衆議院

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第9号 平成18年11月24日(金曜日)

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平成十八年十一月二十四日(金曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 木村 太郎君

   理事 赤城 徳彦君 理事 今津  寛君

   理事 北村 誠吾君 理事 寺田  稔君

   理事 中谷  元君 理事 笹木 竜三君

   理事 前田 雄吉君 理事 遠藤 乙彦君

      安次富 修君    石破  茂君

      小野 次郎君    大塚  拓君

      大前 繁雄君    瓦   力君

      篠田 陽介君    高木  毅君

      仲村 正治君    西銘恒三郎君

      浜田 靖一君    福田 峰之君

      福田 良彦君    宮路 和明君

      山内 康一君    山崎  拓君

      内山  晃君    神風 英男君

      津村 啓介君    長島 昭久君

      東  順治君    赤嶺 政賢君

      辻元 清美君    下地 幹郎君

      西村 真悟君

    …………………………………

   国務大臣

   (防衛庁長官)      久間 章生君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   防衛庁副長官       木村 隆秀君

   防衛庁長官政務官     大前 繁雄君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房技術監) 佐々木達郎君

   政府参考人

   (防衛庁防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁総務部長)  新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            石橋 幹夫君

   参考人

   (東洋英和女学院大学教授)            増田  弘君

   参考人

   (首都大学東京法科大学院教授)          富井 幸雄君

   参考人

   (軍事ジャーナリスト)  前田 哲男君

   安全保障委員会専門員   三田村秀人君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十四日

 辞任         補欠選任

  仲村 正治君     西銘恒三郎君

  山内 康一君     篠田 陽介君

  山崎  拓君     福田 峰之君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     小野 次郎君

  西銘恒三郎君     仲村 正治君

  福田 峰之君     山崎  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     山内 康一君

    ―――――――――――――

十一月二十四日

 米軍と自衛隊の一体化等に関する請願(笠井亮君紹介)(第六八二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六八三号)

 防衛庁の省昇格法案反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六八四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第九一号)


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     ――――◇―――――

木村委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として東洋英和女学院大学教授増田弘君、首都大学東京法科大学院教授富井幸雄君及び軍事ジャーナリスト前田哲男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、増田参考人、富井参考人、前田参考人の順に、お一人二十分程度御意見をお述べいただき、休憩を挟んで午後一時から、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知をいただきたいと存じます。

 それでは、まず増田参考人にお願いいたします。

増田参考人 増田でございます。

 今回、防衛庁を防衛省へ昇格するという大きな問題の背景といたしまして、私は、国民世論の安全保障に対する認識が極めて深まっている、こういう事実を指摘したいのであります。

 国民の安全保障に対する認識が急速に変化したのは、一九九〇年代がターニングポイントではなかったか、このように考えるわけでございます。

 具体的に申しますならば、まず第一番目に、九〇年代初頭に湾岸戦争が発生し、御承知のとおり、日本は数回にわたり合計百三十億ドルもの資金を、アメリカを中心とする多国籍軍に提供したわけであります。ところが、そうした日本の国際貢献のあり方というものが国際社会から批判を浴びることになります。すなわち、日本は金は出すけれども汗を流さないのではないか。こういう、それまでの日本の国際貢献のあり方というものを真正面から批判される。政府のみならず、一般国民世論の間でも改めて反省の念が起こった。それが、PKOという活動につながるわけであります。

 第二番目に、一九九〇年代の前半期、九二年から九四年にかけまして北朝鮮の核疑惑が生じ、九四年には米朝間で、極めて厳しい、緊迫した状況が生まれる。後にテポドンが、九八年でありましたか、日本の上空を通過するという極めてショッキングな事態が生じ、今日、北朝鮮による核実験が行われた。こういう事実が、日本国民をして、改めて、日本のすぐ北に位置いたします朝鮮半島において日本の安全保障を脅かす事態が生じている、こういう認識が広まってきている、これが第二点であります。

 それから、第三点といたしまして、九六年にいわゆる台湾海峡危機が生ずるのであります。これは、台湾の総統選挙に際しまして、中国がミサイルを台湾沖に発射する、これに対してアメリカが空母二隻を派遣する、こういう事態が生じまして、これまた緊迫した事態となったわけであります。そういうことで、日本の北、南、日本の周辺におきまして、こうした、日本にとって軽視できない事態が生じたということが、第三番目といたしまして指摘できるところであります。

 国内におきましては、九五年にあの地下鉄サリン、オウム真理教による事件が発生しておりますし、淡路・阪神大震災というような自然災害も生じて、いわゆる危機管理の問題が改めてクローズアップされるわけであります。のみならず、遠くペルーの地におきまして、九六年から九七年にかけまして、日本大使館大使以下、現地のテログループによって拉致されるというような、これまた衝撃的な事態が生じたという一連の事態を通じまして、国内、国外におけるそうした一連の安全保障、あるいは危機管理に関する問題が生じたということが、政府のみならず、国民の間で安全保障に対する認識を新たにさせるということになったわけであります。

 それまで、日本のいわゆる吉田路線というものは、むしろ経済を最優先する、ということは、言いかえますと、政治、安全保障の面を極力抑えるといいましょうか、政経分離あるいは経軍分離といった形で、できるだけ避けるという姿勢が内外、内政、外交にあったわけであります。五〇年代、六〇年代という、日本がまだ世界の片隅で息を潜めて生きている時代であれば、そうした姿勢というものは問題とされることは小さかったわけでありますけれども、七〇年代、八〇年代と、日本は押しも押されもしない経済大国となり、世界の多極化構造の中の一極を占めるような事態になりますと、そうした姿勢に対する批判が、同盟国でありますアメリカからもジャパン・バッシングというような形で、あるいは日本のただ乗りというような批判も八〇年代の末に生ずるわけであります。

 そういう過程を経て九〇年代を迎えたわけでありまして、そうしたことから、日本の現状にふさわしい、経済力に見合うだけの政治力、あるいは安全保障の能力を高める、いわば二等辺三角形の国から正三角形の国になるという、こうした状況が国民の間にもごく自然に受け入れられるような状況が生まれてきた。事実、若い世代におきましても、政治や経済と同列に、同レベルにこの安全保障の問題が論ぜられるような、そうした空気が生じてきているわけであります。

 いささか古いことになりますけれども、昭和四十年代、私は当時大学生でありましたけれども、その当時は、軍事とか安保とか国防といったような言葉は、むしろ禁句とされるわけでありまして、日米安保体制を肯定するようなことを申せば非国民扱いされかねない、そうした空気が漂っていたのであります。しかし、九〇年代を通じまして、日本社会の通念、理解、常識というものが大きく変わったということが、今回、それに見合う、防衛庁を防衛省に昇格すべきである、こういう状況を生んだものである、こう指摘できるのであります。

 さらに、第二番目として私が指摘させていただきたいことは、先ほど申し上げました、湾岸戦争を通じての日本の国際貢献のあり方が反省を余儀なくされた、その延長線上に生じたのがPKOでありました。九二年に、PKO協力法のもとに日本は自衛隊をカンボジアに派遣することになったのであります。その際、マスコミ等々を通じまして、日本の海外派兵につながる、こういう批判がありましたけれども、PKOの原則を遵守するという形で、カンボジアでの政権のスムーズな交代、選挙を通じての新政権の誕生に日本は貢献をするということによりまして、世界から日本のそうした役割というものが評価されることになったのみならず、国内におきましてもそうした自衛隊の平和的な活動というものが改めて評価されたと申してよろしいかと思います。

 その後、自衛隊は、このPKO活動といたしまして、モザンビークであるとか、あるいは東ティモール、ゴラン高原といった各地におきましてPKO活動を続けていることは御承知のとおりでありまして、自衛隊にとりまして、国内の災害に対する緊急出動であるとか、あるいは一連の日本の防衛という問題に加えまして、国際的な平和活動というものが、今日の防衛庁・自衛隊にとって大きな役割になってきている、すなわち、いわば車の両輪となってきている。

 そうしたことも、この際、付随的な役割ということから本来的な役割へと移行させることによって、より国際的な面での協調的な活動に奉仕することが可能になる、こういうことが大きな第二番目の省昇格の要因、理由であるというふうに考えられます。

 それから、第三番目といたしましては、今日、防衛庁の長官、これは、防衛の役割を担う長として限定された立場に置かれているわけであります。すなわち、二〇〇一年の行政改革によりまして一府十二省庁がスタートしたわけでありますけれども、いわば防衛庁はこの改革に事実上取り残されたと言っても言い過ぎではない。すなわち、内閣府の外局として防衛庁が位置づけられる。したがいまして、防衛面の一義的役割は内閣府の長でもある内閣総理大臣ということになっているわけであります。

 片や、数千の庁が省になり、片や、二十七万もの要員を擁する防衛庁が庁のままにおかれるということは、国内の法的な側面、すなわち、予算面を独自に出すといったことや、閣議を独自に要求するといったことが難しい、こういう側面のみならず、対外的には、防衛庁という、エージェンシーという位置づけが、外国から見れば一つの省の部局という位置づけになるわけでありまして、これまた外国から見れば防衛を担う部局としては適切な名称とは言えない。そういう内外の点からも、この際、日本は防衛庁を防衛省に昇格させることが時宜にかなった措置であろう。

 こういう以上の大きな三つの点から、防衛庁を防衛省にこの際昇格することがより適切ではないだろうか。

 以上、私の意見でございます。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 次に、富井参考人にお願いいたします。

富井参考人 おはようございます。富井でございます。

 おととい、急にこういうことをやれということを言われましたので、準備不足をまずおわびしたいと思います。

 お手元にレジュメが行っていると思いますけれども、非常に雑駁ですけれども、考えているところを述べさせていただきたいと思います。

 先ほど委員長より忌憚のない意見ということがありましたので、まず最初に、大きい数字で書きましたけれども、今回の防衛省昇格という議論ですけれども、ちょっと筋が悪いのではないかというふうに考えるということであります。

 すなわち、一番、盛り上がりに欠ける省昇格議論と書きましたけれども、どうも世論というか社会で、防衛省にすべきだという強い議論が果たして起きているのかということを疑問とせざるを得ない。すなわち、私が言いたいのは、国民は、防衛庁を防衛省とするという難しい問題よりも、これだけ、特に九・一一以降、非常に安全保障に対する危機意識等が高まっている。本当に今のままで、個人の安全のみならず国家の安全というのが保たれるのかというようなことが第一の関心にあるというわけで、そういうことであるならば、庁でも省でも別に構わないというような議論をせざるを得ないというのが出てきてもしようがないのではないかということであります。

 一番のところですけれども、防衛庁は、御存じのように、防衛省にするという議論は防衛庁ができたときからある、あるいはそれ以前からあると言ってもいいわけですが、例えば防衛庁のホームページを見ますと、今回は非常に鼻息が荒いという感じがするということです。

 防衛庁の防衛省昇格の理論づけということを見ますと、ここにちょっと書きましたが、重要なのは、自衛隊法の三条の二項を追加する、すなわち国際平和協力業務と周辺事態、主に国際平和協力業務の方だと思いますが、これをしたいということで、そうなると今のままではだめだということなんですけれども、そうなってくると、では省にしないとそれはできないのかというような反論をされても仕方ないということになってくる。

 防衛庁のホームページを見ますと、諸外国では省になっているから国際並みにしたいとか、あるいは、ここに書きましたが、自衛隊員の士気にかかわるということ。これは書いてなかったんですけれども、ここに書きましたが、もしかすると、これは非常にうがった見方で憶測かもしれませんけれども、防衛官僚という立場からすると、ほかのI種の人間は省にいるわけですけれども、自分はどうも防衛庁というところにいるという引け目という意識がある、早くこれを払拭したいというようなこともあるのかもしれない。これは、非常にうがった見方でありますけれども。

 そうすると、こういった論理というのは果たして説得力を持つのかということであります。ここに書きましたが、昔から言われていることは、防衛省にしないと自衛隊員の士気が下がるという議論、これは一見まとも、合理的なような気がするんですけれども、では、省じゃないと自衛官の士気は上がらないのか。これは非常に自衛官をばかにした言い方でありまして、自衛官は省だろうが庁だろうが淡々と任務をこなしているという集団であります。

 ただ、ここに書きましたが、士気、特に武装集団において士気というのは非常に重要なことであるわけで、だから、士気が上がる下がるということ、確かにこれは重要なことであります。ただ、これは検証のしようがないという問題があるということです。

 そうなってくると、防衛庁が今出しているような、いわばこういった政治的な側面、いわゆるハートに、心理に訴えかけるような説得の仕方というのは、一部の人間には説得力があるかもしれませんが、さめた目からすると、必ずしもできないということであります。

 次に、ちょっと法律的な話をしますが、一般に、過去において庁から省に昇格した事例というのがある。古くは昭和二十五年ですか、これは間違っているかもしれませんが、自治庁は自治省になっている、あるいは、環境庁というのは先般の二〇〇一年から環境省になっている。防衛庁はもっと古くからあるのに、自分だけが置いてきぼりにされたというような感覚があるのではないか。これは、法律的な話をすると、庁も省も、省はいわゆる国家行政組織法の行政機関であるし、庁は外局であるというようなことで、それを何をもって省にし、何をもって庁にするか、外局にするかということについて、法律上の何か明確なメルクマールというのがあるというわけではない。

 ただ、環境庁が環境省になったりしたということにはそれなりの理由があるということで、ちょっとここに書きましたけれども、総合的に取り組まなければいけないというような認識が非常に高まったということがあるのではないかと思います。もちろん、国際的にも環境というのが非常に重要視されてきているということがあると思います。

 そうすると、四角の大きな枠で書きましたけれども、国民は、庁を省にするということが、もしそれが、究極の目的である国民あるいは国家の平和、安全を守るということにとって不可欠であるというような説得づけがなければ支持されないのではないかということで、二番に書きましたけれども、今の防衛省の議論というのは必ずしも筋がいいとは言えないということであります。

 すなわち、私が言いたいのは、防衛省を否定するというわけではなくて、防衛庁を省とするということであるならば、やはり国民の負託にこたえる、今、特に九・一一以降、あるいは日本の場合はもっと古いかもしれません、サリン事件以降かもしれませんけれども、国民のそういう安全保障に対する不安というのを除去してあげる、国家としては万全の体制をつくり上げるということをしなければいけないのではないかということで、防衛庁の省問題というのは防衛庁一行政機関の改革だけではないということであります。

 一ページの最後から二ページにかけてですけれども、何を言いたいかというと、やはり、この際、中央省庁の再編、安全保障機構を再編するというような大きな枠組みの中で防衛省を議論するということでなければ、これはどうも筋が悪いのではないかという気がするということです。

 二ページを見ていただきたいんですけれども、諸外国の例を見ますと、九・一一以降、例えば、アメリカやカナダしか勉強していないんですけれども、安全保障機構を大きく改編しているわけですね。御存じのように、アメリカは、デパートメント・オブ・ホームランド・セキュリティーというのをつくっている。私は個人的にカナダのことに関心がありまして、あのカナダでさえという言い方も失礼ですが、あのカナダでさえ、九・一一のすぐ後、アンタイテロリズムアクトという反テロ法をつくっている。

 さらに、二ページの一番上に書きましたけれども、カナダも、どちらかというと、日本と同じように余り危機意識とか安全保障というのは薄かった部分があるんですけれども、急遽、緊急事態対処というようなことを統合してつくっているということであります。

 二〇〇三年にクレティエンの後を継いだマーチンが提唱して、二〇〇四年から立ち上がっているわけですが、PSEPC、パブリック・セーフティー・アンド・エマージェンシー・プリペアードネス・カナダ、公共安全緊急事態対処省という形になっている。この中に、連邦警察を初め、情報機関ですとかそういうものを入れているということであります。あのカナダでさえそういうことをやっている。カナダでさえというのは失礼ですけれども、ということです。

 ということで、(二)と(三)ですけれども、総合的な取り組み、安全保障機構を再編する、国民の負託にこたえるというような改革がなければいけないのではないかということであります。

 時間がないので詳しいことは言いませんが、例えば(二)では、安全保障の前提は情報収集、分析ということでありますけれども、これをちゃんとやる機関、首相官邸で合同情報会議ですとかいうのはあるとは思いますけれども、例えば、警察、治安情報と、防衛庁が集めている情報、今テロという非常に怖いものがありまして、これはどちらが集めるのか。公安調査庁というのは何をやっているのかよくわからないというようなことがあるということで、やはり情報収集ということを明確にするということと、それをちゃんとすり合わせる機関というのがまず不可欠ではないかということであります。

 ここに書きましたけれども、例えばカナダなどでは、CSIS、カナディアン・セキュリティー・インテリジェンス・サービスと言うわけですが、これは、緊急事態対処省の中に入っているわけですけれども、例えばアメリカのように、必要な場合は令状なしに盗聴ですとかそういうのができるというようなことになっている。もちろんこれはいろいろ批判がありますけれども、しかし、カナダの場合は、そういったことをした場合は議会にちゃんと報告するというような仕組みをとっているということであるわけで、日本でこれをやるということは憲法上いろいろ難しい問題があると思いますけれども、しかし、それぐらい真剣に考えないといけないのではないかということです。

 あと、(三)ですが、そもそも、こういった安全保障機構を再編するというわけですけれども、その指導原理がない、基本法ですとかというものがない、あるいは機関に関する調整をする機関がないということであります。

 ということで、むしろ、そういう流れの中で防衛省という構想が出てくる方が筋としてはよいのではないかという議論であります。

 二番目ですけれども、矛盾するようですが、そうはいっても私は防衛省構想に反対するという立場ではない。ここに書きましたが、法的な意義は認められるということであります。

 これは、防衛庁が出している二番目の側面、すなわち、省になることによって、防衛に関する重要案件の閣議を要請できるですとか、あるいは予算だとか法案について自主的に出すことができるですとかというような面が出てくるということであります。これは、なるほどそのとおりだと。すなわち、むしろこの点は評価されていいのではないかということであります。

 二ページから三ページにかけてですけれども、しかし、そもそも防衛庁や防衛省といっても一体何かという議論、これは果たして十分なされているのか。確かに、戦後五十年、防衛庁は五十年たっているわけですが、防衛庁や防衛省とは一体どういう組織なのか、何をするところなのか。確かに防衛庁設置法には自衛隊を管理すると書いてありますけれども、一体、ではそれはどういうことなのかということですね。

 ここで重要なのは、今度、省になれば、国家行政組織法の国の行政機関、すなわち財務省や国土交通省などと同じ省になる。しかし、それは同じ省なのかということであります。

 大きく違う点は二つ挙げることができると思います。いろいろあると思いますが、二つ挙げることができると思います。

 一つは、防衛というのは国の基本的な責務にかかわるということで、武力行使を前提とするという言い方はおかしいんですけれども、武力行使をする機関である。

 すなわち、一般行政庁というのは、例えば財務省なんかは税金を取るですとか、そういういわゆる通常の意味での一般行政事務、国民の権利義務にかかわる事柄をやる。しかし、防衛庁というのは、もちろんそういう部分もあるわけですが、究極的には、そういう国民にサービスをするという、まあサービスなんですけれども、サービスするという部分よりも、やはり国の基本的な枠組みを守るということで、対外的なものに向いているということで、どうも一般行政という概念というのは必ずしもなじまないのではないかという問題がある。これが一点です。

 もう一点は、ほかの省庁と違って、防衛庁はいわゆる官僚だけではないということですね。これはほかの省庁と違います。ほかの省は全部文官ですけれども、防衛庁は、文官と自衛官、この二つの集団から成っているということが大きく違うということであります。

 三ページの一番上に書きましたけれども、では、防衛庁とか防衛省、まあ防衛庁でもいいんですけれども、そういういわゆる官僚集団ですね、わかりやすく言ってしまえば。国の通常の行政機関と一緒にする防衛省、防衛庁というのはどういう意味があるのかということですけれども、これもいろいろ議論は分かれています。

 ここにちょっと書きましたが、一番重要なのは、やはり自衛官というのは、アメリカだとか、いわゆるハンチントンですとか、そういう流れから見ますと、いわゆる異質な職業集団であるということなんですね。したがって、これは一番に書きましたけれども、防衛省という官僚集団、文官集団の、もちろん自衛官も中に入っていますけれども、その文官集団の意味というのは、やはり政治過程、政策というソフトなものをいわゆる軍事というハードな面に流しをする、行き渡しをする、かみ砕いて行う。

 例えば、ここにちょっと英語の文献を書きましたけれども、この中では、防衛省、MOD、ミニストリー・オブ・ディフェンスというのは、バッファーの役目だと。バッファーというのは緩衝器という、いわゆる和らげるというか、そういうような意味ということであります。

 そもそも防衛省、防衛庁あるいは防衛政策というものを突き詰めてみれば、自衛隊をどう使うかということです。これは、もちろん自衛隊の使い方の一番根本はその内閣、政治家で決められるわけですけれども、それを実際に具体的にどう使っていくか、運営管理していくかというようなことをマネージするというのが防衛省、防衛庁というふうに言えると思います。

 ということで、ここで重要になってくるのは、防衛省に限りませんけれども、官僚集団ということですよね。すなわち、防衛省になると、これは意義あることですが、自主的に予算、人事、自主的にというか、予算ですとか法案あるいは閣議をここで求めることができる。そうすると、やはり重要なのは、防衛官僚が質のいい防衛政策というものをちゃんとつくってくれるということでなければいけないということなんですね。

 シビリアンコントロールという概念は、軍を統制する、政治に服させるという、これは間違いないわけですけれども、むしろ最近は、私の考え方では、確かにそれは基本なんですが、どうも軍を統制するということばかり向いている。実は、大きな意味では、軍事官庁ですね、軍事官庁を政治によって統制するということが重要であるということなんですよね。

 では、防衛省設置を否定するというわけじゃないんですけれども、どういうことを官僚に考えていくのかということですが、結局、今、防衛官僚の質が問われているということであります。石破先生の「国防」という本の中にも、これは私の読み違いかもしれませんが、非常に参事官に失望したという、これは言い過ぎかもしれませんが、そういうような記述、におわせる記述があったということですけれども、防衛官僚の質が今求められているということです。

 したがって、これはやはり、今海外で議論されているのは、単に防衛官僚というのは事務的なことだけ行う、予算ですとか人事ですとか法令ですとか、いわゆる官僚の典型的なことをやればいいんだということではないんですよね。軍事にもかなり精通していなければいけないということであります。

 だから、防衛省設置でもいいんですけれども、これは法案に盛り込むという事柄のことではないんですが、いい政策をつくり上げるということのためには、防衛官僚をどうしたらいいのかということを見なければいけないということであります。

 あと、防衛省設置でもいいんですけれども、これは時間的にはもう事後的になるかもしれません。きょう出てくるときに、民主党さんも一応基本的には合意するというようなことを漏れ聞きましたので、それはできてしまうのかもしれません。防衛省は認められるとは思いますが、やはり重要なのは、これはなるべく早く、先ほど第一段、前提で申しましたけれども、安全保障機構の再編ということを真剣に考えなければいけないということです。これが(二)のお話ということですね。

 今、例えばNSC構想というのがありますが、個人的には、勝手にというわけじゃないですけれども、つくり上げてから考えるというよりも、やはり法律で、権限ですとか調整ですとか、そういうものをちゃんと割り振った上で立ち上げるという方がいいんではないかなという気がするということです。これは雑駁な議論です。

 四ページの(三)、三番目ですけれども、今般懸念されるのは、防衛省になると、今言ったように、防衛省設置構想は、自衛隊法三条二項を追加する、周辺事態ですとか国際平和協力業務というものを追加するということで、どうもいろいろ広がってしまっているんじゃないか。本来任務化する。これもよくわからない。なぜかというと、自衛隊法三条一項は、主たる任務として国防に当たる、従たる任務として治安の秩序維持に当たるとなっています。今度は、改正案ですけれども、二項の方で本来的な任務にするということなんですよね。

 ということで、これもちょっとよくわからないんですけれども、少なくとも、これは多分、自衛隊法百条というのが打ち出の小づちのように使われていたんですね。ぼんぼんぼんぼん雑則のように、何か表現はちょっと思い浮かびませんけれども、いろいろつけ足していくというようなやり方をしていた。これは余りにも無節操というか、よくない。すなわち、軍に対する法律の役目というのは、いろいろな形で拡大させないようにするということ、コントロールするということの基本は法律によってセーブするということにあるわけなんですよね。ということで、それを明確にするということがあるのかもしれないということです。

 ただ、重要なのは、いろいろ権限を付与するということですが、では一体どこまで認められるのか。今回、国連、もういいよとなったときに、では次にまた何か出てきてそれもくっつけるんじゃないかというような危惧というのが出てくるわけですね。

 個人的には、自衛隊というのは、ここに書きましたがパナシアではない、万能薬じゃないんですよ。これは、憲法でしっかり、個別的自衛権をちゃんとやる、武力集団であると。これが本来の任務なわけですよね。だから、本来の任務がおろそかになるというわけじゃないですけれども、おろそかにされて、どんどんどんどん文民支援活動、これも大事なことですけれども、というのでいいのか。あるいは、それはいいとしても、一体、ではどういう原理でそれが認められるのかということを明確にしなければいけないのではないかということです。

 日本は憲法で軍に対する指導原理というのが、ネガティブなものはありますが、基本的にはない。そうすると、やはり自衛隊法というのが自衛隊に対するいわゆる基本的な法になるということなんですね。ということで、その辺にしっかり明確な指導原理というものを置いておくということが必要なのではないかということであります。

 あと、法律的な話ですが、(四)ですけれども、今般、防衛大臣というものをつくって、つまり、内閣府の首長である内閣総理大臣というものを通さないということになるわけで、これはこれでいいことなんですけれども、例えば、防衛出動時に内閣総理大臣が直接自衛隊を指揮監督するというようなことには現行の改正法ですと読めないということで、果たしてそれでいいのかという問題がちょっとあるのかなと思います。

 以上、いろいろなことを言いましたが、要は、防衛省の法的な意義ということは認められる。やはり安全保障は、軍事というところからも責任ある官庁を明確にして、意見、政策形成というものをしていかなければいけない。そういう意味では、防衛省という構想は、防衛省昇格というのは必ずしも否定されるわけではないだろう。しかし、本来、本当のターゲットというのは安全保障機構の再編にある、そういったダイナミズムの中でこの議論をしなければ国民には受けないのではないかというのが、私の考えということであります。

 以上です。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 次に、前田参考人にお願いいたします。

前田参考人 前田哲男でございます。

 私は、本法案に反対の立場から意見を述べたく存じます。

 一言で申すならば、この法案は、かくも問題点の多い、かくも問題点に対する議論の少ない、さらに、にもかかわらず、かくも慌ただしく採決が急がれる異常な事態であるというふうに考えます。

 普通、この法案は、きょうのこの席でも述べられましたとおり、防衛庁の省昇格ないし移行法案というふうに言われます。そうではないと思います。この法案が持つ本質はそのようなものではなく、自衛隊法のより根源的な改正、性格変更であり、そのような言い方は明らかに本質を隠ぺいする、さらに国民をミスリードする議論であるというふうに考えます。正面から向き合って、正面から国民に問題を投げかける、議論する、それが国会の役目ではありませんか。決して省昇格ではない。にもかかわらず、そのような議論が横行している。かなりの部分、これはメディアの伝え方にも問題があると思いますが、発信源がここにあることはまた間違いないことだと思います。

 正式名称は防衛庁設置法等の一部を改正する法律案というふうになっています。これも正確ではないと思います。なるほど、ちょうだいしたこの中には、防衛庁設置法の改正案が冒頭に掲げられておりますが、本則関係八十五ページのうち防衛庁設置法関係は二十ページ。最大の部分、そして実質的な内容、つまり、字句の修正、看板の書きかえでない事項にわたる改正が集中しているのは、分量も内容も自衛隊法改正の部分です。八十五ページ中六十三ページが自衛隊法改正の部分になっています。

 したがって、本法案は、正式に言うならば自衛隊法改正案、自衛隊法の基本的性格を改める法案として提出され、審議され、国民に投げかけられる、そのようなものであるはずなのですが、あたかも看板の塗りかえのような装いで提出されている、そこに大きな問題があると思います。

 さらに、具体的な問題点を述べてみますと、富井参考人も言及されましたとおり、本法案の核心部分は、自衛隊法改正、それも自衛隊法第三条、任務についての根本的改正を伴うというところにあります。創隊以来初めて、自衛隊創設以来初めて自衛隊の任務にわたる改正が提起された、大変なことであるにもかかわらず、それが議論の核心になっていないのはなぜかという重大な疑問があります。

 自衛隊法第三条は、言うまでもなく、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」と定めています。今回加えられる三条二項には、「国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」という表現があります。三条一項をひっくり返す、国際的に拡大する大きな任務の変更がなされている、にもかかわらず、それが一項とどういう関係にあるのかということが十分説明されていない。

 防衛庁のホームページを見ますと、説明資料として、「防衛庁の省への移行 法案のポイント」、九月発表のものですが、省移行の理由として、一つは「防衛と外交と「両輪」で国際平和に取り組むことが必要」という理由が挙げられています。第二点として「米国防省と対等に交渉し得る「組織」であることが必要」という理由が挙げられています。三点目に「米国との交渉や地方自治体等への対応について、責任と権限を持って調整し得る「組織と能力」が必要」というふうに改正理由を挙げております。

 これは、自衛隊が創隊以来基本任務としてきた三条一項を、全く性格の違ったものにしてしまう改正であると考えます。なぜそこをもっと具体的に、このような、「国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」というようなあいまいな内容で表現するのか解せません。

 さらに、三条二項を新設するのに伴って、三条二項の以下のくだりには、新しい法律を制定する予告がなされています。「別に法律で定める」。つまり、三条二項の新しい任務は白紙に置かれて、その内容に関しては新しい法律が予定されている。その内容はわかりません。多分、恒久法ないし一般法という名で語られている、自衛隊の海外派遣を即時、事後ではなしに直ちに行うことができる権限を防衛庁長官、内閣に与える、そのような法律であろうと予測できますが、法律の中に新法が予告されている、その内容に関して、私の知る限り議論が行われたということはない。どのような法律が別に定められるのか、その限界は何なのかということをきちっと示してもらわなければ、国民は納得しないと思います。

 そもそもという言い方をして恐縮ですが、原理主義者としてやはり述べなければなりません。そもそも自衛隊は、一九五四年、警察予備隊、保安隊を経て創設されたときに、年余にわたる激しい議論がありました。私もジャーナリストとしてその一端をかいま見ています。警察予備隊は、文字どおりナショナル・ポリス・リザーブでした。保安隊も、特別の場合に行動する、空軍を持たないから近代戦遂行能力がないので軍隊ではない、したがって憲法九条二項と違和感はない。しかし、航空自衛隊がついた自衛隊を創設するときに、当然ながら従来の論理では通用しなかった。そこで、必要最小限度の実力の保有は憲法に容認される、それは国家の自然権であり、自衛権発動の三要件に基づく限り合憲であるという今日に至る解釈が確立したわけであります。

 したがって、それとの関係で、自衛隊法三条一項、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務」とする。これは必然、憲法九条二項との緊密なあるいはぎりぎりの、私はもう乗り越えておると思いますが、少なくとも緊張関係を持った整合性のある条項としてつけ加えられたわけで、その証拠に、本自衛隊法を採択した参議院本会議は、附帯決議として、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議をつけた上で自衛隊法を採択しています。

 そのように、三条一項というのは単なる任務ではなくて、もちろん任務ではあるんだが、憲法九条との関係において設定された条項である。大変重い条項である。ここに二項を加えて、国際活動、海外活動を公然化する、本来任務化するということになりますれば、それは当然ながら憲法九条との整合性が破られるということになります。それについての説明は何もない。これは一体どうしたことなのか。

 なるほど、自衛隊法の中における矛盾は解決すると思います。

 先ほどの富井参考人の意見にもありましたとおり、九〇年代以降の自衛隊の活動は、海外活動に関する限り、ことごとく、三条任務ではなしに八章「雑則」第百条を活用する、雑則の行列でありました。本来、自衛隊法が制定された昭和二十九年、「雑則」百条は、土木工事の受託、ただ一項をもって成立していたものであります。東京オリンピック、南極観測その他があるにつれて、自衛隊の業務遂行に支障のない限度においていろいろなサービス任務がつけ加えられました。防衛庁は付随的任務と言っていますが、これはサービス任務です。付随では正確ではないと思います。

 そのように、六〇年代、幾つかの任務が加えられましたが、それが冷戦終結後、自衛隊が海外活動をするに際して、自衛隊法三条ではできない。そこで、この雑則百条、サービス任務にPKO、周辺事態、在外邦人の救出をくっつけた。百条の六から百条の十一まで、自衛隊が持つ海外任務、これまで二十回、三万人の自衛官がそのような任務を遂行していますが、すべてサービス任務であるわけですね。これが防衛庁当局にとって大変頭の痛いというより、均衡を失したものであると受け取られるのは当然ですが、それを本来任務に組み込むことで自衛隊法をすっきりさせようとするのは本末転倒であり、逆に自衛隊法の憲法に対する下克上がより決定的になると言わなければならない。

 そのような憲法と自衛隊法の関係についての根源的な議論が必要であり、そこからむしろ問題は始まる、論戦が始まっていくべきだと思うのですが、そういうふうになっていないわけですね。そこが大変大きな問題であろうと思います。

 ちなみに、先ほど少し引用しました、自衛隊法が成立する際に参議院が自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議という院の決議を行っておりますが、これに対して、木村保安庁長官、初代防衛庁長官であります方です、この委員会にも防衛庁長官経験者がたくさん列席されているようですが、木村初代防衛庁長官は、こういうふうに参議院の決議に関して答えておられます。「申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持つていないのであります。従いまして、只今の決議の趣旨は、十分これを尊重する所存であります。」

 これは、自衛隊法が成立したときに、自衛隊法三条の任務に関して初代の防衛庁長官が、参議院、国会に対しこのような誓約をした。この重みを皆さんがどうお考えになるのかということをお尋ねしたい。質疑はやってはならないと先ほど注意を受けましたが、私の疑問として持ちます。

 このような自衛隊法三条の趣旨、それを根底的に変えるような三条二項の新たな規定、加えて、「別に法律で定める」という新たな法律が予告されているということを考え合わせますならば、これまで自衛隊法百条、さらにその下の附則十七と附則十九に位置していたインド洋派遣、イラク派遣というような、事後、時限立法の特別措置法によって行われていた自衛隊の海外派遣が、第三条第二項、そしてそれに基づく別の法律によって、即座に、ないし場合によっては事前にアメリカの軍事行動とともに行われる可能性を持ち得る。論理的に、合理的な推測の中でこの法案を読む限り、そうとしか読めない、ないし立法者はそれを意図してこういう規定をしたとしか考えられない。そのような議論がなされないのはなぜであるかということも、私の強い疑問の一つであります。

 もう一つ、日米安保との関連で考えてみますと、日米安保条約第五条は確かに共同防衛を定めていますが、しかし、そこの共同防衛はあくまで個別的自衛権の範囲内であることは、五条の条文、我が国の施政のもとにある領域に対する、いずれか一方に対する攻撃という規定で明らかでありまして、日米安保、日米協力がいかに重要であるとはいえ、しかし安保の規定に立つ限り、それは本土防衛、日本防衛というところから出るものではない。日米協力をにしきの御旗として自衛隊法に手を入れるということは、明らかにここでも本末転倒があると思います。

 それに関して、六〇年安保の協議の中で、あの安保国会では、この条約によって日本がアメリカの戦争に心ならずも引き込まれるのではないかという国民の不安がありました。それに対し、岸信介総理大臣はこういうふうに答えています。「日本は、極東の平和と安全が日本の平和と安全にいかに緊密な関係があるといいましても、日本の自衛隊が日本の領域外に出て行動することは、これは一切許せないのであります」。一九六〇年三月十一日の安保特別委員会での岸首相の答弁で、これに類した答弁は、岸総理のみならず、藤山外務大臣、赤城防衛庁長官から再三、安保国会の中で繰り返されています。

 つまり、安保に関連して自衛隊が日本の領域の外に出るということは条約上の義務ではないし、そういう意図もないということなんですね。ですから、国際貢献、日米同盟を根拠にして、おつき合いしなければならないではないかというような言い方は、この岸信介総理大臣の安保条約第五条の解釈によっても退けられなければならない、そのような言い方は通らないというふうに私は考えます。

 そのような理由により、この法案は、単なる省の看板をかけかえたり、長官を大臣にしたりというようなものではなく、自衛隊の性格を根本的に変える、憲法第九条第二項との乖離を決定的なものにするという意味で、一種のミニ改憲と呼び得るような性格を持っています。私は、それに対し反対いたしますし、同時に、お願いとして、そのような問題点について正面から提起し、国民に問いかけ、議論し、そして採決していただく。せめて国会が国会である限り、そのような真っ正面から取り組むことをやっていただきたい。国防、安全保障が国の基本であるならば、その基本の法律をなぜ看板のかけかえのようなこそくな手段でおやりになるのか、大変疑問に思います。

 以上、私の反対の参考人意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人各位の意見の開陳は終わりました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。

高木(毅)委員 自由民主党の高木毅でございます。

 参考人の先生方には、大変お忙しい中お越しをいただきまして、そしてまた、先ほどは非常に貴重な有意義な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 私は、ほんの二カ月ほど前まで、安倍政権発足まで防衛庁の長官政務官をしていたわけでございます。約十一カ月でございますけれども、その間、いわゆる施設庁の談合事件だとか、あるいはまた情報流出事案等も発生したわけでございますが、しっかりと私なりに、当時の額賀長官のもと、木村副長官を中心にそうしたことについての対応はしたと私は思っております。あとは久間長官のもとでその対応をしっかりしていただけるというふうに信じているところでございます。

 そうしたことはあったわけでございますけれども、十一カ月間中におりまして、隊員の皆様方をつぶさに拝見いたしておりました。国内外での活躍、活動、すばらしいものがあるというふうに私は思っておりますし、また、日々の訓練においても、まさに整々と行われているものでございまして、そうした防衛庁の職員の、あるいはまた、私は政治家でございますので、あえて悲願という言葉を申し上げるわけでございますけれども、悲願である防衛庁の省移行というものを何としてでも今国会でなし遂げたいという思いでいるわけでございます。そうした思いを持ちながら、参考人の先生方に何点か質問をさせていただくところでございます。

 まず、増田参考人にお尋ねいたします。

 先ほど来、話も出ておりましたけれども、まさに二十七万人の職員を擁する、しかも国防というものは国家の基本であると言われているわけでございますけれども、にもかかわらず、そもそも一九五四年の庁発足以来、何ゆえ五十年以上にわたって庁のままであったのか、まずその点について御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

増田参考人 私は、歴史家でもございますので、どうしても歴史的な経緯ということに一言、あるいは二言になるかもしれませんが、触れざるを得ません。

 実は、防衛庁の成立経緯につきましては、先ほど前田先生の方からも若干お話ございましたけれども、私なりにその経緯を考察した結果、これは、まさに占領期以降の複雑な、あるいは矛盾に満ちた過程の中で発足したということが五十年間にも及ぶ庁であり続けた背景として指摘できるのではないかということであります。

 それはどういうことかと申しますと、まず、終戦から三年を経た昭和二十三年、一九四八年にワシントンの対日占領政策が大きく転換するわけであります。すなわち、それ以前はポツダム宣言にのっとった、つまり、米ソ協調というルーズベルト的な発想のもとに、日本が二度と他国に脅威を与えないようにするという意味で、非軍事化、民主化が基本政策として推進されたのであります。しかし、思わぬ米ソ対立、冷戦、こういう状況がアジア方面にまで広がってくる、グローバル化してくる、こういう経緯の中で、アメリカの対日占領政策は、それまでの非軍事化、民主化から日本の経済的自立化へと大きくカーブを描くことになるわけであります。いわば日本をアジアの防波堤に、アジアの工場に、こういう政策がアメリカの新しい政策になったのであります。

 ところが、こうしたワシントンの決定の前に立ちはだかったのがマッカーサーであったのであります。マッカーサー自身は、自分自身が憲法九条の生みの親であるということを自負していたわけでもあり、一連の再軍備、その延長線上にある日本の再軍備化に対しまして、あるいは公職追放をなくすということに対しましても激しく抵抗するのであります。

 ところが、そのマッカーサーにとって全く予期せぬ事態が起こりました。それが一九五〇年、昭和二十五年の朝鮮戦争であったのであります。冷戦どころか熱戦、ホットウオー、こういう事態の前に、そこでワシントンに妥協せざるを得なくなる。それがナショナル・ポリス・リザーブというものであったわけであります。しかし、この実質はスモールアーミーだったのであります。スモールアーミーをナショナル・ポリス・リザーブ、警察予備隊、こういう名称に置きかえた。これはまさにワシントンとマッカーサー間のいわば冷戦、第二の冷戦の結果であると言ってよろしいかと思います。

 そうした中で、七万五千の警察予備隊がスタートし、それが保安隊を経て自衛隊、海空を加えた三自衛隊になることは申すまでもないわけであります。その間、吉田首相が、戦力なき軍隊、こういう言葉を使いまして物議を醸したわけであります。戦力なき軍隊というのは極めて矛盾に満ちた言葉であったのでありますが、そういう憲法九条との絡み、そして占領期にそうしたアメリカ内部の対立、そういう幾つかの矛盾の中で防衛庁・自衛隊というものが発足した、こういう経緯を無視できないのであります。そういう中で防衛庁がスタートした、そして防衛庁が三自衛隊を管理運用する、こういう立場をとったということが今日につながっている、このように解釈するのであります。

 以上でございます。

高木(毅)委員 ただいまは、なぜこれまで庁のままだったのかというお話、そして、先ほどの意見陳述では、それが九〇年代にどう変わってきたかというお話をしていただきました。そして、ようやくここに来て庁から省へということになってきたわけでございますけれども、やはり、庁から省にする上においてどうしても必要なものは、国民の理解だというふうに私は思っております。昨今の自衛隊のいろいろな活動等を見ていただいて、あるいはまた取り巻く環境、国際環境を見ていただいて、私は、国民もしっかりと今回のこの省移行を理解していただけるというふうに思っておりますけれども、国民の理解という点において、いま一度、増田参考人の御意見を賜りたいというふうに思います。

増田参考人 確かに、国民の理解が安全保障という面で深まっているということは冒頭申し上げたとおりであります。しかし、依然として、やはり防衛庁が防衛省に昇格すると、例えばシビリアンコントロール等々において変化が生じてくるのではないか、こういう疑念、疑問が生ずることは避けられない。そういう点を丁寧に説明する義務があるかと思います。

 ちょっと話がそれるかと思いますけれども、このシビリアンコントロールという懸念に対しましては、これまた私、歴史家という立場でお答えさせていただくのでありますけれども、戦前のあのような軍部の暴走がなぜ生じたのかという原因を考えますと、何と申しましても、一番大きな点は、統帥権がひとり歩きしたという点があるのであります。つまり、軍部が天皇の威光をうまくかりて、彼らの都合のいい方向にこれを運用したというところにあるのであります。あるいはまた、首相の権限、これが閣僚同輩中の上位にすぎない、こういう位置づけでありまして、したがって首相自身が閣僚を解任できない、こういったような問題もございました、そして軍部大臣の現役制が生じた、こういうことが軍部の独走を許した理由であると言えると思います。

 翻って、戦後の日本の新憲法下におきましては、そうした一連の過去の反省に立ちまして、総理大臣の権限が、戦前と比較いたしますと相対的に強大化したのであります。閣僚の罷免権、解任権も持つに至りましたし、シビリアンコントロールという点でもしっかりと根づいてきているのであります。

 そういう一例からいたしましても、国民に、省への昇格は決してそのような疑念を生ずるものではない、こういうことを説得していくことが肝要である、かように考える次第でございます。

 以上です。

高木(毅)委員 ただいま増田参考人からは、いわゆる歴史的背景、そしてまた国民の理解の必要性というものを訴えていただいたというふうに思います。

 もう一つやはり懸念されるのは対外的な影響でございまして、続けて増田参考人にお聞きいたしますけれども、この省移行という問題を国際社会はどう受けとめていると考えていらっしゃるか、特にまた、近隣諸国になろうかというふうに思いますけれども、そういったところがどのようにとらえるであろうかということ、そしてまた、それについて我が国としてどのように対応していけばいいのか、その点についてお尋ねをいたします。

増田参考人 これまた極めて重要な問題であると思います。

 御指摘のとおり、日本が防衛庁から防衛省に昇格するということになりますと、近隣諸国、とりわけ中国や韓国が懸念を表明するということは十分予想できるわけであります。それが政治的意図を含んでいるといたしましても、日本はこれに対して丁寧に説明をしていく必要があろうと思います。

 具体的には、日本は既に一九七七年に、福田ドクトリンという形でアジア諸国に対しまして、日本は決して軍事大国にならないということを鮮明にしているわけであります。そしてもちろん、前後いたしまして、日本は一貫して専守防衛ということを内外にうたってきているわけでありまして、そうしたことを、やはり丁寧にアジア諸国に対して、かつて日本の侵略を受けた、こういう懸念が払拭されていない諸国に対して丁寧に説明を重ねる必要があろうかと思います。

 ただ、私、それに関連して一つ申し上げなければいけないこと、それは、省に昇格することによって、諸外国が当然、庁とは違う立場というものを理解し、そしてその立場で対応してくるということから、やはり、防衛庁・自衛隊の幹部の皆さん方は、単に、俗に言う庁から省に昇格して偉くなったというようなお気持ちではなくして、むしろ、省に昇格することによって、より一層義務、負担が増すんだということを十分自覚した上で、その責任、義務の重さというものをしっかり受けとめながら、具体的にそれを実行していく、それが省昇格のメリットにつながってくるということもあわせて理解していく必要があるのではないか、このように考える次第でございます。

 以上です。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 次に、富井参考人に一つお伺いしたいと思いますが、レジュメにおきましても、先ほどの御発言の中におきましても、自衛隊の士気という話にお触れになられております。戦闘集団として自衛官の士気を高めることは必要だというふうにおっしゃりながらも、それは省でも庁でも同じではないかというような御発言だったかというふうに思いますが、しかもそれは検証のしようがないんだというお話でございました。

 私は、先ほど申し上げたとおり、十一カ月ほどでございますけれども中におりまして、やはり多くの自衛官が、なぜ私たちの役所は庁であって省ではないんだという言葉も聞いておりますし、私は、少なからず、省にすることによって自衛官の士気というものは必ず高まるというふうに思っているところでございます。

 しかも、検証のしようがないということでございますけれども、先ほど、環境省のお話もございました。私は、環境庁が環境省になって、職員の皆さん方の士気も上がったというふうに思いますし、あるいはまた、国民の環境に対する意識というものも非常に高まったというふうに思っております。私は、これは非常にいい好例だというふうに思っておりますが、先ほどおっしゃっていた、省でも庁でも隊員の士気という点ではという話でございますが、私の今の話をお聞きいただいて、どのようなお考えでございましょうか。よろしくお願いいたします。

富井参考人 今御指摘の点でございますけれども、私も、士気の問題ということ、今議員の先生がおっしゃったことを否定するということではありません。

 ただ、重要なのは、自衛官、防衛庁職員すべてそうですけれども、防衛庁のために奉職する、あるいは防衛省のために奉職するというわけではない、国の安全のために働くんだということが基本であります。それは、庁だろうと省だろうと基本的に何か変わるところはあるのかと。自衛官というのは、宣誓にもありますけれども、身を賭してという、いわゆる無定量の仕事をするということであります。

 ということで、まず、庁だとか省だとかということで自衛官の士気にぶれがあるということがあるとするならば、これは極めてゆゆしきことであるということは一つ言えると思います。

 さはさりながら、今の先生のおっしゃるように、環境省の職員の士気、まあ士気というかどうかよくわかりませんけれども、例えば、私も自衛隊員の方、何人か知っていますけれども、もちろん、庁というと、まさにこの議論は昇格という議論になりますよね。だから、庁というのは、昇格する前だから一つ下というふうに見られるということでありますので、そういう意味では、士気にも影響するのかなと。これはいろいろ世間で見られていることですから、それを否定するということではありません。

 しかし、それは省の問題のその根本的な議論ではないというふうに考えます。先ほど御報告しましたように、むしろ、防衛庁が省になるということは、士気ということもさることながら、責任を持って防衛省が動くということ、ここがメーンでありまして、士気ということが必ずしもそのメーンな議論ではないというふうに考えるということであります。

 以上です。

高木(毅)委員 もう時間がなくなってまいりましたけれども、前田参考人に一つだけ、沖縄大学の客員教授だということで、お聞きをしたいわけでございますけれども、省移行後、仮に、庁のままかもしれませんけれども、今後の政策課題として、やはり大きなテーマとして、沖縄の基地問題だとか、あるいはまた米軍再編の問題があるわけでございます。

 実は、さきの県知事選挙におきましては、言うならば、比較的基地容認の候補が当選をしたというふうに思います。しかも、名護だとか、あるいはまた嘉手納だとか、そういったようなところにおいても仲井真氏の得票が多かったわけでございますが、私は、これは、政府あるいはまた与党の、基地あるいはまた米軍再編への取り組みというものが沖縄県民に一定の評価を得ているというふうに感じているところでございますが、先生の御所見をぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。

前田参考人 沖縄県知事選挙の結果は、私にとって極めて残念なものでありまして、見解は違うわけですが、確かに、仲井真知事が当選して糸数候補が落選したという事実が厳然として存在し、かつ、受け入れなければならないものだと思います。

 ただ、仲井真知事が今回の再編、沖縄の新基地を含む事態に対し全面的に協調的である、ないし、それを公約にしたというのは違うと思います。むしろ、彼は、政府の沖縄再編案に関しては、チェック・アンド・バランスといいますか、留保しながら注文をつけていく、そういう手法が糸数さんの基地政策よりよりましな形で受け入れられたと見るべきであって、私はそれは残念な結果だと思いますが、それによって沖縄の基地に対する見方が受け入れ協調に変わったとまで結論するのは少し行き過ぎではないかというふうに考えます。

高木(毅)委員 終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、笹木竜三君。

笹木委員 民主党の笹木竜三です。

 参考人の先生方に質問をさせていただきます。

 まず最初に、先ほどから、士気の問題もある、あるいはプライドの問題もあるというふうな発言とか、質問に対するお答えでも出ているわけですが、当然御存じだと思うんですが、この平成十八年だけでも機密情報の流出ということが頻繁に起こっております。一月には魚雷データの流出事件、同じく一月には陸上自衛隊ミサイルデータ流出事件、二月には海上自衛隊機密資料流出事件、三月には防衛庁ホームページ機密情報流出事件、五月には陸上自衛隊ミサイル関連資料流出。これは、ことしだけです。ことしの一月からだけでこれだけ問題が起こっております。

 先ほど、ほかの委員からも、そして参考人からも、ふさわしい体制を、省昇格のこともそれで理解できる、そういう御発言もありました。反対の御意見もありましたが。

 まず、増田先生にお伺いをしたいのは、先生は、書いたものの中で、省昇格、しかし、その後の課題として、独自情報、例えば、すべてアメリカに頼るのじゃなくて日本の防衛体制の中での独自情報をもっと手に入れるような、そういう工夫も必要だということは言われています。

 そのとおりだと思いますが、逆に、自衛隊あるいは防衛庁内部の情報が垂れ流しのように、ことしだけでもこれだけ起こっている。主なものを今挙げただけですが、ほかにもいろいろあります。こうした事実は御存じでいらっしゃるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

増田参考人 決して詳細とは申しませんが、ある程度のことは承知いたしております。

笹木委員 それでは、三人の先生方にそれぞれお聞きをしたいわけですが、先生方からも、看板のかけかえに終わっちゃいけない、塗りかえに終わっちゃいけないという御発言がありました。私もそのとおりだと思います。それで、こうしたことがなぜこんなにことし一年だけでも起こっているのか、原因の究明も必要でしょうが。

 では、こうした問題が、防衛庁を防衛省にしたからということで、それで士気とかプライドの面で非常に向上されるんだ。それも事実でしょう。しかし、それで解決ができるとお考えかどうか。あるいは、こうした問題は非常に深刻な問題だと思いますが、それについての御意見もあわせて伺えたらと思います。増田先生から順に、三人の先生それぞれに御意見を伺いたいと思います。

増田参考人 先生御指摘のとおり、これは極めて重要な問題であり、座視できない問題として、やはり政府、防衛庁が、肝に銘じて、襟を正してこれに真剣に取り組む、こういう姿勢が重要であることは改めて申すまでもないかと思います。

 私が先ほど申し上げた、防衛庁から防衛省への昇格の背景、理由、要因ということは、もちろんそうした微視的な問題ということよりも、むしろ巨視的な、大局的な観点から論じたという点にあるわけであります。しかし、今御指摘のとおり、そうした微視的な、決してそれは軽視すべきことであるという意味ではございませんけれども、そうしたことも、やはり国民の信頼を得るためには十分慎重に対処していくべきであるというふうに考える次第でございます。

富井参考人 最近、非常に機密漏えい事件があるということですけれども、事件にならないものだけでも、例えば、コンピューターウイルスですとか、あるいはパソコンの中に侵入されて、防衛庁の、機密とまでは言わないですけれども、漏れたりしたというようなことを挙げると、あるいは世間に報告されていないものなんかも入れますとかなりあるのではないかというふうに考えるわけで、そういう意味では、機密保持ということはやはり厳格にやらなきゃいけない。

 それで、現行法は、もちろん防衛庁の防衛情報の秘密を特別に保護するというような法制度ができている部分もありますが、これを強化するということも一つの案かと思います。ただ、これは、防衛省になろうが防衛庁になろうが、機密を保持する、秘密を漏らさないというのは当たり前のことでありまして、それは庁になる省になるという議論とはとりあえずは別の議論ではないか。

 施設庁の談合もその類型に属すると思いますけれども、防衛省構想というのが施設庁の談合でちょっと頓挫したというのもありますが、施設庁の談合等々も含めて、そういった公務員の規律という問題、これは省だろうが庁だろうがちゃんとやらなきゃいけないということであります。

 以上です。

前田参考人 私は、申しましたとおり、今回の法案を省昇格という脈絡ではとらえておりません。自衛隊の基本任務のつけかえということでとらえておりますので、士気云々の問題に直接問題意識を持っているわけではありません。

 海上保安庁は海上保安省ではない。消防庁も消防省ではない。しかし、プロフェッショナルな能力、モラールを考えますと、海上保安庁、消防庁、見事な特化された能力、訓練、そして国民の信頼に足る行動を随所随所で示していると私は思います。省であれ庁であれ、そういう明文論で士気が変わるとか、また変わり得るというふうな問題ではないと思います。ですから、情報流出の問題は別次元のこととして考える必要があるだろうというふうに思います。

笹木委員 機密情報の流出、この問題だけじゃないんですね。規律ですとかモラールにかかわるような問題で、御存じだと思いますが、例えば薬物事件、これも〇五年七月にありました。自衛官が所持、使用のみならず、栽培までして売り歩いていた、そういうような報道もあります。さらに、海外への無断渡航の問題もあります。それともう一つ、これはまだ原因が余りはっきりしていませんが、自衛官が、年間百人を上回るときもあるわけですが、七十人とか八十人とか百人を超える、自殺者がそれだけ多く出ているとかという問題。

 今までの御発言の中で、庁であろうが省であろうが、当然、庁であってもその問題は是正されないといけない、そういうニュアンスでお答えがありましたが、要は、話を戻しますが、やはり看板のかけかえだけでいいのかということにかかわると思うわけです。

 当然、国民の生命財産を守る、そういう方々には、安心な環境で、誇りを持てる環境で働いていただくことは必要だと思いますが、当たり前の問題として、ほかの任務につく方々よりは規律とかモラールの問題で強いものが求められるのは当たり前だと思います。国民もそれを前提にしないと全く安心などできません。

 ですから、こういった法案を出すのであれば、それにふさわしい体制にいかに抜本的に変えていくか、そういう議論がどうしても必要だと思うわけですが、それが全く行われていない、私はそう感じております。

 関連で、官製談合の問題もそうです。官製談合、それはどこの省だって庁だってあるじゃないか。そのとおりです。しかし、報道なんかで、先生方も御存じでしょうが、防衛庁の官製談合が数年前にあって、また施設庁の官製談合が去年の年末からこれだけ報道をにぎわしている。いろいろ調べたら、防衛庁の官製談合のあの一件以来、いろいろなチェック機関も内部につくったはずだと。機能するはずだということでいろいろ体制を組んだわけですが、その後も全くチェックができていなかった。しかも、今回の報告書ではっきりしていますが、その官製談合の原型が、昭和五十年代の半ば、一九八〇年ごろからずっと続いていた、同じ構図で続いていた。チェック機関をつくった後も、五年、六年、同じ形で続いていた。これで本当に国民の期待にこたえられるんですかという話です、先ほどのいろいろな不祥事も含めてですが。

 あわせて言いますと、私、この委員会、今回理事になっていろいろな資料請求もしました。異常なぐらいに情報が出てきません、資料が出てきません。いや、国防上の機密情報なら、流出するんじゃなくて、国会でも非常に慎重に扱わないといけない。これはわかります。あるいは、今まで数十年の経験から、国会に資料を出すとろくなことがない、防衛上の大事な情報が外にばらまかれてしまうとか、そんないろいろな思い込みもあるのかもしれませんが。一つは、さっき言った、現場から流出している問題。

 それと、この官製談合の問題をいろいろやりとりしてきて、どの省に比べても非常に閉鎖的だ。先ほど国民の納得とか国民への説明とか、あるいは、例えば中国に軍事についてもっと透明化しろと日本はしょっちゅう言っているわけですが、こんなことで中国に対して言えるのか。かなり異常な閉鎖性を感じるわけです。きょうも午前中、参考人の先生方のお話を聞く前に二時間ほど資料のやりとり、現物も見たりしておりましたが、どうしてここまで黒塗りにするのか、これは異常としか言いようがない、理屈が通らない、そういう世界だと実感をしています。

 こうしたことで、もう一度お話をしますが、では、単に士気とかプライドの面で非常に向上もするということだけでこの問題を簡単に考えていいのか。しっかりと内実ともに立て直す。先ほど、危機管理とかそういった面も含めて総合的にもっと政策的な詰めが必要だというお話が先生からもありましたが、そうしたことがどうしてもこのきっかけになるわけですから、不可欠だと私は感じているわけです。

 例えば、全く機能をしなかった。この官製談合についての調査も内部の方だけでやっています。ちゃんと外部の方を入れてチェック機構もつくる、トップに外部の方を据えてつくる、あるいは、こうした調査もちゃんと外部の方の力もかりて行う、そうした風通しがもう少しよくなっていかないと、この体質は今後も引き継がれていく可能性が非常に強いと思います。

 この官製談合あるいはいろいろな不祥事、今、機密情報の流出から含めていろいろお話ししました。そうしたことについて、今の体制のままでそれで省になって、内実ともに本当の立て直しができるんだろうか、疑問に感じておりますが、ぜひそれについて御意見をまたお三方からいただきたいと思います。

増田参考人 ただいまの御指摘の点について、基本的に異論があるわけではございません。

 それは、大学の教壇に立つ一国民という立場のみならず、現在私は公的な機関の責任者をやらせていただいております。そういう同じ公的な立場にあるという面からも、こうした防衛施設庁における談合といった問題、事件発生は、極めて遺憾であります。なぜならば、とりわけマスコミ等々におきましては、まさに同類というような目でとらえられ、あたかもすべての公的な機関が同様であるかのごとく指摘されたりもする。これは甚だ迷惑であります。

 そういう意味におきまして、やはりこうした事態が生ずる体質、根というものを断たねばならないという点におきましては、私も先生と同様に同意する次第でございます。

 以上です。

富井参考人 今、先生から御指摘していただきましたいろいろな問題、改革の方向、現状ということ、私も全く同感であります。

 結局、民主主義というのは、情報を共有するというところから始まるわけで、だから情報公開法というものができているわけです。確かに、防衛情報というのは、すべてオープンというわけになかなかいかないかもしれませんけれども、しかし、この委員会に対してだけはちゃんと情報を公開するというような、法律はちょっと無理かもしれませんけれども、何かそういうようにできる制度というか慣習というか、そういうものは絶対必要で、もしそれが公開しては困るということであるならばインカメラでやるというような工夫をして、もっと積極的に情報を開示すると。

 先ほども言いましたように、シビリアンコントロールの原則というのは、議会による統制ということであります。議会と情報を共有しなければシビリアンコントロールは成り立たないということであります。ただ、一方で、やはり機密漏えいということで、情報もプロテクトしなきゃいけない。情報公開というのは、見せるべき情報はちゃんと見せて、見せていけない情報は見せないという、この辺をしっかりしなきゃいけないわけですが、この辺の線をどこに引くかというのは非常に難しいわけですけれども、ということが大事かなと。

 あと、チェック機能が働いていないんじゃないかという御指摘ですが、これも確かにそのとおりだと思います。現に、五、六年ほど前ですか、防衛施設庁とか技本、これは判決が出ているかもしれませんけれども、その後いろいろ改革をした、その防衛庁の努力は認めていいと思います。ただ、それが機能しなかったということにやはり何らかの改革が必要であるのは事実だと思います。

 先ほど議員さんが御指摘なさいましたように、この辺もしっかり詰めて、なおさら、省に昇格の国民の理解は深まるということは言えるかなというふうに思います。

 以上です。

前田参考人 私は、繰り返しますが、この法案は自衛隊の任務を変えるという大きな目的のもとにつくられておりますので、御質問のような形、それがいい方向に向くようなものにはならない、多分無関係だろうというふうに思います。

 防衛施設庁に関しても、私はフリーランスのジャーナリストとして随分取材しました。本にも書きました。こういうものが防衛庁の体質的なものであり、天下り、談合というようなものはまた必ず起こるに違いないというようなことを感じておりましたけれども、そのとおりになってしまったわけで、それは警察予備隊時代から培われてきた一種の閉鎖的な体質、その中には軍事組織としての必要な閉鎖性ももちろんないわけではありませんが、行政組織として過度に身構えてしまうというより、閉鎖してしまう、とりあえず隠してしまうというような体質は自衛隊にも受け継がれていて、私はフリーランスのジャーナリストですから、防衛記者会に入っておりませんから、まず防衛庁から情報が流れてくるということはありません。

 例えば、具体的に雑誌の名前を挙げますと、「選択」という雑誌があります。これで執筆して取材するときは割と受け入れられます。岩波の「世界」で書くことがあります。ほとんど受け入れられません。こういう差別といいますか、情報管理なんですよね。書くことは同じです。書き分けたりはしません。けれども、メディアによってそういう使い分けをするというのが出てきて大変困っている。それが今回の法律で少しでもいい方向に向かうのであれば、私の表現も少しやわらかになっていたかもしれませんが、それはほとんど期待できない。

 防衛省設置法の中には、解体されるはずの防衛施設庁の新しい任務が改正案の中に入っているんですよね。本当はあれはなくなるわけでしょう。なくなるものに新しい命を吹き込むというのはおかしな話だと思いますが、しかし法手続上そうなるということで、ここにもこの法案が持つ奇形的な一面があると思います。

笹木委員 余り時間がなくなってしまいましたので、最後にぜひお聞きしたいことがあるんです。

 先ほど、海外での活動について、本来業務化、本来任務化の問題もありました。テロ特措に基づく、あるいはイラク特措に基づくそういう海外の任務もあるわけですが、こうしたものも本来の任務としていこうということですが、イラクについて戦争の正当性も怪しくなっている。アメリカみずからも認めている。イギリスも認めている。日本だけは、あの当時、アメリカの言うことが信頼できるから、アメリカがそう言うんだからそれを信じるしかないでしょうと言った総理大臣がいますが、それで始まっている。いつ撤退するのかわかりません。アメリカの顔色を見ながらまた撤退するのかわかりません。そう遠くじゃないのかもしれません。

 こうしたことを、特措法、そして今回この本来任務化ということだけで行えるようにしているんじゃなくて、やはり別の、与党の方はこれは恒久法というわけですか、こちらはシビリアンコントロールという観点からも別の法律でちゃんと議論をして位置づけを明確にすべきだ。アメリカが言うのなら地球の裏側でもどこでも行く、そういう話じゃなくて、国連決議との関係はどうなるか、いろいろなことを含めて整理をして、別の法律でやるべきだと思いますが、それについてのコメントを、余り時間がないので、一言ずつお願いしたいと思います。

木村委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

増田参考人 小泉首相がどのような政治的意図のもとにそうした発言をなされたのかは私は詳しくは存じません。しかし、一国際政治を学ぶ者といたしましては、そこには言明されていないさまざまな外交的な判断がなされていたんではないか。そうした複合的な、国益と申しますのは、これは先生に対して釈迦に説法かもしれませんけれども、やはり幾つかの選択肢、その選択の中で国益にとってどれがプラスかというそのプライオリティーの問題でもある。そうした枠の中で総理大臣として御判断したのではないだろうか、これは私の推測でございます。

 以上です。

富井参考人 今の質問、二点だけ指摘したいと思います。

 一点は、新しい改正案の三条二項は、先ほども申しましたけれども、百条以下のいわゆるだらだらとつけ足すようなやり方をやめるというか、歯どめ、明確にするというような意義があるということが一点。

 もう一点は、確かにイラク戦争のように正当性がはっきりしないものに出ちゃうことにならないかということですけれども、現行にある周辺事態法ですとか、あるいはイラク特措法ですとか、そういうものはすべて国会の承認がないと自衛隊は出せないということになっております。

 結局、だから、そこにも問われているのは、恒久法になるか個別法になるかちょっとよくわかりませんけれども、議会の統制を明確にちゃんとしておくということで、楽天的な見方かもしれませんけれども、シビリアンコントロールというのは一つ保たれるのではないかというふうに考えているということであります。

前田参考人 三条二項に新設される新しい任務と別に定める法律が合体しますと、御指摘のとおり、これは内閣の裁量権による海外出動があり得る、つまりイラクにイギリス軍が直ちに米軍と一緒に参戦したようなことも理論的にはあり得ると思います。

 ですから、御指摘のとおり、これは全然別の問題なので、別の法律にというのはその限りでは私は賛成いたしますが、しかし、これは憲法九条二項とのかかわりで論じるべき問題であるということを強調したいと思います。

笹木委員 終わります。

木村委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 三先生におかれましては、急な話であったにもかかわらず御出席を賜り、また貴重な御見解を賜りまして、厚く感謝を申し上げます。

 まず、増田先生からお伺いをしたいと思います。

 先生は歴史家ということで、先ほども、経緯につきまして非常に説得力のあるお話をいただきました。省昇格について、国民の間には戦前のトラウマがある、軍部の独走によって大変な悲劇になっていったというトラウマがあるわけでして、そういった意味で、懸念は多々あるかと思います。

 そういった中で、先生先ほど、統帥権の独立が非常に問題であったということをおっしゃいました。それはそのとおりだと思いますが、私は、ただ、それに加えて、もっといろいろな要因もあるかと考えております。

 特に、戦前の場合、明治憲法下では統帥権の独立はあったわけでありまして、ところが、その明治憲法下にあっても、私は、ある時期、特に近代化初期から日清、日露、それから第一次大戦に至るまでは、日本の軍というのは非常に現実感覚を持ち、また戦略感覚を持って、日本の安全保障を本当に真剣に考え抜いてきた。また、乏しい装備でも非常に士気も高く、規律も高く、戦時国際法の遵守とか、あるいはまた捕虜の扱い等模範的なことを示しまして、非常に、さすが武士道の国と言われた時代もあった。

 ところが、第一次大戦ごろを境に、急速にそれがおかしくなっていくということですね。いわば、前半が坂の上の雲を目指した時代から、坂の下の沼に突っ込んでいく時代ということで、非常に屈折がある。要するに、統帥権の独立の問題自体は、ブレーキが壊れていたということ。これは、もともとあった条件なんですけれども、なぜ、戦前の時期において、前半と後半でこういう大きな屈折が生じたのか、これは歴史的に非常に重大な問題だと思っておりまして、この点につきましての先生の御見解を賜れればと思っております。

増田参考人 二点指摘させていただきたいと思います。

 まず、明治前半期におきましては、元老と称せられる、つまり、法律上、法制上存在するものではない、極めて政治性の強い、しかし政治力の強い、濃厚な一群の人たち、具体的には、伊藤博文、山県有朋、井上馨、こういった、いわゆる幕末から明治維新にかけて、厳しい国際環境を骨の髄まで知り尽くして、極めて国際社会の冷徹な現状というものを認識した上で日本の国家目標に邁進した人たちが、これら元老と称せられる四名、五名の人たちであります。

 こういった元老たちは、以上申し上げたような厳しい国際環境の中で、日本の国家的近代化、そして安全保障の確保、こういう極めて難しい国家目標を達成していったのであります。それはおおむね日露戦争終了時点が、西欧的な、イギリスやフランスあるいはドイツといった、こうした西欧諸国をモデルとした近代国家の成立、そしてまた、ロシアあるいは南方の中国との間で、樺太や千島列島、あるいは琉球、小笠原、こうした国境を明確にする、その上での安全保障の確保、こういう国家目標をおおむね達成できたのであります。

 ところが、日露戦争後、二つのことが起こりました。一つは、国家目標がそこでおおむね達成されたことによって、それ以降の日本の国家目標をどう位置づけるかということについて、国論が分裂していったということであります。例えば、北進論か南進論か、あるいは軍備増強か民力休養かといったような形で国論が割れていった、国家目標が割れていったということが、一つ問題となるわけであります。

 それから、もう一つは、この日露戦争の前後の時期というのは、第一世代と第二世代のまさに交代時期でありました。すなわち、先ほど申し上げた、伊藤、山県らを中心とする元老の第一世代と、桂太郎あるいは加藤高明といったようないわゆる第二世代への移行期でありました。首相以下一連の閣僚は、これら第二世代へとバトンタッチされていくわけであります。

 しかし、これも極めて一般的な言い方をいたしますと、こうした第二世代の人たちと第一世代の違いはどこにあるか。それは、先ほど申し上げたように、幕末から明治維新という極めて日本の変革期、激動期のもとで、厳しい状況の中で生き抜いてきた、そういう第一世代と比べますと、いわばそうした遺産の上に立っている第二世代、平たい言い方をすれば、第一世代ほど認識が深くはない、国際情勢に対してもいささか自信が強まってきた、こういう第二世代にバトンタッチしたということが、やはりその後、統帥権という問題に関連して、ひとり歩きするような状況が生まれてきた、私はこのように考えている次第でございます。

 以上です。

遠藤(乙)委員 大変に深い御見識に感銘をしております。

 この問題は、これからの日本にも当てはまる、国家目標に関する国論の分裂、それから世代の交代、これはやはり心していかねばならないわけでありまして、シビリアンコントロールの制度はしっかりしているとはいえ、今の二点は非常に重大な問題であって、この点につきまして、むしろ本当の議論をしていかなければならないと感じた次第でございます。

 続いて、富井先生にお伺いします。

 先生の御所見の場合は、防衛省昇格反対ではないけれども、今国民の世論も盛り上がっていない、筋悪ではないかという御議論でございました。

 今、この防衛省昇格の問題、二つポイントがあるかと思って、一つは、庁から省へ、実施官庁から政策官庁へと移行して、やはり政策立案能力を強化していくということが一つ大きなテーマとして議論をしておりますし、もう一つは士気の問題。

 今まで十分な認知を得ていなかった自衛隊について、認知、評価、より強い使命感や、また意識、モラールを持って任務に当たるということで、これはある意味では当然のことかと思っておりまして、むしろ、先生のここに書かれているさまざまなことは非常に重要なテーマばかりでございまして、例えば、九・一一以降、新たな脅威に対応する安全保障機構を編成していないとか、それから情報収集や分析の中央組織がない、あるいは緊急事態に対処するための中央組織や基本法がないというのは大変重大な御指摘でありまして、今までも議論は始まっております。

 ただ、これらについて明確な一つのコンセンサスをつくり上げるのは非常に時間がかかるかと思いますし、むしろ、こういった議論を進めていくために防衛庁を省としてきちっと位置づけをして、そこが核となってこういう議論をリードしていくということも大事ではないかと思っておりますし、その第一歩としてまさに省昇格があるんだというふうに私は思っております。

 多分、同じコップに半分水が入っていて、半分しか入っていないか、あるいは半分もあるというか、その表現の違いじゃないかと思いますけれども、むしろ、この際、積極的にこの防衛省昇格というものをとらえて、先生の御指摘のような議論も十分にこれからしていく体制を整えるということが大事じゃないかと思っておりますけれども、そういった点を踏まえて、改めて筋悪かどうかということをお聞きしたいと思います。

富井参考人 筋がいいか悪いかというのは、こういう場ですから多少キャッチフレーズなことを言った方がいいかなということで、今の防衛省の議論というのがいけないということではもちろんない、それは議員さんも御理解していただいていると思います。

 今の御指摘ですけれども、防衛省ということを一種のばねにして、いろいろ緊急事態法とかそういうものをつくっていこうというような御指摘だと思います。こういうやり方もあるんでしょうけれども、むしろ、これが重要なんですけれども、確かに防衛省、国防は非常に重要なんですが、安全保障というのは軍事ということだけではない、もっと総合的な、うまく表現できないですけれども、総合的なものであるということで、それを軍事的なものですべて牽引してしまう、引っ張っていくというようなやり方は余り、ちょっと好ましくないのかなという感じがするということであります。

 したがって、これはやはり内閣主導で安全保障機構、安全保障の政策の概念図をちゃんと描く、その枠組みの中で防衛省というものを位置づけるというようなやり方の方が筋としてはいいのではないかというようなお話であります。

 もちろん、これは私の見解でありまして、今御指摘のとおり、先ほども触れましたが、防衛省はもう時間の問題と言っては失礼かもしれませんが、ということですので、結局はそういうことになると思うんですけれども、なるべく可及的速やかに全体的な安全保障機構の再編とか政策の基本理念法というのをつくっていただいて、多少でも、多少でもというか、国民を安心させるというか、多少でもいやすというようなことが必要ではないかということであります。

 以上です。

遠藤(乙)委員 続いて、前田先生にお伺いをいたします。

 先ほど先生からは、長年軍事問題に携わってこられた御経験、特に自称原理主義者と言われておりましたけれども、まさに面目躍如たる御議論を伺った次第でございますけれども、先生の御議論の中で、この法案は、むしろ国際平和協力業務等、それを本来任務に位置づけて、自衛隊の性質を大きく変える、そこに問題があるのであってということで、防衛省昇格問題は看板のつけかえにすぎず、それはさておきという議論でございました。

 そのさておきのところの議論につきまして改めてお聞きしたいんですが、例えば仮定の話として、こういう平和協力任務の位置づけという問題を全く別として、防衛庁が防衛省になるということ自体につきまして先生は賛成か反対なのか、あるいは、もし反対ならば何ゆえに反対なのかということをお聞きしたいと思います。

前田参考人 さておけるかどうかということがありますが、私は、単なる明文論ではなくて、実体論としてこの法案をとらえておりますので、実体を論じなければ明文というのは見えてこない。見えている明文は、中に大きな実体を隠している、だからその実体を論じようということですから、両者は不離一体で、さておけというふうに命じられても、なかなかお答えがうまくできませんが。

 さっきも申しましたとおり、消防庁は見事にやっているではありませんか。新潟のあの地震のときのあのレスキュー隊のすばらしい活動、防衛庁の隊員ができないはずはない、防衛省にならなきゃ、あんなモラールが出てこないなんということは言えない。海上保安庁も見事にやっていると思います。決して、庁が省になったからというようなことで動きが変わるものではないし、そんなことを期待すべくもないわけで、さておけといってその省と庁のことを言われるのであれば、庁でもっときっちり実体を示し、そして国民の負託にこたえることで何の不都合もないというふうに考えます。

遠藤(乙)委員 もう一点、前田先生にお伺いをいたします。

 先生の先ほどの御説明の中では、いわゆる自衛隊の国際平和協力業務については否定的なトーンでお話をされたわけでございますけれども、そもそも論として、やはり日本は一国平和主義に閉じこもるべきである、ほかの国の、地域の安全保障問題には関与すべきじゃないとお考えなのか。そして、もう一点、PKOについて、これはやはり評価しないということなのか。この点につきましてお伺いしておきたいと思います。

前田参考人 私は、国連平和維持活動への日本の参加が要請された一九九一年のパリ協定、カンボジアのパリ協定のとき、直後に「PKO その創造的可能性」という岩波ブックレットを出しました。その創造的可能性ということでおわかりのとおり、決して否定的ではありません。その後、PKOに関する類書はたくさん出ましたが、私の本はブックレットですから大して威張れた量じゃありませんが、少なくとも一番早かったし、それに対して日本は積極的に創造的可能性として参加すべきであるということを言いました。自衛隊を排除もしませんでした。自衛隊の能力と装備と要員を、しかし、自衛隊を出すということではなくて、また自衛隊の部隊を指名するんじゃなくて、オール・ジャパンとして、また自衛隊ではなくて出していく、彼らが持っている力、資材を国際的に貢献する。当時は公明党もそれに賛成していたんですが、いつの間にか部隊として、自衛隊としてというふうになったのはいかにも残念であります。

 私は、そういうことでもおわかりのとおり、国際平和協力業務及びPKOに対して決して否定的な見解は持っておりません。

遠藤(乙)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、参考人の先生方、先ほど大変貴重なお話を伺うことができまして、ありがとうございました。

 質問に入っていきますが、先ほどから今回の法案の核心について、前田先生の方から、やはり海外活動の本来任務化ということが挙げられておりました。

 そこで、前田先生の方から最初にお尋ねしたいと思いますけれども、私は、今回の本来任務化が盛り込まれたその大もとは、新しい防衛大綱にあったと考えております。

 その防衛大綱は、九・一一テロの後、アメリカの戦略が変わり、そして日本においては防衛力の在り方検討会議として検討されてきました。その中で、海外活動が本来任務ということになった経過を持っていると思いますけれども、今日、日米両政府は自衛隊と米軍の再編計画を進めております。日本の軍事一体化を一層推し進めるものだと私は考えておりますが、前田先生にお聞きしたいのはそのことでありまして、いわゆる海外活動が本来任務化された、今日、米軍再編が進められている、その米軍再編と海外活動の本来任務化についての関係が大いにあるのではないかと考えているところですが、先生はどのようにお考えでしょうか。

前田参考人 両者は緊密に、時期的にもそうですし、活動内容においても結びついていると思います。

 現行の自衛隊法第三条の任務、つまり「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛する」というところから出てくる防衛政策の基本は、御承知のとおり、専守防衛、国土防衛ということであります。もう一つの防衛政策で表現すれば、基盤的防衛力構想といいますか、脅威対処、脅威対抗論ではない基盤的防衛力、専守防衛、これが現行自衛隊法第三条から導き出される防衛行政であり、防衛の基本であります。

 これに対する私の意見はありますが、一応それで、自衛隊は防衛庁のもとずっとやってきた。それを変える。新たに国際的任務につける、つまり海外任務を本来任務化する。附則にあったイラク派遣、インド洋派遣を本来の任務とする。そして、それらは別に定める法律によって内容をこれから規定していく。ということになりますと、これは専守防衛の放棄、基盤的防衛力は実質的には放棄されていますが公式に放棄するということで、日本防衛政策の大転換ということにならざるを得ない。なぜそれを出さないのか、なぜそれを論じないのかというのが私の議論の中心課題で、あとは、庁から省へというのはその次の問題だろう、あるいはもっと下の問題だろうということであるわけです。

 当然ながら、先生がおっしゃった、防衛計画の大綱という防衛政策の基本が〇四年に新たなものになって、その中に、任務遂行における適切な位置づけを含む所要の体制を整えるという表現で、今回の法律改正が必要性を予告されている。同じこの防衛計画大綱は、在日米軍再編という大きな枠組みの中での自衛隊のあり方を位置づけたものでもあるという意味において、在日米軍基地の再編、これは、基地施設の再編という側面と、日米両軍事組織の機能統合、再編という両面を持っていると思います。横田における共同統合運用調整所、座間における中央即応集団のような司令部が米軍基地の中で合体していくというような、そういう機能における再編もあるわけですが、それらは今回の三条二項とまさしくぴったり折り合っているというか、そこまで談合したとは言いませんが、しかし、三条二項が新たに成立すれば、当然、再編の中でより有効な措置として使われていくであろうというふうに考えております。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

赤嶺委員 私も、海外活動の本来任務化と、それから九・一一テロ以降のアメリカの戦略の大転換、その大転換が日本の防衛大綱に与えた影響、そして今回の法律ということでその影響を見ているわけですが、そのことによって憲法との関係がやはり生じてくるだろうと思うんです。

 それで、憲法との関係で、増田先生それから富井先生、前田先生、御三方にお伺いをしたいんです。

 そもそも、自衛隊と憲法、憲法違反でないということで説明するために、これまで、自衛のための必要最小限度の実力だから憲法違反ではないという説明がありました。ところが、今回、日本防衛とそれから自衛隊の海外活動、これがいわば自衛隊の本来任務の二本柱になるわけですね。そして、防衛省、防衛庁を省に昇格させる。防衛庁がそもそも総理府の外局として出発せざるを得なかったのも、私は憲法九条の存在があったからじゃないかと考えますが、そういう角度から、今回の法案と憲法との関係について、増田先生それから富井先生、前田先生、それぞれどんなお考えをお持ちか、お聞かせいただけたらと思います。

増田参考人 大変重要な問題提起であると思います。

 私は、繰り返し申しますけれども、政治を専門とする、とりわけ外交史的な観点から政治を学んできている者でございまして、法律家ではございません。その点をまずお断りさせていただきたいと思いますが、その上で申し上げたいこと。

 政治の要諦は何であるかと申しますと、私は、現実の中の合理性を見出すということにあると思います。一体、現実の中の合理性は何であるのか、言いかえますと、非合理性というものをいかにして排除して現実の中の合理性を追求していくか、ここに政治家としての使命があるのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。つまり、それは、日本自身そして日本を取り巻く国際環境、こういう二つのいわば複眼的な視野の中で、一体何が現実の中の合理性なのかということを見出していく努力が肝要であるという意味でございます。

 翻って、終戦直後に新憲法が制定された時点におきましては、平和をうたったその理念、そして武力を放棄するということをうたったこの考え方、これは極めて時宜にかなった、その当時の日本の置かれている状況、そしてまた日本を取り巻く国際環境においては、極めてこれは合理性を持っていたというふうに私自身は考えるのであります。

 しかしながら、先ほど冒頭にも申し上げましたとおり、日本自身が大きく変わってきております。かつまた、日本を取り巻く国際環境が大きく変化しております。したがいまして、四〇年代後半期における現実の中の合理性と、今日、二十一世紀を迎えた日本を取り巻く国際環境並びに日本自身の現実の中の合理性には大きな違いが生じてきている、この事実というものをしっかりと理解していかねばならぬのではないだろうか。

 憲法九条を尊重しながらも、やはり現実の日本の置かれている位置というものを考えるならば、いわば、例えて申しますと、二十になった、つまり身長も伸び体重もふえた、そういう中で五歳の服を依然着ろというのは果たして合理性があるだろうかというふうに私は考えるのであります。もちろん、二十には二十の、大人としての服装を着るということになれば、服装の問題にとどまらずに、それは、服装のセンス、二十としての身だしなみ、マナーも同時に要求されることでありまして、したがって、そうしたマナー、センスということも同時に身につけながら、それにふさわしい日本の防衛のあり方、安全保障のあり方、これを考えていくことが私は適切である、このように考える次第でございます。

 以上でございます。

富井参考人 憲法との関係ということでありますけれども、自衛隊法の改正案の三条二項ということ、これは、当初は国際平和協力業務ということだけだったと思うんですが、法案を見ますと、周辺事態と国際平和協力業務、こう二つになっていて、いつの間にか周辺事態の方がついていたということがあるんですが。

 三条二項を見ますと、恐らく三条というのは、まさに自衛隊の中の憲法という存在、憲法的な存在だと思うんですけれども、三条二項は、国際平和協力業務をするのでも武力行使と一体にならないようにすると再度念を押しているわけです。これは政府の、レジュメにも書きましたが、九〇年代以降のいわゆるPKO法ですとかあるいはイラク特措法まで、絶対武力行使になってはいけない、こうくぎを刺している。さらに、それをまた今度三条の改正二項で、武力行使等をしてはいけない、こうなっていますので、もちろん憲法の九条の議論をここでするつもりはないですが、政府解釈を前提とするということでとめておくと、政府解釈では個別的自衛権ということですので、個別的自衛権に触れるということは基本的にないだろうということであります。

 ただ、ここでこの際あえて言っておきたいのは、結局、本来任務化すると、海外でいろいろ自衛隊が活動する。これは基本的に後方支援、武力行使はしない。基本的にというか、武力行使はしないわけです。ただ、その際、戦場とどこで一線を画されるとかという議論があるわけですが、やはり、現場で動く自衛官の生命、さらに、ちゃんと職務を全うできるかどうかということがちゃんとできるように、武器の使用等の基準ということは、もっと国会が誠意ある対応を示さなくてはいけないのではないかというふうに考えるということだと思います。したがって、憲法との関係ということでは、三条二項は特に憲法に触れるということは考えていないということであります。

 むしろ、あともう一点ですが、先ほど、なぜ防衛庁は庁のままだったかということで、九条があったからと。確かにそれはあると思います。ただ、今の日本国憲法は、先ほど申しましたけれども、軍に関しては極めてネガティブな表現しか書いていない。本来、安全保障というのは国家の基本的な責務なわけですけれども、これを憲法では何も明記していない。例えば諸外国の憲法ですと、今度舛添さんなんかが、自民党が出している憲法改正案の中には、自衛隊の指揮監督権、こう書いてあるわけで、本来は軍の指揮監督権というのを憲法に明記する。これは皆さん御存じのように、アメリカでもドイツでも、ドイツなんかは憲法を改正してまでそういうことをしたということがあるわけで、結局、防衛とかいうような問題が憲法上必ずしも明確でなかったということ、確かに庁のままであったという部分があると思います。

 それとあと、防衛と警察というのは、これは私の推測ですが、推測で言っちゃいけないですけれども、感想ですけれども、防衛と警察というのはやはりちょっと怖いということで、やはり外局のままにしておいた方がいいんじゃないか、総理府の中に閉じ込めておいた方がいいのではないかというようなことがもしかしたらあったのかもしれない。さらに、警察とか防衛というのは縦割りにはちょっとなじみにくいんじゃないかなというような配慮があって、もしかしたらなかなか省というような動きは結実しなかったのではないかなというふうに思われるということであります。

 以上です。

前田参考人 先ほど、再編と今回の法案改正が防衛計画大綱を媒介として密着しているということを申し上げましたが、同様に、今回の法案は改憲とも連動している。先ほど、私の陳述ではミニ九条改憲、ミニ改憲という言葉を使いましたが、三条二項というのはそういう方向に自衛隊を持っていくだろう。すなわち、集団的自衛権の行使、海外派兵、これまで内閣法制局によって、それはできない、憲法上違憲になるというふうに例示されてきたようなことが起こり得る。

 なるほど、条文を子細に読めば、自衛隊の正常な業務に支障を生じない限度においてとか、武力による威嚇または武力の行使にわたらないというふうな留保がついておりますので、立法技術的には合憲だというふうに言い抜けることはできるかもしれません。ペーパーテストではそれは通るかもしれない。それはもう中谷先生が御承知のとおり、現場では決して通用しない。まして、領海ではない外国の領域において、もう一〇〇%通用しない。そこにやられる自衛官は大変な思いをしなければならない。

 私はカンボジアPKOを何度も取材しました。カンボジアPKOは、自然権的な正当防衛による武器使用を第二十四条で掲げておりました。指揮官を苦しめました。隊員を苦しめました。私は、先ほど申しましたように、自衛隊を含めた能力を持って国際協力をすることにやぶさかではない、日本はやるべきだ、けれどもああいう形ではやるべきではないという主張をしました。しかし、政府はそれを行い、かつ、自衛隊の部隊に実施不能とも思えるような武器使用の基準を与えて、幸いにして自衛隊員に事故は起きませんでしたけれども、大変な苦痛を強いた。

 今回の自衛隊法三条は、それをもっと大規模な形で、しかも日米協力という、もっと修羅場といいますか、もっと危険な状況の中でこれが使われることがあり得るわけですから、憲法はもとより、そういうことに実際に赴かされる隊員たちのことを、憲法九条が人を殺すというようなことになったら、護憲論者としての私はもう立つ瀬がないという気がいたします。

赤嶺委員 もう時間がなくなりましたけれども、最後に、大事なことなんですが、防衛省になることによって、あるいは海外活動を本来任務化することによって、今までと何ら変わらないんだというのが政府の説明であるわけです。

 海外活動を本来任務化して、一方で憲法を変える話があって、集団的自衛権の話があって、装備なども予算も規模も変わらないのか、今後の自衛隊の活動は変わるのか変わらないのかという点について、大変手短に、御三名の先生方、お願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

増田参考人 先ほどお答えしたことをまた繰り返させていただきますけれども、九〇年代に日本は、安全保障を政治や経済と同列に考える、そうした国民の理解というものが高まる中でPKO活動という新たな国際的な役割を担うことになったのであります。そうした立場から、やはり今後も日本はこうした役割を続けていくべきであり、継続すべきこととして、こうした国内的な防衛の役割と同時に、対外的な、国際的な役割を車の両輪として今後も続けていく必要がある、こういうふうに理解しているわけであります。

 以上です。

富井参考人 三条二項は、先ほども言いましたように、従来ある百条以下の、周辺事態法ですとかPKO法なんかを雑則につけていたということでちょっと据わりは悪かったということがあって、これはもう前から本任務化しようという議論があったわけで、それを追認したというわけではないんですが、そういう部分はかなり大きいのではないかなと思います。

 ただ、御指摘のとおり、条文ができるとこれは歩き出しますから、これをもとに、じわじわというのは変ですけれども、いろいろやっていくのではないかというような危険というのか、そういうような認識を持つのは自然なことだとは思いますけれども、しかし、自衛隊は個別的な法律ですとか国会の承認がないといけないわけで、三条二項は何か新たな任務を付加したという規定ではない。むしろ、何か新たな任務をするのなら、もっと個別法で具体的にやるわけでありまして、ということで、変わるか変わらないかといえば、特に何か新たな任務がふえるというわけではない。

 ただ、今後自衛隊の、こういう言い方はよくないですけれども、使い方というんですかね、それはいろいろ国際情勢ですとか国民の世論ですとかそういうもので変わってくるわけで、ただ、憲法とか法律というのは、そういう使い方を、歯どめをちゃんとかけるですとか整合性があるものにするということで、ちゃんとしておかなきゃいけないということで三条二項という改正案というのが出てきているのかなというふうに考えるということであります。

前田参考人 具体的にどのような任務がこれから付加されるかは別に定める法律によるのでしょうけれども、三条に規定された任務が、直接侵略、間接侵略、そして専守防衛、基盤的防衛力というものであった以上、それに加えて今度国際的任務が加わったわけですから、自衛隊の基本的性格が変わったとみなさざるを得ない。そこからどのような法律が出てくるか、それは今のこの改正案の中にはありませんが、普通の軍隊になったと少なくとも周辺諸国が受けとめることは間違いない、我々が考えている以上のメッセージを発信することになるだろうと思います。

赤嶺委員 終わります。

寺田(稔)委員長代理 次に、辻元清美さん。

辻元委員 社会民主党の辻元清美です。

 きょうは本当に、参考人の皆様、ありがとうございます。

 まず最初に、現在の日本を取り巻く、特に安全保障議論についての御見解と、それから、防衛省ではなく、今まで庁としてきた戦後日本の中での歴史的な意味はどういうふうなところに見出せるかという御意見を伺いたいと思います。

 例えば、今回のこの法案をめぐりましても、さまざまな新聞でも、社説などで紹介されております。その中の一、二を紹介したいんですけれども、「防衛を担当する役所を「省」ではなく「庁」としてきたのも、軍事力を抑制的に考える戦後日本の姿勢を反映したものだ。 それを「省」に昇格すべきだというのならば、そうした歴史への総括がなければならない。平和国家としての理念にもかかわる大きな枠組みの議論が必要なのではないか。」とか、地方紙も、自衛隊を首相の指揮下に置くことは、文民統制を一層徹底させるとともに、軍事大国化の道は歩まないという政治的に重要なメッセージを含んできたと。そういう中で戦後日本は歩んできたと思います。

 ですから、私は、単なる役所の名前の書きかえとか、それからいろいろな権限がというような話ではなく、もっと大きく、私たちが戦後をどういうふうに見るかということにもかかわってくると思いますので、この点についての意義と、そして現在の安全保障をめぐる議論の政治状況をいかにお考えか。

 私は非常に危惧をしております。それは、ここでも、文民統制、シビリアンコントロールという言葉がございますけれども、むしろ政治の側が浮き足立っているような気がしてならないわけです。といいますのも、最近、麻生外務大臣などが、核保有議論の必要性についてという発言があったり、それから久間防衛庁長官の、非核三原則の、かすめるということについての発言があり、物議を醸したり、それから最近では、弾道ミサイル防衛システムの整備等について、福田官房長官が集団的自衛権との関係についての縛り発言のようなことを談話で出しておりますけれども、この見直しというようなことを総理が言い出したりということで、私は、何か非常に浮き足立っているような危惧を持っております。

 ですから、戦後の意味と今の安保をめぐる議論の私のこの危機感についていかがお考えかということをお聞きしたいと思います。

増田参考人 私、ただいま、辻元先生の御質問、二点あるというふうに理解しております。

 一つは、防衛庁の成立の経緯というものが、そもそも日本の防衛力というものを抑止する一つの存在として庁であったんだ、こういう御見解でありますけれども、先ほど私が申し上げましたとおり、むしろ、そうしたことではなくて、歴史的な経緯があったんだ、すなわち、占領時代の遺産といいましょうか、その延長線上に防衛庁というものが成立したんだと。すなわち、マッカーサーとワシントン側との日本の再軍備に対する意見の対立があり、それが朝鮮戦争という突発的な熱戦の中で日本は防衛力を担う役割を強要された、こういう事実があるわけでありまして、そうした延長線上に防衛庁というものが誕生するわけでありまして、決して御指摘のようなことではないというふうに考えております。

 それから、安全保障に関する議論に対する私自身の意見はどうかということでありますけれども、私はむしろ逆に、先生とは異なって、安全保障が非常にフリーに、自由に議論されるようになったということは極めて健全ではなかろうかというふうに考えております。

 先ほど私ごとを述べさせていただきましたけれども、私がまだ二十前後のころというのは、安保騒動の余韻がまだまだ続いておりまして、軍事問題、あるいは安全保障の問題、あるいは安保の問題、それを自由に論議することが許されない、そういう雰囲気があったわけであります。すなわち、これはタブー視されていたのであります。しかし、そういうことが果たして健全であると言えるかというと、私はそうは思わないのであります。

 そういう意味において、今日、とりわけ九〇年代以降、安全保障の問題が、それはもちろん軍事問題を含めた安全保障の問題が政治問題や経済問題と同列に議論されるようになったということは、これはむしろ結構なことであって、決してそれを忌避するようなことはないのではないかというふうに私自身は考えている次第でございます。

 以上です。

富井参考人 辻元先生の御質問、非常に難しいことで、ちょっとなかなか答えにくいんですが、二点あると思います。

 一点は、現在の安全保障の議論をどう見るかということですけれども、これは、日本は、基本的には私は憲法九条というのは非常にいい条文だと思います。ということで、九条のおかげということだけじゃないと思いますが、平和で来たのは、九条ということは決して小さくないと思います。

 ただ、憲法は、終戦のああいう流れの中ででき上がったということで、先ほど、何回かもう言っていますけれども、軍事に対しては非常にネガティブなことを持っているということで、それでずっと来たわけですけれども、最近、国際情勢が変わりまして、国民の不安に対する意識、先ほど申しましたが、非常に高まっている。

 もともと国家というのは、どんなに削っても、結局、国家の防衛ですとか警察ですとか司法というのは、これは残るわけで、そういう意味では、やはり安全保障というのは基本的な責務であるということは、今の現行憲法でもこれは余り違わない。ただ、日本国憲法は、軍事を前面に出して安全保障を推し進むということはいかがなものかというふうにしていると解釈できるというふうに思います。

 従来の安全保障の議論というのは九条という議論で、私も法律学の学会に属していますが、特に憲法学会などは、これは私はそれなりに健全な解釈だと思いますが、例えば自衛隊違憲ですとか、そういうような流れで来たということで、なかなかその先に行かなかった。しかし、国民は、実際には、自衛隊が憲法違反かどうかということを無視するわけじゃないですけれども、本当に日本、我々を守ってくれるのか、国家を守ってくれるのかというようなことを危惧しているということで、この負託にはやはり政府はこたえなければいけない。

 今、九条をないがしろにするということではなくて、九条をもう少し現実的にとらえるというような展開になってきて、イデオロギッシュな議論ということよりも、むしろ技術的な議論ということが高まってきている。本来安全保障というのは、イデオロギーよりも、やはり技術的なものが非常に多いと思います。これは科学です。客観的に国民の生命身体を守る、国家を守るということは基本的なことであって、そこに社会主義も資本主義も基本的にはない。ないというか、それはそんなに強く議論するということはない、国家としては基本的な責務であるということをまず位置づけなければいけない。

 さりとて、日本は、憲法で軍事を前面に出すという選択は否定したということですけれども、やはり最後は、最後というか、軍事というのを全く否定したというわけではない。個別的自衛権という形で究極的には自衛隊が出てくるということは決して否定しているということではない、これは政府の解釈と思いますけれども。ということで、今言ったように、安全保障というのはもう少し冷静に、客観的に議論するという場が必要で、だんだんそうなってきているんではないかということを感じるということです。

 二点目で、防衛庁の総括ということですけれども、これは防衛庁から防衛省になるということで、先ほど辻元先生、私のその懸念は不健全でしょうかというふうにお尋ねになりましたが、私は健全だと思います。政治家は、やはり軍に対しては常に警戒的な態度をとらなければいけない。しかし、ネガティブな態度はとってはいけない。安全保障というのは、軍事と政治で、両輪で動いていくという部分がなきゃいけない。政治だけで国は守れないし、自衛隊だけでは国は守れないということ、これが重要です。

 ということで、基本的には、自衛隊の使い方については議会の統制ということをしっかり担保するということが重要ではないかということです。

 ちょっと長くなって済みませんでした。

前田参考人 自衛隊が抑制的に庁という立場に置かれてきたのは平和国家の理念の具現ではないのかという第一の論点があります。私は増田参考人とは反対であります。まさに、平和国家の理念の具現が庁という行政組織の形に今日に至るまで置かれてきた大きな根源だろうと思います。

 それは、警察予備隊発足のときの後藤田正晴さんの回想録、アメリカがどのような圧力をかけてきたか、彼がそれをどのように拒否してスモールアーミーを警察予備隊という編成表にかえていったかということは極めて具体的に書かれています。同じように、海原治さん、先月お亡くなりになりましたが、彼のオーラルヒストリーを子細に読めば、彼もまた、内務官僚として、命じられた再軍備をやらなければならないけれども、それが憲法のもとで普通の軍隊、アメリカが要求する軍隊であってはならないということを具体的にやった方です。久保卓也さん、七〇年代、基盤的防衛力構想をつくられた方もまた同じような考え方の持ち主だったと思います。

 政治家でいえば、吉田さんから宮沢喜一さんに至る、再軍備をしながらも、しかしそれは抑制的なものでなければならないということを実際に形にされました。それは、芦田均、重光葵たちの再軍備論と対比させながら、どちらが採用されたか、なぜ採用されたか、それはどんな形で採用されたかを見れば、明らかに、庁であった、庁であるという合理的根拠、そのような憲法運用、彼らを護憲側には私は入れませんが、しかし、憲法から日本の軍事組織が導き出されてきた痕跡を見つけるのは容易だと思います。

 それが今壊されているのが、第二点の安全保障をめぐるかまびすしい今の議論だろうと思います。タブーがなくなったということですね。ミサイル防衛、核の保有に関しても、集団的自衛に関しても、タブーを設けずに議論しようではないか。それがこの法案の三条二項に出てきていますし、また別の法律という形で予告されているというふうに私は受けとめて、大変危機感を持っています。それは同時に、改憲という別のステージでも議論されているわけですが、この法案の改正にも、最近の安倍政権になってからの安全保障をめぐるタブーなき議論というのが反映しているように思われます。

 私は、憲法を守る、ないし憲法に拘束されるという歴代内閣、それは保守政権によってずっと担われてきましたが、しかし、例えば非核三原則、例えば武器輸出三原則、例えば宇宙の平和利用というような形で、内閣の政策としてこの憲法が要請している安全保障政策を維持するということは守られてきたと思います。それが今、たがが外れるといいますか、それも言論の自由の範囲内だという言い方をしている。違うと思います。

 それらは内閣の政策であると同時に、継承されてきた内閣の政策であり、院の決議によって再度、非核三原則に関してはもう五回か六回、両院の決議によって採択されています。単なる内閣の政策、一内閣の政策ではないということですね。しかも、鈴木善幸総理大臣は、イギリスの王立協会のスピーチで、ワシントンのナショナルプレスクラブのスピーチで、日本の非核三原則はナショナルポリシーだというふうに言っています。これを内閣の政策だから取っ外してしまえというのは、乱暴な議論だと思います。

 安全保障は自由にというのは、それは言葉の上ではそのとおりかもしれませんが、しかし、そのように継承され、踏襲されたもの、ヒトラーだっていいことをしたんだというような議論をドイツで始めたら大変なことになる、そんな議論もいいというようなことになってしまうだろうと思います。そういう意味で、今の議論、安全保障をめぐる議論には大変危機感を持っております。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

辻元委員 私は議論の中身が問題だと思います。机上の空論の安全保障議論が多いんではないか。

 例えば、先ほどから、どういうことかというと、周辺事態に対する活動や国際平和のための取り組みへの寄与というのを三条任務につけ加えることに関しても、そうしましたら、イラクに行った自衛隊の活動を皆さん御存じでしょうか、具体的に。サマワの警備を何人がして、給水活動を何人がしたかとか、どれだけの経費を使ってどのような成果を上げたのか、中身についての議論がないわけです。

 さらに、例えば、先ほどPKOの話がありましたけれども、私もカンボジアのPKOの現場には行きました、最初のころ。PKOのことは、私は安保委員会でずっと、この十年近く議論をしてきました。例えばPKOについても、上位十カ国、どういう国がPKOにたくさん参加しているか、ちょっと御紹介したいんですが、一位バングラデシュ、二位がパキスタン、インド、ヨルダン、ネパール、エチオピア、ウルグアイ、ガーナ、ナイジェリア、南アフリカです。PKOの理念というのは、大きな国が一国で何百人単位でどっと入って完結的にやるのではなく、小さな国、多国籍が入っていって、中立性を高めて、そして活動する。または、特に途上国のような国は、PKOがその国の資金を稼ぐという役割もしておりますので。ですから、では、PKOの活動、例えばルワンダで給水もやったといいますけれども、ドイツから来ていた非軍事の活動の方がはるかに効率がいいわけです。自衛隊の組織では、ピラミッドですから、PKOの活動などになかなかそぐわない面もあるわけですね。

 ですから、その中身についての議論なく、形とか、MDとか、そんな話ばかりしている議論に私は懸念を表明しているわけです。

 そこで、最後にまた三人の方にお聞きしたいんですけれども、このPKO活動やイラクの自衛隊の活動についての御所見。

 実際に先ほど増田参考人が湾岸戦争のときの話からスタートされましたけれども、私は、その議論の立て方、非常に懸念しております。湾岸戦争のときに、あれはクウェートが感謝をするというところに日本の名前がなかった。あのときもさんざんその話が、その後も出ていますけれども、あれは外務省の怠慢じゃないか、ちゃんとプレゼンしてないじゃないかということをみんなわあわあ言っていましたけれども。それをもって、先ほど、世界から批判を浴びたという、どこの国が具体的にどう非難したのか。要するに、そういう中身の具体性を持った議論をするのが私は安全保障の議論だと思っています。PKOの中身について、では、ルワンダはどうだったのか、カンボジアはどうだったのかということの中身についてどのようにお考えなのか。

 イラクについても、費用でいえば、例えば自衛隊員は約二万円ぐらい一日行ったら出張手当とかつくわけですね。五百人ぐらいで一千万ですよ。後半何していたかと聞きますと、学校を修復していたとおっしゃるわけですけれども、イラクなどでは、NGOとかいろいろなところ、民間で学校を建てる、六百万円から一千万ぐらいで一校建つわけですよ。そうすると、出張手当の分だけで新しい学校を新設できるわけですね。

 ですから、総合的にイラクでの自衛隊の活動の中身をどう評価されて、どんなふうに皆さんは御理解なさっているのか、それから、PKO活動については具体的に何のどこがよかったのかということをぜひお三人にお聞きしたいと思います。それが私は安全保障の本当に中身の議論だと思うんですね。

木村委員長 時間が参っておりますので、参考人、簡潔に願います。

増田参考人 私は、一人の学者でございまして、先生からすれば机上の空論を並べているものにすぎない、先生のように、現場に携わって、つぶさに体験をしたような立場からお話しすることはできません。しかし、物事というのは大所高所からやはりとらえるということが大事であって、政治家もまたそのとおりであろうと私は考えております。

 そういう意味において、先ほど申し上げたことをもうここで繰り返すことはいたしませんけれども、やはり、九〇年代を通じて日本のPKO活動というものが国際社会に評価されたということは、もう厳然たる事実として私はそのように指摘できると思います。

富井参考人 辻元先生の御指摘、もっともだと思います。ただ、評価しろといっても、ここで時間がないし、私も細かいところまでは知りません。

 ただ、最後に一言確認のために申し上げておきますけれども、改正案の三条二項というのは、これまでの周辺事態法とPKO、いろいろな活動、それを、本来任務化という意味がちょっと、確かに危険、今話を聞いていると、危険だ、危険な香りがあるなんというような感じもしないわけでもないんですが、むしろ、これまで百条にだらだらつけていたものを精緻化するということが基本だというふうに考えております。ということで、特に問題ないというのか、そういうことでいいんじゃないか。

 それで、あと、具体的な中身を知らないかということですけれども、しかし、本来任務化したからといって、すべての例えばPKOに出るということではもちろんないわけです。PKO法がそこで法律的に優先するわけで、PKO法では、ちゃんと国会の承認ですとかそういうことがあるわけです。したがって、一番重要なのは、例えば三条二項というのがもしできて、それが危険というかいろいろ解釈されるということがあったとしても、しかし、個別法では、議会、国会の承認ということを置いています。だから国会がしっかりしてもらわなきゃいけないということだと思います。

前田参考人 おっしゃるとおり、PKOは、初期はフィンランド、ノルウェー、カナダといった北欧の中立国が主に担ってきました。今は、バングラデシュ、パプアニューギニア、フィジーといった国が、多く兵力を、歩兵部隊に関しては参加させています。これは、経済的な理由が御指摘のとおりあると思います。ですから、日本は、そのような分野ではなしに、医療であるとか通信であるとか、より高度な技能を要するようなところに出していくことが望ましいと思います。

 私は、カンボジアとルワンダ難民救援で何度か現地を見ました。ルワンダの給水活動支援は大変考えさせられるものがありました。スウェーデンから引き継ぎ、ドイツに渡したんですが、スウェーデンはNGOでした。ドイツは、政府機関、内務省の組織でした。両方とも百人以下でやっているのを、日本の自衛隊はたしか四百人ぐらいでした、でやる。能率は同じで、スウェーデンとドイツは運んでいっているんだけれども、日本は蛇口を設けてそこにとりに来てもらうというようなことで、これはむしろ、本当に、下請といいますか、そういう民間に任せた方が、きめ細かな、また的確なサービスをより安くできるということを痛感したわけです。

 今回、三条二項にああいう形で自衛隊の基本任務としてなるとすれば、PKOだけではなしに、大きな国際救援という名目で自衛隊が出ていく。そうしますと、武装部隊が出ていくわけですから、武器の防護のための武器使用というようなことにわたるような、自己肥大的なものになっていく。PKOを初めとする人道的救援に関しては、もっと別のところできちんと議論をしていくべきだし、またできると思います。それに自衛隊の能力や施設を活用するということは、自衛隊違憲論とは別の次元で議論できるというふうに私は考えております。

 以上です。

木村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

木村委員長 引き続き、第百六十四回国会、内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。久間防衛庁長官。

久間国務大臣 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、御説明いたします。

 我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務の重要性にかんがみ、防衛庁を防衛省とするため、所要の規定を整備するほか、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動等を自衛隊の任務として位置づけるとともに、安全保障会議の諮問事項を追加する必要があります。

 以下、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 この法律案は、防衛庁設置法、自衛隊法及び安全保障会議設置法の一部改正並びに関係法律の規定の整備を内容としております。

 まず、防衛庁設置法の一部改正につきましては、防衛庁を防衛省とするとともに、その長を防衛大臣とする等所要の改正を行うものであります。防衛省の任務、所掌事務、組織等は、現行の防衛庁設置法に規定されているものと同様のものであります。

 次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。

 第一に、防衛庁を防衛省とすることに伴い、自衛隊の最高の指揮監督権、防衛出動の命令、治安出動の命令、海上における警備行動の承認その他の内閣の首長としての内閣総理大臣の権限については変更せず、内閣府の長としての内閣総理大臣については、これを防衛大臣と改める等所要の改正を行うものであります。

 第二に、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動並びに国際連合を中心とした国際平和のための取り組みへの寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動について、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされているものを行うこと等を新たに自衛隊法第三条に規定する自衛隊の任務として位置づけるための所要の改正を行うものであります。

 最後に、安全保障会議設置法の一部改正でございます。

 これは、安全保障会議の諮問事項に、内閣総理大臣が必要と認める周辺事態への対処に関する重要事項及び内閣総理大臣が必要と認める自衛隊法第三条第二項第二号の自衛隊の活動に関する重要事項を追加するものであります。

 そのほか、関係法律の規定の整備等を行うものであります。

 以上が、この法律案の概要でございます。

    ―――――――――――――

木村委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁長官官房長西川徹矢君、防衛庁長官官房技術監佐々木達郎君、防衛庁防衛政策局長大古和雄君、防衛庁運用企画局長山崎信之郎君、防衛庁人事教育局長増田好平君、防衛施設庁長官北原巖男君、防衛施設庁総務部長新保雅俊君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君及び海上保安庁警備救難部長石橋幹夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田雄吉君。

前田委員 民主党の前田雄吉です。

 きょうから、我が党も、防衛庁の省への昇格法案を審議させていただきますけれども、私は、こうした議論の中にも大前提がある。その一つには施設庁の談合問題へのけじめ、そして、あと安全保障政策についての統一性をいかに担保するかということであると思っております。

 そこで、まず初めに、施設庁の談合問題について引き続き御質問したいと思います。

 私が、十一月二日の当安全保障委員会において、具体的にこの談合行為がいつから始まったのか、これを明らかにしていただきたいという質問をさせていただきまして以来、三百五人分の証言記録を要求してまいりました。与党の皆さん、そして私どもの筆頭理事、あるいは国対の協議によりまして、本日、朝九時から十時半まで九十分にわたりまして、上下のファイルでありましたけれども、約千二百ページの三百五人分の証言記録を拝見いたしました。

 この証言記録を見まして、私は、具体的に談合問題がどのように始まったか、しかもいつから始まったかという特定をしたかったわけでありますけれども、これは黒塗りの、墨の部分が非常に多くて、なかなかそうしたことが明らかになっていないのではないか、そういう感じがしてなりません。

 そこで、私は、きょうこのファイル二つ分の千二百ページを見るに当たって、とにかく資料の信憑性についてということで、以前いただいたA4三ページのヒアリング結果、五十年代半ばから談合が始まったというヒアリング結果のものを見まして、例えばここにドラフトという判こが押してある、それが本当に原資料に載っているかどうか。あるいは、この六月十五日の調査報告書がありますけれども、この最後のページに「「防衛施設庁入札談合等に係る事案に対する調査委員会」構成図」、参考資料として挙げてありましたね。それから二番目に、「競売入札談合事案に関するアンケート調査結果について」というのがありますから、これが入っているかどうか。あるいは、前回のヒアリングの中に「変遷表を指して」というのが書いてありましたので、これが含まれているかどうかということを具体的に見せていただきました。ドラフトの判もきちんと押してあり、これは現物であるという確信は得ましたけれども、それにしても非常に墨塗りの部分が多かった。

 これの開示に当たっての根拠法について御説明いただきたいと思います。

久間国務大臣 詳しくは後でまた事務方から説明するかもしれませんが、私たちが非常に気にしたのは、この調査をするときに、外に対しては公表しませんからという約束でみんなから意見を聴取した。やはり役所といえども人と約束したことについてはうそを言っちゃいかぬ。それを、後からになってうそを言ったじゃないかというようなことになるとこれから先の信用にかかわるから、そこのところをどうするか。

 しかし、前田先生が前に質問された中で、五十年代半ばというのは、果たして本当にそれがきちんと出ているかどうか、そこのところはやはりわかるようにしないといかぬじゃないかというような、そういうことで、ここのところはそれがわかるようにする。

 それと同時に、さっき言ったように個人情報の問題もあるから、それと、まず見せませんからといってやった以上は、その約束だけはきちんと守られるような形をとらないと、これはもう法案の審議を進めなければならぬからということで、うそを言うというのが一番いかぬことだ、そういう前提に立って話を進めましたので、大変不本意な点もあったかもしれませんけれども、あのような結果でございますが、調査をしたのは事実でございますし、その調査に基づいて、もう五十年代の半ばにはそういうことがあっておったというのもあらかた御理解できたんじゃないかなと思うわけであります。

西川政府参考人 今前田先生から御質問ございましたように、きょう、私の方で、これは法律関係につきましては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、大分長い法律でございますが、平成十一年に制定されました、これの第五条の第一号、ここに、特定の個人として識別ができるもの、それから組み合わせることによって関係者に個人を特定されるおそれがあるもの、あるいは公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるもの、こういう格好で規定されておるのが一つ。それから、第五条の第六号の柱書きのところに、国の機関等が行う事務に関する情報で、公にすることにより、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの、こういう形のものがございます。

 ほか、民法で、もしそれが漏れた場合には別個の不法行為に当たる、これは民法の七百九条でございますが、故意または過失によって他人の権利を侵害したという場合に当たる場合にはその損害を賠償する責任を負うという格好の、これを根拠としてやっております。

前田委員 今、開示の方法に当たっての法律を述べていただきましたけれども、具体的に五十年代に始まる談合事案についての部分が前回のヒアリング結果で六行の部分が出ておりましたけれども、きょう実際に資料を見せていただきまして、一つ目のファイルの中にきちんとこれもありました。「それは、ずうっと前から行っていたのか。あなたは、いつ頃からやっていたのか。」「いつ頃からかは承知していませんが、少なくとも、私が」黒塗り「計画課長になったときには、なんとなくそういう雰囲気があるなということを知りました。それは、昭和五十何年でしょう。それまでは、全く分からなかったんですけれども、そういういろいろな新聞でいう配分表があるのかなあと思っていました。実質知ったのは、総括補佐、今の企画官になったときに知りました。」こういう部分がきちんとありましたので、この部分がこの五十年代半ばということの根拠であったというふうに思います。

 こうした資料がなかなか、どうして明らかになってこなかったかということを、きょう朝、施設庁の皆さんにちょっと聞きましたところ、公正取引委員会に資料をとられていたんだというお話がありました。この公正取引委員会にいろいろな談合事案に関する資料が持っていかれていた経緯等を少し御説明いただけませんでしょうか。

西川政府参考人 済みません、私、その所掌の分野じゃございませんけれども、ちょっときょう、本来、非常に細かいところ、施設庁の方で担当しておりましたので待機を、ちょっと今から調べさせます時間がありますので。

久間国務大臣 細かい経緯じゃございませんけれども、刑事事件には、検察庁の関係で終わっていますけれども、公正取引委員会はまだ今調査が続いておりまして、これによってまだこれから先、公正取引委員会の所掌の範囲内において彼らは仕事をやっておるわけでございまして、それに必要な書類を出してもらいたいと言われれば、うちの方はそれを率先して出さなければなりませんので、その関係で資料を持っていかれて、いまだ返っていないのもあると思います。それはそんな昔の、昭和五十年ごろの話じゃなくて最近の話と思いますけれども、そういうことで御理解賜りたいと思います。

西川政府参考人 失礼しました。ヒアリング調書についての公正取引委員会からの請求についてでございますが、ヒアリング調書については、平成十八年六月二十日に公正取引委員会からの独占禁止法に基づく提出命令に従って提出しております。

 ただ、しかしながら、同年の、十八年の六月三十日にヒアリング調書の開示請求が公正取引委員会に対しなされましたため、同七月十四日に公正取引委員会の方から作成元の防衛施設庁にこの調書の移送手続がとられまして、ヒアリング調書のコピーが送付されたということでございます。

 以後、防衛施設庁におきまして、提供を受けたヒアリング調書のコピーを現在保管している、こういう経緯でございます。

前田委員 今お話にありましたように、七月十四日に具体的には渡っているということなものですから、この調査報告書が出た時点においては、きちんと全部資料があったということでよろしいんでしょうか。

西川政府参考人 そのときには調書がございましたということです。

前田委員 それでは、内容の方に少し入りたいと思います。

 北原施設庁長官に伺いたいと思いますけれども、政治家の氏名が実はこの中にあったんではないか、あったという内部告発が私どもに参りました。実際に政治家の名前があったんでしょうか。北原長官、お願いします。

木村委員長 ちょっと待ってください。

 前田雄吉君、北原長官を参考人で呼んでいないんですね。ちょっと待ってください、今確認しますから。

北原政府参考人 私ども、一月三十一日から調査をしてまいりました。そして、今先生御指摘の調査報告、これにつきましては六月十五日に公表をさせていただきました。

 そして、その中のそれぞれの内容でございますけれども、私どもの調べた約三百名の発言の中には国会議員その他のお話もございますけれども、ただ、それは一般的なお話でございまして、今回の官製談合とは全く関係がない。したがいまして、我々といたしましては、調査報告書を六月十五日に発表させていただきましたが、そこにも全く私どもは記載はしていないところでございます。

前田委員 政治家の名前があったというふうに証言していただきました。

 きょう午前中に見て、私もそれについての質問なものですから、質問通告ができずにおりますけれども、そこの中に、きょう私が見ました資料の二冊目のファイルの中にこんな質問がありました。今回の事案に対してどのように思うか。必要悪でも悪いことと思う。そこの中に、メモをとっていいということなものですから、こういう記述がありました。政治家本人はないが、秘書を何とかしてほしい、こんな政治家を改善してほしいというくだりもあったわけであります。政治のサイドも襟を正さなければいけないということはここにも明らかであると思います。

 実際に、まだまだこの資料は私ども読み込みをさせていただきたいなというふうに思っておりますので、きょうは午前中に見た分についての質問を今させていただきました。

 それから次に、私は、自衛隊の規律にかかわる問題であるというふうにも思っております、練習潜水艦「あさしお」と貨物船との接触事案について伺いたいと思います。平成十八年十一月二十一日火曜日午前九時四十九分に宮崎沖で発生した事案であります。

 このとき、この練習潜水艦は、潜望鏡を出す露頂をしようとしていたということでありますけれども、大体水深何メートルぐらいのところから浮上しようとしていたのでしょうか。またそれは、この「あさしお」でしたら、完全に浮上するまでに何秒ぐらいかかるものでございましょうか、教えてください。

山崎政府参考人 大体どの程度の深度からという御質問でございますが、現在、恐縮でございますが、当艦艇自体に対して海上保安庁の調査が入っておりまして、詳細な深度等について、私どもまだ把握をしている状況じゃございません。わかり次第、御報告をさせていただきたいと思います。

前田委員 では、いつになったらこういうことは教えていただけるんでしょうか。

山崎政府参考人 案件によりますが、通常、海上自衛隊におきますこの手の事故等につきましては、一カ月ないしは一カ月超かかっております。ただ、事案が非常に安全にかかわるものということで、現在、海上保安庁さんとも御相談をしながら、なるべく早期に報告ができるよう今努力をしている最中でございます。

前田委員 この練習潜水艦でありますけれども、ソナーで周辺の船舶を探知するということでありますけれども、通例、この「あさしお」ですと大体どのぐらいの範囲をソナーで船として探知できるんでしょうか。

山崎政府参考人 ソナーでどの程度といいますのは、先生よく御承知だろうと思いますが、アクティブソナーそれからパッシブソナーによって違いがございますが、両案件とも、どの程度の探知距離があるかということについては、事柄の性格上秘密にかかわりますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

前田委員 さっきから、何も明らかになっていない状況だけが明らかになって、私は、こうしたことこそ、自衛隊の規律、それから、これからどうやって省をつくっていくかということの非常に大事な部分であると思いますね。ですから、きちんと私は御答弁いただきたいと思います。

 どうですか、そういうことで、もう一度。

久間国務大臣 この間、米空母が追尾されておったというようなことが記事として出ておったことがありますけれども、空母にしても、潜水艦もそうですけれども、どの範囲ならばエンジン音を聞き分ける、スクリュー音を聞き分けるというようなことは、やはりみんな秘中の秘でございますから、それをこういう席で公にするというのは勘弁してもらいたいと思います。

 しかしながら、事故原因がどこにあったかというのは、これは大事なことでございますから、今調査をさせておるところでございまして、これについては、調査が出次第、また委員会等でも報告させていただきたいと思います。

 ただ、私がちょっと疑問に思っておりますのは、機械はソナーを含めて一切故障していないわけであります。それなのに、なぜこういうことが起きているのか、ここのところが非常に、本人が不注意だっただけでは済まない問題じゃないかと思います。

 だから、さっき言いましたように、潜望鏡が出てくる状態にあっても、ぐっと上に上がってきて潜望鏡が出始める、露頂するところの問題でございますから、ソナーというのは大体、水中での音波をつかまえるわけでございますから、非常に浅く、露頂の瞬間になってきたときには果たしてそれが機能するのかどうかも含めて、もう一回技術的にこの問題は真剣に取り組んでもらいたいということをちょっとお願いもしているところでございます。

 いずれにしましても、事故の原因がどこにあったのか、なぜそういうことが探知できなかったのか、これについては、これから先調査をしっかりとしていこうと思っております。

前田委員 今長官がおっしゃったように、やはり技術的な面でもこれから御検討いただかなきゃいけないことだと私は思います。

 それから、過去にも、数名の命が亡くなった「なだしお」の海難事案等ありますので、私は、この十一月二十一日の練習潜水艦の「あさしお」と貨物船との接触事案については、「なだしお」の海難事案のときに、当然これは米国がつくっていると思いますけれども、そうしたことは、日米の間だったら、他山の石として我が自衛隊もきちんと考えられていくということであると思うんですが、その教訓を生かし切れなかったのではないでしょうか。

久間国務大臣 御承知のとおり、私は、あのとき、防衛庁長官をやめてすぐ後ですから、「なだしお」に非常に関心を持っておりましたが、あの事件というのは、浮上しておりまして、そして遊漁船とぶつかった事件でございまして、浮上しているときの航行のあり方について、あれは海上自衛隊の方に非があって、しかもヨットに気をとられた、そういう問題がございました。

 だから、今度の例は、むしろそれよりも、浮上するときの事故としては、ハワイ沖で起きた、米軍の潜水艦が浮上するときに日本の練習船とぶつかったあの方が、むしろ比較して留意すべきじゃないかと思うんです。ただ、あの場合も、ハワイ沖の場合は、要するに急浮上の、そういうようなことでございますから、今みたいに、そこのところでゆっくりと潜望鏡を出してその周りを見渡してそこから上がる、そういう浮上の仕方とまた違うわけでございます。だから、そういう点では、マニュアルも、あれをもってすぐうちがどうこうということでもないし、「なだしお」ともまた若干違います。

 いずれにしましても、今度のことについては、こういうことがあっちゃいかぬわけでございますから、とにかくきちんと対応させたいと思いますので、調査を厳密にやって、どこに問題があったのか、その辺についてはよく調査したいと思っております。

前田委員 今、長官にハワイ沖との比較もしていただきまして、私は、やはりこうしたことを二度と起こしちゃいけない事案であると思いますので、ぜひ詳しくお調べいただきたいと思います。

 そして、今回の練習潜水艦の「あさしお」と貨物船との接触事案についてのこれからの解決策、これは事務方で結構ですので、賠償責任も含め、どのような法的手段をとられていくのか、お教えいただきたいと思います。

山崎政府参考人 防衛庁といたしましては、今回発生した接触事故により生じた損害につきましては、事実関係を踏まえつつ、事故と相当因果関係が認められる範囲で、当然、通常生ずべき損害について適正な賠償を速やかに実施してまいりたいというふうに考えております。

前田委員 これは、国家の税金を使っていく、国民の税金を使っていくことであると思いますので、慎重にやっていただきたいと思います。実際には、調査報告が出てから、また御質問したいと思いますので。

 次に、安全保障政策の我が国における一貫性について伺いたいと思います。

 ミサイル防衛の話に関して、塩崎官房長官が十一月二十日の記者会見において、MD導入時に、当時の福田官房長官が出した談話で、第三国の防衛に使用されないので集団的自衛権の行使には当たらないと言ったことについて、内容の見直しも含めて検討すべきだという趣旨の発言をされたというふうに聞いております。これに対して、久間長官は二十一日の会見で、第三国に向かって発射されているミサイルを日本からのミサイルシステムで撃ち落とすということが、実際問題として、できないのです、だから、どのようなことを想定していろいろな話をされるのか、私自身が理解できないのでコメントできないのですとお答えになっておられます。

 そこで、塩崎官房長官の言っていることについて防衛庁長官は、技術的に無理な話だとして理解に苦しんでいると私は思いますけれども、何ゆえ官邸サイドでは第三国に向かって発射されているミサイル迎撃を検討しようとしているんだろうかというふうに私は思います。実際に、安倍総理も十四日のアメリカの新聞のインタビューで、ミサイル防衛で、米国に向かうかもしれないミサイルを撃ち落とすことができないのかどうか研究しなければならない、こう総理自身も述べておられます。

 そこで、私は、この辺の意図が、官房長官に伺うしかありませんけれども、ここにおいでになりませんので、仮に技術的に可能になった場合、久間長官は、第三国に向かったミサイル迎撃について、集団的自衛権との関係、あるいは憲法改正論議との関係をどのようにお考えなのか、御説明いただきたいと思います。

久間国務大臣 少なくとも、はっきり言えますことは、現在政府がとっている集団的自衛権の行使ができないというその解釈においては、仮に技術的に可能になっても難しいだろうと思います。

 しかしながら、集団的自衛権というのは、民主党さんでも意見の集約を見ておられるように、私自身は、憲法調査会でも言っていますように、集団的自衛権と個別的自衛権と二つに分けることがいいのかどうか、我が国の自衛権としてどこまではやらなきゃならないか、やれるか、そういう問題についてはやはり研究はする必要があるんじゃないかと常日ごろ思っているわけですね。

 そうしたときに、例えば我が国がどこかに攻撃されて防衛出動が下令されて、米軍がそれに参加した格好で一緒に戦っているときに、我が国周辺ではなくて、米国本土を目がけてその応援しているアメリカを今度はやっつけろという形でミサイルが撃たれたときに、我が国はそれに何もできない、あるいはしないでいいのか、そういう問題。あるいは、周辺事態のときにどうなんだ、あるいはまた、全く関係ないときに米国が攻撃を受けたときに、我が国が、米国は安保条約の同盟国であるからそのミサイルを撃ち落とすかどうか、こういうことについて研究することは、集団的自衛権をこれから先どう扱っていったらいいかということで幅広くやるべきだと私は思います。

 しかしながら、現在我が国が導入しようとしているミサイル防衛のシステム、あるいはまたこれの改良型を使ったとしても、米国本土へ飛来するミサイルを我が国から、あるいは我が国の周辺からそれを迎撃するというのは技術的に非常に難しいということを強調したかったために、議論は議論としてやられるのは結構だけれども、実際日本に配置されている、あるいは日本の周辺でイージス艦に配置しているミサイルでは難しいんですよということを言いたかったので、記者の皆さん方に聞かれたから答えたわけであります。

前田委員 非常に現実的な話であると思いますので、わずか十分のうちにどう対応するかといったら、それは非常に難しい話なものですからね。もう少し米国へは長いかもしれませんけれどもね。

 では、これから少し技術的なことを御確認したいことが何点かあります。長官は、この迎撃の可能性について今御認識を示していただきました。さらに、我が国への複数のミサイルの飛来、あるいは多弾頭化、MIRVですね、MIRV化されての場合、あるいはおとりミサイルが飛んだ場合等、現実の迎撃能力について今どのような御認識をお持ちなのか、御説明いただきたいと思います。

久間国務大臣 今のSM3ではこれは難しい、というよりも、できないわけであります。しかしながら、次世代型の場合は、MIRVといいますか、多弾頭のそういう場合、あるいはおとりを発射した場合にそれに対してどうか。

 これについては、やはり研究をして開発をしていく必要はあろうかと思っておりまして、その開発にはこれから先もやっていこうと思っております。しかし、これをやろうとしますと、またそれだけいわゆる推進力を大きいものにしなければなりませんから、そうしますと、現在のシステムの改良だけでそう簡単にできるかどうかの問題がまだ残っているわけで、これから先の課題であろうと思っております。

前田委員 ぜひこうした課題を解決すべく共同研究なりに力を入れていただきたいというふうに思います。

 そこで、実際にミサイルが我が国に飛来した、特に今のところ私は北朝鮮のノドンであると思いますけれども、これも事務方でこちらは結構ですので、北朝鮮のノドンミサイル着弾の場合、どのような被害想定をされているのか、伺いたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 ノドンミサイルにつきましては、まずどのような弾頭が用いれるか等も含めまして、その詳細については確認されておりません。また、環境条件などによっても結果が異なりますので、今お尋ねのノドンミサイルが着弾した場合の被害想定については、行うことは非常に困難であるということはまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、あくまでも一般論ということでございますが、ノドンのペイロードについては、ジェーン年鑑等の評価で、大体一トン前後だというふうに言われております。仮に、この一トン前後のペイロードを高性能火薬なりで目いっぱい使うということで想定しますと、これは一般的な話でございますけれども、その着弾時の危害を与える面積につきましては、半径数十メートルぐらいになるというふうに一般には言われているところでございます。

前田委員 今初めて、この被害想定について公式に委員会で答えていただきましたので、そうした対応は、僕は非常に評価したいと思います。

 そして、さらにこの迎撃の能力を上げるために、これはアメリカだと、ジャンボジェットにレーダーを搭載して、発射直後、つまりブースト段階での迎撃をねらっての研究が進んでいるわけでありますけれども、こうしたレーダー搭載のジャンボ機等の購入は米国は打診してきているのでしょうか、また購入予定はあるのでしょうか、お聞きしたいと思います。

久間国務大臣 これは、アメリカからはその打診もしてきていないというふうに聞いております。

 それともう一つ、今のエアボーンレーザー、私もそれはアメリカへ行ったときに見ました。民主党の先生方と一緒に行って、それは見せてもらいましたけれども、正直言いまして、やはり相手方の領域まで入らないとそのレーダーが届きませんから、そういうようなことで、我が国がそれを使うということは、現在の要するに敵地攻撃をしない、そういうような我が国の姿勢からいいまして、そういう、直接ブースト段階の、それをねらうものを導入することができるかどうか、これはやはり、これから先、安全保障の議論がどういうふうに推移するかわかりませんけれども、私は、現在までの我が国の、我々の政府がとっておった姿勢からいくと、非常に難しいんじゃないかなというふうに思っております。現段階でそういうような打診もあっておりません。ただ、こういう研究をやっているということについては、興味は持っております。

前田委員 敵地攻撃能力の話に私も少し移りたいなと思ったんですけれども、長官に先にふたをされましたので、できません。

 もう一つ、では、この発射直後の、いわゆるブースト段階での迎撃の場合、まだこれはどこを目指して飛んでいくかわからない、判断がつきにくいわけでありますけれども、この場合で、今の我が国の安全保障の政策の中で、迎撃を考え得られるのかどうか、先ほど少しお答えになりましたけれども、それと集団的自衛権の行使との関係について、長官に少し御説明いただきたいと思います。

久間国務大臣 こういう議論をしますと、いきなりミサイルが降ってくるというような、そういうことをえてしてみんな連想するわけでありますけれども、撃つ方も、やはり何か緊張状態が発して、それからそういう問題に移っていくわけでございますから、まずはそういう緊張状態にならないように、そこのところに我々としては意を払っていかなきゃならない。これは本当に常日ごろそういう認識を持っておかないと、えてして加熱して、もうブースト段階で攻めろ攻めろというような話になりがちでございますから、そこのところはひとつお互いに注意をしていかなきゃならぬなと思っておるわけでございます。

 そういう場合に、やはり私たちは、もう攻撃がされるであろうというような、そういう状況のときに、米軍と作戦を密にとりながら、防衛出動になったときには、安保条約に基づいてすぐさま、我々はいわゆる盾の部分はやるけれども矛の部分は持っていないわけでございますから、そういうときはアメリカにその矛の部分をお願いする形になるわけでありまして、そういう形で日本の安全を守っておるという現実を知った上で、その中でどこまでのことをやれるか、それが私たちの今の任務の精一杯の努力じゃないかなと思っているわけであります。

前田委員 これは冷徹に、やはり安全保障政策でありますので、お考えいただければというふうに思います。

 そして、これまた事務方で結構です。

 次世代型のSM3であるKEI、キネティック弾頭、この場合、高度一千キロ以上を飛ぶ北朝鮮のテポドン2の迎撃は可能であるというふうにお考えでしょうか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 防衛庁としましては、こういった弾道ミサイル防衛システムの着実な能力向上、これは先ほど大臣も申し上げましたように、これを常に高めていかなきゃいけないという認識のもとで、平成十八年、すなわち本年度から、次世代型の迎撃ミサイルに関しまして、日米共同開発に着手しているところでございます。

 この開発の目的は、まず一つとしては、これまでの、今整備中の弾道ミサイル防衛システムに対しまして、防護範囲の拡大あるいは撃破能力の向上というのをねらっております。

 それから、これも先ほど大臣がお答えしております、デコイと実弾頭、デコイの、これの識別をして確実に弾頭に上げていくというふうなところを目的として、日米で共同開発に着手しているということでございます。

 なお、この共同開発でございますが、現在まだシステムの設計段階、いろいろな条件のもとで、どういうふうにしていったらいいかということを設計している段階でございます。

 したがいまして、個別具体的な状況においてどのように対応できるか、その能力はどうなんだと今御質問なんですが、残念ながら、センサーをどこでどうとるか、いつの時点でミサイルを発射するか、どこに迎撃ミサイルシステムを置くか、こういったものがすべて関係してまいりますので、この場でお答えするということは差し控えさせていただきたいのですが、いずれにいたしましても、現在整備を進めております短中距離弾道ミサイル防衛用の対処にありますシステムの能力向上を図っていくということで進めてございます。よろしくお願いします。

前田委員 では、昨今、日本版NSC設置の話が報道されているわけでありますけれども、防衛の任に責任ある機関として防衛庁が防衛省になろうとしているこの時期に、官邸がこれからできる防衛省と別に国の安全保障について検討する新たな機関を設けるということは、私は、このMDの議論と同じように、閣内の不一致とまではいきませんけれども、不統一を生んでしまうようなことが起きるんではないか、非常にこうした事案が頻発するんではないかというふうに懸念しております。船頭多くして船山に登るじゃありませんけれども、そうした懸念がないとも言い切れないというふうに思いますね。

 そこで、防衛庁が防衛省になって、政策官庁に生まれ変わろうとするのであれば、この日本版NSCと防衛省との関係を私は整理しておくべきではないか、実際にできる前にきちんと整理しておくべきではないかな、そういうふうに思います。

 また、このような集団的自衛権にかかわる議論、あるいは今まで話してまいりましたMDについての議論、実際に国民の皆さんにはなかなか何が論点であるかというのはわかりづろうございますので、私は、一度オープンな場で、国民の皆さんに目につくこの委員会の御答弁という場で、この日本版NSCとこれからできるであろう防衛省で、政策の統一性、あるいは内閣との一致等、どのように長官がお考えなのかということを伺いたいと思います。

久間国務大臣 基本的には、防衛庁が防衛省になりましたとしても、その扱う内容というのは同じでございますから、現在と変わって防衛省になったからといって、官邸をさておいて安全保障問題関係は全部こちらでやるというわけじゃありませんので、その辺は御理解賜りたいと思うんです。

 ただ、民主党の先生方と一緒に、私たちは有事法制あるいは緊急事態法制のときに各国のいろいろなことを調べてまいりました。そのときにやはり気づいたのは、日本の場合、防衛庁は防衛庁で情報本部から情報が上がってくる、外務省は外務省で上がってくる、警察は警察で、公安関係は公安で、いろいろなところから情報が上がってくるわけであります。麻薬関係だったらまた厚労省もそうでしょうし。そうしたときに、みんな、自分のところの情報が正しくて、これが一番宝物だ、そういうふうに思いがちでございますが、それをどういう形で評価するのか。それを全部、官房長官のところにストレートに来ても、官房長官も忙しいし、大変じゃないか、これはやはり官邸でそれを評価するような、そういうような何かがないといけないんじゃないか、そういう意見になりまして、そのときも、イギリスあたりで評価委員会をつくっておって、そこが評価をしてオーソライズしたものを上に上げるというようなことをしているので、こういうのを一つ念頭に置きながら日本でもやったらいいんじゃないかなというようなことを話したことがございます。

 やっとNSCという形で、何らかの形をやろうじゃないかという動きが出てまいりましたので、私は、それはいいことだと思います。

 ただ、どういう形にするのか。今のいろいろな外交政策、防衛政策あるいはまた治安関係、いろいろなものが、それぞれ一生懸命みんなやっているわけでございますから、そういうところとバッティングしてもいかぬわけでございますので、そこら辺をこれから先、議論がスタートしたばかりでございますから、そういうのを、話の進みぐあいに、もちろん各省庁関係していきますし、また、現在つくられた懇談会ですか、何かそのメンバーの中にもそれぞれの経験者が入っておられるわけでございますから、自分たちの経験を生かしながらよりよいものを、総理とか官房長官とかそういったところが即座に判断できるような、そういう体制をつくっていく。そして、各省は各省で、自分のエリアの中で情報収集にもこれ努めながら、そしてまたその中で協力し合っていく、そういう姿を本当に摩擦なくやっていくことが大事じゃないか。

 要は、国民のためにどういう形をつくれば一番いいのかというのを最後の念頭に置いておかなきゃならぬわけでございますので、そういうつもりで、これから先注意深く見守っていこうと思っております。

前田委員 とにかく、この集団安全保障の議論は議論でいいわけでありますけれども、具体的に、やはり北朝鮮の弾道ミサイルが飛来すれば十分で着弾ということでありますので、そのときに慌てなくてもいいように、きちんとそうした道筋の整理はつけていただきたいと思います。

 具体的な話、今の現状で考えますならば、政府が整備の前倒しを急ぐと言われていますミサイル防衛、現状においては、横須賀のSM3搭載の米海軍のイージス艦シャイロー一隻と、それからアメリカの空軍嘉手納基地にPAC3が一基、ほとんど丸裸に近い状態で、これは偽らざる現状であるというふうに僕は思います。

 米国に向かうミサイルの迎撃よりも、自国に、我が国に向かうミサイル、つまり自国民の保護が最重要であるというふうに私は思いますけれども、国民保護法制が制定されて二年が経過しております。ミサイル着弾十分前に国民がとり得る防護、避難体制は整っているのかどうか、また周知徹底されているのかどうか、我が国自身のBMD整備の状況及びその見通しとあわせて、長官にお答えいただきたいと思います。

久間国務大臣 整っているのか、そういうふうに問い詰められますと、正直言って、まだ緒についたばかりでございますと答えざるを得ないのが大変残念なわけでございます。

 正直言いまして、二十三年度ぐらいまでに今の計画を一応完備しようとしているわけでございますが、北朝鮮がああいうふうにミサイルの実験等をやっておりますので、私たちもできるだけ早く、前倒しでそれを進めたい。しかしながら、財政も厳しい折でもございますし、それと、財政だけではなくて、SM3にしましてもPAC3にしましても、やはり生産が間に合わない点もあるわけでございますから、前倒しにできるだけ努めようと思いますけれども、そういう両方の制約から、二十三年のがどれぐらい早くできるか、精いっぱい頑張っていこうと思っております。

 それと、余り不安をかき立ててもいけませんけれども、やはり万一のときにはどうするかというようなことについても、ホームページ等を通じながら情報をできるだけ早く伝える、そういう体制づくりは必要でございますから、もう既に、この間、鳥取の知事もお見えになりまして、自分のところで今度、今月中にそういう訓練を、国民保護法制に基づく訓練をやるんだということを話しておられましたけれども、そういう形のいろいろな訓練等もやはり手がけながら、できるだけの努力はしていきたいと思っております。

 体制が整備されたかといいますと、まずやっとそういう有事法制、国民保護法制の法律ができたばかりでございまして、それについても、まだまだ各都道府県レベルまできちんとできているわけじゃございませんで、各協力的なところが積極的にやろうじゃないかと言っていただいて、うちの各部隊等との連絡等も緊密にとっている県もございますし、そうでないところもあるわけでございますから、私たちも、その辺はやはり、これから先抜かりなく、みんなにPRにも努めていこうと思っております。

前田委員 ぜひ、そうした鳥取等の事例があるわけでありますので、またそれも共有の経験になりますように、広く国民の皆さんにお知らせいただきたいと思います。

 実際に、今危惧する点、ミサイル防衛、これからまた長島委員もミサイル防衛について質問だということなものですから、そちらに譲りますけれども、危惧しているさっきの不祥事のけじめ、あるいは潜水艦の話、自衛隊の規律の問題、そしてミサイル防衛について何点か御質問しました。

 これから、実際の省に、防衛庁から省への移行に際しましての話をさせていただきたいと思います。

 施設庁の談合事案と同様に、私は、こうした事案は二度と繰り返させないということが大前提であるというふうに思います。また、これを担保すべく、省移行関連法案の附則において施設庁の廃止、統合を明記したと考えるのですが、なぜ施設庁の統合と省移行を分けた法律として別の時期に実施するのかを御説明いただきたいと思います。

久間国務大臣 この省へ移行する法案については、かねてから非常に懸案になっておりまして、一日も早くということでございましたが、与党内で意見がまとまったのを機に出させていただいたわけでございます。

 しかしながら、施設庁の問題については、施設庁を廃止するというのは、これはやはり予算編成を伴うことでございまして、これはどうしても、今度の十二月の予算編成を終えて、それを受けた形で組織の改編についての法律をつくらなければなりませんから、だから、それは次の段階へ譲らざるを得ないわけであります。

 しかしながら、少なくとも、施設庁は廃止して統合するという姿勢だけでもきちっとしようと。具体的には、先日からこの委員会でもありますように、そのトップに座る人はどういう人かとか、そういうことについては、予算編成を見た上で、できるだけ委員会の意見等もしんしゃくしながら私たちも決めていきたいと思っておりますが、それは、予算が終わって、そしてそれに伴う改編のための法律を出して、そこで議論していただくというふうに分けたわけでございますので、その辺のタイムラグといいますかずれについては、やむを得なかったということを御理解賜りたいと思うわけであります。

前田委員 最後の質問になりますけれども、省への昇格で、周辺諸国に不安を抱かせないようにということも配慮しなければなりません。

 そこで、最後に、これは整理しておきたい点ですけれども、安倍内閣は、非核三原則堅持と言っていて、先般来、中川政調会長、麻生大臣等の核保有発言を容認する態度をとられております。私は、このことは論理矛盾ではないかというふうに思いますけれども、長官のお考えを整理して伺いたいと思います。

久間国務大臣 後のお二方も、非核三原則を変えろと言っているわけじゃないので、詳しく聞いてみましても、非核三原則は、やはり日本としてはこれが最善の策だというのは認めているわけなんですよ。

 ただ、あのとき、なぜ非核三原則をみんなが言うようになったか、そういう経過等も、最近の若い人その他、知らない人もおるわけだから、やはり日本としては非核三原則でいくのがいいんだということをわかる意味でも、核の問題については、少し議論をして、その上で結論を出した方がいいんじゃないかということで、どうも、ちょっと世間にしかし誤解を与えているんじゃないか、何か核を持つべきだと言わんばかりの、そういう議論になっているぞというのを個人的には言うわけですけれども、そうじゃないということは二人ともしっかり言っておられますので。

 私は、結論は、非核三原則は守っていく。しかし、そのために、国民にもう少し、なぜやるかということについての手法、上り方が違うんだな、あるいはまた説明の仕方が違うんだなというような、そういうこと。それと、それを言うことによって誤解を生むことにもなりゃせぬかという、そこに対する懸念が、認識がやはりちょっと違うんじゃないかなと思っておりますが、ただ、基本的にはほとんどスタンスは、ほとんどと言うよりも、全く変わっていない。非核三原則を守るのが今の日本には一番いいことだということについては同じでございますから、ぜひそういう点で御理解賜りたいと思います。

前田委員 議論したいんですけれども、時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 いよいよ防衛庁の省昇格の議論、本格的な議論がきょうから始まったということで、私も前回の質疑の際に、待ちに待った待望の議論だということで、私たちも二十時間ぐらいかけて、私も二、三回質疑に立つ、そんな決意でおります。

 そこで、長官、今、最後に私どもの前田委員から質問がありました核の問題の話なんですけれども、私も、前回の委員会で申し上げたとおり、非核三原則を厳守する、遵守するという立場でありますし、しかし、国会で全く議論をしないというやり方が本当にいいのかという思いは持っております。ですから、外務大臣にもそのラインで質疑をさせていただきましたし、前回防衛庁長官との間で、なぜ核保有というものが我が国の現実的な政策選択にならないのか、そういうことを、なるべく論理的に詰めて議論をさせていただきたいと思ってやらせていただきました。その中でも、今回の一連の閣僚あるいは与党・政府の政策責任者の方の発言が続く中でも、私は、久間防衛庁長官は最初から一貫して極めて慎重なお立場を表明されてこられているということは、深く敬意を表したいというふうに思っておるんです。

 その長官が、せんだって、核武装艦船の領海内の航行を容認する発言をなさった。これは日経新聞でありますが、民放のCS番組に十六日にお出になって、非核三原則、持たず、つくらず、持ち込ませずの三原則から、持ち込ませずを除外して、米国による持ち込みを認めた方が北朝鮮への抑止力になるのではないですかという質問、これは長官がおっしゃったことではありませんが、水を向けられた、このとおり読みますよ、長官は、半ば同調しながら、日本みたいなところに核兵器を設置しても機能しない。これは前回やらせていただきました。移動するような形じゃないと意味がないと表明。日本をかすめるような形ならばと領海内航行の容認に踏み込んだ。こういう記事なんです。さらに、十七日の記者会見で、沿岸三海里を超え十二海里までの範囲と、より具体化し、限定をして、航行は認められるのではないかという認識を示したという新聞記事なんですが、これは、事実誤認であればぜひこの場でお取り消しをいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

久間国務大臣 事実誤認という言い方ではないんです。

 実は、非核三原則で持ち込ませずということを言っていますけれども、持ち込むという言葉自体が非常にあいまいなわけですね。それで、ほかの法令用語では、持ち込みというのは、全部日本の税関に入るとか陸揚げされるとか、いろいろなあれがあって、例えば、空港内でかばんの中にあっても、トランジットで日本国内を通過していく人は、この間の例で言ったのは悪いけれども、ヌード写真を持っておってもそれは持ち込みになりませんから、わいせつ物の持ち込みにはなりませんよと。だから、持ち込みという言葉自体が非常にあいまいな点がある。

 それで、あの当時、岸・ハーターの交換公文あるいはまた藤山・マッカーサー口頭了解等で、重要事項の変更をするときは我が国と事前協議します、その事前協議には、持ち込みの場合も事前協議しますよというふうな、そういう話になって決まっているから、政府の方針としては、事前協議があったときはノーと言いますというのがこれまでの態度でございまして、私は、それはそれでいいと思うんです。

 ただ、私がこの番組のときにそういうことを具体的に言わずにかすめるという表現をしたのは、頭の中に、三海里と十二海里について整理されているかなというのが若干よぎったわけですね。というのは、岸・ハーター交換公文のときも、あるいはマッカーサーとの口頭了解のときも、それは三海里時代のことなんですね。それが十二海里になったのは、日本の方が法律上、領土を十二海里にしますよと、国際条約に基づいて、五十三年ごろになって広がっているわけですね。そうしますと、重要事項の変更というのに、向こうが変更する場合には事前協議しますよと言っているけれども、きのうまで通航しておったところが、そのまま通航しておったら事前協議を何でしなかったと文句を言われたときに、私はきのうからきょうに変更していませんよということだって向こう側なら言えるんじゃないかなというような思いもよぎったものですから、そこで、領海という言葉を使わないで、我が国をかすめるという表現をしたわけであります。

 そこのところは、今の政府はその後の答弁でも、十二海里でも同じであります、十二海里の中に事前協議があった場合はノーと言いますということを言っておりますから、政府の態度としてはそれを貫く。私もそのとおりでいいと思いますけれども、若干そこのところに、それで本当に完璧かなということがちょっとありますのでそういう表現になったわけでありまして、持ち込ませずということも含めて、私は、その三原則を維持するのが日本の政府のあり方としては正しいと思いますけれども、今みたいな問題がちょっと気になるなという思いが根っこにあるということです。

長島(昭)委員 久間長官ならではの御答弁だったというふうに思うんですね。別に前言を否定されたわけでもない、しかし、政府のこれまでの見解はよくわかっておるということなんですが、私、別にひっかけようと思って質問したわけじゃないんです。久間長官の御指摘というのは、実は、軍事的には非常に重要な指摘だと思っているんです。

 というのは、我が国は、みずから核をつくらず、持たず、持ち込ませずと言っておるんですが、だから非核三原則だ、非核政策だ、こう言っている。しかし一方で、それでは丸裸で済むかというと、我が国の国民の生命財産を守らなければいけないという立場から、アメリカの拡大抑止、アメリカの核報復力に、抑止力に頼っているという動かしがたい現実があるんですね。

 その二つを何とかバランスさせるためには、それは長官、領海とか領海でないかというのはまた別の議論で、恐らくこれからしばらくはこの議論が当委員会初め続くと思いますけれども、ここは、一つ申し上げると、九六年に橋本総理が答弁されていて、国籍にかかわらず、つまりアメリカとか同盟国のいかんにかかわらず、核搭載艦の我が国領海の通航は無害通航とは認めないという立場をとっているということでありまして、厳格に解釈をすれば十二海里以内にかすめていくのは全部だめということなんですが、本当にそれでアメリカの核抑止力に頼っている我が国の安全保障が成り立つのかという問題提起なんだろうと私は思うんです。

 これは非常に重要な問題提起だと思うんですけれども、長官、もう一回お答えいただけますか。

久間国務大臣 核が、中国とかロシアとか、ああいう超大国が弾道弾を使った形での核の場合は、アメリカがいわゆる戦略核といいますか、そういう核でそれぞれが核の抑止力を図っているというのはいいわけですけれども、北朝鮮みたいなところが小さな戦術核を、非戦略核を使う場合の抑止力というのはどういう問題があるのかなというのは、頭の中でいろいろ考えているのも事実でございます。そういうときに、いずれにせよ、我が国はアメリカの核の傘でそれに対抗せざるを得ない。

 そういうときに、人には、この間のテレビ番組では、いや、国内に置いておかないとアメリカは信用できませんよ、国内に置いておけば自分がボタンを押せるんだからというふうなことをおっしゃる方もおられるけれども、そういう議論になってしまっても非常に怖いわけでありまして、えてしてそういう議論になりかねない点もありますから、アメリカの核の傘の中で我々はやっているから心配要りませんよということを、そういう人たちも含めて納得してもらわないといかぬ。そのときに、丸腰だというようなことも言いたくない。しかしながら、そこをどういうふうな表現でしたらいいのかなというのは、非常に難しいのは事実でございます。

 これから先、ただ、言えますのは、アメリカも、戦術を昔と変えまして、戦術的な核といいますか非戦略核、そういう核については水上艦には搭載しないとか、普通の原子力潜水艦にも搭載しないとか、そういうことを堂々ともう宣言しているわけですね。これは、ブッシュさんのお父さんの時代だったかいつだったか、ちょっと忘れましたけれども。そういうことを考えますと、そんなに、うようよ核を積んだ潜水艦がおるわけじゃないわけですけれども、やはり、アメリカの核の傘がちゃんときいているということを国民の皆さん方にも理解しておってもらいたい、そういう思いもありまして、そういう流れの中でああいう表現で抽象的に言いましたけれども、どうしても、軍関係の話というのは抽象的にぼやかす以外にない点もありますので、具体的に、仮に知っておったとしても、どこをどうやってやっているかとか、そういうことを言うわけにもいきませんので、その辺はひとつ御理解賜りたいと思います。

長島(昭)委員 ほかの委員がどう考えられるかわかりませんが、私自身は今の長官のお話は理解できました。一々チェックすることもできませんし、核搭載している潜水艦かどうかということを一々確認することも恐らく軍事上は無理だと思いますので、そこは最近はやりの言葉で言えばあいまい戦略でいくのが、自分たちは持てませんけれども、アメリカの抑止力をより高めていく、そういうぎりぎりの方策ではないか、こういうことが言えるんじゃないかと思うんですね。

 それと、これも実は通告にないんですが、もう一つ。

 これは、いつも慎重な久間長官にしては残念なコメントなんですが、沖縄の県知事選挙。これはけさの毎日ですけれども、与党が推薦した仲井真氏が負けたら、法律をつくってでも、一方的に県知事の権限を国に移してでもやらなきゃいけないかもしれないと。そこはわかるんですよ、この前段は。ここは、大田県政のときに、九八年でしたか、特措法でやらざるを得なかった、非常に大変なことがありましたからね。しかし、その後なんですよ。「力ずくでやるんだと言わんばかりの腹を持っていた」という、これはかぎ括弧で長官のお言葉なんですけれども。

 これは、赤嶺委員もおられますけれども、沖縄の選挙は野党の統一候補が敗れたわけですけれども、それでも、やはり仲井真新知事ですら、政府の考え方に対してはいろいろな思いとか政策判断を持っているし、沖縄の皆さんの、アメリカが専権的に使っている基地の七割が集中しているという現状からすると、余りこういうコメント、しかも防衛庁長官のコメントとしては、素直に沖縄県民の皆さんとしても受け取れないところがあると思うんです。

 私、一月に代表質問に立たせていただいたときも、米軍再編については、かつての自民党政権に比べると、ずばり言うと、一番評判のいいのは梶山官房長官がおられたときなんですけれども、これはアメリカの政府関係者からも評判がいいし、しかも沖縄の方たちも、非常に丁寧にやっていただいたという、ちょうどSACOのときですよね、そんな皆さんからの評価があるんですね。ところが、小泉政権になってから、非常に上からどんと落としてくるような手法になっていて、これは同じことをやるのでも、やはり相当慎重に丁寧にやられるのとそうでないのとでは大違いだと思うんですよ。

 またこの委員会の場を通じて、もし訂正というか、おっしゃる言い方の訂正がおありになれば、おっしゃっていただければと思います。

久間国務大臣 あそこで言いたかったのは、そうならずに済んだな、そういう思いを言いたかったわけでありまして、というのは、ちょうど十年前、八年前ですか、駐留軍特措法をつくったときも私でしたから、あのときも、ああいう法律をつくらぬでそれまでにやりたいと思っておったのがやれずに、とうとうあのとき、それを出さざるを得ないで、そして、小沢さんともさしで、梶山さんにお願いしてやってもらいまして、この法律でいかざるを得ませんということで賛成に回ってもらって、七五%の賛成でつくったわけですね。

 だから、私から言わせてもらいますと、八千人の海兵隊が沖縄から減っていく、九千人の家族も減っていく、そして嘉手納以南の基地がそっくり返ってくる、これはもう千載一遇のチャンスなんですよ。こういうのは沖縄の人なら、今まで六十年間、というよりも、復帰してからそんなにたっていませんけれども、それでも何十年間も動かなかったのが減るということは画期的なことだから、最終的にはわかってもらえるなという思いはありますけれども、正しいと思ったら、これは、もし選挙で負けたら、もう法律をつくってでもやるというぐらいの腹でぶつかっていかないと自分の真意を理解してもらえない、そういう思いがあって、そういうふうな荒っぽい表現になっていたわけですけれども、本音は、まあこれでほっとした、あとはまた、知事さんの意向を聞きながら、沖縄県民の意向を聞きながら調整をしていったらいいな、そういう思いであります。

 ただ、私が言いたいのは、これは、県民と政府だけで話がついたからというので片づくわけではありませんし、また政府も、米国と話がついてもまた地元の関係がありますから、この三つの意見がうまく合わなきゃならないわけです。前回のときは、私たちと米国との関係は話がついた、また私たちと地元の方とも話がついたけれども、環境団体と話がつかなかったとか、県は十五年間の期限つきを言ってきたというようなことの中で、そのままの状態で十年間放置された格好になったわけでありまして、私はそのときの責任者でありますから、こういう状態だけはどうしても今度は、なった以上は、何らかの格好で、ああ、あのとき無理されたけれどもよかったといって思ってもらえるような、そういう状態をつくりたいという思いは先生以上に非常に強いわけでございますので、そういうようなことでちょっと言葉が荒っぽい表現になったかもしれませんが、真意はその辺にあるわけであります。

長島(昭)委員 よくわかりました。ぜひ丁寧にまた引き続きやっていただきたいというふうに思います。

 それでは、通告した質問に移りたいと思います、少しあれが長くなりましたが。

 まず一つは、長官のカウンターパート、アメリカのカウンターパートがかわられましたね。ラムズフェルド国防長官からロバート・ゲーツという国防長官にかわられました。

 幾つか伺いたいことがあるんですが、この交代について長官がどんなふうに見ておられるか。前の方と新しい方にかわった、そこのかわったことによってアメリカの安全保障政策にどんな影響があるというふうに、まだ上院の承認もされていませんから、指名されたばかりですけれども、恐らく、民主党の方の受けも悪くないですから、承認の運びになると思うんですけれども、その辺のところ、長官としてどういう見解をお持ちか。

久間国務大臣 私は、かわっても、基本的にアメリカの姿勢は、対イラクとかなんとかは別ですよ、だけれども、日本とか北朝鮮の問題とか、この東アジアについては共和党も民主党もそれほど大きな違いはございませんので、基本的には変わらないだろうと思っております。

 ただ、やはり、ラムズフェルドさんというのは、海兵隊に対してはかなり力がありました。だから、あの八千人動くということについては、ラムズフェルドだったからできたんじゃないかなという気がいたしております。だから、これが、ちょっと何か地元でもめたりなんかしてあれすると、もとのもくあみにならぬとも限らないので、私はそれは非常に心配しているわけでございますが、幸いにして仲井真さんが当選されたので、私は、今までの路線でアメリカに対しても強く迫れるんじゃないかなというふうな、そういう気がいたしております。

 そういう微妙な違いは幾らかあるかもしれませんが、基本的には、対日あるいはまた対沖縄、あるいはまた対北朝鮮を含めてこの東アジア、変わらないんじゃないかなと思っております。

長島(昭)委員 ラムズフェルド長官が海兵隊に対してグリップがあるというお話は私も同感ですけれども、それと同時に、今度の新しい長官のこれまでのキャリアの背景をどういうふうにごらんになっているか。ラムズフェルドさんというのは、私が申し上げるのもあれですけれども、ネオコン的な政策に軸足を置いて、しかし一方で、軍の改革については非常な決意で臨まれて、相当なトランスフォーメーションをきちっとやってこられた、そういう部分もあろうかと思いますが、今度のゲーツさんという方は、むしろ、ネオコン的な立場ではなく、もっと現実的な、言ってみれば、前の国務長官だったパウエルさんとか副長官だったアーミテージさんとか、そういうラインに属すると言われています。あとは、今ベーカー委員会というのが、もう一回イラクの政策見直しで立ち上がっておりますけれども、そのベーカー委員会のメンバーでもあったということで、軍の改革に対する姿勢。

 それからもう一つ言うと、アジアで関係するとすれば北朝鮮に対する姿勢ですね。ラムズフェルド、チェイニーというお二人はむしろ、国務省、パウエルさんとかアーミテージさんとかケリーさんとかという人たちが、もうちょっとアメリカは北朝鮮の政策に関与した方がいいという主張を持っていた、しかし、それをばさっと切って、そんな関与はだめだということで、かなり強硬な姿勢でずっとやってきたところがあるんですけれども、その辺の北朝鮮政策に対する変化というものも視野に入れて、新長官についてどんなふうにごらんになっているか。

久間国務大臣 私は、まだ詳しく余り情報が入っておりませんし、またお会いしたこともございませんけれども、今のライス国務長官とも非常に近かったというような話も伺っておりまして、そういう意味では、これまでの国務省なんかのスタイルと大体似ているんじゃないかなというような、そういう思いがいたしておりますから、それほど大きな、アメリカの国としての違いは出てこないんじゃないかなと思っておるわけです。

長島(昭)委員 もう一つ、次の話題、論点につながる話なんですけれども、ラムズフェルド前長官が相当努力をしてきたもう一つのテーマに、MD、ミサイルディフェンスがございます。

 もともとラムズフェルド前長官は、九八年に米議会の委託でつくられた、ラムズフェルド・コミッションと言われていますけれども、弾道ミサイルの脅威評価委員会の委員長をやっていて、殊のほかミサイルディフェンスに対しては積極推進派だった。そういうこともあって、二〇〇二年の十二月に、二〇〇五年までにMDの初期配備を始めるんだ、こういうことで、二〇〇二年以降、毎年一兆円に上る予算をこのMDだけに要求してきて、それを通してきたわけですね。もちろん議会も共和党でしたから。

 しかし、ここが、もしかすると今までのような勢いでいかなくなるかもしれない。それは、一つには長官がかわったということ、それからもう一つは、議会が上下両院とも民主党が制したということですね。

 民主党はどちらかというと、MDに対して、ミサイルディフェンスに対してはそれほど前向きな姿勢を持っていないという報道もあるわけですけれども、その辺、長官は今度一月に実際お会いになることになるんだと思うんですけれども、ミサイルディフェンスに絡んで御見解を承りたいと思います。

久間国務大臣 このミサイルディフェンスにつきましても、私が防衛庁長官のころに、ガイドラインを最初に決めて、その後技術研究に入ろうという話が、当時は民主党でございましたけれども、コーエン長官から話がありました。しかしながら、もうとにかくステップ・バイ・ステップでいきましょう、今はそのガイドラインの取り決め、それに基づく周辺事態法制、この二つに一生懸命なので、ミサイル防衛まで一緒に、同時にやるというのは無理なので、それは次のときにしましょうということで、そして、額賀長官と私でバトンタッチしましたときに、額賀さんとコーエンさんとで技術研究に入ったわけでありますから、民主党政権のときも、このミサイル防衛については、これから先の新しい時代の防衛システムとしてはやらなきゃならないという思いが非常に向こうも強かったわけであります。

 だから、私は、アメリカに行くたびにコーエンさんとも、その後のいろいろな、旧交を深める意味もありまして、その話をし、ミサイル防衛については話をしておりますけれども、民主党もミサイル防衛について、やはりこれから先の、いかにして防衛するか、ミサイルについて無力であるというのはいかに大変なことかということはよく理解しておりますから、私はそれは、共和党、民主党に限らず、政策的には大きな変化はないんじゃないかというふうに思っております。これもまた向こうに行って確かめたいと思いますが。

 事務的には、打ち合わせも、その後そのままいろいろな関係は続いているようでございまして、ローレスさんもそのまま残るみたいな話も聞いておりますから、やはりそういう意味では余り大きな変化はないと私は見ておるわけです。

長島(昭)委員 ぜひそこは、また米国で確認をしていただきたいというふうに思います。

 それで、本題に入りますが、先ほども前田委員から御指摘がありましたけれども、政府内で、ミサイル防衛システムの法的効果といいますか法理論について少し混乱があるような気がするんですね。

 一つは、集団的自衛権について研究を始めよう、そういう一般論の流れの中で、どちらに飛んでくるかわからないような場合について、我が国の迎撃ミサイルが迎撃をしてもこれはいいのではないか、むしろ、日米同盟の観点からすればこういうことはあっていいのではないかという恐らく総理の考え、あるいは、それをある種引き取って官房長官の記者会見での発言があったんだろうというふうに思うんですが、一つ気になるのは、私どもも北朝鮮のミサイルの脅威あるいは核の脅威にさらされているわけですから、私どもの主体的な責任においてミサイル防衛システムを研究し、開発し、配備をしていくということなんだと思うんです。

 先日も私、ちょっと引用させていただきましたが、シーファー大使が、やはり集団的自衛権の解釈を絡めて、自分たちの国だけのためのミサイル防衛でいいのかというような発言をされたことが記事に載っていました。それから、これは東京新聞ですけれども、在日米軍のジム・ケリー司令官も、ミサイルディフェンスを効果的に運用するためには日本側が集団的自衛権を行使する必要があるんではないか、そういう認識を示されたということなんです。

 これは、特にアメリカ側から、日本ももう少し集団的自衛権の解釈を柔軟に構えて、アメリカ向けのミサイルも一緒に撃ち落とせるような、そういう研究をしてほしいんだけれどもなというような、そういうニュアンスのお話があるんでしょうか、ないんでしょうか。

久間国務大臣 少なくとも軍レベルでは、事実、できることとできないことはわかっているわけですから、できないことについての要請というのはまずないわけであります。

 しかしながら、例えば、イージス艦がおりまして、それがいろいろな情報収集をしている、そして、それがキャッチして、そしてまたそれがアメリカに向かっているというのを判断したときに、アメリカはそれに対して反撃のミサイル迎撃をするわけでありますけれども、そういうのがおるときに、そのイージス艦がそれに集中しているときに非常に手薄になっているところを攻撃される場合には、それは守ってもらいたい、そういう思いはあると思うんですよ。

 だから、どういうシチュエーションで物を言うかによって違ってくるわけで、日本とアメリカがもう共同作戦行動に移っているような、日本の防衛出動が下令されたような、そういう状態のときには、私は、仮に技術的にできる場合だったらいろいろなことができるであろうと思いますし、そういう動いているイージス艦を守るというのも当然の義務になると思います。

 しかしながら、また、そこまでいっていない、周辺事態が発生しているときにどうかとか、周辺事態にも至っていないときにどうかとか、仮に、百歩譲って物理的に可能だというふうになったとしても、それによって法論理的には非常に整理をしなけりゃならない問題がたくさん出てくるんじゃないかと思うわけであります。

 そういう点で、やはり、研究することについて、私はそれは結構であろうと思いますけれども、今改良型をつくったとしても、そこまではまだまだしばらくかかるわけでありますから、そんなに急いで守りますよというようなことを声高に言う必要はないんじゃないかなと思って、事実関係を言ったわけであります。

長島(昭)委員 今長官は二つのことをおっしゃいました。一つは、技術的にはそんな可能性は低いんだという話。これは後でまた技術的な質問をさせていただきます。それからもう一つは、これは長官特有の煙幕かもしれませんが、今いろいろなケースについてだあっとお話しされましたね。

 私は、最初に質問しようと思っていたのは、別に、ミサイル防衛に当たっているアメリカのイージス艦を日本に防衛してもらうとかもらわないとか、こういう話じゃないんですね。もとになっているのは、総理がワシントン・ポストのインタビューに応じて、ミサイル防衛で米国に向かうかもしれないミサイルを撃ち落とすことができないかも含めて研究しなければならない、こう言ったことについてお尋ねをしたのであって、ちょっとそこの点については誤解のないように。

久間国務大臣 そこは安倍総理に私は聞いたわけじゃないですけれども、その同じ日に私のところにワシントン・ポストは取材に来たんですよ。同じようなことを向こうが聞いたんですよ。そして、私はそれに対しては独特の言い方で、記事にならないような言い方をしたわけですけれども、総理が自分からワシントン・ポストにそういうふうに言ったように書かれているけれども、私はその記事を見たときに、そうかなと。私のときに向こうは質問項目として挙げたけれども、総理は本当に、どういうふうな言い方で、自分から切り出されたのかなという思いが実はしたということだけ先生にお伝えしておきます。

長島(昭)委員 いや、ナイスフォローなのかもしれませんが、どうもその総理のワシントン・ポストでの発言を受けて塩崎官房長官は福田官房長官談話に触れて、その見直しがあるかもしれない、翌日にまた多少訂正しているんですけれども、そういう発言をされているんですから、ちょっと今のフォローは、フォローとしてはすばらしかったんですけれども、的を射ていたかどうかはちょっとわかりません。

 もう一つ伺いたいのは、技術的に難しいという、先ほどの前田委員の質問に対して久間長官はおっしゃっておられました。福田長官談話が出てきた背景というのは、恐らく二つのことが混同されていると思うんです。

 一つは、例の平成十五年末に閣議決定をして今現に配備が進められている、順調にいけば平成二十二年末までに地上発射型と海上発射型が配備されることになるわけですけれども、それについて福田官房長官が、集団的自衛権の法理を持ち出すまでもありませんよ、これは純粋に我が国の防衛だけですよ、こういう話をされた。

 ですが、もう一つ混同されていると思ったのは、平成十七年の十二月に安全保障会議で決定をした能力向上型、今の配備をされようとしているのではなくて、もう少し発展した改良型のミサイルディフェンスを、日米で共同で研究していたものを開発の段階にアップグレードしよう、こういう話。この話の先に、もしかすると、今では考えられないのかもしれませんが、つまり、防衛庁長官の記者会見の中では、成層圏まで飛び出したものを後ろから追いかけていったって、二倍のスピードだって追いかけても届かないよ、こういうお話をされましたね。今、能力向上型で迎撃ミサイルの開発を進めている成果として、もしかしたら、アメリカ向けの長距離の弾道ミサイルについても日本周辺から迎撃が可能になる技術を取得できるかもしれない、そのことについてまで否定されますか。

久間国務大臣 正直言って、アメリカ本土に向かうようなあれは、結構スピードも速いのと、高さが高いわけですね。そして、日本からそれを、こちらからブーストでまだ上がっている段階からキャッチして、それから方向が決まって、これはアメリカ向きだとなったときに、そこから発射して追いつくかとなると、改良型でも私は非常に難しい。やっとこさ追いつくかなというような、追いついても、とにかく前のあれにたすきが渡せないぐらいの、それぐらいの追いつき方ということなんですよね、例えて言うならば。それぐらいのスピードで、なかなか難しいと正直思いますね。

 だから、さもできるかのような印象をみんなに与えてしまうことの方がよくないという思いがあって、改良されたとしてもそうはなりませんよということを正直言って言いたかったわけであります。

長島(昭)委員 技術的な知見のある方に伺いたいんですが、今の防衛庁長官のおっしゃった話、だって、これは九年かけてやるわけですよ、長官。今の我々が配備を進めているのは、大体七百キロから八百キロの高度までしか行かない。つまり、ノドン向けですからね。しかし、ノドンだって、もしかすると、ロフテッドというんですか、かなり短い射程だけれども、かなり高く上げて、こちらの迎撃ミサイルをかいくぐって物すごいスピードで落ちてくるような、そういう改良型を向こうがつくるかもわからないわけですね。

 そうしますと、今おっしゃったような、なかなか技術的に難しいと一言で言ってしまうと、これは高度の問題とか速さの問題とか、これから技術進歩をして、九年もかけて開発していくわけですから、もしかしたらそういう可能性もないわけではないと私は思うんですが、いかがですか。

久間国務大臣 後で事務方から聞いてもらいたいと思いますけれども、ミサイルはとにかく放物線を描いて落ちてくる、それをこちらから反撃するというか迎撃するわけでありまして、言うなれば、野球のホームランボールになりそうなのが行ったときに、センターフライとしてセンターが走っていってそれをキャッチする、コンピューターで制御しながらずうっと軌跡をキャッチしてこうやるわけですから、そういう意味では、ボールの速さが速くても、そこに到達すれば捕捉できると一緒で、こっちから迎え撃つというのは、それはかなり高度に上がったとしても私はできると思うんですよ。

 しかしながら、上に上がったものを下から追いかけていって、向こうに走り去っていくものを追いついて迎撃するというのはなかなか、キャッチャーがショートまで出かけていってもなかなかフライがとれないのと同じで非常に難しいと思うので、だからそこはぜひまた研究していただきたいと思いますけれども、私がいろいろなことを聞いている限りでは、迎え撃つことは可能でも、こちらから自分の上空を飛び立っていこうとするのを撃ち落とすというのはなかなか難しいという、特に、北朝鮮から計算すれば、北朝鮮から日本上空まで来る間に、そこから軌跡が決まったとしてこっちから撃った場合には、かなりのスピードでそこは上空を飛んでいくわけですから、非常に、落ちてくるならこちらから撃って落とすことはできても、上空を飛び越えていくものを追いかけながら捕まえるというのはなかなか……

長島(昭)委員 済みません、切ってしまって。

 長官、すごく今の長官の説明、イメージはよくわかるんです。記者の皆さんにも同じ説明をされていた。しかし、もしかすると、我が国のイージス艦は太平洋に展開する可能性だってあるわけですよね。そうなると、今度はちゃんと、キャッチャーではなくてセンターが迎えるような位置でやる可能性もある。だから、そこになってくると今度は技術的な話なんですよ。

 なぜかというと、もし今の長官の話だけで話が終わったら、何で総理や官房長官は集団的自衛権の法理の解釈の変更まで視野に入れた話をしなきゃならないのか、こういう話になりますよね。あほみたいな話になるんです。技術的にちょっと伺いたいと思います。

大古政府参考人 迎撃ミサイルの技術的なところでちょっと御説明をさせていただきます。

 一般に弾道ミサイルにつきましては、高い高度まで推力で上げまして、後は高い高度から落下いたします。その関係で、ブーストフェーズでも高い高度を上げるためには相当スピードが上がりますし、高い高度から落ちる場合にも相当スピードが上がります。

 これに対して、迎撃ミサイルの方につきましては、重力に逆らって迎撃いたしますので、なかなかスピードが上がらないという部分がございます。一般的に、普通のウエポンシステムの関係で申しますと、一般に速いものを遅いものが撃ち当てるというのは難しいというところがございます。

 ただ他方、弾道弾につきましては、基本的に途中で誘導制御をされませんので、一定の固定点に対して、固定点から一番近いところで弾道飛翔を描きますので、一定の狭い軌道を描きます。そういう意味で、迎撃ミサイルについては、基本的には、大臣が先ほど言いましたように、そういう弾道飛翔のところを未来値を予測して迎撃するものになってございまして、この点については、ことし日米間で共同開発します将来型のミサイルにつきましても、過ぎ去ったミサイルを追いかけて当てるということは考えていないところでございますし、技術的にできないということでございます。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

長島(昭)委員 本当にそんなに言い切っていいんですか。できないという見解ですか、局長。技術的に無理、次世代も。いや、これは自民党は怒っちゃいますよ。

大古政府参考人 今御質問が、追いかけて迎撃できるかという質問に対して、私の方ではできないということを言いました。

長島(昭)委員 局長、すりかえないでください。太平洋で迎撃することも考えてという質問を私はしているんですよ。日本海にずっとへばりついている話じゃないんですよ、私が聞いているのは。

 だから、アメリカがアラスカに迎撃ミサイルのシステムを置いているわけでしょう。同じような位置に日本の海上自衛隊が展開した場合は、これから九年かけて開発する迎撃ミサイルのシステムで対応できる可能性があるんですか。いや、それはだれも見たことがないですから断定することは難しいと思いますけれども、否定していいんですか。

大古政府参考人 ことしから日米が開発いたしますものにつきましては、基本的に、到達高度とか迎撃ミサイルのスピード限界とかが上がります。そういう意味で、ただ、基本的にまだこれからエンジン設計の段階でございますので、最終的なスペックというものは現時点で固まっているわけじゃございませんけれども、一般的に申すれば、性能が向上いたしますし、いろいろな置き場所によっては、いろいろ日本以外に向かうものについての迎撃も可能な場合があるというふうに考えております。

長島(昭)委員 最初からそう言ってくださいよ。五分ロスしてしまった。

 そういう可能性があるからこそ、総理の発言あるいは官房長官の発言の意味が私は出てくると思うんですよ。それに対して、恐らく批判的に考えておられる方もたくさんいらっしゃると思いますが、私は、そういう意味では、これからの集団的自衛権に対する考え方が、政府で整理されて、事例研究を通じて出てくると思います。それについても私は質疑をしたいと思っています。

 一つ考えられるのは、もしかすると、これまでは日本の防衛をアメリカにかなりの程度依存してきたわけですね、我が国は。しかし、史上初めて、日米同盟史上初めて、アメリカの防衛に対して日本が具体的に寄与する可能性が、今のお話を突き詰めていくと、出てくるわけですね。こういうことも、私は日米同盟のあるべき姿を探っていく上では非常に重要な観点だというふうに思うんですが、長官、いかがですか。

久間国務大臣 先生のお話、私はちょっと聞いていませんでしたが、太平洋のハワイに近いところで、それでうちのイージス艦が仮におったとすればできるんじゃないかという話だろうと思うんですけれども、現実問題として、日本に四隻しかSM3を今配備できないような状況でハワイあたりに浮かばせておくというよりも、うちの場合は、うちの近くにそれを配置して、ノドンの方の、それに全神経をとがらせるわけですから、そういうようなアメリカをターゲットにしたミサイルを、太平洋に、しかも十分間で飛んでくるわけですから、その十分間のためにずっと太平洋に浮かばせているということは現実問題として考えられるかとなると、それぞれアメリカなり日本なりが持ち場持ち場であれしながら、むしろ情報を共有しながら、その軌跡を即座に報告しながら、向こうは向こうで迎え撃つというような、そういう連携がこれから先緊密になっていくことが一番大事だと思うんですね。だから、日本のミサイルで撃つということを前提にして議論をするよりも、むしろそういった取り組み方の方が私は大事だと思っております。

 太平洋のハワイの近くのグアムとか向こうの方に日本のイージス艦を浮かばせて、北朝鮮がアメリカに撃つかもしれないのを待ち受けていれば、それまでできないかというと、さっき言うように、向けて撃つことはできるわけでありますから、それは私は不可能とは思いません。

長島(昭)委員 ちょっと刺激してみたんですけれども、さすが長官、慎重な御答弁で、それはそれで安心をいたしました。

 ただ、日米同盟をこれからどうやって機能させていくか、強化していくか、そういう視点も一方で重要ですから、私たちもその可能性についてはこれからも探っていかなきゃいけないというふうに思っています。

 もう時間が迫ってしまったので、私もあと二回か三回質疑に立つ時間があると思いますので、さわりだけ少し。よろしくお願いします。

 防衛庁の省昇格についてなんですが、これは、口の悪い同僚議員に言わせると、看板のつけかえというのがよく言われるんですが、結局、チをシにしただけじゃないか、防衛庁を省にしただけじゃないか、こういう陰口も出ているぐらい、防衛庁の皆さんの、申しわけないんですが、御説明が、変わらないんだ、シビリアンコントロールも変わらないんだ、総理大臣の権限も変わらないんだ、ただ名前が変わるだけだみたいな、そういうちょっと縮みの思考みたいな説明が多いので私はいささか不満を持っているのですが、変わることが実際何なのかというのを少し突き詰めて考えていきたいと思うんですね。

 ここに防衛庁からいただいた資料があるんですけれども、変わることの第一番目は、新たな安全保障環境下において危機対処に対しより迅速な対応が可能になるというふうに言っているんですね。しかし、この点は、緊急事態においては、基本的には官邸主導でシステムがつくられていますから、安全保障会議とか閣議とか、もう既に段取りができている。そういう意味では、事務手続上のロスタイムは、今の庁のままであるわけではないですね。

 省に変わると、この説明ぶりからいった、新たな国際安全保障環境において危機対処へより迅速な対応が可能だということが実体的に一体どういうことなのか、これをぜひ説明していただきたいと思います。

久間国務大臣 やはり、国務大臣としての私は閣議請議を行うことができますけれども、防衛庁長官としての私は閣議請議を行うことは今の組織だったらできないわけですね。これがやはり、閣議請議を行うことができないと言っているのはそこなわけでありまして、内閣府に持っていって、内閣府の長である内閣総理大臣にお願いして、そこから閣議を開いてもらう、そして請議を行って決定していく、そういう形式になっております。しかし、今、内閣総理大臣まで含めて全部が国務大臣ですから、国務大臣は国務大臣個人としての、内閣の一員としての閣議請議はできることになっておりますけれども、要するに、組織の長としての立場での閣議請議ができない。こういったところは、今度は我が省の判断でできるということになります。

 ただ、全く変わらないかと言われると、私は、微妙な点では変わってくるような気がいたしております。余りそれを言うといかぬのかもしれませんが。

 例えば、私が前の防衛庁長官のときに、米軍が爆弾を海中に落としました。そのときに、掃海艇が行って掃海をしてやらないかぬということで出動しようとしたときに、官房長官からちょっとおまえ待てと言われまして、それはおまえのところの仕事じゃないんじゃないかという話になりまして、それはそうだということで、アメリカから外務省に依頼の電報を打ってもらって、外務省から防衛庁に対して、この掃海は自衛隊しかやれないのでひとつお願いしますという依頼文書をもらって、そして夜中の二時にそれに出かけるということのサインをしたことがございますけれども。

 今度は、防衛省になった場合は、少なくともそういう国民の安全の問題等についてはもう少し積極的にやれるんじゃないかなという思いがしておりまして、その辺は、今度は省になった後、そういう交通整理は微妙なところで、組織としては変わりませんけれども、これから先やっていく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

長島(昭)委員 今の説明は初めて、積極的な意義、私はよくわかりました。前段の話は実はバーチャルな話で、内閣府の長としての総理大臣云々という話は、何度聞いても私はぴんとこなかった。では、今それで問題があるんですかと言ったら、いや、問題なくやっています、こういう話だった。ただ、今のは非常に具体的な事例でよくわかりました。

 もう一つ、防衛庁の方からいただいた資料で、変わること、「諸外国との協議や交流の場で、我が国の安全保障への姿勢が明確に」なる、こういうことはあるんでしょうね。「近年、米軍再編に関する協議等、米国との政策協議がますます重要となり、」云々と書いてあるんですね。

 そうしますと、日米同盟の運用について、これまで外務省との役割分担をやってきた、その外務省との所掌分担みたいなものも対米関係の中で変わっていく可能性があるのかどうか。

 端的に聞きますと、例えば制服の皆さんの出番というか役割ですよ。私もテレビで見たことしかありませんが、政府同士の話し合い、向こうは制服の人がずらっと前面に出てきますよね。しかし、日本の場合は、それほど制服の方たちが日米交渉の中で前面に出てきていない。そうすると、制服の知見というのはどの程度、日米の米軍再編なんか本当に軍事的な専門知識の要る交渉事の中で反映されるのか、私は非常に心配な思いを持っていたんですけれども、共同作戦計画をつくるとか共同運用体制の構築には、私は、制服の皆さんの知見というのは非常に必要になってくると思うんですが、こういう日米同盟の運用そのものに対する外務省との所掌の変化というのは出てくるんでしょうか。

木村委員長 久間防衛庁長官、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

久間国務大臣 前回のときに、私は、例えば教育訓練局長なんというのは制服の方がいいんじゃないかというふうに思って、そうしようと思ったら、やはり参事官をもって充てるというふうになっておって、それはできなかったんですね。

 だから、そういうような意味では、防衛省になるのをきっかけに、そういう参事官をもって充てるかどうか。その後、そういうことで局長はしませんけれども、今、相互乗り入れをしていますからかなり進んでいますけれども、もう少しその辺は、内部の扱い方の問題としては議論して、そしてまた、内部だけではなくて、ほかの省庁へ、あるいは外国との関係でも、制服と相互乗り入れができるようにした方がいいんじゃないかなという基本的な考え方は今でも私は持っておりますから、そういうような問題意識もこれから先提案しながら、やはりせっかく組織を変える以上は、いいものにしたいと思っております。

長島(昭)委員 私も全く同感でありまして、看板のつけかえだけかというような批判にこたえる意味でも、よりよい国防体制、言ってみれば、内局の方たちと制服の方たちがベストミックスで仕事ができるような環境をぜひつくっていくようにしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

木村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 長島先生から沖縄の問題を取り上げていただいたんですが、集中審議もこれからたくさん予定をされるということでありますので、沖縄の問題は次回に回しまして、きょうは法案の審議に入っていくわけですが、このことについて最初に防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

 防衛庁・自衛隊の発足以来、初めて自衛隊の任務を変更する、防衛庁を防衛省に変える、いわば防衛二法の根幹を変えていくという重大な法案だと思います。海外活動を本来任務ということでいえば、海外活動を始めて十五年、そして、省の問題でいえば、五十年に一度という重みのある改定であります。

 ですから、それにふさわしい十分かつ徹底した審議が求められると思いますし、私たちは、審議を始めるに当たっては、総理大臣が出席のもとに委員会を開催していくということも求めてきました。こういう形で委員会の審議が始まっていくというのは極めて遺憾でありますが、引き続き、総理大臣が出席した、法案の重みにふさわしい審議を求めていきたいものであります。

 加えて、今回の法案は、十五年間の海外活動を検証して、本来任務というものがどういうことになるのか、あるいはどういう役割を果たしていくのか、果たして憲法との関係はどうなのかという徹底した審議と検証が必要だと思います。国民にも、十分な議論を経た上で審議を進めてほしいというのは、午前中の参考人のお話にもありました。

 私は、そういう意味でも、中央、地方で公聴会を開く、防衛庁については必要な資料はきちんと公開をしていくという審議のあり方を求めているわけですが、防衛庁長官は、今回の法案の性格、位置づけについて、どのように認識しておられますか。

久間国務大臣 自衛隊が発足しまして、自衛隊を管理する組織として、あるいはまた、自衛隊が装備するいろいろな装備品を調達してそれを管理する組織として防衛庁がスタートしたわけであります。

 しかしながら、その当時は米ソ冷戦構造の中でそういうような役割でよかったかもしれませんが、その後、世界が非常に目まぐるしく動きまして、国際環境の中で日本が平和と安全を保っていく、そういうような、我が国自身の安全を守るためにもそういう国際環境を無視した形ではやれなくなってきた。

 それと同時に、国際環境を維持するために、やはり各国と同じように、みんなが行こう、これで助けよう、こういうふうにしようというときには一緒になって外国にも出かけていく。そのときに、やはり自己完結型の自衛隊でないとだめだというふうなことから、PKOを初めとして各国へ、世界にも出ていくような、そういう状況になってきて、むしろ、それが国民としても、先般の世論調査を見てみても、そういうような国際的に活躍するというのは今の時代では必要なんだ、そういう判断を下してくれるようになりました。

 そうしますと、今までの、自衛隊を管理する、いわゆる食糧庁とか林野庁とか、それと同じような管理する庁としての組織ではなくて、政策を議論するような組織として、防衛省として位置づける方が正しいし、これから先の時代に合っているんじゃないか。そういう思いの中で、与党の方で意見集約をして、また野党の皆さん方にも話しかけをして、いろいろな賛同を得ながら今日ここまで来た、そういう思いでございますので、どうかひとつ、その背景について御理解賜りたいと思うわけであります。

赤嶺委員 まさに、今長官がおっしゃられたように、世界に出ていく自衛隊、専守防衛から大きく性格を変えていくわけです。ですから、それだけに徹底した審議、委員会、理事会等でも申し上げておりますけれども、委員長、そういう十分で慎重で徹底した審議を改めて理事会等でも検討していただきたいと思いますが、いかがですか。

木村委員長 理事会で協議を続けておりますので。

赤嶺委員 理事会で協議していきますので。ただ、法案の中身に入ろうにも入れない事態が相次いでいるところに今私たちの大変大きな悩みがあるわけです。

 その一つが、十一月二十一日に起こりました海上自衛隊潜水艦「あさしお」が民間貨物船に衝突するという重大な事故であります。

 この問題、やはり看過できないものを持っておりますが、海上保安庁の調査によりますと、貨物船の船底に長さ九メートルの傷をつけ、二カ所に穴をあけた。なぜこういう事故が起きたんですか。

久間国務大臣 なぜ起きたかは今調査していますから、調査の結果を待ってまた発表するわけでありますけれども、とにかく、ああいう事故があってはならないのはもうおっしゃるとおりでございまして、それは私たちも、本当に大変御迷惑をかけたということで、関係者にもおわびを申し上げたわけであります。

 しかし、そういう事故があったからこの法案の審議には入れない、前提条件が違うじゃないかとおっしゃられますと、それはまた別でありまして、国鉄の民営化だってそうでしたけれども、やはり事故があったから民営化するのは嫌だと言って法案の審議をとめるなんということはできないわけでありますから、それとはまた別でありまして、だから、そういう点については、その前提が、もう全然できないんだという話はまた別だと思います。

 しかし、事故については、これはもう一言の弁明の余地もないわけでございますから、私たちとしては関係者におわび申し上げると同時に、必要ないろいろな補償等の問題等についても誠意に対応してまいりたいと思っているところであります。

赤嶺委員 長官、誤解なさらないでください。私は法案に入れないと言っていないんです。法案は徹底審議だ、きょうもやりたいと。しかし、この問題を取り上げざるを得なくなった。こういう事態を起こしたのは私じゃなくて防衛庁・自衛隊の方ですから、そういうようなところもよく見ていただきたいと思うんです。

 それで、「あさしお」は一体、そのときどういう訓練をしていたんですか。

山崎政府参考人 潜没深度から浮上する訓練をしていたというふうに承知をしております。

赤嶺委員 自衛隊が出した、防衛庁が出した文書によりますと、再練成訓練というのがありますが、これは一体どういう訓練ですか。

山崎政府参考人 この「あさしお」という練習潜水艦は、実習生を積んでその教育の用に供するための潜水艦でございますが、たまたまこの「あさしお」は、定期修理を終えて乗員の練成自体が非常に練度が落ちておりましたので、その練成をするための訓練をしていた最中でございます。

赤嶺委員 乗員の練度が落ちていて、練度向上のための訓練をやっていたと。報道では、これらの海域は船舶の航行量も多い海域というのがありましたが、そういう場所で海上自衛隊の潜水艦は訓練を行うんですか。

山崎政府参考人 本事故が起きましたのは宮崎沖でございます。北緯三十一度三十六分、東経百三十一度五十六分の場所でございますが、通常、豊後水道とは違って、太平洋に面しているところでございますので、船舶が極めてふくそうしているような状況ではないというふうに承知をしております。

赤嶺委員 事故が起きた後の通報の問題について伺いますが、事故の発生時間が九時四十九分、海保に連絡が入ったのが十一時ですね。何で一時間十分もかかったんですか。

山崎政府参考人 詳細については現在、先ほど御答弁申し上げましたように、海上保安庁において調査をしておりますので、その調査結果を待ちたいわけでございます。

 概略を我々が承知している範囲内では、まず、九時四十九分に事故発生をいたしまして、十時二十二分に浮上しております。この間、当然、衝突をして衝撃を感じておりますので、潜水艦の方では、潜没をまだその時点ではしておりますので、まず浸水しているかどうか慎重に調査をした。それから、やはりまた衝撃ということは当然衝突ということが想定されますので、非常に慎重を期して浮上したということで、十時二十二分に浮上した。

 その後、当然、海上保安本部の方に国際VHF通信網によりまして連絡をいたしましたが、到達というか、連絡がつかない状況でございました。それで、海上の方から、浮上して後に潜水艦隊司令部の方に通報をいたしまして、潜水艦隊司令部の方から海上保安本部の方へ通報したという手順をとりましたので、若干時間がかかったというふうに承知をしております。

赤嶺委員 海難事故が起きた場合には、まず直ちにやるべきことは、事故を起こした艦船が海上保安庁に直接通報するということになっていますよね。今の局長のお話だったら、横須賀に報告をしてそこからだというふうな話ですが、何で直接通報するということが機能しなかったんですか。

山崎政府参考人 今答弁いたしましたように、浮上して直ちに海上保安庁、保安本部だけではなくて、衝突をしたとおぼしき艦船の方に対しても国際VHF通信で通信を試みましたが、連絡ができなかったというふうに聞いております。国際VHFにつきましては、私も技術的に詳しくは承知をしておりませんが、到達距離が非常に短いということもありまして到達ができなかったのかというふうに推測はしております。

 したがいまして、潜水艦の方といたしましては、専用の衛星通信を用いまして直ちに潜水艦隊司令部に通報しまして、潜水艦隊司令部の方から所要の連絡先に連絡をしたということでございます。

赤嶺委員 事故は日南の地域で起きて、横須賀には通報がついたけれども、管区の海上保安庁には連絡が行かなかったということですか。

山崎政府参考人 潜水艦隊司令部の方には、衛星を通じまして専用回線が通じております。そこで連絡が直ちにとれたわけでございますが、国際VHFの方につきましては、個別の通信回線ないしはその周波数が割り当てられておりまして、自動的に通信を流すというシステムになっております。当然、浮上して直ちに海上保安本部の方に連絡を試みましたが、残念ながら通達ができなかったというふうに聞いております。

赤嶺委員 浮上して、それでも横須賀に通報するまでには時間がかかっているわけですが、艦船が横須賀なり管区海上保安庁への通報をした場所は、浮上した場所は、事故を起こした場所からどのくらい離れているんですか。

山崎政府参考人 今御質問の点につきましては、私ども、先ほど来から御答弁申し上げていますように、海上保安庁の調査が入っておりまして、そこまでの詳細は把握をしておりません。詳細がわかり次第、御報告させていただきたいと思っております。

赤嶺委員 海上保安庁は海上保安庁としての捜査をやりますが、皆さんは事故再発防止の観点から調査をやっているということでありますから、これは速やかに、直ちに、どこから通報したのかというようなことも含めて全体を国会にきちんと報告すべきだと思いますが、いかがですか。

山崎政府参考人 これも先ほど来御答弁申し上げておりますけれども、通常、この手の調査につきましては、事案によりますが、一カ月以上、二カ月ないしは三カ月かかるところでございます。ただ、事案は安全性にかかわる問題でもございますので、なるべく、とにかく早急に調査を了して報告を差し上げたいというふうに考えております。

赤嶺委員 船舶にとってはどこから潜水艦が浮上してくるかわからない、そういう関係になっているわけですよね。ところが、安全対策に万全を期すべき自衛隊の側の艦船が、海難事故が起きてもその通報ができないような状態ですね。非常に時間がおくれる、ゆゆしきことだと思います。もう一度、調査報告についてきちんとしていただきたいということを求めておきたいと思います。

 それで、先ほどから議論になっておりました久間長官の核持ち込みの発言問題ですが、私は私の観点でまた議論させていただきたいと思いますけれども、久間長官は、十六日の民放のCS番組で、日本をかすめるような状態で核兵器を搭載した米国の潜水艦が動くのは核持ち込みにならない、こういう考えを表明されたわけですが、その後いろいろな発言があったわけですけれども、十六日の民放テレビ番組で発言を修正したと報じられております。

 長官は、具体的に何をどう発言し、その発言は撤回されたんですか。

久間国務大臣 私は、日本の国内にはもちろん持ち込みはないわけですけれども、領海内についても事前協議の対象になるということも知っておりましたけれども、その覚書ができたりなんかしたのが三海里時代ですから、三海里と十二海里の間というのについてはどうなっているのかよくわかりませんでした。だから、かすめるという言い方でその辺を表現したわけでありますけれども、その後、法制局から説明を聞きまして、十二海里になってからも、日本の政府の姿勢としては、十二海里内で協議をされた場合でも、それはノーと言いますという姿勢を貫いておりますということでしたから、わかりましたという話をしたわけであります。

 ただ、いまだに、覚書を交換したときの三海里と十二海里の間は、これは協議するのは相手ですから、どうなのかなというのは基本的には根っこにありますけれども、多分、信頼関係の厚いアメリカであるから、日本が十二海里をとっておれば、十二海里については事前協議をしてくるであろうし、してきたら、日本の方はそれはノーと言うという、日本の姿勢は知っているであろうというようなことをそのとき改めて確認したわけであります。

赤嶺委員 私、今、一つちゃんと伺いたいのは、そうしますと、領海内をかすめることであっても、非核三原則に反する立場だから認められない、前言は撤回しているという理解でいいわけですね。

久間国務大臣 いや、前言といいますか、私はかすめるという言い方をしたわけでありまして、三海里と十二海里の間は通ってもそれは構いませんという日本の政府の態度だということは言っていないわけであります。

 だから、かすめるという表現をしたのは、その辺がよくわからないからかすめると言ったのでありますが、その後の政府の話を聞きましたら、十二海里内であっても、やはりそれに対してはノーと言うという姿勢を貫いているということを確認したので、それを私自身も認識をきちんとしたというところであります。

赤嶺委員 十二海里と三海里の間の話ですが、十二海里になったのは、六七年に非核三原則、そして日本の領海は、七七年の領海法の制定のときに三海里から十二海里、かなり古い話なんですよね。そして、九六年に国連海洋法条約を批准しているわけです。

 七七年―九六年の間に、日米間で日本の領海の範囲について、今のかすめる話も含めてですが、何らかの協議があったかどうか。これは長官、一度整理しなければいけないとおっしゃっているわけですから、整理されたと思うんですが、さっきの答弁だとあいまいでよくわからないんですが、あったんでしょうか、なかったんでしょうか。

久間国務大臣 それは私の所管ではございませんので、あったかどうかも含めて私が答える立場にありません。

 しかしながら、私は、交換公文を新たに交わしたとか口頭了解を訂正したとか、そういうことは聞いておりません。

赤嶺委員 長官、整理される、一度整理してみなきゃいけないとおっしゃっているから私は聞いたわけです。ここで長官が私の所管ではありませんと言われたら、これは私、長官の言葉を信じて質問したわけですが。

久間国務大臣 私が所管ではありませんと言ったのは、アメリカとの関係で協議をしたりしなかったり、それは私自身はわかりませんと。しかしながら、私は、整理して法制局長官から、その後もたびたび委員会等で、十二海里になってからも日本国政府としては無害通航を十二海里以内は認めない、そういう方針を持っているということを言われたので、わかりましたということを言ったわけであります。だから整理はついたわけです。

赤嶺委員 法制局長官は、日本の側の見解として、十二海里も領海内ですということをおっしゃっている。それは長官は理解されたと言っている。アメリカがどう理解しているか、それは明確な形で日米間で協議があったのかどうかということを今私は伺っているわけですが、まだそれを整理されていないようですから、ぜひ整理されて、アメリカとの間で三海里が十二海里になったときにどういう整理をしたのか、調査の上報告していただけますか。

久間国務大臣 だから、それは私のマターではありません、だからそれは整理のしようがありませんということを言っているわけで、私は、日本国政府のとっている考え方なり、それを整理して法制局長官から聞きましたから、それに従って、これから先も十二海里はノーと言うんだなということを確認しているわけであります。

 だから、アメリカに聞いても、アメリカはどこに核があるかは言いませんという話になると思いますね。だから、それがあいまいだと言えばあいまいかもしれませんけれども、アメリカはどこを通過しているとかしていないとか恐らく言わないけれども、日本の領海内を通過するときは事前協議をいたします、そのときには日本はノーと言います、そういう整理の仕方であります。

赤嶺委員 ですから、事前協議の範囲が三海里だったのか十二海里だったのか、あいまいなことを長官がおっしゃって、そのときに、そんな急に言われてもアメリカだって困るんじゃないかと、アメリカの立場をおもんぱかってああいう発言をなさっているから、アメリカとの間はどうだったんですかと。日本政府は法制局長官の説明がありました、アメリカとの関係はどうなっていたんですかというわけですから、これは、長官のマターではありませんと言われても納得できませんから、引き続き説明を求めていきたいと思います。

 それで、ただ、それだけじゃないんですよ。長官は、こうもおっしゃっているんですね。その後の十九日の番組の中で、緊急事態でも領海に入って通過することが絶対にないのか、米軍は言わないと思う、こうおっしゃっているんです。緊急事態の場合であっても、アメリカ側はきちんと日本政府に通告して事前協議が行われ、その際、日本政府は核の持ち込みについて認めないというのが非核三原則に基づく政府の立場ではありませんか。それとも、米側は緊急事態の際には事前協議は求めてこないということなんですか。

久間国務大臣 アメリカのことを聞かれてもちょっと私も答えようがございませんが、緊急事態、もうとにかく生命に、生死にとってどうしようもない、そのとき、もう事前協議をするいとまもないときに、そこは、先ほどの潜水艦じゃありませんけれども、急に急速浮上をして無害通航のそれをやるか、あるいはまた急速浮上もせずにそのままそこは通り抜けるか、その辺については、私は、現実問題としてはあり得るんじゃないか、そういうふうなことをそのときに思ったから言っただけのことであります。

 だから、いわゆる通常のパターンのことを言っている場合と、そういうふうに災害その他が起きたときに、あるいは何か海底火山が爆発したときにどうするかとか、すぐ逃げなきゃいかぬときに、そのときに事前協議をするかしないか、そんなことはあれですから、緊急事態の場合といったときには、それはやむを得ない場合だと思いますから、そこのところは、もしあったとすれば、その後に、実はこういう事情だったから事前協議できなかったという報告が、日米間ですからきちんとあると思います。

赤嶺委員 緊急事態について日米間で、こういうときは緊急事態だよという合意があるんですか。

久間国務大臣 いや、私はそれは聞いておりません。

赤嶺委員 聞いていないのに、あるんじゃないかと言うわけですか。そうしたら、では、アメリカが緊急事態という理由をつければ領海内に入ってこられるということじゃないですか。

久間国務大臣 現実問題として、緊急事態のときにそこを通るなと言って、そういうことが許されるかどうかですよ。そこは、緊急事態の場合はやむを得ないんじゃないでしょうか。そのかわり、緊急事態があって、そういうことの場合だったら、事前協議になっていたけれども、こういう形でそこは通過させてもらいましたということが事後的に報告はあるでしょう、お互いの信頼関係だったらそうでしょうから。緊急事態のときも一々しなかったらだめだと言ってみたって、緊急事態のときにはせざるを得ないわけですから。だから、そういうことについて、一々言うこと自体がどうかなと。緊急事態のときはあくまで緊急事態ですから。

赤嶺委員 私たちは、今まで非核三原則、核は持ち込ませないと日本政府は言いながら、実はアメリカとの間に核密約があるんじゃないかということを我が党はたびたび指摘してまいりました。核の持ち込みについては、六〇年安保のときに結ばれたもので、事前協議の対象となるのは核の持ち込み、イントロダクションであり、米軍機の飛来、アメリカの艦船の日本領海や港湾への立ち入り、つまりエントリーは対象としないという日米間の合意になっていたということ、既にこれは党首討論でも当時の私たちの不破議長が取り上げた問題であります。

 有事の際には、実は日本政府との間で、日本政府の了解のもとに当時の密約が動き出すということを今長官おっしゃったように聞こえますけれども、そういうことじゃないですか。

久間国務大臣 私自身、そういう密約そのものを知りません。だから、有事の際はその密約を、ほごにして、そういうことで動き出すなんということも、全然そういう理解をしておりません。

赤嶺委員 結局、緊急の際は仕方がないだろうといって、救急車じゃないんですからね。消防車じゃないんですから。核兵器を積んでいる艦船を、非核三原則に基づいて、やはり持ち込ませないという日本政府の明確な意思表示がこんなあいまいな形で壊されていく、崩されていくということは絶対納得できないということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。

木村委員長 次に、辻元清美さん。

辻元委員 社会民主党の辻元清美です。

 私は、きょう、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案及び今の現在の日本の安全保障をめぐるさまざまな議論のあり方について、防衛庁長官を中心に、率直な御意見を伺いたいと思っております。

 まず、きょう、午前中の参考人の方々にもお聞きしたんですけれども、日本では防衛省ではなく庁であった、この意味ですね。先ほど長官は、管理するというところから政策立案や議論というお話をされましたけれども、私は、それ以上に、やはり日本の歴史的な、戦前のこともあります、そして、戦後日本が特にアジアの中で進んでいくに当たっての政治的な意味があったと思うんですね。特に、防衛庁長官というお立場は、やはり軍事力というものに対して抑制的な立場で仕事をしていただかなきゃ困ると思います。

 それから、やはり過去の歴史に対しての総括をどうされているのか。特に、日本の場合は軍国主義という時代を経ておりますので、それに対する総括をどうされているかということが問われる役職であると思うんです。私はやはり、政治の最大の教科書の一つは歴史だというように思います。

 そういう意味で、まず、基本的な御認識として、日本の場合、防衛省ではなく庁であったという、過去との歴史の中での位置づけや意義、そしてさらには政治的な意義がどこにあったのかという御見解を伺いたいと思います。

久間国務大臣 戦争で負けて、終戦と言う人もいますけれども、私ははっきり負けたと思っていますね、戦争で負けて丸裸になって、もう日本は軍隊を持たない、とにかくもう何もしないという形でバンザイしてしまったわけですね。

 ところが、いろいろなことの中で、無防備でいいのか、攻められたら、もし占領されたら、日本の国民はあるいはまた財産は、もうとにかくやられっ放しじゃないかというようなことから、やはり自衛する、そういうような組織ぐらいは持つべきであろうというふうなことから、とにかく、最初は保安庁としてかもしれませんけれども、自衛隊ができ上がってきたわけですね。そして、それを管理する組織として防衛庁ができた、そういうような歴史的な背景があったと思います。

 そして、それはやはり一つには、あの戦争に突入していったときに、軍国主義といいますか、要するに、統帥権が全然国民のコントロール下にないというようなところから、ああいうところまで暴走するに至ってしまったという反省の上に立って、日本はとにかく、そういうことで、軍隊も持たない、戦争もしないということでいったけれども、やはり何らかの組織は持っておかないと大変だということで、警察だけでは無理だということから自衛隊が発足して、その管理する防衛庁がスタートしたというふうな認識をしておりますので、やはりある意味では、戦前のそういったことには二度と戻らぬようにしようという思いがそこにあったのは事実だと思います。

 そして、それは今でも私は日本国民の中に、我々を含めて全部が思っていると思います。声高にそれをとにかく言われる方がいらっしゃいますけれども、私たち政府側に立って、あるいは防衛庁長官としてこういう任に当たっている者も、そういう意味では、抑制的にあらねばならないと絶えず自分自身にも言い聞かせながら、そういうような気持ちで取り組んでいるつもりでございます。

辻元委員 ただいまの御答弁の中に、軍国主義の時代の一つの総括というものを、やはり防衛庁長官としてしっかりしなければならないという趣旨を含んでいると私は受け取りました。

 その中に、一つ、戦前と戦後の大きな違い、それはやはり、先ほど統帥権の話がありましたけれども、シビリアンコントロールという点が大きな違いだと思います。それと、憲法九条のもとでの専守防衛という点、これはもう全く違う点だと思います。

 そういう中で、長官としまして、すべての防衛論議の基本になると思いますけれども、シビリアンコントロールという点について重要な点を三点挙げるとするならば、どういう点を挙げられますでしょうか。

久間国務大臣 まず、自衛隊をそういう武力集団と見るか、軍事組織と見るかは別として、そういう実力部隊は、必ず国会の予算とか法令に基づいてコントロールされる組織でなければならない、そのトップもまた、国会から選出された内閣がそのトップになってそれをコントロールしなければならない、こういったところが一番大きな基本じゃないかなと思っているわけであります。それと、軍事組織といいますか、実力部隊といいますか、そういうような力のある部隊ですから、それの人事権もやはり文民のいわゆる長官なり総理大臣なりそういう統制下に置かれなければならないという、大体この三つを守っておけば軍が独走することはなかったんじゃないかなというふうに思うわけでありまして、やはり戦前の場合はこの三つのどれもが欠けていたんじゃないかなと私は思っております。

辻元委員 今の御答弁の中で、やはり一つは、国会の関与というところが非常に重要になると思います。本委員会もその一つの重要な、国会が安全保障及び政府をチェックしていくという役割があると思います。

 そういう中で、昨今の安全保障をめぐる議論を見ておりますと、私は心配になる点が幾つかございます。

 それは、きょうもこの委員会で、例えば集団的自衛権とMDをめぐる議論なども出ておりますけれども、やはりアクセルとブレーキといいますか、長官はブレーキを踏む立場だと私は思っております。国会もそうだと思います。ところが、今、安倍政権になってから、空吹かしといいますか、何だかアドバルーン的に安全保障議論を先走るような形、または現実の認識をしっかりお持ちでないような御発言をされる向きがあるのではないかというふうに私は心配しております。

 そういう中の一つが、この福田官房長官談話の見直しなんですね。きょうは官房副長官にお越しいただいていますので、その真意をお聞きしたいと思います。

 塩崎官房長官が二十日の午後の記者会見で、ミサイル防衛システムと集団的自衛権との関係について、福田官房長官談話の見直しも含めて議論をするというように御発言されたと報道もされておりますが、これは事実ですか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 塩崎官房長官がミサイル防衛と集団的自衛権の関係について御発言をしたところでございます。この中におきまして、平成十五年の十二月の福田官房長官談話を踏まえて議論する必要があるわけであり、塩崎官房長官も、談話の見直し云々ではなく、これから議論していく話である旨述べたものと理解をしております。

 これは、具体的に申し上げれば、集団的自衛権とミサイル防衛の問題について、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するかどうか、個別具体的な例に即しよく研究していくという安倍内閣の立場から、例えば、米国に向かうかもしれない弾道ミサイルを我が国のBMDシステムで迎撃する場合についても今後議論していくことになろうと考えを述べたものと理解しておりまして、これは同じような点で、平成十五年の福田官房長官も踏まえての議論で、そのものを否定するということではないというふうに理解しております。

辻元委員 同じ報道、多々出ておりますけれども、塩崎長官が「議論の場については「政府内でいろいろ議論している」と、既に非公式で研究していることを認めた。」とありますけれども、政府のどこで議論しているんでしょうか。

下村内閣官房副長官 塩崎官房長官は、このことについては、安倍総理も集団的自衛権の問題について個別具体的に議論、研究する必要があるのではないかということを発言された中での議論でございまして、具体的にどこで今議論しているかということは承知していないというふうにお答えになっていると思います。

辻元委員 研究、議論の必要があるとおっしゃいましたが、それでは、どこでされるつもりですか。

下村内閣官房副長官 そのことも含めて、これから議論を深めていくことだというふうに承知しております。

辻元委員 そのことも含めて今から議論をしていく場はどこですか。

下村内閣官房副長官 現在においては、まだ決まっておりません。

辻元委員 防衛庁長官にお伺いします。

 この福田官房長官談話を見直すことも含めての議論を防衛庁内でする予定はありますか。

久間国務大臣 たびたび先ほどからも言っておりますように、我が国の現在導入しようとしておりますミサイル防衛システムというのは、アメリカへ向かって飛んでいくミサイルを迎撃する、そういう能力はないわけでございますから、今それをどうこうということはありませんけれども、やはりいろいろな発言というのもその時代時代で背景が違ってくるわけですから、そういうことも含めて議論しようという話をしちゃいかぬ、それもいかがなものかとも思うので、されるのは結構ですよ、そういう気持ちでございますが、防衛庁において今そういう研究をしようというふうには思っておりません。

辻元委員 下村官房副長官がお越しいただく前に、技術的には無理であるという議論が大分展開されたわけですね。それで、今、防衛庁の中では見直しを議論するつもりはないと。そうしたら、官邸の方では議論、検討していくということですけれども、防衛庁でなければ、どこが想定されるんですか。どうぞ。官房長官も総理もおっしゃっていることですから、非常に重いですよ。そういう想定もなく発言される問題ではないと思います。

 特に、憲法九条との関係で、集団的自衛権の行使、これは肝なんですよ、長官。ですから、これをどういうようにどこで議論されようと、防衛庁では今のところないということですが、いかがですか。

下村内閣官房副長官 久間防衛庁長官が、技術的にそれを撃ち落とすことは難しいという話をされたことももちろん承知しております。その上に立って、具体的に今の段階におきまして、官邸の中で、これをどう議論するかとか、あるいはどこにお願いするかということについては、まだ議論をしていない段階でございます。

辻元委員 非常に不思議なんですね。防衛庁長官が、今のところ議論する必要がない、技術的にも難しいと。それで官邸では、私は先ほど長官にお聞きしましたのは、どこかで勝手にだれかが議論するわけじゃないわけですよ、防衛庁として正式に議論されるのかということを聞いて、長官は当面はないという答えだったんです。一般的に議論するのはいいじゃないかとすりかえたらだめですよ。

 やはり、特に安保を語るときは、防衛庁としての姿勢はどうであるということと、その辺で議員が議論するとかテレビ討論でするとかと違うわけですよ。ですから、私は、これは官邸がかなり空吹かしじゃないかと思っております。

 さてそこで、なぜこういうことを言うかといいますと、このMDが導入されるときに、この点が一番の焦点として議論されたわけです。それで、当時の福田官房長官がその点をはっきりさせていこうということで、このときはBMDシステムですけれども、「我が国が導入するBMDシステムは、あくまでも我が国を防衛することを目的とするものであって、我が国自身の主体的判断に基づいて運用し、第三国の防衛のために用いられることはないことから、集団的自衛権の問題は生じません。」というんですね。

 そうしたら、これは平成十五年ということで三年前なんですけれども、官房副長官にお伺いしたいんですが、状況はこの三年間でどう変わったんでしょうか。

下村内閣官房副長官 塩崎官房長官も記者会見等で発言をされているのは、この福田談話について、これを議論し直すということではなくて、集団的自衛権の個別具体的な事例の中で議論をしていこうということでございまして、状況も変わっておりませんし、また福田談話を否定している発言は一切されておりません。

辻元委員 一番最初に私がお伺いしたときに、福田談話について見直しも含めて検討するという報道はそのとおりかと言って、事例に挙げられました、このMDの問題が集団的自衛権の行使に当たるのかどうかと。ですから、私は引き続き質問したわけですね。

 これは、先ほどのシビリアンコントロールとか国会のチェック、このところ、やはり政府がちょっとばらばらというか、事安全保障にかかわっては、今までの見解を変えたい変えたい変えたいとか何か走る人たちと、しかし、それでは近隣諸国、アメリカも含めて、うまいこといかへんという、何かぎくしゃくが見られるんですね。

 そこで、もう一点、ちょっと角度を変えて官房副長官にお伺いしたいんですが、先ほどもちょっと議論に出ていたんですけれども、国家安全保障に関する官邸機能強化会議というのが設置されるということになっておりますね。これは総理のもとということで、小池百合子さんの立場はどういう立場なんでしょうか。

下村内閣官房副長官 お答えします。

 この国家安全保障に関する官邸機能強化会議の位置づけの中での総理補佐官の位置づけでございますが、そもそもこの会議については、我が国政府として、我が国の安全保障の確保に万全を期すために、外交と安全保障の国家戦略を政治の強力なリーダーシップにより迅速に決定できるような仕組みを構築していくことが必要であると認識しているところでございます。

 国家安全保障に関する官邸機能強化会議は、今国会において総理所信表明演説において表明された、外交と安全保障に関する官邸の司令塔機能を再編、強化する施策を検討することを目的として設置されたものでございまして、今月二十二日には第一回会議が開催され、来年の二月末を目途に意見の取りまとめを行われる予定であるというふうに承知しております。

 我が国政府としては、このような意見を踏まえて、我が国にふさわしい司令塔機能の構築に努める所存であり、小池補佐官は、このことにおきまして、総理の補佐官として任用されて活動しているところでございます。

辻元委員 今の官房副長官の御答弁に、外交と安全保障の国家戦略、それから司令塔としてという構想が語られました。

 防衛庁長官がそのメンバーに入っていない理由は何ですか。入っているんですか、防衛庁長官。防衛庁長官はそのメンバーに入っているんですか、入っていないんですか。

下村内閣官房副長官 先ほど申し上げました国家安全保障に関する官邸機能強化会議は、民間有識者の方々にお願いしております。

辻元委員 民間有識者の方に入っていただいて、司令塔の役割という御発言もありました。そうしますと、この内閣が発足してから随分時間はたっておりますけれども、この間、防衛庁長官と小池百合子補佐官、安全保障の、国家戦略も議論される、北朝鮮の核実験問題などもこの間にありましたけれども、公式の情報交換は何回行ったんですか。

久間国務大臣 小池補佐官が防衛庁を訪ねてこられまして二人でお話ししたことはございますが、そういう公式のことでもございませんし、また、具体的な戦略を持っての話ではございません。

 今ちょっと下村副長官から話がありましたように、民間の有識者会議といいますか、そういう人たちが一つの提案を今後されると思います、いろいろな考え方を。それを受けて政府としてはどうしようかという話になってきますから、そのときには、防衛庁はどうするか、外務省はどうするか、警察はどうするか、あるいは公安関係とか法務省はどうするかとか、いろいろなところが関係して、これから先どういう形の戦略を描いたらいいかということで、その時点から具体的な話になるわけでありまして、今はまだその前段階の民間の有識者会議の人たちに、それもいろいろな経験を積んでおられる方々に、この間私もメンバーを見ましたけれども、なかなか皆さん一見識を持っておられた方でございますから、一つの形ができてくるんじゃないかなという期待を持っておりまして、今までみたいにばらばらではいけないんじゃないか、そういう思いを私自身は持っておりますから、非常にいい方向へ進んでいるんじゃないかなと思っております。

辻元委員 これは先ほどからも質疑の中に出ていました。それは、それぞれの場所で二元的な意見が出たりとか、事集団的自衛権の行使の解釈についてもそこで議論するかのような報道もありましたので……(発言する者あり)報道もありました。中谷さん、横で答えないでくださいね、先に。あなたに問うていませんからね。ですから、ここははっきりさせておかないと。というのは、私たち国会の安保委員会でこれをチェックする以外にないわけですよ、この機能はどうですかということを。それは基本的なことだと思います。

 この法案については、問題点を多角的に議論していきたいので、十分審議の時間を持っていただきたいと思っていますけれども、先ほどのMDとの関係、集団的自衛権の行使とか、それから非核三原則、これは、日本がどういう方向を示しているのかというのを諸外国も見ていますので、安保委員会できちっと、堅持するのであればするという議論をすべきだと思いますし、委員長、これは理事会でもずっと出ておりますけれども、しっかりと、集中審議も持っていただいて、シビリアンコントロールとおっしゃいましたので、議論をしていただきたいと思います。

 いかがでしょうか、委員長。お願いします。

木村委員長 理事会で協議を続けておりますので。

辻元委員 そうしましたら、ちょっと論点を変えます。

 一つは、この間、不祥事の問題が出ておりました。そこで、具体的なことをちょっとお伺いしたいんですけれども、私もいろいろ調べてみたけれども、例えばこの十年間にどのような、不祥事がようけあるわけですよ、長官。他の省庁よりも多いと思いますね、これは。

 そうしましたら、例えば、情報流出案件は何件あったのか、薬物事案は何件あったのか、誤射事案は何件あったのか、無断海外渡航事案は何件あったのか、まとめて報告をいただけますか。

増田政府参考人 お答えをいたします。

 過去十年間、今委員から御指摘のそれぞれの事案ごとのいわゆる不祥事の統計につきましてでございますけれども、まず前提として、期間の設定や件数のとらえ方にちょっとふぞろいな点があることを御容赦願いたいと存じます。

 その上で申しますと、まず情報流出関係でございますけれども、件数につきましては、ファイル共有ソフトを介して情報が流出した事案につきましては、平成八年度以降これまでに報道されたもの、十件ございます。ただ、これら以外についても事案はございます。しかしながら、事案すべての件数を明らかにすることは、資料の検索等を誘発し、情報漏えいの範囲を拡大させる可能性があることから、差し控えさせていただきたいと存じます。

 それから談合関係でございますけれども、いわゆる……(辻元委員「談合は聞いていません」と呼ぶ)済みません。

 薬物関係でございますけれども、これについてはこれまで、自衛隊法に基づきまして、懲戒処分を十年間で四十七件実施しております。

 それから誤射事案についてもお尋ねがございました。いわゆる間違って発射してしまったとか、演習場の外に弾が飛び出てしまったというような、事故として取り扱っている事案としては、平成八年度以降七件ございます。

 最後に無断海外渡航事案でございますけれども、これは先般、防衛庁に勤務する全職員を対象としてアンケートを実施した結果、平成八年以降で、この八月までの間に九百九十三件の事案が発生したことが判明をしております。

辻元委員 今、無断渡航も九百九十三件と聞いて驚きました。

 先ほどから、自殺者も多いという話が出ておりますけれども、この十年間でどれぐらいの人数になるんですか。

増田政府参考人 自殺者数でございます。過去十年間の自殺者数は合計で七百七十九名でございます。

辻元委員 長官、私はちょっと異常じゃないかなというように思いますよ。

 十月に入ってからも、例えばこういう記事ですね、「試験装置 防衛庁、使えても廃棄」と。要するに、使えるものも三年足らずで廃棄処分が決まった約三億円の装置、そんなのがあるとか報道されたり、そうかと思うと、この十日後には「中国人女と共同経営の疑い 空自幹部聴取へ」というので、風俗関係の「店舗やマンションの一室で、中国人の女を使い、性的マッサージなどを提供。警視庁は週内にも空自幹部から事情聴取する方針を固めた。」と。

 防衛庁を防衛省にするとか規律をと言っている間にも続々とこういうのが出ておるわけですね。長官、ほかの省庁も御存じだと思いますけれども、これは一体どういうことですかね。ちょっと理解に苦しみます。自殺者が十年間に七百人以上もいて、無断渡航は九百何十人、そして情報の流出はしている、誤射事件はあるで、ちょっと、もうこれは基本的なところがなっていないんじゃないですか。

久間国務大臣 そのうちの、先ほど言われた、使えるやつを捨てている、それはどうもうそのようですから、それはちょっとあれですけれども、確かに、自殺者が七百七十九人、しかも最近は百人を超えているんですよ。平均して、十年間で七百七十九人ですから、最近百人を超えている。これは本当にゆゆしきことなんです。

 ただ、若者の数といいますか、同じ年代での死亡した数からいったら平均値なんですよ、グラフでいきますと。けれども、自衛隊というのは、やはりそうはいっても、訓練されて精強な自衛隊ということで、志願して来ているわけでしょう。そこがほかの平均値と同じような自殺者だというところに私は問題があるというふうな認識をしていまして、いろいろな角度から、何でだろうかということで言われますけれども、本当になかなかわからない。借金もそれはあるでしょうけれども、ノイローゼもあるでしょうけれども、なかなかつかめないんです。

 しかしながら、やはり自衛隊がこれじゃ困るわけでありまして、先般も、自分で銃で撃った、それはしかも弾薬庫の歩哨に立っているのが自分で撃っているわけですからね。そういうのは一歩間違うとゆゆしきことになるわけですから、この問題については本当に真剣に取り組みたいと思っております。

 ただ、いろいろな事案があります。無断海外渡航というのも確かにけしからぬことですよ。しかしながら、今までのあれは、上官に言って、みんなと一緒に観光旅行に休暇に行くといっても、それも許可をもらうのに一カ月かかるというようなことから、ついつい無断渡航で行ってしまうとか、そういう点もありますから、もう少しそういうのは、何か便法を考えてやる方法とか、何か方法があるんじゃないかと。

 だから、無断渡航といったら全部が全部、さっき言われたような変な無断渡航もありますよ、これが事件になっていくような。そういうのもありますけれども、九百何十人というのがそういうあれかというと、必ずしもそういう悪意でない。本当に地域の人たちと一緒に観光旅行に行った、そのとき、手続したら一カ月かかるので、もうとにかくそのままパスポートを別にとって行ったというような、そういうようなたぐいのもありますから、全部が全部じゃないですけれども、少なくとも、組織の一員としては規律をきちんと守っていく、そういうことを徹底しないと組織はもたないような気がしますので、これはこれから先も徹底させたいと思います。

辻元委員 談合事件のこともこの間やりましたけれども、私が中学生ぐらいのときからずっとやっておったというような話なんですね。これは私、この後またこの審議続きますので、海外での任務を三条の本来任務にする議論も、これも非常に大きな問題を、本質的な自衛隊の変質につながりかねない意味を持っていると思いますから、引き続き議論したいと思いますけれども、この不祥事オンパレード言うたら悪いですけれども、見ても、法案を取り下げられて、もう一回ちょっと、一つ一つの問題を究明していただく方がいいということを申し上げ、もう長官結構ですよ、終わりたいと思います。

木村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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