衆議院

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第13号 平成16年5月21日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年五月二十一日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大野 松茂君 理事 桜井 郁三君

   理事 竹下  亘君 理事 西野あきら君

   理事 奥田  建君 理事 長浜 博行君

   理事 伴野  豊君 理事 石田 祝稔君

      宇野  治君    大前 繁雄君

      加藤 勝信君    木村 隆秀君

      鈴木 淳司君    砂田 圭佑君

      西村 康稔君    鳩山 邦夫君

      船田  元君    三ッ矢憲生君

      望月 義夫君    近藤 昭一君

      鮫島 宗明君    島田  久君

      田島 一成君    武山百合子君

      松本  龍君    村井 宗明君

      高木美智代君    阿部 知子君

    …………………………………

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   参考人

   (放送大学教授)     岩槻 邦男君

   参考人

   (江戸川大学社会学部環境デザイン学科助教授)

   (財団法人日本自然保護協会理事)  吉田 正人君

   参考人

   (財団法人日本生態系協会事務局長)  関  健志君

   環境委員会専門員     遠山 政久君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  土井たか子君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 知子君     土井たか子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案(内閣提出第一二五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、放送大学教授岩槻邦男君、江戸川大学社会学部環境デザイン学科助教授・財団法人日本自然保護協会理事吉田正人君、財団法人日本生態系協会事務局長関健志君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず岩槻参考人にお願いいたします。

岩槻参考人 御紹介いただきました岩槻です。

 環境省中央環境審議会の野生生物部会長をやらせていただいていまして、外来種に関する問題についても、いろいろと答申などをつくるのに協力させていただきました。そういう立場から御説明を申し上げたいと思います。

 あらかじめ、事務局の方から、非常によく整った参考資料というのを見せていただいたんですけれども、先生方の手元にも多分届いているのでしょうから、内容については随分詳しくお勉強いただいているものということを踏まえた話にさせていただきたいと思います。

 生物多様性に関しましては、もう少し前まで、一時代前までは余り重視されていなかったんですけれども、国際的な生物多様性条約というのが署名、批准されましてから、いろいろなところで生物多様性に対する理解が広まってまいりまして、それに対する対策も国としてもいろいろ立てていただき始めておりますので、ある意味では理解が広まっている部分があるんです。

 しかし、それにもかかわらず、やはり、生物多様性の本質については、私ども専門の研究者から見ますと、国民一般の認識も加えて、非常に偏っていたり不十分であったりするところがありますので、今回の外来生物に関する法律のようなものがつくられることによって、ますます生物多様性に対する認識が深まり、二十一世紀の地球全体が持続的に発展していけるように、こういうことに対する認識が深まるということを、私どもは強く期待しているところです。

 特に、今回話題になります外来生物、これまで移入種というような言葉がよく使われておりましたけれども、そういう問題につきましては、幾つかの法律が議論されますときに、ここでも十分取り上げられており、幾つかの法律の附帯決議でその移入種問題が重要であるということが指摘されておりますので、改めてそのことに触れる必要はないのかもしれませんけれども、今回話題になっておりますその外来生物は、特に特定外来生物という名前がその冠としてかぶされております。

 外来生物に関しましては、一昨年でしたか、改定されました新生物多様性国家戦略でも、三つの危機のうちの一つで、緊急に対応を立てないと、地球の生物多様性の持続性に非常に問題が生じるんだということが指摘されているところですけれども、外来生物とか外来種とかといいますと、内容が非常に多様になりまして、外来生物の中には、しばしばメディアでも取り上げられていますように、我々の生活に非常に悪い影響を与えているものもありますけれども、一方では、そういうことではなくて、日本の自然になじんでしまっている外来生物もあるわけですから、そのうちの外来生物をすべて抹殺しようというような、そういうことではなくて、外来生物とどういうふうになじみながら生きていくか。

 そのためには、日本の生態系に対して悪い影響を及ぼす外来種をどう認識し、それに対してどう対応していくかということが必要なわけですけれども、中央環境審議会の部会の下に置きました小委員会でも、十回にわたって、いろいろな有識者の御意見も伺いながら、外来種の問題を検討させていただきましたけれども、外来種と呼ばれるもの自体が非常に多様であり、それらの生物多様性に与えている影響というのが非常に多様であり、ですから、それに対する対応も、また非常に多様に対応しなければいけないという非常に難しい問題である。

 法律の専門家に言わせますと、それが生態系に及ぼす影響というようなものを一つの法律で完全に対応するというのは非常に難しいことだというようなことを危惧されている部分もあるんですけれども、それにもかかわらず、問題が現在非常に深刻になってきております現実を、いろいろなところで先生方も十分御認識いただいていると思いますので、国としてどう対応するかということを、この法律をつくり、それから、それをよりよい形で施行していくことによって、そういうことに対する対策が整えられることを期待するということであります。

 ただ、問題が、多様であるということと同時に、世の中で一般に知られておりますのに比べますと、生物多様性だけじゃなくて、科学一般に対するということを言いたいんですけれども、我々の認識が非常に不十分なところがあります。

 例えば、御案内のことだと思いますけれども、外来種と一口で言いますけれども、私ども、現に生物科学の認識として、百五十万種ほどの生物が地球上に生きているということを認知しているわけです。しかし、その百五十万種というのは、その数字自体は非常に大きい数字なんですけれども、実際あると推定される、この推定は、推定ですからいろいろな推定の仕方があるんですけれども、どんなに少なく見積もっても実際は一千万種以上の生物がこの地球上に生きている。多分、私ども大多数の者が考えておりますところでは、億を超えるぐらいの種数の生物が生きているということが、我々専門家仲間での推定の常識になりつつあるんです。そうしますと、百五十万という数字は非常に大きいんですけれども、百五十万種というのは、名前をつけているだけでも、地球上に生きている生物のまだ一%ぐらいにしか達しないということなんですね。

 しかも、そのうちで、例えばゲノムということがしばしば話題になりますけれども、ヒトゲノムが解読されてやっとヒトの研究が始まるようになったというような言い方をしますけれども、全ゲノムが解読されているのもわずか十数種ですから、その程度のといいますか、そういう科学的な認識に従って議論をしているということを一方で御認識いただきたいということと、しかし、そうしたら、それは、一%の種に名前をつけた程度だから何も知っていないのかといいますと、そうではなくて、やはり情報量が圧倒的に大きいからその程度しか知らないということなのであって、現に、これまでわかっています生物多様性に関する情報も非常にたくさんあるわけです。ですから、今度、その外来種に対してどう対応するかというようなことを考える場合には、そういう情報が非常に有効に生かされてきている、そういうことですから、そういう背景の上でのその議論であるということを御理解いただきたいと思うんです。

 特に、特定外来生物種というような言い方をしますのは、先ほどもちょっと申しましたように、既に私どもの日本列島の地球表層と非常によくなじんでいる生物がある。

 例えば、外来種の例でいいますと、私、実は専門が植物ですから、植物の例をよく挙げさせていただくんですけれども、日本の田園風景にクローバーというのはもう既になくてはならない植物の一つになっているんですけれども、これは御存じのように、例えば芭蕉の俳句にもクローバーというのが出てこないように、江戸時代には日本にはなかった植物なんですね。ただ、それが今では日本の田園風景に欠くことのできない要素の一つとなっているということです。

 このことも考えてみれば、日本にもし田園風景というのがなければ、新石器時代以前は田園風景というのは日本列島にはなかったわけですけれども、そういう時代にはクローバーというのは多分生きることができなかっただろうと思うんです。私どもの日本列島の歴史の中で、田園風景というものをつくるようになってきて、そういう条件が整ったところへ外来種が入ってきますと、そこへなじんで生活するということがあるわけですね。

 ですから、例えばいろいろ問題になっています外来種の中で、現在、日本へ持ち込まれて日本の生態系の中で害なく定着してしまうものもあるでしょうし、逆に、以前と比べますと、クローバーのように長い時間をかけて定着するものはいいんですけれども、物の出入りが激しくなってきて、どんどん日本へいろいろなものが入ってくるということになりますと、その入ってきたものが生態系になじまないうちにさまざまな害悪を与えてしまうということがある。

 しかも、もともと日本へ持ち込んでも野外へ放出されますとすぐに死に絶えてしまったような生物も、地球環境全体の変化、例えば温暖化というようなことも非常に大きい影響の一つですけれども、そういう影響があって、日本の生態系を取り巻く環境自体が変動しているということから、もともと日本の生態系に定着しないようなものが、そのまま落ちついて、冬も越し、梅雨のような季節も耐えられるというような生き方をするようになってくるものですから、生態系の中で、これまでだったら起こっても大丈夫だったようなさまざまな変化を生じてきて、それが生態系に非常に大きい影響を及ぼしているという事実があるわけですね。

 外来種に影響を与えられたということを申しましたけれども、人に対する影響を与えるものについては、一般の人々も非常に簡単にそれを理解していただくことができる。例えばカミツキガメのようなものが入ってきますと、子供にかみついて危害を与える、そういうようなことですと非常にはっきりわかるんですけれども、元来落ちついている生態系の中に、外からの生物が入ってまいりまして、その生態系を攪乱してきて、その生態系の攪乱が徐々に日本列島の生物多様性に影響を与えてくるというような事実に対しては、余り気づかないまま通り過ぎてしまうということが多いわけです。

 その生物多様性に対する影響の一番恐ろしいところは、すぐに目立つ影響を与えてはこないんですけれども、徐々にさまざまな影響が蓄積していくうちに、ある閾値まで達しますと、取り返しがつかないような影響になってあらわれてくるということなので、これは取り返しがつかない影響が出てくるまでに十分その前兆を察知して、それに対する対応を立てないといけないということなので、それに対する対応をいかに立てられるかというのを、さまざまな形で専門的な知見を集めて検討したのをまとめていただいたのが今回の法律であるというふうに理解しています。

 この法律ができたら、それで在来生物が完全に保てるか、生物多様性が完全に持続性を維持できるかといいますと、まだ心配なところがないわけではないんですけれども、今、科学の世界ででも考えられるような重要なポイントというのは、多分、この前の中環審の答申には盛り込んでいただけたというふうに理解しているんですけれども。

 現に、もう十年以上前になりますけれども、種の保存法というのを、今正確な名前をちょっとリピートできませんけれども、絶滅危惧に追いやられている種をどう守るかということに対する法律をつくっていただいたことがあるんです。その法律をつくってもらいましたときも、私ども研究者仲間の中には、こういう程度のというのは悪い表現かもしれませんけれども、こういう法律では本当に危ないものは十分守れない、もっともっとさまざまな対応をしないといけないんじゃないか、だから、こういう法律ならできてもしようがないとさえ言っていた連中があるんです。しかし、十年前にその法律ができてから、日本じゅうで種の大切さということを理解していただく輪がどんどん広まりつつあるというのは、もう一方で確かなところなので。

 今度のこの外来種の法案についても、中環審の議論の中でもさまざまな議論が出てきたわけです。いろいろな御意見はあるとは思うんですけれども、そういうものを踏まえてもなお、こういう法律をつくって、日本の全体にこういうことを認識していただき、そういうことによって外来種の問題というのを、生物多様性に対する害悪を除く形で十分御理解をいただくということが、特に環境問題に関しましては、法律だけで決まるものじゃなくて、すべての人々がそういう認識をしっかり持って、それを維持しようという意図を持っていただくことが大切なわけで、そうする上で非常に重要な争点になるものだと思いますので、そういう方向で御検討いただければというふうに思います。

 時間ですので、私の最初の話はこれでやめさせていただきます。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 次に、吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 皆さん、こんにちは。

 江戸川大学社会学部環境デザイン学科助教授、日本自然保護協会理事の吉田正人と申します。

 私は、国際自然保護連合、IUCNの種の保存委員会侵入種専門家グループの委員として、皆様お手元の衆議院環境調査室の資料の九十八ページから百二十九ページにもあります、世界の侵略的外来種ワースト百や、侵略的外来種による生物の多様性の喪失を防ぐためのIUCNガイドラインなどを翻訳いたしまして、IUCN日本委員会のホームページでも紹介してまいりました。

 また、日本自然保護協会では、二〇〇二年に保護研究委員会野生生物小委員会による検討を行い、本日、資料としてお配りした、野生生物とその生息地を保護するための二十七の提言を取りまとめました。その三章は「日本の生物多様性を守るために 外来種に関する提言」でございまして、外来種による生態系や生物多様性への望ましくない影響を防ぐため、早急に外来種対策法を整備するとともに、種の保存法、自然公園法など関連する法律に外来種対策を盛り込むよう提言いたしました。

 また、二〇〇三年には、お手元にお配りした「日本全国カメさがし」を実施いたしまして、全国で観察された六千頭近いカメの六〇%以上がミシシッピアカミミガメ、カミツキガメなどの外来種であることを発表いたしました。

 本日は、このような立場から、本法案に対する意見を申し述べます。

 まず、地球上に存在する三千万種とも五千万種とも、また岩槻先生の今のお話ですと一億種とも言われる生物種は、三十数億年に及ぶ進化のたまものでございまして、一種たりとも人間がつくり出すことはできません。しかし、その生物多様性は世界的に危機に瀕しておりますが、その三大絶滅要因の一つが、侵略的外来種による地域の生態系の混乱でございます。

 特に、島嶼生態系は外来種の侵入に弱く、十六世紀の大航海時代以降、多くの島々で、人間が持ち込んだヤギや豚によって島固有の動植物が絶滅し、あるいは絶滅寸前の状態に陥っています。我が国でも、小笠原諸島や琉球諸島など独特の生物相を持った地域で、ノヤギ、ノネコ、マングース、オオヒキガエルなど、人間が持ち込んだ外来種によって、固有の生物種が絶滅の危機に瀕しています。

 また、湖沼のような閉鎖生態系においても外来種の影響は甚大です。琵琶湖、霞ケ浦などでは、ブルーギルなどの外来魚によって、固有の魚類相が危機に瀕しています。また、木崎湖では、コカナダモの繁殖によって在来の沈水植物が壊滅し、それを排除するために導入されたソウギョが、今度は残った沈水植物を食べ尽くしてしまいました。

 同じ島嶼国であるニュージーランドなどが外来種対策に対しては非常に力を入れているのに対して、我が国は外来種の輸入大国であり、財務省の貿易統計によりますと、年間五億件もの生きた動物が輸入されています。厚生労働省の調査によれば、年間四百万頭もの脊椎動物が輸入され、その五〇%が爬虫類、その大半がミドリガメの名前で輸入されているミシシッピアカミミガメであると言われます。

 また、一九九九年の植物防疫法の改正により、それまで規制されていた外国産カブトムシ、クワガタムシの輸入が解禁され、毎年七十万頭近い外国産カブトムシ、クワガタムシが輸入されています。国立環境研究所の研究によれば、これらの中には、国内産のカブトムシ、クワガタムシと交雑種をつくることが確認されており、それが野外に放たれた場合、在来種に遺伝的な混乱を引き起こす可能性があります。

 このように、外来種問題は生態系や生物多様性に多大な影響を与える状況となっておりまして、早急な対策が必要でございます。

 さて、本法案において、外来生物のうち、生態系等に係る被害を及ぼし、あるいは及ぼすおそれのある種を政令で特定外来生物に、また、生態系に係る被害を及ぼすおそれのあるものである疑いのあるものを主務省令で未判定外来生物に指定することとなっております。

 外来種は、一度侵入し定着してしまうと、その排除に多大な労力と予算が必要となることから、本法案の準備段階でWWFジャパンや日本自然保護協会などのNGOは、外来生物は原則として輸入禁止とし、生態系に係る被害のリスクがないと判断された種のみを輸入規制の例外とする、いわゆるホワイトリスト方式をとることが望ましいという主張をしてまいりました。本法案で、特定外来生物や未判定外来生物が確実に指定されれば、ホワイトリスト方式に近い運用となりますが、ここで幾つかの問題がございます。

 第一に、特定外来生物や未判定外来生物の指定を、産業的な観点からの判断を排除して、純粋に科学的な知見から行うことが可能かということです。

 ブラックバスやセイヨウオオマルハナバチなど、一部の湖沼で漁業権の対象魚となっていたり、温室トマトの授粉に利用されていたりする種を、あくまでも科学的な知見から判断して特定外来生物に指定できるかが問われます。種の保存法の場合、絶滅のおそれのあるとして環境省のレッドデータブックに掲載された生物種二千六百六十二種のうち、わずか六十二種が政令指定されているのみです。これは、米国の絶滅危惧種法で千八百以上の種が指定されているのに比べると著しく少なく、産業への影響を配慮して指定が進まないと考えざるを得ません。

 本法案における種指定が純粋に科学的な知見から行うことができるようにするためには、生態系等に係る被害の可能性を判断する常設の科学委員会が必要であると考えます。

 第二に、未判定外来生物のリスク評価の義務を申請者に負わすことができないかという点です。

 外来生物を輸入しようとする者は、それによって多大な経済的利益を上げることが可能であるわけで、当然、それに伴う社会的リスクに対して適切な費用負担をすべきです。遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ議定書国内法では、新規遺伝子組み換え生物の輸入者は、生態系に対する環境影響評価をみずから作成しなければなりません。また、環境影響評価法においても、環境影響評価書を作成する義務は事業者にあります。

 本法案で、特定外来生物の除去に伴う原因者負担を盛り込んだことは評価できます。しかし、導入以前の生態系への被害のリスク評価義務を申請者に求めていないことは問題です。

 第三に、未判定外来生物のリスク評価期間が六カ月と定められていますが、外来種が生態系に被害をもたらすまでは数年から数十年の潜伏期間があることが知られています。小笠原のグリーンアノールというトカゲの場合、島への導入から島の昆虫類への被害が報告されるまで二十年かかっています。そのため、被害が出てから原因者を捜し出して費用負担をさせるということは実際には難しいと考えられます。

 第二、第三の問題を解決するには、未判定外来生物の評価に係る費用は、その生物を輸入しようとする者の負担とし、これとあわせて、将来的に除去をする場合に必要となる可能性のある金額をデポジットとして先行的に徴収しておくという方法も考えられます。これによって、外来生物を輸入しようとする者に対して、その行為が非常に大きな社会的リスクを伴うものであり、あえてそのリスクを冒してまで輸入しようとすれば、大きな社会的費用負担が必要であるということを認識させる効果が生まれます。

 次に、本法案のもう一つの大きな問題点は、中央環境審議会野生生物部会移入種対策小委員会で提言された、生物多様性保全上重要な重要管理地域に関する条文が盛り込まれなかったことです。

 環境省は、我が国の国土の生物多様性保全のため、平成九年に生物多様性国土区分を発表しました。これは、南北三千キロに及ぶ日本列島を生物地理学的な視点から十地域に区分したものであり、琉球諸島、小笠原諸島は独立した国土区分となっています。

 琉球諸島は、百七十万年前、中国大陸と分離してから、島ごとに生物が独自の進化を遂げ、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、イリオモテヤマネコなど、それぞれの島に固有の生物をはぐくんできました。また、小笠原諸島は、大陸とも日本列島とも一度もつながったことのない太洋島として、島独自の進化を遂げた生物相が見られます。

 しかし、前述したように、いずれの島々も、ノヤギ、ノネコ、マングース、オオヒキガエルなどの外来種によって、固有の生物が危機に瀕しています。また、伊豆七島における外来種被害も深刻で、イタチの放獣により三宅島のオカダトカゲはほぼ絶滅、アカコッコやイイジマムシクイの繁殖率も低くなっています。

 本法案では、外来生物を海外から我が国に導入されることにより生態系等に係る被害を及ぼすおそれがある生物と定義していますが、移入種対策小委員会は、国内の自然分布域を越えて他の地域に導入された生物を国内外来種としており、琉球諸島や小笠原諸島から見れば、国内の他地域から導入される種も外来種です。

 生物多様性保全上重要な地域については、重要管理地域として、他地域からの国内外来種の導入を規制すべきです。また、自然公園法、自然環境保全法を改正し、自然公園や自然環境保全地域の特別地域においては、外来種の放逐、ペットの持ち込みを規制すべきであると考えます。

 次に、外来種対策の基本は、侵略的な外来種を日本国内に入れないことが第一です。しかし、既に導入された外来種が、在来の生態系や生物多様性に大きな影響を与えている場合、根絶あるいは抑制のためにその外来種を駆除することは避けて通れません。しかし、最近は、動物の福祉という視点から、外来種の駆除に対して反対の声が聞かれるようになりました。特に駆除の対象が、猿、猫など愛護の対象となる動物であれば、殺すことに対する嫌悪感が強いのは当然です。

 これに関して、千葉県立中央博物館において、外来種に関する講義の前後で、房総半島のアカゲザルを捕殺することの賛否を大学生に聞いたところ、講義の前では、賛成三七%、反対二九%、わからない三四%と、ほぼ三分の一ずつの割合でしたが、講義の後では、予防すべきだが可能な限り排除すべきが一四%、予防すべきだが問題が大きい場合排除も仕方がないが七一%、合わせて八五%が排除に理解を示しました。

 このように、外来種の防除事業に当たっては、問題の深刻さを理解してもらうための普及教育活動が必要不可欠であり、鳥獣保護法の特定鳥獣保護管理計画のように、会議の公開と市民参加、計画案のパブリックコメントなど、防除事業に対する合意形成のプロセスを確立すべきだと考えます。

 次に、環境影響評価法に基づく環境保全措置や、自然再生推進法に基づく自然再生計画策定に当たっては、これ以上外来種を蔓延させないような配慮が必要です。

 環境保全措置として道路緑化などに使われるシナダレスズメガヤなどのような外来牧草は、その種子が水系に流出して、河原の植物にとって大きな問題となっています。また、千葉県三番瀬再生計画策定に当たっては、小櫃川河口干潟から三番瀬への覆砂が計画されましたが、その砂の中に、アサリを食害するサキグロタマツメタという外来生物がまじっていることがわかり、覆砂は中止されました。

 今後、環境影響評価及び自然再生事業において、これ以上外来種を蔓延させないような配慮、あるいは国内種によって再生するというような、そういう方法が必要だと考えます。

 最後に、千葉県印旛沼の流入河川には、外来生物のカミツキガメが数多く生息し、水田耕作時の危険性なども問題となっています。二〇〇三年に外来亀対策委員会が調査を行ったところ、ふ化直後の三センチほどの幼生が発見されたことから、カミツキガメが野外で繁殖していることが確実となりました。

 ペットとして売られる個体は体長わずか数センチですが、成長すると、体長四十五センチ以上、体重三十キロ以上に育つため、飼い切れなくなって野外に遺棄してしまう事例がふえています。特に、二〇〇〇年に千葉県危険な動物の飼養及び保管に関する条例によってカミツキガメが指定され、こういった機会に野外に遺棄してしまう人がふえたと聞いています。犬、猫は動物愛護センターで預かってくれますが、カメは対象外のため野外に遺棄する人が出てくるのです。

 珍しい外来種はペットにはしない、また、一度飼い始めたペットは生涯飼い続けるという飼い主の責任を徹底するとともに、一時的には、野外遺棄を防ぐために、外来生物の相談所や緊急避難所の設置などの措置がぜひとも必要です。この外来種対策に関する法律が成立することによって、我が国の生物多様性が保全されることを期待しておりますが、それによって外来生物がたくさん遺棄されてしまうということがないような措置を期待しております。

 以上で参考人の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 次に、関参考人にお願いいたします。

関参考人 財団法人日本生態系協会の事務局長の関と申します。

 まず、本日、このような意見陳述の場をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

 まず、意見に入ります前に、日本生態系協会につきまして若干説明をさせていただきたいと思いますが、配付資料の中に私どもの会の活動の概要が書いてありますパンフレットを入れさせていただいております。また、会報の「エコシステム」、これは昨年の三月につくった会報になりますけれども、この三月号の特集がちょうど今回のテーマであります移入種の問題を取り上げたということで、今回御配付させていただきました。

 私どもの会の活動といたしましては、国内の各地域にありますNGOとの連携、または国の政府機関または地方自治体、また世界的には、職員をアメリカ、ドイツに駐在させております関係上、アメリカ、ヨーロッパの環境先進国と言われている方たちとの連携、国際的な研究機関との連携をとりまして、持続可能な国づくり、地域づくりを念頭に置いた、自然再生も含めた活動を積極的に行っている団体です。

 外来種問題に関しましては、会の設立当初から取り組んできた一つの柱でありますけれども、もう一つ配付をさせていただいております表紙がついた資料ですけれども、二ページめくっていただきますと、ちょっと古い資料になりますけれども、一九九二年、もう十年ちょっと前になりますけれども、平成四年九月に、当時、環境庁長官あてに「生物の移出入規制に関する法制化についての要望」というものを私どもの会で提出させていただいております。

 これにつきましては、内容につきましては、まさに世界的にはちょうど移入種問題が叫ばれ始めたころに、日本国内においてもこの移入種の問題を解決するための法制化を進めていただきたいという要望書になっております。具体的な内容につきましては、中の左側「記」のところに、一から五項目述べさせていただきました。

 当時、この要望書を提出させていただきまして、その後、資料もつけさせていただいておりますけれども、幸いなことに、各報道機関にいろいろな形で取り上げていただきました。しかしながら、直接的な言い方をすれば、各方面から意見というよりもクレームに近い反論等も多数寄せられたというのが事実であります。今、時代が流れて、環境という波も大分大きく動いている中で、今回このような法案が上げられてきたというのは大変感慨深いところでもあります。また、内容につきましても、当時、我々、五項目要望させていただきましたけれども、今回の政府法案を見させていただきますと、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、ほぼ内容が含まれているというものを見ましても、個人的にも大変感慨深い気持ちになっております。

 今回の政府提出法案についてですけれども、まだ基本方針であるとか主務省令等の内容が見えてこない中で幾つか懸念される事項はありますが、基本的には、本法案が早期に成立し、これに続き基本計画または主務省令等が策定され、こうしたことを通じて外来種対策が着実に進んでいくということを願う立場から、意見を述べさせていただきたいと思います。

 意見の内容につきましては、お手元の資料の中に、一ページ目からですけれども、六項目、私の方では挙げさせていただきます。資料に従ってちょっと御説明させていただきます。

 まず一項目めは、特定外来生物の指定についてです。特定外来生物については政令でするものとし、指定に当たっては、生物の性質に関し専門の学識経験を有する者の意見を聞いて指定するというようになっております。またその際、パブリックコメントを行い、広く国民の意見を反映するというようなことも検討されているというふうに聞いております。

 私ども、従来から、特定外来生物の指定については、外来種の利用によってもたらされる経済的な利益が優先されるようなことがあってはならないと常々考えており、今回、この部分がどうなるかと懸念しておりましたところ、参議院の方で小池大臣より、外来生物によってもたらされるさまざまな便益との調整、そして社会的な影響などについても慎重に検討していくことも必要であるが、生物多様性の確保が原則であると、強い答弁がありました。

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、先ほどから出ておりますけれども、種の保存に関する法律の国内希少野生動植物種の指定とか、または鳥獣保護法の狩猟鳥獣の指定など、この手の、政令で指定するとか、または鳥獣保護法の狩猟鳥獣などが農水省と協議して指定するというようなことにつきましては、主観になりますけれども、これまでややもすると、経済的や社会的な影響が重視される、そういった傾向が多分に強いということを私どもは感じておりました。

 特定外来生物の指定については、答弁で小池大臣が言われました、生物多様性の確保を原則とするという文言を今後策定される基本方針に明記していただき、ぜひこの原則のもと、特定外来生物の指定がしっかり行われていくということを強く思います。

 次に、二番目の項目ですけれども、未判定外来生物の指定についてです。

 二十一条において、生態系に係る被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物を、主務省令で未判定外来生物に指定し、輸入に当たって個別にチェックしていくことになっています。これについても、特定外来生物の指定同様、日本の大切な自然を守り取り戻していくために、今後策定される基本方針に、生物多様性の確保が原則であることを明記し、疑いのあるものについては積極的に未判定外来生物に指定していくことが重要だと思います。

 特定外来生物や未判定外来生物の指定につきましては、一方で自由貿易を基本原則としているWTOなどとの関係があり、科学的根拠が十分でないものを指定することについてはいろいろ議論があるところかと思いますが、生物多様性条約第六回の締約国会議の外来種に関する決議の中で、予防原則ということがうたわれています。具体的には、外来種に関して科学的な裏づけが十分ではないとか知識が不足している状態であっても、生物多様性が失われる脅威があるときには外来種の輸入を制限するという判断を行うべきである、こういうものです。

 WTOのことを気にし過ぎて特定外来生物や未判定外来生物の指定をちゅうちょするというのではなくて、日本の生物多様性を守るということを第一に考えて法律を運用していただきたいということも思います。

 三点目になりますけれども、未判定外来生物の生態的特性に関する情報の収集に関することです。

 これも二十一条ですが、未判定外来生物を輸入しようとする場合、輸入しようとする者が主務省令で定められた事項に関する情報を主務大臣に届け出て、その届け出のあった情報に基づき、主務大臣が生態系等に被害を及ぼすおそれがあるか否かを判断し、輸入の可否を決めるとなっています。

 これにつきましても、生物多様性条約第六回締約国会議の決議に、輸入しようとする未判定外来生物が生物多様性への脅威にならないことを立証する責任は、第一義的には輸入しようとする者にある、こう定められております。生態系等への影響がないという立証は、基本的に、利益を得ようとする輸入業者の負担により行われるということをはっきりさせておく必要があると思います。

 先ほど、我が国の生物多様性を確保するという観点から、ある程度疑わしい外来生物については積極的に未判定生物に指定することが重要であるというように述べさせていただきましたが、そうなりますと、輸入に関する届け出もそれに応じて多く出ることが予想されます。立証責任については基本的に輸入しようとする者にあるということをはっきりさせておかなければ、国が情報の収集などに労力をかけるということになり、国の出費が多くなります。

 この問題について、参議院の方で、小野寺自然環境局長の方から、届け出の手続の中で、輸入しようとする者に対して、できるだけ生態系影響その他の基礎情報の提供を求めることを、義務づけることを考えているとの答弁がありました。

 第二十一条に基づく主務省令の作成に際しては、生態系等への影響評価に必要な情報の収集は、基本的に輸入しようとする者の手によって漏れがないように行われ、また主務大臣は、輸入しようとする者に対して、必要な場合、追加で資料を請求できるということ盛り込んでおく必要があるのではないかと思います。

 四番目になりますけれども、防除についてです。

 野生生物についてはまだわからないことが多くて、防除に当たっても試行錯誤という部分が多々あります。順応的管理、アダプティブマネジメントの考え方に基づいて防除を行っていくということが重要です。どういう結果を期待して、どのような防除を行い、その結果がどうであったのかということを評価し、期待した成果が得られなかった場合、どういう点に問題があったのかを検討し、その知見を今後の防除に生かしていくということが重要だと思います。

 第十一条第二項に、主務大臣等の防除計画に定める事項が列記されておりますけれども、第四号に、「前三号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項」とありますが、これもこの法案が成立してからの話になるかと思いますけれども、順応的管理という考え方から、第十一条に基づく主務省令の作成に際して、実施した防除の効果に関する評価及びそれに基づく今後の方針という事項を盛り込む必要があると思います。

 防除効果に関する情報は、国内の他地域で行われる防除活動の参考になるということだけではなくて、国際的にも問題になっています移入種の問題は、国際的にも、外来種問題に取り組んでおられる方々にとっても大変参考になるものだと思いますので、この順応的管理の進め方ということをぜひ行っていただきたいと思っております。

 五項目めになりますけれども、二十八条に「国民の理解の増進」という部分があります。「国は、教育活動、広報活動等を通じて、特定外来生物の防除等に関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。」というふうになっております。

 私どもの協会では、環境教育事業の一環ですけれども、この十年間、全国の小中学校、または保育園、幼稚園、大学も含めてになりますけれども、そういった学校機関に向けて、学校ビオトープを働きかけております。その一環として、これも資料をお配りさせていただきましたけれども、学校ビオトープコンクールということも事業の一環で行ってきました。

 この学校ビオトープの基本は、外国の草花とか園芸用の草花の花壇づくりとは基本的に違い、子供たちが生活している地域の自然を校庭に再現し、それをまた観察することを通じて、地域の自然を大切にする気持ちを育て、最終的には地域の自然を守る活動に自発的に参加していく子供たちを育てるというような活動の趣旨があります。

 外来種問題を解決する上で、環境教育や広報活動は非常に重要であると我々も考えますけれども、私どもの日本生態系協会では、学校ビオトープに関する取り組みなどを通じて、外来種問題についての普及啓発活動に引き続き力を入れていくことにしておりますけれども、政府におかれましては、本法案はまた一つのきっかけに、外来種問題に関する学校教育の充実はもちろんですが、テレビでありますとか新聞、雑誌等を通じた広報活動を、効果的に、戦略的に行っていかれることをお願い申し述べたいと思っております。

 最後の六番目になりますけれども、今回の法案は、特定外来生物の輸入禁止、特定外来生物の防除などについて法制化を図るということになりますけれども、もちろんこれが、冒頭も述べましたが、外来種対策のすべてというわけではありません。

 既にいろいろなところで述べられているものですけれども、治山であるとか砂防であるとか、または道路関係の緑化のあり方、または内水面漁業で、外国の魚類や国内のものであっても他地域の遺伝子の系統の違う種苗を、自然界の、川であるとか湖であるとかそういったところに大量に放流をしていく、こういった問題が顕在化してきております。まだまだ課題が多数残されているというのが現状です。

 近年、国土交通省または農林水産省においても、外来種問題に対する取り組みは徐々に始められてきたということは言えますけれども、例えば、緑化に関しましても、地域在来の植物の利用を基本とするというようなところにまではまだ至っていないというのが現状だと思います。こうした問題につきましても、今後順次取り組んでいくことが大変重要ではないかと思います。

 環境省につきましても、重要管理地域の議論はありましたが、これについて、環境省では、既存の自然保護地域制度を充実する中で対応していくということを聞いております。しかしながら、必ずしも今の制度で十分な外来種対策がとれるわけではありません。環境省におきましても、保護地域の種類ごとに順次十分な外来種対策が行えるような、そういった制度改革が必要であると思います。

 本委員会において、法案の審議とともに、こうした残された外来種問題につきましても、今後の道筋をつけていただけますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。

 以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大前繁雄君。

大前委員 自由民主党の大前繁雄でございます。

 きょうは、三人の参考人の先生方、台風の襲来とかあるいはまたいろいろな御多用中の中、御足労いただきまして貴重なお話をお伺いさせていただきまして、ありがとうございました。限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、岩槻先生に、基本的な問題を一点お伺いしたいと思います。

 このたび提起されておりますこの法案は、既に参議院で先議され、採択されているものでございますけれども、参議院では、野党から対案が出され、並行して審議されたと聞いております。そして、その審議過程の中で最も先鋭に意見の対立した点は、外来生物の規制について、政府案では、先ほど吉田先生も少し触れられましたけれども、政府案では、ブラックリスト方式、つまり、だめなものを特定して規制するという考え方を採用しているわけでございますけれども、野党案では、ホワイトリスト方式、大丈夫なもののみ入れてそれ以外のものは規制するという考え方でございますけれども、こういうことを採用していた点であったとお聞きをいたしております。

 そこで、お尋ねしたい点は、ブラックリスト方式をとるにしてもホワイトリスト方式をとるにしても、在来生物と外来生物の分類がしっかりなされているということが本来望ましいわけでございますけれども、この点、分類学上の現状はどのようになっておるのか、お尋ねをしたいと思います。

岩槻参考人 冒頭の説明でもちょっと申し上げましたように、生物多様性に関する科学的な知見というのは、随分進んではいますけれども、全体の情報量からいいますと非常に限られております。

 私は、実は維管束植物を扱っている専門家なんですけれども、植物に関しては、どこにどういうものがあるかということに関する知見は相当進んでいるんですけれども、まだ、例えば昆虫類でありますとか線虫類でありますとかというようなものに関しましては、むしろわかっている方が限られている、地球規模で申しますとそういう言い方になるかと思います。

 それで、予防原則からいいますと、確かに安全なものだけ入れて安全でないものは全部チェックをした方がいいということになるかと思いますけれども、個人的にはその方がいいかなという考えが全然ないわけではないんですけれども、そうしますと、むしろ有益なものを知らず知らずに除外してしまうということもあるわけで、生物多様性と人とがなじんで生きるということは、生物多様性を有効に活用する、活用しながらそれと共存するということが必要な側面があります。

 ですから、生物多様性条約の基本も、サステーナブルユース、持続的な利用という言い方になっているわけですけれども、利用という面が事前に不必要にチェックされるということも一方では問題になるわけなんで、それをどう共生させていくかという言い方からしますと、今の科学的な知見からいいますと、残念ながら、ブラックリスト方式による方がという言い方に妥協せざるを得ないといいますか、そういうことだというふうに理解しております。

大前委員 生物分類につきましては十分な整理がなされていないというようなことでございますけれども、この分類を進めていく上で、専門家の体制整備というのが不可欠であると思われるわけでございます。

 この点について、この体制の現状はどのようになっておりますか。また、現在の体制のままだと、例えば、在来生物のリスト化にどれくらいの年数がかかりそうなのか、お聞きしたいと思います。

岩槻参考人 お答えするのが難しい御質問なんですけれども、私、以前は東京大学植物園に在職しておりました。東京大学植物園におりますと、東京大学の植物園は、植物園としては日本を代表する研究機関であるとしばしば言っていただいて、そういう対応の仕方をしたんですけれども、グローバルに見ますと、幾つか優秀な植物園がありますけれども、イギリスを代表する植物園は、イギリスのロンドン市西郊にありますキュー植物園です。

 そのときに比べさせていただいたんですけれども、キューの植物園には、その当時、学位級の、イギリスは伝統的に学位を取らないことを威張っている人もありましたから学位級のという言い方をするんですけれども、学位級の研究者が百五十人、それに対する補助職員を含めて、研究者が、植物園のスタッフが五百人ぐらいだったんですね。それに対して、東大植物園では、教官と呼ばれる者が、私、在職中に多少無理をしてふやしていただいて六人なんです。小石川植物園本園と日光の分園と合わせてざっと二十人の職員で、今はもっとそれより減っていますけれども、やっていたわけです。

 決して研究レベルで負けておったとは思わないんですけれども、生物多様性という非常に多様なものを対象とする、植物全体を対象とするというような、そういう機関でも、ざっと対比はそのようなものであったということを申し上げて、何年でどうというその試算を今申し上げるのは非常に難しいので、ちょっと発言を控えさせていただきますけれども、そういう具体的な対比をさせていただきたいと思います。

大前委員 いろいろ難しい問題があるようでございますけれども、早急に分類の作業を進めていただきたい、そのように要望しておきます。

 次に、吉田先生に一点お伺いしたいと思います。

 先ほど少し触れられましたけれども、いろいろな動物愛護団体、自然保護団体の方に意見を聞きますと、やはり防除に関しまして、持ち込まれた外来生物そのものに罪があるわけではなく、持ち込んだ人間が悪いのであるから、たとえ侵略的外来生物であっても捕獲して殺してしまうのはよくないという意見がよく聞かれるわけでございます。私が住んでおります西宮市にございます、有名な熊森協会さんというNPOがあるんですが、そこらあたりに聞きますと、一切殺してはならないというようなことも主張しておられるようでございます。

 先ほど先生、合意形成のプロセスが大切だと言われましたけれども、しかし、実際に具体的に方法を工夫する必要があると思うんですね。どのような防除の方法が望ましいとお考えか、もしお考えがあればお聞きしたいと思います。

吉田参考人 先生からお尋ねいただきました合意形成の問題ですけれども、非常に大事な問題でございまして、この世の中にはいろいろな多様な価値観を持った方々がいらっしゃるわけで、その中で我が国の生物多様性を守っていく、それにはどうしても、余りにも影響の大きいものについては排除し、場合によっては、飼い切れないという場合には捕殺するということも必要になってくるわけでございます。

 ただ、それにはやはり、人間が持ち込んだわけですので、人間の責任というものはございます。それを、あたかも外来種に責任があったような、そういう形で伝わりますと、非常に抵抗感も大きいかと思います。

 そういったものをじっくり理解していただけるような、先ほど私が例で御説明した千葉県立中央博物館なんかの場合は、講義を通じたり、あるいは展示を見ていただいたり、問題の深刻さを理解していただいて、そういうふうなプロセスを通じると、八割方、九割方の方は理解していただける。まあ一〇〇%というのはなかなか難しいかもしれませんけれども、ある程度かなりの予算を使って排除あるいは捕殺ということをやっていくには、それなりの、八割方、九割方の社会的合意というものが必要であろうと思います。

 そういったプロセスを経ていくということを、やはりこの法律の中では重要なのではないかなということで、ちょっと例を申し上げさせていただきました。

大前委員 次に、日本生態系協会の関事務局長にお尋ねしたいと思いますが、先ほど、最後に、公共事業の緑化で外来植物を使用することは見直すべきという重要な、貴重な提言をされたわけでございますけれども、外来植物を用いないで緑化をする、そういった在来種だけで緑化をするというやり方について、具体的にどのようなやり方があるのか、お尋ねしたいと思います。

関参考人 さまざまな学会等でも、今盛んにそういった工法について具体的な議論はされておるわけですけれども、例えば、二年ほど前になりますけれども、日本生態学会では、たしか、外来種に関するハンドブック、こういったものを出されておりまして、そこの中では、今まで、特に道路緑化に関することで移入種を使ってきた、市場に出回っている種をまいて緑化をする、こういった事例に関しまして警笛を鳴らすと。これから改めていくというのは、地域固有の種類を植えていく。その具体的な植え方につきましては、今度は例えば、日本緑化工学会、また別の学会になりますけれども、そちらの方でもガイドライン等が今出てきておると。

 私どもの会でも、移入種の問題を提言させていただいておる都合上、各自治体、または実際にその道路を施工していく方たちからの質問がありますけれども、具体的な事例としましては、地域の種をとって、地域の方たちの生産活動の中でひとつ種苗を育てていただく、それをまた、道路をつくったわきのところに植栽していく。残念なことに、市場にそれぞれの地域の種苗が出ているかというと、まだそういった状況にはなっておりませんけれども、さまざまなタイプの、その地域の特性を生かした植栽というのが今技術的には出てきているというふうに聞いております。

大前委員 関事務局長に、もう一点お聞きをする時間がありますのでお聞きしますが、日本生態系協会がビオトープの普及啓発に力を入れておられる。このことについて、一部の学校では、逆に外来生物をたくさん導入してビオトープを整備しているというような話も伝えられているのでございますけれども、そういった誤ったビオトープ整備を防ぐにはどのような工夫が必要か、もしお考えがございましたら、お尋ねしたいと思います。

関参考人 ビオトープという言葉自体も私どもは会の設立当初から使わせていただきまして、これはドイツの言葉になっておりますけれども、ビオトープ事業を通じて自然と共生した持続可能な町づくりということを進めてきていました。

 中で、ただこれは、事業にかかわってくるものになりますと、簡単に、ビオトープを間違ったとらえ方をして事業化していく、今先生の方から学校ビオトープの事例がありましたが、学校ビオトープに限らず、ビオトープ事業というのは、当初から外来の生き物を使ったビオトープ事業というものが盛んに行われてきました。

 そこで、私たちの会としては、本をつくったり、国際的なシンポジウムを行って、ドイツから先生方をお呼びして日本で勉強会を開いたり、そういったことを頻繁に行ってきましたけれども、なかなか事業として成功しません。

 そういった中で、ビオトープ事業に関しましては、民間の資格制度でありますけれども、ビオトープ管理士制度、この資格制度の中でビオトープに対する考え方を啓蒙していく。学校ビオトープにつきましては、きょうお配りしてありますけれども、学校ビオトープコンクール、これは二年に一回のコンクールになりますけれども、審査については一年以上かけて行っております。書類審査をして、現地調査をして、そして最終的に東京で発表会を開く。この発表会のときにはドイツから学校ビオトープの専門家をお呼びして、またそこで評価していただく。文部大臣賞、環境大臣賞も与えていただけるような賞になっておりますけれども、そういった幅広い提言の中で、一つ一つ誤解を解いていくというようなことを活動としては行っております。

 以上です。

大前委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。

小沢委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 本日は、三人の参考人の先生方、本当に貴重な御意見、ありがとうございます。民主党を代表して、心から御礼を申し上げたいと思います。

 先生方の御意見を聞かせていただきまして、正直申し上げて、いかにこの法案に課題が多いのかということをつくづく感じさせていただいたところであります。いよいよ週を明けまして審議に入るわけでありますが、本当に参考になるお話を聞かせていただきました。もう少し詰めて御意見を承りまして、今後の審議の参考にさせていただきたいと思いますので、お答えをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 実は先日、岩槻先生の、「環境情報科学」に寄稿された論文を拝見させていただきました。たしか三十三の一号の中だったかと思うんですが、少し引用させてください。その文献の中で岩槻先生は、「導入された外来種が自然に放出された場合、既存の生物相にどういう影響を及ぼすか、確実な推定をする根拠はほとんどの場合ないということである。確実に大丈夫といえるもの以外は、危険という予測をせざるをえない」というふうにおっしゃってあり、引き続き、「いま導入されている種が、何年も経ってまだ定着していないからといって、見過ごしておいて平気というものではないことを警告する。今後どういう変動が生じるか、正確な推計ができない」というふうに述べていらっしゃいます。

 正直私も、先生がおっしゃるとおり、この内容についてはごもっともだというふうに思っております。ところが、この法案で、未判定の外来生物を六カ月以内に特定外来生物と判定できるかどうかという疑問が、参議院の中でも議論が随分出されました。そういった中で、先生の論文とこの六カ月というものが大きく違いがあるようなふうにも思うんですけれども、先生のお考えと、今法案で六カ月という限定的な期間、これが本当に適切なのかどうかということを、あわせてお答えいただけないでしょうか。

岩槻参考人 今御紹介いただきました一節だけではなくて、本当は全体の流れの中でそれがどう意味するのかということも必要だと思うんですけれども、先ほどの質問にもお答えいたしましたように、この問題だけを取り上げて、最も理想的にすればどういうやり方があるかということはもちろんあるんですけれども、今の日本の生態系を守るために外来種を排除するということだけが問題ではないわけですよね。その生態系をどう維持して、どう維持しながら生物多様性の持続的利用というのを図るかということなんですね。

 実は、先ほどからの御質問でもちょっと気になっていることがあるんですけれども、よろしいでしょうか、別の参考人の方の御意見に、反論するんじゃないんですけれども、コメントしたいことがあるんです。

 外来種を持ち込んでビオトープだとか緑化だとかをしてはいけないという御意見なんですけれども、これは本当にそうかということになりますと、もちろん基本的には、私自身は、日本の生態系は日本の生態系で守るべきだと思うんだけれども、最初の話の中でもちょっと申し上げましたように、クローバーが新石器時代以前の日本にだったらなじまないけれども、田園をつくったという、一種の自然破壊ですよね、そういうことをやってきた日本列島にはなじむんだという事実はまず見ていただきたいということがあるわけですよね。

 ですから、今の日本列島にどうなじむかということは、日本の生態系というのは、既に自然をいろいろ変貌させてきて今の生態系があるんだという、そういう前提でそれを考えないといけないということがあるわけですけれども、そういうかかわりからいいますと、知見ということだけで申し上げますと今引用していただいた部分のとおりなんですけれども、それと今の日本の生態系に対して何を持ち込んでいいか悪いかということの判断は別だと思うんですね。

 先ほど、私、いつごろになったらその分類のことが全部わかるのかというのに返事をいたしませんでしたけれども、それは、改めて申し上げますと、実は、本当にそういうことがわかるというのは、生物多様性についてわかるということは、科学がすべてを知り尽くしたときでないと言えないわけですよね。だけれども、科学がすべてを知り尽くすまで私たちが何も生物多様性に対する対応をしないということだと、これはやっていけないわけですよね。

 ですから、今の知見の中でどこまで最低限のことが確保できるかという対応の仕方をしますと、先ほど私、ブラックリストに妥協するという言い方をしましたけれども、それぞれの対応というのは、その時点その時点ではそういうやり方で対応していかざるを得ないんだというふうに、これは、科学的に何がわかっているかということと、今我々が行えることは何かということとは必ずしもイコールではないんだという前提で申し上げたいと思います。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 非常に、言葉は乱暴かもしれませんが、消極的な印象を実は持たせていただきました。

 私たち、現に、この日本の全国各地でいろいろな外来生物の被害と闘っている方々とお出会いしてまいりました。その中で、なぜこのようなことになったのか、当初は、いいだろう、かわいいだろう、プラスになるだろう、そんな判断から入れられたものが、実を申し上げると、今法案で上がっている六カ月という期限をはるかに超えて、随分長い時間をかけてその被害が明るみに出てきた、そんなことを随分批判的に非難をされる方々が多くいらっしゃいます。

 今し方も、ほかの参考人の方々から、随分いろいろな生物の被害というものを御報告いただきましたが、正直申し上げて、この六カ月が果たして本当にいいのかどうか。一方では、吉田先生は六カ月は短過ぎるというふうにおっしゃっていて、このあたりは、皆さん、それぞれ知見の違いが出てきているのかなというふうにも思うわけですが。

 では、ここで、例えば六カ月という期限にこだわらず、長期間的に考えて、いろいろと被害が出てきた生物に対して、また、既に先ほど事例を出していただいたクローバーのように何となく定着してしまったもの、もしくはツキミソウのことも、この前、参議院の中で引用されましたけれども、非常に日本の風景にツキミソウが似合うと言われながら、実は違うんだよということも御指摘いただきましたが、このままほうっておけば、何か定着していくのかな、そのまま在来種的に扱われていくのかなというような誤解をちょっといただいたんですけれども、果たして本当にそれでいいのかな、もっと時間をかけて見れば大分変わるのかなというふうに思うんですけれども、岩槻先生、いかがでしょうか。

岩槻参考人 私自身は、消極的ではなくて、いろいろな問題に対して結構先鋭なことも申し上げているつもりなんですけれども、先ほど申し上げたことと同じことを繰り返すことになると思うんですけれども、日本列島の環境が原始時代と同じ状態だったらそれをどう維持するかということと、現に人が生活をしてきてどんどん変貌しつつある、変貌しつつあるところにどう対応するかということとは、やはり別に考えないといけないということですよね。

 ツキミソウが富士山に似合うのがいいのか悪いのかというのは、これは環境問題としてどう議論するか、芸術家としてどう見るか、これは別の問題だと思うんですけれども、クローバーだって、本当に田園風景になじませた方がいいのかどうかということ、科学的にいいのかどうかという議論をし始めますと、これはもういろいろ議論があると思うんですけれども、しかし、田園風景というのができている以上、そこになじむようなものだということですよね。逆に言いますと、そうしたら、日本の田園風景の中に日本の野生生物を持ってきてそこになじむかというと、逆になじまなくなっているということだってあるわけですよね。そのことは十分御理解いただきたいことだと思います。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 では、時間もありませんので、次に吉田先生の方にお伺いをしたいと思います。

 要旨の中にも、リスク評価の費用、デポジットを申請者が負担すべきだという御指摘をいただいております。現法案の中で、参議院の議論の答弁を引用させていただくと、幅広く費用にかかわってくる話だとして、情報提供という部分での費用提供のことを答弁でおっしゃっているわけなんですけれども、この先、デポジット制で申請者負担を進めていくとした場合、どれくらいの費用が発生するものというふうに考えられるのか。

 例えばニュージーランドの事例等々も考えると、申請時にあらかじめ申請費用として提供されているわけなんですけれども、そのあたりのことも踏まえて、もし費用負担をしていただくとした場合、金額と申しますか、これぐらいのことが考えられるだろうというような数字、もしお示しいただけたら、御参考までにお願いできませんでしょうか。

吉田参考人 申請料とそれからデポジット、ちょっと違う意味なんですけれども、ニュージーランドの例などを私伺いますと、そういう申請をして審査してもらうのに三十万円ぐらいだそうです。そうすると、そのぐらい払うんだったら、余り見合わないからやめるという人が、ある程度敷居を高くしている、そういう意味があるんだそうですけれども、我が国の場合は、外来種の珍しいものを輸入しよう、あるいはそれによってお金にかえようという人たちはたくさんいますので、三十万円ぐらいじゃ余り敷居が高くなったことにならないんじゃないかと思います。とにかく、当然、判定するにはそれなりにお金がかかるわけですから、そのぐらいは私は払ったっていいと思うんです。

 デポジットは、ちょっとまた別な意味なんですね。六カ月では判定は難しい、どう考えても、これを一年に延ばしたからといって、それで、その間に被害が出てくるかというと、もっと、五年もたってから出てくるかもしれないわけです。ですから、何年延ばしても、もっと先に出てくる可能性はあるわけです。

 ですから、私としては、六カ月で判断し切れないものは延ばす制度をつけてほしいというのがまず第一ですけれども、それでない場合は、デポジットは、今の段階で判断できないけれども、もしかしたら非常に甚大な被害が可能性としては残るという場合には、デポジット、これはいわば保釈金のようなものですね。一応、今は判断できないから、六カ月ではこういう判断をしたけれども、そのかわり、これがもし広がってしまった場合で被害が出たときは、例えばそれを排除するのにどのぐらいのお金がかかるのかということを考えた場合には、物によっては何億というお金がかかる場合もあるわけです。

 ですから、そういった個人的にちょっとしたものを入れる場合と、それから、産業として非常にたくさん入れる場合とでは、その金額が全然違ってくると思いますが、本当に産業的にたくさん入れる場合には、それこそ億単位のデポジットが必要になってくる場合もあるんではないかと思います。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 私も、実はそれについては非常に賛成の意見を持っております。ただ、今法案の中でこれがどのように担保されていくのかなという不安も実は一方で持っておりますので、後ほどの審議の中でしっかり詰めてまいりたいというふうにも思っております。

 引き続き、関先生にお願いをしたいんですけれども、先ほどもビオトープの話が出てまいりました。ビオトープについては、それこそ、どちらかといえばブーム的な要素を実は感じておるんですけれども、その一方で、緑化の問題の中で、最近では、高層ビル群の屋上緑化、このあたりが随分問題視されてきていたかというふうに思います。当然、ヒートアイランド現象等に対する効果をねらっての、東京都の方も随分推進をされてきたりしていたわけなんですが、この中にも随分外来種が使われてきているということを聞いております。

 ビオトープと直接関係ないのかもしれませんけれども、この屋上緑化について、どのような御見解をお持ちなのか、この辺についても、効果とまた被害というもの、二次的な被害とかあるかと思うんですけれども、その辺、もし何か御見解がありましたら、お聞かせいただけませんでしょうか。

関参考人 ビオトープと屋上緑化の話は直接的にイコールということではないと思いますけれども、それで、ドイツのビオトープ事業といいますか、地域計画を立てる、これは簡単に短い時間で説明する力が私にありませんけれども、各地域地域で持続可能な自然と調和した町づくりを考える場合に、どのくらいの緑被率があって、どのくらいの生物多様性の観点で生態的質を維持させるか、そういった中で、人口の配分であるとか道路とかそういったものの配分が決まってくるんだ、そういう計画論は、我々、ドイツに行ったときに聞かせていただいております。

 そういった中で、屋上緑化の考え方といいますか担うべき役割は、まさにヒートアイランドに対応するという一面的な物差しだけということではなくて、やはり地域の自然環境を維持する、または向上させる、そういった意味では、ミティゲーション的な意味合いも持って屋上緑化に多面的機能を持たせていきたいということも、ドイツで研修させていただいたときには聞いております。

 ただし、先ほど岩槻先生の方からもありましたけれども、原生的なハビタットが今のまま同じ日本の国土で保たれているんであれば、それに乗っかる生き物というのも、同じものをゴールとして目指すということは考えられるけれども、そもそもの土台が変わってきているのに、同じようなものを器に乗せることができるのか。これもまた同じで、では、地上にあるものを屋上の上に持ってきて、全く同じタイプのハビタットまたはビオトープタイプというものが存続し得るのかということについての議論というのは多々あると思います。しかしながら、そういった努力を一面的に何もしないで、ヒートアイランドだけを屋上緑化に持たせる、これもまたナンセンスな話だと思います。

 そういう中で、ドイツでは、具体的には、屋上緑化の中には、そもそも、そこの地域に合った自然生態系を、技術的にも何とか工夫して屋上でも確保させる、また、それプラスアルファ、屋上緑化の中でヒートアイランド現象も抑えていくような効果も高めていきたい、まさにそういう意味では、もっともっと環境教育的な多面的な機能というものであれば、多くの機能を一つのものに担わせている、そういったことを聞いております。日本でもぜひそんなことを考えていただきたいと思っております。

田島(一)委員 時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小沢委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 本日は、大変お忙しい中、三人の方に御出席いただきまして、また貴重な御意見をちょうだいいたしまして、大変にありがとうございました。

 こうした生態系を守るという取り組みにつきましては、とかくまだまだ経済優先、こういう風潮の中で、地域固有の生態系を守るという、これは大変に大事なことでございますし、またこれから恐らく一石を投ずる、またこうした流れを大きく推進する大事なきっかけになると思っております。

 そこで、こうした被害を防いでいきますには、当然、輸入の取り締まりであるとか、また駆除であるとか、これも大事だと思いますが、私は、やはり何よりもこうした国民の普及啓発、意識の向上、これが必要と思われると思っております。特に、先ほどペットのお話がございました。こうしたペットを扱う業者、またそれを購入する国民、こういうことにつきましても、これはペットとは違いますけれども、吉田参考人には、先ほどアカゲザルのお話がございました。これはまさにこうした趣旨を国民に周知徹底をする大事な一つの例であると思っております。何となく手を挙げれば三分の一ずつ、しかし、きちんと説明を聞いた後では、駆除もやむを得ない、こうした結論が七五%近くあったという、こういうことにつきまして、私は大変重視をしたいと思っております。

 こうした国民への普及啓発につきまして、三人の参考人の方に順次お伺いをしたいと思います。

岩槻参考人 国民の御理解をいただくというのが、これが一番重要なことであるというのは、まさにおっしゃっているとおりで、私は実は、ここの環境委員会の先生方が皆さん、環境の問題で非常に成果を上げられると次の選挙は大丈夫だというような時代になれば、世の中随分変わるんじゃないかというふうに思っているんです。

 そのためにも、冒頭の説明でも申し上げましたように、十年ほど前に種の保存法をつくりましたときには、我々研究者が大分いらいらしないといけないような内容であったけれども、それをまずつくっていただくということで、その後のさまざまな経過を経て、絶滅危惧種の問題が世の中で理解されるようになってきているという経過はあると思うんです。

 今度の場合も、先ほど私の発言が消極的だという御批判をいただきましたけれども、多少そういうところがある。何度も申し上げておりますように、この案ができたらそれですべてができるなどということは決して思っていないんですけれども、ただ、国として外来生物に対しての対応が必要だということをこの法律で国民に訴えていただくということがまず重要なので、それを今後どう展開していくかということが、まさにこの問題に対する解決だというふうに思うんです。

 普及啓発、私自身、最近はセカンドジョブとして兵庫県立人と自然の博物館の仕事も引き受けさせていただいていますけれども、東大植物園におりましたときも、日本植物園協会の役員なんかもやらせていただきましたけれども、そういうことを通じて、社会教育といいますか、そういうことが非常に重要だということを常々認識しておりますし、科学というものをもっと国民に理解していただくことによって生物多様性の問題というのは一番前進させるべきだというのが、基本的な考えなんです。

 それなら、今十分できていないので、もっともっと普及活動をやって、皆さんに理解していただいてからこういう対策を立てるということだけでは物事は解決しないので、環境省にもしばしば、こういう問題の普及啓発ということをもっと重点的に取り組んでいただきたいことは申し上げておりますし、私自身もそういう活動に多少コミットしているつもりですけれども、そういうことを通じて普及活動をやると同時に、こういう、例えば法律というような形でつくっていただくことによって、普及活動をさらに促進する力になればというのを非常に強く期待しているところです。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 外来種を排除する場合の合意形成についての教育については御質問の中で触れていただきましたので、私は全般的に、輸入する、あるいは持ち込むということについての教育について、ちょっと触れさせていただきたいと思います。

 ニュージーランドでどうしてそういう法律ができてうまくいっているのかということを、私もニュージーランドも行ったことがありますけれども、伺いますと、やはり日本のようにやたらめったら外国のものを持ってきてありがたがる、そういう国ではなくて、非常に自分の国の生物多様性、国土というものに誇りを持っていらっしゃる。そして、もちろん、西洋人が来て、そしてマウリの人たちと一緒につくった国ですから、最初のころは西洋と同じような自然にしようと思って随分いろいろなものを持ち込むには持ち込んだんですね。その上で、その反省に基づいて、これ以上持ち込むのはやめよう、そういうことになったというふうに聞いております。

 日本の場合にはまだ、上等舶来という言葉がありますけれども、舶来のものはすぐれたものだという考え方がありまして、どうしても外国のものは珍重する、そしてそれが高く売れるということがございます。先ほどツキミソウの話とかクローバーの話なんかもありましたけれども、やはり、ああいう百年ぐらいかけて日本になじんできたものと、それから、これからこの法律をつくらなければ入ってきてしまうものは物すごく違いがあるということ、それは国民の方に理解していただかなきゃいけないと思います。

 今は物流の速さなんかも全然違いますし、入ってきたらとんでもないことになるというものがいっぱいあるわけですね。そういったものが生態系に与える甚大な影響というものを理解した上で、そういったものをやたらめったら持ち込むのは非常に日本の生態系にとっては犯罪的なことなんだ、そういったことをみんなが理解していくということが、この法律をうまく運用していくかぎになるのではないかと思います。

 ありがとうございます。

関参考人 私どもも、自然保護を進める団体として日々活動をしているわけですけれども、なぜこれだけ大きな問題が一般国民の方たちの理解を得られないのかということは、この外来種問題に限らず、いろいろなことで感じております。

 そういったところで、では、シンポジウムや書籍をつくる、または、先ほども申しましたような何か免許を出すというようなことも、取り組みとしては行っておりますけれども、翻って、ちょっと整理をして、解析して我々の方でチェックをしますと、例えば内閣府で世論調査を行っている中で、国民が環境問題について何から一番反応を得るかということを調査したことがあります。そうしますと、一番は、いろいろ我々がやっている地道な活動よりも、何といっても日本の場合はテレビから環境の問題を考える。その次は新聞、その次が雑誌。これは、世論調査の結果、こういったデータがあるという一つの客観的なデータになりますけれども。

 そういったことから、例えば昨年、環境教育の推進法というのが法律で通っていますけれども、この中にも明記されていますように、環境教育というのは、あくまで学校教育の中だけで行うものだけではなくて、社会的にどこの立場の方でも、どのセクターでも行っていくべきだと。

 そういったこともかんがみますと、冒頭、意見の中で述べさせていただきましたとおりですが、効果的に戦略を持って、我々の機関も頑張りますけれども、ぜひ政府としてもそのデータを生かして、テレビや新聞や雑誌というところでマスコミの方たち、報道機関の方たちの協力を得て、こういったものをしっかりアピールしていくというようなことに尽力していただきたいな、そんなふうに思います。

高木(美)委員 大変ありがとうございました。

 そこでお伺いしたいのですが、これは関参考人にお伺いいたします。

 先ほどから学校ビオトープというお話がございました。私、東京の江東区に住んでおりまして、南砂小学校、ここが貴協会から優秀賞をいただいたと大変喜んでいらっしゃいまして、また今、今まで大変枯渇しておりました東京の公園でも、自然再生事業の一つの象徴としまして公園にビオトープが見受けられるようになっております。

 しかしまた反面、先ほどから何人かの方から御指摘がありましたように、例えば、自然にいいからコイを放流するとか、またメダカを放流するとか、またきれいだからコスモスをだっと並べればそれでいいとか、そういう美しいから、自然があるからそれでいいのではないか、こういう国民の間違った認識、これが大変多くあると私は思います。

 やはり、こうした中で、生態系の遺伝的な地域差を守ることの意義について、関参考人に教えていただきたいと思います。

関参考人 遺伝的な問題ということですけれども、今ありました、例えばメダカの問題というのは顕著にあらわれているものだと思いますけれども、日本のメダカは、メダカという種類の中にも地域型というのが十以上あるというふうに言われています。東京、関東のメダカが少なくなっているからといって九州のメダカを持ってきて放す、これはよくあることなんですけれども、そういったことによって、純血の東京のメダカと交雑して純血が保たれないということ。これは、生物多様性条約に基づく生物多様性国家戦略というのが日本の中でも平成七年に閣議で決定されて、その後平成十四年に新国家戦略が出ておりますけれども、その中にも、遺伝的なレベルでの生物多様性を守るということがうたわれております。

 こういったことから、遺伝子汚染という言葉を使うわけですけれども、遺伝子汚染の問題につきましても、専門家の中では常識の範囲になっておる問題ですけれども、やはりまだまだ一般の方たちへの普及広報活動というのが、我々も含めて大変未熟な状況であるということは否めない事実だと思います。

 我々もコンクールを通じて盛んに、我々だけではなくて国外の事例も国外の方から言っていただいたりということはしますけれども、ぜひ今まで以上に努力は、我々も含めて国民にわかっていただけるような情報の出し方というものを考えていきたいと思っております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 私は、やはり、こうした遺伝子レベルのこだわりというところまでは、国民の皆様はなかなか理解しにくいのではないかと思います。今、例えば土から病気の治療の薬ができるとか、またそういう研究も大変多く進んでいるところでございますが、こうしたメッセージを、ぜひともまた専門家の皆様からも国民の皆様にお伝えをいただきたいということをお願いしたいと思います。私も全力で働かせていただくつもりでおります。

 最後に、これは吉田参考人にお伺いしたいのですが、特定外来生物の輸入を防ぐために各省庁の連携が大変大事かと思っております。私の住んでおります江東区の湾岸地域、大変大きな開発がありまして、そのとき、見たことのない種の蛇が動いていると住民の方から通報がございました。恐らく多くの材木が輸入されたからという理由でございました。

 そのような、水際でどう防いでいくか、それとともに、また、今ここまで入ってきたものを今後どのようにしていけばよいのか、この点について、吉田参考人にお伺いいたします。

吉田参考人 先生おっしゃるとおり、水際の防除、ボーダーコントロールと言いますけれども、これがこの外来種対策では非常に重要でございます。

 一般的には、空港やあるいは港というところから人が入ってくる、荷物が入ってくる、そういったところで防げなくてはいけないわけですけれども、もう今の段階でも、例えばワシントン条約などにひっかかるような動植物を見分けられる人が全部そろっているかというと、そうではないということで、非常に厳しい状況だと思うんです。これに対応できるような、問題のある外来種を見分けられるようになるとか、そういった人材を十分に確保していく必要があると思いますし、また、税関では、ニュージーランドなどでは、問題のある生物がいればかぎ分けてワンワンとほえるような、そういう外来種の対策犬、ビーグル犬などを配置しておりますけれども、そういったことも必要ではないかと思います。

 また、先生おっしゃるとおり、それ以外の、材木だとかいろいろなルートから非意図的に入ってくるものもございますので、そういったものは本当に省庁の連携がないといけませんので、これから基本方針をつくっていく中で、今回はあえて持ち込む特定外来生物についてこの法律の中で触れられているわけですけれども、非意図的な導入というものについても基本方針の中に書いて対応していく必要があるのではないかと思います。

高木(美)委員 大変にありがとうございました。以上で質問を終了いたします。

小沢委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 まず、岩槻参考人にお伺いいたします。

 岩槻参考人が園長を務めておられた東大の植物園というのは、実は私はそこの医学部を卒業したのですが、私どもにとりましては、そこに行けばちょっと日常からほっとできる、非常にオアシスのようなところでもありました。そして、日本のそういう学術体系の中で、植物系の研究に時間を割けるだけの国としての位置づけをされたところとして、今般、独立行政法人化のいろいろな波が押し寄せたときに、やはり学問というか、そういう長いタームで考えなければいけないものの位置というものを日本がどう考えていくのかなという思いを持ちながら、先ほどから参考人の御意見を聞いておりました。

 今回提案されております法律体系の中で、いわゆる一人の市民として考えますと、経済効率が非常に時代的に前面に出てきた場合に、それ以外に本当に科学的なところ、学問的なところで何かを判定してほしいという思いが逆に強まっているのもまた事実だと思うのです。しかし、なかなか、学問は白黒を時間軸で百年とか考えなきゃいけないという矛盾に立たされた中で、今回つくられようとしております法案の中で、いわゆる専門検討委員会的な、それは学問的なものも含めての貢献ということですが、そういうものが、ここには、法律自身には策定されておらないわけですが、しかし、専門家として、こういう法律ができるときに、どういう形であればより長期的に見てよいかということで御意見を賜りたいと思います。

岩槻参考人 ちょっと御質問が包括的過ぎてお答えするのが難しいところがありますけれども、何度かもう既に申し上げたことを反復することになるかもしれませんが、基本的には、現在わかっています知見、先ほど申しましたように、まだ生物多様性に関する知見は乏しいということを言いながら、やはり大量の情報を持っているわけですから、そういう大量の情報をいかに有効に活用して今問題になっているところを整理できるかということだと思うんです。

 ですから、この法律が成立しますと、いずれ、特定外来生物の審査といいますか、認定というようなことが必要になってくるかと思いますけれども、そういうときには、現在我々が持っています情報というのはできるだけ活用させていただいて、より正確な判定ができるような努力をさせていただきたいと思います。

 ただ、何度も言いますように、情報量がまだ一〇〇%あるわけじゃないですから、ひょっとしたら科学が間違う、私がというよりは科学が間違うということがあるかもしれませんけれども、それは、そういう試行錯誤を繰り返しながら、よりよいものにしていくというスタンスしか、こういうことではあり得ないんじゃないかというふうに思います。

阿部委員 恐らく、市民側から要求されているものは、やはりそういう科学的な判定委員会というものをきっちり形にしてほしいということ。それは、その当座はわからないところがあったとしても、そういうところで判定して一つ一つ確認していく作業が必要なのではないかという意味で、学者に要求されるものも高いのかと思います。

 そして、もう一つ先生にお伺いしたいのですが、同じような島国という成り立ち、海に囲まれた国として先ほど来ニュージーランドの例が挙がっておりますが、そのニュージーランドにおけるさまざまな生物多様性の保存と我が国とを比較した場合、これまであるいはこれからどのような課題がありましょうか。

岩槻参考人 ニュージーランドとの対比は、私も非常に重要なことだと思って、いろいろな意味で申し上げたい部分があるんですけれども、一番典型的なのは、ニュージーランドは日本の四分の三ぐらいの面積ですけれども、人口が横浜市民の数ぐらいなんですね。ニュージーランドで日本人に出会いますとしばしば言うんですけれども、日本列島から横浜市民以外の人が皆さん撤退していただくと、日本もニュージーランド的なことがいろいろやれるようになるんじゃないか。

 先ほどから話題になっています普及活動ということでもまさにそうだと思うんですけれども、ニュージーランドで人々がいろいろなことを認識されるというのと日本で一億二千万の人が認識をしていただくというのは、随分違うと思うんですね。しかし、それにもかかわらず、例えばこの外来生物に関する認識も日々進んでいるということは、私は肌で感じ取っているといいますか、理解しているんです。

 例えば、つい二年前ですか、一年半ほど前ですか、新生物多様性国家戦略の案ができたときにパブリックコメントを求めたときに、今正確な数字は覚えていませんけれども、千数百ぐらい、ブラックバスに関する批判的なコメントがあったんですよね。ところが、今度この法律をつくる前提となりました中環審の答申の案をパブリックコメントに出したときには、見るべき数がなかったんですね。

 それはやはり、最初はいろいろな意味で問題意識を持たれる方も、議論を繰り返していくうちに、だんだんその問題意識を改めていただいている部分もあるんじゃないかというふうに理解しているんです。それは、こういうことを繰り返すことによって、一億二千万の人にどんどん知っていただける輪を広げていけば、ニュージーランドと比肩できるようなさまざまな対応もできるようになるんじゃないかというふうに考えております。

阿部委員 ニュージーランドのこととも関係して、引き続いて関参考人に二つお伺いしたいのですが、確かに、もし私どもの国に非常に経済優先の論理がはびこらなければ、もう少し問題を本質的に掘り下げられると思うのですが、さっき参考人がおっしゃいましたように、ワシントン条約でも分類の2と3に当たるようなものも含めて、平成十四年に四億八千九百万頭の動物が日本には一挙に輸入されておる。アライグマのラスカルがメディアで人気になれば、アライグマがどっと入ってくるというような現状があるわけです。

 その中で、果たして今回のこの法案で、特に二十万円以下のものは特に制限もなく入ってくるという我が国の状況を見たときに、どのような形でワシントン条約における種の保存と今回でき上がった法案の溝を埋められるとお考えでしょうか。抽象的だったらちょっと言い直しますけれども。

関参考人 私の意見の中にワシントン条約の件は今回含めていなかったと思いますから、私の発言に対してということではなかったんじゃないかなと、今お聞きしながら思ったところですけれども。

 ですから、ワシントン条約の、絶滅に瀕する種を貿易しないというカテゴリーの中での立場と、移入種の問題での何を比較してお話しすればいいのか、ちょっと申しわけありません、私、理解できませんでした。済みません。

阿部委員 さっき、どなたかの発言だったと思います。申しわけありません。それは間違えたかもしれません。

 では、同じくこれは関参考人で、先ほどのニュージーランドの例で、これはちょっとお触れになりましたし、いただきました資料の中でも読みましたが、いわゆる生物の安全保障ということについて、極めて国としての取り組みを挙げてしているところと思いますが、そのことと比較して今後の我が国の課題ということでお願いいたします。

関参考人 生物の安全保障ということでしょうか。生物の安全保障というのは、済みません、具体的にどのような内容でお話ししたらよろしいでしょうか。

阿部委員 ごめんなさい。先生からいただきましたこの「エコシステム」という中で触れられております生物安全保障ということ、特に輸入検疫のことで今ワシントン条約も問題にしたのですが、生物多様性の国家戦略という形で述べられておりましたので参考になればと思いましたが、済みません、私の質問がちょっと先生の御発言の意を酌んでなければ結構でございます。

 さっき先生は、WTOとのあつれきが生じる場合に、あえて言えば、そのことも踏み越えて、予防原則にのっとっていくべきではないかというふうにお話しでしたので、そこから演繹したことでございますが、そういうふうにお答えいただければと思います。

関参考人 自由貿易の経済との比較であれば物差しが幾つかあって、WTOの方向では、当然貿易障害を減らしていくという方向で推し進めています。

 ただし、その中でも、環境の保全に対するところはどのくらい、農業関係でよく言われているグリーンボックスのようなものがあるわけですけれども、そういった部分をどこまで高めるかといったときに、今回のこの法律の運用に当たっても、今までの傾向を見ますと、比較的、政令で決められたものというものに関しましては、割と経済的なものに引っ張られて、例えば種の保存法に関しても指定がなかなか思うようにいかない。これは吉田さんの方からも話がありましたが、法律はできても運用の方で十分な運用ができていかないというようなこともあります。

 そういったことに関しましては、今回、参議院の中での答弁で、小池大臣または小野寺局長からも大変力強い言葉としまして、生物多様性の保全というのを、今回の法律では原則として種の指定のところでは強めていきたいというような言葉をいただいておりますので、基本方針、またこれからつくられます主務省令なんかでは、ぜひ、そういったことを明記していただきたいということを私は述べさせていただいております。

阿部委員 済みません。さっきのワシントン条約は、たしか吉田先生のお話だったかもしれません。お許しください。

 最後に、吉田先生にお伺いいたしますが、先生のレジュメの中で、いわゆる重要管理区域の指定、日本は国という区切りで考えれば日本列島ですが、小笠原諸島、それから琉球列島、おのおのその生い立ちが違う地政学的な中に成り立っていて、今回のくくりの中では、特に外来種という国の単位での問題が主に論じられていますが、小笠原諸島とか琉球諸島の地域的な重要区域指定ということもまた重要であろうという御指摘でしたが、この点について再度、今後、この法案を土台にしていくとすれば、どのような形が考えられましょうか。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 重要管理区域に関しましては、この法律の中では残念ながら設定されておりません。ただ、琉球諸島にしても小笠原諸島にしても非常に重要な地域ですので、今後の課題として、そういった地域は、国境とは違って、生物から見れば国境があるわけですね。そういったところへの他地域からの持ち込みを考えるということは、まだ課題としては残っているということだと思います。

 環境省の方からは、参議院の質疑の中で、既存の法律を使ってという答弁がありましたけれども、自然公園法の中で、特別地域などにおいて植物とか昆虫とかをとっていくことは禁じられておりますが、そこに放すことは禁じられていないわけですので、私も、そういう少し変えればできるところからまずやっていくということが必要なんではないかなと思っております。

阿部委員 生物の種の多様性ということで今回のような法律の論じる枠組みができて、そしてさらに、より一歩国会としても進めていくために、きょうの参考人の御意見を参考にしながら取り組んでいきたいと思います。

 ありがとうございました。

小沢委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る二十五日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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