衆議院

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第5号 平成14年11月21日(木曜日)

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平成十四年十一月二十一日(木曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 岩屋  毅君 理事 木村 太郎君
   理事 浜田 靖一君 理事 山口 泰明君
   理事 末松 義規君 理事 渡辺  周君
   理事 田端 正広君 理事 樋高  剛君
      逢沢 一郎君    岩倉 博文君
      臼井日出男君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    杉山 憲夫君
      虎島 和夫君    中山 利生君
      仲村 正治君    野呂田芳成君
      平沢 勝栄君    町村 信孝君
      伊藤 英成君    江崎洋一郎君
      大出  彰君    川端 達夫君
      前原 誠司君    赤松 正雄君
      赤嶺 政賢君    今川 正美君
      粟屋 敏信君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  壷井 俊博君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  入谷  誠君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   天野 之弥君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局労
   災補償部長)       高橋  満君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君
   政府参考人
   (環境省大臣官房審議官) 小野寺 浩君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣参事官壷井俊博君、内閣官房内閣参事官入谷誠君、防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官天野之弥君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長安藤裕康君、厚生労働省労働基準局労災補償部長高橋満君、国土交通省道路局長佐藤信秋君、環境省大臣官房審議官小野寺浩君及び環境省総合環境政策局環境保健部長南川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
田並委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田靖一君。
浜田委員 おはようございます。早朝から御苦労さまでございます。
 長官、本当にその意味では、日本の安全保障、時代は大変動いてまいったわけでありまして、我々の日本の国の防衛というものを考えたときに、勉強すればするほど大変寒いというか、ちょっと心配になるようなことが出てくるわけでありまして、この委員会も同じように、安全保障の考え方というのはいろいろな考え方があると思うんです。そしてまた、各党がそれを議論するということが非常に重要だと思うわけでありまして、田並委員長以下、各党の先生方がいろいろな意見を出し合って、その中でやはり何が足りなくて何を足していったらいいのかというのを議論するというのは大変重要なことだと思いまして、その意味では、この安全保障委員会の存在というのは大変これからも重要なことになると思いますので、ぜひ、この委員会の先生方の努力をまた防衛庁としてもしっかりと受けとめていただいて、今後の安全保障政策に反映していただければなというふうに思うわけであります。
 このところ、基本計画の延長等について、この間も長官から御報告いただいて、いろいろな議論が出ました。そしてまた、今回の延長の前提となっている情勢の認識についても比較的詳細に御説明はいただいたのでありますが、しかしながら、この延長の、計画変更とかそういうことをやはりしっかりと国民の皆さん方にわかりやすい形で示していかなきゃいけないと思います。
 そしてまた、現地の状況というのは一体どうなっているんだ、中には、アフガニスタンでの作戦はもう終わりつつあって、もういいんじゃないかという話もあれば、逆に、アメリカに言われれば何でも派遣して補給を続けるのかというような声もあるわけであります。
 私は、少なからずこの今回の基本計画の延長というものの考え方というのは、確かにアメリカが中心になってやっていますが、人間というのは忘れっぽいものでありまして、去年の九月十一日にテロが起きたときに、アメリカの国民が亡くなったのは事実でありますが、世界各国の犠牲者が出た。特に日本でも犠牲者が出たわけであって、そして、テロ許すまじ、この信念だけはこれは各国共通だよという話で国連でもその議論が行われ、そしてまた、このテロに関してはいろいろな国が参加をしているわけでありますよね。ですから、そういうことも含めて、一回みんなでここはやはり確認しておく必要があるのではないかなというふうに思います。
 そしてまた、一体全体これをやっていることというのは、アメリカがやっていることではなくて、各国が集まっていろいろな作戦行動をしていて、その中心にあるのがアメリカであるということでありますので、とかくアメリカ、アメリカという話が前面に出てきますが、しかしそうではなくて、もしもアメリカとのことだけだったら、日本から本当に出せるのかという話になってしまいますので、そうしますと、そういった認識の上でしっかりと法律をつくって今回出ているということは、やはり確認をしておくべきだろうと思います。
 そしてまた、これは再確認になるのですが、現地の情勢の認識と延長の理由というのをちょっと改めて確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
赤城副長官 委員御指摘のように、九月十一日のテロもアメリカだけの問題ではありませんで、各国被害がありました。また、今回の作戦行動についても各国が参加している、こういう状況でございますので、改めての御説明になるかもしれませんが、現地の今の状況について若干お話をさせていただきたいと思います。
 昨年十月に米軍等によるアフガニスタンの空爆が開始されて、十一月に北部同盟がカブールを制圧、十二月にタリバンがカンダハルを退去して以来ですが、アルカイダやタリバンはパキスタンとの国境付近に広がる辺境地帯に逃走、潜伏し、また陸路や海路を経て脱出をしているという状況で、世界各国においてさらなるテロを引き起こす可能性が指摘されております。現に、昨年の十月のイエメン沖のフランスのタンカー爆破事件とか、インドネシア・バリ島におけるテロなど、アルカイダとの関係が疑われるテロ事件も発生しております。
 こうした中で、米軍等は、まずアフガニスタン国内、国内でありますが、昨年十二月以来、アルカイダやタリバンが逃走、潜伏していると言われるパキスタンの辺境地域と接するアフガニスタン東部山岳地帯を中心に、アルカイダ、タリバンの残存勢力の追跡、掃討、施設捜索による武器弾薬の押収、破壊、アルカイダ、タリバンのメンバーの拘束、尋問によるさらなるテロの阻止等のための情報収集等、アフガニスタンが再びテロの拠点とならないような活動を行っております。
 一方、海上の方でありますけれども、アラビア海等においてアルカイダ、タリバンの残党の海路を経た逃走を阻止し、他国がテロリストの拠点となったり再びテロを起こすことを阻止するための活動を継続的に実施している。
 アフガニスタンの国内でも、また海上においてもこういう活動を継続しておりまして、アメリカのラムズフェルド国防長官は、テロとの闘いはいまだ終結からほど遠い、また、フランクス司令官も、米国は数年間アフガニスタンにいることになるだろう、こういうふうなことを発表、発言しておりまして、テロとの闘いは今後とも継続される、こういう状況にございます。
 そういうことを受けまして、我が国としても、引き続きこういう国際社会の取り組みに積極的、主体的に取り組むということが重要であると考えまして、今般の延長を決定した次第でございます。
浜田委員 ありがとうございました。
 それで、今のお話を聞いていると、アメリカはそういうふうな判断をしているということでありますが、この今の状況の中で、いろいろな国がこの作戦に参加をしているわけでありますけれども、どこか今、日本のような形をとっているかどうかわかりませんが、この作戦の中から抜けた国というのはあるんでしょうか。
赤城副長官 このアフガニスタンの関係につきましては、これまで二十一カ国が派遣をしておりまして、現在のところ抜けたということは聞いておりません。
浜田委員 そういう意味では、ほかの国も日本も同じような考えで、テロというものに対する怒りというのは皆どこの国も持っているわけですよね。それでもって、この問題をこのままにしておいてはいけないという形の中でこの作戦が進められていると思うわけであります。
 ですから、どうもクローズアップするとアメリカが、アメリカがという話になりますが、しかしながらそうではなくて、もう既に御存じのように、今お話にありましたように二十数カ国の国がこれに参加をしていて、同じ思いを持って作戦行動をしているわけでありますので、当然のごとく日本としてもその責任というか、同じ考えであるならばそれなりのしっかりとした義務を果たさなければならないということでありますので、中心になっているのはアメリカでありますけれども、どうもこのところ、国際合意の中でそれが行われているということが少々欠落しているような気がしますので、あえてここで言わせていただいた次第であります。
 そしてまた今後、今回基本計画の延長の中でもいろいろな形で、輸送の話もあればということもあって、今与えられている任務というのがあるわけでありますけれども、よく避けて通って議論があるんですが、誤解をちょっと正しておきたいと思うんです。
 イージス艦というのは一体どんな船なのという話がありまして、まあ護衛艦なんですが、その中で世間に対する誤解というのがちょっとあるのかなと思うんですけれども、何かイージス艦の派遣については、大変これは攻撃的な艦であるので危険だとか、イージス艦を派遣すれば自衛隊が戦争に直接参加することになるというような指摘というか主張する方々がおりまして、私自身はそうは思っていないのであります。
 なぜかというと、それは現場で、インド洋の海域で、大変厳しい環境ですよね。この間も見せていただきましたけれども、生卵をサランラップに入れて置いておいたら目玉焼きになっちゃうとか、そしてまた、これは海洋上でやっているわけですから、いろいろなあらしもあれば、そういう厳しい環境の中で海上自衛隊の隊員たちがなぜそれで出ているか。これはまさに日本の国益なんですね。湾岸戦争のときは、金だけ出して一緒に汗を流していないじゃないかという批判があった。それで、その中で日本の意思として、日本はテロは許さないんだよという意思のもとに、要するに自衛隊員はそれを体現しているわけですよね。
 そうすると、逆に言うと、日本国民の代表として、あそこで国際的な同じ考えを持つ同志がそこで行動しているわけですから、まさに我々にかわって仕事しているというふうに思ってもいいと思うんですが、そこで一番何よりも大切なのは、そういう気持ちを持つということと、我々とすれば彼らの安全というものをやはり十分に確保することが重要だと思うんですね。
 だから、意外とそれを持つことによって使ってしまう、要するに暴発して何かしちゃうといけないんじゃないかという話がありますが、すべていつもその面しか議論がされないんですが、そうではなくて、では、出ていっている人たちにとって武器というのは何なのかといえば、まさに自分たちを守る道具でもあるわけでありますので、そういう意味においてはそこをしっかりと担保してあげる、安全のために。それは当然のごとくそれだけのものを持っている、能力があるわけですから。
 逆に言うと、武器なんていうのはそんなものですよね。使い過ぎれば危ないし、しかしながら自分を守るためには大変重要なものだということになるわけでありますから。そうなれば、持っているならば、要するに最高の安心できるものでその任務についた方がいいと私は思うんですよね。
 議論を聞いていますと、何かそれを出すと、いかにもすぐ戦争になってという話になったり、戦闘に巻き込まれて大変だという話がありますが、我が国は日本国憲法があり、ましてや法律があるわけですね。しっかりとした法律のもとに自衛隊員は行動することになっているわけですよ。
 ですから、それを守らなければ、それはもう自衛隊でも何でもなくなってしまうわけでありますから、そこのところは私は、何か人間を疑うのは、それは自由ですが、しかしながら、やはりそれを信じるという気持ち、そういう気持ちによって自衛隊員は、私は少なくともしっかりと日本の国の安全のために努力してくれているものと確信をしているわけでございます。
 さてそこで、私は、だからといって、アメリカが出せと言うから出すというのは好きじゃないんですね、これは。そうじゃないんですよ。そうじゃなくて、やはり今言ったように、隊員の安全だとか法律の目的達成ということであれば、ぜひこれは議論して、出していくべきだと思うんですよ。イージス艦だから出さない、アメリカから言われたから出すというのじゃないと思うんですね。そうじゃなくて、まさに自分の国の意思としてそういうものを出していく、そして、もってイージス艦に対する誤解も解いていかないといけないと私は思うんですよ。
 ですから、このことについてはいろいろな選択肢があると思いますけれども、今後のイージス艦の派遣についての考え方を大臣にちょっとお伺いしたいなと思います。
石破国務大臣 浜田委員の御指摘は、全くそのとおりなんだろうと私は思います。
 イージスという船がどういう船なのかということをもう一回きちんと私どもも御説明をする必要があるだろうし、御理解をいただく必要があるだろうと思います。
 まさしく名は体をあらわすという話であって、イージスというのは、要はギリシャ神話に出てくるお話で、神々の頭目であるところのゼウスがその娘であるアテナイに盾を与えるわけですよね。矛を与えるわけじゃない、盾を与える。その盾の名前がイージスという名前の盾なわけですね。
 私は、この名前の由来というのはよくここを考えてみる必要があると思っていて、あらゆる邪悪を振り払う盾である、矛ではない、そしてイージス艦という名前がついておるわけであります。それは、空からの脅威に対しても、そしてまた先般もそういう議論をいたしましたが、海からの脅威に対しても、これは遠くまで見える、あるいはそのものが何であるかということを早く識別できる、そういう能力を持った船だと私は理解をいたしております。
 つまり、ウサギが耳が長いように、やはりいつ何が襲ってくるのかということが早くわかれば、それだけ早く危険を回避することができるだろう、そういう能力にすぐれた船だという理解をいたしております。
 そして、従来のといいますか、旧来の護衛艦に積んでおりますリンク11というシステムと、イージスを初めといたします新鋭艦に積んでおりますリンク16、これと、では本質的に何か差がありますかといえば、それは本質的な差はないということなのだろうと思います。
 そして、委員御指摘のように、これは私も長官になる前、浜田委員が小委員長をお務めの自民党の委員会でそのビデオも拝見いたしました。実際にどういうことであるかということ。つまり、外の気温は四十度だ、甲板の気温は七十度だ、その中で六時間並行して同じスピードで走る。少しでもスピードが違ったらホースはちぎれちゃうわけですから、六時間ずっと真っすぐ同じ距離を保ち、同じスピードを保って、外は四十度だ、甲板は七十度だ、その中でそれを六時間続けていくということがどれだけ過酷なことであるか。
 そして、テロのテロたるゆえんは、その兆候が非常にわかりにくいということなんだと思うんです。空からでも海からでも、兆候なしにいきなりやってくるということがテロのテロたるゆえんの一つだろうと。だとするならば、早くその危険が危険なものであるのか、そうでないのかということがわかっておるということは重要なことではないだろうかというふうに考えております。
 そして、六時間ずっと何が襲ってくるかわからないという緊張状態で、憲法によって許された範囲内において法律の目的達成のために自衛官たちは頑張っているわけです。極度の緊張状態、そしてその六時間、ああ何もなかった、よかったということで休もうと思って艦内に入っても、それはそんなところでエアコンのききがいいわけはないので、艦内のベッドでも三十度以上の暑い中で休んでいる。その状況が続いておって、まさしく委員御指摘のように国民の期待にこたえるべく、そして日本国の責任を果たすべくやっておるという実態を考えたときに、さて、イージスというのはどのような船であるのか。
 私は、きのうの記者会見でも申し上げましたが、必要であれば出す、必要でなければ出さない、そして、それはアメリカから言われたから出すというものではなく、日本が主体的に判断をする、主体的な判断に基づいて出す、そういうことだと思います。一にかかってその任務を達成するために必要であれば出す、なければ出さない、そういうことであろうと認識をいたしております。
浜田委員 長官のおっしゃるとおりだと思うわけでありまして、だったら護衛艦とイージスの差というのは一体何なのという話になってしまいます。イージスを出そうが護衛艦を出そうが、そこに意思が備われば、大砲もついていればミサイルもついているわけですから、それは同じぐらいの武器の能力しかないわけであります。だから、あとは目がいい、耳がいいという差しかないわけでありますので、だったら護衛艦もだめだよ、全部だめだよという話になってしまいます。
 だから、能力の比較検討だけで、何かいかにもイージスというのは怖いんですよみたいなイメージがあるんですが、そうじゃないということはぜひ、能力を掲載してあるものがあるわけですから、それを見てもらえればわかると思うんです。それはちょっと払拭したいなという気がしますね。正しい軍事の知識というのはこれから安全保障を議論する上で決して欠かしちゃならぬというふうに思いますので、我々ももっと深く勉強すべきかなと思うわけであります。
 さてそこで、これに関連して、同じことなんですが、今いわゆる弾道ミサイル防衛というのがありますよね。これは日本がアメリカと、アメリカだけじゃないんですが、ほかのところも参加しているんですが、アメリカが中心になっているものに共同研究という形で弾道ミサイル防衛というのをやっておるわけであります。特に大量運搬兵器ということになると、今イラク、北朝鮮が核を持ち、なおかつそういうミサイルを持っているということもありまして、そしてまたこのミサイルの拡散の問題等が大変話題になっているわけであります。
 日本の国にとっては、では、今ミサイルを撃たれたらどうなるのかという議論、これはもうだれもが考えなきゃいけない話だと思うわけでありますけれども、今のそうなっているわけの、ミサイルの拡散の状況というのをちょっと確認だけさせていただけますか。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 弾道ミサイルの拡散の状況でございますが、近年、一部の国で大量破壊兵器、これは核・生物・化学兵器、それから弾道ミサイルなどの運搬手段を含む兵器の取得や開発が顕著な形で進められております。この弾道ミサイルは大量破壊兵器の運搬手段として効果的でありまして、これに対する有効な防御手段というのは今のところ開発されていないという現状にございます。
 それで、この弾道ミサイルの配備は、生起している武力紛争を激化させる危険性が高いものでございます。あるいは、軍事的な対峙が継続している地域の緊張をさらに高め、地域の不安定化をもたらす危険性も高いものでございます。こういう弾道ミサイルは、通常戦力においてまさる国に対する攻撃または威嚇の手段としても利用されるという多様な面を持っているところでございます。
 この弾道ミサイルでございますけれども、これは一九六九年当時、弾道ミサイルを保有する国の数はアメリカとソ連の二カ国に限られていたところでございますが、二十年後の一九八九年ではこれが十五カ国にふえておりまして、さらに十三年後の現在、二〇〇二年でございますが、約四十六カ国が保有する状況になっている、こういうことでございます。
浜田委員 ありがとうございます。
 それだけ日本にとっては今、日本だけじゃなくて結局そういうミサイルを防衛する能力というのは、当然のごとく我が自衛隊にもないわけですね。これは紛れもない事実であって、日本の安全保障、安全保障といいますが、本当にそれでいいのか。本来であればすべてに対処する、テロだとか不審船だとかそれはもう当然のごとく対処するべきものだと思いますけれども、しかしながら、ミサイルという今自分たちの持っていないもの、これを防御するというのは、当然これは考えておかなければいかぬわけでありますので、今研究をしている最中であります。
 しかしながら、きょうちょっと勉強させてもらったら、アメリカというのはもう十数年にわたって八兆円も使って、形は変えてもミサイル防衛というのを考えてきているわけですね。でもって、日本というのはそれに参画をしている。ただ、アメリカの場合は、いろいろなところの防衛の技術研究をしていくと、テンポがすごく速いんですよね。要するに、研究していたと思うとすぐ開発に移って、開発になったらすぐそれを配備というのは、これはテンポアップしていくのがすごく速いので、日本の場合には当然共同研究をしているわけですから、共同して、そこで一回、僕の考えですよ、共同で研究したら研究した段階で開発へ移る、移るときには当然これは確認が必要だと思うんですよね。それじゃないと、よく、そのままどんどん流れ作業で乗っかっていっちゃうんじゃないかというような、アメリカに引っ張られて日本はそのまままた開発してすぐ配備しちゃうんじゃないかみたいな心配をする方がいらっしゃるので、そういうことではないと。
 とにかく一つずつ研究をしました、でも全体の中の、今言った八兆円というものがありますけれども、その中の要するにかけてきたもの、年間では数十億だと思うんですが、数千億かな……(発言する者あり)四千億ですね。そうすると、その中の二百億、研究のときに参加したのはその二百億の金だけでありますけれども、それの中でやっていることというのは、すべて全面的にかかわってやっているんじゃなくて、その一部分だけをやっているだけの話でありますので、誤解されているんですよね。
 話が大きくなっちゃって、何か共同研究といったら、もう一緒になって、日本が中心になってアメリカの大部分に食い込んでやっているような説明しかないんですよ。決してそうじゃないんですよね。大きな開発のあれをやっている中のほんの一部分にすぎないわけですから、当然のごとく日本が開発しようといっても、そこには当然アメリカの開発の力がなければ無理なわけですから、一つずつステップアップしていくものだと私は思っております。
 ぜひこの問題については、やはりしっかりと考えていくべきだと思いますので、長官、大変だとは思いますけれども、一つずつ誤解のないようにクリアしていっていただきたいなと思いますし、今後、このミサイル防衛に関する決意といったらおかしいですけれども、考え方も含めて一言最後にお伺いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
石破国務大臣 これも全く委員御指摘のとおりだと思います。
 要は、ミサイル防衛というのは結局、今の日本もそうですし、アメリカも含めて、どの国も弾道ミサイルに対してきちんと対処できる体制というのは持っていないということが一つ。もう一つは、日本だけがやっているわけじゃない、日本とアメリカだけでやっているわけではなくて、イスラエルのアローというものがある、イタリアやドイツでやっているMEADSというものもある、アメリカが独自にやっている、ボーイング747でブースト・フェーズで撃ち落とすという研究もある、たくさんある中の一つなんですよということを認識しなきゃいかぬということ。
 そして、我々は今研究をやっています。そこから開発に移るときには、それは安全保障会議できちんと決めましょうと。しかし、アメリカにおける研究開発というものと日本における研究開発というものに少しずれがあるのかもしれない。それをアメリカに合わせるということではなくて、日本は日本の納税者のお金でやっておるわけですから、そこは日本の立場というのはきちんと伝える必要があるだろうということだと思っています。
 大事なのは、結局、ミサイル防衛という考え方が、そもそも今まで日本がそういう攻撃を受けなかったのは、それは憲法もあるでしょう、しかし同時に抑止力がきいていたということだと思うんです。核抑止力というのがきいていた。しかし、その抑止力がきかない例えば国家ではない集団であるとか、あるいは冒険主義的な国家であるとか、そういうものがどことは特定するわけではありませんが、そういうものが出たときに抑止力がきかないとしたらどうしますかという議論がもう一つあるでしょう。そして、そもそもこの発想は、そういうものを配備することによってだんだん核を減らしていきましょうよ、そんな核なんか持ったって意味ないんですよという核廃絶への流れとミサイル防衛というのは、最初の発想は一つだったはずなんです。そこのところをどういうふうにして理解するか。
 いろいろな論点はたくさんあります。しかし、これは私個人の理解では、まさしく専守防衛的な、向こうが撃たなければこっちは撃たないんですということ、そして、いわゆる相互確証破壊というような、核の恐怖の中で平和が保たれているということは本当にいいんですかという物事の考え方、そういうことを私どもは議論する必要があるのだろうと思っています。
 いずれにしても、冒頭申し上げましたように、安全保障会議できちんと決める、国民の皆様方の御理解はちゃんといただく。そして、アメリカと日本というのは当然立場が違うのであって、日本は日本の立場をきちんと主張しながら、国民の御理解を得て、今は研究を進めておるところだというふうに認識をいたしておる次第でございます。
浜田委員 終わります。
田並委員長 次に、江崎洋一郎君。
江崎委員 おはようございます。民主党の江崎洋一郎でございます。
 本日は、冒頭、イラク情勢につきまして質問を用意させていただいていたわけでございますが、安倍官房副長官に、私の地元でございます神奈川県の寒川で旧日本軍が遺棄しました化学兵器について、これらの状況につきまして、ちょっとお時間が公務で大変お忙しいと伺っておりますので、冒頭、この化学兵器のお話から御質問をさせていただきたいと思います。
 もう既にこの委員会でも取り上げていただきましたので経緯は概略にさせていただきますが、私の地元でございます神奈川県の寒川町というところで、去る九月二十五日に、不審な物質が入ったビール瓶が割れて異臭が発生した。これは、さがみ縦貫道という国道の建設予定地の中で、地中に埋まっていたビール瓶が割れ、結果として作業員八名の方が皮膚の発疹、かぶれ等の被害に遭いました。その後、防衛庁の化学学校によってこのビール瓶の中身というものを分析していただきました。その結果、ビール瓶の内容物は、びらん剤であるマスタードガスと催涙剤のクロロアセトフェノンと特定されました。
 また、私が地元で聴取したところによりますと、十一月十三日には、国土交通省にも参加いただいて、国、県、町等で構成します、さがみ縦貫道路工事現場において発見された危険物に関する安全対策連絡協議会というものが設置されまして、安全対策に今乗り出していただいているという、まさにその最中でございます。
 また、先週の金曜日十五日には、住民説明会が開催されました。やはり住民の皆さんの関心は、当然のことながら発見されたビール瓶、これはまだ内容物が中に入ったまま保管されております。そして、建設残土。これは、工事中に掘削しているさなか、たまたまビール瓶があって割れてしまったということでございますので、ショベルカーでそのまま残土として別の場所に保管されている状況にございます。
 これらにつきまして、住民の安全確保を第一に処理に当たってほしいという強い要請がございました。また、これに加えまして、今回イペリットガスが発見されたさがみ縦貫道の工事現場以外の場所でも、これら毒ガスがまだ埋まっているのではないかという懸念、これらの声も大きく上がった次第でございます。
 今回発見されたこのさがみ縦貫道の工事現場なのでございますが、旧海軍の相模工廠の跡地でございます。これは戦前、化学兵器をつくっていたというようなことも言われている場所でございまして、やはりそういった関連から、今回このイペリットガスというものも発見された経緯があると感じております。
 この寒川という地区は、富士山がきれいに見える大変風光明媚な地域であるわけでございます。その中で、突如こういった事件が発生したということでございまして、きょう御出席の安倍副長官、また石破大臣、また政府関係者の皆様にお願い申し上げたいんですが、一日も早く原状復帰に努めていただきたいというふうに思っております。
 そこで、安倍副長官にまず御質問でございますが、ちょっと手元に地図がございますが、このピンクの場所が相模工廠の跡地でございます。それで、この黒い点線のところが今回のさがみ縦貫道の工事現場でありますが、この相模工廠の敷地から考えますと、もう本当にほんのわずかなスペース、これが今回たまたま発見されたイペリットガスの発見現場であったわけでございます。こういう全体像を見るに当たって、やはりこの国道用地以外のところにも十分このイペリットガスというものが戦後処理の中で、戦後処理というか戦争が終わった瞬間にいろいろな形で埋められた可能性は否定し得ないと思います。
 これは河原べりなものですから、多くは今工場でございます。しかし、一部住宅地区も入ってございます。そういった意味で、この間の住民説明会の中でも、もし庭先を掘っている中でたまたま知らないうちにこのビール瓶というものにぶつかって、もし被災してしまったら一体どうなるんだろう、そういった別の不安も生まれてまいりました。
 そういう意味で、この相模工廠跡地というところにつきまして今後調査をされる予定が政府としてあるのかどうか、これをまず官房副長官に第一点はお伺いしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 私どもも住民の安全対策を第一に考えておりまして、国土交通省、神奈川県、そして神奈川県警、寒川町で構成する安全対策連絡協議会を現在開催しているところでございます。現場の安全対策につきましては、現在、二十四時間体制の現場管理、化学検知器によるモニタリング等、万全を尽くしているところでございます。
 今後の道路敷地内における危険物の調査及び処理については、関係省庁と連携しつつ、国土交通省において主体的に進めることとしているわけでございます。
 また、御指摘の道路敷地外の調査及び処理についてでございますが、現在行っております道路敷地内における調査結果等を踏まえまして、実施の必要性を含めて、関係省庁等の間で連携を密にして検討していきたいと考えております。
 いずれにいたしましても、住民の皆様方の不安を払拭することに努めていきたい、このように思っております。
江崎委員 ぜひとも調査につきましては、建物が既に建っている地域でございますので、なかなかこの検査というのは難しいとは思います。しかし、例えばこの地区にある住居ないし工場につきまして、今回のビール瓶も地中の一・五メートルの深さのところで見つかったということでございます。そういった意味では、ちょっとした簡単な工事でも十分発見される可能性があるわけでございます。その点を踏まえまして、この地区に当たる方々に対して、例えば掘削作業をする場合には、最寄りの役所に問い合わせをした上で専門家によって手当てをしていただくとか等々、この調査にかかわらず、ほかの手段も含めて御検討いただきたいというふうに思います。
 続きまして、先ほど被災者の方がもう既に出られている、大変御不幸なことでお見舞いを申し上げたいと思うんですが、これらの広い地域にわたって、住民の皆さんもいらっしゃるわけです。今回は、国土交通省さんの国道管理地ということで、国土交通省が中心に、作業に当たって被災された方につきましては工事請負契約に基づいて補償されるというお話でございますが、仮に住民の方が被災をされたら、政府としてどのような対応をとっていただけるのか、官房副長官にお伺いしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 今までの例でございますが、国内において旧日本軍の老朽化化学兵器が発見された場合には、発見された場所、状況等の態様がさまざまであることもあり、その都度、必要に応じ内閣官房を中心に関係省庁連絡会議を開催するなど、関係省庁間で連携して、補償問題等も含めて政府として適切な対応をとって行ってきたところでございます。
 今回の場合は、通常では考えられない物質への対応でございまして、確認に時間を要したところでございますが、今後とも、関係省庁間で連携を密にしつつ、迅速かつ的確な対応を図っていきたいということでございます。今までは適切に、補償等も含めて対応をとってきたわけでございます。必要があれば、当然そういう可能性も排除せずに、迅速な、また適切な対応をしていきたい、こう考えているところでございます。
江崎委員 旧軍の兵器遺棄という問題ではございます。しかし、これは日本がかつてかかわってきた事象でもございますので、ぜひとも政府として前向きな御対応をお願い申し上げまして、安倍官房副長官への御質問は終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、国土交通省さんに、今回の国道建設予定地の中における対応ということでお伺いをしたいと思います。
 現在、現場では、掘削の際に割れたビール瓶が建設残土とともに保管されているのは先ほど申し上げたとおりでございます。残土置き場には、今、周囲に鉄さくをめぐらしまして、横浜国道工事事務所が二十四時間体制で警備をしているということでございますので、とりあえずは人が侵入できないようになっているということでございます。
 しかし、一方で、残土そのものにつきましては現在はむき出しの状態でございまして、残土そのものはマスタードガス、イペリットガスなどにより汚染されたことが間違いない。この汚染された残土が飛散して、農産物や住民に被害を与えないとも限りません。また、残土を通過した雨水が地下に浸透しまして、周辺土壌や河川に影響を及ぼすという心配もございます。
 こういった点から、今回、汚染された建設現場、残土についてはさらに作業を、ビニールシートを張るとか、いろいろな形で土壌汚染を防ぐということも対応として考えられるというふうに聞いておりますが、当面の具体策につきまして、国土交通省の方からお答えをいただきたいと思います。
佐藤政府参考人 さがみ縦貫道路で発見されたビール瓶に入った不審物、先ほど先生御指摘のように、マスタードとクロロアセトフェノン、これにつきまして、十一月十三日に、住民の安全対策などを図るために、国土交通省と神奈川県と神奈川県警、それから寒川町で構成する安全対策連絡会議を開催したところであります。ここを通じていろいろ住民の皆様の不安といった問題についてもお答えしてまいりたいと思いますが、基本的な考え方を申し上げます。
 これまでに発見されたビール瓶そのものにつきましては、分析サンプルを採取した自衛隊の助言も踏まえて、工事現場において厳重に保管いたしまして、二十四時間体制で管理しているところであります。また、寒川南インターチェンジ用地内にある残土の仮置き場は、木さくフェンス及びブルーシートで周囲を囲み、立入禁止の看板を設置し、現在、これも二十四時間体制で現場の安全管理を実施しているところであります。これらの工事現場と残土置き場周辺につきましては、神奈川県警機動隊が十一月十五日に実施した化学検知の結果、異常は認められてはおりません。
 さらに、国土交通省といたしましては、安全対策連絡会議での議論を踏まえて、十一月十六日から継続して化学検知を行うとともに、残土置き場周囲のフェンス設置工事を開始したところであります。
 今後はこれに引き続き、十一月中を目途に、周辺の土壌調査、水質調査、残土置き場内の現地調査、シートによる覆土等を実施する予定にしております。
 今後とも、現地の対策につきましては、住民の方々の安全確保を最優先に考えて、残土置き場周辺の三カ所に掲示板を設置し、危険物の検知結果を毎日三回以上情報を提供するなど、万全を尽くしてまいる所存であります。
江崎委員 この残土というものが今後どのような影響を与えるか、これはまだ未知数でございます。どうか慎重な御対応をお願い申し上げたいというふうに考えております。
 そこで、今回見つかりました化学兵器なのでございますが、これは化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約、いわゆる化学兵器禁止条約ですか、これに抵触するものと思われます。
 そこで、今残土の処理という問題もございましたが、果たしてこの条約の制約にかかってこの残土処理がなかなか進まないとか、住民の方もこの間説明会の中では、実際の現場処理というものが国際条約のもとで行われる作業になっていくのか、あるいは切り離した形で、処理は処理として進めていただけるのか、その辺にも関心が集まっておりました。
 この点につきまして、外務省さんから、条約の上でどのような作業が可能なのか教えていただきたいと思います。
天野政府参考人 今回発見されました不審物の中には、その主成分といたしまして、びらん剤であるマスタードが含まれているものがあると承知しております。このため、この不審物は、化学兵器禁止条約上の老朽化した化学兵器に該当する可能性があります。
 我が国は、化学兵器禁止条約の締約国であります。条約上、老朽化した化学兵器の存在を知った場合には、まず百八十日以内に、化学兵器禁止機関技術事務局というところがありますが、そこに情報を提出することが求められます。次に、我が国から情報提供を受けた技術事務局は、この不審物が老朽化した化学兵器に該当するかを確認するための査察を行います。その後、査察の結果を踏まえまして、条約の規定に従って廃棄が行われますが、廃棄に際して査察が行われることもあり得ます。
 お尋ねの残土の点その他でございますけれども、化学兵器禁止条約上、残土を処理することについての規制はございません。また、査察が行われるまでの間、安全確保のために必要な措置をとることは可能でございます。したがいまして、現場保存のためにさわってはいけないとか、そういうことはございません。
 外務省としては、今後とも、関係省庁と緊密に連絡調整して、今回の事態に関する十分な情報を得た段階で、条約上必要な手続を速やかに進めていきたいと思っております。
江崎委員 外務省の方にもう一つ御質問なんですが、内容物がまだ残っていますビール瓶についても、これは分解措置というのは国際条約の上では先に進めることは可能なんですか。
天野政府参考人 原則的には申告をした後なんですが、緊急の必要がある場合には可能でございます。また、安全上の措置をとることは可能でございます。
江崎委員 そこで、国土交通省さんにお伺いしたいんですが、今、条約の制約なく作業が前へ進められるということでございます。今後の具体的なこの残土処理、安全処理も含めて、どのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
佐藤政府参考人 道路敷地内の残土を含む危険物の調査及び処理につきましては、関係省庁と連携しながら、国土交通省において主体的に進めてまいりたいと思っております。
 具体的には、残土置き場内の現地調査の結果、残土上にビール瓶等不審物があれば、これを搬出して適切に管理するとともに、速やかに内容物の分析を行い、その結果を踏まえ、外務省に対し化学兵器禁止機関への情報提供の要請を行う予定としております。また、化学分野等の有識者から構成される検討委員会を早急に立ち上げて、残土の掘り起こしや道路敷地内の未掘削地の調査、危険物の処理計画の作成など、過去の類似事例への対応を参考にしつつ、道路敷地内の具体的な調査及び処理を進めてまいる所存であります。
 今回は、通常では考えられない物質への対応であって確認に時間を要したところでありますが、今後とも関係省庁間で連携を密にしつつ、適切な対応を図ってまいる所存でございます。
江崎委員 ぜひとも安全確認の上で処理を進めていただきたいと思います。
 また、先ほどちょっとビール瓶が出てきたというところは、この道路工事の既に掘削した土の中以外の周辺でも発見されているというふうにも聞いております。また、今、地中からビール瓶が半分顔を出して、まだそういう状態で保存されているものもあるやに伺っております。そういった意味で、今回掘削したところ以外の敷地についても十分な調査をお願いしたいと思う次第でございます。
 次に、本件にかかわる件で、防衛庁として、特に自衛隊の出動につきまして、一つ私個人としての疑問がございました。石破長官にもぜひお伺いしたいと思うんです。
 今回、いわゆる道路工事現場から不審物が出てきたということで、自衛隊の出動に関しては極めて制約があったように思います。今回の事象が小規模かつ緊急性に乏しい災害ということで、災害出動になじまなかったという問題もあろうかと思います。
 その後、自衛隊には大変な御協力をいただいているわけでございますが、一つ私が疑問に思いましたのは、自衛隊法の中に、附則十四「自衛隊は、当分の間、長官の命を受け、陸上において発見された不発弾その他の火薬類の除去及び処理を行うことができる。」とございますが、こういった遺棄された化学兵器については対象になっておりません。今回、そういったことも制約になって出動が制約されたということもあるのではないかなというふうに私自身は考えております。
 今、これからも、こういった遺棄された化学兵器のみならずテロ対策ということも踏まえて考えたときに、外部からサリンなりイペリットガスというものが持ち込まれる可能性もあるわけでございます。そういったときに、臨機応変に自衛隊が出動していただくというのは重要なことではないかと認識しております。
 その点で、例えば、この火薬類というところに等を入れるとか、あるいは火薬類を化学兵器と置きかえる等々、もう少し幅を広げるというのも一案ではないかなと考えておりますが、防衛庁長官、いかがでございましょうか。御意見をいただければと思います。
赤城副長官 私からお答えさせていただきます。
 委員御指摘のように、今回の対応につきまして、まず防衛庁の能力でありますけれども、化学兵器、化学剤に対しては、その検知や防護、汚染された機材等の除染に係る能力を有しております。なお、廃棄とか最終処理の能力は保有しておりませんけれども、そういう能力を持っておりますので、委員から御指摘ありましたように今回の件につきましても、官庁間協力で専門的知見を有する自衛隊の隊員を派遣しましてその検知、分析を行う、こういうことで、照会のありました剤についての鑑定を行ったということであります。
 また、災害が発生した、被害が発生した場合につきましては、八十三条の規定に基づいて、災害派遣で被災者の援助、被害の拡大防止等を行える、こういうことでございます。この災害派遣は、原則として知事等からの要請によって行うわけですけれども、その要請を待ついとまがないときに、緊急を要する場合には、要請を待たずに派遣できる、こういうふうな枠組みでこれまでも対応しております。
 御指摘のように、法改正が必要かどうかという点につきましては、関係省庁とも連携しながら、こういう枠組みで対応してまいりたい、こういうふうに考えてございます。
江崎委員 防衛庁長官は、自衛隊の任務ということに対しまして大変見識の深い方だというふうに存じております。どうかこの点につきまして、今後十分な検討をお願い申し上げたいと思います。
 また、先ほど来副長官からございましたが、化学兵器の廃棄処分につきましては、自衛隊の本源的な任務ではなかろうと思います。しかし、国全体として考えた場合に、先ほど申しましたとおり、外部からテロ等によりまして、これら化学兵器、物質が持ち込まれる可能性もあるわけでございます。これらを国内の何らかの施設が処理できるという状態は、恒常的に持っている必要があるのではないかというふうに考えます。
 今回の件に関しましても、民間に委託するということで解決をする、化学兵器の中和作業ということにつきまして民間に委託するということではございますが、民間も今大変景気が厳しく、これらの事業についていつも受け入れられる体制があるかどうか、また量的な問題で、相当量の化学兵器が発見された場合に、民間がすべてそれらを請け負えるかどうかという疑問もあるわけでございます。
 国として、自衛隊が持つかどうかは議論のあるところだと思いますが、どこかの部署がこういった化学兵器の処理施設というものも持っている必要があるのではないかと私は思いますが、今後、またその点につきましても御検討いただきたいというふうに考える次第でございます。
 次に、今回、国土交通省さんが中心となりまして、この事案に関しましては、大変御苦労の中、今、うまく円滑に省庁間の連携をとって対策に当たっていただいているわけでございます。
 しかし、発見されてから、また分析結果が出てから相当数の時間がやはりかかってしまった。大変まれな事象であるという先ほど参考人からの御意見もございましたが、私が考えますのは、やはりこういった非常事態に対しても、いつも受け皿となるべき体制というのは必要ではないかというふうに考えております。
 備えあれば憂いなしと申しますが、そういった意味で、政府がどこか受け皿となって、省庁間で、例えば自衛隊の出動要請に対してはこういう手法でやればいい、あるいは外務省に対して、OPCWへの報告というのがあるから、こういう手続も踏まなきゃいかぬとか、あるいは警察、消防への出動要請、あるいは各自治体への連絡体制等々、既にこの事例も三件目、四件目ということでございますので、ある程度のノウハウは蓄積されていると思います。
 それを、発見されたたびに主管官庁が一から勉強してスタートするというよりは、政府にあらかじめ準備があって、その中で、主管官庁がどこになるかは別にしても、ノウハウはきちっと伝授するというような仕組みが必要ではないかなというふうに思っております。そのために常設の会議体を用意しておいた方がいいというレベルの話ではなく、ノウハウをどこかで保存してきちっと開陳できる、そういうような仕組みというのは重要ではないかと思います。
 この点につきまして、現在、内閣官房が、過去の屈斜路湖の件あるいは最近の福岡の件を含めて、御経験が豊富かと思います。こういった準備が必要ではないかという私の意見ではございますが、どのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
壷井政府参考人 お答えいたします。
 まず、国内におきまして旧日本軍の老朽化化学兵器が発見された場合には、これまで発見された場所、状況等の態様がさまざまでありましたので、その都度、必要に応じ、内閣官房を中心に関係省庁連絡会議を開催するなど、関係省庁間で連携して、政府としての適切な対応を行ってきているところでございます。
 先ほども御説明ありましたが、今回は通常では考えられない物質への対応ということもありまして、確認に時間を要したところでございますが、今後とも関係省庁間で連携を密にしつつ、迅速かつ的確な対応を図ってまいりたいと考えております。また、今後の処理等に当たりましては、御指摘のように、過去の類似事例への対応が有効に活用されるよう一層配意してまいりたいと考えているところでございます。
江崎委員 ぜひともこういったノウハウ、大変重要なことではないかと思います。きちっと政府のしかるべき部署が蓄積をして、次の、あってはならないんですけれども、主管官庁にきちっと伝えられるような、そういう仕組みを用意していただきたいというふうに思う次第でございます。
 ちょっともう時間もございませんので、この事案については終わらせていただきまして、最後にイラク情勢につきまして一点だけ質問させていただきます。
 十一月八日に採択された国連安保理決議によりまして、イラクが査察を受け入れるということで、十八日に既にバグダッド入りした先遣隊も、二十七日から早速再開する予定ということでございます。
 今回の査察の目的は、先ほども副長官からもございましたが、イラクが保有していると見られる大量破壊兵器、核、化学兵器、生物兵器、弾道ミサイルの廃棄ということが目的かと思います。イラクは過去に、イラン・イラク戦争の際に、イラン軍に対して、あるいは国内のクルド人に対しても化学兵器を使用しまして、大量殺りくを図っているわけでございます。日本国政府としては、イラクの大量破壊兵器の脅威についてどのような認識を持たれているのか、最後一点、お伺いしたいと思います。
赤城副長官 委員御指摘のように、イラクは過去、自国民に対して化学兵器を使用したことがありますし、また安保理の決議で、大量破壊兵器、核・生物・化学兵器やミサイル、こうしたものを廃棄する、こういうことで査察が入ったわけでありますけれども、一九九八年以降、これを拒否して査察が行われていない。そういうふうな経過を踏まえて、今般のこのUNMOVICの査察を受け入れ、こういうようなことになっているわけでありまして、先般イギリスの政府が公表した資料におきましても、「イラクの大量破壊兵器」、いわゆる証拠文書の中でも、生物化学兵器については、イラクは種々の化学生物剤の製造を現在も継続しているとし、イラク軍は命令から四十五分以内に生物化学兵器を配備することが可能である、こういうふうな指摘もございます。
 いずれにいたしましても、現在、この査察を受け入れてこの疑惑を払拭する、こういうことが大事だと考えておりまして、我が国を含む国際社会が協力してこの問題に取り組んでいくということが重要であると考えております。
江崎委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
田並委員長 次に、末松義規君。
末松委員 民主党の末松でございます。
 きょうは、イラク問題を中心に審議をさせていただきたいと思います。
 今、特措法の延長問題にも関連して、私はこの審議をさせていただきたいと思いますが、一番、イラクとの関係で日本の関与がポイントになるのは、特に特措法との関係でポイントとなるのが、イラクと、特にアフガン、アルカーイダとか、あるいはターリバンとか、そういったいわゆる九・一一という事件を起こしたテロリストとの関連でございます。
 そこで、外務省の方はイラクとこういったテロリストの関係を、あるいはテロとの関係をどういうふうに認識しておられるか、それをまず外務大臣にお伺いいたします。
川口国務大臣 テロ一般の関係の御質問と今承りましたけれども……(末松委員「いえいえ、九・一一。じゃ、二つ下さい。一般とその九・一一」と呼ぶ)
 まず九・一一との関係で申し上げますと、これはアルカーイダのテロということでございますけれども、今イラクの北方にアフガニスタンから逃れてきたアルカーイダのテロ分子がいるというふうに言われております。それでは総合的に、組織的にイラク政府がアルカーイダと関係を持っているかという点については、これは我が国がこれまで主体的に集めた情報から考えましても、イラク政府が組織的にアルカーイダの分子を支援してきた、そういう事実については、接していない、そういうふうには考えていないということでございます。
 いずれにいたしましても、我が国としては、今後これについても情報を集めていきたいと思っています。
 それからテロ一般、アルカーイダ以外のテロということでございますけれども、これは、アメリカが欺瞞と反抗の十年というものをつくりましたけれども、それによりますと、イラクは、テロの支援及びイラク国内でのテロ組織の活動内容、活動の容認をイラク政府が引き続き行っているということを指摘しています。例えば、例を挙げますと、ムジャヒディン・ハルク、パレスチナ解放戦線、アブ・ニダール派等のパレスチナ組織の事務所が存在をして、イラクの国内で活動している。それから、九三年にイラクの情報部によるクウェート首長及びブッシュ元米大統領の暗殺未遂があった、そしてパレスチナ自爆テロ、テロ犯の遺族への奨励金を出している等々のことが挙げられているわけでございます。
末松委員 イラクのテロ、一般的に今お話をいただきました。アメリカは、「欺まんと抵抗の十年」ですか、そこで書いてある、確かに私も見ました。九・一一との関係で、そこにアメリカ政府も九・一一との関係で、イラクとこのテロが関係しているとは書いてありませんでしたよね。これは別に大臣じゃなくても結構ですけれども。
安藤政府参考人 アメリカが作成いたしました欺瞞と反抗の十年の中には、今大臣がお答えした内容のことが書かれているだけでございます。
 ただ、そのほかに、ブッシュ大統領やライス大統領補佐官がいろいろな場で発言をしておりまして、その発言を一部引用させていただきますと、例えばブッシュ大統領は九月二十四日の演説の中で、イラクのフセイン大統領とアルカイーダ・ネットワークが緊密な関係にあり、彼らの連携は脅威であるとか、ライス大統領補佐官は、長年にわたりアルカイーダとイラク高官の間で接触があったことを明確につかんでいるというような発言はしておられます。
末松委員 そうしますと、今我が国が主体的に調べたところでは、アメリカのそういったライスさんやあるいはブッシュ大統領が、アルカーイダと緊密な連絡をとっているというようなことは、ないと判断しているということでございますね。
安藤政府参考人 先ほど大臣からもお答えいたしましたように、私ども日本といたしましては、現時点でイラク政府が組織的にアルカイーダを支援してきたということの確たる証拠は有しておりません。
末松委員 私が今いろいろと調べた情報でも、特にクルド人、あそこはイラクの北部のクルド人が特に、例えばアンサール・アル・イスラームとかいう人間を中心に、イスラム法学の勉強の関係で同窓生ということでアルカーイダの幹部とつき合いがあった、そういったところでアルカーイダが敗走してそちらにかくまわれているとか、そういったことは確かに事実関係であるようでございますが、この人物もイラク政府とは非常に関係がよくないということで、そういった意味で、私自身も、イラクとアルカーイダとの関係が緊密に連絡をとっているというアメリカの主張、これには根拠はない、デマゴーグであるというふうに認識せざるを得ないと考えているわけであります。
 そういった意味で外務省の認識と一致しているわけでありますが、そうすると、これは特措法に関連をするテロとの関係がないという判断ですから、この特措法が適用されるということは、イラクについてはないなという私は感じがするんですけれども、その認識でよろしいですよね。
川口国務大臣 特措法は、目的に書いてありますように、その九月十一日のテロからの脅威に対応するために活動している外国の軍隊を支援するということでございまして、したがいまして、イラクとの関係でこれがどうかという御質問ですけれども、特措法は特措法の目的に照らして適切に運用をすべきであるというふうに考えております。
末松委員 私が申し上げているのは、今アメリカが対イラク攻撃ということで準備をしている。準備をしていることで、要するに、今、国連で決議が、一四四一が出されて、それでスケジュールが一つ一つ、戦争回避ということを含めて今国際的な協力がなされているわけですけれども、そのアメリカが、ブッシュさんは非常に好戦的に言われるんですけれども、対イラク攻撃、不幸にも対イラク攻撃があるとした場合に、そこでアフガンにおけるこのアルカーイダとかあるいはターリバンとの関係が、つまり、ないと。
 私が申し上げたいのは、この対イラク攻撃という課題、テーマは、このアフガンにおける九・一一に関連したアルカーイダとそれからターリバンとか、そういった九・一一の事件を起こしたと言われる、そういった事件の性質のものとは違うものだということを私は認識するわけですけれども、その認識についていかがお考えになりますか。
川口国務大臣 テロ特措法につきまして、その目的は先ほど申し上げたとおりであるわけです。そして、イラクにおけるアルカーイダのテロ分子がどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、我が国が主体的に集めた情報を総合的に考えても、イラク政府が組織的にアルカーイダを支援してきたという証拠には接していないということを先ほど申し上げたわけでございますけれども。
 そして、今一般論として申し上げれば、テロ特措法に基づく活動というのは、先ほど申し上げたような、九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることによって国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等に対して行うものである、そして、この法律に基づく今後の活動については、このような原則に基づいて我が国として主体的に判断をしていくというのが我が国の立場であるということです。
末松委員 ということは、このイラクの攻撃ということに接する場合には、一言で言ってください、ちょっとこれは国民に対して言っているので、読み上げて言うんじゃなくて、対イラク攻撃というものは九・一一から問題とされたテロという問題とは別の性質ですよねと、そこを私は確認したいんですよ。それ、言っていただけますか。
川口国務大臣 ですから、現時点では、我々としては、イラク政府がアルカーイダのテロ組織を組織的に支援しているという事実、事実といいますかそういう証拠には接していない、これは我が国が総合的に、我が国が主体的に集めた情報によればということですけれども、そういうことだということを申し上げているわけです。現時点においてはそうだということを申し上げているということです。
末松委員 だから、そのイラクの攻撃との関連を私は問うているんですよ。そこを言ってくださいよ。
川口国務大臣 ですから、テロ特措法の目的はそういうことであって、我が国としては今の時点では、我が国が主体的に集めた情報を総合しても、イラク政府が組織的にアルカーイダの組織を支援している、そういう証拠には接していないということを申し上げているわけでございます。
末松委員 ということでいえば、私自身は、その主体的に集めた情報による判断によって、アメリカが今イラクに対して攻撃ということをちらつかせながら言っているということは、これは国連決議、たび重なる国連決議違反だということをもってアメリカは攻撃の意図をちらつかせながら主張しているというふうに考えておりますが、その判断、日本政府の今現時点での判断は、そういう私の認識でよろしいんでしょうか。大臣、お願いします。
川口国務大臣 アメリカが攻撃をするかどうかということについては、今何も決めていないということをアメリカは言っているわけでございまして、それを予測して、今の時点で国連決議との関連でどうかということを議論するということは難しいと思います。
末松委員 私は気をつけて言っているんですよ。アメリカが何も攻撃するとは言っていないんですよ。
 アメリカが、ブッシュさんが攻撃をちらつかせながら、今、イラクに対して決議を守れ、守らなければ重大な結果になると。そしてさらに、ブッシュさんの演説によると、私も読みましたよ、そのブッシュさんの演説を。そうしたら、政権交代というものが望ましいということまで言っているわけですよ。それに対して実力行使も辞さないと。さらに、アメリカの上下両院の対イラク攻撃の武力行使の容認決議まで行っているわけですよ。それに対して、これは九・一一に起因するテロ問題というよりは、国連決議のたび重なるイラクによる違反だ、その位置づけで今アメリカはやろうとしているんでしょう、その私の認識についてどうですかと。あなたの認識を言ってください。
川口国務大臣 いずれにいたしましても、今大事なことは、イラクがこの決議を守っていくということであるわけですね。それで、国際社会が安保理で決議をして、そして最大の圧力を今イラクにかけている、そういうことであるわけです。アメリカがイラクに対して戦争をするということを決めたわけではないわけで、したがって、委員がおっしゃるように、それをするときには国連の決議との関係でどうだからそれをするというようなことは、まさに、戦争することを前提に動機を予測しているということであると思います。
 いずれにしても、これは非常に一般論ですけれども、米国がイラクということではなく、仮に一般論として申し上げれば、戦争をするということがあった場合には、当然に国際法に従ってこれを行うということだと考えております。
末松委員 ちょっと言っていることがわからない。何かわからないんだな。
 私のさっきの質問に答えてくれませんか。私は、アメリカのそういった動きについて、どう認識しているのかということを問うているわけですよ。それで、私の認識を述べたわけですよ。テロというよりもこれはイラクのたび重なる決議違反、これに対してアメリカは行動を起こそうとしているんでしょう、これについてどうですか、あなたの認識はどうですかと問うているのに、何でそんなに逃げるんですか。ちゃんと答えてくださいよ、大臣。
川口国務大臣 アメリカは戦争するということを決めているわけではない。したがって、戦争を仮にアメリカがするということを考えたときに、どういうことが動機になるかということについて、私の立場から申し上げることはできない。
 ただ、イラクが違反をしたという、今までのたび重なる決議に違反をしているわけですけれども、これにはさまざまなこと、大量破壊兵器のこともあればクルドの抑圧の話もあればテロの話も入っている、いろいろなことが入っている、そういうことだと思います。
末松委員 ちょっと委員長に申し上げたいのですが、私は、アメリカが攻撃するどうのこうの、これを言っているわけじゃないのですよ。今、アメリカの一連の行動を見たら、確かに攻撃の方向に向かっているのは私は事実だと思うのです。その認識について外務大臣のお答えを求めているわけですけれども、これについて外務大臣は、私がわかるように言っていただけないのですが、そこをちょっと委員長から御指摘いただいて、再度、私は答弁を求めたいと思います。
田並委員長 大臣、質問の要旨は、アメリカが、武力攻撃はしていないけれども、今その備えをしている、これはたび重なる国連決議にイラクが違反をしている、この積み重ねの中でそれが行われようとしているのですかと、こういう問いのようです。
 ということですか。
末松委員 そうです。それに答えてくださいということを言っているだけです。
田並委員長 いいですか。何かありますか。ちょっと待って。
 外務省海老原北米局長。
海老原政府参考人 申しわけありませんけれども、私からちょっと事実関係を補足させていただきたいと思いますけれども。
 確かに、末松委員がおっしゃったように、米国は、ブッシュ大統領以下、相当いろいろな形で強い言葉を使っているということは事実だと思います。それをもって末松委員は、武力攻撃をちらつかせているというふうにおっしゃったのだろうと思います。
 ただ、他方、八日のあの演説におきましてもブッシュ大統領は、米国が判断するのはイラクが安保理決議に従っているか否かの一点のみであるというふうに述べておりますし、イラクがすべての安保理決議に従うことを期待するというふうにも述べております。
 これは、いろいろと強い言葉を使っておりますけれども、私も末松委員も御一緒に九一年のときの湾岸危機をともに対処させていただきましたけれども、あのときも安保理決議を何とか守らせようということでアメリカも相当強いことを言っていたということを考えても、何とかイラクに安保理決議をのませようということで、いわば強い言葉で圧力をかけているというふうに、私はあのときの経験からしても、そういうふうに理解をいたしております。
末松委員 あのころを私も思い出すわけですが、当時は海老原課長といわれたときに、そう、安保理決議を守ってほしいねと言いつつも、アメリカはやるよねと二人でお話ししたことも事実でしょう。
 いいですか。私は別に、外務大臣に、アメリカの攻撃を前提としたことを言っているんじゃないんです。私が言いたいのは、これは九月十一日のあのテロに関係した形でのアメリカの行動ではない。つまり、これはイラクへの攻撃を前提とした、まあ前提とするかどうか、先ほどの私の言葉に即せば、ちらつかせながらやってきたこの行動は、九月十一日のあのテロに起因するものではなくて、これは安保理の決議違反に対する制裁という意味で今アメリカは一連の行動をとっているんですねという、その認識を問うているだけですよ。あなた、それには答えてくださいよ。
川口国務大臣 戦争にすることをちらつかせているかどうか、これは、大事なことは、今国際社会が圧力をかけるということだと思っております。
 その上で、それがテロではなくて国連の決議に違反をしたことかという御質問ですけれども、先ほど申し上げましたように、国連のイラクが違反をしたたび重なる決議の中には、テロの話も入っているということでございます。ですから、テロか国連の決議違反か、そういう分け方ということで、そのどちらだというふうに申し上げるというのは難しいと思います。
 争点になっているのが国連の決議であるということはそのとおりですけれども、その中には、先ほど言いましたように、テロも入っていればクルド民族の抑圧の話も入っていればいろいろなことが入っている、そういうことです。
末松委員 そうしたら、決議の中にテロについて入っている、クルド民族に対する圧制ですか、そういうことも入っている、そういうことが主要なんですか。
 このテロの部分というのは国連決議、どういうふうに書かれているんですか。これは政府参考人で結構ですが。
西田政府参考人 お答えを申し上げます。
 今大臣から累次御答弁のとおり、今回の、国際社会がイラクに対して強化された査察をもって要求をしておりますのは、主として大量破壊兵器の廃棄ということでございます。
 しかしながら、同時に、これまでの非常に多数に上ります国連決議というものに対して一貫してこれを妨害ないし違反してきたということも言及をされておるわけでございまして、今の御質問に具体的に答えますれば、例えば決議六八七、これは九一年のものでございますが、その中におきまして大量破壊兵器計画の完全な開示等々を求めるとともに、テロ支援の停止及びイラク国内でのテロ組織の活動の阻止ということについても言及がございます。
末松委員 どうもこれ以上詰めてもなかなか答弁が出てきませんけれども、要は、本当に主要なことは、この大量破壊兵器等、これがアメリカの、あるいは国際社会の脅威になるということを理由にアメリカが強力に推進しているというのが私は現状であろうと思います。
 次に、さらに外務省の認識を問います。
 十一月七日に外務省の総合政策局の総務課長名でペーパーをいただいています。これは外務省で作成した資料を私のところに届けていただくという、ありがたいことでございました。それは感謝しております。
 ただ、その中で、イラク問題について、「以下の点が重要と考えておりますので、御参考として頂ければ幸いです。」というふうに書かれています。ここまでは非常に丁寧だなと思うわけですけれども、そこで三点書かれてございまして、一点目が、「イラク問題は、「ブッシュ対フセイン」という米・イラク二国間の問題ではなく、「国際社会対大量破壊兵器を有するイラク」の問題であること。」二点目は、「イラクの大量破壊兵器の問題は、「悪の枢軸」発言以降生じた問題ではなく、イラクのクウェイト侵攻以来十年以上続いている問題であること。」三点目は、「この件は、米国の軍事行動の善悪の問題ではなく、イラクによる安保理決議履行の確保の問題、ひいては国連自身の権威に関わる問題であること。」こういうふうに書いてあるわけなんですが、このことは、以下の点が重要だと言われているということは、これは外務省の中でそういった認識があるんだろうと思うんですが、大臣はこの点については知っておられますか。
川口国務大臣 問題の立て方、問題の把握の仕方という意味では、そういうことだと思います。
末松委員 そうすると、問題の立て方あるいは考え方として、これは外務省の中で共通認識だということでよろしいわけですね。再度確認しますが。
川口国務大臣 外務省の中の共通認識と言われると、何をもって共通認識かと思いますけれども、私はそう思っております。
末松委員 今の言葉で言えば、当然、外務大臣の言葉が外務省の認識になるわけですよ。それ以外にあり得ますかね。
 それは詰めてもしようがない問題ですから、具体的にお話を申し上げますが、まず、国際社会対大量破壊兵器を有するイラクの問題である、これはブッシュ対フセインという二国間対立じゃないんだ、イラク対国際社会だということを強調して言っておられるんだろうと思います。「大量破壊兵器を有する」とわざわざ書いてあるんですけれども、イラクの場合、今イラクと大量破壊兵器というのはどういう関係になっていますか。極めて簡単に、これは政府参考人で結構ですから、簡単におっしゃってください。
安藤政府参考人 イラクと大量破壊兵器の関係でございますけれども、まさに九八年以来、四年近くにわたって国連による査察を全くイラクは受け入れていないわけでございますので、したがいまして、現時点でイラクの大量破壊兵器関連活動の現状というのは不明だというふうに申し上げるしかございません。
 ただ、国連のイラク特別委員会が九九年に安保理に提出した報告によりますと、イラクは、三・九トンのVXガスを製造し、そのうち一・五トンを廃棄したというふうに主張しておりますが、残量については説明がない、また、イラクがVXガスの兵器化を行っていたことを裏づける証拠が査察によって発見されていたというような問題点が指摘されているわけでございます。
 それからまた、最近、アメリカのCIA及びイギリス政府が発表した文書というものがございまして、この文書によりますと、イラクがサダム・フセイン政権のもとでどのように化学生物兵器を開発し、周辺諸国を攻撃するためにミサイルを入手、開発し、核兵器の開発を執拗に試みてきたかということが記載されているわけでございまして、我が国といたしましても、こういうような国際社会のイラクに対する懸念を共有しているわけでございます。
末松委員 私もいろいろと話を聞いてきたんですけれども、四年間査察が行われていないという部分、これについては、確かに、それからどうなったのかというのは必ずしもよくわからないところがありますけれども、例えばミサイルの開発ということで見てみますと、決議六八七でいう百五十キロメートルを超えるタイプのミサイルというのはソ連のスカッドが中心で、八百数十発を購入したレコードが、記録があるわけですけれども、これがほとんど使われて、しかも、UNSCOMで四十八発をみずから検証しながら爆破を、破壊をしているという状況であります。ですから、ミサイルについてはほとんどない。アメリカ、イギリスなんかは二、三十発残っているだろうということで、今この調査が行われているようでございます。
 さらに、例えば、六百五十キロと遠方に飛ばせるというようなミサイルを残っているスカッドでやろうとすれば、給油の時間に大体四十分から六十分ぐらいかかるということで、あれはミサイルを立ててから給油しなきゃいけませんので、その間にすぐにわかって破壊をされるということで、私が何を申し上げたいかというと、この四年間に、国連の制裁ほぼ十年近くなるわけですが、この中で、軍需的なミサイルを輸入した記録もないし、みずから短距離百五十キロ以内を長距離に延ばす技術はあっても、これはなかなか物資等によってできないということであります。私が正直言ってわからないのは、地域の大きな脅威になるといった場合に、例えば、先ほど局長の言われた生物兵器それから化学兵器、これは確かによくわからないところがあります。
 それは本当に解明されていないので、私自身もよくわからないところがあるんですけれども、そうであっても、国際的にそういった兵器を使って脅威を及ぼすためには、やはり運搬手段が要ります。運搬手段はほとんどミサイルしかない状況だと思うんですね。
 そうすると、イラクと大量破壊兵器との関係で、核問題については濃縮工場とかそういったものが、大体これはすぐに確認されるし、大規模なものですからそれはわかりやすいということだろうと思います。こう見てきますと、どうも本当に国際社会にイラクが強烈な脅威を及ぼしているのか、私は正直言ってそこを自分自身で判断できないんですが、外務省そのものはどういうふうに判断されていますか。
安藤政府参考人 ただいま委員御指摘の、例えばミサイルの件でございますけれども、ちょっと私が先ほど引用いたしましたイラクに関する英国の証拠文書というものがございまして、これは九月の二十四日に発表されております。
 これによりますと、「射程距離六百五十キロで、化学・生物弾頭を搭載できるアル・フサイン・ミサイルを最大で二十発所有している。」それから、「アル・サムード液体燃料ミサイルの配備を開始しており、兵器査察官の不在を利用して、その射程距離を国連が課している百五十キロという制限を超えて、少なくとも二百キロにまで延ばす作業を行なっている。」「固形燃料アバビル一〇〇の製造を開始しており、その射程距離を国連が課している百五十キロの制限を超えて、少なくとも二百キロにまで延ばそうとしている。」あるいは周辺国に対する脅威との関係では、「キプロス、ギリシャ、トルコ、および湾岸諸国やイスラエルにまで届くミサイルを開発する新しいエンジン試験台を建造した。」とか、あるいは「長距離ミサイルの不法な開発に使用する資材を調達するために、不法な計画を続行している。」というような記述があるわけでございます。
 また、十月四日に発表されましたCIAの報告書でも、イラク政府は化学生物兵器と国連の制限を超えた射程距離を有するミサイルを保有しているというような記述もあるわけでございます。
 それから、生物化学兵器についても、それぞれ、アメリカ政府それから英国政府の文書の中に非常に詳しい記述がございまして、これらに基づきますと、イラクが保有している大量破壊兵器というものが近隣諸国に脅威を及ぼすおそれがあるということでございますので、我々としても、その懸念は共有している。
 したがいまして、現在、まさにその査察によりまして、大量破壊兵器の現状というものを把握しようという国際社会の努力が行われており、日本政府としても、それを支持しているということだというふうに考えます。
末松委員 それは私もちょっと詳細に、一部しか見たことがなかったので、そういうふうに国民に言っていただく方がいいんだと思います。私自身、別にこの質問を通じて、イラク側に立って質問しているわけじゃありませんで、私自身、イラク大使館に二年間いて、サダム・フセイン体制の中でみずからいじめられた経験がありますからそれは言っているんですけれども。
 ただ一方、私は、このペーパーにもありますように、大量破壊兵器を有するイラクだ、そして懸念がある。そうなりますと、イラクはBC兵器の条約にも加盟していません。それは確かにけしからぬことであります。ただ、例えば、大量破壊兵器を有し、それが懸念があるということだけで政権の転覆に言及するようなアメリカのやり方というのは、私はこれもちょっとやり過ぎだと。私だけじゃなくて、これは日本人のかなりの方が同じセンスを共有していると私は信じております。
 では、これは大臣にこの哲学をお聞きしますけれども、BC兵器の条約に同じく加盟していないと私が聞いておりますイスラエル、イスラエルは、例えばこれはパレスチナ人にも、パレスチナ問題にも関係してきますけれども、核兵器も持っていると非常に濃いうわさで言われている、そういった国に対しては何も言いません。アメリカも言わない。
 前にこの質疑にもありました、アメリカ自身も核兵器、うじゃうじゃ持っていますね。パキスタン、インドについても、今度は実験を行って保有をしていると言われている。こういった国々に対しては、非難というものがあるにしても、そういう政権を打倒しようということは言っていない。
 イラクは、唯一イラクに言えるのは、前科者だ、クウェートを侵略したじゃないか。これは確かにあるんですけれども、それで国際社会は一致団結して、湾岸危機のときにイラクをたたいた。そして、十年近く経済制裁を行ってきたわけですよ。
 そうしたら、なぜまた今イラクの政権転覆という形でこの国際社会、あるいは特にアメリカが主導しておりますが、これがやられなければならないのか、その理由が私にはよくのみ込めない。大臣、あなたの解釈はいかがですか。
川口国務大臣 今委員がイラクには前科があるとおっしゃいましたけれども、イラクは九八年から四年間、査察を受け入れることを拒否してきているということがあるわけです。イラクが大量破壊兵器の問題がないのであれば、それはイラクとしては、まさに受け入れてないということを、四年間拒否をしないで見せればよかったことであるわけです。
 国際社会として、大量破壊兵器その他のイラクについて国連が決議をしていることをちゃんとイラクが守るということをまずイラクがやるということが大事であって、今、そのために最大限の圧力をかけているという状況にある。
 したがいまして、イラクがまさにボールを持っているわけでして、これをイラク側が行動することによって、別にその問題はここでなくなるということになると思います。
末松委員 そうすると、今、即時、無条件、無制限の査察で、例えば、大統領の寝室がこれがおかしいと言えば、すべてそこで見せろ、そういうことになるわけです。それにちょっとでもおくれたり、それは待ってくれと言ったら抵抗ということになるわけですが、それがちょっとでも抵抗したら、そういったことでアメリカが攻撃するという形で、ブラフといいますか、おどしをかけているわけですが、こういうことは、主権ということは、確かにここでは許されないという判断に立つわけですか。
 そこはちょっと大臣の感触で結構ですから、いただけますか。イラク側は主権侵害、そこまでというところは、要は、私が言っていることは、自分でちょっとそこはイラク側がのんだので、あとは粛々とやれということ等も考えたりもするのですが、その辺はどうですか、大臣。
川口国務大臣 大事なことは、イラクが国連決議に従ってきちんと査察を入れて、大量破壊兵器を初めとするほかの決議の違反というのも、大量破壊兵器以外のものもありますけれども、国連決議に従うということが大事である。その一環として査察、委員がおっしゃったような無条件、無制限、即時の査察を受け入れるということが大事であるということです。
 委員がおっしゃった、どういうような査察の受け入れ方が査察を受け入れたことになるかどうかということをおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、それは、まずイラクとしてきちんとこれを受け入れる。具体的にどういうような査察について問題があるかということについては、これは今の時点では何もわからない。これから国際社会に、もしそういうことが万が一あれば明らかになっていくということであって、それは報告という形で国連に出され、国連で議論をされるということだろうと思います。
 大事なことは、イラクが国連の決議を守る、ずっと今まで十六の違反と言われていますけれども、守ることによって問題を平和裏に解決することが大事である、そういうことだと考えます。
末松委員 これは私が希望するのは、アメリカが非常に戦争にはやっているんじゃないか。ある人が、日本人はワーカーホリックだけれどもアメリカ人はワーホリックじゃないか、そういうふうに言っている方もいました。難癖のつけ方が非常にうまいと言う専門家もいましたね。それがそうでなければいいんですけれども。
 ただ、では大臣が言われたように、イラクは守ればいいじゃないかと。守っていない、それがけしからぬということであれば、なぜイラクに対して経済制裁がこの十年間段階を追って緩和されてきたんですか。そんなに守らないイラクだったら、どんどん制裁をきちんと続行し、そして締め上げればいいじゃないですか。その点はいかがですか。
川口国務大臣 イラクに対して、人道的な観点からどういうふうに対応を考えていくか、そういう配慮であったかと思います。
末松委員 ただ、それは人道的配慮ということであれば、最初から人道的配慮をすべきだったんですね。最初は人道的配慮はなかったわけでしょう。しばらくしてやってくる、その辺はちょっとおかしいと思いませんか。
西田政府参考人 事実関係で申し上げます。
 御案内のように、湾岸戦争が終わりましてから経済制裁という形になっていくわけでございますけれども、まさに経済制裁を行う過程の中において、大臣がただいま御説明しましたように、人道的な対応の措置をとる必要があるということを国際社会が認めてオイル・フォー・フード等の措置が導入されたということでございますので、全体として矛盾があるというふうには考えておりません。
 それから、先ほどの御質問でございますけれども、イラクに対する措置というのは、安保理決議が、まさにアラブの国でありますシリアも含めて全会一致で国際社会、国連の意思としてなされておりますので、当然イラクは従うべきものというふうに考えております。
末松委員 ちょっと関連ですけれども、さっきの大量破壊兵器の、私自身がまだよくわからないのは、イラクによる切迫した危険が本当にあるのか、本当にそういった大量破壊兵器があって、そしてそれが、それは検証すればいいんです。それはびしびし検証すればいい。それが本当に切迫しているのかということが、どうしても私自身には理解できないわけですけれども、それは、検証をしてからわかるということもあるかもしれません。
 その検証という言葉で、アメリカの報道官ですか、十一月十八日にマクレーランという報道官が語っているんですけれども、インスペクターというのは、ディスアーマメント、要するに武装解除のためにあるんだと。では、武装解除というのは、どこまでやれば武装解除になるんでしょうか。そこは政府委員で結構ですから、言ってください。
海老原政府参考人 今の武装解除という言葉の意味でございますけれども、これも先ほどちょっと申し上げましたけれども、ブッシュ大統領が、米国が判断するのはイラクが安保理決議に従っているか否かの一点のみであるというふうに述べていることからも明らかなように、イラクがこの安保理決議に従いまして実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れまして、大量破壊兵器の廃棄、この場合は廃棄を履行するということを示しているというふうに理解をいたしております。
末松委員 では次に、質問をかえまして、今アメリカが、イラクの政権を転覆させた後に、サダム・フセイン追放後にさまざまなビジョンを描いていると言われております。これは報道等にもいろいろと載っておりますけれども、この点についての米国の検討状況について、外務省の認識をお伺いします。
安藤政府参考人 ただいま委員御指摘のアメリカにおきます検討ということでございますけれども、まず前提条件といたしまして、アメリカ自身がイラクに対する軍事行動を決定したわけではないということも言っておりますし、御指摘のプロジェクト自体もそういう前提で推進されているというふうに理解しております。
 そう申し上げた上で、私ども承知しておりますのは、アメリカの国務省におきまして、将来のイラクのあり方について広範な議論を行い、イラクの予想図を描くということを目的として実施されているプロジェクトであるというふうに理解しております。現在、十六の作業グループが設置されておりまして、それぞれの専門性を有する在外イラク人及び国際的専門家が参加している。主要な作業グループとしては六つございまして、移行期の司法、国家財政及び会計、公共サービス・広報活動、民主的原則、水・農業・環境、保健・人道問題という、以上六つのグループに分かれて検討を行っているというふうに承知しております。
末松委員 そういったグループがもう実際につくられていて、そして検討を行って、十六の部会に分かれているということですから、これは全く生半可な気持ちでこんなグループはつくれるわけがないのでありまして、そういった意味では、イラクが決議に従えばいいということだけ言っておるんじゃないなというのは、アメリカの態度として極めてよくわかるわけであります。
 そういった、アメリカがいつも主導していって、そして日本の方はそれに乗っていかざるを得ない。この質問も、私自身もややじくじたるものがあります。というのは、日本自身が主導していってやるのであれば、的確な意図とそれから的確な情報でやっていくわけでありますが、これはアメリカがやっていって、そしてアメリカのペースがよくわからない、そういった中で、おつき合いをしているというようなことを言う人もいるんですが、そういった中で我が方として適時的確な認識に立ってやらないといけないというのは、外務省及び政府全体としても大変な御苦労があろうかと思います。その辺は率直に申し上げますが。
 ただ、安倍副長官もせっかく来られておられますので、一言質問させていただきます。
 イラク関係ではない特措法の関係で、イージス艦とかそれからP3Cとか、そういったことが官邸の方で検討をされているということを私も事実関係で確認したこともあったんです。そういったことを官房長官にはしたんですが、必ずしも私自身納得できるような回答じゃなかったんです。安倍副長官の方からも、その検討をした事実があるかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 テロ対策特措法に基づきまして、協力支援活動を行う上でどのような部隊を派遣するかについては、現地の情勢、協力支援活動の実績等を勘案しつつ、我が国自身の問題として国際テロ根絶のための取り組みにいかに寄与していくかとの観点から主体的に判断をしていきたい、今後の状況を踏まえていろいろな可能性を検討していきたい、こう考えているところでございます。
 基本計画の案を作成するに際しましては、自衛隊の運用上の必要性、自衛隊の他の任務遂行との関係も含めて総合的に検討する必要があることから、内閣官房としては、防衛庁を初めとする関係省庁と緊密に連携しつつ、派遣する部隊について必要な検討を行ってきたところでございます。
 今御指摘のまずP3Cの派遣につきましては、派遣部隊の活動の安全を確保することが重要であるとの観点から、今後状況を踏まえて慎重に検討していきたい、こう考えております。また……(末松委員「検討してきたの」と呼ぶ)当然、あらゆる可能性というのを検討するというのは、これは至極当然のことなんだろう、こう思うわけでございます。
 そしてまた、イージス艦の派遣でございますが、基本計画の変更とは別に、艦艇の実際の派遣ローテーションや補給活動における安全確保の必要性の高まりなど、今後の状況も踏まえて判断をしたい、こう考えているところでございます。
末松委員 そうすると、では今後の状況次第ではまたこの派遣を考えて、適切だと思った時期にそれを派遣するということも否定はできないということですね。
安倍内閣官房副長官 イージス艦につきましては、これはローテーション上、運営において必要とあれば、当然そういうことも考えなければいけないと思っております。
末松委員 そのどちらも前回の衆議院安保委員会における政府報告に対する質問でもやりましたけれども、その四ページには「アラビア海における各国の活動も、予見しうる将来にわたり継続が見込まれ、テロとの闘いは終わりよりもむしろ始まりに近い時期にある」という認識が、まあ米側の認識ですけれども、これもかなり衝撃的な報告ということで使って、これはどうもイラク攻撃に対する支援の伏線じゃないかというふうに見る向きも多いわけですよ。
 この前、北米局長が、私は北米局長の答弁、必ずしも理解できませんでした。アメリカ側のこういった指摘に対して、日本側として何かコメントしたのか、それとも全く、ああ、そうですかと言ってそのまま受け入れたのか、それを再度お聞きしたいと思います。
海老原政府参考人 第四回調整委員会におきます米側の今お引きになった発言でございますけれども、これは、この前私が申し上げましたのは、テロとの闘いというものがこれからも長い闘いになっていくだろうということを強調したものだというふうに理解をいたしております。
 これに対しまして、我が方がこの部分について特に何らかのコメントをしたということではございませんで、米側の説明全体を受けまして日本側から、本日の米側によるテロとの闘いの現状と今後の見通しに関する説明をも踏まえ、テロ対策特措法に基づく我が国の支援のあり方について我が国政府として主体的に決定するということを応答いたしました。
末松委員 時間が参りましたので、ちょっと一点だけ最後に簡単にお伺いしますが、アメリカがもしイラク攻撃をやったら、世界じゅうの、例えばアメリカ人旅行者を含め、さまざまなテロがまた起こることが予想されます。逆に拡散するんじゃないかと私は思うわけですけれども、これに対して外務大臣の、邦人保護という観点からきちんとした対応を、今体制をとっているかどうか、これについてその決意をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 邦人保護をやるということは非常に重要なことでございます。
 つい先般、外務省といたしましても、外務本省あるいは幾つかの大使館と一緒に訓練を、模擬的な訓練もいたしましたし、これには万全を期していきたいと考えております。
末松委員 終わります。ありがとうございました。
田並委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうもお時間をいただきまして、ありがとうございました。きょうも、ちょっと盛りだくさんでお尋ねをさせていただきたいと思っております。
 まず、お忙しい中を、経済産業省西川政務官そして厚生労働省から渡辺政務官にお越しをいただいております。ありがとうございます。
 まず、査察の状況によりますけれども、イラクに対する米国の武力攻撃が始まったときに、まず日本経済に対する影響はどういうものであるかということも考えていかなくてはいけない。もしかしたら、来月もしくは年明け早々にも攻撃が始まるかもしれないということでありますけれども、今、政府は、日本経済に与える影響をどういうふうに予測をし、そして、例えば石油などの備蓄体制は大丈夫なのかということも大変気になるわけでありますけれども、今どのように認識していらっしゃいますでしょうか。
西川大臣政務官 今の、イラク攻撃が起こった場合日本の経済にどう影響をするかということでありますが、私どもも省内で検討はしておりますけれども、仮にイラクへの攻撃が起こった場合、原油価格の大きな上昇があるかどうか、こういう問題もありますけれども、上昇等があれば企業収益の減少、これはもう避けられない、それから米国経済あるいはアジア諸国経済の減速等もあるだろうし、それに伴う輸出の減少も想定される、こういうことになっています。
 何よりも影響が出るのは消費者のマインドの低下、これが起きてしまうと、日本経済のマイナスということに大きく影響を与える可能性がある、こういうふうに状況を考えております。
 石油の方もお答えしておいてよろしいですか。
 石油の備蓄の問題でありますけれども、国民経済の問題からしましても、エネルギーのセキュリティー、これはしっかりやらなきゃならない、こう受けとめています。
 そこで、どの程度石油備蓄があるんだという話になりますが、現在、十四年の九月末時点で、国家備蓄は九十一日分あります。それから民間備蓄が八十一日分あります。端数を整理しますと百七十一日分ありますので、まあまあたくさんの備蓄がある、こういうふうに考えていただいて結構かと思います。
 我が国への石油の供給が不足するという事態が起きたらどうする、こういうことになりますが、そのときは、国際エネルギー機関と協調のもとで備蓄の放出等所要の措置をやっていこう、こういうふうに考えております。
 なお、イラクをめぐる問題につきましては、現在、国連の安全保障理事会の決議に基づいて国連が査察をやる、こういうこととなっていると承知しておりまして、引き続き情勢を注視してまいりたいと考えております。
樋高委員 今、日本経済はもう危機的状況でありますけれども、この国際情勢、特にイラク攻撃が始まった場合には、それによってまた日本経済の足を引っ張るような結果になってしまっては困るわけであります。
 やはり政治というのは事前に予測をし、それに対策を打つ。総理も繰り返し繰り返し、備えあれば憂いなしと言っておりますけれども、やはりその備えを、口先だけではなくてきちんとした検証をし、そして、今のは石油という分野、エネルギー分野に特化をしてお尋ねいたしましたけれども、対策をとっていただきたい。日本は経済立国でありますから、経済がだめになると日本社会自身も元気がなくなってしまいますので、対策をしっかりとお願いいたしたいというふうに思っております。
 続いて、厚労省渡辺政務官にお尋ねをいたしますけれども、これも全国の皆様方からさまざまな不安な声ということで、私、メールなどを通じまして、マスコミでもなかなか取り上げられていないのでちょっと聞いてくれないかということでございますので、私に対するお答えというよりも国民、市民に対するお答えとして、簡潔明瞭にお願いをいたしたいと思うのであります。
 北朝鮮、イラクももちろん含めてでありますけれども、生物化学兵器を保有している可能性も高いということであります。
 昨日防衛庁からいただきました資料によりますと、例えば、北朝鮮では化学剤を生産できる複数の施設ももう保有をしている、また生物兵器も一定の生産基盤があるということを日本の防衛庁でもしっかりと把握をしているわけでありますけれども、では、それに対する日本国内での免疫、抗生物質の在庫状況はどうなのかということが、今市民の間ではすごく関心が高いわけであります。
 生物化学兵器の対処薬、今どの程度の在庫なのか。昨年、厚生労働委員会、私は厚生労働委員でありましたけれども、同僚の議員の質問によりまして、例えば、これは産経新聞の一面でも掲載されましたけれども、炭疽菌の治療薬は、一年前の段階で在庫は数十万人分ということでありましたし、また、炭疽菌と並んで懸念されております天然痘ウイルスについては、ワクチンはない、しかしながら省内で今後検討し対策を打つということを一年前に役所として答弁をしておりますけれども、どのようになっておりますか。
渡辺(具)大臣政務官 万が一、生物テロあるいは化学テロが生じた場合の医療あるいは医薬の確保ができているかどうか、その体制がちゃんと整っているかどうかという質問でございます。
 厚生労働省といたしましては、こういった生物化学テロに対しまして、万が一に備えまして体制の整備に努めてきたところでございます。
 具体的には、まず、医療機関に対しまして、炭疽等の患者を診察した場合には、速やかに病院から保健所、そして地方公共団体等を通して、厚生省に報告するようにという要請をいたしております。また、医療従事者、そして国民に対しましても、炭疽等の症状あるいは治療方法について、いろいろなツールを通して、情報を提供するといった体制の整備に努めております。
 また、医薬品の在庫等についての御質問がありましたが、炭疽等につきましては、広く流通しております抗生物質の投与が非常に有効だということが認識されております。メーカーあるいは流通部門において、その抗生物質は相当の在庫が保有されているということを確認いたしました。また、そういうところでも非常に在庫量は多いんですが、それでも足りないというような場合には、速やかに増産を図る体制も既にできておるということを承知いたしております。
 また、天然痘につきましてはワクチンが大変有効でございますが、委員御指摘のように、その後、厚生労働省におきまして二百五十万人分の免疫を確保いたしました。そして、さらに来年度の予算要求におきまして、追加の備蓄のための事業を行う予定にいたしております。
 また、化学テロの方でございますが、緊急医療の中心となる救命救急センターにおきまして防染設備や防護服を配備するとともに、医療機関等に対しまして、化学テロ被災者へどういう診断、どういう治療を行ったらいいかといった情報提供などに努めているところでございます。
 また、さらに本年十月には、最近のイエメン沖とかあるいはインドネシアのバリ島におきます爆発事件も踏まえまして、都道府県に対しまして、テロ発生に係る対応について再点検をしてください、細かく、こういう点について点検をしてくださいというようなことを文書でもって要請したところであります。
 今後とも、関係機関とも連携しながら、国民に安心していただくための最善の努力をしてまいりたい、このように考えております。
樋高委員 要するに、例えば日本国内で生物もしくは化学兵器によりますテロの被害が出た場合は、十分に抗生物質なり対処薬なり、きちんともう既に担保されているし、大丈夫だというお答えでよろしゅうございますか。
渡辺(具)大臣政務官 先ほど答弁申し上げましたように、今考えられる範囲におきましては、考えられる化学テロ、生物テロに対しましては体制を整えているところでございます。
樋高委員 生物化学兵器というのはまだまだ解明されていない部分もたくさんありますので、考えられない部分に対する対処も、きちんと積極的に政府としてやっていかなくてはいけないということを御指摘申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、防衛庁長官に伺いますけれども、まず、今回自衛隊の海外派兵を期間延長いたしましたけれども、結果として米国のイラク攻撃に対する間接支援になったとしても、テロ特措法のいわゆるテロ根絶という目的の範囲内であれば、兵を派兵できるという理解でよろしゅうございますか。
石破国務大臣 私ども、派兵という言葉は使っておりません。派遣という言葉を使っております。
 テロ特措法の目的の範囲内で行う行動ということは当然あり得ることであって、それが結果的にどうかということは、それはわかりません。それはそういうことが、そもそもイラク攻撃ということがあるかどうかということにつきまして、政府の立場は、そういうことがないように、イラクが無制限に無条件に査察を受け入れる、そのためには私どもも国際社会の一員として努力するということでございますから、結果的にどうであるかという御質問には、それはお答えをいたしかねるということでございます。
樋高委員 結果としてイラク攻撃の間接支援であったとしても、テロ特措法の目的の範囲内であれば派遣は可能だという理解なんですね。
石破国務大臣 繰り返しての答弁で恐縮でございますが、イラク攻撃がどういう形で行われるかということについて、我々は予見し得る立場にはおりません。
 私どもは、イラクが無条件、無制限に国連の査察を受け入れるということのために、我々も国連の一員として、国際社会の一員として全力を挙げるということでございまして、そのような仮定に基づきましてのお答えをいたすことは失礼かと思って、お答えをしておらないわけでございます。
樋高委員 仮定の話ではなくて、法律論の話をしているんです。
 法律論として、テロ特措法の目的でありますテロ根絶という目的にかなうならば、どこでも行けるということなんですね。
石破国務大臣 これは当然のことでございますが、テロ特別措置法は、どこでも行けるというようなことは書いてございません。法律に定められた範囲に基づいて行う行動ということでございます。どこでも行けるというようなことには相なっておりません。
    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕
樋高委員 条文をよく精査いたしましたけれども、つまり、その法律の目的の範囲内であれば、テロ根絶の目的のために自衛隊を派遣するということであるならば、地球の裏側でも行けるというふうに読み込めますけれども、いかがですか。
石破国務大臣 それは、同意を得た他国のというところを指しておられるのだろうと思いますけれども、それは常識的に考えてみた場合に、九・一一に起因をするといいますか、九・一一に基づきますそういうテロというものがある、そういうテロというものは国際社会全体に対する脅威である、その撲滅のために行動する米国を初めとする諸国の軍隊を支援する、そういうような法律の書き方になっておりますから、ぎりぎり読めば、どこでも行けるというような読み方をされる場合もあるのかもしれません。
 ただ、この場合に、ではそれを使って地球の裏側でもどこでも行ける、なし崩しに何でもできるんだというようなことを予定した法律ではないというふうに私は思っております。その法律は、それはそういう考え方をすれば何でもできるというお話になるのかもしれません。
 ですから、テロ対策をどのように行うかというときに、ある意味、周辺事態法でどうなんだという御議論もありました。やはり周辺事態法ではだめだ、周辺事態法の趣旨にはなかなかそぐうものではないだろうということで、テロ特措法をつくったわけであります。テロ特措法をつくりましたときに私どもが政府と一緒になって考えましたのは、どこでも行けるというようなことがあってはならない、この法律を使ってどこでも行けるんだというようなことがかりそめにもあってはならないということを念頭に置いてこの法律をつくりましたことは、委員も御案内のことかと存じます。
樋高委員 どうも言っていることとやっていることが違うような気がしてならないのでありますが、地域に制限が、あの法律では読み込めませんよね。だから、私、前回の委員会で申し上げましたとおり、なし崩し的に、政府の判断で、結果として、先ほど冒頭申し上げましたとおり、イラク攻撃、イラクの米国による攻撃を間接支援するということになってしまう。そういうなし崩し、なあなあなあ。だって、今回延長したときも、結局、国会承認というのは法律にのっとってみますれば必要ないということでありますから。今、もう既に派遣をしておりますから、これがどんどん拡張していくのは目に見えた話ではないかと思うのであります。
 外務大臣に伺いますけれども、テロ特措法にのっとって考えますと、目的にのっとってテロ特措法の運用を行う、それは当たり前の話ですけれども、また仮定の話には答えられないというお話かもしれませんが、国連によります、安保理もしくは総会による武力行使容認決議がなくても、テロ特措法の法の目的達成のために、テロ根絶のために、兵を派遣するということは可能なんですか。
川口国務大臣 国連の決議がなくてもとおっしゃっているのは、イラクのお話に関連しておっしゃっているんだろうと思いますけれども、委員もおっしゃられましたように、これは、今まさにイラクが決議を守って行動をするように、国際社会が平和的にこの問題を解決できるように、最大限の圧力をイラクにかけているということでございますので、武力が起こるということを仮定した御質問にお答えするのは非常に難しいということでございます。
 いずれにしても、テロ特措法はテロ特措法の目的に照らして適切に運用されるということでございますし、外務省としては、イラクをめぐる情勢について、これから査察が再開をされるわけでございますけれども、イラクによる安保理決議の履行状況など今後の事態を注視しつつ、必要な外交努力をやっていくことを考えております。
樋高委員 実態の話をしているのではなくて、法律論の話をしております。それと、政府の方針をお尋ねしているんです。
 要するに、このテロ特措法の目的にのっとって運用するのはそれは当たり前の話でありますけれども、一方で、イラクに限らず一般論でお答えいただいて結構でありますけれども、それならば、日本というのは、国連による武力行使容認決議がなくても、このテロ特措法の目的達成のために派遣をできるという解釈なんですかということをお尋ねしているんです。すごい重要なことですよ。外務大臣。
川口国務大臣 まさにテロ特措法に基づいて派遣できるかどうかというのは、テロ特措法の目的に照らしてそれが適切であるかどうかということを判断して行う、法律の運用としてはそういうことだと思います。
樋高委員 大変な答弁であります。要するに、目的に合致さえしていれば、武力行使容認決議がなくても日本は派兵、派遣できるということのようであります。
 では、実態としてお尋ねしますけれども、仮に、アメリカがイラク攻撃に際して、イラクはアルカイダ、アルカイダというよりテロとの関与があるのだと主張された場合、それでなおかつ、日本でそのアルカイダとの関与は確認し得ない場合、このテロ特措法に基づいてイラク攻撃を間接支援することができるのでしょうか。
川口国務大臣 先ほど私が申し上げたことについて委員が拡大解釈をなさっていらっしゃるようでございますので、まず、そういうことではないということを申し上げたいと思います。
 テロ特措法の世界はテロ特措法の世界ですけれども、イラクに対して戦争が、武力行使が行われるかどうか、これはあくまで仮定の話でありまして、現在、国際的な努力を行ってイラクに最大限の外交的なプレッシャーをかけ、平和裏に問題を解決しよう、そういうことでございます。
 したがって、武力行使を前提にした御質問についてお答えを申し上げることはできないということです。
樋高委員 最後に一問だけお尋ねをいたします。
 またこの議論は引き続きやってまいりたいと思いますけれども、イラク攻撃に踏み切る事態に備えまして、先ほども議論があったかもしれませんけれども、イラク、その周辺国から在留邦人を退避させる準備は今具体的にどうなっているのかということも注視しなくてはいけないと思います。湾岸危機の際は、邦人が五百人以上イラク国内に足どめされまして、人間の盾というふうにされたこともあった教訓も踏まえなくてはいけないと思いますけれども、外務大臣、今回、準備というか対策をとられておりますでしょうか。そのことをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕
茂木副大臣 政府にとりまして、邦人の保護は最も大切な課題だ、最優先課題だと考えております。
 このため、外務省といたしましては、早い段階から、イラクの周辺の十数カ国に所在する我が国の公館に対して訓令を発出し、在留邦人、短期滞在者の掌握、そして緊急事態対応マニュアルの整備、在留邦人との緊急連絡網の整備、在留邦人に対する説明会の開催等の措置をとってきているわけであります。
 特に、万一の場合、在留邦人の退避につきましては、各国ごとの具体的な状況に応じまして、仮に軍事行動があった、そういう場合に、対イラク軍事行動開始前の邦人退避の完了を目指して準備に万全を期しております。
 このような準備体制でありますけれども、既に過般のインド、パキスタンの状況の緊迫のときにも既に実証済みである、このように考えております。
 委員御指摘のこうした措置をとるに際して重要なことは、本省と在外公館の緊密な連携である、そして省庁間の連携も重要である、こんなふうに考えておりまして、先般、外務省におきまして、周辺の在外公館との連携に関する模擬演習も既に行ったところであります。
樋高委員 ありがとうございました。
田並委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 今、大分・日出生台で日米共同訓練が行われているわけですが、十一月の十八日に陸上自衛隊の西部方面隊松川正昭総監が、この日米共同訓練に反対する集会に介入して、何で共同訓練に反対するんだと集会を妨害、威圧を加えたという事件がありましたが、防衛庁長官はそのことを御存じでしょうか。
石破国務大臣 存じております。
赤嶺委員 これは明らかに憲法第二十一条、集会、結社の自由、国民の権利をじゅうりんするものだと思いますけれども、いかがですか。
石破国務大臣 私が存じておりますと申し上げましたのは、そのような松川西部方面総監と現地で反対行動をしておられる方々の間にやりとりがあったということを存じておるということを申し上げたわけでございます。私どもが掌握をしております事実関係は、このようなものであります。
 十八日の午後三時四十分ごろに、松川総監は、演習場内で共同訓練を視察し終えた。車両により演習場正面ゲートを通過した際、本訓練の中止等を求めゲート外側において集会を開いておられた団体の方々と遭遇をした。これが午後三時四十分であります。
 この際、松川総監は、日米共同訓練の意義を理解していただくことが必要であると考え、車両をとめて下車し、団体の方に対し、共同訓練に反対する理由をお尋ねするとともに、この訓練が我が国の防衛とその抑止力の向上につながるものである旨を申し述べたところでありまして、集会の中止というようなことを求めた事実はないというふうに考えております。
 したがいまして、今委員御指摘のような、憲法に違反するような、集会、結社の自由というものを妨げるようなそういう言動を行ったことはございません。そしてまた、威圧的な行動を行ったというふうにも理解をいたしておりません。したがいまして、委員の御指摘は当たらないというふうに私は考えておる次第でございます。
赤嶺委員 大変な認識ですよ。西部方面隊の総監といえば、個人じゃないですよ。権力を持っている立場の人ですよ。権力を持っている立場の人が集会参加者に向かって、抗議集会、何で反対集会をやるんだと言った。これは言った言わないという話になりますけれども、意義を説いたと。しかし集会参加者は、現場は、それは威圧だと。そして、部下の制止を、とめるのも聞かずに、集会に威嚇を加えているわけですよ。
 これが集会、結社の自由のじゅうりんでなくて何ですか。個人でやったならともかく、西部方面隊の総監じゃないですか。組織を代表する最高の責任者が集会に怒って、集会に対してそういう介入をする、これは明らかに介入じゃないですか。いかがですか。そういう認識なんですか。
石破国務大臣 繰り返しの答弁で恐縮でございますが、これは委員もVTR等々ごらんになっての御発言なんだろうと思います。そして、それが個人ではないという御指摘でございますが、これは個人ではございません。おまえはだれだというふうなお尋ねを受けて、私は西部方面総監であるというふうに名乗っております。ですから、私は個人として申し上げたとは考えておりません。西部方面総監として、この訓練の意義は何なのかということを御理解いただくような、そういうようなことをいたしたというふうに認識をしております。つまり、日米共同訓練の意義を理解していただくことが必要である、そのように考え、そして、なぜ反対なさるのですかという理由をお尋ねし、この訓練が抑止力の向上につながるものですということを御説明したのだというふうに考えております。
 したがいまして、それは権力をもって威圧をし、その集会の中止を求めた、そのために行動したというふうには考えておらないということでございます。
赤嶺委員 そうすると、あなた方は、これからも自衛隊の演習や訓練に対して反対集会が行われている場合に、その訓練の意義について一々責任者が現場に行って意義を説く、こういうことをなさるつもりですか。当たり前の当然のことだと、何も問題にすべきことはないという認識なんですか、こういうことが。
石破国務大臣 繰り返しでこれまた恐縮でございますが、私どもの自衛隊、自衛官は憲法にのっとって、憲法の精神を体現すべく努力をし、行動しておる、当たり前のことだと思っております。そこで、反対をしておられる方々に御理解をいただくということを西部方面総監が西部方面総監の立場において判断し、行ったものだというふうに考えておりまして、では、毎回毎回そのように現場の責任者あるいは総監クラスの者が説明をするのかというふうなお尋ねを受ければ、それは、その場その場によって違うのだろうというふうに思います。
 しかし、私どもがやっております訓練というものについて、一人でも多くの国民の方々に御理解をいただくべく努力をする、まして、本当に反対を唱えておられる方々にこの訓練の意義を御説明するということ、そのこと自体が、御理解をいただくべく努力をするということ自体が、私は決してそのことを理解していただく努力をしたということを非難するというつもりはございません。
 ただ、委員御指摘のように、それが威圧とか、集会をやめるようにというような、そういうことを加えたというふうな形で受けとめられるということがあるとするならば、御理解いただこうとした努力がかえってそのように受けとめられたということがあるとすれば、それは、そういうようなことも私どもは考えていかねばならないというふうに思っているわけでございます。
赤嶺委員 威圧だと受けとめたとしたならば、受けとめた人が悪いんじゃない、やはりそういう受けとめられた行為をした人が悪いと思いますよ。ですから、総監の行為は適切なものであったかどうか。防衛庁長官、どんな角度から見ても、あの総監のああいう行為は適切なものであったんですか。
石破国務大臣 本件につきましては、私ども現場で見たわけではございません。子細にすべてのことを、つまりこういうようなことは最初から最後まで見てみなければ本当のことはわからないのだと思います。片言隻句をとらえて、そのことがどうである、こうであるということを申し上げることは決して意義のあることだとは思っておりません。そういう状況で一体どこからそういうことが始まり、最後はどのような形で終わったのか、片言隻句をとらえて、そのことがどうのこうのということを議論するのではなくて、全体をとらえて理解をし判断をしなければならないことだろうと思っております。
 私自身、その場の最初から最後まで一部始終、当然見ておったわけではございません。そのことについて、現場でどのようなことがあったのかということは庁内において確認をいたしておるところでございます。しかし、私が聞いております範囲におきまして、そしてまた、VTRでとらえておりましたものをすべて再録をして見てみました。そこで本当に松川総監はこの訓練の意義について何とか御理解をいただきたい、そういう一心があったものというふうに考えておりますし、威嚇的な、こんなことをやってはいかぬよというような威嚇的な言動、言辞を弄したとは私は見ておりません。
 いずれにいたしましても、事実関係はきちんと庁内において調べさせていただきます。
赤嶺委員 防衛庁長官、この期に及んで本当に弁解がましいですよ。総監の気持ちはわかるという、あなたが総監の気持ちに同情しているという話をしているんじゃないんです。
 全体として、防衛庁長官として、部下の、総監のそういう行動、そして、集会、結社の自由に基づいて共同訓練に反対している人たちに対して加えた威嚇、これについてあなたは最初は適正なものであったかのように言って、それで議論の中で、いや全体をつかんでいるわけではないからと言いながら、しかし総監への同情の気持ちは隠さない。全体の事実をつかんで、そして厳正な処分を行うべきだと思いますけれども、いかがですか。
石破国務大臣 そのように考えてはおりません。
赤嶺委員 そうすると、全体の事実をこれ以上つかむ必要はないという認識なんですか。
石破国務大臣 必要があるとかないとか、そういうお話ではございません。
 ただ、この国会の場において赤嶺議員からそういうような御指摘があったということは、それはきちんと受けとめねばならないことだと思っております。これから調査をするつもりがないとか、そのようなことを申し上げておるわけではございません。
 しかしながら、私が把握しております限りにおいて、つまり、見たわけではないのですよ、議員もごらんになったわけではないと思います。そこでいろいろな記録されたこと、新聞に載っておりますこと、VTRによってとらえておりますこと、そういうことを見て、そして現場で、これは両方の言い分を聞いてみなければわからないことなんだろうと思います。
 これは、反対運動をしておられた方、そして松川総監、そういう方々が、両方のおっしゃることを聞いてみて、私どもから申し上げれば、申しておることを聞いてみて、全体がどうなのかという判断だと思いますが、私が、今日に至りますまでいろいろなところから聞いてみました、それから全部考えてみましたところ、これを厳正な処分というようなことに当たるとは私は判断をしておらないということでございます。
赤嶺委員 皆さんは、前国会で、リスト問題で国民の自由と権利を脅かすような重大な事態を引き起こしたんですよ。あれで、国民の自由と権利について敏感な、そして本当に大事な権利だと認識して運営をしていくかと思ったら、今度はこれでしょう。こんなことを引き起こしても、それが厳正な処分に当たるようなことはない、威嚇を加えたかもしれないけれども、総監の気持ちをわかってくれと。
 一々一々、例えば沖縄のようなところで、我々は嘉手納基地のゲート前で抗議集会をやりますよ、アメリカのプレゼンスの意義を司令官から説かれたらどうなりますか。考えていることが違うんですよ。自衛隊が考えていることと国民が考えていることが違うんですよ。立場の違い、立場の違いをはっきりさせて集会を開いている、抗議集会を開いている。これが何で自衛隊から説明されなきゃいけないんですか。(発言する者あり)自衛隊じゃなきゃ、陸上自衛隊の西部方面隊の松川総監ですよ。最高権力者ですよ。
 今皆さんが提案している武力攻撃事態法の中には、国民の自由と権利、これに対する制限の条項が入っています。必要最小限、こういうぐあいに説明されましたけれども、武力攻撃事態法が成立する以前から、リスト問題を引き起こしたり、今度のような暴挙を繰り返したりするようなことであれば、皆さんの言う必要最小限の国民の自由と権利の制限、これはもうはっきりしてくるじゃないですか、その姿が。だから私は、そういう意味でも、今度の事件に対する抗議の気持ちを加えて、有事立法の撤回も改めて求めておきたいというぐあいに思います。
 きょうはもうちょっと時間がありませんので、次の質問に移らせていただきますけれども、沖縄の北部のヘリパッド訓練移設の問題ですが、去年皆さんは、そこのヤンバルの森の亜熱帯雨林を切り開いてSACO合意に基づくヘリの着陸帯をつくることについては、余りにも環境への影響が大き過ぎるといって、一度選定した場所を断念して、改めて環境調査をやっているというぐあいに聞いております。今、それがどういう段階に来ているのか、その調査はどのようにして報告されるのか、これについて説明していただきたいと思います。
赤城副長官 お答えをいたします。
 SACOの最終報告を踏まえて、先生御指摘のように、ヘリコプターの着陸帯を北部訓練場の残余の部分に移設する、こういうことで、北部訓練場の過半を返還するということが目的でございます。そのために環境調査をやってまいりました。その中で、特記すべき種、絶滅のおそれがある種が発見され、さらに調査が必要、こういうことで、十一月の五日から継続環境調査に着手したところであります。
 その継続調査におきましては、実施区域六地区八カ所を示しまして、あるいは既設のヘリコプター着陸帯四カ所もあわせてこれを実施する。さらに、環境影響評価において一般的に用いられている内容、方法を基本として、ヤンバル希少種を中心に生態系に関してより詳細な調査を行う、そういうふうなことで、継続調査に十一月五日から着手した、今そういう状況でございます。
赤嶺委員 それはいつまでに報告する予定ですか。時間がありませんので急いでください。
赤城副長官 失礼いたしました。
 十一月五日から現地調査約一年、こういうことで着手したところでございます。
赤嶺委員 そのヤンバルの森というのは、自然に対する影響が少ない地域を選んでヘリコプターの着陸帯をつくるというのは余りにも無理な熱帯雨林地帯です。山が全体として保護されないと、あの山にすむ希少動物も絶滅をしてしまうという地域であり、しかも、あれだけの亜熱帯雨林というのは、地球上であの地域だけと言われているほどのものです。皆さんの環境に影響の少ないところというのは、最初の話からして無理があるということを指摘しておきたいと思います。
 次に、普天間代替基地の移設について。もう場所も辺野古のリーフの上、内海ということを決めました。ジュゴンとリーフについても大変懸念をされます。きょうは環境省の方からも来ていただいていますが、時間がありませんので、ジュゴンとリーフについて少しまとめて説明していただきたいと思います。
小野寺政府参考人 環境省では、平成十三年度から三カ年計画でジュゴンの全般的な保護方策の検討のための調査を行ってきているところであります。十三年度分については、ことしの九月に調査結果を発表しております。調査は、沖縄本島周辺の海草藻場分布、航空機によるジュゴンの目視調査、胃内容物の分析及び遺伝学的調査等を行っております。
 十三年度の調査では、沖縄本島周辺の水深の浅い海域での藻場の分布状況が明らかになりました。また、ジュゴンの胃から確認されたことのあるリュウキュウスガモなどの海草の生育する藻場が本島全体で二千五十七ヘクタール存在することを確認しております。また、普天間飛行場代替施設の建設予定地の周辺海域におきましても、アマモを中心とする藻場が存在することを確認したところでございます。
 調査は、今年度も引き続き目視調査その他を継続しているところであります。
赤嶺委員 リーフについてもお願いします。リーフの説明、環境省。
小野寺政府参考人 予定地域内にかなり大規模なリーフが形成されております。外洋からの波浪に関しては、一定程度の波浪抑止の効果があると思っておりますし、またサンゴとしても、自然環境としてはすぐれたものであるというのが基本認識であります。
赤嶺委員 防衛庁長官に申し上げたいんですけれども、外務省にも申し上げたいんですけれども、皆さんが手をかけようとしているリーフ、そこを破壊するわけですが、二千五百メートルにわたります。リーフというのは、自然環境としても魚の産卵地としても環境問題としても大事ですが、沖縄にとってリーフの役割というのは、波を吸い込むんです。波を静かにさせるんです。ところが、海上に人工構造物をつくった場合に、波しぶきが陸地に飛んで、山を越えて飛んでいって、そして、リーフがある今日でも、台風のときの名護市の農作物の被害は塩害なんです。塩害を想像つかないほどエスカレートさせる。護岸をつくることによって逆に塩害が沖縄では増加をしております。護岸以上の人工構造物をつくるわけですから、名護市民の生活にとっても破壊的な影響を与える暴挙だということを指摘しまして、私の質問を終わらせていただきます。
田並委員長 次に、今川正美君。
今川委員 私も最初に、今月の十八日に大分県の日出生台並びに十文字原で実施された日米共同訓練に関してお尋ねをしたいと思います。
 先ほど他の委員からも質問がございましたが、石破長官、先ほど集会を中止するように求めたことはないという趣旨の御答弁がありましたが、この集会そのものは日出生台対策会議、大分県の平和運動センターや私ども社民党の大分県連合などが主催した集会で、約三百人ほどで行っております。
 新聞の報道をちょっと紹介してみたいと思います。この集会は、十八日午後四時過ぎから日出生台演習場正面ゲート前で行われたわけでありますが、その直前に陸自の西部方面隊の最高責任者である松川正昭総監が、ジープで訓練を視察中に集会前に来て、突然おりて岩崎代表らに詰め寄った。松川総監は次のようにおっしゃっているようですね。「「日米共同訓練はわが国への侵攻やテロに対するもので、北朝鮮への抑止力になる。反対集会が報道されることで、訓練内容が相手に知られるではないか。わたしはここの責任者だ」などと話し、反対集会の中止を求めた。」しかも、そういう総監の言動で集会は騒然となって、岩崎代行らは、反対することは自由だ、言論への抑圧ではないかなどと抗議して、総監は一緒にいた師団長ら部下らの制止を振り切って約五分間押し問答を続けた、これは大分合同新聞であります。
 それと、長官、ここにこういう写真が載っています。先ほど長官がおっしゃったように、日米共同訓練の意義を理解してほしいというふうに求めた写真じゃないですよ。迷彩服を着、食ってかかるような形相をしています。
 いま一つ同じような報道で、毎日新聞のこれは十九日付でありますが、
 松川総監がジープで現れ「責任者はどこだ」と岩崎議長らに詰め寄った。そして「日米が共同訓練することに抗議するとは何事か。マスコミを通じて訓練を実施していることを知られては困る。訓練は拉致問題で揺れる北朝鮮への抑止力にもなっている」などと集会の中止を求めた。
というふうにはっきり報道もされておりますが、まずこの事実確認をしたいと思いますので、御答弁ください。
石破国務大臣 先生御指摘の大分合同新聞、また毎日新聞、私も拝見をいたしました。新聞がすべて真実というか、事実ですね、事実かどうかというのは、これはわかりません。これは私も先ほど来申し上げておりますように、現場で見ておったわけではございませんので、これはVTRに残っておりますものを再生して検討してみました。
 本当にそのようなことを言っているかどうか。これはあくまでVTRに残っておるものを私どもが再生をして見たところでございますが、例えばこういうのがありますね。今の報道されると抑止力がどうのこうのというくだりでございますが、これはVTRを再生するとこういうことになっておるんです。
 我が国に対するいろいろな侵攻とかテロ作戦に対してもできるようにやっているのです、訓練をやっているのです。そういうことが、アメリカと自衛隊がやっているということが、これが報道されると、周辺の国が我が国に対して攻撃できない抑止体制ができるんです。だから我が国の安全ができるんです。
 再生をするとこういうことになるわけです。つまり、これが報道される、日本とアメリカがこういうような訓練をやっているということが報道され伝わることによって抑止力になるんだ、こういう言い方を松川総監はしておるわけであります。
 そうしますと、全く逆のお話になりますわけで、新聞によれば、こんなことが報道されたらどうするんだ、こういう感じになりますが、テープを起こしてみますと、これが報道されることで抑止力となるというふうに申しておるわけでございまして、したがいまして、先ほど赤嶺議員の御質問にもお答えをいたしましたとおり、この総監が申し上げておることと新聞報道との間には少し乖離があるような気が私はしておるわけでございます。
 したがいまして、私どもの調査、私どもが知り得る限り、先ほどの答弁で申し上げたような結論に到達をするわけでございます。
今川委員 実は、こういう出来事があったのは今月の十八日ですね。その二日後の今月二十日には、いわゆる日出生台対策会議、社民党の大分県連合、大分県平和運動センター、そして部落解放同盟大分県連合、この四者でもって陸上自衛隊西部方面隊の松川総監あてに抗議の申し入れ書を渡しております。
 その中で、今石破長官がおっしゃったこととかかわって申し上げておきたいのは、四項目要請をしておりますけれども、その四番目に、
 陸上自衛隊幕僚監部広報室と西部方面総監部広報室は、十八日当日の状況把握を進めた内容を発表されたようです。しかしながらこの状況把握なるものは、当事者の一方である私たちや現地で取材していた報道関係者から事情を聞くどころか、問い合わせすらも行わず身内だけで辻褄合わせをした欺瞞行為であり、無責任かつ権力的押し付け以外の何物でもありません。
というふうに言っているんですね。
 少なくとも、状況的に見れば、日米共同訓練の趣旨を理解してもらおうとして物を言った行為ではなくて、やはり明確にこんな集会はやめろというふうに強く求めているわけですよ。そこはいかがですか。
石破国務大臣 この日出生台対策会議、社民党県連合、平和運動センター、部落解放同盟大分県連合会の皆様方による申し入れ書も私も拝読をいたしました。委員御指摘の今の第四項目めでございます。そこで、つじつま合わせをした欺瞞行為であり、無責任かつ権力的押しつけ以外の何物でもないという御指摘をいただいております。
 ただ、これは私は責任逃れをするつもりも全くございませんし、権力的な押しつけをしていいとか欺瞞的な行為をしていいなどというのは思っておりません。仮に、欺瞞的なことがあったり権力的な押しつけをするというようなことがあるとするならば、それは、国民の皆様方に信頼していただいて成り立つ防衛庁・自衛隊としてあっていいことだとは思いません。
 それが本当に欺瞞的な行為であったかあるいは権力的な押しつけであったか、それは責任あるお立場の四者が共同して西部方面総監に申し入れられていることでございますので、私は、先ほど来申し上げておりますように欺瞞的行為があったとは思っておりません、権力的押しつけがあったとは思っておりません。しかし、そういうことがかりそめにもあるとすれば、そういうことはあってはならないことでございますので、もう一度調べてみたいと思います。
 ただ、これが、私も松川総監の立場に立って物事を考えているわけではありませんが、自衛官たちは本当に自分たちがやっていること、それを御理解いただきたい、反対をしておられる方々、先ほど立場が違うんだからというお話がありました。しかし、御理解をいただきたいという気持ち、この発露であるということは私は理解をしておるところでございます。それが権力的な押しつけということにとられるようなことがあったとすれば、それは考えてみなければならないことだというふうに思います。
 欺瞞的なことがあるかどうかは、私が今、繰り返しで恐縮でございますが、VTRを起こしてみる、そして理解をしたことと新聞の報道との間には乖離があるように思っております。
今川委員 先ほど石破防衛庁長官の御答弁の中で非常に気になったのは、新聞報道は必ずしも真実を報道するとは限らないという趣旨の発言はいかがかと思いますよ。ここはやはり報道機関に対する冒涜じゃないですか。だから、私は、わざわざ大分合同新聞と毎日新聞ととりあえず二種類、御紹介したのは、ほぼ変わらないんです。だから、あえて威嚇をしたとかしなかったとかという言葉じりをとらえるような言い方はしません。
 少なくとも、私も三十年以上、米軍とか自衛隊のもろもろの共同訓練とか、そういうものに反対する運動をずっと続けてきましたよ。今回みたいな事態というのは本当に驚きであり、初めてです。少なくとも、これは釈迦に説法だけれども、憲法二十一条、集会、結社の自由、あるいは十九条で思想、良心の自由、こういうことを頭から否定してかかる。
 石破長官、いいですか、長官がおっしゃるような日米共同訓練をやることによる抑止力あるいはそういう趣旨を理解してほしいと思えば、もっと別の機会に、どうぞ反対運動をやろうとしている皆さんおいでなさい、そこで自分らも誠心誠意訓練の趣旨を御理解願いたい、こういう姿勢がありますか。そういう場所はあるじゃないですか。少なくとも、訓練を視察するためにジープで来たら、途中、反対集会が三百人規模であっていた。激高したんでしょう、部下が制止をするのも振り切って五分間ほどやりとりしているわけですよ。
 だから、長官がおっしゃるようなことであれば、別の機会があり、もっと主体的に、反対運動のところに飛び込んでいくんじゃなくて、反対運動を組織しようとしている皆さんに、おいでください、そういうやり方があるじゃないですか。ちょっとケースが違い過ぎるんです。
 もう一点お聞きしておきたい。
 少なくとも防衛庁や防衛施設庁は、今回の共同訓練に関しては、北朝鮮とかイラクとか、特定の国を想定した訓練ではございませんというふうに広報を通して発表なさっているはずですね。ところがこの松川総監はそうではなくて、この共同訓練が北朝鮮に対する抑止力になると。これは防衛庁や防衛施設庁の公式見解と食い違いはしませんか。いかがですか。
石破国務大臣 今川委員が本当にこういうような運動にずっと長い間取り組んでこられて、その御見識に基づいて言っておられることにつきましては、私も日ごろから敬意を払ってお伺いしておるつもりでございます。
 その上で申し上げますが、先ほど新聞のことについてお話がございました。それはどういうことかと申しますと、先ほどから申し上げておりますように、この訓練をやっていることがわかるということが抑止力になるんだと松川総監は言っておるわけですが、それが報道によると、それが知れたら抑止力が壊れちゃうじゃないかというような、全く逆のことなのですね。
 私は、新聞の言うことは信用ならないとかそんなことを申し上げているわけではもちろんないのです。それが、VTRを起こしてみたものと新聞に書かれておることが全く逆だったものですから。私もこの新聞を読んで、これは一体どういうことだ、なぜこんなことを言ったのだということでVTRを起こしてみたんです。そうすると全く逆だったということであって、その事実が違うんだということで、新聞報道を信用しないとかそのようなことを申し上げたつもりは全くございません。そのことを御理解いただきたいと思っております。
 もっとほかの方法があるじゃないかということであります。それは、率直に言ってそのとおりだと思います。そこで総監がおりて日米共同訓練の意義について説くということが私は常態的なことだとは思いませんし、そういうことが伝えるのに最もいいやり方だということも思っておりません。それは本当に、反対される方々に、本当は我々シビリアンが、選挙によって選ばれ国民に対して責任を負うシビリアンがきちんきちんと御説明するということが一番必要なことだと思います。これは、これから先どうすれば御理解をいただけるかということで私どもも努力をしてまいりますし、このようなやり方が決していいものだとは思っておりません。
 そのことについて現場の、本当にお立場は違うにせよ、一生懸命反対しておられる方々に威圧的な行動というふうにとられることがあったとすれば、それは私としては遺憾なことだというふうに思っております。ほかの方法があるということで、私どももそのことをよく考えていかねばなりませんし、シビリアンたる我々が一番心しなければいけないことだと思います。
 最後に、北朝鮮についてどうだということでございますが、これもVTRを起こしてみますと、反対しておられる方々が、この訓練、この関係は、つまり日米共同訓練のこの関係は北朝鮮を対象にしてやっているんですかというお尋ねがあって、松川総監は、いいえ、我が国に対するいろいろな侵攻とかテロ作戦に対してもできるようにやっているのです、そういうことが、アメリカと自衛隊がやっているということが報道されると、周辺の国が我が国に対して攻撃できない抑止体制ができるんです、だから我が国の安全ができるんですというお答えをしておるわけであります。反対をなさっておられる方々が北朝鮮かとお尋ねになって、そして松川総監は違う、いいえというふうにお答えをしておるということが、私がVTRで知り得た情報、知識でございます。
 したがって、北朝鮮を特定してやっているというようなことを総監が申し上げていた事実は私は承知をいたしておりません。
今川委員 先ほど石破長官は、これからもさらにこの調査をしたいとおっしゃったんですね。どういう調査なんだろうかと思うんですね。そのVTRというのは陸自の側が撮ったVTRなんですか、マスコミですか。
石破国務大臣 これは、陸自はそのようなVTRを撮影いたしておりません。これは、二十日十八時二十六分、午後六時二十六分からの大分放送、OBSにおける報道を起こしたものでございます。
今川委員 恐らく石破長官、早ければ来週にも、今回反対集会をし松川総監あてに抗議の申し入れ書を出した諸団体が上京しまして、石破防衛庁長官のところに申し入れをするのかと聞いておりますが、いずれにしても、防衛庁長官の方には当然陸自の西部方面隊とかそういう下部組織からはそれなりの報告が上がったんでしょうけれども、やはり両方からきちっと、できるだけ具体的に事実関係はどうだったのかということを聞いていただきたいと思うんですね。私も、昨日大分の方に、平和運動センターなどに、電話での確認ですので、実際に足を運んで、どうだったかということももう一度調べてみたいと思います。
 少なくとも、ただ私がいろいろな電話で事情聴取をするなり新聞報道を見る限り、この松川総監がそういう憲法を頭から否定するようなやはり言動があったのであれば、これは即刻罷免ものですよ。こういうことが仮にあったのであれば、その自衛隊という組織はもたないと思います。そこはきちっとしたけじめをつけるべきだと思います、事実確認を前提にしてですね。
 さて、時間がほとんどないんですが、外務省の方にちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
 今、イラクに対して大量破壊兵器の査察が本格的に始まろうとしておりますが、仮にイラク査察が失敗した場合に米国がイラク攻撃に踏み切ったときに、日本政府としての対応を前回お尋ねしたときには、予断を持って判断しないんだという答弁があったけれども、これに対して私は、少なくともまだそういう最悪の事態を迎える前に、こういう冷静なときに国民に対してきちんとした説明と、少なくともこの国会の場できちっとした議論をしておく必要があるというふうに申し上げました。いま一度基本的なお考えを示していただきたいと思います。
川口国務大臣 まず前提として、イラクに対して武力行使が行われるということが決まったわけではないということを前提に申し上げたいと思いますけれども、したがって一般論として申し上げれば、いろいろな問題が起こっているときに政府として国民の皆様に御説明をできるだけ申し上げて御理解をいただく努力をするということは必要だと私は考えています。
今川委員 説明になってないんですよ。もうちょっと時間がありませんから一点だけ確認しますよ。
 これは今月十九日の新聞なんですが、「外務省は十八日、米国によるイラク攻撃が行われた場合を想定して、クウェートとイスラエルから在留邦人をどう避難させるかというシミュレーションを行った。作業手順の確認が目的だという。」これは実際にあったんですか、どうですか。
川口国務大臣 十一月十八日に模擬訓練はいたしております。
今川委員 こういうことは必要なんですね。だから、十八日行った。つまり、もし米国がイラク攻撃をしたときを想定して、そういう具体的な訓練というのをしているじゃないですか。
 同じような意味合いにおいて、イラク攻撃があった場合に我が国政府としてどういう対応をするのか、幾つかのシミュレーションが描けると思います。先ほども、日本経済にどういう影響が及ぶだろうかということを、一定の見解が示されました。そういう議論をきちっと今の時点でやっておくべきだと思うのですよ。そして、やはり国民の皆さんがなるほどということで、政府の方針に十分な理解を示していただけるというふうにしておかないと、まさに一年前、テロ対策を理由にして自衛艦を派遣しました。十一月九日でした。そのように泥縄的にやるのではまずいという言い方をしているのですよ。
 その点をもう一度お答えください。
田並委員長 簡略にお願いします。
川口国務大臣 まず、イラクに対してこれから査察が行われようとしているわけですし、国際社会は、それをイラクがきちんと行って、平和的に問題が解決をされるということのために努力をしているわけでございますので、今の時点で、イラクにおける査察が失敗をしたとか、あるいは米国が軍事行動をとることを決定していない時点で、その場合にはどうかということを仮定して物事を申し上げるというのは非常に難しいということを申し上げたいと思います。
 それで、その上でさらに、仮に軍事行動が開始をされたというときの我が国の対応ということで申し上げますと、我が国として、これはイラク問題についての基本的な立場を踏まえながら、国際社会の一員としてどういう役割を果たすべきかといった観点から、適時適切に対応をし得るような種々の検討を行っておりますけれども、現時点で何ら具体的なことを決めているわけではない、そういうことでございます。
今川委員 もう時間が来てしまいました。また次回にやりたいと思うのですが、今、十八日に外務省がそういうシミュレーションを描いて作業手順の確認をやったということを片一方でやっているわけですから……
田並委員長 今川委員、申し合わせ時間を過ぎましたので、簡潔にお願いします。
今川委員 もうこの時点で具体的に提示しなきゃいかぬのですよ。
 時間が来ましたから、きょうはこれで終わります。
     ――――◇―――――
田並委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 国の安全保障に関する件、特にテロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画の変更及びイラク情勢等について調査のため、来る二十六日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る二十六日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十二分散会


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