衆議院

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第7号 平成18年11月16日(木曜日)

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平成十八年十一月十六日(木曜日)

    午後二時一分開議

 出席委員

   委員長 木村 太郎君

   理事 赤城 徳彦君 理事 今津  寛君

   理事 北村 誠吾君 理事 寺田  稔君

   理事 中谷  元君 理事 遠藤 乙彦君

      石破  茂君    小野 次郎君

      近江屋信広君    大塚  拓君

      大前 繁雄君    瓦   力君

      杉田 元司君    平  将明君

      高木  毅君    高鳥 修一君

      土井  亨君    馳   浩君

      浜田 靖一君    福田 良彦君

      山内 康一君    東  順治君

    …………………………………

   国務大臣

   (防衛庁長官)      久間 章生君

   防衛庁副長官       木村 隆秀君

   防衛庁長官政務官     大前 繁雄君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁総務部長)  新保 雅俊君

   安全保障委員会専門員   三田村秀人君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     高鳥 修一君

  瓦   力君     土井  亨君

  仲村 正治君     近江屋信広君

  宮路 和明君     馳   浩君

  山内 康一君     小野 次郎君

  山崎  拓君     平  将明君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     山内 康一君

  近江屋信広君     仲村 正治君

  平  将明君     山崎  拓君

  高鳥 修一君     安次富 修君

  土井  亨君     瓦   力君

  馳   浩君     杉田 元司君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     宮路 和明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第九一号)


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     ――――◇―――――

木村委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ち、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員に対し、理事をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 第百六十四回国会、内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁長官官房長西川徹矢君、防衛庁防衛政策局長大古和雄君、防衛庁運用企画局長山崎信之郎君及び防衛施設庁総務部長新保雅俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田稔でございます。

 きょうは、防衛庁設置法の改正案の審議に入るわけで、私も三十分ほどお時間をいただくわけでございますが、まず冒頭、野党側が、与党側の再三の要請にもかかわらず審議拒否という、議会制民主主義を本当に愚弄する挙に出ている。しかも、我々は、この野党の諸要求に対しましても本当に丁寧に対応してきたわけでございます。そうした野党の暴挙に対しまして強く抗議をするものであります。

 それでは、懸案となっております防衛庁の省昇格について、きょうは大臣そしてまた副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 この防衛庁の省昇格問題、これはもう本当に長年にわたります政治の悲願であり、そして最重要課題であることは論をまたないわけでございます。そして、この省昇格については、近時におきましても、平成九年の行革会議以来、足かけ八年間にわたりまして、さまざまな場でこの議論が行われてまいりました。そしてまた、五年前の平成十三年には議員立法としても提案をされたことがあるわけでございます。大臣も、その提案者のお一人として、当時の議員立法をされたやにお伺いをいたしております。

 それ以後もさまざまな場で議論が行われました。そして、今回、この政府提出の閣法として国会に提出をされたことはまことに意義深いことであり、大変大きな意味を持つものであるというふうに考えております。我々も、党内におきまして国防部会あるいはまた行革推進本部等の場においても濃密な議論を積み重ね、今回の法案提出を強力に支援してきたわけでございますが、まず冒頭、今回の閣法としての提出につきまして、防衛庁長官としてのお考えをお伺いいたします。

久間国務大臣 本当に長い道のりであったと思います。戦後ずっと、防衛庁としてスタートしましてから、その後昭和三十九年には閣法として出そうということで政府決定を一たんしたんですけれども、国会には出されませんでした。今おっしゃられましたように、議員立法として出たことがございまして、私も提案者、賛同者の一人として名を連ねたことがございました。しかしながら、国の、政府の組織を議員立法でつくるというのは、ある意味ではちょっとどうかなという、内心じくじたる思いもそのときはありました。

 その後、いろいろな各党間の意見の調整の中で、自由民主党と公明党とで、やはり出す以上は閣法で、政府の責任において出すべきである、そういう決定がされまして、政府の方でもそれを受けた形で、閣法として前国会に出たわけでございまして、今国会でようやくその審議がスタートしたというのは全くもって感無量でございますが、やはり政府の組織をきちんと決めるのを閣法で出したということに私は大きな意義があろうと思いますし、出す以上は政府の責任においていろいろな説明責任を負うわけでございますから、そういう責任を持って提出したということを理解していただいていいんじゃないかと思っております。

寺田(稔)委員 今、大臣から、閣法として出したことの大変大きな意義について御答弁をいただいたわけでございますが、今、大臣の御発言にもありましたように、時あたかも今から四十二年前の昭和三十九年、時の内閣総理大臣池田勇人は、内閣の方針として、この防衛庁の省昇格を一回閣議で決定をしたわけでございます。時あたかも、私のちょうど先ほど後ろにおられました江崎鐵磨先生の御尊父に当たられます江崎真澄先生が防衛庁長官、そしてまた池田内閣のときには、今同じ同僚の理事として御活躍をされております赤城理事のおじい様に当たられます赤城宗徳先生も防衛庁長官ということで、本当に両防衛庁長官のすばらしい御活躍によってそのような内閣の方針を決定することができたことは、本当にうれしく思っております。

 当時は、まだこの自衛隊も、いわゆる力の空白を防ぐ、まさに存在すること自体に意義があるというふうに言われた時代でありますけれども、当時からその必要性は強く認識をされてきたわけで、その後、さまざまな自衛隊の任務の拡大、あるいはまた九千回を超えます国内におけます災害派遣等も経て、非常に高い貢献、そしてまた国民の評価も非常に上がってきているということは論をまちません。そういう、存在する自衛隊から、働く自衛隊、活動する自衛隊の、まさに実態を伴う高い評価というのが今回のこの法案提出に至ったものと私も評価をするものであります。

 ちょうどその一つの節目となりましたのが、東西冷戦終結の翌年ですね、イラクによりますクウェート侵攻、これに端を発した最初の湾岸戦争のときであったかというふうに思います。そのとき、まさに久間大臣も防衛庁長官、当時もされておったというふうに思いますが、我が国が、湾岸地域において平和回復のために、当時はまだ人的貢献ができないというふうなことのもとに、トータルで百億ドル以上の巨額の経済援助を実施したわけでございます。

 私も、当時はワシントンで日本国大使館のフィナンシャルアタッシェとして、当時の金銭面での対米折衝の一翼を担ったわけで、国内的には石油税の増税までしてこの必要額を賄ったわけでございます。しかし、そのような百億ドルを超える本当に巨額の支援を行ったにもかかわらず、人的貢献を行っていないというふうなことで、国際社会においては、残念ながら必ずしも十分な評価を受けることができませんでした。

 当時、アメリカの国防総省は、人的貢献をした国の国旗をみずからのホームページで掲げておりまして、毎日毎日見ておりますと、どんどん国がふえていく。しかし、いつまでたっても日本の国旗が出てこないというふうなことを、当時の大使館員とともに大変私も残念に思いましたし、一日も早くそうした人的貢献をしなければいけないというふうに思った次第であります。

 そのような反省も踏まえまして、我が国は、湾岸戦争終結後の九一年の四月に、海上自衛隊の掃海艇等から成ります掃海部隊を初めてペルシャ湾に派遣をしたわけでございます。当時の防衛庁長官は、私のおじに当たります故池田行彦でございました。

 当時、そういうふうな決断をしたわけでございますけれども、当時は自衛隊法上明確な根拠規定がない中で、いかにこの派遣をするかというふうなことで国会でも大変な論議を呼んだわけでございます。調査研究規定といういわば超法規的な措置を使ってまで、掃海艇派遣を決断したわけであります。その後、PKO法が国会で成立をして、晴れて明文規定のもとに国際派遣ができるようになった。そして、最初の国連カンボジア暫定機構、UNTACへの自衛隊の部隊の派遣、そしてまた国連モザンビーク活動を初めといたしまして、自衛隊の本格的な部隊派遣が始まりました。そして、それ以来、延べ二十回、派遣隊員は既に三万人にも上っているわけであります。

 また、国内的にも、九五年一月の阪神・淡路大震災以降、災害から我が日本の国民の生命財産を守るというふうなことで、九千回にも及びます災害派遣を実施いたしまして、延べ二百七十万人を超える自衛隊員がこの活動に従事をしたわけでございます。

 このように、自衛隊の任務は、我が国の防衛のみならず、国内外の災害対応あるいは国際平和のための貢献活動というふうなことに本当に幅広く活動して、高い評価を受けていることはもう御高承のとおりであるわけでございます。近時におきましても、ゴラン高原で、そしてまたインド洋で、さらにはイラクで汗を流して活動を続けている、そうした自衛隊員の皆さんが自信と誇りを持ってそうした諸活動に従事をすることができるように、この防衛庁の省昇格法案の一日も早い成立を私も望むものでございます。

 なお、ことしの春に内閣府が実施をいたしました世論調査では、八五%の国民が自衛隊のそうした国際平和協力活動を高く評価するというふうな世論調査になっております。そして、災害派遣に至りましては、国民の八九%、これはもう約九割、ほとんどの国民が、自衛隊の災害におけます活動を高く評価する、そして大きな成果を上げているというふうな認識を示しております。また、読売新聞が昨年実施をした調査におきましても、信頼できる組織の第四位にはこの防衛庁・自衛隊が選ばれているわけでございます。

 このように、非常に国内外において高い評価を受けている。私も大変うれしく思いますが、特に近時におきましては、日米の、同時多発テロを発端といたします国際テロにおきます協調活動、あるいはまた今現在、防衛庁がイニシアチブをとって実施しておりますPSI、すなわち大量破壊兵器の拡散防止のための諸活動といったような国際的な連携をとらなければならない活動、テロに対する対応、あるいは弾道ミサイルに対する対応、さらにはNBC兵器といった大量破壊兵器の拡散防止といった多様な事態に対して、自衛隊が幅広く活動しているというふうなことであります。

 そして、そうした諸活動は、まさに世界の平和に直結をしているわけでございます。すなわち、自衛隊の活動は、国際的な安全保障環境を改善し、そして国際社会のそうした平和と安定のための取り組みに主体的に大変な貢献をしておりまして、国際平和に多大なる貢献をしていると言っても本当に過言ではないというふうに思うわけです。

 そして、かてて加えまして、本年の五月には我が国は、二年間超に及びます協議を経まして、アメリカとの間で、いわゆる米軍のトランスフォーメーション、すなわちこの再編実現のためのロードマップに合意をいたしました。この大変重要な合意が大変困難な地元調整あるいは周辺諸国との調整の中でなし遂げられましたことは、防衛庁の組織としての大変、能力の高さを示すものであるというふうに私も高く評価をするわけでございます。

 そうした防衛庁の省昇格に対する諸情勢、特に最近の国際情勢、取り巻きます諸情勢をかんがみれば、これはもう待ったなしの、我が国にとって最重要課題であるというふうに思うわけでありますが、そうしたような点も考慮して、我が国として、この防衛庁の省昇格、部隊運用も変わってくる、そしてまた専守防衛、あるいは着実で節度ある防衛力整備、あるいは非核三原則といったような国是を堅持する中でそうした諸活動を強化していくことは、私は、大変意義深いことであるし、国際的にも高く評価をされることであるというふうに考えるわけですが、大臣のその点についての御所見をお伺いいたしたいと思います。

久間国務大臣 今おっしゃられましたように、国際環境もそうですけれども、国内の認識もまた変わってまいりまして、自衛隊が我が国の専守防衛としてスタートはしましたけれども、それの単なる、どう使うか、そういうような観点からの防衛庁としての管理面だけが強調された組織から、やはり国の安全政策をどういうふうに考えていったらいいのか、特に国際的な平和、安全の環境づくりをどうしたらいいのか、そういう全体の政策の中で国の安全問題をとらえる、そういう必要性がだんだん大きくなってきておりますから、まさに政治的な管理、あるいはまた管理のためのツールとしての防衛装備を取得するとか、それをどう使うかというだけではなくて、そういう全体像としてとらえていくような、そういう時期に来ているんだろうと思います。そういう意味で、政策官庁としての省として脱皮することは、まさに時宜に適した、二十一世紀に我々にゆだねられた、そういう時期なんじゃないかなと思います。幸いにして、国民の皆さん方も、そういう中でとらえるべきだと。

 そしてそのときに、単に国内の問題だけではなくて、攻められたときに守る、そういう自衛隊だけでなくて、国連の一員として各国から信頼されているわけだから、そういうところに、憲法の範囲内とはいいながらもどこまで貢献することができるのか、それについても日ごろから考え、そして、それと同時に訓練もしておく必要がある、そういう時期に来たんじゃないかなと思いますので、まさにそういう意味でも、本来任務に取り上げて、そして今までは付随的な業務として雑則でとらえられておった国際協力業務を本来的な任務の中にちゃんと位置づけるという、それも本当に大変大事なことであるので、この際それもきちっとさせていただこうということでこの法案を出しているわけでございまして、まさに今委員が御指摘になったとおりでございます。

寺田(稔)委員 まさに今大臣が言われましたように、政策官庁としての脱皮、そしてそうしたもとでの対応能力の強化ということを私も期待するわけでございますが、前回の質疑でもこの審議になりましたが、防衛庁の省昇格によりまして大臣はみずから閣議請議ができるというふうなことで、危機対応能力も格段に増してくるわけでございまして、自衛隊の部隊運用においても、そうした対応能力の増加、そしてまた多機能、弾力的な運用が可能となってくる、すなわち現実の隊の運用にもそのようなことは大いに反映をされるのではないかというふうに考えますが、この点についての防衛庁長官の御所見をお伺いいたしたいと思います。

久間国務大臣 前回でも私はお答え申し上げましたけれども、今までも国務大臣としては閣議請議はできます。しかしながら、防衛庁長官としての立場ではできないわけでありまして、そこのところは一般の人にはなかなかわかりにくい点でございます。各大臣、全部一応国務大臣でございますから、国務大臣であればその一人としては閣議請議は行うことができるわけですけれども、要するに、役所の代表としての防衛庁長官ではなくて、そこはやはり内閣府の長である内閣総理大臣が閣議請議をやる、そういうことになっておりますから、防衛庁長官である私が長官の立場で閣議請議ができないというもどかしさがあるわけでございます。

 そういう意味では、非常に迅速に対応できるということにもなろうかと思いますし、また先ほど言いましたように、国際協力業務を初めとしていろいろな面で本来任務化されますと、日ごろからの対応が、訓練も含めてやっておく必要があるわけでございまして、そういう意味では、それを含めて弾力的な運用等も可能になってくるわけでございますから、私はそういう点でも非常に、今度の省昇格と同時に、本来任務化に持っていったということも非常にいいことだと思っておるわけであります。

寺田(稔)委員 次に、防衛庁の省昇格によりまして、いわゆる文民統制、シビリアンコントロールの点についてもお伺いをいたしたいと思います。

 基本的に、防衛庁の省昇格によっても、シビリアンコントロールという点については何ら変更がないものというふうに考えております。見方によっては、より一層適切なシビリアンコントロールを発揮し得るような体制にもなるというふうな見方も可能かと思いますが、そこで、大臣にお伺いをしますが、シビリアンコントロールという点から見たときに、一体どのような点において変更があるのか、あるいはあり得るのか、あるいはどのような点においては変更がないものと考えられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

久間国務大臣 よく誤解をされるわけでありますけれども、防衛庁から省になると、何かシビリアンコントロールがなくなって独走するんじゃないかというふうな、そういう錯覚をする人がおられるわけでございますが、決してそういうことはあり得ないわけであります。

 そもそも、シビリアンコントロールというのは、自衛隊みたいな実力組織といえども、これは法律によって縛られてその範囲内で動くわけでありますし、また予算面においても国会の審議を経た予算に基づいて支出がされるわけでありますし、しかも、そのトップはいわゆる文民でなければならないことになっておるわけでございますから、そういうのを指してシビリアンコントロールは守られておるわけでございます。

 そういう点では、従来と、今度は庁が省になっても全く変わらないわけでございますから、シビリアンコントロールについて言うならば、メリット、デメリット、それほどの、再編があったとしても、省に移行したからといって私は全く変わらないというようなことをみんなに言っているところでございます。むしろ、安全保障会議なんかの業務の中に今度は国際協力業務等も入ってくるわけでございますから、そういう意味では、より手順を踏んで物事を判断していくという点ではシビリアンコントロールが強化されることにつながるんじゃないかと。

 今度の法案の一環としてそういう規定も入っておりますから、全体として見ますならば、今までよりもシビリアンコントロールが後退することはなく、むしろ前進することはあっても後退することはないということを国民の皆さん方にも知っていただきたいと思うわけであります。

    〔委員長退席、北村(誠)委員長代理着席〕

寺田(稔)委員 まさに、そういうことだろうというふうに思います。ぜひともその点についても、大いに国民に対する周知も、事務方を含めてお願いをいたしたいと思います。

 あと、諸外国の国防組織、私は寡聞にして諸外国で国防組織がエージェンシーであるという国を知らないわけでございますけれども、これも、ある防衛庁の関係者から聞いたところですと、イギリスに行ったときにエージェンシーだというふうに言ったら、あなた、一体どこの代理店の方ですか、日本は防衛業務を代理店にやらせているのですかというふうなことを言われたと。非常に悲しいことだというふうに思うわけでございます。

 我が国以外に、庁組織、いわゆるエージェンシーであるという国はあるのでしょうか。大臣にお伺いをいたします。

久間国務大臣 私も役所の方で調べてもらいましたが、エージェンシーというような、いわゆる庁というのはほかの国ではないと思います。というのは、みんな、やはりそれは、政策官庁としての各省、デパートメントかあるいはミニストリー、そういう形で政策マターをちゃんとできる組織として位置づけられておるわけであります。

 我が国でも、庁というのは、例えば私がおりました農林省でも食糧庁がありました。食糧庁も、食糧を、やはり特にお米ならお米を、供出米を預かってそれを配るというような、そういう発想からですし、あるいは水産庁というのも、漁業権をどうやってみんなに割り振るか、そういうような観点からの、どっちかというと管理面を中心にした、また林野庁も、国有林野を中心とした管理面、それから森林組合をどういう形でコントロールしていくかという管理面、そういう点が強調されておったわけであります。

 警察庁が一つ最後に残っている庁でございますけれども、これも、実のところ、捜査権限その他は県警本部が持っているわけでありまして、それを全体として調整するような機能であります。海上保安庁だけが、これは当時の運輸大臣のもとでの実力部隊でございますけれども、これとても、やはり違反行為を行った、警察と似たような海洋における取り締まりをやるという形でございますから、いわゆる政策官庁としての省とは若干異なるわけでございます。

 今の防衛庁が、そういうのと比較したときにも、もう少し国の安全問題をどうするのか、そういう観点からの省としての役割が強調されていいんじゃないかなと思っているわけでありましたから、やはりエージェンシーというのはちょっとふさわしくないんじゃないかなと思っております。

寺田(稔)委員 私もそういう認識でありまして、本当におっしゃるとおりだというふうに思います。一日も早い、省、すなわち省といいますと、諸外国ではミニストリーと言ったり、あるいはデパートメントと言ったり、いろいろな名称がありますけれども、やはり正式の政府の組織であり、政策官庁であり、意思決定機関であるということを明示的にしていくことが我が国の地位の向上にもつながり、そしてまた大変高く評価されている自衛隊の活動の正当な評価につながるものというふうに私は認識をしております。

 あともう一点、これもたまに誤解もあるわけでございますけれども、今防衛庁は内閣府の中の組織の補助機関という位置づけであるわけです。これは、内閣府自体が平成十三年一月の省庁再編によってできた組織で、その中の補助機関として、いわば内閣府の傘のもとにぶら下がっている形であるわけでございますが、内閣府のいわゆる総合調整機能、これはかかっていないわけであります。したがって、防衛庁の省昇格によって独立省になったとしても、いわゆる総合調整機能については何ら変更がないものと理解をしていますが、これは、本会議でも同様の答弁を大臣はされておったと思いますが、確認のために再度、大臣、この点についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

久間国務大臣 内閣府は確かに総合調整機能を持っておりますけれども、それは各省庁の権限がそれぞれ別に分かれておって、そういうのを除いたものについての調整機能があるわけでございますから、今までも、防衛庁の庁の仕事として、それを内閣府が総合調整機能を持つわけじゃございませんので、それがそっくり今度の場合は防衛省に移るだけの話でございますから、それは従来と全く変わらない、そういうふうな認識を持ってもらっていいんじゃないかと思います。

寺田(稔)委員 そういうふうな認識であることが確認をされたというふうに思います。

 そのように、やや、一部にはそうした点についての誤解、総合調整機能もそうですし、あるいはシビリアンコントロールの点についてもそうなんですけれども、そこらは当然十分に説明をして、周知をしていくということが必要だと思います。

 そこで、副長官、副大臣にお伺いをしたいのは、そういうふうな周知をしていくというふうなことが非常に重要なんですけれども、防衛庁の省昇格により、本当に、二十七万人もの自衛隊員もそうであります、また関係します諸機関、団体、例えば隊友会でありますとか父兄会でありますとか、あるいは各種の協力会、協力団体、あるいはまた水交会等々といった諸団体もありますが、そういった防衛支援関連諸団体へ、あるいはまた国民一般に対して、そういったようなことを十分に説明をして誤解も解いていく、そして国民みんなが大歓迎をする形でもってそうしたスムーズな省移行を図るべきだというふうに考えるわけですが、そういった国民への説明及びPRは十全になされているのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。

木村副長官 ただいま先生御指摘のとおり、防衛庁を省へ移行するに当たりましては、国民的な御理解をいただくことがとても大切なことで、皆さんの御理解のもとで移行していくことが大切である、こう思っております。

 そんな中におきまして、先生今お話がありましたように、省移行の説明を初めとして、PRをいかにしていくかということが大切であると思っております。特に、これまで自衛隊を日ごろ大変御支援をいただいております隊友会、父兄会を初めとする諸関係団体の方々へのPRというのはさらに丁寧にしていかなければならない、こう思っております。

 もう既に「防衛庁を省に」というパンフレットをつくっておりまして、それらを配布したり、またホームページ等々でも掲載をしておりますし、もう既に、各地方、五回だったと記憶をしておりますけれども、出向きまして、関係行政機関の方々、また隊友会を初めとする支援関係の方々、一般の方々を含めまして、地方での説明会等々を行っているところでございます。

 また、今回、防衛庁を省に移行するということは隊員の士気にも大変いい効果が上がると考えておりまして、全庁挙げて省移行に向かって今取り組んでいるという状況であります。

寺田(稔)委員 ありがとうございました。ぜひとも、そうした十全のPR、遺漏なきを期していただきたいというふうに思います。

 現在、防衛庁・自衛隊には、先ほども申しましたように、二十七万人もの隊員が日夜汗を流して職務に精励をいたしております。これは、国家公務員全体の約三割を占めているわけですけれども、郵政民営化後にはその比率が四割になるわけでありまして、このような非常に大きな影響力を持つ巨大な組織が、エージェンシー、すなわち庁のままであるということは極めて不自然であります。

 ぜひとも、一日も早い省昇格をなし遂げることによって、国の防衛という本当に国家の最も基本的な、基幹的な業務を担い、そして安全保障の最終的な担保であります防衛力を有する組織を、それにふさわしい名前、組織を与えていくというふうなことは、これはもう政治の責務であるというふうに私も認識をいたしております。

 本日も、隊友会あるいは父兄会を初めといたします関係諸団体の役員の方々が来られまして、ぜひとも一日も早い防衛庁の省昇格をお願いしたいというふうな話も承りました。これはもう本当に必要なことでございまして、きょうは瓦隊友会会長初め、多くの本当にすばらしい応援団の先生方がおられるわけでございます。ぜひとも、みんなで力を一つに合わせて、防衛庁の省昇格、一日も早い成就を私も切に祈念いたしまして、私の本日の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

北村(誠)委員長代理 次に、山内康一君。

山内委員 自由民主党の山内康一です。

 今回、防衛庁の省昇格ということで、私は、これまで庁であったのが不思議なぐらいで、個人的には、メリットは考えられても余りデメリットは思いつかないわけでありますが、きょうは、残念ながら野党の先生方がいらっしゃらないので、最初はまず野党的な質問から入らせていただきたいと思います。

 パンフレットを見ると、すばらしいことがたくさん書いてありまして、デメリットはどこにも書いていないわけでありますが、普通、何か新しいことをやろう、あるいは改革をやろうとするとプラスとマイナス両方出てくる、そういったケースが多いのではないかと思います。

 今回の省移行に関して、何か想定されるデメリット、問題点あるいは将来の問題点、そういったものがあれば御見解を承りたいと思います。

久間国務大臣 私も、先生の質問で、何かないかというふうな質問があるというふうに聞きましたので、何かあるかなと随分私なりに一生懸命デメリットを探してみたんですけれども、正直言ってデメリットはないんですね。

 ただ、野党的な方々の立場であえて言うならば、何か、防衛庁が省になることによって、旧軍みたいなイメージを持つような懸念を諸外国に与えることがあるのかなと。そういうことについては、そうじゃないということをやはり我々は説明しなけりゃいけないなと思います。

 今度の法案によって、本当にそういうことはないわけでありまして、全く、やっている仕事自体は、やはり専守防衛で、しかも憲法に基づいて、国会の制約の中で、そしてまた予算なり法令なり、それに従ってやるわけでございますから、そういうことは実際はないんですけれども、イメージ的にそれを逆宣伝されますとそういうことにもなりかねないので、そういうことについては、やはり我々も謙虚に、そういうことにならないんですよということをみんなにちゃんと説明責任を果たさなきゃいかぬなというふうに思います。

 どうもデメリットというのは、見つけてみましたけれども、ありません。

山内委員 安心いたしました。ぜひ、国民への広報活動に、我々も協力しながら取り組んでまいりたいと思います。

 やはり、今回の省移行に関しては、執行官庁から政策官庁への転換ということが一番重要なポイントではないかと考えております。政策官庁として政策を立案していくためには、その基礎となる調査研究あるいはデータの蓄積、そういった機能がこれまで以上に重要になってくるのではないかと思います。

 防衛庁時代であれば、純粋に軍事的な戦略とか戦術とか、そういったことだけを研究していけばよかったのかもしれませんが、やはり政策官庁の防衛省としては、より幅広い視野に立った政策研究というものが必要ではないかと思います。例えば、軍事的な側面だけではなく、政治や法律、歴史あるいは経営学、いろいろな分野の専門性を生かした、より幅広い調査研究、そういったものが必要ではないかと私は思うわけですが、そういったことに関して、今後、どういった形で政策官庁としてふさわしい政策立案能力を強化していくかということについてお尋ねしたいと思います。

久間国務大臣 確かにそれは大事なことで、今までは自衛隊の運用を図っていけばよかったんですけれども、これから先は、国の安全というのをどういうふうに考えていくか、またそのためには、過去にさかのぼって、あるいは各国のいろいろな実例等についても、今まで以上にやっていかなければならないと思います。

 これまでも、防衛庁の場合も、防衛研究所等がございまして、そういうことについての、シンクタンクとは言いませんけれども、いろいろな研究調査、そういうのをやっておられましたけれども、やはりそういう意味では、こういう防衛研究所なんかの役割をやはりこれまで以上に大きく充実させていかなければいけないんじゃないかなというふうに思いますので、これから先、皆さん方がそういう観点からもひとつ取り組んでいただけるように、私自身も長官として、そういう方向へもっと、ハッパをかけるというのは語弊がありますけれども、力を入れるように努力していきたいものだと思っております。

山内委員 そういった政策官庁としての防衛省でこれから重要になっていくのは、私は、特に安全保障対話あるいは防衛交流、そういった分野がこれまで以上に重要になってくるのではないかと思います。近隣諸国との信頼醸成あるいは紛争を予防していくといった観点から、各国の、特に近隣諸国の政策立案に携わる研究者とか、あるいはいろいろな国の防衛当局の高級官僚、そういった人たちとの人的な交流を促進していくということが必要ではないかと思います。

 例えば、最近では、石破先生の御尽力で中国との防衛交流が始まったというようなテレビをちょっと拝見したんですけれども、そういった政策対話、防衛交流、こういった分野をこれからどのように強化していくか、あるいは強化していく予定はないのか、あるいはどういった形で近隣諸国との信頼醸成に向けたそういった地域交流を進めていけばいいのかということをお尋ねしたいと思います。

久間国務大臣 私が十年前に防衛庁長官に就任しましたときに、アメリカとの関係で、いわゆるガイドラインの見直しをする、そこをやったわけでございますが、それと同時に、やはり今言われたように、二国間の防衛交流あるいは多国間の防衛交流が必要であるということで、あのときは結構活発に、制服同士あるいはまた首脳同士の交流を始めたわけであります。

 私のときも、ロシアも来てくれました。私はまた中国にも行きましたし、中国からもまた当時の国防部長が見えました。そのほか、韓国とも行ったり来たりして、結構二国間の防衛交流は始まりましたし、またASEAN地域フォーラムという形で、ASEAN地域の各防衛関係の当局者あるいはまた制服その他も含めて、いろいろな交流の場で安全保障の問題について議論が始まったわけであります。それがちょっとまたしばらく途絶えてしまいまして、そして、今おっしゃいましたように、石破先生のときに行われまして、それからまた、艦船が向こうから来てもらう順番になっておったけれども、またそれがしばらく途絶えておるというような、そういう状況でございます。

 これから先はやはり、今言われましたように、そういう二国間のあるいは多国間の防衛交流を通じて、あるいは防衛だけではなくて、あらゆる分野での交流を通じながら、どういうふうにして安全環境というのをつくっていくのが一番いいのか、そういう方策をお互いが、日本だけじゃなくて、みんなと一緒になってつくり上げていく、それが一番大事な時期に今来ているんじゃないかなと思います。

 やはり、平和であるというのはお互いの信頼関係がないといけないので、双方が透明性を持って、手のうちを明かすような信頼関係ができ上がらないと、疑心暗鬼になるところに、何か思わない出来事でつまらぬことになってしまう、取り返しのつかないことになってしまうというおそれもありますので、そういうことのないような環境構築を図るというのがいかに大事かということをみんなにわかってもらいたいと思っておるわけであります。

山内委員 今の長官の御発言の流れに沿っていくと、やはり戦争と平和というのは裏表であるかと思います。防衛庁の防衛研究所でも、どうやったら戦争に勝てるか、どうやったら日本を守れるかというところも重要だと思うんですけれども、それ以前に、戦争をいかに未然に防いでいくか、未然に予防していくかといった観点からの、くどいようですが、調査研究というものをしっかりやっていかなくてはいけないのではないかと思います。

 私は、大学時代、もう十数年前に読んだ本に、「戦争回避のテクノロジー」という本を読んで大変感銘を受けた覚えがありました。過去二百年ぐらいの戦争をいろいろ、数百件の戦争を調査研究してデータベースをつくってみると、戦争が起きる原因で一番多いのは、やはり疑心暗鬼であるところ、敵について無知であることが戦争を起こす要因になってしまう、あるいは国民が軍事に関して無知であることが戦争の原因になってしまう、あるいは戦争発生の可能性に目をつぶってしまうことが結局戦争に巻き込まれる原因をつくってくる、そういった事実がその二百年間の戦争の分析からわかるわけでありますが、こうやって、戦争を回避するためには、戦争を防ぐためには、やはりお互いがお互いをよく知るということが非常に重要ではないかと思います。そして同時に、国民の皆さんによく軍事のことを知ってもらうこと、それが、平和をつくるために、戦争を防ぐために重要じゃないかと思います。

 今の自衛隊ではよく、観艦式であったり、あるいは富士の火力演習であったり、一般の国民の皆さんに自衛隊の装備をお見せする、そういった部分での広報は非常に積極的で、それはそれでよろしいかと思うんですけれども、これからは、政策官庁らしい広報活動、例えば日本の影響力のあるオピニオンリーダーに対して、より軍事の問題、防衛の問題をしっかり理解してもらう、正しく知ってもらう、そういった努力というのがこれから必要になってくるのではないかと思います。

 やはり、政策立案に強い、それも政策官庁の条件だと思いますが、政策のコミュニケーション、いかに防衛政策あるいは近隣諸国の軍備の状況、そういったことを影響力のあるマスコミの関係者あるいは財界のトップ、そういった人たちに知ってもらう、正しく認識してもらう、そういうことがこれから必要なのではないかと思います。そのための何らかの、防衛省として、省になった暁の方法というか手段とか、そういったものについてコメントをいただければと思います。

久間国務大臣 今委員がおっしゃられたことは本当に大事なことでございまして、自分がつくる政策について、やはりそれを、自分が満足するだけではなくて、ちゃんと理解してもらって、国民がそれをサポートするような、そういう体制ができていることが一番大事でありますから、従来から、防衛庁時代におきましても、防衛政策懇話会とか、あるいは懇談会とか、財界の皆さん方との関係とか、あるいは有識者に対するPRと言ったら語弊がありますけれども、集まってもらっていろいろな懇談をするとか、そういう機会はつくってきたわけでございますが、これから先もそういう点で努力をしていきたいと思っております。

 ただ、先生が先ほどおっしゃいました中でちょっと気になりましたのは、従来の、過去の、いかにして戦争を防げたかとか、あるいはいかにして戦争をしないようにするか、それももちろん大事でありまして、そういう過去の経験則も大事でございますけれども、ただ、過去の、今までの戦争は国対国の戦争だったのが、最近はそれだけにとどまらない。いわゆる国以外のいろいろな組織といいますか、宗教団体も含めて、日本の国内でもオウムみたいのがありますけれども、外国でもやはりテロとかいろいろな集団が、目に見えるような敵じゃない形での敵があらわれてきている。これはまた従来と違った時代背景じゃないかなと思うわけです。

 それで、防衛省になりましたときには、そういうような従来の国対国の争いだけでなくて、双方の国がそういうのを共通の敵として意識しながら、どういう形で不利な状態を回避するように努力するか、これが非常に大事じゃないかなと思うわけであります。

 今、よく核論議が行われておりますけれども、例えば北朝鮮とか、あるいはまた、もし日本がとか、いろいろな国が核兵器をもし持ったとしても、その技術がよそに伝わらないという、それがなかなか難しいんですよ。だから、あっちこっちの国で核兵器をつくり出しますと、核競争になると同時に、その技術がそういう目に見えない敵に渡ってしまうおそれが出てくる。これが一番怖いわけでありまして、国でありますと、やはりそれがコントロールがきいて、核の傘で対抗は、お互いに抑止がきくんですけれども、テロ集団とかそういうのに渡る、そこをとめることが本当にできるのか、そういうことが一番問題でして、やはり、中国なんかも盛んに恐れているのは、日本がもし核兵器をつくったならば、日本が幾ら守っておっても自然自然のうちにそれが近隣諸国に伝わっていって、近隣諸国がそれをまねてつくりゃせぬかという懸念があるわけですね。北朝鮮に対してもそういう懸念が実はあるわけですよ。

 そういうことで、今はもう、中国も含めて六カ国、みんなが一生懸命になって、六カ国じゃない、北朝鮮を除いて五カ国が北朝鮮の核を抑えようとしているというのは、そこのところが非常に大事なわけでございますから、今までの、過去の、十九世紀、二十世紀の戦争と違ったような観点からの取り組みもこれから先はやっていかなきゃいかぬのかなと思っておりますので、今度はまた先生のライフワークにもひとつ入れていただきたいと思います。

    〔北村(誠)委員長代理退席、委員長着席〕

山内委員 御指導ありがとうございました。

 続きまして、防衛庁、省昇格すると今度は国際平和協力等の業務が本来任務化されるということで、これは私は、国際社会に対する貢献の手段をふやすという意味で、大変望ましいというふうに思っております。

 また、最近、日本以外の多くの先進国はODAをふやしておりまして、その背景には、テロ対策の意味でのODA増加傾向といったことがあるかと思います。また、発展途上国、特にイスラム教国での貧困あるいは社会的な不公正、そういったことがテロを生み出す温床になっている、そういう認識のもとに日本以外の多くの国はODAを増加している傾向にあるわけですが、やはりこういった自衛隊による平和維持活動も、国際的な広い文脈でのテロ対策の一環とみなせるのではないかと思います。

 特に、自衛隊、軍事組織以外ではできない平和協力というのはたくさんあるわけです。例えば停戦の監視にしても、あるいは紛争地の復興支援にしても、なかなか民間の組織では対応できない、そういった平和構築のための業務があるわけで、今回のように法改正によって国際平和協力業務が本来の任務とされることは、大変望ましいと私は思っております。

 ただ、具体的に、本来任務化ということでこれまで以上に重要な位置づけになるかと思いますが、その結果、どのような変化というのが自衛隊組織あるいは防衛省の組織に生まれるのでしょうか。例えば予算がふえるとか人員がふえるとか、そういうことはないのでしょうかというお尋ねをしたいと思います。

久間国務大臣 今、直ちにこれでもって予算がふえるとか組織がふえるとか、そういうことを考えているわけじゃございませんけれども、やはり、本来任務としてそこが位置づけられますと、本来任務を適切に行うためには教育も必要でございますし、また、即、それがすぐ、いろいろな形で要請されたときに出ていくような体制づくりも必要でございますから、そういうことについてはやはり今度の法律改正を契機にやるべきだと思って、もう既にそういう動きは十八年度の予算でもやっておりますけれども、十九年度の概算要求等でも、そういう即応集団の中にそういうような部隊を設置するようなことも含めて今検討をしているところでございまして、そういう点では、やはり本来任務化になりましたときに対応できるような、そういう組織、訓練は必要じゃないかなと思っております。

 かなり今、輸送についても結構そういう必要な機具はそろえておりますけれども、これでいいのかどうかということについてもまた十分検討をしていきたいと思っておりますが、今の段階では、それほど大きな予算上の増というのは考えずに、現在の枠内でやろうというような、そういうことで考えているところであります。

山内委員 それでは、やはり国際平和協力、予算はふえなくても、ぜひ専門性を強化する、あるいはノウハウを蓄積するといった方向で取り組んでいただきたいと思っております。

 私は、以前民間のNGOで途上国の援助にかかわっておりまして、アフガニスタン、東ティモール、幾つかの国で、日本の自衛隊、よその国のPKO活動、よその国の軍隊が人道援助にかかわっている、そういった現場を目撃し、あるいは時々交流もあったわけですが、国際的な紛争地におけるこういった平和協力活動においては、軍と民間の人道援助機関、あるいは軍と国連機関や現地政府との連携というのが大変不可欠になってまいります。国連の難民高等弁務官、UNHCRの職員用のマニュアルには、PKOの軍隊とのつき合い方、そういったマニュアルもあるぐらいで、人道援助機関の側では、どうやって軍隊と協力して平和のために、復興のために協力していくか、日本の場合自衛隊ですけれども、そういった体制が大変整っております。

 アメリカ軍はちょっと知りませんが、ヨーロッパの軍は結構、民間の人道援助機関との連携を非常にスムーズにするための工夫をたくさんやってきております。また、平素から軍と民で協力して、災害復旧でも、日本でもそうですけれども、途上国の平和構築、平和協力において、軍民の協力というのが非常に大きな意味を持ってくるわけでありますが、そういった分野の専門性というのが今、日本の自衛隊ではまだまだ足りていないんじゃないかと思います。そういった部分を強化すべくいろいろ平時から努力をしていただきたいということで、質問というよりは意見になりますが。

久間国務大臣 確かに、おっしゃるように、これから先の国際平和協力業務が効果を上げるためには、単に自衛隊が行うだけではなくて、そういうNGOあるいはまたJICAを初めとするいろいろな機関、あるいはまた国連の機関、そういったところとうまく連携をしながらやっていく必要がございます。

 そういう点では、従来、日本の国際平和協力業務というのは単発でございましたから、行って帰ってきた、そのノウハウの蓄積がないままに、次の部隊編成のときはまた別の部隊が出ていくというような、そういうことになっておりますから、従来みたいな、えりすぐったと言えばいいわけですけれども、みんな集めて部隊をやって、また帰ってきて、それがまた各部隊に散っていく、そういうのがいいのかどうか、これも含めてやはり研究する必要があるんじゃないかなと思います。

 一回行った部隊が、経験を積んだ部隊がまたこちらの方に行く場合には、前のときにこういう形でそういう国際機関とうまく連携してよくいったとか、あるいはうまくいかなかったとか、そういう経験が残っている方が次に行ったときには生かせるわけでありますから、そういう点では、今おっしゃるように、そういうようなことがこれから先は必要になってくると思いますので、そういう点についてもみんなでよく研究しながら進める、そういうような時期に来たんじゃないかなと思っております。

山内委員 では、今の質問をちょっと続けさせていただきますと、私も、東ティモールにいたときにポルトガル軍が学校と病院を直すのを見ていたのですが、建物を直すのは非常に早い、それからうまい。だけれども、何も考えずに建物をつくって、学校の先生の手配を何も考えていなくて建物だけつくってしまう。そういった形で、やはり軍事組織であるがゆえに、箱物をつくる、そういう工兵としての任務は達成するのが大変うまいのですが、現地当局と交渉したり、あるいは地域住民と交流しながら地域の人たちに感謝される援助活動を行っていくという観点でいうと、非常にプロフェッショナリズムが欠けているところがありました。日本の自衛隊がどうなのかちょっとわかりませんが。

 そういった意味で、自衛隊と、例えばJICAとか、あるいは民間の赤十字、そういったところとの交流であったり、あるいはノウハウのお互いの交流、そういったものもこれから必要なのではないかと思います。

 それでは次に、別の質問に入らせていただきます。

 今回、在外邦人の輸送も本来任務化されることとなりまして、私も、これも大変今の時代のニーズに合った、非常に時宜を得た措置だと思います。今や、在留邦人が百万人近く海外にいて、また、海外にいる日本人の生命を守るというのも、やはり同じく自衛隊の本来業務として非常に重要になってくるのではないかと思います。

 私も個人的に、昔JICAに勤めておりましたときにインドネシアで暴動がありまして、インドネシアにいる日本人を緊急避難させる、そういった避難オペレーションに参加したことがあるんですけれども、わずか数百人の日本人を暴動のインドネシアから日本まで逃がす、それだけでも大変な苦労をした覚えがあります。インドネシアの暴動のときは、九八年だったと思うのですが、単なる暴動でしたから、民間のフライトは飛んでいたし、空港も閉鎖されなかったしということで、それでも大変苦労しました。

 だから、もし大きな紛争が起きたとき、あるいはアフリカやインドシナ、そういった国々でクーデターや内戦が起きたとき、民間の飛行機もとまってしまう、空港も閉鎖される、そういったときに、自衛隊が出ていって助けてくれるということであれば大変心強いわけです。私がJICAの職員であったときも、JICAの専門家がアフリカにいてクーデターに巻き込まれた、そういった専門家をよその国の軍隊に助けてもらった、そういった経験がありまして、大変恥ずかしいというか情けない思いをした覚えがあります。

 そういった意味でも、こういった在留邦人、在外にいる日本人の命を守る、そういうオペレーションを強化していくということは大変重要であると思います。

 今回、省に移行するに当たって本来任務となりました。これから、本来任務になったこの在外邦人の輸送能力の強化という点で、どういった措置がとられるのかということについてお尋ねしたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 まず、航空機の関係でございますが、在外邦人の輸送といたしましては、現在、C130につきましては十三機、それから747型のいわゆる政府専用機、これにつきましては二機保有してございます。あと、新しい話といたしましては、今年度末から空中給油輸送機、いわゆるKC767でございますが、これが入ってくることになっておりまして、緊急の場合の在外邦人の輸送にも充てられるというふうに考えてございます。それから、より航続距離が長くなりまして輸送能力も強化された新型の輸送機、いわゆるCXでございますけれども、これも開発中でございますが、今中期防中にも整備する予定がございます。

 それから、船の関係でございますが、輸送に適する船舶といたしまして、輸送艦三隻、「おおすみ」型のLSTでございますが、これがございます。それから、ヘリコプター搭載護衛艦DDH四隻がございます。回転翼といたしましては、掃海・輸送ヘリコプター十機、それから哨戒ヘリコプター九十二機を保有してございます。

 これに加えまして、いわゆるDDHにつきましては、平成十六年度、十八年度から新しいものを導入することとしておりまして、それからヘリコプターにつきましても、MCH101とかSH60Kとか、邦人の輸送に適する飛行機を今後整備する計画になっているところでございます。

山内委員 では、ちょっと別の質問に移らせていただきます。

 防衛省になれば、防衛大臣が内閣総理大臣を経ずに閣議を求めたり財務省に予算要求したりということで、大分手順がシンプルになるというふうに理解しておりますが、そうすると、手続的に幾つかの手続をすっ飛ばしてシンプルになるということは、当然、防衛庁になるのか内閣府になるのか、どこかで人員を減らしたり、あるいは事務作業量を減らしたりすることができるのではないかと単純に思いますが、あるいは、防衛施設庁を今度は防衛省の方に統合していくことによって、管理部門等で人員削減ができるのではないかと素人目には思うわけですが、こういった人員削減の効果あるいは合理化の効果というのはあるのかどうか、教えていただければと思います。

久間国務大臣 防衛庁を省へ移行するという今度のこの法律ではそういうような再編というのは考えておりませんので、そしてまた、それほどの人員の減にはなってこないと思います。

 というのは、形式的には確かにいろいろな煩雑な手順が要りますけれども、かなり専決処理でおりておりますし、最終的には内閣府に行って判こをもらわなきゃならぬという点はあるかもしれませんけれども、実際は、実務としては防衛庁でもう専決処理でしておって、後から、行ってから判こをもらって出すぐらいのものですから、そういう事務の形式的な煩雑さがあるのが今度はなくなって便利な点がありますけれども、実員ではほとんど変わりません。

 ただ、防衛施設庁を廃止して内局へ統合する、出先も含めてかなり再編をするわけでございますから、これはやはり、今概算要求で出しているような中身を全部がらがらっと変えてしまってあれしますと、五、六十人のオーダーで人員を削減することができるんじゃないかなと思いますが、これは防衛庁の省への移行とはまた別でございますので、防衛庁の省への移行では、そういうような人員の改廃までは伴わないというふうに理解しておっていただいたらいいと思います。

山内委員 以上で質問を終わりたいと思いますが、これまでの質疑を通して、防衛省への移行に関して何もデメリットがないということを再度確認することができまして、ありがとうございました。

木村委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

木村委員長 速記を起こしてください。

 先般来理事をして御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 これより最初の民主党・無所属クラブの質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

寺田(稔)委員長代理 これにて最初の民主党・無所属クラブの質疑時間は終了いたしました。

 これより日本共産党の質疑時間に入ります。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

木村委員長 これにて日本共産党の質疑時間は終了いたしました。

 これより社会民主党・市民連合の質疑時間に入ります。

 これにて社会民主党・市民連合の質疑時間は終了いたしました。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

木村委員長 速記を起こしてください。

 再三にわたり理事をして御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。やむを得ず、残余の質疑は後日に譲ることといたします。

 次回は、明十七日金曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十六分散会


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