衆議院

メインへスキップ



第2号 平成17年2月24日(木曜日)

会議録本文へ
平成十七年二月二十四日(木曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 赤城 徳彦君 理事 岩屋  毅君

   理事 高木  毅君 理事 仲村 正治君

   理事 大石 尚子君 理事 渡辺  周君

   理事 赤松 正雄君

      奥野 信亮君    加藤 勝信君

      嘉数 知賢君    瓦   力君

      北村 誠吾君    小西  理君

      坂本 哲志君    寺田  稔君

      中谷  元君    中山 泰秀君

      浜田 靖一君    御法川信英君

      城井  崇君    小宮山泰子君

      武正 公一君    津村 啓介君

      西村 真悟君    本多 平直君

      松崎 哲久君    松本 大輔君

      松本 剛明君    村越 祐民君

      佐藤 茂樹君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   内閣府副大臣       林田  彪君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   林  景一君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     小西  理君

  額賀福志郎君     加藤 勝信君

  古川 禎久君     中山 泰秀君

  津村 啓介君     松崎 哲久君

  中野  譲君     松本 大輔君

  前原 誠司君     城井  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     額賀福志郎君

  小西  理君     石破  茂君

  中山 泰秀君     古川 禎久君

  城井  崇君     前原 誠司君

  松崎 哲久君     津村 啓介君

  松本 大輔君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     中野  譲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛局長飯原一樹君、外務省大臣官房審議官鶴岡公二君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済協力局長佐藤重和君及び外務省国際法局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。

高木(毅)委員 おはようございます。自民党の高木毅でございます。

 まずは、町村、大野両大臣におかれましては、このたびの2プラス2への御出席、大変お疲れさまでございました。多くの成果をお持ち帰りいただいたというふうに認識をいたしておりますけれども、きょうは、この2プラス2に関連して、日米同盟関係について、そして在日米軍の再編問題、そして拉致問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の2プラス2と日米同盟関係についてお伺いをいたしますけれども、今回の2プラス2におきましては、いわゆる日米の共通戦略目標というものが明らかにされた。それから、自衛隊と米軍の役割、任務、能力についての検討を継続することの合意がなされた。そしてまた、在日米軍再編問題に当たっては日米間の協議を強化する、こういったことが決まったというふうに認識をいたしておるところでございます。

 ただ、今回の合意までの過程を見ますと、昨年春から秋にかけて、この米軍再編問題に関して、いわゆるマスコミ報道が先行した。そういう結果もあって、米軍基地のある地元自治体やその住民の方々の不安や不満というもの、あるいはまた反発というものも招いたのではないかなというふうに思っております。しかも、外務省が、それらについていろいろ問い合わせがあったときに、まだ何も決まっていないと言うばかりで、十分な対応をしてこなかったような気がいたします。そうしたことがさらにその不安や不満を助長したのではないかという印象を私は持っているところでございます。

 今回の2プラス2というのはその仕切り直しということになったかというふうに思いますが、この間に政府は、関係自治体を初め、国民に対する説明責任というものを十分に果たしてこなかったのではないかということをまず御指摘させていただきたいというふうに思います。

 さらに申し上げますと、この日米安保条約というのは、日米のいずれかが一方的にその終了を通告すれば、通告後一年で失効してしまうものということでございます。この日米安保条約体制というものを良好に維持するためにいろいろとしなきゃならないことがあるわけでございますが、どうも私の感ずるところ、政府は、米国政府やあるいはまた米国世論の動向というものには非常に敏感であって、大変気を使っているようにも見えるわけでございますけれども、一方、最も大切であるはずの日本国民の支持というものを取りつけるという作業といいますか、そういったものが少し劣っているのではないかなと。日本国民の支持がなければ安保体制は成り立たないという最も根本的なことをいま一度改めて認識する必要があるのではないかなというふうに思っているところでございます。

 さて、また、昨年の十月に、当時のアーミテージ米国務副長官が、個別の議論から始めたのは順番が間違っていた、今後の日米関係のあり方から話を始めるべきだったというふうに述べたと言われているわけでございますけれども、この発言も、考えてみれば、我が国の安全保障の中核の一つである日米同盟関係について改めて議論をしなければいけないということをあらわしている言葉ではないかなというふうに思いまして、このこと自体も私は大きな問題ではないかなというふうに思います。

 真の同盟関係というものは、刻々と変化する国際情勢に的確に対応して、常に共通の目標にしていくことであって、また、両国民の間でそのような認識が共有されているということが必要であるというふうに考えておるところでございます。

 今幾つか指摘をさせていただいたわけでございますが、この私の指摘に対しまして、両大臣の御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

大野国務大臣 高木先生がただいま、今回2プラス2というのは仕切り直しじゃないか、こういうお話がありました。まさにおっしゃるとおりでございます。

 当初、在日米軍の兵力構成につきましては、個々の施設・区域ということで先方から提案がありました。しかし、それはやはり、お互いに両国の同盟関係をいかに考えていくか、そこから出発すべきである。私も、昨年十一月にアメリカへ参りましてラムズフェルド長官に会いましたときに、ぜひともこれは、共通の戦略目標あるいは安全保障環境をお互いに認識していこうじゃないか、そしてそれから役割分担、最後の目標がやはりそれぞれの基地、施設・区域である、こういうことを言いまして、先方も、そのとおりということでございました。

 そういう過程において、やはり安全保障というのは国民の皆様の御支持がなければできないじゃないか、当然のことであると思います。まず第一の問題点といたしまして、やはり私は、在日米軍のある、基地のある町の住民にとって、これは大変関心の高い、大きな問題であると思います。したがいまして、政治家として、政治の説明責任として、十分に果たしていくべきだと思います。

 ただ、御理解いただきたいのは、こういう協議事項であります、特に昨年は個別の話から始まりましたので、例えば、ある地域がどうなるんだということが先行いたしますと、それが玉突き状態になって、それじゃここはどうなるんだ、結局、我々が目指しております最終着地点には到達できない、こういうことがあるわけでございます。したがいまして、情報の問題としては、やはりある程度煮詰まってからにさせていただきたい。生煮えのまま出してしまいますと消化不良になってしまいまして、全く決着がつかない、こういうことを我々は恐れているわけでございます。

 説明責任は、個々の問題につきましてある程度煮詰まった段階で必ず果たさせていただきたい、このことをまずお約束させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

町村国務大臣 今、高木委員から貴重な御指摘をいただきまして、どうもありがとうございます。国民の理解と支持なくして外交あるいは安全保障政策というのは成り立たない、まさにそのとおりであろう、こう思っております。

 今、特に個々の話が先行したというのは、去年あるいはおととし、日米間でずっと議論をやってきたところでございまして、そのある断片だけがマスコミに流れ出ていく。我が国、これは外交、安保のみならず、いろいろな面で情報管理の問題というのがまことにお粗末でありまして、国家公務員法違反になるようなケースが多々あるような私は気がするのであります。いずれにしても、きちんとした情報管理ができていないというのはまことに問題だ、こう思っておりますが、それは逆に言うと、我が国マスコミの取材能力の高さのあらわれかもしれないので。いずれにいたしましても、そういう断片情報が国民の中に混乱を巻き起こす部分があったことは否定できませんし、そういう意味では反省すべき点があるな、こう思っております。

 いずれにしても、きちんきちんと折に触れて説明をする。今回の2プラス2の共同発表した文書が、そういう意味では一つの説明責任を果たすいいきっかけになればいいな、こう思っているところでございます。

 私も、この2プラス2の前に、随分多くの方々、例えば基地が所在する沖縄県知事あるいは神奈川県知事を初めとする方々が、渉外知事会でしたか、たしかそういう名称だったと思いますが、つくっておられまして、その方々ともお話し合いをいたしました。あるいは、横須賀の市長さんもお見えになって、原子力空母が配置されるのではないかといったような問題についての御指摘もあり、それについてのお答えもしたりいたしました。そういう形で、いろいろな御理解を得る努力を今後もしていこう、こう思っておりまして、関係する知事さんたちには、帰国後直ちに私の方からお電話をするといったようなこともしたところであります。

 それから、常日ごろからしっかりと日米間で協議が行われているのかということでございましたが、これは随分やっております。ただ、その一つ一つをすべて公開するわけにもまいらないという面があるのでありまして、日米間の協議はかなり緊密にやっているのかなと思います。例えば、私もパウエル前長官とは三カ月間ぐらい大体一緒でしたけれども、その間にパウエルさんとは、国際会議で会った回数を含めて五回会ったでしょうか、かなり頻繁に会うことができております。

 ただ、いずれにしてもきちんとやった方がいいだろうということで、今回の共同発表の中でも、第九パラグラフのところには、「共通の戦略目標に沿って政策を調整するため、また、安全保障環境に応じてこれらの目標を見直すため、定期的に協議することを決定した。」今までも定期協議をやっておるのでありますが、改めてこういうことを触れて、より一層日米間の緊密な安全保障体制を築いていこうということについても改めての合意をしたところでございます。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 まさに外交、安全保障、国民の理解なくして成り立たないというふうに思いますので、引き続きそういった姿勢でお願いをしたいと思います。また、継続的にずっと、まさに日米関係が良好にいくように、御努力を心よりお願いする次第でございます。

 それでは次に、いわゆる在日米軍の再編問題について、これも両大臣にお聞きをしたいというふうに思いますけれども、この在日米軍の再編というのは、二つのテーマがあります。一つは在日米軍の抑止力を維持する、そしてまた、沖縄を含む地元の負担を軽減するということではないかというふうに思いますが、これは、一見相矛盾することと言っていいかというふうに思います。

 これからこの検討がいよいよ始まるわけでございますけれども、私は、端的に、この解決には二つの方法があるのではないかなというふうに考えておりまして、これは大野長官も報道等では少しお話をしていただいているようでございますが、一つは、自衛隊と米軍による、いわゆる基地の共同使用ということでございます。

 共同使用といいましても、大切なことは、やはり自衛隊が基地の管理権を有する共同使用でなければならないというふうに考えるところでございます。同じ軍事施設であっても、米軍基地にあっては、地元自治体の受け入れ拒否だとか、あるいはまた地元住民の根強い反対の声があります。ところが、一方の自衛隊の方は、基地所在地の自治体から、いわゆる今回の陸自定数の削減反対という声が大きく上がったり、あるいはまた熱心な誘致合戦もあるわけでございまして、実は、私の地元福井でも、しかも二つの自治体から、今、自衛隊誘致の声が上がっているような状況でございます。

 同じ基地でありながら基地所在地域の対応が正反対になるというのは一体なぜなのかなというふうに考えてみました。一つには、戦後、自衛隊というものが営々と築いてきた地元との信頼関係構築のための努力があったんだろうと思いますし、それから二つ目は、最近よくいわゆる災害も起きるわけでございますが、自衛隊による災害派遣を初めとする民生協力への高い評価というものがあるだろうと思います。そして、何といっても、自衛隊が、我が国の、我が国民の自衛隊であるという認識がようやく広く国民に浸透してきたからではないかなというふうに思っているところでございます。

 両大臣御案内のように、地位協定に基づく共同使用には二通りございまして、一つは地位協定第二条の4(a)に基づくもの、二4(a)と言われておりますけれども、米軍が管理権を持つ基地を自衛隊が共同で使用するという方法、そしてまた二つ目は、地位協定二条4(b)に基づくもの、二4(b)でございますけれども、自衛隊が管理権を持つ基地を米軍が共同で使用するものという二通りあるわけでございますが、やはり先ほど申し上げたとおり、自衛隊に対する国民の信頼感というものを考えるならば、基地の共同使用に当たっては、いわゆる二4(a)ではなくて、基地管理権が日本にある二4(b)でなくてはならないというふうに考えておるところでございます。

 ただ、もちろん、そうすることによって地元の負担軽減というよいことがあるわけでございますが、よいことばかりではなくて、当然、政府そして自衛隊に大きな負担が逆にかかるわけであります。抑止力を維持しつつ地元の負担を軽減するというこの相矛盾する方針、指針を真に両立させるためには、やはり思い切った施策が必要不可欠だというふうに思います。そのためには、国家としての負担増は避けられませんし、当然、必要な措置は断固として私はとるべきだというふうに思っております。

 自衛隊を増強する、そして米軍と共同使用する基地の管理や警備を行わなければなりませんし、そのために発生する経費については、例えばSACO経費と同様にして、通常の防衛費とは別枠で予算に計上することが私は当然必要なんだろうというふうに思っておりますが、今私が申し上げたことにつきまして、外務大臣、そして長官の御所見をお伺いしたいというふうに思います。

大野国務大臣 高木先生から、日本の自衛隊に対する高い評価をちょうだいしました。それは、日本の自衛隊が地元との信頼のきずなを築いている、そしてまた、災害救援活動等、民生のために大変役立っている、こういうことでございます。

 このことはちょっと余談になって恐縮なんですけれども、イラク・サマワにおける自衛隊の活動も、やはり地元のサマワの皆様とともにやっていこう、こういう関係を構築しておりまして、その点の御指摘、大変今身にしみてありがたく拝聴したわけでございます。

 そこで、まず、共同使用の問題。これは、いわば抑止力を維持しながら負担を軽減していく、これは相矛盾するじゃないか、そのとおりだと思います。しかし、そうでなくするということは、やはり軍事科学力の向上が一つあります。軍事科学力の向上によってその二つの問題を両立させていくことができる可能性はあるのではないか。機動力とか展開力とか、あるいは破壊力とか爆発力とか、そういう問題であります。

 それはおいておきまして、やはり日米が両方でお互いに共同していく、これは大変大きな力となって、私は、この二つの一見相矛盾するような問題を解決する手段になるのではないか。かつて、日本の安全保障、日米安全保障という考え方は、いわば日本の基地とアメリカの軍隊、この二つの組み合わせでやっていた。しかし、日本も、基地を提供すると同時に、人間同士の力も合わせていく、こういうことも大事なのじゃないか、こういうふうに思う次第でございます。

 そこで、あらゆる知恵を絞りながら、この二つのテーマを、二つの一見相矛盾するような問題を解決していこうじゃないか、これがやはり、私は、お互いの役割分担であり、あるいは共同運用、インターオペラビリティーの問題であり、そして、今先生が御指摘いただきました、共同で基地を使用していこうという問題であろうかと思います。私は、そういう問題意識をきちっと持ちながら、この問題に、トランスフォーメーションの問題に対応していきたい、このように思っております。

 ただ、共同使用という一つの考え方、これは、先生がおっしゃるように大変有効な考え方ではあると思います。しかし、その考え方がまずありきであって、そのためにやるというのじゃなく、そういうアイデアを頭に置きながら、あらゆる可能性をこれから一つ一つ検討していかなきゃいけない。一つ一つの基地でそれぞれの問題がありますから、私は、やはりそういうことを強く念頭に置きながら一つ一つの問題を考えていかなきゃいけないのではないか。これは、政治的リーダーシップが当然必要であります。やはりこの政治的リーダシップのもとで、基地の共同使用のあり方を含め、あらゆる方策について今後検討してまいりたい、このように思っております。

 しかも、この問題というのは、単に検討していくというような悠長な話じゃなくて、やはり今回の2プラス2の共同声明でも申し上げておりますとおり、数カ月の間集中的に議論してやっていこう、議論を加速させていこう、こういうことでございます。そういうことで御理解をいただきたいと思います。

 なお、管理権がどちらにあるのか、これも、先生がおっしゃったような問題点、十分認識しております。しかし、それを一つ一つこれから検討していく、これがやはり一番大事、検討する、それもスピーディーに検討していくということが大事だと思います。

 それから、いろいろな意味で、日米共同、あるいは基地の共同使用になってまいりますと、経費の問題ということを先生おっしゃいました。経費の問題につきましては、どうぞまた御支援をくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

町村国務大臣 共同使用の問題は今防衛庁長官がお話しになったとおりでございまして、現時点で、今個別に具体の案がまとまっているという状況ではございませんが、今後、いろいろな可能性を含めて検討していこうということでございます。

 あわせて申し上げることは、この間の2プラス2で出た話なんですが、どうも、米軍基地、即負担ということになります。しかし、これは考えてみると、基地があるということは、すなわち、米軍の抑止力があり、日本の平和と安全が保たれているということでありますから、そのもとで日本がこれまでどれだけ経済的な発展を遂げることができたかということ、要するに、基地がある、あるいは安保体制がしっかりしているということのいわばメリットといいましょうか恩恵といいましょうか、そういう面もあるということをやはり我々フェアに考えておきませんと、一方的に、米軍基地、即負担という非常に偏った見方というのは、やはりこれは私どもとしてはとるべきではないんだろう、こう思っておりまして、そういう意味で、やはり日米安保があるから今日の日本の平和と安全と独立が保たれているという面も、ぜひひとつこれは御認識を賜れば幸いかな、かように、ちょっと釈迦に説法で恐縮でございましたが、申し添えさせていただきます。

高木(毅)委員 どうもありがとうございました。

 先ほど、抑止力を維持して、そして負担を軽減する、この一見相矛盾する二つの目的を達成するために二つの方法という話をしましたけれども、今、一つの話はさせていただきました。もう一つは、いわゆる法整備ではないかなというふうに思っております。

 周辺事態法が成立をいたしまして、朝鮮半島の有事だとか、あるいはまた台湾海峡有事の際における、いわゆる米軍支援の枠組みというのができたというふうに思っておりますし、さらに、昨年、一昨年と有事法制を整備したということによって、我が国有事における米軍支援の枠組みも整ったと考えておりますけれども、今後は、やはりいわゆるこういった有事とか周辺事態ではなくて、平素における種々の米軍支援の枠組みということを整備する必要もあるのではないかな、そうすることによって、いわゆる在日米軍の抑止力を維持しつつ、そして地元の負担を軽減することができるのではないかなというふうに思っているところでございます。

 平素の段階から、周辺事態、そして我が国有事に至るまで、切れ目のない、シームレスな米軍支援の枠組みができれば、米軍の後方支援部隊を削除していくこともかなうのではないかなというふうに思います。場合によっては、このような対米支援も自衛隊の本来任務と位置づけて、自衛隊の中に対米支援の専門組織を設けるということも必要になるかもしれないというふうに考えております。

 今後、政府において検討していただく必要があると考えますけれども、これは大野長官にお聞きをいたしますけれども、駐留米軍削減のために対米支援法制の整備ということについて、防衛庁長官のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

大野国務大臣 大変示唆に富むお話でございました。

 在日米軍の駐留に当たりましては、例えば、在日米軍が使用する施設・区域について、提供施設整備費、在日米軍に係る労務費、光熱費あるいは水の料金等の在日米軍駐留経費負担をいたしておりますし、在日米軍施設・区域の安定的な使用の確保のためにいろいろな施策をとっているところでございます。

 これを、平時、有事、両方にまたがって考えたらどうか、こういう御指摘ではございますけれども、自衛隊と米軍の間では、共同訓練の際とか、あるいは自衛隊施設に一時滞在する米軍に対するACSAの物品、役務の提供等、枠組みが存在いたしておりますけれども、今後どういうふうにそういう有事の問題を考えていくのか。これはやはり特別措置法ということで対応してきておりますけれども、私どもは、やはり基本的な点にさかのぼってこういう問題を考えていかなければいけないのではないかと。日米、今回の兵力構成の問題につきましても、十分先生のおっしゃったような意味も含めて考えなきゃいけないとは思いますけれども、私は、やはり今の基本的な問題との整合性をどう考えていくか、この点も含めて、抑止力の維持と、沖縄を中心とする国民の負担、地元の負担を軽減する、こういう観点から、あらゆる措置につきまして、今後、政治的リーダーシップのもとに検討していかなければいけない、このように思っております。

 まことにあいまいな回答で恐縮でございますが、やはり基本問題は基本問題としてきちっとしておくべきではないか、このように思います。

高木(毅)委員 時間も残り少なくなってまいりましたので、町村大臣に、ひとつ拉致のことについてお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の2プラス2におきましても、「北朝鮮による日本人拉致といった人道問題を含む、北朝鮮に関連する諸懸案の平和的解決を追求する。」という日米の共通戦略目標が明確にされたわけでございまして、これは、北朝鮮に対して強いメッセージを送ることができたのではないかというふうに評価をいたしているところでございます。

 しかし、私は、実は町村大臣の所信を拝見いたしましたが、「北朝鮮に関しては、」「拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決することを引き続き目指します。」こういうふうにして、若干さらっとお触れになっているだけのような気がいたします。

 それから、実はちょっと時間がないので飛ばしてしまいますけれども、説明不足になるかもしれませんけれども、川口大臣が、前は、「特に、拉致問題では、」「あらゆる機会をとらえ、問題解決に全力を尽くしていきます。」というふうにおっしゃっているんですね。ということは、川口大臣は、いわゆる拉致問題の解決ということを一つ大きくとらえているというふうに私は感じております。

 町村大臣は、どこかの発言だったかと思いますけれども、この拉致問題というものは、日朝の国交正常化を進めるための課題というか、そういったようなニュアンスでの発言がどこかにあったようなことで、臨時国会の所信表明ではそういうふうになっておりまして、「拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決を図って国交正常化を実現することなどが重要と考えています。」こういうふうに述べられているわけでございまして、政府の、あるいはまた大臣のこの拉致問題に対するトーンが少し下がったのではないか、ちょっと心配をしております。

 といいますのは、私の地元、福井県小浜市、地村さん、富貴恵さん御夫妻がいらっしゃいまして、お二人、そしてまた御家族の方、帰ってこられたわけではございますけれども、いわゆる認定されました十件十五名のうちの十名、未帰還者、そしてまた、特定失踪者と言われておる方が四百二十名いらっしゃるわけでございますが、ぜひ町村大臣には、国交正常化のための一つの課題というテーマではなくて、しっかりと拉致問題を解決する、そして、今申し上げた十名あるいは四百二十名という方々を絶対奪還するんだ、取り返すんだ、そういう強い決意をこの場で賜りたいというふうに思います。

 いろいろな方策はあろうかというふうに思いますが、もう時間もございませんし、ぜひ町村大臣のこれからの取り組みに対する強い御決意というものをお聞かせいただきたいというふうに思います。

町村国務大臣 今委員がお触れになった部分は、これは、日朝平壌宣言に示されている問題解決の道筋を述べたものでございます。

 それはそれとして、今、拉致問題についてどういう決意で臨むのかというお尋ねでございました。これは、本当に今、ありとあらゆる機会をとらえて私も努力をしているところであります。

 ちなみに、先般も、ライス長官と日米外相会談をやった折にもこの拉致の問題を取り上げておりますし、また、2プラス2でも取り上げました。ライス長官との間での北朝鮮に関する共同声明というのを、特別に、2プラス2とは別に発出をしておりまして、その中にも、この拉致問題について、北朝鮮に対して、「迅速且つ完全に解決するよう強く求めた。アメリカ合衆国国務長官は、アメリカ合衆国が拉致問題に関する日本の立場を完全に支持することを再確認した。」ということでありまして、例えば一つのこういう機会があったものですから、こういう機会をとらえて、アメリカの支援もしっかりと取りつけておくということが大切であろう、こう思ったから取り上げたわけであります。

 いずれにいたしましても、拉致の被害に遭われた方々の、あるいはその御家族の気持ちというものをしっかりと受けとめて取り組んでまいることをお約束申し上げます。

高木(毅)委員 質問時間が終わってしまいましたけれども、国が国民を守れなかったということ、これは本当に主権国家としての存立にかかわる問題だと思いますし、重大な安全保障上の問題だというふうに思いますので、今後とも、この拉致問題の解決に向けて政府を挙げて全力を挙げていただきますことを心よりお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

小林委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 おはようございます。

 きょうは安全保障委員会で大臣所信に対する質疑ということで、できるだけ大臣の所信に合った、大きな、全体的な議論をさせていただきたいと思っております。

 その前に、昨日、私も外務委員会を傍聴しておりましたら、町村大臣を称賛する声が与野党を超えて続いておったように思いますので、安全保障委員会としては大野長官の労もねぎらわなければいけないのかなと思っております。大変厳しい日程の中で精力的に御活動いただいておりますことの労をまず心からねぎらいながら、話を進めてまいりたいと思います。

 今、私たちも、これは内政も含めてだろうと思いますが、いろいろな大きな課題に直面をしているというふうに認識をしております。余り長く申し上げるつもりはありませんが、私自身は、限界という言葉がいいのかわかりませんけれども、大きく見て三つのことが限界に来て、変わり目に来ている、こういう認識で国会の活動に取り組んでおるんです。

 その一つは、明治以来の中央集権型の我が国の仕組みが、ある意味で一つ限界に来ているんではないかということ。二つ目は、今、憲法の改正の議論も言われたり歴史認識のことが言われたりするように、戦後以来いろいろ引きずってきたものが、一つ変わり目、限界に来ているんではないかということ。三つ目は、さまざまな皆さんの認識があるかもしれませんが、戦後もしくは冷戦下のアメリカを中心とする構造が、経済、軍事両面で一つの大きな変わり目に来ているんではないだろうかというふうに感じております。

 経済の面でも、外貨準備といえばドル一辺倒だったのが、世界的に見れば、随分と、幾つかのユーロを含めた組み合わせが始まったりしてきているということがありますし、また、石油を見ても、何十年か前はアメリカ系を中心とするメジャーがほとんど世界の石油を押さえていたのが、国営化という形でかなり分散して主導権を持たれるという時代にもなってきておりますし、軍事的には、冷戦のもとでの相互確証破壊といった形でのアメリカの事実上の優位性というのが今大きく変わろうとしている。それに対応しようとしているのが、今回のアメリカのトランスフォーメーションを含む軍事的対応ではないかな。そういう認識で、引き続き、アメリカのトランスフォーメーションを含む大きな変革が実施をされて、アメリカのいわば軍事的優位性がどう維持されていくのかというのを見ていきながら、我々対応する必要があるんではないかなと。

 そんな認識のもとで、幾つかお伺いをしたいと思います。

 質問の通告を申し上げておるんですが、少し順番を変えてお聞きをしてまいりたいというふうに思っております。

 最初は、私たちの防衛に対する基本的な考え方ということでお願いを申し上げておりますが、一つは、憲法と国連の認識から入りたいと思います。そして、二つ目が安保条約のこと、三つ目が今度の防衛大綱ということで、少し順番を変えて申しわけありませんが、お伺いをしてまいりたい。あわせて、少し各論に入りますけれども、今回出た法案に関連をしてミサイル防衛のことについてお伺いをし、それ以降は、今回の2プラス2に関連して、これも少し順番が変わりますが、大野長官の先ほどの御発言も見ても、全体の理念をまず今回話をして、それから役割分担を話をして、それで個別具体の各論だ、こういう順番でしたので、できるだけそれに合わせてお伺いをしてまいりたいと思います。その後、できるだけ時間を上手に使いまして、国際協力、自衛隊の問題についてもお伺いをしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 憲法については、閣僚のお立場で踏み込んだ発言というのは、今までの流れからすると大変難しいんだろうというふうに思います。私は、政治家としては、これだけ改正が論議されている中では、これからは御議論をいただくことも可能ではないかというふうに思いますが、そこまできょうはあえて議論を拡大させようと思っておりません。ただ、国連と憲法に関する認識をちょっとお伺いできたらなということで、質問項目に入れさせていただきました。

 と申しますのも、この後安保条約についてもお伺いをしたいと思いますが、例えがいいのかどうかわかりませんが、言うなれば、平和国家日本という言葉が憲法の中に書いてある、これがやはり世界に大きく一つアピールしている部分はあるだろうというふうに思います。これが、例えて言うならば、私たちの選挙戦であれば空中戦のようなものであり、日米安保は組織対策のようなものでありというような部分もあるんではないかというふうに思いますが、大変どちらも大事だということからすると、平和国家というのは大変重要だろうと思います。

 ただ、この憲法の平和の理念というのは、もちろん我々の姿勢を出していることもありますが、同時に、憲法の経緯を見ても、また文章を見ても、国連というものを一つ大きな柱に想定をしてこの憲法というのは組み立てられるのではなかろうか。しかし一方で、今の現状を見たときに、日本国憲法ができたときは、これから国連をつくるんだ、こういう形のものが多分できるだろうということで、憲章をベースにいたしましたけれども、具体的に世界の情勢の中で動き始めて、もちろん国連が憲章どおり一〇〇%機能していくわけではない、また同時に、今回のイラクのことを含めて、さまざまな課題があるということも明らかになってきたというふうに思っております。

 そのあたりで、質問としては、この日本国憲法と国連、密接不可分だということの認識をいかがお持ちかということと、今の国連、どういうふうに機能しているというふうにお考えになっているかということを、大変大きな質問を簡単に答えろというのはなかなか難しいかもしれませんが、両大臣からいただきたいと思っております。

町村国務大臣 大変基本にわたる、かつ壮大な御質問をいただきましたので、どこまでうまくお答えできるかわかりませんが、考えるところを少し述べさせていただきます。

 改めて日本国憲法前文を引くまでもないかと思いますが、委員御指摘のような、平和というものを非常に強調した日本国憲法である、しかるがゆえに、これは平和憲法だという表現をされるのもまた当然理のあることだ、こう思っております。また、国際連合、国連憲章においてもそういうことが強く述べられております。そういう意味では、基本的な方向としては、国際の平和及び安全の維持における国際協力の理念というものは、国連憲章及び日本国憲法は軌を一にするものである、私は、ごく簡単に言えばそういうふうに受けとめているわけであります。

 では、現実の国連がどこまでどう機能しているのかというお問い合わせでございますが、確かに、国連がすべての面にわたって十二分な機能を果たしてきたか。特に、考えてみると、冷戦のもとでは、やはり米ソの対立という構造の中でありましたから、国連が十分な機能を果たしたかというと、それは必ずしもそうではなかったのだろうと思います。むしろ、冷戦終結後、いろいろな国連の活動が多様になってきた。PKOは従前からあったけれども、特に冷戦後にこのPKO活動というものが非常にふえてきて、あるいは、多国籍軍という形はとってはおりますけれども、そういう活動もふえてきている。あるいは、日本が唱え始めました人間の安全保障といったような、非常にソフトな面での安全保障の概念というものもだんだん具体化してきている。

 特に最近では、テロ対策というようなことでも、また国連の場を通じていろいろな活動が行われているということであろうと思います。特に冷戦後、あるいは軌を一にする一九九〇年の湾岸戦争後、こうした国際的な国連の活動というものに日本も積極的に参加してきているのは委員御承知のとおりでございまして、そういう意味での国連を中心にするいろいろな平和維持活動、平和創出活動に、日本も、これまでもやってきたし、これからもまた努力をしていく必要があるのであろう、こう思っているところであります。

 そういう情勢であるだけに、昨年十一月に出されました国連の改革、なかんずく、安保理というものが平和維持にとって非常に重要な、中心的な役割を果たしておりますから、そこの改革というものが重要だという今の国連改革の議論にも当然つながっている流れではないだろうか、かように認識をしております。

大野国務大臣 松本先生から、歴史の流れが今変わりつつあるんじゃないか、中央集権、憲法あるいは米国中心主義というような問題について、大変歴史的な、大きな立場から観察されていることに対しまして、まず敬意を表したいと思います。私も、今まさにこの世の中、歴史というのが変わりつつある潮どきじゃないか、このように感じておる次第でございます。

 そこで、例えば国連と日本の憲法との関係でございますが、国連はもちろん平和主義であります。もう町村大臣からるる御説明がありますからごく簡単に申し上げたいと思いますが、日本国憲法も全く同じ精神でつくられております。もちろん、国際連合という明快な、明確な言葉は使っておりませんけれども、気持ち、精神は全く同じであるのが日本国憲法であると思っております。

 したがいまして、その中で、憲法九条、武力行使とかそういう問題、集団的自衛権等々の問題についてはいろいろ議論があるところでありますけれども、やはり一番の問題は、これまでは日本として、国連第一主義あるいは日米安保条約、この二つのことを言っていればお互いに衝突しないでやってこられたと思うのであります。しかし、その問題が時々衝突するような場面も歴史の中で出てきているという観察もあろうかと思います。そういう意味で、その場合に日本がどういう政策的判断をやっていくのか、これが今から問われる時代になってきている。そういう意味で、やはり私は、政治のリーダーシップが大変大事になってきた世の中になっているということと、それから、さはさりとて、両方が衝突する場面があるとしても、やはり国連が機能すべく我々も努力していくべきだ、このように思っております。

松本(剛)委員 あえてお伺いをいたしましたのも、私も、憲法を必要があれば改正するべきだ、また、改正をすべき点があるのではないかということで考えておりますけれども、もちろん我々は現実を見なければいけませんけれども、やはり理想を持つという意味で、ともすれば最近、一部からは、もう国連は機能しないから役に立たないのではないかというような声も出てくることに若干の危惧を覚え、また、これから常任理事国入りを目指すということで我が国も動いておるわけですから、その目指した先の国連がしっかりしていく形に積極的に関与していただきたいということをお願い申し上げたく、こういう形で御質問をさせていただきました。

 少し法律的な話になるかもしれませんが、日米安保条約について、もう一度確認のためにお伺いをしてまいりたいと思います。私も何度も見てまいりましたが、改めて、この日米安保条約の第五条、我が国の共同防衛の項について、二、三、法律的なことを確認してまいりたいと思います。

 一点は、まず、これは総理も、国連は日本を守ってくれないけれどもアメリカは守ってくれるといった趣旨の発言がかつてあったように思いますが、この守ってくれるというのがどういうことなのかということをちょっと確認してまいりたいと思います。

 第五条を読んでまいりますと、一つは、「日本国の施政の下にある領域における、」こう書いてありますけれども、この「領域」というもの、排他的経済水域は入らないのではなかろうかというふうに理解をしておりますが、そのことの確認、そして、私どもが、我が国固有の領土であり、特に紛争にもなっていないと認識をしている幾つかの地域についての認識、これについてお答えをいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 我が国の「施政の下にある領域」ということでございますけれども、「領域」と申しますのは、基本的に、これは一般国際法上の考え方でもあろうかと思いますけれども、領土、領水、領空を指すということになっております。

 そういう意味におきまして、今先生が御指摘ございましたEEZ、これは、基本的には公海としての性格を有する、特定の経済的な面での主権的権利というものをその沿岸国が有するということでございまして、領域に当たるということではございませんので、ここは排除されているというふうにお考えいただきたいと思います。

 それから、係争中の領土というものはどうかという御質問でございましょうか。(松本(剛)委員「言葉を選んで聞いたつもりですけれども」と呼ぶ)済みません、ちょっと正確にはあれでございますが、もとよりこれは、我が国が実際上、現実に支配し施政をしいておる領域はすべてということでございますけれども、例えば北方領土につきましては、現実に我が国の施政が及んでおらないという状況でございますので、これには当たらないというふうに従来から申し上げているところでございます。

松本(剛)委員 領土、領海、領水が基本であるけれども、実効支配が及んでいることもその上に要件としてかかってくる、こういう理解でいいわけですね。そうすると、北方領土は入らないというお話が今ありました。竹島も入らない。尖閣諸島は入る。

 もう一つお聞きします。そこの、今のことの確認と、もしそれで尖閣諸島が入るとすれば、これは日米の条約でありますから、米国の側でこれが入るということを何らかの形で政府として確認をされたのか、もしくは、入るということを確認した向こうの発言、公式な発言を了解されておられるかどうか、このことをちょっとお伺いしたいと思います。

林政府参考人 北方領土については、先ほど申し上げたとおりでございます。

 竹島につきましては、遺憾ながら韓国によります不法占拠が続いておるという状況でございますので、我が国の「施政の下にある領域」に現在入っておらないということだろうと思います。

 尖閣諸島についてお尋ねがございましたが、尖閣諸島につきましては、これは、我が国の立場から申しますと、そもそも領土問題などは存在しない、我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いを入れないというところでございますので、当然のことながら我が国の領域でございまして、現実にも我が国の施政が及んでいるというところでございますので、この「日本国の施政の下にある領域」に当たるというふうに考えております。

 この点につきまして、日米両政府の見解は一致しておるというふうに従来から御説明しております。その根拠の一例といたしましては、最近の例でございますけれども、二〇〇四年三月二十四日、アメリカ国務省副報道官の発言といたしまして、この安保条約第五条の趣旨、規定を述べた上で、尖閣諸島につきまして質問があったのに対して、同条約第五条は尖閣諸島に適用されるということを明言しておるところでございます。

松本(剛)委員 米国の発言も、ずっとその後もあったんではないかというふうに思いますが、きょうはその先まではやりません。

 二つ目、そうしましたら、この第五条、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」というふうになっております。米国の場合は、条約と議会の議決は同等だという解し方もあるようでございます。これは、米国の場合、論理的には、議会で例えば共同の対応を否決された場合はできないという形になるという理解でいいのでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 安保条約のもとで、御指摘のとおり、自国の憲法上の規定及び手続に従うという文言がございます。ただ、今御指摘がありましたとおり、日米安保条約については、米行政府が締結をしているのみならず、米議会でも承認を得て締結をしている。その意味においては、米議会を含めた米国全体として我が国に対する防衛義務を負っておるという認識でございまして、このような義務の設定を承認した議会が、日本に対する防衛義務について相反する意思表示をすることはないというのが基本的考え方でございます。

 また、現在の日米関係、この同盟関係ということでかんがみれば、我が国に対する防衛のコミットメントというのについて、政府としては全幅の信頼を置いている状況でございます。

松本(剛)委員 冒頭で、法律的にお伺いをしたいというふうに申し上げたんです。政治的に、今の日米関係の状況とか、米国がどうしてくれるということは我々も理解をしておりますし、そのことを前提として行動されているということでありますが、条約としての義務、その意味では、議会というのは、おっしゃいましたけれども、批准をした後、法律にしても、次の議会が改めて構成をされて、変えることもあるわけでありますし、法律的にはそういうことになるんですかということを確認申し上げたということなんですが。

林政府参考人 この点につきましては、安保国会当時からも、もう先生十分御案内の上でお尋ねなんだろうと思いますけれども、ここに言いますアメリカの憲法上の手続、これは、我が国との安保条約だけではございませんで、アメリカが、太平洋諸国、太平洋にありますさまざまな諸国との関係において結んでおります相互防衛条約において、全部基本的には入っておるものでございます、米韓、米比等をごらんになればおわかりのとおりでございますけれども。

 ここで、そこにおきます手続と申しますのは、安保国会当時からも御説明しておりますけれども、アメリカ憲法の第一条第八節第十一項、アメリカの連邦議会が宣戦布告を行う権限を有する、それから、第二条第二節第一項にございます、大統領は軍のコマンダー・イン・チーフ、総指揮官たる資格を持っている、この規定であるということを従来から御説明しております。

 したがいまして、理論的に、宣戦布告を行わない場合どうなのかというようなお尋ねの趣旨かとも思いますけれども、もちろん、これにつきましては、軍の運用、コマンダー・イン・チーフとしての大統領が実際行うことができるということと、宣戦布告という手続を本当に踏むのかどうかというような問題が実際の場面においては起こり得るだろうと思います。

 先ほど同僚からも御説明しましたとおり、これにつきましては、私どもは、上院におきます安保条約のいわゆる同意の審議におきましても、たしかロング上院議員だったと思いますけれども、これは、我が国、つまり米国が対日防衛義務を負ったことになるのかという非常にスペシフィックな問いがございまして、これに対して、当時のハーター国務長官、安保条約にも署名した人ですが、この人が、そのとおりですということを明確に述べているところでございまして、この防衛義務を負っているということについて、これは上院も含めまして受け入れているというふうに私どもとしては理解しているところでございまして、手続的な話はございましょうけれども、現実の問題としては、このコミットメントは履行されるだろうというふうに御説明しているところでございます。

松本(剛)委員 今、手続的な問題はあれとして、現実的にはコミットメントというのが恐らく答えなのではなかろうかなというふうに思っております。

 この件についても先へ進んでまいりたいと思います。

 三つ目は、「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」これは、いろいろな対処の、共同の仕方があるだろうと思います。我々が武力攻撃を受けたときに、これですなわち米国が出動して反撃をするというふうに読むという理解でいいのですか。それとも、それぞれ役割分担をして、例えば自衛隊にとりあえず出ていってもらって米国は後ろから支援するとか、そういうのもこの共通の対処に含まれるのかどうかということをちょっと確認したいと思います。

林政府参考人 武力攻撃が発生した場合に、「共通の危険に対処するように行動する」という言い回しでございますけれども、これも、先ほど申しました米比、米韓等の相互防衛条約において共通の使われ方をしている言い回しでございます。

 この考え方といたしましては、武力攻撃というものがある特定の条約区域、日米の場合は先ほどの日本の施政のもとにある領域でございますけれども、そこにおきましていずれか一方に対して武力攻撃が行われたという場合には、これをそれぞれが、みずからの平和と安全に対する、危うくする、つまり、みずからに対する武力攻撃であるというふうに観念をして、この危険、つまりこの武力攻撃に対処するように行動する、すなわち、この武力攻撃を排除するために共同して対処するということを義務としてうたったということでございます。

 そういう意味におきまして、武力攻撃を排除するための行動が行われるだろうということでございまして、では、具体的にどういう形で調整してやるのか。これはまさに、条約のレベルと申しますよりも、むしろ、恐らくガイドラインとか、そういったレベルで実際上の調整をどういうふうにしてやっていくかという次元の話だろうと思います。法律的な考え方としては、武力攻撃を排除するために共同で行動するというところが根本でございます。

松本(剛)委員 すっきりしないんですけれども、ここにばかり時間をかけても……。ただ、結局、この対処するという言葉、これは英文も含めてでしょうけれども、どう解釈をしていくかということの余地を残しているのではないかなというふうにお聞きをしながら、次の問題を伺いたいと思います。

 防衛大綱、今お伺いをしたことを踏まえていきながらお伺いをしたいと思います。

 この中で、多機能弾力的防衛力の整備という言葉が新たにとられました。多機能で弾力的な防衛力というのは、国際的な活動も含めてということで、幅を広げたということなんだろうというふうに思いますが、これまでの基盤的防衛力整備という、この基盤的防衛力の考え方というのは残っているのか、どこかへ行ってしまったのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。

大野国務大臣 これまでの防衛力についての考え方は、今までの古い大綱の方ですが、この大綱では、まず抑止重視の考え方、それから侵略、伝統的な脅威への対処を中心、そしてもう一つ、ここは十分考えていただきたいんですけれども、国際活動はすべて一方的に日本が貢献するんだ、こんな考え方でやってきておりました。この国際活動という点から申し上げますと、やはり国際活動というのは貢献じゃなくて、国際的な安全保障環境を改善していくことが日本の安全につながってくるんだ、日本の平和につながってくるんだ、こういう考え方に切りかわっております、今度の大綱で。

 これをちょっとおいておいて、基盤的防衛力、それから多機能弾力的の問題でありますけれども、基盤的防衛力というのは、我が国が不安定な周辺地域において周辺地域の不安定な要素にならない、したがって、必要最小限度の装備を持っていましょう、こういう考え方であることはもう先生十分御存じのとおりでありますが、やはり安全保障環境はどんどんどんどん変わってきた。一つは、軍事力の進歩であります。ミサイル防衛ということを考えなきゃいけない。もう一つは、テロのように、いわば国家的基盤を持っていない、ノンステート・アクターとよく言っておりますけれども、そういうものが出てきている。したがって、あらゆる脅威に対処していかなきゃいけないという考え方であります。それが多機能。

 そして、いろいろな脅威が出てくるわけですから、弾力的にやっていかなきゃいけない。装備でいいますと、いわば戦車から装輪装甲車へ切りかえていかなきゃいけない、機動力のために。それからもう一つは、例えばヘリコプターのようなものにどんどんかえていかなきゃいけない。こういう問題が提起されていると思います。

 そういう意味で、私は、今回の防衛大綱は、基本的に大きな考え方が二つあると思います。それは、多機能弾力的なものに切りかえていく、それから、先ほど申し上げましたが、国際活動というのは貢献じゃないんですよ、日本の、自分自身のためですよ、こういう考え方であります。

 そこで、それでは、全く基盤的防衛力という考え方を放棄してしまっているのかということでありますけれども、それはやはりその中に残っています。残っている。ここのところはやはり考えていかなきゃいけないのではないか、このように思っておるところでございます。

 したがいまして、新たな安全保障環境のもと、基盤的防衛力構想の有効な部分は残しておこう、そして、新たな多様な脅威に対して即応できるようにしていきましょう、そして、各種の機能を最小限保有するという、基盤的な部分を保持するという考え方は残しておきましょうということでございます。

 したがいまして、全く基盤的防衛力という考え方であったものが、有効な部分の基盤的防衛力は残して、そして、新しい世の中、つまり、国際安全保障環境の変化、軍事的、科学的な力の向上、こういうことを考えながらやっていきましょうというのが多機能弾力的ということでございます。

松本(剛)委員 基盤的防衛力の考え方も残っている、それで多機能弾力的と。多機能弾力的は、それは私も何も否定をしません。別に言葉の遊びをするわけじゃありませんけれども、単機能硬直的なんというのはもう論外なわけでありますでしょうし、そうであるべきだ。

 ただ、基盤的防衛力という言葉の中には、空白とならないようにという言葉と、それから、独立国としての必要最小限のという言葉とあります。

 空白とならないようにという言葉の中には、いわば軍事力の配置の中で空白とならないということであれば、当然我が国における米軍のプレゼンスとかいうものも恐らく考慮の対象に入ってくる部分があるのではないかというふうに思います。

 一方で、独立国として必要最小限のというのは、そういったもののあるなしにかかわらず、かなり普遍的なものがあります。この言葉の中にこれまでのいろいろな経緯とか情勢とかいうものを織り込みながらつくられた言葉なんだろうというふうに私はこれを理解しているんですが、流れからすると、さらに独立国としてきちっと我々が持つべき防衛力という言葉の方向に今回話が行くべきだったのではないかなというところが、今度は多機能弾力的という、何か機能の説明のような防衛力の言葉が全面的に出てきたということ。

 いい、大きな機会であったときに、もうちょっときちっと理念的な言葉、先ほど、日米安保でも、ちょっと領域のことをお聞きいたしました。領土、領海、領水ということですが、もちろん防衛は、我が国の領土、領海、領水、国民の生命財産を守るということであろうというふうに思いますが、今まで、そのことをどこまできちっと表へ出して言うのかということもある中で、基盤的防衛力という言葉が生まれてきたりいろいろしてきたんだろうというふうに思いますが、もう一度そこへ、そして、今我々が抱えている問題を考えれば、排他的経済水域を含めた広い意味での国民の財産というものを守るということまで含めて、防衛力というものに対して、何を守る、そしてそのために必要なことをするというような理念を実は今回ぜひ打ち出していただきたかったなと。これからの議論の中でも、一度整理をして防衛庁長官なりからそういうお話を伺っていきたいというふうに思って、この議論を少しさせていただいたところでございます。

 言葉の中身はいろいろ出てきますが、話を少し先へ進めてまいりたいと思います。

 若干もう一回法律的な議論をさせていただきたいと思いますが、憲法の問題もかかわってくるのかもしれません。

 ミサイル防衛の今回の法案が提出をされていますが、そもそも今回の自衛隊法の改正、大きい意味では防衛庁設置法等改正案の中に含まれている自衛隊法の改正で、ミサイルの防衛、迎撃の規定が設置をされました。今回のこの迎撃が、防衛出動に至らないところの法の欠缺を埋めるものだという説明をいただいたわけでありますが、これは自衛権ではないという説明をいただきましたが、その理解でいいんでしょうか。防衛庁、それから法制局にも見解を伺いたいと思っているんですが、お願いします。

大野国務大臣 ミサイルという新しい脅威に対していかに対応していくか。

 ミサイルが飛来する場合、これは明らかに、急迫不正でありという自衛権発動の三要件ですね、一々言いませんけれども。それに当たるのかどうか、こういう問題があろうかと思います。誤射の問題とか、あるいは過って落ちてくる、こういう場合もあろうかと思います。

 しかし、このミサイル防衛の一番大切な問題というのは、これを放置しておけば必ず落ちる、日本に落ちて国民の財産生命に多大な被害を与える、これはどんなことがあっても防がなきゃいけない。即応性、これが一番であります。

 したがいまして、そこをどういうふうに解釈するか。自衛権というのか、警察権というのか。我々は、何が何でも、自衛隊というか防衛庁といたしましては、日本へ落ちてくる可能性のある、可能性というよりも、必ず落ちてくるのはわかるわけですから、それを防護する、これが一番の使命であります。

 したがいまして、自衛隊の任務としては、自衛権の発動という問題、それからもう一つは公共の維持という問題、二つあろうかと思いますけれども、強いてこれを分類するとすれば、警察権というか公共秩序の維持、こういう意味で分類できるのかなというふうに思うわけでございます。

 繰り返しになりますが、いずれにしても、新しい事象であります。これに対応する。現実問題としては、まず追撃しなきゃいけない、これが一番であります。そして、それを必ずシビリアンコントロールという理念のもとに処理していかなきゃいけない、このことを御理解いただきたいと思います。

阪田政府特別補佐人 今、防衛庁長官からお答えがあったとおりだと思いますけれども、言うまでもありませんけれども、武力攻撃事態であることが認定され、したがって、防衛出動が下令されているという状況のもとでミサイルを破壊するという措置は、これは当然に自衛権の行使として行われるということであります。

 ただ、今、防衛庁長官の話にもありましたように、そのためには、武力攻撃事態法にのっとって自衛権の発動要件が満たされているということの認定が必要であります。具体的に言いますと、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、それから他に手段がないこと等々の判断をしなければいけない。

 今回の法制は、あくまでも自衛権発動の要件が満たされたと認めるには至っていないという状況のもとで、我が国に向かって飛来し、それから我が国に対して被害をもたらすであろうミサイルを撃ち落とす、破壊するということでありますから、自衛権の行使としてなされるものではないということであろうかと思います。

松本(剛)委員 長官にも念のため申し上げなければいけないんですけれども、我々も、飛んでくるミサイルを迎撃しなくていいなどということを申し上げるつもりは全くありません。ぜひしていただきたいと思っています。

 ただやはり、きょうテレビのニュースで、あれはロシアに対して言われたのかどうか知りません、ブッシュ大統領が、ルール・オブ・ローという言葉を言われているんですね。きちっと国として法律的な裏づけが必要だということだからこそ今回立法措置も出してこられたんだろうというふうに思いますが、当然その後ろにはきちっとした法的な体系というのも整備をしていかないと、先々非常に困ったことになるのではないかということで、私たちは今ここで議論をさせていただいておるわけであります。

 それでは、今回の中では我が国に飛来をするミサイル等ということになっておりますが、例えばアメリカ、同盟国に飛来をするものをどうするのかということも議論の余地はあるだろうというふうに思います。

 読売新聞の社説を読むと、アメリカへ飛んでいくミサイルを落とさなければ日米関係は破綻するというふうに書いてありました。ちょっとそれも極端ではないかというふうに思いますし、私どもからすれば、最も政府のお考えをよく理解されている新聞社にしては随分と踏み込んだ発言だなというふうに思って拝見をいたしましたけれども、そういうふうになっております。

 また、産経新聞さんでは、ミサイルの部品が落ちてくるかもしれないからというおそれでアメリカへ行くのも撃てるんだというようなことが書いてありました。お伺いをすると、落ちてくる部品は撃てるけれどもその本体のミサイルは撃てないのではないかというような説明もあったとすれば、あの新聞の報道は、素直に読めば、間違いというふうに言ってもいいのではないかというふうに思います。

 冒頭、町村大臣から、マスコミのお話が高木委員との議論の中であったように記憶をしておりますが、間違いであれば間違いであるという発信をぜひされた方がいいのではないかというふうに私は思います。

 話をもとへ戻して、同盟国へ飛んでいくミサイルを落とすというのは、これは、もちろん防衛出動が下令をされている場合、もしくは防衛出動に当たる場合というんでしょうか、三要件の場合はもちろん簡単なんでしょうけれども、そうでない場合は、これはやはり、一種、警察権の問題だということでいいんでしょうか。これは長官にお伺いしたらいいんでしょうか。

阪田政府特別補佐人 お尋ねのような日本以外の国に飛んでいくミサイルの撃墜ということは、今回の法制化に当たって全く想定をしておりませんので、あくまでも仮定の議論ということであろうかと思いますが、その上であえて申し上げるといたしますと、ある国からほかの国に対してミサイルが発射された、それがその国の武力攻撃の一環としてなされたものであるということだとすれば、それを、他国に向けて飛行するその弾道ミサイルを自衛隊が撃墜するという行為は、我が国に対する武力攻撃はまだ発生していないという今の先生の前提で申し上げますと、にもかかわらず我が国がそれを撃墜するわけですから、我が国の武力行使にほかならないというふうに評価できると思います。そうだとしますと、そういう中で我が国が武力行使をするということは、ちょっと憲法上疑義があるといいますか、どういう根拠で武力の行使ができるのかということになるのではないかというふうに考えております。

松本(剛)委員 今おっしゃったように、我が国がミサイルを撃ち落とす行為は武力行使である、我が国に飛来するものを撃ち落とすのは警察権の行使で武力行使である、こういう理解でいいわけですか。今回、武力攻撃に至らない段階での立法措置がなされたというふうに理解をしておりますけれども、そこのところ、今おっしゃったように、他国へ飛んでいくものを我が国が落とすのは武力行使であるから憲法上認められないと今おっしゃいました。我が国にミサイルが飛来をする、これが、今回の法律だと、少なくとも武力攻撃の前でこれを落とすのは警察権だと今長官はおっしゃいましたけれども、警察権の発動ですが武力行使である、こういう理解でいいわけですか。

阪田政府特別補佐人 大変厳しい御指摘だと思いますけれども、我が国に飛んでくる、飛来する弾道ミサイルを破壊する、撃墜するという行為は、常に必ず警察権だということでは全然ないのですね。したがって、むしろどちらかというと、これは私は軍事のことはわかりませんけれども、あらかじめ備えをして、防衛出動が下令されて、その中で、その一環として対処するということが多いのかと思いますが、それはもうあくまでも我が国も実力の行使として、武力の行使として行うということであります。

 そういうような条件が整っていないときに、では、黙って落ちてくるのを見ているのかねということに対して対応するというのが今回の措置。それは、自衛権の発動、先ほど言いましたように、国会の承認等もございますが、そういう手続をとっていないものですから、自衛権の発動ができる場合だという認定がなされていないという中でやること、それは、事柄の性格上武力の行使ではない、したがって自衛権の行使ではない。

 そうだとすると、それは、警察権というのは定義にもよると思うんですけれども、やはり国民の生命あるいは財産を保護する、公共の秩序を維持するというようなのが国家権力の当然の役割として負わされているんだと思いますね。そういうことを果たすというような趣旨で行使する作用だ、権限だというふうにとらまえますと、黙っておると我が国に被害がもたらされるようなものを落とすということは警察権の作用というふうにとらまえられるというふうに防衛庁長官はおっしゃったんだというふうに理解しております。

 それに対しまして、全く我が国に被害がもたらされるおそれがない、ただ武力攻撃としてA国からB国に飛ばされている弾道ミサイルを途中で邪魔をするという行為は、これは、いかなる意味でも警察活動と言うことはできないわけですね。これは、武力の行使、まさに実力をもってこれを阻止するということに当たるとしか言えないということでありますから、警察権の行使とは言えないというふうに申し上げているわけです。

松本(剛)委員 何度かこの委員会でも出ている、武力攻撃に至らない、つまりマイナーな自衛権の問題とかそういったものを何とかきちっと整理をしていただきたいということ、これは党派にかかわりなく議論が出ているように私は理解をしておりますが、そういった問題を整理せずに、こういう新しい態様の攻撃に対する立法措置をとろうとしているところにいろいろ限界が出てきているんではないかというふうに思っておるんです。

 今お聞きをすると、我が国に飛来するミサイルを落とすのは武力行使の場合とそうでない場合とあって、他国へ飛んでいくミサイルを落とすのはすべて武力行使であるという、その三種類の御説明しかなかったんですよね。そうなりませんか。

 ですから、我が国に飛んでくるのが、武力攻撃に至らない場合で落とさざるを得ない場合があるからこそ立法措置を設けた。他国へ飛んでいくものでも当然そういうのはあり得ておかしくないわけで、それは逆に言えば、憲法上は我が国がやることは禁止されていないということに四つ目のケースはならないですか、長官。

阪田政府特別補佐人 我が国に向けて飛来する、我が国に落ちるであろう弾道ミサイルを破壊する、これはなぜ必要か、武力の行使として、あるいは自衛権の行使としてでなくても、どうして必要かというと、これは我が国に被害が及ぶからですね。これは弾道ミサイルでなくても全く同様なわけでありますけれども、人工衛星の燃えかすといったようなものでもあり得ると思うんですが、これは、日本の持てる力をもって、これは自衛隊でなくてももちろん構わないわけですけれども、その被害を予防するように必要な措置を講じなければいけないということを今回規定したということでありまして、外国に、日本以外の国に飛んでいくというのは、とりあえず日本に対して被害は直接及ばないわけですから、それをどういう根拠で主権国家、我が国がそれに対して対応しなきゃいけないのかというのが、ちょっと国際法上の根拠も含めてよくわからないということであります。

松本(剛)委員 質問を変えましょう。一つだけ、では最後にお聞きをします。

 つまりこれは、いろいろな御意見がありますけれども、少なくとも政府は、集団的自衛権については、持っているけれども行使はできないというのが我が国の憲法であるというふうにおっしゃっておられます。ということは、他国と共同で防衛をするという条約を結ぶことは今の憲法上はできないということになると思います。

 しかし、禁止をされているのが武力行使で自衛権であって、ミサイルを撃ち落とす行為は自衛権になるものとならないものとがあるとすると、ならないものの部分については、他国の国民のある意味では生命と財産を共同で守りましょうという条約をもし結ぶとすれば、その部分はできる、憲法では少なくとも禁止されていないという解釈でいいということになるんですね。それだけ確認をしておきたいと思います。

阪田政府特別補佐人 我が国が他国に対して飛来しているミサイルを撃ち落とすという行為が集団的自衛権の行使になるかどうかというのは、これは、その向けられた他国がどういう対処をするかということによって決まる面もありますので一概には言えないと思いますけれども、集団的自衛権の行使になるという場合もあるでしょう。しかし、集団的自衛権の行使以外はすべて武力の行使ではないんだということでもないわけですね。むしろ、例えば国連の集団安全保障、イラクで今行っているような活動であるとか、ああいうようなものも武力の行使に当たる場合がもちろんありますし、それ以外に、侵略戦争、違法な武力の行使もあるわけですから、およそ集団的自衛権の行使でなければ武力の行使でないということにはならないと思います。

 いずれにしても、我が国としては、自衛のために、我が国を守るために必要最小限度の武力の行使以外の武力の行使は憲法九条によって許されていないというのが従来の政府の解釈である。

 その点を踏まえて考えてみますと、集団的自衛権の行使であるか否かということに関係なく、武力の行使に当たるような行為をやる、とりあえず、その憲法上の根拠があるかどうか、それから、国際法上それは一体何なのかということも含めて議論をしなければいけないわけです。それは、武力の行使ではないという部分があるとすればですね。(松本(剛)委員「あるから今法律をつくっているわけじゃないですか。まあ、いいですけれども」と呼ぶ)それは、我が国に飛来する弾道ミサイルでありまして、他国に対して飛来する弾道ミサイルについてそういう余地があるかどうかというのを今回の法制化に当たっても検討したわけではございませんので、なおそこはよく議論してみる必要があろうかと思います。

松本(剛)委員 法律議論はこのぐらいにしたいと思いますが、両大臣にもコメントはもうお願いをいたしませんけれども、議論をお聞きいただいたと思います。冒頭に、いろいろな意味での戦後の一つの変わり目、限界ということを申し上げた中で、自衛権に対する考え方であるとかいうことを含めて、一度御整理をお願いしたい。今申し上げたところに関する、マイナー自衛権の問題ではないかと学説上言われるような部分についても、何度か議論が出て、政府もきちっと見解をまとめていただきたいということを要請させていただいたりした経緯もあります。ちょっとぜひお考えをいただきたいということを申し上げて、2プラス2の話に移りたいと思っております。

 一つ一つのことについてお伺いをしたいと思っておりましたのですが、少し予想以上に時間がかかってしまいましたので、大きなところからお伺いをしたいと思います。

 今回の2プラス2の共同発表の中で、まさに理念の部分、共通の戦略目標についておおむね合意をしたということではなかろうかというふうに思いますが、かなり広い範囲の合意をされておられますし、地域に関する目標と世界に関する目標という話がありました。

 これも、昨日の外務委員会でも、外務大臣同士、そこに国防もしくは防衛担当が入ってきての合意ということだと持つ意味が変わってくるんではないかというような指摘もあったように理解をしておりますが、この共通の戦略目標に向かって動いていく。

 例えば、世界の共通目標の一番上というのは、いわゆる価値を広めていくという趣旨の話であったのではないかというふうに思いますが、このために我々は、「国際社会における基本的人権、民主主義、法の支配といった基本的な価値を推進する。」こう書いてあります。

 まさにブッシュ政権は、これをもとに中東の大民主化というようなことで出ていっておられる部分があって、我が国もこれに同意をするということは、この民主化について、本当に政府としては、もちろん個々の活動については場合によっては立法が必要であったりするかもしれませんが、政府の意思としては、これでもう世界じゅう、きちっと米国が出ていくべきだと思っているところを、やはり我々もそれは出ていくべきだと思っているというふうな、いわば同意をしたという理解でいいんでしょうか。どこまで我々は行くのかなというふうにこれを読んでいて思ったんですけれども、これについて、外務大臣でしょうか。

町村国務大臣 米国政府としては、いろいろな目標を持っていろいろな活動をしていく。そのときに、ここにこういう基本的人権、民主主義、法の支配、基本的な価値を推進するためだ、そういう例えばアメリカの政府の外交活動あるいは軍事活動、いろいろの活動があると思いますが、それについてすべて、もうこういう大くくりなもとでやっているんだから、日本国も全部それを支持するんだということになるかどうかですね。それは必ずしも常にイコールということにはならない。

 ちょっと具体例を挙げていいかどうかわかりませんが、そこまで別に日米間で詰めた議論をしたわけじゃありませんが、例えばよく、イランに対する姿勢というものが、日本とアメリカと違う。アメリカはかなり、かの国の、一つは核兵器の疑惑、核開発の疑惑ということを言っております。それから、あの国は果たして本当に民主主義なんだろうかというような指摘もされております。では、日本国はどう考えているかというと、確かに核については大分グレーな部分があるよねということで、もっと透明性を高める、IAEAとしっかりやりなさいということは言っております。しかし、では、かの国が民主主義かどうかということについて、例えば日本政府は、そうはいっても、確かにイスラムという日本とは違う原理原則の、そういう憲法に基づいた形ではあるけれども、しかし、かなり民主的な選挙も行われ、そういう形で議会も機能をし、やっているではないかというような意味で、多分、民主主義というものについて、アメリカと日本の理解は、わかりやすく言うために例えば事イランというものを例に挙げれば、そこは違いがあるんだろうと思います。

 ただ、大きな方向として、こういった基本的価値が日米間で共有されるということは言えるんだろう。したがって、さらにその後、もしかして出てくるかもしれない、イランにという意味じゃなくして、どこかの国に対するアメリカのいろいろな安全保障上の活動があったときに、それが自動的に、ここにこう書いてあるから、日本がすべてアメリカの行動を追認するということにはならない。そこは個々のまた判断というものが当然あるということだろうと思います。

松本(剛)委員 今お聞きをしたのも、一つ心配をするのは、もちろんこの中には、例えば日本人の拉致という言葉も入れておられるということで、この戦略目標には、多分、双方から持ち寄って調整をされて、もしくは共通の認識がもとからベースにあったもの、いろんな種類のものがここへずらっと挙がってきているんだろうというふうに思いますが、基本的に、よく言われているように、やはり向こうの国に引っ張られないようにという部分をどうお考えになっているか。

 これを読んだときに私もちょっとそのことを感じましたし、昨日の党首討論をお聞きしていたときに、不安定の弧について我が党の岡田代表がお聞きをしたときに、どのような具体的な協力ができるか不透明な部分があるからそのことに触れなかったというお答えと、もう一つは、向こうから議題に出してこないのにこちらから出す必要はないと思ったという、二つのお答えがあったように思っておりますが、特に後者の部分、これは、不安定の弧のかき方次第ですけれども、アメリカより我が国の方が近いんですよね。

 ですから、問題意識としては、向こうが言ってきたことはやるけれども、向こうが言ってこなかったらやらない、宿題をもらう子供ではないんですから。ただ、あの答弁の中に非常に日米の関係の一端をかいま見るような気がして、特に不安定の弧に関しては、我々も非常に関心を持たざるを得ないし、持つべきだろうというふうに思っておりますが、それについての総理の御回答がああいう形であったということ。

 その中で、かなり米国の大統領の御発言などを含めた、米国の今の政権が考えている世界戦略に近い目標というのが、日米の共通の目標という形でどんどん入ってくるということになりますと、本当に我々はどこまで行くんだろうということを考えざるを得ないと思います。

 大野長官も記者会見で、この2プラス2、コーナーストーンだ、こういうようなことをおっしゃっておられました。世界の中の日米同盟という言葉をここのところよくお使いになっておられますし、そこで、日米安保条約を中核とする世界の中の日米同盟であるとか、日米安保条約を基盤とする世界の中の日米同盟であるという言葉が使われます。もちろん、基盤であり中核であることは間違いないと思いますが、米国の世界戦略的なものに、日本も世界に貢献をするという意味でどうつき合うかということになると、これは日米安保条約とはまた別の次元のきちっとした議論をぜひしていただく必要があるんではないか。

 きょうは三時間しか大臣の所信の質疑がありませんが、ぜひ機会をいただいて、我が国がこれから世界に対してどうやっていくのかという基本的な戦略、米国との関係、議論する場をお与えいただきたいということ、これは委員長にもお願いを申し上げて、話を前へ行かせていただきたいと思います。

 林田副大臣にわざわざ御足労をいただきました。

 どこまで行くのかという意味で、スーダンという話が出ておりまして、PKOの御担当ということでおいでいただくことになったわけでありますが、我々の自衛隊はスーダンへPKOで行くことになるんでしょうか。

林田副大臣 スーダンPKOに関しましては、まだ国連安保理で採択されていないということでございますので、現時点で、我が国の協力のあり方については、具体的な検討にまだ入っておりません。

 したがいまして、今後、いわゆる安保理決議の採択を待って、現地の治安状況あるいは環境、停戦合意の中身等々につきまして検討を踏まえて、いかなる協力ができるか、慎重に判断していきたいというふうに思っております。

松本(剛)委員 ありがとうございます。

 あと、役割分担、それから自衛隊の国際協力、それからSACOの問題等をお伺いしたいと思っておりましたが、時間が大分限られてきましたので、役割分担等についてはまたこれからいろいろな議論が同僚議員からも出てくると思いますので、ちょっと自衛隊の国際協力の問題についてお伺いをしていきたいと思います。

 今もスーダンのPKOの話が出ましたが、本来業務に位置づけるべきだという懇談会の答申が出たことは私も承知をしております。そして、昨年のこの委員会だったと思いますが、当時の石破長官に、これだけ外へ自衛隊に出ていってもらうのであれば、きちっとした法的裏づけが必要ではないかということを私が申し上げた記憶があります。そのとき石破長官は、法的裏づけと、財政、予算的裏づけと両方ないと、とてもじゃないけれどもやっていけないというようなお話をされておられました。

 予算的裏づけも確保できないのに簡単に法的裏づけはできないという趣旨の御返事だというふうに私はお聞きをしたんですが、今、本来業務にしようという話がある中、少なくともこれからしばらくの方向性は、予算的裏づけができているとは私にはちょっと思えない。かなり削られる方向へ進み、かつ、ミサイル防衛でかなりの金額がとられるという中で、これは非常に問題があるんではないかなと。

 実際に、私どもがいろいろ聞いたり考えて整理をしてみたら、空自のC130にしても、海自の補給艦にしても、我が国の防衛のためのC130であり大型補給艦であるはずですが、今、具体的にどうとはここではもうお答えをいただきませんけれども、相当な部分が実は我が国の防衛から、外れてという言葉を使うと問題があるかもしれませんが、直接の防衛の任務からは外れるところへ出ていかざるを得なくなっているというふうに私は認識をしています。

 そこで、一つお伺いをしたいのは、今、本来任務ということも検討しているということは明言をされておられますが、基本的な考え方として、本来任務として、我が国の防衛ということと国際協力ということ、並列的にお考えになろうとしているのか。一は防衛だよ、そして、さらに二として国際協力があるんだよ、ここを理念的にどう考えているかということを、長官の御意見を伺いたいと思います。

大野国務大臣 国際的な活動というのは世界的に高く評価されている、このことはもう言うまでもありません。そういう意味で、今、国際活動というのは付随的業務として行われている、このことをどう考えるかということでございます。

 まず第一に、平和国家日本として、世界の安全保障環境を改善していくこと、これはやはり本来の業務にして、そして、日本はこういう平和活動を本来業務としてやっているんだ、こういうメッセージをやはり世界的に発信していかなきゃいけない、私はこのように思います。

 それからもう一つは、厳しい生活環境の中で一生懸命国際活動をやっている自衛官の諸君に、やはりそれだけの自負心、プライドを持って励んでもらいたいな、こういう問題があろうかと思います。ただ、松本先生おっしゃったように、これは、予算とか人員とか、今私ども来年度にもやりたいと思っておりますのは、アメリカもそうですけれども、語学研修とか、そういうことをもうちょっと強化していきたい。それから、医官が随分出ていっております、お医者さんとか看護、衛生関係ですね。こういう方々に、やはり本当に、国際業務の大切さということで、いわば自負心を持って頑張ってもらいたい。

 こういうことで今考えておりますけれども、それじゃ、この国際業務というのが、本来の自衛、防衛のための仕事とどういうふうに区別されるんだ。本来業務の中に主たる任務と従たる任務というのがありますが、それはやはり、一、我が国の防衛、本来業務の中に、一、主たる任務は自衛、そしてその中で、従たる任務は国際業務、こういう位置づけで私は整理していきたい、このように思っております。

松本(剛)委員 私の質問時間が終了いたしましたので、SACOの問題等、幾つか論点を残しました点、おいでをいただいた関係の方にはおわびを申し上げたいと思いますが、質問を終わりたいと思います。

 最後に、今もおっしゃっていただきましたし、途中の議論も聞いていただいたと思いますが、安全保障、防衛に関する議論というのは、特にこれまではいろいろな経緯があったんだろうというふうに思いますが、正面立って必ずしも議論されてこなかったことがあるんではないかと思います。これから、ぜひきちっと、法律的な面も、予算、財政的な体制、広い意味での体制も含めて、きちっと表へ出して議論をして、整えた形で、自衛官の皆さんにもしっかり仕事がしていただけるという体制をつくっていただきたい。それにはやはり政治的リーダーシップが必要だろうと思いますので、両大臣の御活躍を期待したいと思います。

 一言だけ、直接当委員会の担当にはならないかもしれませんが、緊急事態に関する有事法制、ことし、基本法ということで、自民党、公明党、民主党、三党で合意したもの、これをこの国会で成立を図るということになっております。両大臣も関係をされると思いますので、積極的に、国民を守るために私どもも提案をしていきたいと思いますので、政府におかれましても前向きにお取り組みをいただきますように御要請を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

小林委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。それでは、民主党の会派の持ち時間の中で質問をさせていただきます。

 まず最初に、今年度、平成十六年度の補正予算で購入するということが決まりました政府専用ヘリの調達についてでございます。

 この政府専用ヘリ、今、現状使っているスーパーピューマ、政府の方は、従来の、これまでの現有機のAS332Lからこれの発展型でありますEC225と、同じ製造会社、ユーロコプターというところでございますけれども、これを購入するということを決定いたしまして、もう既に補正予算も成立をしているわけでございます。

 この機種の選定につきまして、幾つか報道をされておりますけれども、非常に不可解な選定であったということが言われております。この点につきまして、この機種に選定をされた経緯につきましてまずは御説明をいただきたいというふうに思います。

大野国務大臣 まず、現在使われておりますスーパーピューマ、特別輸送ヘリコプターでございますけれども、取得してから約二十年が経過いたしております。したがいまして、機体の陳腐化、老朽化がかなり進んでいることは先生御存じのとおりでございます。そこで、今回は、現有のスーパーピューマを同系列の機種に買いかえるということでありまして、新たな機種の航空機を取得するものではありませんから、機種選定ということは行いませんでした。

 では、なぜそういうことをやらなかったか。これは御疑問かと思いますので申し上げておきますけれども、新たに他の機種を取得する場合に比べまして、例えばパイロットや整備員の教育訓練体制、こういうものを変えなくていいのではないか、整備補給体制や格納庫の有効利用、こういう点でもメリットがある、こういうことであります。したがいまして、今新たに購入しようというスーパーピューマ、新しいヘリコプターでございますけれども、従来のAS332Lというものをベースに開発したものである、その上で性能ではかなり改善している、こういうことでございます。

 そういう経緯をもちまして、新たな機種選定は行わずに、発展型を購入した、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 今長官がお話をされました現有機のスーパーピューマ、昭和六十一年ですから一九八六年でしょうか、東京サミットの前ですね、昭和六十一年、一九八六年の三月に購入されて、五月の東京サミットでは各国の要人の輸送に活躍をしました。ですから、以来二十年間、特に一号機の「はと」ですか、名称を当時の中曽根内閣が募集をして、「はと」という名前がつけられたんでしょう。もう既に五千時間が過ぎているというふうにも聞いております。

 確かに、かなりの長い年月をかけて使用されまして、そろそろそういう時期であろうというふうに思いますけれども、専用ヘリの従来の調達ということでは、当然のことながら、そうした機種選定の手続というものが行われるわけですね。

 機種選定の手続については、私もその流れを専門家にちょっと聞いてきたんですけれども、大体機種選定の手続というのは通常八カ月、九カ月ぐらいかかるものだと。当然、要求性能、性能を要求して、各メーカーがどのような形でこたえられるかというようなことについては、当然のことながら、それぞれのメーカーに通知をし、そして、要求性能にこたえる形で、そうしたものを提案してもらうという従来の手続なんですけれども、なぜ今回に限って、これは全部で、今年度が補正予算十八億円、そして来年度が十五億円ですか、総額三十三億円。これは御確認をいただきたい。三十三億円というふうに聞いておりますけれども、これだけ大きな買い物をするのに、なぜこうした従来の手続を経なかったのか。

 今長官の御説明では、今使っているものの後継機といいましょうか発展型であるからいいんだというような説明で、それだったら、一度もう実績をつくったものは、我が国は永遠に同じ会社の同じものを購入し続けなければならないということになりませんか。その点についてもう一回、その選定は非常に不透明だと我々は感じておりますけれども、その点につきましてのお答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 まず金額につきましては、総計で三十二億九千万円、約三十三億円で、渡辺先生おっしゃるとおりでございます。本年度、平成十六年度歳出経費は十八・五億円、後年度負担が十四・五億円、こういうふうになっております。

 なぜ機種選定を行わなかったかということにつきましては先ほど御説明をいたしたつもりでありますけれども、もう一度、繰り返しになりますところはお許しいただいて御説明申し上げたいと思います。

 これはやはり同系列であって、そしてなぜ同系列かといいますと、新たに他の機種を取得する場合に比べて、パイロット等あるいは整備員などの教育訓練体制、これにコストがかからないし、同じものでやっていける、それから、整備補給体制及び格納庫の利用も有効にやっていける、こういうメリットがあるわけであります。したがいまして、そういうメリットを考え、かつ今度新しく買いかえますスーパーピューマが今までのヘリコプターの発展型である、こういう意味で、新規購入ということではありますけれども機種選定は行わなかった、こういう経緯でございます。

渡辺(周)委員 私が聞いたのは、そういうふうなことになれば当然、一回購入したものを、ずっと同じメーカーのものを買い続けなければならないわけですね、そういう御説明ですと。

 つまり、一回実績をつくってしまえば、これまでの流れにあります機種選定を行わずとも、今のようなパイロットの養成であるとか格納庫の利用であるとか、そういう理屈でいえば、改良型をどんどんどんどん継ぎ足していけばこれから未来永劫同じメーカーが調達をされるというふうなことになりますけれども。そういうことになりませんか。どうですか、長官。

大野国務大臣 購入する物品によりましてはそういうメリット等がない場合もあります。購入する物品によりまして、それはもう厳格に、全く新しく出直してやらなきゃいけない、当然のことであります。この新しく購入するスーパーピューマというのは、先ほど申し上げました特別の事情がありますので機種選定ということを行わなかった、こういう点は御理解いただきたいと思います。

 物事によっては、そんなことを言ったら、すべてのものについて一遍買ったものを継続して買わなきゃいけないじゃないか、この御理論も当然のことでありまして、そんなことはできません。やはりいろいろな条件を総合的に勘案して、考えて、全く新しく出直しをしていくべき、これは当然のことだと思います。今回はそういう事情があったということを再度申し上げたいと思います。

渡辺(周)委員 それでは、さらに質問をしますけれども、このスーパーピューマですね、今これから購入を決めたスーパーピューマ、実は型式証明がございます。この型式証明を見ますと、昨年の七月に型式証明をとったばかりなんです。それで、当然のことながら、昨年の、二〇〇四年ジュライ二十七ですからこれは七月の二十七日、型式証明をとったばかり、つまり、当時パンフレットもなければビデオもなかった、ここにある型式証明だけを選定の根拠にしたということでございまして、買うときの根拠はこの型式証明しかないんですね。

 当時は、実はフランスのユーロコプターの代理店が日本になかった。去年の十二月に代理店がなくて、代理店となったのが二月の七日、二月一日に実は補正予算が成立しているんですけれども、補正予算の審議をしているときには日本に代理店がなかった。しかも、型式証明をとったばかりのこの機種を、どうしてこれだけを根拠にして三十三億円もの高い買い物をするという決断をしたのか。

 これが、例えば一部日本の週刊誌でありますとか海外の専門誌の中で、非常に政治的判断による、これは同業他社にしてみると、当然自分たちも売り込みたかったから、それがだめになったら辛らつに書くということを割り引いても、非常にこれは不可解であるということが言われております。その点について確認をしたいことと、私が今申し上げたことが事実かどうかということ。

 それからもう一つは、この性能というものが、現有機に比べてどこにメリットがあるのか。先ほどのメリットというのはパイロットの養成であるとか訓練であるとかあるいは格納庫の問題とかおっしゃいましたけれども、それ以外の性能ということについてはどこにメリットがあってこれに決めたのか。

 つまり、後年度負担であと十五億円の予算がつくのであれば、何もこの補正予算、災害関連の補正予算で慌てて、機種選定もしないで、型式証明だけを見て決めるなんということはしなくてよかったんじゃないか。その点について、性能的な意味についてはどうなんですか。そのメリットは何なんでしょうか、一体。

飯原政府参考人 代理店等の時系列的な資料が手元にございませんので、ちょっと今、お答えを直接できないんですが、考え方、なぜ補正予算に計上したかということでございますが、まず基本的に、今所有をしておりますスーパーピューマに性能的な、基本的な問題がない、つまり全くほかの機種を最初から選ばなければいけないという問題はない。その中で機種更新的な考え方を持っていた。

 かつ、実を申しますと、なかなか先の日程というのは申し上げにくいところもあるんですが、いずれまた東京でサミットを開くような機会もございますので、その際に今の三機保有しているスーパーピューマで対応できるか。実際、内々そういう問題もあったわけでございます。

 そこで、私どもといたしましては、補正予算の編成の際の検討といたしまして、その先の政府専用ヘリコプターに対するニーズもにらみまして、早急にこれを更新した方がまた東京サミット等にも対応できるという判断のもとに、今回補正予算に計上して予算を認めていただいたというのが経緯でございます。

渡辺(周)委員 東京サミットは二〇〇八年ということを想定されているわけでして、それに間に合わせるために、あるいは先般の、皇族が利用された、あるいは総理大臣も利用されて、大きな災害地があったときには要人を輸送しなければならない、こういう理由からだということも一部ございました。

 ちなみに、VIPを乗せるということでありますから、キャビンの中身については、今現在何人乗りなんですか。これが今度の新しい機種では何人乗りになるんですか。それによって利便性は向上するんですかね。そこのところも非常にわかりにくいところなんですけれども、それについてまずお答えをいただきたいというふうに思います。

 それから、日本エアロスペースという代理店が作成をした問題点、これ、たまたま入手をしました。読みましたら、「EC225ヘリコプターの納入及び改造に関する問題点」というのが、実は二十四項目ございます。「解決の方向性」、例えば、「問題点があります」「原因は何か」「対処方法」「国内作業を検討する」「解決の方向性については納入後作業とする」ということがずらっと書かれているんですね。

 例えば、一つ取り上げますと、「納期」の問題については、「通常二十二カ月の納期であるところを十二カ月という短納期での要求」だというふうに言われております。これは、とにかく「納期を年度内最大限延長をお願いしたい」というふうに書いてあるわけなんですけれども、正直言って、この日本エアロスペースも、とにかく購入してから納入するまでいろいろな、つまり要求される性能についてこたえるためにはかなり問題点があるということを実は言っているわけなんです。なぜそこまでして慌てて、これだけの問題点が後から後から出てくるものを決めたのか。

 そして、私が申し上げたいのは、一つ、この型式証明の中にございます離着陸高度なんですけれども、この離着陸高度、要人を乗せて、東京サミットのみならず、当然総理大臣が乗ることもあればあるいは災害地へ行くこともあるでしょう。そうなったときに、これは例えば、ここに書いてあるんですけれども、ここの離着陸の今の現状について、高度ですね、書いてありますのが二千フィートまでと。二千フィートといいますと、高度は大体六百メートルでございます。

 今使われている政府専用ヘリの場合は、いわゆる離着陸高度は一万五千フィートであります。つまり、型式証明を見る限りでは新しい後継機が性能がすぐれているとは決して思えないんですけれども、改めて、私が指摘していることが事実かどうか。つまり、こういういろいろな問題がありながら、なぜこの購入を急いだかということについての御答弁をいただきたいと思います。

飯原政府参考人 質問で御使用になりました文書、私ども多分入手しておりませんので、それについての直接のコメントはちょっと今差し控えさせていただきますが、現在、代理店を通じまして私どもが把握している性能といたしましては、まず最初の御質問ですが、乗客の搭載人員は現状の十二名から最大二十名に拡大をするというふうに承知をしております。

 また、情報通信機器の搭載がされまして、音声だけでなくデータ通信が可能になるという面。それから、GPSつきの自動操縦装置の搭載が可能になりまして、夜間や悪天候時での安全な運航が可能になる等々、当然でございますが、二十年近くの年月を経ておりまして、その間の技術革新を盛り込んだ改良型ですので、性能的には今申し上げた利点があるということでございます。

渡辺(周)委員 離着陸の高度、つまり、このヘリコプターを購入するということを決めたのは、型式証明しか当時ないんですよ、これを参考に決めたと。当然、これを見たら、現行のものより、つまりちょっと言いますと、離着陸高度が二千フィート、六百メートルといいますと、これは例えば私の地元なんですが、滝ケ原で行われている富士の総合火力演習、例えばこういうところへ行けない、富士のふもとまで飛んで行けないというようなことが出てまいります。

 もう一つ、今お話ありましたけれども、乗員が今の十二名から二十名になるというような話がございまして、時間がありません、これは答えてください。十二名から今度は二十名乗りになる。ところが、この現有機から次期の機種になると、大きさは実は余り変わらないんですね。これは私、年鑑で調べまして、この型式証明と比較をしたら一メーターかそこらしか変わらないんですよ、幅も長さも。

 つまり、十二名乗りが二十名乗りになる。よっぽど大きなものになるのかと思ったら、実は一メーターかそこらしか大きくならなくて、VIPの方が窮屈だから、これじゃ大変だというようなことも一部言われていましたけれども、実はよく見たら、これはもっと窮屈になるんじゃないのかというふうなことを指摘せざるを得ないんですけれども、にもかかわらず、なぜこれを購入したのか。

 その点について、まずキャビンの輸送人員の数。つまり、席を十二席のところを二十席にする。しかし、キャビンの長さについては一メーターぐらいしか大きくなっていないんですよ。現有機の六・八メートルが七・九メートルにしかなっていない、キャビンの幅も高さも変わっていない。にもかかわらず十二席を二十席にする、これは大変強い何か事務次官の御要望があったようでございまして、とにかく二十名搭乗というのはなかなか無理があるというふうにエアロスペースは言ったんですけれども、だめだ、必ず二十名の搭乗を確保してほしい、そういうやりとりがもう既にあるわけですね。なぜそこまでしてこの機種を選定しなければ、しかも短期間に決めなければいけなかったのか。この不可解なことにつきまして、納得のいく説明をしていただきたいと思います。

飯原政府参考人 まず、キャビンの長さ、まさに今御指摘のとおりでございまして、六・八メーターの長さが七・九メーターになる。幅は変わりません。それで、ちょっと私の答弁が不正確だったかもしれませんが、十二名が最大二十名ぐらいになるということで、具体的に、余裕の出た一メーターの長さですね、これをどう配分するかというのは考えていかなきゃいけないと思います。

 それから、ちょっと今事務次官云々というお話がございました。これは私、承知をしておりませんので、確認をさせていただきます。

渡辺(周)委員 では、これはちょっと聞き取ったものでございますけれども、ことしになってからこの代理店が、二十名搭乗ではVIP席が前詰めとなって、窓との間隔がずれたりリクライニングができなくなったり一般席との隔たりが設けられないというふうで無理だと言ったんです。そうしたら次官は、リクライニングができなくても一般席との隔たりがなくたっていいじゃないかというふうな答えをした。このパターンではトイレやギャレーはつきませんと言ったら、トイレやギャレーは要らないんだというふうに言って、立派ないすでなくてもいいから、折り畳みでもいいから、とにかく二十名の搭乗を確保してほしいというようなやりとりをしているんです。

 なぜそこまでして二十名にこだわって、窮屈なのに、全くよくわかりませんけれども、つまり、後継機として選んだと最初に長官がおっしゃいました。しかし、この性能を見ますと、長さも幅も変わっていないんですね、ほとんど。にもかかわらず、どうしてこんなに詰め込んでVIPを、陛下、皇族並びにこれは当然、総理大臣から各国の要人に至るまで乗せなければいけないのか。しかも、まだ時間的に余裕があるにもかかわらず補正予算で慌てて契約をしたということに対して、非常に不可解なんですけれども、この問題については防衛庁長官、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

 それと、さっき御答弁いただけなかったんですが、この型式証明にあります離着陸高度の問題、つまり、今この程度の能力しかないのに、なぜ選定したか。それについて、これはそう書いてありますから、そういう認識を持っていらっしゃるかどうか。それはさっきちょっと答弁がなかったので、お答えいただきたい。

飯原政府参考人 二千フィートの問題でございますが、航空機の専門的な話なので間違ったことを申し上げてはいけないと思いまして、ちょっと答弁を差し控えたわけでございます。場合によってはその二千フィートというのは、海面からじゃなくて地上からどれぐらいの視野ですか、確保されていればいいかとか、そういった概念の可能性もありますので、ちょっとそこは文書をいただければ専門家に調査をさせて何らかの形でお答えをさせていただきたいと思います。

大野国務大臣 なぜ補正予算でそんなに急いで購入するのか、こういうことだと思います。

 御存じのとおり、防衛予算というのは厳しい財政事情の中でなかなか余裕がない。これはもう先生御存じのとおりでございます。中期防にいたしましても来年度の防衛予算にしましても大変厳しい情勢でございます。

 一方において、例えば災害が発生する。例えば新潟県中越地方地震でございますが、この地震で総理あるいは皇族の方々が御視察、御激励に行かれる、こういう点を考えますと、この補正予算で予算を獲得する、ここに問題の発生点があったのではないか、このように思う次第でございます。

 一般の予算ではなかなかとりにくいところがありますけれども、ちょうど新潟県中越地震の補正ということ、そして新潟県中越地震の問題がまさにヘリの活動した場所でもある、こういう点がまさにあったと思う次第でございます。

 そういう意味で、やはりそういう方々に現地を視察してもらう、あるいは激励していただく、こういうことを考えますと、この古い、二十年たったヘリコプターではなくて新しいヘリコプターに買いかえたい、こういう希望、要望は強かったと思います。

渡辺(周)委員 この問題は、もう時間がなくなりましたから、これは改めて別の機会に、さらにまた今度は事務次官にもお尋ねをしたいなと思うんです。

 あと幾つか、残った時間の中でお尋ねしたい。

 さっきの高度の話ですね。つまり、メーカーが保証した離着陸の高度というのはここなんですね。だとすれば、さっき申し上げたように、現在二千フィートしか保証されていないものを、導入してからこれは実験するのかどうなのか、あるいは改良しなきゃいけないのかということになってくると思うんです。現在の離着陸の保証されている高度は一万五千フィートだということでございます。つまり、今より性能的に劣っているし、それを改良するということができるかどうかということも実証されていないんですね。

 それと、もう一つ伺いたいのは燃料の問題なんですけれども、これは私もちょっと専門家に聞いた話ですけれども、今、所管をする陸上自衛隊で使っているJP4という燃料名がある。ところが、これが今度、新しい、つまり今度購入を決めたEC225ではJP8という、これまた燃料も違うんだという話なんですよ。

 つまり、燃料も今使っているものが使えない。しかも、先ほど、皇族あるいは要人に使っていただかなきゃいけない、だから急いで必要なんだ、防衛予算厳しいと言う割には、離着陸高度の問題も燃料の問題もキャビンにおける居住性の問題も、何一つメリットがないにもかかわらず、何で本当にこの短期間にこれに決めたか。しかも、三十三億円という高い金を払ってどうしてこれを買わなければいけなかったのか。しかも、買うものについては、去年の七月に型式証明ができただけ、代理店も、これからまだ検討すべき課題や問題点が二十四項目もあると言っているものをどうして買わなきゃいけなかったのかということが非常に不可解なんですよ。この点について、多分聞いている方々も皆さん、おかしいな、なぜそんなに急いで買わなければいけなかったのかということにつきまして、非常に不透明な部分がございます。

 最後にもう一遍、私の申し上げたこと、ぜひこれは今後検討していただきたいと思いますし、表に出ている資料でありましたら、先ほどの型式証明等はお渡ししますので、御検討いただきたいと思います。この点につきまして、最後に一言、何か言っていただけそうな、身を乗り出していただいたので、どうぞ一言言ってください。

飯原政府参考人 資料をいただければ、それについては私どもなりに精査をさせていただきます。

 それから、いろいろな経緯で、私が直接というか、私全く承知していない経緯も御指摘になりましたので、その点は、固有名詞が出たものにつきましては本人に確認をするということをさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 終わります。

小林委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党の村越祐民でございます。

 本日は、大臣所信に対する質疑ということで、自衛隊に関する問題を中心に、大野長官、町村大臣に対してお伺いをしていきたいと思っております。

 自衛隊の役割に関しては、相次ぐ大規模災害に対して、より柔軟な対応をしていかなければいけない、あるいは国際的な平和貢献をしていかなければいけない、自衛隊に関する役割というのはますます大きくなってきていると思います。一方で、限られた防衛予算の中で、どうやってスクラップ・アンド・ビルドを行ってめり張りをつけていくか。筋肉質で、いわばスリムな自衛隊をつくって、国民の安心、安全にこたえていくかという大きな要請があるわけです。

 具体的には、陸海空で重複している装備を削るとか、本当に今必要としているところに資源を再配分していくようなことが必要になっていくんだと思います。そういった中で、これからまだまだ機能的にやっていける余地があるんだというのは、長官の中でも当然御認識があると思います。また、私もそういった思いがあります。

 そういう認識のもと、長官に対して、防衛大綱あるいは中期防を踏まえて、今後の自衛隊のあり方に関してお伺いしたいと思っております。

 また他方で、この自衛隊をどうするかという議論は、何かあったときにどうしたらいいかという議論であるわけですから、逆に、戦争あるいは有事があったときにどうするかという議論を一方でする中で、他方で、戦争あるいは有事が起きないためにどうするかという努力も、同時に我が国として取り組んでいく必要があるわけですから、そのあたりのことを、外交努力をどうするかということを町村大臣に対して、外交政策に関して、この二点、お伺いしたいと思っております。

 まず、長官にお伺いしたいんですけれども、今私がお話しした自衛隊の資源の再配分あるいは合理化に関してお伺いしたいんです。

 後ほどミサイル防衛に関してお伺いしたいと思っているんですけれども、今指摘されているのは、ミサイル防衛関係の予算というのが非常に大きくかさんでくる、防衛予算の中に占めるミサイル防衛の予算が非常に大きくなってくることが指摘されているわけです。当然、ミサイル防衛の予算とそれ以外の予算の整合性というかバランスが求められてくるわけですけれども、その中で、いまだに冷戦下の部隊配置が維持され続けているんじゃないか、北方に資源がまだ集中しているんじゃないかという指摘があるわけです。

 先ほど来、ほかの委員の方々もお伺いしていると思いますが、2プラス2の中でも、北朝鮮の核の問題であるとか、あるいは日中境界線の問題であるとか、あるいは台湾海峡の問題であるとか、北の方面というより西の方面のケアを今後していく必要性が議論されてきたと思うんですが、そういったことを踏まえた自衛隊の今後の取り組みに関して、まず長官にお伺いしたいと思います。

大野国務大臣 自衛隊あるいは防衛力の考え方でございますけれども、これは抑止力から対処力へ考え方を変えている。これは、あらゆる脅威に対抗できるものとして考えていかなければいけない、こういう考え方でございます。

 それから、先生御指摘のとおり、やはり予防という考え方、これを大事にしているために、国際的な業務を大事にしていこう、つまり、国際的な安全保障環境を改善していけば、世界の平和は日本の平和につながるじゃないか。今までのような、国際活動を単に貢献ということで考えるのではなくて、我が国のためにやっていくんだ、こういうような意味合いもございます。

 そこで、新防衛大綱では、事態に実効的に対応し得るような、我が国の地理的特性をやはり踏まえていかなければいけない、そこで部隊を適切に配置していかなきゃいけない、これは先生今おっしゃったとおりでございます。

 例えば、陸上自衛隊でございますけれども、青函以南では重装備を効率化していこう、そして即応性、機動性を重視した編成をしていこう、こういうことでございます。これは具体的には、例えば戦車から装輪装甲車にかえていこう、あるいはヘリコプターに重点を置いていこう、こういう考え方であります。

 他方、北海道の問題でございますけれども、北海道は訓練環境が極めて良好という特徴がございます。そういうことで、新たな脅威や多様な事態から本格的な侵略事態にも対応し得るように編成した部隊を配置して、日ごろから訓練をしてまいりましょう、そしてそれを、機動力ということに重点を置いています、必要な場合には、青函以南、北海道から南の方に配置、転用していこう、こういう考えでございます。

 また、各種の事態が起こった場合でありますけれども、機動運用部隊、つまりヘリコプター団あるいは空挺団、こういうものや各種専門部隊、例えて言いますと特殊作戦群などがあろうかと思いますが、これを一元的に管理して、各地に迅速に兵力を提供する、いわば中央即応集団とでもいえましょうか、そういうものを新しく編成していこう、こういう考え方でございます。

村越委員 一月に、小林委員長の御指導のもと、当委員会で尖閣諸島あるいは那覇基地、宮古のレーダーサイト等見せていただいたわけですけれども、設備の老朽化が目立っていたんじゃないかと思います。また、どういうわけか那覇基地には、F4ですか、古い戦闘機しかないというようなことも聞いておりますので、そういった対応が迅速に求められるんじゃないか、また、そういった対応をしていただきたいということを御要望したいと思います。

 次に、統合運用体制に関してお伺いしたいと思っているんですが、要するに、スクラップ・アンド・ビルドを行ってめり張りをつけるということを先ほど私申し上げましたが、例えば、一つのミサイルを、陸と空で同じものを、別々の経路で調達して別々の運用をしているというような事例があるようなことを聞いております。もしあったとすれば、こういったものは一本化して合理化していく必要があるんじゃないかと思うわけです。

 ミサイル防衛なんかに関して、今後、陸だったり空だったり海の共同作戦のようなものの必要性がより増してくると思うんですが、長官が盛んにおっしゃるところの多機能弾力的な統合運用というものを行うために、こういった調達の合理化であるとか運用の合理化ということをどのようにお考えになっておられるんでしょうか。

大野国務大臣 私は、常に、内部の問題として、運用とか調達とかこういうものは合理化していこうではないか、税金で賄われている防衛費でありますから、これを有効に使って、そして最大限の効果を上げていく、このことに気をつけるように常に言っている、指示しているところでございます。

 そこで、例えばミサイルの問題でありますけれども、同じミサイルを別の経路で調達している事例というものは今のところ全くありません。ここはきちっと一本化で進んでおります。そういうことで、いろいろな意味から、これから、合理化のためにも、戦力、対応力を向上させるという意味からも統合運用というのは大事だし、それからもう一つ、コストを下げるという意味からも統合運用、これを志してまいりたいと思っております。

村越委員 先ほど我が党の渡辺委員からも御指摘がありましたが、若干問題のある調達もあるんじゃないかという指摘もありますので、ぜひそういったところはちゃんと検討していただきたいと思います。

 また、統合運用するに当たって、例えば陸と海で使用言語が違うとか、あるいは使っている無線の周波数が違うとか、そういう実際共同運用するときに障害があるんじゃないかというような指摘もいっぱいあるわけですけれども、こういったところに関しても、今後、合理化というか一つのものにしていくといったようなお考えはあるんでしょうか。

飯原政府参考人 統合運用の技術的な革新が通信手段の統一ということはまさに御指摘のとおりでございますが、陸海空とも必ずしも通信の手段及び暗号等が統一はされていないのは御指摘のとおりでございます。ただ、かねてより、共通の通信基盤をつくらなければいけないということで、防衛庁といたしましては、そのプロジェクトを進めているということもまた事実でございます。

村越委員 次に、ちょっと時間がないので、ミサイル防衛の話に移りたいと思うんですが、先ほど法制局長官からいろいろお話があったかと思うんですが、このミサイル防衛というのは、自衛権の行使ではないし、警察権類似のものを行使することになるんだというようなお話があったかと思うんですが、法律をつくっていく上で矛盾というか限界が来ているのかなと私なんかは若干思っているわけです。

 ちょっと先ほどの松本委員の質疑を聞いてお伺いしたいことがございまして、では、このミサイル防衛というのが警察権類似のものに基づいて行使されるのであれば、自国の、我が国の警察権というのがどこまで及ぶのかということをちょっとお伺いしてみたいなと思うんですね。

 恐らく、自国の警察権というのが及ぶのは領土とか領空とか領海であって、公海とかその上空というのは対象外になるんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

飯原政府参考人 基本的には、警察権ですので、我が国国内における人なり財産の保護、あるいは公共の秩序の維持ということでございますが、例を申し上げれば、海上警備行動のように、行使をする場所は必ずしも領海の中に限られないという場合もございます。

村越委員 領海の中に限られない場所で警察権を行使することは可能だというお考えでしょうか。

飯原政府参考人 ミサイル防衛の場合に即して申し上げますと、まさに我が国の生命財産を守るためには、公海上で行使することが必要であるということでございます。

村越委員 確認なんですけれども、警察権が及ぶわけですね、そういったところにも。そういうお答えでしょうか。

大野国務大臣 ミサイル防衛の場合には、相手国のミサイルが我が国の領域に落ちることが確実な場合、それを撃ち落とす場所が相手の国であってはなりません。しかし、公海であるかもしれない。こういう意味でお考えいただければと思います。我が国の領域内に落ちてくることが確実、そこで警察権の行使、ただし撃ち落とす場所が公海であるかもしれない、こういうことは当然でございます。

村越委員 若干疑問が残るんですが、これをこれ以上やってもしようがないので、もう一つお伺いしたいのは、ちょっと言葉じりをとらえるような質問になってしまって若干後ろめたい思いもするんですが、条文の文言の問題なんですけれども、何で八十二条に、要するに今おっしゃるところの海上警備行動のところにこの新しい条文を挿入することになったのかということをお伺いしたいんですね。

 つまり、まずイージス艦からSM3を放つわけですね。これは確かに公海上です。ところが、それで撃ち逃した場合、二段階目の措置として本土から、陸からPAC3を撃つわけです。これは明らかに海上とは言えないわけでして、そのあたりのお話をぜひきちんと、議事録に残る形で、国民の皆様に対して説明していただく必要があると思いますので、御答弁お願いいたします。

大野国務大臣 八十二条で対応する、八十二条の二ということでございますが、そこでミサイル防衛を規定していくということでございます。

 この問題、第一に考えなければいけないのは本来任務である自衛隊の行動でありますが、これは自衛隊法第六章でございます。その順序については、七十六条の防衛出動、七十八条の治安出動、そして今先生がおっしゃいました八十二条の海上警備行動、それから八十四条の対領空侵犯措置。このように、手続の重い順に並べているわけであります。

 今回の措置の考え方であります。今回の措置は、国民の生命財産を保護するためのものであり、自衛隊の本来任務である、このことで第六章に規定しております。手続といたしましては、防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て部隊に命令を行う、これが基本でございます。その八十二条の海上警備行動、これも防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て下令する、こういう構造になっております。

 したがいまして、八十二条との類似がございますので八十二条の二として規定した、こういう構成になっておる次第でございます。

村越委員 一番なじみやすいというか、据わりがよいということで八十二条の二ということになったかと思うんですが、先ほど私が申し上げた、平時の自衛隊活動に警察権を準用することに若干無理があるんじゃないかということと、若干私も法律を勉強してきたものですから、文言からいって若干違和感があるという感じがしております。非常に大事な問題なだけに、もっと腰を据えて法律の改正を行うなり新たな法律で対応する方がよかったんではないかと私は思っております。

 ちょっと時間がないので、また次に移ります。

 ミサイル防衛の実効性とか費用対効果の問題というのが盛んに議論されているわけですが、先ほど長官もおっしゃっていたように、まさにこれ、税金で高い買い物をするわけですから、この実効性の議論あるいは費用対効果の議論というものがきちっと国民の皆様の前に開示というか説明がなければいけないと私は思っているんですけれども。これ、さんざん長官、お伺いされていることかもしれませんが、先日アメリカでBMDの実験があって、割とぶざまな失敗が実験結果として残ったという報道があったわけですけれども、これは長官、お聞きになってどういう感想をお持ちになられたでしょうか。

大野国務大臣 まず、感想といたしましては、日本で配備するものとは全く違うものであるということでありますので、日本のミサイル防衛システムには影響は全くないな、こういう感想を持ちました。

村越委員 全く違うものであるということなんですが、要するに、全く違うんであれば、我が国独自のものというか、それとは異質なものが配備されることになると思うんですが、そうだとしたら、なお一層、我が国独自のものあるいは我が国に装備するものの実証実験だったりシミュレーションというものをする必要が、導入前に必要だったと思いますし、また、これから配備していく中で実験を続けていくべきだと思うんですが、そもそもそういった実験を我が国としては行ったのかどうか、あるいは行っていないのか、行ったとすれば、どういう結果があって、どれだけ費用がかかったのかということをお伺いしたいんですね。仮にしていなかったとすれば、これからする予定があるのかということをちょっとお聞きしたいと思います。

大野国務大臣 まず、大変多額のお金のかかるミサイル防衛の配置でございます。これは、全体をトータルいたしますと、既に十六年度でも一千億円以上予算を計上しておりますし、また、十七年度予算においても一千億円強の予算をお願いしております。全体で恐らく一兆円近い予算、コストとなるものと思っております。

 したがいまして、それだけ慎重にきちっとイージス艦あるいはPAC3の問題を考えていかなきゃいけない。このことは、アメリカでミサイルが失敗した、どう思うか、こういうことも本当に我が事として考えてきちっとやっていかなきゃいけない、当然のことであろうかと思います。

 そこで、イージスのSM3の問題でありますけれども、これはアメリカで行われている実験でございます、日本ではやっておりませんが、迎撃試験六回中五回成功いたしております。二月下旬に七回目の迎撃試験を予定しているということであります。ペトリオット、PAC3の方でありますが、これはさきのイラク戦争でも実戦で使用されております。我が国独自のシミュレーション等の分析におきましても、その能力は裏づけられている、こういうことでございます。

 そういうことで、これ以上申し上げることもないわけでありますけれども、考え方といたしましては、やはり平成十五年十二月、たしか十九日だったと思いますが、ミサイル防衛をやろうという閣議決定をした際にも、官房長官談話がありまして、技術的に実現可能性が極めて高い、こういう発表がございました。

 具体的な迎撃率につきましては、装備の具体的な能力を示すものであり、必ずしもここで明快に申し上げるわけにもいかないということではありましょうけれども、今申し上げましたように、やはり過去六回中五回成功している、それからペトリオット、PAC3につきましても、さきのイラク戦争で成功している、こういうことから判断して、信頼に足るものである、このように我々は思っております。

村越委員 ちょっとわかりにくいと思うんですよね。これは防衛機密ということになるんでしょうけれども、要するに防衛範囲、フットプリントがどれぐらいなのかとか、あるいは、具体的なデータを出すということは難しいんでしょうけれども、良好な試験結果であったとか、あるいは平成十六年三月二十五日の当委員会での長官の前任者である石破長官の答弁で、「当たるのかねという話ですが、当たります。」というような答弁をされているんですけれども、ちょっとこれでは国民の皆様は非常に不安だと思うんですよね、全然わからないわけですから。なおかつ、第二議員会館の五階の何号室に当たるぐらいの精度で当たるんだなんて、我々からすると非常に不安になってしまうような答弁を石破前長官はされていました。

 ただ、このあたりの実験というか、実証的なデータをきちっとお示しいただけないと、なかなか納税者として、国民として、安心してこのミサイル防衛というものに関して裏書きができないんじゃないかということがあるんだと思います。このことは、ちょっときちっと議論をしていきたいなと思っております。

 これもちょっと誤解を招きかねない質問なんですが、費用対効果に関してもう一点お伺いをしたいんですけれども、航空自衛隊の高射群というのが千歳とか三沢とか入間とか春日とか那覇とか岐阜にあるわけで、そのうちの四カ所ないし三カ所にこのPAC3が配備されるとかされないとかという報道があります。

 ただ、現実の問題として、設置箇所とかフットプリントの関係で、発射機の周辺の人たちだけが安心ができる、それ以外の人たちは弾道ミサイルが飛んできたときどうするんだ、安心、安全じゃないじゃないかという議論が当然出てくるわけです。

 国防というのは、防衛というのは、やはり公共財であるわけですから、したがって、税金を国民から強制的に徴収して、その税で運用するわけです。そういう納税者の観点から考えて、守られない人たちというのは、どうしても不公平感が出てくることになると思うんですが、どうお考えになるか。別に私は、だったら全部、すべからく日本全国にこのPAC3を配備しろと言っているわけではないので、その点だけちょっとお断りしておきたいんですが、いかがでしょうか。

大野国務大臣 大変鋭い御質問、御指摘でございますけれども、まず、今から配備していこうというBMDシステムにつきましては、多層防御ということが一つございます。それはどういうことかといいますと、まず、イージス艦が、これは広範な範囲でやれますから、ミッドコースでこれを落としていく、迎撃していく、このことによって日本全体が守られるということでございます。したがいまして、イージス艦の持っているアンタイ・バリスティック・ミサイルにつきましては問題はなかろう、そういう、場所によって差別ができるということはないと思います。

 それから次にPAC3でございますけれども、PAC3は、もう言うまでもない、先生十分御存じのことでございますが、最終のターミナルコースで撃ち落とすということでありますけれども、この半径は、やはり数十キロメートル程度かなということでございます。したがいまして、その配備状況によっては差が出てくる可能性はあるわけでございます。

 しかしながら、いずれにしましても、PAC3の場合は機動力があるわけでありまして、機動的に移動、展開可能なシステムでありますので、我々としましては、そのときの状況に応じて適切な位置に配備していきたい、そのように思っておるところでございます。

 問題のポイントは、やはり二重に構えている。第一段階目は、非常にミッドコースで、これは全国どこでも防御できる。そこでほとんど撃ち落とせる、先ほどの話じゃありませんが、当たります、当てますということでありますけれども、もし当たり損なったら今度はPAC3で迎撃する、こういう構えでございますから、そこのところは、配備に十分気をつけまして、その時々に応じて適切な位置に配備しておくということでございます。

 こういうことを考えまして、私はやはり、不平等という御指摘でございましたけれども、不平等ではない、不平等にしない、こういう心構えでやっていきたいと思っております。

 いずれにしましても、我が国国民の生命財産を守る、純粋に防御的な、かつ、ほかに代替手段のない唯一の手段であるBMDシステムというものを今のような考え方で配備していくこの意義は極めて大きいものがある、このように考えております。

村越委員 ちょっと時間が来てしまったんですが、せっかくの機会ですので、最後に町村大臣にお伺いしたいんです。

 よくも悪くも、このミサイル防衛というものを我が国はリソースとして持ったということがあると思います。これを本当の意味で資産とするのか負債とするのか、負債になってしまうのか。ある意味で外務大臣の取り決めは僕は大きく影響してくるんじゃないかと思っているんですね。つまり、ミサイル防衛というものは、事実の問題として、東アジアの安全保障体制に対して、結果としてある種のネガティブなインパクトを与えている面があると思います。既に何カ国かの国々が非常に懸念を表明しているわけでして、このところをどうお考えになるのか。

 つまり、こういう有事のときにどうするかという議論と同時に、先ほど私が申し上げたように、有事がないための努力を外務大臣にぜひしていただかなければいけないわけですから、例えばミサイル管理レジームですか、MTCRとか、HCOCといった弾道ミサイルを極力抑えていくための国際的な取り組みというものが既にあるわけですから、戦争有事がないための外交努力というのを、国連の安保理入りの問題なんかもありますけれども、外務大臣、どのように取り組んでいかれるのか、一言だけちょっと御所見をいただきたいと思います。

町村国務大臣 外交の大きな目的は、やはり世界及び日本をいかに平和に保つかということであろうと思います。そういう意味で、やはり我が国有事の際、特に攻撃を受けた際にミサイルディフェンスを整備するということは、それはいろいろなことを言う国はあるかもしれませんが、やはり日本として必要なことはしっかりやっていくという姿勢は、先ほど来大野長官が言われたように、非常に重要なことだと思います。ただ、それを超えて、より戦争のない世界へ持っていきたい、あるいは、できるだけ、核兵器を含めて、通常兵器を含めて、そうした軍備がさらに減っていくという方向を追求するということは、これまた私は積極的な外交であろう、こう思っております。

 そういう意味で、核廃絶に関する決議案を、まあ、決議を出すだけでいいのかという議論もあるかもしれませんが、しかし、やはり国際的な世論を喚起するという意味で、九四年以降、国連総会に提出をされてそれが採択をされている。さらにことしは、五年に一回のNPT運用検討会議というものがことしの五月にニューヨークで開かれることになっております。この会議に積極的に貢献をするために、実は、つい先般、二月に外務省で、このNPT運用検討会議の議長や主要国の軍縮大使を招いてNPT東京セミナーというものを主催いたしまして、このNPTの五年に一度の会議を成果あらしめるようにしたいというような会議も開いております。

 また、通常兵器の分野でも、日本のイニシアチブによりまして国連軍備登録制度というものが設立をされるといったようなこと、あるいは、二〇〇一年の国連小型武器会議での行動計画の採択に向けて日本が主導的な役割を果たすなどなど、こういうようなことを積極的にこれからも展開をしていきたいと考えております。

村越委員 大臣、ぜひよろしくお願いいたします。

 時間を大幅に過ぎてしまいましたが、小林委員長の機能的、弾力的な対応に感謝申し上げまして、質問を終わります。

小林委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、所信表明、主に外務大臣の所信表明に対する質問をさせていただきます。防衛庁長官はないので帰ってもらってもいいんですけれども。

 まず、きょうの質問の背景は、要するに対北朝鮮の問題で、北朝鮮が核の保有という表明をし、国内的にも対外的にもいろいろな意見が噴出しているところでありますが、私は、当然のことながら、特に際立って新しい違ったことを言うつもりはありませんが、要するに、北朝鮮に対する日本単独の経済制裁というのは余り意味がない。やはり中国並びに韓国、こういった両国と北朝鮮との関係が非常に強いわけでありますから、当然御承知のことですが、北朝鮮貿易全体の約五五%を中韓で支えている。日本の部分はわずかに八%程度。こういうふうなことを考えましても、ここはやはり中国、韓国というものをしっかり意識して、この対北朝鮮との対応というものを考えていかなくちゃいけないのは当然のことだろうと思うんです。

 そういう点で、北朝鮮が六カ国協議を離脱したということにつきまして、中国の対外部長が北朝鮮に行ってきた、その反応について、大臣がその結果を、子供の使いじゃあるまいしと言われたのは非常に適切な発言であるというふうにも思います。

 そこで、私は、対中国、対韓国、時間があれば韓国の話になりますが、きょうは主に中国のことについて、非常に基本的な部分で外務大臣のお考えを聞きたい、こんなふうに思うんです。

 まず、その前段としまして、この間外務大臣の所信表明演説を聞かせていただいて、こういう所信表明というのはそんなに大きな意味はないんだろうとは思うんですが、読んでいて少しばかり、本当にささいなと言ってはあれですが、私にもこだわりがありまして、ちょっとばかり気になる箇所があります。

 そこを最初に言う前に、中国との間では原子力潜水艦あるいは海洋調査船等をめぐってという話がありますが、この中国原潜の日本領海侵犯あるいは海洋調査船事案というのは、これは私の理解するところでは一方的に中国が悪い、日本に落ち度があったというふうには思っていないのですが、この辺の認識はどうなんでしょうか。簡単にお願いします。

町村国務大臣 原潜の事案、海洋調査船の事案に日本に落ち度があったかという御指摘でございますけれども、これはもう全く中国側の一方的な行為であるということで、日本側に何かまずい点があった、落ち度があったとは全く認識をしておりません。

赤松(正)委員 そうですよね。そういう観点からいたしますと、この文章を読みますと、「中国との間では、原子力潜水艦や海洋調査船等をめぐって問題が生じないよう国際法の遵守と活動の透明性の向上を働きかけ、信頼醸成を促進していく考えです。」というこのくだりは、私の理解でいうと極めて何か、極めてというのも言い過ぎかもしれませんが、若干歯切れが悪い。要するに、あたかも何かこの二つの事案をめぐって問題が生じないように、こういう表現ぶりというのはやはり、先ほど私が日本に落ち度はあるのかと言ったふうなことを惹起させるような、そういう表現であると。これは非常に勘ぐって言いますと、国際法の遵守と活動の透明性の向上を防衛庁に働きかけて、そういうふうに読むのかなと。外務省のあのときの対応はきちっとしていたと何回もいろいろな角度でおっしゃっていましたから。

 防衛庁については若干、その対応のスピード感等々について防衛庁長官も認められる発言をされておったわけですが、そういうことさえ思わせるような書きぶりになっているというのは、細かいことといえばそうなんですけれども、私が書くなら、問題を生じさせないようにというふうな形にしていかないと、何か非常にあっさりとした書き方に過ぎるのではないか、そんなふうに思う次第でございます。その辺についての御感想を述べていただきたいと思います。

町村国務大臣 今、改めて読んでみまして、赤松委員の御指摘はまことに正鵠を得た御意見をいただいた、こう思っております。

赤松(正)委員 こういう所信表明にも、やはり大臣の個性をいろいろな角度でにじませていただきたいというふうに思います。

 そこで、本題に入りますけれども、ここにありますように、「信頼醸成を促進していく考えです。」とあります。また、同じページの冒頭の部分で、「重要な近隣国である中国、韓国、ASEAN諸国との友好関係を一層増進します。」とあります。これも、私に言わせると、ちょっと通り一遍の表現だなというふうに思うんです。もちろん、友好関係一層増進というのは、これは間違った言葉じゃないんですけれども、私は、やはり中国と日本との現状というものを考えたときに、もう少しこのくだりについては工夫が必要である、そんなふうに思います。

 私も、ではどう書けというのかといいますと、やはりこれは関係改善を一層促進するといったふうな、そういうことが望まれる。つまり、日中間というのは、私は中国が日本と国交を回復したいわゆる一九七二年、昭和四十七年、あのときのことを思い出すわけですけれども、あれから今日まで約三十三年ですか、足かけ三十三年という歳月がたって、この間、やはり非常に両国関係というか、中国自体が大きな変化を遂げているということがあろうと思います。

 やはり、大ざっぱに分けると、一九九〇年だと思いますが、江沢民さんが主席になられてからの約十三年間、これの前と後という分け方をするというのが自然かな、こう思うんですが、やはり日中国交回復以降の日中関係というのは、先ほどの友好という言葉が言ってみればキーワードになるように、日中友好、友好ということが言われたわけですけれども、その後の江沢民時代、これは江沢民という人一人に帰せられる話ではなくて、ある中国専門家に言わせると、トウショウヘイがそっとささやき、それを受けた党長老が賛成をし云々という言葉があるんですけれども、江沢民氏がやはり実践に移していった、何を実践に移していったのかというと、要するに反日教育ということを指摘する向きが昨今大変に多いわけであります。

 つまり、その辺の、なぜそういったことが行われてきたのかということがあるわけですが、まず、基本的に、私が今申し上げた江沢民時代の十三年間の反日教育というふうに言われることをどうとらえておられるのか、いや、そんなことはないと思っていると言われるのか、それとも、その点については自分としてはこう思っているという町村外務大臣の中国観を聞かせていただきたいと思います。

町村国務大臣 江沢民国家主席の前後という分け方をされる、一つの御見識だなと思って今承っていたところでございます。

 一番象徴的なのは、九八年に、小渕首相であったと思いますが、日中共同宣言を出した。これが江沢民国家主席の日中間にわたる一つのハイライトであったか、こう思っております。この共同宣言、それは、文章としては非常に、「友好の伝統を受け継ぎ、更なる互恵協力を発展させることが両国国民の共通の願いである」ということでありまして、これに僕は間違いはないだろうと思っております。

 ただ、我々のみんな記憶に残っているのは、いろいろな場でのスピーチというものがかなり厳しいトーンであった、あるいは発言であったというようなことも確かに記憶に残っているところでございます。

 反日教育と今委員がおっしゃいました。彼らは愛国主義教育、こういう言葉を使っているようでございます。それは、どの国でも、日本はなかなか、愛国心というと委員には大変御無礼かもしれませんが、いろいろな意見があるわけでございますが、中国は中国でやはり愛国心、国を愛するというような教育をやっているということ自体は、それは一般的に言っておかしなことではないのだろうと思います。

 ただ、これは私の解釈というよりは、日中二十一世紀委員会でしたか、小林陽太郎氏だと思いますが、彼の発言によりますと、中国における愛国というのは、しばしばそれは抗日ということを意味するというような歴史的な観察があるということを言っておられました。したがいまして、私は、この愛国主義教育というのが即反日ということではないにせよ、そういう意味合いがあるのではないかという見方をする方がいらっしゃる、これは確かにそういうことなのかなと。

 私も、中国における教育の現場というものが本当にどういうものであるのか、正直言ってまだよくわからないところがありますから、本当にそうした激しい反日教育をやっていると認識をしているわけではございませんが、伝えられているところ、そういう部分もあるのかなと思います。

 いずれにしても、そういうことであるならば、それはやはり日本としてただすものはただしてもらわなければならないということで、例えば、ごく最近時点でいいますと、着任をした佐々江アジア大洋州局長、一月に中国に行った折にもそうした歴史教育のあり方について改善をすべきではないかといったような問題提起までしておりまして、その際に、中国の愛国主義教育施設というのがあるそうでありますが、そうした展示のあり方等含めても意見交換を行ってきているということのようでございます。

 いずれにしても、大国中国がやはり世界の中の一員として、オリンピックもあるわけでございますから、正しい愛国心をしっかりと持った上で、日中友好により一層、若い世代も含めて貢献をしてもらいたいと心から念願をしているところであります。

赤松(正)委員 ちょっと先行きの答弁をされてしまいました。後で佐々江さんにちょっと聞きますが。

 先ほど申し上げたのは、ちょっと私も余り背景説明をしないで言った傾向があるんですが、要するに中国は、御承知のようにというか、当たり前のことなんですが、いわゆる共産主義の国であって、同時に資本主義的要素を強めているという非常にねじれた国家運営をやっているというふうに認識しているわけですが、ある意味で中国共産党の求心力というものを持っていくためには、やはり何か目的をつくらなくてはいけないということで、先ほど大臣御自身がおっしゃった小林さんの言葉ですか、抗日という、いわゆる民族の苦悩というか、そういう部分に目を転化させることによって中国共産党の求心力の低下というものをある意味で代替している。

 そういう時期が、やはり先ほど言った江沢民さんの十三年というのは、いわゆるソ連の崩壊、冷戦の崩壊というもので、現実にこの世界における社会主義、共産主義というものが非常に崩壊過程というものがだれの目にも明らかになった状況の中で、中国という国がどう国家運営をしていくかという問題と深くかかわっているというふうに見るのが極めて自然だと私は思うんです。そういった意味で、冷戦期以後の、冷戦後という時代の流れの中で、中国は反日教育、抗日教育、そういったものを幅広く展開してきたということを指摘する識者というか中国専門家というのは非常に今多いわけであります。

 そういった点で、こうしたことは、先ほど愛国心云々ということを言われましたけれども、通常の愛国心と意味合いが全く違っていて、そういう自分たちのいわゆる過去におけるイデオロギーの求心力低下というものを補うための、言ってみれば目くらましとしての反日教育という側面が非常に強い、そういうふうにとらえるべきだ、こんなふうに私は思っているんです。

 では、佐々江局長、向こうに行ってこられての話を若干聞かせてください。

佐々江政府参考人 先生が今中国のいわゆる国内の愛国主義的教育と対外関係の関係について述べられたわけでございますが、識者の中には、中国の愛国主義、あるいは過去の問題、あるいは台湾の問題もそうでございますが、中国の国の成り立ちと深くかかわっている、そういう問題はすぐれてナショナリズムの問題、感情の問題と結びついているということで、それが中国の政治に大きく結びついている、そしてそれが大きく対外関係にも影響しているという見方もされる人もいるということは事実だと思います。

 他方で、中国政府自身、指導者も含めまして、中国の愛国主義教育というのは決して反日教育ではないということを繰り返し言っていることも事実でございまして、中国としては、決して国を愛するということがほかの国に対して排外的な要素を持つものになってはいけない、そういうことも同時にはっきりと指摘しているということでございまして、我々としては、できるだけそういう面を増幅して、大切にしていくように関係を持っていくことが重要ではないかというふうに思うわけです。

 そういう意味で、私、初めて局長としてこの間北京に行ってまいりまして、日中間でお互いの感情、イメージというものをやはり改善する、よくするという意識的な努力が必要だ、そういう意味で、お互いに対して気を配りながらやっていく必要があるのではないか、そういう観点で、中国の愛国主義教育というのを、いろいろな展示もございますけれども、日本人が見るといわゆる反日的な要素が強いような問題についてやはり改善すべき点がある、考慮をされるべき点があるということを率直にお話し申し上げたわけでございます。それに対して向こうは、これは決して反日的なものではない、純粋に国を愛するということでやっているというお話もあったわけでございます。

 我々としては、そういう中でできる限り、中国に対しても、改善すべき点はやはり改善するように要請していくことが重要だというふうに思っております。

赤松(正)委員 では、佐々江さんは局長になられて初めてそういう議論を向こうとされたということですが、大臣、前任の局長とか過去の経緯の中で、今佐々江さんが言われたのと同じようなことをした経緯があるのかどうかというのが一つ。

 それから、今の局長の答弁、あるいは大臣御自身も余りそういうことは現場、それは現場でどういうことが行われているのかというのは知らない、こうおっしゃいましたが、私は別に反中の立場から言っているわけではもちろんないわけですけれども、まず過去のそういう対中国、先ほどの佐々江局長がおっしゃる言い方だと決して反日ではない、そういう特別な意図を持ったものではなくて、いわゆる中国を愛するということのあらわれなんだというふうな意味合いのことだとおっしゃいました。

 そういう言い方に対して、例えば一つ指摘したいのは、これは二〇〇三年のいろいろな論壇の世界でも話題になりましたけれども、中央公論や文芸春秋の上において、「民族主義的反日論は有害無益だ」、これは馬立誠という元人民日報の編集委員の論文とか、同じ人物の「我が中国よ、反日行動を慎め」という論文とか、あるいは時殷弘さんという、これは中国人民大学の教授でありますが、「対日外交から「感情」や「情緒」を排除せよ」。これは論文ですから、文芸春秋や中央公論のいわゆるタイトルのつけ方が、こういう刺激的なタイトルをつけたという側面はあるかもしれませんが、こういった意見を述べる人が象徴的に二〇〇三年、要するに江沢民時代が終わった後の今の新しい主席になって、胡錦濤さんの時代になってこういう論文が出た。そうして、これに対して非難ごうごうということで、この馬立誠さんは、日本読みでバ・リッセイさん、中国読みではマー・リーチェンさんですが、その立場を追われて、今香港に行っている。こんなふうな話を聞くわけでありますけれども、こういった側面というものをどう見るのかというのが一つあります。

 そのことは、先ほど佐々江さんが言ったような、申しわけない言い方ですが、どっちもどっちという感じで、何か非常に奥歯に物の挟まった対応の仕方しかしておられないのかなという感じをいたします。

 これは何か特別な、いわゆる中国を、どちらかといえば反中的な立場に立っている学者がそういうことを言っているというのではなくて、政府自身に強い関係を持っている学者の皆さん、そういった方々による例の、これは何年でしたかね、正式な日にちはちょっと今あれしましたが、タスクフォースの中にまさにこのくだり、二年前ですね、岡本行夫さんを座長とする委員会の報告書の中に、もう当然御存じだと思いますが、改めてちょっとそのくだりを申し上げますと、「日中間の真の友好関係は、若い世代が相手をどう思うかが決定的に重要である。政府は、中国若年層の嫌日感情のもとになっている中国国内の教育の在り方について、中国政府と率直な協議を行うべきである。」こういうふうな提案というか問題提起を二年前にしているわけですよね。

 別に偏った学者ではない、非常にニュートラルな感じのする学者が加わってのこうした報告書の中に、中国若年層の嫌日感情のもとになっている中国国内教育のあり方、こういうふうなことをしっかり指摘をして、率直な協議を行うべきだ、こう言っていることに対して、先ほどの大臣の認識、あるいは実際にやってこられた佐々江局長の物言い、こういったものについて非常に私は不満を感じるんですが、大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 過去のアジア担当の局長がどういう発言をしたか、ちょっと私はそこまでは知りませんが、必要ならば調べてみたいと思います。(赤松(正)委員「いや、発言ではなくて交渉したか」と呼ぶ)はい、交渉ですね。ちょっとその実態は私はまだ今わかっておりません。

 それから、今の「二十一世紀日本外交の基本戦略」において述べられている中国政府と率直な協議をというお話、これは貴重な提言だと私も思っております。そういう意味で、ではこの提言に基づいて外務省が、日本政府が十分な対応をしてきたかというと、これは委員御指摘のように、まだまだ十分であるとも思われません。私も、近いうちに先方外務大臣とも会う機会も今準備をしているところでございますので、さまざまな課題がありますが、その中の一つとしてこの問題も取り上げてみたい、こう思っております。

 いずれにいたしましても、若い人たちあるいは国民全般に対する教育というものが非常に日中間の関係というものを長い意味で規定をしてくる大きな基礎として重要であろう、こう思っております。中国が嫌日になればなるほど、それが翻ってまた日本人が嫌中になっていくという悪循環に陥ることすら懸念をされる。昨年のサッカーの試合でしたか、ややそういう懸念をする向きも確かにあるわけでございますので、そういうことにならないような真摯な努力をしなければいけない、かように考えます。

赤松(正)委員 私は過去に中国に何回か行ったことがあるんですが、胡耀邦さん、もう亡くなられた方ですが、中国共産党総書記をされた彼なんかは、要するに一生懸命日中関係を本当によくしていこうという懸命な努力をした。それが言ってみれば、中国の中における先ほど申し上げたような冷戦、いわゆる共産主義の崩壊、ソ連の崩壊、そして中国共産党求心力低下、こういう問題と絡み合って彼の失脚につながったという見方があるわけですけれども、今大臣が申されたように、私も中国という国を非常に大事に思うし、そして日本の過去から今日、そして未来を考えたときに、日本は決して反中では生き延びられないし、中国との関係というのは非常に重要である。ところが、中国の側が反日で生き延びようとしている、そういう側面が否定できない。さっき言った二人の学者、ジャーナリストの論文を見てもわかりますように、そういうことに、中国の国家運営というものに日本を利用しようとしている側面は明らかに否定できないということがあるということをしっかり踏まえた上で交渉をしていかなくちゃいけない、そんなふうに思うんですね。

 そういった点で、最後に外務大臣にお聞きしたいんですけれども、日中間には、この間私ども公明党も、新しい時代における、胡錦濤さんが中国の最高責任者になって江沢民さん時代とどう変わっていくか、同じなのか、先ほど私が申し上げたような学者、ジャーナリストの方向性というものをどう新しい指導者が位置づけるのかどうかというさまざま不確定な要素はあります。そういうある状況の中で、日中関係をしっかりとしていかなくちゃいけないということで、今私ども党内に新しい勉強会をつくって、実際に中国人を招いて、いろいろな角度から議論を闘わせようとしているわけですけれども、そういった中に、先方、この間招いた方が言っていたテーマでいいますと、これは当然のテーマですが、いわゆる靖国の問題、そして対中ODAの問題、そして尖閣列島、いわゆる今問題になっている油田の問題、そういった問題に加えて台湾の問題、四つの大きな課題を挙げておりましたけれども、やはり先ほどのような中国のそういった近過去におけるそういう大きな、違う国家と言ってもいいかもしれない。いわゆる日本が国交回復して以降のしばらくの中国とそれから江沢民さんの十三年の中国というのは、国家が変わっちゃったかもしれないというぐらいの状況の中で、日本が外交をしていく場合のいろいろなシグナルというのは非常に重要な意味を持つと思うんです。

 そういう中で、対中ODAの話に一点絞って外務大臣にお聞きしたいんですが、外務大臣は、去年でしたか、いわゆる対中ODA、政府開発援助、円借款の問題につきましては、平成十六年、去年の十一月二十六日に、「近い将来、中国が」「卒業生になることが適当であると考えております。」と、あるいは参議院の予算委員会で、「いずれかのタイミングで、そう遠くないうちにこの中国援助は終了すべきものだ」、こういうふうな発言をしておられますが、この辺は正確に向こうにシグナルが伝わっているかどうか。一方的な打ち切りはとんでもない、こういう言い方が向こうから聞こえてきますが、これは一方的という向こうの言い方は一方的じゃないかという思いがおありかもしれないので、その辺、補足の発言をしていただきたいと思います。

町村国務大臣 日本の国内からは対中ODAについてさまざまな意見が出されてまいりました。長きにわたってそうだったと思います。肯定的な発言、否定的な発言、それぞれこの国会の中にも随分あったと思います。

 私は、長い目で見て、日中関係をよりよいものにしていくための一つの有力な手段として、ODAがこれまで果たしてきた、一九七八年、九年ごろから始まったでしょうか、対中ODAは大変大きな役割を果たしてきたという認識の上に立って、さらにこれから必要だろうかということを考えたときに、かなり発展を遂げている、大きな国になっている、みずからもODAを供与する国にもなってきている、近々オリンピックという大変大きなイベントも控えている、そういう国が日本から借款を受けるという立場でいることが本当にいいんだろうかというようなことを考え、ああいう発言をしたわけであります。

 今、外交ルートでこのODAの今後のあり方について調整を既に始めております。どういう形で軟着陸をさせるかという方向で既に話し合いをし始めておりまして、ちょっといつ答えが出るかわかりませんが、そんなに遠くないうちにこれについては答えが出るだろうと思っております。

 その際、今委員が御心配されたように、一方的に何かばさっと終わってしまうということではなくて、先ほど申し上げました大変意義のあるODAであったわけですから、やはりお互いによかったねと言って終われるような、そういう形をとっていくことが必要であろう、そういう方向で今話し合いを行っている最中でございます。

赤松(正)委員 いずれにしましても、先ほどの教育の話も今のODAの話も、日中間に相互不理解、相互無理解があったら大変にいけないことだと思いますので、重々そうしたお互いの認識ギャップをなくすようにしっかりと交渉していただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.