衆議院

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第7号 平成17年4月15日(金曜日)

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平成十七年四月十五日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 赤城 徳彦君 理事 岩屋  毅君

   理事 高木  毅君 理事 仲村 正治君

   理事 池田 元久君 理事 大石 尚子君

   理事 渡辺  周君 理事 赤松 正雄君

      石破  茂君    奥野 信亮君

      北村 誠吾君    津島 恭一君

      寺田  稔君    西銘恒三郎君

      額賀福志郎君    浜田 靖一君

      古川 禎久君    御法川信英君

      菊田まきこ君    鈴木 克昌君

      武正 公一君    中野  譲君

      西村 真悟君    本多 平直君

      松本 剛明君    村井 宗明君

      村越 祐民君    佐藤 茂樹君

    …………………………………

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     西銘恒三郎君

  坂本 哲志君     津島 恭一君

  津村 啓介君     村井 宗明君

  前原 誠司君     菊田まきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  津島 恭一君     坂本 哲志君

  西銘恒三郎君     嘉数 知賢君

  菊田まきこ君     前原 誠司君

  村井 宗明君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     津村 啓介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君及び外務省大臣官房審議官齋木昭隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 本日は、特に弾道ミサイル防衛に係る事項を除く部分について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩屋毅君。

岩屋委員 おはようございます。自民党の岩屋毅でございます。

 きょうは、質問に入ります前に、一つだけ申し上げたいと思います。昨日起こった事故でございますが、航空自衛隊の救難隊が訓練中に墜落をしたということで、MU2型機だということでございますが、残念ながら四人の隊員の方が亡くなったということでございます。心から御冥福をお祈りしたい、こう思います。

 今聞いてもしようがないことなので、質問ではございませんけれども、防衛庁としては早速調査委員会を立ち上げられたということでございますが、事故原因を徹底的に調査して、こういうことが起こらないように再発防止に万全を期していただきたい、そのことを冒頭にお願い申し上げたいと思います。

 そこで、きょうは短い時間でございますので、聞きたいことはたくさんあるのでございますが、特に法案の中の統合の部分について、ここに絞って幾つかの角度からお伺いをしたい、こう思います。ある意味では、先般の委員会の大石先生の続きを私がやらせていただくということでございます。

 統合問題でございますが、今回の案をつくるに当たりましては、世界各国の事例を防衛庁としても研究していただいたものと思います。特に同盟国であります米軍、これを参考にしたということでございましょう。同盟国でもありますし、世界最強の軍隊でもございますし、よかれあしかれ一番多くの実戦のオペレーションをやってきた組織でございますから、米軍を参照したということなんだろうというふうに思います。

 これは、私も党の部会でこの案の了承を取りつけた張本人でございますから、ここへ来てこういうことを申し上げるのは、いささかじくじたる思いもあるわけでございますが、少し私の中にもすっきりしない点が残っております。党の部会でも数々の指摘があったところでございまして、先般の大石先生の指摘にも通じるわけでございますが、この米軍の組織というのをよく見てみますと、米軍の統合参謀本部というところには、陸軍参謀総長、海軍作戦総長、空軍参謀総長、海兵隊司令官、ユニホームのトップというものがこの統合参謀本部の中には入っているわけでございまして、議長、副議長を入れて全部で六名で構成されている。

 米軍は、管理体制はどうなっているかというと、大統領のもとに国防長官がいて、国防長官の下に陸軍長官、空軍長官、海軍長官というシビリアンがいる。その下にユニホームのトップがいる。管理はそういうふうになっているけれども、いよいよ作戦指揮運用というフェーズに入ると、三長官は、このシビリアンはいなくなって、統参議長、副議長、そして四つの軍のユニホームのトップが入って指揮に当たる、こうなっているわけですね。だから、防衛庁の案では、三幕の長がすっといなくなってしまうというあり方というのは、やはりどうも不自然なのではないかなという思いが私は残っております。

 こういう組織を考えたというのは、米軍との対比でお考えになったんでしょうけれども、どういう理由でこういう構成にしたのかということについて、長官のお考えを聞かせていただきたいと思います。

大野国務大臣 冒頭、岩屋委員からもお触れになりましたけれども、昨日、MU2、訓練中でございますが、国を守るということはやはり命をかけるということでございます。とうとい命が犠牲になりました四人の方々に心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、御家族の方々にお悔やみを申し上げる次第でございます。

 なお、事故原因については徹底的に究明をいたしまして、こういうことがなくなりますように長官として指示をしております。その点を御理解いただきますよう、お願いいたします。

 ただいま御質問の米軍との関係でございますが、米軍の方は、今おっしゃいましたので改めて申し上げません。

 考え方でございますけれども、新たな脅威、いわゆるゲリラからミサイルまで、テロからミサイルまで、こういう新たな脅威が出てまいりまして、その脅威には、やはり迅速な判断、決定が必要である、迅速に対応していかなきゃいけない、しかも、陸と例えば空とが合同で対処していく、こういうケースが非常にふえてきたわけでございますし、今後ともふえてくるということであります。

 したがいまして、まず第一に、今回の改正をお願いしておりますのは、合議体ではない。合議体にすると、やはり時間がかかるという問題があるものですから、合議体にしない。したがって、統合幕僚監部は合議体ではありません。こういうことが一つであります。

 それから、部隊の運用につきましては、申すまでもないことでございますけれども、自衛官の軍事的、専門的な見地からの長官の補佐、部隊等に対する長官の命令の執行といった職務はすべて統合幕僚長が単独で行う、運用についてはすべて統合幕僚長が単独で行う、こういうことでございまして、御存じのとおり、陸海空幕僚長は、運用の職務を行わない。ただし、運用の責任者は、やはり統合幕僚監部に各幕から入ってくる、こういう格好になります。

 さはさりとて、やはり問題点として、統合運用する場合に、例えば調達、補給とかその他については協力をお願いしなきゃならないことがあろう、そういうことで協力体制はあると思います。しかしながら、ふだんからいろんな意味で協議を通じてお互いの連絡を密にしておくことで、私はやはり、今の新しい脅威の中での迅速、効果的、効率的な活動、運用、これが一番求められる。これが今回のいわば部隊運用に関して、統一的に運用する、一元的に長官を補佐する、こういう意味で極めて重要なポイントではないか、このように思っております。

岩屋委員 そのお考えはわかるのでございますが、防衛庁の説明では、統幕長というのはフォースユーザーだ、三幕長がフォースプロバイダーだ、こういうことなんでございます。だから、私育てる人、あなた使う人、こういうことになるんでしょうか、平たく言うと。

 ただ、育てた親方がいよいよとなったときにいなくなる、親方はどこに行ったんだということで、これが本当にうまく機能するのかということについては引き続き議論を続けてみる必要がある、私はこう思っております。

 違う角度からお聞きしたいと思うんですが、法案の九条の二で、統合幕僚長は、三幕長に対し、隊務に関し必要な措置をとらせることができるという規定が置かれてございます。ですから、統幕長というのは、三幕長に対して優越的な地位にあるということは、ここに書かれてあるということでございましょう。ただ、指揮命令上の上下関係にあるかというと、それはそうではない。こういう実力組織において、そこが不明確になっているということで本当にいいのかなという思いが実はするわけでございます。

 やはり、さっきの米軍の例のように、統参議長のもとにしっかりとユニホームのトップが置かれている、こういう構成には我が方の場合はなりそうにないわけでございまして、これで果たして、いわゆる組織の面でも、さっき申し上げた規定の面でも、新しい統幕長のリーダーシップの発揮というのは期待できるんだろうか。この点についてはいかがでしょうか。

大野国務大臣 委員から今、私使う人、私育てる人、こういう御指摘がありました。育てる人と使う人がうまく連携をとれるようなシステムをつくっておかなきゃいけない、こういう御趣旨だろうと思います。

 この点は、運用は全く一元的に統幕長に属するわけでございますけれども、各陸海空幕僚長が持っております編成権、調達権、あるいは補給等のことにつきまして、統合運用をしていく場合にも、やはり必要な協力を仰がなきゃいけないケースがあるわけでございます。

 補給あるいは編成、調達につきましては、もちろん統幕長じゃなくて各幕長がその権限を持っているわけであります。しかしながら、協力関係というのが非常に大事になってきますから、今御指摘の自衛隊法九条の二というのを新設いたしました。それによりまして、統合幕僚長が部隊運用について、ついてというよりも付随してと言った方が正確だと思いますが、付随して必要となる調達、補給等に関し必要な措置を各幕長にとらせることができる、このような規定を設けているところでございます。したがって、運用は一元的に統幕長、運用に付随的に必要なことは協力をお願いする、こういうことが柱になっております。

 そういうことで、陸海空幕僚長も、それぞれの所掌に従って、一丸となって職務を統合幕僚長を支えてやっていく、こういう体制でございます。そういうことでございますので、私は、自衛隊法第九条の二の新設によりまして、自衛隊の運用に関する長官の円滑な指揮命令というのが行える、このように思っておるところでございます。

岩屋委員 長官の説明を聞いておりますと、先ほど、今までの統合のあり方、つまり全員の合意を前提として、統幕議長というのはあくまでも議長としての役割を果たすというやり方では、実際の運用ではリーダーシップというか迅速性が発揮されないのではないか、これは御指摘のとおりだと思うんですね。でも、だったら、今の統幕のあり方を改める、つまり統幕議長の権限、権能を強化するという選択肢も私はあり得たのではないかなという気もするわけです。

 米軍の場合は、議長以外の統合参謀本部構成員は、議長の行う大統領等に対する助言に対し不同意または修正意見を提出することができると。そして、議長は適当と認める場合に統合参謀本部の他の構成員と協議をするということ等が書かれておりまして、つまり、やはり統参議長というのは非常に強い権限を米軍の場合は有している。

 今までの合意制みたいなあり方ではなくて、しからば、現在の統合幕僚会議の強化を行う、そういう選択肢もあり得たのではないか。つまり、運用に関して統幕議長の指揮命令の執行権限を強化するといいますか、そういうやり方もあったのではないかなと思いますが、そういう方法を選択しなかったというのは、どういうわけなんでしょうか。

大野国務大臣 岩屋委員のおっしゃるような、合議体を改善していく、強化していく、合議体が迅速に意思決定をできるようなことは考えられなかったか、私はそれも一つの考え方だと思います。この点は随分といろいろ議論をさせていただきました。

 もしそういう合議体ということになりますと、一つ一つの案件について会議をやっていかなきゃいけない、会議の開催頻度が本当に高くなってくる、こういう問題が一つあろうかと思います。それから、合議体でありますと、やはり相手側の立場やいろいろなことを考えるという問題が出てくる、そうすると意思決定が鈍ってくる可能性があるのかな、こういう問題もあろうかなと思います。このようなことで、本当に各幕僚長の意向を尊重して、こうだな、ああだなという議論が出てくると、やはり意思決定が速やかに行われない可能性が高くなってくるのではないか、こういうふうな問題点があろうかと思います。

 そういうことで、事前の調整や会議の実施そのものに時間を要する、こういう観点から、やはり今の新しい安全保障環境の中で、意思決定を迅速に、そして国民の生命財産を預かる防衛庁でありますから、自衛隊でありますから、効果的な運用をやっていきたい、こういうことで、今回の方法をとらせていただいた次第でございます。

岩屋委員 すっきりするという意味では非常によくわかるんですけれども、すっきりし過ぎていて、どうも、三幕のユニホームのトップが、統幕長のもとにいよいよとなったときにいないということが本当に適当なあり方なのかどうかということについては、もうちょっと私は議論を詰めてみる必要があるのではないかなというふうに感じております。

 時間がなくなりましたので、申しわけありません、あと一点お伺いしたいと思いますが、いずれにしても、統合をやるということになりますと、統合幕僚監部、長はもちろんでございますけれども、そこで任務を行う人材というのは、やはり自分の軍種のみならず、陸海空すべてにある意味では通じておらなければならないということだろうと思います。きょうはBMD以外ということでございますが、BMDなんというのは、運用の面ではもう完全に統合ということだろうと思うんですね。したがって、どういうふうに教育あるいは訓練をしていくのかということが非常に私は大事になってくると思います。

 米軍の場合は、将官への昇任に際して統合教育及び統合勤務職経験を必須化している。このぐらいのことをやっていないと、いよいよ統合幕僚監部になったとき、あるいは統幕長になったとき、自分の所属の部隊のことしかよくわからぬというようなことでは指揮がとれない、こういうことになりますが、この点についてはどういうふうに考えておられるのか、教育訓練、また決まりとして統合経験というのを必須化するというつもりがあるのかどうか、この点について最後に聞かせてください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 統合運用に関します指揮あるいは教育という関係につきましては、これまでもある程度は、当然統幕会議等ございましたので、実際にやっておりました。各幹部学校あるいは各課程でやっておりましたが、これからはそれがさらに必要になるということでございますので、その中身等につきましては、現在どういう形でやるかということを検討中ではございますが、これからいよいよ、そういう幹部については、そういう統合運用についての教育あるいは技能、そういうものが非常に重要視されるということで、今カリキュラムを検討しつつあるところでございます。

 それから、先生今御指摘の、あるポストを必須とするべきかということ、これは人事の関係でございますが、これについては、功罪いろいろあろうかと思います。これからは、これを一つの課題、検討項目として現在も検討しておりますが、まだやるともやらないとも決まっておりませんが、これも一応検討課題の中に入れて検討していきたい、こういうふうに思っております。

岩屋委員 きょうは時間厳守ですのでこれで終わらせていただきますが、引き続き、この統合については野党の先生方の御意見も拝しながら議論を続けていきたいと思います。

 やるかやらないかわからないんじゃなくて、絶対やらなきゃいかぬですよね、これは。お願いをしておきたいと思います。

 終わります。

小林委員長 次に、本多平直君。

本多委員 民主党の本多平直です。

 私、質問に入ります前に、やはりきのう起こりました航空自衛隊の救難捜索機で四名の方が亡くなられた事故について、簡単に触れたいと思います。

 まずは、お亡くなりになられた隊員の方々に心から御冥福と、遺族の皆様にお悔やみを申し上げたいと思います。

 当然、まだ起こったばかりですからわからないことも多いと思うんですが、長官として今のところで委員会に御報告できることを御報告いただければと思いますが、いかがでしょうか。

大野国務大臣 昨日、事故が起こったという第一報に接しました際に、まず人命救助を徹底的にやってほしい、こういうことを申し上げました。残念ながら、四人亡くなったわけでございます。この事故というのは、やはり人為的な事故なのか、あるいはハード面の事故なのか、そして両面なのか、この辺は徹底的に究明するように指示をいたしております。

 まだ事故原因はわかっておりません。本格的にきょうからやりますけれども、まず、ハードの面について申し上げたい。

 航空自衛隊は、MU2でございますけれども、昭和四十二年度から取得いたしております。このMU2というのは、御存じのとおり、三菱重工が一九六〇年代に開発いたしたものでございます。今回の事故機は昭和六十二年度に取得いたしておりますから、そろそろ二十年近い、まだ二十年にはなっておりませんけれども、十八年ちょっとになりましょうか、こういう問題があろうと思います。そういう問題も含めて、徹底的にハード面を検討したいと思っています。

 操縦面、人為的な問題でございますが、これも徹底的に究明していきたいと思いますが、現在申し上げられることはありません。

 したがいまして、当面はMU2の運航というのは見合わせていこうと思っております。

本多委員 大変古い飛行機であるということを長官からもいただきました。二十年使われてきた、そして、そもそもつくられたのは四十年ほど前の飛行機であるということで、これは新聞報道なんですが、新潟の部隊の方では早く買いかえてくれという要求が出ていたそうでございます。その辺は、事実関係をまだつかまれていないでしょうか。

大野国務大臣 この問題、きちっと事実関係を把握するようにいたします。

 ただ、機体整備は毎日毎日きちっといたしておった、このような報告を受けております。

本多委員 もちろん、今回の事故の原因と古さが関係あるかどうかということはわかりませんし、予断なくきちんと調べていただきたいと思いますが、しかし、新潟の部隊がそういう要求をしていたかどうかということは、きちんと調査の範囲に入れていただきたいと思います。私も、今後きちんと聞いていきたいと思いますし、四名の方が亡くなったことですから、きちんとお願いをしたいと思います。

 それで、法案の方の御質問に行きます。

 統合運用なんですけれども、私も、役所の縦割りで、本当に国会議員として質問をしていると大変つらい思いをすることが多い。ましてや自衛隊という組織が三自衛隊に分かれていて、そこで連携がおかしいというようなことがあってはそれは大変困るなということで、統合運用の話はいいことだなと思っておりました。

 それで、あえて過去のことを振り返らせていただきたいんですけれども、これは石破先生が、前長官が書かれた本を私は何度も附せんをたくさんつけながら読ませていただいておりまして、石破長官の統合運用が必要だという例が三つ書いてあるんですね。

 これは、読むと本当に恐ろしくなっちゃうようなことが書いてありまして、議事録に残したいので読ませていただきますと、九九年、「北朝鮮の工作船が来た時、海上自衛隊のイージス艦が舞鶴から出ました。航空自衛隊もF-15を飛ばしました。しかし、両隊の間では、なんの連携もなかったといいます。」これは本当だったら、何なんだということなんですね。仲の悪い役所同士もこんなことは余りない。

 それから、「もしゲリラが上陸したら、陸上自衛隊が出ます。しかしそれだけでは足らず、航空自衛隊が新しく装備する精密誘導爆弾などが必要になったとしても、今までは、陸上自衛隊が航空自衛隊に対してお願いするルートを全く持っていませんでした。無線も通じないのです。それぞれが勝手にやっているわけです。」

 もう一点、石破先生は例を出されています。「あるいは、陸上自衛隊は、地対艦ミサイル連隊というのを持っていますが、それを使い、宇都宮の駐屯地から東京湾に現れた船を沈めるとします。しかし水平線の向こうにいる船というのは、地球は丸いので、陸上自衛隊のレーダーでは見えません。その場合、海上自衛隊がP-3C哨戒機を飛ばして、船の位置を陸上自衛隊に伝えるシステムが必要になるのですが、それが整備されていないのです。」

 つい先日まで長官をされていた石破先生がつい最近の著書でこういうふうに指摘をされているんですが、法案が通っていないわけですから、今こういう現状なんでしょうか、ぜひお答えをいただきたい。

大野国務大臣 石破前長官の御本でございます。まあまあポイントは、そういう点が多々あるのではないか。特に私は、通信とか情報面において、ばらばらなシステムを使っている、もちろん連携はとれるようにはなっておりますけれども、やはりハードが違う、こういう点は反省をしていかなきゃいけないんじゃないか。

 本多委員おっしゃいましたとおり、これから本当に、先ほど岩屋委員がおっしゃいましたように、弾道ミサイルなんというのは空自と海自でやらなきゃいけないんですね。それから、ゲリラなんかにつきましても主に陸自と海自でやっていく。島嶼部の侵攻はもうすべて三自衛隊でやっていかなきゃいけない、こういう時代を迎えておりますから、この点は十分検討して、直すべきは直していきたい、このように思っています。

本多委員 石破先生がいらっしゃって発言できない場でこういうことをするのはいいのかどうかわからないんですが、石破先生も世論喚起の面で書かれた面もあると思いますし、少しでも直っていることにこしたことはないと思いますので、万が一この法案が通らなくても、今の体制のもとでもこういうことがあってはいけないと思いますので、そこはしっかりと直していっていただきたい。そういった観点からも、私は統合運用はいいことだなと思いました。頭はミサイル防衛の方にばかり行っていたんですけれども。

 しかし、今自民党の岩屋先生からの議論を聞いておりましても、せっかく出していただくのだったら、もうちょっと与党としても自信を持って出していただきたかったな。つまり、私たちの大石委員の質問にもありましたとおり、私も、考えれば考えるほどこの統合は中途半端だなという気がいたしておるんです。アメリカの例とかいろいろあるんでしょうけれども、海外の例をいろいろ防衛庁の方に伺っても、アメリカの例ぐらいしか調べていないような部分もあるようなんですが、私は軍事の専門家じゃないですが、運用のみを統合するというのはなぜなんですか。

大野国務大臣 安全保障環境がどんどん変わっていっている。それは今までのように、例えば航空戦だけでやる、海上戦だけでやる、あるいは戦車だけでやる、こういう場面が大変少なくなってきて、今申し上げましたように、いろいろな面で統合をしていかなきゃいけない場面が想定されるわけであります。いわばゲリラからミサイルまで、よく言われますけれども、そういうことに対してやはり対抗していかなきゃいけない、これは運用の問題であります。しかも、抑止力だけの時代じゃなくて、展開力、機動力、実効的な運用をやっていかなきゃいけない。そうすれば、判断を迅速に、そして効果的に展開していかなきゃいけない、こういう問題が出てくるわけでございます。

 そういう意味で、運用は一本にまとめましょう、ただし、その他の例えば補給、訓練等の問題は今までどおり各幕にお願いする、こういうことでございます。

本多委員 運用の統合が必要なことはよくわかっていまして、それ以外が各幕に残った理由は何なんでしょうかと。

大野国務大臣 各幕に残した理由、逆に考えますと、それをすべて統合幕僚長がやるとなると大変な仕事になるわけでありますね。これは、教育から編成から補給から、何から何までということになると、もう統合幕僚長は大変な仕事になる。やはり私は、日本の防衛のために一点に絞って運用、何か起こったらすぐ判断して展開する、こういう多機能弾力的な防衛力を備えた国でなければ安心できない。

 そういう意味で、ほかの仕事はこれまでどおり各幕にお願いする、そして、その間で、先ほども議論いたしましたけれども、新しい自衛隊法九条の二のように、連携するところは連携していこう、こういう考え方でございます。

本多委員 そのお答えでは余り納得できません。

 なぜかといいますと、大野長官自体がすべてをやられているわけです。運用も防衛庁長官の指揮なんです。そして、予算や訓練や教育も大野長官の範囲なんです。ですから、それを補佐する統合幕僚長にすべての人事や予算という権限、海とか陸それぞれの権限を集めることをしなかった理由は何があるんですか。

大野国務大臣 今、長官の例をお引きになりました。長官は、幸せなことに、運用については統幕長の補佐を受けます。その他については三幕長の補佐を受けます。それから、その他、政策的、一般的なことについては内局で各担当の局長の補佐を受けるわけであります。

 したがいまして、そういう意味でいいますと、第一に、先ほど申し上げましたように、それだけのことを全部一本に絞ってしまう、これは大変なことである。これが第一点。

 それから第二点は、具体的に申し上げますと、運用以外の分野、特に人事とか予算とか、これを一本化すると大変な大仕事になる。自衛隊の運用に支障があってはならない。この一点をお考えいただきたいと思うのであります。

 そういう意味で、いろいろな観点から考えまして、訓練もそうでありますし、それからその他、いろいろな意味で、スケールメリットのことも頭におありなんだろうと思いますけれども、それは調達とか何かの面で効率化を図るべきところは調整しながら三幕で図っていく、こういうことはやります。

 しかしながら、ポイントは、逆に説明するものですからおわかりにくいところがあるかもしれません。運用を一本に絞って日本の皆様に安心と安全をお届けする、それは運用でございます。その他、補給、訓練、教育、いろいろな問題がありますけれども、人事も予算もありますけれども、それは各幕にお願いしてやっていく、そういうことでございます。

本多委員 余り理解ができないんですね。なぜこういうことを言っているかというと、別にスケールメリットの話は後でします。

 人間が組織で言うことを聞くときというのは、長官も十分御存じのように、人事を握られている、あの人に昇進を見られている、予算の権限を握られているというのはすごく大きな権限なわけですね。これは政治の世界ではよくおわかりのことだと思います。その権限を持っている人と、いざ出動というときに命令をする人が違うわけですね。例えば海上自衛隊だったら、出動のときは統幕長から指令が来る。長官からですけれどもね、実質的には。そして、日ごろの予算やそういうものはこちらで握られている。このことが分かれているということは、もうちょっとうまく答弁していただくと理解ができるのかもしれない。ちょっと私は、今のところ、わかりにくいところがある。

 それともう一つ、逆から言えば、例えば私がずっと海上自衛隊で頑張っていて、海幕長になった、海上自衛隊で最高の地位になった。そのときに、海上自衛隊が出動するというときに、日ごろの予算とかそういう話では権限があっても、出動のときに権限がない。これは大石委員も指摘をされました。

 これは、自衛隊というのは、ある意味士気でもっているような組織だと思うんですね。昇進をすることによって名誉と権限を持っていきたいという人たちの組織にとって、統合が必要だということは、だから両面、僕は今矛盾していることを言っているかもしれないんですが、こちら側から見てもどうも中途半端、こういうふうにすると。

 逆に、これは海外の例でなくて、こういうのは軍事の常識からいったら違うのかもしれないけれども、完全にラインに置いて統幕長の下に入れているわけじゃないんですね。運用のラインじゃないんですね、各幕長は。そういうふうにもなっていない。これはどう思われますか。

大野国務大臣 人事、予算というのが大変大きな力を持っているんじゃないか、そういうことを忘れているのではないか、こういう御指摘でございます。

 ある観点からはそういうことも言えようかと思いますけれども、やはりこの問題、全体を見渡せる統幕長が見て運用しているわけでございます。人事とかそういう問題のときに、そういう問題をどういうふうに評価するかという問題も出てこようかと思います。そういうことから、人事だけで物事を判断していいのかな、私はそのように思います。

 やはり、教育訓練を立派に受けた者が、そして、いろいろな面で補給とか調達とかそういうことにすぐれた人が、その属している幕僚長によって認められる、当然のことではないでしょうか。運用というのは、そういつもあることではありません。これはあってほしくないことであります。しかしながら、あった場合には効果的にやっていく、こういうことであります。

 そういう意味で、ふだんの実績なり、ふだんの行いがやはり人事面でも出てくる、こういう組織ではないでしょうか。そしてまた、全体的にも、運用の面でこういう働きをしているということは各幕長もきちっと見ていく、それがまた隊員の諸君の励みになっていくことではないか、私はこのように思っております。

本多委員 この法案がもし通ってしまったらそうやってください、それは。こういう中途半端なものをつくった以上、それをしっかりいい方向に運用していただかないと困りますけれども、せっかくこれだけの大改革をやるときに、両面からですよ、どうも中途半端な面があるなという問題点を指摘させていただきたいと思います。

 そして、もうちょっと細かくいくと、では運用は完全に統合しているのかというと、どうも細かく三自衛隊に訓練に関する運用とかが残っているんですね。では、人事と予算は三自衛隊でやる、運用は統合でやるというのなら、これは残さないという統合はなかったんですか。

大野国務大臣 実際に統合運用するんだから、訓練もやはり統合訓練を行え、こういう御趣旨、御質問だと思いますけれども、部隊運用と訓練の関係でございます。

 訓練は、自衛隊を最も効率的に運用するために訓練を行う、これは当然のことであります。そういう意味で、統合訓練もまた必要になってくるものと思います。統合訓練につきましては、新たな統合運用体制において、当然のことではございますけれども、統合運用のための訓練の重要性は一層高まってくるものと思います。

 したがって、その辺は統合幕僚長がその責任を有することになるわけでございますけれども、各自衛隊が連携して対処するための新たな統合演習、これは今後大いに実施していかなきゃいけないし、統合幕僚監部が所掌することとなる訓練、このことにつきましても、きちっとした計画をつくって、充実をしていかなきゃいけない。したがいまして、訓練というのは、統合的にやるということも考えているわけであります。その点は両面あるということを御理解いただきたいと思います。

本多委員 だから、両面あるものを分けているんですよね、皆さんの法案は。だから、両面あるなら全部ラインにして、海幕長とか陸幕長を統幕長の下に置いて、統合でやる訓練は訓練、統合でやる人事もあるわけですよね、統合でとらなきゃいけない予算もあるはずですよね。それをやって、陸だけでやる訓練というものもあるかもしれない、陸だけで出動することで済む場合もある。そういうときは、形式的には統幕長が命令を出して、陸幕長が運用にも携わる、そういう仕組みもつくれたんじゃないかなと私は思いますので、ぜひ、もうちょっと議論する機会があるのかどうかわかりませんけれども、少なくとも与党の皆さんには自信を持って説得をしていただくような、大臣からも答弁をいただきたかったなという気が私はします。ちょっと、両面から中途半端であるという御指摘をさせていただきたいと思います。

 それで、私、もう一個、ここはちゃんと統合してくれという部分がございまして、装備品の調達なんですね。こんなものは、希望を上げるのは陸海空から上げてもいいんですが、微妙に張り合ったりなんなりして、例えば、実態はよくわかりませんけれども、紙とか事務用品とか、どこの自衛隊で使っても同じようなものを三つに分けて買うより、同じところから買った方が安くなるとかという話があるんですよね。これが三つに分かれている。

 そういう事務用品だったらまだいいんですが、ヘリコプターみたいなものを、陸のUH60というのと海のSH60というのが微妙に仕様が違って、どうも陸のUH60というのは羽根を折り畳めない、海のSH60というのは船に積み込むときのために羽根を折り畳めるらしいんですね。こういう細かい違いを勝手につけてやっているせいで、陸の分をばらばらに調達しているせいで、陸のものを急に海に積み込むときに、羽根を折るために、海外へ行くのが何日かおくれたという例があるそうなんですが、これは御存じですか。

大野国務大臣 御質問は、ヘリコプターの問題ですか。(本多委員「はい」と呼ぶ)

 この問題は、例えば、インドネシアへ国際救援活動に参りました。そのときに、御存じのとおり、陸自の多用途ヘリUH60ブラックホークでございます、これを二機と、輸送ヘリCH47三機でございます、これを海上自衛隊の輸送艦「くにさき」で現地まで輸送しよう、こういうことになったわけでありますが、恐らくこのことをおっしゃっているのだと思います。海自ヘリSH60というのは護衛艦において運用することを想定しておりますけれども、陸自の多用途ヘリUH60の方は陸上において運用することを想定しておりますから、ここに問題があった、こういうことであります。

 UH60は、ローターブレード、羽根の部分ですね、これが折り畳めないということでございます。しかしながら、割合簡単に取り外すことができるということで、ローターブレードを取り外して運ぶ、この取り外すということがありました。

 それから、CH47の方でございますが、これは陸上自衛隊輸送ヘリでございますが、機体の寸法を見ますと、輸送艦のエレベーターに入らない、こういう問題があるわけでございます。そこで、航海中に潮を浴びて大変なことになったらいけない、こういうことで、ローターブレードを取り外した上で、海上輸送カバーで覆って運んだ、こういうようなことがありました。

本多委員 細かい事情を聞いているんじゃなくて、私もわかって聞いているので、こういうことも起こるし、まとめて買った方が安いとか、あと、ばらばらに買わない方が後でこういう細かい違いが出ないから、調達は統合運用に入れたらいかがだったんですか、なぜ入れなかったんですか、これを短くお答えください、情報本部のことも聞きたいので。

大野国務大臣 全く御指摘のとおりでございます。これはやはり、いろいろな、物品によって違いますよ、それは。例えば、先ほど先生おっしゃった文房具とかそういうものは、やはりスケールメリット、調達を一本にしてやったら、そういう事務に携わる人も少なくなっていく、当然のことであります。それから、機体によっては、大きなヘリコプターとかなんとかいうことになりますと、陸で使うもの、海で使うもの、どういう特性があるのか、こういうことを検討しながらやっていかなきゃいけない。

 しかし、私が今指示しておりますのは、やはり調達コストは下げていこう、こういう面から考えて検討してくれ、こういうことを言っております。全く、そういう調達の効率化、真剣に考えていかなきゃいけないことであります。

本多委員 効率化はどんな制度のもとでも当然で、私たちもそれをしっかりお願いしたいんですけれども、せっかくの制度運用のときにそれが抜けているというのはどうかという御指摘をさせていただいておきます。

 さて、情報本部を長官直轄にするということも今回の法案の一つの目玉であると思っておりますけれども、こちらにも実は、残念なことに、情報本部というのは、各自衛隊にばらばらにあった情報の部門を集めて情報本部をつくって、幾つかの成果も上げてきていると伺っております。私はそのことは評価をしたいと思うんですけれども、今回、改めて長官直轄にするというこの改革のときにおいても、まだ各自衛隊にも、調査部とか調査課とか情報部みたいなものが細かく残っているようなんですね。これをまとめない理由は何なんですか。

大野国務大臣 今回、長官直轄の情報本部をつくりました。しかしながら、なおかつ、各自衛隊にこの調査系統の問題が残っている。

 これはやはり、各自衛隊が現場レベルで、例えば、レーダーサイト、航空機や艦船等による警戒監視の情報が入る、あるいは情報収集活動でやる、ヒューミントの問題もありましょう、実際に情報を収集して、各自衛隊で使う情報というものがあるわけでございます。したがいまして、各部隊に提供する情報等は、中央情報本部とは別に必要なケースもある、このことは御理解いただきたいと思います。

 したがいまして、中央で集める情報、それから、それと同様に、各自衛隊が特殊専門的に持っている情報、こういうことを御理解いただきたいと思います。

本多委員 まあ、余り御理解できないんですが、また追及をしていきたいと思います。

 それから、この情報本部というところでは、電波部というのがかなり重要な役目を果たしていると思うんですが、この電波部の部長というのがずっと警察からの出向だという話があるんですね。なぜですか。

大野国務大臣 情報本部電波部、その前身である陸幕調査別室等は、大規模な情報組織であります。したがいまして、電波部長や調査別室長には、一定の情報業務に精通した者、経験のある者、すぐれた指揮運用能力や行政手腕が求められるわけであります。

 歴代の調査別室長や電波部長というのは、このような資質を有する適任者としてその職に充てられたわけでありまして、警察出身だから任命したというわけではありません。

本多委員 きょうは時間厳守ということなので、少し質問を積み残したんですけれども、統合運用の話とか情報本部のあり方については、別にこの法案が通ろうと通るまいと、今後もこの安全保障委員会の重大なテーマだと思いますので、質問をしていきたいと思います。

 今の件ですけれども、警察にたまたまそういう適任者がいたということですが、しっかり警察は警察で情報活動しているわけですから、防衛庁でせっかくこの情報本部を持っている以上、ぜひ防衛庁の方がそこのトップにつけるような人材育成を早急にしていただきたいと思います。

 以上御指摘をして、私の質問を終わります。

小林委員長 次に、中野譲君。

中野(譲)委員 民主党の中野譲でございます。

 運用の統合については、前回の我が党の大石委員、そしてきょうの岩屋委員と本多委員。私自身もいろいろと疑問点はあるんですが、長い時間をとって、もう一度これはじっくり考えるべきじゃないのかなという気が私もしております。

 言うまでもなく、防衛そして安保、外交という問題は、これはやはり日本の国のためにどうするかという一点に絞って、与野党関係なく、そして官僚と政治が対立することなく、どこまで積み上げてしっかりと国益のために仕事ができるかということだと思うんです。その点で、私は、最近二点気になることがありまして、それをきょうは逢沢副大臣を中心にちょっとお尋ねしたいと思います。私が大変尊敬をさせていただいています政治家でございますので、ぜひとも誠意ある答弁をよろしくお願いしたいと思います。

 一つ目は中国の問題なんですね。

 御案内のとおり、今中国でデモが起こって大使館等があのような被害を受けている中で、町村大臣が今非常に強い姿勢で臨むということは、私は、それはそれで、そういうやり方もあるのかなという気がするんですが、正直言いまして、最初からボタンのかけ違いを始めているのではないのかなという気がしております。

 というのは、まずちょっと逢沢副大臣にお聞きをしたいんですが、例えば日本国にもいろいろな大使館があって、当然中国大使館もあって、そういう大使館をきっちり守るというのは、もう副大臣御存じのとおり、ウィーン条約の二十二条で決められていることだと思うんですよね。そのウィーン条約二十二条に今中国は明らかに国際法上違反をしているというふうな認識をお持ちかどうかということをまずお聞きしたいと思います。

逢沢副大臣 中国の反日活動について御質問いただいたわけでありますが、御承知のように、国際法、ウィーン条約におきまして、接受国は、当該国におきます在外公館と外国資産の安全管理、それをきちんと責任を持ってやるということは定められているわけでございます。

 そういうことを認識いたしますときに、先般、週末に、中国の首都北京におきまして、我が国の大使館また大使公邸が、一部のデモ隊によって、主に投石によって破損をした。さまざまな映像を見て判断をする限りにおきましては、中国側の説明によれば、警察官等々安全確保のための体制は整えた、こういう説明を聞いているわけでございますが、映像を見て判断をする限り、あるいは種々の情報を耳にする限りにおきましては、投石等いわゆる暴力行為、破壊活動が必ずしも適切に排除されなかったということはかなりの程度明確ではなかろうか、そのように判断をいたしております。

 したがいまして、そういう認識、判断に立つといたしますと、これは明らかに国際法、ウィーン条約に抵触するという判断に立たざるを得ない、そのように承知をいたしております。

中野(譲)委員 九日、事務次官から、そして十日には町村大臣の方から中国政府に対して、また、同じ九日でしたか、九日、阿南大使の方からもいろいろな申し入れをしているわけですが、そのときに、このウィーン条約についての、これは当然常識で考えれば、ウィーン条約があるわけですから、まさかあんなことは起こらないよなということが実際には起こっているわけですね。

 今副大臣がおっしゃるとおり、どうやら抵触をしているようだと。それで、事務次官にしても、大使にしても、町村外相にしても、会談等、面談、電話でのやりとりの中で、このウィーン条約の件をどのように考えているのかということを先方に対してお話はされているのでしょうか。

逢沢副大臣 あってはならないことが残念ながら起こったわけでありますが、これに対しまして、十日、日曜日でございますけれども、町村外務大臣が王毅在京中国大使を外務省、我が省に招致いたしまして、そして、二日及び三日に成都及びシンセン等で起きた一連の破壊活動も含め、当然その前日の北京の破壊活動のことが中心的テーマであったわけでありますけれども、抗議を行ったわけでございます。

 御承知のように、中国側に対しまして、町村大臣は明確に謝罪、損害の賠償を求め、そして、今後、在留邦人、日本企業及び日本大使館等の保護のために再発の防止について万全を期してほしいということを強く要請いたしたところであります。

 その場でウィーン条約云々について言及をされたかどうか、私、海外に出張いたしておりまして、同席をいたしておりません。もし必要であればそのことについても確認をさせていただきたいとは思いますが、中野先生御指摘のように、このような破壊暴力活動は国際法、ウィーン条約に当然抵触をする、そういう認識のもとに、大臣は王毅大使に強く謝罪、賠償を申し入れ、そして再発の防止についても言及をされたというふうに理解をいたしております。

中野(譲)委員 繰り返しになって恐縮なんですが、当然起こらないことが起こるんですよね、中国で。なぜ当然起こらないのかといえば、それは国際法上、ウィーン条約があって、そんなことが起こることはあり得ない、私たちはそういう認識でいるんですね。ただ、ではそのウィーン条約自体を中国政府はどのように考えているんだということを日本政府からあえて問いかけているのかということは、私は一つ問題だと思うんですよ。

 そのときに、私も外務省から一枚のぺら紙をいただきましたけれども、町村大臣が陳謝、損害の賠償を求めるとともに云々ということを書いてありますけれども、それは当たり前のことなんです。ただ、あなた方はウィーン条約に署名をしている国としてウィーン条約自体をどう考えているんですかということを、一つきっちりと中国側の立場というものを伺わないと、再発防止に努めるとか今後起こらないようにするといったって、ウィーン条約はきっちり守ります、大切なものですというふうな念書を一つとれば、当然こういうくだらないようなことは起こらないと私は認識をしているんですね。

 これは、副大臣自体が、町村大臣本人ではないし、どういうふうな経過があるというのを御存じないようですけれども、齋木審議官はこのあたりというのは御存じでいらっしゃいますか。もし御存じであれば、ちょっと、ウィーン条約に関してそういうようなメンションがあったのかどうか等含めて、おわかりにならなければ結構でございますけれども。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 今し方、逢沢副大臣から御答弁申し上げましたように、あってはならないことが起きたということで、当然これは、デモによって生じた損害の賠償を含め、また陳謝の要求も含めて、事務次官、それから外務大臣からそれぞれに対して強い申し入れをしたわけでございますけれども、それを受けて、さらに、念のためにということで、文書によってこの申し入れをした方がいいという判断をいたしましたものですから、十二日でございますけれども、中国にある日本大使館から中国外務省外交部に対しまして、口上書という形できっちりと改めてこの辺のところを申し入れております。

 そして、その中で、「外交関係に関するウィーン条約の関連規定等を踏まえ、大使館等に生じた相当の被害について、損害の賠償を求める。」という言い方でボールを投げておりますので、我々としてはそれに対するきっちりした回答を求めている、こういうことでございます。

中野(譲)委員 そうしますと、これは我が国のメンツにかかわる部分でございますので、ぜひとも政府一丸となって、しっかりとした向こうからの対応をいただきたいということでございます。

 ただ、私、ちょっと気になるのが、九日に谷内事務次官が程公使と電話でお話をしたということなんですね。

 それで、きのう、私もこの件についていきさつをいろいろ伺ったんですけれども、聞けば聞くほど、外務省でも若い方がレクにいらっしゃるものですから、やはり答えられないような顔をされて、非常に私も何か心痛む部分もあるんです。というのは、その説明の中で、王毅大使はちょうど移動中で東京にいなかったので、王毅大使をつかまえることはできなかった。そのかわりとして、程公使をかわりにつかまえるんだけれども、しかし、何で電話なのかということをお伺いしたんですよ。

 それで、普通であれば、きっちりとお呼びをして、やはり目と目を突き合わせて、こういう重要な問題については対応するのが、私、常ではないのかなという気がするんですが、その辺のところを、今、齋木審議官の方から多分逢沢副大臣の方にお話が行ったと思いますので、どのようなコメントをされるのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。

逢沢副大臣 中野先生御指摘のように、谷内次官が在京中国大使館の程永華公使に対して、電話で申し入れをいたしたわけであります。

 当然、最高責任者でいらっしゃる王毅大使に直接言及すべきということでありますが、たまたまそのときには、王毅大使は国内出張で在京の大使館には不在であった。したがって、程永華公使がナンバーツーでございますが、公使に谷内次官から申し入れた、そういう経緯があったと承知をいたしております。

中野(譲)委員 それはいいんです。

 私がお聞きをしたいのは、なぜ事務次官のところに公使をお呼びしないで、電話でこういう大切なものを、電話でその再発防止、日本人の安全をどうのこうのということを、これを電話でなぜやるのかということ自体が私はちょっと理解できないんですよ。

逢沢副大臣 結果的に電話を使うことになった理由を申し上げておかなくてはなりません。

 御承知のように、あの日午前中に大使館からかなり離れたいわゆる中関村で集会が行われました。その場で日章旗が焼かれる、焼却をされる、そういうゆゆしきことがあった。それに対しては、北京の我が方の大使館から中国外交部に対しまして、大変遺憾な行為が行われた、あるいは行われている、そういうことについて強く抗議をいたしたわけであります。

 その後、いわゆるデモ行進といいますか、日本大使館に対して、その集会がデモ化をいたしまして、数時間かけて日本大使館の方にやってきた。そして、当初、大使館の前でさまざまなシュプレヒコール等々が行われたわけでありますけれども、その後、大変遺憾なことに、投石等の破壊、暴力行為といいますか、活動がスタートをした。

 そういう緊急の事態を受けて、谷内次官が程永華公使に、緊急事態でございますので、呼んでいるそういう時間的な余裕はない、したがって、電話をかけて緊急な申し入れをいたしたわけでございます。

 そういう一連の経緯があったことを御報告申し上げておきたいと存じます。

中野(譲)委員 きのうそういったことを、私も別に隠し球を持つ気がありませんので、レクの間にはいろいろとこちらも腹を割って話をするわけですよ。話をすればするほど、要は、やらなかったことに対してのアリバイづくりを必ず外務省はするんですよ。そういう細かいことは大臣、副大臣御存じないからそういうふうにお読みになりますけれども、その辺のところは、外務省は直るのか直らないのかと私は非常に危惧をしているわけでございます。

 これは外務省のホームページで、一つは、阿南中国大使から喬副部長に申し入れをしたということについて、抜粋をしますと、要は「破壊されるという事態に至っている。」そういう「被害が生じたこと」なんですよね。それに対して、喬副部長は「行動を行った」「容認できることではなく、」「お見舞いと遺憾の意を表明する。」ということ。もう一つ、これは同じですね、事務次官から程さんの方にも、「同日」これは九日ですね、「北京市において生じた」なんですよ。それで「破損されるという事態に至っている。」と。それで「被害が生じたことは」というふうに、これは基本的に過去形なんですね。

 先ほどの喬さんのお話でも、要は、これは申し入れる時間がないというふうにおっしゃるんですけれども、これは時間的に合っていないと思うんですよね。あと、新聞等の報道でも、そういうものが起こった後に申し入れをしているというふうな報道になっているんですね。

 緊急事態だ緊急事態だ、それでつかまらないから電話でやったというふうなアリバイづくりをするというのは、これは本当に外務省はそういうところを直すべきだと私は思いますよ。そういうことが起こってある程度鎮静化をしたから、そのときに向こうに公式に、こういうことはおかしいじゃないか、日本政府としてはこういうことは断じて許すことはできませんよというふうに、そこでお話をしているわけですから、それはタイミングの段階があるわけですよ。それを、大臣にそういうような答弁をさせるということ自体が、外務省は本当に非常に問題な、これは外務省改革をぜひともしていただきたいと私は思います。

 この問題はああだこうだとまたやってもしようがないので、次に進みたいと思いますけれども、私は、谷内次官がまず電話でやったということ自体が大失敗と思っているんですよ。来れないのかということの一言も、外務省はやっていないわけですよ。どこにいるのか、すぐに来れるのか、五分、十分で来れる場所にいるのか、都内でどこにいるのか確認をして、来れるのであれば来てもらうということの姿勢をきちっと示すということが私はまず大切だと思っております。

 そして、九日に遺憾であるというふうな表現を中国がしているわけでございますが、十日に今度、町村大臣が陳謝、損害の賠償を求めるというわけです。これは、王毅大使、日本語がぺらぺらでございますので、この陳謝という意味をどういうふうにとらえるかということも、やはり外務省としても、もうちょっと言葉の使い方を考えた方がいいと私は思うんですよ。

 前日に中国政府が遺憾の意を表明していて、遺憾と陳謝というのは随分言葉としては違うようでございます。私は日本語も余りうまくないので、中国語はますますあれなんですが、遺憾という言葉は、日本語も中国語も大体同じようなニュアンスであるということを私の同僚議員に教えていただきました。陳謝という言葉自体は中国語にはないらしいんですよ。ただ、陳謝という言葉をあえて中国語にすれば、道の歉と書いてダウチェンと言うらしいんですね。それか、陳謝の謝に絶すると書いてシエジュエと言うらしいんですが。

 これは王毅大使が、前日に中国政府としては遺憾の意を表明しているところに、十日に町村さんが、陳謝しろ、損害をこうむったんだからそれを賠償しろというふうな言い方をストレートにしたら、中国政府がどういう態度をとるかというのは、わかるじゃないですか。その結果として、それは日本政府、日本が昔やってきたことに対して反省がないからああいうことが起こったんだというふうに、それはメンツをつぶされたら今のような状況になるんですよ。だから、その辺のところをもうちょっと、中国というのがどういう国かということを考えて、言葉遣いとか外交のやり方というのを私は考えた方がいいと思うんです。

 これは損害をこうむったものに対して損害の賠償を求めるという話なんですが、昨年、サッカーのときに、中国で公用車がぼこぼこに傷つけられましたよね。あれも損害を求めるという話になっているんですが、これはいまだに損害は補償はされていないわけです。金額は別として、損害を補償するということは、中国が自分の国の非を認めるということですから、そういうことを中国政府がなかなか表立ってやることができない国だということは、これは外交をやっている皆様であったら当然わかっていることだと思うんですよね。

 昨年の七月に、とりあえず車は直さないといけないということで、日本のお金で車を直して、そのお金を中国政府に払ってくださいという話をしていて、まだ今のところ払われていない。そういう車一台の解決もできないところが、今度大使館がぼこぼこにやられたというときに、損害を求めるというふうに直接に公の場でこう言ったときに、向こうがどういう反応になるかということを、これはわかって町村大臣は言っていらっしゃるのかどうか。この辺が私は非常に問題だと思います。

 乗り込むのはいいですよ。じゃ、とことんやるのかどうかというところを、私は、これは外務大臣のこれからのやり方というのを注視していきたいと思うんですが、そのようなやり方自体、副大臣は個人的に政治家としてどのようにお考えになりますでしょうか。

逢沢副大臣 結果的にあれだけの許しがたい暴力行為、破壊活動が起こったわけでありますから、それはあらゆる立場を超えて、やはり国ということからいたしますと、相手に対して求めることは同じということになるのではなかろうかと思います。それは冒頭にも確認をいたしました。国際法、ウィーン条約に、状況からいたしまして明らかにこれは違反をする、抵触をする、そういう認識に立つとすれば、やはり陳謝そして原状回復、原状回復するためには賠償が必要になる。こういうことでありますので、それはきちんと求めるということは国の立場からして当然のことであるというふうに、副大臣という立場からいたしましても、また一政治家という立場からいたしましても、また、あえて申し上げるとすれば、一国民という立場からしても同様な結論になるのではなかろうか、そのように申し上げたいと存じます。

中野(譲)委員 私も副大臣と考えは同じなんです。ただ、その求め方ですよね、やり方が私は誤っていると思うんです。これはこれから数週間、数カ月のうちに結果が出てくることだと思いますけれども、もともと小泉総理が中国とどうも関係がよくなくて国交がなかなか今うまくいっていない状況の中で、今度、外務大臣までもがこういうような手法を使うこと自体が、それは国の権利をきちっと相手国に言うのは当たり前なんですよ、言い方自体が、私は外交のやり方としてはもうちょっと中国を勉強された方がいいのではないかなという気がしているんです。

 もう一点、やはり外交で、カンボジアの件なんです。

 逢沢副大臣はどこまで御存じなのかわかりませんけれども、カンボジアという国は今政党が三つありまして、そのうちの一つのサム・レンシー党という政党がありまして、そこの党首の方を含めて、今三名の方が、二人は今国外にちょっと逃げているんですが、一人は今投獄をされているような状況でございます。背景としましては、要は、日本でいったら、橋本さんが一億円でわいろをもらっていると言った途端に非公開の会議の中で議員の免責特権を剥奪されているという、人権問題としては非常にゆゆしき問題なんです。

 これに対しまして、これは二月の三日に起きたことなんですが、二月の二日に国務省はそういう情報を早目に察知しまして、国務省として、そういうことが行われるのは民主主義の立場からも非常にゆゆしき状況であるから、そういうことはやらないようにということを前日に早々と表明しております。ただ、残念ながら、二月の三日の段階で、カンボジアは三名に対して議員特権等の一時剥奪をして、一人を今投獄してということになってしまいました。

 二月の七日には、国連の人権問題担当の事務総長特別代表が、これはカンボジアの司法の独立等に含めても非常に大きな欠陥がある、人道的にも非常に問題であるという声明を出しておりまして、続きまして、欧州連合、そして欧州議会本会議、欧州議会本会議の場合は、カンボジアに関するこの問題に対する採決で、賛成が七十五、棄権が二で反対ゼロでございます。

 こういうふうに、世界各国としては、人権的にも民主主義的にも非常に大きな問題であるというふうな表明をしているわけでございますが、日本政府は一体どういうアクションを起こしたんですかと私もきのう聞いたんですよ。時間も余りないので、私は答弁をいただく前に大体の背景を申し上げますが、日本政府としては、一つは、在カンボジア大使館への訓令ということで、同大使館より人民党、人民党とフンシンペック党というのが三党のうちの二党でございますけれども、人民党及びフンシンペック党に対し、国際社会の懸念を払拭するため、貴国が民主主義及び議会政治の原則にのっとって解決策を見出すべく努力することを期待していると。この件に関しては、特に何も言っていないわけですよね。

 ちょっと副大臣にお聞きをしたいのが、こういった問題を人権的にまたは民主主義的に見た場合には、どのようにお考えになりますか、このカンボジアで今行われていること自体について。

逢沢副大臣 今、中野先生がお話をなさいましたように、二月三日にカンボジア国民議会において、名誉毀損等の罪で提訴されているサム・ランシー党の党首を含め三名の議員の免責特権の一時停止が採択をされた、そういう事実がございました。日本の立場は国際社会と同様でございまして、大変な懸念をこの事態に対して持っているわけであります。

 したがいまして、今、在カンボジア大使館への訓令のことについてあえて先生の方から御指摘をいただいたわけでございますが、そのことも含めまして、カンボジア政府に対して早期の事態解決を努力するようにという働きかけをいたしているところでありますし、また同様な働きかけをいわゆるサム・ランシー党にもさせていただいている。当事者間の建設的な対応を強く促している。その背景には、国際社会と同様に、カンボジアの政治状況、民主主義の状況に大変な懸念を有しておる、そういうことが背景にあるということも先方には伝えているわけであります。

中野(譲)委員 これも背景を逐一副大臣が御存じないからそういうふうな答弁書をいただいてお読みになるんでしょうけれども、サム・レンシーさん、この間日本に来ておりまして、私もお会いしましていろいろなお話をさせていただきました。

 きょういらっしゃっている齋木審議官の方からサム・レンシーさんにお話をしているのは、貴国において真の民主主義が確立することを期待しており、帰国後に、貴殿が身の安全を保障された上で、議会人として議会での健全な議論を通じてカンボジアの発展のために尽力されることを期待すると。これは何も言っていないんですよ。まず、帰国後にって、帰ったら逮捕されちゃうわけですよ。帰国できないような状況が今あることに対して日本政府はどう考えますかということに対しては、何にもないんですよ、外務省は。そして、身の安全を保障された上でって、身の安全が保障されないから今国外に出ているんですよ、サム・レンシーさんともう一人の方は。

 それに対して、どのように人権的な問題、民主主義の問題から日本政府は考えるんですか、外務省は考えるんですかというときに、これに対して何もないんですよ、外務省は。そういうようなことを、ぜひとも大臣、これは政治主導でしっかりとやっていただきたいと私は思っております。

 先ほどカンボジアの政府に対しても働きかけをしているということでございますが、これは外務省からけさいただいた資料なんですけれども、在カンボジア大使館から一等書記官の方が、チア・シムさん、これは向こうの上院の議長さんなんですが、上院議長の側近に対して民主的に国際社会のそういった懸念も踏まえてやっていただきたいということを言っているというんですが、齋木審議官、側近ってどなたですか。どういうランクにある方か。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘になられた上院の議長の側近というのは、ウム・サリットさんという上院の事務局長をしている方であります。長年、このチア・シムさんという上院議長さんの筆頭の秘書としての機能、役割を果たしておられる重要な人物であるというふうに聞いております。

中野(譲)委員 このウム・サリットさん、事務局長なんですよ。事務局長さんというのは、日本でいえば、衆議院の河野洋平さんがいて、事務総長がいて。相手国政府に対して、相手国政府というのは現状でいくと人民党とフンシンペック党なんですけれども、この政府に対して、各国が国連も含めて申し入れをしている、そしてシアヌーク前国王も申し入れをしている。その中で、側近の事務局長ですよ。事務局長に、しかもこれは文書じゃないんですよ、口頭で、先ほど申し上げたような国際社会も懸念をしているから、その問題に対しては対処してほしいと。これは外交ではないですよ、正直申し上げまして。

 もう一つ、きょうは時間がなくなりましたのでこの辺にしたいんですが、在カンボジア大使館への本省からの訓令は、人民党及びフンシンペック党に対してですよ。日本でいえば、例えば自民党及び民主党に対してというようなものですよ。そのときに、チア・シム上院議員は人民党の党首ですけれども、その側近、事務局長、議員じゃない人に対して、お茶飲みをやっているのか何かわからないけれども、口頭で物を言っている。でも、政党に対して、きちっとしたしかるべき人に言っていないし、フンシンペック党に対してだってこれはやっていないじゃないですか。そうしたら、これは訓令違反じゃないですか、在カンボジア大使館は。人民党とフンシンペック党、両方やれというのに、やっていないじゃないですか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもからは訓令を出しまして、私どもの高橋カンボジア大使の方から、当事者の一人である連立与党第二党、フンシンペックの党首を務めているラナリットという国民議会の議長でございますけれども、に対してアポイントメント、会談を申し入れているところでございますが、まだその会談をいつ設定するという返事は実はないわけでございます。

 したがって、我々としては、大使が先方の要人と早急に会って、日本政府としての立場、懸念を伝えるということを、まず実現に努めている。その間、必要なことは、先ほどの答弁でもございましたけれども、側近も通じていろいろと日本政府としての懸念を伝えていく、こういうことでございます。

中野(譲)委員 時間が参りましたので、きょうはこの辺で質問を終わらせていただきたいと思いますが、要は、やっていないことはこれからやります、今向こうにお願いをしているところですと。中国の場合は、これは非常にエマージェンシーなので、電話でもすぐやる。こういう問題は、これは起こってからもう二カ月近くたつわけですよね。いまだに会談も設定もできないで、訓令も守らないで、きちっとした外交をやらない、こういう外務省の姿勢自体、私は外務省の組織自体が問題だと思いますよ。

 官僚の方々、若い方々は本当に国のために一生懸命やっていると私は思いますが、こういう場になると皆さん口をつぐまざるを得ないということ自体、やはりこれは大臣、きちっと政治主導で頑張っていただきたいと思いますので、きょうはこの辺にさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小林委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 では、冒頭にお尋ねをいたしますが、今、中野委員からもお話ありました日本と中国、非常に今厳しい状況下にある。その中で、これはこの時期ではないと。

 私も実は経済産業委員会にも所属をしておりまして、きょうの午後から委員会がございますが、日中中間線での海底資源をめぐって、先般、中川経済産業大臣が、試掘権を付与するという方向で、中国側にもデータを求めたけれども、何ら回答がない。これは日中の局長級会談でも昨年から一貫して言われてきたことでございますけれども、権益を譲らず、今回のような事態に至りました。

 ここで質問したいのは、もう簡潔にお尋ねしますけれども、試掘権の付与ということが決まって、手続が開始された。その後、日本の民間企業がそうした申請をし、鉱区の希望を出して、その後、実際にはこれは九カ月とか十カ月とか、あるいは一年近くかかるのかなと思いますけれども、そうしたことが、もし日本の政府の委託を受ける形で民間が試掘に入った場合に、当然、あのエリアというのはリスキーなところでございまして、その場合に、中国は何らかの威嚇手段を使って、つまり、今でもここに中国海軍が何らかの形で示威行動をしている。デモンストレーション、つまり軍事力を背景にした、非常に日本に対してプレッシャーをかけてくる。そうなったところで、日本は、我が国はもちろん第一義的には海上保安庁が対応するということはこれまでの答弁でもわかりますが、自衛隊はそのときにどういうことができるのか、あるいはできないのか。

 その点について、つまり、日本の試掘をしている民間企業に対して防衛なり、あるいはそこに建っているやぐらを守るということになった場合、日本の海上自衛隊は何ができるんですか、あるいは何ができないんですか、それだけ簡潔にお答えいただけますか。

大野国務大臣 まず、委員おっしゃいましたとおり、海上航行の安全、海上の安全というものは、第一義的には海上保安庁でございます。海上保安庁における人命、財産の保護または治安の維持について、それをバックアップする形で自衛隊が出ていくわけでございます。

 そこで、まず第一には、我々は情報の共有というのを常にしておかなきゃいけない。そして、情報が入り次第どういう対応をとっていくか、こういう問題があろうと思います。しかし、一方において、公海上の自由航行の原則があります。どういう事態が発生するのか、これは政府としていかなる対応をとるか、その場面で検討していかなきゃいけない問題であります。そういうことで、まず一番大事なのは情報の共有、そして情報を得次第迅速に行動する、海上警備行動をとっていく、こういうことが大事だと思っています。

渡辺(周)委員 ということは、例えば自衛隊の護衛艦、艦船がその近隣にいて、今おっしゃった情報の共有という、つまり情報収集を目的とした形で、これは防衛庁設置法に基づくいわゆる調査活動、情報収集という形で、例えば試掘をする近隣のエリアに当然護衛艦がいるということをやるということで考えてよろしいですか、もしそこの試掘が始まれば。

大古政府参考人 現在、海上自衛隊におきましては、一日一回を基準といたしまして、哨戒機、P3Cのことでございますが、P3Cによりまして東シナ海の海上において監視活動を行っております。必要に応じ、この監視を強化するということはやっているところでございます。

渡辺(周)委員 これはもう少し、別の質問もありますので、また改めて深くやりたいと思いますが、これは当然、日本の国益をかけて、日本の政府の委託を受ける形で、日本が、政府が権益、権利を認め、そして予算措置もしてやるわけでございますから、我が国の国益を守るためには、私は、何らかの形で、当然我が国の自衛隊も、不測の事態に備える。

 これは、北朝鮮がミサイルを飛ばしてくる以上に、非常に危険性の高いエリアだと思っています。我が国は多額の、今後質疑をしていく中で、ミサイルディフェンスの話をこれからしていくわけですけれども、北朝鮮が我が国に向けて何かを飛来させる、ミサイルを飛来させるという可能性と、当面の脅威はどちらかと考えれば、当面の脅威は、私は、このしかるべき時期に日本が試掘を始めれば、そこで何らかの中国からの実力部隊による威嚇、示威行動は当然あるだろう。その可能性の方が高いわけであります。

 その不測の事態に備えて、我が国として、今の現行の法律の中で、つまり、その周辺に対して船を派遣し、そこで試掘業者を守ることはできるんでしょうけれども、何らかの形で安心感を与えるということはできると理解してよろしいんですね。そこだけ聞いておきます、この話はまだ続きがありますので。

大野国務大臣 海上保安庁と関係各省と十分連携をとりながら、今後の動向を見詰めながら、しかるべき対策を考えてまいりたいと思います。

渡辺(周)委員 これはその場の場面だなんて言っていることではないので、これは国を挙げてやらなきゃいけないことです。経済産業省も、国を挙げて、これは各省庁それこそ連携をして、当然最大限の安全確保に努めなければいけないわけでございます。まさか丸腰の、当然民間の試掘でございますから、向こうは軍事力を背景にして威嚇をしてくる、そうなったときに、我が国だけがそのときになったら考えますなんということはあり得ないわけであります。やはりこれはあらゆるシミュレーションを今からしておくべきだと思いますけれども、そういうことで要望して、また改めて、次回の委員会でこの問題は質問したいと思います。

 さて、これまでも二回にわたりまして質問しました例のスーパーピューマ、政府の要人のヘリコプターの非常に不透明な機種選定の問題でございます。

 これまでも納得いくお答えをいただいておりませんけれども、一つ最初にお尋ねしたいんですが、先般私申し上げました、温度制限がある。この温度制限については、ここの型式証明の中では非常に限定的な範囲でしか使えないと言っておりますけれども、これが実際、本当に寒冷地であるとかあるいは非常に寒いとき、あるいは上空で、百メートル上がっていけば気温は〇・六度ずつ下がっていくわけですから、非常に寒冷地あるいは非常に寒い時期でこれは使えないじゃないかという質問をしました。

 その点についてはお答えいただいてないので、まず確認のために、それはどうなんですか、それは実証されたんですか。

大野国務大臣 まず、型式証明の中の、例えば温度という要素でございます。

 まず御説明申し上げなきゃいけないのは、一九九九年まではこれは理論値であったわけでございまして、一九九九年以来、試験をした結果、きちっと証明をつけてやれ、こういうことになっているわけであります。

 したがいまして、温度につきましては、現有のAS332、現有スーパーピューマといいましょうか、それがマイナス三十度からプラス五十度ということでありますが、まず試験をするごとにそれを発表しているわけでありますから、新たに取得するEC225の現時点での型式証明上の温度限界は、マイナス十五度からプラス四十度というふうになっておるところでございます。

渡辺(周)委員 それは実証をされているんですか。つまり、そこで使えないものをなぜこんなに急いで買ったのかというのがこれまでの私の追及でございまして、この間申し上げたのは離発着高度の問題。今度は温度制限の問題。燃料にも触れました。

 つまり、型式証明では何一つ実証されていないものが、取り急ぎ、とにかく補正予算だからこれは早く決めなきゃいけないんだと。ほかのメーカーと比較をして、それでトータルで考えた上でこれだというならわかるんですけれども、全く実証されていないデータをもとに、まさに今度のこともそうですけれども、決めた。これについて、納得いかないんですよね。それはどうなっているんですか。

大野国務大臣 そういう御疑問に答えるために、冒頭、型式証明については、一九九九年までは試験をしないで論理上、理論上の値でやっていた、こういうことを申し上げたわけであります。一九九九年以来は、今申し上げたように、これは実際に試験をいたしまして、後継機につきましては、さらに、マイナス三十度からプラス五十度、ユーロコプター社によれば、本年一月には低温はマイナス三十度まで、本年二月には高温は五十度まで運航可能なことを確認済みと言ってきておりまして、そのことは、その試験結果を踏まえて、ことしの夏には型式証明の変更を行う、このように言っておるところでございます。

 したがいまして、もう一度、くどいようですが、御理解いただくために、九九年までは論理上の値でやっていた、九九年からきちっと試験をしてやっています。とりあえず試験をした結果が現在の話でありまして、そしてさらにこれは上がっていく可能性、予定である、このようになっておるところでございます。

渡辺(周)委員 いや、だからこそ、寒冷地についてはカナダで、暑いところではエクアドルのキトですか、南米でそれを実証している。そのときにはまだ実証されていないんですよね。実証されていないわけです。もうこれは補正予算の審議をやっているころにやっとこさそれを実証されたわけでございます。

 それにしても、時間がありませんから、この問題についても納得がいきません。

 もう一つ、居住性の問題。これは、キャビンの長さが一メーターほど長くなるということですね。これまでの従来のAS332L、現有機六・八メートルから、今度のEC225は七・九メートル、一メーター長くなる。だから、一メートル長くなったぐらいで二十席もの席が用意できるのか、VIP使用できるのかというふうなことを聞きましたら、ちょっと事前に昨日お答えいただいたのでは、いや、できますというふうにおっしゃっているわけでございます。ところが、このキャビンの長さというのは、ヘリコプターの、いろいろ私も調べてみましたら、実は後ろの部分ですね。ここは正直言ってとても人が座るようなところじゃないです。何かといいますと、ここは荷物置き場なんですね。荷物置き場まで入れて一メーター長くなった。つまり、七・八メートルだというふうに。考えられないです。つまり、居住空間と思えないようなところに座席を何席か置くことによって二十席確保できる。それでは余りにも無理があるわけですね。

 つまり、何を言いたいかといいますと、私は、そういうことが全く検証されていないのに、買ってから、とにかく購入契約してから、とにかくこうしたことについては正直言って後から後から何とか整合性を持たせようとしてやる。後から後から出てくる。私自身はもう正直言ってそういうふうな疑念を持たざるを得ないわけなんですけれども、この居住性についてはどうなんですか。実際は、本当は五・八六メートルなんじゃないですか、居住空間。つまり、今以上に狭くなるんじゃないですか。

大野国務大臣 居住性の問題でございます。

 前のスーパーピューマの場合が六・八メートル、キャビンの長さでございます。現在の後継機が七・九メートル。それから幅でございますが……(渡辺(周)委員「幅はいいです、知っていますから」と呼ぶ)幅はよろしゅうございますか。

 それでは全体として申し上げますけれども、そういう長さだけの説明でよろしゅうございましょうか。他にもっと御説明申し上げてもよろしいんですが。

 要するに、これまでは四席のVIP用座席と九席の一般用座席の計十三席でありましたものを、今回は五席程度のVIP用座席と十五席程度の一般用座席の最大二十席ということになります。

 そこで居住性の問題が出てくるわけでございますけれども、二十席をなぜ確保できるのだ。今申し上げました長さも関係するわけですが、新たに取得する後継機というのは、もともと、カタログ上の座席数は最大二十五席でございます。そういうことを踏まえて、二十席を確保するのは十分できるだろう、こういうことであります。

 さらに、問題はトイレとかギャレーの問題でありますけれども、飛行時間が大変短いということから、トイレ、ギャレーは特段必要ないというふうに考えまして、これらは装備いたしておりません。トイレを例にとりますと、こういう要人を運ぶ場合でありますから、トイレを過去に使った例というのは実際には一回しかございませんでした。そういう意味で、トイレはつけない、こういうふうに考えております。

渡辺(周)委員 では、ちょっと参考に聞きますけれども、この七・八メートル、本当はこれは、後ろの荷物置き場の部分を除いたら五・六メートルしかないんですね。本当に一番後ろの荷物置き場まで含めて座席のレイアウトを考えるんですか。つまり、座席というのはVIPが座りますから、一般的に考えれば飛行機のビジネスクラス並みのシートの幅と、それから随行員をぎちぎち入れても後ろの荷物置き場まで入れなきゃいけない。つまり、構造上、ここに人を座らせることはできないんですよ。それはどうなっていますか。

飯原政府参考人 先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、カタログ上の最大の座席数二十五、さらに、その中で、その範囲の中でギャレー、トイレを外したり、今までの運航上の経験上、二十席ぐらいのキャパシティーが必要であるということも考えまして、VIP用五席、それからVIP以外用を、それはスペース的にはVIP用より当然狭くなりますが、十五席が入るということを確認した上で、予算計上、契約をいたしたものでございます。

渡辺(周)委員 時間厳守ということを理事会で申し合わせましたので、これはまた改めてやりますが、この質問を私はこれまでに二回この委員会でやってきました。最近、便利なことに、メールだとか匿名でもいろいろな方からいろいろな意見をいただくんです。非常にこれは聞けば聞くほどよくわからない、不透明だ。つまり、この機種選定の従来の手続を飛ばして急いで決めた。しかも、先ほど来、きょうも申し上げたとおり、あらゆることが全部後手後手なんですね。つまり、従来であれば、どういう性能が欲しいからといって、性能を要求してある程度いろいろなところから出す。その上でこの機種に決まったんだったら、私は何も文句は言いません。そういうものだろうかなと思います。ただ、その必要な手続きを経ないで決めた。

 ですから、私、最後にお伺いしたいのは、初めからこの機種ありきというふうになっていたんじゃないですか、違いますか、長官。初めから、もうとにかく細かいことはいいからまずこれを買うということを一つ決めろということで、何かそういうことが方針としてあったんですか。そう考えないとこれは納得いかないんですよ、いかがですか。最後にそれを聞いて終わります。

大野国務大臣 この後継機というのは補正予算のときに要求させていただいたものであります。その際、そういう初めからこれありきというようなことでこれを選定したという話は一切聞いておりません。

渡辺(周)委員 時間がありませんので、これで終わります。また次回、この問題、質疑をやりたいと思います。

 終わります。

小林委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 質問に先立ちまして、昨日訓練中に亡くなられました、航空自衛隊の新潟救難隊の四名の皆様の御冥福を心からお祈り申し上げます。

 きょうは、弾道ミサイルに係る部分以外の事項ということでございますので、統合運用の強化を中心に何点か御質問をさせていただきたいと思うんですが、私は、今の自衛隊を取り巻く環境、また日本を取り巻く国際情勢、特に弾道ミサイル攻撃でありますとか、ゲリラ、特殊部隊、さらにテロ、こういうものに対処しなければいけない、いわゆる新たな脅威と多様な事態に対処しなければいけない、こういう要請に対して迅速かつ効果的に自衛隊が対処するためには、今までのような陸海空三自衛隊がそれぞれの構想に基づいて個別に行動し、そして必要に応じて統幕が総合調整を行うというような、そういう体制よりも、むしろ、日ごろから一体的、統一的にそういう構想を持ち、また計画をつくり、運用できるような、そういう体制が必要である、そういうように考えておりまして、今回のこの新たな統合運用体制をつくっていくということに対しましては私は賛成である、そういう立場から何点か御質問をさせていただきたいんです。

 一つは、この統合運用の強化というのは、今回の法案に至る前に、新防衛大綱でもしっかりとうたわれておりまして、この新防衛大綱のIV、「防衛力の在り方」のところに、「防衛力の基本的な事項」のトップに「統合運用の強化」ということがきちっと述べられているわけでございまして、「各自衛隊を一体的に運用し、自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するため、自衛隊は統合運用を基本とし、そのための体制を強化する。」そういうふうに冒頭述べられているわけですが、その上で、「その際、統合運用の強化に併せて、既存の組織等を見直し、効率化を図る。」そういうふうに明記されているわけです。

 ですから、統合運用を強化して運用面でしっかりと国を守れる、国民を守れる、そういう体制をしっかりととるのはもちろんとして、その上で不断にやはり組織等を見直して、結果として国民から見た場合に、統合運用の強化によって自衛隊がきちっと効率化が図られた、そういう姿をどうきちっと残していくかということももう一方で私は大事であろう、そのように考えているわけでございます。

 そこでお尋ねをしたいんですが、我々は、これは与党のプロジェクトの間でもいろいろ議論があったんですが、公式の場で防衛庁また政府の考え方というものが示されておりませんので、確認の意味でお聞きをしたいわけですが、この今言いました「既存の組織等を見直し、効率化を図る。」という意味は、私は、自衛隊のこれからの統合運用の訓練、演習、そういうものをされるでしょうし、また実際に、部隊の統合運用、さらに統合部隊をつくって運用を積み重ねていく、そういう積み上げの中で、既存の組織、組織だけでなく装備、さらに予算の配分などの重複やむだを不断に見直して、いわゆる切り詰めるところは切り詰め、強化すべきところは強化して、結果として、機能的で合理的で、そして効率化された新しい自衛隊の体制をつくり上げていくんだ、そういう考え方をこの大綱の文書というのは示しているものだと思いますが、組織等の見直しというこの「組織等」の意味するところも含めて、防衛庁長官の見解を伺いたいと思います。

大野国務大臣 まず、MU2の事故に対しまして、本当に佐藤委員からお言葉をちょうだいしましてありがとうございます。きょう午後三時に、防衛庁・自衛隊で一斉に、犠牲になられた四人の方に黙祷をささげることにいたしております。

 さて、お尋ねの問題でございます。もう先生御自身がお答えを出しているような話でございまして、そのとおりと一言申し上げたらいいわけでございますけれども、まさに新しい安全保障環境のもとで、まず早い、早くて強くて、そして低コストである、こういう理念を持ってやるわけでございます。その中で大事なことは、三自衛隊が有機的に連携していくこと、そして、一元的に早くて強い運用をやっていくこと、このことでございます。

 そういう面から、組織、装備、運用にわたる効率化、合理化を図る。限られた資源で、より多機能で弾力的なことをやっていく。具体的には、教育訓練、通信等の運用以外の分野においても統合運用の基盤をしっかり立てていこう、特に情報通信の基盤の共通化の問題があると思います。それから、調達の効率化の問題があろうかと思います。

 そういう問題について、やはり国民の目にわかりやすいような形であらわしていく、このことも重要だと考えております。その国民の目にわかりやすいというのは、やはり次期の新しい中期防の計画においてそれがどう反映されていくのか、それから、毎年の予算の中でそれがどういう形で反映されていくのか、私は、国民の皆様にこういう意味でわかりやすい説明の仕方、これは十分考えて対処していきたいと思っています。

佐藤(茂)委員 今もう防衛庁長官から御答弁いただきましたので、質問しようとしたことはあえてやりませんが、ぜひ、今後の毎年のそういう予算作成、さらには次期の中期防の計画の中に、統合運用によって具体的にこういうところが自衛隊効率化されましたよ、そういうものをしっかりとお示しいただくことをお願いしたいと思います。

 それで、続いて二番目にお聞きをしたいのは、きょうは弾道ミサイルの破壊措置の中身そのものには至れませんので、弾道ミサイル防衛に関連してよく議論されるのが、いわゆる敵基地攻撃能力の問題なんですね。先週の、ちょうど一週間前の四月八日の記者会見で、大野防衛庁長官は、「北朝鮮のミサイル基地を戦闘機で攻撃する「敵基地攻撃」の可能性を、九四年に防衛庁が研究していたことを明らかにした。」と。これは八日の朝日の夕刊でそういうふうに報じられております。「ただ、「理論的に敵基地攻撃ができるとしても、そういう能力を持つべきではないし、現在も持っていない」と語った。」と報道もされているわけですが、改めて当委員会で防衛庁長官にぜひお尋ねしたいのは、敵基地攻撃能力の保有についての御見解を当委員会で述べていただきたいと思います。

大野国務大臣 まず、法理的な側面とそれから日本の意思の問題、政策的判断の問題、二つあろうかと思います。

 法理的に言いますと、まず、防衛出動下令のもとであります、防衛出動が下令された後、仮にミサイルが日本に飛来してくる、これは、他に手段がなければ敵基地を攻撃することは憲法違反にはならない、法理上可能である、このことは御存じのとおりでございます。法理的には自衛の範囲に含まれる。そうしなければ、日本国民の財産生命が守れない。これは防衛出動下令後の話であります。しかしながら、まず日本としては専守防衛という基本的な理念を持っているわけであります。その問題が一つ。

 それから、もう一つの問題は、やはり日米安全保障条約のもとで役割分担がある。例えば日米防衛協力のための指針、これは一九九七年でございますけれども、米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用、それから弾道ミサイル攻撃には日本と協力して立ち向かう、こういうことを書かれておることは御存じのとおりでございます。やはり相手の基地攻撃ということは、日米安全保障条約のもとで米軍の役割かな、日本は、基本的な専守防衛の立場から、こういうことは役割としてはアメリカにお願いする、こういう立場でございます。

 その前にやはり申し上げたいのは、専守防衛という基本的な理念、これはずっと保持しておりますし、今後も、現段階で変えるつもりはありません。そういうことで、敵基地攻撃能力を持つ意思は、意図は全くない、このことを申し上げたいと思います。

佐藤(茂)委員 今、防衛庁長官が述べられたことが歴代の内閣で一貫した考え方だと思うんですね。にもかかわらず、そうすると、次にお聞きしたいのは、平成六年、九四年の時点で、だれの指示で、何ゆえ防衛庁内でこういうものを研究されたのか、きょう明らかにしていただきたいと思います。

大野国務大臣 私は、いろいろな研究、これは自衛隊としてはやっていけないことということも一つあろうかと思います。しかし、国を守るために研究する、このことは研究である限り許されることではないか、こういうふうに思っておりますけれども、そういう前提のもとに申し上げれば、防衛局長、統幕議長の指示のもと、当時の防衛局、統合幕僚会議事務局を中心に実施したもの、このように聞いております。

 しかしながら、それはあくまでも部内の研究であります。研究項目、研究内容などにつきましては、事柄の性質上、明らかにすること、このことは差し控えさせていただきたい、このようにお願いする次第でございます。

佐藤(茂)委員 私も、今防衛庁長官がおっしゃったように、研究までやめろとか、そんなことを、ほかの党では言う人はいるかもわかりませんが、そんなつもりは全然ございません。

 しかし、大事なことは、後で申し上げますが、我々は、この日本で大事なのは、シビリアンコントロールの世界に生きておるわけですね。だから、防衛庁内で研究されたことも、ある程度やはりしっかりとした透明性を確保しなければいけない、そういうふうに私は思うわけでございます。

 そういう観点から、次に、お答えになられないかもわかりませんけれども、あえてもう少しお聞きしたいんですけれども、その内容なんですね。

 朝日新聞では割と少な目に報道しておりまして、その朝日新聞の四月八日の夕刊では、「関係者によると、F4戦闘機で弾道ミサイル基地を攻撃するシミュレーションを航空幕僚監部が作成。「攻撃は可能だが、有効な能力があるとは言えない」と結論づけたという。」そういうふうに報道しております。

 さらに、その日の朝刊、これは四月八日の産経新聞の朝刊によりますと、さらに詳しく報道されていまして、少し長いですが引用いたしますと、

  その内容は、北朝鮮沿岸部に近いミサイル基地で「ミサイル発射が迫っている」との前提状況で、空自のF4要撃戦闘機、F1支援戦闘機が石川県小松基地や鳥取県美保基地から北朝鮮に飛行。目標に関する情報や敵の地上レーダーの攪乱などで米軍の支援を受けながら、高高度で接近、低高度でミサイル基地を攻撃、再び高高度で離脱する「ハイ・ロー・ハイ」による作戦シミュレーションだった。そして「敵地まで爆弾を運び爆撃する能力はあるものの、空自の情報収集能力、電子戦能力などでは、組織的に有効な攻撃が確実にできるとはいえない」との結論に達したという。

と報道されております。

 この九四年というのは、私ももう国会議員にならせていただいておりましたけれども、北朝鮮の核開発危機というのがたしか最高潮に達しておりまして、六月のカーター元大統領と当時の金日成主席の会談で終息するまで戦争の可能性をはらんだ、非常に緊張した、そういう時期と重なるわけですね。

 先ほども答弁されておりました、公表できるものではないと述べられておりますけれども、九四年から見ると、もう今や十年以上たつわけでございまして、シビリアンコントロールの、特に国会による統制という観点からも、当時の研究の概要について、この安全保障委員会の場で、ある程度私は明らかにされてもいいんじゃないのかな。

 支障のない範囲でその概要というものを御説明いただきたいと思いますが、防衛庁長官、お願いしたいと思います。

大古政府参考人 当時、委員の御指摘のとおり、北朝鮮の弾道ミサイル、ノドンの試射だとか、それから核開発疑惑とか、いろいろございました。そういう中で、平成五年から平成六年にかけまして、種々の研究を防衛庁として任務遂行する観点から行ったところでございます。

 ただ、時間がたっているという御指摘ではございますけれども、やはりこちら側の研究の状況を具体的に述べますのは、事柄の性質上、先ほど大臣が申し上げましたように、明らかにすることは差し控えたいということで御理解賜りたいと思います。

佐藤(茂)委員 私は、内容を触れられないことが非常に残念でございます。

 ただ、そうしたら、この問題、角度を変えてもう一つお聞きしたいのは、これについてはお答えできるんじゃないかと思うんですが、この四月八日の報道でも、朝日と産経では、その内容の全体の表現の仕方が違うわけです。

 朝日新聞は、敵基地攻撃の可能性の研究を防衛庁は平成五年から平成六年にかけてされた、そういう内容になっております。産経新聞は、そういう表現じゃなくて、対北先制攻撃の作戦を検討した、こういうふうになっているわけです。

 一体どちらなんですか。この二つによって全然違うわけです。敵基地攻撃の可能性の研究というものと、対北朝鮮先制攻撃の作戦を検討したというのと、全然違うと思うんですよ。一体どちらを目的としてされたんですか。

大古政府参考人 先ほど申し上げましたように、平成五年から平成六年にかけた研究につきましては、我が国を防衛するという観点から種々研究をさせていただきました。ただ、委員の御指摘の二つのうちどちらかということも含めて、恐縮でございますが、事柄の性質上明らかにできないということで御理解いただきたいと思います。

佐藤(茂)委員 それぐらいは明確に言えるでしょう。明らかに言わないことは、逆に産経の方の、そういう研究をされていた可能性もあるということになるんだと思うんですけれども、もう一度ちょっと、どちらなのか、はっきりさせていただきたいと思います。

大古政府参考人 繰り返しますけれども、我が国の防衛という観点から種々研究させていただいております。ただ、それに対して具体的にお答えすることは、自衛隊の備えている能力が明らかになったり、いろいろ周辺諸国との関係で無用な誤解を抱かせますので、その具体的な状況については答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 それでは、最後の質問になりますが、防衛庁長官も冒頭言われましたが、昭和三十一年の鳩山内閣当時の統一見解に、「たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」そういう統一見解が今もずっと生き続けておるわけです。

 そこで、今般予定されている弾頭ミサイル防衛システムの導入というのは、この統一見解で言う、攻撃を防御する有力な手段である、そういうふうにお考えになるのか。そうであるとするならば、この「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」という論拠がなくなることになるわけでございますが、弾道ミサイル防衛システムの導入というものがそういう前提条件を覆すほどのものである、そういうふうにお考えなのかどうなのか、最後に防衛庁長官の見解を伺いたいと思います。

大野国務大臣 まず、他にかわるべき手段がない、この手段とは何だろう、こういう御質問かと思います。

 この他にかわる手段といえば、いろいろな手段があるかと思います。例えば、外交的な対応、あるいは日米安保体制のもとの役割分担の問題、あるいはODAをどうするか、こういうような問題もあろうかと思います。その中で、BMDというような最近の我が国の防衛については、科学技術の発達の結果でございまして、そのことをどう考えていくか。一連の流れの中で、今までにもそういう代替手段はあったわけでございます。それをどう考えていくか。

 法理論の世界ではやはり防衛出動下令後に敵基地を攻撃することは許される、しかし、日本の政策として、他に代替手段がある場合には控えておくべきじゃないか、こういう政策論と法理論とが混同しているのかな、していないのかな、私はこの辺はよくわかりません。わかりませんが、代替手段ということで考えれば、私は今までにもそういう意味での代替手段はあったのかな、場合によって解釈が変わってくる問題かなと。

 しかし、いずれにしましても、この防衛出動下令後の敵基地攻撃ということが、ここに書いてありますとおり、私は、法理的には変わらない。言いかえれば、BMDシステムの導入のいかんにかかわらず、敵基地攻撃に関する法理的な考え方には変更がないと思いますし、それから、基本的な問題でありますけれども、日米間の適切な役割分担を通じて、現時点で敵基地攻撃を目的とした装備を保有する気持ちは全くない、このことははっきりと申し上げたいと思います。

佐藤(茂)委員 私は、冒頭、議論の中で申し上げましたとおり、使うかどうかというのは、実際に行うかどうかというのは政治判断の最終的な問題だと思うんですけれども、防衛上、そういう可能性や限界というのはある程度本当に詰めておかなければいけない、そのように考えるわけでございまして、今後とも引き続き透明性の確保に努めていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

小林委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十六日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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