衆議院

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第4号 平成19年3月27日(火曜日)

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平成十九年三月二十七日(火曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 木村 太郎君

   理事 赤城 徳彦君 理事 今津  寛君

   理事 北村 誠吾君 理事 寺田  稔君

   理事 中谷  元君 理事 内山  晃君

   理事 笹木 竜三君 理事 遠藤 乙彦君

      石破  茂君    大塚  拓君

      大前 繁雄君    瓦   力君

      坂井  学君    高木  毅君

      仲村 正治君    浜田 靖一君

      広津 素子君    福田 良彦君

      宮路 和明君    山内 康一君

      山崎  拓君    神風 英男君

      津村 啓介君    長島 昭久君

      前田 雄吉君    横山 北斗君

      赤松 正雄君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君    日森 文尋君

      下地 幹郎君    西村 真悟君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛大臣         久間 章生君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  雅彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊佐敷眞一君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石黒 憲彦君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     押田  努君

   政府参考人

   (国土交通省国土地理院長)            藤本 貴也君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  冨岡  悟君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  千田  彰君

   政府参考人

   (国際協力銀行理事)   野崎  茂君

   政府参考人

   (国際協力銀行理事)   武田  薫君

   安全保障委員会専門員   三田村秀人君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     広津 素子君

  長島 昭久君     横山 北斗君

  辻元 清美君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  広津 素子君     坂井  学君

  横山 北斗君     長島 昭久君

  日森 文尋君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     安次富 修君

  照屋 寛徳君     辻元 清美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出第二七号)

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

木村委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官鈴木敏郎君、内閣官房内閣審議官原雅彦君、内閣官房内閣審議官伊佐敷眞一君、総務省人事・恩給局長戸谷好秀君、外務省大臣官房審議官佐渡島志郎君、外務省大臣官房参事官松富重夫君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省国際法局長小松一郎君、国土交通省国土地理院長藤本貴也君、環境省自然環境局長冨岡悟君、防衛省大臣官房長西川徹矢君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、防衛省運用企画局長山崎信之郎君、防衛省人事教育局長増田好平君、防衛施設庁長官北原巖男君、防衛施設庁施設部長渡部厚君及び防衛施設庁建設部長千田彰君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長諸澤治郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹木竜三君。

笹木委員 民主党・無所属クラブの笹木竜三です。

 質問を始めます。よろしくお願いします。

 まず、この質疑は、前回、防衛庁の省昇格の法案を審議しているときに、あの施設庁の問題等あり、そのことでの集中審議も何度かやりましたが、その中で、情報公開の問題ですとかシビリアンコントロールの問題、そうしたことについてさらに集中審議をやる、そうした話をして、約束をして、その後採決に入ったわけですが、きょうはそのことに関する質疑の時間になっています。

 まず情報公開のことについてお尋ねをしたいと思うわけですが、その前に、二〇〇六年の十二月、あの審議なんかもやっていた最中、あるいは終わりのころですが、防衛施設庁が騒音対策として基地周辺の住民に補助しているエアコン購入費について三年間単価を見直さなかったために、実勢価格とのずれが非常に大きく生じていた、こういった記事がちょうど十二月の下旬に出ています。このことについて、事務方の方で結構ですから、どういう経緯だったのか、御説明いただきたいと思います。言ってみれば、時期としては、二〇〇五年の一月からあの施設庁の談合のことが話題になっており、そして報告書も六月に出た、その半年後にまたこの問題が話題になった、そのことについてです。御説明いただけますか。

北原政府参考人 済みません、笹木先生、今御質問の趣旨を取り違えていたら申しわけないんですが、十八年度のエアコンの補助単価が前年度に比べて低下していることをめぐって住宅防音工事が滞る騒動があった、その関係でございますか。(笹木委員「はい」と呼ぶ)その点につきましてでございますが、新聞でその旨が報道されております。

 これにつきまして、私ども防衛施設庁におきましては、住宅防音工事に関係します予算の効率的また効果的な執行を図るといった観点から、十八年度のエアコン等の補助単価を決定するに当たりまして、一般競争入札によりまして財団法人の建設物価調査会に委託いたしまして、エアコン等の本体価格等の調査を行ったところでございます。

 そして、この調査は、年度当初に、住宅防音工事における工事業者が機器を入手するまでの実際の流通経路などを踏まえまして、メーカーあるいは系列販売会社、商社、工務店などの取引価格を対象といたしまして、エアコンなどの本体価格についてはメーカーなどに対しまして一定の条件のもとに調査を依頼したものでございまして、私ども、この調査の結果、エアコンなどの本体価格の一部が前年度に比べて低下したということでございます。

 これで住宅防音工事の円滑な実施が一部で滞るといった事態が発生したところでございますけれども、私どもといたしましては、全国の関係者に対しまして累次御説明をし、一定の理解が得られている、そして工事が進捗している、そのように考えているところであります。

笹木委員 ちょっと質問した内容について先走ってというか、このときの経緯をお聞きしたかったので、ちょっと具体的にもう一回確認しますが、まず、調査を行って実勢価格をもとにその単価を変えた、要は修正したわけですよね。修正した結果、これは騒音対策として、サッシとか空調とか、そういうものを九割補助とかあるいは全額補助している、対象件数が大体三万三千世帯と聞いていますが、この問題について非常に実勢価格とギャップがあった、調査をしてみて、その後修正をしたということです。六畳用のエアコンですか、そうしたもの、それまで七万円払っていたのを三万八千四百円にした、八畳で七万六千五百円払っていたのを四万六千二百円に価格を修正したということで間違いないですよね。細かい通告はもちろんしておりませんが、事前にこういうことでやりとりはちゃんとさせていただいていますが。

北原政府参考人 個々の単価につきましては、今後のまた業務の遂行上支障がありますので、公表は差し控えさせていただきたいと思っております。

 ただ、先ほど私申しましたが、今回の本体価格等を決めるに当たりまして、繰り返しになりますが、財団法人の建設物価調査会といったところに委託をいたしまして、その結果に基づきまして、私どもとしては公正な価格を打ち出しまして契約に臨んだ、そのように考えております。

笹木委員 公表を差し控える、新聞とかにも、いろいろほかの雑誌とかにも出ています、委員会で隠すような話じゃないと思うんですが、さっき言ったように、大体四五%とか四〇%とか、そうした価格のずれがあったということです。

 これが、調査をする年、ずれがあった、修正したということなんですが、それだけの実勢価格とのずれが決してその年だけじゃなかった、三年以上、そうしたずれがあったまま放置をしていたということで問題になっているわけですよね。そうした事実を、経緯を今確認しているんですが、間違いないですよね。

北原政府参考人 本件について、ちょっと突然の御質問ですので、正確を期したいと思っておりますが、私ども、インターネット等で実勢価格その他についてはフォローをしておりました。十八年度につきましては、繰り返しになりますけれども、一般競争によるということになりまして、財団法人建設物価調査会という公の団体に調査を依頼いたしまして、それに基づきまして価格を決めていったというものでございます。

笹木委員 では、説明しますが、決して事前にいろいろ聞いたりしていないわけじゃないんですが、要は、財務省から過去に二度にわたって改善が求められていたわけでしょう。先ほどの御説明ですと、実勢価格にずれがあるようなので、市場調査をして、それで修正したというお話ですが、それは過去、財務省から二度、改善を求められていたけれども、それに対して対応せずに、二〇〇三年と二〇〇五年、指摘があったけれども改善をせずに、それで、その後でいろいろ問題になって、ようやくこの市場調査をやって、実際にさっき言った四五%とか四〇%の価格のずれがあったということで、それから初めて修正をした。三年間放置をしておいたということでしょう。そういった経緯の確認をしているんですが。

北原政府参考人 笹木先生の御指摘でございますが、二度、この住宅防音工事について御指摘があったということでありますが、過去、さかのぼりますと、一度、この住宅防音について御指摘があったことは事実であります。他方、もう一回につきましては、学習等供用施設といった、その関係での御指摘があったことは事実でございます。

 いずれにいたしましても、三年と時間がかかっていることは先生御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましては、厳正に、そしてしっかりとした契約あるいは価格でこういった住宅防音その他の工事に臨んでまいりたい、そのように考えております。

笹木委員 それともう一点、あわせて確認させてもらいますが、これで価格を修正して、実勢価格、大体の市場価格と同じような額に修正をした。今までの業者がそれを受けない、断る業者が出てきたということですが、それで、住民に、業者が契約に応じない場合は別の業者を選定してくださいということで、量販店を紹介したり、そうした通知をした、そういうこともあったということですね。今まで大体いつも受けていた業者は、全国基地周辺住宅防音工事協力会、こうした業界の中での業者に委託をしていたわけですが、そうした業者が断る例もあって、量販店とかを御紹介した、そういうこともあったということですね。

北原政府参考人 今回、価格が下がったということに基づきまして、これまで関係していた関係の業者の方々等から、今先生御指摘のような声が上がったことは事実でございますが、私ども防衛施設庁といたしましては、しっかりとした根拠に基づいてこの対策事業をやっていかなければならないといった観点から仕事を進めてまいりました。

 したがいまして、全国各地に、その関係の関係者に対して累次にわたりまして御説明をしながら、また、今先生が御指摘になられたようなケースもあるやに承知しておりますが、直接的ではございませんが、そういったケースも承知はしております。

 いずれにいたしましても、私どもは、住宅防音というのは件数も大変多うございますが、きちっとした価格に基づいて対応していきたい、そのように考えておりまして、懸命に御理解を求め、そして契約にこぎつけているといった状況でございます。

笹木委員 経緯を一応確認させてもらったんですが、とにかく二〇〇五年の一月から施設庁の談合が話題になっていて、報告書も六月に出た、そうした時期ですが、そうした時期にも、またその直前から三年間放置していた、それに対する対応もしていなかった、こういうことが続いていたということです。

 それとあわせて、きょうの答弁の中にもありましたが、いろいろな資料を求めても、もう新聞とか雑誌で出ているような数字とか資料についてもなかなか出てこない、こういうことが非常に多いわけです。

 ここでもう一回振り返って、施設庁の問題をやっていたときの情報公開の問題について取り上げたいわけですが、あの報告書を出すに当たっての調査、ヒアリングの結果がなかなか出てきませんでした。公開はしないという話でした。その後、何度もしつこくやっても、黒塗りが非常に多いものをようやく出してきて、それを、一般のところじゃなくて、場所を決めて閲覧、そういう状態でした。

 もう一度ここで振り返って整理をしたいんですが、なぜあの資料は一般に公開することができないのか、それについて御説明を、大臣でも結構です。

北原政府参考人 笹木先生に御答弁申し上げます。

 本件につきまして、集中審議でも御指摘をいただきました。繰り返しになりますが、今回の約三百名に対しますヒアリング調査、これは聴取内容そのものを外部に公にはしないといったことを前提に、被聴取者の任意の協力を得て行ったものでございます。そして、私どもが取りまとめましたヒアリングの資料、これは特定個人の意見だとか行為だとかあるいは信条など、特定の個人を識別できる記載ですとか、あるいは、公にすることによりまして、被聴取者本人に不利益を及ぼすおそれがある記載などが含まれているところでございます。ヒアリング資料が仮に公になった場合には、被聴取者との信頼関係が破壊されまして、今後任意に提供される情報が限定され、公正、公平かつ客観的な調査に支障を及ぼす可能性が著しいため、提出を差し控えさせていただいたものでございます。

 私どもは、そうした基本的な考え方の中で、国会での御審議にぎりぎり応じなければいけないということで、先般、可能な限りの御説明等に努めたところでございます。

笹木委員 今の御説明とあわせて、あの前後にもよく答弁で言われたので、被疑者が特定される、そうすると、被疑者じゃないですね、ヒアリングをした相手の方が特定される、固有名詞とかが特定されたりすると、その方の権利とか権益を侵す可能性があるということも言われました。そうしたもの、その固有名詞を塗りつぶした形、被疑者が特定できない形、その部分だけ黒塗りした形でもだめなのかということでも、だめだというお答えでした。

 今施設庁長官にお答えいただきましたが、大臣、この公開しない理由、今言ったような理由で大体尽きているんでしょうか。

久間国務大臣 私は、今施設庁長官が答弁したのがその原因だと思います。

 いずれにしましても、私の前任者を含めまして今までの人たちが、公表しないから、人には言わないからあなたの感想でもいいから言ってくれというようなことで約束したことを後の人が約束を破るというのが、私は一番やはり政治的な信頼を欠くと思っておるわけです。だから、そういう約束したことについては、私はどんなことがあっても約束を守るという立場でありますから、私が、例えば、した方が格好いいからということで、そういうことは絶対するつもりはありません。

 だから、一回約束したことはやはり守るべきだというように思っておりますから、前の長官時代にこういうようなあれをつくって、公表しないからとにかく言ってくれというようなことで言った、そういうようなことについて、私は守るべきだと思っております。

笹木委員 今大臣からお答えいただきました。

 そのことについてはさらにお聞きをしたいと思いますが、その前に、固有名詞等がつぶされている状態でもなぜ公開しないのかというときに、あわせてこちらからお伺いしたのは、公務員の職に関する情報だ、だから非開示にするのはおかしいじゃないかということも何度かやりとりをさせていただきました。これについてはどういうふうにお考えになりますか。これは施設庁長官か事務方の方で結構です。

北原政府参考人 笹木先生に御答弁申し上げます。

 本件につきましても御指摘をいただいたところでございますが、行政機関の保有いたします情報の公開に関する法律、いわゆる情報公開法第五条の第一号本文におきまして、個人に関する情報で不開示情報となるものの要件を定めておりますが、同号のただし書きハにおいては、当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分は不開示情報から除かれる旨規定されているところでございます。

 本件の調査においてでございますが、被聴取者が公務員であり、聴取内容に被聴取者の職務に関連する場合があるとしても、被聴取者が聴取を受けることは当該被聴取者が職員として分任された職務の遂行に係るものとは認められず、これを取りまとめた具体的な聴取内容の記録は情報公開法第五条第一号ただし書きハに該当しないと考えているところでございます。

 なお、情報公開・個人情報保護審査会におきます過去の答申といたしまして、いわゆる行政処分ですが、処分に先立って行われた事情聴取の記録に関しまして、諮問庁の職員が、みずからの非違行為あるいは同僚の職員の非違行為に関連して事情聴取を受けるとき、当該聴取内容が被聴取者の職務に関連する場合があるとしても、被聴取者が事情聴取を受けることは、当該被聴取者が諮問庁の職員として分任された職務の遂行に係るものとは認められず、情報公開法五条一号ただし書きハには該当しないとされた例などがあると承知をいたしております。

笹木委員 今の答弁については、大臣にも確認をしたいわけです。

 これは、もちろん任意でヒアリングに応じたということでありますが、その聞いているヒアリングの内容が、逮捕者も出た、そして、構造的な何十年も続いてきた施設庁の中の談合にかかわる、国民の税金にとっても非常に大きな無駄につながったような、そういう甚だ社会的な影響が大きい、そのことについて、しかもそれは職務の遂行の上で起こった事件だ、それぞれがどういうふうにその事件にかかわったかということを調べたヒアリングの内容だ。それにおいても、公務員の職務遂行に関する情報だ、だから非開示とすることはできないと私は思いますが、大臣はそうお思いになりませんか。

久間国務大臣 法律上は、今北原長官が答弁したとおりだろうと思います。

 それと、先生の方のおっしゃる、それにもかかわらず、法律上はそうかもしれないが、非常に重要なことだから開示してもいいんじゃないかという思いがあられるわけですけれども、そこにつきましては、私は、今度の調査そのものが、いろいろなことを推測していく参考にはなるけれども、前提として、言っていることが正しいというふうに果たして言い切れるかどうかという問題はやはり残っていると思います。ヒアリングの内容が、自分の推測で言っている点がございますから。

 そうしたときに、それを開示するということが果たして妥当かどうか、その問題もありますし、その前提として、あなたが感づいたことでもいいから言ってくれというようなことで言って、言った内容を検事や公取みたいに検証するというようなことは、こちらとしては捜査能力がないからできていないわけでありますから、そういう意味で、それが事実かどうかの究明もしていないわけでございますので、それがあたかもそうであるかのようにとられて、開示してしまったときに、他に迷惑をかけたときにだれが責任をとるのかとなりますと、それは開示者になりますから、開示しないという形でそういう調査をやったというような今までの流れを見ますと、私の立場として、何でもいいから開示してしまえというような無責任なことはできないということをぜひ御理解していただきたいと思うわけであります。

笹木委員 先ほどから、大臣も施設庁の長官も、開示をしないと約束したから、それを開示することは、要は相手との信頼関係の面から問題があるということを盛んにおっしゃっています。

 では、開示をしないという約束をした内容、これは何か証明するものはありますか。こちらは、例えば、その内容については社会的な影響が非常に大きい、逮捕者も出た、こうしたことについての参考にするためには、いろいろな開示の仕方があると思いますが、審議のために必要だということで、固有名詞とかそういうようなものは黒塗りにしていてもいいと。しかし、黒塗りの部分が今の現実にはほとんど、その事案がどうかということを調べることに参考になることについてはほとんど黒塗りになっている、これが現実です。

 ですから、固有名詞とかそういうものを特定するものは外してもいい、審議のために、例えばちゃんとそれを閲覧できるようにすべきだということを何度も主張したわけですが、そういうこともできないというときの理屈が、不開示を約束したからというふうにおっしゃるわけですが、不開示するといったその内容について、どうした約束の内容だったか、それを証明するものは何か残っていますか。

北原政府参考人 三人の私どもの職員等が逮捕されたのは一月三十日でございました。直ちに防衛庁長官の統括のもとに私を長とする調査委員会が立ち上がりました、一月三十一日でございます。そこで、OBを含めて関係者に聴取をしていこう、そして全力でやっていくという話をしました。

 したがいまして、そうした中で、我々としては、強制的な権限があるわけじゃございませんので、あくまでも、事実、行政府に与えられた、防衛施設庁に与えられた最後の自浄能力として、なぜこういうことが起こったのかを調べるためには、どうしても職員とOBの聴取が必要だと考えました。先ほど、繰り返しになりますが、権限がございません。そうした中で、私ども、インタビューをするに当たりましては、今申し上げたような、これの目的というのはあくまでも事実関係を調べるためで、外に出す、公にするとかそういったものではないということを口頭で一人一人に伝えています。

笹木委員 約束をしたから出せないという、この理屈もまた納得できるかどうかは別問題ですが、そういうふうにおっしゃるなら、少なくとも、どういう約束をしたかというのをしっかりと文書で示してもらわないと納得ができません。

 というのは、あの黒塗りの内容を見て、例えばどういう構造があったか、その内容にかかわると思うようなもの、言ってみれば肝心な情報だと思うものがほとんど黒く塗りつぶされている。これでは全く判断できないんですね。結局、これは恣意的に黒塗りしているんじゃないかというふうに、ざっと見た印象は、見たものほとんど、我々みんなが思ったわけです。

 ですから、どういう内容の約束をしたか、それに従ってこういうふうに黒塗りをしているというのがわかるんならいいんですが、何でもかんでも恣意的に黒塗りをしているという疑いがどうしても晴れないわけですね。ぜひ、どういう約束の内容だったか、そして、それに対応する形でどういう黒塗りをしたか、それをはっきりと文書で示していただきたいと思います。

 というのは、さっきからお話しするように、今のエアコンの問題もありますが、過去の防衛庁、そして施設庁、構造的に続いていて、隠ぺいして、隠して、そしてまた続いてきた。今度、解体をして組織がえもするというふうにおっしゃるわけですが、それで本当にこういった隠ぺい体質が改まるのか、そこが一番心配なわけです。もちろん、監察官制度、外部から人材を登用、そういうことも必要だと思いますが、一方で、情報公開。先ほど、法的には公務員の職務遂行に係るものじゃないとお話しになりましたが、これも、何人かの法律の専門家とお話をしても、その内容の与える社会的な影響が非常に大きい場合、それについてはいろいろな解釈があるわけです。

 ぜひ、最低限、どういう内容の約束だったか、そして、それに従ってどういうものが黒塗りにされているのか、その原則を文書で示していただきたいと思います。

久間国務大臣 実は、それ以前に、開示しません、こういう話についてはとにかく公表しませんという約束でやったものですから、本来だったら、黒塗りで塗って出すことすら倫理的には私は非常に難しい問題だと思うんですよ。しかしながら、あのときの議論の中で、どうしてもそこは、黒塗りでもいいからということで理事会で認められたからでありまして、黒塗りで出すことについても、約束した手前からいったら、それすら本来は、政治家としては守るべき道義じゃないかなという気がするんです。そういうようなことを言って、本来なら言うべきでなかったのかもしれませんけれども、言ってからそういうふうに出してしまえば、言うこと自体は、私はそこに非常に道義上の問題が残されている。

 というのは、聴取を受けた方は、黒塗りででも出されたということは、何らか私の言ったことが開示されているんじゃないか、感づかれるんじゃないかという不安がずっと残ると思うんです。私は、そういうことについてすら、本来は、やはり約束した以上はそういう心配を与えちゃいけないということを非常に気にします。だから、こういうふうなことになりますと、これから先、聴取には応じてくれない可能性がやはり出てくるんじゃないか。

 だから、そういう意味では、本当にこういう問題については微妙な問題ですから、先生が私の立場におられたら、私と同じような気持ちになられたかもしれません。これから先のことを考えますと、開示そのものをしないと言った以上は開示をしない、ほかの方法で何かを切り開いていくべきではないかなという思いがいたしております。

笹木委員 今お話しの中にありました、黒塗りでもいいから閲覧をさせろという、我々が言ったのは、固有名詞とか本人を特定するような部分は黒塗りでいいから、それで閲覧をということでお話をさせていただきました。

 実際に見たら、それは固有名詞とかそういうものにかかわるものだけじゃなくて、要は、過去こういう事件があった、こういうような経緯があったということについての肝心な情報までもほとんど黒塗りにしているわけですね、ここに今現物がありませんから、こういう話しかできませんが。だから、それが問題だとお話をしているわけです。

 大臣のお気持ちはわかりましたが、その相手との、一般に外には出しませんという約束が一体どういう形で相手の了解で、どういうふうに理解されているのか、それも、おっしゃるとおりのことを我々うのみにするしかないわけですね、今の現状では。ですから、例えば、どういう内容の約束だったか、それをちゃんと文書で出してください。それに対応してどういう黒塗りの原則でやっているかをちゃんと出してくださいというお話を今したわけです。ぜひ、このことを理事会で協議していただきたいと思います、委員長に。

木村委員長 先般の、委員おっしゃる黒塗りということですが、あの時点で、私、委員長としては、与野党の理事を通じて、それぞれあの時点では納得した上でのあそこに至っているというふうに考えておりますので、今、理事会でどうこうということではないような気がするんですが。(発言する者あり)

笹木委員 いや、何か今横から発言された方がおられますが、そのやりとりは幾らでもお話ししますが、黒塗りの部分が多いからもっとこれを少なくしろという話もその中でも何度もお話ししました。それと、あの閲覧も終わったわけじゃありません。これは、今発言されている方との間でも、これでは不十分だからまだ終わったわけじゃないという話を何度も何度もさせていただいて、あれで二回やって、終了していないわけです。ですから、ちゃんと理事会で、あわせて協議をしてくださいとお話をしているわけです。

木村委員長 後ほど理事会でちょっと協議しましょう。

笹木委員 では、この件はまた、理事会を経て、その後、追ってやるとしまして、まだこの集中審議が残されておりますので、さらにやりたいと思っています。

 二点目、基地に対する交付金についての審議がきょうの午後から始まりますが、前回、外務委員会でも、外務大臣に対して、過去のいろいろな大臣の答弁等とか、審議に入るまでに確認をさせていただきました。きょうは、また同じように確認をさせていただきたいと思います。外務委員会では麻生大臣にお聞きした内容ですが、久間大臣にも同じようなことをお聞きしたいと思います。

 きょう午後から入りますが、その前段として、今まで何度も委員会とかでも答弁をされていますが、ここでもう一度再確認をさせていただきたいんですが、米軍再編で、米軍の再編に係る費用、特にグアムに対する費用をどうして日本が負担しないといけないのか、その理由について確認をさせていただきたいんです。

久間国務大臣 米軍再編というものは、米軍の方でも世界的ないろいろな再編の計画がある。その話の中で、日本におる海兵隊をグアムに移転してもいいんじゃないかという気持ちが向こうにもある。これは、こちらにとっては、沖縄の海兵隊を減らすというような前からの熱意が沖縄にありましたから、願ってもないチャンスである。それならば、うちの方も米軍にきちんと言おうじゃないかということで、それを日本から申し入れをしたわけであります。だから、八千人移ってくれることになりましたので、これならということになりまして、それならその経費については我が国として応分の負担をしようということになったわけであります。

笹木委員 お話を簡単にまとめると、沖縄の基地から海兵隊が移転をする、それはこちらにとっては負担が減ることだ、それをこちらから提案して、お願いして、それが実現した、そういうことで、向こうに移転する分については負担をするんだということですね。

 そうであれば、当然、それ以外のことには負担をしないということ、これも間違いがありませんね。具体的に言いますと、八千人の海兵隊と九千人の家族、その移転に係る費用、例えば住宅ですとかあるいはインフラの一部、そうしたもの、家族も含めた一万七千人の移転分について日本はあくまでも負担をするんだということですね。

久間国務大臣 我々としては、そのうちの三千五百戸分を、海兵隊の隊員が沖縄から向こうに移っていくということで負担をするということであります。

笹木委員 ですから、それ以外のことには負担はしないということですよね。

 具体的に言いますと、グアムでは今インフラが一般的に非常に古くなっている。道路も港もあるいは電力とかも非常に質が悪い、いろいろなことが言われます。あるいは家族住宅についても、例えば沖縄から移転する分以外の、もともとグアムにいる六千五百人ですかの兵隊とその家族、あるいは、さらに約一万人ぐらいですか、沖縄から行く分でもない、もともとグアムにいる分でもない、さらに一万人ぐらい、新たに多くの兵隊と家族が住むことになるようですが、少なくとも、そうしたもともとグアムにいる兵隊と家族、あるいは日本からじゃない、他の国から移転するその兵隊と家族の分についての負担などは決してない、これは確認させていただいていいですよね。

久間国務大臣 インフラの整備等においては、分離はなかなか難しい点がありますが、うちの方は、少なくとも日本側が出した分は将来ちゃんと回収してもらう。インフラならインフラを整備して、水道料金だ電気料金だ、そういうので全部返してもらうということで考えております。

 だから、ほかの分については、アメリカがまたそれは出すかもしれませんし、どういうふうになりますか、その辺はこれから先のスキームの中で詰めていくときに議論しようと思いますけれども、とにかく、海兵隊が移転していく分、これについてうちの方は応分の負担をする、あるいは融資をする、そういう考えであります。

笹木委員 そうしますと、本来こちらが約束というか分担すべき分だけに使うということをどういうふうにチェックされていきますか。国際協力銀行を通して出資をする、融資をする分もあります、財政的な支出をする分もありますが、どういうふうにチェックをされていきますか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 チェックというお尋ねでございますけれども、まず、分担について現時点で日米の合意はありますけれども、現実に支出するに当たっては、日本政府としても精査して、日本の負担がなるべく最小限になるようには今後精査していくということになるかと思います。

 そういう中で、例えば家族住宅でございますと、SPEという特殊目的の会社を設立いたしまして、そこが住宅の建設なりすることになるわけですけれども、そこについては国際協力銀行の出資なりありますし、そういう中で、国際協力銀行が支出についてはきっちり監督するということになるかと思います。そういうことでございます。

笹木委員 国際協力銀行が支出については管理するというんですが、もともとこれは、この委員会でも法律を出しているし、防衛省自体がそれをどういうふうにチェックするおつもりがあるのか。防衛省としてはチェックをするすべがないし、つもりはないということですね。

大古政府参考人 今お願いしている法案の中では、国際協力銀行に対しても、この海兵隊のグアム移転に関連する業務につきましては、防衛省としても監督権を持つというふうに考えております。

 そういう中で、現実に、真水の部分で司令部庁舎とかをつくるということで考えておりますけれども、その点については当然防衛省の財政支出になると思われますので、ぎりぎりに精査した上で、財政負担は最小限になるように防衛省としても今後とも努力していきたい、こういうふうに思っております。

 それから、融資で行う住宅建設等につきましては、JBICに対する防衛省としてのいろいろな監督、チェックを通じまして適正な融資を行うように努めていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

笹木委員 ぜひ久間大臣にお答えいただきたいんですが、真水の分、財政支出の分についてもきちっとやりたい、国際協力銀行を通しても、国際協力銀行も精査するし、きちっとやりたいと。甚だ一般的なというか抽象的なお話なんですが、どうチェックをされますか、どうチェックをすべきだと思われますか。大臣、お答えいただきたいんです。

久間国務大臣 ちょっと答弁が食い違っているというか、かみ合っていないので、何となく聞いていて感じましたけれども、要するに、我が方としては、海兵隊の移転に伴う分について、それに必要な経費分がどれだけか、これはもちろん精査しますけれども、決まったものをそれからはみ出ないようにどうやって監督していくかという、そこだろうと思うんですよね。

 だから、それをこれから先、事業のいろいろなスキームを決めていくときに、我々としては、これは後日も聞かれるわけでありますから、会計検査院ももちろんそうでしょうし、あらゆるところから、これは違うのに転用されておるじゃないかとかいろいろなことを言われないように、どういう角度からチェックしていくのか、これからそういう協議も含めて念頭に置きながらやっていかなきゃならない、そういうように思っているわけであります。

 まず、事業主体を、SPEというんですか、それをどういう形でつくるのか、それに対する発言権を日本政府としてどれだけ持てるのか、その辺からまず決めていかなきゃなりませんし、アメリカの政府自体もそうだと思いますので、その辺も含めて、特に民活事業については、その辺で後からになって手が及ばないというようなことにならないように、それはしたいと思っております。

笹木委員 SPEを通してやる、それは先ほど事務方の方もお答えになりましたが、なるべく無駄がないようにというか、これは少しでも節約するようにということですよね、費用を無駄遣いしないようにということ。それで民活方式やSPE方式をやるとか、そういうことはわかります。

 今、それを聞いているんじゃなくて、本来使うべきところ以外に使われるのを防ぐチェックをどうするかというお話を聞いているわけで、それで、大臣が今お答えになったのは、それをちゃんとそういうチェックができるようにこれから、あるいはSPEに対してもそういうチェックが及ぶようにすべきだというお話はありましたが、それは今の時点では全く何の担保もない、何の担保もないけれども額だけは決めている、そういうことですね。

久間国務大臣 これ以上にはならないという上限を決めているのであって、額も決まっていないわけです。それから幾ら下げるかですね。これからがやはり、いわゆる積み方だと思うんです。

 アメリカでやっているSPEなんかを聞いてみますと、いろいろ積んで上がってきたとき、政府がそのSPEに一割だけは入れているというようなやり方で、政府が絶えずチェックが入れるような方法をやっているという話も、ハワイなんかでやっているものについてはやっていると聞いておりますから、今度グアムでどういうような計画でアメリカが考えてくるのか。

 アメリカも、今のハワイとかなんとかと違って、今度は真水を結構あそこは入れるわけですから、向こうだって、やはり同じ国内的にどうやってチェックするかということをやろうと思いますから、我々もそれと同じように、議論しながらこれから先煮詰めていきますし、また、事業が始まるまでに、固まってきた場合には、固まってくる前にこういう委員会等でもまたその進捗状況についてお話をさせていただきながら、とにかく抜かりのないようにしていきたい、そういうふうに思っておりますので、その辺は信用していただきたいと思うわけです。

笹木委員 しかし、これは質問主意書なんかでもやりとりをして答弁も返ってきましたが、駐留米軍の国外への移転を、もともと駐留されていた国が費用分担するという例はあるのか。全く今までないわけですよね。初めてのことですよね。移転については費用を負担していないわけですね。しかも、その法的根拠はあるのかと聞けば、分担することを明示的に禁じる法律の規定はない、こうしか言えないわけですね。全く、へ理屈に近いと思いますが。

 ですから、今回法律をつくった、今例がないことを法律でつくった、出せる枠組みをつくったということだと思いますが、つくったんだけれども、本来分担すべき目的以外のことに使われない担保ができているか、それはできていない、これからだというお話。これは甚だあいまいというか、いいかげんな話だと思います。

 あわせて、会計検査院にお聞きしたいんです。この検査、一般的に国際協力銀行とかこうしたものに対する会計検査はどういうふうにされていますか。

諸澤会計検査院当局者 御答弁申し上げます。

 お尋ねは、会計検査院の検査、特に国外での検査、あるいはJBIC、国際協力銀行に対する検査についてのお尋ねと考えますけれども、まず、会計検査院の検査全体についてのスタンスを申し上げますと、これは「国の収入支出の決算の検査を行う」また「法律に定める会計の検査を行う。」ということとされておりますので、「正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行う」こととされておりまして、国際協力銀行に対する検査も同じようなスタンスで行っているところでございます。

 国際協力銀行につきましては、国が資本金の二分の一以上を出資している法人であるということから検査を実施しているわけでございますけれども、お尋ねは、それぞれの出融資先などに関する検査ということについてでございますけれども、国際協力銀行からの出融資がどういう形で行われるか、そういうものによって私どもの検査が取り組まれているというふうになっているということでございます。

笹木委員 では、別の聞き方をしますが、今まで、国際協力銀行とかこうした外国に出資をしたり融資をしているものに対する会計検査で、これは本来の使い方から完全に逸脱をしている、おかしいというような検査の例はどのぐらいありますか。最近の例で結構ですが。

諸澤会計検査院当局者 具体的な指摘の事例として申し上げますと、国際協力銀行が政府開発援助についてかかわる、その出融資に関する検査につきましては、私ども、そのプロジェクト等の現地調査を行ってまいりまして、その出融資のプロジェクトに対する検査結果を毎年検査報告に掲記しているところでございますが、直近の例で申しますと、十七年度の決算検査報告におきまして、これは、国会からの検査要請にかかわる事項につきまして国際協力銀行との契約に基づきましてコンサルタントが実施した調査におきまして、再委託契約の精算に当たり適正を欠く事態があった、そういう指摘をした事例がございます。

笹木委員 私もいろいろ、過去の事例とか資料でいただいて見させていただきましたが、要は、うまく検査できる場合もありますが、全くできていない場合もあるんですね。全くできない場合、どういう場合なんでしょうか。

 例えば、今までの例でいうと、マレーシアなんかの例がありますね。パハン・セランゴール導水事業の最終報告書、これは全く公開されていない、相手の国においてですが。そうすると、検査のしようがないんじゃないですか。

諸澤会計検査院当局者 国際協力銀行の出融資先に対する検査権限のお話かと思います。

 一般論として申し上げますと、政府出資法人からの国内の出資先は、会計検査院法第二十三条第一項第五号に該当する場合は、会計検査院が必要と認めるときは検査をすることができることとなっておりまして、お尋ねの、国際協力銀行のさまざまな出融資に関する検査ということにつきましては、その出融資がどのような形で行われているかによるものというふうに考えているところでございます。

笹木委員 ちゃんと聞いていることにお答えいただきたいんですが。では、もう一回聞き方を変えて、要は、出資したり融資をしている、その相手の先、外国が、十分に公開もする、そしていろいろな協力もする、そうしたことがあれば検査は可能になる。しかし、それがなかなか難しければどうだ。非常に検査は不可能になる。簡単に言ってしまえばそういうことですね。

諸澤会計検査院当局者 先生御指摘のとおり、私どもの海外での出融資に関する検査につきましては、さまざまな条件はございますけれども、そのような相手国の、あるいは融資先の協力といったものが必要になっているということは、そのとおりでございます。

笹木委員 ここで大臣にお聞きをしたいわけですが、今会計検査院ともやりとりしたように、では、それが当初目的としたことにちゃんと使われているか、それ以外のことに使われていないかというのは、会計検査院でも、相手の国の資料の公開ですとか検査への十分な協力とか、これがないと全く不可能になるということなんですね。その担保は一体どこにありますか。検査が可能になるという担保はどこにありますか。相手の国が十分に検査に協力をしてくれる、資料も十分に提供してくれるという、その保証はどこにありますか。今回のグアムの場合ですが。

久間国務大臣 保証というよりも、これは、今度この事業を進めるに当たって、どういうスキームにしてどういうふうにそれをやっていくかという、そしてまた、終わった後、どういうふうに日米双方がそれの実効あるかどうかについて検証するか、そういったことも含めて、日米で、やはり信頼関係の上に立って事業をやるわけですから、その辺はきちんと決めておかなければならないと思っておりますので、それは私たちとしてもその辺を詰めていこうと思っております。

 だから、会計検査があるということはアメリカだってそれはわかっているわけでありますから、日本から公金が出た以上は会計検査がやはりあるということはわかっておるわけでありますので、その辺については私たちも、この事業を進めるに当たって、お互いに忌憚なく意見交換した上で話をしたいと思っております。

笹木委員 結局、さっきもお話ししましたが、今まで例がないようなことにお金を出す、それでこの法律を出してくる、きょうの午後から委員会でも審議をするということですが、一つは、防衛省の側でも、それを海兵隊の移転分だけに使うかどうかのチェック、これは全く今のところ具体的な手段ですとかそうしたものは何も確保されていない、約束もされていないということです。会計検査院がどうやってチェックをするのか、それについても全く今何の保証もないということです。

 こうした状態で、とりあえず金だけ出すことを決めよう、金を出す枠組みだけ決めよう、そういう法案になるということになります。これでは非常におかしいので、もっと言えば、いろいろ積算根拠ですね、こういうものについても全く、引き続き米国と協議することになっていると。我が国の分担は、本当にあれが合理的なのかどうか、それはどう判断するのか、これも、今後引き続き精査をしていきたい、こういう答弁ばかりなんですね。

 こういうことでは非常に困るので、ぜひ、この審議に午後から入る前にここで確認をしたいわけですが、海兵隊の日本からの移転、それについて財政支出、出資が使われる、そのことをしっかりとチェックできる、その材料も含めてちゃんと出す、そういうことをぜひ、今この委員会の午後からの審議の中でしっかりと担保していくようなことを具体的に考える、結論を出していく、そのことが必要だと思われますが、まず、久間大臣、そのことを御確認させていただきたい。

 もう一つは、麻生大臣にもあわせてその後でお答えいただきたいんですが、前回、外務委員会でこのことについて若干取り上げさせていただいたときに、当然、そうしたことに十分、当初の目的に予算が使われることをしっかりと果たすために、最大限そのことを努力しないといけないという答弁はいただきました。きょうの、お話をさせていただきましたような、単に、これからそういうふうにする、チェックのあり方もできるようにするとかこれから検討するという話じゃなくて、法案を具体的に採決するまでに、その具体的な保証というか担保についてしっかりこの委員会で結論を出していくことが必要だと思いますが、そのことについて御意見をそれぞれいただきたいと思います。

久間国務大臣 今度のこの法律は、JBICが出資あるいは融資をすることができる、そういう法律でありまして、金額を幾ら出資するか、財政的に幾らの無利息のそういうような融資をするかというようなことを含めて、それはやはりその都度予算を国会で計上しまして、それに基づいて出すわけであります。

 だから、この法律で出すわけではありませんで、法律はそのための仕組み、JBICが可能なようにつくっているという法律でありますから、そこのところは、今言われましたように、何年か先になりますけれども、これに基づいてきちんと計画が定まって、それの予算計上したときに、具体的に出すか出さぬかという、それも含めて国会の審議を経て出ていくわけであります。そこのところはぜひ御理解いただきたいと同時に、私たちも、それまでの間には、スキームについてはきちんとした説明を、どれだけの事業費だということも、これから先、コンサルを入れて調査して、そして精査して、向こうの物価と比べたときにグアムではどうなのか、そういうことも全部比較考量しながら、これなら合理的に国民に対しても説明ができる、予算化しても大丈夫だというような中でやっていくという、そこのところについてもひとつ御理解賜りたいと思うわけであります。

笹木委員 あと一点違うこともお聞きしたいので、時間がないので。

 それは、今、お金を出す枠組みについて決める法案をここで審議しようということで、しかしそのチェックの仕方は全くわからないことでは審議ができないですよというお話をしているわけです。またこれは、具体的な午後からの法案の審議になったらさらに深くやりたいですが、麻生大臣にも御意見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今防衛大臣の話と重なるところもあろうと思いますが、今回、この法案の審議をいただいているのは、JBICという今あります国際協力銀行の権限の話が基本なんだと存じます。できるようにする権限をつくるという話を今回させていただいておるということだと思います。

 日本の分担にかかわる話につきましては、事業を実施するという段階、これは大分先、今すぐの話ではありませんから、するに際しまして、今後とも、日本という国が主体的にどうやっていくかという具体的な事業の枠組みの話、いわゆるスキームの話やら、また積算の細部の話、これは基本設計、詳細設計、いろいろあるんだと思いますけれども、そういったところで所要の予算要求というのを行って、その都度国会で審議をさせていただくというような枠組みになるんだと理解をいたしております。

笹木委員 いや、わかりましたが、ですから、そうした目的とすること以外に使われないようなことについてしっかりと確認をとっていく、それは必要がないということですか、この法案については。

麻生国務大臣 この法案につきましては、基本的には、JBICに新しい業務をという権限の話をしておるというのが基本です。その際に当たって、チェックの話等々は、ほかのものに使われた場合は、基本的に詳細に、予算をやっていくときの、何かこれは予算が違うじゃないかということになっていくんだと思います。

笹木委員 大体、全体のお金についても、積算根拠についても一向にはっきりしない。そして、このお金を出す枠組み、JBICが使うことを決めるんだけれども、その後のチェックのことも全く何の実態もわからない。これでは法案として非常に欠陥法案と言わざるを得ないと思います。これはまた法案の審議の中で詳しく説明もしたいと思います。

 あと一点、確認をしたいことがある。弾道ミサイルの迎撃のことについて、余り時間はありませんが、確認をしたいわけです。

 パトリオット3ですよね、いろいろ計画を前倒ししてやっているということですが、前回、委員が質問していてなかなかお答えがはっきりしなかったんですが、要は、二〇一〇年度末に十六ですか、十六の高射隊においてこのパトリオット3、そして、そこから移動もできる形で展開をしていくということですが、大体、一つの配備が半径十五から二十キロメートル、その範囲だというのは、これもいろいろなことで新聞とか雑誌とかで書かれていますが、十六配備したとしても、単純に計算すれば、とても日本全国を覆える、日本全土を覆えるものでは、全くけた的に違いますよね。それだから必要がないなんということを言うわけではもちろんありませんが。

 イージス艦からの迎撃、そして、それで撃ち漏らした部分をこのパトリオット3からの迎撃、まずは今、首都圏だけを対象にといいますが、二〇一〇年度までには十六の場所でということですが、それでも日本全体の面積をカバーするにはほど遠いものである。これは間違いありませんね。

久間国務大臣 これは、イージス艦とPAC3とが両方あってカバーするわけでありますから、これだけでもって十分とはもちろん思っておりません。しかしながら、やはり計画的に配備していかなければなりませんので、とにかく前倒しでやったということであります。

笹木委員 なかなか御確認していただけないみたいですが。

 それで、いろいろ展開先を移動させたりもできる、それでなるべく広範囲に覆うのだと言いますが、しかし、それは、どこかの国が弾道ミサイルを発射する兆候があるというようなことがあってから実際に発射するまで、これが一カ月とか二カ月間の期間があればいろいろ展開先を検討することもできるでしょうが、そして、予測した場所にちゃんと、そのとおりに向こうが弾道ミサイルを着弾するということ、こちらが予測した情報と大体一致していれば、展開先によってある程度覆えるとは思いますが、一致するとは限らないわけですし、もっと言えば、一カ月、二カ月の猶予があるとも限らないわけですよ。これは間違いありませんね。

久間国務大臣 それはもう間違いありません。向こうがいきなり発射してきて十分ぐらいで到達するわけでございますから、だから非常に難しい。それだから、全部を網羅するような整備をするには二十三年までかかる、それをせめて二十二年度までに完了したい、そういうふうに思っているところであります。

笹木委員 それで、あえてここで、ちょっと時間がないのでお聞きをしておきたいのです。自衛隊法第八十二条の二第三項に規定するような、あらかじめそういうことが、今はまだそのおそれはないけれども、日本に着弾するおそれはないけれども備えをしておけというケースの場合ですが、そういうふうにあらかじめ命令をしておいて現場の指揮官の判断で迎撃をする場合ですが、仮に、いや、これはもうそういう事態に至ったんだということで、現場の指揮官が判断をして迎撃をした。パトリオット3による迎撃を具体的に指示した。しかし、それが当たらなかった、当たればもちろんいいんです、当たらなかった場合、当たった場合にはその後のことはなかなかわかりませんが、命中しなかった場合で、命中しなくてそのままミサイルが飛んできて、しかも、これが日本の国内に着弾しなかった。

 これはいろいろな場合があると思います。向こうの国が目標とした、それが目標とした場所に着弾できなかったという場合もあるでしょうし、あるいは、こちらの判断ミスで、結局、日本にはもともと着弾しなかったものを間違って迎撃してしまったという場合もあるかもしれません。そういう可能性もないわけではありませんが、そういう場合に、例えば、指揮官の責任とかそういう話はどういうような議論になりますか。

久間国務大臣 まず、ちょっとそういうようなケースは考えられないといいますか、ミサイルの場合は、とにかく、偵察衛星で、発射された、上がったということと、それがどういう速度でどういう方向に飛び出したかという情報が入ってきて、それをイージス艦でキャッチして、そしてSM3で撃つ、SM3が逃した場合にPAC3でそれを撃つ、そういう形でございます。かなりの精度が高まってきたからこそ、共同開発をして、今配備をしようというふうになったわけでございますから、今先生がおっしゃるような、そういうあやふやな程度が多ければ、もちろん一〇〇%とは言いませんけれども、かなりの精度になってきたから配備しようとしておるわけでございますので、その辺についてはそんなにアバウトじゃないと。余りそれを言いますと国民に大変心配をかけますけれども、精度がかなり高まってきたからこそ、米国もそうですし、我が国としてもこれを本土防衛のために配備しようとしておる、そこのところについてはひとつ御理解賜りたいと思うわけであります。

笹木委員 それは、イージス艦からの迎撃についても、パトリオット3の迎撃についても、命中度か、あるいはその確度について、本部発表は非常にいいというふうに言っていますが、これもいろいろな議論があるわけですし、いろいろな可能性があると思います。もう時間がなくなったので終わりますが、そうしたことについてはまた別の機会にさらにお聞きをしたいと思っています。

 質問を終わります。

木村委員長 次に、神風英男君。

神風委員 おはようございます。民主党の神風英男でございます。

 本日は、一般質疑ということで、最近よく耳にするようになりましたインテリジェンスに関連しての質問をしたいと思うわけでございます。

 まず、両大臣に、もう今さら伺うまでもないわけでありますけれども、インテリジェンスとはいかなるものであるのかという御認識を踏まえて、また、現在の日本のインテリジェンスの体制、まだまだ不十分であるという御認識なのか、あるいは相当程度充足をしているという認識をお持ちなのか、その点をまずお伺いしたいと思います。

久間国務大臣 インテリジェンスの話になったら、私たちよりも神風先生の方がかえって詳しいのかもしれませんが、一言でインテリジェンスと言いますけれども、情報の中でも知的に加工されて集約された情報、それをインテリジェンスと言っていると思いますし、私たち、防衛関係でインテリジェンスと言うときには、それが国の安全の問題にかかわるような知的に加工されて集約されたそういう情報、これをインテリジェンスと言っているのかなと思いながら対応しております。

 なお、現状については、情報本部が発足いたしまして、防衛大臣の直轄のもとで動き始めましたけれども、まだまだ、動き始めたわけでございまして、そういう意味では、各国、アメリカあるいはイギリス、ロシア、イスラエル、そういったところのインテリジェンスと比べますと、まだ修練を積んでいないといいますか、そういう面も御指摘されるかもしれません。あるいはまた、それに対する、今度はインテリジェンスの評価といいますか、それについて、あるいはまた集めた予算の使い方、そういったことについても十分かどうかと言われますと、これも一概に言えませんけれども、まだまだ道半ばじゃないかなという思いもいたしております。

麻生国務大臣 かかって情報収集能力プラス分析能力、両方ないとインテリジェンスとはなかなか言いがたいので、集めればいいというものだけではないのでして、それをきちんと系統立てて分析し、かつその上に、それに基づいてどうするというのにつなげていかぬと意味がないと思っております。その意味では、いろいろ情報収集というものに関しては、昔に比べて随分ふえてきたような気がいたしますけれども、それを総合的に分析する、かつ、それをどうやって戦略に役立てるというところにはなかなか行き着いていないような感じがいたします。

 久間大臣からもお話がありましたように、基本として、そういったようなことに今まで余り配慮をしなくてもよかったような国際環境だったと思いますが、最近、そのようなわけにはいかなくなってきているというような状況にありますので、ここらのところに関しましては、より一層の訓練、またある程度そういったものに対する知識といったようなものに関しましては、一部の方はそういったものに極めて詳しい方もいらっしゃいますけれども、総じてこの国は、この種の諜報とかいうことに関してはこれまでも余り高い評価を与えてこなかったという長い歴史がありますので、そういった意味からいきますと、今後、力を入れておかなければならない部分だ、私はそのように理解しております。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

神風委員 体制としてはまだこれからであるということであるのかなと思います。

 先月の二月二十一日のイラク支援特別委員会でも伺ったことでありますが、例の防衛省の情報本部の一等空佐が読売新聞記者に秘密情報を漏らしたとされる事件、その際伺ったときには、現在捜査中であるからということで、大半コメントできずという回答であったわけですが、その後、どこまでその事実が解明をされたのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

久間国務大臣 これはまだ今も捜査中でございますから、つまびらかにできないわけでございますが、中国の潜水艦の記事をめぐっての問題が漏えいの問題である、そういう認識はいたしております。

 しかしながら、やはり捜査中でございますから、それでは、そのどこの部分が秘密漏えいで罪になるのかならないのか、そのようなことについてはこれから先の捜査を待たなければいけないと思っておりますので、この場で詳しく申し上げることはできないと思っております。

神風委員 捜査終了の見通しはいつごろになるというのは、幾らかわかっているんでしょうか。

久間国務大臣 こういう事案につきましては、防衛省の警務隊だけではないわけでありますから、それから先のことも視野に入れながらやるわけでありますから、今ここで、いつまでにこの問題については決着をつけるというような、そういうことを言えるような状況にはございません。

神風委員 捜査が完了した段階で、この事案についての全容というのをある程度明らかにしていただけるのでしょうか。

久間国務大臣 明らかにできる場合もございますし、また、その内容等を公表することによって、今度はまた防衛省全体が秘密漏えいに当たる場合もございますから、それは今の段階では何とも言えないわけであります。

神風委員 これは、「防衛省における不開示情報の基準について」。情報公開法において、「行政機関の保有する情報は原則開示の考え方を採用する」となっております。「開示することの利益と開示しないことの利益を比較衡量」しながら、それは比較検討するということにはなっているわけでありますが、ただ、不開示情報の場合には、「法に定める事項に厳正に該当するものに限られる。」とされているわけでありますが、この事案の場合、これはどの事項に該当するということになるんでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 これにつきましては、五条の中の不開示事項の中に、捜査関係の事項、四号でございましたか、これがございます。第五条四号のところに、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」場合、情報公開法上の形はこういうようになっております。

神風委員 第五条の第四号の四でよろしいんですか。確認です。

西川政府参考人 はい、四号でございます。

神風委員 わかりました。

 この事案の場合、よく報道にあるのが、国民の知る権利に照らして余り機密とは言えないのではないかという意見も多い。新聞報道なんかを拝見しておりますと、そういう意見も多いわけでございます。

 例えばイギリスでは、国家秘密法が設置を定めた委員会が、報道機関を交えて、何が機密情報に当たるのかを決めることになっていると聞くわけでありますが、こういった対応というのは今後考えられないんでしょうか、検討に値しないんでしょうか。

久間国務大臣 我が国の法律ではそういうふうになっておりませんで、そういう情報を他の機関と相談するというふうな、そういうことにはなっておりません。

神風委員 これは防衛秘密に指定をされている事案であろうかと思うんですが、例えばアメリカの場合、国家安全保障情報の秘密指定について、クリントン政権になってから、二十五年以上を経過した情報については自動的な秘密指定の解除を規定している。それ以前は三十年であったのが、クリントン政権になってから二十五年に短縮をされたということのようであります。

 日本のこのような防衛秘密であるとか、あるいは特別防衛秘密というものがあろうかと思いますが、この点、日本の場合にはどういうふうになっているんですか。

久間国務大臣 これは、自衛隊法の別表第四に掲げる事項ということで、かなり狭められて、その中から防衛大臣が特に指定するということになっておりますから、結構絞られた中で、法的な覊束性といいますかそういうのがあって、その中で防衛大臣が指定するということにしておるわけでございます。

神風委員 いや、そうではなくて、例えば、防衛秘密であるとかあるいは特別防衛秘密に大臣が指定をされた場合に、それはもう永久に秘密指定の解除というのはないんでしょうか。つまり、アメリカのように、二十五年たったならば自動的にそれが解除をされて公開をされるとか、そういう制度になっていないのかどうか、その点をちょっと確認したいと思います。

大古政府参考人 防衛庁におけます秘密の指定については、秘密を指定されたときに期間を定めているわけではございません。ただし、時間の経過により秘密を指定する必要がなくなった場合には、解除の手続をとるということになります。

 ただ、その際に直ちに公開するというような制度としてはございませんで、秘密が解除されれば、情報公開の請求がある場合には必要に応じて公表するというようなことになるかと思います。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

神風委員 そうしますと、今の、秘密指定の解除を判断されるのも、それは防衛大臣が判断をされるということになるんですか。

大古政府参考人 防衛庁の秘密のうち、防衛秘密については、防衛大臣が指定し、解除いたします。ただ、他方、それぞれの組織で決めている秘につきましては、その秘密を指定した者が解除するということになります。

神風委員 これは、通常何年程度になるんでしょうか。やはり二十五年とか三十年という期間になるんでしょうか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと突然のお尋ねなので、そういう統計についてございませんので、一概に秘が何年ということについては、具体的データを持ち合わせておりません。

神風委員 ちょっと後でその点を教えていただきたいなと思います。

 ちょっと毛色の変わった質問をしたいと思うんですが、これは週刊ポストの昨年の十月二十日号に載っていた記事でありまして、非常におもしろいなと思って読んでいたんですが、タイトルというか、表題が「角栄を驚愕させた「味噌汁恫喝」」という形で載っておりました。

 ちょっとこの文章を読ませていただきますと、「七二年九月、故・田中角栄元首相が訪中した際のエピソードだ。北京市内の釣魚台国賓館に宿泊した田中氏は、深夜、打ち合わせの最中に空腹を覚え、メニューにあった「おにぎりと味噌汁」をルームサービスで頼んだ。その味噌汁に、田中氏は驚いてこう呟いた。 「これは、うちの味噌だ」 味噌汁には、国内でも珍しい、田中氏が生まれ育った新潟県柏崎市特産の赤味噌が使われていた。さらに翌朝、朝食として出てきたのは、木村屋のアンパンだった。田中氏は毎朝、木村屋のアンパンを食べる習慣があったのだ。」「田中氏のこの嗜好は、一部の秘書と家族しか知らないことだった。田中氏は、「こんなことまで調べているのか」と、中国の情報収集能力の高さに震え上がった」という記事が書かれておりまして、私も非常に驚いたわけでありますが、これは事実であるんでしょうか。

松島大臣政務官 非常におもしろい質問であったものですから、外務省でもいろいろと調べてみました。

 外務省の記録としては残っておりません。なおかつ、当時この総理訪中を仕切っていました外務省の中国課長にけさ方電話で聞きましたところ、そういう食べ物に関して中国が非常に情報収集能力があるといって、総理や自分たちが話題にしたことは全くなかったということでございます。

 ちょっと、真夜中の夜食の件とは違うんですが、日本経済新聞の一九七二年九月二十七日の朝刊によりますと、田中首相はこの日、朝食は日本から持参した梅干しとノリを添え、みそ汁は新潟県柏崎、確かに出てきます、新潟県柏崎のみそを使用、これは、随員もこれと同じものを食べたけれども、何しろ総理は辛いものが好きなものですから、それに合わせた調理だけあって随員の面々は、きょうのみそ汁はしょっぱかったなあと嘆くことしきりというのは確かに残っております。

 それで、これが中国の高度な情報収集処理能力によるものなのか、あるいは、この記述ですと、みそはこっちから持っていったのかどうかが不明なのと、なお、一般的には、こういう偉い人が行かれるときには、好物がどういうものかと事前に聞かれてお知らせすることがよくあるので、そういう意味で中国が知ったのか、本当に極秘の情報を仕入れたのかは、ちょっと今のところまだ定かではございません。

 以上です。

神風委員 ありがとうございました。

 これが本当に中国の情報収集能力の一端であるのかどうかは別にしまして、そういった情報の面に関して相当な収集能力がある国がやはり中国であるのかなという思いもするわけでありまして、そういう視点に立ってちょっと一つ伺いたいなと思うわけでございます。

 最近、地図の製作業務、作成業務というのを海外へアウトソーシングしている話というのをよく伺うわけでありますが、これについて実態がどうなっているのか、教えていただけますでしょうか。

藤本政府参考人 お答えさせていただきます。

 ストレートに先生のお話にお答えできるかどうかわかりませんが、地理院が行っておりますいろいろな測量、我々は基本測量と言っておりますけれども、そういう発注を請け負うことのできる者につきましては、測量法に基づいて測量業者として登録をされていること、そしてなおかつ、事前に国土地理院の審査を受けまして、国土地理院の有資格業者名簿に登録されている者が測量を請け負うことができる、こういうことになっております。

 一点目の、測量法に基づいた登録でございますけれども、その登録に際しましては、国内に営業所を、本店または支店ということになるわけですけれども、有することを求めておりますけれども、海外に本店を持つ外国籍の業者、こういうものを排除はしておりません。したがって、当然対象の中に入ってくる可能性はある、こういうことでございます。

 それから二点目の、地理院の有資格業者名簿の登録でございますけれども、その登録に際しましては、これも外国籍の会社だということを理由にそれを排除はしておりませんけれども、その当該業者が外国籍であるかどうかについては、そういう情報につきましては一応参考までに申請の中に書いていただくようにはしております。

 そこで、平成十七、十八、先生の御指摘をいただきましたので、ちょっと調べさせていただきました。十七、十八年度において地理院に登録されました業者、約千五百ほどございますけれども、その中には外国籍の会社は入っておりません。したがって、元請としての受注はしていない、こういうことになります。

 あと、下請についてどうかということでございますけれども、請け負った者が測量の一部を下請に出すという場合には、契約上、簡易なものを除きまして、いわゆる発注者であります国土地理院の承認を得ることになっております。

 では、その承認はどうなっているかということでございますが、十八年度の分を調べさせていただきましたが、三件、下請承認が出てきております。そのときの下請会社、三件についての下請を調べましたら、日本国籍の会社、三件ともそうでございました。

 なお、簡易なものにつきましては、その辺は承認が上がってまいりませんので、その分は、コピーをするだとか製本をするだとか、そういうものについては簡易なものとして承認は不要というふうになっております。

 実態は、以上ということでございます。

神風委員 これは私もちょっと調べてみたんですが、例えば住宅地図の大手企業であるゼンリンなんかは、これは九七年から地図データベースの製作業務を中国の子会社二社にアウトソーシングしているという事例がありました。あるいは昭文社、道路地図をつくっている会社でありますけれども、ここら辺は、七八年から一時期、韓国の子会社に地図製作業務の一部を委託していたと。ただ、現在は既にこれは撤退をしているということであったわけであります。

 実は、やはり国や自治体から地図を請け負っている、航空写真を撮って、それを地図に落とすわけですが、そういった仕事をしているある会社の社長さんから、非常に興味深いお話を伺いました。その社長さんのお話によりますと、結局、航空測量会社といえば大体大手四社あると。パスコ、国際航業、アジア航測、朝日航洋ですか、ここら辺があるけれども、現在、こういった会社では、社内では営業活動だけで、実際にそこでは地図はもう作成はしていない、地図の作成というのは大体もうその子会社に出している、さらにこの子会社から海外へ下請に出されているのが多いと。恐らく、その社長さんの言うには、六割から七割程度が既にもう海外の下請に出されているんではないかというようなお話でありまして、その海外というのは中国が多くて、あるいは、その中でも国防関係の人間がそういった地図作成に携わっているらしい、あるいは、ほかにはタイであるとかフィリピンなんかにも出しているようだと。

 こうした傾向というのは五、六年前から始まっており、競争が激しくなっていて、結構、安値受注のために人件費の安いところへ流れている結果らしいということなんですが、その背景として、九三年から二〇〇二年にかけて、こうした航空測量会社が、航空測量業務の入札談合事件で公正取引委員会から独禁法違反で排除勧告を受けていたわけでありまして、その結果、適正価格よりもかなり安い額で落札をしてということで、海外の下請がこういう結果でふえているということであったわけですが、こうした実態はそのとおりであると思われるかどうか、どの程度把握をされているのか、ちょっと見識を伺いたいと思います。

藤本政府参考人 お答えさせていただきます。

 地理院から直接、地図の作成というのは、地理院がやっておりますのはかなり基本的なものを作成させていただいております。御承知かと思いますけれども、昔は五万分の一の地図、あるいは二万五千分の一の地図、これは全国。例えば二万五千図だと全国四千三百ぐらいの地図で全体を覆うようになっております。それから都市部については一万分の一の地図。この辺までを我々が基本測量という名前で地図を作成しておるわけでございます。

 そのつくりました地図をもとに、民間の方は、いわゆる使用承認と我々言っていますけれども、それを使いましていろいろな地図をおつくりになっているということでございまして、その民間の方がおつくりになる際にどういう形でおつくりになっているのか、当然、直接飛行機会社の飛行機を飛ばしてつくる場合もありますし、うちの地図を使いまして、それに付加価値を与えてやる場合もあります。それをどういうつくり方をされているかは我々は承知はしておりません。

 ただ、先ほど言いましたように、私どもがつくっております地図につきましては、下請についてはそういう形で厳しく承認をとるというふうにしております。ただ、先生おっしゃいましたように、いわゆる低入札も特にここ二、三年ふえてきておったりしまして、品質の確保についてはいろいろ我々も危惧をしておりますので、そういう意味で、監督をきっちりやるというふうなことはさせていただいております。

 以上でございます。

神風委員 ちょっとその話を聞きながら大変気になったというか、その社長さん自身がやはり危惧をされていたのが、一つは、海外の場合は地図イコール国防というイメージが非常に強い。そういう観点からすると、その社長さん御自身が言われたことが、韓国の人から、なぜ日本はこんなに地図を海外に出すんだと。韓国でどうなっているのかはちょっと私もはっきりは知りませんが、韓国では海外へ地図を出すのは禁止だと言われて、その社長さん御自身が非常にはっとしたということを、危惧されながら話しておられました。

 地図といっても、普通の住宅地図や道路地図ではなくて、それだけではなくて、例えば上水道、下水道、電気、配線とか、ガス管であるとか、そういった地図も相当ある、中には原発に関連するような、そういった地図も海外に出されているケースもあると。つまり、テロということを考えれば、これは相当危険なことにつながっているんではないかなと。例えば、今私の選挙区は朝霞でありますけれども、朝霞にも東京都の朝霞浄水場があるわけでありまして、十月のあの核実験の後には県警が随分その浄水場の警備に当たったという話を伺っておりますけれども、仮にその浄水場の、上下水道の地図がテロのそういった手に渡っていれば、簡単にそれはテロ行為をすることができるということにつながるわけでありまして、そこら辺、一度これはきちんと調査して検討をいただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

久間国務大臣 通常の地図はもう既に市販されておりますし、あるいはまたインターネット等でもかなりのぞけるわけでありますから、我々はそれを超えるような詳細地図をつくる場合には特別の配慮をしますけれども、普通は国土地理院の地図あるいはまた海上保安庁の海図等、そういうのを使わせてもらっておりまして、それについてはもう今先生のおっしゃるような形で、海外に見られるのをとめると言ってもそれは無理な話でございますので、恐らくこれについてはもうみんなが熟知しているんじゃないかなと思っております。

 ただ、中にどういう配管をしているかとなりますと、これはまた別の話でございますから、そこまでは、今のところは地図を作成されて出回っているということはちょっと考えられませんので、これはそれぞれの自分の企業の秘密として、水道管はどういう布設の状況かは水道局が持っているでしょうし、下水道は下水道で持っているし、NTTは電話回線はどうだというのは持っておりますけれども、それは第三者がそう簡単にはのぞけないようなものじゃないかなと思っております。

 うちも、そういうようなこととか、演習をする場合の地理隊がつくる地図というのは、これは独自でそういうような国土地理院の地図をもとにつくって演習をやるというようなことはやっておりますが、それは外に出ていくものではございません。

神風委員 これは現状では、こういった地図の作成について、例えば海外へそういった形で下請に出されることについての規制みたいなものは何もないんでしょうか。

藤本政府参考人 私どものつくっている地図につきましては先ほど言いましたとおりでございまして、下請についてはそういうルールをしいておるということでございますので、海外の企業がやってはいけないということにはルール上はなっていない、実態上は余りないというふうには思っておりますけれども。一方、民間会社がやる場合、これについては、特段の規制については私もちょっと、よく承知はしておりません。

 ただ、ちょっともとに戻りますが、先ほど先生がおっしゃいましたが、中国におきましては地図は持ち出しは禁止されているというふうに伺っておりますし、韓国につきましては今は許可制だというふうに伺っております。ただ、東南アジア系ではそういうところは結構ございますけれども、欧米では比較的そういうものは少ないというふうに聞いてはおります。

神風委員 今、中国は持ち出し禁止というお話がありましたが、ことしの三月一日からは中国の方では、外国の組織または個人による中国での測量製図管理暫定弁法というものが施行されて、いわば外国の団体、個人が許可なく測量を行うことは禁止されたということのようであります。先ほどの中国の情報収集能力にかんがみても、多少なりとも留意すべきことではないかなと思いますので、この点も、ぜひ今後御検討いただきたいなと思います。

 次に、日本の情報機関について伺いたいと思うんですが、日本の中で情報機関と呼べる存在というのはあるんでしょうか。

伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。

 情報機関の定義にもよりますけれども、私どもは、通常、日本の情報関係機関ということで考えます場合には、内閣官房の内閣情報調査室、警察庁警備局、公安調査庁、外務省国際情報統括官組織、防衛省防衛政策局、この五者を想定しております。

神風委員 そのかなめは内閣情報調査室ということになるのかなと思いますが、この内調と言われる組織、どういう体制で何をしているところなんですか。

伊佐敷政府参考人 内閣情報調査室の現時点での体制でございますが、本室に約百七十名、それから、内閣情報調査室に附置されております内閣衛星情報センターがございますが、こちらのセンターの方に約三百名強が勤務しております。

 内閣情報調査室の任務でございますけれども、内閣法第十二条及び二十二条並びに内閣官房組織令第四条の二の規定に基づきまして、情報収集衛星に関することを含めまして、内閣の重要政策に関する情報の収集及び分析その他の調査に関する事務をつかさどるということにされております。

 具体的には、内閣直属の情報調査機関といたしまして、幅広い観点から国内外のさまざまな情報をみずから収集しているほか、我が国の情報コミュニティー、先ほど申し上げました五者でございますが、これの中核といたしまして、各行政機関の行う情報の収集及び分析その他の調査であって、内閣の重要政策にかかわるものの連絡調整や、緊急事態の発生時等における政府の情報の集約及び連絡の一括処理等も任務としております。

神風委員 政府の情報機能強化検討会議が先般中間報告をまとめられて、その中で、内閣情報分析官を新設すると発表されたわけでありますが、この内閣情報分析官というのはいかなる存在で、今後、この内調との関係というのはどういうふうになるんですか。

伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生が今御指摘の中間取りまとめでございますが、本年二月二十八日に情報機能強化検討会議といたしまして取りまとめ、発表をいたしたところでございます。この中に、情報機能をいかに強化するかという基本的な考え方をまとめてございます。

 二に「情報機能の強化」とありまして、その中に幾つかございますが、三つ目に「集約・分析・共有機能の強化」という章がございまして、その冒頭に「集約・分析・共有の必要性」ということが書いてございます。報告書の四ページでございますけれども、その中に、「現在の合同情報会議の機能を発展させ、」これは、先ほどの情報コミュニティー五者の局長クラスで構成している会議でございますけれども、ヘッドは事務の副長官でございますが、それぞれの省庁からは局長クラスが出ておりまして、この「機能を発展させ、情報コミュニティの英知を結集する場とし、情報コミュニティは、同会議等において、官邸首脳及び官邸の政策部門の情報関心に基づくオール・ソース・アナリシスを行うとともに、情報の共有を促進する。」とございます。このオール・ソース・アナリシスというのは、政府が保有するあらゆる情報手段を活用した総合的な分析ということでございますけれども、これを行う。

 そのために、五ページ目にございますけれども、内閣情報調査室に高度の分析能力を有する専門家、仮の名前といたしまして内閣情報分析官としておりますけれども、これを置いて情報評価書の原案を作成することとし、この情報評価書を合同情報会議に諮る、これを情報コミュニティー全体の英知を結集した分析内容とする、こういう考え方が述べられております。

 具体的には、この中間取りまとめはあくまで中間でございまして、半年以内にさらに具体的な施策を取りまとめ、政府としての意思決定を行う、その上で着実に実行に移す、こういうことになっておりまして、御指摘の内閣情報分析官につきましても、基本的な考え方は今申し上げたようなことでございますけれども、引き続き細部を詰めまして、実施に移したい、このように考えているところでございます。

神風委員 二〇〇四年の十月に、「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書というのがまとめられております。その中でも、「人的情報手段の有効活用を早急に進めるべきである。」というような指摘があったり、あるいは、二〇〇五年の九月十三日、「対外情報機能の強化に向けて」、この中では、非常におもしろい項目がありまして、「特殊な対外情報活動を行う固有の機関」、「特殊な対外情報収集活動を行う固有の機関の設置は、政府全体として取り組んでいくべき、今後の重要な検討課題である。 情報機関の長い歴史と経験を有する英国では、秘密情報機関(SIS)」、MI6ですね、「を設置し、外務大臣の下におきつつ、固有の活動を行う体制としているが、このような方式はわが国としても参考になる。」といったような意見も盛り込まれているわけであります。

 そういった意見も今回の中に盛り込まれて反映されているのかなと思いますが、ちょっと考え過ぎかもしれませんが、その内閣情報調査室という組織をMI6のような組織に発展させていこう、そういった想定もされているんでしょうか。

伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の分野は、対外人的情報収集機能を強化するために、新たな機関あるいは既存の機関を強化し、例えば御指摘のようなイギリスの通称MI6と言われる機関がございますけれども、こういった機関のようなものを我が国としても持つべきかどうか、こういう御指摘であると理解いたしました。

 その点につきましてもこの検討会議において検討したところでございますが、二月の末のこの中間取りまとめを発表した時点におきます検討状況は、報告書の三ページ目にございますけれども、我が国の安全保障にとって重要な情報といたしまして、国際テロ、大量破壊兵器拡散、北朝鮮等に関する情報があるわけでございますけれども、これらの対象について情報を収集することは非常に困難な場合が多い。ここの報告書にございますが、「情報収集の対象国や組織は閉鎖的で、その内部情報の入手が困難であることが多く、そうした情報が不足している状況にある。」こういう認識については、検討会議として一致したところでございます。

 ではどうするか、この対応でございますけれども、報告書にございますが、「この問題に取り組むため、具体的に不足している情報の検討を踏まえて、より専門的かつ組織的な対外人的情報収集の手段、方法及び態勢の在り方を早急に検討し、その実現を図る。」とされておりまして、まだ検討の過程にあるというのが現状でございます。

神風委員 アメリカの国務省に、INR、インテリジェンス・アンド・リサーチ、日本語に訳せば情報調査局と呼ばれるような、わずか三百人の組織があるということでありまして、しかも、彼らが扱う情報の大半というのはいわゆるオープンソース情報である、それがかなり成功しているという話を伺うわけですが、このINRというのはどういった組織になるんでしょうか。

松島大臣政務官 今神風委員がかなり御説明されたんですけれども、国務省の中にある一つの部局として、情報調査局がございます。

 これは、情報を外交政策に適切に活用することを目的といたしまして、各政策の局とは別に、独自の視点から情報を分析し、その分析結果をアメリカ、米国政府内の政策決定者に提供を行っている部局でありまして、一九四六年に設置されて、委員がおっしゃいましたように、およそ三百名が所属しております。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

神風委員 このINRの局長をされていたカール・フォードさん、この方はもともとはCIAの分析担当をされていた方らしいんですが、このINRの成功の秘訣として、人数は少ないが、長くやってくれているベテランが多く、そういう人たちが正確な分析をしてくれるということを指摘されているわけでありまして、これはなかなか日本にとっては傾聴に値するのではないかなと。

 つまり、日本の場合、どうしても関係省庁の縦割り意識が非常に強くて、しかも、貴重な情報は他省庁には教えたくないと、縄張り意識が大変に強いわけでありまして、情報を抱え込むという傾向がある。

 さらに、先ほど内調の体制について約百七十名と言っておられましたけれども、これは、プロパーの職員は約七十名、ほかはほとんど、半分以上が出向の職員ということになろうかと思いますが、その出向の職員、大体どのぐらいの任期で交代になるんでしょうか。

伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれのケースによって異なりますけれども、内閣情報調査室採用の職員は、当然、採用から出向の期間等を除きまして長期にわたって内閣情報調査室に勤務しております。出向の者は、通常の慣行に従いまして二年のケースが多うございまして、場合によっては、それより短い場合、長い場合ございます。

神風委員 これは、縦割りの弊害を排して、オール・ジャパンで本当に情報というかインフォメーションをインテリジェンスに分析、加工していくような組織にしていただかないとなかなか機能しないと思いますので、その点、ぜひお願いをしたいと思います。

 加えて、これは〇四年五月に発生をいたしました中国・上海の日本総領事館勤務の電信官の自殺の事件に関連して伺いたいわけでありますが、この電信官という存在というのは機密情報に最も接し得る立場にある方であるわけでありまして、通常、諸外国ではこの電信官というのは情報機関の人間が務めるという話を聞くわけでありますが、その点、どのようになっているんでしょうか。

松島大臣政務官 我が国の場合は、いわゆる電信官といいますのは、情報機関ということでなくて、在外公館にいる人でございます。そして、仕事といたしましては、大きく言って二つあります。一つは、外交行のうという、これは秘密の外交文書を入れる袋でございますが、条約で税関でも見せなくていいことになっています、こういう袋だとか、外交伝書使、クーリエと呼びます、もっと秘密なものは直接人が持っていくわけですけれども、そういったような文書による通信を扱っているということと、もう一つは、電信などの電気的な通信に関する業務全般を担当している。在外公館でこういう仕事をやっておりまして、いわゆる情報機関ではございません。

神風委員 自殺をされた上海総領事館の電信官の方というのは、旧国鉄の民営化に伴って外務省に入省された方であると聞いております。

 諸外国ではこうしたキャリアの方が電信官を務めるということは余りないのではないかなと思いますが、諸外国でこの電信官を務められている方というのは、どういう方がやっていらっしゃるのか。情報機関の方がやっていらっしゃるのかどうか、そこら辺はわかりますか。

佐渡島政府参考人 きょうこの時点では、私ども、外国の情報機関の職員がそういう業務に当たっておられるかどうかということについてのきちんとした情報を手元に持ち合わせてございません。

 片や、政務官の方からもお答えを申し上げましたけれども、日本の外務省の場合には、外務省員がそれぞれの業務に必要な研修を受けて任に当たる、こういうシステムになっております。

神風委員 これは、昨年の十二月に設置をされましたいわゆるカウンターインテリジェンス推進会議、こちらの方でこの電信官の問題について何か言及をされたようなことはあるんでしょうか。

伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。

 カウンターインテリジェンスにつきましては、昨年十二月より全省庁に参加いただいて検討を開始したところでございまして、先般も御説明申し上げましたが、一年を目途に結論を得べく作業を進めておるところでございます。電信官の話も検討対象にすべきだと思いますけれども、まだ具体的な内容につきまして御報告できる段階には至っておりません。

神風委員 これは、ある意味では防諜という点からは最もねらわれやすいような存在というのが電信官のような存在であるのかなと思うわけでありまして、ぜひここら辺の点も対応を検討していただきたいなと思うわけでありますが、外務大臣、何か御意見があればよろしくお願いします。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおり、電信官というのは直接話を聞く立場になりますので、そこの与えられている任務の重要性については単なる技術屋という以上のものが要求されているというところを、外務省、ずっとプロパーで上がってきたならともかくも、そうじゃない人はそういうことに関する認識、知識が落ちている部分というのは、それはやむを得ぬところもあろうと思いますので、そこのところに関しましては、これは教育で補う以外にほかに方法がありませんので、その点に関しましては十分に教育をということで事に当たっております。

神風委員 次に、最近よく目にするようになりました新人材バンクのことに関連して伺いたいわけでありますが、この新人材バンクの前に、いわば旧人材バンクというんでしょうか、それが七年前に発足をして、約七千万円の費用をかけて実際に再就職をしたのはわずかに一人だったということがあるわけですが、なぜこんなばかな状況になっているのか、その点、御説明いただけますか。

戸谷政府参考人 私ども、試行人材バンクという呼び方をしております。国家公務員の再就職の適正化を図るための透明な仕組みの一つということで、試行的に運用しているところでございます。国の行政機関の人材に対する民間からの求人情報と人材バンクに登録していただきました人材情報との照合等を通じて再就職を支援しようという仕組みでございます。

 成果が上がっていないということでございます。私どもとして考えております実績がこれまで上がってこなかった理由としておりますのは、まず、登録者を、本府省在勤の課長職以上と相当数が少なくなってまいります、に限定しております。この方々がどういう職につくかということでございます。勤務地、この方々は東京に住んでいる方がほとんどでございます。実は、こういう求人には地方からの求人もございます。そういう点についての、なかなか一致できなかった、年収面でも条件がそろわなかった、こういう状況がございます。

 それからもう一つ、非常に厳しい雇用情勢の時期だということもございまして、なかなか求人開拓が十分できませんで、求人件数が非常にこれまでは少なかったという状況でございます。

神風委員 何かその失敗の原因がよくわかりませんが、今度の新人材バンク、その反省に立って、どこをどうその実効性を担保しようとしているのか、今の失敗をした人材バンクとどこがどう違うのか、その点、御説明いただけますか。

岡下大臣政務官 お答えいたします。

 今の、新人材バンクにつきましては、総理から、全体のパッケージの中で、各省庁による再就職あっせんをなくして、機能する新人材バンクへ一元化していく方向で、早急に法案化を進めるようにとの指示があったところでございます。

 現在、この指示を踏まえて具体的な制度設計を急いでいるところでございますけれども、いずれにしても、新人材バンクにつきましては、退職職員が正面玄関から正々堂々と再就職できる、透明性のある仕組みとして機能するものとして構築してまいる所存でございます。

神風委員 余り中身がない答弁であります。

 これは全省共通ということになるのかなと思いますが、当然ながら、防衛省全体もこの新人材バンクを活用していくということになるわけですか。

岡下大臣政務官 お答えいたします。

 国家公務員法は一般職公務員を対象としているために、大方の職員が特別職である防衛省の職員へは自動的には適用されないと考えております。いずれにせよ、総理の指示を踏まえて、今後は防衛省においても検討することとなると考えております。

 ちなみに、防衛省の一般職員といいますと、防衛施設庁の業務職員三十名でございます。

神風委員 というと、その三十名以外はこの新人材バンクは適用されずに全く別枠で、そういう何らかの制度が手当てをされるということになるんですか。

岡下大臣政務官 今、制度設計を進めているところでございまして、防衛省は、今申し上げましたように、一般職員が、大体三十三万人の職員のいる中の三十名ですので、防衛省は特別職でございますので別枠だと思います。

神風委員 これは久間大臣の方にもお伺いしたいんですが、若年定年制の問題というのがよく防衛省の中では言われるところでありますけれども、例えば、背広組と制服組で分ければ、背広組については新人材バンクを活用していくんだ、あるいは、制服組の中でも佐官級以下の自衛官と将官以上の自衛官とでは、将官以上は新人材バンクを活用していくんだという検討もなされてしかるべきなのかなと思いますが、その点は防衛大臣としてはいかがなんでしょうか。

久間国務大臣 防衛省におきましては、これは先ほど話がありましたように、特別職でもありますし、ちょっとよそと違いますので、これから先のそういう人的活用のあり方検討会というのを、有識者を入れまして別途もう立ち上げて、これまで四回会議を開いてきたところでございまして、今まで問題点をずっと列挙してまいりましたが、これから先は対処方針に絞って、いろいろな検討をしていただいている最中でございます。

 したがいまして、防衛省としても、今の若年定年制の問題も含めて、これでいいのかどうか、今の任期制をもう少し非任期制に改めていった方がいいんじゃないかとか、いずれにしましても、これから先、少子化でかなり公的人材というのは払拭してまいりますから、その中で三年でやめていってもらうのがいいのかどうか、そういうことも踏まえながら、今検討を行っているところでございます。

 なお、防衛省におきますいわゆる事務官、これにつきましては、国家公務員の方が一つの動きとして出てまいりまして、それが非常にうまく機能し始めますと、そういうことをまた参考にしながらやっていくことになろうかと思いますが、ただ、やはりなかなか、言うはやすく行うはかたしでございまして、これから先、どういうような形になっていくのか、これが見えませんと、今の段階で評価するわけにはまいりません。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

神風委員 これはぜひ実効性のある制度設計をしていただきたいなと強く希望するところでございます。

 ちょっと、余り時間もありませんので、最後になるかと思います。

 先般、日本版NSCを創設することを柱とする最終報告書がまとめられたわけでありますけれども、その中で石原座長は、集団的自衛権の研究について真っ先にこのNSCで議論されるのではないかと語っていらっしゃるわけであります。

 しかし、昨年の年末、やはりこの安保委員会でその旨、当時はまだ長官でありましたけれども、久間長官にお伺いをしたところ、それはNSCでそういった集団的安全保障のような研究はなされないであろうということを御回答されていたわけでありますが、これは、今回まとめられたNSCの最終報告書と久間大臣の御認識が相当違っているということなんでしょうか。

久間国務大臣 いや、そんなに違っているわけじゃございません。

 いずれにしましても、集団的自衛権という言葉が非常によく使われますけれども、この概念を含めて、各党の、おたくの党も例えば集団的自衛権という使われ方をされている、そういうケースも含めて、もっと幅広く、いろいろな研究なり検討が進められればいいな、そういう思いでございます。

神風委員 今度新設をされる内閣情報分析官とNSCとの関係というのは、どういうふうになっていくんですか。

伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的な考え方は、中間取りまとめにございますように、政策部門との連接を密にするという考え方でございます。したがいまして、NSCの方から情報サイドに研究するようにという話が来た場合には、内閣情報分析官を含めまして検討し、政策サイドに返す、こういうことになろうかと思います。

 ただ、集団的自衛権、こういった話は、情報の話というよりは政策の話ではなかろうかと存じます。

神風委員 一つは、このNSCの動きを見ていて気になりますのは、官邸とやはり防衛省あるいは外務省との二元外交になり得る可能性が、危険があるのかなと。それに対して、そういった事態を避ける方策がなかなか見えてこないというか、何ら組み込まれていないような感じがするわけでありますけれども、その点はいかがなんでしょうか。

久間国務大臣 そういうことがあってはならないわけでありまして、NSCというのがどういう形になるかわかりませんけれども、防衛省あるいはまた外務省、そういった各省が、やはり官邸なら官邸を中心に一つの方向に政策がまとまるように動いていくように努力する、そういうような組織体であってほしいと思っております。

神風委員 今回出された報告書については、大臣としては満足をされているという認識でよろしいですか。

久間国務大臣 私は、あれでそんなに大きな狂いはないんじゃないかなと思っております。

神風委員 これは、NSCを事実上統括する事務局長、この人選というのがかなり大きなキーになるのかなと思いますが、今回の報告書によりますと、首相補佐官の兼任も可能としているようでありますが、小池補佐官がこれに就任をされるという見通しなんでしょうか。

久間国務大臣 そういうのは、できてしまってから、そして総理がどう判断されるか。結局、総理と直結する形で、補佐官を置くのか事務局長を置くのかわかりませんけれども、いずれにしましても、そういう一体の人が、いろいろな情報の収集を初めとして、最終的には総理と一体で行動するようなポストといいますか、そういうのが必要じゃないかなと思っております。

神風委員 これは、制度をつくっても、やはり最終的には人の問題が非常に大きい。いずれにしても、今のインテリジェンスの問題にしても、すべてにおいてそういう形ではないかなと思っておりますので、ぜひ人の問題、気を使って取り組んでいただきたいなと思います。

 それでは、最後になりますが、これは本委員会でも以前ちょっと指摘をしたところでありますが、施設庁の官製談合事案発生の根本に施設庁の閉鎖性がある、その閉鎖性の原因に、一つには、防衛庁職員の採用方式がかなり村社会的というか、タコつぼ的になっているんではないかという指摘をさせていただいたわけであります。結局、受験の時点あるいは採用時点で、それぞれ採用予定機関ごとの採用となっておって、なかなか、これで村社会になるなと言う方がおかしいような形になっていたのではないかなと思います。

 今回は現状の採用方式になるのかなと思いますが、今後この採用方式というのはどういうふうに変わっていくのか、その点、御説明いただきたいと思います。

久間国務大臣 これは、防衛省として一本化して、そして、同じ技術屋なら技術屋でも全体として使っていくような、そういう方向になっていきます。今度の四月までは、まだ防衛施設庁は残っておりますから従来のやり方が残るかもしれませんけれども、今出しております法案を通していただけるならば、次の改編のときからそうなるわけであります。

神風委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょう、私は、沖縄県の北部訓練場の問題について質問をしていきたいと思います。

 その前に、環境省をきょうはお呼びしておりますので、環境省に最初に伺いたいのですが、三月九日に、環境省が設置した国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会があります、その検討会の中で、沖縄県の山原、沖縄本島北部地域、これについて国立公園指定を検討するよう提言を提出しております。環境省にまず聞きますけれども、今回の提言の内容と背景、この提言を受けて環境省としてはどのような取り組みを進めていかれるのか、お答え願えますか。

冨岡政府参考人 先生お尋ねの提言に関しましては、生物多様性豊かな照葉樹林の地域はすぐれた自然の風景地として評価すべきとされておりまして、中でも、沖縄県の山原地域につきましては、鹿児島県の奄美群島と並びまして、国立公園の指定も視野に入れたより詳細な評価を行う必要があると提言されておるところでございます。

 これを受けまして、環境省といたしましては、山原地域は、イタジイに代表される亜熱帯性の自然林に覆われ、ヤンバルクイナなど多くの固有種を含む野生生物が生息、生育しており、生物多様性の観点からも重要な地域と認識いたしております。今後も、このような認識のもとに、国立公園指定を視野に入れたより詳細な評価を行い、山原地域の公園としてのあり方の具体化や地元の意見の把握に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

赤嶺委員 二〇〇三年五月に、世界自然遺産候補地に関する検討会、この報告の中でも琉球諸島の自然について触れられておりますけれども、世界自然遺産条約の登録との関係で、この点では、環境省、いかがなんですか。

冨岡政府参考人 世界自然遺産の登録につきましては二つの条件がございます。一つは世界的に見て貴重な自然であること、もう一つはその自然を将来にわたって守るために必要な措置がとられていること、この二つでございます。

 平成十五年五月の学識経験者による世界自然遺産候補地に関する検討会報告におきましては、奄美から沖縄にかけての琉球諸島は固有な動植物が多く、独特の生態系を有しており、世界的にも貴重であることが高く評価されたところでございます。一方、沖縄、奄美両地域ともに、海岸部を中心に国定公園として指定されておりますが、陸上部につきましては保護区の設定が十分でないことが今後の検討課題であると指摘されております。

 このため、先ほどの国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言をも踏まえまして、関係省庁、沖縄県等との連携のもとに、山原地域を含む陸上部について、保護区の設定、拡充に努め、世界自然遺産推薦のための条件を整えてまいりたいと考えております。

赤嶺委員 琉球諸島の貴重な自然の中核をなすのが山原であるわけですね。その山原の中には、御承知のとおり、北部訓練場があります。SACOの合意では、北部訓練場の過半の地域を返還するとしました。残りの地域は引き続き訓練場として使われることになっていくわけです。残りの地域にも山原特有の希少動物、これが生息していると思われます。

 これも環境省に伺いますが、絶滅危惧種のヤンバルクイナ、ノグチゲラ、この分布状況、そして分布状況をどのように把握しているのか、個体数はどうなっているのか、環境省が把握している点を説明していただけませんか。

冨岡政府参考人 ノグチゲラ及びヤンバルクイナの両種は山原地域の固有種であり、環境省のレッドリストにおきましては、最も絶滅のおそれが高いランクであります絶滅危惧1A類とされております。

 まず、ノグチゲラにつきましては、沖縄本島北部の比較的広い範囲で見られ、近年は分布域、個体数ともに大きな変化は確認されておりませんが、その数は五百羽程度と推定されております。

 次に、ヤンバルクイナにつきましては、やはり沖縄本島北部の比較的広い範囲で見られるところでありますが、近年は分布域が縮小傾向にあることが確認されておりまして、個体数も減少傾向にあると推定されております。その数は現在、千羽前後ではないかと推計しているところでございます。

赤嶺委員 残る北部訓練場にもノグチゲラやヤンバルクイナは存在しているわけですね。

冨岡政府参考人 先ほど申しましたノグチゲラ、ヤンバルクイナは北部に広く分布しているところでございまして、先ほど申し上げた推計数といったものは、先生御指摘の沖縄の基地と申しましょうか、そういう地域を含めてのものでございます。

赤嶺委員 沖縄の基地も含めて絶滅危惧種が存在をしていると。

 今度は防衛省に聞きますけれども、施設庁は、こういう貴重な地域に訓練場を残すということにとどまらず、新たにヘリパッドをつくろうとしているわけです。私は、本当に重大だと思います。まず、大前提の問題として確認したいのですが、これまで防衛施設庁は、返還地域のヘリパッドの数については七カ所ある、こう説明してきました。残りの区域、これは現在、米軍のヘリパッドは何カ所存在しているのですか。

北原政府参考人 御答弁を申し上げます。

 現在二十二でございますので、七を引きますと、十五でございます。

赤嶺委員 久間大臣、既に残りの地域に十五カ所ヘリパッドがあるわけです。そこにまた六カ所、米軍のヘリパッドをつくろうとしているわけですね。先ほど環境省からも説明がありましたが、ヤンバルクイナやそういう希少な動物に重大な影響を与えると、いわば沖縄県の動植物の専門家は悲鳴に近い声を上げているんです。

 防衛施設局の方も、これは防衛施設局の文書から引用したんですが、北部の同訓練場が所在する地域は、山原特有の自然が残され、自然保護の観点から注目されている地域だとしてまいりました。そして、防衛施設局自身が平成十年から十二年にかけて環境調査を実施し、七カ所の移設先を候補地として当時挙げましたが、見直しを余儀なくされました。その経緯について、改めて説明してくれますか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、北部訓練場、トータルで七千五百ヘクタールあります。先生御指摘のとおり、その過半、約四千ヘクタールを返還するということで、これを早期に実現することは、沖縄の皆さんの負担を軽減するといった目的、SACOの目的に盛り込まれたものでございまして、私どもは、今先生御指摘の環境保全といったこと等にも最大限努力をしながら実現してまいりたいと思っております。

 そこで、経緯等でございますが、まず、私どもが政府としてつくろうとしておりますヘリコプターの着陸帯の移設でございますが、これにつきましては、環境の面からのいわゆる環境影響評価法などの対象外でございます。しかしながら、私どもといたしましては、自主的な判断によりまして、沖縄県の環境影響評価条例に準じて環境影響評価の手続を実施してまいりました。

 それで、その適用外ということも大切な話でございますので、私どもが勝手に適用外と言ったわけではございません。現在、沖縄県の環境影響評価条例の対象とする事業というものが明記されておりまして、これは滑走路あるいは誘導路などの施設を備えた陸上ヘリポートというのが対象になっておりまして、私どもは、今申しましたような沖縄県の環境影響評価条例に準じて環境手続をとるときに、沖縄県と調整をいたしました。調整をして、今申しましたような対象には当たらないということでやってまいりました。そこで、私どもがスタートしたのが平成十年の十二月、先生おっしゃるとおりでございます。

 そのしばらく後に、十一年の四月二十七日に日米の基本合意がございまして、ヘリパッド、着陸帯については七カ所、直径七十五メートルという話があったわけでございます。それにつきまして、我々は次に、いわゆる方法書に準ずるところの継続環境調査検討書というものをつくりました。そうした中で、住民の方々の意見、それから知事の方々の意見というものをいただきました。さらに、それに基づきまして調査を実施してきた。

 その中で、十八年二月九日の日米合同委員会合意で、今申しました七カ所を六カ所にする、それから四十五メートルにするという形で変わってきたところでございます。

 さらに、いわゆる環境影響調査書によるところの準備書に該当する環境影響評価図書案というものをつくりました。そこで、さらに、住民の方々に、国頭村、東村の方々にも説明し、住民の皆さんの御意見を聞き、また知事さんからの御意見をいただきました。そして環境影響評価図書を作成いたしました。

 さらに、知事の御意見等をいただきまして、七項目ほど知事さんから、十九年、ことしの一月二十六日に出てまいりましたけれども、これを踏まえてさらに図書の補正をした、評価書の補正をしたところでございます。

 私どもといたしましては、今日まで、その環境が極めて重要であるということで、県知事から出された御意見等はすべて盛り込んだ必要な補正を行って、今、三月二十二日に環境影響図書等の補正を終了したというところでございまして、いずれにいたしましても、最大限配慮してまいりたいと思っております。

赤嶺委員 今の長官の説明は、アセス法に準じて手続をとりましたという説明にすぎないんですよ。そういう手続の中で何が起きていたのか。

 平成十年から十二年にかけて環境調査を実施したとおっしゃいました。その十二年に発表した皆さんの文書の中に、七カ所選んでみたけれども、より自然環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯移設候補地があるかどうか調査する、新たな区域及び既設ヘリコプター着陸帯周辺区域において環境調査を継続すると。いわば、環境調査を最初にやった、過年度調査と呼んでいるようですが、やって選んだ七カ所というのは余りにも環境に与える影響が大き過ぎる、新たな場所を調査する、そういうような報告書を出しておりますが、それは間違いありませんね。

北原政府参考人 当初、先生も御指摘のとおり、また私も申し上げましたが、七カ所、直径七十五メートルということでスタートいたしました。その後、十八年の二月九日に、六カ所、直径四十五メートルに変わっております。

赤嶺委員 その七カ所を選んだときに、結局、環境、自然の専門家から厳しい批判が上がって、より自然環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯移設候補地があるかどうか調査する、このように報告書を出したんでしょう。これは認めますか。

北原政府参考人 先生、今引用されていらっしゃるこの環境影響評価図書案のあらましに基づきますれば、先生がおっしゃったような経緯でございます。

赤嶺委員 ところが、皆さんあのときに、選んだ七カ所は環境に与える影響が大き過ぎるといって、いわば、新たな場所についても検討する、そして、環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯移設候補地があるかどうか検討するといって、今度の六カ所が出てきたわけですよ。ところが、今回提案してきた候補地の中には、前回と同じ場所が改めて提案されてきているわけですね。

 宇嘉川周辺、G地区というところ、ほかにもありますが、そこを言いますと、この地区も大変自然度が高いと言われていたわけですよね。ここが何で今回も候補地として挙げられるんですか。あれだけ、アセスに基づくような、準ずるような調査をしてきた、してきたと言いながら、そして、前に出した七カ所はどうも環境に与える影響が大きいと言いながら、今回、慎重な環境調査を重ねて出してきた六カ所の中に何で前回の案が入っているんですか。

北原政府参考人 事業に着手するに当たりまして、先ほど申しましたように、私どもは環境影響評価の一連の流れを準用してやってまいりました。

 そうした中で、今先生御指摘の点等々、今御指摘をいただいたわけでございますけれども、私ども、その都度地元と、沖縄県の環境影響評価条例の流れに準じまして、住民の意見を求め、知事の意見を求め、そしてステップ・バイ・ステップで進めてきたところでございまして、そして、本年の三月二十二日に事業実施までの必要な作業を終了したところでございます。

 今後につきましては、もちろん、事後調査ということでその都度、知事の対策の要求等々があれば、これも必要に応じて私どもは誠実に対応してまいりたいと思っているところでございます。

赤嶺委員 質問に答えていないんですよ、長官。

 なぜ、平成十二年のときには七カ所を挙げた、自然度に与える影響が大き過ぎると言って環境調査を継続した、そして今度六カ所挙げてきた、ところが、前と同じ場所が入っているじゃないですか、一例として今G地区というのを挙げました。この地区は入っているわけですよ。何で同じ場所が今回候補地として選ばれてきたんですか。

北原政府参考人 この場所を設定するに当たりましては、私が今申しましたような自然環境並びに米軍の運用上のニーズ等々を総合的に勘案して決めたところでございます。

赤嶺委員 全く答えになっていないですね。

 本当に、こんな答弁で、ああいう自然度の高い地域に訓練場をつくるのが許されるんですか。G地区が何で今回も入っているのか、ちゃんと答えてください。

北原政府参考人 全部で六カ所入っております。それにつきましては、米軍の運用上の問題、それから、今申しましたけれども、私どもは、沖縄県の環境影響評価条例に準じまして、一から、すべて必要な手順を踏んで行ってまいりました。

 そうした中で、我々といたしまして、必要な住民の皆さんからの意見あるいは知事の御意見等につきましては、手続の過程の中で、例えば知事の御意見等については、今申しましたような沖縄県環境影響評価条例に準じた手続の中で三度聴取をし、そして、我々はそのすべてを我々の計画の中に盛り込んできたものでございます。

赤嶺委員 自然を配慮したとかアセスに準じてしたと言う割には、そこの自然についても、そして、そこが候補地としてなぜ設定されたかについても、全く説明できません。条例に基づいて知事の意見も聞いてきたとおっしゃいましたが、その知事の意見を出す諮問機関、環境監視検討委員会、この中で琉球大学の動植物の専門家がこのように言っています。今、皆さんがヘリパッドをつくろうとしている地域、海岸から脊梁山地までずうっと自然林がつながっている、沖縄本島でも唯一の場所だと。ヘリパッドと進入道路は、その連続を分断してしまう、ここは非常に大事なところ、山原を守る上で非常に大事な場所と指摘されているわけです。

 国立公園の話がある、世界自然遺産条約の登録の話がある、そういう山原の自然の上でもいわば心臓部に当たるような場所にあなた方はヘリパッドをつくろうとしている。これは、この先生は平成十二年のときにも同じ意見を出しているんです、この場所についてはと。今回もやはりそういう意見が出ているわけですよ。

 今、長官、米軍の運用の必要上と言ったわけですが、結局、自然環境よりは米軍の運用の必要上を優先したということになるではありませんか。

北原政府参考人 先生、お言葉でございますが、私先ほど来申し上げておりますけれども、現在、着陸帯を移設するに当たりまして、県の条例にすべて準じてやってきております。

 そして、そうした中で今御指摘の、先生の御発言もあるかもしれませんけれども、繰り返しになりますが、結節点、結節点で、知事からは三度にわたって御意見をいただいているところでございます。それは、知事さんは、沖縄県民の安心、安全と、まさにこの山原の自然を守る責任があるお立場だと思います。そうした中で三度にわたって御意見をいただきました。そして、その御意見については、我々は全部取り込んでその計画を修正等をしているわけでございます。

 その結果が今現在の六カ所で決まったわけでございまして、私どもといたしましては、所要の手続はきちっと、また県民を代表される知事さんの御意見も踏まえて、ステップ・バイ・ステップで今日まで来ている、そのように考えております。

赤嶺委員 あなた方が出した補正書も読ませていただきましたよ。かなり分厚い補正書ですよ。結局そこにあるのは、環境の専門家の意見を取り入れたのではなくて、やはり米軍の運用の必要上で、専門家が自然破壊につながると言われている場所に着陸帯をつくろうとしている。

 あの山原の地域は、かつて専門家から東洋のガラパゴスと呼ばれていた地域です。大陸と切り離されて動植物が固有の進化を遂げてきた、地球上でも珍しい希少動物がたくさんいる、希少植物がたくさん存在している。そこの心臓部のところに、米軍の運用の必要上があるからといって、環境よりもヘリパッドの着陸帯の着工を優先するというのは本当に僕は許せない行為だ、撤回すべきだというぐあいに思っています。

 環境に影響を与えない地域を選んだ場所があるんですね。この場所はどういうところかというと、今度は地域住民の住宅に近い地域になっているわけですね。東村の高江集落、この高江集落というのは、皆さんがヘリパッドを移設してきた結果、従来の十五カ所と合わせて二十一カ所のヘリパッドに高江集落は囲まれる、こういうような結果になりました。

 住民の暮らしに対して、いわばもう日常的に住宅地上空をヘリが飛んでいるわけですが、この点についての環境の影響を調査しましたか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生御指摘の近接する高江地区、高江の集落でございますが、私どもといたしましては、一年間の連続測定を実施いたしました。その結果、全調査時間は、時間でいいますと約五千時間でございます。そのうち、ヘリコプターの飛行音と判断でき、かつ、環境基準を超えた時間は約六時間、全体の〇・一%でございました。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、米軍との間で、ヘリコプターの運用に関しては住宅あるいは学校地区の上空をできるだけ回避するなどの、地元住民の皆さんへの影響を最小限にするといった申し入れもしていますし、その旨の回答もいただいております。

 それから、今後、所要の手続を踏んでまいりまして、ヘリコプター着陸帯の移設後におきましては、米軍の運用に伴いますところの騒音の影響等につきましては、私どもといたしましては、騒音測定を行うことを考えております。そうした事後調査もきちっと考えているところでございます。

 我々といたしましては、繰り返しになりますけれども、一年かけて、そういった環境の問題、それから地域住民の方々の問題、それから、それに対して責任のある知事さんの御意見等を踏まえて今このような作業を進めているところでありますことを、ぜひとも御理解賜りたいと思います。

赤嶺委員 さっきから知事さん知事さんとおっしゃいますけれども、知事さんは現場に行ったんですよ、北部訓練場に。そうしたら、自分が出した意見とはどうも違う感じだな、こう述べたんですよ。それで、では今から直すかといえば、遅きに失したというぐあいに言っております。一年かけて調査したというのは、着陸帯の上でのホバリング調査でしょう。実際の米軍のヘリの運用に沿って調査したわけじゃないんですよ。事後の調査と言うけれども、とんでもないですよ。

 これは住民の声です。今でもヘリは、夜十時過ぎてからでも住宅地上空を飛んでいる、石を投げれば当たるような距離を飛んでいる、ヘリは夜の飛行時にはライトで地上を照らしながら飛行しています、私は今我慢しております、現在でも私の家の上を、まるで犯人を捜索するように飛行している。

 今回の計画でどのような飛行ルートになるのか、そこで暮らす住民にとっては基本的な人権の問題ですよ。実際に米軍の運用に即して調査をしたんですか。今長官が、先ほどしたのは、ホバリングの調査のことを言っているんじゃないですか。

木村委員長 北原防衛施設庁長官、時間が来ましたので簡潔に願います。

北原政府参考人 調査は、高江地区の住宅の屋根等に観測器を置いて調査したものでございます。

赤嶺委員 終わります。終わりますけれども……

木村委員長 赤嶺政賢君、時間になりました。

赤嶺委員 はい。

 本当に、アセスに準じたことをやったと言いながら、環境調査の名に値しないような調査で、新たな負担を住民に押しつける、許せないことだということを指摘して、質問を終わります。

木村委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは、主にミサイル防衛システム、MDについて、防衛大臣と外務大臣にお尋ねをしたいと思います。

 三月二十三日の閣議で、いわゆる緊急対処要領というのが決定をされました。そして、三月二十九日には、私も埼玉なんですが、航空自衛隊の入間基地にPAC3が配備をされるということになっています。地元では、本州で初めてといいますか、PAC3が配備をされるということで、大変不安もあるし、反対だという声も大変強くあるわけです。

 そこで、最初にお聞きをしたいと思うんですが、航空自衛隊の入間基地にPAC3を配備するという基本的な理由は一体何かということが一点と、それから、これを配備するに当たって、地元でさまざまな意見があることはもちろん承知しておられると思いますが、地元の自治体あるいは市民に対してどのような説明をしてきたのか、市民の理解というのは十分得られているのかということについて、最初にお聞きをしたいと思います。

久間国務大臣 御承知のとおり、ミサイル防衛は、イージス艦に積むシステムと、そしてこのPAC3と両方で、一〇〇%とは言いませんけれども、かなりの日本全体を覆うということでございます。

 それで、まず第一番目に入ってくるPAC3をどこに置くかというときに、我々としては、首都圏、これがやはり一番大事だということで、第一高射群にそれを置くということを決めたわけでございまして、なぜこれが入間か、なぜ第一高射群かと言われましても、そこは、それはほかの地区でも別にいいわけでありますけれども、まずやはり首都圏に配備したということであります。

日森委員 どういう説明をされて、自治体は理解をされているのかということについても御答弁いただきたいと思います。

大古政府参考人 地元への説明でございますけれども、昨年の八月三十日以降、適宜、数回にわたりまして、狭山市、入間市、所沢市、それから埼玉県について説明をしております。基本的に、地元の理解は得られているというふうに考えているところでございます。

日森委員 大臣、PAC3は水平で数十キロメートルですよね。(久間国務大臣「距離で」と呼ぶ)水平距離で数十キロメートルが防御範囲ということになっているわけですね。

 そんなことも含めて、入間に配備をされたとすると、当然、首都圏をカバーできないんじゃないかというふうに思うんですが、そんなことはないんですか。

久間国務大臣 いや、それは、これ一基だけではあれですけれども、第一高射群に四基、四つの群に四基ずつですから十六基、それを配置する。それとSM3が、またこれは、イージス艦四隻ですけれども、常時機能するのは二隻か三隻、一隻はいわゆる交代もありますから、そういう形でカバーすることにしておりまして、PAC3は、SM3で迎撃できなかった分の外れた分を一応落とす形になりますから、それはそれなりの効果があるわけでありまして、数十キロの範囲内でカバーできますし、ある程度、その中だったら移動も可能であります。

 だから、どういう形で、少し重なってもいいから首都圏については置くかどうか、これはまだ、第二を置くときにどういうふうな配備にするか今検討している段階でございまして、やはり首都圏防衛というのを最初に考えたのは事実でございます。だから、入間でなければいかぬかと言われますと、そこのところは、なぜ入間かという絶対的な理由というのは出てこないということであります。

日森委員 いや、大臣、我々はMDに賛成しているわけじゃないので、何か誤解をされそうな答弁だとちょっと心配になりましたので、改めて申し上げておきたいと思います。

 続いて、これは、システムの完成度を高めていくとなるとかなりお金がかかる、技術革新もそうなんですが。一方、SM3なりPAC3、それぞれ配備をしていくけれども、今度はそれに対抗するような、どこから飛んでくるかわかりませんが、ミサイルを発射する国も、これに対応するような技術開発をするわけですよね。

 現実には、聞いているところによりますと、中国は、このMDに対抗してミサイルの多弾頭化というのを今考えているというような話もありますし、例えばロシアなどは、地下で移動式の、地下で移動するようなICBMの実戦配備を行っているんじゃないかという話も聞いているんですよ。

 だからそれに対抗しろと言っているんじゃなくて、こういうふうになっていくと、技術革新が進めば進むほど、どんどんどんどん新たなものを整備しなきゃいけない。SM3も、もっと新しいものを今開発途上なんでしょう。そうすると、新たな軍拡競争というのがずうっと進んでいくんじゃないのかという懸念がちょっとあるんですよ。その辺について、大臣、どんなふうにお考えでしょうか。

久間国務大臣 十年前、私が防衛庁長官に就任しましたときに、こういうミサイル防衛システムについてアメリカが研究し始めて、日本と共同研究しようという話がありました。私は、そのときに中国に行きまして、向こうの国防大学で講演したことがございました。

 終わった後、日本はミサイル防衛をしようとしているけれども、どうなんだという話がありましたから、とにかく、防衛庁長官として国民の生命財産を預かっているときに、ミサイルを撃たれたときに何もすることができない、これほど歯がゆいことはありませんよ、これについて何らかのすべがあるならば、そのすべを模索するのは責任者として当然じゃないでしょうかという話をしましたら、中国は、多分あれは教官だったと思います、専守防衛で、日本の防衛のためにミサイル防衛をするのはわかる、しかしながら、日本で開発されたミサイル防衛が、よその国に転売されていくようなことになると、これは軍拡競争につながっていくというような発言がありました。

 まあ、特定の場所をそれが指しているなというふうなイメージはわきましたけれども、私どもはあくまで我が国の防衛のためにやっているんだからという話をしましたら、やはり自分の国を守るためにいろいろな方法を研究するのはもう当然だということで、一応それは終わったわけであります。

 今度も、ミサイル防衛システムの導入については、外国から余り反響はあっておりません。だから、これが軍拡にはつながらないというふうに私は思っておりますし、また、日本に目がけてもし、そういう中国にしましても、これはかなりのミサイルを持っているわけですから、ああいった国と対抗するミサイル防衛システムとして完璧かと言われますと、数からいって全然違うわけであります。

 ただ、何発かテロリストその他によって撃たれるようなケースだってないわけじゃありませんから、国と国に限らず、テロリストの手に渡ったときに、それでおどされたときに何もなすすべがないという、これほど残念なことはないわけでありますから、そういう意味でも、ミサイル防衛システムは国としてやはり備える必要があるんじゃないでしょうか。

日森委員 ちょっと質問の原稿には入っていないんですが、最初は確かに技術研究をやりましょうやという話で始まったけれども、性格が変わったでしょう、変わりましたよね、MD計画の。

 実際には、結局、アメリカのMDシステムの基本というか、ミサイル防衛計画の基本は、アメリカ本土防衛でしょう。本土防衛ですよ。そこをやはり担っているのはイージス艦のSM3ということになるんじゃないか。今度は、技術開発している新しいSM3は、多分、大陸間弾道弾の一部も迎撃できるということで研究されているわけでしょう。

 そうすると、日本の本土防衛というふうに言っているけれども、実は性格が随分変わってきているんじゃないかというふうに思うんですよ。それはいいんですね。だから、中国で大臣が講演された時点と今ではやや違うのではないかという思いがありますが、それはちょっと質問項目に入っていませんので、次に進めたいと思います。

 技術的に大変難しいんだ、ビュレット・ツー・ビュレットなんだ、飛んできた弾丸をこっちでバンと鉄砲を撃って当てるようなものなんだというぐらい難しい話だというふうに聞いています。それで、現在配備しようとしているMDシステム、これは日本を標的としたミサイルを一〇〇%迎撃できるのかどうなのか。

 防衛白書などを見ると、随分実験などをやって、これは日本でやっているわけじゃなくてアメリカでやっているんでしょうけれども、かなりの成果を上げているんだ、我が国でも独自でシミュレーションを行って、その技術的な信頼性を確認していますというふうに言われているわけですが、これは一〇〇%本当に迎撃できるようなことになっているんでしょうか。

 成果をおさめているとか成果を上げているという言葉はたくさん出てくるんですが、新聞などで散見すると、アメリカの実験で、たまに成功するけれども失敗した例もたくさんあるというようなことを、そんな話も聞いているんですよ。そういう意味からいうと、本当の的中率というのはどれぐらいなんですか。

久間国務大臣 的中率というようなことは言えないわけでしょうけれども、一〇〇%というのもまた、実際、いろいろな装備で一〇〇%という装備というのはないわけですから、それも無理だと思います。

 最初、研究を始めましたときには、確かにこれは精度の問題もいろいろありました。私自身も防衛庁長官をやめた後、毎回アメリカに行っておりますけれども、そのとき、ずっと絶えず見せてもらいました、実験を映像で。

 それで、今おっしゃられました、最初は大陸間弾道弾を念頭に置いたことでありましたけれども、それからだんだん変わってまいりまして、精度も上がってまいりまして、かなりの精度になってまいりまして、それにPAC3と両方合わせると、外れたうちの、またそれに対する精度がある程度上がれば、かなりの精度になっておるわけであります。

 それと、今、弾に弾を当てるんだからと言われますけれども、弾と違うのは、ミサイルという場合は、これは一つの軌跡が決まってまいります、成層圏に行きますから。そして、横向きの力が入ったら、どれぐらいのスピードで、どういう形で、どういうふうに落下していくかというのがわかりますから、それに向かっていきますと、ちょうど、ホームランまでいかないけれども、センターフライになったのをセンターが追っかけていってミットでとる。人間の頭で考えて、どういう軌跡で落ちてくるかということを想像しながらつかむわけでありますから、あれだって簡単なようだけれども、実際はちゃんとそういう軌跡を考えながら追っかけているわけでありまして、それをコンピューターでやる技術も出てまいりましたし、また、日本の企業もこれに参加して、この目の部分を日本企業にやってくれということを言っていますから、一緒になって研究しているわけですから、向こうの成功した、失敗したというのもそんなでたらめじゃないわけでありまして、その点は割と信用していいんじゃないかなと思っております。

日森委員 あとお金の問題で、大分お金がかかると。

 例えばイージス艦に積むSM3、現在型でもいいんですが、それは幾らするんですか、一発二十億円とか言われていますけれども。それはちょっとわかりませんが、二十億円だという説もあって、二億円という説もあって、二億円のSM3というのは使い物になるのかという思いもあるんですが、ともかく二十億円ぐらいする。

 そうすると、BMD関連予算がこの四年間で約六千億円かかる。二〇一一年までにこのシステムを整備するというふうに考えていらっしゃると思うんですが、総額で一兆円を超すではないかということが予想されているわけです。

 さらに、これの整備が済んでも、メンテの問題とか技術が更新をされていくということになってくると、さらに費用がかさんでいく。最初に、システム整備、二〇一一年までに実際どれぐらいお金がかかるのか。それから、さらにその後メンテナンスだとか技術革新ということが当然必要になってくるわけで、それにどれぐらいお金がかかるのか。今わかっている範囲でお示しいただきたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 総額で幾らぐらいかかるかというお尋ねでございますけれども、BMDシステムに、今整備を計画しているもので、まず装備品を買うイニシャルコスト、それから、初動装備品と言っておりますけれども、最初に買ったときにセットでバイタルの維持整備品、部品とかがついています。そういうものを含めまして、それから、日米共同開発に今着手しておりますけれども、その点も含めまして、大体八千億から一兆円程度を要するというふうに考えているところでございます。

 あと、維持費はどの程度かという御質問でございますが、この点については、実際に導入してみて部隊で使用してみないと、正確な維持費はわかりません。ただ、例えばPAC2で申しますと、今、全体で六個群ございますけれども、大体、年間二百億円弱程度、維持費がかかっております。これはPAC3を導入したからといって、そんなに大幅にふえるというふうには予想していないところでございます。

日森委員 大分お金がかかるということがわかりました。

 例えばその費用対効果なんというのは当然出てくるんでしょうけれども、一兆円かけて、メンテに二百億ずつずうっとかかっていくということは、物すごい負担が大きいと思うんですよね。本当にこういうものを整備していくことによって効果があるんでしょうかということが一つ言えると思うんですが、それを一点、ちょっとお聞きしたいと思うんです。

 それは、具体的に、MDシステムが仮に必要だというふうに思っても、技術が日進月歩で進んでいく。先ほど申し上げたとおり、日米共同で次世代のSM3を今開発しているんだということになっているようですね。これは大陸間弾道弾の一部を迎撃できるんだというところまで進んでいくわけですね。そういうことをずっと一方でやりながら、今SM3をイージス艦に載せる、四隻ですか、全部載せるとか、PAC3も全部配備をしていくんだということが、今そんなに慌てて二〇一一年までに全部整備しなきゃいけないということになるんでしょうかという思いがあるんですよ。

 確かに、テポドンだとかノドンだとかということが最初言われました。だからミサイル防衛をやらなきゃいかぬのだよというふうに言われたけれども、差し迫って、今、膨大なお金をかけてこれを全部整備する必要が一体あるんでしょうかということについて御見解を伺います。

久間国務大臣 今先生が費用対効果の話をされましたけれども、こういう問題については、なかなかそれは難しいんですね。

 というのは、例えば、ある市が、そこに高層ビルができたから、消防車の中で高いところまでのはしご車を買った。そして十年間使ったけれども、一回もそれは出動しなかった。このはしご車を買った市長がよかったか悪かったかという評価は、これは一概に言えないわけでありまして、だから、そういう意味では、いざというときに備えてそれだけのことをやる必要があるかどうか、その辺はやはり政策判断じゃないかと思うんです。

 十年前にも、やはり、特にテロとかそういうような手に渡ったときに、ミサイル攻撃されたときに本当に大丈夫なのか、何もしないでいいのかという思いもありましたので、私は、ミサイル防衛については考えるべきだ、研究すべきだというので取り組みました。その後、ミサイルの実験を実際、日本海でやったのはこの間、北朝鮮は昨年でございますけれども。

 だから、十年前から、研究する必要がある、共同開発する必要がある、整備する必要がある、配備する必要があるということを言ってきた。そのことが、今、北朝鮮がああいうふうにやったからすぐやっているわけじゃありませんで、そういうときに備えて、やはり備えあれば憂いなしじゃないけれども、やっておこうということでやって今日に至ったという、そういう長い時間をかけての動きであるということも理解していただきたいと思うわけであります。

日森委員 武器輸出三原則との関連でお聞きをしたいと思うんですが、まず最初に、武器輸出三原則の内容と目的についてお伺いをしたいと思います。

鈴木政府参考人 我が国からの武器及び武器技術の輸出についてでございますけれども、昭和四十二年に佐藤内閣が発表いたしました武器輸出三原則及び五十一年の三木内閣の際の政府統一見解などに基づきまして、従来から慎重に対処しておりますけれども、その目的は、それによって、政府としては国際紛争等を助長することを回避するという考え方に立ったものでございます。

 具体的には、共産国向けの場合、国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合、国際紛争の当事国またはそのおそれのある国向けの場合には武器及び武器技術の輸出を認めないほか、三原則対象地域以外についても、憲法等の精神にのっとり、我が国からの武器及び武器技術の輸出を慎むという方針でございます。

日森委員 BMDに関しては、二〇〇四年の官房長官談話というのがございまして、武器輸出三原則によらないというふうにされたわけですね。これは日米安全保障体制の効果的運用に寄与するものだ、同時に我が国の安全保障に資するという意味で、この三原則によらないというふうにしたわけです。

 同じく昨年六月の二十三日に、米国に対する武器及び武器技術の供与に関する書簡というのが交換をされました。これは外務大臣、当時は麻生さんでしたかね、失礼しました、外務大臣と駐日米国大使の間に行われたんですが、我が国の事前同意のない目的外利用や第三国移転を禁止するなど厳格な管理のもとに武器及び武器技術を提供する枠組みが合意をされたということになっているわけです。

 そういうことになると、日本に配備されるMDシステム以外に日本の武器の技術が供与されるということは認められないことだというふうに考えるんですが、それに対する政府の見解はいかがなんでしょうか。日本以外は認められないということ。

鈴木政府参考人 平成十六年の官房長官談話において御指摘のような決定をしたわけでございますけれども、あわせて、米国との共同開発・生産案件及びテロ、海賊対策案件等に関する案件につきましては、今後とも、国際紛争等を助長しないという考え方に立って個別案件ごとに検討していく、その上で結論を得るという考え方で来ております。

 なお、米国については、御案内のように、昭和五十八年の中曽根内閣の際に、防衛分野における米国との技術の交流を図ることについては、日米安保体制の効果的運用を確保する上で重要だという観点から、武器輸出三原則等によらないという方針を決めておるところでございます。

日森委員 時間がなくなってきたんですが、先ほど申し上げたように、米国に対する武器及び武器技術の供与に関する書簡の中で、我が国の事前同意のない目的外利用や第三国移転を禁止するという厳格な管理のもとに提供する枠組みなんだというふうにおっしゃっているわけですが、なぜ我が国の事前同意のないという留保がついているのかということが一つちょっと疑問に思いました。

 これは、読みかえると、場合によっては、我が国が同意をすれば、日本の技術の目的外利用や第三国移転があり得るということですよね。どういう場合にこれを認めるということになるのか、想定されている範囲で教えていただけたらありがたいと思います。

西宮政府参考人 御指摘の交換公文は、共同開発及び共同生産を実施するために必要な武器及び武器技術の我が国から米国への供与に関する両政府間の基本的な枠組みを定めたものでございます。

 この交換公文は、我が国が米国に供与した武器または武器技術につき、日米相互防衛援助協定、これは昭和二十九年の協定でございますけれども、これに従いまして、我が国の事前同意のない他の目的への転用及び第三者移転を禁止する等厳格な管理を行うことを定めております。

 我が国が供与いたしました武器または武器技術の他の目的への転用または第三者移転につきまして、米国が我が国の事前同意を求めてきた場合につきお尋ねでございますけれども、個々の具体的なケースに応じ、当該武器または武器技術を米国に対して供与した趣旨及び武器輸出三原則などを踏まえ、米国の要請の背景あるいは事情等も慎重に勘案の上、我が国としてその可否を判断することとなります。

木村委員長 日森文尋君、時間になりましたので、簡潔に願います。

日森委員 時間がなくなりました。外務大臣、申しわけございませんでした。

 終わります。

木村委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十五分開議

木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省国際法局長小松一郎君、経済産業省大臣官房審議官石黒憲彦君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長押田努君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、防衛省運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君、国際協力銀行理事野崎茂君及び国際協力銀行理事武田薫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 付託されました米軍再編につきまして、質問をさせていただきます。

 先日、当委員会理事でグアムの米軍基地を視察いたしました。グアムは、日本から空路三時間半、人口十七万千人、年間百五十万人の日本人が訪れる観光地でありますが、太平洋戦争の屈指の激戦地でもありまして、日本軍の守備隊が二万人おりましたが、うち戦死者が一万八千人、飛行場を守るために玉砕をいたしました。

 このグアム、硫黄島、サイパン島は、太平洋戦争の日本防空死守圏の第一線でありまして、飛行場を守るため、壮絶な戦いがありました。最後の司令部でありましたマンガン山というところに慰霊碑が建っておりまして、そこで我々は、祖国日本のためにその誠をささげた英霊を慰霊いたしましたが、私は、司令部があった洞窟に入り込みまして、その中で、最後、指揮官は何を考え、何を思っただろうかということを思ってみました。そこでは祖国を思った方々の無念の気持ちというものがわいてきましたが、私は、再び日本国民が異国の地で散華、玉砕するという悲劇を起こしてはならないと誓いました。

 そのためには、何があっても日本が国際社会において絶対に孤立してはならないこと、国際情勢をよく見て判断し、まず日本とアメリカが戦わないことが第一であり、そのためにアメリカと安全保障条約を結んでおりますが、この日米安全保障条約というのは絶対に必要であると再び認識をいたしたわけでございます。

 この日米安保条約、結ばれて五十五年、世界で最も成功した二国間条約の一つでありまして、これまで一つ一つ信頼性の向上を図ってきたわけでありますが、二〇〇五年の二月に米軍の再編協議が行われて、共通の戦略目標を公表しました。その後、十月の2プラス2では、その目標を達成するための日米両国が負うべき任務と役割、それに必要な能力が明らかにされましたが、その際、今後強化すべき活動として次の十五項目を挙げております。防空、ミサイル防衛、PSIの拡散対処、テロ対策、機雷戦、船舶検査、捜索救難、情報・監視・警戒、人道支援活動、復興支援、PKO、インフラ施設の防護、大量破壊兵器の廃棄、相互の後方支援、施設の提供、そしてNEO、非戦闘員の救出、また、新たな脅威や多様な事態として、島嶼の防衛、特殊部隊対処が特記をされております。

 この合意につきましては、もはやアメリカ一国のみでテロや大量破壊兵器を拡散することを防止できない、やはり日米同盟のパートナーの協力が不可欠であるという約束でありますが、これらの日米同盟の強化に防衛省はどのような対応をされているのか、また、この内容を検討する特別の部署やチームを設けて検討を進めておられるのか、この点についてお伺いをいたします。

久間国務大臣 確かに、二〇〇五年十月に2プラス2でこれから先の戦略としての方向を示されたわけでございますが、昨年九月二十五日でございますから、私は二十六日に就任しておりますので、その直前に防衛省でも訓令を出されまして、こういうような防衛省としての検討を進めていくために米軍再編実施本部というのをつくって、そのもとに役割・任務・能力部というのをつくりまして、これから先の役割、任務、能力をどういうふうにして高めていくか、あるいは発揮していくか、そういうことについての方針を決めて進んでおるところであります。

中谷委員 この合意につきまして、私は、もう一つの目玉は司令部同士の協調、調整だと思っておりますが、現に横田基地と座間に司令部が参りまして、日米間で協力をしていこうということですが、今回の米軍再編の柱は、この共同作戦、情報共有、共同訓練、基地の共有使用であると考えます。

 そこで、自衛隊と米軍は連携を強化して、統合運用も強化しておかなければなりませんが、この点、防衛庁はどのようにしてこの強化を進めていくのか。

 そして、報道では、連休には2プラス2が開催されるように承知しておりますが、世界の中の日米同盟を目指す上において、では、これから日米安保のどの分野において協議を進めていくのか。

 また、日本は集団的自衛権というものは戦後封印をしてまいりましたけれども、今後、この集団的自衛権について、日本の防衛に必要なものであるのかどうか。現在の憲法で運用を研究すると申しますが、一方で、憲法改正で堂々と国民に問うべきだという考えや声もございます。久間大臣の集団的自衛権の考え方について、お伺いをいたします。

久間国務大臣 今おっしゃいましたように、統合運用というのは必要でございますから、まず、自衛隊の中でも統合運用を今スタートさせたところでございますが、今度は米軍とも統合運用をできるような、そういう日ごろからの体制づくりが必要で、そういう点では、今度の米軍再編で、横田に米軍の、空というよりも、在日米軍の司令部が横田にあるわけでございますから、それと自衛隊の空とが隣り合わせに一緒になるということは大変いいことでございまして、そういう形で、陸上自衛隊と陸軍の座間との関係も近接するわけでございますから、非常にお互いの連携が図っていけるんじゃないかなと思っております。

 いずれにしましても、そういう形で、これから先は日米が双方一緒になって、共通の戦略目標を立てながらやっていくという方向が示されたわけでございますので、それに向かって進んでいきたいと思っております。

 そういう中で、今度の2プラス2は、とりあえずは、向こうの国防長官がかわられたわけでございますので、まずは今までのこういった流れをお互いが確認し合うようなところからいくのが一番いいんじゃないかなと思っておりますし、それと同時に、運命共同体じゃないけれども、共同でやろうとしますと、やはり整備も補給も、あるいはまた輸送も、そういうことについても共同で対処できるものについてはやらなきゃならない。

 そのときに若干問題になりますのは、やはり、米軍があるいは米国が、日本に対して情報の提供だけではなくていろいろなことをしてもらおうというときに、どの程度秘密が守れるか、そういうことに対する不安もございます。

 そういう点では、我が国の場合は、御承知のとおり、防衛秘密については法律改正されまして、かなり強化されておりますけれども、民間も含めて整備を行うとか補給をやるとか、いろいろなことをこれからやろうとしますと、やはり共通の土俵に乗っておらなければいけませんから、世界各国と結んでおるGSOMIAみたいなものについても、やはりこれはこれで考えていかなきゃならないんじゃないかなと思っておりますから、そういうことも含めて、忌憚ない意見の交換をして一つの結論を出せればいいなと思っているところであります。

中谷委員 そういう点においてもしっかりとしたお話を進めていただきたいと思います。

 今の、テロや大量破壊兵器の時代を迎えて、アメリカ単独ではなかなかアメリカの安全も維持できないという時代を受けておりますが、もうそろそろ日米安保条約も五十五年たってきておりますので、実際に世界の中の日米同盟とまで宣言をするぐらいでありますので、日本としてもやれることはやっておかなければならないのではないか。

 日米でこの考え方の差はどこの辺にあるかといえば、その置かれた状況で、日本は憲法がありますので、なかなか必要最小限度以上のことを自国でできないという状況があります。しかし、アメリカのプレゼンスにおいては、確かに、中国、ロシア、北朝鮮などに対峙する核の傘として、盾と矛の関係、我が国にとりましては軍事的な後ろ盾であり、また守護神であって、それを背景に外交が展開している部分があろうかと思います。

 一方で、米国にとっては、別にアメリカの守りを日本に直接期待する必要がなくて、イラクや東アジアの軍事行動においても、あくまでも国家の、アメリカの意思で行動して、日本との直接的な共同作戦も必要ないという立場でありますが、しかし、日本に基地を置いておくことについては非常に意義が大きいということで安保条約が続いているわけでございます。

 しかし、本当にいざというとき米軍が行動してくれるかどうか、これは日本自身にとっては非常に甘い依存心があるのではないか。何をやっても米国が守ってくれるとは限らないわけでありまして、やはり信頼関係と協力関係、こういうものを維持しなければ同盟関係が成り立たないということで、ぜひ今後、日本はやることができるような国になるような視点でまた検討していただきたいというふうに思います。

 そこで、グアムの移転ですが、グアムを視察したときに、グアムの準州、直接的な州じゃありませんが、そこのカマチョという知事があいさつに来られまして、今回の沖縄海兵隊のグアム移転の意見を伺いました。彼は、グアム移転は、グアム成長の観点から、島民にとっても重要な機会をいただくことであり、地元としても移転を歓迎する、グアムにとってもいいチャンスであり、同時にチャレンジであるので積極的にサポートしていきたいという歓迎のあいさつがありました。

 それから、海軍のライディック・マリアナ海軍司令官は、グアムの立地条件は戦略的に重要であり、米軍の戦略展開、即応体制、ISR、これは情報監視活動ですけれども、そういった能力を向上させる、そして、アジア太平洋の安全保障協力の促進に寄与するとともに、自衛隊など同盟国の部隊に十分な訓練機会を与えることが可能であると言いました。

 現在も航空自衛隊が御当地で訓練をいたしておりますが、日本では空域とか周波数の問題があってダイナミックな訓練ができません。ところが、こちらでは射爆訓練とか遭遇戦などが訓練できるということで、大変効果があると聞いておりますが、日本には米軍が駐留して、基地の地位協定を結んでおります。では、日本がアメリカとアメリカ国内に地位協定を結べるかといいますと、これは、憲法上、私は制約がないのではないかと。グアムに訓練を目的とした日本の施設を建設して、陸海空自衛隊が訓練をする。また、災害やPKOなどの際に、こちらに事前に資材の集積や補給のポイントなどの施設があれば、迅速に海外の活動も可能になってくるわけであります。

 このように、米国と地位協定を結んで、こちらの方に日本の自衛隊の施設を建設しておくということにつきましては、これは私の考えでありますけれども、大臣はどう思われるのか、その必要性についてお伺いします。

久間国務大臣 アメリカとの共同訓練がこれから先必要になってくるというのはよくわかりますし、またそのときに、グアムを一つの共同訓練をする場所として使わせてもらうというのはいいわけでございますが、現在の自衛隊法では、日本の自衛隊が外国に駐留するということは想定しておりませんで、今、部隊の配置等においてもきちっと場所が規定されているわけでございますから、現行の法律では、そういうことは想定していないということが言えると思います。

 それと、憲法上どうかといいますと、私は、これは必ずしも憲法で否定するものではないわけで、武力行使は否定しておりますけれども、共同訓練をするためにそこにとどまって施設を持つこと自体までも禁止しているとは思いません。

 しかしながら、現行の自衛隊法その他を照らし合わせますと、他国の領土の中に基地を、施設を持つということについては想定していないんじゃないかなと思いますので、これについては、直ちにいい考えだと同調するわけにもいかないというのが、与えられた法律の枠内で私たち防衛省・自衛隊は行動するわけでございますので、その辺は御理解賜りたいと思います。

中谷委員 目的が何であるかということではないかと思いますが、現にイラクの復興支援におきましては、航空自衛隊がクウェートにおいて、アリ・アルサレム基地において長期駐留をいたしまして、国際活動を行っております。

 しかし、グアムにおいては、日米同盟であって、やはりお互いの信頼性の向上や訓練による技術の向上などを考えますと、米国が受け入れをする、そして目的が訓練であるというならどうかということでありますが、今後御検討いただきたいというふうに思います。

 最後、ミサイル防衛についてでありますが、このたび、PAC3が配備をされることになりました。そして、閣議において、緊急事態に対する準備の命令もされるということですが、実際にこの準備命令が出た場合に、PAC3の部隊がどこかの重要施設を守るために基地から出る場合もあります。

 その際、武力攻撃事態とかおそれ事態におきましては、私有地の使用とか道路の使用とか自治体の協力とか、法律で規定されておりますが、その前の準備段階においての土地の使用だとか住民との関係、また一番の問題は周波数でありまして、非常に自衛隊の周波数の帯域が狭いために、こういったミサイル防衛の場合にはいろいろなジャミングとかがかかりまして、たくさんの周波数を切りかえしながら使わなければならないと伺っておりますが、こういった周波数の確保も、武力攻撃事態でないので、いかに確保するかという問題もございます。

 こういった場合の部隊の事前の準備について、可能な態勢をとっておられるのかどうか、大臣の御所見を伺います。

久間国務大臣 正直言いまして、十九年度に配備するのを十八年度に、PAC3については急ぎ前倒しで入れたこともございまして、あの法律をつくられた当時からいろいろな検討はされておるのかもしれませんけれども、当時の皆様方の意見等を聞いてみても、今委員が言われたような問題、あるいはまた車が移動していく場合、車というんですかね、そういうふうに基地から出て移動する場合の交通規制の問題とか、いろいろな点では、まだまだ詰まっていない点があるんじゃないかなと思います。

 したがいまして、とりあえずは、現在のはそのまま入間基地で使うという前提に立って、しかも、今回の緊急対処要領というのは、一カ所でございますから首都圏用につくったわけでございますので、これから先、いろいろな問題がどの辺にあるのか、そういうことについても、これはおくればせながら、試行錯誤的にいろいろな問題点を挙げながら整理していく、そういうような状況にある。正直言って、そんな問題がたくさんまだ残っております。

中谷委員 現在はまだ導入直後ということで、まだまだ準備しなければなりませんが、来年になりますと、イージス艦のSMDの方がもう配備になりますし、アメリカ自身のイージス艦の部隊も日本海に来る可能性もあるわけであります。

 米軍の方は、ミサイルの発射につきましては、もう既に部隊に権限を移管しまして、速やかに対処できるROEという行動基準が整備をされております。米軍は、宇宙に早期警戒衛星も上げていますし、独自の情報入手能力もありまして、飛んでくるミサイルを発見したら直ちに撃ち落とすということでございますが、日本の場合には、この前の閣議の決定においても、防衛庁長官の準備命令がないと準備にかかれないということで、すなわち、撃ち落とすことができなくなります。

 しかし、SMDが配備されますと、独自でその発射の情報も探知できるようになりますし、また、よりさらに時間が緊迫した対処が求められるわけでもありますし、はたまた、アメリカのJTAGSという、これは、早期警戒衛星から直接情報を受信できる装置でありますが、今まで日本にありませんでした。韓国にあって、韓国は備えをしておったんですが、韓国の米軍は。NORAD経由じゃなくて直接三沢が情報を入手できるということで、より一層、我が国のそういったミサイル情報と米側のこういったミサイル情報の連絡調整と指揮運用、これがうまくいかないといけないと思います。

 その際、ROEもそうですけれども、やはり日本も直ちに撃ち落とすことができるということを現場に与えておくべきではないか。ちょうど、他国に飛んでいくようなものにおいては非常に政治判断が必要かと思いますが、ミサイルが我が国に向かってくる場合においては、これはもう政治判断というよりも緊急事態の常時対処、つまり、火事が起こったら、スプリンクラーがあって自動的に消火をするようなものと同じように、ミサイルが飛んできた場合には直接対処できるという形を構築しておくべきではないかと思います。

 もう一つの例としては、巡航ミサイル、これにおいても防空対処をするということで、飛行機の場合は人間が操縦していますのでどこへ行くかわかりませんが、ミサイルの場合は一目散に目標に飛んでくるというときも、現行においては、緊急避難ということで判断できればいいんですけれども、なかなか現場においても判断しづらいと思います。

 こういった点において、ミサイル防衛における法律も検討するべき内容が多いんじゃないかと思いますが、この辺においての大臣のお考えを伺いたいと思います。

久間国務大臣 この法律が二、三年前につくられましたときは、私自身が直接携わっておりませんので、今みたいに、防衛庁長官が、その当時は防衛庁長官ですが、防衛庁長官が期限を定めてそういう対処要領をつくる、そういう法システムになっておるわけでありまして、今委員が御指摘になったような、そういうようなことはそのとき議論されなかったんだろうかというような思いも、私自身もございます。

 しかしながら、初めてのことでございますから、やはりそこは、いろいろなことを考えながら、期限を付して、閣議の決定をして、緊急対処要領をつくっておいて、いざというときに備える一応の仕組みをつくられたんだろうと思っておりますが、これにつきましても、これから先いろいろと議論はあるんじゃないかなと思っております。

 ただ、今度のものはあくまでPAC3を念頭に置いてつくっておりますが、巡航ミサイルについては、PAC2というんですか、旧来のそういうので対処する方が合理性といいますか、費用対効果のことからいきましても、今度のペトリオットPAC3を使うというのは現実問題としてあるのかなという思いもございますので、そういう点もしかし念頭に置きながら、これから先検討していきたいと思っております。

中谷委員 巡航ミサイルというと、いわゆるトマホークのようなミサイルですが、これは技術的にはやはりPAC3では対処できないと聞いておりまして、現行のPAC2のペトリオットで対処しますけれども、実際に飛んできたときに迎撃ができるかといえば、これはなかなか現場ができる状況ではないというふうに聞いておりますので、またこの辺も研究をしていただきたいと思います。

 では、最後になりますが、今回の米軍再編というのは、お互いの目標を決めて、大きな軍の再編ということで、確かにアメリカの方はダイナミックな転換をしておりますが、では、日本の自衛隊の防衛体制というのはどれほど転換したかというと、三年ぐらい前にできた防衛の大綱、それに従って行っておりますが、この合意というのは、その後の合意でかなり大きな、指揮運用、装備においての変化が伴っております。

 現実には、沖縄の海兵隊の司令部、これがなくなるわけでありまして、単純に考えますと、その分、九州南西においての自衛隊の役割、機能というものが充実されなければおかしいと思っておりますが、この米軍の変革を受けて我が国はいかなる防衛体制を構築するのか。そのために主体的、緊密な作業と、何をおいても変えるための予算というものも必要になってくると思いますが、そうなりますと、防衛大綱の新しい見直しということも念頭に置かなければなりませんけれども、こういった新たな体制、また、あり方のための検討会議などを行っていく御意思があるのかどうか、大臣にお伺いしたいと思います。

久間国務大臣 今おっしゃられますように、米軍の再編に合わせて我が国自身も、先ほど言いましたように、役割、任務、能力、こういったものを、やはりどこまでをどういう能力で受け持つかということを決めていかなきゃならない、そういう時期に来ておるわけであります。

 ただ、我が国は、御承知のとおり今財政再建の渦中にありまして、防衛予算はそれでなくても非常に厳しい状況でございます。それに、今言いましたように、ミサイル防衛システムの導入でありますとか、あるいはまた米軍再編に伴う出費でありますとか、いろいろなものが来ますので、気持ちとしては、我が国の再編も合わせて一生懸命やらなきゃならないわけでありますけれども、残念ながら、そちらの方が少し、半歩おくれている、そういう感じはぬぐい切れません。

 さはさりながら、私たちも、そういうような厳しい状況ではございますけれども、やはり米軍の再編と合わせながらこちらの任務、能力も高めていく、そういう努力をしていきたい、そう思っておるところであります。

中谷委員 確かに、財政的な問題はあろうかと思います。しかし、国家の安全保障、防衛というのは、いかに国と国民を守っていくかということで、これは、米国の変化に伴う我が国の防衛という観点もありますし、また、GNP比で考えますと日本は一%以下で、ほかの国々に比べて、中国などに比べて比率も少ないわけでございますので、ぜひその目的を達成するという見地でこれからも御検討いただきたいというふうにお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

木村委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 議題となっております米軍再編法案に関連をいたしまして、質問をさせていただきます。

 まず最初に、このトランスフォーメーション、それからいわゆるGPR、グローバル・ポスチャー・レビュー、この再編法案の前提、背景となっておりますトランスフォーメーションの問題、またグローバル・ポスチャー・レビューの問題、これは私、非常に重大なテーマであると認識をいたしております。

 冷戦終結後、長いことポスト冷戦ということが言われておりましたが、具体的にどういうポスト冷戦の時代に安全保障の状況が出て、どういう概念でどういう対策を打つかはなかなか流動的だったわけでありますけれども、ここに来てやっとこういうトランスフォーメーションあるいはグローバル・ポスチャー・レビューということが明確になってきたと思っておりまして、これは、私は、ある意味で安全保障問題の新しいパラダイム形成、パラダイムシフトというふうにとらえるべきではないかと思っております。それほどの大きなインパクトを持つ考え方の変化というふうにとらえるべきではないかと思っております。

 特に、脅威の対象が従来的な伝統型国家の脅威から非常に多様な脅威に変わってきた、また、新しい脅威が発生をしてきたということ、また冷戦期には大体どこで紛争が起こるかがほぼ予測をできたわけでありますけれども、今は世界じゅうどこでもむしろ起こり得るという状況になってきております。

 それからまた、もう一方は、いわゆるRMA、軍事における技術革命、こういった情報通信技術または輸送技術等における革命的な変化、これによって軍事的な技術の可能性の面で大きく変化がありました。

 こういった総合的な環境変化のもとで、やっとここに来てトランスフォーメーション、このグローバル・ポスチャー・レビューという考え方が出てきたということは、これは非常に私は重要なパラダイム形成であると思っておりまして、この環境の変化は、我が国も同じ前提がありますので、やはり我が国としても二十一世紀の専守防衛の戦略はどうあるべきか、これはしっかりと考えていかなければならないかと思っております。

 そういった意味で、まず最初に、トランスフォーメーション並びにグローバル・ポスチャー・レビューについて、この本質を政府としてどのように認識しているのか、また、我が国の安全保障体制に今後どのような影響を及ぼしていくのかにつきまして、できるだけ突っ込んだひとつ見解をお話しいただければと思っております。

久間国務大臣 確かに、世界的な規模での動きというのは、国対国ではぶつかり合う、そういうような状況がなくなってきて、不確定な、多様な危機がいろいろな形で起きるだろう、そういうものに備えなきゃならないという状況にございます。だから、アメリカもそういう方向で動いているのは事実でございます。

 ただ一方、我が国の周辺の場合ですと、まだそういうような、アメリカが、ヨーロッパその他で経験しているような、そういう変化じゃなくて、いまだに国対国の、あるいはまた国対国がぶつかったときにそれに派生して我が国がまた巻き込まれるというような、そういう状況がないわけじゃないわけでございますので、そういう点では、空白になってもいかぬ。日米安保条約を基軸とする我が国の防衛というのがきちんと残っていないといかぬ。そういうような問題がございますから、世界的な動きとは別に、我が国としては、そういうような状況を念頭に置きながら、さはさりながら、アメリカ自身がそういう動きの中でいろいろな変化をしているときに、我が国としては、どういうような形でそれに対応したらいいのかというのはやはり考えていく、そういう時期に来ているんじゃないかなと思っておるわけであります。

 したがいまして、今度のグアムへの移転等につきましても、やはり我が国としては、海兵隊が沖縄に今非常にたくさんおるというのが、アメリカがグアムへ司令部を持っていくという動きになってきたのを、これはいい幸いだということで、八千人を向こうに移してといいますか、沖縄から撤退してもらうというようなことをお願いして、それが実現することになったわけでございますけれども、だから、そういうような動きがありながら、抑止力は維持しなきゃならないという問題をどうとらえていくか、これが我々のこれから先の課題じゃないかなと思っております。

遠藤(乙)委員 これは私の印象なんですが、アメリカのこの検討は非常に本格的でありまして、非常にグローバル、また戦略的であるということは非常に印象深く見ているわけでありますが、他方、我が国の受けとめは、政府も大変努力をしておられますけれども、どうも非常にローカルで、かつ戦術的ではないかという感じがしております。

 確かに、いわゆる沖縄の負担軽減等々、これは非常に重要な問題であり、絶好のチャンスということは間違いありませんけれども、これだけではない。やはり今回のトランスフォーメーションは非常にグローバルな、戦略的な問題であって、ここをしっかりと押さえておかないと、今後日米同盟の対話にそごを来す可能性があるというふうにちょっと危惧をしております。そういった意味では、もちろん我が国独自の地政学的事情はあるわけでありまして、それは踏まえなければなりませんけれども、単にローカルにとどまらず、やはりグローバルな点についてもよく分析、認識をしておく、また戦略的なところもしっかり押さえておいた上で、どう対応するかというところを我が国はしっかりと押さえないと、今後、日米同盟の運用に当たって、そんなはずじゃなかったとか、国民に対する説明もいろいろまたそごが生ずる可能性がありますので、ぜひこの点はよく、本格的な取り決めをしていただきたい。先ほど、中谷議員の質問にもありましたけれども、同じ趣旨で私も申し上げたいと思っております。

 そういった意味で、自衛隊のトランスフォーメーション、こういったこともきちっと打ち出していいんじゃないかと私は思っております。九五年の大綱から二〇〇四年の大綱ですか、確かに大きな変化が見られますし、統合運用の問題とか技術の問題とかいろいろな面で、まさにトランスフォーメーションに値する要素はたくさんあるわけであって、むしろ正面から、二十一世紀の新しい安全保障、また我が国独自のそういった地政学的事情も踏まえた上で、専守防衛の新戦略あるいは自衛隊のトランスフォーメーションということをしっかりと打ち出すべきではないかと思っております。

 特に、大臣は、防衛省移行につきまして、政策官庁ということを非常に強くアピールされておりますので、まさに戦略的に物を考えてしっかりと国民に説得していく、そういう論理を持った防衛省として転身しなきゃならないと私は思っておりまして、ぜひそういう方向で検討すべきだと思っております。

 自衛隊のトランスフォーメーションということについて大臣はどうお考えか、お聞きしたいと思います。

久間国務大臣 自衛隊は、そもそもが我が国の専守防衛ですから、そういう意味では非常にローカルなんですね。限定されていまして、これが世界に飛び回る、今度は国際協力業務が本来業務になりましたが、それは全体から見ますとやはり少ないわけでありまして、そういうようなことが一つあります。

 それともう一つは、防衛大綱は五年ごとに見直しをやっておりますけれども、十年を一つのでやりますけれども、現実には、その地域の経済と結びついておりますから、なかなかそう簡単に変えられない、そういう点が実はありまして、ここはもう少し早く、こういうふうにシフトしたらどうかなという思いがみんなの頭にあっても、それを現実に変えていくとなると、やはり国内政治との関係もございまして、そう急に変えられない、そういう問題がございます。これを国際的に、アメリカみたいに国際舞台でやる場合でしたら、相手の国のことよりも自分のことを中心にさっと変えられるんですけれども、やはり同じ地域でございますから。

 それと、例えば陸上自衛隊について言いますならば、やはり我が国は北から南まで災害等があるわけでございますから、専守防衛という防衛のサイドだけではなくて、やはり、いざ災害があったときの派遣の体制、そういうことも念頭に置かなければなりません。

 今日では、極端な言い方をしますと、太平洋側というのはそんなに戦略上、そちらの方からは、昔と違って、余り攻撃の、着上陸のおそれはないかもしれませんけれども、逆にそういったところにも陸上自衛隊をやはり置いておかないと、いざというときの災害の応援その他を考えますと必要なわけでありまして、そういう点で、いろいろと難しい点がありますから、アメリカみたいにトランスフォーメーションという形で直ちにやりにくいという点があることも御理解賜りたいと思います。

遠藤(乙)委員 私は何もアメリカに合わせてトランスフォーメーションをやれと言ったわけでは全くありませんで、日本独自の専守防衛という基本的なスタンスそれからまた災害問題、これを踏まえた上で我が国独自のトランスフォーメーションを戦略的な主体性を持ってやるべきだということを申し上げているわけで、その点はぜひ誤解のないようにお願いしたいと思っております。

 ただ、アメリカの問題意識はよく理解をした上で、その上で対応していかないと、今後そごを来す可能性があるので、その点はぜひ、そういったグローバルな、また戦略的な意識を持った上で取り組んでいただきたいということは要望したいと思っております。

 続いて、グアム島への海兵隊移転の件なんですが、これは非常に私は政府がよく努力をしていただいたと高く評価をする点でありまして、在日米軍基地の七五%が集中する沖縄、沖縄を視察するたびに心を痛めるところがあったわけでありますけれども、そういった意味では一つ大きな前進であるということで、これは高く評価をするところであります。

 また、グアムの現地視察をして、グアムの方も非常に歓迎しておりますし、また沖縄と違って、基地はあっても基地問題がないという非常にいい状況にありますので、これは非常に一石二鳥三鳥の政策と。グアムの振興発展にもつながり、また沖縄の負担軽減にもつながる、また、さっきの中谷委員からもあったように、日米共同訓練の場にもなり得るということで、一石二鳥三鳥だなという気がいたしましたので、ぜひこれは成功させなきゃならないと強く感じた次第であります。

 その上で質問なんですが、今回のグアムへの海兵隊の、特に司令部機構の移転によって、抑止力は維持されるということになっております。私もそういうふうに理解はしておりますけれども、なぜ抑止力が維持されるんだという根拠を、説明をちゃんと米側から受けているのか、あるいはまた政府としてしているのかという点でございます。この点につきましては、まず、それだけの海兵隊が八千人、グアムに移るわけでありまして、なぜそれによって抑止力は問題なく維持されているというのか、この点につきましての御説明をお願いしたいと思います。

久間国務大臣 詳しい説明はまた事務方から聞いてもらっても結構ですけれども、私はこう考えております。米軍自身が判断したのは、我が国を取り巻く環境その他からいって、司令部が移動しておっても、最近のいろいろな輸送体系あるいはまた通信、そういうようなことから、機能的には十分機能し得る。また、それと同時に、米軍は今、我が国の防衛と同時に多機能的にいろいろなことを展開する。そのときに司令部が沖縄にあることとグアムにあることとでは、グアムの方がむしろ自由度が高いんじゃないかなとか、いろいろなことをアメリカ自身が考えた上でそれは判断したんだろうと思います。

 我が国にとって大事なことは、そういう米軍の動きは動きとしながらも、我が国の安保条約の目的がきちっと達成されるかどうか、そういう観点から、それが十分達成されるならば、世界的ないろいろな戦略の一環として、グアムならグアムに司令部が移ったとしても、うちの方はいいんじゃないかと。それと同時に、八千人海兵隊が減っていくということは、沖縄の負担がそれだけ軽くなるわけでありますから、それはそれでいいんじゃないかというような、向こうの動きに追随したと同時に、我が国としても、日ごろから沖縄からいろいろな要望があった、それを実現するチャンスだという形でそれに乗っかったというようなことが本音じゃないかなと思っております。

遠藤(乙)委員 本音の御説明を伺いまして、よくわかりました。

 そこで、海兵隊移転というのは非常に結構なことで全面的にこれを支援しなきゃなりませんけれども、また沖縄の現地の人たちから見れば、司令部よりも戦闘部隊の方が移転したらもっとよかったんじゃないかということですよね。実際にいろいろ問題を起こすのは戦闘部隊の人たちが多いわけですから、沖縄の現地の人たちから見れば、どうせ八千人移転するなら、戦闘部隊の方が移転してくれて、司令部が残って、いざというときに戦闘部隊はすぐに沖縄に駆けつけるという方がベターなのではないかという気がいたします。そういった交渉はされなかったんでしょうか。また、アメリカ側としては、どんな論理で戦闘部隊を残したんでしょうか。

大古政府参考人 海兵隊のグアム移転につきましては、従来から累次申していますとおり、沖縄の負担軽減という目的もありますけれども、他方、日本防衛の抑止力の維持という観点もございました。そういう観点で、今回、グアムに移転する海兵隊につきましては司令部要員中心ということでございますけれども、グアムに移転した後も海兵隊として日本の防衛の任務は残るというふうに聞いております。そういう中で、万が一のときに日本に駆けつけるような場合におきまして、やはり司令部要員ですと、重たい装備品がないということで、比較的早く移動できるというようなことがアメリカの考えにあったというふうに承知しております。

 また、他方、先ほどの抑止力維持ということで申しますと、別途、高速輸送艦ですとか輸送機ですとか、そういうものについては日米それぞれの立場でその整備に努めていくということで日米合意していますので、そういう意味でも、抑止力の維持の低下にならないように措置したということでございます。

遠藤(乙)委員 私は、沖縄とグアムとを考えた場合、逆に司令部を沖縄に置いておいて戦闘部隊がグアムに行ったとしてもそんなに大差はないのかなという気は個人的にはしております。高速輸送艦、多分四十八時間以内で輸送できると思いますし、また、いろいろな装備は事前に沖縄に集積をしておけばいいわけであって、いろいろ工夫をすれば、司令部を逆に沖縄に残して、おとなしい、紳士的な司令部を沖縄に残して、いわば荒っぽい戦闘部隊はグアムに行くというのも、そういう選択肢もあったんじゃないかと思っておりますが、決まったことですから、それ以上言いませんけれども。

 いずれにしても、さらなる沖縄の負担軽減につながるような形でこのグアム移転を成功させるべきだろうということを思っております。ぜひとも、今回の海兵隊のグアム移転は第一歩として、全力を挙げてひとつ成功に向けて努力をしていただきたいことをまず要望しておきたいと思っております。

 続いて、座間へ今度米陸軍の第一軍団司令部が逆に移転してくるということですよね。これは、第一軍団の司令部が米本土から座間へ逆に移転してくるということですよね。これは、今の海兵隊の司令部がグアムへ行くのと逆の動きになっているんですけれども、これの理由、意図ということについては、どういうことなんでしょうか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 在日米陸軍司令部の改編につきましては、先ほど来先生の御指摘がありました、世界的な米軍のトランスフォーメーションの一環として行われるものであるというふうに承知しております。

 日本を防衛する観点から、それからこの地域の平和と安定を確保するとの観点から、米軍としても、一層迅速かつ柔軟な対処を可能としたいということもございまして、高い機動性及び即応性を有して、統合任務に対処可能な作戦司令部組織として改編する必要があるというふうに承知しております。

遠藤(乙)委員 この座間へ第一軍団司令部が移転してくるということの意味、将来への影響ということは、なかなか現時点では、必ずしも明確でないわけなんです。私の推測では、多分、これは受け入れ部隊、受け入れの準備態勢であって、いざというときには、いわゆる戦闘部隊が、陸軍が移ってくるのではないかという、その一つのフォーメーションだろうという気がいたしております。

 特に、今、アメリカの場合には、陸軍についても、従来の師団という考え方から、もっと機動性、緊急即応性を重視して、旅団、戦闘旅団という形で、いわゆるBCTですかね、そういう形で、旅団戦闘チームというような形で、もっと柔軟に、かつ機動的に、緊急対応がもっとしやすいような形で今編成を変えていて、従来型のいわゆる師団等の編成と随分変わってきている。トランスフォーメーションの中で、従来型のいわゆる団の編成からまた随分変わってきているわけであって、この辺の認識もよく持っておく必要があるかと思っております。

 第一軍団司令部がここにあるということは、有事の際、あるいはアメリカが判断したときには、いわゆる旅団戦闘チームが多分、その麾下にあるのがそこに集まってくる、米本土、アラスカあるいはハワイ等から来るんだろうと想定されますけれども、そういう認識、理解でよろしいんでしょうか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 米陸軍は、今までのいわゆる師団中心の編成から、柔軟性、機動性、即応性を有する旅団中心の編成に移行するという考えであることについては、先生御指摘のとおりであると思っております。

 他方、日本防衛という観点からは、今回は司令部の改編だけでございますけれども、従来から、日米安保体制のもとに、米本土なりから来援兵力が来るというのは十分あり得ますので、今回の座間の司令部については、そういうときの核となる司令部になるというふうに承知しております。

遠藤(乙)委員 これは外務省に対して質問したいと思いますが、そういう形で、トランスフォーメーションの中で新たなそういったフォーメーションができるだろう。いざというときには、いわゆる旅団戦闘チームが駆けつけてくるということが想定をされるわけでありまして、従来、いわゆる安保条約上の事前協議については、在日米軍の重要な配置変更について事前協議をするということになっておりまして、陸軍については一個師団程度、それから空軍についてはこれに相当するもの、そして、海軍については一機動部隊程度がいわば事前協議の対象になるというふうに理解をしております。

 この新しいトランスフォーメーションのもとでの軍団編成における旅団戦闘チーム、これの移動、もし日本に来るとなった場合、そういった場合は事前協議の対象になるのか否か、その点についてはどうなんでしょうか。

西宮政府参考人 御指摘のとおり、配置における重要な変更に該当する米軍の規模といたしましては、例えば陸上の部隊ですと、一個師団程度の配置ということが、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解により、日米間で了解されております。

 お尋ねの点でございますが、事前協議制度というのは、具体的事案に即して、我が国が自主的に判断して許諾を決定するために設けられた制度であり、今後とも、日米安保体制の重要な一部であると考えておりますが、そもそも配置における重要な変更を事前協議の主題といたしましたのは、施設・区域の提供など、我が国の受け入れ体制の面で大きな影響があり得るとの考慮によるものであり、こうした見地から、適当な基準として、先ほど申し上げました一個師団程度という規模が日米間で合意されたものでございますので、現在の事前協議制度の基準の見直しを行うという考えはございません。

 なお、ここで話題になっております配置における重要な変更の配置というのは、米軍が我が国の施設・区域を本拠とし、あるいは根拠地として駐留する場合をいうものでございまして、いかなる場合を想定して本拠あるいは根拠地として駐留するというふうに該当するか否かという点につきましても、個々のケースについて米軍の活動の実態に即して判断すべきものかと考えております。

遠藤(乙)委員 そうすると、いわゆる新しい旅団戦闘チーム、これについて、複数の旅団が来る場合、量的に例えば師団規模になった場合、それは事前協議の対象になるんですか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまでも一つの目安として一個師団程度ということでございまして、具体的なケースで考えていく必要があると思いますし、先ほど申し上げましたような実際の配置になるかという点もいろいろと考えてみる必要があると存じます。

遠藤(乙)委員 続いて、岩国の件につきましてお聞きしたいと思っております。

 グアム移転とともに、私は、厚木から岩国への移転、もう一つの非常に重要な要素であると考えておりまして、注目しているところなんですが、今までのところは岩国は反対ということで、非常に混乱しておったということでございますが、この三月二十三日の時点で、岩国市議会が決議案を多数決で採択して、国が判断した安全保障上の施策の重要性を理解し、現実的かつ効果のある取り組みを求める決議案を採択したと。三十四名の議会の方の二十二名の賛成で採択したということがありまして、これは非常に重要な動きだなと思っております。また、市長もこの決議を受けて、重く受けとめたいという発言をしたと伝えられておりまして、かなり柔軟姿勢に転ずる兆候であるのかなというふうにこれは認識をされるわけでございます。

 この岩国への受け入れ、非常に重要な問題でありますので、ぜひ防衛省としても丁寧に、また全力を挙げて、市側またはさまざまな、議会も含めて協議をしていただいて、ぜひともスムーズな受け入れ、市も満足し、住民も満足し、また国も満足できるような、そういった解決にぜひ取り組んでいただきたいと思っております。

 まず、この新しい決議の採択という状況をどう防衛庁としてはあるいは施設庁としては判断をしておられるか、お答えください。

久間国務大臣 私も市議会の皆さん方ともお会いしました。また、市長さんともお会いしました。市議会の皆様方も、そういう決議をされる前でございましたけれども、やはりかなり理解を示していただいております。あるいはまた、そういう市議会とか市だけではなくて、いろいろな自治会がございますけれども、連合自治会等においても、やはり協力するところは協力せぬといかぬのじゃないかという空気が強くなっておりまして、大変ありがたいことだと思っておりますから、これから先も、やはり皆さん方に理解を得るべく努力をしていきたいと思っております。

 市長さんは、選挙のときにそれを掲げてやっておられるだけに、直ちに賛成とはなかなか言っていただきにくい環境にあるかもしれません。しかしながら、やはり、市議会あるいは市の自治会、いろいろなところが、これだけ沖合にあって、厚木と比較したときには、岩国の方は騒音が少ないんだから、日本全国のいろいろなトランスフォーメーションの中で、やはり考えるところは考えぬといかぬのじゃないかという空気については理解を示していただいているような雰囲気もございますので、私たちもまた粘り強く市長さんにも御理解を得るべく努力していきたいと思っております。今言われましたように、丁寧にこの問題については対処していきたいと思っております。

遠藤(乙)委員 その丁寧にという具体的な中身なんですけれども、一つは、多分非常に重要なのは、SACOの関連補助金として十九年度に予算計上が見送られた市庁舎整備補助金三十五億円、これは本来、岩国が期待しておったんですけれども、今までの経緯の中で防衛省はこれを計上しなかったということなわけであります。これがまず非常に重要な、丁寧な協議の一環になろうと思いますので、ぜひ岩国側とよく協議をしていただきたい、これが一点。

 もう一つは、民間空港再開ですね。これも非常に地元の、特に財界の期待が強い、二点目。

 それからまた、愛宕山地域開発事業、これも非常に厳しい状況になっているようでありますが、市としてもどうこれを持っていくかということが今後の大きなテーマになっております。例えば、米軍住宅のここへの建設とか、あるいはまた、特に今、国立病院センターの移転が問題になっておりまして、地元の市並びに住民の側から、ぜひ愛宕山に移してほしいという声が強いようでございます。

 こういった要素をパッケージとしてやっていくことが非常に重要な、丁寧なこれからの説得の具体的な取っかかりになるだろうと思っておりますが、それぞれにつきまして、どういう状況か、どういう見通しかにつきまして、施設庁、御説明を、これは大臣ですか、お願いします。

久間国務大臣 施設庁の場合は、どうせかたい話になりがちでありますから、私なりの考え方を述べさせていただきます。

 これは市長さんにも言った話でございますけれども、確かに、SACOの合意で移ってくるということで、岩国市は市庁舎を建設されて、それに対する補助金を約束してやったわけであります。ただ、それを各年度の予算補助でやりますよという約束でやっておりますので、予算の申請をするときに、今度の米軍再編で反対と言っておられるときに、やはりもう国民の税金を予算編成で計上するというのはなかなかやりにくい環境にあったために予算計上できなかった国側の立場も理解してくださいよという話を私も市長さんにしました。

 さはさりながら、前に一たん約束をして、状況は、こちら側の状況で、こちら側の事由でトランスフォーメーションがもっと違った形になってきたんだということについては、じくじたる思いは私自身だって持っておりますから、その辺はこれから先いろいろと詰めながらやっていこうじゃございませんかという話をしておりますので、そういうことで丁寧にやっていこうと思っております。

 それと、米軍住宅の話でございますけれども、これについては確かにいろいろな、米軍住宅とかいろいろな利用の仕方もありますけれども、現在の土地が、かかった経費が非常に高いですけれども、もし国が買って米軍住宅にしようと思う場合でも、やはり時価が決まっておりますからそれ以上に買うことはできない。そうすると、その差額については、県と市がどうするかという腹を決めなきゃならない問題がその前提としてまずあるわけですね。それがどうなるのか、県と市でよく話し合っていただきたいという話をしております。

 それと、民間空港については、最終的には、これは国交省だけではなくて、民間航空会社が果たしてそこに乗り入れをするのかしないのか、この問題もございますけれども、我々としては、市が望まれるならば市が望まれる方向で、いろいろな形で後押しはしていきたいという気持ちはございますというような形で、市のいろいろな考え方についてできるだけ聞きながら話をしていこうと思っておるわけでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

遠藤(乙)委員 あと一点、国立病院の移転の問題です。これも一言、大臣から。

久間国務大臣 これも、国立病院、まあ厚労省の問題でございますので、他省庁の私どもが言うわけじゃございませんが、やはり市がそういうような気持ちを持っているというのは、間接的にはできるだけ伝えていきたい。

 ただ、国立病院の統廃合の問題というのはまた別の角度からいろいろ議論されるわけでございますから、そういうベッド数が必要かどうかを含めて、それは別のサイドで議論されるので、私は今ここでそれに対して前進する方向での答弁をするわけにはいかぬという、そこも御理解賜りたいと思います。

遠藤(乙)委員 大臣から大変懇切に、また非常に含蓄のあるお言葉をいただきまして、これは非常にいい方向に動くのかなという感じを私は持った次第でございます。

 防衛庁が防衛省となり、特にこういった地元に対するいろいろな交渉、これは大変重要な要素だと私は思っておりまして、今まで以上に政治的な感覚を生かしていただいて、リーダーシップをとっていただいて、話をまとめていただく、大事なことだと思っております。

 政治は技術、政治は可能性の芸術と言われておりますので、今回の市議会のこういう非常に現実的な決議をいいチャンスとしてとらえていただいて、パッケージで進めていただければよい結果になり得るものと私は思っておりますので、ぜひとも、大臣のリーダーシップのもと、防衛省の強力な取り組み、また丁寧な取り組みをお願いいたしまして、私の質問といたします。ありがとうございました。

木村委員長 次に、前田雄吉君。

前田委員 民主党の前田雄吉です。

 本年一月九日に防衛庁が防衛省となったわけでありますけれども、昨年の我々の国会審議を通して、我が民主党も賛成しました。その理由として、やはり、よく大臣もおっしゃっておられましたけれども、自衛隊管理官庁から政策官庁への脱皮ということがあると思いますが、それをぜひ実現していただきたいと思っております。

 最近よく考えますけれども、過去に、よく有事の話をすると、それは大変な議論になってしまって、もう手がつかなくなるような事態に陥っておったわけです。最近のニュースの中で、私は、なるほど、非常にいいことを言われたなというのがありまして、三月十二日のロサンゼルス・タイムズ、米国がイラク撤退計画策定に着手していると報じられたものであります。そこで、報道官の伝えるところとして、ゲーツ国防長官が、起こり得る将来のさまざまな可能性を検討しないのは国家の怠慢であるということを述べておられます。

 国民の生命財産を守る、これは国家の責務であって、そのための防衛政策を議論する、これは我が安全保障委員会の使命であるというふうに思っております。

 そこで、これは防衛省になって初めて提出されました、記念すべき第一号の法案である駐留軍の再編特措法を審議するに当たりまして、この法案が我が国防政策にどのようにかかわるのか、また、抑止力の維持は本当に担保されているのか、あるいは地元の負担は本当に軽減されるのかということを念頭に置きながら質問させていただきたいと思っております。

 まず初めに、我が国、在日米軍の施設も区域も七五%が集中する沖縄にとりまして、この地元負担の軽減という言葉は、沖縄の負担軽減というイメージが最初に浮かんでくるんですけれども、確かに過重な負担を強いられている沖縄の皆さんにとって、国を挙げて受けとめる、こういう発想は必要だと考えます。

 しかし、私は、この交付金制度を見ますと、なかなかそうではないんじゃないかという気がしてしようがありません。財政が逼迫している市町村にとって、厳しい自治体にとって、ここをねらい撃ちにしては、いわば兵糧攻めじゃないかというふうに思います。苦渋な選択をされる自治体に対して、交付金を出してやるからという発想はいかがなものかと私は思いますけれども、大臣の所見を伺いたいと思います。

久間国務大臣 これは、出してやると言うと、何か知らぬ、非常におこがましいといいますか高圧的に見えるわけです。先ほどの岩国の話じゃございませんが、SACOの場合はその都度予算措置でやっておったわけですね。そうしますと、そのときそのときで予算を計上しない場合だって出てくるわけでありまして、受け入れてくれたのにそういうことがあり得るわけですね。

 そういうことはしませんよ、もう受け入れてもらったらきちんと出しますよというのを法律で担保するような格好になるわけでありまして、その市町村にとってみれば、非常に安心して、ここまでいったらこれぐらいきちんと出してもらえるんだということで、その年度で、もうことしは予算は計上しませんでしたというようなことにはならないわけですから。

 だから、そういう点で、むしろ、負担がふえる市町村にとってははっきりそういうふうに書いてもらった方がいい。言うなれば、原子力発電所を引き受けたときに、ああいう立法があって交付金が出ている。そういうようなこともあるわけだから、これはやはり国として、向こう十年なら十年間、そういう形できちんと出す、そういう債務といいますか、責務を明示した方がいいんじゃないかという考え方に立ちますと、私は、その方がかえって親切なんじゃないかなというふうに思っているわけであります。

前田委員 では、この交付金の出し方ですけれども、四段階に分けて出されるというふうに私は伺っております。政府案受け入れがまず第一段階、第二段階がこの環境影響評価の着手、第三段階が施設の着工、第四段階がこの再編の実施と、段階を追って、ここまでやったら出してやる、ここまでやったら出してやるという、市町村に対して、何か、それだったらあめだ、でも、聞かなかったらむちじゃないかというふうに私は思うんですけれども、非常に恐ろしい話じゃないかなというふうに思います。

 具体的に、これから、この法案の中身について議論していきたいと思います。

 今回のこの法案において、米軍再編に伴い負担が増加する市町村を再編関連特定市町村に指定して、当該市町村に再編交付金を交付するなどの措置を定めるが、再編関連特定市町村に指定される区域の範囲や再編交付金の交付額の算定方法など、多くの事項が政令の事項とされている。つまり、これから政令で定めるという話ですね。これらの点について、笹木議員が質問主意書で、例えば再編関連特定市町村に指定されることが想定される市町村について質問しても、答弁としては、この法律の規定を言いかえたものしか返ってきていないわけであります。

 政府として、確かに、法技術的な問題があったり、関係市町村に先入観や予断を与えるという懸念があるかもしれませんけれども、私は、このまま多くの点が政令制定まで明らかにされない、国会がそういったら政府に対して白紙委任状を与えるんじゃないかというふうに思います。非常に懸念されます。

 そこでこれは、再編交付金の上限額、あるいは進捗状況に応じた交付の方法とか、再編関連特定市町村に指定される区域の範囲をどのような基準で定めるか、政令で定めることとなっている事項についてどのような考え方で政令を制定されるのかということについて、この委員会の審議を通じて丁寧に御説明いただきたいと私は思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

久間国務大臣 今の政令の話については事務方の方からどういう基準でやるか説明をさせますけれども、その前に、やはり、段階を追ってというのは、これは電源の立法に基づくものもそういうふうにやっているわけですよ。あの場合は、むしろ、そういうことを具体的に書いていなくて事実上やっているわけですから、うちの場合は、むしろ、こういうような基準でと言うだけまだ法律に前進しているような気持ちでございまして、電源立法の場合は全くそれは任されている、そういうことから、あれを参考にしたのは事実でございますので、だから、他に例がないというわけではございません。

 これは、立法技術的にもそういう別表をつくってやるということがなかなかしにくいし、どういう事業が出てくるか、どういう関係がどこまで入るかというのは、そのときの米軍再編の具体的な事業の内容が進んでみて、そして調べてみないとわかりませんので、そういうような基準等を一応決めておいて、それに基づいて政令で定める、そういう方式をとったわけであります。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

前田委員 大臣、言われる側からすればやはり、段階を追って、こういうふうな段階にこれをのんだら出すぞ、これをのんだら出すぞというふうに感じますので、私は、それは親切というよりも、反対に、言われる側から見ると、ちゃんと言うこと聞けよということでしかないというふうに思いますけれども。まあ、それは見解の違いでしょうから、先へ進みます。

 とにかく、政令を待つというのが多過ぎますので、私は、では、具体的にどういう指針、また基準をお持ちなのかということ、例えば再編交付金の上限額、あるいは進捗状況に応じた交付の方法、これを具体的に御説明いただきたいと思います。事務方で結構です。

大古政府参考人 お答えいたします。

 まず、交付金の交付額の算定でございますけれども、これにつきましては、負担の程度を点数化して、予算の範囲内で交付するように措置したいと思っております。

 再編に伴って住民生活に及ぼす影響の増加の程度ということでございますが、これについては、防衛施設面積の変動ですとか、施設整備の内容ですとか、それから航空機等装備の更新、配備の状況、それから人員の変動、それから、訓練移転の場合ですとどういう訓練移転の内容かというようなことにつきまして、点数化して、交付金の水準を決めていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

前田委員 算定は、いろいろな変動の要素があるわけで、それをもとに点数化してということですけれども、それだったら、きちんとそれを公表したらどうですか、算定式を。いかがですか。

大古政府参考人 この種の基準につきましては、やはり、法案成立後、政令を制定する段階で具体的に検討いたしますので、今の審議の際には、我々としてはその考え方についてはできるだけ御説明したいと思いますけれども、具体的に、今申し述べた、例えば点数について何点だということについては、まだ検討中なので、まだ決まっていないということで御理解いただきたいと思います。

前田委員 今、委員の皆さん聞いたとおりですよ。そんないいかげんな話でこんな法案を出してきてどうするんですか。これはやはり、せっかく防衛省になって初めての法案ですよ、きちんと出されたらどうですか。もう一度。

大古政府参考人 基本的に先ほどの繰り返しになりますけれども、御審議の過程ではいろいろ我々としても考え方を説明していきたいと思いますし、いろいろ国会の御論議を踏まえて、それをも参考にした上で政令をつくるときについては考えていきたいと思っております。

 そういう意味で、先ほど点数化という話を申しましたけれども、ただ、現時点では確定しているわけではありませんし、これ以上具体的な内容についてはまだ御説明できないということで御理解を賜りたいと思います。

前田委員 内容を明らかにして審議をするのがこの場所でしょう。どうしてこれが出せないんですか。これは、国民の皆さんにかわって私たちは聞いているわけですよ。納税者に対してしっかり説明してください。もう一回。

大古政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、交付金の水準につきましては、先ほど言ったような要素を点数化して、政令をつくる際にいろいろ基準を明確にしていきたいというふうに考えております。再三の御指摘でございますけれども、現段階では確定していないということで御理解を賜りたいと思います。

前田委員 いいかげんな話じゃないですか。ちゃんと確定してからここへ法案の形として出したらどうですか。内容がわからなかったら、私たち審議できませんよ、そんなものは。何時間使おうが、そんな、確定していませんとかなんとか、いや、まだ今のところは出せませんとか、何ですか、それは。これは委員会を侮辱していますよ。やはり、納税者にかわってここで審議をさせていただいているんですから、これは防衛省、しっかりその辺をわきまえていただかなきゃいかぬですね。

 さらにまた聞きますけれども、では、再編関連特定市町村に指定される区域の範囲をどのような基準で決めるのか、事務方で結構ですから、具体的に説明してください。

大古政府参考人 御質問につきましては、法案の第五条一項に定める政令で定める範囲内の市町村ということだと思いますが、これにつきましては、再編関連特定防衛施設が所在する市町村のほか、再編の具体的な態様に応じて、所在市町村に隣接する市町村とすることになると思っております。

前田委員 では、政令の定める市町村というんでしたら、その政令がどういうものになるのか言ってください。もう一度。

大古政府参考人 その点につきましては、再編の実施が周辺に及ぼす影響の程度等を考慮いたしまして、当該市町村において住民生活の利便性向上に寄与する事業を行うことが再編の円滑かつ確実な実施に資するため必要であるといったような点に基づきまして、隣接市町村について指定することになると考えております。

前田委員 委員の皆さんで、今の話を聞いて、いや、ここですよと具体的に地域が浮かぶ方がありますか。そういう言葉のマジックみたいなもので、こんないいかげんなことをやってほしくない。何度も言いますけれども、防衛省になって初めての法案ですよ。きちんと決めてから出してくださいよ。

 では、大臣、答弁してください。

久間国務大臣 いや、そうじゃなくて、再編関連防衛施設として、今度の再編事業の中で防衛施設がそこにできるかどうか、そして、できる市町村は、政令ではっきり入るわけですね。それとの隣接する市町村で、それがどこまで関連するかというのは、これはやはり、ある程度そこができてみないとわからない点もあります。かといって、隣接すればどこでも入るというんじゃいかぬわけです。やはりそこで、騒音関係で、隣接して、一体として、そこは気の毒じゃないかというような、例えば岩国なら岩国の、市じゃないけれども市から立ち上がっていくところの隣町村はいいじゃないかとか、やはりそこは、政令にゆだねたからといって、そう恣意的にやるわけじゃございません。まず、再編関連防衛施設がある市町村が入る、しかし、それに関連する市町村も含みますよと、その辺は政令で定めさせていただきたい、そういう考えでございますから、そこはぜひ御理解していただきたいと思うわけです。

前田委員 今大臣は、例えば騒音とかそういうことを具体的に言っていただきました。そういう話をきちんと事務方から私はしてほしいんですよ。どうですか。もう一回。

大古政府参考人 その点につきましては、例えば飛行場であれば騒音が及ぶ範囲、その点について対象となる市町村を指定するということになるかと思います。

 それから、例えば人員の増があるような場合については、米軍の移動等に伴って道路の交通量がどれだけふえるかとか、そういうことが主要になるかなと思っております。

前田委員 初めからそうした説明をしてくださいよ、読み上げるだけじゃなくて。これは、ここの委員会をばかにしていますよ。何ですか、一体。これからの答弁の中できちんと答えてくださいね。いいですか。

 それでは、さらに進みます。

 再編交付金、この再編関連特別事業を実施するために交付されるものであるわけでありますけれども、この再編関連特別事業は、「公共用の施設の整備その他の住民の生活の利便性の向上及び産業の振興に寄与する事業であって、政令で定めるもの」とされ、生活の利便性ばかりでなく、産業の振興も視野に入れたものであるということだというふうに読ませていただきました。また、在日米軍再編に当たって特に負担が増大する地域については特に配慮をする必要があることを考慮し、本法案の中でそれらの地域を再編関連振興特別地域に指定するということですが、この再編関連振興特別地域の整備計画においても、生活環境の整備に関する事項のみならず、基幹的な交通施設の整備に関する事項や産業の振興に関する事項についても定めるということでここに載っておるわけですね。

 私は、防衛省の予算というのは、本当に純粋に我が国の安全保障にかかわる部分に使うべきものであって、産業振興まで担当するようなものじゃないというふうに思うんですね。確かに、関連するといえばそうですけれども、やはり財政法上、財政法は、審議で通った各省庁が持ったもの、それについてきちんと出すということなものですから、私は、産業振興まで手を伸ばすことは、これは不適当ではないかというふうに思うんですけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

久間国務大臣 この再編関連特別振興事業といいますか、具体的に言えば、例えばその地域で、これは地域のために道路網をこの際一緒になって整備する必要があるというふうに、そういう認定をして県知事が上げてきたときには、それはこの再編を進めるためにはやはり非常にいいと判断した場合には、各行政機関の長に加わって、各閣僚で協議を開いて、これは対象事業にしようということで決めるわけであります。だから、そういうときには補助率のアップもしますよと。そして、それは、防衛省がするのではなくて、それぞれの事業の所管官庁がそれを担当しますよ、そのときに補助率のアップはしますよというような、そういうことでございますから、防衛省が直接やる事業とは考えておりませんので、そういうことだったら、やはり米軍再編と合わせてその地域の振興を図っていくということは、私は一緒に考えていいんじゃないかなと思うわけであります。

前田委員 では、政府は、この再編関連振興特別地域として、普天間飛行場代替施設周辺地域と岩国飛行場周辺地域を想定しているという一部報道がありましたけれども、この真意を、事務方で結構ですから、伺いたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 各種報道があることは承知しておりますけれども、お尋ねの地域の指定につきましては、法律が成立した後、再編関連特定周辺市町村に指定された後でございますけれども、都道府県知事からの申し出を受けまして、駐留軍等再編関連振興会議の議に基づき指定することになりますので、現段階で具体的な地域として決まったものがあるというわけではありません。ないということで御理解いただきたいと思います。

前田委員 先ほど来の、本当に、産業振興まで、まだ私はちょっと納得できぬものですから、まあ、確かに大臣のお考えはお考えでいいわけですけれども。

 私は、既存の沖縄振興策とこの法律案に基づく振興策、この整合性について伺いたいと思います。

 既存の振興策については、本年度、一千億円、沖縄北部の振興策がとられて、予算に入っているわけでありますけれども、沖縄担当大臣が所轄している既存の沖縄振興策とこの法案に基づく振興策との整合性について、大臣に御説明いただけたらと思います。

久間国務大臣 沖縄の振興につきましては、別途、沖縄振興という目的からつくられた制度でございますから、それはそれで、これとは別にずっと走っているわけでございますし、特に沖縄振興でやっております公共事業等については、ここでやる補助率よりも高いわけでありますので、多分そちらの方が採択されると思いますから、県からまず上げてこないと思いますね。だから、県から、いや、既存のものじゃないものでこちらの方でやるような事業があります場合にはこちらで上げてくるかもしれませんけれども、それは、上げてきたのを見た上で、それをまた協議会にかけまして、どうするか。そのときには、沖縄担当大臣もありますから、そしてまた沖縄振興法との整合性といいますか、あるいはまたそういう調整もするようなことを書かれてありますので、それはちゃんと念頭に置きながら整理していきますので、競合して非常に困るということにはならないと思います。

前田委員 それでは先に進みますけれども、グアム移転経費及びその分担割合について伺いたいと思います。

 日米で合意しましたグアム移転経費及びその分担割合については、次のようにされております。日本側の金額は総額に占める割合でコミットしたのではなく、施設やインフラの所要に基づき経費を負担するもの、経費については、今後さらに事務的に精査される、このため、財政支出、真水は上限としている、こういうふうにされているわけでありますけれども、実際の負担額及び割合、これは明らかになっていません。

 先ほど来、笹木議員の質問もありましたけれども、やはり、この辺について、何度もお聞きしますけれども、大臣にもう一度御説明いただけたらと思います。

久間国務大臣 これは正直言いまして、こういうようなやり方でやりますよという政府の姿勢が、今度の法律で通りますと、今組んでおります十九年度の予算で調査費も入っておりますから、そういう調査をかけて、いろいろな、現地にどういうようなものを建てるのか、そのときに物価がどうなのか、どういうような形になるのか、我が方もいろいろ言いますけれども、アメリカはアメリカで出してくると思います。

 そういうものを両方から積み合わせて、実施計画といいますか、実施設計を組んで、それで煮詰まっていくわけでありますので、我々としては、またアメリカもそうですけれども、さはさりながら、上限がどれぐらいになるかというものを決めておかないと、特にアメリカの場合は、日本がどれぐらいまで出すのかという、それを決めておかないと、向こうの議会対策もあって、日本としては真水では二十八億ドルだというようなことを一応両者の合意で決めたわけであります。そして、アメリカの方もそれに応じてこれだけだ、そういう形で、合計で百二億ドルというような、トータルですけれども。

 これも言うなれば概算でありまして、先般、予算委員会のときも、参議院の方で聞かれたこともございますが、ちょっと高過ぎるんじゃないか、アメリカで実際やっている住宅はこんなものじゃないぞ、もっと安いぞ、四分の一以下じゃないかというようなことも指摘もされて、それもホームページにも載っておるぞというような話をされましたので、私たちとしては、それも参考にしながら、これから先、アメリカに対しても、実際こんなにかからないかもしれないじゃないかということで詰めていこうと思っております。

 これについては、金額が、こういう数字がこれから煮詰まっていくというふうに理解していただいて、そして、煮詰まりましたらまたそれを予算で決めていくわけでございますので、法案じゃなくて、今度は予算委員会等でも毎年毎年これぐらいを出すというようなことを具体的に決めていくわけでございますから、事業実施までには、スキームとして、大体の金額の、積算単価もこのぐらいだということについては公にすることができるかもしれませんが、現段階ではまだ調査すらしていないわけでございますので、その数字についてはとにかくカウントできないというのが正直なところであります。

前田委員 今大臣が言われたとおり、まだ安く施設ができるじゃないかとか、可能な限りその額を、経費を節約するのは当たり前の話です。

 それと同時に、やはり本法案の審議ということになりますと、大前提として、実際に我が国が負担する額がどのぐらいであるかということを早急に明らかにするべきではないかというふうに私は思います。

 今まで委員会審議を通して私がその議論から受けた心証は、やはり順序が逆じゃないか。政令で定める、今は何も決まっていません、今はまだ調査もしていません、これから金額を決めますと。反対じゃありませんか。これこれこういう政令をつくりました、その上でこういう法案の案文ができました、だから御審議してください、そういう順番がこれからこの審議では必要ではないかというふうに私は思います。

 再度大臣に、私は、我が国の負担額、早急に明らかにすべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。

久間国務大臣 これは正直言って、早急にはなかなか数字は煮詰まらないと思います。これから精査して、そして実施設計を組んで、そして金額が決まるわけであります。

 だから、その前にではなぜ法律を出すかと言われますけれども、こういう法律で、こういう仕組みでやりますよということを法律ではっきりしないと、米軍の方は、日本は出すのか出さぬのか、あるいはまた、どういうような仕組みでやろうとしているのか、やるのかやらぬのか、そこが非常にあいまいになってしまいますと、それではもう進まぬよということになります。

 進まないということになりますと、海兵隊の移転が、ちゃんとグアムの移転が決まってから海兵隊は移るということになっておりますから、今のまま移らないというようなことにもまたなりかねないんですね。

 私は、やはりせめてその仕組みを、こうしてやりますという姿勢をあらわす意味でこういう法律というのは必要だということで、最初は、正直言って、法律が必要なのかどうか、これはJBIC、国際協力銀行法の一部改正をやれば済む話じゃないかという議論も中にはあったわけです。しかし、それでは日本の姿勢がきちんと出ないじゃないか。やはりこれは、日本の今度の米軍再編にかける姿勢をきちっと法律で示すことによって、アメリカと合意をしたこの内容をやりますよということを言うことが、公にすることが大事だと思って、法律を出すべきだということを主張した手前からいいますと、私はぜひこの法律は通していただきたいと思っているわけであります。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

前田委員 確かに、やる気はあるとか姿勢を示すのは大事だと私は思いますけれども、ここは納税者の皆さんに対してきちんと御説明する場です。もちろんアメリカに対しての姿勢もあるでしょうけれども、納税者の皆さんに対してきちんと説明していただく、これこれこういう考えですよということを。だから、政府がグアムの移転経費を、詳細をいつまでも明らかにしないというのは、実のある審議ができない、そういうふうに私は思います。

 では、一体いつになれば、大臣、明らかにしていただけるのか、伺いたいと思います。

久間国務大臣 実施設計を組んで積算して、いろいろな単価について、これぐらいならやれるという、そして向こう何年か、四年なら四年間の見通しを立てて、これで四年間なら四年間で事業を完成するという見通しが立った時点で数字が決まるわけでありますから、その時点で予算を今度は国会にお願いして、JBICが幾ら出資するか、あるいは無利子融資をする場合だったらどれぐらいの金額を融資するのか、そういうのをこの委員会にかけて、予算案として出していくわけでありますので、その時点でそれを御審議いただくわけでありますから、現在は、こういう仕組みでいきますという、それについての制度のつくり方、これを今御審議していただいておりますので、ぜひそれは御理解いただきたい。

 といいますのは、交付金についても同じことでありまして、交付金も、具体的にいろいろなところから上がってきませんと、再編関連でどこまで広がって、どこまで各市町村が受け入れていくか、それによって決まってくる。そのときにまた予算申請をして、予算書を政府内で固めて、御審議を願って決まっていくわけでございます。

 だから私は、数字については、いつということを今ここでなかなか言えないというのはそういうことで、これから先のそういう作業を見ながら決めていくわけでございますので、ひとつ御理解していただきたいと思うわけです。

前田委員 だからこそ私は、では、今は数字は決まらない、あるいは内容が決まらないというのだったら、先ほど来申していますけれども、せめて政令の方向とか方針ぐらいはきちんとこれからの委員会審議で示していただきたいと思います。

 先ほど来出ています国際協力銀行についての質問に移ります。

 私も、国際協力銀行、JBICウオッチャーとして、この七年、JBICを追っかけてきましたけれども、今までJBICは、これはいいことをやったというのは一つしかありません、非常に厳しいかもしれないけれども。環境ガイドライン、これはきちんとされているというふうに私は思います。しかし、例えばパブリックコンサルテーションのやり方一つとっても、関係のステークホルダーを呼ばずに、受注企業だけ呼んで、いや、これでパブリックコンサルテーションですとか言っていましたよ。もうさんざん私も言いまして、やっと環境NGOもそこに加えていただけたとかいうケースもあります。

 それから、異議申し立て制度、これは財務金融委員会でやらせていただきましたけれども、これも非常におかしな話で、融資が決定して実行してからでないと異議申し立てができない。簡単に言いますと、住宅を買ってからしか、ここの家は欠陥住宅だと言えない。そんなもの、初めから欠陥住宅だったら買いませんよね。融資に問題があったら最初から融資すべきじゃない。この異議申し立て制度もだめ。

 具体的なケースで、午前中の審議の中で笹木議員が言われましたけれども、マレーシア、パハン・セランゴールの導水事業、首都のクアラルンプールが、マレーシアは非常に水不足であります、無収水率といいまして、収入にならない水が二〇〇〇年の段階で一八%あったということです。

 これは何かというと、収入にならない水というのは、盗水、水が盗まれる、それから、管が古くて壊れて水が出ていっちゃう。それだったら管を直した方が早いんじゃないかということが現地でも非常に言われておりながら、結局、額として八百二十億円。ODAとしては、これはプロジェクト借款として過去最高額ですよ。

 当時、二〇〇五年三月三十一日に、国際協力銀行、JBICは、マレーシアのセランゴール州と首都クアラルンプールへの水供給を目的としたマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に関して、マレーシア政府との間で八百二十億四千万円を限度とする円借款の貸付契約に調印したわけでありますけれども、当時は既にODAの見直しの時期に入っていた。そして、マレーシアは発展した国でありますので中進国として位置づけられているわけでありまして、ODA卒業国であります。そこにこの円借款供与、これはアジア経済危機の後の新宮沢構想を契機にして、特別円借款と称してこの借款が開始されたわけであります。

 こうしたことも、確かに必要とされればいいですけれども、これはまだ根拠となる報告書すら開示されていない。だから、非常に僕はJBICに対して懐疑的な見方をいたします。そのもともと問題のあるJBICを使って、目的外の仕事をさせていいものかどうか。

 JBICはもともと、国際協力銀行法第一条、「国際協力銀行は、」中略「我が国の輸出入若しくは海外における経済活動の促進又は国際金融秩序の安定に寄与するための貸付け等並びに開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)の経済及び社会の開発又は経済の安定に寄与するための貸付け等を行い、もって我が国及び国際経済社会の健全な発展に資することを目的とする。」とあります。これが目的なんですよ。

 それなのに、どうして移転経費にここを使うんですか。堂々と税金で使ったらどうですか、そんなJBICを使うなんて言わずに。だから、非常にスキーム自体も間違っているというふうに私は思います。

 さらに質問を続けます。平成二十九年三月三十一日までの時限立法として本法案は出されているわけでありますけれども、国際協力銀行が出資する資金に関して返済期間は四十年から五十年と報道されていますが、これは事務方で結構ですので御答弁いただきたいと思います、本当ですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 具体的なスキームにつきましては、まだ日米間で協議中でございますので現段階で確たることは言えませんけれども、例えば家族住宅につきましては、米国での事例を踏まえますと、事業期間はおよそ五十年程度になるという事例がありますので、今回のJBICの活用についても、返済期間としては五十年程度になるというふうに考えているところでございます。

前田委員 これは、施設が四十年、五十年もつか、ええっという、私は非常に不安があるんですね。最後の最後までアメリカ政府に償還をきちんと求めますか。

大古政府参考人 住宅の場合は住宅手当で償還されることになりますので、それは期間が五十年であろうと、確実な償還を求めるのは当然であると思っております。

前田委員 不良債権化しないようにきちんと求めてください。

 国際協力銀行の業務の特例については、返済期間が先ほど来出ています四十年から五十年と、非常に長期にわたります。ですから、平成二十九年三月三十一日以降も当分の間なおその効力を有することになっておりますね。

 他方、今国会に、政策金融改革の一環として株式会社日本政策金融公庫法案が提出されております。同法案が成立すれば、国際協力銀行に関しては、新たに設立される株式会社日本政策金融公庫に吸収されることになります。本法案において、この点について業務の継承等の規定は整備されているものの、政策金融改革の方向から照らし合わせて、この法律案上、期間を限定せずに相当長期にわたって駐留軍の再編促進金融業務を継続することは妥当かなというふうに僕は思いますけれども、これは大臣はいかがお考えでしょうか。

久間国務大臣 相当長期にわたって建設したり融資をするのであればそれはいかがかと思いますけれども、これはつくるのは短期間でつくるわけでありまして、ただ、償還が長いからその継承をずっとどこかがやっていくことになるわけでございますから、その辺はその法律の行革の関係でも別に抵触しないというふうに理解しております。

前田委員 それでは、私はさっきからJBICの問題を挙げておりますので、今度はJBICに伺いたいと思います。

 どんな借款を供与されるときも、私は根拠をきちんと示さなきゃいかぬというふうに思っています。先ほど来出ていますマレーシアのパハン・セランゴール導水事業、これについても根拠をしっかりと説明していない。

 ことしの三月四日のマレーシアのニュー・サンデー・タイムズ、ここには、マレーシアにおける環境工学の専門家から、その必要性に疑問を呈して、この導水事業の必要性ですよ、どういうふうに書かれているかというと、本当にこのダムが必要なのかどうか、新たな調査をすべきである、また代替案も検討しなくてはならない、こういうコメントが寄せられているわけであります。また、同紙では、民間企業からもケラウ・ダムに頼らない代替案が提案されているわけであります。

 ODAとして日本政府がこうした巨額な資金支援を実施しておるわけですけれども、現地のメディアにも事業に対してこんなに疑問がいっぱい出ているんですよ。ましてや、そうした必要性もしっかり説明しないようなJBICが、この大事な我が国の安全保障にかかわる移転の経費にかかわってくるということは、私は問題があると思いますよ。

 まず、このセランゴールの導水事業についてですけれども、現地メディアでもそもそも論が言われている、これをどうJBICとして受けとめられるか、ちょっと伺いたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 まず、本事業でございますけれども、先生のお話がございましたとおり、マレーシアの首都クアラルンプールを含みますセランゴール州、ここの継続的な人口増加等に伴います水需要、こういう増加に対応するために、隣のパハン州の水源から導水を行い、また水不足の改善を図るものでございまして、一昨年、二〇〇五年に円借款契約を締結してございます。

 今先生がおっしゃいました現地報道につきましては、私どもも承知をしてございます。ただ、本事業対象地域における水需要につきましては、現時点においても引き続き深刻な状況にあると私どもは承知しておりまして、また、これらの地域における新たな水資源開発、これが困難であるということから、本事業は引き続き必要である、こういうふうに判断してございます。

 また、マレーシア政府そのものは、代替案といたしまして、地下水開発、工業用水のリサイクル、他地域からの導水等々の検討を行いましたけれども、これらにつきましてはいずれも、水資源量、コストなどの面から、本事業の代替案とはなり得ない、こういう結論を出していると私どもは承知してございます。

 また、マレーシア政府は、本事業の実施に当たりまして、現地住民を含みます関係者との協議を適切に行っている、こういう点からも、マレーシア政府の検討過程は妥当なものであった、こういうふうに考えてございます。

前田委員 先ほど来、いや、これは代替案を政府が考えたけれどもそれはコストに合わないからとか言われていますけれども、やはり融資締結前から事業の必要性に対して疑問が投げかけられていたわけであります。

 それに対して、根拠というのはどういうものであるかということをはっきりと示した調査報告書があるわけですよね。パハン・セランゴール導水事業E/Sに係る案件形成促進調査、SAPROF、サプロフと我々は言っておりますけれども、最終報告書、これが出ているんですよ。これはどうして開示されないんですか、国際協力銀行。

武田政府参考人 お答えいたします。

 私ども国際協力銀行は、円借款の供与契約締結におきまして、各事業の内容、必要性、妥当性、また環境社会配慮面での審査結果、成果の目標、こういうものを示しました事業の事前評価表、こういうものを国際協力銀行のウエブサイトで公表しておりまして、本事業におきましても同評価表を公表し、本事業の必要性についても説明をいたしてございます。

前田委員 私は、そんなことを聞いていない。

 いいですか、この導水事業のSAPROF、これはどうして開示されていないんですか。これを聞いているんですよ。

武田政府参考人 まず、事業の必要にかかわります事業事前評価表、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり公表してございます。

 また、SAPROFと申します事業の案件形成促進調査なる調査そのものは実施しておるところでございます。これにつきましては、私ども国際協力銀行とマレーシア政府との間の協定に基づきまして事業の実施内容を作成しておるものでございまして、事業内容等々機微にわたるところがいろいろあるということで、そういう性格のものでございますので、公表については差し控えさせていただいてございます。

前田委員 うそだ。うそを言っている。

 いいですか。平成十七年の十二月一日、私はそのとき決算の理事でした。決算委員会から、衆議院シンガポール及びマレーシアにおける決算行政監視等実情調査議員団というのを組みまして、この報告書が出ているわけですよ。

 私自身が、マレーシア政府の水資源大臣、リム・ケンヤク大臣に申し上げて、この事業の推進に当たっては、三つの点を示した。十分な情報開示がなされること、パハン・セランゴール導水事業、先ほどのE/Sに係る案件形成促進調査、SAPROFについてとにかく開示すること。厳格な環境社会調査を実施すること。それから三番目に、すべてのステークホルダーを集めた公共性の高い会合を開催する。これを提案したら、リム・ケンヤク大臣は、もちろんであると言われたわけですよ。そういう、開示するという言質を得たわけですよ。

 そして、さらにまた次の会合の、ラハマン経済企画院副長官、この方との会談の中で、JBICが同報告書と同じものを所有している、日本の納税者に対して開示、説明責任を果たすべきだと私が指摘しましたら、ラハマン副長官は、私からもJBICに言うという開示の許可を出した。このときにJBICの職員もいたんですよ、この現場に。

 何がマレーシア政府に、開示されていないからなんて、うそばかり言っちゃだめですよ。そういうことをやっているから、私は、この大事な安全保障にかかわるスキームにJBICに加わってほしくないんですよ。

 どうですか、もう一回この説明を。

武田政府参考人 お答えいたします。

 まず、SAPROF調査報告書につきましては、過去にも申し上げておるとおりでございますけれども、基本論といたしまして、まず、マレーシア政府との間の信頼関係に基づいて行われている、こういう調査でございまして、私どもが円借款事業の検討、調査を行うに当たりまして、今後、マレーシア側から十分な情報が提供されないおそれがある、あるいは円借款事業の適切な事業に支障を来すおそれがあるということから、公開はしてございません。

 ただ、これはあくまでも基本でございまして、ただいま先生がおっしゃられましたとおり、本件につきましては、私どもも、NGOの要請あるいはマレーシア側からの了解も得まして、一部開示をいたしてございます。そのようなまさに信頼関係に沿って、そしてマレーシア側の了解も得て、一部開示をしておる、こういうことで説明させていただいておるところでございます。

前田委員 JBIC、一部開示だったら、最初からそうやって言えばいいじゃないですか。これは、実際に現地で、リム・ケンヤク大臣は政権の重鎮ですよ、彼が許可をしているんですよ。それを、一部開示していますと胸を張ってどうするんですか。きちんと全部開示して、このプロジェクト借款に対して根拠はあるんだということをしっかり示すべきですよ。

 これから、JBICが加わったスキームでこの移転経費の一部を賄うということになって、私は、この融資の透明性あるいは情報公開について非常に不安が残る。だから、JBICに加わってほしくないんだ。

 いいですか。きちんと、何に関してもうそを言わずにやるべきですよ。では、きちんと開示しますね。いいですか、JBIC。もう一回、答弁。

武田政府参考人 SAPROFの報告書につきましては、私どもと借入人との間の信頼関係に基づいて、基本的に非公開としておるところでございますけれども、まさに借入人の了解を得るということを前提といたしまして、相互の信頼関係を失わないような範囲におきまして開示をいたしておるところでございまして、こういうことで、今後も、借入人との信頼関係、それから国内での説明責任というものを全うしてまいりたい、こういうふうに思います。

前田委員 とにかく、やはり私は、いや、今開示しておるところでありますけれどもなんて言っているけれども、現地がいいと言ったらきちんと開示すべきですよ。私は、これからこういうスキームの中にJBICが入られるんだったら、やはりそういう部分をきちんとしてもらわないといけないですよ。

 さらに、同事業に関しては、融資契約を締結する二〇〇五年以前より、ラクム森林保護指定地域、これは非常に広くて一千五百五十ヘクタール、ここの水没、オランアスリと言われていますマレーシアの先住民族三百二十五名の移転など、環境、社会問題に関する懸念が取り上げられています。

 私も、現地で先住民族のオランアスリの研究者にしっかり会って話をしてきました。オランアスリはこの移住に関して同意しているんだと言われましたけれども、同意書を私は一切見たことがない。先ほどのラハマン経済企画院副長官とのお話の中で、私は見たことがない、それはマレーシア政府が開示してくださいというふうに聞きましたら、いや、JBICは同じものを持っていると言いましたよ。JBICはそれまで、いや、一切私どもそれは見ていませんと。これまたうそを言っていましたよ。

 そういう隠し事をして、それは本当に国民に対しての背信行為ですよ。いいですか、JBICには税金が半分入っているんですよ。その辺をきちんと認識して、これからこのスキームの中にもし入られるとすれば、やられない限り、やはりJBICへの信頼は置けないというふうに国民は判断します。

 今言いました先住民族の移転に関して、深刻な懸念が残っております。では、JBICとして、これからこの環境、社会問題に関してどういう方針を打ち出されるのか、私は少し聞いてみたい。

武田政府参考人 お答えいたします。

 まず、先住民族に対しましては、マレーシア政府より、住民協議がなされまして基本的に移転に同意している、こういうことを私どもとしては確認してございます。また、移転対象住民の意向などを聞くために、住民あるいはNGOなど現地関係者を招きましたモニタリング会合が、一昨年の円借款契約調印後、三回開催されておりまして、私どもといたしましては、適切にモニタリング会合が開催されるようマレーシア政府に申し入れているところでございます。私どもも、その会合の内容については十分にフォローしてきておるところでございます。

前田委員 今、私どもモニタリング会合をしっかりフォローしていると言われましたけれども、過去にこの住民移転に関しては、JBICは、しっかりと説明責任も果たさず、深刻な問題をさんざん引き起こしてきました。例を挙げましょう。フィリピンのサンロケ・ダム、インドネシアのコタパンジャン・ダム、スリランカの南部ハイウエー建設事業、全部、住民問題に関しての深刻な問題を引き起こしてきました。それに対して何もやっていません。パハン・セランゴール導水事業においても、いまだにこれが残るわけであります。私は、こうした姿勢が、やはり税金を半分預かる者として適切かどうかというところがあると思うんです。

 JBICは、こうした問題、今私が列挙しましたけれども、では、こういう問題に対してこれからどういうふうに対応されるのか。もう一回ちょっと説明してください。

武田政府参考人 お答えいたします。

 今回のマレーシアの案件につきましては、私どもとして、マレーシア政府がどのような手を打っているかについて十分にフォローする、かつまた、モニタリング会合というような形で、マレーシア政府、住民、NGO等の協議が適切に行われるように、こういうことをマレーシア政府に申し入れをし、かつその協議の内容等々についてウオッチをする、こういう姿勢で取り組んでいる次第でございまして、また、先生がおっしゃられましたインドネシアの事業あるいはフィリピンの事業におきましても、基本姿勢といたしましては、今申し上げたような姿勢でもって取り組んでおるということでございます。

 以上でございます。

前田委員 マレーシアのパハン・セランゴール導水事業、巨大な八百二十億の円借款ですよ。それで、さらにもっと大きな額になるのではないか、我が安全保障委員会が所掌するグアム移転経費等、私は、もう一回JBICは襟を正していただきたい、そういう気持ちで今質問をさせていただいております。

 この導水事業についても、直径五・二メートルの巨大な導管で掘るんですよ、地下に四十五キロ。このばかでかい計画をやっていくわけですよ。それよりも、先ほど申し上げたように、地元の民間企業からも、無収水率を下げるには管を直した方が安くつくじゃないかといった代替案がいっぱい出ていますよ。先ほど言った三月四日の現地の新聞にも、環境工学者の方からそういう記事が載るわけです。

 ということは、JBICは、何でもお金を出せばいいんだ、政府の言うとおりになって出していけばいいんだ、政府の財布だという考えではだめですよ。きょうは、防衛省が最初の記念すべき法案であるのに、政令の具体的な内容も言わない、これから算出してから予算額を出していくとか、これはそのときに審議すればいいなんて言っていますけれども、やはり納税者の皆さんにきちんと説明していただきたい、それがこの委員会の趣旨でありますので。

 とにかく、私はもう一回JBICに伺いますけれども、こういうパハン・セランゴール導水事業のように、不十分な説明そして説明責任も果たしていない、透明性も担保されていない、そういう状態のもとでの融資が実施されて、またさらに、先ほど言っております先住民族のオランアスリの移転という環境、社会問題も放置、私はあえて放置と言いますよ、対応していないからね。それで、この事業の融資を実施している、問題も何も解決されていない。

 そんな状況下で、今回の米国の駐留軍移転促進事業においてJBICが資金の貸し付け等の業務を実施するに当たって、貸し付けが適切に実施され、また貸付金が適切に使われているかどうかということについて、どのような形でこれから情報公開を実施して説明責任を確保していかれるのかということをJBICに伺いたいと思います。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 当行といたしまして、駐留軍移転促進事業に係る資金の貸し付け等の駐留軍再編促進金融業務、これを実施するに当たりましては、政府とも十分に相談しつつ、適切な情報公開の確保に努めていく所存でございます。

前田委員 適切な情報公開に努めていく所存です、それはだれでも言えますよ。具体的にどうするんですか。説明してください。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 こうした問題につきましては、政府の御意向を十分に反映しつつ、必要なものに関しまして適切に情報公開、これをやっていくということかと存じます。

前田委員 私は、JBIC本体、JBICの本社に一人で乗り込んでいきました。情報公開されていないけれどもと。それから、先ほど一番冒頭に挙げたように、パブリックコンサルテーションで何にも、はい、皆さんに意見を聞きますと言っていて、呼んでいるのは受注企業だけとか、そういうばかなことを繰り返されてはいけないわけでありますよ。我が国の安全保障にかかわる部分にタッチするわけですよ、皆さん。そんな政府の方針とかなんとか、皆さん笑ってみえますよ。いいですか。

 どういうふうに、例えば定期的にパブリックコンサルテーションをやるとか、一体どういう形でされるんですか。もう一回。

野崎政府参考人 そうした点につきましても、今後とも、よく政府に御相談申し上げながら、適切に対処していくということかと存じます。

前田委員 私はその言葉はJBICから何回も聞きました。

 先ほど来、皆さんもよくわかったと思いますけれども、事業の根拠になる報告書すら、マレーシア政府が出していいと言っているのにJBICはひた隠しに隠しているとか、やはりきちんとそうした説明責任は果たしていただきたい。いいですか。

 これから私は要望しますけれども、とにかくJBICは事業者や当該政府の言うことをのみ重視する方向にあるというふうに私は思います。だからこそ、反対に、現地の住民やステークホルダー、そしてこれからは、我が国の安全保障にかかわるんでしたら日本国民の声もきちっと重視して、そこに対して、納税者に対して説明責任も果たしていただきたい。政府が言うとおり私たちはお金を出していきます、それだけの話じゃありませんよ。いいですか。これだけはお約束いただきたい。どうですか。

野崎政府参考人 ありがとうございます。

 先生の御指摘も踏まえ、適切に対処していきたいと存じます。

前田委員 きちんと、そのとおりしてください。もうそれしか言いようがありません。いいですか。

 これでこの法案についての話は一たん閉じさせていただきますけれども、とにかく、これから何事についても具体的な話をしていこうじゃありませんか。

 それで、最近ちょっと気になったことを最後に一つだけ挙げさせていただきたいと思います。デンソーの機密情報持ち出し事案についてであります。

 デンソーの中国人技術者が同社の機密情報を持ち出すという事案が発生しました。同社は軍事転用可能な情報は含まれていないと説明されていますけれども、他方では、かねてより中国が他国の高度な技術を入手しようとして努力しているのは事実である、日本企業は持っている技術にどれだけ軍事的な価値があるのかわかっておらず、軍事転用への警戒感が薄い、こういう指摘もあります。

 北朝鮮による去年の七月五日の弾道ミサイル発射事案や十月九日の核実験など、我が国を取り巻く安全保障関係は非常に緊張した状態に入っていると私は思います。軍事転用の可能性を否定できない情報の流出は非常にゆゆしきことだというふうに私は思っております。

 二十年前に議員立法で常会に提出されましたいわゆるスパイ活動防止法、私は、これは制定すべき時期に来たんじゃないかというふうに思いますけれども、まず、どうでしょう、防衛大臣のお考えを伺いたいですね。

久間国務大臣 相手に情報を渡したらその相手から第三者に渡ってしまうと思われますと、非常にそういうところで情報が入ってこなくなる、そういう問題がございますから、情報の秘匿というものについてはやはり神経を使わなければならない、そういうことはもうよくよくわかっております。

 しかしながら、さりとて、どこまでそれを厳しくすることがいいのかどうかについては、国民的なコンセンサスを得る必要がございますから、なかなか難しいわけであります。だから、今私たちがちょっと考えておりますのは、せめてアメリカと日本の間で、今度アメリカに行きましたときも話をしようと思っておりますけれども、世界各国、六十一カ国と、要するにGSOMIAという一般協定を結んでおります。

 それは何かというと、やはり相手の企業が、企業同士で交わしたものでも、そういう防衛秘密といいますか、向こうでいう国防秘密といいますか、そういうものについては漏らさないということをやはり守らせるべきだ、そういうような行政協定を各国と結んでおるなら、日本は確かに今までは日米安保条約に基づく刑事特別法があったりなんかして、いざとなったら刑事事件として、あるいはまた防衛省を通じてのいろいろな問題は防衛秘密として刑事罰があるからということで担保されているという話でしたけれども、企業同士が下請で入ったときなんかはそれが守られないんじゃないか、そういう問題も出てきております。

 企業同士がこれから先お互いに相互運用でいろいろなことをやり始めますと、下請として直接使うことだってあり得るので、一般協定なんかを結ぶ必要があるんじゃないかな、そういう思いがございますけれども、まだスパイ防止法というほど国民世論がまとまってきていないんじゃないかなという気がいたしますので、その辺についてはやや慎重にならざるを得ないんじゃないかというのが私の率直な今の感想であります。

前田委員 今大臣もおっしゃいましたけれども、非常にゆゆしきことでありますし、そこまで至らなくても、我が国、先ほどのデンソーの事案は、パソコンを一個盗んだという軽犯罪にしかならない、罰せられないわけですね。そうした事態だけでも改善をしなきゃいかぬというふうに思っています。

 その中で、ちょうどきょう経産省もお越しいただいておりますので、経産省にもちょっと伺いたいと思います。

 私は、経産省が平成十八年十二月、発表された調査がありますけれども、これはなかなかよく調査されていると思います。我が国製造業における技術流出問題に関する実態調査ということで、製造関連企業はどういうふうに情報流出について思っているかといったことを聞いた資料であります。外務委員会でも長妻委員が副大臣にも質問したと思います。

 それによりますと、何と三五%以上の製造関連企業が情報流出があった、こう回答しているわけであります。こうしたものの具体的な防止策は、経済産業省、どのようにとらえているのか、伺いたいと思います。

石黒政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成十八年十二月に当省で行いました調査によりますと、約三六%の企業が技術流出と思われる事象があったということで回答いたしております。さらに、技術流出のルートについて聞きますと、技術流出があったと回答した企業の約七割が物を通じて流出しており、そのうち約七割が最終製品のリバースエンジニアリングや製造装置を通じて流出している、また約六割が人を通じても流出しておって、そのうちの約六割が退職者を通じて流出しているというふうに回答しております。

 このように、必ずしも法令違反の行為とは言えない事例も多数含まれていることには留意が必要でございますけれども、いずれにせよ、御指摘のように三割以上の企業では意図せざる技術流出が発生していることは事実でございます。

 このような観点から、こうした状況を踏まえまして、当省としては、これまで技術流出防止指針、営業秘密管理指針などのガイドラインを策定いたしまして周知徹底を進めるとともに、不正競争防止法の改正や外為法の厳格な運用などを進めてきたところでございます。今回のアンケート調査も企業に注意を喚起するということでございまして、今後もこのような取り組みの推進により、我が国企業の適切な技術管理を徹底してまいりたいと思っております。

前田委員 時間が来たようなのできょうはこれでやめますけれども、経済産業省、いい調査をされて、私は、ちゃんと防止策もきちっと対応されているというふうに思います。

 とにかく納税者に対して説明がつくように、きょう、防衛省になって最初の法案審査でありますので、私はこれからぜひ防衛省に望みたいのは、とにかく具体的にどうするのかということをきちんと書いて、それからちゃんと法案を出していただきたい。もしそれが出せなかったら、きちんと御答弁いただきたい、初めから。

 これだけをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

木村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 日米両政府が今進めています米軍と自衛隊の再編、これは地球規模の米軍の再編成の一環であり、そして日本と米国の軍事一体化と基地の再編強化を進めるものであり、本当に重大であります。政府は沖縄の負担軽減を強調してきましたけれども、それが全く根拠のないものであることは、計画の進行とともに、いよいよだれの目にもはっきりしてまいりました。私は繰り返しこの問題を取り上げてきたところであります。

 今回の法案は、その再編計画を推進するためのものであり、撤回すべきというのが私たちの立場であります。同時に、先ほどの質疑を聞いていましても、極めて疑問の多い法案、したがって、十分かつ徹底した審議を求めるものです。

 そこで、まず法案の前提問題として、再編経費、これの問題について聞きます。

 昨年来、政府は、再編経費の全体をできる限り早期に明らかにすることを繰り返し説明してまいりました。例えば、先ほどの前田議員が、本委員会、去年の六月十五日に質問しておりますが、当時の額賀防衛庁長官は「できるだけ地元や米国との間でスピーディーに協議をして積算して、その諸経費について総額を明示したい」、このように答弁しておられます。久間大臣も同じ考えですか。

久間国務大臣 計算できるものについてはできるだけ早く計算してと思っておりますけれども、なかなか、まだその前段階でありまして、例えば、今言われましたけれども、沖縄のキャンプ・シュワブの問題にしましても、今やっと環境アセスに入るか入らないか、そういう状況でございますから、入った結果どうなるのか、それによって実施設計がどうなってくるのか、これも変わってくるわけでありますから、今この段階で、それを含めていつまでに積算額をきちんと出すなんということは物理的に不可能であります。

 だから、それを言われましてもそれは難しいわけで、決まったらちゃんと国会に報告をして、国会で予算を組んでもらって、そして出しますから、それはやはり、今ここの時点できょうあすに出せと言われても、これはアセスメントだけでも三年ぐらいは常識的にかかるわけであります。今、沖縄県にはできるだけ早くやってもらいたいという思いを持っておりますけれども、これとても、法律上は相手が対応することになるわけでありますから、そういうことを考えますと、再編の経費を今ここでいつまでに明らかにするというのは難しいと私は思います。

赤嶺委員 政府は考え方を変えたんでしょうか。額賀長官はこう言っているんですよ、「できるだけ地元や米国との間でスピーディーに協議をして積算して、その諸経費について総額を明示したい」。今の久間大臣のお話を聞いていると、予算ごとに出ていくんだというお話のように聞こえますけれども、総額を明示したいということについては態度を変えたんですか。

久間国務大臣 いや、積算ができれば、それはもう合計額を明示したいと思います。そして、そのうち、年度予算としてはこれだけですよというのが、あるいはまた、債務負担でこれだけで何年間でやりますよというのは、それはまた債務負担を認めてもらう場合にはそれを出しますから、総額を出すのは当然であります。

 しかしながら、その総額をいつまでに出せと言われても、なかなか難しい状況にあるから、額賀大臣のときの、気持ちは私も同じようにそういう気持ちを持っていますけれども、できないものはできないわけであります。

赤嶺委員 米軍再編のその年の負担については予算を見ればわかるじゃないかということではなくて、きちんと協議をした上で総額を明示するという立場は変わらないわけですね。

久間国務大臣 事業実施計画ができて、そしてこれを何年間でやりますということを提示するときには総額は出てくるわけですから、そしてまた、それは総額を示さないといけないと思いますから、設計ができ次第、日米で合意したら、その設計内容でやるとなれば、これは幾らかかるか。現実はわかりませんよ、三年、四年かかる間に物価が変動することもありますから、結果はわかりませんけれども、少なくともこういう計画でこういうふうにしてやりたいという、そこを提示することは必要であります。

赤嶺委員 であるにもかかわらず、次年度予算から米軍再編の予算が計上されるわけですよ。そして、法律も出るわけですよ。しかし、総額の明示はいつになるかわかりませんと。これでは、雲をつかむような話で議論を進めなければいけないということになると思うんですよ。

 ローレスさんは三兆円かかると言っていた。日本国民の怒りも非常にあるわけです。守屋事務次官は、当時、グアムの移転経費を除いて日本側負担は二兆円になると言っていた。そういう三兆円だとか二兆円だとかという話は、法案も出ているのに、そして次年度から予算も計上されているのに、決着をつけないで前に進もうとするわけにはいかないんじゃないですか。

久間国務大臣 ローレスさんには私も、あなたは何で三兆円なんて言ったのかと言ったら、いや、アバウトに言ったんですよということで、何も決まった話じゃないわけであります。新聞報道が、それがさも決まったかのように報道されることによって、向こうは向こうのいろいろな思いもあったかもしれませんけれども、あれは決まった数字でも何でもありません。

 それと、十九年度の予算に確かに予算は計上しております。それはほとんどは調査費でありまして、その調査費に基づいて調査をやって、それによって今度はまた実施設計その他をやっていくわけでありますから、そういう手順を踏んで経費というものは決まってくるわけでありまして、つかみで言った数字が、それでもってひとり歩きされたらかえって困るわけですから、国会に、総額幾らかかりますというときには、やはり責任を持って答えるだけのそういうような出し方をしたいと思っております。

赤嶺委員 ローレスさんは、アバウトではあっても三兆円規模になるぞと言ったわけですよ、守屋事務次官は二兆円規模になるぞと言ったわけですよ。今大臣に聞いたら、よくわからない。一体いつになったら総額明示できるんですか。

久間国務大臣 だから、今度予算を通していただいたので、それに基づいて調査をして、実施設計その他を組んで、さらに今度は実行の方法、今度はどういう形でやるか事業スキームも組んで、それでまた、やったときにどれだけ安くなるか、それをにらんだ上で、全体としてはこれぐらいでいけるだろうという、それだってきちっとした数字じゃないかもしれませんけれども、そこまでいきますと概算がきちっと出てくるんじゃないかと思っておりますので、その段階になったら、また、なる前からでも、ある程度の方向づけが決まったら国会にお示しして、議論もしていただきたいと思っております。

赤嶺委員 それはいつのことになるんですか。

久間国務大臣 米軍再編の全体については、いろいろなケースがございますから、今ここではっきり言うことはできませんけれども、やはり米軍再編の中でのキャンプ・シュワブへの普天間の移設につきましては、環境アセスが終わって、事業実施計画が固まった段階では出せると思います。あるいはまた、アメリカへの移転経費につきましては、実施設計等がこれから先の調査を経て決まりますれば、これはまたやっていける、出せる、そういうふうに思いますから、いつというのはなかなか、ここで日にちまでというか、年度まできちんと限定して言うのは難しいと思っております。

赤嶺委員 額賀長官の、できるだけスピーディーに国民に説明をしたいというような答弁からすると、今の久間大臣の答弁というのは、本当に総額の明示はいつになるのかわからない、率直な、そういう感じを受けます。でも一方で、予算は計上され始めて、事業は再編事業ということで進めて、法案が出てきている、こういうやり方が本当に許されるかなと思いますよ。

 それではちょっと聞き方を変えますけれども、ロードマップに盛り込まれた再編案があります。予算額が明確になっているのはどれですか。網羅的に説明してくれますか。

久間国務大臣 予算額が決まっているのはほとんどないんじゃないかと思います。

 それはむしろ、これから先、先ほどから何回もここで言っていますように、各市町村が受け入れを認めて、そして、そのときに、こういう事業を自分たちとしてやりたいというような希望があった場合に、それをまたこちらとして認めて、それはいいでしょう、そういう話になっていく。あるいは、その間で県がかんで、県がそれはいいでしょうということで、県を通じて上げてくることになっておりますから、県が上げてこなければ市町村が希望してもそれは対象事業にならないわけでありますから、県が上げるか上げないかも不確定であります。

 だから、そういうようなことで、上がってきた段階で後にわかることはありますけれども、今ここでわかっているのはほとんどないという方が正直な話だと思います。

赤嶺委員 わかっていることでさえ、ほとんどないと言って説明するんですから、本当に僕は大した答弁だと思いますよ。

 調査費だって予算のうちですよね、調査費でも。調査費は出ているんじゃないですか。出ているでしょう。再編事業費でしょう。そういう点はどうなんですか。

久間国務大臣 今委員が、再編に絡んで出ていく経費がどれぐらいかと言われたので、それはわかりませんということ。今言った調査費なんというのは、そのうちの、全体の額の本当にわずかでありますから、何十億かもしれませんよ。

 ところが、交付金を初めとして、これから先出ていく金はどれだけになるかというのは、十年間の事業、交付金の総額なんというのはわからないわけでありますし、ましてや、そういう点では不確定要素がたくさんあるわけですから、数字が決まっているかのような言い方というのはいかがかと思います。

赤嶺委員 大臣、話の場面は転換したんですよ。私は、ロードマップでいわば盛り込まれた再編案のうち、予算額が明らかになっているのはどれかと聞いたわけですよ。

 既にロードマップに盛り込まれた再編案のうち、予算額、例えば、一つ一つ聞いていきますけれども、航空総隊司令部の横田基地への移駐に伴って、次年度予算に調査、建設費百四十三億円、もう十数億円のレベルじゃないですよね、けたが違うんですよ、計上しています。

 司令部移駐に伴う経費負担、これですべてと理解していいですか。

久間国務大臣 そういうお聞き方をされればわかります。

 今度のこの法律に絡んでのロードマップとの絡みで私は金額を聞かれたと思いましたから、それは無理ですということを言ったわけであります。それはそのとおりです。おっしゃるとおりです。予算に出ているわけですから。

赤嶺委員 ですから、百四十三億円計上しているわけですが、横田への司令部移駐に伴う経費負担、これですべてだということで理解していいのかと聞いているわけです。

大古政府参考人 御指摘の百四十三億円につきましては、航空自衛隊の航空総隊司令部が今般横田飛行場に移設することになりましたけれども、その司令部庁舎の整備費でございます。

 ただ、この移設に関連してまだほかにどういう経費がかかるかについては、まだ細部を詰めているわけではございません。

赤嶺委員 そうすると、まだこれからもかかっていく、百四十三億円以外にかかるということで理解していいんですか。

大古政府参考人 百四十三億円は司令部庁舎の整備費でございますので、他にもまだかかる経費はあると思っております。

赤嶺委員 横田に移るものでさえまだ部分的にしか説明していないんですよ、今年度予算にかかっているのは庁舎費用だけですと。

 例えば、通信設備だとかあるいは司令部要員の隊舎、こういうのは建設するんですか、しないんですか。

大古政府参考人 航空総隊の司令部が横田に行く関係で、宿舎とかそういうものは、どういうものが必要になるかについては検討しているところでございます。

赤嶺委員 はっきりしないんですね。日本政府の間でやっている作業でさえ、法案が出ているのに、そして、総額明示をスピーディーにやると言いながら、予算計上をやっているのに全然はっきりしない、全体では幾らかかるかわからない。

 例えば、額賀長官は当時、いや、それは沖縄の嘉手納以南の土地の返還、ロードマップでは〇七年の三月までに決めるんだ、まだそれもやっていないんだからと言っておりました。嘉手納以南の土地の返還は、これで負担の軽減につながる、これで負担の軽減につながると何度も言われてきたことなんですが、三月中に具体的な計画を決めるということをロードマップに明記されているわけですが、発表できるんでしょうか。

久間国務大臣 我が国からアメリカに対しても言っておりますけれども、まだ少し時間が欲しいというふうにアメリカ側は言っております。

赤嶺委員 三月中には発表できないわけですか。

北原政府参考人 今大臣が御答弁させていただきましたけれども、現在、米側との関係で、詳細な計画の作成のための協議を鋭意やっている状況でございます。なかなか月末、もうきょうは二十七日でございまして、大変厳しい状況にございます。

赤嶺委員 大臣、沖縄県民の負担の軽減、負担の軽減、ロードマップで三月中に決める、嘉手納以南の土地の返還、額賀長官なんか面積まで拡大して千五百ヘクタール、これはできないじゃないですか。

 何で、日米間で何がもめているんですか、ロードマップであれだけ決めているのに。何が問題になっているんですか。

久間国務大臣 三月末と言いましたけれども、それができない、そういうことでいっております。

 しかし、それだからといって、決めたことができないのかというと、それがおくれているということとできないのはまた別でありますから、そこのところを、できない、できないと余り強調しないでください。できるように向こうも努力しているし、こちらもそういうことで交渉しているわけでありますから。

赤嶺委員 ですから、日米間でできるとおっしゃるなら、何が問題になってという説明責任はあるんですよ、ロードマップに三月末までにということで明記しており、そして皆さんもそれについて大変な期待を抱かせてきて、じゃ、県民の負担の軽減につながるならということでこの法律も出ているわけですから。出ているんでしょう。

 そうしたら、何で、何が今詰まっていないんですか、日米間で。

北原政府参考人 昨年の五月一日に承認されましたロードマップには、次のような記述がございます。「返還対象となる施設に所在する機能及び能力で、沖縄に残る部隊が必要とするすべてのものは、沖縄の中で移設される。これらの移設は、対象施設の返還前に実施される。」このように書かれております。

 いずれにいたしましても、今御指摘の嘉手納以南の土地の返還につきましては、こうした残す機能あるいは能力、さらには移設先などの検討も含めまして、今、アメリカ側との間で鋭意協議をしているところでございます。その具体的な中身云々といったことにつきましては、米国との関係もありますので、ここでは御答弁は差し控えさせていただきたい。

 いずれにいたしましても、大臣も答弁いたしましたけれども、ロードマップを着実に実施していく、今そのための協議を鋭意しているところでございます。

赤嶺委員 結局、嘉手納以南の土地の返還の場合でも、機能は沖縄のどこかに移設する県内移設ですから、大臣もよくおわかりだと思いますが、午前中に私が取り上げた北部訓練場問題、やはり、移設条件つきだから進まなかったわけですよ。負担の軽減、負担の軽減と考えているのは皆さんだけで、実際に基地のそばに住んでいる人たちは、そんなふうにはとらえ切れない、考えられないというのが現状なんです。

 ですから、中身も報告しないで、この法律が通らなければ沖縄県民の負担の軽減が実効性を持たないなんというのは、今の一事、説明できないことをもっても、私は、そうは言えないということを言いたいと思うんです。

 それで、負担の軽減にかかわって、嘉手納からF15が訓練移転、三月五日、築城で始まりました。次年度分の訓練移転費用として四億円計上しているわけですが、移転に伴って自衛隊基地の中での施設の整備、これはどうなったんですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 施設が必要かどうかということにつきましては、日米で実地調査をすることになっております。既に築城と新田原について今調査を実施し、あるいは実施したところでございます。今後、あと百里あるいは千歳、小松等々につきましても、必要な調査をし、そこで具体的な、何が必要となるのかまた判断をしていく、そういったことになります。

赤嶺委員 できるだけスピーディーに総額明示をするという約束を皆さんしたんですから、その調査というのはどのぐらいかかるんですか。

北原政府参考人 具体的にいつまでということは、今この時点では申し上げることはできません。

 ただ、ぜひ御承知をいただきたいと思っておりますのは、私どもといたしましては、先生御指摘の、特に嘉手納等の負担軽減ということで、今、タイプ1を一度実施させていただきました。それから、十九年度には、タイプ1については十二回、それからタイプ2につきましては三回、これを今、何とかやろうということで、またそれに必要な予算は計上しているところでございます。

 我々といたしましては、タイプ1につきましては、築城でもやりましたが、基本的には施設整備の必要はなかろう。ただ、さはさりながら、今後、負担軽減を続けていく上で、例えば築城を使っていく上でさらに必要なものがあるかどうかということは、調査をしたところでございまして、今取りまとめ中でございます。

 いずれにいたしましても、嘉手納等の負担軽減を本土の各基地にお願いするわけでございまして、基本的には自衛隊基地の中で行いますけれども、今申しましたように、日米共同で調査をしたい。ただ、それはしっかりとした調査をしたい。また逆に、いつまでもだらだらといったものではございません。一生懸命調査をしてしっかりと対応したいと思っております。

赤嶺委員 つまり、タイプ1はいざ知らず、それ以外の訓練については、施設設備の整備も必要になってくるという理解でいいんですね。

北原政府参考人 一概にそうは言えません。だから、我々が、嘉手納の負担軽減ということで、タイプ1、タイプ2をこれからずっと続けていくわけでございます。そうした中で、恒常的にいろいろ続けていきますので、それを受け入れる側の自衛隊の施設整備等、必要があればやっていくということで、タイプ1は必要ないけれどもタイプ2は必要だ、そういった単純に割り切れるものではございません。

 いずれにいたしましても、訓練移転をしっかりと継続的に実施していく上で必要となる施設を整備する、そういった考え方でやっております。

赤嶺委員 私、今るる聞いてきたんですけれども、答弁を聞いていて、結局、個々ばらばらに事業は進んでいくけれども、一体、米軍再編に幾らかかるのか。雲をつかむような話だけ聞かされて、そして最後は沖縄県民の負担の軽減ということばかり繰り返して、築城に訓練移転した日に北谷の砂辺の有力者が、爆音というのは分かち合うものではない、爆音というのはなくするべきものなんだ、こう言っているんですよ。当然じゃないですか。そういうようなものも負担の軽減につながらない。非常に全体が、米軍再編の予算があいまいなまま法律だけ通せと言っても、これはできない話です。

 そういう関連資料を理事会に出すことを強く求めて、私の質問を終わります。

木村委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 きょうは、辻元委員のピンチヒッターでございます。しんがりとなりましたが、久間大臣におかれましては、先ほどからお見受けしておりますと、鈴の糸のような目で満面に笑みをたたえて答弁されていますが、誠実な御答弁をお願いしたいと思います。

 ただいま審議中のいわゆる米軍再編促進特措法案に対して、私も社民党としても反対の立場であることをまず表明しておきたいと思います。特に私は、沖縄二区から選ばれた議員であります。大臣も御承知のように、私の選挙区は、嘉手納基地、普天間基地、那覇軍港が移設予定のキャンプ・キンザー、楚辺通信所など、最も米軍基地が集中し、いわばこの国の安全保障の矛盾の縮図のような選挙区であります。私は、この選挙区において、一貫して米軍再編反対を有権者に訴えてまいりました。

 さて、いわゆる米軍再編は、抑止力の維持と沖縄の基地負担の軽減を大きな理由にしてございます。本法案もそうでありましょう。しかしながら、私や社民党は、米軍再編によって、在沖米軍基地の県民負担が軽減されるどころか、基地機能はますます強化されておると考えております。

 私は、本会議における久間大臣の本法案の趣旨説明に対する質問でも述べましたように、米軍再編というのは日米軍事同盟の強化であり、米軍と自衛隊の一体化、融合化以外の何物でもない、このように考えますが、米軍再編に対する久間大臣の率直な御認識をお聞かせください。

久間国務大臣 先ほども当委員会でも述べましたけれども、米軍再編というのは、米軍の世界的な大きな動き、流れの中で、国対国がぶつかり合うというだけではなくて、目に見えない敵といいますか、多機能な多面的な脅威に対してどう対応するかという、アメリカの一つのそういう戦略のねらいの中で、司令部を沖縄からグアムならグアムに移すというような、そういうようなことで全体をにらんでいる、そういう面は確かにあろうかと思います。

 それに対して、私どもは、やはり日本をどうやって守るか、自衛隊だけでは守れないかもしれないということで日米安保条約を結んだ、そしてそれが、現時点で考えたときに、やはり日米安保条約をそのまま機能させることが必要だ、そうすると、そういう抑止力を日本で維持しておかなければならない、米軍のそういう抑止力というのは必要だというようなことから、しかしながら、沖縄に集中しているのを少しでも減らせればそれにこしたことはない、そういう両方の思惑が一つになって、今度、米軍再編を利用しながらグアムへの移転をしようというふうに思ったわけであります。

 あるいはまた、横須賀に原子力空母が来ます。しかし、原子力空母といえども、空母である以上は艦載機の離発着の訓練をしなきゃならない。それが厚木に今は集中しているけれども、厚木は周りが密集してしまっているから、それはかなりの危険性と同時に、騒音等も耐えがたいものがあるだろう。裁判でも負けておる。そういうことを考えますと、岩国が幸いにして沖合に飛行場をつくったので、厚木と岩国とを考えますと、岩国の方が、これまた被害といいますか、受けるマイナス面は少ないというようなことから、岩国の人には御迷惑をかけるけれども、厚木と比較考量したときに、そちらに移っていく方が、抑止力はそのまま維持しながら、負担の軽減にトータルとしてつながるんじゃないか。そういうようなことを考えながら、これについても、やはり負担軽減と抑止力の維持、そういう双方が生かされる。

 そして、岩国についても、かといってNLPまでやったらいけないので、NLPについてはまた別途どこか場所を、二〇〇九年の七月までに候補地を探して提示をしたいということで進めているわけでありまして、そういう意味で、やはり米軍再編は、負担の軽減を図りつつ抑止力を維持する、そういうような機能を持つものだというふうに理解しております。

照屋委員 きょうは、細かい点ではなくて、法案の前提というか立法事実みたいなものに絞ってお聞きをします。

 さて、久間大臣、沖縄に在日米軍の約七五%が集中していることは、もう大臣先刻御承知のとおりであります。その理由として、よく地政学的な根拠を挙げる政府関係者がおられます。久間大臣は、沖縄への米軍基地の集中配備というか、存在する根拠としての地政学的な理由の中身についてどのような所信をお持ちでしょうか。

久間国務大臣 沖縄の方にはある意味では非常に気の毒かもしれませんが、一つは、歴史的に、アメリカ軍が沖縄を占領して、そして返還もおくれたというようなこと、それの理由は、やはりあそこが地政学的に、米軍から見たときに、アジア太平洋地域の拠点として非常に有利性があったという判断をしたんだろうと思いますし、今でもその判断というのはやはりあるだろうと思っております。

 そして、しかも、ロシアとアメリカが、ソ連邦が解体してから北の方での脅威が非常になくなってしまった。しかしながら、南の方ではいまだに不確定な要素が非常に多い。そういうようなことから、北よりも南の方にウエートが移ってきている、そういう点もあろうかと思います。

 そういうことをいろいろ考えたときに、我が国に米軍があるということ自体が、アジア太平洋地域で平和が戦後ずっと続いてきた、ベトナム戦争はありましたけれども、朝鮮動乱もありましたけれども、それが終わってからはアジア太平洋地域については全然戦争がなかった。そのおかげで世界各国が、特にアジア太平洋地域で各国が発展して、経済的には世界の富のかなりの部分を生産するに至った。そういうようなことをいろいろ考えますと、沖縄の方には非常に気の毒であったけれども、米軍が沖縄におったというのは、ある意味では、アジア太平洋地域のプレゼンスとしては非常に機能しておったという一面があるわけであります。

 そういうようなことの中で、しかし、我々としては、沖縄の方々への負担をもう少し和らげることができないか、そういう思いは日本の本土の人はみんな持っているわけであります。持ちながらも、今みたいな現実もあって、その中で、今度は八千人移動するチャンスが来たということで、これに乗っかっていったという、あるいは、乗っかっていくというよりも、それをこちらから主張して、こういう米軍再編をやるのならば海兵隊をグアムへ移転してもらいたいということで、それについては日本全体で費用は負担しましょう、ある程度の応分の負担はしましょうという形で、そういうふうな方向へ動いてきておる。そういうような現実をぜひ御理解していただきたいと思うんです。

照屋委員 久間大臣、盛んに、沖縄の人には気の毒だと繰り返しておりましたが、そんなことではなくて、沖縄に基地負担を押しつけて、その基地負担を日本の安全保障上必要であるというならば、公平に負担を引き受けようとしない、むしろ、そういう感覚の人たちや政治家の方が私は気の毒だと思う。

 それで、地政学的な理由をおっしゃるんですが、例えば、今一番沖縄で問題になっている海兵隊の存在、これは、一九六〇年代においては、東京を初め関東に駐留しておったんですよ。それじゃ、これは地政学的な理由になりますか、大臣。

久間国務大臣 なぜ関東とか北海道ではなくて、沖縄に、そこに厳としておるのかという、そういうようなことについて、なかなかいわく言いがたいところがございますけれども、それが現実だということをぜひ知っていただきたいわけであります。

 どこでもいいならどこででもまた配置ができるわけですけれども、どこでもというわけにはいかないわけでありまして、そういう意味で、海兵隊が現にあそこにおるという、前は関東におった、それが南に下ってきておるという、その現実が何かということについても、思いをめぐらせていただきたいと思います。

照屋委員 早くしゃべれないのでもどかしいんですが、たくさん質問を準備したんですが、久間大臣にもう一点伺いたいのは、大臣は、防衛庁長官時代の去る一月三日にタイ国を訪問された際に、同行記者団との懇談で、日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ沿岸V字形滑走路建設にはこだわらない、こういう報道がありました。

 久間大臣は、県や名護市などの地元自治体、アメリカ政府が合意するなら、滑走路一本でもいいと考えている、このような地元報道もありましたが、久間大臣、今でもそのようなお考えはお持ちでしょうか。

久間国務大臣 先般も予算委員会で、参議院の方でだったと思いますけれども、私が答えましたが、どうも報道というのは非常に、一部だけをぱあんととられますので、私がそういう談話を発表したかのようにとられますけれども、そうじゃなくて、沖縄のこの基地の問題については、アメリカと日本国政府だけではなくて、日本国政府と地元、そして地元もまた県と市、こういうところがみんな話し合って、話がつかないといかぬのですよ、これが大事なんだ、話がつくならば一本でも別に構わないんだということを言ったわけであります。

 そして、基本的には、日本とアメリカ政府とV字案をつくりますときには、額賀さんの時代にかなり丁寧にやはり説明はしているわけです。ただ、その説明の仕方で頭越しだったと受け取られたというふうなそういう印象もありましたから、私は後日、沖縄の今の仲井真知事さんには、そういうふうにとられたとすれば大変遺憾でありましたというようなことを申し上げたわけであります。かなり地元にも説明した上で、政府とアメリカ政府とはV字案で一応合意しているわけでありますから、そういうようなことを考えますと、基本的にはV字案でこれまで走ってきた、そういう過去のいきさつがございます。

 だから、このV字案が本当にだめだということになればともかく、今は政府同士でそういう形でやって、それでマスタープランまでアメリカもつくっているようなことを考えますと、これが基本になりながらも、しかしながら、沖縄県とかあるいは名護市とか地元の意見にも耳を傾けながら、聞くものについてはやはり聞かなきゃならない、そういう姿勢で今臨んでいるわけでございますから、何でもいい、一本でもいい、全然別の案でいっていい、そういう無責任なことを私は言ったわけじゃございません。やはり、その三者あるいは四者の合意が大事なんだということを申し上げる、その一環として、ただ一つの例として、みんなで話がつくならどんな案でもいいんですよ、そういう言い方をしたわけでございます。

 そこのところだけが強調されますと、全く今の案を否定したかのようなとらえ方をされますけれども、少なくとも、今の案については、地元にも説明した上で日米の両政府が合意している、そういう事実については私も十分知っているつもりでございますので、だからV字案を基本としながら、いかにして地元との意見のすり合わせをよくしていくか、それが今我々に課せられた課題であると思っております。

照屋委員 久間大臣、率直にお聞かせください。

 大臣は、日米両政府が合意をしたロードマップの案、これは変更ないんだ、そのとおり県や名護市は受け入れてもらわぬといけないんだ、こう考えているのか、あるいはロードマップの合意いかんを問わず、県や名護市が求めている修正案に基づく協議も可能だ、こう思っていらっしゃるのか、どっちなんでしょうか。

久間国務大臣 合意をしたんだから、これでもう聞く耳持たぬというふうな態度はとるべきでない、そう思っています。

 しかしながら、これにかわる修正案というのが果たしていいのかどうか、それを合理的な説明ができるのかどうか。感情的だけで話をされてもそれまたいかぬ話でございますから、どういう形での説得力があるか、そういう説明があるか、そういうふうなことがこれから先はますます大事になろうかと思っております。

 だから、いろいろな環境アセスとかそういうことをしながら、それで最終的にこういう案に関係者がみんなすり寄ってくるならば、それは一つの方法だと思いますが、私は、議論していけばいくほど、やはりV字案というのは、私は直接タッチしていませんけれども、結構考えた案だなというふうに思っております。やはり、地元の上空を通らないとかいうふうなことで、名護市も含めてかなり議論された案でございますから、V字案そのものについては、なかなか考えておるなというような、そういう思いは今非常に強く持っております。

照屋委員 時間ですので、あと一問だけ、ずばりお答えください。

 久間大臣は、去る三月十一日、大臣就任後初めて沖縄を非公式に訪問して、ケビン・メア在沖米総領事と面談しております。

 なぜ非公式訪問だったのか。それと、大事なのは、メア氏との会談で大臣から、日米両政府が合意したV字形滑走路を沖合に移動することをメア氏に提起した、こういう話もございますが、真実はどうなんでしょうか。

木村委員長 久間防衛大臣、時間になりましたので、簡潔に願います。

久間国務大臣 私がメアさんにお会いしたかったのは、あの人は非常に日本滞在が長くて、公使としても東京におられたし、福岡の領事としても福岡におられたし、そして沖縄にも今おられます。そして、いろいろなことを実際、トップじゃないけれども、私が十年前にかかわったときから今日まで下で全部関係しておられますから、いろいろな話をよく知っておられるわけでございますから、そういう人から見たいろいろな感触を職員や県や市を通じずに直接聞きたかった、そういう思いが一つあります。

 それと、今言われたように、私はそんなことは言っておりません。そもそも沖合では前に無理だったということで、陸地側に寄せる案を出したのは、私がむしろ持っていたわけでございますから、私は沖合へ沖合へというのは非常に難しい、そういう印象を今でも持っております。

照屋委員 きょうは終わりますが、メア・久間会談は多くの問題をはらんでおるんじゃないかと思いますので、次回にやりたいと思います。

木村委員長 次回は、来る二十九日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


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