衆議院

メインへスキップ



第14号 平成16年5月25日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年五月二十五日(火曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大野 松茂君 理事 桜井 郁三君

   理事 竹下  亘君 理事 西野あきら君

   理事 奥田  建君 理事 長浜 博行君

   理事 伴野  豊君 理事 石田 祝稔君

      宇野  治君    大前 繁雄君

      加藤 勝信君    木村 隆秀君

      鈴木 淳司君    砂田 圭佑君

      西村 康稔君    鳩山 邦夫君

      原田 令嗣君    船田  元君

      望月 義夫君    荒井  聰君

      近藤 昭一君    鮫島 宗明君

      島田  久君    田島 一成君

      武山百合子君    松本  龍君

      高木美智代君    土井たか子君

      川上 義博君

    …………………………………

   環境大臣         小池百合子君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   環境副大臣        加藤 修一君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           齊藤  登君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  竹谷 廣之君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  小野寺 浩君

   環境委員会専門員     遠山 政久君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  村井 宗明君     荒井  聰君

同月二十五日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     原田 令嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     三ッ矢憲生君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案(内閣提出第一二五号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房審議官藤原啓司君、農林水産省大臣官房審議官染英昭君、農林水産省大臣官房参事官齊藤登君、水産庁資源管理部長竹谷廣之君、国土交通省道路局長佐藤信秋君、環境省地球環境局長小島敏郎君及び環境省自然環境局長小野寺浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大前繁雄君。

大前委員 おはようございます。自由民主党の大前繁雄でございます。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 最初に、防除の問題についてお尋ねしたいと思います。私は、今回の質問を担当させていただくことになりまして、幾つかの自然保護団体、動物愛護団体の方々から意見を聴取しました。その結果、どうしても気になって、いまだに頭を悩ませている問題が一つございます。それは、先般、二十一日の参考人質疑の折にも大きな話題の一つになりましたが、防除、いわゆる根絶の問題でございます。

 そこで、まずこの件に関して二、三お尋ねしたいと思います。

 一つ目は、そもそも一度野に放たれた動物の根絶など不可能なのではないかという意見についてでございます。

 ある動物愛護団体が全国の都道府県の鳥獣保護担当者に対して実施した匿名アンケート調査によりますと、ほとんどの人が、一度野に出た動物の根絶など不可能だと回答しているそうでございます。また、我が国では、動物四百万匹、昆虫まで入れると八億匹という膨大な数の生き物が輸入されており、今さら日本固有の生態系に戻すのは不可能ではないかとも言われております。

 もしそうであるといたしましたならば、莫大なお金、税金を投入して、たくさんの生き物を殺して、そのあげく根絶という目的を達し得ない、そういうことであれば、結局、国や自治体にとっては税金のむだ遣い、動物にとっては殺され損、むだ死に、得をするのは捕獲業者だけということになるわけでございますが、こういった意見についてどのようにお考えか、まずお尋ねしたいと思います。

小野寺政府参考人 一般的に申し上げますと、一たん入った外来種で、かつ国土全体に蔓延しているものを絶滅まで駆除するというのは、そう簡単ではない、難しいと言ってもいいかもしれませんが、かなりの困難が予測されるというのが公平な見方ではないかと思います。

 しかしながら、与える影響、被害を考えて、例えばある特定地域、非常に貴重な生態系が存在している地域の中に外来種が入って被害を起こしているという場合には、その被害の程度と駆除に要する費用なりエネルギーの関係で物事を考えるべきだというのが一つあると思いますし、また、全面駆除と、部分的にある程度駆除をして被害を低減するということも考え方の一つとして大事なんじゃないかと思います。

 したがって、総体的な中で被害を低減させていく、あるいは中期的な目標を設定してそれに向けて作業を進めていくということが一つあると思いますし、また、外国の事例等を参考にいたしますと、例えば島嶼とか池などの非常に限定的な、まとまりのある生態系の中で駆除に向かって進めていくというのは、やりようによっては可能であると考えております。

大前委員 私どもの秘書は淡路島の出身なんですけれども、例えば、問題になっておりますオオクチバスなんかで、淡路島の山のてっぺんのため池にまでさらえてみるとおるということでございます。そういったため池については、根絶といいますか駆除は可能ですが、琵琶湖のようなあれだけ大きなところでは、とてもじゃないが、とことん、全部根絶させてしまうということは不可能なわけでございます。今の御説明によりましたら、そういう大きな根絶不可能なところでは、部分的に減少させていくというような意見でございましたので、そこらあたりの根絶についての考え方を、もう少し自然保護団体とかそういうところにも徹底して説明をしていただければと思います。

 それで、根絶の問題につきましてのもう一つの問題は、道徳、倫理面の問題でございます。

 この点について、さきの参考人質疑でも、日本自然保護協会理事の吉田正人参考人が取り上げられまして、合意形成のプロセスの導入が大切だと述べられました。野に出た野生生物の三分の二は人間が捨てたものであると言われており、人間が起こした問題を罪のない動物殺害で解決するのは道徳的、倫理的に問題があり、教育にも悪影響を及ぼすのではないか、そういった懸念がございますけれども、こういった点についてどのように説明づけをされるのか、お尋ねしたいと思います。

砂田大臣政務官 人間何千年の歴史の中で、動植物が、それぞれの人間とのしのぎ合いの中で、長年殺したり殺されたりということが続いてまいったわけでございます。しかし、現代、やはり自然の環境を守るという意味からも、動植物について、人間がそれなりに人間の立場として大事にしていかなきゃならないものというものは存在をしているわけでございます。

 既に蔓延している特定外来生物、そういう膨大な数に上っている現在でございます。これらすべてを生かして管理をするということは、まことにしにくい、難しい問題であり、非現実的な問題ではないかというふうに考えているところでございます。殺して処分をする以外に有効な手段がないことがあり得るというふうに考えているわけでございます。その場合でも、殺して処分を行う際には、動物愛護管理法の考え方に沿って、動物に苦痛を与えない適切な方法によって行うよう基本的な方針に明記をする、適切な対処をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、やむを得ず殺して処分をしなければならない必要性や、防除の対象となる外来生物が適正な管理下にある限り失われなかった生命であることなどについて、外来生物対策の普及啓発を進める中で、広く国民の理解を得ていくことが大事ではないかというふうに考えている次第でございます。

大前委員 防除に関してもう一つ懸念される点は、鳥獣保護法の適用を外すという問題でございます。

 現在、法の適用があるのに密猟が後を絶たないというのは巷間伝えられているとおりでございますけれども、そのような状況下で適用を外すと、違法捕獲、錯誤捕獲が激増して、在来動物の希少種もわなにかかることが心配をされておるわけでございます。希少種というのはやみで高く売れますので、防除に名をかりた密猟が横行することが懸念されておりますけれども、この点、どのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。

小池国務大臣 鳥獣保護法の適用を外すことについてのお尋ねでございますけれども、地方公共団体やNGOが行う防除でございますが、まず、鳥獣保護法の適用の除外を受けられるのは、国が公示をする防除の内容に沿ったものとして確認もしくはその認定を受けた場合ということにいたしております。

 違法な捕獲、そして間違えてとってしまうということが起こらないように、基本方針また政省令におきまして、防除の方法がいわゆる在来の鳥獣とかこれまでの我が国の生態系の保護に重大な支障を及ぼさないものであるということをまず確認する、そしてまたそれを認定するということといたしておりまして、それらを要件として定めるといたしております。今幾つか御心配の点を挙げられましたけれども、これらのことが起こらないように適切に対処してまいりたいと考えております。

 また、確認もしくは認定を受けました対象とか方法以外で捕獲などをしたときは、当然のことながら鳥獣保護法の違反となってしまうことをつけ加えておきたいと思います。

大前委員 この点についてはぜひとも厳しい密猟対策というものを講じていただきたい、そのように要望しておきます。

 次に、外来種の輸入、移入規制問題について数点お尋ねしたいと思いますが、最初に、さきの参考人質疑で放送大学教授の岩槻邦男参考人から御説明のございました、生物分類を進めていく上で不可欠な専門家の体制整備の問題でございます。

 現在、随分と体制整備がおくれているという岩槻先生の御指摘でございましたけれども、この点、その促進策について環境省のお考えをお聞きしたいと思います。

加藤副大臣 今の質問の内容は、私も極めて重要だと思ってございます。生態系への影響に迅速に対応するためには、やはり自然環境にかかわる基礎的なデータをどれだけ把握しているかということが出発点になるわけでありますので、特に今御指摘のありました生物の分類あるいはそのリスト、こうした対策というものはやはり対策の基礎である、そういうふうに認識しているわけでありまして、環境省も、これまで自然環境保全基礎調査、こういった調査やレッドデータブックの作成等を通じまして、専門家の協力を得まして動植物の分類リストの作成に努力してきているところでございます。

 生物の数は非常に膨大であるが、先ほど説明の中にもございましたけれども、今後とも、各分野の専門家の協力を得ながら、これらのリストをさらに充実させてまいりたいということになるわけでありますけれども、御指摘の専門家の体制整備、おっしゃるとおり心もとない状態でございます。たしか、岩槻先生もそのようにおっしゃっておりまして、イギリスを代表するロンドンの植物園では学位級の研究者が百人いる、日本の東大の植物園では教官が六人しかいない、そういう寒い状態でございますので、こういった面については、人材供給についても積極的に考えていかなければいけない。

 先ほど述べましたようなさまざまな取り組みを積み重ねると同時に、やはりそういう人材育成にもつながることを考えていかなければならないわけでありますし、あるいは文部科学省そのほか関係省庁とも必要に応じてこういった面について充実を働きかけてまいりたい、こう思ってございます。

 また、OECDなんかでも、地球規模の生物多様性情報機構という世界的な規模の機構を立ち上げた段階でございますので、そういったところとも生物分類にかかわる情報について共有できるように、積極的な対応を考えていきたい、このように考えている次第でございます。

大前委員 法の施行に当たりまして、生物分類というのは大変重要な問題でございますので、きっちりと促進策を講じていただきたい、そのように要望しておきます。

 次に、水産庁の方のお答えをいただきたいんですが、漁業や生態系に悪影響を及ぼす魚種の放流規制の問題についての質問でございます。

 現在、芦ノ湖、河口湖、山中湖、西湖の四つの湖で、外来種であるオオクチバスを対象とした漁業権が免許をされております。また、アユやイワナなど、日本在来の種でも地域によって遺伝的特性が異なると言われておりますが、最近、地域を超えて、他地域産の魚が盛んに放流されていると聞いております。このような放流は種や遺伝子の多様性の喪失につながると考えますが、海外由来、国内由来を含め、外来種の放流の実態や生態系への悪影響について水産庁の方でどのように把握しておられるか、まずお尋ねしたいと思います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども水産行政におきましては、平成十三年に制定されました水産基本法第十六条におきまして、「環境との調和に配慮した水産動植物の増殖及び養殖の推進を図る」という、まず基本的な方向づけをしていただいているところでございます。

 これを踏まえまして、水産庁といたしましては、平成十五年からの漁業権の切りかえに際しまして、環境との調和に配慮しながら進めていこうという観点に立ちまして、放流につきましては、それぞれの河川なり湖沼なりにおきます在来種の保全に留意するよう、技術的な見地から各都道府県知事に対しまして徹底をさせていただいているところでございます。

 まずそういった基本的なスタンスがございますが、放流の実態につきましては、若干古い数字になりますが、直近の数字で申しますと、平成十年の数字でございますが、在来種関係でいきますと、一番多いのが、アユを大体年間二億匹ほど放流しております。あるいはワカサギを、これは卵でございますけれども百四十億個、これを増殖するということで各河川なり湖沼なりにまくわけでございます。それからニジマス、古くからの外来種でございますが、これを六百万尾放流している。大きなところが、そういったような数でございます。そのほかにも、ほかのものがございますが、ちょっと詳細な把握はしておりません。

 それらの放流に関してでございますが、先ほどのような水産基本法の考え方もございますので、特に外来種の放流が生態系に与える影響については、まずオオクチバス、ブルーギルにつきましては、平成元年より三カ年間かけまして調査をいたしまして、その生態なり固有種に与える影響あるいは規制の対策というものを検討、調査してまいりました。それから、そのほかの外来種、ニジマスなりあるいは草魚といったようなものにつきましても、平成十五年度より、在来魚の状況につきまして調査を開始しているところでございます。ですから、最初に申し上げました二つについては元年から、それからそのほかの外来種につきましては十五年から調査を始めているところでございます。

 そうした調査結果を今取りまとめつつありますが、特に、先行しましたオオクチバス、ブルーギルの結果を踏まえまして、これらのものが分布域を広げている、あるいは在来種を捕食しているといった問題があるということを踏まえまして、四十六の都道府県につきまして内水面の漁業調整規則というものを定めていただきまして、移殖、いわゆる放流の禁止というものを措置していただいているところでございます。

 また、それと同時に、水産基本計画というのを平成十四年に閣議決定しておりますが、その中で移殖の禁止を進めるとともに、それとあわせまして駆除対策というものも進めていこうということを位置づけて取り組んでおります。その中で、生息数の減少なりあるいは生息域の拡大の防止ということを基本にして駆除を進めていこうということで取り組んでいるところでございます。

大前委員 この法案は環境省だけの努力ではなかなか目的を達成できないわけでございまして、できるだけ他省庁も理解をして、協力をして前へ進めていっていただきたいと思います。

 そこで、もう一つ水産庁の方にお聞きしたいんですけれども、内水面漁業では、漁業法に基づいて漁業の対象種の放流が行われていると聞いておりますけれども、知事が漁業権対象魚種を定めるときには、放流先の河川や湖の生態系に対する影響評価を行った上で定めることが必要だと考えます。現在そのような取り組みが行われているのかどうか、また、国の方でも、漁業権を免許する場合、生態系への影響評価を行って、その結果に基づいて免許を行うよう漁業法を改正する必要があると私は考えておりますけれども、この点、いかがお考えか、あわせてお尋ねしたいと思います。

竹谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在の漁業法におきましては、漁業法の第十一条の規定におきまして、都道府県知事は、漁業上の総合利用を図り、漁業生産力を維持発展させるために漁業の免許をする必要があり、かつ、当該漁業の免許をしても漁業調整その他公益に支障を及ぼさないと認めるときは、内水面漁場管理委員会への諮問などを経まして漁業権の免許をしているということでございまして、そういった意味で、今申し上げましたように、公益に支障を及ぼさないという点を考慮しながら漁業権の免許をするという体系になっているところでございます。

 こうした形で漁業権の手続がありますが、現在、先ほど先生から御指摘がございましたように、芦ノ湖、山中湖、河口湖、それから西湖の四つの湖におきましては、オオクチバスを対象といたしまして漁業権の設定がされております。

 ただ、先ほども申し上げましたように、オオクチバスにつきましてはいろいろとこういった問題がございますので、平成十五年からの漁業権の切りかえに際しましては、ブラックバス全般、それとブルーギルが水産資源に与える影響というものを懸念いたしまして、当分の間、これらの外来魚につきまして新たに漁業権の対象とする免許は行ってはならないという農林水産大臣の指示を出しております。それから、既存のこの四つの湖におきますオオクチバスを目的とする免許につきましても、継続するに当たりましては、在来生物への影響評価を行っていただく、あるいはまた、ほかの湖、流域等に流出するのを防止するという点をきちっとやっていただくということを講じた上で継続していただくということを、技術的見地から都道府県知事に徹底をさせていただいているといったところにございます。これが現状でございます。

 しかしながら、先生から漁業法を直してはどうかという御提案がございましたけれども、今申しましたように、漁業法で公益の点を考慮するようになっておりますが、漁業法の体系、そもそもが漁業の面を中心とした法律でございます。したがいまして、生物多様性を含めまして生態系の問題を総合的に、すべて漁業法の体系の中でいろいろと評価していくということにはなかなか難しい面もございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、今般ここで御審議をいただいております法案の体系の中でまず総合的に位置づけをしていただきまして、その位置づけを踏まえて、先ほどの公益の面を配慮できるような漁業法の規定がございますので、その判断の中に反映をする形で取り組んでいきたいというふうに考えている次第でございます。

大前委員 この問題は大変重要な問題でございますので、都道府県知事と連絡を密にして今後とも進めていっていただきたいと思います。

 次に、本法案とWTOとの関連についてお聞きしたいと思います。

 今回の法案の趣旨は、生態系などに被害を及ぼすものあるいは及ぼすおそれがあるものを特定外来生物、未判定外来生物に指定し、輸入制限を行っていこうというものでございますけれども、一方で、WTOでは自由貿易が原則とされております。今回の法案について、成立した後、特定外来生物や未判定外来生物に関する具体的な指定作業が最も重要な作業となってくると考えておりますけれども、この場合、少しでも疑わしいものは基本的にすべてとりあえず未判定外来生物に指定しておいて、届け出があったときによく吟味し、判定するということが大切だと思いますが、非関税障壁と海外から指摘されるおそれがございます。このあたりの問題をどのように整理しておられるのか、環境大臣にお尋ねしたいと思います。

小池国務大臣 御指摘のように、自由貿易を標榜しますWTOでございますが、WTOの協定の中で、人や動植物の生命または健康の保護のために必要な措置を締約国が実施することは妨げられないとされております。このような措置を実施する際には事前にWTOの締約国へ意見照会をすることが必要とされておりまして、この法案についても既にその手続を済ませたところでございます。その結果といたしまして、他の締約国からコメントは寄せられておりません。資料請求などはございましたけれども、コメントは寄せられておりません。

 ということで、本法案につきましても、WTOの協定の考えに整合する、このように考えておりまして、未判定外来生物につきましても、この法案に基づいて、おそれの疑いのある外来生物の指定を的確に進めてまいりたい、このように考えております。

大前委員 この件については、大臣にしっかりとやっていっていただきたいと思います。

 最後に、国民の大変関心の深いペット関連の問題について一点だけお聞きしたいんですが、特定外来生物に指定される前からペットとして飼養している場合、それが特定外来生物として指定された場合、取り扱いがどのようになるのか、飼養等が認められなくなるのかどうか、この点だけちょっとお聞きしたいと思います。

小野寺政府参考人 御指摘のように、ペットの特定外来生物の飼養は原則認めないというのが法律の考え方です。ただし、法律が施行されたときに既に例えば愛玩動物として飼っている場合には、学術研究機関で特定外来種を飼うのを許可する場合に、ちゃんとした施設をつくって、逃げ出す危険がない条件が整ったものについては許可するということにしておりますので、その並びで、既に飼っていて、そういう施設など逸出する条件がないものについては認めることも考えるべきだ、こういうふうに思っております。

大前委員 ペット関連の問題については、国民の関心が非常に高いようでございますので、水際対策と同時に、そういった広報、周知の徹底について努力をしていただきたいと思います。

 時間が参りましたので質問を打ち切りたいと思いますけれども、最後に一言だけ要望しておきます。

 この法案は、我が国で初めての法案でございますけれども、未解明な点、試行錯誤的な面も多々あるように散見されます。環境権に関する規定を憲法に明記する議論がなされております昨今、外来種問題は、本法案の成立ですべて解決するものではないと思われます。この法案を第一歩として、国民に理解が得られますよう、問題と対策の普及啓発、周知を広げて、今後、二歩も三歩も進んだ法案にしていただくよう強く要望しまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。

 昭和五十年、一九七五年の十月一日から一九八〇年の三月三十一日まで、私は、石垣島にあります熱帯農業研究センター沖縄支所の導入研究室というところにいて、四年半の間に、アフリカのサバンナの草等々六百種ほどの外来種を導入して評価する仕事に携わっていたものですから、そういう加害者としての反省も込めて、きょうはやや自爆テロ的な質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この前も参考人で、東大の植物園の先生もキュー・ガーデンの話をちょっとおっしゃっていましたけれども、この生物多様性条約が生まれる背景には、古典的な植民地時代のアングロ・サクロンの考え方、つまり、新しい大陸を発見したら、そこで使えそうな貴重な動植物は全部本国に持ち帰って保管して、これで一応遺伝資源は保存できた、あとは自由に開発しろというので一気呵成に開発してしまうというのが従来の植民地型の自然管理、全部、オイルパームの畑にしちゃったりゴム園にしちゃったりと。

 ところが、そういう貴重種だけをキュー・ガーデンのようなところで細々と維持管理していても、それは本当の意味の遺伝資源全体の保全につながらないということがだんだん問題になってきて、野生種でも何でもいいんですが、ある種の存在している生態系そのものを自然のままで保全しないと、周辺の関連する亜種とか何かも含めてなかなか保全できないという考え方から生物多様性条約ができ、そして、なるべく自然をあるがままにそっとしておきましょうという保全の仕方というふうに考え方として変わってきて、それに沿って国内法を整備していく、その流れできょうという日もあるというふうに私は認識しています。

 確かに、例えば佐渡のトキにしても、もう数羽になってからトキセンターに持ってきて、いいえさをやって、それ、頑張って、もう一息といっても、なかなか子孫はできない。やはりトキが生息する無農薬の田んぼがあり、ドジョウがいてタニシがいて、横にうっそうとした森があり、この生態系そのものを保全しないとなかなか種の保存はできないんだという考え方がきょうの法律の背景にあるということをまず確認しておきたいと思います。

 順番でいきますが、この前私は間違えて、環境レポートのときは、我が党は反対するのかと思って質問しちゃったんですが、きょうも何だかよくわからなくて、ちょっと私が疑問に思うことを全部聞いていくことにします。

 特定外来生物の定義を簡単にわかりやすくお願いしたいんです。

小野寺政府参考人 法律上、生物全般が対象になりますというのが法律のまず一番大きな概念であります。

 中央環境審議会で一年ほど、昨年の秋に答申が出たわけですが、その中では、明治以降に外国から入ってきたものを外来生物ととりあえず整理しようということにしております。その理由は、分類そのものが、明治以降、我が国及び外国において進んできたということが一つでありますし、我が国においていいますと、明治以降、飛躍的に人流、物流の量が拡大したということで、明治以降というふうに考えているところであります。

鮫島委員 私が聞いている範囲では、明治以降、人間が意図的に、人為によって運び込まれたものというふうに聞いているんですが、それはそれでいいんでしょうか。

小野寺政府参考人 そこはちょっとわかりにくいんですが、明治以降入ってきたものについては意図、非意図にかかわらず今回の法律の対象になります。

鮫島委員 そうすると、意図したかしないかにはかかわらず、明治以降に日本に入ってきて定着または利用されているものというのが外来生物、その中で、生態系に悪影響を及ぼすか、農業に悪影響を及ぼすか、人間の健康に悪影響を及ぼすか、その三つの観点から見てどうもよろしくないというのが特定というふうに分類されるということだと思いますが、では、今の定義からいうと、国内由来の外来種、例えば家猫が奄美大島で悪さをしているとか、国内由来のものは、つまり、移入といいますか、それはこの定義では入らないのか。

小野寺政府参考人 今回の法律では入りません。

鮫島委員 特定外来生物のイメージをもうちょっと具体的にしていく意味で、では、今、奄美なんかで問題になっているマングースは当然特定外来生物に入るんでしょうね。

小野寺政府参考人 マングースは対象として考えております。

鮫島委員 アメリカザリガニはどうでしょうか。

小野寺政府参考人 対象だと思います。

鮫島委員 これから専門家で検討して絞って決めていくということだと思いますが、私は、今から入れるものについて評価するのももちろん大事ですが、今既に入っちゃっているもの、明治以降、数千種ぐらい入っているんじゃないかと思いますが、とにかくいろいろなものが入っていて、それについても、明治以降海外から入ったものについては特定外来生物か非特定かという分類は当然するんですよね。

小野寺政府参考人 専門家を集めた中央環境審議会の小委員会で一年ほど検討した結果では、それらのことを勘案して、ほぼ二千種が当面の対象の母体だというふうに考えております。

鮫島委員 そうすると、当面の対象になる二千種というのはいわゆる特定外来生物かそれ以外かを判定する対象という意味ですね。

小野寺政府参考人 とりあえず、去年の秋の答申の段階では二千というふうに申し上げました。したがって、それを特定外来生物、これは政令でするわけですし、未判定生物というのは省令でやるつもりですけれども、それが二千種を超える範囲になるのかどうかというのは専門家と議論しながら決めたいというふうに考えております。

鮫島委員 約二千種程度が明治以降日本に持ち込まれてさまざまな使われ方をしている、中には生態系に悪影響を及ぼしているかもしれないものがある、こういうのが判定の対象になってこれから検討が行われるわけです。

 そうすると、その判定の結果が出るまではグレーのままずっと存在し続ける。あるいは、そこで、先ほどマングースは多分特定に分類されるでしょうと言いましたが、オオヒキガエルとかマングースとか、ジャンボタニシなんかもそうなのかもしれませんが、そういうふうに特定に分類されていくものがだんだんふえていく。それについては、防除義務あるいは駆除義務というのはだれに課せられるんでしょうか。

小野寺政府参考人 特定外来生物に関しては基本的に国の責任だと考えております。

鮫島委員 そうすると、例えばジャンボタニシが、これは九州の方で田んぼの苗の食害なんかがかなり問題になっていますが、こういう場合、国といった場合に、農水省ですか。

小野寺政府参考人 これは、農水と環境、農林被害については農水省が主として所管し、全体について環境省が所管するということになっています。

 したがって、ジャンボタニシが一体何に影響を与えるのかということですが、私の考えでは、生態系への影響もやはり認めざるを得ないと思いますね。したがって、ジャンボタニシがもし特定外来生物になれば、環境省もそれなりの責任が発生すると考えております。

鮫島委員 国土交通省にお伺いしますけれども、最近、道路ののり面なんかの植栽でかなり外国種の、ウイーピングラブグラスとかトールフェスクなんかが使われているという話ですが、こういう外来生物種が在来のイネ科の草等を駆逐しているという指摘がありますが、そういう認識は国交省の方もお持ちなんでしょうか。

佐藤政府参考人 先生御指摘のように、ウイーピングラブグラスだとかトールフェスクであるとか、これは耐寒性が強いといいますか、そういうところに着目して、従来、のり面の植生工などに使ってきたところであります。

 しかしながら、日本緑化工学会からも、昨年の九月ですが、在来の植物を駆逐するなど生態系を攪乱する問題が生じているのではないか、こういう御指摘もありました。そのような御指摘の以前に、私どもも、地場の植生を使うことができるのであればできるだけそうしよう、そんなふうに方向を転換してきているところでございまして、できるだけ地場の植生、そんなふうに今努力しているところでございます。

鮫島委員 多分これまでに随分植えちゃっていると思いますが、そういうのが、どの審議会か、委員会でやるのか知りませんけれども、判定の結果、特定外来生物です、例えばウイーピングラブグラスが特定外来生物ですということになると、これを生態系から排除する責任は国土交通省にあるというふうにお考えでしょうか。

佐藤政府参考人 これからまたこの法律全体の運用等に係る問題かもしれませんが、例えばウイーピングラブグラスがどうしても被害を与える、影響が大きいもの、こういうような場合には、少なくとも、まず、当該のり面といいますか、そこに何らかの置きかえるべきようなことができるかどうか、そんな検討もしながら対応を考えてまいりたいということになろうかと思います。

鮫島委員 環境省にお伺いしますけれども、今のようなケース、のり面にこれまで使われていた、主に外国由来の牧草類だと思いますが、そういうものが特定外来種に指定された場合に、環境省の側としての駆除の責任、環境省にはその責任はあるんでしょうか。

小野寺政府参考人 過去にのり面緑化等が行われて、その結果で例えば水系の下流域の生態系が攪乱されているような場合に、この法律に基づく一義的な責任は環境省にあるというふうに考えております。しかしながら、道路局その他が協力して駆除するということについては歓迎したいと思います。

鮫島委員 何かよくわからないんだけれども、ちょっと農林水産省との関係に絞って残りの時間聞きたいと思います。

 私は、先ほど言ったように、かつて導入研究室というところにいて、余り、石垣島で四年もいた人は少なかったんですが、したがって、そういう出自を持っている人は公務員といえども官僚とは私は呼ばないんじゃないかと思いますが、未納と官僚出身だとダボになっちゃうものですから、せめて未納だけにしていただきたいんです。

 農林省というのは、毎年毎年、導入・探索の予算に基づいて栽培種と関係のある野生種の導入・探索旅行というのをやっていて、年間平均三チームぐらいが諸外国に出ている。稲については、雲南の地区でちょうどモチ米とウルチの間ぐらいの、次の次の品種のネタみたいのを雲南あたりに探しに行くわけですが、そういう人里離れた山の中で野生種を探すので、いろいろ危ないこともあります。

 私は、ちょうどパーレビの末期のイランとかトルコとか、あるいは南米にエネルギー植物の探索等に行きましたが、サツマイモの野生種のイポメア属というもの、ヒルガオなんかもこのイポメア属で、サツマイモと接げる植物なんですが、いい台木がないかというので、農林省から三人のチームがペルー、エクアドルに昭和六十一年の十月に探索旅行に入って、サツマイモの近縁野生種を探しに行ったんです。

 あの辺に行くと山奥で、ジープに乗った、武器を持った若い四人組が、一体、警察なのか軍隊なのかゲリラなのか追いはぎなのかわからない、そういう四人組に会ったら、最悪のケースで追いはぎだった。それで、農林省から行った三人組は身ぐるみ全部はがされて、シャツとステテコだけの姿で山中に置き去りになって、ほうほうのていでヒッチハイクをしながら里までおりてきた。そこから領事館に駆け込んで農林省に電話して、大変なことになりました、どうしましょうかと言ったら、農林省がそのまま探索を続けろと。そういう残酷物語があって、でも、そういうところで得られた野生種が、今九州なんかではやっているムラサキイモの開発に結局つながっているんです。

 だから、ある意味では、いろいろな外来生物を入れてくるというのはもちろん大変プラスの側面もあるんですが、やはりかなり扱いに気をつけないといろいろな影響がある。

 大体、夏の雑草、これは水田雑草でも畑雑草でもいいですが、夏の雑草はほとんどすべて明治以降の外来種。雑草の種類を調べようと思うと一番頼りになる図鑑は、北隆館というところから出ている「日本帰化植物図鑑」、これが一番雑草の判定に使えるわけで、それは、特に牧草の導入を通じて、あるいは農業の種を入れるときそれにまざってきて、いかにいろいろな草が明治以降入ったかと。

 ですから、農業というのは、今の特定外来生物による生態系の攪乱ということから見ると、被害者でもあり加害者でもあるという側面が大変強いんですが、どうも私の感じでは、私が実際その導入業務をやっているときも、評価項目の中に生産性とか季節安定性とかいろいろな評価項目がありましたけれども、生態系への負の影響というのは評価項目に入っていなかったですね。今でも、多分組み換え体の評価項目なんかには入っていますが、一般に、海外から使えそうな植物を持ってきて評価するときにはそれは入っていないと思うので、ある意味では、農水省は、少なくとも今までは、いろいろなものを入れてきたときにそれが生態系にどういう影響を及ぼすかという視点は欠けていたと思うので、そこは率直に私は認識されていいんじゃないかと思います。

 個別の例で聞きますけれども、そういう意味では、農林水産省がよかれと思って入れてきたもので、しかし結果的には生態系にかなりの悪影響を及ぼしているというもの、多分いろいろ皆さん念頭に置いていると思いますが、そのような例の一つとして、セイヨウオオマルハナバチの生態系への悪影響が最近指摘されているところであります。

 これは、ハウス内の受粉のために大変よく働くということで、静岡県の農業試験場が最初入れて、何度かテストした後、これでいけるというので、今やかなり全国的に使われるようになっていると思いますが、この群の一部が人間の管理環境下から出て、そして一部野生化して在来のマルハナバチとテリトリー争いをして、移入種の方が優勢だというような報告もありますが、こういう点について、農林水産省は、このセイヨウオオマルハナバチの生態系に及ぼしている被害というのをどんなふうに認識しておられて、もしその悪影響があるとしたら、どういう駆除法を具体的に考えておられるんでしょうか。

染政府参考人 先生御指摘のセイヨウオオマルハナバチでありますが、これは、トマトを中心とした施設栽培におきまして労力の軽減やホルモン剤の代替などに大変大きな役割を果たしております。そういう意味で、農業利用上、極めて重要な位置づけであるというふうに私ども考えておる次第でございます。

 ただ、一方、御指摘ありましたように、セイヨウオオマルハナバチにつきましては、平成十五年十二月の中央環境審議会の答申におきまして、在来種のマルハナバチと競合する、また、花を外側からかみ破って穴をあけまして吸みつする行動によりまして、野生植物の繁殖に対して影響を及ぼすことが懸念される、そのような指摘を受けていることを承知しております。

 しかしながら、当該生物を特定外来生物に指定するかどうか、あるいはどのような規制の対象とするかという扱いにつきましては、生態系への影響を科学的な視点に基づきまして検証いたしますとともに、当該生物の利用や管理の実態等を十分に把握した上で、環境省と連絡をとりつつ、検討すべきものと考えております。

 ただ、当面の対策といたしまして、当該生物の利用に当たりましては、技術指導通達を発出いたしまして、飛散防止ネットの使用あるいは使用済みの巣箱の適正処理、この辺の施設外への拡散を防止するための適切な措置を講ずるよう配慮しているところでございます。

鮫島委員 もう一度聞き直しますが、この導入したセイヨウオオマルハナバチは自然生態系には特に悪影響を及ぼしているというふうには認識していないんですか。まあ、そういううわさがあるという程度ですか。あるいは、農林省にもたくさん昆虫の専門家がいると私は思いますが、このセイヨウオオマルハナバチが生態系に負の影響を及ぼしているかどうかという結論は、現時点では農水省としては得られていないということですか。

染政府参考人 先ほど申し上げましたように、中央環境審議会におきましては、在来マルハナバチとの競合、あるいは野生植物の繁殖に対する影響が及ぶことが懸念されるというふうな表現で御指摘を受けておるわけでございます。

 いろいろな学会の御意見等も聞いてみますと、今申し上げたようなことにつきまして、賛意を、そういうことだというふうに賛成を表する先生方と、必ずしもそうではないのではないかというふうな御意見もありまして、まだまだ意見は分かれている状況ではないかというふうに考えておりますので、先ほど申し上げましたように、今後、科学的知見を十分整理した上で、この辺のことにつきましてどのような扱いにするかということを考えてまいりたいというふうに考えております。

鮫島委員 ちょっとまだ意見が分かれている状態ですが、一応ネットを張ったり、外に飛び出さないような指導はするということですか。

 今の質問との関連で戻りますけれども、私は、この法律の急所は二つあって、一つは、特定外来生物の判定、これをどういう立場の人がどうやるかというのが大変大事だと思いますが、今のセイヨウオオマルハナバチについても意見が分かれている、専門家の間で意見が分かれている。確かに、ある種の生態系の中で生物の相互作用は必ずしも定量的に全部明らかになっているわけではないから、私は、特定外来生物の判定というのは大変難しいと思います。

 その意味では、この法文の中には、生物について専門的な知識を有する者というような表現になっていますが、これは個人を指すんでしょうか、それとも生態学会とか組織を指すんでしょうか。

小池国務大臣 法案の第二条に、特定外来生物の指定について、主務大臣は、その生物の性質に関して専門の学識経験を有する者の意見を聞くとしているということがございますが、これは具体的には、関連する生物分類、それから生態系、農学などの幅広い分野の専門家の方から意見を聴取すること、これがベースでございますが、その際は、専門家の個人だけでなくて、必要に応じて学会の協力を得るということも想定をいたしております。

鮫島委員 これまでも、行政は、いろいろな意味で、野党よりも学者の意見を尊重するという流れがずっと来ていますが、どの学者を選ぶかによってどうにでもなるんですよね。だから、このオオマルハナバチについても、影響ないぞ、ないぞという結論を出している人を引っ張ってくればそういう結論になるし、甚大な影響だと言う人を持ってくればそうなるし、これは諫早湾の干拓事業だろうが長良川の河口堰だろうが何でも同じで、ブラックバスじゃないけれども、行政がえさを投げればみんな食いつくわけです。

 そういう意味では、私は、特にエイズの安部さんの事件は大変大きな教訓で、個人に依存しちゃいけませんよと。日本血液学会なら日本血液学会という組織に頼めば、それにその判定をゆだねれば、彼らは組織の命運がかかるから真剣にやるはずだし、意見の違う学者同士も熱い議論をするはずなんです。それを、個人を一本釣りして、その人に裏で特別研究費をつけてあげるというこれまでのやり方は、私は、全然客観的な判定でもないし、学識経験者による判定とも言えないと。

 この法律では、ここが、特定外来生物の判定がある種急所になるわけで、これは、三つの視点から評価します、人の健康に害を与えないか、それから農業に悪影響を与えないか、生態系に悪影響を与えないかという三つの視点から評価しますということですが、これはごちゃごちゃでやるんでしょうか、それとも三つの分科会みたいな感じでやるんでしょうか。それはまだ決まっていないんですか。

小野寺政府参考人 今はっきりどういう形でやるということは申し上げられませんが、分類上、極めて専門多岐にわたるということになります。したがって、分科会的なものは実質上つくるという方が合理的だと考えております。

鮫島委員 環境省側は、先ほど出たセイヨウオオマルハナバチの生態系への影響というのをどんなふうに聞いてというか、どんなふうに調べて、現在ではどういう認識なんでしょうか。

小野寺政府参考人 生態学者、専門家と話をしているところでは、実態については農水省からお答えしたとおりですが、生態系へ一定程度の影響があることは否定できないと考えております。

鮫島委員 生態系への一定程度の影響があることは否定できないというのは、在来の日本のマルハナバチに対してその生存域を危ぶませるような負の影響という意味ですか。

小野寺政府参考人 二つありまして、一つは、在来のマルハナバチとの競合、それから二番目が、みつをとる花を物理的に壊してしまって、その植物を繁殖できないようにしてしまう、その二点が専門家の指摘しているところだと理解しています。

鮫島委員 これは、生態系に悪影響を及ぼしているということがはっきりした場合に、駆除の責任は環境省の方にあるというふうにお考えでしょうか。

小野寺政府参考人 法律上、一義的には環境省にあると思いますし、また、その被害の対象が農林被害でありますと農水省ということになります。

鮫島委員 今の御答弁で割合はっきりしたと思うんですが、つまり、被害の対象が農林水産業の場合は農水省が駆除の責任を負うけれども、被害の対象が生態系だった場合は環境省の責任になる。

 そうすると、私、先ほど探索・導入の歴史を言いましたが、農水省がこの間、明治以来、二千になんなんとするものをいろいろ入れてきました。そのうちの幾つかが特定外来生物に指定された、これらは農林水産業には何のマイナスの影響も与えていません、しかし生態系に負の影響を与えていますというときは、駆除責任は全部環境省の方に来るんですね。導入して、それを管理不十分で、我々の言葉でエスケープというんですが、ある閉鎖環境から逃がしちゃった、その逃がした人の責任は問われない。このセイヨウオオマルハナバチもそうですが、多分業者の指導が不徹底で、ハウスの中から出しちゃいけませんよというのが不十分で、生態系に逃げちゃった。これは、逃がした人は一切責任を問われないで、生態系を預かる者である環境省だけに責任が来るというのは何となくおかしいと思いますが、環境省はそれでいいんですか。

小野寺政府参考人 法律がもし通って、施行された後、今委員が御指摘のような事態が起きれば、それは原因者が負担するというのが法律上決まっております。

鮫島委員 そうすると、結果としての被害が農林水産業に及ばなくても、原因者がだれかが特定されれば原因者が負担する。これは、この分野はもう縦割りが錯綜する部門ですから、私は今言ったような話が非常に難しいんじゃないかと思います。

 先ほども、ブラックバス、ブルーギルの話が出ていましたが、オオクチバスも入るんでしょうね。オオクチバスとコクチバスとブルーギル、この三種ということでよろしいんでしょうか。

 あと一点だけ最後に聞きますが、最初の特定外来生物の定義の中に、国内由来の外来生物、つまり国内での移動は入りませんと。しかし、この委員会でも指摘されているように、例えば北海道なんかは内地からの外来生物による生態系の攪乱というのが大変深刻な状態だと思いますが、この法律では、国内由来の生物、家猫とか、ミンク業者が飼っていて倒産してミンクを全部放しちゃったとか、テンとかあるいは岡山の方のヌートリアとか、いろいろな特定畜産生物と言われるものがかなりおかしな状態になっていると思いますが、ミンクとかヌートリアはともかくとして、こういう国内由来の生物が貴重な生態系に侵入するのを防ぐ措置というのは、この中では一切ない。

 例えば国立公園、自然公園法とか自然環境保全法の中には、大事なものをとっていっちゃいけない、動物もとっちゃいけない、卵もとっちゃいけないというのがありますが、何か持ち込んではいけませんよということが決まっていないような気がするんですね。それで、ある日、上高地のミズバショウを見に行ったら、大正池からワニがぬっと顔を出すというようなことは今の法律では防ぎようがない。まあ、でも、環境大臣の責任がそこで問われるのかもしれませんが、その点についてはどうなんですか。この法律では多分カバーできない欠落部分だと思いますが、どういうふうにお考えなんでしょうか。

 在来の生物が、その生物がいなかった地域に移動していくことによる害、ニホンジカなんかも変な島へ持っていくと大変なことになると思いますし、実際、ノヤギが小笠原の諸島で大変な食害を与えていることもよく知られていますが、こういうことを防ぐ手だては、この法律にないとしたら、どうしようとするんでしょうか。

加藤副大臣 いわゆる日本国内由来の地域相互間での外来生物の問題については、その重要性というのは認識してございます。

 自然公園等の既存の保護地域制度の規制強化、あるいは運用の充実で対応を図る必要を考えております。より具体的には、自然公園法の施行令を改正する。平成十四年に自然公園法を改正しておりますので、それに基づきまして施行令を改正して、特別地域及び特別保護地域でありますけれども、これらの地域については、本来生息、生育していない生物を外部から持ち込む行為等を規制することなどを今検討しているところでございます。こういった面についても御理解をいただきたいと思います。

鮫島委員 いろいろな不十分性が私なりに明らかになったと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

小沢委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 鮫島委員に引き続きまして、本法案に対して質問させていただきます。

 いきなりですけれども、まず冒頭、外国産のカブトムシ、クワガタムシについての対応をお聞かせいただきたいと思います。

 先ほど鮫島委員の指摘もありましたとおり、実はこの外国産のカブト、クワガタムシ、平成十一年に農水省によって輸入が認可されたものでありますけれども、このところ、もうけた違いにふえております。トラフィックイーストアジアジャパンというところが平成十四年に公表した「外国産カブトムシ・クワガタムシの市場調査」によれば、平成十三年には約六十八万個体の外国産カブトムシ、クワガタムシというのが我が国に輸入をされています。

 大臣、ちょっと、これは御存じでしょうか。こんなカードがあるんですけれども、ごらんになられたことはありますでしょうか。実はこれは、今小学生の中で大ブームの「ムシキング」というカードなんですね。子どもたちは、実は、このカードを一枚百円で買って、大手のスーパーなんかにあるゲームセンターの機械に通して、バーチャルな戦いをするという非常にブレークしているゲームなんですけれども、いわゆるこれは外国産のカブトムシ、クワガタムシが全部かいてあるんですね。

 ある意味では、そういう外国の生態系を勉強するいい遊びだというふうにとらえるかもしれませんが、実はこのゲーム機の隣でその外国産のカブトムシ、クワガタムシというのが売られているんですね。今、子どもたちに一番人気のあるヘラクレスオオカブトに至っては、一対、ペアで実は一万五千円以上の値段がついているんですが、当然、このゲームに夢中になった子供は親に買ってくれ、買ってくれとせがんでおります。

 しかしながら、その子どもたちが、このブームが過ぎ去って、カブトムシをではどういうふうに扱っているのか。そのまま命を召されていくようであれば問題はないんですが、万が一これが野外に放出されたりすると、とんでもないことになるのではないかと危惧しております。

 平成十四年の五月末から六月初旬にかけて、神奈川県の藤沢市の雑木林で、スマトラオオヒラタクワガタの雄が相次いで見つかったケースが報告されています。さらに、国立環境研究所では、DNA分析により、国内産と外国産のヒラタクワガタの交雑種というのも確認をされています。

 こういうことを考えると、この外国産のカブト、クワガタムシの影響というのはすごく軽視できないというふうに思うんですけれども、本法案ではこの外国産のカブト、クワガタムシをどのように扱おうと考えていらっしゃるのか。それと、この法案の中では、特定外来生物種の指定といった具体的な内容は、基本方針あるいは閣議決定に先送りされていまして、法律の実体というものが非常に見えにくい内容であります。あわせて、現在検討しておられる特定外来生物の指定種及び基本方針を具体的に開示していただけませんでしょうか。

小池国務大臣 まず、カブトムシとかクワガタとか、私は余り好きな方ではないんですけれども、特定外来生物や未判定外来生物に指定するかどうかについては、今後、生態系への影響について専門家の意見を聴取いたしまして、さらに情報収集した上で、政省令の指定に際して具体的に検討する、こういう段取りとなっております。

 今、スマトラヒラタクワガタとかいろいろ出てまいりましたけれども、国環研、国立環境研究所の方でもいろいろと実験をしておりまして、インドネシア産のスマトラヒラタクワガタと日本産ヒラタクワガタの間で交雑した個体が生まれるということもわかっておりますし、また、外国産ヒラタクワガタと国産ヒラタクワガタ、その交雑個体にも繁殖能力があるということでございますので、御指摘のように、外国種が入ってくると、それによってまた新たな個体が生まれてくるということになろうかと思います。いずれにいたしましても、政省令の指定に際して具体的に検討させていただきます。

    〔委員長退席、長浜委員長代理着席〕

田島(一)委員 あくまで、これを認可しているのは農水省だというところにやはり非常に問題があろうかと私は思います。どうぞ、環境省でありますから、厳しい目で見ていっていただきたい、そのことをぜひお願いをしたいと思います。

 次に、質問を変えますが、実は先日、五月十八日の朝日新聞の夕刊で、環境省がペット店の全国調査をしたという記事が掲載されていました。全国のペットショップ約三百七十店からの調査回答で、ちょっとこれも、千件お願いしたのに三百七十店でえらい少ないなと随分思ったんです。裏に何かうさん臭いのがあるんじゃないかというような疑問も持ちましたわけですが、これら全国のペットショップ調査の中で、外来生物の販売状況、そして同じく、ペットショップとしてインターネットでやっているネットショップの実態調査について、どのような調査結果が出たのか、お示しをいただけますでしょうか。

小池国務大臣 この朝日新聞の方に掲載されましたペット店の全国調査ということは、これは動物愛護法の関係でどのような実態なのかということが主目的で調査をしておりまして、ただ、特定外来生物について、飼育等の許可条件で報告を義務づけるなどのことによりまして、国内での流通を的確に把握をしてまいりたい、このようには考えております。

 そして、外来生物の流通実態については現時点ではまだ十分な把握はできていないのですけれども、最近、多種多様な外国産の生物が販売されている、先ほども例がございましたけれども、こういったことについては承知をいたしているところでございまして、ですから、今回のは動物愛護法の関係での実態調査、それとまた別に、実態把握のための事例調査に平成十五年度から着手をいたしているところでございます。

 今御審議いただいておりますこの法案の施行がされましてから、特定外来生物に限らず外来生物の国内流通の状況全般について一層の把握に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

    〔長浜委員長代理退席、委員長着席〕

田島(一)委員 せっかくこういう外来種の法案が出ているときですから、環境省ももう少しこういうところにも気を配って、せっかくやられるアンケートですから、こういう状況をやはりきちっと把握して、本当はこの法案成立に向けての材料として使われていればよかったのにな、私だったらそうするのになというふうに思ったわけであります。

 しかも、最近はネット販売というのは、それこそ届け出義務というものがつかめておらず、実態把握が多分できていないと思います。それだけに、こういったインターネットでの販売をしている業者に対してどのような取り締まりを、これから特定外来生物の取り締まりを効果的に行うことができるのか、非常に疑問に思うわけですけれども、もしお考えがあるようでしたらお聞かせをいただきたいと思います。

小野寺政府参考人 インターネット販売は特に把握と規制が難しい分野だというふうに思っています。それも含めて、昨年度から外来種を目的とした調査に着手したところでありますし、法律の規制と並行して、実態把握と、その抑制手法で何か効果的なものがないか、検討していきたいと思っております。

田島(一)委員 ぜひスピードを上げてやっていただくようにお願いをしたいと思います。

 次に、リスク評価の期間等についての質問に移らせていただきます。

 本法案では、未判定外来生物が生態系に被害を及ぼすおそれがあるかどうかを判定する期間を最大で六カ月というふうにしております。

 御承知のように、北海道や神奈川県で発見されたアライグマの被害、これは発見から数年経過をしてその被害と爆発的な増加が見られました。このように、外来生物が生態系に被害をもたらす場合は、導入されて直ちに被害が出るというものよりも、しばらくの間は潜伏し、実際に被害に気づいたときはもう手おくれだというようなことが想定されます。それだけに、その判定は慎重に行う必要があり、判定期間は六カ月以内と特に限定せず、ある程度の判定期間の延長をできる仕組みというものを取り入れるなど、柔軟な対応をすべきだというふうに私ども考えます。

 どうして判定期間を六カ月と限定されたのか、参議院での議論もありましたけれども、改めて御答弁をお願いします。

加藤副大臣 本法案は、生態系等に係る被害を防止するための厳格な規制を課するものでありまして、本法の保護法益以外の公益や私権、そのバランスを慎重に図る必要があると思います。

 こういった基本的な認識と同時に、今御指摘の点になってくるわけでありますけれども、未判定外来生物が生態系等に及ぼす被害の有無については、主務大臣が専門家の意見などを聞いて判定する、そういうことに考えております。

 ただ、判定に当たりましては、専門家による外国文献の収集、分析、あるいは海外の専門家との意見交換、あるいはパブリックコメント手続、それから輸入規制に係るWTOに基づく通報手続、そういったものなどに要する時間が必要になるわけでありますが、これらにかかる時間などを考慮しても、六カ月間ぐらいが適切な判定を行うために妥当な期間であろうというふうに考えておりまして、機敏な対応という観点からもこの期間で積極的に対応を図っていこう、こういった考え方になっているわけでございます。

田島(一)委員 その六カ月という期間の中で危険性が証明できない場合、そういう外来生物については輸入を認めるというようなことにでもなろうものなら、今後大きな問題を引き起こすのではないかというふうに私どもは考えます。

 参議院の議論を見ていても、多分これは何度やっても同じような結論になろうかというふうにも思いますが、ただ、本当にこの六カ月というのが逆に足かせになって、慌てて輸入を認めてしまったというようなことで問題が引き起こったときは、環境省が責任をとるというふうに私どもは理解をしてよろしいでしょうか。

加藤副大臣 そのとおりでございます。

 十分そういった面については機敏に対応すると同時に、慎重な議論も踏まえながら考えていかなければいけない、このように考えております。

田島(一)委員 わかりました。

 続きまして、重要管理地域の指定についてお尋ねをしたいと思います。

 中環審の答申の中で、「外来種対策に関する措置の在り方」の「制度化に当たり検討すべき事項」の中には、生物多様性の保全上の重要な管理地域に関しては別途特別な外来種対策が必要というふうに記述をされています。しかし、本法案においては、この重要管理地域の指定及び当該地域における外来種対策を講ずるための施策というものは残念ながら見送られてしまいました。

 どうして見送られたのか、その理由をお聞かせいただきたいのと、あわせて、固有種それから希少種が数多く生息し、生物多様性保全上の重要な地域、例えば小笠原諸島であるとか南西諸島、そういった地域における外来種対策について、具体的に政府はどのような方策を講じられるのか、お答え願います。

小野寺政府参考人 今回の外来種法は、外国から入ってくるものを専ら取り締まるということを目的にするというのが考え方であります。その上で、国内移動のものについては既存の保護法制度、具体的には自然公園法とか鳥獣保護法になりますが、その中で対応が可能だし、場合によっては充実強化をして対応することが法制度上合理的であるという判断に立ったというふうに考えております。

 それから、御指摘の奄美、小笠原について、これまで既に国や関係機関によって、マングース、アカギというのは植物でありますけれども、ノヤギなどの駆除を進めておるところであります。これを引き続き推進したいというふうに思っておりますし、また、重ねてになりますが、自然公園法の政令改正をするということも今事務的に準備中であります。こういう既存の制度を使って的確に対応してまいりたいと考えております。

田島(一)委員 せっかく小委員会の方でも適合する候補地まで示されたわけですから、本当ですと、指定ガイドラインみたいなものをおつくりいただいて、その思い入れというものを具体的にやはりあらわしていただきたかったというのが私どもの思いであります。

 ちょっと質問の数が多いので、先を急がせていただきます。

 次に、特定外来生物、未判定外来生物の輸入規制についてお尋ねをしたいと思います。本法案の最大の問題点というふうにも私どもは考えておりますので、参議院での議論もございましたが、改めて確認の意味でお尋ねをいたします。

 この輸入規制は、外来生物を幅広く指定することで、外来生物の輸入が限られるホワイトリスト方式に近い運用が可能ではありますけれども、一方では、特定外来生物及び未判定外来生物を限定して指定することで、指定されない外来生物が自由に輸入されてしまう、いわばブラック方式にも運用が可能であります。

 四月八日の参議院の環境委員会で副大臣が、未判定外来生物は、「特定外来生物と生態的特性が比較的似ている生物の中から、生態系等に被害を及ぼす疑いのある生物を一定のグループごとに選定することを想定している」と答弁をされています。

 つまり、特定外来生物と似た生物グループにいわば限定して輸入を規制することであり、よくわからない未知の外来生物にむしろ通行手形を公に発行してしまうような、そんな法律として運用される危険があるやに感じております。

 こうしたブラックリスト方式による運用で、外来生物を規制する法律どころか、逆に未知の外来野生生物輸入促進法として誤った方向へ進む危険性があるのではないかというふうに感じますが、大臣、どのように御理解していらっしゃいますか。

小池国務大臣 その御懸念はないと思います。

 まず、いわゆるホワイトリスト方式でございますけれども、生態系に影響がないということが明らかな生物をまず指定する、これ以外の生物の輸入などは原則認めない、こういう方式でございます。

 この法案でございますが、生態系などに被害を及ぼすか、または及ぼすおそれがあるという外来生物を特定外来生物として定めて、そして、特定外来生物と生態系が似ているグループに属します外来生物について、未判定外来生物としてその種属であるとか科などの単位で指定をして輸入制限を行うこととしているわけでございます。

 つまり、この法案におきましては、生態系などに対する影響があるもの、あるいはそのおそれのあるものについては、幅広くかつ迅速に規制の対象とすることが可能な仕組みである、このように考えております。

田島(一)委員 先日の岩槻参考人が、ブラックリスト方式による運用を一概には否定できないといったような趣旨の発言もございました。本当に、解釈一つではこれはちょっとやばいんじゃないかなと私どもは思っております。

 五年後に見直すなんてこともお考えなのかもしれませんけれども、この幅広い運用についてのコメント、たしか十五日、小野寺局長も答弁で、「グレーの種については運用上広く特定、未判定を取ることによって基本的には回避されるというのが我々の考え」だというようなコメントをなさっていらっしゃいます。その一方では、先ほど副大臣の御答弁も引用したんですけれども、一体どれが政府の方針なのか、非常にあいまいに感じてしまうわけであります。

 参議院での答弁を見ていると、それぞれの方のおっしゃっていることが随分温度差があるように思うんですけれども、もう一度きちっと整理をできる御答弁をいただけないでしょうか。

小池国務大臣 今御答弁させていただいたのが最終的な答弁でございまして、衆参のそれぞれの答弁の違いというのは、時間軸のとらえ方であって、何ら変わるものではないと考えています。

田島(一)委員 この議論をずっとやっていたら、あと一時間ぐらいあっても足りないと思うんですけれども、わかりました、今大臣がおっしゃったことが基本だというふうに御理解をさせていただいて、この先進めていきます。

 次に、輸入者に対するリスク評価の部分なんですけれども、未判定外来生物を輸入しようとする者は、種類その他の事項を届けることになっております。みずからの責任において生態系等の被害に係るリスク評価資料を提出するということには残念ながらなっておりません。

 遺伝子組み換えの生物等の規制による生物の多様性の確保に関する法律では、開発者または輸入者等に生態系影響評価表というものを作成し、主務大臣の承認を受ける義務というものが課せられております。なぜこの法案ではリスク評価に伴う資料の提出というものを義務づけられなかったのでしょうか。

 例えば、申請に伴う手続処理の費用、何よりも審査の費用など、どうして国が負担をしなければならないのか。一部の輸入者の経済活動のために国がそれを肩がわりするというのは何かおかしいというふうに私どもは考えるんですが、いかがでしょうか。先日の吉田参考人の御意見等も踏まえて御答弁をいただけたらと思います。

加藤副大臣 これは、未判定外来生物を輸入しようとする者に対しては、本法案に基づく届け出手続の中で、未判定外来生物の種類に関する情報のほか、その生態特性に関する情報などを提供することを考えているわけであります。ですから、輸入者にも一定の負担を課すということになるというふうに我々はとらえているわけでございます。

 しかしながら、その生態系等に係る被害防止を図るのは一義的には国の役割でありますし、未判定外来生物が生態系等に係る被害を及ぼすおそれがあるか否かは、やはり専門性あるいは公平性の観点から主務大臣が判断すべきものと考えているわけでございます。

 ですから、提出する方々がみずから評価したアワスメントのような形になってはいけないということも考えながら、そういう懸念を排除することに基づいて考えている部分もございますので、こういった面についての御理解もぜひいただきたいと思います。

田島(一)委員 先日の参考人の意見をお聞きした中では、吉田参考人が、ニュージーランドでは三十万円という申請費用を取っているということを御紹介いただきました。このことによって、ニュージーランドでは外来生物の輸入の試みが、輸入が随分激減したというふうにも聞いております。

 果たしてこの日本で三十万円という費用が適当かどうかは議論が必要なところかもしれませんが、それなりにこの申請者に対して費用負担を課すことによって、実質的な防除効果もしくは輸入に対するハードルというものを設定することによってかなり効果が期待できるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤副大臣 今申し上げましたように、そういう情報等に関してあらゆる努力して、最大限努力していただいて関連の情報を出すこと、それ自体が私たちは費用というふうに考えているわけでございますので、改めてこういった点についての御理解をぜひいただきたいと思います。

田島(一)委員 輸入業者がどれだけの情報収集ができるか、学者等でもなかなかわからないようなものを本当に情報収集として行い、また提出できるのかどうか、それは本当に甚だ疑問でもあります。水かけ論になりそうなので、今の質問についてはもうこの程度にとどめさせていただきたいと思います。

 次に、新たな科学的知見の充実が図られた場合の対応についてお伺いをしたいと思います。

 輸入が許可された日以降における新たな科学的知見の充実等により、生態系等に被害をもたらすことが明らかになった場合、その輸入、飼養等の中止を命じるということ、私はこれが適当だというふうに思うんですけれども、いかがお考えですか。

小野寺政府参考人 考え方としては、明らかになった段階で特定外来生物のリストに載せる、それをできるだけ速やかにやるということだと思います。

田島(一)委員 リストに載せるということは、輸入とかはもう中止の命令を下すというふうに理解してよろしいでしょうか。

小野寺政府参考人 時間的な問題があります。手続を経なければいけませんので、にわかに発効できるということにはならないと思いますが、できるだけ速やかに規制が及ぶようにするということです。

田島(一)委員 その規制というのが輸入、飼養の中止だというふうに理解をさせていただきます。

 では次に、特定外来生物の防除につきましてお尋ねをしたいと思います。

 防除を行うに当たっては、中環審の答申でも記述されているように、関係行政機関、専門家、そして利害関係者等、それからまた地域の関係者の合意形成を図る仕組みが必要だというふうに思います。

 政府は、この防除に関してどのような合意形成を図られようというふうに考えているのか。大臣は、関係都道府県の意見を聞いて、対象となる特定外来生物の種類、それから防除を行う区域、期間、それから防除の内容等を定めて公示しなければならないというふうに規定されていますけれども、政府のこの合意形成に係るお考え方をお聞かせください。

小池国務大臣 合意形成については大変重要だというふうに認識をいたしておりまして、実施状況のモニタリング、そして関係者間の合意形成、これについて可能な限り実施する方向で今後検討していきたいと思っておりますし、また、その旨については基本方針に盛り込んでいく考えであります。

田島(一)委員 やはり現場の声というものが一番大きな指標になろうかというふうに思います。どうぞその辺、漏れであるとか抜かり等がないように、しっかりとした基本方針をお酌み取りいただくように御配慮いただきたいというふうに思います。

 次に、先ほども質問にも上がっておりましたけれども、特定外来生物指定前からの飼養の外来生物の取り扱いについてお尋ねをしたいと思います。

 本法律案は、公布の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するということになっております。施行前から特定外来生物をペットとして飼養している者は、指定前に当該生物を遺棄、放出する可能性が想定されます。例えばカミツキガメであるとかアライグマなどは、個体登録が行われる前に野外に放つ人がふえるのではないかというふうに危惧しております。

 本法律が通ったがゆえに、逆に国内で飼われていた外来生物が一挙に放出され、かえって我が国の生態系が攪乱される可能性すらあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。例えばニュージーランドで、あらかじめ受け入れ先としてのシェルターを用意するとか、そういった受け入れ体制を事前に整備して臨むべきだというふうに思うんですけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。

小野寺政府参考人 既に飼っているペットが特定外来生物に指定された場合には、そのような問題が非常に危惧されるところであります。

 したがって、一定の施設、管理が可能な者については許可をするということにしたいというふうに考えていますが、一方で、御指摘のような懸念も考えられるところであります。

 あわせて、同時並行的でありますけれども、国が、そうなったらもう飼い切れない、そんな立派な施設をつくれないというような人に対しては、あっせんのためのネットワークをつくるなり、直接紹介をするなりということもあわせて検討したいと思っております。

田島(一)委員 この罰金額だとかを見たときに、恐らく飼っている人たちはもうびびっちゃって、絶対に逃がすというふうに私たちは想像するんです。そうなってからでは手おくれなんですよね。逆に、外来生物の被害を防止しようという法律だったのが、それを助長することにもなりかねない。そこのところの対策をしっかり立てておかないと、本当にとんでもないことになると思いますよ。

 例えば、どういう形で広報活動をしていくのか、もしくは飼い主の放出に対して何をしなきゃいけないのか。例えば、飼い主の方々がどうして逃がすのかというその原点にやはりもう一度立ち返らなきゃいけないと思うんですね。自分がずっとかわいがっていた動物、だけれども、とてもじゃないけれどももうこれ以上飼えない。では、どうすればいいか。

 アメリカなんかでは、自分の目の前で飼い犬をずどんと撃っちゃって処分して、それで引っ越しをしていったりしている現状があるわけですよね。でも、日本人にそのようなことはさせるわけにもいかないし、できないでしょう。だから、自分の力で生きろよといって、みんな逃がしていくんですよ。だから、今こうやって被害がどんどんどんどん大きくなってきている。

 ということは、そういったシェルター等でしっかりとした体制を整え、そして、苦痛を伴わない殺し方をするんですよということを、より多くのペットの飼い主とかに広報していかなきゃいけないと思うんですけれども、そういうことも踏まえて体制を整えていかないと、この法施行間際で一斉に逃がし出すということは本当に心配されると思うんですが、もう少しその辺に対して誠意あるお答えをいただけませんでしょうか。

小野寺政府参考人 動物、野生生物保護、ペットの扱いというのは、先生がおっしゃったように非常に人間の感性そのもの、あるいは文化と非常に深くかかわっている部分があって、我々のように自然保護をずっとやってきた人間からいいますと、特に鳥獣野性生物に関して言うと、科学的な判断をするということと、情緒的にかわいいのでちょっと目の前で殺したりなんかするのは嫌だということが、実はかなり大きな混乱の原因になっている面があるというふうに思います。

 かわいいということは素直でありますし、そこは大事にすべき人間の感性だというふうに思いますが、それが実際に、もうちょっとリアルな調整を現場が行う場合には、しばしば合理的な判断ができない結果になってきたということも一面で否定できないんだと思うんですね。

 そういうことをあわせて考えていく中で、我々が考えております科学的、かつ、この辺がまあ行政というか、つらくてもやらなきゃいけないことだよということは、一方でしっかり説明しながら、ただ同時に、先ほどの御質問にもあったように、あっせんのためのネットワークなり仕組みなりというのを、行政としてはその責任の中で検討してつくっていくということが重要だと思っております。

田島(一)委員 あっせんの仕組み、ネットワークとおっしゃいましたけれども、あっせんというのは、受け入れる人があって初めて、その取引といいますか、移動が可能になるかと思うんですね。では、その受け入れ先というのが本当にあるのかどうか。例えば、カミツキガメなんて、どこの動物園だってもう受け入れられませんと言っているんですよね。にもかかわらず、カミツキガメをまだ飼っている人がいるんですよ。では、その人が逃がしたら、一体どこにあっせんするんですか。

 そのあっせん先が全くないような状況、もう飽和状態の中で、それにもかかわらずあっせんします、そのネットワークをつくりますといっても、これはどう考えたって限界があるような気がするんですけれども、もう一度、そのあっせんとおっしゃるその先のことをお答えください。

小野寺政府参考人 必要に応じて殺処分ということも考える必要があると思いますし、動物愛護なりの考え方からしますと、できるだけそういうことにならないように、欲しい方と、逃がしたい、管理できないという人がいれば、その間をむしろ国なり行政が前面に出てお世話をするというのが基本的な考え方ではないかと思います。

田島(一)委員 わかりました。

 やはり一時保護的なシェルターというものを一定用意しておかないと、なかなかそのタイムラグを埋めることは非常に難しいかと思います。どうぞその辺については、この先問題が必ず起こってくると私は予想しておりますので、そういうことのないようにくれぐれも十分な対策をしてください。

 次に、地方公共団体等に対する防除費用等の補助についてお尋ねをしたいと思います。

 防除を行うには、事前の調査も含めて相当な経費が必要になろうかというふうに思います。本法案においても、防除費用を担保する予算措置というものが十分に講じられているのかどうか甚だ疑問であります。

 平成十六年度の予算の中でも、移入生物対策費として計上されているのはわずか一億三千二百万円であります。政府主導で防除を行うこの予算額で果たして十分な予算措置が講じられるというふうに言えるのかどうか。私は、とてもじゃないけれども足りないというふうに思います。

 地方公共団体においても、特定外来生物の防除を行うには国からの経費の補助が必要で、NPO等が防除を行うについても、それはもう費用的なことから考えたら非常に困難なことであります。国内の生態系の被害の防止は広域行政でやらなければならないものでもありますし、国が責任を持って防除計画というものを策定し、必要な経費を負担しつつ、地域の実情というものをしっかりと見て、都道府県が防除の実施を行うのが何よりも適当だというふうに思うわけですけれども、どのようにお考えでしょうか。

小池国務大臣 防除の費用、地方公共団体に対してはいわゆる補助ということになるんでしょうか、要望があることはよく認識をいたしております。

 また、政府の方も、人員、予算についても適切な増員、増額が必要かと考えております。一億三千万というのがその前は八千万だったわけでございまして、ぜひ、予算のシーズン、与野党の皆様方、大いにこの点でも御支援をいただきたい、このように思っているところでございます。

田島(一)委員 私、先日、奄美へお邪魔をしてマングースの駆除の現場を見てまいりました。関係者が一様におっしゃるのは、もう予算がないということばかりであります。おおよそ概算的なんですけれども、奄美大島でマングースを完全に駆除するためには、恐らくこの先十四、五年はかかるだろうというふうに専門の方からも意見を聞きました。では、十四、五年間、一年間ぐらいで大体幾らぐらいかかるんだろうかねというような話をしましたら、二億円ぐらいは必要でしょうねというお話であります。十五年間掛ける二億円、これだけの予算を確保しなければ、この法律は全くざる法にしかならないということを私は痛切に思いました。

 この予算を確保する自信と覚悟がおありかどうか、大臣、もう一度覚悟のほどをお聞かせください。

小池国務大臣 ぜひとも、野党の皆様も御支援いただきたいと思います。

田島(一)委員 私どもは精いっぱい応援しますよ。大臣としての覚悟を聞いているんですよ。その辺をお聞かせください。

小池国務大臣 ぜひとも、皆さんの御支援を得て頑張りたいと思います。

田島(一)委員 頑張りましょう。やはり、大臣としての自覚をもうこれ以上にお願いすることはございません。

 次に、非意図的な外来生物の導入についてお伺いをしたいと思います。

 この外来生物、先ほどからも話がありましたけれども、必ずしも意図的に導入されたものばかりではございません。人や物資に紛れて、非意図的に昆虫であるとか植物がかなり導入されております。アルゼンチンアリであるとかセアカゴケグモ等はもう非常に有名でありますし、また、イッカククモガニとかムラサキイガイなんかはバラスト水に混入して随分入ってきております。

 参議院の環境委員会で、大臣が、外来生物の非意図的な導入についても、その導入経路、生息状況の調査を行う、また、港や空港などでの通報協力の検討を行う、防除措置の検討を行うというふうに前向きな御答弁をされていました。

 調査をそれ以降されてこられたのかというふうに思うんですけれども、この調査結果でどのようなことがわかり、この先どのような措置をおとりになられるとお考えなのか、お聞かせください。

加藤副大臣 今の御質問でございますけれども、目的を持って意図的に持ち込まれるのではなくて、人や物資に紛れて持ち込まれる特定外来生物、これについては、輸入や買うことなどの行為が伴わないために、やはり直接的に規制するということはなかなか難しい、困難である。しかしながら、こういった面については、非意図的導入の場合についても、やはり生態系等に対する被害を生ずるおそれがあるわけでありますので、十分な対応が必要であるというふうに考えているわけでございます。

 このため、先ほど委員の方から紹介がございましたけれども、導入経路や生息の状況についての調査、そういったことも今後行ってまいりたいと思っていますし、あるいは物資の運搬など非意図的な導入が生じやすい場所、先ほど空港の話も出てまいりましたけれども、その関係者に対しまして、外来生物を発見した場合の通報などについても協力を求める、そういった検討をやっていかなければいけないというふうに考えているわけでございます。

 こういった調査を含めまして、被害が確認された場合については、速やかに防除等の措置を検討していかなければいけない、こんなふうに考えているわけでございます。よろしくお願いいたします。

田島(一)委員 多分、まだ調査等は行っていらっしゃらない、この先のことだろうというふうに、ちょっと残念なんですけれども、ぜひ速やかな調査と、それから対応策をとっていただくように切にお願いを申し上げたいと思います。

 次に、他の動植物関係法令の罰則との整合性についてお尋ねをしたいと思います。

 本法案の三十二条において、許可なく特定外来生物の飼養等をした者や主務大臣の措置命令に違反した者は、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金、また、法人の代表者または法人の違反行為については一億円以下の罰金を科すということ、これは、これまでの動物関係法令の罰則より随分高く設定をされました。

 一方、種の保存法における希少野生動植物の譲渡などの規制違反や国内希少野生動植物種の個体等の輸出入規制違反に対する罰則、これはいずれも一年以下の懲役または百万円以下の罰金であり、もう一つ、鳥獣保護法においては、輸入規制違反に対しては一年以下の懲役または百万円以下の罰金というふうに非常に軽くなっております。動物愛護法に至っては、愛護動物を遺棄したら、わずか三十万円以下の罰金に処されるのみというふうになっております。

 余りにもこの罰則の差があろうかというふうに思うんですけれども、この他の動物関係法令等についても、本法律案と同等の処罰内容を検討しなければならないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

小野寺政府参考人 外来種法の罰則は、これまでの自然保護関係の法制度の中では相当強いものであるというふうに、案をつくった我々も感じております。

 御指摘のその他の法令についてどうするかというのは、実は、法律が何を目的として、効果が、社会的利益が何が得られるかということとの関係の中ですので、一概に、どの法律も一律横並びで、外来種法が突破口を開いたのでこのレベルに合わせるということを申し上げるのは適当ではないと思いますけれども、おおむねその方向で、厳しい方向に推移するのではないかというふうに考えております。

田島(一)委員 御苦労いただいた御答弁でありましたけれども、法律によってその罰則の差がこれだけ大きく開いてくると、当然抜け道みたいなものを探る悪徳業者、悪徳者みたいなものが出てくる可能性がやはりあります。罰則を強化すればすべて事が片づくとは当然私も思っておりませんが、関係法令で大きくこの差がつこうとしているこの状況をどうぞ十分に勘案していただいて、他の法令、法律の罰則内容の見直しに着手していただきたいと思いますが、再度、確認の答弁をお願いします。

小野寺政府参考人 先ほど申し上げました法律の目的、それによって得られる社会的利益を勘案して、今後の検討課題とさせていただきます。

田島(一)委員 期待をしております。

 次に、財務省にきょうはお越しをいただきましたので、税関職員の体制強化につきましてお尋ねをしたいと思います。

 特定外来生物等の輸入規制の実効性を高めていくためには、まず通関時における監視体制の充実が非常に重要になってくるかと思います。一たん国内に移入された外来種を防除するよりも、水際での移入、侵入を防いだ方がその防除効果というものが非常に高く、費用の面でもすぐれているかというふうに思います。

 そこで、外来生物の移入に対して、税関職員等の研修の強化、また税関と環境省及び専門家等との連絡体制の整備、識別情報のデータベース化、輸入時の監視体制を強化するといった必要があろうかというふうに思いますが、いかがでしょうか。財務省、お答えをお願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案で規定されております特定外来生物、これは主務大臣の許可を受けた者でなければ輸入することができないこととされておりますし、また、外来生物の輸入に際しましては、一定のものを除きまして、外国政府、外国の政府機関が発行した証明書等の添付が求められております。税関におきましては、関税法第七十条の規定に基づきまして、当該証明書等を確認することになるわけでございます。

 財務省、税関といたしましては、こうした業務に的確に対応すべく、税関の人員及び予算につきましては、今後の業務量を見きわめた上で適切に対処いたしますとともに、税関職員の専門知識の向上につきましては、今御指摘のありました研修でありますとか、あるいは環境省等と連携しながら、規制されることとなる外来生物の識別情報を含めまして、外来生物に関する資料等を例えばデータベース等の形で整備してまいりたいと考えております。

 また、関係行政機関、専門家等との連携につきましては、環境省と税関の担当者間の連絡体制を整備いたしまして緊密な連携を図るとともに、環境省等と連携いたしまして専門家の知見等を活用してまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、税関といたしましては、今申し上げたことを踏まえまして、外来生物に係る輸入規制の実効性の確保に努めてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 長々とどうもありがとうございました。

 実は、参議院の環境委員会で草刈参考人が、ニュージーランドでビーグル犬がこの水際での防止に一役を買っているという御紹介をいただきました。日本でも今、麻薬犬としてラブラドールとかが活躍していると思いますけれども、いわゆる生肉だとか生き物に対して非常に嗅覚の高いこのビーグル犬が、水際防止に一役を買っているというふうに聞いたんです。だからといって、すぐ日本で導入しろというのはなかなか難しいかもしれませんが、一定、こういった導入例等を参考にしながら、今後、日本でも、水際で税関職員の嗅覚に頼るわけにもなかなかいかないというふうに思いますので、何らかの形で防ぐための対策をとるべきだというふうに思うんですが、ビーグル犬の導入について調査研究を進めるお考えはおありかどうか、簡潔にお答えください。

藤原政府参考人 今ビーグル犬につきましてお尋ねがあったところでございますけれども、農林水産省からは、オーストラリアあるいはニュージーランド、アメリカ等におきまして動物検疫上の観点から検疫犬が導入されていることを承知しており、外来生物の摘発にも検疫犬が活用できるという情報等があれば、農水省としましても関係機関に提供する用意があると伺っております。

 財務省、税関といたしましては、これも踏まえまして、外来生物に係る輸入規制の実効性をどのように確保していくかにつきまして、環境省等と相談、連携しながら実効性の確保に努めてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 時間もなくなってまいりました。最後に、国の防除行為が招く環境破壊の可能性について、大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。

 防除によって、在来種への被害というものが逆に国にとって新たな問題として引き起こす可能性があるというふうに実は考えます。生態系に既に組み込まれた移入種の駆除を安易に行うと、むしろ逆効果が生じる可能性がある、そんな報告もいただいております。

 日本生態学会が発行している「保全生態学研究」に掲載された「群集動態を考慮した生態系管理の課題と展望 奄美大島における外来種問題の事例」という論文を引用させていただくと、アマミノクロウサギを保護するために移入種のマングースを駆除すると、移入種のクマネズミがふえて別の悪影響を生じさせる可能性があるという例、ほかには、移入種のブラックバスを駆除すると、移入種のアメリカザリガニがふえて、逆にそのことで水草が減り、トンボが減るという可能性がある、そんな例を指摘していらっしゃいます。

 こうした移入種対策が生態系をさらに攪乱することになれば、この法案が持つ本来の目的というものが本末転倒になってしまうような気がいたします。国の防除に対する評価システムというものをやはりここで急いでつくっていかなければ、防除に伴う生態系破壊を行ってしまう可能性がぬぐえないというふうに思いますが、いかがお考えでしょうか。

小池国務大臣 今御指摘がありましたような副次的な影響については、専門家の意見を聞きまして事前に検討して、そして適切に防除を進めていく必要がある、このように考えておりますので、その旨については、特定外来生物被害防止の基本方針などで明らかにしてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 もう質問終了の時間が参りました。

 最後に、この法律を通じて、この先、日本での防除が本当にきちっとなくなるというふうに確信ある決意を大臣から一度お聞かせをいただきたいと思うんですが、それをぜひ承りまして、この先の審議を終わらせていただきたいというふうに思っております。

小池国務大臣 まずは本法案をぜひとも通していただきたい、このように思っているところでございます。

田島(一)委員 お願いで終わりましたけれども、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小沢委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 まず、本案とは若干外れますけれども、地球温暖化の現状について、冒頭お伺いしたいと思います。

 最近の新聞記事等を見ますと、地球温暖化の我が国の目標の達成はなかなか厳しい、こういう記事のオンパレードでありますけれども、このことで、十八日に政府の会も、また審議会の合同会議もあったようでありますけれども、この件についての大臣の現状の認識とこれからのお考えと、お伺いしたいんです。

 それと、これは新聞記事でありますけれども、大臣が、今回の会合、これは政府の会合でありますけれども、「温暖化対策税を含む大胆な追加対策検討のキックオフになった」、こういう記事が一紙だけ出ておりましたけれども、その点もあわせてお伺いをいたしたいと思います。

小池国務大臣 このところ、報道でもされておりますように、二〇〇二年度の我が国の温室効果ガスの総排出量が九〇年度比で七・六%増加ということになりまして、さらに増加の量がふえてきているということでございます。京都議定書の六%削減の約束を達成するためには、マイナスの分とプラスの分を合わせまして、また吸収源対策を含めまして一三%強の削減が必要ということで、残念ながらハードルは高くなる一方でございます。

 今、中央環境審議会で地球温暖化対策推進大綱の評価を行っている最中でございますけれども、その結果として、現在の対策のうちで確実に削減量を見込めるもののみを前提といたしますと、今後も精査することになる暫定値ではございますが、二〇一〇年における排出量は、九〇年の排出量から四%程度の増加ということになります。これを吸収量も勘案をいたしますと、六%削減約束の達成のためには追加的な対策が必要である、このように評価されているところでございまして、万全を期すべく、新しい追加的な対策の検討を行っていく必要があろうかと考えております。

 審議会の方では、今後、追加対策の検討を進めることとしておりまして、その結果を踏まえまして、政府全体として、今やっている対策の実効性を高めるということと同時に、さらに実効性のある追加対策を導入するということで、議定書の削減約束の達成は確実なものといたしたい、このように思っております。

 せんだってのキックオフの会合というものは、これは地球温暖化対策推進本部でございまして、総理の御指摘を踏まえて、各省が連携をした取り組み、そしてまた政府としての率先した取り組みを進めてまいる、その意味でのキックオフでございます。

石田(祝)委員 それでは、本題に入りたいと思います。

 今回の法律の、特に目的で何点かお伺いをしたいんですけれども、特にその中で第一条のところでありますけれども、ここで「生物の多様性の確保」また「人の生命及び身体の保護」、これはよくわかるんですけれども、ここでは「農林水産業の健全な発展に寄与する」、こういう文案が入っているんですね。これは農林水産業という業という形で書かれておりますけれども、これは、業として行っている組織とか人、こういうものを保護する、こういう意味なんでしょうか。

加藤副大臣 海外から導入される外来生物の中には、生態系や人の生命、身体に被害を与えるだけではなくして、アライグマのように農業に被害を出している外来生物がいるわけでありまして、その問題点が指摘されているところでございます。いわゆる農業被害ということになるわけでありますから、これは、本法案の中では、特定外来生物による被害を防止するための対策を行うことを通じまして、結果として農林水産業の健全な発展に資すること、これが目的である、そういうとらえ方をぜひしていただきたいと思います。

石田(祝)委員 それで、ちょっとさらにお伺いをしたいんですが、今回、外来種の被害という形で、それを防止することによって「農林水産業の健全な発展」と。私どもはここをちょっとこだわっているのでありますけれども、こういう形になっておりますけれども、これは、ちょっと見方を変えてみますと、この法律そのものが、外来種からの被害を防止する、こういうことでありますから、それは今回の法律としては、そういう書かれ方は当然でありますけれども、本来、この農林水産業の被害という形に考えてみますと、これは外来種というよりも、いわゆる在来の鳥獣被害の方がもっともっと大きいんじゃないか。

 ここの被害についてももっとしっかりと取り組んだ上で、なお外来種の被害についてもと、私はこれが本筋だろうと思うんですけれども、これは、在来種による被害と、また鳥獣保護の観点から少々お聞きをしたいんですけれども、この在来、外来、こう分けられれば分けて教えてもらいたいんですけれども、鳥獣による被害の現状、これについてはどういうふうになっていますか。

小野寺政府参考人 鳥獣被害は高い水準で、どちらかというと横ばいで推移しているというふうに思っております。

 例えば、イノシシなどの在来の獣類による被害額というのは、年間で全国ベースで百二十億円程度というのが我々が把握している数字であります。このために、十一年に鳥獣保護法を改正しまして、被害を及ぼしている鳥獣を計画的にとれる仕組みというのをつくっております。例えばイノシシについて言いますと、現在で三十七道府県、五十七計画が策定されておりますし、二十府県、二十一計画の策定を予定しているところであります。

 鳥獣の被害対策に関して言えば、計画的な対応が一つでありますし、だれがとるという問題もあって、これは狩猟免許を持っている人が実は実数が減ってきております。それが問題の大きな原因にもなっておりますので、狩猟者をどう確保するかということについて、税制改正の要望もしておりますし、また、新しい仕組みをつくるべくいろいろな検討をしているところであります。

 さらにもう一つの要件は、被害を防ぐには、例えば防護さくを整備するというようなことも有効な手段であります。これは農水省が中心でありますけれども、関係省庁と議論をしながら、その対策も進めてまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 ちょっと局長、お伺いしたいんですが、農林水産業、特に農林業だと思うんですけれども、この鳥獣被害、在来種といわゆる外来、今回、目的で農林水産業の被害を防止する、こういう書き方をしているんですけれども、これは漠とした数字で、在来と外来というのはどっちの方が、何対幾つぐらいの被害になるんですか。

小野寺政府参考人 在来種の農林被害については、ある程度数字、今申し上げましたようなものがあるんですが、外来種の被害については、定量的なものは今のところ持ち合わせておりません。

 しかしながら、現状の中で推定するに、被害金額の積み上げという意味では、今現在の外来種による農作物被害というのは、ちょっと問題にならないぐらい低いのではないかと思います。

石田(祝)委員 ですから、これはこの外来種を、生態系の観点もあるので、農業被害だけはもちろん言えないんですけれども、やはりこの目的のところに農林水産業、こういうことで書かれておりますので、今回の法律を一つの契機として、在来種の鳥獣被害、これについても、私のところなんかに来るのは、やはりイノシシ、猿、シカですよ。そのほかのもので言われたことはありませんで、ますますひどくなっているというのが現状なんですね。ですから、こういう形で外来種を一つのてこにして、いろいろな生態系を守るとか農林水産業の健全な発展に寄与する、こういう形でありましたら、今回のことを一つのきっかけにして、在来種による被害も、これはしっかりと取り組むべきではないか、こういうふうに私は思っております。

 それで、今回、今局長の御答弁にありましたけれども、外来種による被害は問題にならないぐらい低い数字だろう、こういうお話でありましたけれども、実は規制することによって、逆に農林水産業に、ある意味で言えば、現状においてはマイナスの影響が出てくる、こういうものも私はあろうかというふうに思っております。

 特に、今お触れになった方もいらっしゃいますけれども、温室でトマト、またナス、そういうものに対する受粉の際に使用されているセイヨウオオマルハナバチ、この件でちょっとお伺いをしたいんですけれども、現在、このハチを使って受粉等をさせている対象作物、また使用数量等はわかりますか。

染政府参考人 セイヨウオオマルハナバチは、約二千七百ヘクタールの野菜施設でトマト、ナスなどの受粉作業に利用されております。特にトマトの施設栽培、これは約八千ヘクタールございますが、この施設栽培におきましては、その三割の二千六百ヘクタールでセイヨウオオマルハナバチが利用されておるという現状でございます。また、出荷数量は、巣箱数で平成四年で約二千五百箱程度であったものが、平成十五年には約七万箱に増加しております。

 先生御指摘のように、セイヨウオオマルハナバチは、トマトを中心といたしました施設園芸におきまして、労力の軽減であるとか、あるいはホルモン剤の代替等に大変大きな役割を果たしております。そういう意味では、農業の利用上極めて重要なものだというふうに私ども考えておる次第でございます。

石田(祝)委員 ですから、先ほど小野寺局長の御答弁では、いわゆるセイヨウマルハナバチという外来種、これを含めてのお話だろうと思いますけれども、農林水産業に対する被害は比べ物にならないぐらい小さいと。そういう中で、現状、中央環境審議会でも、このハチについて、いろいろと在来種に影響がある、こういう指摘も、もう名前を挙げて出されておりますよね。

 そういう中で、この第一条の目的で、「農林水産業の健全な発展に寄与する」、こういうとらえ方の中で、規制をする方がプラスになるのか、逆に、規制をすることによって、現状、そういう業に従事している人たちが受けている、享受している利益、こういうものを考えたとき、これはたちまちあしたから、これは外来種だからだめよ、こういう形で割り切っていけるのかどうか。ここは私は大変大事な問題だろうというふうに思っております。

 現実、七万箱ですか、それだけ使っている、こういうことになりますと、これは大変な大きな影響もある。そうすると、今回のこの法の本来の目的の趣旨に合わなくなってくるんじゃないか。これは、最終的には、法案が通った後に審議会で検討する特定外来生物に指定するかどうか、こういう問題があろうかと思いますけれども、これについて、私たちはきょう法案の審議が終わって採決までする予定でありますけれども、採決が終わったら、あとはもう環境審議会に任せて政令、省令で決めていただいたら結構です、こういう形にはなかなかならないわけですね。

 ですから、あとは全部任せますよということになると無責任になるものですから、ある程度の、そういう現実に業として営んでいる、また産業としても大変大事な位置づけをされている、それと、環境を守る、在来種を守っていく、この両方で、農林水産省と環境省、どういう形でこれを、ある意味で言えば決着をつけていくのか、こういうことは大変大事なことだろうと思っておりますけれども、これはそれぞれについて、現在のお考えをお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

加藤副大臣 環境省としては、生物多様性の確保、これを原則にしているわけでありますから、本法案の目的が十分に達成できるように、特定外来生物の規制を行っていく必要があると考えてございます。

 先ほどの質問に対する答弁も、特定外来生物ということで規制するというのは、やはりそれが生態系の方に出てしまって、農業生産物に対する影響だって当然、当然といいますか、マメ科の花弁について、それを物理的に破壊する等々、そういった懸念が言われているわけでありますから、そういったことが頻繁に起こるということを考えてまいりますと、やはり農業に対する被害を生じる可能性が十分ある、そういったことも当然考えなければいけないということだと思います。

 結果として、やはりこういった外来生物によってもたらされるさまざまな便益との調整、それから社会的な影響などについて、やはり個別にこれはならざるを得ないと思います。個別に慎重な検討をしていかなければいけないな、こういうふうにとらえているところでございます。

染政府参考人 セイヨウマルハナバチにつきまして、これを今後、特定外来生物等に指定していくかどうかという問題につきましては、中央環境審議会の中で、ただいまお答えがありましたように、在来のマルハナバチとの競合の問題、あるいは野生種の繁殖に影響を与えるとの懸念とか、そういうことが指摘されておる現状にあるわけでありますので、その辺をどう受けとめるかという問題だと思います。

 ただ、私どもといたしましては、やはりその辺の指定等につきましては、きちっとした科学的な知見に基づきながら指定をいただくというのが重要だというふうに考えておりますので、そういう方向で、今後、環境省とも御相談をしながらやってまいりたいというふうに考えておる次第であります。

石田(祝)委員 これは、だけれども、この法案の中は、残念ながら被害については共管になっているんですね。ですから、ちょっと難しいところもあろうかと思いますけれども、そういう使わないことによる被害ということについての共管ができるかどうか、私もちょっとこれは疑問な点があるんですけれども、大変大事な問題であるという認識でぜひお取り組みをいただきたいというふうに思います。

 質問を通知していたところがありますので、最後にお伺いしたいんですが、今回、いわゆる土地の立ち入りとかまた立木の伐採、それぞれの個人財産にも踏み込む、こういうことにもなっております。それと、飼育者の責任、トレースできる仕組みとか、こういうこともあわせて、今後どういうふうにお取り組みになるのか、最後にお伺いをしたいと思います。

小池国務大臣 他人の土地への立ち入りということでございますが、この法案では、他人の土地に立ち入って特定外来生物を捕獲したり、また捕獲の支障となる樹木などを伐採するということの規定を盛り込んでおります。このような行為に伴って損失を受けた方に対しては、その損失を補償することも規定をされているところでありまして、環境省としては、こうした規定に基づいて適切に対応をしてまいりたいというのが一点。

 それから、特定外来生物の飼養などの許可を受けた者に対して、許可を受けていることを明らかにするよう義務づけをしているところでございまして、その具体的な方法については、特定外来生物の種類に応じて、適切な方法を主務省令でもって定めるということにいたしております。

 例えば、よく言われますマイクロチップでございますけれども、これも有力な方法の一つと考えており、埋め込みが不可能な本当に小さな、微小な生物を除いて、脊椎動物全般を対象に埋め込みを義務づけたい、このように考えているわけでございます。

 余り小さなものなど、マイクロチップの埋め込みが難しい生物については、写真とかタグなどによる方法、これらも想定をしているということでございます。

石田(祝)委員 ありがとうございました。終わります。

小沢委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。田島一成君。

田島(一)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提案の特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法案に対する反対の討論を行います。

 外来生物問題が深刻さを増し、実効性ある対策を図ることが喫緊の課題となっております。私ども民主党は、昨年十月、参議院に民主党独自の外来種法案を提出し、さらに、今国会、内容に精査を加え、実効性ある法案を再提出いたしました。

 しかるに、政府が提出した本法案ですが、私ども民主党は、参議院での審議、本院及び当委員会でも、多くの問題点を指摘してまいりました。

 以下、政府提案の本法案に反対する理由について申し述べたいと思います。

 反対理由の第一は、本法案における外来生物の定義を海外から持ち込まれた外来生物種に限定していることであります。

 島嶼や自然保護区など、我が国における生物多様性の保全上重要な地域については、海外から導入された生物種に限定することなく、国内のある地域から自然分布域を越えて導入された生物種についても特定外来種に指定できる制度を整備すべきであります。

 例えば、沖縄北部の山原地域においては、ヤンバルクイナがマングースだけでなく飼い主から遺棄されたノネコによっても捕食され、絶滅の危機に瀕しております。マングースを特定外来生物に指定することによって本法案における防除等の対策を講じることができても、ノネコに対しては本法案の仕組みによっては対策を講じることができません。

 海外から導入された生物種に限らず、国内の自然分布域を越えて導入された生物種についても特定外来生物として指定できる仕組みを構築するべきであります。

 また、これらに関連して、生物多様性の保全上重要な地域においては、重要管理地域をして国内外から生物の持ち込みを禁止する地域を指定できるような制度を整備すべきであります。

 第二に、外来種対策は予防原則の観点から水際規制が最も重要であるにもかかわらず、本法案では極めて不十分なものであると言わざるを得ません。

 本法案では、生態系等に影響を及ぼすことが明らかな外来生物のみを規制する方法、いわゆるブラックリスト方式に近い考え方を採用しています。輸入しようとする外来生物が生態系等に係る被害を及ぼすかどうか不明である場合には、該当外来生物と生態系等に係る被害の因果関係が科学的に十分立証されていなくても、未然防止の観点から輸入を規制し、国内に導入してもリスクが少ないと判定された生物種以外はすべて規制の対象とする、いわゆるホワイトリスト方式を採用することが未然防止の観点から重要だと思います。

 第三に、本法案において、未判定外来生物が生態系等に被害を及ぼすおそれがあるか否かを判定する期間は六カ月以内と限定されています。

 北海道や神奈川県におけるアライグマの例からもわかるように、外来生物が導入されて直ちに被害をもたらすよりも、しばらくの期間は潜伏し、実際の被害に気がついたときには既に手おくれとなる、そんな場合も想定されています。

 こうしたことから、その判定は慎重に行う必要があり、判定期間を六カ月以内と限定せず、ある程度の判定期間を延長できる仕組みにするなど、柔軟に対応すべき旨を指摘させていただき、私の反対討論を終わらせていただきます。(拍手)

小沢委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小沢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大野松茂君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。長浜博行君。

長浜委員 私は、ただいま議決されました特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、公明党、社会民主党・市民連合及び民主党・無所属クラブを代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 特定外来生物の指定に当たっては、諸外国の知見や学識経験者の意見を参考にして、適切に指定を行うこと。また、被害に係る新たな知見が得られた場合には、特定外来生物への指定を検討すること。

 二 特定外来生物の防除の実施に際しては、防除を行う地域における在来生物の混獲等への配慮や危険なわなの使用を避け、在来生物の生態系に影響を及ぼさないよう努めること。

 三 海外から輸入される生物の種及び数量の実態把握に努めるとともに、関係府省間の連携に努め、特定外来生物が密輸入されることのないよう、水際対策を強化すること。輸入貨物への付着等によって、非意図的に導入される外来生物について、導入経路及び生育状況の調査並びに監視に努めること。

 四 本法実施に係る人員・予算の確保等必要な体制の整備に努めること。

 五 政府や自治体が行う緑化等の対策において、外来生物の使用は避けるよう努め、地域個体群の遺伝的攪乱にも十分配慮すること。

 六 外来生物対策の必要性について、広報活動、教育活動など様々な手段を用い、国民や動物取扱業者等の関係者に普及啓発・周知を徹底すること。

 七 国内由来の外来生物の問題については、自然公園法等の既存法令を活用した規制の強化などを行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

小沢委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小沢委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小池環境大臣。

小池国務大臣 ただいま御決議ございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力する所存でございます。

    ―――――――――――――

小沢委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.