衆議院

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第3号 平成13年2月27日(火曜日)

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平成十三年二月二十七日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 五島 正規君

   理事 伊藤 達也君 理事 稲葉 大和君

   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君

   理事 小林  守君 理事 近藤 昭一君

   理事 青山 二三君 理事 樋高  剛君

      植竹 繁雄君    小渕 優子君

      岡下 信子君    熊谷 市雄君

      小泉 龍司君    河野 太郎君

      下村 博文君    田中 和徳君

      谷本 龍哉君    鳩山 邦夫君

      原田昇左右君    平井 卓也君

      増原 義剛君    奥田  建君

      鎌田さゆり君    佐藤謙一郎君

      鮫島 宗明君    長浜 博行君

      田端 正広君    藤木 洋子君

      金子 哲夫君    原  陽子君

    …………………………………

   環境大臣         川口 順子君

   農林水産副大臣      田中 直紀君

   環境副大臣        沓掛 哲男君

   環境大臣政務官      熊谷 市雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括

   審議官)         川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部

   長)           永村 武美君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局次

   長)           佐藤  準君

   政府参考人

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (水産庁次長)      川本 省自君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  大石 久和君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・

   リサイクル対策部長)   岡澤 和好君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環

   境保健部長)       岩尾總一郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  浜中 裕徳君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  松本 省藏君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境

   部長)          石原 一郎君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  西尾 哲茂君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     田中 和徳君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 和徳君     下村 博文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境保全の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

五島委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君、農林水産省大臣官房総括審議官川村秀三郎君、農林水産省生産局畜産部長永村武美君、農林水産省農村振興局次長佐藤準君、林野庁長官中須勇雄君、水産庁次長川本省自君、国土交通省道路局長大石久和君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長岡澤和好君、環境省総合環境政策局環境保健部長岩尾總一郎君、環境省地球環境局長浜中裕徳君、環境省環境管理局長松本省藏君、環境省環境管理局水環境部長石原一郎君及び環境省自然環境局長西尾哲茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

五島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中和徳君。

田中(和)委員 おはようございます。

 私は、我が党の環境委員会委員各位の御理解をいただきまして、本日の質問に立たせていただきます自由民主党の田中和徳でございます。川口大臣、沓掛副大臣、熊谷環境大臣政務官、御苦労さまでございます。よろしくお願いをいたします。

 私の選挙区は、長年にわたり公害問題に苦しみ、官民挙げてその改善に取り組んできました京浜工業地帯の中心をなす川崎市の臨海部でありまして、私自身、市会議員あるいは県議会議員として環境政策にも大きくかかわってまいりました。

 また、環境問題こそ喫緊のテーマとの共通認識のもと、鳩山邦夫先生が主宰される自然との共生を考える国会議員の会というのがございまして、そのメンバーとしても入会をさせていただいておるわけでございます。

 そういう立場から、限られた時間でありますけれども、大臣の所信表明並びに諸施策に対してお尋ねをしてまいりますので、明快なる答弁をお願いしたいと思います。

 人類が地球上に誕生して以来今日まで、夢を形にするために、物をつくり、それを普及させる経済を求め、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会に陥っていったのでございます。その結果、大気や水質が汚染され、多くの動植物が絶滅し、そして地球温暖化やオゾン層の破壊といった深刻な地球環境問題が発生をいたしております。その意味では、まさしく二十一世紀は、人類が未来に向けて継続して生き続けることができるかどうか、その能力が試されている時代とも言えるのではないかと思います。

 今、環境の世紀と言われる二十一世紀がスタートし、環境庁が環境省に昇格したことの意義は大きいものがあると思っております。特に、民間の出身であり、女性でもある初代環境大臣の川口順子大臣に寄せられる国民の期待も極めて大きいと思っております。

 そこで、大臣は、新世紀を迎え、環境省の任務の重さをどのように受けとめ、国民の期待にどのようにこたえようとしておられるのか、その決意のほどをまずお伺いをさせていただきます。

川口国務大臣 今委員が、環境問題は喫緊のテーマであるというふうにおっしゃられて、私も全くそういうふうに思っております。

 二十一世紀は環境の世紀と言われておりますけれども、ちょうどその二十一世紀の初めに環境庁が環境省にしていただいたということは、国民の皆様の環境保全に対する強い思いというのがあったと思いますし、また、それを御支持いただいた環境委員会の皆様を初め、国会の多くの方、あるいは日本社会の大勢の方のこの問題についての強い期待をまさに反映してということだと思っております。そういう意味で、私は、初代の環境大臣という仕事をさせていただくことに対しまして、大変に重い責任をいただいたというふうに思っております。

 環境省は、環境庁から環境省になる過程で、例えば廃棄物行政が厚生省から環境省の所管になるというようなこともございまして、今までよりは仕事の面で、権限の面でより多くの権限をいただいたと思っております。政策を企画立案し、それから、例えば廃棄物行政のようにそれを実際に実施していくという立場になったわけでございまして、そういう意味で、政策を企画立案し行動する官庁としての環境省をこれから職員一同と一緒になりましてつくっていき、国民の皆様の期待にこたえるようにしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

田中(和)委員 大臣のかたい決意もお伺いをいたしまして、ぜひひとつ頑張っていただければと。私も頑張りますので、よろしくお願いいたします。

 続いて、COP6についてお尋ねをいたします。

 昨年の十一月にハーグで開催された気候変動枠組み条約の第六回締結国会議では、川口大臣が代表団長をお務めになられました。しかし、京都議定書を実施に移すための必要な各種ルールについて、会議期間中に各国の合意形成には至らず、本年六月、七月に再び会合が開かれることになっております。大臣も強い危機感を表明されておられますけれども、地球温暖化は、人類社会のまさしく基盤を揺るがす重大な環境問題になっておるわけでございます。

 本年一月から二月にかけて開催された気候変動に関する政府間パネルの中に設けられた作業部会でも、既に地球の温暖化が始まっていることは気象観測のデータなどから確認されておりまして、推定される地球の気温の上昇幅は、当初見込まれたよりも大きいんじゃないか、こう言われ始めておるんですね。

 また先日、経済産業省が、平成二十二年度の国内のエネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量が、平成二年度を七%上回る三億七百万トンに達するとの試算結果を明らかにしております。京都議定書の六%減という方針は、このままでは残念ながらまず達成不可能じゃないか、このように私も危惧しているんです。

 そして、COP6での我が国の態度も、大臣には恐縮でございますが、すべての項目について後ろ向きであったとの強い批判も一方で出ております。私も点数はちょっと厳しくつけておりまして、重大なことだな、こう思っております。

 私は、我が国は、グローバルスタンダードとして受け入れるべきものは受け入れていく、そして今こそ、主張すべき点はきちっと主張して国際社会の理解を得ることが必要だと思うんです。そして環境の分野こそ、我が国日本が世界の先進国としてリーダーシップを発揮して、まさしく世界をリードすべきと思いますけれども、再開会合に臨む大臣の決意をお伺いしておきたいと思います。

 交渉上の困難なことも御報告を聞いてある程度は知っておりますけれども、その点についても、特に外国の主張等、また困難な状況等の留意すべきところがあれば、あわせてお答えをいただければと思います。

 以上であります。

川口国務大臣 ハーグで合意ができませんでしたことにつきましては、私も、ほかの国からの代表もそうですけれども、大変に残念だったというふうに思っております。

 その関係で、私どもはハーグでもそういうふうに言いましたけれども、二〇〇二年に締結ということを目指して合意をするということでやってきましたので、このために今度の夏の再開会合では全力を尽くすつもりでおります。

 それから、会議に合意できなかったということは、京都の場合のようにただ一つのこと、目標値を決めるということではございませんで、決めるべき項目がもうたくさんありまして、それを、それぞれの国の利害関係をお互いに一緒に合意をしながらやっていくということが非常に難しくて時間切れになってしまったということでございます。次の会合においても同様に非常に困難であると思いますけれども、全力を尽くすつもりでおります。

 それから一つだけ、日本はすべてに後ろ向きであったというふうに委員がおっしゃいましたけれども、私は全くそういうふうには認識をいたしておりませんで、むしろ途上国問題について日本が中心になってアンブレラグループのあの話をまとめるとか、それからあの会合の場でも、ある部分、京都メカニズムについて私は共同議長をやらせていただきましたし、ということで、非常に積極的に、前向きに貢献をさせていただいたつもりでございまして、実は、その関係でこれから後も日本としては前向きにイニシアチブをとっていく必要があると思っております。

 その一つといたしましては、今度の四月に予定をいたしておりますけれども、前回のハーグでの会合で合意が難しかった一つの点、これは、排出量取引等の京都メカニズムについてアンブレラグループとEUとの対立があったわけですけれども、実際にこれは使えるものでなければ意味がないということでございますので、四月の場では、実務家をも含め、それからそのアンブレラグループの人たち、あるいはEUの政策担当者及びこの問題を研究している学識経験者等を集めまして、国際会議でこの議論をいたしまして、次回の会合で、四月の会合の成果あるいは合意というものが何らかの形で反映されるようなことになればいいというふうに思っております。これも日本として次の会合に向けての一つの貢献というふうに位置づけております。

田中(和)委員 私は、確かに、それぞれの国が抱えている事情、皆違うと思うんですね。ですから大変だと思うんですが、私は、やはり日本が力を発揮できるというのは、平和そしてこの環境の問題だと思うんですよ。ですからこれは、とにかく大変なことはよくわかりますが、それゆえに川口大臣に御就任をいただいておるわけでございまして、まさしく国民の期待もそこにあるわけでございますから、ひとつ張り切ってぜひ頑張っていただきたい、このように思います。ぜひひとつ、引き続き大臣として頑張っていただければと、私も応援いたしますから、よろしくお願いしたいと思います。

 時間の関係がありますので、次にちょっと参ります。

 次は、土壌汚染について伺うんですが、大臣は土壌汚染問題について、有害物質により土壌が汚染されていることが判明する事例が急増していることを踏まえて、土壌環境保全対策のために必要な制度のあり方の検討を進める、このようにおっしゃっておられます。

 川崎市もそうですけれども、工場地帯を抱える地域では、その跡地利用を円滑に進める上で土壌汚染の解決は大きな課題になっております。知らずにマンション用地として取得した土地が有害物質で汚染されておりまして、その除去に六年もかかったという事例が私の地元にもございます。

 そこで、汚染が判明した件数は近年どのように推移しているのか、まずお伺いします。

 また、環境省が把握している以外にも現に汚染されている事例は多数あると私も思いますけれども、その点についてどのような推測や事例があるか、環境省が調べていないなら民間などほかの機関の報告や調査でも結構ですから、おおよその見通しをお伺いしておきたいと思います。

 以上です。

石原政府参考人 お尋ねの件につきましてお答えいたします。

 まず一つ、土壌汚染の判明の件数の近年の状況でございます。

 環境省としましては、都道府県それから水質汚濁防止法の政令市を通じまして、当該都道府県なりあるいは政令市においてどのような土壌汚染が判明したかということで調査を行っております。

 平成十年度の調査結果によりますと、十年度までに土壌環境基準を超過していることが判明した事例は二百九十二件でございます。そのうち百十一件が平成十年度に判明するなど、土壌汚染の件数は近年増加傾向にあろうかと認識しております。

 また、それ以外にもあろうかというお尋ねでございます。

 御指摘のとおり、環境省で把握しているものは、都道府県なり政令市を通じて判明した事例ということで捕捉してございます。そういう意味では、捕捉していないものですからどういうふうに申し上げていいかというところはあるのですが、汚染されている事例で都道府県においてすべて把握し切れているかというと、必ずしもそうでもないこともあろうかと思っております。そういう意味では、そういうものもあろうと思っております。

 民間機関におきまして調査があるかというお尋ねでございます。

 民間機関におきましても土壌汚染そのものという形での捕捉はしておりませんで、環境基準におきまして有害物質とされている物質を使っている事業所をもとに大胆な推定というような形でのものはあります。ただ、環境基準を超えているという意味での土壌汚染というような形ではございません。

 いずれにしましても、環境省としまして、これら事業所の推定等も踏まえまして汚染の把握には努めてまいる所存でおります。

田中(和)委員 なかなか大変だと思いますが、環境省が自分でちゃんと調べないからいわば正確な数字が把握できないんだ、私はこのように思っているんですよ。やはりやらなければいけない、これは。

 それから、これは非常に人の健康にかかわる問題なんで、環境の立場から考えてもこれは重大なことなんですね。大気汚染とか水質汚濁は法律上できちんと監視測定を行うことが行政の根幹になっているわけでございますが、土壌対策は何でこんなにおくれたのかな、こういう認識を私は持っているんですよ。

 不動産の売買契約時に、物件説明書にもこれは記載をしなきゃいけないですね。工場跡地の土地の流動化の促進という意味では、経済政策として重要な役割を果たしていくわけですが、アメリカでは、企業買収に当たっての土地の汚染の有無を確認することはもちろん当然ですし、私も調べましたけれども、買収の成否にかかわる一番大きなポイントになっておるんですね。

 私有地に立ち入って汚染の状況を確認するためには法律上の権限が必要でありますし、それがないから現状を把握できないということであろうと思います。そのためには早急に法律をつくることが環境省に課せられた使命じゃないか、このように私は指摘をしたいと思います。

 それからもう一つ、外国では相当進んだ制度がもうできておりますから、いろいろないい例がありますから、一生懸命ぜひひとつ事例を勉強していただきたい、このようにも思っております。

 そういうことで、私は我が国の、潜在的に極めて多い汚染があるのではないかとみんなが心配しております土壌の問題について法律をとにかく進めてもらいたい。そういうことで、検討の内容とスケジュール、いつ国会に法案を提出する考えがあるのか、まだそこまで発言ができるのかどうか、御答弁ちょっとわからないかもしれませんけれども、ぜひひとつ踏み込んだお答えをいただければと思っております。

 また、土壌対策の状況、他の先進国等ではどのような形で制度化されているのか、把握されているのかもあわせてちょっとお聞かせいただければと思います。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、土壌の汚染の問題というのは大変に重要な、重大な環境問題であるというふうには私どもも認識をいたしております。

 それで、昨年の十二月から、学識経験者の方々に集まっていただきまして、土壌汚染の問題の研究を始めております。幾つか検討すべき事項がありまして、例えば、どういうふうに環境のリスクをとらえるかということですとか、それから、どういうふうにその情報を管理するかとか、幾つか詰めていかなければいけない問題はあるわけでございます。できるだけその問題を早くに詰めまして検討を進めまして、その結果をもとに、制度化も視野に入れてということで具体的に取り組んでいきたいと思っております。

 委員から、時期はいつごろかというふうに言われましたけれども、これはまさに検討会での御議論のいかんにもよりますので、ちょっときょうの時点では、いつというふうに時点を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 それから、外国の例ですけれども、ほかの国では、アメリカ等でもスーパーファンドというのもございますし、幾つか進んでいる制度を持っている国はございます。また同時に、そういった制度についての問題もあるというふうに思います。そういったほかの国の取り組みにつきましても大いに参考にさせていただきつつ勉強を、研究をしていきたいと思っております。

田中(和)委員 これは、はっきり言って我が国の取り組みがおくれちゃったのですね。おくれたことを今幾らああだこうだ言ったって仕方がないので、早くやるということなんですが、特にこれは、不動産の契約上のことで考えれば、国土交通省と関係も出てくるわけですね。当然これは法律上のことでもございますし、費用のかかることでもあります。ですから、これらのことがひとつディスクロージャーできるような状況をやはりつくっていかなきゃいけない。後からひどいことになったということになりますと、環境省の責任も大きいわけでございますからね。ですから、ひとつ御努力をいただいて早く法律化していただきたいなと思っております。

 続いて、大都市で大問題になっております大気汚染について、特に自動車の大気汚染についてお尋ねをいたします。

 私の住んでいる川崎市の臨海部は、全国でも有数の激甚な大気汚染の町であったわけでございます。関係者の努力によりまして工場等による大気汚染は随分と改善をされましたが、自動車排ガスの影響によって、市内の幹線道路沿線の多くの地点では、今なお窒素酸化物と浮遊粒子状物質の環境基準を達成でき得ない状況が続いております。

 御存じのように、昭和五十七年以来四次にわたって提訴された川崎公害訴訟は、平成八年十二月に企業との和解が成立し、一昨年五月に国及び首都高速道路公団との和解が成立して終結を見たところであります。この訴訟事件で、自動車交通公害については、国と公団が環境対策を実施することを前提に和解が成立をしたものであることを十分踏まえて、環境省においても引き続き大気汚染の改善に最大限の御努力をお願いしたいと要望をしておきたいと思うのでございます。

 さて今、国会に環境省はいわゆる自動車NOx法の改正案を提出する予定というふうに聞いておりますけれども、大都市圏における大気汚染、とりわけ道路沿道の大気汚染が現在どのような状況にあり、それに対して、法制度の充実を含め、今後環境省はどのように対処されるのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 大都市の大気汚染の問題というのが大変に問題であるということも十分に認識をいたしておりまして、特に窒素酸化物ですとか浮遊粒子状物質について大気汚染の改善が進んでいないということでございます。環境基準の達成率が非常に低い状況にございます。

 それで、自動車NOx法に基づく措置ですとかその他の措置で総合的にいかなる改善が可能かということで今まで取り組んできたわけでございますけれども、環境基準の達成ということに照らして考えますと、今までの取り組みが必ずしも十分とは言えない、言えなかったということでもあると思います。

 特に大都市地域の大気環境の改善ということで、自動車NOx法につきまして、粒子状物質の規制対象への追加ですとか対象地域の追加、名古屋地域を追加するということでございますけれども、それから事業者への指導、制度の充実といったようなことを含めて、現在NOx法の改正に向けての検討を関連各省ともども進めているところでございます。間もなく成案を見ることになるというふうに思っておりますので、国会で御審議をいただきたいというふうに考えております。

 環境省としまして、国会でNOx法の改正案を成立させていただいて、これに基づいて大気汚染に対する環境のさまざまな施策を一層強力に進めていきたいというふうに思っております。

田中(和)委員 地方自治体の方でも、御存じのように大変な問題になり、首長さん等の発言も続いておりまして、またいろいろな方策も提言をされておりまして、ぜひひとつ国が頑張ってもらわなければならない。早く対応してもらわないと後追い行政になってしまいますから、よろしくお願いしておきたいと思います。

 特に、自動車の排気ガスによる大気汚染の中でも、ディーゼル排出粒子、DEPによる健康影響が私たち川崎でも大変懸念をされておるのでございます。

 その対策として、ディーゼル粒子除去装置、DPFといいますけれども、その開発、実用化が注目をされております。ところが、二トン、四トン車用のDPFが百数十万もするということでございまして、そんな高額の装置はなかなか普及しないのじゃないかな、このように私も思っております。川崎の地元にはいすゞ自動車という会社もございまして、いろいろと相談をしたのだけれども、やはりコストダウンがなかなか難しい、こういう話もあるわけでございます。

 DPFの環境改善効果を環境省はどのように評価しているのか、また普及させるためにはどうしようとしているのか、そんなことをまずお尋ねしておきたい。

 もう一点は、石原知事が提起をして、東京都を初め各種対策が議論されて実施に移されつつありますロードプライシングのことについて、国はどういうふうに対応しようとしておられるのか、お聞きしたいと思います。

 以上です。

松本政府参考人 今の御質問のうち、前段の部分について私の方から御説明をさせていただきたいと思います。

 ディーゼル微粒子の除去装置、いわゆるDPFでございますけれども、この環境改善効果につきましては、私どもが昨年設置しておりますディーゼル車対策技術評価検討会、ここで昨年の七月に中間まとめをいたしておりまして、そこではPM、粒子状物質、この低減に効果はあるけれども、NOx、窒素酸化物の低減にはほとんど効果がないという評価であります。したがいまして、古いディーゼル車については、基本的に最新の規制適合車への代替を促進する、これがベストだという評価でございます。

 また、現時点ですべての使用過程のディーゼル車にこの装置を装着するというようなことはなかなか難しいということでございまして、したがって、装着の一律の義務づけというようなものは難しいわけでございますけれども、緊急的な措置としては有効性は当然期待できるということでございまして、装着可能な一部の車両につきまして、環境省といたしましても、DPF装置の装着に対する補助を平成十三年度から実施をしたいということで、現在、十三年度予算案に所要額を計上しているところでございます。

大石政府参考人 後段につきまして私から御説明申し上げます。

 東京都が都内の一般道路を対象に検討中のロードプライシングにつきましては、施策の合理性、利用者の受容性、徴収技術、周辺道路への影響、課金の根拠、収入の使途など検討すべき課題が多く残されておると考えております。現在、東京都が設置いたしました東京都ロードプライシング検討委員会におきまして、学識経験者の方々、東京都、国土交通省を初めとした国の関係機関等が連携して鋭意これらの課題の整理に取り組んでいるところであります。

 このように、一般道路でのロードプライシングにつきましては検討の途上でございますが、国土交通省といたしましては、直ちに実施できる施策といたしまして、現に料金を徴収させていただいております有料道路を対象にいたしまして、ネットワーク内の並行する路線間に料金格差を設けることによりまして、住宅地域に集中した交通を湾岸部等に転換させ、例えば横羽線から湾岸線へというようなことでございますが、住宅地域の沿道環境の改善を図る環境ロードプライシングを平成十三年度よりまずは試行的に実施したいと考えているところであります。

田中(和)委員 私の地元川崎でも大変多くのトラック業者の皆さんがおいででして、一様に経営が苦しいんですね。ですけれども、内陸部に入っていかなくとも高速道路をうまく使ったらという案もありまして、自動支払いシステムがいよいよ軌道に乗りつつあるわけでございまして、短い間で事足りるんだったら、内陸部に、一般道路に入って通らなくても、わずかな間を、短い間を高速道路でさっと抜けていけば随分違うという話もあるんですね。大石局長にもまたお力をいただかなきゃいけないな、こう思っておりますし、ぜひひとつ取り組んでもらいたいんです。

 もう一点だけ、最後にお尋ねをいたします。

 川崎市では、次善の策として、クリーン軽油をバスあるいは民間のトラック業界の皆さんにも御協力いただいて使うようにし始めました。ただ、二〇%高いんですよ、実は。つくっているメーカーがほとんどないんです、今まで使っていませんからね。これが大変効果があるんですよね。実際に私調べてみましたけれども、現場に立ち会いましたけれども、非常にいいんです。いいんですけれども高いんです。そういうことで、僕は、次善策としてこのクリーン軽油をもっと使うようにしたら大分安上がりで効果が上がるんじゃないかな、このように思っているんです。

 ですから、何か環境省なり国側でこのクリーン軽油を使うことに対してサポートできるようなシステムが、あるいは制度、こんなものができないのかな、また、費用の面でも少しインセンティブを与えるようなシステムができないのかな、こう思っておるのでございます。

 ぜひ、クリーン軽油について環境省としてどのようなお考えを持っていらっしゃるか承って、前向きな答弁を期待して、終わりたいと思います。

松本政府参考人 御説明いたします。

 本年一月から川崎市が、クリーン軽油と委員おっしゃられましたけれども、軽質軽油を使用し始めたというのも承知しております。軽質軽油というのは粒子状物質の削減に一定の効果があるということでございまして、使用過程車対策という意味ではそれなりの期待がなされているというのも十分承知をいたしております。

 ただ、やや難点と申しますのは、軽質軽油の製造に使用されます原油中の軽質の成分というのが灯油の製造にも使われるということでございますので、軽質軽油の生産量が増加をする、全国的にそれを普及させるというような方向でいった場合には灯油の供給に影響を及ぼす可能性がある、特に冬の間というようなことでございまして、現時点では軽質軽油の供給量には一定の限界があるのではないかというふうに認識をしているわけでございます。

 したがいまして、環境省としては、軽質軽油について当面の地域的な対策として、例えば川崎市とか、その効果が上がることを期待しているというのが現状でございます。私どもは、全国的な対策という意味では、粒子状物質削減を目的として昨年中央環境審議会で答申をいただいておりまして、軽油中の硫黄分をリッター当たり五〇ppmへ平成十六年末までを目途に削減していくという答申をいただいておりますので、その線でまず最大限の努力を傾けていきたいと考えております。

田中(和)委員 終わらせていただきます。

 環境ホルモンの問題やたくさんあったのでございますけれども、時間で、失礼をさせていただきます。ありがとうございました。

五島委員長 小林守君。

小林(守)委員 民主党の小林でございます。

 まずは、川口大臣、環境の世紀二十一世紀の初代の大臣御就任まことにおめでとうございます。また、大変御苦労さまでございます。日本の二十一世紀を開いていく環境政策の新しい路線をぜひ切り開いていっていただきたいと心から期待を申し上げる次第であります。

 早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 環境庁から環境省に昇格、格上げがされたわけでありますけれども、環境庁が設置をされた経過を見ますると、全国各地で公害問題の深刻な多発という社会状況のもとで、三十年前、一九七一年に設置されたわけでありますが、新たな決意のもとに大臣が先ごろ所信表明をなされたわけであります。私は、極めて簡素で質の高い所信表明ではないか。その所信表明の中で、非常にインパクトのある言葉を受けとめさせていただきました。大変印象強い言葉ではないかなと思っておるんですけれども。

 その所信表明の中で、二十一世紀、「環(わ)の国」日本づくりというようなことを表明されております。この「環(わ)の国」というのは、環という字は、環境省の環でもあるんだろうし、循環型社会の環ということもあるだろうし、その辺をとったのかなというふうに思いますけれども、首相の私的懇談会である二十一世紀「環(わ)の国」づくり会議を大臣が発案されて設置されたというふうにお聞きもしております。

 そこで、お聞きいたしますのは、「地球と共生する「環(わ)の国」日本」の創造、これは言葉として非常にインパクトのあるいい言葉だなというふうには思うんですが、具体的にどのような二十一世紀の日本の社会を構想している言葉なのか。

 そして、簡素で質の高い活力のある持続可能な社会の実現を目指すということなんですが、その次に、百年先を見通した構造改革を進めていくんだということでございます。

 構造改革という言葉はあらゆる分野で今使われているわけでありますし、二十世紀的なさまざまな、政治、経済、社会、文明、文化、それらの閉塞状況を打ち破っていくような課題として構造改革という言葉が使われているわけでありますが、二十世紀型の構造改革、どのような問題を構造改革しようとする意味なのか、百年先を見通した構造改革の骨子は何なのか、この辺を明らかにしていただきたいなと思うわけであります。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、「地球と共生する「環(わ)の国」日本」づくりということで提案をさせていただいておりまして、総理のもとで会合がこれから開かれることになるわけでございますけれども、おっしゃったように、環(わ)というのは、環境の環(わ)でもあり、循環社会の環(わ)でもあり、それから人と人が一緒にやっていく環(わ)でもあり、人と生物が一緒にやっていく環(わ)でもありということでございます。

 私ども人間は今まで、物をつくり、物を消費し、物を廃棄する過程で地球にどんどん負荷をかけてきたわけでございます。これから百年先、二十一世紀の環境ということを考えますときに、こういった行動形態あるいは生産形態、消費形態、廃棄の形態というのを変えていかないと地球への負荷がもう限界に来てしまうということを認識して、それぞれのすべての主体が、これは企業もそうでございますし、国もそうでございますし、それから国民一人一人ということもそうでございますけれども、行動の形態を変え、それを簡素で質の高いものにすることによって地球と共生をするというような社会をつくることが必要になってくると思います。

 そのために何をするかということで、委員の方々にお集まりいただきまして、そこに全閣僚も出席をいたしまして、議論をしていって、その中から出てくるものを、各省の立場からいいますと、それを政策に反映できるところはどんどんしていく必要があるのではないか、そういうことを考えております。

小林(守)委員 所信の中にも、構造ということに当たるのだろうというふうに思いますが、大量生産、大量消費、大量廃棄の二十世紀型の社会を変えていくというようなこと、このようなシステムが地球への負荷を限界に達しさせてしまっている、こういうことで、人類の存続にもかかわる問題が生じているというようなことだと思いますが。

 ここでお聞きしておきたいなと思いますのは、そのような、地球環境への負荷が限界に達しているというような状況の中で、まさにこれは日本の今日の廃棄物・リサイクル行政などが目の前にしている課題でもあるわけですけれども、このような大量生産、消費、廃棄のシステムを変えていく上で私たちが注意しなければならないのは、ただ単にリサイクルをすればいいということではないのではないかと。やはり、大量リサイクル社会を目指すことについて、私は避けなければならない問題なのではないかと。

 というのは、環境負荷が限界に達しているということは、ただ単にリサイクル社会をつくればいい、循環型社会をつくればいいということだけではないのではないか、このように思うわけですけれども、その辺についてはいかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 循環型社会をつくっていくに当たりまして、単にリサイクルすればいいということではございませんで、できるだけ自然からの資源の収奪を少なくする、それから、使えるものはできるだけリユースをする、リユースできないものについてはリサイクルをする、リサイクルをできないものも最後はあるわけですから、それについては非常にきちんとした形で廃棄をする、そういった手順を踏んで私どもは生活をし、あるいは企業は生産をしということが必要になると思っております。それがまさに循環型社会の考え方でもございますし、「地球と共生する「環(わ)の国」日本」の考え方の基本にあるというふうに考えております。

小林(守)委員 私ども、同感というふうに思っておりますけれども。

 循環型社会形成推進基本法ですか、このような法案の今日までの議論の中でも、三つの原則、リデュース、リユース、リサイクルというような三Rの原則というものがまず掲げられてきたわけです。私たちは、その三Rの原則プラス環境への負荷の最小化というか、そういう視点から考えるならば、大量リサイクル社会を目指すのではないのだということを考えるならば、やはり自然からの資源の収奪をできるだけ少なくするという方向性を持った循環型社会でなければならないのだろう、このように考えるのですね。

 そこで私たちは、三Rプラスリフューズという、できるだけ使わないというような、資源収奪をしないというような意味でのプラス一つのR、リフューズ、この辺を循環型社会のもう一つの柱として、二十一世紀的な柱としてつけ加えるべきではないか、このように考えているところであります。これらについての所見をいただきたいというように思います。

 ということになりますると、物質循環という全体的な日本の、自然からの資源の採取というか収奪というか、採取と同時に、もちろん海外、国内からの資源の採取がありますし、それらをリサイクルで使ってくる部分もあります。しかし、その物質循環の総体、マテリアルフローということになると思いますが、これらについては大体二十二、三億トン、これは平成八年の環境庁の資料なんですけれども、こういう形で見ていけば、私は、大量生産、消費、廃棄の循環社会、リサイクル社会のその全体を、大量リサイクル社会をコントロールできる。要は、もっと資源収奪という視点に立ってやはり考えていかなければならぬということをコントロールするのは、マテリアルフローをしっかりと国が把握していくことが大事なんだろう、このように思います。

 また、単なるリサイクル社会というのは、私は、どんどんGDPは大きくなってしまう仕組みなんだろうというふうに思うのですね。そのGDP全体を一定程度にコントロールしていくということがもう二十一世紀には求められているのではないかということになると、マテリアルフローそのものをどうコントロールしていくか。どういう「環(わ)の国」日本のモデルを構想するか。その中で大事なことは、資源循環の物質収支のシステム、マテリアルフローがどのようなモデルとして構想されるか、そこに私はポイントがあるのではないか、このように思うのですけれども、このリフューズの考え方、それからマテリアルフローをどう構想していくか、これらについて大臣の所見を伺いたいと思います。

川口国務大臣 マテリアルフローが、これが循環をしていくということは、循環型社会を形成するという意味では非常に大事な基本であるというふうに思っております。

 日本の経済社会を考えましたときに、そういった物を使う部分と、それから、その付加価値といいますかプラスアルファで、エネルギーを使わない、あるいは物を使うのではないけれども付加価値をつけていくという活動もあるわけでございまして、そこの部分がまさにGDPを形成しているということでございますけれども、例えばサービス産業のようなものあるいはIT産業のようなものという部分もあるわけでございまして、全体として産業構造が安定をしている、環境保全との関係では安定しているというふうな形になるということが大事だと思っております。

 それで、リフューズにつきまして、これも大事な柱だと私は認識をいたしておりますけれども、今度の「地球と共生する「環(わ)の国」日本」づくりの中で、有識者の方々ともどもこういった点について議論をさせていただければというふうに考えております。

小林(守)委員 もう一つ、やはり二十世紀的な環境政策の中で大きなテーマであった、またジレンマであった環境と経済、環境と開発、これらについての二十一世紀的な統合というのはどういう姿であるべきなのか。それらについての見解がございましたらお聞きしたい、このように思います。(川口国務大臣「済みませんが、質問の趣旨が……」と呼ぶ)

 今日までの環境行政なり環境政策を考えていく上で大変悩ましい、難しい問題として、環境と経済発展というようなジレンマの問題として、二十世紀的には二項対立的な問題として常にあったわけですけれども、これらについて、「環(わ)の国」という発想の中でこの問題をどのように解決していこうとしているのか、その辺の考え方をお聞きしたいと思うのです。

川口国務大臣 環境と経済の関係というのは常にずうっと難しい問題であったわけでございますし、その時々の日本のあるいは世界の人々の価値判断によっても変わってきた問題であると思います。地球への負荷がこれだけ大きくなった経済社会をつくってしまったということでございますから、今後私どもがやることにつきましては、環境と経済が統合されたという観点がとても大事だと思います。

 環境を維持するためにはある程度の経済社会の基盤が必要でございまして、それは現在、発展途上国が何で環境保全を十分にできないでいるのかということを考えれば明らかであると思いますし、また、環境が保全されている状況でなければ経済活動は持続可能ではないということでございますので、その二つの統合を考えるということが大事だと思います。

小林(守)委員 引き続きこのような議論については私も時々させていただきながら論議を深めていきたいな、このように考えているところであります。

 次に、庁から省へ、一月六日、中央省庁再編に伴って改革されたわけでありますけれども、今日まで、環境行政の中で私は常に、省庁縦割りの弊害というか、とにかく事業実施官庁とのあつれきというか、大変ふがいない思いとかむなしい思いとか、何とも力のなさみたいなものを受けとめてきたというような思いがあるんですけれども、庁から省になって、やはり一定の行政的なパワーを持った行動官庁に脱皮してもらわなければならないというふうに思います。

 全体的に環境行政というのは、あらゆる政府の政策全体の基礎となるべき、あるいは基盤となるべき政策なのではないか、このように私は考えておるんですね。そういう点で、あらゆる計画の上位計画にやはり位置づけられるべきものであって、環境庁から省になろうと、総合調整機能というのは欠かせない課題だろう、このように思います。

 そういうことで、庁から省になることによって総合調整機能が、今度は省同士の横並びというような、縦割りの壁が高くなってしまったようなことであっては、これは逆にマイナスしかないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その総合調整機能はどのようになるのか、お聞きしたいと思います。

川口国務大臣 環境庁が環境省になりまして、引き続き総合調整のための機能というのは持っております。そのほかにも、委員がおっしゃられましたように、廃棄物のような専管の部分がふえるとか、リサイクル等のように共管の部分もふえるといったようなこともございますけれども、総合調整の機能は引き続き環境省にあるわけでございまして、さらに、それに基づいた勧告権というのも以前同様にあるわけでございます。

 こういった機能を十分に発揮いたしまして、私どもといたしましては、政策を企画立案し実施をする、政策及び行動する官庁として全力で環境保全のために取り組んでいきたいというふうに思っております。

小林(守)委員 事務分掌の一元化とか共同管理、共管とか、それから勧告という、従来どおりの関与するスタイルが継続されているというような形であろうと思いますし、共管事項が今までに加えてふえてきたということで、他省庁に対する環境的な政策の浸透というんですか基盤というか、それぞれ行政体そのものが環境の大切さというものを考えなければならないという状況になっているということがあるんだろうというように思いますが。

 勧告という問題も、私は極めて環境行政にとって大事なことではないか。環境行政以外の、共管とか一元的管理以外の行政分野についても、環境保全という視点から、やはり勧告を出すなり関与していく責任がある、そういうふうに思うんですね。要は、しゃしゃり出ていって言わなきゃならぬということですね。

 ただ単に環境に配慮した、環境行政以外のさまざまな行政があるわけですけれども、それに対して、環境省としては、これじゃ足らぬというような、環境を守るという一つの頑固な力というか立場を貫く、そういうことを国民は期待しているのではないかなというふうに思うんですね。

 その辺で、一つだけ例としてお聞きしたいなと思うのは、いわゆる有明海のノリの養殖が大変な被害を受けている。多くの漁民の皆さん方も、あれは諫早湾の潮受け堤防の締め切りによって海水が循環しなくなってしまった、そして干潟が完全にだめになって、そこの水質が汚濁され、そしてプランクトンなどの生態系が狂ってしまった、それが大きな影響があるというふうに直観的にも考えて受けとめているんだろうと思いますし、具体的な事例が、韓国の始華という干潟の問題にもあらわれているわけですよね。

 そんなことで、水質の保全という視点に立って、自然環境の保全という立場に立って、私は、有明海のノリの問題について、環境省はやはり勧告という立場をとるべきではないか、このように思えてならないんですが、今日まで静観をしているのはどういうことなのか、ちょっと憤りを持ちながらお聞きしたいというふうに思います。

川口国務大臣 有明海の問題につきましては、ノリ等で被害を受けられている漁民の方は非常に大変な状況におありになるというふうにお見舞いを申し上げております。

 それで今、どういったことが原因であるかということについて農水省が、環境省もそれに参加をさせていただいておりますけれども、予断を持たないで総合的にいろいろな見地から検討をするということで一生懸命にやっているわけでございます。

 私どもも、そういう意味で、農水省と連携をしながら、それから環境省におきましては、緊急補足調査を底質等についても行っているわけでございまして、まず、予断を持たずに調査をきちんとして、何が原因であるかということを見きわめるということが今非常に大事なことだというふうに思います。

 勧告権につきましては、過去それを使わせていただいた例もございますが、とにかく今、その原因が何かということがはっきりわかりませんと、その先どうすればいいかということについても何か言えるという状況ではございませんので、環境省といたしましては、水質の保全あるいは改善、有明海の状況の改善ということに視点を置いて行動をしていきたいと思っております。

小林(守)委員 ぜひ積極的に、やはり国民が最大の関心を持っている環境問題であろう、このように思いますし、環境省が、ああ変わったなというところを明確に打ち出していただきたいな、このように思います。

 三番瀬の問題では千葉県に対して大臣が明確な考え方を示されたということを私は評価しておるわけでありますし、ぜひ有明海の問題についても、環境大臣としての立場から一言言わせてもらうということをきちっと明確にすべきだろう、このように思っています。

 それでは、次に移りますけれども、地球温暖化防止でCOP6が昨年の十一月オランダのハーグで開催されまして、結果的には合意形成に至らずに決裂というような状態になったわけでありますが、特に議論のポイントとなったのが、森林の吸収源の扱い、あるいは京都メカニズム、排出権取引とか共同実施、CDMの例えば総量規制というか上限設定の問題、あるいは遵守事項について法的拘束力をどういうふうに位置づけるか、実効性を高めるために、確保するために、やはり法的な拘束力をきちっと位置づけなければならないという問題、あるいは途上国に対する支援、これらの問題がなかなか、国益とかそれぞれの国の思惑とか、外交交渉という場でもあるでしょうけれども、EUと日、米、カナダのアンブレラグループ、それに途上国などの大体三つか四つぐらいのグループの中でなかなかうまくかみ合わずに、再開会合という形でことしの六月から七月にかけてボンに持ち越されているというような状況でありますが、地球温暖化という問題は、やはり国益だけでは問題の解決にはならない人類の共通の課題だというふうに視点をさらに広いレベルに持たなければならないだろう、このように思えてなりません。

 そこで、まず最初に、IPCCという、世界の科学者たちがつくっている気候変動に関する政府間パネルが最近、ことしの一月に新たな知見を発表されました。まさに五年前の報告よりも深刻さが増しているということなんだろうというふうに思いますが、総体的にこれらの報告に対してどのように受けとめているのか、科学的知見の、報告書の骨子みたいなものを簡単にまずは共通認識として出していただければありがたいと思います。

浜中政府参考人 IPCCの知見ということで御説明を申し上げたいと思います。

 先生御承知のとおり、IPCCでは五年ごとにレポートを出してきておりまして、現在第三次評価報告書の作成を進めているわけでございます。三つ作業部会がございまして、今般、このうち第一と第二の作業部会の報告書がまとまったということでございます。

 それらによりますと、これまで過去五十年間に観測された温暖化の大部分が人間活動に原因がある、起因しているということについての新たな、そしてより確実な証拠が得られたということでございます。

 また、影響に関してでございますけれども、近年の地域的な気温の変化、多くの場合それは上昇しているわけですけれども、それが氷河の後退を招いているということでございますとか、脆弱な生態系に影響を及ぼしているということについて強く確信しているというようなことが述べられているわけでございます。

 将来予測については、二十一世紀末までに地球の表面気温が一・四度から五・八度上昇する。前回の報告では、これは一九九五年末にまとめられたものでございますけれども、一・〇度から三・五度ということでございましたから、上昇幅が大きくなっているということでございます。また、海面水位は九センチから八十八センチ上昇するという予測が示されているわけでございます。

 こうしたことによりまして、例えば豪雨とか渇水、熱帯地方のサイクロンの強度が強大になるといった異常気象現象の激化が予測されておりますほか、水資源でございますとか農業生産、生態系、あるいは人間の健康などへの深刻な悪影響が出ることが指摘をされておりまして、これらを深刻に受けとめなければいけないというふうに考えている次第でございます。

小林(守)委員 今の知見を受けとめながら、これは一刻を争う課題だ、しかし先送りすればするほどその努力というか対策は困難になってくるというようなことであろうかというふうに思いますが、ことしの六、七月に再開会合が予定されているわけであります。

 そこで、所信の中にも触れられておりますが、日本は国際交渉をリードしていく、そして我が国みずからが京都議定書を締結できるよう、温室効果ガスの六%削減の目標を達成するための総合的な国内制度の構築に全力で取り組むというような表明がなされているわけでありますけれども、問題は、国内対策として六%削減を実現する国内制度の構築ということの中身であります。

 少なくとも国際交渉をリードしていくというスタンスに立つならば、私は、国益を守るという視点でだけリードをされては困るなというふうに思えてなりません。吸収源とかCDMの原子力発電の利用とか、このような問題を、国益を守るという形でハーグにおける閣僚会合の中で大臣は何度も主張されたというか発言されたというふうに聞いておりますけれども、国益を守るという考え方は、むしろ私は、日本の恥をさらすようなことになってしまうのではないか、このように思えてなりません。

 大臣が考えている国益というのは何なのかということを私はお聞きしたいと思いますし、やはり国益ではなくて、もう一つ、国際社会でこのような環境問題をリードしていく先進国の責任、日本の責任ということを考えるならば、やはり地球益的な観点で会議をリードしなければならないんだろう、このように考えるわけでありまして、いささか国益という考え方が少し、本当に国内の業界とか団体とか行政分野とか、それらのあつれきの中での何か枠組みで縛られていて、どうにも動きがとれないようなことを何か国益国益と言っているように思えてならないんですけれども、少なくとも地球的な視点に立つならば、EUとかあるいは途上国とか、もちろんアンブレラ諸国との協力もあるでしょうけれども、どうも会議全体の合意形成の方向ではなくて、違った方向に私は日本がスタンスをとってしまった。そして国際NGO、三百団体ぐらいのNGOから、最も会議の成功に向けてよくない態度をとっている国として名指しで日本が非難されたという不名誉を私は強く反省として受けとめなければならないんだろう、このように考えております。

 そこで、要は、国内制度の構築という中でお聞きしたいのは、その国内制度の中で大きな問題は、やはり地球温暖化対策の推進大綱に決められているマイナス六%の割り振り、これを見直すのかどうか、これにかかっているというふうに思えてなりません。

 この推進大綱のマイナス六%の内訳、吸収源三・七、いわゆる京都メカニズム一・八、そのほかマイナス〇・五という数字で出てくるわけですけれども、CO2、エネルギー起源ではプラマイゼロというような数字も出ていますね。その辺のことを踏まえて、三年前の九八年だったでしょうか、地球温暖化対策の推進大綱で決められた六%の割り振り、これを見直さなければ、私は国際社会の合意形成に日本はリード的な役割は果たせない、このように思えるわけなんですけれども、その辺について一括してお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 京都議定書の運用ルールをつくるという会議は、すべての参加者がどうやったら地球益を守れるかということを考えるためにやっている、これはもう大前提でございます。同時に、各国が考えておりますのは、そういった地球益を守るための仕組みをつくる中で、どうやったらそれぞれの国の相異なる国益がうまくそこにブレンドをして一緒に両立をするような形になるか、そういう仕組みをつくれるかということでございます。

 私は、日本を代表する人間といたしまして、日本の国益を守り、なおかつ地球益を守るというのは当然の大前提でございますから、それが両立するようなことというのはどういうことだろうかということを考えましたし、そういう意味ではアメリカの代表もEUの代表も全く同じ立場でございます。

 そこで、その国益というのは何かというふうにおっしゃられましたけれども、私は、これは別に日本の国益というのがほかの国の国益と比べて何か特殊だということではなくて、各国の代表が考えていることは、どうやったらそれぞれの国が国として健全な経済社会を維持し続け、国民の安全と安心が確保できるようなそういう仕組みであり続けるかということだと思っております。

 それで、大綱でございますけれども、私がその交渉をハーグでしながら、一貫してずうっと思いましたことは、日本の発言権に対する信頼、あるいは日本のリーダーシップに対する信頼というのは、日本が今まできちんと省エネルギー対策なりあるいは温暖化対策推進法なりといった措置をとってきたということにあるわけでございまして、日本が今後ともリーダーシップをとり続けていくことができるためには、きちんと国内で対策をとっていくということが前提にあるというふうに私は思っております。

 そのために、環境省といたしましては、去年の八月に中央環境審議会のもとに地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会というのを設置していただきまして、六%の遵守をするための、何を、どういう枠組みがあるか、どういう政策の手法があるか、あるいはそのミックスがあるかということを検討をしていただきました。

 今回、環境省発足とともに新しい中央環境審議会が発足をいたしたわけですけれども、そこにおきましても二つの小委員会を設置いたしまして、各分野で削減余地がどれぐらいあるかというような検討をし、あるいは、そのための社会の枠組みとしてどういうものがあるかということの検討を今していただいております。

 そういった検討を踏まえて、日本としてはきちんとした国内措置をつくっていくということが非常に大事でございますし、それとともに、国際的に、みんな、地球益と国益が調和するような形での議定書の運用ルールということを合意するために一緒に取り組んでいくということが大事だと思っております。

小林(守)委員 確認しておきますけれども、中環審の方で六%の国内削減対策、そして制度の導入とかが検討されているということですが、要は、温暖化対策の推進大綱についての六%の割り振り、これの枠組みは見直すというふうに結果的になると受けとめてよろしいですか。

川口国務大臣 今、中環審の場でいろいろ御議論をいただいて、勉強していただいているところでございます。私どもとしては、その六%の削減が可能になるような枠組みとしてどういうことが可能になるかということを今勉強していただいているわけでございまして、それをベースに、実効性のある国内制度が構築できるということを目指していきたいと思っております。

小林(守)委員 明確には見直すかどうかについてはお答えになっておりませんけれども、結果的にはそうならざるを得ない。経済産業省では既に、七・一%ぐらいオーバーになっていってもうお手上げだというギブアップ宣言をしているようなものですから、じゃ、こちらの方に任せなさいという形で、今度は環境省がそれをきちっとやるということをやはり出すべきだというふうに思っております。

 それでは、時間が大分迫ってまいりましたので、次に移りたいと思います。

 温暖化対策の中で、国内対策の柱として、私は、HFC等の代替フロン、SF6とかPFCですね、これらについても、人為的な物質でありますからコントロールが可能な化学物質であります。それで、これらをきちっと回収・破壊をしていくようなシステムをつくれば、温暖化対策にとっても国内対策にとってもかなりの有効な削減がカウントできるというふうに言えると思うんですね。もちろん特定フロンについては対象外物質なんですが、温暖化対策に果たしている役割は極めて大きいというふうに言わざるを得ません。

 ですから、代替フロンの回収・破壊のシステムづくり、これはオゾン層の保護にもつながるわけでありまして、そういう点でいろいろと費用負担の問題等についてお聞きしたかったのですが、これは議員立法の方向で鋭意詰めていきたいなと思っているところですので、きょうは質問から省かせていただきたいと思います。

 次に、自然と人間との共生というテーマに移りたいと思います。

 昨年、環境委員会において佐渡のトキ保護センターを視察させていただきました。担当されて一生懸命飼育されている皆さん方に本当に頭の下がる思いと、心の温かくなるような思いを与えていただいたなというふうに思っているわけです。

 このトキの生息の状況、それから野生への復帰という課題をこれからの大きなモデルとして、シンボル的なモデルとして取り組んでいこうということでございますが、私は、この「トキ」という資料を見せていただいた中に、昔のトキの生息地域の概況というのがあります。これを見ておりますと、これは何か、東アジア、北東アジアになりますかね、朝鮮半島も入っているな、台湾海峡も入っているな、こんな思いで受けとめてこの地図を見ておりました。

 昔、いつごろかちょっとわかりませんけれども、ここにトキが生息していた、ニッポニア・ニッポンという種のトキが生息していたということなんですね。今、外交における安全保障、周辺事態などといろいろと議論されているところですけれども、これは、この地域における集団的な、軍事的な安全保障という問題と、人間の、自然の安全保障というか、そういう安全保障と同じ地域ではないか、このように思えてならないんですね。

 そういうことで、トキが人間の安全保障というか、この地域の軍事的な安全保障ではない、もっと根源的な意味での安全保障をつくり上げていくリーダーになっていけるというかシンボルになるものではないのかな、こんなふうに夢を膨らませたわけなんですけれども、これらについて、佐渡のトキセンターでは、朱鎔基総理が来られたときに、環境大臣が美美をいただいて、優優とのペアリングの方向だというお話も聞きました。

 それから、江沢民さんが来られたときにいただいた友友、洋洋ですか、これらについても、新新、愛愛などの誕生も迎えられたわけですし、これから野生化への夢がだんだん膨らんでいくな、このように期待をしているところでありますけれども、今日のトキの野生化への、自然復帰への取り組みの状況等についてお聞かせを願いたいと思います。

川口国務大臣 委員のお話を伺いながら、私の知り合いが中国のトキセンターを訪問して、空を舞う、飛ぶトキを見て感激をしたという話を聞いたことを思い出しておりましたし、いずれの日にか、佐渡の上空をトキが舞い、あるいはこの地図にあるように東アジアの上をトキが舞うというようなことになればすばらしいと、一緒に夢を描かせていただいておりました。

 環境省といたしましては、まず、佐渡のトキ保護センターにおいて飼育下にあるトキの数をふやす、そのために努力をしていきたいと思っております。

 それから、将来の佐渡での野生への復帰ということに向けまして、今年度から、共生と循環の地域社会づくりに着手をいたしております。関係の自治体の方や地域住民の方々、農協の方々の御意見をいただきながら、環境再生ビジョンを三カ年かけて策定をしていくということで考えております。

小林(守)委員 毎年シンポジウムなどを行いながら、この佐渡のトキの野生復帰へのさまざまな課題、増殖というんですか、ふやしていかなきゃならないということと同時に、要は、自然復帰のための自然環境はどうあるべきなのか。もちろん、人里に非常になれ親しんで生息する鳥ですから、地域社会、私たちの暮らしている農山村社会、この辺がまさにトキにとっても生存していく、生息していく環境でもあるわけですね。

 ということになると、日本産は絶滅することになってしまいましたけれども、なぜトキがこのような状態になってきたのかと同時に、やはり地域社会、自然環境、そういうものを再生していく課題を担っていかなければならないんだというふうに思うんですね。

 ということになると、私は、里地・里山と田んぼ、これをどう再生させられるか。近代的な農業基本法行政というんですかね、そういう農政そのものが問われているというふうに思いますし、しかし農山村社会の中でトキを生息させ、繁殖させ、自然に返すために、そこに住んでいる農業者とか地域住民が、犠牲と言ってはおかしいのですけれども、本当につらい思いでいるのは、決してこれはいい関係ではないんだろうというふうに思うんですね。

 動物園で飼うようなトキの繁殖、それも自然との共生にはならないわけでありますから、要は、野生に復帰させて、なおかつ地域の住民も喜びながら、本当に豊かな心を持ちながら、トキが自然に舞う姿をどうつくっていくか。大変これは困難な課題でもあろうというふうに思うんですが、時間がかかってこのような状態になってしまったわけでありますから時間はかかると思いますけれども、ぜひ野生復帰への地域社会づくり、これは私は、農業の再生にもつながる、地域社会の再生にもつながる課題だろう、このように考えているところであります。

 シンポジウムに参加されている多くの方々は、昔の里山・里地に戻すことではないんだということをおっしゃっていますね。非常に意味のある言葉だろうというふうに思います。例えば、四十年前、五十年前の農山村の風景に、あるいは農作業、田んぼとか畑作、そういう状態に戻せばいいのだということではないのだということをおっしゃっておりますけれども、この辺に二十一世紀型の自然と野生生物との共生というテーマがあるのだろう、このように思います。

 その辺について、昔に戻ることではないのだというところはどういうことなのか、ちょっとお聞かせいただきたい。少なくとも、有機農業的にやらなきゃならないだろうとか、ドジョウとかメダカとか蛍などがやはり帰ってこられるような土地改良事業でなければならないのだろうと思いますが、農水省の構造改善事業との調整もどう進められるのかという面もあろうと思いますが、基本的には、昔に単に戻ればいいのだということではないというところを押さえながら、野生への復帰の計画について、大臣の所見をお伺いして終わりにしたいと思います。

川口国務大臣 ただいまの、昔に戻るということではないのだということは非常に含蓄のある言葉で、しみじみと聞かせていただきましたけれども、トキの野生復帰ということでいえば、えさを食べる場所があるとかねぐらがあるとかすめるような森林があるとか、あるいは環境と共生できるような農業というのが存在しているとか、さまざまな条件が満たされていく、そこに、委員おっしゃられましたように、地元の方のそれに対する理解ということが必要だというふうに思っております。

 そういうことを全部含めまして、先ほど申しました環境再生ビジョンを、地元の方々を含めていろいろな方にお知恵をいただいてつくっていくことが必要だと思っております。

小林(守)委員 先ほど申し上げましたけれども、私は、東アジアにおける人間の安全保障体制をつくっていくシンボルの役割をトキは果たしてくれるのではないか、このように思えてなりません。ぜひ、何としてでも自然、野生への復帰を実現できるように、我々もいろいろと応援していきたいなと思っているところです。

 終わります。

五島委員長 鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島です。

 環境庁が環境省に充実することによって長官から大臣への御昇格、おめでとうございます。

 先ほど地球環境問題の質問を前の委員がしておりましたけれども、これは別に質問じゃなくてひとり言として聞いていただければいいのですけれども、森林を余り吸収源として当てにすることは、お考えを変えた方がいいのじゃないか。今、内外でも森に対する信頼がかなり下がっていまして、森を当てにするのはやめようという考えが一般化していますので、ひとつ大臣も余り森を当てにしないようにというふうに思います。

 きょう私、持ち時間四十分の中でかなり大きな課題を二つやらなければいけなくて、まずカネミ油症の被害者の救済の問題、それから後半で諫早湾の干拓事業の問題点、二つのテーマをしたいと思いますものですから、なるべく御答弁は簡潔にお願いいたします。

 今度の大臣の所信表明の中にもありましたけれども、PCBについて厳重な保管を義務づけるとともに、今後十年間でそれを処理していくという政策が述べられておりましたけれども、大臣はPCBの危険性の認識というのを、どういう事実を知って御自分で認識されたのか。本にはいろいろ書いてあるし、新聞にもPCBは危険だと書いてありますけれども、日本ではかなり大きな事実があったわけですけれども、どういう事実に基づいてPCBの危険性を感じたのかということをお聞かせいただければと思います。

川口国務大臣 個人的には、最初にやはりおやと思ったのは、カネミ油症の件が報道をされたころであったかと思います。

鮫島委員 現在カネミ油症の患者さんたち、認定患者が約千九百人おられますけれども、現在どんな状態に置かれているかというのは大臣は御存じですか。

川口国務大臣 申しわけございませんが、どういう症状が起きているかということは存じておりますけれども、現在、カネミ油症の患者の方々について存じ上げていることは、認定患者が二千名弱いらっしゃるということでございまして、その当時、患者の方の症状を、テレビだったか絵だったか写真だったかで拝見をしたことはありまして、大変な状況であるというふうには今でも思っております。

鮫島委員 多分、実態調査については厚生省の方で行っていると思います。これから厚生省と農水省の御担当の方々にこの問題についてお伺いして、最後にもう一度大臣に一連の経緯についての御感想をお伺いしたいと思います。

 初めに、厚生省の方、現在、カネミ油症の認定患者、千九百人弱、現在症状をどのように把握しておられるのでしょうか。

尾嵜政府参考人 厚生科学研究費によりまして、全国の油症研究班という形で、毎年三十三都府県市におきましてカネミ油症の患者さんを対象に検診を呼びかけておりまして、そういう中で、カネミ油症の認定患者の方々につきましては、今先生からお話がございましたように、およそ千八百名いらっしゃますが、その中でお亡くなりになった方もいらっしゃいまして、およそ千五百名ぐらいの方が御存命でございますが、そういった方々に幅広く呼びかけをいたしまして検診をやっております。

 平成十一年度の研究班の検診の実績というのは、認定患者の方については、二百四十名に対して検診を行っているという内容でございます。その際、未認定の患者さんも、十一年度は二十九名受診をされておるという状況でございます。

鮫島委員 お亡くなりになった方を引いても千六、七百名の方がおられて、定期的な診療で、どうぞ診療にいらしてくださいと言っても、やはりなかなか患者さんの方々が来られないという実態が、この二百四十名しか把握していないということにつながっているのだと思います。

 患者さんたち、今でも全身に吹き出物ができて、悪臭を放つうみが出続けていたり、めまいや頭痛、ダイオキシン中毒特有のさまざまな症状に大変苦しめられていて、診療所に来なさいと言っても二百四十名しか来ないというのがその病状の悲惨さを物語っているんだと思いますけれども、さらに正確に現状を把握するために、厚生省はどのような御努力をしようと思われているんでしょうか。

尾嵜政府参考人 先ほど申し上げましたように、三十三都府県市の方で健康診断をやっているわけでございますが、年一回でございますが、今申し上げましたように認定患者さんに対しまして幅広く呼びかけはしていただくように、研究班に対して私どももお願いを申し上げております。

 ただ、実際的には、呼びかけにつきまして、認定患者の方々の住所がお変わりになったりしまして連絡がつかない、あるいは呼びかけの通知なりは届いておりますけれども、そういった検診機関の方にお見えにならないというふうな状況が現状でございまして、先ほどのような数字の実績になっておるということでございます。

鮫島委員 診療所に年一回は来てくださいということではなくて、むしろ出ていって、その患者さん方の病状をぜひ正確に把握していただきたいと思います。中には寝たきりになって、五島列島から長崎まで来いと言われても、お金もないし、体の自由もきかないという方もたくさんいると聞いておりますので、ぜひその辺は厚生省の方で、派遣で病状を把握するような方針をとっていただきたいと思います。

 現在でも大変多くのカネミ油症の患者さんたちが苦しんでいると聞いておりますけれども、治療法は確立されているんでしょうか。

尾嵜政府参考人 この油症事件が発生して以来、油症の患者さんの診断、治療に携わってまいりました医学関係の研究者の方々にずうっと研究をしていただいておりますが、これまでまだ根本的な治療法というのはないということで、主は対症療法という形にならざるを得ない状況であるという認識をいたしております。

鮫島委員 カネミ油症は、一九六八年にカネミオイルを摂取した方々で体の不調を訴えた方が一万四千人いて、そのうちに認定患者としての認定を受けた方が二千人弱。一九七六年にはイタリアのセベソというところで化学工場が爆発して、甲状腺の異常、あるいはクロルアクネという黒いにきびが全身を覆うという症状が出た方が七百人。それから、一九七九年には台湾でカネミ油症と同じような問題がありまして、やはり食用油中に含まれているPCBで約二千人の方々が同じような症状で苦しめられている。世界の三カ所に大量の患者さんがいて、いまだにその治療法がないままに大変な苦しみを味わっているというのが現状だと思います。治療法もないままに全身からうみを出しながら苦しんでおられるのが現状だと思います。

 長期化すると、肝臓、副腎あるいは心臓にまで障害が出てきて、大変危険な状態に置かれて、もう大分皆さん御高齢になっていまして、矢野トヨコさんという、この問題を告発する一番の中心的な人物だった方も現在床に伏せったままだというふうに聞いておりまして、ぜひ治療法の確立に向けた取り組みは、国際的な連携も含めて大いにやっていただきたいというふうに思います。

 このカネミ油症事件、一九六八年に発症したわけですけれども、どういうわけか農水省が前面に立ってこの問題と取り組んでおられる。もともと食品の安全性にかかわる件なのに、厚生省ではなくて農水省が前面に立ってこの問題に取り組んで、それで、一審の判決が終わった一九八四年から八五年にかけて、国として農水省が窓口になって二十七億円の仮払金を払っておられるんですけれども、食品の安全性にかかわる件なのに、なぜ厚生省ではなくて農水省が御担当になったのか、その辺の経緯をお話しいただきたいと思います。短くお願いします。

永村政府参考人 お答えを申し上げます。

 カネミ油症損害賠償請求事件に係ります福岡地裁の判決によりますと、農林水産省が、カネミ油症事件の前駆となる事件としまして、米ぬか油の副産物でございますダーク油を用いたえさによりましてブロイラーが大量にへい死した際、当時の厚生省への通報の義務をしっかり尽くしておれば油症被害の拡大を防止できたということで、農林水産省の過失を認めまして、国敗訴の判決ということになった次第でございます。

 これによりまして、先生御指摘のとおり、農林水産省は、昭和五十九年と六十年に合わせて約二十七億円の仮払金を支払ったところでございます。

 以上でございます。

鮫島委員 いや、国民の健康を預かるという意味では、あるいは食品衛生法を所掌するという意味では、私はむしろ厚生省が前面に立ってやる方が自然だなと思ったのですけれども、家畜のえさと同じようなプロセスでつくられていたカネミオイルということで農水省の方に行ったのだと思いますけれども。

 その後の経緯の中で、高裁、最高裁、上級審の方で違った判決が出て、最終的には、一九八七年の三月二十日、千八百九十六人の方々がカネミとの和解が成立し、そして国と係争していた方々が訴訟を取り下げて、結局、仮払いした二十七億円が不当所得に該当するということで、そこから患者さんに対して農水省の債権の取り立てというのが始まったわけです。

 全部で二十七億円、既に六億円ぐらい返した方もおられるというので、二十一億円ぐらいがまだ農水省が患者に貸しているお金、つまり、本来払う必要のなかったお金を払ったという建前で、今その回収業務にかかっているところだと思いますけれども、はたから見ると、大変実はこのことが、随分国も残酷なことをするものだなと。つまり、カネミとの和解でもらったお金は三百二十万ぐらいですし、農水省が患者さんに払ったお金も平均三百万程度。つまり三十数年間、治る見込みのない業病に苦しめられながら、もらったお金がわずか六百万程度なんですけれども、そのうちの半分の三百万を、もう既に一九六八年から三十年たった今日、返せ返せといってせっつくという話が、随分日本というのは残酷な国だなという印象を与えているわけです。

 また、水俣病の場合でも同じですけれども、原因不明の奇病が発生すると、あれは遺伝だとかあそこの家はのろわれているとか、いろいろな風評が飛び交って、普通親としてはそういうものを隠したいというようなことがあるんですけれども、農水省からの内容証明の取り立てがそういうことを隠していたお子さんのところにまで全部送られて新たな問題を引き起こしているというふうにも聞いております。

 一方で、農水省が現在有している未回収債権の総額というのは、これはさまざまな事業でそういうことが起こりがちだと思いますけれども、総額でどのぐらいあるんでしょうか。

川村政府参考人 決算の出ております十一年度で申し上げたいと思いますが、まず、一般会計が五十二億円余りでございます。それから、農林省は、例えば国営土地改良事業のように事業費の償還が長期にわたって行われるというものがございますので、これはかなりの額に上りますが、一兆三千四百八十三億ございまして、合計で一兆三千五百三十五億円余りというのが十一年度の数字でございます。

鮫島委員 今私が言っているのは、一兆三千五百三十五億分の二十一億円の話なんですけれども。

 住専の処理の問題なんかについて随分行政当局は大胆な債権放棄を指導したと思いますけれども、今の患者の置かれている状況を考えて、この二十一億円、農水省に言わせれば不当利得と言われているこのお金の債権を放棄するという方針は、農水省の方からは立たないものでしょうか。

田中副大臣 農林水産副大臣の田中でございます。鮫島議員、大変御専門の先生でございますので、しっかり答弁をしたいと思っております。

 今の御質問でございますけれども、農林水産省は、御指摘のとおり、昭和五十九年、六十年と合わせて二十七億円の仮払金を支払ったところでございます。現在は、御指摘のとおり六億円にプラスして、負債の放棄といいますか、債務放棄ということで、相続の中で放棄をされた方が一億円弱計上されておりますので、実質二十億円が滞っておるという現状で把握をいたしております。

 御存じのとおり、債権管理法を厳格に履行いたしますと、当然債権管理法に基づいてすべて皆さん方に戻していただく、こういう建前になるわけでありますが、農林水産省といたしましても、財務省所管でございますので、当然御相談をしながら対処してきておるところでございます。

 現在、弁済が困難として履行延期の合意がなされている方のうち、履行延期後十年を経過した後において、無資力かつ弁済することができない見込みであるということが認められた方には、債権を免除できる旨の規定ということを設けておりまして、この合意が平成八年から十一年の間に行われておりますから、具体的になりますのは平成十八年以降、こういうことでございます。

 大変御高齢の方もいらっしゃいますし、治療を受けられておる方々から見ますと若干先のような形でありますが、なお一層、委員の御指摘のとおり対処ができればというふうに思っておりますが、現時点では、個々の人たちの状況に応じて、関係省庁との協議の上、適切に対処していくというのが現状でございます。

鮫島委員 この事件の場合も空白の十年というのがありまして、八七年に原告団が訴訟を取り下げてこの二十七億円が不当利得ということになったわけですけれども、原告の方々の認識は、これは自然債務で、特に督促されることもなければ、時がたてば払わなくてよくなる、自然に消えるというふうな御認識だった方々が大分多かったと聞いております。

 それが、ちょうど十年経過した九七年になって急にばあっと農水省からいっぱい支払い命令が来て、それで慌ててそこで調停ということになったものですから、調停の発効する期日が実は十年おくれて一九九七年からになってしまたものですから、今おっしゃった、あと十年後までかかりますよと。どのぐらいの患者の方々が御存命であるか大変憂慮されるところですけれども。

 こういう特殊な状況にあるものですから、国民の健康を預かる省庁としての厚生省は、本来でしたら食品衛生法上の責任の一端もあるのではないかと私は思いますが、何らかの特別な救済措置をとることを検討する余地はないものかどうか、厚生労働省の方にお伺いしたいと思います。

尾嵜政府参考人 カネミ油症の患者さんの方々が、御指摘のように健康障害等で非常にお困りになっているという状況については十分認識しているところでございますが、本件につきましては、株式会社カネミ倉庫に原因があることが明らかにされまして、カネミ倉庫において患者の方々への治療、入院費等を負担しておりまして、裁判上も、和解または取り下げによりまして決着をしているという状況でございます。

 こういった状況の中、厚生労働省としては、先ほど来御指摘がございますような、研究班として検診あるいは研究というものに取り組んできておるところでございまして、これを越えて特別の救済措置ということは、私どもとしては非常に困難ではないかというふうに考えているところでございます。

鮫島委員 確かに、今の裁判の経緯あるいは行政の枠組みの中では特別の措置をとることが難しいというのはよくわかります。ただ、今これだけの多くの患者さんたちが、世界最大のダイオキシン被害とも言われているカネミ油症の患者さんたちが、いまだに救済の手がなくて苦しんでおられるという現状について、最後に大臣の御所見をお伺いいただければと思います。

川口国務大臣 この問題も非常に多くの不幸な方を生み出した大変に重大な問題であるというふうに認識をいたしております。

 いろいろ過去の経緯その他があってなかなか思うように物事が進んでいかないということなのかもしれないということを、委員とそれからこちらのやりとりを伺いながら思っておりましたが、日本に存在するそういうあまたの問題が、できるだけ早く患者の方々の御満足のいくような形で解決ができるといいなというふうに個人的には思っております。

鮫島委員 PCB新法でPCBそのものを処置なさるのも結構ですけれども、体内にPCBを抱えたままの方がいることをぜひ忘れないでいただきたいと思います。

 広島の原爆もそうなんですけれども、こういう高濃度、大量の人たちがダイオキシンにさらされた事例というのは大変珍しくて、できればこういうのは後の世代も含めて、徹底的な疫学的調査を含めた科学的調査をしておくことが将来、例えば広島の原爆でさまざまな蓄積しておいた医学的な所見がチェルノブイリの事故のときに大変役に立って、すぐヨードを子供たちに飲ませるというような措置にもつながるわけですから、どれだけ環境中に今PCBが拡散してしまったかわかりませんけれども、今後どこかの特定の地域でそういう慢性毒性みたいな形でPCBの問題が出てきたときに、やはり日本のカネミ油症の悲惨な体験というのが生かされるような、しっかりしたデータと体制をとっておく必要があるということを私の意見として申し上げておきます。

 これは確かに、行政的には取り組むのはなかなか難しい話でしょうから、むしろ政治の側で議員立法の可能性を含めて今後検討していきたいと思っておりますので、その意味では行政側の御理解もよろしくお願いいたします。

 次に、諫早湾干拓事業の問題点に移ります。

 先週から有明全体のノリの不作をめぐって千人以上の漁民の方々が抗議のデモに押しかけて、三月一日には農林水産省に三百人近い地元の方々が抗議に来るというふうに聞いておりますけれども、機動隊が出たり、大分現地は騒がしくなっているようですけれども、この事業そのものでアセスメントが十分だったかどうかという観点からお伺いしたいと思います。

 私もいろいろな資料をこの間取り寄せたのですけれども、農林水産省は今度の行政改革の中で一番変わらなかった省庁だと言われていますが、外から対応している限り、どうも一番変わったのが農林水産省ではないかなという気がします。

 この諫早湾干拓事業計画のアセスメントの資料をもらうのにも、一括はだめだというので何度にも小分けにしてもらわなければもらえない。こういう何でもない公開資料をもらうのも、田中副大臣が関与しているのかどうか知りませんけれども、いわば政治の方から役所に入っていった方々の決裁をとらなければいかぬというので、大変資料が出にくくなっていまして、これはむしろ政治主導というよりも政党干渉で、行政の中立性、公平性が失われ始めてきているのではないかというのが資料請求の経緯の中で大変強く感じたところでございます。

 このアセスメントの資料をもらったのですけれども、最後まで出てこないのが、これをやった委員のリストが出てこないのです。大分何度もせっつきましたら最後に出てきたのですけれども、委員長がだれかがわからないのです。いわゆる諫早湾の環境アセスと言われている諫早湾干拓事業計画に係る環境影響評価書、昭和六十一年と、そして平成三年に追加アセスをやった、これが一冊にまとめられているわけですけれども、この委員の名簿はわかりますけれども、委員長さんはどなただったのでしょうか。その委員長さんの御専門がわかれば。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、六十一年と、それから平成三年に変更の、干拓事業計画に係る環境影響評価書を作成しております。

 当初の環境影響評価書の作成の委員長ということにつきましては、九州大学の藤川武信名誉教授を委員長としております。また、一部変更の環境影響評価書の作成に当たりましては、東京大学の志村博康教授に委員長をしていただいております。

 この委員長の選び方というようなことにつきましては、これは委員会の中で委員のそれぞれの互選というような形で決められております。

 また、御質問の専門分野でございますけれども、九州大学の藤川教授におかれましては土質工学、それから、東京大学の志村教授におかれましては水理学というふうに承知しております。

鮫島委員 このアセスメントを一読すると、土木工学的な評価は大変精密、綿密、あるいは流れがどう変わるかというようなことについては精密なアセスが行われていますけれども、生物的な視点が大変弱くて、具体的にどうなっているかというと、ほとんど大体、生物、特に水産生物に関してのアセスが内容的に行われておりません。

 例えば、工事中の影響はどうかということについては、濁りによる多少の影響がノリの養殖に出るかもしれない、特に幼芽の生育期、つまりノリが伸び始める最初の時期に多少の影響が出るかもしれませんと、三行しか書いてないんですね、工事中の影響、水産との関係でいえば。

 それから、設置及び供用時の影響ということに関して言えば、貝類については、「潮受堤防の設置及び調整池の供用が諫早湾内の貝類には多少の影響を及ぼすものの、他の有明海の貝類にはほとんど影響を及ぼすことはないものと考えられる。」というふうになっています。

 また、ノリの養殖については、もちろん堤防の中ではできないわけですけれども、「他の有明海ののり漁場については、潮流速等の環境変化がほとんどみられないので、ノリの生育や生産などに影響を及ぼすことはないものと考えられる。」というふうに、諫早湾の干拓事業を行っても、潮受け堤防の内側ではもちろん大きな環境変化がありますけれども、潮受け堤防の外側では大きな環境変化はなくて、貝の生産にもノリの養殖にも影響がないということが、多少の影響があるという表現はありますけれども、大筋で言って、深刻な影響あるいは大きな影響はないというのがこのアセスメントの結論です。

 ところが、その実態は、既に皆様御承知のように、例えばタイラギという平べったい貝がありますけれども、平成二年には諫早湾で三千六百八十六トンとれていました。それが平成五年になって、これは大分工事が始まってからですけれども、六十七トンというふうに激減しまして、ついに平成六年からはタイラギの水揚げがゼロというのが今日まで続いているわけです。ほとんど影響ないと言いながら、タイラギが全くなくなってしまった。潜水器漁業という、潜水具をつけた漁業というのはついに諫早湾からなくなってしまった。

 それから、ノリの養殖については、ほとんど影響がないというふうなアセスになっていますけれども、御承知のように、平成十一年度は前年比で六割弱という生産量になってしまいまして、色落ちの問題が大変広く有明海全体に出て、それが漁民の怒りとなって具体的な行動につながっているわけです。

 こういう、特に生物的な分野について極めてずさんなアセスメントが行われっ放しになっているわけですけれども、環境省の新たな設置法四条二十一項で、環境省の業務の中に、アセスメントを審査するというのが今度加えられたと思いますけれども、これは、過去のアセスについて遡及して審査するというのは難しいんでしょうね。ちょっとそれだけ。

沓掛副大臣 時間の関係もありますので簡潔に申し上げたいと思います。

 諫早湾の干拓事業に関しましては、昭和六十三年三月に公有水面埋立法に基づく承認がなされており、環境省はその際に、環境影響評価の予測結果に関してのレビューの実施等の環境保全上の意見を述べております。現在、農水省においてそのための作業が行われておるところでございます。

 なお、今先生おっしゃいましたアセスメントをさらに遡及させてもう一度やってはどうかというようなことについては、環境影響評価法に基づく環境影響評価というのは、現況、すなわち事業を実施しない場合と比較し、環境状況の変化を事前に予測評価することにより、許認可等へ反映させる制度となっております。

 この制度の趣旨から、既に着工済みの本事業について適用させることはできませんが、今後とも、環境保全の観点からは、農水省に対しまして必要な対策についていろいろ求めていきたいと思っております。

 また、環境省、農林省との間にも環境保全上の会議も設けておりますので、そういうものを通じながら、今先生のおっしゃった趣旨に沿うような形で実施していきたいというふうに思っております。

田中副大臣 農林水産省の方からも、若干御指摘がありましたので二、三お答えをさせていただきたいと思います。

 資料請求の件につきましては努力をしていきたいと思います。恐らく各部署に直接行っておるような状況で、すぐに提供しているかどうかということについては、私も若干心配で話をしたことがございます。資料請求についてはできるだけ敏速に御要請に沿えるように、農林水産省としては努力をしていきたいと思います。

 それから、環境アセスメントと実態のずれはどうかという御指摘だと思います。

 環境アセスメントは昭和六十一年と平成三年に行われているところでございますが、ノリの養殖につきまして甚大な被害が出て、漁業を営まれている方々がそういう面では大変苦労され、あるいは来期の養殖を大変心配されておるということは心が痛むわけでありますし、当然、農林水産省として全力を挙げて対処していきたい、政府・与党一体となって今検討をしてきておるところでございます。

 御存じのとおり、三月の三日から第三者機関で、漁業の皆さん方にも入っていただいて、十五人の専門有識者の方々も加わって四月以降の本格的な調査を行うということで、しっかりとした原因の究明を図っていく。そして、その結論に従ってこれからの対処をしていくということでありますが、今までどういう形で評価されておったかということでありまして、私も、このような状況がありましたときに、どこまでいわゆる環境モニタリングをしていたか、こういうことで、省内でも何回も報告を受けたわけであります。

 確かに、環境モニタリングということで、環境アセスメント以降、毎年毎年有明海の観測地点を決めてあらゆる面から調査はいたしております。諫早湾の干拓工事の関係についても調査をしてきているわけでありますが、御指摘のとおり観測地点が、私もちょっと、この内容を見ますと、もっと広範囲にやっていることが必要ではなかったかというような感じをいたしております。

 したがいまして、水生生物の貝類の問題あるいはノリの養殖の問題についても、先ほど御指摘のとおり、潮受け堤防の設置及び調整池の供用が諫早湾内の、それから堤防の付近、こういうことが相当集中されて調査されておったわけでありますので、その辺は多少の影響を及ぼすのではないか、しかし、有明海全体には影響を及ぼさないんじゃないか、こういう見解になっております。

 しかし、ここ数日、漁業を営んでおる方々が本当に心配されて、潮流はこの四年間相当変化しておるんだという、肌で感じた声を言っておられますし、また、その後、現地のいろいろな方々のお話を三月の一日に谷津大臣が直接陳情を受けて聞かれる、こういうことでありますから、農林水産省としても、今までの調査については反省しつつも、これからは万全の対策で御迷惑をかけないようにしていきたい、こういうことで臨んでおるところでございます。

鮫島委員 時間がありませんので短く御答弁いただけるとありがたいのですが。

 このアセスメントの後、いろいろなことが起こりました。

 一九九三年に、先ほど数字で挙げましたけれども、タイラギがとれなくなっちゃった。それで、慌てて九州農政局の方では、諫早湾漁場調査委員会というのを秦彰男さんを委員長として立ち上げた。しかしこの委員会、発足以来今日まで報告書が出ておりません。

 それから、平成九年、潮受け堤防を締めた後、調整池の水質が悪化し始めたので、慌ててまた九州農政局は、諫早湾干拓調整池等水質委員会というのを立ち上げました。委員長さんは戸原義男さん、九州大学名誉教授、ここの委員会も報告書がいまだに一本も出ていない。

 今度、また慌てて、先ほどおっしゃった、なぜノリにこれだけ大きな被害が出たのかという第三者委員会を立ち上げることになるでしょうけれども、調査報告も出さずに、しかも調査期限も決まっていないような委員会を次々立ち上げて、これだけ一応専門家に任せておりますから御心配なくという手法は、私はもうおやめになった方がいいのではないかと思います。

 特に、昭和六十一年、平成三年のこの間違いだらけのアセスメントをやった人がこの対策のために緊急にできた委員会の委員長を務めているというようなことは、これは客観性、公平性からいってもまことにおかしい話でして、自分がやったアセスメントについて、まずい結果なんか次の委員会で出すわけない。これはある意味では、薬害エイズにおける安部教授のような人が実はこのアセスメントを仕切っているところに含まれている。

 私は、かなりこのクロに近い人がだれだというのは大体予想がつきますけれども、自民党ともつながりが強い、地元の土木関係者では有名な水理土木の教授でございます。そういう方々が全部これを仕切っていて、私は、この委員会の中で多分一番水産関係に詳しいのは諫早湾漁場調査委員会ではないかと思います。ここには水産の専門家が何人か入って、なぜタイラギが全滅しちゃったのかを調査する委員会ですけれども、ここの報告書が抑えられているというのには、私は政治的な圧力が働いているのではないかと思いますけれども、この諫早湾漁場調査委員会の報告書をいつお出しになるつもりなのかをお答えいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 今、現在取りまとめ中ということで、作業中でございます。

鮫島委員 平成五年六月一日に設置されて、どんなに遅くとも十二年度中にということだったと思いますけれども、私はこの専門家の先生方から、自分たちが発表したくても、そこへ出ている結果が余り最初のアセスメントと違い過ぎるということでこの発表が抑えられているというふうに聞いております。そういうゆゆしき問題がこの諫早湾をめぐっては数々あるわけでして、私は農林水産省の九州農政局の幹部の手も必ずしも白い手ばかりではないというふうに聞いております。

 日刊ゲンダイ、ことしの二月九日号には、農水官僚が買収工作を行った。唯一、潜水器漁業、先ほどのアサリやタイラギを専門にとっている漁協長の方だけが最後まで反対していたら、九州農政局の幹部が、もう貝なんかこの海域ではとれないんだから、知り合いのゼネコンを紹介してあげるからそちらに行きなさい、月給は七十万ですというようなことを一対一で、密室で恐喝的に誘っているというようなことがあります。

 これは、御本人のこの漁協長の方は、いつでもこういう公の場で証言する用意があると言っておりますので、私はぜひ理事会で協議した上で、こういう問題について参考人を、間違ったアセスメントをやった黒い学者の代表者、あるいはかなりクロに近い、買収工作を行ったとされる農水省の官僚の人たちを、私はしかるべき時期に参考人としてぜひこの委員会にも呼んでいただきたいと思います。

 この買収工作を行った九州農政局の幹部は、その後、勝村建設という建設会社に天下っているんですが、この勝村建設は諫早湾の干拓事業の受注をしておられるかどうかわかりますでしょうか。

佐藤政府参考人 勝村建設も過去、ほかのジョイントベンチャー等を継ぎまして、工事の受注はしておるという事実はございます。

鮫島委員 農水省の九州農政局からの天下り先のリストと、特にゼネコン関係で結構ですけれども、そのゼネコンが諫早干拓事業でどんな仕事を受けているか、それをぜひ調査の上、一覧表としてお出しいただきたいというふうに思います。

 最後に質問します。

 平成十一年の十一月十日の農林水産委員会で、農水大臣が二〇〇一年度に諫早の干拓事業を再評価するとおっしゃっていましたが、ことしいつから、どんなメンバーでこの諫早の干拓事業の再評価を行うのでしょうか。

佐藤政府参考人 再評価につきましては、国営土地改良事業等再評価実施要領というのがございます。これに基づきまして、事業採択後五年ごとに実施主体が実施をするというふうにしております。この手続によりますと、諫早湾干拓事業の再評価は、平成十三年度に実施する予定という形になります。

 この再評価におきましては、九州農政局に設置されます国営事業管理委員会、これが実施をすることになっておりまして、学識経験者で構成されます第三者委員会の意見を聴取した上で結果を取りまとめるという予定になっております。

五島委員長 鮫島君、持ち時間が終了しておりますので。

鮫島委員 ぜひ公開の原則に基づいてやっていただきたいと思います。ありがとうございました。

五島委員長 近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。大臣の所信表明に対して、幾つか質問させていただきたいと思います。

 昨年の臨時国会の際、COP6が終わった後に決裂をしてしまった。私も、大変に短い時間ではございましたが、COP6の会議に、傍聴させていただいたというか一部参加をさせていただいて、大変にその結果を残念に思いつつ、また現地で、残念ながら、NGOのグループからは、日本は化石国家である、非常に化石燃料にいつまでも頼っている、そして、これは多分、古い考え方にいつまでも固執している、こういうことだったのではないかと思いますが、その上位に何回もランクをされている、日本から行った者として、日本の国会議員として大変残念に思った。

 そんなこともありまして、一部の声ではあるけれども、臨時国会の質問の際には、川口長官の退陣を求める声もあると、大変に失礼なことも言ってしまったわけでありますが、ただ私は、こうして二十一世紀、環境庁が環境省にいよいよなり、ぜひともその初代の大臣につかれた川口大臣には頑張っていただきたい、そんな思いでいるわけであります。

 その中で、今同僚の先輩の議員から諫早についての質問がありました。質問通告はさせていただいていないんですが、簡単に事実をちょっと幾つかお聞かせいただきたいと思うんです。

 川口大臣も大変に積極的に行動されているので、私も新聞等々で、いろいろな現地に行かれているという報道を目に、耳にしております。ですから勘違いをしておるのかもしれないので確認をしたいのですが、川口大臣は諫早には行かれておられましたでしょうか。

川口国務大臣 行っておりません。

近藤(昭)委員 ここのところ諫早については大変に大きな問題になっておりまして、三月一日ですか、農水省の方に、国土交通省ですか、農水省にもだったかもしれませんけれども、地元の漁協の代表者の方がお見えになる。大変に大問題になっておりまして、先ほども、各省庁等との調整等々をしまして環境省がこれから頑張っていかれる、そういう話もありましたけれども、大臣としては、今まで行かれなかったのはどういう理由があったのか、また今後行かれる予定があるのか、お聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 私は、現場主義ということをいろいろ言っておりまして、実は一月は、全部で何カ所かちょっとはっきり記憶にないんですけれども、日程上東京を離れることが可能な限り、千葉の不法投棄の現場ですとか、それから愛知の大気汚染の現場ですとか、それからフロンを破壊している工場ですとか、万博の会場予定地ですとか、可能な限り一月は回らせていただきました。そういう現場主義というふうに思っておりますので、私も機会があればいつか諫早へ、これは現場をまず見ないと感覚がつかめないということでございますので、行きたいと思っております。

 ただ、今、国会会期中でございましてなかなか東京を離れることが難しいということと、それから既に、これは実は先週末もやっておりましたのですけれども、タウン・ミーティングというのを日本のあちこちでやるということで考えておりまして、環境の政策について語るということで予定もいろいろしているところもございますので、その日程を勘案しながら、機会がございましたら現場主義を貫きたいというふうには思っております。

近藤(昭)委員 余り揚げ足をとるつもりはないんですが、機会があればというのは少々消極的ではないかなと思うわけであります。もちろん国会会期中という事情もあると思いますが、もう少し積極的に早い時期に、今すぐにでもということは申しませんが、早い時期に行っていただきたいという思いもしますし、随分と地元の漁協の方は、工事――先ほどの大臣の答弁の中にも、小林議員からの質問の中に、たしか予断を持たずに調査中である、調査中なのではっきり物はまだ言えないというようなことだったと思うんです。

 ただ、本当に残念ながら、かく言う私も最近はちょっと行っておりませんけれども、二度ほど諫早が締め切られた直後に参ったことがあります。報道等、あるいは地元の漁協の皆さんの声を聞いておると、先ほど、鮫島議員のデータの中にも、かなりこれは明確に工事の影響ではないかと思われることが出ているわけであります。

 そうしますと、環境省としてもう少し、現場に行かなくても、例えば三月一日に地元の漁協の方が見える、今実質的には何か工事もストップしているようでありますが、こういうストップをすることについて積極的に意見を言うとかそういうことはできないのでありましょうか。

川口国務大臣 ただいま、農水省と連携をいたしまして、予断を持たずに総合的に原因を究明するという過程にございます。

 この問題については基本的に素人でございますけれども、私が仄聞した範囲でも、諫早のほかに、いろいろな原因とおぼしきことが挙げられて議論をされているというふうに理解をいたしております。ということで、今直ちに何をする、これをすればいいということが明らかである状態ではないというふうに思っております。

 環境省といたしましても、その原因の究明に対しましてはできる限りの御協力をさせていただいておるところでございますので、そういうことで、予断のなき原因の究明ということがまず第一だというふうに思います。

近藤(昭)委員 まさしく、予断のないということは大事だと思うんですが、ただ、これは川口大臣の所管することではないと思うんですが、先ほどの鮫島議員の質問、やりとりを聞いておりますと、逆に言うと、予断というのは、言葉をかえれば、公平に、中立にということだと思うんですね。

 ところが、先ほどのあれは何か、農水省なのかもしれませんけれども、大変に予断ともいうべき公平でない資料の出し方、あるいは調査の結果の報告の仕方があるようでありまして、大臣も、予断のないようにという立場を貫かれるのでありましたらば、環境省になった大切なこのとき、まさしく私は、諫早湾という、環境省が大きな力を発揮できる絶好のタイミングが来ているのではないか、そのように考えるわけでありまして、ぜひとも早急に現地にお出かけをいただきたいというふうに考えるわけであります。

 それでは、地球温暖化対策についての質問をさせていただきたいと思います。

 先ほども申し上げました。COP6が決裂をしてしまったこと、大変に残念に思っているわけでありますが、これは、昨年の十一月の時点で五月か六月にCOP6・5といいましょうか、COP6の続きをやるということでございました。あれはボンだったと思いますが、今どういうふうになっているでしょうか。

浜中政府参考人 COP6の再開会合につきましては、今月の十二日だったと思いますが、プロンク議長が、役員会と申しますか、いわゆるビューロー会議を開催されまして協議をされました。

 そこの結果として、現在公にされておりますことは、当初考えられておりました五月末からではなくて、六月の後半から七月末までの間の二週間の会期を設定したいということで、具体的な場所などにつきましては、現在プロンク議長が事務局と協議をしているというふうに承知しているところでございます。

近藤(昭)委員 そうしますと、六月の後半から七月末、どこかでCOP6・5が開かれるわけでありますが、そのCOP6・5に、再開会合に臨むに当たって、今大臣はどのようなお気持ちというか所信でいらっしゃいますでしょうか。

川口国務大臣 京都議定書を二〇〇二年に締結することができるように、全力を尽くして交渉に当たりたいというふうに思っております。

近藤(昭)委員 そうしますと、COP3の京都議定書を実質的にどう進めていくかということについて、しっかりと合意をしたい。

 大臣、そうしますと、残念ながら決裂をした会合が今度合意に至るには、日本としてはどういうふうなスタンスで臨まれるのか。決裂をした幾つかの原因はある。臨時国会の委員会で質問したときには、川口大臣の言葉によりますと、日本の立場は理解をされたと思うというようなことがあったと思うのですが、日本は昨年のCOP6のときと同じスタンスで臨まれるのか、こういうことについては変えたということでいかれるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 COP6以降いろいろな動きが実はございまして、COP6の後、電話会合でずっと昨年の暮れまでやっておりまして、一部事務レベルでは会合もございましたし、閣僚レベルで会合をするかどうかということで長々と電話会談も数カ国の大臣でやりまして、私も当然そこに入っておりましたけれども、結局やるということで合意には至りませんでした。

 ただ、会合は開かれなかったわけですけれども、電話あるいはその後のさまざまな国際会議の場がこれから開かれるということになっておりますので、そういう場を利用いたしまして、この話につきましてはどんどん進捗をしていくというふうに思っております。

 例えば、この二月にナイロビでUNEPの会合がございまして、そこには途上国の代表もUNEPの会合ですから出ておりまして、温暖化問題について議論が行われたということでございますし、それから、三月の二日からG8の環境大臣会合がございまして、ここにはオランダのプロンク議長が出席をして議論が進むというような形で、四月、五月とさまざまな国際会議の場がございまして、そういうところを使って話は進展をしていくということでございます。

 日本といたしましては、前回同様、引き続きイニシアチブを持って交渉に臨むということが大事だと思っております。

 そういう意味では、ハーグのときの一つの焦点でございました京都メカニズムと言われる分野につきまして、これはなかなか、どういう制度をつくるか、どういう運用可能な制度ができるかということについて議論がございましたところですけれども、国際会議を日本がプロポーズをいたしまして、実際にこういうことに携わっている実務家、それから有識者あるいは政府の代表の方々に集まっていただいて、この点で運用可能なシステムというのはどういうことなんだろうというふうな議論もやらせていただきたいというふうに思っております。

近藤(昭)委員 さまざまな機会を通じて進捗をさせていくということでありますが、そうしますと、進捗の中身はどうなんでしょう。日本政府としての立場というか考え方は、いわゆる方針は変えないで、とにかくそれを理解してもらう機会がたくさんあれば理解をしてもらえるだろうというお考えなのか。COP6のときはこういうふうに日本は主張したけれども、この点についてはとにかく合意に向けて考え方を、譲歩という言い方がいいのかどうかわかりませんけれども、少し変えて臨まれるというのか、いかがでしょうか。

川口国務大臣 交渉事でございますから、今の時点で、日本はこの点について譲歩をするということを申し上げてしまうと交渉にならないわけでございます。交渉でございますから、これは日本だけではなくて、すべての国がそうですけれども、何を譲歩する、何をそのかわりほかの国からもらうということで、パッケージでというのは大分たびたび申し上げさせていただいておりますが、そういうことで進みますので、交渉のプロセスに参加をして、交渉しながらおのずとみんなで合意をする、合意が可能なような案に向けての努力が行われる、日本も、そのうちの一つの国としてイニシアチブを持ちながら交渉に参加していきたいと思っております。

近藤(昭)委員 まさしく交渉事なんでしょうから、そのとおり、大臣がおっしゃるようなところもあると思います。

 ただ、それでも私は、ここは交渉事でも、例えば会議の調整に向けて、ましてや先ほど大臣は、さまざまな会合を利用して進捗をしていくのだというようなお話をされたわけでありますから、そうすると、COP6・5の六月後半から七月までの間にもいろいろと交渉が進んでいくのだと思うんですよ。

 そうすると、この部分についてはある種最後までとっておくという部分があるかもしれないけれども、その前については、COP6の決裂を踏まえて、日本はちょっとここは変えたとか、小出しというのでしょうか、そういうものもやりながらやっていかないと、またCOP6・5のときに、6・5の会議が始まった、そこでずっとやった、そして最後のところで、お互いが譲るところがあるけれども、時間切れであったというようなことになってしまう心配を私はするわけであります。

 ただ、今、政府もプロンクスペーパーに対して、ここはこういうふうに修正を望むという意見というか案を出されていると思いますが、その中で私は、きょうの委員会の冒頭から大臣がおっしゃっている、日本政府としては途上国との折衝、あるいは他の先進国との折衝、さまざまなところで積極的な役割を果たしている、積極的な役割というものの意味がどういうものかというのはなかなか難しいかなとは思います。例えば、積極的な役割は、多くの国の合意が得られるように、その合意内容を少しやわらかな表現にするとか、そういうことももしかしたら積極的な役割なのかもしれないと思う。

 ただそれは、環境を守っていくということでいえば、私は、やはりできる限りの厳しいことを求めていくということだと思うんですね。そういうことでいうと、プロンクスペーパーの中にある幾つかの文を、何か日本が少し弱めるような文案に変えようとしているのではないかと危惧をしているわけであります。

 プロンクスペーパーの中の六、「対応措置の影響に対処する行動」、条約の四・八条、この中でも、対応措置で悪影響を受ける非附属書I国を支援することを奨励するとか、その前の五の三・一四条のところでも、決定する、こういう言葉があるんですが、こういうところも、奨励するとか、少々文案を和らげているところが私はちょっと気になる。そういう中で、厳しい国からすると、日本は非常に後ろ向きではないか、特に森林吸収源のことなんかはそういう感じが私はするわけです。

 先ほど、IPCCの新しい見直しの予測によると、大変に厳しい予測が出ている。だからこそ、地球温暖化はもう本当に深刻に受けとめて取り組んでいかなくてはならない、そういう状況が出ているわけでありますから、それは私は、合意に積極的に貢献をしていくということは、中身を緩くしていくということではなくて、より中身が厳しいものをみずから課す中で、他国にも、我々もこうやって頑張るんだ、だからそれぞれが緩い条件の中ではなくて厳しい条件の中でやっていこう、こういうことを日本政府がみずから表明することじゃないかと思うんですが、逆のことを日本が言っているのではないか。

 遵守委員会のメンバーにおきましても、地域的な状況をかんがみるというよりも、先進諸国から選出すべきではないかということを日本が言ったり、大変に後ろ向きだと思うわけであります。

 そういう中で、私は、一つこれは世界的な大きな流れの中で、特にヨーロッパの国が反発をする、反発して当たり前ではないかと思うことは、京都メカニズム、技術支援の中で日本がどうしても原子力発電所にこだわっているということは、私は大変に気になるわけであります。

 CO2を出さないから原子力発電はいいんだということをおっしゃられる方もいらっしゃるが、私は、本当に原子力発電所は、事故があってはならないわけでありますが、一たん事故に遭ったときに大変な環境汚染があるわけでありますし、いまだもってその廃棄物の処理の完全なる方法は見つかっていないわけでありまして、そういう、大変に環境を汚染する可能性が高いものをなぜ含めることにこだわるのか、これに大変に疑問を感じるわけでありますが、大臣、いかがでありましょうか。

川口国務大臣 どういうスタンスで交渉をするかということですけれども、ハーグ以降も先ほど申しましたように交渉は進んでおりまして、ですから、ハーグのところのポジションを日本はいつまでも持っているということではないということでございます。という意味では、今、交渉はまさに動いている過程にあるということを申し上げておきたいと思います。

 それから、私は、この交渉にできるだけ多くの国が参加をして、その結果として京都メカニズムの運用ルールができる、合意に達するということが何よりも一番大事だというふうに思っております。そのために、日本としては積極的に関与をしていきたいということでございまして、例えば四・八、四・九、これは途上国への支援のところでございますけれども、日本は、この間のハーグの前にアンブレラ諸国を誘ってまず会議をしまして、十億ドルというファンドについてGEFにウインドーをつくって行うということの提案をいたしました。これは各国からも、途上国も含めて評価をされましたし、それがかなり会議の空気を変えるということにも役立ったわけでございます。

 それで、厳しくあるべきだというのは、これは一つの考え方でございますけれども、今、例えばプロンクペーパーでこのことについて出ているのは、毎年十億ドルということで出てきております。それでは、日本は毎年十億ドルということの方がより厳しいから、では毎年十億ドルということでやれということでほかの国、ほかの先進国を説得することができるかどうかという問題があるわけでございます。

 ですから、むしろ大事なことはファンドができるということでございまして、毎年十億ドル、日本自身がこれに賛成できるかどうか、これは予算の関係もございますし、国会で御審議いただくことが必要になる事柄でもございますけれども、そういう意味で、キーワードは各国が合意できるということでございまして、それは、例えば毎年十億ドルで日本がほかの国を、先進国を説得してそれでやるということであるかというと、必ずしもそうでない場合もあるという意味で、何について厳しくあり、何に対してとにかく合意に達することを優先すべきかということは、項目項目によってそれは異なってくるというふうに私は思っております。

 それから、原子力発電のことでございますけれども、CDMで原子力発電を認めるかどうかというのは、これはたまたま私が議長をしたところでもございますので非常に記憶に強く残っているところですけれども、これについてもさまざまな意見がございます。途上国の中でも、中国ですとかインドですとかそういった国は、CDMで原子力発電を認めるべきであるという、これは強い意見でございます。

 ということでもございまして、それでは、これをどうやって全体としてまとめていくかということは、まさに議長の役割、プロンク議長の役目であるわけでして、これを、先ほどまとめることが大事だというふうに言いましたのは、まとめるためにどういう合意ができるかということでございますので、遵守の話もおっしゃいまして、時間も余りないでしょうから一々申し上げませんけれども、事によって厳しくやることが必要なこともあるでしょうし、まとめることを優先するということを考えないといけないところもあるだろう。大事なことは、今度の会議で合意に達することができるということだと私は思っております。

近藤(昭)委員 大臣、まとめることも大切でありますが、まとめるためにどんどんどんどんと、先ほど小林議員の質問に大臣も答えていらっしゃった、国益を守りつつ地球益を守る、その調整、バランスとでもいいましょうか、そういうこともかんがみながら調整をしていく。ただ、大臣が国益の中で何をおっしゃっているのかちょっとよくわからないところがあるんですが。

 単純な国益、国益というよりも、国というのは、そこに住む一人一人の人間がそこにいるわけでありますから、やはりそこに住む人々の利益、つまり、そこに住む人々の利益というのは地球益にかなり一致してくるのではないかと私は思うわけでありまして、そういう意味では、国益もやはりそこに住む一人一人の人間の総体としての国益、そういうものが大事だと思いますし、そういうことで考えると、私はもっと厳しくあるべきだ。

 特に原子力発電所は、日本は、確かにCDMのメカニズムなんかも、当事国の要望といいましょうか、当事国の要請があればということに大変こだわっていらっしゃって、今大臣も、中国あるいはその他の国からはぜひこれを認めてほしいというようなことがあるという言葉もおっしゃられましたけれども、ここが私はちょっと、相手国の要請があればということが逆に言うと非常にひっかかるところでございまして、大きな流れの中ではもっときちっと、これからのあり方を考えれば、原発については私は含めるべきではないという思いであるわけであります。

 質疑時間がもう五分しかありませんので、予定をしておりました質問が全部は質問できませんが、一つぜひ環境省になった大臣にお伺いをしたいことがあります。

 今月の二十日でしたでしょうか、田中康夫長野県知事が脱ダム宣言をしました。これから始まる長野県議会で大分もめるというか紛糾すると言われております。議会に相談することなく脱ダム宣言をしたことについては確かにいかがなものかなと思うわけでありますが。

 ただ、宣言そのもの、考え方そのものには私は大変に共鳴をしておりまして、私ども民主党でも、緑のダム構想、もはやコンクリートで固めた川あるいはダムの時代ではない。決してこれは治水とか利水とかということを無視しているわけではなくて、治水、利水の面から考えても、コンクリートで固める――ダムには堆砂の問題もあります。そしてまた、一気に流していく、水流の問題もあります。こういうことを考えれば、もうそういう時代ではない。

 森林の保水力、私が思うには、やはり日本は戦後の森林政策を間違えたのではないかと思うわけでありますが、そういったことから脱出していこう、それは決してダムをつくらないという単純なことではなくて、もっと大きな目から考えていく。ダムをつくらないことによって、自然の森あるいは自然の地形を利用して治水等々もやっていく。そして、森の中にはやはり、環境にもいいといいましょうか、人が見ても本当に心が和む、こういうことだと思うのですが、この田中知事の脱ダム宣言について、大臣いかにお考えでしょうか。

川口国務大臣 田中知事の脱ダム宣言について申し上げる前にちょっとだけお時間をいただいて、先ほど私がCDMと原子力について申し上げたことが多少言葉足らずだったかなと思いますので、もう一度きちんと申し上げさせていただきたいと思います。

 CDMの議論というのは、基本的に途上国が、自分が思うような技術を、ほかの国にこれはやってはいけませんと言われないでやることができるかどうかということが問題の核心でございます。そういう意味で、原子力であるとないにかかわらず、途上国がそれを欲した場合に、それをほかの国が、主権に反して、あなたはそれをやってはいけませんと言えるかどうか、そういう議論だということをちょっと申し上げさせていただきます。

 それで、脱ダム宣言でございますけれども、私は新聞の報道でこれを読んだだけでございまして、そこに至る過程その他については承知をいたしておりません。

 ただ、感想は幾つかございまして、まず、これは委員おっしゃるように、環境の保全とダムのような公共工事との関係がどういうふうにあるべきか、どう考えるべきかということについて一石を投じたというふうに私も理解をいたしております。ただ、ではダムすべてが悪いかということになりますと、それはそういうことでも必ずしもないかもしれない。利水、治水、ほかの手段がない場合もあるだろうという気もいたしております。

 それから、その実行可能性ということからいいますと、この宣言に至る過程で、やはり地元の方々との話し合いが十分であったかとか幾つかの点はあるのかもしれないという印象を新聞記事から得ました。ただ、問題提起という意味ではというふうに私は考えております。

近藤(昭)委員 今大臣がおっしゃったように、ダムがすべて悪だという言い方はなかなかできないだろうということは私も思います。

 ただ、違う方法があるのだ。ダムは全く、例えば点数で言うと、仮定でありますが、五十点ぐらいだと。でも、もしかしたら百点という方法が、あるいは百点に近い方法があるのではないかと私は思うわけでありまして、それについてもっと積極的に、特に環境省、今おっしゃられました、そういった公共事業でいろいろなものをつくることと環境破壊とのこれからのあり方が非常に重要だと思いますし、そういう中でやはり環境省が果たしていく役割は非常に大きいと思うのです。

 ですから私は、環境も守りながら、なおかつ、さっき大臣もおっしゃった治水とか利水の面でも有効な方法があるのだ。ですから決して田中知事も、ダムは全部悪でダムをやめてしまうことがいいということではなくて、ダムの果たしてきた役割も大事にしつつ、違った方法でやっていこうという宣言だったと思います。

 アメリカでも、一九九六年でしたでしょうか、九六年から九七年にもう脱ダム宣言をしているということですので、私は、積極的に一石を投じたというよりも、世界的にはもうかなり前から一石は投じられている、その結果、田中知事は脱ダム宣言をしたのではないかというふうに思うわけであります。

 時間が参りましたので、きょうの質問はこれで終わらせていただきます。

五島委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

五島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青山二三さん。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。

 本日は、環境省として発足いたしまして初めての委員会でございます。環境の世紀と言われる二十一世紀、新しい世紀の始まりに環境省という新たな体制の発足を見ましたことは、大変うれしく思っております。環境の世紀をリードしていく重要な役割を担っておられる川口環境大臣に大きな御期待を申し上げて、短い時間ではございますが、質問をしてまいりたいと思います。

 二十一世紀の最重要課題の一つとして環境問題が挙げられております。公明党が政権に参画して以来、大量生産、大量消費、大量廃棄という社会のあり方から、ごみゼロへ向けた環境型社会へ大きく前進してきております。特に昨年は、循環型社会形成推進基本法とその関連の七つの法律が整備され、ごみゼロ社会への本格的な取り組みが始まりました。

 我が党では本年一月、環境省の発足にあわせまして、環境に優しい社会構造改革を実現するために、田端議員を議長といたしまして、循環型社会推進会議、エコ・ジャパン会議と申しておりますけれども、これを設置いたしまして、シンポジウムの開催や省エネ生活の実践項目を書き入れましたエコカードの配布などさまざまな企画を考えているところでございます。そして国民挙げて、環境に優しい生活、エコライフの運動につなげていきたい、そういうことで頑張っているところでございます。

 環境省の絶大なる応援をお願いいたしますとともに、このエコライフ運動につきまして、川口大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 二十一世紀は環境の世紀ということでございまして、循環型社会をつくっていかなければいけないわけですけれども、そのためには、国民の一人一人あるいは企業の一つ一つ、あるいは国、国の機関がライフスタイルを変えていく、仕事の仕方を変えていくことが非常に大事なことだと思っております。これは本当に重要なことだと思っております。

 それで、環境省といたしましては、そのためにどういうことをそれぞれの方にやっていただくのがいいのか、あるいは各主体それぞれでどういうふうに考えていただくのかということが可能になるような枠組みをつくることが必要だと思って仕事をしております。

 例えば、私はタウン・ミーティングというのを始めておりまして、ついこの間仙台でもいたしましたけれども、環境省が何を考えているか、国民の皆様に何をお願いしたいかということについてディスカッションを二時間ほど行わせていただきました。そういった意識の啓蒙啓発活動というのが大事だということでございます。

 それから、広く環境教育というふうにくくって言われますけれども、学校での教育、総合的学習の時間ということで平成十四年度から取り組まれますけれども、ここで環境について子供たちに教える。それから、こどもエコクラブのような課外活動的な取り組みというのもございます。それから、大人に対する教育も重要でございますし、政策担当者についての研修等を通じた教育と言ったらいいと思いますが、必要だというふうに思っております。

 このほか国民運動的なものとしまして、アイドリング・ストップ運動を実施する、あるいはエコライフ・フェア、それからセミナーの開催、環境月間、地球温暖化防止月間等のキャンペーンというさまざまなことをやっておりまして、委員御指摘になられますように、エコライフを進めていくための取り組みというのはとても重要だというふうに思っております。

青山(二)委員 大臣から大変な御支援の言葉をいただきまして、意を強くしてこれからもこの運動に取り組んでまいりたいと思います。

 このエコ・ジャパン会議の取り組みの第一弾として、私たちは自然エネルギー促進法の制定を目指しております。環境問題の中でも、地球温暖化は私たちの生命、生存、生活にとって深刻な問題となっております。

 そして、地球温暖化問題で避けて通れないのは新エネルギー、新たなエネルギーへの転換であります。我が党は、こうした深刻な温暖化とエネルギーの問題への有力な対策として、無尽蔵でまた再生可能な自然エネルギーの活用を強力に進めるべきであると考えているところでございます。

 しかしながら、日本の自然エネルギーの全体に占める割合はたったの一%、十年後には、二〇一〇年でございますけれども、三%にふやす見通しを立てておりますけれども、この達成も危ういのではないかと言われております。ですから、まずこれを大きく前倒しをする必要があると考えるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。

 そして、自然エネルギーの促進はエネルギー自給体制の脆弱な日本にこそ必要でございまして、自然エネルギーの普及拡大を目指す自然エネルギー促進法を早期に制定すべきであると申し上げたいわけでございますが、川口大臣の御見解を伺いたいと思います。

川口国務大臣 自然エネルギーの利用促進ということは、温暖化防止という観点からも重要なことだと思っております。

 それで、環境省は今までに、自然エネルギーを活用したモデル事業として幾つかのことをさせていただいておりまして、例えば太陽熱、太陽光、バイオマスなどの新エネルギー活用のモデル事業ですとか、生ごみから発生するメタンを利用する燃料電池、太陽光発電などの実施検証事業、これは神戸それから茨城県古河市でやっておりますけれども、ということも進めさせていただいております。

 自然エネルギーの利用の促進のためにさまざまな取り組みが行われていまして、御指摘の自然エネルギー促進法案につきましても、自然エネルギー促進議員連盟において現在検討がなされているというふうに承知をしております。

 環境省としても、自然エネルギーの導入に熱心な市町村と連携を図って各種の事業を展開するということを引き続きやっていきたいというふうに思いますし、自然エネルギー促進議員連盟を中心とする法律制定に向けた動きについても協力をさせていただくということを含めまして、自然エネルギー促進のための取り組みの積極的な促進ということを推進したいと思っております。

 この間、ある電力会社の方に伺いましたら、その電力会社の傘下で、この間、電力会社でグリーン料金という、一口五百円上乗せされるということを始めましたけれども、そこに御賛同をいただいている事業家の方というのが全体五百万中五千にしかすぎないというような状況でもございまして、これは供給側だけではなくて国民の側の問題といたしましても、もっと自然エネルギーについての理解が深まり、利用をしようあるいは協力をしようという動きがふえていくということが重要だと思っております。

青山(二)委員 大変積極的な御答弁いただきました。我が国の自然エネルギーの開発というのは、欧米に比べて本当に大変おくれているという感がするわけでございますので、これからも自然エネルギー促進法制定に向けて頑張ってまいりますので、どうかまたよろしくお願いを申し上げます。

 さらに、地球温暖化問題で忘れてならないのは、オゾン層を破壊するフロン対策でございます。

 現在、特定フロンの生産は禁止はされておりますけれども、既に使用されている特定フロンは、法的な仕組みが整備されておりませんので、大気中に放出されてオゾン層の破壊を一層進めているわけでございます。また、オゾン層を破壊しないということで開発されました代替フロンも、特定フロンと同じように地球温暖化を進める性質を持った温室効果ガスでございます。

 オゾン層を保護するには、生産の禁止だけではなくて、使用されている特定フロンの回収・破壊が必要でございまして、フロン対策は、技術もあるわけでございますので、回収・破壊をするというその意思さえあれば容易に実行できる温暖化対策であると思っております。

 フロンの回収・破壊法につきましても、オゾン層の破壊防止、地球温暖化防止の観点から、既に公明党は昨年法案を公開させていただいております。もちろん、これからも各党とも相談をいたしまして、必要な修正をして、議員立法という形で、この通常国会の早い時期に合意に至りまして法律を成立させたい、このように考えているところでございます。

 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、私たちは、このフロンの回収・破壊法が緊急に必要であるとの認識のもとに作業を行っているわけでございますが、川口大臣も共通の認識に立っていることと考えておりますけれども、この点はいかがでしょうか。

 大臣は、COP6におきまして日本の国際交渉力を強いものにするためにも、温暖化防止の国内対策を強力に進めていかなければならない、このような発言もされております。まさに、今国会におけるフロンの回収・破壊法の成立は、実際にオゾン層破壊防止や地球温暖化防止に効果があるだけでなく、COP6再開の会合で日本の交渉力を強めることになる、このように考えるわけでございますけれども、この点についてもいかがでございましょうか。

川口国務大臣 フロンを空中に放出させない、回収して破壊するということが、委員おっしゃいましたように、オゾン層を守るという観点からも、それから地球温暖化の防止という観点からも非常に重要だという認識は私も全く共通にいたしております。

 私が理解いたしましたところでは、業務用冷凍空調機器とカーエアコンから二〇〇〇年に大気中に放出された冷媒フロンの温室効果は、京都議定書の基準年である一九九〇年の温室効果ガスの総排出量の三・四%に当たるという試算結果もあるようでございます。

 今、各党においてフロン回収の法案が検討されているということでございますので、今国会においてぜひ実効性のある法律を成立させていただくことを強く期待申し上げております。

 また、環境省といたしましても、議員立法の成立に向けて精いっぱいの協力をさせていただきたいと考えております。

青山(二)委員 力強い御答弁、大変ありがとうございます。本当に一日も早く成立ができますように頑張ってまいりたいと思います。

 次に、ちょっと角度を変えまして、アレルギーー性疾患対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 今、私どもの党では、アレルギー性疾患対策に総力を挙げて、そして粘り強く取り組んでおります。殊に昨年、一千四百六十四万人の署名を集めましたが、この署名が大きな追い風となりまして、この要望に掲げました大幅な予算の増額や治療研究拠点の整備、そして食品の表示などが次々に実現いたしまして、この署名に託されました国民の願いとして、国のアレルギー性疾患対策に向けた取り組みが大きく進んでいるわけでございます。そこで、環境省といたしましても、このアレルギー性疾患対策に強力に取り組んでいただきたいと思っているところでございます。

 さて、花粉症の人にとりましては大変憂うつな季節がやってまいりました。日本気象協会の予測では、杉、ヒノキの花粉は昨年に続いて飛ぶ量が大規模になる、こういう予想が出されております。

 環境省にお聞きする前に林野庁にお伺いをしたいと思っておりますが、杉花粉症に悩まされる患者は全国に千三百万人もいる、このように推定されております。特に被害が深刻な関東地方では五人に一人が花粉症に悩まされているのでございまして、これはまさに国民病と言えるものでございます。

 林野庁は今年度から杉林の緊急間伐対策に乗り出しておりますけれども、過日、杉花粉症対策に向けて、従来の百分の一以下の花粉しか出さない杉四十二品種を開発したということが発表されておりました。林野庁として、主な花粉症対策について御説明をいただきたいと思います。

中須政府参考人 ただいま御指摘のございました、林野庁として杉等の花粉症対策に対する取り組みでございますが、私どもは、森林・林業という側面からの担当ということで、第一点目は、ただいまも御指摘にございましたとおり、花粉の少ない杉品種、これを調査選抜をするということで、先日、四十二品種を新たに開発し、発表いたしました。既に十五品種を公表しておりまして、合わせて五十七品種ということになるわけでありますが、これらが実際に杉の木になっていくという過程には大分時間はかかるわけでありますけれども、我々としてこれらの品種の普及に努力をしていきたいということが一点目でございます。

 それから二点目は、今気象協会によります花粉の飛来予測というお話がございましたが、これについても私ども、気象協会等と協力しながら、花粉生産量の予測手法、こういうことの調査に取り組んでいるということが二点目でございます。

 それから三点目も、御指摘ございましたとおり、今全国で、杉に限らないわけでありますが、間伐がかなりおくれております。そのことが花粉の増大ということにもつながっているわけでありまして、そういう観点から、花粉の発生抑制にも資する間伐を緊急に五カ年で進めていこうということで、今年度から取り組んだところでございます。総体で百五十万ヘクタール、各年三十万ヘクタールの間伐を緊急に実施をしたいということで取り組んでいるわけでございます。

 いずれにいたしましても、花粉症対策は、原因究明あるいは予防・治療、あるいは発生源に関する対策等を総合的に講じなければなりません。そういう意味におきまして、環境省、厚生労働省、気象庁、また私どもも含めまして四省庁、花粉症に関する担当者連絡会議というものを設けて、密接な連絡をとりながら対策に取り組んでいるところであります。引き続き努力をしてまいりたいと思っております。

青山(二)委員 確かに花粉症で悩んでいる人の声を聞きますと、もう大変なものでございまして、あるところの調査によりますと、年間二千八百六十億円の損失を出しているということでございますので、杉が育つのに何十年もかかるわけでございますから、緊急に今お話しのございました間伐対策、そういうこともしっかりと進めていただきたいと思っております。

 しかし、花粉症になる原因は杉やヒノキが出す花粉だけが原因かとなりますと、そうじゃないわけでございまして、私、栃木県でございますが、日光杉並木がございます。もう江戸時代からあるわけでございまして、あのときには花粉症などというものは一切ございません。これは、やはり花粉症の増加の一因として考えられますのが、自動車の排ガスなどの大気汚染の物質との関連が今指摘されているわけでございます。

 そこで、こうした花粉や自動車の排ガスなどの複合的な大気汚染物質がアレルギー性疾患に及ぼす影響などについて、環境省としてはどのような調査を進めてこられたのか、お伺いをしたいと思います。

岩尾政府参考人 杉花粉症の患者は今や千三百万人を超えるとも言われておりまして、環境省、林野庁など関係省庁の協力のもとに花粉症問題の解決に向けて取り組んでおります。

 環境省では、平成三年度から、ディーゼル排気微粒子と花粉症の関係について動物を用いた研究などを行っております。これまでの動物を用いた実験の主な成果としては、ディーゼル排気微粒子の濃度をさまざまに変えた実験の結果、高濃度では花粉症様の症状を誘発するなどの実験結果が得られています。

 一方、我が国の研究者による人の疫学調査、すなわち人口集団を対象として、環境汚染物質の暴露量と健康影響発生率との関係を統計的に分析する方法の結果からは、大気汚染物質と杉花粉症との関連性についてはなお評価が分かれておりまして、さらなる研究究明が必要であるというような結果を得ております。

 以上です。

青山(二)委員 花粉症と大気汚染の関係を示す疫学調査というのが七〇年代から行われていたということでございまして、その結果、原因として、花粉だけでなく大気汚染、殊に自動車の排ガスによる大気汚染が疫学的に花粉症の危険因子の一つであるということが指摘をされているわけでございます。

 さらに、八〇年代から、東大医学部の物療内科というところや、また国立環境研究所などにおきましての幾つかの研究で、ディーゼル排ガス中の微粒子は、発がん性ばかりでなくて、鼻水の増加やぜんそくなどアレルギー症状を増加させるという動物実験の結果も、今お話がありましたように示されているわけでございます。先ごろ、東京都立衛生研究所の動物実験では、妊娠中に大量のディーゼル排ガスを吸った母ラットから生まれた子供のラットはアレルギー体質になりやすい、こういう結果が出たことが報道をされておりました。

 このように、既に八〇年代から花粉症の増加の一因はディーゼル排ガス中の微粒子であることがほぼわかっていた時点でディーゼル排ガスの厳しい規制を始めることはできたはずだとか、あるいは、科学的には早くから原因が究明されていたのに、国の対応は遅い、こう専門家の方々が話しておられるようでございますが、こういう批判に対しまして、環境省としてはどのようにお考えでしょうか。

松本政府参考人 ディーゼル車から排出されます粒子状物質、あるいは窒素酸化物もあろうかと思いますけれども、これらの排出ガスに対しての規制でございますけれども、自動車一台ごとのいわゆる単体規制というものを実施しているわけでございます。この規制につきましては、これまで順次強化をしてきております。

 粒子状物質あるいは窒素酸化物の現在の規制値と申しますのは、一般的に長期規制という規制値なんでございますけれども、規制当初の値から比べますと三分の一程度に厳しくなっております。そして、平成十五年あるいは十六年からは、いわゆる新短期規制というものを実施することを予定しております。

 さらに、その先の規制として、新長期規制というものを平成十九年度から実施するということを当初予定していたわけでございますけれども、その新長期規制につきましては、昨年十一月に中央環境審議会から答申をいただきまして、平成十九年というのを二年前倒しいたしまして、平成十七年までにその新長期規制というものを実施に移すことにいたしているわけでございます。

 その新長期規制の規制値は、十三年度中に決めるということにいたしているわけでございますけれども、新短期規制の規制値よりさらに半分以下というような大変厳しい規制値を念頭に置きながら具体的な基準値を決めていくということを考えているわけでございます。

 さらには、この答申の中で、軽油中の硫黄分の軽減を大幅に図っていくという答申もいただいておりますので、十六年末までには軽油中リッター当たり五〇ppmという水準を確保する方向で努力をしていきたいということでございます。

 環境省といたしましても、こういうような答申などに基づきまして、今後ともディーゼルの排ガス対策を一層強化していきたいというふうに考えているところでございます。

青山(二)委員 御答弁がございましたように、環境省としても積極的に取り組んでいただいているということでございますが、現に花粉症で悩んでいる方々のことを思いますと、やはりしっかりとこれからも取り組んでいただきたい。そして、規制のあり方とか、また健康被害の防止対策などにも本腰で取り組んでいただきたい、このように思うわけでございます。

 それでは、時間も参りましたので最後の質問になりますけれども、環境大臣にお伺いをしたいと思います。

 この二十一世紀の始まりの年、環境型社会二年目を迎えまして、我が国は地球環境とともに生きる循環型社会の構築に歩み出しております。これまでの道路づくり中心の公共事業、また流通コストや輸送効率を優先した税制など、環境や健康に配慮する視点で社会の仕組みを見直していくことが重要であると考えております。そして、環境問題解決のためには、環境省は、将来の世代、声なき自然、被害者等の代弁者であるという使命を再確認されまして、予防的なアプローチに立った行政を進めていっていただきたい、このように考えているところでございます。

 先月、二月の十六日でございましたか、全閣僚と有識者で構成する二十一世紀「環(わ)の国」づくり会議の開催も決まりましたが、地球環境とともに生きる、共生できる新たな社会づくりに向け、川口大臣には大いにリーダーシップを発揮していただきたいと期待しているわけでございます。

 最後に、世界に誇る環境大国日本実現へ向けて、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 委員おっしゃいましたように、地球環境問題というのは、ずうっと時間がたっても問題としては続くということでございますから、この世代が後の世代のためのすばらしい地球環境というものを奪ってしまうというようなことがあってはいけないわけでございまして、まさにそれが持続可能なということの背景にある考え方であるというふうに思います。

 「地球と共生する「環(わ)の国」日本」ということは、そういった幅の広い環境問題、あるいは後世代まで関係のある環境問題に取り組むために、委員がおっしゃったような枠組みで議論をしていきたいということでございまして、循環型社会をつくっていくために、質の高い簡素な日本社会ということを念頭に置きまして、皆さんの御議論を聞かせていただきたい、あるいは議論に参加をさせていただきたいというふうに思っております。

青山(二)委員 御答弁ありがとうございました。

 時間でございますので、これで終わらせていただきます。大変ありがとうございました。

五島委員長 樋高剛君。

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。

 本日は、発言の機会を賜りまして、本当にありがとうございました。委員長初め委員の皆様方、そして関係各位の皆様方にまずもって心から感謝を申し上げる次第であります。また、日ごろ環境行政につきまして大変な御尽力をいただいております大臣、副大臣、そして政務官、平素の御尽力に対しまして心から敬意を申し上げる次第であります。

 私自身、今回が環境委員会初質問でありまして大変緊張いたしておりますが、本年から環境委員会委員となりました。なぜならば、いよいよ二十一世紀という新しい時代を迎えましたけれども、今こそ環境の問題が最も重要なテーマである、環境の問題の解決なくして日本の将来、そして世界の将来はないという大変危機的な思いを持ちまして、環境委員にさせていただき、取り組んでいるところであります。特に循環型社会、そして人間と自然との共生、調和の部分を一つのテーマといたしまして、これからも常にアンテナを高く上げて、新しいものをどんどん吸収しながら、新しい環境の問題に積極的に取り組んでまいりたいと思います。

 本日は、環境行政の現状と課題につきまして、前半では総論、後半では各論につきまして、特に廃棄物、土壌汚染、化学物質対策、そして地球温暖化へと質問を進めてまいりたいと思っております。

 本年一月六日から中央省庁の再編に伴いまして環境庁が環境省に格上げとなりました。そもそも環境省への国民の期待は物すごい大きいものがあると私は考えております。しかし、庁が省へ昇格をした、では、それによって一体何が変わるのだろうかということが実は国民に届いていない、私はそれを肌で感じるわけであります。

 せっかく行革によりまして、きっとさまざま考えられて新しい体制を再構築なさったのであろう、二十一世紀の環境の問題を先取りした形で、どういう行政のシステムであればいいのかという部分を考えられて新しい体制をつくられたのであろうと思われるのでありますけれども、そもそも看板のかけかえであってはいけないわけでありまして、では、中身の部分でどういうふうにどこが変わったのか、私にではなくて、国民の皆様方にまずわかりやすくお答えをいただけますれば幸いです。

川口国務大臣 環境問題には今大勢の日本の方々が関心を持っているわけでございまして、特に樋高委員のように将来の日本をしょっていかれる方の世代の環境への関心というのが特に高まっているというふうに私は認識をしております。環境庁が環境省になりましたのも、そういった国民の皆様の期待、環境問題についてもっと国としてやっていかなければいけないという期待を背景に環境省にしていただいたというふうに考えております。

 それで、委員おっしゃられるように、では環境庁が環境省になって一体何が変わったのか、何が変わるのかというふうに思っていらっしゃる方が多いと思います。私どもも、環境省に変わって何が変わるのかということを国民の皆様にお伝えすべく、実は一月六日以降、さまざまな催しなり取り組みをやってまいりました。

 例えば、一月六日、発足をした日には日比谷公園で環境省のロゴの発表、タウンウオークというのも、江戸ウオークラリーということをやらせていただきましたし、それから、タウン・ミーティングというのも開催をさせていただきまして、実はつい先週の日曜日に仙台でもいたしました。

 環境庁が環境省になってこういうふうに変わる、あるいはこういう政策のスタイルで仕事をしていく、今重要な環境問題の分野というのはこういうことですということをパワーポイントを使って御説明を申し上げ、それをベースに聴衆の皆様と、これは公募をして参加していただいているわけですけれども、議論をしていくという催しをやってまいりました。これは今後も続けていきたいというふうに思っております。

 ただ、委員が御指摘のように、それだけの試みではまだ十分ではないと思っておりまして、今後さまざまな機会をとらえて、環境庁が環境省に変わって、このように行政が変わるのだということを御説明していきたいと思っております。

 それでは本当に何が変わったのかということになるわけですけれども、一言で言ってしまえば、今まで規制をする官庁あるいは調整をする官庁ということから、政策を企画立案し実際に実施をしていく行動官庁に変わるということでございます。

 権限的には、廃棄物行政が環境省の所管になりましたし、リサイクルあるいは化学物質対策等環境保全を目的の一部に持つ事務が他の府省と共管ということになっております。それから、環境政策について環境省は府省を横断的な形で勧告をする権限もございますし、調整機能というのももちろん持っています。

 こういった機能を十分に発揮し、環境保全のために必要だと思うことを遠慮することなく発言をしていって、環境保全ということの牽引車としての役割を果たしていきたいというふうに思っております。

樋高委員 行動官庁というお言葉がありました。まことにすばらしいことではあると思いますけれども、要は、環境庁から環境省になって、やはり中身の部分で本当に変わらなくては意味がないのではないか、体制、体質の問題なのではないか、そして職員皆様方の一人一人の意識の問題なのではないかと私は考えるわけであります。

 今までは後手後手に回っていた、何か問題が起きたときに、それに後から対処をする。そうではなくて、自分たちがみずからを持って、先見性を持って、こういう問題が発生するであろうということに対してあらかじめその問題を認識した上で、先手先手を打って、そして、むしろ日本が世界に模範を示す。みずからを律して、みずから見本となって、そして環境問題で世界をリードするのだということが今環境省には期待されているのではないかと私は思うわけであります。

 確かに、いろいろな局、部の名前も変わりました。そして、厚生省から例えば廃棄物行政の一本化も行われましたけれども、まことに結構なことでありますけれども、それによって本当に中身の部分がやはり目に見える形で変わらなくてはいけないのじゃないかと私は思います。そのためには、やはり大臣の役割は物すごく大きいのではないかと思うわけであります。そのことにつきまして、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 責任は十分に自覚をいたしておりますし、全力を尽くしていく所存でございます。

 環境庁が環境省になる前に環境庁三十年の歴史があるわけでございまして、これは日本のほかの省庁、ほかの府省、例えば財務省、大蔵省ですけれども、等と比較いたしますと、大変に新しい歴史でございます。

 新しいということは歴史がないということでもございますけれども、逆に、しがらみにとらわれないで新しい発想ができるというメリットも持っているわけでございまして、環境省の職員は、まだまだ環境委員会の委員を初め皆様にこれからどんどん鍛えていただかなければいけないと思っておりますけれども、そういう意味では非常に意気軒高、やる仕事については大変な問題意識を持っておりまして、一生懸命に仕事をしております。

 そういう意味で、そういう職員の皆さんのやる気というのを、副大臣あるいは大臣政務官と一緒になって引っ張っていくという役割を私どもは負っていると思っております。

樋高委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。特に、G7の一員として日本がリーダーシップをとって、国連の機関とか、きょうずっと議論されておりますさまざまな国際会議などで、先ほども申し上げましたけれども、やはり日本が中心的役割を担って、今、本当にもう回復不能とも言われております地球環境回復のためにぜひ頑張っていただきたいと思います。

 時間がありませんので各論に入らせていただきます。

 廃棄物、特に産業廃棄物につきまして、そして土壌汚染、化学物質対策につきまして質問をさせていただきます。

 そもそも産業廃棄物、いわゆる産廃でありますけれども、私も常日ごろから生活していて本当に感じるのでありますが、不法投棄が余りに多いと思うわけであります。やはり世界に向けて環境問題をリードするのであれば、まず国内の問題をきちっと把握し、そしてその国内の環境問題に主体的、積極的に取り組んでいくところがなくてはいけないのではないかと思うわけでありますけれども、不法投棄につきましてどの程度把握なさっておいででしょうか。

 先ほど来話を聞いておりますと、地方には直接そのセクションがないからなかなか情報が入ってこないのだというようにちょっと発言の中で感じられたのでありますけれども、仕方がないではなくて、やはりこれから積極的に地方の環境の問題も取り上げていかなくてはいけないと思うわけであります。

 どの程度不法投棄について把握なさっていらっしゃるのか、そして原因は何だとお考えでいらっしゃるでしょうか。

沓掛副大臣 今の御質問ですが、産業廃棄物の不法投棄件数はおっしゃられるように依然として多く、産業廃棄物処理全体についての国民の信頼を損ねているというふうに思っており、何としてもその撲滅を図ることが必要だと思います。

 産業廃棄物の不法投棄の件数及び量等について都道府県及び保健所設置市を通じて調べたところによりますと、平成十一年度の不法投棄件数は千四十九件、投棄量は四十三万三千トンでございます。なお、投棄量については四十万トン前後と前年度と変わっておりませんが、これまで年々増加してきておりました投棄件数については、平成十一年度には、初めてですが幾分減少の傾向が見られます。

 さて、これらのそういう原因でございますけれども、この不法投棄がなかなか少なくならないその原因としては、廃棄物の排出事業者と処理業者が、それぞれの責任について十分な自覚がない、また、その責任を十分果たしていないということと、もう一つは、一方で、安心できるそういう適切な廃棄物処理施設の整備がおくれていることにあるというふうに思っております。

 そのため、平成十二年に廃棄物処理法を改正いたしまして、排出事業者に産業廃棄物について最終処分まで責任を持たせるような、そういう規制の強化を行うことをいたしております。また同時に、処理業者に対する規制の強化、そして、これらを行うためのマニフェスト制度の充実や罰則の強化等を行っております。

 もう一方の、公共関与によります産業廃棄物処理施設確保の推進のためにも、廃棄物処理センター制度についての要件緩和のほか、都道府県に対する財政支援措置などを講じておるところでございます。

 改正されました廃棄物処理法は本年四月一日から全面的に実施されるものでございまして、この改正法の規制を厳格に行うことによって不法投棄対策に万全を期していきたいというふうに考えております。

樋高委員 不法投棄の問題というのは、これから行われるであろう不法投棄に対する対策と、今既にもう不法投棄されてしまっている部分に分けて考えなくてはいけないのではないかと私は思うわけなのでありますけれども、それぞれ対応、対策はどうなっているのか。

 特に私は、例えば今まで過去二十年、三十年かけて、前々から不法投棄され、本当にそこからPCB、ダイオキシンのような問題が発生をしている、現に国内のたくさんの地域で発生をいたしているわけでありますから、それらにつきましてどういった具体的な対策をとろうとしているのか、お考えをお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 不法投棄につきましては、不法投棄が行われないようにできるだけ未然に防止するということがまず大事だというふうに思いますが、同時に、投棄されてしまったものが生活環境に悪い影響を与えないようにということも必要だというふうに思っています。

 それで、平成九年に廃棄物処理法改正を行いまして、適正処理推進センター制度というものをつくりました。これは、平成十年六月以降、これがこの改正法の施行日であるわけですけれども、平成十年六月以降生ずる事案については、産業界が拠出する基金によって都道府県が行う不法投棄の原状回復に必要な費用を支援することができるようにということでございまして、国もその基金の造成を補助いたしております。

 それから、平成十年六月以前に不法投棄されたものについてはどうかということですが、平成十年度、十一年度及び十二年度、今年度の補正予算で国庫補助予算を計上しまして、以前のものについての原状回復につきましても国として都道府県を支援いたしております。

 さらに、昨年廃棄物処理法を改正いたしまして、不法投棄の摘発が迅速に行えるようにする、あるいは原状回復命令を発動しやすく、かつ効果的にしたというような手を打っております。

 この全面施行が四月一日ということでございますので、これから改正法の規制を厳格に運用いたしまして、都道府県により原状回復命令などが的確に行われるようにするということが必要でして、環境省といたしましても、適正処理推進センター制度による都道府県に対する支援などに万全を期していきたいと思っております。

樋高委員 日本国内での不法投棄によりまして、実は大きな国際問題が今発生しつつあるということできょうは取り上げさせていただきたいと思います。

 私の選挙区であります横浜、新横浜の鶴見川多目的遊水地という案件なのでありますけれども、実は、ここには横浜国際総合競技場という競技場がございまして、その横からPCB、ダイオキシンがたくさん発見をされたわけであります。

 御案内のとおり、今月十五日からワールドカップサッカーのチケットの応募が始まったやに聞いておりますけれども、この国際競技場では、来年の六月三十日ですか、平成十四年六月三十日には実はここでワールドカップサッカーの決勝戦が行われる。そして、世界各国からサポーターの方々、そして選手の方が見えられる場所なのであります。

 そもそもワールドカップサッカーは、一説によりますと、オリンピックをしのぐ、オリンピックを上回る方々が全世界で観戦をなさる。ワールドカップそのものは全世界で四十億人が観戦する。そして決勝戦は、先のことだから実際はわからないでしょうけれども、全世界で約二十億人が二時間弱の決勝戦の試合を注目する。それが実は横浜でございます。

 それが来年六月三十日にあるんですが、すぐそこの横浜国際総合競技場の横から、実は、昭和四十年代に恐らく産業廃棄物の不法投棄によって起きたであろういわゆるPCB、ダイオキシンが発見をされたわけであります。

 先般のシドニー・オリンピックでも、同様に会場の近くからそういった環境の問題が発生をいたしたと伺っておりますけれども、国家を挙げてその環境の問題にむしろ積極的に取り組んで対策を講ずることによって、逆に環境については積極的に取り組んでいる国であるということをシドニーではアピールなさったのだそうでありますけれども、逆に言えば、今回、来年の六月、ワールドカップサッカーの大会を通じまして、日本が環境先進国であるということを全世界にアピールするむしろいいチャンスなのではないかと思うわけであります。

 そもそもワールドカップサッカーを大成功へ導かなくてはいけない、これは当たり前のことでありますけれども、しかし環境の問題を、またこれにふたをして先送りして、なあなあまあまあでなし崩していってしまうということは決して許されることではないと私は考えるわけであります。

 昨年の八月四日、厚生委員会でも私自身取り上げさせていただきました。そうしましたところ、当時厚生委員会では、建設省さんから、横浜市と連携をしてこの安全な処理について検討が今行われている、実行中であるという回答をいただいておりますけれども、それ以来六カ月が経過をいたしたわけであります。

 その間、鶴見川多目的遊水地の土壌処理技術検討委員会というのを設けられまして、いわゆる検討委員会が公開をされて、私も出席をしながら議論を、対策を注目を持って見てきたのでありますけれども、実は、この二月の初旬に新たに第一回のモニタリング委員会が開催されました。遊水地内のPCBなどを含む異物混入土の一時保管対策工法による周辺環境への影響評価と作業環境の評価を行って、適正な対策工が実施されることを確認するために、国土交通省さんの京浜工事事務所さんが事務局となってやられたわけであります。

 新たな住民参加をということで、地域のコンセンサスを得てということのようでありますけれども、私の聞き及ぶ範囲によりますと、まだまだ住民参加が本当に中身の部分で実現されていないということでありました。

 いずれにいたしましても、地域の住民の方々と、実は昨年の八月、私は環境庁の大臣室にお邪魔をいたしまして、市民の皆様方と一緒に、実はこの鶴見川の遊水地周辺の土壌汚染、恐らく産業廃棄物が原因であった、この徹底調査を求める署名を持ちまして実は要望に上がったのでありますけれども、その後、半年間を経まして、調査の状況、そして現在の対応はいかがなっておりますでしょうか。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

川口国務大臣 鶴見川多目的遊水地の問題につきましては、事態の推移というのは委員がただいまお話になられたようなことでございまして、環境省といたしましては、この検討委員会での議論に関しまして、国土交通省ですとかあるいは地元の自治体から、すなわち神奈川県ですとか横浜市ですとかから逐次報告を受けておりますし、必要な技術的な助言も行っております。

 現在、住民の参加も得てモニタリング委員会が新設されたということも、委員のおっしゃられたとおりでございます。

 それで、私どもが承知をしておりますのでは、五回開かれた先ほどのその委員会で、遊水地内で一時的に保管をした後で、処理技術が確認をされた段階で無害化処理をするという方針が決まったということでして、国土交通省でこの三月から、この方針に基づきまして一時保管工事に着手をするというふうに聞いております。

 環境省といたしましても、この委員会の方針というのは尊重されるべきであるというふうに考えておりまして、必要に応じ適切な助言ということを行っていきたいというふうに思っております。

樋高委員 つまり、一時保管施設への異物混入土の移動の量が実は当初の見積もりとちょっと違っておいででありまして、当初三万三千立方メートルだったのが、もう一回よく横浜市が調べてみたら、実は四万立方メートルを超えているということが判明をいたしまして、当初よりもかなり一時保管容量をオーバーして捨ててしまうということであります。

 この事実につきましては御存じだと思いますけれども、要は、私が申し上げたいのは本質的な問題でありまして、例えば測量、そしてその見積もりの量が云々、どうだったという問題を私は突く質問をするつもりは毛頭ありません。そうではなくて、例えば、そういうふうに一回市民が参加をした会議にきちっと数字を出したのだけれども、それがずるずるずるずるなし崩し的に次から次へと数字がまた変化していく、そういう調査データの信憑性が私は問われているのではないかと思うわけであります。

 要は、信頼関係が本当にそこにはないといけない。住民の皆さんの理解をきちっと得て事業を進めていく、行政側の信頼をやはり大変に損なってしまうのではないかと思うわけであります。しかも、ワールドカップサッカーの決勝戦が行われる会場のすぐそばでそういったことが行われてはならないと思うわけであります。

 環境省として、このいわゆる再発防止策、そして今後どのように行政の信頼を回復していくとお考えなのか、お聞かせを願えればと思います。

沓掛副大臣 この鶴見川の遊水地の問題でございますが、ここでPCB等に汚染された土壌の量について、最初と後ではいろいろ変化があるということでございますが、全体としての土壌量は十万二千立米ということで変化がなく、ここで移動する量、どの程度移動するかという数値について、当初計画では二万七千立米というので、それが計画改定後では三万一千ということになっております。今委員の言われたNGO見解は四万というデータですが、これについてはちょっといろいろな、土量の見方の相違があるのではないかというふうに思っています。

 事務的には、計画改定後は二万七千から三万一千と一五%はふえておりますが、全体としての土壌の中でどれを動かすかということについては、その後のいろいろなこともあって、そういう計算上の移動量の増加が出てきたというふうに思っておりますが、いずれにしろ、きちっとした数値を出し、そしてそれを確実に保管していくことが信頼を得る上において一番大切でございますので、これからもできるだけそういう数値的なものについてもしっかりとした形でやり、それを公表していくことが大切だというふうに思っております。

 以上であります。

樋高委員 モニタリングの委員会、これからも何回も開かれるそうでありますし、その委員会の中でも結構であります、しっかり問題が出てきたときには正面からぜひ取り上げていただいて、そして市民が参加して迅速に対処されるように、どうか環境省さんからも御指導いただきまするように強く要望をさせていただきます。

 重要なのは、やはりその地域の方々の信頼をきちっと得た形でやるということ。それと同時に、実はこれは国内問題でありますけれども、同時に国際問題にも発展しかねない大きな問題であるという御認識を持って御指導いただきたいと思っております。

 続きまして、厚木基地の周辺のダイオキシン問題について取り上げさせていただきます。

 平成十年、在日米軍厚木基地に隣接する株式会社エンバイロテックの焼却炉からの排気ガスが米軍基地内の住民の健康を害しているという指摘がアメリカ側から提起されました。御存じのとおりであります。

 一昨年、平成十一年夏に、日本とアメリカが共同して大気関係のモニタリングを行いました。そうしましたところ、基地内の測定地点では、環境基準〇・六ピコグラムを大幅に超えるダイオキシンが実は検出されました。具体的には、平均値で六・六ピコグラム、最大で五十四ピコグラムのダイオキシンが検出されまして、その後、事業者が神奈川県の施設改善勧告に従いましてバグフィルターを設置いたしました。

 焼却炉の適正な運用を確保するために、昨年、平成十二年三月から日米共同でモニタリングを行いまして、先週、実はようやくその結果が公表されたと伺っております。日米共同モニタリングの結果とその評価をお伺いいたしたいと思います。

 周辺住民は、もう安心して生活してよろしいのでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、昨年の春から日米共同モニタリングを行っておりまして、民間の廃棄物処理業者の焼却炉にバグフィルターを設置した後の四月から六月の大気環境中のダイオキシン類の平均値は、それぞれ〇・二、〇・四六、〇・四九ピコグラムということでございますので、これは平均値でございますが、環境基準値の〇・六ピコグラムを下回る状況ということでございます。

 高濃度が検出されましたのは一昨年の夏ということでして、季節が異なるので単純には比較できないということは残るわけでございますが、厚木海軍飛行場内のダイオキシンの濃度は大幅に低下をしているということでございます。

 環境基準は年間平均値ということで定められていますので、今後、年間を通じてはかって、その結果を見た上で評価を行う必要があるということでございますので、引き続きモニタリングを実施いたしまして、周辺環境の状況の把握をしていきたいと思います。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

樋高委員 モニタリングの結果につきましては、そもそも、昨年の三月の十一日から七月の一日までの調査結果を公表する時期が、なぜ実は次の年の二月になってしまったのか、なぜモニタリングの結果の公表がそもそも半年以上かかってしまうのかという部分をお考えいただきたいわけであります。その間ずっと住民の方々は、ダイオキシンの不安におびえながら生活をしてきたわけであります。調査結果の公表に半年以上要した理由と、今後それを短縮するための改善方策、ございましたら伺いたいと思います。

沓掛副大臣 今御指摘のとおり、今回の結果の公表については、昨年三月から開始した共同モニタリングの第一回目の公表ということでもございまして、データの精査を日米間で詰めていくこと、また、公表の仕方等についてもやはりいろいろの意見がございまして、日米双方でかなり慎重な調整のために時間がかかったということでございます。

 今委員のおっしゃられたとおり、やはり非常に重要なことでございますので、これからのデータの公表につきましては、今回いろいろな議論をし調整もやってまいりましたので、日米間での合意がとりやすい環境も出てきておりますし、今の御指摘のように、国民にとっても大変重要なことでもございますので、今後のデータの公表についてはできる限り迅速な対応を図っていきたいというふうに考えております。

樋高委員 大気環境のモニタリング結果とは別に、実は米軍が周辺の土壌を独自に調査をいたしました。国の環境基準の九倍のダイオキシンを検出して、対策を日本政府に求めている、これは報道であります。事実関係はどのようになっておりますでしょうか。環境省としてはどのように対応する方針でいらっしゃいますでしょうか。

沓掛副大臣 厚木基地の南側に隣接しております産業廃棄物最終処分場において在日米軍が実施した土壌調査の結果が、日米地位協定に基づく日米合同委員会環境分科委員会を通じて、昨年十二月七日、米側から環境省にも知らされました。また、そこで環境省は、同日、この調査結果を神奈川県に連絡もいたしました。

 これを受けまして、神奈川県では、この土壌汚染の状況を確認するとともに、汚染原因と対策を検討するため、周辺の土壌、河川の水質及び地下水質の調査を今月十九日より開始したところでございます。

 神奈川県では、本調査の結果を踏まえ、汚染原因の究明を行い、また、必要な対策を講ずることといたしております。

 これらを踏まえて、環境省としても適切に対応していきたいというふうに考えております。

樋高委員 大臣の所信の中にも、有害物質による土壌が汚染されていることが判明する事例が急増していることを踏まえて、土壌環境保全対策のための必要な制度のあり方の検討を進めると触れられておいでであります。

 鶴見川多目的遊水地の問題、そしてこういった厚木基地の周辺の問題に限らず、土壌汚染が明らかになっております。これらの問題につきまして、やはり徹底した原因究明を行う。そして、土壌汚染の除去のための法制を整備することは緊急の課題であるというふうに私は考える次第であります。

 環境省といたしまして、いつまで、そしてどのような内容の法制度を整備したいとお考えでございますでしょうか。

熊谷大臣政務官 ただいまの委員の御質問に対して、私の方からお答えをさせていただきます。

 委員おっしゃるとおり、この件数というのが最近非常に多くなってきたわけですね。したがって、この土壌汚染という問題に対して、特に法制度というものを含めた何らかの対策が必要であろう、こういうふうに考えまして、昨年の十二月から、学識経験者などを交えた検討委員会というものを立ち上げて今盛んに検討しているわけであります。したがって、環境リスクというもののとらえ方、あるいは調査、処理対策のあり方、こういったような問題について目下鋭意検討を進めているという段階でございます。

 これはいろいろ、性格上と申しますか、難しい課題というものを技術的にも大変抱えているわけでありますので、ある程度の時間が必要であろうというふうに思っております。しかし、これは一刻も猶予を許さないという状況でありますので、できるだけ早く検討を進めて、法制化の問題も視野に入れて、具体的な取り組みというものをこれからも積極的に進めてまいりたい、このように考えております。

樋高委員 大臣の所信の中に、PCB廃棄物を確実かつ適正に処理するため法案を今国会に提出したと述べておいででありますけれども、そもそもPCBによる土壌汚染問題をなぜこの法案には盛り込まなかったのだろうかと私は考えるわけであります。ダイオキシン類対策特別措置法のように、土壌汚染も視野に入れた法案にすべきではないかと考えるのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、PCBの対策でございますけれども、長いものは三十年ぐらい保管ということになっておりまして、その過程で、不明ですとか紛失が発生をした。その結果、環境汚染が懸念をされるということでございますので、処理を進めるための施策が必要だということで法律案を提出させていただいたところでございます。

 土壌汚染との関係でございますけれども、PCB廃棄物の紛失の発生というのを食いとめることによって、PCBによる土壌汚染などの環境汚染の防止に取り組んでいく、そういう考え方でございます。

 PCBによる土壌汚染対策については、従来から環境基本法に基づきまして土壌の環境基準を設定いたしまして、土壌汚染についての調査、対策を推進するための調査方法あるいは対策方法を定めた技術指針をつくっておりまして、これを都道府県に提示して事業者に周知を図っているということでございます。したがいまして、まずPCBの発生を抑えて、それから生ずる土壌汚染をとめる、そういう考え方でやっているということでございます。

 それから、先ほど政務官から申し上げましたように、土壌環境保全のための制度のあり方については、十二月に委員会を設けて検討を始めたということです。

樋高委員 PCBにつきましては、化学物質審査規制法によりまして製造禁止とされて以来、三十年の長きにわたりまして各事業者の保管にゆだねられまして、何ら措置が講じられないまま放置されてまいりました。この間に、先ほど大臣もおっしゃっておいででしたけれども、保管中のPCBが紛失したり、保管していた事業者が倒産してしまった事例もあると伺っております。

 先ほど三十年というお言葉もありましたけれども、実際になぜ三十年も処理されず放置され続けてきたのでしょうか。

川口国務大臣 三十年放置をされてきたということについて、普通の人が考えればどうして三十年と思われるのはそういうことかなというふうに思いますが、決して手をこまねいていたということではございませんで、まずPCB廃棄物については、昭和四十七年に当時の通産省の行政指導によりまして、PCBの製造中止と回収の指導が行われたということでございまして、その後、製造事業者を中心に設立された団体、財団法人電気絶縁物処理協会で処理施設の設置については努力が行われてまいりました。

 この間に、鐘淵化学工業の高砂工場で回収されたPCB、これは熱媒体として使われていたということだそうですが、につきまして、高温焼却処理というやり方で取り組みが行われたということですけれども、このときの処理方法が高温焼却処理に限られていたということもありまして、自治体や住民の理解が十分に得られなかった、そういうことで続いてきているわけでございます。

 その後、こういう状況がございましたので、平成五年から環境庁、通産省、厚生省、当時のでございますが、連携をしまして、高温焼却処理ではなくて化学的にPCBを分解する技術について、技術開発とその実用化を促して、安全性や実用性の評価を行って処理方法としてそれを導入してきたということでございます。一部の大企業の自社処理の取り組みは見られますけれども、本格的な処理体制が整備をされるという状況にはまだございません。

 それで、環境省といたしまして、このまま事業者による取り組みにゆだねるということだけでは長年の保管に終止符を打つことができませんので、関連法案を国会に提出させていただいて早期の成立をお願いしているということでございます。法案に基づきまして環境事業団を活用いたしまして、地方公共団体の協力をいただきながら、PCB廃棄物の本格的な処理体制を整備していく所存でございます。

樋高委員 それでは、時間でございますので最後の質問とさせていただきたいと思います。

 そもそも、二十一世紀初頭に当たりまして、先ほど来ずっと議論してまいりましたPCB廃棄物、いわゆる負の遺産であります、やはりこれをきちんと処理をして、そして我々の子供の代、孫の代、次の世代へ引き継いでいくことが重要ではないか、喫緊の課題であると私は思っております。

 このPCBの処理施設をどのように国として整備をして、また、いつまでに処理を終えるとお考えなのか、具体的な見通しを最後にお伺いして質問を終わりたいと思います。

川口国務大臣 この国会に提出をさせていただいているPCBの関連法案に基づきまして、PCB製品の大部分を占め、不明、紛失による環境への影響が極めて大きいと懸念されます高圧のトランス、コンデンサーを中心として、広域的な処理施設の整備に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 具体的には、環境事業団を活用いたしまして、地方公共団体の協力をいただきながら、平成十三年度から北九州市で着工すべく、北九州市の意向を踏まえながら準備を開始させていただくということになっております。さらに、近畿、中部、関東といった地域で逐次立地が可能になりますように努力をいたしてまいります。

 こうした施設整備に約五年間ぐらいを努力目標として考えております。その施設整備後おおむね十年程度をめどに高圧トランス、コンデンサーを中心として全国のPCB廃棄物の処理を終了したいということで、できるだけ早く適正に処理を推進していく所存でございます。

樋高委員 どうもありがとうございました。

五島委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。よろしくお願いをいたします。

 私はきょう、有明海の漁業異変と諫早湾干拓事業についてお伺いをしたいと思っております。

 今回の有明海漁業の異変は、諫早湾締め切り反対の声を無視して、必要な事前の調査を尽くさずに堤防を締め切ったことがいかに無法な暴挙であったか、このことを改めて示したものだと思います。

 有明海のノリ色落ち被害が起こっているわけですけれども、実は、有明海では九七年の堤防締め切り以前、つまり堤防着工時の九〇年前後から異変は起こっております。まず、ムツゴロウとともに二枚貝のアゲマキが壊滅状態、そしてアサリも激減をいたしました。貝類は八八年に四万二千四十トンだったものが、九九年には一万七千五百九十九トンに半減しています。魚介類も、ガザミが一千二十一トンから三百九十七トンに、魚類も一万三千百八十九トンから五千七百三十二トンに激減しています。

 ですから、今ノリ被害が大きな問題になっていますけれども、漁獲高の推移を見ますと、有明海での生物生産能力や浄化機能そのものが確実に低下しているというのは、だれが見ても明らかだと思います。

 そこで、大臣はそのことをどのように認識していらっしゃるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

川口国務大臣 今般の有明海の問題というのは、過去に例を見ないほど非常に大きな問題でございまして、深刻な事態であるというふうに思っております。その原因については今の時点では明らかではないということで、大事なことは、予断を持たないで徹底的に調査をして原因を明らかにすることだというふうに思います。

 環境省といたしましても、今緊急捕捉調査ということでございまして、従来から実施をしています水質のモニタリングに加えまして、底質ですとか底生生物等の項目についても緊急に補足調査を行うということにいたしております。それを行いつつございます。

 それから、平成十三年度につきましては、総合的な調査を関係省庁が協力連携して行うということで、これは環境省もその一員でございますけれども、有明海の環境の保全それから改善という観点から、適切に対処をしていきたいと思っております。

藤木委員 今いろいろ原因について、今の時点では原因は定かではないということで調査をされるというお話でございましたけれども、海面漁業の生産量を見てみましても、全体で九五年の四万二千三百五十六トンから九九年の二万七千六百七十九トン、そして特に貝類は二万八千四百八十二トンから一万七千五百九十九トンに激減をしているわけです。確かにタイラギなどの貝類は五年周期で増減しているというように見えますけれども、しかし、全体としては大幅に減少していることは明らかでして、長崎県のタイラギなどは、九四年以降は全く漁獲されていないというのが実態であります。

 有明海のノリ不作の直接的な原因としては、植物プランクトンの異常増殖ということで、漁業関係者の間でも専門家の間でも見方は一致しているわけです。

 そこで、なぜ植物プランクトンが異常増殖するのか、これについて熊本県立大の堤教授はこう述べています。植物プランクトンを食べるアサリやタイラギなどの二枚貝が激減したことで、赤潮発生にブレーキがかからなくなったと指摘しているわけです。

 香川大学の門谷教授によりますと、二十年前と現在との有明海のアサリ漁獲量の差というのは、有明海の湾口部を除く一千三百平方キロの海水を一週間から十日間でろ過するほどの浄化力に相当するものが失われたことにあるとしています。

 そこで、浄化機能の低下が赤潮の発生増加を引き起こしているのではないかと考えますけれども、これは環境省、どのようにお考えでしょうか。

石原政府参考人 赤潮についてのお尋ねでございます。

 本年のノリ不作の件につきましては、沿岸四県の水産部局の見解によりますと、昨年十一月初めの降雨で栄養塩がふえた、その結果としてのプランクトンの増殖、それと、ことしは海水温が例年より高かった、十二月の日照時間が長かったというようなことで、例年では冬には姿を消すプランクトンが増殖したことにより栄養塩が減少してノリの色に影響を与えたというふうに言われております。

 それで、赤潮の発生の原因でございます。いろいろな要因が言われておりますが、基本的には栄養塩の増加がその基本であろうかと思います。増加の要因としましては、一つは、豪雨によります陸域からの栄養塩の流入、あるいは底層部分からの栄養塩の溶出などが考えられるところであります。

 いずれにしましても、赤潮の発生機構そのものにつきましてはまだ未解明の部分がございます。今回緊急に、環境省としまして緊急補足調査をしております。その中で、有明海全体としての環境の現況を把握するという観点から、水質のみならず、おっしゃられたような底質あるいは底生生物を含めた緊急調査を現在実施しておるところでございます。

藤木委員 ことしが特別赤潮が発生する原因が多様にあったかのような御答弁でございました。

 しかし、赤潮の発生件数というのは、九七年は十七件でした。九八年には三十件になっております。九九年には二十三件、二〇〇〇年には三十五件と増加しているわけですね。ですから漁業被害件数も、九七年には二件、九八年には九件、九九年には四件、二〇〇〇年には十件、このように増加しているわけですよ。大多数は有明海沿岸全域でのノリ被害なんですけれども、そのほかに小長井町のアサリ、ブリなどの被害が出ております。

 鹿児島大学の佐藤助教授によりますと、諫早湾の干潟、浅海域が一度に失われてしまったために、有明海奥部の富栄養化が急速に進んだ可能性が高いこと。九七年以降、有明海奥部での赤潮が頻発していて、特に、有明海でかつては出現したことがない有毒性プランクトン種による赤潮が発生していること。もう一つは、有明海奥部の潮汐が弱まり、干潟の浄化能力が低下したり、あるいはプランクトンが滞留しやすくなったりするなどの影響が出ている可能性があること。気象庁の検潮所の観測値によりますと、諫早湾の締め切り工事が始まった八九年ごろから、有明海の奥部では大潮時の平均干満差が十センチ程度小さくなっています。

 ですから、諫早湾の締め切りが有明海の大きな潮汐を弱めて、浄化能力と生物生産力を悪化させる大きな要因の一つであることは明らかだと私は思いますけれども、環境省の見方はいかがですか。

石原政府参考人 潮流あるいは流向についてのお尋ねでございます。

 農林水産省におきましてモニタリング調査を行っているところでございますが、流向なりあるいは流速につきましては、一つは、流向につきましては、潮受け堤防の締め切り前後で明確な変化はございません。それから流速につきましては、諫早湾内につきましては低下は見られたものの、湾口部で変化はわずか、それから湾外では明確な変化が認められないとの調査結果になっております。

 また、今回の緊急補足調査の関連で、水産庁におきましても緊急に補足調査を実施しているところでございます。その中におきましても、流向、流速につきまして調査することとなっております。そういう調査データも踏まえながら対応したいというふうに考えております。

藤木委員 環境省としては、調査はこれからでして、今お返事をされたのは、農水省のをうのみにした言い方だというふうに私は思います。

 干拓事業に伴う湾口部分での海砂が実は二百五十六万立方メートル採取をされておりまして、これによってできた広大な面積で、深さ実に四メートルもの凹凸起伏、これが出現しているわけです。こういったこともありまして有明海の海流は緩慢になり、海底への酸素供給量が減って硫化水素が多くなる、こういった海底の状況が底生生物にとって極度に悪化したためではないかという懸念を私は非常に強く持っております。

 佐賀大学の瀬口教授も、有明海で最も豊かな干潟が消えた上、昨秋は晴天続きで日照時間が長く、温暖だった。このため、海水中の栄養塩類がふえ、ノリの生育に悪影響を及ぼす植物性プランクトンが大量発生した。生活雑排水を浄化する能力が低下していることは間違いない、このように指摘しておられます。

 さらに、長崎大学の東教授の調査によりますと、諫早湾周辺の底生生物は、水門を閉めた直後の九七年六月の生息密度を一〇〇とした場合、九九年六月が四四、去年の六月は三〇と確実に減少しているということです。また、去年十一月の海底の生物調査でも、個体数が二千六十二と、九七年六月の調査の一万四千二百八十五に比べると、八六%も減少しているわけです。東教授は、潮受け堤防の建設で潮流に大きな変化が起き、底生生物がすめなくなった、ノリ被害は変化の一部、生態系全体が回復力のない悪循環に陥っている可能性もあると指摘しています。

 ですから、堤防締め切りでの潮流の緩慢が底生生物の生息環境を悪化させているのではありませんか。環境省、どうですか。

石原政府参考人 お尋ねがございました底生成物あるいは底質につきましては、先ほども申しましたように、緊急補足調査におきまして、今回、水質に加えまして底質、底生成物についても調査を実施することとしております。専門家の意見も踏まえまして、有明海全体の環境状況について把握してまいりたいと考えております。

藤木委員 本当に環境省独自の調査がなかったということは重大だというふうに思うわけですね。これからなさるのはもちろんしていただかなければなりませんけれども。

 しかし、九州農政局の潮流調査でも、北部水門前で諫早干拓着工前の八九年一月には秒速にして四十四センチございました。ところが、九八年の一月には十四・九センチに減っている、こういう結果が出ているわけです。底質調査は当然のことです。もちろん、実際に水門をあけるというような場合には、海域に対してどのような影響を与えるかといったような科学的な調査を十分行って、それに基づき、地元の合意を図りながら進めなければならないというのは当然のことであります。

 堤防の締め切りの前後で海域の水質に明確な違いはないというふうにおっしゃいましたけれども、調査もまだ十分やっていないのにそういう結論を出すというのは、甚だ私にとってはおこがましいと言わなければならないと思います。

 調整池内の水質保全基準は、CODで五ミリグラム、全窒素で一ミリグラム、全燐で〇・一ミリグラム。これに対して、平均でCOD六ミリグラム、全窒素一・四程度、全燐は〇・二程度、いずれもオーバーしたままです。また、締め切り堤防外側の海域でも、II類型でCODが二ミリグラム、全窒素は〇・三ミリグラム、全燐は〇・〇三ミリグラムに対して、平均でCODが二ミリグラム以上、全窒素も〇・三ミリグラム以上、全燐が〇・〇五ミリグラム以上となっています。また底質でも、硫化物、栄養塩が調整池から湾口部北側にかけて高い傾向にあるわけです。これで、海域の水質に違いがない、そんなことが言えるでしょうか。

 さらに、浄化能力の低下や生物生産力の低下など、厳密な調査が必要だというふうに私は存じますけれども、厳密な調査が必要だというふうな御認識を環境省はお持ちでしょうか。

石原政府参考人 有明海の水質のお尋ねでございます。

 有明海の海域全体のCODあるいは全窒素、全燐の水質のレベルといたしましては、年によって変動がございますけれども、おおむね環境基準の前後で推移しております。

 それから、お尋ねのありました調整池水域内の窒素、燐につきましては、基準値の、若干高目でございますけれども、工事完成時点での目標でございます。現在は工事実施中でございますので、その状況を見守っておるという状況でございます。

 いずれにしましても、水質それからその水質に影響を与える底質なり底生成物については大変重要な要素と考えております。したがいまして、今年度の緊急補足調査の中で特に調査することとしました。また、十三年度におきましても、関係省庁と共同いたしまして、有明海の海域環境に関する総合調査を実施するということにしております。有明海の環境の保全それから改善の観点から、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

藤木委員 今の御答弁にもありましたように、調整池内の最高値というのは、去年の十二月二十五日で全窒素は二・五六ですよ。全燐が〇・六一八となっていますから、これで海域の水質に影響がないなどとは言えないでしょう。言えないわけですよね。

 そこで、環境省は、今もお話がありましたけれども、去年の四月から有明海の全窒素及び全燐に係る環境基準を設定しているわけですけれども、この基準から見ますと、有明海(ハ)の諫早湾ですね、この海域は、去年が、全窒素基準〇・三に対して〇・二、全燐基準の暫定〇・〇四二に対して〇・〇三七程度となっています。全燐の基準が〇・〇三ですから、これをオーバーした数値で推移しているということになっています。

 そこで、今回のノリ被害の状況を見ますと、閉鎖性海域として環境省はもっと早く環境基準の設定を行うべきではなかったのかというふうに考えますけれども、いかがですか。

石原政府参考人 海域の窒素、燐に係ります環境基準につきましては、平成五年八月に設定したわけでございます。その後、国が類型指定をする、当てはめと申しておりますけれども、水域ごとに基準値を当てはめていくことになるわけですが、類型指定すべき海域としまして、東京湾それから大阪湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明海とございます。東京湾、大阪湾につきましては平成七年、伊勢湾につきましては平成八年、瀬戸内海につきましては平成九年ということで、順次当てはめを行ってきたところでございます。

 有明海につきましても、平成九年に類型指定をすべく中央環境審議会の方に諮問を行ったところでございます。ただ、審議の過程におきまして、窒素、燐の類型指定を行うに際しましては有明海中央部の水質データがさらに必要であるというような指摘がされたわけでございます。

 その指摘を受けまして、十年度に有明海の中央部についての補足調査を実施し、それに基づきまして類型指定をしたということでございます。その結果、昨年度になりますが、十二年三月に類型指定ができたというところでございます。そういう意味では、できる限り早目に、海域についての窒素、燐の指定を有明海についてもできる限りの努力をしてきたところでございます。

 それを受けまして、昨年四月から、沿岸四県におきまして常時監視が行われております。ただ、データそのものにつきましては、平成六年から既に沿岸の四県におきまして窒素、燐のデータにつきましては調査してきたところでございます。

藤木委員 やはり遅かったと思いますよ。だって、全窒素、全燐の最高値が、例えば九九年九月でそれぞれ最高〇・四七、〇・〇七五となっているわけですから、もっと早く設定すべきだったということを私は強調させていただきたいと思います。

 環境大臣は六日に、養殖ノリの記録的な不作原因を探るために、二月下旬から三月末にかけて有明海の水質と底質を緊急調査するとしておられるわけですけれども、しかし、これまでいろいろと議論してまいりましてわかりますように、九七年の潮受け堤防の締め切りでの影響が心配されていながら、有明海の浄化能力や生物生産力などへの影響調査と対策をこれまでしてこなかったというのは、私にとっては驚きですね。

 環境省の緊急調査は、有明海沿岸の福岡、佐賀、長崎、熊本の四県が設置している五十一の観測地点のうち、約二十点そこそこの実施としています。ノリ不作の原因とも指摘されている諫早湾干拓事業の近くの海域には調査地点を設けていないということでもございます。

 そこで、緊急に徹底した科学的調査を行うことはもちろん重要ですけれども、その調査を行う場合に、有明海の漁業者や環境保護グループの意見をよく聞くこと、また、原因究明や調査を口実に水門の開放を先送りにしないことが必要ではなかろうか、このように私は思いますけれども、環境省はどのようにお考えになっておられますか。

石原政府参考人 今回の緊急補足調査につきましては、五十一ポイントの中から二十四ポイントを調査することとしております。調査地点の選定に当たりましては、専門家の意見も聞きつつ、調査項目あるいは調査の地点を設定したところでございます。

 また、十三年度からは、関係省庁が連携して、有明海の海域環境に関する総合調査につきましても、水産学あるいは生態学の各分野の専門家の意見を聞きつつ適切に実施してまいる所存でございます。

 調査自身は科学的、学術的な観点から実施するものでございますので、お話のありましたような特定のグループから意見を聞くような場を特段設けているわけではございませんけれども、漁業者なり環境保護グループから御意見がございますれば、水産学あるいは生態学の専門家の意見も聞きつつ今後の調査を実施してまいりたいというふうに考えております。

藤木委員 ちょっとよく聞いてくださいね。特定のグループの意見を聞けと私は言いませんでした。取り消してくれますか。

石原政府参考人 表現がよろしくなかったかと思いますけれども、漁業者や環境保護グループの意見がございますれば、水産学や生態学の専門家の意見を聞きつつ調査を実施してまいりたいというふうに考えております。

藤木委員 当然です。

 そこで、農水省にもお伺いをしたいと思います。

 谷津農水大臣は、水門が関係しているなら水門をあけて調査する、予断を持たずに調査すると表明しています。また、第三者委員会が調査のために必要と判断した場合、因果関係が指摘されている諫早湾干拓事業の工事中断もあり得るとの見解を示しています。

 今政府に求められているのは、干拓優先の態度を捨てて、有明海漁業や環境保護のためには干拓中止もあり得るという態度をはっきりさせて対策に当たることです。

 現在、一日二回、干潮時に水門をあけて、調整池にたまった汚水を外海に流して海域を汚染していることは明らかなのですから、私は、外海からも堤防の内側に海水が入るように水門を開放し、閉め切り以前に近い状態に戻して、ノリ被害との因果関係を調査すべきではないかと考えるのですが、農水省、いかがですか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 今般の有明海のノリの不作の原因は、現時点では明らかでないわけでございますが、まずは、予断を持たず徹底的に調査を行うことが重要であるというふうに考えておるところでございます。

 その調査に際しましては、学識経験者、漁業者の代表から成ります第三者委員会を設けることとしておりまして、昨日その委員会のメンバーを発表したところでございます。この第三者委員会が、排水門をあけて調査をすべきであるという結論になれば、排水門をあけて調査をすることがよいというふうに考えておるところでございます。

 また、その関連といたしまして、工事を中断することも必要ということになれば、工事を中断して調査することもあり得るというふうに考えております。

 以上でございます。

藤木委員 しかし、これまでタイラギなどが激減している兆候がもう既にあるんですから、工事を中断して、水質、底質などの調査を行って、生物生産能力や浄化能力の低下との因果関係をもっと早く究明して被害対策をとるべきだと思うんです。第三者機関を待たなくても、農水省として漁業を守るというのがその役目ではないでしょうか。

 農水省は当初、水門が周辺地域の洪水、浸水被害を防ぐこと、潮受け堤防で高潮を防ぐことなどの防災効果を説明してまいりました。今でもそう言っておられるわけですが。しかし、調整池の効果というのは、本明川河口から二、三キロの地点までにしか及びません。河口から五、六キロ先にございます諫早市街地の洪水防止にはつながらないと指摘されております。また、高潮防止の効果というのは、気象データから高潮発生が予測できるときだけ水門を閉じればよいということになるんじゃないですか。

 ですから、水門を開放できないという論拠はないと思うのですけれども、農水省、どうなんですか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 諫早湾干拓事業では、潮受け堤防の排水門の管理によりまして、まさに高潮、洪水、それから周辺低平地の排水不良、こういうものに対する防災機能の強化を図るという目的を持っております。したがいまして、調整池の中の水位を標高マイナス一メーターに下げて現在管理をしているところでございます。

 具体的に申しますと、洪水時や常時排水時に、調整池水位より外潮位が高いときには水門を閉め切って、そのとき雨が降った場合にはその洪水を調整池の中に一時貯留するというような形をとっております。そして、外潮位が下がったときに、その調整池に余分にたまった雨水を流すというようなことを操作をしているところでございます。

 一方、潮受け堤防の排水門を常時開放して海水を入れておくということになりますと、いわゆる潮汐、満ち潮、引き潮の関係で一度上昇した調整池の水位を急に低下させるというのは非常に困難でございます。こういうときに大雨が降った場合、全体の洪水調整容量が不足するというようなことから、非常に防災上危険であろうというふうに考えております。

 したがいまして、常時排水が円滑に行われ、なおかつ洪水や高潮時の防災機能を十分に発揮させるというためには、高潮時だけ排水門を閉じるというわけではなくて、常時にも適切な排水門の開閉操作が必要だろうというふうに考えております。

藤木委員 今のお話はもう既に論破されておりまして、私が農水省にお伺いしたときはそれ以外の理由を述べておられましたね。それは何かといいますと、水門を開放すると底の泥が巻き上げられる、つまり漁場が荒れないかということを言っておられました。

 しかし、金沢大学の宮江教授は、一気に全開せずにじわじわあける、海底の洗い流しを防止する護床工のブロックを敷き詰めれば底泥の巻き上げを抑えることが可能だとしています。

 また、水門を常時開放して海水を堤防内に流入させれば、水質は改善され、汚水の排出は解消されます。潮が戻れば生態系が徐々に回復して、水質浄化機能も戻り、干潟が再生すると長崎大学の東教授も指摘していますし、閉め切ったままでは浄化機能は絶対に回復しない、今の最悪な状態を脱するには水門をあけるべきだと強調しています。

 もちろん、実際に水門を全面的にあけるかどうかという問題は、海域への影響など科学的な調査に基づいて、地元の合意を図りながら進めることが大切だと考えますけれども、農水省、いかがですか。

佐藤政府参考人 有明海は非常に干満の差が大きいということで、非常に潮流の流れが速うございます。こういうところで非常に狭い水門から潮の出し入れをいたしますと、そこには非常に急速な海流の発生が予想されます。

 そういう意味で、漁業への影響とか、それから防災上の問題というようなものにつきましては十分検討した上で、また、地元がそういうようなことを懸念しておりますので、それらの懸念を十分踏まえてゲートの操作というものをやる必要があろうというふうに思っております。

藤木委員 難しいのは最初から難しいんです。それを考えて十分な施策を打つ気があるのかどうか、そこが問題だというふうに思いますよ。

 私、次に環境省の方に伺いたいんですけれども、有明海沿岸の福岡、佐賀、長崎、熊本の四県の知事さん、副知事さんは、九日に農水省と環境省などに、ノリ不作の原因究明を徹底的に行い、有明海の浄化と水産資源の回復を図るための有明海再生計画をつくるよう要望書を提出されました。

 関西学院大学の片寄教授は、諫早湾の干拓事業で失われた干潟を再生する構想をまとめておられます。それによりますと、海と調整池を仕切っている潮受け堤防を防潮連続ゲートにつくり直して海水を入れ、数年で締め切り前の干潟の状態に戻すというものです。実は、これはオランダ南部のデルタ地方にも実例があるわけです。

 そこで、有明海、諫早湾干潟の再生を図る考えが環境省にはおありかどうか、お答えをいただきたいと思います。

石原政府参考人 干潟につきましては、水質の浄化機能、あるいは渡り鳥の渡来地といった環境保全上の重要な、多様な機能を持っており、適正に保全していくことが重要と考えております。

 一方、今回の有明海に係るノリ不作の問題につきましては、現時点でその原因が明らかになっておらず、まずは、予断を持たず原因を調査究明するということが急務というふうに考えております。

 また、この原因究明の一環としまして、平成十三年度から、関係省庁が連携して、有明海の海域環境に関する総合調査を実施する予定でございます。この中で、有明海の環境の保全それから改善の観点から、干潟の保全、再生についても調査検討することとしたいというふうに考えております。

藤木委員 今の御答弁では、本当に再生する気があるのかないのか判然といたしませんね。農水省が調査した調査結果については、それに従って御答弁をされる。

 しかし、もう既に学識経験者の皆さんたちがさまざまな研究をしていらっしゃるわけですよ。堤防締め切り以前と以後と比べた見地もあるわけです。そういったことについての研究というのはこれからでなければできないわけではなくて、これまでも関心を持ってやってこられて当然ではなかったでしょうか。その点はどうですか。

石原政府参考人 有明海の水質環境につきましては、従来から水質のモニタリング等を通じて実施してきたところでございます。今回、ノリ不作に関連しまして、水質のモニタリングに加え、特に、底質なりあるいは底生生物についても調査を実施するということにしております。十三年度におきましても、そういう観点からさらに有明海の海域全体を調査してその原因究明を図りたいというふうに考えております。

藤木委員 では、大臣にお尋ねをしたいと思いますけれども、今政府・農水省は、まともな環境影響調査を怠ってきた一方で、有明海の自然環境に著しい影響を及ぼすものではない、このように言って、九七年四月に水門閉め切りを強行いたしました。

 私たちは、潮受け堤防を締め切るというようなことで重大な被害が起きることは明らかだと反対をしてまいりました。しかし環境省は、これに対して、諫早湾干潟の有効な保全策を打ち出すことができませんでした。優良農地造成の保証もなければ入植者の見通しもない、そんな干拓農地をつくる諫早湾干拓事業はむだ以外の何物でもないという批判をされながらも強行した自民党政府の失政が今日の事態を招いたと私は考えています。

 今回も、干拓事業の是非について環境大臣は議論が必要とおっしゃいましたけれども、議論は必要と言うだけではだめだと思うんですね。諫早湾干潟の再生、有明海の再生はそれでは図れないというふうに思います。干拓事業にしがみつく態度をそのままにしていたのでは、政府の現地調査も結局は形式的なものでしかなかったということになると思います。

 ですから、環境省として、諫早湾干拓事業の中止を求め、潮受け堤防を段階的に開放あるいは撤去する、こういった立場をはっきりさせて、諫早湾の干潟の再生、そして有明の再生の具体的な施策を図ることが求められているのではないかと思いますが、大臣、どうですか。

川口国務大臣 今回の有明海のノリの不作問題につきましては、先ほどから出ておりますように、予断を持たないで何が原因かということを政府一体となって徹底的に調査をすることがまず大事であるというふうに思っております。

 それで、谷津農水大臣がおっしゃっていらっしゃいますように、その過程で第三者委員会によって必要だということであれば、水門をあけ、あるいは工事を中止して調査をするということが大事だと私も思っておりますし、この点は谷津大臣と全く同意見でございます。

 大事なことは、その調査を行い、それから政府一体となって問題の解決に取り組むということでございまして、環境省としては、有明海の環境の保全、それから有明海の環境をどうやったら改善できるかという視点で適切に対処をしていきたいと思っております。

藤木委員 環境大臣が有明海の改善と保全ということをおっしゃったわけですけれども、私は、閉鎖性海域の有明海を再生させようと思いますと、やはり科学的で系統的な調査を行っていくことが必要だと思うんですね。今は緊急調査と言っておられますけれども、やはり科学的で系統的な調査が必要であろうというふうに思うわけです。

 実際に、瀬戸内海の環境保全特別措置法というのがあるわけですけれども、そういった法の網をこの有明海全域にかけるということを検討する必要があるのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、原因が何かということを徹底的に予断を持たずに調査をするということが先にあると思います。

 その調査の結果を踏まえまして、どのような対策が必要かということ、あるいはそれが有効かということを、先ほど申しました有明海の環境の保全それから改善ということの観点から検討をすることとしたいと思います。

藤木委員 私が科学的で系統的というふうに申し上げましたのは、先ほど来の御答弁でも、ノリの被害の影響は何かと言ったら、予断を許さず云々かんぬんと一方ではおっしゃるんですけれども、特に暑かったからだとか、それから雨がよく降ったからだとか、そんなことで端的にお答えになるというようなことが起こっているからなんですよ。

 そういう場面が仮にあったとしても、系統的で科学的に調査をずっと続けていく、これは農水省じゃなくて環境省のやることとしてね、海の保全という立場に立ってやっていただきたいというふうに思いますし、そのためにはやはり、そういった閉鎖性海域に対する保全特別措置法が必要であろうと。そういった法律がありましたら、その法律に基づいて基本計画を立てて一つ一つ施策を前進させていくことができるであろう、私たちはこのように考えて、きょうはもう時間が参りましたので、御提言をさせていただいて質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

五島委員長 原陽子さん。

原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いいたします。

 いよいよ二十一世紀がスタートしました。私は、二十一世紀の大切なキーワードの一つが環境であると考えています。地域環境や地球環境の保全、そして私たち世代が元気に二十一世紀を担っていくためにも、そして、私たちよりも若い子供たちの世代がやはり元気に生きていくためにも、この環境という観点は非常に大切だと思っております。

 しかしやはり、環境委員会、こうずらっと見渡してみても、席に着いていらっしゃる委員の方が少なかったり、あと、大臣の所信表明のときにも席に着いていない委員の方が多かったように私はお見受けをいたしました。そして、どうしても眠くなってしまったりというような委員会の状況を見ておりまして、大臣は、それがなぜだとお思いになられますか。

川口国務大臣 私は、委員室で、実はそちら側に座っておりませんで、こちら側に座っておりまして、なぜだろうかと考えておりました。

原委員 ありがとうございます。

 私は、それはやはり委員会が形骸化しているからではないかと思います。大臣のすばらしい所信表明を聞きまして、それを実現するためにはやはり委員会が活性化しなければならないと思いました。このことは、私は今急に思いついたのではなくて、議員になってからずっと疑問に思ってきたことの一つに、この委員会のあり方ということがあります。

 そして、二十一世紀最初の委員会ということで、大臣はどう思われるかということをぜひお聞きしたいと思ったのですが、先日質問をとりに来た環境省の方から、三権分立の原則により、行政の長である大臣に聞いても答えられない、委員長や理事からクレームがつくというふうに言われました。そして、大臣は呼ばれたから来るのであって、委員会のあり方は理事懇談会で話すべきだとおっしゃいました。確かにそうであるかもしれませんが、私はこれは非常に残念なことだと思います。

 例えば、農水省の土地改良法に基づく諫早湾の干拓によって有明海でノリに影響が出ました。こういうときはやはり、立法府も行政もなく、環境委員会こそ、土地改良事業とその根拠法である土地改良法をどうすればいいのかという議論をする必要があると思います。どのような条項がこの法律になかったからこのようなことが起きたのか、また、今後どうすればこのようなことが避けられるのかということを、私は、大臣も含めて自由討議をしていくような場が必要ではないかと考えます。

 環境に関する事項というのは、やはりさまざまな方面から柔軟に対応していかなくてはならないことがたくさんあると思います。このことは、党や国会、行政の垣根を越えて積極的に自由討論をしたり合同審査を進めたり、また参考人質疑、これも、何か採決の前に参考人を呼んじゃうようなそういったやり方ではなくて、正しい時期に参考人を呼ぶといったような積極的な委員会の運営が必要ではないかと私は思いまして、そんなことを私はただ率直に大臣にお尋ねをしてみたかったのですが、三権分立という思いもかけない理由で聞けないことがわかり、非常にがっかりしておりますが、このことについては改めて我が党の金子委員の方から理事懇談会で提起をさせていただきたいと思います。

 国会が縦割りで省庁別の方式になっていては、改善できる点も改善できないことが多々あると思います。質問はあえてしませんが、このことはぜひ他の委員の方々にもお願いをしておきたいと思います。

 そして、早速次の質問に移らせていただきます。

 大臣は所信表明の中で、重点的に取り組む施策の第三番目として、国民の安心と安全の確保を挙げられ、この中でも自動車排出ガスに起因する大気汚染対策を第一番目に挙げられております。このことに関してお尋ねをしたいと思います。

 大気汚染防止法によれば、「大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定める」とあります。また、自動車NOx法では、特定地域の総量削減が課されると書いてあります。ただし、現状では、尼崎や名古屋などの訴訟で見られるように、ようやく被害が起きた後に住民が勝訴や和解ができるようになりました。しかし、本来、予防原則に基づいて、公害が起きる前に裁判が起こせるようになるべきではないでしょうか。

 現在、内閣府のもとで司法制度改革審議会が開かれています。そこでは、司法の行政に対するチェック機能のあり方についてというテーマでも話し合いが行われており、実は、このことと大気汚染対策が深く結びついているのではないかと私は思っています。

 この審議会の中では、行政法の専門家で立命館大学の園部教授、東北大学の藤田教授、そして弁護士の山村氏、このお三方が共通して同じ問題を指摘されています。それは、司法による行政チェック機能が低いということです。環境保全にとって私はこれは大変不利なことだと考えますが、大臣の所信の中には、裁判制度とのかかわりについてのお考えが含まれておりませんでしたので、この点、つまり、司法による行政チェック機能が低いという点について大臣はどのようにお考えをしているか、お尋ねをしたいと思います。

川口国務大臣 今の質問にお答えする前に、私自身も去年の夏までは永田町あるいは霞が関から遠いところで仕事をいたしておりましたので、原委員のような新しい目でこの国会、これは環境大臣として申し上げていることではなくて、去年の夏までいた一人の個人として実は永田町、霞が関を見ておりましたときに、ぜひ原委員のような新しい感覚、新しい物の考え方で議論を活性化してくださる方が一人でも多くいらっしゃるといいなと思っておりまして、特に今、官から政へという力のシフトが起こりつつあるときでございますので、ぜひ原委員に先頭に立ってそういった議論の活性化をしていただきたい、これは川口個人として思うところでございます。

 それで、質問のお答えでございますけれども、未然防止ができるようにというお話もございましたが、行政上の取り組みといたしましては、例えば大気汚染に対応するための仕組みといたしましては、自動車NOx法ですとか大気汚染防止法ですとか、そういった法律による規制のほかに環境アセスメント制度というのがございまして、地域住民の意見を幅広く聞くということの仕組みがございまして、まず、環境行政をする立場としては、これらが適切に運用されるということが大事だというふうに思っております。

 それから、同じく去年の夏まで永田町、霞が関の外にいた人間といたしましては、行政に対するチェックが、司法のみならず普通の国民からも十分に行われるということが大事だというふうに思いますけれども、司法の問題ということで申し上げますと、現在、司法制度改革審議会で司法制度に係る幅広い、これはこの問題だけではなくて、非常に幅広い議論が行われていますので、司法の行政に対してのチェックという意味では、その議論をもう少し見守らせていただきたいと思っております。

原委員 ありがとうございます。

 質問の続きになるのですけれども、例えば道路ができる計画段階で将来的に大気汚染が予測できる場合は、やはりその周辺住民が裁判を起こし、原告適格とみなされるようにならなければ、大臣が所信の中で表明をされた国民の安心と安全の確保は実現されないと思います。常に公害が起きた後で損害賠償を求めることができるだけではやはり私も不十分であると考えます。

 大気汚染防止法の強化や環境影響評価法の強化により、例えば、道路の計画段階であっても訴訟が起こせるような立法措置を検討していかなければならないと思いますが、このことについて環境大臣としての御見解をお尋ねしたいと思います。

川口国務大臣 国民の皆様が政策についてどうお考えになるかということは、その政策評価ですとかアセスですとか、いろいろな仕組みで真剣に取り組んでいくことが重要だというふうに思っております。

 行政をどうチェックするかということについては、先ほど申しましたように、審議会の動向を見守りたいと思います。

原委員 済みません、もう少し具体的にお聞きをしたいと思います。

 先ほどのお三方がやはり共通して発言していることの中に、原告適格の幅を広げるべきだ、つまり、憲法で保障されている裁判を受ける権利を広げるべきだということをおっしゃられています。

 例えば、現在の道路事業に係る地権者は、土地収用法の事業認定の取り消し訴訟などで原告となることができますが、その沿道周辺の住民は原告になることが現段階ではできません。ところが、地面に境はあっても空気に境目はないわけで、本来求められるべきおいしい空気を吸って生きる権利というものを主張することが裁判で認められることが至難のわざだというのが今の現状です。

 これは今一つの例として挙げさせていただいたのですが、行政法の専門家が審議会で主張されたのは、こうした原告になれる範囲を広げるということを意味しているのだと思います。

 繰り返しになりますが、大臣の所信表明、重点的に取り組む施策の三番目として国民の安心と安全の確保を挙げられ、中でも自動車排気ガスに起因する大気汚染の対策を一番に挙げられました。そうであるなら、環境政策の基本である予防原則に基づき、空気を吸う住民も裁判で権利保護を訴えることができるようにしなければ意味がないわけで、そのようなきめ細かい立法措置を今後は環境省としても検討するべきではないでしょうか。

 司法制度改革審議会に丸投げをするのではなくて、そして法務省に任せきりにするのではなくて、環境省としての取り組みがやはりこの二十一世紀となった今期待されるところだと思うのですが、もう一度お答えをお願いいたします。

川口国務大臣 原告適格の問題につきましては、おっしゃるように、特に環境の分野では、例えば後世代のいい環境を享受する権利をどういうふうに考えるかというような問題もありますし、あるいは自然の、言葉を出せない例えば動物たちの原告適格性はどうかというような問題もございますし、原委員が今おっしゃったような問題もございます。そういうことをひっくるめて、これは繰り返しになるようでございますけれども、問題あるいは考え方として、そういう考え方をとるべきであるというふうにお考えの方々もいらっしゃいますし、そうでないというふうにお考えの方もいらっしゃいます。

 こういうことを日本としてどういうふうに考えていくかということは、今後さまざまな裁判の手続のプロセスを経て、あるいは司法の制度改革審議会での議論も含めてもう少し、環境省がそれに基づいて立法措置をどうするということではなくて、日本社会全体の問題として考えられるべき問題だというふうに思っております。

原委員 ありがとうございます。

 やはり環境を守りたいと考える、これは本当に国民みんながそうだと思うんですよ。環境を守りたいという国民にとって、やはり裁判というのは重要な武器になります。それなので、憲法上に書かれている裁判を受ける権利というものを実質的に保障するための施策というのを積極的に、私も一緒に頑張って考えていきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

 それでは、最後にもう一つ質問をさせていただきたいと思います。

 やはり所信表明の中での大臣の発言に関してなんですが、ちょっと順番が前後してしまうのですが、大臣は、この第二番目に廃棄物問題について挙げられております。このことについてお尋ねをしたいと思います。

 先週、私の事務所に、和歌山県和歌山市の埋立地に埋め立てられた廃棄物に関して一つの問題が持ち込まれました。その問題というのは、関西電力がその埋立地にLNG発電所の建設をするに当たり、その埋立地に昭和五十三年からダイオキシンを含むごみが埋め立てられていたというものです。関西電力が独自にその埋立地を調査したところ、ダイオキシン対策特別措置法で定められた土壌の環境基準の十八倍のダイオキシンが検出されたことがわかりました。

 この埋立地の環境保全を手当てする法律としては、埋め立てがなされる前であれば公有水面埋立法というものがありますが、この法律は大正時代に生まれた法律ですし、埋め立てられた後については、ダイオキシンについて手当てがなされていません。

 また、公有水面埋立法を所管している、ちょっと長い名前なんですが、国土交通省河川局水政課では、対策は、解釈によっては第四条で可能だと言っていますが、先ほど述べたように、既に埋め立てられたものについてはやはり手当てができません。

 また、廃棄物処理法に基づく課長通知によれば、全体の容量で、一般廃棄物であれば三分の一、産業廃棄物三分の一、または両方合わせて二分の一を超えたものは最終処分場とみなされ、ダイオキシン対策特措法で手当てができることになっています。

 ところが、この和歌山市のケースでは、全体の重量でいえば、三分の一を超えていることがわかっていますが、和歌山市住民が環境省に問い合わせたところ、廃棄物対策課では、まだ容量の方が超えているかどうかを確認できていないと言います。つまり、廃棄物処理法で最終処分場とみなし、ダイオキシン対策特措法で手当てができるかどうかわからないということになります。それにもかかわらず、私どもの問い合わせについて、公有水面埋立法で対処すべきではないかという考えを担当の課長補佐の方が示されました。

 また、ダイオキシン対策特措法のどこに穴があるのですかと聞けば、それは議員立法だから議員側で考えてほしいというふうに言われました。こちらは、私どもとしては法の穴をふさごうとして聞いているのに、私は、これは非常に無責任な発言であるというふうに受けとめました。

 この関西電力のLNGのケースに限らず、ほかにも、このように容量が不明な場合や、容量で処分場の指定基準を満たしていない場合、例えば、そこを埋めちゃったが最後、ダイオキシン特措法にも公有水面埋立法でも廃棄物処理法でも手当てがされず、法の網の目から落ちてしまうことになります。大臣、そういう見解でよろしいでしょうか、今の一連の流れは。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

岡澤政府参考人 海面の埋立地に関する廃棄物処理法の適用関係について御説明をさせていただきます。

 海等の公有水面を埋め立てる場合には、埋め立てるものが廃棄物であるか否かによらず、今御指摘のように、公有水面埋立法上の免許が必要でございまして、同法によってその埋め立てが環境保全について十分配慮されたものでなければ免許されない、また、埋立工事が竣工するまでの間は都道府県知事の監督を受けることになっておるわけでございます。

 廃棄物処理法におきましては、こうした公有水面埋立法における規制を考慮いたしまして、今先生の方から御指摘のあったように、一般廃棄物または管理型産業廃棄物が三分の一以上の場合、あるいはそれらの合計量が二分の一以上である場合に限って、廃棄物処理法に基づく廃棄物最終処分場としての取り扱いをしているということでございます。

 今御指摘の住金の埋立地でございますけれども、この埋立地は平成八年に工事が竣工しておりまして、その後、土地としての登記がなされているというふうに聞いております。仮に、この埋立地が廃棄物の最終処分場であったとしても、現在は埋め立てが完了して閉鎖され、土地として登記されている状態にあるというふうに考えられます。

 そういうふうに考えますと、今回の問題につきましては、いずれにしろ埋立跡地の利用に際して生じた問題ということになりますけれども、埋め立てを開始しようとする際に、廃棄物の最終処分場であったかどうかということとは直接関係なく、いずれにしても既に埋め立てが終わった段階にあるということになるかと思います。

 また、容量の比率で規定しているのだけれども実績は重量比で出ているということでございますけれども、御指摘のように、ここの埋立実績では、重量比でございますけれども、一般廃棄物が約二%、管理型の産業廃棄物が約一一%でございます。合わせて一三%ということですが、管理型産業廃棄物の八割を占めておりますのが鉱滓でございまして、鉱滓というのは比重が他の廃棄物に比べて大きいものですから、一般的に申し上げれば、重量比で一三%というのは容量比ではもっと小さくなる可能性の方が強いというふうに考えております。

原委員 それでは、今現時点を考えた場合に、LNGの発電所の建設が始まらない場合、今の時点で何法によってこれは措置をされるのでしょうか。それとも、やはり措置ができないという状況にあるのでしょうか。

岡澤政府参考人 公有水面埋立法にいたしましても、廃棄物処理法にいたしましても、埋立行為、それから、しばらくその後の管理について規定しているものでございまして、完全にそういう行為が終わって廃止された状態ではこれらの法律の適用はございません。

原委員 ありがとうございます。

 やはり住民が心配している点に、もちろんそのLNGの発電所の建設が始まってからということもありますけれども、護岸や海底から標準の十八倍のダイオキシンが一応検出されたという結果がありますので、ダイオキシンがしみ出すかもしれないというリスクのこともあります。このことに対してはどのように対処をされますか。

 やはり最低限調査をさせて、住民を安心させる施策をとるとしたら、今の法律や通達や標準をどういうふうに変えればそうできるのでしょうか。今の段階でできないのであれば、どういうふうに変えればいいのでしょうか。私は、やはり複数の法律の間でたらい回しにするのではなく、積極的に法の網の目を詰める必要があると思います。

 やり方としては、やはり一つは公有水面埋立法の改定、一つは、例えばその課長通知の改定、一つはダイオキシン特措法の改定、この三つのやり方があると思います。私は、この課長通知を若干改定して、このようにダイオキシンを含む埋め立てというものを柔軟に最終処分場とみなして、ダイオキシン対策特措法による土壌の環境基準が適用されるべきだと考えておりますが、どのようにお考えになりますでしょうか。できれば大臣に。

岡澤政府参考人 埋立行為の際に周辺の海域に汚染をもたらすというふうなことについては、公有水面埋立法によりましてもあるいは廃棄物処理法によりましても規制できるということでございます。

 そういう状態が終了した、つまり、周辺の環境に影響を及ぼさなくなった状態で閉鎖されるわけでございますので、終わった状態で環境に影響が出ていることはない、それまでは少なくとも管理されているというふうに考えられると思います。ですから今の状態、確かにダイオキシンを高濃度に含むものが一部入っているかもしれませんが、それが周辺の環境に今直ちに影響を及ぼしている状態ではないというふうに考えております。

 ただ、これから、もし跡地を利用するに際して、その土地を掘削したり攪乱するというふうなことをしたときに、また新たな環境汚染を生じるのではないかというふうなことは考えられるのではないかと思います。

 その際に、例えば掘り出したものをどこかに処分しなければならないというふうなケースを考えてみますと、その掘り出したものが廃棄物状であって廃棄物と認定されるような場合には、廃棄物処理法による廃棄物として規制がかかりますので、それをいいかげんなところにぽいと捨てるという話にはならない。それはこちらの廃棄物処理法の体系の中できっちり管理できると思います。

 それから、一般の土壌というふうに、土地というふうに認定されるような状況になれば、これは土地として土壌の環境基準がかかるわけでございますので、それはそちらの方で対応できるというふうに考えております。

原委員 そもそも、ダイオキシンを埋めた場所を掘り起こして物を建てるということ自体、やはり土地利用のあり方というものを環境省として規制をするべきだというふうに考えます。どうしても建てる必要があるとするのであれば、法の目から落ちたような状況が起こり得るのであれば、その法の網の目を直ちに解消するように環境省としてやっていかなくてはならないと思います。

 最後に大臣にちょっとこのことについてのお考えをお聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

川口国務大臣 先ほど廃棄物リサイクル部長が申し上げたように、今そういう状況で管理をされている状況では、廃棄物処理法あるいは公有水面埋立法の規制が適用されるということでございます。全部終わってしまった後ということでしたら、そこからまた掘り出す場合には、さらに、場合によっては廃棄物処理法の規定にのっとって廃棄物として処理される。あるいは、外部と区分されていない普通の土、普通の土地ということであれば、それはダイオキシン法という基準が適用されるということでございますので、今の状況ではそれぞれ適切に法律によってカバーをされているのではないかというふうに思います。

原委員 ぜひ多様な方面から、こうした法の目を埋めていけるように頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。

五島委員長 金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子哲夫です。

 今の原委員の質問ですけれども、いずれにしても、そういう汚染の状況がはっきりして、再利用される際に住民の皆さんの不安というものは必ずあるわけですから、いろいろな法律があるとは思いますけれども、ぜひ住民の声にもっと適切に、親切に対応していただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 それで私は、昨年の十二月十九日に閣議決定をされた瀬戸内海環境保全基本計画にかかわって、瀬戸内海の問題について幾つか御質問したいと思います。

 特に、私ども社民党は、瀬戸内海の環境保全の問題で、海砂利採取の問題について、広島、岡山、香川、愛媛、それぞれの我が党の県連合が協力しまして、この間、海砂利採取中止を求めてさまざまな活動をしてまいりました。結果として、今広島が中止をし、そして岡山、香川も中止の方向を示しているようでありますけれども、この点についてお聞きをしたいと思います。

 最初に、一九九四年、平成六年から今年度にかけて瀬戸内海の海砂利採取環境影響評価調査というものが進められて、平成十年、九八年に中間取りまとめが行われておりますけれども、その後、いよいよもう二〇〇〇年度が終わろうとしておりますけれども、海砂採取の環境や漁業への影響について、現在までのところの評価と、そして、これからの作業の状況を教えていただきたいと思います。

石原政府参考人 平成十年六月の海砂利採取環境影響評価調査の中間取りまとめの件についてでございます。

 瀬戸内海におきます海砂利採取が環境に及ぼす影響につきましては、平成六年度から調査を実施しているところでございます。その十年に中間取りまとめとして取りまとめを行っております。

 中間取りまとめの状況について申しますと、海砂利採取が環境に影響を及ぼしている点といたしまして、一つは海底の地形の変化、もう一つは海底の底質の状況になろうかと思います。海底地形としましては、長年の採取によりまして砂州あるいは砂堆が消失している採取箇所があること、あるいは海砂利を採取しました関係で海底がれき化しているということが判明しておるところでございます。

 漁業への海砂利採取の影響につきましてでございますけれども、一つは、海砂利採取の及ぼす影響としましては、濁りあるいは海底の攪乱、それから砂場という意味での産卵場所の減少があろうかと思っております。

 平成十年にそのような形で中間取りまとめをさせていただいたわけでございますが、漁業への影響という点につきましては、平成九年度から本年度にかけまして、瀬戸内海の代表的魚種でありますイカナゴにつきまして、稚魚の発生状況あるいは生育の状況につきまして、海砂利の採取地区とそうでない地区との比較の調査などを行っておるところでございます。

 取りまとめそのものにつきましては、十二年度までの調査でございますので、十三年度になろうかというふうに考えております。

金子(哲)委員 中間取りまとめの中でも、今、海底の状況を含めて、砂の採取を含めて、若干イカナゴの問題ついても触れられておりまして、影響が出ているということが明らかになっております。

 しかし、昨年十二月十九日に決定をされた保全基本計画では、残念なことですけれども、この海砂利採取について、確かに小規模のものにということは書かれておりますが、禁止というか中止というか、採取をやめるという方向が打ち出されておりません。

 本来、瀬戸内海の基本計画は、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づいて計画をされたもので、その瀬戸内海環境保全法の一番の骨子は、瀬戸内海は、我が国のみならず世界においても比類のない景勝地として、「また、国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ、」ということでこの法律もつくられ、それに基づいて基本計画が策定をされておりますけれども、しかし、この海砂利採取が大きな影響を与えている、三十年以上にわたって採取が続けられているという状況の中で、なぜ中止という方向がこの基本計画の中に打ち出せなかったのか、この点について大臣のお考えを。

川口国務大臣 瀬戸内海の環境というのは非常に日本にとっては重要なもので、比類のない景勝地でございますし、漁業資源の宝庫でもございまして、国民がその恵みを十分に受けることができることが必要だと思っております。

 それで、海砂利でございますけれども、十二月の瀬戸内海環境保全計画の変更の際には、例えば海砂利採取を禁止ということにいたしますと、その代替といたしまして岩石を採取して砕砂をする、砕くということをしなければいけない等で、別途自然環境への影響がございますので、委員おっしゃられましたように、広島県はもう平成十年二月から採取を禁止しておりますし、岡山県あるいは香川県は、それぞれ十五年度あるいは十七年度から採取を禁止する方針を決定いたしておりますけれども、そういうことが今の段階ではまだできていなくて、他の自然環境への影響を勘案しますと、海砂利の採取が当面避けられない事情を有する県があるということで全面禁止ということにはいたさなかったということでございます。

 先ほど委員もちょっとおっしゃっていただきましたように、採取を検討する場合には、環境への影響あるいは資源量への影響を調査すること、あるいは、採取を行う場合であっても最小限の採取量にする、それから影響を及ぼすことの少ない位置、面積、期間、方法等をとるということ、それから三番目に、採取後の状況についてモニタリングを行うというようなことにさせていただいたわけでございます。

 環境省といたしましても、今後、代替材の開発等が進みまして、極力海砂利への依存低減をするということで、関係の府県とも連携をしまして、この依存低減が進みますように取り組んでいきたいと思っております。

金子(哲)委員 そういうことで海砂利採取の期間が延長されているわけですけれども、私は広島でこの問題に取り組みまして、確かに広島県も平成九年の十月に、そういういろいろな事情、今大臣がおっしゃったのと同じような事情を言って五年間の延長というのを当初知事が表明されました。

 その後、海砂利採取の影響が、漁場の崩壊、護岸侵食、例えば民家の床下の土砂が崩れ落ちる、島の砂場が崩れ落ちていく、そして漁獲量の激減。例えば広島県におきますと、七四年と比べてみますと、県内全体ですと漁獲高が七二・六%の減少ですけれども、この採取地においては四五%にも漁獲量が激減をしているんです。

 そういうもろもろの事情の中で住民の皆さんから大きな声が上がって、結局、平成十年の二月の十六日に全面禁止を決定したわけですね。ところが、平成十年の全面禁止を決めても、広島県で、では砂利業者の中でそういうものが起こったか、全然ゼロですね。結局、そういうことは余り大きな理由になっていない。

 環境省が考えるとしたら、むしろ最初に言いましたように、瀬戸内海の環境保全特別措置法に基づいて、今の瀬戸内海を、多くの皆さんから見れば、かつての海を知っている人たちから見ると、もう既に昔の海ではないということを言われております。本当に命豊かな海と言われていた瀬戸内海が死の海とも言われるような状況になっているときに、なぜ保全をすべき環境省の中に、そういう業界の、いわばそういう理由の中で中止の方向が出ないのか。

 例えば岡山県にしても香川県にしても、私はもっと早くやめてほしいと思いますけれども、一応は中止の方向を出したんですよ。残っているのは愛媛県だけ。その愛媛県だけのためにこの基本計画の中に、なぜ海砂採取のことを、このまま期間延長するようなことが出てくるんですか。しかも広島では、海砂採取をやめた途端に海では、例えばホンダワラが三倍の成長をした。これは、光が入ってき出した、泥水が流れなくなった、そういう現象が出てきています。

 もちろん、とり過ぎた海砂が、何万年かの時代によって堆積した海砂が帰ってくるとは、すぐに簡単には帰ってきませんけれども、今とめれば、まだそれでも自然の回復というのは間に合うわけであって、それをなぜ一県のためにその基本計画の中にそういうことが盛り込まれたか、その点もう一度答弁をお願いします。

川口国務大臣 委員が今おっしゃられた愛媛県でございますけれども、愛媛県も十三年二月に骨材対策委員会を設置して、採取禁止も視野に入れて今後の方針の検討を始めたというふうに理解をいたしております。

 そういうことで、海砂利の採取についての、先ほど申し上げましたような三つの、モニタリングですとか、できるだけ影響が及ばないように小さくするようにするとか、そういった条件をつけまして、海砂利への依存がなくなるということを目指して、できるだけ早く海砂利への依存の低減が進むように、これは代替材等も必要でございますので、そういったことを連携して進めていきたいと思っております。

金子(哲)委員 いや、それは何回答弁を聞いても答弁になりませんよ。

 では、なぜ何年度までにはとめようということがこの中へ載らないんですか。この基本計画は長期なものでしょう。その中に、少量だったらとり続けてもいいと基本計画に盛り込むこと自体がおかしいんじゃないですか。愛媛県も中止の方向を検討しているのならば、なぜその検討のことがこの基本計画の中に入って明確に中止にならないんですか。

 しかも、先ほどの答弁のように、今年度まで漁獲も含めて調査をして、十三年度にはその調査結果も発表するということになっているわけでしょう。その結果も待たずになぜこの計画ができたかということは、私は極めて残念でなりません。

 ですから、これから環境省の責任として、とにかく早く海砂の採取が中止になるように、関係の県に働きかけをぜひしてほしいと思います。もう一つ質問があるので、この点についてはそのことを要望して、基本計画は決まっていますけれども、ことしの調査結果に基づいて改めて検討をぜひしてほしいということを申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、瀬戸内海にかかわる問題で御質問したいのは、瀬戸内海は今や自然環境が、自然の海岸が非常に破壊をされている。ある市民団体の調査によれば、自然環境が昔と比べて悪くなったと考える人は九〇%、自然海岸をぜひ残してほしいというふうに思っていらっしゃる方は九五%です。今、自然環境を残していくということはもうぎりぎりのところに来ていると思います。

 その中で、今山口県の上関に中国電力が原子力発電所を立地したいということで、環境評価準備書などを提出されて、昨年の二月には環境庁長官の意見もあって再評価をされたということであります。

 その点についてはいろいろありますけれども、この海域が瀬戸内海では大変残された、非常に貴重な生物等が生息している地域だということが、私どもが言うのではなくて、日本生態学会中国四国地区会の皆さんが調査をされた結果、言われております。「周防灘東部に位置する上関町長島の環境や生物相は、固有種の存在や、希少種の多産、種相それ自体の豊かさなどから、疑いなく現在の日本が世界に誇るべき財産の一つと言えます。」ということを言われております。

 私も十月に現地調査に行ってまいりましたら、実は先ほどの砂採取と関係があるんですけれども、広島県に回遊をしておりましたスナメリクジラが最近は広島県沿岸には来なくなっております、これはイカナゴとかいろいろなこともありまして。ところが、上関の長島周辺には大変多数のスナメリクジラが検出をされております。

 それから、私も行ってみましたけれども、例えばナメクジウオ、広島県の三原市沖にナメクジウオの生息地がありまして、ここは海砂採取の禁止区域に指定をしておりましたけれども、瀬戸内海は閉鎖水域でも海流が流れておりますから、全体のそういう影響があってそこのナメクジウオも減っておるんですが、この長島地域では、私自身も行って見てまいりましたが、まだ生息をしているということで、いわば本当に多種の新種も海生生物の中に発見をされているということが言われております。

 そういう意味でいいますと、先ほどの瀬戸内海環境保全の立場からいって、また、自然海岸を残す、それから大臣が先日の所信表明でもおっしゃいましたように、豊かな自然環境の保全ということからいいましても非常に大事なことだ。

 この生態学会の先生は、私たちは原子力発電所に賛成とか反対とかいう立場ではありません、そういうことを抜きにして、今この地域の生態系を調査をさせていただいたら、非常に貴重なものがたくさん残っていて、何とかこれを残してほしいという思いが強いということをおっしゃっておりました。

 もちろん、いろいろな審議会とか手続があると思いますけれども、私は、そのことについて環境省としてしっかりと受けとめていただいて、場合によれば環境省の独自調査も含めてやっていただいて、この地域がどれだけ瀬戸内海の今の破壊された環境の中で残された貴重な場所かということをぜひ検討していただきたいということを要望申し上げたいと思います。

 もし、大臣のお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 この問題につきましては、昨年の何月でございましたか、金子委員初め皆様に大勢おいでいただいて、いろいろお話を聞かせていただいたときのお話の内容は非常に鮮明に記憶をいたしております。スナメリのほかに、ハヤブサですとかカクメイ科という貝ですとかということもよく記憶をいたしております。

 先ほどおっしゃっていただいたように、環境省といたしましては、今後、手続的には、環境省の追加調査の依頼に基づいてなされた調査の結果も踏まえまして、経済産業大臣から意見の照会がございますので、その調査の結果も踏まえて、環境保全上の観点から意見を申し上げるということでございます。

 それから、自然環境の保全というのはとても重要なことでございまして、どういうものがあるかとか、どういうことになっているかということについての情報を十分に得るということは非常に必要でございますので、自然環境保全基礎調査の充実等を含めまして、保全には十分に努力をしていきたいと思っております。

金子(哲)委員 ありがとうございました。

 あそこは閉鎖性の水域でありまして、今までの原発立地とは随分環境条件が違うものですから、特に念入りの調査をお願いして発言を終わりたいと思います。ありがとうございました。

五島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十三分散会




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