衆議院

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第2号 平成16年2月26日(木曜日)

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平成十六年二月二十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小此木八郎君

   理事 岩屋  毅君 理事 小島 敏男君

   理事 高木  毅君 理事 仲村 正治君

   理事 大石 尚子君 理事 長島 昭久君

   理事 細野 豪志君 理事 赤松 正雄君

      赤城 徳彦君    大前 繁雄君

      嘉数 知賢君    北村 誠吾君

      佐藤  錬君    中谷  元君

      林田  彪君    古川 禎久君

      山口 泰明君    大出  彰君

      小林 憲司君    佐藤 公治君

      高山 智司君    西村 真悟君

      前田 雄吉君    松本 剛明君

      渡辺  周君    遠藤 乙彦君

      御法川信英君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   安江 正宏君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 兒玉 和夫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  青木  愛君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  高山 智司君     青木  愛君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

小此木委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大石利雄君、防衛庁防衛参事官安江正宏君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、外務省大臣官房審議官兒玉和夫君及び外務省北米局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小此木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小此木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲村正治君。

仲村委員 きのう、きょう、あしたと、北朝鮮の核問題についての六カ国協議が進められております。我が国としては、核問題と同時に、拉致問題も解決をしていかなければならない。かたずをのんでその成果を見守っているところでございますけれども、ただ、あっと驚くような成果を得られないにしても、一歩でも二歩でも前進していくことを願っているわけであります。

 そのことについてきょうはコメントを求める気持ちはございません。私は、去る十九日の石破防衛庁長官と川口外務大臣の所信に対する若干の質問をいたしたい、このように思っております。

 両大臣とも、在日米軍基地の七五%の集中している沖縄県の負担軽減のために、SACO最終報告の着実な実施に真剣に取り組む、こういうことを表明されました。しかし、その一週間前の二月十三日の一部の報道で、米国はSACO最終報告の普天間基地の代替施設なしでの返還を日本政府に打診した、こういう報道がなされているわけでございます。もし、アメリカが普天間基地の代替施設なしで返還をしていいと言うなら、これはもう私たち沖縄県民として願ってもない話だ、このように思っております。

 しかし、今申し上げましたように、二月十九日には石破大臣も川口大臣も、SACOの最終報告の着実な実施に真剣に取り組む、こういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、この二月十三日の報道のように、米国が普天間基地の代替施設なしでの返還を日本政府に打診した事実があるのかどうか、明確にお答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 そのような打診、辺野古沖への代替施設の建設にかわる案について米側から打診を受けているという事実はございません。

石破国務大臣 今外務大臣から御答弁がありましたとおりでありまして、そのような内容につきまして日米間におきまして話し合った、あるいは米側から打診があったというようなことは、事実としてはございません。

仲村委員 私たちは、この二月十三日の報道を見て、沖縄県出身の自民党の衆参議員が集まって、外務省と防衛庁の担当を呼んで、この報道に関しての事実関係をただしたわけであります。その中には、何日にだれとだれと会った、何日にだれとだれと会ったと、もう本当に、日本政府とアメリカが緊密に連絡を取り合っているというようなことがはっきり書かれているわけでございます。

 その件について、先ほど申し上げましたように、もし米国が代替施設なしで返還していいということであれば、これにこした話はないわけです。それは、普天間基地の移設というのは期間的にも相当長期間かかる、資金の面でも三千五百億から五千億ぐらいかかると言われておりますので、我が国にとっても、米国がそういう気持ちがあるならぜひ真剣に取り組むべきだということを話しましたら、アメリカは終始一貫SACO最終報告の着実な実施を求めている、作業がおくれていることについてある意味でしびれを切らしていることはあるけれども、早くその実現をしてほしいということを絶えずアメリカ側から求められているのであって、報道のようなことは事実無根である、こういう説明であったわけでございますが、今両大臣とも、そういう話を聞いたことはない、こういうふうに言っておられるわけであります。

 その報道の後、石破長官も川口大臣も、全くその話は聞いていない、こういうことでございますけれども、もう一度、今私が申し上げたように、何日にだれとだれが会った、何日にだれとだれが会ったと、こういう状況の中からして、果たして今両大臣がおっしゃったようなことでいいのかという気持ちを持っておりますので、再度ひとつ確認をしたいと思います。

川口国務大臣 何日にだれとだれが会ったということについては、これは日米、同盟国という関係でございますから、我々はワシントンであるいは東京で日本とアメリカの間の両国の政府のコンタクトというのは、それは頻繁にございます。ございますが、先ほど先生がおっしゃったような普天間飛行場の移設、返還、これにつきまして代替施設なしに返還をするといったような打診、辺野古沖についてそれにかわる代替案等といったような、そういった打診、それは全くございません。

石破国務大臣 報道にありますような日米間の緊密な協議というものは常に行っておるところでございます。私も、担当者から逐次報告は受けておりますが、その中において、先生御指摘のような、あるいは報道に出ておりますような、そういうようなお話があったという報告は受けておりません。

仲村委員 私は、ただいまの両大臣のお答えを信じたい。しかし、二月十三日に引き続き二月二十日にも同じような報道がより綿密に書かれております。NHKもその件で報道しております。地元の新聞も連日それに関連しての報道がなされておりますので、私たちの立場として、何らかのやはり動きがあるなということを感じざるを得ないのであります。

 なぜなら、私たち沖縄県民の立場からすれば、米側が代替施設なしの返還でよいと言うなら政府は直ちにその米側の提案を受け入れるべきである、そのように思っておりますが、もし米側から代替施設なしでの返還というようなことで話し合いが持たれた場合にどういう対応をされるのか、お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣 もしなされたらということでございますけれども、我々が承知をしている限りは、米国も日本もSACOの最終報告の実施ということをずうっとコミットしているわけでございますから、そういうことがあるかどうかという仮定の話、そういうことを前提にして日本政府としてどうですと申し上げるのは難しいですけれども、ただ、はっきり申し上げられることとして申し上げたいのは、これは、普天間飛行場の移設、返還について、SACOの最終報告あるいは既にできている代替施設の基本計画、これを踏まえて今まで密接に米側と協議をしてきたという経緯があるわけです。したがって、それを見直すということは全く想定しがたいことであるということであります。

 普天間飛行場が、私も実際に現場で見ましたけれども、非常に市街地の密集している、住宅がびっしり並んでいる中にある状況であるということで、住民の方は非常に不安に思っていらっしゃる、このお気持ちというのはよく理解をいたしております。したがいまして、引き続き、平成十一年の閣議決定に従いまして、地元の公共団体の方々と協議を続けながら、このSACOの最終報告、これに取り組んでいく、普天間飛行場の移設、返還、これに全力で取り組んでいくという気持ちに変わりはありません。

石破国務大臣 二点を考えていかなきゃいかぬのだろうと思っています。

 一つは、抑止力というものが効果的に維持をされなければいかぬということが一つ。もう一つは、沖縄県民の方々の御負担というものを十分に念頭に置いていかねばならない。総理がおっしゃいますように、我が内閣の大きな課題の一つは、沖縄の方々の御負担を軽減することである。これは、政府の確固たる方針であり、私もラムズフェルド長官と会談をしますときに常に申し上げておるところでございます。この二つを念頭に置きながらやっていかねばならないことだというふうに考えております。

 まだ具体的な提案があったというようなことは、全くございません。私ども、そういうことを予測しておるわけでもございません。したがいまして、抑止力が効果的に維持をされるということ、そして沖縄の皆様方の御負担を軽減するということ、この二つを実行していかねばならないのだろうと思っております。

 先生、一番よく御案内のとおり、普天間の代替飛行場というものが、進捗状況が必ずしも完璧に順調にいっておるわけではない、その理由はそれぞれの理由のあることでありまして、先生がよく御案内のとおりであります。

 私どもとしては、SACOの着実な実施ということに全力を傾けるという方針に全く変更はございません。

仲村委員 SACOの最終報告というのは、平成八年の四月十二日にモンデール大使がSACO中間報告を発表して、十二月二日にSACO最終報告が発表されたわけでありますが、それは、十一施設、約五千ヘクタールを返すと。今の七五%が、これだけ全部を返せば七〇%に下がっていく、そういう状況でございましたが、私たちとしては、決してSACOの最終報告というのはベストの基地の返還ではない、しかし、ベターとして、今の段階でできるのはこれしかないということで、私たちはそれを、ぜひ着実な実施を求めているわけであります。

 この十一施設の中で、どんどん終わったのもありますし、ただやはり、普天間基地だけはその十一施設の中の象徴的な問題でありますが、時間もかかるし金もかかるということで、そういうスピードしかできぬのかなということは私たちはよく理解をしております。

 ラムズフェルド国防長官が昨年十一月十五日に沖縄に来られたときに、上空から沖縄の米軍基地を視察して、特に普天間基地の状況を見て、町の真ん中にこんな基地があって事故が起こらないのが不思議だ、その後、帰国をしてから、代替施設なんてもう死んでしまっている、こういうことで、国防総省に対してSACOの最終報告の見直しを指示した、そして国防長官の意向を受けて昨年末に外務省と防衛庁にも伝えられた、こういうことが書いてありますけれども、その件はどうでしょうか。

川口国務大臣 昨年、ラムズフェルド国防長官が日本にお見えになったときに沖縄に行かれたということは事実でございます。そのときに、沖縄で、沖縄にある米軍の施設・区域も視察をなさったということと承知をしています。

 ただ、そのときにラムズフェルド国防長官が何をおっしゃったのかということについては、直接にその確認をすることができない。これは、アメリカ政府部内の問題でございますから、我が国の立場、我が国の政府の立場として、相手国の政府の、政府部内の問題について一つ一つコメントをしていくということについては差し控えたいと思います。

石破国務大臣 ラムズフェルド長官が普天間をごらんになって、とにかく、先生がおっしゃいますように、こんな町の真ん中に飛行場があるということは、これは住民にとっても、あるいは米軍にとっても危険なことである、早急に何とかしなければならないというような趣旨の御発言をされたということは、報道では承知をいたしております。しかしながら、ラムズフェルド長官がその後で、代替施設の建設も進まないので、代替施設なしの返還ということも考えるようにというような、そういうような趣旨の御発言をなさったというようなことは、私ども聞いておりません。

 ラムズフェルド氏が沖縄に行かれる前日に、私もかなり長い時間会談をしておりますけれども、その折も、我々としては、沖縄県民の御負担を軽減しなければならない、日本政府としてはその強い意思を持っている、したがって、SACO最終報告の着実な実施ということを申し上げたところであります。そのことは、米側もよく理解をしていることだというふうに承知をいたしております。

仲村委員 ラムズフェルド国防長官が沖縄を視察して、帰られてから国防総省内でどういう話をしたかは、それはそういう話があったかもしれないという外務大臣のお話でございますが、SACOの最終報告の見直しを国防総省に命じて、そしてその協議が、国防長官の意向は昨年末に外務省と防衛庁に伝えられた、こういうふうに言っておりますが、その点も全く、アメリカ側からのその件の話し合いをしたということはないんですか。もう一度確認します。

川口国務大臣 先ほど来、何回か申し上げておりますように、国防省、米国政府から、普天間基地について、代替施設なしの返還といったような打診が日本政府に対して行われているという事実はございません。

仲村委員 次に、今月三日にアーミテージ国務副長官が東京都内で石破長官とひそかに会談した中で、SACO最終報告の見直しを検討したい、こういうことで協議の開始を求めた、こういうことを言っておりますが、その件について石破長官のお答えをいただきます。

石破国務大臣 アーミテージ氏は、日米外務次官級戦略対話に御出席になるために来日された、その機会に私もアーミテージ氏と意見交換を行ったということは事実であります。

 私の方から、沖縄の負担軽減というものを我が国は強く望んでいるということを強く申し上げました。アーミテージ氏より、そのことはよくわかっているというふうに発言がございまして、私に対しまして副長官が、SACOの最終報告の見直しを検討したいでありますとか、代替施設の建設を普天間飛行場返還の条件としないというような意向が示されたというような事実は全くございません。

 日米間におきましては、いろいろなレベルにおきまして在日米軍の軍事体制の見直しについて緊密に協議をしておるわけではございますけれども、具体的内容につきましては、これは申し上げることはできません。繰り返しになりますが、その際に副長官の方から、SACO最終報告の見直しの検討というような御発言は一切なかったものでございます。

仲村委員 そもそも、SACO最終報告十一施設の中でも、普天間基地は象徴的な問題でございます。十九日の両大臣の所信の中で、政府はSACO最終報告の着実な実施に真剣に取り組む、こういうことをおっしゃったわけであります。これは、私たちとしては理解できる話でありますが、ただ、今私が一連の報道について、二月十三日、二月二十日、これは一部の報道ですが、それからNHKも言った、地元の新聞も連日そのことを書いておるわけでございますけれども、そういう話と今両大臣の答弁とは全く整合しないところがあります。何かあったのではないかという気持ちを、これはもう払拭することはできません。

 私たちとしては、あってほしい話なんです。しかし、今の御答弁では、全くそういう話はないということでありますので、それはそれとして受けとめておきたいと思っております。

 米側は、ブッシュ政権が進める米軍の変革・再編、いわゆるトランスフォーメーションが、在日米軍の構成見直しとして、横田の空軍基地を嘉手納基地に移動させることが検討されていると言われております。これは全く受け入れられる話ではありません、私たちの立場からすると。さらに、沖縄県内でも、一部の人が普天間基地の嘉手納統合をしきりに言っております。これは、嘉手納基地周辺の市町村が全部反対しております。

 外務省や防衛庁で、普天間基地の嘉手納基地への統合を考えたり、あるいは米側から統合についての具体的な提案を受けたことがありますか。お答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 普天間基地を嘉手納基地に統合するという点についての打診を米側から受けたという事実はございません。

石破国務大臣 私もございません。

仲村委員 この件もいろいろな形で、アメリカがトランスフォーメーションの中で、横田基地は嘉手納に統合するとかそういう話がありますけれども、もしそのようなことを日本に提案された場合にどういう対応をするのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 普天間基地につきましては、政府の考え方というのは、先ほど申しましたように、平成十一年の閣議決定に従って、地元の地方公共団体の方々と御相談を、協議をしながら進めていくということでございまして、これにいささかの揺るぎもございません。

石破国務大臣 米国政府といたしましても、私ども日本政府がSACOの最終報告の着実な実施に向けて全力を尽くしたいという意向は、よく承知をしておるところであります。したがいまして、私は、普天間基地の嘉手納統合というようなことが今まで米側から提案があったこともございませんし、米国政府もその日本政府の立場、沖縄の県民の方々の御負担を減らすために私どもとしてSACOの最終報告の着実な実施に向けて全力を傾けるという立場は、よく承知をしておるものだと考えております。

 したがいまして、もし仮にそういう提案があったらということでございますが、米国政府としても、我々日本政府の意向というものを十分に承知の上で、今後ともいろいろな政策をとっていかれるものというふうに承知をいたしております。

仲村委員 今、アメリカのトランスフォーメーション、いわゆる変革と再編ということでいろいろなことが報道されております。在日米軍基地についての、増強する、削減をするということについては、少なくとも日本政府との調整が必要である、私はこのように思っております。

 特に、今イラクに沖縄から三千人海兵隊が行っているというんですが、これは、沖縄には帰ってこないでそのまま本国に帰ると、その三千人をまた補強するのかということについて、私たち非常に関心を持っているんです。とにかく、三千人イラクへ行って、そのまま本国に帰して、もうその補強をしなければありがたい話だと思うんですが、その件について御見解をいただきたいと思います。

川口国務大臣 今沖縄にいる三千人の、沖縄に三千人だったかと思いますけれども、海兵隊がイラクに行くということについては、事前に通報は、話は聞いております。その人たちが終わった後、七カ月であるというふうに記憶をいたしておりますけれども、イラクでの仕事が終わった後、アメリカに帰るのか、あるいは日本に、沖縄に戻ってくるのか、そういったことについては、我々としては承知をしていないわけでございます。

 いずれにしても、米軍の運用のことにつきましては、我々から申し上げる立場にはないということであります。

 それで、その間、我が国における抑止力の低下、これがあってはいけないので、それがないように一時的にいろいろな措置をとるということを米軍から聞いております。ただ、それは一時的な、あくまで一時的な措置であって恒久的なものではない、本来最適な形ではないので、それはできるだけ早くまた最適な形に戻すということにしたいというのが米軍の意向であるというふうに思います。

仲村委員 きょう質問した一連の報道は、ブッシュ政権が進めようとしている全世界に配備された米軍のトランスフォーメーションの中で、在日米軍の構成見直しの具体的な作業として頻繁に普天間基地問題が取り上げられているものだと私は思っております。私の質問に対しましては、すべてその報道に、全くわからないと否定する答弁であったわけでありますが、それはまだ表に出せないということなら、それ以上私は追い詰める気持ちはありません。

 それはそれとして、もし本当に米側が、ラムズフェルド国防長官が普天間基地を上空から視察した後に、帰国して、代替施設の計画自体はもう死んでいる、こう言ってSACO最終報告の見直しを国防総省に指示をした、こういうことをさっきも申し上げましたが、これはもう私は間違いなくそのようなことを指示した、こういうふうに信じたいです。

 もし米側が代替施設なしで普天間基地を返還するということを正式に我が国政府に持ちかけられたときに、これは我が国としてどういう対応をするのか。私は喜んで受けるべき話だと思いますが、その件について両大臣から御答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 我が国といたしまして、そのSACOの最終報告を実施していくということについて変わりはないわけでございまして、普天間飛行場の移設、返還につきましては、平成十一年の閣議決定、これに従って、いろいろな経緯があって閣議決定に至った話でございます、この閣議決定に従って、地元の地方公共団体の方々と御相談をしながらこれに全力で取り組んでいくということに変更はございません。

仲村委員 いや、今答弁、アメリカがそういう話持ちかけられたら、どう我が国としてあれするかということです。

川口国務大臣 米側が、今までのそういった経緯があって、SACOの最終報告ですとか、それから代替施設の基本計画を踏まえて米側と緊密に協議をしてきたという経緯があるわけでございます。したがいまして、米側からそういうような話がある、今まであったということはないというふうに申し上げていますが、今後あるということは、我々としては想定しがたいというふうに思っております。

 それで、どういう状況であれ、我が方の方針というのは、先ほど申しましたように、平成十一年の閣議決定、そして沖縄の地元の公共団体の方々と御相談をしながらこれを進めていくという方針に変更はないということでございます。

石破国務大臣 繰り返しの答弁になりましたら申しわけありませんが、要は、沖縄の県民の方々の御負担はとにかく減らさなければいかぬということでございます。一方で、抑止力は実効性を確保していかねばならない。この両立をするためには、SACOの最終報告を着実に実施をすることだということでアメリカと日本政府というのは認識の一致をしておるわけでございます。

 したがいまして、もしアメリカからそのような提案があったらどうだという先生のお尋ねでございますが、その場合に、一体どのような条件がつき、どのような形になっておるかということが全くわかりません。

 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、その二つを満たすというのがSACO最終報告の着実な実施であるというふうに考え、米側ともそのようにお話をしてまいっておるところで、そこにおいて両国の認識に相違があるとは考えておりません。

仲村委員 最後になりますけれども、やはり世界情勢は時々刻々変化していくわけです。アメリカも今、先ほど申し上げたように、変革・再編、いわゆるトランスフォーメーションで、世界に駐屯している米軍を全部整理していこうというような考え方がありますので、確かに、SACO最終報告を決定した時点では、我が国政府としても決定に従ってやろうということは、それはわかりますよ。しかし、今申し上げたように、変革と再編の中で、米軍としては普天間基地はもう代替施設なしでいいじゃないかという考え方に変わってきていると思うんです。その場合にどうするかということをお尋ねしているんです。

小此木委員長 質疑時間が終了しておりますので、最後に石破長官。

石破国務大臣 政府の立場は今まで申し上げたとおりであります。

 ただ、先生がおっしゃいますように、トランスフォーメーションというものが、軍事というのは時々刻々変わっていくものでございます、その中においてどうなっていくかということは、それは私どもとしても考慮しなければいけないことだとは思いますが、現時点におきまして、SACOの最終報告の着実な実施ということにおいて米側と私どもに認識の相違はないということでございます。

 私どもとしては、この着実な実施に向けて努力をしてまいるということに変わりはございません。

仲村委員 ありがとうございました。

小此木委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、石破長官、川口外務大臣、また逢沢外務副大臣、毎日激闘御苦労さまでございますが、先般行われました所信表明に対する質問を若干させていただきます。

 その前に、安全保障委員会に所属すること延べ約十年の私にとりまして、最初に所感を申し上げたいなという気分に駆られております。

 といいますのは、今から約十、正確に言うと十一年前、平成五年でありますから、当時、私、当選を初めてしたばかりのときの国会は、文字どおり、安全保障委員会の与党側の筆頭理事が大出俊先生で、野党側の筆頭理事が山崎拓先生という、極めて、今から思えばへえという感じがする布陣でございました。ということと同時に、もちろん公明党も与党に入っているわけですけれども、もう一点、この安全保障委員会において、日本共産党、社民党の方が一人も所属しておられないというこの事実は、大変に、私のように五五年体制打破というものを目標にして一生懸命頑張ってきた人間にとって、非常に深い意義を感ずるものでございまして、この流れは逆流させてはいけないなという感じがするわけですが、それは選挙があってどうなるかわかりませんけれども。

 要するに何が言いたいかといいますと、極めてこの安全保障委員会においても建設的な、健全な議論が恐らくこれからなされるであろう、とりわけ、私よりも、私から後の松本剛明委員以下の民主党の三人の方の質問が非常に重い意味を持つだろうと。過去における非常に空想的なお話じゃなくて、建設的な議論が石破さんや川口大臣との間に展開されるだろうということを非常に私は意義深いと思っている一人でございまして、そういうふうな所感を申し上げさせていただいて、長官、外務大臣に対する、所信表明に対する若干の質問をさせていただきます。

 まず防衛庁長官にお聞きしたいんですが、防衛庁長官の所信表明の中に、ポスト冷戦からポスト九・一一へとの時代認識を私は強く持っていますと。ポスト冷戦からポスト九・一一。明確に、かつての冷戦期からポスト冷戦、そしてポスト九・一一というふうに二つに分けて、そして時代認識を強く持っている、こうおっしゃっているわけであります。

 まず最初に、そうしたポスト冷戦並びにポスト九・一一、この両者の若干の違いを、もちろん込めておっしゃっているんだろうと思いますけれども、そういう時代認識について若干敷衍して述べていただきたい、そんなふうに思う次第でございます。

石破国務大臣 これは、先生から常に御教授をいただき、私も考えを整理しておるところでありますが、要は冷戦期というのは、ある意味とても戦争がないことが長く続いた時代だったんだろうと思っています。それは何でなんだということを考えたときに、結局、西側、東側というものがあって、アメリカ合衆国が日本に原子爆弾を投下した、これは大変ということでソ連も原子爆弾をつくった、ソ連が人工衛星、弾道ミサイルと技術は一緒ですから、これをつくった、これは大変ということで合衆国もそれをつくったというようなことで、要するに、軍事力が均衡することによって、バランスが保たれることによって戦争のない状態が続いたというのが私は冷戦期だっただろうというふうに思っています。それは、対称的というんでしょうか、いわば鏡に映したようにという意味での対称ということなのですけれども、戦闘機には戦闘機、ミサイルにはミサイルというようなこと、そしてまた、主体も主権国家同士であったということだと思います。

 冷戦が終わってめでたしめでたし、これで世界は平和になる、平和の配当だというようなこともあの当時ございましたが、どうもそれはそうではなくて、バランスが崩れてしまったということによって、それまで顕在化しなかった民族であるとか宗教であるとか領土であるとか、そういうものをめぐる紛争というものがあちらこちらに起こるようになりました。決して、冷戦の終結というものは平和の到来を無条件に意味するものではないというところまでがポスト冷戦の発想だっただろうと私は思っています。

 ところが、九・一一という話になりまして、何が起こったのかといえば、まさしく非対称的脅威、国家に対してあのようなテロリズム、そしてまた、今まで戦闘機だ航空母艦だミサイルだというものであったのが、民間機を乗っ取ってというようなことであって、その主体もそしてまた手段も完璧に非対称ということになりましたということだと思います。

 ですから、手段並びに主体においてまさしく非対称的脅威とどのように闘うのかということが、もちろん対称的脅威もなくなったとは申しませんが、それに対する備えもしなければいけませんが、非対称的脅威、主体にしても手段にしても、そしてまたその手段が大量破壊兵器あるいはその運搬手段たるミサイルということになってきたときに、これは一体どうするのだということだと思います。それが私は、ポスト九・一一として、私どもは本当にそれに対してどうするのだという答えを、我が国としても、国際社会としても出していかねばならない、それがポスト九・一一だと私は認識をいたしております。

赤松(正)委員 主体もまた手段においてもその非対称化を著しく強めているこの国際情勢の中でどう対応していくか、今の長官の御答弁では、最も主たる軸として、いわゆるミサイルディフェンスということを考えておられるんだなということがわかったわけでありますけれども。

 ポスト冷戦並びにポスト九・一一のとらえ方というのは、大筋でもちろんそう大きく違うものではないわけですが、今、日本を含めて国際社会の中で、強く、いろいろな論者、いろいろな学者、文化人、あるいは政治家も含めて、さまざまな議論が噴出してきているということの一つの例として私はぜひ挙げたいと思うのは、要するに、そういうふうに長い間の冷戦、そしてポスト冷戦、つかの間のポスト冷戦と言ってもいいかもわかりませんが、その後にポスト九・一一が来た。これは言ってみれば、先ほどの、民族、人種、宗教、こういった冷戦時代に封じ込められていたものが噴出してきているということですが、形を変えて言うと、一つの国の中におけるそういう事象、出来事に対して、大きな国家がそれに対して介入をするという事態も、いわゆるコソボを初めとする事件、あるいはまた今回のイラクもそういう見方が、私は必ずしもそういう見方をとらない、私は、十三年戦争という、湾岸戦争から今回のイラク事態はワンパックで、十三年戦争としてとらえるべきだ、こう思っているんですが、当のアメリカが余りそのことを認めてくれないので、非常にちょっと困っているんですけれども。

 そういう私のとらえ方からしますと、そういう他国に対する人権を口実にしての介入、あるいはまた、いつどこでどういう形で国際テロが起こるか知らない、こういう状況に対して、要するにそれにどう対応するかという日本の主体的な準備というものが、果たして、今長官がおっしゃっているミサイルディフェンス、もちろんこれも重要でありますけれども、それ以外にいろいろな対応をしていかなくちゃいけないんじゃないか。その対応していく状況の中で、いささか物事の考え方において若干の混乱を来しているんじゃないかという側面があるということを次に少し指摘したいと思うんですね。

 それは、長官御自身の言葉をかりますと、先ほどの、時代認識を強く持っておるという言葉の後で、五行ぐらい後に、要するに自衛隊の変化、存在する自衛隊から機能する自衛隊へと変化している、これにこたえるために、憲法の範囲内において、憲法の範囲内において、いかに抑止力が実効性を持ち得るか日々検証する、こうおっしゃっているわけですね。この憲法の範囲内という言葉が極めてくせ者でございまして、私どももしばしば憲法の範囲内ということを使います。ただ、この憲法の範囲内をめぐっては、いささか同床異夢というか、言う人、聞く人それぞれにいささかの食い違いがあるのではないかという感じがするわけですね。

 先ほど、冒頭に、大変申しわけない言い方ではありましたが、社民党、共産党の皆さんがいなくなったということは、極端に言えばというか、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、この二つの政党の皆さん、私はかつて憲法調査会で、日本が攻められたらどうするのかということをこの二つの政党の代表の人に、一人一人に聞きました。そうしたら、社民党の方は、何もしない、無抵抗、されるがまま、これが一番いいんですと言いました。日本共産党の方は、警察力で対応すると言いました。これは非常にある意味で戯画化した言い方かもしれませんが、明確にそう答えていますから。若干、共産党の人の場合はいろいろ条件つきがあるんですけれども、こういう議論。つまり、それはなぜか。それは、日本に自衛権が認められていない、自衛隊は憲法違反の存在であるからということなわけであります。

 そういう議論がなくなったということは非常にいいんですが、その後に今度来るべきものとして、いわゆる集団的自衛権問題というものがあると思うんですね。だからこれは、集団的自衛権問題について、今もう面倒くさいので一々細かいことは言いませんが、長官は恐らく、法制局見解に依拠したことを今防衛庁長官としては言わざるを得ないという側面がおありだろうと思うので、あえてそのことを細かく、定義だとかどうとか言いませんが、ただ、私は、今ここで強く強調したいのは、集団的自衛権の問題については、自衛権そのものを個別、集団に分けることに意味がない。

 例えば、ついせんだって、参議院の憲法調査会で佐瀬昌盛さんが来て、私は彼の、文字どおり「集団的自衛権」という本もしっかり読ませていただきました。彼の主張はよくわかります。個別と集団を分ける意味がないという、この主張はわかります。ただ、その主張と、もう一つは、「日米同盟の絆」を書いた坂元一哉さんが同じ場所で、集団的自衛権と海外派兵とは違うんだ、分けてほしいと。海外派兵と集団的自衛権は違う、ぜひとも分けて国会では議論してほしいということを懇願するように言われておりました。このこと。それから、朝日新聞の田岡俊次さんがややそれに近い形で、いわゆる海外における直接戦闘的行動というものについて、日本が例えばアメリカからそういうものに参加を求められた場合それはオーケーできない、しかし、もっと認めていい集団的自衛権というものもあるという、仕分けの話をしていました。

 あるいはまた、この間、中谷元前防衛庁長官が、やはり憲法調査会の場において、要するに日本が、自分の国、国益、正確な言葉を引かなくちゃいけませんが、自国の利益を守るための憲法九条行使としての自衛権と、それから国際的社会における利益を守るための自衛権と分けなくちゃいけない、そういうふうな意味合いのことをおっしゃっていました。

 つまり、集団的自衛権問題について今四つほど例を挙げましたけれども、一言で集団的自衛権という言葉を言っても、若干その意味、内容は分かれると私は思っています。

 と思っていた私にとって、今から三年前ですか、平成十三年四月二十七日、小泉総理が総理大臣になられた翌日、記者会見で、要するに、集団的自衛権については研究の余地がある、こうおっしゃっていますね。私はそのことを予算委員会で質問したことがあります。先般、安倍自由民主党幹事長も同じことをおっしゃっておりました。ところが総理は、その研究の余地があるという議論から今、若干後退しておられる。つまり、議論をしていいんだ、だけれども、私の総理大臣の間は、従来政府が積み重ねてきた政府解釈というものを変えるつもりはない、こういうふうにおっしゃっています。

 そこで、長官にお聞きしたいのは、長官の問題意識として、総理が言われたような、集団的自衛権において研究の余地がある、先ほど言ったような集団的自衛権をめぐる定義の問題で若干の混乱があるということについて、そういう問題の所在を意識しておられるかどうか。研究の余地はないと思っておられるのか、いや、研究の余地はあると思っておられるのか。そこをまず簡潔にお願いしたいと思います。

石破国務大臣 簡潔にという仰せでありますから、くだくだ述べると一晩でもかかってしまいますが。

 政府として、集団的自衛権の定義あるいは解釈の変更というものを行うつもりはございません。これは私としても、全くそのとおりの立場におります。

 先生御指摘のように、集団的自衛権を研究、それは政治の場において、いわゆる国権の最高機関たる議会の場においていろいろな御論議がなされるということだと私は承知をいたしておりますが、その際に、集団的自衛権ってそもそも何であるかということについて認識が違ったままで議論をされるということは、私は、余り生産的な話ではないのではないか、政府の立場で申し上げるのも妙なことでございますが。

 私は、いろいろな場で申し上げておりますのは、そもそも、その集団的自衛権なる概念はどうして出てきたのだろうか。集団的自衛権を認めるとすぐ戦争になっちゃうぞというお話がございますが、これは佐瀬先生のつとに御指摘になるところでございますけれども、要するに、国際連合というものができるときに、南米の小さな国々が、もしその集団的自衛権というものが認められなければ我々は一体どうなるんだと。拒否権を有した国もしくはそれに影響された国が南米の小さな国々を攻めてきたときに、では我々はどうしたらいいんだというところからこのお話は始まったのだと。むしろ小国が大国の横暴から身を守るためにということで出てきた発想が集団的自衛権というものであり、それが国連憲章に明文化されたというような歴史的な事実がある、集団的自衛権イコール大戦争というような話ではないのだという話を聞いて、私は、なるほど、こういうものかというふうに思ったことがございます。

 要は、価値観を交えずに申し上げれば、集団的自衛権の定義、そしてまたその出てきた沿革、そしてそれが、ではベトナム戦争はどうであったか、グレナダ侵攻はどうであったか、そのときにどのような評価がなされたか、そのことについて論者の間で認識の一致を見て議論がされるべきものではないだろうか。

 私は、政府の方針に全く変更はございませんし、私としてもそのとおりでございますけれども、もし政治の場で御議論をいただくときに、これは集団的自衛権の議論すべてそうなんですね、例えば、イラクにおいてオランダ軍がやられている、そのときに、では自衛隊は行けるか行けないかという御議論と集団的自衛権の議論というのは、それは必ずしも一致をするものではないと思っています。それも、定義について認識の相違があるから議論が混乱をしてしまうわけであって、私は、議論の場において、定義はお互いに共通の認識を持った上で議論をされる、そういうことが必要なのではないだろうかと思っております。

 いずれにいたしましても、我が国政府として、集団的自衛権に対する見解というものは変更はございません。

赤松(正)委員 何だか、中身はいいんだけれども最後の結論部分が余り生産的じゃないなという気がするんですが。

 つまり、恐らくそうはおっしゃっても、石破さんのことだから、研究をだれかに命じるなり自分で夜中にひそかにやっておられるんじゃないかと思うんですけれども、私は、集団的自衛権の問題は、やはり一つのエポックを画する状況を迎えた今、やはりきちっとどこかの場で、だれかが議論をしなくちゃいけない。今さっき政治の場でとおっしゃいましたけれども、政治の場というのは、こうやって私たちが一方的に政府側に答弁を求めるという形、公的にはこれしかないんですよ。政治家同士が議論するのは憲法調査会だけなんですね。憲法調査会は、幸いなことに、先ほど私が申し上げましたように、社民党の方や共産党の方にどうですかと聞いて、向こうがこう言われるという場面がありますがね。各政党が政党の中で議論するのはあったとしても、なかなか国会議員同士がきちっとしたルールのもとで議論するなんというのはないんですよ。

 だから、政府としてそういうことを変えるつもりはありませんなんて、そういうふうなことを、政府だからそういうふうに言わざるを得ないのかもしれませんけれども、もう少しその辺の言い方にも変化があっていいんじゃないのかなという気がしますね。まあ、それはいい。

 私は、集団的自衛権問題については、先ほど、坂元さんが言った海外派兵と集団的自衛権を分けるべきだ、これも一つの提案だと思うんですが、私はあえて海外派兵というものに対する、さっきグレナダ侵攻だとかなんとかおっしゃいましたけれども、いわゆる能動的集団的自衛権という言葉を私は自分でつくっているんです。

 能動的集団的自衛権、つまり、海外における紛争に介入して、出かけていってぼかぼかぼかとやるというのは、これは許されざる集団的自衛権だと思いますが、一方で、受動的集団的自衛権、この受動的という言葉が当てはまるかどうか、的確かどうか、いささか自信があるようで、ないんですけれども、ありていに言えば、公海における米艦船を、日本艦船がそばにいて、それをどうするかといったときに、今の政府の解釈では、第一撃がアメリカに向かっていたらそれを守るのは集団的自衛権、日本に向かっていれば個別的自衛権という、極めて何かややこしい分け方になってしまう。そういう一連の日本周辺の出来事を中心に行われること、あるいは、さっき大臣御自身が言われた、例えばPKOに出かけていった場合の対応、あるいは今イラクにおける対応、そういった場面の、今言われている集団的自衛権の疑いありとか抵触と言われているものは、私の範疇によれば、そういうのは全部、受動的集団的自衛権という言葉でくくられるのではないかな。例えば、そういうふうに大きくずばっと分けてやる。

 その上で、私は個人的見解を申し上げれば、私も、実は集団的自衛権問題について、政府が解釈を変えればそれで済むんだ、一瞬のうちに済む、こうおっしゃる論者が、有名な方がいっぱいいらっしゃるし、自由民主党の中にもいっぱいいらっしゃるということはわかっていますが、我が公明党赤松正雄はそういう考え方はやはりとらない。そういう意味では、極めて法制局に近いというか、今の長官に近い立場でありますが、しかし、いつまでもそうじゃなくて、憲法というものをどうするのかという流れの中で、はっきり言えば、憲法改正という場面でその問題を俎上にのせるべきだ。俎上にのせてオーケーというんじゃないんです、私は。俎上にのせた上で、先ほど言った能動的集団的自衛権はどこまでいってもノーだ、憲法改正してもだめ、しかし、受動的集団的自衛権は憲法改正した上でオーケーとすべきだというのが私の考えなわけでございます。

 以上、意見を開陳させていただきまして、次の問題に移りますけれども、外務大臣、外務大臣が今回の所信表明の中で、未来志向の協力関係というようなお話をされていますね。中国と韓国との関係、五ページ。中国と韓国との関係では、「重要な隣国として、国民間の相互理解・相互信頼を一層増進します。同時に、未来志向の協力関係を更に推進していきたい」こうおっしゃっている。そのとおりだと思いますが、一点、先般予算委員会で、今座っておられる長島民主党の委員が、いわゆる台湾との関係で彼はかなり詳しく質問をされております。

 私もこれについて、多くを述べる時間もありませんが、一点だけお聞きしたいのは、これは石破長官も、御自身の御著作「坐シテ死セズ」、私は、これはまた長官の方に戻っちゃいますけれども、すばらしい本だと思っています。しかし、政治家というのは本を書くべきじゃないという話がありますね。なぜか、縛られるからです。

 堂々と石破さんはいろいろなことをおっしゃっていて、僕はこれは、石破さん自身は防衛を勉強する人間に対して、「亡国のイージス」とそれから「宣戦布告」とをぜひ読むべきだとおっしゃっているが、多分「坐シテ死セズ」も読むべきだ、こういうことになろうと思いますけれども、この「坐シテ死セズ」の中でもおっしゃっているんだけれども、要するに台湾と中国との関係。

 台湾と中国との関係というのは、一九七二年の日中共同声明、そしてそれ以来の一連の日本国政府がとってきたスタンスがあります。私は、これは非常に正しいと思います。つまり、二つの中国を認めた上で、しかし、台湾を中国が一度も友好的にいわゆる領土として持った経緯がないということについて、中国の主張を理解、尊重はしても承認はしないという日本の姿勢というのは、私は的確な姿勢だろうと思うんです。

 そういう前提に立って、今回、外務大臣が、総理にもちろん相談されたと思うんですが、台湾当局への申し入れを、内田交流協会台北事務所長を通じて台湾に申し入れをされた。初めてこういうことをされたというのは、私はやはりちょっとこれは、内政干渉という言葉が当てはまるかどうか、一国という形態をとっていないという言い方をすれば、内政干渉じゃないという言い方かもしれませんが、ちょっと介入し過ぎであると思います。

 それについてどうこう言いませんが、これを百歩譲って認めたとして、では中国に対して――九六年、中国がああいう台湾海峡にミサイルをぶち込むということをやった、それは、その前に台湾が、李登輝さんが今回と同じようなことをやったから中国もやむを得ずミサイルをぶち込んだんだというふうなスタンスにどうも立っておられるかのごとき発言を民主党委員との間にされている。要するに、いろいろな選択肢を持っているアメリカでさえ台湾に対して注文をつけているじゃないか、だから、日本がやってなぜ悪い、こういう外務大臣の御答弁だったと私は聞いているんですが、そうじゃなくて、というよりも、それを百歩譲って認めたとして、では中国に対して、ミサイルをぶち込むようなことはやり過ぎじゃないのということが、いろいろな場面で私はあっていいと思うんですけれども、かつて、九六年前後に日本国外務省はそれをされたのかどうか。あるいは、今回の台湾に対する申し入れと相前後して、日本国政府は中国に対して一言何かを言った場面があったのかどうか、外務大臣の御答弁を聞きたいと思います。

川口国務大臣 台湾に我が国として何を先般言ったかということについては、お話を申し上げたとおりでございます。同時に、そのときに、御答弁も申し上げておりますけれども、中国に対しても言っています。

 中国に対してどういうことを言ったかということでありますけれども、昨年の十二月の二十二日、これは一例ですけれども、二十二日に、日中外交当局間協議というのがございました。そのときに、田中外務審議官から王毅外交部の副部長に対して、台湾に対する我が国政府の立場は日中共同声明にあるとおりでありと言って、二つの中国、あるいは一つの中国、一つの台湾との立場はとらない、独立も支持しないということをいろいろ言い、そして、我が国としては、台湾をめぐる問題が平和的に解決されることを、そのための対話が早期に再開をされることを希望していて、中国の武力行使には反対であるということを明確に中国に言っているわけでございます。

 全く同じようなことを、これは二月の十日であったと思いますが、日中安保対話というのがございまして、そのときにも田中外務審議官から王毅副部長に対してお話をしているということでございます。

 今、具体的に九六年についてだれが何を言ったかというデータは、表は持ってはおりませんが、九六年のときにも両方について言っております。

 必要なら、今手元に……(赤松(正)委員「いや、いいです」と呼ぶ)よろしいですか。

赤松(正)委員 ぜひともそういう姿勢、余りそういった部分がクローズアップされていないので印象として弱いわけですけれども、中国に対してしっかりと言っていく。アメリカが今、イラクを抱え、そして北朝鮮の問題を抱えているので、台湾に対する言い方というのは余り、いろいろなアメリカなりの考えがあってのことだろうと思いますけれども、私は余りアメリカと歩調を合わせる必要はない、そんなふうに思います。

 最後に、そこで石破長官に、せっかく「坐シテ死セズ」の話を持ち出したので、ここでひとつ中国と北朝鮮の関係ということについて、僕はこの本の中でいろいろ感銘を受けた部分は多いんですよ。とりわけ、うんと思ったのは、これは全く同感だ――ただ、ある意味で、この本は中国に石破さんが行かれる前に書いたんですね。行ったらこう言うということを書いておられるわけです。非常に堂々といいことをおっしゃっているので、本当にそういうふうに言ったのかどうかを確認したいんです。

 要するに、中国は難民条約に加盟しながら国内に難民認定制度を整備していない、だから難民は一人もいないということになるんだ、これはどう考えてもおかしい、私はずっと前からそう言ってきた、中国が難民を受け入れない限り、中国の北朝鮮に対する姿勢は不透明であると。これは私も全く同感で、かつて川口大臣に、要するにドイツの例を挙げて、ハンガリーの役割を中国が果たすべきだと思うけれどもなかなか難しいですよねというような話をしたことがありますが、そういうことに加えて、石破さんは、「今後、北朝鮮難民が怒濤のごとく押し寄せて、中朝国境に難民キャンプを作ったとすれば、UNHCRや諸外国と協力して日本がその相当部分を負担してもいいのです。」等々、非常にいいことをいっぱいおっしゃっています。

 最後に、「中国を訪問し、「永遠の日中友好」をうたいあげるだけでは、あまり意味がありません。中国に行くことがあれば、難民問題を含む朝鮮半島情勢や、地域全体の問題を、率直に語り合いたいと思っています。」と。さて、どのように語り合われたのか、短い時間でいいですから言ってください。

石破国務大臣 その認識は私は今でも持っておりますし、その問題提起は、中華人民共和国におきましても、どの席だったかちょっとはっきり覚えておりませんが、したと思っております。それについての具体的なお答えというものが得られなかったということも事実であります。

 ですから、要するに、ハンガリーが大量の東ドイツ難民を受け入れた、それがベルリンの壁崩壊につながった。この朝鮮半島、北朝鮮の問題というものを平和裏に解決をしていくためには、いろいろな手段があるのだろうと思っています。平和裏に解決をしなければいけません。そのときに、今の脱北者というものを中国が、我が国にいるのは不法滞在者なのだ、帰ってしまえばもう迫害を受ける人たちを、我が国には不法滞在者しかいないのだ、なぜならば、難民を認定する制度がないからだと言われると、何となく釈然としないところはございます。そこのところを我が国としてどうできるのか。UNHCRとどのようにして協力をしていくのか。

 いずれにしても、私どもは、北朝鮮問題の平和的な解決と同時に、やはり脱北者の方々の人権というものをどうやって守っていくのかということは、やはり同じ人間としてきちんと考えていかねばならぬことではないのか。その人たちがどんなにひどい目に遭おうが、本国に帰ってどれだけ迫害を受けようが、そのことについてきちんと物を言わないということは、それは、私は余りあっていいことだとは思っておりません。

赤松(正)委員 終わります。ありがとうございました。

小此木委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 今、民主党の防衛部門の担当をさせていただいているということで、きょうここで、石破大臣、川口大臣に所信についての質疑をさせていただきたいと思います。

 まさに今、六カ国協議の真っ最中でありますが、やはり北朝鮮の問題についてお伺いをせねばならないというふうに思っております。

 川口大臣の所信で、途中省略をいたしますが、平壌宣言に基づき諸問題を包括的に解決されると。途中を省略して少し今申し上げましたが、私どもは、この平壌宣言をベースに北朝鮮との外交を進めるということを、一度区切りをきちっとつけるべきではないかというふうに思っております。その考え方に私どもは立っているわけでありますが、外務省、川口大臣としては、引き続きこの平壌宣言をベースに北朝鮮との外交を展開される、こういう理解でよろしいんでしょうか。

川口国務大臣 政府としては、そのように考えております。

 先般ピョンヤンで二国間会談が開かれましたけれども、そのときにも、先方もそれから日本も、日朝平壌宣言をベースに置いて、それにのっとって今後日本と北朝鮮の交渉を進めていきましょうということになっているわけで、先方もそういうふうに考えているということであります。

 それで、なぜかということでありますけれども、それがなぜそうなのかということですが、我々の考え方というのは、日朝平壌宣言というのは、両国の首脳が合意をした政治的に重みのある文書であるというふうに考えているわけです。それで、幾つかのことをそこで書いてあるわけでございます。そしてそれは、核、拉致を含む日朝間の諸問題を包括的に解決する、そして地域の平和と安全に資する形、これで国交正常化を実現する、そういった基本的な方針が書いてあるわけでございます。さらに、そういった国交正常化をした上で、その後で経済協力をする、その前は経済協力をしないということもきちんと書いてあるわけでございます。

 こういった考え方の基本的な方針、これは我々としては正しい方針であると思っております。そして、これを堅持して進めていくというふうに考えております。

松本(剛)委員 今大臣、平壌宣言にのっとって相手側も、こういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、北朝鮮が平壌宣言に、もしくは平壌宣言の精神に沿って行動をしているとは私どもには思えない。平壌宣言そのものについても、今、拉致、核を含む諸問題を包括的に解決するとおっしゃいましたが、私どもから見れば、正確に言えば、拉致を含む諸問題、拉致を含むと日本側が解釈をしている諸問題を解決するというふうに、文書の字を見れば言うべきではないかなというふうに思うわけであります。

 石破長官の所信を拝見させていただくと、途中を割愛いたしますが、北朝鮮の一連の行動は日朝平壌宣言に反するものであると。これは、NPTからの脱退、核関連施設の動き、ミサイル発射のモラトリアムを見直すなどの発言ということに対して言っております。

 まさに、私たちも、この平壌宣言を北朝鮮が誠実に履行していこうという姿勢を見せているとは思えない。最初に、一度平壌宣言に区切りをつけるべきではないかという言い方を申し上げたのは、もちろん、首脳同士の宣言の重みというのは、外交上大変重みがあるというふうに私どもも理解をしておりますが、今政府は、対話と圧力という方針で北朝鮮に接しておられるというふうに私ども理解をしております。対話と圧力というのは、つまり押したり引いたりということに、ありていな言葉で言うと恐らくなるんだろうというふうに思います。平壌宣言についても、もう首脳同士で決めたことだ、しかし今、石破長官の認識にもあるように、この間の北朝鮮の行動が平壌宣言を誠実に履行しようとしている姿勢だというふうには私にも到底思えない。

 つまり、向こう側が誠実に履行しようとしていない中で、私どもが、平壌宣言を守っていくんだ、ベースにいくんだということを言い続けることが日本に本当にプラスになるかどうかというのは、私は疑問に思っております。

 その意味で、今まさに六カ国協議が行われている中で、先般私もテレビで拝見をしましたが、交渉の任に当たっている薮中局長、大変御苦労されているということは私どもも認めてまいりたいと思っておりますが、平壌宣言にのっとって、基づいてといったような表現を冒頭でもおっしゃっておられましたが、本当に私どもが、日本国政府がこのことを言い続けるということが果たして北朝鮮との外交にどんなプラスがあるのかというのを私は思っておるわけであります。

 今、対話と圧力と言って、我々も、北朝鮮がこのような行動、これは拉致の問題についても核の問題についても同様でありますが、続ける限りは、一度平壌宣言は白紙に戻さざるを得ないというぐらいのことをむしろ言うべきではないかというふうに思いますが、大臣の所見があればお伺いいたしたい。

川口国務大臣 お話を伺っていて幾つか思うことがありましたけれども、日本の基本的な方針というのが対話と圧力、これはそのとおりであります。それで、対話と圧力の意味というのは、私は押したり引いたりということではないと思っております。対話でも押す。圧力というのは何かといいますと、これは、対話に前向きに、対話に持っていくための圧力であるわけですね。圧力というのは、圧力のための圧力ではないわけで、目的を持って圧力をかけるということであって、前向きの対応をさせるために、そのための手段というのが圧力であると私は思っております。

 ですから、対話と圧力ということは、我々としては、必ずしも押したり引いたりということではなくて、それぞれ有機的に連関を持って、一つの方向に向いて、ツールとして使っていく、あるいは戦術的な考え方ということだと思います。それでは、その方向は何なのかというと、それが先ほど申し上げた日朝平壌宣言であるということです。

 具体的に、NPTを脱退するということを例えば北朝鮮は言いました。それで、国際社会が北朝鮮がNPTを脱退したかどうかというふうに認識しているか、これはいろいろな考え方があって、必ずしもそうではないということですけれども、厳密に、一言一句、何か外れていることはないかと見渡せば、それは、今ちょっと具体的に例を思い浮かべることが直ちにできないんですけれども、そういうところがないとは言えないかもしれません。

 ただ、ではそのときに、仮にそういうことがあったとして、どこに向けて交渉を戻していくのか、北朝鮮が守らなければいけないノーム、基準、あるいはそのゴールというものは何か、これを示しているのが平壌宣言であると我々は思っているわけです。

 ですから、平壌宣言というのは、日本と北朝鮮の間の交渉を示していくための考え方、方針であるということであって、それに基づいて、それをベースに交渉を進めていく、これは私は非常に重要な考え方であると思っています。北朝鮮も日本も、その点については、そこをベースに、そこを基本に交渉をやっていきましょうということについては、全く意見の一致を見ているということでして、それが基本的な方針である。それを一回崩すということになりますと、では再びその基本方針は何ですかということをまたゼロからやっていくということになって、そういうことでは私はない。この方針は、それを北朝鮮に守らせるということの方針、考え方でも同時にあるということだと思います。

松本(剛)委員 これ以上時間をかけるのはもったいないような感じがしますが、私どもは、石破長官が所信でおっしゃっているように、この間の一連の行動は、反するものというふうに受けとめるのが素直な受けとめ方だというふうに思います。これに対してほとんどメッセージが日本側から発せられないまま、これはいろいろな意見があるんだろうというふうに思いますが、やはり平壌宣言、今のように、拉致についても核についてもミサイルについても誠意がない状態の中で、我々の方が積極的に北朝鮮に対して平壌宣言のように働きかけていかなければいけない理由はないのではないかというふうに思うわけであります。

 石破長官、もしコメントがあれば。もうよろしいですか。

石破国務大臣 私の認識は外務大臣と全く一緒、当然のことでありますが、一緒であります。

 それから、所信でも申し上げましたように、NPTからは脱退する、核関連施設を再稼働させる、あるいはモラトリアムを見直す可能性を示唆するというようなことは、その具体的文言は日朝平壌宣言に盛り込まれているわけではありませんが、どう見たって日朝平壌宣言の精神には大きく反するものだろうと私は思います。だからこそ、この日朝平壌宣言をきちんと遵守しなさいということを我が国としてはきちんと言うべきではないのか。

 六カ国協議の場においても、あれは一片の紙切れだということではなくて、少なくとも、我が国総理と向こうの軍事委員長ですか、公表し、宣言をしたものですから、このことのきちんとした履行というものを我が国としては迫るということが必要なのではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、我が国としては、重大な懸念を有し、今後、六者会合の中で、どのように解決されるべきか、関係諸国と一層の連携を図りつつ、問題解決に向け、毅然たる対応を示したいというふうに申し上げたとおりでございます。

松本(剛)委員 反するものという認識と日朝平壌宣言にのっとってという政府の方針は、当然、石破長官も大臣でありますから、そのとおりだろうというふうに思います。ただ、私たちが申し上げているのは、この一連の日朝平壌宣言の精神に反する行動というのは、かなり根幹にかかわる問題を含んでいるはずでありまして、また日朝平壌宣言は、国際的な約束を遵守するということをお互いに取り決めただけではなくて、その先があるわけですね。国交正常化、支援の問題を先まで含んでいる。当然、したがって、北朝鮮にとってはそこを、いわばメリットになっているとも言える宣言でもある部分であるわけですから、そこを申し上げているわけであります。これだけ根幹に関する部分に対して誠意のない行動を続ける以上は、その先の部分についても、我々はということをきちっと言うべきではないかということを申し上げたいと思います。

 関連をして、北朝鮮に対する支援に対して、日本の姿勢というのを伺ってまいりたいと思います。これも、六カ国協議の真っ最中ということで、大変デリケートな問題を含んでいることは承知をしておりますけれども、今だからこそお聞きをさせていただきたいということで申し上げてまいりたいと思います。

 今回の六カ国協議、日本は、拉致の問題、ミサイルの問題、核の問題、いずれも解決をしなければいけない重大な問題を抱えているというふうに承知をしております。主としてこの六カ国協議では、今、核の問題について六カ国の関心があり、その進展がどういうふうになるかというのは、まさに今、交渉ということだろうというふうに思いますが、この中で、先般の、私どもも報道で確認をしているだけですから、内容がもし違うということであればあれですが、六カ国協議に先立つ日米韓の局長級会議で、李秀赫韓国の外交通商次官補ですか、これは、韓国としてはというふうに言っておられるようでもあり、日米韓の三カ国で話した中でと言っておられるようでもあるので、ここは正確ではないのですが、核のプロセスについて一定の進展があれば、エネルギー支援を検討することを考えていきたいというようなことをおっしゃっておられます。

 これまでの経緯そして実績を考えれば、当然、このエネルギー支援の枠組みの中では、日本も協力を、約束したかどうかは今ここでおっしゃれるような問題ではないのかもしれませんが、恐らく、求められてくることになるだろうことは間違いないだろうというふうに思います。しかし、私たちはやはり、拉致問題が実質的かつ具体的に進展をしない限り、つまり、ただ協議機関が設けられたとか次回の協議が決まったとかいうだけでは、あらゆる支援を北朝鮮に対して行うべきではないのではないかというふうに思っております。

 今六カ国協議の真っ最中ですが、こういうことをここでお聞きするのも、日本としての姿勢というのは、むしろあらかじめ示しておかないと、求められてから断るのではなく、日本にとっては核の問題も当然解決をすべき問題であります、したがって、核問題の進展が六カ国協議で進むことは歓迎をされることであるし、そのことについて尽力をすべきだろうというふうに思いますが、同時に、拉致の問題も日本にとって解決をされるべき問題であり、日本の国民の税を使う支援をするということになれば、やはり日本としての一つのハードル、線を引いておくべきだというふうに思います。

 まず、エネルギー支援、これは今どうなるかというのはわかりませんが、核問題の進展というのがあって、そして国際協調の形でエネルギー支援を行うとすれば、日本も参加をするというお考えなのかどうかというのを川口大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 まず、韓国が今回の六者会談の中でエネルギーの支援についてどういうことを言ったかということについては、今まさに進行中でありますし、私どもはきちんと承知をしておりません。(松本(剛)委員「あらかじめそういう意思を示したということですか、会議の前に」と呼ぶ)ええ。

 仮に韓国が言ったとしても、それについては日本の立場で申し上げるということは難しいと思いますけれども、一般的に申し上げれば、これは報道等でも出ていることでありますけれども、韓国は、いろいろな条件のもとで北朝鮮がその対応をきちんとした場合にはと、大ざっぱに申し上げればそういうことですけれども、そういった支援もしていいのではないかと思っているという部分はないわけではないと思いますが、具体的にそういうことを北朝鮮に言っているかどうかということについては、全く事実関係も承知をいたしておりません。

 それで、仮にそういうことがあったとして、日本の立場はどうだろうかということですけれども、先ほど来申し上げているように、我が国としては、日朝平壌宣言にのっとって、それを基本として対応していくという方針を持っているわけです。それで、その日朝平壌宣言にその点について何が書いてあるかということを申し上げると、北朝鮮に対する経済協力の実施は、あくまで拉致問題、核問題、ミサイル問題等の安全保障上の問題が解決をして国交正常化が行われる、それが前提であるということを言っているわけでございます。拉致問題の解決、核、ミサイル、その他諸懸案の解決がなくて国交正常化はない、そして、国交正常化がなければその後の経済協力はないということは申し上げているということでございます。

松本(剛)委員 経済協力について、あえて国際協調というふうに申し上げた。バイの、二国間の問題だけではなくて、マルチの、多国間の、国際機関といったような形を通じたものに対しても、むしろ日本の立場をあらかじめはっきりさせて、そしてまた、関係する各国にも理解を求めながら解決を図るようにすべきではないかという私たちの意見を申し上げて、次の問題に移ってまいりたいと思います。

 これからの防衛力ということについて、既にこれまでも国会でもいろいろな議論が行われてきておりますが、まさにいろいろな意味での大きな転機だろうというふうに思います。

 昨年の三月、石破長官と前原議員の質疑でも、これは、いわゆるミサイルの発射に関する敵地の攻撃について、これまでの議論はこれまでの議論、これからの議論があってよい、こういうお話でありました。まさにおっしゃるとおりだろうというふうに私たちも思っておるわけであります。

 その中で、これから、ことし、ミサイル防衛に関連をしてという言い方が適切かどうかは議論のあるところだろうと思いますが、昨年のミサイル防衛の導入と同時に、中期防衛計画と防衛計画の大綱の見直しというのも決定をされたというふうに承知をしております。

 先般、予算委員会で長島議員の方から指摘を申し上げたように、むしろ、大綱を決め、中期防衛計画を決め、そしてミサイルを導入すべきではないかという指摘、私たちもそういうふうに思うわけでありますが、あわせて、いろいろな基本的な考え方というのを、これから、大綱を見直されるのであれば、どういうふうにしていくのかということをお伺いしてまいりたいというふうに思います。

 私自身は、日本の防衛力の基本的な考え方、これは、まさに平和主義、そして九条、専守防衛から来る、こういう形でなければいけないという、いわば絶対的な表現というのが幾つかに見られる。一方で、日本を取り巻く環境は変わってきているからこうならなければいけないという相対的な表現もいろいろなところに見られる。恐らく、基本をこれまでも絶対的な部分に置いていたのは、相対的な周りの環境に基準を置くとすれば、常に対抗して、場合によってはエスカレートをするという可能性もあるということを考えたがゆえに、絶対的な概念というのを置いていたんではないかというふうに思うわけであります。

 一方で、例えばミサイルの問題を見てみると、かつては、誘導弾等による攻撃を受けて反撃をすると言っていたというふうに承知をしておりますし、またミサイルの燃料を注入している段階で、またその先は、我が国を目標として飛来してくる蓋然性が高い場合には自衛権の対象となり得る、ある意味では、明らかに変わってきていると言ってもいいと思うんですね。長い年月、周辺の情勢からして変わってきていることを我々はどうこう今申し上げているわけではありません。これからの議論ということであります。

 そこで、今これを引用させていただいたのも、そもそも専守防衛の考え方というのは、誘導弾等による攻撃を受けてというように、損害受忍という概念があると考えていいんでしょうか。一度攻撃を受けて、そして反撃をするという考え方がもともとはあったというふうに思います。防衛白書を拝見させていただいても、相手から武力行使を受けたときに初めて防衛力を行使するというのが専守防衛の精神だというふうになっている。しかし、現実には、今の大量破壊兵器であったり、ミサイル等の運搬手段を考えたときには、恐らく、この専守防衛の最初の言葉が出たように、一回攻撃を受けてから反撃するということでは到底無理な状況が今できているというふうに私は思っております。これを、無理やり損害受忍のような、専守防衛のような考え方に当てはめようとすると、これは私どもの考え方ですが、戦闘地域、非戦闘地域のような無理な理論構成になってくるような気がいたします。

 この専守防衛の考え方、損害受忍の考え方、新しい大綱なり新しいあり方検討が今されていると思いますが、ここについて一つの基準とかを示すお考えというのはおありでしょうか。

石破国務大臣 民主党の防衛担当でいらっしゃいます先生と議論ができることは、大変にありがたいことだと思っております。

 巷間、専守防衛という考え方は第一撃受忍の思想ではないか、こう言われますが、私はそうだとは思いません。そんなような話にはならないのであって、第一撃はやむを得ないということであれば、それはかなり国家としての責任を放棄したことになるのではないでしょうか。私はそうは思いません。

 しからばどうなるのだという話ですが、理論的に申し上げれば、武力攻撃が発生した時点というのはいつなのだということなのだろうと思います。それは、もう損害を受けちゃったときでは間違ってもないわけで、しかしながら、おそれの時点で、単に東京を火の海にしてやるとかわあわあ言っているような、そういう段階でもだめなのであって、では、それはどの時点なのだろうかということを考えてみたときに、一つは、例えば、東京を灰じんに帰してやるぞという宣言があり、ミサイルを直立させ、燃料注入を開始したというようなときは、着手があったというふうに、武力攻撃が発生したというふうに評価ができることもあるのではないかということを申し上げてきたわけであります。

 しかしながら、我が国に今そのような能力はございませんし、それは、ガイドラインにおきましても、米国の打撃力にそれをゆだねるということになっておりますわけで、私は、そこの部分は、日米の安全保障体制の信頼関係をいかに高めていくかということなのだろうというふうに思っております。

 専守防衛の考え方というのは、先ほどの赤松委員の方からもいろいろなお話がございましたけれども、その考え方は決して変えるべきものだというふうには私は考えておりません。そこに、専守防衛というのは第一撃甘受の思想であるというのは、そうではない。それは、日米安全保障体制とも相まって、我が国に第一撃甘受というような、そういうような無責任な考え方はないのだということをきちんと御説明していくべきだと私は思っております。

松本(剛)委員 私は、第一撃を甘受しろと言っているわけではありませんので。

 ただ、例えばさっき防衛白書をあえて引かせていただいたのも、この防衛白書の文章を読めば、第一撃甘受と読めてもおかしくないような、相手から武力行使を受けたときに初めて防衛力を行使するというのが専守防衛の考え方である、この受けた、初めての解釈を今ある意味でおっしゃったんだろうというふうに思います。

 あえて申し上げたのも、やはりこの専守防衛の考え方、そして第一撃甘受といってもいいような考え方も、私も、最近は変わられたのかもしれませんが、何年か前に航空自衛隊のパイロットの方とお話をさせていただいたときも、二機飛んでいったときは先の一機は絶対に撃ってはいけないというふうに教育を受けている、その気概で我々が日本の国を守ろうと思っていることを理解してほしいと逆に言われた。それはそのとおりだろうというふうに思います。

 今そういう教育をされているかどうかわかりませんが、言われたのは、事実上、先に攻撃をしない限り、今の武器の性能であれば、先に攻撃を仕掛けられれば、第一撃ではかなりの確率で戦闘機はやられる可能性が高いということを言っておられたんだろうというふうに思います。

 申し上げたかったのは、これを、今おっしゃった解釈がありましたが、専守防衛の精神というのは我々も大変重要だろうというふうに思っておりますが、このような表現ではなくて、もうちょっときちっとした表現に改めていくべきではないかということをお聞きしたわけで、そんなお考えはあるか、こういう質問だったわけであります。

石破国務大臣 私の言い方が悪かったのかもしれません。もちろん、先生が第一撃甘受だということをおっしゃっておられるとは私ども全く考えておりません。

 今おっしゃった、スクランブルで二機飛ぶというのは、必ずしも、一機がやられて、それに対するというようなことをもちろん考えておるわけではございませんで、正当防衛、緊急避難として、これは武器の使用が可能な場合、つまり、向こうから撃たれなければ撃てないというものではないのだということも、これははっきりいたしておるところでございます。

 専守防衛というものはどういうものなのか。これは、防衛白書の中にも、専守防衛の考え方と自衛権、ミサイル防衛と自衛権についてというような項を設けさせていただいて記述をさせていただきましたが、ここのところをもう少しわかりやすく御説明をする。専守防衛の思想というものは堅持をしていかねばならない、しかし、専守防衛の思想というのは、例えばスクランブルのときに相手が撃たなきゃ絶対に撃てないのだ、こういう話でもないし、そしてまた、国民の生命、身体、財産に犠牲が生じなければ、損害が生じなければ一切できないというものでもないのだということはきちんと申し上げていかねばならぬのであろう。しかし、それが専守防衛の考え方を踏み外すようなものであっては絶対にならないのだということも、私どもきちんと、先生方との御議論の上で明確にしていきたいと思っておるところでございます。

松本(剛)委員 現実に緊急事態でありますから、いろいろな応用なり柔軟な要素というのが必要だろうと思いますが、日本が専守防衛であるということを日本自身が声明をしてきたことというのは、国際的な中ではやはり一つの大きな意味があっただろうというふうに思います。特に、第二次世界大戦の後というのはそれなりの意義があっただろう。これを、なし崩しという言葉はちょっと表現が悪いかもしれませんけれども、なし崩しに見えるような形でいろいろ解釈をされるよりも、専守防衛とはこういうことだということをきちっと書かれた方がいいのではないかということを申し上げたわけであります。

 これも、先ほど申し上げた、いわば専守防衛だからこういう絶対的なものでなければならないと言いながら、状況が変わったらいろいろ変えなければいけない部分があるという、そのバランスのとり方だと思いますが、関連して、基盤的防衛力構想という大綱の考え方があります。前の大綱の考え方を今回も踏襲をされているということでございます。大綱の前提となる「国際情勢」とか、防衛白書をずっとさかのぼって随分と私もまじめに読ませていただいたら、去年とことしで若干表現を変えておられるところが細かいところであったりいたしまして、日本語として変えたのか作為的に変えたのかわかりませんが、このことはまた後々機会があればお聞きをしていきます。

 基盤的防衛力構想というのも、これは私もずっとさかのぼって見ました。前の大綱で見る文章と冒頭の部分、もう全部読み上げませんが、基本的には極めて、ある意味では絶対的な、つまり周りに左右されないといったら言い過ぎかもしれませんが、こういうものであるというような言葉というふうに読めました。さらに、昔の防衛白書には、能力的には「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標」としているということまで書いてあったわけでありますが、最近はその文言はなくなっているようであります。ただ、これも、例えばことしの防衛白書であれば、そういったことを主眼としつつ、我が国の置かれた戦略環境を見てというような表現も入っているわけでありまして、さっきまさに申し上げた絶対的、相対的が混在をしているような表現になっています。

 やはり日本の一つの指針という、もちろんそれは折々において変わっていかなければいけないというふうに思いますが、今回、大綱を見直されるということであれば、日本の防衛力の考え方というのはこうであるということもやはり示される必要がある。これは、基盤的防衛力構想が行われてきた歴史というのを全く否定はできないかもしれませんが、やはり私は、いろいろな意味で見直していくべき環境に来ているというふうに思いますが、これはむしろ大臣としてのお考えを伺えたら幸いだというふうに思います。

石破国務大臣 基盤的防衛力って何ですかと聞かれて、かくかくしかじかのものでありますと言える人は余りいないのです。防衛にかなり精通した人でもよくわからない、何のことでしょうかみたいな話で。

 ここで一回整理しますと、基盤的防衛力構想とは、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという考え方である。(発言する者あり)今、与党席から、何のことだかよくわからぬ、こういうお話でありまして、これが何となく寿限無寿限無みたいなお話になってはいけないねと。

 ただ、ここにおいて一つのキーワードは、力の空白論というものだと思うんですね。つまり、我が国が力の空白となって、すなわち、委員の表現をかりれば、軍事的脅威に直接対抗する、つまり相対的な、向こうが何を持っているから我が方はそれに備えてこれを持つのだということじゃなくて、我が方がとにかく力の空白、真空地帯になっちゃうと、それが不安定要因になるので、それはいけないねと。周りの状況というものも勘案するが、そのことに主眼を置かないで、とにかく力の空白になっちゃいかぬ、こういうような物事の考え方であったとするならば、それはやはりもう一度検証してみる必要があるのではないだろうかということを私は認識をしておるところでございます。

 これは、ポスト九・一一の認識ともある意味重なるところがございますが、要するに、冷戦期は力のバランスですから、そこにおいて不安定要因になってはいけないのだという発想が物すごく強く働いていたと思うのです。しかしながら、これが非対称的脅威で、何が実際起こるかわからない、力のバランス論というものもある意味で崩れてきたということになるならば、力の空白論そのままでいいのだろうかという発想は必要でしょう。防衛の考え方自体は、専守防衛というように、これはやはり絶対的に守っていかねばならない思想的なものはあると思うのです。しかしながら、防衛力整備というものは、相手が非対称的である以上は、やはり単なる力の空白論だけではだめだ、力の空白論に基づくがところの基盤的防衛力整備構想というものがあるとするならば、それはまず検証してかかる必要があるだろうと思っています。

 基盤的防衛力という考え方につきまして、私ども、政府の部内におきましても議論をいたしております。与党の中でも議論をいたしております。ぜひ民主党の先生から、特に松本委員から、こうあるべきだというような御提示をいただいて、私ども、本当にきちんとした議論をシビリアンコントロールのもとになしていきたいというふうに思っておるところでございます。

松本(剛)委員 寿限無寿限無と言われるとあれなんですが、先ほどの専守防衛の考え方にしても、この基盤的防衛力整備構想というのですか、基盤的という言葉を踏襲されるかどうかはまた今後議論の余地があると思いますが、やはり、わかりにくい部分があるとはいいながらも、原則を一つ決めた上でやっていくということが、防衛力というのは、当然反撃をする力であったり攻撃をする力そのものも指しますが、抑止ということ、これはメッセージとともにやはり発せられるだろうというふうに思いますので、きちっとその辺を明らかにするということが大変重要ではないかというふうに思います。

 あわせて、これは当然、敵基地攻撃能力を保有することも検討に値するよといったような形で、長官の発言を私も理解をしております。当然、保持し得る自衛力というのは何なのかということも改めて今の動きの中では検討されなければいけないということを申し上げて、時間も限られてまいりましたので、一点、先ほど、仲村委員との議論の中でもSACOの話が出ておりましたが、SACOだけというよりも、むしろ米軍全体の再編、海外に駐留する部隊の再編を行うということは、既にアメリカ側は明言をしているようであります。

 当然、沖縄の皆さんの負担というのを軽減されなければならないという認識は私どもも強く持っているわけでありますが、同時に、そのプレゼンスの問題。これも、沖縄の海兵隊のプレゼンスの問題は、予算委員会で先週の金曜日、長島議員が質問をいろいろさせていただいているというふうに思いますが、米軍の再編について関係をする国々と話し合いを始めるということは、昨年の十一月の二十五日の大統領の声明かなんかにもあったというふうに思います。

 先ほど、普天間については、あったなかったという議論が、ここでお聞きをさせていただきましたけれども、普天間のことも我々もお聞きをしたいわけでありますが、再編全般として日本に対して話があったのかどうか、そして日本としてはこれに対してどんな基本の方針で臨まれるのか、石破長官に。――川口大臣が先ですか、では。

川口国務大臣 二つぐらいのことを申し上げたいと思いますけれども、米国政府は、ブッシュ大統領が昨年、たしか十一月だったかと思いますけれども、相談をすると言っているということでございます。それで、日本とアメリカ、これは同盟国でございますから、いろいろな折に緊密にこういった問題については、トランスフォーメーションについては話をしているということでございます。アメリカも、同盟国である日本に相談をしないで決定するということはないということを言っているということでございます。

 それで、そのときの考え方が何かということですけれども、これは先ほど石破長官がおっしゃられましたけれども、二つのことがあります。一つは、委員も先ほどおっしゃられましたけれども、沖縄を含む施設・区域が存在をする地元の方々の負担の軽減ということがあります。それから、もう一つの考え方として、抑止力、これをきちんと維持をするということが重要であるということであります。この二つの柱、これに基づいて我が国としてはこの問題を考えていくということであります。

松本(剛)委員 時間が限られてまいりましたので、また議論の機会をいただいてまいりたいというふうに思いますが、日本が今独自で我が国を防衛するという考え方をお持ちの方もいらっしゃいますけれども、やはり日米協力をした体制の中で我が国の安全を確保していくべきであると私も考えております。それだけに、米軍の海外駐留の再編の問題というのは看過できない問題がある。これに対して、やはり日本としてもしっかりかかわっていっていただくと同時に、日本としての基準というのを、今抽象的には私が申し上げ、川口大臣がおっしゃったことだろうというふうに思いますが、やはり具体的な部分、先般長島議員が、では、沖縄には海兵隊のどのぐらいのプレゼンスがあったらいいというふうに思っているのかということを政府として考えるべきではないかというふうに申し上げたような部分というのを、ぜひ申し上げてまいりたいというふうに思います。

 あと、ミサイル防衛構想とか、国際平和協力、国際緊急援助活動についていろいろ申し上げたかったんですが、後に続く同僚議員、または次の機会に伺わせていただきたいと思います。

 一点だけ、全体の大綱等を見直される中で、特に国際平和協力活動、国際緊急援助活動をきちっと自衛隊の本来の業務と位置づけていただいて、かつ、我々から見ても、例えば海上自衛隊は、これはテロ特措法で出、またイラクで出、また関連その他で相当な数の人間が海外に出ておられるんではないかというふうに思います。ローテーションまで考えてまいりますと、かなり厳しい状況と言っても過言ではないんじゃないか。補給艦の運用だけ見ても、私は大変ハードではないかというふうに思います。

 もともと自衛隊は、まさに我が国の防衛のために整備をされている、ぎりぎりの整備をされているのが海外へ出たら、足らなくなって当然だと言ってもおかしくないわけであります。どこかにしわ寄せがやってくるんだろうというふうに思います。そういった面もきちっとお示しをいただいて、我々がまたこれについて審議をさせていただきたいということを最後に申し上げて、私の方の発言を終わりたいと思いますが、何かありますか。

石破国務大臣 おっしゃるとおりであって、今、別に余力があって回しているわけではございません。まさしくぎりぎりの中で運用しておりますし、本来任務でないということはそういうことでございます。我が国の防衛に支障がない限りということが本来任務ではないということのゆえんですから。理屈の上はそうなんです。

 ただし、委員御指摘のように、まさしく補給艦の回し方なんというのは本当にぎりぎりいっぱいのところでやっておるわけで、もし仮に本来任務にするというような御議論があるとするのであるならば、それは体制であるとか定員であるとか、そういうものも見直していかなければ、これはだめなのだと。単に、日本はこれから先世界じゅうにいろんな貢献をしていくべきだから本来任務にするべきだと言われましても、それはなかなか、体制、定員等々を見直していかなければ、実際に行うことは難しいだろう。本来任務化というのはそういうことなのだということだと思います。

 それは、当然、予算を伴うものでございますので、納税者の方々の御理解というものもきちんといただいていかねばならぬ。それは恒久法につきましても、政府部内で議論はいたしておるところと承知をいたしておりますが、ぜひ、この国会におきましてもそういう御議論をいただきまして、実際の現場に過度な負担がかからないこと、そして納税者の御期待にきちんとこたえること、それを目指してまいるべく御教授を賜りたいと思います。

松本(剛)委員 中身を伴ったことを含めての本来業務というふうに申し上げたつもりであります。

 終わります。

小此木委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 先ほど赤松先生の方から、私が予算委員会で台湾の問題について質疑をさせていただいた、そのことをお触れいただきましたので、ちょっと冒頭に川口大臣にお伺いをしたいと思っているんですが、せんだっての二十日の予算委員会の質疑の中で、日本政府は、今回の台湾総統選挙、そしてそれに伴う公民投票について、政府の決定に基づいて、台湾海峡及びこの地域の平和と安定という観点から、台湾総統府のいわば官房長官に当たる秘書長に対して異例の申し入れを行った、このことはお認めをいただいたというふうに思いますが、政府の決定というのは私にはちょっと解せないのでありまして、どういう形の政府の決定がされたのか、もう一回確認をさせていただきたいと思います。

川口国務大臣 これは、政府の中の決裁を、そのことをやることについてとるという形で行われております。

長島委員 政府の中でというのは、内閣の中でもいろいろ議論があったように私は想像するんですけれども、石破防衛庁長官、ちょっと伺いたいんですが、この台湾に対する異例の申し入れについては事前に御存じでしたか。

石破国務大臣 存じておりません。

 しかし、これはもう政府としての立場は、外務大臣が答弁されておられるとおりと承知をいたしております。

長島委員 仮に、事前にこういう話を防衛庁長官が伺ったら、どんな対応をされたと思いますか。どんな感想を持たれましたか。

 つまり、こういう、今まで外交関係がなかった台湾に対して、一九七二年の断交以来三十年間、日本は政治的には沈黙をずっと守ってきたわけですね。外務大臣がおっしゃったように、今回初めて地域の平和と安定という問題について日本は口出しをした。こういう申し入れをすることについて、内閣の一員としてどんな認識をされているか伺いたいと思います。

石破国務大臣 仮定の御質問にはなかなかお答えがしにくいところでございますが、ただ、この国民投票の内容が何であるのか、総統選挙との関連はどうなのかということも、私は議論としてはあるべきものなのだろうと思っております。

 私自身、政府の一員として、当然、政府が今回行った立場というものが正しいものだというふうに認識をしておりますが、同時に、個人的な感想として申し上げれば、総統選挙は行うのだ、しかし、同時に国民投票も行うのだ、この国民投票の内容というものが、これは世論調査でも何でもそうなのですけれども、それを問われたときに是と言うか非と言うか、そのことに何の意味があるのかというような議論も私はあるのだろうと思っております。

 我が国といたしまして、いずれにいたしましても、この地域の平和と安定というものを構築していくために何をなすべきかということは、常に真剣に考えてまいらねばならないことと承知をいたしております。

長島委員 私も、どちらかというと、今回の申し入れに対しては違和感を持っている一人なんですけれども、さっき赤松委員の質問に答えて、中国側には何か申し入れをしたのかと、つまり、一方当事者である台湾に対して一方的に自粛しろ、緊張が高まることになるから自粛しろ、こう言った。逆に、中国側に対しても、アメリカなんかを見ると、ブッシュ大統領の温家宝首相との会談の際のコメント、これも、両方に対して自粛を、自制してくれ、こう言っていますね。そして、今回の公民投票については、一方的に現状を変更するおそれがあるから気をつけた方がいいという話をした。しかし、その次の日に、ライス安全保障担当の大統領補佐官はそれに対して補足をして、我々は中国側に対し、もし中国が台湾に軍事力あるいは威圧を加えようとするならば行動するんだ、台湾を守るんだ、こういう言い方をしておりますし、今防衛庁長官がおっしゃったように、公民投票の内容が出た時点で、もう一度、パウエル国務長官は、大分台湾の総統府も柔軟性が出てきたなという一定の評価を与えるコメントを香港のメディアに対して公の場で言っているんですね。あのアメリカでさえ、かなりバランスをとったことをしているんですね。

 今、赤松委員からの質問に対して、日中の外務担当の会議でも言ったよ、日中安保対話でも言ったよ、こう言うんですけれども、これは私たちに全く知らされないんですね。

 つまり、何が言いたいかというと、やはり中国側に言ったんだったら、例えば、報道官が後から出てきて記者会見をして、中国側にも言ったんだと言う、そういうバランスをとった対応というのが政府は必要なんじゃないですか。いかがでしょう。

川口国務大臣 先ほど赤松委員にお話をした田中外務審議官の発言というのは、これは日中外交当局の協議が一回目、それからもう一回あったわけですけれども、そういった協議に際しては、常にその後に記者ブリーフをしております。もちろん、いろいろなテーマが入って、広い日中間の協議、外交当局の協議であったり安保関係の協議であったりするので、そういう中でほかのものも一緒に出ていくということでございますけれども、我々の基本的なポジションというのは、そういうことについてはお話をしているということであって、ただ私、今、その田中審議官が発言をしたときのブリーフの状況について、何をどう言ったかという紙は持っておりませんので、具体的にこういうふうに言いましたということを申し上げることができないわけですけれども――今ここで来ましたですね。

 このときにお話をしていますのは、台湾に関する日本の立場は日中共同声明のとおりであるから、従来から変わりなく、最近の台湾の動きについて政府として懸念を表明しているところである旨説明をした、また、地域の平和と安定のため、中国側に対しても冷静な対応を求めるとともに、この地域の平和と安定のためにも、武力行使には反対である旨指摘をしたということが、これが二月の十日の第九回の日中安保対話について記者ブリーフをした内容でございます。

 ですから、きちんとバランスをとって我々としては申し上げている。ただ、情報はたくさんありますから、その情報の中に埋もれてしまうとなかなかお目にとまらないということはあるかと思いますけれども、こういったブリーフは全部、外務省のホームページでも出しているはずでございます。

長島委員 今のを伺って多少安心をいたしましたけれども、内田交流協会の台北事務所長は、申し入れを行った直後に記者会見をして、かなりメディアの注目を集めているんですね。それをやはり後で、ある意味で中和するためには、それ相当の政府としての意識的な努力が必要だと私は思いますので、その点、これからぜひ気をつけていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 私は、何でこんなに心配をするかというと、どうも、チャイナスクールという言葉があるように、外務省の中国に対する姿勢というのは、ちょっとおもねっていると言うと言い過ぎかもしれませんが、多少腰がふらついているんじゃないか、こういうふうにいつも疑いを持っておりまして、そうこうして今回の質問に備えて準備をしているときに、ちょっと重大なことに気がつきましたので、お手元に、委員の皆さんには資料をお配りしてありますが、御承知のとおり、米中の間では三つのコミュニケが基本的な枠組みとなって、アメリカと中国の間の関係を規定しているんですね。

 その三番目のコミュニケが、レーガン大統領のときに、八二年に交わされているんですが、川口大臣も英語が得意でありますので、よく見ていただければ一目瞭然でありますが、この訳語なんですね。英語の方を見てみますと、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であるということを承認」していると、これはアメリカ合衆国が。これは問題ないです、米国内でですからね。そして、もう一文ありますね。「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるという中国の立場」、アクナリッジと書いてあるんですね。このアクナリッジというのは、普通言えば、認識している、そういうふうに中国が言っている、中国の立場はわかっているよ程度の話なんですね。

 ところが、ここでは、その立場も、「も承認した。」これはツーとかアズ・ウエルとかついていないんですよ。「も」というのも多分誤訳ですけれども、承認したという同じ日本語を使っているんですね。違和感ありませんか。――いや、外務大臣にちょっと。英語の問題ですから、これは。いやいや、まず外務大臣。

兒玉政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、米中間の三つのコミュニケにおいては、まず英語の正文はいずれもアクナリッジとなっておりますが、中国語の正文がございまして、それは七二年の上海コミュニケでは「認識」というふうになっておりまして、その後もう二つの、七八年と八二年のコミュニケでは「承認」となっております。

 他方、このコミュニケは米中間の文書でございますので、それらの語の意味するところについて、日本として有権的に解釈する立場にはないということかと思っております。

長島委員 これは米中間の話なんですが、日本の政府の立場よりもさらにおかしな訳になっているんですよ。私は、これは誤訳というよりか意訳だと思うんですがね。

 日本政府は、中国との間に日中共同声明がありますね。この第三項で「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」これは、中国がそうやって表明した、ただそれが書いてあるだけ。日本政府の立場が書いてあるんですね、「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」と。日本政府ですらここまで、ある意味で相当慎重に、ガラス細工のような関係ですから、承認するなんということは言っていないわけですね。ところが、アメリカのコミュニケで、承認するという訳語を使っている。

 今兒玉さんの方から、中国語の正文を使っているからという話があるんですが、こういう文書は、いろいろな学生や一般の国民がアクセスをして研究の材料に使っていく大変重要な、私はわざわざアジア大洋州局の中国課に、日本語の、今政府が公式的に採用している訳語なんですかということを再三確認して、そうですと、外務省の方でこれはオーソライズした訳語ですということで御説明を受けているわけですけれども、そこにこういう誤訳があるということ自体、まず問題です。

 百歩譲って、いや、これは中国側の正文をそのまま書いただけですからということであれば、やはり後学のために、ここには注をつけて、米中間の複雑な関係もあって、英語ではアクナリッジになっているんだけれども、あえて日本語は中国の立場も、まあ中国の立場を重んじるなんて書くかどうかわかりませんが、ここは承認したといたしましたというふうに、やはり注をつけてください。これはぜひ外務省の努力として、日本の政府の、中国、台湾、あるいはこの地域の安定ということを考えたときに、やはりそれぐらいの矜持を持っていただきたいということを要望しておきたいと思います。どうぞ。

川口国務大臣 今先生が提示なさったこの文章でございますけれども、これが外務省がやっている訳であるというニュアンスでおっしゃられたんですけれども、我々としては、この文章の出典ということについては全く承知をしていないです。

 外務省として使ってある文章というのは何かといいますと、これは外交青書の中で書いてありますが、例えばこの文章について言いますと、アクナリッジはアクナリッジというふうに書いてあるということでございます。これはごらんいただいたらいいと思いますけれども。ですから……(長島委員「訳語はないんですか」と呼ぶ)日本語になっていないじゃないかとおっしゃられれば、それまでかもしれませんが、我々が使っているのは、唯一の合法政府であることを承認し、これは承認しと書いてありまして、承認し、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場をアクナリッジしたというのが外交青書で使っている言葉です。

 いずれにしても、両方、承認という言葉を使って外務省として書いているということは事実ではないということを、ちょっと事実関係の問題ですので、きちんとさせていただきたいと思います。

長島委員 いや、それは多少言い逃れなんですけれども、アクナリッジは認識というふうに、ほかの二つのコミュニケではしっかり訳しているんですよ。それで、ここだけ何かアクナリッジということで逃げるというのは、私はとても納得できませんが、そういうことは一応、委員の皆さんを初め、国民の皆さんにぜひ認識をしていただきたい。そういう意味で、外務省の軽率な行動はぜひ慎んでいただきたいということを言って、次の問題に移りたいと思います。

 実はこれも中国絡みでありますが、海洋調査船の問題であります。

 中国の海洋調査の歴史というのは、七〇年代の半ばからずっと続いております。まず南シナ海で活発化をいたしまして、どんな経緯があるかと調べてみると、最初は海洋調査で始まるんです。ところが、だんだん資源探査にいって、最後は軍艦が出てくるんですよ。こういうことに、東シナ海、つまり日本が隣接をしている海がそうなってはならないと私は思うんですが、そういうことで脅威が増大してきた経緯があって、実は東シナ海でも同じような経緯で今着々と中国の活動が続けられているんですね。

 九〇年代半ばから、日本が主権的な権利を主張するような海域で海底石油調査が始まったりということがあるわけです。日本側は、当然のことながら中止の要請をしておりました。そして、それはほとんど無視をされて最近まで至っております。九六年には十五回、九七年には四回、九八年には十四回、九九年には三十回。特にEEZ、排他的経済水域での中国の海洋調査は、二〇〇〇年から物すごい勢いで頻発をしているわけです。

 九九年だけ例にとりましょう、時間もないので。九九年に確認をされた三十回のうち、実は四回は領海侵犯だった、二十六回はEEZに対する侵入だった、こういう記録があるんですけれども、この四回にわたる領海侵犯行為に対してどういう対応をとられたのか。私の確認しているところによると、排除はしなかった、ただ抗議だけをした、こういうふうに書いてあるんですが、事実関係、いかがでしょう。

兒玉政府参考人 申しわけございません、今手元にちょっとその資料がございませんので。

長島委員 海上保安庁の方もいらっしゃらないですか。

小此木委員長 きょうは、海上保安庁の政府参考人の要求がございませんので、出席はされていません。

長島委員 きのう、ブリーフでは申し上げたんですが。

小此木委員長 先ほどの理事会で申し上げたとおりですけれども。

長島委員 一年生なので、ちょっと手続で戸惑いますけれども。

 二〇〇〇年の五月、六月に大変なことが起こったんですね。(発言する者あり)そうですけれども、たくさんありますので、またこれは集中してやりましょう。

 二〇〇〇年の五月、六月に、中国海軍の情報収集艦、これが、津軽海峡、房総沖を通過して日本列島を一周いたしました。こういう事実がありました。これで大騒ぎになったんですね。そこで、日本側も、当時河野外相でしたけれども、多少真剣になって、初めての日中安全保障対話というのを始めることになりました。

 このときに、日本側は、中国海軍の軍艦の津軽海峡での活動に懸念を表明、こういうことであります。そして、その際に中国側が何と言ったかというと、日本の懸念は認めるけれども、正常な活動であり問題ない、こう言ったんですね。外務大臣、本当に問題ないですか。

川口国務大臣 具体的な例について、領海侵犯とか、何かそういうようなことがあったかどうかということについて、私はちょっと今知りませんので、それは調べてみたいと思います。

長島委員 随分ずさんですね、政府は。きのう、ちゃんとこの問題について通告しているんですよ。

兒玉政府参考人 例えば、昨年でございますけれども、中国の海軍艦艇が日本の周辺海域で活動した事例がございます。日本政府からは、その都度、関係省庁間で連携した上で、外交ルートを通じて、そうした活動の概要、それからその目的について説明を直ちに求めるとともに、日本国内の誤解や不必要な疑心を生じせしめぬようにということで、慎重な対応を申し入れてきております。

 また、これに関連しまして、先ほども言及がございましたが、中国側はことしの二月に日中安保対話を行っております。中国側からは外交部や国防部も参加しておりますが、その場で、中国側としては海軍軍艦の活動については国連海洋法条約に合致したものであると考えているが、隣国である日本側からの提起のあった関心を踏まえ、今後は情報交換、意思疎通、関連事項についての説明を行っていきたいというふうに述べております。

 いずれにしても、これから引き続きこうした活動内容を把握して、一層の努力を払っていく考えでございます。

長島委員 実は、まだ二〇〇〇年の話をしていたんですけれどもね。去年の話ではないんですが、去年の段階ですら、ただそういう慎重な対応を申し入れる。二〇〇〇年の段階で既に五月にこういう事件があって、三年間何をやっていたんですか。大臣。

川口国務大臣 これは、先ほど兒玉審議官の方からお話をいたしましたように、確かに、例えば昨年の例としては、中国海軍が我が国の排他的な経済水域において漂泊をしたとか、そしてワイヤをつりおろして調べたとか、それからもう一つ、これは領海外ですけれども、近くを中国の国旗を掲揚して浮上航行していた、これは潜水艦ですね、というようなことがあったということは、そのようでございます。

 先ほど申しましたように、これは、我が国の周辺海域で活動をしたときには、外交ルートを通じて中国に、その活動概要それから目的、そういったことについて説明を求めておりますし、我が国として、中国側が慎重に対応することが必要だということも申し入れをしてきております。

 それで、二〇〇〇年のお話を先ほどなさって、二〇〇〇年から昨年の、今申し上げたのは昨年のケースでの対応ですけれども、それまでの間何をしたか、これは具体的にどういうケースがあって、そのときに何をしたかというのは、ちょっと細かいデータは手元に資料がございませんので、それについては調べたいと思います。

長島委員 外務大臣の認識はその程度ですか。二〇〇〇年から二〇〇三年の間には大きなことがあったんですよ。それは、事前通報制度を日中間で取り決めたということ、これは大変重要なことなんですね。そのことを全く御存じないんですか。そういう話をぜひしていただきたいと思ったんですが、御存じなかったようなので。

 この点、防衛庁長官、今潜水艦の浮上もあった、こういう話ですけれども、安全保障上の観点から、防衛庁長官の御所見をぜひいただきたいと思います。

石破国務大臣 調査船がいろいろなことを行っている目的は多々あるだろうと思っております。資源探査もございましょう、そのほかのいろいろなものもあろうかと思います。

 私どもとしては、この中国の調査船が行っておること、そしてまた、その目的等々を含めまして、重大な関心を持って見ておるところであります。私どもとして、うちのP3でありますとか、そういう飛行機がこういう船を見つけた場合には、とにかくきちんと公表する、すぐさま公表するということは行ってまいりました。

 私ども、あらゆる安全保障上の観点からも、この問題には重大な関心を有しております。

長島委員 引き続き、ぜひ安全保障の観点からこの活動はウオッチしていただきたい、このように思います。

 この事前通報制度についてちょっと伺いたいんですが、以前、これも平成十三年の六月の外務委員会での質疑の中で、中国側が事前通報制度にのっとって、こういう調査をしたい、こういう器具を使ってこういう調査をしたいということは逐一事前に報告を受けている、エアガンを使用するとか、あるいはボーリングをするとか、こういう事前通報がある、こういうふうに言っているんですが、その都度政府部内でどんな検討がなされているのか。

 これは、外務省が通報を受けて、外務省の中だけで検討しているのか、あるいは、安全保障上の問題も含めて政府部内で皆さんで協議をして、そしてそれに対して同意を与えるか与えないかということを吟味して、そして、まあこういうことだったらいいだろうということで同意をしてずっとこの間やらせてきているのか、その点確認させてください。

兒玉政府参考人 お答えいたします。

 まず、先生御指摘のとおり、東シナ海における中国の海洋調査船の活動、科学調査に関しましては、日中間で境界の画定がなされていないということなどを踏まえまして、御案内のとおり、平成十三年の二月に日中間の海洋調査活動に関する相互事前通報の枠組みが成立しております。

 この調査については、中国側から事前通報、それから事前申請を受けることになっておりまして、その都度日本側では、申請を受けた上で、まず国内の関係省庁としましては、海上保安庁あるいは防衛庁、文科省、農林水産省、国土交通省、総務省、それから経産省の資源エネルギー庁、環境省に対して情報を共有しまして、これについての承認を与えるべきかどうかということで検討した上で、問題がないことを確認した上で同意を与えております。

長島委員 これまで口上書の、つまり、通報制度ができてから何回通報を受けて、何回同意を与えているか。つまり、拒否した事例はあるかどうか、ここもちょっと確認させてください。

兒玉政府参考人 お答えいたします。

 これまで、事前申請を受けた件につきましては、二度ほど受け入れられないということで拒否をした事例がございます。

長島委員 この二回、ぜひ詳細に教えてください。

 通報事項というのは、幾つかあるんですね。海洋の科学的調査を実施する機関の名称、船舶の名称、種類、責任者、当該調査の概要、目的、内容、方法及び使用器材、当該調査の期間及び区域、どの点にそぐわないということで同意を拒否したんでしょうか。

兒玉政府参考人 お答えいたします。

 まず、不同意を与えたというケースについて、私は二件と申しましたが、訂正させていただきます。失礼いたしました。三件でございます。

 具体的な事例としては、平成十三年の八月二十九日の申請案件で、これについては、申請形式の不備ということで、我々の要求する所定の様式に従っていなかったということを理由に不同意をしております。

 それから、平成十四年の九月三十日の申請につきましては、一度私どもが同意を与えた海洋調査に関連して、期限延長、それから調査海域の拡大を申請してまいりましたので、これについては、新たな海洋調査であるということで、きちんと新しい案件ということで申請すべきだということで、不同意をしております。

 それから、三件目でございますけれども、平成十五年の十月の十三日に申請を受けておりますが、これについては、平成十六年の四月一日から海洋の科学的調査を行いたいという申請でございましたが、我々としては、四月一日から十三日の期間について不同意ということで、その十月十三日から六カ月後である四月の十三日以降については同意を与えております。

 いずれにしても、私どもとしては、海洋の科学的調査に関する相互事前通報の枠組みについて、我が国として不同意を最終的に与えた例というものはございません。

長島委員 結局、内容でけっていることはないということがわかったので、それはまたおいおい詳しく詰めていきたい、こういうふうに思いますが、もう時間があと残り十分を切りましたので、次の問題、防衛庁長官が退屈そうなので、防衛庁長官に聞きたいと思いますが、ミサイル防衛システムについて伺いたいというふうに思います。

 これも、先日予算委員会で少し議論をさせていただきましたけれども、十二月の十九日の閣議決定で、私はあえて言っているんですが、日本独力というか、独自のBMDシステムの配備を決定いたしました。そのときの官房長官談話の中で、これも私、先日ちょっと触れましたけれども、「迎撃の実施に当たっては、我が国自身のセンサーでとらえた目標情報に基づき我が国自らが主体的に判断するものとなっています。」こういうふうに言っているんですが、「我が国自身のセンサー」というのは、具体的なイメージ、ぜひ教えていただきたいと思います。

 推測するに、イージス艦及びAWACSにあるフェーズドアレー・レーダー、これが一つですね。それから、二月の十八日付の読売新聞の報道に、将来の警戒管制レーダー、FPS―XXというのが、こういう新レーダーが四月に試験と。これと今フェーズドアレー・レーダーと、この二つを組み合わせて、PAC3とSM3の配備をコンビネーションで決めて、そして、ある意味でいったら、目標の探知から、そしてそれを捕捉していって、そして最後、追尾して撃ち落とすまで、これを日本独自でやろう、こういうことだと思いますが、もう少し詳しく、防衛庁長官の立場から御説明いただけますか。

飯原政府参考人 お答え申し上げます。

 現在導入を予算案に計上しておりますシステムは、イージス艦システム単体、もしくはPAC3システム単体でも、そのレーダーで目標を捕捉してミサイルを迎撃することは可能でございます。ただ、全体のシステムといたしまして、地上に高性能のレーダーを配備いたしまして、そのレーダーと連接をすることによってより高性能の迎撃性能を付与できるということでございますので、将来的には、全体のシステムとしてそうした方向を目指すということでございます。

長島委員 二つ疑問があるんですけれども、一つは、今まで私たちが軍事常識で、知識として認識をしていたのは、さすがに、早期警戒情報、つまりミサイルが飛び出す瞬間、ここは早期警戒衛星でしか、つまり静止衛星でしかとらえられない、これはアメリカとロシアしか持っていないというふうに認識をしていたんですけれども、この官房長官談話の雰囲気からいくと、発射から全部捕捉しようというかなり野心的なレーダーシステムを日本は開発しようとされているように聞こえるんですが、早期警戒衛星の情報にも代替し得る、それだけの性能を持ったレーダーなんでしょうか。

安江政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の新型レーダーは、将来の航空機等による経空脅威、空から来る脅威、そういうものに備えて開発中の将来警戒管制レーダーでございまして、航空自衛隊の航空警戒管制部隊で使用することを考えております。

 航空機等のステルス性、レーダーに見えない、そういう能力が年々向上しておりますので、かかる航空機等には、現在装備しているレーダーだけでは十分な対処ができなくなると見込まれますことから、これら航空機等の趨勢に対応し得る航空警戒管制網を継続的に維持するために、探知追尾能力、それから電子戦能力、抗堪性にすぐれるとともに、弾道ミサイルにも対処可能な、探知距離が長い警戒管制レーダーを開発しているところでございます。

 現在、平成十五年度、九月に完成した試作機を用いまして、千葉県の飯岡町で試験を実施しているところであります。試験の終了は平成十七年度末を予定してございます。

 以上です。

長島委員 こういうレーダーはバッジシステムをある意味で進化させるということなので、航空機の侵入に備えたところから始まっているという今の御説明はよく理解できるんですが、ミサイルと航空機ではもう全然違いますね。ペトリオットがイスラエルを防衛するのに、最初に湾岸戦争のとき全然役に立たなかったということが記憶に新しいわけですけれども、航空機用につくられたレーダーがミサイルを捕捉できないというのは、これはもうこの委員会の委員だったらみんなわかっていることですよ。それを、その延長線上で、さらに性能をよくして、ミサイルにも対応できるようにしようと思っているんですか。もう一回確認させてください。

安江政府参考人 今回開発しておりますレーダーは、二つの能力を同時にあわせ持つものでございます。(長島委員「ミサイルと航空機ということですか」と呼ぶ)はい、そうでございます。

 電波の周波数が二つのバンドを使いまして、遠くにある小さいものも見られるもの、それから航空機のように大きなものも見られるもの、そういう能力をあわせ持つ、二つの能力をあわせ持つレーダーでございます。

長島委員 大変野心的で結構な話なんですけれども、これは、研究開発から配備への具体的なプログラムはどうなっているんでしょうか。つまり、一つはコストの面、それから、どれぐらいの期間がかかるのか、予算の問題もありますからね。

 つまり、何が言いたいかというと、日本独自のBMDをやるだけで八千億から一兆円かかる、後年度負担が物すごいかかってくるわけですよ。それについては、ドラスチックな、トランスフォーメーションを含めた、装備体系から自衛隊の編成から全部見直すんだという、まさに防衛庁長官の決意をこの前予算委員会で伺ったんですけれども、それプラスこのレーダーも開発するとなると、これは、どんなにコストがかかるか我々も想像がつかないんですけれども、その八千億から一兆円という日本独自のBMDシステムの中にこのレーダーはそもそも含まれているのか含まれていないのかも含めて、御説明ください。

安江政府参考人 お答え申し上げます。

 将来のBMDシステムの整備につきましては、財政当局を初めとする政府部内で調整を得た上で、最終的には各年度の予算を通じて確定されるべきものというふうに考えておりますが、防衛庁としては、将来警戒管制レーダー、今お話ししました開発中のものでございますが、その整備などを効果的、段階的に行っていきたいというふうに考えておりまして、この整備を含めてBMD全体経費を見積もりますと、現時点においては八千億から一兆円程度を要するものではないかと見込んでいるところでございます。(長島委員「レーダーも含めて」と呼ぶ)はい。

 以上でございます。

長島委員 この野心的な計画を日本の国会が納税者の立場でどうこれから判断するかというのは、大変興味深いというか、私もその一員として厳しく見ていきたいと思うんです。

 防衛庁長官、もう時間がないので、政策論をちょっと伺いたいと思うんですが、こういう野心的な計画もあり得ると思いますが、相当な莫大なコストがかかってくるわけです。そもそも、ミサイル防衛というのは何なのかということをちょっと考えたいと思うんですけれども、例えば、ラムズフェルド国防長官はかねがね、ミサイル防衛というのはグローバルシステムなんだと。つまり、ミサイルの脅威に直面している地域あるいは国というのが、迎撃テクノロジーをある意味で向上させながら、そしてミサイル配備の誘因、例えばどこどこの国がミサイルをつくっていく、そういう誘因とかあるいはミサイルテクノロジーの拡散というものをある意味で排除していこう、そういうものを抑え込んでいこう、そういうところに今意味があると思うんです。

 今回、そういう意味では、ミサイル防衛の分野というのは、ある意味で日本が国際的に貢献できる非常に重要な分野だ、こういうふうに思うんですが、この日本独自のBMDという考え方が、野心的でもあり、日本の主体性という意味でも、ある意味では理解できるんですけれども、何か主体性という言葉にこだわり過ぎて、ちょっと自閉的になってしまっているんじゃないかということを私は懸念するんです。

 というのは、これもこの前予算委員会で申し上げましたけれども、日米共同開発をしていこう、BMDについては日米でいろいろ技術を持ち寄って、研究開発、配備まで持っていこう、こういうことで五年前にスタートしました。百五十億もつぎ込んでまいりました、これまでに。今のBMDの話を聞くと、自分たちで自己完結的にやろう、こういう意欲はわかるんですが、そのアメリカとの共同開発、共同生産をしていこうというBMD、日米共同運用のBMDとどうつながってくるかということをもう一回明確にお答えいただかないと、これは何か日本だけ、自分たちだけよければいいんだ、こういう話になりかねないと思うので、ぜひ。

石破国務大臣 先ほど来、FPS―XXのお話をいたしております。私は、実はこの話を聞いたときに、委員と全く同じことを思ったんですよ。これは早期警戒衛星がなきゃできないという話じゃなかったか、それがなくてもできるなんというのは本当なのかという話は、随分と庁内でもいたしました。

 今の、新しいレーダーも含めまして、それは、我が国だけでできればこれが一番いいわけです。アメリカを信用しないと言っているわけではなくて、アメリカから入ってくる情報を付加すればなお正確であるということで、アメリカを信用しないと言っているわけではありませんが、我が国独自でできるということは非常に意味のあることだと思っています。この委員会を通じてまた御審議をいただき、本当に国民に向けて役に立つものにしたいと思っておりますし、今御指摘の百五十億円、アメリカとの共同研究に使っておりますこのお金、これはむだにならないようにということは、私の方から再三アメリカに対して申し上げておることでございます。

 これは、先般も予算委員会で委員にお答えをしたことと重なりますが、要するに、スパイラルで開発をするわけですから、今回導入をお願いいたしておりますシステムにこの共同研究の成果が生かされるものではございません。しかし、これが将来、本当にさらに研究が進んでまいりまして、開発段階になる、生産段階になるというときに、次の世代のさらに性能が向上したものに使われるということがなければ、これは何のためにお金を使ったんだかわからないということになります。そこについて、日米とも共同認識を持っていかなければいけないと考えておるところでございます。

 このミサイル防衛システムというのは、何も近年になって登場したものではなくて、もう何十年も前から、そのためにABM条約ってあったわけですから。ところが、当時のミサイル防衛というのは、とにかく飛んでくるミサイルの近くにこっちもミサイルを撃って、それで核爆発の力によって葬り去ろうなんぞという、かなりとんでもない代物であったわけで、今度の直接ぶち当てる形のミサイル防衛システムというのは、やはり考え方が変わったのだろうとは思っております。だからこそ、専守防衛にかなうものだというふうに議論をしておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、日米共同研究というのを今行っておるところでございまして、ここに使われました納税者のお金というものはむだになることがないように、そこは武器輸出三原則ともよく、きちんと整合がとれるように私どもとしては考えてまいりたいと思っております。

長島委員 ぜひ、国民の貴重な税金を使っておるわけですから、二重投資の批判を浴びないように、これからリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

小此木委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 私が最後の質疑者でございますので、若干お二人の委員の残った分も含めて質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、石破長官にお伺いしたいんですけれども、所信も拝聴しておりまして、今回、新しい大綱をつくろうと。平成七年につくられた大綱が現在の大綱でございますので、九年ぶりということになると思うんですが、九年ぶりに大綱を新たにする、そのときに防衛庁長官をやられているということの重みというか意味というのも大きく感じていらっしゃると思うんです。

 いろいろなことを発言されているんですけれども、今度の大綱で長官が一番重視をされていること、どういうことをやろうとされているのかということのイメージを少し詳しくお話しをいただければというふうに思うんです。

石破国務大臣 これは、端的に申し上げれば、ポスト九・一一の時代に対応し得る防衛力ということなのだと私は思っています。

 赤松委員の御質問にもお答えをしたので重複は避けますが、要は、存在する自衛隊から機能する自衛隊へ、こう申しますと、何だ、今まで機能していなかったのか、こういうふうにしかられてしまう、それ以前は、働く自衛隊という言葉があって、今まで働いていなかったのかみたいなことになってしまうわけですね。私は、やはりその新たな時代のポスト九・一一というのを、主体においても手段においても、非対称的な脅威というものにどう対応し得るかということをまず考えたいと思っています。それはテロについてもそうであります。

 国家資源の配分という点からも議論をきちんとしなきゃいけないのであって、警察も自衛隊も同じようなものを持っていますとか、海上保安庁も自衛隊も同じようなものを持っていますなんというのは、これは国家資源の二重投入以外の何物でもあり得ない。だとするならば、警察はどこまでやるのか、自衛隊はどこからやるのか、海上保安庁はどこまでやって、海上自衛隊はどこからやるのか、共同で行う部分はどこかということについても、きちんとした答えを出していかなきゃいかぬのだろうと思っています。

 それから、もう一点申し上げれば、国際的な責務の履行、国際貢献とも申しますが、これをどのようにするのかということも考えていかねばならないであろうということでありまして、今度の新しい大綱をつくるに当たりましては、私個人としては、そういうことをきちんきちんと検証しながらやっていきたい。多分こうであろうという話ではだめなのであって、そのような推測、願望に基づいたような、そういうような大綱であってはならないと思っております。

細野委員 私も問題意識は全く共有するところでございまして、大綱の基本的な今の方向性という資料を見ても、従来は、重要事項としては、やはり大規模な侵略というのがまず一番に来て、そしてその後に、国際社会への貢献であるとか、またさまざま、テロへの対策などが来ておったのが、今回、大綱では、私が聞いているところですと、順番が変わって、新たな脅威への対応というのが真っ先に来るんだということで書かれるというので、非常に期待をしておるんです。

 そこで、私もやはり問題にしたいと思っておりますのが、では、果たして、それに向かってどういうふうにこれから歩み出すのか、運用の部分も含めてしっかりやっていただけるのかどうか、そこに私も一番関心がございます。

 先ほど、ミサイル防衛については少し聞いていただきましたので、テロ対策についてお伺いをしたいんですが、ことしの四月に、習志野に三百人の特殊部隊を編成するという話があります。三百人という人数の是非はもちろんいろいろあると思うんですが、九六年ですか、韓国に北朝鮮の例の武装工作員が入り込んで、十数人の大捕り物をして、六万人のそれこそ軍隊が出動して、ようやく何とか沈静化した、あんな事態もある。これに向けて、そういうテロ対策、特殊工作員対策、こういうものに対してどういう体制を整備されようとされているのか、基本的な、現段階でわかっている枠組みをまず教えてください。

石破国務大臣 まず一つは、法改正を行いました。これは、今から三年ぐらい前になりますでしょうか。一つは、情報収集出動というものをつくりました。もう一つは、警護出動という規定をつくりました。もう一つは、治安出動におきます武器使用の権限というものを見直しました。

 それは、主にとは申しませんが、このような武装工作員に対して法律で十分なのかといえば、十分ではない場面があった。武装工作員に対する武器使用の権限を治安出動で行う場合に、必ずしも十分ではない部分もあった。それで、何が来ているのかよくわからぬというときに、情報収集をする、そのときにおいて、権限の規定がなかったということもございました。まず、法の改正を行いました。

 それからもう一つ、今先生が御指摘の習志野のお話でございますが、まだ仮称でありますけれども、特殊作戦群というものを新編したいというふうに考えておるわけでございます。

 法律はできました。そして、装備も整えております。新しい特殊作戦群、仮称というものを設けようということになっております。

 そこで必要なのは、まず第一に、警察との連携がちゃんとできているかということであります。まだ図上演習の段階でございますけれども、全国ほとんどの管轄区域におきまして、警察と自衛隊との連携がきちんとできるのかという図上演習を行わせていただいております。これも、今までやっていなかったということが驚くべきことでありまして、これはきちんと何の問題点があるのかということを把握している。

 そして、先ほど申し上げましたように、どの時点で警察が出て、どの時点で自衛隊が出るか。そこで警察が全部やられてから自衛隊が出るとか、海上保安庁の船が全部沈んでから海上自衛隊が出るとか、そんなばかなことがあっていいはずはないのであって、そこの連携をどうするかということも今検証を行っております。

 その上で、実際に対応できるかどうかということは、本当に早急に、これでいけるという検証をしていかなければいけないだろう。それは、あした起こらないという保証はどこにもないのでありまして、まだそこまでいっていませんでしたみたいないいかげんなことは言えませんので、私は、法律、それから装備、そして運用、その三つの面において、毎日これで万全であるということがきちんと言えるべく、今最大限の努力をいたしておるところであります。

 したがいまして、今の時点で法改正の必要がさらにあるという認識は持っておりませんが、さらに検証は深めてまいりたいと思っています。

細野委員 法律の部分について後ほど少しお伺いしようと思っておるんですが、その図上訓練なんですけれども、私もリストをいただきまして、各地で警察と自衛隊の方が共同訓練しているというのは、それはそれで絶対必要なことだというふうに思うんですけれども、警察にも銃器対策部隊というのがかなり充実をされてきて、SATというのも存在をしている。片や、防衛庁の方も、この特殊部隊をつくる上に、各地の、それこそ駐屯地なんかでも、ある程度テロの対策をする訓練もされているわけですよね。

 これをではどうやってやるのかということで、具体的なイメージをぜひお伺いしたいんですが、具体的に自衛隊が国内のテロに対応するとすると、一つは警護出動、これは、ただ警備でございますので、即行動につながるものではない。実際にではどういう行動になるかというと、治安出動の場合なんですね。あくまで仮定、これは仮定しなきゃしようがないんですが、治安出動が下令をされた場合に、警察と自衛隊の役割はどうなるのか。

 要するに、共同で鎮圧に当たるのか、もしくは、治安出動が下令された時点で、鎮圧はあくまで自衛隊が当たる、警察はさまざまな後方の事項に当たる、避難誘導などに当たるという整理をされているのか。仮に、では両方の部隊で当たるということになった場合は、指揮権はだれが持つのか。そのあたりについて、もう既にこれは整理をされているべきものだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 これは整理はいたしております。そのときになって、やってみなきゃわからぬみたいな話では、これは無責任のきわみでありますので。そういう場合に、これは治安出動の規定のとおりでございますが、その場合に、治安出動が下令をされれば、では警察は何もやらぬのかいといえば、そういうことにはならないわけでありますし、逆に申し上げれば、治安出動が出なければ自衛隊は何もせぬのかいといえば、そういうことにもならないのだろうと思っております。

 それは、治安出動の下令がありますまで治安出動に定められた権限というものを使えない、それはもちろんのことでございます。当然のことであります。しかしながら、そこは情報収集出動等々を用いまして、そこは、治安出動が出てもそのときにスムーズに移行できる体制というものは整えていきたいというふうに考えております。

 その場合に、では警察が自衛隊にかわるという場面もございますが、その場合においての指揮命令というのは、それは共同して行うことになるだろうと思っております。警察が自衛隊の指揮命令に服するとか、あるいはその逆とかいうことは考えておりません。しかし、そのときに指揮命令系統が混乱をし、それぞれがばらばらなことをやらないようにという調整はきちんと行う必要があるというふうに現在認識をいたしております。

細野委員 今の御説明だと、余り整理されているように聞こえないんですが、治安出動が下令をされました、その場合は、治安出動が出るまでは警察が対応しています、それはわかります。ただ、治安出動が出た時点で、治安の維持に当たる責任は防衛庁に移る、自衛隊に移る、そういう認識でよろしいんですか。

石破国務大臣 これは、近年、治安出動の際における治安の維持に関する協定というものを改正いたしました。それ以前は、昭和三十年代だか何だか、非常に古い協定がありまして、もうそんなことではだめだという認識で協定の改正を行ったところでございます。その中におきまして、自衛隊と警察との協力関係に関する基本的な事項を定むるということになりました。

 その中で、細部の協定、相互の意見聴取、事態への対処、すなわち、自衛隊及び警察は、治安出動命令が発せられた場合には、警察力の不足の程度などに応じた具体的な任務分担を協議により定め、事態に対処する。その際の任務分担は、防護対象の警備に関し警察力が不足する場合には、警察力の不足の程度に応じ、自衛隊は警察と協力して警備に当たる。治安を侵害する勢力の鎮圧に関し警察力が不足をする場合には、治安を侵害する勢力の装備、行動態様等に応じて任務分担を定める。

 聞いただけでは何のことだかさっぱりわかりませんが、これに書いてありますように、何に対して行うのか、何に対して警察力が不足をしているのかということに着目をいたしまして、その場合に応じた役割分担というものを定めておくということでございます。したがいまして、任務分担というものはきちんと事前に定めて対処するということになります。

細野委員 今の御説明だと、基本的に警察がやっているんだけれども、足らざるところを自衛隊が補う、そういう認識でよろしいんですか。再確認。

石破国務大臣 それは、治安出動の規定がどうなっておるかということによるわけでございます。治安出動は、先生御案内のとおりでございますが、命令による治安出動、もちろん要請による治安出動もございますが、命令による治安出動は、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」というふうに書かれておるわけでございまして、一般の警察力をもってしては対処し得ない事態が生ずる、それが治安出動の下令要件でございます。

 そういたしますと、補完という言い方は私は必ずしも正確ではないのだろうと思っております。それが量的にあるいは質的に、もちろん治安出動も防衛出動ではございませんので、これは、一般的な国内の警察作用として働くわけでございますけれども、それが警察力をもってしては、質または量によって、全く警察が対処し得ないというような事態が起こったとするならば、それは補完という関係には立たないのだと思っています。

細野委員 何でここをしつこく聞くかというと、従来とは治安出動の必要性というものの考え方が変わってきているんだろうというふうに思うんですね。といいますのは、いきなり今大規模侵略というのはあり得ないわけでして、その一つの方法としてはミサイル攻撃というのを十分考えなきゃならないんですが、ミサイル攻撃をではいきなりしかけてくるかというと、それも可能性は必ずしも高くないだろう。むしろ、武装工作員なりの行動が既に始まり、その予兆をもってどう判断するかという政府判断があるんですが、当面は治安出動を下令せざるを得ない状況というのは、私はあるというふうに見ているんですね。

 その中で、今長官がおっしゃったような、警察と自衛隊がお互いに補い合って、指揮系統もそれぞれ協力をしてやりましょう、事前に決めておくんですということで果たして対応できるのかというのは、私は極めてそこは正直不安に思っておりまして、治安出動が出た場合の責任の所在というのは、私は、できればもう防衛庁に移しておいた方がいいという意見なんですが、そこの議論をぜひこれからしていただきたい、これは私から要望をしておきます。

 そこで気になるのが、ちょっと横道に若干それるんですが、警察とそれから防衛庁のそれぞれの今までの経緯からいって、そのひずみが出て必ずしもいい方向に向かわなかったのが、私は警護出動という概念だと思うんですね。警護出動を出した場合に実際に警備することができるのは、米軍の施設とそして自衛隊の施設、この二つに限定をされているんですが、警護出動というのは、そういう、例えばテロであるとか、さまざまな不測の事態が起こる可能性があるという情報が入った場合に警護できる、そういう規定になっていますね。情報が入る可能性があるのであれば、まず一番どこを守らなきゃならないか、これは自衛隊法改正のときも随分議論になりましたが、官邸であり、それこそ原子力発電関係の施設ではないかという意見があり、それをある程度うやむやになる中でこの二施設に限定をしたという経緯があるんですが、今度、防衛大綱も変わります、そして、テロの危険性というのが高まったという認識に立つ中で、この警護出動について範囲を拡大する必要性、防衛庁長官、感じられませんか。

石破国務大臣 これは何度か答弁をしたことでございますが、政府といたしましてなぜ絞ったかといえば、米軍の施設にしても自衛隊の施設にしても、それが攻撃を受けちゃったらば、そもそも出動するもの自体がだめになるわけだから、したがって、これはまず必要だよねという一つのカテゴリーを設けたわけでございます。これは、私、当時、大臣でも何でもありませんでしたが、自民党内の議論におきましても、では、原子力発電所はどうした、首相官邸はどうした、自民党本部はどうだ、民主党本部はどうだとか、そんな話になってくるわけですよ。そうすると、どう考えるんだと。そのときに必要に応じてなんていう、そんないいかげんな規定はできないよねというような議論もございました。

 それは、警護出動の対象をどう広げるべきかということについては、私どもとして、政府として一つのカテゴリーというものを設けてはおります、それは自衛隊と米軍施設ということで。その理由は先ほど申し上げたとおりですが、それ以外に拡大をいたします場合には、では一体、なぜそれを対象とするのかというメルクマールをつくる必要はあるのだろうと思っております。

 私どもといたしましては、この点、国会における御審議、御議論を通じまして、さらにこの議論を深めていただきたいというふうに考えておりまして、ぜひ、その点につきまして、国会の場における御議論を拝聴させていただきたいと考えております。

細野委員 長官も改正の可能性を否定しないという御発言だというふうに受け取りましたが、もちろん、守るのは自衛隊であり米軍であり、実動部隊として頑張ってもらわなきゃいかぬわけですけれども、指揮をするのは官邸なわけですよね。少なくとも官邸を入れないと、今の御説明は論理矛盾しています。そこはもうはっきり申し上げて、御認識もされていると思いますが、党内でも当然議論をしたいと思いますが、やっていただきたいという要望だけしておきます。

 もう一点、海上警備行動の方なんですが、こちらも、昔はそれこそ、海上のさまざまな領域警備に関しては、ボートピープルの問題であるとかそういう、せいぜい、あとは密輸船が来るか来ないかというような中での海上警備行動は海上保安庁の責任だ、今は必ずしもそういう状況ではなくて、武装不審船も来るというような中で、一度だけ海上警備行動が発動されたという経緯があります。こっちは、治安出動であるとか防衛出動のとは違い、防衛庁長官がこれは独善というか、お一人で決められるんですね。

 過去、私は何度か判断の間違いがあると思っていまして、例えば十一年の能登沖の事案に関しては、これは、発見をしたのは海上自衛隊で、海上保安庁に連絡をして、追いつかなかったので最後に海上自衛隊が出てきて、逃げられちゃいました。その後の十三年の九州の沖であった不審船の事案については、海上保安庁が行ったんだけれども、銃撃戦になって、そして海上警備行動は発令をされなかった。

 陸上の場合は、治安出動なり防衛出動ということになれば、それこそ自衛隊が前面に出るわけですので、さまざまな国民の不安をあおるという面があると思うんですね。ただ、海上の場合は、もちろん、出ていくことによるマイナスのこともあり得るとは思いますが、そういう国民の不安をあおるということはない。むしろ、海上の脅威が高まっていく中で、海上警備行動に関しては、これは防衛庁長官が決められるので、もう少し海上保安庁との役割を明確にしていただいて、不審船に関しては、もう対応は海上自衛隊なんだということで対応していただくのが私は今の時点では最も望ましい、しかも、ダブル投資にもならない方法なのではないかというふうに思いますが、海上警備行動の発動の基本的な考え方をお伺いできますでしょうか。

石破国務大臣 これは先生よく御案内のとおり、八十二条は、「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」と書いてございますから、防衛庁長官が勝手にできるというものではございません。「内閣総理大臣の承認を得て、」ということに当然なっておるわけでございます。よく御認識のとおりであります。

 ここは書きぶりは治安出動とはちょっと違っておりまして、なぜこれは「長官は、」ということになっているか、治安出動は内閣総理大臣であるのに比べ、なぜ海上警備行動は「長官は、」ということになっているかということの理由の一つは、まさしく先生おっしゃったように、陸上であれば一般私人の方々の生命財産に直接関係するよね、だけれども、海上であればそういう場合は少ないであろうということも理由の一つであるというふうに承知はいたしておるところでございます。

 今までの不審船、工作船事案を通じて、第一義的には海上保安庁が対応すべきものだというふうには私は現在でも認識をいたしております。それは、その船がいかなる能力を持っているかということがわからない時点におきまして、いきなり海上警備行動を発令して、それが警察作用によるものであるとはいえ、いわゆる海軍力、私どもでいえば海上自衛隊を用いるということが、必ずしも外交上適切ではない場合もございます。やはりその場合には、同じ警察力でございましても海上保安庁が出た方が、よりよい結果が出る場合もございましょう。しかしながら、何でもしゃくし定規に適用するという話ではなくて、最初から海上警備行動をかけた方がより望ましい場合というものが全く排除されるとは私は考えておりません。

 いずれにいたしましても、これは自衛権を行使するわけでも何でもございません。警察権というものを使うわけでございますが、第一義的に海上保安庁が対応すべきものという考えに全く変わりはございません。そうあるべきものだと思っています。

 しかしながら、これは、「特別の必要がある場合に」ということをどう読むのか、そしてまた、先生おっしゃるような、国家資源の二重配分にならないようにということで、本当に私ども、防衛力の見直しの中で、海上保安庁と防衛庁との間で、本当にどうなのかという役割分担はきちんとしようということは申し上げております。それは、国土交通省の中にあります海上保安庁と私どもがそうですし、そして、現場においてもそういうような認識が共有をされなければならないものだというふうに考えておりまして、防衛力のあり方検討の中におきましても、その点につきましての認識は強く持っております。また御教授をいただきたいと思います。

細野委員 冒頭で長官が二重投資を避けたいということをおっしゃったので、その問題意識は持っていらっしゃるだろうなというのは重々わかるんですけれども、ある程度、やはり主体によって分けていかないと、船のスピードにしても強度にしても攻撃力にしても、こういうものにはどっちで対応するのかということを決めておかないと、これは二重投資は避けられない。その整理をぜひしていただきたいということを最後にお願いしておきたいというふうに思います。

 残りの時間を、ちょっと、これから政府が出してくる有事法制の議論に使いたいというふうに思うんです。

 まず、これは政府委員の方で結構なんですが、今回出てくる国民保護法制につきまして、一点ちょっとお伺いをしたいんですが、要綱の第八ということになるんですが、緊急対処事態という新しい概念が入っております。これを読むと、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態」、要するに、武力攻撃事態に至らない、手段は同じだけれども至らない可能性がある事態について、緊急対処事態というのを新しく定義をして、それについての国民保護を規定するという流れになっているやに読めるんですが、これは、事態法の補則の二十五条の二項で、武装不審船などに対応するようにと、これは我々の要望で入れたんですが、これに基づいて、今回、国民保護法制でこういう規定が入った、そういう理解でよろしいですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、事態対処法二十五条の規定が議院修正で入ったわけでございますが、その規定が入りました経緯にもかんがみて、このような緊急対処事態における国民保護措置を講ずる必要があるだろうということで検討させていただいたものでございます。

細野委員 防衛庁長官にお伺いしたいんですが、我々は、そもそも有事法制の議論をスタートするときに、緊急事態全体に対応できる法整備をしようということで、テロ対策であるとか、場合によっては災害も含めた法律体系をつくりました。

 それに対して、出てきた政府案、その法案を見ると、あくまで武力攻撃事態、これは侵略に該当するものですね。それに対する自衛隊の行動について書いた事態法というのが出てきた。それで、国民保護法制では幅広くというこの考え方は、国民保護法制については、テロ対策も含めてきちっと対応しようということは賛成をするんですけれども、我々の法体系と少し違うところは、この緊急対処事態、こちらの定義には入っているけれども武力攻撃事態の定義には入っていない部分の自衛隊の行動について、本当にこれで全部カバーできているのか、既存の法律で全部対応できているのか。

 この部分について、我々は整合的な法律を出した方がいいんじゃないかという主張をそもそもしておったんですが、さっきの議論とつながるんですけれども、今回の法律体系で抜けている部分があるんじゃないかと私は考えておるんですが、この点についての考え方はいかがでしょうか。

石破国務大臣 トータルな緊急事態法制をどうつくっていくかということにつきましては、これは、先般の我が党と民主党さんとの合意ということもございます。また私どもの中で、今自民党と公明党さん、与党の中でも議論をいたしておるところでございますが、緊急事態法制というものをトータルでつくっていかなければならないということにつきまして、私ども与党と民主党との認識はほぼ一致をするのではないかなというふうには考えております。これが今後どのような推移になるか、それはもう政党間の御議論でございますので、政府としてあれこれ申し上げることは不適当かと思います。

 まさしく今先生御指摘になったような、そうでないと穴が生ずるじゃないの、こういう場合に困るじゃないのということが具体的にあるのかどうか、その点につきましては私も大きな関心を持っておるところでございます。

 いわゆる国民保護法制ということで考えますと、災害対策基本法というものがベースにあって、これをいろいろなものに応用できるような形にして、それで一本の法律ができるとすれば、それは災害対策基本法が発展的にそちらの方に移行するというようなこともあり得るのだろう、一つの考え方としてはあるのだろう。それが自然災害あるいは人為災害、テロ、あるいは武力攻撃事態というふうにだんだんエスカレートしていっても、それにすべて間断なく対応できるような法制が一番いいねというふうな認識は私は持っているのですが、逆に、それをつくらなければここが抜けているというようなことが具体的にあるか、法の欠缺というのか、それによってこのような支障が生じて非常に国民に対して不利益がこうむる、そういう部分ありとせば、私は、それはあってはならないことだ。現在、私はそういうのがないという認識なのです。

 委員の方から、例えばこういうところが抜けているではないかということがあるとすれば、いずれにしても、緊急事態法制というものが今国会でできるできないは別にして、そういう法の欠如、法の欠缺みたいなことによって具体的に困るということがあるとするならば、それは適切に対応するという議論はなされるべきものと思っております。

細野委員 私も、具体的な事例をできるだけ考えてみようというふうにしました。

 それで、法律の構成としては、武力攻撃事態が発動されたときは、それこそ、これはもう武力攻撃なわけですから、防衛出動で下令されて、これは戦闘行為になるわけですね。そういう意味では、現場の自衛官も、これは殺人罪に該当するかというような極端なことは考えなくてもいいわけですね。片や、それが発動されない場合は従来の治安出動になる。そうすると、武器の使用要件としてはこれはどうなのかということをかなり考えなきゃならない。これはいろいろな議論がこれからあっていいんだろうと思います。

 もう一つ、私が、これはこれからもう少し具体的な事案について考えていかなきゃいかぬと思っているんですが、武力攻撃事態に該当するようなケースの場合は、例えば、私有地の利用であるとか、立ち木を切るとか、道交法の問題、医療法、すべてこれは例外、何でもオーケーなんだ、何でもオーケーと言わないまでも、例外が認められたところに対しては全部できるわけですね。

 ただ、実は、武力攻撃事態と武力攻撃事態前、ここで言っている緊急対処事態というようなものにはそんなに大きな差はなくて、例えば韓国の事例のように、ゲリラがばっと全国回るような場合で、しかも主体がはっきりしないので武力攻撃事態には該当しないというようなケースに、例えば、私有地も通れないようなことでいいのかとか、立ち木を切れないような状態でいいのか、道交法をきちっと守るということで対応できるのかという問題意識は持っていただきたいことは申し上げておきます。

 具体的に議論をすれば、恐らくそういうところが出てくると思いますので、その穴をできれば早い段階で埋めておいて、トータルな法律をつくった方がいいんじゃないかという問題意識を申し上げたい。

 一言で結構ですが、どうぞ。

石破国務大臣 それは恐らく、治安出動が下令されているときなのですね。そのときに、委員が御指摘になったような、私有地の通行ですとか、立ち木、立木を処分するというようなことがどういう場合にいかなる目的を持ってそれを行わなきゃいかぬかなという、それぞれの現場を想定してみなきゃいかぬのだろうねというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、武力攻撃事態に至りませんテロ、あるいは武装工作員の侵入事案に対して、自衛隊の活動の実態を踏まえて、そのような例外措置をとった方がいいということになるのかどうか、これは検討していかなきゃいけない。ですから、やはりテロとかそういうような場合と実際の武力攻撃事態というのは、事態の長さ、あるいは継続性、また態様が少し異なるものがあるのだろうと思っています。しかしながら、同じような場面もたくさんあるわけで、実際にそのような例外規定をつくることが自衛隊の行動の円滑化になるかどうか、そのことをよく検証しながら議論をしたいというふうに思っています。

細野委員 もう私どもも、それこそ与党の皆さんと協議をしてこの法律の枠組みに乗っかっているので、もう今さら全部なしにして原点に戻れとは申しません。ただ、やはりトータルに、危険の度合いが上がっていくに従って自衛隊の行動のレベルも当然上がっていかなきゃならない、それと同時に国民の保護のあり方というのも当然上がっていかなきゃならない、一方で私権の制限のレベルというのも上がっていくのも、これも当然なわけですね。そういうトータルな姿が国民に見えやすいようにする必要があるんじゃないか。いろいろな事態なり出動の形態が今混在をしていて、整理をされていないんじゃないかという問題意識を私が持っているということはお伝えをしておきたいというふうに思います。

 最後、時間もなくなってまいりましたので、武器輸出の三原則の問題について、一月の十三日でしたか、長官のハーグでの発言がいろいろ報道されております。ちょっと真意をぜひお伺いしたいというふうに思うんですが、長官、では初めに、ハーグのときおっしゃった要点はどういうことをおっしゃったのかということをまず御答弁いただけますか。

石破国務大臣 恐らく、委員も私が記者会見で申し上げました全文をお手元にお持ちなのかもしれません。もしお持ちでなければいつでも差し上げますが、私が申し上げたかったのは、武器輸出三原則というものは憲法の精神にも直結をする極めて重いものであります、よって政治の場で御議論をいただくことが必要ですということを申し上げました。ですから、報道にありますような、政府として見直しを始めたとか、見直しを検討しておるとか、そういうことは一言も申し上げていないわけであります。

 ただ、政治の場において、これもこの間もどなたかに答弁を申し上げたかもしれませんが、例えば、以前、我が自由民主党においては、武器輸出三原則というものは見直さなきゃいかぬのではないのかという趣旨の提言を国防部会として行ったことがあるという事実がある。片や、これはもう党として御議論になったかどうかは寡聞にして存じませんが、御党の委員から参議院においてそういうような御提起があったということもございます。

 私どもとして、武器輸出三原則を見直すという考え方を現在持っているわけではございませんし、憲法にもつながることでございますから、政治の場における御議論は必要だというふうに考えておりますが、政府といたしまして、もし情報提供を求められた場合には、これは適切なインフォメーションを提供する義務は政府にあるだろうということでございます。

 武器輸出三原則も、佐藤三原則から三木三原則というふうになり、そして冷戦が終わり、世界の武器産業、兵器産業というものの統合再編が物すごく進んでいるという中にあって、いろいろな御議論が出てきているのだろうというふうに私は思います。政府としての方針に何ら変更はございませんが、政治の場における御議論、そしてまた、それに対する私どもの情報提供というものは必要なものだと認識をしております。

細野委員 石破長官が自民党の国防部会の幹部でいらっしゃったら、この発言は一つの問題提起と受けとめます。ただ、政府の防衛の責任者である防衛庁長官が武器輸出三原則に関してこういう発言をされるということは、当然それは政府の中で検討されるのであろうととるのが、これが常識的なやはり受けとめ方だということはまず申し上げる必要はあると思います。

 その上で、いろいろおっしゃっているんですが、私は、武器輸出の三原則については大体三段階ぐらいあるんじゃないか。

 一つは、例えばミサイルディフェンスのようなケースで、日米で共同研究します。ただ、あれは世界の安全に関しての責任を持つ構想だとアメリカが言っている以上、これは第三国に技術が行くのはやむなしと見る、これは、一つ考え方として我が党内でも検討しています。これは、第一段階としてあると思います。

 もう一段階先に武器輸出三原則としてあるとすれば、長官がおっしゃっている、ヨーロッパでは武器の共同開発は、これはもう常識だ。それこそ、日本も艦艇であるとかミサイルの技術を持っているわけですから、そういうことに対して共同でやろうということが、これが武器輸出の二段階、ミサイルディフェンスの先にあることですね。ここまでは一つ考えられるだろう。

 第三段階としては、日本にもいっぱい、それこそ防衛費を相当かけてつくってきて陳腐化した武器も結構ある。そういう艦艇なんかをそれこそ第三国に輸出をする。それこそ途上国の中にはそういうのが欲しいという国もあるやもしれない。ここも武器輸出の概念には入ってくるだろう。三段階ぐらい考えられるだろう。

 石破長官がおっしゃっている、武器輸出の三原則は見直す可能性はあるけれども死の商人にならないというのは、その死の商人というのはどういうことをいうのか。私が言う第一段階は死の商人じゃないのか、第二段階は、これは国によるのか、第三段階まで視野に入れられているのか。その辺、ちょっと今時点のお考え方をぜひお聞かせをいただきたいと思います。

石破国務大臣 死の商人になるということはどういうイメージかというと、例えば、対立しているAという勢力、国でもいいですが、それとBという国、Bという勢力がある。そのどっちにも武器を売って大もうけしちゃう。世界じゅうに、頼むから戦争が起こってくれないかというふうに願って、一番ひどいのは、両方に武器を売って大もうけするなどというのが一番典型的な死の商人なのでしょう。それは、両方に売るというひどいことはしなくても、片一方にせっせと売ってやっていくというようなイメージもあるかもしれない。

 いずれにしましても、兵器の輸出をすることによって戦争が起こることをこいねがい、そのことによって金銭的な利益を多分に得るというのが死の商人のイメージなのかなというふうに私自身は思っております。

 日本は、いずれにしても、そういう形で世界に武器を売りまくって大もうけをするなどということは、今までもしてきたことがない。確かに、佐藤三原則の前には、東南アジアを中心に武器は売っていました。実際、日本でもそういうことはあったのです。しかしながら、そのときも、大もうけしてなどというイメージではなかったと思います。

 それを持ってはいけないのだということは当然ありますが、同時に、憲法との関連で申し上げれば、やはり我が国が専守防衛、そして九条というものを持つ平和国家である以上、そういうものの輸出は慎むべきだという考え方、それが平和につながるのだという考え方に根差しておることも、これはまごうことなき現実であって、そのことも大事にしていかねばならないのだろうと思っています。

 そうすると、では何なのだということになりますが、では、東南アジアに本当に日本では陳腐化したものを欲しいと言っている国がある、そこらに対して出すべきなのかどうか。それは今だめです。やってはいけません。そのことは本当にどうなのだろう。政府としてそれを認めるという方針は全くございませんが、そのような観点からの御議論、今申し上げたような観点からの御議論というものはこれからあるのかなというふうには思っております。

 もう一つ、欧州においてもアメリカにおいても、いろいろな統合がなされているではないかということがございます。それとは日本は関係なく、そういうような世界の流れ、つまり、リスク削減あるいはコストの低減、そういうものと関係なく日本はやっていくのだということであってよいのかどうかというような御議論はあるのかもしれない。

 いずれにしても、私どもは、やはり防衛力というのはあくまで抑止力であって、使ったらおしまいだということはきちんと認識を持たなきゃいかぬのだと思います。使うようなことがあったり、それによって人が殺傷せられるようなことがあっては絶対にいかぬのだ。

 では、どうすれば使わなくて済むのかということの過程において、いろいろな議論がなされる。しかしながら、私どもといたしましては、今いろいろなことを申し上げましたが、そういうことを国会の場において御議論をいただくのだろうと思いますが、政府として武器輸出三原則を見直すという考え方はございませんし、憲法にもつながる重要なことでございますので、国会においての御議論というものがあるのだろうというふうに思っておるところでございます。

細野委員 第三段階まで行かないというのはわかりました。

 ただ、防衛庁長官、ミサイルディフェンスと武器輸出三原則、もう具体的な視野に入っているわけですから、それは国会でやってくださいという話ではなくて、どこまで政府としてはやらなければならないと認識をしているのかということを、ぜひ政府内でも整理をしていただきたい、そのことをお願いして質問を終わります。ありがとうございました。

小此木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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