衆議院

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第2号 平成13年10月26日(金曜日)

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平成十三年十月二十六日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 大石 正光君

   理事 伊藤 達也君 理事 稲葉 大和君

   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君

   理事 小林  守君 理事 近藤 昭一君

   理事 青山 二三君 理事 樋高  剛君

      岩崎 忠夫君    小渕 優子君

      岡下 信子君    熊谷 市雄君

      小泉 龍司君    河野 太郎君

      下村 博文君    高木  毅君

      西野あきら君    鳩山 邦夫君

      平井 卓也君    細田 博之君

      増原 義剛君    松宮  勲君

      奥田  建君    佐藤謙一郎君

      鮫島 宗明君    土肥 隆一君

      長浜 博行君    田端 正広君

      藤木 洋子君    金子 哲夫君

      原  陽子君

    …………………………………

   環境大臣         川口 順子君

   環境副大臣        風間  昶君

   環境大臣政務官      西野あきら君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国

   際社会協力部長)     高橋 恒一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    北島 信一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境

   局長)          日下 一正君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次

   長)           小平 信因君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネ

   ルギー・新エネルギー部長

   )            河野 修一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・

   リサイクル対策部長)   岡澤 和好君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長

   )            中川 雅治君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環

   境保健部長)       岩尾總一郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  炭谷  茂君

   環境委員会専門員     飽田 賢一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     岩崎 忠夫君

  熊谷 市雄君     高木  毅君

  増原 義剛君     松宮  勲君

同日

 辞任         補欠選任

  岩崎 忠夫君     岡下 信子君

  高木  毅君     熊谷 市雄君

  松宮  勲君     増原 義剛君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境保全の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

大石委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、外務省経済局長北島信一君、厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君、林野庁長官加藤鐵夫君、経済産業省産業技術環境局長日下一正君、経済産業省製造産業局次長小平信因君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長河野修一君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長岡澤和好君、環境省総合環境政策局長中川雅治君、環境省総合環境政策局環境保健部長岩尾總一郎君及び環境省地球環境局長炭谷茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大石委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

大石委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本公一君。

山本(公)委員 おはようございます。

 私は、自由民主党の環境部会長を務めさせていただいてかれこれ四年ぐらいになろうかと思いますけれども、きょう一般質疑ということで、大臣に御質問申し上げたいことは多々あるわけでございますけれども、きょうは目前に迫りましたCOP7、このことに絞って御質問をさせていただきたいと思います。

 COP3のときに政務次官を務めさせていただいて、大木大臣のもとで京都議定書をまとめる作業に私も参画をさせていただきました。言ってみれば、劇的な瞬間に立ち会わさせていただいたという、政治家にとって冥利に尽きるようなことも経験をさせていただきました。それからCOP4、COP5、COP6、いよいよCOP7、ここで二〇〇二年の発効に向けてということに相なりますと、ここで合意を見なければもうタイムリミットに来たということで、我々の今日まで積み上げてきた努力というのが無になってしまう、このCOP7というのは本当に大事な、集大成の会議であるというふうに私は心得ております。

 その間、いろいろなことがございました。特にことしになりまして、アメリカの議定書離脱というもの、そしてまた、それに追い打ちをかけるように、同時テロによる国際的な不況に今日陥ってしまった。もろもろの変化の中で、申し上げましたように、COP7というのは、ここ数年来の人類の知恵を絞って絞ってたどり着いた一里塚の集大成だろうというふうに、かように心得ております。

 おおよその内容等々については、ボンの合意でおおよそできているだろうというふうには理解をいたしております。ただ、最後の詰めの段階、まだ多くの課題が残っているだろうというふうに思っております。そういうこのCOP7の残されました課題と、このCOP7に間もなく出発をされます川口大臣の、この会合に向けての御決意を冒頭お聞きを申し上げたいと思います。

川口国務大臣 ただいま山本委員の、京都議定書が九七年に採択をされまして以降の歴史、携わってこられた歴史の流れについてのお話を伺いまして、私も、改めて、はるばるここまで来つるものかなという感じを持ちました。

 今度のCOP7におきましては、委員おっしゃられましたように、COP6再開会合で、柱の部分、京都議定書の運用ルールについての中核的要素についての政治的な合意はできたわけでございますけれども、それを法的な文書にしていく過程でまだ残っている課題があるわけでございまして、法的な文書に全部の部分をしていくということが大きな仕事でございます。ボンにおきまして政治的な合意が中核的要素について成立しました後、実はその作業にかかりましたけれども、時間が十分にございませんで、その作業を終わらせることができませんでした。

 ということで、今回はその法的な文書に落としていく作業をCOP7の最初の部分において行っていくということでございまして、それができた後で閣僚レベルのハイレベルセグメントが開かれまして、そこでそれを正式に合意をするという作業をするということになっております。委員おっしゃられましたように、二〇〇二年の発効を目指して、日本といたしましては、今度の会合で合意に向けての最大限の努力をしていくつもりでございます。

 欧州委員会におきましても、二〇〇二年の六月十四日までに京都議定書を締結すべきであるという提案が昨日の時点で正式に採択をされまして、これも二〇〇二年の発効を目指してというタイミングを、タイムリミットを意識してということかと思います。私どもとしては、代表団一同、最大限の努力をして合意に達したいというふうに考えております。

山本(公)委員 大臣の御奮闘を期待を申し上げたいと思います。

 私は、かねがね、いつも申し上げますけれども、日本という国が多分世界の中でリーダーシップをとっていける分野というのは環境しかないのじゃないかというふうに思っているわけでございまして、もちろん軍事なんて日本がリーダーシップをとれるわけもないし、経済力もやや少し弱ってきた。そうした中で、日本という国の環境技術というのは多分世界一だろうと思います。そしてまた、公害問題等々非常に多くの経験も積んできております。そういったことから、多分、日本という国は、将来、世界の中で事環境に関しては、私は、ヨーロッパよりもアメリカよりもリーダーシップがとれる国になり得る可能性があるというふうに思っております。

 そういう意味において、こういった国際会議の日本の一つ一つの行動、一つ一つの決定、非常に大きな要素をそういった面では占めてくるというふうに思っておりますので、ぜひ、信頼はいたしておりますけれども、誤りのない行動をとっていただきますようにお願いを申し上げておきたいと思います。

 そして、先ほどちょっと申し上げましたが、アメリカが京都議定書のグループから抜けた。そしてまた、聞いておりますところによると、大臣も、ハイレベル会合等々を通じながらアメリカとのパイプを切らさないように今日まで努力をしてこられた。私ども、最大の排出国であるアメリカが京都議定書から離脱をするということは、その実効性の面において非常にやはり懸念を感じます。いいのかなという思いもいたしております。そういう意味において大臣がずうっと努力をされてこられたことも承知をいたしております。

 しかし、もう始まろうとするCOP7、アメリカはどういう態度でこの会議を見ておるのか、また、臨もうとしているのか、その辺のことについて、外交交渉でございますから言いにくい面もあろうかと思いますけれども、大臣が話される範囲内において、今日までの対米交渉についてお話を願えればと思います。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、環境分野というのは、日本が国際社会においてリーダーシップをとっていける、そしてとるべき分野であると私も考えております。

 その意味におきまして、アメリカからCOP7までに提案が出るかもしれないということでございまして、私ども、今まで働きかけてまいりましたけれども、この働きかけというのは、日本が環境分野で国際的なリーダーシップをとり続ける上からも、引き続き続けることが重要であるというふうに考えております。

 不幸なことに同時多発テロがございまして、私はその直前にアメリカに働きかけに行っておりまして、そのときの印象では、ボンでの合意以降、アメリカの社会において、これは政府の内外両方ということでございますけれども、COP7に向けて具体的な提案をすることがかなり重要であるという認識が高まってきて、そのための準備もアメリカ政府としてはしていたという印象を私は持っておりますが、同時多発テロによりましてこういったことに割ける時間あるいは人の数が極度に減ってしまいまして、具体的な提案をCOP7までにアメリカがしてくる可能性は低いというふうに私としても考えているところでございます。

 今まで申し上げておりますように、地球の温暖化を抑制するという観点からは、最大の排出国である米国の参加というのが環境十全性の観点から非常に重要なことでございます。それから同時に、日本やアメリカやEUが国内的に排出抑制のための実際のさまざまな取り組みをしていくことが重要であるということももちろんでございます。

 九月には、ことしの七月に行われました日米のハイレベルに引き続きまして、事務レベルでの協議を行ってまいりました。この事務レベルの協議というのは三つの分野がございまして、途上国問題、科学技術それから市場メカニズムの三つの分野ということでございまして、今後とも、こういった日米ハイレベル及びそれに基づく事務レベルの協議を中心といたしまして、アメリカへの働きかけ、アメリカとの対話を継続していきたいというふうに考えております。ありとあらゆる機会を通じまして最大限の働きかけをしていきたいと思っております。

 以上です。

山本(公)委員 最大限の働きかけをやっていただくわけでございますけれども、私どもも、得ている情報によると、多分アメリカは、あのテロ以降、はっきり申し上げてとてもCOP7どころじゃないというような状況になっているのだろうと思います。COP7までに何らかの提案があるのではないかという期待もいたしておりましたが、多分もうほとんど可能性はゼロに近いのだろうと思っております。

 そうした中で、アメリカ抜きで合意を目指さなければいけないということに相なってくるわけでございますけれども、これは大臣の御決意としてお伺いいたしたいわけでございますけれども、アメリカ抜きの合意であっても合意に努力をされるということにおいては間違いがないのでございましょうか。

川口国務大臣 今度のCOP7会合におきまして、日本として合意に向けて最大限の努力をしていくということに全く変わりはございません。そのつもりでおります。

山本(公)委員 先ほど申し上げましたように、日本で生まれた京都議定書というものの発効に向けてここまで日本も努力をしてきて、一部で言われるように、ひょっとしたらアメリカに同調して京都議定書というものを少し遠ざけるのじゃないかというような声もあるやに聞いておりますけれども、私は、もしそういうことになったとしたらば、環境にかかわらず、日本のいわゆる外交というもの、もっと大きく言えば日本人というものが世界からやはり疑いの目で見られるようなことになってしまいかねないというような懸念を抱いておりますので、いろいろな事情があるにしろ、やはり日本は毅然として、日本で生まれた京都議定書の二〇〇二年発効に向けてリーダーシップをとっていただきたいなと思います。

 それは、一部で言われるような感情論でも何もないと私は思っております。一部では、そういうことを吐くと、感情に流されてという表現を使っている方もいらっしゃるやに聞いておりますけれども、私は感情ではないというふうに思っております。当然日本としてやるべきことをやっていくという淡々とした一つの流れの中の一つの作業だというふうに思っておりますので、何度も申し上げますけれども、ぜひ頑張っていただきたいなと思います。

 ところで、アメリカがもしこういうような形で京都議定書の発効に向けての作業から離脱したまま合意ということになっていったときに、途上国というのは、一部ではアメリカが入らないようだったら云々というような、途上国も参加がますますおくれるんじゃないかというような懸念を抱く声も聞こえてくるわけでございますけれども、私どもはそうじゃないというふうに逆に思っておるわけでございます。

 途上国の方々も、この地球温暖化の問題というのは、それぞれの国の特性はあるにしろ、やはり共同してやらなければいけない作業であるということは認識を強く持っていらっしゃるというふうに思っておりますので、たとえそういう状態の中でも、途上国は積極的にこの作業にこれから後も、COP7以後も努力をしていただける、また参加もしていただける可能性の道を探っていただける、私はそのように思っておるわけでございますけれども、大臣はどのようにその辺のことについてお考えでございましょうか。

川口国務大臣 アメリカが京都議定書を支持しないと言った理由の一つが、途上国が参加をしていないということでございました。それで、途上国の参加というのも、委員おっしゃられますように非常に重要でございまして、例えば、二〇一〇年以降、途上国の排出ガスの総量は先進国の排出量の総量を超えるというふうに言われているわけでございます。それから、現時点で中国の排出量は既に日本を上回っているという状況にもございます。

 途上国の参加というのは、私ども日本といたしましては、共通だけれども差異のある責任というルールに基づきまして、次の段階以降、重要なテーマとして私どもは取り組まなければいけない問題であるというふうに認識をしております。

 京都議定書に決められていますCDM、クリーン・ディベロプメント・メカニズムというのは、これは途上国において排出削減の努力をするということでございまして、そういった努力、それから途上国に対するその他のファンド、京都議定書で定められましたいろいろなファンドを活用しての技術移転あるいは人的資源の育成といったさまざまな取り組みを通じて、途上国においても排出を削減するための能力が高まっていくことになると思いますし、またその取り組みが日本としても重要だというふうに思っております。

 いずれにしても、途上国の参加の問題というのは、環境の十全性の観点から、次の段階のテーマとして非常に重要であるという認識を私どもも持っているわけです。

山本(公)委員 ちょっとまた話がもとに戻って恐縮なんですけれども、たとえ合意をしたとしても、COP7後もアメリカとの交渉というのは続けていかれるおつもりなんでしょうか。

川口国務大臣 アメリカの参加というのは非常に重要でございますし、また、先ほど委員の御質問にございました途上国の参加も、アメリカの参加がなければこれを実現していくことは非常に難しいというふうに私は認識をいたしております。したがいまして、アメリカへの働きかけは今後ずっといろいろな場を活用して最大限にやっていきたいというふうに考えております。

山本(公)委員 いずれ私はアメリカはやはり戻ってきていただけると思っております。絶えざる努力をしていただきたいなと思っております。よろしくお願い申し上げたいと思います。

 ところで、もしマラケシュで合意ということになりますと、国内制度を整備していかなければいけないということに相なろうかと思います。九〇年レベルというものに戻すといいますか、物の考え方というのは非常にやはり厳しいものがあるんだろうと思います。

 九〇年の段階において、多分、日本という国はあの時点においても環境先進国だったんだろうと思います。かなりの努力をそれぞれの企業がなさってきていらっしゃる。そういう中で、九〇年レベルからの六%削減ということになってくると、今また数字が少し上がっていますから厳しいものになるんだろうと思いますけれども、最近、やはり経済界を中心として、国内法整備の中身について非常に興味を持っていらっしゃるというか、COP7の合意そのものにも、先ほども申し上げましたように、いろいろな懸念も抱いていらっしゃいます。さらに、合意になった上で国内法整備というときに、今大変な不況に陥っている、その不況に追い打ちをかけるような厳しい制度をとられては困るなというような声が随分と聞こえてくるわけでございます。

 環境問題というのは、いつも申し上げますけれども、私は、一種哲学だというような気がいたしております。人類の経済活動と、そして一方で環境を保全していくということは、時に相矛盾することもやはり起きてくるんだろうと思っておるわけでございますけれども、いろいろ考えていくと、やはりこれはやり遂げていかなければいけない。しかし、企業が倒れてしまって、倒れるというのは極端な話でございますけれども、企業が弱ってしまって日本の活力そのものが失われてしまうと、これもまた国民生活に多大な影響を与えるということに相なってくるわけでございまして、そういう観点からいくと、今度合意ができて国内法整備をしていくときに、がちがちがちがちしたような制度をつくるのが果たして今日的には正しいのかなという思いも一方ではいたすわけでございます。

 私は、多分、来年から国内法整備をしていくときに、二〇〇八年までの実施期間まで六年間の時間もあるということ、いろいろなことを考えていくときに、当面やらなければいけないこと、そして中長期的にやらなければいけないことというような仕分けをして国内法整備を図っていくということはあっていいんじゃないかなという気がいたしております。そういう仕分けの仕方をすることによって、今、日本の経済界がこの問題について持っていらっしゃる懸念を多少なりとも払拭できるんじゃないかな、私はそういう気がいたしているわけでございますけれども、大臣、このことについて何かお考えがありましたらお聞かせを願いたいと思います。

川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、経済界を中心としまして、日本は既に過去さまざまな取り組みを行って優等生であるので、今後引き続き同じペースでやっていくことは非常に難しいという声が上がっていることについては、私もよく承知をいたしております。

 確かに、我が国は、石油危機以降さまざまな省エネ等の取り組みをいたしまして、その成果は、現在の例えばGDP単位当たりのエネルギーの使用量等がほかの先進国に比べて格段にいい成績であるといったようなことにあらわれているというふうに思っております。この経済界の取り組みは、過去においてもきちんとなされたと思いますし、また現在においてもいろいろ取り組みをしていただいているというふうに私は考えております。

 経済と環境の統合というのは常に上がってくるテーマでございますけれども、不況で確かに足元の経済には非常に問題がございますけれども、環境に取り組むということは、同時にビジネス機会であるということでもございます。それから、例えば、EUがさまざまな仕組みを世界に先行してつくっていこうとしている発想の背景としては、これから世界で使われることになる仕組みをEUとしてもつくり上げていきたい、自分の手でつくって、デファクトスタンダード的にしていきたいという考えもあるのではないかと私は推測をいたしております。

 そういった中で、日本の経済界にも、引き続きこの問題については、みずからの事業に際して、あるいは国民が使えるような技術、省エネ機器ですとかそういった点についての技術開発を進めていただくとか、さまざまな点で取り組んでいただきたいというふうに考えているわけでございます。

 その際、二〇〇八年からの目標達成とその仕組みとの関係について考えますと、これは、委員がおっしゃられますように、今後、社会経済の動向あるいは技術開発の動向、さまざまな変化が今から二〇〇八年までの間にはあるわけでございます。

 したがいまして、事業者や国民の皆さんの自主性を尊重して、費用対効果が高いような仕組みをつくっていくことが大事でございますし、最初の段階ですべての必要な対策が導入されていなければならないというふうには考えておりません。施策の進捗状況ですとかその効果について定期的に評価や検証を行いながら、必要に応じて施策の見直しあるいは強化を行う仕組みを検討していきたいというふうに考えております。

山本(公)委員 いろいろなことをやっていかなきゃいけないんだろうと思いますけれども、特に環境税の問題なんかというのはやはり俎上に上がってくるんだろうと思います。こういった税の問題については、国民生活にやはり直接に影響してまいります。企業はもちろん、国民生活そのものにも影響してまいりますので、今大臣がおっしゃられましたような、その時々の社会情勢、経済情勢をよくよく配慮に入れながら、環境税の問題等々はやっていく必要があるんだろうと思います。

 僕自身は、個人的には、最終的には、その抑止力を考えるときには、環境税の導入というのは絶対的に必要なものだというふうに思っておりますけれども、それが及ぼす影響を考えていきますときには、タイミングをよほどうまくはからなければ、我々が意図するところと違う方向に行ってしまいかねないような可能性も秘めている問題でございますので、注意してこの問題は取り扱っていただければというふうに思っております。

 もう時間がございませんので、最後に一言お願いを申し上げておきたいと思います。

 COP3のときに、毎日毎日、新聞が報道をしてくれました。一面で京都会議のことをどんどん報道してくれて、テレビもやってくれました。国民の間に地球温暖化という一つの今の現象が初めて広まったというふうに私は思っております。しかし、あのキャンペーンが終わった途端に、ぱたっとしぼんでしまったような気がいたしてしようがありません。そういう国民の心理というのはわかるような気がしますけれども、もう一度ねじを巻き直さなかったら、国民生活のこの問題に対する寄与のあり方が難しいことになってくるんじゃないかなという懸念を抱いております。

 今後、多分環境省としても改めてキャンペーンをお始めになるんだろうと思いますけれども、そのときに、私はCOP3のとき感じましたけれども、非常に効果があるといいますか、わかりやすかったのは、よく演説で言っていたんですけれども、いずれ大阪駅まで水が来るんですよとかいう極端な話をしていました、何もしなかったら。西野先生いらっしゃるけれども、堤防をつくりますからそれは来ないんでしょうけれども、何もしなかったら、海面が一メーター上昇したら大阪駅まで海岸になるんですよ、そういう極端な話をしたんです。

 何も国民を不安がらせる必要はないと思うんですけれども、例えばセミの分布がどんどん北上しているという事実もあったりする。私の地元の宇和海、サンゴ礁がだんだん北上しているんですよね。ここまではサンゴ礁がなかったのにというのが、ちょっと北上したところにサンゴ礁がだんだん形成されつつあるんですよ。海温もどんどん上がってきているんですよ。

 そういった、国民生活にわかりやすいような事例を挙げながら、日本列島だけを事例として取り上げて、そういうキャンペーンの仕方というのは、国民の皆さん方の協力を得るためにも、警鐘を鳴らす意味においても効果的だというふうに私は思うわけでございますが、今後、国内法整備をやらなきゃいけない、同時に国民に対する啓蒙もやっていかなければいけない、今申し上げましたようなわかりやすい事例を挙げながら国民にこの問題を啓蒙していただくようになればと思っておりますが、最後に大臣、一言お伺いいたしまして終わりたいと思います。

川口国務大臣 委員おっしゃられますように、この問題というのは国民一人一人の生活のスタイルから生じている問題である、自動車を使うとかエネルギーを使うとかということですけれども、そこからきている問題であるということを国民の一人一人にきちんと理解をしていただくということは非常に大事でございまして、キャンペーンというのはその意味で効果がある形でやらなければいけないというふうに考えております。

 その意味で、委員が今おっしゃられた具体的な例というのは、私もとてもいいやり方だというふうに思っておりますので、これを具体的に進めていくに当たってぜひ参考にさせていただきたいと思います。

山本(公)委員 ありがとうございました。

 終わります。

大石委員長 増原義剛君。

増原委員 地球温暖化の問題は非常に重要な問題でありまして、先ほど山本議員の方からいろいろお話がございました。聞いていて本当に、私ども人類あるいは生物の生存の基盤を揺るがすような非常に大きな問題である、これに対しては本当に相当の決意を持って取り組んでいかないと、宇宙船地球号、この地球がおかしくなってしまう、そういう非常に強い危機感を持っております。

 そうした中で、山本議員があらあらのことを聞かれましたので、ちょっと細かいことになるかもしれませんが、私どもの国内における対応につきまして幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 既に三年前、平成十年でありますが、地球温暖化対策推進大綱が六月に閣議決定されました。そしてその秋の十月に、今度はその推進法が制定されまして、それを受けて翌年基本方針が出され、そしてまたことしの夏ですか、中央環境審議会の小委員会の方で中間取りまとめが出されました。それなどを見ながら一、二質問をさせていただきたいと思います。

 まず、平成十年の推進大綱における全体イメージがございます。いろいろな施策をやりまして、基準年に対しましてマイナスの〇・五%にしていくということでございますが、その中で、実は経産省の方がことしの夏に総合資源エネルギー調査会で答申を出されました。三年前の大綱策定時と大分様相が違ってきているやに聞いております。

 そういう観点からして、平成十年の推進大綱、これについて今後どのように取り組むと申しますか、見直すと申しますか、していく必要があるのか、それについての見解をお聞きいたしたいと思います。

日下政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように状況変化が起こっております。そのような状況変化及びそれに対する対策についてお答え申し上げます。

 需要面では、九九年の二酸化炭素排出量は、当初予想したよりも景気が非常に低迷してきた、経済活動が活発でなかったという要因もございまして、産業部門ではほぼ横ばいで推移する中、そういうような景気状況の中にもかかわらず、民生部門では九〇年比で一七%、運輸部門では二三%ふえてきている。

 また、供給面におきましても、原子力発電所の立地、これを十六から二十基ぐらい増設することを二〇一〇年に向けて見込んでいたわけでございますが、現在見込める基数は十基から十三基の増設にとどまるということが出てきておりますし、エネルギーの供給量の伸びもさることながら、このように、石炭であったり原子力の発電の貢献が予想したよりも少ないことなど、同じ電力を使いましてもCO2を含む量がふえてきているというような展開になってきているわけでございます。

 総合資源エネルギー調査会の答申におきましては、既存の施策を着実に推進していくとともに、さらに追加的な措置を実施して、当初のねらいを達成していきたいと考えているわけでございます。

 省エネ対策におきましては、石油・ガス機器など、省エネ法におきますトップランナー機器の拡大によりまして、炭素換算で六百万トンをさらに削減でありましたり、新エネ対策では、太陽光発電、風力発電などの導入補助を拡充することによって九百万トン、それから燃料転換、電力の燃料転換で五百万トンの削減などをすることとしておりまして、これらの対策を強力に推進することによりまして、温暖化対策推進大綱におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量を二〇一〇年度において九〇年と同じ水準に抑制するという目標を達成することとしたいというのが答申の骨子、考え方でございます。

 なお、大綱につきましては、毎年、総理大臣を本部長とする対策推進本部におきまして、大綱の進捗状況及び今後の取り組みの重点を取りまとめているところでございまして、本年も七月に、御指摘のような状況変化及びこれに対する対応も含めまして、その取りまとめを行って、大綱に基づく対策の着実な実施を進めることとしたところでございます。

増原委員 ありがとうございました。

 また一方で、今度は中央環境審議会のシナリオ小委員会の方の中間取りまとめが出されまして、排出削減ポテンシャル、これを最大限に引けば、マイナス二%からマイナス五%、あるいはマイナス四%からマイナス七%まで削減が基準年に対して可能であるということも出されております。

 そうしたシナリオの中で、いわゆる経済的手法、先ほども話に出ましたが、環境税などの経済的手法はどのように位置づけられているのかお聞きいたしたいと思います。

炭谷政府参考人 ただいま先生がおっしゃられました中環審の中間的な取りまとめにおきましては、まず、排出削減のポテンシャルとして計算いたしまして、制度面、コスト面というものを全く捨象いたしまして、技術的な観点から二〇一〇年で可能な排出削減量を推計いたしましたところ、まず百種類程度の技術対策の導入が可能である、そういたしますと、二〇一〇年に基準年比で、幅がございますけれども、二%ないし七%の削減が潜在的に可能であるというふうなことを言っているわけでございます。

 その目的を達成するための手段として、今先生が指摘されましたいわば経済的な手法、また自主的な取り組み、また社会的な規制というものについて、総合的にポリシーミックスとして対応をしていくという意味では大変効果的であろうというふうに中環審では述べております。

 特に、経済的手法につきましては、価格を通じまして市場メカニズムを機能させることによりまして、それぞれの各主体が自主的に効率的な行動が可能であるということで、大変効果的なものであるというふうな位置づけをしておるところでございます。

増原委員 ありがとうございました。

 これから具体的にいろいろ考えていかれるんだろうと思いますが、そうした中にあって、先ほど経産省の方からもお話がありましたが、基準年以降の部門別のCO2、炭酸ガスの排出量の推移を見ていきますと、いわゆる産業部門というのはほぼ横ばい、景気によってはマイナスのこともあったりいたします。しかし一方、民生とか運輸部門、いわゆる国民生活に非常に直結している部分、これが二けたの伸びを示しているわけであります。

 そしてまた、一九九〇年という基準年をとってみましても、あるいは今現在をとってみましても、日本の対GDPベースの二酸化炭素あるいは炭素換算の排出量、これは非常に効率的になったわけであります。国民一人当たりを見ましても、原子力発電が主体であるフランスとほとんど余り変わらないぐらいの非常に効率的な経済をある意味ではつくっている、先ほど山本議員の話にもありましたけれども。

 そういう意味で、そこらあたりを踏まえて幾つか御質問したいのですが、まず第一に、これまでの対外的な交渉の中で、そういった我が国の経済社会の効率性、対GDPベースとかあるいは国民一人当たりの炭酸ガスの排出量はこうなんだ、それに対してアメリカやヨーロッパ、EUはこうではないかといったようなことについて、先般、マイナス六%、七%、八%、日本とアメリカとEUと出されましたが、それをつくる過程において、先ほど私が申し上げたことについて外交交渉の場で何らかの形でそれを発言され、あるいは議論をされたのかどうか、これは外務省の方にお聞きしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、我が国は、石油危機以降、省エネルギーに積極的に取り組みまして、京都議定書の交渉が行われる当時におきましては既に大変高いエネルギー効率を達成したわけでございます。そういうことがございますので、京都議定書の交渉におきましては、我が国は、こうした我が国の努力の成果が適切に評価されるべきとの立場から、各国の温室効果ガスの削減目標を決めるに当たりましては、GDP当たりの排出量や一人当たりの排出量等を踏まえる形で設定すべき、そういう提案をし、主張を行ったわけでございます。

 しかしながら、交渉におきましては、もちろん我が国だけではなくて、多くの国からそれぞれ自分の国に最も有利な形でさまざまな提案が行われました。その結果、特定の基準に基づきまして数値目標を設定するということにつきましては、いずれの案につきましても合意をするに至らなかったわけでございます。

 しかしながら、地球温暖化防止のための目標を達成するためには、何らかの削減の各国の義務を決めなくちゃいけません。ですから、さらに交渉を継続した結果、御案内のように、一九九七年に京都で開催されました気候変動枠組み条約の第三回締約国会議におきまして、政治的に各国の数値目標を設定するということで合意が成立いたしまして、その結果は京都議定書という形で採択されたわけでございます。

増原委員 どうもありがとうございました。

 外交交渉ですからいろいろなことがあるのだろうと思いますが、先ほど来山本議員の話もありましたように、我が国の経済社会、もちろんなお、そうはいいましても全体の五%の排出をしているわけですから、引き続き努力していく必要があるとは思いますけれども、それぞれの国で大分事情が違っているということであります。

 実は、この夏に私ども有志でドイツの脱原発、リサイクル事情につきまして視察をしてまいりました。そのときに環境当局といろいろ話もさせていただきました。

 そうした中で、いわゆるEUの中でドイツはマイナス二一%を引き受けるということで、ドイツとイギリスが大きいのですね、しかも、既に現時点では、基準年に対してもう一八・七%マイナスでやっていますよと言うのですね。そうですかということで、ベルリンの壁が崩壊するちょうど九〇年ですから、結局基準年については、彼らは西ドイツと東ドイツを一緒にした形なんですね。それで、質問したのですよ。では、旧西ドイツベースでデータはあるんですかと。ありませんと言うのですね、ないと言うのですよ。それは、非常に効率の悪い東ドイツを入れたわけですから、その九〇年レベルも入れれば簡単なんですね、ある意味では。

 もちろん、再生可能エネルギーの風力、これはアウトバーンを走ればあちこちに見えるわけで、それも努力されていることはわかるのですが、実は、大半は旧東ドイツのエネルギー効率の非常に悪いものを効率化している。このこと自体はいいのですけれども、そういう意味で、楽々と目標が達成できるような口ぶりなんですね。だから、削減量についてはほとんど気にしていないという感じであります。そういうような状況なんですね。

 そうした場合と、日本でさらにマイナス六%というのとは全く違うわけでありますね、事態が。そこらあたりをしっかり考えていかないと、外交交渉、私は十分ではないのではないかという気がいたしております。

 そうした中で、先ほど申し上げましたように、いわゆる産業は横ばいで、民生、運輸が伸びている、これを何とかしなければどうしようもないわけでありまして、そういう意味で、これは経済社会システム全体の見直しが必要なんですが、とりわけ国民生活のあり方をきちっと変えていただく必要がある。これをやりませんと、とても目標達成ができるものではないというふうに思っております。

 そういう意味で、今後中環審の方で、国内制度小委員会でいろいろと今後の対応をお取りまとめになるというふうに聞いておりますが、そこらあたりの今現在における対応について環境省にお聞きしたいと思います。

風間副大臣 先生の御質問、まさに今中環審の国内制度小委員会で議論を重ねさせていただいて、ことしの七月に中間取りまとめをさせていただいた。その中には、もちろん低公害車の導入、あるいは一人一人の国民生活の中で、どういう形で、温暖化を防止する上で生活上のさまざまな項目まで掲げさせていただいているわけであります。

 あるいは、参議院のサマータイム推進議連というのがありますが、それとはまた別に、この国内制度小委員会でもサマータイムの導入についても議論をさせていただいている。あるいは、太陽光発電を導入するといったようなこと、公共交通機関の活用、モーダルシフトをきちっとやっていく。

 あるいは、今環境省の中でありますけれども、月の第一月曜日、ノーカーデーになっていますから、公用車を使わないようにするための、要するに私どもみずからがやっていかなきゃならないということも含めて、これは国内制度小委員会とはまた別でございますけれども。

 したがいまして、環境省といたしましても、こういった国内制度小委員会の中間取りまとめの御審議をきちっと見定めた上で取り組んでいかなきゃならないというふうに思っております。

 今先生からお話のありました民生の部門については、少なくとも十四年度の予算の概算要求にも、地球温暖化防止国民運動の展開、あるいは家庭における地球温暖化診断といったことを予算化させていただいて、これを盛り込ませていただきたいというふうに思っております。

 また、運輸部門につきましても、ことしの七月、関係省との連携のもとで、二〇一〇年までのできるだけ早い時期に低公害車を一千万台以上入れるということについても、たしか五億ぐらいだったと思いますけれども、概算要求で出させていただいております。

 全体に、地球温暖化防止の一層の推進のために、中央環境審議会での国内制度小委員会の検討結果を受けて、さらに一層取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

増原委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、国民全体、産業はもとよりでありますが、私たちの生活のあり方、これを本当に変えていかないと、とても達成できるものではないというふうに私は考えております。とりわけ、今度は二〇一〇年以降でございますね。当然、第二ステージというか次があるわけで、二〇〇五年ぐらいから、今度はそちらの方の議論も始まるということになってまいります。

 そうした意味で、私は、中国などの途上国、今は中国でも日本の五倍ぐらいの排出量がありますが、何せ日本の十倍の人口ですから、これが経済発展をどんどんしてくれば大変な量の炭酸ガスを排出されることになります。そういう意味で、中国のみならずインドも含めて、途上国をどうしても枠の中に入れなくてはいけない。交渉の場にというだけではなくて、今日本やアメリカやEUに課せられているような枠を、第二ステージではどうしても途上国を含めて入れなくてはいけません。

 その意味からも、大臣、近々COP7にお行きになりますが、アメリカを、仮に、京都議定書、これはちょっと無理にしましても、何らかの形で日本がアメリカを参加させる、この国際交渉の場にきちっと入れて、アメリカはアメリカなりに何か出させるということをぜひやっていただきたいと思っておる次第であります。

 大臣、一言これにつきまして。

川口国務大臣 委員おっしゃられますように、途上国が将来参加をしてくる、実際に義務を履行するような形になるということは非常に重要であると考えております。

 そのためにも、米国が参加をすることが大事でございまして、私どもとしては、米国に対して働きかけを今までも行ってまいりましたし、それから、もし国会のお許しをいただくことが可能でございましたら、アメリカ経由でマラケシュに行って働きかけをしたいと私としては考えております。

増原委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたが、最後に一つ外務省の方にお聞きしたいんですが、これからWTOの交渉が始まります。私は、常々思っているんですが、環境コストを払っていない途上国に対しては、環境関税といったものをつけるべきではないか。例えば、一千億円をかけて高炉をつくる、日本はそれで七、八百億かけて九十数%の脱硫・脱硝効果を持つものをつけるわけですね。これでつくった鉄と、脱硫・脱硝装置をつけていない、もうNOx、SOx垂れ流しの高炉とどちらが安くできるか、もう火を見るよりも明らかなわけであります。

 そういうところについて、むしろ、アメリカなどとともに、グリーンラウンドという形で今後交渉していくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

北島政府参考人 WTOの新ラウンドの関連の御質問ですけれども、地球環境問題に適切に対処すべく、新ラウンド交渉において貿易と環境の問題を取り上げるということにつきましては、日本政府としてそういう考え方を持っております。

 これまでのところ、WTOの貿易と環境委員会においていろいろな問題を検討してきておりますけれども、そのうちの一つに、WTO協定と環境目的の課徴金及び内国税との関係という事項がございます。これに関連するわけですけれども、この問題が将来議論され、新ラウンドで取り上げられていくようなときに、日本政府として、途上国の立場を踏まえつつも、政府としてどういうふうに対応するかということを考えていくわけですけれども、委員の御指摘の点を踏まえていきたいというふうに考えております。

増原委員 ありがとうございました。

大石委員長 小林守君。

小林(守)委員 民主党の小林です。

 いよいよ京都議定書の細目を決めるマラケシュのCOP7の会議が迫ってまいりました。二十一世紀の地球環境にとって、また人類にとって最大のテーマである温暖化防止のための京都議定書の最終合意を実現するための大きな役割を、特にこの日本はその京都議定書の議長国でもあったということを考えるならば、大変な責任を持ち、そしてなおかつ、アメリカの不参加というような状況の中で、日本の批准、発効というのはキャスチングボートを握っている立場にもあるわけでありまして、そういう点でも、環境大臣の役割、まことに重大である、このように考えるわけであります。

 三月にヘーゲル上院議員にあてたブッシュ大統領の書簡の中で、COP7に向けてブッシュ政権は、京都議定書については不支持であるというような書簡が明らかになり、世界的な反響を呼んだわけであります。その後、六月の十一日にはブッシュ大統領の声明がございまして、この不支持の内容についてアメリカのスタンスを明らかにされたわけであります。

 これら一連の動きの中で、環境大臣を含め環境省の皆さん方、政府の皆さん方は、アメリカに対して参加への勧誘というんですか勧奨というか、熱心な取り組みをなされてきているということを評価したいと思いますが、しかし、COP7までにアメリカからの新たな提案は期待できない、無理である、ないというふうにも判断していいんだと思います。

 こういう状況の中で、今後の国内対策も含めて考えるならば、ブッシュ大統領の、ブッシュ政権の示している京都議定書に対する反対の理由、離脱の理由、これをどう日本が受けとめ、これに対してどういう論拠を持って説得に当たっていくか。これは、今後の国内対策においても極めて重要なことになるのではないか、このように思えてなりません。

 最近の報道には、産業界を中心に、特にエネルギー多消費型の産業分野、鉄鋼、セメントなども含めまして、経団連の中でも、この京都議定書に対する早期批准というものに対して考えるべきじゃないかとか、このようなデフレ経済のもとでさらに追い打ちをかけるようなことになるのではないかとか、そういう後ろ向きの発言がかなり目立ってきております。

 そういう点でも、ブッシュ政権の示している離脱の理由にきちっとこたえていくというか、きちっとした論拠を持って反論をしていくということが、今後の国内対策の上でも極めて大事だろう、このように思っております。

 そういう点で、大臣は、ブッシュ大統領の不支持、離脱声明についてどう受けとめ、どのような考え方を持ってアメリカの京都議定書への参加を要請してきたのか、それをお示しいただきたいと思います。

川口国務大臣 ブッシュ政権がことしの三月に京都議定書を不支持、支持しないということを言いましたことは、私どもとしては非常に残念なことでございまして、委員おっしゃっていただきましたように、それ以降、再三再四、いろいろな機会をとらえてアメリカに対しては働きかけを行っているところでございます。

 それで、ブッシュ政権は、離脱をした、あるいは支持をしない理由といたしまして、まず、途上国が参加をしていないということを言っております。

 これに対しては、私どもといたしましては、途上国の参加問題というのは、共通だけれども差異のある責任ということに基づいてこれを考えていくべきであって、日本としては、第二約束期間以降の参加ということで、したがいまして、第二約束期間以前からその話をする必要があるわけでございますけれども、これは、日本だけではなくて、ほぼ、主要な先進国の間での同じコンセンサスがあるのではないかというふうに思っております。これについてはアメリカは、必ずしも同調はいたしておりません。

 それから、経済への悪影響ということでございますけれども、これにつきましては、まさにこの点を軽減するための京都メカニズムという、価格メカニズムを使った柔軟性メカニズムが京都議定書の中にあるわけでございまして、その点の指摘、あるいは、環境に取り組んでいくことが技術開発を促進し、新しい雇用機会、新しい産業を生み出すということで経済の活性化につながるのであるということもアメリカに対しては申し上げております。

 それから、科学的不確実性、本当に温暖化問題があるかどうかということにつきましても、一時的にアメリカはそういうことも言っておりまして、今は、それは問題があるというふうに認識はしていると思いますけれども、アメリカは、その問題があるということは認識をし、自分なりのやり方で対応をしていくということは言っておりますけれども、それを京都議定書というやり方でやっていくということについては賛成でないというのが今のアメリカのポジションでございまして、引き続き働きかけを、アメリカの政府、行政府だけではなくて議会に対しても行っていきたいというふうに思っております。

小林(守)委員 今大臣の方から、三つの主な理由を述べられ、そして日本として、また大臣としてこの問題についてどう考えているかというお話をされたわけでありますが、私たち環境委員会で、盆の過ぎ、八月の十六日から二十三日までだったでしょうか、アメリカに派遣をさせていただいて、たまたまアメリカの全米科学アカデミーの皆さん方と、このアメリカの離脱の問題について議論をさせていただきました。

 その三つ目にありました科学的な不確実性という問題について、アメリカの議会の中でそういう議論があったんですね。それらについて、その全米科学アカデミーの方でIPCCの第三次報告について評価をいたしまして、科学的に確実性はあるというような裏打ちがされて、いわゆる政治家、政治レベルでの不確実性の問題については否定されたというような経過があったようであります。そういうことで、アメリカの離脱の理由の一つは消えたというか、そのように言えるんだろうというふうに思います。

 また、アメリカの世論の中でも、上院のお一人の方が共和党を離脱されて無所属になったという形で、力関係が一人の違いで逆転しちゃったような状況になりましたね。そういうことで、かなりアメリカの議会の力関係も変わりつつあるということなんですが。

 たまたまワールドウオッチ研究所のフレービン所長さんにお会いすることができまして、いろいろお話を聞かせていただきまして、アメリカ国民の六割ぐらいは、やはり京都議定書に参加すべきだというのが世論だというふうにお聞きいたしました。ただ、ブッシュ政権の選挙の公約などもあって、むしろ振り上げたこぶしがおろせないでいるのではないかみたいなお話も、そのワールドウオッチ研究所のフレービンさんの方からもお聞きした経過もございまして、それで意を強くして帰ってきたというような状況であります。

 そういうことで、残された、経済への損失をもたらすものなんだという考え方、あるいは途上国の問題について、途上国の問題については、これまでの十年に及ぶ交渉の経過、積み上げの中で、共通であるが差異のある協力というんですか、そういう形で合意がされてきた経過もございますから、確かに中国やインドが参加されていないというのは環境の十全性からいって大きな問題があるのは事実だと思いますが、これをもって致命的欠陥だというように言うアメリカの考え方というのは、これはやはり国際協調の視点からいっても通らない話ではないか、このように思えてなりません。

 そこで、残された大きな問題は、その経済的損失を伴う京都議定書については反対だという視点を、どうきちっとした論拠を持って、先ほど言いましたが、今後の国内対策も含めて考えるならば、これは相当のきちっとした政策体系を持って、理念を持って臨んでいかなければならない問題ではないかな、このように思うわけですね。

 たまたま日経新聞などにも出ておりましたし、また最近の経団連などの主張を取りまとめたものをちょっと手に入れることができましたが、政府は、二〇〇二年の議定書発効に固執することなく、米国を含む国々が参加できる国際的な枠組みづくりを目指すべきである、こういうことを言ったり、あるいは、経済への悪影響を考慮すべきである、さらなる対策を産業界に求めれば、環境コストの上昇によって国際競争力は失われ、国内の雇用情勢はさらに悪化する、こういうような論調で、京都議定書の、COP7に向けての国際的な取り組みに対して非常に後ろ向きな論調がこれらの経済界を中心に起こりつつあるということでありまして、ひしひしとその問題については環境省の方でも受けとめているのではないかと思いますし、また、経済産業省の方の産業構造審議会の地球環境小委員会の中でも、これに類する立場の発言がかなり目立ってきているということも私たちは大変懸念を受けているわけであります。

 そういう点で、先ほど来の議論の中にもありましたが、環境と経済の新たな統合、新たな枠組み、これはやはり新しい経済の構造改革、今盛んにあらゆる分野で構造改革ということが言われていますが、経済社会の構造改革の大きな柱なんだろう、このように思えてなりません。環境と経済との統合の中で新たな枠組みをつくっていく、新たな持続可能な経済社会の発展の枠組みをつくっていくということなんだろうというふうに思うんですよね。

 そういうことで、資源リサイクルの問題、地球環境の問題を考えていっても、今までの二十世紀型の成長路線ではあり得ない二十一世紀ということを考えるならば、まさにここで構造転換をしなければならないし、私は、ブッシュ政権の考え方、あるいは、今それに同調するような形で出てきている日本の産業界、経済界の一部の考え方については、やはりちょっと二十世紀型の延長線上にある論理ではないのかというふうに思えてならないんですが、その辺について、これを今後どう進めていくのか。

 特に大臣の場合は、日米ハイレベル協議の中で、少なくともアメリカの参加を求めるということになるならば、この説得というか、いろいろな考え方を示しながらアメリカ等の参加を求めてきている経過がありますので、相当この辺がやはり自分自身の考え方の整理の中でも問われたのではないかというふうに思うんですが、その辺をお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 温暖化を抑制するために取り組んでいくということは、二十一世紀における我々人類の大きなやるべき課題であり、また義務であるというふうに思っております。この観点で、委員がおっしゃられましたように、日本の産業は今までもかなり取り組みはやってきていますし、それなりの成果は上げていると思います。また、その点は、国際的にも既にほかの国々によって認識はされているというふうに思います。

 ただ今後、「環(わ)の国」日本づくりということを先般来私ども申し上げておりますけれども、二十一世紀百年を通して、温暖化抑止を進めていき、それから循環型社会も目指して構造改革をしていくという観点からいきますと、まだまだやっていかなければいけないことがありますし、産業界には取り組んでいただきたいことが多くあるわけでございます。ただ、取り組みに当たりましては、やはり環境十全性を維持する、それを確保すると同時に、経済的に効率性の高い、費用対効果の高い手段を他の手段と組み合わせて使っていくということが非常に大事であるというふうに思います。

 日米のハイレベルの協議を先般来やっておりますけれども、そのときに取り上げている三つのテーマのうちの一つが市場メカニズムの活用ということでございまして、こういったことについて、引き続きアメリカとの議論も進め、環境十全性の立場からは、アメリカがこの温暖化抑制に一緒に、一つのルールに基づいて取り組んでいくということが重要でございますので、引き続き働きかけは行っていきたいというふうに考えております。

小林(守)委員 今後、日本は、このマラケシュの会議においてどういう声明を世界に対して発していくのか、いろいろと議論をされ、きのう記者会見をされたようですね、大臣。その中でも、はっきり、たとえアメリカがどうしても今回間に合わなくても日本は行くんだ、批准し発効を目指すんだというようなことについては最後まで言葉を濁したというような報道がありましたけれども。

 ある新聞の方の情報でちょっと読ませていただいたんですが、アメリカは、EUや日本に対して、議定書には参加しないが、しかしその発効については妨害しません、どうぞやってくださいというようなことを日本に伝えている、EUや日本にはアメリカは伝えているというような記事があるんですが、これは二十三日の日経の社説の中で書かれていることなんですが、こういうようなことは、感触として、はっきり言われているんでしょうか。

川口国務大臣 アメリカが京都議定書についての他の国々の議論といいますか交渉について、アメリカに非常に大きなかかわり合いを持つ部分については積極的に参加をするという姿勢、それから、京都議定書の発効について合意が達成したら、発効がその次の段階としてあり得るであろうということについて、それは妨害をしないという発言は、私の記憶では、前回のCOP6再開会合のときに会合の場でなされたというふうに記憶をいたしております。

 ということでございますので、我が国といたしましては、二〇〇二年の発効を目指して、来るCOP7の会合で、京都議定書の運用ルールをテキストに落としていく、法的な文書にするという作業に関しまして、合意に向けて全力を尽くすという所存でございます。

小林(守)委員 わかりました。

 アメリカの方では、日本やEUがこの発効を目指して進むことについて妨害しませんというような立場であるということを確認できるのならば、私、用意した質問の中で、来年の九月、ヨハネスブルクの地球サミットまでには日本は京都議定書を批准して発効させる、そういう立場を貫くことができるというふうに受けとめてよろしいですね。

川口国務大臣 我が国は、二〇〇二年の発効を目指して、今度のCOP7の会合の場で合意に達すべく全力を尽くして交渉を行う所存でございます。

小林(守)委員 衆参の国会の決議もあるわけでございますし、十分意を強くして頑張っていただきたい。しかしながら、確かに、環境の十全性という視点から考えるならば、アメリカの参加も、それから途上国の今後の参加も極めて重大な問題だというところは押さえながら頑張っていただきたい、このように思うところでございます。

 それで、マラケシュの会議の成功と最終的な合意の実現と日本における来年九月までの批准ということがほぼ今後の課題になってくるんだろう、このように思いますが、その際に、既に議論にもありましたけれども、日本の国内対策として、どのような法制度の改革と今後のCO2削減のプログラムを考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国は、京都議定書の二〇〇二年の発効を目指して今度のCOP7の場での合意を目指すということと、同時にまた、京都議定書の目標を達成するための国内的な制度をつくっていくために総力で取り組んでいるところでございます。現在、中央環境審議会におきまして、京都議定書の目標を達成するための国内制度のあり方につきまして御審議をいただいているところでございます。

 国内制度の構築に当たりましては、京都議定書の目標とする期間が二〇〇八年から二〇一二年という将来の期間でございますので、それまでの間に、社会経済の動向に変化が生じたり、あるいは技術開発の状況などが異なってくるということが十分に考えられるわけでございますので、そういった状況を見定めながら、目標達成のための個々の対策の導入や、あるいはこれを促進するための施策を盛り込んだ計画を定めまして、その進捗状況あるいは効果に応じましてその計画を定期的に評価し、検証し、必要に応じて施策の見直しを行っていくといった仕組みを中核といたしまして国内制度を検討してまいりたいと考えております。

小林(守)委員 もう少し具体的にお聞きしたいと思うんですが、さきの通常国会におきまして、議員立法でフロン回収・破壊法が成立をし、来年の十月までにはカーエアコンの回収も施行される、あるいは来年の四月一日には業務用冷凍空調機器の回収も施行されるというようなことになりました。

 フロンについては、オゾン層の保護という一つの目的のほかに、強力な温室効果ガスでもあるということでございまして、特に今度のフロン回収・破壊法の対象物質としてはHFCが含まれるわけでありますが、この法律が実現したことによって、温室効果ガスの削減効果が期待できるのではないか。もちろん、この法律では対象ではなかったですけれども、そのほかの温室効果ガスであるフロン、例えばPFCとかSF6とか、これらについても当然温暖化物質として対象ガスには含まれているわけでありますから、フロン回収法には含まれていないけれども、しかし、当然その趣旨としては、そこも含めて対策をとってほしいというのは、これは附帯決議などについても触れさせていただいているところであります。

 そういう点で、この強力な温室効果ガス六ガスの中のフロン物質についての回収・破壊による削減効果、あるいは環境教育法が必要ではないか。先ほど来、民生や運輸部門での増加が目立つというようなお話もございました。そういうことになるならば、やはり国民の生活意識、生活スタイルそのものを大きく変えていく、価値観まで変えていくということにつながると思いますが、そういう点でも、環境教育法的なものが制度化される必要があるのではないか、このようにも考えられますし、もちろん、税制のグリーン化、低燃費車の導入とか優遇税制とか、そういうことも含まれますでしょうが、税制のグリーン化とか環境税の導入とか、経済的な手法によるインセンティブを働かせていくというようなことについても当然検討されていかなければならないわけであります。

 さらに、石炭、石油等に依存するような、化石燃料に依存するようなエネルギー構造から、再生可能な自然エネルギーへの転換ということも、まだまだ微々たるものではあるけれども、少なくとも欧米においてはそういう方向への転換を進めているのも事実であります。そういう点で、自然エネルギーの利用促進ということについてもやはり法制度化すべきではないかというのも、国会の中でも議論をされているところであります。

 これらの法制度について、幾つか今申し上げましたが、それぞれ取り組みの状況についてお知らせをいただければありがたいと思います。

炭谷政府参考人 まず、フロン回収の関係について御説明させていただきたいと思います。

 先生御指摘のように、HFC、PFC、SF6の三ガスにつきましては、これまで私ども、地球温暖化対策推進大綱に基づきまして対策を講じてきまして、かなりの成果が上がったのじゃないかなと思っております。特に事業者の自主的な取り組みによりまして、漏えい防止、また回収・破壊というものが大変進んでいるわけでございます。九五年と二〇〇〇年とを比べますと、三割近くの減になっているというふうに数値が出ております。

 さらに、今後、議員立法で御努力いただきましたフロン回収・破壊法が施行されてきますので、これの効果も相当望めるでしょうし、また、フロン回収・破壊法の対象になっていない冷媒以外のもの、また、PFC、SF6のガスにつきましても、それぞれの対策を講じて排出削減に万全を期していきたいというふうに考えているわけでございます。

中川政府参考人 環境教育、環境学習の推進についてでございますが、御指摘のように、大変重要な課題であると認識いたしております。

 環境教育、環境学習の法的な位置づけにつきましては、平成五年に制定されました環境基本法の二十五条に規定されているところでございます。

 環境省におきましては、現在のところ、環境教育に関する特別の法制の検討は行っておりませんが、文部科学省、経済産業省と連携いたしまして、地球温暖化防止活動推進センターを活用したグリーン教育モデル事業とか、こどもエコクラブ事業による地域での小中学生の自主的、自発的な活動の支援、あるいは地球温暖化防止月間やアイドリング・ストップ運動の実施などによりまして、地球温暖化防止にも資するよう、環境教育の振興や国民等の自主的な活動の促進に努めているところでございます。今後とも、各主体と密接に連携協力しながら、一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

 それからもう一つ、環境税についてでございますが、環境税は、価格を通じて市場メカニズムを機能させることによりまして、各経済主体が消費や投資等の行動を、自主的に温室効果ガス排出の少ないものとするよう促進する効率的な手法であると認識をいたしております。

 一方、現下の厳しい経済情勢のもとで、環境税の導入については慎重に検討すべきであるとの議論があることも十分承知いたしております。

 現在、我が国といたしましては、京都議定書の二〇〇二年発効を目指して、COP7において最終合意を達成すべく引き続き全力を尽くすとともに、京都議定書の目標を達成するための国内制度のあり方を総合的に検討しているところでございますが、環境税導入を京都議定書締結の前提として位置づけなければならないとは考えておりません。

 しかしながら、環境税が導入されれば、より効率的に京都議定書の目標達成を実現できる可能性がございますので、現在、中央環境審議会に地球温暖化対策税制専門委員会を設置いたしまして、そこで専門家による御審議をいただいておるところでございまして、環境省といたしましても、引き続き、我が国の実情に合った具体的な制度面の検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

河野政府参考人 自然エネルギーの利用促進の制度についての検討状況について、御説明申し上げます。

 太陽光発電、風力発電といった自然エネルギーは広く新エネルギーに含まれるわけでございますが、これは、エネルギー安定供給の確保あるいは地球環境問題への対応という観点から大変重要な意義を有しているということで、これまでも、いわゆる新エネ法の対象ということで、その利用促進を図ってきたわけでございます。

 こうした中、本年六月の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の報告書におきまして、二〇一〇年度に向けた新エネルギーの新たな導入目標、原油換算にいたしまして一千九百十万キロリットルでございますが、これが定められますとともに、新エネルギー対策の強化ということがうたわれたわけでございます。

 その中におきまして、発電分野における目標の達成というものを目指して、新たな市場拡大措置の導入に向けて早急に検討するようにという提言がなされたわけでございまして、これを受けまして、七月に、新エネルギー部会のもとに、各方面の専門家から成る新市場拡大措置検討小委員会というものを設置いたしまして現在検討を進めているわけでございます。

 この電力分野におきます新市場拡大措置につきましては、年内を目途に我が国の実情に即した具体案をお取りまとめいただくよう、精力的な検討をお願いしているという状況でございます。

 以上でございます。

小林(守)委員 それぞれの視点で国内制度を整えて取り組んでいくというようなことのお話をいただきました。ぜひ力を入れて頑張っていただきたい、このように思うわけであります。

 一つだけ、環境税の導入の検討にかかわると思いますが、イギリスでは、産業同盟と政府が協定を結んで一定のCO2の削減目標を、業界団体が、産業同盟の方が自主的行動計画に基づいてつくるのですね。それに対して、政府は協定してくれと。その協定以内で目標が達成できれば、エネルギー税導入をするということなんですが、エネルギー税の八割を免除する、しかも、その目標以上に削減した場合には、その分は国内取引というのですか、国内排出量取引みたいな制度にして、どうぞ市場で売り買いしてくださいというような制度を何か始めるようであります。

 自主行動計画というものと同時に、環境税の導入というものをセットにした方式だというふうに、私も大変興味のあるものだなというふうに思っておりますが、こういう形で新しい、経済と環境との統合というのですか、一つの仕組みをつくり出そうとしている、このように評価していいと思うのですね。

 そんなことで、たまたま、民主党の税制調査会がありまして、そのときに経団連の方々と、いろいろ来年度の税制改正の要望等についてヒアリングをさせていただきました。その中に、環境関係の税について全く触れられていない中身だったのですね。

 それで、私の方で、環境税とか税制のグリーン化については経団連としてはどう考えているのですか、特に、地球温暖化の問題について考えるならば、この問題について先進国ではどこの国でも検討されてきている状況であるということで水を向けてみたのですが、けんもほろろというか、業界団体は一生懸命やっているのであって、やはりその環境税については反対だと明確なことを言われてしまいました。認識の溝がさらに深まっているのではないか。

 さらに、ブッシュ政権のあの離脱の路線というか考え方に沿って、日本の経済界、業界団体が声を強くしているなという懸念を強くしたわけなんですけれども、このイギリスの業界団体の自主行動計画に対する政府との協定、そしてエネルギー税の導入、これらについて、何かデファクトスタンダードという形で一つの世界の標準にしていきたいというようなねらいもあるようでありますが、これらの税制というのですか、こういう制度はキャップ・アンド・トレードというような方式なんだというようなことが言われておりましたが、これらについてどのように受けとめておられるか、ちょっとお聞きしたいと思います。

炭谷政府参考人 先生お話しのように、英国の方で、地球温暖化のために、気候変動協定、また、それにあわせまして排出量取引という、また、さらにもう一つの税というものを、三つを組み合わせた制度を来年から発足させるべく準備しているというふうに私ども伺っております。

 ちょうどたまたま昨日、私自身、イギリス大使館に招かれまして、ブライアンというエネルギー大臣が来ていらっしゃいますので、そのお話をお聞きすることができました。大変この制度に対して期待し、効果も上がるんじゃないかなというふうに伺いました。

 特に、この制度につきまして、むしろ主導をとりましたのが、日本で言う経団連に相当する団体の会頭であったマーシャル卿という方が中心になりましてつくられたということで、経済界もこの仕組みに対して、現在は非常に地球温暖化というところで効果があるんじゃないかというふうな期待を込めているということをお聞きしております。

 私どもも、先般、中央環境審議会の委員の方々に実際に英国に渡っていただきまして、相当詳細な調査をいたしました。それに基づきまして私ども、これについて十分に参考にしながら、これからの制度づくりについて検討してまいりたいというふうに思っております。

小林(守)委員 ぜひ、そういう方向で取り組んでいただければありがたいと思います。

 それでは次に移りたいと思います。

 自動車リサイクル法の制度化に向けて、今、政府あるいはそれぞれの審議会等において中間的な取りまとめの段階に入っているというふうに聞いております。来年の通常国会に出てくるのではないかというふうに考えられるわけでありますが、この自動車リサイクル法の制度化にかかわって、フロンの回収・破壊の中では、カーエアコンの回収・破壊があるわけであります。特に、オゾン層の破壊物質であるCFCなどについては、これは一刻を争う回収・破壊の責任があるわけでありまして、そういう点で、自動車リサイクル法の実現を待ってから一緒にやってはどうかという議論には、とてもとてもこれは許されないという形で、私たち議員立法で、山本部会長さんもいらっしゃいますけれども、力を合わせながら、このフロン回収・破壊法が実現できたわけでありますけれども、要は、自動車リサイクル法の先行的な形でフロン対策については進めなければならないという状況であります。

 そういう点で、今どのような準備が進められているのか、この辺について、自動車リサイクル法の枠組み、スキームというか、その中にどうフロン回収の、特にCFCの回収の仕組みは位置づけられているのか、この辺について御説明をいただきたいと思います。

 言いたいことは、フロン回収法の中で議論されたように、やはり基本的には先払い方式、リサイクル、回収・破壊費用は先払い方式でやるべきだ。これは、与野党挙げて共通認識のもとでつくられた法律でありますが、その新車段階というか、新車販売時段階でのリサイクル費用の負担、ユーザー負担というものができるということになりますけれども、この原則は絶対に曲げられては困るということが大きな前提だったわけであります。

 その点を押さえて、今度の自動車リサイクル法の中でどのように整合性を図られようとしているのか、お聞きしたいと思います。

小平政府参考人 カーエアコンに係るフロン回収につきましては、使用済み自動車の解体の過程で行われることが一般的でございますので、自動車リサイクルと一体的に行われることが実効的かつ効率的であるという基本的認識のもとに進めてきているところでございます。

 こういう認識のもとに、自動車メーカー等が回収業者からフロンを引き取りまして、回収に必要な費用を回収業者に料金として支払うというフロン回収・破壊法に基づき構築されます仕組みは、現在検討を進めております自動車リサイクルに関する新しい法制度、自動車リサイクル法においても引き継ぐということにしたいと考えておるところでございます。

 また、お話のございましたフロン回収・破壊法におきまして、自動車メーカー等が自動車ユーザーに費用負担を求める方法につきましても、フロンの大気放出抑制という法目的を踏まえますとともに、自動車リサイクルに関する法制度に円滑に移行できるものにしたいというふうに考えているところでございます。

 こういう認識のもとに、自動車リサイクルに関する法制度の検討を進めていくこととしておりますけれども、あわせまして、フロン回収・破壊法の施行に向けても準備を進めているところでございます。具体的に申し上げますと、産業構造審議会、中央環境審議会の合同会議におきまして、法施行に必要な関係業者の登録基準等について検討を進めていくこととしております。

 また、自動車業界におきましては、フロン法施行までの間も、現行の自主的な取り組みによりますフロン回収・破壊システムの一層の拡充を図るということとあわせまして、フロン法に基づく費用徴収等に関する電算処理システムなど実務対応の準備を行っているところでございます。

 私ども経済産業省といたしましては、環境省を初めといたします関係省庁と連携しながら、国民及び関係業界の御理解と御協力をいただきながら、円滑なフロン回収・破壊法の施行に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

岡澤政府参考人 自動車リサイクル法の仕組みにつきましては、今経産省の方からお話のあった、ほぼそのとおりでございます。環境省では中央環境審議会、経産省の方では産業構造審議会でそれぞれ検討いたしまして、双方連携をとりまして、すり合わせしながら検討を進めているというところでございます。

 中身につきましては今お話ししたとおりなんですが、大きくフロンとエアバッグと、それからシュレッダーダストについては、おおむねその事業者に引き取りの義務を課すという枠組みで考えているところでございます。また、そのリサイクルのための費用につきましては、これはまだ両省間で検討中で最終的に詰まってはおりませんけれども、どういう形で費用を徴収して担保するのかということについてさまざまな角度から検討しております。

 しかし、いずれにしても、両省の審議会の報告にもありますように、新車については先取り方式、既販車につきましては一定期間内の任意時に徴収する方式ということを原則として細かい細部の設計を考えているところでございます。

 いずれにしましても、関係省庁との連携をよくとりまして、来年の通常国会に法案を提出すべく準備を進めてまいりたいと考えております。

小林(守)委員 ありがとうございました。

 一つだけ確認しておきたいのですが、特につなぎの期間というか、自動車リサイクル法が来年の通常国会に出されて、それが施行されるまでには一年やちょっとはかかると思うのですね。そうしますると、カーエアコンの回収・破壊、特に既販車対策ですね。既販車にあるCFCは製造されていませんから新車にはないわけですね。ですから既販車に装てんされているはずのCFCは、ここ二、三年のうちがピークだろうというふうに言われております。ですから、ここを外してしまえば、せっかくオゾン層保護の法律をつくっても、回収・破壊すべき対象がなくなってしまって放出されてしまうというおそれがあるわけですね。そういう点で一刻を争うということになるのだろうと思いますが、しかし、既販車であるということ、費用負担をどうするかという問題が、来年の十月三十一日までには施行するというふうになっておりますが、自動車リサイクル法ができて施行されるまでの間、大体一年半ぐらいは最低期間があるんですよね。その間、どのように既販車のCFCを回収するのか、特にこの費用徴収の問題が悩みの種というか難しいと思うのです。

 私たちは、後払いで廃車時負担というのは不法投棄を誘発するということで、これはだめだという形で、自動車リサイクル法全体の仕組みも含めて、前払い方式という形を強く主張して、これは与野党共通の理解のもとに進められたのですが、しかしCFCについては、これは新車はあり得ないわけですから、その後の既販車対策で、では費用負担をどうするのかということが非常に難しい。先ほどの御説明では、一定期間内の任意の徴収ということなんですが、これはどういうことなのか。

 一つの考え方として、審議会の中間答申というのですか、パブリックコメントにかけた中間取りまとめの中にも幾つかの考え方があって、むしろ徴収しない方がいいのではないかという形で、これは業界が責任を持って回収しますと。しかし、その費用は今後のシステムの中で十分のみ込めるはずだというふうにも考えますが、その辺も含めて、一定期間内の任意の徴収になるこのCFCの回収については、十分不法投棄を誘発することのないような配慮を持った徴収の方法を考えてもらいたい、このように思うのですが。

炭谷政府参考人 ただいまの先生の御質問の、自動車リサイクル法が施行されるまでの間のCFCの回収の方法につきましては、自動車リサイクル法案での資金の徴収方法はどうなるかというようなことを見定めながら今現在検討いたしておりますけれども、やはり基本は、先生おっしゃられましたように、何とかCFCが不法に投棄されないような何らかの工夫というものがやはり法の目的の第一だろうと思っております。

 何かそういう工夫ができないかということを考えながら、リサイクル法の資金の徴収の方法を見定めながら現在検討しているところでございます。

小林(守)委員 それでは、自動車リサイクル法の準備状況等に移っていきたいと思いますが、現在、中央環境審議会あるいは産業構造審議会の方で、それぞれの審議会が並行して、それぞれの視点の置き方は違うようでありますが、中間取りまとめを行い、パブリックコメントにかけているというような段階と聞いております。

 それで、自動車リサイクル法の準備状況について、まず検討状況と、パブリックコメントにかけて国民の意見を聴取するということなんでしょうが、どのようなことが論点として掲げられているのか、この辺をお示しいただきたいと思います。

岡澤政府参考人 両省の審議会での検討あるいはパブリックコメントの論点、ほとんど同じところに議論が集中すると思いますけれども、幾つかございます。

 一つは、特に関係者の役割分担という点ではないかと思います。昨年制定されました循環型社会形成推進基本法では、拡大生産者責任という考え方を明示しているわけでございまして、その基本法以降の、政府提案としては多分初めての法律になるだろうということで、製造事業者責任という考え方を入れ込みながら、製造メーカーあるいは販売事業者、それから整備事業者、解体事業者、こういうそれぞれの事業者の役割をどういうふうに位置づけていくのかというところが一つの議論の点だろうと思います。

 それから二つ目に、先ほどから先生のお話がありましたように、フロン法との整合性もございますし、また一方では、使用済み自動車については廃棄物になる場合とならない場合とがございまして、廃棄物処理法の適用関係というふうな、そういう法律上の整合の問題がございます。

 それから三つ目といたしまして、これも先ほど御指摘があったのですが、費用を徴収するのにどうするのか。確実性ということを前面に出して費用を徴収する考え方もございますし、事業者責任というのを前面に出す費用の徴収の仕方もある。そうした考え方の整理の中で、不法投棄を誘発しないように、かつ自動車リサイクルが確実に行えるような費用の徴収方式というものを考えていく必要があるだろうと思います。

 大きくそんなところに論点があると思いますが、現在両省間で意見の調整中でございますけれども、これからさらに意見を詰めまして、しっかりとした制度の構築に努めてまいりたいと思います。(小林(守)委員「産構審の方はいいですか。今、産構審の方も代表して答弁したのですか。産構審の方も」と呼ぶ)

小平政府参考人 ただいま環境省の方から御説明ございましたように、私どもの検討、環境省の検討、両方連携をとって進めておりまして、論点等もほとんど同じでございますので、しっかりした仕組みができますように今後とも協力しながら法案を固めていきたいというふうに思っております。

小林(守)委員 ありがとうございました。

 従来、省庁の縦割りの弊害などと我々も委員会の中では何度も指摘をしてきた経過もございますが、十分連携をとって進めているというようなお話でございますし、そういう点で、廃棄物リサイクル、そして資源循環行政というものは一体であるというような姿を、今回の自動車リサイクル法の提案の中で、検討の中でさらに密接な一連の流れとしてつくり上げていっていただきたい、このようにも期待するところでありますし、ぜひ両方の審議会、若干ニュアンスが違うなというふうに受けとめるところもあるのですが、その辺も十分調整をされて、しっかりとしたシステムとして自動車リサイクルのシステムをつくり上げていただきたい、このように願うわけであります。

 特に、国民にとってシビアな問題というか関心の強い問題、また我々もフロン回収・破壊法の中でも十分議論をしてきた問題としては、費用徴収の時期と方法ですね。

 これは再度確認するような形になろうかとは思いますが、新車購入時、そして価格への内部化というのですか、ユーザーに対して、一応この額の中にはこれだけの額のリサイクル費用が入っていますよという説明はいいと思うのですよ。しかし全く別枠に、お金に名前をつけて全く別ルートで取るような仕組みではなくて、同時に、その価格の中に含まれているというようなことを説明しながら徴収していくことがいいのではないかというふうに私は思いますが、費用徴収の時期と方法について、両審議会の議論も含めて、今どのようなレベルになっているか、どういうところが論点になっているか、その辺について教えていただきたいと思います。

岡澤政府参考人 リサイクル費用の点で、少なくともほぼここまで合意しているというところがございます。それは徴収時期の問題でございまして、先ほどの繰り返しになりますけれども、新車につきましてはその購入時に負担していただく、それから既販車については一定期間内の任意時、例えば車検時等について負担を求めるということ、ここはほぼ、パブリックコメントの意見も含めて、そこに集約しているのだと思います。

 問題は、その費用の徴収の方法、時期ではなくて方法の問題があると思います。いずれにしても、リサイクルの費用、最終的にはユーザーの負担になるわけでございますけれども、それをユーザーからどういう形で徴収するのかという問題がございます。

 今有力な考え方の一つとしては、リサイクル費用として徴収時にユーザーから別建てで負担していただくということがあります。これは、資金を確実に調達するという意味ではすぐれた方法だと思いますが、一方で、外側にその基金を積まなきゃいけないとか、こういう行政改革の中でそういうのが適当なのかどうかとか、莫大なお金を外に積んでそうした費用の管理がうまくできるのかどうかというふうな意見もございます。

 こちらを立てればこちらが立たずというか、全体にうまくいく仕組みはございませんので、結局、資金確保の確実性とか、一方では、負担するユーザーの意識の啓発というふうな観点とか、それから、企業が仮に倒産したような場合のリスクの担保をどうするかとか、それぞれについてもうちょっと詳細に検討して、どういう徴収方法が適当なのかということを詰めていかなければならないし、今そういう段階に差しかかってきているというふうに認識しております。

小林(守)委員 きょうは非常に漠然としたところに触れるような話になってしまいまするけれども、問題は、この制度の中で本質的な問題を、理論的な問題を示すのは、それじゃ輸出中古車に対して、新車時に、あるいは既販車であっても、ある一定の任意のときにリサイクル費用を負担してもらってある車が輸出される場合に、ではその負担されたお金はどうするんですかと。

 先ほどの、別建てで、はっきり属人的、属車的に徴収したお金であるならば、輸出されてどうなっちゃうかわからぬ、リサイクルの責任がなくなっちゃうわけだから、これは返してくれと言うのは当然になってきますよね。そうなってくると、この制度を最初に、属人的、属車的に、自車充当方式という言い方があるかもしれませんが、そういうお金なんだというふうに位置づけてしまうと、大変な問題が、また大変な事務を背負わなければならない、こういうことになるんだろうと思うんですよ。

 そこで、もう一度、大前提の議論から入るのですが、やはり今度の自動車リサイクル法は、フロン、エアバッグ、シュレッダーダスト、この三つの品目について拡大生産者責任を導入するということですよね。こういう観点でいくならば、属人的、属車的なものではなくて、要は、製造メーカー責任でやれと。リサイクルの責任は製造メーカーにありますよ、しかし製造メーカーの経営の中でそれに必要なしかるべき負担をユーザーに求めます、求めていいですよと、それでリサイクル処理の責任はメーカーにありますという形にすればいい。そうしないと、輸出することになってしまった車は、その費用、リサイクル費用を負担された人に返さなきゃならないという議論が出てくるんですよね。その辺をきちっと整理をしていただかないと、何かあいまいな、あるいは新たな特殊法人をつくるような、公益法人をつくるような、わざわざお金を積み上げるような方式になってしまわざるを得ない、こういうふうに考えられるわけであります。

 そういうことで、循環型社会形成推進基本法の十一条ですか、ここに明確に事業者の責務という形で位置づけられたあの拡大生産者責任の考え方、これを三品目について導入するのが今度の自動車リサイクル法の進んだ部分だというふうに私は思います。そういう点で、その趣旨を生かして、ぜひ製造事業者責任という概念でこの問題を処理していく。あとは市場原理に任せる。もちろん不適正な処理や不法投棄は許さぬという形でこの仕組みを、システムをつくっていっていただきたいな、このように願うわけであります。

 現在、不法投棄された自動車は、路上放棄車処理協力会というものをつくって、自動車工業会とか販売協会とか軽自動車協会とか、それぞれがお金を出し合って、自治体がどうしてもほっておけないというところで回収した費用については、その協力会の方がお金を寄附するというような形で自治体に還付するというか、その分を支払っているようでありますが、何か自動車工業会が、自治体が回収を行った場合の費用について協力をします、寄附をしますという形なんですよね。これはどう見ても、趣旨は、いわば自動車工業会なり製造者が不法投棄についてもほっておけない、しかし税金で全部やってくれというのもちょっとおかしいということで、それぞれのメーカーが協力という形で寄附をしてやってもらっているような姿ですよね。

 しかし、今度の自動車リサイクルシステム全体の中では、私は、この問題はもっと明確に、要は、ユーザーが自動車のリサイクルシステムをつくっていく社会的コストを負担する、負担してあるというふうになるわけでありますから、その負担の中から、不法投棄なり放置自動車の回収費用はそのシステムから払っていくというような形ですっきりするのではないかな、私はこのようにも思うんですね。

 そういう点で、製造責任者責任という考え方を基礎に置いて制度の設計をしていかないと、どうも属人的、属車的な、これは私の車の回収、リサイクルの費用なんですよというふうにつけて回ってしまいますといろいろな問題が生じてしまう。あくまで公正に、不正が行われないようにというだけにその事務がさらに膨れてしまうという不必要な新たな公益法人をつくっていくような方向になってしまうのではないか。こういうところこそ市場原理をきちっと導入できる仕組みが適切なんだろう、私はこのように思っております。

 そういう点で、今後の検討の中で、拡大生産者責任の視点を初めて日本で明確な形で導入されるのが自動車リサイクル法なんだと思いますので、その辺をぜひ押さえて頑張っていただきたいと思いますし、我々もこの法制度の実現に向けて関与をしていきたい、このようにも考えているところであります。

 以上で終わります。

大石委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島です。

 初めに、直接関係ないとお思いかもしれませんが、今世間が狂牛病の騒ぎで大変大騒ぎになっています。狂牛病がなぜこんな騒ぎになったのかといいますと、羊のスクレーピーは二百年ほど前から知られていて、別にこれは羊にとってある種普通の病気で、特段のことはなかったわけですけれども、それが一九八九年に突然種の壁を越えて牛にうつり、そしてまたさらにその種の壁を越えて、ネコ科の動物、カモシカのたぐい、そして人間にまで異常プリオンが感染したということからこういう大騒ぎになったと思います。

 現代病と言われる新しい病気が、こういうふうに種の壁を越えて野生生物なんかからうつってくるというのが大変危険視されておりますけれども、その意味では、野生生物を所掌する環境省も全く無関係とは言えない状況にあると思います。

 野生生物が媒介する人畜共通、人獣共通の感染症あるいは寄生虫について、環境省もこういう状況ですのでそれなりの監視体制をしかなければいけないと思いますが、危険視されている具体的な例として、キタキツネが媒介しているエキノコックスというサナダムシに似た寄生虫がありまして、これが人間に入ると大変な被害を生むということもあります。

 もう一つ、狂牛病の次に日本を襲うんじゃないかと言われているニパウイルスという病気があって、これは、マレーシアで豚を飼っている養豚農家がだんだん都市から郊外の方に追われて山岳地域の方に行ったときに、そこにすんでいたフルーツバット、フルーツコウモリが自然宿主としてニパウイルスというウイルスを持って、コウモリは発病しないんですけれども、それがある日豚にかみついて豚に感染し、豚も大して重篤な状況にはならない、よだれや鼻水が出ると言われていますが。ところが、その養豚農家にそれが感染して、二百六十六人に感染して百三十人が死んでしまった。致死率が五割という恐ろしいウイルスですが、そういうのにマレーシアが襲われまして、結局百万トン以上の豚を焼却処分せざるを得なかった。

 狂牛病の次に日本を襲うのは、こういうニパウイルス等々の、もともと野生生物にいたものが家畜を介して人に襲いかかるということもあるのではないかと言われていますが、野生生物を所掌する環境省としては、こういう人畜共通の感染症について、今の、例えばキタキツネについてどのような監視体制を持っているか、お教えいただきたい。

風間副大臣 私も北海道ですから、昭和四十年代、キタキツネによるエヒノコックス感染で何人かの方々が、特にいわゆる過疎地で起こったのを記憶しておりまして、今先生御提起いただいたマレーシアにおけるフルーツバットによる豚からの養豚農家の感染も、環境省としても注意深く見守っていかなければならないというふうに思っております。

 今先生御指摘のこの例を含めて、いわゆる人畜、人獣共通感染症につきましては、一義的には厚生労働省がその情報の収集あるいは提供、調査研究もされていらっしゃいますし、またもう一方、農水省でも、検疫に関して、輸出入の鳥獣の検疫をきちっとやっているところでありますから、環境省としましても、こういった人畜共通感染症の対策については、特にけがをした鳥獣の情報収集とその提供についてはきちっとやっていかなければならないと思いますし、輸入動物を含めて、動物を飼っていらっしゃる動物飼養者といいましょうか、そういう方々に対する普及啓発をも図っていかなければならないというふうに思っておりまして、御指摘の例だけでなくて、もう少し、厚生労働省そして農水省と連携をきちっととった上で対策を総合的に進めていかなければならないかなというふうに思っております。

 環境省独自として、農水省やあるいは厚生労働省のような形の調査研究はまだ一歩のところかなと私は実感しておりますものですから、極めて強力な連携、緊密さが必要だというふうに思っております。

鮫島委員 余り深入りするつもりはありませんが、今のフルーツバットというフルーツコウモリ、ニパウイルスの媒介者と言われていますが、実はペットショップに、日本に入っているということもありまして、これは家畜じゃありませんから農水省も余り関心を持たない。それから、まだ患者が発生していないから厚生労働省も関心がない。ワシントン条約の適用外の普通の生物のものだから経済産業省も余り関心がない。行政のすき間をすり抜けて、もしかしたら恐ろしい病気を持っているかもしれないこういうフルーツコウモリが既に東京のペットショップに入っているというようなことも、ちょうど行政のすき間か谷間みたいなところにある課題ですので、その辺は環境省としても相応の監視体制をぜひしいていただきたいと思います。

 狂牛病一頭発生しただけで約二千億の被害が出たと言われていますので、入ってからでは遅いということもありますので、そういう意味では十分な危機管理体制をぜひしいていただきたいと思います。

 きょうは、私は、森林の吸収源の問題に絞って御質問させていただきたいと思います。

 個人的なことを申しますと、今から三十五年ぐらい前、一九六四、五年に、私は大学の卒業論文で初めて与えられたテーマが、大豆の葉っぱの光合成能力をはかりなさいということがテーマとして与えられまして、それから二十五年ぐらいずうっと植物の光合成ということをやっていまして、本当はずうっとそのまま研究していればよかったんですけれども、神様のいたずらでこういう職種になっちゃったんですが。

 そのころから本郷のキャンパスで、少し長いパイプを立てて空気をとりながら、どのぐらい植物に炭酸ガスが吸われるか、出入り口の差で光合成能力というのをはかるんですけれども、はかっているうちに、毎年東京のCO2濃度が上がってきたのが当時から実感としてありました。ちょうど東京オリンピックの後、モータリゼーションの波が始まったころですけれども、毎年一〇ppmぐらいずつ、ああいう都心部で当時から既にCO2が上がってきているというようなことがあります。

 そのことが、専門家の間では、一九七〇年代の初頭から、これは大変なことになるぞというようなことが言われていまして、ただ、世界の学者は大体二グループに分かれていて、大変心配するタイプと、自然の反復力でバランスするから大丈夫だというCO2オプティミストとCO2ペシミストというグループに大体当時から分かれていたんですけれども、残念ながら、地球の環境は、そのペシミストが心配したように年々悪化して、今や予断を許さない状況になっている。それがIPCCの直近の報告でも明らかにされていると思いますが。

 まとめて言えば、多分二つの結論、近年における急速なCO2の増加は、CO2を初めとする温暖化ガスの上昇は、主として人間の活動に起因するということが一つと、二点目は、このままだとCO2が今の倍近くに上がっちゃいますよ、最悪の場合は気温が五・八度上がり、平均の海面水位が一メートル近く、八十八センチ上昇します、この二つの指摘が警告として出されたと思いますが、この報告を大臣はどの程度重く受けとめておられるかをお伺いしたい。

川口国務大臣 IPCCは三度にわたって報告書を出しまして、その過程でさまざまな知見を積み上げてき、あるいはその知見を訂正しながら前に進んできている部分もあるわけでございますけれども、科学とそれから政策のあり方の密接な関係ということを考えましたときに、IPCCの果たしてきた役割ということは非常に大きなものがあるというふうに思っております。

 私自身、IPCCの最初の議長をしていらしたボリン博士とは何回かお話をさせていただいたこともありまして、先ほどCO2のオプティミストとペシミストというふうにおっしゃいましたけれども、やはりこれが地球環境に大きな問題をもたらすという信念があって、大勢の科学者の方々を引っ張ってここまで来る礎をボリン博士の場合には築かれたというふうに思っております。

 それで、こういった科学のもたらした知見というものを政策の方で重く受けとめて、これを環境の保全に資するための政策をつくっていくというベースとして、国際協調のもとで進めていくということが非常に重要で、この基本的な枠組みをつくることに大きく貢献をしたもの、これがIPCCの報告書だというふうに思っております。

鮫島委員 今、大臣の御認識を拝聴いたしましたけれども、気候変動枠組み条約が地球圏における温暖化ガスの循環というようなものを把握しながら、IPCCという専門家グループが適宜警告を発しておりますが、このIPCCが対象としている、あるいは京都議定書が対象としている温暖化ガスの動きは人為的な動きが対象であって、それ以外に自然循環の非常に大きなサイクルがあるわけですけれども、それは今直接の対象としていない。人間活動、産業活動によって発生する温暖化ガス、そして、それが一部どう吸収されて循環しているかということが対象だと思いますが、そういう認識でそれはよろしいんでしょうか。つまり、自然循環は対象としてないということです。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

川口国務大臣 私も、そういう認識でおります。

鮫島委員 午前中の質問でもあったと思いますが、九八年に大綱をつくって以来、さまざまな審議会あるいは民間のグループ等で、温暖化ガス排出の長期見通し、さまざまな試算が行われていますが、最近相次いで出されている報告書ですと、九八年の大綱のときにつくった見通しよりも、どちらかといえば、それほどふえませんよという結果の方が最近大分多いのではないかと思います。

 例えば、午前中、小林委員から質問がありましたが、代替フロン等の三種類のガスの排出の見通しが、大綱のときは地球温暖化に対してプラス二%増加要因として働くという話がありましたが、その後フロン回収・破壊法もできて、政策効果を見込んだ場合に、今、この辺の数字がどういう見通しになっているかをお教えいただきたいのです。

風間副大臣 今おっしゃいましたように、フロン対策につきましては、ことしの六月に成立しましたフロン回収・破壊法で新たな枠組みが追加されて、さらに一層の対策効果が得られるように私ども努めていかなければならないというふうに思っております。

 地球温暖化対策推進大綱に基づく関係業界の取り組みの推進で相当効果が得られているというふうに考えておりますが、今お話のありましたHFCを含めた三ガスの全般的な見通しについては、今後、どういう形で需要が行われ、またそれに対する対策技術が進んでいくかということをきちっと見きわめなければならないのかなというふうに思っておりまして、そのことを含めて検討していかなければならないというふうに思っております。

 今、ダイレクトの質問の、どのぐらいの数値かということについては、ちょっと私、頭に入っていません。

鮫島委員 せっかくこの委員会でもみんなが賛成してフロンの回収・破壊法をつくった、しかもその法律を所掌している環境省ですから、もうちょっと自信を持って、この法律が必ず政策効果を生んで、プラス二%の増加要因ということになっていたけれども、そうならないように、この法律を有効に活用して減らすんだという意思を語っていただきたかったんですが。

 フロンを初めとしてさまざまな温暖化ガスの排出量が、景気の減速あるいは産業構造の変化というようなこともあって、当時の見通しと大分違うんじゃないかと思いますが、その辺、大綱を見直す時期に来ているのではないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいんです。

川口国務大臣 まず、先ほど御質問のあったフロンのことでございますけれども、これは、あるデータによりますと、産業界の自主的な取り組み状況でフロンのガスがどれぐらい進んできたかということにつきまして、一九九五年がこれは基準でございますけれども、二〇〇〇年の時点で三つ、HFC、PFC、SF6を合わせまして、基準年に比べまして、大まかなところ一%ぐらいのマイナスになったのではないかという試算が、これは、産業界の自主的な取り組み状況についての数字をベースに計算をすると一%ぐらいの減になるという数字がございます。

 先ほど副大臣が申しましたように、これにフロン回収・破壊法の新たな枠組みが加わりまして、当初予測されていた二%よりはさらなる対策効果が出てくるということを私どもは大いに期待をしておりますし、そのために、そういったことが可能になるような努力もしているところでございます。

 それから、大綱のお話でございますけれども、委員がおっしゃられましたように、経済情勢ですとか産業構造ですとか国民一人一人のライフスタイルですとか、さまざまな要素によって温室効果ガスの伸びといいますか変化というのは異なってきているわけでございまして、京都議定書の基準年に比べて、九九年度の温室効果ガスの六ガスの総排出量は約六・八%ということになっておりまして、これをガス別に見ますと、二酸化炭素は九%の増加になっております。他方で、メタン、一酸化二窒素、HFC等の排出量は減少をしているということでございます。

 大きな変化をもたらした要因としては、原子力発電所の設置予定基数が異なっているということと、景気の動向も影響しているかと思いますけれども、自動車の輸送量の予測が大綱をつくりましたときと比べて減ってきているということ、これが、相反する方向に働く要素が大きな変化の要因であったかというふうに思います。

 それで、中央環境審議会におきまして、ただいま、こういった状況の変化を考慮しまして、大綱の進捗状況とそれから現行施策の評価を行っておりまして、中間取りまとめがこの夏に出されたところでございます。

 環境省といたしましては、こういった作業をする過程で、それから、京都議定書の目標を達成するために国内の制度としてどういうことが必要かということの検討をする中で、大綱の見直しが必要なのか必要でないのかということも含めまして、現在、中央環境審議会で検討をいただいているところでございます。

鮫島委員 米国の態度は相変わらずはっきりしないわけですけれども、米国が京都議定書に加わろうが、あるいは場合によったら加わらないかもしれませんが、我が国が二〇〇二年じゅうに批准を行うべきだということは午前中の御答弁でもありました。そのタイミングをにらむと、やはり正確に温暖化ガスの排出の見通しを立て、そして、何についてどのぐらい、どういう分野で減らさなければいけないのかという作業は、私はかなり急ぐ必要があるのではないかと思いますが、ちゃんとした報告なのか、まだ内部資料なのかわからないような状態が何となくこの半年ほど続いていて、いたずらに時が過ぎているような気がするものですから今のような質問をさせていただきました。

 吸収源の話に入りますが、前回のボンの会議で川口大臣が大変頑張って、森林吸収三・七と言っていたのが、プロンク議長からの提案で要求を上回る三・九%枠が日本に与えられたということですが、この枠というのをどういうふうに大臣がとらえているのかをお伺いしたいのです。

 つまり、六%日本は削減義務があります。三・九が枠として認められたから、もうこれは既にクリアした数字、あと二・一、国民各層の努力、産業界の努力で減らせばいいというふうにお考えになっているのか。それとも、三・九というのはあくまでも枠として与えられた数字だから、それがそのまま生かされるわけではないというふうに御認識されているのか。そのどちらかをお答えいただきたいのです。

川口国務大臣 森林の吸収源といいますのは、実は昨年の十一月にハーグで交渉をいたしましたときに一つの大きな争点になったところでございまして、この間、ボンにおいては、みんなで知恵を出し合った末、御案内のような結果が一つの表になって国ごとの数字として出てきたわけでございます。これは、我が国の場合には年間一千三百万炭素トンということになっているわけでございまして、おっしゃったように基準年排出量の約三・九%ということになっております。これは、第一約束期間において計上できる森林管理による獲得吸収量の上限であるというふうに私どもは理解をいたしております。

 環境省は、林野庁を初めとする関係省庁と現在密接に連絡をとっておりまして、国内の吸収源対策を検討しているところでございます。これを検討、そして推進をいたしまして、第一約束期間において日本に必要な吸収量が計上できるようにしていきたいというふうに考えております。

 以上です。

鮫島委員 確かに、今おっしゃったように、人為的管理その他によってどの程度吸収量をふやすことができるかどうかにかかっていると思いますが、京都議定書の三条の三項、植林及び再植林、この枠で、二〇一〇年までにどの程度温暖化ガスの削減を見込んでおられるのか、御担当の方からお伺いしたいのですが。

炭谷政府参考人 先生今御指摘の京都議定書第三条三項の新規植林、再植林、森林減少については、土地利用の変更を伴うもの、例えば森林から普通の田畑に移ったという場合のみが対象になることで合意されておりますが、温室効果ガスの基準年排出量に対しまして、削減になるのではなくて、むしろ〇・二%の排出という増加要因になるというふうに見込んでおります。

鮫島委員 今のが京都議定書の三条の三項ですけれども、三条の四項には、人為的な働きかけによって吸収量がふえれば、それも見込んでいいですよという項目があるわけです。ただ、これは原則としては、第二期の約束期間またはそれ以降の約束期間に適用されるものであって、例外的に、余り温暖化ガス削減能力のない国に限って、第一約束期間に適用することも選択してよろしいという、ある意味では劣等生向きの条項がついていると思いますが、我が国はこの三条四項を、本来ですと、原則は第二期の約束期間に適用するということになっていますが、第一期の約束期間にこれを適用しようというふうにお思いになっているのかどうか。

川口国務大臣 おっしゃった三条四項の最後のくだりのところでございますけれども、これを英語で言いますと、「ア パーティー メイ チューズ」ということになっておりまして、使うことができるという書き方になっているわけでございます。私が聞いたところによりますと、この部分というのは、九七年の京都議定書を採択する段階で、使うことができるという前提、要するに使い得るということで入れられたというふうに聞いております。

 それで、我が国といたしましては、先般のボン合意におきましても、京都議定書の第三条四項に基づき各国に認められる吸収量についての合意がなされたところでございまして、既に世界最高のエネルギーの効率的な水準も達成をしているわけでございまして、京都議定書の削減目標を達成するために、第一約束期間におきまして、三条四項に基づく必要な吸収量を計上することにいたしております。

鮫島委員 わかりました。

 それでは、その三条四項に基づく削減量を計上する場合、今具体的な数字は難しいかもしれませんが、理想的な森林管理が行われた場合、どの程度削減に寄与するという見通しをお持ちなんでしょうか。

炭谷政府参考人 京都議定書の第三条第四項による我が国の吸収量につきましては、先ごろのCOP6の再開会合で合意された詳細な国際ルールがございます。この国際ルールを踏まえた算定が必要でございますので、林野庁を初めとする関係省庁と密接に連携しながら、今後、早急にその算定作業を進めてまいりたいというふうに考えております。

鮫島委員 はっきりしないお答えでしたが、私がずっと最初から聞いていることは一つでして、この温暖化ガス対策、自然循環は勘定に入れませんと。これはある意味では地球の摂理のようなもので、大気の炭酸ガスを陸上と海洋の緑の植物が吸収し、それがまた分解し、あるいは動物が摂取し呼吸してCO2が出るという大循環がありますが、この自然循環は対象にしない、あくまでも人為によって出る温暖化ガスが削減の対象、そのこととIPCCの警告というのを重く受けとめて、数字の上の削減ではなく、実質的に本当の意味でCO2を減らさなくちゃいかぬという態度が日本の基本的な態度でなければいけないと私は思います。

 この森林の吸収というのは、三・九という枠が与えられたのは枠としてはまことに大きいわけで、三分の二、これでやろうと思えばやれるというので、ついこの枠に頼りたい誘惑に駆られるのはわかりますが、本当の意味でCO2を減らすあるいは温暖化ガスを減らすということからいえば、これはあくまでも枠であって、どこまでこれが生かせるかは、まさに今後の具体的な努力次第だというふうに思います。

 林野庁の方が森林の基本法に基づいて長期の森林計画を最近おつくりだと思いますが、この計画に基づくと、これまで数十年の日本の森林が稼いでいたCO2、これを英語で言えばビジネス・アズ・ユージュアルという言葉かもしれませんが、日本語で言えば定常的な吸収量、それに対して今後森林の吸収量が森林計画に基づいてどういう変化をしていくのか。つまり、従来よりも日本の森林は総体として吸収量がふえる傾向にあるのか。あるいは、もうピークを過ぎてかなり成熟期に入っている森林ですから吸収が減っていくということも考えられますが、その点、どういう見通しをお持ちでしょうか。

加藤政府参考人 今先生お話しありましたとおり、森林・林業基本法に基づきまして森林・林業基本計画というものを策定したところでございまして、実は本日付をもちまして閣議決定をいただいたところでございます。

 その計画の中では、今後、適切な森林施業を行っていくということを考えながら成長量等につきまして予測を行っているわけでございますが、総成長量につきましては、二〇〇〇年で八千九百万立方というふうに見込んでおりますけれども、それが二〇一〇年には八千万立方、二〇二〇年には六千九百万立方という減少基調で推移するというふうに考えております。

 これは実は、現在の森林の、人工林を主体として成長があるわけでございますが、その人工林の齢級構成を見ますと、成長力が非常に高い齢級でございます七、八齢級が現在のピークでございますけれども、今後さらに大きくなっていくということになりますとだんだん総成長量が落ちてくるということになるわけでございまして、そういう点で、今言いましたような形で推移するというふうに見込んでいるところでございます。

 それから、定常的にどうなっていくのかというお話でございますけれども、それについては蓄積がどうなっていくかということではないかというふうに思いますけれども、二〇〇〇年の蓄積といたしましては三十九億三千万立方の我が国森林資源の蓄積があるわけでございますが、二〇一〇年には四十四億一千万立方、二〇二〇年には四十七億三千万立方と、蓄積の方は着実に増加をしていくというふうに考えているところでございます。

鮫島委員 済みません、ちょっともう一回。

 一九九〇年における日本の森林全体の年間の吸収量と、二〇一〇年の日本全体の森林の吸収量の見込み、この二つの数字、一九九〇年と二〇一〇年を比べたときにどんな数字になるかだけ。できれば、CO2換算でお答えいただきたいのですけれども。

加藤政府参考人 一九九〇年のときには、約七%程度の吸収量に相当するということで考えていたところでございます。前の計画に従いまして考えてきたのでは、二〇一〇年の段階では三・七%になる。そのときも量は落ちていくということで考えていたものでございます。

鮫島委員 先ほどのお答えですと、一九九〇年には多分約七千万立米、木の重さといいますか植物体の重さで七千万立米、それが多分二〇一〇年には五千万立米ぐらいに落ちるのですかね、CO2換算すると約その半分ぐらいだと思いますが。

 温暖化ガスは単位がいろいろあって難しいと思いますけれども、一般的に言うと、CO2で十二億トン。つまり、人間一人、国民一人当たり十トン、老いも若きも平均すると、人間一人十トン大体CO2を出しているというのが十二億トンという数字だと思いますが、それに比べて森林が今言ったような四千万トンとかで、二〇一〇年にはそれが三千万トン程度になります。

 この吸収枠を使うときは、九〇年に比べて二〇一〇年がふえていて初めて吸収枠が使えるのだと私は思いますが、その辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。

川口国務大臣 上限でございますので、基準年である一九九〇年に比べて第一約束期間のその期間でふえていた分について、要するに吸収が増加をした分についてそれが使えるということでございます。

鮫島委員 先ほど林野庁からの御説明もありましたように、確かに、木はだんだん年とってくると、扶養家族の部分といいますか、光合成をしない部分、根っことか幹とか枝がふえてきて、すべての森林は最後はプラス・マイナス・ゼロに収れんしていくという運命にありますから、日本の森林もだんだん成熟していくと当然落ちていくわけで、その意味では、森林の吸収枠というのは逆になって、マイナス三・九が目いっぱいで大変ありがたいと思っていたら、実測の方からいうと、実は先ほど、三条の三項だとプラス〇・二、つまり森林が消滅して田んぼに変えられていくというような、畑に変えられて壊廃していくということがあって、これがプラス〇・二になる。

 三条四項の方からいっても、森林が成熟し劣化していくということで活性が落ちていくという意味では、これもプラスの方になっていくという意味では、三・九で大変大きい枠をもらってありがたいと思っていたけれども、実はそれほどこれは使えない。余りこれを当てにしないで積み上げないといけない状況に今あるのではないかと思いますが、そういう認識でよろしいのでしょうか。

川口国務大臣 この三条四項は、人為的に行われたその活動というのが条件になっているわけでございまして、そういったその条件の範囲内で、細かいルールはこれからまた決められていくことになりますけれども、そのルールにのっとって、吸収がふえたところについてこれが適用される、その上限であるというふうに理解しております。

鮫島委員 その意味でも、一九九八年にできた大綱では、ここのところで三・六見込むというふうになっておりますし、フロン等の三ガスについてはこれがプラス二の増加要因というふうにもなっていたり、いろいろな意味でCOP6ツーを経た今の段階で見ると、大綱の見通しの数字、それからどういう努力で減らすというこの削減の見通しについても基礎から見直さなければいけないんじゃないか。しかも、来年の九月までがタイムリミットとすると、かなり作業を急がなければいけないんだと私は思います。

 そういう意味では、中央環境審議会が三月に大変いいレポートを出していると私は思うのですが、なかなかこれが表に出てこない。つまり、温室効果ガス削減シナリオ策定調査検討会報告書というのがあるのですけれども、これはなかなかよくできていまして、温暖化ガスの排出見通しも大綱のときよりはそんなにはふえない、今の景気の状況あるいは産業構造の変化、ハードからソフトへと変わっていくことも見込むと、大綱のときよりはそんなに大きくふえませんよと。それから、さまざまな削減ポテンシャルを働かせることによって、この六%という数字が森林の吸収枠を見込まなくても場合によったらできるという可能性を示しているレポートだと思うのですが、相変わらずこれが表に出てこないというのはどういう事情なんでしょうか。

炭谷政府参考人 ただいま先生がお示しになりましたレポートにつきましては、既に中環審の中間取りまとめといたしまして、ことしの七月だったと思いますけれども、これで公表しているものでございます。

 同じような数値が載っておりまして、これによりますと、経済的、社会的コストというようなものを、制約をなくして技術的な観点だけで判断をすれば、いろいろな前提があるんですけれども、九〇年比に比べて、マイナス二からマイナス七だったですか、マイナス八だったですか、そのぐらいのものは技術的には達成できるというふうなレポートをまとめて、これは公表いたしております。

鮫島委員 このレポートを、他省庁からのさまざまな意見あるいは提案、批判も入れて、ぜひ閣議決定のレベルにまで、早急に、中間報告ではなくて最終報告まで持っていっていただきたいと思いますが、これと大綱との関係はどうなるんですか。つまり、これが閣議決定されれば大綱は消えるというふうに受け取ってよろしいんでしょうか。

炭谷政府参考人 先ほど御説明いたしましたように、この数値につきましては、経済的、社会的ないわば制約を全く無視しまして、技術的に現在利用できるもの、また、二〇〇八年までに開発可能なものを見込みまして、百程度の技術を全部導入すれば、その程度のものはできるだろうという、いわば一つのシナリオということで描いたものでございまして、それに対して、いろいろな、実際に経済的な要素、または社会的な変化というものを加味して現実的な数値を出していかなければいけないというふうに考えております。

鮫島委員 いや、もっとはっきりしなくちゃいけないんじゃないかと思いますよ。

 二〇〇二年に批准する。批准するからには、二〇一〇年に国際公約の六%削減ができる、あるいは六%削減をするんだということですと、いつまでも古い数字に基づいてできている大綱の枠組みで議論をするのではなくて、現実的な、今日的な数字、それからさまざまな新技術の見通し、それも織り込んで、ある種の政策意思を持ってこの六%削減のシナリオというのを書いていかなければいけないんだと思いますが、その意味では、大綱は大綱であり、そして今のような、経済的なことは余り考慮せず、技術だけで走ったらこれだけいくよというのが、二本立てで常にあるというのは、時間的なことも考えるとおかしいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 先ほど炭谷局長から申し上げました中央環境審議会で行っております議論といいますのは、これは、中央環境審議会の議論でございますので、環境大臣の諮問に基づいて議論をして、環境大臣に対して報告をしてくるという性格の報告でございます。

 それから、大綱は、政府に地球温暖化対策推進本部というのがございまして、これはそこで決定をされたものでございまして、環境省も、環境大臣もそのメンバーでございますけれども、ほかの関係省庁がそこにも入っているわけでございまして、今、各省庁、経済産業省も含めまして、それぞれの分野でのどういう対応策があるかということの検討及びシナリオをやっているところでございまして、これを全体としてまとめた形で、日本として、何によってどういうふうに削減をしていくかということが決まっていくということでございます。

 それから、念のために、先ほど森林についてのお話がございましたときに、全体として減っていくかどうか、三条四項に基づく吸収がどういう状況に今後なっていくかということにつきまして、第一約束期間におきましては、伐採が行われますとその分森林が減って炭素ストックが減るということになるわけでございまして、その分マイナスになりますけれども、森林が成長するに従って吸収がふえますので、それをプラスマイナスしたところでは、第一約束期間におきましては、そこでかなりの相当量の吸収が見込まれるということでございまして、結果としては、それをプラスマイナスして出てくる、一方的に減っていくわけではないということをちょっと念のために申し上げさせていただきます。

鮫島委員 川口大臣は、何となくそこのところはいつもごまかしたがるんですけれども。

 要するに、私は毎回言っていますけれども、二〇一〇年に日本の森林が突然目を覚ますわけじゃないでしょうと。森林はひたすら、きょうのような天気には大分光合成量は多いですよね、こういう光のときは。まじめに吸収しているわけで。九〇年に吸っている量と二〇一〇年に吸っている量がどうかと。森林の手入れをよくし、そしてその更新も順調にやって、一九九〇年より二〇一〇年の方が絶対的なトン数としてふえていればそれはカウントしてもいいけれども、絶対的なトン数が減っていれば、それは残念ながらプラスカウントになってしまうと。

 それは、私は最初にも念を押したつもりなんですけれども、つまり、自然循環は対象にしない。例えば、天然林なんというのは人間と無関係に自然循環で吸収しているわけで、そういうのをいただきという話は私はないと思いますよ。ですから、一九九〇年の吸収絶対量と二〇一〇年の吸収絶対量がふえていれば使ってもいいけれども、減っていればこれは使えないということをもう一度確認したいんですけれども。

川口国務大臣 まず、人間活動によるということは三条四項に明記をしてございますので、それはそういうことでございます。

 それから、私はちょっと先ほど勘違いをして、これ、大事なところで勘違いをして間違えて申し上げたので訂正をさせていただきますけれども、九〇年と比較してということでは、要するに、九〇年からの増加分ということではなくて、三条四項は、九〇年以降に人為的な活動が行われた土地を対象にするということで、ネットネットの概念ではないということをきちんと訂正をさせていただきます。したがいまして、九〇年からの増加分ではなくて、九〇年以降に人為的に活動が行われた土地を計上の対象とするということで合意が国際的になされているということで、これはちょっと先ほど間違って申し上げたと思いますので、訂正をさせていただきます。

鮫島委員 私は、だから、一番最初の質問で、IPCCの第一作業部会の結論をどれだけ重く受けとめていますかと。数字のごまかしではなくて、本当にCO2を日本として減らすんだという基本的な立場かどうかを私は最初に聞いたつもりです。そうしたら、川口大臣は、重く受けとめていると。重く受けとめているということは、ちゃんとCO2を減らすということでして、今の、三条四項で、九〇年以降人為的な活動が行われたところを全部カウントするというのは、多分具体的に何をやるかというと、山火事注意とかという札を立てるわけですよね、森林の中に。これで人為的な監視活動をやったというので、その大面積を九〇年以降も新たな枠だとして使おうという。環境省のやることといったらそのぐらいしかないですね、山火事注意とかキタキツネに気をつけましょうとかそういう。林野庁は、多分少し、枝打ちしたり間伐したりすると、これは固体であった部分が減っちゃったりして、CO2をふやしているんだか減っているんだかわからない。私は、そんなにいいかげんにやったらよくないと思いますよ。

 私は、もうちょっと別の角度から、正面からこの森林吸収の問題を受けとめて、日本は世界に冠たる木材文化を持っている国ですし、伊勢神宮以来の木なりの文化というのも持っているわけですから、森林吸収とか木材の扱いについては、私は、世界に発信する資格を日本は持っているんだと思います。

 地球温暖化の問題というのは、炭素の存在状態の問題で、別に宇宙から温暖化ガスが飛んできてふえるわけじゃなくて、地球圏全体の炭素の量は一定で、それが気体であるか、液体に溶け込んでいるか、固体であるか、この存在状態のバランスが崩れて、固体であった石炭を燃して気体にしてしまった、液体であった石油を燃して気体にしてしまった、この三つのバランスが崩れて気体の部分がふえてきたというのがこの地球温暖化問題の本質ですから、その意味では、できるだけ気体を固体にする。つまり、植物の光合成作用によって、無機物だったCO2を糖とかでん粉とかセルロースという有機物に変えますと。この作用を最大限使い、そして、本当はこういう環境委員会の部屋で、こんな、おがくずを接着剤で固めて紙を張ったような机を使っているのは大変よくなくて、私はちゃんとした木を使うべきだと思いますが、大事に非燃焼的に木材を使うというのは、これは固体ストックをふやすという話ですから、気体から固体というフローの流れを盛んにする。それは多分、新たな森林の管理というのが大いに有効だと思います。

 それから、でき上がった木材という、気体だったCO2を固体化したものを燃やさないで大事に長く使う。これは私は、日本の歴史が持ち、日本の文化そのものだと思いますので、そういう立場から、むしろCOP7の、あるいはこういう京都議定書の枠組みの中で、私は、日本が一番まじめにしっかりと主張できる資格がある国だと思いますが、そういう意味で言えば、先ほど大臣のおっしゃったような吸収枠の使い方、九〇年以降手をかけた森林の分については、全部それはカウントしてしまうというようなことは余りフェアな態度ではない。やはり九〇年の日本の森林の吸収に比べて、二〇一〇年、明らかにちゃんとふえていましたということを見込んで足さないと本当はおかしい。

 それからもう一つ、私は今机の話をしましたけれども、これが全然、COPの一連の会議の中で全く考慮されていないんですね、そういう木材文化というものが。非燃焼的にストックとしての木材を大事に長く使ったら、この部分は本来ストック量としてカウントされてもいいはずですが、残念ながら今のCOPの中では、木を切ったらこれをそのまま排出として読んでしまうというまことにおかしな、日本文化に反する見込みになっていると思いますが、その辺は私はCOP7の中で大いに主張すべき問題だと思うんですが、今の、木材文化と吸収源といいますか、温暖化との関係というのを大臣はどのようにお考えでしょうか。

川口国務大臣 この吸収源をめぐる議論というのは、非常に細かい点がいろいろございまして、そういったルールづくりは国際的な場で共通なルールをつくろうということで今作業を進めているところでございます。これは、いずれ国際的に合意がなされた形でルールはきちんとしてきまして、それにのっとって日本もやるということになると思います。

 木材文化といいますか、建物や家具等に木材を使っていくことは私は非常に大事なことであると思っております。これをやることによって、しかもそれが長い間もつような形で行われることによって日本の森林の保全というのもそれによってなされるということでもございますし、それはそれで、これは林野庁のお仕事であるかと思いますけれども、環境省の立場からも、それが環境の保全に資するということで非常に賛成をいたしております。

鮫島委員 ぜひ私は、世界の中で尊敬されるように、日本は最も環境についてはすぐれた文化を持っている国だと私は思いますから、胸を張ってフェアに論理を展開し、そして日本人の英知で六%の枠はクリアするんだということを宣言していただきたいと思います。

 アメリカが入る入らないということが大変大臣の頭にもいつもあるようですが、アメリカというのは大変すばらしい面もありますが、とんでもない愚かな面とかずるい面もありまして、今温暖化ガスの取引で最も大きい商売をしようとしているのがアメリカで、もう既に二〇〇二年の中旬には、シカゴにCO2排出権取引の巨大なマーケットをつくろうと。フォードやデュポン等二十五社が参加して、会社ごとにCO2排出枠を決めて、それよりオーバーしている会社はそれより少なく出している会社からCO2の排出権の枠を買うと。これは既に先物まで含めて巨大なマーケットをアメリカが既にもう試行的に走らせていますし、来年の夏には本格的に立ち上がる。一方で、京都議定書を離脱して、地球温暖化なんか関係ないと言いながら、商売だけは地球規模でしっかりやるという、こういうのがやはりアメリカの負の側面ではないかと思います。

 しかも、これがどのぐらい巨大なビジネスになるかということも彼らは見込んでいて、大体トータルで、二〇一〇年には千七百七十一億ドル、日本円に直して二十一兆円のビッグビジネスになるというふうに既にアメリカは見込んでそういう準備をしているわけですから、川口大臣はブッシュさんとどんな話をしているのかわかりませんが、一方でこういう、汚いというか、しっかりビジネスは、これは金の取引の七倍ぐらいの大きなビジネスですから、二十一兆円というビッグビジネスを既にアメリカが、京都議定書からは離脱しておいて、そんな地球温暖化なんか何だと言っておきながら、金もうけの方だけはしっかりやろう、こういう態度をとっているアメリカに余り善意だけで対処してもしようがないんじゃないかと思いますが、この間何度かアメリカとの交渉をなさっていてその辺どういう印象をお持ちでしょうか。

川口国務大臣 私も、アメリカという国は、委員おっしゃられるように、非常にすばらしい面を持っている国、あるいはそうでない部分もあわせ持つ国というふうに言ってもいいかもしれませんが、だと思っております。

 アメリカにおける排出量取引の歴史というのはかなり長い実績がございまして、温暖化ガスについては、今委員がおっしゃられたとおりでございますけれども、SO2の排出量取引については、これはもう既に実績がございまして、排出量取引という新しい経済的なメカニズムを使ったシステムということについては、恐らく世界の中で一番実績を持っている国ではないかと思います。

 温暖化ガスの排出量取引について今委員がおっしゃられたことは、これは企業ベース、自主的にやっている話でございまして、京都議定書からの離脱というのはアメリカ政府の考え方の話でございまして、アメリカらしくと申したらよろしいかもしれませんけれども、企業と政府の間のある種のねじれ現象というのがそこに出ているかなというふうに思っております。

 また、こういった企業の取り組みが、いずれアメリカ政府に対して、京都議定書あるいは京都の精神に基づいて温暖化対応をやっていくということに、アメリカ政府を動かしていく力になるということもあるのではないかと期待も持っております。

鮫島委員 ぜひ、環境省としても、このアメリカがもくろんでいるビジネスの実態、そしてこれがどんなふうに展開していくのか。亜硫酸ガスのような、法律で、マスキー法で決められた悪いガスの場合、それはみずから決めた法律でみずから排出権取引をやるのは結構ですが、アメリカが離脱をして、おれは関係ないよと言っている世界の枠組みだけを使ってビジネスを組み立てている。ですから、実態としてこれだけビジネスがアメリカの社会の中で伸びていく以上、当然、政府としてもそのビジネスのもとになっている京都議定書には参加しないとおかしいということをぜひ、大臣というお立場ですから、これからもアメリカに強く、このビジネスの実態を踏まえて主張していただきたいというふうに思います。

 私の質問は以上です。

川口国務大臣 アメリカに向けての働きかけは引き続きやっていきたいというふうに、これには最大限努力をしたいと思っておりますが、念のためにですけれども、このアメリカの企業が考えている排出量取引の枠組みと京都議定書という国際的な合意がなされる枠組みとの関係についてはまだ不明ということでございまして、直接には関係がないということでございます。

鮫島委員 粘り負けで申しわけありません。

 終わります。

小林(守)委員長代理 続きまして、樋高剛君。

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも発言の機会を賜りました。委員の皆様方に感謝を申し上げます。

 大臣が所信表明の中で目下の最大の課題であるとおっしゃっております地球温暖化の問題、きょうも朝からずっとその議論も続いておりますけれども、まず取り上げさせていただきたいと思っております。

 地球温暖化につきましては、国際的な問題の側面と、また国内の対策と別個に考えていく必要があるのではないかと私は考えております。七月に行われましたCOP6再開会合におきましては、京都議定書の運用ルールの中核的要素について基本的な合意、つまりボン合意がなされたわけであります。しかしながら、アメリカは、会議には出席はいたしましたけれども、合意には参加されなかった。会議そのものの中身では、一応政治的な決着をしたという意味では、評価はまずはされてよろしいのではないかと思うわけでありまして、大臣を初めといたしまして、御尽力なさいました皆様方にまずもって感謝を申し上げたい、御礼を申し上げたいと思っております。

 しかし、一方で、COP7、もう間もなく始まりますけれども、COP7に当たりましての課題も多く残されているのが事実であります。途上国支援につきましては、先進国からの資金源があいまいであるというものの、まずはめどがついている。しかしながら、京都メカニズム、そして遵守、また吸収源につきまして課題が残されているわけであります。京都メカニズムにつきましては、排出量取引の細かなルールの問題、そして遵守につきましては、守れなかった場合の細かなルールは、最終的には議定書発効後の会合でということで先送りになってしまったわけであります。また、吸収源につきましては、ロシアの吸収量の扱いをどうするかということのようであります。

 今後、法的な文書の合意を目指す細目の策定に当たりまして、もしかしたらこのボン合意を今度のCOP7で踏みにじるところが出てくるかもしれないというところまで踏まえた上で、そこまで視野に入れた上で日本としては交渉に挑んでいかなくてはいけない。その中にありまして、川口環境大臣を初めとする日本の役割はとても大きいわけであります。

 議定書発効のかぎを握っておりますのはまさしく日本でありますけれども、まず、大臣のCOP7に当たりましての強い決意を賜りたいと思います。

川口国務大臣 COP7は、先ほど委員がおっしゃられましたように、ボンで合意をした京都議定書の中核的要素を法的な文書にしていくという作業でございまして、先ほど委員がおっしゃられたような問題点がまだ残っているということでございますが、二〇〇二年の発効を目指してマラケシュで合意をするということは非常に重要なことでございますので、ここで合意が見られるように、我が国といたしましては最大限の努力をする所存でございます。

樋高委員 一昨日の新聞のコピーがございます。「米参加せず発効へ」「米政府筋は二十二日、米国が検討中の代替案について、」「(COP7)での提出は見送る方針を明らかにした。」「米国の参加抜きで発効に向かうことが確定的になった。」先ほども議論ありましたけれども、「同時テロの影響で、ブッシュ米大統領が進めてきた閣僚レベルでの見直し作業が遅れたためとみられる。」ということであります。

 このような状況になったわけでありまして、もはやアメリカ抜きでも京都議定書の発効を目指すべきではないか。引き続きアメリカに強力に働きかけを行うということはもちろん当然の話でありますけれども、アメリカの動向にかかわらず、日本は成功のかぎを握っているわけでありますから、腹をくくって、強い意志を持って挑むべきであると考えるのでありますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 米国におきましては、私が得ている印象でございますと、同時多発テロ以前まではかなり検討も進み、幾つかの考え方も整理をしという段階にあったというふうに私は受けとめておりますけれども、その後、テロ事件の結果として、そこに人的な資源あるいは時間を割けなくなってしまったということは非常に残念なことでございます。

 我が国といたしましては、先ほど申しましたように、二〇〇二年の発効を目指して最大限の努力をしていくということとあわせて、日本としてその義務を守る、六%削減を確保するということが非常に重要でございますので、そのための作業を総力を挙げてやっていくという段階でございます。

 いずれにいたしましても、まず、二〇〇二年発効を目指してマラケシュで合意に達するということが重要でございますので、そのための最大限の努力をしたいと思っております。

樋高委員 一方で、先般のボンの合意によりましていよいよ合意が現実的なものとなりつつあるという状況の中にありまして、日本の産業界からは、早期発効に固執すべきでないという声も強くなりつつあると伺っております。もちろん経済界のおっしゃることもわからないではないんですけれども、しかしながら、この際でありますけれども、環境に配慮した産業構造に転換をするよい機会である、アメリカよりも日本は世界に先駆けて、例えば製造業を初めとして経済産業の仕組みを世界に先取りした形に変えていくよいチャンスではないかと思うわけであります。日本の得意としております環境技術をさらに向上させまして、システム開発、技術開発によって将来やがて得られる利益の方が大きいのではないかと考えるのでありますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 地球温暖化対策推進法に基づきまして平成十一年に決定をされました地球温暖化対策に関する基本方針におきましては、次のように書かれております。

  地球温暖化対策は、あらゆる社会経済活動にかかわり、また、それを見直していく作業であり、その過程で、投資を呼び、技術革新を生み、新たなビジネスをもたらすものであり、広範な事業者にとって新事業の大きなチャンスであることを念頭に置いて取組を進める。

というふうになっているわけでございます。

 燃料電池を考えましても、今、燃料電池の技術が、自動車、あるいは家庭に小規模のものを置くといったような方向でさまざまな開発がなされておりますし、それから、交通インフラの整備等につきましては、適切にその方向に持っていくことによって雇用機会をふやすということでもございます。環境政策、環境対策というのは、経済を刺激し、技術を進め、また、雇用にも資するといった側面を持っているわけでございます。

 こうした観点からも、京都議定書の二〇〇二年の発効に向けて全力を尽くすとともに、その目標を達成するための国内制度をつくっていくということに総力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

樋高委員 総理は、二〇〇二年中の京都議定書発効を目指すと公言しておいででありますけれども、ちょっとスケジュールをここで考えてみたいと思います。

 つまり、来年中の発効を目指すということでありますけれども、批准手続後に、九十日後に発効する、つまり、三カ月後に発効するという仕組みになっておりますので、来年末までに発効するということは、三カ月さかのぼります。そうしますと、日程的に、例えばでありますけれども、来年九月のリオ・プラス10あたりで遅くとも手続、サインをする作業をしなくてはいけないというふうに、逆算をしたらなってくるわけであります。そういたしますと、来年の臨時国会ではもう日程的に間に合わない。また、条約関係もありますから、いわゆる臨時国会ではなくて通常国会でということに相なるわけであります。

 義務を負いますのは将来の期間でありますけれども、次の通常国会で京都議定書締結の国会承認をしなくてはならない。また、その場合の第一約束期間の二〇〇八年から二〇一二年までの五年間における温室効果ガスの六%削減を確実に達成できることが担保されなければならないわけであります。国内担保措置も必要になってくるというわけでありますけれども、日本国内での批准に向けての準備の状況は抜かりなく進んでおいででございますでしょうか。

川口国務大臣 国内制度をきちんとしていく、それによって六%削減義務を果たしていくということは日本として非常に重要なことでございまして、現在、中央環境審議会においてそのための国内制度の取りまとめという議論をしていただいております。

 これについては、七月に中間取りまとめをしていただきまして、それを踏まえまして、具体案をまとめるための御審議を今中央環境審議会でいただいておりまして、年内を目途に最終的に取りまとめていただきたいというふうに考えております。

 ということで、国内制度の構築ということについては、総力を挙げてただいま取り組んでおります。

樋高委員 温暖化の問題に関しましては、結局のところ、要するに、温暖化によりまして、どれだけ今の生活環境、我々の暮らしているこの生活が今よりも悪くなるのか、いわゆる将来の姿、将来像がイメージとして国民の間につかめていない、ここに問題があるのではないかと私は考えるわけであります。

 つまり、もしかしたら気温が五度から六度も上昇し、海抜が上がり、海抜の低い国はその領土の形も変わるかもしれない。また一方で、異常気象によりまして農作物の収穫にも大きな影響を与えて、ひいては生物の生態系にまでその影を落とすかもしれない。つまり人類の営みによって、自然との共生から最もかけ離れた結果を今実は我々は日々つくり出しているのだ、実は世にも恐ろしい状況に今なりつつあるのだというイメージがまだつかめていないのではないか。やはりその現実を自分たちのこととして理解し切れていない、のみ込めていないのではないかと思うわけであります。世界へ向かいまして、国内に向かって、世論の喚起、啓発啓蒙活動が足りないのではないか、甘いのではないかと自分は考えるわけであります。

 国内においても、温暖化問題について理解を得るためにも努力が一層必要ではないか。事例で申しますれば、例えば小学校、中学校の学校の先生がどれほど生徒さんに温暖化の話をなさっているのか。学校の現場に限らず、社会全般の環境教育の視点にもっと力を入れるべきではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、私も、温暖化抑制のためにどういうことをしたらいいか、あるいは何が問題でそういうことになっているのかといった点についての啓発活動、環境教育がまだまだ十分ではないというふうに思っております。まだまだ努力をしていかなければいけないと思います。

 温暖化問題というのは、それぞれ一人一人の人間の生活様式あるいは行動が温室効果ガスをもたらすということでございますので、国民一人一人がそれに対応していただくということが非常に大事でございます。国民の皆様方の関心も、タウンミーティング等に伺いますと、どうしたらいいのだろうか、何をすればいいのかという御質問も多々ございまして、御関心も持っていただいている、そのきっかけは十分にあるのではないかというふうに思います。

 環境省におきまして何をやっているかということについて若干触れさせていただきますと、地球温暖化防止月間あるいは環境月間というものを設けまして普及啓発をやっている。それから、こどもエコクラブ事業というのがございますけれども、地域で小中学生が、これはリーダーがついてということでございますが、自主的、自発的な活動をしていくことを支援していく。それから、経済産業省、文部科学省と連携をいたしまして、地球温暖化防止活動推進センターを活用いたしましたグリーン教育モデル事業というものをやっておりまして、小中学校で環境、エネルギーについての教育を実施いたしております。

 今後とも、文部科学省、経済産業省といった関係省庁と連携をしながら、地球温暖化対策の推進のために普及啓発活動を進めていきたいというふうに考えておりますし、委員おっしゃられましたように、学校教育だけではなくて、社会人への教育あるいは政策を担っている人たちへの教育といった、社会のすべての層に向けての教育及び啓発活動をしていかなければいけないのではないかと思っております。

樋高委員 環境の問題というのは、結局、個人個人の意識改革、やはりここに行き着くのではないか。そんな中にありましても、環境教育、ぜひとも引き続き積極的に行っていただきたいと思います。自分たちの未来のため、そして自分たちの子供たちのためにも、今回COP7に挑まれるわけでありますけれども、日本国としてリーダーシップを発揮して、ぜひともしっかりと成果を上げていただきたいと御期待を申し上げておきます。

 さて、次の問題に移りたいと思います。公害の問題であります。

 公害防止計画制度の運用見直しについてでありますけれども、去年の十二月、中央環境審議会の意見具申が行われたと伺っております。まず、現在の検討状況をお聞かせいただきたく思います。

風間副大臣 御案内のように、公害防止計画は、環境基本法の十七条に基づく計画でございまして、環境大臣により策定指示されるわけであります。

 今御質問のありました制度の運用の件でございますけれども、ことしの四月に、環境大臣の方から中環審の会長に対しまして諮問を行って、都合これまで四回にわたって公害防止計画小委員会というので審議が行われて、答申案がほぼ取りまとめられました。

 その答申案によりますと、地域の課題に対応した計画制度へ変えるために、一つは、地域の課題と具体的な施策、それからその施策を達成していく目標、その関係を明らかにするという意味で、まず計画のあり方を見直す。もう一つは、この公害防止計画の策定指示要件の明確化を図るべきとされておりまして、きょう、二十六日付でパブリックコメントの手続を行わせていただきまして、年内には答申をいただいて制度の運用の見直しを行ってまいる予定でございます。

樋高委員 公害につきましては、時代の変化とともに形態が変わってまいりました。つまり、激甚な産業型の公害から、今は都市生活型の公害へと変化してきたわけであります。そのことは、平成の時代に入りましてから、今から約十年以上前から既に言われてきたことでありまして、運用の見直し自身、遅過ぎた感が否めないのでありますけれども、今副大臣がおっしゃいましたけれども、公害防止小委員会において四回の会議を行った。きょうからパブリックコメントが始まったようでありますけれども、では、今後の見通しはどのように進んでまいりますでしょうか。

風間副大臣 続きになりますが、いずれにしましても、今、都道府県単位では協議会を開いておりますし、そこで順次説明をしていくという手続を、さらに都道府県から市町村へ徹底をしていただくように通知を一つはしたいと思っております。

 そして、年内に答申が行われましてから、直ちに答申に基づいて都道府県に私ども通知をさせていただいて、今先生がおっしゃったいわゆる都市型の公害の課題と問題点について、来年度の策定計画より見直していっていただけるようにしていきたいというふうに、より地域の課題に応じて実効性の伴う公害防止計画にしていくように、私どももきちっと働きかけてまいりたいというふうに思っております。

樋高委員 公害の地域の指定に当たりましては、昭和四十年代中ごろからでしょうか、大体五年ごとに指定をなさってきたんでしょうけれども、今まで指定してきたから、今までそうであったからという流れで持続されてきたわけであります。そうではなくて、しっかりと国民に見える形で課題が解決される要件を明確にする、明らかにする、進行管理を行って政策効果と目標の達成状況の評価をきっちりと実施していただきますことを強く要望させていただきたいと思います。

 次に、土壌汚染問題についてお伺いをいたします。

 ここ数年、企業の事業の再編あるいはリストラの動きに関連いたしまして、いわゆる遊休地の再開発、また工場跡地の売却が進められる中で、土壌汚染が発見されるケースがふえてきております。環境省さんの調査結果を見てみましても、環境基準を超える土壌汚染が判明した件数、これが驚くほど伸びている。平成十年のデータでは、前年の二倍、倍になっている。翌年の平成十一年も同じような水準となっているというわけであります。

 土壌汚染は、いわゆる大気や水の汚染と違って、地中、つまり土の中に存在するものでありまして、汚染の状況が把握しにくい、またその影響が周辺の環境に影響を及ぼすまでに時間がかかるという特徴があるわけであります。つまり、目に見えない、またどの程度影響があるかわからないがゆえにより不安をかき立ててしまう、増大をさせてしまっている。これまでの汚染の対策とかその必要性に対する認識が十分でなかったのではないかと思うわけであります。

 しかし、現在、土壌汚染について規制する法律がないがために、工場跡地などが住宅やマンションに転用される過程で土壌汚染が発覚したときに、土壌汚染について住民の皆さんが不安に感じるケースも多く見られるようになってきております。このため、国として土壌汚染の調査や対策のやり方に関する法律をきちっと整備することが、大臣の先日の御発言の中にもありましたけれども、国民の安全と安心の確保のためには極めて重要ではないかと思うわけであります。

 こうした中にありまして、環境省さんにおきましても、土壌環境保全対策の制度の検討を進めていると伺っております。その現在の状況をお聞かせいただきたく思います。

川口国務大臣 最近、企業が工場跡地を再開発するということですとか、あるいは事業者が自主的に調査をするといったことが進んでおります結果、委員おっしゃられましたように、有害汚染物質についての土壌汚染事例の判明件数が著しく増加をいたしております。

 このような土壌汚染による健康影響等への懸念、それから対策の確立への社会的な要請の高まりを踏まえまして、環境省では、昨年の十二月から、学識経験者から成る検討会をお願いいたしまして、土壌環境保全対策のためにどういう制度が必要かということにつきまして検討を進めてきたところでございまして、ことしの九月に中間的な取りまとめが行われました。

 この中間取りまとめにおきましては、汚染された土壌の直接の摂取、それから地下水への溶出等による健康影響等を防止するために、土壌汚染による環境リスクの管理が必要である土地を把握する、それとともにこの環境リスクの管理を適切に行うことができる新しい制度が必要であるという考え方が示されております。

 この中間取りまとめを踏まえまして、このたび、さらに土壌環境保全対策の制度のあり方について検討を進めるために、中央環境審議会に対しまして、今後の土壌環境保全対策のあり方についての諮問をいたしたところでございます。今後とも、その制度化につきまして検討を進めてまいりたいと存じます。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

樋高委員 この土壌汚染の問題は、二十世紀の時代に私たちがつくった負の遺産と言えるのではないかと思います。この蓄積された負の遺産をできるだけなくすことが子供たちに対する私たちの責任でもある、最も重い責任の一つであると思います。

 同じ負の遺産の問題でありますPCB廃棄物問題については、ことしの通常国会で、行政、事業者それぞれの役割を定めた新しい法律をつくりまして、既に対策が着手されたところでありますけれども、土壌汚染の問題につきましても、このような負の遺産を生み出した国民全体の責任としてできるだけ早く制度化を進めることが私は必要だと思います。大臣の今後の見通し、お考えを賜りたいと思います。

川口国務大臣 人の健康に対する影響あるいは国民の安全と安心を確保するという観点から、土壌汚染対策というのは非常に重要なことであると考えております。

 先ほど申しました中間取りまとめ、あるいは今回諮問をいたしました中央環境審議会による検討の結果を踏まえまして、できるだけ早く制度化をしていきたいというふうに考えております。

樋高委員 土壌汚染の問題は国民の日々の生活に直結する話であります。また、危機管理の側面からもしっかりとした取り組みが重要なのではないか、このように考えております。

 次に、生物多様性保全のための重要地域、重要湿地の情報につきましてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 今月十一日に、環境省さんから、重要湿地の選定について、そして生物多様性保全のための国土区分ごとの重要地域情報が公表されました。これは、日本の生物多様性を保全するためにどこを優先して回らなければならないかを示したものであります。調査の結果、例えば重要な湿地につきましては、釧路湿原を初め五百カ所、また重要地域情報の方では、重要な生態系が一千カ所以上リストアップされているわけであります。この取り組み自体については、これは大変な事務量、大変な調査だったと思います。高く評価できるのではないかと思います。

 ところが、このリストを拝見させていただきましたけれども、一行一行言葉として羅列して書かれているばかりでありまして、実はさっぱりイメージがわいてこないのが正直なところであります。言葉でどこが重要だと言うことももちろん重要でしょうけれども、だれにでも見た目でぱっとわかるように、ああ、ここが重要な地域なのかとわかるような資料、つまり視覚としてわかるように、ビジュアルに地図をつくって、あわせて公表することが大切なのではないか、このように考えるわけであります。

 環境省さんの発表資料では、例えば重要な生態系のある地域について、その概略的な範囲の把握を行っているということでありますけれども、逆に言えば、おおよその場所はわかっている、けれども、まだ地図では具体的にはっきり、どこからどこまでがその地域というふうに示すことができない、そういう段階にあるのではないか。線引きができないのか、もしくは何らかの理由があるのかというふうに考えるのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 重要湿地それから重要地域につきましては、環境基本計画や生物多様性国家戦略の長期目標でございますところの生物多様性保全上重要な地域が保全されていることを実現するために、環境省といたしまして、多くの専門家の方々をお煩わせいたしまして取りまとめを実施いたしまして、それを今月の十一日に発表をしたところでございます。

 委員おっしゃられますように、これらの保全上重要な地域を国民の皆様にわかりやすい形で提示をするということは、保全のための情報を与える、あるいは保全の意欲を高めるといった上で非常に重要であると認識をいたしております。

 これらの公表をいたしますときに、環境省のホームページに、名前、位置、それから生物群集や湿地のタイプ等を掲載いたしましたけれども、その中には、日本の地図上におおむねの位置ということで地図に落としたものも含まれているところでございます。

 以上です。

樋高委員 日本の大切な自然がこれ以上失われないようにするためには、また自然と共生する社会の実現に向けましても、完全な資料でなくても、まずは、取り急ぎ概略的なものでも結構でありますので、重要な湿地、生態系がある場所を、せめて五万分の一か二万五千分の一くらいの縮尺の地図上に落とした資料を、例えばインターネットなどで広く公表すべきではないか。

 先ほど大臣おっしゃられたのが、もしかしたらこういう資料かもしれませんが、一枚のペーパー紙に日本地図が書いてあってドットで打ってあるだけでありまして、これではさっぱりわからないわけであります。せっかくこれだけの大切な情報、こんな一千カ所、そして五百カ所、重要な情報を取りまとめられたわけでありますから、地図をしっかりとつくって、もう少し細かい、もう少しわかりやすい、市区町村別にまでわかりやすい地図を例えばつくって該当の自治体に配付をする、インターネットで広く公表する、そして地域開発計画における配慮を事業者に促すという本来の目的に使われるべきではないかと思うわけであります。

 これらの資料につきましての活用方法も伺いまして、保護地域になっているかどうかを調べて、保護地域になっていないところについては、その保全策を検討するということでありますけれども、保護地域になっているかどうか、そういう情報もできるだけ早く地図の形にまとめて公表する必要があると考えるわけであります。また、環境アセスメントを行う際にも、今回リストアップした地域については特別の環境配慮をそれぞれの地域でお願いしたいという意向があるならばなおさらではないかと思うのでありますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、生物保全の重要性ということを理解していただくためには、やはり地図というのは非常に重要なツールであるというふうに思います。

 五万分の一の地図あるいは二万五千分の一の地図というふうにおっしゃいましたけれども、やはりその地図の上に落としていくためには、これはかなり詳しい地図でございますから、それなりにその地域に応じた植生の分布なりあるいは動植物の分布状況ということをきちんと調査をし、把握をして地図に落としていく必要があるというふうに思います。重要であると思いますけれども、その調査をするためにはそれなりの時間や費用もかかるわけでございまして、直ちにすべての湿地等につきまして、これらの詳細な情報を記載していくということは非常に困難であるかと思います。

 ただ、そういった詳細な情報ということは非常に必要なことであるというふうに思いますので、そのための努力をしていきたいというふうに思います。

 保護地域との重なりといったようなことについても、あるいはアセスメントを行う際に、それぞれの地域で、それがあれば環境保全の配慮ができるではないかとおっしゃるのも全くそのとおりの御指摘であると思いますけれども、今後詳細な調査を、詳細な情報の収集、あるいは現地調査をするということに努めまして、その実現ができるように検討をまずいたしたいと思っております。

樋高委員 ありがとうございます。大臣の前向きな御答弁をいただきました。

 環境行政に求められておりますのは、大臣もおっしゃいましたけれども、わかりやすさ、これも一つ重要なことではないかと思います。情報公開につきまして、環境省さんはある一定の評価、いい評価が今なされていると私は認識をしておりますけれども、そういった重要な情報を一人でも多くの方々にお伝えをすることも、環境省さんに課せられている重要な課題の一つではないかと思っております。強く要望させていただきたいと思います。

 次に、狂牛病の問題であります。肉骨粉の処理問題についてお尋ねをさせていただきます。

 環境省さんは、ちょうど一週間前の金曜日、狂牛病の感染源とされる肉骨粉について、市区町村の清掃工場で焼却処理する際の安全基準を都道府県を通じて通知されたそうであります。通知は、自治体のごみ焼却施設ならば肉骨粉を問題なく焼却できると明記をされておりまして、国が病原物質の感染力をなくす一般的な目安とされておりました八百度以上で四時間以上の焼却以下でも、通常のごみと同様の方法で処理可能との見解を示されております。

 しかし、全国の市町村が運営するごみ焼却施設一千五百六十五カ所のうち、肉骨粉の受け入れが可能なのは二百三十カ所という調査結果をまとめまして、一日当たりの焼却可能量は三百九十五トン、年間二百六十日稼働すると仮定すると、焼却可能なのは年間約十万トンとなりまして、年間約四十万トンとされる肉骨粉製造量の約四分の一にとどまっております。つまり、四分の三は余ってしまう。群馬、三重の二つの県におきましては検討中ということでありますけれども、常時受け入れ可能な施設は百五十二カ所、一時的に可能が七十八カ所だけだと伺っております。

 新聞にも取り上げられておりましたけれども、肉骨粉焼却可能量は製造量の四分の一にとどまっているのは事実でしょうか。また、その後の集計ですべての量の焼却が可能になったのかどうか。

 また、セメント業界にもセメントの原料として肉骨粉を受け入れてもらえないかと要請しているとも伺っておりますけれども、今後、どのような見通しであるのか。国民に向けてわかりやすく御説明を賜りたいと思います。

西野大臣政務官 樋高委員からお示しの、狂牛病、BSEの問題が、我が国に先月、九月の中旬でございましたか、惹起をいたしたところであります。直ちに、所管をされます省庁、厚生労働省、農林水産省等でしかるべく対応をなさったわけでありますが、率直に申し上げて、ややちぐはぐな点も一部あったりしまして、国民の皆さんには非常に迷惑をかけた部分があったのではないかな、このように思っております。しかし、御案内のとおり、十月の十八日から全頭の検査が実施をされることになりまして、直ちに安全宣言も実施をされたところでございます。

 問題は、今御指摘をされております肉骨粉の問題でございますが、環境省といたしましては、十月の四日付で市町村に対しまして、肉骨粉を引き受けてもらえる、いわゆる焼却可能な全国の市町村に対して、都道府県を通じてお願いといいますか調査をいたしたところでありまして、今数値をおっしゃいましたのがちょうどその中間発表でございます。

 十月の四日時点では、それぞれの市町村、焼却の施設を持っております組合等々も、肉骨粉が果たしてどのような性状であるのか、どのような焼き方をすればいいのか、運搬はどうだとか、これらの詳細の情報が実は十二分にまだ行き渡っていない時期でございました。そのために、お示しのとおり、全国の千五百何がしの施設から回答を得ましたのは、わずか一割程度のことであるわけであります。

 しかし、さらに十月の十九日付で肉骨粉に係ります技術情報を詳細に提供いたしまして、その受け入れを改めてまたお願いをいたしておるところでございますので、環境省としては、現在は一割ほどでございますけれども、これはさらに増加してくるものだろう、このように受け入れ態勢ができてくる、このようにも思っております。

 また、すべてがそうではありませんで、セメントの工場が全国で三十六カ所ほどあるわけでございますが、その中の一部におきましては既にセメントの原料として利用してもいいというような動きも現実に出てきておるところでございますので、それらも踏まえて対応すれば肉骨粉の対処はすべてできるものだというふうに思っておりますが、今後とも関係の省庁、自治体とも相提携をいたしまして、この処理が円滑に進みますように取り組んでいきたいと思っております。

樋高委員 狂牛病の問題に関しましては、行政に対する国民の信頼はある意味で地に落ちているわけであります。焼却されない肉骨粉が知らないうちにどこかでまた使われちゃうんじゃないか、そんな不安を抱く方も少なくないわけでありまして、不安が残るわけでありますから、完全に処理されますように、どうか環境省としてしっかりと取り組んでいただきたい、これも強く要望させていただきたいと思います。

 最後の質問に入りたいと思います。

 不法投棄の問題であります。身近な廃棄物の問題でありますけれども、最近、放置車両の問題が多発をいたしております。景観を損ね、また地域の生活環境に著しい影響を与えるいわゆる環境犯罪とも言われているわけであります。そして今、その放置車両に火をつけるという信じられないことをする不心得者もふえてきているわけであります。

 十月二十日付の新聞によりますと、例えば横浜では、最近余りにもふえてきたので、横浜市の消防局が統計をとりました。以前は毎月数件しかなかったのですけれども、ことしの五月から十月ぐらいにかけまして百三十件もの放置車両への放火が発生しているというわけであります。実は、私の住んでおります横浜市の都筑区、区別に見ましても最も多く発生をいたしておりまして、何人もの住民の方々から強い不安の声を聞いております。また全国的にも広がっていると伺っているわけであります。

 実は、放置車両は法律上はごみ扱いなんだそうでありまして、ナンバーがあっても登録住所に所有者がいなかったり、廃車届が出されていたりするために、いわゆる被害者がいなかったことによりまして放火容疑が成り立たないのだそうであります。また、その火災もほとんど人けのないところなものですから、建物近くで火を扱った場合に適用できる軽犯罪法の立件も難しい。放置車両、不法投棄の問題は抜本的に解決されにくく、警察でも対応に苦慮しているということであります。

 全国の自治体でも条例等をつくりまして対応いたしているわけでありますけれども、この問題、これからも大きくなりまして、住民からの苦情がさらにふえてくるという状況を考えまするときに、この対策は急務である。放置されてしまった車両について、今後も放置車両へ放火する問題が懸念されるわけでありますけれども、現在の法体系でいわゆる放置車両を処理する、それが放置されてから大体平均が、正確なデータかどうかわかりませんけれども、放置されてから一年から二年はそこに置きっ放しになる、そんな状況なわけでありまして、今後国としてどのように取り組んでいかれるおつもりでしょうか。

西野大臣政務官 放置自動車につきましては、単なる放置をされた自動車というだけのことではなくて、樋高先生がお示しのようにさまざまな問題を実は起こしておるところでございます。

 従来までは、自動車が放置されましても、放置する前にリサイクルが十二分に行われておりまして、廃車になった自動車をそういう業者に渡しますと有償で引き取ってくれる、こんなことがあったのに今はもう逆でございまして、費用がかかってしまう、こんなことから路上等々に廃棄をされる事態が惹起をしてきたわけでございます。そのために、このことが、自動車にあります廃油とか、あるいは景観上もそうですし、今、横浜でありましたようなそういう火災とかいう防犯上の問題とかいろいろな問題が実は起こり、重大なことだというふうに認識をしておるところでございます。

 これを適正に処理するには、まず国民のといいますか所有者のモラルが大事だというふうに思っておりますし、あわせましてまた、社会がそれを許さないというものも形成する必要があるのかなというふうに思っております。いずれにしても、そういう事態になりますと、法に従って取り締まり、撤去等の命令が厳格に行われるようにすることが大事だ、このように思っておるところでございます。

 御案内のとおり、今いろいろ検討しておりますいわゆる自動車のリサイクル法がいずれ俎上に出てきまして先生方の御議論に付したい、このように思っておるところでございますが、いわば車自身のリサイクルのシステムがしっかりと確立されるということが大事なことだ、このように思っておるところでございます。

 要は、放置されました自動車につきましては、自動車工業会それから外車の輸入業者あるいは販売会社等々の協会が相寄って放置処理に対する協力会を形成していただいておるわけでございまして、そういうところから市町村に対して寄附いたしまして当該の市町村の手によって放置自動車を回収する、こういう手だてになっておるところでございます。

 そういう中で、先ほども申し上げましたとおり、問題は所有者のモラル、そして改めて、自動車のリサイクル法の一日も早い制定を見、その実効が上がるように努めていくべきだ、このように思っております。全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。よろしくお願いします。

樋高委員 きょうはさまざまなテーマにつきまして取り上げさせていただきました。本当にありがとうございました。

大石委員長 青山二三君。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。ただいまも御質問が出ておりましたけれども、私の方からも狂牛病の問題について少しお伺いをしておきたいと思います。

 先週の十八日から食肉牛の全頭検査が始まりましたけれども、さらに感染源と思われております肉骨粉などの動物性飼料、肥料の製造販売が一時的に全面停止され、家畜へ与えることを法律で規制する方針も打ち出されましたので、とりあえず拡大を防ぐ対策はとられた、このように思っております。

 しかしながら、問題はその後でございます。農水省は環境省に対しまして、レンダリング業者が保持する余剰となった肉骨粉等の隔離、そして焼却を要請いたしました。また、厚生労働省は屠畜場から排出される牛の脳や脊髄などの危険部位についても焼却を義務づけたために、屠畜場から恒常的に廃棄物が出される事態になっております。

 このように、大量に発生いたしております新たな廃棄物について、どのような対策を現在実施されているのか、これは副大臣にお伺いをしたいと思います。

風間副大臣 経過は今青山委員がおっしゃったとおりでございますけれども、環境省としましては、十月の二日に、まず肉骨粉の処理に関して市町村に協力を要請させていただきました。同時に、十月の十九日にも、市町村においての肉骨粉の焼却処理を検討していただきますよう依頼をさせていただきました。

 あとは産業廃棄物の方になってまいりますが、動物系廃棄物、いわゆる屠殺場から出されたものにつきましては、十月の十七日政令改正を行いまして、明日十月二十七日から産業廃棄物として施行していくようになっているところであります。

 それからまた、肉骨粉をセメント原料として廃棄物処理法の再生利用認定制度の対象になるようにも十月十五日に所要の改正を行わせていただきました。

 あと、いわゆる死んだ牛は、今までは農家で亡くなった牛はほとんどレンダリング業者に行っていたわけでありますけれども、このレンダリング業者、いわゆる化製業者の方々がそれができなくなりましたから、死体牛の処理も実はこれから問題になってくるところでございます。これも産業廃棄物の処理として行っていかなければならないかなというふうに思っておりまして、これからそのことについてもきちっとさせていかなければならないかなというふうに思っておるところでございます。

青山(二)委員 今、副大臣から御答弁いただきましたように、全国の食肉処理場から出る牛の内臓や骨は大変なものでございまして、一日に四千五百二十トンにも上ると言われております。レンダリング業者が引き取れば、飼料原料ということになって資源になるわけでございますが、そうでなければすべてが廃棄物になってしまうわけでございます。その処分方法や捨て場をめぐって、イギリスでは環境問題として大変な問題になっているようでございます。我が国でも、肉骨粉の流通禁止によって、各地の食肉処理場では解体処理後の骨や内臓が大量にたまってしまっているわけでございます。

 狂牛病の影響は、処分が厄介な動物性のごみの処理という新たな問題にまで発展をいたしております。既に都内の肉骨粉製造業者は、たまった肉骨粉を焼却する場所が見つからず、その敷地内に引き取り手のない肉骨粉が山積み状態だということでございます。また、福島県内の食肉センターでは、牛の脳などを引き取り、焼却する施設を探しましたものの、すべて引き受けてくれるところがなく、見つからずに大変な思いをしているというのが現状のようでございます。

 環境省が先日発表いたしました全国調査によりますと、肉骨粉の焼却を受け入れる市町村は全体の一五%にとどまっていることが明らかになったわけでございます。秋田、埼玉、新潟、京都、奈良、鳥取、山口、徳島の八府県は焼却を受け入れる施設が全くございません。こうした事態に対しまして、環境省はどのような取り組みを考えておられるのか、御説明をいただきたいと思います。

岡澤政府参考人 御指摘の調査結果、今のとおりでございまして、一五%程度の市町村しか受け入れる余地がないということでございます。

 ただ、これは、十月の四日、肉骨粉を処理しなければならないというふうに決まって間もなく、すぐ調査したときの状況でございまして、そのときに、肉骨粉をどのように焼くかとか、どのように扱うかということについて詳細な情報は提供できておりません。そういう中で市町村が、一般廃棄物処理施設において処理がどこまでできるかということをとりあえずの速報値として回答したという数字でございます。

 十月の十九日付で、肉骨粉の運搬方法や焼却方法についてのもうちょっと詳細な技術情報を市町村に改めて提示いたしまして、そうしたやり方で焼けるのかどうか、その場合、余力がどうなのかということを改めて調査している段階でございます。

 そういうことによりまして、私ども聞いてみますと、かなり間違った状況といいますか、判断が市町村の中にもあるようでございますし、判断ができないというふうなことを言っている市町村もあるわけでございますので、こうした技術情報を正確に提供することによってもう少し対応できる市町村の数がふえてくるというふうに期待しておるわけでございます。

 それから、肉骨粉の排出量といいますか、年間大体四十万トンと言われておりますけれども、先日、農水省の方から、牛以外の豚とか鶏のみを原料とする肉骨粉については流通を解禁するということになりまして、これが量的には大半といいますか、七、八割になりますので、燃やさなければならない肉骨粉の量というのはかなり減ってくるだろうと思います。

 それからまた、セメント会社にも今打診中でございまして、幾つかのセメント工場では肉骨粉の処理を引き受けていただけるというようなことになると思いますので、間もなくそういう体制が整って肉骨粉の処理が流れ出すというふうに考えております。

青山(二)委員 ただいま御答弁がございましたように、食肉処理場から排出されます肉骨粉の国内の製造量は年間四十万トンと言われているようでございます。そして、この焼却を可能とする二百三十施設で一日に焼却できる量は三百九十五トンにすぎず、年間では三十万トンの焼却先が不足することになってしまうわけでございます。

 ただいまもお話しいただきましたけれども、特例として、再生セメントの材料として使えるように制度の改正を行っていただきましたけれども、さて、そのセメントを製造する際の肉骨粉のリサイクルの安全性についてはどのようにお考えになっておられますか、伺いたいと思います。

岡澤政府参考人 肉骨粉の焼却処理ということでございますが、仮に変性プリオンが入っていた場合でも、一般的には八百度C以上で燃焼させることで安全なものに、有害性がなくなるというふうに言われております。セメントのキルンといいますのは、焼成炉といいますのは千四百度以上の高温でセメントの原料を焼成するという炉でございますので、この中に肉骨粉を入れた場合、当然、その千四百度で燃焼いたしますし、無害化されるというふうに考えていいと思います。

 それからまた、燃え残ったものは、これは灰、セメントの原料になるカルシウムなどでございますので、これはセメントの原料としてそのまま使えるということでございまして、特にセメントの品質、安全性というところで問題が出るということもないというふうに承知しております。

青山(二)委員 セメントをつくるということで、どれだけの今後消費があるのか、どれだけのものがつくられて、どれだけ消費できるのかということが関心の的となってくるわけでございますけれども、そのあたりも注意深くこれからも見ていただきたいと思っております。

 それから、肉骨粉には廃棄物のリサイクルという側面がございます。循環型社会の構築が叫ばれている中、レンダリングに見るように、畜産においてでき上がっている循環システムが今回の狂牛病騒動で一時的にせよ破壊をされまして、ごみの増大につながるなど他方面への影響が大きいわけでございます。

 イギリスでは、一九九六年、すべての家畜に肉骨粉を与えることを禁止いたしまして、肉のリサイクルの輪を断ち切っております。そこで、肉骨粉の生産業者は牛の焼却業者にさま変わりしたと言われております。

 今回、我が国でもすべての牛の残渣、肉骨粉を焼却することにいたしましたが、肉骨粉を肥料として使用してきた農家などからは、安全な肉骨粉を早く復活使用させてほしい、そういう声も上がっております。過日、農水省は鶏と豚を使った肉骨粉につきましては、鶏と豚用の飼料として認める方針を明らかにいたしておりまして、十一月には解禁になりそうでありますが、牛については規制がかけられたままの状況でございます。今後、この肉の残渣、そして肉骨粉のリサイクルについてはどのように取り組まれるのか、お伺いをしたいと思います。

風間副大臣 なかなか難しいと思います。何が難しいかって、リサイクルをして、どういうものに製品としてつくっていくかということが難しいかなというふうに思っておるわけであります。

 どっちにしても、肉骨粉の処理、焼却は、まず、少ないとはいっても、さらに既存の施設でやっていただけるようにいろいろなやり方があるわけでありますから。やり方というのは、焼却の炉の温度が一定程度上がらないところについては、具体的にこのぐらいの量を入れていけば大丈夫だとか、いろいろな細かなことも含めてきちっとやっていただけるように引き受けていただくことが必要でありますし、そのためには、都道府県あるいは市町村の受け入れの情報をきちっとこちらがつかませていただいて、もう一方では、セメント焼成炉での受け入れのための措置を、今セメント事業者で産廃の業の許可を持っていらっしゃるところが十四カ所ぐらいありますから、それをさらに拡大していけるようなことも考えなきゃなりませんし、そういう意味では、これらの廃棄物の焼却が行える場所の確保を、必要な情報提供を行って協力を要請させていただいて頑張らなきゃならないかなというふうに思っております。

 そういう意味で、それが一〇〇%できないにしても、ある程度リサイクルができる、しかし、残ったものをどうするかという問題、まだ引き続きこれは大きな課題でございますから、厚生労働省、農水省と連携をして、強力にこの処理をリサイクルのものに持っていけるように、していけるようにしていきたいというふうに思っております。

青山(二)委員 本当にこの問題は、たった一頭狂牛病の牛が発見されたということでもう大騒ぎになっているわけでございまして、我が公明党でもすぐその対策本部をつくりまして、いろいろな業界の方、団体の方からお話を聞く中で、もう困った困ったの話で明け暮れておりますので、これから国民の安心と安全確保のために、政府一体となった取り組みを今後ともしていただきますようにお願いをしておきたいと思います。

 それでは次に、廃棄物処理施設の整備についてお伺いをしたいと思います。

 今回の問題でも注目されておりますのが廃棄物処理施設の整備でございます。一九九七年の廃棄物処理法の改正で、来年十二月からダイオキシン排出規制が、現在の八十ナノグラム以下から規模別に一から十ナノグラムと本格的に規制されるという相当厳しいものになっております。ところが、現在このダイオキシンの新たな排出基準を達成していない自治体の焼却炉は既存の二割以上の三百六十施設もあることが、四月時点の環境省調査で明らかになっているわけでございます。

 また、朝日新聞の調査では、全国の産業廃棄物焼却施設の中でこのダイオキシン排出規制に対応できるのは、三十都道府県の二千八十施設のうちわずか二百四十九施設、一割ほどしかございません。

 また、産業廃棄物焼却施設を見てみますと、一九九七年の廃棄物処理法の改正でダイオキシン濃度基準が定められました際、約五千あった焼却施設が三割減っておりまして、来年の新基準ではさらに減ることが予想をされております。新基準に対応できる施設がほとんどない地域では産廃処理ができなくなる不安を抱えております。

 また、各自治体の家庭ごみを燃やす焼却炉につきましても、来年の期限までに対策をとらないと焼却炉の操業が禁じられまして、家庭ごみが町にあふれかねない状況でありますが、自治体はその費用を工面するのに大変頭を悩ませているようでございます。

 来年十二月からの新基準に対応するために、早急に焼却炉の新設や改修が必要であります。それはまた、今すぐにでも取りかからなければならない、間に合わないというところでございます。

 公共投資の削減など、大変に厳しい時期ではございますけれども、十分な予算を確保して、必要な施設の整備に取り組んでいただきたいと思っているわけでございますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

川口国務大臣 平成十四年度のダイオキシンの基準に合致する炉を持つために、ただいま市町村につきましては整備を一生懸命にやっているところでございまして、十四年度の予算及び今年度の補正予算におきましても、そのための国の補助についてのお願いは財務省にいたしているところでございます。

 それから、産廃の処理、産業廃棄物の焼却施設につきましても、ダイオキシン類の規制に適合できない焼却炉の休廃止が進んでいるということで、委員おっしゃられましたように、焼却が非常に難しくなっているという現状がございます。また、ダイオキシンが産廃の焼却炉から出るということで住民の皆様の不信感が高まっているということで、新しい立地が困難になっているということもございます。

 産廃につきましては、平成十二年度の法改正におきまして徹底した排出事業者の責任の強化を図りまして、産廃処理に対する信頼を回復するということを考えました。優良な産廃処理施設の整備に対する融資、債務保証、税制上の措置等の支援制度の拡充、それから、排出事業者責任を補完する都道府県等の公共関与による施設整備を促進すべく、廃棄物処理センターの制度の拡充も図ったところでございます。

 こうした制度改正を踏まえまして、民間事業者の処理を補完する廃棄物処理センターによる施設整備に対する国庫補助を十二年度から開始をいたしておりまして、産廃焼却施設の整備の促進に努めてきております。

 また、ことしの五月に定めました廃棄物処理法に基づく国の基本方針の中では、市町村の全連続炉におきまして、あわせて一般廃棄物と一緒に焼却処理をするということを市町村が検討することも明確に位置づけてございまして、市町村の協力を得られるように努めてきております。

 このような形で、環境省といたしましては、あらゆる施策を講じてきているところでございますので、今後とも引き続き最大限の努力をしていきたいと考えております。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 それでは、不法投棄の問題について、先ほど来いろいろと御質問も出ていたようでございますが、私の方からも質問させていただきたいと思います。

 循環型社会の構築のための第一歩として家電リサイクル法がことしの四月に施行されまして、間もなく半年になろうとしております。ことし四月から八月の対象となる家電四品目の不法投棄の現状を見ますと、不法投棄台数が昨年よりふえた自治体は百五十五となりまして、約五六%の自治体で不法投棄が増加しております。四品目の不法投棄台数では一万一千六百十三台となっておりまして、去年の同期に比べまして約一九%もふえていることが環境省の調査で明らかになっております。

 この不法投棄が法施行前より増加している現状につきましては、大臣、どのように御認識しておられますでしょうか。

川口国務大臣 ことしの四月に家電リサイクル法が施行されまして半年になります。約四百五十万台の廃家電が引き取られておりまして、おおむね順調に推移をしているのではないかと私どもは認識をいたしております。

 廃家電の不法投棄でございますが、委員がおっしゃられましたように、前の年度と比較ができる全国の二百七十五の自治体で見ますと、廃家電四品目全体の不法投棄台数としては一千八百七十七台、約一九%の増加が見られます。

 ただ、これをよく見てみますと、増加した自治体もございましたけれども、減少をした自治体もあった。それから、月ごとの増減数が一けたである自治体が大半であるということ、それから、四月に法が施行されまして、それ以降、廃家電四品目全体の不法投棄台数が月を追って減少をしてきていて、八月には前年同月を下回るに至ったということ、品目別に見ますと、エアコンはむしろ減少いたしまして、冷蔵庫、洗濯機ではほとんど変化がないということ、こういった状況が見られまして、施行後まだ五カ月と日が浅いということも考えますと、一概に不法投棄が増加をしたという判断を下す状況にはないというふうに考えております。

 今後とも、引き続きその動向について注視をしていきたいと考えます。

青山(二)委員 ただいま大臣に御答弁いただきましたように、それほど心配することはないというようなことで受けとめてよろしいのでしょうか。

 現実、いずれにしても、私どもから見ますとふえている。これはどうしてかといいますと、不法投棄された家電製品のリサイクル費用はやはり自治体が肩がわりを余儀なくされておりまして、不法投棄を見越して予算を計上した自治体も、予算の範囲内で足りるかどうかを大変心配しているというようなことでございます。リサイクル費用を商品購入のときに取るようにすれば不法投棄が減るのではないか、何とか検討してほしいというようなことで、法改正の必要性を訴える自治体もございます。

 またさらに、日本消費者連盟などが七月に開設いたしました家電リサイクル法問題一一〇番によりますと、廃家電を自分の所有地に不法投棄されたために、自治体に撤去をお願いしましたところ、処理費用を請求されて憤慨しているという相談が相次いでいるようでございます。このような私有地の小規模な不法投棄を処理するような明快なルールは今のところございません。それで、各首長の裁量にゆだねられている状況でございまして、環境省は、今後、こうした問題に対しましてはどのように対応をしていかれるのか、お伺いをしておきたいと思います。

岡澤政府参考人 家電リサイクル法は平成十年に制定された法律でございますけれども、御指摘のように、排出時の負担という方式でリサイクル費用を徴収しているわけでございます。今検討しております自動車リサイクル法が購入時負担、新車時負担ということで、不法投棄をなくす上では販売時負担にした方がいいんじゃないかという声が前からあるのは承知しております。

 ただ、家電製品につきましては、既に販売されて現に家庭で使用されている製品の台数が三億台を超えるというふうに非常に多いということ、しかも、自動車の場合には車両登録というような制度がございますけれども、電気製品の場合には、どこで、だれが、どのぐらい使っているかということが全くわからないというふうな事情もありまして、さかのぼって費用を徴収するということは難しいということから排出時負担という方式をとったわけでございます。家電という製品の特性から見れば、現在のように、リサイクルの費用を排出時に負担していただくという方法でしっかり回していくということがいいことではないかというふうに考えています。

 ただ、家電リサイクル法の趣旨とか関係者の役割分担、あるいは消費者負担の必要性等についての認識が必ずしも十分ではないというふうなことでもあると思いますので、今後ともそうした意識啓発、普及啓発に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、集められた廃家電製品が不法投棄されることがないように、ここは管理票制度を通じまして廃家電の回収を行う小売業者等の不正行為に厳しく対処していくということで、そちらの方はしっかりと抑えていきたいというふうに考えております。

青山(二)委員 今も御答弁がございましたように、ごみの発生を極力減らして資源を大切にするという循環型社会へ向けました諸制度が有効に機能するためには、まず不法投棄などの環境犯罪を厳しく取り締まることが前提となるわけでございます。

 こうした事態に期待されますのが、十月から全国九カ所に配置されました地方環境対策調査官、いわゆる環境Gメンであります。ごみゼロの循環型社会の構築に向け、我が公明党の主張を取り入れて環境省が設置いたしました環境Gメンに各方面から期待が高まっております。この環境Gメンの広域的な監視活動が強化をされ十分に機能すれば、不法投棄の大幅な減少が見込まれることと思われます。

 またさらに、電子モニター制度の試験や、人工衛星を活用した不法投棄監視システムの開発などが予算化されるなど、環境犯罪を撲滅するための作業が現在進められておりまして、環境破壊を未然に防止することが期待されているわけでございます。

 環境循環型社会、ごみゼロ社会への転換を円滑にするためには廃棄物の不法投棄問題を解決することが不可欠でございまして、最後に、この環境犯罪撲滅への大臣の御決意をお伺いいたしまして、時間になりましたので終わりたいと思います。

川口国務大臣 委員がさまざまなことをおっしゃられましたことがすべて今後不法投棄が減っていく社会をつくっていくために必要なことだというふうに考えております。環境省として、さまざまな政策ツールを使いまして、その方向の努力をしてまいりたいと存じます。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

大石委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。

 きょうは、温暖化防止対策をお聞きする前に、緊急な狂牛病対策の二、三の点についてお聞きをしたいと思います。

 廃棄物となった肉骨粉等の焼却処理については、現在三つの問題がございます。一つは、屠畜場から排出される脳、脊髄等の廃棄物処理、二つ目は、レンダリング業者のもとにある在庫及びこれから排出される肉骨粉等の廃棄物処理、そして三つ目に、肉骨粉等をコンクリート原料としての焼却処理がございます。

 そこで、一つ目の脳、脊髄等の廃棄物処理ですけれども、これは産業廃棄物に位置づけられるそうですけれども、牛一頭当たり十五キログラム程度で、一日当たりにいたしまして、一つの県で一・一トン程度が排出されると伺っております。現在、この脳、脊髄等の廃棄物は、その七割が屠畜場の焼却炉で焼却され、その三割が冷蔵保存されていると説明されております。この脳、脊髄等の廃棄物は、当然ながら生ものですから、水分も多い塊で、焼却処理には困難が伴うのではないか、このように思います。

 そこで、現在、脳、脊髄等の廃棄物処理をしている焼却炉は、未燃焼だとか未燃落下物などが起こらなくて、完全燃焼による安全な処理が行われていなければならないと思いますけれども、屠畜場の焼却については厚生労働省の方にお答えをいただきたいと思いますし、それ以外の焼却については環境省に、それぞれお答えをいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

尾嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 特定危険部位につきましては、九月二十七日から食肉処理時におきます除去、焼却を指導してまいりまして、この十月十八日からは、と畜場法の施行規則を改正いたしまして法律上の義務化をしたところでございます。

 今、御質問の中にございましたが、十月の十二日時点で私どもが調査をいたしました焼却の状況によりますと、屠畜場内の焼却施設で焼却をしているというのがおよそ三分の一ぐらいでございます。また、三分の一ぐらいは、屠畜場外で焼却の処理をしている、残りは保管をされておる、そういった状況だというふうに承知をいたしております。

 お尋ねの焼却処理につきましては、異常プリオンが含まれているということもございますので、私ども、専門家の方々にお集まりをいただきまして、その焼却処理については八百度C以上で完全な焼却を行うよう、厚生労働省から都道府県等を通じまして屠畜場設置者に対しまして要請しているところでございます。

 さらに、個々の屠畜場が廃掃法の基準を遵守する、そういった点が非常に重要だというふうに考えておりまして、こういった特定危険部位の焼却につきましては、屠畜場におきますBSE対策上極めて重要な課題と認識しておりまして、今後とも、環境省、農林水産省と連携を十分とりながら、都道府県等に対しまして適正に処理するように指導していきたいというふうに考えております。

岡澤政府参考人 屠畜場内で焼却処理されるもの以外は、産業廃棄物処理業者の焼却施設を用いて処理するもの、それから、一部でございますけれども、市町村で、市町村の一般廃棄物とあわせて処理しているところもございます。

 これらの廃棄物処理法の規定を受けます廃棄物焼却炉につきましては維持管理上の基準が設けられておりまして、廃棄物を燃焼するためには八百度以上で焼却しなさいという規定がございます。特定危険部位を安全に焼却するための条件として八百度C以上で完全燃焼することというふうに言われておりますので、ちょうどこの廃棄物処理施設であれば八百度以上が確保されて完全燃焼ができるというふうに考えているわけでございます。

 また、八百度C以上で燃やされていることをどういうようなことで確認するかということでございますけれども、温度計でその場は見られますが、これは連続的に測定してかつ記録をしなさい、その記録につきましては三年間保存しなさいということになっていまして、そうした、危険部位を燃焼したときの燃焼状況について後でもチェックすることができるという体制になっております。

 ですから、こうした基準を守って焼却施設で焼却している場合には、十分安全に焼却できるものというふうに考えております。

藤木委員 次に、二つ目の肉骨粉等の廃棄物処理ですけれども、これは事業系一般廃棄物に位置づけられるということでございます。その在庫量が三万トンから五万トン、そして、これまで飼料用、肥料用とされた年間四十万トンを焼却処理することになると伺っております。

 この肉骨粉等は事業系一般廃棄物ですから、地方自治体の焼却炉で焼却することになりますけれども、環境省が十九日に明らかにした全国調査では、全国一千五百六十五施設の焼却炉のうち、肉骨粉等の焼却が可能、あるいは当面は可能としたのは二百三十施設であって、全体のわずか一五%でございました。この二百三十施設で焼却できる量は一日合計三百九十五トンで、年間では三十万トンの焼却が不足するということになると伺いました。秋田、埼玉、新潟、京都、奈良、鳥取、山口、徳島の八府県では、焼却してくれる施設はありません。五十六の焼却炉がある埼玉県内では、炉の底が格子状のために肉骨粉が下に落ちてしまう、保管場所に肉骨粉が飛び散り、排水口に流れるおそれがあるなどとして、受け入れるところがありません。

 そこで、まず、八百度C以上で灰になるまで焼却すれば問題はないと説明をされておりますけれども、これは、灰になったそのものを実際に検査して、プリオンの不活化を確認しているといったような明確な安全性が実証されたものなのかどうなのか、環境省にお答えをいただきたいと思います。

岡澤政府参考人 異常プリオンの安全な処理のための焼却ということでございますけれども、これはヨーロッパの方で先行的に進められていて、それを日本でも同じ方法で処理しようということでございますけれども、ヨーロッパでも八百度以上での焼却処理、完全燃焼ということで処理されております。

 また、これはたんぱく質でございますので、八百度C以上で一定の時間をかければ完全に灰になって活性化がなくなるということで、国際的にも確認されているということでございますので、私どもとしては、八百度C以上で一定時間燃焼させることで、異常プリオンについては完全に無害化できるというふうに考えております。

藤木委員 国際的な知見を活用しているということのようでございますけれども。

 さらに、環境省は十九日、「肉骨粉の処理について」の情報提供を行っています。そこでは、「ごみピットにおいては、他のごみと十分に攪拌し、均一化する必要がある。また、受入量については、原則として焼却量の一割以内とする。」「袋や容器のまま、炉に投入する場合は、火格子上のごみの上にまず置くようにし、次の袋や容器をすぐに続けて投入せずに、燃焼状態をみながらごみをその上に置き、時間をおいて次の袋や容器を置いていくというようにごみと交互に投入する」「火格子の隙間からの未燃肉骨粉落下がみられる場合はごみの焼却量に占める肉骨粉の割合を少なくすることで対応するものとする。」などとしております。

 これは、八百度C以下での不完全燃焼や未燃肉骨粉の落下を防止するための情報ですが、それにしても、実際には、埼玉県内でも心配されておりますように、未燃焼や未燃落下物が老朽化した施設では起こり得るものだということでございますね。

 そこで、肉骨粉の安全な焼却処理を確保するためには、炉の老朽化や燃焼の管理などで未燃焼や未燃落下物が起こり得る施設は対象から除外するといった慎重な対応が必要ではなかろうかと思うのですが、環境省、いかがですか。

岡澤政府参考人 肉骨粉については一般廃棄物処理施設で焼却できるというのは、一般論として申し上げているわけでございますけれども、御指摘のように、老朽化した施設や古い型式のものも含めてすべての焼却施設で対応できるのかと言われれば、そうではないというふうに申し上げざるを得ないと思います。

 技術情報を提供いたしましたのも、こうした条件で焼けば安全に焼ける、ですから、そうした条件が整ったところで対応していただきたいという趣旨でございまして、そういう意味では、すべての市町村で肉骨粉の処理をしてくれということではなくて、ああした技術情報で示したような形で処理でき、それがまた安全に管理できるような体制を持ったところに焼却処理をしていただきたいということでございます。

 先週、十九日付でそうした技術情報を送付いたしまして、先ほど、十月四日付の情報では一五%の市町村がオーケーだということで申し上げたのですが、改めて、そういう情報に基づいてもう一度見直してもらって、しっかり焼けるところについては、対応の可否、それから受け入れ量について報告していただくように求めているところでございます。

藤木委員 次に、三つ目のコンクリート原料での焼却処理ですけれども、環境省は、肉骨粉を処理する施設としてセメント事業者の活用を図るため、再生利用認定制度の適用を行うとしております。セメント事業では、現在、一千四百五十度Cの燃焼で年間八千三百万トンの生産が行われているので、安全性の面でも量的な面でも何ら問題はないと説明されております。

 しかし、確かにドイツ、フランスでは行っているわけですが、肝心の狂牛病先進国のイギリスでは、コンクリートの原料にすることは行っていないと伺っております。そこで、コンクリートの原材料化をイギリスが行っていない理由は、業者が経済的に折り合わないからと伺いましたけれども、それにしても、狂牛病の緊急対策だからといって、コンクリート燃焼検査などの実証的に不十分なままで拙速にコンクリート原料にする焼却処理を行うのは、本当に安全上問題はないのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

岡澤政府参考人 今御指摘のありましたように、セメントの焼成炉の中に肉骨粉を投入して処理するという方法は、フランスやドイツでも広く行われているわけでございます。

 仮に狂牛病の変性プリオンが入っていたとしても、八百度Cで一定時間完全燃焼させれば無害化するということでございますが、キルン炉の場合には千四百度以上、これは一番低いところで千四百度でございまして、実際に燃えているところではもっと高い温度だと思います。理論的にそういう高い温度で変性プリオンが生き残ることは考えられないということでございまして、そういう意味では、投入されたものについては安全に処理されているというふうに考えられます。

 ただ、セメントの製品との関係でいきますと、製品の規格との関係がございまして、例えばセメントの原料に肉骨粉を相当多量に投入するということは技術上もできません。多分一%だとかそういうオーダーでしか投入できないと思います。したがいまして、でき上がったセメントにつきましては通常の規格のセメントになるように調整して投入いたしますし、そうした状況であれば、特にまた肉骨粉等の処理がかなりうまくいく方向で対応できるのじゃないかというふうに考えているところでございます。

藤木委員 今、狂牛病対策の処理についての三つの問題点で指摘をさせていただいたわけですけれども、厚生労働省にもう一つお願いをしておきたいと思うのですが、環境省がマニュアルを出しておりますように、危険部位の処理、生もの焼却についても情報の提供が必要だということを私は強調したいと思うわけですね。特に温度を下げるという効果があるわけですから、生ものでありますし、水分を含んでいるわけですから、その点はぜひ安全対策についての指導をしていただきたいと思います。

 いずれにしても、安全性を確実に保証して速やかな処理を行うことに両省は責任を負っていただかなければなりません。処理状況を注意深く見守って、改善すべきことにはすぐ手を打つ、そういう機敏な対応をしていただくようにお願いしておきたいと思います。

 それでは、温暖化問題についてお聞きいたします。厚生省、結構でございます。

 COP6の再開会合は、京都議定書からの米国の離脱と、米国なしでは議定書に批准はしないとする日本の態度を表明したという異常な事態のもとで開かれましたけれども、途上国から成る七十七カ国グループのイランのアサディ大使が二十三日の総会で述べましたように、多国間協力が一国主義に勝利したとも言えるものでした。再開会合は、京都議定書の死文化を阻止するため、EUや発展途上国グループが日本に大幅に譲歩した上で、議定書実行ルールに関するプロンク議長の提案文書を一部修正をつけて合意しました。

 そこで、この最終合意案を日本政府が受け入れたのは、EUが京都議定書の早期発効を求めているそのさなかに、歩み寄りをさっぱり見せない米国寄りの姿勢をとり続けていたのでは国際社会の批判が日本に集中しかねない、そういう危機感があったからではないのでしょうか。大臣、いかがですか。

川口国務大臣 COP6再開会合に臨んだ日本の方針といいますのは、二〇〇二年までの発効を目指して合意に最大限の努力をするということと、それから、アメリカの参加ということは非常に重要なので働きかけるということと、それから、我が国としては国内制度の構築に全力を尽くすということでございました。

 この会合におきましては、オランダの環境大臣であるプロンク議長のもとで京都議定書のいわゆる中核的要素に関する合意が得られたわけでございますけれども、これについての日本の積極的な貢献というのは、国際的にも大きく評価をされたところでございます。

 すべての国が二〇〇二年の発効を目指して合意に努力をしようということで考え方のベクトルが一つの方向になって、それが相互の、それぞれの妥協に対する柔軟性を生み出し、妥協が可能になったものだと考えております。

藤木委員 しかし、米国と日本の異常な態度表明というまさに異常な事態の中で、ともかくも議定書の核心部分を守り、将来の温暖化防止措置の拡充に希望をつなぐというのがEUの姿勢でした。それは、我々が今やっているのは議定書救出作戦ですとEU代表のバルストロム欧州委員が語っていますし、またドイツのトリッティン環境相も、今回、譲歩は受け入れがたい内容だが、合意のため犠牲を払ったと話していることからも明らかだと思います。

 ですから、EUは、科学的根拠も不確実な森林による温暖化ガス吸収という課題でも、日本やカナダの特例扱いの要求を大幅に認めた議長提案に同意をしました。また、温暖化ガス削減目標を達成しない国への罰則規定でも、日本の緩和の要求に譲歩したのではないですか。結局、譲歩をしたのではありませんか。

川口国務大臣 ただいま委員が、アメリカと日本の異常な意見表明とおっしゃったように伺いましたけれども、日本の異常な意見表明というのが、もし私の聞き違いでなければ、何についておっしゃられたのか私には意味がよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、このたびのCOP6再開会合における合意の成立というのは、すべての国が妥協をし、合意に向けて最大限の努力をしたところから生まれたわけでございまして、おっしゃるように、EUも妥協しましたし、途上国も妥協いたしましたし、日本の属するアンブレラグループもさまざまな点において妥協をし、当初の対処方針からは離れた柔軟な妥協をすることによって合意が成立したものだというふうに理解をいたしております。

藤木委員 それは、すべてが対等、平等の立場でそれぞれ歩み寄ったということではありません。

 それに対して、私は思うのですが、日本は、米国の離脱で日本が批准しなければ議定書が発効しない、そういう状況が生まれたことをむしろ最大限に利用して自国に有利な譲歩を最大限引き出す、そういう態度に終始いたしました。ですから、まさに、とにかく最後までとれるだけとるという交渉態度でした。こうした交渉態度は、いわゆるごね得との批判を浴びても仕方がないものだと思います。

 しかし、問題は、こうした日本などのごね得とEUなどの大幅譲歩で合意された温暖化防止対策というのは、結局、排出量取引など市場メカニズムに拡大の余地を残すなど抜け穴を大きくしたことで、温暖化防止対策そのものを後退させたことになるのではないかというふうに私は思いますが、いかがですか。

川口国務大臣 今回の、今回のといいますか、COP6再開会合におきましての合意の成立について、若干手前みそに聞こえるかもしれませんけれども、日本の貢献が最大であったということに対する評価というのは国際的に確立をしていると思いますし、それは、最後の場における日本に対する拍手の多さ、あるいは、私自身もその後いろいろな方に日本の貢献について評価をしていただきましたけれども、そういうことにあらわれているのではないかというふうに私としては認識をいたしております。

 それから、排出量取引等につきましては、これは京都議定書の枠組みの中にきちんと位置づけられている、九七年の時点で合意をされたものでございまして、今回のCOP6再開会合におけるという意味でございますが、合意につきましては、これについての中核的なルールについての合意に至ったものでございます。

藤木委員 それは、述べられていたことの拡大する余地を残したという点で私は申し上げたわけです。

 さらに、議長案の罰則規定に対して、日本は、参加をちゅうちょさせるような罰則的な規定は条約文書になじまないなどと主張いたしました。その結果、目標を達成できなかったことを環境破壊と見て補償を求める条項を削り、合意の罰則規定に、遵守にかかわる手続や仕組みを議定書発効後の最初の加盟国会合で採択するということが盛り込まれることになりました。

 ですから、この日本の主張は、厳しい罰則規定を容認することは米国復帰の道を閉ざすことになるからと言われていますけれども、大臣、そういうことだったのでしょうか。

川口国務大臣 遵守のところにつきましては、COP6再開会合でいろいろ議論がなされたところでございまして、ボン会合におきましては、法的な拘束力のある遵守制度の導入を主張するEU、途上国と、それから、懲罰的なものではなくて、不遵守を回避し遵守を促進する、そういう制度にすべきであるという一部のアンブレラ諸国との間での意見の相違がございました。

 できるだけ多くの国が京都議定書に参加できるような制度とし、京都議定書を二〇〇二年までに発効させようと各国が知恵を出し合った結果、ボンでは、遵守制度の具体的な中身については合意をいたしました上で、法的な性格については、COP・MOP1といいますのは、あの京都議定書の締約国会合、第一回の締約国会合でございますけれども、そこで採択をするという合意をしたものでございまして、これは、ボンにおきます会合のほぼ最後の段階でそれぞれの国が、EUも途上国もそれからアンブレラ諸国も妥協し合った結果の知恵の産物であったというふうに私は考えております。

藤木委員 しかし、日本は常々、米国に対する窓を常に開いて交渉してきたし、これからもそのつもりだ、二〇〇二年の発効に向けてどうするか、米国と協力できる道を探りたいと、米国に追随する姿勢を示してきたのに対して、パウエル国務長官は、日本の取り計らいに感謝すると表明をしておられました。これは、米国を国際的に孤立させない、そういう思惑に立ったものだと思います。

 しかし、日本政府が罰則措置を受け入れられないというのは、米国の議定書復帰に道を開くためという大義名分と同時に、日本国内の削減シナリオが描けていない、そのために森林吸収分を含めても削減義務を達成できるかどうかは不明ととらえる、そういうとらえ方が産業界に根強くあるからだと言われております。

 だからといって、日本政府は、罰則規定問題などで議論を蒸し返して、今月開催されるCOP7での決定文書の作成を妨げるようなことはすべきでない、このように思うのですけれども、大臣、いかがですか。

川口国務大臣 まず、我が国といたしましては、みずからが締結をしますあらゆる条約、議定書につきましては、それそのものが条約、議定書であれば、それそのものに法的拘束性があるわけでございますから、その罰則規定の有無にかかわらず、締結する以上は必ず守るという考えでおります。

 いずれにいたしましても、我が国は、COP7におきまして、遵守制度の法的拘束力の問題も含めまして、ボンでの政治合意を蒸し返す意図は全くございませんで、これはEUも、新聞報道で拝見をいたしましたところでは、全く同じ考えであるというふうに認識をいたしております。そして、二〇〇二年までの京都議定書の発効を目指しまして、政治合意に基づいた法的文書の合意、採択にCOP7におきまして全力を尽くす所存でございます。

 それから、その前におっしゃられましたアメリカの参加につきましては、日本といたしましては、たびたび申し上げているように、環境十全性の立場から、アメリカの参加というのは非常に重要なことであると考えております。これは、日本だけではございませんで、EUも途上国もすべての国がアメリカの参加というのは重要であるというふうに考えているということを付言させていただきます。

藤木委員 それでは次に、ボン合意の内容について伺います。

 運用規則の森林と土地利用の中で、新たに排出量から差し引くことを認める森林吸収の総量は国別に定めた上限値を超えないとして、森林吸収を大幅に認めたことは、削減義務の骨抜きどころか、むしろ排出増を認めることにもなるわけです。

 特に、ハーグ会議での当初案では〇・五%しか認められていなかったものが、日本の温暖化ガス削減義務量への森林吸収分の算入が、先ほどもお話をしておられましたけれども、一千三百万炭素換算トンで、九〇年の総排出量の三・九%に相当する分が認められました。先進締約国全体で五・二%の削減目標のうち二・三%程度を吸収源で達成できるようになったわけです。

 これに対して、スイスの代表団は、何のリーダーシップも示さない日本の姿勢のおかげで議定書の環境面での完全さは全く失われたと問題を指摘しています。これは、明らかに京都議定書からの後退ではないのでしょうか。大臣、どうですか。

川口国務大臣 森林等の吸収源の保全及び強化は、京都議定書におきまして地球温暖化対策の一つとしてきちんと位置づけられているわけでございまして、先般のボンでの合意におきましても、京都議定書の第三条四項に基づきまして各国に認められる吸収量につきましての合意がなされたわけでございます。

 我が国は、既に世界最高水準のエネルギー使用の効率性を持っております。京都議定書の削減目標を達成するために、議定書第三条四項に基づきまして、我が国に必要な吸収量を計上いたすことといたしております。

藤木委員 そこで、運用規則の合意でたとえ日本が三・九%の森林吸収量が認められたからといって、それを目いっぱいに見積もって国内での削減をおろそかにするようなことにはすべきではないと思いますね。

 運用規則の合意内容でも、メカニズムの利用は国内措置に対し補完的であるものとし、したがって国内措置は、第三条一項のもとで数量化された排出抑制の約束達成のために各附属書1締約国によってなされる努力の重要な要素であるとして、排出削減は国内対策を主とし、柔軟性措置は補完的なものであることを再度強調しております。締約国は、第三条第四項での適格な土地利用、土地利用の変化及び林業活動を約束目標の達成に選んでも選ばなくてもよいことになっています。

 ですから、土地利用、土地利用の変化及び林業活動を取り扱う際の原則に従うならば、これらの活動は約束の達成にできるだけ用いないことが必要であろう、私はこう思いますが、大臣はいかがお考えですか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国といたしましては、七〇年代あるいは八〇年代にさまざまな努力を積み重ねて、先進国の中でも、例えばGDP単位当たりのCO2排出量あるいはエネルギー排出量という指標でとりましても、先進国の中で最大と言っていい、フランスが原子力発電をやっておりますのでかなり効率のいいシステムを持っておりますけれども、フランスと同様に最大級の高い効率性を持っているわけでございます。

 したがいまして、京都議定書の削減目標を達成するために、我が国といたしましては、京都議定書第三条四項に基づきまして、日本に必要な吸収量を計上いたすことといたしております。

藤木委員 しかし、ノルウェーは、ボン合意で自国に認められた森林吸収源活動からの除去分三%を利用しないで、実質的な排出削減で約束を達成する、その意思を表明していると聞いております。ですから、日本も約束の達成にできるだけ用いないことが必要だということを私は重ねて強調したいと思います。

 さらに、運用規則の内容で、日本は原子力発電を温暖化対策の中核に位置づける、そのことから、附属書1締約国が議定書第三条一項のもとでの約束達成に原子力施設により発生した排出削減単位を使用することを差し控えるべきことを承認するとの条項に反対しましたけれども、結局、EUの主張で明記されることになりました。欧米の主要国のほとんどが、原発建設計画を持たずに、プルトニウム循環方式からも撤退をしております。むしろ寿命が来た原発は廃棄するという方向です。ドイツでは、二〇二〇年初めまでに原発を全廃することになっています。

 ですから、温暖化対策の中核に原子力発電を位置づけるということは抜本的に見直すべきではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 ボン合意におきましては、クリーン開発メカニズムや共同実施につきまして、原子力発電施設から生じたクレジットの使用を差し控えるというふうになっております。これは、原子力が発電過程におきまして地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないエネルギーであるということを否定するものでは全くございません。

 我が国といたしましては、今後とも、地球温暖化対策に関する基本方針、これは平成十一年の四月九日に閣議決定をされましたけれども、そこにおきまして、「原子力の開発利用については、原子力基本法等に基づき、放射性廃棄物の処理処分対策等を充実させつつ、安全性の確保を前提として、国民的議論を行い、国民の理解を得つつ進める。」とされておりまして、これに沿って温暖化対策を進めてまいる所存でございます。

藤木委員 しかし、その原発偏重のゆがみというのは、エネルギーの自給率がわずか六・二%まで低下するという事態を招いております。加えて、新エネルギーの開発と利用を大きく遅らせる要因にもなっています。風力による発電量を見ますと、日本はドイツの六十五分の一、アメリカの三十七分の一です。エネルギーの研究開発支出に占める再生可能エネルギーの割合も、日本は、国際エネルギー機関加盟国の平均の四割という低さです。

 そこで、自然エネルギーの普及ですけれども、太陽光発電の場合、初期投資が大きく、設備単価も平均価格が出力一キロワット当たり八十三万円で、一キロワット時の発電コストは六十円と通常の二倍ないしは三倍と言われるような高さです。ドイツでは、市民が太陽光発電で起こした余剰電力を電力会社が市場価格に上乗せして買い取る、こういう制度が定められているので、設置家庭はまだ一万軒程度ではあっても普及しつつあるという状況になっています。

 ですから、太陽光発電を日本の場合も自治体が率先して導入をし、ドイツのように電力会社に上乗せ買い取りを求めるような国の制度をつくるということが必要であろうと思いますが、これは経済産業省の方にお考えを聞きたいと思います。いかがですか。

河野政府参考人 太陽光発電の促進に関します我が国の取り組みでございますが、これまで政府は、太陽光発電の設備の導入に際しまして、諸外国と比べても大変手厚い助成措置を行っております。

 これは、一つは、個人で太陽光発電を住宅に導入される方はもちろんそうでございますけれども、自治体あるいはその他公共機関等が、あるいは事業者が導入することに対しても非常に充実した助成を行ってきております。同時に、電力会社においても、太陽光発電から発生する余剰電力については、販売電力料金と同じ価格で購入するという自主的な取り組みを行っているところでございます。

 こうした官民の取り組みの結果といたしまして、この太陽光発電の分野におきましては、我が国の導入量というのは世界一の規模になっております。

 ちなみに、二〇〇〇年におきます我が国の累積太陽光発電の導入量というのは三十一・七万キロワットでございまして、ドイツの十一・四万キロワットに比べまして三倍近い導入量になっているわけでございます。こういうことで、太陽光発電につきましては、これまでの我が国の取り組みというのは相当の効果を上げてきたのではないかというふうに考えております。

 ただ、今後、太陽光発電を初めといたします新エネルギーの二〇一〇年の導入目標、これを実現していくためにはさらなる努力が必要である、こういうことで、本年六月の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書においても指摘されているわけでございますが、電力分野における新たな市場拡大措置の検討ということを、現在、部会の下に小委員会を設けて行っているところでございまして、その検討委員会には、年内にも案が取りまとまるよう精力的な検討をお願いいたしている、そういう状況でございます。

藤木委員 国の施策として進めるということで、検討委員会が早くその方針をお出しになることを期待しております。

 それでは次に、川口大臣は、早期批准に向けて、これから細目や具体的な数値を詰める、国内的に削減目標を達成できるかの確認作業も必要で、批准に向けた準備を始めていくとしていましたけれども、ボン合意を日本の国内制度の整備との関係でどうするのかという問題です。

 九九年度の日本国内の温室効果ガス総排出量は、前年比二・一%増で、九〇年の排出量と比べて六・八%増となっております。今回の合意で森林吸収が三・九%認められても、なお九%を省エネルギーで削減することになります。しかも、中環審での二〇一〇年の排出量予測は九〇年比で八%増となっています。

 ですから、事業所ごとの温暖化ガス排出量報告と削減を義務づけ、経済的措置としての環境税、環境対策税を導入し、再生可能エネルギーの拡大、新環境技術の開発と実用化など、六%削減を達成する担保とする対策を法制度に盛り込む必要があると私は思います。

 そこで、中環審の地球環境部会小委員会の中間取りまとめを見ますと、技術的な観点から見た排出削減ポテンシャルについては、温室効果ガスの排出量を基準年比で、マイナス四%ないしはマイナス七%の水準にまで削減できる可能性があるとしております。種類、部門別の排出削減割合を見ますと、エネルギー起源でCO2がプラス・マイナス・ゼロからマイナス二、非エネルギー起源でCO2などがマイナス一ないしはマイナス二、フロンガスがマイナス三となっております。

 今回のボン合意で吸収源がマイナス三・九%が認められ、京都メカニズムが推進大綱どおりだとしますと、マイナス一・八%程度ということになっていますので、京都議定書の目標の達成は十分可能どころか、吸収源や京都メカニズムの活用を抑えても可能性があるということです。ですから、補完措置に頼らなくても、国内対策として、事業所ごとの温暖化ガス排出量報告と削減を義務づけるなどの規制制度を設けて、六%削減の達成を担保すべきではないかということを一つは伺いたいと思います。

 時間がないので、まとめてあと二つほど聞いておきたいと思うんですが、また、環境対策税ですけれども、これは環境省の報告では、炭素税だけで二〇一〇年時点のCO2排出量を九〇年比で二%削減しようとすると、排出する炭素一トンにつき約一万三千ないしは三万五千円の課税となる。こうした課税でも、税を導入しない場合に比べて国内総生産は軽微な減少にとどまるのだとしております。

 また、報告書は、一トン約三千円の課税による税収約九千億円をCO2排出削減技術・設備導入のための補助金に充てると、九〇年に比べまして二%の削減を達成できるという試算を示しているわけです。ですから、かねてから産業界は、景気に重大な影響があると強く反対しておりますけれども、導入の見通しについてお答えをいただきたいと思います。

 そして最後に、いずれにいたしましても、COP7に当たって、日本政府は、遵守問題などで議論を蒸し返すのではなくて、決定文書の作成を妨害するようなことはせずに、批准の意思をやはり明らかにしていただくべきだと思いますので、その辺についてお答えをいただきたいと思います。三つ重ねてお願いいたします。

川口国務大臣 御質問が三つございましたので、答えの方も三つ分になりまして、ちょっと長くなるかと存じますけれども、御容赦いただきたいと思います。

 まず、最初の御質問について、国内制度のことでございますけれども、現在、中央環境審議会の国内制度小委員会におきまして、京都議定書の目標を達成するために必要な国内制度のあり方について御審議をいただいているところでございます。環境省といたしましては、これらの御審議の結果を踏まえまして、国内制度の構築に総力で取り組んでいきたいと存じております。

 それから二番目に、環境対策税、環境税のお話でございましたけれども、環境税は、価格のメカニズムを通じまして、各経済主体が効率的に温室効果ガスの排出を少ないものにするという手法であるというふうに考えております。一方で、足元の厳しい経済情勢のもとで、環境税の導入について慎重にすべきであるという議論がありますことも十分に承知をいたしております。

 日本といたしましては、京都議定書の二〇〇二年発効を目指しまして、COP7で最終合意を達成すべく、引き続き全力を尽くしていきますとともに、京都議定書の目標を達成するための国内制度のあり方を総合的に検討しているところでございますけれども、環境税導入を京都議定書締結の前提として位置づけなければならないとは考えておりません。

 しかしながら、環境税が導入されれば、より効率的に京都議定書の目標達成を実現できる可能性がございますので、中央環境審議会の専門委員会での御審議をいただくなど、引き続き我が国の実情に合った具体的な制度面の検討を進めていきたいと考えております。

 それから、最後の三番目の御質問でございますけれども、これは先ほども申しましたように、我が国としては、COP6再開会合におきます政治的な合意を蒸し返すという意図は全く持っておりませんで、京都議定書の二〇〇二年発効を目指しまして合意に最大限の努力をするつもりでおります。

 以上でございます。

藤木委員 終わりますが、批准について言明をされなかったのは極めて残念でございます。

大石委員長 原陽子さん。

原委員 社会民主党の原陽子です。最後になりましたが、よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、京都議定書のことについてお聞きをしたいと思います。

 大臣は、一番最初の委員会のときの発言の中で、「二〇〇二年までに京都議定書を締結できるよう、締結に必要な国内制度の構築に総力を挙げて取り組んでまいります。」というふうにおっしゃっていましたが、その京都議定書を二〇〇二年中に発効するために来年の通常国会で国内法を整備していくという方針に間違いはないかということ、これは大臣と副大臣の両方にまず確認をしたいと思います。

風間副大臣 現在、中央環境審議会で京都議定書の目標を達成するための国内制度のあり方を議論されているわけでありまして、何度も何度も、大臣も、また総理もおっしゃっておりますけれども、京都議定書の二〇〇二年発効を目指して、そして同時に、国内対策をきちっとやるんですということを、日本として総力でそれに立ち向かっていくということはもう間違いないわけであります。

 今お話のあった国内制度を構築するということと法律をつくるということの関連は、今の段階で、私は、直ちにそれが法律になる、ならないというふうには言えないと思っております。つまり、中環審で議論しているわけで、審議しているわけですから、締結に必要な制度の具体的な内容はまだ定まっておりませんし、今後、その審議結果を見た上で具体的な制度のあり方を明らかにしていくという意味で国内制度の構築と、こういうふうに話させていただいたわけであります。

川口国務大臣 京都議定書の二〇〇二年の発効を目指しまして、COP7におきまして合意を目指して最大限の努力をいたします。

原委員 私は、この大臣の発言というか方針に間違いがないというふうに受けとめさせていただきたいと思っております。

 その中で、地球温暖化対策推進法を改正していく動きがあるというふうに聞いておりますが、この改正の中で最大の課題は、今、経団連などが自主的に行っている事業者の対策を義務化していくことだというふうに私は思っております。

 経団連自身が今月発表した「第四回経団連環境自主行動計画フォローアップ結果について」、大変立派な名前だなと思うんですが、これによれば、一九九〇年度で見た場合、このフォローアップに参加をした三十六業種が日本全体で排出するCO2は四二・七%に相当する、産業部門とエネルギー転換部門全体の排出量からすると七六・七%を占めているというふうに書かれております。その中で、事業者自身の責任が重大であるということを事業者みずからが理解しているというふうに思われます。

 環境省は、この推進法の改正点の一つに事業者の対策の義務化を考えている、今この事業者のところが、努力するということになっているところを義務化していくというふうに考えていると先日説明を受けました。

 それで、今このように経団連などが自主的に取り組んでいる対策と、今回、その法改正、法の整備というものをどのように関連づけて行っていくのかということをお伺いしたいというふうに思います。

炭谷政府参考人 先ほど来御説明をいたしておりますように、現在、中央環境審議会の国内制度小委員会におきまして、事業者の対策をどのようにしたらいいかということについて御議論をいただいております。それによりまして、京都議定書の目標を達成するための必要な国内制度のあり方について、幅広い見地から総合的に現在審議をいただいているところでございます。

 経団連の自主行動計画につきましては、先ほど原先生から御披露がございましたように、自主的な取り組みとして非常に積極的に推し進めるということで評価される一方、その信頼性、透明性、実効性という面で一層の確保が必要ではないかという議論が中環審の中でなされております。

 環境省といたしましては、これらの審議結果を踏まえながら、京都議定書の目標を達成するための国内制度の構築について引き続き力を注いでまいりたいというふうに思っております。

原委員 そのようにお願いしたいと思います。やはり、自主的に頑張っていらっしゃるこの頑張りと国内法の整備というものをうまく関連づけていっていただきたいというふうにお願いをします。

 あとは、たしか午前中にあった議論だったと思うのですが、事業者自身は、オイルショック以降一生懸命対策に取り組んできた、けれども、民生、運輸部門は努力が足りないというようなことが午前中に議論の中にあったと思います。具体的な数値も述べられていたと思うのですが、一九九〇年度からの比率で見ると、運輸部門が二三%、そして民生部門が一七%というふうに、確かに数値だけの伸び率で見ますと伸び率としては高いことは高いんですが、しかし、運輸とか民生の部門にも事業者が関与しているという点が抜け落ちているというふうに私は思っております。

 そこで、お聞きをしたいのですが、日本の自動車の保有台数のうち、トラックやバスが占める割合は四分の一だそうです。また、七割を占めているのがいわゆる乗用車と言われるものですが、その乗用車のうち、企業が配達や営業に使う、ビジネスユースとして使われている乗用車がどれくらいあるかということと、同時に、民生部門についてもなんですが、民生部門には、家庭で使われる、家庭から排出されるということだけではなくて、銀行やデパートなどの業務部門が排出するCO2も含まれているということなのですが、民生部門の中でも業務部門の割合はどれくらいになるかということをお答えください。

炭谷政府参考人 確かに、今御指摘になられましたように、私ども、産業部門は横ばいというふうな説明をこれまでしてまいったわけでございますけれども、運輸また民生の中には当然事業者が使う部分があるという面についてやはり注目していかなければいけないというのは、御指摘のとおりだろうと思います。

 そこで、運輸と言われているものの中にどれだけ事業者が使っているものがあるのかということを見てまいりますと、まず、貨物自動車からのものが一九九九年で三四%ございます。そのほか、営業用の乗用車、これは二%、バスが二%。純粋にいわば自家用の乗用車、この中には事業者が使われるものも入っているのじゃないかなというふうに思いますけれども、その内訳はございません。これが六二%というふうになっておりますので、いわば運輸部門の中にも事業者も使われる部分があるということでございます。

 また、民生部門につきましても、家庭部門、業務部門とこれは分類されておりまして、ちょうど約半分ずつで、民生につきまして、業務部門が一九九九年で四八%、家庭の部門が五二%ということになっているわけでございます。

原委員 前半の運輸部門のところなんですが、自家用車の中で業務に使われているものの割合というのは出ていない、わからないということでよろしいのですか。

炭谷政府参考人 私どもの持っている資料では、そこまでの分類というものがないようでございます。実際、自動車を登録したりする際のはっきりした分類というものがなされておらないようでございます。

 ただ、いずれにしろ、大変重要な点だろうと思いますので、私ども、何か手がかりはないかという面では、さらに調査をさせていただきたいと思います。

原委員 これは私が聞いた話なんですけれども、いわゆる乗用車の中でも、営業とかビジネスユースに使われているものは七から八割くらいあるという話を聞いたことがあります。これは私も聞いた話なんですけれども、あります。

 今、民生部門についても数値がありましたが、大体半分近くがやはり事業者が絡んでいますよね。ですから、先ほど午前中にあった議論の中に、事業者は、自分たちは一生懸命頑張っている、民生と運輸部門はもっとしっかりやりなさいというような議論だったと思うのですが、そうではなくて、運輸や民生の部門にもやはり事業者とか企業の責任の範囲というのは幅広く及んでいるということをぜひ忘れるべきではない、忘れないでいただきたいというふうに思っております。

 産業界からいろいろな意見もあるというようなことを午前中からずっと議論なされていたと思います。議論の中には、今の経済状況に配慮をして、経済界に配慮をしてこの法整備を進めていくべきではないかというようなこともありましたが、私はあえて、経済界からのいろいろな声にめげずに、京都議定書の発効を目指して法改正をしていっていただきたいということを強く要望させていただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 次は、公害健康被害補償不服審査会、大変長い名前なんですが、これについてお伺いをしたいと思います。

 この審査会は、自分が水俣やぜんそくの公害被害者であると思う人が公害認定を求めたのですが、都道府県に却下された患者が不服を訴え、それを審査する機関だそうです。

 これは水俣病に限ってでよろしいのですが、その審査会が、水俣病についての不服申し立てを受けて裁決するまでにかかる平均年数というものはどれくらいか、お答えをください。

岩尾政府参考人 水俣病認定に関する不服申し立ての裁決件数ですが、平成三年度から平成十三年度まで九十件あります。裁決に要した一件当たりの平均所要期間は約十年と承知しております。

原委員 十年というふうに今お答えをいただいたのですが、公害健康被害補償法は、単なる行政不服審査とは違って、不服を申し立てる人というのは、やはり何らかの症状を持って、公害患者としての認定を望んで、そして、認定しないという結果について、でも、自分はこれだけ体のぐあいが悪いのだということで、不服だから審査会に訴える。ですから、通常の行政不服申し立て以上に迅速な処理がもちろん求められていると思いますし、この法律の「目的」にも、「迅速かつ公正な保護及び健康の確保を図ることを目的とする。」とはっきりと書かれております。

 十年かかると、例えば、二十で訴えた人が三十歳、六十歳で訴えた方は七十歳になってしまうわけですね、認定されるときには。私は、これは決して法律の目的の迅速ということに合っていないというふうに思うのですが、迅速に処理できない理由、または、迅速にできない問題というのは何かというふうにお考えでしょうか。

岩尾政府参考人 公害健康被害に係る不服審査に当たっては、処分を受けた者及び処分をした行政庁の双方の提出書面を精査し、これら関係者の出席のもとに現地で審理を行うなど、慎重な手続を経る必要があるため、一件当たりの審査業務が膨大になります。

 これに加え、水俣病については、認定申請者の高齢化などによって判断の難しい案件がふえていること、平成七年の政治解決前に生じてしまった被処分者と処分庁の間の不信感などから、審理のための円滑な協力が得られにくい案件があることなどの事情で、裁決に至るまでに相当の期間を要する事案があるものと承知しております。

原委員 続けて質問をします。

 審査請求が受理されると、処分庁である都道府県から弁明書が提出されることになっていますが、環境省からいただいた資料の中には、それが提出されないケースがあるというふうに書いてありました。つまり、行政側の原因で処理がなかなか進まない場合があるわけです。

 都道府県からの弁明がなく、そして、不服申し立てが通り患者が認定されたケースというのは今までありますでしょうか。

岩尾政府参考人 審査会の審査に当たりましては、処分庁の判断理由等を明確にする必要から、行政不服審査法に基づいて、処分庁からの弁明書の提出を求めるとしております。したがって、弁明書の提出がない事案を裁決した例はないと聞いております。

原委員 何か、いろいろ質問をしていくうちに、この不服審査会は本当に機能しているのかなというような疑問を持ちながら、続けて質問をさせていただきます。

 処分庁から弁明書が提出されると、今度は不服申立人から反論書が提出されます。不服申立人から反論書が出ないことで審査が滞ることもあるという説明も受けました。

 処分庁からの弁明書というのはとても法的な文書です。だからこそ、この審査会には、医学の専門家の方のほかにも法律の専門家の方もいらっしゃいます。患者さんも、自分の症状を正確に書いてくれるお医者さんや弁護士がいなければ、なかなか法的な反論書というものは書けないのではないかと思います。

 先ほども、患者の方が高齢化なさっているというふうな御答弁がありましたが、要するに、高齢で体のぐあいも悪くてなかなか反論書も書けないと、患者さんは三重の苦しみにあえいでいるかもしれません。そのせいで審査が滞るのであれば、例えば訴訟扶助制度のような仕組みというものを検討していくというようなお考えはおありでしょうか。

岩尾政府参考人 公健法に基づきます不服審査請求では、審査請求人は、代理人に反論書の作成を委任したり、代理人その他の補佐人とともに口頭審理に出席することが認められております。また、実際にもそのような代理人、補佐人を活用されるケースが多いと承知しております。

原委員 では次に、委員の構成のことについてもお聞きをしたいと思います。

 現在、この審査会には六人の委員の方がいらっしゃって、四人が常勤で二人が非常勤です。専門分野でいえば、三人が医学、三人が法律の専門家ということになっています。このような不服審査の目的というものは、公害被害者かどうかの認定を却下された事案に対する、非常に微妙で、非常に医学的に専門的な知識が要る審査だというふうに説明も受けましたし、とても医学的なものだというふうにも説明に来られた方がおっしゃっていました。

 現在ここで認定される患者の種類というものは、水俣かぜんそくかどちらかということになっているそうです。この法律の目的にのっとって迅速に処理をするためには、私は、水俣かぜんそく、どちらかの治療経験があるお医者さんなり専門家が必要だというふうに思っていますが、審査委員の六人中医学の専門家の方は三人です。その三人のうちに、水俣とぜんそくの治療経験のあるお医者さんはいらっしゃるか、お答えください。

岩尾政府参考人 審査会の委員六名中三名が医師でありますが、このうちの二人は臨床経験がおありで、一名はメチル水銀中毒など重金属の専門家でございます。もう一名は小児科、内科でぜんそく等の呼吸器疾患に造詣の深い方と聞いております。また、残りの一名は公衆衛生の専門家で、公害行政の経験もお持ちの方でございます。

原委員 水俣病に限って見ると、この六人の審査委員で、平成十二年度です、たった三件しか処理をされていません。水俣病の未処理数は、実は四十九件も未処理の数がある、たまっているそうです。私は、法律の趣旨から考えて、この処理件数は余りにも低過ぎるというふうに思います。六人審査委員がいて、十二年度ですよ、水俣病はたった三件しか処理をされていないわけです。やはり、体のぐあいが悪くて本当に迅速にこれは処理をしていかなくちゃいけない、対処をしていかなくてはいけない問題の中で、なぜ処理が迅速に進まないかということをぜひ徹底的に調査をしていただきたいというふうにも思います。

 例えば、人事が悪ければ人事をかえるとか、事務局体制が悪ければそれを改革するとか、あと、先ほど、患者のサポート体制ということも幾つかおっしゃっていましたが、もっとサポートが必要であればその改革をしていくなど、私は、いずれにしても、余りにも未処理件数と処理件数、未処理件数がこんなに大きくて、処理件数が余りにも少ないということに非常に驚きましたので、ぜひ、なぜ迅速に進まないかということを徹底的に調査をしていただきたいというふうに思いますし、できれば、その調査結果を私は環境委員会にも報告をしていただきたいというふうにも思うのですが、どうでしょう、委員長。

大石委員長 委員長は答えることができませんで、どなたに御質問されるか、決めてください。(発言する者あり)

原委員 それでは、大臣に、本当に命にかかわる問題だというふうに思いますので。

岩尾政府参考人 公害健康被害補償不服審査会は、公健法上の審査請求を処理する機関でございまして、委員は独立して職務を行うとされております。個々の案件はそれぞれ難しい問題を含んでいるというふうに考えております。

 おっしゃった趣旨、公健法の趣旨も踏まえまして、できる限り迅速な審査を行うということが望まれますので、私ども事務局でございますので、御指摘の点につきましては、その旨を審査会に伝えたいというふうに考えております。

原委員 先ほども申し上げましたが、本当に人の命にかかわる案件だというふうに思いますので、ぜひ、なぜ迅速に進まないかということを徹底調査して、そして、なるたけこの法律の趣旨に合ったものになるようにしていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、地域指定の解除というものについてお尋ねをいたします。

 これは大気汚染の方なのですが、昭和六十二年にこの法律の改正が行われて、大気汚染地域である第一種地域のすべてである四十一地域が指定解除されたというふうに説明を受けました。その地域指定が解除されたので、今は新しい患者の認定は行っていないそうです。しかし、厚生労働省からもらった資料を見ますと、ぜんそくの患者さんというのは減ってはいないですよね。やはり年々ふえております。

 例えば、平成二年には八十五万人近くだったのが、平成十一年には百万人。とにかく、公害患者は、この地域解除をしたということで新しい患者認定はしていないということで、あたかも公害患者が減ったような認識なのかなというふうに受けとめるのですが、決してぜんそく患者というものは減ってはいません。名古屋や尼崎の公害訴訟の判決等々も出ておりますので、私は、今、政府として改めてこの道路公害というものを目的としたというか、その道路公害による地域指定というものを検討していただきたいなというふうに思うのですが、いかがお考えでしょうか。

西野大臣政務官 公健法で指定をされました第一種地域につきましては、昭和六十一年に中央公害対策審議会の答申で明確に言われておりまして、それは、現在の我が国の大気汚染は、ぜんそく等の疾病の主たる原因をなすものとは考えられないという見解が示されました。それを受けて、地域指定の解除を昭和六十三年三月に行ったところでございます。

 環境省といたしましては、この大気汚染と健康の影響という問題につきまして、今後ともこの調査を進めていく必要があるというふうに思っておりますが、要するに大気汚染とぜんそくは、有症率で見ますと、有意な相関関係が認められない、こういうことが答申をされておるわけでございます。とはいえ、その後ぜんそく患者が多いことも承知をいたしておるところでございまして、そのことが大気汚染とのかかわりにどうあるのかということも、関係の省庁とも連絡をとりながら、あるいはその患者さん等と周辺の人たちの健康相談、診断等々も行いながら、十二分に対処していきたいというふうに思っております。

原委員 ありがとうございます。

 それでは、最後の質問に移りたいと思います。

 がらりと話題は変わるのですが、先日、環境省は、「日本の里地里山の調査・分析について」という中間報告をまとめられて発表をされました。このことについて質問をしたいと思います。

 この報告書の中で、里地里山は国土の四割を占め、そこに日本における絶滅危惧種が半分以上生息していることがわかったというふうに報告をされております。私は、これは大きな発見だというふうにも思いますし、その地道な調査とか分析を環境保護団体や活動団体と一緒に行ったことを私は大きく評価をしたいというふうに思っています。

 ただ、この中間報告の結果というものは非常に危機的な状況を示しております。なぜかなという原因を考えたときに、その一つは、自然環境を守るべき法律が純粋にそうなっていないからではないかというふうに思いました。

 公害対策基本法には、生活環境保全は経済発展と両立する範囲で行うという趣旨の、いわゆる経済調和条項があったというふうに聞いています。しかし、この経済調和条項は、一九七〇年の反公害世論の高まりで、公害国会において削除されたというふうに聞いています。これは私の生まれる前の話ですが、そういうことだそうです。ところが、自然公園法とか自然環境保全法、そして絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律には、いまだに経済調和条項が存在しています。例えば、財産権の尊重及び他の公益との調整といったような感じで、まだ経済調和条項が存在をしています。

 生物やその生息地をどう保全するかということは、民有地とのぶつかり合いだというふうに言われております。しかし、現在では何かメダカさえも絶滅危惧種だというふうに指定されている時代に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の中に所有権や財産権の尊重ということが書かれていて本当にいいのかどうかということです。どうすれば生息域が守れるかという議論がもっともっと必要ではないかというふうに思います。

 これは実は前置きなんですが、環境省、今年度末を目指して生物多様性国家戦略の見直しが行われるというふうに聞いております。今回の里地里山の調査結果を踏まえて、より実効性のある国家戦略が策定されるというふうに私は理解しておりますし、そのように期待もしております。前回の国家戦略は、環境保護団体からは、各省庁が好き放題書いた施策を切って張っただけだと、非常に厳しい評価を得ているそうです。

 例えば、前回の国家戦略の中の第六節のところだったと思います。多分これはその当時の建設省が書いたのではないかなというふうに思うのですが、文章が長いので全部は読みませんが、その「砂浜の保全」のところを見ますと、要するに、砂浜が、海岸が侵食されていくことが問題であるというふうに書いていまして、その原因を明らかにしていくというようなことが書いてあるのです。

 一般的には、海岸が侵食されていく、砂浜が侵食されていく理由というのは、建設省がつくるダムが原因だというふうに言われています。そうなんだけれども、こういったところの文章では、海岸が侵食されていくのが問題だとしか書いていなくて、それは実は、山とかにつくられたダムのせいで山から砂が供給されなかったからというようなことは書いてないわけですよね、こういうところに、その原因は何かということを。

 ですから私は、今回はこういうような文章ではなくて、今回、生物多様性国家戦略の見直しが行われる中で、ぜひ環境省が主導権を握って、生態系をどう守っていくかという視点でつくっていただきたいというふうにも思っていますし、せっかく里地里山の調査で、本当にこれはすばらしい調査というか、大発見だったと私は思いますので、こうした調査の分析とかを生かすためにも、ぜひ環境省主導でこの戦略の見直しを行うということを私は今ここで大臣に約束をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 里地里山などの生態系の保全を含む生物多様性国家戦略の策定に当たりまして、環境省にエールを送っていただいたことに感謝を申し上げます。

 この新しい生物多様性国家戦略は、先日、十月の十日に中央環境審議会に対して諮問をいたしたばかりでございまして、今年度末を目途に見直す予定でおります。

 今後、審議会で議論をしていただきまして、それから関係各省、国民、NGOの幅広い意見を踏まえまして、当然パブリックコメントにも出すことになると思いますけれども、環境省といたしましては、里地里山の重要性、それから具体的にどう取り組んでいって保全をしていくかということについて、その方向につきまして積極的に盛り込んでいきたいというふうに考えております。応援をしていただきたいと思います。

原委員 大臣の積極的な御答弁、非常に私もうれしく思いますし、ぜひこうした調査、または自然を守っていくということで頑張っていただきたいというふうに思います。

 最後に、済みません、大臣に一つお願いがあります。

 おとといなんですが、私は熊本県の川辺川ダムの予定地に視察に行って、現地の方々からいろいろなお話を聞いてきました。この川辺川ダムの事業というのは、昭和四十年代に始まった事業で、いわゆる法アセスというものは行われていません。

 しかし地元の、現地の方々からのお話の中で、この地域には七つのクマタカが生息していて、日本で三例目という大変珍しい目の退化したナミハグモ、私、ちょっとどんなものか見たことがないのですが、それが日本で三例目というので、非常に珍しいのだと思います。それが確認されるなど、二千七百十一種類の豊かな生物相を持つといった本当に自然環境豊かな場所です。私も現地に行って、本当に山奥のすごく自然のあふれるいい場所だなというふうにも思いました。

 国会には、地元の市民団体などから、十五万人の署名を集めて、環境アセスの実施を求めて請願を行います。それなので、私もおととい川辺川ダムに行ってきたということもありますし、ここでやはり公共事業を見直すということも必要になってくる時代でもあると思います。ですので私は、川口大臣からぜひ、扇千景国土交通大臣に環境アセスメントを行うようにお願いをしていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをします。

 何かお答えをいただけますか。

川口国務大臣 これは、委員おっしゃられましたように、かなり前に、委員が生まれる前に始まった話でございまして、そういう意味では、法的なアセスの制度のもとでアセスが行われたということではございませんけれども、事業者が環境保全という観点からはきちんと調査を行っているというふうに私どもは認識をいたしております。

原委員 でも大臣、やはり今本当に、二十一世紀になって、環境とか自然の保全とか、そういうことを新たにまた考え直すべき時期だというふうに思いますので、多分、扇大臣ともお話をする機会があるかと思いますので、ぜひ扇大臣に法環境アセスメントをやってくださいと、やりなさいというふうにお願いをしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 最後に要望して終わります。ありがとうございました。

大石委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十分散会




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