衆議院

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第2号 平成21年3月13日(金曜日)

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平成二十一年三月十三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 今津  寛君

   理事 江渡 聡徳君 理事 嘉数 知賢君

   理事 新藤 義孝君 理事 中谷  元君

   理事 仲村 正治君 理事 松本 剛明君

   理事 山口  壯君 理事 佐藤 茂樹君

      安次富 修君    愛知 和男君

      赤城 徳彦君    小野 晋也君

      大塚  拓君    瓦   力君

      木村 太郎君    薗浦健太郎君

      武田 良太君    寺田  稔君

      冨岡  勉君    山内 康一君

      神風 英男君    津村 啓介君

      長島 昭久君    馬淵 澄夫君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

      下地 幹郎君    西村 真悟君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   外務副大臣        橋本 聖子君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   防衛大臣政務官      武田 良太君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       杉山 晋輔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石井 正文君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      秋元 義孝君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   安全保障委員会専門員   金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  山崎  拓君     冨岡  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     山崎  拓君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

今津委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、外務省大臣官房長河相周夫君、外務省大臣官房地球規模課題審議官杉山晋輔君、外務省大臣官房審議官石川和秀君、外務省大臣官房参事官石井正文君、外務省北米局長梅本和義君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官秋元義孝君、海上保安庁長官岩崎貞二君、防衛省大臣官房長中江公人君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、防衛省運用企画局長徳地秀士君、防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今津委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今津委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 おはようございます。自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 きょうは、この大事な時期にお時間をいただきまして、委員長初め理事の皆様に心から感謝を申し上げます。

 早速質疑に入らせていただきますが、きのう、また夜、いろいろ動きがありましたので、ちょっと通告以外のこともお伺いをするかと思いますけれども、答えられる範囲でぜひよろしくお願いしたいと思います。

 既に朝から報道等々で出ておりますけれども、北朝鮮が、人工衛星と称する飛翔物体の打ち上げというものの日程と、それから、それに伴ういわゆる危険海域の、日本海と太平洋でしたが、二カ所の指定をしてきました。これは国際機関に通知をしたということですが、政府としてその事実というものを把握していらっしゃるかどうかということと、また、それに対応して、現段階で政府としてどういう対応をとっていらっしゃるかということを、まずお伺いしたいと思います。

浜田国務大臣 日本時間の三月十二日夜、国際海事機関から、日本を含むIMO加盟国に対しまして、北朝鮮当局からIMOに対する試験通信衛星打ち上げのための事前通報があった旨の連絡があったと承知をしているところであります。

 政府としては、たとえ人工衛星であれ、発射が行われた場合には、国連安保理決議に違反するものであり、地域の安定及び平和を損なうものであることから、北朝鮮に対して改めて打ち上げ中止を強く求めていく考えであります。

 いずれにせよ、防衛省としては、北朝鮮の動向については引き続き十二分に情報収集を行うとともに、事態に適切に対応できるように万全の態勢を整えてまいりたいというふうに思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 人工衛星かミサイルかという話があると思うんですけれども、弾道ミサイルと人工衛星というのは、ほとんど弾頭部分しか実際は変わらないという中で、我が方はミサイルだ、いわゆる国際社会はこれは弾道ミサイルですよという話をして、一方で、北朝鮮は人工衛星と主張しています。

 これはインテリジェンスにかかわる部分もあるので、細かい話はなかなかしにくかろうとは思いますけれども、弾道ミサイルだといういわゆる根拠というか、そういうものをお持ちであれば、お示しできる範囲で示していただきたい。もしくは、これはミサイルですということの十分な確証たり得る情報があるんだ、ないんだということも含めて、お答えできる範囲で結構ですので、答えていただければと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 弾道ミサイルか衛星かという問題については、いろいろな形でそれは区別ができるかと思います。

 一つは、前回、テポドンが打ち上げられたときに、北朝鮮は衛星と言っていたわけでございますけれども、衛星である以上はそれなりの実体というのがあるわけでございますので、そういった点で、まず一つは大きな違いがあるんではないかなと思います。

 それから、軌道的な、上げられ方ということでいいますと、それぞれどういった軌道に投入することを念頭に衛星を上げるかということによりますけれども、その軌道だけで、それが弾道ミサイルの実験であるのか、あるいは衛星打ち上げを目的としたものであるのかということは、なかなか簡単には判別できないということがあろうかと思います。

薗浦委員 ありがとうございます。

 ちなみに、これは、撃たれない、撃たれないというか発射しないにこしたことはない。先ほど大臣の方からも、北朝鮮への働きかけをしていくというお話がありましたけれども、いろいろ散見をするところによりますと、日米韓という三カ国については、共通認識というか、特に韓国大統領がかわってから、非常に三カ国の連携という意味ではとれ始めていると思うんですけれども、やはりかの国に対しては、中国、ロシアという国からの働きかけ、圧力というものも必要になろうかと思います。

 政府として、中国やロシア政府への働きかけ等々は今後考えていらっしゃるのかというのをお答えしていただけるならば、お願いしたいと思います。

中曽根国務大臣 委員も御承知のとおり、この件に関しまして、アメリカ、韓国、それからイギリスは我が国と同様な考えを持っておりまして、これがたとえ人工衛星、そういうふうに北朝鮮が称してもといいますか、人工衛星であっても、これは安保理決議違反、そういう判断でございます。中国、ロシアにつきましては、対外的に立場は明らかにしていないわけでありまして、そういう意味ではコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、我が方といたしましては、従来から、この両国に対しましても働きかけを行っているところでございます。

薗浦委員 撃たれないにこしたことはないと言いつつも、ここまでやったら、あの国のことですから、撃つかもしれない、撃つ可能性も高いと僕自身は思っておるわけですけれども、いよいよ、日本の領土もしくは領海に落下をする、落下物が来るということを判断した段階で迎撃をするという方針で確認をさせていただきたいんですが、よろしゅうございますか。

浜田国務大臣 これはミサイルであれ、ロケットであれ、とにかく我が国の領土、領海にかかわるものに関しては、当然、そういった対処をしていくということであります。

薗浦委員 ありがとうございます。

 我が国であれば、当然、イージス艦とそれからPAC3というのが主たる迎撃手段ということになろうかと思いますけれども、これはちょっと確認をさせていただきたいことがあるんですけれども、米軍が、日本の領土、領海に飛来をする、そうした物体に対して迎撃をするということに関しては、いわゆる法律とか条約上、何ら問題がないことだという解釈でよろしいですか。

中曽根国務大臣 一般論として申し上げれば、米軍による弾道ミサイルなどの迎撃というものは、我が国の安全のために必要である、そういう我が国の意向を踏まえた形での協力として行われるものである以上、当然、これは国際法上は認められるものでございます。

 弾道ミサイル等への対処につきましては、米国との協力は極めて重要でありまして、これまでも、さまざまなレベル、また分野におきまして、米国との間では緊密に協議をしてきております。

 ただし、日米間の協議の個別具体的な内容については、お尋ねの点を含めまして、安全保障上の考慮、そして米国との関係にかんがみまして、お答えを差し控えさせていただきます。

 いずれにしましても、我が国の国民の生命財産に対するそういう被害を防止するために、安保体制に基づいて、日米間で引き続き万全を期していく、そういうことでございます。

薗浦委員 個別例はなかなか御答弁いただけないという話がありましたけれども、では、今の一般論的な話でいえば、今回の弾道ミサイル、北朝鮮のミサイルが打ち上がった段階で、当然、その日米の連携でもって対処をするという基本方針でよろしいんでしょうか。

中曽根国務大臣 万が一の場合でございますけれども、米軍による弾道ミサイルの迎撃というものは、先ほど申し上げましたけれども、我が国の安全のために必要である、そして我が国の意向を踏まえた形での協力として行われるものである以上は、そのような米軍の行動は、日米安保条約上、これは第六条の施設・区域の使用目的に合致するものでありまして、何ら問題ない、そういうふうに思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 それで、当然これまでもいろいろな積み重ねをやってきて、実験もやってきて、さまざまなレベルでの協議をなさっているというお話を伺いましたけれども、これは言うなれば、有事と言ったらちょっと語弊があるかもしれませんけれども、現実問題として、日本を敵性国家というふうに表現をし、ミサイルを持っている国がそこにあって、いざミサイルを撃つという状況に今あって、それに日米が、いわゆる自衛隊と米軍がどう対処するかという意味では、今回は、ケースとしてはまれなケースというか、両方の連携とか実際の対処というものが大変問われるケースになろうかと思います。自衛隊側で、今回のこのケース、さまざまなものを検証して、いわゆるシミュレートをしたり、撃った後でいわゆる検証、これからいろいろな対応をするべく今回のケースの検証をするとか、そういったようなお考えはございますか。

浜田国務大臣 我々とすれば、常々、日米間でいろいろな協議をしておって、そしてあらゆる事象に対して考えて対処するということが当然のことでありますので、今回どのような結果になろうが、今回の件にかかわり合いなく、当然そういったことも含めて、いろいろな事例でもそのようにしておるわけであります。

 逆に言えば、今、ではこの後のことはと言われてもなかなか想定がしづらいのでありますけれども、しかしながら、当然、我々は、いろいろな事象に対処するべく米国と議論していきたいというふうに思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 今回のケースは、日米の連携とかいろいろなものを検証する意味でも大変、誤解を恐れずに言うならば、いいと言ったらいかぬな、まれなケースであると私自身は思っておりますので、ぜひそういうことをやっていただければなというふうに思います。

 それで、ちょっと話題をかえまして、いよいよ、きょう発令なされました海上警備行動についてでございます。

 きょう閣議決定されました新法がございますけれども、我が国は、ペルシャ湾の掃海以来、いろいろな意味でこれまで国際実績をずっと積み上げてきて、インド洋の給油の話もあって、今回海賊への対処ということになろうかと思うんですけれども、この海賊への対処というステージに移るいわゆる意義づけというものを防衛省としてどういうふうに考えていらっしゃるか、まずその意義づけからお伺いをしたいというふうに思います。

浜田国務大臣 本日、海賊対処のための新法が閣議決定されたわけでございますけれども、この海賊対処のための新法ができるまでの間、きょうは閣議決定されたまででございますので、その応急措置として、私の方から海上警備行動を発令したところであります。

 日本関係の船舶を海賊行為から防護するために必要な行動をとるということで、今回の海警行動を発令したわけでありますけれども、当然、我々日本の船舶、そしてまた、この地域では二千隻を超える船が通航しているわけですから、我が国にとって極めて重要な海上交通路でありますので、これに対してしっかりと我が国として対処するというのは極めて重要なことだと思っておるわけでございます。

 今、意義づけというふうにおっしゃいましたが、そういった意味では、この日本の海上交通路の確保、そしてまた日本の船舶、そして人命、財産というものをしっかりと守るというのが大きな意義だというふうに思っております。また、国連でもしっかりとした決議がありということも含めますと、国際協調の中でも当然重要な意味があると思いますけれども、しかし、今回我々は新法がございませんので、海警行動でそこは対処するというのは、極めて応急的だけれども、極めて意義のあるものというふうに考えておるところであります。

薗浦委員 ありがとうございました。

 きょうからは警備行動ということでいって、その後、新法の議論がこれから始まるわけですけれども、警備行動から新法になれば、また一段階高いステージということになろうかと思います。

 海洋基本法等々もありますけれども、今は海上警備行動の意義づけをお伺いしましたけれども、新法というものは、我が国のいわゆる防衛それから海洋政策上、どういうふうに意義を感じていらっしゃるのか、そちらの方の意義づけについてもお伺いできればと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存しております貿易立国であります我が国にとりまして、海上を航行する船舶の安全の確保は極めて重要な課題でございます。近年のソマリア沖、アデン湾で発生をいたしております海賊行為は、我が国のみならず、国際社会にとって緊急に対応すべき重大な脅威となっております。

 国連海洋法条約では、すべての国が最大限に可能な範囲で公海等における海賊行為の抑止に協力するということにされておりますとともに、関係者や関係船舶の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使することが認められております。

 このような状況及び国連海洋法条約の趣旨にかんがみまして、我が国として、外国船舶を含め、海賊行為への適切な対処を図るために、海賊行為に対する処罰を規定いたしますとともに、我が国が海賊行為へ適切かつ効果的に対処するために必要な事項についての法的根拠を定める、そういうことによりまして、我が国の繁栄と発展に不可欠な海洋の安全の確保を図ろうとする、そういう意義を持っておると考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 この新法ができるまでは、我が国の護衛艦はいわゆる外国船舶というものを守ることはできないということになろうかと思うんですけれども、自衛隊法のどこをどう読めば、それはできるとは確かに書いていませんけれども、どこをどう読めば、外国船舶に対してそれができないのか、もしくは、例の長年言われていた局長答弁が根拠になっているのかというところを、今、現段階の解釈を教えていただきたいと思います。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 海上における警備行動につきましては、自衛隊法の第八十二条に基づくものでございます。自衛隊法の第八十二条におきましては、海上警備行動の発令の要件といたしまして、「海上における人命若しくは財産の保護」ということになっております。そして、この八十二条という条文は、自衛隊法の任務との関係で申しますと、公共の秩序の維持という位置づけになっております。したがいまして、従来から、この「海上における人命若しくは財産の保護」と申しますものは、基本的には日本国民の生命または財産というふうに解釈をされてきておるところでございます。

 より具体的に申しますと、日本籍船それから日本人というのが基本ではございますけれども、その他我が国の船舶運航事業者が運航する日本関係船舶あるいは外国籍船に積載されている我が国の積み荷というものにつきましても、公共の秩序の維持の観点から、海上警備行動による保護の対象に該当し得る場合があるというふうに考えてきたところでございます。

 そういうことを踏まえまして、今回は、海上警備行動を発令するに当たりまして、保護の対象となる船舶につきまして、日本籍船、それから、外国籍船でありましても日本人が乗船する外国籍船、それから、我が国の船舶運航事業者が運航する外国籍船、または、我が国の積み荷を輸送している外国籍船でありまして、かつ我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶、こういうものを保護の対象とするというふうに考えることとしたものでございます。

薗浦委員 それはいつ以来の解釈ですか。

徳地政府参考人 先ほど申しましたとおり、基本的には日本国民の生命または財産の保護ということにつきましては、昭和五十年代以降そのような答弁があるというふうに記憶をしております。

 いずれにいたしましても、自衛隊法全体の仕組みの中で、この八十二条という規定は、自衛隊法三条の任務規定との関係におきまして、公共の秩序の維持、そういう位置づけになっておりますので、その観点から、基本的に日本国民の生命財産の保護であるというふうに従来から考えてきておるところでございます。

 しかしながら、日本籍船に絶対に限るというわけではないということも、これまでから申し上げてきているところでございます。

薗浦委員 そうしましたら、昭和五十年代と今平成二十一年、自衛隊を含めて海外での活躍ということも念頭に置いて、当時と状況が全く違うという御認識はございますか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊の任務全般につきましては、まず第一に、我が国の防衛それから公共の秩序の維持というものがございます。さらに、従来は雑則に書かれておりましたいわゆる国際平和協力活動というようなものにつきましても、新たに本来任務というふうに加えられたという経緯はございますので、自衛隊の任務全般につきましては、国際社会の平和と安全に貢献するというようなもの、つまり、我が国の防衛でありますとか我が国の公共の秩序の維持をさらに超えるものが出てきたこと、これは我々としても十分認識をしておるところではございます。

 しかしながら、八十二条の位置づけということにつきましては、先ほど申し上げたとおりというふうに考えているところでございます。

薗浦委員 ありがとうございます。

 国際環境が変わったというのを十分認識しているのであればそのような運用をしていただきたいと思いますけれども、先ほど来、基本的にというお話がございました。それで、実際、「高山」でしたか、あの船はドイツの船に助けられたわけでございますけれども、今回の派遣に関して、今おっしゃった八十二条というものを柔軟に運用するお考えというものは、基本的にと先ほどおっしゃいましたけれども、お考えはございますか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、海上警備行動によります保護の対象といいますものは、まさにこの八十二条の規定の性格から考えまして、一定の限界はございます。

 したがいまして、世界じゅうのすべての船舶というものを、およそ国籍なり積み荷にかかわらずすべて保護の対象とするわけにはまいらないわけではございますけれども、他方におきまして、実際に保護の対象とならないような船舶がございましても、そのようなものが、現に海賊行為が行われている、そういう場面にたまたま自衛隊の海上警備行動に当たっている船が遭遇をするというような場合があって、この船舶の危難を救うためにやむを得ない場合には、事実行為ということではありますけれども、その場でできる限りのことをする、これは当然であるというふうに考えております。

薗浦委員 ありがとうございます。

 今、その場でできる限りのことをするというお話をいただきました。

 あちらの話を伺っていますと、いわゆる海賊船というのは、母船があって、そこから小型の船がばんばん出てきて取り囲んでというふうに伺っておりますけれども、結構ヘリコプターが近づいてくると逃げるというような話も僕は仄聞をしております。

 では、今おっしゃったできる限りの範囲ということで考えて、また、ヘリコプターが飛んできたら海賊船が逃げるというようなことを考えれば、武器を使わずとも追い払うことができるケースもあるのではないかというふうに考えますけれども、いわゆる海賊行為が行われて、ちっちゃい船が跳梁ばっこして、ある外国の船を取り囲んでいた。ヘリを出したら逃げるという事例が多い中で、いわゆる今回の海上警備行動の中で、ヘリコプターを飛ばしてそれを追っ払うということは可能かどうか、また、やられるおつもりがあるのかどうかということは、今、御見解はいかがでございますか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 このたび派遣をされます護衛艦にはヘリコプターを積んでいくということを考えておるところでございます。これはまさに先生御指摘のとおり、ヘリコプターを飛ばすということが海賊を退散させる上で有効であるというふうに言われておりますので、そのようなことを踏まえたものでございます。

 したがいまして、海上警備行動による保護の対象とならないような外国籍船が現に海賊に襲撃されている場面に遭遇したというような場合に、例えばヘリコプターをそこに飛ばして状況を確認したりとか、それから他国の艦艇に状況を通報する、そうしたような事実上の行為はすることが可能であろう。あくまで事実行為という範囲内でございますが、そのように考えておるところでございます。

薗浦委員 ありがとうございます。

 自分のところの船が他国に助けられておって、他国の船が襲われておるときには何もしないというのはいかにも情けない話でございますので、今言ったヘリコプターを飛ばすということを事実行為として考えていらっしゃるということであれば、ぜひやっていただきたいというふうに思っておりますし、それが我が国の使命ではないかと私自身は思っておりますので、これはぜひやっていただきたいと思いますけれども、同じ話を大臣からお伺いすることはできますでしょうか。お願いします。

浜田国務大臣 今回の海上警備行動の発令に当たって、我々はありとあらゆることを考えながらやってまいりましたし、そういう意味では、今御指摘のあったヘリコプターについても、これは当然使うべきものは使っていくということであります。

 ただ、我々とすれば、では何ができるのか、そしてどこまでできるのかというのをやはり常々考えております。それは、海上自衛官が自分たちの能力、そしてまた自分たちの身体にもかかわる問題でありますので、そこは当然、可能な限り、あらゆる権限が付与できればというふうには思っております。

 しかし、当然、我々防衛省・自衛隊は法律にのっとってやることが極めて重要でありますので、その与えられた中で、今回は考えに考え、そしてやれることをしっかりと考えて、いろいろな形をつくろうと思って行動についても考えております。その点は、今後また新法の中で、いろいろと与野党で議論していただくというのは極めて重要だと思いますので、議員の皆様方にその点も含めて議論を深めていただければというふうに思っているところであります。

薗浦委員 ありがとうございました。

 それで、海賊がどこから武器を調達するかという話になってこようかと思うんですけれども、アフガンからいわゆる今回の対象地域となる海域というのは、海賊のみならず麻薬とか武器弾薬を運ぶ密輸船もばっこしておるという話なんです。

 新法の中で、「海賊行為をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為」という一文がございますけれども、いわゆるあそこの海域で麻薬とか武器弾薬を運んでいるような船がこの条文に該当するのかどうかということをお伺いすることはできますでしょうか。

大庭政府参考人 海賊行為の定義に関するお尋ねでございます。

 凶器を準備して船舶を航行させる行為ということに関するお尋ねがございましたけれども、本日閣議決定をいたしました法律案におきましては、これは目的がつけてございまして、海賊の典型的な行為でございます、暴行もしくは脅迫を用い、その他の方法によって人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、またはその運航を支配する、あるいは、そのような手法によって船舶内にある財物を強取する、さらには、人質にする目的で船舶内にある人を略取する、さらには、人質を使って要求をする、こういうような典型的な四つの海賊行為を行うことを目的として、凶器を準備して船舶を航行させる行為というふうになっておりますので、先生御指摘の場合には、これには該当しない場合が多々あろうと存じます。

薗浦委員 ありがとうございます。

 新法の議論はこれから深まっていくでしょうから、きょうはこのぐらいにしておきますけれども、現実、武器弾薬それから麻薬が目の前を走っていて、フラッグの話もあるでしょうからなかなか難しいんでしょうけれども、そこの話も今後ぜひ考えていただければなというふうに思っております。

 ちょうど時間が来ましたので、終わります。本当にありがとうございました。

今津委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 ただいまの自民党の薗浦委員に引き続きまして、昨日来、大変緊迫をしてまいりました北朝鮮の弾道ミサイル発射準備の状況に関しまして、何点かお尋ねをさせていただきたいと思うわけでございます。

 昨日の夕刊各紙からテレビ報道でも、北朝鮮が人工衛星を打ち上げると称して国際海事機関、IMOや国際民間航空機関、ICAOに通報してきた、さらには危険区域も、また危険な期間というものも具体的に指定をしてきた、そういう報道があるわけでございます。

 それに対しまして、既に官房長官のコメント等も出ておりますけれども、日本政府としては、たとえ人工衛星と北朝鮮が称してもこれは安保理決議違反になるんだ、そういうお話でございますが、この日本政府の見解の根拠、理由について、ぜひ最初に確認をさせていただきたい。

 特に、中曽根外務大臣がこれを最初に言われたのは、公式に報道されたのは、三月一日に北京で温家宝首相と会われたときに、日本政府の見解を中国側にも伝えた、そういうようにも報道されているわけでございます。

 この日本政府の見解について、特に国連安保理決議というのは、今から約三年前の平成十八年の十月九日に北朝鮮が核実験の実施を発表した直後の十月十四日に、国連安保理決議第一七一八号が決議をされているんですけれども、このことだと思われるわけですが、たとえ人工衛星の打ち上げのためと北朝鮮が主張しても、日本としては国連安保理決議一七一八号に違反すると言われるのであれば、どの部分に違反するのかということ、また、その具体的な根拠、説得力ある理由というものを明確に持っておかないといけないであろう。

 というのは、万が一、予定どおり北朝鮮が打ち上げた後、国際社会でやはりこれは論争になると思うんですね。そのときに、国際社会に通用する、納得のいく、そういう主張を日本政府としても持っておく必要があるのではないか、そういうこともありますので、ぜひ最初に確認をさせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 我が国は、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を強行した場合には、先ほど委員がおっしゃいましたように、私どもとしては、仮に北朝鮮がこれは人工衛星だというふうに称しましても、安保理決議の一六九五号及び一七一八号の違反であると考えております。

 この決議の内容でございますが、一部分御紹介させていただきますが、一六九五号におきましては、「北朝鮮が、弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、」と書いてあります。それから一七一八号も、「北朝鮮に対し、いかなる核実験又は弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求する。」そういうふうに両決議でなっておるわけでございます。

 これは、北朝鮮の弾道ミサイル計画に関連するすべての活動は停止されなければならない、そういう意味でございますが、弾道ミサイルと、それから人工衛星打ち上げに使われる宇宙打ち上げ機、これはほぼ同一でありまして、互換性のある技術に由来をするものである。そのために、北朝鮮が人工衛星の打ち上げであると主張いたしましても、北朝鮮が発射を行えば、今申し上げました国連安保理の決議に違反する行為である、そういうふうに考えているところでございます。

佐藤(茂)委員 今外務大臣が言われた一六九五号というのは、その前の夏に、七月だったと思うんですけれども、北朝鮮が七発の弾道ミサイル発射をしたということを受けての国連安保理決議でありまして、その一六九五号と一七一八号の部分に違反するんだ、そういうことでございます。

 ただ、難しいのは、この「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」というところで本当に読み切れるのかどうか。彼らは人工衛星とどこまでも主張する。今回、新たにわかった事実としては、宇宙条約にも急遽加盟したということを言っておるわけでございまして、すべてそういう意味でいうと言いわけがましい事実行為を積み重ねていっておる、そういうようにも読み取れるわけですね。

 そこで、今、外務大臣がおっしゃったんですけれども、これはアメリカの専門家も、弾道ミサイルも人工衛星打ち上げのためのロケットも、基本的には同じ技術によって飛び、基本的な仕組みはほぼ同じである、これは十日のアメリカの上院軍事委員会の公聴会で、デニス・ブレア国家情報長官の証言の中でも同様のことを言われているわけであります。

 ここは非常にややこしい部分でありまして、というのは、先ほど防衛省の局長が答弁されていましたけれども、九八年に日本を飛び越えて太平洋にテポドン一号と思われるものが落下したときに、あのときに北朝鮮は、今回と同じく光明星一号という人工衛星の打ち上げに成功したと直後に発表したんです。

 アメリカの専門機関が幾ら調べても、該当する衛星は見つからなかった。だから、アメリカは、これは衛星ではない、そういう判断をされるのかと思ったら、それにもかかわらず、日本とアメリカで判断が分かれたんですね。日本は、ミサイルの発射実験だった、そういうふうに言ったんですけれども、アメリカは、ごく小型の衛星を打ち上げようとしたが失敗したとの判断を最終的に公表したわけであります。ですから、同じように打ち上がっても、最終的に弾道ミサイルなのか人工衛星打ち上げのためのロケットなのかというのは、見きわめとか判断というのは非常に難しい部分があるわけであります。

 ただ、今回のように、これからのことを考えると、人工衛星の打ち上げ、そういう言いわけをしての弾道ミサイルの発射というものを許してしまうことになると、これは北朝鮮などの、そういう大量破壊兵器を持った国のやりたい放題になってしまうわけですね。

 ですから、私は、九八年のそういう分析が分かれた結果、また今回のこういう問題、北朝鮮が言いわけがましく人工衛星というようなことを言っていることを踏まえて、人工衛星の打ち上げと称して弾道ミサイルの発射を許さないような、そういうミサイル問題をさらに詰めて話し合うような国際的な枠組みをやはりこの際しっかりとつくっていくべきではないか、そのように思うんですが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 言うまでもありませんが、まず、発射させないようにぎりぎりまで努力をするということが一番大事であります。

 それから、これは違反かどうか、人工衛星かどうかという判断は、我が国としては、先ほど申し上げましたような決議を解釈して、違反である、そういうふうに判断しております。

 最終的には、安保理等でいろいろな議論が行われ、いろいろな見解が出るかもしれませんが、御案内のとおり、今回のことにつきましては、アメリカもイギリスも韓国も、これは人工衛星であっても違反である、そういうふうな見解をもう既に表明しているところでございます。

 ミサイルの開発というものは、核の開発と相まって、我が国の安全保障にとって大変重大な脅威でございますが、六者会合の作業部会では、日朝国交正常化のための作業部会があるわけですけれども、そこにおきましてミサイル問題について取り上げると同時に、北東アジアの平和及び安全メカニズム作業部会、こういう作業部会もあるわけでございますが、こちらにおきましても、ミサイル問題を含めた懸案事項を包括的に解決して、そして国交正常化を実現するよう努力することが北東アジアの安全保障環境を改善する上で重要である旨表明をするなど、北朝鮮側にミサイル脅威の除去を働きかけているところでございます。

 また、新しく誕生しましたオバマ政権におきましても、北朝鮮のミサイル問題、これは六者会合の枠組みの中で取り上げていく必要がある、そういう考えでございますし、またクリントン米国国務長官も、二月に来日いたしました際に、このミサイル問題は北朝鮮に対する米国の全般的な懸念の一部をなすものだ、そういう立場を明らかにしています。

 政府といたしましては、日朝平壌宣言にのっとりまして、拉致と核とミサイルといった諸懸案を解決いたしまして、いつも申し上げていることですが、不幸な過去を清算して、そして国交正常化を実現するとの方針でございまして、このミサイル問題につきましても、米国と連携をしつつ、先ほどから申し上げておりますように、六者会合の枠組みにおいて取り上げていく考えでございます。

佐藤(茂)委員 今、六者会合の枠組みの中でしっかりとやっていくというお話でございました。しかし、アメリカも政権がかわったこともありまして、なかなかその立ち上げができておりませんので、これはこの際早急に、日本が主導してでもそういうものをやっていただきたいなというふうに思うわけであります。

 その上で、今外務大臣からありましたように、やはり当面のポイントは、このままいくと北朝鮮は、これだけいろいろな手続を経てきているんですから、なかなか発射阻止というところに向かわないかもわかりません。しかし、最後の最後まで、やはり発射阻止、発射を自制させる、そういうことが努力として必要ではないかなというふうに思うわけであります。

 それで、このミサイル問題に限らず、北朝鮮問題に関してはやはり中国がかぎを握っている、そういうことはもう自明の理でありまして、先ほど言いましたように、三月一日に外務大臣は温家宝首相にも会われました。ぜひ、そういうことも含めて、引き続き、北朝鮮への大きな影響力を持つ中国に、北朝鮮に強く自制を求めるような要請というもの、また、発射を断念しなさい、そういうことを強く働きかけてもらうような要請というものもやはり日中間でもやっていかないといけないでしょうし、こういう中国、さらには、今六カ国協議の話がありましたが、ロシアも含めた、北朝鮮のミサイル発射を阻止するための包囲網というものをしっかりと日本の外交としてつくっていただきたいと思うんですが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 さきの日中外相会談におきましては、中国のヨウケツチ部長との間で、北朝鮮は現在非常にこの地域の緊張を高めて、そして地域の平和と安全を脅かすような行動をとるのではないか、そういう懸念、共通の認識を有しておりまして、引き続いて、まず情勢を注視して、そして緊密に連絡をしていくということで一致をいたしました。そして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けても緊密に連携をしていこうというのがこの日中外相会談でまず話し合われたところで、一致したところでございます。

 また、温家宝国務総理との間でも、北朝鮮問題についての我が方の立場を述べまして、意見交換を行いました。

 政府といたしましては、これまでどおり、中国を含む国際社会と連携をしながら、北朝鮮がこの地域の平和と安定を壊すような、損なうような行動については慎むよう求めていく考えでございますが、委員おっしゃいますように、包囲網というものは大切でございまして、現在、米国、韓国また日本は一致しておりますが、中国に対しましても、北朝鮮に強く働きかけるように、そういう要請はこちらからもしているところでございます。

佐藤(茂)委員 ただ、その上で、日本を含め国際社会からの働きかけ、外交努力また警告、そういうものも無視して北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合に、日本としては、これは国連安保理決議違反だと既に表明されているわけですから、そのことを北朝鮮が行ったわけですから、当然、非常任理事国として、追加の制裁を含む厳しい措置を入れたそういう国連安保理決議の動きを主導すべきであると私どもは考えますし、また日本独自の追加制裁というものも早急に措置すべきである、そのように考えますけれども、外務大臣の見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 繰り返し申し上げますが、まず、打ち上げることのないような努力、自制を求めていくということがまず第一でございます。

 そういう努力にもかかわらず、北朝鮮が発射を強行した場合には、これも再三申し上げておりますが、仮に人工衛星打ち上げと称してもこれは安保理決議違反だ、そういうふうに考えておりまして、米国や韓国を初めとする関係国と緊密に連絡をして、そして安保理でしっかりとした議論をするということが大事でございます。

 今御質問のありました我が国の対応あるいは制裁についてでございますけれども、この北朝鮮措置のあり方というものにつきましては、政府部内においては不断に検討を行ってきております。実際の対応につきましては、ミサイルだけでございませんが、拉致とか核とか諸懸案に対する北朝鮮の対応、それから六者会合の様子、また国連安保理等における国際社会の動き等、そういうものを踏まえて総合的に判断をしていく、そういうことにしているところでございます。

佐藤(茂)委員 今、検討中なので、一歩踏み込んだ発言はなかなか難しいかと思いますが、ただ、三月十一日の夕刊には、高須国連大使が、記者会見でありましたけれども、次のように述べておりました。要は、「大使は個人的な見解としたうえで、ミサイルが発射されれば「日本が直接の脅威を受けるため、他国の動向に関係なく当然、日本として安保理に毅然とした行動を至急取るよう求める」」、そういうことを言われているんですね。

 私は、個人的見解であったとしても、これはそれなりの高い見識を示されているのではないかと思うわけであります。日本が直接の脅威を受ける一番の国でありますから、ミサイル発射は絶対に容認できないんだ、そういう毅然とした態度で事に当たることは極めて大事であるということだけ申し上げておきたいと思います。

 その上で、防衛大臣にお聞きをしたいんですけれども、具体的な弾道ミサイル対処のあり方で何点か確認をさせていただきたいと思います。

 この自衛隊法第八十二条の二というのは、我々法律の議論にも相当参加をさせていただいた一人として、防衛出動による対処でない場合には、この八十二条の二に従って事態に適切に対処できるように、私は万全の態勢をぜひ整えておいていただきたいと思うわけであります。

 特に、あのとき議論したように、弾道ミサイル等の中には、弾道ミサイル、人工衛星打ち上げ用ロケット、人工衛星、またそのほか落下により人命または財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって航空機以外のものを対象の範囲に入れているわけですから、今回北朝鮮がいかに人工衛星とかそういうことを偽ろうとも、当然粛々と法律にのっとって迎撃をしていただきたい、そのように私は申し上げておきたいと思います。

 ただ、その法律をつくって装備を整えた後の初めての迎撃のケースでございますので、順番を変えて、まず一つだけ確認をさせていただきたい。

 昨日も北朝鮮は、部品等の落下が予想される危険区域として、秋田県沖また千葉県東方の海域、この両方の海域が四月四日から四月八日までは危険区域という形で言ってきているわけであります。

 ただ、これが本当にそのとおりになるのかどうかもわかりません。彼らの技術が、やはり今回の蓋然性として非常に高いのは、要するに、テポドン2かあるいは改良型と言われているんですけれども、スピードがノドンよりも非常に速い、さらに高高度である。そのとおり飛べば今のとおりなのかもわかりませんが、打ち上げが失敗して、予定していた危険区域ではなくて日本の領土、領海に入ってくる、そういう蓋然性というものもあるわけですね。そういう場合に、我が国として万全の対応ができるのかどうか。

 今まで、SM3またPAC3での対応というのは、どちらかというとノドン型を対象にして技術も開発してきたと思うんですけれども、今回果たして、テポドン2のようなスピードと、最高飛行高度もノドンよりはるかに上回るもの、それが、失敗とはいえ日本に落下してきた。そういう場合に、具体的には、例えば、イージス艦のレーダーと日本各地に置かれた監視レーダーなどによって、そういう弾道ミサイルの航跡を追尾し、また落下地点、着弾地点ですね、これをしっかりと割り出す。さらに、発射に失敗等して日本に落下する危険が出てきたときに、そういう今の二層システムで技術的にも運用面も対処でき得る、そういうように断言できるのか、これはぜひ防衛大臣の御答弁をいただいておきたいと思います。

浜田国務大臣 今、佐藤委員の御指摘にありましたけれども、とにかく、我が国のそもそも領土を越えて飛んでくるということは、あらゆる事態が予想できるわけであります。ですから、それに対して対処せにゃいかぬということになれば、当然、具体例ではなかなか申し上げられませんが、我々とすれば、今まで培ってきたものをしっかりと駆使してこれに対応していきたいというふうに思っております。

 これはなかなか個別具体的に、相手を利するようなことは言えませんので、そこのところは我々としてはしっかりできるものというふうに思っているところであります。

佐藤(茂)委員 今回、本当に初めてのケースでございます。私どもは防衛省また自衛隊を本当に信頼しておりますけれども、ぜひ万全の態勢で遺漏なき対応をお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

今津委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 両大臣には、早朝から大変御苦労さまでございます。

 これは安全保障委員会でございますので、安全保障の課題に限ってお話を伺いたいというふうに思います。

 今の我が国を取り巻く安全保障上の課題は、先ほど来議論がありました海賊の対処の問題、それから、たった今議論がありました北朝鮮の人工衛星あるいはミサイルの対処の問題、これは、くしくもですが、自衛隊法八十二条の一と二にかかわる問題でございまして、きょう海上警備行動の発令をなさったというふうに伺っておりますけれども、まず最初に、海賊問題について伺いたいと思います。

 私が最初に昨年の十月に提案をさせていただいて約五カ月、ようやく海上警備行動で護衛艦が二隻出航することになりました。この間、私は単に提案を、しかも野党の立場で提案をさせていただいただけでありましたけれども、浜田大臣、具体的に海上自衛隊に対して準備を指示して、そして武器の使用基準も含めていろいろなことに手当てをされてこられたこの五カ月だというふうに思うんです。

 そういう中で、いよいよあす、呉港を出港するという運びになったわけです。これは別に通告しておりませんけれども、この五カ月間、浜田大臣として一番心を砕いた問題と、そしてそれをどのように克服されて、まず当面の措置とはいえ、海上自衛隊の護衛艦二隻を初の公海上における海上警備行動の発令、こういうことになったわけですけれども、その辺の御苦労の跡を振り返って一言伺いたいと思います。

浜田国務大臣 昨年、長島委員から御指摘をいただいた海上警備行動、これは、我々とすれば、今そこにある危機というか、ソマリア沖における海賊問題というのが我々の海上交通路等を確保する意味でも大変重要だということを御指摘いただいて、我々も検討させていただきました。おっしゃるとおり、海上警備行動でこれに対処することができるということは、本当に我々自身も確認をしたところであります。

 しかし、今まで我々、与野党を問わず、海上自衛隊そしてまた自衛隊が海外に出る際の法案というものはいつも特措法でつくってきたわけでもございますし、我々とすれば、そこのところは自衛官に対して迷いのないような形をとるということが任務を遂行するためには極めて重要だということもありました。

 そういったことも含めて、あくまでも、いろいろな国民の皆様方の理解、自衛官の立場、そして活動の担保というものを明確にするという思いが私の中にもありましたので、やはり新法というものを模索しながらも、しかし、事態は時間をかけてはならないということで、長島先生に御指摘をいただいてから五カ月間もかかってしまったことには我々も大変じくじたる思いがあります。しかしながら、一応、今回そういった新法を担保としつつ、国会でも議論していただけるということで、そこでしっかりとした活動範囲も決めていただくということでございますので、それを我々としては国会に出したということで、これから議論していただく。そしてまた、これが国民の皆さん方に理解していただける法律というふうなことを御議論の中で示していただいて、それまでの間、海上警備行動ということになったわけであります。

 そういった意味では、私自身も長島先生と同じ意識を共有しておりましたけれども、きょう、こういった形でできたこと、それがすべて百点満点というわけにはまいりませんが、しかしながら、今後も、国会を通じ、また、たびある機会を通じて、この件に関しての御説明をしていきたいというふうに思っているところでございます。

長島(昭)委員 ありがとうございます。私どもも、海賊対策に関する新しい法案が出てくれば、真っ正面から議論をきちっとしていきたいというふうに思っております。

 派遣される海上自衛隊の皆さんにおかれましては、ぜひ立派に活動を全うして、そして一日も早く無事に帰国していただくことを国民の一人としてお祈り申し上げたいというふうに思います。

 一点、この海賊問題で、特に我が党の議員の中に、なぜ海上自衛隊なのか、なぜ海上保安庁では難しいのかというところがまだ釈然としない、そういう意見も実はございます。

 私も最初の質問で、きょうは海上保安庁長官、お見えでございますけれども、長官に、第一義的には海保の仕事ではないだろうか、海保としてマラッカ海峡ではかなり御活躍をいただいた、海賊対処で相当な成果を上げてこられたという実績もありますので、なぜ海上保安庁ではできないのか、こういう御質問をさせていただきましたけれども、さまざまな理由から総合的に判断をされて、現状では海上保安庁では困難、こういう御答弁をいただいたんですが、もう一度この場で、国民の皆さんにわかりやすく、海上保安庁では難しい理由を御説明いただけないでしょうか。

岩崎政府参考人 先生から昨年御質問を受けたときに、海上保安庁の巡視船を派遣することは、日本からの距離、それから海賊が所持する武器、各国海軍の軍艦等が対応していること等を総合的に勘案すると、現状においては困難、こう御説明をさせていただきました。

 まず、海賊が所持する武器へ対応できること、これはやはり必須の課題だと考えております。御案内のとおり、ロケットランチャー等重火器で武装しております、これらによる攻撃を受けた場合であっても、被害をある程度食いとめながら業務を継続できる、これはやはり必須の要件だろう、このように思っております。

 それから、日本からの距離を考慮いたしますと、長距離を航行できることが、業務を安定的、継続的に実施するための重要な要件になります。海上保安庁は、このような要件をある程度満たす巡視船を現在一隻しか保有しておりません。継続的に業務を実施していくというのは困難な状況でございます。

 また、現状においては、これも御案内のとおり、世界各国、海上警察機関、我々コーストガードと言われる機関ではなくて、海軍の軍艦、軍用航空機等が派遣されております。海上保安庁はこれまで、かかる軍艦等との実際的な連携行動の実績がございませんので、やはり急迫した事態その他、他国と連携が必要になったときに、不安、支障を残す可能性がございます。

 こうしたことを総合的に勘案した結果、現状においては巡視船の派遣は困難であると考えておりまして、自衛隊へお願いをするという形になったわけでございますけれども、司法警察職員としての仕事は我々ちゃんとやっていきたいと思っておりますので、今回も、我々の職員八名を同乗させまして、その任務はきっちりやっていきたい、このように思っているところでございます。

長島(昭)委員 今御説明をいただいたように、遠距離であること、それから、海賊の装備を考えて、今の巡視艇の装甲といいますか船のつくり、構造からいって、なかなか任務の継続が難しい、それから、一隻しか対応できる船がないので、恐らく何カ月、もしかしたら何年かかかるオペレーションだと思いますので、それを継続的にやっていくのは難しい、こういうことなんだと思います。

 そうだとすると、例えば、将来、装備や人員というものを確保することができれば、場合によっては、ソマリア沖という遠距離であっても、海上保安庁として任務を担い得るという見通しを持っておられるのか。あるいは、例えば、何でもかんでも海上自衛隊、何でもかんでも海上保安庁だけでやるというものではないと思うので、今回は、司法警察官としての海上保安官の上乗り、海上自衛隊の護衛艦に上乗りという形をとっておりますけれども、今後、場合によっては、これから「しきしま」クラスの巡視船の数がふえてきて、ローテーションでオペレーションできるような環境が整った場合、こういう海賊事案に対して海上自衛隊と共同でオペレーションをする、そういう見通しなどは持っておられるかどうか、ぜひお伺いしたいと思います。

岩崎政府参考人 私どもの装備の方の予算でございますけれども、年間、保安庁の全体の予算が千八百億程度、それから船艇、航空機に回す予算が大体三百五十から四百億程度の予算でございます。「しきしま」級の船をつくろうと思いますと三百五十億程度かかると思われておりますし、また建造期間も四、五年かかるというのが見通しでございます。

 それから、保安庁が今回行かなかった理由の一つは、装備の話とあわせて、各国は軍がやっておられること、その連携行動に不安が残ること、支障が生ずること等も挙げておりますので、そうしたことも総合的に勘案しないといけないな、このように思っております。

 いずれにしろ、まだ率直に、私どもの海上保安庁内でもあるいは政府部内でも、将来のことまで十分議論をしておるところではございません。とりあえずこの今の事態にどう対応していくか、それからどういう法制をつくるかということについてこの数カ月かかっておりましたので、将来どうするかということについては検討をまだ十分しておりませんので、今の段階でのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

長島(昭)委員 私も、新しい船をつくるといったってそれは三、四年かかる話ですから、今回、先ほど浜田大臣がおっしゃったように、今そこにある危機に対応するという観点からすると、なかなか現実的なオルタナティブにはならないのかな、こういう理解をしております。ただ、我が党には海上保安庁への応援団がたくさんおりますので、海上保安庁の予算がイージス艦一隻とほぼ同等、こういう状況を何とかこれから打開して、海上保安庁の皆さんにも活躍をしていただきたい、こう思っておりますので、一言それは申し添えておきたいというふうに思います。

 もう一つの課題に移りたいというふうに思います。

 北朝鮮の人工衛星の打ち上げ予告についてでありますが、外交的に言えば、恐らく北朝鮮は何らかの意図を持ってこういうある種騒ぎを起こしているわけです。秘密裏にやらないで、人工衛星から見えるような形で準備をし、そして予告をしてきているわけですから。

 これは、外交の観点からすれば、相手にしない、無視をするのが実は上策だろうというふうに私は思うんですね。したがって、私は実は余りここで大騒ぎをするつもりはないんですけれども、ただ、ここは外務委員会ではなく安全保障委員会ですので、最悪のケースも想定しながら、なるべく冷静にきちんと議論をしておく必要があるということで、きょうは質疑をさせていただきたいと思うんです。

 外務大臣、まず最初に、北朝鮮が今この時期に、人工衛星だと言って、技術的にはミサイルにも互換性のある技術を世界にアピールする、そういう北朝鮮の意図をどう見ておられますか。

中曽根国務大臣 北朝鮮の意図は必ずしも私どもわかりませんし、またあちらも明らかにしているわけではございませんけれども、南北関係の問題にいたしましても、あるいはミサイルの問題にいたしましても、重要なことは、北朝鮮に対しましては、地域の平和、安定、そういうものを損なう行動は慎むようにと、とにかく働きかけをするということが今一番大事なんじゃないかと思います。

 委員もおっしゃいましたように、これに対しては冷静に対応するということが大事でございますが、同時に、まさに委員おっしゃいました、最悪の場合を想定してというお言葉を使われましたけれども、国民の生命、安全を守るためには、政府としては対応については検討をしっかりとやっておく必要がある、そういうふうに思っております。

長島(昭)委員 外務大臣、しっかり対応していくというのはもちろんそのとおりでありますけれども、私がお尋ねをしたかったのは、確かに北朝鮮という国は、私たちからなかなか理解しにくい、そういう国でありますけれども、意外とこの間、かなり合理的に行動してきて、そしてかなり合理的に対米交渉を重ねてきたというのも、これは事実だろうと思うんです。

 特に、似たようなケースを考えると、九八年のテポドン一号と言われているものの発射のときと比較をして、何らかの北朝鮮の意図が読み取れるんじゃないかと私は思っているんです。九八年のときと今回のケースと、似通った点があるとすればどういうことなのか、あるいは異なった点があるとすればどういう点なのか、外務大臣として北朝鮮の意図も含めてどう分析しておられるか、お聞かせいただければと思います。

石川政府参考人 事実関係を中心にお答えを申し上げます。

 委員御承知のとおり、一九九八年の八月三十一日に弾道ミサイルを発射したわけでございますが、そのときには、各国に対する通報あるいは国際機関等に対する通報もございませんでした。それから発表という形も何らなされなかったということで、発射の後に北朝鮮は国際社会から大変な批判を強く受けたという経緯がございます。

 今回、大臣申し上げましたとおり、北朝鮮の意図がどのようにあるかというのは定かではございませんけれども、いずれにしましても、今回は試験通信衛星を発射するということを北朝鮮自身が対外的に明らかにしているということと、それから国際海事機関、IMOでございますけれども、これへの通報を行うといった国際的な手続をとっているわけでございます。

 ただ、前回と今回で大きく異なりますのは、二〇〇六年にやはりミサイルを撃った、あるいは核実験の実施発表をいたしたということを受けて、先ほど来御議論をいただいている安保理決議というものが既にできていて、国際社会の声というものが既に統一的に発表されているということが大きな違いかというふうに認識をしております。

 いずれにせよ、大臣が先ほどから御答弁申し上げておるように、これは人工衛星ということで発射をしても、我々としては、安保理決議に違反するということできちんと対応していきたい、このように考えております。

長島(昭)委員 今、大事な点を御指摘いただいたと思います。

 事前通報が前回はなかった。したがって、事前に我々が大騒ぎすることもなかったんですね。つまり、最初に私が申し上げました、余りあおって相手にすると、相手がまたおもしろがって我々の期待にこたえるような行動をしはしないかという思いが実は一方にあるんですが、それをしなくても彼らは九八年のときに撃ってきたということを考えると、今回も恐らく、意図はともかくとして、発射をしてくることになるんだろうということが容易に予想できるんです。

 私なりに多少分析をすると、今回と前回とのある種、類似点があるとすると、前回、九八年は、二月に金大中政権が発足した直後だったわけです。金大中政権が、その前の金泳三政権と違って、太陽政策を掲げて、北朝鮮をエンゲージしていくんだ、そういう表明をして出てきた。そのエンゲージメントという新しい政策がどういうものであるかということを、ある種、ミサイルテストでテストするという、そういうことがあったんだろうと思うんです。

 今回は、似たようなことがあるとすれば、これはオバマ政権が誕生したばかりでございまして、オバマ政権が、外交上のアプローチとして、恐らくブッシュ政権と違いを出してくるんじゃないかという予測のもとに、オバマ政権の出方を見る。あるいは、今、核問題で六カ国協議がかなり行き詰まっておりますので、核の問題ではなかなかカードが切れない。そのカードをもう一つふやすために、人工衛星の発射ということで、ミサイルと同等の技術を世界に見せることによってカードをふやしていこう、こういう二つの意図があるのではないかという、私なりの分析はしているんです。

 そういう中で、一つ外務大臣にお伺いしたいのは、今回、先ほど御説明がありましたように、国際ルールを意外と意識して、幾つかの国際機関に事前通告をしている。そして、滑り込みのような形で、実は未加盟だった宇宙条約にも今回加盟をしてきている。そういう中で、私が伺いたいのは、今回、北朝鮮が示した行動というのは、通常、普通の国が人工衛星を打ち上げる際に満たすべき国際ルールをほぼ満たしていると考えていいんでしょうか。

杉山政府参考人 御質問にお答えいたします。

 ただいま委員御指摘のように、一般的に、宇宙空間の探査、利用については宇宙条約というものがございます。その宇宙条約、たしか第三条だったと思いますが、このような宇宙空間の探査、利用というのは国際法に従って行わなければならないといったような一般的な義務が規定をされております。しかしながら、この宇宙条約においては、人工衛星の打ち上げに関する具体的な手続、具体的にどういう通報をしなければいけないかといったようなことについての規定はございません。

 他方、今、委員御指摘のような国際民間航空機関、ICAOと呼ばれるものだと思いますが、それから国際海事機関、IMO、この二つの国際機関のもとではさまざまな規定がございます。必ずしも国際法上の国際約束としての法的な拘束力があるというわけではないところもあるのでありますけれども、しかし、このようなシカゴ条約の附属書とかIMOの総会の決議といったものによって、航空機や船舶の航行の安全に影響を及ぼす活動あるいはそのような作業を行う場合には関係当局に事前にきちんと通報するというような規定がございます。恐らく今回の北朝鮮の行動というのは、このようなことを意識したものに違いないとは思っています。

 ちなみに、IMOの事務局、それからICAOの事務局からは、IMOはきのうの夜でございます、ICAOはけさ、朝八時半ぐらいだったと思いますけれども、こういう通報があったという公式の連絡がございました。

 IMOにつきましては、このような通報というのはIMOの総会の決議に合致しているだろうというふうに考えて各加盟国に通報したという話は我々として聞いております。

 他方、それに比べまして、ICAOの方については、事前通報はあったけれども、これが本当にICAOの附属書に言う具体的ないろいろなルールに沿ったものであるかどうかについては断定を避けておりまして、ICAOの事務局から我々が通報を得たその通報の文書によりますと、ICAO条約のいろいろな規定をいまだ遵守していないのであればそれをきちんと遵守するように強く促すということが書いてあるとともに、北朝鮮からすべての関係当事者に、アドバイザリーという表現になっておりますが、勧告と申しますか通報と申しますか、適当なアドバイザリーもきちんとやらなければいけない、こういった附属書にあるような諸規定をきちんと遵守しているかどうかについては、必ずしも断言を避けているというのが現状でございます。

長島(昭)委員 ミサイルといいますか人工衛星が発射をされた場合、当然のことながら、対応は、外交場裏の対応とそれから安全保障上の対処と、二つに分かれるんだろうと思います。外交上の対応は恐らく安全保障理事会が舞台になるんだろうというふうに思うんです。

 多少気になるのは、もちろん我が国として毅然とした対応をしていく必要がある、そして外務大臣ももう何度も明言されているように、前回の二〇〇六年のミサイル連射あるいは核実験の後に出た国連決議一六九五、一七一八、この二つに明確に違反するんだということをたびたび述べておられますけれども、仄聞するところによると、これは読売新聞の三月七日の夕刊ですけれども、中国やロシアは、人工衛星ならば決議違反ではないという見解を各国に伝えていると。これは外務省として、中ロからのこういう伝達については承知をしているんでしょうか。

中曽根国務大臣 御指摘の点につきましては、中国それからロシアは立場をまだ対外的に明らかにしていないこともございまして、我が国としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、発射をすることのないように、これは十分に関係国が事前に、事前にといいますか従来からそういう協議は行っておりますけれども、引き続いて緊密な連絡をとっていく、そしてコンセンサスというものをつくり上げていくことが大事だ、そういうふうに思っております。

長島(昭)委員 これは、特に韓国の国防長官が二月二十四日に韓国議会で明言しているんですね、衛星発射であれミサイル発射であれ、我々への脅威と判断すると。こういう明確な韓国の政府の大臣の答弁があるということを一つ紹介しておきたいと思いますし、実は北朝鮮自身も、九八年のあのテポドン、彼らはあのときも人工衛星の発射だ、こう言っていたわけですけれども、そのテポドン1の発射の後、九八年の九月八日の労働新聞の中でこう言っているんです、世界の世論は、衛星を軌道に乗せることができる運搬ロケットが開発されたことは大陸間弾道ミサイルを保有するのと同じであるとしばしば評価していると。こういう、みずからも、この技術というのはミサイルに互換性がある技術だということを誇示しているわけですから、これは私たちにとりましては極めて深刻な脅威だ、こういうことになろうかというふうに思います。

 そこで、浜田大臣にお伺いしたい。

 浜田大臣は、これまた大臣のステートメントの中で、こうおっしゃっています。これは三月三日の記者会見ですけれども、日本に落ちるかどうか確定していない人工衛星を迎撃することについて質問があって、それに対して、我々の迎撃対象というものは、自衛隊法八十二条の二にありますように、「弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のもの」と規定しているわけですから、そうなれば、ロケットであっても、制御を失って我が国に落下する可能性がある人工衛星も当然含まれているわけですから、それに対処するのは当然のことだと思っています、こういうことを明快におっしゃっているんですが、ここで言う対処というのは具体的に何を意味するのか、御説明いただきたいと思います。

浜田国務大臣 これは今、長島委員の方から御指摘がありましたように、我々のやることというのは、我が国の領土、領空、領海ですけれども、そこに落ちてきて人的被害があるというようなことがあったり、そういったことを想定した場合にどうなるかということであります。

 それに対しては、対処の意味というお話がありましたが、これはもう当然、自衛隊法の八十二条の二に基づいて、自衛隊の部隊に対して破壊措置を命令することができるわけでございますので、本命令が下された際には、自衛隊の部隊が、我が国のBMDシステムによって、弾道ミサイル等の進路、速度、高度等から落下予測地域を計算して、我が国に飛来することを確認した場合に、SM3ミサイル搭載イージス艦やペトリオットミサイル、PAC3によって破壊措置を実施することになるということでございます。

 このことが要するに私の対処ということで、実質的な事態対応について今まで考えていたことを申し上げたところであります。

長島(昭)委員 そうしますと、今回のケースで、こういう飛翔物体に対する破壊措置の命令を下すおつもりがあるという理解でよろしいんでしょうか。

浜田国務大臣 今のいろいろな御懸念を委員の皆様方からもお話をいただいているわけでありますので、そういったもしもというときを、先ほど委員も最悪の場合もというようなお話をされました。それに対して我々はおこたえできるだけの準備をしなければなりませんので、これに対しての判断というのは当然していかなければならないというふうに思っているところであります。

長島(昭)委員 自衛隊法八十二条の二というのは、一項と、二項はまた一項に対する補足でありまして、具体的に言うと、一項と三項、二つの方法に基づいて破壊措置命令が下される、こういう規定になっているわけですけれども、その一項と三項を分かつポイントは、弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあると認められる場合には、一項に基づいて内閣総理大臣の承認を得て防衛大臣が破壊措置を命令する、こういう流れになっている。もう一つ、三項の方は、弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあるとまでは認められない場合、その場合について、緊急対処要領というのがもう既に閣議決定されておりますけれども、これに基づいて防衛大臣が破壊措置命令を発令する。これは、場合によっては非公開でやられる可能性がある。私はこういう理解をしているんです。

 今回のこのケース、もう北朝鮮が四月の四日から八日の時期に人工衛星を発射するから気をつけてくれと国際機関に予告を、事前通報をしている、そういう段階ですが、私から見れば、これは武力攻撃というふうに断定することはできないと思うんです。つまりは、飛来するおそれが仮にあったとしても、これは自衛隊法七十六条の武力攻撃事態に認定するということはまず問題外だ、こういうふうに思うんです。

 さて、今回、このように期間まで予告をした、事前通報もしている、この人工衛星発射、場合によっては、そのかけらが我が国の領土、領空、領海内に落下する危険も当然のことながらあるわけですね、今までミサイル実験は数々失敗してきている国でございますので。そういうことから考えて、今回のケースはこの八十二条の二の一項のケースに当たるのか、つまりは、飛んでくるおそれがあるというふうに認めているのか。それとも、おそれまではないんだというふうに認識をしておられるのか。どちらでしょうか。

浜田国務大臣 先生、この日にちというのは、きのう明示をされて、国際機関を通じてそれを我々のところにもわかるようにしてきたということでありますが、しかし、今のこの状況下でどちらをとるかというのは、まだ我々とすれば今現在では判断をしておらないところであります。当然、今先生の御指摘のあった二つの方法というのをまた今後勘案しながら、万全の態勢をとるための準備というのはこれから考えていかなければならないというふうに思っておるところであります。

長島(昭)委員 もちろん、これからじっくり冷静にお考えになるんだろうと思いますけれども、時は刻々と差し迫っている、そういう状況があるのが一点。

 それから、もちろんこの八十二条の二の改正のときに、我々も議論しまして、この第一項と第三項の違いがよくわからない、どこに基準があるのかよくわからぬという議論がさんざんなされたんですが、その当時はまだバーチャルな議論だった。しかし、今回は、本当にリアルな議論をしていかなきゃならない、こういう時期だと思いますよ。

 そのときに、これは平成十七年の五月十二日、本委員会での質疑の中で、先ほど質疑をされた佐藤茂樹委員に対して、当時の大野防衛庁長官がこういう御答弁をされているんです。「第一項の飛来のおそれは、国際情勢、発射の示唆及び部隊の動き、ミサイルの発射の準備状況といった軍事的動向を総合的に分析、評価し、政府全体で判断するものであります。」こう言っているんです。この後、「具体的な例といたしましては、意図は不明ですが弾道ミサイルの発射に向けた具体的な兆候がある場合や、諸外国が弾道ミサイルの発射を具体的に示唆した場合などが考えられます。」これが第一項ですね、と言っているんですね。

 こういう御答弁を元の防衛庁長官がなさっておられるんですが、浜田大臣、この御答弁を受けて、今、この差し迫った状況に対して、この破壊措置命令を第一項に基づいておかけになるのか、それとも、もう少し様子を見るのか、明確に御答弁をいただきたいと思います。

浜田国務大臣 これは、一つの要素としては確かにそのとおりだと思うわけでございます。

 ただ、これに関しては、政府部内の決定ということになろうかと思いますので、当然、我々としてはもう少し情報収集し、私なりに、また防衛省なりに判断をしつつ対処していきたい、今、長島委員御指摘のように、時間をかけるということではなく我々としても考えていきたいというふうに思っているところであります。

長島(昭)委員 もう一言添えますと、この大野長官は、その後、同じ日の質疑の中で、今私が申し上げたようなケース、「今後ああいうケースが出てきたら、私は、ちゅうちょなくこういう状況でありますと説明をして閣議で決定してもらいたいなと思います。そういう意味で、私は、一項の命令を出させていただきたい、」こういうふうに防衛庁長官が、当時は、ある種気楽な立場といいますか、まだ危機が差し迫っているわけでもなく、法律の意図するところ、趣旨をお述べになったところでありますから、私も冒頭に申し上げたように、必要以上に空騒ぎすることは慎むべきだと思いますので、防衛大臣の心中を察して余りあるわけでありますが、ぜひ、遅滞のない、遺漏のない御判断をどこかでしていただかなければならないということだけ申し上げておきたいと思います。

 もう時間がございませんので、では、少し山口委員の時間に食い込んでよろしいでしょうか。

 それでは、山口理事からの御好意によって、もう少し続けていきたいというふうに思います。

 もし、防衛大臣が対処を判断された、そして破壊命令を下された。先ほど大臣の御説明にあったとおり、命令を下されたら直ちに対処の行動に移っていくわけですが、これは具体的には、ここから先はもうバーチャルな話で、肩の力を抜いて、今法律に定められた、今防衛省の中で具体的なシナリオに基づいてなされているところを御説明いただきたいんですが、具体的な行動というのはどういうように展開をしていくんでしょうか。

 例えば、我が国は今、海上発射型のBMD、それから地上発射型のBMD、二つ持っているわけですけれども、それをどのような形で展開していくということをお考えでしょうか。

浜田国務大臣 そもそも、BMDのシステムというのは、今、長島委員からもお話がありましたように、海上型のシステム、そしてまたパトリオットを中心とする地上型のミサイルで撃ち落とすという形をとっておるわけでありますので、二重の形をとっておるわけであります。

 これを、いろいろな場面を想定しつつ、我々とすれば、この対応、位置づけも含めて、配置についてもしていくことになっております。また、パトリオットに関しては、これは移動型のミサイルでございますので、そういった意味では、今後、いろいろな形等、まず情報収集をしながら、それに対処していくという形になろうかと思いますので、迎撃のシステムとしてはその二通りで対処していくということになろうかと思います。

長島(昭)委員 私は悪趣味でこういう話をしているわけではなくて、やはり国民として、もし防衛大臣が破壊措置の命令を出された後、どういう形で自衛隊の部隊が展開をしていくかということは、当然のことながら、頭に入れておかなければならない。

 特に、海上発射型のスタンダードミサイルの場合は、当然のことながら日本海なんでしょうけれども、我々の目には触れない、見えない場所でやっておりますので、その点についての国民の皆さんへの影響というのはほとんどないんだろうと思うんですが、PAC3の場合は、現在、首都圏周辺にも、習志野、武山、霞ケ浦、入間、こういうところにそれぞれのファイアユニットが配備をされていることになっているわけですけれども、捕捉できる半径というのは、これはもちろん軍事機密だと思いますけれども、恐らく数十キロ、こう言われておりますので、日本全国をカバーするというのは、まず現在の配備状況では難しい。となれば、どこか重点を決めて、そこに絞り込んで展開をしなきゃいけない、ずっと入間の基地にいるだけでは役に立たない可能性がありますので。そこは、当然のことながら、国民生活とぶつかる可能性があるんです。

 武力攻撃事態の場合はいわゆる有事法制でさまざまな手続が決められておりますけれども、平時における部隊の展開ということについては、これはいろいろな法規制、通常の法規制との関係で、かなり摩擦を生じる可能性がある、こういうふうに考えています。

 大臣、例えば、PAC3のレーダーなんかが、もちろん、ミサイルが飛翔した後、そこをレーダーが輻射していくときに相当な強力な電波を発することになると思うんですけれども、そういうことで、近傍の皆さんはテレビが見れなくなるとかあるいは通信ができなくなるとか、そういうことになろうかと思います。その点、事前に大臣として、その発令をする前、破壊措置を命令する前から関係省庁との連携をとり合っていくのか。それとも、緊急対処要領を見ると、あくまでも発令してから関係各省との連携をとるように読めるんですけれども、今大臣として、想定できる具体的なPAC3の展開状況を考えて、もう四月四日から八日と決まっているわけですから、今からそういう関係省庁との連携をとり始める、そういうおつもりはありますか。

浜田国務大臣 私もかたいことを言うつもりはございませんが、基本的に仮定の質問についてはなかなかお答えしづらいというところがあるわけであります。

 しかし、一般論として申し上げれば、自衛隊法第八十二条の二の第一項に基づく措置の場合には、これは内閣総理大臣の承認のための閣議において関係省庁間での所要の調整を行うことは当然でもありますし、また、PAC3の部隊の展開のための措置が政府全体としてとられることになるわけですから、当然、今先生の御指摘にあったことに当たってくるものと思っておるところであります。

 今、今回のような件を想定せずともそういった形がとれることになっているわけでありますので、時間がないというのは確かにそうなのかもしれませんが、しかし、あらゆることを今まで我々も想定しながらやってきたところでありますので、当然、長島委員のおっしゃられるところも含め、対処していくことになろうかというふうに思っておるところであります。

長島(昭)委員 もう少し具体的に御説明をいただきたかったんですが、例えば展開地域の土地の収用とか、あるいは、大型車両が、もちろんランチャーとかが行くわけですから、そういう道路使用許可とか電波制限とかあるいは空域調整とか、こういうことは当然必要だと思いますし、住民の皆さんの避難ということも当然頭に入れておかなきゃならない、破壊をすれば破片が飛んでくる可能性もあるわけですから。こういうことも含めて、ぜひリアルに対処していただきたいということが一点。

 なぜ私がこれを申し上げるかというと、海上発射型のスタンダードミサイルは万能じゃないということなんですね。これまでも何度か実験をハワイでやっていますよ。私が知る限りでも、〇七年の十二月の「こんごう」の実験は成功していますが、その後、翌年の十一月、「ちょうかい」がやった実験は、実は捕捉できずに失敗に終わっているんですね。

 ですから、第一弾は海上発射型のスタンダードミサイルで防ぐわけですけれども、撃ち漏らしということは当然あり得るわけで、それが今度は、まさに我が国の領土内に飛んでくる可能性は極めて高い。そのときにPAC3が出ていってそれを捕捉していく、こういう状況でございますので、私は、ぜひ、総務省等ももちろんですが、地方自治体等も含めて連携をとっていただかなければならない、このように思っております。

 最後に、もう時間もないんですが、在日米軍との連携についてもお伺いをしておきたいと思います。

 これは外務省に伺いたいんですが、今回、八十二条というのは、海上警備行動ももちろんですし、弾道ミサイル等の飛行物体の破壊措置、これは両方とも公共の秩序維持という範疇でカテゴライズされているわけです。我が国の公共の秩序維持に在日米軍が加勢をするといいますか、一緒にやるということは、日米安全保障条約上の義務と見ていいんでしょうか、それとも便宜と考えるべきなんでしょうか。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 一般論として申し上げれば、米軍による弾道ミサイルなどの要撃が日本の安全のために必要である、そういう我が国の意向を踏まえた形での協力として行われるものでございますから、先ほどから申し上げておりますが、これは国際法上、認められるわけでございまして、このミサイル等への対処につきましては米国との協力が非常に重要なわけで、これまでもいろいろなレベルで緊密に協議をしておるところでございます。

 具体的な協議の内容については、安全保障上、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、やはり国民の生命財産、それに対する被害を防止するために、日米安保体制に基づいて日米間で引き続き万全を期していく、そういう考えでございます。

長島(昭)委員 今、日米の連携が非常に重要だという外務大臣からの御答弁なんですが、具体的に、在日米軍が保有しているBMDの戦力といいますか、もちろん我が国の持っている戦力については把握しておるんですけれども、在日米軍が運用する、例えばレーダーとかあるいはPAC3とかあるいはイージス艦とか、これはどういう勢力になっているんでしょうか。イージス艦の状況とかあるいはPAC3の状況、御説明いただければと思います。

浜田国務大臣 米軍の配備につきましては、現在までに、BMD用の移動式レーダー、例のXバンドレーダーが青森県の米軍の車力通信所に、そしてまたPAC3が沖縄の嘉手納飛行場及び嘉手納弾薬庫地区にそれぞれ配備しているほか、BMDの能力を有するイージス艦が西太平洋地域への前方展開をしているというところでございます。

長島(昭)委員 在日米軍が保有するすべてのアセットは我が国の自衛隊と相互運用可能な状況にあると認識してよろしいんでしょうか。

浜田国務大臣 日ごろより、情報も含めいろいろな形での米軍との協議ということを積み重ねてきておりますので、今後あらゆる状況にあっても米軍との情報共有をしていくということは、当然我々としては考えているところであります。

長島(昭)委員 仮に弾道ミサイルだった場合は、発射から着弾まで七分と言われています。十分足らずと言われておりますので、相当リアルタイムで相互運用性が確立していないと困るわけですけれども、最後に質問申し上げたいのは、合同の司令部といいますか合同の指揮統制所といいますか、そういうものを日米の間で設置しているんでしょうか。それから、もしないとすれば、これから設置をしようとされているんでしょうか。

浜田国務大臣 お尋ねの日米共同統合運用調整所というのを、これは二〇一〇年を目標として、その施設、インフラを完了しようということでございます。

 これは当然、我々とすれば、日米関係、そしてまた国民の安心、安全を確保する意味でしっかりと対処できるようにしていきたいというふうに思っておるところでございます。

長島(昭)委員 これは相手のあることですから、日本が急いでもアメリカ側の都合も当然ありますけれども、一日も早くそういう体制を確立するということ、それによって国民の皆さんの生命、財産、安全を守る、このことをぜひ徹底的に整備していただきたい。このことを最後にお願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

今津委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 先ほど長島さんの方から、北朝鮮の関係の話も大分ありました。このことは、我々ちょっと注意しておかなければいけないのは、向こうに、どうしても撃たなきゃいけないという気持ちにさせないことも大事ですから、そういう意味では、余りあおらないように、危機の管理を我々きちっとやっていかなきゃいけないと思うんです。そういう意味では、秘密会でも開いてもう少し議論をした方が本当はいいんでしょうけれども、そういうことも含めて、ぜひきちっと外交的に対処してください。

 私も外務省にいたときに、隣国の議会の議論の状況というのはつぶさに報告した覚えがありますし、このことは必ず北朝鮮にも伝わっていますから、我々はこういうことに対して極めて強く受けとめているということと同時に、今、中曽根大臣の方からも国交正常化ということも出てきましたけれども、いずれその折に、我々が協力しようとか一緒にやっていこうという気持ちに水を差さないようにしておいてくれよということもありますから、このメッセージはきちっと北朝鮮の人たちに届くように、届くと思いますけれども、そういうことを我々は強く思っているということを最初に申し上げたいと思っています。

 大臣、そういう危機管理、エスカレートしないようにということについて、一言お願いします。

中曽根国務大臣 まさに委員のおっしゃるとおりだと私も思っております。

 そういうところから、いろいろな形で、まずこの地域の緊張を高めないようにしてほしいということはメッセージを送っているわけでございますし、また、関係諸国間で緊密な連携をとりながらそういうことをやっているわけでありますが、私たちは、拉致問題とかいろいろな課題があるわけでありますし、それから、そういうような懸案事項が無事にまた解決するということであれば国交正常化ということになるわけでありますから、そういう意味では、まさに委員がおっしゃいましたような点を十分配慮しながら対応していくということが大事だ、そういうふうに思います。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

山口(壯)委員 北朝鮮の話はそういうことにして。

 次に、海賊対策について、きょう閣議で決定されたこともあります。その閣議で決定された考え方、そこに出ているのは、こういうことでよろしいんでしょうか、一義的には海保が担当する、どうしても難しい場合に海自が出ていく、こういう考え方でよろしいんでしょうか。

岩崎政府参考人 海賊事案の対処でございますけれども、これは、海上における人命、財産の保護、また治安の維持という観点の仕事でございますので、一義的に責任を有するのは海上保安庁の任務だと思っております。

山口(壯)委員 一義的には海上保安庁だと。

 先ほど、同僚の長島議員の質問に対する答え、あるいはこれは前からの答えですけれども、なぜ海保ができないかという理由ですね、三つありました。一つは、日本からの距離がすごく遠い、もう一つは、海賊がいろいろな怖い武器も持っている、それからもう一つは、ほかの国も軍艦が結構対応しているから、その連携の実績がないのでということでした。

 他方、今回の法律というのは恒久法ですね。一年、二年と区切った短期の話ではない。十年、二十年、三十年をも見据えた法律です。そういう意味では、今できないということと、これからやろうという話は、当然違えて考えるべきだと思うんです。

 先ほど長官の方から、将来のことだから今は余り言えないという答弁がありましたけれども、それじゃちょっと物足りないですね。やはり海保として、第一義的に責任を有するという認識を持っておられるのであれば、例えば、いずれどういう艦船を望むのかということをきちっとお伝えいただかないと、予算の手当ても困ってしまう。

 長官、いかがでしょうか。将来を見据えて、例えばどういうようなことであればできるのかということをお答えいただけますか。

岩崎政府参考人 海上保安庁の装備の将来をどう考えていくかということでございますけれども、現在、お話ししていますとおり、海上保安庁、非常に老朽、旧式化した船をまだ多く抱えておりますので、それを代替整備していこう、緊急整備していこうということでやっておるところでございます。したがって、まだこの整備に大分時間がかかりますので、直ちに将来の計画を立てるということには至っておりません。

 ただ、先生おっしゃるとおり、中長期的には、やはり海上保安庁が今後どんな形の船をどういう危機に対応して整備していくかというのは、研究しなきゃいけない課題だと思っております。その中の一つに、やはり、こうした日本から遠く離れた地域の事案にどう対応するか、あるいは、重火器を武装した凶悪な事案等にどう対応するか、こうしたことも、中長期的な船艇整備等々を検討するときの検討すべき課題の一つだ、このようには考えております。

山口(壯)委員 どういう船を望まれるかという答えはなかなか出ないんですけれども、中長期的に考えると同時に、他方、短期的にも、海保が中心、海自がサブでお手伝いするということは私は可能だと思うんです。

 例えば、今、海警行動でとりあえず対応しますね。その間、海保として対応できるように、ただ単に海自の船に同乗するということではなくて、海保として対応できる工夫というのは私はあり得るんじゃないかと思います。例えば、海上自衛隊の船舶を海保に渡すということも法律的には可能です。長官、どうお考えでしょうか。

岩崎政府参考人 私の方から直接コメントをする立場ではないかもしれませんけれども、海上自衛隊の艦船、それぞれ日本の防衛という活動に従事されている船でございますので、それを海上保安庁に渡すということについて、それが適切なのかどうかについては、やはり防衛省での御判断があろうか、このように思います。

 それから、今派遣されている船を私どもに渡していただくということは、これは非現実的だと思っております。護衛艦としての任務を果たしておられるわけですし、護衛艦として今までの仕事をやっておられるわけでございますし、そうしたことを私どもが例えば指揮をするとか、そんなことは、やはりオペレーションの性格からいっても適切ではない、このように考えております。

山口(壯)委員 長官、国有財産法の十二条というのがあります。国有財産法の十二条は、「各省各庁の長が、国有財産の所管換を受けようとするときは、当該財産を所管する各省各庁の長及び財務大臣に協議しなければならない。」逆に言えば、関係する大臣と財務大臣がオーケーすれば、船を海保に移すことも可能です。

 そして、今海保の方でおっしゃっておられるのが、一義的には海保の任務だとしながら、できない理由が三つある、一つ目が、一番の理由として船がない、こうなっているわけですね。船がない、では持たせればいいじゃないか。長期的な話をしているんじゃないんです、短中期的な話をしているんです。

 では、法律的に不可能かといったら、可能なんです。国有財産法十二条によれば、可能なんです。もちろん、海保の長官御自身が決められる話ではありません。三つの大臣がかかわります。防衛大臣、国土交通大臣、そして財務大臣です。しかし、その三人がオーケーすれば、それは可能なんです。

 したがって、一つ目の理由の、日本からの距離が遠くて船がないというのは、余り説得力がないということなんです。いかがでしょうか。

岩崎政府参考人 繰り返しになるところもあるかと思いますけれども、海上保安庁はやはり警察任務をやっておりますので、それに適した船を持っております。それに適した船の性能を満たす設計をされておるところであります。自衛隊の船は、やはり防衛ということに主眼を置いた船の性能を満たす設計でやられておる、このように思っております。

 そうした設計思想が違う船を直ちに移管することが適切なのかどうかという問題、それから、先ほども申しましたように、護衛艦はやはり護衛艦として任務を果たしておられて、必ずしも余っているとかそういうことではないだろうと思いますので、法律上、それが制度としてできるかどうかということは別にいたしまして、そういうことが適切かどうかというのはやはり課題が多い、このように思っております。

山口(壯)委員 今回、どうしてもできない理由にそれが挙がっているから、私は言っているんです。浜田大臣、どうでしょうか。財務大臣も含めて所管の三大臣がオーケーすれば、そういうことも可能なんです。

 そして、今長官の方からは、海保の船というのは警察活動用につくっているし、海自の船というのは防衛用につくっているしと。今回、海賊というのが、そういう警察活動を若干はみ出るような武器も持っているから、したがって自衛艦でなければ対応できないというのが論理でしょう。そうすれば、これから海賊対策について海保が責任を持って頑張ろうという気持ちがもしもあるのであれば、あるいは、国際連携をつくって日本がリーダーシップをとってやろうという気持ちもあるのであれば、そういう船を持つことの必要性というのはあると思うんです。

 長期的につくると同時に、短期的にも、例えば海保の方に海自の船を、ちょっと古くても、ロケットランチャーが飛んできても大丈夫なような船というのは、当然、五十二隻のうちの二隻から六隻、どうしてもこの話が大事なのであれば、この海賊対策というのがどうしても大事なのであれば、そういうことで対応することも可能ですね。

 そういう意味では、今回、海自で対応するということがどうも先に結論めいてしまっていますけれども、うちの長島議員が言ったのも、何とか海賊対策をしなきゃいけないという話です。しかも、短期的にも長期的にも、どこが責任を持ってこの枠組みをつくっていくのか。防衛省の任務は我が国の防衛です。海賊対策というのは、今回新しく加わるとしても、それは主任務ではありません。主たる任務は海保にあると法律にしっかり書いてある。

 したがって、今長官は一生懸命、できないできないという理由を述べられている、役人というのは、できないことを正確にできないと言うのが仕事ですから。しかし、政治家というのは、不可能を可能にしていくというのが仕事ですから、海保で今できないのであれば、どういうふうにできるようにしていくかというのが我々の仕事です。

 大臣、この所管がえについてちょっと検討してみようかという気持ちもおありかどうか、一言お答えいただければと思います。

浜田国務大臣 今回、我々とすれば、海上自衛隊がこの任に当たるということに関しては、海上警備行動の中に、第一義的には海上保安庁がということで書いてあるわけでございますし、我々とすると、海上保安庁が任務ができない、これをやっても全うできないということであるからこそ、我々が出ていくということで、あくまでもこれは二次的な発想で、我々が出たいと言っているわけでもなく、ただ、国民の生命財産を守るといった際に、今この対応ができないということは、これはあってはならないことでありますので、その際に我々が出ていくということになっておるわけでございます。

 今先生がおっしゃったことに関しては、当然、これは一義的にはというふうに書いてあるわけですから、我々とすると、いろいろな状況で考えなければならないわけであります。

 今回の法案についても、今後御議論いただく際に、当然いろいろな御議論が出てくるものと私は思っていますので、私自身から海上保安庁のことの内容にどうこうということはございません。しかし、政府として、あらゆることを想定していろいろなことを考えていくのは、これは決して悪いことではございませんので、今後、海上保安庁でもいろいろな御議論があろうかと思いますので、その論を待ちたいというふうに思っておるところでございます。

山口(壯)委員 浜田大臣、例えば船の所管がえの話についてはいかがですか。

浜田国務大臣 先生、確かに、船をかえればというお話は何となく説得力があるように思います。ただ、そうは言いながらも、我々も、防衛の任の中で、要するにいろいろな配置をしながらやってきているところもございますし、今まで、確かに物を右から左に移すというのは可能かもしれませんが、しかし、隊員の意識、そしてまた法律上の部分、逆に言えば、今先生は会計法上のことをおっしゃられましたが、我々の防衛省の法律等々も含めて、いろいろなところを精査しなければなりません。今後、先生のそういうふうな御指摘という部分、御意見というのは、我々も検討というか、頭の体操もしていきたいというふうに思います。

 しかし、なかなか、そういった組みかえによって海賊対策をやっていくというのは、ちょっと私としては今のところ考えづらいというふうに思っているところであります。

山口(壯)委員 これは船だけではなくて、例えば身分についても移すことは可能です。要するに、船を操る、あるいは武器を扱う、それは海保の方は当然なれていないわけですね、その船は海上自衛隊のものだったんですから。

 身分を併有というんですけれども、よくあることです、海上自衛官の身分を保ったまま、あわせて海上保安官の身分を有する。これは、特別職の自衛官の方が一般職の海上保安官を兼務、兼職する場合には併有と呼ぶそうなんですけれども、こういうことは可能なんです。

 法律上は自衛隊法の六十条というもので書いてあって、これは別段の定めという言葉が出ているんですけれども、その別段の定めに当たるのが自衛隊法施行規則の六十条一項五号というものなんです。これは、隊員が他の国家機関の職を兼ね云々のときには、「職務の遂行に著しい支障がないと防衛大臣が認める場合」に可能だとしてあるんです。

 したがって、例えば操船の問題についても、船を海上保安庁に移すと同時に、習熟されておられる海上自衛官の方を、身分を併有してもらって、そして、例えば八割は海上保安庁の職員、二割が海上自衛官とそれから海上保安官を併有した上で、例えばかじを操る場合にもアドバイスもできるだろうし、場合によっては交代してもいいだろうし、武器を使用する場合にもアドバイスもしくはかわってやってもいいでしょう。

 そういう意味では、今海上保安庁の方から、できないという理由を一生懸命挙げておられるんですけれども、決して不可能なことばかりじゃなくて、幾らでも政治的な工夫はできるじゃないか。このことは、きょう閣議決定された法案の中身を変えることなくできることなんです、既にある法律の規定によってできるから。

 どうしても自衛隊だという話じゃないということは大臣が言われました。私もそうだと思います、この海賊対策の話がそうだから。したがって、海上保安庁の方で、先に結論ありきではなくて、中長期的なことも踏まえなければいけないんだから、この法案は一、二年の特措法ではないんだから、恒久法なんだから、したがって、今の長官の答弁では極めて、満足がいかないどころか不適切ですね。将来、海上保安庁が主たる任務を負おうとしている気持ちは全く感じられない。できないできないという理由を一生懸命正確に挙げておられる。しかし、その正確だと思われている理由が、実は正確じゃないんです。

 ちなみに、船が海保に移った場合に、やらなきゃいけないテクニカルなことが幾つかあるんです。例えば、色を塗りかえなきゃいけないとか、自衛隊の船はグレーですけれども海保の船は白にしなきゃいけないとか、あるいは番号をつけなきゃいけないとか、あるいは自衛艦のときには電波法とかいろいろ除外されているけれども、実際に海保の船になったら免許を持っている人が運転しなきゃいけないしとか、いろいろある。でも、そんなのは全部テクニカルな話ですよ。

 政治がどういうメッセージを出すかということに関しては、これからの中長期的なこともにらんで、これは外務省に関係があるかもしれない、もしも海賊対策というのを国際的な連携の枠の中でやろうという気持ちがあるのであれば、そういう海保の位置づけというものをきちっと今から、その気持ちも持ってもらうようにモラルも高めてやっていくことが必要じゃないかと思うんです。

 今、外務省と私言いましたが、外務省の方で、こういう海賊対策に関する国際連携に対して、今では足りぬな、これからもうちょっときちっとやっておかぬと、コーストガードの連携というのは不十分だから、何か各国も軍隊というか軍艦でついつい今やってしまっているけれども、本当にそれで大丈夫かということはきっと思っておられると思うんです。中長期的に国際的な枠組みをつくっていこうという気持ちはおありでしょうか。

中曽根国務大臣 国際連携というのは大変大事であることはもう言うまでもございません。

 昨年でございますが、このソマリア沖の海賊対策に関しまして、委員も御承知のことと思いますけれども、国連で四つの決議を採択いたしました。そして、その決議では、各国に軍艦等の派遣、こういうものを要請しているわけでありますが、またこれにこたえまして各国が軍艦などを派遣しているわけでございまして、そういう意味で、今国際的な対応が協調のもとに行われておるわけでございます。

 こうした海賊行為の防止とか取り締まりのための国際的な連携を進めていくためには、この決議の中の例えば一八五一号、これに従いまして、国際協力メカニズムとしてのコンタクトグループも設置されましたし、また国際海事機関、IMO主催によりますソマリア周辺海域海賊対策地域会合、こういうものの開催などによりまして、周辺諸国の海賊防止のための取り組みも進められているわけでございます。

 長くなって恐縮でございますが、こういう海賊行為の防止、取り締まりに当たりましては、周辺諸国の取り締まり能力を向上させるということが大事でございますし、それから関係諸国の協力関係、これを構築することも大事ですし、何よりも、ソマリアの不安な状況の根っこを直すということが大事でございます。

 こうした国際的な連携を行う上に当たりましても、我が国としては、そういうものに積極的に参加をいたしまして、そして東南アジアにおける海賊対策の経験等も踏まえ、あるいはジブチでの会合におきましてはワークショップ等に資金協力を行うとか、いろいろな形で、今、我が国としてもこの海賊対策に積極的に取り組んでいるところでございます。

山口(壯)委員 今、中曽根大臣の方から、積極的に参加という表現も幾つかありました。それはそれでいいんですけれども、私はもう少し先を望んでいるわけですね。

 日本が枠組みづくりをやるぐらいの、要するに、今回自衛艦とかあるいは軍艦が行っているものはある意味でのカンフル剤ですから、カンフル剤というか、とにかくどうしようもないからやっているという。だけれども、それで事態の根本的解決にならないことはみんなわかっているわけですね。海上自衛隊で例えば逮捕とか云々の話も当然できないわけですし、ある意味では追っ払うだけの話ですね。ですから、この海賊対策の問題を考える場合には、どうしてもコーストガードという要素が中心になってくるわけです。では、その枠組みというものもきちっとつくれば、日本のコーストガードが他国の船も助けることすら当然可能なわけです。

 だから、そういう意味では、枠組みづくりを日本がやっていって、積極的に参加のみではなくて、積極的につくっていくという気持ちを持っていただきたいし、そういうアクションをとっていただきたいなと思うわけです。大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたけれども、今、ソマリア沖海賊対策ということで、国際協力メカニズムとしてのコンタクトグループというものが設置されているわけでありまして、こういうグループに参加している各国の中でいろいろな対策が検討されているわけです。我が国としても、それに参画をして、そしてその中でも、会議をある意味ではリードする、そういうような形で海賊対策には取り組んでいっているわけでございます。

 おっしゃいますように、ただ防御というだけじゃなくて、将来的に何ができるか、そういう点は、こういうグループの中での議論、そして我が国政府の中での議論というものを通じて、今後も考えてはいきたいと思っております。

山口(壯)委員 例えばマラッカ海峡に関しては、海保でやってきたわけですね。そして、マラッカ海峡に関する枠組みも、これは日本が頑張ってやってきたと思うんです。そのことを踏まえて今大臣はおっしゃっていただいているんだと思うんですけれども、だから、今回の新法がこれから議論されるときにも、海自がどうしてもという話、やはり我々の認識として、一義的には海保が担うんだ、法律でもそう書いてあるんだから、そこら辺はきちっとしておきたいと思うんです。

 そういう意味で、岩崎長官、もう一度きちっと答弁いただきたいと思うんです。今、わからないわからない、できないできないという答弁が主だったんですけれども、やはりきちっと海保としてはやっていきたいと思う、場合によっては短期的にも可能な道を探っていきたいということの気持ちをおっしゃっていただけますか。

岩崎政府参考人 今回提案させていただく法律にも、海上保安庁が一義的に対処する、こうありますので、それは私ども、できることは精いっぱいやっていきたいと思っております。ソマリアだけではなくて、世界各国、最近でこそおさまっていますけれども、東南アジアでも海賊が多発しておりましたし、将来どうなるかわかりません。海上保安庁の持てる能力、装備、それから将来のいろいろな施策、工夫等々によって、できることは積極的にやっていきたいと思っております。

 そういう、海上保安庁がこの海賊問題に対して消極的な姿勢で決して臨んでいるわけではなくて、やれることは積極的にやっていきたいという気持ちでただやっております。

 ただ、今回の、今のソマリアのことに対する対応をどうしていくかということについては、繰り返しになりますけれども、現段階での巡視船の派遣等々は難しいことがあり、司法警察職員としての同乗をする。それから、今外務大臣も答弁されましたけれども、周辺国の海上保安能力の向上等々、そうしたことを含めて、これは海上保安庁の仕事だと思っておりますので、できることは積極的にやりたいという気持ちでこれからも臨んでまいりたいと思っております。

山口(壯)委員 長官、この船を、ないのであれば手当てをする道もあるのではないかということをきょうは私申し上げました。それは今の現行の法律でも可能だということを申しました。それから、身分についても、併有という形でサポートすることが可能だということも申し上げました。きょうは国土交通大臣はこの場には、安全保障委員会ですから私はお願いしていませんけれども、長官、きちっと大臣にもお伝えいただいて、その旨考えていただけますか。

岩崎政府参考人 こうした議論をこの委員会でやっていただいているということについては、大臣に御報告申し上げます。

山口(壯)委員 私は、この海賊対策について、前向きに前向きに、ポジティブにポジティブに議論をしているつもりです。そして、法律が、海上保安庁が第一義的な任務を担うのであれば、ではそのための方策というものを、役人の皆さんができないことは政治家の我々が発想しましょうということで、きょうは申し上げたつもりです。

 そういう意味で、ぜひ、大臣とも協議の上、また場を改めて私はお聞きすることになると思いますから、前向きに考えていただきますようにお願いします。

 きょうはいろいろ、またほかにも、グアムの話とかあるいはアメリカとの関係での防衛力整備の話とか、事前に通告していた話はありますけれども、きょうは、海賊対策、それから北朝鮮については、ぜひ危機をエスカレートすることがないように我々もうまく対応していきましょう、そして、余りミサイルが飛んでくるような話が出てくると、日本の我々が後で協力する気持ちに水を差すことになりかねないから、北朝鮮の方もその辺はきちっと頼みますよというメッセージを国会の場で出させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

新藤委員長代理 山口君の質疑は終了しました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 政府は本日、海賊対策の新法を閣議決定するとともに、浜田防衛大臣が海上警備行動を発令いたしました。海賊対策の根拠となる新法が必要だと言いながら、応急措置として明確な法的根拠なしに自衛隊を海外に出すという、憲法をじゅうりんする重大な行為と言わなければなりません。

 そもそも、自衛隊法第八十二条の規定は、日本から遠く離れたソマリア沖での発動を想定したものではありません。自衛隊の海外派遣という憲法にかかわる重大問題であるにもかかわらず、国会への事前の説明は一切ない。本委員会での審議も発令後になっています。私は、まずこうしたやり方に強く抗議するものであります。

 海賊行為は国際犯罪であって、国際的な連携協力による警察活動によって対処すべき問題です。日本は、そのための地域協力の枠組みづくり、周辺諸国の海上警備活動への財政、技術援助、問題の根本にあるソマリアの内戦と貧困の解決に向けた支援をすべきであって、自衛隊は出すべきではないというのが私たちの立場であります。

 きょうは、そういう立場を踏まえた上で、このソマリア沖の海賊問題がなぜ起こってきたかということについて質問をしたいと思います。

 外務大臣に伺いますが、外務省が公表している「アフリカ地域における海賊問題の現状と我が国の取組」というペーパーがありますが、それによりますと、海賊事件発生の背景について次のように述べています。アフリカ地域での海賊事案多発の原因は、貧困問題や治安機関の取り締まり能力不足などが挙げられる、特に、ソマリアには中央政府が存在せず、法執行、司法機関が機能していないことが事件多発の大きな要因と思われる、こう述べているわけです。

 外務大臣も同じ認識ですか。

中曽根国務大臣 委員のおっしゃるペーパーというのをもう一度教えていただけますでしょうか。私、今手持ちにございませんし。

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 今タイトルを言いましたが、外務省のホームページからとりました「アフリカ地域における海賊問題の現状と我が国の取組」というペーパーであります。それを知らないんですか。

中曽根国務大臣 突然の御質問でございますので、手元にもございませんし、現在ちょっと持ち合わせておりません。

赤嶺委員 持ち合わせていないと言われるとその次の質問に非常に困るんですが、知らないんですか、外務省、これだけいらっしゃっていますが。

石井政府参考人 まことに申しわけございませんが、私、今手元に持っておりません。ホームページの記述のことであろうと思います。至急取り寄せるようにいたしますので、まことに恐縮でございます。

赤嶺委員 皆さん、ホームページに外務省自身が載せたことについて認識がないんですか。ソマリア問題について質問するという事前の通告もちゃんとしておりますが、そういう認識はなかったわけですか。

石井政府参考人 資料につきましては、先ほど申し上げたとおりで、手元に持っておりません。まことに恐縮でございます。至急取り寄せたいと思います。

 ただ、先生のおっしゃいましたこの問題多発についての認識でございますが、それについては、ソマリアにおきまして実際政府の能力が欠けていること、それから周辺地域の能力も十分ではないこと、この辺が要因であるという認識については、全くそのとおりではないかというふうに思っております。

中曽根国務大臣 今参考人から答弁いたしましたけれども、その背景ということでございますれば、今も答弁いたしましたように、ソマリアにおける混乱といいますか無政府状態、こういうものも一つの大きな原因だと思いますし、また、ソマリア周辺国の取り締まり能力の不足とか、そういうものがあるのではないかというふうに思っております。

赤嶺委員 取り締まり能力の不足、中央政府が存在していない、それから、外務省は貧困ということも挙げておられるんですよ。

 それで、具体的に聞いていきますが、去年からの新聞報道を見ると、一口に海賊といっても大半は元漁民だ、このように指摘されておられるわけですね。内戦や外国漁船の違法操業によって生活手段を奪われた漁民が海賊化した、最近は組織化され、海賊ビジネスと言われるまでになっている、こういうことがかなり共通して指摘されているわけです。防衛大臣も副大臣も漁業について大変詳しいことではありますが、今は外務大臣にお聞きしております。

 海賊の大半は元漁民だという指摘について、外務大臣はどういう認識ですか。

秋元政府参考人 お答えいたします。

 海賊の出所がどういうところかというのは必ずしも正確にわかりませんけれども、もともとは、ソマリアの沖でもって外国漁船が違法操業を行う、それに対して、自分たちの権益を侵されたということで漁民たちが立ち上がってそういうことを行い始めた、それが起源だと言われております。

 他方で、委員先ほど来おっしゃっていますように、ソマリアというのは非常に貧困地域でございまして、若者たちに職業がない、多くの失業者がいるという中で、海賊というものが一つのビジネス化していて、恐らく漁民でない人たちも海賊に参加するようになった、こういうことだろうと思います。

赤嶺委員 私は、きょう質問するに当たって、ソマリア、地元で発行しているメディア、ソマリランド・タイムズを調べてまいりました。ここで海賊について報道しているわけですが、バレ政権が崩壊した九〇年代の初めから、外国のトロール船がやってきて違法操業を行うようになった、彼らは国際的に禁止された漁具を使って操業を行い、地元漁民の網やとった魚を奪い、漁船を転覆させた、漁民はそのことを何度も国際社会に訴えたが、何ら具体的な対策はとられなかった、そのため、若者が高速船と銃を使って外国船を追い払うようになった、それが海賊になっていった、このように地元メディアで指摘をしているわけです。さっきの外務省の答弁と重なるところもあろうかと思います。

 まだあるんですね。アフリカン・エグゼクティブという雑誌があるんです。これの中でも海賊について書かれております。ソマリアの海賊には二つの顔がある、こういう記事を寄せています。文字どおり船の海賊、それだけでなく、外国漁船によるソマリアの海の侵略、これも海賊だ、こう言っているんですよ。ソマリア沖の海賊、ソマリア沖の海賊と言うけれども、ソマリアの領海内に入ってくる海賊もいると。

 これによりますと、二〇〇五年には、一度に八百隻の違法漁船が確認されている。年間四・五億ドル以上を稼ぎ出している。違法漁船はEUやアジア諸国から来ている。イタリア、フランス、スペイン、ギリシャ、ロシア、イギリス、ウクライナ、日本、韓国、台湾、インド、イエメン、エジプト、こういう国名を挙げているわけですが、日本も例外ではないわけです。

 こういう違法操業の実態について、外務省、把握しておられますか。日本政府や関係国、何か手だてをとってきましたか。

秋元政府参考人 お答えいたします。

 違法操業の実態というのは、これは本来であれば、その国に、ソマリア自体にきちんとした政府があって、そこに海上警備を行うような機関があってきちんと取り締まるものなんですけれども、それが現在ないために、事実上野放しになっているという状況でございまして、実際に違法操業がどれぐらい行われているかというのは、統計もございませんし、把握しておりません。

赤嶺委員 ところが、ソマリアの漁民たちは、我がソマリア領海内へ海賊がやってきた、こういう認識なんですね、ソマリア沖の海賊という日本の議論もありますが。ですから、漁民は何度も何度も被害を国際社会、国連に訴えたというんですよ。国連はそのことについて、批判は口にするけれども何の行動もしなかったと、現地の漁業の専門家は指摘しているんです。そういう姿勢が私たちにも問われていると思います。

 もう一つ、このソマリアの貧困、海賊とかかわって、廃棄物投棄の問題があります。これも、とりわけ内戦に入って以降、ヨーロッパやアジアの企業によってさまざまな廃棄物の不法投棄が行われてきたと言われております。この実態についてはどのように把握しておりますか。

秋元政府参考人 お答えいたします。

 これも、統計等ございませんので、実態把握しておりません。

赤嶺委員 この件に関しては国連は報告書を出していますよね。御存じないですか。

秋元政府参考人 私自身承知しておりませんので、調査いたします。

赤嶺委員 ソマリアに中央政府がないからといって、ソマリアの領海内で何でもやっていいということにはならないと思いますよ。

 この廃棄物投棄の問題については、国連環境計画が公表したスマトラ沖地震の報告書、津波後緊急環境調査の中で言及しております。八〇年代初頭から内戦を通じて、ウラン、放射性廃棄物、鉛、カドミウム、水銀、産業廃棄物、医療廃棄物、化学廃棄物など、さまざまな有毒性廃棄物が投棄されてきた。こうした廃棄物はドラム缶などの容器で海岸に投棄され、そこから有毒物質が漏れ出している。とりわけ、二〇〇四年のスマトラ沖地震による津波で廃棄物がかき回され、地元の漁民に深刻な健康被害、環境への被害を与えてきた。呼吸器系の疾患、口や腹部からの出血、皮膚の異常、有毒物質を吸引した直後の死亡などが報告されております。非常に深刻な問題を引き起こしました。

 外務大臣に聞きますけれども、海賊行為が行われている以上、その行為を取り締まるのは当然です。しかし、こうした先進国による廃棄物の投棄、違法操業が行われて生活手段が奪われるという実態がある限り、問題は解決しないと思うんですね。これは明らかだと思います。

 こうした廃棄物投棄、違法操業の問題について、まだ政府は認識しておられないようですが、ちゃんと調査して認識して、国際社会とも連携して取り組むべきではないかと思いますが、いかがですか。

中曽根国務大臣 委員からそのような御質問があると承知しておりませんので、詳しいお答えができなくて申しわけありませんが、確かに、廃棄物の不法投棄とかあるいは違法操業、これはあってはならないことでございます。

 要は、ソマリアの政府がしっかりと、この不安定な状態からしっかりとした政府ができて、そういうような行政的な面でも取り締まりをやれるようにするということが大事でありまして、私ども、そのために、海上での海賊対策と並行してソマリアの安定化のためにいろいろ検討し、また取り組んでいるところでございます。

 今お話にありましたようなことにつきましては、もう少し調べてみたいと思いますので、またその後に御報告をさせていただければと思います。

赤嶺委員 なぜ海賊が発生したのかという通告をしておりまして、今私が取り上げている議論は、特別な認識がなければできない議論ではなくて、メディア等でも言われていることです。

 例えば、日本のメディアの中で、ウクライナの貨物船、MVファイナを乗っ取った海賊の広報担当がこう言っているんですよ。「みんな漁師だった。政府が機能しなくなり、外国漁船が魚を取り尽くした。ごみも捨てる。我々も仕事を失ったので、昨年から海軍の代わりを始めた。海賊ではない。アフリカ一豊かなソマリアの海を守り、問題のある船を逮捕して罰金を取っている。」

 ソマリアでは、海賊が逆に英雄視されているわけです。若い女性たちが結婚相手に海賊を求めるというようなものもあります。海賊は犯罪行為として孤立させなければならないんですよ。ところが、長期にわたる先進国による不正を正す手段だ、このように見られているわけですね。こんな状態で海賊がなくなるはずはないと思いますよ。

 それで、防衛大臣に一問伺いますけれども、アメリカの第五艦隊のゴートニー中将は、合同任務部隊等国際的な海軍の活動では海賊問題は解決できないだろう、このように述べています。米軍の司令官自身が軍事活動では解決できないと認めているわけですが、日本の自衛隊が今度ソマリア沖でやろうというのは、海賊を積極的に捕まえることではないわけですね。商船の護衛、海賊の抑止、近寄ってこないようにするだけ。これでは、いつまであの海域に居続けなければならなくなるのか。

 防衛大臣は、自衛隊の活動を終える見通し、いつ終えるのか、そういうものをお持ちですか。

浜田国務大臣 我々とすれば、今現在、その期間について想定はしておりません。

 しかしながら、今先生がおっしゃっていること、当然のように、この海賊の根本というものを絶つ、根元を絶たなければ海賊はいなくならないというのは、まさにそのとおりだと思っておるわけでございまして、そういう意味では、我々、今、対処的な行動ではありますけれども、我々に与えられた任務の中で護衛という任務を果たすこと、それが船の安全航行を担保することであるということであれば、それをしっかりとやっていく。

 そしてまた、ただそれだけでは物事の解決にならないということも先生のおっしゃるとおりだと思いますので、外務省を中心とする国際的な動きの中で、ソマリアの政府というものが今後どのように回復し、そしてまた、海賊というものに対してソマリアの国としてどのように解決していくのかということもあわせて考えなければならないと思います。

 そういった意味におきましては、私自身、今海上警備行動を発令し、今後この任務をしっかりと海上自衛隊員に全うしてもらうわけでございますので、遺漏なきよう、しっかりとやっていきたいというふうに思っているところであります。

赤嶺委員 あくまでも自衛隊の派遣は対処行動とおっしゃるわけですが、軍隊の行動というのは対症的な療法にもならなくて、事態を悪化させるんですよ。泥沼化させるんですよ。

 今ソマリアで起こっている問題に先進国として何をなすべきか、こういう真剣な検証と検討をやる必要がある、そして、あくまでも海賊の取り締まりは警察行動として行うべきだということを申し上げて、質問を終わります。

今津委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 海上警備行動の議論も進んでおりますが、きょうは私は、防衛、外務の両大臣が昨日の所信表明において、在日米軍再編については抑止力の維持と地元の負担軽減を図りながら着実に進めると述べたことに関連をして、お尋ねをいたします。

 最初に、去る二月二十七日、福岡高等裁判所那覇支部で嘉手納基地爆音差しとめ等請求控訴事件の判決がありました。両大臣は、この控訴審判決をどのように理解をし、受けとめたでしょうか、伺います。

橋本副大臣 御指摘の判決につきましては承知をしております。

 米軍飛行場における航空機の騒音問題については、周辺住民にとって大変深刻な問題であるということを認識しておりまして、中曽根外務大臣も二月の一日に沖縄を訪問いたしまして、当省としても、沖縄県民の皆様の御負担を改めて実感をしたところでございます。その中曽根大臣の訪問の際には、沖縄の防衛局の屋上からでありますけれども、嘉手納飛行場も訪問をさせていただいております。

 政府といたしましては、従来から、嘉手納飛行場を初めとする米軍飛行場の周辺の住民の御負担を軽減するために、各飛行場における航空機の騒音規制措置を米側と合意するとともに、訓練移転等の対応に努めてきているところであります。

 政府といたしまして、今後とも米側に対し、航空機騒音規制措置を遵守し、地元に与える影響を最小限にすることを求めますとともに、訓練移転等の取り組みを着実に実施することを通じて、可能な限り地元の負担を軽減するため、今後とも努力をしていきたいというふうに考えているところであります。

浜田国務大臣 我々とすれば、この二十七日に言い渡された御指摘の判決におきましては、飛行差しとめ請求及び将来分の損害賠償請求についても国の主張が認められたことは、妥当な判断が示されたものと評価しておりますが、しかし、過去分の損害賠償請求の一部が許容されたことに関しては、裁判所の十分な理解が得られなかったものと思料しているところでございます。

 いずれにしても、これはあくまでも裁判に対する私どもの感想でございまして、今先生からの御指摘、そしてまた、今外務省の橋本副大臣からのお話等にありますように、我々とすれば、沖縄に対しての思いというものをしっかりと持ちながら、今後もいろいろな形で説明をしていきたいというふうに思っているところでございます。

照屋委員 中曽根大臣、私は、控訴審判決、せめて判決要旨ぐらいは読んで、十分理解をしていただきたかったな、こう思っております。

 この控訴審判決で、浜田大臣おっしゃるように、確かに過去の損害賠償分が認められたわけですが、ここで大事なのは、一審判決と違って、受忍限度のW値を七十五と決めたんですね。それによって、賠償額も、一審判決二十八億円に対して、五十六億二千六百九十二万円になった。こういうこともしっかり踏まえていただきたいと私は思います。

 それで、控訴審判決に対しては、たしか本日が上告期限の最終日だと思いますが、国は上告するんでしょうか、しないんでしょうか。

浜田国務大臣 これは、二月二十七日に言い渡された御指摘の判決について、三月十一日に原告側が上告及び上告受理申し立てを行ったことは、報道によって承知しております。

 国としては、判決内容を慎重に検討し、関係機関と十分調整した結果、上告及び上告受理申し立ての事由が認められないことから、上告しないことにさせていただきました。

照屋委員 私も、上告すべきではないというふうに思っております。

 それで、控訴審判決で、国側が主張した、いわゆる危険への接近の法理について、判決はこう述べておる。すなわち、被告、国は、騒音被害が違法な水準に達しているとの司法判断が三度にわたって示されているのに、抜本的な騒音対策を講じて違法状態を解消することができていない、このように述べておるんですね。

 両大臣は、この高裁判決の、騒音被害が違法な水準に達しているという判断、それから抜本的な騒音対策を講じて違法状態を解消することができていない、この指摘をどのように受けとめておられますか。

浜田国務大臣 防衛省としては、嘉手納飛行場の航空機騒音は周辺住民の方々にとり深刻な問題であり、当該騒音の軽減は重要な課題の一つであるというふうに認識をしております。そのため、従来より、周辺住民の方々の御負担を軽減するために、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律等に基づいて、住宅防音工事等の各種周辺対策に努めておるところでございます。

 さらに、平成八年のSACO最終報告に盛り込まれた騒音軽減イニシアチブの実施によりまして、嘉手納飛行場北側に新たな遮音壁を設置するなどの騒音対策に積極的に取り組んできておるところでございます。

 また、米軍に対しては、航空機騒音規制措置を遵守し、可能な限り周辺住民の方々への影響が最小限になるように、累次の機会に申し入れを行っているところであります。

 いずれにいたしましても、当省としては、今後とも引き続き、米側に対し当該申し入れを行うとともに、各周辺対策の推進及びその充実に一層努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

中曽根国務大臣 今、防衛大臣から御答弁がございましたけれども、政府といたしましては、従来から、嘉手納飛行場を初めとする米軍の飛行場周辺の住民の皆さんの御負担を軽減するために、各飛行場における航空機騒音規制措置を米側と合意をして、そしてまた訓練移転等の対応に努めているところでございます。今後とも、米側に対しましては、航空機騒音規制措置を遵守するように、そして地元に与える影響を最小限にすることを求めるとともに、この移転の取り組みを着実に実施することを通じまして、地元の皆さんの御負担を軽減するように私ども努力していきたい、そういうふうに思っております。

 私が過日、沖縄を訪問いたしましたときも、米軍の関係者にその旨要請をしたところでございます。

照屋委員 中曽根外務大臣にお伺いをしますが、米海軍の掃海艦二隻が、来る四月一日から三日にかけて八重山の石垣港に寄港する旨、在日米軍が海上保安庁に通知をしたようであります。その件で、おとといでしょうか、外務省の職員も八重山へ出張したようです。ところが、大臣御承知だと思いますが、その四月一日から三日にかけては、石垣港には、大型クルーズ船二隻が入ってくる、それから貨物船が三隻入港予定であります。もう既にそれは予約をされておる。このような状況の中で、民間港湾に強制的に入ってくる。これを外務省は認めるつもりなんでしょうか。

中曽根国務大臣 米軍の艦船は、日米地位協定に基づいて、我が国の港湾に出入りすることが認められておるわけでございますが、これは、米軍の円滑また効果的な活動を確保し、そして日米安全保障条約の目的を達成するために重要である、そういうふうに考えておるところでございます。

 この日米地位協定は、米軍の船舶と民間船舶との間で港湾の施設の使用が競合した場合の入港のあり方について具体的に規定しているものではございませんけれども、通常、こういうような場合には、先にバースの使用が割り当てられた民間船舶を排除してまで米軍船舶を優先させるということを当然としているものではない、そういうふうに考えております。同時に、日米地位協定の趣旨にかんがみますと、米軍の船舶は、少なくとも民間船舶と同等にまた港湾施設を使用することが認められるということ、これも当然のことであると考えております。

 また、米軍艦船の本邦への寄港というものは、外交関係の処理について責任を有する立場から、国がその是非を判断すべきものでございまして、外交関係の処理に当たる国の決定に地方公共団体が関与し、またはこれを制約するということは、港湾管理者の機能を逸脱するものでございまして、地方公共団体の権能の行使としては許されないものであると考えております。

照屋委員 大臣、私も地位協定五条はよく承知をしております。しかしながら、この石垣島の港湾、石垣港は、石垣島と周辺離島を結ぶ定期船が一日に二百五十ないし三百隻運航している。しかも、今さっき申し上げましたように、既に予約が入っている、しかも大型クルーズ船。これを押しのけて軍艦が入ったら、これは、石垣島は今観光産業、石垣に来る観光客は腰を抜かしてびっくりしますよ。そして、イメージも悪くなる。

 石垣市は、一九九九年に平和港湾宣言をしております。私は、米海軍は乗組員の休養と友好親善が目的だと言いますけれども、港湾管理者である石垣市長も反対をしている、それから多くの市民も入港に反対をしている中で、友好親善が果たして成立をするかなと。

 絶対に強行をしてはいけない、そのことを外務省として米海軍に速やかに伝えるように、大臣、具体的な措置をとるべきではないでしょうか。

中曽根国務大臣 一つは、先ほども申し上げましたけれども、日米地位協定におきましては、米軍船舶と民間船舶との間で港湾の施設の使用が競合した場合の入港のあり方について特に決まった規定はないけれども、先にバースの使用が割り当てられた民間船舶を排除してまで米軍の海軍の船舶を優先させることを当然としているものではないということ、まずこれがベースでございます。

 お話ございました、中止をさせるべきではないかと、石垣市の対応についてのお話でございますけれども、外務省といたしましては、今後とも、この入港の趣旨等については、地元の関係者に丁寧な説明を行ってまいりたい、そういうふうに考えているところでございます。

照屋委員 終わります。

今津委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 きょうは、外務大臣と防衛大臣に、所信表明を受けての質問をさせていただきたいと思います。

 衆議院の予算委員会で外務大臣に御質問させていただいたことがあるんですけれども、一九九三年から、日本に対して対日要望書が来る、この対日要望書は、アメリカが、世界各国、ロシアにも中国にも、そしてアフリカにもイギリスにも出しているのかと言ったら、対日要望書というのは日本にしか出していませんよという外務大臣の御答弁でありました。

 日米関係が同格というようなことをやってまいりますと、そろそろ、この対日要望書をアメリカ側に拒否するというのが一つのスタートになるのではないかというふうなことを私は申し上げさせていただいたわけであります。所信でも大臣が、安全保障にとって大事なのは外交だ、戦わずして勝つことにあります、これこそが安全保障において外交が果たすべき役割でありますというようなことを申されているわけです。また次のページでは、日米同盟の重要性についてもお話をしているわけですけれども、これから、この対日要望書をアメリカにも出させないで、きちっと日本の役割、アメリカの役割というようなことを明確にしていくのが非常に大事なことであるということを私はまず一点申し上げておきたい。

 そして今度、二月の十七日にクリントン国務長官が参りました。非常に戦略的な外交を感じましたね、この大臣の。日本に来られて、まず、すぐに明治神宮を参拝して、お神酒をいただいて、これがテレビで全部放映されて、非常に日本の歴史、文化を大事にするというような雰囲気づくりをして、東大に行って、その学生と対話集会をして、日本の隅々の声を聞くというふうな雰囲気をつくり、そして拉致家族の皆さんの声にもしっかりと耳を傾けて、これからどうするのかという方向性を示すようなことをおやりになって、これはヒラリー国務長官にしかできなかったことでありますけれども、皇后様にもお会いして会談をなされる。これは元大統領夫人だからできることだというふうに聞かせていただきましたけれども、こういうふうなことをやる。そして最終的には、グアム協定にサインして帰る。これはなかなか、このグアム協定がいいとか悪いとかという論議はおいておきまして、戦略的な外交があったのではないかなと思います。

 そして、この後はインドネシアに行かれて、インドネシアでまた、イスラム教にも対話を持つよというようなことをやるし、韓国に行ったら、今度は韓国で、新しく北朝鮮の担当者をかえるというふうなことをやって、北朝鮮にも、今までとは違うやり方でやるというメッセージを送り、中国に行ったら、中国に行って、これまで選挙のときにあれだけ人権問題を言ってまいりましたけれども、人権問題にもそんなに言及しないで、経済とかこれからのあり方についてしっかりと頑張るというようなことをやられる。一連の動きを見ると、外交に戦略性が物すごくあるんですよ。

 こういうのを見ていると、すごいなという感じをするわけです。それで、私も、安全保障における外交においても経済政策における外交においても、そろそろ日本の外交の瞬発力というか、外交の力みたいなものをつくっていかないとなかなか難しいんじゃないかと思うんです。

 今、この外交の瞬発力をつくるというので、前から私の持論でありますけれども、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、それに韓国の五カ国の大使は政治家か実業家の代表であるとかというふうなことを、主要国に関しては、官僚の大使ではなくて、同等にその総理大臣と意見を言える、そういうふうな方を大使にするというのが私はこれからの外交を強くする意味では非常に大事じゃないかなというふうに思うんです。

 実際、今、日本は百三十一人外交官がいますけれども、民間は七人しかいませんね。主要なところにはいませんよ。しかし、アメリカを見てください、大臣。今度もジョセフ・ナイさんが来るのではないかと言われるし、シーファー大使は実業家であるし、ハワード・ベーカー氏は政治家で上院議員でもあるし、フォーリー氏も下院議長もなされた政治家である。イギリスも、重要な駐米国大使、歴代の大使も民間人、中国においては、過去三代、民間の、軍人出身者、そういうふうな状況になっている。

 そういう意味では、私たちも、外交力を強くする、それが安全保障の平和の役割にも貢献するというふうになってくると、こういうふうに外交のあり方をもう一回変えてみる。構造的なものがよくならないと、私はなかなか、役人に任せるような外交だけでは無理じゃないかと思うんですけれども、大臣のお考えを少しお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃいましたように、まず、外交は戦略的なものが大事だと思いますし、それから積極的、主体的であるべきだ、そういうふうに思っております。

 お話にありました主要国の大使等の任命ということにつきましては、従来から、これはもう当然のことでございますけれども、適材適所で対応をしていくということでこの人事を行っておるわけでございますが、日本におきましても、国会議員を任用することができないというわけではなく、委員御承知のとおり、既に国会議員経験者四名、例がございます。

 今後も、外交力を強化していく、そして、相手国政府との間での交渉等をかんがみて、そういうような適した人材がいれば、これは積極的に任命をし、活用していくことが大事だ、そういうふうに思っております。

下地委員 主要五カ国、これは急にはできないと思いますけれども、主要五カ国に政治家とか経団連の会長をなされた方とか重鎮を充てて本格的に外交する、そういうような構想については、大臣はどう思われますか。

中曽根国務大臣 今の大使の人たちの力がないということではございませんが、委員のおっしゃりたい趣旨はよく理解をしております。

 そういう点も踏まえながら、今後、適材適所でやっていけばと思っておりますが、特命全権大使という立場のほかに、能力のある政治家を外交交渉において活用する、例えば、政府代表とか特派大使とか、そういうような特別職というものがあるわけでございまして、その案件などによって、外務公務員法の規定によって、現職の国会議員をまたそういうケースで任用するということもできるわけです。今までも、森元総理を初めとしていろいろな方がそういうような立場で外交の交渉もやっていただいているということはございます。

下地委員 私は、決して今の大使がだめだとかと言っていることではありませんけれども、ぜひ、外交を政治が中心にして考える。これまで国会議員の中にも、なかなか選挙の票にならないから外交活動をやらないとかという声が聞かれるようなことがありましたけれども、これからは、私たちの国益は外交によってできてくるんだ、そしてそれを政治家が積極的にやっていくというような姿勢を見せる上でも、ぜひ大胆な、百年に一度の経済危機だとかということも大事ですけれども、僕は、百年に一度の経済危機は外交によって乗り切る部分も物すごく大きな部分があるというふうに思っていますので、そのことをぜひ頑張っていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 趣旨は十分理解をしております。そういう意味で、今後、委員のおっしゃるような形に少しでも近づくようにやっていきたいとは思っております。

下地委員 今度は浜田大臣に、大臣の立場ではなかなか言いにくいんですけれども、アメリカの上院の外交委員長とか上院の安全保障委員長というのはなかなか重鎮なんですよ。安全保障委員会というのは物すごく重い委員長といいますか、そういうふうになっているんです。決して今津さんが軽いと言っているわけじゃありませんよ。ただしかし、物すごく重要視されているというところがあるんですね。経歴を見ても、みんなすごいですよ、上院委員長になられている方々というのはやはりすごい。

 大臣は、この職を解かれても、また与党の中でも、この安全保障の分野では非常に大きな役割を担う。だから、今は党があってそして行政があって委員会がありますけれども、委員会の中でも委員長の役割を物すごく強固にしていく。これは今の外務省の話もそうですけれども、私は、安全保障委員長は、二回、三回大臣経験者が座る。委員も、まさにそれぐらいの格のあるというか、外交に見識を持たれている方が座るというようなことをやっていくと、また、この分野においても、安全保障の役割、特に、日本の自衛隊は役割が物すごく大きくなってきましたよね。今度の海賊対策もそうでありますし、さまざまなもので日本の自衛隊の国際貢献というのは大きくなってきているわけですから。それに伴って、役所にだけ任せるのではなくて、委員会が重みを持つ、委員長の発言が外交の発言にもどんどん影響を及ぼすような委員会をつくっていくということもまた、私は政治の場において必要かなというふうに思っておりますので、そのことについての御意見を浜田大臣と武田政務官にお願いしたいんです。

浜田国務大臣 アメリカは確かにそういう形をとっておられますね。これはあくまでも立法府の方のいろいろな議論があってそういう形になっておるかと思いますが、私とすれば、いずれにしても、安全保障の問題というのを委員会で、やはりこれは、いろいろな意見があっても最終的には国の安全保障を議論する場でありますので、敵対委員会ではない、正しく国民に情報を伝えながら、理解を得ながらやっていくことが極めて重要だと思っていますので、そういった意味では、委員会自体の重さというものもあわせて、立法府でまた御議論願えればというふうに思っているところでございます。

 大変答えづろうございますのでやめますが、いずれにしても、安全保障委員会というものの重さを実感していただくためにも、そういった努力は必要かと思っております。

武田大臣政務官 国際感覚豊かな下地先生ならではの御質問と承っておりますけれども、大臣申されましたように、国会で決せられることですので、我々がとやかく言う立場にはないわけですけれども、我々としては、国会の活発なこうした委員会の議論に対する誠意ある対応というものを心がけていくこと、これはもとよりもちろんのことなんですけれども、私自身は、この委員会の委員の諸先生方の経歴そして経験、見識、そして、何と申しましても今津委員長の人格、見識、経験、こうしたものはどこの国の委員会と比べても劣るものではない、こういうふうに思っております。

 今後またさらに充実させていくためにも励んでまいりますので、御指導お願いいたします。

下地委員 褒め過ぎですね。物には限度がありますよ。

 しかしながら、最後になりますけれども、やはりうちの国は輸出で六〇%成り立っているような国家ですから、ぜひ、安全保障と外交政策の委員会のあり方、もう一回根本的な構造を論議して、力強い安全政策と外交ができるような国にしていきたいというのは、私は反対する人はいないと思うので、これから論議していきましょう。

 どうもありがとうございました。

今津委員長 次回は、来る十七日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十一分散会


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