衆議院

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第5号 平成23年5月19日(木曜日)

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平成二十三年五月十九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平野 博文君

   理事 浅野 貴博君 理事 下条 みつ君

   理事 神風 英男君 理事 宮島 大典君

   理事 村越 祐民君 理事 今津  寛君

   理事 岩屋  毅君 理事 佐藤 茂樹君

      小原  舞君    神山 洋介君

      菊池長右ェ門君    高橋 昭一君

      玉城デニー君    萩原  仁君

      福嶋健一郎君    松本 大輔君

      森本 和義君    森山 浩行君

      渡辺浩一郎君    渡辺 義彦君

      大野 功統君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    武田 良太君

      中谷  元君    浜田 靖一君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   外務副大臣        伴野  豊君

   防衛副大臣        小川 勝也君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高橋 清孝君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山内 正和君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  横畠 裕介君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    城野  功君

   安全保障委員会専門員   湯澤  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  空本 誠喜君     森本 和義君

  江渡 聡徳君     下村 博文君

  木村 太郎君     柴山 昌彦君

同日

 辞任         補欠選任

  森本 和義君     空本 誠喜君

  柴山 昌彦君     木村 太郎君

  下村 博文君     江渡 聡徳君

    ―――――――――――――

五月十八日

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)

同月十七日

 尖閣諸島・沖縄への自衛隊配備と日米同盟強化を求めることに関する請願(稲田朋美君紹介)(第六四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)

 国の安全保障に関する件

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

平野委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、去る十一日、東日本大震災における自衛隊の活動状況等の実情調査のため、宮城県に委員派遣を行いましたので、派遣委員を代表いたしまして、私から調査の概要について御報告を申し上げます。

 派遣委員は、民主党・無所属クラブの浅野貴博君、下条みつ君、神風英男君、宮島大典君、村越祐民君、自由民主党・無所属の会の今津寛君、岩屋毅君、公明党の佐藤茂樹君、日本共産党の赤嶺政賢君、社会民主党・市民連合の照屋寛徳君、そして私、平野博文の十一名であります。

 まず、今般の東日本大震災における自衛隊の活動状況等について御報告を申し上げます。

 去る三月十一日十四時四十六分ごろ、三陸沖を震源とするマグニチュード九・〇の巨大地震が発生し、東北地方から関東地方の太平洋沿岸の広い範囲を津波が襲い、甚大な被害が発生いたしました。

 地震・津波災害等により亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

 本地震、津波の発生後、岩手県知事、宮城県知事、福島県知事等からの要請を受けて、政府は、自衛隊総定員の約半数に及ぶ十万人の自衛隊員、発足以来初めて即応予備自衛官及び予備自衛官を派遣いたしました。

 自衛隊員は地震発生から二カ月の間、被災者の救助、人員及び物資輸送、給食、給水、入浴、医療支援等々の支援活動を行っているところであります。

 それでは、調査の概要について御報告申し上げます。

 まず、陸上自衛隊仙台駐屯地の東北方面総監部において、君塚東北方面総監及び柴田東北方面総監部幕僚副長から、統合任務部隊の概要及び活動実績や現在の活動状況等について説明を聴取した後、地震及び津波発生時の初動の態勢、基地、駐屯地の防災機能、戦力回復、活動を実施している隊員の心のケア等について質疑を行いました。

 次いで、統合任務部隊の司令部である幕僚調整室へ移動し、勤務状況を視察するとともに、室員を激励いたしました。

 次に、航空自衛隊松島基地の東部に位置し、地震及び津波の被災地である東松島市大曲地区に移動し、被災状況等を視察いたしました。

 現地は、石巻港に隣接した地域であり、津波により陸に打ち上げられたタンカーや漁船、津波により流されてきた船舶の衝突により破損した橋、倒壊した家屋等の被災現場を目の当たりにし、地震、津波のすさまじさを痛感いたしたところでございます。

 最後に、航空自衛隊松島基地を訪問し、杉山第四航空団司令から、発災時における津波の状況及び津波による基地の被害の概要、災害派遣の活動状況、周辺自治体等の被災状況等について説明を聴取した後、隊員の被災状況、被害に遭遇した戦闘機等の現状、今後の基地の防災強化についての課題、松島基地が担っていたパイロットの教育訓練をめぐる問題等について質疑を行いました。

 質疑終了後、地震から二カ月である十四時四十六分に黙祷を実施いたしました。

 その後、同基地内で津波の被害を受けて、エンジンが外され前後が空洞化したF2戦闘機、周辺自治体被災者のための入浴支援施設、隊員の水没した被害車両等を視察いたしました。

 以上が調査の概要であります。

 今回の派遣により、現地の自衛隊員からいただいた課題や意見等については、今後の本委員会の審議等に反映してまいる所存でございます。

 最後に、今回の調査に御協力をいただきました皆様に心から感謝を申し上げますとともに、被災現地が一日も早く復興されること、自衛隊員が健康に留意され今後も活動されることを祈念して、報告を終えたいと思います。

 お諮りいたします。

 委員派遣の詳細な報告書につきましては、これを本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平野委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官高橋清孝君、内閣官房内閣審議官山内正和君、内閣法制局第一部長横畠裕介君及び海上保安庁次長城野功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福嶋健一郎君。

福嶋(健)委員 おはようございます。民主党の福嶋健一郎でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、質疑に入ります前に、今委員長からもお話がございましたけれども、東日本大震災でたくさんの皆さんが被災をされました。心からお見舞いを申し上げますとともに、貴重なとうとい命を失われた皆さんにお悔やみを申し上げます。

 私も立法府の一員であり、当安全保障委員会の一員でございます。同僚の皆さんと一緒に、被災地及び我が国の復旧復興に向けて全力で取り組んでまいりますことをここにお誓いして、質問の方に移っていきたいと思います。

 この東日本大震災が起きて以降の自衛隊の皆さんの活動については、もう既に当委員会でも何度となく議論されているところでございます。私の地元、熊本でございますけれども、こちらの方に総監部のある陸上自衛隊の西部方面隊、即応予備自衛官の皆さんを含めて約五千名以上の皆さんが、震災直後から、主に宮城、福島を中心に、捜索、生活支援、瓦れきの撤去、あるいは化学防護隊の皆さんは除染作業等々、本当に昼夜を問わず活動されておられることに心から敬意を表するものでございます。

 私、当委員会に今国会から所属しておりますので、そういう意味では同僚議員の皆さんの中で一番年次が浅うございます。過去いろいろ議論をされているとは思いますが、本日は、もう一度、日米のあり方、特に日米安全保障を中心に質問させていただきます。

 震災後の米軍によるいわゆるトモダチ作戦、これにつきましては、当委員会でもいろいろとやりとりをされておるところでございまして、その実効性だとか日米関係の深化だとか、こういうことについては、今さら述べるまでもなく非常に重要なことであったというふうに思っております。

 また、昨年秋の尖閣の問題、一連の事案のときにも、当時の前原大臣とクリントン国務長官との間で、尖閣は日米安全保障条約第五条の適用範囲であるということをクリントン長官が明言をされております。

 その他いろいろとありますけれども、そういうものを複合して、私は、やはり日本の外交及び安全保障というものについては、まず日本の自立というのがあって、その上に日米同盟が基軸としてあって、その基軸の根幹をなすのが日米安全保障だというふうに考えておりますので、きょうはその辺を中心に質問させていただきたいと思います。

 質問に入る前に、集団的自衛権のことについて御確認させていただきたいと思います。これは法制局にお願いしたいんですけれども、従来からの見解というのは、我が国は集団的自衛権について権利を有するが憲法上行使できないというふうなことでございますが、これは現在も変わらないというふうな整理をしてよろしいでしょうか。御答弁をお願いいたします。

横畠政府参考人 現在の政府の見解を私どもが代表して申し上げるというのは僣越でございますので、ちょっとその点は留保させていただきますけれども、これまで御指摘のような集団的自衛権についての解釈をしていたのは事実でございまして、それは変更されていないものと承知しております。

福嶋(健)委員 ありがとうございます。

 この政府見解が引き続き踏襲されているということで、要は、集団的自衛権を持っていないのではなく、持っているけれども、憲法の制約上それを行使できない。持っていないことと持っているけれども使えないということは全く別のことでございますので、これはまた後に議論をさせていただきたいと思います。集団的自衛権については、私はやはりいろいろなところで議論されてしかるべきだというふうに思っておりますけれども、日米安全保障条約第五条のところについて、日本がアメリカを防衛するという観点から質問をいたします。

 きょう資料を実はお手元にお配りしていないので、日米安全保障条約第五条というのは何だということであると思います。ちょっと前段部分だけここで読ませていただきますけれども、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」後段の部分はございますけれども、前段の部分はこういうことでございます。

 まず、日本による対米防衛義務というものに関しての質問でございます。

 ずっと今までの委員会、国会等のやりとりを見ている限り、日本の施政下のある領域で例えば米国に対する攻撃が行われたときに、それはケース・バイ・ケースであるんでしょうけれども、ケースによっては、日本は個別的自衛権を行使していわゆる対米防衛をする。例えば、日本が武力攻撃を受けています、アメリカから米国艦隊がそれを応援に来ます、その艦隊に対して攻撃される、それに対して日本がそれを擁護するなんというのが従来、政府の御答弁等であったと思います。

 こういった個別的自衛権の行使に基づいて行動するということについては可能だというふうに整理をされておるかと思いますが、あくまでも五条の枠組みの中のお話なんです。この五条の枠組みの中で、では、先ほどの集団的自衛権を行使してアメリカを防衛するということについては、第五条については、集団的自衛権に基づく対米義務というのはそもそもありませんよという話なのか、いやいや、それはあるんです、条約上そう読めるんです、ただし先ほどのお話にあったように、それは憲法上行使できないからその履行はできないんです、どちらかだと思うんですが、どちらで整理をして確認をした方がいいのかというのを、これは外務省さんからだと思いますが、お願いをいたします。

松本(剛)国務大臣 委員が今五条を引用されました。まさに「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」ということでありますが、この五条に基づいて、我が国の施政のもとにある領域内にある米軍に対する武力攻撃が生じた場合、これは今申し上げたように、五条に従って我が国は米国と共同対処行動をとることとなりますので、このような米軍に対する攻撃は、法的にも実態的にも我が国に対する攻撃というものにほかならないというふうに考えております。

 したがいまして、このような場合における我が国の自衛権の行使というものは、まさに分別すれば個別的ということになると思いますが、自衛権の行使に当たると考えられ、集団的自衛権の行使というには当たらないという位置づけで整理をいたしております。

福嶋(健)委員 整理はよく理解をいたしました。

 なぜこういう質問をしたかというと、これからどういう議論があるのかないのかも含めてわかりませんけれども、可能性の一つとして、集団的自衛権というものが我が国において行使できるというふうな、仮定の話ではございますけれども、もしそういうふうになったときに、ではこの辺の日米安全保障条約というのは変えるのか変えないのか。

 例えば、後で質問をいたしますけれども、第五条だと片務的な防衛義務、それを第六条の施設等の提供でカバーしているというふうなものもパッケージで恐らく議論をしていかないといけないなというふうに私は思っています。そういう前段階の、きょうはこの議論はいたしませんけれども、もともとこの五条について、よくアメリカが日本をという話はありますけれども、日本がアメリカをという話は余り質疑等でも出ておりませんでしたので、ここは確認をさせていただきました。ありがとうございました。

 次に、これも外務省に御答弁をお願いしたいんですけれども、今度は逆サイドの話ですね。アメリカによる対日防衛義務の話。これは義務の話と義務を履行する話と二つに分けられれば分けて考えたいなというふうに思っています。

 よく一般的には、この第五条というのは米国に対して対日防衛義務を課しているというふうに言われております。ただ、第五条を見ると、そこの条文はそういったことをすきっと書いてあるわけじゃございません。米国に対して対日防衛義務を課しているというふうに、その条文の何を根拠に、どのように読めばそう整理されるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 委員が御指摘をいただいているのは、当該条約の五条において、日米両国は、我が国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することをそれぞれ宣言しているということでのお話だと思いますが、これそのものを、我が国に対する武力攻撃が発生した場合には日米両国が共同して日本防衛に当たることを定める、両者が宣言を、いわば国際約束である条約のもとで行うわけでありますから、日本防衛に当たることを定めるものと考えており、米国による日本防衛の義務がここに明確に示されている、このように考えております。

福嶋(健)委員 今大臣から御答弁がございましたように、過去からも、そういったことをもって対日防衛義務というのはありますというふうなことなんですが、この第五条の、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」というところなんです。

 これについて、私としては今度は義務の履行という整理をしたいんですが、まずこの「自国」、これは米国サイドのお話ですので、アメリカの憲法上の規定及び手続、いわゆる共通の危険に対処する前段の憲法上の規定及び手続というものについて、政府としてどのように御認識をされているのかということについて伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 委員御指摘の当該条約五条に言う憲法上の規定及び手続、米国については、米国の憲法上の手続、すなわち、米国憲法第一条に規定されている連邦議会による戦争宣言、あるいは同第二条に規定されている米国軍隊の最高指揮官としての米国大統領の権限を指す、このように考えております。

福嶋(健)委員 今大臣から御答弁がありましたように、アメリカの憲法ではそのように定められています。

 それと、加えて、ベトナム戦争等々のこと以降、戦争権限法というのが設定をされています。要は、議会が宣戦布告をするというケースと、議会の宣戦布告によらず、大統領が指揮官として軍隊を投入するということだと思うんですが、この場合、特に後段の場合においては、議会がその後で宣戦布告をすれば、それはそのまま投入は続くんでしょうけれども、そうじゃないケース、議会がやはりアメリカの国益を考えて宣戦布告はできないということも法の建前上はあるわけでございます。

 そうしますと、戦争権限法等によれば、もし、米国の議会が宣戦布告をしないという中で、大統領の権限で軍隊を投入したときに、最長でも六十日程度で引かないといけないというふうなことだと、すなわち、最初から最後まで一緒ではなくて、そこは撤退をするというふうなことも法律手続上はあるという認識でよろしいのかどうか。外務大臣にお願いします。

松本(剛)国務大臣 御指摘のとおり、米国に戦争権限法があるわけであります。ただ、政府としては、米国の国内法を有権的に解釈する立場にはないということでありますが、この日米安保条約は、米国政府が締結をして、米国の議会が承認をいたしたものであります。この条約の五条に規定する米国の対日防衛義務は、議会を含めた米国の国家としての対日義務を設定している、このように考えておりまして、この義務を承認した議会がその履行を妨げる措置をとるということは考えがたいというふうに私どもは思っております。

 また、現政権も、米国の核抑止を含む対日防衛に係るコミットメントを累次にわたって表明しており、政府としては、米国がこの義務を果たすことについて全幅の信頼を置いているところであります。

福嶋(健)委員 ありがとうございます。

 アメリカの憲法手続の話ですので、これ以上我々サイドがこうだとなかなか決めつけがたい部分はありますけれども、私は、やはりこの義務の履行については、義務はあるけれども、要は、自動的に、オートマチカリーに、例えば日本が武力攻撃を受けたら米軍が自動的にやってくれるなんということは、そうは理解できないんですね。

 やはりそこには、義務の履行に対してアメリカのサイド、アメリカの法律の話がある。だからこそ、それを埋めていかないといけないというふうに思っています。要するに、義務をアメリカが履行してくれるにはどうしていけばいいのか、我々日本としても、自立をしながら、そして信頼感を深めていくにはどうすればいいかというのが大事であろうというふうに思います。

 言いかえますと、条文とか手続とか、そういった事態があったとしても、それを日米間の信頼関係でカバーしていく。アメリカにおいて、ある意味自国の国民を危険にさらしてまでも同盟国を守るんだというふうな思いをつくってもらう。それに対しては、日本はきちっと日本の、自分で自立をしながらも、やはりそういう信頼感を米国に対して醸成するという努力が必要だ、今されているとは思うんですけれども、もっともっと必要かなというふうに私は思います。

 引き続き、ちょっと外務大臣にお尋ねをしたいんですが、今の話の続きではあるんですけれども、日米安全保障条約第五条に基づいてアメリカが対日防衛義務を負っている、アメリカにおいてどう整理をされておられるという御認識があるのかということについてお尋ねをしたいと思います。

 というのは、もう少し言いますと、実は今から数年前、平成十七年二月の当委員会におきまして、当時委員だった大臣、松本委員が今私と大体同じような質問をされておられます。そのときの政府答弁、要約をしますと、当時、上院における安保条約の同意の審議というのが昭和三十五年、一九六〇年に行われた、そのときの議論で、我が国、すなわち米国は対日防衛義務を負っているんですかというふうな問いに対して、当時のハーター国務長官がそのとおりと言っています、これについては上院も含めて受け入れているというふうに政府も理解をしています、手続的な話はありますけれども、現実の問題としては、コミットメントは履行されているという趣旨の政府の答弁が、その日のやりとりがあるんですね。

 これはこのまま今受け継がれているのか、またさらにいろいろな補強材料があるのか、そこのところについてお尋ねをしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 私自身の審議について御引用をいただきましたが、今お話がありましたように、政府として、当時の安保条約の、一九六〇年、昭和三十五年の安保条約の同意に関する米国上院の審議を受けて、米国政府が防衛義務を負っていると私どもが理解をしているということは変わりがありません。

 加えて申し上げれば、私自身も、外務副大臣そして大臣と、合わせますと八カ月ほど政府の一員として外交に携わっておりますけれども、日米の間において、この五条において米国が対日防衛義務を負っているということ、そしてその義務は履行されるべきものであるということは全く疑いなく、ある意味では前提として、議論が積み重なってきているということを実感しているというふうに御報告できると思います。

福嶋(健)委員 今御答弁いただきましたように、これはある意味では、総理大臣、外務大臣、もちろん防衛大臣含めて、大臣、副大臣あるいは事務方の皆さんで、日米安全保障条約というもののベースのベースの部分、これについては、一々言葉でどうですかと確認をするというのはないとは思いますけれども、やはりつかさつかさでというか、場面場面で、そういったことを何らかの形で確認していくということは必要ではないかというふうに思います。

 時間もあと五分ぐらいですので、最後の質問に行きます。

 先ほど言いましたように、逆に今度は、日本は日本で、アメリカに信頼をしてもらう、信頼される、日本を守ろうというふうなことに向けて、やはり努力は引き続きしていかなければいけないという中で、先ほど冒頭に尖閣の話をいたしました。尖閣の細かい話は今ここではできませんけれども、要は、なぜクリントン長官が発言をされたかというと、尖閣は日本の施政下にある、すなわち実効支配をしているということに尽きると思うんですね。

 そうすると、この実効支配というものを続けていかないと、我々にとってみればそれは日本の領域でもあるし当たり前の話なんですけれども、やはり国際的に見て、尖閣は日本が実効支配をしているんだということで、何かあればそれは日米の安全保障条約の中に入っているんだということを常に発信していかなければいけないというふうに思っています。

 そこで、最後ですが、外務大臣、そして防衛大臣にお伺いをしたいと思います。

 本来であれば海上保安庁にもお伺いしたかったんですが、ちょっと通告をしておりませんので両大臣にお伺いしたいんですが、昨年の尖閣の衝突事案を踏まえて、外務省の世界、外交の世界、そして防衛の世界において、この尖閣の実効支配を継続するために現在どのような対応、対処をされているのかというのが一つ。それが十分ですかというのが一つ。もしこれから何か検討すべき課題があればというこの三つについて、両大臣から御答弁をいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところ、そして領有権をめぐって解決すべき問題はそもそも存在をしないというのが政府の立場でございます。

 その意味で、国際的な間で領土問題が存在をする場合などによく用いられる実効支配という概念を政府としては必ずしもこの場面では用いていないところでありまして、引き続き尖閣諸島を有効に支配していくことが極めて肝要であるというふうに考えているところでございます。この有効に支配するあり方については、関係する省庁ともしっかり連携をしながら取り組んでいかなければならないというふうに考えております。

 私ども外務省としても、前原前大臣のときから、私も当時政務三役の一員であったわけですけれども、大きな意味での国力をしっかりと日本が蓄え伸ばしていくことが重要である、このように議論をしてまいりました。これは個別の問題に直接影響があるわけではありませんが、やはりしっかりとした国力を蓄えること、これこそがいろいろな意味で我が国の考え方、主張というものを国際的にもしっかりと訴えていく根底の力になる、このように考えているところであります。

 尖閣諸島そのものを有効に支配していく方策は今後とも政府の中でしっかり検討をして、さらに関係省庁間で連携をして進めていかなければいけないと思っておりますが、外務省としては、これももちろん関係の政府内で議論をするわけでありますが、大きな意味での国力の増進ということもしっかり進めていくことが重要だと思っておるところでございます。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 冒頭に、先ほど委員長から、被災地を御視察いただき、現地の部隊にも御激励をいただきましたことに心から感謝申し上げます。

 南西地域に多くの島嶼部を抱える我が国といたしましては、その地理的な特性を踏まえると、尖閣諸島を含む島嶼部の防衛は極めて重要であるわけであります。そういう意味で、海上自衛隊は、P3C哨戒機による東シナ海を含む我が国周辺海域を飛行して警戒監視を行っておるところでありまして、これによって得られた情報は関係省庁、内閣官房であるとか、あるいは外務省、海上保安庁等に提供をしてまいっております。また、必要に応じて護衛艦、航空機等を柔軟に運用して、さまざまな事態に対応できる体制はとらせていただいております。

 昨年十二月の防衛新大綱の策定に当たっても、この辺については十分な議論をいたした結果、軍事力の近代化や各種の活動の活発化を含む我が国周辺における安全保障にかんがみて、島嶼部への攻撃など、各種の事態への対処能力について検討をいたしたところであります。

 自衛隊の活動基盤が手薄なこの地域については、さらに体制の充実を図るという意味で、今年度予算に調査費を計上し、お認めをいただきましたので、さらなる調査を重ねて体制を強化してまいりたい、このように思っております。

福嶋(健)委員 ありがとうございました。

 要は、質問いたしましたとおり、安全保障条約しかり、この尖閣の実効支配、有効的な支配でもいいんですけれども、国際的に見て、ちゃんとそこは、何でも日本は待っていれば自動的になるということではなく、やはり日本は日本としてきちっと努力をしていかないといけないことは努力をしていかないといけないというふうに私は申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平野委員長 次に、下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。このような機会をつくっていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 私も、尖閣諸島の問題をお聞きしたいと思うんです。

 今、実効支配という話がありましたが、実効支配じゃないですね。有効支配というふうにおっしゃっていました。北方領土の問題それから竹島の問題、このことを考えると、幾ら我が国において尖閣諸島は我が国の固有の領土だと主張していても、中国は中国で、国内法で尖閣諸島は中国の領土だと主張しているわけでございまして、何ら解決にはならないというふうに思います。そういう意味で、私も、実効支配をきちっとすることによって、今後起きるかもしれない要らぬトラブルを事前に防ぐという意味での安全保障というのは大変重要であるというふうに思います。

 その中で、具体的に実効支配ということであれば、やはり尖閣諸島に人を常住させる。先ほど松本大臣が国力を高めるとおっしゃいましたが、抽象的過ぎて、それが尖閣諸島の解決になるという答えには全くならない答弁だと私は聞いていて思いました。具体的に、やはり常住させるしかないと思うんですね。

 ただ、いきなり防衛省・自衛隊の職員を配置するということについては、いろいろな外交的な配慮も必要かもしれませんから、とりあえず、あそこは灯台がありますから、灯台守、気象庁の職員を常住させるとか、それから、あそこは世界でもまれな環境資源が残っているところでもございますので、環境省の職員を常住させるとかいうような形での事実上の実効支配を図るということが必要であると思います。

 残念ながら、外務大臣も防衛大臣も、このことについて明確な答弁をされませんでしたので、同じことをお聞きしても意味がないと思いますので、それだけまず問題提起をさせていただきたいと思います。

 私は、具体的にちょっと幾つか確認をさせていただきたいと思いますので、お答えをいただきたいと思います。

 まず、ことしの一月の二日に、香港に、中国、香港、それから台湾、マカオの活動家たちが結集して、尖閣諸島奪取のための世界華人保釣連盟を設立しました。このことについては、私も質問主意書で出したところ、政府は、二月一日時点で、平素より関係情報の収集を行っているという答弁をいただいているところでもございます。

 それを踏まえて、この民間団体、ことしの三月の二十七日に香港で、保釣四十年記念検討会を開催しております。また、同じく四月の十日には、台湾で保釣四十周年大会を開催しております。その内容について把握をしているかどうか、まずお聞きしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 私どもとしても、質問主意書でも御回答申し上げたように、本件について関連情報の収集を行っているところでございます。

 直接はインテリジェンスの問題でもありますので、報道等によればという形での回答をさせていただきたいと思いますが、お尋ねの会議で、それぞれ中国、香港、台湾の活動家などが参加をして、尖閣諸島に関する彼らのこれまでの活動や当該活動が社会にもたらした影響、そして今後の活動の方向性などについて議論が行われたというふうに承知をいたしております。

下村委員 この団体は、ことしの六月の十七日、ちょうどこれは沖縄復帰四十周年の記念日に当たるわけですが、この日に、千隻の船で尖閣諸島海域に押し寄せてくる、そして、そのうちの一部は上陸をする、こういう計画を当初立てていたというふうに聞いております。しかし、その後、台湾のグループは六月十七日の活動を断念したという話も聞いておりますが、香港、マカオ、中国本土の活動家の動向はどうなのかというのは不明でございますが、外務省の方では把握されているかどうか、お聞きしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今御案内がありましたように、黄錫麟世界華人保釣連盟会長の発言でありますが、台湾、中国、香港、マカオなどの華人保釣団体は、昨年、既に大型客船を予約し、千二百人に声をかけ、六月十七日に香港から出発し、台湾の基隆を経由し、さらに釣魚台に、釣魚台はちょっとあれですけれども、そのときの発言はそうなっていたようでありますが……(下村委員「島の名前ですね」と呼ぶ)釣魚台に行き、大規模な海上デモ活動を行う予定であった、日本が津波の大災害に遭い、現在はまた放射能の脅威に直面をしており、日本政府は既にさんざんな目に遭っており、多くの保釣活動家が、この時期に出航すれば、人が危険な状況にあるすきに乗じて、水に落ちた犬をたたいているという悪名を着せられ、外国人の華人に対するイメージが悪くなると考えていることから、しばらく活動の手を緩めることを決定した、このように発言をしておりまして、この発言からすれば、六月十七日の活動は、渡航計画は取りやめになったと理解をする内容だというふうに承知をしております。

 これについては、発言では、台湾、中国、香港、マカオなどの華人保釣団体はということになっておるわけでありますけれども、委員御指摘の可能性も踏まえて、政府としては、引き続き情報の収集を行い、情報の共有を図り、万全の体制をとることが必要だ、このように考えております。

下村委員 今のお答えのように、六月の十七日はちょっと不確実ですが、しかし、そもそも断念をしたわけではないので、いずれ尖閣諸島周辺を取り囲むということは十二分に予想できることであるというふうに思います。

 我が国領海内に千隻の船が入ってくる、なおかつ尖閣諸島への上陸、つまり領有を目的として中国船が我が国の領海内に入ってくるということになるわけです。

 そもそも、千隻の船の領海侵犯を阻止する体制は現在どうなっているのか。尖閣海域を巡回する海保の船は三隻しかないというふうに聞いております。中国船一隻に対して海保の船一隻で対応するという今までのことでいえば、とても対応できないということになるわけでありますが、これについての対応を海上保安庁としてはどう考えているか、お聞きしたいと思います。

城野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在までのところ、千隻が来るという具体的な情報はございませんけれども、一般的には、尖閣諸島の領有権に関する独自の主張を行うことを目的としまして、同諸島周辺の我が国領海への不法な侵入等を試みる外国人が乗り組んだ外国船舶に対しましては、同諸島に対する我が国の一貫した立場に基づきまして、海上保安庁は関係省庁と連携しながら、当該船舶の領海への侵入阻止、領海内に侵入した当該船舶の領海外への排除など、必要な警備を厳正かつ的確に実施してまいるということにしております。

 また、具体的な抗議船の今後の情報に応じまして、警備体制を強化して対応するということにしております。

下村委員 これに関連して、五月九日の産経新聞の記事についてお聞きしたいと思います。

 これは、防衛省が対中国の有事シナリオ、尖閣諸島を中国によって占領されたことを想定して、それについて奪還するということをシナリオとしてつくられているということでございます。これは、あくまでも防衛省のそういうシナリオですから、事実かどうかということはお答えはできないと思いますから、一般論で結構なんですけれども、中国は今非常に海洋調査船が大型化、高速化している、そして今の海保の巡視船では能力的に対抗できない、そういう判断にこのシナリオではなっているんですね。

 実際に政府は、現在の海保の巡視船の能力や大きさで、大型化、高速化している中国の最新の海洋調査船に対抗できるというふうに判断しているかどうか、これは海上保安庁にお聞きしたいと思います。

城野政府参考人 海上保安庁におきましては、そのシナリオの存在、あるいはその具体的な内容につきまして把握をしておりませんけれども、海上保安庁においては平素から、尖閣諸島周辺海域に大型巡視船を常時配備いたしますとともに、航空機によりまして広域的な監視警戒を実施しており、適切に対応できるというふうに考えております。

下村委員 防衛省のシナリオでは、対応できないというふうになっています。

 それで、そのシナリオですけれども、中国の漁船監視船等が海保の巡視船では排除できないというふうに日本政府が判断をして、そして海上警備行動が発令され海上自衛隊が出動するというふうなシナリオになっております。

 ちょっとお聞きしたいんですが、まず、海上警備行動が発令された事例が過去あるのか、またどんなときに発令されたのか、お聞きをしたいと思います。

北澤国務大臣 そもそも、この記事については、私、新聞記事としては承知はいたしておりますが、お尋ねではないんですが、こういう対中有事シナリオを作成して、これに基づき自衛隊の体制を見直している、こういう事実はございません。

 また、今、具体的にお話がありましたことについては、能登半島沖でかつてそういう事例がございました。

下村委員 ほかにもありますか。

小川(勝)副大臣 今、具体的事例として、大臣から能登半島沖不審船事案が答弁されましたけれども、そのほかに、中国原子力潜水艦の潜航事案、これは平成十六年でございまして、また、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動も同じく海上警備行動の発令でございます。

下村委員 今のお話のように、過去三回、海上警備行動が発令された事例があるということですね。

 ですから、今回のシナリオが、防衛省が実際につくったかどうかは別にしても、想定としてはあり得る話だというふうに思います。

 しかし、そもそも、海上自衛隊の艦艇が出動したとしても、中国の漁船監視船等は非常に大型化、高速化になってきているというふうに聞いておりますが、実力で阻止することができるのか。実力で排除しようとしても、中国側が無視して我が国の領海内を徘回した場合、自衛隊はどういう措置をすることが可能なのか、お聞きしたいと思います。

小川(勝)副大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、第一義的に対処いたしますのは海上保安庁でございます。さらに対処が不可能な場合には、海上警備行動等により自衛隊が対処することになります。

 中国の公船等が高速かつ大型という理由ではなく、国際法上のさまざまな規定から、自衛隊のとり得る行動は限られておりまして、想定の対応は領海外への退去を要求することなどとなろうかと存じます。

下村委員 ですから、退去をただ求めるだけなんですね。

 この防衛省のシナリオで、実際に日本の自衛隊の艦艇に対抗して中国の海軍艦艇がやってきたとしても、日本側は実際は武力衝突ができない、それを恐れて退去するということにこのシナリオそのものもなっています。

 防衛省の防衛研究所が刊行した中国安全保障レポートでも、「海・空域において、自衛隊と人民解放軍との間で「不測の事態」が発生する可能性は否定できない。」というふうに指摘をしているわけですね。

 このように、尖閣諸島をめぐって中国の海軍艦艇が出動してくることも想定し、そしてその対応を協議しておくということは極めて重要なことだと思うんですね。

 ですから、当然、この産経新聞が報じた防衛省のシナリオというのはあり得ることであるというふうに思いますが、この産経新聞の記事云々はともかくとして、このような想定というのは当然防衛省として考えておくべきことであると思いますが、これについては大臣としていかがですか。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 防衛省とすれば、国を守るという大前提の中で、さまざまなことを想定して、それに準備するということは怠らないわけでありますが、特定の国を名指しで準備する、そういうことは今のところ考えておりません。

下村委員 いや、答弁は第三国ということでもいいんですけれどもね。しかし、これは別に国家の秘密でも何でもなくて、非常事態に対してどう対応するかということについては、明確に国会の中でも答弁をぜひしていただく必要があるというふうに私は思います。

 この中国海軍の動向について、五月の五日・十二日号の週刊文春で「中国人民解放軍「尖閣上陸作戦」」という特集記事を組んでいるんですが、この記事の内容を防衛省として把握をされておられるか。把握をされているとしたら、どんな感想なのか、コメントを求めたいと思います。

小川(勝)副大臣 記事の内容は、委員からの御指摘もございまして、さらに確認をさせていただきました。

 他方、中国軍による作戦計画の内容等につきましては、もちろん公式に明かされているものではございませんし、週刊誌の記事でございますので、防衛省といたしましては、こうした記事に逐一コメントする立場にないというふうに考えております。

下村委員 では、この記事ということでなくていいんですけれども、私の質問に対しては答えていただきたいと思うんですが、例えば、中国人民解放軍が尖閣海域で大規模な軍事演習を実施する計画を持っているとして、もし中国政府が我が国の領海または排他的経済水域で軍事演習をしようとしたら、政府としてはどう対応するのか。これは、先ほどの話でいえば中国を第三国というふうに申し上げてもいいですけれども、この場合はどう政府として対応できますか。

小川(勝)副大臣 防衛大臣から答弁がございましたように、当該海域を含む領海には、空から海からしっかり情報収集に努めているところでございます。

 仮定のお話でございますけれども、お尋ねの事案につきましては、先ほど答弁申し上げましたように、外国艦船や外国公船は我が国領海内で普通に通航する権利を有しているわけでございまして、当該事案、すなわち演習を行うということになれば、領海外への退去を一義的には要求するという先ほどと同じお答えになろうかと思います。

下村委員 防衛大臣、そんな答弁でいいんですか、一時的に退去を求めると。

 先ほど言いましたように、我が国の領海において、あるいは排他的経済水域で他国が軍事演習をしようとすることに対して、では、一時的だったら場合によっては認めることもあり得るということですか。

北澤国務大臣 これは認めるということではないわけでありまして、あくまでも退去を求めるという行動に出るということであります。(発言する者あり)

下村委員 一時じゃなくて一義的ということですね。わかりました。耳が悪くてよくわからなかった。

 具体的に、中国の漁船監視船が尖閣諸島の領域に入ってきたらどのように対応するのか、また、これまで尖閣諸島の領海に中国の監視船等は、いつ、どのように入ってきたか、これについてお聞きしたいと思います。

城野政府参考人 中国漁業監視船の尖閣諸島周辺の領海の侵入についてでございますけれども、昨年の九月に発生いたしました中国トロール漁船ミンシンリョウ五一七九の当庁巡視船への衝突事件、これを契機に、尖閣諸島周辺海域におきまして、これまで合計九回、中国漁業監視船漁政が確認をされておりますけれども、当庁巡視船等から我が国領海内に侵入しないよう警告をいたしました結果、現在までのところ、領海内に侵入した事例は発生しておりません。

 以上です。

下村委員 九回入ってきたんじゃないの。

城野政府参考人 九回、我が国周辺、領海の外側ですね、外側の海域にまで接近したということでございまして、領海内には海上保安庁の巡視船等が入らないように警告いたしまして、入っていないということでございます。

下村委員 では、海上保安庁の警告によって、領海に九回入ろうとしたけれども、結果的に入っていないということですね。

 そして、これもシミュレーションですが、中国人民解放軍の海軍陸戦隊と特殊部隊、これが尖閣諸島に上陸するかもしれないということになった場合、このような動きを海上保安庁は阻止することができますか。

城野政府参考人 外国軍隊によります上陸作戦ということに対しましては、海上保安庁といたしましては、法制度の観点からも、あるいは装備資機材の観点からも、阻止することは困難であるというふうに考えてございます。

下村委員 海上保安庁は無理だと。自衛隊はどうですか。

小川(勝)副大臣 外国の武装工作員等が我が国の領土に上陸した場合における自衛隊の対応は、状況によってさまざまでございますので、一概にお答えするのは困難かと存じます。

 また、一般論として申し上げるとすれば、また一義的には海上保安庁がまず行動をとるという前提でございますけれども、外国の武装工作員等が我が国への上陸が明示された意図あるいは態様等が我が国に対する外部からの武力攻撃に該当すると判断した場合は、我が国を防衛するため必要があると認められる場合には、自衛隊法第七十六条に基づき、防衛出動という形で対処することになろうかと思います。

 また、武力攻撃には該当しない場合、一般の警察力をもっては治安を維持することができない緊急事態と認められる場合には、自衛隊法第七十八条に基づいて、治安出動という形で自衛隊と警察が緊密に連携をとって対処することもあり得ると考えております。

下村委員 この場合は、武力行使ということではないというイメージだと思いますね。つまり、尖閣諸島は我が国においてだれもそこに常住していないわけですから、武力行使によって占拠するということではなくて、ある意味では侵入して上陸をするということだと思いますので、阻止しようとした場合、今の御答弁ですと、七十八条に該当するのかというふうに思います。

 領土の占拠という政治的意図を持ったグループの領海侵犯について、今の法整備で大丈夫なのかどうか。領海侵犯罪とか、あるいは海上警備法とか、国内法の整備を十二分にする必要があるのではないかと我々は考えておりますが、このようなことに対して現法体系で大丈夫なのかどうか、確認をしたいと思います。

城野政府参考人 侵入に対する法制度をつくるということに関して、海上保安庁としてはそういった立場ではないと存じておりますけれども、海上保安庁としては、現在、外国人によります不法上陸を防止する等の観点から、出入国管理及び難民認定法等の法律に基づきまして、所要の警告、規制措置等を実施することとしております。

下村委員 海上保安庁の中では、対応は無理だということだと思います。防衛省の方はどうですか。

小川(勝)副大臣 防衛省といたしましても、警察や海上保安庁とさまざまな連携をとって、訓練をしたり、あるいは情報を共有したりして対処をしているところでございます。現行法の中で万全を期してまいりたいというふうに考えております。

下村委員 現行法でできるのかどうか、我々は新たな法律改正案を提案したいというふうに思っております。

 そして、冒頭申し上げましたように、尖閣諸島の問題は、実効支配じゃないわけですね。実際に、外務大臣がみずからおっしゃったように、有効支配という言葉をお使いになっておられましたが、つまり今回のような、六月の十七日はないかもしれませんが、その後あり得る話なわけですね。これに対応するためには、事実上の実効支配を尖閣諸島において我が国がきちっとするということが、これは周辺諸国だけではなく国際社会に対する我が国の、領有権を持っている立場としての当然のことだというふうに思います。

 これについて答弁するとしたら総理しかおられませんが、総理がおられませんので、申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平野委員長 次に、今津寛君。

今津委員 自由民主党の今津寛でございます。

 質問の機会をいただきまして、同志の皆様方に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 大変申しわけなくて、通告していないのですが、大事なことが新聞に載っておりましたので、急遽、御質問させていただきたいと思います。

 きょう、ある大手の新聞に、三権の長であります参議院の議長さんが、「首相の責務 自覚ない」ということで、「私は、国権の最高機関を代表する一人として、この一文で敢えて率直なことを申し上げます。 菅首相、貴方は、即刻、首相を辞任すべきです。」という文章で始まるんですが、かなり長い文章です。

 「その一。首相は、なぜ、三月十一日以降、直ちに「緊急事態法」をまとめ、立法化を図らなかったのか。」「看過できないのは、首相が、十万人もの自衛隊員に出動を命じるのに、安全保障会議を開かなかったことです。」「その二。原発事故は、国際社会の重大な関心事です。首相が初動段階で、米軍の協力の申し出を断ったことが大きな判断の誤りです。」その三、その四、その五といろいろ述べられておりまして、「その六。首相の政治手法は、すべてを先送りする、ということです。この国難に当たっても、前段で指摘した課題のほとんどは、期限を明示しませんでした。」そして最後のところで、「野党が多数の参院で問責決議案を可決しても、貴方は居座るかも知れません。」あなたというのは首相のことですね。「もしお辞めにならないのであれば、二十六、二十七両日の主要八か国(G8)首脳会議前に、野党が衆院に内閣不信任決議案を出す以外に道はないのです。」

 もちろん我が党としては、適切な時期に内閣不信任案を提出して、これはもう国民の総意、支持のもとに私たちは政治的活動をしたいと思いますが、民主党から選出された参議院の議長という立場の人が明快にこういうことをおっしゃっている。これは看過できないことだというふうに私は思います。とうとうここまで来たかという感じもするんですが、これについて、防衛大臣、外務大臣、それぞれ感想を聞かせていただきたいと思います。

北澤国務大臣 突然のお尋ねでありますが、私も新聞は朝、見出し程度のところを読んでまいりました。したがって、内容について今、その一、その二というふうにお話をいただいたわけでありますが、この発言について、閣僚の一員として極めて残念だということを申し上げなければならぬ。

 そこで、私も参議院に長く籍を置く一参議院議員として発言をするということをお許しいただければ、少し胸のうちは申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか。

平野委員長 防衛大臣としてお答えをいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 外務大臣としてお答えをさせていただくということになれば、一つ一つについて申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 震災の対応についても国会でもさまざまな御議論をいただいているところでございますけれども、そういった御意見も踏まえていきながら、震災の対応については、被災者の方々への対応、また原子力発電所への対応、すべてがいわば思いどおりにいっているとは申しませんけれども、進めるべきものはしっかりと進めさせていただいているというのが政府の立場であります。

 ぜひそういったことを、院からある意味では総意をもって互選されていると思いますが、議長も含めて皆様に御理解いただけるようにさらに努力をしていきたい、そしてしっかり対応してまいりたい、このように思っております。

今津委員 突然で恐縮でした。

 この中で、この委員会にかかわることも何点か発言されているんですね。

 一つは、「看過できないのは、首相が、十万人もの自衛隊員に出動を命じるのに、安全保障会議を開かなかったことです。」これは、我が党は常々、安全保障会議をなぜ開かないのかということを至るところで発言させていただいているのですが、やはり同じように西岡議長がお感じになっていたということなのですね。

 私は、半数の自衛隊が自分の立場を離れて災害に従事せざるを得ない状態の中で、やはり安全保障会議を開いて諸般のことについてきちっと確認し議論をしておくべきだったというふうに思います。私は、防衛大臣が首相に、安全保障会議を開くべきだ、こういうお話をしておくべきだったというふうに思いますが、これについてどう思うかが第一点。

 もう一点は、先ほども述べましたが、「首相が初動段階で、米軍の協力の申し出を断った」と。恐らくこれは原子力発電所の関連のことにも絡む話だというふうに思いますが、これについて、二つのことについて防衛大臣のお話を聞きたいと思います。

北澤国務大臣 御質問は西岡議長の発言をもとにしての御質問でありますので、そのことについては、国権の最高機関の一員として、行政府に向かってどういうお立場で発言されたのか。そもそも、国権の最高機関ということであれば、参議院を代表するということでありまして、参議院の中でさまざまな意見がある中で、それが凝縮した意見として存在するわけでもないのに一方的にお話をするということをもとにしての御質問だということになれば、私とすればお答えするわけにはいきません。

 ただ、自民党として、さまざまな場面で安全保障会議を開くべし、こういう意見があった、これは傾聴いたしてまいりたいというふうに思いますが、あのときは緊急性を要しまして、緊急災害対策本部を設けて迅速に事をなしていった中で、私はあの対応は間違っていなかったというふうに思っております。

松本(剛)国務大臣 米国の支援を断ったというお話、今も北澤大臣からもお話がございましたが、私としても、西岡議長の文章に直接お答えをする立場にはないということをまず申し上げなければいけない、このように思っております。

 私自身も、衆議院の議院運営委員長が私で、西岡現議長が議院運営委員長で、一年間いわば御一緒してまいりましたので、大変独特のスタイルで職務をお進めになることがあるということは理解をいたしておるつもりであります。

 お話があった、当初米国の支援を断ったということは、これまで国会においても累次において御質問をいただいております。震災発災当初、後から振り返ってみたらすべてが完璧であったというのがどこにあるのかというのはなかなか難しいところがあると思います。米国側からも、大災害が発災した当初に何ら混乱がないということはあり得ないというのが双方の共通の認識でありましたが、私どもとしては当初から米国の協力を求めてまいりましたし、協力を断ったという認識は私どもにもありません。米国側も、記者会見などでの照会に対して、断られたという認識はないと答えているというふうに理解をしております。

今津委員 私は、参議院議長がこのような時期にお話をされたということは、恐らく、職を賭して発言されていることだろう、西岡さんの性格からいっても、そういうふうに感じるところです。非常に重い発言だし、これはある意味では国民の声を代弁していると申し上げておきたいというふうに思います。

 これからは、日本のこれからの防衛の話をさせていただきたいと思います。

 まず、先般の委員会で、私は防衛大臣に幾つか問題提起をさせていただいたんですね。その中で、自衛隊の皆さん方はこれだけ頑張ってくれているし、外国からも大きな評価をされているのだから、これはもう憲法を改正して、自衛軍、国軍として存在を明らかにするべきでないか、そのことが自衛隊の方々の尊厳にもつながっていく、名誉にもつながっていく話だし、そのことについては恐らく国民の方々も支援をしてくれる、支持をしてくれるのではないかなというふうなことだったんですが、議事録を見ますと、安全保障委員会において自衛隊のあり方、国防のあり方について冷静な議論を展開すると大臣はお答えになられたのですが、ちょっと大臣の真意を聞きたい。あなたの真意を聞きたい。

 まず一つは、大臣はそもそも、私が言った、憲法を改正するべきだと思っているのかいないのか。自衛隊を国軍として位置づけるという同じ気持ちに立っているのかいないのか。

 もし同じ気持ちでいたとしたら、それは憲法を改正するべきだと思うのだけれども、例えば、機運がまだ高まっていないとか、議論が熟していないとか、国民の理解が得られていないとかというふうにおっしゃるのか。また、全く今までのように、自衛隊は戦力を持つ実力組織、こう言われているわけですね、これは従来の位置づけでいい、あなたはそういうふうに思っていらっしゃるのか。そこのところを聞かせていただきたいと思います。

北澤国務大臣 私は、閣僚の一員として、現在ある憲法を遵守していくという基本的な立場に立っているということをまず御理解いただきたいというふうに思います。

 それから、この発言をいたしましたときに、まだ後段があるわけでありますが、当時の小泉総理も、憲法を改正して自衛隊を軍隊として位置づけることについては、いまだその機運には至っていないとの認識を述べておられたと、このようなことを申し上げておるわけであります。

 憲法改正というのは、それぞれの議員が重く受けとめて、その議員の政治生命をまさに賭すような気持ちで発言をされておるわけでありますが、しかし、日本の現在の政治状況の中で、最近の中では特に強力な内閣を推進した小泉内閣でさえ、その機運に至っていないという政治判断をされたということからすれば、今、憲法を改正して軍隊として位置づけるということを私の立場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

今津委員 非常に遺憾ですね。小泉総理のときのことをお話しされましたけれども、もう何年前の話ですか。非常にもう時間がたっていて、それからさらに自衛隊は国際貢献等で実績を上げて、非常に評価が高い。イラク、ゴラン高原などなど、そして今度の震災の大活躍、時は変わり、事情も変わっていると思うんですよ。あなたが言わなかったらだれが言う。自衛隊のトップのあなたが、憲法を改正して、自衛隊をしっかりとした尊厳が持てるような立場にしましょうと言わなかったらだれが言う。私は非常に遺憾です。

 大綱、中期防の見直しについては、法案が出ますから、後ほどじっくりさせていただきたいと思います。本会議等でも議論がありますので、そこでやります。

 二つ目。自衛隊の待遇、評価、名誉については、現職中に勲章や褒章が受章できるように現行の栄典制度を見直すべき、自衛隊のトップたる統合幕僚長を認証官にする、こういう提案をさせていただきましたが、大臣、私の提案はいついかなるところで御検討いただいておりますか。

小川(勝)副大臣 御答弁させていただきます。

 四月二十一日に、委員から、現職自衛官の勲章、叙勲、あるいは今御指摘ございました統幕長の認証官への位置づけについて御質問いただきました。

 松本政務官からるる答弁をさせていただいたところでありますが、日ごろから、今津委員におかれましては、自衛隊員の処遇、ステータス、そしてモチベーションに大変高い関心をお持ちで、アドバイスをいただいておりますことをありがたく存じます。

 防衛省の中におきましても、大変重要な案件でございますし、また、ほかの制度やその整合性についても留意をしなければならない案件でございますので、比較的お時間をいただいて検討させていただきたいと考えております。

今津委員 あの後何も指示していないということですね。どこの場所でも何の相談もしていないし、大臣からの指示がないということだね。どうですか。

小川(勝)副大臣 大変僣越ながら、大臣の方から具体的な指示をどういただくかという下打ち合わせを私のところでさせていただいているところでございます。

今津委員 民主党がやらなければ自民党がやりますから。自衛隊の人たちの御苦労に報いる待遇、そういうことについては、政党が違っても政務三役が先導してやらないと、いつまでたってもできないじゃないですか。ぜひそのことを申し上げておきたいと思います。

 先ほど聞いておくべきだったんですけれども、もう一つ、初動態勢について。

 東電の社長が小牧にいたんですね、十一日。それで、東京に戻らなければいけないということで、いろいろとトライしたんだけれども乗れなくて、結局、自衛隊の輸送機に乗せてもらうということになって、乗って出発したんだけれども、また戻ったということです。

 これは事態対処課長がそういう指示をしたというんですが、課長がそういう大きなことを自分で判断できるわけがない。恐らく大臣と相談があったというふうに思いますし、このことが結果として大きな初動態勢のおくれにもつながっている。責任者が現地へ行って、そして陣頭指揮をとる、それがかなりおくれてしまったということなんですよ。

 大臣、これについてどうだったのか。

北澤国務大臣 当時の状況からすれば、危機管理監から防衛省の運用局長にそういう依頼があったということであったようでありますが、省庁間協力というものを制度的に確認しなければならないわけでありますが、そのとき、危機管理監がどこから依頼されたかということが定かでないというような、そういう事実関係があったことは事実であります。

 その後、今日に至ればいろいろなことが整理されたわけでありますけれども、この前もお話ししたと思いますが、そのとき、私が官邸から防衛省へ帰るのに二時間以上を費やして、車の中に再三連絡が入ってきた。そういう中で、一番重要なことは、この小牧のC130というのは、翌朝の四時五十三分、伊丹へ出発して、花巻空港へDMATを輸送する、その後、五時五十九分、六時二十七分というふうに連続してこのC130はDMATを輸送するということで任務が既に確定しておったわけでありまして、私はそのことを優先すべきだと。しかも、要請そのものについては不確かな情報であったわけであります。

 それから、社長が本気になって行こうとすれば、あのときの状況からすれば、新幹線にも間に合ったし、あるいはまた、高速道路は確かに閉鎖されておりましたけれども、車で帰ることもできたということであります。また、この社長が、帰ってきて間もなく病に倒れて一週間入院していたという事実もあるわけでありまして、総合的に申し上げて、私は、私の判断で初動をおくらせたというようなことは全くありません。

今津委員 社長が一週間病に伏していたというのは何が関係あるんですか。何の関係もないんじゃないですか、そんなこと。それと、情報が不確かだというのは、それこそ防衛省の内部の問題じゃないですか。上司に対して情報をきちっと報告し、判断を求めるということ。

 それと、何といっても、これは大臣、言いわけできないのは、結果として、社長は会社に戻ることがかなりおくれてしまったということで、初動態勢に参加するのがおくれたということが大きな、だからだめなんですよ、そういうふうに居直るから。そういうふうに居直って、全部責任転嫁する、今の内閣は。だから問題なんだよ。だから国民は、もう菅さんあるいは内閣はかわれと言っているんだよ。穏やかに質問しているつもりなんだけれども、責任を放棄するというか居直るというか、認めないんですね、事実をいろいろと。国民の批判というものをまともに受けていないんですね。

 アメリカが非常に頑張ってくれました。トモダチ作戦ですね。日本の東方千五百キロメートルの西太平洋にいた原子力空母ロナルド・レーガンは、韓国周辺で予定されていた米韓合同軍事演習への参加を急遽取りやめ、三陸沖に針路を定めた。長崎・佐世保基地に停泊していた揚陸艦トーテュガは、上陸用舟艇を積み込み、地震発生の数時間後に出港した。マレーシア・コタキナバルに寄港中だった強襲揚陸艦エセックスは支援物資の積み込みを始め、シンガポールにいた海軍第七艦隊の指揮艦ブルーリッジでも、全乗員に船に戻るようにとの命令が下ったと。

 これらの米軍の日本の災害に対する支援、初動態勢がここにあらわれていると思うんですが、日本の災害を支援するために日本に向かっている友好国の船が第三国から攻撃を受けたときに、我々自衛隊は、その同盟国、友好国の艦船を守るために戦うことができるかどうかということはどうなんでしょうか。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の場合における自衛隊の対応については、個別の状況に応じて判断されるべきものでございますが、一般論として申し上げれば、我が国の領域内の他国の艦船に対する第三国からの攻撃が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たると認められる場合には、自衛隊法第七十六条に基づき、防衛出動により対応し、その一環として他国の艦船について防衛を行うことは可能であると考えられます。

今津委員 原発が事故によって大変な状況になっているんですが、アルカイダは、米国及びその同盟国に対しては仕返しをするということを言っている。それから、日本の近辺にはロシア、朝鮮半島、そして中国と、核ミサイルがかなりの数において配備をされている。私ども日本の国に、大都市でもいいし、原発でもいいんですけれども、向かってくる核ミサイルに対して我々は先制攻撃、先制して攻撃をできるか。これについてはどうでしょうか。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 いわゆる敵基地攻撃をめぐる最近の議論には、先制攻撃と敵基地攻撃、さまざまなものがあると承知をしておりますが、お尋ねの先制攻撃と敵基地攻撃についても、どのような意味で使われるか、注意を要するものと考えております。

 自衛権発動には三要件があることはもう御承知のとおりでありまして、憲法九条のもとにおいて認められる自衛権の発動としての武力の行使については、従来から、急迫不正の侵害があること、これは我が国に対するということでありますが、それから、これを排除するために他の適当な手段がないこと、さらには、必要最小限度の実力行使にとどまること、こういった三要件に該当する場合に限られると解しております。

 以上でございます。

今津委員 政務官、先制と言ったんだから。敵基地攻撃というものは恐らく法制局でも認められているのだけれども、先制してそれをたたくということは、実は今、我々は米国にその仕事についてはお願いをしておる。だから、我々は基地を提供しているんだけれども。

 これはやはり、私は、みずからができるように能力を持つべきだというふうに思うのですけれども、法制局がせっかく来ているので、法制局、ちょっとそこら辺の整理をやってください。敵基地攻撃と先制攻撃。

横畠政府参考人 自衛権発動の三要件については、先ほど防衛政務官の方から御説明がありましたので省略させていただきますけれども、いわゆる先制攻撃の場合について問題になりますのは、その三要件の第一要件であります我が国に対する急迫不正の侵害、すなわち、我が国に対する武力攻撃がまだないのに我が国として武力が行使できるかという問題になろうかと思います。

 そうしますと、やはり国際法上も、いまだ武力攻撃を受けていないのに武力を発動するということについては、伝統的にはなかなか難しいというふうに考えられていると理解しております。その意味で、日本であるかアメリカであるかにかかわらず、先制攻撃という問題については、国際法上の議論もあるのではないかと思います。

 我が国としての個別自衛権の発動ということで申し上げますと、やはり自衛権発動の三要件というものは厳格に守られるべきだというふうに考えておりまして、その意味で、我が国に対する武力攻撃がまだ発生していないのに我が国として武力を発動するということはやはり許されないと考えております。

今津委員 それでは、例えば敵基地を攻撃する、そういう能力は今の自衛隊は持っているのか。持っているとすればどういう戦力なのか。

北澤国務大臣 現在の自衛隊は、専守防衛でありますから、敵基地を攻撃するというような体制にはなっておりません。

今津委員 時間が来たのでやめざるを得ないのですけれども、集団的自衛権の片務性の問題あるいは恒久法の問題、安全保障基本法の問題、我が国の防衛の問題についてはいろいろと議論をしなければならないことが多々あるというふうに私は思うんです。

 先般も申し上げたんですが、実は自民党も、部会でいろいろと議論をして、提言書を提出して、政府といろいろと交渉しているんですが、やはり諸般の事情があってなかなかそれが実現できなかった。しかし、今、政界再編が行われて、民主党中心の政権が行われている。ただ、武器輸出三原則なども、あれは大臣は恐らく決断をされたと思うのですが、社民党との関係などもあって先送りされたのではないかというふうに思うと、やはり大臣の胸中を思うときに、大変だなという感じもするんです。

 ここはやはり、先ほどから何回も言っているが、前に向かっていろいろと議論をし、一つずつ解決していかないと、外国から見れば、日本という国は相変わらず自分の国のことだけ考えていてというふうに誤解をされがちなんです。そこのところを、経済大国として、独立国として当然やるべきことはやる、そのやるべきことをやれる法の改正も含めて、そういう状況をつくり上げていきたい。そのために、今の政府の御英断を心からお祈り申し上げて、そういう英断が出た場合に、我々は喜んで御協力をさせていただくということを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

平野委員長 次に、岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋です。よろしくお願いします。

 まず、さっきの今津委員とのやりとりを聞いておりまして、輸送機のUターン問題ですが、これは私、通告しておりませんので質問にはいたしませんが、指摘にとどめさせていただきたいと思います。

 一つは、大臣、やはり政府内の連絡調整ミスがあった、これは事実だと思います。大臣みずからが、どこからの依頼だったかよくわからないということをおっしゃいましたが、危機管理監、運用局長、事態対処課長、それから大臣、現場の指揮官、この間の連絡調整が必ずしも適切ではなかったということは指摘をさせていただきたい。

 それからもう一つは、やはり判断ミスはあったと思います。新幹線があったじゃないか、高速道路もつながっていたじゃないかとおっしゃいますが、余震がどんどん続いていたわけです。地上では何が起こるかわからない、また交通機関が途絶えるかもしれないというときに、こういうケースはやはり空輸するというのが一番の安全で確実な方策だったと思いますので、原発の最高責任者をできるだけ早く指揮所というか現場に届けるということについては、今後防衛省として適切な判断をしていただきたい、そのことだけ指摘をさせていただきたいと思います。

 先般、平野委員長とともに東北方面の視察をさせていただきました。君塚総監、なかなか立派な指揮官だとお見受けをいたしました。こういう危機のときは冷静沈着な判断ができる指揮官が必要だと思いますが、まさに人材を得てよかったなという思いがしたわけであります。

 総監からいろいろなお話、また幹部の皆さんからお話を聞いたときに思いましたのは、やはり自衛隊の基地、駐屯地そのものの防災機能あるいは災害対応機能を強化する必要があるなということを実感して戻ってまいりました。

 要は、自衛隊の基地が駆け込み寺になるわけですね。市民の皆さんも殺到する、全国から部隊が殺到して、収容人員が二倍、三倍にも膨れ上がる。全国から集まった資材もそこに集結をする。まさに、基地が災害時においては極めて重要な役割を果たすことになるわけであって、聞くところによると、東北方面でたくさんの自衛隊の基地があるけれども、自家発電装置を備えているところは三カ所しかない、総監部がその中の一つであった、こういう説明でありました。

 今回の経験を踏まえて、基地の防災機能の強化、また災害対応能力の強化ということについて、これは急務だと思いますが、防衛大臣の見解を聞かせていただきたいと思います。

北澤国務大臣 御視察をいただいて、その果実として御提言をいただいたわけでありますが、私も任地を何度も視察する中で全く同感でありまして、自衛隊は、御案内のように、自己完結が有力な能力であるわけでありますけれども、一部その面において欠けている部分もあるということで、当面、緊急を要するものは第一次補正で要求し、さらに第二次補正においてもこれを強力にお願いしてまいりたい、このように思っております。

 それと、松島基地は、ごらんいただいたと思いますが、これはやはり立地がこの津波までを想定していなかったということで、かなり大きな変革をしながら、あの場所そのものは非常に有効な場所でありますので、格納庫であるとか隊舎であるとか、そういうものはもう少し高いところに置けないかというようなことも今検討させていただいておる次第であります。

岩屋委員 被災した基地の機能をどう強化するかというだけではなくて、もちろん全国の自衛隊の基地、駐屯地の機能強化ということをぜひ検討課題にしていただいて、方針を遠からず示していただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。

 今般の災害はトリプル災害ですよね。地震があって、津波があって、そこに原発事故が重なっている。自衛隊にとっても本当に初めての経験だったと思います。昼夜を分かたぬ献身をいただいている隊員の皆さんに、心から改めて敬意を表し、感謝、御礼を申し上げたいというふうに思います。

 自衛隊は今のところ、持てる力を最大限に発揮していただいていると私は考えておりますけれども、しかし、今回の経験に照らしたとき、もちろん事態はまだ進行中ではありますけれども、災害対応に必要な装備あるいは人員等が不足をしているということも実感されているのではないかと思います。

 当初、大活躍したヘリについても、果たして十分だったか。本当は病院船があった方がいいんじゃないかという議論も起こりました。米軍は無人偵察機を飛ばして観測をしたということもありましたが、そういう機能も獲得をした方がいいのではないかという議論も起こりました。それから作業用のロボット、これは本当は日本が世界最先端なわけですから、やろうと思えばできないことはない。遠隔操作カメラ、隊員が着ている迷彩服、防護服、あるいは、アメリカからCBIRFという部隊がやってきましたが、我が方の特殊武器防護隊と比して、果たして装備、人員の点で大丈夫かといろいろな議論が起こったと思います。

 ぜひ、今回のことを教訓にして、これらの装備あるいは人員を充実するというふうに考えるべきだと思いますが、この点はいかがでしょうか。

北澤国務大臣 前向きな御提案をいただきましたが、我々とすれば、今回の新大綱並びに中期防では、大規模地震、原子力災害等さまざまな大規模・特殊災害等に迅速かつ適切に対応し、国民の生命財産を保護するための施策を推進する、こういうことになっておるわけであります。このことをこれからまさに進めようというときに、被害を伴いながらも大きな体験をしたわけでありまして、ぜひ、そういう意味では、足らざるものにしっかり対応していきたい。

 当面、二十三年度予算においては、災害等への対処能力向上を図るために、多用途ヘリコプター、それから輸送ヘリコプター、NBC偵察車等の装備品の整備や各種訓練に必要な経費はあらかじめ計上しておったところであります。さらに、今後の対応として、今もお話ありましたCBIRFと、CBIRFは結果的には出動しませんでしたが、装備を全部持ってきて共同訓練をいたしましたから、かなり得るものがあったというふうに思っておりますので、その点についても検証しながら、お願いをしてまいりたい。

 それから、まさにロボット、これは私も、ロボット大国だと思っておりましたので、自衛隊にないとしても、必ず東電であるとかどこかほかで備えてあるものかというふうに思いましたが、試作品はかなりあったようでありますが、当用するに至っていなかった。今後、ぜひこういうものはしっかり持つべきである。

 多分、諸外国も、日本がこれだけの原子力災害を受けて、ロボット大国の日本は最新鋭の装備を使って対応したんだろうという期待感を持って見ていたというふうに思います。そういう意味からすれば、諸外国に対してある種の失望感を与えたのではないか。

 私は、今後、六月にシンガポールでシャングリラ会議があります、そのときにも、原子力発電が世界じゅうに施行されている中で、こういうものについて世界全体で装備をする、あるいは地域的に、持てる国が拠点を持つとか、そういうようなことは提案してまいりたいなというような今考えを持っておる次第であります。

岩屋委員 大臣から非常に前向きな御答弁をいただきましたが、単年度でできることはやっていけばいいと思うんですが、もっとトータルで計画をつくらなきゃいけないと私は思うんですね。ちょこちょこ補正をつけながらやっていくということだけでは事足りないと思います。

 そこで、できたばかりの大綱、中期防ですが、私は、早期に見直してしかるべきではないのかなと考えております。

 この委員会の視察報告書の中にも、君塚総監の発言が記されております。「人員について効率化の下に削減されてきたが、有事を想定した基準で検討されなければ困る。」という御発言がありました。これは自民党も反省をしなければいけない点があると思います。財政上の理由から、あるいは行革上の要請から、自衛隊の予算を削減し、人員を削減してきたことも事実であります。しかし、そこに、言ってみれば有事が発生をしたわけであって、半分近い隊員の皆さんに出動していただいて、何とかこれを乗り切ろうとしているわけであります。

 さっきずっと聞いてきました装備の面、基地の機能強化の面等々、大臣もお認めになって、対処しなくちゃいかぬというお話をされたわけですから、やはり自衛隊の装備だけは単年度では解決しませんので、そのために大綱、中期防というのがあるわけですから、これは何も今の大綱、中期防を非難するということではなくて、今回の事態を踏まえれば、当然早期に見直しをしてしかるべきではないか、こう思うのですけれども、いかがでしょうか。

北澤国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、大綱、中期防で、大規模地震であるとか原子力災害等について、これへの対応をうたってあるわけであります。しかし、それが具体的に装備に結びついているかどうかということはありますから、中期防を改変するということではなくて、私は、実務の上で追加をしていけばいいんではないか。

 それから、今回、私なりに感じたことは、無人のロボットとかそういうのは、いろいろなところで、例えば企業で用意をしておくといっても、やはり利益追求の企業社会の中では、ややもすれば、五年、十年とたって実際に稼働しなかったということになると、まず最初に削られていく分野だと思うんですね。そうすると、自衛隊のように、持てる機材を常に活用して、事態が起こらなくても訓練を繰り返していくというところでは相当効率的な活用ができる、こう思いますので、自衛隊の一つの、国全体の危機管理の中で、そういう装備を自衛隊が保有して、常に訓練を怠っていないというような体制は極めて重要だというふうに思っておりますので、御提言を体しながらしっかり対応してまいりたい、このように思っています。

岩屋委員 大綱、中期防については、また本会議でも議論をさせていただき、またこの委員会で改めてやらせていただきたいと思います。

 陸自の装備や定員を削減する、南西重視だ、動的防衛力だと。しかし、ある意味では、今回の災害に際して、本当にそれで事足りるのかということに気づかされたとも私は思うのでございます。したがって、やはり大綱、中期防については早期に見直しをしていくべきだと思っておりますので、ぜひ今後とも、この点についてしっかりと意見交換をさせていただきたいというふうに思っております。

 さて、外務大臣にお伺いをいたします。

 さきに、ウサマ・ビンラディン氏が米国のオペレーションによって死亡いたしました。今回のオペレーション、ウサマ・ビンラディン氏の死亡、殺害というのは、テロとの闘いという観点からいえば確かに大きな前進だったと思います、国際テロ組織の首領が取り除かれたわけでありますから。しかも、我が国は米国と一緒に、同盟国と一緒にテロとの闘いを進めてきたわけでありますから、基本的には歓迎すべきことだと思うのです。

 しかし、やはり今回の事案については、オペレーションについては、国際社会の中でもいろいろな議論があることは事実です。国際法上のいろいろな疑義が呈せられていることも事実でございます。パキスタンの主権との問題、あるいは丸腰で抵抗したビンラディン氏を殺害に至ったという経緯、さらにこれを水葬に付したという経緯等々、もちろん理由があってのことだとは思うんですけれども、ウサマ・ビンラディン氏が除去されたということは何度も申し上げるように歓迎すべきことだと思いますが、今回のオペレーション全体を果たして全面的に肯定していいものなのかどうか。九・一一の真相はこれで永遠にやみの中に葬られたわけでもあります。

 今般の事案について、日本政府としての正式な見解を聞かせていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 本件そのものについては、今委員もお話がありました、私どもとしては、今回のテロ対策の顕著な前進を歓迎するというのが我が国政府の立場であります。

 御案内のとおり、安保理の議長声明でも、ウサマ・ビンラディンが二度とテロを起こすことができなくなった知らせを歓迎する、こういう表現をとっているわけであります。

 その上で、委員御指摘の国際法のお話について申し上げれば、政府の立場といたしましては、本件の直接の当事者ではなく、また米国とパキスタンとの間の具体的協力の態様等について具体的に事実関係を承知する立場になく、確定的な法的評価についてコメントをするということは差し控えたい、このように考えております。

 パキスタン政府が、今回の米政府によるオペレーションがパキスタン政府への事前の通告あるいは許可なくして行われたことに深い懸念と留保を表明する、また外務次官が、今回の米国政府の行動につきパキスタン政府に事前の連絡、相談がなかったと述べつつ、本件の国際法上の問題に留意している、このように述べていることも私どもも承知をしておりますが、同時に、当該次官は、法的評価は後世の歴史家の判断にゆだねるというふうに述べていることも私どもとしては承知をして留意しているところであるというふうに申し添えたいと思います。

岩屋委員 私は、本件についてこれ以上深入りするつもりはありません。ただ、日米同盟というのはもちろん重要ですし、テロとの闘い、極めて重要でありますが、国際法上疑義がある場合について、やはり政府の態度表明、見解表明というのは、あらゆる観点から検討を加えていただいて、慎重で、また適切なものであってほしいということだけ申し上げておきたいと思います。

 先ほども今津委員からもありました、報復テロというのに警戒しなくちゃいかぬ。米本土は物すごい厳重な警戒だと思いますが、何も米本土だけがターゲットというわけではないでしょう。我が国においてもしっかりと備えをする必要がありますが、防衛大臣、対策はしっかりととっていただいているでしょうか。

北澤国務大臣 通常の監視活動等を含めて、しっかりした対応をとるように指示をいたしております。

岩屋委員 よろしくお願いいたします。

 最後に、日ロ関係、対ロシア外交について聞かせていただきたいと思います。

 五月十五日、ロシアのイワノフ副首相を長とする政府代表団、何人もの大臣がくっついていったようでありますけれども、択捉、国後両島を訪問いたしました。外務大臣は、翌日でしたか、ロシア大使を呼んでしっかり抗議をしたというふうに承知しておりますけれども、私は、本当にあっという間に日ロ関係というのはある意味でがたがたになってしまったなと非常に残念に思っております。

 メドベージェフ大統領の北方領土初訪問以降も、果たして、日本の外務省あるいは外務大臣、政務三役はしっかりと事態の打開に努めてきたのかと疑わざるを得ないというか、一つも事態は改善しておらないわけですよ。むしろ悪化しているわけですね。もうロシアは北方領土の実効支配をどんどん強化しております。物すごいインフラ投資をやる、軍備を増強する、閣僚をどんどん送り込む。全く事態は改善をしておらない。前原前外務大臣も訪ロしたけれども、私は正直、何をしに行ったのかなと思うような訪問だったと思いますよ。唯々諾々と相手の言い分を聞いてきたとしか思えない訪ロだったと思いますよ。

 そういう意味で、ロシアはますます態度を強硬にして、もう領土問題なんか話すつもりはないんだと言わんばかりの政府高官の発言が続いている。やはり今、日本外交の最大の使命は、もう一度領土問題をテーブルの上にのっける、このために全力を尽くすということが大事だというふうに思います。

 外務大臣、今後の対ロ外交の我が国としての基本戦略をどう考えておられるのか、聞かせていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 委員御指摘のとおり、十五日のロシアのイワノフ副首相を長とする政府代表団の択捉島、国後島訪問につきましては、私が翌朝、ベールイ・ロシア大使を呼びまして抗議をいたしました。この抗議は、訪問について遺憾の意を表明いたしたわけでありまして、逆に申し上げれば、私どもとしても当然、情報収集、そして私どもとしてなすべきことはなしてきたと思っておりますが、結果として遺憾の意を表明すべき事態が発生したことをしっかり受けとめなければいけない、このように思っております。

 なお、申し上げれば、イワノフ副首相は、二〇〇五年には国防大臣として、また二〇〇七年には第一副首相として択捉島を訪問いたしておりますが、この際には、当時日本側は何ら抗議は行わずにいたというふうに私どもは承知をいたしております。今回は、私自身の方で申し上げるべきことは申し上げてまいりました。

 現在、領土問題については、おっしゃったように、残念ながら日ロ双方の立場は大きくかけ離れていると言わざるを得ない面があると思っておりますが、これまでの諸文書、諸合意に基づいて、今委員は領土問題をテーブルの上にのせなければいけない、こういう表現をとられましたけれども、しっかりと話し合いができる形で領土問題は前進を図っていかなければいけないというのはまさにおっしゃるとおりだろう、このように考えております。

 今後、外相レベル、そして首脳レベルも含めて、当然その私どもの内容というのはしっかりお話をさせていただくことになってくるだろう、そういう機会がありましたらこのようになってくる、このように考えているところでございます。

岩屋委員 大臣、イワノフさんは前にも行ったことがある、あなたたちは何も言わなかったじゃないかという説明はよくないですよ。そのときは、きちんと領土問題はテーブルの上にのっかっておったんですよ。やはり政権交代以降、これは日本側だけの事情じゃないかもしれない、ロシア側の事情によって強硬姿勢が急にとられるようになったということも言えるかもしれませんが、この間の日本外交のパフォーマンスのまずさということも原因していることは確かなんです。

 一点だけ私気になっていますのは、前原前大臣が行ったときに、あたかも、政経分離でしばらく仕方がないかのようなニュアンスが出ておったと思うんですね。日本の立場を害さない範囲だったら経済協力を進めましょうという発言があったと承知をしておりますが、私はやはり、経済協力を進めるのは結構ですけれども、領土問題がちゃんと交渉のテーブルにのっかっているという前提がなければ、やらずぶったくりのようなロシア外交におつき合いする必要はない、こう思っているので、ぜひ松本大臣におかれては、対ロシア外交をしっかりと基本戦略を練っていただいて、もうすぐサミットもあります、首脳会談もあるでしょう、外相会談もあるでしょう、しっかりと対応していただくようにお願いします。

 もう一度、大臣の所見を聞いて終わりたいと思います。

松本(剛)国務大臣 前原大臣の際にも、また私も一度ラブロフ外務大臣と会談を持たせていただきましたが、静かな環境のもとで領土問題を話し合って解決して平和条約を締結するという点では両者の立場は一致しているという意味では、しっかり議論をする場はあるということは確認させていただいていると申し上げたいと思います。

 その上で申し上げれば、私どももこの間議論をしてまいりましたが、この数年間で、やはりエネルギー資源大国としてのロシアという国際情勢の中でどのような戦略がとれるかということを総合的に判断しつつ、前進を図る戦略を練らなければいけない環境にあるという認識は共有をいただけるものと思っていることだけ申し添えたいと思います。

岩屋委員 終わります。

平野委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、外務省の、大臣が掲げられているという復興外交の姿勢についてまずお聞きしたいんですが、その前に、当委員会で、四月は五日と二十一日に委員会質疑がございました。そのときに私、二回連続、しつこいようですが質問も申し上げたのは、被災地の支援に当たっている自衛隊員の処遇の問題ですね。特に、災害派遣等手当と死体処理手当、これをやはり引き上げるべきだ、そういうことを二回にわたって質問もし、申し上げました。

 十六日に、政府として、約二倍に引き上げる方針を固められたことについては、私も、野党ではありますけれども評価をさせていただきたいと思います。今度縮小をされるそうですけれども、ぜひ、三月十一日にさかのぼって、しっかりとした自衛隊に対しての手当をお願いしたいと思うわけでございます。

 そこでまず、きょうは、冒頭申し上げましたように、外務大臣に何点かお聞きをしたいんです。

 私どもは野党ではありますけれども、大型連休中に、予算委員会を初め国会審議はありましたけれども、国益のために外務大臣が国際舞台でしっかりと活躍していただくことがやはり大事である、そういう思いから我々は外務大臣の外遊を認めたわけでございます。それであるからには、その成果もしっかりと我々はお聞かせいただかなければいけないであろう、そのように思うわけであります。

 特に、報道でお聞きすると、先ほど申し上げましたように、外務大臣は、これは復興外交だ、そういうように掲げられているそうでございます。福島第一原発事故に伴う日本産の食品であるとかあるいは日本製工業品の輸入制限などの風評被害、これを防止するために、外務大臣に限らず政務三役の皆さんがトップ外交で国際社会の理解を得るというのは、日本経済の信頼回復、また復興にとって極めて大事である、そのように私どもは考えております。

 外務大臣は、ワシントンに行かれて、まずクリントン長官と会われました。これは外務省からもペーパーで報告いただいております。さらに、ベルギーではバローゾ欧州委員長、EUの委員長ですね、またダリ欧州委員、さらには、イギリスではヘーグ外務大臣と会談されて、日本の食品に対する過度な輸入規制などを行わないように要請されたと伺っておるんです。

 日本の報道はいい面も悪い面も報道していまして、一定の理解を得るとともに、福島原発事故を受けた日本の対応への各国の厳しい姿勢も浮き彫りになったという報道もあるんですが、外務大臣は、今回の外遊によって、特に強調された過度な輸入規制などの風評被害防止にどれだけの理解を得て、成果があったと認識されているのか、まず御答弁いただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 まず、海外出張について、佐藤先生の公明党を初め各党に御理解をいただきましたことにお礼を申し上げると同時に、御指摘をいただきましたように、大臣として、海外出張させていただいた以上は国益のために全力を傾けなければいけない、その思いで行ってまいりました。

 復興外交という、私自身は必ずしも大きな看板をぶち上げるのが得意ではありませんので、そのようなことを申し上げたという認識はなかったんですが、ただ、省内には、今後の外交においてというより政府の一員として、すべての面で復興に何が資するのかという視点は持たなければいけないということは申しました。そのことがそのように伝えられたのではないかというふうに思います。また、諸外国との関係で、今お話がありましたように、当面の喫緊の大きな課題の一つとして輸入規制であるとか渡航制限などに対する取り組みというのがあることは事実でありまして、これについても働きかけ、そして結果をしっかりと管理していくようにということを申しているところでございます。

 実際に、今お話しいただいたように、もう個別には申しませんが、各国でお話をさせていただきました。最終訪問した英国も含めて、お会いをした方自身に御理解はいただけ、動いていただける端緒にはなったというふうに思っております。

 ただ、手続というものがありますので、現実には、例えば四月に来日をされた何人かの外務大臣の方に働きかけをさせていただいたものが、何週間かたって具体的な成果として出てくる。早めていただくようにさらに働きかけをしなければいけないんですけれども。

 また、特に大きな相手であるEUの場合は、御案内のとおり、加盟国とEUの委員会とさらには議会というような構成になっていることもありまして、累次の会議で取り上げてもらえるという感触を得て帰ってまいりましたので、今後、ぜひ効果が出てくるように、また効果が出るように督促もしていくように努力をしていきたい、このように思っておるところでございます。

 米国においては、共同の記者会見において、明確に、風評被害対策、そしてサプライチェーンとしての日本の役割に焦点を当てるという話が出ました。また、英国との間でも、そのような話が二カ国では出たことは明示的に申し上げられると思いますが、早くそれが具体的な規制の緩和などの効果になるようにさらに努力をしてまいりたい、このように思っております。

佐藤(茂)委員 それで、外務大臣の行かれた行き先については私もしっかりつかんでいるんですが、これは事実誤認であれば後で答弁で御指摘いただきたいと思うんですが、今回の大型連休中に、外務省の政務三役以上の皆さんが、私の聞いている限り、約十八カ国程度行かれたわけですね。しかし、それを見せてもらうと、日本の戦略的にもっとほかに行くべき国はあったんじゃないのかと。特に福島原発の汚染水の問題なんかで非常に懸念を示した近隣国の中国であるとか韓国、こういうところが政務三役以上の訪問先の中に含まれていないんですね。

 なぜ大事なのかというと、ゴールデンウイークの、この大型連休の直前に、四月二十四日ですか、日本の東京都内で貿易経済大臣の会合というのがありました。日本からは海江田経済産業大臣が出られたんですね。そういうのも一般紙の報道になっておりますけれども、海江田大臣が中国、韓国の両国に農産物などにかけられる輸入規制の解除を求めたんですけれども、彼らはどう言ったかというと、国民の安全が大切で、科学的根拠に基づいた規制を我々は行っているんだ、そういうことを言われた。要するに、海江田大臣が、科学的根拠に基づいて規制をもう一回見直してくれ、そう言ったら、いや、我々は科学的根拠に基づいた規制を行っているんだという、全く認識の違いが浮き彫りになって、平行線だったというんですね、輸入規制の緩和問題については。

 だから、その直後の大型連休中にせっかく外務省の政務三役が行かれるのであれば、まずやはり近隣国である中国や韓国、さらにはアジアで成長著しいインドなどというようなところに、輸入規制の緩和などを含めたしっかりとした話を、外務省の政務三役以上で行かれるべきだったのではないか、そのように思うんですが、なぜ行かれなかったのかということとともに、今後、まさに今言いました中国や韓国の近隣国、さらにはインドなどに対して、風評被害防止について、外務省としてどのように理解を得ていくつもりなのか、御答弁いただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 中国、韓国が極めて、そもそもというんでしょうか、まず重要であるからこそ日中韓という枠組みもあると理解をいたしておりますし、それだけに、経済的なつながりも大きいだけに、今お話があったような経済面での規制について早急に対応をとる必要があるという点も御指摘のとおりと認識をして、現在もさまざまな接点から努力をさせていただいておるところでございます。

 その上で、もちろん、ゴールデンウイークだけを取り上げてみれば、確かに、中韓が訪問先として欠けていたという御指摘もあるわけでありますけれども、三月に既に、私自身が中韓の外務大臣とお会いをしたときにもこの風評被害対策については申し入れをし、その後もあらゆるレベルでフォローしている状況でもありましたし、また首脳会談がこの週末に予定をされているということもありますので、世界各国との関係の全体を総合的に勘案して、副大臣、大臣政務官の出張先については決定をいたしたところであります。

 中国と韓国についてしっかりと対応せよ、こういう部分については、私どもとしてもその認識でございますけれども、改めて肝に銘じて進めていきたい、このように考えております。

佐藤(茂)委員 外務大臣が日中韓の外相会談を三月に行われたことも伺っております。しかし、今申し上げましたように、一カ月以上たっての四月末の貿易相会議でも全く変わっていないんですね、彼らの態度。特に、やはり中国というのは、今アメリカを抜いて日本との貿易額でいうと世界一になっているわけですね。だから、そういうことからいうと、やはりまずこの近隣国にしっかりと、この原発の事故を受けての風評被害を何としても防止してもらうような、そういう方向にさらに働きかけていくべきである、そのように申し上げて、この件は終わりにさせていただきたいと思うんです。

 次に、防衛大臣にお聞きをしたいのは、今回の災害対応で、先ほど岩屋委員のときにもございましたけれども、米軍のトモダチ作戦、これが行われて、最大時で約一万八千人の米軍が参加して被災地支援に頑張ってもらったわけでございますが、その活動が四月三十日にほぼ終了いたしました。ただし、アメリカ軍としては、トモダチ作戦自体は継続して、航空輸送活動であるとか即応態勢は維持する、そういうふうに言っておられるんですが、現場での活動という点で見るとほぼ終了したというこの時点において、ぜひ御答弁いただきたいんです。

 異例な規模で今回支援をしてもらいました。艦艇で約十五隻、航空機約百四十機、人員一万八千人まで投入してもらって、さらに、提供した水だけでも約七千七百トン、食料などは約三百トンに上ります。日本側の要請でそれ以外に輸送した物資は約六百五十トン、そういうことでございます。それ以外にも、線路や駅舎の瓦れきを除去するソウルトレイン作戦であるとか、あるいは被災地での捜索救難活動も自衛隊と一緒にやってくれたりとか、そういうことも行いました。

 それで、自衛隊を持っている我々日本の目から見ていても、確かにアメリカ軍というのは大したものだなと思うのは、特筆すべきなのは、津波で被災した仙台空港を数日で復旧させた、これはやはり我々は学ばなければいけないことも多いんだろうと思うんですね。救援物資の補給基地にいたしました。さらに、気仙沼市の孤立した離島に揚陸艇で駆けつけて、強行上陸して、命綱の港湾施設を復旧させるというようなこともしてくれたわけです。

 防衛大臣にぜひお聞きしたいのは、この一つのけりがついた段階で、トモダチ作戦を行ったこの米軍の支援活動をどのように評価して、また日本として学ぶべきことは何だと考えておられるのか、御答弁いただきたいと思います。

北澤国務大臣 今お話がありましたように、最大の支援をしていただきました。数字については、今お話があったとおりでありますから繰り返しません。

 そういう中で、米軍の行動が日本人の心をつかむというところにおいて非常に有効であったというふうに思っております。今後、我々がもしどこか海外で災害救援というようなことがあったとすれば、私どもは、それを誇示するわけではありませんが、せっかく支援に行ったら、その国の国民の心を打つような支援のあり方というのは学ばせていただいたのではないかというふうに思います。

 それとまた、彼ら自体が、行動が極めてフレンドリーでして、市民の中へすっと入ってくる、こういうことは、私ども、なるほどなとしみじみ感じた次第であります。

 それともう一つ、今お話のありました仙台空港の復旧に対する迅速さ、この能力の高さというのは、我々も非常に高く評価して、学ぶべきものがあったというふうに思っております。

 一方で、我々は、松島基地が水没した中でこれを早急にやったわけでありますけれども、米軍は、仙台は拠点だから我々がやるよ、そのかわり、その支援に向かう拠点をすぐ貸与してくれというようなことで、山形空港をすぐ向こうから要請があって、我々も山形県知事の了解もすぐとれたというようなことで、非常に参考になったということと、先ほども御答弁申し上げましたが、CBIRFとの共同訓練、これは非常に我々は得るものがあったというふうに認識をいたしております。

佐藤(茂)委員 そこで、今後もこの日米の共同作戦を日米の連携強化につなげていかなければいけないと思うんですね。

 今回やはりポイントになったのは調整メカニズム、具体的に、日米共同調整所というものを三カ所に置かれました。防衛省と横田基地と陸上自衛隊の仙台駐屯地の三カ所に立ち上げられたんですね。先ほども質疑でありましたけれども、先日、当委員会で仙台駐屯地を訪問させていただいて、君塚東北方面総監に私の方から何点かお聞きした中に、米軍との調整のこととか日米共同調整所のことをお伺いしたところ、君塚東北方面総監は、報告書にも簡潔に書いていますが、日ごろの日米共同訓練がまさに生きたと思う、ヤマサクラなどの日米共同訓練で準備していたことが役に立ったんだ、そういうことをしみじみとおっしゃっておりました。

 ですから、本来、日米ガイドラインで、我が国に対する武力攻撃や周辺事態に際して日米それぞれの活動の調整を図るために調整メカニズムをつくりましょうと、二〇〇〇年からそれはできておりますけれども、それに基づく日米共同調整所を今回災害に準用されたというか転用されて、自衛隊と米軍が密接に連携できる調整の場になったことの意義は、私は極めて大きいと思うんですね。

 だから、今までガイドラインで想定していた日本有事、周辺事態に加えて、大規模災害の際にも自衛隊と米軍の活動の調整を図るための調整メカニズムの強化、深化をきちっとさせていくべきであると私は考えるんですけれども、こういう大規模災害時の調整メカニズムや日米共同調整所について防衛大臣はどのように考えておられるのか、見解を伺いたいと思います。

小川(勝)副大臣 私の方から御答弁をさせていただきたいと思います。

 御指摘がございましたように、今回の大規模災害派遣で、まだ反省の途中ではありますけれども、成果あるいは反省するところ、そしてよくできたところ、いろいろあるわけでありますが、御指摘の日米の調整という点におきましては、市谷、横田、仙台と、それぞれの場所でそれぞれ必要な調整が全くうまくいった例として把握をさせていただいているところでございます。

 また、御指摘がありましたように、数次にわたる共同訓練、演習等が今回の調整をうまくいかせた原因になってまいったというふうにも考えておるところでございます。

 また、今回の災害派遣を通じまして、三カ所においての日米調整がさまざまな場面、すなわち、ガイドラインに指摘されておりますように、武力攻撃や周辺事態が万一起こったときには、今回の経験も教訓として生かされていくものと考えているところでございます。

 今委員から御指摘がございましたように、ガイドラインには災害においての調整メカニズムは本来規定されているわけではありませんけれども、このたびのような大規模な災害派遣につきましても、日米調整メカニズムがしっかり機能するように、あり方を検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

佐藤(茂)委員 今回は急だったので、そういう決まり事なしに、とにかく共同訓練や共同演習を踏まえてやろうということでされたと思うんですけれども、ぜひ、そういう決まり事というのは、今後しっかりと検討してつくっていただきたいなと思います。

 その上で、軍同士の前に、両大臣おられるので、私は、ぜひこれは主張もし、見解を聞きたいと思うんです。

 今、日程調整をされておられるという2プラス2、ここで、日米同盟の深化という流れの中で、共通戦略目標というのをもう一回、多分、今あるものを相当バージョンアップされるんだろう、見直されるんだと思うんですが、その共通戦略目標の中に、大規模災害への対応というものも共同文書に明記して、そして、これから日米として日米同盟の一つの大きな重要なテーマとして扱っていくべきであると私は考えるんですけれども、政府の考え方をぜひ御見解として伺っておきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 御指摘の次回2プラス2の成果の具体的内容については現在協議中でありますが、その上で申し上げれば、今後の日米安保協力や在日米軍の再編、そして共通戦略目標について適切な形で発出をするということで認識は共有できておると思います。

 その際に、御指摘をいただきました大規模災害における協力、この重要性については、今回の大震災そして原発事故対処、ここにおける協力を踏まえて適切に検討してまいりたい、このように考えております。

佐藤(茂)委員 私は、これは、ただ二国間だけではなくて、アジア太平洋地域というのはどんどんいろいろな災害が起きているわけですから、そういうものも日米同盟でしっかりと共通のテーマに掲げてやっていくべきである、そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 続いて、米軍の普天間飛行場の移設問題についてお聞きをしたいんです。

 北澤防衛大臣が、今週、五月十七日の参議院の外交防衛委員会でこの移設問題について、沖縄との調整が長引いていることからすると完成はなかなか厳しい、そういうように述べられたと伺っております。日米で合意したこの二〇一四年までの完了は困難であるという認識を示されたと報道されているんですね。

 ぜひきょう真意をお聞きしたいのは、この発言の趣旨というのは、二〇〇六年五月一日の2プラス2のロードマップで決めた再編案、さらに昨年の五月二十八日のときにも再確認された再編案の中身は変えずに、ただ、沖縄の調整が非常に厳しくなっているので、移設完了目標の二〇一四年までというこの期限を守るということがなかなか厳しい、そういうことを言われたと受け取っていいのか、どういう真意なのか、防衛大臣の見解を伺いたいと思います。

北澤国務大臣 参議院での審議の中でそういうお答えを申し上げたわけでありますが、御案内のように、ロードマップは、二〇一四年までにこれを完成する、こういうことになっていますから、二〇一四年というのはもう目の先でありますので、日本政府と沖縄県との間での調整がまだついていない、それから日米の間でもまだ積み残したものがあるという中からすれば、物理的に言ってこれはなかなか厳しいという私の感触を申し上げた次第であります。

佐藤(茂)委員 ですから、物理的に言ってなかなか厳しいという発言は、アメリカ側にも当然伝わっていると思うんですね。それは結局どういうことになるかというと、例えば昨年の五月二十八日の2プラス2のときにどういうように言われていたかというと、「閣僚は、二〇〇九年二月十七日の在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定に定められたように、第三海兵機動展開部隊の要員約八千人及びその家族約九千人の沖縄からグアムへの移転は、代替の施設の完成に向けての具体的な進展にかかっていることを再確認した。」要するに、普天間の移転が物理的に厳しいということは、グアムへの海兵隊の移転、八千人の隊員と九千人の家族、そのことも実は厳しいんだ、そういうこととセットになっているわけですね、この合意では。

 同じことがその二十八日の2プラス2のところに書かれていて、「グアム移転」の項目のところには、「代替の施設の完成に向けての日本政府による具体的な進展にかかっている。」具体的な進展が物理的に厳しいということは、結局、とりもなおさず、米軍海兵隊及びその家族のグアムへの移転も、またここにも確認されているんですが、それによってもたらされる嘉手納以南の大部分の施設の統合及び返還の実現も、目標期限までに行うことはなかなか厳しい、困難である、もっと具体的に言うと、おくれざるを得ない、そういう認識を防衛大臣はやはり今の段階で持たれている、そういうように確認をさせていただきたいんですけれども、御答弁いただきたいと思います。

北澤国務大臣 極めて重い問いかけでありますが、これはもうすべてセットになっておるわけでありますから、論理的な帰結とすれば、そういうことは十分言えるというふうに思います。

 そこで、私が申し上げたのは、日米で合意をしていることでありますから、日本と沖縄との関係、あるいはまた日米の関係の中でも、八千人がどういう部隊編成で行くのかということもまだ詰めてあるわけではないわけでありまして、これは合意のときにもそうなっていたわけであります。それからまた一方で、FCLPについても、二〇〇九年に整備する、こういうことになっていましたが、これは置き去りになっておるわけであります。

 さまざまなことを勘案すれば、私は、日米の間で率直に、いつまでもしゃくし定規なことを言っていないで、難しいものは難しいという認識を共有して、その後、では新たにどうするかという議論があってもいいのではないかという意味も含めて、一石を投じる意味で申し上げたわけであります。

佐藤(茂)委員 私は、そこは本当に北澤大臣として率直に、一石投じられたと思うんですね。ただ、それでどうするんですかと。難しいので、要するに、沖縄の調整が長引いているから二〇一四年の期限は守れませんね、では今度は期限を設けずにいくんですかということが一部の新聞に出ています。しかし、私は、無期限に先送りして新たな期限を設けないということには物すごく懸念を持っているわけです。

 やはりこれは、まずアメリカの理解が得られないだろうということが一つと、何よりも、延ばすけれども期限を設けないということになると、結果として普天間飛行場の無期限の固定化につながりかねない、そういうことが一番最悪のパターンであります。

 ですから、二〇一四年完成は難しいけれども次はここまでにはきちっとした新たな移設完了目標を設けてやりましょうという完了目標というのはきちっと定める、新たなものは当然定めるべきである、そのように私は思いますけれども、防衛大臣の見解を伺っておきたいと思います。

北澤国務大臣 きちんと何年何月までというような決着になるのか、またもう少し違った表現をやるのかというのは、これからの日米の協議を重ねる中で決めていかなきゃいけませんが、一方で、これは日本側の事情だけではなくて、一石を投じたということの意味は、米側も、先ほど申し上げたような部隊編成の問題、それからグアムにおけるインフラ整備の問題、これは、当初ロードマップをつくったときとグアムの環境は極めて大きく変わっているというふうに聞いておりますし、特に八千人が行くところの用地そのものも、グアム政府の文化財の整備というような新しい問題も提起されておりますので、私は、総合的に率直に協議していくべきだというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 私も、二〇〇六年のロードマップが決まった直後に、当時アメリカと話をしました、私どもは与党におりましたから。自民党の山崎拓先生であるとかあるいは町村信孝、その後官房長官になられたかな、そういう方々と一緒にグアムに直に視察に行かせてもらいました。そのときに思ったのは、やはりインフラが大変だなというのは今防衛大臣が答弁されたとおりでありまして、そういうことも含めて、これは本当に、先延ばしをずるずるとするのではなくて、どういう解決策があるのかというのは、今後、我々、当委員会でも、両大臣を交えながらしっかりと議論をさせていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

平野委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 引き続き、米軍再編の問題について防衛大臣に伺います。

 アメリカの上院軍事委員会のレビン委員長初め超党派の三名の議員が十一日、東アジアにおける米軍再編計画の再検討を求める提言を発表し、国防総省に提出をいたしました。沖縄と東京とグアムなどを訪問し、関係者への聞き取り調査を行った結果として、現在の再編計画について、非現実的で実行不可能であり、財政的にも負担不可能だと断じております。

 これは単なる一議員の発言にとどまるものではありません。予算承認権を持っているアメリカの議会の軍事委員会の超党派有力議員の提言として、非常に重い意味を持つと思います。

 防衛大臣の認識を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、神風委員長代理着席〕

北澤国務大臣 おっしゃるとおり、極めて重要な地位にある方の提言でございますので、我々も、ただ単に米国の議会の発言であるということで事を済ますわけにはいかないというふうには思っておるわけであります。一方また、議会と米国政府との間の隔たりも極めて大きいようでありますので、ここのところは冷静に推移を見定めてまいりたいというふうに思っております。

 ただ、そこで、レビン上院軍事委員長の提案は、一つの問題として、普天間を嘉手納に統合するということで、依然として沖縄の中に代替地を求めておるということでありますので、この点についてどういう思いがあるのかというふうなことも我々は注意深く見なければならぬというふうに思っております。

 一方、せっかくの機会でありますから少し丁寧に申し上げますと、三つの問題点があるというふうに私は思っております。騒音の増加、速度の遅い回転翼機と速い戦闘機を共同運用することの安全性の低下の問題、それから三番目に、有事等における混雑による基地機能低下の問題などがあるというふうな認識は、ひそかに頭の体操をさせていただいておるわけでありますが、今後とも米議会と政府との協議を見守ってまいりたい、このように思っています。

赤嶺委員 まさに防衛大臣がおっしゃったように、辺野古の新基地建設を取りやめる一方で、嘉手納統合案を蒸し返すものになっています。空軍と海兵隊の軍の運用上の問題じゃないんですよ。嘉手納統合案というのは、かなり怒りに満ちた、このことがどんな怒りを沖縄で呼び起こしているかということをぜひ認識していただきたいんです。

 ただ私は、問題は、今度の提言は何のための提言であったかということをもう一度見る必要があると思います。

 提言は、二〇〇六年に再編実施のための日米のロードマップが署名されてから多くのことが変わったと述べて、幾つかの計画にかかわって多額の経費の増大が見込まれているが、今日の厳しい財政状況においては負担不可能だと財政の問題を述べているわけです。その上で、高額なキャンプ・シュワブへの代替施設の建設は取りやめ、それによって浮いた予算を新たな計画に投入できるよう、日本政府と交渉して新たな費用負担の取り決めをつくることを提案しております。これが提言の中身であります。

 大臣は、この点、承知しておられますか。

北澤国務大臣 この提言をまとめて出される前に、防衛省においでをいただいて会談いたしましたが、そこまでのお話はございませんでした。

 ただ、この提案については、米政府が明確にこれを拒否する発言をしておりますので、先ほども申し上げましたように、我々がこれ以上中身についてコメントをしていくのは差し控えるべきではないかな、こんなふうに思っております。

赤嶺委員 レビン委員長が提案をして、先ほど北澤防衛大臣も事実上ロードマップの破綻をお認めになりました。レビン委員長の提言の中に、新たな費用分担の取り決めというのは、恐らく防衛大臣と会われたときにそういう話があったんじゃないですか。

北澤国務大臣 実は、私も初めてお行き会いしたんです。同行したウェッブ議員とは何度かお行き会いしておるわけですが、なかなか味のある方で、風貌を見ていただくと、眼鏡をこの辺のところにつけて、私も幾らかカメの甲か年の功か重ねておりますが、なかなか真意を読み取るのは難しかったんですけれども。

 日本政府の財政についての見解は全く述べておりません。ただ、震災が極めて大変であるなというような発言をされておりました。ただ、そうすると、今度は米側の財政事情の問題になってくると、これは全くもう米側の事情になるわけであります。

 一昨日も参議院の外防委員会で、私は、日米の間でこの問題については五月二十八日の日米の合意がすべてでありまして、今言われたようなレビン委員長の報告等を勘案した中で、これが最高だ、こう言っているわけではなくて、日米の中においては、ベストだとかベターだとかいうわけではなくて、オンリーワンだというふうに申し上げております。

    〔神風委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 さっき破綻を認めておきながら、日米の合意が唯一だと言ってみても、もう始まらないですよ、北澤大臣。やはり、ここは国会に正直な答弁をしていくことが今求められております。

 多額の追加経費が必要になっているのは、海兵隊のグアム移転の方なんですね。繰り返し報道もされてきましたが、現在の日米合意は百二・七億ドル、これを大きく上回る約百五十億ドル以上もの経費が必要になっているということがこれまでのGAOの報告書や米軍関係者の発言などで指摘されております。一・五倍ですよ。

 昨年来、アメリカは日本政府に対してその一部を負担するよう求めておりました。合意には至っておりません。そこで、辺野古の代替施設の建設を許してやるかわりにグアムの追加負担には応じろというのが今回の提言の中身であります。提言は、必要なことは、我々があらゆる機会を通じてアメリカの納税者への不必要で賄い切れない負担を避けることだ、いわば財政負担をどのように切り下げていくか、こういう中身になっているわけです。アメリカ国内の基地建設にもかかわらず、アメリカの納税者の負担を軽減するために、追加費用はあくまで日本政府に負担させるというものです。

 防衛大臣は、追加負担について去年の九月、国会答弁で、アメリカの領土のインフラで、独立国同士の協議になかなかなじまないと否定的な立場を表明されておられました。この立場は今も今後も変わりませんね。

北澤国務大臣 当初は、米軍の兵士そして家族がグアムに移動をする、そのインフラを整備するということで決まっておるわけでありますから、それ以上のものについては我々がそれを負担する義務はない、このように承知していることを先ほどおっしゃられたような言葉で述べたわけであります。

赤嶺委員 今回の提言で、提言の中身にあった辺野古にかわる嘉手納統合案、先ほども申し上げましたけれども、騒音被害の軽減という約束を何度も裏切られてきたのが嘉手納の町民です。既に四月二十八日には、深夜早朝の飛行差しとめと騒音による損害賠償を求めて、国内最大規模と言われる二万二千五十八人の原告団を擁する第三次嘉手納基地爆音差しとめ訴訟を起こしています。辺野古も実行不可能なら、嘉手納も実行不可能であります。

 結局、今回の提言でいきますと、普天間の危険性は放置され、そしてグアムへの新たな財政負担だけは負わされるというのが今度のレビン提言の本質じゃないかなと。もう書いてあるわけですから、新たな財政負担の枠組みをつくるためにこういう方法をやるんだというのが。ここは絶対に我々としては受け入れることができないと思います。

 米軍再編にかかわって、さっき大臣が時期のおくれをおっしゃっておりました空母艦載機の離発着訓練、これの恒常的な訓練施設、ロードマップでは、「二〇〇九年七月又はその後のできるだけ早い時期に選定することを目標とする。」こういうふうになっていましたが、あれから二年近くが経過した今も選定できていません。

 この問題で、今週に入って以降、訓練を鹿児島県西之表市の馬毛島で実施する方向で最終調整に入ったということが報じられております。報道によると、大臣自身が馬毛島で実施できるか検討するよう指示していると報じられておりますが、どういう指示をされたんですか。

北澤国務大臣 これはロードマップで、既に申し上げたとおり、二〇〇九年までにはこれを整備する、こういうことであったわけですが、このことについての積み残し案件として、防衛省としては真剣に対応しなければならぬということで指示はいたしました。特定の場所を指して指示をしたという事実はございません。

赤嶺委員 昨年十二月にも馬毛島という報道があって、そのときにも、種子島と屋久島の一市三町でつくる米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会は訓練反対の要望書を防衛省に提出いたしました。にもかかわらず今回またこのような報道がされたことに対して、会長を務める西之表の長野市長は、これまで数回にわたり政府に対し反対の意思表示をしてきているが、何も言ってこない、報道により唐突にこのような話を聞くということに対して大変怒りを感じると述べています。一市三町で直ちに反対の意思確認をして、我々の反対の意思は何ら変わることはないと強い意思を持って表明していくと強調しております。

 やはりこうした地元自治体、住民の意思を重く受けとめるべきだ、このように思いますが、いかがですか。

北澤国務大臣 沖縄に過重に負担を強いておる現状を何とか解決していかなきゃいかぬということで、国内的な世論の中にも、全国で分かち合うべきであるというような議論があることはもう御承知のとおりだと思いますし、菅政権としてもこれを各都道府県知事にお願いしておるわけでありまして、今委員から、あれもだめ、これもだめというようなことを言われるのは、私は、沖縄の負担軽減をしていく中では余り生産的ではないのではないかと思います。

 しかし、防衛省が馬毛島を特定して準備しているとか、私が指示したとか、そういう事実は現在のところございません。

赤嶺委員 馬毛島に空母艦載機の訓練を移転するのは、どこから見ても沖縄の負担の軽減じゃないですよ。これが何で沖縄の負担軽減になるんですか。沖縄を口実に、地元自治体の頭越しに、米軍再編はやるんだ、空母艦載機の訓練の移転もやるんだという、アメリカに幾ら訓練の代替基地を提供しても言うことを聞かない、そういうアメリカに物を言うべきですよ。

 この間、ウィキリークスが発表されました。聞いても答えないだろうと思いますが、しかし、あのウィキリークスを読んで、私、大変びっくりしたんですよ。なぜなら、私が委員会で取り上げてきた、海兵隊のグアム移転の八千人、家族九千人、この実数はどうなんだということについて、皆さんは答えませんでしたが、ウィキリークスは、実際は見かけ上の数字としてああいう数字を発表したと言っている。私は、そういう発表だったんじゃないかということを自公政権時代から言ってまいりました。

 また、ロードマップが発表された五月二日に私は質問主意書を出しまして、何でグアムに高速道路、軍用専用道路をつくる必要があるんだと、余りに不思議に思って質問をいたしました。これは、今度のウィキリークスの中では、日本の負担を低く見せるために、分母をふやすために、アメリカとしては要望していないんだが日本政府の要望で入れたものだ、このようになっておりました。

 全部私が委員会で取り上げてきたことが真実で、皆さんが答弁をごまかしてきた。こうやって、米軍再編を沖縄県民の負担の軽減という、これも口実ですよ。実際には、沖縄への新たな基地の建設、沖縄の基地の恒久化で、アメリカべったりの日米合意をごまかすためのものであった。

 米軍再編は崩壊ですよ。もう崩壊寸前ですよ。今度開かれる2プラス2は、ロードマップで決めたことの合意の実施というのにはとても至りません。米軍再編合意、ロードマップを撤回して日米交渉をやり直すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

北澤国務大臣 余りにも見解が違い過ぎまして、どういう御答弁を申し上げればいいのかと今迷っておりますが、日米合意は現実に存在し、それを実行するための両国の努力は続けなければならぬ、こう思っております。

赤嶺委員 余りにも見解が違い過ぎるのは、これまでもそうでした。そして、私の追及が当たっていて、皆さんがごまかしていたということは疑いようもなく、あのウィキリークスの中で出された公文で明らかになっております。

 いつまでもうその説明を、ごまかしの説明を続けるのではなくて、ロードマップは撤回すべきである、沖縄への県内基地の建設は許されない、新たなグアムへの基地の費用負担は認められないということを申し上げまして、質問を終わります。

平野委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 最初に外務大臣に尋ねます。

 去る五月十六日、宜野湾市が、津波などの災害時に住民が基地内の道路を通って避難する現地実施協定を外務省沖縄事務所に申請をいたしました。東日本大震災で津波警報が発令された際、高台方面へ向かう車両が渋滞をし、市民の避難が大幅におくれたことが背景にあります。すなわち、軍事基地によって住民の避難が阻まれるのであります。災害時における住民の基地内立ち入りは、日米合同委員会でも合意されております。

 宜野湾市と米軍の協定締結実現に向けて、大臣の強い決意をお聞かせください。

松本(剛)国務大臣 委員御指摘の申請については、私も報告を受けているところでございます。この後、宜野湾市と現地米軍当局との間で交渉が行われて協定が作成をされる、こういう運びになってまいりますが、外務省としてもぜひ支援をいたしてまいりたいと思っております。

 委員がおっしゃったように、まさに災害時の協力というんでしょうか、対策の案件でもありますので、よく理解をしていただけるように、そして、災害時はあらゆる考えられる準備をして、あらゆる協力を得るような形をとるのが望ましいと私自身も思いますので、そのように努めたいと思っております。

照屋委員 ぜひ力強いバックアップをお願いいたします。

 防衛大臣にお尋ねいたします。

 去る四月二十八日、大臣はアメリカの上院軍事委員長のカール・レビン氏と会談をしております。その際、膠着状態にある普天間飛行場移設問題について、仲井真知事は問題の本質を理解している、率直な意見交換をしてうまく解決できるようにしたいと述べたようであります。

 大臣がおっしゃる問題の本質とは何か、何を根拠に仲井真知事がその本質を理解していると思うのか、お聞かせください。

北澤国務大臣 私もレビン委員長と会談したときの言葉を一つ一つ全部記憶しているわけではありませんが、せっかく先生からの御質問でありましたので少し調べさせましたところ、琉球新報の四月二十九日の朝刊の記事の中にこういうことが書いてあります。

 言った言わないとか中身が違うとかということよりは、私と仲井真知事はさまざまな話をいたしました。前撮りのフルオープンの中で議論していることと、また二人だけで真剣な議論をするということ、中身について、それは違いますよ、こっちとこっちは違いますよというような話ではないんですけれども、この本質という意味でいえば、まず普天間の危険性を固定化してはいけない、これだけは本当に意見が一致しているんです。ではそのためにどうするかということになると、方法論において県内というようなことになるわけでありますが、ともに真剣にこの危険な基地の返還を一日も早くなすべきだという意味では非常に意見は一致している、このように思っております。

照屋委員 北澤大臣は、五月七日に来沖をされ、仲井真知事と会談をしておりますが、その際、仲井真知事から普天間飛行場の県外移設を強く求められたのではありませんか。

北澤国務大臣 そのとおりであります。

 強くというのがどのぐらいの尺度かはわかりませんけれども、かなり親しくさせていただいております中でも、仲井真知事は、県外を検討してくれ、日米合意は見直してくれ、こういうことを公式におっしゃっておられます。

照屋委員 その際、大臣が先ほどおっしゃっておった、普天間飛行場の固定化があっちゃいかぬ、普天間飛行場は非常に危険だ、固定化があっちゃいかぬということは、同席をした与世田副知事からもお話がございましたか。

北澤国務大臣 与世田副知事は会談の後半部分で知事から指名をされて、彼も就任して日が浅いものですから、ある意味おさらいのようにずっと全般的な経緯をお話しになって、主要な趣旨はそういうことでありました。

照屋委員 大臣、くどいなと思われたら私の本意じゃありませんが、五月八日の那覇市内における記者会見で、大臣が、知事とは非常にいい話し合いができた、こう述べておられますが、いかなる具体的な内容をもって会談の成果があったと評価をしておられるのか、お聞かせください。

北澤国務大臣 個人的には非常にいい関係を構築してきた、こう思いながらも、この問題については真正面から対立をしておったわけでありまして、そういう中で、今回、この固定化の問題について知事が極めて危機感をお持ちになっておるということから、私は、本筋のところで同じ認識を持っておる、そのために、何とか二人の間で解決の道を探り出せるのではないかというような思いを、私は一方的に持ったわけでありますけれども、そういう意味で知事と共有する部分があったということについて表現をしたというふうに思っております。

照屋委員 馬毛島への陸上空母離着陸訓練の移転の話、先ほど共産党の委員から質問がありましたので重複を避けますけれども、ちょっと気になるのは、大臣が五月七日に来沖をされて仲井真知事にほのめかしたという新たな負担軽減策の一つや二つの中に、もしかしたら馬毛島への嘉手納基地からの戦闘訓練移転も含まれているのかなと私は個人的に思うんですが、まだ確定していないともおっしゃっておりますが、よかったら、一つや二つの内容をお話しいただけませんか。

北澤国務大臣 沖縄の訪問を終えて、帰り際に記者のぶら下がりの中で言ったことは記憶しておりますが、みずからも、ちょっと余計なことを言ったもんだなと、そんな反省はあるわけですが、当時から記者たちの反応も、馬毛島とかそういうので、なぞかけみたいな話ですから、そういう問題意識は全く彼らは持っていなかったんですが、つい先日の共同通信の配信以来、これでしたかと言ってきますが、これではないよと言い返してはおるわけであります。

 ただ、私は、負担軽減という面から見れば、FCLPの場所を特定すれば、そこに訓練移転の幾つかは配置できるのではないかというようなことは、形状がどうかというようなことももちろんありますけれども、そういうことはひそかに考えてはおるわけでありまして、そうかといって、これが馬毛島で事が進んでいるということでは全くないということだけは申し上げておきます。

照屋委員 外務、防衛の両大臣にお伺いをいたします。

 去る四月二十八日に、国頭村安波区の評議委員ら十六名が署名押印した要望書を携え、同区の代表四人が上京したようです。その際、防衛、外務両省の幹部に、沖縄自動車道の延伸などを条件に、普天間飛行場の代替施設受け入れを伝えたとの報道がございます。

 両大臣は承知をしておるかどうか、まず第一点。そして、その際、滑走路の長さや配置を示した具体的な計画書なども両省の幹部に手交したようでありますが、それはごらんになったんでしょうか。

 まず、外務大臣。

松本(剛)国務大臣 御指摘の計画については、五月の十七日に国民新党の下地幹事長が私のところにおいでになられまして、連休中の幹事長の訪米、それから辺野古の状況、さらには嘉手納統合案、そして今お話があった案について、こういうものであるということでお話をされました。

 私自身も、国民新党の幹事長でいらっしゃいますけれども、沖縄出身の議員のお立場から、さまざまな角度での御議論というふうに理解をしてお話を聞かせていただきましたが、政府としては昨年五月の合意を着実に実施する立場であるということも、かねてから申し上げてまいりましたし、その点は御理解をいただいているもの、このように思っております。

北澤国務大臣 私は、一切、その件についてお話を承ったこともないし、また、そのような書類も見たことはございません。

照屋委員 両大臣にお聞きをいたしますが、私が関心を抱いているのは、そのような計画書、要望書が両省の幹部に、上京の上、渡されたのかどうか。そういう事実関係をお聞かせいただきたいと思います。

北澤国務大臣 私も承知しておりませんし、防衛省に対して、そういう要請も一切ございませんでした。

松本(剛)国務大臣 個々に、どういう方がどこにいつ当省に来られたかということは、私から必要に応じてお話をさせていただきますが、基本的にはお話をすることができないものも多くあるということを御理解いただきたいと思います。

 御指摘の件については、先ほど申し上げたように、私、外務大臣のところに国民新党の下地議員が来られて説明をして、今お話がありました、その判こなんとかというのは私はそのとき拝見をしておりませんけれども、そういう計画があるという話はお聞きをさせていただきました。

照屋委員 最後に、両大臣に、国頭村、いわば沖縄でも北部山原の過疎地域の振興というのは普天間基地の問題とは別個の問題であって、その振興策をちらつかせて、そういう利権構造のわなにはまって、普天間飛行場問題を解決してはならないと私は思います。そして、国頭村の宮城村長も強く反対を表明していることを申し添えて、質問を終わりたいと思います。

平野委員長 外務大臣、退席していただいて結構でございます。

     ――――◇―――――

平野委員長 次に、内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。北澤防衛大臣。

    ―――――――――――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

北澤国務大臣 ただいま議題となりました防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 説明に先立ちまして、こういう機会をお与えいただきました委員長、理事、委員の皆さん方に心から感謝を申し上げる次第であります。

 自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、自衛官定数等の変更、防衛審議官の新設、防衛医科大学校の看護師養成課程の新設、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定等の実施に係る措置等について所要の規定の整備を行う必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省設置法の一部改正について御説明いたします。

 第一に、自衛隊の部隊等の改編等に伴い、自衛官の定数を三百人削減することとしております。

 第二に、政務三役の補佐体制に万全を期すため、防衛審議官を新設することとしております。

 第三に、防衛医科大学校に四年制の看護師養成課程を新設することとしております。

 次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。

 第一に、陸上自衛隊の部隊の改編に伴い、即応予備自衛官の員数を十二人増加することとしております。

 第二に、防衛医科大学校に新設する看護師養成課程を修了した者に対して六年間の勤続努力義務を課すとともに、当該期間内に離職した場合には償還金を課すこととしております。

 第三に、訓練、国際緊急援助活動等の際にオーストラリアの軍隊に対し、及び国際緊急援助活動の際にアメリカ合衆国の軍隊に対し、自衛隊が物品及び役務を提供することを可能とすることとしております。

 最後に、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部改正について御説明いたします。

 これは、航空機乗員に支給する航空手当について、その上限額を引き上げることとしております。

 そのほか、関係法律の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

平野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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