衆議院

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第15号 平成13年6月15日(金曜日)

会議録本文へ
平成十三年六月十五日(金曜日)

    午前九時十六分開議

 出席委員

   委員長 五島 正規君

   理事 伊藤 達也君 理事 稲葉 大和君

   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君

   理事 小林  守君 理事 近藤 昭一君

   理事 青山 二三君 理事 樋高  剛君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      熊谷 市雄君    小泉 龍司君

      河野 太郎君    坂本 剛二君

      下村 博文君    西野あきら君

      鳩山 邦夫君    原田昇左右君

      平井 卓也君    細田 博之君

      増原 義剛君    奥田  建君

      鎌田さゆり君    佐藤謙一郎君

      筒井 信隆君    長浜 博行君

      山田 敏雅君    山村  健君

      田端 正広君    藤木 洋子君

      金子 哲夫君    中川 智子君

      原  陽子君

    …………………………………

   環境大臣         川口 順子君

   環境副大臣        風間  昶君

   環境大臣政務官      西野あきら君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 田村 政志君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 竹内  洋君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議

   官)           鶴田 康則君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊藤 雅治君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議

   官)           長尾梅太郎君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次

   長)           小平 信因君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  大石 久和君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局

   長)           高橋 朋敬君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環

   境保健部長)       岩尾總一郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  浜中 裕徳君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  松本 省藏君

   参考人

   (中央環境審議会委員)  浅野 直人君

   参考人

   (成城大学名誉教授)   岡田  清君

   参考人

   (モータージャーナリスト

   )            安藤  眞君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  細田 博之君     坂本 剛二君

  鮫島 宗明君     山田 敏雅君

  金子 哲夫君     中川 智子君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     細田 博之君

  山田 敏雅君     筒井 信隆君

  中川 智子君     金子 哲夫君

同日

 辞任         補欠選任

  筒井 信隆君     山村  健君

同日

 辞任         補欠選任

  山村  健君     鮫島 宗明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)(参議院送付)




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     ――――◇―――――

五島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案審査のため、本日、参考人として、中央環境審議会委員浅野直人君、成城大学名誉教授岡田清君、モータージャーナリスト安藤眞君、以上三名の方に御出席いただいております。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にしてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序でありますが、浅野参考人、岡田参考人、安藤参考人の順に、お一人二十分程度御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。

 それでは、浅野参考人にお願いいたします。

浅野参考人 中央環境審議会委員、福岡大学法学部長をしております浅野直人でございます。

 本日は、発言の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。

 いわゆるNOx法、すなわち、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、自動車排出ガス対策の環境政策における意味、現行法がなぜ効果を上げ得なかったか、その問題点、改正法案の評価、以上の三点につきまして意見を申し述べさせていただきます。

 自動車排出ガスのうち、環境基準が定められております窒素酸化物は、一般の大気環境測定局はともかくといたしまして、自動車排出ガスの測定局での環境基準の達成率を見ますと、平成十一年度には、現行NOx法の特定地域では前年より改善されてはおりますものの、なお達成率は六〇%弱にとどまっております。

 浮遊粒子状物質は、全国では前年より大幅に改善されまして、自動車排出ガス局の七六%強で環境基準を達成してはおりますけれども、未達成局は特定地域に集中しております。さらに、平成十一年度の浮遊粒子状物質測定値は、気象要因によって平年と異なる数値を示している疑いがあると指摘されているところでもございまして、将来に向けて改善の傾向を示しているとはなお断定できない状況でございます。

 ところで、窒素酸化物は、他の大気汚染物質との複合影響を指摘する意見がございますけれども、現在の環境中での濃度の程度で、窒素酸化物だけが単体で直接に人の健康に急性あるいは慢性の影響を与えるというデータは乏しいと聞いております。しかし、窒素酸化物は物の燃焼に伴って不可避的に生ずる物質でございますので、都市活動あるいは人間活動の指標としてこれを見ることは十分に意義を有するものと言えるように思われます。

 浮遊粒子状物質は、御存じのとおり、直径十ミクロン以下の粒子を言いまして、これが人の呼吸器に入って健康影響を生ずることが心配されております。ただ、十ミクロン以下という基準で物質を拾っていきますと、案外自然由来の物質が多く含まれるそうでございます。

 私が住んでおります福岡市のデータを見ますと、冬から春にかけては、玄界灘の荒波で海塩が巻き上げられてそれが微粒子になる、あるいは中国大陸の黄砂が飛んでくるといったような影響がございまして、自然由来のものが五割を超えているということも聞かされております。

 しかし最近は、国際的にも、自動車排出ガスに由来するものが多いと考えられております二・五ミクロン以下の粒子状物質の健康影響が特に問題となっておりまして、これらについてのデータを集めるとともに、早い段階でその削減に努める必要があろうかと存じます。その意味では、改正法案が、粒子状物質対策強化の方向を示していることは極めて高く評価されると考えられます。

 後にも述べますが、これまでの自動車排出ガス対策は、主に発生源である個々の自動車の機能の改善、すなわち単体対策に重点を置いておりましたが、このような対策は、対策効果を数量的に把握しやすいという長所がありますけれども、反面、どんなに単体での排出原単位が削減され改善されましても、走行台数が増加いたしますと対策効果が減殺されてしまうという欠点も持っておりました。走行台数の削減効果をもたらす対策にまで踏み込んだ施策が必要でございまして、このような点につきましては、平成十二年末に閣議決定されました新環境基本計画の戦略的プログラム、第三の項目であります「環境への負荷の少ない交通に向けた取組」の中でも示唆されているところでございます。

 しかし、いずれにいたしましても、全体といたしまして自動車交通量の適正化を含めた自動車排出ガス対策が実現されますならば、それは、心配されております健康影響への未然防止の対策強化に資するということにとどまりませんで、そのまま自動車騒音問題でありますとか振動問題であるといった都市公害の問題の解決に資するわけでございます。さらには、資源、エネルギーの節約、ひいては温暖化対策にも資するということが言えるわけでございまして、つまり、自動車排出ガスの総量削減の政策は、そのまま、環境への負荷が少ない持続可能な社会の形成につながるものとして、統合的、総合的な環境政策の重要な一部を担うものと言うことができようかと存じます。

 さきにも指摘いたしましたが、都市における窒素酸化物排出量総量の状況を持続可能な社会形成の指標と見ることは十分可能でございます。したがって、都市の窒素酸化物発生に関して自動車排出ガスの寄与を減らす対策努力を引き続き行っていくということも、今のような意味で環境政策の一部をなすものとして評価し、位置づけることができようかと存じます。

 次に、現行法の評価でございます。

 現行法は平成四年に公布、施行されまして、制度の中心をなす車種規制の制度は平成五年に施行されました。現行法が検討されておりました当時は、道路上の自動車の走行規制は道路交通法で公安委員会が一元的に行う、自動車単体の機能については運輸大臣が道路運送車両法で一元的に管理をする、それから供用後の道路の管理は建設大臣の所管である、自動車製造段階での行政の関与は通産大臣の所管事項である、事業者の事業活動と密接に関係がある事業活動に伴って行われます自動車使用は各業所管大臣がコントロールすべきものである、こんなようなぐあいに各省庁の権限が大変入り組んでいたわけでございます。

 こういう中で新たな施策を導入するということに関してはさまざまな議論があったものと想像されるわけでありますが、結局、特定地域においては、車両登録段階で特定排出基準に適合する自動車でなければ登録を認めないという、いわゆる車種規制の制度が導入されたわけでございます。

 この法案審議の前段階では、ステッカー方式で特定地域に車を乗り入れることを規制しようとか、事業所別総量規制をしようとかいろいろな案が検討されたわけでございますけれども、当時は、直接規制という方法以外の政策実現手法を実定法制度の中に取り入れるという発想はほとんど採用される余地がございませんで、直接規制ということになりますと、これはフリーライダーが出ることが少ない方法でないと公平性を欠く、それでそういうもの以外はなかなかとれないということになったわけでございます。結局、最も公平性もあるし、かつ実効性も高い、つまり、満遍なくその規制に従わせることができるという意味では車種規制の方法が一番いいということになりまして、これが採用されたものと考えられるわけでございます。

 この車種規制制度以前も、年次計画的に自動車単体対策が進められまして、自動車排出ガスの排出量削減の努力が重ねられておりましたけれども、こちらの方は全国一律でございまして、最新規制適合車が普及していきますと、それで排出ガス量の削減が見込まれる、こういう施策でございましたけれども、この車種規制は、これに加えて、窒素酸化物の環境基準の達成が困難な特定地域においては、自動車登録の段階で制限を設けまして、より排出ガス量の少ない自動車に強制的に買いかえ代替をさせて、その上で環境基準の達成を促進させようというものでございました。

 車種規制方式は、平成六年十二月当時、特定地域の中での特定自動車の基準適合率というのは約四割にとどまっておりましたけれども、平成九年三月にはこれを七割に引き上げたと評価されておりますし、平成九年度の特定地域内での自動車起因窒素酸化物を平成二年に比べますと、もし車種規制を行わなかった場合と比較をすれば、約六千六百トンほど排出量を削減させたものと推定されております。こういうような実績を見ましても、車種規制の制度が一定の効果を上げていることは間違いないわけでございます。

 しかしながら、自動車の走行量そのものがふえておりますので、削減効果が減殺される結果が生じていることも明らかでございます。特定地域内での自動車走行量がもし平成二年度の量のままであったといたしますと、平成九年度の特定地域での自動車起因窒素酸化物の削減量は一万三千六百トンぐらいまでいけたのではないかという推定もございます。

 ところで、現行法は、地域での自動車排出ガスに起因する窒素酸化物削減に関して必要な施策を検討し、その結果として、地域での削減目標を設定するというために都道府県知事に総量削減計画を策定させるということにしているわけでございます。しかし、その削減計画に掲げられた削減の方途の実施ということになりますと、実質的な担保が弱いという欠点を持っております。

 現行法は、事業の用に供するために自動車を使用する事業者に対して、それぞれの事業を所管する大臣が、自動車使用の合理化を図ることその他必要な措置を講じることによる自動車排出窒素酸化物排出抑制に関する指針を定めまして、さらに必要な助言指導をすることができると定めております。

 しかし、さきに中央環境審議会で現行法のレビューを行いました際に関係各省担当者のヒアリングも実施しておりますけれども、一部を除きますと、事業所管大臣が、個々の事業者の事業用の自動車走行の実態をどこまで把握しておられるかということはなかなか明らかではございませんでしたし、また、それぞれの事業所管大臣のとっておられた措置というのは、業界団体を通じて指針の徹底をお願いするという程度のものがほとんどでございまして、概して言いますと、実効性のある施策は講じられていないという印象を受けたわけでございます。

 せっかく都道府県知事に総量削減計画を策定させることにしているにもかかわらず、施策の実施を知事が行うということについても、また、必要な情報が都道府県知事に集まる仕組みという点もどうもあいまいでございまして、総量削減計画の進行管理という点では仕組みが不十分であったわけでございます。そのために、地域によって当然状況が違うわけでありますけれども、地域課題に即して、適切に、適当な時期に追加的な施策を講じることもできないということでございました。

 それでは、以上のような点を踏まえまして、今国会に提出されている法案について評価をさせていただくことにいたします。

 まず、私は、今回の提案されている法案は、現行法の問題点の解決を図るとともに、さらに、予防原則という国際的にも広く認められている政策理念に沿って自動車排出ガスに起因する粒子状物質対策に積極的に取り組む姿勢を示している点では評価できるものと考えるものでございます。また、効果があることが確認されております車種規制を強化するとしている点も評価できると存じます。

 ただ、実質的には重複指定される地域が多いものと思われるのですが、法案は、国が定める基本方針や都道府県知事の定める総量削減計画を、窒素酸化物と粒子状物質のそれぞれについて別個にこれを定める、そういう形にしておりますので、これは国民にはややわかりにくいのではないかということでございます。

 もちろん、窒素酸化物対策を講ずべき地域が当然そのまま粒子状物質対策を行うべき地域と重なるというわけではございませんので、立法技術的にはこういう規定の仕方もやむを得なかったわけでございまして、その点、理解はできるわけであります。

 また、重複指定される地域で、それぞれの総量削減計画がお互いに矛盾をするというような事態は到底考えられないわけではございますけれども、それにいたしましても、運用面で十分な調整が行われることは当然必要でございます。運用面では誤りなきよう行われることを希望する次第でございます。

 ところで、自動車の使用という活動につきましては、規制的手法だけで政策目的を達成させることにはかなり無理がございます。

 法案の二条では、粒子状物質規制が本格的に実施されることになる段階から適用される条項といたしまして、事業所管大臣による事業者への指針策定の制度を改めて、事業を行う者の判断の基準となるべき事項の策定ということに変わっているわけでございます。

 この「判断の基準となるべき事項」という用語は、実は調べますと、省エネ法でありますとか資源有効利用促進法というものに既に見られるわけでございまして、先行する法令の運用実態を見ますと、かなり詳細にわたりきめ細かく内容が定められることが多いわけでございます。

 また、経済産業省は、これらの法令に基づく判断基準の策定に当たりましては、産業構造審議会に諮って関係業界や学識経験者の意見を徴する、さらに、そういうような議論を通じて、業界との合意のもとで、いわば政府と業界との自主的協定の締結が行われたと同じような結果をもたらしていると言えるようなプロセスを経て策定をしているわけでございます。そして、事後的にはその実施状況については審議会でレビューをいたしますので、こういったようなプロセスを通じて、産業活動に対する環境配慮の組み込みについてはかなりの実績を上げてきたと私は考えております。

 今度の法案の二条で新たに用いることになりましたこの「判断の基準」という用語は、ただ単に指針が判断の基準という名前に変わったというだけではございませんで、もっと重みを持ったことだと私は考えているわけでございます。この点は経済産業省はもう十分おわかりだと思うわけですけれども、それ以外の関係省庁についても、指針が変わっただけだというようなことじゃなくて、先行する法令の運用のあり方などをよく勉強されまして、適切な運用をされることを期待するわけでございます。

 また、この「判断の基準」に照らして、都道府県知事が事業者に対して指導助言ができるようにされましたし、事業者に、自動車排出窒素酸化物の排出抑制のために必要な計画的に取り組むべき措置の実施に関する計画の策定と、都道府県知事へのその計画の提出を義務づけました。また、措置の実施状況に関しては、都道府県知事に報告をすることを義務づけております。また、これらの報告等に関連いたしまして、知事には事業者に対して勧告、命令を出す権限がございますし、また勧告、命令のための報告徴収や事業所への立入検査の権限が与えられることになったわけでございますが、これらはいずれも適切な改正であろうかと存じます。

 事業者に計画策定を求めるという施策は、これまでも既に地方公共団体で条例や要綱の形式で行われてきているところでございます。しかし、今回、法的な根拠に基づいて義務づけが行われたということは、計画策定を義務づけることが、事業者の具体的な取り組み内容については詳細に規制を加えるわけじゃなくて、事業者の自主的な創意工夫に期待するわけでありますが、枠組みとして計画策定は義務づける、こういうことでございまして、これは枠組み規制という手法だと考えるわけでありますが、こういうものがここでも採用されたということでございます。この手法が取り入れられましたことによりまして、事業者の意識も変わるでございましょうし、自主的な取り組みも促進されることと存じます。

 知事への報告義務を課すことは、計画のつくりっ放しという事態を防ぐとともに、総量削減計画を策定した都道府県知事に、地域の実施状況に関する情報が集まる仕組みをつくる、計画の進行管理の素材を与えるということでございます。そして、知事のもとに集まりました情報は、環境大臣に通知され、全国の情報が一元的に整理できる仕組みとされていることもあわせまして、こういう仕組みは、今後の我が国の環境政策の展開の上では、先例としての意義を有するのではないかと思われるわけでございます。

 そこで、主務省令で報告事項等を決定することになっておりますが、その際に地域環境管理に必要な情報が過不足なく集まる仕組みとすることが必要でございまして、その点の配慮が必要でございます。ともすれば、過度な企業の営業秘密の保護という名目で情報が隠されてしまうということがございますが、そういうことがないような適切な省令がつくられることをお願いしたいと存じます。

 自主的取り組みというやり方は、アウトサイダーの発生という問題を抱えているわけでございますが、知事に勧告、命令の規制権限を与えたということも、そういう意味では理解できますし、また必要なことではないかと思うわけであります。

 ただ、自治体の中には、固定発生源からの汚染物質排出の取り締まりが強く行われていた時代の発想が抜け切れないというところも間々見られまして、そういうところが、公平性抜きに、ねらい撃ち的にどこかをねらってこの権限を発動するということがないように、これは本来の趣旨を十分踏まえて、あくまでも自主的な取り組みを促進するんだということを踏まえた運用が望ましいと考えるわけでございます。

 中央環境審議会では、このほかに低公害車の導入促進でありますとか、交通需要マネジメントを重視せよといったような提言を行っているところでございますけれども、これらの施策は本法に基づく総量削減計画の中で取り入れられるべき施策であると存じます。

 しかし、さらに、審議会で提案しております経済的措置の導入ということも含めまして、環境基本計画の戦略的プログラムの中での「環境への負荷の少ない交通に向けた取組」の一環として、こういったような中央環境審議会の提言は広く取り上げられ、展開されていく必要があろうかと存じます。政府で検討いただくことはもちろんでございますが、国会におかれましても、今後の積極的な御検討をお願い申し上げたいと存じます。

 以上、限られた時間でございますために十分に意を尽くした意見を申し述べることができませんで、御理解いただきにくいということもあったかと存じますが、自動車排出ガス問題は緊急性を持っておりますので、速やかに本法案が可決されますように希望申し上げまして発言を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

五島委員長 ありがとうございました。

 次に、岡田参考人にお願いいたします。

岡田参考人 ただいま御紹介いただきました岡田と申します。

 自動車NOx法の改正問題について、賛成の立場から若干の意見を述べさせていただきたいと思います。

 既に参考人の浅野先生から詳細な話がございましたので、これ以上繰り返すこともないかと思いますので、主に外国では一体どういうふうにやっているのか、何が問題なのかということについてお話を申し上げさせていただきたいと思います。

 結論じみて恐縮でございますが、環境行政というのは非常に難しい行政でございます。しかも横割り行政で、中央と地方の関係であるとか、今既に浅野参考人からお話ございましたように、各省の連携がスムーズにいきませんとこれはなかなかうまくいくものではありません。そういうことで、一例としてアメリカの例を若干申し上げさせていただきたいと思います。

 アメリカでは、大気保全に関する法律というのはクリーン・エア・アクトと呼んでおりますけれども、一九七〇年、それから七七年の改正法、一九九〇年と三回にわたって法案を出しております。その内容は三つのアプローチから成り立っているわけであります。

 一つは、お手元にお配りしましたレジュメに書いてございますように、自動車のメーカー責任、つまり発生源対策をどういうふうにやっていくのかということが一つであります。

 それから、各州の政府がどういうふうな自動車の削減対策を行うか、これが第二番目であります。

 第三番目は、これは既にドイツの緑の党として非常に問題になっておりますように、これほど環境が悪くなりますと、もはや道路投資は必要ないのではないかという観点から、交通インフラ投資と環境というものとの整合性をどうとっていくのか。ここには「州政府責任」と書いてありますが、州政府責任だけではありませんで、中央政府と州政府の関係であるとか、あるいは州政府自身の政策の問題であるとか、インフラ投資を、中でも道路投資というものを環境基準の観点から抑制するかどうかという点が論点になるわけであります。これは、今申し上げましたように、ドイツの緑の党を初めとしまして、非常に大きな政治問題になっております。

 そこで、日本流に言いますと大気保全法、英語流に言いますとクリーン・エア・アクト、一九七〇年あるいは七七年の改正法はいずれも失敗だというふうに申し上げてもよろしいかと思います。

 一九七〇年法では、ナークスと片仮名で書くとちょっとわかりにくいわけですが、NAAQSというふうに略語で言いますけれども、一九七〇年法でもって、環境基準を守るようにという、一言で言いますと基準行政を導入したわけであります。したがって、いわば汚染物質の削減計画をつくって、それに見合うように環境をよくするようにと、これが一九七〇年法のねらいであります。これについて、結果としてはかなりうまく機能いたしましてよくいったのですが、例えばSOxであるとか、そういうふうな一部の排気ガスは減少いたしました。

 この七〇年法の特色は、健康基準というふうに申し上げてもよろしいかと思いますが、あくまでも州の人たちの健康を守る、健康を守るためにはどこまで排気ガスを削減すべきなのかということが七〇年法の特色であります。

 七七年法も本質的にはそう大きな違いがありません。ところが、それでもなかなかうまくいきません。

 一九九〇年法、わずか十数年前のことでありますが、御案内のように、一九八〇年代というのはアメリカは大変景気が落ち込みまして、さまざまな問題が表面化してまいりました。そういう場面の中でどういうふうな環境政策をとるべきか、これが一九九〇年法のねらいであります。先ほど言いましたNAAQSの条件を満たしていない都市、つまり環境基準を満たしていない都市が随分残ってしまった。

 そこで、一九九〇年法におきましては、環境政策のニューラウンドというふうに表現をいたしまして、いわゆる第一段階規制、ティア・ワン・コントロールというふうに呼んでおります、この制定をいたしました。それでもなおかつうまくいかない場合には第二段規制。その第二段規制を行うかどうかというのは、中央政府の環境保護局、EPAが綿密に調査するということであります。しかしながら、第二段規制を厳しくやるというのは大変難しいテーマでございまして、この一九九〇年法の特色は二つほどあろうかと思います。

 一つは、特定の州で大気保全の状況が非常に悪いということをEPAが認定するということが一つであります。

 それから第二段目は、環境政策と交通政策というものを連動させなければもはや環境政策は達成できないんだ。そこで、この点はまだ十分に理解されていないかと思いますけれども、環境政策と交通政策の連動ルール、これは私の訳ですから、コンフォーミティールールというふうに英語で申し上げた方があるいはいいのかもしれませんが、いかにして環境政策と交通政策を結びつけて対策を実行していくか、これは言うべくして決して簡単ではありません。

 既に御案内のように、カリフォルニア州はこの一九九〇年法で最悪の州であるという認定をされましたために、いわゆるフリート規制というものを採用いたしました。フリート規制というのは、自動車の販売メーカーあるいは製造メーカーに対しまして、車を売る場合に何割かはゼロ・エミッション・ビークル、無公害車でなければほかの車も販売させない。つまり、販売台数の一定の割合を必ず無公害車にすることを要求した。これをフリート規制と呼んでいるわけであります。

 これは実は、EPAの第一段階規制よりもちょっと緩いと言われておりますけれども、一言で言いますと、カリフォルニア州はたまりかねて、何とか排ガスの出ない車を販売させようと。これは我が国でも十分に紹介されておりますから先生方も御案内のとおりかと思いますが、いわゆる俗に言うZEV、ゼロ・エミッション・ビークル、無公害車を一九九八年から売り出しまして、二〇〇三年までに一〇%を販売するようにと。例えば、日本の自動車メーカーが百台売るといたしますと、そのうちの一〇%は無公害車でなければ百台の車も売らせない、こういうふうな規制政策のことをフリート規制と呼んでいるわけです。

 当然のことながら、自動車メーカーは大変びっくりいたしました。これにいかに対応するか、世界の名立たる自動車メーカーが一斉にこれに対してどう取り組んでいくか、ここで販売をめぐる自動車製造メーカーのいわばヘゲモニー争いが起こってきたわけでございます。

 幸いにも、日本のトヨタ自動車は早くからこの政策に乗るという政策を打ち出したために、ベンツを初めGMも乗らざるを得なくなってまいりまして、言いかえれば、自動車の販売市場で主導権争いがここで起こった。争いというのは決していい表現ではありませんが、二十一世紀の自動車というものについてのヘゲモニー争いが完全にここでスタートいたしました。それを契機にして、低公害車あるいは無公害車の開発が一挙に進むことになったわけでございます。

 その意味では、一九九〇年法が世界の自動車メーカーに与えた影響というのは非常に大きなものがあります。これは、我が国の自動車メーカーもいち早くこれに乗ってきたという点は高く評価されるべきではないかと思っております。

 時間の関係もありますので、第二点。

 しからば、環境政策と交通政策の両方のドッキングをするいわゆるコンフォーミティールール、つまり両者を連動して政策を打つということはどういうことか、これは自動車交通量を抑えるということであります。環境政策は、例えば都市交通の主導権を握って交通政策をリードしていく……

五島委員長 参考人、申しわけございませんが、ちょっとまとめていただきたいと思います。時間でございますので。

岡田参考人 済みません。

 以上のような観点から、アメリカの場合は九〇年法の場合には大変この方向に向かいまして、後ほどまた御質問でもあればお話をいたしますが、イギリスの場合もさまざまな論争があって、各国とも大変努力していることを申し上げまして私の話を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

五島委員長 ありがとうございました。

 次に、安藤参考人にお願いいたします。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

安藤参考人 おはようございます。安藤でございます。

 私の略歴につきましては、資料の表紙に書いてございますので割愛させていただきますが、NOx法につきましては、ジャーナリスト活動を始めました九二年当時ぐらいから関心を持って調査しております。

 早速ですけれども、今回の改正案について意見を述べさせていただきます。

 まず、SPMの規制が追加されたということなんですけれども、これは非常に歓迎すべきことだと思います。ただし、留意しなければならない点も幾つかあると思います。

 「この法律において「自動車排出粒子状物質」とは、自動車の運行に伴って発生し、大気中に排出される粒子状物質をいう。」というふうになっております。この定義でいいますと、粒子状物質というのは、排気ガスに含まれているもののみならず、道路粉じんですとか、ブレーキをかけますとブレーキは減ります、そうすると微粒子になってダストになって出ます、そういうものまで含まれているというふうに理解するのが適当だと思います。

 この資料のグラフを見ていただきたいのです。これは中央環境審議会の第三次答申からの資料なんですけれども、排ガスに起因するものと道路粉じん、タイヤ、ブレーキから出てくるものを比較した場合に、例えば上から四番目の「初台2」を見ますと、排ガスに起因するものが二〇%であるのに対して、タイヤ、ブレーキと道路粉じんを合わせたものが二二%あります。

 道路粉じんですとかタイヤ、ブレーキに起因するものというのは、走行量がふえるほど、走行速度が上がるほど粉じんはふえてきます。ですから、車をスムーズに流すことによって排ガス量を削減するという施策を施しますと、逆にこっちに起因する浮遊粒子状物質というのがふえてしまうということを考えた上でこの辺の対策をしていただかないと、また新たな問題が生じるのじゃないかと思います。要するに、交通量を減らすということを根幹に据えて対策をしていかないといけないのではないかと思います。

 それから、もう一点、自動車排出ガス測定局というのが道路の沿道にありまして、全国で四百数十カ所と聞いております。ここでは排出ガスに関して十二項目の測定を行っているのですけれども、すべての測定局がこの十二項目全部を網羅しているというわけではございませんで、測定局によっては測定していない項目もあるのですね。

 例えば、愛知県の名古屋市には十四の測定局があるのですけれども、SPMを測定しているのは四局にすぎないわけです。愛知県全体を見ましても、国道一号線沿いでSPMを測定しているのは全部で十八局あるうちの岡崎の一局だけなんですね。こういう状況で本当に正しい測定が行われているのか非常に疑問がある。ちなみに東京の場合、二十九局中二十八局でSPMを測定しておりますので、これは比較的安心できるのではないかと思います。

 最初にNOx法が制定されたときに、名古屋市というところが特定地域から抜け落ちまして、この抜け落ちた原因の一つが、もしかしたらこの辺の排出ガス測定局の分布が適正を欠いていたのじゃないかというふうに考えることもできると思います。

 そういうことを踏まえまして、特定地域の追加に関してなんですけれども、現在、特定地域というのは具体的な市町村名で法律に記載されております。これですと、新たに問題が発生した場合に、次に法律を改正して新しく市町村名を法律の中に追加していかないと対応ができないという、非常に後手後手に回る可能性が高いような内容になっているのですけれども、これを例えば、過去一カ月にNOxまたはSPMの環境基準達成率が自排局で何%かを下回った場合、翌月から特別地域に組み込んでしまいましょうというような形にしてしまえば、問題が起こったらすぐ対応できるというふうな形で柔軟に運用ができていくのじゃないかと考えております。

 続きまして、排ガス測定モードと車両重量区分という、いささか専門的な話になるのですけれども、これについて述べさせていただきます。

 自動車の排ガス測定、排ガス基準というのは、自動車の種類あるいは重量によって測定の仕方ですとか排出の基準が決められています。大気汚染防止法では、例えばトラック、バスですが、トラック、バスの重量車を、ガソリンの場合三・五トンなんですけれども、二・五トンを超えるものとしているわけです。要するに二・五トンを超えるものであれば、三トンのものでも十トンのものでも二十トンのものでも測定するモードは同じで、排出基準も、基準といってもこれは若干馬力によって比例的に変わっていくような形なんですけれども、かなり大きさの違う車も十把一からげでくくっているということなんです。

 これに対してNOx法というのは、二・五トンを超え五トンまでという新しいカテゴリーをつくっております。二・五トンから五トンまで、その上が五トンから上ということで、トラックの中でも比較的小さ目の車にある程度厳しい規制になっております。

 これは非常に歓迎すべきことなんですけれども、実は大気汚染防止法の方が非常に進んでしまいまして、NOx法が制定されたときの基準よりも現在の大気汚染防止法の方がより厳しい基準になってしまって逆転現象を起こしている。今回の改正で恐らく施行規則の方も当然変えられると思うので、この辺はどう変わってくるのか非常に興味深いのですけれども、大気汚染防止法よりも厳しいものにならなければ大した意味はないのじゃないかと思っております。

 結局のところ、大気汚染防止法というのがきちんと機能していればわざわざこういうNOx法というのをつくらなくてもよかったという話なんですけれども、その大気汚染防止法というのも非常にいろいろと問題を有していると考えております。

 その大気汚染防止法十九条に排出の許容限度を定めているのですけれども、まず、車によって測定モードが違うということについてお話しします。

 乗用車と軽い重量のトラックは、十・十五モードといいまして、市街地走行を想定した走り方を再現して、そのときの排ガスをはかります。トラックの場合は、ある一定の負荷をかけて、そのときに出た排ガスをはかるという形になっております。

 二番目の資料をごらんいただきたいのですけれども、上に書いてあるのが十・十五モードの走行パターンですね。縦軸が速度で横軸が時間になっています。これをどう見ていくかといいますと、速度ゼロでずっと行っていますが、これ、四十秒間速度ゼロということはアイドリングですね。走っていないわけですからアイドリングしていると。そこから時速二十キロに達するまで七秒間、七秒間で時速二十キロまで加速します。時速二十キロで十五秒走って、今度は七秒かけてまた停止します。それでアイドリング十六秒と、こういうパターンをずっと繰り返していくわけなんですけれども、このパターンが何を根拠にいつごろ決まったのかといいますと、これは昭和三十年代、聞くところによりますと、虎ノ門から溜池ですとか赤坂見附、あの辺を走ってみて調査したらおおむねこのぐらいのパターンだったということで、この十モードというのがまず決まったというふうに聞いております。

 それに道路がすいている時期の首都高速の走行パターンというのがこの第四パターンだそうなんですけれども、こういうパターンで時速七十キロまで加速する走行モードを合わせまして、十・十五モードというような形で規制しているのですが、昭和三十年代に決められたものですから当然現状と著しく乖離をしていると考えられます。車の性能も上がっていますし、交通量もふえていますので。

 自動車の排気ガスというのは、エンジンの負荷が高くなれば高くなるほど量も多くなるし、汚染度も高くなります。ということになりますと、速い加速をしようと思うと余計に排出ガスが出るということになるのですけれども、この十・十五モードの中でどれだけの加速をしているのかというのを計算しましたところ、最大加速度は〇・七九メーター・パー・セコンド・スクエアということになっております。といいましても、ぴんとこないと思うのですけれども、この加速度で五十メートル走ると何秒かかるかというふうに直しますと、これは十一秒二二なんですね。

 皆さんのお子さんなりお孫さんなりに五十メートル走何秒ぐらいで走れると聞いてみるとわかると思うのですけれども、小学校高学年では速い子は大体八秒ぐらいで走りますね。十一秒二二というのは、大体小学校の低学年ぐらいの駆けっこの速さなんですね。その辺の走っている車を見てみますと、そんな遅い、のんびりした加速で走っている車というのがあるのかどうかということですね。議員の皆さんも恐らく、自分の公用車がそんなにゆっくり加速していたら、君、もうちょっときびきび走れぬのかねというようなことぐらい言うと思うのですよ。

 それから、十五モードの方の、首都高速の合流を想定していると思われる、ゼロから五十キロの加速に十八秒かかっているというのもあるのですけれども、こんなにゆっくり加速していたら危なくて合流なんかできません。それから、これは比較的スムーズに流れている方だと思うのですけれども、場所によっては、環八ですとか環七ですとかに行くと、非常に渋滞が激しくてこんなにスムーズに流れることもできません。ということで、この辺はもう少し実態に合わせたものに変えていく必要があると考えております。これはもう十年ぐらい前から言われていることですし、中央環境審議会の方の答申にも何度も出てくるお話でございます。

 それから、中量車の荷重条件なんですけれども、中量車というのは比較的車重の軽い部類のトラックですね。これは市街地の走行モードで規制されています。十・十五モードというふうな規制の仕方をしているのですけれども、これは実は乗用車のためにつくられたモードで、積載する荷重の条件というのが決まっています。これは百十キロなんですね。成人男性二名分、五十五キロ掛ける二で百十キロと決まっているのですけれども、もともと、商用車、トラックというのは積載状態で運行されることが目的であるにもかかわらず、人が二人しか乗っていない走行モードで排ガスを測定してどうするのだということが言えると思います。これは当然、例えば最大積載量の二分の一ですとか、そういう積載の条件を新たに加えて新しい規制を加えていかないと、非常にパスしやすいような規制になっていると言わざるを得ません。

 それから、重量区分に関する疑問点なんですけれども、軽量車、中量車、重量車というふうに分かれているのですが、重量車といいますと、恐らく皆さん、家の屋根ぐらいまである大型トラックを想像されるのじゃないかと思うのですけれども、重量車というのは二・五トンを超えるものなんですね。中量車というのは一・七トンから二・五トンまで。これは車両総重量でやっております。

 車両総重量というのは、車の重さプラス最大積載量プラス乗車定員というふうに決められていますので、例えば二トントラックぐらいの車というのは、車重は二トンあります。二トントラックというのは、コンビニの配送の車ですとか宅配便の車というのが大体あのぐらいですね。車が二トンあって最大積載量が二トンあったら、車両総重量はもう四トンなんですね。見た目あんなにちっちゃい、中量車かなと思うようなイメージのトラックが重量車で区分されているのですね。そういうところに非常に大きな問題があるのじゃないかと考えております。

 例えば、最大積載量二トンまでというような新しいカテゴリーをつくりますと、車両総重量に直すと大体五トンぐらいまでとなる。これがNOx法で新しくつくられたカテゴリーの二・五トンから五トンというのに大体合致してくるということで、大気汚染防止法の範疇になるのですけれども、これは新しいカテゴリーをつくって新しい規制を加えるべきなのじゃないかと考えております。

    〔小林(守)委員長代理退席、近藤(昭)委員長代理着席〕

 それで、トラックの方の走行モード、排ガス測定モードなんですけれども、この資料の三の一というところの下に書いてありますのが、ディーゼル車のディーゼル十三モードというはかり方なんですけれども、これは実際の走行を想定したものではなくて、非常に見にくいのですけれども、アイドリングというところに大きな丸がついています。これは、アイドリングをしたときに排ガスをはかって、この丸の直径が、重み係数といいまして、どのくらい重要視するのかということをあらわしているのですけれども、それぞれ、縦軸が負荷率、横軸が回転数比となっております。負荷率というのは大体アクセルの踏みかげんと考えていただいて結構です。六〇%負荷というのは、六割ぐらいアクセルを踏んでいる。六〇%回転数比というのは、エンジンの回転計の最高回転の六割を指しているというような形で考えていただくといいと思うのですけれども。

 そういう一定の負荷を課したときに出てくる排ガスを測定して、それに重み係数を掛け算しまして、全部足し算して、それを仕事率で割って排出ガスの量を何グラムというふうな形で算出しているわけなんですけれども、一定の負荷条件ですから、これは、加速している最中ですとか、そういう肝心なところがはかられていないのですね。普通はアクセルを踏み込みながらずっと加速していくものですけれども、そうじゃなくて、一定の負荷に達してからそこで初めてはかります。いわゆるトランジェントモードと言われているのですけれども、これもたしか、環境審議会の方からトランジェントモードがないのはまずいのじゃないかという答申が書かれていたと思うのですが。

 矢印のついた点線は私が書き込んだのですけれども、例えば急加速した場合にどんな動きをしているのだろうかというのを私の推定で書いたのですね。これは時計回りで見ていただきたいのですけれども、まず、アイドリングの状態から発進するときにクラッチをつなぎます。アクセルをすっと踏み込むと負荷率が上がります。回転数もほんのちょっと上がります。クラッチがつながると、さあ加速しようというので、アクセルをぽんと踏み込みます。負荷率がぐっと上がりますけれども、車は重いからなかなか加速しません。じわじわじわっと加速してきて、加速状態になって大きな負荷がかかって、次のギアに変速するとまたアイドリングのところまで戻ってくると。大体この点線で囲んだ中で動いているにもかかわらず、そこから外れたところになぜか重み係数の多い、回転数比六〇%、エンジン負荷率五%という、どういう走り方をしたらそうなるのかというようなところに一四・二%という重みがついていますね。

 これをヨーロッパの例で見ますと、次のページになるのですけれども、現在のECE十三モードというのは、負荷率一〇〇%、回転数比六〇%のところに二五%という、これだけの重みをつけています。負荷率が大きくなれば、それだけ排ガスも汚れてくるわけですから、これは日本の規制に比べてかなり厳しいというふうに考えることができます。

 それから、これも改正の予定なんですけれども、その下の段に書いてありますのが今度新たに改正されるという図なんですが、日本のように非常に負荷が軽くて回転数ばかり高いようなところというのはここには入っていないですね。もちろん、走行形態が違いますので、一律に同じにしたらいいのかというと、そうも言えないと思うのですけれども、それにいたしましても、実走行モードに合致していないということは間違いなく言えるのじゃないかと思います。

 しかも、トラックはこの十三モードということで実走行とは違うようなモードではかっていまして、十・十五モードという乗用車とか軽い方のトラックというのは、市街地走行を一応想定したようなモードではかっているのですけれども、同じ交通環境を走っているのに測定するモードが違うということ自体そもそも疑問なわけです。

 トラックの保有台数を見ますと、大体一〇%ちょっとなんですね。これが、走行の混入率で見ますと大体四割から五割というふうなデータがいただいた資料に、これは平成九年の交通センサスですか、これを見ますと、保有台数わずか一〇%なのに四、五〇%トラックがまじっているというようなことが書かれております。ですからこの辺も、十三モードではなくて、もしNOx法ということで規制するのであれば、特定地域の中を走行する車だけでも市街地の走行モードを適用しなければいけないのじゃないかと考えております。

 それから、これは大した影響はないかもしれないのですけれども、軽の商用車、軽のトラックが、NOxの排出量に関しましていまだに優遇されている。現在の規制を見ますと、例えば議員の皆さんが乗っておられるクラウンですとかセドリックですとか、そういう車よりも、赤帽の軽トラックの方がNOx排出量が多くていいことになっているのですね。

 軽自動車というと環境にいいのじゃないかというふうなことを考えていらっしゃる方も大勢いるのじゃないかと思うのですけれども、実は軽トラックというのは非常に優遇されていまして、ガソリンの三・五トン以下のトラックと同じ排出ガスが認められてしまっているというようなこともありまして、この辺もちょっとおかしいのじゃないかと考えております。

 それから、使用過程車の排ガスレベルに関してなんですけれども、現在路上を走行している車のほとんどというのが、排ガスの浄化装置の耐久走行距離というのが大体二万キロから三万キロということになっています。この資料の四番目の表なんですけれども、ここに書いてあります。

 「現行」というところを見ますと、大体二万キロ、三万キロという数字が並んでいます。というのは、これは二万キロ、三万キロを超えてから先は、排ガス浄化装置が所期性能を維持していなかったとしても、まあ一応合法になってしまうわけですね。

 そうはいっても、車検でチェックされているのじゃないかというような見方をされる方もいらっしゃるかもしれないのですけれども、実際に車検場に行ってどういうことをしているかといいますと、ガソリン車でアイドリングのときにHCとCOを計測しているだけです。NOxははかっていません。ディーゼル車に至っては、スモークを一応目視するぐらいということは場所によってはやっているかもしれないんですけれども、私がユーザー車検で行っています所沢の陸運局は、ディーゼルの商用車の場合は何にも見ていませんでした。ということで、使用過程車の排ガス性能が劣ってきても、それが合法になってしまっているということなんですね。

 それがどういうふうに変わっていくかといいますと、この表の「変更後」というところなんですけれども、これが、平成十四年から十六年までの間にこれだけの長さに延長されていくということになっていまして、これは非常に歓迎すべきことだと思うのですけれども、こういう車に変わっていくまでの間というのが六年から八年ぐらいかかるんじゃないかと思われます。現在走行している車に、何らかの排ガス浄化装置の性能が維持されているかどうかを確認するような網をかける必要があるのではないか、こういう話もNOx法には盛り込んでいただきたかったなというふうに考えております。

 それから、都道府県知事の権限について、権限が強化されたというような形には一応なっているようなんですけれども、実は大気汚染防止法の二十一条を見ますと、都道府県知事は、排ガスの汚染がひどくなった場合に、道路交通法の規定によって交通規制していいということになっているんですね。道路交通法を見ますと、都道府県の公安委員会というのは、交通公害に起因する障害を防止するために交通規制をしてもいいということになっているんですけれども、この辺がきちんと運用されていれば、もう少しNOx法の必要性そのものというのもなかったのじゃないのかなというふうに考えております。

 最後になりますけれども、「事業者に対する指導に関して」というところなんですけれども、改正案の十五条の周辺を読んでみますと、どうも環境大臣というのが事業所管大臣の下に組み入れられているんじゃないかというような印象を受けます。これですと、事業所管大臣の方が強くなっちゃうわけですから、大したことはできないんじゃないかというふうに思います。

 そうはいっても、恐らくこのまま法律は通っちゃうんじゃないかと思うんですけれども、もしそうするのであれば、例えば事業所管大臣が判断基準を決めるなり指針を決めるなりということになっていますけれども、こういう判断基準なりを策定するに当たって、費用対効果というのが必ず計算されるんじゃないかと思うんですね。この費用対効果を計算するに当たる費用の中に、マイナスのコストをぜひ入れていただきたい。今までというのは経済に寄与するプラスのコストばかり計算していたのですけれども、規制を行わなかった場合に生じる環境被害によって生じるマイナスのコストというのをぜひ入れていただきたい。それをやらないと、結局これで骨抜きになってしまうんじゃないか、そういうふうに考えております。

 あと、最後のところはちょっと余談的になるんですけれども、事業者というのは基本的に利益を上げやすい方向で活動するものですから、運輸業者というのは少しでも燃料を節約するようにほっておいても合理化するんですね。それを指導するという形でわざわざ入れておいてもどういう意味があるんだろうかというので、私は非常に疑問に思っています。

 逆に、車をなかなか買いかえできない非常に小さな、運送業者ではない事業者、例えばリフォーム屋さんですとか外装屋さんですとか内装屋さんですとか、都内で工事でいろいろ動き回っている小さな業者さんなんかですと、利益も余り上がっていませんし、なかなか車を買いかえることができない。それでもやっぱり汚い排ガスの車を乗り続けなければならないというところに何らかの優遇措置なりなんなりというのを講じていかないと、効果は余り上がらないのではないかと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

    〔近藤(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

五島委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

五島委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増原義剛君。

増原委員 自由民主党の増原義剛でございます。持ち時間十五分でございますが、参考人の方々に少しお話をお聞かせいただきたいと思います。

 まず最初に浅野先生でございますが、かつてよりいろいろ御指導賜っておりまして、ありがとうございます。また、中環審初めいろいろ環境関係につきまして精力的に活動、御指導賜っておりまして、ありがとうございます。

 先ほどかなり子細にわたるお話がございました。そうした中で、現行法がどうして実効性が上がらなかったか。縦割りの問題とか情報の一元管理の問題とか、あるいは、先ほど安藤参考人の方から言われましたいろいろな問題があるんだろうと思いますが、このたびの改正案におきまして、特に都道府県知事の権限の問題というんでしょうか、これが非常に大きくクローズアップされてきて、いろいろ監督、助言ができるような形になり、また情報が一元的に環境省の方に集まってくるという、ある意味ではフィードバックの仕組みが少し整備されてきた、いろいろあると思うのでございますが、そういった面についてどのようにお考えかということが一点。

 それから、今いろいろCOP6あたりで問題になっておりますが、地球温暖化の問題も含めて、これをどのように考えていくべきかということがあると思うんですね。先ほどこれは岡田参考人の方からも話がありましたが、交通システムの問題ともやはり絡んでくる。これは後ほど岡田先生にお聞きしたいと思うのであります。

 いわゆる規制的手法、確かにこの中では、いわゆる枠組み規制の手法というんですか、事業者の自主的な取り組みも入れ込んだような形でのフレームを公的なものをつくって、その中で今度は各事業者が自主的に取り組んでいけるような仕組みになっている。

 そういう意味では非常に評価すべき点もあるのですけれども、もう一方で、私もその政策にタッチした人間として言いますと、環境基本法二十一条でありますが、霞が関文学の粋と言われたあのへんちくりんな二十一条の条文なんですが、いわゆる経済的手法ですね、これをどういうふうに組み合わせていくべきか。交通システムの問題のほかに、そのシステムの一部というべきでしょうか、そういうものも考えていっていいのではないかと思っておりますが、そこらあたり浅野先生の方からまずお聞きいたしたいと思います。

浅野参考人 どうもありがとうございました。

 まず御質問の第一点でありまして、知事の権限強化であります。

 これまでは業所管大臣がコントロールをするということになっておりましたので、どうしても情報が業界単位でしか集まらない、個別の事業者にわたる情報というのがなかなか集まりにくいという状況がございました。今回の制度改正によりまして、知事のところに計画を出さなきゃいけないとか報告をしなきゃいけないという形で、個別の事業者に少なくとも手が伸びるということになりました。事業者の側も、みずからの走行実態を把握するということができるようになりますと、ちょうどPRTRの制度と似たような面もあると思いますけれども、やはり自分のところの効率性の悪さということに気がつくということもあるのではないかと思います。

 先ほど安藤参考人は、運送業者はみずからどうせ最適化をねらってやるんだから指導は意味がないとおっしゃったのですが、確かに運送業者はそうかもしれませんけれども、それ以外の業者というのは結構いるわけでありますから、それ以外の業者がもっとみずからの行動についての認識を持つという効果はあろうかと思います。

 それから、さらに、個別情報が集まってまいりますので、特に負荷の高い事業者に対しては、排出削減努力をしていただきたいということを自治体との間で話し合うといいますか、自治体がそこにお願いに行くという手がかりができるわけでありまして、そういうことは従来公害対策の中でも、例えば公害防止協定のような形で行われていて、自治体には十分実績がありますから、その面での機能は期待できるのではないか。そして、そのお願いをする中で、低排出車種を導入しようということについては、事業者の側にも弾みがつくのではないだろうか。もちろんこの場合に、現在でも補助金制度なんかがあるわけですが、これをもっと強化する必要が当然あろうかと思います。

 その意味では、先ほどの第二の質問でございますけれども、経済的措置と言われた点について、これは、もう少し弾力的に政策課題実現のための措置として考えていかなきゃいけないんだろうと思います。自動車税制にせよ燃料課税にせよ大変複雑でございますし、それから道路の通行料金体系などについても、必ずしも政策目的を実現するという意味ではすっきりしていないわけでありますから、単に税という話だけじゃなくて、経済的措置というのはトータルに考えていく必要があろうかと思います。

 そして、そこで集まったお金が一般財源に流れるというやり方ももちろんあるんですけれども、しかし、ある目的を持っているものについては、その目的のところに流すということが必要だろうと思うんですね。例えて言いますと、努力をした人は報われる、努力をしない人は損をする、これが一番わかりやすい理屈だと思うわけで、努力をしてやっている人のところには補助金も行きます、いろいろな優遇措置もあります、努力をしない人には高い負担がかかりますというふうにすることが、恐らく先ほどの、知事さんがお願いをして努力をしてくださいというときの突っかい棒にもなるのではないかと思います。

 ぜひこういうことは国会で御議論いただくことが最も適切ではないかと思いますので、増原先生の御活躍をお願いいたします。

増原委員 御答弁に加え、励ましの言葉、どうもありがとうございます。

 次に、岡田参考人に少しお伺いしたいのでございますが、先ほどのアメリカの例はよくわかりました。イギリスの例をお話しになる途中でおやめになったのでございますけれども、私のときにあわせてお答えいただきたいと思うのでございます。

 いわゆる燃料課税と申しますか、税制のグリーン化というので、先般、自動車税の方につきまして、そのウエートづけをする。これは先ほど浅野先生が言われたように、環境コストを払っていないものについてはちょっと重くし、より環境コストが少ない、負荷が少ないものについては軽くする、こういう発想で自動車税がなされたわけですが、実はここのところ、IEAのいわゆる燃料課税を見てみますと、日本は今、特に石油関係の人は、日本の石油課税は重い重いと言われているんですが、全然重くないんですね、全く重くない。

 フランスやイタリー、前はイタリアが一番重かったのですけれども、値段も高かったのですが、今やもうイギリスあたりがすごく高いですね。これを見ますと、毎年燃料課税を上げているんですね。それが高過ぎて、先般、オイルが上がったときにああいうストライキのようなものが起きたのかもしれませんが。

 それはそれとしまして、実は今、ガソリンと揮発油と軽油への課税は非常にアンバランスになっております。これは、第一次オイルショックのときに、バス、トラックという公共財を提供するんだから、料金を抑えるために実は導入したわけであります。これは先生御承知のとおりであります。しかし、今やもうデフレの時代で、その必要はないわけでありまして、とりわけ一般の乗用車までディーゼル化が進んでいる。どうしてか。それは燃料が安いからなんですね。

 ですから、そういう意味では、軽油引取税をもっと上げて、ガソリン税を下げるかどうかは別としまして、本当にそういうところを上げて燃料課税をイコールフッティングの形にしてしまう。そうすれば自動的に、先ほど安藤先生も言われましたけれども、事業者の人は必死で燃費を考えているわけですから、一般の乗用車にせよ、あるいはトラックやバスにしても、それについて当然合理的な判断をして動いていくのではないか。そういう面で、税制面、燃料課税の面につきまして、イギリスあたりも相当今度は環境シフトをしているようでありますので、そこらあたりを少しお聞かせいただけたらと思います。

岡田参考人 先生は専門家でいらしゃるらしいので、私の方からお答えをするのはいささか面映ゆい感じもいたします。

 道路関係の租税問題というのは昔から非常に政治問題になってまいりましたし、外国でもやはり同じでございまして、それで揮発油税と軽油、つまり、トラック関係の税金との差が大きいのではないかということも長年主張されてきたとおりでございます。

 そこで、問題を非常に部分化して物事を判断し、軽油対揮発油税、こういうふうに比較論で物事を見る方がいいのか、もうちょっと、例えば道路であれば、道路空間の利用というものの負担の仕方をどうするかという観点からいきますと、道路価格、料金制ですね、ロードプライシング、これはちょっと余分な話かもしれませんが、リンダール均衡というのは、とにかく料金制でもって何もかもカバーできないかということを経済学者は主張いたします。ところが、実際にはそれが不可能なわけですから、それを税金で補っている、こういう発想をするのがセカンドベスト論、こういうふうに言われる考え方です。

 そこで、先生の御指摘のように、揮発油税対軽油引取税という対応関係ではなくて、もうちょっと全体の負担のあり方、あるいは公共財の供給システムというのは一体どうやるべきなのかというところにいきませんと、問題がどうしても部分化してしまって、こっちをいじればこちらに問題が起こるということが起こってしまう危険があるということだけをちょっと申し上げておきたいと思いますが、それでよろしかったでしたか。

増原委員 加えまして、岡田参考人に、イギリスの最近における全体の交通システムと申しましょうか、交通政策と環境政策との融合の問題についてもう少しお願いします。

岡田参考人 舌足らずで大変申しわけありません。

 イギリスのことをちょっと申し上げさせていただきますが、高速道路は無料制を原則とっております。それで、ブレア政権になりまして高速道路有料制を導入しようではないかと。つまり、道路空間にプライシングシステムを導入するということを考えました。これはもうイギリス全国に行き渡りまして、実は一九九五年、大がかりな研究結果を、一九九五年にロードプライシングの導入を仕掛けて、これは相当大きな、ここに書いてございますが、交通論争の種になりました。ところが、これは失敗をいたします。

 それでロンドン市長は、その後、ロードプライシングを一つの政治スローガン、公約に掲げて選挙に勝って、これは二〇〇三年目標で一般道路の料金制を導入するということを今計画している最中ですが、これには大変悲観論が多いということで、そういう意味で、プライシングでいくのか、レーティングと言いますが、要するに税金でいくのかという点は、今後もやはり残り続けるテーマだろうと思います。

 アメリカはそこまでいっておりません。むしろ、一九八〇年代の税金に対する反税運動、タックスレボルトという現象が起こりまして、料金どころか税金を上げるのも反対だといってこれは物すごい反発が出まして、したがって、負担政策と環境政策がここでぱちっと切れてしまったという状況にございます。

 これまた舌足らずかもしれませんが、ちょっと一言申し上げておきます。

増原委員 残り時間が少なくなってまいりましたが、安藤参考人にちょっと聞きたいのであります。

 先ほど来、かなり技術的な分野で、現行法も含めて不備があるというふうに私も感じました。これも今後さらに私ども勉強して、改正すべきは改正していかなくてはいけないというふうに思っておりますが、私が聞き及ぶところによりますと、相当いろいろな分野で技術的にもそのエキスパートであられるようであります。

 時間が参りましたので一言だけお願いしたいのでございますが、今後いわゆる自動車の分野で、きょうの日経新聞にも出ておりましたが、今やトヨタがいろいろな、ハイブリッドから燃料電池車まで出していくということを言われていますが、ここらあたりの今後の見通しにつきまして、安藤参考人の方に何か御意見がございましたら一言お願いできればと思います。

安藤参考人 基本的には、低公害車を開発するということについては歓迎すべきことだと思うんですけれども、今走っている車がすべて低公害車に変わったところで、渋滞の問題ですとか交通事故の問題ですとか走行騒音、振動の問題というのは全然解決しないわけですね。その辺をかんがみますと、やはり基本的には、低公害車よりも交通量の削減、交通マネジメントという方を重視していくべきではないかと考えております。

増原委員 どうもありがとうございました。

五島委員長 近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 本日は、三人の参考人の先生方には貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 実は、私は名古屋の選出でございまして、まさしくあの名古屋南部公害訴訟のことを大変に厳しく感じているわけでありますけれども、今回、浮遊粒子状物質の規制が加わった、これは大変に評価すべきことであると思うんですが、この物質の発がん性の疑いというのは随分前から指摘されてきたことだと思います。それが、この対策がここまでおくれてしまった原因についてはどういうふうにお考えでしょうか、三人の先生方にお聞きをしたいと思います。

安藤参考人 まず、大気汚染防止法の中の規制が実情から乖離していたというところが大きいのじゃないかと思います。現在のようなモードの規制ですと、その走行モードから外れてしまったら、どんな排ガスを出していても一応法律的には合法になってしまうわけですね。最近電子制御というのが大はやりでして、負荷状態ですとか走行状態に応じて排ガス浄化装置を動かしたりとめたりするということも可能なわけです。そうなりますと、馬力が必要なときというのは排ガス浄化装置が動いていない方が一般的に効率がいいわけですから、そういうふうにして排ガス浄化装置の働きをとめることもできてしまう。その実態がどうなっているのかということは個別具体的にはわかりませんけれども、そういう可能性があるということです。

 それから、排ガス規制をするに当たって、大体自動車メーカーが、このくらいならできますよというようなことを言わないと基準が決まらないという傾向がどうもあるようでして、中央環境審議会ですか、第四次答申にも書いてあるのですけれども、「今後とも排出ガス低減技術の開発状況等を見極めつつ、適宜排出ガス低減目標を見直すことが必要である。」というふうに、「排出ガス低減技術の開発状況等を見極めつつ、」という断り書きがついているのですね。だから、これだけできますというふうに言われないと、排出ガスの低減目標を見直すというのは余り積極的に行われてこなかったのではないかと考えております。

岡田参考人 名古屋の場合は十一月二十七日でしょうか、判決が出まして、都市交通全体の観点から、それから環境政策の観点から、今後は全体的に考えていく必要があろうかと思いますが、とりあえず利用できる政策はあらゆる政策を動員して対策を立てるべきだ、まず環境政策が優先すべきだと理解をしております。

浅野参考人 なぜPMの規制がおくれたかという御質問でございます。

 幾つか理由があろうかと思います。一つは、技術的に見て、NOxの対策とPMの対策がトレードオフの関係にあるということが言われておりまして、どちらに政策の重点を置くかという政策重点の考え方の整理が悪かったのではないか、これが第一点でございます。

 しかし、その背景にありますのは、PMについて少し研究ベースの問題があったと私は思っております。といいますのは、PMそのものがトータルに問題であるということは、例えば疫学調査等で幾らでもデータを出せるのですけれども、それを幾ら言っても学術論文にならないというのですね。PMの中のどの物質がどういうメカニズムでどういう悪さをするのかが明らかでなければだめであるというような形で、従来PMについての研究も、中に入っている個々の物質がどうであるかというところに主に関心が向けられていて、トータルにPMをどうするかというところの議論がなかなかうまく進まなかったのではないかと思います。

 何よりも、そういったように、具体的な数字がどのレベルでどういう危険性があるということがない限り、政策を動かすことが難しいという雰囲気が結構また障害になったのではないかという気がしますが、やはり危険性があるということがわかれば、それに対応する施策を迅速に行うという発想の転換が必要であろう、このように考えておりまして、今後は、このような問題については、もっと細かいデータがなくてもやらなければいけないことはやるんだというような政策の方向に持っていく必要があろうと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 御指摘があった中で、いろいろと現状が難しいところがあったのではないか、そういう中で、なかなか国の規制も思い切って踏み込めなかったのではないかというような御指摘があったのかなと私も思うわけです。

 ただ、そういう中で、やはり一番大事なのは、できるかどうかではなくて、まずやるんだということが、特に法律、予防的な側面が必要だというふうに考えるわけでありますが、今回の改正法案でも私はかなりそういったある種の配慮というものがあるのかなと思っているわけであります。つまり、法案では厳しくするというようなことはうたってあるけれども、細かいことについてはまだまだ、これから政令で決めていくとか、そういうところにちょっと心配をするわけであります。

 そういう中で、今回の規制が、自動車運送業者については国土交通省が監督するということになっておるわけでありますが、ここを私はちょっと心配をしておりまして、やはり環境省がしっかりと、一元的にというか、先ほどどなたかの先生の指摘の中でも、国土交通省の下に環境省があるような感じがしないでもない、そうなると規制が手ぬるくなってしまうのではないかという御指摘があったような気がするのですが、この、自動車運送業者については国土交通省を監督者とするということについてはいかがお考えか、岡田先生と安藤先生にちょっとお聞きをしたいと思います。

岡田参考人 大変重要なポイントを御指摘になっておられるように思います。

 環境行政というのはもともと横割り行政なんですね。今お話しのように、国土交通省というのは、今までは少なくとも、これは国土交通省になりましたから変わっていくと思いますが、縦割り行政である。縦割り行政と横割り行政のバランスをとるというのは、ほかの日本の行政システムの上で古くからある最大のテーマであろうかと思います。そういう意味で、環境省が優位に立つべきか、あるいは国土交通省が優位に立つべきかということは大変難しい。

 イギリスでは一種の調整機構をつくってやろうとしたのですが、これはなかなかうまくいきません。ただし、省を合併いたしまして、交通環境省ということでこれをくっつけてしまいました。だから、大げさに言うと、内閣がかわって、問題が起こるのに応じて行政システムを地域交通環境省というふうにくっつけているというふうな政策で、省庁サイドが政策のあり方の方に歩み寄っているという方向です。

 日本ではそこまで十分に対応できないかと思いますが、その場を設けてやるか、だれが責任をとるか、ここら辺の整理はもう一段やる必要があろうかと思っております。

安藤参考人 小泉総理の米百俵の話じゃないのですけれども、国土交通省というのが主導権を握っておりますと、どうしても目先の経済ですとかそちらの方にとらわれがちになってしまって、対策が後手後手に回るのではないかと考えております。少なくとも対等、もしくは環境省の発言権というのをもう少し強める方向に変えていくべきではないかと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 私自身も、やはりこれは環境省が非常にリーダーシップを発揮してしっかりやっていってもらいたいというふうに思っているわけです。

 ところで、今回の法案改正の審議の中で、国はこれまで、道路渋滞やそれに伴う排気ガスの影響があった、それを緩和するためにはどちらかというと新たな道路を建設してきた、つまり渋滞をするからそこで排ガスが出る、だからこそ道路をつくってきた、バイパスをつくったりとかやってきた。

 ちょうど名古屋の南部は、その意味でいろいろな道路が交差をしているようなところになってしまって、私は、結果的には国が言ってきたこととはかなり逆な状況になっているのではないかと思いますが、参考人の先生方はどういうふうにお考えか、恐縮でございますが、三人の方にお聞きをしたいと思います。

浅野参考人 渋滞対策のためにバイパスをつくる、新設道路をつくる、これは一つの施策のあり方としては確かにあり得ると思いますし、さらに、その混雑の原因となっている交差点改良というようなこともあろうかと思います。ただ、確かに、バイパスをつくるということがどのぐらい効果を上げたのかということについての実際の検証は余り行われていないのですね。例えば、音一つとってみても、バイパスの開通前と開通後でどのぐらい変わったのかということは、実証的にほとんど何も明らかにされていない。

 それから、多分先生お気づきだと思いますが、道路をつくれば車がさらにまたふえるということは間違いない事実であります。

 ですから、それだけが唯一の施策であるとは思えないわけで、それのトレードオフの関係というものを考えなければいけない、審議会では、その点はかなり真剣に議論をしたつもりでございます。

 例えば、路面の補修等についてもっと力を注ぐ。渋滞緩和という点ではないかもしれませんけれども、ある意味では環境政策として非常に重要であります。新設の道路には大量に予算がつくけれども、道路の維持管理費はほとんど予算がない、こういうアンバランスな状態というのは非常に問題だと私は思っておりまして、道路財源の見直しを、一般化する前に、まず、その中での配分を考えるということも当然必要ではないかというふうに思います。

 ちょっとお答えが御質問と外れたことに至ってしまいましたけれども、渋滞対策については、基本的には車そのものの量が問題である。他の参考人もみんな同じようにおっしゃっていますけれども、その点に手をつけないという形での道路新設ということだけではどうもだめだということは、先生御指摘のとおりであろうかと思います。

岡田参考人 これも大変古くて新しいテーマで、重要な御指摘をいただきました。

 先ほどもちょっと申し上げましたが、ドイツの緑の党というのは、道路をつくること自身に対して批判的な態度をとっております。しかしながら、そうはいいながら、現実にはやはり環境対策のための道路投資も必要だということで、そこは大変あいまいになっている。我が国の場合は、御承知のように、環境対策のための道路投資はあり得るという前提であります。

 そこで、考え方が二つほどあります。

 一つは、もし道路をつくれば交通量がふえて環境が悪くなるから、道路をつくるべきでないという論理、これは、昭和四十年代から我が国でも指摘されてきたとおりです。道路をつくればつくるほど車がふえてしまって、環境がよくならないどころかかえって悪くなってしまう。そして、自動車もふえるからまた道路をつくる。その繰り返しをどこで遮断すべきか。遮断すべきであるという論理は、昭和四十七年の宇沢弘文先生の「自動車の社会的費用」の中ではっきりとうたわれております。

 しかしながら、逆に、交通量がそれほど伸びないということであれば、今混雑しているような環境の非常に悪い道路に別に道路をつくってやることによって、いろいろな意味で分散化を図るべきだ。この点は、経済学の方でも、ピグーの二つの道路問題として古くから議論されている。その均衡点、バランスがどうとれるか。これはトラフィックエンジニアリングの方でも大きな研究課題でございますが、今のところ十分な結論は出ていないということだけ申し上げておきたいと思います。

安藤参考人 潜在需要を把握するということが非常に重要になってくると思います。潜在需要があるということになると、道路を拡張したところで、渋滞解消効果があるどころか逆に車がふえてしまうというのは、例えば関越自動車道あたりを見るとよくわかると思うのですけれども、三車線化されたにもかかわらず渋滞はそれほど劇的に減少したというふうには考えられないと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

五島委員長 青山二三さん。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。

 三人の参考人の皆様には、雨の中、大変足元の悪い中お越しいただきまして、ただいま貴重な御意見をお伺いさせていただくことができまして、本当にありがとうございます。

 私の方からまずお伺いしたいと思いますのは、大都市地域におきます大気汚染が非常に深刻な状況になっております。

 今回の改正法案で、自動車から排出されます粒子状物質を対象にしたこと、また対象地域を拡大したこと、そしてディーゼル乗用車を規制の対象に追加したことなど、これは一定の評価のできる法案になっていると考えております。

 環境省は、環境基準が二〇〇〇年までに達成できなかったのは、交通量の増大により規制の効果が出なかったことを原因に挙げておりますけれども、ただいま参考人の方々からもそのようなお話を伺いました。

 そこで、自動車の交通量の抑制につきましてお伺いしたいと思います。

 改正法案では、事業者を指導することが交通量の抑制につながる、こういうふうにしているわけでございます。しかしながら、交通量を直接に抑制するという施策は盛り込まれていないわけでございます。

 交通量を抑制するためには、流入規制とか、またロードプライシングとか、あるいはカーシェアリングなどの試みも始まっているようでございます。現在、特定地域のような広域的な地域において交通量を抑制するための有効な施策につきまして、三人の参考人の皆様からお伺いしたいと思います。

浅野参考人 広域の地域での交通量の全体としての抑制をどうするかということについては、岡田先生が御専門でいらっしゃるわけでありますが、率直に申しまして、何か一つの方法でこれをやれば効果が上がるというものがあるならば、とっくの昔に問題は解決しているというふうに思いまして、なかなかお答えが難しい問題ではないかと思うわけであります。

 しかし、特定地域のようなところの場合には、人口が集積しておりますし、公共交通機関も十分に発達しているということがありますから、そういう地域の特性を踏まえた対策ということが必要ではないか。

 つまり、オール・ジャパンで議論をしていきますと、九州の僻地のようなところは、どうしたって自動車を使わなきゃいけないというところがあるわけですけれども、そんなものを使わなくても移動ができ、物も運べるというような状況があるところではそれを活用するというのがまず基本ではないかと思うのですね。

 そのためには、単に責務とか努力とか言っているだけではどうにもならない面があるわけでありますから、例えばロードプライシングであるとか乗り入れ課徴金であるとかといったような経済的な措置も、とるべきときには思い切ってとらなきゃいけないのではないかと思います。

 ただ、この件に関しては、これは多少素人ですから誤った認識なのかもしれませんけれども、特定の道路を定めて、その道路にプライシングをかけるというのは、交通流の変化をもたらすという政策効果はあるわけですが、総量の削減にはつながりません。それから、乗り入れ課徴金というべき、ある地域全部に入ればお金がかかるという施策の場合には、それは削減につながるかもしれませんが、これは税という形で何か施策を講じることとどこが違うのかよくわからないわけでありまして、ロードプライシングと単純に一言で言っておりますけれども、これもいろいろあるのではないか。

 トータルには、交通需要マネジメントというシステムの中にどういうものをはめ込むかということを考えることが必要なのではないかと考えているような次第でございます。

岡田参考人 先生の御指摘でありますが、ある政策を導入いたします場合に、考え方として三つあろうかと思います。

 第一点は、その政策が果たして有効な政策であるかどうか。あるいは、もっと言えば、コストイフェクティブネス、政策評価問題が今話題を呼んでおりますけれども、いかにコスト的に安い政策であるかということが第一点であります。

 それから、幾ら安くても実行可能性がなければ導入をすることが不可能であります。道路のような公共財の場合には導入ができないケースが非常に多いということが一般に言われているところでございます。

 第三番目には、社会的に果たしてそれで、意識といいますか感覚、その政策を受け入れてくださるかどうか。そうしますと、社会的なコンセンサスをいかに確立していくのか、幾らいい政策でも社会で受け入れてくださらなければうまくないのではないかということだけ申し上げさせていただきます。

安藤参考人 例えば物流に関して、交通量を抑制するに当たりまして、現在、宅配便なんかですと、時間を指定したりですとか引き取りサービスなんかをやっているわけなんですけれども、これは私の感覚からいうとちょっと過剰サービスなんじゃないか、世の中がそういう方向に動いてしまっているのでこれをとめるというのは非常に難しいと思いますけれども、この辺をもうちょっと考え直した方がいいんじゃないかということ。

 あと、コンビニエンスストアの配送が今大体一日六回とかそれくらい行われているらしいんですけれども、これもちょっとやり過ぎなんじゃないかなというふうに考えてはいるんですけれども、なかなかこれは、便利なことを求める世の中ですので、受け入れてもらえるとは考えておりません。

 実際、では、物流をどうしたらいいかというと、一般的に言われていますけれども、やはり大きな物流に関しては鉄道にシフトしていくということをもう少し積極的に展開したらいいのではないかと思います。

 それから、ロードプライシングということも言われていますけれども、実際、シンガポールなんかでも行われていますけれども、あそこは島だからできるわけですね、入り口、出口がもう決まっていますので。東京都でそれを行おうとしてもなかなか難しいんじゃないか。どこで関所を設けるのかということで、山手線のガードの下だったら必ずみんなが通るからというようなことを言われていますけれども、そうすると、環七とか環八とかは全部漏れちゃうわけですね。そういうところまで網をかけようとすると、すべての抜け道にくまなく料金所を配置しなければならないというようなことになりまして、非常に現実的ではないということになります。

 あとは、料金自動収受システムといいまして、ETCといって高速道路なんかで最近よく見かけますけれども、ああいう形で自動化なんということも考えているようなんですけれども、あれは実は致命的な欠点がありまして、領収書が必要な人というのはあそこで一たんとまらなきゃいけないんですね。とまって領収書をとらないといけないから、全然ノンストップのシステムじゃないんですね。前の車がいつとまるかわからないということは、後ろにいる車も、追突しないように、とまってもいいようなスピード、車間距離でいないといけないわけですから、そこでまた新しい渋滞が発生してしまうということで、ちょっとおまけ的になりましたけれども、ETCを使ってロードプライシングというのも現実的ではないと考えております。

青山(二)委員 大変交通量の抑制が難しいということがさらにわかったような気がいたします。

 それでは、次の質問でございますけれども、これは浅野参考人にお伺いをしたいと思います。

 一九八〇年代から実施されております動物実験の結果、ディーゼル車の排出する微粒子にはたくさんの発がん物質が含まれておりますために、肺がんとかぜんそくとか花粉症を発症させる働きがあるということが判明いたしておりました。

 環境省は、現在、ディーゼル排気粒子の健康リスクの解明に向けた調査を進めておりまして、平成十三年度末を目途にいたしましてその報告を取りまとめたいということを過日の環境委員会で御答弁をいただいたところでございます。

 今回の改正案では、自動車NOx法で粒子状物質対策を行うこととしている、こういう点につきましては、浅野参考人から、積極的な姿勢を示した点で評価できるとおっしゃっていただきました。

 そこで、このディーゼル排気ガスと健康被害との関係が科学的に完全に解明しているとは言えなくとも、もう二十年前からこの発がん性は判明していたわけでございますので、人々の健康を守るためにより厳しい規制を行うべきと私は考えておりますが、先生はいかがでございましょうか。

浅野参考人 お答え申し上げます。

 ディーゼル排出ガスの微粒子の危険性については、実は私は法律が専門でございますので余り詳しくは存じません。先生がおっしゃるようなことであろうかと思います。

 私も予防原則という言葉を先ほどの意見の中で申し上げましたけれども、予防原則というのは、何となく危なそうだから、だからそれはもうともかく何とかしなきゃいけないという程度の話ではないようでございまして、こういう言葉を使うときには、ある程度リスクについての確実なデータがある、そして、そのリスクに対して対策を講じることの費用対効果も考える、そういうことも全部含めて、やるべきときにやるのが予防原則だと言われているわけでございます。

 PM二・五ということが強く言われるようになりましたのは、私の知る限り、比較的最近のことでございまして、現在言われておりますのは、死亡率が確実に上がるということが言われているわけであります。

 具体的な疾病としてどういう疾病にかかるとか、どういう発がん性があってどうなるんだということを定量的に議論するということになりますと、これはまだいろいろ議論があるのではないかと思いますし、それから発がん性については、やはり量等の関係が当然ございますから、ごくわずかの暴露でもがんになるのか、それとも相当量の暴露でがんになるのかといったようなことが当然問題になってくるのではないかと思われます。

 ですから、発がん性の可能性があるから抑えるといっても、一方では、では自動車を全廃するかというようなことはとてもできないわけで、リスクの問題というのはいつもそういうトレードオフの関係を考えなきゃいけないという厄介な問題がありますから、であるから、先ほど言いましたように、リスクの程度とそれを抑えることについての影響その他さまざまなことのバランシングが必要だと言われているんだろうと思います。

 しかしながら、私は、PM二・五に関しましては、先ほども申しましたように、現在、死亡率が上がるということだけでもって、それがもうかなり確実であるということが言われている以上は、これは削減のための政策を講じるということは必要であろうかと思います。

 政策を考える場合に、リスクが高いので、ハイリスクだからその削減努力をしなきゃいけないという政策は、直ちに被害の補償につながるという議論とは結びつかないわけですね。そこをどうも我が国では、ハイリスクだから対策をしなきゃいけないというと、直ちにそれが補償の問題につながるという認識が強過ぎるものですから、どうしても対策の方も慎重になってしまって、余りこんなことを言うとまた訴訟か何かになるのではないかという議論になるんですけれども、これはもっと裁判所がしっかりしてほしいなと思うわけですね。

 補償をしなければならない、それは明確に因果関係があるということを当然前提にしての補償ということなんでしょうけれども、そのレベルでなければ公共政策は何も動かしちゃいけないということはないはずでありますから、予防対策というのは被害が出ないようにするところに眼目があるわけなんで、そのためには、ある程度リスクがはっきりしていて、この程度のものはこのぐらいに抑えなきゃいけないという段階から政策を発動すべきであるというふうに思います。

 その意味では、NOxかPMかという話があったのですけれども、これはやや遅きに失して、ようやく今回PMの方に力を向けようというふうになってきた。遅きには失していると思いますけれども、ともかく、その方向に向かって努力をしていくということはぜひ必要であろうかと思うわけですね。

 努力をするという姿勢を示すことによって、当然技術もそれを追いかけてついてくるという面があるわけで、従来は、NOx対策をやったら、もう粒子状物質の対策はほとんど手が出ませんというような言い方をされてしまうんですけれども、これはまた問題でありまして、粒子状物質の対策をちゃんとやってくださいよということをメッセージで明確に出すということが技術の進歩をもたらすというふうになる。両立するような技術を当然優秀な技術者は考えていくんだろうと思いますから、必ずその方向に向かっていくのではないかと思います。

青山(二)委員 時間が少なくなりました。最後、一問だけ質問させていただきたいと思います。

 ディーゼル車の増加を調べてみますと、一九七三年に二千八百台でありましたものが、年々増加をいたしまして、一九九〇年には二百五十二万一千台にもなっている。その増加の理由は、燃料費が安い、馬力が出る、エンジンの耐久性がよい、こういう点があります。そして、第一次オイルショックでガソリンが高騰したということで、このディーゼル車が飛ぶように売れて、こういうことがずっと十年間も続いているという現実がございましたので、いやが上にもディーゼル車がふえてきた、こういう実態であろうと思います。

 先ほど、岡田参考人の方から、カリフォルニアでは厳しい規制を行った、フリート規制というんですか、これを行って効果を上げたということでございます。日本のバスはほとんどディーゼル車、トラックも六、七割はディーゼル車、乗用車は何と五百万台もある、こういう中で、この法案が成立いたしますと、ディーゼル車もガソリン車並みの厳しい排ガス基準が適用されるということになって、このことでは期待したいわけでございますが、しかしながら、日本ではディーゼルエンジンの開発が大変おくれていると聞いております。ですから東京、名古屋、大阪では所有できなくなる可能性もあるわけでございます。

 過日、この委員会で、天然ガス自動車とか燃料の給油スタンドを視察してまいりましたけれども、自動車メーカーに対しましてこうした低公害車の生産を促進させていくためにはどのような方策がよろしいでしょうか、これを岡田参考人にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

岡田参考人 大変難しい御質問ですが、要するに、自動車メーカー自身が競争をしていただく、これが一つ。それから、それをバックから支援するという意味で、税制の優遇措置をとるというふうないわゆる租税政策。それから、メーカーの生産計画などの時間的なスパンを明確にして、方向性を国の方からリードしていくという姿勢が必要ではないかと思っております。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

五島委員長 樋高剛君。

樋高委員 きょうは、三人の参考人の先生方には、お忙しい時間を割いてお話を賜りまして、本当に感謝いたしております。そして、心から敬意を申し上げます。

 まず、これは委員会の方の問題なんですけれども、きょうお話を伺って、さまざまな先生方、参考人の三人の先生方からすばらしい御指摘をいただいて、もうきょう採決ということで、実はこれが法案に反映されないことに私は素朴な疑問をすごく感ずるわけでありまして、そういうことのないようにこれからやっていかなくてはいけないのではないかということをまず申し上げさせていただきます。

 そもそも、今回、自動車NOx法の改正に至りましては、SPMによりまして健康に対して影響があるという部分もありますし、また環境基準の達成が困難になったからという部分もあるわけであります。

 そんな中で、対象物質に粒子状物質を追加したり、地域を拡大したり、また排出ガス対策の強化といたしまして、粒子状物質についての車種規制を導入したり、車種規制の強化をしたり、また事業者に対する措置の導入を行うということが内容であります。十分であるとは思えないのですけれども、一歩前進ということで私は評価できるのではないかと思うのでありますが、なおやはり今後も、この法律ができ上がった後もしっかりと点検をし、ふぐあいが生じたときには積極的に変えていかなくちゃいけないと思うわけであります。

 まず冒頭に、三人の参考人の先生方にそれぞれお伺いをしたいのでありますが、今回の法改正でそもそもの目標は達成できるとお考えであられるのか。今までの経過を見ますと、現実的にはなかなか難しい部分もあるのですけれども、では、その目標に向かってどういうふうにしていったらいいのかにつきましてまずお伺いをさせていただきたいと思います。

安藤参考人 効果につきましてですけれども、これは非常に難しいのじゃないかと思います。

 何度も申し上げているとおり、やはり根本的な原因として、走行量、自動車の量が非常に多いということが挙げられます。単体の規制をしましても、それが本当に実態に合っているのかどうかという点で非常に疑問も大きいですので、新しい規制を通った車が多少ふえたところでどれだけの効果が上げられるのかというところには疑問を感じております。

 その目標を達成する手段なんですけれども、それは、私ごときがわかればどなたかがもうとっくに考えついているのじゃないかと思います。

 以上です。

岡田参考人 どういうふうにやるかということは、効果をどう見るかということでありますが、環境というのは変わっていきますよね。したがって、本法案がどれぐらいの効果を持つかということを常に見きわめて、俗に言ういわゆる進行管理という方向で常に見きわめていくという姿勢が大変重要だということです。

 それから、その成果を国民に発表して理解を求める。できないならできない、できるならできる、その辺の行政プロセスが非常に重要だということを申し上げておきたいと思います。

浅野参考人 私も岡田先生と同じ意見でございます。

 目標が達成できるかどうかということでありますが、これは正直言ってわかりません。しかし、達成するべく努力をする必要がある。私は、粒子状物質についてはかなり進むのではないか、かなりの点での期待をしております。

 どうすればいいかということでございますが、これまでの法制度の問題点は、総量削減計画をつくるのですが、これは目標をつくるために計画をつくっているところがあって、では、それはどうなるのかということは全くフォローアップができていないのですね。中間点検もできていない。第一、データが集まるのがすごく遅いのですね。二年ぐらい後になってようやくデータが集まるわけですから、これでは、分析をして次の手を打とうといっても手の打ちようがないわけです。ですから、進行管理が大事である。そのために、リアルタイムでいいから地域の情報が早く手に入るようにということで都道府県知事の権限強化ということをやったわけでありますから、これをぜひ空洞化させないようにする必要がある。

 それから地域単位では、とにかく早く情報を整理する。環境情報整理の迅速化を図るということが必要でありまして、そういたしませんと、例えば毎年毎年のことが全然つかめていない、先がどうなるかということもわからないという問題が起こってしまいます。これはぜひとも防ぐ必要があろうかと思うわけでございます。

樋高委員 ありがとうございます。

 同じく三人の参考人の先生方に伺いたいのでありますが、いわゆる特定地域、対象地域は今後どのぐらいまで広げていくべきとお考えか、また、なぜそう思われるのかにつきましてお伺いをしたいと思います。

浅野参考人 お答え申し上げます。

 現在の特定地域は車種規制を前提としております。そうなりますと、車種規制というのは余り小さい自治体を一つだけ対象にいたしましても、結局車庫をよそへ移してしまえば完全に逃れることができますから、相当程度の固まりを持ったところを押さえなければなりません。しかし、全く汚染されていないところをそういう理由で広げて指定するということも、これはまた法適用上の問題がございますから、やはりどうしてもその要件を満たしている地域で相当の固まりがある場所ということに限定せざるを得ません。したがってこれは、ふやすということは言うのは簡単でございますけれども、そのようなことで必ずしもうまくいくかどうかということについては疑問がございます。

 それから、汚染物質によっては、汚染の発生地と被害が出る場所が違うということがあります。そうなりますと、モニタリングでひどい汚染が出ているというところを幾ら押さえられてみても、発生地が違いますとこれは全然効果が上がらないということがございますから、その点も考慮する必要があるのではないかと思います。

 小さい単位のところはむしろ条例にゆだねるとか法に準じた施策を行わせるとか、車種規制が無理であっても、その他の施策については同じような形で実施できるような、地域の努力という形でとりあえずはクリアしていくということになるのかと思います。

岡田参考人 特定地域の問題というのは、今浅野参考人から御説明があったとおりでございます。つまり、人口規模であるとか広さであるとか、そういうことだけではなかなかはかり得ない。

 問題は、私は局地対策の重要性ということを前々から主張しているわけでありますけれども、例えば東京の中でも非常に環境の悪いところとそうでないところがあるとか、そういう特定地域という概念からもう一段下がった地域という概念を導入して、そして全体として特定地域としてどうかという判断が必要ではないかと思っております。

安藤参考人 単体規制ということで、特定地域内をより厳しく単体規制ということだと思うんですけれども、現状ですと単体規制の方が先に進んでおりますので、特定地域じゃなくて、これはもう全国一律でも特に問題はないんじゃないかというふうに考えております。

 あるいは、最初の意見陳述のときに述べましたように、排ガス測定局を適当な分布にしまして、問題が起きた地域については随時特定地域の中に組み入れる。それも、特定市町村という枠の切り方ではなくて、交通密度ですとかその辺でエリアを決めていって、その中で問題が起きた地域を随時組み入れるという方法もあるんじゃないかと考えております。

樋高委員 どうもありがとうございます。

 浅野参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 改正案の評価のところで、参考人は、立法技術的わかりにくさ、つまり、窒素酸化物と粒子状物質を別々に定めてあるという御指摘がございました。そして、その後の御指摘の中で、重複適用される地域で、運用面で十分な調整が行われるべきことが必要であるという御指摘がありましたけれども、もう少し詳しくお話を伺いたいと思います。

浅野参考人 今回の改正法は、先生御存じのように、改正法案そのものが一条、二条に分かれていまして、それで、第一段階の改正と第二段階の改正ということになりますね。それも、ちょっと改正法を見てもなかなかわかりにくいということでございますけれども、それはさておきまして、ですから、人によっては前の方を見てしまって、後の方の究極的な改正のところが改正の中身になっているということを見落としてしまうということまで起こってしまうんですけれども、それはしようがないんですが。

 私が申し上げましたのは、立法技術的には、どうしてもNOxとPMとは別々の地域になる可能性があるので、計画も方針も別々にせざるを得ないということになることはやむを得ないと一応は認めるんですが、しかしこれは、下手をしますと、計画をつくる担当者が自治体で違って、こっちの計画はこの人がやる、こっちの計画はこの人がやるということになりますと、全然お互いに調整をしないということが起こりかねないなという気がいたします。

 それから、共通施策というのは当然あるわけでありますから、そうしますと、今度は逆に、ちょっと関係ないことを言って申しわけないんですが、オゾン法みたいに同じ条文がいっぱい出てくるというのは非常に見づらいですよね。

 ですから私は、法が施行される段階でどういう通達をお出しになってどういうアドバイスをなさるか知りませんけれども、場合によっては、法の精神からいうと、二冊でなくたっていいと思うんですね。一つの地域は、重複適用であれば、一冊の本がNOxの方の計画でありPMの計画であるということであっても別に何も法に触れるわけではない。

 その辺のところは余り硬直的に形式的に考えないで、一冊にまとまるのなら一冊にまとめておいて、そして、PM対策として特に強調しなきゃいけないことは強調する、それからNOx対策として特にやらなきゃいけないことならそれを強調するというふうになると思いますが、恐らくほとんどの部分は一緒の話をすれば済むんだろうと思いますので、重複適用地域では一冊の本にまとめるというような運用も多分可能ではないか、法理的には何の問題もないと思いますので、そんなことも含めて柔軟に対応する必要があるということを申し上げたかったわけでございます。

 どうも御指摘ありがとうございました。

樋高委員 どうもありがとうございます。

 続きまして、岡田参考人にお伺いをしたいと思います。

 いわゆるフリート規制のお話がございました。これを私もちょっと興味深く研究、勉強させていただいているんですけれども、これを仮に日本で取り入れるということを考えましたときに、どういった問題点があるのか、また、それを根づかせることが可能なのか、先生のざっくばらんな所見をお伺いしたいと思います。

岡田参考人 フリート規制の特色は、環境に適合する車両の開発を促進するという機能があります。一種の抱き合わせ政策ですから、表現は悪いかもしれませんが、車の量をたくさん売ろうと思えば、必ず低公害車あるいは無公害車を販売しないとたくさん売らせないよということですから、これによってメーカーの開発が進行いたします。

 そこで出てくる効果は何かということでありますけれども、これは、例えば一万台の車が売れて、あるメーカーが無公害車を開発して、そのあるメーカーが占める割合が非常に大きければこれは機能いたします。ところが、一つのメーカーの開発力は弱い。しかも、将来は販売を伸ばしたいけれどもどうも開発が思うようにいかないというまた別のメーカーがいたりしますと、そこら辺のバランスで、メーカーの販売戦略との関係がそこで果たしてうまくバランスがとれるのかなということがあります。

 それから、フリート規制の問題点といいますと、これはどうしても部分的になりますので、部分的な効果で社会全体が果たして環境がよくなったということが言えるのかどうか。ここら辺の整理はついていない。ただ、開発促進の戦略的手段としてのフリート規制というのは、それだけに開発競争を促したという意味で、ある意味では画期的であったと理解をしております。

樋高委員 どうもありがとうございました。

五島委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。

 きょうは、お三方には早くからお出ましをいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速お伺いをさせていただきたいと思うのですけれども、浅野参考人、岡田参考人、それぞれ中央環境審議会の委員として、またお二方ともその小委員会の方のそれぞれ委員と、岡田先生は委員長もなさったというお立場でいらっしゃいますので、まず最初にお二人に同じ質問をさせていただきたいと思うわけです。

 現行法の問題点ということで、これは浅野先生の方がおっしゃったわけですけれども、環境基準の達成が再三にわたってできなかった理由、それをどんなふうにお考えになっているのかということを伺いたいわけです。

 従来の単体対策に加えて車種規制の方式を採用して、これが実効性も非常にあって公平性があるだろうということで採用されたということですけれども、排ガス量の少ない自動車への強制的な代替ということで非常に期待をされたわけですが、結局、基準は達成できないということになるわけですね。

 しかし、中間の報告の中では、もっとさまざまな分野についても述べておられまして、例えば事業所への総量規制だとか、地域への流入を規制するステッカー方式であるとか、それから使用過程の車に対して規制をかけるという問題だとか、そういった懸案事項がたくさんあったのですが、私は、それが切り捨てられたことが実は基準を達成する上で一つ妨げになったのではないかという懸念を持っているわけですね。

 従来そういうことがあったにもかかわらず、今回もまたそれが最終答申では抜け落ちてしまったというあたり、どうも私には理解ができないところがございますので、よければ、その辺の経過の御解明と、それがなくても達成できるというのであれば、どういうウルトラCがあるのかというあたりを御説明いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

浅野参考人 私どもの中環審の検討の中で、いろいろな手だてがあるということで、手だての検討をしたことは事実でございますけれども、ある意味では少し勉強したというような面がございまして、政策として具体的にどれを採用できるかということについては利害得失があるということでございます。

 それで、最終の答申のところで今回ありますような答申を出したわけでございまして、これで達成できるというふうに言っておりますのは、もちろん、車種規制を導入し、車種規制を強化すれば達成できると言っているわけじゃなくて、それ以外にいろいろ書いてございまして、こういう施策を全部総合して実施するということが必要だということは当然背景にあるわけでございます。

 もともと、現行NOx法制定の段階からさまざまな施策についての議論があったということは先ほど私が申し上げたとおりでございますけれども、そのときに車種規制のところに行ったということについても、先ほど申し上げたようなことでございますが、しかし、今日であればもうちょっと違う議論がひょっとしたらできたのかもしれないと思うんですね。

 例えば、事業所別総量規制という議論は、強制力を加えるという形で事業所別の総量規制をやらなきゃいけないと思い込みますと、なかなかデータもとれない、個々のものにどこまで入っていくのかという問題があるわけです。しかし、考え方として、事業所で努力をしていただくということがまず第一ではないか。特に、大量に自動車を抱えている事業者が、使用の合理化を図るとか、あるいは、その中に低排出自動車を大量に導入していただくというようなことがあれば非常に効果が上がるわけでございます。

 そういうようなことについて、現行法制定段階では、強制的にやらせるということばかり考えたためにうまくいかなかった。今回はそれを、事業者に対する自治体からのきめ細かい指導を行わせることによって、あるいはお話し合いをしていただくことによって実現できるようにしようと。つまり、既に自治体が先行的にそれぞれの場所でやっておられるんですね。それに法的なサポートを与えるということがあればもっとうまくいくだろうということも考えておりますので、車種規制だけですべて事が足りるという発想ではなかった。審議会としてはそのように考えているわけでございますが、小委員長がおりますので、詳細はまた小委員長から。

岡田参考人 浅野参考人は小委員長に全責任を負わされまして、いささか困惑しておりますけれども。

 御案内のように、ディーゼル車というのは、例えばトラックでいいますと、もともと非常に能率のいい、しかも燃費消費量も少ない、エンジンの性能という意味においては非常にいい性能を持っているんですね。これが普及する一つの大きな原因になっております。もちろん税金が安いということもありますけれども。それにNOxを減少させる技術がついていけば大変うまくいくんだろうと思います。

 ところが、なかなかそれがついていきませんで、結果として、物流対策だ交通対策だ、いろいろな社会的な政策の応援を得ないとそこまで行けなかった、ここのところに問題点がある。ところが、その応援の方が非常に弱いといいますか、車をとめればまた別でありますけれども、その機能を生かしながらといいましても、そう大きな期待がなかなか持てない、この点が最大の悩みでございます。

 交通政策というのは、もっとやればやれるではないか、料金制を導入するといろいろなことができるじゃないかということを言われるんですが、これが言うべくして非常に難しい。その意味で、今後とも先生の御指摘の問題というのは残り続けるものだと理解しているんです。それだけに、時代の変化に合わせて新しい政策を模索していくしかないと思っております。

藤木委員 今のお話を伺いまして、そういった議論の上で、一定規模の事業所に対して計画をつくらせて都道府県にきちんと提出をさせる、それで都道府県からの指導だとか助言だとかそういうことも受けさせるということに前進した。その点は確かに一歩前進だと思います。

 私ももちろん、他の委員などもおっしゃっていましたけれども、対策を行う対象物に粒子状物質が追加されたとか、それから対象地域を拡大したとか、そういう前進面、もちろんあるわけで、それで進むであろうというふうには私たちも期待をしているところですけれども、基準を達成しないで終わる、こういうことの繰り返しが続いておりますので、何としてもこれを断ち切るようなひとつ契機にしたい、そういう気持ちを持つものですから今のような質問をさせていただきました。

 今度はもっと技術的なことでお伺いをさせていただきたいと思いますので、安藤参考人にお尋ねをしたいと思います。

 実は、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、一昨日、東京都の環境科学研究所へ行ってまいりました。ここで、先ほどから専門的な用語が出ていますモードというのを説明していただきまして、その御説明を受けながらいろいろと聞いてきたのです。

 ところで、今度の法律は、最終の答申をもとにしながら進めていくということになっているわけですけれども、特定自動車排出ガス基準というのが定められるわけですが、現行だったら、ディーゼル車をガソリン車に代替する場合に、ガソリン車の最新規制値を特定自動車排出ガス基準に設定するということになっているわけですね。また、ガソリン車の場合も、車種規制施行時点において最新の規制値を特定自動車排出ガス基準に設定する、いずれもそういうふうになっているわけです。

 ところが、中央環境審議会の答申では、ディーゼル乗用車を、「ガソリン車への代替が必要となるレベルに特定自動車排出ガス基準を設定する」ということですから、非常にあいまいな表現ではありますけれども、最新規定はしない、その一歩手前といいますか、そういうところにとどまるということになるわけですね。ガソリン車の場合も、最新規制値前の規制値を特定自動車排出ガス基準に設定するというふうになるわけです。私は、そのことはむしろ現行基準よりも後退するおそれがあるんじゃないかというふうに思うわけですよ。

 ところが、答申での理由は、ディーゼルエンジンの今後の技術開発の発展を阻害することになるとか、費用対効果を述べてこれを採用しないというふうになっているんですけれども、技術畑からごらんになって、果たして最新規制値を設定するということはそれほど技術開発を妨げることになるのか、そして、その費用対効果の面でもどれほど大きな損失になるのか、その辺ちょっと、おわかりでしたらお知らせをいただきたいと思います。

安藤参考人 それは、車の大きさによって大分変わってくると思うんです。

 例えば乗用車の場合ですと、乗用車でSPMだけを取り上げますと、ヨーロッパで一番排気ガスのきれいなディーゼル乗用車は、もう既に日本の二〇〇七年規制のSPMの基準を下回っておりますので、小さい車のSPMに関しては相当厳しい規制をしくことはできると思います。ただし、その車もまだ日本の長期のNOxには対応できていなかったと思います。

 それで、NOxとPMのトレードオフというようなお話がよくされるんですけれども、NOxが悪いのかPMが悪いのかというお話もよく出てくるんですけれども、実はNOxというのは、暴露されますと非常に気道の繊毛運動が弱まりまして気道感染しやすくなるわけですね。気道の繊毛運動が弱くなるということは、異物を出す能力が減ってくる。そこにPMが入ってくる。PM二・五という非常に細かい粒子が入ってくるから問題なのであって、どっちがいい悪いということじゃなくて、両方を同時に削減していかなければならないということで、その辺も考えていかなければならないと思います。

 それから、大型の車につきましては、ガソリン車並みといっても、実はガソリン車の規制というのも、五トン以上の重量車にガソリン車というのはたしか今は存在しないと思うんですけれども、それは技術的につくれない。つくれないこともないんですけれども、エンジンがやたら大きくなってしまって非常に非効率であるということになりまして、大型には存在しないということなんですが、それ以下の、車両総重量二・五トンから五トンというカテゴリーにはたしかあると思うんですけれども、それも、以前のガソリントラックの規制というのはそれほど厳しくなかったと思うんですよ。ですから、そのくらいまでディーゼルの規制を持っていっても問題ないんじゃないかと考えております。

 それで、ディーゼルの二・五トンから五トンまでのカテゴリーの要求出力というのがありまして、どのくらいの馬力のエンジンを積んでいたらちゃんと走るのかというのを見ますと、大体乗用車のレベルなんです。二トンクラスの四輪駆動車のディーゼルエンジンというのは大体同じくらいの馬力を出しているわけですね。乗用車の規制がしかれていますからより厳しい規制をパスしている。

 それをそのまま二・五トンから五トンまでの車に載っけてしまえば、積載したときになると車は重くなっちゃいますので全く同等というわけにはいきませんけれども、さらに厳しい規制をパスできるんじゃないか。走行モードも、トラック用の十三モードじゃなくて十・十五モードの方を適用していくことも可能なんじゃないかということが考えられるんですけれども、その辺というのは非常に装置にお金がかかるという経済的な理由でやりたがらない、そういうことがあると思います。

 ただ、その辺というのは、かつて、日本の昭和五十三年規制の根拠になりましたマスキー法というのがアメリカでありまして、あれも非常に、技術的にできるとか経済的にできるとかそういう話じゃございませんで、大気汚染が発生したのは車の量が十倍にふえたからだ、だったら一台から排出する排ガスの量を十分の一に減らせばいいじゃないかと言ったのが、マスキー法のマスキー上院議員という方なんですけれども、技術的には暗くても非常に説得力があるのですね。

 昨今では、ディーゼル車NO作戦の石原都知事が、こんな排ガスを吸っているんですよと言うのも、できるできないの話じゃなくて、これ、やっぱり減らさなくちゃいかぬだろうということを言われると、できないできないと言っていたことができちゃったわけですね。

 石油業界の方の話になりますけれども、軽油の低硫黄化なんですが、最初に〇・二%から五〇〇ppmに下がるときに、業界全体で四千億の投資が必要だからということでかなり抵抗されたらしいのですけれども、それも五〇〇ppmに下がって、石原都知事がディーゼル車NO作戦ということを言い出したら、では、二〇〇三年からは五〇ppmでいきましょうという話になりました。ですから、より厳しい規制というのをどんどんしいていった方が、それを目標としてメーカーも努力していくんじゃないかというふうに考えます。

 かつて昭和三十年代に国民車構想というのがありまして、大人四人が乗れて、時速百キロで走れて、燃費が一リッター三十キロで、二十五万円で買える車をつくりなさい、一番乗りしたメーカーには開発費用を多少なりとも国が負担しますよ、そういう話があったわけですね。当時というのは、どこの技術もドングリの背比べだったのでそういうことができたとは思うのですけれども、今日似たようなことをやると、多分、一番技術を持っているメーカーというのはもう限られてきますので、なかなか競争にはなりにくいと思うのですけれども、そういう歴史があったということも考えて、何らかの形でその技術競争を促進していくということも十分に考えられるんじゃないかと思います。

藤木委員 ありがとうございました。

 貴重な御意見、ありがとうございます。

五島委員長 金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子でございます。きょうは、三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。

 先ほど来話を伺いまして、私も質問したいことの幾つかが質問に出たわけですけれども、やはり総量規制といいますか、全体の車の量を規制していくということが一番大事だと思います。その点でいいますと、先ほどのお話の中でも非常に難しいということでおっしゃっておりますけれども、やはりモータリゼーションの社会の発想そのものを変えないと、これはもうだめではないかというふうに思うわけですね。

 例えば広島では今も路面電車が走っておりますけれども、非常に大量の輸送手段として今も毎朝満員電車という状況であります。ほとんどの都市が路面電車を廃止して自動車に、東京もそうですけれども、切りかえたということがあって、今また路面電車を復活しようということが、ヨーロッパなどではそのことが非常に大事にされて、パーク・アンド・ライド方式も含めてそういう方向が出されていると思うのですけれども、そういう方向にまず変えていかない限りは今の総量規制というのは大変難しいのではないかと思うのです。

 非常に困難ということはわかりつつも、まずその点について三人の先生から、一言ずつで結構ですけれども、御意見を伺いたいと思います。

浅野参考人 おっしゃるように、発想を変えることが必要であるということは、環境基本計画の中でも繰り返し指摘しているところでございます。

 路面電車の効用につきましては、温暖化の方で技術的な検討を今審議会でしておりますけれども、そちらの方でもかなりこれは効果があるということがございます。実現の可能性がどのぐらいあるかということは抜きにして、論理的には全くおっしゃるとおりでございますので、政策の方向としては、今あるものをこれ以上廃止することはないようにということは当然考えるべきですし、何よりも、それに乗りかえていただくためにどうすればいいのかというそのことについての施策は、やはり総合的に考えるという姿勢が常に必要ではないかと思うわけですが、先生の御指摘のとおりだと私も考えております。

岡田参考人 路面電車の活用をもっと図るべきだという御指摘かと思いますが、ドイツのフライブルグというのが、人口四十万ぐらいだと記憶しておりますけれども、これが路面電車を導入している。ちょっと記憶で恐縮ですが、ドイツで三十二、三都市に路面電車が入っている。そういうものをもっと活用すべきだという点は全く御指摘のとおりであります。

 問題は、交通体系というのは人口規模によってかなり違います。御承知のように、地下鉄が機能するためには人口百万なければいけない、これも俗説だといえば俗説かもしれませんが。したがって、政令指定都市以上のところでは軌道系の交通体系はどうしても必要だという点で、日本の交通政策はその点で取り組んでまいりました。

 しかしながら、それ以下のところで、例えば熊本の五十万、そんなところで路面電車を導入しようかということで、人口規模別にどういう交通システムを割り当てるのが最適か、これは決め手はありませんけれども、そういう努力をしてまいりましたので、今後ともこれは続けていくべきだと理解しています。

安藤参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 東京周辺の場合は地下鉄という公共交通機関が非常に発達しているのですけれども、実際皆さん御利用になってわかると思うのですけれども、乗りかえ等でかなり不便なんですね。上がったり下がったりしなければならない、どこへ行ったらいいのかわからない。そういう点で、もっとその辺がわかりやすいような路面電車網というのを整備する意義というのはあると思います。

 ただし、現在大気汚染が非常に深刻なところというのは産業道路の沿線だったり、その周りに住宅地があるということも問題なんですけれども、そういうところは路面電車ではちょっとどうすることもできないかなということもございます。

金子(哲)委員 それと同時に、物流の改革といいますか、特に配送、集荷の場合はなかなか難しい問題が、企業間の競争があると思いますけれども、配送あたりについては、ターミナルから配送専門の例えば業者を出すとかすれば、同じルートに同じ配送の車が走っているというようなこともかなり改善できるのではないかというふうに私は思っておりまして、そういう面からも、なかなか企業との関係もありますけれども、そういう方向もぜひこれから検討していかなければならないのではないかと思っております。

 それでもう一つ、今度は安藤参考人にお伺いをしたいのですけれども、先ほどの話の中で、今度都道府県にかなり権限が移譲されるという問題がありますけれども、先ほどの話では、これが本当にこれまでの経験の中でどう機能するだろうか、今までなぜそれが十分に機能しなかったかという点についてもうちょっと詳しくお話しいただければと思います。

安藤参考人 私の基本的な考え方として、大気汚染防止法がしっかり機能しておればこのようなNOx法というのをわざわざつくらなくても済んだんじゃないかというふうに考えております。

 今回、ちょっと伝え聞くところによりますと、何でも覚書というのが交わされていたそうで、これがどうも、交通規制にかかわるようなことはやらないでくれというような覚書が省庁間で交わされていたと。これまで効果を上げてこなかったことですとか大気汚染防止法で抑え切れなかったということについても、そういう法をないがしろにするようなことがもしかすると行われていたんじゃないだろうかというふうな疑いは非常に持っております。

金子(哲)委員 それから、地域拡大の問題が出ておりまして、おっしゃられるように、小さな地域とかすべてを、安藤参考人はもう日本全国でやったらどうかという御意見だったのですけれども、今例えば委員会の中などで出ておりますのは、今度指定をされている地域に加えて政令指定都市も加えてはどうかという意見が出ております。

 安藤参考人は全域ということですので、浅野参考人と岡田参考人に、政令都市をぜひ今度の法律でも加えるべきだという意見は強くあるわけですけれども、その点についての見解をお聞きしたいと思うのです。

浅野参考人 私は、一律に政令市だから加えるべきであるという考え方には必ずしも賛成いたしません。

 と申しますのは、NOx対策、浮遊粒子状物質対策はいろいろなメニューがあるわけです。そのさまざまなメニューをそこで集中的に投入すべきという意味であるなら構わないのですけれども、あくまでもこの法律は車種規制という具体の規制方式を前提にして、それを適用すべき地域としての特定地域ということでございますから、もう一つ別に外枠のところで環境負荷の少ない交通体系を確立すべき地域を設けるという意味であるならば、議員おっしゃったとおり政令市にはそのような必要性があると思いますけれども、この法律は、もちろん外枠にはそれがあるのですが、内枠のところに車種規制というものがひっかかっておりますから、先ほど申しましたような理由で、すべてのところに適用するのがいいとは必ずしも言えないと考えております。

岡田参考人 要するに、NOx法の目的と政令指定都市というのがうまくなじむかどうかということは、まだ明確になっていないように思います。CO2ですと地球規模の問題でございますのでどこで抑制してもいいのですが、PMの問題、NOxの問題、それを車種規制という手段でどこまで対応できるか、それがちょうど都市行政とどういうふうにリンクするかというのは、明確な方針はまだないように思っております。

金子(哲)委員 安藤参考人にお伺いしたいのですけれども、単体規制だけでは不十分だということでお話しをいただきました。しかし、やはり一方で単体規制というようなものを強化していくということになると思います。

 先ほどの岡田参考人のお話の中にアメリカなどの例が出てまいりましたけれども、先ほどの説明でも、日本の場合の検査体制というものがやや、ヨーロッパと比べてもアメリカと比べてみても基準が甘過ぎるのではないかというか、現実と乖離をした状態でそのチェックがされているのではないかという指摘があります。しかも、日本の企業も今や世界化しておりまして、アメリカへ行けばアメリカの規制、ヨーロッパへ行けばヨーロッパの規制の中で実際には受けているわけで、当然技術を戻してくればできると思うんですけれども、やはりその辺はかなり差があると考えていいものでしょうか。

安藤参考人 ヨーロッパ、アメリカと日本とでは測定のモードが違いますので一律に比較するということはできませんし、ヨーロッパの場合は今までもディーゼルの場合はNOxよりもSPMの方を重視して規制してきておりますので、その辺は直接比較するというのはなかなか難しいわけであります。ただし、現在の単体規制のモードが日本の走行実態と乖離しているということ、これは間違いなく言えると思います。

 これはNOx法よりも随分以前の話なんですけれども、東京都の環境科学研究所ですとか、あとは建設省の土木研究所の方でも、新しい排出ガス規制がしかれた車を実際に走らせてみて、古い排出ガス規制の車と比較して排ガス量がどれだけ減ったかというのを測定したデータがあるんですが、例えば低速走行モード、渋滞を想定した平均速度四・四キロというので比較しますと、ちょっと随分古い話で恐縮なんですけれども、八三年規制をパスしたものはそれ以前のものの一六〇%の排出量になっていた。逆に新しい規制をパスした車の方がふえているというようなことも起こり得るわけで、この辺というのは、排出ガスの抑制装置をどう制御しているかですとか、規制のモードのピンポイントだけねらって基準を達成するとそれ以外がどうなってしまうかわからないという問題を如実にあらわしている現象だと思います。

 現在についてもそうなっている可能性というのは否定できませんので、やはり走行実態に合わせたちゃんとした基準を考えるか、あるいは複数、渋滞のモードと、あるいはこの辺で見られますように信号が青になって割と速い加速度で一気に加速してまた信号できゅっととまるようなモードですとか、そういうのもいろいろと検討する余地があると思うんですけれども、そういうさまざまな角度から適正な走行モードというのを早急に決めまして、新しい基準をつくっていくべきなんじゃないかと思います。

金子(哲)委員 最後の質問になりますけれども、先ほどお伺いしたところで安藤参考人にもう一度お伺いしたいのです。

 地域拡大の問題でお伺いをしたのですけれども、今お二人の参考人からは、必ずしも政令都市ということではそういうふうに限って考えなくてもいいのではないかというお話をいただきましたが、先ほどちょっと説明の中でありました自排局の問題ですね。それで調べている内容も若干違うということですけれども、現在全国各地に設置をされている設置状況というのが、何か今お話を聞いたら、東京都で二十数カ所程度かという感じが私にはするわけなんですが、全体としてもっとふやして、検査体制といいますか、そういうものが必要だというふうに私はちょっと感じたのですけれども、その点についてもし見解があればお聞かせいただきたい。

 その点がないと、どこの地域に広げるかということを実際の数値もデータもない中で検討するというのは非常に難しい。その点では、私は、政令都市なども含めて、ややそういう検査の体制が弱いのではないかなという思いがするんですが、安藤参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

安藤参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 自排局は全国に四百数十ありまして、先ほどの東京で二十八というのは二十三区のことなんですけれども、確かに、測定すべきところで測定すべき項目が測定されているのかどうかということがこのNOx法の地域を拡大する際に当たって、そこら辺がきちんと担保されていなければ何の意味もなくなってしまうということで、この辺というのはぜひ再検証されるべきだと考えております。

金子(哲)委員 長時間にわたりましてありがとうございました。

五島委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

五島委員長 引き続き、内閣提出、参議院送付、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官田村政志君、財務省大臣官房審議官竹内洋君、厚生労働省大臣官房審議官鶴田康則君、厚生労働省医政局長伊藤雅治君、経済産業省大臣官房審議官長尾梅太郎君、経済産業省製造産業局次長小平信因君、国土交通省道路局長大石久和君、国土交通省自動車交通局長高橋朋敬君、環境省総合環境政策局環境保健部長岩尾總一郎君、環境省地球環境局長浜中裕徳君及び環境省環境管理局長松本省藏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

五島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長浜博行君。

長浜委員 長浜博行でございます。

 先日の一時間の質問に続きまして、最終段階での御質問を申し上げるわけであります。

 視察の方も今週させていただきました。そしてまた、今参考人の方々の貴重な意見を拝聴して、またその参考人に対する質疑の中で、私自身も何となくこの永田町感覚になれてしまいまして、参考人の質疑を聞いたり、あるいは視察をした結果によって、これはやはりこう改めた方がいいんじゃないかというふうに思った点があったとしても、この後すぐ採決が用意をされているということは、大臣に申し上げることではなく、むしろ委員長とか私どもが、今後の法案審査においても、他委員会、いろいろやり方があると思いますけれども、事この環境問題に至っては、一貫して私の姿勢を申し上げているとおり、過ちに気がついたらそれを改めるにはスピーディーであった方がいいということからすると、せっかく貴重な御意見、あるいは自分で見たことを法案の中に生かしていくということが大事なのではないかなというふうに私は思っております。

 民主党は修正案を提出させていただきますが、より人の健康にかかわる法案を審議していることでもありますので、貴重な参考人の御意見とか視察の結果をむしろ修正という形で法案に生かすべきだというふうに思いますが、一般的にこういう考え方について大臣はどう思われますか。

川口国務大臣 私は国会議員ではございませんので、国会で法律を制定なさる際に、どういう手続をおとりになってなさるかということについて御意見を申し上げるのは控えさせていただきたいと思いますけれども、私、国民の一人でございますので、国民の一人として私の個人的な意見を申し上げさせていただくということでお許しをいただけるようでしたら、やはり間違いがありましたら、予防原則というのもございますし、何か間違いがあったときには、それを少なくとも議論の対象にして、それが本当に間違いであるのか、あるいはやはり間違いではなかったのかということを、情報も明らかにして御議論いただきたい、国民の一人としてはそういうふうに思っております。

長浜委員 大変心のこもった御意見をいただきまして、ありがとうございました。私も全くそういうふうに思っておりますので、多分審議の方法も、私たち国会議員あるいは立法府が考えるべき点があるのではないかなというふうに感じました。

 この法案の中で、特にこの間も質疑の過程で明らかになりましたように、政令とか省令でこの法案が成立後にまた決められてくる部分というのが大変多くなるというふうに思います。また、今大臣もおっしゃられましたが、そういった中においての情報公開を適切にしていく、そして見直しを適宜行っていくということが大変大事だというふうに思いますが、今の参考人質疑の中においても一つのポイントになってきたのは、対象地域の問題だというふうに私は思うわけであります。

 現行法から今回の改正案に至る六都府県、百九十六市区町村から名古屋周辺が今度加わるということでありますけれども、いわゆる市区町村という細かい分け方をしていて、都道府県で見ますと、おや、何でここが入っていないのかなと感ずる場面が時々あるわけであります。

 私は、逆に、市区町村で余り細かく対象地域を限定するのではなくて、特にSPMの問題なんかは風で随分動くような部分もありますものですから、むしろある程度広目に対象地域を指定するのなら指定した方がいいと思います。極論ではありますけれども、余りこの対象地域を指定しないで全国というふうにする場合、どういった弊害があるんでしょうか。

松本政府参考人 NOx法の地域指定の範囲の問題についての御質問でございます。

 まず、自動車NOx法のそもそもの考え方でございますけれども、委員御承知のとおり、全国レベルでの自動車の排出ガス規制は、いわゆる単体規制というような仕組みで順次規制強化を図ってまいりましたし、またこれからも段階的に強化をしていくという政策手法を進めていくということでございます。

 ただ、どうしても大都市圏域における窒素酸化物の汚染、それから今回はさらにPMについての汚染、こういう特定の地域におけるNOx、PMの汚染というのがはかばかしくないので、そういう特定の地域に着目をした、大都市圏域に着目をした特別措置法としてこの自動車NOx法というのを考えるということでございますので、まずは、全国にというのはなかなか難しい。やはり地域限定の特別措置法ということであろうかと思います。

 それでは、例えば特定地域を考えるときに、一つの考え方として、自然的な地域区画みたいなもので線を引くとかいうようなことも理論としてはあり得るかもしれませんが、現実的には、自動車NOx法といいますのは、車種規制にしろその他の対策にしろ、一つの施策遂行のための総体、取りまとめをしている制度でございますので、やはりそれは行政区画というのを基本ベースとして考えていくしかないのではないかと思うわけです。

 そうなりますと、今考えられますのは、議論としては、都道府県単位で指定していったらどうかという議論も当然あるわけでございます。ただ、今の都道府県といいますと、例えば埼玉県と考えてみますと、埼玉県も大変ある意味では大きくて、西部の方は大変な山岳森林地帯ということでありまして、ここは環境基準はもう完全にクリアしているわけでございます。そういうような地域と、現実に、例えば川口、浦和、大宮、こういう東部、南部の方と、大気汚染防止のための具体的な政策フレームとして同じに、均一にやっていくというのはいかがかなということになりますと、次の行政単位として、やはり市町村単位というのに着目しながら、自動車の交通量が大変多くて、しかも他の政策で環境基準達成がはかばかしくない地域というのを押さえていくということなのではなかろうかというわけでございます。

 いずれにいたしましても、NOx法の施策は総合政策でございますけれども、一番効果的なのは車種規制でございます。車種規制を実施するためには、ある程度広域的といいますか、まとまりのある地域を指定していくということで、現行のNOx法におきます地域指定も行っておりますし、今回、名古屋並びにその周辺地域の地域指定もそのような考え方を基本にしてやっていくのが適当ではないかと考えているところでございます。

長浜委員 時間もありませんが、ですから、今のような形の規制の上に、現実問題として、市町村を細かく分けていくのであれば、各自治体が条例によって法律に上乗せ規制をするというようなことをむしろ意識の高い自治体にはどんどんやっていってもらわないと、当面、深い議論としては、事業者によって、各当該する自治体においてのスタンダード、ダブルスタンダードとかトリプルスタンダードのような形が出てきたらやりづらいというふうな問題が発生するかもしれませんが、機動的運用をしないとこの法律の場合はつくっても意味がないものですから、各自治体が条例によって法律に上乗せ規制する。

 例えば、一つの例が東京都の二〇〇三年十月のいわゆる車両乗り入れ規制ですか、こういった厳しい条例も出てくるわけでありますから、どこかで調整をしていくといったらいいんでしょうか、それをやるためには、頻繁な法令の見直しというのが不可能であれば運用上の見直しをしていかなければいけないというふうに私は思います。

 視察において特に印象に残ったのは、ディーゼル車のDPF装置の問題でありました。東京都の場合は特にこのDPF装置に時間とお金を使っておられるようで、規制を強化する一つの要因になっておりますが、本法案では直接このDPF、ディーゼル車のいわゆる排気物質の除去装置については細かく触れられている部分がありませんが、それは何か特定の意味がございますか。

松本政府参考人 自動車NOx法の全体の仕組みは御承知のとおりでございまして、個別には、都道府県知事さんがそれぞれ総量削減計画を策定していただく、その中でそれぞれの地域ごとの特性に応じた具体的な施策を盛り込んでいただく、こういうことになろうかと思います。

長浜委員 それと、低公害車がなかなか普及をしていかない。確かに、参考人の議論を聞いていますと、総量規制で量を減らさなければいけない、交通のシステムを変えて交通量を減らさなければいけないという話もありましたが、一つには、やはり流れとしては低公害車に進んでいくのだというふうに思います。

 私の記憶に誤りがなければ、低公害車は旧法案において予想したのを著しく下回るような結果になっていると思います。視察のときにも感じましたけれども、社会的インフラの整備がこれまた著しくおくれている。買ったはいいけれども、どこで燃料を入れていいかわからない状態になるということもあるわけであります。この低公害車の普及の問題について、これは経済産業省になるのですか、お答えをいただければと思います。

小平政府参考人 私の方からは、自動車メーカーの開発状況等についてお答えを申し上げます。

 自動車メーカーにおきましては、従来から自動車の環境負荷の低減に向けまして積極的に取り組んできておりまして、電気自動車、天然ガス自動車、ハイブリッド自動車というようなクリーンエネルギー自動車の開発、実用化を進めてきたところでございますけれども、現在、平成十二年三月時点で約四・六万台が普及をしているという状況でございます。

 しかしながら、こういうクリーンエネルギー自動車につきましては、値段が高い、今までの車に比べまして加速性が劣るというような課題がございますので、引き続き、コストの低減、性能向上、それから車種の多様化というようなことに向けましてメーカーが鋭意開発を進めているところでございます。

長浜委員 今の価格の問題も、視察のときに、視察をした場所では、当該の車種の代替を低公害車にする場合は、何とか一一〇%ぐらいなら企業努力で吸収できる、あるいは車両価格というのは、利益の中で買いかえますから、当然利益が出れば買いかえられる、それは何か謙虚に随分言っておられました。

 だけれども、もう一つの大きなポイントは、これはやっていただかなければ、社会資本整備としての燃料の供給システムの場所がないと、ガソリンスタンドのような数がないと、事実上、買ったはいいけれども運用ができないということでもありますので、環境省を中心としながら、経済産業省とそれから国土交通省がこの問題に真剣に取り組まないと、過去と同じような形で、いい商品はできたけれども普及しないということになりますので、この点についてはぜひ考えていただきたいというふうに思うわけであります。

 それと税制面の問題。先ほど軽油の税制格差、ガソリンとの格差が出ておりましたが、低硫黄の軽油というのを普及していくことによって大分このディーゼルガスの排気対策の問題も進んでいくのではないかなというふうに思いますので、これは質問というよりは要望として、低硫黄軽油という問題に関して、環境省を中心としながら、努力目標というよりは積極的に今の軽油を低硫黄軽油に全部変えていく。量産化の技術は問題がないというふうに私は認識をしておりますので、そういった方向に進んでいただきたいというふうに思うわけであります。

 それから、直接この法案ではないのですが、御承知のように、京都議定書に私はずっとこだわり続けているものですから、この京都議定書の問題も申し上げなければなりません。

 私の質問に合わせるような形でさまざまなコメントが世界じゅうからなされるわけでありますが、きのうはブッシュがヨーロッパで、スウェーデンでEUの関係者とミーティングをした後、会見をしていました。あのときも、私のヒアリング力が間違っていなければ、ウィ・ドント・アグリー・キョウトトリーティーというような発言をしておりまして、アグリーメントとかトリーティーは別にしまして、キョウトという言葉を聞いたときと、ドントと言われたときに、どんと衝撃を受けたわけであります。

 こういった問題で、あしたから外務大臣がアメリカに行かれます。先ほど外務委員会においても、私どもの菅幹事長が田中眞紀子外務大臣に対して京都議定書に関する質疑をしておりましたけれども、あしたから行かれる外務大臣に環境大臣は具体的なメッセージを託されておるのでしょうか。

川口国務大臣 私といたしましては、外務大臣がアメリカに行かれて、京都議定書に米国が戻ってくるように、というのは米国の参加が非常に重要でございますので、米国に働きかけていただけるということが非常に重要なことだというふうに思っております。

 田中外務大臣とは、二、三日前でございますけれども、アメリカに働きかけることの重要性についてはお話をいたしました。

長浜委員 前回の質疑のときにも、詳しくといいますか、こだわって申し上げましたけれども、私自身の認識としては、ある意味でアメリカに対する働きかけの時期はもう終わっているというふうに認識をしています。戻ってくれればラッキーだ、戻らなくても日本が批准をしなければいけない。

 その根拠は、四月十八日に参議院の本会議、そして翌四月十九日に衆議院の本会議でなされた決議案であります。与党も野党もなく全員で決議をした内容であります。この内容は二つのパラグラフで成り立っておりまして、前半部分は、アメリカがこの議定書の交渉のテーブルに戻ってくることを要請すること、後半のパラグラフは、「政府は率先して批准し、」と、つまり日本政府の態度を明確に規定しているわけであります。参議院の本会議の決議書は、「政府は率先して批准し、」と明確に書いてありますし、衆議院本会議の決議案には、「我が国は早期に批准し、」ということが書かれているわけであります。

 憲法第六十六条では、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」というふうに規定をされておりますが、国会で衆議院、参議院、全議員が決議をしている、早期に批准をするということに関して大臣はどうお考えになりますか。

川口国務大臣 政府といたしましては、国会決議を重く受けとめまして、京都議定書の二〇〇二年までの発効を目指しまして、このための国際交渉に世界最大の温室効果ガスの排出国でございます米国が前向きに参加をするように求めるということとともに、七月にございますCOP6の再開会合において、そこにおける成功に向けて全力を尽くしていく所存でございます。

 アメリカに対してはあらゆる機会を活用して働きかけるとともに、EUに対しても、米国が参加しやすく、なるべく柔軟になるように呼びかけているところでございまして、今後とも、国際的に合意が可能となるように、このような努力を引き続き行ってまいりたいと考えております。

 それから、我が国自身も、COP6再開会合で国際的な合意を経た上で京都議定書を二〇〇二年までに締結できるように、京都議定書の締結に必要な国内制度の構築に全力で取り組んでいるところでございます。

 このように、政府といたしましては、全会一致の国会決議を十分に尊重いたしまして、小泉総理の所信表明演説にもございますように、京都議定書の二〇〇二年までの発効を目指して全力で取り組んでいるところでございます。

長浜委員 国権の最高機関である立法府での国会決議、そうたびたび法案とか条約に応じてやっているわけではありません。そういった中でのこの京都議定書に関する国会決議を重く受けとめられて、日本が批准をしないということになれば、あるいは、アメリカと日本が批准をしないと現実にこの京都議定書の発効は不可能になりますので、数字合わせは今しませんけれども、この状況に陥った場合の当然担当大臣としての責任問題にまで発展することを恐れているからあえて申し上げているわけであります。この日本単独での批准ということも十分視野に入れて今後の環境大臣としての行動をとっていただきたいと心からお願いをしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

五島委員長 田端正広君。

田端委員 私も京都議定書の問題をお尋ねしたいと思います。

 十二日のブッシュ声明を見てみても、この京都議定書に対して、致命的な欠陥があるということ、科学的知見が地球温暖化についてまだ不十分で、予防原則のアプローチというものについて否定しているということ、それから、先進国と途上国の義務を同等のレベルにしよう、そういうことを今なおまだ主張していること等々述べられておりまして、そういった意味でなかなかブッシュさんのお考えは変わっていないなという感じ、そして、いよいよ京都議定書からの離脱の方向への意思を強めてきたのではないかな、こういう感じがしています。

 きのうのEU首脳との会議の報道を見ていても、EUも大変にその辺のところを心配、懸念をされていまして、きょうの新聞の中には、決裂かという表現の報道もございました。

 そういう意味で、今もお話ございましたが、国会決議を踏まえて、アメリカの行動にかかわらず、日本は早期に批准する意思があるんだということを、いよいよ最終的な日本の判断として大臣がお示しになるタイミングに今来ているのではないか、こういう思いがいたしますが、その辺のところ、いかがでございましょうか。

    〔委員長退席、近藤(昭)委員長代理着席〕

川口国務大臣 今回のブッシュ大統領の声明につきましては、以前と同様に、京都議定書については、フェータリーフロードと、致命的な欠陥があるということを言っておりまして、それについては大変に残念だと思っております。

 同時に、アメリカは、国際的な枠組みということを言っておりますけれども、その具体的な提案についてはまだわからないという状況でございます。アメリカのブッシュ政権は、引き続き、気候変動政策に関する閣僚レベルの検討作業を続けるということを言っており、また温室効果ガス削減のための共通のアプローチを友好国、同盟国とともに探るんだということも言っております。

 日本といたしましては、これも前から申し上げておりますように、環境十全性の観点から、アメリカの参加が重要であるというふうに考えておりまして、アメリカが京都議定書の発効に向けた交渉に積極的に参加をするように粘り強く働きかけていきたいと考えております。

 それから、日本といたしましては、京都議定書の二〇〇二年までの発効を目指して、来るCOP6再開会合で全力で取り組むという方針に変わりはございませんで、国会決議を重く受けとめまして日本として努力をしていきたいというふうに思っております。

 それから、日本自身も、COP6再開会合におきます国際合意を踏まえまして、国内的にこれを担保する措置が必要でございますので、締結に必要な国内制度の構築に全力で取り組んでいきたいと考えております。

田端委員 この問題については、私も、政府与党代表団としてアメリカに先般抗議に行かせていただきましたが、その後、与党三党の幹事長がこの前訪米された際にも、我が党の冬柴幹事長が、国会決議の英訳全文をお持ちして関係各位にお渡ししたということも聞いておりますけれども、そういった意味で、総力を挙げてここはやらなきゃならない今大きな山場に来ているのだろうと思います。

 きのう、実は私も、安全保障委員会で田中外務大臣にこの問題についてお尋ねしました。そして大臣にも強く申し上げましたが、その際外務大臣も、日本の自主外交の意思として、メッセージとして反省を促すことを伝えたい、こういうお話がございました。

 同時に、防衛庁長官中谷さんも、例のアメリカのあれに広告を出した一人でございますが、同様の考えだということもおっしゃっておりまして、この二人が十八日、それから二十二日でしたか二十一日でしたか、訪米されます。また川口大臣も、二十三日ですか訪米されるように伺っております。

 そういった意味で、川口大臣も、ここは本当にひとつ頑張っていただいて、アメリカ側にいろいろな日本のチャンネルを使って訴えていかなければならないだろうと思います。

 そして、三十日ですか、日米首脳会談があるわけですから、その日米首脳会談でどういうことを日本が訴えるかということを、今関係する日本の閣僚が何人か行かれて、その情報をきちっと総理のもとに集めて、そして、日本の総理大臣として、最大の外交テーマとしてこの問題を取り扱っていただけるように、川口大臣の方からも、そういったこともひとつ御配慮していただいて、そして、今非常に難局になっているこの京都議定書の問題について突破口を開いていただきたいな、こんな思いでございます。

 再度お尋ねいたしますが、いよいよ、そういう意味の日本の本当の腹構えというものをお示しいただければ大変ありがたいと思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 私も、小泉総理が御訪米になられたときに、ブッシュ大統領とこの問題について直接首脳同士でお話しをいただくということが非常に重要なことだと考えております。

 政府といたしましては、小泉総理が所信表明演説でおっしゃられましたように、二〇〇二年までの発効に向けて全力で取り組むという方針に変わりはございませんし、また小泉総理は、私を環境大臣に任命なさいましたときに、就任の際に小泉総理からも、地球温暖化問題は非常に重要なので最大限努力をするようにというふうに私におっしゃっていただいております。指示を受けております。

 アメリカは四分の一の排出量でございますので、環境十全性という観点からいきますと、アメリカが参加することは非常に重要だというふうに思っております。国会、田端先生を初め大勢の方に働きかけていただきまして、私どもとしても、この分野でも努力をいたしてまいるつもりでございます。

 さらに、二〇〇二年までの発効に向けて、来るCOP6再開会合で全力を尽くすこと、及びその合意を踏まえまして、国内制度の構築に向けて最大限の努力をし、二〇〇二年までの発効を可能にするということを目指して取り組んでまいりたいと思います。

田端委員 当然のことと思いますが、大臣は、アメリカからヨーロッパの方に回られて非公式会合があると思うのです。そうすると、そこでもいろいろ御意見があると思いますが、そのころにちょうど総理が御出発になるのだと思うので、ぜひ現地から総理の方にどんどん情報を入れていただいて、よろしくひとつお願いしたいな、こういう思いでおります。

 それでは、NOx法の関係についてお尋ねいたします。

 私は、前から基本的に一つ不思議に思っているのは、日本の自動車産業のスタンスといいますか、ディーゼル車がいいのか、ガソリン車がいいのかという基本的な考え方がもうひとつはっきりしていなかったのではないかなと。ヨーロッパでは、どちらかというとディーゼル車というものに比重を置いて技術研究開発を進めてきた。そういった意味では、日本は、燃費の面ではディーゼルはいいんですが、一般的にはガソリンでずっと来たわけですから、そこのところに非常に技術的な開発のおくれがあったのではないか、こう感じられます。

 したがって、これからの方針として、ディーゼル車の位置づけというものはどういうふうに考えていくのか。こういうDEPというものが非常に健康を害するということがはっきりしてきた以上、ここのところの技術開発を急いでやらないと、これ以上ディーゼルという問題は大きな問題になっていくと思いますが、この辺の基本的スタンスはいかがでしょうか。

風間副大臣 大気汚染問題の解決は急務でございますから、そういう意味では、ディーゼル車からガソリン車への代替を促進することもこれは当然必要なことではないかというふうに思っております。

 ただ、都市大気汚染を考えてみると、ディーゼル車の出す、台数は極めて少ないにもかかわらず、NOxを含めPMについてもかなり高いということでございまして、そういう意味で、今回のこの法案におきまして粒子状物質を追加して、ディーゼル車からガソリン車への、相対的に排出ガス性能がよい車への代替を急ぐということはもう先生も御承知のとおりだと思います。

 そこで、では、技術の向上が図られていくのであるならばディーゼル車へ、燃費がすぐれているわけでありますから、その位置づけをきちっとやはりしていかなければならない、急いでその部分については、地球温暖化対策の観点からはやっていかなきゃならないというふうにも思っております。

田端委員 車種規制が強化されるということで、自動車を保有する事業者に対しての自動車使用管理計画、そして実施状況の報告義務、これらが課せられているわけでありますが、私、地元の運送関係の業者の方々と話をしていて感じることは、こういうふうになればなるほどこれは車庫飛ばしになると思われます。だから、法律で規制すれば解決する問題じゃないのではないかなと。規制は確かに大事ですが、しかしまた、それなら車庫を別の規制地域対象外にしよう、こういうことになるんだろう、そこのところはどういう対応をお考えになっているんでしょうか。

松本政府参考人 お話がありましたように、自動車NOx法におきましては、車種規制あるいは事業者の自動車使用管理計画の作成、報告の義務というのは、特定地域の中に使用の本拠地を有している自動車が対象になるということでございます。これは実際上、現行の車検制度というのを活用した形でないと実効性が十分担保できないということでこういう仕組みにしているわけでございます。

 このために、委員もお話がありましたように、いわゆる偽装による車庫移転あるいは登録変更の可能性というようなことを懸念する声があるわけでございますけれども、これ自体は、基本的には自動車の保管場所の確保等に関する法律で禁止をされているわけで、それを守らないというのはもう本当に犯罪になるわけでございます。いわゆる車庫飛ばしが起きないように、まずは関係省庁、警察庁が中心でございますけれども、一層の取り締まりの強化を働きかけていくということが第一でございます。

 それから、当然この自動車NOx法の本来の趣旨、それから車庫飛ばしというのは基本的に脱法、犯罪行為であるという旨の周知徹底を、この法改正を機に改めて環境省としても努力をしていきたいと思っております。

田端委員 今のお話、余りよく納得できないという気もするんですが、つまり、大阪市内は地域に指定されている、だから、運送業者の場合あちこちに営業所、車庫を持っているわけですから、そこにある車庫を、例えば奈良県の営業所の車庫に車を移しかえてしまう、こういうことをするだろうということを言っているわけです。

 つまり、今この業界も大変厳しい不況の中にあるわけですから、そういう意味では、どうしてもやはりそういうふうにするのではないかということを心配して申し上げているわけですが、そういった点もぜひお考えいただいて、取り締まりといったってなかなかそれは難しいんじゃないかという気がしますから、そこはちょっとひとつ研究課題にしていただきたい、こういうふうに思います。

 実は私、この環境委員会で平成七年にDEPの問題を取り上げさせていただいて、花粉症それからアレルギー性疾患あるいは発がん性、そういったものとこのディーゼル排気微粒子との関係をぜひ環境省を中心に関係機関で、関係省庁で、これは将来大変な問題になると思うのでぜひ研究していただきたい、こういうことを提案させていただいた一人でありましたので、今回の法改正というのは、それから六年かかっていますけれども、一歩前進したと非常に喜んでいます。

 しかし、まだまだヨーロッパに比べて、このディーゼル排気微粒子と人間の健康という問題については、技術的にはあるいは科学的には、対策といいますか対応策が進んでいないように私は思いますから、ぜひ積極的に環境省がリーダーシップをとり、厚生労働省、文部科学省、林野庁、国土交通省等関係省庁でひとつやっていただきたいと思います。

 そしてまた、例えば花粉症なんというのは、実際に花粉がある山の中に住んでいる人よりも都会に住んでいる人の方が罹患率が圧倒的に高いわけですから、これははっきり何らかの形で浮遊粒子状物質等の関係があるわけですから、ぜひこういった問題は、命にかかわらない花粉症で困っている人というのがたくさんいるわけです。本当に十人に一人か七、八人に一人いるわけですから、そういった意味で、このディーゼル排気微粒子というものに対しての科学的メスを積極的に入れていただくよう、法律をつくるだけではなく、関係省庁との連絡会議等を開いていただいて対策の強化をお願いしたい、こう思いますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。

    〔近藤(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

岩尾政府参考人 花粉症対策全般については、先生御指摘のとおり、環境省、厚生労働省、林野庁、気象庁から成る担当者連絡会議を設けまして、平成十二年度には昨年の八月と本年の一月、二回開催して、綿密な連携連絡をとりながら対策、研究等を進めております。

 このような認識のもとに、ディーゼル排気粒子の健康影響ということでは、平成十二年三月に環境省に専門家から成るディーゼル排気微粒子リスク評価検討会を設置して検討を進めております。

 今後とも、関係省庁と連絡をとりながら、環境省としては研究を推進し、ディーゼル排気微粒子等大気汚染と花粉症の関係の究明について取り組んでまいりたいと考えております。

田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。

五島委員長 樋高剛君。

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。

 お昼の時間も熱心に、皆様方、大変にお疲れさまでございます。

 さて、今回の改正案に当たりまして、私は、まず冒頭で三点のことを強く要望させていただきたいと思っております。

 まず一点目が、対策地域の設定に関してですけれども、都道府県からしっかりと意見を聴取した上で、車種規制など今回対策を講じ、そしてその効果が十分に発揮されるようにできるだけ広域的に指定を行っていただきたい。それと同時に、前回も質問させていただきましたけれども、その地域内に流入するディーゼル自動車の対策につきましての検討を行って、必要に応じて規制措置を講じていただきたいというのが一点目であります。

 そして、二点目でありますけれども、いわゆる大きな道路、主要幹線道沿いの大気汚染によりまして人間の健康に影響しているということでありますけれども、その調査研究をしっかりと進めていただきたい。そして、研究をするだけではなくて、その地域地域それぞれで定期的に積極的に情報公開、どういう調査をしてどういう結果であったかということを情報開示をしていただきたい。また、その調査研究で結論を得られました暁には、それに応じて必要な措置を講じていただきたいと思うわけであります。これが二点目であります。

 三点目、前回の質問でも、いわゆるDPF、除去装置につきましても詳しく質問させていただきましたけれども、このDPFの実用化に向けた研究開発の促進に積極的に取り組んでいただきたい。

 この間視察で、東京都の環境科学研究所でDPFそのものを見たのは私は初めてでありました。その前日に実はDPFについて質問をさせていただいたのですけれども、あれを見まして、実際に確かにあれは費用もかさむしなかなか容易にできることではないけれども、ああいうことの研究開発を率先して国がリーダーシップをとってやっていくということが大変重要なのではないかという思いを私は改めてしたわけでありまして、DPF装着に対する例えば補助の拡充、また、ある意味では今後、長期的な展望に立ちまして装置の義務づけについて検討を行っていただきたいと思うわけでありまして、以上三点につきまして、まず冒頭強く要望させていただきます。

 質問に入りますけれども、今、政府におきまして、すべての公用車を三年以内に原則として低公害車に切りかえていくということでありました。

 きょうの午前中も参考人の先生方から意見をさまざま聴取いたしまして、もちろん低公害車だけでは当然解決できる話ではなくて、全体の交通量の抑制とか、もっと本質的な部分もやっていかなくてはいけないけれども、幾つかあるうちの一つの手段としてそれは有効なのではないかということのように私は認識をいたしました。

 しかし、低公害車にするという対象を、中央の役所の車だけではなくて地方の自治体、市町村までは財政的に苦しいと思いますので、例えば都道府県もしくは政令市、また一方で、特殊法人また独立行政法人に至っても、やはり環境省さんがリーダーシップを発揮していただいて、低公害車に切りかえていく。これは、単なる声がけ、努力しているんだよということだけではなく、現実にそうなるように施策を推進すべきであると考えるわけであります。

 また一方で、この国会周辺、そして霞が関周辺の車を見まするに、議員の先生方も率先して低公害車にするというふうに私は取り組んでいくべきではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 中央省庁で三年以内に、政府で三年以内に一般公用車を全部低公害車に切りかえるという総理の御方針がありまして、今それに向けて努力をしているところでございますけれども、特殊法人につきましても同じ対象になっておりますので、環境省といたしましては、取り組むということのお願いをいたしております。

 それから、地方公共団体につきましても、取り組む努力をする義務がございますので、環境省から文書でお願いをいたしまして、取り組んでいただいているところでございます。

 それから、グリーン購入法の対象は国の機関ということになっておりまして、国会もその対象ということでございます。国会につきまして、先生方の御努力で今その取り組みが進められようとしているということは、私どもにとっても非常にうれしく思っていることでございます。また、国会議員の先生方、個人的にもそのようにしていただければ大変にありがたいというふうに思います。

 環境省といたしましては、低公害車の普及促進のために、さまざまな機会をとらえて、各層の皆様に積極的に働きかけてまいりたいと考えております。

樋高委員 心強いお言葉をいただきまして、ありがとうございました。

 ぜひ議員の先生方にもしっかりとお勧めをいただきたいなと。私もハイブリッドカーに乗っておりまして、性能的には全く遜色ないわけでありますので、それだけ本当に日進月歩で科学技術が、ふだんの業務に全く支障のないように移動できますので、どうかその意義と、そしてその大切さをぜひ積極的に説いていただきたいと思います。

 また、素朴な疑問なのでありますけれども、アイドリングストップの話であります。

 国会内、議員会館の前で停車している多くの車がアイドリングをしたままでございます。先生方は、おりられて、その後エンジンを切っているかどうかなんというところまではもちろん現実的にわからないのでしょうけれども、アイドリング状態の車が本当にたくさん見受けられるわけであります。

 申しわけない程度に、アイドリングをストップさせましょうなんて小さい看板があちらこちらにある程度でありまして、中には、運転手さんが乗っていないのにエンジンがかけっ放しのものもあったり、また、エンジンをかけていて運転手さんは乗っているのですけれども、エアコンをかけていると思うのですけれども、窓は全開であるとか。

 また、御案内のとおり霞が関の役所の周りは、夜になりますといわゆるタクシーの客待ち、ずらっと並んでいますね。あれも、一生懸命CO2を排出して空気を汚しているんだなと。あそこに夜になりますと何十台、何百台とぐるっと一周並んでいるわけでありまして、ああいう現実を考えますときに、本当にそら恐ろしくなるわけであります。

 また一方で、議員の先生方の車も、小さい車ではなくて結構大きな車。二、三千ccは小さい方、大体四千ccから四千五百cc。また、ベンツなんかに至っては、ベンツが悪いと言っているわけじゃないですけれども、六千ccでありますから、リッターカーの、いわゆる千ccの車六台分の、もちろん、だからといって単純計算の六台分の話じゃないのですけれども、それだけの排出量があるわけでありますね、現実に。

 そんな中にありまして、小泉総理がおっしゃったいわゆる米百俵の話ですけれども、これは、現代社会、我々は本当にさまざまな先人たちの努力によりましてこうして快適に生活をさせていただいておりますけれども、我々が多少の痛みを我慢しても、将来の世代、自分たちの子供たち、孫たちの世代、また日本の未来のためにしっかりと考えていくべきだということではないかと思うわけでありまして、環境の問題にまさしく当てはまることではないかと思うわけであります。

 環境問題への取り組みはまず身近なところから始めることが大切であるということも、総理は所信でおっしゃっておいででありました。国会周辺のアイドリングストップにつきまして、ぜひともイニシアチブをとっていただきたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 アイドリングストップというのは大変大事なことでございまして、企業の環境報告書を見ておりますと、それを行動目標に掲げ、あるいはその企業の環境方針に入れて実行している企業がかなりの数ございます。

 まさに委員おっしゃられましたように、一人一人が実施できるということでございますので、その実行を促進するために、アイドリングストップの重要性についての普及啓蒙活動をやっていくということは重要だと思います。

 国会におきましても、国会の中の駐車場にアイドリングストップを呼びかける看板があるということは承知をいたしております。その意味では、まさに国民の代表である国会議員の方々に、身近にできることとしてアイドリングストップが広く実行されるということを望んでおりますし、皆様方にぜひお願いを申し上げたいと思います。

樋高委員 これから夏、気温が上昇して暑くなってまいりますので、その中でエンジンをとめると、きっともう中はサウナ状態になってしまうのも、それも現実、事実でありますけれども、そこは、例えば待合室みたいなのをつくって、そこでちょっとおりていて、運転手さんはそちらの方でゆっくり時間調整していただくとか、やはりさまざま考えていっていただきたいと思うわけであります。

 そんな中にありまして、現行の自動車NOx法の基本方針の中では、低公害車の利用の促進のための所要の措置を講ずるとか、事業者の低公害車の導入を誘導するための所要の措置を講ずるとか、いわゆる抽象的に書かれているわけであります。

 そんな中にありまして、要するに、抽象的な文章であるということで低公害車の普及が促進されないということは、現に今日本国内で走っている低公害車はわずか五万台足らずであるということを見ても明らかなわけでありまして、小泉総理のもとで、先ほどおっしゃいました、政府は原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえるということにしているわけですから、これはやはり、先ほど大臣のおっしゃった中で、企業でも一部そういうふうにも、アイドリングの部分については運動なさっている方もいらっしゃる、大変すばらしいことであると思いますけれども、少なくとも、この低公害車への切りかえについても、大企業について、もうある一定の割合で義務づけることにしても私はいいんじゃないかと思うわけであります。

 現実問題として、東京都の条例では、一定規模以上の事業者に対して低公害車の導入を義務づけることとされているわけであります。低公害車の大量の普及を図るため、民間事業者も含めた需要の創出がやはり不可欠であります。

 もちろんコストもかかりますけれども、今回の改正案において、事業者に対する低公害車の導入の義務づけも盛り込むべきではないかと私は考えたのでありますけれども、いかがでしょうか。

西野大臣政務官 樋高先生の御指摘、その気持ちといいますか、考え方は私もある意味でよく理解をいたします、そのとおりかなというふうに思っております。

 ただ、現実は、大手企業はもちろんでございますが、例えば配送会社、あるいは給食会社等々とありまして、要するに、車を数多く利用する一定の規模以上の事業者というふうにした方がむしろいいのではないかという個人的な考えであります。そういうことではあります。

 それでは、なぜやらないのかということでございますが、例えば、私が今官用車で乗らせていただいております天然ガス車は、霞が関には給油所がありますけれども、全国にはまだまだ数が少のうございますから、燃料を供給する施設がまだ徹底されておらない。当然ながらその需要も、天然ガス車の普及もまだ全国で一万台を割るような、そんな状況でございます。これは値段が高いという問題がございましょう。

 さらには、事業主の方も、単なる乗用車だけではございませんで、軽自動車から始まりまして貨物車、小型、中型、いろいろあると思います。要するに、事業主の用途にもいろいろありますから、そういう意味では、単に事業者の用途に応じた車種が、要望どおりのものが今市中に出回っておるかといったらそうでもないわけでございまして、そういういわゆるメーカー側の車種に、いろいろ多様な乗用車を含めての対応ができておらないという問題、そういうことからいたしましても、今直ちに一定規模以上のものを制限するということ、気持ちはよくわかりますけれども、義務づけることというのは、今この時点ではそれはかけ声だけになってしまって、現実には実効性がないのではないかというふうにも思われます。

 つきましては、事業者の実情を踏まえて、自動車の使用管理計画なるものを策定させて、その実施を求めて、その上で、適切に低公害車の普及啓蒙というものを行いながら実効あらしめていきたい、このように思っておるところでございます。

樋高委員 最後に、一問質問させていただきます。

 今回の改正法案は必ずしも十分なものではありませんけれども、やはり一歩前進だというふうに私は認識をしております。この法案の成立後、これをいかにより効果が上がるように運用するのか、適切に運用して実効あるものにするのかが私は重要ではないかと思うわけであります。

 環境省として、この改正法をどのように運用していこうとしているのか、環境基準の達成期限を含めましてお答えをいただけますか。よろしくお願いします。

川口国務大臣 委員おっしゃられますように、これの実効性を上げるために取り組んでいくということが何よりも肝要なことだというふうに思っておりますし、それが環境省の責務だというふうに認識をいたしております。

 したがいまして、地方公共団体や関係の省庁と連携をいたしまして、環境基準の達成に向けて最大限の努力をしてまいります。

樋高委員 どうもありがとうございました。

 今後もしっかりと監視をし、そして定期的に見直すということをやっていただきますように、最後に意見を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

五島委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十四分開議

五島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。

 尼崎、名古屋の両判決は、現在の自動車排ガスによる大気汚染公害での被害をもはや一刻の猶予もできないものととらえ、これに対する国を初めとした行政の無策を厳しく断罪しました。そして、現在進行形の自動車排ガス公害と気管支ぜんそくとの因果関係を明確に認めたことによって、これまで国、環境省が公害健康被害補償法の指定地域解除の口実としてきた、大気汚染とぜんそくとの因果関係が不明確という論拠が完全に崩壊することになりました。また、幹線道路の公共性よりも、生命の危機にさらされる原告の健康を優先することを示しました。

 そこで、まず、環境基準の達成と政府の責任の問題でお伺いします。

 政府は、七八年七月、NO2環境基準を大幅に緩和した当時、八五年までに環境基準を達成すると約束し、八八年三月には公健法の指定地域を解除し、新規認定患者の切り捨てをしました。そして、九二年の現行自動車NOx法を制定した際には、二〇〇〇年おおむね達成を約束しましたけれども、達成できませんでした。特に九二年の制定当時は、各種対策効果を示して、例えば車種規制で七%、低公害車で五%、車速改善で九%、その他一〇%それぞれ削減で、合計二八・五%程度のNOx排出量削減率になるとしていました。しかし、実態はすべてを合計しても五%程度も効果がなかったのではないでしょうか。

 そこで、大臣は、このたび重なる公約違反と環境省の責任についてどのように御認識か、お伺いしたいと思います。

川口国務大臣 現行自動車NOx法に基づきます対策が総合的に見て十分な効果を上げ得なかったということにつきましては、これを謙虚に反省いたしております。

 今後は、粒子状物質を改正NOx法の対象に加えるとともに、車種規制の強化あるいは事業者指導の仕組みの強化等の改正を行いまして、対策の一層の推進を図ることといたしております。これを行っていくことが環境省に課せられた責務であると考えております。

藤木委員 現行法の制定当時から、事業所の総量規制やステッカーによる流入規制を排除して、単体、車種規制だけの対策になったことに対して抜本的な見直しを要求してまいりましたけれども、それにも耳をかすことなく放置したまま今日の深刻な自動車公害を起こした責任は極めて重大だと言わなければなりません。

 さらに、今回の車種規制の強化や事業者への計画作成義務づけなどの法改正で、十年程度の目標期間内に二酸化窒素の環境基準をおおむね達成できるとしていますけれども、自動車排ガスによる大気汚染の深刻な現状から見て、実効性が果たしてあるのだろうかと思います。現行法の制定時にも、中間報告で総量規制や流入規制が提案されながらもそれを排除して、単体、車種規制のみで二〇〇〇年環境基準のおおむね達成を約束したけれども、実現できなかったわけです。

 今回も、現行より改善されたとはいえ、NOxでいえば、車種規制の強化や事業者への計画作成義務づけなどにとどまっていまして、環境基準のおおむね達成は困難ではないかと思います。また、新たに対象物質に追加される粒子状物質の達成水準は、可能な限りの削減を図るというレベルの目標にとどまっております。

 ですから、環境基準を達成し、大気汚染による健康被害を出さないためには、事業所への総量規制、対策地域内への流入規制などの抜本的な対策がどうしても不可欠ではなかろうか、このように思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 御指摘がございました、例えば事業所に対する自動車の排出総量規制につきましては、これは事業所ごとに自動車、車を持っているその所有の形態ですとか、あるいは走るときの態様が業態によって異なります。ということで、排出実態が異なりますので、一律に規制をするということは困難だというふうに考えております。

 本改正法案におきまして、新たに事業者に対しまして自動車の使用管理計画の策定を義務づけるということが盛り込まれておりますけれども、これによりまして、自動車の排出ガスの適正な抑制が図られるというふうに考えます。

 それから、流入規制についてお話がございましたけれども、取り締まり体制をどうやって確保するかというところに問題が残っていると思います。ですから、直ちに流入規制を実施するということは不適切であると思います。

 改正法の地域指定に基づく規制でございますが、対策地域以外の登録車両が走っている車両数に占める比率がどれぐらいかということを考えますと、それは一割以下であるというふうに推定をされておりますので、したがいまして、適切に地域指定を行って、地域の中において車種規制を初めとするさまざまな施策を総合的に行っていけば着実な効果を上げ得ると考えております。

藤木委員 国民の健康を守る上で、達成期間は長くても五年、達成水準は環境基準の完全達成とした上で、このために必要な事業所への総量規制、製造、販売者への総量規制、対策地域内への流入規制、使用過程車の走行規制などの抜本的な対策検討を選択すべきだというふうに思います。

 では、答申は、六都府県特定地域における単純将来NOx排出量に対する必要削減量と対策効果をもとにいたしまして、車種規制の強化を初めとする総合的な対策を最大限講ずることによって、九〇%以上の環境基準達成率は可能としています。

 確かに、将来総排出量中位推計では、六都府県全体で環境基準九〇%達成が可能のように推計されております。しかし、それはあくまでも想定による計算であって、対策による実質削減量を積み上げたものではございません。しかも、高位ケースの試算では、各地域とも、本答申の対策をもってしても、二〇一〇年の環境基準九〇%以上達成さえおぼつかない状況です。さらに、最も大気汚染の深刻な東京都については、高位のみならず中位ケースの計算によっても九〇%達成はおよそ困難との試算になっています。

 ですから、車種規制の強化を初めとする総合的な対策を最大限講ずることだけでは、東京都などの環境基準のおおむね達成ができないことはもう既に明らかだと思いますが、どうでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃいますように、中央環境審議会の平成十二年十二月におきます答申の中では、「東京都の場合には、他の地域に比べて環境基準の概ね達成には更なる対策努力が必要」と指摘がなされております。環境基準のおおむね達成に向けて大変大きな努力が要るということは事実だと思います。

 このため、環境省といたしましては、改正自動車NOx法の効果的な推進に全力を挙げるとともに、その際には、環境確保条例に基づく各種の新たな対策の実施を予定している東京都と連携を密にしていきたいと思います。協力をしながら、環境基準のおおむねの達成に向けて取り組んでいきたいと考えております。

藤木委員 目標が達成できなかった原因といいますか要因について、自動車走行量の伸びによって単体規制、車種規制の効果が減殺されて目標が達成できなかった、こういうことをずっと言ってこられていたわけですけれども、今もおっしゃったように、東京都そのものが交通容量がもう飽和状態ですね。ですから、走行量が横ばいになっているという状況になっております。また、その他の都市でも、自動車交通量の発生集中を抑制、削減する策がほとんどないわけですから、走行量が伸びたということだけが理由ではないと私は思うわけですね。

 そこで次に、単体・車種規制と特定自動車排出ガス基準の強化の問題で伺います。

 単体規制で排出ガスの測定に用いられる法定走行モードについては、現行の十・十五モード、十三モードによる測定とも、東京都環境白書では、東京の走行実態と乖離したものとなっているとの指摘がございます。

 混雑時の平均走行速度を九七年の道路交通センサスから見ますと、全国平均が三十五・二キロメートルなのに対して、東京都区部は十八・五キロメートル、東京都多摩地区でも二十四・二キロメートルというぐあいです。ですから、例えば普通貨物のNOx排出係数が、全国平均の場合は五・二グラム程度なのに対して、東京都区部の場合には七グラム程度で、走行速度が遅い分だけ多く排出することになるわけです。

 そこで、規制値の走行モードが、走行速度が低い大都市の実態と乖離しているため実質的な規制効果が少ないということは、以前から中央環境審議会でも指摘をされていたものであって早急に見直すべきであろうと思いますが、環境省、いかがですか。

松本政府参考人 御指摘のありましたとおり、現行の走行モードにつきましては、制定されてから十年以上が経過をいたしました。そして、走行実態に変化が生じてきている可能性が高いと私どもも認識をいたしておりまして、走行実態を踏まえて見直すことが必要だということについては、昨年十一月の中央環境審議会答申においても指摘をされたわけであります。

 これを受けまして、私ども環境省といたしましては、現在、最近の走行実態調査を現に行っているところでございます。この結果をまとめ上げましたら、その結果を踏まえて、中央環境審議会大気環境部会の自動車排出ガス専門委員会におきまして見直しをしていただくということで、既にこの専門委員会も立ち上げております。

 この結果は今年度末を目途に取りまとめられる予定でございますので、今後、環境省といたしましては、その審議結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。

藤木委員 本年度末と申しますと、来年の三月までということでよろしいんですね。ちょっとお答えください。

松本政府参考人 そのとおりでございます。

藤木委員 わかりました。

 環境省は、特定自動車排出ガス基準について、最終答申の内容に基づいて設定するとしておりますけれども、そうすると現行基準より後退するおそれがあるのではないでしょうか。

 現行では、ディーゼル車をガソリン車に代替する場合、ガソリン車の最新規制値を特定自動車排出ガス基準に設定しています。また、ガソリン車も車種規制施行時点における最新規制値を特定自動車排出ガス基準に設定しています。

 しかし、答申はそうなっていないんですね。ディーゼル乗用車をガソリン車への代替が必要となるレベルに特定自動車排出ガス基準を設定する、またガソリン車も、最新規制値前の規制値を特定自動車排出ガス基準に設定するとしております。これは、答申が、ディーゼルエンジン技術の今後の発展を阻害するとしたり、費用対効果なるあいまいな指標を持ち出して、より効果が高く、現実的に可能な低減対策である最新規制値での特定自動車排出ガス基準の設定を排除するのは問題ではないかと思います。

 ですから、現行どおり、乗用車も含め代替可能な車両区分ではガソリン車の最新規制値を排出ガス基準とし、ガソリン車も車種規制施行時点における最新規制値とすべきだと考えますが、環境省、いかがですか。

松本政府参考人 乗用車それからトラック、バスの軽量車と中量車につきましては、ディーゼル車をガソリン車に代替することが可能であるということから、車種規制におきましては、ガソリン車並みの規制値を設定することを念頭に置いているわけでございますが、仮に御指摘のようなガソリン車の最新規制値を用いた際には、実態的にほとんどのガソリン車が基準非適合になってしまうということになりまして、すべて代替を強いられるということにもなりかねないわけでございまして、その影響が極めて大きいということで、すべてを最新規制とすることは想定をしていないわけでございます。

 なお、トラック、バスの重量車につきましては、ガソリン代替が事実上困難でございますので、そういうことを勘案してディーゼル車の単体規制の最新規制値に設定することを想定しているところでございます。

藤木委員 午前中の公聴会でも、技術関係のモータージャーナリストの安藤さんに、技術的にそれは難しいことなのかというようなことで伺いましたけれども、決してそうではないというお答えもございました。

 結局、ユーザーへの負担のことをお考えではなかろうかと思うわけですけれども、排ガス対策が不十分な自動車を供用して、その結果、耐用年数の代替をユーザーに余儀なくさせて、早期の代替でその利益を拡大する、そういうことになりますと、自動車メーカーは随分もうかっているわけですから、その利益分で代替の負担をさせていくということは当然できることではないかと思います。

 そもそも言われておりますのは、答申が、ディーゼル乗用車をガソリン車への代替が必要となるレベルに特定自動車排出ガス基準を設定したというのは、実は、欧州車の対日輸出への影響を懸念したEUの圧力によるもの、そういった報道もございます。私は、やはり現行どおり、乗用車も含めて代替可能な車両区分ではガソリン車の最新規制値を排出ガス基準とすべきだというふうに思います。

 また、九三年に現行の特定自動車排出基準が定められていますけれども、その後、一般的な単体規制の強化がございまして、単体規制と特定自動車排出基準の逆転現象が生じております。

 例えば、二・五ないしは五トン以下の区分では、九二年の車種規制が六・八グラムだったのに対して、単体規制の場合は五・九グラムとなっております。五トン超の場合では、九二年車種規制で七・八グラム、これに対して単体規制が五・九グラムなどと、いずれも法による車種規制と一般の単体規制が逆転現象を起こしているわけですね。

 そこで、答申は、単体規制の強化に伴う車種規制基準の段階的強化についても、費用対効果を理由に消極的になっているわけですが、中間報告では、ディーゼル自動車単体の新長期規制を前倒しで早期に実施するとともに、その規制が具体化した時点では車種規制にその単体規制強化が速やかに反映できるように配慮することを検討すべきだ、このように言って、段階的強化を行うということを明記していたわけですね。

 ですから私は、単体規制の強化に伴う車種規制基準の段階的強化については当然の措置ではなかろうか、このように考えますけれども、いかがでしょうか。

松本政府参考人 単体規制の強化に伴います車種規制の排出基準値の段階的強化、こういう御指摘でございますけれども、短期的に、例えば一年とか二年の間に規制基準が変わることによるユーザーの混乱を避ける必要があるというようなこともやはり勘案していかなければならないということでございます。

 ただ、単体規制の施行状況あるいは大気汚染の今後の状況を勘案して今後検討してまいりたいと思っております。

藤木委員 以上で終わります。

五島委員長 原陽子さん。

原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、午前中、参考人の方々への質疑がありまして、その参考人の方が指摘した点から幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 自排局の分布と測定項目に関することについての指摘があったのですが、今回、特定地域に加えられた名古屋市には今十四の自排局がありまして、その十四の自排局の中でもSPMを測定しているのはたった四局にしかすぎないという指摘が参考人の方からありました。今回の法改正でそうした地域を拡大するのであれば、やはりしっかりと、測定すべき場所で測定すべきものを測定できるように、こうした自排局の設置というものも再検討する必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

松本政府参考人 道路沿道におきます大気汚染状況につきましては、大気汚染防止法に基づきまして、都道府県知事及び政令市長、自治体が常時監視を行う、これが第一義的な義務になっているわけでございます。環境省におきましては、適切な監視の方法などについて技術的な助言を自治体に対して行う、そしていろいろと支援をしていく、こういう立場にあるわけでございます。

 測定局の配置などにつきましては、平成七年六月に、環境省、当時環境庁でございましたけれども、が作成をいたしました「自動車排出ガス測定局の配置等について」という報告書の中で、常時監視を実施すべき地域の考え方を明らかにいたしておりますし、また、種々の測定項目などについても、例えばNOxやSPMを当面重点的に監視する必要があるというようなことなど、基本的な考え方を示しております。

 さらに、その後の検討結果を踏まえて、ことしの五月には、測定局の適正な配置の考え方などを示した常時監視事務の処理基準というのを定めまして、これを、第一義的に測定をしていただく知事及び政令市長に通知をしているわけでございます。

 環境省におきましては、測定局の適正な配置のあり方などに関しまして、現在もさらに一層具体的な検討を進めているところでございます。本年中にも新たな報告書を取りまとめるべく検討しているところでありまして、こういう取り組みを通じまして、各自治体における大気汚染の常時監視等を適切に支援していくということでまいりたいと思っております。

原委員 ではもう一つ、午前中の参考人の方から指摘された点でお伺いをしたいと思います。

 「この法律において「自動車排出粒子状物質」とは、自動車の運行に伴って発生し、大気中に排出される粒子状物質をいう。」というふうに、第二条の三項に書かれております。それをSPMと言うそうなんですが、この定義の中に、道路粉じんとかタイヤ・ブレーキダストというものが含まれているという解釈でよろしいのでしょうか。

 というのは、きょうの午前中のお話の中で、大気の中にはそうした道路粉じんとかタイヤ・ブレーキダストというのが合わせると二〇%ぐらい含まれているというようなお話もあったので、二〇%というのは決して少ない量とは言えないと思っていますが、こうしたSPMももちろん、道路粉じんやタイヤ・ブレーキダストというものについての対策はどのように考えて進めていくのでしょうか、環境省と国土交通省の方にお聞きをしたいと思います。

松本政府参考人 浮遊粒子状物質、SPMでございますが、このSPMは発生の由来を問いません。発生の由来にかかわらず、大気中に浮遊する粒子状物質のうちで粒径が十ミクロン以下のものをSPMと言っているわけでございます。

 したがいまして、道路粉じんやタイヤ・ブレーキダストとして出てきました粒子についても、この条件に該当するものについては、当然SPMに含まれることになります。

 SPMの環境基準を達成していくというのが政策目的ということになるわけでございますが、これらの粒子の低減に寄与する対策としては、例えばスパイクタイヤ禁止法を施行いたしまして、平成三年四月からスパイクタイヤの使用を原則禁止とするという取り組みを推進してきておりますし、また、タイヤ・ブレーキダストに関しましては、タイヤやブレーキの性能の向上、あるいは道路粉じんに関しましては、道路の定期的な清掃なども粒子の低減に寄与するものと想定されるわけでございます。

 ただ、改正後の自動車NOx法におきましては、道路沿道の環境に最も大きな影響を及ぼしている自動車排出ガス中の粒子状物質を対象としているわけでございまして、今御指摘のありましたような道路粉じんとかタイヤ・ブレーキダストそのものは、現在御審議をお願いしております自動車NOx法の対象ではありません。

大石政府参考人 道路の路面には、自然界由来のもの、工場由来のものの粉じん等が堆積いたしておりまして、これらが車の通行によって巻き上げられましてSPMになる場合があるものと考えております。

 このためには、道路管理者といたしましては、交通流を円滑にするあるいは分散化するということが何よりも重要な基本的な対策だと考えておりまして、環状道路、バイパス等の幹線道路ネットワークの整備を急いでおるところでございますが、今環境省の方から御説明ございましたように、道路粉じんにつきましては、スパイクタイヤ法施行以来激減いたしておるとは思いますが、沿道の生活環境の改善のため、路面の状況、交通量の状況、地域の状況等を勘案し、粉じん等の巻き上げや飛散が少なくなるよう道路清掃に努めているところでございます。

 例えば、東京都心部を管理いたしております東京国道工事事務所で申しますと、都心部では月に八回、郊外部では月に五回清掃を行っております。今後とも、適切な道路清掃に努めてまいりたいと考えております。

原委員 もちろん環境政策というのも交通政策と非常に大きくかかわってくるところだと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、先日の質問の続きで、これは環境大臣にお聞きをしたいと思うのですが、先日私は、環境基本法に定められた望ましい基準というものを達すべき基準にしてはどうかという提案をしてみたのですが、その質問に対しまして、環境大臣は、その望ましい基準というのは、非常に高く厳しく設定してある基準だというふうにおっしゃっていましたが、首都圏の特定地域の自動車NOxの環境基準達成率はわずか二七%だそうです。確かに高くて厳しい基準とはいえ、二七%というのはちょっと余りにもひど過ぎる状況ではないかなというふうに思っています。

 そこで提案なのですが、その高くて厳しい望ましい基準というものと同時に、例えば達すべき基準というのを別に定めてみてはどうかなというふうに思っています。

 例えば、尼崎とか名古屋南部の訴訟では、環境基準の一・五倍の範囲で差しとめができるという判決が出たわけなので、その望ましい基準と達成すべき基準というものを定めて、その達成すべき基準というものを超えたら、もう有無を言わさず道路建設や車の走行を差しとめることができるくらいに法律というものの位置づけを変えてみたらどうかなというふうに思ったのですが、環境大臣のお考えをお聞かせください。

川口国務大臣 大変に興味深い御提案ではございますけれども、今、全体としての環境基準の設定の考え方が、この前申し上げたように、十分な安全を見込んで設定をされている、国民が健康で文化的な生活を確保する上で何が望ましいかということで考えられているということでございまして、自動車NOx法に限って、環境基本法の今申し上げたような考え方と異なる考え方、達成すべき水準を設定するということにして、その達成を目指すということにいたしますと、環境政策全体で望ましい水準ということでやっているわけですから、その整合性の問題が出てくるということだと思います。

 改正後の自動車NOx法におきましては環境基準の確保を目的としているということでございますので、その確保に向けて全力で取り組んでいきたいというふうに考えております。

原委員 ありがとうございます。

 あともう一つ、質問させていただきたいと思います。

 先日も質問しました覚書のことなんですが、やはりまだちょっと気になるということで、もう一度きょう質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 先日私が、経済産業省と環境省が交わした覚書の中の七番目の項目のところで、低公害車への乗りかえの期間などに猶予を与えてしまうので破棄すべきではないかという提案をしたのですが、そのときに経済産業省の方は、財産権という言葉を挙げられたということは覚えていらっしゃることと思います。

 しかし、昭和四十五年に公害対策基本法から経済調和条項というものが削除されたと聞いております。そして、その経済調和条項が削除をされて、経済優先ではなくて環境優先の政策をつくっていこうということになったというふうに聞いております。

 そして、私は昨日、このNOx法をつくるに当たって策定にかかわった法制局の方からお話を聞きました。その法制局の方は、経済産業省とこうした覚書があったとは知らなかったというふうにおっしゃっていました。そして、前回の私の質問に対して経済産業省の方が財産権という言葉をお使いになったことに関して驚かれていて、余り財産権財産権と言われることに関しては、心外だというふうにもおっしゃっていました。

 それで、憲法の十三条では、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利について書かれてあります。そして、憲法の二十五条には、国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有すると書かれています。そして、この法律なのですが、もう一度よく見てみると、目的のところの一番最後に、とにかくこの法律の目的自体が、「国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することを目的とする。」というふうにしっかりと書かれてあります。

 もちろん、経済産業省の方の御説明にもあったとおりに、きのう買った車をきょう買いかえろというのは非常に困難だ、私もそれは非常に理解をしております。ですから、そのために十三条の中に、財産権を考慮しているものがしっかりと書かれているというふうに思います。

 この法律の目的自体が、国民の健康を守るというものを目的としていて、そして財産権のことに関しては、この十三条でしっかりと考慮をしている。この法律の中にしっかりとそうしたものが書かれているにもかかわらず、私が非常に気になる覚書の中でまたさらにそうした猶予期間を与えるようなことを、私はよくよく考えたのですが、そんな覚書を交わす必要はないというふうに思いますので、ぜひこれは破棄すべきではないかと思うのですが、これは経済産業省の方からの御意見をお聞かせください。

長尾政府参考人 お答えいたします。

 この確認文書の趣旨については、先日御説明申し上げたとおりでございますので繰り返しませんけれども、この猶予期間の設定の問題でございますけれども、自動車を代替させる必要性と使用者の負担を考慮いたしまして、実際上、従来、平均的な使用年数からおおむね一年を減じた年数を基本として設定されてございます。問題になっております確認文書の中に書かれておりますような考慮要素も勘案した上で、そのようなこともされているというふうに承知しております。

 今後の問題といたしましては、昨年十二月の中央環境審議会の、今後の自動車排出ガス対策のあり方についての答申におきまして、今後の猶予期間につきましては、「現行規制と同等のものとすることを原則として決定する必要がある。」こういうふうに記述されております。したがいまして、これを踏まえて検討することになるのではないかというふうに考えております。

 経済産業省といたしましては、環境省等関係省庁と協力いたしまして、このような使用過程車の猶予期間の適切な設定に努めるとともに、非常に先生の御関心の高い、クリーンエネルギー自動車普及整備事業や自動車税のグリーン化税制等の支援措置によりまして、低公害車の導入促進に引き続き努めてまいる考えでございますので、御理解賜れば幸いと存じます。

原委員 前回の御説明と余り変わらず、同じような内容だったかなというふうに思うのですが、でも、このNOx法をつくることにかかわった法制局の方がおっしゃっているわけですよ。その財産権という言葉が出てくることは心外であったとか、この法律の中で、その財産権に関しては、この十三条でしっかり考慮しているというようなことをおっしゃっているわけですから。ですから、きのう、たしか覚書という言葉を使わずに私の部屋で説明を受けた気がするのですが、済みません、ちょっと忘れてしまったのですが、ですからやはり、裏でこういうふうな約束を取り交わすということは私はおかしいなというふうに思います。

 そこで、大臣にお聞きをしたいのですが、この法律の目的は健康を守ることだというふうに目的にしっかりと書かれていて、そして、その車の所有権のことに関しては、財産権のことに関しては、十三条で考慮をしているというふうにこの法律にかかわった法制局の方がおっしゃっているのですから、その裏での経済産業省と環境省が結んだこの覚書のことについて、私は破棄すべきだというふうに、しつこいかもしれませんが、いまだに強く思います。大臣のお考えをお聞かせください。

川口国務大臣 この十三条といいますのは、車種規制に関する経過措置でございまして、車種規制というのは、持っている自動車に対して何らかの制限を課すものですから、そういう意味では、憲法の二十九条の一項に「財産権は、これを侵してはならない。」というふうにありますので、それを制限するということですので、実施をするに際しては、財産権の不当な侵害とならないように、施策の効果と財産権の制限の程度についてバランスをとる必要があるということでございます。

 そういうことで、この覚書につきましては、この車種規制の猶予期間を設定するに当たって、財産権と法律の効果というものの二つのバランスをとる際に、考え方といたしまして、ここにございます窒素酸化物の低減効果、自動車の平均使用年数の動向云々ということを総合的に勘案するということを言っているわけでございまして、そういう意味で、この趣旨を確認するというのがこの経済産業省と環境省の覚書の内容でございますので、その文書は妥当だというふうに考えております。

原委員 時間が来てしまったので終わらなければなりませんが、猶予期間を与えるというのも、もちろん政令で定めるということ、この政令を定める段階で、この法律が目的としている国民の健康を守るということがしっかりと守られるように、そこは大臣としてチェックをしていっていただきたいというふうに思います。

 質問を終わります。

五島委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

五島委員長 この際、本案に対し、近藤昭一君外一名及び藤木洋子さんから、おのおの修正案が提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。近藤昭一君。

    ―――――――――――――

 自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

近藤(昭)委員 私は、ただいま議題となっております自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対しまして、民主党・無所属クラブ、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。

 その内容は、お手元に配付させていただいております案文のとおりでございます。

 その趣旨について御説明申し上げます。

 昨年一月の尼崎公害訴訟判決に続き、十一月の名古屋南部公害訴訟判決におきましても、道路管理者である国等に対しまして、浮遊粒子状物質について一定濃度以上の排出を差しとめる判決が出されるに至り、国のこれまでの無策が厳しく糾弾されることとなりました。

 原告はもとより、気管支ぜんそく、花粉症、心疾患等に苦しむすべての健康被害者に対し、今回の改正案は、それに十分こたえる内容のものでなければならないと考えております。しかしながら、従来の窒素酸化物に加え、粒子状物質を対象としたことは評価できるとはいえ、改正法の内容はほぼ従来どおりであり、これでは、これまで三度公約違反をした環境基準を達成できるわけがないと言わざるを得ません。

 それは、昨年三月の自動車NOx総量削減方策検討会報告書で指摘された自動車交通量の抑制、経済的措置の活用等の対策がこの改正案では抜け落ちているからであります。

 そこで、総量削減広域交通対策計画の策定等を推進し、環境基準を達成し得る修正案を提出する次第であります。

 修正案の内容は、第一に、環境大臣は、窒素酸化物対策地域または粒子状物質対策地域の指定要件に該当すると認められる一定の地域があるときは、速やかに、当該地域を指定する政令を立案しなければならないとしていることであります。

 第二に、国は、総量削減交通対策推進地域にあっては、総量削減基本方針に基づき、総量削減広域交通対策計画を、都道府県は、総量削減交通対策計画を策定しなければならないこととしております。

 第三は、事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制のために必要な計画的に取り組むべき措置その他の措置に関しまして、その事業者の判断の基準となるべき事項を定める者は、事業所管大臣ではなく、環境大臣とすることとしております。

 また、自動車運送事業者等につきましては、特例として監督者を国土交通大臣とする改正規定を削除し、原則どおり、都道府県知事が必要な監督を行うものとしております。

 以上であります。

 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますよう、お願いいたします。

五島委員長 次に、藤木洋子さん。

    ―――――――――――――

 自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

藤木委員 私は、日本共産党を代表して、議題となっております自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。

 修正案は、既にお手元に配付されておりますので、詳細な説明は省かせていただきます。

 その内容は、第一に、健康被害の防止と環境基準の達成をするためには、今回の車種規制の強化や事業者への計画作成義務づけだけでは不十分なことから、事業者に対して、使用する自動車のNOx及びPM排出総量を規制するため、総量規制制度を創設し、総量規制基準の設定、事業者による基準達成計画の提出、特定事業者に対する勧告、命令等を規定するものです。

 第二に、自動車排ガスによる大気汚染の深刻な現状から、使用過程車に対して、二〇〇四年時点までにディーゼル微粒子除去装置の装着を義務づけ、対策地域内の運行を禁止するため、運行規制制度を創設し、特定域外自動車排出基準の設定、基準に適合しない自動車の運行規制、PM除去装置の装着等を規定するものです。

 第三に、自動車排ガスの削減と低公害車の普及が大幅におくれていることから、自動車製造事業者等に対して、車種別の排出ガス総量削減や低公害車の販売促進を実施するため、低公害車への転換目標を含めた自動車製造事業者等に係る総量削減の措置を設け、自動車製造事業者に対する勧告、命令等を規定するものです。

 第四に、人の健康保護と生活環境を保全する観点から、道路沿道の測定データや健康影響データなど、すべての関係機関の情報を公開させるため、測定、調査及び調査研究の促進、調査結果の公表などを規定するものです。

 第五に、地方自治体の権限を強化するため、自動車排出窒素酸化物等の排出に関し、上乗せ、横出しなど必要な規制を条例で定めることを妨げないものと規定するものです。

 以上、委員の皆様の御賛同をお願いして、趣旨説明を終わります。

五島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

五島委員長 これより原案及びこれに対する両修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。

 内閣提出、参議院送付、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、藤木洋子さん提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、近藤昭一君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

五島委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十三分散会




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