衆議院

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第2号 平成20年11月27日(木曜日)

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平成二十年十一月二十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 今津  寛君

   理事 江渡 聡徳君 理事 嘉数 知賢君

   理事 新藤 義孝君 理事 中谷  元君

   理事 仲村 正治君 理事 山口  壯君

   理事 渡辺  周君 理事 佐藤 茂樹君

      安次富 修君    愛知 和男君

      赤城 徳彦君    大塚  拓君

      瓦   力君    木村 太郎君

      下村 博文君    薗浦健太郎君

      武田 良太君    寺田  稔君

      山内 康一君    山崎  拓君

      川内 博史君    神風 英男君

      津村 啓介君    長島 昭久君

      馬淵 澄夫君    田端 正広君

      赤嶺 政賢君    辻元 清美君

      下地 幹郎君    西村 真悟君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   内閣府副大臣       宮澤 洋一君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   防衛大臣政務官      武田 良太君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   原田 正司君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 西村 泰彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 始関 正光君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   中村 明雄君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳久 治彦君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 関口 幸一君

   政府参考人

   (観光庁長官)      本保 芳明君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   枡田 一彦君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   安全保障委員会専門員   金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十七日

 辞任         補欠選任

  福田 康夫君     下村 博文君

  津村 啓介君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     福田 康夫君

  川内 博史君     津村 啓介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

今津委員長 これより会議を開きます。

 この際、柴山外務大臣政務官より発言を求められておりますので、これを許します。柴山外務大臣政務官。

柴山大臣政務官 おはようございます。外務大臣政務官の柴山昌彦でございます。

 今津委員長初め委員の皆様方にごあいさつを申し上げます。

 本日も、タイあるいはインドから大変な事件のニュースが飛び込んできているわけですけれども、こうした国際情勢が依然として不透明な中で、我が国の安全と繁栄を確保するために一層の努力が必要であると考えております。

 私は、外務大臣政務官としての責任を果たすべく、中曽根外務大臣の御指導のもと、外交、安全保障政策の推進に全力で努力をしてまいります。

 委員長初め本委員会の皆様方の御指導と御協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

今津委員長 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、内閣府政策統括官原田正司君、警察庁長官官房審議官西村泰彦君、法務省大臣官房審議官始関正光君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、外務省大臣官房審議官廣木重之君、外務省大臣官房審議官石川和秀君、外務省北米局長西宮伸一君、財務省理財局次長中村明雄君、国土交通省航空局次長関口幸一君、観光庁長官本保芳明君、防衛省防衛参事官枡田一彦君、防衛省大臣官房長中江公人君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、防衛省運用企画局長徳地秀士君、防衛省人事教育局長渡部厚君、防衛省経理装備局長長岡憲宗君及び防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今津委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今津委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嘉数知賢君。

嘉数委員 おはようございます。自民党の嘉数でございます。防衛大臣それから外務大臣に質問をさせていただきます。

 まず、前空幕長の件に触れたいんですが、防衛大臣におきましては、本当に的確な迅速な対応、心から評価をしたいと思っています。ただ、私は、あの一連の参議院での外防の答弁あるいは個人的な記者会見を見ていて、本当にこういう人が我が国の防衛のトップにいたのかなという背筋が寒くなる思いをしました。と同時に、自衛隊のやみを一部かいま見たのかなという気もするんです。そのぐらい、大変ショッキングなことだったんです。

 私は戦前生まれですから、戦前のあの戦の中で軍人がとった行動というのは子供ながらに見てまいりました。特に、個人的な話をしますと、私のおじは、終戦間際、離島から私どもの食糧を調達するためにくり舟で出かけていったんです。それをとがめられて、守備隊にスパイ容疑でその場で射殺された。軍人というものの怖さ、軍人のかたくなな思い、それは大変恐ろしい思いをしていました。経験もしました。

 それからしますと、我が国のシビリアンコントロールは果たして機能していたのかな、するのかなという懸念を実は持っていました。これから防衛省改革に取り組んでいかれる大臣、本当にシビリアンコントロールがきちっと機能できるような改革を、単に組織の改編じゃなくて、国民が安心して自衛隊を信頼できる、そういう自衛隊にするための組織改編あるいはまた改革をしっかりやっていただきたい、そのように実は思っていまして、大臣に期待をしております。

 質問は後でいたしますけれども、それと同時に、私が大変懸念したのは、教育のあり方だと思うんです。戦前もそうだったと思うんですけれども、戦後教育の中で自衛隊が幹部候補、幹部の教育をどのような形でやってこられたか、あるいは隊員の教育をどのようにやってこられたかということの一連の流れの中でああいうことが出てきたのかと思っています。そういう意味で、改めて、組織改編と同時に、自衛隊の中、防衛省の中の教育改革をしっかりやっていただきたい。

 例えば、幹部候補生に対する教育のあり方、あるいは教授陣の選任のあり方、あるいは防衛大学校の学生に対する教育のあり方、また一般隊員、それをしっかりやっていかなきゃ、前空幕長みたいな考え方の人たちがどんどんふえていく可能性がある。今歯どめをかけなければ、我が国はまた誤った方向に行かざるを得なくなる格好も出てくるかもしれないという懸念を私は持っていまして、ぜひその辺、しっかり取り組んでいただきたいと思っていました。

 その件につきまして、防衛省の改革の中でシビリアンコントロールというのはどういう形でやるのか、どういう形で機能させるのか、大臣の決意と、教育改革。これは人事教育局長、来ていますね。現場で担当する者として答弁をしていただきたいと思っています。お願いします。

渡部政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事案を踏まえまして、今嘉数先生の方から御指摘がございましたけれども、幕僚長等の要職にある者に対しましては、その職責の重さあるいは国民の信頼にこたえることの重要性を十分に自覚するように改めて促してまいりたいと思っておりますし、また、自衛隊員の諸君が偏向した歴史認識を有することなく歴史を客観的に理解するように、改めて幹部教育あるいは防衛大学校における教育について点検いたしまして、その結果を踏まえて、見直しについて検討してまいりたいと思っております。

浜田国務大臣 今、人教局長から説明をしたとおりでありますが、我々とすると、シビリアンコントロールというのは、我々、特に政治家として省の中に入っている人間、どれだけそれをしっかりと見ていけるかということだろうと思っておりますし、また、多くの国民の皆さん方に自衛隊員が見られている、要するに注目をされている、そしてそういった自衛隊の存在というものをどれだけ認識していただけるかということが極めて重要だと思っております。そしてまた、それに対して、国民の代表として国会というものがあるわけでありますので、国会議員の先生方に安全保障そしてまたそれにかかわる自衛隊としての役割というものをしっかりと見ていただくことが極めて重要だと思っております。

 我々とすれば、今言った教育の内容、そして何のために存在している自衛隊なのかということを改めて、任務を遂行するための自衛官としての心得というのをさらに一層徹底しながら、当然国民の負託にこたえるだけの活動をする自衛隊としてのあり方をいま一度徹底してやっていきたいというふうに思っているところであります。

嘉数委員 どうもありがとうございました。

 不祥事が続いている防衛省、本当に真に国民から信頼される、感謝される、そして協力される、そういう自衛隊をつくらなきゃいかぬ。そのためには、やはり大臣が先頭に立って、教育の問題についてもシビリアンコントロールについても、しっかり頑張っていただきたい。大臣には期待をしていますので。

 それから外務大臣に、せんだって久米島の町長と沖縄知事さんと、私もお伺いしましたけれども、実は鳥島の件、久米島の。沖縄県は、平成四年に軍用地を一括して契約しました。そして、二十四年にその期限が切れるんです。その期限が切れるときには、もう一度また改めて契約をしなきゃいかぬ。二十四年にそういう時期が来るんです。久米島の町長は、その前にもう返還してほしいという要請をいたしました。それはなぜか。

 実は、いろいろ資料を調べてみたんです。我が国に鳥島の資料はほとんどないんです。先ほどお見せしました最初の図面、これは、実は第二次世界大戦中、一九四五年にアメリカ軍が調査をした鳥島の形容なんです。それを見ますと、尾根が約五百メーターぐらい続いていて、高さが約二十五メーターぐらいの島があるというだけの話です。あと、細かいのはいろいろやっていますけれども、一番古い資料がこれなんです。

 その次の資料、二番目が、これは復帰のときに我が国の国土地理院が調査をした資料です。そのときまでは、鳥島というのは一つの島になっています。一九四五年のときも島になっています。四十七年までも島になっています。面積は定かじゃないですが、およそ四万一千平方メートルと言われています。それが、一九八三年ですから昭和五十八年に改めて測量したときには、その島が三つに割れているんです。それは何でかといいますと、復帰後、米軍が射爆撃場として使って、じゃんじゃん爆弾を撃ち込んでいる。そのために、およそ長さが五百メーター、横幅が一番広いところで二百五十メーター、狭いところで百メーターといった島が、三つに割れてだんだん小さくなっている。

 それで、最後にどういう形になっていますかというと、今度は次のを見ていただきたいんですが、これは上空から見た写真なんですけれども、島らしい島はほとんど見えないんです。周辺に、リーフの上に砂浜がある。島らしい島はほとんど見えない。町長さんにお伺いしましたら、島が三つに割れて、もう島らしい島がなくなっている。それで砂浜が残っている。

 次の写真が、これはことしの八月でしたか、沖縄県議会の経労委員会が調査に行って、船上から撮った写真なんです。それからしますと、当初二十五メーターあった島の高さがほとんど三メーターか四メーターぐらいの高さに、しかも砕けて三つに分かれ、しかも一番低いのはもう二メーターしかない。ということは、島が消滅しつつあるということなんです。

 我が国の領土で、久米島からおよそ三十キロ離れた地にありますから、そこにある島が消滅するということは、国家としてこんな大損失はないんです。今のままで続けていますと、間違いなくあの島は消滅し、リーフだけが残っちゃう。リーフだけ残ったら島じゃなくなる。今きちっとした対応をしなければ、沖ノ鳥島みたいな格好になっちゃう。そういう危険性を十分はらんでいる。

 それで、久米島町長は、もう返還してほしい、射爆撃場としてはもうこれ以上耐えられない、それだったら島がなくなりますよということで、実は要請に来ていただいたんです。日米間で射爆場として提供している、それが今まさに消滅の危機にあるということです。我が国の領土が一つ減ってなくなっちゃうという時期に来ている。ただ、政府としてどういう対応をしているかというのはほとんどわからないんです、私どもは。そういう動きもないと思っています。

 知事さんが横田基地の司令部に行って向こうの報道官にお会いしたときに、米軍は、あの島がだんだん減っていくのに大変懸念をしているという表現はしているんです。しかしながら、だからやめますという話じゃないんです。今から、日米間で話し合いをしながら、あの島をどういう対応をするのか、どうして守るのか。必要ならば、やはり返還してもらう以外にないと思うんですけれども、そういうことをしっかりやっていただかなければ、沖縄から、我が国から領土が一つなくなるということです。国の領土を守るというのは、それは国家の責任ですから、それが、外国に貸与して、そこで爆撃されて沈んでなくなるというばかな話はあり得ないと思うんです。

 ぜひ真剣に、国土交通省もそうかもしれませんけれども、提供する側とそれから交渉する側としっかり話し合いをしていただいて、早急に調査をして、まだ調査されていないんですよ。昭和五十八年に調査されたのが最後で、後は何も残っていない。調査資料も全く残っていないんです。昭和五十三年に一応地主が登記だけはしてあるんです。あのときの島の面積はあるんです。しかし、その形はもう残っていないんです。ということですから、これは私は看過するわけにはいかないと思っています。

 ぜひ、しかるべきところで調査をして、そしてその現状をとらえて、日米間で話し合いをしていただいて、できるだけ早目に返還するという努力をしていただきたいと思っていますが、それはどちらの話でしょうか、答弁は。

今津委員長 嘉数君に申し上げますが、質疑に使います資料につきましては、できるだけ他の委員にもお知らせしていただくようにお願い申し上げたいと思います。

嘉数委員 はい。

浜田国務大臣 今先生から御指摘のありました件につきましては、今般十一月十二日に、沖縄県知事並びに沖縄県の漁業協同組合連合会会長及び協同組合の組合長会長からも私のところに、ホテル・ホテルの訓練区域の一部解除並びに鳥島の射爆場及び久米島射爆場の返還要請があったところでありまして、防衛省としては、今般の知事等の要請を踏まえて、在日米軍司令部の回答を確認するために、在日米軍司令部に対して米側の対応を照会したところであります。

 これに対して米側からは、同訓練地域については、日米安全保障条約の目的達成のために、引き続き米軍施設・区域として維持する必要があると認識しており、一部解除及び返還することは考えていないが、沖縄県知事等の要請を踏まえて、何らかの改善が可能かどうか検討することとしたいとの回答を得たところでございます。

 いずれにしても、鳥島射爆場の返還については、現在のところ、米軍の訓練の運用上の理由等によって非常に厳しいものがあると考えておりますが、沖縄県知事等の要請については、これを念頭に置いて、米側とともに調整しつつ、適切に対応していきたいというふうに思っているところでございます。

 また、防衛省としては、現在の賃貸借の契約更新の取り扱いについては、久米島町等の要望を勘案しつつ、適切に対応していきたいというふうに思っているところでございます。

中曽根国務大臣 ただいま防衛大臣からも御答弁ございましたけれども、鳥島、久米島の返還のこと、そしてホテル・ホテル訓練区域の返還とあわせて、十一日に私のところにも、仲井眞沖縄県知事、そして先生にも御同席いただいてお話を伺いました。

 その際にも申し上げましたけれども、日米安全保障条約の目的達成のためには、やはり引き続き維持する必要がある、そういうふうに認識をしておるわけでございます。

 侵食の問題については国土交通省が所管なのかもしれませんが、今お話を伺いまして、島の消滅というようなことは大変大きな問題だ、そういうふうに思っております。

 防衛大臣からもお話ありましたけれども、訓練区域とかあるいは射爆場のあり方、こういうものにつきましては、沖縄県あるいはほかの地方公共団体からの御要望、必要性というものを伺っておりまして、そういうものも勘案をしながら私どもとしては米側と協議をしているところでございますが、先般、先生初め知事さんや地元の皆さんから御要請をいただいた、そういうことも頭に置きまして、今後対応していきたいと思います。

 米側としても、今防衛大臣お話しになりましたけれども、返還を行う考えはないものの、何らかの改善が可能かどうか検討したい、そういうふうにしておるところでございまして、私どもとしても、どういう対応が可能か考えていきたい、そういうふうに思っております。

嘉数委員 返還する意思がないから、はい、そうですかというわけにいかないんです。国土がなくなるんですから。その点しっかり頭に入れていただいて話し合いをしなければ、提供しました、相手は使いたい、しかし使ってしまったらこれがなくなりますよというのに、相手が返さないからという話にならぬと思うんです。

 もっと積極的に日米間で話し合いをしていただいて、別に空域あるいは海域を返せと言っているわけじゃない、あの島をもう射爆場から解放していただきたいということなんですから、ぜひもう一度、国としてしっかりした取り組みをしていただきたいとお願いいたしまして、質問を終わります。

今津委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 私の持ち時間はきょうは十三分でございますので、早速大臣所信に対しての質疑を行わせていただきたいと思うんです。

 まず最初に、外務大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、そのテーマは、クラスター爆弾禁止条約の署名とその後の日本の役割につきましてお尋ねをしたいと思うわけでございます。

 クラスター爆弾禁止条約の署名式が、十二月三日及び四日、ノルウェーの首都オスロで開かれることになっているわけでございます。この条約は、本年五月に、我が国を含む百七カ国、国際機関及び非政府団体の参加のもと採択されました。今回の署名で、オスロ・プロセスは大きな節目を迎えるわけでございます。

 半世紀以上にわたって、罪のない市民が殺傷されまして人類に苦難をもたらしてきた、いわゆる悪魔の兵器と言われていたこのクラスター爆弾が人道上の見地から規制されるということは、歴史的に大変意義深いことである、そのように私どもは考えております。

 また、日本政府としても、本当に決断をしていただいて、現有の四種類のクラスター爆弾を全廃し、欧州諸国が今維持しておる最新型のクラスター爆弾も今後導入しない方針を固めておられるということは、私どもも評価をしたいと思います。

 ただ、安全保障上考えましたときに、このクラスター弾廃棄に伴って防衛上の観点から支障がないように、代替手段であるとか補完措置ということについてはしっかりと考えていただいて、また今後の戦い方の検討も、しっかり政府として行っていただきたいと思うわけであります。

 十二月の署名式に中曽根外務大臣が今御出席の方向であるということで伺っているんですけれども、ぜひ予定どおり御出席いただいて、日本の存在感というものをきちっとこの場でも示していただきたい、そのようにまずお願いしておきたいと思います。

 そこで、二点お伺いしたいわけであります。

 署名の後それぞれ、批准、発効となっていくわけですけれども、日本ができることは何か、そういうことをしっかりとやはり我々も考えていかないといけないと思うんですね。

 一つは、被害者への支援というか、そういうこと。あるいは、これからの技術力の開発に関連してきますけれども、日本は技術力の非常に高い国ですから、不発弾の処理なんかも日本が本当はイニシアチブがとれる、そういう分野ではないかと思うんですが、まず一点目にお伺いしたいのは、このクラスター爆弾による被害者への支援などに、今後一年内に六百万ドル、約六億円を拠出する方針を署名式の際に発表するのかどうかも含めて固められた、そういう報道がございます。その報道のとおり、そういうことを考えておられるのかどうかということですね。

 私は、そういうことをしっかりと、日本が積極的な姿勢を平和構築に向けてされるということは非常に意味があることだと思うんですが、その場合に、この六百万ドルを使ってどういう国を支援対象国と想定されているのかも含めてお聞きしたいということがまず一点でございます。

 もう一点は、この条約の署名、批准、発効後、日本政府として、今後の国際世論を高めるための努力がさらに必要ではないかということでございます。

 今回の条約には、残念ながら、もう御存じのとおり、主要生産・保有国であるアメリカ、中国、ロシア、さらにはお隣の韓国などは不参加で、条約の実効性自体に疑問が残っているわけであります。ただ、対人地雷禁止条約が発効したときにも、非締約国も地雷を使わなくなった、そういうこともありまして、今回のクラスター弾禁止条約で同様の影響も期待できる、そういう楽観的な見方もございます。それはぜひ期待をしたいわけです。

 ただ、これから外交によってもう一つの、本家本元のプロセスであるCCW、これは日本名では特定通常兵器使用禁止制限条約の枠組みですが、これの交渉でも、大国のアメリカ、ロシア、中国、こういう国に対しても、やはり今回の禁止条約と同様の、近い内容の規制を行うのが望ましい、そういうように我々は考えているわけです。

 今回、最終的に福田総理が五月の採択をされるまでに決断をされた。それまでの交渉過程を見ていると、外務省というのは他国の後ろに何となくついていって模様を見ている、そういう雰囲気が報告を聞いていても非常に強かったわけですが、私は、やはり日本は、唯一の被爆国として、人道上の懸念という点をもっと前面に出して、クラスター爆弾の廃棄を非締約国各国にもリーダーシップを発揮して今後強く訴えていくべきである、そういう外交をしっかりと中曽根外務大臣のもとで主導していただきたいと思うんです。

 この二点につきまして、外務大臣の見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 お話ありましたように、十二月の三日から四日にかけまして、ノルウェーのオスロにおいて、クラスター弾に関する条約の署名式がございます。

 御質問のことでございますが、一つは被害者支援等のお話がございました。

 我が国は、クラスター弾等によって惹起されます人道上の問題を今までも深刻に受けとめておりまして、委員御承知かと思いますが、被害を受けておりますレバノンとかラオス、カンボジア、アフガニスタンなどにおきまして、不発弾の処理あるいは犠牲者支援に貢献をしてきたわけでございます。

 六百万ドルというようなお話、今委員からありましたけれども、具体的な額等については現在お答えできないわけでありますが、今後ともこういう貢献というのは積極的に行っていきたい、そういうふうに思っております。

 それからもう一点、委員がおっしゃいましたように、クラスター弾がもたらす人道上の懸念というのは大変大事で、国際的な協力に向けて我が国も貢献をしていくということは、ある意味では当然のことでございます。

 他方、クラスター弾の主要保有国それから生産国も締結をしております先ほどおっしゃったCCW、これの枠組みにおきましても、人道上の懸念に対処するための実効的な国際的な約束、これが作成されることを私どもとしても大変重視をしているところでございます。

 残念ながら、CCWの枠組みにおけることしの交渉では最終的な合意に至りませんでした。しかし、この交渉については来年も継続をされる、そういうことになっておりますので、我が国といたしましても、引き続いて積極的にこの交渉に参加をしていく、そういう考えでございます。

佐藤(茂)委員 ぜひ、積極的にということを強調されましたので、お願いをしたいと思います。

 では、外務大臣、追加の答弁があれば。

中曽根国務大臣 十二月三日、四日の署名式ですが、できれば出席をして、今申し上げましたような、我が国としての積極的な働きかけをやっていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 ぜひ出席をしていただきたいと思います。民主党さんからも、出席しろ、そういう話ですから、国会上許されるんじゃないかと思うんですが、よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、田母神前空幕長等の問題につきまして、もうきょうは一点ぐらいしか聞けないと思うんですが、私は、各論に入る前に、防衛省としての今回の問題に対しての覚悟というか、姿勢、態勢の問題についてお聞きしたいと思うんですね。

 私としては、今回の田母神前空幕長の問題というのは、昨年来の数々の不祥事にまさるとも劣らないくらいに、防衛省・自衛隊の体質が問われている、そういう大変大事な問題ではないかというように思っているわけでございます。

 残念ながら、最近の報道を見ておりますと、浜田防衛大臣が、この後起きました空将補のセクハラ問題も含めて、不祥事が続いているということをマスコミから問われて、そんな趣旨で言われたことではないと思うんですが、タイトルでは、「不祥事続きで防衛相弱音 個人の自律性頼るしかない」というような見出しの報道まで出ているんです。私は、ぜひ防衛大臣には、今は本当にピンチだけれども、それを逆にチャンスに変えるんだ、そういう意気込みでこの問題に対応していただきたいと思うわけであります。

 ただそこで、まず気になるのは、この問題に対する取り組みの姿勢、態勢が、旧防衛施設庁の談合事件から防衛省としてとられてきた、そういう不祥事に対応する省内の態勢と比較して、どうしても少しはれものにさわるような、腰が引けている対応をしているんじゃないかというように私は見受けられるわけであります。

 私は、ぜひこの際、本当に防衛省挙げての徹底した事実関係の調査、今現実に防衛監察本部が動かれているというのは報道で聞いております。しかし、防衛監察本部というのは、法令遵守という観点ですから、今回の場合、果たしてどこまでそれで事実関係がはっきり調べ上げられるのかどうかというのは疑問が残ります。

 ですから、そういう防衛監察本部を動かすのも含めて、しっかりと省を挙げての事実関係の調査とともに、再発防止策については、防衛省幹部はもちろんです、大臣も入っての幹部はもちろんですが、外部の有識者であるとかあるいは自衛隊幹部OB、立派な方も多くいらっしゃるわけですから、そういう方にも入っていただいて、例えば、仮称再発防止対策検討委員会というようなものをきちっと立ち上げて、再発防止策を徹底的に議論して、なおかつスケジュールを、いつまでに答えを出すんだということを明確に定めて発表する。そういう防衛省挙げての全省的な徹底した取り組みをなぜされないのか非常に疑問なんですけれども、ぜひしていただきたいと私は思うんですが、防衛大臣の見解を伺いたいと思います。

浜田国務大臣 先生のおっしゃるように、私の態度が大変軟弱、積極的でないというお話があるわけでありますが、ただ、私の感覚からすれば、幕僚長という地位にある人間がこういうことをしたというのは大変問題でありますし、それが、我々すべての自衛隊員に対して影響を与えているかといえば、そうではない、私はそう思っております。

 そういう意味合いにおいては、当然、先生のおっしゃるような強い姿勢で対応すべきというところもありますけれども、私とすると、今回の問題に関しては当然、シビリアンコントロールの面で落ち度はなかったのかという点検も含めて、慎重に動向を見定めながらこれから対処していきたいというふうに思っておるわけでありまして、決して腰が引けているわけでも何でもありません。その辺のところも含めて、先生の御指摘もよくわかりますので、今後対応していきたいというふうに思っています。

 ただ、大変申しわけない話でありますが、余りにいろいろな事案が多過ぎまして、委員会を立ち上げ過ぎておりますので、そういったところの整理等も含めて、厳正な対処をしていきたいというふうに思っているところであります。

佐藤(茂)委員 私は、浜田防衛大臣を信頼しておりますから、対応されるだろうと思うんです。

 ただ、こういう問題が起きたときに、やはりどの程度、本当に防衛省としてこの問題を重視しているのかというのは、具体的に形にあらわれてくるわけですから、大臣の覚悟がどうだけれども、しかし具体的にどういう仕組みをきちっと形としてつくって対応されるかということは、国民にもやはり、ああ、防衛省はこの問題についてはこう取り組んでいるんだなということがはっきり目に見える形で対応されることが必要ではないか、そのように思うんですが、もし答弁があればお願いしたいと思います。

浜田国務大臣 その辺も含めて、見える形でやれるようにしていきたいというふうに今思っているところであります。ここのところ、そういう意味では大変いろいろな事象が起きてまいりましたので、そういうものも含めて、今後、先生の御指摘のように見える形でやれるようにしていきたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

今津委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 けさは、一月前にテロ特で質問させていただきました海賊対策の問題について、まず質疑をしたいと思います。

 ちょうど、けさの日本海事新聞の一面に、昨日、日本船主協会の前川会長が記者会見をされた、そのことが記事になっております。

 前川会長はその記者会見の中で、「乗組員の安全だけでなく、国民生活のための物資を運ぶことにも影響が出る。各国がやっているのと同じように政府関係艦船の派遣を含め早急に検討してほしい」と。加えて、アデン湾についての各国の海軍の派遣について言及をし、「有効な手だてとして、自衛隊の艦船の派遣も含めて考えていただきたいのが本音だ」「(海自艦船が)いてくれるだけでいい。日本関係船舶が頼るのが外国だけというのは独立国家として、いかがなものか」、こういう御発言をされております。

 そして、前川会長は、派遣に向け、法整備に努力していただいているのはありがたいが、危機は今そこにあるんだということで、現行法制下で可能な即時的な対応を切実に期待をした、こういう記事でございます。

 一昨日の防衛大臣、外務大臣の所信を私は伺っておりまして、これだけ海賊事案が、国民の間でも関心があり、また海運関係者の間では極めて緊急の取り組みを要請されている、こういう事案でありましたけれども、浜田防衛大臣の所信の中で一言も海賊について言及がなかったのは、大変残念でございました。

 それに引きかえ、中曽根外務大臣の所信、これは約三分の一を割いて海賊対策について言及をしていただいた。しかも、「海賊対策は、航行の安全確保や日本国民の人命及び財産の保護の観点からも、急を要する課題であります。」とはっきり言及をしていただいております。また、「海賊対策は国際的な課題でもあることを踏まえ、我が国として積極的に取り組んでまいります。 今こそ、我が国にとって、海上安全保障について改めて考え直すときであります。」こういう言及が外務大臣からなされております。

 中曽根外務大臣、改めて、ソマリア沖、アデン湾が今注目を浴びておるわけですけれども、もちろん伝統的にはマラッカ海峡も我が国にとっては大変重大な関心を持ってきたところでありますけれども、ソマリア沖の海賊対処について、私どもも、火急の課題である、一刻の猶予もない、こういう認識でありますけれども、海外における邦人の生命及び身体の保護、こういうことを管轄しておられる外務大臣として、この問題に対する、あるいは海上安全保障という新しい概念を提示していただいておりますけれども、御決意あるいは具体的にどういう施策を考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 委員に申し上げるまでもありませんけれども、日本は海洋国家でありますし、また貿易立国である、そういう日本にとりまして、船舶の航行の安全を確保するということ、それから海賊対策、テロ対策を行うということは、当然重要なことでございまして、これは国家の存立にもかかわることだ、そういうふうに思っております。

 マラッカ海峡それからソマリア沖、アデン湾、最近、新聞にもいろいろ海賊の記事が出ておりますけれども、昨年に比べてこの事件の件数が大幅にふえている、そういうふうにも認識をしているところでございますが、大変懸念すべき状況である、そういうふうに思っております。御承知のとおり、ことし、海賊対策を促す国連の安全保障理事会決議が二件、全会一致で採択されましたし、我が国も共同提案国となったわけでございます。

 そういうことで、私も所信の中でこれの重要性について述べたわけでありますけれども、委員もお話ありますように、安全確保という観点から重要でありますが、国民の人命また財産、船員の人命、そういうことにもかかわることでありまして、まさに急を要する課題だ、そういうふうに思っております。

 政府といたしましては、種々検討して、そしてできることから早急に措置を講じていく必要がある、そういうふうに思っております。

長島(昭)委員 そこで、概念を少し整理させていただきたいと思っているんですが、新聞紙上でも、海賊対処あるいは海賊取り締まり、政府も今海賊取り締まりの新しい法制度に向けて検討中、こういう見出しが躍るわけでありますが、私は、この海賊対処については二段階あると思っております。第一段階は、今、中曽根外務大臣がおっしゃった、人命、財産の保護のために海賊行為を抑止するというフェーズであります。そして第二段階としては、その抑止から、あるいは船に乗り込んでいって逮捕して、そして裁判、司法過程にのせる、こういう二つの段階から成っている。

 そして、私どもは、まず可及的速やかに第一段階の対応を政府に求めている、こういうことであります。

 私の理解によれば、第二段階の検討については、官邸の中に総合海洋政策本部というものが設置をされ、そこで法整備が今続けられている。続けられているといっても、実はことしの二月から始まっていまだに延々とやっているので、いつになったらこの成果が出てくるのか、私は非常におぼつかないところもあるんですけれども、今言えることは、ソマリア、アデン湾の海賊事案の最近の多発ぶりからして、この第二段階の成果を待っているような状況ではないというふうに考えているわけであります。

 そこで、私は、一月前のテロ特での委員会審議の中で、自衛隊法八十二条の海上警備行動の発令をする必要があるのではないかという主張をさせていただいたわけであります。

 もちろん海上警備行動というのは、その成り立ちからいって、本来は日本近海の武装の不審船あるいは工作船、こういうものを念頭に置いた仕組みであるということは私も理解をしておるんです。

 防衛大臣、これまでの防衛庁長官時代からのさまざまな答弁の積み重ねによって、私の理解によれば、歴代の防衛庁長官がこの国会の審議の場で、例えば、自衛隊が海賊の脅威からの安全確保のために行動するとすれば、それは海上警備行動であるという平成十七年の大野防衛庁長官の御答弁。

 あるいは、自衛隊の船舶の航行の安全を確保するための護衛という任務は、その根拠は海上警備行動である、これは平成十五年の当時の石破長官の御答弁。

 あるいは、海上警備行動はソマリア沖にも発令する、地理的な限界はないという、これは先日の私の質疑に対する浜田防衛大臣の御答弁。

 それから、平成十五年の石破答弁の中では、海上警備行動というのは長期にわたるオペレーションも念頭に置かれているということが言及されております。それから、自衛隊の能力の面でも、民間船舶が危険にさらされている中、船舶の航行の安全を確保するために護衛する能力を自衛隊が持っている、これも平成十五年の石破長官の答弁でございます。

 これは私の単なる思いつきで申し上げたわけではなく、こういう累次の答弁の積み重ねの上で、このソマリア、アデン湾における今回の深刻な国民の生命財産にかかわる事案に対して現行法制上何ができるかというふうに探ったときに、海上自衛隊の海上警備行動、これが念頭にあってしかるべきだと思うんですが、浜田大臣、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 今、長島委員御指摘のように、海上警備行動は使えるということは、これは今までの答弁の中でもお話が、大臣が答弁しているところでございますので、そういう意味では可能だと思っております。後はそれこそ政府としてどういう決断をされるかということになってくるかと思っております。

 我々とすれば、当然それに対応すべく我々なりに考えをまとめているところでありますので、そういった意味においては、海上警備行動というのを政府全体としてどう考えるかというところにかかってくるのではないかというふうに思っておるところであります。

長島(昭)委員 おっしゃるとおりです。私も、全く同感です。

 今、政府の姿勢が、政府全体の姿勢が問われている、このように考えておりますが、私の記憶によれば、先日、十七日のテロ特の審議の中で、麻生総理自身がこの海域における海賊行為の抑止を目的とした自衛隊派遣も含めた対応にかなり前向きな印象を私持ったんですけれども、その後、防衛大臣にそういうことを検討するようにというような御指示はあったんでしょうか。

浜田国務大臣 今のところ私のところにはそういうお話はございません。しかしながら、先ほど委員から御指摘のあった海洋政策本部の方で議論をしているというふうに、私の方は聞いておるところでございます。

長島(昭)委員 海洋政策本部の話は、私も先ほど申し上げたように、それは第二段階の問題でありまして、むしろ国民が今喫緊の課題として認識をしているのは第一段階、現行法上で対処すべき問題。

 その問題について、総理は国会の質疑の中ではかなり積極的な姿勢を示しておられたようでありますが、具体的な指示が、特に海上警備行動は総理大臣の承認に基づいて防衛大臣が発令することになっておりますので、その辺の連携、指示がまだきちんとした形で来ていない、こういう認識を今改めてさせていただきました。この点は、別の機会にまた追及をしていきたいと思います。

 何ができるかというイメージなんですけれども、国民の皆さんの間でも、海賊退治といっても漠然としたイメージでよくわからないと思うんですが、仮に海上警備行動で自衛隊の艦艇を派遣した場合、どういうことができるのか。

 例えば、船舶の航行の状況というものを監視する、私はP3C哨戒機を派遣したらどうか、こういう提案もさせていただきましたけれども、こういう警戒監視、あるいは航行する船舶に対して呼びかけたり、海賊船に対してとまりなさいと言ったり、信号弾で自分の存在を示したり、あるいは接近をしていって、追尾をしていって、そして伴走する、こういうようなことまでできるというふうに理解をしておるんですけれども、防衛大臣の御認識を伺いたいと思います。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 自衛隊法第八十二条に基づきまして、仮にその法的な要件に該当するということで海上警備行動が発令された場合ということでございますけれども、自衛隊法第九十三条の規定によりまして、海上保安庁法の一定の規定が準用されておりますので、それに基づきます権限の行使が可能でございます。

 具体的には、海上保安庁法十六条の規定がございますので、必要に応じて付近にある人あるいは船舶に対して協力を求めるでありますとか、あるいは同じく海上保安庁法の第十七条第一項がございますので、船舶の同一性などを確かめるために船舶の進行を停止させて立入検査をする、あるいは質問をするということも法的にはできることになっております。

 それから、十八条に基づきまして、航路の変更、あるいは停船等のほかに、海上における生命身体に対する危険または財産に対する重大な損害を及ぼすおそれがある行為というものを制止することができるということになっております。

 したがいまして、これらの規定に基づきまして、例えば、我が国船舶の航行の安全を確保するために、船でありますとかあるいは航空機によりまして、一定の海域を哨戒するとか、あるいは保護の対象となっている船舶と並んで走る、並走によりまして、我が国の船舶の護衛といったような活動に自衛隊の部隊を従事させるということは、法的には可能でございます。

 いずれにしましても、そもそも海上警備行動を発令して自衛隊が海賊対処を行うかどうかということにつきましては、当然のことながら、自衛隊法第八十二条の法的な要件に該当するかどうかというような法的な側面もございますし、それから政府全体としての海賊対処のあり方、あるいはその部隊のローテーションを含みます運用上の課題、あるいは他国との協力のあり方等、さまざまな点について十分に検討をしていくことが必要であると考えております。

長島(昭)委員 今、徳地さんにるる説明をしていただいたとおりでありまして、これはもう大体私伺っていて第一段階の対処としては十分だというふうに認識をしておるんですけれども、もう一つ肝心なことを伺いたいのは、武器使用についてでございます。

 これは、私の理解によれば、警察官職務執行法の準用ということになる、つまり海上警備行動というのは警察行動、こういうことでございますので、それが準用されると思うんですが、具体的に三点伺いたいんですけれども、第一番目、普通、武器使用というと、自己の防護のための武器使用、それからもう一つは関係する他人の防護のための武器使用、そしてもう一つは任務遂行に対する抵抗を抑止するための武器使用、この三つの種類に分かれると思うんですけれども、八十二条のもとで仮に海上自衛隊が派遣された場合、武器使用の権限はこの三つを満たすものとなるんでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの自衛隊法第八十二条に規定をする法的要件に該当いたしまして海上警備行動が下令をされた場合におきましては、自衛隊法の第九十三条の規定によりまして準用をされます警察官職務執行法の第七条に基づきまして、自己もしくは他人に対する防護または公務執行に対する抵抗の抑止を目的として、事態に応じ合理的に必要と判断される限度におきまして武器を使用することができるということになっております。ただし、正当防衛、緊急避難に該当する場合を除きましては、人に危害を与えてはならない、こういうふうにされておるところでございます。

長島(昭)委員 今の御説明を整理いたしますと、海上警備行動発令時の海上自衛官に与えられている武器使用の権限からして、これは警察活動の範囲内、こういう理解でよろしいんでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊法の第八十二条によりまして海上警備行動が発令されるといいますものは、これは我が国の公共の秩序の維持という目的のために発令されるものでございますので、いわゆる警察権の行使ということになります。

長島(昭)委員 そうすると、重ねて確認をさせていただきたいんですけれども、警察権の行使ということでありますから、例えば海賊の問題に対して海上警備行動が発令された場合、憲法第九条の問題は生じない、もっと言えば、国または国に準ずる者かどうかとか、あるいは非戦闘地域かどうかとか、あのテロ特やあるいはイラク特などで議論したそういう概念とは次元を異にする、こういう理解でよろしいんでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 これも一般論でございますけれども、海賊行為への対処のために自衛隊法の第八十二条に基づきまして海上警備行動が発令をされている場合に、我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為に対しまして、自衛官が、先ほど申し上げた自衛隊法第九十三条によりまして準用をされます警察官職務執行法第七条の範囲内でいわゆる警察権の行使として行う武器の使用であれば、これは憲法九条に反するものではないと考えられるものでございます。

長島(昭)委員 今議論をさせていただいてまいりまして、防衛大臣にこの問題について最後に伺いたいと思っているんですが、まず、このソマリア沖、アデン湾の海賊事案は、可及的速やかに対処をしていかなければならない事案である。しかも、法律上の根拠は海上警備行動ということで累次の御答弁が重ねられてきている。

 そして、もう一つは、さっき徳地局長から、法的要件を満たせば、こういうお話がありました。その法的要件というのは恐らく、私が考えるに、この八十二条の「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合」、その特別の必要という法的要件にはまるかどうか、こういう御指摘だったんだろうと思います。

 その点で、私、最初の、一月前の質疑の中でも申し上げましたけれども、海上の治安の維持というものは一義的には海上保安庁が対処するということで、海上保安庁の能力あるいは装備、こういうものをただしましたところ、海上保安庁長官からじかに、ソマリア、アデン湾については自分たちの手に余るんだ、こういう御指摘がありました。

 今まで私どもの理解によれば、海上保安庁では対応し切れない、そういう部分については特別の必要というこの部分に当たる、こういう理解でございますので、ここで海上自衛隊の派遣の可能性が、つまり法的要件として満たされる、こういうことであります。そういう理解です。

 そして、今、最後に伺いましたように、海上警備行動については憲法九条、武力の行使という問題とはかかわりがない問題である、しかも、能力の面においても、先ほど徳地局長の方からるる説明をしていただいたように、海上のエスコート、民間船舶のエスコートをするという能力あるいは権限、私は十二分にあるというふうに認識をしたんですけれども、最後に浜田大臣に伺いたい。

 そういう今私が申し上げたことを前提に、なお海上警備行動を発令することについて法的に大臣のお考えを縛る、あるいは、そういう発令をされようとなさる大臣を縛るような環境、条件、こういうものがもしあるならば教えていただきたいと思います。

浜田国務大臣 今先生がずっと御質問になられてきたことに対しまして、我々とするとやはり今後特に考えなければならない点があるのかということで御指摘をいただいたわけであります。

 私どもとしては、まず、各国が相互に協力している活動の中で、我が国の公共の秩序の維持を目的として、防護対象に限定のある海上警備行動により活動を行うことについて、国際協力の観点からどう考えるべきか。二番目として、また、海賊がロケットランチャー等の重火器で武装しているということ、現に他国軍に対しても銃撃して抵抗していることなどにかんがみて、隊員の安全確保の万全を図るにはどうすべきか。そしてまた、海賊を拘束した場合に、身柄を沿岸国に引き渡すのか、あるいは我が国の司法手続に従って我が国へ移送するのかといった論点もあるわけでありますので、そういった点についても検討しなければならないというふうに思っておるところであります。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 自衛隊を預かる大臣としては、今の御答弁は私も十分理解をするところであります。ですから、その問題をしっかり検討していただいて、そして、きょうこの海事新聞にもあるように、今本当に日本人の生命財産あるいは日本国経済の生命線が脅かされている、そういうことを念頭に置いてしっかりとした対応をしていただきたいというふうに思います。

 あと、残る時間を使って、もう一つの問題について伺いたいというふうに思います。

 それは質問通告もさせていただきましたが、対馬あるいは市谷あるいは横須賀、こういう日本の、我が国の防衛上極めて重要な場所、地域の周辺の土地が、極めて安易に外国資本の手に渡る、あるいは民間の間で売買をされる、あるいは国有地だったところが極めて安易に民間に売却をされる、こういう事態が実は続発をしておりまして、その点についての防衛省の御認識を私は伺いたい、このように思っております。

 きょう神風委員が対馬については詳しく質疑をされる、こういうことでございますので、私は対馬についてはそれほど突っ込んだ議論をするつもりはないんですけれども、実は嘉数委員長を中心として、私ども安全保障委員、ことしの八月、対馬に視察をしてまいりました。

 これは、もう巷間、さまざまな報道でもなされているように、まさに海上自衛隊の対馬防備隊本部の周辺の、周辺といいますか隣接している地域に外国の資本が入り込んでリゾート地をつくっている。それで日常的に外国人が基地の周りを合法的に徘回する、こういう状況が起こっているわけです。

 改めて伺いたいんですけれども、防衛省として、こういう場所に外国人によって土地が所有されるという事態は、基地の運用上あるいは安全保障という観点から本当に問題がないと思っておられるんでしょうか。

枡田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の対馬防備隊本部近辺における土地の買収の問題でございますが、この問題につきましては、平成十三年から平成十五年ごろに、隣接する民間業者から海上自衛隊対馬防備隊本部に対しまして、同社の工場跡地の売却についてお話がございました。

 同本部におきまして土地購入の要否について検討を行ったところでございますが、その必要性はないと判断しまして、海上自衛隊としては当該土地を購入することはなかったところでございます。

 そして、海上自衛隊対馬防備隊本部におきましては、基地の警備を含めまして、部隊の運営は地域の特性に合わせて適切に実施しておりまして、外国人等による自衛隊基地に隣接する土地の買収が部隊の運営に直接影響があるとは認識していないところでございます。

長島(昭)委員 部隊の運用に直接影響がないというお話ですが、今委員の方が聞いておられて、そしてまた国民の皆さんがこれを聞いておられて、本当に影響がないんだろうかと思われますよね。

 余りにも視野が狭いというか、外国人が、あるいは民間の方でもいいですよ、基地の周りをうろうろするという状況は、本当に運用上全く問題ないと思っておられるんですか。あるいは、もしかしたらそういうところから監視をされるかもしれない。こういうリスクなどについてお考えになっておられないんでしょうか。

枡田政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでも防衛省・自衛隊としましては、基地の周辺の状況については常々関心を払いつつ対応しているところでございます。

 部隊の運営につきましては、先ほど申し上げましたけれども、地域の特性に合わせて適切に実施しておりまして、私どもとしましては、部隊の運営に直接影響があるものとは認識しておらないところでございます。

長島(昭)委員 今の話は非常に受け身なんですよ。つまり、そういう環境の中に置かれた、そういう環境のもとでの部隊運用は何とか注意を払いながら頑張ってやりますという話ですね。

 そうじゃないんですよ。我々が考えているのは、そういう場所が外国資本に買われる可能性もある、あるいは民間で安易に売買が行われる可能性がある、それをなぜもっと抑止的に、プリエンプティブに、先んじて制するような対応をおとりにならないのか。その点を伺っているんですが、いかがでしょう。

 どうせすっきりしたお答えがいただけないと思うので、もう一つ伺いたいと思っているんですが、市谷の防衛省、これも皆さんに地図をお配りすればよかったんですが、ちょうど市谷の北側ですか、国有地がずっと並んでいるんですね。もともと厚生省の書庫があったところが、国有地の売却の流れの中で民間のディベロッパーに売却をされ、今や何と三十八階建てのマンションが建っている。市谷のまさに防衛省・自衛隊の本丸を見おろすようなロケーションに三十八階建てのマンションが建っている。しかも、その周りには、財務省の総合研究所とか、国立印刷局とか、内閣衛星情報センター、外務省の職員の子弟育英寮とか、こういうものが並んでいる。

 今、政府資産を持ち過ぎだということで、これを民間に売却したらいいんじゃないかという流れがあるわけですけれども、下手をすると、この辺をずらっと民間に買われてしまう可能性があるわけですね。防衛省の本丸ですら、周辺についてはこの程度の、ある意味でいうと安全保障上の配慮の低さなんですよ。そして、対馬なんですよ。

 さらに私申し上げますと、横須賀。横須賀は、今、皆さんに写真をお配りさせていただきました。これは十一月の十九日に、夕刊フジという夕刊紙がありますけれども、ここでこういう見出し、露中土地買い標的は横須賀基地、ロシアと中国ですね、対馬だけではない、こういう記事が躍っております。

 どういうことかというと、横須賀は、皆さん行かれたらわかると思いますが、軍港を見おろすようにして後ろが高台になっています。その地形をぶち壊せというわけにはもちろんいきません。その地形の中で、その土地のところどころに、ちょうどこういうふうに軍港の状況、横須賀の基地の様子をまさに数百メートル先で手にとるように見おろせるような高台が幾つかある。それが民間の間で安易に売買されている。こういうことであります。

 そこで、この記事はどういう記事だったかというと、ある会社の社長さん、経営者が、知人からこの土地、こういうふうに軍港を見おろせるような高台の土地を譲り受けた。購入をして、登記をした。これは、二年前の平成十八年の七月三日に売買契約をして、同十九日に名義変更の登記を完了した。完了した三日後に、中国人が二人、日本人の通訳一人がその会社を訪れて、売却してもらえないかと言った。さらに、一週間後の二十八日、今度はロシア人が二人でやってきて、売却をしないかと持ちかけてきた。

 そこでこの会社の社長さんは、おかしいな、何でこういうところを外国人が買おうとしているのか、いぶかしいと思って、このことを当時の防衛庁長官、実名を挙げますと、額賀長官とその後の久間長官あてに、こんなことが起こっているんですが大丈夫なんでしょうかというお手紙を送ったそうなんです。あわせて、これは横須賀港ですから米軍基地もありますので、アメリカ大使館のシーファー大使あてにも同様の手紙を送ったわけです。これが十月の二十六日付であります。

 ところが、反応が日米で大きく違っていました。日本側からは何の反応もなかった。シーファー大使からは約二週間後に自筆のサインがしたためられた返書がこの会社社長あてに来て、そのすぐ後に米海軍犯罪捜査局のオフィサーがこの会社社長を訪れ、そして、この現場を一緒に訪れて、この記事によると、これは大変なことだ、こんなところが外国人の手に渡ったら安全保障上極めて深刻だという感想を漏らしたと。こういう記事なんです。

 しかも、この場所は、ことしの九月十二日に、過激派と思われる連中によって飛行弾が二発この高台から発射されている。こういうことなんです。防諜、諜報という意味においても私は深刻な問題だと思いますが、加えて、こういう二百メートル、三百メートル先ですから、本当に射程の短い飛行弾で十分攻撃することができる。

 こういう状況の中で、防衛省はこの会社社長さんの善意の手紙に対して何の反応もされなかったという記事なんですけれども、事実関係はいかがでしょう。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の手紙につきましては、平成十八年九月、当時の、土地の所有者と思われる方から額賀防衛庁長官あてに対して手紙をいただいております。その後速やかに、関連部署において所要の確認を行っております。

 この結果、部隊の運営に直接の影響があるとの判断には至らなかったということでございますけれども、いずれにいたしましても、防衛省においては、今後とも、その基地の周辺の状況等に配慮し、基地の安全を確保すべく万全を期してまいる所存でございます。

 事実関係として申し上げれば、即座に対応はしております。

長島(昭)委員 関連部署にと言うんですけれども、もう少し詳しくお話ししていただけませんか。

高見澤政府参考人 具体的に申し上げます。

 まず、この記事の内容なり、内容証明でいただいておりますので、当然その内容について、どういった目的があるのかとか、事実関係が本当に合っているかとか、いろいろなことを私どもも慎重に確認をしなければいけませんので、当然、その基地の周辺の状況については日ごろから関心を持ってやっております。私どももそういう意識を持って関係のところからいろいろ確認をしているということでございますので、その辺は御理解をいただきたいと思います。

長島(昭)委員 それでも、アメリカ、米海軍に比べて日本の対応、日本政府の対応は、明らかに差異がありますよね。向こうは、シーファー大使からちゃんと返信が来ているわけです。そして、オフィサーが、犯罪局の捜査官がちゃんと行っている。日本側は、社長の、今のお話もそうですけれども、何の対応も表には出てきていない。

 しかも、ちゃんとやっていると今高見澤局長はおっしゃいましたけれども、自民党の参議院の佐藤正久さんは、インタビューに答えてこう言っているんですよ。

 現場に行ってぞっとした、さっきのこの写真の現場ですね、この現場に行ってぞっとした。RPG、これは携帯型のロケット推進砲でありますけれども、射程が数百メートル、RPGなどでねらわれたらひとたまりもない。当時、衝突したイージス艦の「あたご」がずっとあそこに停泊していたんですけれども、「あたご」が停泊していたが、甲板上の乗組員の動きも確認できた。地理的条件は仕方ない、そういう地理的な条件は仕方がないけれども、何か具体的な対策をとらなければならない。

 こういう、普通だったら私たち素人でも何か特別な対応が必要だというふうに思うはずなんですけれども、そういう対応が具体的に見えてこない。対馬の問題もそう。それから市谷の問題もそう。そして横須賀も極めて深刻。これは日本国だけではなく、同盟国であるアメリカも絡んだ問題です。

 そこで、きょう、法務省の方にも来ていただいておりますが、日本には外国人土地法というのがある。この外国人土地法というのは、私の理解によると、外国人及び外国法人が日本における土地に関する権利を保有することを制限する法律。これは大正十四年につくられた。今でも有効な法律なんでしょうか。

始関政府参考人 お答え申し上げます。

 外国人土地法は、委員が今御指摘のとおり、大正十四年につくられた法律でございまして、現在でも生きているものでございます。

長島(昭)委員 この外国人土地法の第四条にこういう規定があるんです。国防上必要な地区においては、政令によって、外国人等の土地に関する権利の取得につき禁止をし、または条件もしくは制限を付することができる。

 この政令についてなんですけれども、戦前に、大正十五年に勅令という形で政令が制定をされておりますが、これが二十年の十月二十四日に廃止をされているんですね、終戦と同時に。この政令によると、一定の地域における、つまり、国防上必要な地区と思われる地域における外国人等による土地の取得に関し陸海軍大臣の許可の取得を義務づけるものだ、こういうことなんですが、こういう理解でよろしいでしょうか。

始関政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、一定の地域における外国人による土地の取得に関して、陸軍大臣、海軍大臣の許可の取得を義務づけていたというのが、委員御指摘の大正十五年の勅令第三百三十四号でございます。

長島(昭)委員 そういう今のお話ですと、対馬の事例あるいは横須賀の事例、横須賀は、この会社の社長さんが善意でお知らせいただいたからよかったようなものの、これは黙っていたら、もしかしたら、ロシア人、中国人に買われた可能性があるわけです。

 これは、諸外国はどうしているかということを、私、調べてみました。

 韓国。韓国には日本とほとんど同じような外国人土地法がございまして、これは第四条に、やはり同じように政令によってこういう地区の売買を制限することができる。韓国の政令を見ると、外国人土地法施行令というのがあって、この第五条、軍事目的上必要な地域については、建設交通部長官、これは日本でいうと国土交通大臣が、国防部長官、つまり防衛大臣等関係中央行政機関の長と協議して、この地域を指定するかしないかを決定すると。

 大臣、こういう法律の枠組みがまだ日本にある、そして、政令によって、こういう国防上重要な、安全保障上極めて重要な地域について外国人の売買を制限するあるいは条件をつける、こういうことが可能なのでありますが、今後、政府として、こういう政令を設けていく意思あるいは必要性を感じておられますか。これが最後です。

今津委員長 長島君、時間が過ぎていますので、最後の質問ということでよろしいですか。

浜田国務大臣 今先生御指摘の点、大変私自身も関心を持つところでもありますし、この政令というものの存在も承知しておるわけであります。我々の問題意識がどこにあるのかというのは極めて重要だと思っておりますので、当然、今後もそういったものも含めて考えていかなければならないというふうに思いますけれども、憲法第二十九条において財産権が保障されていることを踏まえた慎重な検討もしなきゃいけないということを私どもも思っておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、今、その政令云々というよりも、関係省庁としっかりと連携をして、今御指摘のあった点、大変私どもも問題意識を持つところでありますので、対応していきたいというふうに思っておるところであります。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 これを最後にします。憲法第二十九条に今お触れになりましたけれども、財産権の内容というのは公共の福祉に適合するように法律によって定める、こうなっておりますので、まさに国防というのは、安全保障というのは、最大の公共の福祉だと思いますので、ぜひきちっとやっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

今津委員長 次に、神風英男君。

神風委員 おはようございます。民主党の神風英男でございます。

 本日は、ただいまの長島委員の質問に引き続きまして、対馬の問題を中心に質問をさせていただきたいと思っておりますが、実は、ことし八月の十九、二十日と、本委員会派遣で、対馬、佐世保を視察してまいりました。ですから、本日御参会の委員の皆様方にも共有の、共通の御認識は相当ある方が多いという認識のもとに質問をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひしっかりとした答弁をしていただきたいなと思っております。

 まず、ことし七月に韓国で、これは与野党の国会議員五十人によって、日本の対馬も韓国の領土であるとする対馬返還要求決議案なるものが発議をされたということでございますが、まず、この事実をどのように受けとめていらっしゃるのか。また、これに対して何らかの対抗措置というか、抗議なり何らかの手段というものをとられたのかどうか。まず、その点からお伺いをしたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本年七月二十二日に、韓国与野党国会議員五十人の発議により、対馬の大韓民国領土確認及び返還要求決議案というものが提出されました。これは、八月二十九日に外交通商統一委員会及び行政安全委員会に付託されましたけれども、これまで審議はなされていないということを承知しております。

 その上で、日本政府といたしましては、対馬が我が国固有の領土であり、また、韓国政府も対馬を韓国の領土であるとは考えていないことは明らかであるという認識に基づき、引き続き、対馬をめぐる状況をよく注視して、必要に応じて韓国政府の注意喚起をする等、適切に対処していくという考えでございます。

神風委員 韓国の国会議員の定数というのは二百七十三人と伺っております。ですから、考えてみますと、約二割の国会議員がこの決議案に加わっているという状況であるわけでありまして、私自身はそれ自体がかなり問題ではないかなと思うわけでございます。

 また、加えて、この対馬返還要求決議案に対して、これはリアルメーター社というんでしょうか、ここの会社の世論調査によりますと、韓国国内の五一%がこの決議案に賛成をしているというような結果が出ているということでございますので、まさに、メディアであるとか学校教育、あるいは口コミによって、こういった一方的な情報というのがどんどん韓国の中で広がっていって韓国の全国的な世論に発展をしてしまう、特にああいう国柄でありますから、そういう危険というのは相当にあると思うわけであります。

 もう一度それに対して早い段階で何らかの手を打つべきではないかということを私自身は考えておりますけれども、今の状態で静観をするということでよろしいんでしょうか。

伊藤副大臣 静観という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、政府としては、状況の推移を注視して適切に対処していくという方針でございます。

神風委員 そこら辺が日本の外交の一番の本質的な問題ではないかなと思っておりますので、ぜひ、まさに適切な対応を積極的に行っていただきたいと思っております。

 実は先日、対馬市長でいらっしゃいます財部市長さんの話を伺う機会がございました。財部市長さんのお話を伺いながら改めて思いましたのは、対馬と韓国というのは非常に近いのであるなと。市長さんも、対馬から韓国・釜山の花火大会が見えるという話を聞いて、実際に見えるのかどうか行ってみたら実際に見えたというような、五十キロという距離でありますので、それぐらいの近さであるということでございます。

 この対馬を訪れる韓国人が、観光客が大半ではあろうかと思いますが、この韓国人が相当に最近増加をしている。以前は年間約千六百人程度であったそうでありますが、それが平成十一年に対馬―釜山の定期国際航路が就航し、さらに平成十五年には韓国人のビザなし渡航が始まって、それから相当に急増をしている。この数字は概算でありますけれども、観光客として、平成十六年には二万一千人、平成十七年には三万六千六百人、十八年には四万二千人、十九年には六万五千人と、相当な勢いで拡大をしている。ことしは八万から九万ぐらいの観光客が来るのではないかと見込まれているという状況であります。ただ、最近、非常にウォンが安くなっているものですから、それがまた急減をしているというような情報もございます。

 ただ一方で、対馬の人口というのは、かつて七万人いたものが現在では三万七千人まで急減をしているというような状況でありまして、対馬の人口の優に二倍以上の韓国人が対馬を訪れているという状況であるわけでありますが、この背景あるいは要因をどう考えていらっしゃるか、分析をされていらっしゃるか、その点について教えていただきたいと思います。

本保政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国からの来訪者数は近年急速にふえておりまして、昨年二百六十万人になっております。私どもの観光魅力を海外に発信しますビジット・ジャパン・キャンペーンというのを二〇〇三年にスタートしておりますけれども、そのときに比べて七八%の増加ということになっております。

 その背景といたしましては、先ほど委員からも御指摘がありました訪日韓国人に対する九十日以内の短期滞在のビザ免除措置があったこととか、あるいは韓国でも週休二日制が定着している、こういう中で、距離的に近い日本に対する関心が高まりまして、一方で、韓国人のニーズが高い温泉とかショッピング、あるいはグルメ、スキー、ゴルフといった日本の観光プロモーションを随分やってきた、こういうものが功を奏しているものだと思っております。

神風委員 純粋に観光という視点からいえばそういうことなのかなと思います。

 ただ、平成十七年に島根県議会で竹島の日が制定をされました。それ以降特に韓国人の観光客が急増しているというような状況のようでありますが、その背景として、韓国人の中で対馬を自分たちの領土であると心から信じている方も相当いらっしゃるようでございますし、ある意味では実効支配をしたいというような思いもあるようでありますが、何らかのこうした政治的意図があると判断されていますでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、韓国人の来訪者の急増についての説明がございました。その政治的な意図という御質問でございますけれども、韓国政府側も、対馬が韓国の領土だとは認識していないということが明らかであるということでございますし、これまでのところ、政治的な意図を持った形で韓国人の来訪者が急増しているということを証明するようなことはないものと認識をしております。

神風委員 先ほども申し上げましたが、実際に対馬返還要求決議案みたいなものを国会議員五十人が出されているような状況の中でこういう事態が進展をしているということでございます。

 先ほどの質問の中で長島議員が質問をされておりましたが、我々自身というか、当日参加をした委員も、この対馬防備隊本部と隣接する土地、そこにできている実際の韓国風のリゾート施設というのも、外観でありますけれども、拝見をしてまいりました。

 この土地というのは、実際には旧大洋漁業系の大洋真珠が工場を経営していた。対馬の真珠養殖業が衰退する中で、同社が平成十四年に工場を閉鎖し、その土地を売却することになった。それが、昨年の夏に島民名義で韓国資本に買われ、そしてまた昨年の暮れから建設工事が始まって、現在韓国風のリゾート施設がオープンしているという状況であります。

 当初、大洋真珠も、土地を外国人には売らない方針であったと。実際に、売却の交渉相手は日本人であったし、あるいは最終的な売却先も日本の会社であったそうであります。それが何らかの経緯で韓国資本の手に渡ってしまったということでありますが、結果的に、実態としては一〇〇%韓国資本のリゾート施設がまさに海上自衛隊の基地の隣にできているわけであります。先ほど長島委員も質問をされておりましたけれども、非常に不満足というか心もとない答弁であったわけでありますが、実際に、地元の住民の話の中にも、自衛隊の行動が逐一監視をされているのではないかというような声もあるわけでありますし、場合によってはそれがテロの施設にさま変わりするような危険性も否定はできないということは言えるのではないかなと思っております。

 そういう中で、それが本当に安全保障上全く問題はないという認識なのかどうか、もう一度確認をしたいと思います。

枡田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省といたしましては、海上自衛隊対馬防備隊本部の隣接地に韓国人旅行者向けと思われる宿泊施設が所在していることは承知しております。

 あと、対馬の安全保障上の体制につきまして申し上げますと、対馬につきましては、その重要性にかんがみまして、陸上自衛隊の対馬警備隊、海上自衛隊の対馬防備隊、航空自衛隊では第一九警戒隊を配置しておりまして、各駐屯地、基地において必要な警備の体制をとっておるところでございます。

 あと、基地の警備を含め、部隊の運営につきましては、地域の特性に合わせて適切に実施してまいりたいと考えておるところでございます。

神風委員 先ほどの答弁で、土地を購入する必要性がないと判断したということでございましたが、そうすると、これは当時、韓国資本による買収を警戒していなかったというか、たとえ韓国資本に買われても問題がないという認識で買わなかったんでしょうか。

枡田政府参考人 当時、部隊の方にお話がございまして、部隊の方といたしましては、自衛隊施設用地としては同本部の施設に隣接する用地を購入する必要性はなかったということで、このお話については計画に計上しなかったというふうに聞いておるところでございます。

神風委員 報道によりますと、実際には対馬防備隊本部の拡張を防衛省の方でも検討していて、防衛施設庁の幹部が何回かそこに視察に訪れたというような報道がございます。

 ただそれが、二〇〇三年には自衛隊の方から、予算が組めないという理由で防衛省としては購入を断念するというような話が報道されているわけでありますが、その事実関係はどうなっていますか。

枡田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま答弁を申し上げましたとおり、本件土地を購入しなかったのは、予算上の制約ということよりも、この土地を防衛施設として購入する必要性がなかったということだというふうに聞いております。

神風委員 施設庁の幹部がそこを視察に行ったというのは事実ですね。購入の目的を持ってそこに何回か視察に行っているというのは事実ですか。

枡田政府参考人 突然の御質問でございますけれども、私、今、その点については承知いたしておりません。

今津委員長 後ほど調べてお伝えしてください。

神風委員 そうしますと、これは確認ですが、たとえ韓国資本にそこが購入をされても防衛省としては全く問題はないという認識でいるということで、それはそういうことでよろしいんですね。

枡田政府参考人 私どもとしましては、部隊運営につきましては、先ほども申し上げましたとおり、地域の特性に合わせて適切に実施しております。先ほども申し上げましたけれども、隣接地が外国資本に買収されることによって部隊の運営について直接影響があるというふうには認識していないところでございます。

神風委員 部隊の運営について支障がないというのがよく意味がわからないんですが、日本の安全保障という観点から、一般常識的に考えれば、自衛隊の隣接している土地が韓国資本にそういう形で買われて、たとえ韓国資本がそれを買っても問題がない、今後もそれに関しては、例えばその土地を防衛省の方で改めてまた購入するというようなことは全く検討しない、そして現状でも、今後も含めて全く問題がないという御認識なんでしょうか。

枡田政府参考人 現在のところ、当該土地について防衛省として購入する予定はございません。

 ただ、いずれにしましても、基地の周辺の状況について全く関心がないというわけではもちろんございませんので、常々関心を払ってまいりたいとは考えておるところでございます。

神風委員 ぜひこれは、防衛大臣に大臣としての見解を伺いたいと思います。

浜田国務大臣 当時のことは私自身も承知しておらないところでありますけれども、ただ、先生が疑問に思われたことというのは、まさに私自身もどうなのかなという思いはあるわけでありますので、そういったことに関しては、先ほど長島委員にもお答えをしましたけれども、我々がしっかりと問題意識を持って、今後どのように対応するかを検討していきたいというふうに思っているところであります。

神風委員 この視察には武田政務官も同席をされておりましたので、ぜひ政府内でしっかりとした対応をしていただきたいと思っております。

 自衛隊に隣接している土地に限らず、現在、韓国資本による対馬の買収というものが相当進んでいるということでありますが、こうした買収というのがいつごろから始まって、これはどのぐらいに及んでいるのか、そこら辺の実態把握というのができているのかどうか。実際には島民の名義あるいは日本人の名義で購入されているようでありまして、なかなか気づかれにくいというようなことのようでありますけれども、その実態把握というのが進んでいるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

枡田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、対馬防備隊の隣接地に韓国人旅行者向けと思われる宿泊施設が所在していることは承知しております。ただ、対馬市全般の状況につきまして、防衛省として把握してはおりません。

神風委員 財部市長によりますと、韓国資本による不動産買い占めについては、約五千五百坪、島全体の〇・二六%が韓国資本で買収されていると確認しているということでございました。また、新聞等の報道によっても、不動産の買い占めが始まったのが約二十年ほど前からで、現在でも、民宿だけでも既に十五軒ほどが買収をされ、進行中の計画を含めると相当程度さらに数はふえるということでございました。

 これは防衛省になるのかほかの役所になるのか定かではありませんが、こうした実態把握をしていくような予定というのはありますでしょうか。

浜田国務大臣 これは、今、我々の方としてそれをするような立場かどうかも含めて、逆に政府でこれは検討することだと思いますので、逆に言えば、今神風委員から御指摘のあった点を我々が受けとめて、また政府部内で問題提起をさせていただければというふうに思っているところであります。

神風委員 ぜひ政府一体となってこの問題に取り組んでいただきたいなと思っております。特に、買い占めているのが民間人、個人なのか企業なのか組織立ったものなのか、そこら辺も全くわからない、ある意味では気味が悪いような状況でありますので、ぜひこの実態調査、把握を進めていただきたいなと思っております。

 加えて、一般島民の方と自衛隊員との交流というのはどんな形で現在図られていますでしょうか。

浜田国務大臣 今、対馬には陸海空自衛隊の部隊が所在をしておりまして、駐屯地、基地周辺における地域社会の理解と協力が不可欠との考えのもと、記念行事における駐屯地の一般開放、そしてまた音楽隊の演奏などを実施しまして、自衛隊と島民との間の交流を図っているところでございます。

 ちなみに、陸上自衛隊の対馬駐屯地におきましては、観桜会、夏祭り、駐屯地創立二十八周年記念行事、そしてまた海自では、佐世保音楽隊を招いてファミリーコンサートを二度ほどことしもやりましたし、空自におきましては、基地の開庁記念行事を行っているところであります。

神風委員 今申し上げたような状況でございますので、ぜひこうした交流は相当綿密にこれからも取り組んでいただきたいなと思う次第でございます。

 また、この対馬問題について、麻生総理が、土地は合法的に買っている、日本がかつて米国の土地を買ったのと同じで、自分が買ったときはよくて人が買ったら悪いとは言えないということを述べているそうでありますが、これはこの対馬の認識と相当程度乖離があるんではないかなと思うわけであります。

 これに関して、防衛大臣、外務大臣両大臣にちょっとそれぞれの御見解をお伺いしたいと思います。

浜田国務大臣 総理のお話、経済行為というのは我々が立ち入っていくときにはなかなか難しいところもあるわけでありますので、感想としてそのようにお述べになったのではないかなと思いますけれども、これはあらゆる角度からいろいろな検討をしてみれば、今神風委員がずっと御指摘になってきた点というのはどうなのかなというところも当然あるわけであります。そういった意味においては、いろいろな角度から、経済分野そして安全保障の分野から見たときの差というのを総合的に勘案して判断していかなきゃいけないと思っておりますので、きょう委員から御指摘の点は私なりに重く受けとめて対応していきたいというふうに思っておるところであります。

中曽根国務大臣 先ほどの長島委員の御質問とも関連していると思いますが、安全保障、それから我が国の領土を守るということは、国家の最重要課題だと思っておりまして、委員の御指摘の問題というのはしっかりと対応しなければならない、基本的には私そういうふうに思っております。

 御承知のとおり、一般的な話でありますが、法令に基づいて適正に購入された不動産、こういうものについて規制するということは現行法上はもちろん困難であると思いますけれども、対馬という島が我が国固有の領土であるということは間違いないわけでありますし、先ほどからお話ありますように、韓国政府も対馬を韓国の領土であると考えていないということは明らかであるということでもありますので、私どもとしても今後十分注意を払いながらしっかりと対処していきたい、そういうふうに思っております。

神風委員 今の質問に絡んでというか、さらに進めてまさに安全保障上の観点から、こうした対馬のような国境に面している離島に対して、外国資本による不動産買収を制限するような措置というのも今後必要ではないかな、ある意味で国境新法というような措置もこれから必要になってくるんではないかなと思いますが、それに対しての御見解、防衛大臣からお伺いをしたいと思います。

浜田国務大臣 一般論から申し上げれば、自衛隊の基地の隣接地か否かにかかわらず、外国資本が我が国の土地を買収することが直接領土問題に発展することはないものと考えます。

 外国人の不動産取得を制限することができる法律としては外国人土地法があるものと承知しておりますが、御質問の土地取引に関する議論については、先ほども申し上げた財産権の問題等々を踏まえて慎重な検討が必要であると考えております。

 いずれにせよ、今委員の御指摘、先ほどから申し上げているように大変我々も問題意識を持つところでありますので、関係省庁と連携して検討していく必要があるというふうに思っておるところであります。

神風委員 この対馬の問題に関しては、いろいろな方が問題提起を論文等でもされているようでありますので、ぜひ政府としてしっかりした対応をこれから進めていただきたいなとお願いをするところであります。

 ほとんどもう時間もなくなってしまいましたが、最後に一点、三十年前と現在、ある意味では冷戦時代と冷戦後、日本を取り巻く脅威の性質がどう変化しているか、まずその御認識をお伺いしたいと思います。

浜田国務大臣 昭和五十一年、すなわち三十二年前に初めて防衛計画の大綱を策定しておりまして、その後の環境の変化に応じて適切な防衛力を整備すべく、平成七年及び平成十六年にもそれぞれ防衛大綱を策定してきたところであります。

 その都度、周辺諸国の動向等を踏まえた安全保障環境等に関する認識を示してまいりましたが、その時々の環境について申し上げれば、昭和五十一年の大綱では、米ソ両国を中心とする東西関係において各種の対立要因が根強く存在しており、我が国周辺においては、限定的な武力紛争が生起する可能性を否定することはできないが、大国間の均衡関係及び日米安全保障体制の存在が、国際関係の安定維持及び我が国に対する本格的侵攻の防止に大きな役割を果たし続けるとの認識を示してきたところであります。

 冷戦後となる平成七年の大綱におきましては、冷戦の終結等に伴い、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性が遠のいているとの認識を示しつつ、宗教上の対立や民族問題等に根差す対立はむしろ顕在化したとして、複雑で多様な地域紛争の発生を指摘するとともに、大量破壊兵器やミサイル等の拡散といった新たな危険の増大を指摘しております。

 また、我が国周辺においては、朝鮮半島における緊張が継続するなど不透明、不確実な要素が残されており、安定的な安全保障環境が確立されるには至っていないとし、日米安全保障体制を基調とする日米両国間の緊密な協力関係が、こうした安定的な安全保障環境の構築に資するとの認識を示したところでございます。

 少々長くなって恐縮でありますが、平成十六年に策定された現在の大綱では、米国の九・一一テロを引きながら、国際テロ組織などの非国家主体が重大な脅威となっているとの指摘をし、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態が、国際社会にとって差し迫った課題となっているとの認識を示しているところであります。

 我が国周辺については、極東ロシアの軍事力は量的に大幅に削減されたが、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在すること、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる問題など不透明、不確実な要素が残されていることを指摘しつつ、北朝鮮の軍事的な動きが地域の安全保障における重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止努力に対する深刻な課題となっているとの認識を示しているところであります。

 その上で、我が国としても、地域の安全保障上の問題に加え、新たな脅威や多様な事態に対応することが求められているとの認識を示しているところであります。

神風委員 丁寧な説明をありがとうございました。

 現在と三十年前とでその脅威自体の性格が相当程度変わっていると思っております。実際に、今お手元の方にお配りをしました陸海空自衛隊の予算の推移でございますが、この三十年間、昭和五十四年、五十五年ぐらいは多少外れるにしても、予算配分というものがほとんど変わっていない。つまり、陸上自衛隊が四一から四五%、海上自衛隊が二七から二九%、航空自衛隊が二六から三一%。つまり、脅威の性格が相当変わっているわけですから、これは予算配分も本当であれば陸海空でそれぞれ変化があって当然であろうと思うわけであります。

 今、予算の編成の時期であろうかと思いますし、予算に間に合うかどうかは別にしても、機敏な予算の対応というのも必要であろうかと思いますが、最後に大臣の見解をお伺いしたいと思います。

浜田国務大臣 政府としては、環境の変化に応じて適切な防衛力を整備すべく、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画を節目において策定してきておるところでございますけれども、防衛関係費については、それらを踏まえて毎年度の予算編成を行っているところであります。

 したがって、これまで三自衛隊の予算配分が大きく変化していないものの、各年度においては、その時々の安全保障環境の変化に対応した防衛力の整備等を着実に行えるよう編成してきておりまして、防衛省としては、各年度の三自衛隊の予算配分に、安全保障環境の変化との関係で問題があるというふうには考えておらないところであります。

 今後も適切に対処していきたいというふうに思っております。

神風委員 時間が参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

今津委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官徳久治彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今津委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今津委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 委員長、与野党の理事の先生方にお許しをいただきまして、発言の機会をいただきました。心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。両大臣、よろしくお願いをいたします。

 私は、本日、大変話題になっているというか問題になっております田母神さんの一連の発言あるいは行動について、検証をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、最新の月刊誌にまた田母神さんの新しい論文、手記が掲載をされております。彼は文章を書くのがお好きなようで、さまざまに文章を書いていらっしゃるわけですが、最新のものによると、「「日本は悪い国だ」「侵略国家だ」という占領軍によるマインドコントロールは払拭されることなく今日に至ってしまっているのである。日本人はまるで呪にかけられたように「日本は侵略国家である」と思いこんでしまっている。」こう書いています。

 私は、日本が悪い国だと思っている人は恐らく一人もいない、いろいろ問題はあるかもしれないが、いい国だねというふうに恐らくすべての国民は思っていらっしゃるだろうし、侵略国家だというようなことを決めつけて思っている人もそう多くはないだろうというふうに思います。

 そこで、お尋ねをいたします。

 田母神さんはさまざまな論文の中で、教科書が問題だ、教科書にそう書いてあるんだというふうにおっしゃっていらっしゃるわけですが、きょうは文部科学省に来ていただいていますのでお尋ねをいたしますが、日本は侵略国家だった、あるいは日本は悪い国だというふうに記述してある中学校あるいは高校の教科書がありますか。

徳久政府参考人 お答えをいたします。

 現行の中学校や高等学校の教科書においては、日本が侵略した東アジア、東南アジアでは、戦場で死んだり労働に駆り出されたりして、女性や子供を含めて一般の人々にも多くの犠牲を出したといった記述はございますが、お尋ねのように、日本は侵略国家である、あるいは悪い国であるなどと断定した記述についてはなされていないものと承知しております。

川内委員 それでは、政府が発出した正式な文書の中で、日本は侵略国家であった、あるいは日本は悪い国なんですというふうに書いてある文書がありますか。

中曽根国務大臣 さきの大戦に関する歴史認識につきましては、政府の見解という意味では、村山総理大臣談話それから小泉総理大臣談話があるわけでございます。

 その中で繰り返し述べておりますのは、例えば村山総理大臣談話では、我が国は、「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」こういうふうに記しているわけでありますし、小泉内閣総理大臣談話におきましても同様に、植民地支配と侵略によって多大な損害と苦痛を与えましたとなっておるわけでございまして、侵略国家であったとの表現を使ったことはございません。また、悪い国であるとももちろん書いてございません。

川内委員 過去の一時期、国策を誤って、要するに政策の選択を誤って、我が国の国民のみならずアジアの人々に苦しみを与えてしまったということに関して反省をし、そして今日があるという意味において、いろいろなことを乗り越えて、いい国に、さらにさらに未来に向かっていこうねというのが我が国だと思うんですけれども、田母神氏は、だれも言っていないのに、日本は侵略国家だった、悪い国だ、それは間違っているというところから議論を始めるわけですね。

 そこで、ではそれを改善するには何が必要かというと、安全保障論の根本には健全な歴史観、国家観がなければならないのだというところに行くわけですね。健全な国家観、歴史観が必要だと。だからこそ、彼が校長をお務めになられた学校で歴史観、国家観に関する授業を開設されたわけでございまして、これは鵬友の中にも、自分が開設をした、私が開設をしたんだというふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございます。

 その決裁文書をいただきましたが、「教育目標」に、「健全な歴史観・国家観を育成し、」中略、「部下指導に資する。」こう書いてあります。

 防衛省・自衛隊がここで掲げている教育目標、健全な国家観、歴史観とは何ぞやということを教えていただきたいと思います。

渡部政府参考人 お答え申し上げます。

 今、川内先生御指摘のとおり、統幕学校の歴史観、国家観の教育目標といたしまして、「健全な歴史観・国家観を育成し、」ということで示されているところでございますけれども、健全な歴史観、国家観ということにつきましては、いわゆる偏向した歴史認識を有することなく、歴史を客観的に理解することといった意味であると考えております。

川内委員 そうですね。偏向したらだめだよ、偏向した歴史観や国家観を持っちゃだめだ、だれも言っていないのに、日本は悪い国だと決めつけちゃだめですよと。私は、田母神さんのこういう歴史観、国家観こそ偏向しているのではないかというふうに思います。

 それでは、さらにもう一つ、「日本の歴史等について、その本質を正しく理解させる。」と書いてございますが、本質とは何かということを教えていただきたいと思います。

渡部政府参考人 お答えします。

 今、川内先生御指摘のとおり、統幕学校の「歴史観・国家観」の「教育目標」というところにおきまして、「日本の歴史等について、その本質を正しく理解させる。」というふうに示されているところでございます。

 その本質ということでございますが、日本の歴史等につきまして、独自の性質ということであろうかと思います。広辞苑によりますと、本質とは、「あるものをそのものとして成り立たせているそれ独自の性質。」というような解説がなされているわけでありますので、日本の歴史等についての独自の性質といったような意味合いであると考えております。

川内委員 あるものを成り立たせている物事の……。何ですか、もう一回言ってください。物事を成り立たせている何と言いましたか。

渡部政府参考人 失礼しました。お答えいたします。

 広辞苑でございますけれども、本質とは、「あるものをそのものとして成り立たせているそれ独自の性質。」という解説でございます。

川内委員 では、その歴史をしっかり直視していきましょう、日本の歴史をあるがままに受け入れましょうということかと思います。

 では、その中の教官の、外部講師としてお招きになられた方々の中で、福地さんという、元文部科学省教科書調査官で、問題を起こして更迭された方がいらっしゃるわけですが、この方、これは参議院でも議論されているのですけれども、その方の講義というものがインターネット上のサイトに出ております。

 この福地さんの統合幕僚学校での講義の目的は、第一に、昭和の戦争は東京裁判の起訴状と判決に言うような侵略戦争では全くなく、自存自衛のためのやむを得ない受け身の戦争だったこと、第二に、それが了解できれば、現憲法体制は論理的に廃絶しなくてはならない虚偽の体制であると断言できることをこの講義の中で論ずることでありますというふうに、この福地さんはおっしゃっていらっしゃるわけです。

 この講義について、参議院の中では余り明確な御答弁をされていらっしゃらないようなんですが、日にちもたっておりますので、検証作業も行われていると思いますから、どのような講義だったのかについて、もう一度衆議院で御説明をいただきたいと思います。

渡部政府参考人 大正大学教授の福地先生でございますけれども、直近の講義、本年の九月にございました。これは担当講師のメモをつくりまして、こんな内容であったということで、福地先生の御理解をいただいた上でつくった簡単な記録でございます。

 その講義におきましては、国家観としまして、国家とは歴史を共有する人々の共同生活体である、また国家の尊厳を守り、国土と国民を守る世界戦略を確立することの重要性といったようなことをお話しされた、それから歴史観につきましては、民族共通の過去の記憶、国家への帰属意識、国民としての歴史意識といったようなこと、あるいは、現在の日本における歴史認識は日本人のための歴史観ではないといったようなお話をされたと承知いたしております。

川内委員 今、平成十九年について御説明いただいたんですけれども、十八年、十九年。十九年でしょう。

渡部政府参考人 失礼しました。ことしの九月でございます。

川内委員 この福地さんは、平成十五年、田母神さんがこの講座を開設されたときからずっと講師でいらっしゃるわけで、私がお尋ねしているのは要するに、田母神氏がどのような思いでこの講座を開設し、福地さんに講師をお願いされたかということを検証したいわけですから、平成二十年、ことしのことを説明されても余り脈絡がないので、平成十五年、この講座が開設されたときに、この福地さんがどのような話を講義の中でされたのかということが大きな問題になる。憲法を改正すべきであるということを講義の中でおっしゃられたのか否かということを知りたいのですけれども。

渡部政府参考人 お答えします。

 平成十五年当時につきましては、講義録といった記録をとっておりません。また、五年前の話でございますので、教官であった者も記憶が定かでないということで、特に直近の講義ということで、ことしのものの聞き取りを行ったということでございます。

川内委員 いや、自衛隊法六十一条で、政治的目的を持って政治的行為をする場合には自衛隊法違反であるということになるわけですが、今の防衛省のお答えは、さまざまな詳細な事実について検証していない、わかりません、記録がないから。だけれども、田母神氏には政治的目的はなかったのだということを今までおっしゃっているわけですね。矛盾しませんか。

 いろいろなことを詳細に調べたが政治的目的はなかったというのならまだしも、いや、どういう講義をしたのか全然わかりませんわ、記録もないですもの、教官も覚えていないと言っていますと。

 教官に聞いたのですか、本当に。その教官というのは、自分で学生に、学生といっても自衛隊の幹部でしょう。幹部の方にどんなことを講義されたのかさえ忘れてしまうような教官が、この統幕学校の教官なんですか。

 詳細に検証した上で政治的目的はないと防衛省としては判断するというのであればわかりますけれども、いや全然わかりませんと。それは全然論理が矛盾しますよ。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 私どもが川内先生にお答えしましたのは、田母神前空幕長が懸賞論文を出したことについて、そのことが自衛隊法に定めております政治的行為に当たるかどうかという点につきまして御説明させていただいたということでございまして、五年前のことについて政治的行為に当たるかどうかという議論はしていないというふうに理解しております。

川内委員 いや、私が申し上げているのは、局長、田母神氏は鵬友の中で、自衛官も政治活動をすべきであるという主張をしていますね。それはいいんですよ。だって、みんなに政治活動の自由は保障されているのですから、自衛官も政治活動をしていいのですよ。だから、田母神氏も、自衛官も政治活動をすべきであるということをおっしゃっている。まず、そこを認めてください。政治活動をすべきである、こう書いていますねということは認めてください。

渡部政府参考人 平成十六年の鵬友におきます論文におきまして、田母神前空幕長は、新たな歴史教科書関係者への経費支援の呼びかけでありますとか、あるいは田母神氏の、特定の雑誌に投稿を呼びかけるといったようなことを記述しておりますけれども、政治活動そのものをやるべきだというような直接的な記述はなかったと理解しております。

川内委員 いや、何でこんなことで議論しなきゃいけないのですか。すべての国民に政治活動は保障されているのですよ。政治活動をしていいのですから。ここでそんな議論をしている暇はないですよ。

 それで、田母神さんは政治活動をすべきであると言っているわけですから、その政治活動が適正なものであるかどうかが判断される、評価されるべきであって、政治活動自体を否定したらだめでしょう。

 ここに書いているじゃないですか。「自衛隊はこれまで政治的活動に関与せずということを強く指導されてきたために部外において意思を表明する活動については極めて慎重な対応をしてきた。自衛隊の外で行われることには無関心を装ってきた。しかし気がついたら反日活動がこれほどにも進展している。」反日活動が進展しているとはとても思えないですが。「これを認識すれば、今後はこれに負けない親日活動をするぐらいの心構えが必要である。」

 政治活動をしていこうねということを言っているじゃないですか。それはいいんですよ、言って。それをだめだなんてだれも言わないから。いいんだけれども、その政治活動がどのような目的でなされるのかということが問題になるでしょう。

 その場合に、彼が書いているこの鵬友という文書や、あるいは彼が開設した講座でどういう講義がなされていたのかという実態や、そしてまた懸賞論文の内容、総合的にその政治的目的、政治的意思というものが判断されるべきではないのかということを私は申し上げているんです。その論文だけ取り上げて、これには政治的目的がありませんとかありますとかいうのはナンセンスでしょう。

 政治的目的とか政治的活動というのは、さまざまな活動を通じてその意思を実現することを政治的目的とか政治的活動というわけであって、彼のさまざまな文書や活動を通じて評価されるべきものである。だから、この講座の内容も問題であるということを申し上げているんですけれども、違いますか、私の言っていることは。

渡部政府参考人 お答えします。

 繰り返しになりますけれども、自衛隊法で規定しております政治的行為に当たるかどうかという議論につきましては、十五年当時の講義までを検討の対象にして先生に御説明したということではございませんので、それにつきましては、要するに、鵬友なりに論文を出したこと、あるいは今回懸賞論文を出したことについて、政治的行為に当たるかどうかという検討をしたところ、それは自衛隊法で言うところの政治的行為には該当しないのではないかという整理をさせていただいたということでございます。

川内委員 この鵬友の中に、彼が講座開設に至ることが書いてあるわけですよ。それは御存じでしょう。鵬友の中に、田母神さんが講座開設になぜ至ったのかということについて書いてある部分がありますよね。

今津委員長 それは何年のものですか。

川内委員 資料が多くて、委員長、ちょっとよくわからないんです。ちょっと待ってください。ありました。

 「統幕学校では今年の一般課程から「国家観・歴史観」という項目を設け、五単位ほど我が国の歴史と伝統に対する理解を深めさせるための講義を計画した。」中略で、なぜこういう講義が必要なのかということに関して、「国家や歴史に対する基本的な素養が無ければ出来ないのである。幹部自衛官は明治維新以降の我が国の歴史について勉強し、我が国の歴史と伝統について揺るぎない自信を持ってもらいたい。」「無知故に、我が国の歴史に対する贖罪意識を持っているようでは部隊を元気にすることは出来ない。」「正しい国家観、歴史観を確立して、部下隊員を指導する」というように記述していらっしゃるわけで、彼は、ある種の御自分なりの価値観を部下に教えていこう、そして講師を呼んだ。そして、その講師がどのようなことを講義の中で発言しているかというのは、彼の政治的目的に大いにかかわるわけです。

 だから、国にとって安全保障は大事だよ、これは当然のことですよね。安全保障は大事だ、だれも文句は言いません。しかし、その安全保障に関して、憲法を改正すべきなのだ、集団的自衛権を行使すべきなのだ、あるいは、専守防衛などはだめだ、鵬友にこう書いてありますからね。専守防衛はだめだ、相手に先制攻撃するのだというようなことを講義の中で教えていたら、それは本来あるべき政治的目的を逸脱した違法な政治的目的ではないのかということになるわけです。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたけれども、ここで防衛大臣に御答弁いただきたいんですが、この講義でいかなる講義がなされたのか、そしてまた鵬友の論文、さらには懸賞論文。田母神さんは、更迭はされたけれども法的には何ら処分されていないわけですから。私は、そこが大きな問題だと思うんですよ。

 そうすると、これらの彼の一連の行動、あるいは発表された文書などを総合的に検証して、彼がどのような政治的目的を持っていたのか、その政治的目的が憲法の枠の中におさまっていれば、これは合法的な政治的目的であるということが言える。しかし、憲法の枠をはみ出す政治的目的を持っていたならば、これは自衛隊法違反に当たるわけですから、そこは総合的にもうちょっとしっかり検証しないと、いや、そんなことはこの論文だけからしか判断できませんとか、いや、全然記録が残っていないからわかりませんとか、そんな安易な問題ではないと私は思うんですよ、この田母神さんの提起した問題というのは。

 私も親戚に幹部自衛官がおりますし、大活躍をしておりますからね。自衛隊の皆さんは、現場は一生懸命頑張っていると思っていますよ。しかし、それが、日本は侵略国家だった、あるいは悪い国だと言われているのはおかしい、だれも言っていないのに、おかしい、それはおかしいと言い募りながら全然違う方向に思考が行っているというのは、それは違うよ、だれもそんなことは言っていないからねということはしっかり指導していかないといけないというふうに思うので、この講演とか論文とか、しっかり田母神氏の政治的目的について総合的に検証するということは防衛大臣としておやりになられるべきではないかというふうに思いますが、御答弁はいかがでしょうか。

浜田国務大臣 御本人の書かれたこと等について、これはもう私とすれば、航空幕僚長としての任を解いて、そしてまた退職というところまでさせていただきました。そして、そこに投げかけた大きな問題というのは確かに私自身も認識をしているつもりであります。

 今後、それをそこまで御自分の中で大きくしてしまっていることを検証することが果たしていいのかどうかということも含め、その内容についても、果たしてこれは議論するに値することなのかという内容のことでもあるというふうに私自身は思っていますので、そういった意味においては、その辺のことを少し冷静に考えながら、検証すべきところは、問題点として、我々が改善するために必要とするべきところはすくい上げながらやっていくのがいいのかなというふうに思っています。

 ですから、今、そのまますべてを検証するというところにまでは至っておらないところであります。

川内委員 この月刊誌の最新の論文によれば、田母神さんはこう書いています。「現職時代は、はっきり意見が言えないもどかしさを感じていた。しかし私はもはや民間人である。遠慮はいらないだろう。」日本の自衛隊を普通の民主主義国家の軍隊にすべきだ、「「集団的自衛権」の行使は言うまでもない」「自衛隊を「軍」と認めない「日本国憲法」も書き換えが必要である。」と。

 要するに、はっきり言えなかったけれども、今はっきり言うと。はっきり言えなかったけれどもというのは、気持ちでは思っていた、心では思っていました、政治的意思はありましたということを論文の中で言っているわけで、私は、田母神さんが逸脱した政治的目的を持っていたか否かというのは、これは自衛隊法六十一条にかかわる重大な問題である。

 そこで、本委員会に田母神前航空幕僚長を参考人としてお招きをし、ぜひ、どのような政治的目的あるいは政治的意思を持っていたのかということを本委員会として検証すべきである、委員長にお取り計らいをいただきたいと思います。

今津委員長 理事会でお諮りをいたします。

川内委員 終わらせていただきます。

今津委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、まず最初に、沖縄の鳥島の米軍の訓練水域問題について質問していきます。

 先ほど、嘉数先生の方からも質問がありました。同じテーマの質問を嘉数先生と私が取り上げている、ここにこの問題の深刻さ、そして沖縄における世論の盛り上がりがあるわけですから、政府、外務大臣、そして防衛大臣については、しっかり受けとめていただきたいと思います。

 この間の答弁でいきますと、県知事やあるいは久米島町長、そして県の漁業協同組合連合会長、久米島漁業組合長、米軍の訓練水域について、場所は、鳥島と久米島の両米軍射爆撃場、そして米軍のホテル・ホテル訓練区域でありますが、先ほどの外務大臣の答弁を聞いておりましたら、日米安全保障条約の目的達成のために引き続き維持していくことが重要だとおっしゃっておりました。

 これらの訓練水域は、日米安全保障条約の目的達成のためにどんな訓練をしているか、外務大臣、御存じですか。

    〔委員長退席、江渡委員長代理着席〕

西宮政府参考人 射爆撃訓練に使用されていると理解しております。

赤嶺委員 どこの部隊が来て、どんな射爆撃訓練をしているんですか。

西宮政府参考人 お尋ねの点につきましては、米軍の運用にかかわることでございまして、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 外務大臣、つまり、日米安全保障条約の目的達成のために重要だと言いながら、その射爆撃場がどんな訓練をしているのか、水域で何をやっているか、米軍の運用にかかわることだから答えないんですよ、説明できないんですよ。だから、安保条約の目的達成のために必要だというだけでは県民に対する何の説明にもなっていないということをまず御指摘しておきたいと思います。

 それで、防衛大臣に伺いますが、防衛大臣は防衛という問題と並んで漁業、水産業についても大変な専門家でいらっしゃるということは私も認識しておりますが、今回の問題というのはまさに漁業とかかわっているわけです。沖縄の陸域には広大な米軍基地がありますが、空域も水域も米軍基地に取り囲まれているわけです。広大な訓練水域は、沖縄の漁師たちから漁場を奪っている。漁場間の移動にも遠回りを強いている。その上、この夏の原油価格の高騰で操業経費も高騰し、漁師らの生活は圧迫されてきたというのがあるわけです。

 同時に、今月四日に、沖縄船籍のマグロ漁船がミクロネシア連邦近海で領海侵犯で拿捕されました。船長は、GPSの誤差で領海内に誤って進入した、誤差だったんだと言っている。ところが、沖縄近海というのはマグロの好漁場なんですよ。だから、何で遠くミクロネシアまで行って漁をしなければいけないか。莫大な燃料費、莫大なお金を使って行くわけです。それは、近くの漁場が訓練水域になっていて漁ができないからなんですね。訓練水域や空域を越える誤爆や事故も後を絶たない。漁船の安全操業が脅かされている。

 防衛大臣、そういうことを御存じでしょうか、いかがですか。

浜田国務大臣 水産業に従事する、そしてまた漁師という立場からすれば、当然これは自分の目の前の海で操業したいという思いがあるというのは十二分に承知をするところでもありますし、今先生が御指摘のように、ミクロネシアまで行く必要はないではないかということも、漁師の気持ちというものを考えれば、当然よくわかるわけであります。それを私自身も水産関係の仕事をさせていただきましたのでよくわかった上で、今先生に御指摘をされれば、当然漁師さんの立場は大変だなというふうに思います。

 ただ、そこで、我々とすれば、今その地域においてマグロが好漁地域、今大変マグロも値段もよくて、そういう意味では商売をするには一番いい魚種だと思うわけでありますが、その点も含めて、今先生が御指摘のような、そういった水域にひっかかるというようなことを一体全体今後どうしていくのかということをやはり我々も頭の中に入れて、いろいろな米側との交渉等もしなければならないという思いではおります。

 先生がおっしゃるように、わざわざミクロネシアまで行かなくてもいいではないかという御指摘は確かにそのとおりだというふうに思いますし、今後、しっかりとまた漁師さんたちの立場に立って、解決できる方法があれば目指してやっていきたいというふうに思っておるところであります。

赤嶺委員 漁師の立場に立つということは水域の返還でありますから、防衛大臣。

 マグロだけじゃないんですよ、ソデイカがあるんです。沖縄のソデイカは、特に久米島を中心として、日本の六割があの近海でとれているんですよ。このソデイカは漁法が発達して漁業として成り立つようになったものですから、ある意味、防衛地域に提供して補償をもらうというような話とソデイカ漁の発達と比べてみたら、全く収入が違うという意識があるんですね。漁民だから漁業で食っていきたい、漁業で立っていきたいというのがあるわけです。

 そういう漁民の思いが、県知事の要請になり、あしたは県議会の超党派の決議になり、そうだと、沖縄県民は宝のような漁場を、しかも、戦後ずっと米軍の直接占領下のもとで、言われるのは、安保条約の目的達成のために必要だ必要だと、六十年間同じことを言ってきて、そして、沖縄県民がなぜ一つにまとまっているかというような核心についてやはり十分な理解もなしに、とにかくアメリカといろいろやってみますということではないと思うんです。これだけ県民の総意がはっきりしているわけですから。

 かつて、石破防衛大臣が、その要求が県民の総意であれば、日米合同委員会に提案をして、日米間の交渉に移りたいということをおっしゃっていたんです。これは、沖縄の与党の議員の先生方もみんな御存じであります。

 もう日米合同委員会に提案する時期だ、外務大臣、そのようにお考えになりませんか。

中曽根国務大臣 訓練区域それから射爆撃場のこういうところのあり方、そういうものにつきましては、私のところにも知事さんやまた市町村長さんがお見えになりましたけれども、そういう地方公共団体からの御要望、そういうものを、またさらには、当然のことながら日米安全保障上のいろいろな点というものを勘案しながら、米側と協議をやっておるわけでございまして、今後も、そういう、先生のおっしゃる沖縄県のいろいろな問題につきましては、御要請というものをしっかりと踏まえて対応していきたい、そういうふうに思っております。

赤嶺委員 米軍基地を押しつけて経済振興はしっかりやるつもりですという政府の立場がいいのか、それとも、沖縄の自然の恵みを生かした経済の発展を図るのか、このことが問われている大事な問題です。私が日ごろ言う基地撤去という立場と今回の訓練水域の返還という立場、共通点もありますが、しかし、本当に今宝のような自然を取り戻したいという思いで取り組んでいることですから、ぜひそこは強く取り組んでいただきたい。

 きょうはちょっとほかにもやることがありますので、また引き続きこれはやっていきます。

 田母神問題について聞いていきます。

 この問題は、現職の航空幕僚長が、日本の過去の侵略戦争を美化し、集団的自衛権も行使できないなどと現憲法を公然と非難する論文を執筆し、そして民間企業主催の懸賞論文に応募するという極めて重大な問題であります。

 まず防衛大臣に聞きますが、こういう問題が明らかになった以上、自衛隊の中で政府見解に反する教育や活動がどこまで広がっているのか徹底究明し、そして全容を国民の前に明らかにする、このようなことが繰り返されないように対策をとる、こういうのが政府に課せられた最低限の責務だと思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 確かに今回の田母神問題におきましては、国民の多くの皆様方にいろいろな御心配そしてまた御不安な部分をお与えしたことは、十二分に承知しているところでございます。

 今先生御指摘の点につきましては、確かに我々とすれば、そういったことも、影響も含めて、調査すべきだというお話もあるわけでありますが、逆にもう一度、教育の問題、そしてまた今後のそういった、意見の発表というのは、これは先ほどもありましたように、言論の自由というものがあるわけでありますので、なかなかそこは難しいところであります。

 逆に言えば、参議院の外交防衛委員会でも、民主党の先生からの御指摘にもありましたけれども、逆にそういった議論の場を与えることによって、どういった形の、今後の教育の中でそういったことも勘案しながら、何となく内に秘めたものではなくて、自分たちの思いというものがうっせきすることなく、しっかりと意見の言えるというようなことも含めて、どういった方法がいいのかということを勘案しながら、隊員の教育というものに従事した方がいいのではないかということもあります。

 ですから、調査というものに関しては、全部これを調査するということが本当にどうなのかということも含めて、我々とすれば、今状況を見守りながら、今後どういった方法論を、教育でいくのか、そしてまたどういった方法でやったらいいのかということを、今我々なりに模索をしているところでありますので、今全部調査しろというお話には、なかなかこれは難しいところがあるのかなというふうに思っておるところであります。

赤嶺委員 参議院の我が党の井上議員に明らかにしたように、例えば、田母神氏が、熊谷基地などで、あるいは全国の基地でみずからの考え方に基づく訓示や講話を公然と行っていたわけですよ。ですから、そういう講話や教育の影響の広がりをつかむということは、第二、第三の田母神問題を防ぐ上で極めて大事ですよね。

 何か思想調査をしろと言っているわけじゃないんです。第二、第三の田母神問題を防いでいく、そういう意味で、田母神氏が全国各地でやった訓話や講話、これをどこでどれだけ行ったのか、そして、どれだけの隊員が訓示や講話を受けていたのか、そういうことを調査してはっきりさせていただきたいということなんですよ。この点ははっきりしているんですか。

中江政府参考人 お答えいたします。

 田母神前空幕長が、全国のいろいろな基地で、訓示や講話を空幕長として何度か行っていることは把握をしておりますが、その中で、記録として残っているものと、それから全く記録として残っていないものと、双方がございます。

赤嶺委員 例えば、熊谷市での向こうの部隊での講演などは、我が党の井上議員が読み上げて田母神氏に間違いないですねと言ったら、間違いないですと言っているんですよ。これは見つからないはずないですよ、本人がやったことを認めているのに。

 それでは、また別のことを聞きますが、今回のアパグループの懸賞論文に応募していたのは、田母神氏だけではないわけですね。防衛省の説明によると、航空自衛隊九十六名、防衛研究所一名、計九十七名が応募しております。これらの論文の中に、田母神氏と同様に政府見解に反する内容を含む論文、対外的に応募しているわけですから、そういう論文はあったんですか。

中江政府参考人 先生御指摘のように、九十七名の者が今回の懸賞論文に応募をいたしておりまして、現在、その論文の内容につきまして確認をしているところでございます。論文が残っているものにつきましては、論文自体を確認いたしました。それから、残っていないものにつきましては、その本人から聞き取りなどをして、今確認の作業をしているところでございます。

 現時点で、今先生の御指摘についてきちっとお答えをできかねますけれども、この作業を急ぎまして、その確認ができ次第、報告をしたいというふうに考えております。

赤嶺委員 それは、確認をしたら国会に報告をするということですね。そういうことですね。

中江政府参考人 何らかの形で報告をさせていただきたいと思っております。

赤嶺委員 九十七名のうち、第六航空団については事情がちょっと違うんですね。第六航空団司令が、当時行っていた教育の一環での幹部論文の課題を選定するに当たり、アパグループの懸賞論文と同じ表題、「真の近現代史観」を選定し、この論文を、本人の同意を得て、第六航空団の方で取りまとめてアパの方に提出した、このように説明しているわけです。第六航空団の司令は、なぜアパグループと同じテーマを幹部論文として、幹部論文というのはもう普通の幹部の研修ですよね、幹部論文の課題に選んだんですか。

中江政府参考人 委員御指摘の経緯につきましては、まず本年五月に、航空幕僚監部の教育課長が、本件懸賞論文の募集につきまして、その趣旨が隊員の自己研さんに役立つものと考えまして、全国の空自部隊に対しまして、本件懸賞論文の紹介をいたしました。

 この紹介を受けまして、第六航空団におきまして、当時行っておりました所属幹部に対する教育の一環として、幹部論文の課題選定に当たりまして、この懸賞論文と同じ表題を選定して論文を作成させたという経緯でございます。

赤嶺委員 そうすると、論文を取りまとめてアパグループに提出する際に、国家観や歴史観、こういうものについて政府見解との整合性はチェックしたんですか。

中江政府参考人 その点も含めまして、今確認作業をしているところでございます。

赤嶺委員 その論文の中身一つ一つの話じゃなくて、いわば幹部研修として課題を与えたわけですよね、アパグループと同じテーマを。それをアパグループの懸賞論文に応募しましょうということになって、チェックして出したと言っているんですよ。チェックして出したということをおっしゃっているわけですけれども、それは政府見解との整合性についてはチェックしたんですか。何をチェックしたかということです。

中江政府参考人 そのチェックの際の基準をどういう基準でもって評価をしたのかということにつきまして、ちょっとその点も含めて今確認をしておりまして、委員御指摘のような、政府見解と異なるかどうかというような観点でチェックをしたかどうかについては、今ここできちっとお答えできない状況でございます。

    〔江渡委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 これは司令に一言質問すれば、はっきりすることじゃないですか。そういう質問をしていないんですか。いかがですか。そういうチェックはしなかったのか、政府見解との整合性についてチェックしなかったのかと。一番の関心事でしょう。真っ先に聞くべきことですよね。それはしなかったんですか。

中江政府参考人 その点も含めて今確認をしておりますので、もう少しお時間をいただければと思います。

赤嶺委員 非常に重要な点だと思います。皆さんは記者会見で、チェックしてアパに論文を提出したということになっていますけれども、その際に政府方針との整合性についてのチェックはどうであったかということは、まさに、あなた方の持っている方針がきちんととられていたかどうかということでありますから。

 私は、今回の懸賞論文について、特にこの九十七名というのは、いわば幹部研修で書いた論文ですから、全部残っていると思うんですよね。これは、九十七名全部については速やかに国会に提出して、やはり外に出す場合に、政府方針との整合性で幹部がどれだけ慎重な姿勢を持っていたか、田母神問題から教訓を引き出す上でも大事だと思いますので、九十七名の論文、これは提出していただけますか。これは防衛大臣がいいんじゃないですか。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、論文自体、九十七名分全部の論文が残っているわけではございません。小松基地につきましては、航空団の方でまとめて投稿しておりますので、論文が残っているようでございます。その論文そのものを私ども、今内容を確認しているところでございます。

 そういうことで、この論文そのものをお出しすることにつきましては、やはり隊員の思想、信条に立ち入りかねないという問題もございますし、今後公表した場合に、今後の論文教育の円滑な実施にも支障があるということも考えられますので、論文そのものの提出は差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、論文の内容につきましては、きちっと確認をして御報告を申し上げたいというふうに考えております。

赤嶺委員 問題の事柄、性質をきちんと踏まえてほしいんですよ。

 今回の場合は、現職の空幕長が侵略戦争の美化、憲法の否定という、いわば政府見解に公然と反する論文を提出していたという重大問題なんですよね。それが、その空幕長のもとで、この種の見解がどこまで広がっていたかを検証しなきゃいけないんですよ。空幕長一人の問題じゃないわけですから。だから、そのためには、どうしても内容の把握が必要であります。

 私は、改めて、その内容がわかるようにきちんと論文を提出するよう、委員長、求めたいと思います。ぜひ理事会でも協議していただきたいと思います。

今津委員長 今のですと、大臣官房長の答弁の中で、内容については報告をしますということを言っておりますが、それでは不十分ですか。

赤嶺委員 不十分ですので、協議してください。

今津委員長 理事会で協議いたします。

赤嶺委員 今回の懸賞論文について、先ほどありましたが、空幕教育課長がファクスで、その後、人事教育部長がレターで全国の部隊に応募を呼びかけている。それが第六航空団での集団の論文応募になったわけですが、テーマまで、そのファクスとレターが大きく影響していたわけですよね。

 それぞれ課長名、部長名で行われているわけですが、これは職務行為として全国の部隊に懸賞論文への応募を呼びかけたということでいいですね。職務行為なんですね。

中江政府参考人 そこが教育に資するということで、教育課長は全国の部隊にそういう懸賞論文を紹介したということでございます。

赤嶺委員 そうなると、この呼びかけ文の中にはこういうくだりがあるんですよ。「これに応募するために隊員各自が独自に研究研さんすることは、現在空自が推し進めようとしている「歴史に重点を置いた精神教育」の推進に寄与するものと考えられます。」こういう文章になっています。

 この中で言われている歴史に重点を置いた精神教育、これは何ですか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 歴史に重点を置いた精神教育といいますのは、安全保障環境の変化あるいは自衛隊の任務の拡大等を踏まえまして、自衛隊員が歴史を客観的に理解し、強い使命感を保持することが、国民の期待と信頼にこたえ、適切に任務を遂行していく上で必要であるとの観点から、航空自衛隊において精神教育の中で歴史について十分に教育していくという趣旨を述べたものであると聞いております。

赤嶺委員 何か、今の説明からは実態が全く見えてこないんですけれども、歴史に重点を置いた精神教育というのは、田母神氏が提唱したんですか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 現在のところ、そこまで確認をできておりません。

赤嶺委員 この中で言われていることは、「現在空自が推し進めようとしている」ということを言っているわけです。

 そうであれば、そのもとになる方針あるいは計画、つまり大もとの方針があって、その方針のもとで全国の部隊にどういう具体化が図られていたかという問題が起こります。歴史に重点を置いた精神教育という大もとの計画ですね。こういう趣旨だと、それを一発言えば論文に応募する人たちが出てくるわけですから。そういう大もとの方針についてきちんと、どこにどんなふうに書かれているんですか、明らかにしてください。

渡部政府参考人 お答えします。

 航空自衛隊として歴史教育に重点を置いた精神教育、趣旨につきましては先ほど答弁申し上げましたけれども、こういう考え方をまとめた方針あるいは計画といったものにつきましては、これまでのところ確認されておりません。

赤嶺委員 そういう大もとの方針がないまま、何となく航空自衛隊の中で、歴史に基づく精神教育、大事だ、大事だという、そんなムードができ上がったんですか。それで田母神氏のような事件が起こったんですか。やはり、ここははっきりさせていただきたいということを求めておきます。

 そこで、防衛大臣、今回の懸賞論文問題を受けて、私もこの間、鵬友をざっと見てみました。そうすると、ことしの五月号、この中に、技術研究本部技術開発官の空将が論文を寄稿しています。そこでは、「歴史・伝統・文化への思い」ということで、「我々日本人は、大戦前と後では価値観が百八十度異なる世界に身を置かざるを得なくなり、かつ東京裁判史観、自虐史観を植え付けられている恐れがある。」このように書いて、「少なくとも国防に従事する自衛官は、旧軍全て悪玉論というような一方的な考えに偏らず、史実に基づく正しい歴史観を持つことが何より必要なことである。」このように述べております。

 これは、繰り返し大臣がおっしゃってこられた政府見解の立場に照らして、どのようにこの論文をごらんになりますか。

浜田国務大臣 私は、詳しくその論文を読んでいませんので、今ここでお答えすることはできません。一回読ませていただければと思います。

赤嶺委員 ぜひお読みになって、つまり、もう第二、第三の田母神氏の広がりをなくするという点では同じ考えですよね、大臣も私も。そういう立場でよろしい。

 ただ、私は、この人の論文の中で、例えば「歴史教育」については「極端に旧軍の過ちを強調したり、歴史上の重要人物の紹介を減らしたり、我が国の歴史教育としてはバランスを著しく欠いている。」と。「極端に旧軍の過ちを強調したり、」というその事例の中に沖縄戦を挙げているんですよ、沖縄戦を。

 「最近の歴史問題としては、1沖縄戦における軍による強制集団自殺問題記述」、ちょっと意味はわかりませんが、こういう言葉は私は初めて見たんですが、自衛隊の中で使われているかどうかですね。「強制集団自殺問題記述に関する教科書検定の混乱、2大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判の訴訟判決、」を挙げ、「それぞれの結果にはやるせない思いである。」と。この時点では地裁判決ですが、でも、旧日本軍の戦隊長の、私は自決はやめろと言ったというこの発言は、この間の大阪高裁の発言で、それは違うとはっきり判決の中で言われていますからね。

 そういうことまで、何か歴史教育の中で沖縄戦を教えることが旧軍の過ちを極端に強調するような行為みたいにして批判するんですが、これは私、沖縄戦の教科書検定にかかわってきた者としては看過できないと思いますけれども、この点についてもきちんと調査して、そして報告していただけますか。

浜田国務大臣 まずはそれを検証させていただきたいと思います。

赤嶺委員 やはり、鵬友を精査したわけじゃないんですが、見ているだけで、田母神論文と同じ傾向の論文がたくさん見つかるんですね。だから、もうこれ以上こんなことを起こさないのだというのであれば、何が起きていたのかという事態の検証が大事だと思います。ぜひ、求めた論文の公表も含めて、これからも国会に報告していただきたい。

 それで、武田政務官、マスコミを見ていましたら、武田政務官のお名前が見受けられたものですから、二十三日の築城基地で開かれた航空祭の祝賀会で発言されているわけですね。御地元ですから、そういう発言があるんだろうと思いますが。

 この中で、自衛官がみずからの国の歴史に正義感を持たずして崇高なる任務を果たせないのは御理解いただきたい、我々は歴史認識を強要する権限は持ち合わせていない、自由な発想とみずから学んだことに信念を持つことはだれにも侵されないと述べた、これは報道です。このような発言をなさったんですか。

武田大臣政務官 かいつまんだ形で新聞に出てしまったんですけれども、私は冒頭、近代民主主義国家の原則というのは、やはり軍隊よりも政治の優越性というものを重要視しなければならないと。それを刺激する者に対しては、やはり我々は文民統制の観点からしっかりとした対処をしなければならない。特に、責任ある立場にある者がそうした文民統制というものに対して刺激的なものをすることに対しては、これは我々は見逃すことはできないということを言った上で、ただ、やはり憲法二十一条にも、言論、出版その他一切の表現の自由もうたわれていますし、思想、信条の自由もみんな人間には与えられております。そこのところは我々は制限することはできないんだと。

 国民から負託をいただいた政治家を含め、自衛官を含め、自衛隊員もそうでしょうけれども、それぞれの地域やそれぞれの立場で、それなりに皆さん歴史というものを勉強して、それぞれ歴史認識というものを持っておると思うんです。それを冷静に見きわめて、どのような形で国民の負託にこたえるかという、そこで、私は、一人一人が正義感を持って初めて意気に感じ、国民の負託にこたえられることになっていくのではないか、そうしたことを皆様方は御理解いただきたいという形で説明申し上げたんです。

赤嶺委員 自衛官がみずからの国の歴史に正義感を持つ、この正義感というのは、過去の侵略戦争の歴史について正義感を持つということですか。

今津委員長 赤嶺君、時間になっていますので、御注意ください。

武田大臣政務官 どの項目について、それぞれの自衛官が正義感を持つという意味で言ったわけではございません。国民の負託にこたえるためには、我々政治家も同じでしょうけれども、やはり正義感というものを、それぞれの価値観に合った正義感というものを持って励まなければ、本当に国民の負託にこたえることはできない、このような意味で申し上げた次第でございます。

赤嶺委員 終わります。

今津委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党の辻元清美です。

 私は、田母神前航空幕僚長問題について質問をしたいと思います。

 航空自衛隊のトップが、政府見解と異なる歴史認識や、それから憲法尊重擁護の義務があるという立場にもかかわらず、憲法に反するような発言を公然と繰り返してきた、これは私は、大臣、日本にとって深刻な問題だと考えています。それは、シビリアンコントロールの不全、それから任命責任の問題、そしてさらには、自衛隊内でどのような教育が行われてきたのかということに対して、日本の国民だけではなくて、このことはワシントン・ポストなど世界で報道されておりますので、国際的に不信の目が向けられている。これをしっかり、この問題の核心はどこにあるのかということをえぐり出して、そして検証して、二度と起こらないようにするということが日本にとって非常に大事なことではないかと思います。私は余り国益という言葉は使わないんですけれども、国益を害していると思いますね。

 ですから、きょうは大臣に、特に教育がどうあったのかという検証について中心に質問をしたいと思います。

 まず、大臣は、十一月二十一日の記者会見で、国家観、歴史観、これは統合幕僚学校の講座に二〇〇三年から設けられ、現在も続けられていると言われている、この講師の選定について質問を記者から受けて、このようにお答えになっております。「これが適切であったと判断することはなかなか難しいのではないかと考えているところであります。」とお答えになって、適切であったと判断することは難しいとお考えになった理由はどういう点にあるんでしょう。

浜田国務大臣 いやいや、これはもう既にお名前も公表させていただいていますし、その講義の内容等々も含めて見てみれば、極めて同じ考えの方が大分並んでいらっしゃるということを、これは見た段階でいろいろな御指摘を受けているわけでありますので。ということは、これは適切だったのかなと言われれば、ちょっとこれは適切ではなかったかなと思える、思っても仕方がないというふうに思ったところであります。

辻元委員 今、同じ考えのような方々とおっしゃいましたけれども、どんな考えの方々だと大臣は認識されていますか。

浜田国務大臣 その意味では、極めて右というか、そちらの方に偏っておられるかなという感じにとられても仕方がないということでございます。

辻元委員 右と左の線引きが難しいんですけれども、右というのは、具体的に言いますと、大臣はずっと村山談話を踏襲するとおっしゃってきましたけれども、歴史認識についていわゆる自虐史観というような言葉がよく出てきますけれども、この村山談話を否定している、または批判しているというような意味で右とおっしゃったんですか。右って何ですか。

浜田国務大臣 要するに、基本的に、一般的に言われている言い方をしただけでございまして、その意味では、学術的に言えば、歴史認識の面においては、村山談話とは相入れないというか、それとは違った認識を持った方々と言った方がいいかもしれませんが、その点が、右というのが不適切であればそれはちょっとあれなんですが、ただ、歴史的な認識の見方がやはり同じような方々がという意味だと思っております。

辻元委員 それでは、こういう講座がどういう過程で設置されるようになったのかなんですけれども、このときの教育課長は坂川隆人統合幕僚学校教育課長、この方が自衛隊の専門テレビの放送で、田母神学校長と二人三脚でカリキュラムをつくったと紹介しているというような報道を私は拝見いたしました。この教育課長というのはどういう立場の方なんでしょうか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 統幕学校におきます歴史観、国家観の課目につきましては平成十五年から始まったわけでございますけれども、当時、学校長は田母神前空幕長でございました。この課目をつくるに当たりまして、担当課長というのがこの教育課長でございまして、統幕学校の統合教育及び調査研究に関する達というのがございますけれども、それに基づきまして教育課長が教育実施計画案を作成し、学校長の決裁を受けて、平成十五年当時、その講座が開設されたということでございます。

辻元委員 教育実施の実務を担ったということで、講師選定なども力を尽くされたのではないかと思うんですが、この教育課長もこの講座で講師を務めていらっしゃるんですね。

 この教育課長という立場で講師を務める際に、政府の方針に反した国家観、歴史観の授業をすることはできるんですか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、当時の教育課長、坂川氏でございますけれども、この実施計画案を作成するとともに、自身が講師としてその課目の中において講義を行ったということでございまして、その講義につきましては、当然、政府の見解等を踏まえた形でやるべきものと考えております。

辻元委員 教育課長の講義ですから、政府の見解と違う認識の講義をばんばんやるということは、普通はこれは認められないことだという御答弁だったと思います。

 その方は、その後、退任をされているんですが、大臣、その方の授業、いろいろ、歴史観、国家観の総括とか東京裁判の本質とか、現憲法及び教育基本法の問題点、米国の占領政策など多岐にわたって何年間か講師を務められていて、最初が教育課長としての講義なんです。

 先日、どういう講義が行われたかということで、その講義の内容が防衛省から公表されました。それを拝見しますと、この元教育課長、「誇るべき日本の歴史」というところで「欧米諸国によるアジア諸国の植民地化に対して立ち向かった日本。」とか、「米国の日本占領政策」のところで、縦軸、これは歴史を指すらしいですけれども、の切断に大きな役割を担ったのが東京裁判とか、何かあたかも田母神さんとよく似た御趣旨の講義をなさっていたのではないかと思うわけですね。これは教育課長ですよね。もしも田母神さんと同じような内容の講義を行っていたとしたら、これは問題ですね。大臣、いかがですか。

浜田国務大臣 これは内容を精査してみないとわかりませんが、当然、我々とすれば、もしもそういうことであればということになるわけでありますが、とりあえずこれをすべてチェックをしないと、私自身、今ここでお答えするのは難しいです。

辻元委員 それでは、大臣、徹底検証が必要と、先ほどからも大臣の御答弁の意気込みは感じるんですけれども、教育課長のこのときの講義の内容などしっかり調べていただいて、報告していただきたいと思います。

 というのは、田母神さん一人の問題なのか、それとも組織ぐるみ言うたら変ですけれども、みんなでこういうようにやろうとしていた問題なのか、ここ、大きな違いなんですよ。だれか一人、政府と違う歴史観、国家観を持った人がいて、そして突っ走ったという話なのか、それが氷山の一角なのか、第二、第三の田母神さんのような人がいっぱいいるんじゃないかという、そこを疑念が持たれているわけですね。ですから、調査して報告していただけますか。

浜田国務大臣 今私がここで言えるのは、とりあえず調査をさせていただいて、その報告に関してはまた御相談させていただきます。

辻元委員 大臣、そううねうね言っているから疑いの目が、余計何か隠そうとしているんじゃないか、ここを洗いざらい検証されるということが日本の信頼を取り戻すことだということを肝に銘じていただきたいと思うんです。

 次に、もう少しお聞きしたいんですけれども、二〇〇三年から二〇〇五年までの一般課程では毎回五回、二〇〇六年からは、ことしまでで、前期、後期に分かれていまして四回ずつなんですよ。その一回の五人の講師のうち四人までは毎回同じ方なんですね。それが今の元教育課長、それから福地大正大学教授、高森日本文化総合研究所代表、そして作家の井沢さん。そのほかの方は、櫻井よしこさんとかくるくるかわっているんですけれども。

 このいつも定番の四人の講師の方で、いわゆる新しい歴史教科書をつくる会の関係者が半数を占めているわけですよ。ですから、これ、結局、一つの会の関係者、副代表をされていた方々ですけれども、半数を占めていた。

 そしてさらに、田母神さんは鵬友の二〇〇四年三月号でこういうことを言っています。「隊員に対しては部外で個人や団体が実施する親日的な活動には経費も含めて個人的に支援するという意識を持たせるべきであろうと思う。例えばここ数年新しい歴史教科書が話題になっているが、今後このような本などが出た場合、これをみんなで買いまくるぐらいの意識があっても良いのではないか。」

 この発言について、これは一つの団体のことを言っているわけですけれども、買いまくって応援しろという発言、これは幕僚学校長のときです、どう思われますか。

浜田国務大臣 そのときの発言というのは、今この時点でお聞きをすると、流れの中で聞けば、極めて不適切というふうに言わざるを得ない。

辻元委員 先ほどから政治的意図があったかなかったかという議論があるわけなんですけれども、これは総合的に考えて、こういう疑念が持たれています。それは、講師も一組織の人たちから選抜してきている。そしてさらに、この一つの組織について買いまくれとか。買いまくれということは、応援しろということですね。そして、その考え方を隊員の中にも広めようということにつながりますね。

 これは単に田母神さんだけでなく、先ほどの、教育課長がどうもひょっとしたら同じような考え方で実施要綱などもつくってきた可能性があるとなってきますと、これは一組織及びこの講座をつくった過程だけではなく、その教育全体のあり方に一民間のそういう政治集団というか組織の影響力が非常に出てきているんじゃないかというようなことを指摘する人たちまで出てきているわけですよ。

 そういう点も踏まえて調査していただけますか。

浜田国務大臣 その点に関しては、私、お言葉を返すようで大変恐縮なんですが、我々、任務遂行のために、自衛隊員、自衛官は一生懸命努力をしているところでありますので、そういった影響がないというふうに私自身は思っております。

 その中においてすべてを調査してということは、果たして物理的に可能かどうかも含め、逆に言えば、我々の目的というものをもう一回考え直す必要があるのかな。

 我々はあくまでも日本の安全保障をしっかりと守る、これが我々の任務であり、それをなし遂げることが我々の仕事であるということをさらに我々はしっかりと考えることが極めて重要。

 そして、そういった歴史認識等に関しては、当然我々は、前から申し上げておりますように、思想、信条というのは、これは持っても構わない、ましてやその意見を発表するのも構わないと言っているわけであります。

 ただ、我々、この政府の見解というものが極めて重要である以上、これをしっかりと守って、与えられた範囲内でいかにこの国を守っていくかということが我々の任務ということをさらにしっかりすることが私は重要だと思っていますし、今の状況を、いろいろなことを私ども確認させていただいておりますけれども、その中ではそういった兆候は見られないということだけは申し上げておきたいと思います。

辻元委員 私、ちょっと甘いんじゃないかと思うんですね。

 もしも自衛隊という実力組織に対して、同じような考え方に共鳴するような人をねらい撃ち的にある団体などが目をつけてと言ったら変ですけれども、その団体などの活動を広めたり、同じような考え方を持つ人たちを自衛隊の中に広めていこうというような接触が、これは金銭のやりとりなどだけではなくて、あるというのは非常に危険だし、問題だと思っているわけですよ。ですから、そういうある特定の団体からの働きかけや、それと関連して今回のことが起こっているようなことがないかどうかも含めて調べてほしいと言っているわけです。今の御答弁は趣旨が違うと思います。この点が一点。

 それからもう一つあわせて質問をして、まとめて御答弁いただきたいんですけれども、私は心配しているわけですよ。そんなことはあってはならぬことですよね。

 もう一つ、この田母神時代と言いますが、統合幕僚学校長であったときに、この統合幕僚学校に上がってくるには、その下に幹部学校の指揮幕僚課程というのがあるということなんですね。では、どういうように選抜されて統合幕僚学校に最後、幹部が上がってくるのかというのを調べてみましたら、実は、その時代の一次試験のテーマが、一次試験は論文なんです、愛国心だったんですよ、この年は。それで、この年に五百七十二名が一次試験を受けて、九十五名が選抜されてきているわけです。そして、二次試験を受けて、さらに統合幕僚学校へ行くわけです。振り落としていくわけですね、言ってみれば。

 この愛国心の論文などについて、当時、この主任試験官、一等空佐の方が所感を文書にして、選考を終えてということで書いていらっしゃるわけです。その中にこういうくだりがあるんですね。「当事者意識」というところに「ごく一部の受験者において、自身が戦後のいわゆる自虐史観教育の影響から抜けきらず、その考え方を是とした者がいたのは極めて残念であった。」と。

 これ、意味はわかりますよね。こういう基準で選考していたということは、言ってみれば自虐史観の人を選ばないということになるわけですね。そうすると、今大臣おっしゃった、先ほど私、自虐史観のことを答弁いただきましたけれども、村山談話などに反するというか、そういう考え方だと。そうすると、政府の見解で村山談話に沿っての見解を書いた人はどんどん落とされて、田母神さんみたいな考え方の人がこの選考では残ってきたんじゃないかというぐらい疑われるわけですよ。

 これはちゃんとこの主任試験官の方が、もう一回読みますよ、「自虐史観教育の影響から抜けきらず、その考え方を是とした者がいたのは極めて残念であった。」と試験官が述べているわけですよ。こういう事実があったかどうか。これも結局、先ほど申し上げました田母神という人個人の問題なのか。特に田母神時代、この人はトップにいたわけです、どういう教育がなされてきたのか。

 そしてさらに、二次試験の選考、主任試験官の方はこうおっしゃっています。一等空佐の方ですね。「防衛問題(専守防衛、攻勢作戦、武器輸出三原則等)は高等教育を授かった受験者ほどその弊害としてか、従来の枠組みの中での発想しか見られず、将来の国防組織を担う者としての意気込みを感じることが少なかった。」と。これは従来の枠組みで発想したらだめなんですかね。

 田母神さんの論文でもう一つ問題になっているのは、集団的自衛権の行使や武器使用、そして憲法を変えろと。二次試験の選考された主任試験官の一等空佐の方がこういう基準で審査されていると出ているわけですよ。大臣、御存じでしたか。私は、別に自衛隊員の方をみんな疑っているわけじゃないんですよ。それはわかるでしょう。どうなっていたのか明らかにすべきだと言っているわけです。これは御存じでしたか。

 御存じじゃなかったら、幹部が上がっていく教育の試験のあり方や、どういう基準でどんどん上がっていく幹部候補生を選んできているのか、これは全部、田母神時代については検証する。

 そして、もう一点申し上げたいのは、検証するだけじゃなくて、報告書を出してほしいんです。例えば、今まで防衛省の不祥事がありました。その不祥事のたびに不祥事検証委員会というものを省内に立ち上げ、報告書を出して、国会及び国民に報告してきたわけですね。今回の事態もそういうことをするに匹敵する。田母神さん一人やめさせて終わりと違いますよ。

 ですから、今私が指摘した点への検証、調査、報告、及び全体像の調査、報告、報告書を出していただけるかどうか、これは大臣の御決意にかかっています。そこでうにゃうにゃ言う答弁していたら、何やとなると思いますよ。いかがですか。

浜田国務大臣 基本的に、私は、まず田母神さんの件については、極めて不適切であったから切ったという思いがいっぱいあるわけでございまして、その意味では、それがすべて自衛官と同じように見られるというのはおかしな話であります。そもそも、自衛官というのはバランス、右から左までというお話がありましたし、バランスよくいろいろなことをしっかりと自分の中に吸収して、国のために宣誓をしてこの自衛隊に入ったということをしっかりと認識することが極めて重要であって、バランス感覚があるからこそやっていけるというふうに私は思っています。ですから、バランス感覚のない人間は自衛隊を去っていただいたということがまず重要なことであります。

 今後、我々がやらなければならないことは、そういったバランス感覚を持たせるためにも、右から左まで、いろいろな意見、いろいろな考え方というものをしっかりと勉強させることによって、何がよくて何が悪いのか、そして自分の任務を遂行するために何が必要なのかをしっかりと学ばせることが重要だと私は思っています。

 ですから、先生のおっしゃるように、明らかにするべきところは明らかにし、しかしながら、私自身とすれば、それが果たして余りにも大したことのない人間だったかもしれないことを大きくしてしまうことの方が問題である部分もあるわけでありますので、その点に関しては極めて慎重に対処してまいりたい、このように思っておるところであります。

辻元委員 今大臣が立派におっしゃったことを立証するために、きちんと検証していただきたいということなんです。言ってみれば、今私がちょっと調べても、こういう選考基準だったのかしらと思うようなことが目に飛び込んでくるわけですね。

 鵬友をいっぱいきょう持ってきましたけれども、この鵬友の中にも、田母神さんと同じような主張を展開されている。先ほど、沖縄の集団自決の話は赤嶺委員が指摘されました。それ以外にも、主に空将の方が、「学校で使用する歴史教科書は驚くほど自虐的である。」とか、また、もう一人の方は、「「日本の若者が日本に誇りを持てないのは反日的な近代史教育が関係していると思います」。」とか、出てきているんですよ。

 ですから、一体どういうことがどういう形で行われているのかをきちんと調査して公表するということは、自衛隊の信頼を取り戻すため、大臣が今おっしゃったことを立証するために非常に必要なことだと思います。

 それ以外にも、ここに「使命の自覚」という海上幕僚監部が出していると言われている、内部の教育の参考資料があります。この中にも同じような発言があるわけですね。「戦いに敗れた日本人は、すでに述べたように、敗戦をきっかけに、愛国心を禁句とし、賤民意識のもとに、何事につけても、自らを卑下すると同時に、自国の存在理由を主張し、自国の良さを語ること、自分の国を世界の繁栄に向けて建設して行くことに、全く消心し、」とかいうくだりがあるんですよ。これは海上幕僚監部が出しているものです。

 私は心配しているわけです。間違ったことは間違ったでちゃんと反省して、そしてきちんと国を再建していこうという、その中で自衛隊はシビリアンコントロールでやっていくんだということであるわけです。しかし、こういうようなことがあちこちに出てくるわけです。

 最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、実は幕僚長がこういう発言をされています。大臣と同じように講義のことを聞かれたんですね。

 幕僚長は、講義の内容は多様であり、許容される範囲を逸脱したというふうには言い切れない、うんと偏っているとは判断しておりませんと。そして、記者が、えっ、それは多くの自衛隊の幹部の方が共有されているバランス感覚ですかと再質問しているわけです。ちょっと驚かれたのかもしれません。これは大臣の答弁とはちょっと違いますよね。これは二十日です。さらに、それに対して、私はそう思っております、一部ですが学生等に聞いた所見を総合しますと、それほど偏ったというふうに私は思っておりません、これは幕僚長の会見での発言です。

 そうなってくると、そういうさっきの振り分けみたいなので選考されているとするならば、賤民意識とかそういうので教育がもしもされているとするならば、そういう学生に聞いても、いや、偏っているとは思わないと言うでしょう。

 そして、幕僚長がこういう御認識であるとすれば、大臣と見解が違うと思います。そうなってくると、私は断定しているわけじゃないです、自衛隊の中での国家観や歴史観というのは、自衛隊の常識は田母神さんに近い常識になっているんじゃないか、一般や国際社会とかけ離れていく可能性があるんじゃないかと思われても仕方がないわけですよ。この幕僚長の発言について、どう思われますか。大臣とは違う。

 もう一度申し上げます。ちゃんと調査報告書を出した方がいい。内部、そして第三者を入れた方がいいですけれども、きちっと検証をする組織を立ち上げた方がいいというように思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 統合幕僚長の会見の件は、それは今回の田母神さんの選んだメンバーのことを言ったのではなくて、カリキュラム全体を見たときにはというただし書きがついておりまして、その点については記者さんたちも理解をしていただいたというふうに思っています。

 それと、今調査のお話がありました。我々とすれば、じっくりと時間をかけてこれを調査したいというふうにも思いますし、報告に関しても、まだ、委員会を立ち上げるかどうかも含めて、これから考えたいと思います。

辻元委員 終わります。

 私も、田母神さんに直接いろいろお聞きしたいと思いますので、委員長、先ほどと同じように参考人として呼んでいただきたいということを要望して、質問を終わります。

今津委員長 理事会で協議いたします。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 田母神さんの発言についての認識論がいっぱい続きましたから、私の考えだけ申し上げておきますけれども、大臣が退職をさせた、早急に自衛隊を去ることが大事であって、その決断の方が自分にとっては重要だった、僕はよかったと思いますよ。だから、そういう意味でも、決断はよかったわけですから、後の処理に関して、いろいろな御意見が出ていますけれども、国民から信頼が得られるようにまた頑張っていただきたい。

 今、国民と自衛隊の間で共有したいことは、今の自衛隊が頑張れるか、将来も自衛隊はちゃんと国民のために頑張れるか、そういう考えをお互いが共有したいのが大事なんですよね。専守防衛で自衛隊がどんな役割を果たすのか、災害でどんな役割を果たすのか、それとか自衛隊が国際貢献をこれからやる中でどういう役割を果たすのか、こういうふうなことをずっと共有していきたいというのが国民の考えであるという認識を私は持っています。

 だから、もう一回歴史観をひもといてどうするかというのじゃなくて、もっと未来のやつに自衛隊の考え方をつくっていくというのがやはり大事かなと。そして、歴史観は、もう二度と戦争を起こさないというその共通項だけ持てばそれで結構、自衛隊がまた余計な歴史観を持つ必要はない、もう二度と戦争を起こさないと共通項を持つということが大事だというふうに思っていますから、そういう教育をこれからもやっていただきたいなというふうに思います。

 その件だけ、質問通告をしていませんけれども、大臣の……。

浜田国務大臣 下地委員のおっしゃるところ、大変よくわかるわけでありまして、我々、平和のために存在する実力組織として、しっかりとその任を確認しながら今後も頑張ってまいりたいというふうに思っておるところでございます。

下地委員 末端の自衛官は、一生懸命頑張って、緊急患者輸送の問題でも役割を相当果たしているんですけれども、南大東、北大東という沖縄から一番遠いところがあるんですけれども、そこにヘリコプターで行くと一時間四十分、固定翼で行くと五十分で行くわけでありますから、患者さんの治療を行う上では固定翼で行った方が早いということになるわけです。

 しかし、この飛行場はなかなか夜間の着陸ができない状況の中にありまして、厳しい環境の中で自衛隊は着陸をやっているわけなんです。それをぜひ改善してくれという町からの要請もありますので、改善をしたい。固定翼が災害時に、救急輸送のときにちゃんと夜中でもおりられるようなことをやってもらいたいという声がありまして、自衛隊からこの前、このやり方でどうかというふうな話がありましたけれども、このやり方をすれば自衛隊の飛行機は南大東に着陸できるということで考えてよろしいんですね。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 自衛隊の航空機が、南北の大東島の二つの空港を利用いたしまして、夜間に急患の輸送を実施することが年に何回もございます。

 他方、これらの空港におきましては、夜間の照明施設が整備をされておりませんので、いわゆるランタンというものを今百メートル間隔ぐらいで滑走路の両側に設置をしていただいて実際に対応しているところでございますけれども、その明るさが十分とは言えないということで、特に悪天候の場合にはこのランタンの明かりが確認をしづらいという状況にあるというふうに聞いておるところでございます。

 それで、御指摘の点につきましては、現地の部隊を中心に、関係機関の方でいろいろと必要に応じて話し合いが進められているというふうに聞いておりますが、今後とも、必要に応じまして、現地を中心に、沖縄県を初め関係機関とよく話し合っていきたいと考えております。

下地委員 これで、あなた方が出したものでいいんですかと聞いているんです。六十メートル間隔で横の方に置いて、一応ランタンを置くことでよろしいんですかと聞いているんです。ちゃんとした答弁をしてくださいよ。

徳地政府参考人 先ほど申し上げましたように、現時点におきましては、百メートル間隔で、たしか三十数個だったと思いますが、ランタンを設置していただいているというふうに聞いておりますが、夜間あるいは悪天候時におきまして、今よりも十分な明るさが確保されるということでありますれば今よりも安全性が確保されるということであるので、基本的には我々としても望ましいと考えております。

下地委員 望ましいって、自分が出した資料だよ、六十八個にしてくれと。

 それで、この六十八個のランタンを置いて、六十メートル間隔でやるということに関しては、航空局としては法律上の問題はありませんね。

関口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の、南大東、北大東空港におきまして現在使用されておりますランタンにつきましては、航空法上の第二条第十一項に規定する航空灯火には該当しないというふうに考えております。したがいまして、当該空港において、急患輸送を目的として自衛隊機がそれを用いて夜間に離着陸を行うことについては、空港の設置管理者であります沖縄県及び運航する自衛隊の方で判断していただければいいのではないかというふうに考えております。

下地委員 北大東で年間十五回、南大東で十六回あるわけですから、設置者と自衛隊がこれでオーケーというんだったら、それは法律上問題ないというふうな認識でいいわけですね。

 それで、そのことについて南大東からも北大東からも相当の要望が来ていると思うんですけれども、それに関して内閣府としてどういうふうな対応をするのか。前大臣はしっかりとやるというふうなことを申し上げておりますけれども、設置者と自衛隊がこれでいいというふうなことになった場合に、いつごろまでにそれをおやりになるのか、お願いしたいんですけれども。

宮澤副大臣 今委員がおっしゃったように、大変問題が発生しているという認識を持っておりまして、前々大臣ですが岸田大臣が大変熱心にこの問題に取り組んでおられました。七月には、たしか南、北と一泊ずつされて、住民の方からゆっくり意見を伺ってきたようでございます。

 両村からの要望もあって、大変大事な問題だと我々も認識しておりまして、関係省庁、また特に設置管理者である沖縄県と今調整をしておりまして、いつまでといいましても、私どもが決定できるというよりは沖縄県が恐らく主体になる話だろうと思いますので、できるだけ早急に整備したいと考えております。

下地委員 特別調整費を使って今年度中にやるというふうなお考えはないんですか。

宮澤副大臣 財源につきましては、委員おっしゃるように、恐らく調整費を使うということになろうかと思います。一方で、本年度中かということになりますと、調整がつき次第ということになりますので、私どもとしては、もちろん本年度中にできればやりたいと考えております。

下地委員 毎月一回、緊急患者輸送が行われているわけですから、この前行きましたら、産気づいて迎えに行こうとしたら行けなくなっちゃって、翌日迎えに行って那覇でお産したら障害が少し出たという話を聞かせていただきました。そういう意味でも、この予算を早目に執行して、島の医療に安心をもたらすというのが沖縄開発庁の役割、内閣府の役割だと思いますので、ぜひしっかりと、自衛隊のパイロットが安心しておりられるように、皆さんの方で整備をしてもらいたいというふうに思っていますから、お願いします。

 もう一つ、那覇空港について質問したいんです。

 今、那覇空港は航空自衛隊がいるわけですけれども、年間四十四回、スクランブルがありますね。前年度は三十四回でしたから、これから那覇空港の役割というものは物すごく大きくなってくるのかな。尖閣列島の問題や中国の軍事力の増強であったり、今、潜水艦の問題、さまざまな問題が起こっていますから、那覇空港が、これから防空の役割だとか、さまざまな陸海空自衛隊の拠点としての役割はこれからも、小さくなることはなくて大きくなっていくのではないかなというふうに推測します。

 今、年間に離発着回数が二万二千回ぐらいあるんですよ。那覇空港そのものが十二万回ですから、大体一八%。しかし、土曜、日曜は自衛隊は休みますから、そうなると、月曜日から金曜日までで二〇%を超えるぐらい自衛隊の頻度というのは高くなってきているというふうなことなんです。

 それを那覇空港は、今こういう状況の中で、F4戦闘機を今度はF15にかえるというふうな方向で進められているようでありまして、南の守りといいますかシーレーンを通してさまざまにこれから大きく展開していかなければいけない。今その拠点になっているのが那覇空港であると言ってもやぶさかじゃないと思うんです。

 この那覇空港はもう一つ大きな役割がありまして、沖縄の空港でありますから離島県沖縄にとっては生活路線でもあるし、沖縄経済のリーディング産業は観光ですから、観光客においても大きな役割を担っていますね。年間五百八十万人の観光客が来ますけれども、九〇%以上は那覇空港を通過して、あとは石垣や宮古、久米島に直行便があるといっても一便や二便ですから、九〇%近くは那覇空港を利用するというふうなことになってくるんです。

 ことし十二万三千回という回数なんですけれども、一九九八年度の那覇空港の将来整備基本調査によると、この空港は何回で限界なんですかといったら、十三万回だと報告書に出ているんです。十三万回となると、今十二万三千回というから、あと六千回ぐらい。六千回といいますと、一日十六回。十六回は離発着ですから、観光客を迎え入れることからすると一日八回なんですね。これぐらいまでもう来ているわけなんです。

 仲井眞知事は、この十年以内に一千万人の観光客を達成したいというふうに言っておりますけれども、これで計算すると、どんなにこの空港を活用しても、あと八十万人しか伸びないだろうな。八回に三百六十五日を掛けて、それに今の六九・五%の稼働率を掛けて、四百人を掛けていって、通常の計算をすると八十万人ぐらいしか伸びないだろうなというふうになっているんですね。

 それで、この空港は、これからあと滑走路をつくるというふうになりますけれども、きょうは航空局が来ていますけれども、これは完成するまでにあと何年かかりますか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 那覇空港につきましては、今先生御指摘のとおり、容量がだんだん逼迫してきているという状況でございまして、私どもは、この空港の能力の増強が必要だというふうには考えております。

 ただ、具体的な整備の計画につきましては、平成十五年度から十九年度にかけまして、国と沖縄県が連携いたしまして、住民参加型の総合的な調査、パブリックインボルブメントと称しておりますけれども、これで将来対応方策を絞り込み、具体的な施設配置を検討する構想、施設計画段階に移行することが適切という結論を得ております。これを受けまして、今年度、平成二十年度からは、具体的な滑走路の増設案を検討するための、構想段階と称しておりますが、この段階に今入っております。

 今後、この構想を経まして具体的な事業の評価あるいは採択というふうに進んでまいりますので、現時点で、いつ、この整備が終了するかということは、ちょっと申し上げられる段階ではございませんが、今後、その方向に向けて今努力をしているところでございます。

下地委員 こういう答弁を聞いていると疲れるね。一般的に何年かかるんですか。環境アセスに三年、構想にあと二年して五年、三千メートルの滑走路をつくるのに一般的に七年かかりますね、八年かかりますね、としたら十一年ぐらいかかりますね、大体そういう答弁をするんじゃないの。

関口政府参考人 お答えいたします。

 一般的にどうかというお尋ねでございますけれども、この那覇空港で仮にもう一本の滑走路を増設するというふうに考えますと、建設工事自体で七、八年ぐらいは要するのではないかというふうに考えております。

 ただ、着工に至る前の段階といたしまして、先ほど申し上げましたとおり、事業の評価、また採択、それから滑走路を増設するとなりますと、当然埋め立て等を伴いますので、環境アセスメントの手続等がございます。そういった種々の段階を経るということで、もう少し時間がかかるかなというふうに思います。(下地委員「何年」と呼ぶ)例えばアセスメントですと二年とか三年とか、その程度の時間は要するというふうに考えております。

下地委員 小さい政党は時間がないので、二回答弁しないで。これは十一年以上かかると言われているんですね。

 それで、先ほど、そのままでいけば国の役割でも那覇空港は大事なんだと言って、F15が出てくる役割もあるし、右の方では、沖縄経済にとっても大事なんだという話になってくるんです。今、自衛隊機が一日百四十便ぐらい飛んでいますけれども、こういうふうな状況の中で、ちょっと試算をしてみると、この百四十便が民航機に全部かわりましたというふうになると、大体八千億ぐらいの経済効果があるんじゃないかと試算する方がいらっしゃるんですね。

 今お話しのように、今のままでは空港の完成までに十一年以上時間がかかる。那覇空港は一日八便ぐらいしかおりられない。再来年には東京の四本目の滑走路ができ上がる。そこの滑走路が一番沖縄にとっては、関東から来るお客さんに非常に来ていただきたい滑走路だけれども、那覇空港はもうどうにもならないという状況の中で、内閣府は、この一千万人の観光客の誘致だとか経済の自立だとかということを高くおっしゃっている。

 きょうの沖縄の新聞を読むと、佐藤大臣は、今の第四次の振興計画で予想したものよりも、県民所得も失業率も何もかも達成目標には届かないだろう、下方修正しないといかぬなというふうなことを言っておりまして、こういう中で対案をお持ちなのかどうなのか。那覇空港というのが沖縄にとって大事だという中で、経済の自立を図っていこうというので内閣府が対案をお持ちなのかどうなのか、まずそれをお聞きしたいんです。

宮澤副大臣 今、対案というお話でございましたけれども、一義的にはやはり県の方で相当考えていただかなければいけない話だと思っておりますし、また、私もいろいろ勉強しましたら、外国人観光客の誘致とかMICEの誘致とかリゾートウエディングの推進とか、また滞在を平準化するとか、いろいろ頑張っておられるなと。一千万人という大きな目標であり、今のお話を承っていても、飛行場が広がらなければなかなか達成できない目標かもしれませんけれども、大きな目標を掲げてやっていただくというのは大変ありがたい話ですし、また、そういう目標があって観光客がふえること自体が、先ほどの長くかかるかもしれない滑走路の拡張、もう一本ふやすといったことが早く実現する、そういうもとになってくるんだろうというふうに思っています。

 実は先ほど地域別の経済報告というのを若干聞いておりましたけれども、沖縄県だけは、景気が悪くなった七月、八月、九月、前年比プラスが続いているというようなことで、ああ、少し効果が上がってきているのかなと。なかなか、これなら我々の対案であるということではないわけでございますけれども、最大限協力しながら、一千万人かどうかは別にしましても、観光客をふやす努力を我々としてもしていきたいと思っております。

下地委員 沖縄がプラスになっているとか、こういうふうにおっしゃいますけれども、本当に実体経済をお知りになって、倒産件数だとかそういうのを見ておっしゃっているのかどうなのかわかりませんけれども、私はそういうレベルではないと思いますよ。

 それで、時間がかかることだけははっきりしていますから、これでいくと、国防においてもマイナス要因はいっぱい出てくるんですよ。また、こういうふうなものが出てくる可能性がやはり強くなってきますから、そこで大臣、これをどうするかということを考えていかなきゃいけない時期に来ている。これは大事なんですね。やはり、嘉手納空港がある、普天間空港がある、この両方の空港があったりさまざまな要因を含めて、私たちは今から考えなきゃいけない。

 私はよく言っているんですけれども、嘉手納空港のF15の部隊が今二つありますけれども、一つはそのままグアムに行かせて、那覇空港にあるF15の部隊は嘉手納に入れなさいと。その方向もやると、滑走路ができるまでの間は観光客に関して誘致ができますよとか、さまざまな考え方が今論議されていないんですね、アンタッチャブル。今副大臣がおっしゃっているように、これは役人が言っているようなことを言っているだけの話で、そんな簡単なもので物事ができるわけじゃない。

 だから、私は、この那覇空港というのにもう一回視点を当てて、さまざまな計画をつくるのも必要なんですけれども、今の段階でどうするのか。これは、安全保障上も相当問題が起こると僕は思いますよ。先ほど言った、自衛隊が観光の足を引っ張っているという声が出るかもしれない。そうなったら、これは余りいいことではないですね。

 そういうのを含めて、もう一回自衛隊としてもこの問題についてどう考えるかということはお考えになって、計画をおつくりになるというふうなこともやっていく時期に来ているんじゃないかというふうに思いますが、その辺だけお答えいただいて終わりたいと思います。

浜田国務大臣 当然いろいろな取り組みをしているつもりではありますけれども、今先生の言ったように、前へ出る考え方、そして計画を持ってやれというお話、極めて重要だと思っておりますので、我々も、今内閣府のお話がありましたけれども、関係の方々と調整をとりながら、何ができるかをやっていきたいというふうに思いますので、今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。

下地委員 ありがとうございました。

今津委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十五分散会


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