衆議院

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第6号 平成14年12月6日(金曜日)

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平成十四年十二月六日(金曜日)
    午前九時五分開議
 出席委員
   委員長 松本  龍君
   理事 稲葉 大和君 理事 田村 憲久君
   理事 西野あきら君 理事 柳本 卓治君
   理事 奥田  建君 理事 牧  義夫君
   理事 田端 正広君 理事 高橋 嘉信君
      小渕 優子君    木村 太郎君
      阪上 善秀君    鈴木 恒夫君
      鳩山 邦夫君    菱田 嘉明君
      松浪 健太君    三ッ林隆志君
      水野 賢一君    望月 義夫君
      山本 公一君    大石 正光君
      小林  守君    近藤 昭一君
      鮫島 宗明君    西  博義君
      東  祥三君    中井  洽君
      藤木 洋子君    金子 哲夫君
    …………………………………
   環境大臣         鈴木 俊一君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府参考人
   (水産庁増殖推進部長)  弓削 志郎君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           松井 英生君
   政府参考人
   (環境省大臣官房廃棄物・
   リサイクル対策部長)   飯島  孝君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局長
   )            炭谷  茂君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   政府参考人
   (環境省地球環境局長)  岡澤 和好君
   政府参考人
   (環境省環境管理局水環境
   部長)          石原 一郎君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  岩尾總一郎君
   政府参考人
   (国際協力銀行理事)   志賀  櫻君
   環境委員会専門員     藤井 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十八日
 辞任         補欠選任
  川崎 二郎君     横内 正明君
十二月六日
 辞任         補欠選任
  中井  洽君     東  祥三君
同日
 辞任         補欠選任
  東  祥三君     中井  洽君
    ―――――――――――――
十一月二十八日
 化粧品開発における動物実験禁止を動物の愛護及び管理に関する法律の中に明記することに関する請願(佐藤謙一郎君紹介)(第三三〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第三五五号)
 同(阿部知子君紹介)(第四七一号)
 同(金田誠一君紹介)(第四七二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 環境保全の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
松本委員長 これより会議を開きます。
 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として水産庁増殖推進部長弓削志郎君、経済産業省大臣官房審議官松井英生君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長飯島孝君、環境省総合環境政策局長炭谷茂君、環境省総合環境政策局環境保健部長南川秀樹君、環境省地球環境局長岡澤和好君、環境省環境管理局水環境部長石原一郎君、環境省自然環境局長岩尾總一郎君及び国際協力銀行理事志賀櫻君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
    ―――――――――――――
松本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。
水野委員 おはようございます。自由民主党の水野賢一でございます。
 まず、地球温暖化問題について質問をいたしたいと思います。
 COP3が京都で開かれて京都議定書が採択されたのが、一九九七年、平成九年の十二月であります。そして、その翌年には地球温暖化対策推進法という法律が成立をした。当時の環境庁は、この法律は地球温暖化という問題に的を絞った世界初の法律だというふうに自画自賛をしていた。自画自賛という言葉がちょっと言い過ぎであれば、盛んにそういうふうに喧伝をしていたわけですね。
 この法律はどういう法律かというと、簡単におさらいをしてみると、国と地方公共団体と事業者がそれぞれ温室効果ガスの排出抑制計画をつくりなさい、そういう法律だったわけです。そういう計画をつくれば、野方図なCO2の排出は避けられるだろうし、そしておのおの省エネにも努めるようになるだろう、そういうねらいがあったと思います。
 さて、ここからが質問なんですけれども、この法律、地球温暖化対策推進法では、国は、みずからが排出する温室効果ガスの排出抑制計画をつくることになっています。いわゆる政府の実行計画と言われておるものですけれども、望月政務官にお伺いをいたします。この計画というものが策定されたのはいつになりますでしょうか。
望月大臣政務官 水野先生にお答えさせていただきます。
 地球温暖化対策推進法に基づく政府の実行計画につきましては、本年の七月十九日に閣議決定されたところでございます。それにつきましては、法律の施行されたのが十一年でございますので、義務が発生されるまで、実はそのときから義務が発生されるわけでございますけれども、若干の時間がかかり、三年かかっております。
水野委員 今政務官がおっしゃられたように、三年かかってしまっているわけですね。法律の成立というのは九八年の十月です。施行は九九年の四月ですから、これは余りにも遅かったんじゃないかというふうに思うわけです。
 では、都道府県の場合と比べてみましょう。
 都道府県は、やはりこの同じ地球温暖化対策推進法という法律で、温室効果ガスの排出抑制計画という同じような計画をつくることが義務づけられているわけですけれども、さっき政務官おっしゃられたことしの七月の時点、政府がこの計画をつくった時点で、都道府県はどれだけ作成済みになっていましたでしょうか。
望月大臣政務官 都道府県は大変積極的にその指導を受けていただきまして、その時点で四十五の都道府県が実行計画を策定してその実行をしている、そういう事実がございます。
水野委員 ということは、四十七都道府県のうち四十五の都道府県が策定をしてから、それから国が策定したというのは、余りにも遅かったんじゃないか、遅きに失したんではないかというふうに思うわけであります。本来なら、国がこういうことは率先垂範すべきだったと思います。恐らく、いろいろな言い分というもの、もしくは言いわけというものもあるかもしれませんけれども、このことは環境省に対して大きい反省をしていただきたいというふうに思います。
 さて、この法律、地球温暖化対策推進法は、第九条で、事業者、つまり各企業に対しても同様の計画をつくれというふうに、これは明確な義務ではないけれども、努力義務みたいな形で規定をされているわけですけれども、各事業者の温室効果ガスの排出抑制計画について、策定状況を環境省として把握していますでしょうか。
岡澤政府参考人 事業者によります温室効果ガス削減のための計画につきましては、平成十二年度の段階ですけれども、環境省で策定状況のアンケート調査を実施いたしました。その結果によりますと、回答のあった事業者のうちの五一・八%が計画を策定していたということでございます。
 今後とも、計画策定状況をタイムリーに把握するように努めるとともに、策定を促進するために、排出量を把握し、公表し、評価するためのガイドライン等を策定して広くこれを広めることにより、事業者の自主的な取り組みを促してまいりたいというふうに考えております。
水野委員 こういう問題については、きっちりと今後も策定について、策定の状況を把握することにも努めていただきたいというふうに思います。
 さて、続いてPCBの処理の問題について入りたいと思います。
 昨年の六月に、PCB処理特別措置法という法律が成立をしたわけであります。同じく時を合わせて、関係する環境事業団法の改正というのも行われたわけです。
 法律というのは、制定するときには随分いろいろと議論がなされるんですけれども、制定された後になってしまうと、どちらかというと焦点が当たらなくなるということもあるわけですが、本当に大切なのは、法律は制定することに意味があるというよりも、むしろ、その後それを実行し、そして効果を上げるということが一番大切なわけであります。そうでなければ、仏つくって魂入れずというふうになってしまうわけです。ですから、法律というものがどれだけの効果を上げているのかということを検証する必要があると思うわけですね。PCB処理特別措置法というのもそういう検証が必要だと思うんです。
 改めてここでPCBの問題というのを振り返ってみると、PCBは、有害物質として一九七二年以降、最初は行政指導で、後は化審法という法律によって製造、使用が禁止をされた。製造、使用が禁止されたけれども、しかし、それまでに既につくってしまったPCBは残ってしまっている。そしてそれも、きちんと保管されているならばまだしも、紛失してしまうなどというような問題が頻発をした。そこで、こういう二十世紀の負の遺産のようなものは早く処理をしなければいけないということで、昨年、先ほど申し上げたような法律が成立をしたわけです。
 ただ、きちんと処理をするというふうに一口で言っても、これは費用がかかることですから、特に中小事業者にとっては費用が余りにも負担が大きいということで、特にPCB処理基金というものをつくって、中小事業者が処理をするときにはそこから補助をすることになったわけです。
 さて、基金というのは原資が要るわけであります。このPCB処理基金の場合、国と都道府県が原資として補助という形で出して、一方で、製造者等が出捐をするということになっております。さて、ここで質問ですけれども、望月政務官、国内でPCBを製造したメーカーというのはどこになりますでしょうか。
望月大臣政務官 お答えいたします。
 ただいまの質問、PCBを製造した会社はどちらかということでございますけれども、我が国では二つの会社がございまして、鐘淵化学工業株式会社、そしてまた三菱モンサント化成株式会社、以上の二つでございます。
水野委員 PCB処理特別措置法では、この基金に出捐をするのは「製造者等」というふうになっていますけれども、製造者は今の二社でわかりました。「製造者等」という、この「等」というのは具体的に何を指すんでしょうか、政務官。
望月大臣政務官 PCB製造者とは、PCBそのものを製造した企業でございますけれども、この「等」というのは、PCBが使用されている製品を製造した企業を指しておりまして、大変たくさんの企業がございます。これにつきましては、非常に多岐に及んでおりますので、後ほどまた資料を提出させていただきたいと思います。
水野委員 平成十四年度は、この製造者等からの基金への出捐がないというふうに聞きますけれども、事実でしょうか。
飯島政府参考人 平成十四年度に出捐がないというのは事実でございます。
 これまでの経緯によりまして製造者等が出捐しておりました財団法人電気絶縁物処理協会から、昨年度末解散したわけでございますが、その解散に当たりまして、残余の財産をPCB廃棄物処理基金に出捐いただいて以降、現在までに新たな出捐はございません。
水野委員 大臣にお伺いいたします。
 PCB処理特別措置法の第十五条では、環境大臣が製造者等に資金の出捐を求めることになっておりますけれども、大臣、九月末に御就任以来、出捐の要請を製造者等にされたことはございますでしょうか。
鈴木国務大臣 冒頭、おくれましたことをおわび申し上げたいと思います。
 私の就任以来、出捐を要請したかどうかということでございますが、結論からいえば、要請をいたしておりません。
 若干経緯をお話しさせていただきますと、ただいま廃棄物・リサイクル部長からお話がございましたとおりに、財団法人の電気絶縁物処理協会が昨年度末に解散をいたしまして、その財産を環境事業団に設けたPCB廃棄物処理基金に出捐をしていただいた、これが四億八千万でございます。
 そして、今後でありますけれども、実際に処理事業が始まりますのは平成十六年十二月からでございます。しかし、これが始まれば、今から膨大な経費がかかるということはもう見込まれているわけでございますので、早い段階から計画的に基金への出捐をお願いするということが必要である、そういうふうに私も認識をしております。
 早速、製造者等に対して事務的に要請をさせまして、その上で、出捐の状況を見つつ、必要があれば私自身が要請することを検討したいと思っております。
水野委員 非常に前向きの答弁をいただいてありがたいわけなんですが、これは過去の議事録などを見てみても、例えば衆議院の環境委員会の平成十三年、昨年の三月三十日の、当時の川口大臣の答弁ですけれども、「同時に鐘化は、」鐘淵化学ですね、「鐘化は、基金へ出捐をすることなどによりまして、確実かつ適正に処理が行われる、そのことを推進するために、国それから地方公共団体の施策に協力をしなければいけないという義務を負っています。」というふうに、出捐の義務というようなことを大臣みずから企業の固有名詞も挙げて答弁をされていらっしゃる。
 そして法律にも、先ほど大臣自身お認めになっていらっしゃるように、出捐の要請ということは大臣の行うこととして法律に書いてあるわけですね。しかも、基金に資金が集まっているならばあえてこのことを問題にする必要もないんでしょうけれども、先ほど来の答弁にあるように、平成十四年度においては基金に対して製造者からの出捐もない。それに対して、やはり私は、大臣がしっかりと出捐要請というようなことをされるのが必要だというふうに思っております。
 さて、望月政務官にお伺いいたしますけれども、PCBというのはもともと自然界に存在する物質でしょうか。
望月大臣政務官 PCBは、絶縁体や熱媒体として人為的、化学的に合成されたものでございます。これは一八八一年に、御存じだと思いますけれども、ドイツのシュミットとシュルツが合成しました。それで、一九二九年に米国で工業生産をされ始めたものでございます。
 その他、焼却等によって非意図的に生成されるものが一部あることが知られております。これは早く言えば排ガスでございますけれども、大変分解しづらい、環境中に残留しやすい、それから毒性がある、そういうことで、もちろん、昭和四十三年のカネミ油症事件以来、これは日本のみならず、国際的に大変なことであるということで製造を中止された、そういうものでございます。
水野委員 今、政務官が答弁されたように、十九世紀後半になって人工的に初めて合成されたものであり、二十世紀になって商品化されたわけですね。これは、つまり商品なんですよ。ということは、自然界にない有害物質をわざわざ製造して、それによって利潤を得た人がいるわけですから、それはやはりその製造者というものが一定の責任を負うというのは私は至極当然のことだと思いますので、大臣の先ほどの答弁のようにこの問題にも取り組んでいただきたいというふうに思います。
 さて、産業廃棄物の不法投棄の問題について質問をさせていただきたいと思います。
 産業廃棄物の不法投棄というのは、平成十年六月以前に投棄されたものと以降に投棄されたものでは、その適正化の処理のスキームが違いますので、ここでは、平成十年六月以降のものについて、とりあえずそこに限って質問をいたしたいと思います。
 十年六月以降に不法投棄された産業廃棄物のうち、原状回復されていないものというのは何トンぐらいありますでしょうか。
飯島政府参考人 昨年六月に環境省が全国の都道府県を通じて調査した結果では、平成十年六月以降のものにつきましては、総件数二百四十件、このうち量を把握されているものが二百件ございまして、合計百六十万トンとなっております。
水野委員 その百六十万トンの場合だと、原状回復のためにどのぐらいの費用がかかりますでしょうか。
飯島政府参考人 ただいま申し上げましたように、都道府県から報告のあった百六十万トンでございますが、そのうち、どの程度の量について環境保全上の問題があるか、あるいは原状回復の必要性が高いかということがまだ不明でございます。
 また、原状回復の方法につきましても、投棄された廃棄物の種類や、投棄された場所の地形や地質などにより異なってきますので、現段階で総額幾らぐらい費用が必要になるかは把握しておりませんが、大体、有害物質を含むものをきちんと処理すると二万円から三万円かかる。それから、瓦れきのようなものについてはそれほどかからないということで、そういったものを今後精査していく必要があると思っています。
水野委員 明確な数字が出なくても、例えば数十億円ぐらいかかるとか数百億とかかかるということでいえば、数百億ぐらいかかるわけでしょう。
飯島政府参考人 今申し上げましたように、精査をまだしておりませんので、有害物質の量等もまだ把握しておりませんので……(水野委員「大ざっぱに言えば数百億ぐらいかかるわけでしょう」と呼ぶ)百億のオーダーに行く可能性が高いと思います。
水野委員 そういう不法投棄された産廃の処理というのは、本来、原因者がやるべきだということは、これは間違いない、筋なわけであります。
 ただ、原因者が不明であるとか、もしくはわかっていても能力がない、財力がないというような場合がありますので、そういう場合は都道府県が代執行するわけですが、そのときに、都道府県だけに任せておくのではやはりまずいというようなことで、その都道府県の代執行などを資金的に支援するために、産業廃棄物適正処理推進センターというところに基金があり、そこから支援をしているわけですが、その基金の残高は今どのぐらいありますでしょうか。
飯島政府参考人 先生御指摘の産業廃棄物適正処理推進センターの基金は、平成十年度にスタートをしたわけでございますが、産業界の自主的な拠出と国の補助金により造成されておりまして、平成十三年度までに十七億円の基金が造成され、これまで八億円の支援を行っておりますので、現在、支援可能な基金残額が約八億円ということでございます。
水野委員 要するに、十年六月以降に投棄された産廃を全部処理するだけでも百億のオーダーがかかるというのに、それを支援するための基金というのが残り八億ぐらいしかないというのは、僕は、非常に少ない、心もとないというふうに思うわけですね。
 である以上、これはやはりこの基金を充実させていくという必要があるわけですが、今お答えにあったように、この基金というのは、国から出てくるものもあるけれども、事業者等から、産業界から出てくるものもある。
 大臣にお伺いいたします。
 廃棄物処理法では、環境大臣は、事業者等に対し、この基金への出捐を求めるように努めることになっていますけれども、御就任以来、出捐を求めたことはございますでしょうか。
鈴木国務大臣 この基金は、都道府県が代執行を余儀なくされたときに、その原状回復を支援する仕組みとして大変重要なものであると思っております。設立以来、事業者等から自主的に出捐をいただいてきているところでございます。
 就任以来、この出捐を求めたかということにつきましては、環境大臣としてはそれは求めておりませんけれども、これは継続的に事務方で常に事業者との協議をしているところでありまして、そういう協議も踏まえて、今後、必要があれば事業者等に要請をしてまいりたいと思っております。
水野委員 これは歴代大臣も要請していないんですよ。内々の事務的な打診というのはあるのは事実でしょう。しかしながら、要請というものは明確にしていない。
 そして、廃棄物処理法の第十三条の十五に明確に書いてあるんです。「環境大臣は、前項に規定する基金への出えんについて、事業者等に対し、必要な協力を求めるよう努めるものとする。」というふうにちゃんと書いてあるわけですね。法律に書いてあることなわけですから、これはやはりきちっと要請というものをしていただきたい。
 さらに言うならば、この基金というもの、これが十分足りているというのであればあえてこういうことを申し上げる必要はないんでしょうけれども、先ほど来の話にあるように足りないわけですね。でありますから、大臣、出捐をお求めになることの決意をお聞かせいただきたいと思います。
鈴木国務大臣 基金、十分に準備するということが大切であると思っております。
 一方において、今、直ちに基金が不足しているという状況ではございませんが、先ほど水野先生が御指摘のように、今後、想定されるものをすべて片づける、それが一気に訪れるということになりますと、これはとても今の状況では足りないことになろうかと思っております。
 そういうこともしっかり踏まえながら、せっかくのこういったような枠組みが機能しないということがないように、適宜対応させていただきたいと思っております。
水野委員 これは今、産業界からの出捐ということを中心に議論をいたしましたけれども、国も一定の資金を出すということがやはり必要だと思うわけですね。
 というのは、先ほど申し上げたように、不法投棄の撤去は原因者がやるというのは当然なことなんです。当然ですけれども、なかなかそれが進んでいない。そういうときに、これは被害を受けた近隣の住民とかからすれば、降ってわいたような災難なわけですから、公的な機関がしっかりと責任を負うという必要がある。
 恐らく、全国の不法投棄、平成十年六月以前のものも含めれば、不法投棄されたものを全部原状回復するとなると、数千億のオーダーの費用がかかるでしょう。しかし、これは一見高いように見えるかもしれませんけれども、例えば、私は千葉県だから言うわけじゃないですけれども、アクアライン一本でも一兆五千億ぐらいかかるわけですから、全国の不法投棄を処理するために数千億の資金をいろいろ使うというのは、私は決して高過ぎることはないというふうにも思います。
 さて、湖沼の水質保全問題について質問をさせていただきたいと思います。
 湖沼水質保全特別措置法という法律がありまして、全国の湖沼のうち、汚染度の高い、水質改善の必要が認められるようなところに対しては国が指定をするようになっている。今は十の湖沼が指定をされているわけです。
 指定湖沼というのは、国が水質改善の必要性を認めたということである以上、何らかの優遇措置があってしかるべきだと思いますけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
石原政府参考人 指定湖沼の水質改善につきましては、指定湖沼は特に水質の改善が必要であるということでございます。したがいまして、湖沼水質保全計画というのを策定しております。その湖沼水質保全計画に盛り込まれました水質保全事業につきましては、その実施が特に促進して図られるよう、例えば指定湖沼地域での実施、あるいは事業の優先採択といったような措置を講じておるところでございます。
 例えば、当省所管の水質改善事業ということで申しますと、合併処理浄化槽の整備事業があるわけでございます。この中で、特に個人負担の軽減が図られる市町村型の事業の採択要件としまして指定湖沼である地域、あるいは、さらに来年度に向けまして高度処理型浄化槽の整備事業を要求しておるところでございますが、その際、指定湖沼に係る採択要件の緩和を要求しておるところでございます。
 また、国土交通省におきましても、下水道事業の整備に当たりまして、湖沼法の指定地域に係る地域などの特に重要な地域につきましては、管渠整備の補助対象範囲の拡大を要求しているところでございます。
 このような各種事業の実施が指定湖沼なりにおいて特に図られるよう、今後とも関係省庁とも連携しながら着実に水質の改善を図ってまいりたいというふうに考えております。
水野委員 指定湖沼というのは、それだけ、国が認めるぐらい水質改善の必要性があるということですから、きちっとした対策をとっていただきたいというふうに思います。
 時間ですので、最後の質問にいたしますけれども、とりわけ、指定湖沼の十のうちの一つ、千葉県の印旛沼という沼は、飲料水源となっている、つまり水道水源となっている湖沼の中では全国最悪の水質なわけですね。これは、全国最悪ということは、全国で最優先の課題として取り組んでいく必要があると思うんですけれども、印旛沼の水質改善に向けての大臣の御決意をお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
鈴木国務大臣 印旛沼は、飲料水あるいは農業用水そして工業用水の水源として活用されている、また、内水面漁場また住民の方々の憩いの場として活用されている大変重要な湖沼である、そういうふうに認識をしております。
 この対策につきましては、今石原水環境部長からお話がございましたが、このような指定湖沼にもなっているわけでありますので、私といたしましても、合併処理浄化槽の整備の促進等、水質浄化に向けて全力で努力してまいりたいと思います。
水野委員 ありがとうございます。終わります。
松本委員長 小林守君。
小林(守)委員 おはようございます。民主党の小林守でございます。
 さきの通常国会に提案をされ、継続として今国会において一昨日参議院の方で成立をいたしました自然再生推進法、議員立法でございまして、提案者の皆様方には心から敬意を表したいと思うところでございます。
 我々も提案者の側に立ってこの法案の行方を追ってきたわけでございますけれども、法律でありますから、我々の思っていることあるいはねらい、それがどのようにどう表現されているのか、出てきた法案から読んでみますと、非常に抽象的な表現であったり、あいまいな言葉であったりというようなところでありまして、そういう点で、NGOの団体の皆さんや国民各層から、本当にこの法律が目的とするような運用がされるのかどうか、その結果について大変懸念を抱かれた経過もございます。
 そういう点で、この立法過程に携わった一人といたしましても、その目的が、あるいは運用が正しく、さらに効果的にされますように、これからしっかりと検証をしていかなければならないということだろうというふうに思いますし、またそれは提案者らの責任でもあるだろう、このように考えているところでございます。
 私たちは、そういう視点に立って、この法案の各条項について理解をしているつもりでありますけれども、しかし、この法案の全体構造を見ますると、法案は、議員、政党が提案をしたという経過ではございますけれども、しかし中身は、その魂となる部分、基本方針の策定、これについては環境大臣にお任せをするというような中身になっておりまして、環境大臣は、国土交通大臣や農水大臣と協議をして、そして国民の意見を聞いて閣議で決定をするというようなことになっておりまして、そういう点では、議員立法の議員の、あるいは政党の手を離れるというふうに言わざるを得ないわけであります。そういう点で、これからの検証も含めて、またこの法律の目的や理念、それがしっかりと実現できるような面でも、私たちは幾つか残されたところを確認しておきたいなと思っているところであります。
 既に成立をした法律でありまして、我々の地方でよく言われることですけれども、冷めた御飯をまぜ返して、温め返しておじやにして食べるというようなことが言われますけれども、そのおじやも結構おいしいものでありまして、きょうは、そういう点で幾つか確認の質問をさせていただきたいと思っているところであります。
 まず、自然再生推進法の背景とか理念の問題にかかわってくるわけでありますけれども、ラムサール条約との関連を抜きに語ることはできない法律であろう、このように考えているわけであります。
 ちょうど十一月の十八日から二十六日、スペインのバレンシアで第八回のラムサール条約締約国会議が開かれました。そして、その決議第十六という中で、湿地復元の原則と指針が採択されました。この決議十六は、二十年以上にわたる世界各国の湿地復元事業の事例研究と科学的知見を集約したものだと言えると思います。
 そこで、まずこの決議に対して、ラムサール条約締約国、日本もそういう国になっているわけでありますが、締約国の遵守義務等について総括的な質問をさせていただきたいと思います。
岩尾政府参考人 お答えいたします。
 条約の締約国会議で採択される決議は、締約国による条約の実施の促進のために、締約国の政治的意図のあらわれとして行われる決定でありまして、締約国に対し法的な拘束力を有するものではなく、国際法上、その実施を義務づけられるものではないというふうに聞いております。
 しかしながら、私ども、今回のラムサール条約の締約国会議に出席し、代表団として参加した中で採択されたものでございますので、この決議十六の内容が湿地復元に関する基本的な考え方を提示するものということで、我が国としてもこれらを尊重していきたいと考えております。
小林(守)委員 それでは、それを踏まえまして、まず、そもそもラムサール条約で言う湿地というのは何かということをただしておきたいと思います。
 今度の自然再生推進法の「定義」の中にも、対象地域という形で、法文には第二条で、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林、こういうことが具体的に示されておりますが、ラムサール条約で言うところの湿地と重なる部分があるわけであります。事実上からいうと、この自然再生事業にかかわるというのは、非常に湿地にかかわる部分が現実には多いのではないか、このように考えますが、この湿地というのはどういうことなのか、お知らせをいただきたいと思います。
岩尾政府参考人 ラムサール条約において、湿地とは、沼沢地、湿原、泥炭地または水域をいい、干潮の際の水深が六メートルを超えない海域を含むものであります。この湿地が人工物であるか天然であるか、あるいは永続的なものか一時的なものか、淡水であるか汽水であるかということは問わないということになっております。
小林(守)委員 今湿地のお話がされましたけれども、そういうことで、ラムサール条約の対象の湿地は、今度の自然再生推進法の河川、湿原、干潟、藻場、これらがすべて入るというようなことになるわけでありますが、もう一つは、要は、ラムサール条約で登録されていない湿地についても当然この法律の適用がなされるわけであります。今度の自然再生推進法というのは、ラムサール条約に登録されている湿地以外の国内の、日本の湿地、そういうものにも当然対応がされるということで、広い再生法になってくるわけであります。
 その際には、新生物多様性国家戦略とこれまた重なってくるわけでありますけれども、ラムサール条約と日本で定めました新生物多様性国家戦略と、どういう形の上に今度の自然再生推進法が構築されているのか、その辺をお聞きしたいと思います。
岩尾政府参考人 ラムサール条約の登録湿地かどうかにかかわりませず、締約国が求められているものといたしましては、湿地復元の原則とガイドラインを定めた、先生御指摘の決議十六の適用を挙げることができるというふうに理解されております。
 私ども、ことしの三月に策定いたしました新生物多様性国家戦略では、今後講ずべき具体的な施策の取り扱い方針として、自然再生、湿地の保全を掲げております。この中には、広域的視点やネットワーク形成の必要性、失われた湿地の再生、修復、モニタリングと科学的評価の重要性、多様な主体の参加と連携等を掲げており、決議十六における湿地復元実施に当たっての意思決定の枠組みや手順の考え方については、既に盛り込まれているという認識をしております。
小林(守)委員 それでは次に、だめ押しみたいな質問になろうかとは思いますが、今回の自然再生推進法は、ラムサール条約の決議について遵守義務のある関連国内法であるというように確認できると思いますが、それを再確認したいと思います。
 また、そういうことであるならば、今度の第八回のラムサール条約締約国会議の決議十六の原則と指針は、自然再生推進法の第七条で言っている自然再生基本方針、環境大臣が定める自然再生基本方針にしっかりと組み込むことになるということを確認できるでしょうか。
岩尾政府参考人 ラムサール条約の決議は、締約国に対し法的な拘束力を有するものではありませんが、どのような方法で決議を国内施策に反映するかについては、各締約国にゆだねられているというふうに理解しています。
 おととい成立いたしました自然再生推進法でございますが、第二条の「定義」において、自然再生を過去に損なわれた自然環境を取り戻すこととしているほか、第三条の「基本理念」において、自然再生は、地域における自然環境の特性、自然の復元力及び生態系の微妙な均衡を踏まえて、かつ、科学的知見に基づいて実施されなければならない、それから、自然再生事業の着手後においても自然再生の状況を監視し、その結果に科学的な評価を加え、これを自然再生事業に反映させるとされておりますので、ラムサール条約の決議十六の中で示されている御指摘の事項の趣旨というのがこの法律の中に含まれているという認識でございます。
小林(守)委員 それでは、もう一歩突っ込んで聞きたいんですが、決議十六の中には、重要な一般原則が掲げられていると思います。
 一つは、湿地の復元あるいは創出が自然湿地の喪失に、これは最初の方の湿地の復元あるいは創出というのは、つくり出す方の創出ですね。それが、自然湿地の喪失、これは失う方です、喪失に置きかわり得るものではないという翻訳文なんですが、そういう原則。復元あるいは創出が自然湿地の喪失に、失うことに置きかわるものではないという考え方ですね。
 それからもう一つは、湿地復元プロジェクトの最終目標、そして目標、評価基準を明確に理解し、提示することは、復元の成功のために非常に重要である、これは附属書の八番目に出ている一般原則であります。
 この二つの要約文なんですけれども、これについては、私は、極めて重要な現在の科学的知見であって、政策の原則と指針になるんだろう、このように思います。この原則と指針が今度の自然再生法の基本方針の中にしっかりと生かされ、組み込まれているというふうに確認できるでしょうか。
岩尾政府参考人 基本方針の策定に当たりましては、第三条の先ほど申しました基本理念を受けて作成するものと考えております。したがいまして、今先生のおっしゃいました決議につきましても、この法律の中に含まれているものという認識をしております。
小林(守)委員 さて、湿地の保全につきましては、国内で、さまざまな問題が全国各地で生じております。
 三年前のラムサール条約締約国のコスタリカ会議におきまして、湿地を賢明に、賢くですね、湿地を賢明に利用するための法制見直しに関するガイドラインが採択されました。この決議の中では、湿地に悪影響を及ぼしている法制、法律や制度ですね、法制などを全般的に検証することというような決議がされたわけでありますが、法的な拘束力はないといえ、遵守義務を負うわけでありまして、環境省は、この湿地に悪影響を及ぼしている法制度について、国内の法制度について全般的な検証が必要だということを指摘されているわけでありますけれども、どのように検討されてきたのか。
 少なくとも、環境配慮というような条文がいろいろな各省庁の事業法に位置づけられていかなければならないのではないか、私はそのように思うんです。例えば河川法の改正などの中では、いわゆる環境への配慮というものが条文の中に明確に位置づけられてきたという経過もございますけれども、しかし、そのほかのさまざまな事業法、公共事業にかかわる法律、あるいは、民間にももちろんかかわるような事業法ですね、国の許認可にかかわるような事業、そういうものに対しての環境配慮というような条文、あるいは環境大臣が一定の意見を申し上げられるような権能というか、そういうものがそれぞれの事業法の中で位置づけられていかなければならないのではないか、このように思うわけでありますが、環境省に、まず、今日までそういう事業法等についてどう検討されてきているのか、その辺をお聞きしたいと思います。
岩尾政府参考人 九七年にアセス法をつくりまして、各事業についての環境面の配慮につきましては私どもからも申し入れができるようになっておりますが、個別の法律につきましては、河川法などの多くの法律がございます。それぞれの法を所管する省庁が、必要に応じて個別に法制度の見直しを行っていると聞いております。その中で、先生御指摘のような改正につきましては、一九九九年及び二〇〇〇年に海岸法及び港湾法が改正されまして、法の目的として環境の保全などが追加されたというように承知しております。
 今後とも、環境省初め関係省庁におきまして、特に湿地の保全と賢明な利用に関係するような法律と制度につきましては、必要に応じて見直していきたいと考えておりますし、今回の締約国会議に提出した我が国の国別報告書でも、そうした国の姿勢について明らかにしたということでございます。
小林(守)委員 ひとつ個別法についてちょっとお聞きしたいんですが、特に湿地の問題は埋め立ての問題とかがかかわってくるわけでありますけれども、藤前干潟が今回ラムサール条約の登録湿地になったわけであります。
 藤前干潟は、御承知のように、名古屋市の最終処分場という形で進められておったところを、全国的な国民の運動やあるいは環境保全上のさまざまな行政的な働きかけの中で、これが干潟として保全されることになったわけでありまして、今日、ラムサール条約の登録湿地となって国際的な財産になったわけでありますけれども、この湿地の埋め立ての問題にかかわりましては、公有水面埋立法があります。これが、今日の干潟の問題、海岸線あるいは湖沼の埋め立ての問題の相当大きなネックになっている法律ではないかというような指摘がなされております。
 それからもう一つは、茨城県の笠間市のいわゆる採石場跡地に、茨城県が笠間市とともに産廃の最終処分場をつくりたいというような問題が今全国的に話題になっているところでありますが、この採石場の跡地がぽっかりとあいた湖になっているわけでありますけれども、採石法にも大きな問題があるのではないか。採石法そのものの環境配慮やそういうものが全くない法律体系の中で、こういう問題が起こってきているのではないかというふうに言えるんですけれども、公有水面埋立法の環境配慮に環境大臣なり環境省がどうかかわっているのか、それから採石法に対しては現在どういうふうになっているのか、この辺について、法的な問題としてお聞きをしたいと思います。
岩尾政府参考人 総論的に言いますと、環境配慮ということにつきましては、環境基本法におきまして、国の施策の策定に当たって環境の保全に配慮する旨規定がなされております。
 個別法についてでございますが、先ほど申しましたが、最近改正されたものでは、平成九年の河川法、平成十一年の海岸法などに環境の保全というものが追加されております。それから、先生御指摘の公有水面埋立法という中に、第四条の二号で、「其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」というような文章があるというふうには承知しております。それから、採石法には規定がございませんが、地方自治事務であるため、県の条例に規定されている例があるというふうに承知しております。
 いずれにいたしましても、私ども、最近の流れからしていきますと、自然環境にかかわる個別の事業法において入念的に環境保全、環境配慮に関する規定が明確に盛り込まれてきているという流れは、環境保全の観点から望ましいと考えておりまして、そのような方向に世の中が進んでいるものというふうに理解しております。
小林(守)委員 今お答えをいただいたんですが、公有水面埋立法については、そういうかかわりのある条文が入っているのでありますけれども、しかし、なぜ全国でそういう埋立法の問題が生じてしまうのか。環境省はどういうふうにそれらの問題についてかかわっているのか。どこに問題があるのか。確かに環境配慮ですとか環境的な視点からのかかわりを持つ条文があったとしても、実効性が伴っていないのではないかというふうに言えると思うんですよね。
 そういう点で、公有水面埋立法について、もう一歩、このかかわりの問題で、どこにこういう問題が生じてしまうのか、見解をお聞きしたいと思うんです。
炭谷政府参考人 埋め立ての問題でございますけれども、現在、環境アセスメント法の対象に公有水面の埋め立てについてもなっているわけでございます。したがって、埋め立てといえども、ある一定の規模のものについてはアセスメントが行われるわけでございますけれども、この中の一つのよく言われる批判として、都道府県知事、市町村長の御意見が出されることになっておりますけれども、その段階では環境大臣の意見が出されておらないということがよく指摘されるわけでございます。その考え方は、あくまで公有水面の許認可が都道府県知事であるということから生ずるわけでございます。
 その後、公有水面法、埋め立ての世界に入りますと、これまで、多分大正時代に出されました通達に基づきまして、国土交通大臣に承認を求めるという手続があったわけでございますけれども、そのものが実は平成十二年の地方分権推進の考え方に基づきまして廃止になっております。その段階で、環境大臣の意見が言えなくなってきているという問題が指摘されているわけでございますけれども、私どもといたしましては、環境保全の考え方から、やはり必要な場合はしかるべき意見を言っていくということが必要ではないだろうかというふうに考えているわけでございます。
小林(守)委員 今、問題のありかがちょっと見えたような気がするんですけれども、今後それらを受けとめまして、環境省も我々議員団も取り組みを進めていかなければならないんだろう、このように考えているわけであります。
 それでは次に、具体的に、第七条の自然再生基本方針について、細かくお聞きをして確認していきたいと思います。
 先ほども申し上げさせていただきましたが、この自然再生基本方針につきましては、広く国民一般の意見を聞いて、環境大臣が農水大臣や国土交通大臣と協議をして作成して、閣議決定を得ることになっております。この第七条にかかわる自然再生基本方針は、この法律の魂とも言えるものだと思いますし、参議院の環境委員会におきまして、提案者の皆さん方あるいはすべての党派の皆さん方の御理解をいただいて、本当に立派な附帯決議をつけていただいたなというふうに見ているわけでありますけれども、この法の基本的な性格や方向性が随分と明確になったな、私はこのように評価をしているところであります。
 ところで、環境省は、自然再生の総合的、効果的、効率的な推進を図る省庁間の連絡調整の中心的な役割を担わなければならないわけであります。そこで、この第七条の二項一号から五号に関する基本的方向や基本的事項、重要事項について、新生物多様性国家戦略を踏まえた環境大臣の基本的な認識と決意について確認をしておきたいと思います。
鈴木国務大臣 自然再生推進法、いろいろこの議論が法案審査の中でございました。その中で、法案の文言、意味するところ、それから今後実際に運用するときに気をつけなければならない点、そういうのを発議者の方からお答えがあったわけであります。この法律、成立をいたしましたので、環境省としても、そういった法案審議の過程で示されたことをしっかり踏まえて、この運用には万全を期していきたいと思います。
 それから、その基本となる基本方針でございますが、これは他の共管の農林水産大臣それから国土交通大臣と協議することになっておりますけれども、環境省が、環境大臣がリーダーシップを持ってこの基本方針を策定してまいりたいと思っております。
小林(守)委員 それでは、基本的な方向についてもう一歩突っ込んで聞きたいと思います。
 自然再生は、第二条の「定義」にありますとおり、過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことが目的であります。したがって、再生事業の形態は、保全、再生、創出、そして維持管理というものがありますが、その優先順位は、保全が最優先され、そして次に再生が来るというような順序立てのある言葉の並べ方なのかな、私はこのように理解をするわけでありますが、そう考えてよろしいでしょうか。
岩尾政府参考人 個々の地域の自然再生の手法につきましては、地域の事情に応じて検討されるべきものと考えておりますが、基本理念にもありますように、自然の復元力を踏まえて自然再生事業が実施されるべきであります。必ず工事などを行うということを前提とするわけではないと考えております。自然の回復力に任せることによりまして自然再生を行うという保全的な方法も十分考慮した上で、適切な方法を採用していく必要があるというふうに考えております。
小林(守)委員 あえて優先順位だというふうには答弁なされておりませんが、基本的にはそういうことだということでよろしいんでしょうか。言葉で言ってください。
岩尾政府参考人 そのとおりでございます。
小林(守)委員 今申し上げました中で、保全、再生、創出、この創出ということについてちょっとひっかかるわけであります。
 創出という形態は、どのような場合が想定されるのか。一般的に考えるならば、生態系が完全に損なわれ、生物の生息できない土地の形状や工作物がある場合に、まずそれを除去することだと考えるべきなんではないかな、このように思いますが、この創出という形態の事業の条件というんでしょうか、言葉が使われてくる前提条件はどういうことなのか。
 心配することは、再生をしていく、保全をしていくというような、再生に名をかりて創出されてしまうようなことになるのではないか。今までの自然回復力みたいなものを取り戻すというのではなくて、全部きれいにして、更地にしてしまって、全部壊してしまって、新しく自然的なものを人工的に造成するというようなことを優先されてしまうようなものが、自然再生事業に名をかりて行われてしまうのではないかというような懸念が随分あるわけでありますけれども、そういうものではないんだということを明確にしていただきたいというふうに思います。
岩尾政府参考人 新生物多様性国家戦略におきまして、自然再生の例として、大都市での森とも呼べる大規模な緑の空間を創出し、ネットワーク化することも、失われた都市の自然生態系を再生するものであるという記述がございます。
 こうした考え方を参考にして、過去に損なわれた自然そのままの状態を再生するだけでなく、大都市における大規模な緑の空間を新たに創出することも考えられます。このような場合も、その都市全体で見れば、失われた自然環境を取り戻すという意味で、自然再生に当たると考えられることから、自然再生の定義に明記されたものと理解しております。
 このような例では、所有者の合意を得た上で工作物の撤去が行われる場合もあり得ますが、いずれにせよ、基本理念にもあるように、自然再生は自然の復元力を踏まえて実施すべきことであるから、必要以上に人の手を加えることは慎むべきものという認識をしております。
小林(守)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、同じ条文の中に、維持管理という言葉が出ております。自然の回復力とともに、これは科学的知見に基づいて、相手が生き物ですから、管理のあり方というのは、よく適応型あるいは順応型管理という言葉が使われているようでありますけれども、適応型管理が必要であって、これは生物の時間、長期間にわたる生物的な時間の回復力を生かしていかなければならないわけですね。
 そういう点で、この維持管理については、長期間にわたって住民とかNPOの参加というものが期待されるわけでありますけれども、どのような維持管理のためのパターンというんでしょうか、その運用のあり方というかについては想定されているのか、お聞きしたいと思います。
岩尾政府参考人 維持管理の手法でございますが、地域によってさまざまな形態があると思います。地域の実情に通じ、地域に密着して活動する住民、NPOなどが重要な役割を果たしてくると思います。
 具体的には、NPOなどが自然再生事業の対象区域の管理者たる国などから委託を受けて維持管理を実施するケース、民間の土地所有者との間で協定を結ぶケースなどが想定されます。これらを踏まえ、第十条には、維持管理に関する協定についての規定が置かれたというように理解しております。
小林(守)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、自然再生協議会に関する基本的事項という点についてただしておきたいと思います。
 実施者が組織する自然再生協議会には、自然環境に関し専門的知識を有する者が構成要件として明文化されております。この専門的知識を有する者の参画というのは、極めて重要な役割を担うものと私は考えておりますし、基本的な理念の項目とか、あるいは科学的知見に基づいた実施というようなこの再生法の非常に基本的な目的、理念、そういうものを実現していく上で欠かすことのできない役割を担うのが専門的知識を有する者の参画だろう、このように私は考えるわけでありますが、この再生協議会に参画を予定している専門的知識を有する者については、この協議会の中でどういう役割が期待されているのか、お答えをいただければありがたいと思います。
岩尾政府参考人 先生御指摘のように、この協議会、モニタリングなどを通じまして、長期的に自然再生事業をフォローしていくという役割が期待されます。モニタリングの結果は、当該協議会において専門家が中心となって科学的に評価し、その評価結果を事業者が事業に反映していくというようなサイクルになるかと思われます。
 このように、自然再生事業を科学的知見に基づいて適切に実施する上で、この協議会に参加する専門家の役割というものが大変重要視されるというふうに理解しております。
小林(守)委員 ありがとうございました。
 そこで、ちょっとお聞きしておきたいと思いますのは、十七条の第二項で、これは野党、我々の提案によって、この法案が出される以前の各党協議の中で、修正という形で法案の中に導入された自然再生専門家会議の設置、これが入っているわけであります。これについては、中央に一つできるような法律のスタイルにはなっているわけでありますが、基本的には、事業の規模からいっても、また専門家会議の役割からいっても、中央に一つ、中央省庁の連絡会議のもとに置かれる自然再生専門家会議だけではなくて、それぞれの都道府県レベルあるいは政令市レベルでもあった方が、はるかに役割を果たす実効力が上がるのではないかな、このように私は考えるわけでございます。
 そこで、法律にはありませんけれども、例えば都道府県や政令市、あるいは大きな自治体でも可能かとは思いますが、このような中央における自然再生専門家会議に準ずるような専門家会議あるいは科学評価委員会、このような組織をそれぞれの自治体において設置することについて、この法律は全く妨げないというようなことを確認したいわけですが、いかがでしょうか。
岩尾政府参考人 委員御指摘のような地方独自の取り組みは、地域の自主性を尊重するという本法の趣旨には反しないものという認識をしております。基本理念にございますように、自然再生は、地域における自然環境の特性を踏まえ、かつ科学的知見に基づいて実施されるべきというふうに書いてあるということでございます。
小林(守)委員 ありがとうございました。
 そういうことで、自治体によってさらに自然再生推進法の趣旨を生かしていくためには、それぞれの都道府県なり政令市レベル、あるいは自治体レベルで、この専門家会議を組織して機能していただいて結構ですよ、むしろ望まれるというようなことだということですね。ありがとうございました。
 ところで、このような専門家会議などの役割というのが非常に大きな問題にもなるわけでありますけれども、例えば諫早湾の干拓事業の問題についても議論されてきたところでございますが、今日、有明海の再生について、有明海・八代海総合調査評価委員会が、環境省設置法の改正によって設置されることになりました。この評価委員会の委員の人選を環境省はどう進めようとしているのか、お聞きをしたいわけであります。
 既に、農水省は今日まで、有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会、通称ノリ第三者委員会の議論がつくられてきたわけですけれども、今度環境省でつくる予定の有明海・八代海総合調査評価委員会、この委員会の役割というのは非常に大きいな、このように考えるわけです。今日までの農水省の方の設置されてきた委員会の議論の経過、それから近々答申が出されるという予定と聞いておりますけれども、その答申を受けとめながら、科学的、客観的、第三者的な、公正な人選が望まれるのではないか、私はこのように思うわけであります。あえて言うならば、御用学者ばかりを並べられては困るよということになるわけでありますけれども、その点について、大臣はどのように今後この環境省に設置される評価委員会の人選をお考えになっておられるか、お聞きしたいと思います。
鈴木国務大臣 有明海・八代海総合調査評価委員会でありますが、この委員会の役割は、国及び県が行う総合的な調査の結果を評価するということでございますので、そういう委員会の役割に最もふさわしい方を選んでまいりたいと思っております。
 具体的には、海域環境の保全、改善または水産資源の回復等、そういうものに対して十分な知識と経験を持った人でなければならないと思っておりますし、その際、先生の御指摘のように、科学的、客観的、第三者性というものも確保できるような公正な人選が必要であると思っております。
 そして、先生の御指摘の農林水産省のいわゆる第三者委員会でありますが、そこでの検討というものも当然、今回立ち上げられます総合調査評価委員会における重要な資料になる、そういうふうに考えております。
小林(守)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、第九条の自然再生事業計画、第二項の三号に規定しております「自然再生事業の対象となる区域の周辺地域の自然環境との関係並びに自然環境の保全上の意義及び効果」、こういうことを自然再生事業計画の中ではしっかりと押さえてやってくださいということになるわけでありますが、これは読み方によっては非常に重要な項目だと私は見ております。
 科学的知見に基づいた専門的な評価が求められていることになるわけでありまして、あえて言うならば、これは計画段階のアセスメントではないかというふうに思いますが、もちろんこのような事業計画をするためには、事前調査がなければできるはずがありませんから、事前調査に基づいた計画段階のアセスメントと理解してよいか。この条文の記述の内容の評価は、私は既に計画段階のアセスメントだというふうに見るわけですが、いかがでしょうか。
岩尾政府参考人 先生御指摘のように、当該規定は、自然再生事業実施計画策定に際して、自然環境保全の観点からの科学的評価の必要性を踏まえたものと理解しております。
 この事業実施計画は、自然再生協議会で十分協議された結果に基づいて作成されなければならないとされているところでございます。事業の発案、調査設計という初期の段階から、自然環境の専門家だけでなくて地域住民やNPOなども参加するというものであり、大きな意味があるというふうに思っております。
小林(守)委員 明確には計画アセスだとはおっしゃっていないんですが、計画アセス、事実上そういうものだというふうに確認してよろしいでしょうか。
岩尾政府参考人 そのようなものに当たるかと思います。
小林(守)委員 我が国では、環境影響評価法、環境アセスメント法はまだ事業アセスメントと言われている段階にあるわけであります。しかし、世界的な環境先進国の取り組みは、既に計画段階からアセスメントを行うというのが当たり前になってきておりますし、別の言い方で言うと戦略アセスというふうな言い方にもなっているわけでありますけれども、事実上、この条文によって日本でも計画アセス段階に踏み込んだのかな、私はこのように思うんです。ぜひそういう方向も含めて、それから、将来の計画アセス法への転換、現在の環境影響評価法の改正というような方向も含めて、これで大きな基盤ができてくるな、私はこのように期待をするところであります。
 さて次に、第六条の「他の公益との調整」という条文についてただしておきたいと思います。
 他の公益との調整は、この法律の目的や基本理念にかかわる極めて重要な条文でありますし、それぞれの委員が議論を重ねてきたところでもあります。そのために、他の公益との調整に際しては、やはり基本方針の中にその原則や指針というものが書き込まれておかなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。
 特に、何かほかの公益との拮抗というんでしょうか、災害防止とかいろいろあるでしょう、他の公益との対峙とか矛盾とか拮抗というような場合に、どのようにその考え方に基づいて優先する公益を選択していくのか、これは非常に重要な問題だと思います。また、これがいいかげんであるならば、何のことはないというふうな、今度の法律の性格が、なに、これは公共事業の延命策ではないかということにもなってしまうわけであります。
 やはりこの法律の趣旨からいって、他の公益との調整という観点に立つならば、この法律は生態系の保全が最優先されるんだというようなものが一般原則としてあるんだということが基本方針の中に書かれるべきではないか、私はこのように思うんですが、いかがでしょうか。
岩尾政府参考人 提出者との議論の中にもこの議論はあったかと思いますが、この自然再生とその他の公益というものについては、どちらかが必ず優先するというものではなくて、それぞれ地域の自然的、社会的条件に応じて個々に判断されるものというふうに答えていたかというふうに理解しております。
 環境省といたしましても、そのような判断が必要なケースについては、個々の事業ごとに適切に対応したいというように考えております。
小林(守)委員 ちょっと不満の残る、あいまいな答弁なんですけれども、これ以上詰めても現段階では無理かなというふうに思いますので、次に移りたいと思います。
 具体的な事例で、他の公益との調整ということで、ちょうどいい問題というか、考えなければならない課題、問題があります。
 さきの委員会においても、我が党の理事の奥田さんの方からも触れられたことがありますけれども、「エコフロンティアかさま」、笠間市の富士見という里山のところにできた湖に産廃処分場をつくろうという茨城県の事業団の事業なんですけれども、確かに、県サイドから見て、あそこに産廃処分場を建設したいというようなものは、いろいろな経過があったにしても、いろいろな問題があったにしても、理解できるというか、その必要性、どこかにつくらなきゃならないというような問題としては、公益性があるなというふうに考えられるわけです。
 しかし、採石法の適用によって破壊された、穴があいてしまったところが、何かとんでもない立派な、すばらしい、透明度の高い湖ができてしまったというようなところで、しかもハッチョウトンボとかオゼイトトンボとかコバネアオイトトンボとか、環境省のレッドデータにも載っているような非常に貴重なトンボ類なども生息している、あるいはランみたいなものも咲いているというようなことであります。すばらしい自然が、何にもしないでと言ってはおかしいですけれども、採石跡地がそのままほっておいたらそうなったという、十七年ぐらい経過しているんだそうですが、自然のすごい復元力というものに私は感嘆をするわけですけれども、このすばらしい再生された自然を産廃処分場にしてしまうのはとんでもないというような住民の大きな要望なり運動が今盛り上がっているところでございます。
 環境大臣は、その茨城県が設置しております環境事業団ですか、それに対して監督命令をする立場にあるんですね。廃棄物処理法の十五条の十四によって、環境大臣はその事業団の事業に対して監督できる立場にありますし、その事業団に対して補助金を出したりあるいは無利子融資をしたりすることができる立場にあるわけでありますが、どちらの公益を環境大臣は優先するのか。極めて重大な、シビアな問題だと思うんですが、いかがでしょうか。
 しかも、産廃処分場の設置と両方環境省の所管になったわけですよね。廃掃法上の責任と環境保全という今度の自然再生法との関係で、両方の問題を環境省みずからが抱えたというふうに言えると思うんですよ。これに対してどっちを優先していくのか、その辺が、私は、本当に環境省の基本的なスタンスが問われる問題だろう、このように思うんですが、いかがですか。
炭谷政府参考人 ただいま先生が御指摘されました笠間市の問題につきましては、財団法人の茨城県環境保全事業団が事業主体になって現在いろいろな調査また計画を練っているところでございます。また、これについては、先生が御指摘されましたような自然環境上の問題、また住民の不安というのがあることも承知いたしております。
 現在、これらのことも含めまして、私ども、県から聴取いたしまして、それらについて検討いたしているところでございまして、また、環境省といたしましては、引き続き地元住民の御理解をいただくということが重要ではないかというふうに考えている次第でございます。
小林(守)委員 地元住民の同意をいただくというか合意をいただくというのは重要だ、それは当然のことなんだけれども、どっちの方向で合意をいただくことになるんですかね。
炭谷政府参考人 いずれにいたしましても、この問題はいわば産業廃棄物の、この地域につきましてはいろいろと長年この地域における検討結果というものもございます。一方、自然環境の問題というものをあわせた、そのどういうふうなところに調和点を見つけるかということにつきましては、まず地元の方の御理解、調整というものが必要ではないかというふうに考えているわけでございます。
小林(守)委員 補助金を出したり無利子の融資をできる命令、監督権限は大臣にあるんですよ。ということになると、地元、地元という形で逃げちゃっていていいのかというふうに思うわけであります。
 当然、産業廃棄物関連の処理施設をつくるためには生活環境影響調査を義務づけておりますよね。これをちゃんと添付して出さなければだめですよということになっているわけでありますが、その生活環境影響調査、これが、前提条件が誤っているんじゃないかというふうに住民たちあるいは研究者の中で言われております。
 要は、生活環境影響調査は、あそこはわき水ではなくてたまり水なんだという前提で調査結果報告がなされている。立派な学者たちがそろってそういう調査結果を出しているんですね。しかし、現実にはあれはわき水じゃないかというふうに、ほぼわき水には間違いないんだと思うんですが、すごい水が出ているんですよね。物すごくきれいなすばらしい水が出ているから、本当に希少種まで再生してしまうようなところになったわけだと思うんですけれども、しかし、こういうことがだんだんわかってきたならば、今度は県は、いや、わき水でもやりますよというふうに態度を変えてしまっているというような状況でありまして、これはちょっと、少なくとも科学的知見に基づいて評価をしてやっていくんだというのがやはり自然再生法の趣旨であるし、根本だと思うんですよ。
 ところが、その前提条件がおかしい、もう一回再調査する必要があるというのが見えてきているわけですが、そういうことに対して環境省は監督する立場にある。しかし、何も言えないのか、指導できないのかということだと思うんですよ。そこが私は今度の法律の行方を占うような一番の大事な問題なんだというように思うんですよ。これでちゃんとしたものができないならば、環境省、何たるものぞというふうに言えると思うんですが、いかがですか。
炭谷政府参考人 これについては、いずれにしろ、国庫補助金の対象ということについての問題というのは環境省に来るわけでございます。
 この国庫補助金に関しましては、廃棄物処理法に基づく施設の技術基準の問題、また、県の廃棄物処理施設に適合しているかどうか、周辺の住民の理解のもとに管理運営がなされるかどうか、住民に対する趣旨の啓発普及が図られるか、それによる理解が得られるか、また施設の安全性についての情報公開を行うなどが厳しく審査要件となっているわけでございます。このような審査要件に照らしまして、今後この最終的な補助金の交付決定について、これらの審査基準に基づいて考えるというふうになろうかと思います。
小林(守)委員 大臣、そういう経過がございまして、この問題、非常に環境省の基本的な問題が問われている、見えてしまう問題だというふうに思うんですよ。ひとつ賢明な選択をしていただきたいというふうに御期待を申し上げたいと思うんです。
 それでは、時間の関係もございまして、一つだけこれは提言というかそういう形にしたいと思うんですが、このたび、中海・宍道湖の淡水化事業を島根県は鳥取県と一緒に中止したいということを国に要望しようというように、大体議会の中では中止を決定したというふうに報道されておるわけです。もうこれについて詳しい事業の経過は申し上げませんが、私は、中海・宍道湖というのは、ラムサール条約の湿地としても非常にふさわしい規模であり、また質を持ったものだというふうに思うんですけれども、あそこに対して地域再生というようなことも含めて考えていくならば、私はこの自然再生推進法の極めてモデル的な事業になるのではないかなというふうに思えてならないんですよね。
 ラムサール条約の登録湿地の手続をまずしていってはどうかとか、そのためにどういう条件整備をしていったらいいのかということもあるでしょう。もちろん地元の盛り上がりも必要だということにもなるんだろうと思いますが、私は自然再生推進法のモデルケースになり得る格好のものではないのかな、このように考えておりまして、ぜひそういう方向での取り組みをお願いできないかということを要望しておきたいと思います。
 それで、時間の関係でもう一つ触れておきたいんですが、旧日本輸出入銀行、それと海外経済協力基金が統合になりまして、三年前に国際協力銀行、JBICが発足いたしたわけであります。その設置法にかかわりまして、国会の方では附帯決議を付して、この国際協力銀行の機能、役割については、国際水準の環境アセスメントを融資の際に行いなさい、そして情報公開を徹底してくださいというような附帯決議をこの設置法の際に付したわけでございますが、この国際協力銀行の融資業務について、それを受ける形で本年の四月に新しい環境配慮のガイドラインが発表されました。
 そういう点では、一歩踏み込んだものとして国際的にも評価されているというふうなことをお聞きいたしているわけでございますが、現在、異議申し立て制度について決めていくために、いろいろな手続を経ながら、来年ですかの施行に向けて取り組みを進められているところでございます。要は、国際協力銀行の融資業務について、これはおかしいよ、いろいろな問題がある、あるいは環境ガイドラインに沿ってちゃんと守って行われているものではないよというようなものを異議申し立てしていくというような制度でございます。
 いろいろな論議の中で、パブリックコンサルテーションというものが今行われておりますけれども、政府開発援助にかかわる円借款業務、ODAにかかわる円借款業務については、国際協力銀行がその環境評価をして、それを示した以降は契約調印前であっても異議申し立ては受けますというふうに変わってまいりました。そういう点で、一歩前進として評価をしたいと思うんですけれども、しかしながら、もう一方の、政府開発援助にかかわるものではない民間の海外活動、海外投資活動、これについての金融業務については、融資契約調印後でなければ受けられないとかたくなに主張をしておるんですね。
 これは国際協力銀行と産業界がかなりその意向が強いようでありますが、基本的に政府系の金融機関でありますから、そこに公的資金が流れるわけですけれども、財務省にしても外務省にしても、そこにかかわっている環境省にしても、いや、当然融資契約調印前にやっていいじゃないか、やるべきじゃないかというふうに私は聞いております。
 当然NGOの皆さん方も、ぜひ事前に、できるだけ早い時点でリスクを回避する、リスクを軽減するという意味からも、融資契約調印前に異議申し立てを受けるべきだということを強く主張しているし、政府の方でも、そういうふうにあるべきじゃないかというふうに言っているんだそうなんですが、国際協力銀行は頑としてこれが受けられないということで、今日協議中だというような状況なんですけれども、なぜ融資契約前に受けられないのか、私にも理解できないところでありまして、その辺について、きょうは国際協力銀行の方からおいでいただいておりますので、御答弁をいただきたいと思います。
志賀政府参考人 御指摘のとおり、円借款につきましては、パブリックコンサルテーションでの御議論を踏まえまして、本行の融資契約調印以前に政府による手続が存在しまして、その過程で本行としての案件の評価をある程度対外的に示すことになるということに着目いたしまして、融資契約調印前でありましても異議申し立てを受け付けることといたしたところでございます。
 他方、国際金融等業務の場合、円借款のような政府の手続が存在しないために、融資契約調印前に本行の評価を対外的に示すという手続がないものですから、融資契約調印まで本行による環境審査が完了するという時点が存在いたしませんので、従来から申し上げているとおりでありますけれども、ガイドラインの遵守、不遵守が確定するのは融資契約調印時点であると考えております。
 したがいまして、国際金融等業務において、融資契約調印前に異議を受け付けることは適切ではないのではないかと思っておりまして、この点は、国の類似する制度について見ましても、行政不服審査制度というのは、やはり意思決定が行われた段階で、意思決定に対して異議申し立て、不服申し立てということが行われるわけでございまして、意思決定が行われていない段階においては、ちょっと変な言い方かもしれませんが、シューティング・ザ・ムービングターゲットといいますか、まだない存在に対して、存在していない意思決定に対して異議申し立てを受け付けるということが、制度の理論的性格上あり得るのかというふうに考えているわけでございます。
 あわせて、円借款業務以外について、融資契約調印前に異議申し立てを受け付けることについては、いろいろな立場の方から強い反対の御意見もいただいていることも御理解いただきたいと思っている次第でございます。
 ガイドラインにおいては、融資の意思決定前の暫定的な状況であっても、できるだけ早期に情報提供を行うという考え方から、調印以前の、意思決定の以前においても、カテゴリーの分類だとか環境影響評価の入手状況等につきましては情報公開をすることとしておりまして、関係機関、ステークホルダーにとって、できるだけ早い段階で本行の投融資部門と対話できるよう配慮しているところでございます。
 また、パブリックコンサルテーションでの皆様の御意見を踏まえて、国金等業務においても、調印前に、異議申し立て受け付け担当部門、審査役と仮称で申しておりますけれども、意見が示された場合には、担当部門は、審査役は、当該意見を投融資部門に移送するし、総裁にも報告することになっておりまして、総裁が意思決定する際に、当該意見に対する投融資部門の対応が適切か否かを確認できる仕組みにすると同時に、投融資部門の対応については、審査役である異議申し立て受け付け担当部門に報告される仕組みになっている制度設計にしておるわけでございます。
 それから、ガイドライン及び現状の異議申し立て手続に定められた今申し上げましたような仕組みを通じまして、本行は、ステークホルダーの意見を十分踏まえて意思決定を行っていく所存であります。
 ちょっと長くなりまして恐縮でございますけれども、いずれにしましても、今後、本要綱案について、借入人となる途上国政府に今説明手続に入ろうとしているところでございますが、それが終了しましたら、来年の二月ごろからまたパブリックコメントを募集いたしまして、それに引き続きましてまたパブリックコンサルテーションを実施する予定でございます。
 今後とも、皆様の御意見を承りながら、現在の案を基本としつつ検討していく考えでございますので、そういうことでございます、御了解いただきたいと思います。
    〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕
奥田委員長代理 答弁は適切な長さでお願いいたします。
 小林委員。
小林(守)委員 長々といただいたんですけれども、いずれにしても、私にはまだ明確に、なるほどというふうに理解できませんので、さらにコンサルテーションの中でNGOの皆さん方の声とか、それから各省庁の考え方もあると思いますけれども、その辺も含めて、業界とそして、やはりリスクを事前に回避し減少するというような視点に立って、アセスメントそのものは計画段階からやらなきゃならない時代になっているんですよ。今度の再生法でも、実質的には計画段階からNGOや市民が参画できる、専門家も参画できるというような実質的な中身に変わってきているんだというふうに私は思うんですよ。
 そういうアセスメントそのものが、要は、今までのスタイルからいうと、事業決定後、どう環境に影響があるのかというアセスメントをしているんですね。国際協力銀行のスタイルはまだその段階なんですよね。事業決定した後、異議があったら申し立ててくださいという話なんだけれども、リスク減少なり、より効果のある、また効率的なものとするために、事前にやるというスタイルをやはりぜひ融資業務の決定の中にも導入していただきたいな、このように私は思いますし……
奥田委員長代理 小林委員も、質問時間を終了しておりますので、取りまとめをお願いします。
小林(守)委員 はい。
 異議申し立てという言葉が適切でなければ、例えば意見具申制度とか、何らかのとらえ方でやり得るのではないか、このように私は思います。
 以上で質問を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
奥田委員長代理 東祥三君。
東(祥)委員 おはようございます。鈴木大臣並びに副大臣、お忙しいところ、大臣就任後、初めて質問に立たせていただきます。
 実は、ことしの三月の十二日、本委員会におきまして、いわゆる外来魚、とりわけブラックバスの問題について議論をさせていただきました。そのときに大木大臣の方から、私の質問を通して、外来魚といわゆる在来魚との関係といいますか、風説では、外来魚が在来魚を食いつぶしてしまっている、そのやり玉に上げられているのがブラックバスでありましたけれども、本当にそういう非科学的な風説だけでもって世の中動いていていいのか、そういう視点から、ちゃんとした調査が現在までのところ何もないということも本委員会で明らかにし、その後、大木大臣から、ちゃんとした調査を行います、こういう話がありました。
 ことしの三月から、十二月でありますから、もう既に十カ月近くがたっているわけでありますが、まず、その調査の進捗状況といいますか、その点について大臣からお答え願いたいというふうに思います。
弘友副大臣 ことし三月に委員の御指摘をいただきまして、環境省として、外来魚の現況やまたこれによる被害などについて、改めて資料収集やまた文献調査を行ってきたところでございます。
 環境省が平成三年度から四年度にかけて行った自然環境保全基礎調査、いわゆる緑の国勢調査におきましては、百五十三の河川のうち三十八河川、六十の湖沼のうち二十湖沼でブラックバスを確認している。また、国土交通省の調査では、平成八年度から十二年度にかけて行ったものでは、百二十三河川のうち八十一河川でブラックバスが確認されている。また、琵琶湖や宮城県の伊豆沼等で、外来魚と在来魚の漁獲量の変化を調べたデータもあります。今後、引き続き、研究機関の実施した調査結果等を収集するとともに、分析を加えていきたい。
 なお、環境省としましては、来年度以降、動植物の生息、生育環境を含めた生態系を長期的にモニタリングしていくために、今所要の予算を要望しているところであり、この中でも、外来魚に関するデータの取得について検討してまいりたいと考えております。
    〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕
東(祥)委員 大臣、今副大臣から答弁がありましたとおり、前回の本委員会で申し上げたことは、在来魚の減少と外来魚の影響ということについての調査がほとんど行われていないのではないか。そのときに出してきたデータというのは、どういう調査方法に基づいているのかもよくわからないし、非常に首尾一貫した形での調査がなされていない。そこで、今副大臣から報告があったものは、どこどこの水面に外来魚がいるかいないかという生息状況についての調査で終わってしまっているわけですね。
 この問題がはらんでいるのは何かといえば、先ほどお話ありましたとおり、生態系が外来魚の移入によって乱れてしまっている。では、その実態を把握するためには、各水面における生息分布が一体どうなっているのかという極めて難しい調査をしなければならないわけですよ。環境省は、各地方自治体に、外来魚が生息しているのかどうなのか、そういう調査を行っているかわかりませんけれども、そういうことではなくて、総合的にとらえていかなくちゃいけないということで提案させていただいているわけですね。
 したがって、大臣にもう一度お聞きしますけれども、そういう生息分布状況、各水面におけるいわゆる在来魚の減少と外来魚の影響、これを基本的に調査していくための科学的なデータをそろえなくちゃいけないわけでありますから、そのことをまずちゃんとやると、再度申し上げますけれども、そのことを明確にお約束していただいて、今後ともずっと追跡調査していきますから、よろしく。御決意を。
鈴木国務大臣 内水面における在来種の減少ということは現実としてあるわけでありますが、その原因がどこにあるのか。例えば、それは水質汚濁によるものかもしれませんし、あるいは内水面漁業の漁獲対象になっているもの、琵琶湖でいえばニゴロブナ等あるわけでありますけれども、例えば漁獲対象になっていると、そこに過剰漁獲がなかったかどうか、また、外来種の存在がどうなのか、その辺はやはり総合的に研究をしなければならないと思っております。
 ただいま副大臣から、来年度予算計上をしてデータの取得について長期的なモニタリングを開始するということでありましたが、そういう中で今申し上げたことができるのかどうか、一度検討させていただきたい、そういうふうに思っております。
 そしてまた、水産庁等でも恐らくそういうような検討がなされるのではないかとも思いますので、他省庁との連携についても検討させていただきたいと思います。
東(祥)委員 大臣、今御指摘になりました例えば滋賀県で最近、キャッチ・アンド・リリース禁止を含む琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例、これができ上がりました。今大臣が言われたとおり、例えば滋賀県琵琶湖における外来魚の問題というのは、今副大臣からも御説明があったとおり、ちゃんとした科学的なデータがないんですよ。にもかかわらず、偏った観点からとらえられているように私には思えてならないのであります。
 在来種の減少の主原因をブラックバスやあるいはまたブルーギルの存在に求めて、外来魚を駆除すれば琵琶湖の従来の生物相が回復するかのような伝聞が広がっております。テレビや新聞を通しても、そういうものが出てきます。よくわからない解説者等が出てきて、ブラックバスというのは害魚だ、こういう形でもって喧伝されてしまっているわけですよ。
 私は、今大臣がおっしゃったとおり、琵琶湖総合開発に代表される湖畔の大規模な自然破壊だとか、周囲の宅地化などによる水質の悪化などが大きく影響しているようにも聞いております。外来魚の駆除で琵琶湖の生物相を回復するような一部の主張というのは、説得力に欠けているんじゃないのか。これは、公共事業などによる湖畔の過剰な開発のてんまつであることを隠ぺいする目的があるのではないかという疑いすら出てきてしまうわけであります。
 現実に、水産庁にしても環境省にしても、科学的なデータがないにもかかわらず、例えば、滋賀県の県知事が言っている、琵琶湖のレジャーの新ルールなる条例をつくった、これは朝日新聞で県知事が言っているんですけれども、「琵琶湖には、珍味として知られる「ふなずし」になるニゴロブナをはじめ、ホンモロコやワタカなど多くの固有種が生息している。こうした在来の魚が今、著しく減少している。その要因の一つとして考えられるのが、ここ三十年ほどの間に異常繁殖したブルーギルやブラックバスといった外来魚の存在である。」こういうふうに言い切っているわけです。
 では、琵琶湖の総合開発というのは一体どうだったのか。在来からすんでいた魚がすめるような環境が破壊されてしまっている。また、生活環境の変化によって、生活汚水がたくさん出ることによって、その状況がどうなっているのか。そういう科学的な知見なり、そういうものが一切ないにもかかわらず、こういう形で、いわゆるレジャーを規制するような形でこういうものが出てきているんですよ。後からも追及しますけれども、外来魚というのは一体だれがもたらしたのか、滋賀県それ自体の県、自治体にその原因がなかったのか、責任はないのか、こういう問題も隠ぺいしているんですよ。
 環境大臣、この問題というのは、ただ単に琵琶湖だけの、滋賀県だけの問題ではないんだろうと思いますけれども、このキャッチ・アンド・リリース禁止を含む琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例について、環境省としてどのようにお考えになっていますか。
鈴木国務大臣 滋賀県がつくった条例につきましては、承知をいたしておるところであります。
 その間に知事さんがどういう御発言をされたか、今、東先生からいろいろお話ございましたけれども、それは承知はしていないところでございますが、環境省という立場で申しますと、琵琶湖というのは四十万年を経て今の位置にいるということだそうでありまして、五十種を超える固有……(東(祥)委員「四百万年」と呼ぶ)四十万年。(東(祥)委員「ああそう、こっちは四百万年」と呼ぶ)もしそこがあれでしたらちょっとあれですが、四十万年を超えて今の場所にあって、五十種を超える固有種が生息するということで、多様な動植物が生息、生育しているということで、生物多様性を確保していく上でも大変重要なものとして考えているところであります。
 それで、確かに、先生の御指摘のとおりに、固有種が減っているという原因は、もしかしたらといいますか、外来種だけの問題ではなしに、水質の汚濁ということも考えられる、それから漁獲対象になっている魚については過剰漁獲ということもあるのかもしれません。しかし、また一方において、外来種の存在というものも、やはり固有種を減らしている原因の一つであるというふうに思うんです。
 したがいまして、それぞれきちっと対応していかなければいけない。水質汚濁の防止にも取り組んでまいりますし、仮に過剰漁獲というものがあれば、それも改めなければいけない。そしてまた、一つの課題でありますこの外来種の問題につきましても、対応をしっかりしていくということが必要ではないかと考えております。
東(祥)委員 だから、そうすると、そこでの基本的な論点はどうなるかというと、データなんでしょう。
 ブルーギルやあるいはまたブラックバス、いろいろな説があるわけですけれども、ブラックバスに当たっては、七十年前、あるいはまた米軍による占領下において、米軍が初めてスポーツフィッシングのものとして取り入れたということ、それでも五十年以上前、日本に初めて。それ以来、ずっともういるんですよ、日本に。それがどんどんいろいろなところで拡散してしまっている。みんな知っていることです。
 そういうことをもとにしての議論ではなくて、それぞれの内水面におけるいわゆる在来魚と外来魚とのかかわりにおける相関関係を調べるためには、それなりのデータがなければだめですよねという話をしているんですよ。それをちゃんと環境大臣が、鈴木大臣も明確に言ってもらいたいんですが、非常に難しい調査だと思いますよ。ただ単に環境省だけではなくて、あるいはまた内水面漁業組合の人たちの力もかりながら、釣り人の人たちの力もかりながら、あるいはまた地方自治体の力もかりながら、総合的な形でやらなくちゃいけないじゃないですか。その基本方針を環境省としてちゃんと立てるべきだということを言っているんですよ。調査をします、来年度ちゃんと予算をつけました、そういう話をしているんじゃないんです。ちゃんとした方針を決めて、科学的なデータがない限りこの問題は、いつまでやったとしても、一方的な偏った議論で展開していかざるを得なくなる。
 この点について、もう一度鈴木大臣に申し上げますけれども、決意をちゃんと述べてくださいよ、抽象論で言うんじゃなくて。
鈴木国務大臣 来年度要求しております予算の中でやらせていただきたいと思います。
東(祥)委員 鈴木大臣、私は時代というのは必ず変化するというふうに思います。そういう意味で、ここにかかわる問題ですが、生態系の問題、それから釣り文化の変化というのがあるんだろうと思うんです。きょうは経済産業省も呼んでおりますけれども、新産業の育成ということでも考えていかなくちゃいけない。まさに総括的な、包括的な形でもって考えていかなくちゃいけないんだろうというふうに思います。
 この滋賀県における新しい条例に基づいて、いわゆるレジャーボートの規制、プレジャーボートというんですかね、ツーサイクルエンジン搭載のプレジャーボートの規制だけが明確になっているわけですけれども、私は非常におかしいんだろうというふうに思うんですよ。漁船においてもツーサイクルエンジン搭載の漁船というのはないのか、ツーサイクルエンジンを搭載しているその他の船というのはないのかどうなのか、そういうことは横に置いておいて、いわゆるレジャー産業にかかわるそういうものに対しての規制がここに盛り込まれてしまっている。基本的に恣意的な、何か泥臭い動きがあるのかとすら懸念せざるを得ないわけですが、これは滋賀県が管理しているから滋賀県の問題、任すという問題ではないんだろうというふうに思いますよ。
 環境省として具体的に、例えばプレジャーボートの規制を考える場合、それは、水質汚染あるいはまた騒音、そういう科学的なデータがあって初めてそれに対しての規制がなされるんだろうというふうに思いますけれども、この点について環境省としてどういう御意見を持っているんですか。
鈴木国務大臣 条例が策定される間の滋賀県内における議論、またその背景にあるもの、そういうものについては私も承知をしていないわけでありまして、この条例そのものに対する評価はできないわけでありますが、一般的に言えば、先生から御指摘のとおり、船舶に対する規制というのは、騒音でありますとかあるいは水質の汚濁でありますとか、そういう観点でなされるのではないかと思っています。
東(祥)委員 お願いでございますが、環境省として、この問題について差別がないかというか、騒音あるいはまた水質汚染、それにかかわる船であるとするならば、それは一般論として包括しなければならないのであって、そこで差別的に、プレジャーボートだからいけないだとか、そういう話というのはないんだろうと思いますが、再度僕は別の機会で質問させていただきますので、この点を環境省としてちゃんと調べていただきたいというふうに思います。
 キャッチ・アンド・リリースの問題に関して申し上げますが、例えば、鈴木大臣は釣りをやるかどうかわかりません。僕は基本的に釣りをやりません。ヘラブナに見られるとおり、ヘラブナというのはキャッチ・アンド・リリースするんですね。では、ブラックバス及びブルーギルという外来魚に関してこれをキャッチ・アンド・リリースは禁止する、これまたおかしな話になってきているわけですね。
 つまり、スポーツ文化、新しい文化に対して、一つの固有の問題だけに対して差別的な扱いをしていく、これまた大きく取り上げなければならない問題なんだろうと思いますが、この点について、鈴木大臣、いかがお考えですか。
鈴木国務大臣 フナについてはキャッチ・アンド・リリースをして、外来魚、とりわけブラックバスについてはキャッチ・アンド・リリースをしないようにしているというのが、新たな文化、スポーツ文化の差別ではないか、こういうお話ですけれども、これはスポーツ文化に対する差別ということではなしに、日本固有のいろいろな在来種を守る、しかも琵琶湖においてはそれは貴重なものの位置づけがなされているということでされているということで、スポーツ文化、新しい文化はどんどん起こるわけですけれども、決してそれに対する差別ということではないということだと思っております。
東(祥)委員 それは大臣、論理がおかしいと思いますよ。つまり、外来魚が本当にある水面における在来種を絶滅させてしまう、それをそのまま放置しておけばだめだというならば、それは駆除するんですよ。キャッチ・アンド・リリースというスポーツにかかわる問題ではないですよ。駆除をしなければならないんです。
 キャッチ・アンド・リリース云々というのは、スポーツフィッシングにおける一つのルールですよ。そのルールを行政が恣意的な形でもってやめさせるということと、在来魚と外来魚とのかかわりについて云々するものとは違うではありませんか。論理的なおかしさを感じませんか。悪いものであるならば、おかしいということなら、それは駆除するんです。キャッチ・アンド・リリースというスポーツの、いわゆる釣り文化にかかわるルールとは関係ない問題ではありませんか。いかがですか。
鈴木国務大臣 環境省の立場としては、固有の在来種を守っていくということであります。そして、そのためにはいろいろなアプローチが必要であると思うんです。
 先生がおっしゃるように、すべて外来種だけが固有の在来種を減少させている原因だとは思っておりません。そこには水質の汚濁とか、あるいは漁獲対象になっているものについては過剰漁獲というものもあるかもしれない。そういういろいろなことでやっていかなくてはならないと思うわけでありますが、外来種対策もやらなければいけない。その中で、駆除というやり方もあるかもしれませんが、一つの方策として、キャッチ・アンド・リリースを禁止するということを外来魚対策として滋賀県が考えられて、条例で定められたということじゃないかと思っています。
東(祥)委員 この点についての勉強をしていただきたいんですが、キャッチ・アンド・リリースというのは一つの釣りのルールなんですよ。いいですか。今大臣が言われているのは、在来種に対して外来種が大きな影響を与えて、在来種の減少につながってしまうということであるならば、キャッチ・アンド・リリースとは全然関係ない問題ではありませんか。これがまず一点ですよ。
 それから、キャッチ・アンド・リリースをするということはどういうことかというと、キャッチ・アンド・リリースをする釣りを楽しむために人がたくさん来るんですよ。キャッチ・アンド・リリースができない、そのようなフィッシングのために人が来なくなるんですよ。話が違うでしょう。その論理を明快に踏まえた上で議論していただきたいということ。僕の論理がおかしければ、そのことをついてくれて構いません。
 時間がなくなってきちゃうんですが、さらに、外来魚と行政とのかかわり合い方という問題があります。
 例えば、今、滋賀県においては、ブラックバスというのはどんどん少なくなっているというふうに言われております。大半はブルーギルが今散見されるというか見られるわけでありますけれども、ブルーギルの増加というのは琵琶湖でも顕著でありまして、その影響が危惧されておりますけれども、その移入経路がいまだにはっきりとしていないわけであります。釣り魚の魅力に欠けるため、釣り人が持ち込んだとは考えにくい面があるわけでありますけれども、ブラックバスとのセット放流という主張もありますけれども、琵琶湖に関しては推測の域を脱しません。
 実は、一九六三年に滋賀県の水産試験場にブルーギルが導入されたことは確認されています。淡水真珠の養殖に使うイケチョウガイの増殖に効果があるのではないかと言われていたためであります。その飼育時の管理がずさんで琵琶湖に逃げ出して、一九七〇年代前半には全湖に広がっていったという文献もあります。
 こういった中で、県はブルーギル繁殖の要因をつくった責任を認めておりませんけれども、こうして順を追ってみますと、そこに大きな疑念が生じてくるわけであります。
 去る十月九日に滋賀県琵琶湖環境農政水産常任委員会で発表された資料が、ブルーギルの移入時期などに関するマスコミの追及を受けた後、十一月に書き改められ発表されたという事実もあるわけであります。また、滋賀県内の漁協を支えてきた琵琶湖から全国に出荷されるアユ、ワカサギの種苗に外来魚の稚魚が混入していた事実も確認されているわけであります。
 総合的に考えますと、外来魚の拡散というのは、必ずしも報じられているような釣り人の手によるものだけではなくて、むしろ琵琶湖から全国へ向けてのこういった大がかりな行為によった部分も大きいのではないかというふうに僕は思っているんです。だから、こういったことも踏まえた上で、ちゃんと明確にオープンにしていかなくちゃいけないんでしょう。自由党のモットーというのはフリー、フェア、オープンですから、常に情報を開示していかなくちゃいけない。
 そして、僕は滋賀県県知事の朝日新聞に載ったものを見たときに、例えば、県、自治体が行ってきた総合開発の問題や、あるいはまた自治体それ自体が大きな責任を有しているだろうと言われる外来魚の移入に当たっての問題を横に置いておいて、今起こっている問題に対して、外来魚にすべての責任をおっかぶせているというその行政のスタイルに対して、物すごい憤りを感じる者のうちの一人であります。
 そういう意味で、もう一度改めてこの琵琶湖の新条例にかかわる問題でありますが、これはただ単に滋賀県の問題だけではなくて、全国から国民が滋賀県に行き、また、この条例の波及するところというのは極めて大きなものがあります。環境省としても真剣に検討していただいて、そしてそれなりの方針をつくり、在来魚と外来魚とのかかわり合いについて、そしてその他のいわゆる総合開発とのかかわり合いについても、関係者の皆さん方を投入して調査をしていくことを要望させていただきたいというふうに思います。
 時間が来ましたので、大臣、コメントがあれば、それを聞いて終わりにしたいと思います。
鈴木国務大臣 東先生からいろいろ御指摘をいただきました。私も答弁させていただきましたが、固有種の減少がすべて外来種の影響だとは私も思わないわけでありまして、さまざまな要因があろうかと思います。しかし、その中の一つの要因であるということは確かではないか、その対策はしなければいけないと私は思っております。
 しかし、さまざまな御意見もございまして、環境省といたしましては、ブラックバスに限らず、さまざまな移入種が在来種の存在を脅かすものとして全国的な問題となっていることを認識いたしておりますので、本年八月に、移入種(外来種)への対応方針というものを取りまとめたわけでありますが、それを受けまして、一月をめどに、中環審野生生物部会に専門の小委員会を設置いたしたいと思っております。その中でこの問題について検討を進めてまいりたいと思っております。
東(祥)委員 まだ三分ありました。
 大臣、だから今内閣というのは、僕は非常におもしろいと思うんですが、何かあればすぐいろいろな委員会を立ち上げる。それはいいんですよ。だから、よくジョークにあります。複雑な問題が出てきたときに、どうしたらいいんだろうか、そういう議論をしているときに、その解決策をだれかが出すんではなくて委員会をつくろうと。委員会ばかりができ上がってくるんですよ。
 だから、大事なことは、環境大臣、環境大臣が環境大臣になられる背景というのは、環境大臣になって何をやるか、そういうちゃんとした方針を持って僕は大臣になられているんだろうと思いますよ。また、そういう形にこれからなっていかなくちゃいけないのであって、そういう意味からしますと、この問題を扱うためには、ただ単に、だれがだれを選ぶのかよくわかりませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、一つは、環境省として、この問題についての専門家、それからいわゆる漁業をなりわいとしている方々、あるいはまた釣りをプロとしている方々、あるいはまた自治体、そういうところの人たちを大臣のもとでちゃんとよりすぐって、そして大臣の方針のもとにそういう審議会なり委員会というものを運営していかなければ、よく自分自身わからないから、知見を集めて、そして結果を出そう、そういうやり方というのはもう、すべての分野において共通しているわけでありますけれども、僕はやめた方がいいんだろうと思いますよ。
 環境大臣のもとで、イニシアチブを持って、そして環境大臣の魂が入った委員会をして、そして結論を導き出していくという形の委員会でなければ、問題を解決するためにさらに委員会を設立し、さらに複雑になっていくという、非常に乱暴な言い方をして申しわけないんですが、そういうイニシアチブを大臣に持っていただくことをお願いいたしまして、ちょうど三分が切れましたから、私の質問を終わらせていただきます。どうぞよろしく。
松本委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 きょうは、本年七月十七日に当委員会が調査を行いました尾瀬沼にある有名な長蔵小屋の不法投棄問題等、自然公園内でのごみの不法投棄問題について質問をいたします。
 自然保護の象徴的な存在として知られる長蔵小屋は、自然公園法に基づいて環境大臣から認可を受けて公園事業を執行している公園事業者です。公園事業者というのは、公園計画に基づいて執行される公園の利用または保護のための施設であって、国立公園内における宿泊施設等、民間事業者が国にかわって行うことができるものとされております。
 九九年六月、長蔵小屋は別館の建てかえを申請いたしました。申請を受けた環境省は、既存建築物の撤去に伴い生じる木材を除く廃材は国立公園区域外に搬出することを条件に受理、承認を行っています。真鍋長官のときでした。
 ところで、その翌年、二〇〇〇年四月に環境省は、不法投棄をしているのではないかという情報があったにもかかわらず、うわさ程度の内容で埋めた位置や量もはっきりしておらず、当時の自然保護官は、五月に跡地を見た、つまり目視をした程度で放置をしていたとされております。そこで、一年たった五月、平野社長に直接確かめたところ、ごろごろした石は埋めたかもしれないが、ごみは埋めていないと否定をされまして、掘削の協力も得られなかったと報じられておりました。
 別館建てかえに際して、環境大臣は、既存建物の撤去に伴い生じる木材を除く廃材は国立公園区域外に搬出する、そのことを条件にして申請を受理、承認したのですから、この条件を守っていない疑いが生じたわけですね。そういった場合は、その真偽について確認する必要があるだろうというふうに思うわけですよ。
 この区域は、尾瀬の自然を守る長年にわたる運動で、車の乗り入れが禁止されております。廃材を国立公園区域外に搬出するためには、ヘリコプターを使用することになっております。ですから、平野社長が掘削の協力を拒んだとしても、ヘリコプターで搬出したことを証明する伝票の提示を求めていれば、正しく処理されたかどうかということを確認することはできたと思うんですね。この時点で自然保護官はそうした確認を行ったのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
岩尾政府参考人 当該山小屋の建てかえに伴う承認に当たりましては、先生御指摘のように、既存建築物の撤去に伴う廃材を公園外に搬出する、それから工事施工跡地を整理するという条件を付して許可したところでございますが、条件の履行状況につきましては、山小屋の事業主からの聴取、現地の自然保護官が工事施工跡地の整理の確認は行いました。
 しかしながら、その時点で明確な違反が見出されなかったということで、ヘリコプターなど搬送伝票の提出を求めなかったということでございます。
藤木委員 だから、求めていないわけですよね。
 ところが、さらに、それから四カ月ほどたった二〇〇一年の九月に再び通報が寄せられております。このときも長蔵小屋側に問い合わせたけれども、そういう事実はないと否定をされて、それらしき場所を掘ったそうですけれども、見つからなかったということでした。
 私も、委員会視察に参りましたときに、旧別館跡地を見てまいりましたけれども、その場所は、ちょうど北関東地区自然保護官事務所に対面した場所なんです。ですから、事務所の二階にある二つの窓からは何の障害もなく真正面に見えるところでございました。この九月に電話による通報があったときは、それまで夏休みで保護官は事務所にいなかった、不在にしていたということですけれども、後に発見された不法投棄の廃棄物の量というのは、短時間で埋められる量とはとても思えません。
 さて、次に埋めているとまた通報があるわけですね。それは十一月です。このときは、埋めていた場所についても詳しい説明があったので、調査をしたところ、発泡スチロールを発見した。長蔵小屋側に掘り出させたら、六十キロ用米袋二十八袋分、配水管などの廃材を地下一メートル深さに埋めてあるのを確認したということです。
 もっとも、その季節というのは、雪が降る季節に入っておりましたので、閉山になるということもあって、雪解け後に再調査を行うということにして、平野氏に、廃材の量と、来春、環境省立ち会いのもとに搬出処理をすることについて確認書に署名をさせたそうですけれども、受理、承認の条件に対する違反行為はこの時点で明らかになりましたね。環境省はこのときにどのような処分を行ったのですか。
岩尾政府参考人 平成十三年十一月ですが、長蔵小屋の主人平野太郎氏立ち会いのもと、埋設された廃材を確認いたしました。先生御指摘のように、時期が降雪、閉山の時期と重なりましたので、周囲の実況調査等が実施できず、結局、環境省立ち会いのもと、翌春の雪解けの後の搬出処理を確認する内容の確認書に署名させ、また、環境省北関東地区自然保護事務所長あてに事実報告書の提出を約束させたということでございます。
藤木委員 結局、環境省は適正処理を行う確認書に署名を求めたといったことだけであって、別館建てかえの承認の際の条件不履行の責任について、何のおとがめもない、責任を問わないということだったんではありませんか。
 ところで、ことし二月の六日、さらに建築廃材約二百キロを発見しております。そこで、環境省は初めて平野社長に、この件に関する報告を文書で提出するように求め、十五日に提出させております。その報告書には、ほかに大きなごみはないと書かれていたと報じられておりました。
 一方、二月の二十日、奥利根自然センターの内海広重所長を初めとする尾瀬の自然保護団体六団体は、長蔵小屋の平野社長に、謝罪と特別保護区内での営業縮小を求める文書を提出しております。
 他方、環境省は口頭で撤去を指示したと報道されていますけれども、本当に口頭で撤去を指示しただけなのですか。それ以外に何もやらなかったのでしょうか。そのときの対応はどうだったのでしょうか。
岩尾政府参考人 平成十四年の二月の六日に、尾瀬の長蔵小屋不法投棄に関する新聞記事が掲載された後、同月十五日に、平野太郎氏より埋立量等に関する環境省北関東地区自然保護事務所長あての報告があり、その後、環境省としても事情聴取をして事実の把握に努めたところでございます。
藤木委員 民間の保護団体が、資格がないよというような怒りをぶつけているのに対して、環境省の対応というのは極めて生ぬるいというか、結局何もしなかったということではなかったのでしょうか。
 いよいよ、福島県警などの本格的調査が雪解けを待って始まりました。五月十四日から十六日にかけての調査で、別館を建てかえたときの廃材や断熱材、廃プラスチック等、新たに計三十トンが発見されたということでした。この調査にも環境省は立ち会っております。
 ところが、環境省が、自然公園法に基づいて、不法投棄した旧別館跡地を、国に返還命令を出し、改善命令を発したのは、それから約一カ月後の六月十二日のことです。こうした環境省の対応からは、尾瀬の自然と環境を守ることを使命とした毅然とした姿勢が私には感じられません。
 委員会の現地視察のとき、社長は私たちの前に出てきて謝罪をされましたよ。監督不行き届きだったことを反省していると言われました。長蔵小屋は、環境大臣から認可を受けた公園事業を執行している公園事業者です。国立公園の宿泊施設として、いわば国にかわって事業を行っている民間事業者の一員です。ですから、長蔵小屋にこの事業を認可した環境省は、認可権者としての監督責任があります。こうした不始末には、もっと毅然とした対応が行われるべきだと思いますね。
 通報を受けてから廃棄物の本格的撤去まで二年もかかって、結局、警察の手が入ってからでなければ処分できなかった。これは、認可権者としての監督責任を誠実に果たしたとはとても思えないのですが、大臣、いかがお考えですか。
鈴木国務大臣 事業者に対する徹底的な責任の追及というものが不十分であった、そういうふうに思っております。
 どうしてそうなってしまったのか、背景を今から思ってみますと、環境省と尾瀬の山小屋は、これまで、ごみ持ち帰り運動とか利用マナーの普及啓発、または浄化槽の設置など排水対策の実施などについて連携協力して実施をしてきたところでございますので、そういう連携協力の関係の中で、事業者の環境対策に対する姿勢に過度の信頼を置いてしまっていたためではないかというふうにも思うわけであります。
 そうしたことも踏まえまして、今後は、事業者に対する法令の趣旨や規定内容の周知徹底、巡視励行や条件履行状況の確認などに万全を期して、違反行為の防止に努めなければならないと思っております。
藤木委員 不法投棄が行われているかどうかというのは、さきに私指摘いたしましたように、ヘリコプターで搬出したことを証明する伝票を提示させることでも判明できたはずですし、また、別館建てかえ申請を承認する際の条件不履行が判明したその時点での処分も行っていないんですね。
 私は、その信頼がそこで裏切られたときだと思うんですよ、出てきたということは。それまでの、ごみを出さない運動なんかやってきて、信頼関係があったから、まさかと思っていた。しかし、実際に出てきたときは、それを裏切られたということがわかった瞬間なんですね。そのときさえも手を打たなかったということは、極めてずさんだと言わなければならないと思いますね。そこには、やはりなれ合いがあったんじゃないかと思います。
 また、虚偽の報告書を作成していたことに対しても、おとがめはありませんでした。結局、警察の手が入ってからでなければ、自然公園法に基づく処分を行うことができなかった。
 問題は、私は、長蔵小屋だけの問題じゃないというところが深刻だと思うんですね。こうした不法投棄というのは、ことしの八月二十六日付の各紙が報じていたところによりますと、谷川岳の山小屋、肩ノ小屋でも、一九九三年改築の際、建築廃材が不法に上信越高原国立公園の特別地域内に埋められていたということが判明しています。また、十月十九日付の新聞報道では、尾瀬の山の鼻ビジターセンター付近の公衆トイレの建てかえの際に、浄化槽を撤去せず、七年間地中に放置していたということが判明したそうです。
 では、この二件はどうしてわかったのか、どのような経過で明らかになったのかを一つはお答えいただきたい。そして、これに対して環境省としてはどのような対応をなさったのか、お答えをいただきたいと思います。
岩尾政府参考人 まず、谷川岳肩ノ小屋でございますが、上信越国立公園の谷川岳に位置しまして、群馬県が避難小屋の建てかえを行うに当たり、基礎工事のために掘削した建設予定地において、埋設された旧避難小屋の解体廃材などが、本年八月、工事関係者によって発見されたものでございます。
 環境省の現地事務所においては、旧避難小屋の事業者としての群馬県から随時報告を受けながら、適切な処理がなされるよう指導等を行い、既に廃材については撤去を完了。また、環境省としては、群馬県知事より始末書の提出を受け、本年十一月、群馬県知事あてに厳重注意文書を発出したところでございます。
 日光国立公園尾瀬山の鼻にある公衆トイレについては、群馬県が公衆トイレの建てかえを行うに際し、工事関係者が旧トイレ浄化槽の一部を撤去せずに埋め戻していたものでございます。
 本件につきましては、事業者としての群馬県が、本年十月、浄化槽の掘り出し等を終え、本年中に公園区域外に廃材を撤去する予定と聞いておりまして、適切に処理されるよう指導等を行ってまいりたいと考えております。
 環境省としては、尾瀬、谷川岳など、廃材等の不適切な処理実態が見られたことから、本年九月、国立公園事業の執行に係る建築工事等に伴い発生する廃材等廃棄物の適正処理に関して、万全を期するよう、環境省現地事務所及び都道府県に対して文書により指導を行ったところでございます。
藤木委員 今の御答弁、おかしいですね。事業者が発見したんですか。なぜわかったのかと私は伺っているんです。わざわざ掘り返す必要があったんですか。なぜわかったんですか。
岩尾政府参考人 肩ノ小屋の事件が報道されましてから、群馬県が自然公園内で実施した工事に関して廃材処理に関する調査を行ったことから判明したものと聞いております。
藤木委員 確かにそうなんですよ。群馬県はこれまでの公共事業洗い直しということで点検を行う、チェックを始めたということがそのきっかけなんですね。
 今言われた通知ですね、尾瀬の教訓からおつくりになったのだと思います。私もいただいて見ましたら、随分詳しく指示しているわけですね。二つ言っておりまして、申請指導に当たっては、国立公園事業者に対し、発生する廃材等廃棄物の内容、搬出処理方法について十分説明を求めろ、また、具体的に記述するように指導する。承認をする際にも、必要に応じて、廃材等廃棄物の搬出処理方法、進捗状況及び完了報告の提出等について条件を付すことを求めております。
 二つ目には、承認後の問題です。国立公園事業者に対して、既存建築物の解体、廃材等廃棄物の国立公園区域外への搬出処理に係るスケジュールやその方法の詳細等について説明を求め、必要に応じ、現地確認を行い、完了報告等の提出を求めるなど、廃材等廃棄物の適正処理の状況確認に努めること、こういう細々としたことになっているわけですね。確かに、対策に抜かりがないようになっております。
 しかし、これで本当に防止できるんですか。管理事務所の目の前で起こったことすらつかめなかったんですよ。この通達どおりきちんと実行するためには、それにふさわしい体制の整備が必要だと思います。
 伺いましたら、きのういただいた立派なパンフレット、すばらしいのができています。「すぐれた自然を後の世代に引き継ぐために」という立派なパンフレットができておりまして、裏面に、日本列島にある国立公園と、それから自然保護官が滞在している事務所の数などが書かれたのをいただきました。この広いところに、聞いてみると、レンジャーが二百人余りなんだそうですね。私、これではとてもこの通達を実行することはできないんじゃないかというふうに思いますが、レンジャーの増員などの検討はしておられるんでしょうか。
    〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕
岩尾政府参考人 その地図にもございますが、全国を十一のブロックに分けまして、各ブロックごとに自然保護事務所を設置し、そのもとに支所、自然保護官事務所を配置しておりまして、総数で二百十八人の職員が、国立公園の保護管理、野生動植物の保護などの業務に当たっております。
 これらの業務を適切に実施するために、管理体制の充実はもとより重要と認識しております。国有林野事業に携わる林野庁の職員の受け入れ等によりまして、これでも、最近五年間で五十人の増員を行うなど、現地事務所の職員の増員に努めてきております。環境省として現地業務を的確、円滑に実施し得るよう、今後さらなる体制の強化に向けて一層の努力をしてまいりたいと考えております。
藤木委員 さらなる体制の強化はぜひ進めていただきたいと思います。
 環境省が過去五年間に整備、建てかえなどを行ったのは一体何件、何カ所あるのかということを伺ったんですけれども、これはどうも集計ができないということでございました。そこで、知り得る範囲ということで、少なくとも整備、竣工したビジターセンターの数は十五、公衆トイレの数が四十三あると、今把握できているものについて教えていただきましたけれども、これらの直轄事業で整備を行った際に廃棄物の処理が正しく行われていたのかどうか。お出しになったこの通知に照らして、報告どおり処理されたかどうか点検は行っておられるのでしょうか。いかがですか。
岩尾政府参考人 環境省が発注する解体工事につきましては、請負業者から、搬入を証明する伝票、廃材の運搬や処分場への搬入状況の写真を提出させ、確認を行っております。さらに、一部の事業では、処分場に環境省の職員が直接、搬入前と搬入後の状況を確認しております。こういった確認作業により、環境省が直接発注する事業については適切な廃材等の廃棄物処理が行われてきたものと理解しております。
    〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕
藤木委員 長蔵小屋の場合は、不法投棄をしたということを目撃したという方からの通報で後に判明していくことになるわけですね。肩ノ小屋、山の鼻ビジターセンター付近のトイレの場合は、群馬県が過去の事業をチェックするということで明らかになったわけです。長蔵小屋の教訓から群馬県はその必要性を感じて点検作業を行ったということは、私は非常に大事なことだというふうに思うんですね。
 廃棄物の国立公園特別保護区などでの不法投棄は、これまでに判明をした三件以外にないと、局長、断言できますか。断言できないでしょう。できるわけないですよ。出てきたらどうしますか。環境省は、せめてみずからの直轄事業についてチェックを行うということが必要だというふうに思いますが、いかがですか。
岩尾政府参考人 直轄事業を始めて、これまでも工事の監督、検査の一環として、廃材等の処理については注意をしてまいりました。今のところ、不適切な処理は確認されておりません。
 しかしながら、今般、地方公共団体が発注した事業ということでございまして、廃材を埋めていた事実があったことを踏まえますと、環境省の直轄工事で解体した施設周辺に廃材等を埋めた形跡がないか、改めて職員が状況確認を行う必要があるのではないかと考えております。さらに、谷川岳の肩ノ小屋、尾瀬山の鼻ビジターセンターのような、不適切な処理が特に起きやすいと考えられる山岳地のような場所における工事については特に注視をしてまいりまして、関係者からのヒアリングなどを行いたいと考えております。
藤木委員 山岳地帯はそういう特別な問題が確かにありますけれども、そうでないところでも、安易に考えれば、事業の料金が安くつくわけですよね、現場に埋めてしまうということをやっちゃうと。ですから、絶対にないということは言えないわけですよ。これまでの事業だって、報告書をちゃんと提出させて万全を期してやってこられたわけです。それでも起こっているということが明らかになっているわけですから、それはぜひ強化していただかなければならないと思います。
 今後、こうした不法投棄を未然に防止するために万全の対策をとるということは当然でありますけれども、過去の事業について点検を行うということはぜひやっていただかなければならないと私は思いますね。もし仮にこうした不法投棄があるならば、それは放置しておくわけにいかないわけですから。見つからない限りは、放置されているという状況が持続されるわけです。
 環境省の予算を拝見いたしますと、九六年から急激に増額をしております。環境省としてはですよ。環境省としては、二けた台の億から三けたになっているわけですね。九六年は百十六億四千二百万円、九七年は百二十八億円、九八年は百二十九億円、九九年が百六十四億円、二〇〇〇年は百七十五億円というふうになっておりまして、九六年以降は自然公園事業は至るところで行われるというようになってきているわけですね。もう公園の事業量そのものが多くなっているわけです。
 私は以前も、ダイヤモンド計画について、やり過ぎではないかという工事がたくさんあるということを指摘して質疑を行ってまいりましたけれども、このような公園事業の施設でこうした不法投棄事件が起こっているということなんですから、過去の環境省直轄の事業については点検をぜひ行っていただかなければならないというふうに思いますが、大臣はどのようにお考えですか。
鈴木国務大臣 環境省が直轄で行いました施設整備、整備した施設の周辺に廃材を埋めた形跡がないのか、また、これまでそのようなことを懸念する情報がなかったのか、改めて確認をいたさせます。
藤木委員 それをぜひやっていただきたいと思いますが、そのおっしゃったことが本当に履行できるかどうかは、体制が整わないとこれはなかなか困難なことであろうというふうに思うわけですね。
 環境省がみずからの直轄事業に対してそのような責任を負うという立場をとってこそ、先ほど局長は、全国の都道府県にそれぞれやるように、指示命令はできないにしても、そういうことを促していきたいということをおっしゃいましたけれども、環境省みずからがやってこそ、そういった行為が各地方に受けとめられるであろうというふうに思うわけです。
 ですから、この点はぜひとも今大臣がお約束をいただいたことが実行できるような体制を整えていただいて、このパンフレットに恥じない自然公園を、皆さんに愛していただけるように努めていただきたいというふうに思います。
 そのことを申し上げまして、少し時間前ですけれども、終わらせていただきます。
松本委員長 金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 きょうは、先般、自然再生推進法が参議院も通過したようで、成立したようでありますけれども、自然再生にかかわる問題で二、三お伺いをしたいと思います。
 今、瀬戸内海の環境というのは、残念ながら、戦後のさまざまな開発などによって自然が破壊され、また、海砂利の採取等で海底を含めて自然が破壊されているということは、私も前にこの環境委員会でも指摘したところですけれども、今広島湾の岩国沖で、岩国基地の拡張工事ということで藻場、干潟が大量に消失する、消滅するという状況が出ておりますけれども、そのことについてお伺いをしたいと思います。
 先般、七月の十八日に「瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画の変更への同意について」という環境省が発表されたものがあるんですけれども、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づいて、各府県が瀬戸内海の環境の保全に関してさまざまな計画変更案を作成して、それに対して環境相が同意をしたということで、その同意についての「瀬戸内海環境保全基本計画変更の概要」という、いわばマスコミに報道された資料の中の第一に、計画の目標等に、藻場、干潟や自然海岸等の保全及び回復を追加したということで、このことが第一ということで強調されて記載をされております。
 私は、そのことは非常に大事なことだというふうに思いますけれども、そういう意味でいいますと、藻場、干潟を重要視していこうということが環境省の中に広がっているというふうに思うんですけれども、この岩国基地の拡張というのはそもそも平成八年ごろから始まった事業で、その際、埋め立てが承認されたときから比べると、そういう藻場や干潟に対しての考え方というものが、状況が大きく変わっているというふうに私は思うわけですね。
 それで、例えば山口県などが、瀬戸内海の環境の保全に関する山口県計画という資料の十ページの第五項に「埋立てに当たっての環境保全に対する配慮」という項があって、こういうふうに書かれているわけですね。
 環境への影響の回避・低減を検討するとともに、必要に応じ適切な代償措置を検討するものとする。その際、地域住民の意見が適切に反映されるよう努めるものとする。
  これらの検討に際しては、特に浅海域の藻場・干潟等は、一般に生物生産性が高く、底生生物や魚介類の生息、海水浄化等において重要な場であることを考慮するものとする。
ということが記載をされているわけであります。
 つまり、今、藻場とか干潟に対して非常に見直しをやろうということになっておりますけれども、最初にお伺いしたいのは、今度の岩国基地の問題でも、岩国の周辺は百五十ヘクタールの藻場、干潟があるというふうに言われておりますけれども、広島湾全体を見ると、その百五十ヘクタールというのはどれぐらいの位置を占めているんでしょうか。わかりませんか。
石原政府参考人 資料を持ち合わせておりませんので、後ほど調べまして。
金子(哲)委員 広島湾全体でいうと、私も広島ですけれども、ほぼ広島市域にかかわるような浅海地域はほとんど埋め立てでもうなくなっていますよね。二千ヘクタールぐらいあっただろうと言われている藻場地域がほとんどなくなっている。この百五十ヘクタールの岩国周辺の藻場というのは、広島湾の中では非常に重要な地域に、残り少ない藻場、干潟の地域になっているというふうに考えておりますが、その辺についてはどうですか、具体的な数字は別にして。
石原政府参考人 瀬戸内海におきます藻場、干潟につきましては、藻場、干潟の重要性にかんがみまして、平成十二年に瀬戸内の基本計画を改正しております。それを受けまして、山口県の基本計画もこの七月に改定になったわけでございます。
 その中におきます藻場、干潟の扱いにつきましては、委員が御指摘のとおり、その重要性にかんがみという記述がなされているところでございます。したがいまして、藻場、干潟の重要性は依然として変わらない、従来に増してさらに重要になっているという状況ではないかというふうには考えております。
金子(哲)委員 重要性についての認識はそれでいいんですけれども、私が今問うているのは広島湾。
 山口県の資料を見ますと、私もこれを実は調べていて、山口県が、「浅海域の保全等」というところで、その根拠として出されている資料が第四回自然環境保全基礎調査海域生物環境調査報告書、一九九四年三月、環境庁作成の資料を最初見ましたら、この中にも書かれているんですが、「山口県の瀬戸内海沿岸海域には総面積二千百十三ヘクタールの藻場があり、響灘に最も多くみられる。」という記述があるものですから、一体この資料では岩国の周辺にはどれぐらいの藻場があるかといって計算したら、三十一ヘクタールの藻場が記載をされているだけなんですね、この数字で。それで、今度の岩国基地に関する資料を見ますと、百五十ヘクタールとふえているわけですよ。
 実際には、例えば広島湾全域に一体藻場が大体どれぐらいあって、どれぐらい消滅したか、そして、今百五十ヘクタールと言われる藻場はどれぐらい貴重なものかというような価値の判断について、環境省は一体どういうふうに判断されているんですか。
石原政府参考人 定量的に数字を持ち合わせておりませんけれども、瀬戸内及び山口県計画に記述がございます響灘におきましての藻場、干潟については、重要であるというふうに考えております。
金子(哲)委員 重要であることはさっきも言われたとおりで、私が言っているのは、広島湾の中で岩国沖がどれぐらいの位置を占めているかということを聞いているので、それを答えてください。
石原政府参考人 お答えできる資料を持ち合わせておりませんので、また調べまして御報告したいというふうに考えております。
金子(哲)委員 広島湾全体で藻場の重要性が全然わかっていない、比較できない、岩国沖。
 それで、この百五十ヘクタールも、岩国沖すぐのところは百五十ヘクタールもないんですよね。実際には、あそこから離れた大島の地域も含めて百五十ヘクタールでしょう。
 それで、この問題で、とりあえず百五十ヘクタールというところにいきますけれども、百五十ヘクタールのうち四十一ヘクタールが消滅するわけですよね。実際には、岩国沖だけだと、率からいうともっと高くなるんですよ。しかも、百五十ヘクタールのうちの四十一ヘクタールもなくなる。にもかかわらず、今度の計画では、造成計画の予定地では二七%――実際には四十一ヘクタールというのは藻場ですね。そして、干潟と合わせると、ダブっているところもあるので、七十二ヘクタールがなくなる。そのうちの二十七ヘクタールを造成計画などによって回復するというわけですよね。この回復というのは約三〇%ですけれども、それはどのようにお考えですか。
炭谷政府参考人 今回の消滅する七十二ヘクタールに対して、二十七ヘクタールの回復という予定になっているわけでございますけれども、これは、先生御案内のように、専門家の検討の結果、できるだけ安定した藻場、干潟を確実に造成するという観点に基づきまして、専門家の指導助言を得て、長期的かつ慎重な議論を踏まえたもので、適切なものというふうに評価できるのじゃないかというふうに考えております。
 また一方、本事業は、埋め立て等については環境保全上特別な配慮が必要な瀬戸内海海域における事業であることなどを踏まえまして、環境省としては、事業者に対しまして、例えばこの報告書を尊重した確実な藻場、干潟の回復、また残存する藻場、干潟の保全、また回復に向けたさらなる取り組みというような意見を申し入れているところでございます。
金子(哲)委員 さっきからの答弁をずっと聞くと、結局、広島湾における藻場の全体の状況もわからずに、そして二十七ヘクタールは、向こうが言って、学者も含めて言ったんだからそれはいいんだと。
 それでは、環境省が、藻場の保全とか回復をします、今度の瀬戸内海基本計画の変更した第一はこういう大きなことを変更しております、これが追加になりましたといって発表して、大事なことは全体の問題でしょう。全体として四十一ヘクタールも藻場がなくなる。干潟を合わせれば七十二ヘクタールもなくなる。そのことの問題について、先ほども言いましたように、平成七年に最初の埋立計画ができたときから比べると、藻場、干潟に対する全体の認識が変わってきているわけですから。そういったことに対しての認識は全くなくて、二十七ヘクタールだけは埋め戻しが、回復ができます、だからわかりましたと。それでは環境省の藻場の保全や回復に対する役割は何もないじゃないですか。全体の、いわばあの一つの海域としての、広島湾全体としてどう見るのかという視点は全くないんですか。その辺はどうですか。
炭谷政府参考人 私どもといたしましては、先ほど来御答弁しておりますように、瀬戸内海における藻場、干潟の重要性というものは十分認識しております。その中において、できる限りの、最大限の、また確実な努力をしていただきたいというふうな立場でございます。
 今回出されました二十七ヘクタールというのは、確かに、失われるものの三〇%にしかすぎないわけでございますけれども、それは確実に達成できるものというふうなもので評価しているわけでございます。
金子(哲)委員 評価していないのなら、そのようなことをやらなきゃいけないですよ。今大事なことは、海域全体を見て、その中における消滅する藻場がどういう役割を果たすかということをまず第一義的に考えて、その上に立って、再生するかしないかという問題が出てくるので、大体、七十二ヘクタールの藻場、干潟がなくなるのは基地の拡張だからしようがないんだというところから出発するのは、平成八年のときはしようがなかったけれども、今、変わってくるのが普通じゃないですかということを言っているんですよ。その点はどうですか。
石原政府参考人 先ほどの広島湾の藻場ですけれども、広島湾の山口県の側の藻場部分での面積は、第四回自然環境保全基礎調査によりますと百八十ヘクタールでございます。
 それと、先ほどの藻場の重要性ということにつきましては、十二年の瀬戸内の基本計画の中で、従来四十八年に策定されたものから比べまして、さらに重要が増したということでの改正でございます。
 ただ、具体的な事案に関しての藻場の必要性、重要性等につきましては、当該事業の実施に当たりまして環境影響調査を実施します。その中で、環境省の方から、そういう観点を含めましての意見を申し上げておるというところでございます。
金子(哲)委員 そうすると、最大限というのは、三〇%やれば最大限になるんですか。
炭谷政府参考人 先ほど御説明いたしましたように、今回の二十七ヘクタールというのは、専門家によって、これは確実にできるというような高い可能性で言っているわけでございます。
 しかしながら、私どもといたしましては、これにとどまることなく、できるだけ広く、より可能性があればもっと広くというようなことで御意見を申し上げているところでございます。
金子(哲)委員 最大限かどうかというのに答えてもらえないんですけれども、向こうが一生懸命やるというんだからそれを信用しているんだというだけのことしか答弁されていないようなんですけれども、例えば今回、今、藻場、干潟の話をしましたけれども、藻場は四十一ヘクタール消滅するんですけれども、そのうち十四ヘクタールほど再生をするということになっていますよね。造成をし、再生をする。
 ところが、十四ヘクタールのうちの九ヘクタールは埋め戻しなんですよね。今まで既に何かの事情でしゅんせつされていた。たまたまそこの地域がしゅんせつされて、藻場に穴があいていた。そこを九ヘクタール再生をする。
 これは、本来、岩国基地の埋め立てとは関係なく再生すべきことで、これが十四ヘクタールのうちの九ヘクタールも含んでいるんですよ。これでは、実際上は五ヘクタールしか造成しないということじゃないですか。それが最大限の藻場の再生の努力と言えるんですか。
炭谷政府参考人 確かに、十四ヘクタールのうちに五ヘクタール埋め戻しの分があるわけでございます。これは、まさに専門家の御意見によりまして、埋め戻すことによって、より確実に藻場が形成できるというような判断が一つございました。そのようなことで、あえてこの埋め戻しということを手間をかけまして、九ヘクタール分を広げたというふうに考えているわけでございます。
金子(哲)委員 全然話がすり合わないんですけれども、そういうことを言っているわけではなくて、そこはもともと本来なら、それは工事があろうがなかろうが再生をして藻場を回復する場所だったんですよ。それを、この工事に合わせて、区域外を含めたら九ヘクタールじゃないですか、五ヘクタールとおっしゃったけれども。それを、あたかもそれも含めて十四ヘクタールだからいいことなんだという主張がおかしいと僕は言っているんですよ。
 実際上に、四十一ヘクタールも消失する中で、新たにつくられるのは五ヘクタールじゃないですか。そういう認識はないんですか。
炭谷政府参考人 確かに、埋め戻し部分を入れまして十四ヘクタールということになるわけでございます。しかし、その他の、干潟等の造成等を入れますと、すべてで二十七ヘクタールということになっております。
 繰り返しになりますけれども、この二十七ヘクタールというのは、専門家から見て自信のあるという、確実なものにできるという自信に基づいてやっているものでございまして、私ども、その二十七ヘクタールにとどまることなく、できればもっと拡大していただきたいということの見解を述べているところでございます。
金子(哲)委員 それでは、自信があるところなら、自信のないところも含めてもっと拡大する努力をなぜさせないんですか。その計画をまず上げさせるのが先じゃないですか。自信があるところだけ認めて、あとは努力しろだけでは、それで終わったら全然何にも拡大できないじゃないですか。
炭谷政府参考人 まず、この二十七ヘクタール分を確実に実施していただきまして、また、その間モニタリング等によって知見が加わるわけでございます。その知見に基づきましてさらに拡大していただきたいという意見を私ども公式に述べているところでございます。
金子(哲)委員 次の問題に移りますけれども、ところで、この埋め戻しの土はどれが使われるんですか。河口土ですか、それとも何の土が使われるんですか。
炭谷政府参考人 現在のところ、事業者からは検討中というふうに聞いております。
金子(哲)委員 それではおかしいじゃないですか。この実験の中で、あなた方も承知されているとおり、報告書の附属文書の中に、実験結果についていろいろ記載されているでしょう。土によって物すごく生育の状況が違うということが言われているわけでしょう。なのに、それもまだ決まっていないのに、何でそんなことを承認できるんですか。
炭谷政府参考人 専門家の研究におきましても、いろいろな土を入れまして比較検討いたしております。そういうものを含めまして、確実にできるというふうに聞いているわけでございます。
金子(哲)委員 それでは、環境省は全く検証していないのですか。
 この報告書の中で、河口土の非処理区と藻場土の非処理区とを比較すると、株の密度は、平成十一年八月時点で、河口土非処理区では九株一平米当たり、藻場土非処理区の三十七株一平米と比較して四分の一にとどまっているという報告があるんでしょう。もし河口土でやったら四分の一しかできないということでしょう。
 そういう実験結果があるのに、その土も何を使うかもわからないところで、二十七ヘクタールの努力をしたと。これは、学者、自分たちが、実験をした学者が報告しているんですよ、それを。それなのに、土の状況も決まらずに、二十七ヘクタールだからいいんですというような環境省の姿勢でいいんですか。
炭谷政府参考人 私どもといたしましては、報告書につきまして、十分勉強、検討させていただきました。
 また、先生ただいま引かれました報告書の検討につきましては、これは他の地域で実験したというものでございまして、また、それも十分今後の埋め戻しに当たっての参考にして、事業者において考えられるというふうに考えています。
金子(哲)委員 今、重大な発言だと思いますよ。
 実験したのは他の地域でやっているんだったら、その地域で実際にそれが定着するかどうか確証がないじゃないですか。そんなところで実験したものをうのみにして、それで学者が言ったんだからいいということで、二十七ヘクタールオーケーという、そんな答弁あるんですか。
 大臣、どう思われますか。全然別の地域で実験をした実験結果を持ってきて、だからここでできるんだというようなこと、海域、潮流問題、いろいろある中で、そういうことを何の検討もしないで、向こうが言った報告書だけ信用するなんということがあっていいんですか。
鈴木国務大臣 実験の事柄につきましては、ちょっと私は承知しておりませんので、今調べておりますので答えると思いますが、九ヘクタールの埋め戻し、先生は、それは土によってまた効果といいますか結果が違うんだ、こういうことでありますが、しかし、それは必ず再生できる、そういうものを当然使ってもらうということが前提である、そういうことを思っております。
 したがいまして、全くそぐわない土を持ってきたらこれはだめなわけでありますけれども、きちっと再生できるもので手当てをする、結果において九ヘクタールが再生できる、こういうことになろうかと思います。
金子(哲)委員 環境省が出した意見書の中には、そういうことは全く書かれていないわけですよ。十一月の十五日に出された見解の中には、モニタリングはやりなさいということはあります。埋め立てに伴って影響を受ける藻場を最小限にとどめなさいとか、先ほど言われたように、回復に最大限努力しなさいということはありますけれども、それではこの報告書をうのみにしただけで、実際に、実験の報告書の附属資料の中に、実験をした人たちでさえ一〇〇%の保証はないということを書かれているのに、それを、いや、もうこれだけやるから大丈夫だということで、先ほど、しつこく言うようですけれども、藻場、干潟が重要だ、今度の瀬戸内海基本計画の見直しの中の第一にそれだといって言っている環境省がとるべき態度ですか。
炭谷政府参考人 先ほどの私の答弁に一部間違いがございましたので、一つだけまず最初に訂正させていただきたいと思います。
 まず、土壌の実験につきましては、その地域でやっている、試験区はその地域でございます。申しわけございませんでした。
 私どもといたしましては、今回の藻場、干潟の回復の措置につきましては、非常に長い時間をかけた専門家によっての検討ということで、評価いたしております。また、今回、非常に厳密に、それぞれの藻場、干潟を回復できる自然環境の条件というものについて必須の条件としていたり、また周辺に対する影響等を重要な条件とするなど、非常に綿密な検討が行われているというところで、その回復について相当な実現性があるというように考えている次第でございます。
金子(哲)委員 この質問は時間がないので終わりますけれども、今答弁があったように、何か向こうが報告したことだけをうのみにされて進んでいるんじゃないですか。
 では、今後のモニタリングというのはだれがやるんですか。実験をした学者が、実験した人たちがまたモニタリングをしてやっていけば、そんな報告は信用ができるわけないじゃないですか。環境省としてはどういう検証をするんですか。
炭谷政府参考人 モニタリングにつきましては、事業者の責任においてもちろんやっていただくということになりますけれども、私どもも、必要に応じて、その調査結果を受けまして、必要があれば適切な助言もしくは意見を申し入れたいというふうに考えています。
金子(哲)委員 報告を受けて必要な助言とかいうことでなくて、あなた方自身が検証していけばいいんですよ。環境省にも検証グループをつくってやっていくのが筋じゃないですか。ぜひそれを要望したいと思いますけれども、どうですか。
炭谷政府参考人 まず、アセスメントの実施に当たりましては、事業者の責任でやっていただくという原則になっております。
 しかしながら、私どもといたしましては、もちろん結果をうのみにすることではなくて、しっかりと私どもなりに検証し、必要に応じて、環境省が専門家の意見を聞きながら事業者に対して適切な助言をしてまいりたいというふうに考えております。
金子(哲)委員 それは、環境省が独自にやはり専門家に意見を聞くということだと思いますので、そういう点で了解しておきたいと思います。
 それでは、次の質問に移りたいと思います。
 前々回の委員会でも質問したと思いますが、水俣病のことに関して、委員会の議事録の、速記録のことでお伺いしまして、それは確認をしますということでしたが、その結果はどうなっているでしょうか。
南川政府参考人 その後、速やかに当時の委員会委員長でございます井形先生に私自身がお会いいたしまして、速記録の問題について確認をさせていただきました。
 井形先生自身は、速記録がとられていたこと自身は知らなかったけれども、当時の委員会での具体的な発言内容については記憶をしておらず、現時点で速記録上の発言が正しいかどうかは確認できない、しかし、委員会としての取りまとめを行った報告書の内容が、すべての委員が専門的立場から熱心に討議した結果であって、その報告について責任を持つことができるということでございました。
 また、浅野先生にもお会いいたしました。浅野先生も、記録をとられること自身は、当然ながら事前に委員に断るということが必要だけれども、全く知らなかったということでございます。
金子(哲)委員 事務方の人にはどうですか。
南川政府参考人 事務方には確認いたしておりません。
 委員会の運営につきましては、一般的には、冒頭に委員長あるいは司会の部会長から、公開するかどうか、あるいは議事録を残すかどうかにつきまして、すべて委員に諮って、了解をとって進めるということが慣例でございます。そういう意味で、委員長に聞けば十分だというふうに考えた次第でございます。
金子(哲)委員 いや、そういうことを言っているわけじゃなくて、具体的な一人一人の発言について聞いているわけで、事務方の方にも、発言がどうだったかという確認はできるわけじゃないですか。それはどうですか。
南川政府参考人 これは、先日の御質問があってから、そういう意味では、直接に話は聞いておりませんが、幅広い議論があったということはいろいろな方から漏れ聞いております。
金子(哲)委員 わかりました。
 ということは、速記録に書かれた結論は報告書のとおりです、だけれども、その中で、少なくとも議事の中でそういう話し合いが行われたことは、やはり速記録として認めるということでいいのですか。
南川政府参考人 議論の主題は自然科学的なことでございますけれども、水俣病問題の歴史を含む社会科学的な事柄についてもいろいろ議論があったというふうには聞いております。
金子(哲)委員 時間になりましたので終わりますけれども、今の答弁ということは、事実上、この速記録に書かれた内容というのは認めているということですよね。なかったということで否定できないということだということだけ確認しておきます。
南川政府参考人 正式な記録ではないというふうに考えております。
金子(哲)委員 いや、だから、そのことは、この前も、会議で言って、話があったかどうかということは、あなたは、正式なものは議事録が正式だとおっしゃっただけで、少なくとも速記録というのは会議で論議された中身はそれに書かれているということで、私は、会議はそういう速記録に書かれているような中身を論議されたというふうに受けとめていいということを改めて確認しておきます。
 終わります。
松本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時一分散会


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