衆議院

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第5号 平成25年6月4日(火曜日)

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平成二十五年六月四日(火曜日)

    午後二時三十分開議

 出席委員

   委員長 武田 良太君

   理事 今津  寛君 理事 大塚  拓君

   理事 薗浦健太郎君 理事 中山 泰秀君

   理事 武藤 容治君 理事 長島 昭久君

   理事 阪口 直人君 理事 遠山 清彦君

      岩屋  毅君    大野敬太郎君

      勝沼 栄明君    門山 宏哲君

      岸  信夫君    左藤  章君

      笹川 博義君    東郷 哲也君

      中谷 真一君    野中  厚君

      浜田 靖一君    武藤 貴也君

      大串 博志君    篠原  孝君

      渡辺  周君    今村 洋史君

      中丸  啓君    伊佐 進一君

      畠中 光成君    赤嶺 政賢君

      玉城デニー君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   防衛大臣         小野寺五典君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      城内  実君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  種谷 良二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  黒江 哲郎君

   安全保障委員会専門員   湯澤  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月四日

 辞任         補欠選任

  大串 博志君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺  周君     大串 博志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)


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     ――――◇―――――

武田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官種谷良二君、外務省大臣官房参事官山田滝雄君、防衛省防衛政策局長徳地秀士君及び防衛省運用企画局長黒江哲郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤容治君。

武藤(容)委員 自由民主党の武藤容治です。

 ちょっと自己紹介を兼ねて、国内で最も古い、長い歴史を持つ航空自衛隊の岐阜基地が選挙区にある議員であります。お見知りおきをよろしくお願いいたします。

 三年間、ちょっと落選をしていましたときに、いつも、C2がまだプロトタイプの段階で飛んでいる姿に励まされて、また来させていただくことができましたけれども、今回戻らせていただいて、国家の最大の福祉と言われるこの安全保障委員会に配属を御下命いただきまして、その責任の重さを痛感しているところであります。

 また、小野寺大臣におかれましては、防衛大臣という崇高な任務につかれ、先週もシンガポールまたグアムと大変強行なスケジュールをこなされていますことに、そして愚直なまでに任務を遂行されている姿を拝見させていただきまして、心から深甚なる敬意を表明させていただきたいと思います。

 今回、自衛隊法の一部改正ということで、まずもって、遠い異国の地のアルジェリアで亡くなられました方々に対して改めて哀悼の意を表するとともに、思い返せば、二〇〇一年ですけれども、九・一一がありました。私も、あのときにちょうどニューヨークに行きまして、十数年ぶりに高校の親友に会いました。あの事件で彼は亡くなったわけですけれども、そんなことで、今も同胞が世界各地で活躍している中で、こういう理不尽な武力で大変な悲劇が起きたことに改めて怒りを感じる次第であります。

 ということで、今回の事案につきまして、自衛隊法の改正については速やかな法的整備をぜひ私自身もお願いしたいと思いますし、皆様方の御努力に改めて感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 ついては、きょうは、せっかくこういう質問の機会をいただきましたので、法案について幾つか御質問をさせていただきます。

 まず一つ、八十四条の三ですけれども、今回、安全要件の規定の明確化ということで、現行法では、安全について、これが確保されているときということを、改正案では、輸送を安全に実施できると認めるときという形に変更されました。

 与党PTでは、輸送が可能と認めるときという文言であったので、どちらの表現がいいのかなという気はしていましたけれども、この辺について、与党PTの議論というものが、何かそういう意味合いが、いろいろな形で議論があったと思いますけれども、そのときに議論をされてどのような基準を下されたのか、ちょっとこの辺についてまず御質問させていただきたいと思います。

黒江政府参考人 輸送の安全の要件の考え方についての御質問でございますけれども、御指摘のとおり、与党PTにおきましては、この要件につきまして二つの考え方が提示されました。

 まずは、現行規定を維持すべきである、そういう御意見がございました。この御意見につきましては、仮に安全が確保されないような場合に、あえて危険を承知で輸送を行うということになりますと、邦人に事故等が起こる事態が起こりかねない、そもそも安全に在外邦人をお運びするということ自体が成り立たなくなるということがありますので、その種の現行規定の趣旨をそのまま維持すべきである、そういう御趣旨であったというふうに我々は理解しております。

 他方、現行規定の表現を改めるべきである、そういう御意見も確かにございました。この点につきましては、現行規定のままの書き方ですと、あたかも民間機が行けるところにしか自衛隊は行かないといったような、全く危険がないところにしか自衛隊が行かないという誤解を招くのではないか、そういう御意見であったというふうに理解をしております。

 そういった各種の御意見を踏まえまして、最終的に政府案で書きましたのは、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について防衛大臣と外務大臣が協議をします、その結果、大臣が当該輸送を安全に実施することができるというふうに判断される場合に行いますと。

 この趣旨は、最初に申し上げました、本来、邦人を安全にお運びするということはもちろん確保はいたします、他方、危険が存在するということは認めます、ただ、それに対するきちんとした方策を手当てするんです、その上で行うんです、そういうことを、実質的な中身は変えずに書き下して意味を明確にした、そういう趣旨でございます。

武藤(容)委員 いろいろな形での議論というのがあって、私は、今の黒江局長の話を聞いても、やはり現行法よりもちょっと幅を広げて、ある意味で、覚悟を持って邦人救出に当たるというところが、多少、文言が変わったところの意味合いが入っているのかなと思いますけれども、もちろん、邦人の安全確保というのは第一前提でありますし、方策をつくるという意味で、方策の中で幅を少し広げていくという形での認識として受けとめてよろしいでしょうか。

黒江政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたとおり、今回の規定の明確化という趣旨の中では、前回までのといいますか、現行法の中身と実質的にこれを変更するものではない、その上で、よりわかりやすくプロセスを書き下した、そういう趣旨でございます。

武藤(容)委員 わかりやすく。わかりやすく承諾いたしました。

 そして、幾つかあるんですけれども、前の百四十二回の外務委員会の答弁というのが資料にも入っていますけれども、基本的には相手国がある話の中ですから、相手の国が日本の自衛隊出動を承認した時点から自衛隊の安全確保の責任を負うということで安全を確認されるという、もともとの外務省答弁という形があったと思います。

 今回の改正では、その辺については変更があるのか、いかがなんでしょうか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、在留邦人の安全確保を含めまして、ある国の領域における治安維持は、一義的には当該領域国の責任であるというふうに理解されております。

 自衛隊が領域国の同意を取りつけて在外邦人等の輸送を実施する際にも、一義的には領域国が自衛隊の安全確保の責任を負う、そういうことで、百四十二回国会において、当時の外務省の領事移住部長より答弁を申し上げたものだというふうに理解しております。

 この点は、今日においても変わっておりません。今後も、自衛隊の派遣という事態に対処します場合は、外務省としては、領域国ときちんと連絡をとって協力関係を確保していきたい、さように考えております。

武藤(容)委員 ありがとうございます。

 ただ、今回改正において、いわゆる車両というものを使った輸送ということを対象にされました。前回、参考人の招致で生々しいお話もありましたけれども、やはり航空機または船舶という方法とまた違った意味で、現地で活動をする自衛隊が標的とされる可能性が増すということも、ある意味で私どもとしては想定をしていかなくてはいけないんだろうと思います。

 外務大臣から依頼があって任務を遂行する防衛省の方々が、これまでの空路とか海路の輸送の安全性の確保以上に、いわゆる情報というものの収集を初めとして輸送の安全確保というところについては、その判断あるいは突発的事態へ対処する能力というのは、非常に厳しい、必要なものになってくるんだと思います。

 これについて、今回の法案改正に当たって、防衛省と外務省の緊密な情報共有、あるいは協力体制というものはどういうふうな御見解でいらっしゃるのかをお尋ね申し上げます。

黒江政府参考人 御指摘のとおり、今般の自衛隊法の改正によりまして陸上輸送が可能になるわけでございますけれども、これは、航空機や船舶による輸送と比べまして、現地の陸上における活動の地理的範囲が広がるということでございます。

 したがいまして、どのような危険が予測されるのかといったことや、危険を把握するという観点から、現地当局、現地の当該国の治安能力というものがどのくらいのものであるのか、あるいは、在外公館を通じてできるだけ詳しく当該国の治安状況を把握するといったこと、これは大変に重要なことでございます。

 また、予測される危険を回避するということからしますと、現地当局に対して、警備強化といったことを申し入れる余地があるのかないのか。あるいは、そのための調整というのをきちんとできるのかどうか。さらに、自衛隊自身が移動する際の経路について、最善の経路、あるいはその手段、これは陸上輸送だけではなくてヘリ等も含まれますけれども、そういった手段、方法の選択といったことで最善のものをとらないといけないということが大層大事になるということでございます。

 また、御指摘いただきました突発事態への対処ということについても、これは実際に派遣される部隊が現地で戸惑わないように、あらかじめさまざまなケースを想定しまして、それぞれのケースでどこまでの武器使用を行えるのかといったことを教育訓練等を通じて徹底するということが必要になります。

 さらに、これも御指摘のとおりと我々は認識しておりますけれども、当然のことながら、外務省さんとの間で緊密な情報共有、さらに連携といったものをとるということが死活的に重要になるというふうに認識をいたしております。

山田政府参考人 防衛省と重複いたしますけれども、外務省といたしましても、今回の改正によって陸上輸送ということになりますと、行動範囲が広がり、またいろいろな要件も加わってくるということで、在外公館を通じまして、派遣先国における治安、インフラ等の綿密な情報収集を行い、また、派遣先国政府との緊密な協力関係を確立して、防衛省ときっちり協議、協力してまいりたいというふうに考えております。

武藤(容)委員 情報収集とか利用分析というのは、本当に多くの課題が今まだあるところだと思います。

 我々自民党の中でも、外交部会が外交力体制強化を求める決議もこの前やらせていただきましたし、また、きょうこの安全保障委員会にも御出席ですけれども、岩屋調査会長を初め中山防衛部会長に大変御尽力をいただきまして、防衛大綱の新たな提言ができたところであります。

 その中にも、今回、両省のいろいろな情報共有という形がありますけれども、私自身は、やはり国家安全保障会議、NSCが早く設立をされて、しっかりとした形での情報というものが非常に大事に管理をされるということが大変大事な緊急課題だというふうに認識をしております。

 ぜひまた、防衛省さん、外務省さん、後押しをさせていただきますので、ひとつよろしくお願いいたします。

 自衛隊の在外邦人輸送というものについて、今のお話の中で、大変ある意味で慎重に、そしてまた迅速に対処するということなのだろうと思いますけれども、基本的には、相手国が受け入れたということが大前提であります。

 いろいろな外国とおつき合いをしなきゃいけないんだろうと思いますけれども、承認はしていただいたとしても、おい、ちょっとこれは大丈夫な国なのかなとか、あるいは、はなから否認という形でのケースというものが当然想定をされるというのが、今、世界を駆けめぐっている日本の人たちが一生懸命頑張っているわけですから、今回、改正案というのはなかなかそこまで対処はできないのかもしれませんけれども、どのような対応をとられているのかを御質問させていただきます。

黒江政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、自衛隊がこの条文を用いまして他国の領土で活動するということのためには、派遣先国の同意が当然必要でございますし、また、邦人の輸送というのを安全に実施できる、そういう要件が必要なわけでございます。

 他方、御指摘いただきましたように、現地の治安当局が必ずしも治安を十分に確保できない、あるいは、そもそも当該国から同意をいただけないといった場合には、当然のことながら、今回の改正があったとしても、自衛隊を当該国に派遣することはできないということでございます。

 それ以上の点につきましては、今後の検討課題であるというふうに考えております。

武藤(容)委員 確かにこの法案というのは対応が難しいことは私は理解をさせていただきますけれども、やはり現実論というところから目を背けてはいけないんだと思います。今後の問題として問題が課題提起されたということについては、我々自身も、そういう意味で何とか善処していきたいというふうに思っております。

 そういう意味でいうと、大事な問題というのはこの武器の使用基準の修正でありますが、基本的に、武器使用権限というのは現行の憲法解釈を前提としております。いわゆる自己保存のための自然的権利の範囲内ということですが、一方で、やはり今の局長のお話でもありますが、この法案より乗り越えて、例えば救出ということは現状ではできないわけですけれども、救出や、あるいは今後の在外邦人の保護といった任務の拡大、その他の自衛隊の海外における活動を考えていった際に、海外における自衛隊の武器使用権限の拡大というのはやはり重要な検討課題であると思っています。

 そもそも、そういうような形ですので、現場の指揮官に過大な負担を与えてはいけないんだろうと思いますし、そのような制度をつくることがやはり我々の大事な使命であるのではないかと思いますが、これは大臣の方に御見解をいただくということでよろしいでしょうか。

小野寺国務大臣 日ごろ自衛隊の活動に御理解いただきまして、ありがとうございます。

 今般の改正では、基本的に派遣先国の同意を得て、陸上輸送を安全に実施できることを前提としており、万一不測の事態が生じたとしても、自己保存型の武器使用権限により、事態に応じた適切な対応を行い得るものと考えております。

 また、防衛省において、さまざまなケースへの対応を検討し、派遣された隊員が現場で困ることがないように、法改正とあわせて、武器使用のあり方を含め、不測の事態への対処方法の徹底を図る考えであります。

 一方、在外邦人保護のための新たな任務を自衛隊に付与することや、海外で活動する自衛隊に新たな武器使用権限を付与することについては、国際法や憲法との関係など、各種の課題があると考えております。

 いずれにしても、在外邦人の安全確保や国際平和協力活動に関し、現場で無理をさせないようにすることが重要であることは御指摘のとおりでありますので、今後とも必要な制度の見直しは不断に検討を行っていきたいと思っております。

武藤(容)委員 大臣の前向きなお気持ちというのは本当にありがたいと思います。

 今回、自民党の防衛大綱の中にも、邦人保護あるいは輸送能力の強化ですけれども、任務遂行のために、やはり武器使用権限付与については、「検討を加速し、」という文言が入っておりますし、必要な対応をとることともされています。

 本当にいろいろな意味で自衛隊の現地の方々が混乱をしないように、責任を持って、命をかけてやっていただいているわけですから、それに対応させていただけるような、我々永田町にいる人間がやはり政治という形の中で使命を果たしていくということだろうと思います。

 例えば、今おっしゃられましたように、いわゆる国際協力という形の中でいうと、例えば海外における自衛隊の武器使用権限についてですが、相手国との間で自衛隊員に攻撃を行う者が単なる犯罪集団と認定できる場合、この場合には、いわゆる自己保存のための自然的権利を備えた性格の武器使用というものではなくて、国または国に準ずるという、憲法が禁ずるところの武力の行使に当たらないものとして解釈することは、ある意味で今後検討する余地があるのではないかと思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。

黒江政府参考人 武器使用権限に関します憲法との関係についての御指摘だというふうに私は理解をいたしました。

 今回の改正案も基本的に変わらないわけですが、現行法で認められております自己保存型の武器使用の場合には、自己保存型の武器使用を要件に基づいた形で行っている限りは、相手方が結果的に国または国に準ずる組織の場合であったとしても、憲法九条の禁ずる武力の行使には当たらないということでございます。

 そういう意味で、今回の改正法案の中でも、自己保存型の武器使用という考え方を維持したわけでございます。

 他方、自己保存型を超える武器使用権限を付与しますと、これは、相手方が御指摘のとおり国または国に準ずる組織であった場合には、憲法九条の禁ずる武力の行使に当たるおそれがあるということになるわけでございます。

 法制度として定めます際に、相手方が国または国に準ずる者であるのかどうかというところを切り口に判断しますと、現場でそれを区分するといいますか識別するのが非常に難しい、そういう難しい論点を含むのでございます。そういう意味で、現行法のような定め方をしておるということでございます。

 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、この種の課題については不断に検討が必要であるというふうに我々は認識をいたしております。

武藤(容)委員 不断の検討でぜひ前向きに物事が進むように、ひとつよろしくお願いします。

 私も憲法審査会に今出ていますけれども、国に準ずる者の定義自身がまだなかなかはっきりしていない段階でもありますので、いずれにしても、現場の感覚というものがやはり必要なんだろうなという気がしています。

 今のお話の中でも、やはり、十分にこういう公的な根拠というものに裏づけされない中での隊員の方々の行動というのは、心身一体となった活動という意味では、なかなかかけ離れていることだろうと思います。また、先ほども局長からおっしゃっていただいておりますけれども、やはり平生の訓練というものがいざというときのためには大変効用のあることだと思いますけれども、やはり、こういうことも法的に裏づけられていないと、任務の成功というものにはなかなかつながりにくいだろうというふうに私自身は認識しますけれども、防衛省の御認識はどんなものなのでしょうか。

黒江政府参考人 訓練の重要性についての御指摘でございます。

 確かに、今回、改正法案を仮にお認めいただきますと、陸上輸送という新たなミッションが追加されるわけでございます。また、それに伴いまして、武器を使用できる場所が広がる、あるいは対象者が拡大する等、さまざまな変更を伴うわけでございますけれども、こういったことを現場で隊員がきちんとできるというためには、御指摘いただいたとおり、平素から訓練を重ねる、事に臨んだときに適切な行動をとり得るというところまで隊員を訓練するということが大変大事になるということでございます。

 このため、先ほども申し上げました、予想されるさまざまなケースへの対応の仕方といったものをあらかじめ細かく検討して、その結果といったものを隊員に徹底して、現場で迷うことがないように努めたいというふうに考えておる次第でございます。

武藤(容)委員 そういう形でぜひ善処をしていただきたいと思います。

 この自衛隊法の改正というものについては、先ほども申しましたとおり、やはりアルジェリアの案件ということを受けて、陸上の輸送、また対象者を拡大するとか、あるいは安全の基準というものの意義をもう少しわかりやすくするとかいう形で、取り急ぎ、今回の教訓というものを、亡くなられた方々のためにもしっかり善処するという形だろうと思います。

 ただ、現実論で、私自身が思うに、ニューヨークの話じゃありませんけれども、世界の至るところで、安全が確保されないときにこそ、海外で危険に陥った我が同胞、日本人を、自衛隊がいかに迅速に、救出を含んだ形で保護できるという形に持っていくかということが、やはり我々政治家の使命だというふうに認識をしています。

 そういう意味でいうと、憲法という大変大きなハードルがあるわけですけれども、集団的自衛権の行使、あるいはテロに対する武器使用と武力行使の区別等々を明確にする一つのサポートとして、先ほど来ちょっと私が申しましたけれども、例えば安全保障基本法というものが、我々の党の中でも話が出ています。やはりこういう形で、不足部分を補う形で、ある意味で救済措置をつくっていくということを早期に制定すべきじゃないのかな、そんな思いでおりますけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。

小野寺国務大臣 御指摘をいただいておりますいわゆる国家安全保障基本法につきましては、我が国の安全保障に関する基本原則を定める法律を制定し、総合的に安全保障政策を推進していく必要があるという問題意識から、自民党内において議論が重ねられているということは承知をしております。

 今後の進め方につきましては、与党の議論を見守りたいと思いますし、また、最終的には政府全体で検討すべきものと考えております。

 他方、集団的自衛権の問題を含め、新たな安全保障環境において我が国の平和と安全を維持するために我が国が何をすべきかは、先般、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会が改めて立ち上げられ、前回作成された報告書を踏まえつつ、検討が始まったところであると承知をしております。したがって、政府としましては、集団的自衛権に関する問題に関し、まずはこの懇談会における議論を待ちたいと思っております。

武藤(容)委員 いろいろありがとうございます。

 私自身も、今本当に、憲法審査会に出ていて各会派の皆さんの御意見を承っていますけれども、いずれにしても、戦後六十八年という時代が経過をして、殊さら、冷戦が終結した後、国連という形の集団安全保障に関する動向というのも随分大きな変容を遂げた今だと思っています。

 もちろん、多国籍軍容認等々、いろいろあるわけですけれども、我が国が、国際社会という中での日本の位置づけというのは、経済大国、GDPでは三位になりましたけれども、やはりそこには、自由社会の最もすばらしく誇りを持つべき我が国として認識をした方がよろしいんだと思いますし、国際的な平和維持活動というところには、正直申し上げて、これからはどんどん積極的に我々は関与していかなきゃいけない立場になっているんではないかと認識しています。

 現行憲法、いろいろな形でさまざまなハードルはありますけれども、やはり一つは国際法規というのが、我が日本国憲法、現行法でも基本的には法治国家としてそのような形が憲法の中に入っていますから、そういう意味でいうと、そういうところの中で、やはり我々としては対処というものを新しい形で築いていくということも必要になるんだろうと思います。

 憲法前文は御存じだと思います、自分のことのみに専念して他国を無視してはならないとかいう形で入っておりますので、そういう中でいうと、今、世界のそういう大きな変容の中で、日本の責任をとるということでいうと、先ほど来申した安全保障基本法等々で新しい日本の国際貢献の形というのが、最前線で自衛隊の方が決して苦労なきように、スピーディーというのか、誇りを持って活動ができるような形というのをある意味でつくっていけるのが当然ではないのかなという気がしております。

 大臣には、いろいろお疲れのところ、本当に御苦労さまでございますけれども、そういう形で日本のあるべき姿というのを、これから防衛省の大きな任を持たれている中でぜひ構築をしていただけるように心から念じまして、私の質問をきょうは終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

武田委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 まず、小野寺大臣におかれましては、グアムそれからシンガポール、大変お疲れさまでございました。

 グアムにつきましては、大臣よく御承知のとおり、御視察をされた報道等を見せていただきましたけれども、やはり2プラス2でアメリカ側が在沖海兵隊の定員を九千人減らすということを約束しておりまして、これをしっかり実行していくことが沖縄の負担軽減につながるわけでございますが、何分、この九千人の定員減につきましては、グアムの施設整備が進まないと、なかなか目に見える形で沖縄の負担軽減にならないということでございますので、大臣が直接現地に行かれて精力的に推進方、努力をしていただいたことを、私も沖縄の公明党の責任者として大変感謝を申し上げたいと思います。

 また、シンガポールでの演説も大変すばらしかったと思っております。

 新聞報道では、防衛大臣としては異例の言及というような表現もありましたけれども、最近の一連の橋下徹共同代表による御発言は、私は、直接この委員会の今の審議に関係ありませんので論評は避けますけれども、やはり日本の国際社会の中での評価、評判というものに傷をつけたということは間違いないわけでございまして、やはり安倍政権の一閣僚としての防衛大臣が、ああいう国際会議の場で、そういう表明された見解に安倍政権はくみしないとはっきりと言っていただいたことは非常によかったな、こう思っているところでございます。

 さて、自衛隊法の改正案でございますけれども、先ほど来出ておりますとおり、輸送の安全の要件にかかわる規定の明確化が行われております。

 すなわち、現行法では、安全が確保されていると認めるときとされていたわけでございますが、本改正案では、「当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるとき」と書きかえられているわけでございます。

 私は、与党PTの一員として、この輸送の安全要件を残すように主張した一人でございますので、この改正案に全面的に賛成でございます。

 しかしながら、先ほどの武藤議員の質疑にもありましたとおり、PTの議論の中でも、他の議員から、安全なら自衛隊が行く必要はないのではないか、安全でないところで邦人保護、邦人輸送をするから自衛隊が行くのだという御意見も表明されておりました。

 そこで、PT案では、現行の輸送の安全要件を残すということと併記される形で、輸送が可能と認められるときという案も記されていたわけでございますが、最終的に、政府として、防衛省として、輸送の安全要件を残すことにしたわけでございます。この理由について、小野寺大臣から簡潔に御説明いただければと思います。

小野寺国務大臣 まず、ちょっとだけグアムのことについて触れさせていただきます。

 沖縄の負担軽減の中で、グアム移転というのはどうしても重要な役割であります。どの程度グアム移転が進んでいるか、あるいは米側がどのような姿勢でいるかということを直接行って話を聞くということは大切だなと思って、行かせていただきました。

 インフラ整備、特に港湾、それから、例えばヘリコプターの駐機場等の整備は、今、具体的に工事が始まっておりました。

 また、住宅地につきましては、今後、どの場所にするかというのは米側が今環境調査をしながら決めると思いますが、土地も、住宅用地もかなり広いところでありますので、きちっとした場所さえ決まれば建設は速やかに進むような、そういう印象を持ちましたし、現地の知事も、ぜひ一日も早く移転について私たちも協力したいというお話でありました。

 今後、米国の上院を含めた議会への働きかけも必要だなと思っております。

 さて、輸送の安全のことについての御質問がありました。

 御努力いただきました与党PTにおきましては、輸送の安全要件について、まず現行規定を維持すべきとの御意見がありました。

 これは、仮に安全が確保されないと判断される場合に危険を承知で輸送を行えば、邦人に事故等が起こる事態ともなりかねず、在外邦人の安全確保というそもそもの目的を達成することができないという、現行規定の趣旨を重視した意見というふうに理解をしております。

 他方、現行規定の表現を改めるべきという御意見もありました。これは、現行規定は、あたかも民間機での輸送が可能な程度に安全な場合しか自衛隊機を派遣できないという意味に誤解されることを懸念したということであります。

 これら二つの御意見を踏まえまして、今回政府部内で検討した結果、改正案では、輸送の安全の要件について、予想される危険を回避する方策をとることにより安全に輸送できるという、本来の趣旨をより明確かつ簡潔に表現する表現に改めて、その実質的な意味は変更しないということにさせていただきました。

遠山委員 大臣、ありがとうございます。

 次に、同じく大臣にお願いをしたいんですが、より具体的に、輸送の安全を構成する要素について伺いたいと思います。

 ある状況を指して安全であると判断をする場合には、それが恣意的あるいは主観的な判断に基づいた場合は、特に在外のオペレーションでは想定外の事態に直面する可能性がございます。もちろん、安全性の判断要素の中には、受け入れ国政府の同意や協力、あるいは想定される輸送ルート上の治安状況、あるいは自衛隊を派遣しようとしている国における武装勢力がいたとして、その活動範囲や武装レベル、こういったことが当然に含まれると私は思いますけれども、防衛省としてはどういった構成要素を判断基準として考えて安全性の判断をされるのか、御答弁をいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 今回の輸送業務は、基本的に、外務大臣からの要請ということで我が省の検討が始まるわけですが、当然、外交、防衛一体となりましてさまざまな情報収集をしっかりするということが前提であります。

 その中で、輸送を安全に実施することができるかどうかということに関して、例えば管制・保安施設、滑走路、埠頭など、航空機、船舶の航行に必要な施設の利用や車両の輸送経路の確保に問題はないのか、輸送手段である航空機等への攻撃等の危険を避けることができるのかといった点を総合的に考慮して判断することになります。

 今般の改正により可能となる陸上輸送については、航空機や船舶による輸送と比べ、現地の陸上における活動の地理的範囲が広がります。ですから、予想される危険を把握する観点から、現地当局の治安能力も踏まえつつ、在外公館等を通じて情報を得ること、そして、こうした危険を回避する観点から、現地当局による警備の強化に係る申し入れ、調整、最善な移動経路、移動方法の選択など、必要な方策をとることが一層重要になると考えております。

遠山委員 ありがとうございます。よく確認をできました。

 今回の改正の最大の変更点は、アルジェリアにおけます人質事件も踏まえまして、在外邦人の「輸送に適する車両」、そういう表現が法文の中で使われているわけですけれども、これを使う選択肢が加えられたことでございます。

 そこで、まず何点かまとめてお伺いをしたいと思いますけれども、事務方で結構ですが、まずこの在外邦人の「輸送に適する車両」と法文で書かれている車両とは、自衛隊所有の車両では具体的にどれを指すのかという点をお伺いしたいと思います。

 また、同様に、法文の中には、「借り受けて使用するもの」という表現がございますので、この車両を借りていいよ、借りて邦人輸送に使っていいということが明記をされているわけですが、これはどのような事態、場合に適用されるのか、具体的にイメージが湧くように御説明を願いたいと思います。

黒江政府参考人 自衛隊が使用します車両についてのお尋ねでございますけれども、まず、自衛隊の保有する車両ということで、改正案に規定しております輸送に適する車両の代表的なものでございますが、これは例えば、我々の保有します高機動車でありますとか、あるいは軽装甲機動車などがございます。これらを輸送に使用するということを想定いたしておるところでございます。

 また、御指摘のとおり、法文上では、自衛隊が車両を借り受けるということが予想されておるわけですが、これは、こちらから持ち込む車両だけでは輸送すべき対象の邦人の数が多くて間に合わないといったときには、当然現地で借り受けという形で車両を調達するということが必要になるわけでございます。

 そういった場合にも、例えば、先ほど申し上げましたような、こちらから持ち込んでおります軽装甲機動車で前を先導する、あるいはその後ろを護衛するというような形で、借り受けた車両を間に挟むような形で対応するといったことを現在想定いたしております。

遠山委員 それで、車両を借り受けて邦人輸送を行う場合について、少し細かいんですが、確認の意味も込めて。

 今の局長の御答弁にほぼ半分ぐらい答えが入っているんですけれども、当然、外国に行って、現地で車両を借り受けるということは、それで邦人を運ぶわけですけれども、その車両を運転する人、運用する人というのは、当然自衛隊員なのか、それとも、現地で車を借りるわけですから、現地の運転手つきで借りた方が、地元の道路の事情に明るいとか、いろいろな事態に対応できるということもありますし、一方で、外国人運転手に運転させる車に邦人を乗せて本当にいいのかという意見も出かねないわけでございます。

 その辺の、車を借り受けるのはいいんですけれども、それを全部自衛隊員で運用するという基本方針なのか、それとも、運転手とか、場合によってはバスガイドみたいな人を使う必要があるかどうかというのはちょっとわかりませんけれども、例えば水先案内人のように現地の地理状況に詳しい、あるいは、これはあってはいけないことですけれども、途中で襲撃をされたときに逃げる別ルートを知っている方を車両に乗せておく、これは運用上あり得る話ですけれども、この辺の整理はどのようにされているか、伺ってよろしいでしょうか。

黒江政府参考人 基本的にはただいま先生御指摘になられたとおりでございまして、借り受けます車両につきましては、これは当然のことながら自衛隊員が運転する場合もございますけれども、あわせて、現地で民間の役務を調達する、すなわちドライバー御自身もお願いをするということも当然ございます。(遠山委員「あり得ると」と呼ぶ)はい。

 また、これは当然、現地で自衛隊自身はさまざまな情報収集をやった上で行動はするわけでございますけれども、それでも足らざる部分というのが出てくる場合がございます。そういったところでは、現地の日本の大使館あるいは領事館の職員、さらには現地雇いの方、さらにはまさにその場で現地の方の知恵をおかりするといったさまざまなことが想定されますので、基本的に、先生がおっしゃったようなことをいろいろな形で我々としては総合的に能力を使わせていただきながら実施をしたいというふうに考えてございます。

遠山委員 ありがとうございます。大分イメージが具体的に湧きましたので、これで結構でございます。

 次の質問、これは大臣に伺いたいと思います。

 きょうはあえて配っていませんけれども、防衛省が今回の改正を説明するときに使っていたポンチ絵がございます。自衛隊による在外邦人等輸送のイメージというものでございますが、これに大体描かれているわけでございますけれども、邦人等の保護のために自衛隊が車両を用いる場合でも、自衛隊の車両あるいは借り受けた車両は、邦人が巻き込まれている緊急事態の現場そのものには向かわずに、これはどれぐらい近接しているかはおいておきまして、その近辺に設けられるであろう集合場所というところに直行して、そして、そこで保護対象者の到着を待つことになるわけでございます。

 保護対象者等が到着した後は、外務省の在外公館職員の協力を得ながら、スクリーニングやセキュリティーチェック、あるいはここには書いてありませんけれどもメディカルチェック等を行った後に、自衛隊が用意した車両で近接の空港や港湾に輸送する、さらにそこから別の手段で本邦あるいは近隣の安全地に送り届ける、こういうことがイメージされているわけでございます。

 そうしますと、これは一般の方々が、新聞報道などで自衛隊が邦人保護の輸送もしますといったときに、ハリウッド映画を見過ぎている人なんかは、緊急事態の現場に自衛隊員が行って、まだ日本の邦人が解放されていないときは、もう何か救出するための軍事作戦を行うのではないかという誤解を持っている方もごく一部いるようでありますけれども、ここで確認をしたいのは、あくまでも自衛隊の部隊は、邦人の車両による輸送を行うのであって、いわゆる各国の特殊部隊等がやっている軍事的救出作戦は行わない、こういう理解でよろしいでしょうか。

小野寺国務大臣 今回改正をお願いしておりますのは、あくまでも陸上輸送ができるようにということの改正が中心でございます。基本的に、派遣先国の同意を得て、邦人等の輸送を安全に実施できることを前提とするものであります。

 したがって、御指摘がありますように、自衛隊が、拘束された邦人の救出作戦を行ったり派遣先国の治安を回復する作戦を行うということは想定しておりません。

遠山委員 ありがとうございます。

 時間的に最後の質問になるかと思いますが、活動地域あるいは国によっては、自衛隊が運用する車両により保護対象者等を輸送している途上で予想し得なかった武力攻撃を受ける可能性も完全に排除することはできないケースもあると思われます。

 これに関して、今回の改正案では、先ほどもありましたけれども、武器使用基準の緩和は見送っているわけでございますが、与党PTの中の議論でも、攻撃してくる勢力が重武装していて、自衛隊が対処できないケースが起こり得るのではないかという懸念が示されました。

 私は、個人的に、そういった事態は当然に予想され得ますし、可能性として排除できないわけでございますが、他方で、重武装した勢力からの攻撃を想定した武装で自衛隊が行くということも、なかなかこれは今回の法改正に基づいてでき得ないことだというふうに思っておりますので、そうしますと、一番大事なことは事前の情報収集だというふうに思っております。

 そうすると、この改正案が成立後に、防衛省として、海外のそういうオペレーションを検討せざるを得ない状況になった際に、どういう情報収集体制で臨んでいくのか、防衛省の見解を伺いたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 在外邦人輸送において万が一襲撃を受けた場合、自衛官は、自己等の生命身体の防護や武器等の防護のために法に基づいた武器の使用をするということは、これは可能であるわけでありますけれども、今委員が御指摘の重武装の武装勢力の襲撃に遭遇した場合、これらのことに対しての対応というのはその時々の個々具体的な状況によって判断するものでありますから、今あらかじめ一概に申し上げるということは非常に困難でございます。

 そういうようなこともありまして、先ほど大臣の方からも御答弁があったわけでありますけれども、今回の改正法案によって可能となる陸上輸送を行うに当たっては、このような武器による攻撃の可能性を含め、予想される危険を把握する観点から、現地当局の治安能力も踏まえつつ、在外公館等を通じて情報をしっかりと得ていく、このことが大切であろうと思っておりますし、また、こうした危険を回避する観点から、現地当局による警備の強化に係る申し入れとか調整、あるいは最善な移動経路、移動方法の選択など、必要な方策をとることとしたいというふうに思っております。

 また、防衛省として、これらさまざまなケースへの対応を検討中であるわけでありまして、派遣された隊員が現場で判断に困ることのないように、不測の事態への対応方法など、徹底して図りたいというふうに考えております。

遠山委員 終わります。ありがとうございました。

武田委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 早速質問に入りますけれども、そもそも、この法案提出に至った背景ですね、理由を大臣、簡潔にお述べいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 これは、今回、先般発生しましたアルジェリアの邦人に対する事案、このことをもとに、さまざま与野党の中で議論が行われたと思います。

 その中で、私どもとしまして、自衛隊が今まで邦人輸送ができる範囲というのは、航空機、船舶に限られていたということであります。

 ただ、今後さまざまなことを想定した場合に、例えば陸路についてできないというのはいかがなものか、あるいは、その際、輸送できる範囲というのが例えば通訳の方、あるいは大使館員、さまざまそういう方もいろいろ想定できる中で本当に今までの状況でいいのか、そういうことを勘案した中で今回の自衛隊法改正を国会に提出し、今こうして御審議をいただいているところだと思っております。

渡辺(周)委員 私が昨年の十月まで防衛省の副大臣をしておりましたときに、就任してすぐに、平成二十二年の六月だったと思いますけれども、今からもう三年前ですね、小野寺大臣も提案者でありました、いわゆる自由民主党提出の在外邦人輸送に関する自衛隊法の一部改正案というのがございまして、このとき自民党は、朝鮮半島情勢を踏まえて在外邦人等の避難措置、避難措置というのは輸送プラス警護ということで通常国会に提出されました。

 そのときは、念頭にあったのは朝鮮半島情勢だったんです。今大臣がお答えになったのは、アルジェリアでことしの一月に起きました大変痛ましいテロ事件であったと。どちらなんですか、主眼は。

 私は、副大臣のときに、この自民党案をどうしたら実現できるんだろうということを事務方と随分やったんです。これは、多分、今大臣も事務方といろいろやって、さまざまな事由によってできないということで、恐らくかなりトーンダウンした、この後に質問しますけれども。これはアルジェリアのことが契機なんですか、それとも、延坪島のあの韓国に対する北朝鮮の攻撃から端を発したと私は考えておりますけれども、どちらですか。

小野寺国務大臣 自民党が邦人輸送についての検討を行ったことがあります。そのときに法案提出者の中に私もおりましたし、当時、外交部会長で検討の中に入っておりました。

 そのときにはさまざまな議論をさせていただきましたが、ただ、これは渡辺委員も御存じのとおり、そこで提出する内容のレベルの邦人の輸送等を行うということになりますと、武器使用の問題を含めてかなり国際法や憲法の問題にかかわる問題がたくさんございます。ですから、これをクリアするということに関してはかなりの時間、そしてまた世論が必要だということは、当時も今も同じ認識でございます。

 今回、この自衛隊法の改正というのは、あくまでもアルジェリアの邦人救出事案の問題の中で出てきたさまざまな問題点、そして検証委員会から出てきたさまざまな視点、その論点を整理しまして、まずは陸上輸送を可能とするということ、そして輸送範囲を広げていくということ、このことに特化した形で提出をさせていただきました。

 いずれにしても、この内容につきましては、今後さまざま、自衛隊に対する要望、要請が出てまいります。それを踏まえつつ検討を続けていく、そのような内容だと思っております。

渡辺(周)委員 平成二十二年の八月二日に、石破現自民党の幹事長が予算委員会でこうおっしゃっているんですね。ちょっと省略しますけれども、「仮に銃弾が少しでも飛び交っている、自衛隊が行けないとすればどこが行くか。アメリカの海兵隊が行くんですよ、同盟国ですからね。余った席があったら乗っけてくれる、こういう話ですよ。本当にそれでいいのか。邦人輸送ではなくて、救出のための法案を出した。」こういうことを力強くおっしゃっているわけでありまして、危険だから自衛隊が行くんだ、安全ではないから自衛隊が行くんだということもよくおっしゃっていましたね。

 ですから、私はそのとおりだと。あの延坪島の砲撃を受けて、もし韓国国内に邦人がいた場合、第二弾、第三弾の攻撃があった場合に、例えば仁川空港に日本人が取り残されていた、飛行機は飛ばない、韓国は助けてくれない、自分たちの国は自分たちで何とかしろということになった場合、今ではできないということを、我々も同じ問題意識を持ったので、私も防衛省にいるときに、この問題について随分やりました。

 これは石破さんもよくおっしゃっていたんです。「邦人を救出するために自衛隊法を改正する、それも日本がきちんとやる、当たり前のことですね。」ということを言っているんです。

 もう一回伺いますけれども、そうすると、この法案は、当初自民党が出された自衛隊法の一部改正案、つまり、輸送ではなくて救出をするという主眼で法律を出されたはずだと思うんですけれども、先ほどの大臣の答弁では、これは救出というよりもあくまでも輸送と。今までの海と空の輸送に加えて、安全なところに、しかも相手国の同意があって、陸上でいわゆる邦人を輸送するためにやる、その法律であって、当初自民党が出された法律とは違う、こういう趣旨でいいんですか。

小野寺国務大臣 今回の法律に関しては、先般起きましたアルジェリアに関する邦人のテロ事案、この検証の中で、在外邦人を陸上輸送する必要性や、輸送対象者の範囲の拡大という課題が明らかになったということでありますので、その事案に対応できるよう、海外において邦人の保護が必要となる緊急事態、これはいつでも起こり得るということであります、政府としましては、まずこれらの課題に一日も早く対応したいということで、今回の隊法改正を行いました。

 他方、今御指摘がありましたように、海外で活動する自衛隊に新たな武器使用権限を付与する、あるいはさまざまな活動について期待をする、そのような向きもあることは承知をしております。そのようなことに関しては、国際法や憲法との関係など、各種の課題があるということも事実でありますので、これは、今後とも、必要な制度の見直しをしながら不断の検討をしていく必要があると思いますが、まずは、今回の改正については、いつでもこのような緊急事態が起こり得る、そのときに陸上輸送ができるようにということでの改正のお願いをしております。

渡辺(周)委員 例えば、北朝鮮による延坪島に対する攻撃が第二弾、第三弾と拡散した場合に、取り残された邦人を救出するということは、今大臣がおっしゃった緊急時というものに含まれるんですか。

小野寺国務大臣 どこかの国と、どこの場所の想定を考えた形でのお答えというのは、差し控えさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 大臣は、多分、手元に答弁のあんちょこがあるんですね。私も全部持ってきました、これを多分言うんだろうなと思って。今みたいな答弁、とにかく、個別の事案に対して、事柄の性質上、答弁は差し控えると。

 もうこういうのはやめた方がいいですよ。だって、もうわかっているわけですから。それで、僕らが同じことを言ったら、皆さん方が野党のときには、いつまでそんなことを言っているのかということを随分言われました。

 大体、次の答えも、関係省庁と連携をとりつつ状況に応じて的確に対処してまいりますと、運用企画局の国際協力課がつくった答弁を多分読まれるんでしょうけれども。

 具体的にどうするのかというと、具体的な検討の内容については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えさせていただきます。

 お願いだから、この後はもう使わないでください。そういう答えを言われて、皆さん方もそういう答弁は聞き飽きていると思うんですよ、役所がつくって。

 では、具体的にこれから聞きますよ。

 まさに自民党が当初提出された中に、避難措置の実施に対する妨害行為の排除のための武器使用権限を付与すること、こう書かれていますね。この点については、それでは、今回の法案が成立をしたとして、この後、救出ということについては、先ほどおっしゃったような憲法のことも含めて、どうされるおつもりですか。

 これがなければ、実効的に、最初に自民党がおっしゃっていた、私も防衛省で本気で検討した、いわゆる邦人救出ということなんていつまでたってもできないと思いますよ、そんな検討することばかり言っていたら。多分、幾らやっても、憲法の制約がある限りできない、同じ答弁を繰り返して進まないと思うんですけれども。

 大臣はどうですか、かつての提案者として。その志を失ってはいないと思うんですけれども、大臣になって何か後退した感が否めないんですけれども、いかがですか。

小野寺国務大臣 まず、渡辺委員にお答えします。

 もう委員が一番御存じだと思いますが、議会でのさまざまな発言、議論というのは大変重要なことだと思っておりますが、例えば、政府が特定の地域に特定の問題を想定して対応するということになりますと、これは相手国との関係もありますし、国際社会に与える影響は大変大きいと思います。

 もし、逆の立場で、どこかの国が、日本のどこどこでどのようなことが起きて、そして、そのために私たちはこのようなことを準備しているということを政府の閣僚が発言すれば、それは大変大きな問題になるということはよく御存じでいらっしゃると思いますので、その点だけについては、お互い武士の情けということで、お含みおきいただければと思っております。

 その中で、今、自国民の救出ということがあります。これは確かに、自民党案の中で、武器使用のことについては今回の法案よりもかなり前向きな内容になっていると思いますが、自民党案の中でも、いわゆる自国民救出ということに関しては、救出という形での想定をして法案を出したということではありませんので、そこは、救出ということについて、前回も今回も変わりがあるわけではないと私は理解をしておりますが、いずれにしても、今審議をしていただいておりますのは、今回提出をしておる政府案ということで御理解をいただければと思います。

渡辺(周)委員 その自民党の提出された案についていろいろ議論したときに、運用企画局が、在外邦人等の保護及び自衛隊の役割ということでペーパーをくれたんですね。いろいろ、自民党案のを見て、どうして無理かということについて随分私も説明を受けました。でも、これを何とかしなかったら、延坪島のようなことが起きたときに、では何もできないじゃないかということになったわけですよ。

 だけれども、結局、そこから、いろいろ議論して、にっちもさっちもいかなくなった。そうこうしているうちに、自民党からはなぜやらないのかということが出てきた。ところが、今、政権交代したら、やはり憲法の制約があってできないんだという話になるわけですよ。

 それで、特定の国のことを念頭に置いて閣僚が発言するわけにはいかない、それはわかりますけれども、でも、この法案は、もともとは自民党が、大臣が野党時代に提案者として名を連ねて出されたものというのは、延坪島を念頭に置いたわけですよね。だって、実際、質問主意書等を見ると、朝鮮半島情勢を念頭に置いてというふうに、質問主意書も山谷えり子さんが出されていますよ。

 自民党として出されているのに、今ここへ来て、特定の国を何か念頭に置いたらいかぬのだと言いますけれども、どう考えても起きる可能性があるというのは、大体もう絞られているわけですよね。そのことを、今ここへ来て、特定の国を何か名を挙げるのはいかぬみたいなことを言うと、これは全く具体的にイメージが湧かないわけですよ。

 だって、実際、このいただいた紙の中には、どこの国のどこの港がどうしたらいいかということは、もう地図もついて書いてありますよね。だけれども、特定の国じゃないと言うけれども、蓋然性としてどこで起きるかということは、ある程度もうみんなイメージしてやっているわけでございますから、そういう何か建前みたいなお話はもうそろそろやめた方がいいんだと思います。

 もう一回伺いますが、救出をするということについては、今後、法案をやはり検討されますか。この法律では、あくまでも輸送することはできる、しかし、それは相手国の受け入れがあって。相手国に対してかなりな話をして、人を運ぶことはできるんだろう、それも相手国との連携のもとに。ただ、そうじゃない、本当に何かがせっぱ詰まった場合にはすぐ救出に行くということについて、救出をするための法案というものは考えますか、いかがですか。

小野寺国務大臣 きょう御審議をいただいているのは、あくまでも邦人輸送のことの法案についての議論ですので、私どもとしては、邦人輸送についての検討を行った中での自衛隊法改正をきょう御審議をお願いしているというところであります。

渡辺(周)委員 いや、私は、だから、今後、救出に向けての法案というものを、例えば、先ほど申し上げた、避難措置の実施に対する妨害行為の排除のための武器使用権限を付与する、こういうことを野党時代に自民党は検討されたわけですから、これに基づいて、今度は救出ができるようにする法案というものは、大臣としてはお考えになられますか、いかがですかと聞いているんです。

小野寺国務大臣 現在のところ、私どもが考えておりますのは、在外邦人の安全確保に引き続き取り組んでいくために、今後とも必要な制度の見直しについては不断の検討を行っていく必要がある、そのような認識は持っております。

渡辺(周)委員 何かお気の毒だなと思うんですね。ここをとにかく繰り返して読みなさいということで多分書かれているんだろうと思います。

 しかし、当初おっしゃっていたような救出をするということとこの法律はもう全く違うものだ。輸送はできるけれども救出はできないということですね。先ほどの公明党の委員とのやりとりの中でも、輸送ということでは前進なんだけれども、本来目的としていた邦人救出ということについてはこれでは不十分であると。そのことについてはいかがですか。これでは邦人救出ができないということでよろしいですか。

小野寺国務大臣 邦人救出ということについては、前回自民党で出した法案の中でも、いわゆる自国民救出ということについては想定をしていない内容だと思っております。

 そして、私どもが今回お願いしておりますのは、あくまでも邦人の輸送ということであります。

渡辺(周)委員 この点についてはもう最後にしますけれども、これは当初の思いから少し後退したと言わざるを得ないと思います。

 つまり、自民党が出したのは救出だったんです。これはあくまで輸送なんです。ですから、全然違う問題が出てくる。なぜなら、先ほども議論がありました、駆けつけ警護等が出てきた場合に、できるかできないかということについては、これはできないという現行の法律の延長線上にある。

 だとすれば、実効性の上において、この法律では戦渦に巻き込まれる、あるいは巻き込まれそうになっている邦人を救うことができないということで、私は、この法律をもっと、せっかくこの法案を出されるのであれば、救出ができるまでにする検討がまだまだできるのではないかと。

 その点については我々は決して反対するものではありませんし、その方が実効性があるのではないかというふうに思っておりますけれども、それでも、今後、大臣が大臣であるうちに、邦人救出のための法案は出さない、そういう理解でよろしいんでしょうか。

小野寺国務大臣 まずは、今回提出させていただきました改正法案、これは、アルジェリアのような事案がいつ起きるかわからないような状況で、一日も早く成立をさせていただきたい、そのように思っております。

 その上で、今回の、例えば在外邦人の安全確保に対する取り組み、対応というのは、これは今後とも必要な制度の見直しがあるということは私ども理解をしております。不断の検討を行っていく、そのような必要があるというふうに思っております。

渡辺(周)委員 では、もしこの法案が通ったとして、陸上輸送が可能となったことを前提に、残りの時間でちょっと質問をしたいと思います。

 アルジェリアに飛ばした政府専用機はアルジェ空港には行ったことがなかったんだけれども、シミュレーターの中にアルジェ空港のシミュレーターがあった、そういうことで政府専用機を飛ばすことができたんですね。

 そうしますと、例えば、車両を用意するといいますけれども、では、その車両がどこかの国に行くとなった場合に、現実問題として、派遣先の交通事情や法規、これを把握して慣熟していることが必要なんですけれども、実際に迅速かつ安全に輸送を行うための実効的な準備としてどうされますか。

 飛行機の場合はシミュレーターがある、あるいは艦艇、船の場合は、外洋に演習で出かけながら、いろいろな国の港、港を回っている。ところが、車については、行ったこともない土地をいきなり走れと。国道何号線なのか、どこに大きなロータリーがあるのか、どこで何通りと交差するのかわからない、そんな中でどうやって車を走らせるのかということになれば、何らかの形で把握するための準備が必要だと思いますけれども、そういうことはお考えになっていますでしょうか。この法律が通れば。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 先ほどの委員等々からのいろいろなお話があったわけでありますけれども、あくまでも情報収集その他の部分においては、当該受け入れ国からの情報もしっかりと我々はいただいて、それらのことに対して対応していくこと、あるいは在外公館等々を通じながら情報をしっかりと得て、そしてやっていく。あるいは、今委員からお話があったとおり、それでもなかなか道路から何からわからないじゃないかとか、いろいろな状況があろうかと思っています。そういうときにおいては、我々としては、必要であれば、現地等のガイド、その他それなりの方々を雇うというようなことも考えていかなければならないのではないのかなというふうに思っております。

 どちらにしても、我々は、受け入れ国が受け入れるというそのお答えが返ってくるまでの間、できる限りの情報収集に努めながら、しっかりと対応できるように頑張っていきたいというふうに思っているところでございます。

渡辺(周)委員 今、邦人輸送を念頭に入れた輸送への待機というのは全国で何カ所、駐屯地や基地があるか御存じですか。

 クイズをするつもりはありません、手元にあるんですが、九カ所あるんですね。海上自衛隊が四カ所、陸上自衛隊が三カ所、そして航空自衛隊が二カ所とありますけれども、一番近いところでいきますと、これは佐世保にあります。佐世保に輸送艦がありますけれども。

 そうしたところに、もう既に車両を搭載する、あるいは何らかの、これは特定の国は言いたくないでしょうけれども、朝鮮半島だとして、では、朝鮮半島に一番近いのはどこかといったら、今あるのが、呉か佐世保か、そして舞鶴だということになれば、そこにいる人たちにそれなりの、例えば車両なりをもう既に準備しておくとか、あるいはもう載せておくとか、載せておくのは難しいでしょうけれども、その人たちに、どこかの国へ行って、少し法規なり地理なりを把握させておくということは考えなきゃいけないと思うんです。

 この法律が通ったら、近隣の国々に対して、日本はこういう法律が通りました、そのときには陸上輸送をしていただくことになる、その許可をいただくことになる、そのためにちょっと協議に入らせていただきたいということは、その準備をするためにやらなければいけないと思うんですね。それについてはどうですか。この法律が通ったら幾つかの国と協議に入る、こういうことは準備しなきゃいけないと思いますけれども、いかがですか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今委員御指摘のように、あらかじめ準備をしていく、そのような考え方、その問題意識ということは私も大事なことであろうと思っております。

 しかし、ある意味、何も起こっていない段階においてそのような協議等々を行う、しかもまた、ある特定の国を念頭に置いた形で検討を行うということが、果たしてよりよいことなのかどうなのかということ、この辺のところも考えていくならば、事前にということになりますと、なかなか困難なことではないのかな、私はそのように思っております。

渡辺(周)委員 これまた御党の幹事長の言葉を引用するようで申しわけないんですけれども、これは、平成二十四年二月十七日の予算委員会で石破さんが言っているんですね。

 朝鮮半島、台湾海峡、私は脅威というものはそこにあると思っている。それを政府流に懸念と言っても、それは同じことです。そこにどれだけ速いスピードで駆けつけることができるかということでしょう。そこにおいて、残念ながら今の自衛隊法の考え方では邦人救出というのはできませんから、合衆国海兵隊に、朝鮮半島であれ台湾であれ、邦人、日本人を救出することもお願いをしなきゃいかぬでしょう。一分一秒を争うことなのだ、一分一秒おくれれば事態が取り返しがつかないことになるのだ、だから早くなければいけないのだ、

同じ認識を持っている。

 今みたいに、事前に準備は必要だけれども、今から特定の国に対してこんなこと、我々はこんな法律をつくりましたよ、そのときはそういうことでちょっと御協議をお願いしますと言っていたら、一分一秒を争う場合には間に合わないですよね。それはどうなんですか。日本の国内法としてこういうものができたけれども、相手国の受け入れがあるとなれば、受け入れてもらえるように準備をしなきゃいけないと思うんですけれども、それでは、それはやりますか、いかがですか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 先ほども申し上げさせていただいたように、やはり、あらかじめ、特定の国という言い方は、これもまたいろいろあるかもしれませんけれども、事前にという形で、日本はこういう法律ができましたから、いざというときには受け入れをしていただきたいということでの申し入れということは、私は困難であるのではないかなと思っております。

渡辺(周)委員 副大臣、そんなことを言ったら、日本の国ではこういう法律ができました、これまでの空と海に加えて陸でも輸送ができるようになりました、日本人は知っているかもしれないけれども、相手国にとっては知らぬ話で。日本の国内法に基づいて、おたくの国にぜひやっていただきたい、協議をして、やりたいと言っても、いやいや、うちはハンドルの位置も違うし交通法規も違うし、とんでもない、日本の国の法律でそう言われたって、我々にとってはとても受け入れがたいという話になっちゃうわけですよね。

 だから、私は、特定の国じゃなくてもいいから、日本はこんな法律をつくりました、何かあったときには、邦人輸送のために、これまでの空と海に加えて陸上で皆さんの国の領土の中を我が国の車が走ることには御理解いただけるように、協議をしていただきたいと。これは、外務省、どうなんですか。城内さん、在外公館を通してお願いするしかないんじゃないですか。

城内大臣政務官 外務省としても、一般論で言わせていただきますと、あらゆる事態を想定しておりまして、在外公館を通じて平素より情報収集等に努めているところでございます。また、現地邦人社会との間では、特に企業ですね、緊急事態が発生した場合の安全対策について緊密に協議を行っておるところでございます。

渡辺(周)委員 この法律が成立したら、我が国がこういうことをすることで、おたくの国にも協力をしてもらいたいんだけれどもという御説明をされますかということを聞いたんです。

城内大臣政務官 今の御質問の件につきましては、御質問の趣旨を踏まえて、防衛省とも協議して、検討するかしないかも含めて考えていきたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ城内さん、そこは実効性を高めるために、一分一秒を争うために、そういう危機感を持っていたわけですよね、自民党が。でも、今のお話ですと、何か事が起きてから動き出すのでは間に合わないと私は思うんですけれども、その点について、ぜひ法案が通ったら速やかに、何かあったら、少なくともアルジェリアの事件はまだ記憶に新しい、城内さんも現場に行かれた、同じようなことがあった場合に、我々は例えば、ひょっとしたら輸送機に日本の車両を載っけて運ぶこともあり得る、小牧から飛ぶこともあり得る、そういうことは説明していただいて、そのときには道案内も含めて御協力を願いたい、そういう話をしておくべきだと思いますよ。そうでなければ、実効性の高いものにはならないんだというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、幾つか駆け足で質問をします。

 これが例えば、邦人に何かあった場合に、当然我々は行く。逆の場合ということを考えて、相互主義に基づいて、他国から同じようなことがもし持ちかけられた場合には、日本の国というのはどう判断できるのか。その点はいかがでしょうか。

城内大臣政務官 一般論で言いますと、先方からそういった要請があった場合は検討するということだと思います。

渡辺(周)委員 つまり、日本の国が相手国に対して邦人救出、邦人の輸送に行くことができる。逆の場合もあって、例えば日本に首都圏直下型の地震が起きた、あるいは何らかの大きな災害が起きたときに、自国民を保護するために同じことを例えば相手国が、日本が日本人の輸送のためにそういう法律をつくってやるのであれば、我々の国も相互主義で同じことを、日本で首都圏直下型地震や南海トラフ地震が起きたときに、自国民保護のために同じことをしたいということは、これは多分担当するのは外務省じゃないですか。

 そうなった場合に、こちら側としてそういうことをやれる法律をつくるのであれば、相手国が同じように相互主義に基づいて持ちかけてきた場合はどう対応するかということを聞いているんです。

城内大臣政務官 済みません。この御質問については御通告はありませんので、きちんとしたお答えはできませんけれども、一般論として言えば、外交ルートで、外国から日本政府に対して、外務省に対しましてそういった要請が来ることは当然想定されます。それを踏まえて関係省庁と協議をして決めていくことであるというふうに思いますが、それはその時々の判断によって違うのではないかなというふうに考えております。

渡辺(周)委員 この点について、我が国が他国における邦人の輸送のために法律を出す。相手国も、ひょっとしたら、日本で何かあった場合に、これは実際、東日本大震災のときに、自国民の保護のためにあらゆる国が、福島第一原発の放射能漏れがどのような形で外国に伝わっていたのかというのはかなりばらつきがありましたけれども、もし万が一のときには、当然、自国民救出のために何らかの形で動いたであろう。もちろん、我が国の領土にいる外国人についても、それを第一義的に保護するのは我が国の主権のもとでということは百も承知でありますけれども。

 ただ、この法律もそうですけれども、自国民を救出する、あるいは輸送するということになった場合には、当然、他国からも同じように持ちかけられた場合に、我が国としてはどうできるのかということについて今聞いていたんです。

 今、大臣が手を挙げられたので。何かお答えはありますか。

小野寺国務大臣 今回の隊法改正でお願いをしておりますのは、あくまでも邦人の輸送ということであります。そして、その前提は、相手国の同意が必要だということであります。同意が必要というのは、あくまでもこれはこちらからのお願いベース、そして、先方が、それでは日本でお願いをしたいということでの相手国の了解ベースということになります。ですから、こういう内容についてのいわゆる相互主義ということは特に想定するような内容ではないんだと思っております。

 いずれにしても、私どもとしては、相手国の受け入れが明確にあった場合に初めてこのような陸上輸送ができるということだと思います。

渡辺(周)委員 時間がありませんので、もう一回大臣に確認したいと思うんです。

 邦人の救出という意味において、どうするかということ。これは、私は、予算委員会において古屋拉致問題担当大臣にも質問をしました。御党でも検討されたと思いますけれども、北朝鮮が崩壊した場合に、北朝鮮国内にいる横田めぐみさんたちを初めとする日本から連れていかれた人々、こういう方々をどうすることができるのかということについて、法を検討するかと言ったら、議員立法でと言われました。政府で検討していたのかと思いきや、議員立法でやってくれということでもございました。

 私は、この救出ということについて、自国民の命を、自国民を安全に母国へ戻す、祖国へ戻すということに関しては、党派を超えて取り組むべきだと思うんですけれども、もう一回伺います。救出をするための法案、これについては、やはり、小野寺さん、あなたが大臣の間は検討しないんですか、考えないんですか。いかがですか。

小野寺国務大臣 今回お願いしていますのは、あくまでも邦人の輸送ということになります。そして、先ほど来から御指摘がございます、前回自民党が議員立法として出した法案の中にも、自国民救出ということに関しては、これは想定をしていないという法案でありました。

 今後、この国会の中でさまざま議論があり、各党会派でさまざまな議論が行われる、その中で、私どもとしても不断の検討をしていきたいと思っております。国際法そして憲法、そこについての議論も必要な分野と私どもとしては理解をしております。

渡辺(周)委員 時間が来たので終わりますけれども、また引き続き議論をさせていただければと思います。

 終わります。

武田委員長 次に、中丸啓君。

中丸委員 日本維新の会、中丸啓でございます。

 きょうは、自衛隊法の改正について質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、そもそも今まで航空機、船舶があって車両がなかったということ自体の方が不思議なところではございまして、それが今回、車両という文言が追加されるということに際して、防衛省の最高指揮者である防衛大臣として、この法案が通ることの意義と、通ったことに対して今後どのように御判断されるか、意気込みをお聞かせ願えればと思います。

小野寺国務大臣 意気込みというような内容では多分ないんだと思いますが、いずれにしても、今回、アルジェリアの事案、今委員が御指摘ありましたその事案の発生した後、その検証をするさまざまな議論の中で、やはり御指摘がありました、自衛隊の輸送可能なところが空と海だけであって、陸路ができないということ、それから、従前、これは自衛隊で経験した内容でありますが、サマワの自衛隊の基地から飛行場まで輸送しなければいけない事態があり、特に報道機関の方だったと思いますが、この方々を輸送したことがございます。

 ただ、自衛隊には陸上輸送の役目が付与されておりませんでしたので、このときは、私ども自衛隊関係者という範囲という理解の上でこのような任務に当たったという過去の事例もございます。

 このようなことを考えながら、今回、私どもとして、海路、空路にあわせて陸路についても加えさせていただきたい、そして、輸送範囲を広げさせていただきたいということで、隊法改正をお願いしているところであります。

中丸委員 ありがとうございます。

 それでは、実際に輸送に際して、全く、この車両追加に対して問題があるというふうに私は思っていません。ぜひとも早急に実施していただきたいと思うんですが、先ほど来さまざまな委員から質問が出ておりまして、実際面になったときにどうなのかという話もたくさん出ていたと思うんですけれども、自衛隊が行かねばならないほどの場所だということは、まず大前提としてあると思うんです。

 その中で、実際に何かが起こったときにけがをする、これは想定として考えないと当然いけないと思うんですね、邦人の安全確保が目的ですから。けがをしたときに、今、陸上自衛隊員が持っているファーストエードキットというものがあります。御存じだと思うんですけれども、これがPKO用と国内の訓練で持っている陸自の隊員用と違うんですけれども、この違いについて御説明願えますか。

黒江政府参考人 自衛隊の保有しております衛生資材についてのお尋ねでございます。

 私、PKO用と一般のものと区分があるという御質問については、今初めて耳にしましたので、直接そのままお答えするということができないことをちょっと御理解いただきたいんですが、自衛隊が保有しておりますのは、現場での応急処置ということのために必要な、止血のための材料でありますとか、あるいは気道を確保するための器具といった、そういった衛生資材というものはございます。

 また、もう少し高次元のものとしまして、初期の外科手術を行うことが可能な野外システムでありますとか、あるいは負傷者を後送するということのために必要な救急車といったような、そういうさまざま多様なものを保有しておるというのが現状でございます。

中丸委員 今おっしゃられた中で、野営の中で手術ができるものとか、そういったものではなく、私が言っているのはファーストエードキットというものです。

 今一番冒頭に出ましたけれども、止血剤という言い方をおっしゃられたと思うんですけれども、この止血剤は確かにPKOの隊員の皆様が海外派遣されるときは持っていっているんです。しかし、国内で訓練等々をされる陸自の隊員の方用の中には止血剤は入っていないんです。

 今、ちょっとそこまで想定していなかったということなんですが、先に答えを言ってしまいますと、国内は医師法の関連があるからです。止血剤は血をとめるものですよね。医師資格がない者が国内では使えない、医師法があるので。というのが今の自衛隊の実態でございます。

 ですから、海外に今回、車両派遣をされる場合は、ぜひともPKOのそういったファーストエードキットを使ったことのある、もしくは訓練を受けた人でなければ、止血剤の使い方を実際にやったことがない人が行くことになる可能性があるということを申し伝えておきます。

 それでは、ちょっと質問をかえます。

 想定される車両について、先ほど公明党の遠山委員からも質問でありましたけれども、高機動車、軽装甲機動車で先頭と後ろを挟むというようなお話もありましたけれども、今のファーストエードキットにちょっとひっかかってくるんですが、先ほどおっしゃられた救急車というのは、この参考資料十二の中でいうと恐らく高機動車か二トントラックに赤十字のマークをつけたものだというふうに思うんですけれども、その理解でよろしいですか。

黒江政府参考人 御指摘のとおり、一・五トントラックの形といいますか、そこに救急車のマークといいますか、赤十字の標章をつけたものを救急車という形で運用しております。

中丸委員 救急車もそうすると、例えば、病人の方がおられたり、けが人の方がおられたりすれば、当然、移動する車両の中を想定していかないといけないと思うんですけれども、今おっしゃられた車両は、横がほろなんですよね。ほろだと思うんですけれども、当然、ほろであれば防弾効果はないと思うんです。

 不測の事態があるという前提があるからこそ自衛隊だと思うんですけれども、邦人輸送中に敵の攻撃を受けて負傷者が出た場合、先ほどのファーストエードキットもそうなんですが、どのように安全地帯まで護送するのか、輸送するのかということが大きな課題になると思うんですね。

 その場合、今言ったほろ、今までそれしか日本の自衛隊にはないですから仕方ないとは思うんですが、ちなみに、他国の各国軍は、戦場における負傷者収容のための装甲車、戦場救急車というものを使っています。これは、その名前のとおり、戦場で救急活動ができるように、もちろん装甲板もあり、それからそれ以外のものも、医療機器だけではなくて車内で応急処置ができたりとか、そういったものがあります。ただ、この種のものがうちの自衛隊にはないんです。これをぜひ知っていただきたい。

 参考までにちょっと、資料とまではしていないですけれども、これはMATVという米軍が使っている特別車両ですけれども、これは緊急用にもう使われています。非常に高度な、先ほど言った情報収集能力も高い、しかも悪路でも走れるもの、これは日本の自衛隊にはないです。ぜひとも今後の研究課題の一つにしていただきたいと思います。

 ちなみに、米軍にはこの中に救急バージョンというのがきちんとありますから、ぜひとも調べていただきたいと思います。それ以外に、ドイツ、フランス、イタリアも、独自の戦場救急車を配備しています。

 例えば、そういったアメリカのものを一両、二両購入されて、研究して、車両であれば国内でもつくることができると思うんです。そういったこともぜひとも検討をしていただきたいというふうに思います。

 邦人輸送の救急に関してはそうなんですけれども、次の質問に行かせていただきます。

 車両が走る前に、これまで、従来あったのが、航空機それから船舶による輸送ができるというお話があるんですが、輸送能力が非常に高いとなると、先ほど輸送機C130の話題とかも出ましたけれども、これは滑走路が要ります。滑走路が要らずに長距離を飛ぶとなると、なかなか通常のヘリでは難しいところがございまして、俗に言うティルトローター機、V22ですけれども、個人的には、アメリカの海兵隊が使われているMV22が有用だろうというふうに考えます。

 当然のごとく、飛行機のように高速で飛べる上に垂直の離着陸が可能であるんですけれども、現状、海上自衛隊の飛行艇US2、これが一機九十三億円。陸自で使っているチヌーク、これが四十八・七五億円、海上自衛隊のMCH101が八十四・六七億円というところなんですけれども、それでいけば実はこのMV22というものは、当初は安全性や稼働率が懸念されていましたけれども、現状の米軍を見る限りもうその懸念はないと私は個人的には思っております。

 そういう意味では、このMV22もしくはV22を多数運用することによって一機当たりのコストを下げれば、現状使っている先ほど申し上げたような装備と大差のない金額で実は配備ができる可能性があるというデータがあるんですけれども、それについて御所見をお伺いできればと思います。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 確かに先生御指摘のように、固定翼の場合ですと、そもそもスピードが速い、それから航続距離も長い、それから回転翼の場合ですと、垂直離着陸が可能である、あるいはホバリングが可能であるといったような、それぞれの利点を持っておりますので、この二つの利点をあわせて持っているいわゆるティルトローター機、オスプレイもその一つの機種でございますが、こうしたものについて、防衛省といたしましても必要な情報収集を行っておるところではございます。

 そして、速度、搭載能力それから行動半径においてすぐれた性能を持っているティルトローター機につきましては、諸外国でも実用化が進んでおるところでございますので、本年度、二十五年度の予算の中に、必要な調査研究の費用として約八百万を計上しているところでございます。これによりまして、ティルトローター機の開発状況でありますとか、あるいは機能、性能それから諸外国における導入の実績とか計画、あるいは先生がおっしゃられた経費といったような面も含めて、幅広く、まず調査研究をしてみるというような段階でございます。

 防衛省といたしまして、オスプレイ等、特定の機種の導入を前提とした具体的な検討を行っているわけではありませんけれども、こうしたティルトローター機の実用化が日本の防衛にとってどういうような意義があるかということ、それから、邦人輸送も含めてどういう利用可能性があるかということにつきましては今後よく検討をしていく、こういうこととしておるところでございます。

中丸委員 今のティルトローター機のお話ですけれども、アメリカの米軍が今導入をされているものですけれども、そのアイデアは実は四十数年前に日本であったんです。

 御存じの方もおられると思いますけれども、円谷プロさんがやっていたウルトラマンシリーズの帰ってきたウルトラマンで、モンスター・アタック・チーム、MATというのがありまして、ここにマットアロー三号というものが、実はこれはティルトローター機なんですね、というアイデアは、日本人というのは非常に昔から、多分、恐らく米軍が開発する前から持っていたと思います。そういった自由な発想も今後の技術開発では必要、ちょっと余談ですけれども、あると思うんですね。

 先ほどお答えいただきました、八百万円で調査研究を行うということなんですけれども、これはどこの部署のどなたが行うのか、教えていただけますか。

徳地政府参考人 先ほど申しました調査研究費、二十五年度予算のお話でございますが、執行に当たりましては、防衛政策局の防衛計画課が主管となってこれの執行に当たるということを考えております。

中丸委員 今のを聞くと国内でやるようですけれども、私の知っている範囲で申し上げれば、海外の調査会社に調査委託するということではないですか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 実際の調査は、もちろん今申し上げましたように防衛力整備を主管しております防衛計画課が行うわけですけれども、外部の調査機関に委託をして行うということとしております。実際にどこの調査機関に委託するかということは、これから選定するということになります。

中丸委員 八百万とはいえ貴重な税金ですので、ぜひとも貴重なデータがとれるところをしっかりと選定していただきまして、今後の、もちろんオスプレイに限らずですけれども、そういった型式の新しいタイプの輸送機に関しての研究を進め、一日も早い導入をお願いいたしたいというふうに思います。

 同じような輸送時の安全確保で、できれば地面よりは、先ほど申し上げたように空を使う方が安全性は高くなる、これは誰が考えてもわかることなんですけれども、とはいえ、地面しか行けないという中で、港湾だったり飛行場だったり、そういったものが使えないことも当然想定されると思うんですね、場所によっては。

 陸に上がってからの距離を考えれば、通常の輸送艦「おおすみ」型を使って運んでいくとなると、LCACというものを使われる可能性も十分あると思うんですけれども、この海自の持っている大型ホバークラフトLCACは、実は非常に旧式化しています。かなり古くなっているんですね。これを延命して継続的に使うためには、米海軍と同様の近代化を施す必要がある。

 イギリスの海兵隊が使用しているグリフォン・ホバーワーク社のグリフォン2400TDは、貨物二・二トンまたは人員二十五名、時速三十ノットで輸送ができます。LCACのような大型のホバークラフトも必要ですけれども、この前も質問で言ったことがあるんですけれども、ホバークラフトはバックができませんから、向きを変えるのに非常に広い海岸線が必要になる。大型になればなるほど必要になるんですけれども、今申し上げたイギリスの使っているような比較的使い勝手のいい小型のホバークラフトを導入してはいかがと思うんですが、そういった議論というのは今までございましたでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、海上自衛隊が保有しているエアクッション艇LCACでございますけれども、確かに、就役年度は、例えば一号機、二号機ですと平成九年度ということで、ある程度年限がたっておりますので、今、その艦齢を延伸する工事、それから部品の取得といったような事業に着手をしているところでございます。

 それから、そもそもLCACは後進ができないのではないかという御指摘でございますけれども、実際には、プロペラの逆回転をさせることによって、もちろん前にも進んだりあるいは後ろに進むということができるようになっております。そもそも、そういう小回りがききませんと、「おおすみ」型のような艦艇に収納するということができませんので、したがいまして、かなり小回りがきくものというふうに承知をしております。

中丸委員 そう言われるのならそうかもしれませんが、そういった方向にかかわられている専門家の方々の意見では、今のLCACでは小回りはきかない、もう少し小型化するべきだと思うし、そういったことをイギリスの海軍、海兵隊も含めてやっているんじゃないかという意見があります。

 あと、LCACに関しては、装備品の武器に関してのことも聞きたいことがあるんですが、時間がなくなりそうなので、これはまた次回にさせていただきます。

 地上の車両で輸送する場合、今、どこから弾が飛んでくるか、いろいろな情報を駆使されるとは思うんですけれども、やはり想定にないことが起こるのがそういった場所であるというふうに思うんです。そういう中で、車両防御、例えば相手が武装したヘリコプターを飛ばしてきた場合、今の法律の解釈でいえば、最低限の武器使用も含めて、持参するのは最低限のものだということで、この話の中で、前回、宮家参考人の方から、最低限じゃ絶対に難しいと、現地は。

 そういう意味では、私はそのときに、では最適なものがふさわしいんですねというお話をしたことがあるんですけれども、そういう中で、相手がそういう武装ヘリとかで出てきた場合、これも想定の中には入れておかないといけないとは思うんですが、もしくは地上でかなり重火器のものが出てきた場合ですね。

 そういった場合に、やはり邦人の安全輸送というのが最大の目的でございますから、そういったものを排除する事態が当然、正当防衛の範囲で発生すると思うんですけれども、我が国の軍備の中では非常に危惧されるのが対地攻撃能力。迫撃砲とか戦車を輸送に運んでいくわけにいかないでしょうから、そうすると、持っていけるのはやはり空を飛べるもの、輸送艦等に積めるものとか、そういったものになると思うんです。

 AH64Dという戦闘ヘリがあると思うんですが、この戦闘ヘリは、そういうことがあったときに、国外に持っていって運用ができるレベルに訓練されているか否か。いかがでしょうか。

黒江政府参考人 在外邦人の輸送の際に使います自衛隊の装備品についての考え方ということになるわけですけれども、今回の改正法案で、陸上輸送を行う場面として、我々、本日の審議の中でも御説明をしておるわけなんですけれども、予想される危険を把握した上で、それに対しての安全策というのはきちんと確保できておる、そういう中で行われるものでございまして、例えば、先ほど先生おっしゃいましたような、戦闘ヘリを敵対勢力がどんどん飛ばしてくるといったような中で活動するというのは、基本的には我々もなかなか想定しづらい状況なんだろうというふうに考えておるところでございます。

 ですので、ただいますぐに戦闘ヘリを海外に展開いたしまして、これを運用するといったようなことまでは想定をしておらないというのが実情でございます。

中丸委員 そうかもしれません。でも、絶対に一〇〇%出ないとは言い切れないですよね。

 今そういう御答弁になるのは、理由はすごくわかります。これは、我が国は訓練用以外で所持していません。非常に値段も高いものなんですけれども、訓練用で、もっと言えば途中で調達がとまっています。それが、このAH64Dアパッチロングボウと呼ばれる戦闘ヘリです。空の戦車と言われて、米軍では非常にさまざまな、陸と空の護衛ということで、もちろん攻撃だけではなくて、輸送とかそういったものでもかなり活躍をしています。もちろん哨戒活動も含めて、アフガニスタンしかり、イラクでCPAがやっているときもしかり。非常に活躍しているものですが、正直、我が国の陸上自衛隊の中では使い切れていないというところが現実かなというふうに私は思います。

 先ほど言われた、想定していないんじゃなくて、さっき何回も渡辺委員からもお話ありましたけれども、今は想定していなくても、それはそれでそうなのかもしれません。でも、これから先も想定しないんですか。いかがですか。

黒江政府参考人 恐縮でございますが、先ほど私は想定しづらいと申し上げたわけですが、先ほど来の御議論の中でもありましたように、今我々が考えておるような、そういう、輸送の安全が確保できるという中で任務を行うという形ではなくて、大変に危険なところで、当初から相手方を攻めて人質を救出してくる、あるいは奪還してくるといったような作戦を行うということになりますと、全く自衛隊に与えられる任務が変わるわけでございます。また、これにつきましては、先ほど来御答弁がありましたように、憲法との関係でありますとか国際法との関係といったところをクリアしていかないといけないという課題になっておるわけでございます。

 そういった意味で、今後の残された宿題であるということが政府の立場になっておるということでございます。

中丸委員 私は、今、奪還という言葉を一回も使っていないと思うんですけれども、輸送中にそういった攻撃があるかもしれないですし、想定していなかったということは、もしあったときには皆殺しになるということですよね。違いますか。

黒江政府参考人 これは、個別具体的に、どういう状況で邦人が危険にさらされているのか、そういう事態をどういうふうに分析するかということになるわけでございますけれども、かなり相手が重武装で、非常に危険な任務であるということになりますと、そもそも自衛隊がこの法案の求めるところであります安全に邦人を輸送するという任務ができないということになりますので、少なくともこの法律の範囲から出てしまうのではないかというふうに思われます。

中丸委員 わかりました。この法律の範囲から出てしまうということですね。

 そうすると、この法律から出てしまう範囲の事象が起こったときは、邦人の救出は、今、救出はできないという話ですから救出はできない。どこかの国に救出してもらっても、輸送もできないということですか。いかがですか。

黒江政府参考人 この法案に定めております輸送の安全の要件といったものが満たされない場合には、この法案の条文に基づいた活動というのはできないということでございます。

中丸委員 今の答弁は、御自身の立場からいえばそうかもしれません。

 では、あなたの家族がその輸送対象になっているとして、そういう御判断ですか。

黒江政府参考人 私からお答えするのが適切かどうか、これはわかりませんけれども、まさにそれは、国がどのような形で自衛隊に任務を与えるかということの判断ということだと思います。

中丸委員 では、国が、そうなったときにどのように与えるか。小野寺大臣、いかがですか。

小野寺国務大臣 一般論としてさまざまな想定をするということは大切だと思うんですが、先ほど来の委員の御主張、議論の中で、例えば空から攻撃を受けるなり、かなりもう、その事態が相当、紛争の当事国あるいは当該地域に当たるということになれば、当初から、今回の自衛隊の輸送任務というのは対象の場所になっていないというふうに考えることなんだと思います。そして、そのような紛争が起きている地域に関しては、これは外務省を含め政府を挙げて、一日も早くそこから逃げていただくこと。そして、私どもが輸送ができるようなそういう地域であれば、私どもとしてその任務をさせていただくということであります。

 いずれにしても、そういう紛争当事国に自衛隊が入るということは、憲法、国際法を含めたさまざまな議論が必要になる、もうそのぐらいのレベルの話になってしまうのではないかというふうに考えております。

中丸委員 おっしゃることはすごくわかります。

 ただ、そういったことがあした起きないという保証はどこにもないんですよね。先ほど来、渡辺委員の方から朝鮮半島有事というお話もありましたけれども、場所を特定したものはあれだというのもわかるんです。場所を全然特定しなくていいんですけれども、大丈夫だと思っていても、そういった状況が起こり得るような場所であれば、翌日の朝起きたら全く状況が変わっていることというのはあるんですよ。ここは大丈夫だと思って泊まっていたホテルの隣がミサイルで吹っ飛ばされることがあるんですよ。本当にあるんですよ、僕もありましたから。大丈夫だと。それが現実なんです。

 おっしゃることは本当にすごくわかるんですけれども、自衛隊の方々の命ももちろん、輸送する邦人の命も、ですから救急車のお話もしましたけれども、でき得ることはやはり考えておかないと。そして準備をしておかないと。これは邦人輸送だけに限らず、国防を考えたときに全てに当てはまることだと思います。

 ちょっとおまけとしてお話をさせていただければ、さっきのAH64Dのヘリコプターのお話ではないんですけれども、対地攻撃能力というのは、地上作戦を遂行するに当たって非常に有意義、効果的なんですね、犠牲も少なくて済みますし、必要なときに。

 ちょっと話は飛びますけれども、F35は本来、攻撃的な性格が強い機体で、対地攻撃能力に力を入れてつくられた機体です。我が国では、これを航空自衛隊で、対空、要は領空を守るために、もちろん調査も含めてですけれども入れようということになっています。

 対空能力においては、もちろんステルスですから、ステルスモードになるためには、中に収納するミサイルが二発、中距離しかできません。空中戦で相手に対して撃つのは一度に二発。一発ずつじゃないですから。一度に二発撃つというのが常識でございます。そうすると、F35は、一回の出動で、基本的にミサイルでは一機しか迎撃することができないというものでございます。

 そういうところも非常に私は問題視しているんですけれども、今の対地攻撃能力という意味では、誘導爆弾であるJDAMというものがちゃんとあるんですけれども、これは今のところ、恐らく搭載する予定になっていないとは思うんですけれども、もしお答えできればお答えいただいてよろしいですか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 F35の運用についてでございますけれども、そもそもF35につきましては、マルチロール機ということで我が方も選定をして、これから整備をしていくという計画でございます。

 F35につきましては、制空戦闘能力を持つということはもちろんでございますけれども、空対地の攻撃能力というものも備えているものでございます。下の方から地対空ミサイルで攻撃を受けた場合に、どこから来るのかということについての表示装置を持っているということもありますけれども、先生が先ほど御指摘のようなJDAM、いわゆる精密誘導爆弾というものを使う、そうした能力というものを持っているということで、そのような対地攻撃能力も含めまして我が国の総合的な防空能力の向上に資する、こういう観点からこれを選定したものでございます。

中丸委員 そういう意味で選定していただいたということは非常に望むべきことだと思うんですけれども。

 実は、今のレーザーJDAMという対地攻撃に関して言えば、これは終末誘導が問題なんですね。地上からのレーザーデジネーターで誘導する必要があるんです、着弾させるために。しかし、現在、空自にも陸自にも、統合航空管制官の部隊がないんです。終末誘導自体は今技本では研究されているようですけれども、そういった統合航空管制官の部隊というのは現在存在していませんよね。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような誘導をするような要員は持っております。

中丸委員 要員ということは、機材もあるという判断でよろしいんですか。

徳地政府参考人 それに必要な機材も保有しております。

中丸委員 わかりました。あるんですね。では、あるということでお答えいただいたと思います。

 私は、調べていただいた感じでいうと、現状では、そういう使えるもの、もちろん訓練も含めて、ないということでございますし、あるとすれば秘密裏に何かあるんでしょうね。あった方がいいと思います。

 ちなみに、NATO諸国はみんなこれをやっていますから。やっていないのは、本当に我が国ぐらいなものなので、ぜひとも考えていただきたいということです。時間になりましたので。ちなみに、ちょっと英語ですけれども、(資料を示す)F35に積む、こういったものです。

 そういうところなので、最後に一つ申し上げておきたいのは、国家というのは、国の家と書きます。先ほど、大変失礼ながら、お子様だったらどうですかというお話をさせていただいたのは、国にとって国民は全て家族だというのが我が日本のそもそもの考え方。それが、漢字がそうなって、国の家と書いているわけでございますから、法律のこと、今の現状のこの答弁の中でお答えできないこと、非常におつらい立場だという大臣のお気持ちは非常に理解できます。しかし、いざ本当に何かあったときには、やはりそこを飛び越えてでも助けないといけないものは助けないといけないし、見殺しにはできないものは見殺しにできない。それが可能なのが自衛隊であるならば、命令は下すべきだと。(発言する者あり)そうですね。それをお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

武田委員長 次に、畠中光成君。

畠中委員 みんなの党の畠中光成でございます。

 アルジェリアでの人質テロ事件を受けて、邦人の陸上輸送を可能とするこの自衛隊法の一部を改正する法律案ですが、事件後の一月末ぐらいでしたか、当初は、武器使用基準の緩和について、読売テレビの番組で、小野寺防衛大臣は、自衛官は緊急時に武器を使っていいのか悪いのかを考えながら対応しなければならないと指摘し、自衛官がかわいそうとおっしゃられました。その後、自民党や与党PTはもちろん、政府内でもこの武器使用基準についてはさまざまな研究、検討をされたかと思いますが、当初の大臣の発言と比べ、ここまで後退をした理由について教えていただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 ここでのテレビでの発言についての受け取られ方というのはそれぞれさまざまで、今委員が私の発言をそう受け取ったんだなと思いましたが、今回、私ども、この法案提出をするに当たりましては、在アルジェリア邦人に対するテロ事案の検証では、在外邦人を陸上輸送する必要や、輸送対象者の範囲の拡大といった課題が明らかになり、今般のテロ事案のように、海外において邦人の保護が必要となる緊急事態はいつでも起こり得るということで、政府としては、まず、これらの課題に一日も早く対応すべく、四月十九日に今回の改正案を国会に提出しました。

 したがって、改正案にある陸上輸送についても、現行法に基づく在外邦人等の輸送と同様、基本的に派遣先国の同意を得て行うものであり、邦人等の輸送を安全に実施できることを前提とし、自衛隊が、拘束された邦人の救出や派遣先国の治安の回復を行うことまでは想定をしておりません。

 このような前提のもと、武器使用権限についてもさまざまな検討を行った結果、万一不測の事態が生じたとしても、自己保存型の武器使用権限により、事態に応じた適切な対応を行うこととしておりまして、輸送を安全に実施し得るものと考えております。

 また、政府としては、派遣された隊員が現場で判断に困ることのないよう、法改正にあわせて不測の事態への対処方法の徹底を図る考えであります。

 いずれにせよ、在外邦人の安全確保は政府の重要な責務であり、今後とも必要な制度の見直しについては不断の検討をしていきたいと思っております。

畠中委員 今私が申し上げたこの読売テレビの番組について、これは私が受け取ったわけではないですよ。もうネットで流れていますからね。小野寺大臣が、自衛官はかわいそうというふうにおっしゃったということが書いてある、その事実を述べただけでありまして、私が受け取ったわけではございません。

 あわせて、ちょっと質問をさせていただきますが、海外での邦人保護の際に、車両を使用し陸路を輸送すれば、当然、何者かからの攻撃を受けるリスクが高まるということは、もう皆さん御指摘のとおりでございますけれども、その攻撃者が国または国に準ずる組織の場合にも武器を使用することができるのでしょうか。

 攻撃者が国または国に準ずる組織の場合か否かや、自己の管理下に入っているか否かという判断は、一体誰が行うのでしょうか。隊員個人が行うのでしょうか。きっと突発的な判断になるかと思うんですが、一体誰がその責任を負うのでしょうか。

 お答えください。

小野寺国務大臣 海外で活動する自衛官が、不測の事態に際して自己等の生命身体の防御のために武器を使用するということは、いわば自己保存のための自然的権利というべきものであって、相手がたまたま国または国に準ずる組織であっても、武力の行使に該当するものではなく、憲法上許されるというのが従来の政府見解であります。

 在外邦人等の輸送においても、法律に基づき自衛官が自己保存型の武器使用を行うに当たり、攻撃者が国または国に準ずる組織であるか、その都度判断することは要しません。

 いずれにしても、防衛省においては、さまざまなケースへの対応を検討し、派遣された隊員が現場で判断に困ることのないよう、法改正にあわせて、武器使用のあり方を含め、不測の事態への対処方法を徹底してまいります。

畠中委員 今、自己保存型ということでおっしゃられましたが、この点が、当初大臣がテレビでおっしゃられたことと比べると、大分後退したのではないかなというふうに思うわけでございます。

 この自己保存型との境目ですね、自衛官がもし境目の中で相手に危害を加えた場合、正当防衛だったのか、緊急避難だったのかということを立証しなくちゃいけない。これも皆さん御存じのことだと思います。立証できなかったら、これは刑事罰にもなる。

 警察官職務執行法第七条、海上保安庁法第二十条に規定されている武器使用というのは、逃走の防止、公務執行に対する抵抗の防止等、武器使用を認めて、この自衛隊法よりも許容範囲が広いんです。ですから、警察とか海上保安庁の方が自衛隊よりも許容度が広いというのはしっくりこないと言わざるを得ません。

 このように、海外での武器使用に制限がついたままでは、自衛隊員に過度な負担を与えることになります。これでは、自衛隊の任務だけをふやして権限はそのままのため、何にも変わらないため、輸送される邦人はおろか、自衛隊員自身にとってもかえって危険が増すのではないでしょうか。今回の自衛隊法改正における残った宿題というのは、まさにこの部分だと認識しております。

 これまで、海外での武器使用の問題はさまざまな角度から研究、議論をされてきており、小野寺防衛大臣も既に、正直なところ、何が必要で何が問題なのか、答えは十分御存じのはずだと思います。この武器使用基準について、正直なところ、最後は内閣法制局による憲法解釈のところがネックなのでしょうか、それともほかの問題があるのでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 今般の改正では、基本的に、派遣先国の同意を得て、陸上輸送を安全に実施できることを前提としており、万一不測の事態が生じたとしても、自己保存型の武器使用権限により、事態に応じた適切な対応を行い得るものと考えております。

 また、防衛省においては、さまざまなケースへの対応を検討し、派遣された隊員が現場で判断に困ることのないように、法改正にあわせて、武器使用のあり方を含めた不測の事態への対処方法の徹底を図る考えであります。

 他方、海外に派遣される自衛官に自己保存型を超える武器使用権限を付与するということについては、相手が国または国に準ずる者である場合、憲法第九条が禁じる武力の行使に当たるおそれがあるというのが従来の政府見解になります。

 いずれにしても、在外邦人の安全確保は政府の重要な責務であり、海外に派遣される自衛官にいかなる武器使用権限を付与することが適当かを含め、今後とも必要な制度の見直しについては不断の検討を行っていく必要があると思っております。

畠中委員 ここのところは、私はしっかり聞いておきたいと思いますので、ちょっと重ねて質問させていただきますが、私がお聞きしたのは、最後のネックは、内閣法制局による憲法解釈がネックなのでしょうか、これはイエスかノーかで。もしくは、ほかの理由なのだったら、その、ほかの理由を端的に、もう一度、申しわけありませんが、お答えいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 繰り返しになりますが、現在、私どもとして、海外に派遣される自衛官に自己保存型を超える武器使用権限を付与することについては、相手方が国または国に準ずる者である場合、憲法第九条が禁じる武力の行使に当たるおそれがあるというのが従来の政府見解であります。

畠中委員 私ごとですが、私の地元は兵庫七区の西宮、芦屋というところでございまして、かつて社民党の党首でありました土井たか子氏が現職であったところです。ちょうど私の席の前に肖像画がかかっているんです、個人的な恨みは全くありませんけれども。

 ちょうど十年ほど前、北朝鮮問題がクローズアップされて、日本の政治は、憲法や安全保障は果たしてこのままでいいのか、そう思ったところが私の政治活動の原点なんです。

 それで、その土井たか子氏が二〇〇一年四月に提出した質問主意書、「小泉内閣発足にあたって国政の基本政策に関する質問主意書」というのがございまして、これは九条と集団的自衛権の解釈でしたが、憲法解釈の変更について政府の見解を問いました。

 その答弁書から述べたい部分を抜粋しますと、「特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考える。」と書いてあります。ここで述べられた、解釈の変更は十分に慎重でなければならないとは、裏を返せば、十分に慎重だったら解釈の変更も考えられるともとれるのではないでしょうか。

 しかしながら、安倍政権の防衛政策を担っておられる小野寺防衛大臣においては、この問題についてどのような態度でおられるのか。いまだなお、憲法解釈に対して極めて硬直的な立場に立っておられるのかどうか。それをお聞かせください。

小野寺国務大臣 私ども閣僚は、すべからく憲法の遵守義務を負っております。

 その中、このような議論につきましては、集団的自衛権の問題を含めて、新たな安全保障環境において我が国の平和と安全を維持するため、我が国が何をすべきかということ、これは、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会が改めて立ち上げられ、前回作成された報告書を踏まえて検討が行われており、防衛省としても、この検討については必要な協力をしていきたいと思います。

 今後、どのような議論がなされ、どのような方向に行くのかということについて、私どもは、その検討内容についてこれからも注視をしていきたいと思っております。

畠中委員 今、憲法の議論も世の中で盛んになっていますし、国会でも、私も憲法審査会のメンバーで、私自身も将来的な改正には賛成の立場でありますけれども、その前に十分やるべきことというのがあるんですよ。まさにそれがこのことではないでしょうか。アルジェリア事件を受けて、いろいろな課題が浮き彫りになって、在外邦人の保護、この自衛隊法改正の議論をしっかりとやらなくちゃいけないところで腰砕けになっているのではないでしょうか。

 ちょっと質問が前後しますけれども、先ほど来、北朝鮮の話、救出の話が出ましたので、一つ飛ばして質問させていただきますが、安全が確保されたところを輸送することができる、けれども、まさに邦人がテロリストにとらわれているというような状態から救出することはできない、そういう法体系になっていますよね。

 つまり、この北朝鮮のケースの場合、体制が崩壊して、拉致被害者である邦人の情報があったとしても救出することができない、あくまで安全が確保されたところにしか行けない。これも、もう一回聞きますよ、内閣法制局の憲法解釈の問題なのでしょうか。大臣、お答えください。

小野寺国務大臣 今、個別の国に関してのお話がありましたが、今回の私どもの隊法改正の中の邦人輸送の業務は、あくまでも相手国の同意ということが必要になります。

 今発言された国が、我が国の自衛隊が輸送することに関して同意をするということが実際あるかどうかというのは、これは難しいことではないかと思っております。

畠中委員 ちょっと、答えの中身がよくわかりませんでした。

 先ほど来お伺いしているのは、憲法の問題、憲法解釈の問題についてお伺いをしております。しかしながら、この答えについて、明確にお答えをいただいていない、そのように思います。

 この憲法の問題、私はそもそも思うんですが、憲法の三原則、中学校でもわかりますよね。基本的人権の尊重、国民主権、平和主義。これは何も戦争に行くわけじゃないんですよ。海外で活躍されている、海外におられる在外邦人の保護のために、これをなぜ日本という国家が守ることができないのか。これは、基本的人権を守ることができない、かえって憲法を侵しているんじゃないでしょうか。一方の北朝鮮の問題だってそうでしょう。基本的人権が侵されているのに、なぜそれを助けることができないんでしょうか。果たしてどっちが正しい憲法解釈なんでしょうか。

 これは通告していない質問でありますけれども、大臣、ちょっと一言で結構ですので、お聞かせください。

小野寺国務大臣 私は、防衛省・自衛隊という実力組織を指揮する立場にあります。その私が憲法の解釈について発言することは適当ではないと思っております。

畠中委員 非常に残念でありますけれども、そこは本当にしっかりと頑張っていただきたいと思いますし、ここにおられる委員の皆様も、ぜひしっかりと追及をしていただけたらと思います。

 済みません、質問を移らせていただきます、時間がありませんので。

 今回のアルジェリア事件で、事件現場からイナメナス空港まで五十キロ離れていましたが、これがガルダイア空港だと九百キロにも及びます。外務大臣、防衛大臣が現地の治安情報を確認して適用を決定するとのことですが、例えば道路の状態、でこぼこがあれば、車ですからスタックの危険もあるわけですけれども、これは衛星で見たってそういうでこぼこなんてわからないと思いますが、そのような中で、どのような判断基準で車両による輸送を決めるのでしょうか、教えてください。

黒江政府参考人 輸送の安全についての判断基準についてでございますけれども、先ほど委員御指摘になられました道路の状態、あるいは凹凸等々、あるいはスタックの危険があるかどうかといったことというのは、大変重要な情報であると我々も考えております。

 他方、これらについて、できる限り、現地当局からの情報提供でありますとか、あるいは現地の大使館の人間からの情報、さらには、もちろん、もし我々防衛駐在官がいれば、そういったものを通じての情報等々、あるいは、先ほどの議論の中にも出ましたけれども、現地で必要な方を雇うといったようなことも駆使して、できる限りの情報を集めるということが前提となるわけでございます。

 その上で、道路の状態等も勘案して、車両が支障なく通行できるのか、あるいは現地における治安の乱れ方の状態というのはどの程度のものなのかといったことを総合的に判断した上で、輸送の安全を最終的に判断するということになるわけでございます。

畠中委員 今私がお聞きしたのは、もっと細かい話でありましたが、時間もありませんので、次の質問をさせていただきます。

 その情報について、先日、安倍総理を中心に取り組んでおられるNSCに関連して、中東、北アフリカ地域担当の分析官を置くというのは、私は大変重要なことだと思い、早期の稼働実現をお願いしたいと思います。

 そもそも、このアルジェリア付近、この地域の情報は十分と言えず、今回のアルジェリアの人質テロ事件も、身の代金目的の人質事件なのか、もっと根の深い、思想的な問題による軍事対立があるのか、そういったところもしっかりと分析して、情報収集をしておく必要があると思います。この中東、北アフリカの情勢というのは、決して地理的に遠いからといって関係のない話じゃなくて、極めて我が国にとって重要な話であります。

 しかしながら、今回、アルジェリアの事件で明らかになったのは、現地の大使館は、警備対策官を含め日本人職員十三名のみであり、防衛駐在官とか警察アタッシェ、こういったところは配置されていませんでした。

 単に増員すればいいという話ではないと思いますが、例えば、日揮も一九六〇年代からそこで仕事をされておられた、こういった民間と、すなわち官民共同で情報収集する、それをいかにして我が国の情報体制としていくかという新しい試みも現実策として必要かと思いますけれども、こういったところについて、我が国のインテリジェンス体制のあり方についても含め、お答えいただけますでしょうか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省として、今回の反省を踏まえまして、有識者懇談会の提言もいただきましたし、与党PTの提言もいただきました。それから、政府みずからの検証もいたしました。

 やはり、その中で重要なことの一つは情報であって、かつ官民協力である、そういう深い反省と、それから、今後の課題というのをいただいたというふうに考えております。

 今回の有識者懇談会等を踏まえまして、五月三十日には官房長官が、三十一日には岸田外務大臣が、今後の検討の方向性について述べさせていただきました。その双方において、官民ネットワークの強化、特に、これからは双方向の情報交換が必要である、現地のことはやはり現地にいらっしゃる民間がよく御存じだろうということ、それから、そういった集めた情報をどうやって皆さんに共有するか。

 アルジェリアの事件の後ではございますけれども、各大使館で百七十六回の安全対策連絡協議会を開催しております。それからまた、IT技術も進歩しております。そういうことを官民の情報共有のためにどうやって使っていくか。

 こういう大きな宿題をいただいたと思っておりますので、私どもとして、できるだけ早急に改善策を打ち出してまいりたいと思っております。

畠中委員 以上で終わります。ありがとうございました。

武田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢であります。

 法案について質問をいたします。

 本法案は、自衛隊が外国におけるさまざまな緊急事態に際して在外邦人などの輸送を行う手段として、従来の航空機、船舶に加え、車両による陸上輸送を可能とするものであります。

 まず、防衛大臣に確認いたしますが、これまで政府は、緊急事態とは何かという点について、災害だけではなく内乱や紛争、これも排除されないことを説明してきました。その点は間違いありませんね。

小野寺国務大臣 間違いありません。

赤嶺委員 これまで政府は、在外邦人などの輸送を実施するに当たっては、派遣先国の同意を得ることが前提になると説明してきました。

 今回の法改正によってもその点に変更はないと理解してよろしいですか。

小野寺国務大臣 変更はありません。

赤嶺委員 派遣先国の同意を得るということの意味について改めて確認をいたしますが、派遣先の国が国際的な武力紛争下にある場合であっても、必要とするのは派遣先国の同意のみであり、武力紛争の相手国の同意は必要としない、そういうことですね。

小野寺国務大臣 私どもとして、今回輸送に当たりますのは、まず、外務省、外務大臣からの依頼があり、そして、輸送に関して安全が確保される、十分輸送の任務が行われるということの勘案をするということであります。

 今委員が御指摘の内容について、外務省が私どもにどのような事態を想定して要請するかということは、外務省の判断ではないかと思っております。

赤嶺委員 大臣、派遣先国の同意を得る、これはそのとおりだとおっしゃいました。その派遣先の国が国際的な武力紛争にある場合であっても、同意を得るというのは派遣先国の同意のみであり、武力紛争の相手国の同意は必要としない、そういうことですね。

 外務省の話を聞いているんじゃないんです。同意のとり方です。

小野寺国務大臣 まず、今の質問の前提となるそれぞれの地域の状況に関しては、これは政府全体として把握をし、外務大臣の方から私どもの方に派遣の要請がある。それを受けての派遣国の同意ということになりますので、順番からいうと、私どもに外務大臣からの要請があるということがその前だと思っております。

 お尋ねの件は、政府全体として、特に私どもは外務大臣からの依頼ということが前提になるというふうにしかお答えできません。

赤嶺委員 ちょっと、同意は誰からとるか、国際的な武力紛争が起こっている国に行く場合にはどうなのか、それを聞いているわけでありますが、お答えになりません。

 それで、派遣先国が内戦下にある場合、この場合は、必要とするのは派遣先国の政府の同意のみで、紛争当事者である反政府勢力の側の同意は必要としない、そういうことでいいですね。

小野寺国務大臣 いずれにしても、委員が想定されるようなその国の状況については、これは全体として政府が判断し、外務大臣から私どもに輸送の業務ということで依頼があるということが前提でありますので、今のさまざまな想定については、政府そして外務省で判断されるものだと思っております。

赤嶺委員 答弁なさらないわけですけれども、当然、紛争や内乱、これも緊急事態ということでお答えになったわけですから、内乱も起こり得るし、国際的な武力紛争に巻き込まれている場合もある。これを、防衛省が行く場合の同意というのは、つまり当事国の政府だけでいいんですね、当事国の政府から手続をとればいいんですねという、同意のとり方を聞いているわけです。いかがですか。

小野寺国務大臣 何度ものお答えになりますが、今赤嶺委員が前提とされるような状況の国においての設定であるということになれば、一般論としては、これは私ども、その国の状況について、政府全体で、そして外務省から私どもに派遣の依頼があるということであると思っております。

赤嶺委員 私が想定したことは、皆さんの法案でも想定の範囲内であります。これに対する判断を排除するわけではないですよね。国際紛争の武力紛争に巻き込まれている、内乱が起こっている、そういう国には絶対行かないという判断そのものをこの法案が排除しているわけではないですよね。

小野寺国務大臣 従来から、この自衛隊法、今回お示ししている改正を含めた邦人輸送の内容については、あくまでも防衛省・自衛隊は外務省からの依頼ということが前提になります。

 委員が今お話しされたような内容については、政府全体、そして外務大臣がどのような御判断をされるかということ、それがあって初めて私どもですから、その依頼がある前提の前に、私が、こういう場合ならいい、こういう場合なら悪い、そういうようなことを言う内容ではないんだと思っております。

赤嶺委員 結局、私が質問したことに答えられないわけですが、最初に、法律は内乱や紛争も排除していないというお答えでありました。

 そういう場合でも、同意というのは、結局、一方の当事者の同意を得たことにしかならないわけです。もう一方の側からいたしますと、理由も判然としないまま、第三国の軍隊が入り込んでくるということになります。これまでは派遣先国の飛行場や港湾まででしたが、今度は文字どおり領土に踏み込んでくることになります。

 自衛隊の派遣自体が敵対行為とみなされ、攻撃の対象となるおそれは十分あり得る、今までの港湾や空港とは違う問題が生じ得る、この点はいかがですか。

小野寺国務大臣 委員が先ほどから御質問されている前提のことを一般論として言えば、それは私どもが今回の法案の中で判断をするような範囲ではなく、何度も申しますが、そのような国がどのような状況にあるかということ、それは政府、そして外務大臣が判断をされ、私どもに派遣の依頼がある、その手順であると思っております。

 なお、加えて言えば、私どもとしては、派遣依頼があって私どもで判断をするというのは、輸送の安全を実施できるかどうかという判断を私どもとしてするということになると思います。

赤嶺委員 この中で、最初に、緊急事態とは何かという事態についての定義も聞いたところからすれば、当然起こり得る話であります。自国民の保護のためと説明しても、相手がそれを額面どおりに受け取るとは限りません。

 ちょっと具体的に伺いますが、一九九四年に自衛隊による在外邦人等の輸送を可能とする法改正が行われて以降、これまでに実際に輸送が行われたのは、今回のアルジェリア人質事件を除けば、二〇〇四年四月に、イラクのサマワからクウェートまで報道関係者を輸送した事例があるのみであります。先ほど防衛大臣も触れておられました。

 米軍によるファルージャでの掃討作戦を契機として、占領統治に対するイラク国民の反発が強まり、外国軍隊に対する攻撃や人質事件が頻発しておりました。そうした情勢の悪化を受けて、サマワの陸上自衛隊を取材していた報道関係者を陸上自衛隊の装甲車などでイラク国内のタリル飛行場まで輸送し、そこからクウェートのムバラク飛行場まで、航空自衛隊のC130輸送機で輸送したというものです。

 陸上輸送の法的根拠について、当時、政府は、イラク特措法第八条の対応措置の実施に伴う後方協力だ、このように説明をいたしました。この事例は、今回の法改正で、陸上輸送を実施できるケースに該当するのですか。

黒江政府参考人 仮にということでございますが、さまざまな条件がつくのかと思いますけれども、仮にこの法案をお認めいただいて、今回我々の提案しておるような形で条文が用意できましたということであれば、それは当然のことながら、輸送の対象になるというふうに考えてございます。

赤嶺委員 輸送の対象になる。まさに、紛争の当事者の一方の側に立った行動になるという私の懸念が、具体的な場面に当てはめると出てくるじゃないですか。(発言する者あり)出てこないと言う人たちは、イラク戦争の実態を知らないだけの話ですよ。

 私も、イラクに行ってその戦場の様子も見てきまして、民間の車列で非常に危険なところにも行きました。ああいうところに自衛隊が行くのかと。

 そもそも自衛隊のイラク派遣というのは、国連憲章違反のイラク戦争に引き続く軍事占領を支援するためのものでありました。派遣期間を通じて自衛隊の宿営地への攻撃は繰り返されました。そうしたもとで、現地に派遣された自衛隊が邦人輸送を担うことは危険きわまりないものであるということは、あのイラク戦争当時から、国会に籍を置いていた人なら誰でもわかることであります。

 政府はこれまで、輸送実施の要件となる輸送の安全に関して、空港や港湾の安全についてまず派遣先国が確保し、空港の管制や保安施設、滑走路、港湾の埠頭の状況などを日本政府が確認すると説明をしてきました。今回の改正で、「輸送の安全」という規定は「輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策」に変わりました。陸上輸送において危険を避けるための方策とは、具体的に誰がどのような方策をとるということですか。

黒江政府参考人 陸上輸送における安全の確保策でございますが、当方、自衛隊そのものがやれるということについて言いますれば、自衛隊の車両の移動の経路あるいはその移動の手段を、最適なもの、最も安全なものを選択するといったこと、さらに、現地当局による警備の強化を申し入れる、そういったことが考えられます。

赤嶺委員 現地当局において警備の強化を申し入れるというようなものもありました。ただ、紛争下というのは、相手の行動を予測することは容易なことではありません。輸送を行う側が危険を避けるための方策をとったと考えたとしても、実際の輸送中に攻撃を受ける可能性は否定することはできないのではありませんか。

武田委員長 約束の時間が過ぎていますので簡潔に、黒江局長。

黒江政府参考人 法文上、さまざまな不測の事態が生ずるということは、予測といいますか当然読み込み済みでございますので、自己保存のための武器使用が認められる、そういうことでございます。

赤嶺委員 終わります。

武田委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、自衛隊法の一部を改正する法律案について質問させていただきますが、その前に、大臣には事前に通告はしていないんですが一点、安全保障に関する重大な案件が生じましたので、そのことについて少し見解をお伺いしたいと思います。

 昨日、三日ですが、アメリカ海兵隊が部隊配備計画で、二〇〇三年からイラクやアフガニスタンへの軍事作戦のために中止していた海兵隊の部隊配備計画、UDPで、CH53E大型輸送ヘリなど八機を米軍普天間飛行場に配備すること、その第一機目が三日の午前中に普天間基地に到着いたしました。

 しかし、このことに関しては、事前に沖縄防衛局から地元の宜野湾市へは連絡がなかったことについて甚だ遺憾であると、昨日の午後、佐喜真市長が、その配備強行についてこれはまかりならぬという要請と、それから、今夏のオスプレイの配備計画の中止、普天間飛行場の危険性の除去もあわせて申し入れを行った、そういうニュースがけさの地元沖縄県の新聞に載っておりました。

 私が問題にしたいのは、この配備の強行もさることながら、これは六カ月間のローテーションですから、いろいろ、太平洋や韓国を回っていくという部隊になるわけなんですが、この配備について沖縄局の武田局長が、日米安保条約の目的達成のための活動の一環で、配備撤回をアメリカ側に申し入れることは困難ですとの認識を示したということなんですね。

 本来であれば、これは防衛省がしっかりと確認をして、そして地元の行政にしっかり連絡を入れて、この配備計画についてアメリカから連絡がありましたというふうなことも含めて、事前の情報などについてしっかりと提供するという責任があると思います。

 加えて、この間、県民の声を聞いてしっかりと負担軽減を行っていくということを、予算委員会での私の質問、それから本委員会での私の質問にも、安倍総理、岸田外務大臣を初め小野寺防衛大臣もしっかりと答えていただいておりました。この件について、まず大臣の見解をお聞かせください。

小野寺国務大臣 今お話にありましたCH53E大型ヘリの普天間飛行場配備ですが、五月三十日、米海兵隊より、二〇〇三年に縮小していた部隊配置計画を再開することとし、六月初旬に第三海兵遠征軍が沖縄に航空分遣隊を再配置することについて、海兵隊員百七十名が六カ月ごとにローテーション配備され、固定翼機八機が配備されること、これらの部隊に新しく配備される大多数の海兵隊員が基地内に滞在し、接受国への影響を減少することが公表されているということは承知をしております。

 本件のこの部隊配置計画は、二〇〇三年以降縮小していた計画を再開し、それまでの運用形態に戻すものであると承知をしておりますが、いずれにしても、沖縄の負担軽減につながるように、一日も早くこの普天間飛行場の移設や嘉手納以南の返還について努力をしていきたい、そのように思っております。

玉城委員 この件についてはもう質問は控えさせていただきますが、委員長、これは私からの申し入れでございます。

 明五日、安全保障委員会の理事会が沖縄に視察をすることになっておりまして、あわせて普天間基地も視察をすると……

武田委員長 明後日、明日ね。

玉城委員 ごめんなさい、明日でございます。明五日でございます、失礼いたしました。

 この普天間基地でしっかり関係者からその事情を聞くということも、筆頭間で協議をしていただきたいと思いますが。

武田委員長 後ほどまた理事会で諮りたいと思います。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、自衛隊法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 輸送の安全の要件について、八十四条の三の関連項目から順にお話を聞きたいと思います。

 当該輸送の安全が確保されていると認めるときと現行制度では書かれております。これが、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策と、当該輸送を安全に実施できると認められるときと書きかえられるわけですが、この当初の現行規定と新しく書きかえる相違点はどこにあるのかをお聞かせください。

黒江政府参考人 輸送の安全の要件でございますが、本日の質疑の中でも累次御答弁申し上げておりますけれども、改正案におきましても、両者の間に実質的な差というものはないということでございます。

 改正案では、これまでの国会等における議論を踏まえまして、これまでの趣旨、すなわち、危険はあります、予想される危険に対してそれをどのように回避できるのか、そういった方策を総合的に勘案して、安全が確保できるということが認められるときに実施をするんです、そういう趣旨を明確かつ簡潔に示す表現に改めたということでございます。

玉城委員 その輸送の安全についてですが、これは、安全であると外務大臣が判断すべき内容と、現行の、安全が確保されていると防衛大臣が判断される内容は、それぞれどのようなことを示すのか、それについて、まず外務副大臣からお願いしたいと思います。

鈴木副大臣 自衛隊による邦人輸送の安全の判断に当たりましては、当該輸送において予想される危険とこれを回避する方策について、防衛大臣が外務大臣と協議することになっております。

 輸送の安全の判断に当たりましては、一つとして、現地の輸送拠点や輸送経路において妨害行為を受ける可能性など、現地当局の治安能力も踏まえつつ、予想される危険を把握すること、二つ目といたしまして、こうした危険を回避する観点から、現地当局による警備の強化に係る申し入れ、調整や、自衛隊の移動の経路、手段等の選択など、いかなる方策をとることが可能か検討すること、これが重要になると考えております。

 このような観点から、外務大臣は、在外公館等を通じまして、派遣先国における治安、空港や港湾等の運用状況及び交通等に係る綿密な情報収集を行い、これを防衛大臣に提供するとともに、派遣先国当局に対して警備の強化等の申し入れ、調整を行うこととなります。

玉城委員 そのことについて、防衛大臣のその判断をお聞かせいただきたいと思います。

黒江政府参考人 防衛大臣は、今御説明ありましたような外務省からの情報の御提供といったものを踏まえまして、輸送の実施に責任を有する者としての立場から、専門的な見地から、輸送経路の状況でありますとか、あるいは航空機、船舶等であれば保安施設等の機能といったものが十分に発揮されているのかどうか、そういう面から安全性の判断を加えるということになります。

 また、陸上輸送について申し上げますと、先ほどありました情報をいただいた上で、移動経路あるいは移動方法、そういったものをどのような形で選択すれば一番安全であるか、そういう判断を行うということでございます。

玉城委員 ちょっと質問の順番を変えさせていただきたいと思いますが、八十四条の三関連で輸送手段についてですが、この改正案で車両による輸送を加えることについて、先ほども答弁があったと思います、「借り受けて使用するものを含む。」と加える理由は何か、お聞かせください。

黒江政府参考人 これは、実際に自衛隊を派遣する場合の状況にもよるところでございますけれども、退避を要する邦人等の数がかなり多い、これに対して、こちら側の自衛隊が自前で用意できる車両等の数が限られておるといったようなときにも対応できるように、そういう趣旨で借り受けの車両といったものも加えておるということでございます。

玉城委員 そのように、例えば陸上移動する車両の数がふえるということは、それだけ、あってはならないことかもしれませんが、攻撃を意図する者に対しては大きな目標になってしまうという危険性も伴うわけでございます。

 車両輸送を明確に今回改正で加えることによって、そういう不測の事態に遭遇するなど陸上輸送における危険性が高まることについて、どのようにその場合の危機回避を予測するべきか、お答えください。

黒江政府参考人 これも繰り返しになりますけれども、当然のことながら、これは現地の情勢をいかに正確に把握するかということが最も重要なポイントになりますので、これに必要な情報につきまして、現地の当局からの情報提供でありますとか、あるいは現地の日本の在外公館あるいは領事館からの情報といったもの、あるいは自前で事前に偵察を出すといったような努力をしながらそういう情報を得るということで、危険を回避するということでございます。

玉城委員 安全であること、危険を回避すること、そういうことを考えますと、やはりいろいろな点で十分な現地の情報を得ることが絶対条件だというふうに思います。

 そこで、私が一点疑問に思うのは、輸送の対象者についてでございます。

 条文上で明記する輸送対象者に、「早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者」とあえて加える理由は何かについてお聞かせください。

黒江政府参考人 輸送対象者の拡大の理由でございますけれども、これらの者を新たに輸送対象者として規定しております理由は、御家族等と保護を要する邦人等と早期の面会を実現するといったようなこと、あるいは帰路、帰り道で御一緒にお運びをするということ、そういうことを通じて、より落ちついた環境で帰国を図るといったような配慮が必要であるということが今回のアルジェリア等の件を通して教訓として得られたということを踏まえまして、そのような状況に対応できるように、そういう理由でございます。

玉城委員 こういう場合には、私はやはり民間航空の利用も必要になってくるのではないか、実はその方が、民間人を送る場合には、より早い時間に現地に行っていただいて、さる場所で集合するということの方が、より自衛隊の迅速な動きにもなるのではないかというふうに思った次第です。

 では、御家族を送るとして、輸送対象者の安全確保の観点について、この御家族を連れていくとする場合はどこまで連れていくということをこの法案で想定するのか、お答えください。

黒江政府参考人 これは、当然、危険な場所にお連れするというわけにはまいりませんので、予想される危険、あるいはどうやってこれを避けるかということを総合的に勘案して、具体的にどこまでお運びするかというのを決めることになるわけですが、通常の場合ですと、空港あるいは港湾、そういったところで安全にお過ごしいただけるように配慮をするということだと思われます。

玉城委員 ありがとうございます。

 八十四条の関連に関しては以上なんですが、やはり、安全に安全を期するということはもちろん当然のことであると思います。

 九十四条の五の関連質問をさせていただきます。

 武器の使用権限ですが、自己保存型の武器使用権限を陸上輸送にも適用させることで十分であると考えられる理由についてお聞かせください。

小野寺国務大臣 答弁の前に、一つ訂正をさせていただきたいと思います。

 先ほど冒頭で、CH53大型ヘリの中で、私、八機の飛行機に関して、これを固定翼機と発言しましたが、回転翼機の間違いでございました。

 ただいまの御質問ですが、今般の改正では、基本的に、派遣先国の同意を得て、邦人等の陸上輸送を安全に実施できることを前提としております。

 そのような前提のもと、武器使用権限についてもさまざまな検討を行った結果、万一不測の事態が生じたとしても、自己保存型の武器使用権限により、事態に応じた適切な対応を行うことで、輸送を安全に実施し得ると考えております。

 防衛省としては、本改正案により可能となる陸上輸送の実施に際し、想定されるさまざまなケースへの対応を検討し、不測の事態への対処方法の徹底を図るなど、現場で隊員が対応に苦慮することがないように配慮してまいる所存でございます。

玉城委員 では、これがもう最後の質問になるかと思います。

 そもそも、専守防衛を主とする自衛隊としての本来任務が、外国における邦人の諸活動に対する安全保持行動へと自衛隊法が改正されて、これまで対処されてきたわけでございます。

 国防における任務を主とする自衛隊とは別に、私は、海外における邦人及び企業等が活動する地域の情勢に対応できる組織を編成することはこの憲法において可能であるというふうに思いますが、最後に大臣からその見解を伺いたいと思います。

小野寺国務大臣 今回の改正案においても、自衛隊による邦人輸送は、緊急事態において邦人輸送を安全に実施可能な場合に行うものとされており、自衛隊が治安を創出しつつ邦人を救出、奪還するということを想定しているものではありません。

 また、自衛隊が他国の領土において車両を用いて在外邦人等の輸送を行う際には、航空機や船舶による場合と同様、その国の同意を得ることが前提となります。

 このような武器使用権限は、前回と同じような自己保存のためのものに限られるということでありますが、今御指摘がありました。私どもとして、このような活動で十分対応できるというふうに考えております。

玉城委員 終わります。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

武田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 大臣、長時間御苦労さんでございます。

 私は、きょうは、審議中の法律案と関連して、総論部分に関して二、三点お伺いをいたします。

 まず、去る六月一日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議での小野寺防衛大臣の演説が国内外で大きな反響を呼びました。

 報道によれば、小野寺大臣は演説で、安倍政権の歴史認識について、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明する歴代内閣と同じ立場を引き継いでいると表明いたしました。また、安倍政権による防衛力強化や集団的自衛権行使容認に向けた議論に対し右傾化を心配する声があるが、全くの誤解だ、地域の安定のために貢献することが目的だとも述べたようであります。

 国際会議で安全保障とは直接関連しない話題に言及するのは極めて異例だと言われておりますが、米国や中国からは高く評価されたようであります。私も報道に接して、共感と懸念を抱きました。

 そこで、大臣に、演説の真意をお伺いいたします。

小野寺国務大臣 演説を読んでいただきまして、ありがとうございます。

 防衛省・自衛隊、平成二十五年度予算をふやさせていただいております。また、さまざまな、今後、防衛力あるいは大綱の見直し等を行う中で、周辺国に我が国がどのような意思を持ってこのような防衛力整備を行うかということを説明するのが大切な役割と思い、ここで、我が国の、特に安倍政権になりまして、その外交姿勢の中で、今お話があった部分について、政府見解をスピーチの中に入れさせていただきました。

 いずれにしても、私どもが目指す安全保障環境というのは決して他国に脅威を与えるものではないということを意図して、今回スピーチをさせていただいたところであります。

照屋委員 大臣、私は、自民党の憲法改正による交戦権容認とか、あるいは国防軍の創設、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認、あるいは本件自衛隊法改正などの動きが、アジア各国に日本の右傾化や国際社会への挑戦と見られる懸念を与える要因になっているのではないかと心配しますが、大臣はどうお考えでしょうか。

小野寺国務大臣 一つ一つのことに関して、それが懸念につながる、つながらないということについては、私ども、判断できる立場ではありませんが、全般として、やはり日本がこのアジアの地域で置かれている立場、そしてさまざまな近隣諸国との歴史の問題、こういうことを考える中で、私どもとしては、今回、防衛力を整備するに当たって、しっかりと安全保障に、むしろ日本が積極的な役割を果たすということを対外的に発することは、私は必要なことだと思っております。

照屋委員 大臣、きょうの朝日新聞の社説に、防衛大臣が国際会議でこんな弁明をしなければならないのは尋常ではない、歴史認識をめぐる安倍政権の価値観とは何か、どこに向かうのか、その見えにくさが右傾化批判を招く一因であろう、各国の懸念を誤解と弁明するならば行動で見せるしかないとの趣旨の社説がございました。

 私も、アジア各国の代表を目の前にした国外の発言と、国内での安倍政権の言動に食い違いが生ずれば、日本はいよいよ各国から信用を失うんではないか、こういう懸念を持っておりますので、ぜひ、大臣もそういう声があるということをしかとお考えいただきたいと思います。

 さて、私は、国民の生命財産を守ることは政府に課された責務である、あるいは、海外で危険に巻き込まれたり、情勢が不安定になった国に残されたりした邦人の退避に全力を挙げるのは政府の当然の大きな責務だと考えております。

 そこで、大臣にお聞きをしたいのは、紛争地における安全を確認した上での邦人輸送の際、車両による邦人輸送、自衛隊の現地情報システムは、どのように確立をされるんでしょうか。

小野寺国務大臣 今回の輸送のことに関しても、前提は、やはり、まずその国の安全に関する情報をしっかりと収集することだと思っております。

 在外公館等を通じて、派遣先における治安、交通情報の収集、これはもちろんでございます。また、他国も輸送を行う場合は、その実施状況についての情報を収集するということにもなると思います。

 緊急事態が発生した際に、こうした治安、交通情報を収集するためには、邦人が活躍する外国について、平素からさまざまなネットワークを通じて情報を得られるようにしておくことが大事だと思いますし、防衛省としても、各方面からの情報を入手できるよう、関係省庁と連携をとってまいりたいと思っております。

照屋委員 大臣、私は、いろいろな邦人輸送手段、これについてさまざまに検討することも当然大事でありましょう。そして同時に、忘れてはいけないのは、海外へ進出している企業が、情報収集と防衛策を強化するとともに、外務省や大使館が、企業や現地政府、関係各国との情報交流を密にする必要があると思っております。

 まず危険を回避して、緊急事態では最も有効な方策を選ぶ総合的判断が求められていると思います。そのために、防衛省はどのような具体的な対策を講じていくんでしょう。

小野寺国務大臣 一番大切なことは、恐らく、輸送ということを私どもが任務としなくても、事前にさまざまな危険情報、退避情報が外務省を通じてその国の在留邦人に伝わり、危険なところから退避をするということが前提なんだと思います。その上で、万々が一、私どもに任務についての指示があれば、私どもとして輸送の安全を考えながら対応していくということだと思っております。

 いずれにしても、今委員が御指摘のように、情報収集が大変大切ですので、私どもは防衛レベルから情報をとる防衛駐在官の増員というのを検討しておりますが、政府全体、特に外務省を中心にこれからも相談をし、また検討していきたいと思っております。

照屋委員 終わります。

武田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十五分散会


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