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第6号 平成14年4月2日(火曜日)

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平成十四年四月二日(火曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 大石 正光君
   理事 熊谷 市雄君 理事 西野あきら君
   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君
   理事 奥田  建君 理事 牧  義夫君
   理事 西  博義君 理事 樋高  剛君
      小渕 優子君    亀井 久興君
      木村 隆秀君    小泉 龍司君
      小林 興起君    谷田 武彦君
      西川 公也君    原田昇左右君
      三ッ林隆志君    山本 有二君
      桑原  豊君    五島 正規君
      近藤 昭一君    津川 祥吾君
      田端 正広君    武山百合子君
      藤木 洋子君    金子 哲夫君
      西川太一郎君
    …………………………………
   参考人
   (早稲田大学法学部教授) 大塚  直君
   参考人
   (大阪産業大学人間環境学
   部教授)         村岡 浩爾君
   参考人
   (構想日本代表)
   (慶應義塾大学総合政策学
   部教授)         加藤 秀樹君
   参考人
   (神奈川県環境農政部技監
   )            梶野  忠君
   環境委員会専門員     飽田 賢一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月一日
 辞任
  原  陽子君
同日
            補欠選任
             西川太一郎君
同月二日
 辞任         補欠選任
  菱田 嘉明君     谷田 武彦君
  小林  守君     桑原  豊君
  鮫島 宗明君     津川 祥吾君
同日
 辞任         補欠選任
  谷田 武彦君     菱田 嘉明君
  桑原  豊君     小林  守君
  津川 祥吾君     鮫島 宗明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 土壌汚染対策法案(内閣提出第二七号)


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     ――――◇―――――
大石委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、土壌汚染対策法案を議題といたします。
 本案審査のため、本日、参考人として、早稲田大学法学部教授大塚直君、大阪産業大学人間環境学部教授村岡浩爾君、構想日本代表・慶應義塾大学総合政策学部教授加藤秀樹君、神奈川県環境農政部技監梶野忠君、以上四名の方に御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にしてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序でありますが、大塚参考人、村岡参考人、加藤参考人、梶野参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。
 それでは、大塚参考人、よろしくお願い申し上げます。
大塚参考人 大塚でございます。
 本日は、土壌汚染対策法案について、法律の観点から簡単に三つほどの点について申し上げておきたいと思います。
 まず第一に、今般の法制化の意義、それから第二に、この法案におけるリスク低減措置の実施主体、費用負担の問題、第三に、土壌汚染情報の取り扱いという三つの点について申し上げたいと思います。
 まず、今般の法制化の意義でございますが、最初に、土壌汚染問題の特色として三つの点を挙げておきたいと思います。
 それは、第一に、これがストック汚染、蓄積性の汚染でありまして、大気汚染とか水質汚濁のような通常の公害とは少し異なる性質を持っているということでございます。浄化をしないと永久に持続するという性質の汚染でございます。
 第二に、この土壌汚染というものが人の健康に対して影響していくという経路といたしましては、三つのものがございます。一つは、農作物を通じた経路でございます。二つ目は、皮膚接触などによる、あるいは直接食べてしまうというようなことなどによる直接摂取の経路でございます。三つ目が、地下水を通じた経路でございます。この三つの経路がございますが、通常の公害、大気汚染、水質汚濁のような公害と違って、この経路を遮断することによって人の健康に対する影響を遮断することができるという性質のものでもあるわけであります。
 第三に、汚染土壌の多くが私有地であるという問題がございます。これは、行政が規制をしたり対策をとったりする上で何らかの理由づけが必要になるということを意味しております。
 我が国の土壌汚染につきましては、昭和五十年度から平成十二年度までに都道府県等が把握した累積で見ますと、総事例で千九百三件、調査事例千九十七件、環境基準を超過した事例が五百七十四件ということでございますが、これは氷山の一角にすぎないというふうに考えられます。
 そこで、従来、土壌汚染に関してどういう法制度があったかということでございますが、土壌汚染というのは、環境基本法及びその前身でございます公害対策基本法に規定されています七つの公害の一つでございます。七つの公害一つ一つについて、それに対応する立法が一応整備されてきておりますが、土壌汚染に関してだけ、農業用の用地である農用地についてだけ、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律というのが昭和四十五年に制定されたきりでございまして、それ以外の土地、つまり市街地についての法制度は従来なかったということでございます。
 この農用地の土壌の汚染防止等に関する法律というものは、公害防止事業費事業者負担法とセットになりまして、国、地方公共団体が公共事業として対策事業を行いまして、その費用を原因者から徴収するという仕組みを持っております。
 従来、農用地以外の土地、つまり市街地の土壌汚染につきまして法制度がなかったという理由といたしましては、市街地の土壌汚染に基づく健康リスクについて余り知見が十分でなかったということ、それから、市街地の汚染土壌の多くが私有地であって、行政が規制しにくかったということが挙げられると思います。
 土壌汚染に関しましては、環境基準が長らくつくられませんでしたが、平成三年にようやく設定されました。また、平成元年には特定地下浸透水の浸透の禁止という、地下へ水が浸透していくというものについて有害物質の浸透を禁止しました。それから、平成八年に地下水の水質の浄化に係る措置命令の規定が置かれております。さらに、平成十一年にはダイオキシン類対策特別措置法が議員立法によって制定されまして、市街地土壌汚染についても、ダイオキシン類に限って浄化等の対策措置の規定が入れられたということでございます。しかし、ダイオキシン類以外の市街地の土壌汚染については何ら法制度がないというのが現在の状況であるということであります。
 そこで、今回の法案が提案されているということでございますが、これまでの法制化の検討経緯といたしましては、レジュメの一の(三)にありますように、一九九五年の懇談会の中間報告以降、主に環境省において検討がなされてまいりました。
 今般の立法化の背景といたしましては、いろいろなものがありますけれども、土壌汚染に関する健康への影響について、直接摂取それから地下水経由という二つの経路についての知見が充実してきたということ、それから、工場跡地において土壌汚染が明らかになる事例がふえてまいりまして、これが土地の取引を阻害するおそれが出てきたということが大きな理由であるというふうに考えられます。
 これ以外に、土壌汚染に関する欧米における立法例というのが整備されてきているということも背景にある事情でございます。
 そこで、第二点の本法案におけるリスク低減措置の実施主体、費用負担について申し上げておきたいと思います。ここでリスク低減措置というのは、法案におきます「汚染の除去等の措置」と書いてあるものでございます。
 土壌汚染の対策のための法制度といたしましては、二つのものが考えられるわけです。
 一つは、国、地方公共団体が公共事業として汚染除去等の措置をとりまして、後から原因者から費用を徴収するという方法でございます。これは公共事業型と言うことができます。現在ある農用地の土壌汚染の防止に関する法律は、このような考え方をとっております。
 第二は、一定の場合について、行政庁が原因者、土地所有者などに汚染除去等の措置の実施を命ずるという方法でございます。これは規制型と言うことができます。
 どちらがよいかということを考えますと、一見いたしますと公共事業型の方がよいように見えるわけですけれども、市街地の汚染地というのは非常に多くの、相当数に上るということが予想されておりますので、行政がすべての対策を実施するということは、行政リソースの限界ということから見て極めて難しいところから、規制型の方が適当であるというふうに考えられます。
 ちなみに、オランダでは公共事業型がうまくいかなくて規制型に移ったということがありまして、参考になると思われます。
 次に、浄化の実施主体、費用負担の主体といたしましては、汚染原因者と土地所有者等、所有者、占有者、管理者ですけれども、土地所有者等との関係が問題となります。
 土壌汚染というのは土地と関連しておりますので、その汚染除去などの措置を実施する際に、土地所有者等が何らかのかかわりを持つということになります。つまり、土地所有者等は、まず、汚染除去等の措置が行われることについて許諾するかどうか、許すかどうかということについて権原を持っております。これは自分の土地だからということでございます。
 それからもう一つ、土地所有者には現在の土壌汚染による健康リスクを支配しているという面がありまして、これは土地を支配しているから土壌汚染による健康リスクも支配しているという面がございまして、これを根拠とする責任を負っているというふうに考えられます。これは、土地を支配しているというところから、そういう状態から出てくる責任ということで、状態責任と呼ばれるものでございます。
 他方で、もちろん土壌汚染の場合にも、それを引き起こした原因者の責任、これは行為責任と呼ばれますが、行為責任というのは存在するわけでございまして、汚染者負担原則が適用されるということに間違いはないわけであります。
 ただ、土壌汚染の場合には、原因者と土地所有者がともに責任主体となるということでありまして、これが大気汚染とか水質汚濁などとは少し違ったところでございます。
 では、両者はどういう関係に立つかということでございますが、この法案は汚染者負担原則を貫いているというふうに見られます。それは二つの点にあらわれています。
 一つは、汚染の除去等の措置は、原因者が明らかな場合には原因者が実施するというふうに七条でされていることでございます。二つ目は、土地所有者等が措置を実施した場合に、汚染原因者に対して費用を請求できるというふうに八条に規定されていることでございます。これらは、汚染原因者が明らかである限りで原因者を優先するというスタンスを示したものであります。
 ただ、汚染原因者が特定できないという場合には、先ほど申しました状態責任等の観点から、土地所有者等が責任を負うということになっておりまして、これが汚染原因者が特定できない場合に制度に穴があくということを防いでいるわけであります。この点についてはいろいろな議論がなされてきましたが、私としては、最終的に非常によい形におさまったというふうに考えております。
 次に、調査の実施主体についてでございますが、調査の実施主体については所有者等が行うということが三条で原則とされています。その理由としては、土壌汚染の調査というのは汚染の有無とか汚染原因者がだれかということが明らかになっていない段階で行うものであるということから、土地所有者にしていただくのが適当であるということでございます。
 次に、基金のお話に移りたいと思います。
 住宅地などで汚染が発見されたけれども、原因者が明らかでない、そして土地所有者である住民等の負担能力が低いという場合などには、財政支援のために基金というものが必要になってまいります。基金につきましては、この法案は、国の補助金に加えて、産業界等、政府以外の者から任意の拠出を募って事業費とするということを考えています。産業界からの拠出については、広い意味での汚染者負担原則の適用というふうに考えるべきであると思います。
 これにつきましては、個々の事例における汚染と原因者との関係というのを厳格にとらえて、原因者不明の場合の基金への拠出を渋る動きが産業界に見られます。しかし、土壌汚染の原因となる物質というのは、元来産業界において製造されたものでありまして、化学品などに目的税を課するということさえアメリカなどでは行われてきたという経緯がありまして、任意拠出をしていただくという理由は大いにあるというふうに考えております。
 次に、第三の土壌汚染情報の取り扱いについてお話をいたします。
 まず、土壌汚染情報の自由閲覧、公表の意義でございますが、この法案は、指定区域の土壌汚染について適切な管理が行われるようにするために、台帳を調製いたしまして、土壌汚染情報を一般の閲覧に供するということにしております。指定区域の台帳というのは二つの目的がございます。一つは、周辺住民への情報の提供でございます。もう一つは、土地の取引とか改変、それから汚染土壌の搬出などによる新しい環境リスクの発生を防ぐということでございます。
 近年、環境政策の一つの手法として、情報の公開とそれに基づく市民の監視という手法、これは情報的手法と呼ばれますが、こういうものが注目されておりますが、土壌汚染における情報の公表というのは、一般の情報的手法以上に大きな効果があると考えられます。それは、汚染地であるという情報が直ちに土地の価格を下落させ、売り主は汚染地を真っ当な価格で売ろうとすれば、汚染の除去等をせざるを得ないという状況に陥るからでございます。その意味では、この台帳の記載とその自由閲覧というのは、一見地味でございますけれども、この法案の最も重要な事項であると言っても過言ではないというふうに考えられます。
 最後に、浄化措置によって指定解除された場合、台帳から削除すべきかどうかという点についてお話ししたいと思います。
 この点については議論があるところですけれども、私としては、削除すべきであるというふうに考えております。この法案もそういうスタンスに立っているというふうに思われます。それは、指定区域の台帳というのは基準を超える土壌汚染が存在する土地の情報を記載するものでありますから、指定が解除されれば台帳から削るというのが適当であると考えられるからであります。指定解除の後におきましても、関係文書については、都道府県でそれぞれの情報公開の制度に服するということになります。
 もし台帳に記載を残すというふうにいたしましたときには、土地の価格が下がったままになって、浄化自体のインセンティブというのが極めて低くなるということを考えざるを得ないという問題もございます。イギリスにおきまして、一九九〇年の環境保護法の制定のときに、汚染の可能性のある土地を登録しようとして制度が立ち行かなくなりまして、九五年に汚染が確実であるという土地のみを登録するというふうにしたということは、この点について何らかの参考になるというふうに思われます。
 以上で私のお話を終えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 次に、村岡参考人にお願いいたします。
村岡参考人 おはようございます。村岡でございます。
 私は、中央環境審議会における小委員会で、今後の土壌環境保全対策のあり方について審議の取りまとめ役をいたしました。このときの報告に基づいて今回の法案化がなされたわけですが、その内容につきまして、要点と私なりの考え方を述べさせていただきます。
 この小委員会は、大変短い期間でございましたが、各専門家、各界の代表者によって非常に活発な議論をいただきました。検討期間が短い、こういう意見も出ましたが、現在の土壌汚染が健康影響に対して極めて憂慮すべき状態にあるという背景にあって、すべての委員が最初から一貫して汚染防止対策の制度づくりに賛意を示していただいたことは、議論を発展させる上で大変に有意義であったと思います。
 御承知のように、土壌汚染対策の制度化は、典型七公害の中で最後に残された課題でございます。なぜ制度化がおくれたかといいますと、一つには、土壌汚染の機構が極めて複雑で、科学的な知見も少なく、汚染防止の技術や健康への影響が非常にわかりにくかった、そういう点にあります。もう一点は、大気や水が公共財であるのに対しまして、土壌は私有財でもあり、土壌の持つ自然的な機能のほかに、土地の利用や土地の売買など経済機構の中での土壌の価値が非常に大きく、そのために、かえって土壌の環境面での問題がしばしば閉鎖的に取り扱われたという一面があると思います。
 しかし、今回の小委員会で制度化の議論が非常に有効にできましたのは、人の健康に及ぼす影響を未然に防止するということを目的といたしまして、土壌の汚染機構、人への暴露経路、そして土壌を土地として扱う社会経済での構造などがこれまでの検討会等によって非常に明確になってきたことに基づくと思っております。
 まず、土壌汚染の実態でございますが、土壌の中の有害物質は土壌の中でわいてきたものでは決してありません。その上にある地表面、そこから有害物質が浸入してきて初めて土壌汚染というものが存在するわけです。したがって、まずこの土壌汚染を生じさせないということが重要でありまして、そのためには、地表面からそういう有害物質を浸入させないということを考えないといけません。このことに関しましては、既に、有害物質を含む排水や廃液や、あるいは有害物質を含む廃棄物の浸入が水質汚濁防止法や廃棄物処理法によって規制されております。
 したがって、本法案では、汚染されてしまった土壌に対しまして健康影響をどのように未然に防止するか、これが問題となっております。私は、その解明には、土壌中の有害物質自身の動態、これは物理的、化学的パフォーマンスというようなことですけれども、その有害物質自身の動態がどのようなものであるか、そういう理解が基本的に必要になってくると考えております。
 この土壌中の有害物質の動態には大きな特徴がございまして、それは、土壌粒子や土壌中の有機物にこの有害物質がしっかりと吸着してしまってなかなか動こうとしない、いわゆる蓄積型あるいはストック型と言われるような汚染形態になっている点であります。このような物質には、カドミウム、鉛、水銀、PCBなどが考えられます。ストック型というところに、実は、人への暴露経路、調査の方法、健康リスクの低減措置の技術などが特徴づけられてくるわけであります。
 例えば暴露経路について言いますと、呼吸、皮膚接触といった土壌の直接摂取が問題になってきますけれども、この場合には、ストック型の特徴を理解して摂取経路を遮断する、そういう措置も可能になってくるわけです。もちろん、工事中などにおきます土壌の飛散というものが人為的な行為として生じますので、そういった場合の有害物質の大気への拡散といったことにも対処しなきゃいけません。すなわち、この大気への飛散ということに限らず、拡散等による新たな土壌汚染の発生を防止することも土壌汚染対策の重要な目的であるということを別途認識しておかなければならないわけであります。
 飛散はともかく、土壌中の粒子に吸着すればもう絶対にはがれないのかといいますと、そうではありません。はがれにくいということでありまして、雨水の浸透、それから土壌に化学変化が生ずるといったことによって、ごくわずかながらも水に溶け出してきます。その結果、それが浸透して地下水を汚染するという事態が起こります。このように、土壌汚染が原因になって、そこからさらに浸透して地下水汚染に結びつく、こういう形態の地下水汚染の物質としましては、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物による地下水汚染が非常によく知られております。
 土壌と違いまして、空気とか水は流れますから、大気汚染あるいは水質汚濁は流動型あるいはフロー型の汚染と言われております。地下水の流れは一般に極めて緩慢でありますが、やはり流れておりますので、土壌汚染が原因となって土壌から浸出してきた有害物質による地下水汚染は、やはりフロー型と考えなければいけません。そうしますと、やはりそのところでの調査とかあるいはリスク低減措置も、フロー型に特徴づけられるような、そういうものを考察していかないといけない。一たんフロー型になりますと、下流の方に汚染物質が運ばれます。
 さて、こういったときに行う調査でありますけれども、まずは土壌汚染を確認するということから始まります。
 法案では、調査の契機は、有害物質を使用する特定施設が廃止される場合、周辺に飲用井戸がある場合で地下水汚染が発見されるなど、土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがある場合、そういったことを契機にいたしまして行われますけれども、これも、ストック型の汚染である、つまり有害物質が余り動かないということを考慮しまして、一般の人が立ち入ることがないということ、それから、そこで働いている人も労働衛生的に適正に管理されている、こういった場合はあえて調査を必要としないという考え方に立っております。
 しかし、飲用のある地域の周辺地域で有害物質を使っている、その周辺で地下水汚染というフロー型に至ってしまった汚染が発見されますと、もはや早急な調査が必要になってまいりますから、都道府県知事からの調査命令がかかるということになるわけです。
 リスク低減措置につきましても、この汚染がストック型かあるいはフロー型か、そういう形態の観点からその方法を考察することができます。通常、水質汚濁などは、環境における汚染物質の浄化といいますと、汚染物質を無害にする、あるいは環境基準以下にするということを意味するわけですけれども、土壌汚染の場合には、このような形の浄化だけではなく、立ち入り制限、覆土や舗装あるいは汚染土壌の封じ込め、こういうふうな、人への暴露経路を遮断するという対策を講ずる、こういうことができるわけです。これは、土壌汚染の蓄積性という性質を利用したものでありまして、汚染の発見から汚染地の管理あるいはリスク低減措置という一連の過程で、科学的知見に基づく技術及び対策の経済性、こういったことにかんがみて非常に合理的で妥当なものと解しております。
 調査の実施主体はだれかということにつきましては、土壌汚染のおそれのある土地の状態を管理する立場にあり、調査に必要な権原を有する土地所有者が実施主体であること、また、調査の結果、汚染が確認され、リスク低減措置の対策が行われるときの主体も、汚染のある土地の状態に対しまして責任があり、対策の実施に必要な権原を有する土地所有者とするということを小委員会の合意として得ております。また、措置を行う場合で、別に汚染原因者がいる場合には、対策に要した費用は当然汚染原因者に請求できるということになっております。
 調査の結果、リスク管理が必要だというふうに判定された土地は、指定区域台帳に登録されて都道府県が管理することになります。対策が終われば台帳から外すということによりまして、土地の状態に対する信頼性を高めるとともに、あわせて、土地の有益な流動化を促進するというねらいがあります。
 そうはいっても、この調査、対策には費用がかかりまして、資力の弱い中小企業者に対する支援措置も必要になってまいります。そういったことで、小委員会でも種々議論をしたところでございます。
 このように、小委員会の報告内容をもとに今回の法案は適切な法文化がなされておると判断しておりますけれども、この法案が成立した後、政省令化の段階でも、なお詰めないといけない事項、例えば、直接摂取にかかわる基準の具体的な数値を決めるということ、それから調査、分析の方法の基準化、それからリスク低減措置にかかわる技術、新たな環境リスクの発生防止にかかわる技術的基準など、検討が必要と思われます。
 今回の法制度化では、人の健康の保護という観点から対応しておりますが、生活環境の保全から見た対応あるいは生態系保全から見た対応についても、今後も知見の集積を図らねばならない課題であるというふうに考えております。
 今回は土壌対策のルールづくりということで進めてまいりましたが、これは必ずしも完全なゼロリスクを保証する、そういったゼロリスクをねらった完璧なものというよりも、社会情勢にかんがみましてどうしても弾力的に対応しなければならない部分も出てまいりますが、そういったものもあっても、新たな政策の第一歩を踏み出すためにはこういったことも必要だという視点もございました。そういったところをうまく調和させる、その調和点を見出す手段として、適切なコミュニケーションの展開が必要かと思っております。リスクコミュニケーション、これこそ健全な土壌環境保全を有機的に結合させていく手段であると信じております。
 私も、現職にある限り、この法制度化の適正な実効性を求めて努力をしたいと考えております。
 以上で私の陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 次に、加藤参考人にお願いいたします。
加藤参考人 構想日本というネットワーク型のシンクタンクを主宰しております加藤でございます。
 既に今、大塚、村岡両参考人からこの法律についてのお話がありました。私は、法律の専門家ではありませんので、法律そのものではなくて、この法律ができると関係者あるいは世の中の人たちはどういうふうに動くかな、その結果どんなことが起こるか、あるいはうまくいくかいかないか、そんなことについて、当たり前に考えられることをお話ししたいと思います。
 言うまでもございませんけれども、私たちの環境というのは、これは雑な言い方ですが、大きく分けまして、空気とそれから水、それに土ということだと思います。この中で土だけ今まで汚染についての規制がきちんとできていなかった。それはなぜかということについては、先ほど大塚先生、村岡先生からお話があったとおりであります。そういう意味では、今度この土についてきちんとした規制の枠ができる、これは大変にいいことだと思います。
 私も、本来、環境省については大いにシンパであるつもりでして、大変結構なことだと思いますけれども、ただ、かなり問題があるのも事実ではないか。それは、その中身です。その中身についても、もう既にこの委員会でいろいろ御審議されていると聞いております。私は、今二つ申し上げたいと思います。
 一つは、調査と情報開示、これがすべてのスタートだということです。かぎは、汚染の可能性のある土地あるいは土については全面的に調査をするということ、そしてその調査した中身についてはなるべく詳細に情報公開をするということ、この二点に尽きると思います。
 しかし、残念ながらこの法案では、例えば原則として工場の操業を廃止したときといったような、調査の契機が極めて限定的になっております。
 それからもう一点ですけれども、その調査した中身、それの情報の出し方ですけれども、これは地表面の概況調査を行って、そこで汚染の疑いが強いとなれば、そこは汚染地の指定がされます。それは、いわばシロかクロかということを世の中に発表するということになります。
 この二点の問題についてですけれども、まず、シロかクロかということになると、やはり普通の、ここは先ほど申し上げました世の中の人はどう対応するかということなんですが、シロかクロかと言われると、往々にしてマスメディアというのはこういうときにはあおりがちな、そういう報道をしがちであります。今までもそういうことは多くありました。その結果、特に資力のない中小企業などの場合には、これはクロになると大変だと。調査をしないといけない。お金もかかる。あるいは、さらに浄化しないといけないかもわからない。売ろうと思ってもこれは買い手がつかないかもわからない。そうなると、あらかじめ操業を廃止する前に表面をきれいにして、それであたかも何も汚染がないかのようにして、それで売ってしまおう。これは、私は、特別に悪い人でなくても当然の人情ではないかなと。よく性善説あるいは性悪説というようなことが言われます。しかし、私はどちらも違うんではないかな、むしろ性弱説ではないかなと。人間とは、私なんかはその典型ですけれども、弱いものですから、やはりこっちの方がお金がかからないなと思ったらどうしてもそっちの方に行く。これは、それを責めてもしようがないんではないのかな。
 私も霞が関で二十年余り仕事をしてまいりましたけれども、やはり霞が関の中だけ、あるいは法律のことばかりやっていると、ひょっとしたらそういう世間の人の動きがわかりにくくなるのかもわからないなと、私もやめてようやくそういうことが少しわかるようになってきたのかもわかりませんが、この委員会で御審議いただく国会議員の先生方、皆さんその辺は最もよくおわかりだと思います。ぜひ、世の中の人たちの機微、これを勘案した上で、今の点についてぜひ十分な御審議をいただきたいと思います。
 この法案をつくるに当たって、作成の担当省である環境省の方、恐らくいろいろなことを御検討されたんだと思います。例えば、今私が申し上げました中小企業にとって負担にならないかとか、あるいは地価に悪い影響が及ばないかとか等々を配慮した、あるいは配慮せよとの力がいろいろあった、そういう結果こういうことになったのではないかと思います。
 しかし、私は逆に、いろいろな例を見てまいりますと、抜け穴が大きければ大きいほど、あるいは小出しにすればするほど問題は裏に潜って、結果的には悪い結果になる。そのことは、薬害エイズであっても不良債権の問題であってもあるいは狂牛病であっても、問題の中身は違っても同じような結果をもたらしている。ここは、やはり十分に注意をする必要があると思います。
 そういうことを考えますと、私は、最初に申し上げましたとおり、望ましいのは、全面的に調査を行って、それをなるべく丁寧に詳しく世の中に出していくこと、そのことに尽きると思います。
 土地にはいろいろあるんだ、例えば、道路に面している、あるいは日当たりがいいとか悪いとか、水はけはどうだこうだ、そういうことと同じように、その土地にある土についても、こういうことで少し汚れている、あるいはここはこんなことで相当に汚れている、浄化しないといけないぐらい汚れている、そういうことが当たり前の情報として世の中に出回ることが、むしろ逆に最も健全なことであって、いわゆる風評とか、あるいはその結果としてのパニックを起こりにくくする。それで、結果的にはそれが土地の流動化にもつながる。あるいは、これは小泉内閣の大きい柱でもあります都市の再生あるいは経済に対するプラス効果にも必ずつながるものである。逆に、それを恐れて限定的なものにすれば、必ず逆効果になるのではないか、そんなふうに思います。
 この点については、私も必ずしも専門家ではありませんが、随分いろいろな方に伺いました。ディベロッパーのような土地の流通にかかわる専門家は、大体一様に、きちっと情報開示をしてもらった方がいいということを言っておられました。
 二番目の点であります。これは、土地と土ということです。土地が汚染されているということは、同時に、そこにある土が汚染されているということです。それで、土地は動きませんが、そこにある土は動くわけです。
 これはたしか政策投資銀行の調査だったと思いますが、二〇〇〇年で、いわゆる建設残土、建設発生土という言い方もするようですが、これが年間五億トン発生するようです。それで、これもこの方面の専門家に伺いますと、その建設残土の多くが、山、山間部の谷合い、あるいは農地を埋め立てるのに使われているということです。
 これにつきましては、私が用意しました資料の五ページに、なかなかないものですから、少し古い絵を入れておきました。これは、営団地下鉄八号線ですから、たしか有楽町線かと思います、ここで掘り返された土がどこへ行ったかというものを、矢印と数字、その行き先、地名で示したものであります。多くは、当時の埋立地、例えば夢の島なんかに行っております。今では埋め立ては随分減っておりますから、かなりの程度、これはむしろ海ではなくて山の方に行っているわけです。これは営団地下鉄という半ば公的な機関についての調査ですから、かなり行き届いた調査ができておりますけれども、これは非常に例外的なものだと思います。これを見ても、随分広範囲に広がっております。
 これが日本全国で行われるわけですし、現在ではむしろ山の方に行っている。そうなると、もしこの中に汚染された土がありますと、ではどうなるかということは大変に心配になります。ましてや、谷あるいは農地に行った場合には、数年たって、それが我々にとって、例えば農地の場合には、そこでつくられた作物を経由して体の中に入ってくる、その可能性というのは決して小さくはないのではないか。
 私は、この法律において、土が移る、どんどん捨てられて、あるいはどこかに持っていかれて使われる、場所を変える土についてどうするかという視点が全く欠落しているということも非常に大きい問題ではないかと思います。これについても、数年たって、何か問題が出てきてからでは遅いわけですから、ぜひとも十分な御審議をいただきたいと思います。後から、あのとき、こういうことについてきちっと十分審議が行われたのかなということのぜひないようにと切に願っております。
 何しろ、この法案の見直し期間というのは、十年という、今どきちょっと珍しいぐらいの長い期間ですから、十年たって見直すのでは、これは全く遅いのではないかと思います。
 ちなみに、一つ、これは新聞で私は見たことなんですが、土の輸出をしてはどうか。例えばマーシャル諸島のような、まさに地球温暖化の結果、どうも水位が上がって、国がひょっとしたらどんどん減って、消滅するかもわからないという心配をしている島嶼国があるわけですね。そういうところから、日本で掘り起こされた土を輸出してほしいという依頼がある。それに対して、国あるいはその大きい土の提供者である東京都は、どうもためらっている。なぜためらうかといいますと、そうやって土を輸出したときに、もしその土が汚染されていた場合には、いわゆる有害廃棄物の輸出を禁止しているバーゼル条約にひっかかってしまうのではないか、こういう新聞を見ました。
 これは新聞記事ですから、どこまで正しいものかわかりませんが、バーゼル条約を気にしてなかなか輸出できない、そういうことをためらっているということがある一方で、国内なら有害な土がどんどん移ってもいいではないか、そんな判断をしているとは私はまさか思いませんが、こういう記事が、これは一九九六年ぐらいから何回か見られます。
 先ほど申し上げましたけれども、法律ができると、その法律に関係する人たちは、その法律に対応して、自分がそこで不利なことのないように必ず行動します。そうしますと、やはりこの土についても、では早目にどこかに持っていこうかという行為が出ないという保証は全くないのではないかと考えております。
 それから最後に、これは少しつけ足しであります。これも最近、全く別な話ではありますけれども、時々新聞の記事にありますが、今の会計基準で時価会計をどんどん採用しております。もうこれが国際会計基準になりつつあるわけですけれども、これが不動産、土地についても及んできているわけです。
 土地についての時価会計を導入しようとしますと、これはどうしても、その土地の状況、土壌汚染を含めて、その土地がどう評価されるかということがきちんと調査されないといけない。この国際的な会計基準に合致するかどうかということも、これは経済の面から見ますと非常に大きい要素です。ようやく日本の金融資産については時価会計が進んできたわけですけれども、これは保有する不動産についても同じことが言える。その面からも、十分な調査を行って、詳細に発表することが不可欠になりつつあると思います。
 それから、もう一つつけ足しでありますが、これは、私もかつて役所にいたものですから、余り言いたくないなという気持ちがあるのですけれども、この法律、全部で四十条ほどありますけれども、残念ながらその半分ほどが、指定機関、指定調査機関あるいは支援のための機関の指定に関する事柄に割かれております。
 私は、この調査機関を国が指定するというのは、これは、いわゆる構造改革、広い意味での行政改革に当たると思いますが、あるいは規制緩和、そういう流れにどうも反するのではないかな、こんな感じがしております。ほかの面で、例えば公益法人に対する委託業務はどんどん減らしていこうとか、そういうことを含めて、規制緩和あるいは行政改革が進んでいるときに、調査する機関を指定するというのは、これはどんなものかな。これについても、やや論点が違いますけれども、やはり構造改革あるいは規制緩和、行政改革といったことについては、これはすべての行政に関して常に注意をしておかないといけない点ですから、つけ足しではあると思いましたけれども、申し上げました。
 以上で終わります。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 次に、梶野参考人にお願いいたします。
梶野参考人 神奈川県環境農政部技監の梶野でございます。
 本日は、土壌汚染対策法案について国会の場で地方自治体としての発言をする機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。土壌汚染対策法案に関連いたしまして、神奈川県における土壌汚染対策について御紹介をするとともに、法案に対する評価について賛成の立場から意見を申し述べ、あわせて法案の運用について要望をさせていただきたいと思います。
 工場の跡地などにおける土壌汚染につきましては、これまでは明らかになることが少なかったわけでございますが、近年、工場跡地の再開発、売却などの際に土壌調査が行われるケースが増加しており、また地方自治体による地下水の常時監視の拡充に伴って、カドミウム等の重金属やトリクロロエチレン等の有機塩素系化合物等による土壌汚染が判明をしてきております。
 本年二月に環境省から発表されました土壌汚染調査・対策事例及び対応状況に関する調査結果によれば、平成十二年度に都道府県等が把握した土壌汚染の事例で、土壌環境基準に適合していないことが新たに判明したものは百三十四件あり、平成十一年度に引き続き、高い水準で推移しているということでございます。
 このように、土壌汚染の事例が増加する中で、神奈川県としましては、土壌汚染問題に対処するため、平成十年四月に施行いたしました神奈川県生活環境の保全等に関する条例において、有害物質を取り扱っている事業者に対して、使用状況等の記録を作成させ、その土地を譲渡するときは譲渡する相手方に記録を引き継ぐこと、事業所を廃止するときは土壌調査を実施すること、また、事業所の敷地の区画を変更したり土木工事により土地の形質を変更する場合に汚染が確認されたときは、汚染された土壌の飛散、流出を防ぐための計画を作成して土壌の浄化対策を実施することを定めておりまして、これまでの計画の届け出件数は、平成十年度二十八件、十一年度三十一件、十二年度八件となっております。
 土壌や地下水の汚染が判明した場合には、地域ごとに行政機関と試験研究機関で構成する土壌・地下水汚染対策検討会を設置いたしまして、浄化方法や周辺の地下水への影響などについて検討するとともに、汚染原因者に対して改善指導を実施しているところでございます。
 このように、本県では、条例によりさまざまな土壌汚染対策を進めているところでございますが、条例の規制対象が有害物質を取り扱っている事業所に限られており、過去に汚染された土地で事業を行っている事業所やマンションなどの場合は規制の対象とはなっておりません。
 このようなことから、国において、土壌汚染の調査、事業者による円滑な浄化対策の推進など、土壌汚染対策について早急に制度化していただきたいと考え、昨年、こうした点につきまして、国に対して要望書を提出したところでございます。今回、土壌汚染対策法案が国会に提出され審議されることは、私ども神奈川県といたしましても評価をしているところでございます。
 ここで、この法案の主要な点につきまして、本県としての意見を述べさせていただきます。
 今回の法案では、土壌汚染のリスクとして人の健康に係るリスクを対象としており、これまでの地下水等の摂取によるリスクの観点からの判断基準となります土壌環境基準の溶出基準以外に、汚染土壌の直接摂取によるリスクの観点からの判断基準、すなわち土壌の直接摂取基準が設定されることと聞いております。人の健康を保護する上で、土壌の直接摂取の基準は既にダイオキシン類対策特別措置法の中で具体化されておりますが、ダイオキシン類以外の物質についてこのような判断基準が設けられるということは、人の健康の保護の観点から見て評価されるべきものと考えております。
 次に、土壌調査を行う契機につきましては、法案では、使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の敷地であった土地について、土壌汚染の状況について調査させ、その結果を都道府県知事に報告させるものとしております。土壌の調査を過去に事業所の敷地であった土地までも対象にしていること、また土壌の調査の命令権を都道府県知事等に付与していることは、高く評価できるものと考えております。
 調査の実施時期といたしましては、法案では、工場、事業場の廃止時に調査を行うこととなっておりますが、これ以外に、操業中の事業所の場合で、既存の建物の除去や新たな建物の建設などの土木工事を行う場合についても調査することが考えられます。しかし、通常、工場、事業場は一定の安全管理がされており、操業中の敷地内には一般の人は立ち入らないこと、また、工場の外に影響が及ぶ場合には知事の調査命令が可能であること、操業中に調査しても、その後新たな汚染が発生する可能性があり、用途変更される時点でもう一度調査をしなければならなくなることから、調査の実施時期を工場、事業場の廃止時とすることはやむを得ないことと考えております。
 次に、土壌汚染による人への健康影響を防止するため、土地の所有者、汚染原因者に対してどのような措置を求めるかということでございます。
 土壌は、水や大気と異なり、移動性が低く、土壌中の有害物質も拡散、希釈されにくいため、直ちに土壌の浄化を図らなくても、有害物質の暴露経路を遮断することにより人の健康へのリスクを低減できるということが言えます。こうした考え方を採用したのが、第七条の措置命令の考え方であるかと思います。
 土壌の環境基準の考え方からすれば、土壌の浄化は必要なことですが、全国を対象とする法律でございますので、土壌汚染の特質から見て、必ずしも土壌汚染のすべてを浄化するということではなく、覆土や汚染土壌を封じ込めるといった措置も、リスクを低減する手段としては有効であると考えられます。また、こうしたことは、浄化対策を行う中小企業者にとって、資金力の点から見てなかなか難しい面があるわけでございますが、中小あるいは零細事業者が実施可能な内容になっているということも言えるのではないかと考えます。
 次に、土壌汚染に係る情報の公開の問題でございます。
 最近、行政庁の情報は、国、地方自治体を通じて公開する方向にあり、特に環境にかかわる情報は、人の健康にかかわることから、公開が原則となっているということは言うまでもないことでございます。法案の第五条では、都道府県知事は指定地域の指定に当たっては公示することとされ、また、第六条では、指定区域の台帳は「閲覧を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。」となっております。
 本県では、情報公開につきましては、既に、全国に先駆けて制定いたしました神奈川県情報公開条例に基づき、個人情報を除いて情報の公開に努めているところであり、さらに、土壌汚染や地下水汚染などの環境情報につきましては、県民の環境保全に対する不安感を払拭するために、適宜適切な内容で情報提供を行っているところでございまして、今回の法案では、これまでの公害関係の法律に比べて情報公開が進んだものとしてとらえることができると思います。
 最後になりますが、今回の法案に対しまして、地方自治体として何点か要望をさせていただきたい事項がございます。
 まず、第一点目でございますが、今回の法案では、土壌の調査命令、措置命令など、対策の根幹となる部分について都道府県知事にその権限が付されており、現場を抱える地方自治体としては、力強い限りでございます。
 しかしながら、御承知のとおり、地方財政は非常に厳しい状況が続いており、今後も明るい展望が見えないことから、本県では、行政システム改革の目標として、三つの一〇%目標を掲げ、職員数の削減、組織のスリム化、県債の発行の適正化等に努めるなど、財政健全化に向けた取り組みを進めております。
 環境立県を標榜する本県といたしましては、こうした中で、環境の保全につきましては、県民の健康を保護する上で非常に重要な分野でありますことから、できるだけの措置を講じることとしております。土壌汚染対策法案に基づき新たに都道府県が行うこととなる土壌汚染の原因究明等の事務に対して、財政的な措置につきまして特段の御配慮を賜りますようお願いを申し上げます。
 二点目の要望でございますが、今回の土壌環境保全制度を円滑に運用するには、リスクコミュニケーションの促進が大変重要でございます。したがいまして、土壌汚染に関する情報を積極的に国民に提供するとともに、土壌汚染対策に熟知している人材の育成、土壌汚染による環境リスクに関して住民にわかりやすく説明できる人材を育成することが大切であり、こうした取り組みを国において積極的に進めていただきますようお願いを申し上げます。
 三点目の要望でございますが、中小企業者が利用できる簡易でかつ経済的な浄化技術の開発の推進でございます。
 中小企業者が汚染原因者の場合に、経費の面でなかなか土壌や地下水の浄化対策が進まないことが多くございます。本県における過去の事例として、一般的な浄化技術を用いると相当な経費がかかることから、県の温泉地学研究所が考案した簡易な浄化設備により事業者が浄化対策を実施した例がございますが、こうした簡易な浄化方法を国の研究機関において積極的に研究開発していただきたいと思います。
 以上、今回の土壌汚染対策法案に対しまして、現場を預かる地方自治体としての評価や要望などをるる述べさせていただきました。
 環境省の調査によれば、土壌汚染に係る条例等を制定している地方自治体は全国で二百十七に上っているとのことでございますが、一方で、国に対して法制度化の要望は非常に強いものがございます。
 本県は、全国有数の工業地帯である京浜工業地帯を抱え、かつて激甚な産業公害を経験いたしましたが、規制の強化や事業者の努力によりまして、現在では当時の状況は改善をされてまいりました。土壌汚染につきましても、条例に基づいて積極的に取り組みを進めておりますが、二十世紀の負の遺産である土壌汚染を一掃するまでには至っておりません。
 このようなことから、土壌汚染対策法が制定されることは大変意義のあることであり、ぜひ今国会で成立させていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、まことにありがとうございました。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
大石委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小渕優子さん。
小渕委員 おはようございます。自由民主党の小渕優子でございます。
 本日は、参考人の先生方、出席いただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。大変短い、限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 先ほどから参考人の皆様方のお話にありますように、この土壌汚染対策法案ですけれども、農地だけでなく、生活の場である市街地においても防がなければならない問題でありながら、法規制がなされていなかったということで、この法案は大変画期的な第一歩であると私自身思っております。
 ただ、やはりその運用でありますけれども、幾つかの課題がありまして、法の実効性を高めるためにも、より精査して審議をなされていかなくてはならないと思っています。
 そこで、まず汚染除去の責任の所在についてお伺いをいたしたいと思います。
 先ほど大塚参考人の方から、土地の所有者と汚染原因者との関係についてお話があったかと思いますけれども、調査、汚染除去の責任また費用負担は最大の課題であると思っています。土地の所有権が移動して、それによってたくさんのトラブルなども発生するのではないかと考えられますけれども、その中で、そうした責任の所在というものを今後より明確にする必要があるのではないかと思っています。
 諸外国の例などを見ますと、例えばアメリカなどにおいては、この責任の所在につきまして、汚染者また土地の所有者のみならず、潜在的な責任当事者として、ほかに有害物質の発生者や輸送者にまで広く定義づけていると聞いています。
 こうした諸外国の評価を含めて、この法案における土地所有者と汚染原因者との関係について、先ほどもお話しいただきましたが、環境法を初め法制面で環境分野に携わってこられた大塚参考人より、もう一度御意見をいただきたいと思います。
大塚参考人 大塚でございます。御質問ありがとうございます。
 土壌の浄化とか汚染の除去についての実施主体、費用負担の主体についての御質問でございますが、まず、諸外国のうち、今御質問がありましたように、アメリカにつきましては、土地の所有者、原因者だけではなくて、有害物質の発生者とか輸送者などについても対策の責任者として挙げられております。
 ほかの国におきましても、例えばドイツなどでは、支配企業と言いまして、親会社のようなものについても、子会社がもし土壌汚染を引き起こしたという場合については、親会社についても責任を問うというようなことも規定が置かれております。
 また、オランダにおきましては、土地の所有者以外に、長期の賃借人とか汚染者などが責任を負うというようなことになっております。
 このように、各国におきまして少しずつ対策の責任者というのは違っておりますが、さらにアメリカの場合には、法律に規定は特にないのですけれども、判例上、金融業者、銀行さんなどについても、その土地と事業との関係で何らかの関連があれば、レンダーライアビリティーということで、責任を負うということもなされております。
 ただ、アメリカの場合には、かなり責任の主体を広げ過ぎたということで、訴訟が頻発したというような問題もありまして、そのままその制度を我が国に導入した方がいいというふうには必ずしも考えられないというところでございます。
 今回の法案というのは、原因者だけではなくて、土地所有者というのを責任の主体として取り上げたというところに非常に大きな意味があるというふうに考えられますが、我が国らしく非常にかたく責任者というのを考えるというのを基本にしながらも、土地所有者を入れたというところに非常に大きな眼目があるということではないかと思います。
 この点については、さらに、先ほど申しましたように、土地所有者と汚染原因者との責任主体の関係という問題がございますが、基本は汚染原因者を主体としているというふうに考えることができますけれども、土地所有者についても、状態責任という観点から責任を認めているということになっております。
 私のお答えは以上で終わらせていただきます。
小渕委員 大塚参考人、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、次の質問に移らせていただきます。
 続きまして、汚染除去等の措置についての質問をさせていただきます。
 この汚染の除去については、必ずしもすべての場合に汚染土壌の浄化を求めるものではないと思っております。これについては、先ほど村岡参考人の方からお話があったかと思いますけれども、汚染の状況等に応じては、リスク管理の観点からは覆土や舗装また汚染土壌の封じ込めといった措置もまた適切であり、有効であると聞いています。
 今、東京の新都心などは、旧来工場跡地でありましたけれども、今では住宅や学校などに、そういう生活の場に姿を変えていまして、そういった場では、現在小さいお子さんからお年寄りがみんな一緒に生活をするような場に一変した地域も多くあります。
 そうした中で、やはり健康を害することなく、安心して安全な生活を国民すべてが享受していくことは、当然守られていくべきものだと思いますけれども、そしてそのことがこの法案のメーンテーマであると思っています。そうした中で、不安を感じることなく生活ができるということ、そしてこの負の遺産をこれから将来に残していかないように、汚染を除去し、かつ拡散を防ぐためにしっかりとした技術的基準を策定することが不可欠ではないかと考えています。
 その点からも、環境リスクの管理について、村岡参考人より、専門家のお立場からこれをどのようにお考えであるか、また御意見をいただきたいと思っています。
村岡参考人 御指摘どうもありがとうございました。
 先生のお話の中で、結局考えないといけないのは、汚染状態に応じた措置をどうするかということからまず始まるのではないかと思います。
 この汚染状態に応じた措置というのは、まず私は汚染物質の動態を理解した措置というふうに考えたいと思っております。
 つまり、土壌という環境の中で物質がどのような動態をとるかということを理解した上でやるわけですから、仮に猛烈な汚染物質があった場合には、これは無害化するという処理がやはり必要かと思いますが、これは大変お金のかかる問題です。しかし、覆土をするあるいは舗装するということでもって汚染物質の人体への暴露経路を遮断することによって直接的な健康の被害が阻止できるなら、やはりこれを選ぶことによって広く国土のリスクを軽減していくということが必要ではないかと思っております。
 そういう意味で、汚染物質の動態と、それから技術のやりやすさ、保証というもの、それからもう一つはやはり経済性だと思うのですけれども、そういった点から考えますと、私は、技術の面では、これはそんなに難しい技術ではないと思いますので、技術の確かさは保証できると思います。
 しかし、そういった技術を施行した後でやはり検査をしないといけませんし、検査した後、どのようにそれが、汚染が推移していくかということを監視するモニタリングといったものも併用してやるということが条件になってくるかと思います。
 それでもなお住民が不安だということはあり得ると思うのですけれども、その点は、行政は措置命令を出す、企業はそれを受けてそういう防止措置を行う、住民はやはり不安であると、それぞれの接点のところで何か判断の上のギャップがあるように思うわけですね。そのギャップをできるだけ埋めて、全体として調和するように持っていく、それが一つのリスクコミュニケーションの適用だと思っております。
 そういう一連のことを考えますと、今言いました無害化という直接的な浄化対策だけではなくて、暴露経路の遮断といった技術も大いに取り上げていかないといけないというふうに判断しております。
小渕委員 ありがとうございました。
 思ったより大変簡潔にお答えいただきましたのですが、あと五分ありますので、お願いをしていなかったのですが、一つ質問をふやさせていただきたいと思います。
 加藤参考人に質問させていただきます。
 大変貴重なお話に、なるほどと思いながら聞かせていただきました。
 お話の中で、見直し期間が長い、十年というのは余りにも長いのではないかというお話があったかと思います。
 確かに、十年という期間を考えますと、本当に長い十年であるような気はするのでありますけれども、例えばこの期間をもうちょっと短くする。短くするとなると、やはり土壌汚染をクリアにするためにはそれなりに時間が必要とされることではないかと思いますし、例えば、見直しがあるまでちょっとこのまま放置しておいてもいいのではないかという甘い考えが出てくる場合もあるかと思います。
 そうした意味で、この十年という見直し期間があるということに、もう一度ちょっとこの辺の御意見をいただきたいなと思います。
加藤参考人 十年ではなくて、ではどれぐらいが適当かということについては、これは私の単なる感覚でありますけれども、例えば二年とか三年とか、最近できた法律の見直し期間というのはそれぐらいの期間が多いのではないかなと思います。
 と同時に、これは必ずしも今の御質問に対するお答えではないかもわかりませんけれども、先ほども申し上げました、それから既にこの委員会でも何回も御審議いただいておりますように、土地とそこにある土、土は移る、土がどんどん運ばれてよそに行く、その拡散を防ぐための措置が全くないということについては、これはむしろ、全くないのであれば、ではつくればいいではないか、こういう発想もあるのではないかと思います。
 今回の法律に関して、私もいろいろな方から話を伺いました。それで、土地についての規制をするということと、そこで移っていく土あるいはその拡散についてきちんと規制をしていく、これは後者の方が必要であるということは環境省の方々も皆さん一様におっしゃっております。
 であれば、これは、もちろん閣法としてでもいいでしょうし、あるいは、少々テクニカルかもわかりませんけれども、もちろん議員立法としてでも可能だと思いますけれども、では、一遍に全部ができなかったのであれば、見直しを待たなくても、拡散防止についても、まだ国会の会期はしばらくあるわけですから、これだけ今のこの法案が短期間に用意された能力を考えると、もう一つ拡散について、拡散防止のための法律を用意することも、例えば環境省の方にとってはそんなに難しいことではないのではないかな。
 ですから、見直しの期間とあわせてそういうこともむしろ御審議いただければいいのではないかな、このように感じております。
小渕委員 貴重な御意見をありがとうございました。
 時間がちょっとありませんので、最後、梶野参考人まで回りませんでしたけれども、大変重要な土壌汚染対策法ですので、私もしっかりまた勉強して、また皆さん方にもこれからも御意見を引き続きいただきたいと思います。ありがとうございました。
大石委員長 牧義夫君。
牧委員 民主党の牧義夫でございます。
 きょうは参考人の皆様、わざわざお越しいただきまして、また、限られた時間ではございましたけれども、非常に示唆に富む御意見の陳述をしていただきましたことを改めて御礼申し上げたいと思います。
 この法案については、先週金曜日、ようやくこの環境委員会におきまして実質的な審議に入ったわけでございます。先週の雰囲気をちょっとお伝え申し上げますと、まだまだなかなか再考の余地もある、そんな法案だなというような雰囲気が、与党の側からも、あるいは野党ももちろんでございますけれども、そんな雰囲気が出ていたということを参考人の皆様方にお伝え申し上げたい。
 また、加藤参考人を除くお三方からは、おおむね大木大臣以上にこの法案を評価されるような、そんなお話をお聞きしたわけでございますけれども、私ども、加藤参考人とやや似た部分と申しますか、この法案、土壌汚染対策そのものはもちろんだれも否定するものではございませんけれども、むしろ、土壌汚染防止法と申しますか、未然防止の観点からも、もう少し掘り下げて見直していく必要があるんじゃないかな。
 それと、その運用の各都道府県知事の裁量にゆだねられている部分が非常に幅が広いわけでございますけれども、これを徹底してやらないで、本当に中途半端なやり方をすると、かえって汚染の拡散が招来されるんではなかろうかというような懸念も抱くものでございますから、そういった観点で、この質問、果たしてこの法律というものが、やらないよりやった方がましなのか、あるいは中途半端なことであればむしろやらない方がましなんだろうかというような大前提に立ち返って、お話を伺いたいと思っております。
 加藤先生、土壌汚染対策の必要性そのものについては強調されているわけでございますけれども、ただ、これらを徹底しなければ最悪の事態になるというようなお話もされております。資料を拝見いたしておりますと、これによって土地の狂牛病化というようなショッキングな文言も入っているわけでございます。大木大臣そのものも、せんだっての委員会での答弁では、まだまだこれは未完成な法案なんだということをはっきり明言されておりますけれども、ただ、未完成ながら、行政の裁量でその辺のところを埋めていくんだというようなことも、あわせおっしゃっておられました。
 そういった観点から、先ほど加藤先生のお話の中に、残土が農地やらあるいは谷合い、谷戸に運ばれたり宅地などに利用されて問題となった事例というのがあるというようなお話がございました。参考資料の中に、地下鉄工事の残土がどういうふうに移動しているかというような図も示されているわけでございますけれども、いろいろな報道で、例えば宅地なんかにもそういう汚染された土砂が運ばれているというふうなことも、多少は私なりに今まで耳にあるいは目にしているわけでございますけれども、こういった事例というのは果たして氷山の一角なのか、あるいは実際にそういった事例というのはまだまだたくさんあるのか、その辺の御認識があれば、ちょっとそういったケースを挙げて御説明いただきたいと思います。加藤先生、お願いいたします。
加藤参考人 これは、なかなか土についての調査自体が難しい、難しいからこの法律が今までなかったということなんだと思います。
 私が数少ない資料で一つだけ見つけましたのは、政策投資銀行のこれは推計です。環境省の資料に基づいて計算されたもので、汚染の可能性のあるサイトが約四十万カ所ということになっております。それから、あわせて、時々個別のもので新聞で報道されます。そんなことを考えると、氷山の一角という言葉というのは、やはり残念ながら当たっているんではないかな、こんなふうに思わざるを得ないと思っております。
牧委員 よくわかりました。
 それと、そういった観点で、これは全国網羅的に調査をしていくというのは大変なことだと思うのですけれども、その辺のところは、例えば水質汚濁防止法等の運用、その隣接する法律との運用でどの辺で接点をとっていくかというような、さっきの話に戻りますけれども、大臣も運用面でカバーしていけるというようなお話をされております。
 都道府県知事の裁量の幅というのも非常に広いわけでございますけれども、実際にこの法律が施行された場合、どのような点に留意をしてこの運用を行っていけばいいのか、加藤参考人の方にお聞かせいただきたいと思います。
加藤参考人 一つは、この内容にかかわることではないわけですけれども、法律上明確に書かれていなくて、それを行政裁量でもってというのは、これは基本的な行政のあり方として、今全体的に進められている改革とはやはり違う方向に向いているのではないかな。私も行政に携わった経験から反省も含めて申し上げるわけですけれども、それは法律あるいはそれが政令であったとしても、なるべく明確なルールというものを世の中に示した上で、その上での裁量の余地というのはあり得るのだと思いますけれども、法律で明確でないことを運用上でというのは、私は基本的なルールにもとるものではないかと思います。
 それから、この法律は政令あるいは省令にゆだねているものが随分多いわけですけれども、具体的に政令あるいは省令でどういう中身になるのかというのが、まだこの法律の審議の時点でも具体的になっていない。このことについても、やはりこういう委員会の審議の中でもう少し明確に示されるべきである。これはもう一般的な、基本的な行政のやり方自体のルールではないかな、こんなように思っております。
牧委員 今のお話でよくわかるんですけれども、その明確なルールということになりますと、例えば加藤先生が先ほど来強調されていることは、特に土壌の移動という部分に力点を置かれているわけでございますけれども、その土の移動についての、それに対する何らかの届け出の義務ですとかあるいは規制ですとか、そういったことを具体的に明確にこの委員会の中ではっきりさせていくべきだ、そのように理解をさせていただいてよろしいでしょうか。
 そういった観点で、そこら辺を明確にしていかないと、かえって土壌汚染が拡散されるという認識については、私どもも全く同じですし、そういった意味で、この法案に問題点が数ある中の、これが一番重要な部分だと私どもは思うわけでございますけれども、その辺について、せっかくでございますから、大塚先生から順次その辺の御意見を、一言ずつで結構ですから。
大塚参考人 どうも御指摘ありがとうございます。
 残土の移動につきましては、既に関東圏におきましてもかなりの自治体で条例、要綱等をつくっております。したがって、特に必要な部分については現在条例、要綱等で規制をしているという状況にあります。
 この法案との関係で申しますと、この法案は土壌についての国民の健康のリスクを低減するということを考えております。土壌、土地についての健康リスクの低減ということを考えておりますので、搬出土壌について、それを有効利用したり、あるいは適正に処理するという問題については、残念ながら法律の目的と少し違うということがございます。したがって、この法案には少し入りにくいということでございまして、むしろ廃棄物・リサイクル制度の方で、現在環境省においても検討が進められておりますが、そちらの方で早急に対応していただくということが望ましいのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
村岡参考人 土壌の搬出のことについてお尋ねでございますけれども、本法案でどうなっておるかというと、まず調査をいたします。その調査の契機というのが、工場が廃止されるときとか、あるいは周辺の地下水が汚染されている、こういうふうに契機を考えまして調査して、その場合、結果的に汚染が確認されますと、それは健康リスクを生ずる非常に蓋然性の高い場合というふうに確実に捕捉していくことになりますので、それによってその地域は指定地域というふうに指定されます。この指定地域になりますと、もはや、そこから土壌を搬出する、あるいは、そのほか、土地の形質を変更するということは制限されます。したがって、そういう場合の土壌の搬出というのはあり得ないというふうに考えます。
 ただ、土壌が、ある土地から搬出されるという全般的な搬出、移動ということにつきましては、今、大塚参考人が言われましたように、本法案とは違ったところで考えないといけないというふうなところがあるのではないかという認識はしております。その場合も、そういった廃棄物処理法の観点から、持ち出した土壌がどういうふうに汚染されているかということ、汚染されていればそれはどういうふうに処置しないといけないかというあたりがちょっとはっきりしない面があるので、やはりこれは廃棄物・リサイクル制度をもう一回見直す、現在見直されているということでありましたけれども、そういったところで考え直さないといけないというふうに考えております。
梶野参考人 お答えをいたします。
 神奈川県では、残土につきましては残土処分条例というのがございまして、環境面の視点も入れて条例で規制しておりますが、一方、私どもが所管する生活環境保全条例の中でも、工場敷地内で汚染土壌が確認された場合には、その汚染土壌による二次公害が起こらないように、公害防止計画を策定してもらいます。その中で、汚染土壌の最終的な処理方法、あるいは搬入場所、委託業者等を計画の中に記載していただくことになっています。さらに、事業者は、公害防止計画の完了報告書を知事あてに提出することになっておりまして、この完了報告書の中で、汚染土壌の適正な処理について確認することとしております。
 以上でございます。
牧委員 今の同じ質問を加藤先生にもさせていただきたいと思います。
 その移動の部分について修正が加わらなければ、この法案そのものは、かえって拡散を招くものなのか、あるいはそうでないのか、その辺のお考えをお伺いいたします。
加藤参考人 先ほどの繰り返しになりますが、私はあくまでも、汚染された土地を規制するということと、そこから搬出されるおそれのある土を規制するということは、セットで行わないといけないと思います。
 これは、これも先ほどの繰り返しになりますけれども、土地を持っている人、あるいは買いたい人、売りたい人等々は、法律ができると必ずその法律に対して動くわけです。そうなりますと、調査の契機が非常に限られている、しかも、事前にそれに対して土を運び出すというようなことでもってコストを削減できるというようなことになれば、言葉は悪いんですけれども、正直者がばかを見るというような状況が許されるとすれば、当然にかなり多くの人が、先ほども申し上げましたように、そんなに特別悪い人だけじゃなくて、ではちょっと早目に何とかしておこうかというようなことになるのは普通のことではないのかな。
 人間に、法律に書いてあるように動けと言うのはなかなか難しいものですから、ですから、あくまでもこれはセットで考えないといけない。そういう意味では、先ほどお二方の参考人が、やはり何らかの対応が、これは違う法律の中であっても対応が必要だとおっしゃっていたのは私は大変心強いお話だと思いますし、ここはぜひセットでお考えいただきたいと思います。
牧委員 ありがとうございました。質問を終わらせていただきます。
大石委員長 西博義君。
西委員 四人の参考人の皆さん、本当にお忙しいところおいでいただきましてありがとうございました。大変貴重な勉強をさせていただいた思いがいたします。
 初めに、大塚参考人にお伺いしたいと思います。
 今回のこの土壌汚染対策法案の意義について詳しく御説明いただきました。私、以前、数年前に出版された本だと思うんですが、東京大学の地球惑星物理をなさっている専門の松井先生が、たしか借り物の思想という本をお出しになったと思うんです。つまり、地球は宇宙からの借り物であり、私たちの持っている土地というのは地球からの借り物だというような御趣旨だったかなというふうに思っているんですが、私有地という、今までの大気や水質とはまた違う側面を持っているこの法律が発効することによって、やはり土地というものをきれいに使ってきれいに返さなければ、次の世代に移していく、またよその、ほかの人に売買をする、こういう考え方が法律的に一つでき上がるきっかけに、完全とは私もこれは思ってはいないんですけれども、きっかけになるのではないかな、こんな気持ちがしているんですけれども、御意見をちょうだいしたいと思います。
大塚参考人 どうも御質問ありがとうございます。
 法案の意義ということですが、今御質問にありましたように、土地をきれいに使ってきれいに返す、あるいは、売るときにはその人にきれいにして多くの場合売るというようなことをこの法案は促進するということがまず確実ではないかというふうに確かに思っております。
 この法案は、先ほどほかの参考人の方々もお話しになりましたように、一定の場合に調査をして、さらに措置命令という形で浄化の実施が義務づけられるという制度でございますので、土地の使用の方法あるいは土地の売買に際しての注意義務というようなことが、この法案をきっかけにして商慣行として出てくるだろうということは想像にかたくないわけでございまして、先ほど来幾つかの問題点についても御指摘はありますけれども、とにかく現在の状況を一歩進めるという意味では、この法案は大きな意義を持っているというふうに考えております。
 さらに、この法案の中で、先ほど少し申しましたように、台帳制度とその自由閲覧という問題がございますが、これが、汚染地だということの情報が広がることによって、閲覧されることによって汚染地の価格が下がるという、市場を通じて劇的な形でリスク低減措置、浄化を進めていくということが見込まれますので、そういう意味でも非常に大きな意味を持つ法案であるというふうに考えております。
 さらに、産業の問題としては、この法案によって、環境ビジネスとしての土壌浄化ということが進んでいくということも見込まれるわけでして、そういう意味では、大きな意義を持つ法案であるというふうに考えております。
 以上でございます。
西委員 もう一個、大塚参考人にお尋ねしたいんですけれども、このリスク低減措置の実施主体の件でございます。
 ここのところに、(一)、(二)に「浄化対策の実施主体」「浄化の実施主体」、こう書かれているんですが、いわゆる本格的な浄化ということを前提にしてお考えでこの議論が進められているのかということと、それから実際の今回の法律、措置命令と求償権という大変ポイントになるセットの考え方であるということで、随分私どもは議論もさせていただきました。
 土地が私有地ということを前提にいたしますと、汚染原因者と土地所有者が、今後の問題は別として、今までもう既に汚染されているところの土地の浄化を、または回復をどうするのかということは非常に難しい問題で、ようやくここまで、基本的には汚染原因者をその実施主体とするというところの表現にしたんですが、同時にやはり、その土地の汚染原因者がわからない場合には、求償権というのをどうしてもセットで入れていかないと完成しないという感じがいたしておりまして、先ほど先生から、よい形でできたというお話がございましたけれども、その関係についてもう少し言及いただければ、この二点、浄化ということと二つお願いしたいと思います。
大塚参考人 どうも御質問ありがとうございます。
 まず第一点目についてでございますが、浄化とか汚染の除去等とかリスク低減措置とか、いろいろな言葉を使って恐縮でございましたが、先ほど村岡参考人の方からも御説明がありましたように、この法案は、浄化でなくても、それ以外の汚染の除去等あるいはリスク低減措置等でも構わないということを考えておりまして、具体的には、例えば覆土とかあるいは封じ込めとか、場合によってはモニタリングだけとか、立ち入りの禁止とか、そういうものも含めて汚染の除去等に入るという整理がなされております。
 これは、この法案が国民の健康リスクを低減するという観点からつくられているということがございまして、特に直接摂取の経路につきましては、その土地の利用状況に応じて、最も合理的な方法でリスク低減を進めていくということでございます。したがって、浄化といいましても、完全な浄化という場合だけではなくて、それ以外のいろいろな方法があるということでございます。
 それから、第二点につきましては、先ほども少し陳述させていただきましたけれども、基本的には汚染者負担原則というものがこの場合には土壌汚染についても適用されるということでございまして、それは原因者が判明しているという場合には原因者に対して措置命令をするという考え方からその点が示されているわけであります。
 さらに、御指摘がありましたように、土地所有者がリスク低減措置をとったという場合についても、原因者が明らかになったということが出てくれば後から求償して費用を徴収するということ、原因者に対して求償するということが八条で可能になっておりまして、そういう意味で、汚染者負担原則というのが適用される法制度になったということで、私はこの点を高く評価しているところでございます。
 しかし、もちろん土地所有者についても、先ほど申しました状態責任という観点から、汚染原因者が不明の場合には最後まで責任を負っていただくという制度でもあるということも重要な点でございます。
 以上でございます。
西委員 続きまして、村岡参考人にお願いをしたいと思います。
 先ほど、中央環境審議会の「今後の土壌環境保全対策の在り方について」の取りまとめをされたというふうにお伺いしました。大変御苦労さまでございました。
 このタイトルから見ますと、健康被害に限って議論が行われたのかわからないんですが、私は、最終的にはやはり何らかの抜本的な対策はどうしてもいずれかの時期に必要になってくるだろう、こう思っておりまして、その辺の議論がこの審議会の議論の中にあったのかどうか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
村岡参考人 御指摘ありがとうございます。
 当然そのような意見はたくさん出ました。しかし、環境行政としてこれまで公害対策として考えてきた水とか大気とかの延長として土壌環境の保全ということになりますと、やはり健康影響ということが主体になりますので、それを軸にしてずっと論議をしてきたつもりでございます。
 ただ、先ほど来幾つかの関連する土壌汚染にかかわる問題が指摘されておりますから、それはそれで、この法案以外のどういったところでそれが規定できるかというふうなこともあわせて検討しております。逐一申し上げるわけにもいきませんけれども、そういったことでありまして、ほかの、水質汚濁などで考えられておりますような生活環境保全のための制度というのは考えないのかというふうなことも、当然議論をさせていただきました。
西委員 もう一つお伺いをしたいと思います。
 先ほどお話がありましたように、土壌中の有害物質の動態に応じた対策が必要である、当然そういうことだと思います。ストック型という、いわゆる吸着をする、多分金属類を中心としたお考えだと思うんですが、それとフロー型。いずれにいたしましても、この当面の対策をすることによって、いわば皮膚接触だとかそれから水質汚濁だとかいうことをとめましても、土壌中のことですから、いつまでも残ることは残るんですね。気体や液体の場合ですと、当然のことながら、いっときのことですと、拡散してだんだんと薄くなって健康被害がなくなる、こういうことなんですが、土壌の場合は、ふたをしても、水がしみ込まないようにしても、そこにいわば固定することが当面の目標ということになりますと、もちろん有機物質なんかの場合は、微生物等の影響があったり、またほかの要素で分解したりということは若干起こるかもしれませんけれども、基本的にはそのまま残る。それが最終的に日本各地に、これからこの法律が適用されていっても、そういう状態が各地にどんどん広がってくるという可能性があるとしたら、やはり先ほどの、いずれの機会にか抜本的な対策がなくてこの狭い国土がうまく回っていかないんじゃないか、私はこういう感じがしているわけでございますが、その辺の村岡先生御自身のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
村岡参考人 これは結局、ゼロリスクまでいくかどうかという話だと思います。ゼロリスクは、もうこれは理想の、終局の問題です。私はそれを願うけれども、やはりゼロリスクを今徹底させるということはまず不可能であろうというふうに思っています。
 そのために、先ほど言いましたような汚染物質の動態を考えた措置をいろいろ考えて、そしてそれで全く安全であるということじゃなくて、モニタリングをしていくというふうなことで、ある段階でまたそれにチェックを入れていくということをあわせて考えるということによって、国土の土壌保全、土壌対策ということにかかわっていくべきだというふうに思っております。
西委員 もう時間がなくなって、もうあと数分ですので、一つだけちょっと気になることを確認させていただきたいと思います。
 加藤先生、済みません、もう時間がなくなっちゃって申しわけないんですが、梶野参考人、今現実に神奈川県でこういう土壌汚染対策が行われているわけですが、先ほどからちょっと議論がありました汚染者の負担の原則ということを今法律的に適用してまいりますと、土地所有者と汚染をした人とがうまく一致すれば問題はないんですが、汚染者が見つからないとか、そういう現場で処理をされる上の実態、幾つかの前例がおありなんだろうと思うんですが、今のところの実態がもしわかればお伺いをしたいと思います。
梶野参考人 私ども、汚染が確認された場合に、まず汚染原因者を発見して対策を進めているわけですが、これまでの例では、汚染原因者がわからないという事例はございません。ただ、今後は、広域汚染とかそういうことになりますと、しかも発生源が幾つもあるような地域ですと、やはりそういった事例が、どこの工場が汚染原因者なのかという事例は出てこようと思いますが、幸いにして、今までの神奈川県の事例では、そういったわからない、不明という事例はございません。
 以上であります。
西委員 時間です。ありがとうございました。
大石委員長 武山百合子さん。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 きょうは、それぞれの立場からお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 まず、大塚参考人にお尋ねいたします。
 先週、委員会でいろいろ議論が出ておったんですけれども、今実際に、現実問題として土地の売買で、汚染がされているかどうかということを企業自体がどんどん調査を始めている実態を聞いたわけなんですね。
 この場合は、法律でもう有害化学物質と限定されておりますけれども、浄化の実施主体、費用負担ということで、お互いに汚染原因者と土地所有者との関係の間でなすり合いなんということが出てくると思うんですね。それで、お互いに利害がかかわるものですから、裁判になんて持ち込むこともあると思うんですね。その辺の議論はここではどうなされましたでしょうか。
大塚参考人 御質問どうもありがとうございます。
 この点は、汚染原因者と土地所有者との関係についての重要な点でございますが、先ほども少し申しましたように、七条、八条というあたりがその辺に関係するわけですけれども、七条の規定というのは、一項で、土地所有者に措置命令を課するということになっていますが、ただし書きがありまして、「所有者等以外の者」というのは、これは原因者というふうに基本的には考えていいですけれども、原因者が明らかだという場合には原因者に対して措置命令を課することができるということになっております。したがって、原因者が明らかだという場合には原因者の方に措置命令がかかるということになります。
 御指摘の点はその先の八条の方で、措置命令を受けた土地所有者がリスク低減措置をとったという場合に、その後、求償を原因者に対してしていくという場合にはどうなるかという問題かと思います。
 ここでは、もし、求償の結果、原因者の方が支払わないというようなことになりますと、これは確かに裁判が起きる可能性はあるわけですが、八条の規定が明確に定まっておりますので、原因者だということが明らかになれば、原因者がこの費用を支払わなければいけないということが明確に定められているということになります。
 なお、八条は措置命令を受けた土地所有者が求償したという場合の規定でございまして、措置命令を受けないで土地所有者がみずからリスク低減措置をとったという場合に原因者に対して求償していくという場合については、これは民法の不当利得または不法行為の規定が適用されることになろうかと思います。
 以上でございます。
武山委員 大塚参考人にもう一度お尋ねしたいんですけれども、その場合、ずるずると長引く場合と早急に解決する場合とあると思うんですね。ずるずると長引く場合が結構出てくるんじゃないかと思うんですよね。その場合、青写真として想定して、どのくらいできちっと解決できる道筋ができるものなんでしょうか。
大塚参考人 これはケース・バイ・ケースでございますので、必ずしも明確な答えはできませんが、これは裁判においてどういうふうに扱われるかということになりますので、裁判をできるだけ迅速にしていくという方向が現在の司法改革等で出ていると思いますけれども、そんなような観点から、できるだけ早期に解決が図られるということが望ましいと思われますけれども、残念ながら、この法案のみの問題ではないということになろうかと思います。
武山委員 それでは、また大塚参考人なんですけれども、先ほど土壌汚染情報の取り扱いということで、土壌汚染情報の公表の意義というところで、調査と公表のみでも相当の意義ということですけれども、これは調査するというだけのことで、調査の中身は公表されないわけですよね。それから情報公開という点で、いわゆる土地の調査に関して住民からの申し出なんというのは全然取り入れないわけですよね。一方的に都道府県が調査するだけで、調査の中身がなぜ明らかにならないのか、またそれが公表されないのか、その辺、議論したと思うんですね。ぜひそれをお知らせいただきたいと思います。
大塚参考人 まず、台帳の記載内容でございますけれども、汚染されている土地がどういうところかということと、それから汚染状態がどういうことかということについて自由に閲覧されるということになっておりますので、台帳の記載内容については、私自身はそれほど問題はないというふうに考えております。
 もう一つの御指摘の点で、住民の意見を聞くような手続が入っていないということについてでございますが、これは都道府県が住民から調査をしろという要請があった場合に適切に対応していただくということで、特に規定は置かれていないということになっております。
 さらに、その点について、置くべきではないかという御議論はあろうかと思いますけれども、この点については、公害規制全般について同じような問題があるというふうに私自身は考えておりまして、むしろ公害全般についてそのような制度を設けるかどうかということを今後検討していくべきではないかというふうに思っております。
 以上でございます。
武山委員 それでは、都道府県が調査するその調査が本当に正しいかどうかという担保、実効性の担保はどういうふうに国民は判断したらいいでしょうか。何でもお上のやることは正しいという前提のように聞こえもするわけなんですね。調査自体の中身が本当に正しくて実効性があるかというその実効性の担保は何でしょうか。済みません、大塚参考人、議論の中でどういう議論が出たか。
大塚参考人 この調査につきましては主に三条の規定が適用されるわけでございますが、これはお上がやる、都道府県がやるということではございませんで、都道府県は、土地の所有者、管理者または占有者に対して、環境大臣が指定する者に調査をさせるということを、そして都道府県知事に報告させるということを求めているわけでございます。
 この「環境大臣が指定する者」というのが、先ほど来委員御指摘があちこちでございました指定調査機関というものでございまして、指定調査機関というのは、まさに今御質問がありましたように、その調査について信頼性を高めるという観点からこのような機関を考えているということでございます。これは民間の事業者を指定することを考えておりますので、決して現在の構造改革に反するというような問題ではございませんで、むしろ調査の信頼性を高める、あるいは調査について一定の能力を備えた人が調査をするということにするために極めて重要な問題というふうになっております。こういうことによって、調査の信頼性が確保されているということになります。
 さらに、この調査については、虚偽の調査をすると罰則がかかるということにもなっているということについても追加して指摘しておきたいと思います。
武山委員 新たに行った防止措置、それに対しての公開はなぜこのとき盛り込まなかったんでしょうか。中央環境審議会で議論された村岡参考人にぜひお聞きしたいと思います。
村岡参考人 新たに調査した結果の公表ですか。
武山委員 はい、防止措置の。
村岡参考人 防止措置ですか。
武山委員 はい。これを公開されていない、公開しないわけですね。ですから、これはなぜ公開しないということになったのかなというその辺の議論の経緯です。
村岡参考人 新たに防止措置をとった場合、新たというのはどのように判断すればいいでしょうか。
武山委員 調査の結果、ここは防止しなければいけない、汚染が確実にわかった、これこれこういう防止をしなければいけないという措置をとるわけですね。その防止の内容を公開した方がいいと思うんですね、正々堂々と。こういう汚染状況で、それで、そのために調査をしたのでこのような防止措置をとる、その防止措置の内容をぜひ公開してもらいたいというのが国民の願いなんですね。ところが、これには公開は入っていないわけなんですね。その辺は、なぜ国民に公開しない結果にこの法律はなったんでしょうかという議論でございます。
村岡参考人 防止措置をとった後の報告という段階で、都道府県になされるわけですね。どのようなフォーマットの報告になるかはまだ決められておりませんけれども、その段階で、どのような措置によってこのような防止を行ったか、その点が記述されるはずと思っております。
武山委員 加藤参考人にお聞きしたいと思います。
 この法案によって、都市再生という新たな前向きなビジネスチャンスじゃないかということを加藤参考人の資料等で読ませていただいたんですけれども、例えば前向きな大きな話で、汚染防止がきちっとされて都市再生につながるとしましたら、例えば試算してどのくらいの経済効果があると思いますか。
加藤参考人 私は全くわかりません。
 それと、一つつけ加えますと、私が先ほど申し上げました趣旨は、きちんと調べて、その情報をくまなく出すということでもって、土地が汚染されているということが土地に関する当たり前の情報になることが大事だということだと思います。
 先ほど大塚参考人から、浄化もビジネスになると。私は、そういうのももちろんあると思います。しかし、それはむしろ付随的なことであって、それを法律の効果だということを余り喧伝するのは、正直なところ、私自身はいかがなものかなと。むしろその本質的な問題というのは、土地がきちんと正当に評価されるかどうか、評価されれば、それは土地の流動化にもつながるし、都市の再生にもつながる、こういう趣旨でございます。
武山委員 先ほど加藤参考人のお話の方から、会計基準ということで、土地について時価会計基準、保有する不動産にきちっとした価値をつけた方がいいというふうにお話ありましたけれども、日本は非常に固定資産税に対してもオープンになっていないわけですね。アメリカなぞではすべて、土地を購入する者にとっても、まただれでも、固定資産税が幾らかとか、土地の評価というものが非常にオープンになっているわけなんですね。日本の場合は、買って初めてその土地の評価がわかるというような状態なわけですね。
 ですから、この会計基準、時価会計基準について、きちっとした価値をつけるべきだというふうに私も本当に思っておるんですけれども、これは今何がネックになってこういうことが行われていないと思いますか。
加藤参考人 これも先ほど来の繰り返しになりますけれども、やはり土地についての評価を厳正に行うに足る情報が十分でないということだと思います。ですから、土地は例えばどういう場所にあるのか、どういう形になっているのか、いろいろな条件があるんだと思いますが、それと同時に、最近は特に外国の企業が、特にアメリカなどはそうですけれども、日本に来て土地を買う、それでそこに建物をつくる、あるいは使うときに、土壌の汚染がどうかということを非常に気にするわけですね。それに対応できるように、日本の企業も大企業を中心にして、汚染の有無を調べるように、もうそういうふうに状況としてはなっているわけですけれども、しかし、まだまだこれは一部の例なんだと思います。
 したがって、その土地自体が汚染されているかどうかということが、かつては土地を評価する上での余り大きい条件ではなかったわけですけれども、土壌汚染の有無というものが今は非常に大きい条件になっている。これは、むしろそういう世界的な状況の変化で我々が迫られている。その点に関して日本はまだ対応がおくれている。その結果、評価がきちんと行われていないということだと考えております。
武山委員 どうもありがとうございました。
大石委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 きょうは、本当にお忙しいところお運びいただいて、ありがとうございます。
 まず最初に、この法を提出するに至る経過でいろいろと御審議をしていただいた中央環境審議会の委員として、村岡参考人にお尋ねをしたいというふうに思います。
 このたびの法案は人の健康被害を防止するということになっておりますけれども、先ほどもお話がありましたけれども、生活環境影響だとかあるいは生態系影響ということに対しては、知見がまだないので、それは将来のこととして、今回はそこまで踏み込まなかったんだというお話がございました。
 しかし、中環審の答申では、費用対効果の関係の問題や、国民に対する過大な負担を課すことにならないようにというようなことなどで、その浄化対策についても別途省令にゆだねるということになっております。
 また、環境基準に対して対策基準、つまり基準のダブルスタンダードということを設けることが、果たして日本の国土を、国民の健康被害を防止する土壌に再生することができるのだろうか。これは私の思いなんですけれども、人の健康被害防止をするのに果たしてそれでよいのか、もっと徹底して防止を担保すべきだ、こういう意見もございます。そのことについてはどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
村岡参考人 対策基準そのものを設けるという方向にはありますけれども、それがどういった値になるかは、まだもちろんこれからの検討になります。
 そういった対策基準を設けるということと人の健康を守るということと矛盾しないかという点ですけれども、これはやはり、先ほど来申しておりますように、汚染の人へのリスクがどのような構造になっているかということを理解して実効ある対策をしなきゃいけないという段階で、どうしてもそういう考え方を導入しないといけないのではないかと私自身は考えております。
 もし直接すべての汚染土壌について、その汚染レベルを環境基準として、それで対策を練っていくということになりますと、どうしても土地が動かないとか、対策が費用の面で滞るとかいうふうな問題が生じてきますので、そこのところこそ、実効ある対策に結びつけるための一つの手段として、そういう対策基準的なものを何か評価しないといけないというふうに私は考えております。
藤木委員 もう一つ伺っておきたいと思うんですけれども、そのために汚染対策としてさまざまな方法がある。土壌汚染の特徴からいって、これは動かないといいますか、はがれにくいといいますか、そういう特性があるので、覆土であるとか遮断であるとかということで、国民の実生活との環境を遮断するということで対策をとろうということになっておりますね。
 私も幾つかのところを見てきたんですけれども、確かに埋立跡地にできた工場の跡地、そこに住宅が建つということで、それは住宅から遮断できない場所に住宅が建っているということがございますね。しかも、そういうところは、私、特に兵庫県の出身でございますから、阪神・淡路大震災で大変な直下型の地震を体験したんですけれども、必ずそういうところは逆流してまいりますから、噴き出してまいりますから、コンクリートであろうと何であろうと割って噴き上げてくるわけですね。
 そういうことにまで対応するということをお考えいただかなければ、ですから、やはり環境基準をクリアするということを、最終目標と言われましたけれども、それをあくまでも追求するということが示されていなければ、危険性というのはかなり持ったままいくということになるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
村岡参考人 例えば地震のように、災害が起こって下から噴き出してきたという場合は、これは災害の立場から一応考えられるべき問題です。ただ、そういったものが結果として人の健康に影響する可能性がある場合には、その辺をもう一度、この関連法案としての見方を追求していかないといけないというふうに思います。
 今回は、あくまでも汚染されている土壌がそのまま置いておいて大丈夫なのかどうかということからきている人の健康リスクの保護ですから、その点から考えますと、何か事故が起こったということについては、やはり別の考え方を導入しないと、一緒にはできないというふうに思っております。それは否定するわけではありませんけれども、そういう考え方になろうかと思います。
藤木委員 ありがとうございました。
 それでは、法の専門家として、大塚参考人にお伺いをしたいと思うんですが、諸外国では既に土壌汚染対策あるいは土壌保全のための法制化が進められておりまして、先ほど来お話にありましたように、米国のスーパーファンド法は、八〇年に制定されたのが最初というふうに言われているわけですけれども、それに次いで、英国、ドイツなど欧州でも、オランダももちろんそうですが、土壌保全法などの制定がされております。私は、この欧米と日本の違いといいますか、そういうことを非常に感じるわけですけれども、その点についてちょっと伺いたいんです。
 例えば、先ほど来お話に出ておりますが、スーパーファンド法では、所有者それから設置者、汚染原因者それから有害物の発生者とか、さらには連帯責任をそれらにかぶせるという法律になっていまして、先生のお話にもありましたけれども、これは法律上の責任問題ということになっているわけですね。判例上も、そういう企業に対して融資をしたということでの責任が問われるということが実際行われているわけですけれども、非常に広範な共同責任を負うということを課しておりますね。多過ぎたというお話もさっきあったんですけれども、しかし汚染は実際に起こっているわけですから、責任のなすり合いで解決をおくらせるということよりは、共同で責任をとるということは極めて合理的だというふうに私は思うわけですね。そこの日本と欧米との違い。
 それからまた、ドイツの場合などは、ドイツ連邦の土壌保全法では、未然防止の立場に立っているというふうに思うんです。土地は公共の福祉だという観点に立って、だから汚染してはならないということを義務づける、そういうことになっておりますね。未然防止というこの予防の措置、こういう汚染対策をとるということが、人の健康被害を防ぎ健康を守る立場としては極めてよいのではないかというふうに考えるわけです。
 なぜその違いが出てきているかというところですけれども、日本の場合は、私有財産ということになっておりまして、その土地は所有している者が支配する。だけれども、考えてみますと、企業だとしても、その企業は土地があり続ける間その企業としてもあり続けることができるかというと、決してそんなことはありませんし、必ずどこかに譲らなければならない。あるいは、個人で持っていたとしても、相続をするとか売るとかということになっていくわけですから、公共の立場に立つということが極めて大事ではないかというふうに思うわけですね。
 実際に、今度の法律は、そういう立場から見ますと、幾つもいろいろな汚染企業が自主的な調査というのをやっていますね。最初の発覚は、確かに人の生活圏に出ているということが検出されて、行政指導でやられるわけですけれども、その場合、その一カ所だけではなくて、企業は、自分の関連するあらゆる事業所をやはり調査して、それをクリアするための努力というのをやっているわけですね。今度の法律だけでは、そのことがむしろできないというか、やらなくてもいいということになっているわけですけれども、その辺の不備について、法学的な立場からどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
大塚参考人 どうも御指摘ありがとうございました。非常に広範な論点にわたる御質問だったと思いますが、まず、スーパーファンド法等の外国法との関係で今回のこの法案がどういうふうに考えられるかという点について、御指摘のあった点を中心にお答えしておきたいと思います。
 まず、アメリカのスーパーファンド法においては、先ほど御指摘があったような、たくさんの潜在的責任当事者と呼ばれるものについての連帯責任ということにしているわけですが、先ほどもちょっとお話をいたしましたように、余りその責任主体の範囲を広げてしまうと、どうして私が責任を負わなくちゃいけないんだというふうに思う人が必ず出てくるわけでして、そういう人は、自分の正義の意識に反するというようなことにもなるものですから、必ず訴訟を起こすというような問題が出てきます。
 銀行などでも、融資者などでも、実際に土地を所有してしまえばもちろん責任を負うのは当たり前なんですけれども、では、お金を貸したというだけで、汚染土壌を持っている事業者にお金を貸したということを中心的な論点として、そこから責任を負うということについて、果たして社会的に正当だというふうに思われるかどうかというふうな問題は必ず出てくるわけで、それがどういうことになるかというと、結局、非常に多くの訴訟が起こって、訴訟するのに金がかかってしまってちっとも浄化が進まないという状況が、アメリカの場合かなり長い間、法の制定から続いたということがございます。
 そういうことにかんがみまして、その後、九〇年代に入ってから法制度を整備しましたヨーロッパの国々においては、余り責任当事者は広げないということを基本としていると言ってよいわけですが、土地所有者とか原因者、それからドイツの場合は、先ほど申しましたように、支配企業と呼ばれる親会社などにも多少責任は広げてはいますけれども、その程度でございまして、余り責任当事者の範囲を広げ過ぎると制度が立ち行かなくなるというのが基本的な考え方でございます。その点からは、今回の我が国の制度は、少なくとも、土地所有者は入れていますけれども、原因者と土地所有者ということを責任主体としているという点で、私自身は合理的なものではないかというふうに考えております。
 それから、ドイツについては、確かに未然防止とか予防原則とかが、規定が置かれているわけですけれども、今回のこの法案におきましてはどういう整理がなされているかといいますと、未然防止の観点については、水質汚濁防止法の、先ほど少し申しました特定地下浸透水の浸透の禁止というところで一応制度ができていることとか、あるいは廃棄物について、有害廃棄物の適正処理についての制度があるということで、そちらで未然防止の観点については対処するということを考えているわけでございます。土壌汚染についての、ストック汚染としての過去の汚染の除去ということが今回の法案の基本的な論点ということになります。
 さらに、私有財産との関係とか、あるいは公共の立場に立つことが必要ではないかという御指摘がございました。
 我が国の場合、私有財産制がかなり強く理解されているということは確かに御指摘のとおりでございますが、この法案においては、だからこそ土地所有者に責任を負わせるということが逆に可能になったという面もございます。
 それから、公共の立場に立つことは確かに必要なんですけれども、公共の立場に立つことが必要だといっても、欧米のどの国においても、先ほど申しました公共事業型の制度というのはなくて、規制型の制度ということになっているわけですから、だれか私人がとにかく責任を負うという制度をつくらなければいけない。そこで、最も中核として考えられる原因者と、さらに土地所有者というのが今回の法案における責任の当事者として考えられたものでありまして、私としては合理的なものではないかと思っています。
 それから、最後にもう一つ御指摘のあった点でございますが、調査について、あらゆる事業所で調査をするのが望ましいのではないかということでございますけれども、今回の法案は、確かに、有害物質を使用している特定施設についてのみ調査の義務をかけており、かつ廃止時に限っているということで、限定されていることは否定できない事実でございますが、これは、この法案の目的が国民の健康被害を防止するという観点にあるために、一般人が通常立ち入らない領域についてまで調査義務をかける必要は必ずしもないということがその趣旨でございます。これは、もしそういうものについても直ちに調査義務を課するということになると、過剰な義務を課することになるのではないかという考え方でございます。
 しかし、この法案ができても、自主的に先ほどおっしゃっていただいたような取り組みを進めていくということは望ましいことですし、むしろ、この法案ができても、そういうことが進んでいくのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
藤木委員 ありがとうございました。
 時間なんですけれども、私、自治体の御意見をぜひ伺いたいと言ってお越しいただいた関係で、一言だけ伺いたいと思うんです。
 神奈川県でも随分、要綱、条例をつくって御苦労していらっしゃるわけですけれども、そういうものができたとしても、一番自治体が御苦労していらっしゃるのは、汚染源を突きとめるという問題と、それから、先ほどもちょっと御要望の中にありましたけれども、その調査費用だとか、費用が極めてかかるという点がお悩みのように私お見受けするんですけれども、今度の法ができたことでその両者がかなり緩和されるのかどうか、その辺を一言お述べいただきたいと思います。
梶野参考人 まだ法案の全体が明らかになっておりませんので、これから政省令が出て細かい部分が示されると思いますが、今、県条例でやっておりますけれども、法律ができるということは、さらにその対策を進めていく上で強化されるというふうに考えておりますので、調査にかかわっては費用もかかりますけれども、やはり実効ある条例に基づいて実効ある事業者指導、浄化対策を進めていくことが大事であるというふうに考えております。
 以上であります。
藤木委員 ありがとうございました。
大石委員長 金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 きょうは、四人の参考人の皆さんには、大変ありがとうございます。
 早速質問に移らせていただきますけれども、最初に村岡参考人にお伺いしたいんです。
 先ほどの質疑の中にも出てまいりましたけれども、汚染地域の土壌の移動、土の移動ということですけれども、答申の中でもこの点については、リスクがある、起こってくる、やらなければならないということが書かれております。先ほどの話では、搬出制限されているようなこともちょっとお話がありましたけれども、第九条を見てみますと、残念ながら、形質変更についてそこまで明確になっていないと思うんですね。
 しかも、そうしますと、今までの地域から外に移動するということになれば、その移動方法また移動場所によれば、非常にリスクが増大するという問題もあるものですから、もちろん関連の法案ということもありますけれども、私は、この法案の中に、その土地の土壌の移動ということについて、監視、届け出、先ほど神奈川の例も御報告がありましたけれども、そこをきっちりと法律の中で明記するということは非常に重要なことではないか。この九条の中身だけでは、必ずしも搬出、移動について明確になっていないんではないか。省令で定めるということになっておりますけれども、その点は、今回の法律の中でも、今まで土地だけに限定されて、そこの対策をいろいろ考えていたけれども、それがもし万が一外へ出たときには、やはりきっちり届け出したりするという義務なりを明確に課すべきだというふうに考えております。
 その点では、答申の中身と法律の関係でいうと、少し甘いのではないかというふうに思いますけれども、その点どのようにお考えでしょうか。
村岡参考人 一たん指定区域に指定されますと、土地の形質の変更というのはできない、その土地の形質の変更の中に、汚染土壌を搬出するということも含まれていると御認識いただきたいと思います。
 したがって、言葉が足らないという面はあるかもわかりませんが、内容はそのようになっておりますので、指定区域になって、これはあくまでも人の健康の保護のための指定区域ですから、法律がもともとそこから出発しておりますので、その法律の立て方の中での指定区域からは汚染土壌は出ていくはずがないというふうに考えております。
 ただ、一般的に、土砂とかあるいはこういう指定がされていないところからの土壌の搬出、これは、先ほど私が申しましたように、別の廃棄物関係の移動になるかと思いますので、そこを仕分ける必要はあると思います。
金子(哲)委員 ちょっとこだわって聞くようで申しわけないんですけれども、今、その指定をされた地域からの土壌は移動はしないということは、どこをどう読めばそういうことになるんでしょうか。そのことについては、法律上は形状変更ということは認めているわけでして、土地の移動ということは、汚染土壌における土地の移動、土壌の移動ということは、これは九条の中に書かれているということになるわけですか。
村岡参考人 やはり指定区域からの土壌の搬出ということも含めて、土地の形質の変更は制限されるというふうに御理解いただきたいと思います。
金子(哲)委員 ということは、当然その形質変更の届け出の中には、土地の移動、もし土壌を移動するようなことがあれば、その届け出の中に明確に記載されるべきだということでいいわけですね。
村岡参考人 そのように考えております。
金子(哲)委員 それから、今度は加藤参考人にお伺いしたいんです。
 先ほど土地のいろいろ評価の問題とかありました。私ども、先般の委員会の質問でも同僚の委員から質問しましたけれども、土地の登記簿へのこの情報の記載ということ、これからの土地の売買にとっては非常に重要な要件になるというふうに考えますと、土地の登記簿にもこの汚染情報というのは記載をされるべきだというふうに私ども考えておりますけれども、その点についてもしお考えがあれば。
加藤参考人 私は、できればそれはそうあるべきだと思います。
 もちろん、土地の登記簿というのはもともとそういう目的でつくられたものではないというような反論があるんだと思います。しかし私は、これも一般論になりますけれども、今の行政のあり方というのは、やはり基本的なところからいろいろなものが問われているわけですね。ですから、そもそもそういうふうにつくられたものではないからということで、いつまでたっても、例えば土壌汚染の情報は別でやるべきだとか、そういうことではなくて、やはり世の中が変われば法律も変えないといけない、仕組みも変えないといけない、役所も変わらないといけない。それは、役所なり法律というのは、自分たちは変わらない、世の中をこっちに合わせろと言っているようなことが余りにも多いんではないのかなと、今の土地の登記簿についてもですね。
 ですから、先ほども申し上げましたけれども、土地についての条件というのが、土壌の汚染も含めて一元的に住民に、住んでいる人、国民と言ってもいいかもわからないです、提供されやすくする、だれが行ってもそれがすぐわかるという状況にしておくことが、国民の利便性の上からも当然必要だと思いますし、また、それが土地の流通を促進していくためにも必要だと思います。
金子(哲)委員 大塚参考人にお伺いしたいんですけれども、レジュメをいただいた中で、浄化措置がなされた場合の指定の解除ということで、これは指定解除すべきであるということを先ほどお話しになったと思いますけれども、浄化措置ということは、完全に、本格的な浄化があって初めてだと思いますけれども、その点はそれでいいのか、短くお願いしたいと思います。
 それともう一つ、私は、経歴というものを、経歴というか履歴といいますか、指定は解除されてもその情報だけは残しておくべきだというふうに思うんですけれども、その点についてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
大塚参考人 どうもありがとうございます。
 浄化措置については、まさに完全な意味の浄化措置ということで、それ以外のリスク低減措置は含めない趣旨でここでは書いております。
 それから、履歴について残すべきかということでございますが、先ほど少し申し上げたんですけれども、私は残すべきではないというふうに考えておりまして、それはイギリスなどでも、汚染の可能性がある土地について登録をしようとして制度が立ち行かなくなったということがございますので、とにかく、浄化をしたということになればこれはもう傷をなくすということが、浄化のインセンティブを高めるという観点からも極めて必要ではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
金子(哲)委員 梶野参考人にお伺いしたいんですけれども、今、使用が廃止された土地と健康の危険性のあるものということで対象になっておりますけれども、心配をされるのは、例えば、使用中の土地であっても工場の建てかえとかいろいろなことで形状変更されるような場合、それから、一部がもう停止状況になっているような場合、部分的に売却されるような場合とかも含めてですけれども、そういったときに例えば形状変更するときに、その土地の土が持ち出しをされるとかいったことがあると思うんですけれども、そういったことの場合にも、そういう移動、形状変更が行われるようなときにもやはりこういう調査をするということが、土壌汚染の調査をする契機の中の一つに挙げるということが大事ではないかと私は思うんですけれども、神奈川の例から見てどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
梶野参考人 工場の操業中の土壌調査ということかと思いますが、確かにそのとおりでございまして、県の条例で申し上げますと、有害物質を使用する事業所の敷地につきまして、土地の区画を変更したり、あるいは、土木工事等によって土地の形質を変更しようとするときは、その内容をまず届け出てもらう、変更する前に土壌調査を実施していただきまして、その結果をやはり行政の方に届け出てもらうということになります。
 万が一、調査の結果、土壌環境基準を超えていた、汚染土壌が確認されたといった場合には、先ほど申し上げました二次公害を生じないように公害防止計画をつくっていただきまして、その計画の中に汚染土壌の処分等について記載していただく、そういうことでフォローしていくということでなっております。
 以上であります。
金子(哲)委員 ありがとうございます。
 今お話をお伺いしますと、この法案の方が神奈川の取り組みよりもおくれているんじゃないかということで、もうちょっとやはりこの法案の中で審議を詰めなければいけないんではないかというふうに今お聞きをして思いました。
 最後に、村岡参考人にお伺いしたいんですけれども、今、神奈川県の取り組みをお伺いしましたけれども、県は、神奈川の場合、取り組みは非常に進んでいるというふうに私も今お聞きをしておりますけれども、問題は、これまでのいろいろなこういう土地の汚染の問題で問題だったことは、自治体が情報をなかなか公開しない、出さないということで長引くケースというのがかなり多かったと思うんですよ。
 それで、いわば使用が廃止された土地ということになれば、当然、転売とかいろいろなことがありますけれども、今多くのところで、多くの都道府県で遊休の土地というのが随分出てきております。それは、今できるだけ早く新しいプロジェクトなりをやりたい、特に地方の自治体において。そういう場合に、ほとんど省令、政令にゆだねられているものですから、法律ではその具体的なことが書かれていないということは問題だと私は思っておりますけれども、例えば健康のおそれのあるというようなあいまいなものではなくて、きっちりとした目標を、条件というものを出さないと、都道府県によってアンバラが出てくる。そのときの都道府県の判断、それから、その土地をできるだけ早く活用したいという思いがあれば、調査以前にもう転売、そういうことも含めて、可能性があると思うんですけれども、その点について、都道府県に対する統一的なものの指導を、知事がほとんどの責任を負うわけですから、調査命令を出すにしても知事がやる、そのきっかけということに対するいわば条例なり省令の中身が非常に重要になってくると思うんですけれども、その点について最後にお伺いしたいと思います。
村岡参考人 仰せのとおりだと思います。
 政省令化する段階で私がかかわれることがあれば、当然、そういったことを考えていきたいと思います。また、法律でも、国と県との連携といったあたりで、これはしっかりと考えないといけないということが明示されております。と同時に、それぞれの県でも、この法令が成った場合に、あとどうするかということは、私が知っておる限りでは、非常にシビアに考えておりまして、やはり汚染ですから、県レベルの汚染の実態というものを背景にして、どのように肉づけしていくかということは考えているというふうに私は判断しております。
金子(哲)委員 大体時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。
大石委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 次回は、来る五日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時六分散会


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