衆議院

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第16号 平成13年6月22日(金曜日)

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平成十三年六月二十二日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 五島 正規君

   理事 伊藤 達也君 理事 稲葉 大和君

   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君

   理事 小林  守君 理事 近藤 昭一君

   理事 青山 二三君 理事 樋高  剛君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      熊谷 市雄君    小泉 龍司君

      河野 太郎君    下村 博文君

      西野あきら君    平井 卓也君

      細田 博之君    増原 義剛君

      奥田  建君    鎌田さゆり君

      佐藤謙一郎君    鮫島 宗明君

      長浜 博行君    田端 正広君

      藤木 洋子君    金子 哲夫君

      原  陽子君

    …………………………………

   環境大臣         川口 順子君

   環境副大臣        風間  昶君

   環境大臣政務官      西野あきら君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  浜中 裕徳君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境保全の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

五島委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として環境省地球環境局長浜中裕徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

五島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。

平井委員 おはようございます。自由民主党の平井卓也です。

 COP6の再開会合については、連日新聞でも報道され、テレビでもいろいろと報道されていますが、きょうは時間が限られておりますので、基本的なことだけをお伺いしようと思っております。

 地球温暖化の問題は、もうまさに人類の存続にかかわる非常に深刻な問題であり、二十一世紀の最も重要な課題であるということは共通の認識ですが、国家百年の計として我が国も積極的に取り組まなければならないと考えています。考えれば、十年以上の歳月をかけ、おびただしい数の国際会議を重ねた末にやっとまとまった温暖化防止のための国際合意が京都議定書であり、地球規模での取り組みを進めるための唯一の枠組みであります。

 しかし、昨今、アメリカのブッシュ新政権は、京都議定書を支持しないとの立場を表明しており、ボンの再開会合でも米国が議定書の枠組みに戻ることは絶望的だとの見方も広がっています。またさらに、アメリカは、地球温暖化の科学的側面にさえ若干疑問を持っているというか、疑っているということも感じられます。

 そこで、まず地球環境局長にお伺いしますのは、人間活動によって地球温暖化が起きていることは本当に科学的に証明されているか、また、気候変動が起きると具体的にどのような影響が起きるかということを、手短に要点だけをお答えいただきますようにお願いします。

浜中政府参考人 御説明を申し上げます。

 まず、人間活動によって地球温暖化が起きているかどうか、科学的に証明されているかどうかという点でございますが、世界じゅうの科学者が参加をして最新の知見をまとめておりますIPCCの第三次評価報告書によりますと、地球の平均気温は二十世紀中に〇・四度ないし〇・八度C上昇をしておる、そして過去五十年間の気温の上昇の大部分が人間の活動に原因があるという、新たで、かつ、より確実な証拠が得られたといったことを指摘してございます。

 さらに、六月六日に全米科学アカデミーがブッシュ大統領に報告書を提出いたしました。この中におきましても、基本的にこのIPCCの分析に同意をするという見解が示されておりまして、人間活動によって地球温暖化が起きていることは科学的に明らかになっているものと認識をしております。

 また、ブッシュ大統領も、六月十一日に発表されました声明におきましても、地球温暖化が起こっているという科学的な確証がある、こういうようなこともおっしゃっておられますので、米国大統領の御認識も現在はそういったようなことに立っておられるのではないかというふうに考えております。

 IPCCの報告書によりますと、二十一世紀中には、平均気温が一・四度ないし五・八度C上昇をする、あるいは平均海面水位が九センチないし八十八センチ上昇するというふうに予測をしてございまして、こうした温暖化に伴って高潮による浸水被害の拡大が起こるとか、あるいは水資源の問題、水不足ということで現在も十七億人が世界で苦しんでいるということでありますが、二〇二五年には五十億人に増加をするというようなことも言われております。途上国では、農業生産等への悪影響あるいは生態系の破壊、伝染病の拡大などが生じるというようなことが予測されているわけでございます。

平井委員 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、最近、先ほどの話にありましたブッシュ大統領の気候変動政策に対する声明や、アメリカとEUの会議の結果、アメリカは予算教書の中で、これは私自身、環境予算が大幅に削減されているというふうな話も聞いております。アメリカの気候変動政策に関するスタンスは一体どのようなものなのか、また、それを大臣自身がどのように評価されているか、お答えいただきます。

川口国務大臣 ブッシュ大統領が六月の十一日に、ヨーロッパに行きますその前にホワイトハウスにて声明を発しまして、アメリカがEUのサミットで首脳と会ったときにどういうことを言うつもりかということを発表いたしました。

 そのときの見解では、アメリカは相変わらず、京都議定書には致命的な欠陥があるということを繰り返した、これは非常に残念なことだと思っております。なおかつ、今具体的にどういう案があるということも提示できなかったということでございます。

 ただ、アメリカが言いましたのは、ブッシュ政権は、引き続いて気候変動政策に関する閣僚レベルの検討作業を行う、それから、温室効果ガス削減のための共通のアプローチを友好国、同盟国とともに探るということを言っております。

 アメリカもCOP6再開会合には積極的に参加をするということを言っておりますので、我が国としては、京都議定書の二〇〇二年までの発効を目指して、COP6再開会合の場で全力を尽くすという方針に変わりはございません。七月のCOP6再開会合の成功に全力で取り組むと同時に、国内の制度の構築が非常に重要でございますので、それにも全力を尽くしたいと思っております。

 以上です。

平井委員 さらに、プロンク議長も新しいテキストを出されておりますが、その内容と、大臣のその内容に対する評価をお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 プロンク議長は、考えてみますと、昨年の今ごろあるいはもう少し前から、この温暖化の交渉を進めるためにはさまざまな努力をしていらっしゃいまして、世界じゅうをそのために駆け回っていらっしゃるということで、今回も非常に精力的に、四月のニューヨークでの会合の後、新しい改定案を出しまして、しかもそれがテキストという形で、もう本当にフルに書かれたペーパーであるということでして、この地球環境問題、温暖化問題の解決に向けてのプロンク議長の努力あるいはリーダーシップには非常に頭が下がる思いを持っております。

 吸収源については、前回の議長ペーパーから大きな変更があったというふうに考えておりますし、日本にとってはそれが一定の前進であるというふうに思います。

 ただ、全体としては、日本が前々から会議でも問題であるというふうに申し上げている例えば京都メカニズムの柔軟性ですとか遵守の制度、あるいは途上国への支援をめぐっての金額ですとか、あるいは何をもって途上国を支援したとみなすかという考え方などなど、さまざまな問題があると日本としても思っておりますし、先日のEUの環境委員の講演によりますと、あちらも同じように問題があるというふうに考えているということでございます。

 途上国も、今までずっとそうでしたが、かなり問題があると考えていると思いますので、問題は非常にいろいろございますけれども、そういう意味では問題の難しさはハーグのときと全然変わっていないと思いますが、一生懸命に、まさにこういうときこそ知恵が出てくるときですし、出さなければいけないので、全力を尽くして頑張りたいと思っています。

平井委員 難しい吸収源の問題は日本にとっては既に解決のめどが立っているというふうにも考えられるわけで、日本は、実質的には議定書を批准することに問題がないように私は思っています。

 結局、EU、ロシア、東欧が批准した場合に、発効できるかどうかは、幸か不幸か、日本がもうまさにキャスチングボートを握ってしまうということになるわけで、EUと有利に交渉を進めていくといいますか、議定書のルールをより柔軟にしていくということも考えた上で、アメリカの参加というものも考えられるのかなと思ったりもします。

 しかし、議定書を二〇〇二年までに発効させるためには、本当にCOP6の再開会合に向けて大臣に頑張っていただかなければならないということは当然であります。

 その意味で、どのような国際交渉を進めていくか、簡単にお話しいただけたらと思います。

川口国務大臣 今、交渉当事者といいますか、私のほかの国の環境大臣たちの頭の中は、どうしたら合意ができるかということでみんな頭がいっぱいであるというふうに思います。私もそうでございます。

 黄金の一手というものは実は残念ながらないわけでございまして、ハーグのときと同じように、粘り強く日本の主張を訴えながら、相手の主張にも耳をかして、どこで合意ができるかということを探っていく必要があると思っております。

 すべての国が建設的に、前向きに、柔軟に交渉に参加をすることが、日本ももちろんでございますけれども、大事でございまして、また、そういった雰囲気をつくるための議長のリーダーシップにも期待を持っているところでございます。

平井委員 そこで、地球環境局長にお伺いしますが、我が国は六%削減を達成することは、我が国の技術力をもってすれば不可能ではないと思うのですが、いかがでしょうか。

浜中政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の技術力をもってすれば達成はできるのではないか、こういうことでございますけれども、現在、私どもの中央環境審議会におきまして、省エネ技術でございますとか資源の有効利用、あるいは代替フロンなどの排出抑制などの数多くの温暖化対策技術がございますが、どれだけの削減が可能かを今御審議いただいております。

 これまでの検討によりますと、経済的あるいは制度的な制約は実際にはいろいろございますけれども、そういうものをある程度捨象いたしまして、純粋に技術的な観点から、これらの技術というものをできるだけ導入するということを考えました場合にはマイナス三%、あるいは最大限に考えました場合にはマイナス九%程度まで削減できる可能性があるということでございますので、技術的観点だけからいたしますと、六%削減目標の達成は可能ではないかということでございます。

 現在、審議会におきましては、引き続きまして、こうした個々の技術についての経済性評価、それから技術の導入を促進するための経済的な措置を含むいろいろな制度のあり方につきまして御審議をいただいているところでございます。

 環境省といたしましては、その結果を踏まえて、目標の達成に向けて各種対策の推進に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

平井委員 やはり、それだけ我が国には技術力がある、その技術をあとはいかに社会に生かしていくかということになると思うのです。

 経済と環境の両立ということがよく言われますが、私自身、その発想自体がもう古いのじゃないかなと思ったりもするわけであります。両立とは、そもそも、両立することが困難という前提に立っていますが、本当にそうかどうか。

 地球温暖化を防止する、環境を改善し守るということは、経済を萎縮させるのではなく、むしろ新しい技術を生んで産業を活性化させ、経済をダイナミックなものに変えていく、いわば社会全体のパイをふやすということにもつながるように私は思うわけであります。

 つまり、私が言いたいのは、環境を守ることイコール経済を萎縮させるものではないということであります。ですからその点において、この経済と環境の両立というものに関して、この点は日本独自のスタンスでこれから交渉に臨んでいっていただきたいと私は思います。

 もう時間になりましたが、最後に大臣に、日本経済を前進させ、また構造改革を進めるためにも地球温暖化対策を進めるべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃられました経済と環境の関係の考え方は、私も全くそのとおりだと思います。

 経済と環境は統合された一体として考えられなければいけませんし、そういう意味では、技術革新、燃料電池等ございますけれども、それが日本経済のさらなる進歩、世界経済のさらなる進歩に役立っていくと思います。

 「環(わ)の国」づくりということを進めておりますけれども、生活スタイルの改革も含めた全般的な構造改革が環境の保全にさらに一層役立っていくということでございますし、またそれの前提になるというふうに考えております。

平井委員 どうもありがとうございました。

 大臣のこれからの御健闘を心よりお祈り申し上げます。ありがとうございました。

五島委員長 樋高剛君。

樋高委員 おはようございます。自由党の樋高剛でございます。

 川口大臣は、大臣就任以来、タウンミーティングの開催、またNGOとの意見交換会、NGOとの連携に力を入れておられるようでありまして、七月にはNGOの政策発表会にも大臣みずから御出席なさる予定だと伺っております。私は、このような国民の声を聞くという大臣の姿勢につきましては、前々から高く評価をさせていただいているところであります。

 ところが、このようにNGOを初めとして多くの国民の声を聞いていらっしゃる川口大臣なのでありますけれども、一方で現在、実はNGOに罷免を求められているという皮肉な事態が発生をしているということであります。

 気候ネットワークが先週発表した緊急プレスリリースの中には、川口大臣が記者会見にて米国提案に一定の理解を示したことは、日本がまさに京都議定書の死を宣告しようとしているに等しい、非常に嘆かわしい対応で、怒りをぬぐい得ない、これは、日本は批准すべしとした国会決議に明らかに反しているというふうにされているわけであります。これは非常に極端な主張でありまして、私自身がそのように思っているわけではありません。

 念のため、衆議院決議について私もう一度読み返してみました。しっかりと、文言を一文字一文字見てみたのですけれども、我が国の早期批准と同時に、京都議定書の交渉に世界最大の温室効果ガス排出国であるアメリカが継続して参加することを決議は求めているわけでありますから、米国抜きで批准しなければ決議に反するということにはならないと思うのであります。

 また、一口にNGOと言ってもさまざまな団体があるわけですから、一部のNGOがおっしゃったからといって、それをNGOすべての声を代表するものだとは私は思わないのであります。

 しかしながら、そういった極論はさておいても、NGOの多くが、米国の動向いかんにかかわらず我が国が早期に率先して京都議定書を批准すべきだと考えていることは事実であろうと思います。

 一方で、経団連、経済団体連合会は、先週十五日に記者発表を行いました。大臣もペーパーを見られたと思いますけれども、米国が参加して実質的に効果が上がる国際的枠組みとなるように引き続き努力を続けるべきである、米国抜きで批准するというような政治的決断は避けるよう政府に求めているわけであります。

 このように、京都議定書の批准をめぐる国内の世論というものは、一方では米国抜きで直ちに批准せよという見解があり、またもう一方の極では、直ちに批准することはせずにアメリカの説得に努めよという見解があるわけであります。

 今、その二つの極、いわゆる国論は二分されているわけでありますけれども、私は、七月のCOP6再開会合ですとか来週開催される非公式閣僚会合の前に、さまざまな意見を聞いていくべきであるというふうに考えるわけなのでありますが、このように国論を二分するような大きな問題は、広くNGOそして産業界などの意見を十分に聞いて、また十分に政府の考え方を理解させるように説明をして意見の集約をするように最大限努力を重ねた上で、我が国の交渉に挑む姿勢を決するべく決めるべきだ、申し上げるまでもなく、そのようになさっているとは思いますけれども、改めて思うわけであります。

 そんな中にありまして、交渉姿勢を決める際の手続に関する大臣の見解をまず伺いたいと思います。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、こういう大きな問題、さらに申し上げれば、これは、環境問題の分野に限定された問題だけではなくて、相当に大きな問題である。きのうもたまたまアメリカのあるNGOの方とお話をしておりましたけれども、これはまさに世界各国の首脳の問題であるというふうにその人もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、そういった非常に大きな問題につきましては、委員がおっしゃられるように、さまざまな立場からの意見がありますし、さまざまな立場の意見を謙虚に伺うべきだと思っております。それから、こちらからも、政府がどういうふうに考えているかということをきちんと御説明を繰り返し繰り返し申し上げるべきだというふうに考えております。

 さまざまな方の御意見を伺うということで申しますと、NGOの方や産業界の方と時間のある限りお話をさせていただくことにいたしておりまして、七月もタウンミーティングがございますし、それからNGOの方の政策の発表会の場もございますし、また財界の方ともお会いしたいというふうにも思っております。

 それから、御説明をする方につきましても、実は先週の土曜日もある新聞で、アメリカの参加が重要だというお話をさせていただいて、あるいはもっとさせていただいたのですが、そういう部分が載っかっていましたけれども、恐らく私は、小泉内閣が始まって閣僚にしていただいて、したがって四月の終わりからですけれども、今までに二十回ぐらいはプレスやいろいろな方にお話をしてやってきております。おとといも外国人記者クラブで講演をいたして、日本の説明をいたしてまいりました。ということで、いろいろな方の御意見を伺うということについての重要性を認識している、あるいはそれを実行しているという意味では人後に落ちないつもりでおります。

 それで、交渉の方針を決めるときの手続についてどう考えるかということでございますけれども、そういったさまざまの方の意見がどうあるかということを伺うということは、これは常日ごろの姿勢として当然ということでございます。

 それから、交渉の方針自体につきましては、これは外交の交渉方針ということになりますと、それなりに、手のうちを明かしてしまうと交渉にならないという側面もございますので、政府の関係部局、特に官邸ときちんと御相談をさせていただいて決めていく、日本政府としての態度を決めていくということだと考えております。

樋高委員 ありがとうございました。

 国論を二分するような大問題でありますから、NGO、産業界、また一般国民からも広く意見を伺っていただいて議論をして、意見をしっかりと集約させていただくよう重ねてお願いをいたしたいと思います。

 さて次に、今後の我が国の国際交渉に挑む際の姿勢についてちょっと伺いたいと思います。

 私は、地球温暖化防止の重要性については十分に理解をしているつもりでありまして、当委員会におきましても以前私も申し上げたとおりであります。やはりこのような意気込みで、しっかりとした意気込みを持って国際交渉に挑むべきだ、私の考え方は基本的に変わっていないのでありますけれども、地球温暖化という百年単位で考えなければならない問題につきましては、いわゆる長期的な視野のもとで冷静に、メリットは何なのか、デメリットは何なのか、広く国民に明らかにした上で交渉に臨む姿勢を決めることが必要であると私は考えるわけであります。

 大臣もかねてから、交渉に際しては、環境保全にとって何がいいことなのかを基本に考えるとおっしゃっているわけであります。世界の温室効果ガスの排出量の約四分の一を占めるアメリカと合意しないまま京都議定書を発効させる、EUと日本だけで今後の百年の土台となる枠組みについて合意するということが環境保全にとってよいと言えるかどうか、多くの国民、NGO、そして産業界、企業、もちろん国会議員など、率直に知りたいとまず思っているのではないかと思うわけであります。

 今まで、過去の歴史を振り返ってみますと、国際連盟に始まりまして、近年ではバーゼル条約に至るまで、アメリカという国は、時として自国中心的な行動をとる場合も見受けられるわけであります。

 いずれは世界全体で取り組まなければならない課題について、世界で一番排出量の大きい国との間で合意がとれない枠組みでスタートすることについてちゅうちょがあることも理解できなくはないわけであります。また、アメリカが参加しない枠組みで、中国とかインドなど途上国の参加がどの程度見込まれるのかということも、我が国の交渉姿勢を決めるに当たって大変重要な情報だろうと思っているわけであります。

 そんな中にありまして、大臣はかつてワシントンの日本大使館において駐米公使を務められて、米国の政治動向には、状況には大変詳しいと伺っておりますけれども、アメリカが参加しない形で京都議定書を発効させることのメリット、デメリット、それをまた短期的な視野と中長期的な視野に分けて、やはり今この段階に来て、むしろ冷静にきちんと国民に説明をすることが環境大臣に求められているのではないかと私は思うのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃるとおりでございまして、この地球環境問題、京都議定書についてのさまざまな考え方についてのメリット、デメリットについてはきちんと御説明をしてし過ぎることはない、もっともっとすべきであるというふうに思っております。私も、先ほど申しましたように、時間がある限りそういう努力をいたしておりますが、何分にもまだ、では全部にしみ渡っているかというとそうでないところもあるかもしれないという反省は常に持っております。

 アメリカは、ブッシュ政権が今国内で、環境問題についてのブッシュの政策についての評価が、ほかの政策と比較して少し世論の支持が少ないということについての若干の、懸念と言うと言い過ぎだと思いますが、思いはブッシュ政権としても持っているようでございますので、私どもとしても、そういった機会を機会ととらえて、引き続き粘り強くアメリカに働きかけていきたいというふうに考えております。

樋高委員 今このタイミングに来まして、私、冷静にさまざまなことを考えてみましたのですけれども、先ほど申しましたけれども、我が国は要するに粘り強く交渉を続けるというと、アメリカの橋渡しを果たすべき部分もあるのだということも先ほど申し上げたとおりなのであります。

 翻ってみますと、結局日本が、我が国が京都議定書の批准をするかしないかにかかわらず、やはり極論は、まず率先して国内対策を今まで以上に強化して、みずから六%削減を達成することが結局必要なのではないか、国内の整備をきちんとすれば、むしろ環境先進国を目指す大臣の姿勢が国内外にアピールできるのではないか、日本が環境問題でリーダーシップを発揮することができるのではないか、私はそういう結論に至ったのでありますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 私も、おっしゃるとおりだと思っておりまして、日本としては、地球温暖化防止のための国内対策の手を緩めることなく取り組むということが大事であるというふうに思います。

 それで、中央環境審議会でも、二〇〇二年までに京都の議定書が締結できるように二つの小委員会を設置いたしまして、一つはシナリオ、一つは技術的な側面についてただいま御検討いただいているところでございます。

 ただ、京都議定書の細目についての国際合意が固まりませんと、六%削減目標を達成するために最終的に必要となる国内制度が固まらないということも事実でございます。したがいまして、私どもとしては、国際合意に達するように今度のCOP6の再開会合で全力を尽くしたいというふうに思っております。

 七月に入りましてから地球環境問題の担当閣僚会議がございますけれども、それを開催いたしまして、国内で、国内の取り組みをきちんとやるんだということの再確認をしようというふうに考えております。

樋高委員 来月がある意味で山場でございますので、川口大臣の御活躍を祈念しておりますし、大臣が省内で、バトル・アンド・エボリューションという言葉を使ってハッパをかけられたというふうにも伺っておりますけれども、どうかしっかりと頑張ってきていただきたいとエールを送りまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

五島委員長 田端正広君。

田端委員 早速ですが、私も京都議定書の問題についてお尋ねしたいと思います。

 私は、いよいよ最終的判断をする時期が迫ってきた、そういうせっぱ詰まった思いでおります。一昨日、大臣は総理と協議されたということも伺っておりますし、三十日の日米首脳会談という一つの大きな外交交渉があるわけですから、それに向けても近々またもう一度最終協議をやられるようなニュースも聞いておりますが、どちらにしても、日本としてどうするかというスタンスを今決めなきゃならない時期に差しかかっているのではないか、こんな思いがいたします。

 アメリカの態度、これは今ここで変わるようなことは考えられませんから、その場合に、では日本としてどうするかということを、二〇〇二年発効のために、いよいよ批准を決断すべきときに来ているのではないかということを感じておりますが、大臣の今の心境をお願いしたいと思います。

川口国務大臣 七月のCOP6再開会合におきまして、各国は合意を目指して一生懸命に交渉をするわけでございます。私も、二〇〇二年までの発効を目指して、この会合で全力を尽くして国際的な合意に達するべく努力をしたいというふうに考えております。

 私を含めて各国の環境大臣の頭の中は、どうやってこの交渉をして国際的に合意に達することができるかということを今一生懸命に考えているわけでございまして、それがまず今一番非常に重要なことであるというふうに思います。

 それから、もちろん、あわせて国内的な制度の構築ということが大事であるということも言うまでもございません。

 六月二十日のクエスチョンタイムで総理がおっしゃられましたけれども、外国との交渉には粘り強さが大事であって、各国の本音と建前をよく見きわめながら、六月三十日の首脳会談までにじっくりと研究をして、判断の材料を間違えないように判断をしなければならないので、今まだどうするのか結論を出す段階ではないというふうに総理はおっしゃっていらっしゃいまして、私も同じ意見を持っております。

 いずれにしても、国会決議を重く受けとめて、京都議定書の二〇〇二年までの発効が可能になるように交渉において全力を尽くし、アメリカの参加につきましても粘り強く働きかけていきたいということには変わりございません。

田端委員 総理が粘り強く努力を傾けたいという、これは当然だと思います。

 しかし、日程的に考えて、六月、今月の二十七、二十八ですか、非公式閣僚会議、大臣が御出席になるということでありますが、それと前後して六月三十日に日米首脳会談。そうしますと、この非公式閣僚会議での実質的な話し合いが大変大事なポイントになると思います。

 総理が、日米首脳会談でお話しになったその足でそのままヨーロッパに向けて、二日、四日と、イギリス、フランスで首脳会談、こういうことであります。そして、十六日からCOP6の再開会合があって、二十日からジェノバのサミットがある。こういう流れを見てみますと、粘り強く働きかける、それはわかるのですが、それはそれとして、日本はどうなんだということがやはり、これはもう外交交渉ですから、大事なポイントといいますか、今そういう時期に差しかかっていると思います。

 大臣、あすかあさって、非公式会合に向けて御出発になると伺っておりますが、そして日米首脳会談と、それとの連動した形になるわけですから、そこのところで、今大臣としてどういう姿勢でこの非公式会合に臨まれようとしているのか、もう一度お願いしたいと思います。

川口国務大臣 非公式会合は実は二つの部に分かれておりまして、最初がまず締約国、アネックス1の会合でございます。それから、途上国も含めた形での非公式会合、この二つがあるわけでございます。

 ただいま議題が来ているのが、最初の日の締約国の1に属する国の会合の議題だけでございまして、ここでは、今後の進め方とプロンクの新しい提案、ペーパーについての各国の意見を言うということになっております。これは一日でございますので、恐らく余り議論になる余地がなく、お互いに何を考えているかということがわかるということで終わるのかなと思っております。

 それから二番目の方の、途上国も含めた会合の方の議題はまだ私のところには届いておりませんので最終的にどういう形になるかわかりませんけれども、恐らく同じように、今後の進め方とプロンクのペーパーについての意見をお互いに言って、それで終わるのかなというふうに思っております。

 いずれにしても、ここは交渉の場ではございませんで、四十カ国、あるいはもう少しあるかもしれませんけれども、数が限られた国の会議の場でございますので、お互いにそれぞれの立場を知るということで終わるということでございます。

 日本といたしましては、来るボンの会合において、二〇〇二年までの発効を目指して全力を尽くすという方針のもとに、その会合がうまく進むような形で今後の進め方というところでは発言をしていきたいというふうに思いますけれども、会議自体がどういうふうに進んでいくかというのは、まさにプロンク議長がどういう采配を振るわれるか、あるいはプロンク議長がどういう形の会議に持っていかれたいかということによりますので、彼は自分にアドバイスを欲しいということをおっしゃっていらっしゃるわけでして、何についてアドバイスを欲しいかということを多分そのときにおっしゃられると思いますので、適切に対応していきたいというふうに考えております。

田端委員 もちろんそういう意味でプロンク議長に対してのアドバイス等いろいろ必要だと思います。

 しかし、今問題なのは、日本政府としてどうするかということが今問われているわけでありますから、川口大臣は大臣として、いろいろな現場を抱えて悩まれて、苦労されていることはわかりますが、先ほど大臣の口からも、これはトップレベルの判断が必要だというお話もございましたが、これはやはりぜひ総理に決断していただく時期にもうなっているんだということを私は申し上げているわけです。

 そういう意味で、国会決議に従って日本がどういう対応をすべきかという考え方として、私、一つ提案したいと思うんですが、それは、まず、もう批准することをきちっと表明する。その上で、アメリカを突き放すということではなくて、先ほど来お話があるように、根気強く今後もテーブルにのせるための努力はしていただくわけですが、つまり、京都議定書というその枠内か、あるいはそれと違った枠になるかもわかりませんが、そういう別のことも視野に入れて交渉に取り組んでいく必要が今あるのではないのかなと。

 そういうふうに腹を決めていただいたら、総理も三十日の日米首脳会談にははっきりとして臨めるし、まして、二日、四日のヨーロッパでの首脳会談においても、日本はこうだということが胸を張って言えるわけでありますから。今のままでいきますと、アメリカでもはっきりしない、ヨーロッパへ行ったらもっと小さくなってしまう、こういう感じにならざるを得ませんから、確かに難しい判断ではありますが、ぜひそういうことでやっていただきたい。

 そして、結果として、日本とEU、ヨーロッパで二〇〇二年発効ということをさせて、そして排出削減を実施し、またその後において途上国の参加というものをそれによって引っ張り込み、そして、やがてまたアメリカも戻ってこれるような筋道はきちっと残しておく、こういう考えで、恐らく大臣も腹の中にはそういうお考えがあると思いますが、私も悩んでいろいろ考えた末に、そういうことしかないんじゃないかなと、こういう思いがしているんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 田端委員からは、ただいま大変に建設的な御提案もいただきまして、ありがとうございました。これからその京都議定書の議論をするCOP6再開会合までの間に、おっしゃるように余り時間もございませんので、また、こういうときに各国さまざまな意見あるいはアイデアが出てくるというふうに思っております。

 今、田端委員がおっしゃられたような考え方でいこうというふうに発言をする国もあるかもしれませんし、そういったさまざまな対応を見ながら適切に対応したいというふうに思っておりますが、私も、田端委員がおっしゃられるように、日本がどういうポジションをとるかということがきちんとしているということは非常に大事だと思います。外交交渉でございますから、それを外に言うかどうかというのは別問題であるというふうに思いますけれども、日本の態度、足場がきちんとしていて、それに基づいてリーダーシップがとれるということが非常に大事だというふうに思います。

 これは、総理もどういうふうにするかということを一生懸命に考えていてくださっていますし、ほかの省も関係がございますので、私としては、近い将来に関係の閣僚が集まって議論をするということが非常に必要だというふうに思います。

 私は、ヨーロッパに来週参りまして、そういった総理の御判断に資するいろいろな各国の考え方あるいは各国のスタンスを、議論する過程で自分なりに見きわめてきちんと総理には御報告をしたいと思っております。

田端委員 ぜひ、大臣の御健闘を祈りたいと思います。ヨーロッパから帰られて、総理が御出発になる前に、ぜひ細心の打ち合わせといいますか協議をやっていただいて、対応にお間違いのないようお願いしたいなと心から念じたいと思います。

 話は変わりますが、六月十五日にフロン回収・破壊法が成立いたしました。関係者の一人として大変喜んでいる次第でありますが、脱フロンに向けてさらに一歩進み出す必要があると思います。冷媒についてはこういう仕組みができたわけでありますが、脱フロンに対しては、やはり規制措置といいますか、そういったことでこれからも対応する必要がある、こう考えております。

 特に、京都議定書の対象物質にもなっているわけですが、自然界にはない人間がつくった化学物質として、HFC、PFC、SF6、こういう三つのガスの問題もあって、これらは発生源も特定されているわけでありますが、この三つのガスで二、三%、三%ぐらいまでは削減できるのではないか、こう言われているわけでありますから、こういう脱フロン対策を強力に進める必要がある。つまり、国内対策としても、そういうことをしっかりすべきだ。

 代替技術がないものは早く開発しなきゃならないし、実用化する必要があると思いますし、そういう技術があるものについては必要な措置を講じてどんどんやるべきだ、こういう感じがいたしますが、政府として、これらについてどうされるのか。私は、もしあれだったら、また議員立法みたいなことも考えなきゃならないかなという感じもいたしますけれども、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 フロン法につきましては、議員立法で大勢の方の御苦労をいただいて、リーダーシップをいただいて成立をさせていただきまして、大変にありがとうございました。今月あるいは来月の温暖化のための国際会議の場で、日本はフロンについての法律があるということを、国内対策をきちんとやっているということの一環として説明することができますことを私としては大変にありがたく思っております。

 おっしゃられましたように、冷媒についてはそういうことでございますけれども、温室効果ガスの中でも、HFCとPFCとそれからSF6につきましては、生産、使用時の漏出の防止ですとか回収・処理、他の物質への代替等の対策技術が考えられるわけでございます。これらの技術について、経済的あるいは制度的な制約をある程度捨象して考えますと、地球温暖化対策推進大綱策定時に、基準年と比べましてプラス二%まで削減するとした見積もりに対しまして、基準年比でマイナス三%まで削減できる可能性があるということが、中央環境審議会におきますただいま行っている御審議の内容で明らかになっております。

 今後、中環審における審議の結果を踏まえまして、京都議定書の目標達成のために私どもとしても取り組んでまいりたいというふうに考えております。

田端委員 このフロン回収・破壊法の中で、一つまだ大きなテーマが残っているわけです。つまり、ユーザーへの費用徴収の方法についてでありますが、これは附則の四条の中で、政府は「検討を加え、その結果に基づいて速やかに必要な措置を講ずる」、こうなっています。したがって、私は、廃車時の負担ということにならないことを願ってこの立法化に当たってきた一人でありますが、この「必要な措置」について、ぜひこれは公明正大に秋の臨時国会で、この八月の産構審の結論を得て、法律という形できちっと手当てをした方がいいのではないか、こう思っておりますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 それからもう一点、自動車リサイクルとの絡みで、産構審のワーキンググループの先般の報告を見ますと、お金を公的な費用管理主体によってプールする、こういうことが盛られているわけでありますが、私は、当初公明党の案はそういうことを考えていたのですが、行革の精神に反するということでやめましてやったわけですから、やはり民は民でやっていただいた方がいいのではないかな、こういう思いをしておりますが、その二点についてお尋ねしたいと思います。

川口国務大臣 おっしゃられました自動車ユーザーからの費用の徴収方法につきましては、現在、中央環境審議会と経済産業省の産業構造審議会で、自動車リサイクル制度の検討の中で鋭意検討中でございます。フロンが大気中に不法に放出されるということを防止して、回収の実効性を高めるという観点に立って、何がいいかということをできるだけ早く検討していただいて、それを受けまして必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。

 それから、おっしゃられました法律あるいはそうでない手段ということにつきましては、まさにその検討の内容によるところもあると思いますので、できるだけ早く検討を終わらせていただいて、それを踏まえて考える必要があると思っております。

 公的なものということにつきましては、これは経済産業省の産業構造審議会で御議論をいただいているというふうに思います。基本的に民でできることは民にということはあると思いますし、同時に、民でやることについて、これは巨額なお金でもございますので、税金の問題等があるというふうにも聞いておりますので、ここは産業構造審議会できちんと議論をしていただきたいというふうに思います。

田端委員 ぜひ大臣、ここ大変な日程かと思いますが頑張っていただいて、日本の将来、そしてまた地球、二十一世紀のその将来に過ちのなきような御判断をいただけるよう心からお願いしたいと思います。ありがとうございました。

五島委員長 鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島です。

 初めに、議論に入る前にちょっと確認しておきたいのですけれども、COP6の再開会議までの間の大臣の御日程に関して、先ほど、来週ヨーロッパに行かれるというお話でしたけれども、再開会議までに何回ぐらい国際的な場面での交渉のチャンスがあるのでしょうか。スケジュールを教えていただければと思います。

川口国務大臣 何をもって交渉というかということでございますけれども、今回はヨーロッパで会議がございます。きちんとした会合の場ではという意味では、十六日のCOP6会合ということでございますが、今までの例ですと、それまでの間に、いろいろな電話会談ですとかあるいは個別の電話の会議とか、さまざまなことがございます。近々、EUのミッションも七月の初めに訪ねてくるというふうに聞いておりますし、私も、できましたら七月に入ってまた、直接に顔と顔を突き合わせて議論をするために外国に行くのがいいことではないかというふうに頭の中で考えたりもいたしておりますので、ちょっと今の段階で、どれぐらいその機会があるかということについては何とも申し上げにくいことでございまして、電話会談を取り上げましても、私は非常に頻繁に外国の方とは電話で話をして議論をいたしております。

鮫島委員 直近ではっきりしているというのは、来週ヨーロッパに行かれて、環境政策を担当している重鎮の方々と会われて、その会談の結果を総理に伝えるというのが一応直近のスケジュールでしょうか。

川口国務大臣 さようでございます。

鮫島委員 もう一つ、今日本の政府あるいは環境省がこの地球温暖化対策についてどんな考え方を持っているかについて知ろうとした場合に、直近の公式資料としては、温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会がつくった十三年三月付の報告書、これが一応直近の日本政府の温暖化対策の考え方、それに基づいて、大変これはわかりやすいペーパーですけれども、環境省の地球環境局が温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会報告書概要というものを出していますけれども、例えば外国の人が、今日本の政府ないし環境省が考えている地球温暖化対策の直近の資料をもし調べようと思ったら、これでよろしいのかどうか。

浜中政府参考人 ただいま先生が引用されました検討会の報告資料は、いわば私どもの地球環境局長の私的な諮問機関で専門家に検討していただいたものでございまして、現在、これを踏まえて、中央環境審議会において、さらにさまざまな観点から精査をしていただきながら政策の検討をしていただいているところでございます。

 わかりやすい資料とおっしゃっていただきましたが、ある意味で確かにそういう点はあるとは思いますけれども、私ども政府として責任を持って進めていく政策はどのようなものであるかという点については、現在そういうことで審議会でやっておりますので、それはまだ検討中、これは、COP6再開会合までに中間的な取りまとめをいただく予定でございまして、今鋭意取りまとめを急いでおるわけでございます。

 したがいまして、ボンの会合におきましては、そういうまとまったものは審議会の報告ということで、私ども対外的に御説明をするとすれば、そういうことになろうかというふうに考えております。

鮫島委員 今おっしゃったことは、ボンの会合までに中央環境審議会でまとまったものをつくるという意味ですか。

 大筋ではそれほど大きく変わることはないと思いますけれども、このシナリオ策定調査検討会でも、もちろん環境省の独断で数字を積み上げたわけではなくて、関係省庁からのかなりきめ細かいヒアリングを当然行ってファイルアップしたものだというふうな認識でよろしいのでしょうか。

浜中政府参考人 おっしゃるとおりでございますけれども、ただ、やはり検討を委嘱いたしました専門家の、最終的には技術的な観点からのいろいろな知見に基づくいわば御判断というものも入った上で検討会の報告書がまとめられている。そのあたりについて、さらに技術的な問題については日々知見も進歩をいたします。新しい情報も出てまいりますので、現在審議会において、改めて専門家を交えて精査をいただいているということでございます。

鮫島委員 私は、環境省、調査室を含めていろいろ資料を集めたら、これが直近で一番新しいし、日本の環境省を中心にした政府の考え方が織り込まれたもので、議論の土台がないと、まさか三年前の大綱から一歩も出ちゃいかぬというようなことではとても議論にならないわけでして、余り私も化石資源的資料に基づかずに、今日的な資料の方がいいと思うのですけれども。

 そうすると、ちょっと不思議といいますか、つまり、ボンの会議に行く前に、こういう国会の場で、どういうプランを持っていきますということが開示できない。会議の直前にならないと中央環境審議会の答えが出ない。そうすると、国会でもそれは開示されない。国民にもわからない。何が問題点なのか、まだ相変わらず森林吸収を見込むのかどうかもわからないままに、いきなりまたボン発の外信のニュースで、見てびっくりするという話になるのじゃないかと思いますけれども。

 では、ボンの会議に行く前に、政府の考え方、COP6の再開会議に臨むときに、大綱とどう違う内容、どう磨かれた内容を持っていくのかについて、ボンに行く前にこういう場で開示する、あるいは審議することをお考えなんでしょうか。

浜中政府参考人 私ども、中央環境審議会の先生方には大変御無理な日程をお願いいたしまして、最近は毎週のように会議を開かせていただいておりまして、検討を急いでいただいているところでございます。

 また、個々の会合、小委員会でございますが、会合はすべて原則公開ということで、一般公開の中で、傍聴を希望される方には聞いていただきながら審議を進めているという状況でございます。

鮫島委員 審議会の先生のお立場を大変重視して、我々はその会議を傍聴に来いという意味なんでしょうか。

川口国務大臣 今の御質問へのお答えは後で局長の方からいたしますけれども、ちょっとさっきの局長の答弁に補足をしたいと思って申し上げたいのです。

 七月の十日に、地球環境保全に関する関係閣僚会議を開催しようと考えております。ボンに向けての直近のまとまった政府の考え方という意味では、その閣僚会議と地球温暖化対策推進本部を合同で開催する、したいというふうに考えておりますので、そこでの文書というのがまとまった直近の資料になるかというふうに考えます。

 それから、これは、それぞれ状況が刻一刻変わっていく話でございますので、そのときそのときの政府の考え方につきましては、例えば総理の党首討論における考え方ですとか、国会でのいろいろな方の御答弁ですとか、そういうことが公的な資料であるというふうに思っております。

 それから、中央環境審議会、あるいは経済産業省の産業構造審議会あるいはエネルギー関係の調査会、その他いろいろな省が、農水省もやっていると思いますし、さまざまなことをやっておりますけれども、それは、一応それぞれの審議会の報告という位置づけあるいは調査会の報告という位置づけでございますので、それそのものが政府の見解ということではないというふうに認識しています。

鮫島委員 政府ベースのスケジュールについてはわかりましたし、関係閣僚会議を開催されてそこでの合意を図ることもわかりますけれども、多分、自民党の部会にだけ説明に行って、野党の方に来ないという危険性もありますので、いろいろ変化はあって、微妙なところで詰めの作業も大変でしょうけれども、ひとつぜひ国会を軽視しないように、また、十分政党に公平に対応しながら積極的な情報開示に努めていただきたいと思います。

 私は、きょう議論するのに、やはり直近の資料としてはこれしかありませんので、環境省の地球環境局のつくったこの資料に基づいて幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどの田端委員の質問とも一部ダブりますけれども、フロン回収・破壊法ができましたけれども、一番温室効果が大きいと言われているHFCについて、業界用語で言うR12とかR22、オゾン層破壊物質CFC、HCFCから、この間随分速いスピードで、オゾン層破壊の作用のないHFCへの置きかえが随分進んだと思いますけれども、ただしかし、これは、オゾンは破壊しないけれども大変高い温室効果ガスを持っているからこれも減らさなくちゃいかぬということですけれども、どのぐらいこれがつくられているかという、年間の生産量と分野別の利用量は把握しておられるのでしょうか。

浜中政府参考人 HFCの生産量、使用量に関しまして経済産業省が公表した資料によりますと、一九九九年のHFCの全生産量は二万六千六百二十トンということでございまして、主要な用途別の利用量を申し上げますと、冷媒といたしまして一万一千六百トン、発泡用途が六百トン、エアゾールなどの製造が二千二百トンとなってございます。

鮫島委員 前の大綱と今度のシナリオとの大きな違いで、排出量の予測、HFC等三種類のガスが、前の大綱では、二〇一〇年までにこのガスがふえて、二%温暖化係数が上がってしまうといいますか、つまり二%温暖化ガスが、温暖化効果がふえるというふうに見込んでいたのを、今度のシナリオの予測では、マイナス〇・九%、約一%減りますと。

 先ほど田端委員もおっしゃっていましたけれども、ここで三%開いているんですけれども、これは三月時点のシナリオですけれども、もう既にフロン回収・破壊法の成立を織り込んでこの数字を出しているのか、あるいは、この上にさらに法律ができたから、もっとこれはインセンティブが働いて減っていくのかどうか、そこの判断はいかがでしょうか。

浜中政府参考人 フロン回収・破壊法の効果を見込んだかどうか、こういうことでございますけれども、このシナリオ、温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会におきましては、地球温暖化対策推進大綱策定以降に決定をいたしました政策、対策を含めて実施をした場合に、二〇一〇年でどのぐらいの排出量になるかという検討をしていただいたものでございますので、その時点ではまだフロンの回収・破壊法が成立しておりませんでしたので、その効果はその時点では見込んでおらなかったところでございます。

鮫島委員 そうすると、今度七月五日に関係閣僚会議に出す資料については、恐らくここは、マイナス〇・九よりももっと進んだ数字といいますか、さらに温室効果ガスが減る数字になって当然出てくるものというふうにこちらは了解いたします。

 それから、もう一つ変更しているので、メタンとか亜酸化窒素も、これはマイナス〇・五になっていたものがマイナス〇・八というふうに変更していますけれども、これも何か根拠があって変えているんでしょうか。

浜中政府参考人 ただいまお尋ねの点は、二酸化炭素でありましても、工業プロセスと申しますか、エネルギー起源以外のものがございます。それからメタンや一酸化二窒素でございますが、特に、エネルギー起源以外の二酸化炭素については、一番排出量が多いのはセメント生産に伴うものでございまして、セメント生産量をどのぐらいに見積もるかということが全体の排出量の推定に非常に大きく影響するわけでございます。

 大綱策定時におきましては、一九九〇年のセメントの生産実績値が八千九百四十三万トンということになっておりましたところ、これが二〇一〇年までに一億五百万トンまで伸びるという想定でございました。今回の検討会の推計におきましては、近年の減少傾向を踏まえまして、八千二百七十九万トンに減少するというふうに想定をいたしておりますので、この点が一つ大きくきいているということでございます。

 また、その他の要因といたしましては、例えば容器包装リサイクル法によりまして廃プラスチックのリサイクル目標値が達成されるというようなことも想定している、こんなことが要因となりまして、見込み、見積もり量が減少しているということでございます。

鮫島委員 見積もりの数字の中で、あと幾つかわからないところがあるんですけれども、本論に入る前にちょっと事前に確認したいと思います。

 まず、旅客用自動車、いわゆる普通の乗用車ですけれども、この保有台数が、二〇一〇年には一九九〇年の一・七三倍になります、三千五百万台が六千百万台になりますという予測になっているんですが、私が自動車メーカー各社に聞いたところ、すばらしい予測を出していただいて大変ありがたい、こんなに売れるのかと驚いていましたけれども、この数字はどこから出てきたのでしょうか。

浜中政府参考人 お尋ねになられましたのは、乗用車の保有台数ということだと思いますが、一九九〇年に比べまして二〇〇〇年で、十年間の実績でございますけれども、既に保有台数が四八%伸びております。

 私どもは、今後、二〇一〇年までの十年間の伸びはかなり鈍化するだろうというふうに考えておりまして、これからの十年間は、過去の十年間の四八%増に比べまして、一七%に鈍化するのではないか、その結果として、九〇年から二〇一〇年までの二十年間で一・七三倍ぐらいになるのではないかということでございます。

 この鈍化をする予測ということについては、まず、これまでの、九〇年から九八年までの新車購入台数がどういう推移をたどってきたかというようなことを考えまして、いろいろ年によりまして変動がございます。どちらかというと、やや変動を繰り返しながら、九〇年以降、新車購入台数はやや微減の傾向があるようにも思えますが、いずれにいたしましても、これまでの、九〇年から九八年の新車購入台数の平均値を使って、二〇一〇年までの新車購入がどのぐらいになるであろうかということをまず見積もっております。

 もう一つは、それぞれの年度で購入をされた乗用車が何年ぐらい使われるか、こういう残存台数というような見積もりもございまして、そういうものをいろいろ加味をいたしまして予測をさせていただいたというところでございます。

鮫島委員 本当は幾つか確認したいことがあるのですけれども、時間がないので飛ばして、こちらから一方的に感想だけ述べます。

 今世界全体で約七億台の車が走っていて、そのうちの十分の一、七千万台が日本を走っている。乗用車と貨物自動車の比率は大体半々でございます、三千五百万台。今世界じゅうの車の十分の一がこの狭い日本の国でひしめいているわけですから、そこでさらに一・七三倍、六千百万台になりますと、貨物自動車も同じとすると、一億二千万台ぐらいがこの日本列島を走り回ることになるわけで、運輸部門の自動車の使い過ぎというのは、地球環境問題に大変大きい影響があると思います。

 世界全体で七億台が走っていて、もし中国が先進国並みの自動車の保有台数を持つとすると、さらに七億台ふえる。地球全体で十四億台になるという恐ろしい数字があるものですから、ここは何らかのインセンティブを働かせることを考えないとおかしいのじゃないかという気がします。

 それから、エネルギーの分野から見て大変問題の分野というのは運輸と民生部門、これははっきりしていると思いますけれども、民生部門は、家庭と業務と二つあります。いわゆるサービス産業の展開場所としての業務用の民生部門、それから家庭用の民生部門とあるわけですけれども、この運輸、民生が、今後の環境問題を考えるときに一番悪いといいますか、問題分野というのがこの二分野。

 業務用の床面積を今度は一・四八倍というふうに見積もっているのですけれども、これはサービス産業を展開する床面積ということだと思います。本当に日本の経済は、もっと物づくりからサービス化経済の分野で民間活力が大いに活用されなければいけないわけですけれども、ここのところが今全部、公益国家独占主義という思想のもとに、ほとんど官僚ビジネスがこのサービス産業のところを押さえている。医療、教育、福祉、金融まで押さえているという、一部は押さえていますけれども。

 これがこういう構造では、とてもこんな一・四八倍、つまり、サービス化経済の分野が五割増しの床面積を必要とするほどは伸びないのではないかと思いますけれども、ここまで、サービス化経済の分野で一・五倍床面積が必要だというのは、もう既に小泉改革が全部成功するということを見込んでの数字なんだろうというふうに、これはこちらでまた勝手に解釈いたします。

 一番大事なのが、この地球温暖化の六%案を考えるときに、電源構成をどうするか、これでほとんど大体答えは出てしまうというところだと思います。ずっと環境省のお出しになっている、もう大綱のときからそうなんですけれども、石炭、石油を天然ガスに置きかえていくのが電源構成について一番効き目がある。排出の原単位からいうと、キロワットアワーでどれだけのCO2が出るか。丸めて言いますけれども、石炭が大体〇・八、石油が〇・六、天然ガスだと〇・四、つまり石炭の半分になるし、石油の五割引きになる。そのぐらい天然ガス化というのが大変大きな効果があります。

 ヨーロッパ自身も、そういうことから、一九六〇年代の末から、ヨーロッパ全土にわたって大変きめ細かい、網目のような天然ガスパイプラインを敷いてきた。これで約八十年、人類はエネルギーを獲得できるというふうに見積もられていますけれども、アジアがおくれている。天然ガスに関しては徹底的におくれていて、日本もおくれていて、大綱もそうですけれども、今度の新しいシナリオでも、石炭、石油からLNGへの転換をほとんど見積もっていないのですけれども、これは何かある種のお考えがあるのか。

 私は、環境大臣のエネルギー政策についての思想といいますか、哲学を余り聞いたことがないのですけれども、今や環境政策、エネルギー政策、ほとんど一体ですから、別に経済産業省に遠慮することなく、大臣の、長期的に見た、あるいは文明史的に見たエネルギーのあり方について、できれば原発の評価も含めて一度お聞かせいただければと思います。

川口国務大臣 天然ガスの方が石油、石炭よりもクリーンであるということは、委員おっしゃられるとおりだと思います。

 ただ、環境の分野から考えればそれが一番望ましいということは言えると思いますけれども、例えばエネルギーの供給の安全、例えば発電を一つの種類の燃料だけに頼ってしまうということの危険性、特に日本は海外からの輸入に依存しているということでございますので、そういった観点も考えなければいけないというふうに思います。

 エネルギー政策について私はここで申し上げるほどの知見は全然持ち合わせておりませんで、常識の範囲内で考えている話でございますけれども、今エネルギーと環境政策の両立ということが一つの政策、エネルギー政策を環境の分野から、環境の観点から見たときに非常にいいものにすることが必要であるという政策ニーズと、それから供給の多様性を確保してエネルギーの安全を確保するというニーズ、ほかにもあるだろうと思いますけれども、そういったことをどういうふうにバランスをして考えるかということが非常に大事でございます。私としては、国産エネルギーが非常に少ない、そういう意味では、ヨーロッパの国やアメリカとは大分違うエネルギーの供給構造を持っている日本としては、エネルギー供給の多様性も必要ではないかというふうに思っております。

 それから、原子力についても、私は自分がこう思うということを申し上げるほどの勉強はございませんけれども、環境という観点から見たら、安全性が確保されるという前提で考えると、原子力というのはそれなりに位置づけるべきであろうというふうに、これは大綱でも位置づけられておりますが、私としてもそういうふうに思っております。

 それから、アジアで天然ガスの使用が非常におくれているということは、そうだと思いますけれども、これもきちんと勉強してみたいと思いますけれども、ヨーロッパやアメリカにあるような天然ガスのパイプラインがアジアでは十分にない、あるいは日本でもそれは同じことが言えるわけですが、といった事情も影響しているのかなとお話を伺いながら思った次第です。

鮫島委員 エネルギーのセキュリティーの問題はすぐれて外交問題で、天然ガス依存率を高めたからといって、天然ガスの油田はかなり各地にありますから、そういう意味では、セキュリティーの面から、石炭を天然ガスにするのが一番、これはもう二分の一できいてきますから、このことを進めることがエネルギーのセキュリティーを脅かすとは私は到底思いません。

 大体、日本人の暮らし方自身が、食べ物も含めてですけれども、江戸時代に三千五百万で大体均衡していた人口、これは日本列島で鎖国状態で暮らせる人間のアッパーリミットだと思いますけれども、我々は既にそれを三倍超えちゃって、三千五百万人しか乗れない島の上に一億二千万人乗っているわけですから、当然三分の二は食べ物もエネルギーも周りから持ってこないと暮らせない。これは、日本人が選んじゃった道だからしようがないと思いますよ。

 ですから、外交が本当は極めて大事だと思いますが、今の外務大臣はどこまでその自覚があるかわからないけれども、これは川口大臣のせいじゃないから構いませんけれども。

 私は、この天然ガス、今度エクソンがシベリアの開発をして全部天然ガスの利権を押さえようとしていますけれども、私は、ぼやぼやしているとアジアに巨大にある天然ガスの権利が、ある意味ではそういう石油、オイルメジャー系にまた押さえられてしまうのではないかということを大変危惧します。

 プルトニウムリサイクルが完成するまで、だれも幾らかかるかを見積もっていないようですけれども、少なくとも二十兆円以上はかかります。そんな金があったら、私は、アジアで天然ガスパイプラインを敷いた方がよっぽど確実で安上がりで環境にもいい。今、もし石炭と石油の火力を全部天然ガスにかえる、机上の計算ですけれども、それだけで、今、日本で稼働している原子力発電の三分の二をとめることができる。そのぐらいLNGへの転換効果というのは大きいということをぜひ御認識いただきたいと思います。

 最後になりますけれども、最初にお伺いしましたように、来週早速ヨーロッパに行かれる。電話でも達者な英語を駆使して多くの外国の要人の方々と交渉する。大体どこの党も共通だと思いますけれども、いつまでアメリカの顔色をうかがうのか。日本は二〇〇二年に批准するということを、これは別に軍事交渉でもないし経済交渉でもない、ある意味では意識の争い、モラルの争いですから、私は、経済交渉や軍事交渉と同じようなセンスでびくびくどきどきすることはないんじゃないかというふうに思います。

 いつまでアメリカの説得に時間を費やすつもりなのか、タイムリミットというのを考えておられるのかどうかだけ教えてください。

川口国務大臣 釈迦に説法もいいところになってしまいますけれども、私は、アメリカの参加ということが、実効性ある温暖化対応のシステムを世界につくっていくために非常に大事だというふうに考えております。

 総理もおっしゃっていらっしゃいますように、それは、とことん粘り強く交渉をし説得をするということであるというふうに考えておりまして、総理がおっしゃられましたように、今まだ、決めなければいけないというふうに思っておりません。

 それから、日本の批准についてのお話がございましたけれども、これは交渉の一部の話でもございますから、心に決めるということを委員はおっしゃっていらっしゃるというふうに思いますけれども、それを外に言うかどうかというのは、恐らくこれは交渉の仕方の一部に入る話だというふうに考えます。

鮫島委員 心に決めるというか、外に言わないのもおかしな話です。要するに、日本国民は日本の政府が何を考えているか知ることができない。

 小泉さんの改革も大分色あせてきて、何でもかんでもまあ二、三年以内にと言いますけれども、二、三年かけていたらもう二〇〇二年は終わっちゃうわけですから、私は、やはりタイムリミットがちゃんと決まっていないというのはおかしいと思いますよ。アメリカをいつまで説得するのか。

 七月に関係閣僚会議で、大綱の見直し案について恐らく政府内で会議で決定して、私の聞いているところでは、十一月に各部門別にかなり細かい見通しのある数字で積み上げて、それで六%削減を確実にする用意はできていると思いますが、それだったら、いつまでアメリカに対して働きかけ、それがだめだったら、あるところで日本は日本なりの意思決定をして、もう本当に二〇〇二年の批准に向けた作業に入らないと間に合わないと思います。どう遅くても今度のボンの会議で、現場でまたたっぷり時間があるでしょうから、そこで最後の説得をして、それがだめだったら、一応もう五五%条項を使って先行的に批准の体制に入っていくという決断をしないと私は間に合わないと思います。

 もし、そういうタイミングを逸して、二〇〇二年にもうとても間に合わないよということになったら、これは私は、大臣、総理含めての大変大きな責任が問われると思います。

 ちょうど参議院選挙が七月十三日からありますから、このことを我々としても非常に大きな争点として、今の政府、自公保の政府の体制がこの地球温暖化対策についてどんな姿勢なのか、タイムリミットも決めずにずるずるやって、もしかしたらだめかもしれないという姿勢なのか、我々民主党や他の野党のように毅然として絶対二〇〇二年までには批准するという態度なのか、これは私は参議院選挙で国民に問うべき非常に大きな課題だと思います。

 以上で質問を終わります。

五島委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。

 きょうは温暖化防止と京都議定書問題についてお伺いをいたします。

 共和党系の有力シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のクリストファー・デミュース所長は、二酸化炭素排出量に何らかの規制、制御を設ける発想自体が受け入れられない、二酸化炭素の削減率に柔軟性を持たせたとしても、米国が京都議定書に復帰する選択はあり得ないとまで語っています。また、EUの議長国スウェーデンのペーション首相は、首脳会議後の記者会見で、ブッシュ米大統領は、批准はしないが発効を妨げないと述べたことを明らかにしています。

 ですから、今や、あきらめずに協力していただけるよう努力を継続したいという立場はやめて、米国が京都議定書から離脱して、議定書に復帰することはあり得ないという認識で政府が米国との交渉に臨むべきであろうと思いますが、いかがですか。

川口国務大臣 我が国といたしましては、二〇〇二年までの京都議定書の発効を目指して、来るCOP6再開会合におきまして合意に達するべく、全力を尽くして取り組むということにいささかの変更もございません。

 また、そういった国際的な合意を踏まえて、国内的に担保できるような、その国際的な合意を担保できるような制度をつくっていくために全力を尽くすということもまた必要であるというふうに考えております。

 それから、京都議定書の実効性を環境十全性の立場から確保するためには、アメリカの参加が非常に重要なことであるというふうに考えております。これは、申すまでもなく、アメリカが排出ガスの四分の一を世界の中で占めているということでございますので、それが非常に大事であるというふうに考えております。

 そういったことがただいまの日本政府の方針でございまして、総理も今考えていらっしゃるとおっしゃっていらっしゃいますけれども、とことん可能な限り粘り強くアメリカを説得をしていく、京都議定書の枠組みに戻るように説得をしていくということが重要であると考えております。

藤木委員 それは、温暖化問題への冷静で粘り強い交渉を求めるとした経団連の緊急アピールの立場と変わらないように思いますね。このアピールは、日本とEUだけの先行批准を批判して、日本の批准を求める世論を抑え込もうというものでありまして、私はそれはだめだと思いますね。

 先日の米・欧州連合首脳会議後に行われた共同記者会見では、ペーション首相が、議定書の取り扱いについて、不合意で合意したと述べるとともに、我々は議定書を批准する、米国は違う道を選んだと語っています。この首脳会議が決裂したのは、もちろんブッシュ大統領が、京都議定書には重大な欠陥がある、こういう立場を繰り返したためですけれども、その背景には、ブッシュ政権が議定書離脱について一方的に決断をして、EU諸国には事後通告を行ったということが原因ではなかろうかと思いますね。だから欧州のメディアは、こうした一方的外交を超大国米国のおごりとして批判をしております。

 そこで伺いたいのですけれども、協力していただけるよう努力をしている日本政府の姿勢に対して、ブッシュ政権は、それでは、ことしの三月に京都議定書への不支持を表明した際、また今回、議定書からの離脱表明と独自対策案について事前に通告がございましたでしょうか。また、今後代替案なるものが事前に通告されるという保証があるのでしょうか。

川口国務大臣 三月の不支持表明というのは私も非常に残念だと思っておりますが、その際、日本を初めとし、アンブレラのほかの国々に対しては事前の通告はございませんでした。これについては、日本だけではなくて、アンブレラのほかの国々も非常に残念だと思っているというふうに私は直接に聞いております。

 それから、六月のブッシュ大統領の声明の際におきましては、事前に通報を受けております。なおかつ、かなり細かい説明を聞いております。

 今後、アンブレラグループの閣僚間と米国の間、米国はアンブレラの一員でございますけれども、は密接に連携をとっていこうということはお互いに合意をいたしておりますので、私ども日本を初めほかの国々も、代替案については事前に十分に説明をしてほしいということを言っておりまして、アメリカも了承をいたしておりますので、事前に通報するであろうということについては疑問を持っておりません。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

藤木委員 通報と言われますけれども、それは一方的な通報でありまして、同盟国として日本を協議の対象にはしていないということであります。

 米国・EU首脳会議では、事務レベルの作業部会が発足しているわけですけれども、そこで、先日のEU首脳会議では、米国抜きでも議定書を来年批准する方針を再確認しております。

 ところが、日本政府は、温暖化ガスの最大排出国である米国の参加は不可欠として、先行批准はしないとしておりますけれども、肝心の米国がEUとの妥協案として独自の温暖化対策を並行して実施することになりましたら、日本政府は、ブッシュ政権に歩調を合わせて京都議定書を批准しないということになるのではないでしょうか。米国抜きで八・五%を排出する日本が批准しなければ京都議定書の発効がないというのは明らかです。

 そうなりますと、二〇〇二年の京都議定書の発効というこの公約を破り、日本がCOP3の議長国として採択をした京都議定書をみずからの手で葬り去るということになりかねないと懸念をいたしますが、そうならないことが保証できますでしょうか。

川口国務大臣 京都議定書を非常に大事に思っているということにつきましては、日本はCOP3の開催国でございましたので、ほかの国にも増してそれが大事であるというふうに思っていると思います。

 私どもは、こういった観点も含めて、京都議定書の二〇〇二年までの発効を目指して、来るCOP6再開会合で全力を尽くすということに全く変わりはございませんし、我が国を含めた関係国が京都議定書を締結することが可能となるようにそこで全力を尽くす所存でございまして、各国ともその点で積極的に協議をしていきたいというふうに考えております。

 それから、言うまでもなく、国内制度の構築がなされているということが批准をするためには必要でございますので、国際的な合意を踏まえて、国内制度の構築につきましても全力で取り組んでいきたいと考えております。

藤木委員 しかし、八日の中央環境審議会の地球環境部会でも多くの委員から、米国に振り回されず、議定書を批准する態度を世界に強く示すべきだとの意見が出されたと伺っております。また、国立環境研究所の京都議定書の発効による温暖化防止効果についてという研究の結論でも、京都議定書が発効せず、先進国全体の取り組みがおくれるシナリオだけは最低限回避すべきだ、このようにしております。

 今のままで推移いたしましたらそういうことになりかねないので指摘するわけですが、そうならないように日本政府は、米国の態度いかんにかかわらず、二〇〇二年発効のため、早期批准を明確にして交渉に当たることを改めて強く要請しておきたいと思います。

 そこで、プロンク議長は、議定書の運用ルールを決めました新提案を関係各国に提示しておりますけれども、森林吸収分について、日本の要求を全面的に受け入れる特例措置を盛り込んでおります。そこでは日本も三・七%を森林吸収分で確保するという計画になっているわけですから、明らかに日本が議定書の枠組みにとどまることを期待して行った特例措置だということが言えると思います。批准のためとはいえ、こうした運用によって京都議定書が骨抜きになっていくことは大変遺憾です。

 しかし、日本が議定書の枠組みにとどまって日欧中心で発効させた場合、米国抜きでも温暖化ガスの削減効果は十分に大きく、国内経済への影響も軽微で済むという国立環境研究所の試算が出されております。この試算結果では、一つは、各国GDPの変化はいずれの場合も約〇・三%減少以下であり、経済に著しい影響を及ぼすとは言いがたい。二つは、米国だけが相対的に大きな経済影響を受けるわけではない。三つは、米国が参加しない場合の日本のGDP損失は、米国が参加する場合よりも小さいなどとしております。

 そこで、大臣は、これまでにもおっしゃってこられて、きょうもおっしゃっていられるわけですけれども、米国が参加しないと実効ある京都議定書の実施は困難というお考えをさらに持ち続けるのだろうかということに疑問が起こります。国立環境研究所の報告書でも、米国抜きの発効で一定程度の削減効果が期待できるというのは明らかなのではないでしょうか。いかがですか。

川口国務大臣 私どもがアメリカの参加が非常に重要であるというふうに申し上げておりますのは、言うまでもなく、アメリカが四分の一の最大の排出国であるということ、これが入らないと問題であるということと、それから、最大の排出国が参加をしない議定書に、途上国が将来的に削減の義務を負う形で入るということに非常に大きな抵抗を持っている、抵抗といいますか、入らないであろう、入ることは不可能であろうというふうに思われるからでございます。途上国は今でも、削減義務を負うことすら、その必要がないというふうに言っているわけでございます。

 それで、おっしゃった国立環境研究所の試算でございますけれども、これは二つのケースについて比較をしておりまして、一つは、米国以外の先進国が二〇〇二年から排出削減をし、途上国が二〇四〇年から削減をするケース、それからもう一つは、先進国全体が二〇三〇年から削減をし、途上国が二〇五〇年からの削減のケースというものを比較して考えているわけでございますけれども、私どもが危惧をしていますのは、米国や途上国がずうっと入らないという状況を危惧しているわけでございまして、このケースはこの国環研の分析には入っておりません。

 したがいまして、私どもが危惧をしている問題に、必ずしもこの国環研の、これはそれなりに成果がある分析だというふうに思っていますし、当然前に進めるということが大事ですから、その場合には成果があるということを言っているわけですけれども、私どもが危惧をしているアメリカの参加、あるいはその結果生ずるであろう途上国が参加をしないということを前提にした分析ではないということをちょっと申し上げておきます。

 ただ、そういうことは申し上げましたけれども、私どもとしては、アメリカの参加に働きかけるということと、それから、日本といたしまして二〇〇二年の発効を目指して取り組んでいく、これは国際会議において、あるいは国内制度の構築において、両方ございますけれども、という方針に変わりはございませんので、それを申し添えておきます。

藤木委員 しかし、私はそれは非常に大事だと思うんですね。ブッシュ政権が議定書による経済への打撃を極めて懸念している、そういうときに、米国抜きの議定書発効でも温暖化ガスの削減効果は十分に大きく、国内経済への影響も軽微で済む、この試算は極めて重要なポイントだと考えます。

 しかし、それでも国立環境研究所の試算は、そもそも各国がロシアなどから温暖化ガスの排出権を購入するということを想定したものであります。二〇〇二年の発効を目指し、早期の批准を明確にして交渉に当たるためには、六%削減目標をあくまでもエネルギーの効率化などの国内対策で確実に達成する、そのことが必要だと考えます。

 環境省が二十六の都道府県の温暖化ガス削減計画を集計した結果、国内の二〇一〇年度時点の温暖化ガス排出量が七億五千五百万トンのCO2となり、一九九〇年度の八億六百九十万トンと比較をして六・四%も減らせるという調査を公表しています。例えば、京都府がマイナス八・二%、大阪府がマイナス九・〇%、兵庫県がマイナス六・〇%などとなっています。これは、全国に散らばる工場や発電所など事業所まできめ細かく調査したものであって、地域の削減対策の積み上げで六%削減目標を達成できる可能性を示しているわけです。

 ですから、経団連の環境安全委員長であり産構審の環境部会地球環境政策委員も務めておられる山本氏のように、米国抜きで議定書を発効させる考え方には反対などとして、批准、発効をおくらせてはならないと思います。まず、産業界が自主行動計画を見直すということが大事だと思いますね。

 きのうの環境省の検討会も、経団連の自主行動計画では信頼性、透明性、実効性が十分に確保されておらず、京都議定書で定める削減目標を達成するには不十分、このような報告をまとめているわけですから、産業界のこういったことに対する行動計画見直しということは極めて重要だと思います。

 そうして、さらに一層の温暖化ガス削減対策を確保する、その上で、二〇〇二年の批准、発効が確実なものとなるように大臣としても全力を尽くすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 六月の十五日に経団連の今井会長から政府に対して、粘り強い交渉を求めるというメッセージが出されて、その中で、産業界は温暖化に対応するためのその手を緩めるべきではないというふうにもおっしゃっていらっしゃるということは承知をいたしております。

 経団連では、今まで自主行動という形でそれなりの成果は上げられてきたというふうに思っておりますし、また、現在、それをさらに違う産業界も含める形で広げようと努力をなさっていらっしゃるということも聞いております。今までは温暖化ガスのカバレッジで七五%ぐらいだったようでございますけれども、それをもっと広げようという努力をしていらっしゃるというふうにも聞いています。

 ただ、そういう成果を上げつつある自主規制でございますけれども、やはり今の透明性あるいは相互比較性といったものを求める、情報公開が大事であるということの流れの中でいきますと、それぞれ産業界ごとの比較ですとか、あるいは普通の国民が見てのわかりやすさとか、そういった点でもう少し工夫をしていただく余地があるのではないかという審議会、検討会の指摘は、それもそれなりの妥当性があるのかなというふうに思っています。

藤木委員 しかし、二〇〇二年の批准、発効を確実なものにするためには、シンクや京都メカニズムの活用が難しいとなった場合にも、産業部門にはしわ寄せをさせることがないようにという経団連のような姿勢に政府は立つべきではありません。

 こうした国立環境研究所の試算だとか都道府県の温暖化ガス削減計画などの努力がある一方で、産業界の温暖化防止に向けた熱意の低下があらわれております。

 先ほどの経団連のアピールもブレーキをかけていると思いますけれども、経済産業省の総合資源エネルギー調査会総合部会では、何らかの経済対策が必要だという総論は出しましたけれども、国際的情勢が不透明で今決めるべきではないとする産業界の反発で、CO2排出抑制の具体的政策の取りまとめを見送ることを決めております。これらの動向は、日本の国内から京都議定書の批准、発効を危うくするものと言わざるを得ません。

 ですから、米国の離脱に左右されて削減対策を見送るような態度ではなくて、排出事業者への環境対策税の導入だとか風力発電などの新エネルギー対策の推進など、二〇〇二年批准、発効に向けた国内制度の整備を積極的に進める断固とした決意をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 二〇〇二年までの発効が可能になるためには、その一つの前提として、国内制度の構築、六%の削減を可能とする国内制度の構築が非常に重要であるわけでございます。さらに、温暖化ガスの排出というのは、まさに私どもの毎日の暮らしからの排出も含めてさまざまなソースから排出をされるものでございますので、その対策の幅も取り組みもさまざまでなければいけないというふうに私としては思っております。

 そういったライフスタイルの変更も含めた対応が必要になる話でございますけれども、いずれにいたしましても、国内制度の構築については全力で取り組んでいきたいと考えております。

小林(守)委員長代理 質疑時間が終了いたしましたので、最後にしてください。

藤木委員 はい。

 もう質問ではございませんけれども、COP6で、国内対策を確実に進めることが国際社会における我が国の発言に信頼性を与えるということを身をもって体験したということを大臣はおっしゃっているわけですから、その立場に変わりはないと思います。

 さまざまなということを言われましたけれども、産業界に甘くなるというようなことがないように、そのことを申し上げて質問を終わらせていただきたいと思います。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

五島委員長 金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子でございます。

 大臣は大変お疲れのようだとお伺いしておりますので、あすからアメリカ、ヨーロッパへお立ちになるようですけれども、ぜひ健康に留意をされて、しっかり成果をおさめていただきたいということをまず冒頭に申し上げておきたいと思います。

 京都議定書の発効をめぐって非常に重要な段階を迎えているのは、今各委員の皆さんからおっしゃったとおりでありますけれども、私どももまず最初に、この京都議定書に対するアメリカの対応、率直に言って、アメリカが京都議定書に戻ってくるということは現状では考えられないのではないかという思いを持っております。その上に立って日本が二〇〇二年に京都議定書発効を実現させるとしたら、日本の政府がきっちりとこの京都議定書を批准するということを明確にしてCOP6の再開会合に臨むべきだということを私ども社民党は考えておりますので、その点をまず申し上げて質問に入らせていただきたいと思います。

 最初にちょっとお伺いをしたいのですけれども、先般、六月の十一日だったと思いますけれども、先ほどもお話がありましたが、プロンク議長が新しい提案をされて、その中に、特に日本にかかわりの深い森林吸収源三%容認という見解が出されたわけですね。昨年の秋の〇・六%から見ますと、三%ということで、かなり日本の主張が取り入れられたような形でこの新しい数値が出てきたと思うんです。

 私は、この件に関して、大臣は、ただ数値が上がったからということでなくて、この新しい提案に込められるプロンク議長のメッセージをどのように受けとめられているのか、まずお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 プロンク議長が、日本の立場についての理解を深めていただいているというふうに理解をいたしております。

金子(哲)委員 日本の立場というのはどのようなお考えか、もう一度お伺いしますけれども、私は、日本に対して、この京都議定書の発効のために、こういう条件も含めて提示するからぜひ批准して加わってほしいというメッセージだというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがですか。

川口国務大臣 プロンク議長は、議長としてCOP6をハーグのときからまとめる責任を非常に痛感していらっしゃると思います。そういう意味で、昨年からアフリカにもいらっしゃり、南米にもいらっしゃり、世界じゅう東奔西走、走り回っていらっしゃって、日本にも、私が閣僚になってから、多分二回か三回おいでになっていらっしゃいます。

 そういったプロンク議長が今一番望んでいらっしゃることというのは、ぜひCOP6再開会合で何らかの合意を成立させたいということを考えていらっしゃるというふうに思いまして、日本といたしましても、二〇〇二年までの発効を目指して全力を尽くすという立場から、また、COP6のハーグでも私はある分野で共通議長を務めさせていただいたという立場からも、議長に対する最大限の協力をしていきたいというふうに考えております。

金子(哲)委員 次に、先ほども委員から質問がありましたが、こうした中で、国内にあって、経団連が六月十五日に談話を発表しております。

 先ほど大臣は、その中にはアメリカを引き続き説得するようにということが言われているということをおっしゃいましたけれども、同時に言われておりますのは、「国民の一部には、米国抜きの京都議定書批准を求める動きがあるが、真に有効な地球温暖化対策を検討する上で十分なものとはならない。」ということまで書かれております。これはある意味では国会での決議も否定したような本末転倒の論理だというふうに私は思っております。

 しかも、きょうの新聞を見ますと、経団連の温暖化対策は不十分だということを環境省自身が認めていらっしゃるわけですけれども、この前段には、この経団連の発表の中には、我々は積極的に努力をしている、余りにも身勝手な発言のように思うのですけれども、その点についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 経団連が六月十五日に発表いたしました今井会長のメッセージについては存じております。

 経団連は、当然経団連の立場でどういうことを望ましいと考えるかということを言っているわけでございまして、この間総理もおっしゃられましたように、さまざまな立場からさまざまな御意見がおありになるわけでございまして、そういった意見をわきまえて、きちんと伺って、私どもとしては、政府として国会の決議を当然尊重しながら、今後の交渉方針については考えていく所存でおります。

金子(哲)委員 私が言いたかったのは、その経団連の発表というのは「国民の一部に」という、大多数は、もしアメリカが京都議定書に参加しなくても日本は批准をすべきだという声の方が圧倒的に多いわけで、そういうことに対して、そういう「国民の一部」というようなことでとらえている中でそういう声明が出ることに対しては、私は、政府の方針に対しても国会の決議に対しても全く違う態度じゃないかというふうに思うのですけれども、改めてお聞きしたい。

川口国務大臣 日本は民主主義国家でございますので、さまざまな意見をお持ちの方がそれぞれの立場から御意見をおっしゃるということは当然だというふうに私は思っております。

 それから、これはアメリカなんかもそうだと思いますけれども、そういった多様な意見が表に出てくるということが、日本の国としての透明性あるいはいい意思決定という観点から望ましいというふうに私は考えております。

金子(哲)委員 いずれにしても、この地球温暖化防止のために日本が進めていく政策の中で経済界が占める役割というのは非常に大きいわけでして、その意味では、やはり経済界の方針なり計画なりというのは非常に大きな役割があるので、私はあえてそのことを、言われたように一般的に国民の多様な意見があるということは、それは当然民主主義国家で自由に発言できることは大きいわけですけれども、かなり大きな責任を持つ分野にあるわけですから、そういう責任にある人たちがこういう見方で発言するということは、私どもは納得できないということを申し上げているわけで、余り民主主義一般の問題で語られるのはおかしいと思います。

 そういうことで同じことで言われるのだったら、ではこれから、財界だけじゃなくて、すべての政策を決定するとき、一人一人の国民の意見をすべて聴取するようにできるかというと、そんなことないんじゃないですか。大体、審議会だって、財界の代表はたくさん入って、国民の代表がどれだけ入っているのですか、一般の国民が、市民が。それだけ日本国内の中で重要な位置にあるということで財界などを位置づけて政策決定の際にもいろいろ意見を聞かれるわけですから、一般的なそんな民主主義の問題と同列に扱われるということについては、私は非常に、大臣としての見識をちょっと疑う面を持ちますね。

 次に、時間がありませんので、アメリカを説得する、説得するということをおっしゃっておりますけれども、それは京都議定書に戻ってこいということを説得されるというふうに思うのですけれども、これは何度も言われているように、先日の欧州首脳との会談でもそうですけれども、また十一日のブッシュ大統領の声明でもそうですけれども、京都議定書には致命的な欠陥があるということで言われております。

 そして、大統領の提案されている中身というのは、京都議定書の根本的な重要な点である対策の期限とか目標が、具体的にしてこれを進めていくという京都議定書の一番大事な部分が全く触れられていない。だから、そういう意味でいったら、議定書の方向と全然違うことを考えているわけですね。そういう人をどこまで説得できるかということは、結局はアメリカの説得に時間だけ費やして、京都議定書の発効そのものをおくらせる結果になるのじゃないでしょうか。もうそろそろ決断すべき時期じゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 アメリカの参加というのは、環境十全性を確保するという観点から非常に重要でございます。

 京都議定書の実効性というのが、四分の一の温室効果ガスを排出している国が参加しないような状況ではまさに抜け穴ができてしまうということでございますし、将来的に発展途上国が、今すぐに削減目標を課されるということについては非常に反対をしているわけでございますけれども、共通だ、だが差異のある責任に基づいて将来的に削減目標を背負うということについても、まず非常に大きな困難が生ずることになると思います。

 ということを考えますと、発展途上国が二〇一〇年の時点で温室効果ガスの排出のシェアが五割を超えるというふうに予測をされているわけでございまして、その五割にアメリカの、シェアでいくとそのときにどれぐらいになっているかわかりませんけれども、シェアを加えたそれだけの温室効果ガスが議定書の外に出てしまうということは非常に問題であるというふうに考えておりますので、アメリカの説得に全力を尽くしているわけでございます。

 それで、アメリカは、委員おっしゃられるように、確かに今の時点では、削減目標とか約束年次とか、そういったことについては言及をいたしておりません。おりませんが、今の時点で私どもが聞いておりますところでは、さまざまな観点から、アメリカはいかなる対応策がいいかということを考えているということで、それを友好国、同盟国の知恵をかりながら、また国内の産業界、NGOの人たちの知恵もかりながら考えていくのだということを言っておりますので、私どもとしては、知恵をかしながら、いい成果が上がり、アメリカの中でいい対応策が、代替策が出てくるということを期待いたしております。

 そういう意味で、アメリカの参加は非常に重要でございますし、日本は、参加に粘り強くとことん働きかけながら、今度のCOP6の再開会合では、二〇〇二年までの発効を目指して国際的な合意に全力を尽くし、またその合意を踏まえて、日本で国内制度の構築をきちんとして、締結が可能になるような国内的な制度の構築に取り組んでいきたいと考えております。

金子(哲)委員 アメリカが大事なことは私たちも同じ認識は持っているんです。京都議定書を日本が早く批准する方針を決定すべきだと言っていますけれども、同時に、アメリカが重要なことはお互いが認識をしているわけでして、だから国会決議でも戻すようにということを言っているわけです。

 しかし、アメリカが入ること、聞いておりますと二五%の非常に重要な国家だからということですけれども、どうも聞いていると、その二五%のアメリカが入らなきゃ有効に働かないから、こんな、せっかくやってもだめじゃないかというふうに何かしらやはり聞こえてくるわけですよ、日本の政府の態度は。

 問題なのは、仮にもし、もうあれだけ強硬なアメリカは重要だとしても、この京都議定書を発効するかどうかということについて、日本政府は非常に重要な、キャスチングボートを握るぐらいの重要な位置にあるわけで、日本政府としては京都議定書を批准するという方針をはっきり出すことが、これは京都議定書を成功させる上での大前提だと思うんですよ。

 アメリカを説得して、アメリカも入ることは、それは京都議定書をより有効にするためには当然必要で、それを置いておけばいいということを言っているわけではなくて、今アメリカのかたくなな、かなり強硬な態度の中でどうするかというときに、日本の政府はきっちりとした京都議定書発効に向けた批准を行うということを明確にすることこそ今重要じゃないかと思うんですよ。

 それで、もう今月末には小泉総理も訪米をされるようですけれども、きょうは環境大臣にお話をするわけで、最終的には総理が決断されるかもわかりませんけれども、今、担当の環境大臣として、担当大臣として、やはり日本はこの京都議定書については明確に批准をするんだ、そしてより有効にするためにアメリカにも働きかけを続けるんだということが方向性として出なきゃ、今おっしゃっているのはアメリカを説得しますということだけが強調されているだけで、もし間違っているのなら、京都議定書を明確に批准しますと、その点だけはっきりさせてください。

 私は、少なくとも、最終的に総理が決断をしてどういう方向になるかはいろいろあるでしょう。しかし、担当大臣としての環境大臣の決断というのは、総理にどういう進言をするかということは重要だと思うんですよ。その大臣の決意、考え方というものを今ここではっきりしていただいてアメリカにも行っていただきたい、ヨーロッパの準備会議にも行っていただきたい。総理に対してもその信念で、環境大臣として、担当大臣として総理に意見を言い、国の政策を決定するように努力するというのが環境大臣の今果たすべき役割じゃないでしょうか。

 どうも、環境大臣の今までの話を聞いてみても、先ほども、総理がまだ判断すべき時期ではない、私もそう思っているとか、そんなことではなくて、京都議定書は所管の大臣として絶対に日本国内では批准するという明確な方針、態度を持って各国に当たり、そして総理に対してもその意見を具申するというのが今環境大臣に求められていると思うんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。

川口国務大臣 委員の御発言は、京都議定書が非常に大事であるというお気持ちをおっしゃっていらっしゃると思いますけれども、私もそれについては全く同じ考えを持っております。

 二〇〇二年までの発効を目指して全力を尽くす、COP6の再開会合で全力を尽くすということを私は再三再四申し上げているわけでございまして、交渉の当事者として今頭の中にたくさんあることは、この発効の前提となる国際的な合意を今度のCOP6の再開会合で、どうやったらほかの国々と協力をしてできるだろうかということでございまして、さまざまな進め方については考えがあると思いますけれども、ほかの国と連携をしながら、私としては、合意につながるように努力をし、それがあって初めて二〇〇二年までの発効が可能になりますので、それを可能にすべく努力をしたいというふうに思っております。

 あわせて、繰り返しになりますけれども、百年後の地球人に対して実効性のある温暖化の枠組みをつくったと言えることが大事だというふうに思っておりますので、同時に私としては、アメリカの参加を働きかけるということにも、とことん粘り強くやっていきたいと考えております。

金子(哲)委員 全く同じことを繰り返されているだけだと思うんですよ。私は、大臣はどういう決意なのかということを聞いているだけであって、例えば、この来週からの準備会にしても、日本が批准をするということを前提にして会議に臨めば、アメリカに対してはより新しい提案もできるんじゃないですか。その方針がなしに、批准するかどうかもわからない国を相手にしてどういう交渉をするんですか。

 私は、外交のことに、プロでも何でもない、素人ですからわかりませんけれども、しかし、こういう重要な時期には、大事なことは、我々はこういう方針でいくというのは、そんなテクニックの話じゃないんじゃないですか。国の基本にかかわる方針を明確にして我々は交渉に臨む。そのためには我々もこういう努力をする。それは、具体的な数値の、具体的な各条の中では交渉テクニックはあるでしょう。しかし、京都議定書を批准するという方針すら内外に明らかにできなくて、交渉に臨んでどんな成果があるんですか。最後にもう一度お伺いします。

川口国務大臣 日本の交渉の方針は、もうつとに明確に海外では、あるいは国内でも申し上げておりまして、それは、二〇〇二年までの発効を目指して全力を尽くして国際交渉に臨み、合意に達するべく努力をし、あわせて国内制度の構築をするために全力を尽くすということでございまして、これはもう既に海外で、あるいは国内で明らかになっている、明らかにしているというふうに私は考えております。

金子(哲)委員 わかりました。

 ということは、発効さすということですから批准するということですね。そのことを確認して終わりにします。ありがとうございました。

五島委員長 次回は、来る二十六日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会




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