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第2号 平成14年11月5日(火曜日)

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平成十四年十一月五日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 岩屋  毅君 理事 木村 太郎君
   理事 浜田 靖一君 理事 山口 泰明君
   理事 末松 義規君 理事 渡辺  周君
   理事 田端 正広君 理事 樋高  剛君
      逢沢 一郎君    岩倉 博文君
      臼井日出男君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    杉山 憲夫君
      虎島 和夫君    中山 利生君
      仲村 正治君    平沢 勝栄君
      江崎洋一郎君    大出  彰君
      金子善次郎君    川端 達夫君
      前原 誠司君    赤松 正雄君
      赤嶺 政賢君    今川 正美君
      粟屋 敏信君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (防衛施設庁施設部長)  大古 和雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月五日
 辞任         補欠選任
  江崎洋一郎君     金子善次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  金子善次郎君     江崎洋一郎君
    ―――――――――――――
十月三十日
 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
十一月五日
 空中給油機の航空自衛隊浜松基地配備反対に関する請願(大島令子君紹介)(第一二六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長奥村萬壽雄君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長宇田川新一君、防衛施設庁施設部長大古和雄君、防衛施設庁業務部長冨永洋君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省入国管理局長増田暢也君、外務省大臣官房参事官齋木昭隆君、外務省大臣官房領事移住部長小野正昭君、外務省北米局長海老原紳君及び外務省中東アフリカ局長安藤裕康君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
田並委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩屋毅君。
岩屋委員 おはようございます。自民党の岩屋毅でございます。
 中谷前長官、それに続いて石破長官ということで、私どもと同世代の若き防衛庁長官が続いて誕生したということを、私ども、非常に心強く思っております。
 特にまた、石破長官とは、かつて政治改革の運動をともにさせていただいたし、最近では安全保障の各種問題にともに汗をかかせていただいてまいりました。石破長官はこの分野においては我が党きっての論客でもありますし、今回の石破防衛庁長官誕生を私ども心からうれしく思っておりますし、期待をいたしております。微力ですが、しっかり支えていきたい、こう思っておりますので、ぜひ御奮闘を賜りますように、まずお願いを申し上げたいと思います。
 きょうは時間が短いので、当面の問題について、ざっと簡潔に質問させていただきたい、こう思うんですけれども、まず有事法制の整備方針についてでございます。
 前回の国会でこの有事法制を成立させることができなかった、非常に残念でありました。これは、我が党の中の議論を通じても、前回の政府案の出し方というのはやはり準備不足だったのではないか、そのことを厳しく指摘したにもかかわらず、準備が整っていないまま国会に出された、まさにその準備不足が露呈をして成立を見ることができなかったということで、私ども大いに反省をする必要がある、こう思っております。
 しかし、さきの国会でかなりの時間を費やしまして各党の議論ができたということは、大きな前進であったと思います。この成果を踏まえて、政府案の足らざる点はこれを補い、修正すべきはこれを修正して、次回は万全の準備で臨んでいただきたい。ぜひとも次期通常国会でと、今言っちゃっていいのかどうかわかりませんが、日程的にはそうなるでしょう、ここで成立を期すべきだと思っておりますが、この有事法制の整備方針について、防衛庁長官のお考えを聞かせていただきたいと思います。
石破国務大臣 有事法制について、準備不足であるという今委員のお話をいただきました。私自身、党におりましたときに、岩屋委員などと一緒にそういうような指摘をしてきた一人であります。斉藤長官のもとで、私が副長官、委員に政務官をお務めいただいたこともありますが、少なくともおととしの十二月ぐらいまでの段階では、有事法制というのは研究が終わったいわゆる一分類、二分類だ、まずこれをもって有事法制で、全部ではないけれども、まず有事法制というのはこれなんだというふうに多くの人が思っておったと思うんです。防衛庁としてもそういう考えだったと思います。
 としたところが、ことしになって、忽然とというべきか、武力攻撃事態対処法案というものが出てきた。それは、理念法のようでもありプログラム法のようでもあり、よくそこの整理ができていなかったといううらみはあるんだろうと思うんです。ここのところをきちんと整理したい、理念の部分とプログラムの部分をきちんと整理したいということが一つあります。
 それからもう一つは、こっちの方が大事なのかもしれませんが、一体何のために有事法制が必要なんですかというそもそも論、これをきちんと国民の皆様方に訴えてきたかというと、その部分もやや十分ではないところがあったのではないかと思います。
 私は、以前副長官として防衛庁におりましたときに、有事法制という名前が、もしネーミングがよくないのであれば、文民統制法案だっていいんですよということを申し上げました。いざとなれば超法規ということは絶対にあってはならないことであって、きちんと法律にのっとってやるんですよということ、文民統制、法治国家の意義をこの有事法制においてきちんとするんだという意味合い、そして、国民の権利とか自由とか、そういうものを最終的に担保してくれるのは国家しかないわけですよね。民主主義なんかぶち壊してしまえ、民主主義国家なんかぶち壊してしまえ、仮に、そういう勢力が仮定の話ですが、あったときに、国民の権利や自由をきちんと守ってくれる国家、それを守るための法制、そしてそれが法律に基づいてきちんと動くということ、そういうそもそも論が必要なんだろうと思っています。
 それから、国民保護法制というものに対する説明、この部分も十分これからはしていく必要があるんじゃないかと思っています。
 委員御案内のとおり、昔は戦争というのは軍人がやるものだった。プレーヤーは軍人だった。けがをするのも、不幸にして命を落とすのも軍人であった。しかし、それが第二次世界大戦で軍人と民間人の比率が同じぐらいになって、朝鮮戦争では民間人の方が多く死ぬようになって、ベトナム戦争なんかになってみると、何十倍も民間人の方が死ぬわけですね。だとすれば、民間人をどうやって守っていくかという法制がなければ、幾ら軍が、あるいは実力組織がきちんと戦ったとしても、民間人がたくさん犠牲になってしまえばその戦は負けなんです。そのことが必要なんだということ、そういうことをきちんとこれから先説いていって、時期のいかんは私は申しません、一日も早い成立をお願いしたい、そのように思っておる次第でございます。
岩屋委員 適切なお考えだと思いますね。特に、長官が今力説された、シビリアンコントロールを貫徹させるための法制だ、このことを国民の皆さんに御理解いただけるようにしっかり努力をしていただきたいと思うし、私どもの立場でも努力を続けたいと思います。
 次に、有事に至る前段階の問題なんですが、非常に物騒な世界になってまいりまして、各地でテロが頻発をいたしております。アメリカ、ロシア、中東、インドネシア、フィリピン等々、これは決して我が国も安閑としてはいられないと思います。国民の皆さんは、有事法制の議論をするときに、外国の軍隊が攻めてくるというよりは、テロや不審船、こういうことのための法整備をこそ急いでくれ、こういうお話がやはり多いわけですね。より蓋然性の高い脅威に対してどう備えるか、この法整備がやはり伴わなければ、有事法制全体についての御理解もなかなかいただきにくいのではないかな、こう思います。
 このテロや不審船についてのさらなる法の充実というか整備についてはどうお考えでしょうか。
石破国務大臣 この部分も、十分なコンセンサスが実はできていないんじゃないかという感じを私は持っているんですね。普通、テロというのは犯罪であって、それは国内法によって対処をすべきなのである、こういうお話になってくる。しかし、それでは九・一一みたいなものは自衛権の発動だ、こういうことになっている。では、どのようなテロが国内法によって対処すべきものであり、どうなれば自衛権の発動になるのかという議論が一つあります。
 それからもう一つは、私は基本的には、テロが国内犯罪として取り扱われる以上は、自衛権の発動ではなくて、警察権の発動なんだろう。ただ、ここを誤解していただきたくないんですが、警察権の発動として自衛隊が出るということは当然あるわけですね、海上警備行動であり、治安出動がそうですね。
 では、どういう場合に、海上警備行動、治安出動で警察権の行使として自衛隊が出るのかということもちゃんと整理をしておかなければいけない。しかし、相手にしてみれば、軍が出てきたぞ、自衛隊は向こうから見れば軍に映るわけですよね、軍が出てきたぞと向こうが思うことによって事態が拡大をするということも避けていかなきゃいけない。この辺の明確な整理が私は必要なんだろうと思っています。
 委員が、今法整備というふうにおっしゃいました。私が思っていますのは、例えば三年前に能登半島沖の事案があった。あのときは、海上警備行動が初めて発令されて海上自衛隊が出た。しかし、条文を読みますと、例えば治安出動は、自衛隊の部隊に対してと、こういうふうに書いてありますから、じゃ、海上自衛隊に治安出動をかけるということになった場合に、ではどうなりますか、どこまで可能ですかという検証はきちんとやらなければいかぬでしょう。あるいは、航空自衛隊に海上警備行動をかけたとしたら何ができますかという検証も必要なことなんだろうと思っています。
 まず法改正ありきということではなくて、今与えられている法律の中で一体どこまで可能なのかという検証作業というものを今大至急やっておるところであります。これはまさしく机上の空論になってはいかぬのであって、本当に現場でどうなんだ、そして海上保安庁なり警察との連携でどうなんだ、そしてそれにタイムラグは生じないのかということを全部検証した上で、しかるが後に法改正が必要なのかどうか、そういう議論を詰めないで、まず法改正ありきという考え方は私はとりません。
 もう一つは、昨年の自衛隊法の改正において、情報収集出動というものを入れましたね、それから警護出動というものを入れました。そして、治安出動の要件、この部分も緩和をしたところがございます。その部分をどこまで使えるのかというこの検証も、ただ条文だけに書いたって仕方がないのであって、やっていかねばならないのであろう。
 冒頭に申し上げましたように、じゃ、そのテロというものに対してどのような方向性で対応するのかということと同時に、運用面でどこまでできるという検証を、これはきちんとやって、国会の場の御議論に付すことが我々の責任である、かように思っておる次第でございます。
岩屋委員 その各種の検証作業を、これは急いでやっていただいて、やはりその全体像を早く示していただきたい。これは、より蓋然性の高い、可能性が高いと国民が思っている危機に対して、政府が、どう対応する、どういう手順で、どういう整理で対応するのかということをつまびらかにするということは非常に大事なことだと思いますので、ひとつ御努力をいただきたいと思います。
 そこで、例えば、きのう、おとといですか、ロシアのテロのビデオなどがテレビ等に流されて、生々しい惨劇の様子を私どもも拝見したわけですが、さっきの話をわかりやすく、現状をわかりやすく説明していただくために、例えば、我が国においてロシアで起こったとほぼ同様の事件が起こった場合、人質を伴ったああいう施設の占拠事件、しかも重装備をしたテロリストによる事件が発生をしたという場合は、現状において、どのようなスキームで、どのような手順で対処がなされるのか、我が国の現状について説明をしていただきたいと思います。
石破国務大臣 同じ問いは私も役所の中でしておるところなんですね。あれと同じことが起こったらどうなるのということなんです。
 先ほどのお答えと重複したら恐縮ですが、基本的には国内犯罪なんだろうと。だとすれば、まず警察が出るのだろうということにはなるわけです。そのときに、持っているものが非常に、警察の武器では対処できないとか、そういう場合になったとしたらどうなるか。そうすると、今度は官庁間協力ということになって、いろいろなそういうものを御提供することになるだろう。あるいは、被害者が出た場合には災害として対処するというようなこともある、これは災害派遣の枠組みを使うことになるだろうということだと思います。警察力をもってしてはなお対処し得ないという事態になったときに、今度は治安出動の枠組みということになるのだろうというふうに、こう紙の上では整理ができるわけですね。
 しかし、実際問題、まだ幸いにして我が国でああいうことが起こっていませんが、そういうふうに紙の上で書いたような、頭の上で理解したような、そういう形で迅速的確に対処できるかということを我々は政府の責任としてきちんとやる必要があるんだろうと思っています。もちろんいろいろな仕組みがあるわけで、軽々に、どうなったらば一般の警察力をもってしては対処し得ない事態というふうに判断をするか、そのことについてもいろいろな議論がございます。
 例えば、劇場が占拠されたというようなロシアのような事態が起こったときに、では、警察が緊急事態の布告をするかというと、そういうことにはならない。確かに、緊急事態の布告というのは治安出動の下令要件ではありませんけれども、どうなった場合に自衛隊が治安出動を下令するか、やはりああいうケースを念頭に置いてやることになるだろうと思っています。
 大体の流れとしては今申し上げましたようなことかと思っていますが、そのことで遺漏がないかどうか、このことも今全力を挙げて検証しておるところでございます。
岩屋委員 そうですね。スキームとしてはそうなるんでしょうけれども、実際に迅速な対応が可能かということについては、もう一度石破長官のもとでしっかり検証しておいていただきたい、このように思います。
 時間がないので次に行きますが、次は北朝鮮の核開発の問題ですけれども、これはまた後ほど同僚議員からもたくさんお話があろうかと思いますが、長官は、拉致議連の前会長さんとしてこの拉致の問題の解明に多大な御尽力をなさいました。心から敬意を表したいと思います。しかし、一方のこの核開発問題ということになりますと、まさしく国防の責任者として、断固これを阻止すべくこれから力を尽くしていただきたいと思っているわけであります。
 既にさきの米朝協議では、北はウランの濃縮計画を進めているということを明言した。アメリカの見方では、いろいろな人の発言では、もう既に保有をしておるのではないか、こういうお話もあるわけですが、現段階で防衛庁としてはどう見ておられますか。
石破国務大臣 委員御指摘のように、先般、ケリー国務次官補が行きましたときにそういうことを向こうが認めたということは、非常に大きな意味を持つものだというふうに我々は思っています。
 そして、アメリカにおいていろいろな文書が出ておりますが、昨年の一月に出ました国防総省の文書「拡散―脅威と対応二〇〇一」でありますとか、あるいはことしの十月十七日にラムズフェルド国防長官が記者会見におきましてなさった発言とかいうふうに、合衆国はそのような認識でおります。
 私どもとしては、これは自前でそういうような情報を、きちんとしたものを把握しておるかといえば、それは違う。しかし、北朝鮮がそういうことをしておるということを排除する、否定する理由もどこにもないわけで、やはりそのようなことを重く受けとめて認識をする必要があるだろうと思っています。
 特にウラン型というのは、広島に落ちたいわゆる広島型の原爆というものと同じものであって、広島型の場合には、実験も行わずにいきなり落としたというところが長崎型と違うところであります。しかし、この難点は、小型化をするのが非常に難しいねというところがある。プルトニウム型は、非常に実験等を繰り返さなければいけないが、小型化は容易である。そうすると、では、ミサイルに積めるのか積めないのか、小型化の技術開発がどうなっておるか、そういうようなことも多々あるんだろうと思っています。
 しかし、北朝鮮が核兵器の開発を認めておる、あるいは持っておるということを否定する理由もどこにもない、少なくとも排除することにならない。だとするならば、そういったことに対するいわゆる脅威というものをきちんと認識する必要があるであろう。
 ですから、拉致の解明とあわせて、この核の問題というものをこれから先の交渉の中で最優先課題とするということを、先般の会議でも我が政府としては申し上げたところでございます。
岩屋委員 今長官おっしゃったように、もし弾頭が開発されて、要するに小型化に成功したということに将来なりますと、既に北のミサイルの射程内に全土が入っている我が国にとっては、常時この北の核の脅威にさらされるという事態になるわけでありまして、断固そういう事態は阻止をしなければならないと思います。もちろん、外交努力でまずその可能性を排除するということが先決ですが、しかし一方で備えもなければならないと私は思うんです。
 新聞に出ておりましたが、ケリーさんと長官の話し合いの中で、ミサイル防衛技術については研究の段階から開発の方に一歩進めるというお話があったと聞いておりますが、私は当然そうあるべきだと思っているものの一人でございまして、やはり敵のミサイルを無力化するための防御システムということについては、私は、真剣に取り組んでいくべきではないか、研究から開発の段階に移っていくべきではないか、特にそういう防空のための技術開発については特段の取り組みを防衛庁はすべきではないか、こう思っておるんですけれども、長官の御見解を聞かせてください。
石破国務大臣 ケリー次官補との会談の内容につきましては、これは外交上のお話でございますので、この場で言及をいたすことはお許しをいただきたいと存じます。
 これはもう委員御案内のとおりであって、今、研究というものをやっているわけですね。それが開発段階に移りますときには当然安保会議の議を経るということであって、これを私が研究段階から開発段階にというようなことを云々すべき立場でないことも十分御案内のとおりであります。
 しかし、私はかねてから、ミサイルディフェンスというものは積極的に進めるべきだという考え方の持ち主でありまして、要は、抑止力というもので今まで幸いなことにそういう核戦争というものは起こらなかった、しかし、その抑止力、MADの理論というものにほころびが見えたときに、あるいは冒険的にそういう核を使うということが否定できない場合に、どういう形で一番それが抑止できるか、あるいは対応できるかといえば、それはミサイルディフェンス以外にないのだろうというふうに思っております。
 これは、合衆国も含めまして、そういうミサイルに対しまして完璧に防御できるという体制はどの国も持っておりません。我が国だけが持っていないわけではなくて、アメリカ合衆国だって持っていないわけであります。では、現在我が国は何を持っているかといえば、極めて限定的な能力、イージスで探知が部分的にできるとか、あるいはPAC2で、本当にその辺まで飛んできたときに撃ち落とせる、例の湾岸戦争のときにごらんになったとおりであります。それしか有していない。
 私は、専守防衛をとります我が国にとって、このミサイルディフェンスというのは、向こうが撃たなきゃ撃たないわけですから、まさしく専守防衛以外の何物でもないというふうに考えております。したがいまして、研究の時点では、これは物になるのかならないのか、本当にこれが兵器として物になるかならないかといろいろなデータを積み重ねていくのが研究の段階であって、本当にその研究の成果が出て、これは物になる、非常に俗な言い方ですが、防御兵器として、かぎ括弧つきの兵器と申しますが、非常に役に立つということになって開発に移るわけですね。私は、そういうような研究の成果が一日も早く出るべく努力をすべきだというふうに願っておるものでございます。
岩屋委員 ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
 時間が短くなってきたので、長官にも簡潔な答弁をお願いしたいと思いますが、そもそも論の問題で一つ二つ聞いておきたいと思うんです。
 それは、第一番目は集団的自衛権ですが、私はかねてから、この日本の政府の集団的自衛権の定義はおかしいなと思ってまいりました。国連による集団安全保障という概念がある、その下にこの集団的自衛権という概念があって、多国間、地域でまとまってやっているものもあれば、二国間のものもあるでしょう。最後に個別的自衛権がある。こういう概念のイメージだとすると、日米安保条約を締結するということそのものが、ある意味では集団的自衛権の行使なんだと私は思っているわけです。
 つまり、日本の政府が言ってきた、自国が攻撃されていないにもかかわらず、密接な関係にある国に対する攻撃を実力をもって排除する権利などという定義は、これは世界に一般的なものではないはずだと思います。国連憲章を素直に読めば、同盟国と相協力してお互いを相互に防衛する権利が集団的自衛権だ、こう読むのが私は筋だと思っておるんです。
 長官は、この集団的自衛権については、当然これまでの政府見解を踏襲する、しかし研究はしてもいいのではないかということを当委員会でもおっしゃった。そして、では具体的にはどういうことかという問いに対しては、例えば武力行使との一体化の問題がありますね、情報提供などもそうですね、こういうお話でしたが、私は、本来はそういう瑣末な議論ではないのではないかと思っているんです。
 この集団的自衛権の研究ということについて、もう一度長官のお考えを聞かせてください。
石破国務大臣 これは、予算委員会で総理が言明をされましたように、小泉内閣として憲法の解釈を変えるつもりはないと。また、かつて橋本内閣のころであったかと思いますが、解釈を変えるためには明文で変えなければいけないという答弁もございます。閣僚の一員である以上、それに従うのは当然のことということを前段として申し上げておきます。
 委員御指摘のように、そもそも集団的自衛権とは何なんだ。そして、国連というものができるときに、国連憲章をつくるときに南米の国が集まって、最初は集団的自衛権というのはなかったわけですよね、南米の国が集まってチャプルテペック協定というのをつくった、なぜ集団的自衛権という概念をわざわざ認める必要があったのだろうか、国連憲章においてわざわざ認める必要があったのだろうか。そして、集団的自衛権の定義は、私も随分調べてみましたが、やや国によって異なりがある部分がある。密接に関係のある国とは何だ、それは条約を必要とするのか、同盟国であることなのか、いろいろなことがあるわけですね。そしてまた、我が国が攻撃を受けていないにもかかわらずというようなニュアンスが本当にどこかで出ているか。そういうことが私は研究なんだろうと思っています。
 しかし、我が国においてこの集団的な自衛権の議論をされるときは、例えば武力行使の一体化を避ける、あるいは情報の提供をすることが集団的自衛権に当たるか当たらないか、それを委員のお言葉を使えば瑣末ということになるのかもしれません。しかし、そういうようなことがすべて集団的自衛権と何らかの関連を持って議論をされている。
 やはり、そもそも集団的自衛権というものは、世界に平和を確立する、国連がきちんとワークをする、そのためにつくられたものであって、そもそも集団的自衛権とはという研究は私は必要なことだろうと思っております。
 内閣における立場は冒頭申し上げたとおりで、何ら変更はございません。
岩屋委員 これはまた機会を改めてやらせていただきたいと思います。
 もう一点、これは簡潔にお答えいただきたいと思うんですが、前の国会でもちょっと問題になったことですが、我が国の核の保有に関する政府見解ですね、これまでの。憲法上は禁じられてはいないが、我が国は非核三原則という国策によってこれを保持しないということについては長官はどうお考えですか。同様のお考えでしょうか。また、だとするならば、なぜそのようにお考えか、聞かせてください。
石破国務大臣 これは、委員は過去の政府の答弁を全部お読みになっての御質問だろうと思っています。
 すなわち、核を持つということは当然憲法上許されないというわけではない、当然憲法九条からそれが導き出されるわけではない、しかし我が国は、非核三原則であるとかあるいはNPT条約であるとか原子力基本法であるとか、特に私は明文で禁じているのはNPT条約だと思うんですね、この条約でとにかくそういうものはやらないんだということになっている、それである以上、憲法上許されたとしてもそれを持つことはできない。あるいは、今までの答弁の中で、原子力基本法の趣旨からいっても、たとえ防御的なものであるにせよ、核兵器は持てないというような愛知科学技術庁長官の答弁もあるわけであります。それが政府の立場です。
 核を抑止力として考えた場合に、我々は、それは日本はもちろん持たない、しかし米国のそういう抑止力に依存をするというのが今までの立場であったわけで、我々がNPT体制というものを是認し、これの推進を全世界に向かって呼びかけていきます以上、私は、NPT体制の持っておる精神というものは我が国として大切にしていかねばならぬのじゃないか。
 核の持つ意味についていろいろな御議論はあるだろうと思います。しかし、今、北朝鮮と交渉をしておる、その中で、NPT体制というものを確立、NPT体制における義務の履行ということを言っております。我が国として、NPT体制、そういうようなものにおける核は持たないんだということ、このことをきちんと肝に銘じて交渉する必要があるであろう、このように思っておる次第でございます。
岩屋委員 了解しました。
 最後に、外務大臣、外務省に一点だけ質問させていただきたいと思います。
 それは、当然日朝国交正常化に関してでありますが、まず、これまでの御努力に心から敬意を表したいと思います。
 ただ、今回の交渉で、私ちょっと気になっておりますのは、既に決まってやっていることですからしようがないにしても、五人の被害者の方々を帰さないという方針転換を政府がしたということは本当に正しい判断だったのかどうかというのを私は考えます。
 というのは、国交正常化交渉を始めるために既に北朝鮮が切ったカードを、一回もう切られてしまったカードを、もう一回相手の交渉カードにかえってさせてしまったのではないか、そんな思いがしてならないわけですが、これはどういう理由で、だれがこの決断をされたのか、経緯をちょっと教えていただきたいと思います。
川口国務大臣 今回の政府の決定について、今岩屋委員がおっしゃったような考え方をなさる方もいらっしゃると思います。
 これは政府の方針として、帰られた五人の方が自由な環境のもとで意思決定をすることができる、そういうことのためには、五人の方に引き続きいていただいて、なおかつ北朝鮮に残っているお子さん等の家族の方にも日本に来ていただいて、その上で意思決定をしてもらう必要がある、そういう考え方からでございます。
 これが北朝鮮側の新たなカードとなるかどうかということについては、前回の交渉で、これはカードとはできないということをきちんと向こう側には明快に伝えているわけでございます。これが北朝鮮側にとってはカードとはならない、日本としては、家族の方の帰国をしてもらって、そこで自由な意思決定をしてもらう、これが政府の方針でございますので、これは守っていきたいと考えています。
岩屋委員 残念ながら時間が来たので終わりたいと思うんですけれども、当然、被害者の御家族も含めた全員の永住帰国というものを目指して、毅然たる交渉をこれからもしていただきたい、こう思っておるわけですけれども、もしそれに失敗するようなことになると、同じ悲劇を繰り返す、親子の分断ということにもなりかねないわけで、私は本当に、外務大臣並びに当局、強い決意を持ってこれからの交渉に臨んでいただきたいと思います。
 あえて最後に言いにくいことを一つ言いますが、私は、被害者の御家族の皆さんの御意向を尊重するということは非常に大事だと思いますけれども、ある意味ではそれがすべてではないわけでありまして、今般の報道の様子などを見ておりますと、外交交渉では異例の、情報の開示が私はひど過ぎるのではないか、こういうことを繰り返しておって本当にまともな外交になるのかなという懸念を持っている者の一人でございます。
 御家族の皆さんの心情をおもんぱかるということは極めて大事でありますが、さらに大きな外交目的を持ってこの交渉は進められているんだということを踏まえて、しっかりとした交渉をやっていただきたいということを最後にお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
田並委員長 次に、大出彰君。
大出委員 民主党の大出彰でございます。
 きょうは、第三次厚木爆音訴訟の件につきまして、同じ厚木の米軍、海軍飛行場の隣のエンバイロテックというところの公害の問題で前回質問をさせていただきましたが、それとの比較におきまして、厚木訴訟についてお伺いをしたいと思っています。
 十月の二十九日の日に、神奈川でございますので、神奈川の国会議員の方々に署名をいただいて、首相官邸に、控訴を断念してくれという要望に原告団の方々と行ったわけでございます。神奈川といいますと、小泉首相も神奈川なので、小泉さんがサインをなされば解決したんでしょうけれども、実はそうではなかったものですから、この問題はどうも、私としては控訴を取り下げるべきではなかったか。
 原告団、四十年の歴史があり、第一次訴訟が始まってから二十六年たっている。拉致の問題も、当然戦後のやみといいますか、外交が進展しなかったケースの一つでございますけれども、同じように、ハンセン病のときに英断をしたように、小泉さんが解決の意思を示していただければすっと解決するのではないか、そんなふうに訴訟については思っているわけなんです。
 そこで、どうも爆音でございますので、議会で爆音というのはどういうのだと説明をしても説明しにくいわけですね。本当ならば、爆音の訴訟をやっている原告団が、ビデオテープ等に現場で爆音の音を撮って、それを聞かせるということをやりたがっているわけなんですが、この委員会に持ってくるわけにいきませんので、どのように表現をして現場の声を私が伝えればいいのかということをいろいろ考えましたけれども、なかなか難しいなと思いながら、そんな思いの中で質問させていただきたいと思っています。
 そこで、この判決なんですが、大変評価のできる部分があると思っております。大変長いもので、十月の十六日に出た判決ですので、全文を取り寄せるというのはなかなか難しかったものですから、ほとんど要旨が出回っているというのが現状だと思います。
 その中で、結論的には、「自治体騒音測定データ等に照らし激甚であると推認される。」ということを言っているわけでございまして、特徴的なのは、うるささ指数が七五以上だということですね。こういうふうにも言っているんですね。平成六年以降平成十一年までは、NLPが大幅に減少されたことが認められる、しかしながら、平成十二年は厚木基地におけるNLPの回数は硫黄島におけるよりも多いし、平成六年以降の厚木基地周辺の騒音自体について見ると、年間の騒音回数は大きく減少していない、したがって、騒音状況をNLPの有無だけで判断するのは相当ではない、こう言っているわけですね。
 これが重要なのは、うるさいのはNLPだけじゃないんですね。朝のも、MLPといいますか、モーニングもありますし昼間もあるわけです。そして、米軍機だけではなくてP3Cも当然あるわけです。そういう意味では、ややもするとマスコミ報道等、NLPあるいはデモンストレーションのデモフライトについて取り上げることが多いんですが、そうではなくて、NLPだけじゃなくてうるさいんだよと言っているというところが、これは原告の皆さんが、そうだ、そうなんだ、やっと気がついてくれたかと、そういうことなんですね。そういう意味で重要な判決だと思います。
 そして、飛ばしますけれども、もう一点は、いわゆる減額の法理としての危険への接近の理論を適用しなかったという点があるわけですね。というのは、騒音の発生状況に常態性、定期性がないことに照らせば、原告らが入居する前に騒音の実態について正確に把握することは極めて困難であり、仕事や家庭の事情に基づくものであり、少なくとも被害を積極的に容認するような動機は認められないと言って、減額の法理であるところの危険への接近の理論を適用しなかったということなんですね。結果的には二十七億四千六百万円の賠償を命じているという判決なんです。
 そこで、政府としてはというか防衛庁としては、どういう理由で控訴をしたか、お聞かせください。
石破国務大臣 今委員が御質問の中でおっしゃったとおりでありまして、うるささ指数が今まで八〇までしか認められていなかったが、今度七五まで拡大をされたということ、そしてまた、危険への接近の理論というものが認められなかったこと。
 私どもは別に、判決がすべてけしからぬとか、そのようなことを申し上げておるわけではありません。国の責任というものもきちんと自覚をしなければいけません。そして、委員が御指摘のように、私は役所の中で申し上げておることですが、NLPだけではない、昼間もあれば朝もあるということを申し上げております。ハンセン病の場合のことも私も申し上げました。
 しかしながら、法律の理論といたしまして、やはりうるささ指数というものが八〇であったものが七五になった、そして、危険への接近の理論が全く認められなかったということ。これは国の責任ということはまた別に、法理論としてこれは争っていかねばならないということであろうというふうに思っております。そのようなことで控訴をさせていただいたと承知をいたしております。
大出委員 今、七五Wといううるささ指数で認めたという点に、通常と違うということでしょうか、八〇からということになっているということを言いたいんだと思いますが、普通、八〇以下だからだめなんだと言う、では七五で本当に現場の方々が耐えられているのかというと、私は耐えられていないんじゃないかと思います、一つは。
 それからもう一つは、それを言うということは、例えば防音装置をつけて、ほら八〇以下になりましたよ、七五ですよ、それでいいのかということ、そういうふうなことを言っているような気がして、おかしいのではないかと実は思っているんですね。そしてまた、七五以上ということにすれば、当然賠償の範囲もふえてくることでございますし、そのふえるのがけしからぬと言っているようにも聞こえないわけではないので、その点でどうもおかしいのではないかと思っております。
 そして、きょうはこれをメーンにやろうと思っていますので、少し長々と原告の皆さんの声などをこの議会で反映させていただこうかなと思っておるわけです。
 今回の判決、岡光民雄さんが裁判長なんですが、二〇〇〇年の九月の十八日に現場検証をおやりになったんですね。御本人が、裁判長が初めて爆音を聞いたというんですね、現地に行かれたと。そのときは、九月十八日の夜七時から九時までということで現場検証を行ったんだそうです。
 そうしたところ、実際は三十分ぐらいずれたらしいんですが、十九時から二十一時までの間に、十九時には、ジェット機四十機、プロペラ機ゼロ、ヘリコプターゼロ、合計四十機。FA18Cが五機、F14Aが十機、S3Bが四機、EA6Bが二十。二十時のときになると、ジェット機が三十二、プロペラが一、そしてFA18Cが一、F14Aが三、S3Bが一、EA6Bが二十七。二十一時の段階が、ジェット機が十九、そしてプロペラが六、合計二十五ですが、FA18Cがゼロ、F14Aもゼロ、S3Bがゼロ、EA6Bが十九、こんな検証の結果になっているようなんです。
 これを聞いただけではあれなんですが、プロペラというと、場合によってはP3Cも入ってくることなんですが、たったの十九時から二十一時の間でこれだけの件数の飛行機が飛んでいるということで、それも当然大きな爆音を響かせているということなわけです。そして、そういう検証結果を得た、心証を得て、こういう判決に至っているんだということなんです。
 そして現場では、原告による監視データというのがいっぱい出ておりまして、特徴的なところをこの議会ででも反映できるように申し上げますが、P3Cについて言っているんですね。多分一年前だから二〇〇一年の話だと思いますが、こういうことが書いてあるんです。
 海上自衛隊の特にP3Cの騒音だ。P3Cは通常任務でもかなり飛ぶが、特にひどいのは、一、二機が基地周辺を旋回しながら長時間にわたって行う連続離発着訓練だ。なぜか一周四、五分のコースで旋回するので、二機で行うと平均二分間隔で頭上付近を通過される。基地の担当者に抗議すると、訓練で飛んでいますから御理解くださいとしか言わない。理解すれば爆音が聞こえなくなったり、墜落の危険がなくなるのなら幾らでも理解するが、そうはならない。だから理解は何の足しにもならない。このひどさは今に限ったことではなく、統計的には、平日の約半分は一日に三十機以上のP3Cが飛ぶ。
 最近の例として、八月二十七日月曜日の全機種の時間帯別延べ目撃機数の表を右に掲げると書いてありまして、この日は、ジェット機は比較的少なかったが、プロペラ機百六十五機のうち百三十三機はP3Cで、その大部分が離発着訓練で、実に延々八時間にも及んでいる。ジェット艦載機はよほどのことがなければこんな長時間連続して飛ぶことはない。爆音はジェット艦載機よりは多少小さいが、それでも頭上付近を低空で飛ばれると八十五デシベル前後を示すので、神経がおかしくなる。もし機関銃があればためらわず撃ち落とすだろう、そんな気持ちになるほどひどいのだ、このように訴えているわけなんです。
 これを見ると、P3Cが大分、音としては小さいらしいんですが、うるさいということを言っているわけなんですが、この点についてどんな御感想なり対策なりをお持ちなのか、お聞きしたいんです。
大古政府参考人 厚木周辺の住民の方々にとって騒音問題が深刻な問題だということは、我々としても十分認識しております。
 そういう中で、従来から防音対策に最大限の努力をしてきておりまして、今後とも周辺住民の理解を得るためにその施策を充実していきたい、こう考えております。
大出委員 このことを現場の、原告団の方々はずっと四十年間にわたり、そして訴訟を始めてから二十六年間にわたり問答を繰り返しているわけです。
 ところが、後でも話しますが、エンバイロテックのときの、つまりは厚木の海軍基地の隣あたりのダイオキシンの公害の問題で、米軍が撤去要求をしてくるわけですね。撤去をして、それが九二年からですから、八年ぐらいで片がついているわけです。それと比べますと、いまだに解決がつかないというか、その手がかりさえできていないというのが現状だなと今思いました。
 そんなことでございますので、もう二、三実態等をお尋ねしたいと思っております。
 実は、最近は、いわゆるフライトデモンストレーションというのを米軍の方はやらなくなっているようなんですね。ところが、ことしの五月の二十三日、大和の大和祭というのでしょうか、その期間中は米軍の司令官の方はデモ飛行は一切行わないと言ったらしいんですが、自衛隊の方はどうなんでしょうか。デモフライトをこのときはおやりになったんでしょうか。
大古政府参考人 先生御指摘のように、米軍のデモフライトは司令官の判断で自粛するということになっておりますが、自衛隊のデモフライトの状況については、ちょっと具体的なデータは今持ち合わせておりませんけれども、基本的には行われていないというふうに承知しております。(大出委員「やったということですか」と呼ぶ)行っていないと承知しております。
大出委員 行われていないというならばよろしいんですが。この方は原告の方なんですが、厚木基地のホームページにアクセスしたんですね。そうしたら、「船員達が大和祭を盛り上げる」と題して次のような記事を掲載している。
 対潜ヘリコプター(HSL51)部隊からの乗組員は大和祭の期間中、SH60Bシーホークヘリコプターの操縦を日本の少年に見せる。祭は手作りの土産物を売るための地域販売や市民が大和周辺の自然環境を楽しむための機会であった。
 海上自衛隊は群衆のためにSH60JヘリコプターとP3C航空機で飛行演示(フライトデモンストレーション)を行った。
というように言っているわけなんですが、統一的に行ったかどうかは、今、質問通告しておりませんから、確認できませんか。
大古政府参考人 先ほど申しましたように、米軍のデモフライトにつきましては、住民の方からいろいろ御懸念する声もございまして、自粛するということになっております。
 自衛隊の方については、先ほど申しましたようにちょっと詳細なデータを持ち合わせていないのですが、細部は確認したいと思いますけれども、近隣住民に迷惑がかかる形で、いわゆる曲技飛行とか、そういう形ではやっていないというように承知しております。
大出委員 そして、P3Cに絡んでいるんだと思うのですが、厚木飛行場周辺の航空機の騒音軽減措置、俗称飛行協定というのがございますね。その場合に、飛行協定4a(1)によれば、二十二時から朝の六時の時間帯は緊要と認められる場合を除きすべての活動は禁止されることになっているということになっていて、しかし、どうも実はP3Cが、特に十一月、きょう五日ですね、このころに多いのじゃないかという御指摘なんですね。
 というのは、平成十年、十一月六日から十一月十一日の六日間、平成十一年は十月二十八日から十一月三日の七日間、平成十二年は十一月七日から十一月十三日の七日間、平成十三年は十一月五日から十一月十一日の七日間、このときに集中的にP3Cが深夜や明け方に飛んでいるというのですね。どうもこれは飛行協定に違反しているのではないかという御指摘があるんですよ。
 まずは、何のために飛行をしているのかをお尋ねすると同時に、一説によると、物資を投下しているという、そういう計画はあるのでしょうか。この二つ、お尋ねなんですが。
大古政府参考人 厚木飛行場におきます深夜における飛行の原則としての自制につきましては、日米合同委員会で合意されまして、米軍に適用されるものでございます。ただし、自衛隊につきましても、周辺住民に御迷惑をかけないように常に運用上心がけていると思いますけれども、先生の御指摘の具体的なところの詳細は、今データを持ち合わせていないのでちょっとお答えしかねるのですけれども、基本的に自衛隊につきましても、深夜については緊急の任務がない場合については飛行しないということになっているというふうに理解しております。
大出委員 大変困ったことに、米軍の方よりも日本のP3Cの方がうるさいというような感覚で書いてあるわけでございまして、それと同時に、協定違反ではないかと疑われていたり、訴訟の原告でございますので、証人に立ったりもしている方が、こういう話が出てきて、物資を投下する訓練をやっているというと、本来、そんな訓練だと目的が違うのではないかというような話があるわけでして、この辺は、やはり現場の方はしょっちゅう騒音があるから逐一どんな飛行機が通ったかということが音でわかるわけですから、そういう意味ではしっかりとしていただかなければいけないなと思っております。
 そして、先ほども最初に申し上げたみたいに、どんな音がするのかとかそこにいたら耐えられるのかというようなことを示すことが大変難しいわけでございまして、長いと思われるかもしれませんけれども、こういうことが起こっているんだということを少しでも現場の声をお伝えしたくて、私は今、るる言っているわけです。
 もう一つ、「原告の声」の中にありますので申し上げますが、「軍用機の尻にも麻酔液を」というタイトルなんですね。何かといいますと、これは二〇〇一年六月の話なんですが、
 六月二十一日、構造改革の指針となる基本方針が正式に決定された。その中の不良債権問題で「今後二〜三年を日本経済の集中調整期間とし、短期的には低い経済成長を甘受しなければならない」というのがある。不良債権ではないが、基地周辺住民には不良環境問題として今後二〜三年どころか過去四十年にもわたって爆音のために最低限度以下の生活を強いられてきた。これに関することはどこにもまったく触れられていない。一体どうしてくれるのか。六月二十一日付小泉内閣のメルマガの中で、厚生労働大臣は無医村での体験談として、耳にコガネムシが入った少年を看護婦の機転でコガネムシの尻に麻酔液を注射して動けなくし、無事取り出すことに成功した話を紹介している。我々基地周辺住民は、連日のようにコガネムシどころかFA18やP3Cなどの爆音が両耳から侵入し、外耳道を通り越して脳髄にまで達し、精神的・肉体的にダメージを与えている。どこかにFA18やP3Cなどの尻に麻酔液を注射して動けなくしてくれる看護婦さんはいないだろうか。
こう書いてあるんですね。
 これは要するに、常時うるさい音を聞いているとなると、とてもたまらないわけですね。笑い話ではございません、笑えないような状況。これが、ある意味の、全部ではございませんし、一端しかありません。一端をお話ししただけで大分時間が参ってしまいまして、この問題はいずれまたの機会にいたします。
 先ほども申し上げたように、エンバイロテックとの比較について触れたいわけなんです。
 というのは、実はあの問題は、一つは、先ほど申し上げましたように、エンバイロテックのダイオキシンに絡む設備を国の費用によって撤去させるということが最終結果だったわけですが、そのときに、九二年に米軍に言われ始めてから撤去をするまでに八年ぐらいかかったということなんですが、そのとき米軍住宅というのをずっと建ててきたわけですね。さらには、最終的には施設を撤去する費用を出したということなんです。
 それで、一番最初は住宅があったのですが、公害施設ができてから後に住宅を建てたり改修したり、実はずっと防衛施設庁はしてきたのです。平成四年に環境文化委員会においてアメリカから悪臭と煙害の問題について指摘があったわけですが、その後も、平成五年度にいわゆる改築や新築にお金をかけているのです。平成四年に言われて、平成五年度は三十四億円かけていまして、平成六年度は八十三億円かけていまして、平成九年度は四十七億円かけておりまして、平成十一年度は十九億円かけているんですね。これをかけて米軍住宅を建てたりあるいは改築をした。合計百八十三億円かけているわけですね。さらに、公害がうるさいということで、施設を撤去するのに総額六十八億円かけているわけですよ。足しますと二百五十一億円を米軍の軍属と家族の皆さんのために金を使ったということなんですね。一応の解決を見たということなんでしょう。
 ところが、この厚木訴訟の場合には、賠償金が二十七億四千六百万と言われているんですが、まだ控訴もしますし、解決がついていないということなんです。この辺の違いを私はもう少し、やはり日本の皆さんが本来守られるべき対象なんですから、しっかりとこれは控訴を取り下げるか何かして解決をしていただきたいと石破さんにお願いをしたいんですが、お答えください。
石破国務大臣 この件につきましては、かねてから委員がるる御指摘をなさっておられることは、私も議事録を拝見して承知をいたしております。
 十分御案内のことかと思いますが、エンバイロテックにつきましては、これは米軍あるいは軍属の方たちだけのためにやったわけではございません。周辺住民の皆様方の健康にもかかわるものであったということもございまして、国はそのような対応をさせていただいたわけであって、米軍のためだけにやったわけではないということは委員よく御案内のとおり。
 そして、もう一つは、撤去さえすれば一応根源の原因がなくなる、そのエンバイロテックと本当に厚木の場合とは本質的に異なるのだろうと思っています。私たちは、国の責任を認めないとか、住民の方々の苦痛というものを全然等閑視しておるとか、そういうつもりは全くございません。そういうものを軽減すべく、これからも努力してまいります。
 しかし、私は思うのですけれども、訓練している立場に立ってみれば、本当に国民の負託にこたえて、どうやって安全保障をきちんと守っていくか、国民の皆様方から御負担をいただいて自衛隊というのは運営をしておるわけです。P3Cもそれに基づいて飛んでおるわけです。いざというときにきちんとした任務が果たせないということであれば、これまた安全保障の根幹にかかわることであります。
 そして、訓練する側にしてみても、住民の方々がうるさいだろうなという自責の念、あるだろうと思いますし、同時に、訓練する側というのは非常に怖いんだろうと思うんですね。ナイト・ランディング・プラクティスなんかそうですが、本当に、自分自身もいろいろな恐怖の中で闘っているということはあるだろうと思います。何のために訓練をしておるのかという認識、これもやはり持っていかねばならないことだろうと思います。
 いずれにいたしましても、私どもは、住民の方々の御負担というもの、つまり日本全体の安全のために、あるいは極東全体の安全のために、厚木の方々に多大の御負担をおかけしておるわけですから、甘受しろなどと言うつもりは毛頭ございません。どうやったら減るのかということを一生懸命考えてまいります。
 それと同時に、本当に抜本的な解決は何なんだ、前も委員会で申し上げたことですが、硫黄島、そこは台風の常襲地帯であってなかなか使えない、そのことをどうやったら抜本的に解決できるかということにつきましても、先生方の御議論を踏まえて、きちんとした対応を図る、このことも必要なことだと認識をいたしております。
大出委員 時間がなくなってきてしまいますので、また続きをやることにしまして、お呼びをしておりました、一つは、代表質問等で気にかかっておりました有本恵子さんの捜査の点なんですが、この点について、どうも当時、まだ首相が動かなかったときですけれども、いわゆる三点セットがあって、犯罪であるということで動き出した経緯があると思うんですが、残念ながら中毒で亡くなっているとかいう話になっていますので、今後どのような捜査等をおやりになるのかをお聞きしたいんです。
奥村政府参考人 お答えをいたします。
 警察といたしましては、有本恵子さんの拉致容疑事案につきまして、ことしの三月、警視庁に捜査本部を設置いたしまして、その全容解明のため、鋭意捜査を進めてまいりました。
 九月に、この有本恵子さんの拉致の実行犯であります、よど号犯人の魚本公博、旧姓安部公博でありますけれども、この魚本公博につきまして、逮捕状の発付を得まして、国際手配の手続を行いました。そして、そのほかのよど号グループとともに、外務省を通じまして、北朝鮮に対して身柄の引き渡しを今要求しているところであります。
 他方、有本恵子さんに関する北朝鮮側の事実関係の説明につきましては、不十分な点あるいは疑わしい点がありますので、外務省を通じて、北朝鮮側に対してさらに詳細な説明を求めているところであります。
 警察といたしましては、この有本恵子さんの拉致容疑事案を含めまして、北朝鮮による日本人拉致容疑事案の重大性にかんがみまして、その全容解明のため、今後とも必要な捜査を最大限の努力で行ってまいるつもりでございます。
大出委員 時間が来てしまいまして、申しわけないんですが、入管の方をお呼びしたものですから、一言だけお答えください。
 金正男さんの航空料金はだれが払ったのかという点でございます。証拠があるんでしょうか。どうぞ。
田並委員長 法務省増田入国管理局長。
 なお、申し合わせの時間が来ましたので、簡単にお願いいたします。
増田政府参考人 委員お尋ねの人物につきましては、平成十三年五月四日、本人みずからの負担によって成田空港から出国しております。
大出委員 時間ですので、質問を終わります。お呼びして質問できなかった方、申しわけございません。
 ありがとうございました。
田並委員長 次に、渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、質問をさせていただきます。
 拉致問題の解決なくして日朝正常化はあり得ないと繰り返されております。前回の外務委員会での閉会中審査でも私質問しましたけれども、拉致問題の解決なくしてと。どの時点で拉致問題を解決したと判断するのか、この点について、だれかお答えできる方いらっしゃいますでしょうか。
川口国務大臣 拉致問題がどういう段階になったら解決できるのかということについて、これは非常にはっきりした明快な形で、こうなったらということをお答えするのは難しいかと思いますけれども、基本的に、これについては、今政府として、北朝鮮にいる被害者の人たちの家族の人について、日本に戻ってきてもらって、そしてここで、自由な環境のもとで意思決定を、拉致された被害者の方にしていただくということが非常に大事であるというふうに考えていまして、そのために、クアラルンプール等その他の場も含めまして、北朝鮮に対しては、この拉致問題についての政府の方針をきちんと話をし、交渉をし、それに対応するようにということを言ってきているわけでございます。
 今、さまざまな事実解明を行っている段階であるわけですけれども、今までのところ、北朝鮮から出てきた事実と言われるものについては、十分にこれでわかったというわけにはいかないということでございますので、政府として引き続き、事実については解明を求めていっているところでございます。
 それをまずしてもらって、それを踏まえまして、今後の対応については、またその中で考えていく必要があると思います。
渡辺(周)委員 外務大臣、今お答えされた中に、今日本に帰ってきている五人の家族、当然のことながら、この人たちは被害者でございまして、罪なき人がある日突然暴力によって連れていかれたわけです、かの国に。そして、その家族が今国にいる、離れ離れにされている中で、五人の家族が帰ってきて自由になればと言いましたけれども、これはこの時点で拉致の解決にしてはいけないんです。その御認識については、今の説明ですと、答弁ですと、何かこの五人が帰ってきて、ある程度自由に物言える環境ができれば、拉致事件は解決したと判断するようなニュアンスにとられるわけですけれども、これは、それ以外に、拉致されたと認定されて北朝鮮側が死亡したというふうに言った人間の生存、安否、これももう一回確認というよりも、我が国が主体的になってやらなければいけないと思うんです。
 それともう一つ、まだ拉致されたというふうには認定されていないけれども、非常に疑わしき事案がある。昨日も、鳥取県の米子市だったでしょうか、行方不明になった女性が実はそうではないのかということで、鳥取県知事に対して、拉致された事案として働きかけをしてもらいたいということが報道されておりましたけれども、例えばこうした問題をどう判断するか、この点についての御認識。
 それから、私自身の考え方を言わせていただければ、やはり私は、北朝鮮の政府に対して、要請するのじゃなくて、これは協力を全面的にさせる、日本が主体的に拉致事件の真相解明については送り込む、それによって、あなた方はもう国家としてやったことを、一部のはねっ返りと金正日総書記は言っていますけれども、認めたのであれば、我が国がそれについては調べる、それによって協力を全面的にするべきだと強い姿勢で臨むべきでありますし、もっと言えば、北朝鮮の国内にいる日本国籍を持つ人間に対して全部出させろ、それぐらいのことを私たちはやるべきだと思いますけれども、その点についてどうなんですか。
川口国務大臣 先ほど申し上げたのは、まさに基本的に委員がおっしゃったことを申し上げたつもりなんですけれども、まず、今ここに帰ってきている拉致の被害者の人たち、この人たちの北朝鮮にいる家族については、まず日本に来てもらいませんと、被害者たちが自由な環境のもとで意思決定ができない、それを確保することが大事であるということで、北朝鮮に対しては、クアラルンプール等々でそれについては話をしている。
 それから、さらに申し上げたことは、事実解明について北朝鮮側から今出てきていることが十分だとは考えないということで、これについては働きかけている。これについては、五人の方の拉致をされた状況、あるいは向こうでの生活というのも含みますし、それから、亡くなったとされている方々について説明があった分、これが十分でないということも含みますし、さらに、拉致をされた疑いが非常に濃い人たちについても、この間、クアラルンプールで話をしているわけでございまして、そういったこと全部について事実解明をするということが非常に大事であるということで言っているということを申し上げたわけです。
 それから、さらに、その上で、その事実関係が進む中でそういうことを踏まえて、今後の対応について、どういうことが適切であるか、何をするかということについて、これは事実解明をまずやるということが非常に大事ですので、その中でそれについては考えていくということです。
 それから、先ほど委員がおっしゃった配偶者、北朝鮮に戻った在日の人たちの配偶者のことについて触れられたというふうに理解をいたしましたけれども、これらの方々についても、北朝鮮側に対しては、どういう状況であるかということについても既にこれは聞いている、そういうことでございます。
渡辺(周)委員 そうしますと、外務大臣、私が申し上げたのは、この五人の問題、今日本に帰ってきてふるさとにいる五人と、そしてその家族の問題の解決が拉致問題の解決ではないということは、当然のことながら日本政府は思っているということで認識をいたしました。
 これは伝聞でございますけれども、拉致された日本人を救出するための全国協議会、この幹部の方からつい数日前に聞いた話なんですが、有本恵子さんが九九年――亡くなったというふうに北朝鮮側が発表した、あの九月の十七日のピョンヤンでの日朝首脳会談の席で死亡と発表されました、北朝鮮側から。そして一九八八年の十一月四日の夜に、自宅で石炭ガスによる中毒で亡くなったというふうに、その後、詳細が北朝鮮側から報じられたわけなんです。この事実について、この拉致された日本人を救出するための全国協議会の幹部の方のお話によれば、数日前、私も聞いた話ですが、一九九九年に、有本恵子さんに、住んでいるところに行って本人と会った。それがどこの国かというと、ロシアの国の人間だという話があると言うんです。これはその背景については、ロシアが日本からの、行く行くは正常化になれば、経済協力の巨額の資金を当てにするといいましょうか、ロシアとしてはそれを原資にして北朝鮮とロシアに鉄道を敷設したい、そのことを念頭に置いてロシアの、これは推測ですが、何らかの情報機関なりの人間たちがこの日本の拉致事件について真相を調べたという話がございます。
 これは伝聞でございます。この救出協議会のまた幹部の方から私も聞いた話です、そういう情報があるんだけれどもと。有本恵子さんは一九九九年には生きている、つまり、北朝鮮側の発表というのは全くのでっち上げじゃないか、つまり、まだ今も生存している可能性があるという情報もあるんですが、こうしたことを日本政府は何らかの形で知っておりますか。
齋木政府参考人 有本恵子さんについての今のお話でございますけれども、私ども政府の調査団で九月の末に向こうへ参りまして、事実関係の調査を求めるその中で、先方からは個人個人についての情報提供がございました。それは既に報告、公表済みでございますけれども、私ども、その際にも北朝鮮側にも申しましたけれども、提供された情報の内容は甚だ不十分である、我々としてこれを信ずることはとてもできないということで、相当激しく先方とやり合ったわけでございます。
 いずれにいたしましても、今お話がありました点も含めまして、有本さんの安否の情報につきましては、先方から提供のあった情報は私どもとしては不十分であるという前提のもとに、依然として生存されておるという前提のもとに、私どもは引き続き先方に対して情報提供を求めておる、こういう状況でございます。
渡辺(周)委員 それは当然、北朝鮮側が一回死亡と発表した、しかもその死亡されたという日時まで、死因まで特定したものを出しているわけですね。これを見ていけば、もうくどくど申し上げませんけれども、大体そんな時期に、そんな石炭によるストーブなんかを使っていたのか。あるいは水死したと言われる時期に、別の方ですけれども、海水浴を日本海の寒い中でやるのか。どう考えてもこれはまともじゃない、腑に落ちないということがあるわけです。ですけれども、そのことを幾ら北朝鮮側に追及しても、彼らが一回出したものをのみ込んで、いや、実はあれは間違いでしたということはもう出てこないと思うんです。
 だとすれば、これはロシアがもしそういうことを調査したというのであれば――もしかしたら、ちょっと乱暴な言葉を使えば、ガセネタかもしれません、しかしありとあらゆる情報収集、例えばあるところからちゃんとした話として、もし来ているのであれば、あらゆる可能性を考えて、北朝鮮にのみ情報を出させるんではなくて、そういう話であるのならば、第三国と言いましょう、もしその周辺国家、それは例えば今回ロシアの名を出しましたけれども、ロシアもしくは中国、近隣の国々に対して、我々は情報収集を日本政府として最大限広げるべきじゃないか、そこで真相をやはり明らかにするべきではないかと思いますが、その点についてはどうなんですか。例えば、ロシア政府に公式に日本政府として、そういうことがあるかないかと事実を確認することができるかどうか。
齋木政府参考人 今のお尋ねでございますけれども、まず一義的には、私どもは先般、日朝正常化交渉をクアラルンプールでやりましたときに、私のレベルでございましたけれども、先方から提供のあった不十分なその情報について、日本に持ち帰って、それぞれの方々について相当数の質問項目、疑問点というものをぶつけてございます。
 これは警察庁の御協力もいただいた情報も入っておりますけれども、そういったものを今向こうに投げておりまして、それについてのさらに明快な説明を要求しておる、そういう状況でございます。私どもとしては、期限を切って、向こうからの説明を求めておりますけれども、わかり次第、何らかの手がかりはよこすようにということを向こうに要求しておるわけでございます。
 一義的には、まず、先方との関係で、先方からさらに誠意のある回答を求めるというのが主であろうというふうに思っております。
 他方、御指摘のようにほかのルート、ロシアのルートあるいは中国のルートという御示唆がございましたけれども、当然のことながら、私どもとしては、あらゆるルートを通じて、被害者の方々の安否情報についてはさらに情報収集に努めていかなければいけないというふうに考えております。
渡辺(周)委員 もちろん第一義的には北朝鮮と言いますが、一回もう発表したものを北朝鮮がもう一回持ち帰って、いや、実はあれはうそでした、捏造でしたということを言うとはとても信じられない。だとすると、この交渉はどんどん先に行くわけですね、向こうがもうその事実に変わりないと。
 ですから、我々は、やはり外交交渉する上で、あらゆる情報をほかの国から、ほかのチャンネルから得た上で外交交渉をやるべきだと思いますし、もしそういう情報があるのであれば、日本政府は、先ほど申し上げましたいろいろな形でやはりやるべきだと思います。それはもちろん、どの国とどういうことについてということは、正直この公の場で、外交交渉の一つの武器として得るためには言えないのかもしれませんが、その点については当然情報収集をしていただきたいと思いますし、当然のことながら、もしそれがある程度信憑性のあるものであれば、日本政府はロシア政府に対して、こういうことがあるか、公式、非公式に、私はやはり情報収集のチャンネルを広げるべきであろうと思います。
 時間がございませんので、次に行きます。
 この点について、今、北朝鮮の情報収集、北朝鮮情報をいかに入手してきたかということについてお尋ねをしますが、前回も外務委員会でお尋ねしました青山健煕さんという方の件でございます。
 この青山健煕さんという方は、この間光文社というところから本を出されまして、月刊現代の十一月号、十二月号にも手記を続けて載せられております。私もこの方にお会いをしました。この方が、現在北朝鮮の元工作員という立場で、実はこの今回の核開発についても、既に北朝鮮は核開発をしているということについてきょうの一番新しい月刊誌には載せているわけでございますけれども、この方が日本政府にもう何度となく、三十回を超える北朝鮮の情報を提供してきたということをおっしゃっています。
 この間、私が外務委員会の閉会中審査でお尋ねをしたときは、特定の人物については答弁を差し控えたいというふうにお答えされましたけれども、この方自身はもう本に出しているんですよ、何度も。この人がずっと黙っているのなら我々もこの方とお目にかかる機会はなかったと思いますが、もう向こうは名乗りを上げて、どういうことをしてきたかということをおっしゃっている。この方の存在を外務省は認めますか、どうですか。
齋木政府参考人 お尋ねの方、青山健煕さんという方がおられるということ、それからまたその方が最近、今お手持ちの月刊誌、それから著書を出版されたということを私どもとしてはよく承知しております。
 他方、この方との関係につきましては、私どもとして申し上げるのは、この前も御答弁申し上げたとおりでございますけれども、特定の個人と私どもとの関係について、情報の収集があったかどうかも含めてお答え申し上げるというのは、その情報収集活動の性格上、これはやはり差し控えさせていただきたいと思います。
渡辺(周)委員 今のお答えがお答えだと思うんです。特定の情報収集活動をしていたことが、当然のことながら、この方も既に書かれているんですよね、こうした問題の中で。
 この方のちょっと身分のことを申し上げると、今日本政府の、この方の言い分をそのまま伝えますと、おっしゃっていることを伝えますと、北朝鮮の幹部であったこの方が、身の危険を感じて中国経由で脱出をするときに、日本政府にお願いをして、北京の日本大使館のルートで脱出をした、そして、そのときに中国人の偽造パスポートを持っていたけれども、それも含めて日本に入国することを認められた。それで、今この方はそのまま、偽造パスポートを持った中国人として日本にいるわけです。この方については、もうこの方はテレビにも出ています、顔は出ていませんが、後ろ姿が。そして、もうこうやって活字としても発表されております。その点について、きょう法務省の方、来ていると思うんですが、この方に、パスポートに滞在延長の手続をしてもらっているというようなことでありますけれども、こういう方が存在することは、法務省は認められるんでしょうか。
増田政府参考人 我が国への出入国等に関する特定の個人にかかわる御質問につきましては、個人のプライバシーにかかわる問題でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。
渡辺(周)委員 特定のプライバシーと申しますが、この方は、私は偽造パスポートを持っていることでもう出頭してもいいと言っているんですよ。呼ばれれば、国会に来て話をすると言っているんですよ。ですから、御本人が――もっと言ってしまえば、日本政府は偽造パスポートのままでも入国を認める、そのかわり日本に入ったら日本国籍、もともと在日の方でございますから、日本人として帰化申請してくれれば認めるという約束で帰ってきたんだけれども、三年間の滞在延長のスタンプを押してもらうだけで、いまだに私は偽造パスポートを持った中国語をしゃべれない中国人ということになっている。しかも、都度都度、たびたびに、もう三十数回にわたって私は日本政府のために北朝鮮のかなりの情報を提供してきた。
 ちょっと例を挙げますと、九八年の十一月には、北京にて北朝鮮のミサイル基地についての資料を出した、そしてその翌月の十二月に、同じ北京で朝鮮労働党三十五号室、元対外情報調査部の組織構造と北京組織の実態について、もうずっと出しているんですね。その一部も私は見ました。
 それで、この月刊誌にも載っているように、その中には、例えば北朝鮮の核開発施設について、平安北道寧辺、ここの核開発団地の配置図、緯度経度に至るまでちゃんと座標軸を書いて、北緯何度何分、東経何度何分というところまで記されて、そこには原子力研究所の本舎、ウラン濃縮所、使用済み核燃料再処理所と、八つの重要施設の所在位置が詳細に書かれているんです。こういうものが、実はもう日本の中でも幾つかの方の手に渡っているんです。
 実際、こういう情報がもし提供されていたということであれば、二つお尋ねしたいのは、一つは、私は、この方の身を守る必要があるんじゃないか。つまり、この方が北朝鮮の極秘情報を持ち出して他国に入った場合に、今この方はまさにこうして自由に発言をするぐらいの、ある意味では自由なんだ。しかし、逆に言うと、命をねらわれたときに、この方自身は偽造パスポートを持った正体不明の怪しげな中国人のまま迷宮入りしてしまう。身の危険を感じるのは当然なんですが、この点について、法務省が特定の方についてお答えできないというのであれば、ぜひこの方の国籍なりあるいは日本国民としてのアイデンティティーを、早く御本人の意思に基づいてちゃんと確立していただきたいということが一つ。
 それからもう一つ、こういう情報提供があって、外務省は、先ほどのお答えですと多分次の答えも余り期待できませんが、こういう情報提供があった場合、それについて保護するなりあるいはそうした方々の情報を何らかの形で政府の政策決定に、特に核開発の問題が出てきました。いかにも日本政府はアメリカから後から知ったようなことを言いますが、実はもう自分が何度もこういう情報を出しているんだということについて、何らかの政策決定に対して考慮することはあるんでしょうか。外務省、いかがなんですか。
齋木政府参考人 繰り返しで恐縮なんでございますけれども、この青山さんという方と日本政府との関係につきまして、私ども、今この場で云々するというのは必ずしも適切ではないと思っております。これはやはり情報収集活動を、仮に私どもはだれかから情報をもらっているという活動をやっているにしても、どの人からどういう情報をもらっているかということを明らかにするというのは、これは情報収集活動の性格上、やはり問題があると思います。
 ですから、私どもとしては、まことに申しわけないんですけれども、この点についてお答えすることはできないということを繰り返し申し上げざるを得ないと思います。
渡辺(周)委員 わかりました。決して納得してわかったわけじゃない。情報活動の性格上はそうなんですよ。でも、この方は、もうそれに対して守ってもらえないということで、ジャーナリストも集めてそこで自分の生い立ちから何から全部しゃべっているんですよ。つまり、情報提供者が国によって守られないならば、自分の身を守るしかない、マスコミの前へ自分をさらけ出すしかないということをせざるを得ないところまで来たんです。
 その点については、やはりこれは情報提供をされたということが答えられないと言うけれども、もしそうであるならば、私はこういう方は守られないとおかしいと思うんですよ。失礼な言い方をすると、自由に物を言えるような、ということは日本の情報収集活動上にもよくないでしょうし、またこの情報提供者に対しても、身の危険にさらされるわけですからね。これは、この問題についてこれ以上論議しても同じ答えでしょうから、また次の機会にやりますけれども、この方については、私は今回初めて国会の場で問題提起をさせていただきました。そこでとどめさせていただきます。
 残り五分でございますので質問をさせていただきますが、この間、十月の二十八日、世界食糧計画のモリス事務局長、ロンドンで記者会見をして、資金不足のために北朝鮮向け約三百万人の食糧配給を十一月中旬には中止するということを発表されている。
 私も、英文をうちの秘書に訳させました。少々意訳でございますけれども、その英語を和訳したものの中にあるのは、朝鮮民主主義人民共和国三百万人の飢えた人間への緊急支援の継続を停止せざるを得ない、さらに、来年の初頭から一月中には、さらに百五十万人のより貧困な人々に対しての食糧支援を中断せざるを得ないということを発表したんですけれども、これは日本政府は認識しておりますか。
齋木政府参考人 私どもは、そういう発表をしておるということにつきましては把握しております。
渡辺(周)委員 となりますと、将来、日本に対して国連が、あるいは北朝鮮のディレクター、このWFPのリック・コルシーノという方らしいんですけれども、北朝鮮の過酷な冬、これについては、悲劇であるのは、一番危険にある人々がすべての重荷に耐えなくてはならないというようなことを言っていますけれども、当然日本政府に対しても何らかの要請があると思うんですけれども、その場合は日本政府はいかに対応しますか。
齋木政府参考人 一般論で申し上げると、人道上のいわゆる配慮に基づいていろいろな援助を国際機関からのアピールに基づいて行うということは、一般論としてはそれは、従来もそういうことでやってまいりましたし、当然検討することになるんだと思います。
 ただ、今の北朝鮮との関係で、いかに国際機関からのそのアピールがあるとはいえ、何らかの形で人道上の支援を行うということであるにしても、やはり大切な国民の税金をそういうことで、国際機関からのアピールにこたえる形で即座に支援ということで回していいのかどうかということは、当然大きな国民的な議論というものが沸き起こると思いますし、現在の北朝鮮に対する国民感情の厳しい状況を見れば、私どもとしては、そういうような具体的な食糧支援も含めた人道支援を行うということは、ちょっと考えられないと思います。
 そういうことで何らかの方針を決めたとか、あるいは検討しているということは全くございません。
渡辺(周)委員 私もそうだと思っているんです。私は、結論は出すべきでない、たとえ要請があっても。
 確かに、飢えて亡くなる子供さんに対して、しかし我が国でなくても、これは世界のいろいろな国から、恐らくそういう状況になれば、世界食糧計画からの要請を受けて支援する国々も出てくるでしょう。しかし、我が国は、現在、ここでもしやるということは、誤ったメッセージを伝えることになる。また、それが北朝鮮国内で、実は日本という国は本当は怒っていないんだ、それが証拠にこれだけのことをしてくれたと。つまり、ちょっと例えはあれですけれども、勘当だと言いながら仕送りを送り続ける親みたいなものでございまして、やはりこれに対して、私たちははっきりさせなきゃいけない。本当に怒っているんだぞということは、やはり向こうに対してやらなきゃいけないと私は思うわけであります。
 ぜひ日本政府はその姿勢を、国連から、何か決定してから手元に届くまでには二カ月間ぐらいは最低でもかかるだろうと言われておりますけれども、その点についてもう一回確認しますが、日本政府は、もし国連から要請があっても、今出せる状況ではない、出さない、要請に対しては拒否するということでいいんですね。
茂木副大臣 御指摘いただきました食糧支援、現在の段階で政府として検討には入っておりません。
渡辺(周)委員 では、先ほどの青山さんを初めとする問題につきましては、また別の機会に質問を続けさせていただきます。
 終わります。
田並委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 まず最初に、長年にわたりまして、北朝鮮から逃れた、いわゆる脱北者と呼んでいるようでございますが、この難民の支援活動に尽力をされてきました北朝鮮難民救援基金、そこの事務局長の加藤博さんと、通訳をされております水田昌宏さんが行方不明になられた件につきましてお伺いします。
 加藤事務局長さんでございますが、去る六月十四日でございますか、私の事務所にも訪ねてみえられまして、北朝鮮の民主化という基本問題を見据えた人権というものを基本にした外交の展開が、これからの日本において必要だというようなことを強調されておられました。この方が行方不明になられたということで、関係者の方々が大変心配なさっているわけでございますけれども、現在、外務省に入っている情報につきまして、まずもってお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕
齋木政府参考人 今お尋ねの加藤さんという方に関することでございますけれども、御指摘の方につきましての消息でございますけれども、今現時点で私ども、この方の所在確認にかかわる情報には、残念ながら接しておりません。いずれにしましても、政府としては、引き続きこの方々の所在確認に向けて今全力を尽くしている最中でございます。
金子(善)委員 実は、当基金の事務局によりますと、現地の数あるNGOの情報といたしまして、加藤さんと通訳の水田さんでございますけれども、中国の遼寧省の公安当局に拘束されていることがほぼ明らかになったというようなことを言っておられるわけでございます。また、韓国のNGOであるグッド・フレンズというものがございますけれども、このメンバーが最近中国の公安当局に拘束されたというような情報もあるわけでございます。
 今の答弁でございますと、いろいろ情報収集をやっているんだというようなことを言われたわけですけれども、中国公安当局に対して何らかのアクションを外務省として起こしているのかどうか、まずそれをお聞きしたいと思います。
齋木政府参考人 私どもも、この方の消息についての確認を求めるために、外交ルートを通じまして中国政府に対して所在の確認を含む照会等々をやっております。今そういうことで、先ほど申し上げましたように、全力を挙げて御本人たちの所在確認に努めておるところでございます。
金子(善)委員 少なくとも身分のはっきりした日本人が行方不明になったというようなことで、もう数日たっているという状態において、いろいろ努力しているんだというようなことを言っておられるんだと思いますけれども、その程度の話でこれは国民感情として済むのかどうか。
 拘束されているということを確認するのに、そんなに時間がかかるのかどうか。拘束をしているか、していないか、それを中国の公安当局に確認すればいいわけですから。なぜ拘束されたかどうか、その次の問題だと思うんです。日本人を行方不明だというような状態にしておくということが、これは一連の問題ですべて共通する問題だと思うんです。
 外務大臣、その点どうですか。
川口国務大臣 これは、委員がおっしゃるとおりでございまして、外務省は中国の外交当局を通じてこの人の安否については確認の申し入れをしたということでございまして、今の時点では、どちらにしても、要するに、拘束をしたともしていないとも、そういう情報はまだもらっていない、そういうことでございます。
金子(善)委員 今のところでは、努力をしているけれども、もらっていないと。これは甚だ私としては不満でございますけれども、再度強く、この問題の対応につきまして、外務大臣の方に要望しておきたい、このように思います。
 この加藤さんでございますけれども、これまでの活動を通じまして、一九六〇年代でございますけれども帰国運動で北朝鮮に帰った方が、今、中国にたくさん逃れてきておりまして、日本に帰りたがっているというようなことも言っておられました。
 先ほど、同僚議員でございます渡辺委員の方からもお話ございました青山健熙さん、こういう方々の証言も相次いでいるわけでございますが、この難民問題は、日本自身の問題であるというふうにも考えられるわけでございます。また、そう考えるべきであるというふうに私は思いますけれども、外務省としてはこの問題にこれまで、また今後どのように取り組んでいくのか、答弁をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮から難民が大勢中国に出てきているということは、これはこの地域の平和、安全、安定に非常にかかわりのある問題でございますので、我が国としても重大な関心を持ってきているということでございます。
 この点については、今まで関係のこの近隣の国々とも話をしてきているということでございますし、内閣において、我が国の難民の受け入れの問題については、これは関係するところが非常に多うございますので、そこで議論を始めている、そういうことでございます。
金子(善)委員 この問題は、今、日本という国において最大の課題となっております拉致問題、これと同等の問題だと私は思っているわけでございます。そういうことで、これから外務省としての熱心な取り組みを切に要望させていただきたいと思います。
 次の問題でございますが、KEDO、北朝鮮エネルギー開発機構の問題についてお伺いしたいと思います。
 一九九四年十月のいわゆる米朝枠組み合意、ジュネーブ合意でございますけれども、これは、北朝鮮の寧辺というところに建設中の原子炉建設を凍結するその見返りとして、軽水炉二基を建設、供与するというものであります。北朝鮮の核開発を継続しているという今般の北朝鮮が認めた事実というものは、明らかなジュネーブ合意違反であると私は思っておりますし、そう解釈されていると思います。
 そこで、十月の三十日から三日間でございますけれども、KEDOの専門家会議にアメリカが代表団を欠席させたというようなことが言われているところであります。また、ジュネーブ合意に基づく北朝鮮への毎年五十万トンの重油供給、これを停止する意向だというようなことも報道で私は承知しているわけでございますが、この核開発を続けていたという合意違反、これが解決されない限りはアメリカによる重油供給の継続、あるいは軽水炉の建設の継続というものはあり得ない、このように解釈してよろしいのか、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 KEDOにつきましては、これは国際社会が北朝鮮の核の開発をどのように阻止するかということのために非常に現実的な手段であるということでございまして、それはこの前そういうことで合意がなされたわけですし、この点については今も引き続き、この重要性、核開発を阻止するために重要な手段であるということについては変わりがないというふうに思います。
 米国政府として、今の時点でKEDOについての方針を決めたということではない、まだそこについてはそういう了解は私どもは持っておりません。
    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕
金子(善)委員 外務大臣のお話でございますと、四月二十六日でございますけれども、外務委員会で私はKEDOについて質問をさせていただきました。そのときも、これは田中局長答弁でございましたが、北朝鮮の核兵器の開発というものを封じ込める、このため、KEDOの枠組みというものが有効であると思っていますという答弁なんです。今も大臣が、その流れと申しますか、そういうような趣旨の考え方を示されたわけでございますが、現実は全く有効でなかった、現実がここにあらわれたわけでございます。この点について、どのように考えられますか。
川口国務大臣 有効でなかったという言い方をするのか、あるいは十分でなかったという言い方をするのか、いろいろな言い方があると思いますけれども、KEDOについては、プルトニウム型の核の開発をとめたということについては有効であったというふうに思います。
 それで、北朝鮮側が今、核兵器開発のためのウラン濃縮のプログラムを持っているということを言っているわけでして、そこについては、これはAPECの首脳会談においても、それから平壌宣言でも言っていますように、北朝鮮が核の開発については国際的な合意を守っていくということをやっていくことが重要であるということについて、国際社会の意見は一致をしているわけでございまして、引き続きこれを守るように北朝鮮に対して強く要求をしていく、そういうことだと思います。
金子(善)委員 基本的な考え方といたしまして、大臣が今言われたところは理解はできるわけでございますけれども、北朝鮮という国はそれほどタフな、そうした国である、後ほどまたこの点については述べさせていただきますけれども、そういうことをよく念頭に置いた外交というものが展開されなきゃならないのではないかという観点から申し上げているわけであります。
 そこで、このKEDOにつきましては、国際協力銀行から既に三百十七億円の融資が行われております。それからまた、国の予算から昨年度までに六十一億円が拠出され、本年も十七億円の予算が計上されている、こういう状況にございます。
 これは、本来でございますと、北朝鮮がみずから自分のエネルギーというものを確保するのが当然の、国家としての当たり前のやり方であると思うんですが、その分日本が肩がわりをしてお金を与えている、そういう流れになってくると、お金には色はついていないわけでございますから、そうした点について、これはいろいろなことを、国際協定に関する合意違反というようなことを確認しないままにそういうお金を出し続けている日本政府の姿勢というものは責任が非常に大きいのではないか、このように思います。外務大臣の答弁をお願いしたいと思います。
茂木副大臣 先ほどアメリカの枠組み合意、そしてKEDOに対する対応につきまして御指摘いただいたんですが、アメリカ政府としても、枠組み合意をこれからどうしていくか、現時点では明確な態度を決めていない。また、重油の搬出につきましても、とめるということを決めた、そのように我々は承知をいたしておりません。
 そんな中で、今後のKEDOに対する我が国としての支援のあり方につきましても、米国、韓国等々と緊密な連携をとりながら検討してまいりたいと思っております。
金子(善)委員 実は、このKEDOの問題につきましては、それだけじゃない問題があるということを申し上げたいと思います。
 五月三十一日の外務委員会で私は質問させていただいたわけでございますけれども、一つは、十分な査察というものが行われておりませんと。もう一つでございますが、それは今のお話の中での話だと思いますけれども、損害賠償の枠組みというものがまだ決まっていないというようなことを指摘させてもらったわけであります。
 そうした状況にもかかわらず、つい最近でございます、八月の七日に、軽水炉の収容施設の着工式というものが行われたという事実がございます。これは今副大臣も言われたわけでございますけれども、こうした状況であれば、日米韓、そしてEUがKEDOのメンバーということでございますけれども、よく協議をして、完全な査察というものが実現されるまで建設を凍結する、そしてまた、北朝鮮の技術者の訓練というものもやっているようでございますけれども、これも中止する、それぐらいの毅然とした態度で臨んでいく必要があるのではないかと思います。この点についてはいかがか、質問したいと思います。
 それと同時に、実はこれは報道でございますけれども、日本政府としてアメリカ政府から説明を受けているかもしれませんけれども、米朝高官会議が十月上旬にございました。そこで北朝鮮サイドは、米朝枠組み合意というものは無効というようなことも表明しているようでございます。無効ということであれば、みずから重油の供給あるいは軽水炉の建設というものも放棄している、そういう論理にならないかどうか、それもあわせて答弁をお願いします。
茂木副大臣 枠組み合意につきまして、北朝鮮側のあの発言というのは承知しているわけでありますが、同時に北朝鮮も、この日朝平壌宣言におきましても、「核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」と。このようにありますように、安全保障の問題が前進をしなければ国交正常化も進んでいかない、このような認識は十分持っているのではないかな、このように我々としては考えているわけであります。
 そして、そういった認識に立って、このたび日朝国交正常化交渉においても、十一月に安全保障会議を立ち上げることになった。同時に、我が国としては、この北朝鮮の核開発問題、目に見える、検証できる形での査察、これを強く求めておりますし、こういった問題についてもアメリカ、そして韓国とも連携をしながら、強く求め続けていきたいと思っております。
金子(善)委員 ですから、そこをお伺いしたいわけでございまして、ただいまの御答弁はそれなりの論理一貫性はあるかもしれません。しかしながら、今、異常な状態にある。その中で、この八月七日に軽水炉の収容施設の着工式も行われています。しかも日本は予算も持っています。ですから、当分、はっきりするまでこれをとめる、そういう考えはないのかどうか、それをお聞きしているわけでございます。
 もちろん、これからアメリカあるいは韓国その他の国々ともよく協議をした上で、それを考えるんだということはよくわかります。ただ、それまでの間これを継続する気持ちなのか、あるいは、ここで一たんストップしますよという政府の方針をとるべきだと私は思うわけでございますけれども、その点について、再度答弁をお願いします。
川口国務大臣 このKEDOのプログラムというのは、先ほど申しましたように、北朝鮮の核の開発を阻止するという意味で有効である、そういうことが一つあるわけでございます。それは、我が国にとっても、近隣の国にとっても、国際社会にとっても非常に重要なことであると思います。
 どうやって今後これに対応していくかということについては、先ほど来副大臣がお話をしていますように、関係の国々と相談をしながら結論を出していく、そういうことだと思います。
金子(善)委員 それは今、日本政府の、先ほど米支援の問題も質問の中に出ておりました。全くそれと同じような基本的な考え方で臨んでいくべきではないだろうかというのが私の主張の趣旨でございまして、そうした観点から、要は、毅然とした態度で北朝鮮との交渉に、あるいは関係各国との協議の場に臨んでいただきたいと強く要望をしておきたいと思います。
 次にお伺いしたいと思いますけれども、実は、日朝平壌宣言についてでございますが、この小泉総理が署名をされました宣言でございますけれども、いわゆる北東アジア地域の平和と安全について、こういう表現がございます。「核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」というような表現になっております。
 これは、一般的に考えた場合でございますけれども、問題の解決を図るための努力をするとか、あるいは、問題の解決を図るというようなはっきりした表現が一般的じゃないかと私は想像するわけでございますけれども、あえて「必要性を確認した。」と。この表現は何か特別の意味があるのかどうか、その辺につきまして第一点。
 それから、こうした表現を用いるということは、この核問題ということは日本政府も知らない、中国政府も知らなかった。中国の首相は、小泉総理との会談で、中国政府も核開発問題については知らなかった、こう言っているわけです。そうすると、あくまでも秘密にしていこうというような気持ちで北朝鮮サイドは外務省とのこれまでの内々の協議に応じてきたのではないか、これは容易に想像できるわけです。
 その辺のところで、北朝鮮サイドのこの姿勢と申しますか、隠ぺい体質と申しますか、そういう考え方がこの表現を採用したところに入っているのではないかとさえ思われるわけですが、この点につきまして、答弁をお願いしたいと思います。
齋木政府参考人 お尋ねの平壌宣言の中に、確かに、あれは四のところでございますけれども、今先生お読みになったくだりが書いてございます。「双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」と。
 この文言は、要するに、日朝の双方の首脳が署名した非常に重い文書なわけですけれども、先方と我が方との間で、日朝関係を実際に正常化していくに際しては、ぜひともこういった安全保障上の懸案の解決が不可欠でありますよということについて双方の首脳が確認をして、それを十分に認識した上でこういう文章をつくったということでございまして、私どもとしては、これは当然の表現であろうというふうに思っております。
金子(善)委員 一たん署名してしまった以上はそういう答弁にならざるを得ないのかなというふうに思いますけれども、私といたしましては、若干あいまいな表現になっている宣言ではないかというふうに思うところであります。
 現実にこれまで北朝鮮の交渉態度、今後のことについては、どうなっていくかは、これから我が国を初め各国の対応いかんにかかっていることは言うまでもないことでございますけれども、これまでの北朝鮮のやり方と申しますか、これにつきましては、いろいろな交渉というものをやる、それが経済援助を引き出すための場になっている。いわゆる交渉を進めれば、それだけのいろいろな外国の支援というものを引き出すことができるんだというような考え方で来ている面が見られる。
 これはアメリカとのジュネーブ合意の問題もそうでございますし、まして韓国との二〇〇〇年六月の南北共同宣言の署名に関しましても、その後対話が膠着状態に陥るとか、いろいろなところで北朝鮮が困ってくると、例えば韓国との間でも、八月からようやく交渉再開というような動きになってきているというようなことで、日本も御承知のとおり、一九九〇年以降でございますが、百十八万二千トンの米支援をやってきている。
 その結果、どういうことだったか。いつも政府の答弁は、そういうことをすることによって北朝鮮との関係も余り変にならないようにというようなことで、人道上の支援だというような言い方をしながらやってこられたわけですが、では、結果としてどういうことがその後に起きてきているかというと、テポドンの発射であったり、あるいは工作船の侵犯、いろいろなことが相次いで起きてきている。いわゆる国際間の信義というものが、そこではほとんど見られていないというような状況になっているかと思います。
 そこで、外務大臣の認識だけをちょっとお伺いしたいんですが、今回の日朝首脳会談が実現したのは、日本政府が米支援につきましてかなり厳しい姿勢を示したからだというような印象を私は受けているわけでございますが、外務大臣の認識をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 今回の日朝首脳会談が実現をした理由というのは、これはさまざまな理由があったと思います。
 北朝鮮が経済的に、国内的に非常に困っている、国際社会と対話をしていくことが重要であるという認識を持ったということもあると思います。米国が悪の枢軸ということを発言した、その影響ということもあったと思います。韓国の太陽政策というのもあったと思います。また我が国がずっと粘り強く、北朝鮮を国際社会との対話の場に引っ張り出すということのために努力を重ねたということもあったと思います。こういったさまざまな要因が働いて今度の北朝鮮との対話、小泉総理の首脳会談が可能になったというふうに私は認識をしております。
 それから一点、先ほど日朝平壌宣言との関連で、ここに書いてある文言があいまいであるのではないかというニュアンスの御質問がございましたけれども、この平壌宣言というのは、この平壌宣言の精神と基本原則、これが守られなければ日本と北朝鮮の国交正常化はないということをきちんと言っているわけでございまして、ここに書いてあることを確保していくということは、正常化ということが北朝鮮に対してのてこであるということでございますので、我々がそれを使ってここに書いてあることはきちんと確保していく、そういうことでございます。
金子(善)委員 基本的に、北朝鮮という国は独裁国家であるということを強く認識をして対応していただきたい、このように思います。
 そこで、お伺いしたいと思いますけれども、先般、アメリカのケリー特使、十月三日から五日までの訪朝、北朝鮮を訪れまして会談を行ったということで、その件につきましては日本政府もいろいろな形で米国政府の説明を受けたわけでございます。そこで、北朝鮮がその席上、高濃縮ウラン製造施設の建設を含む核兵器開発を進めているという事実を公表したということが言われているわけでございます。
 そこで、防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、日本政府として現在、この北朝鮮の核開発の状況、アメリカから聞くだけではなくていろいろな情報もあろうかと思います。そうした観点から、どのような状態にあると認識をされているか、それが第一点。
 もう一つでございますが、韓国も大変な影響を受ける国ということになるわけでございますが、もしおわかりであれば、韓国の防衛当局が北朝鮮の状況についてどのような見方をしているか、その二点につきましてお伺いさせていただきたいと思います。
石破国務大臣 北の核については、先ほど来お答えをしておるとおりでございまして、米国からいろいろな情報の提供は受けて、認識もいたしておるということであります。先般、北がそれを認めたということは非常に重要な意味を持っておるという段階で私としては答弁をさせていただきたいと思っております。
 韓国の国防政策についてのお話ですが、他国の政策につきまして私どもで云々するお話ではございません。
 ただ、私が認識しております限りにおいて申し上げれば、向こうの国防白書を読みます限り、結局、脅威というのは意図と能力と両方の掛け算によってあらわされるわけですが、とにかく韓国の場合、意図はともかくとして能力を重視する、要するに、相手が韓国に対して攻める能力を持っておるということであれば、それを脅威として認識するということであっただろうと思っております。そして北朝鮮を主敵というふうに位置づけ、軍事的脅威として感じておるということは二〇〇〇年版までの国防白書であります。ところが、最新版がそれでありまして、実は、ことし出るはずだったのが出ていないわけですね。それは向こうのいろいろな変化もあれば、いろいろな部内の意見もあるということです。
 太陽政策とも絡まって、どのように韓国の国防政策を考えるかということでありますが、結局、陸続きであるという点、そして同じ民族であるという点において、どうしても我が国といろいろな相違が出てくるのだろうと思います。要は、韓国においては、どうすれば北が暴発をしないかということにかなり力点が置かれておるわけであって、我が国と韓国と感じている脅威がやや違うのかもしれない。
 しかし、先般来申し上げておりますように、基本的には、合衆国、韓国そして我が日本、核の脅威あるいは北朝鮮の脅威というものについて、我が国はまだ脅威というものをきちんと正面から認めたわけではありませんが、少なくとも、そういうようなおそれについて共通認識を持つという努力は今後とも必要であるというふうに認識をいたしておるところでございます。
金子(善)委員 ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。
田並委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
田並委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 石破防衛庁長官、御就任まことにおめでとうございます。私の地元に、姫路に第三特科連隊があるんですが、先日そこに自衛隊の記念日に参りましたとき、長官就任直後でありましたので、中谷長官に続いて石破防衛庁長官、自衛隊のことをよくわかっている大変にすばらしい指導者を迎えてよかったねという話をしましたら、自衛隊の皆さんがという意味じゃなくて出席者が、それはいいんだけれども、赤松さん、石破長官はすごいと言ったけれども、すご過ぎて大丈夫だろうかという、心配な発言はないんでしょうねというようなことを言っておりました。賢明な長官のことですから、しっかり、元気いっぱいやられながらも自制心をきかせたリードをしていただきたい、そんなふうに思う次第でございます。
 朝、同僚の委員がいろいろな質問をなさいました。重複を避けてやりたいと思いますし、また、今回の日朝関係、日朝交渉の部分の拉致問題については先般のこの委員会で私どもの田端正広委員が丁寧に詳しく質問をいたしましたので、その部分は避けて核開発等の問題につきましてまず入りたいと思いますが、その前に、今回の日朝国交正常化交渉全体をどうとらえるかという、非常に茫漠たるというか、総論的なことを一つお聞きしたいと思います。
 先ほども、今回の日朝交渉の問題について外務大臣は質問に答えられて、アメリカの悪の枢軸、ブッシュ大統領の発言とか、あるいはまた韓国の太陽政策とか、あるいはまた日本のさまざまな政策、それぞれの要因がいわば働き合って今日の事態を迎えている、こういうふうな御答弁をなさいました。
 それは当然そういうふうなお答えになるんだろうと思いますけれども、私は、今回の北朝鮮の動きというものについては、さまざまないわば学者あるいは専門家、内外の人々はいろいろなことを言っておりますけれども、つづめて言えば、アメリカのブッシュ大統領を中核とするブッシュ共和党政権の、いわば武力攻撃も辞さない、そういう意味合いの外圧というものが一つ大きく存在しているだろう。
 もう一つは、本当に北朝鮮そのものに歴史的な変化というか、かの国のいわば内部的な変化というものが起こっているのかどうか、内部的変化というか指導者、指導陣における変化でありますけれども、そういったことをつづめていけば、そのどちらかということになるんだろうと思います。
 このあたり、まず本質的に北朝鮮というのは変わりつつあるというのか変わったのか、それとも、その部分は変わっていなくて、外圧というものがあり、国内的事情もあり、懸命に今、本質的なものは変えないまま事態の進展の中で必死の対応をしていると見るのか、このあたり全体的な、総論的なとらえ方として、外務大臣、どのようにとらえておられるか、まずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 本質というのが何かということもまた難しい問題だろうと思いますけれども、今回の北朝鮮の変化については、先ほど申し上げたように、今委員が繰り返されたので私はさらに繰り返しませんけれども、さらにそういうことにつけ加えてもう一つ挙げるとすれば、日韓米、この三カ国が緊密に連携し合って進めているということも挙げられるだろうと思います。そして、それが北朝鮮の変化を外圧という形でもたらしたということに加えて、やはり北朝鮮自身が、現在の厳しい経済情勢のもとで、変わらなければならない、変わることがみずからの利益であるというふうに思い始めているということも言えると思います。
 経済面を見ましても、北朝鮮は経済の、そのうち価格の自由化等も始めたわけですし、また、特別な自由な経済活動ができる地域をつくろうといった動きもあったわけでして、そういった、中から変えようという動きもあったと思います。
 これが本当に何が本質なのかということまで突き詰めていきますと、そこのどんどん皮をむいていって、本当の本質が変わったかどうか、これはなかなか難しい御質問でございまして、本当の本質がどうかということは本質的に難しいというふうに申し上げないといけないんですけれども、今見えている範囲では、外の働きかけ、そしてそれにこたえる中の変わらなければいけないという動き、両方が相まって今日の情勢が生まれてきていると私は考えています。
赤松(正)委員 本質的なところは本質的に難しいというお答えでございました。
 私は、変わろうとしている部分はあるんでしょうけれども、交渉の途中で出てくるさまざまな拉致問題における、今回のマレーシアの交渉における相手方の代表の拉致問題についての発言を見ましても、なかなかそう簡単に、一朝一夕に手のひらを返したようにはもちろんいかないだろうなというふうなことを見つつ、一番大事なことは、北朝鮮を暴発させてはいけないという、追い込んで北朝鮮を暴発的なる行動に追い込むような、そういったことにさせては絶対ならない、こんなふうに思うんです。
 依然として、基本的にそういったことに行き着く可能性というものは十分にあるというか、そんなふうに私は見るんですけれども、防衛庁長官はこの点について、先ほどの外務大臣にしました質問と基本的には同じだろうと思いますけれども、北朝鮮の暴発を食いとめなければいけないという観点の私の今の話について、つけ加えることがあれば答えていただきたいと思います。
石破国務大臣 先生の御指摘は、私は基本的にそうなんだろうと思います、暴発は防がなければいかぬ。
 しかし、あの国の意思決定のなされ方というのは大分我が国とは違うだろうというふうに思っております。民主主義人民共和国とはいいながら、そこにおいて、我が国で行われるような世論というもの、あるいは選挙というもの、議会というもの、議院内閣制というもの、そういう形によって政治の決定がなされるわけではなくて、先軍政治という、私が知ります限り、軍が党の上に出る、こういうような形の国家というのは余り例がないと承知をいたしております。
 そのときに、軍がすべてのことに優先するという判断は、私は基本的には変わっていないのだろうと思います。暴発は防いでいかねばなりません。したがって、暴発を防ぐ場合に、やはり軍事的に全く成算がないということも必要なことなのだろうと思っています。
 これは感情論を抜きに申し上げるのでありますけれども、かの国の意思決定システムが我が国とは違う、世界のほとんどの国と違っておるということは私どもは明確に認識をしながら、この交渉というものに臨んでいかねばならぬ。いずれにいたしましても、暴発を防ぐ、危機的な状況を防ぐという点につきましては、先生の御見解に私は全面的に賛同するものであります。
赤松(正)委員 さて、次に、今回の交渉の核をめぐる問題でございますけれども、先ほど防衛庁長官の発言の中で、さきに十月の二十一日に、ケリー米国務次官補が日本にやってきたときに、ミサイル防衛計画に関して話題になったという話が実はございました。
 その際に、長官の方は、かねて、自分自身がミサイル防衛、ミサイルディフェンスの積極論者であるというふうなお話はこれあり、一方で、同時に自分自身がミサイル防衛について、自分がどう言ったからこう言ったからといって、そのことが日本のミサイル防衛について、積極的な意味合いというとおかしいですね、現状の事態を大きく変えるという意味合いではないんだというふうなことを言われたと記憶をいたしておりますけれども。
 その時点で、約四年前から、日本が、ミサイル防衛について日米共同で技術研究をやっているわけですけれども、この技術研究から、やがては開発、そして配備ということになっていくのでありましょうけれども、まずその技術研究の段階で、それこそ大臣のお言葉をかりれば、物になるのかならないのかという話がありました。私は、このミサイル防衛につきましては極めて悲観的といいますか、空中に飛んでくるものをこちらから撃って当てて落とすということについては、SDIとは相当にいわば技術的な部分が違うんでしょうけれども、ミサイル防衛については相当に技術研究段階というものが長くかかるだろう、こういうふうな考えでいるわけです。
 大臣の先ほどの発言、あるいはケリーさんとの会談等を報じた一部新聞報道を見ますと、かなり近々に、そういった研究段階から次の段階への移行を促進すべく自分が対応したいというふうな感じでおられるやに受けとめられました。恐らく防衛庁長官は長らくその席にいらっしゃると思いますので、これからの日本の防衛計画に強い影響を与えられるだろうという方であるがゆえに、明確にその辺のスタンスをお聞かせ願いたいと思います。
石破国務大臣 これは実際、相当難しいことだろうと思いますよね。数マッハで飛んでくるものをこちらから撃ち落とすという話ですから、極めて技術的には難しいものだと思います。本当に、その確率が相当程度上がっていかなければ、開発段階に移行しない。これはもう政治の判断等々でできることではなくて、本当にその技術がそこまで高まっているのかということがまず大事なんだろうと思っています。そして、それが本当に物になるということになれば、開発へ移行する。
 しかし、我が国において、当然のことでございますが、これは安保会議の議を経て決定することでございます。私も安保会議のメンバーではございますが、まず、技術的にどうなのかということ、それが本当に我が国の、そしてまた地域の平和に資するものであるのか、そういう議論がきちんと精緻に行われることが必要なんだろうというふうに思っておるところでございます。
 ただ、このBMDというのは、要は、今まで相互確証破壊の理論のもとに一種の安定が構築をされていた。しかし、そういう抑止がきかない冒険主義的な国家に対して、では何がそれを防ぐことになるのかといった場合に、MD、ミサイルディフェンスというのは一つの選択肢だろうという思いは、私は今も変わりがございません。
 しかし、ここにおいて、クリアしていかねばならない憲法問題もございます。集団的自衛権の議論もございましょう。そのことが我が国の日本国憲法の趣旨にきちんとのっとるものであるということ、そしてまた、一部の国が非難をするように、それがかえって軍拡につながるというようなことがないように、きちんとした冷静な議論が必要なものであろうというふうに私は理解をしておるところでございます。
赤松(正)委員 その場合、今、いわば日本のそばに北朝鮮という、こういった極めて近隣諸国に危険なものを与える可能性が高い、そういう国家の存在というものが、いわば先ほど来長官がおっしゃったような、このミサイルディフェンスの必要性というものを感じさせるわけです。
 では、仮にそういった存在、北朝鮮の存在がない、北朝鮮という国家を想定しない場合、仮に、万が一、今回、まあどれぐらいのスパンかわかりませんが、北朝鮮がいわば普通の国になったという時点においても、日本にとって、特定の国を対象としなくても、いわば恒常的にミサイルディフェンスというものは必要である、こういうふうに考えておられるんでしょうか。
石破国務大臣 北朝鮮に対抗するためにということを、私は明確に特定して申し上げておるわけではございません。
 しかし、このミサイル技術、大量破壊兵器、その拡散ということは特に近年顕著になり、それが懸念をされておるところでございます。それが国家の形をとらなくても、あるいはテロリストという、国家として条約の対象外の人たちや勢力がそういうものを持つということも、私は新しい時代にあっては決して否定のできないことだと思います。
 私は、それを抑止力として、本当に抑止力として、そういうことをやっても意味がないのだということを担保するために、北朝鮮という国が本当にその交渉がうまくいって平和になった、しかし、だからといってミサイルディフェンスの必要性が全くなくなるということだとは思っておりません。これが、新しい時代の脅威というものに対応する一つの考え方ではないかというふうに思っておるところでございます。あくまで本質は抑止力であり、軍拡を招かないということが必要なことだと思います。
赤松(正)委員 本質は抑止力であり、先ほども同僚委員の質問に対して、いわば専守防衛の範疇に入る兵器なのである、こういうふうなお話がありましたけれども、先ほども集団的自衛権との関連というお話がありました。
 総理も、午前中にもありましたけれども、集団的自衛権の問題については研究する必要があるというふうな発言をなさったり、この問題についても、いわば日本が今後研究し、開発をした段階、さらには配備した段階、そういう状況の中で、言ってみれば、アメリカのいわばシステムの中に組み入れた、そういう使い方をされた場合に、集団的自衛権の行使との絡みが出てくる。これはかなり先の話になってこようかと思いますけれども、今、そういった整理はどのようにされているか、そこについてお伺いしたいと思います。
石破国務大臣 現段階におきましては、研究でございますから、そこまで立ち入った議論は、正直言って詰めておりません。
 ただ、これは私が長官になります前、有事法制の審議等々で申し上げたことでございますが、一つは、我が国に向かって飛んできている、それが我が国の施設であれ、仮に米軍施設を本当に直撃するものであれ、これは個別的自衛権の範囲内なのだろうと思っています。
 それが問題なのは、ブースト段階あるいはミッドコースで――ブースト段階でしょうね、ミッドコースは入らない。ブースト段階で、どこへ飛んでいくかよくわかりませんねという状況で、これがどの国へ向かっているのかわからない。そこで我が国がミサイルディフェンスを行うということが、一体どういうことになるのか。
 かてて加えて申し上げれば、ミサイルディフェンスの法的性質、法的構成はどうなるかということは、私はきちんと政府において詰める必要があるのだろうというふうに思っております。法制なくして配備するということはあり得ないわけでございまして、その辺、何しろ今までになかった技術でございますから、今までの法理論、これをどのように当てはめていくべきかということにつきましての議論は、国会においてもまたいろいろなされることと思います。
 私どもとしても、そういうような御議論を踏まえて、きちんとした、国民に向かって説明のできるものを構築せねばならぬ、そのように考えておるところでございます。
赤松(正)委員 先般、予算委員会で、総理に、集団的自衛権の問題についての研究はその後どうなっているのかとお聞きいたしましたけれども、その後、どうにもなっていないような発言でございました。ぜひとも防衛庁長官の立場で、今言ったようなテーマも含めて、さらに研究をしていただきたい、そんなふうに思います。
 あと、テロ特別措置法の問題でありますけれども、延長期限が十一月十九日に迫っている。
 今日までさまざまな角度で、このテロ特措法に基づく自衛隊の協力支援活動については行われてきたということを理解しております。例えば、給油総額というのは、今日まで、艦船用燃料、米軍の補給艦、駆逐艦に対して百二十八回、イギリスの補給艦に対して六回の合計百三十四回、二十二万六千キロリットルを提供して、給油総額は約八十二億円であるとか、あるいはまたさまざまな物品を輸送した、こういうことであります。
 あとわずかに迫ったこの延長期限について、今後、先般の委員会では、今特段の要請はアメリカから来ていないというふうなお話でございましたけれども、現段階における米との関係と、並びに日本の今の姿勢、これが一つ。
 それから、この際、ぜひ、テロ特措法に基づく自衛隊の協力支援ということ以外の、さまざまな分野における日本のアフガニスタン並びにその周辺に対する協力支援の活動について、副大臣の方からでも手短に答えていただければと思います。
赤城副長官 ただいま赤松委員から御指摘ありましたように、テロ特措法に基づき、これまで給油二十二万六千キロリットルとかあるいは航空自衛隊の輸送協力をやってまいりまして、国際社会からも高い評価をいただいております。テロ撲滅のために、我が国が積極的、主体的に取り組んでいくという大変重要な活動であると考えております。
 御指摘のように、この期限が十一月十九日に参ります。この後についてはアメリカからどういうふうな要請があるか、こういう御指摘でございましたが、現時点において、アメリカから協力支援活動について新たな要請があったということは承知しておりません。
 今後、計画の変更などの可能性については現在検討中でございまして、確たることを申し上げることは困難でありますが、今後、諸情勢を見きわめつつ、米軍等のニーズをそんたくして、我が国として主体的にその必要性を判断してまいりたいと存じております。
赤松(正)委員 時間の都合上、先ほど申し上げた自衛隊の協力支援以外の部分についてはもう答えがなくても結構ですけれども、引き続き今の問題について、イージス艦の派遣等についての、派遣をしたい、そういう希望が防衛庁の方にあるやに聞いておりますし、あるいはP3Cも出したい、こういうふうないわば日本の側における期待、希望というものがあると承知をいたしております。
 そういった、今回のいわばアフガンに対する、テロ特措法に基づいて自衛隊が協力支援するに際して、いわばイージス艦あるいはP3Cを出すということについてのメリット、そういうものを出すのはいわば情報収集、そういう根拠に基づいて出すとしたら出すんでしょうけれども、そういった場合における、何をしたいがために、それをするとどういう利点がある、こんなふうな判断で防衛庁は考えているのかどうか。あるいはまた、それについてそうしたいというのか、それともしたくないというのか。今の時点における考えをあわせて述べていただきたいと思います。
石破国務大臣 私どもとして、イージスを出したいとかP3Cを出したいとか、そのようなことは申し上げたことはございません。ただ、御指摘のように、まず法の趣旨にきちんと適合するということが大事だろうと思っております。
 もう一つ、情報収集ということでありますが、例えて言いますと、イージス艦の場合には、対空でも対水上でもそうなのでございますけれども、情報収集の能力が格段にすぐれておるということがあるだろうと思っています。
 例えば、イエメン沖でフランスのタンカーが攻撃を受けたということがございました。仮にイージスを出した場合には、はるか遠くの地点から、そういうような自爆ボートなら自爆ボートといたしますと、それがかなり遠くの地点から、一体これがどのようなものであるのか、見える範囲は今までの船と一緒です、DDHと一緒です、別に遠くまで見えるというわけではありませんが、しかし、それがいかなる船であるのかということを解析する能力が格段にすぐれておるということがございます。そうしますと、乗組員の負担というものも非常に軽減される。それにも増して、本当に我々の船が、テロ根絶に向けて行動しておる諸国の船に後方支援をするということをよりきちんと果たすことになるであろうということでございます。要は、いかにしてその地域において安全に業務を行うかという点に私は力点を置いて考えるべきものと思います。
 もう一つ申し上げれば、今、先生御存じのヘリコプター搭載護衛艦、DDHと申しますが、これが四隻、私どもにはございます。一隻はドックに入っておりますが、三隻で回していくことになるわけです。指揮通信機能、司令部機能というのは、このDDHもしくはイージス、これが持っておるわけであります。しかし、今ある四隻のDDHのうちの一隻はドックに入っている、三隻が常時いなければいけないということになりますと、先生御案内のとおり、非常にローテーションとしてはきついということがあります。そこへイージスが入ってきましたときに、かなり繰り回しが楽になっていくであろうというふうにも考えておりまして、私どもは、インド洋における後方支援ということも大事です、しかし同時に、我々の日本近海の防衛というものもきちんとやっていかねばなりません。
 そういうような観点から、私どもは前のめりで出したいとかいうことを申し上げておるわけではなくて、どうすれば安全に任務が遂行できるかということ、そして日本の防衛にもいささかにも遺漏があってはならぬという二点で私どもは物事を考えてまいりたい。価値判断をしておるわけではございません。
赤松(正)委員 アフガン周辺もさることながら、そこに至るまでのマラッカ海峡周辺、今回のインドネシアのバリ島へのテロの問題等、私どもの日本周辺におけるテロ活動等、いわばアフガンにおける事態とは別な次元でのそういうテロ活動等もあり、かなりしっかりとそのあたりを見ていかないと、どういった事態が起こるかわからないという部分があります。引き続きこの問題はしっかり研究をしていきたい、そんなふうに思う次第でございます。
 最後に、有事法制について、石破長官は、武力攻撃事態特別委員会で、今のお立場じゃないときに、かなり長時間にわたって、いわゆる有事法制についての物の考え方を、しばしばぎりぎりという言葉を使って、ぎりぎり法律を詰めていけばという格好で質問をされたと記憶するんですけれども、幾つかその中で指摘をしたいと思うんですが、武力攻撃以外の緊急事態への対応の準備を急がなくちゃいけないという指摘、それから、その中で、期限を切るべきじゃないのかというふうな御指摘、それから、工作船に対するこれからのいわば日本の対応としての法の運用の構想についてという部分についてもお話がありました。
 さらに、もう時間がないのでまとめて申し上げますけれども、整備推進本部という考え方をあのときに述べておられますけれども、石破防衛庁長官がまだ長官でない普通の委員のときに述べられたこの整備推進本部という考え方は、国民保護とそれからいわば緊急事態対応の双方を考えておられたというふうに読めるわけですけれども、この整備推進本部という考え方の中に、先ほど言いましたいわば武力攻撃事態以外の緊急事態への対応をどう急ぐのかということを検討する、そういうものを含ませるのか、それとも、それは別個でいいのか、差し当たっては国民保護という部分についてのみ研究をする、考える、合意を得ていく、そういう本部でいいと思っているのか、どちらでしょうか。
石破国務大臣 テロとか不審船に対する対応というものは、これはいつでもいいものだとは思っていません。やはり蓋然性は正規戦よりも高いのだろうというふうに思っています。
 そうしますと、私が委員のときに、大臣になる前に委員会で申し上げましたのは、やはりこれはきちんとした期限、その期限が到来する前にそんなことがあったらどうするんだと言われるとそれまでですが、いずれにしても、非常に急いでやっていかねばならぬのだろう。いつまでということをやらないと、だらだら延びてしまって、何か事が起こったときに、ああ、やっときゃよかったということでは責任を果たしたことにならないと思っています。期限を切るということも必要ですが、私としては、午前中の答弁でも申し上げましたように、一体今の法律でどこまでできるのかという検証、これはきちんとやり、また先生方の御論議をいただきたいと思っております。
 それから、国民保護法制推進本部についてでございますが、私も議事録を読み直してみますと、委員御指摘のように、テロとか不審船もその整備本部に含めてというような言い方をしております。これは、私が申し上げたのが言い方が悪かったのだろうと思いますが、基本的には、国民保護法制を主眼としてやるべきではないかと思っています。
 なぜならば、結局、都道府県知事さんやあるいは市町村長さん、消防の皆さん方あるいは消防団の皆様方、自警団の方々、そういうような広く広範な皆様方にかかわっていただくわけであって、そのためにはそういうような推進本部のようなものが必要ではないだろうかということ。あるいは、これは業務従事命令、保管命令とも絡むことでございますけれども、それでは、それを建築の方々、土木の方々、運送の方々、そういう方々の御意見も広範に聞くということが必要なのではないだろうか。国民保護法制というのは、本当に広く国民の御理解を得る必要があるし、それぞれのお立場の方々にとっての重要な問題ですから、そういう整備推進本部をつくってやるべきだというふうに申し上げたことでございます。
 今回、私は、仄聞する限りでございますが、与党において修正案というものが議論されておるやに聞いております。委員もその中心メンバーのお一人であるやに聞いておりますけれども、私が委員会で申し上げたのはそういうような趣旨でございまして、聞いておる限りは、それにかなり近いものがいただけるのではないかというふうには思っておるところでございます。
赤松(正)委員 先ほど、朝の答弁の中で、いわば有事法制、いわゆる国家対国家の紛争、戦争に対応する部分以外の緊急非常事態に対応する法について、あるいはまた法律以外の、現行法で対応するものについて、最初にまず法改正ありきじゃなくて、いろいろと想定されるべきものを早急に、大至急やりたい、検証作業をやりたい、こういうふうなお話でございました。
 いささかそういう発言は、今までの大臣もそういう発言があったし、なかなか形として出てこない、遅過ぎるということを御指摘申し上げさせていただいて、私のきょうの質問を終わります。
田並委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 まず、工作船の分野から入っていきたいと思います。
 きょうは、お忙しい中を国交省副大臣にお越しをいただいております。ありがとうございます。納得のできる、率直な、詳しい御答弁を賜りますように、よろしくお願いいたします。
 まず、平成十三年十二月二十二日発生事案につきまして、なぜ九カ月も引き揚げにかかったのか、なぜ九カ月もわざわざかけて引き揚げをしたのか。前回の委員会のときに防衛庁長官にその質問をいたしましたところ、まあちょっと長官に就任する前には同じような認識も持っていたという発言もありましたけれども、そもそもなぜ九カ月を要したのか、反省すべき点はいかがでしょう。
中馬副大臣 直接担当いたしております海上保安庁の立場から答弁をさせていただきます。
 昨年の十二月二十二日でございました。事案発生後、やはり事案を徹底解明するためには船体の引き揚げがどうしても必要だということで、その詳細な調査を実施することが必要不可欠と考えて、行動に移ったわけでもございます。
 その一環としまして、本年二月二十五日から三月一日までの五日間、巡視船艇搭載の自航式水中カメラ等を用いた調査によりまして沈没位置を特定するとともに、不審船の外観、船名等を確認した次第であります。また、五月一日から八日までの八日間、潜水士及び潜水艇により、沈没している船体の外観調査を実施し、沈没船の船体が安定した状態で海底に着底していることなどを確認いたしました。
 これらの調査結果を踏まえまして、専門家により具体的、技術的に検討いたしました結果、引き揚げが技術的に可能との結論を得た次第でもございます。
 一方、御承知のとおり、現場海域は我が国が事実上中国の排他的経済水域として扱っている海域でありますから、中国との調整もしつつ適切に対処する必要があったわけであります。この件に関しましては、外交ルートを通じまして中国側と協議を継続して行った結果、六月十八日に中国との調整が調い、同月二十一日に開催されました関係閣僚会議においての船体引き揚げに関する政府方針の決定を受けまして、同月二十五日に引き揚げ作業に着手した次第でございます。
 その後もかなり時間が経過いたしましたが、一つは、台風が非常に多く襲来いたしました。例年になく多くて、十の台風が来まして、作業を実施したのは二十七日、作業を中止したのが五十四日となっております。
 そして、九月十一日に船体を引き揚げまして、十月六日に陸揚げをした次第でもございます。
 以上でございます。
樋高委員 台風が来たからというのは全然説得力がございません。要は、九カ月かかったことに対して反省しているのかしていないのか、イエスかノーかでお答えください。
中馬副大臣 先ほど申しましたように、調査に相当の時間がかかりますし、また、今言いましたような物理的な結果でございまして、これに反省すべき点があるかという点でございますけれども、反省すべき点はないと私は存じております。
樋高委員 そんな緩慢なことだからだめなんですよ。さまざまな理由を一生懸命並べる。
 要するに、こういうときこそ毅然として、さまざまな外交案件なり、環境の問題なり、またいろいろな気候の問題、確かにありますよ。そうだけれども、何で引き揚げるのに一年近くもかかるわけですか。要は、こういうときにきちんと素早くスピーディーに対処することによって、内外に日本の意気込みを示すことがきちんとできるのではないか。一事が万事、いわゆる日本の危機意識の低さを世界に露呈したんじゃないか。私は、情けなくてしようがないと思います。
 では、この調査の結果、新たにいかなることが判明をし、そして、この事案においては何が任務であったと具体的に分析しておいででしょうか。
中馬副大臣 工作船の最新の調査結果についてのお尋ねでございますが、先般引き揚げました工作船についてですが、十月六日に陸揚げした後に、船体の構造、性能等に係る詳細な見分を行っているほか、船体後部の格納区画より引き出しました小型舟艇の見分もあわせて行っているところであります。
 これまでの作業経過の中で回収されたもの等につきましては、もう既に御承知かと思いますけれども、小型舟艇、水中スクーター、ゴムボート、武器類、計器類等、かなり多くの証拠物件を回収いたしております。これらにつきましても、現在、専門家等への鑑定を依頼しておりまして、鋭意捜査を進めているところでございます。
 具体的な内容に関しましては、まだまだこれから外交案件等にも関係いたしますので、総合的なことが判明次第ということにしまして、現在はお答えを差し控えさせていただきます。
樋高委員 では、それはいつまでに明らかにするんですか。
中馬副大臣 何度も申しますように、これからの専門家等の鑑定の結果によりますので、いついつまでということにまではここで言及することはできません。
樋高委員 日本の政府は反省していないということですね。これはもう大変なことですよ。
 まず、この引き揚げられたものにつきましては、写真も見ましたし、細かく説明もいただきました。その中で、私は外務大臣に伺いたいんですけれども、これはちょっと役職が違うかもしれませんけれども、日本の製品が大変多く発見されたのも重々お聞きになっていると思います。要するに、日本の製品が今回、直接密輸されたのか第三国を経由して入っていったのかわかりませんけれども、直接悪用されている。国家犯罪を犯すのに対して、日本の製品が堂々と使用されているということが明らかになったわけですね。いわゆるメード・イン・ジャパンの日本製品がこういうふうに使われること自体をどのように考えるのか、仕方ないと思っているのか、もしくは、それに対して反省もしくは対策をどのように打たれるおつもりですか。
川口国務大臣 私どもも委員と問題意識を同じにしております。大量破壊兵器あるいは通常兵器の開発や製造に寄与する物資、そして技術の北朝鮮向けの輸出については、従来から外為法に基づく輸出管理をきちんと行っているわけです。リストがございまして、そのリストに基づいて、これは経済産業省が所管でございますけれども、その輸出許可を必要としている、そういうことでございます。
 さらに、ことしの四月からはこの制度を一段と強化したということもやっておりますけれども、引き続いて関係省庁の間で連携を密にして、この輸出管理の堅持と、それから不拡散に注意をして行政をしていきたい、そういうふうに考えています。
樋高委員 工作船の任務の中に、もしかしたら国家ビジネスとして、いわゆる覚せい剤の密輸もなされていたのではないかとも言われておりますけれども、覚せい剤については、一説によりますと、日本のシェアの三〇%、三割にも及ばんとしているのではないかというような話もあるわけでありまして、数少ないいわゆる外貨獲得の手段として行われている可能性も私は否定できないであろうというふうに思います。
 このこと自体も、国家犯罪以外の何物でもない、いわゆる覚せい剤によって日本人が骨抜きにされてしまう、このことについて外務大臣、どのように対処なさるおつもりですか。
川口国務大臣 覚せい剤は非常に大きな問題であると私も認識をしております。
 これのうち、北朝鮮を仕出し地とするものの覚せい剤の大量密輸事件が行われているということについては、政府としても重大に受けとめていまして、八月に日朝の局長レベルの会談を行いましたけれども、こういったところでも取り上げているわけです。今後とも、これについては日朝の交渉の場で取り上げ続けていきたいと考えています。
樋高委員 防衛庁長官に伺いますけれども、先ほど中馬副大臣は、九カ月かかったことに対して、反省していないと開き直っておいででありました。私は、結果として九カ月かかった、もちろん言いわけもあるでしょう。しかも実際かかってしまったものですから、自分の非は認めたくない、認められない、確かにあるかもしれないけれども、こういう委員会では本音の議論、もう少し早く引き揚げるべきであったと思うぐらいの答弁はあってもしかるべきではないかというふうに私は思いますけれども、長官、どのように考えるのか。
 そもそも、この不審船対策、工作船対策は、いわゆる長官就任会見のときには、国交省と連携をとって、さらなる充実を期すという話でありましたけれども、就任なさって一カ月、どこがどのように変わりましたか。
石破国務大臣 私、先般の答弁でも申し上げたかもしれませんが、この船を揚げるということは技術的に非常に困難なことだというふうに承知をいたしております。実際そういうことに携わられた方々に私は聞きまして、どうしてあんなにかかるのというふうに聞きましたが、これはそれぐらいかかるものなんだ、実際にやってみればわかる、やらない人間にはわからないというふうに言われまして、私もそうかなというふうに思ったのであります。
 これは第一義的には海上保安庁のお話ですが、海上保安庁はもう職員の命がかかっているんです。海上保安官の命がかかっているんです。そのことをいいかげんにしたり、あるいは言いわけをしたりというような、私は日本政府としてそのような対応をとっておるとは思っておりません。
 かてて加えて申し上げれば、とにかく交渉の前に、日朝交渉の前にきちんと引き揚げたということの重み、よくぞそれに間に合ったという考え方も私はあるのだろうと思っています。
 加えて申し上げますが、不審船についてどうか、工作船についてどうかというお話であります。先ほど来申し上げておりますように、この検証がいつまででもいいというわけではありません。先ほど赤松委員から最後に御指摘をいただきましたように、このことの答えはきちんと出さねばいけないと思っています。
 つまり、海上自衛隊に治安出動を下令した場合に、九十条における特別の武器使用権、これはどこまでできるのかということ、そういうことを中心に議論をする必要があるのだろうと思っております。つまり、武器使用権限のお話でありまして、先ほどのお話とも関連をいたしますが、それでは、船はとまりました、乗り移りました、向こうの方が先に撃ってきて全員死にました、そういうようなことが絶対にあってはいかぬことなんです。
 では、どのようにできるか。それでは、武器使用権限の問題であるのか。それともいろいろな船で遠巻きにして、その工作船、停止した工作船が本当に無力化するのを待つべきなのか。いろいろな考え方があるだろうと思います。法的な面、運用的な面、これで十分なんだということを出さねばお返事をしたことにはならないと思っておりますから、いずれ、早急にお答えを出して、議会における御議論にも資したいというふうに思っておるところでございます。
樋高委員 時間がありませんので、次に移りますけれども、北朝鮮の核問題について伺いたいと思います。
 外務大臣に伺いますけれども、前回の答弁でも、大臣の答弁はこういう答弁でありました。査察の受け入れを含むすべての国際的な義務を完全に遵守するという話でありました。つまり、査察の受け入れはきちっと条件として当然担保されなくては、国交正常化の前提条件は満たされないということでありましたけれども、核の完全撤去も重要な、もう一歩踏み込んだ、査察だけではなくて、やはり核が朝鮮半島からなくなるということが私はとても重要な条件であると思います。
 なぜならば、核がそこに存在をしていて、そして、もしかしたら、今までずっとうそをつき続けてきた国家でありますから、もしかしたらまたあるとき、国交正常化の後、日本から資金援助もしくは経済協力がなされた後、その金銭によって核が開発される可能性もあるから、私は、やはり核の完全撤去というのは外せない条件であるというふうに思いますけれども、では現在の具体的な方針、つまり何をもって、何が担保されれば核問題が解決されたというふうに認定をなさるおつもりか、大臣、伺います。
茂木副大臣 北朝鮮の核問題につきまして、どのような条件が担保されればと、先日来そういう形で御質問いただいておりますが、まさに私は、この北朝鮮の核問題、今後の交渉の中で解決していく問題でありまして、できましたら、直接的に定義はと、こういうことは控えさせていただくのは委員としても御理解いただけるのではないかなと思うんですが。
 そこの中で、今委員の方から御指摘いただきましたウラン濃縮プログラムの廃棄の問題、これにつきましては、さきの国交正常化交渉の場でも、北朝鮮に対しまして、迅速かつ検証可能な方法でウラン濃縮プログラムを廃棄すること、これを求めたわけであります。
 同時に、先日大臣の方からも答弁させていただきましたように、日朝平壌宣言において北朝鮮が行ったコミットメントに従って、査察の受け入れを含めすべての国際的な義務、例えばNPTであったり、それからIAEAによります保障措置協定、さらには朝鮮半島の非核化に関する南北の共同宣言、そして枠組み合意等々の義務を完全に遵守するよう求めている次第であります。
樋高委員 川口外務大臣、今の副大臣の答弁ですと、核の完全撤去は条件じゃないよということでしたけれども、それと間違いございませんか。
川口国務大臣 すべての国際合意を受け入れるということを言っているわけでございまして、この中には、今副大臣が答弁しましたように、朝鮮半島の非核化の南北の共同宣言というのも入っているわけです。ですから、すべての国際合意を遵守するという中には、当然にそれは入っているわけです。
樋高委員 では、国際的な義務を完全に遵守するということは、要するに、朝鮮半島から核の完全な撤去ということが含まれているという理解でよろしいということでありました。
 では、核の技術供与についてでありますけれども、濃縮ウラン技術でありますが、これを行ったのがパキスタンという報道もなされておりますけれども、当然、外交ルートを通じて外務省は確認をなさったと思いますけれども、その回答はいかがでしたでしょうか。
茂木副大臣 北朝鮮によります核の問題、これは国際的な平和、安定だけではなくて、まさに近隣であります我が国にとりましても、我が国自身の安全保障にとって大変重要な問題である、こういう認識のもとで、御指摘いただきましたパキスタンを含みます関係各国との間でしかるべく情報、意見交換を続けているところでありますが、具体的なやりとりに関しましては、相手国との関係、さらに今後の交渉への影響等々もありまして、この場では差し控えさせていただきたいと思います。
樋高委員 副大臣、パキスタンに問い合わせをしたのか、していないのか、伺います。
茂木副大臣 今後、さまざまな場面を想定しまして、我々として今後の交渉に臨んでいくのに必要な意見交換をパキスタンとの間でさせていただいております。
樋高委員 それでは、防衛庁長官に伺いますけれども、核につきましてでありますが、私、前回の質問のときにも、核開発問題ということで、開発という言葉が入っているから、あたかもまだ発展途上、いわゆるまだつくっている途中の段階であるかのごとく錯覚されてはならないというふうに申しましたところ、長官も、そこにいわゆる開発という言葉が入っているがゆえに全くできていない、可能性を否定してはならないという御答弁もいただいておりますけれども、私、核の脅威というふうにずっと言われておりますけれども、この保有というものを、政府として、どちらかというとある方に予測しているのか、ない方に予測しているのか、長官に伺いたいと思います。
石破国務大臣 これはどちらでも同じと言っては言い方がいけないのかもしれませんが、要するに、持っているということを否定することを排除する理由はない、こう言うべきなのでしょうかね。
 とにかく、持っていないというふうには断定はできない。つまり、この間、明らかに開発を認めたわけですよね、ケリーに対して。そしてまた合衆国で、ラムズフェルドの演説等々で、持っているというふうに合衆国は言っている、持っている可能性があると言っている。そして、北朝鮮が先般核開発を認めたということですから、それをつなぎ合わせて考えた場合には、持っていないと断定する証拠はどこにもないだろうということであります。
 私どもは、可能性をどちらにかけるかという話ではなくて、少しでもその可能性があるとするならば、それに対してきちんとした備えをするということは防衛政策としては当然のことだというふうに考えております。
樋高委員 じゃ、続いて伺いますけれども、日本は、要するに、核の標的の可能性になっていることも否定できないということでよろしゅうございますね。
石破国務大臣 これは、向こうが今までいろいろなことを言ってきています。例えば、平成十年に、向こうの新聞なぞを読みますと、アメリカの召使をするとするならば日本も道連れだ、正確な表現ではありませんが、そういうようなニュアンスのことが書いてあるということ、もちろん、向こうのそういう新聞にはいろいろなことが出るわけです。少なくともそのように表に向かって言っているという事実があります。
 そしてまた、先ほど来申し上げているように、核を持っていることを否定するということにはならないだろう。それを組み合わせればどういうことになるのかという、これは推量の問題であります。向こうが日本に対して核を向けておるということを明確に言ったという点を私はつまびらかには存じませんけれども、少なくともそれを積極的に否定する理由はないであろうということだと思っております。断定することはいたしません。
樋高委員 前回、外務大臣は、一定の情報は持っているという答弁でありましたけれども、その部分についてもはっきりした答弁をいただけないので、大変残念であります。
 それで、核の問題であると同時に、私は、ミサイルの問題もとても重要な問題であろうというふうに思います。
 国交正常化の最優先課題として拉致の問題、そして核問題を含む安全保障の問題ということでありましたけれども、ミサイルの脅威というのは、これは物すごく重要視しなくてはならないと申しましょうか、むしろ、そのミサイルの脅威というものがまだまだ認知されていないであろう、まだまだ足りないんじゃないかというふうに私は思うわけであります。
 今後、いわゆる安全保障協議も含めまして交渉を行っていくと思いますけれども、ミサイル問題も私は最優先の課題であると思います。もちろん核の脅威を重要視するのは当たり前でありますけれども、ミサイルも極めて私は蓋然性が高いであろうと。先々週の予算委員会におきましても、長官は、百基以上のミサイルが既に配備されている可能性が高いから、だからしっかりと対処をとっていきたいという答弁でありましたけれども、このミサイルの問題も、対北朝鮮との国交において、私は最重要の課題であると思いますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。
石破国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
 ミサイルの怖さというのは、要はそこに何を積むかということなのですね。委員御指摘のように、小型化をしなければ積めない、それは核の場合であって、通常弾頭でも、例えて言うと、日本海側にはずらっと原発が並んでいるわけです。そこへ落ちたらどうなるのということ、これは現在のところ安全だということになっています。そして、まずそういうことについては私どもはきちんとした責任を持たねばならない、国民に対する当然のことであります。
 しかし、そのことに対する恐怖感だけでもこれは大きなことがございまして、そこら辺をどうしていくのか、我が方の備えを、本当に政府としてそういうような不安をかりそめにも住民の方々に与えないということも必要でありますが、通常弾頭でも十分に脅威となり得るだろうというふうに思っております。そこに生物兵器、化学兵器を積まれた場合は、これはもう大変なことであって、あるいは核と同様のことかもしれない。
 いずれにしても、その運搬手段としてのミサイル、このことにも我々は十分な関心を払うべきだと思っております。
 これは先ほど、誤解を招くといけませんが、原発の問題は、私どもとしてはそれが落ちてもきちんとした対応ができるという態勢でおることには変わりはございません。
樋高委員 まず、仮に核爆弾が開発もされているという仮定の話にはお答えできないという話になるでしょうけれども、大型である、だからミサイルには積めないよと。そこで忘れてはならないのは、だけれども、船には積める大きさ、重量であると私は思います。
 先ほどのまた不審船の話に戻ってまいりますけれども、不審船、船に載せてもしかしたら核弾頭が、ミサイルに載せられるほど小型化していないものですから、まだ重量もある、大きさもあるものですから、私は、船に載せられて日本近海に来る可能性も高いと思うんですが、長官はいかがお考えになりますか。
石破国務大臣 委員、ごらんになったかどうか知りませんが、「トータル・フィアーズ」みたいなお話なんだろうと思いますね。そういうのを完璧に否定するということにはならないだろうと思っております。それが本当に技術的に可能なのか、どれぐらいの大きさなのか。それはもう本当に船に積めるぐらいの、たしか「トータル・フィアーズ」だと、自動販売機の中に隠してみたいなお話でしたよね。一体どこまで技術があるのかということもきちんと我々は想像し、推量していかねばならないだろうと思っております。ミサイルだけがすべてだとは思っておりません。
 したがって、そういう船、工作船とも不審船とも、どういうような言い方をしていいかわかりませんが、そういうようなものに対してもそういうようなものが持ち込まれることがないように、当然のことでありますが、核は持ち込ませずというのは、何も合衆国のみを念頭に置いて言っているわけではございません。そういうことで、私どもは万全を期していくこと、何も、ミサイルだけが核の脅威だ、それがセットにならなければ脅威ではないというような認識ではおりません。
樋高委員 要するに、船に積まれて核が持ち込まれていた可能性もあるのではないかと私は言っているんですが、いかがでしょうか。
石破国務大臣 私はそのような認識はいたしておりません。現段階で、そのような核が日本へ持ち込まれたというようなことを申し上げるような材料は、私は一切持ち合わせておりません。
樋高委員 いずれにいたしましても、この交渉におきまして、いわゆる拉致の問題、核の問題、そしてミサイルの問題、このミサイルの問題も、私は、とても重要な、極めて大切な問題であるというふうに思っております。このミサイルの脅威につきまして、やはり国民に説明責任が私はまだ足らないというふうに思いますけれども、いかなる周知活動を今後行っていくおつもりでしょうか。
石破国務大臣 このことにつきましては、防衛白書等々でも国民の皆様方に御説明をしてまいったことでございますが、なお説明責任が足りないという御指摘でございますので、これが十分になされたかどうかは私も検証したいと思っております。
 ただ、いたずらに不安をあおるということもまた、よいことだとは思っておりません。正確なことを正確なように国民の皆様方に御説明する、その態度でまいりたいと考えておる次第でございます。
樋高委員 私も、別にいたずらにあおり立てているというつもりではございません。
 外務大臣に伺いますけれども、今後、この日朝の交渉におきましても、核や拉致の問題ももちろんでありますけれども、それと同じぐらい最重要課題の一つとして、いわゆる中距離ミサイル、ノドンの開発、配備、そして輸出の中止も強く要求するということでよろしゅうございますでしょうか。
川口国務大臣 ミサイルの問題につきましては、既にこの間のクアラルンプールの会談におきまして、配備をされたノドンについては、それを撤去するようにということは既に交渉のテーブルで話をしています。引き続き、この問題についても、当然に安全保障協議の場で、あるいは本交渉の場で話をしていくということに変わりはありません。平壌宣言の精神と原則、これが守られなければ正常化交渉は妥結をしない、そういうことでございます。
樋高委員 それでは、日朝の安保協議でありますけれども、何を議題とする予定でしょうか。そして、具体的な日程的な見通しも含めてお話しいただきたいと思います。
茂木副大臣 日朝の安保協議でありますが、詳細につきましては、これから北朝鮮の側と調整をしていくということでありますが、議題につきましては、先ほどミサイル、ミサイル、こういう何回か御発言があったわけでありますが、日朝平壌宣言におきましても、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、問題解決を図ることの必要性を確認しているわけでありまして、この同宣言に基づきまして行われます日朝安全保障協議の場におきましても、我が方としてこれらの問題について当然取り上げていくことになる、このような認識を持っております。
 協議の見通しということでありますが、現時点におきましてはなかなか予断することはできないわけでありますが、いずれにしましても、この拉致問題、そして安全保障問題、これを最優先課題として取り上げ、そこの中で日米韓連携をさらに強化いたしまして、北朝鮮側に対しまして日朝平壌宣言の完全な遵守を強く働きかけていきたい、このように考えております。
 なお、この安全保障協議、そして国交正常化交渉、これにつきましては一体のものとして我々としては進める、こういう認識であります。
樋高委員 以上で終わります。ありがとうございました。
田並委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 最初に外務大臣に、日朝国交正常化交渉問題について質問したいと思います。
 日朝平壌宣言を受けて二年ぶりに開催された日朝国交正常化交渉であるわけですが、二日間の日程を終えました。
 それで、日本政府は、拉致問題、核開発問題について交渉の最優先課題として臨んだわけですけれども、拉致被害者の家族の帰国、核開発計画の即時停止の確約を得ることはできませんでした。拉致問題について、日本側は、五人の拉致被害者の家族の安全確保、早期帰国、帰国日程の確定を求めていたわけですが、物別れに終わったというのは本当に残念であります。特に、朗報を期待していた拉致被害者と家族の不安と怒り、複雑な思い、これは察するに余りあります。
 鈴木交渉担当大使は、拉致問題の交渉について、家族の早期帰国、そして、生存が確認されていない被害者の事実解明について、次回の国交正常化交渉を待たず、さまざまなチャンネルを通じて交渉し、一歩でも二歩でも進める努力をしたいと述べていますが、私たちもこの日朝国交正常化交渉を実りあるものとして進められていくことを期待しているわけですが、今後も交渉に当たっては、日朝平壌宣言の原則と精神に基づいて、毅然とした態度でなお解決に向けて一層努力されることを強く求めたいわけですが、この二日間の日程を終えて、これからまた再開に向かっていくわけですが、どういう基本的な姿勢で臨んでいかれるのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 前回の交渉の経緯については、今委員がお話しになられたようなことでございまして、特に、拉致の被害者のお子さん等北朝鮮にいらっしゃる家族の方の日本への帰国の日程が決まらなかったということについては大変に残念に思っています。我々といたしましては、引き続き、核を含む安全保障の問題、そして、この拉致の問題が最優先課題であるということには全く変わりはございません。日朝平壌宣言の精神と基本原則に従って、毅然として相手側、北朝鮮側と交渉を続けていくということが方針でございます。
赤嶺委員 次に、その日朝平壌宣言の原則と精神にもかかわってくるわけですが、核の問題についてであります。
 北朝鮮の核開発問題、すなわちウラン濃縮プログラムは、核不拡散条約、北朝鮮IAEA保障措置協定、米朝の合意された枠組み、南北非核宣言に対する違反であり、そして、日朝平壌宣言そのものにも反する行為であります。
 この問題について、日本側の方からは、ウラン濃縮プログラムの内容を明らかにすること、プログラムの検証可能な形での即時撤廃、合意された枠組みに基づく施設凍結維持、IAEA保障措置協定の完全履行、査察受け入れを強く求めたわけですが、北朝鮮の方からは、日朝平壌宣言を遵守すると言いながら、解決は米国の協議によって可能と主張し、米国との交渉課題というぐあいに姿勢をとっています。同宣言で朝鮮半島の核問題の包括的な解決のために関連するすべての国際合意を遵守すると約束しているわけですから、北朝鮮の米国と協議するという主張は日朝平壌宣言に照らしてどうなのか、この点について今外務省、どのように考えていらっしゃるのか聞きたいと思います。
齋木政府参考人 ただいまの話ですけれども、要するに、我々としては、この前の日朝交渉の席で、今先生が御指摘になったようなさまざまな論点について、おかしいではないかということから、相当強く先方の態度表明を迫ったわけでございます。
 先方はこれに対して、日本が核問題で関心を有することについては一応理解はします、それは、日本が正当な関心を持つのはわかる、したがって日本とも議論はしますよ、ただ、最終的な、究極的な解決というのはアメリカとの協議によってのみ可能なんです、したがってアメリカとの対話を通じてこの問題を解決するんだということをしきりに言っておったわけです。
 これに対して、日本側としては、いやいや、そういうことではないでしょう、やはりミサイル問題も含めて、日本の安全保障に対して直接の影響があるこういう問題については、日本としても重大な関心を持っているわけですから、今後ともこの問題については、あなたのところとはきっちりと協議してやっていきますよということを述べて、それで先ほども言及がございました安全保障協議のテーマとして、日本側としてはこれを取り上げていくつもりであるということも含めて先方に対して強く申し述べた次第であります。
赤嶺委員 そうすると、その安全保障協議なわけですが、ただ、正常化交渉が、十一月開催の安全保障協議、これも合意をされたわけですが、核問題で議題にするかどうかをめぐって、結局具体的にそれは取り上げられずに、日朝平壌宣言に沿った議題設定で合意した、こういうことで報道されているわけです。
 その経過と、安全保障協議で核問題が協議の対象に実際なっていくのかどうか、日本側としては、どういう対応でその安全保障協議に臨むのか。議題の決め方が非常に一般的に決められているものですから、そのあたりも具体的に説明をしていただきたいと思います。
齋木政府参考人 安全保障協議で何を取り上げるかということにつきましては、国交正常化交渉の席上、私どもの方からは、核の問題、ミサイルの問題、工作船の問題、それから麻薬の話等々、いろいろと日本として取り上げたい問題があるということで、それは我々の方からの関心事項として頭出しをいたしました。これに対して先方は、このクアラルンプールの協議の席上では議題の細部の確定をすることはできません、持ち帰って検討しますということで、議題についての合意はできなかったわけでございます。
 ただ、その際、議論しておりましたときに、平壌宣言の文言のまさに一番最後のところに、「双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。」こうなっておりまして、そこの一番最後の行に至るまでのところに安全保障にかかわる問題というのがいろいろと列記されておるわけでございます。
 したがって、安全保障協議を行うに際しましては、当然のことながら、この平壌宣言という、双方が最高の首脳レベルで合意してサインしたその平壌宣言に書かれている内容が、安全保障協議で取り上げられるものというのが私どもの理解でございます。
赤嶺委員 それでは次に、普天間基地の十五年使用問題について伺いたいと思います。
 七月の末に、第九回の代替施設協議会で、普天間飛行場代替施設の基本計画が決定されたわけです。名護市沿岸の海上のリーフの上に埋め立て方式で二千五百メートルの航空基地を建設するというものです。
 この基本計画の位置の決定をめぐって、地元の住民からも、賛成をしていた住民からも、政府は約束と違う位置を頭越しに決めたという怒りの声が起こりました。同時に、そのリーフの上につくられる基地が、あの北部一帯の美しい自然を取り返しがつかないところにまで破壊してしまうのではないか、こういう意見も広がっているわけです。
 そういう議論も残されてはいるわけですが、実は、そういう議論は今後の委員会の中で私も取り上げていきたいと思いますけれども、問題は、この基本計画が策定をされて、九月に初めての日米外相会談が行われたわけです。外務大臣は、基本計画を策定したというこういう新しい段階に入ったことを踏まえて、この日米外相会談では、十五年使用期限問題について、どういう立場で交渉に臨んだのか、その結果、どういう交渉が行われたのか、いかがでしょうか。
川口国務大臣 九月十七日に私は、国連総会に行った後ワシントンに行った際に、ちょうどニューヨークからワシントンに戻ってきたばかりのパウエル国務長官とお話をさせていただきました。
 私は、普天間飛行場の代替施設の使用期限の問題については、今まで申し上げていますように、平成十一年の閣議決定にありますとおり、政府としては国際情勢もあって厳しい問題であるという認識を有しているけれども、沖縄県知事及び名護市長から御要請があったことを重く受けとめて、米国政府との話し合いの中で取り上げていくということを申し上げております。したがいまして、九月十七日の会談のときですけれども、そのときにもパウエル国務長官との間で取り上げさせていただいた、そういうことでございます。
赤嶺委員 そのパウエル国務長官との会談の中で、十五年使用期限について何か前進があったんですか。
川口国務大臣 このときに私からパウエル国務長官に言いましたことは、沖縄県民の負担軽減、事件、事故の防止を図ることが重要であって、使用期限の問題については、日米双方の立場があるけれども、引き続き普天間飛行場の移設、返還を含むSACOの着実な実施に向けて協力をしたいというふうに言いました。
 これに対しましてパウエル長官から、そのとおりであって、普天間飛行場の移設、返還を含めたSACOの最終報告の着実な実施に向け協力をしたいという発言がございました。
赤嶺委員 今の外務大臣の答弁を聞いていて、やはり外務大臣からも、十五年使用期限について前進があった、そういうお答えが出てこない。そのとおりだと思うんですよね。今の外務大臣の答弁にもありましたように、外務大臣の方からは、日米双方の立場はあるがと、こうなっているわけですね、引き続き普天間基地飛行場の移設、返還を含むSACOの着実な実施に向け努力したいと。
 日米双方の立場という場合に、アメリカの立場は、十五年使用期限を認める、こういう立場ですか。
川口国務大臣 米国の立場といいますのは、使用期限問題については、困難な問題であるけれども、普天間飛行場の移設、返還につき引き続き協議をしていきたい、そういうものであると承知をしています。
赤嶺委員 要するに、基本計画が策定をされて、そして初めての日米外相会談が行われて、そこで十五年使用期限について確認したのは、日米双方の立場の確認なんですね。アメリカは、十五年については受け入れられない、こういうものなんですね。
 私は、基本計画ができたのなら、十五年使用期限についてもっと踏み込んだ交渉を外務大臣はやるべきだ。もちろん私は、十五年の期限をつけたからといって、あの基地を受け入れるものではありません。ただ、稲嶺知事と政府との間で、これは大事だ大事だということを繰り返しているものですから、本当に皆さんの立場から見て、大事だという取り扱いをしているか。何も踏み込んでいない、双方の立場を確認しただけ、これじゃ交渉にならないわけですよね。つまり、日米間ではもう既に困難な問題だという暗黙の了解があったから、まともに交渉しなかったのではないですか。
川口国務大臣 申し上げましたように、使用期限の問題については、平成十一年末の閣議決定に従って適切に対処をしてまいる所存でございます。
 そして、使用期限の問題の背景に、平和を願う沖縄県民の痛切な気持ちがあるということでございます。政府としまして、厳しい国際情勢があるとはいえ、こうした沖縄県民の気持ちを重く受けとめて、一歩でも二歩でも、県民にとっての理想の姿に国際情勢が肯定的に変化をしていきますように、外交努力をしていきたいと考えております。
赤嶺委員 アメリカの合意を得る事項ではなくて、国際情勢の変化にまつという話にもう既に外務大臣はなっているわけですけれども、十月の二十四日、ワシントンで、いわゆるミニSSC、それから普天間実施委員会、FIGが開かれたわけですが、当然、この場では十五年問題について何か協議されたんでしょうね。普天間問題、ミニSSCという非常に大事な場ですから、十五年問題を取り上げておりますか。
川口国務大臣 これは事務ベースの会議の場でございまして、普天間問題については取り上げておりません。
赤嶺委員 同じときに普天間実施委員会も開かれていますよね。FIG、ここではどうなんですか。
川口国務大臣 十五年問題については取り上げていない、そういうことでございます。
赤嶺委員 そういう場でも全く議題になっていないわけですよ。基本計画が決まって、一番最初の日米外相会談では双方の立場の理解というところに終わって、その後の、いろいろ実務者の会談とはいえ、議題にさえならない。やはりここには、アメリカに対して議題にして協議をして同意を得るということはできない、そういう困難な問題だという、日米双方に暗黙の了解があって進められているというぐあいに考えざるを得ません。
 私は、この問題というのは、これまで安保委員会でもそれから外務委員会でも何度も取り上げてきました。もう既に、基本計画が決まったら、早速那覇の防衛施設局は、十月には環境影響評価の方法書を作成する業者を選定し、二〇〇三年にはアセス実施、二〇〇六年には工事を着工したいと、基本計画からさらに一歩前に進んだわけですね。
 ところが、十五年使用期限は稲嶺知事や岸本名護市長の代替基地受け入れ条件であるわけです。稲嶺知事は、今行われている知事選の中では、十五年使用期限を受け入れなければ工事の着工は拒否する、このように言明しております。しかし、アメリカ政府の方は、安全保障上の必要性はその時々の状況や脅威によって決められ、十五年という人為的な期限を設けるべきではないというぐあいに明言をしている。そのような期限は設定できないという立場に一切変化がないまま、ここまで来ているわけですね。
 もはやこの十五年問題というのは不可能だ、アメリカ政府に約束させるのはできないということを日本の政府は明確にすべきじゃないですか。国民に対する責任、県民に対する責任、知事は十五年使用期限は着工までにできなければ拒否すると言っている。皆さんは、莫大な国民の血税を投入して、工事着工できるかどうかわからない環境アセスその他の事業をずっと開始に向かって進めようとしている。間際になって問題が起こるのではなくて、既に十五年問題というのはアメリカ政府に約束させることはできません、こういうことを国民に明らかにすべきじゃないですか。
川口国務大臣 政府といたしましては、平成十一年末の閣議決定に従いまして、適切に対処をしていきたいと考えております。
赤嶺委員 平成十一年末の閣議決定から動き出しているわけですよ。動き出して、そして基本計画も皆さん方はつくられ、そして環境アセスも始めようとしている。こういう中で、稲嶺知事は、いや、十五年が決まらない限り工事には着工させませんと言っている。なぜそういうことを言ったか、工事着工に向かって事態が進んでいるからなんですよ。
 ですから、古い壊れたレコードを回すように閣議決定だけ国会で答弁しておれば、それが国民の納得を得られるというものじゃ絶対にないですよ。アメリカには約束させることはできませんと言うべきじゃないですか。そんな同じことの繰り返しの答弁では、全く政府としての責任が果たされているとは思いません。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、政府といたしましては、平成十一年末の閣議決定に従いまして、適切に対処をしてまいりたいと考えております。
    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕
赤嶺委員 普天間飛行場の代替基地というのは恒久的な基地であるというのは、もう今の川口外務大臣の答弁を聞いていても明白になったと思うんです。
 基地をつくることによる環境破壊、これは取り返しがつかないものです。それから、事故、騒音、これも非常に重い負担を県民に強いるものであります。私は、名護に新基地をつくるのは断じて容認できませんし、計画の撤回を強く求めたい。第一、沖縄の自然を知っている者であれば、リーフを破壊してそこに基地をつくるというのは、およそ考えられないような発想であります。
 そして、稲嶺知事と政府との間で、できもしない十五年使用期限をあたかもできるかのように言いながら、ところが、日米の外相会談においては、双方の立場を理解するというやり方しかできない。そういうことしかできないのに、県民の気持ちを酌んでいるという言い方は、二重三重にとても受け入れられるものではないということを申し上げておきたいと思います。
 この間の安保委員会でも取り上げた問題ですが、伊江島における米軍物資投下訓練の廃止の問題について取り上げます。
 伊江村の村議会が、十一月三日、日曜日です、十一月三日の夜に臨時議会の本会議を開きました。日曜の夜、臨時議会を開くこと自身が異常なわけですが、そこにこの伊江村での物資投下訓練の事故の重大性を村民がどのように受けとめているかあらわれていると思います。
 ちなみに、伊江村で米軍基地の演習や訓練や事故にかかわって抗議決議が上がったのはこれが初めてであります。村長も基地を受け入れるという立場、それから村議会も基地を受け入れている人たちが圧倒的に多い、こういう立場からしても、抗議決議には、重量約六十キロもの物資がパラシュートが開かないまま民間地に落下、これは人命にかかわる重大事故だと。こういう重大事故がたびたび起きているわけですね。これ以上声を上げなければ、本当に重大事故につながっていくということなわけです。
 外務大臣は、この間の答弁では、原因究明まで訓練の中止は求めるけれども、物資投下訓練の廃止はアメリカに対して求めない、こういう答弁でありました。村議会も村長も、廃止という決議を上げております。なぜ廃止か、それは廃止以外に再発防止はできないからです。
 そこで、このパラシュート降下訓練、物資投下訓練、パラシュート降下訓練部隊は読谷村でやっていた部隊なんですね。SACO合意によって伊江島に移った。読谷村では、物資投下訓練は禁止されていた。しかし、伊江島では、五・一五メモその他で物資投下訓練ができる。でも、これ以上こういう訓練を続けたら、必ず人命にかかわる重大事故が起こるという認識があるわけです。
 私自身、五・一五メモ、これらの中身については反対であるわけですが、あるいはSACO合意に基づく伊江島の基地の使用条件、これにも反対であるわけですが、非常に切実な村民の願いに一歩でもこたえるという姿勢が少しでもあれば、伊江島でこの物資投下訓練を認めている使用条件について、外務省はアメリカに対してその使用条件の見直し、物資投下訓練の廃止、これについて交渉すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
茂木副大臣 基本認識で若干委員と異なる部分がありますのでお答えしにくい部分もあるんですが、本件に関しまして、まず御指摘いただきましたように、たしか十月二十九日のこの安保委員会におきましてお答えを申し上げましたように、事件の発生を受けまして、外務省の北米局から在京の米国大使館に、そしてまた外務省の沖縄事務所から在沖縄米軍に対しまして、遺憾の意を表明するとともに、再発防止の徹底、そして原因究明につき申し入れをさせていただいた。それに対して米国側から、本件はまことに遺憾であり、再発防止の徹底及び原因究明に努めたい旨の応答があったわけであります。
 そこで、先日の答弁に関しまして、日本側がこの訓練の中止を要請した、こういうお話でありますが、アメリカ側の方からも、本件事案にかかわる徹底した原因究明と再発防止策がとられるまでの間、重量物投下訓練を中止する旨の連絡を受けているところであります。
 何にいたしましても、地元の住民の皆さんの心を心として、今後の協議にも当たっていきたいと思っております。
赤嶺委員 副大臣、今、私の質問に答弁していないですよ。
 基本認識が違うとおっしゃいましたけれども、私が取り上げているのは、基地における基本認識で政府と同じ立場に立っている村長や村議会が、そうではあっても、物資投下訓練というのは人命にかかわる重大な事故をたびたび繰り返しているから、せめてその物資投下訓練だけでも廃止していただけないか、こういうことですよ。基地に対する基本認識は皆さんと一緒の立場の村長や議会が言っているんですよ。私が言っているんじゃないですよ。私と政府とでは基本認識は違いますよ。
 あなたは、今、そこで原因が究明されるまでは訓練中止を求められると言っている。そんなのは当たり前ですよ。落下事件を起こして、それで何もそういうことを気にせずにどんどん訓練するような、こんなでたらめなことは幾ら沖縄でも許せないですよ。同時に、今後の事故の再発防止を真剣に考えるのであれば、そういう物資投下訓練の廃止、せめてこれをするための使用条件の変更をアメリカに申し入れて交渉する気はないかということなんです。
末松委員長代理 茂木外務副大臣。
 時間がないので、手短にお願いします。
茂木副大臣 一言だけ。
 先ほど最後に申し上げましたように、地元の皆様の御意向をしっかり受けとめた上で今後の対応を図っていきたい。
 ただ、沖縄におります米軍がさまざまな訓練を行っていく、このことについては必要性があると考えております。
赤嶺委員 外務大臣もちょっと。
川口国務大臣 今副大臣からお答えしたとおりでございます。
赤嶺委員 私は今の質問で、私の立場からではなくて、伊江島はSACO合意も受け入れて、パラシュート降下訓練も受け入れて、基地に対する基本認識では少なくとも政府と一緒の自治体だ。そういう自治体で、そこの住民が、基地を受け入れはしたけれども、せめて物資投下訓練、六十キロもの物資が落ちてくる、コンクリートの塊が入ったドラム缶が空の上から落ちてくる、こんなのが認められますかと。せめてこれだけでもアメリカと交渉していただきたいというのが住民の痛切な願いだったと思いますが、皆さんはそういうことさえ耳を傾けることができない、本当に対米従属の外務省だということを強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
末松委員長代理 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美です。
 まず冒頭に、石破防衛庁長官に、これは事前の通告からちょっと離れるんですが、通告をした後に、実は長崎新聞の今月の三日付で、いわゆる日米共同ミサイル防衛に関して大きく記事が出ておったものですから、冒頭にちょっとお尋ねをしてみたいと思います。
 実は、先月の二十一日に、ケリー米国務次官補と東京で会談した際、日米共同ミサイル防衛に関して、「「現在の「研究」から「開発」段階へ早急に移行したい」との意向を表明していたことが分かった。」というふうに記事がなっております。これは、実は御存じのとおり、我が国の政府としては、九八年に、開発や配備段階への移行は別途判断するというのが政府の見解だと思いますし、この新聞記事によると、「石破長官は、自らの判断で発言し、政府内で統一された意思の表明ではない。」というふうになっておるわけですが、そこのところの真意をお聞かせください。
石破国務大臣 これは、当然のことですが、私が判断できる立場にはおりません。安保会議の議を経て研究段階から開発段階に仮に移行することはあるとしても、それはその議を経なければいけないことですし、実際に、先ほど来答弁申し上げておりますように、この技術というものが、開発段階に移行できるほどに確度、信頼度が高まったものでなければ、そこまでまいりません。
 そういうことを全部踏まえた上で私が申し上げましたのは、やはり抑止という観点、専守防衛という観点から、ミサイル防衛というものを実用化すべく、まず研究というものの精度、確度を上げていくべきではないか、そういうニュアンスでお話をしておりますが、研究から開発へ移るべきだというようなことを、私は申し上げる立場にもございませんし、そのようなことも申しておりません。
今川委員 もう一度確認ですが、そうすると、もちろんおっしゃるとおり、政府の公式の見解でないことは言うまでもありませんが、石破防衛庁長官として、米国のケリー国務次官補とお会いになったときにも、自分としてはそういう開発段階に移行したいとかという、この記事というのは正確ではないんですか。
石破国務大臣 どこからこういう記事が出たかは存じませんが、これは正確ではないというふうに思います。
 つまり、繰り返しになって恐縮でございますが、どこまで確度が上がったのかということがわからなければいけませんし、先ほど赤松委員の御質問にもお答えしましたが、そのことが新しい技術でありますがゆえに、法律的にどのように当てはめていくかという問題もございます。私は、そのようなことが判断できる立場にもございません。
 ただ、私としては、専守防衛にかなうミサイルディフェンスというものは進めるべきだと思う、それが抑止力になると思う。研究の確度が上がっていって、かなり高い確度で、確率で物になるということになり、これが開発段階になることによってそのような抑止力が高まるということは、私は個人的には期待をいたしております。それが抑止力である限り、専守防衛にかなうものである限り、期待はいたしておりますが、そのことは、私が安保会議を代表しておるわけでももちろんございません、私の立場でそのようなことを申し上げることができないことは、当然のことであります。
今川委員 それでは、事前通告に基づいて質問をいたしたいと思います。
 これは私が議員になってから歴代防衛庁長官にはお尋ねをしておるんですけれども、まず最初に、前国会でもこれは委員会で質問したことなんですが、佐世保にことし三月末に新設をされた普通科連隊、これは西部方面隊の直属の部隊でありますが、御案内のように六百六十人規模で、九州を中心に全国からえりすぐりの自衛官を集めた部隊だと言われています。任務としては、離島防衛と言いつつも、いわゆるゲリラとかテロ対策ということで、肉体的にも精神的にも非常に屈強な隊員で構成されているはずなんですが、ことしの五月、七月に、相次いで三名の方が自殺をされるという非常に痛ましい事件がございました。その後も二名の所属隊員が行方不明になって、これは幸い無事戻ることができたんですけれども、余りにも、新設をされてから半年もたたないうちにそういう相次ぐ事件があったということを、私も非常に重要視をしています。
 それで、私が思うのは、原因がはっきりしないんですけれども、例えば、通常の普通科連隊以上に訓練プログラムの中身に非常に過酷さがあるのか、あるいはいじめだとかそういった問題があったのかなかったのかということが非常に気になるんです。
 それで、自衛官が、御承知のとおり毎年大体平均して六十名から七十名が、理由はさまざまですけれども、自殺者が出ている。八〇年代ぐらいからふえ始めて、九〇年代以降、特にふえているんですね。たしか九八年は八十人以上だったと思います。そのことは委員会の都度質問もしてきているんですが、いわゆる防衛庁などの統計によっても、原因不明とされるのが自殺をされた自衛官の約半数近くなんですね。そこに私自身は、いつも問題にしている隊の内部でのいじめだとかしごきだとかという問題がありはしないのか、そのことが無視できないのではないかというふうに思っておりまして、その一つの象徴として、佐世保で始まっているいわゆる護衛艦「さわぎり」にかかわる裁判があるんだと思うんです。
 まずこの点を、新しく長官となられて、石破長官、どのような御感想をお持ちでしょうか。
    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕
石破国務大臣 事の詳細につきましては副長官から御答弁申し上げますが、さきの国会において今川委員が御指摘になった点、私もずっと聞いておりました。
 これは、今回長官になりまして、もう一度きちっと検証しようと思っています。これはやはりゆゆしきことだという認識で私はおります。このことの根絶というのは難しいのかもしれない。しかし、原因を除去しなければこういうことはなくならないというふうに考えております。
 詳細につきましては、副長官から御答弁申し上げます。
赤城副長官 最初に、委員御指摘のありました、西部方面普通科連隊において三件の自殺が発生しました。故人、御家族にとって大変痛ましいことでございます。改めて御冥福をお祈りし、哀悼の意を表したいと思います。
 なお、先生御指摘の、厳しい訓練とかいじめとか、その象徴として今回の事例があったのではないか、こういう御指摘でございますが、いずれも厳しい教育訓練が原因となったという報告はされておりません。いわゆる個人的な事情によるものと判断いたしております。
 なお、その具体的な個別の自殺の原因とか理由につきましては、亡くなられた隊員の遺族への配慮、またプライバシーの保護の観点から、公表は差し控えたいと思います。
 なお、先ほど長官からも答弁いたしましたように、このような自殺、いろいろな理由があると思いますけれども、これはゆゆしきことでございますので、しっかりと対策をとってまいりたいと思います。具体的には、カウンセリング、メンタルヘルス等の施策を充実してまいりたいというふうに存じております。
今川委員 もちろん、私、自衛隊の中での自殺だけを問題にしているんじゃないんです。今、年間、一般の人たちも何万人という人が自殺をしている、たしか三万人を超えていますよね。そういった意味では、一人一人の自衛官も普通の人間ですから、例えば借金苦であったりとか、いろいろな理由はあると思います。問題なのは、今申し上げたように、組織の中でいじめとかしごきとかということで命を絶つようでは、これはもう家族はもちろん、たまったものではない、そういう気持ちがあるわけです。
 そこで、二点目に、実は、陸上自衛隊の三年前の意識調査では、自衛官の六人に一人が、やはりいじめはある、それから、自殺が頭に浮かんだことがあるという回答をしているそうですね。しかし一方で、そういう自衛官の上官は、上司の厳しい指導をいじめと受け取られたら訓練などできはしないというふうにも言っているというんですね。非常に難しいと思います。ここをどのように対処したらいいのだろう。
 どのようにお考えでしょうか、防衛庁の方は。
赤城副長官 自衛隊という国を守るための組織でございますので、一定の練度、訓練というものは必要でございます。先生御指摘のように、その訓練が個人にとって非常につらいとか、いろいろな受け取り方があろうかと思いますが、それがために自殺に至るというようなことがあってはならないと思います。
 そのために、先ほどちょっと申し上げましたけれども、平成十三年度から、メンタルヘルス施策として、その啓発教育、意識改革を行い、またカウンセリング体制を充実するということで、隊員の方が気軽にといいますか、カウンセリングを受けられて、そういうふうな悩み、ほかにもさまざまな個人的な悩みもあろうと思いますけれども、そういうことを相談できる、そういう体制をとってまいりたいと思います。
 また、隊としましても、防衛庁における隊員の配置につきましても、本人の技能、能力、適性も含めて総合的に勘案して行い、適材適所に人事配置、適正な人事管理を行ってまいりたいというふうに考えております。上官も含めて、こういう問題については、より親身に取り組んでいく、相談に乗っていくということが大事であろうと考えております。
今川委員 そこで、もう一つ、表現は余りよろしくないんですが、いわゆる自殺予備軍、これは安保委員会の中でも政府の方もそのようなお言葉を使われたことがあったと思うのですが、実名は避けますけれども、最近の事例を一つだけ示してみたいと思います。
 これは、九州のある県の部隊に所属している自衛官、昨年の八月、二十五歳のときに、五年間勤めた自衛隊をついていけそうにないということでやめられたんですね。そういうケースは間々あると思うんですね。そうした場合に上司の皆さん方は、わかった、しっかり今度は民間企業なりで頑張りなさいというふうに激励をして出せば何も問題は起こらないはずなんです。この私の今から示すケースは、最初自衛隊に入るときには、高校時代のいわばサッカーの同僚が、自衛隊いいところだよということで、君も一緒に来いと言われて入ったそうです。
 ところが、なかなか、訓練が厳しいだとかいろいろなことがあったのでしょう。昨年の春先に、上司に素直に、どうも自分はついていけそうにないからやめたいと言ったそうです。そうしたら、どうしたことか、富士演習場まではるばる連れていって、例えば、やみ夜にそのA君に対して上司が数人で銃剣を突きつけてこらっとおどしてみたりとか、そういうことが繰り返されたものですから、彼は故郷のお母さんに、僕は殺されそうだと電話で必死に訴えて、どうするのかと思ったら、樹海に逃げ込みたいと言った。お母さんはびっくりして、やっと何とか取り返してきた。
 それで、そのお母さんとはことし夏にお会いしたんですが、いろいろな話を聞いてみますと、それからもう一年たっていますから、無事どこかの民間企業で働いているのですかと聞いたら、涙を浮かべて、実は病院からいわゆる精神統合失調症と判断されてしまった。今、私は善後策をそれぞれ相談をしていますが、そういうことがあったんですね。
 本来あってはならないことが、しかし、現にあっている。いろいろなところで、たくさんあっているとは言いません、少なくとも私が遭遇した一つのケースでそういうことがあった。
 私もこの間似たようなケースにぶち当たってみて、どうも自衛隊の中で、いざというときには国家国民を守らないかぬのに、弱音を吐くのは落ちこぼれといったような、そういう旧軍の体質を引きずったようなものがありはしないのかという疑いを強く持つんです。
 先ほど政府の方から、上司に悩みを相談してほしい、当然そうです。カウンセリングを積極的にやはり活用してほしいと私も思います。しかしながら、上司に悩みを相談する自衛官は全体の一割足らず、現在のカウンセラー制度の利用率もかなり低いと聞いているんですよね。そこら辺をどのように改善したらいいと思われますか。
赤城副長官 ただいまの先生御指摘の銃剣による、やめたいと言ったときにそれをおどかした、こういうふうな御指摘がございましたけれども、上司がやめようとする部下を銃でおどしたというふうな報告は受けておりません。今回、先生からの御指摘を踏まえて、慎重を期す観点から、陸上自衛隊西部方面総監部を通じて各方面、調査をいたしましたが、やはり、上司がやめようとする部下を銃でおどした、こういう事実は確認できませんでした。
 さはさりながら、御指摘のような、上司に相談したところ、逆にそういうふうに迫られるようなことがあってはいけませんし、上司、先輩が親身になって相談に乗る、こういう体制が大事だと思います。先ほど申し上げましたような制度をより充実しながら、特にカウンセリングについても、部内ですとなかなか相談しにくいということもあろうかと思いますので、部外のカウンセラー、階級とか身分とか関係なく相談できるということが大事だと思っておりますので、先生の御指摘も踏まえて、より一層充実してまいりたいと存じます。
今川委員 そこで、この問題に関してはあと一点だけ、これは石破長官に率直に考え方をお聞きしたいと思うんです。
 私の持論として、こういういじめ問題だけじゃないんです。例えば、防衛庁も、装備品の調達をめぐったああいう不祥事も含めて、いつも言っていますのは、スウェーデンとかドイツのような、通称軍事オンブズマン制度みたいな、かなり強力な調査権限を持つような機関を外側に置いておく、国のもとに。そのことで、日本でもそういうものを制度化することによって、自衛隊という組織内の安定を図ってみたり、あるいは国民からもより信頼を高める、そういう効用もあるんだと私は思うんですが、石破長官としての考え方がもしあれば、聞かせてください。
石破国務大臣 現在におきましても、部外有識者による機関の活用はいたしております。
 しかし、外部監察、監察という制度を導入する場合には、さて、外部機関による行政のチェック機能に係る基本的な問題が内在をされておりますので、これは防衛庁に限らず、これをどのように行政の問題として対処すべきかということだと思っています。このことについて、私は何も等閑視をするつもりはございませんで、どうすればいいのかということについてよくよく検討したいと思っています。
 ただ、これは委員、物は相談ですがと言っていいのかどうかわかりませんけれども、さっきからずっと考えているんですが、どうしたらいいんだろうということなんです。委員もお子さんをお育てだと思います。私も子供を育てていて、では、厳しく言えばいいのか。褒めて使えといって褒めてばかりいますと、増長しちゃうことになる。余り厳しくやって思い詰められても大変だということはあります。
 これが私は、旧軍のようないわゆる精神棒のようなもので、本当にしごきというようなことがあっていいとは全く思っていません。あるべきだとは思いません。しかし、いわゆる実力組織、普通の国でいいます軍において、規律はどのような制度で保たれているのか、あるいは使命感は何によって担保されているのか、命をかけて戦うときにそれに報いられるような栄誉があるのか、国民みんながそのことを本当に感謝しているか。私は、人間というのは、ある意味そういうような誇り、パンのみにおいて生きるのにあらずでして、誇りみたいなものもあるんだろうと思う、規律みたいなものもあるんだろうと思う。
 冒頭に、このことは真剣に考えたいと申し上げましたのは、諸外国と比べて、やはり我が国は違う点があるんだろうと思います。本当に我々が、自衛隊というものを国民の皆様方から託されておるわけで、それがきちんとワークするためにはどういうことが一番よいのかという議論、委員は自衛隊のことを一番よく御存じの一人でいらっしゃいますから、どうか議論をさせていただきたい。
 私は、どうすれば国民の信頼にこたえることができるか、そのことにつきまして本当に考えていき、答えを出していって、自殺者が本当に皆無、根絶できるように、そういう体制をつくりたいと思っておりますので、今後とも御教示賜りますようお願いを申し上げます。
今川委員 わかりました。今おっしゃったとおり、例えば三十年、四十年前の若い子たち、それから今の同じ年齢の若い人たちとも、今の社会の基盤、生活の水準が相当違いますから、自衛隊のように、ともに訓練をする、一つの宿舎で生活を一緒にするということも含めまして、共同生活をいきなりするということ自体にもいろいろな意味でやはりなじみにくいとか、難しい問題があろうかと思います。この問題は、今長官がおっしゃったように、今後それはそういった立場を超えて、やはりよりよい方向に、どうしたらいいのかということはぜひお互いに考え、検討していきたいものだと思います。
 さて、大きな二番目に移りますが、これはまず外務省の方にお聞きしますけれども、先ほど赤嶺議員の方も沖縄の基地の問題を触れておられましたが、もう冷戦が終わってから約十二年ほど、いつもこれは申し上げているんですけれども、よく言われる在日米軍基地の整理縮小問題を少し具体的に認識を聞いておきたいと思うんです。
 まず第一点は、私は三年ほど前にアメリカのカリフォルニア州に行きまして、アラメダ、ロングビーチ、サンディエゴ、三大海軍基地を視察に行ったんですけれども、御案内のようにもうサンディエゴしか残っていません。そういう冷戦終結後の米本国の基地の閉鎖なり再編の状況をどのように認識されておるのか。まず、外務省の方からお考えを示してください。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 米国の国内基地の閉鎖縮小状況でございますけれども、一九八八年の会計年度以降、基地の数にいたしまして、米国の国内では約二〇%の米軍施設・区域等の整理縮小を図る方針が国防省の方から出されております。
 ただ、これにつきましては、九五年度をもちましてこの方針は最後とされておりまして、現在、今後の国内基地の統合閉鎖につきましては、二〇〇一年に改正された一九九〇年米軍基地統合閉鎖法によりまして、米国政府といたしまして、二〇〇五年中に新たな基地の統合閉鎖計画を決定するということで、現在検討が行われているというふうに承知いたしております。
今川委員 今御答弁があったように、米国内基地のざっと約二〇%が削減をされているという話でありました。
 同じように、冷戦後この十年余りで、海外基地の変化であります。最近の資料によりますと、九一年から二〇〇〇年までの約十年間に、例えばドイツでは米軍の兵員数が二十四万四千人から六万八千人に激減しています。イギリスでは二万七千人から一万一千人に、それからお隣の韓国でも四万四千人から約四万人といったぐあいに、これは今米軍の兵員の数でありますけれども、その国々の国防費だとか、あるいは装備だとか基地だとか、それ相応に冷戦後に備えて、そうした整理縮小というのが目に見える形で出てきているわけですね。
 ちなみに、海外の基地でありますけれども、基地の閉鎖の状況を見てみますと、アメリカにとって全世界に六百二十八カ所のうち三八%が閉鎖をされている。ドイツでは、冷戦後いろいろなことがありましたので、全体の七割が閉鎖をされる。イギリスで十カ所、韓国でも十カ所、米軍基地が整理をされているわけですね。
 こうした状況のもとで、では、日本にある在日米軍基地は一体どうだろうかということを考えたときに、余りにも、よその海外基地あるいは米国内の基地の整理の状況から比べてみますと、ほとんど変化に乏しい、私はそのように思うんです。
 ある時期、九〇年代の前半でしたが、アメリカのアスピン国防長官が、長官になられる直前にアスピン構想というものを示されたときには、私が非常に注目したのは、第三海兵師団、つまり沖縄の海兵隊は本国に撤収するという構想まで示された時期もあったんですね。そういうぐあいに、ある意味では、国際情勢の変化の中で、米国の財政事情にもよりますけれども、ある面非常に合理的に基地を整理したり、再編成したり、統合したりということを繰り返してきたわけですね。
 そうしますと、我が国にある米軍基地を今、外務省なり防衛施設庁なり、特に外務省の方だと思いますが、この十年余りで、当然アメリカと具体的に協議をしなければなりませんけれども、日本の主体的な、ここら辺はもう閉鎖をしていいだとか、縮小していいだとか、統合していいだとか、そういう計画を検討したことはあるんでしょうか、いかがですか。
海老原政府参考人 米側との間では常に、我が国におきます米軍の兵力構成を含む軍事態勢につきまして協議を継続いたしております。
 地位協定におきましても、不要となった施設・区域についての返還ということも規定されているわけでございまして、その施設・区域の有用性等につきましては常に米側との間で話し合いを行っております。
今川委員 今の御答弁にあるように、米側と緊密に協議をしているということはわかるんです。日米合同委員会の中でも、残念ながら、いつ、どういうテーマで話をしているかということが公開されていませんから、そこはわかりませんけれども、日米で協議をするというのは当たり前です。
 問題なのは、米国政府に対して、沖縄の痛切な訴えがありますように、沖縄だけではありません、厚木の問題も質問がございました。少なくとも北は三沢から南は沖縄に至るまで、在日米軍基地を、米側と協議する前に、冷戦が終わったんだから、終わったら終わったなりに、ここはもう要るはずがないだとか、ここは残さざるを得ないとか、そういう日本としての、日本政府としての主体的な判断、米側に求めるべく、そういう原案を検討したことはないんでしょうかということをお聞きしているわけです。
川口国務大臣 これは、先ほど北米局長が言いましたように、米側とはいろいろな折に話をしているわけですけれども、具体的な例としては、例えばSACOの最終合意というのがあるわけでございます。これについて、もしSACOの合意を実施すれば、これは平成十九年度末を目途にということですけれども、今後沖縄の基地の約二一%が返還をされるということになるわけでございまして、日本の政府としても、この点については非常に重要視をいたして、努力をしているわけでございます。
 それから、国際情勢、いろいろございますけれども、これは冷戦が終わったということでございますが、この効果といいますか影響、この意味合いというのは、世界全部の国が一様に同じであるということではございませんで、委員が御案内のように、特にこの地域においては引き続き不確実性が残っているという状況であるということもございまして、ほかの地域と一概にこの地域を比較するということもまた難しいところがあるということだと思います。
今川委員 もうほとんど時間がないんですが、いわゆるおっしゃったように、当然ヨーロッパ方面とアジアでは状況が違います。しかし、少なくともこの日米安保、日米同盟、在日米軍基地というのは、冷戦が終わるまでは、ソ連を仮想敵国に見立てて、そこに向けた体制をしいていたわけでしょう。だから、対ソ戦略のもとでの在日米軍基地と、例えば今の朝鮮半島であれ台湾海峡であれ、アメリカが持っている地域紛争に対応していく戦略のもとでと、在日米軍基地が同様であっていいはずがないじゃないですか。そこはもっと、米側がどう受けとめるかは別にしまして、日本は日本なりに主体的に検証し、分析し、残すところは残すんだ、しかし、閉鎖をするなり縮小するなりするところはこうするんだという主体的なものがないんじゃないですか。
 例えば、SACO合意とおっしゃいますけれども、あれも、今から七年前にあんな大変な少女暴行事件がなかりせば、あのような形で動いたでしょうか。あの事件があってアメリカも驚き、日本政府も、これは日米同盟にひびが入りかねないということで動いていって、SACO合意ができたわけでしょう。事件がなくてもSACO合意みたいなああいうものができましたか。そのことを私は言いたいんです。
 だから、もっとやはりアジア地域はアジア地域なりに、対象とする戦略なり性格、国際情勢が変わったわけですから、それなりに対ソ戦略をしいておった時代の三沢から沖縄まで、そして冷戦が終わってから朝鮮半島が、この日朝交渉がうまくいけばいいんですけれども、仮にうまくいけばいくほど、日本にとっての不安定要因というのはより減少していくわけでしょう。そうしたら、当然それにふさわしい程度に在日米軍基地を整理していく方が、日米同盟、日米安保に対する国民の信頼性は逆に高まるんじゃないかということを言いたいんです。悪いですけれども、米側から何かあったときに、日本が受けとめていろいろと、いや、そこまではできませんねという程度の交渉しかしていないんじゃないかということを言いたい。
 私は、もっと日本が主体性を持って、在日米軍基地の整理縮小ということを、国際情勢をにらみながらきちっと計画を立ててやっていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
     ――――◇―――――
田並委員長 次に、内閣提出、防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を求めます。石破防衛庁長官。
    ―――――――――――――
 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
石破国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、このたび提出された一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の例に準じて防衛庁職員の給与の改定を行うものであります。
 すなわち、第一点は、一般職の職員の例に準じて防衛参事官等及び自衛官の俸給並びに防衛大学校及び防衛医科大学校の学生の学生手当の改定を行うとともに、営外手当についても改定することといたしております。
 第二点は、自衛官俸給表の陸将、海将及び空将の欄または陸将補、海将補及び空将補の(一)欄の適用を受ける自衛官以外の自衛官に対する調整手当制度について、その充実を図っていくために、当該自衛官に係る調整手当の支給割合を改定することといたしております。
 以上のほか、附則におきまして、施行期日、適用日、俸給表の改定に伴う所要の切りかえ措置等について規定をいたしております。
 なお、事務官等の俸給並びに扶養手当、期末手当及び期末特別手当の支給割合等につきましては、一般職の職員の給与に関する法律の改正によって、一般職の職員と同様の改定が防衛庁職員についても行われることとなります。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
田並委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十九分散会


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