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第1号 平成18年1月27日(金曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十八年一月二十日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 木村 隆秀君

   理事 宇野  治君 理事 加藤 勝信君

   理事 田島 一成君 理事 長浜 博行君

      井脇ノブ子君    石崎  岳君

      岩永 峯一君    岩屋  毅君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      篠田 陽介君    竹下  亘君

      とかしきなおみ君    並木 正芳君

      根本  匠君    馬渡 龍治君

      松浪 健太君    山本 公一君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      高井 美穂君    村井 宗明君

      吉田  泉君    高木美智代君

      富田 茂之君    江田 憲司君

      野田 聖子君

平成十八年一月二十七日(金曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 木村 隆秀君

   理事 石崎  岳君 理事 岩永 峯一君

   理事 宇野  治君 理事 加藤 勝信君

   理事 松浪 健太君 理事 山本 公一君

   理事 田島 一成君 理事 長浜 博行君

   理事 富田 茂之君

      井上 信治君    稲田 朋美君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      篠田 陽介君    杉田 元司君

      竹下  亘君    とかしきなおみ君

      並木 正芳君    西本 勝子君

      根本  匠君    馬渡 龍治君

      盛山 正仁君    岡本 充功君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      高井 美穂君    村井 宗明君

      吉田  泉君    高木美智代君

      江田 憲司君    野田 聖子君

    …………………………………

   環境大臣         小池百合子君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   環境副大臣        江田 康幸君

   環境大臣政務官      竹下  亘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  宮野 甚一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松井 一實君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小野  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       森山  寛君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           深野 弘行君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            竹本 和彦君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十七日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     杉田 元司君

  岩屋  毅君     井上 信治君

  木挽  司君     盛山 正仁君

  高井 美穂君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     稲田 朋美君

  杉田 元司君     西本 勝子君

  盛山 正仁君     木挽  司君

  岡本 充功君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     岩屋  毅君

  西本 勝子君     井脇ノブ子君

同日

 理事桜井郁三君及び西野あきら君平成十七年十一月二日委員辞任につき、その補欠として岩永峯一君及び山本公一君が理事に当選した。

同日

 理事大野松茂君平成十七年十一月二十四日委員辞任につき、その補欠として石崎岳君が理事に当選した。

同日

 理事石田祝稔君同月十九日委員辞任につき、その補欠として富田茂之君が理事に当選した。

同日

 理事宇野治君同日理事辞任につき、その補欠として松浪健太君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

一月二十日

 石綿対策の総合的推進に関する法律案(仙谷由人君外八名提出、第百六十三回国会衆法第二三号)

同月二十七日

 石綿による健康被害の救済に関する法律案(内閣提出第二号)

 石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 石綿による健康被害の救済に関する法律案(内閣提出第二号)

 石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――

木村委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事宇野治君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任による欠員のほか、委員の異動に伴い、現在理事が五名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に

      石崎  岳君    岩永 峯一君

      松浪 健太君    山本 公一君

   及び 富田 茂之君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

木村委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 環境保全の基本施策に関する事項

 循環型社会の形成に関する事項

 公害の防止に関する事項

 自然環境の保護及び整備に関する事項

 快適環境の創造に関する事項

 公害健康被害救済に関する事項

 公害紛争の処理に関する事項

以上の各事項につきまして、その実情を調査し、対策を樹立するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中調査を進めたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

木村委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、石綿による健康被害の救済に関する法律案及び石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。小池環境大臣。

    ―――――――――――――

 石綿による健康被害の救済に関する法律案

 石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小池国務大臣 ただいま議題となりました石綿による健康被害の救済に関する法律案及び石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 初めに、石綿による健康被害の救済に関する法律案について御説明申し上げます。

 石綿による健康被害については、国民の生命や健康に影響を及ぼすものであることから、すき間のない健康被害者の救済、今後の被害を未然に防止するための対応等を適切に実施していくことが必要であります。

 このため、平成十七年七月以来、政府部内においてアスベスト問題に関する関係閣僚による会合が開催され、同年十二月二十七日に開催された第五回となる同会合において、「アスベストによる健康被害者のうち、既存の法律で救済されない被害者を隙間なく救済するための新たな法的措置として、「石綿による健康被害の救済に関する法律案」を、平成十八年の通常国会の冒頭に提出するとともに、法案成立後はその速やかな施行に努める」こととされたところです。

 このような経緯を踏まえ、石綿が長期間にわたって我が国の経済活動全般に幅広くかつ大量に使用されてきた結果、多数の健康被害が発生してきている一方で、石綿に起因する健康被害については、長期にわたる潜伏期間があって因果関係の特定が難しく、現状では救済が困難であるという特殊性にかんがみ、石綿による健康被害者であって労災補償等による救済の対象とならないものを対象とし、事業者、国及び地方公共団体が全体で費用負担を行い、石綿による健康被害者の間にすき間を生じないよう迅速かつ安定した救済制度を実現するため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、労災補償等による救済の対象とならない者に対する救済給付の支給についてであります。

 石綿を吸入することにより指定疾病にかかった旨の認定を受けた者及びその遺族に対し、医療費、療養手当、葬祭料、特別遺族弔慰金、特別葬祭料及び救済給付調整金を支給することとし、その費用については、独立行政法人環境再生保全機構に石綿健康被害救済基金を設け、事業者、国及び地方公共団体が全体で負担することとします。

 第二に、労災補償を受けずに死亡した労働者の遺族に対する特別遺族給付金の創設であります。

 指定疾病等により死亡した労働者の遺族であって、労働者災害補償保険法の規定による遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅した者に対し、その請求に基づき、特別遺族年金または特別遺族一時金を支給することとし、その費用は労働保険特別会計労災勘定の負担とすることとします。

 なお、この法律は、一部を除き平成十八年三月三十一日までの間において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 引き続き、石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 石綿による健康被害に係る問題については、平成十七年七月以来、政府部内においてアスベスト問題に関する関係閣僚による会合が開催され、同年十二月二十七日に開催された第五回となる同会合において、「アスベスト問題に係る総合対策」が取りまとめられたところです。この間、すき間のない健康被害者の救済等とあわせ、今後の被害を未然に防止するための対応について関係各省において検討が行われ、大気汚染防止法、地方財政法、建築基準法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律の四法律について改正を図ることが、総合対策に盛り込まれるに至っております。

 このような経緯を踏まえ、石綿の飛散等による人の健康または生活環境に係る被害を防止するため、これら四法律を一括して改正する本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、大気汚染防止法の一部改正であります。

 石綿粉じんによる大気汚染の防止を徹底するため、石綿が使用されている建築物に加え、石綿が使用されている工作物についても解体作業等による石綿粉じんの飛散を防止する対策を義務づけることとします。

 第二に、地方財政法の一部改正であります。

 地方公共団体が行う公共施設等に係る石綿の除去に要する経費について、当分の間、地方債をもってその財源とすることができることとします。

 第三に、建築基準法の一部改正であります。

 石綿の飛散に対する衛生上の措置として、建築物は、建築材料に石綿を添加しないこと等の基準に適合するものとしなければならないこととします。

 第四に、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正であります。

 今後大量に発生することが見込まれる、石綿が含まれる廃棄物の迅速かつ安全な処理を促進するため、高度な技術により無害化処理を行う者について、環境大臣が認定する特例制度を創設することとします。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

木村委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

木村委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官宮野甚一君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、厚生労働省大臣官房審議官松井一實君、厚生労働省健康局長中島正治君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長小野晃君、厚生労働省労働基準局労災補償部長森山寛君、経済産業省大臣官房審議官深野弘行君、国土交通省大臣官房審議官和泉洋人君、環境省大臣官房審議官寺田達志君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君、環境省総合環境政策局環境保健部長滝澤秀次郎君及び環境省水・大気環境局長竹本和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。とかしきなおみ君。

とかしき委員 初質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 静かな時限爆弾と言われるアスベストは、昨年六月のクボタの発表以降、工場の従事者だけではなく、家族や周辺住民にも患者が出るというショッキングな展開となり、国民は、身近にあるアスベストに対する健康不安や政府の対応のおくれを指摘する声が大きくなっていました。その声を受け、このたび提出されましたアスベスト関連法案につきまして、次の四点、実態把握の強化、過去の被害への対応、国民不安への対応、被害拡大防止について質問をさせていただきます。

 まず最初に、実態把握の強化についてお尋ねいたします。

 昨年行われましたアスベスト使用実態調査の結果、アスベストについてどの程度の実態把握ができたのでしょうか。内閣官房、お答えください。労働者や家族及び周辺住民のアスベスト暴露における健康被害の状況はどうだったのか。厚労省、環境省、それぞれお答えください。

宮野政府参考人 お答えをいたします。

 建築物におきますアスベストの使用実態でございます。

 関係省庁におきまして、その把握のため、公共住宅、学校施設、病院といった公共建築物や、民間の建築物につきまして調査を実施しております。現時点におきまして、調査対象施設におけます調査の回答の状況を見ますと、例えば公共住宅につきましては一〇〇%、学校施設、病院、社会福祉施設につきましては約九割、民間の建築物、これは一定の規模以上のものについて調査をしておりますけれども、約七五%につきまして実態把握がされているところでございます。

 いまだ所有者の回答が得られていない建築物につきましても引き続き調査を行うとともに、これと並行をいたしまして、これらの調査結果を踏まえ、暴露等のおそれのある施設について、アスベストの除去等の対応を進めているところでございます。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 労働者の健康被害の状況につきまして、労災保険の支給決定件数を申し上げますと、平成十六年度までの累計で、石綿による肺がんにつきましては三百五十四件、中皮腫につきましては五百二件でございます。

 なお、ここ数年の支給決定件数を見ますと、肺がんにつきましては、十四年度が二十二件、十五年度が三十八件、十六年度が五十八件となっておりまして、また中皮腫につきましては、同様に五十六件、八十五件、百二十八件と、いずれも増加傾向にございます。

滝澤政府参考人 周辺住民等への健康被害でございますが、その健康被害の実態、詳細については明らかとなっておりません。しかしながら、この関連情報収集ということは極めて重要だというふうに認識しております。

 このため、環境省におきましては、人口動態調査のデータを活用いたしまして、平成十四年から十六年の三年間に、尼崎市を含みます兵庫県内で中皮腫でお亡くなりになりました方を対象に、遺族の御協力をいただきまして、一般環境経由による石綿の健康被害について、本人、遺族への聞き取り調査でありますとかカルテの調査など、実態調査を現在実施中でございます。専門家の科学的な助言をいただきながら分析を進め、年度内には取りまとめたいと考えております。

とかしき委員 健康被害の実態把握について調査をしたところ、私の地元の自治体からは、労災認定は国の事業であり情報が得にくい、あと、労働基準監督署に問い合わせたところ、個人情報にかかり開示できないとのことで、被害実態が非常につかみにくいという声が上がっています。

 アスベスト対策における関係省庁との連携において、国はどのような指示を行っているのか、窓口の一本化など検討なさっているのか、内閣官房から御答弁をお願いいたします。

宮野政府参考人 アスベスト問題につきましての関係省庁間の連携でございます。

 アスベスト問題につきましては、昨年の七月以来、関係閣僚会合、あるいは局長、課長クラスの関係省庁会議、これを開催いたしまして、関係省庁間の十分な連携を図りつつ、随時、必要な措置を講じてきたところでございます。政府といたしましては、今後とも、それぞれの省庁が責任を持って対応する一方で、閣僚レベルでの十分な調整を含めまして、関係省庁が緊密に連携をしつつ、総合的なアスベスト対策を迅速に実施することができるよう最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

 なお、ただいま先生から御指摘がございました労災補償に係る情報でございますけれども、これも個人情報については公表できないというような制約がございますが、一方で、広く国民に情報を提供し、その不安の解消を図るということは非常に重要なことだと考えております。そういった観点で、厚生労働省におきましても、石綿による中皮腫あるいは肺がんの労災認定を受けた労働者が所属していた事業場名の公表、こういった措置を行っているというふうに承知をしております。

とかしき委員 次に、二点目、過去の被害への対応についてお尋ねいたします。

 今回の法案では、アスベスト被害に対して、補償とせずに救済とした理由をお示しください。今回提案の救済とそして労災とでは、大きく処遇に差があります。なぜ、これだけの格差があるのでしょうか。環境省の方、お答えください。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 石綿、アスベストによりますところの中皮腫及び肺がんというような健康被害につきましては、暴露から発症まで平均で三十から四十年という長い潜伏期間があるという特殊性を持っているところでございます。したがいまして、労災補償対象者以外の被害者の方々につきまして、個別的な因果関係、つまり、どういう暴露の形態で、どこでどういう原因により発症したのかということを特定するということは、極めて困難な状況にあります。

 したがいまして、そういった因果関係に基づく補償制度を構築するのは非常に難しい。あるいは、仮に補償制度ということになりますと、そうした困難な中で、一人親方でありますとか、労働者の家族、あるいは施設内の暴露者、周辺住民という、さまざまな方々の暴露形態を特定いたしまして、その原因者を追及して賠償責任を確定する、こういう作業を行わざるを得ないわけでございまして、結果として、迅速な救済も図れませんでしょうし、多くの方々が対象から漏れて、すき間のない救済ができなくなる、こういったことが当然予想されるわけでございます。

 そこで、本制度では、民事責任から離れまして、個別の因果関係は問わないで、石綿による健康被害者をすべからく救済するという構造といたしまして、迅速で、すき間のない救済を実現するということとしたものでございます。

 なお、こうした構成をとったところから、お尋ねにございましたように、労働基準法上の事業者の災害補償責任を保険の形式で担保する、そういった労災制度と差が生ずるということは、これは制度設計上の問題としてやむを得ないことであるというふうに考えておりまして、その上で、本制度における給付金の支給水準につきましては、他の救済制度とのバランスを勘案いたしまして、十分な水準となるということと考えております。

とかしき委員 それでは次は、石綿による健康被害の救済のために、政府は、広く事業者に費用負担をさせるために石綿健康被害救済基金を設置し、徴収対象は二百六十三万事業所に及ぶと聞きました。これは世界を見ましても事例のない画期的な挑戦だそうで、評価をしたいと思います。

 参考までに、事業者の拠出金は、零細企業の場合、または数千人規模の大企業の場合、年間幾らぐらいの負担になると予想されているのでしょうか。環境省の方、お答えください。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者が薄く広く負担するという一般拠出金の額についてのお尋ねでございます。

 一般拠出金の額につきましては、賃金総額に一定の率を乗じた額ということで考えております。賃金総額に乗じる一定の率というものは、救済給付の支給に要する費用の予想額、あるいは国及び地方公共団体からの拠出金の額、指定疾病の発生状況などを勘案しまして、今後、中央環境審議会の意見を聞いて定めていくということでございますけれども、お尋ねでございますので、今のところの予測と申しますか、数字を申し上げたいと思っております。

 実際の所要額、負担額を正確に予測するというのは、これは至難のわざでございますけれども、環境省といたしましては、制度設計上の仮定といたしまして、年間の総所要額を九十億円というふうに見込んでおります。

 この九十億円から国の負担する事務費あるいは地方公共団体の拠出金、さらには石綿との関係が特に深い事業主に課される特別拠出金を差し引いた額が一般拠出金の総額となるわけでございますけれども、仮にこの九十億のすべてを一般拠出金で賄うというふうに考えた場合、マックス等を考えるということでございますけれども、その負担率は賃金総額に対しまして一千分の〇・〇六ということになります。

 これを具体的な企業に当てはめますと、例えば我が国を代表するような従業員六万人ぐらいの規模の大企業で年三千万円程度、あるいは、零細企業というお尋ねがございましたけれども、従業員十人ぐらいで平均賃金が五百万円というふうな企業を想定いたしますと、年三千円程度という計算になるわけでございます。

とかしき委員 次に、三点目の国民の不安への対応についてお伺いいたします。

 国民のアスベスト関係の健康相談所の実施状況をお知らせください。その場合、都道府県、市区町村の担っている役割は現在どのようにすみ分けされているのでしょうか、あわせてお教えください。厚労省の方、お願いいたします。

中島政府参考人 アスベストによる健康被害に対してでございますが、労災病院あるいは各都道府県にあります産業保健推進センター等に相談窓口が設置されておりますほか、保健所におきましては、都道府県、指定都市、中核市、特別区等、いずれが設置するものでありましても、相談があれば健康相談業務の一環として広く受け付けているという状況でございます。これらの窓口におきまして、労災病院を中心に、昨年末までに一万八千件を超える相談があったところでございます。

とかしき委員 アスベストによる健康被害の疑いのある方に対して、現在どのような健康診断が行われているでしょうか。市区町村で行っている例えば肺がん検診にアスベストの調査を組み合わせていくという形で活用する方法とか財源措置をとっていくことはできないでしょうか。厚労省の方、お答えください。

中島政府参考人 現に石綿作業に従事していらっしゃいます労働者の方については、その雇用主である事業者に健康診断の実施が義務づけられているところでございまして、また、退職された方については、石綿による一定の所見が見られた方に対して無料で健康診断が実施されているところでございます。

 また、不安を抱えておられる住民の方に対しましては、無料で相談をこれまた受け付けておりまして、その結果、一定の石綿暴露の可能性があると認められた方については、石綿関連の調査研究の一環といたしまして、自己負担なく必要な検査を受診できるようにすること等につきまして、現在、環境省とともに検討を進めているところでございます。

 また、肺がん検診の活用等でございますが、厚生労働省といたしましては、既存の検診の場等さまざまな機会を活用いたしまして、アスベスト関連疾患の診断に活用できます自記式、自分で書ける調査票、こういったものの配付、活用等を通じまして相談窓口の紹介を行うよう努めてまいりたいというふうに考えております。

とかしき委員 公共施設や住宅などで吹きつけアスベストが使用されていないということが確認できたとき、例えば表示でアスベスト安全表示という制度を創設すれば住民の不安を少しでも解消できるのではと考えますが、取り組みを検討していただくことはできないのでしょうか。国交省の方、お答えください。

和泉政府参考人 お答え申し上げます。

 公共建築物などにつきましては、施設管理者におきまして吹きつけアスベスト等の使用実態を調査しており、学校、病院、駅等の施設名の公表が行われております。

 また、今回提出しております建築基準法の改正が行われれば、多数の者が利用する建築物等につきましては、吹きつけアスベストの状況につきまして定期報告が義務づけられることになります。その報告の内容が特定行政庁におきまして一般の閲覧に供されることになります。

 加えて、住宅につきましては、今後、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におきまして、既に建築された住宅を対象として、吹きつけアスベストの有無等を表示対象に加えるというようなことを検討しております。これらの制度により住民に対する情報の開示が行われ、先生の御指摘の趣旨も含めて、住民の不安の解消につながるよう努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

とかしき委員 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 それでは、不安を感じた国民の方から依頼のあったアスベストの検査費用とか囲い込み、除去及び解体の助成について、国交省のお考えをお知らせください。

和泉政府参考人 平成十七年度補正予算及び十八年度予算案におきまして、建築物における吹きつけアスベストの検査、除去等の費用につきまして、日本政策投資銀行等による低利融資制度の創設を盛り込むとともに、多数の者が利用する建築物について、既存の補助制度を拡充しまして、アスベストの検査、除去等の費用について補助できるようにしたところでございます。さらに、住宅につきましては、十七年度に新たに創設した地域住宅交付金の活用が考えられます。

 地方公共団体とも連携して積極的に支援するとともに、これらの支援措置について幅広く周知してまいりたいと考えております。

とかしき委員 では最後に、被害の拡大防止についてお伺いいたします。

 大阪府では、アスベスト除去を円滑にするため、中小企業金融公庫等の低金利融資制度を創設することになりました。しかし、実態を調査いたしましたところ、中小零細企業が利用する場合、担保不足で利用が困難になりやすいと判明いたしました。そこで、弾力的な運用制度が必要ですが、自治体側にも財源がなく、苦しい状況に追い込められています。

 政府として、中小零細企業へのサポートをいかがお考えになっているのでしょうか。経産省の方、お答えください。

深野政府参考人 お答えいたします。

 融資制度の関係でございますけれども、中小企業が建築物等からのアスベスト除去を円滑に行うことを支援するため、現在、中小企業金融公庫及び国民生活金融公庫に低利融資制度を創設することを進めて、準備をしております。

 また、御指摘の無担保の場合でございますけれども、通常、こういったところから無担保でお金を借ります場合には上乗せ金利がございます。しかしながら、今回、無担保の融資を円滑に関係の事業者の方が受けられますように、本年度の補正予算におきまして所要の出資金を計上いたしまして、上乗せ金利なしで融資が受けられるように、今そういう措置の準備をしております。

とかしき委員 よろしくお願いいたします。

 では、海外ではドライヤーを頻度高く使っていた美容師が中皮腫になったとの報告もあります。私の地元の自治体では、市民からの要請により、アスベスト含有家庭用品のドライヤーやこたつなど六十品目を昨年の十一月より回収、保管しております。ところが、その処分に大変困っております。

 このような自治体が回収したアスベストを含んだ家庭用品は、一般廃棄物でも産業廃棄物として受け入れ処分をしていただけることはできないのか、環境省の方、お答えください。

由田政府参考人 お答えします。

 アスベストを含有する家庭用品が廃棄される場合にも、通常の家庭用品が廃棄される場合と同様に、市町村が処理を行うことになるわけでありますが、その処理の工程で、万一にもアスベストが飛び散ることのないように対応する必要があるわけであります。

 このため、市町村に対しまして、製品に関する情報につきまして提供いたしておりますが、これとともに、当面の対応としまして、飛散防止に留意して、他のゴミと区別して排出してもらい、破損しないように回収すること、あるいは、できるだけ破砕せず、散水や速やかな覆土により最終処分を行うよう、また、保管する場合には他の廃棄物と区別がつくようにすることにつきまして、昨年来指導をいたしているところであります。

 また、恒久的な対応といたしまして、より安全な処理方法、システムにつきまして、処理施設におけますアスベストの挙動調査、分析を行いまして、専門家の意見を聞きながら、年度内にも考え方を取りまとめまして、市町村に対して提示したいと考えております。

 こうした調査検討の結果、廃棄物処理施設の改造などが必要となった場合には、昨年、改革、創設させていただきました循環型社会形成推進交付金によりまして、しっかりと後押しをさせていただきまして、国と地方が一体となってアスベストが含有する家庭用品の処理を進めてまいりたいと考えております。

 このようなアスベストを含む家庭用品の廃棄物につきましては、アスベスト含有スレート製品などの廃建材とは異なりまして、アスベストの含有率が低いということから、市町村の処理施設での対応が中心になるものと考えておりますが、家庭用品の市町村による破砕残渣などが、今回提案させていただいております法案の無害化処理の特例制度に基づきまして、一般廃棄物及び産業廃棄物につきまして認定された産業廃棄物処理業者に委託処理されることは可能だというふうに考えております。

 また、都道府県知事から一般廃棄物と産業廃棄物の処理施設の設置許可を受けた無害化処理施設を有する優良な産業廃棄物処理業者に市町村が委託処理することも十分可能であります。

とかしき委員 では、一般環境におけるアスベスト濃度の環境基準はなぜないのでしょうか。住民の不安解消のため、一般環境におけるアスベストの濃度の調査を、これからアスベストが飛散する可能性の高い地域で継続的に実施していくことは難しいのでしょうか。環境省の方、お答えください。

竹本政府参考人 現在、アスベストにつきまして環境基準はないわけでございますが、一九八六年に公表されましたWHOの環境保健クライテリアなどを参照いたしまして、健康影響の面も検討した上で、大気汚染防止法に基づきまして、工場、事業場の敷地境界基準値を一リッター当たり十本と定めておるところでございます。

 アスベストは、その発生源からの距離に応じまして急速に濃度が減衰するということが知られておりまして、主として、発生源直近で高濃度の汚染が生じる物質でございます。そのために、一般環境における基準を定めるよりも、敷地境界における基準を設定いたしまして、発生源において重点的な対策を講ずる方が、一般環境での健康影響を防止する観点からも、より効果的と考えたところでございます。

 また、環境省が実施しております大気環境モニタリングの結果によりますれば、アスベストの環境濃度は当該基準に比べましても極めて低い結果となっておりまして、この結果も踏まえまして、現時点におきましては環境基準を設定する必要はないと考えておるところでございます。

 また、モニタリングにつきましては、委員御指摘のとおり、国民の不安解消のため大変重要と私ども考えておりまして、今後とも、昨年秋より緊急環境濃度モニタリング調査というのをやっておりますが、これを継続して、アスベストの飛散の懸念される建築物の解体現場などを中心にこれからも実施をしてまいりたいと思っております。

とかしき委員 次は、立入検査についてお伺いいたします。

 大気汚染防止法で、除去作業前の養生が終了した時点で立入検査が入りますけれども、労働基準監督署は除去作業中が基準の原則として、現場は、立ち入る時期が変わっているということで、大変混乱しているようです。

 立ち入りの場合はどちらが適用になるのでしょうか。立入検査の都道府県と市区町村の連携をどのようにとっていらっしゃるつもりなのか。そして、今後、自治体間をつなぐような連絡会議のようなものを持たせる予定はないのでしょうか。環境省の方、お答えください。

竹下大臣政務官 お答えをいたします。

 対策を確実に実施していくためには、自治体と国あるいは自治体と国の機関との連携、さらには自治体内部の部局間の連携というのは非常に大切であると考えております。

 このうち、自治体と国の機関との連携につきましては、昨年夏に環境省から関係自治体に通知を発出いたしまして、労働基準監督署と共同で立入検査を実施するなど、連携して規制の徹底を図るよう依頼をしたところでございます。

 また、自治体内部の部局間の連携につきましては、昨年九月に取りまとめられました政府の当面の対策を踏まえて、自治体の関係部局間におきまして、石綿の使用実態調査結果などの情報の共有化が図られるよう、国においても関係省庁間で連携を強化しようということにいたしております。

 さらに、神奈川県などでは、国の地方支分部局、県及び関係市が協定を結びまして、情報の相互提供や合同の立入検査などを進めております。

 環境省といたしましても、地方自治体などが参加して開く会などの場で、こうした先進的な取り組みを他の自治体に紹介することなどによりまして、地域における石綿対策の確実な実施を図ってまいりたい、こう考えております。

とかしき委員 御答弁ありがとうございました。

 アスベストの問題は、政府の対応のおくれが今までこの問題を大きくして、拡大してしまった責任は否めないわけです。それを是正する意味でも早急にこの法案の成立を望みますけれども、さらに、今御答弁いただきましたように、運用の面においても、現場で混乱が生じないように、そして、隠れた被害者を救済できるように、連携のとりやすい体制づくりをぜひ配慮していただきたいと思います。

 そこで、最後に環境大臣にお伺いいたします。

 今回の法整備を含む対応策でアスベストへの対応は十分とお考えになっていますでしょうか。今後、事態の推移を見ながら、必要とあればさらに補充していく姿勢が大切と考えておりますが、環境大臣の決意をお聞かせください。

小池国務大臣 御指摘のとおり、この新法、救済策につきまして、スピード感ということも大変重要であるということで、昨年の七月以降に関係閣僚会合などを随時開催いたしました。そして今回の新法を取りまとめをしてきたところでございます。さらに、昨年十二月には、このアスベスト問題に係る総合対策を、その結果として取りまとめることができました。今回、十七年度の補正予算案、そして十八年度の予算案などにおいて必要な措置を講じて、あわせて、法的整備が必要な対策について、今回のこの二法案を国会に提出して、御審議をいただいているところでございます。

 今後とも、関係省庁間で密接な連携を図る、情報を共有するなどといった形で連携を図りながら、これら二法案の着実な施行を初めとして、総合的な石綿対策の実施に全力を尽くしてまいりたいと考えております。また、初めての法律でございますので、しっかりと進捗状況を見てまいりたいと考えております。

とかしき委員 ありがとうございました。

木村委員長 次に、篠田陽介君。

篠田委員 自民党の篠田陽介と申します。

 私は、木村委員長と同じ愛知・名古屋が選挙区であります。また、生まれて育ったところは、昨年、世界自然遺産に登録されました知床半島のつけ根の町で生まれ育ちました。自然の脅威に恐れおののく謙虚な気持ちを持ちながら、今日の繁栄を築いていただいた先代の世代、親の世代に感謝しながら、今、何とか地球温暖化問題と日本の財政再建、この二つを私のライフワークとしてこれから取り組んでまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 そこで、私は、衆議院の環境委員会と外務委員会に所属をさせていただいております。地球温暖化防止に何とか取り組んでいきたい、また、中国を初めとする諸外国に対して、日本の持っておりますさまざまな環境技術、または省エネの技術、さまざまな技術、これらを活用して新しい国際貢献の形をこれから日本がなすべきではないか、そのような思いを持ちながらこれから取り組んでまいります。

 また、これまで水俣病などさまざまな公害に苦しんできた日本でありますので、これから、それを克服してまいりましたこれまでのノウハウ、これを世界に向けて発信していく必要があるのではないか、そのように考えております。

 今回のアスベストによる健康被害の救済、また、今後の被害の防止のための大気汚染防止について、ぜひ完璧な対策を講じて、世界に対して日本の対策がスタンダードとなるような、また、各国が日本の対策を手本とするような対策になることを私は期待しております。

 そこで、まず小池環境大臣にその決意をお尋ね申し上げます。

 アスベストによる健康被害の問題は、現実に被害が発生していなくても、危険性が予見される場合には先手を打って規制するという予防的なアプローチが浸透していなかったことが原因の一つであると考えていますが、今後、化学物質対策や地球温暖化対策など環境対策においては、現実に被害が発生していなくても、対策をおくらせるのではなく、予防的なアプローチの考え方に基づいて対策を講じていかなければならないと考えておりますが、その辺について、小池環境大臣の決意をお聞かせください。

小池国務大臣 篠田委員におかれましては、ライフワークとして地球温暖化対策など環境の政策立案にぜひとも今後とも御協力いただきたいし、また頑張っていただきたいと、まず申し上げておきたいと思います。

 この石綿問題に関しましてでございますけれども、今御指摘ありましたように、予防的アプローチの考え方に基づいて対策を講じるべきだというお考え、まさにそのとおりだと思います。

 また、逆に申し上げますと、この石綿の問題ということについて、過去の対応がどうであったか、総理も反省すべきは反省しというふうに述べておられますが、環境省としてこれまで何をしてきたのかということで検証を行っております。その結果、当時として、今御指摘のありましたような予防的アプローチの考え方が浸透していなかったという点は素直に認めていくべきだと思っております。

 と同時に、かつて、旧環境庁でございましたけれども、当時の限られた所管の範囲内でしか対策を行っていないということ、エンド・オブ・パイプ、ここまでは何省、ここまでは何省というような形、先ほど長浜委員の方からも、代表質問でセクショナリズムという言葉がございました。そういった関係で、関係省庁間の連携が必ずしも十分ではなかったといったような点が挙げられると思っております。

 今申し上げましたように、このセクショナリズム、縦割り行政のすき間で生じた問題であるということを感じたわけでございまして、だからこそ、この救済制度の構築に当たりましては、そのすき間を排除することを心がけ、スピード感を持ってこの法案を取りまとめさせていただいたところでございます。

 また、起こるかもしれない、起こってはいけない、そういったこれからの被害の未然防止対策でございますけれども、関係各省が密接な連携をとりまして四法律の改正を一括法としてまとめることができたと考えております。

 おっしゃいますように、脱温暖化社会、そして循環型社会の構築などに向けまして、環境先進国としてすぐれた技術で世界をリードしていくことが期待されている日本でございます。と同時に、有害物質によります環境汚染から人の生命、身体を守るということは最も基本である環境政策でありますので、そういった意味でも、今回の教訓を真摯に受けとめまして、安心、安全な社会を構築することに全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

篠田委員 ありがとうございました。

 それで、今回提出をされました法案、大きく二つの目的があると承知をしております。

 一つ目は健康被害者への支援であります。これは、従来の労災による労働者の健康被害者に加え、労働者の家族の健康被害者、また周辺住民の健康被害者へも不公平感のない迅速かつ手厚い支援を行いましょうというものであると承知しています。

 もう一つ、二つ目の目的は、アスベストの飛散防止であります。具体的には、規制範囲の拡大と規制基準の強化やアスベストの除去や飛散防止措置の徹底、さらにはアスベストの適正な処理の推進などであると承知をしております。

 これらの問題をまず考えるときに、これは決して日本だけの問題ではない、世界各国で実際に起こっている問題であるから、まず、世界各国の事例がどうなっているのか、その辺についてお尋ねをしたいと考えております。

 世界各国のアスベストの使用実態について、どのくらいの国がいつごろから全面禁止措置に踏み切っているのか。また、各国の健康被害者の発生状況と、また、支援策で実際に国が公費負担を行っている事例があれば、それを教えていただきたい。以上、二点を質問させていただきます。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 アスベストの使用に関します海外の規制状況でございます。

 まず、EUでございますけれども、一九九九年のEC指令によりまして、二〇〇五年一月までにアスベスト製品の販売、使用等を一部の例外を除きまして全面的に禁止いたしました。ただ、現在でも、一定の電気分解用の隔膜ですとか、禁止以前に設置されている製品、禁止以前の在庫品については、禁止の例外というふうにされているところでございます。

 また、ヨーロッパの主要国では、イギリスが一九九九年、フランスが二〇〇二年に全面禁止を行っております。この国々につきましても、規制当初は多くの例外品が認められておりまして、現在においても、禁止措置の施行前に既に設備等に取りつけられた製品等が除外をされている、こういう状況にございます。

 それから、アメリカにつきましては、現在も石綿のセメント、波板等の建材、自動車用部品等、多くの製品の製造、使用が認められている、こういう状況でございます。

寺田政府参考人 被害並びに支援策ということでございます。

 やや断片的になるところをお許しいただければと思いますけれども、各国の健康被害の発生状況について、例えば二〇〇二年におけるアスベストに特異的な障害と言われています中皮腫で申し上げますと、死亡者数が、アメリカで二千五百七十三人、また、イギリスで一千八百六十二人ということを聞いております。

 こうした被害に対する対応策でございますけれども、私どもの承知している範囲では、石綿による健康被害者への支援策で実際に公費負担などを行っている例といいますと、フランスの石綿被害者補償基金、FIVAというものがございます。ただ、これは、国は雇用主の立場で費用を負担している、そういう制度であると承っております。

篠田委員 私、この問題について海外の事例を今お聞きさせていただきました。私は、実は九年ほど、武部勤という議員の秘書をしておりまして、農水大臣のとき、ちょうどBSE問題というものが発生しました。あの当時も、やはり日本の規制が甘かったものですから、世界各国から汚染された肉骨粉が入ってきたということがあろうと思います。このアスベスト問題も、やはり日本が禁止していないということで世界各国から安価なアスベストが大量に入ってきたのではないか、そのようなことを懸念しておりますので、ぜひ今後、安全の確保のため多くの手間と費用がかからないように、事前に行政の不手際のないようにきちんと対応していただきたい、そのように考えております。

 早目の対策と先手の規制が、長い目で見たとき、対策に対してコストの削減や、安心、安全の確保につながるのではないかということを考えておりますので、その辺のところをどうぞよろしくお願い申し上げます。

 また、今回の法改正に当たり、各省庁や自治体、関係業者において実態調査を行ったと承知しておりますが、厚生労働省の実態調査においては、監督指導を行ったアスベスト含有製品を製造、取り扱いをしている事業場のうち、四六%で何らかの違反が見つかったと承知をしております。これについて質問をさせていただきます。

 これまで、厚生労働省はどのような監督指導を行ってきたのでしょうか。また、二つ目、その四六%の何らかの違反の詳細について教えていただきたいと考えております。また、三つ目、これまで監督指導を行ってきたにもかかわらず、これらの違反が見つかったのはどんなことに原因があったのか。以上、三点をお尋ね申し上げます。

松井政府参考人 お答えさせていただきます。

 労働安全衛生法等違反の監督指導、これにおきましては、まず、使用などが禁止されておりますアスベスト、これが実際使用されていないということを原則的に確認するという作業を行うとともに、使用が認められているアスベストというのがございまして、これは白石綿というようなものになっておりますが、これに関しましては、労働者の健康障害につながることがないようにという意味で、こういったものが発散することを防止するとか、労働者への暴露を防止する、こういう観点に立ちまして、法令上必要とされている諸措置が適正に講じられているかどうか、こういう観点から監督指導をやってきております。

 今回、御指摘がありました違反の四六%、この結果なんですけれども、これは、アスベスト含有製品の製造取り扱いが今ではまだ認められておる、こんな事業場についての調査結果でありました。

 違反内容につきましては、直ちに労働者の健康障害につながるような重大違反というものは認められておりません。しかしながら、具体的にちょっと見てまいりますと、健康診断、つまり石綿事業場における健康診断の実施ということが義務づけられておるんですけれども、これに関するものが多くございまして、中身として、この健康診断を一部の労働者について実施していないとか、それから、実施すべき時期というのが決められておるんですけれども、これを徒過している、こんな事例がございました。

 それからまた、呼吸用の保護具、これは暴露防止ということで使用が義務づけられている、備えつけるということも義務づけられておるんですけれども、この保護具の数が十分確保されていないような事業場とか、あるいは、備えつけられているんですけれども、一部の労働者の方が使用していなかった、こんなことがございました。

 こういう意味で、今回の調査で判明した違反、これは、そういう意味では、主に事業主が、業務の繁忙時期等いろいろなことで大変なんだということでやっていないという事例が少なからずございましたけれども、我々といたしましては、特に監督行政といたしましては、労働者の健康障害の防止、これは非常に重要な問題でありますので、こういった軽微な違反でありましても放置することなく、関係法令の一層の周知徹底を図っていきたい、こういうふうに考えております。

 以上でございます。

篠田委員 また、同じく文部科学省の実態調査では、学校施設では二千五百六十施設で吹きつけアスベスト等が使用され、そのうち三百三校が飛散による暴露の可能性があるとのことでした。

 私は、先日、ある自治体の首長さんから聞いた話では、小学校でアスベスト使用の実態が明らかになった、それで直ちに撤去開始をした、その費用負担について、都道府県の教育委員会に何とか支援をお願いしたいとお願いしたところですが、現在についてそのような財政措置はないというような回答があったとの話を聞きました。

 そこで御質問させていただきます。

 文科省として、現時点での財政措置は実際にないのでしょうか。また、二つ目、これら三百三十の学校施設での現状での対策状況をお聞かせください。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 公立学校施設のアスベスト対策についてのお尋ねでございますが、文部科学省におきましては、子供たちなどの安全対策に万全を期すため、先生ただいま御指摘ございました学校施設等における吹きつけアスベスト等使用実態調査、これを実施いたしまして、昨年十一月末の段階でその結果を公表したところでございます。

 吹きつけアスベスト等を有する公立学校は二千五百六十校ございまして、このうちアスベストの飛散により暴露のおそれがある部屋を有する学校は、今御指摘がございました三百三校でございます。これらにつきましては、該当する部屋を使用禁止にするなど、適切な措置を講じていることは既に確認しているところでございます。

 また、この調査結果を踏まえまして、平成十七年度の補正予算案におきましては、公立学校施設のアスベスト対策といたしまして二百八十一億円を計上しているところでございます。この執行に当たりましては、アスベスト問題の緊急性にかんがみまして、既に実施済みの工事につきましても国庫補助を行うこととしているところでございます。

篠田委員 ぜひさかのぼってその対策を講じていただきたいと考えております。子供への健康被害を第一に考えて、すぐに対策をとった自治体が措置を受けられない、現行の法律の施行を待ってから対策を講じた方が支援を受けられる、そのような不公平感がないように、先にやった熱心なところにきちんと財政措置がなされることをぜひとも希望申し上げます。

 また、私は、これからの歳出の抑制につなげるためにも、これから被害拡大の防止を何とか防いでいきたい、また国民の不安への対応について、この二つの対策、特に万全を期していただきたいと考えております。

 そこで、特に大気汚染防止法等の一部を改正する法律案の概要について幾つかお尋ねさせていただきます。

 まず、環境省では、大気汚染防止法の一部改正で、アスベストを使用している工作物について、解体等の作業時における飛散防止対策の実施を義務づけるとなっておりますが、きちんと飛散防止対策が行われるかどうか、また、どのような方法で監視をするのか、また、このような飛散防止対策が行われなかった場合の罰則規定はどのようになっているのか、これをお尋ね申し上げます。

竹本政府参考人 大気汚染防止法におきましては、解体等の作業を監視するための手段といたしまして、事前に作業の方法につきまして計画を提出させまして、地方自治体におきまして計画の審査を行うこととしております。

 また、地方自治体におきましては、必要に応じまして作業状況の報告聴取や作業場所の立入検査を行うということもあわせて行っております。

 さらには、解体などの現場におきましては、作業の内容、責任者の氏名などを明記しました掲示板を見やすい箇所に設置するなどの規定が設けられておるところでございます。

 また、罰則の規定につきましてでありますが、解体等の作業の届け出を行わなかった場合、これにつきましては三カ月以下の懲役または三十万以下の罰金、また、都道府県知事が発出しました作業計画の変更命令や作業基準への適合命令に違反した場合、六カ月以下の懲役または五十万以下の罰金が科せられることになっております。

 こうした大気汚染防止法によります監視と処罰の仕組みによりまして、石綿の飛散防止対策は確実に行われるものと考えておるところでございます。

篠田委員 また、国土交通省の建築基準法の一部改正では、吹きつけアスベスト、またアスベスト含有吹きつけロックウール等の使用を規制するとなっておりますが、これは、使用を規制するということは、既存のものも速やかに撤去するという解釈でよろしいのか。また、指導に従わず撤去が行われない事例に対してどのような対策を講じるのか、これらについてお尋ねします。

和泉政府参考人 まず、御指摘のとおり、既存の建築物にも規制がかかります。今回の改正によりまして、既存建築物につきまして増改築等を行う際の吹きつけアスベストの除去、封じ込め、または囲い込みの義務づけが行われますし、また、吹きつけアスベストが使用されている建築物におきまして劣化等が見られる場合につきましては、特段増改築等が行われない場合につきましても、特定行政庁がアスベストの飛散防止措置の勧告とか是正命令等を行うことができます。

 また、多数の者が利用する建築物等につきましては、吹きつけアスベストの飛散防止措置の状況に関する定期報告、こういったものが義務づけられまして、その内容が一般に閲覧されます。

 加えて、こういった今回の法規制、法改正に伴う規制にかからないものにつきましても、従来どおり、吹きつけアスベストが劣化していない場合であっても、その除去について指導してまいりたいと考えております。

 また、こういったことの実効性を確保するためには、環境整備としまして、アスベストの除去等に対する支援制度の創設、あるいは相談体制の整備充実、建築士等に対するアスベストの調査方法、除去方法に対する講習会や研修会、こういったものが必要でございまして、今後とも関係省庁と十分連携をとりながらしっかり取り組んでまいりたい、こう考えております。

篠田委員 ありがとうございます。

 私は、これからの行政のあり方についてですが、今までは事前規制型というのが行政のあり方だったと思います。これからは、きちんと事後チェック型への転換を図る、行政が法案の趣旨どおり行われているかどうかきちんとチェックをする、またいいかげんなことが行われた場合厳しく処罰をする、またそれを公表し評価をする、これら事後チェックがこれからの行政にはぜひ必要なことだと考えております。政治の世界も同じだと考えております。決してやりっ放しにしないで、きちんとやったことについて責任を持ちながら、きちんと事後チェックをし評価をするというシステムの導入を関係各省にお願いさせていただきたいと考えております。

 また次に、環境省の廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正でありますが、現状では、アスベスト廃棄物については直接埋め立てをしていると承知しておりますが、不法投棄の事例もあるのではないでしょうか。

 ここで、質問させていただきます。アスベスト廃棄物処理の実態調査をされているのかどうなのか、されているのであれば、どのような調査結果であったのか、この二点についてお尋ねします。

由田政府参考人 お答えさせていただきます。

 環境省におきましては、昨年七月に都道府県及び政令市に対しまして、アスベスト廃棄物に関する重点的な立入検査などを行うことによりまして、処理の実態の調査を行うように指示いたしまして、昨年十月にその調査結果を取りまとめて公表をさせていただいたところであります。

 これによりますと、飛散性アスベスト廃棄物につきましては、立入検査の結果、分別の不徹底など不適切な事案が、排出事業者で七百五十件のうち二十三件、処理業者で六百七十件のうち一件あることが明らかになりました。それから、アスベスト成形板などの非飛散性アスベスト廃棄物につきましては、立入検査の結果、分別の不徹底等不適切な事案が、排出事業者で二千六百四十一件のうち十四件、処理業者で五千九百九十七件のうち七十九件あることが判明いたしました。

 これらの不適切な事案につきましては、都道府県等の指導によりまして既に改善されておりますが、環境省としましては、引き続き都道府県などに対しまして、適正処理の確保のための指導を行っていきたいというふうに考えております。

 また、不法投棄事案に関してでありますが、非飛散性のアスベスト廃棄物については現在のところ不法投棄の事例は承知しておりませんが、飛散性のアスベスト廃棄物につきましては、昨年八月に京都府及び大阪府におきましてそれぞれ一件ずつ、それから、十一月には岡山県におきましてそれぞれ不法投棄事案が発生いたしております。これらにつきましては、いずれも既に自治体が撤去を行ったと承知いたしております。

篠田委員 また、廃棄物処理業者は、もちろん商売でありますから、利益を確保するために少しでもコストのかからない方法で処分するのは、これは商売として明白であると考えております。この法案によりまして溶融処理をして無害化し埋め立てする処理に誘導するというふうに法案には書いてありますが、直接埋立処分よりも安いコストで処理できることが商売においては前提条件であると考えております。

 そこで、質問させていただきます。直接埋め立てと溶融無害化処理、この二つについてのコストの比較はされているのか。また、溶融無害化処理への誘導策について具体的な方策をお聞かせください。

由田政府参考人 お答えいたします。

 埋立処分の費用につきましては、昨年四月時点では一トン当たり八千円程度であったものが、十月時点では、地域によっては二万円から三万五千円程度になっており、処分費用が高騰している様子がうかがえます。

 無害化処理の費用につきましては、無害化の方式、施設の立地条件、それから施設の種類、処理能力、事業者の意向など、条件がさまざまに異なると考えられますことから、その数字について一概に言うことは困難でございます。しかし、アスベスト廃棄物の処分場への受け入れに関しまして、今後ともその意向がある事業者が少ないということ、それからまた、最終処分場におきます処分費用が高騰いたしまして、従来に比べまして二、三倍となっておる状況も見られるようなことをかんがみますと、無害化処理に要するコストは最終処分に要するコストとそれほど大きな差異はない状況になるものというふうに想定をしております。

 無害化処理への誘導策としましては、まさにこの国の認定制度を御提案させていただいているものでありまして、本認定制度に基づきまして国が個々の施設と処理方法ごとに安全性を確認することによりまして、より迅速かつ安全な処理の実施を可能としようとするものであります。

 さらに、環境省におきましては、アスベスト廃棄物の新たな無害化処理技術の開発につきまして、廃棄物処理等科学研究費補助金というのがございます、この補助事業におきまして、公募により研究費の配分を行うことといたしております。特に、無害化処理の認定につながり得る早期の実用化可能なすぐれた技術の開発を重点的に支援する方針といたしております。この事業を活用いたしまして、安価な無害化技術の開発を支援してまいりたい、このように考えております。

篠田委員 私がこれから懸念をしておりますのが、年間百万トン以上と予想されるアスベスト廃棄物の処理方法の過程であります。

 例えば、運送過程。せっかく対策を講じて処理をするに当たり、運送の過程でアスベストが飛び散ってさらなる被害の拡大につながるのではないかという懸念もしております。また、特定有害産業廃棄物となりますアスベスト廃棄物の処理に困った業者が不法投棄を行うのではないかという懸念もしております。産業廃棄物業界、その業界の中でも、これからの処理方法に解釈の違いなど多少の混乱が生じているというふうな話も聞いております。

 これらについて、環境省、不法投棄防止に向けた具体策、何かありますか。お尋ねします。

由田政府参考人 お答えいたします。

 まず、廃棄物の運搬に当たりましては、廃棄物処理法に基づく処理基準によりまして飛散しないようにすること、運搬車などにつきましては飛散するおそれのないものであること等をまず求めております。

 これに加えまして、飛散性アスベスト廃棄物につきましては、廃棄物処理法により特別管理産業廃棄物と定めまして、通常の廃棄物より厳しい規制をかけております。さらに、マニュアルにおきまして、飛散防止を徹底するため、耐水性の材料で二重にこん包すること、あるいは固形化した上で運搬するというふうなことを求めております。

 一方、非飛散性アスベスト廃棄物につきましては、昨年三月に技術指針を取りまとめまして、できるだけ破砕しないなどの飛散防止を徹底して運搬することなどを求めているところであります。

 さらに、これにつきましては、今後、廃棄物処理法に基づきます政省令の改正も行いまして、処理基準の強化をいたしたいというふうに考えております。

 次に、不法投棄の対策であります。

 これにつきましては、当面の対応としまして、アスベスト廃棄物の適正処理の確保のために、昨年七月二十八日に、環境省より都道府県に対しまして、アスベスト廃棄物の排出事業者と処理業者への重点的な立入検査などにより指導の強化、徹底を図るように通知をしたところであります。

 また、アスベスト廃棄物の処理の透明性を確保いたしますため、昨年八月二十二日に、環境省より都道府県に対しまして、排出事業者が委託契約を締結するとき、それから産業廃棄物のマニフェストを交付する際に非飛散性アスベスト廃棄物である旨を明記するということの通知をいたしたところであります。これにつきましては、今後、廃棄物処理法に基づく政省令の改正によりまして措置もいたす予定としております。

 今後、不法投棄を未然に防止するためにも、埋立処分のルートに加えまして、新たに無害化処理のルートを開拓しまして、処理のバリエーションを追加することが重要ではないか、このように考えております。

篠田委員 時間となりましたので、最後、小池環境大臣に決意のほどをお聞かせいただきたいと思っております。

 これは、石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案、ぜひ、混乱を来さないために、環境省、総務省、国交省、緊密な連携が必要だと考えております。従来の、いつも批判されております縦割りということがないように、きちんと、主管相である小池環境大臣に、その辺の意気込みをお聞かせいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

小池国務大臣 今回のこの法案を含めまして、これから起こるかもしれない、しかしまた起こらせてはいけない、その被害の拡大を防止するための各種制度の実効性を確保するということは極めて重要だ、このように考えております。

 その意味で、石綿が使用されている建築物などに関しての情報の整備と、そしてまた、その情報の共有化、関係各省庁間で情報を共有するということ、そしてまた、この制度の内容については地方公共団体そして国民の皆様方にしっかりとお知らせをするということなどは極めて重要だと思っております。

 こうした点に十分に留意しながら厳格な運用に努めてまいりたい、このように考えております。

篠田委員 ありがとうございました。

木村委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、環境委員会での私にとっても初めての質問でございまして、大臣、どうかいい御答弁をいただきますよう、よろしくお願いします。

 まずは、今回の石綿対策、アスベスト対策について、私のこれまで感じてきた所感を少し述べさせていただきたいと思います。

 アスベストというのは、本当に古くから人間の生活の中で有効に活用されてきた物質だったのかもしれませんけれども、健康被害との相関が明らかになったことも決して新しい話ではなかった歴史があります。そういった中で、多くの方が原因不明の病気となり、そして大変苦しい呼吸困難の中で命を落とされていった、そして、これから先もそのリスクがある中で、今まさに政府が対策となるべき案を出してきた、そういった状況にあるわけであります。

 そういった中で、この環境委員会には、第百六十三国会において石綿対策の総合的推進に関する法律案が民主党議員より提出をされておりますけれども、民主党も、この石綿対策にこれまで以上に前国会含めて力を入れてきているのが実情であります。

 そういった中で、私は、民主党の衆議院議員の中でもう数少ない医師免許を持つ一人となりましたこともありまして、今回は特に、健康被害をどのように認定していくのか、少し医学的な分野に偏ってしまいますけれども、その点に特に主眼を置いて、仲間の議員と少し質問を分けて質問をしていきたいというふうに思っております。

 まず初めに、皆様方に少し資料をお渡しさせていただいたんですけれども、ちょっとカラーになって見にくい、字がちょっと読みにくいところがありまして恐縮でございますけれども、なぜこの資料を出したか。

 こちらは、上のレントゲン写真、そして右が、Bと書いてあるCTの写真ですけれども、これがいわゆる肺繊維症、アスベストを起因とする肺繊維症になられた方のレントゲン写真です。黒い部分が空気の吸えるところ、そして白い部分が繊維化をした肺です。このように、空気の吸える肺がどんどん少なくなってくる。同じ二〇%の酸素のあるこの地球上にいても、この患者さんにとっては極めて苦しい呼吸環境に置かれるわけです。

 この左下はちょっと所見が違う方なので、Cはちょっと残しておいて、Dですけれども、これがいわゆる石綿小体と言われる、石綿が肺に突き刺さっている顕微鏡の写真です。先が丸くなっておりますけれども、この細長い物質を含めて、何マイクロメートルという、例えば、ここに直径三マイクロメートル、長さが二十から百マイクロメートルの石綿小体が写っているというふうに書いてありますけれども、非常に細かな石綿がこのように肺に突き刺さることで、ここから、これが原因となって肺繊維症になってみたり、胸膜と言われる肺を包む膜に、肥厚といってだんだん分厚くなってくる、こういうことを契機に悪性中皮腫という病気が起こったりしてくるわけなんですね。

 いろいろな病気がありますけれども、今お話をさせていただいたとおり、こういった呼吸困難を伴う病気というのは極めてその経過においても苦しい経過をたどりますし、こういった皆さん方を救っていく必要性は高いということで、政府が出された方針ということについては、私も大変、ああ、大きな網をかけるんだなとある意味感心をした部分がありました。いわゆるすき間なく救済をするという一文であります。

 これは正直申し上げまして、かなり私は難しい。もちろん、政府としてそれを打ち出されたわけですから、その方針にきちっと沿ったぐあいの法律案になっている、もしくは法律の運用をされると信じておりますけれども、このすき間なく救済をしていく、こういう方針のもと、まず、悪性中皮腫においてはどのように診断をし、悪性中皮腫の人はほぼこの新法の対象になるというふうに聞いておりますけれども、悪性中皮腫だというふうにどのように認定するのか。医師としての立場で言わせていただくと、非常に診断が難しいんです。どのように診断をつけていかれるのか、その確定診断をすき間なくしていく方法についてお答えをいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 中皮腫等の関連疾患の判定の問題でございますが、現在、環境省と厚生労働省が共同で専門家の検討会を開催しております。石綿による健康被害に関する医学的判断について、目下、検討を最終的に進めている段階でございます。

 この検討会におけますこれまでの検討におきましては、中皮腫については、中皮腫との確定診断が行われた方については原則として救済の対象としようではないかという議論が行われているところでございます。

 どういうふうに確定診断をするのかという若干技術的な御指摘もございましたが、岡山労災病院の岸本先生等々、専門家がメンバーに入っておりますけれども、やはり、胸腔鏡下による生検というようなことも一つの手段であるというふうに伺っておりますが、さまざまな形で、いわゆる臨床診断という形で行われた診断もございましょうし、それは、それぞれのケースに応じて、その医学的な立証の状況を見きわめていくということになります。

 繰り返しになりますが、中皮腫については、そのように確定診断がなされた場合については原則すべて救済していこうというふうに考えております。

 また、肺がんにつきましては、これはさまざまな原因で肺がんが起こるというふうに言われておりますので、認定に当たりましては、石綿を原因とするものであることを何らかの形で医学的に確認する必要が出てまいります。

 その何らかの形というのは、目下、一月十一日、一月二十四日と検討会をかなり集中的に開いておりますが、かなり具体的な、エックス線所見あるいはCT所見、先生御承知のとおり、それ以外に欧米の基準がありまして、肺の組織をとってきて、その中に石綿小体等がどのくらい含まれているかというようなベルギーの基準がございますけれども、そういう基準以外に、もっとルーチンで簡便な方法でこの肺がんは石綿由来だと言えないだろうかという議論を今詰めておりまして、相当具体的な基準化の議論が進んでおる状況でございます。

岡本(充)委員 今、診断がなされた場合にはと言われましたけれども、私は、その診断をどのようにつけるかというふうに聞いているんですね。

 ちなみに、その次の私の資料なんですけれども、これは医学部の学生がよく使う勉強の資料、そしてまた、ほとんどの医学部の学生はこの資料を見ていると思いますが、この資料。なおかつ、内科認定医といって、もしくは内科専門医という、この専門医の試験を受けるときにもこれで医師が勉強をしている、その参考書でございますけれども、この「胸膜中皮腫」というところの下側、「病理」というところがあります。真ん中よりやや下です。ここに、「低分化型腺癌との鑑別がしにくい。」そして、その三行ほど下には、「確定診断は、胸膜生検による。しかし、超音波ガイド下の胸膜生検での診断率は二〇から三〇%であるゆえ、胸腔鏡や開胸による診断が必要となる。」これも内科認定医の試験問題に一九九八年に出ておる。こういうふうになっています。

 さらに、この先、胸水をとってきたところでも、「ヒアルロン酸の検出、LDH高値」というふうになっているが、これも「常に陽性とは限らない。」これは一九九九年の内科認定医の試験の問題から抜粋してきています。

 つまり、認定医の間、専門医の間でも診断が極めて難しいということが常識になりつつあるこの病気を、すき間なく救済をする、確定診断をつける、なかなか難しい。先ほどもお話ししました、呼吸苦のある人に胸腔鏡下の検査をする、開胸の検査をする。リスクが伴う中で、この検査をためらう向きもあるかもしれない、できないこともあるかもしれない、技術的に。そういった方は救済対象とならない可能性があるということを、まず中皮腫で私は懸念しているんです。

 こういう方についての診断をどのようにして進めていくのか。もう一度、中皮腫に限ってで結構です。その次、肺がん、類縁疾患と続いて聞いていきますので、まずそれでお願いします。

滝澤政府参考人 御指摘のように、確定診断ということは、非常に、二〇%とか三〇%とか、あるいはさらに侵襲性の高い検査をしなければたどり着かないとか、それは御指摘ごもっともかと思います。

 ただ、お一人お一人のいろいろなアナムネーゼ等々、居住歴、二十年、三十年、四十年という潜伏期間もございますし、そういったものと、それから、臨床的ないろいろな経過、さまざまな諸データ、そういったことを臨床現場においてこのアスベスト、中皮腫の専門家がしかるべき診断した結果、確定診断、こういうことになるんだと思います。

 おっしゃるように、一つ一つ、このケースはどうだ、中皮腫が極めて疑われたけれども、なかなか確定診断に至らなかったケースはどうだ、それは、今回いろいろ御提案しております機構での審査、あるいはさらに中環審での最終的な審査、そういう形で審査を経て最終的に認定されてまいりますので、さまざまな総合的な判断が下されるのではないかというふうに考えております。

岡本(充)委員 ちょっと後から聞こうと思っていましたけれども、アスベスト由来の中皮腫の専門医による判断、こう言われましたけれども、その専門医は何人いるんですか。

滝澤政府参考人 正直、人数までは掌握しておりませんが、厚生労働省、旧労働省関係のアスベストの関係のセンター、あるいは旧労災病院等、こういった分野の専門のネットワーク医療機関、あるいは専門医が、しかるべき人数がいるということはわかっております。

 ただ、そういった先生方も、我々だけでは到底全国的にいろいろな意味でカバーできないだろう、研修も大事だろう、あるいは地域のそういった医療機関の方にも勉強していただこうというような御意見も伺っているところでございます。

岡本(充)委員 しかるべき人数だというのは極めてあいまいであって、把握をしていないんです。私ははっきり言わせていただく。

 それで、確認をしたい。しかるべき先生と言われるけれども、これはあいまいとしています。アナムネーゼ、問診で石綿由来であることが疑われる問診であり、居住歴として、もしくは職業歴として、少なくとも石綿と接する環境にある会社の、例えば総務であれ人事であれ、そういう直接吹きつけ現場にいなくても、その会社にいたとか、間接的に疑われるそういう職業歴、そして居住歴があった場合、医師が中皮腫を強く疑うというその根拠で、医師がですよ。専門の医師は数少ないから無理なんです、会えないんです。医師が、この方は中皮腫だということを強く疑うという旨のその添付文書があれば、今回のいわゆる新法の救済の対象になるというふうに理解してよろしいわけでしょうか。イエスかノーかで、時間がないのでお願いします。

滝澤政府参考人 それは、臨床診断として中皮腫という診断が妥当であるかという判断は、我々としては加えるということになると思います。

岡本(充)委員 臨床医が中皮腫だというふうに臨床診断をしたという場合、今のお話では、明らかな相違が認められなければ、アナムネーゼを含めて、居住歴を含めて、職業歴を含めて、問診の結果と検査の客観的な蓋然性とを照らし合わせて、たとえアスベスト小体が、石綿小体が見つからなくても、確定診断に至らなくても、これは認めていただける、そのように理解してよろしいですか。

滝澤政府参考人 臨床診断としての妥当性をチェックするというふうに申し上げました。

 こういう場合は認めるか、こういう場合は認めないのかということについては、ちょっと私、この場ではお答えをしかねます。

岡本(充)委員 それでは定義ができないじゃないですか。きちっとここで認めていただいて、どういう方が対象になるのか、どういう方が対象にならないのかということが決められなければ、この質問、私は続けられませんよ。それでは私は質問を続けられない。委員長、ちょっと答えてもらってください。

滝澤政府参考人 御質問の趣旨は、居住歴とか職業歴とか、そのアナムネーゼによってかなり臨床経過として疑わしいけれども、病理診断等の確証がない、こういうケースも認めていただけますかというお話です。それを、今それだけの条件設定で、私がこの場で、はい、そのようなケースも対象になりますというふうにはお答えしづらい。

岡本(充)委員 あと、では何があればいいですか。

滝澤政府参考人 失礼しました、あと何が……(岡本(充)委員「あとどういう条件があれば認めていただけますか」と呼ぶ)

 先ほど申し上げたように、病理組織であるとかそういったことを、より確かな医学的な……(岡本(充)委員「七割から八割ないんですよ、病理組織」と呼ぶ)

木村委員長 委員長のまだ許可が。答弁終わりましたか。

滝澤政府参考人 病理組織等の、いわゆる中皮腫というポジティブデータがそろうかどうかということかと思います。

岡本(充)委員 今、お話、最初にしたじゃないですか。苦しい検査でこれ以上侵襲的な検査ができない人もいる、検査をしても七割から八割は見つからない、こういうふうに書いてある。この人たちが救われないじゃないですか。その病理組織がにしきの御旗で、これがなければ全部だめという話ではないと、先ほど私は前向きな答弁をされたなというふうに思ったんですけれども、病理組織がなければ確定診断ができないということで、新法の救済の対象にならないというふうに言われるわけですか。

滝澤政府参考人 話がちょっと前後して恐縮ですが、先ほど検討会を開催しているというふうに申し上げました。一月二十四日、一月十一日、それから次回二月二日、ほぼ最終的な、検討会としての御議論をまとめていただくことになっています。

 そうした中で、その中皮腫の診断ということについても、最終的に報告書という形で御専門の先生方にまとめていただくことになりますので、その結果を踏まえて、さらに中環審への諮問、それからパブリックコメントに諮る、こういう手続を経て基準は決めていきますので、そうした中で、いろいろな意見について調整といいましょうか、最終的な認定の考え方を定めていくということになると思います。

岡本(充)委員 今、手順を私聞いているんじゃないです。こういう方は認めようとこの新法の中で考えてみえるのか、政府としてのその考え方を聞いているわけです。すき間なく埋めると言っているわけだ。

 検査の結果、七割から八割は出ないかもしれない、そういう話もあるわけです。こういう人たちをどうやって救うか。アナムネーゼと今の職業歴それから居住歴、こういった話は重要だと部長も言われたじゃないですか。この部分を尊重して認定をするかしないか、それだけでいいです。もう手順とか今後のスケジュールはいいです。

滝澤政府参考人 しかるべき手順はいいというお話でございましたが、やはりしかるべき中環審等々の専門機関による認定基準をオーソライズしていただくということが大事でありますので、私の立場で、そこできょうイエス、ノーを言う性質のものではないというふうに考えております。

岡本(充)委員 それでは、この法案の対象者がどういう方になるのかがはっきりしないわけですよ。これでは審議のしようがないじゃないですか。大臣、ちょっと前向きに答弁ください。

小池国務大臣 これは、この新法は、アスベストによる被害を受けた方々で、労災などのこれまでの基準に合わない方々をどうやって救うかということで御議論いただいているわけであります。

 今、中皮腫、なかなかわかりにくいという医学的な御発言だろうと思いますけれども、先ほどから保健部長がお答えしているのは、そこに客観的などういったものを判断基準としていくのかということをただいま御議論いただいているところでありまして、その主な内容については先ほど保健部長からお答えをしたとおりでございます。

 できるだけ多くの方々を、そしてまた、制度のすき間に落ちてしまわないような形で、私どもは、できるだけ多くの方々を救っていきたい、救済をしていきたい、そういう方向性で考えているところでございますので、手順のことはもういいというお話でございますが、新法をきっちりと定めていくためにはやはり手順というものも必要でありましょうし、その方向性ということでは、今私が申し上げたとおりでございます。

岡本(充)委員 私、ほかの疾患についても聞こうと思ったんですけれども、この問題がちょっと長引いちゃって時間をとられて、余り時間がない中で端的に聞きたいんです。

 もちろん手順が必要なのはよくわかるんです。ただ、今、では、もし手順が必要であれば、どういう方が対象になるのかがはっきりしてからこの法律を制定する、もしくはこの法律を提案されるということがあっても、どういう方を認定するかということがまだ明らかでない中で、だれが対象になるかが明らかでない中でこの救済法を考えていくというのは、逆に言えば、手順的に逆なんじゃないですか。

滝澤政府参考人 ちょっと先生におしかりを受けるような言い方になるかと思いますが、中皮腫は今、学問的に言いますと、約八割ぐらいアスベスト由来だろうと言われております。そういう議論も踏まえまして、ただ、中皮腫と診断された人は、その八割とか二割が落ちるとか、そういうことじゃなくて、中皮腫と確定診断された人はすべて救済の対象にしていきましょうということは、この検討会で既に一月十一日に結論的に御議論をいただいております。

 だからそこは、中皮腫という確定診断ができるかできないかという技術的な御指摘はきょうお受けいたしましたけれども、今後、いろいろな審議会等々の手続の中で議論をさらに深めたいと思っております。

岡本(充)委員 答えになっていないと思うんですね。順番が逆なんじゃないですかという話をしているのと、一〇〇%中皮腫と診断された方は今回の救済法の対象になりますというのとは違うので、中皮腫とは何なのかということが決まっていない中で中皮腫の人は全部救いますと言ったって、だれが中皮腫なんですかということなんですよ、私が言っているのは。

 中皮腫が、どういう人が悪性中皮腫だという確定診断が非常に難しい中で、中皮腫だと認められればこの人は救いますよと言われても、だれが中皮腫なのかという定義がなかなかつけられない中で、この法律案はその定義づけが不確定になるんじゃないかということを指摘しているんです。

 時間がないので、次の質問に移ります。

 同じく、肺がんも診断が極めて難しい、大変に難しいと思っています。この肺がんの診断についても、検討会でという話が恐らく答弁で出るのがわかっておりますから、もう検討会で検討していただいているのはよくわかっています。

 その中で、この肺がんをすき間なく埋めていくというけれども、例えばアスベストと喫煙の関係、相加効果なのか相乗効果なのか。肺がんが発症する方の悪い方の効果が相加効果なのか相乗効果なのか。いろいろ議論があって相乗じゃないかという声が多いですけれども、しかし、では、ヘビースモーカーの人が少量の暴露で肺がんを発症した場合、この場合でも例えばアスベスト由来の肺がんだというふうに認定をするのかどうかを含めて、極めてこの問題も難しいと思います。

 肺がんについても、すき間なく埋めるというのであれば、どういう人が肺がんなのかということについて、同じ質問になります、きちっと定義ができてからその救済を議論していかなければならないのではないか。つまり、法律はできた、すき間なく救済します、だけれども、どういう人がアスベスト由来の肺がんなのかというその診断ができませんというのでは、この法律は意味をなさないわけなんですね。

 そういう意味で、どういう人がアスベスト由来の肺がんなのかということが定義できる、それをきちっとすき間なく定義できるんだという、これからの議論だと思います。その決意、できますよとはっきり言ってください。

滝澤政府参考人 肺がんは、年間六万人ほどかかっているということを言われております。そうした中で、さまざまな原因が指摘される中で、この石綿由来の肺がんであるということをどのように認定していくかという議論を、御指摘のように今真っ最中で議論しているところでございます。

 これは先ほどちょっと言いかけましたが、いろいろ欧米の基準、特にベルギーの基準なんかがございまして、それは、おっしゃるように、わざわざ肺の組織をとってこなきゃいけないとか、御本人にいろいろな負担を強いる検査の基準でございます。

 そういうことではなくて、もう少し、エックス線とかせめてCTぐらいで、きちっとこういう所見があれば石綿由来の肺がんと言っていいんだということを、かなりこれは最終的な議論にたどり着いておりまして、そこは基準は明確化したいと思っております。

岡本(充)委員 必要条件と十分条件という言葉がありますよね。すき間なく埋めるというのは必要十分か、もしくはもっと広い範囲をとらなきゃいけなくなってくるんですが、恐らくは、レントゲン所見で石綿由来だという所見を見られる方はそんなに、もちろん見えるのはわかる、ある一定はいる。その一方で、その所見すらなくて見つからない、たまたま見えないだけ、こういう人だって中にはいるわけですね。この人たちを救うというのは非常に難しい。

 私は、部長、責めているわけじゃなくて、今回すき間なくやるということは大変いいと思うのですが、そういうことを発案されて、政府としても大臣もおっしゃられている中で、このすき間なくというのは極めて難しく、逆に言うと、石綿由来じゃない人までも拾うぐらいの覚悟がないと、すき間なくこぼれていく人を救済するというふうにはできないんだ、だからもっと投網を大きくかけなきゃいけないんだということを指摘しているんです。もう時間がないから答弁はいいです。

 そして、さらに難しいのは亡くなられた方ですね。もう既にレントゲン所見もないような方、たくさんみえます。レントゲンも破棄されている方、病院によっては何年保管している、十年や二十年保管しているという病院もあるかもしれませんが、この新法の中で過去に亡くなられた方も救済をしていくという話になってくると、私自身の印象としては、ここ最近こそ、中皮腫だという診断をしよう、もしくはヘリカルCTを撮ろう、こういう話ができてきたけれども、かつてにおいては、内科の医者においては、石綿由来の肺がんであろうとそれ以外の肺がんであろうと、腺がんか扁平上皮がんか、こういうところは議論の対象にならずに、小細胞がんか非小細胞がんかだけで分けて治療法を決めてきた、こういう過去の歴史がありますよね。そういう中で、過去の症例については、深くアスベスト由来かどうかまでは追求していないと思う、臨床の現場で。

 したがって、アスベスト由来だという確定診断まで至っておらずに、もしくは中皮腫、そういう認識すらない中で亡くなられていった皆様方がみえる、こういう人たちをどのようにして救済していくおつもりなのか、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 亡くなった方の取り扱いでございますけれども、中皮腫であったことを医学的、客観的に確認できる、例えば死亡診断書でありますとかあるいはカルテでありますとか、そういうことになろうかと思いますが、そういうものがあればこれは救済対象としていこうというふうに考えております。

 肺がんも同様に、カルテ等の一定の医学的な所見があればそれは審査をしていくということになると思いますが、いわゆるパーストヒストリーだけでということはなかなか難しいのではないかと考えております。

岡本(充)委員 いや、死亡診断書に、肺がんで(石綿による)とか、もしくはその起因、アスベストによるなんて書いてある死亡診断書、医系技官だというふうに伺っていますけれども、見られたことはありますか。実際ないと思うんですよ、そういう人。そんな、死亡診断書に死亡原因、それが肺がんと書いてある、それで(アスベストによる)、こういうような死亡診断書というのは、特に過去において、私はほとんどないんじゃないかと思う。

 したがって、これでは、今のお話のすき間なく埋めるということにはならなくて、ほとんどの人は逆にこぼれていくという話になりますよね。この点については、やはり過去のヒストリーを重視しなければ仕方ないんじゃないですか、職業の従事歴、居住歴。それからまた、その人が例えば若年性で肺がんになる、普通はなかなかないような年齢で、普通はなかなかないと言ったら語弊があるけれども、例えば四十代で肺がんになっている、こういうような話があるときに、普通の肺がんとはその疫学的な意味合いが違うんじゃないかという疑いを持って一つのクライテリアにまとめるなり、何らかのその人たちの救済策を考えていくなりするべきじゃないかというふうに思うんですが、答弁を求めたい。

滝澤政府参考人 先ほどと若干繰り返しになりますが、確かに死亡診断書は、年間九百人とか千人亡くなるという疾患でございますので、二十数万人いる医者が遭遇するという意味では非常にまれな疾患であります。また、どのように結果的に書かれているか、いろいろなバリエーションがあろうかと思います。

 ただ、カルテが保存されている場合には、診断書とはかなり違った情報が得られます。それから、もちろん、先生再三おっしゃっているように、パーストヒストリー等々のそういうヒストリーもあわせて、そういう書類、カルテ等の書類も含めての判断になると思います。だから、ただパーストヒストリーだけでは、中皮腫にしても肺がんにしてもなかなか難しいのではないかと思っております。

岡本(充)委員 では、個別的な話をさせていただきますと、例えば、かつての職場が石綿、アスベストを取り扱う会社だった、この会社に勤めていた、そしてその期間も、そんな一カ月や二カ月ではなく、年単位で勤めていた、こういう方がみえて、その方がおよそ二十年から三十年後、例えば二十代で就職をして、二十年仕事をして、その後は違う職場に移るかもしれませんが、二十年後ぐらいに肺がんになった。例えばたばこも吸わない、こういう人。疑わしいなと思うけれども、もう既に亡くなって二十年たっている。カルテはない、レントゲンはない、CTはない。二十年前だからそんなに頻繁にCTが撮れる施設、まあ、なかったとは言いませんけれども、十分な情報もない。こういった中で、この方は救われないわけですか。

滝澤政府参考人 かなり職業歴とかそういったことがはっきりしていらっしゃる方と、またそれがそうでない、一般環境経由かなというようなケースの方と、いろいろあるかと思います。

 本当に繰り返しで恐縮でございますけれども、中皮腫については、その亡くなった方の病気が中皮腫であるということが何らかの形で確認できる書類があれば、これはもう認めていこうではないか、つまり、検査データとかなんとかという当時のことは求めずに、それは認めていこうではないかというふうに、さっき、ちょっと中皮腫と肺がんとまとめて言いましたので誤解を生じたかと思いますが、中皮腫はそのように考えております。何らかの客観的な書類があれば、それは対象にしていっていいのではないかと考えております。

岡本(充)委員 私は、肺がんだと聞いているんです。

滝澤政府参考人 肺がんについては、先ほども申し上げました、繰り返しになって恐縮ですが、一定の医学的な所見というものを、他の原因が非常に多過ぎる疾患でございますので、当時のそういう所見があれば、それは判断材料にしていくということになります。アナムネーゼだけでは難しいのではないかと思っております。

岡本(充)委員 そういう話になると、かなりの方が漏れるということをもう委員各位は認識をされると思いますけれども、今の肺がんの方、確かに救済するのは難しい、認定するのは難しいというのはわかるけれども、もうカルテがない人、たくさんみえるわけですよね。アナムネーゼが、もしくはそこへ就職していたということだけはわかるけれどもという人はいっぱいいる。こういう人たちを救済しなければ、先ほどの、この法律の大きな精神の一つである、大臣がきょうの本会議でも述べられた、すき間なく救済をしていくというこの方針に私は外れてくるんじゃないかというふうに思っているわけです。

 大臣、どうでしょう。もっと幅広く、検討会の意見を踏まえてですけれども、過去の肺がんの方、もうカルテもない人、こういう人も救っていくような方向にしていくべきじゃないでしょうか。お答えいただけませんか。

小池国務大臣 石綿を扱っている会社にお勤めになって肺がんで亡くなってということであるならば、むしろ労災ということが考えられるわけで、今やっておりますのは、そこの対象にはならない方々の問題をどうするかということでこの新法を御提案させていただいているというのがまず一点ございます。

 肺がんについては、先ほどからおっしゃっておられますように、また私どもの保健部長が申し上げているように、さまざまな要因があって、そこをアスベストと結びつけて、そしてそれが証明できるということ、なかなか難しいということも、この点はお認めいただけるのではないかと思います。

 今、一つ一つ、中皮腫はどうか、そしてまたびまん性はどうかといったような形で、その症状ごとにこの審議会の先生方に御検討いただいているところであります。その上で、また手続論がどうのこうのという話になるかもしれませんけれども、それを、これもかなり猛烈なスピードでやっていただいていると思うわけでございますけれども、ほかの例でいうと、ほかの病からすればかなりのスピードではないかというふうに思うわけでございますけれども、二月二日には報告書を取りまとめていただいて、そして二月十日には認定基準の中環審諮問を行うという、このスピード感でやらせていただこうと。

 また、先ほど来、肺がんのお話の方に今集中しておられるかと思いますけれども、これまでに、中皮腫であるということの医学的な何らかの証明、そして客観的な証明ができれば、その中皮腫の患者さんについては救済の対象にしようというのは、これは、これまでのことを考えますと、かなり大胆に進めているのではないかな、このように思っているところでございます。

 認識の違いがあることは、申しわけございません。

岡本(充)委員 いや、認識の違いと言われましたけれども、すき間なく救済しようという言葉を聞けば、やはりすき間なく救済してもらえるものだと思ってみえる患者さんもしくは御遺族の方、たくさんみえる。今、労災の対象だと言われましたけれども、労災の対象だといっても、今回のこの新法が対象にしようと思っている範疇は労災という枠組みができてからだという話を聞いておりますけれども、実際には、これまでいろいろなところで話題にも上っていると思いますけれども、このアスベストと中皮腫並びに肺がんの関係が指摘をされ、そして皆さんが注目をされる中で、その認定をされてきた歴史はそう長いわけではないわけであります。

 その昔は、よくわからないけれども、先ほどもお話ししたとおり、うちのおやじは胸の患いで死んでしまった、こういうような方もたくさんみえる。ただ、よく考えてみれば、うちのおやじは吹きつけ工場で働いていたな、労災という枠組みには入っていなかったな、こういう人もみえる。この人も救っていこうというのが今回の法の趣旨であるはずでありまして、私は、それは認識の違いということよりも、せっかく大臣が、そして政府がかなり思い切った方針を出されたなと思った割には、最終的にしりすぼみという形になることを大変恐れています。

 時間がなくなりますので、ちょっとその他周辺のものについてもお伺いいたしたいと思います。

 石綿肺、良性の肺疾患含めて、こちらの方についても今後検討会等で検討して、さらに補償の、救済の対象としていくのか。周辺住民に石綿肺までの肺線維症はないという話をされている方もみえますが、今後変わってくる、その認識は変わる可能性もあります。したがって、検討会で検討をしていく、そしてまた、もしくは対象疾患についても毎年見直していく、そのぐらいの取り組みをされるということがあるのかどうか、その点について端的にお答えをいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 先ほど来申し上げております検討会で、石綿肺等の関連疾患の取り扱いについても専門技術的に議論をしています。それも含めて、三月いっぱいまでに最終的にまとめていくということになります。

岡本(充)委員 しっかりと、ほかの疾患についても毎年見直すというぐらいの心意気が欲しいというふうに思いますけれども、これは今後、科学的な、医学的な知見も変わってくるかもしれない、また新しい疾患が石綿由来で出てくるかもしれない、そういった意味では、新法を、この精神を生かして、ほかの疾患にも広げていくというぐらいのおつもりがあるかということです。

滝澤政府参考人 今までの議論からしますと、石綿肺、それから良性胸水等々の議論をしておりますけれども、中皮腫とそれから肺がんについて、これはしかるべき基準に合えば対象としていこう、それ以外についてはなかなか、今回の当面の救済法の対象という意味では難しいのではないかという議論になっておりますが、最終的には三月いっぱいかけて議論したいと思っています。

岡本(充)委員 大分時間も押してきました。

 きょう、いろいろ伺おうと思いましたが、また機会を改めて、中皮腫の専門医の数が少ないことはもう先ほど答弁いただいた。これを育てていかなきゃいけないという取り組みもお答えをいただきたかったけれども、その決意をちょっとお聞かせいただきたいのと、それから、新薬でペメトレキセドという中皮腫の新薬、今後早期に使いたいという思いを持ってみえる方がみえますが、今後の治験の行方、これについてお答えをいただいておきたいと思います。

中野副大臣 岡本委員の御質問にお答えしたいと思いますが、アスベストの関連疾患の専門医が少ないという現状をどう考えておるかということかと思いますけれども、これについては、厚生労働省としては正確に今把握していないというのが現状でございますけれども、そういう中で、このアスベスト関連の疾患に関する診断技術とか治療方法等を医療関係者に広く普及していくということが重要じゃないかと考えておるわけでございまして、例えば、昨年の十一月から、アスベストの問題につきまして、診断、治療の中核となる医療機関として、二十二の労災病院にアスベスト疾患センターを設置いたしまして、健康相談とか診断、治療、症例の収集を行うと一緒に、地域の医療機関または産業医等の関係者からの相談とか講習会、そういうものを具体的に今やっております。

 そしてまた、国におきましても、十八年度において、やはり診断技術等を初めとした問題については広く普及するようにということで今予算をとっておりますので、そういう点については一生懸命頑張りまして、今委員の御質問、御心配についての、少しでもそれについて前進するように頑張りたいと思っておりますので、その点よろしくお願いしたいと思います。

黒川政府参考人 御指摘の抗がん剤ペメトレキセド、欧米での販売名はアリムタと申しますけれども、これは悪性胸膜中皮腫の治療薬として欧米で承認されておりまして、肺がんなどに使われている抗がん剤シスプラチンとの併用、これでよく使われているものでございます。

 本剤は、国内では未承認の医薬品でございますが、昨年一月の第一回未承認薬使用問題検討会議、ここにおきまして、国内で治験を早急に開始することとされ、この決定を受けまして同年三月に治験が開始されまして、現在順調にその治験が進行していると聞いております。

 このお薬につきましては、今後、薬事法上の承認申請がなされました際には、臨床試験成績などの提出データに基づき、有効性、安全性について迅速に審査してまいりたい、こう思っております。

岡本(充)委員 もう時間が参りましたので、最後に私の残りのペーパー、最後の二枚ですけれども、ちょうど下段から下のあたりに悪性中皮腫の文言があります。左上は、悪性中皮腫になられて亡くなられた方の肺の、亡くなられた後に切った像です。白っぽいところが悪性中皮腫に侵されていて、もう黒いところは本当にわずかしか残っていない。こんな肺になって、この方もかなり苦しまれたと思います。

 こうやってこういう病気が起こるということを既にこの下に書いています。下から八行目、アスベスト鉱山で粉じん吸引により胸膜の悪性中皮腫の発生に気づいたのは、これは一九六〇年だ、こういう報告があったと。それで、次のページの、めくって上から三行目ですが、実験的にアスベスト粒子が胸膜に集まる性質を利用してラットの胸腔内に注入し、胸膜中皮腫をつくることができるということが証明されたのが一九六二年です。

 WHOは昭和四十七年以来指摘をしてきたという指摘もありますけれども、学術的にはもうこの時点でアスベストとの関係がはっきりしていた。その対策を怠ってきた現実を、なかなか政府としては認めづらいと思いますけれども、私は、今回きちっと対策をとらなければ、また未来に禍根を残す。そして対策は、先手をとれば簡単ですけれども、こうやって後からカルテを探すだとか、後からいろいろ診断基準を、何とかいいものを検討会で探すとか、大変御苦労をされるわけですね。

 前向きの取り組みをしていかなきゃいけない、この意気込みを最後にお聞かせいただき、そして、これまでの政府の、一九六〇年以来の残念ながら対策をとれなかったことについての、できましたら反省の思いを含めて大臣に最後お聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

小池国務大臣 予防的アプローチをとってこなかったという御指摘はそのとおりであろうと思います。そしてまた、各種の、例えば昭和四十七年にILOそしてWHOの各専門家会合で発がん性が指摘されていたわけでございますけれども、その当時を振り返ってみますと、我が国でも被害がまだ顕在化もしていない、科学的な知見も不足していたというような実情があったかと思います。

 こういった科学的知見の収集、環境モニタリングなど、私もずっと、環境省は何をやってきたかというので振り返って、何年に何をと、そしてまた、こういう文献の調査であったり指摘があったことに対して大気の環境調査なども行っている。そうすると、大きな影響はないというような結論が出る。そういったことを重ねている中で、大気汚染防止法などを改正もしたりしております。

 いずれにしても、行政として、それぞれの時点で私は不作為があったというふうには考えておりませんけれども、しかしながら、今委員が御指摘のように、これをまた繰り返すということでは、まさに英知の積み重ねがないわけでございます。ましてや、発症してから一、二年しか生きる力がないという今回のこの中皮腫の問題などにつきましても、できるだけ早く救済の措置はとっておく。と同時に、この問題については、繰り返さないことのために何をすべきかということをしっかり積み重ねていきたい、このように思っております。

岡本(充)委員 終わります。

木村委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 きょうは、同僚議員と分担し合いながら、極めて中身の濃い、そしてまたボリュームのあるこのアスベスト関連法案について質問をさせていただく中、随分時間をちょうだいし、私は、とりわけこの制度の基本的な性格、そして対象範囲、また給付の内容、水準等について、大臣以下、関係各位にお尋ねをしたいと思います。

 先ほども、本会議でも、また冒頭の提案説明でも、何度も小池大臣の方はすき間のないという言葉をお使いになられました。説明文の中にも五つほど拝見をしたところであります。本当にすき間のない対応を求めていらっしゃる、それだけに、スピードは大切ではありますけれども、それ以上に本当にすき間がない対応ができているのかどうか。被害に遭われた方、そしてまた遺族の方々が、きょうも傍聴席にお座りになってこの議論の行方を見守っていらっしゃいます。そういう思いをしっかりと受けとめて質問に立たせていただきますが、大臣のおっしゃるすき間とは、そもそも何と何の間のことをとらえていらっしゃるのか、前提としてお聞かせいただきたいと思います。

小池国務大臣 例えば、これまでの救済策といたしましては労災制度というものがございます。今回は、一般環境ということなどもあって、その労災の対象にはなりにくいというか、なり得なかった方々が存在するであろうということがまず第一点。

 それから、これまで各省庁間の縦割り行政のすき間に入ってしまって、これまでの対応が予防的アプローチということがおろそかにされてきたのではないかという反省に立って、セクショナリズムというようなすき間に陥ることなく、シームレスで対応をしていこうという観点でございます。

 そしてまた、結果として、スピード感を持って、今この石綿の被害に遭っておられる方々、それから、今後暴露から実際に発病というその段階にいらっしゃるであろう方々、まだわかりません、そういった方々に対しての将来の救済措置を整えておくこと。

 そしてまた、建築物などの取り壊しなどによって、ここからまた新たにアスベストの飛散が起こらないような形で行って、対策を練っていく、その対策にもすき間がないこと。

 こういったことなどを念頭に置いて、対案、この新法、そして一括法の案をつくらせていただいたということでございます。

田島(一)委員 労災補償制度と今回の新法とのすき間、そしてまた省庁間の連携といった、基本的な部分ですけれども、そのすき間、そしてまた、対策自体のすき間、このすき間を埋めるという観点で、今回、この法案を提出されたと今理解をさせていただきました。

 果たして、本当にそのすき間が埋まっているのでしょうか。私には、やはりすき間はすき間として、御認識いただいているようですけれども、埋まり切っていないなという気がしてなりません。

 そもそも、私ども民主党は、昨年の特別国会で対策法案を提出させていただきました。どちらかといえば、総合的な推進という観点に立ち、ノンアスベスト社会を築くために、アスベストによる健康被害者に対する補償という観点で提出をさせていただいた法案でありました。

 補償で行うべきか、救済として行うべきか、この基本の立ち位置が全く違うと一蹴されてしまうかもしれませんが、私はやはり、国の責任がしっかりと問われる、それが今回のアスベストの問題であり、これまで全面禁止をしてこなかったこと、そして、被害が世界各国でさまざま出ていたにもかかわらずそれを見過ごしてきた政府の責任をしっかりと踏まえた上で、やはり、今回のような急場しのぎではなく、総合的な推進法、推進対策を打ち出すことが一番求められているのではないかというふうに考えるわけであります。

 その点について、お考えをお聞かせいただけますか。

小池国務大臣 補償か救済かという観点の違いということでございますけれども、ただやはり、きょうの趣旨説明の中でも申し述べさせていただきましたけれども、石綿によります健康被害というのが極めて長い潜伏期間、平均で四十年というふうに言われております、こういった特性。そして、発がん性が指摘された昭和四十七年当時には、その当時はまだ被害が顕在化していない、科学的知見も不足していた実情にあって、そういった中で、政府がこれまで、各時点での科学的知見に応じまして石綿の環境汚染問題には真摯に取り組んできたもの、このように考えております。行政としての不作為はない、そのため、国家賠償責任に基づく補償制度の創設ということについてはなじまないものと考えているところでございます。

 一方で、実際に病気、中皮腫などのアスベストの被害をこうむっておられる方は現に存在しておられるわけでございます。原因の特定が極めて困難であるということ、それから、重篤な健康被害にもかかわらず労災補償の対象者以外には現状では特別な救済手段がない、存在しないということから、この今回の制度でございますけれども、個別的な因果関係を明確にすることが困難というこの石綿によります健康被害の特殊性にかんがみまして、民事上の責任とは切り離した上で、事業者、国、地方公共団体の全体が費用負担をシェアすることで被害者の迅速な救済を図ろう、このように考えた上での法案提出でございます。

田島(一)委員 責任の所在をどこかに置かなければ問題は解決しない。そう考えると、やはり私は救済ではなく、国がこれまで対策を打ってこなかった、先延ばししてきたその責任をとってしっかりと補償する、そういう観点でなければ、恐らく、何の罪もない、アスベストで被害に遭われた方々は報われない、そんな気がしてなりません。

 恐らくこの議論だけやっていればきょう一日あっても足りませんので、次に進ませていただきたいと思います。

 私、今回のこの法案をすべからく拝見する中で、どうしても、昨年、被害者そして被害者の遺族の方々と尼崎のとあるホテルで会談をされた小池大臣の発言が頭から離れません。クローズでの会合でしたから、その会議に参加されていた被害者の会の方の発言を引用させていただくと、別れ際に小池大臣は、がけから飛びおりますからねと言ってくれました、その言葉を信じたいというお話でありました。これは、おっしゃったことは事実ですね。

小池国務大臣 その発言は、そこにいらした方がおっしゃって、がけから飛びおりる気持ちでやってくださいという御依頼は受けました。私の言葉ではございません。その言葉は別の、選挙の方で使っていたもので、失礼しました。

田島(一)委員 がけから飛びおりるつもりでやるという、その決意は変わらないですか。

小池国務大臣 ですから、私はその言葉は使っておりません。

 しかし、今環境大臣として、この大きな法案、そしてまた大きな流れをつくっていくということについての責任、そしてまた、これからの環境行政そのものもある意味で大きく変えてくる、そのきっかけとなるかもしれないこの法案、これについて取り組みをしていくという決意については変わっておりません。

 がけから云々という言葉は、そのときいらした方が何か非常に気に入ってくださっておられまして。ただ、ずっと大臣をやっていると、連続、毎日がその決意でございます。

田島(一)委員 言ったか言わないかを別に問題にする気はありません。ただ、「「飛び降りますからね!」と力強く言われました。」というふうに、古川さんという方が直接、御本人が書いていらっしゃるこの文章を拝見したものですから。私も、大臣のその決意を実はすごく期待したいと思っていたところでありました。

 昨年も、話は全然変わりますが、外来種の指定のときに、ブラックバスの指定の問題が随分大きく話題になりました。私は、あれは一種の大臣の決意のあらわれかな、外来生物の被害を食いとめようという思いのあらわれだという意味で、おっしゃっていないと言われますけれども、がけから飛びおりた覚悟の決断であったのだろうというふうに思いました。

 ですから、あの延長線で今回も、アスベストの被害に遭われた方の、労災認定者とそうでない方のすき間をきっちりと埋める、言いかえれば、労災認定者と同じだけの補償に値する救済を打ってくださるものと実は期待をしていました。しかし、残念ながら、労災認定者とそうでない今回の新法の救済とでは、随分な差があると思います。先ほどもすき間としておっしゃいましたけれども、このすき間は実際に埋まっていないと思うわけであります。

 きょう、皆様のお手元に比較の表を配らせていただきました。上をごらんいただきたいと思います。上の表は、配偶者と子供一人、被扶養者二人、そして賞与を除く年収五百万円世帯の場合で、労災補償と今回の新制度による救済案、そして労災の時効事例の救済案を、それぞれ費用項目別で比較一覧表をつくってみました。

 労災補償では、医療費、通院費、休業補償費、葬祭費、遺族一時金、遺族年金、そして就学等の援護費がそれぞれ記したとおり計上されています。

 ところが、今回のこの新制度による救済案、法が施行する前にお亡くなりになられた方、これは右側にありますが、まだ生きていらっしゃる方が右以外というところに書いてありますが、この労災補償との差を比較していただきたいと思います。果たして、これで本当にすき間がないと言えるのかどうか。

 通院費をごらんください。労災補償では、原則実費全額補償されています。ところが、今回の新法による救済では、一円も上げられていません。

 休業補償の中に、療養手当として月額約十万円とあります。これが言ってみれば通院費にも充当するんだというお考えをお示しになるかもしれませんが、療養手当、休業補償として当てはめるならば、このような分け方になります。

 葬祭料ももちろん、労災補償に比べればわずかな額。遺族一時金も、そして、遺族年金や就学等援護費については、一切救済の中身には盛り込まれていません。

 どうして、このようなすき間がありながら、それでもこの労災補償とのすき間がないと大臣は言い切れるんでしょうか。お答えください。

寺田政府参考人 既に委員御承知のことと思いますけれども、本制度は、石綿被害の特殊性というものにかんがみまして、民事上の賠償責任に基づく補償制度ではございませんで、社会保障的な考え方に基づく、言ってみれば見舞金的性格の給付を行う制度として構築されておるものでございます。

 したがって、その給付内容というものは、いわゆる逸失利益とか積極的損害の額などを厳密に積み上げてそれをてん補する、そういうものではございませんで、医療費、入通院に係る諸経費、介護等に係る費用、葬祭料などの一部をてん補する要素を含む見舞金的なものでございます。

 そうした性格でありますから、項目の設定あるいは額の算定に当たりましても、含まれている要素の損害額とか必要額を積み上げる、損害のすべてをてん補するというものではなくて、救済の程度につきましては、我が国の法制度全体のバランスも参照しながら決定するというものでございます。

田島(一)委員 一つ一つ見ていきたいと思うんですね。

 例えば、まず通院費であります。

 今回、この通院費、私はこれは、なしというふうに記させていただきましたけれども、この療養手当月額十万円というものの性格、これが休業補償として該当すべきなのか、それとも、通院費もこの中に含まれるというふうに解釈をされているのか、そのあたりをまず前提としてお聞かせいただけますでしょうか。

寺田政府参考人 まず、お尋ねの中に休業補償というお言葉を承りましたけれども、休業補償というのは、まさしくこれは損失のてん補、損害の賠償でございますので、本法における救済の中にはそういった休業補償的なものはないというふうに御理解をちょうだいしたいと思っております。

 その上で、ただいま御質問の療養手当の内容ということでございますけれども、先ほどの答弁を繰り返すようで恐縮でございますけれども、この制度の給付全体が見舞金的な性格というものを持っておりますので、個別の損害、あるいは個別の、例えば実費がどのくらいかかるか等々を勘案するものではなくて、一定の諸経費を定型化するということでございます。

 療養手当につきましては、入通院に伴う諸経費に該当する部分について、さらにこれに介護手当に該当する部分と申しましょうか、関連する諸制度を参照いたしますと、例えば、医薬品の副作用被害救済制度による療養手当に含まれるような入通院の実費的な要素、さらに原子爆弾被爆者援護制度における介護手当のような要素、それぞれに準拠をいたしまして、いわゆる入通院等の諸雑費プラス介護等に要する費用の一部を勘案して支給するということでございます。

田島(一)委員 そういう話を持ち出すために、どうしても救済にしておかなければならないんだというのが前提にあるわけですね。

 要は、実費を勘案するものではないとおっしゃったんですけれども、なぜ勘案しちゃいけないんですか。必要経費としてかかってきているもの、しかも、それも被害に遭われた方によっては個人差も随分ある。それが極端な例としては通院費ですよ。

 昨年の十月十六日、尾辻厚生労働大臣が被害者の方々と面談をされた中で、労災の適用の場合でも非常に交通費がかかるというようなことから、十月三十一日付で交通費の支給エリアを拡大されました。非常にスピーディーな対応で、私はさすがだなというふうに評価をしたところなんですけれども、実際にかかるものはかかるんですね。

 しかしながら、今回のこの中皮腫の、またアスベストの診断をはっきりとしていただくには、近隣なところには医者がいない、難しいという現状のお話もいただいております。ですからこそ、この交通費、通院費には随分個人差があるんだ、それならば、先ほどの療養手当月額十万円というものも、その現状に照らし合わせた中で、それ以上かかる人についてはもう少し面倒を見てあげよう、救済してあげようとするのが本当のすき間を埋めることになるんじゃないかなと私は考えるんですけれども、違いますでしょうか。

寺田政府参考人 再三同様の答弁を繰り返して恐縮でございますけれども、本制度につきましては、損害賠償的な制度として、実際にかかった金額が幾らであったか、実際に生じた損害が幾らであったかというものを積み上げるものではないということを先ほども申し上げました。

 その上で、本制度におきましては、我が国におきますさまざまな救済制度とのバランスも一定とりながら、定型化した給付をするという政策手法をとっているということでございます。

田島(一)委員 冷たい対応だなというのをしみじみ感じるんですね。今、本当に、被害に遭われた方々にマイクを向けたら、多分、私の思い以上のことを皆さん発言されると思うんですよ。本当にそんなのでいいんでしょうか。

 今、例えば、もう公共交通機関に乗って病院の診察などできないという方々もいらっしゃいます。自動車で移動して、高速道路を使って一回往復すると一万幾らかかる、そんな方々もたくさんいらっしゃいますよ。せっかく御用意をいただいている、例えば療養手当としての月十万も交通費で全部飛んでしまう、そんな方もいらっしゃいます。

 何の責任もない、罪もない、そんな被害者、本当に救済しようという思いがあるならば、せめて、せめて実費の交通費、通院費を面倒見ることが、私は、血の通う人間として、救済する側の配慮ではないかというふうに思いますが、何度聞いても同じ答えしかされないおつもりでしょうか。

寺田政府参考人 健康被害者の皆様が大変困難な状況に直面されているということは、政府としても認識しているところでございます。

 本法の第一条に、石綿被害の特殊性、つまり、何ゆえにこの救済制度をつくるのかという理由が記されております。石綿被害の特殊性、三から四十年の潜伏期間とともに、多くの被害者が重篤な病気に直面して苦しんでいらっしゃる、そして非常に予後も悪い、そのような悲惨な状況にあるということが、まさしくこの本法の提案の理由でございます。

 ただし、長い潜伏期間ゆえに、個別の因果関係を明らかにして、損害賠償的な補償制度としてこれを構築するということができない以上は、さまざまな被害者、暴露の時期、場所、原因者もよくわからないという方々が非常に多数いらっしゃるだろうと思われますけれども、そうした方々につき、分け隔てなく、しかも迅速にその負担軽減を図るには、救済というフレームで制度を迅速に構築する以外にはないというふうに政府として判断しているところでございます。

 補償的な救済制度ではなくて、救済というフレームである以上、損害がすべててん補されたり、実際の必要額が積み上げられたりすることはない、これは制度設計上もやむを得ない仕儀と考えております。

田島(一)委員 この議論を続けることが非常に難しくなったなと思いました。補償ではなくて救済だということ、あくまでそれを盾にとられるのであるならば、これからお話ししようとすることは全部、救済だから、救済だからで済ませようとされるわけですよね。

 私が申し上げているのは、実際に被害に遭われた方々の生活実態や治療の現状というものを照らし合わせたその上で、救済としての手だてをすることができないかという提案なんです。何も、無理をして金を積めとやみくもに言っているわけではありません。必要経費としてかかっている部分を見てあげることが、どうして救済だったらできないのかということなんですけれども。

 済みません、大臣、どうなんでしょう。本当にだめなことなんでしょうか。

小池国務大臣 今お話が幾つかございますけれども、補償と救済では制度設計そのものから違ってきている。と同時に、国家として救済制度を設けている例はほかにもございます。それは、御承知のように、原爆の被爆者の方々に対してなど、類似のものがございます。

 そういった形で、今回は基金という形をとるわけでございますけれども、それによってできるだけのことをできないかということで、ぎりぎりの、さまざまな折衝がそこまでございましたけれども、例えば財務当局の話もございますけれども、そういった議論を通じまして今回の新法の中身というものができたわけでございます。

 例えば、その積み上げの中で、療養手当だけでなくて、実際には通うであろうというようなことも議論の中にあって、そして、それもその療養手当をふやしていくことによって、この形で少しでも便宜が図れないだろうかという形で今回の法案をまとめさせていただいたものでございます。

田島(一)委員 大臣は冒頭に、すき間の説明で、この労災補償制度とのすき間ということをはっきりおっしゃいました。片や補償でこなたは救済だという違いがあるけれども、やはりすき間として存在しているのは労災補償制度とこの新法とのすき間であるということをおっしゃいました。(小池国務大臣「制度がないから」と呼ぶ)はい。

 私、思ったのは、今回、やはり比較としてどうしても出てくるのはこの労災補償制度であります。救済と補償との違いというのをおっしゃいますけれども、しかし、被害に遭われた方々は同じアスベストによる被害であります。仕事に直接かかわっていた人も、かかわっていなかった人も、同じ苦しみでいらっしゃる。そういう立場からすれば、その患者の成り立ち、また職歴、そして住居歴等にすき間があってはならない、これは当然のことではないかと思うんですけれども、なぜこんなに違いが出てくるのかにやはり悩みが出てくるんですね。

 同じことの繰り返しかもしれません。でも、そこのところのすき間を埋めることが、今回、小池大臣に課せられた一番の大きな使命だったんではないでしょうか。

小池国務大臣 私も尼崎に土地カンがあるもので、そして、そこにクボタという大変大きな、そしてまた石綿を大量に扱ってきた企業が現在あるわけですね。ですから、ついそっちばかり見てしまいます。と同時に、奈良のニチアスであるとか、それから例えば堺であるとか、そういったところには、戦前からも、また戦後も小さな零細企業が石綿などを使って営んできたというような大きな流れなどもございます。

 ですから、ついつい、今回、尼崎という非常に人口が密集して、そして工場地帯がすぐそばにあってというところで、クボタ関係の人は労災でもってこれだけもらうじゃないかというような比較が出てきてしまうというのは、これは人間の心理として、あちらさんは幾らよという話が出てくるということは否めないものだと思っております。

 しかしながら、実際には、原因者が被害者に対しての責任を負うという、そういった原因者を特定するということは、このアスベストによります被害が、暴露から発症まで四十年もかかってしまう、一方で、一たん発症してしまうと非常に生命が、一、二年でお亡くなりになるというような状況がある。二つのはざまがあるわけでございますけれども、そういった中で、やはりできるだけ早く、これはお茶を濁すとかそういうことではなくて、国家としてきちっとした制度設計をして、そしてできるだけ早く救済措置をとらせていただいて、そして安心していただけるようなということで、このたび設計させていただいたのが今回の新法でございます。

 ですから、労災ということで見てしまいますと、そちらとの比較というのが、単純な比較はできないのではないかと思っております。

田島(一)委員 労災と単純な比較ができないとおっしゃっても、やはり被害に遭われた方というのはどうしても労災補償と比較されるわけですよ。これはしようがないですよね。でも、それと一緒に見るなとどう説明するんですか。

 では、例えば、こういう案をつくられましたよといって、今回、大臣、被害者の会の方々とこの件についてお話しされましたか。被害者の会の方々とこの政府の救済案の内容について、直接お話をされましたか。お答えください。

小池国務大臣 一度お目にかかりました。その後は事務方、そしてまた、これまでのいろいろな御要請などについてはしっかりと受けとめてきたつもりでございます。

田島(一)委員 遺族の方の方からのいろいろな御要望を取りまとめると、実は、お手元の、お配りをした下側の救済案の網がけになっている部分であります、最低限これだけは見てほしい、これだけは欲しいというのが救済案の中身であります。通院費は原則実費全額補償、救済ということで補償ではない、そうおっしゃいますけれども、全額実費を見ていただきたい。そして、休業補償として、労災では約三十三万円、平均賃金の六〇%ですけれども、同じように、これに準ずる形で月額約二十万円をという声が上がっています。

 多くの方々が発症して、それこそ仕事もやめなければならない、中には幼い子供を抱えて、そして入院生活を繰り返していらっしゃる、そんな患者さんもいらっしゃいます。そんな中で、いわゆる療養手当月額十万円で生活をしていくのが可能かどうかは大臣も御理解いただけると思います。

 そして、もう一つには、この遺族年金であります。労災補償では、遺族年金として二百七十五万円、二百四十万に満たない場合は差額ということで、これは労災補償の方にも声が上がっておりますけれども、実際に、今回、相対的に若い年齢で発症している、そんなケースが非常に多い中、死亡した場合の家族に与える影響というのも非常に大きいものがあります。とりわけ、今その原因を引き起こしている企業自体が廃業しているケース、それから存在はしていてもその関係資料がほとんどなくなっている場合、そういう場合では民事訴訟は事実上不可能でもあり、患者は実際、この新制度における給付約三百万円、遺族一時金の二百八十万円と葬祭料二十万円を合わせた三百万円で泣き寝入りをしなければならない、そんなことが数字としてあらわれています。

 すき間という話にもう一度戻るならば、クボタやニチアスのようにまだ企業として経営を続けている大企業と、そして先ほども話がありました中小零細企業や既に企業としてもう廃業しているケース、この原因においてもすき間があるわけであります。クボタであるならば、ニチアスも含め、今回二百万円という見舞金の支給が決定をされました。しかし、その見舞金すら支払われない原因を排出した企業等も考えられます。こういった企業間のすき間ということはどのように考えていけばよいのか、お答えいただけませんでしょうか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 労災並みの給付を求めるという被害者の方々のお気持ちというのは、理解できるところでございます。被害者の方としては、当然の御要望であるかもしれません。しかしながら、現実は、労災という事業主の労働災害への賠償義務という労働基準法において確立された補償体系の対象者以外は、現在のところ、労災対象以外は何らの救済も受けられない、こういう状況に現時点ではあるわけでございます。

 そうした状況を踏まえまして、政府といたしましては、労災のごとき損害賠償的制度の設計は無理でございますので、何とか今の状況を打開するということで、救済措置というフレームで迅速かつあまねく被害者を救済するということで、今回御提案を申し上げているものでございますので、何とぞその点、御理解を賜りたいと考えます。

田島(一)委員 済みません、随分食い下がるようで申しわけないんですけれども、お願いされても、やはり納得できないところがいっぱいあるんですね。

 例えば、一番最後に挙げました就学等の援護費、今回この就学援護については、新法での救済では一体何に当たるのか、お答えいただけませんでしょうか。

寺田政府参考人 現在、私どもの提案させていただいています制度において、これに該当する給付は予定しておりません。

田島(一)委員 去年十二月の神戸新聞、十二月十六日でしたか、神戸新聞をごらんになられた方がいらっしゃるかもしれません。高校三年生の妹さんが、それこそアスベスト被害で亡くなられた親のかわりに高校を中退して働き始めたという報道の記事を読んだことがあります。アスベストの被害を受けて親を亡くし、そして学業を途中で断念して働きに出なければならない、そんな事実は、補償ではなく救済であったとしても、私は打つべき手として有効な方策ではないのかというふうに思います。

 なぜそれが行われないのでしょう。見る必要がないのでしょうか。救済としてこの就学援護という視点をとらえること、制度設計に加えることは、なぜ除外をされたのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 本法の給付内容につきましては、まず基本的に、安んじて御本人が医療を受けていただくということを基本にし、考えているところでございます。

 その上で、我が国におきましては、ただいま御提案申し上げております救済制度以外にも、先ほど来いろいろと申し上げております、例えば医薬品の副作用であり、あるいは原爆の援護であり、あるいは犯罪被害者である等々、他の救済制度もあるわけでございまして、やはり我が国の法体系の中で救済制度を構築するということである以上は、それらの制度とのバランス等も考えながら、現在の給付の内容並びにその水準を決定いたしたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 こういうアスベストという本人の自覚もない暴露によって、中皮腫、肺がんで亡くなられた御本人はもとより、遺族の皆さんにとっては、なぜという疑念が一番深いことであろうと思います。ましてや、そのことによって生計が成り立たず、学校をやめていかなければならない、進学を断念しなければならない、これは同情を禁じ得ません。

 御本人の療養のための救済であるとおっしゃいますが、残された遺族にとっては、それこそ大きな問題としてこうした就学援護等の救済が一番望まれるのではないかと思うわけでありますし、何よりも、進学を断念したそのお子さん本人の将来までこのアスベストが及ぼしている影響として考えるならば、これは若い人たちの人生をも狂わせることになります。

 何とか心情的に、例えば、法施行後の次回見直しの時期までに速やかな措置を講じるような手だてを義務づけるというようなことを盛り込むような検討はできないのか。その余地も全くないのでしょうか。いかがでしょうか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、本法の基本的な性格でありますところの、石綿被害の特殊性にかんがみこれを救済という制度的フレームで実行する、被害者の救済を行うということそのものは、これは動かしがたいところであろうかと思っております。

 その上で、この法律につきましては、五年以内に見直しをするということになっているわけでございますから、細部の給付の水準その他運用の面などについて、全く今私どもの考えているままで未来永劫このとおりだということは当然それはない、さまざまな事情の変化に応じて、いろいろなところを見直していくという余地はあるものと考えております。

田島(一)委員 見直す余地はあるというあいまいな答弁しか、今の段階ではできないかもしれません。しかし、実際に被害に遭われた方々の遺族、とりわけ幼い子供さんの進学が断たれるということは、本当に、多分小池大臣も同じように同情していただけることだというふうに思います。

 何とかして、こういう部分で次の見直しまでに措置を講じるようなことは検討していただけないかどうか、お答えいただけないでしょうか。

小池国務大臣 今回の救済に関する法案の中に、附則第六条で、見直しという項目を設けさせていただきました。

 多くの場合、法案を出させていただくと、途中で修正などが入ってそういった見直し条項というのを盛り込んだりいたしますけれども、今回のこの法案そのものは、まず新法でございます、全く新しい形でスタートいたします、それから、科学的知見などにつきましてもまだまだ十分でない部分もございます。

 その意味では、五年以内の見直しというのは、今後この新法、法律を施行していって、さまざまな要素、新しい要素、ましてや、いろいろな予測から考えますと、これから中皮腫、アスベストの被害の方々というのは、発症される方々はこれからふえるのではないかというような見通しもあるわけでございます。

 そういった意味も含めまして、この五年以内のというのは、必ず五年後ということではなくて、そこは、私はむしろ臨機応変に見直しも図っていく必要があるのではないか、このように考えているところでございます。

 ですから、今お尋ねの療養、就学費であるとかそういった部分部分のことのみならず、全体像の中で、今後、必要な見直しは適宜行っていくということになろうかと思います。

田島(一)委員 もう見直しのお話まで言及いただきましたけれども、なぜ今回五年というルールにお決めになったのか。三年でもよかったのになと私は思うんですね。場合によっては、毎年毎年状況も変わっていくわけですから、毎年見直すという話が起こっても当然だろうというふうに思うんですけれども、なぜ五年という数字が出てきたのか。このあたりの背景がわからないんですけれども。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、五年というのは五年以内ということでございます。先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、別に、それ以前に見直すべき新しい事実、状況が発生すれば、それを五年まで待つという意味ではないということでございます。

 その上で、五年とした理由というお問い合わせでございますけれども、まず一つ申し上げられますのは、これが全く新しい制度である以上、ある程度この制度が定着し、運用実績がわかってくる、その上で見直すということを検討していくということになろうかと思いますので、おのずと一定の時間は要るだろうというようなことでございます。

 それからもう一つは、費用負担に関係する部分でございます。

 実は、私ども、制度設計上、一定の患者数の予測等は行っておりますけれども、石綿の健康被害、これからどの程度患者さんの数等が推移していくのか、それを予測するのは非常に難しいところがございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、政府としては、一九七〇年代にさまざまな対策、これは政府の対策もあれば業界の自主的な対策もございます。一例を申し上げますと、例えば、話題になっております尼崎のクボタで青石綿を全廃したのが一九七五年でありました。あるいは、政府の対策からいいますと、吹きつけアスベストというものを禁止したのも一九七五年でありました。そういった一九七〇年代の対策というものが、暴露から発症までの平均の期間が三十年から四十年ということを考えますと、そろそろその効果が発現してくるであろうということを政府としては期待しているわけでございます。

 そういった意味で、将来の予測というのは非常に難しいんですけれども、そうかといって、制度設計上、一定の予測は頭の中に置いてやらざるを得ないということで、政府として向こう五年間の費用負担のスキームといいますか概算をしているところでございまして、そういったところもこの五年という数字についての一つの理由となっていると承知しております。

田島(一)委員 今答弁で、費用のスキームとして五年間だというお話をされました。費用のスキームとして見るのと、それから法の改正等の見直しをするのとは、必ずしも一致しなければならないということは何もないんじゃないんですか。もっと短くてもいいわけですよね。費用は五年先まで見てもいいですけれども、法律の中身については、もっともっと臨機応変に運用していけるように見直しましょうという意味で三年以内とするとされてもよかったのに、五年以内とするということは、五年まで引き延ばすことも可能ですよということですよね。

 実は、きのうの予算委員会でしたか、大臣が、多分間違えられたと思うんですけれども、五年後に見直しますと御答弁されているんですね。(小池国務大臣「そうだった」と呼ぶ)はい。私、議事録を取り寄せたら、やはり五年後だったんです。(小池国務大臣「じゃ、それは間違いだ」と呼ぶ)それはまた後で訂正をされたらいいと思うんですけれども、私は、大臣もやはりもう頭の中には五年後しか見直すつもりがないんだとあの答弁で実ははっきり思ったんですね。(小池国務大臣「そういうふうに速記録を」と呼ぶ)それは御確認をされた方がいいと思いますけれども、やはり心の中に、五年間はさわらないぞという覚悟からの発言だと私は実は理解をしたものですから、あえてそのようなことをちょっとお聞かせいただきたいと思ったんですけれども。

 本当に、これから先、いろいろな状況の変化が出てくると思います。労災認定、まだ後ほどの質問でさせていただきますけれども、併給の問題だとかでいろいろと揺れ動く中で、問題が出てくるとすれば、やはり五年よりも三年とか一年刻みで見直しをするというような、将来にわたって、新法だからこそもっと綿密な見直しをする、そういう姿勢を私は示すべきではなかったかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 今、費用負担の面に言及して五年という数字を申し上げたところを、委員から、費用負担と何も全部連動する必要はないではないかという御指摘をちょうだいしたところでございます。

 ただし、これは救済制度でありますから、費用とそれの裏返しとなる給付というのが当然のことながら連動関係にあるということでございますので、この費用の問題というのは極めてこの法律の中で大きな、基幹的な要素であるということは御理解ちょうだいできるかと思います。

 ただし、その上で、先ほど来私も申し上げております、大臣も申し上げたところでございますけれども、別にそれはありとあらゆるものを五年後に延ばすという意味ではございませんで、当然のことながら、この新しい制度につきましては、毎年毎年、さまざまな実績も上がってまいりましょう、いろいろなこともわかってまいりましょう、そういうことの中で適宜適切な見直しを五年を待たずに行うということを否定するものでは全くございません。

田島(一)委員 次の質問に入りたいと思います。

 昨年、実は環境省の方から、フランスのFIVA、石綿被害者補償基金の方に訪問調査されたというふうに聞いております。このフランスのFIVAの訪問調査でわかったこと、そして、何を今回のこの法案づくりで参考にされたのか、それをお聞かせいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 救済の対象疾病として、中皮腫、肺がん、それから、その他の関連疾患ということが指摘されているわけですが、フランスにおいて、どのような認定基準で、どのような給付がなされているかということを中心に調査してまいりました。

田島(一)委員 もう少し丁寧に説明いただけたらいいかなと思ったんですね。どうぞ。

滝澤政府参考人 それで、その結果としまして、肺がんと中皮腫については、臨床的な確定診断あるいはエックス線、CT等の診断をあわせ基準にしているということが判明いたしましたし、また、その認定の実績、ここ三年ほどでございますが、それぞれの病気ごとに累計何件行われているかというような実績も掌握することができました。

 それから、対象疾患として、いわゆる職業性暴露の方、それから、その他そういったものの関連がない方をともに対象としているわけですが、結果として、給付件数の対象になりましたのが、九五、六%でありますか、職業性暴露の方であったということで、いわゆる労災制度とかなり近似した制度を運用しているなという印象を受けました。

田島(一)委員 滝澤さんが今おっしゃったように、申請のほぼ九五%が職業暴露だと。これは結果として受けとめればいいと思うんですね。

 しかしながら、今、冒頭おっしゃったフランスの基金のやり方、これはつまり、労働者と住民を分け隔てなく、区別せず、同じ補償を行っているというのが前提ですよね。これの確認だけ、間違いないかどうか、お聞かせください。

滝澤政府参考人 そのとおりでございます。

田島(一)委員 その中で、全体として九五%が職業暴露だ、これはこれでフランスの実態だと思いますが、今、日本では何%かそれはさておき、とりあえずは、同じようにすき間なくやるというのが今回のこの視察に行かれたフランスの石綿対策の基金であろうかというふうに思います。

 フランスでできてなぜ日本でできないのか。フランスでせっかくこの石綿被害者の補償基金を調査されたにもかかわらず、それが今回のこの新法で生かされなかったのか。これはどういう経緯があったのか、ちょっと御説明いただけませんでしょうか。

滝澤政府参考人 私、先ほど冒頭申し上げましたように、これから認定基準、対象疾病をどうするか、それから、その疾病であるという客観的な判断をどうするかを今検討しております、国内での専門委員会の検討でございますが。フランスがこういった意味で、アスベストの認定あるいは救済、補償等々の制度で進んでいる国であるということで、かなり専門技術的な認定基準ということに調査の目的を絞って、短期間でありますが行ってまいりました。

 したがいまして、今先生の、フランスへせっかく行ったのにこの今回の法案の提案になぜ反映されなかったのかということに関しましては、私どもの行った目的が、昨年の年末でございましたが、そういうことでございましたので、認定基準について勉強をしてきたということで御理解いただきたいと思います。

田島(一)委員 認定基準も大事ですけれども、やはり私たちは、このFIVAの重要なポイントというのは、分け隔てなく同一の補償をしているんだという実態だと思うんですね。都合のいいところだけは目を向けて、都合の悪いところは見ないようにする、何かそんなふうに受け取れて仕方がないわけであります。

 もちろん、今回のこのフランスの石綿被害者の補償基金、問題点も確かにあります。すべてが右へ倣えである必要はないかもしれません。でも、何度も繰り返しおっしゃるすき間のない補償という点では、一番見習うべきお手本、これがフランスのFIVAだと私は思うわけでありますが、なぜそこにポイントを置かなかったのか、それが疑問であります。

 何か、おっしゃっていることが、全然ポイントがずれているからということで答弁を逃げられるようですけれども、もう一点申し上げます。

 このFIVAというのは、国も実は事業主の一団体として一定の財源負担を行っているというふうに聞いています。これは間違いがないか確認をさせていただきたいのですが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 御指摘のとおり、国も一定の拠出をしている、事業主としての立場で負担をしているというふうに聞いております。

田島(一)委員 そういう実態も、参考にすべき事例がやはりあるわけですよ。せっかくフランスまで行っていらっしゃったのに、なぜそういうようなポイントが今回の新法に反映されていないのかが私は疑問でなりません。そのあたり、どうお考えですか。

寺田政府参考人 まず、今回の調査につきましては、先ほど来環境保健部長から御答弁申し上げておりますように、まさに今回、すき間のない救済ということで新しく制度をつくり、その中で認定基準をつくる、その点につきましてフランスにおける運営の実態、科学的知見を集めるということに主眼を置いたものだということでございます。

 その上で、当然このフランスの事例というものも参考にはなりましょうけれども、世界各国、それぞれの制度があるわけでございまして、私どもの知るところでは、このフランスの基金以外に、例えば、アメリカにおいてもイギリスにおいても、アスベストに着目したような特別な制度はないわけでございます。また、労災の制度もそれぞれ違っているわけでございます。

 当然のことながら、諸外国の事例というものを参考にするということは必要でありましょうけれども、これは我が国でつくる制度でございますから、我が国におきます今までの救済制度というのがどういうものであるのか、それとの均衡はどうであるのか、我が国の法制度の実態、あるいは我が国での損害賠償というものがどういうものであるのか、そういうことをまずは勘案していくというのが自然な姿ではなかろうかと思っております。

田島(一)委員 都合のいいことは参考にする、都合の悪いことは参考にしない、これが鉄則なのかもしれません。行かれたという事実をとらえて、その中で、その先進事例として確認をさせていただきましたが、その先進事例のいずれも今回は参考にされなかったというふうに素直にお答えをいただいたら、私はそれでもう仕方がないのかなという気もしております。

 時間がないので、次、労災の時効事例についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 お手元にお配りをしたその一覧表の一番右側、労災時効事例の救済案というところをごらんいただくと、労災補償を受ける方とそうでない方、受けられない労働者との違いが一目瞭然であろうかというふうに思います。いわゆる五年時効の遺族補償年金分を、言葉は悪いですが、値切って給付をするだけで、二年時効の休業補償給付、そして療養補償給付などや就学等援護金は対象にはなっておりません。

 尾辻前厚労大臣はこのすき間を御理解いただいていたというふうに私は認識していたんですけれども、このように時効分の医療費、通院費、そして休業補償費が救済なし。そしてまた、葬祭料はそうですが、就学等援護費もない。これをどのようにとらえていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 石綿による疾患につきましては、先ほど来お話しになっていますけれども、潜伏期間が長い、あるいは石綿と疾患の関連性に医者もその本人も気づかないままに、労災制度による補償の申請の機会を逸して、時効によってその権利を失っている方がいらっしゃるわけでございますけれども、これらの方々につきまして、時効制度そのものを否定して救済等を行うことにつきましては、過去にさかのぼって健康保険等との給付の調整を行う必要が生じること、あるいはまたレセプト等の証拠書類が既に廃棄されているといったことを考えますと、非常に困難であるというふうに考えているところでございます。

 このため、今般、時効制度自体を否定するのではなくて、現行の労災保険において何らの給付を受けられない者、つまり遺族補償給付を受ける権利が時効により消滅した者に限り新たな救済措置を設けるという考え方でこの特別遺族給付金をつくったものでございます。

田島(一)委員 労災給付は、若いときの暴露業務従事当時の給与をもとに算出されるわけであります。人によっては、労災給付というのが時効事例に比べて逆転するケースが出てまいります。例えば、一人親方の自営業者、この方でも、労災保険に特別加入していて掛金の額が低かった場合にも、逆転という同じような問題が生じてくるというふうに思います。

 このあたり、時効成立後、新たな救済制度による特別遺族年金を受けた方が有利だというような、いわゆるてんびんにかけざるを得ないような状況が発生することが考えられるんですけれども、そういう問題が生じることを考えていらっしゃるのかどうか、お答えいただけますか。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 労災保険制度は、被災時の事業主のもとでの賃金で算定しておりますけれども、その額につきましては、現在の賃金との変動の幅等を考えまして、スライド制を適用して現在の賃金水準まで引き上げている制度、こういうものでございます。

 今申し上げました制度であるわけでございまして、ただ、先生がおっしゃいました選択の余地でございますけれども、これにつきましては、今回の法律で、特別遺族給付金を受けることができる遺族は、この法律の施行日の前日の五年前の日までに死亡した労働者の遺族の方でございまして、この施行日以降に労災保険制度上の遺族補償給付を受ける権利が時効により消滅する方につきましてはこの対象となっていないところから、選択ということはないというふうに考えております。

田島(一)委員 こうした矛盾とかが絶対出てこないようにやはりしていただきたいなというふうに思うんですね。

 問題点はまだまだ、さらにあろうかというふうに思います。例えば、労災年金の受給者でも、いわゆる若いときに暴露したそれが基準になるわけですから、お受け取りになられている年金額というのも二百四十万円以下の方が随分いらっしゃろうかというふうに思うんですね。

 しかし、残念ながら、この間お聞きすると、この二百四十万円に満たない件数、その中で、中皮腫、アスベスト肺がんにかかって労災認定を受けられた方の数字すらまだ把握していらっしゃらないというふうに聞いています。本当を言えば、百万円以下の方は何人ぐらいいらっしゃるのか、百五十万円以下は何人ぐらいいらっしゃるのか、そういう数字がしっかり出てきて初めて問題点が明らかになるんですけれども、残念ながら、厚労省の方ではその数字をつかんでいらっしゃらない。これはやはり大きな問題だと思うんですね。

 今後、こういうような数字をきちっと把握するように努められるのかどうか。例えば、あと特別加入者の内数等についても本当は明らかにしていただきたいんですけれども、お持ちじゃないということです。時間があれば本当にゆっくり聞きたいんですけれども、このあたりの数字もしっかりとこれから用意するようにしていただけるかどうか、それだけお答えいただけますでしょうか。

森山政府参考人 システムの問題等ございまして、今先生おっしゃったような金額別の支給件数等につきましてはなかなか把握をしていない状況でございますが、当然ながら、全体の保険給付の額、それから指定者数等、いろいろな関係の調査については、必要なものにつきましては、今後ともそういう調査をして把握していきたいというふうに考えているところでございます。

田島(一)委員 最後に、給付手続と実施期間に関してお尋ねをしたいと思います。

 今回、このようにアスベストで被害を受けられた方々が申請をして、そして、それを今回の新法、そしてまた労災等で給付を受けるまでの期間、それぞれどれぐらいというふうに想定されているのか、お示しをいただけますか。

寺田政府参考人 まず新制度につきまして、申請から認定、さらには支給までの期間ということでございます。

 何分新しい制度でございますし、認定の基準等もこれから決定をする、さらには諸様式等につきましてもこれから詰めていくということでございますので、残念ながら、今時点で期間についてどのぐらいと申し上げられる状況にはございませんけれども、迅速な救済を一刻も早く図るという見地でこの法律も提案させていただいたわけでございますので、当然のことながら、この実行に当たっても、できる限り速やかな申請の処理、給付の支給をしなければならないということは当然だと思っております。

森山政府参考人 労災での業務上疾病に係る遺族補償給付につきましては、現在、六カ月を標準期間としてやっているところでございまして、私どもこれがどの程度かかるかということにつきまして今計算をしておりますけれども、この内容につきましても、その標準処理期間を参考に考えていきたいというふうに思っています。

田島(一)委員 まだはっきりとした時間、期間がわからないというお話ですけれども、少なくとも、労災認定より時間がかかるということはないと思うんですね。

 その中で、医療費と療養手当の給付、これは確定診断以降までさかのぼって支給されるものだというふうに私は思っておりました。実際のところはどうなんですか。

寺田政府参考人 本制度は、指定疾病が石綿起因であることを認定された被害者に対して各種給付がなされるということでございます。よって、認定される以前に行われた検査その他についてさかのぼってその費用を給付することはしていない。つまり、具体的に申し上げますと、認定申請の時点までさかのぼるということを考えているということでございます。

田島(一)委員 申請時からというお話ですけれども、私はやはり確定診断以降、言い方をかえれば、体調がおかしいぞと病院に通ったところからスタートをするべきだというふうに思うわけであります。

 労災認定は、調査も含めると最低六カ月かかるというお話でありました。認定を却下されてから改めて例えば新法の申請となりますと、診断が確定をしてからはかなりの月数がたってしまうことになります。そうすると、新法の給付が救済申請時、それから認定時からというふうになりますと、療養期間が二十八カ月を超えてしまった場合、不利益をこうむってしまうことになりますね。労災申請をためらわせないためにも確定診断時からの給付というふうにした方が私は親切だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 二点申し上げたいと思います。

 まず第一点でございますけれども、我が国のこれに類する制度におきましては、私の知る限りにおいて、確定診断にさかのぼるという例は皆無でございまして、やはりその権利について申請をするという時点にまでさかのぼるという請求主義というのが我が国の通例であろうかと存じ上げております。

 その上で、ただいまお話にありました、労災の方で労災の認定申請を受けられずに、その後この新制度に来る方についてかなりお気の毒な状況にあるのではないか、こういう御指摘でございますけれども、別に我々の今考えております新制度というのは、労災制度と一緒に並行して申請をしてくるということを認めない、労災に行った人はこちらの受け付けをとめて、労災の結果が出るまでこちらに来ないでくださいというようなことをするという制度ではございませんから、そういった点もお考えおきいただければと思います。

田島(一)委員 ということは、あわせて申請はできるけれども、では、この新法による救済というのと労災補償の併給というものは可能ですか。

寺田政府参考人 本制度は、そもそも労災補償が受けられない方々を念頭に置いて設計されている制度でございますから、例えば、新制度において認定された方々がその後労災認定を受ければ、その時点で新制度からは離脱するということになるのが当然かと思います。

田島(一)委員 新たな救済制度で適用された後に職業暴露が明らかになる、そういうケースも出てくるわけですよね。先ほど冒頭で私が申し上げた問題点、療養期間の二十八カ月を超えた場合というケースも不利益がかなり出てまいります。

 こういうすき間の部分を本当に埋めていかないと、恐らく過去の、三十年前、四十年前の記憶をもとに業務に従事した経験があったかどうかというのが本当に確証できないケースも間々あろうかというふうに思うんですね。そういったあいまいな状況の中で、きちっと切りかえが本当にできるのかどうかという不安があります。

 例えば、片や労働基準監督署で申請をする、そして片方では保健所でするという二度手間もあるわけですから、本来ならば、労基署で全部受け付けをするぐらいの取り組みをされた方がわかりやすいのではないかというふうに思うんですが、そういうような発想は今回はお持ちにならなかったのでしょうか。

森山政府参考人 この救済の支給手続につきましては、これから環境省とも詰めてまいりたいと思っていますけれども、本法案の策定に至った経緯等も踏まえ、それからまた、そういう関係の連携の強化ということもございますので、そういうトラブルが発生することのないよう、できる限り利用者の利便性を高めることができるような方策について今後検討していきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 いろいろと質問を分担しておりますので、私の与えられた部分の質問と、また、この間、二時から始まりまして、審議の中で私が疑問に思ったことを質問させていただきたいと思います。

 まず、この救済措置、救済法の枠組みの費用の負担の考え方、このことについてお聞きをしたいと思います。

 企業あるいは自治体にも負担を求めるということでありますが、私はこの後いろいろと質問したいと思いますが、この問題については国の不作為に大きな原因がある、そういうように思っているわけであります。

 まず、今申し上げた枠組みの費用負担の考え方について、お答えをいただきたいと思います。

寺田政府参考人 まず、この制度の費用負担の考え方ということでございます。

 本制度は、本日再三再四、御指摘を受けて答弁させていただいておりますけれども、個別的な因果関係を明確にすることが非常にこの石綿の健康被害という問題については困難である、こういう石綿健康被害の特殊性というもの、これにかんがみまして、民事的な責任とは切り離して、事業者、国及び地方公共団体の全体の費用負担により被害者の迅速な救済を図ろうということが基本でございます。

 その上で、この制度の創設に当たりましては、国は、制度の早急かつ安定的な立ち上げの観点等から、平成十七年度補正予算により、基金に拠出し、また基金創設時の事務費の全額を負担する、そして、地方公共団体は、基金創設の趣旨にかんがみまして、国が給付費用として基金に拠出する金額の四分の一に相当する金額を平成十八年度以降一定の期間で基金に拠出する、そして、事業者につきましては、平成十九年度以降の総費用から、事務費のうち国が負担する部分及び地方公共団体による拠出分を除いた額を拠出するという設計にしておるところでございます。

近藤(昭)委員 基本的な考え方については後で質問をしたいんですが、現状の枠組みの中で、ちょっと確認をしたいんです。

 そうすると、今後発生してくる費用にかんがみて分担をしてもらうということですが、企業に求める場合、およそアスベストと関係がない企業、あるいは、先ほどからお話が出ていたみたいに、これは非常に長い潜伏期間があるということであります、そうすると、今発生している大変多くの皆さんの苦しみ、これは随分と前に因果関係があるということでありますが、その拠出部分については、全くアスベストと関係ない、あるいは、最近できた企業、これからできてくる企業にも分担を求める意向であるのかどうか、確認をしたいと思います。

寺田政府参考人 まず、事業主、企業に負担を求める基本的な考え方でございますけれども、若干長くなるかもしれませんけれども、まずそもそもの考え方として石綿被害の特殊性、三十年から四十年に及ぶ潜伏期間、しかもその後発症すると、中皮腫と肺がんでいえば十二カ月から十五カ月で半数の方がお亡くなりになるという、非常に予後が悪い、しかも重篤な疾病である。そうやってお苦しみになられている方々が一方にいて、その原因がアスベストである。そのアスベストというものは、長い潜伏期間ゆえに個々の原因者は特定できませんけれども、それは、一千万トンに及ぶ輸入量がございまして、我が国の産業社会、高度成長を支えてきた、そういうような現実があるわけでございます。

 そういうことを踏まえまして、今お苦しみになられている方々の御負担というものを、やはりアスベストによって一定の利益を受けた集団に部分的にせよ負担していただこう、こういうふうに考えているということでございます。

 アスベストによる利益というのはどういうことかということでございますけれども、御存じのとおりアスベストは社会全体に非常に広く使われております。ありとあらゆる建築物の天井や外壁、自動車のブレーキライニング、発電所のパッキン、水道管等々、数え上げれば切りがないということでございます。産業基盤となる施設設備、機械等に幅広く利用されてきたということでございます。

 このため、もちろん直接、間接ということはありましょうけれども、およそ事業活動を営むすべての者が、石綿を利用した建築物を事務所とし、石綿を含有するパッキンを使用した発電所で発電された電気を利用し、石綿を含有するセメント水道管を通じて届いた水を利用するというようなことで、社会全体、産業全体に石綿の使用による経済的利得というのが及んでいるんだろう、こういうことを考えて、このようなスキームにしたものでございます。

近藤(昭)委員 考え方はよくわかりました。ですから、ちょっとお答えいただきたいんです。この法律のできる前に、例えばことし一月にできた企業がこれから負担するのかどうか。

寺田政府参考人 御負担をいただくことになります。

近藤(昭)委員 だから、その考え方をよく教えてください。

 非常に幅広くアスベストがいろいろなところで、日本の社会に、産業といいましょうか、恩恵を与えてきた。でも、これからというか、先ほどもお話を聞いていましたら、一九六〇年代ぐらいから非常に危険性が言われている。日本も、これはちょっとまた細かくなるとあれですから大ざっぱに言えば、先ほど、一九七〇年代から規制も始めてきたんだよ、こういうお話をされたわけです。全面禁止もするんだろうと思うんです。禁止をしておいて、それからできた企業がどうして恩恵を受けるのか、よくわからないんですが。

寺田政府参考人 まず、基本的なところを一点申し上げますと、この制度は、先ほど来、損害賠償的な制度ではないということを再三再四申し上げておりますけれども、この負担につきましても、厳密な意味での原因者負担ということで構成しているものではないということでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、我が国の産業社会全体がアスベストというものの利益を享受しておる、こういうことから、社会全体で今お苦しみになっている方々の御負担を分かち合おう、こういう趣旨であるということでございます。

 さらにつけ加えますと、石綿による便益ということになれば、別にそれは石綿をその時点で生産した方々にとどまらず、現時点でも石綿というのはこの社会のいろいろなところで、建物の壁面、天井、あるいは水道管、発電所のパッキンというもので使用されており、その使用による便益というのは今の産業、今の生活者にも及んでいるということも考えられるというところでございます。

近藤(昭)委員 幅広くとにかくいろいろなところに使われているんだ、そういう中でこういう被害が起きてきたんだから、これからつくる企業であろうとも、設立する企業であろうとも、そういうものは御負担をいただかなければならない、こういうことでしょうか。

寺田政府参考人 基本的には、石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、社会全体で、先ほど申し上げましたように、現在お苦しみになっている方々の負担を分かち合おう、こういう趣旨でございます。

近藤(昭)委員 そうすると、企業からすると、一生懸命企業活動をしていく、それは、一つ一つの企業がどれぐらい負担金を負担していくのか、先ほどちょっと御答弁もありましたので、会社の規模、給料を払っている規模で決まるんだ、こういうことらしいですけれども、例えば大ざっぱな考え方として、社会でみんなで痛みを分かち合っていこう、こういうことで理解をしていても、企業の考え方からすると、新しくできる企業は、できればそういうことはなくしてほしいと。

 そうすると、国の責任というか、いろいろなところにそういう恩恵があるけれども、その恩恵を与えたはずの物質が、社会に、今本当に多くの方が苦しんでおられる、そういう結果をもたらしたわけじゃないですか。だから、それを、そういうふうにならないように国はやらなくちゃいけなかった。ところが、この間、ちょっともう一度、さっきおさらいはされましたけれども、どういうふうにアスベストを規制してきたのか。いろいろと法律のことを、一九七〇年代から始めたとおっしゃいましたけれども、これは実質的に、例えばアスベスト禁止といったって、実は十種類ぐらいしか禁止していなかったりとか、全面的にちゃんと禁止していないんじゃないですか。

寺田政府参考人 まず、本日の政府全体のこの問題についての見解につきましては、当時の科学的知見に応じて、関係省庁がそれぞれ必要な対応をとってきた。そこで、確かに過去において関係省庁間の連携が必ずしも十分でない等々反省すべき点はあったけれども、不作為による違法ということまでではないと政府としては総括しているということは、再三申し上げたところでございます。

 その上で、環境省について申し上げますと、昭和四十七年にILO、WHOが発がん性というものを公式に認めて以来、文献調査を行い、また、測定を行い、知見の収集に努め、その結果として大気汚染防止法の改正に至ったということでございまして、その間、無為に、手をこまねいていたことではないというふうに理解をしております。

近藤(昭)委員 いや、ですから、そういうふうにやった、大気汚染防止法を改正してアスベストも対象にした、でも、これは適用したことがないんじゃないですか。

寺田政府参考人 もちろん、大気汚染防止法改正時点では規制対象施設はあったわけでございますから、規制は適用されております。

近藤(昭)委員 いや、だから、適用したというのは、法律ができたんだから、適用したというか法律があったわけですが、そういうアスベストを対象にしていく、規制はしたけれども、例えば、実質的に、あなたのところはおかしいですよとか、そういうことはしたんですかということですよ。

寺田政府参考人 済みません、ただいま手元に詳細な資料がないわけでございますけれども、当然、法律というものを施行したわけでございますので、事業者に対する指導監督ないし検査等々は行われていたというふうに確信しております。

近藤(昭)委員 いや、確信してもらっても困るわけです。

 規制というものは、先ほどもちょっと寺田審議官の答弁を聞いておりましたら、一九七〇年代から我々も危険性を認識してやってきたんだ、ただ、これは一九七〇年以前はまだなかなか十分に規制されていなかったんだ、ところが、潜伏期間が長いので、残念ながら、規制は始めたけれども今なおそういう患者の方が発生しているんだ、こういうように聞こえたんです。

 でも、今、大気汚染防止法は一九八九年に規制をした、だから実質的にちゃんとそういうアスベストが大気中に出ないようになっていなきゃいけないわけで、そういうことはどうだったんですかということをちょっとお答えいただけませんでしょうか。

寺田政府参考人 大気汚染防止法の改正により規制対象となりました特定粉じん発生施設、これの届け出のあった工場、事業場数でございますけれども、工場、事業場数で、これまでの累計で三百九十八に及んでおるところでございます。これらは規制対象施設でございますし、こういう数値を把握し、それらの施設において指導し、必要に応じて地方公共団体が周辺の測定をし、当然規制基準は守られていたというふうに思っております。

近藤(昭)委員 いや、だから、思っていますじゃなくて、やっていたんですかということですよ。

寺田政府参考人 もちろん実行しております。

近藤(昭)委員 いや、それは例えばどういうふうに実行されたんでしょうか。先ほどの話で、そういう粉じんの規制の対象は数をおっしゃって、そこが特定されたからやっているんだというのは、例えばどういうふうに測定をして、違反をしている場合、どうだったのか。

 あるいは、本当はその施設だけじゃなくて、どういうふうに当時は認識されていたのかと心配するわけです。住民の人にも物すごく被害が出ている、患者の方が出ているわけですから。工場だけじゃなくて、その工場から出ているアスベストが大気中に行く。多分、大気汚染防止法というのはそういうものだと思うんですけれども。

 それは、工場は幾つか指定されました、発生源がそうでした、では、大気はどうでしたか。大気なんかはどういうふうにやっていたんですか。

寺田政府参考人 大気汚染防止法の規制は、工場の敷地境界線での濃度の規制でございます。

 どういうふうにしていたのか、こういうことでございますけれども、まず、規制対象施設になりますと、当該事業者に測定の義務がかかります。したがいまして、当該事業者がみずからその敷地境界線におけるアスベストの濃度というのを測定する。その測定結果については、随時、地方公共団体がチェックをするということになります。また一方で、地方公共団体は、当然のことながら、適宜、必要に応じて地方公共団体としても周辺の環境濃度を測定する、こういうことになってまいります。

近藤(昭)委員 いや、だから、逆に言うと、当時は、余り作業というか、その工場ではやっていたけれども、住民の皆さんが暮らしているそこではやっていなかったんじゃないですか。

寺田政府参考人 ただいま規制についての御質問でございましたので、規制に直結するような意味で、その規制対象施設の敷地境界線ないし周辺での測定について申し上げましたけれども、別途、一般環境における環境濃度の測定というのも環境省は実施してまいりました。

近藤(昭)委員 そうすると、地域の大気について、先ほど適宜自治体がというようなおっしゃり方をしましたが、適宜ではなくて実質的に、そういうかなり危険なというか発生をしている工場がある近くについては、広範囲でというか、やっていらっしゃったということでしょうか。それとも、そこの発生源だけ大丈夫だから、発生源だけやってきて、それがどういうふうに影響しているかは余りやってこられなかったのかどうか。

寺田政府参考人 これまでの環境省の環境測定について申し上げますと、実は、大気汚染防止法の改正に至るまでの間におきまして、かなり長期間にわたっていろいろなところの測定はしております。例えば、工場直近で、あるいはかつての石綿鉱山周辺というような、発生源でないかと思われるところの周辺近傍でやったのもありますし、あるいは幹線道路の沿道、あるいは住宅密集地域、さらには、それとは離れた、いわゆる主たる汚染源が想定されていないような環境下でのバックグラウンド濃度、そういったさまざまなところについて測定をしているところでございます。

近藤(昭)委員 それは、アスベストをという意味ですか。

寺田政府参考人 さようでございます。

近藤(昭)委員 ただ、どうなんですか。測定をして、そうすると、環境省さんあるいは厚生労働省さん等々がやってみえた、規制は始めますよということですが、そのときのアスベストは、濃度というか、それはどういうような変遷をしてくるんでしょうか。

 規制はしたけれども、十分な規制でなかったのではないかというような指摘もありまして、今のお話を聞くと、大気汚染防止法も改正しました、やり始めましたということですが、やったとしても、その規制値が緩ければ、意味がないのではないでしょうか。

寺田政府参考人 規制値につきましては、アスベスト濃度でございますけれども、一リットル当たり繊維で十本という規制値でございます。これにつきましては、当時のWHOの環境保健クライテリアにおきまして、一般の土地環境下における濃度は、ただいま申し上げました十本・パー・リッター以下であり、そこでのリスクは無視できるほどであろうというふうな知見に基づいて決定されたものでございます。

近藤(昭)委員 一九八八年ですか、旧労働省も作業環境評価基準というのを設けていると思いますが、それはどういう規制でしたでしょうか、数値。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十六年に作業環境の評価基準の改正を行いまして、石綿の管理濃度を二本から〇・一五本に引き下げたものでございます。

近藤(昭)委員 済みません。一・五本、二本から……(森山政府参考人「二本から〇・一五本に。十六年でございます」と呼ぶ)

木村委員長 では、もう一度しっかりと答弁していただいていいですか。

近藤(昭)委員 はい。一九八八年時点で答えてください。

森山政府参考人 手元に資料がないものでございますので、調べてすぐ御報告申し上げます。

近藤(昭)委員 すぐ調べていただけるんだと思いますけれども、ちょっと質問通告をしていなかった部分で申しわけなかったんですが。

 環境省は、先ほどのことで、工場敷地内については一リットルについて多分十本以下という規制にされたんだと思うんですね。当時、労働省は違う規制ではなかったか。

森山政府参考人 失礼いたしました。

 その当時、立方当たり二本ということで作業環境の基準を定めたものでございます。それを今回、先ほど申しました、十六年に二本を〇・一五本に下げたということでございます。

近藤(昭)委員 そうですか。二本。一リットル当たり二本で間違い……

森山政府参考人 リットル当たりは二千本でございまして、一立方センチメートル当たり二本ということでございます。

近藤(昭)委員 一リットル当たり二千本ですよね。これは、随分と環境庁がやっていらっしゃることと労働省がやっていらっしゃったことは違うと思うんですが、こういうような状況で十分に当時国は規制を始めていたと。二千本と十本では随分違うんですけれども、それぞれ御認識はいかがでしょうか。

寺田政府参考人 まず、基本的に、石綿の健康影響に関する知見というものは、昭和四十七年当時からでございますけれども、環境省と当時の旧労働省におきまして、かなりの程度までシェアされていた、さまざまな検討会において情報も交換し、またその検討会の先生方というものもかなりの程度まで重複していた、こういう状況にあります。

 その上で、十本と二千本、随分違うんじゃないか、こういうことではございますけれども、一般環境と労働環境での基準値というのは、これはむしろ違うのが当たり前というか、同じであることはまず通常ほとんどないわけでございます。

 例えば、私どもは一般環境に着目してということでございますけれども、そこには、当然のことながら、二十四時間、何らの防護もなく、病弱な方もいらっしゃれば赤ちゃんもいらっしゃる、そういう中での基準というものと、そうではなく、一般に限られた時間において、健康な方々が、しかも、労働環境の中でのさまざまな対策に守られてお仕事をされるというところでは、これは当然に異なるものというふうに考えているところでございます。

近藤(昭)委員 その説明はわからないでもないんですが、敷地内と作業をしているところとは。でも、そうすると、作業をしているところの方が多分ずっとそこにいるんじゃないでしょうか。ちょっと私の理解、間違っていますでしょうか。工場敷地内というのは、多分敷地の中ですよね、そこの方が一リットル十本以下で、作業をしている環境評価が一リットル二千本以下というのは、どっちが厳しいんでしょうか。

寺田政府参考人 ただいま、作業している環境の方がずっとそこにいらっしゃるのではないか、こういう御指摘でございますけれども、私ども環境省の一般環境についての考え方からすれば、それは一般環境における大気汚染というのはある程度の広さを持って広がるわけでございますから、それは極端に言えば、職場であろうと学校であろうと御自宅であろうと通勤過程であろうと、常にそれに暴露されているという前提に立つわけでございまして、二十四時間暴露ということに考えるわけでございます。

近藤(昭)委員 でも、それはすごくわかりにくくて、いろいろなところで暴露する、ある人はある環境の中に長くいるかもしれないし、違う人は短くいるかもしれないので、本当はというとあれですが、わかりやすいというか、あるべきは、より厳しくて一定であるべきではないんですか。

 それに、今申し上げたように、二千本の、環境が違うといったって、さっき申し上げたように、環境が違うだけじゃなくて、状況とかその人のあれが違うわけですから、一時間いる人もいれば五時間いる人もいるのであって、こういうふうに違うのはわかりにくいんですけれども。

寺田政府参考人 もちろん、極めて安全サイドに立って物を考えるということであれば、非常に厳しい基準でありとあらゆる基準を統一するというようなお考えもあろうかとは思います。

 ただ、やはり、通常、規制というものにつきましては、冒頭申し上げたようなことで恐縮でございますけれども、労働環境と一般環境ではそれは違う、そして、労働環境においても、それは規制でございますから、一定の定型化をしなければならない、そういうふうな事情にあるのではないかと思っております。

近藤(昭)委員 私は、やはりより厳しくあるべきだし、何で作業現場と敷地とあれと違うんだ、それでは規制になっていないと思います。そういう意味で、やはりそれぞれ連携が悪かったと思うんですね。

 ちょっと違う聞き方をしますけれども、アスベストを完全に禁止したのはいつですか。

森山政府参考人 クロシドライトそれからアモサイトにつきましては、平成七年に製造を禁止いたしました。

近藤(昭)委員 製造が禁止をされて、使用が禁止になったのは。

森山政府参考人 同じ平成七年でございます。

近藤(昭)委員 それはすべてのアスベスト製品ですか。例えば、いろいろ建築材なんか、アスベストが五%以上とか何かそんな基準もあったと思うんです。

 いわゆる、アスベストの製造を禁止して、アスベストの使用を全面的に、すべての種類のアスベストの禁止をしたのはいつですか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 クロシドライトとアモサイトにつきましては平成七年でございまして、クリソタイルにつきましては平成十五年に政令を改正し、十六年から使用等を原則禁止したものでございます。

 現在、十八年度中にできる限り速やかにこの法的措置、全面禁止についてやっているところでございまして、先般、関係事業者団体に対しまして、禁止対象となるアスベスト製品の速やかな使用中止等を要請するなどしまして、実質的に全面禁止を措置したところでございます。

近藤(昭)委員 そうですよね、まだ全面禁止はしていないんですよね。これからの努力ということ、これからするということですよね。

森山政府参考人 先ほど申し上げましたように、十八年度中にできる限り速やかに法的措置をとりますし、現在、関係事業者団体に対しまして禁止対象となる速やかな使用中止等を要請するなどして、実質的には全面禁止の措置をしているところでございます。

近藤(昭)委員 安倍官房長官も十八年度中にやりたいという答弁をされていたようですが、つまり十八年度中なわけであって、先ほどから、アスベストの危険性は早くから認識をしてきたし、そのために大気汚染防止法も改正してきたよ、労働省も基準を設けてやってきたよということですが、そうやってきて、でも全面的には禁止していないということは、国に大きな責任があるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 何点かに分けてお答えしなければならないかと存じます。

 まず第一点でございますが、本日何度も申し上げておりますとおり、今回の新法で着目しておりますアスベストによる健康被害、中皮腫及び肺がんというのは、三十年から四十年という暴露から発症に至る長い潜伏期間があるということでございますから、実は現在発症されている方々というのは、その平均値からいいますと相当以前、すなわち、例えば一九七〇年の前後ぐらいに暴露されたということになるわけでございまして、今御指摘の、国が規制をやってきたけれども甘かったのではないか、あるいはなかなか規制が進まなかったのではないかというような御指摘の時点とは若干ずれるところがあるというのが一点でございます。

 それから、もとより、国の責任というお話でございますけれども、先ほど大気汚染防止法について申し上げましたけれども、行政機関として、当時は環境庁でございますけれども、文献を収集し、科学的知見につき検討会を設け、環境濃度も測定し、その濃度の測定の結果というものは当時の科学的知見に照らして安全だというレベルであったというような、さまざまな検証をしながらのことでございます。確かに、結果として現在被害者の方々がいらっしゃるということは事実でございますから、その結果において反省すべきところは反省する。

 やはり、行政におきまして、例えば、現在はいわば常識のようになっております予防的アプローチというような物の考え方が徹底していなかったというようなことは反省しなければならないと考えておりますけれども、それが直ちに公務員の不作為違法、賠償責任ということに結びつくものではないというふうに考えておるところでございます。

近藤(昭)委員 その都度規制をしてきた、その都度安全を確認してきた、こういうことでありますと、それぞれのときにベストのことをやってきたんだから、やっと最近になってこんなに危険だということがわかった、だから、これまではその都度一生懸命やってきたんだから国の責任はない、こういうふうにしか聞こえないんですが、そういうことですか。

寺田政府参考人 お言葉を返すようで恐縮でございますけれども、私は、一般論としての国の責任がないと言っているわけではなくて、現に被害が生じている以上、また政府としても認めている関係行政機関の連絡の不十分さもあった、あるいは、その背景事情として、予防的アプローチとか、あるいは当時の環境庁にあった、大臣も申し上げましたけれども、エンド・オブ・ザ・パイプ的な発想とか、そういったものは反省する必要があるのであって、そういったことに何らの責任もないと申し上げているわけではございません。

 私は、公務員の不作為違法につながるような責任はなかったと考えているというふうに申し上げております。

    〔委員長退席、岩永委員長代理着席〕

近藤(昭)委員 では、例えば、その都度やらなかった無作為とか不作為の責任はないにしても、結果として、アスベストが飛散をして、これだけ多くの方が患者、そして命まで失われている。

 きょうの議論をずっと聞いていると、因果関係がなかなか特定できないから、特定できないからとおっしゃっているんですが、でも、アスベストが原因だということは特定なさっているわけでしょう。アスベストの特徴として二十年、三十年、四十年と潜伏期間が長いんだ、だからアスベストが原因だということは特定なさっているということですよね。

寺田政府参考人 アスベストが原因で起こった疾病の被害者を救済する制度をつくっているものでございます。

近藤(昭)委員 そうですよね。だから、アスベストで疾病になられた方を救済するということで、それで、私は、それぞれの時点でベストを尽くされたかもしれないけれども、残念ながらアスベストが原因で患者の方が発生しているんだから、なぜ国は結果責任をとらないんですか、こう聞いているわけです。

寺田政府参考人 お言葉を返すようでまことに恐縮でございますけれども、私は、責任がないと言っているわけではなくて、国家賠償責任につながるような公務員の不作為の違法行為はなかったと認識していると申しているわけでございます。

 国は別に責任を感じていないわけでもございませんし、また、そういった国の視点としての責任の感じ方の一つとして今回このような石綿関係二法を提出するに至ったものと考えております。

近藤(昭)委員 ですから、賠償と救済というのは多分物すごく大きな意味があるんだと思います。

 賠償は責任があるから賠償するんだ、そういう意味で賠償と救済にこだわりになるのはよくわかりますけれども、でも、結果としての責任はどうですかと言っているんです。アスベストが原因で患者の方がみえて、苦しんでおられて、亡くなられている。その間不作為だ。その時点でベストだったかもしれないけれども、アスベストが原因だということをおっしゃっているんだったら、なぜアスベストが原因で亡くなられた方、困っていらっしゃる方に対して、同じように労災補償と救済、補償か救済かはどっちでもいいんですよ、やらないんですか。

 だって、先ほども同僚の議員も聞きましたけれども、本人の、関係の方の気持ちでいうと、労災であろうが何であろうが、アスベストで何の罪もなく亡くなって、片や労災と救済では余りにも差があると思われませんか。

寺田政府参考人 先ほど来同じような答弁を繰り返してまことに恐縮でございますけれども、確かに今御指摘のとおり、被害者の方から見れば、労災給付と差がある、同じような給付水準を求めるというのはごくごく自然なお考えだろうと思っております。

 ただし、最前来私が申し上げておりますように、国においても、さらに言えば、国は規制をしなかったという責任があるのではないかという御指摘ですけれども、当然、被害に対する責任論からいえば、実際には原因行為というものがあったはずでございます。当然ながら、まずその原因行為を行った者というのが第一次的な責任者かと思いますけれども、そういった原因行為を行った者というものについても、三十年から四十年前、こういう長い潜伏期間を考えますと、例えば被害の予見可能性があったかどうか、さらには、その長い潜伏期間の中で損害賠償論を構築できるほど特定の責任者が特定できるのか、具体的に明らかにできるのかというと、それは実際問題として非常に無理である。

 そういう中で、政府としては、労災という、これは事業者の労働災害への賠償義務という労働基本法上において確立されたスキームでございますので、これによらない方々が何ら救済を受けていられない、こういう状況にかんがみまして、迅速かつあまねく救済をするということで、今回の救済スキームを提案しているところでございます。

近藤(昭)委員 いや、ちょっと考え方が違うのかどうかわかりませんけれども、原因者がいて、今の私の推量でいくと、企業が原因であって、その企業が出してきた、ただ当時は、そんなにアスベストは危険ではないということだったので、それは本来ならば企業が、第一原因の人がやるべきだけれども、どれだけ住んだか、どこに住んでいたか、どこで働かれたかよくわからない、だから、なかなか特定しにくいから、それは補償と救済では違うんだとおっしゃっているのかなと思うんです。

 でも、先ほども話がありましたように、小池大臣は、すき間を埋めると言っている。労災に入らなかった人とそうでなかった人とのすき間を埋めると言っている。つまり、私なりのすき間でいうと、労災の補償は受けられなかったけれども、新しい制度ができて労災に準じるような形になるんだ、つまり、そのすき間を埋めて渡れるんだということだと思うんです。ところが、今聞いていると、新しい制度はできたかもしれないけれども、とてもすき間が埋まっているようには思えないんですね。だって、余りにも差が、いろいろな措置が違うわけですから、とてもすき間が埋まっていると思えない。

 それと、どうなんですか、中皮腫で亡くなった方の、過去のデータで、労災認定されている方の割合というのは物すごく少ないんじゃないですか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 労災の認定件数は、平成十六年度末までで八百五十六件でございまして、中皮腫で亡くなっておられる方と比べまして乖離があるという御指摘はあるところでございます。(近藤(昭)委員「何%ぐらいですか」と呼ぶ)中皮腫の方が人口動態調査で大体千人程度、十六年度で九百五十三人でございますけれども、それで同時に、十六年度の私どもの中皮腫の方が百二十八人でございますので、千人と百二十八人という関係でございます。

岩永委員長代理 時間ですよ。

近藤(昭)委員 はい。そうすると、約千人で百二十八人、それでいくと一〇%そこそこです。

 そうすると、中皮腫で亡くなられた方で労災認定を受けられる方は、残念ながら物すごく少ない割合で、そのほかの方をどういうふうに、認定が難しい、認定が難しいとおっしゃるわけだけれども、多くの方が少なくとも労災補償では認定されないわけで、そういう意味でいうと、かなり多くの人が救済をされない、こういうことになるのではないかというふうに申し上げて、委員長、済みません、最後の質問であります。

 先ほどから出ていますけれども、五年以内、でも、五年以内というと五年かもしれないんです。そうすると、患者の人たちとか関係者の人は、五年というと物すごく不安なんですよ。やはりもっと短くすべきではないでしょうか。最後の質問です。

岩永委員長代理 簡単に答えてください。

寺田政府参考人 五年以内でございまして、そこは柔軟に対処する余地があると最前より申し上げております。現行の条文でお願いしたいと思っております。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

岩永委員長代理 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 私たち民主党は、アスベスト総合対策推進法をしっかりと国会に提出して、そして総合的に漏れのない一括の法律としてやっていきたいと訴えています。ところが、自民党さんが出された、もしくは政府が出された、この四つの法律を変えるというのは、すき間のないようにすると言いながらも、どうしても四つばらばらにやったままだといろいろなすき間が出てしまっている、私はそのように思っています。

 その上で、そのことをまず裏づけるために、アスベストの含有率の規制値について、まず一個一個お伺いしたいと思います。まず、労働安全衛生法、衛生法自身には数値は書いていないんですが、その施行令で定めているアスベストの含有率の規制値はお幾つでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 労働安全衛生法では、アスベストのうち、アモサイト、クロシドライトについて、重量の一%を超えて含有する製剤その他のものについて、製造、使用等を禁止しておりまして、その他のアスベストにつきましても、建材等の製品で、その含有する重量が一%を超えるものについて、製造、使用等を禁止しております。

村井委員 今のところ一%ですが、その含有率の数値を〇・一%に変えるおつもりは今後ございますでしょうか、どうでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 ことしの一月十八日に、石綿製品の全面禁止に向けた検討会の報告書を踏まえまして、平成十八年度中に労働安全衛生法施行令の改正を行うこととしておりますけれども、その際に、禁止の対象とする石綿の含有率につきましては、〇・一%とする方向で今後検討したい、こういうふうに思っております。

村井委員 一%を〇・一%に変えるのは、大体いつごろを目安にされるおつもりでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 政令の改正につきましては、十八年度中をめどに考えております。

村井委員 十八年度中に一%が〇・一%に変わっていくわけです。では、労働安全衛生法で指定しているアスベストというものは〇・一%以上のもの、〇・一%以下のものはアスベストとみなさない、それはそれで当然だと思うんです。

 では、今回の大気汚染防止法で定めるアスベストというもの、そのアスベストの定義は含有率が幾つ以上のものなんでしょうか。

竹本政府参考人 大気汚染防止法での対象でございますが、政令におきまして、建築材料を規定いたしまして、吹きつけ石綿及び石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材を規定しておりますが、その含有率、石綿の含有率でございますが、施行通知におきまして、石綿の質量が当該建築材料の質量の一%を超えるということとしております。

村井委員 まずそこで、労働安全衛生法ではことし中から〇・一%、大気汚染防止法で定めるものの含有率というのは一%。そこで、そもそも一緒にアスベストの問題を取り上げなければならないのに、アスベストというものの定義自身が狂っている。〇・九%のものだったら、アスベストとしてみなさないものがあれば、アスベストとしてみなすものがある。非常に矛盾が生じてくるわけです。

 では、そこでお聞きしますが、廃棄物処理法で定めるアスベストの含有率の数値はお幾つでしょうか。

由田政府参考人 お答えいたします。

 飛散性アスベストにつきましては、含有率によらずに、吹きつけアスベストなどのアスベストが飛散しやすいものを廃棄物処理法におきまして特別管理産業廃棄物と位置づけて厳格に対応いたしております。

 また、非飛散性アスベストにつきましては、昨年三月に技術指針を設けているところでありますが、廃棄物処理法においての現時点での含有率は定めておりません。

村井委員 含有率を定めていませんといったら、では、ほんのちょっとでも入っていたらアウトとか、どこから先がアスベストなのか、どのようにまず考えておられますか。アスベストを含有しているものとみなすものとみなさないものの基準は、大体どの辺にあるんでしょうか。数値でお答えください。

由田政府参考人 ガイドラインの方で、技術指針の方で定めておりますものに関しましては留意事項を定めております。これにつきましては、今後、アスベストを含有する廃棄物につきまして、飛散防止のための処理基準の強化などの対策の充実を図っていく予定でございますが、その際に、労働安全衛生法などの他法令で定める数値との整合性にも十分留意しながら検討してまいりたいというふうに考えております。

村井委員 そもそも、他法令で定めるものに合わせてと言っていますけれども、労働安全衛生法だと〇・一%で、大気汚染防止法だと一%で、そもそもちょっとだけ入っているものに対してどう扱うのかというのは変わってくると思うんです。その辺、今後は、今決まっていないというのはわかりましたので、いつどのように検討していくおつもりなのかお答えください。

由田政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたように、技術指針という形で昨年三月につくらせていただいております。これで現在運用しておりますが、これにつきましては、改正される廃掃法の施行とあわせまして、その際、処理基準の強化などを検討したいと考えておりますので、その時点で、先ほど申し上げましたように、労働安全衛生法などの他法令で定める数値との整合性にも十分留意させていただきたいというふうに思っております。

村井委員 大臣に質問します。

 そもそも、では、どこから先を規制するのかもわからないのに、本当にこの廃掃法の改正というのを国会で審議していいんでしょうか。ちゃんと数字がわかりません、法律が通ってからやります、これはどうですかね。大臣、どのように思われますか。

小池国務大臣 それぞれ、法律そしてその基準値、例えば、今廃掃法の含有率の話をされましたけれども、廃掃法でも、いろいろと製品になっている場合とか、その目的によって違ってくるわけですから、そこで今廃掃法での含有率によるすそ切りはないということでありますが、これは建物などから除去した飛散性の石綿廃棄物の規制を定めたものでありますので、大気汚染防止法などとは規制の対象の範囲が異なってくるわけであります。

 よって、今一括法案の方で、建築基準法において石綿に関する規制を新たに導入するということにしておりますけれども、この法律についても、大気汚染防止法そして労働安全衛生法の今の使われている運用を踏まえて、石綿の含有率一%を規制対象物の判断基準とする、その予定であるというふうに聞いております。

 いずれにいたしましても、基準の数値は整合しているものと思われますが、先ほど来お話に出ております労働安全衛生法における基準の見直しが行われる場合ということについては、大気汚染防止法における基準についても見直しは検討していくということもあるということでございます。

 ただ一方で、石綿を〇・一%まで見分けるのは、数値をはかるという、測定はなかなか難しいものであるということも同時に聞いております。

    〔岩永委員長代理退席、委員長着席〕

村井委員 まず、今重要だったなと思うのは、今回は一%だったけれども、労働安全衛生法が〇・一%になっていくに当たって見直しを検討されるということの発言をいただきました。重要な課題だったと思います。そして、それが議事録にしっかり残ったことをうれしく思います。

 さて、次に、建築基準法に定めるアスベストの含有率の数値はお幾つでしょうか。

和泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の建築基準法改正におきましては、建築物に使用されている建材を新たに規制しまして、当面飛散するおそれの高い吹きつけアスベスト及びアスベスト含有吹きつけロックウールのみを規制の対象と考えております。

 したがいまして、これらの規制対象に関しまして、建築基準法独自にアスベストの含有率の数値を定めることは考えておりませんが、その数値の考え方は、今環境大臣が御答弁されたとおりでございます。

村井委員 要するに、労働安全衛生法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、建築基準法、みんな今のところ、アスベストといいながらも、どこから先がアスベストなのか、どこから先は薄いから関係ないのかということすら、基本的な数字すらばらばらで、これはやはり、四法一括で総合対策と言っているけれども、一つの法律にしていかなきゃだめなんですよ。

 整合性がとれていないという状況なんですが、まず所管官庁内で調整をされているんでしょうか。大臣、どのようにお考えかお聞かせください。

小池国務大臣 今回も四法一括ということで進めているのは、まさにその連携を図っていくということの具体例ではないかと思っております。

 大気汚染防止法、労働安全衛生法、それぞれの法律に基づく大気濃度に係ります基準の有無、そして値、それぞれ異なっておりますけれども、そのこと自体は、おのおのの法律の目的が違っているわけでございますので、直ちに問題となるものではございません。

 ただし、各基準の設定のベースとなる石綿の毒性評価に関する知見ということにつきましては、これこそまさにアスベストの被害の問題に直接、今後の被害を起こさないということにかかわってくるわけでございますけれども、そこは共通の目的になるわけでございますので、今後ともこの知見に関して収集を継続するとともに、各関係省庁間で連携を密にとりまして、施策の整合性、さらに連携を図ってまいりたいと考えております。

 御懸念は当たらないと思います。

村井委員 大臣の方から、関係省庁間で調整をいただくという話がありました。その関係省庁間で調整をする中でも、やはり、まず国連勧告ですら発がん性物質は〇・一%という数字を今のところPRTR法などで出しているわけです。

 さて、そこで、自民党が石綿全国会議の選挙の前の公開質問状の中で、すばらしいですね、自民党の発言。「「発がん物質としての規制対象範囲の整合化」について、どのようにお考えですか?」大臣が今言ったのと違って、整合をちゃんととると書いてあるんです。しかも、〇・一%以上含有するものでは文書交付等を行うべきとされています、今後、そのように整合をとるよう改正を行いたいと考えておりますと書いてあるんですが、大臣、どうでしょうか。

小池国務大臣 このことについては、国連勧告、化学品の分類及び表示に関する世界調和システムについての見解を述べたものと思います。

 これについては、まず環境省として、関係省庁間で協力してこの勧告の実施に向けた取り組みは行っているということでございまして、この勧告では、例えば化学品の業者間の受け渡し時に安全データシートを交付するということで、グローバルスタンダードでやっていこう、各国同じマークを使いましょうということが規定されているわけでございまして、これについては各省庁間で連携をとりまして実施に向けた取り組みを行っているところでございます。

 それから一方で、大気汚染防止法それから建築基準法、廃棄物処理法などにおきます石綿の含有率の基準でありますけれども、建築物の解体などに伴って、そこで飛散をする、それを防止しなければならないという特別な対策の実施を義務づけるかどうかといったところでの判断基準となってくるわけでございまして、この製品の受け渡しなどにおきます先ほどの勧告、国連の勧告でございますけれども、製品の受け渡しなどにおきます情報提供、文書交付とは全く異なる目的によります基準と考えております。その意味で、両者の数値が異なることは問題ではないというふうに考えております。

竹本政府参考人 技術的な点について、補足で御説明申し上げたいと思います。

 国連の世界調和システム、委員御指摘のとおり、きっちりとしたルールのもとでやっていくということで、政府内におきましては、関係省庁間で協力をして、この勧告の実施に向けまして積極的取り組みをやっております。このデータシートのやりとりというのは、もう既に取り組みの始まっている部分もございます。そういう意味では、データの提供とか情報の提供、そういうシステムの問題と、それから、先ほど大臣の方からもお答えいたしましたとおり、解体に当たっての具体的な規制を義務づけるという世界においては、もちろん二つの世界があるわけでございます。

 しかしながら、いずれにしても、先ほど大臣の方から答弁申し上げましたとおり、厚生労働省の方からも、労働安全衛生に関する基準について今後とも見直しをしていくという御答弁がございましたとおり、環境省におきましても、厚生労働省、また関係する省庁とも連携をしてこの問題を検討してまいりたいと思います。

村井委員 せっかく、自民党の政策についてお聞きしたものですから、副大臣、公明党の政策についてお聞きしたいと思います。

 公明党さん、もっとすばらしく踏み込んでおられます。PRTR法と労働安全衛生法の施行令は、アスベストの基準値を〇・一%にするとまで堂々と踏み込んでおられます。今大臣は、一%から〇・一%にすることを検討するという話だったんですが、副大臣、公明党としてはどのようにお考えでしょうか。

江田副大臣 私も、その数値のところは、たしか今おっしゃいましたように、〇・一%に踏み込んできちんとやっていこうということだと思いますが、その方向でまた党としては努力していくと思っております。

村井委員 党として努力していただくのはもちろんだと思うんですが、公約でございますので、環境省に〇・一で大気汚染防止法もその他の法律も働きかけるということはされますでしょうか。副大臣、どうでしょうか。

江田副大臣 大臣お答えのとおり、その方向で進みたいと思っております。

村井委員 ありがとうございます。

 大臣からは今後検討するという話、それから、副大臣からはそのように働きかけるという話をいただきました。何とかぜひ、一%以上をアスベストとみなすんじゃなくて、〇・一%以上をという数値でどんどん統一していただきたい。

 この間の毎日新聞の記事、私は持っているのですけれども、この中でもやはり出ているのです。PRTR法では〇・一%以上を対象にしている、ところが、ほかの法律で一%以上にしている。そうしたらどうなるかというと、やはりはかってみたら誤差が出るのです。誤差が出たときということを考えれば、やはり〇・一でしっかりやる方が、はるかに多くの人が安心できるんじゃないか。一%以上じゃないと届け出すら要らないとなると、それは〇・九%、ぎりぎりのものは届け出しない、そういうのじゃなくて、しっかり国民の健康、そして安全を守っていくルールを確立していただければと思います。

 とりあえず、今のところは石綿の含有率の話をさせていただきました。これからは、大気中の濃度についてのお話に移らせていただきたいと思います。

 まず、アスベストが含まれたものの解体作業中の建物の中の濃度の基準は、何を根拠に定めて、何%ぐらいを基準とするのでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 解体作業を行う際の作業場の濃度につきましては、屋内、屋外にかかわらず、石綿障害予防規則において、マスク等の保護具の着用等を義務づけた上で、作業場の濃度基準につきましては、屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドラインに基づきまして、一立方センチメートル当たり〇・一五本以下となるように濃度基準を定めております。

村井委員 一立方当たり〇・一五本。わかりました。

 そうしたら、次。アスベストを扱っている、もしくは扱っていた工場等の周辺、具体的に言うと、境界になっている門のあたりのアスベストの大気中の濃度は、何を根拠に定めて、どの法律で、そして何%ぐらいでしょうか。

竹本政府参考人 まず、工場等周辺のアスベスト濃度の規制基準でございますが、大気汚染防止法におきまして、工場、事業場の敷地境界におきます基準値を一リットル当たり十本と環境省令で定めておるところでございます。この数値の設定に当たりましては、WHOにおきます知見、ガイドラインなどを踏まえまして定めたものでございます。

村井委員 となると、工場の門のあたり、周辺は一リットル当たり十本、これはWHOの基準。

 そうしたら、次に、一般環境の中でのアスベスト濃度の基準は、大気中の濃度は何を基準に定めて、何本でしょうか。多分ないと思うんですが、もしよかったら言ってください。

竹本政府参考人 今、委員の方からも御発言がございましたとおり、現在、アスベストにつきまして、一般環境におきます環境基準というのは定められておりません。

村井委員 そうしたら、さらに踏み込みます。廃棄物処分場及びその周辺のアスベスト濃度の基準は、どの法律を根拠に、何%ぐらいなんでしょうか。

由田政府参考人 廃棄物処理法におきましては、廃棄物処分場及びその周辺のアスベスト濃度についての基準は定めておりません。

 環境省としましては、今後、アスベストを含有する廃棄物につきまして、今回の法改正による無害化の促進のほか、先ほど御答弁させていただきました処理に当たっての飛散防止など、処理基準の強化を行う予定であります。

村井委員 なしという話をいただきました。

 では、今度は、建築基準法の改正で、国土交通省が定めるアスベストの大気中濃度の基準値は幾つでしょうか。

和泉政府参考人 お答えします。

 今、環境省から御答弁がございましたように、室内の一般環境基準はございません。また、今回の建築基準法改正におきましては、規制対象として、飛散するおそれの高い吹きつけアスベスト及びアスベスト含有吹きつけロックウールのみを当面対象にするということでございます。したがいまして、改正後に建築基準法に基づきまして勧告等あるいは是正命令等をする基準につきましては、現時点では、目視により、吹きつけアスベストの表面のけば立ちや繊維の崩れ等、劣化の状況を確認した上で行う、こういった方針で臨むことを予定してございます。

 なお、今後、そういった室内濃度基準が設けられることになれば、個々の建築物の室内濃度基準の勧告等の運用に当たってガイドラインをつくっていくということは、当然検討すべき課題だと思っております。

村井委員 とりあえず検討ということですね。

 そうしたら、では、今回議題となっている大気汚染防止法の改正では、基準値を何%ぐらいに、どのぐらいのものに定める予定でしょうか。

竹本政府参考人 今回の法律の改正は、建築物解体の対象を工作物に広げるということでございますが、大防法で、先ほど申し上げました製造工場の敷地境界における基準、敷地境界基準そのものについては、変更する予定はございません。

 なお、この解体に関しては、作業基準、もう委員御承知のとおりでございますが、作業場をほかの場所から隔離するとか、集じん・排気装置を設ける等々の作業基準についてきっちりと定めておるところでございまして、これについても特に変更を行うということは考えてはいないところでございます。

村井委員 そこで、大臣、今あるように、全然場所によって濃度の基準値が違ったり、全くなかったり、そして、今後つくるから今から検討するというところだったり、数字もみんなばらばらなわけなんです。

 さあ、そこでちょっと考えてもらいたいんですけれども、では、そこの、それぞれで働いておられる方々の健康に対する影響は違うのか。一緒ですよね、同じ人間なんですから。働いておる人、その場にいる人の健康を守るというのが我々政治家の使命なんです。それぞれの場所によって基準値、つまり守るべき値が違うというのは非常におかしいし、それについて総合調整していかねばならぬと思うんです。大臣はどのようにお考えでしょうか。

小池国務大臣 全部一律ということは、目的が違うということから、その必要性はないのではないでしょうか。

 例えば、先ほど、大防法ではリッター当たり十本ということで出ましたけれども、労働安全衛生法となりますと、これはまた違ってくる。しかし、そこで、作業場の衛生状態、そして空気の状態が劣悪な中で、今どきの日本で、あのひどい状況の中で、そして、そこで働く社員の方が、作業する方々を劣悪な状況の中で働かせるというわけではないけれども、しかし、一般大気の場合と、そしてまた中の場合と、数値はおのずと変わってくることはあると思います。

 それから、廃棄物のところでの数値がないというお話がございましたけれども、それはまさに、また大気汚染防止法がそのまま使われるということであるわけで、ですから、今お尋ねでございますけれども、法律によって、大気濃度に係る基準の有無であるとか値については、それぞれ、その対象、目的によって異なってくるわけでありまして、そのこと自体が問題になるというものではないと思います。

 ただ、もっとそれを厳しくするであるとか、それぞれ課題によって、問題によってその数値を変えるということなどは、別に今のこの問題だけに限らずでございます。

 しかし、今最大の問題になっているのは、各基準の設定のベースとなるこの石綿の毒性の評価に対する知見であります。これは、どういう形にすれば危なくて、どういう形にすれば大丈夫であるといったような形のいろいろな知見、データ、そういったことをそれぞれ収集して、ただし、その持ち寄ったデータ、知見については情報として共有をしていきましょう、そして、今議員がお尋ねのように、政治の目的はということで、どうやって国民の健康、命を守っていくのかが使命であるというならば、行政もそれは同じでございますので、そういった意味で、法律の目的など、方向性は同じでありますけれども、その中身によって数値などが変わってくる、基準があるなしも違ったりもする。

 いずれにしても、方向性として、今あることは、石綿の毒性評価に対する知見をシェアして、そして施策の連携を図っていくということが重要かと考えております。

村井委員 もちろん、大臣のおっしゃられることもよくわかるんです。その上で、やはり人間の健康というのはどの場所に行っても一緒なんです。これ以上はだめという数値をやはりちゃんと決める、一般環境の中でも決める。そして、私は、やって初めて、本当に人間にとっての安心できる暮らしを守れるんじゃないかなというのを強く訴えたいと思います。

 ただ、その数値、もちろん含有率にしてもそうだし、大気の中でもそうなのですけれども、実際に何%とかという検査をする環境測定機器の整った機関の数はどのぐらい今あるんでしょうか、そして検査体制は整っているんでしょうか。

小野政府参考人 お答えさせていただきます。

 労働安全衛生法に基づいて石綿に係る作業環境測定を行う分析機関としては、六百四十七機関ございます。それから、今先生御指摘のように、これから精度をよくして、建材中の石綿含有率測定を可能とする体制の整備も図っていかなくてはいけません。そういう意味で、日本作業環境測定協会、ここに非常に技術を持った方々がおられますので、そういうところで講習会等を開いていただいて、しっかりした体制を構築していきたい、こういうふうに考えております。

村井委員 その六百四十七機関で測定するという話、検査するという話なんですけれども、さっき、含有率のことで、私ちょっと、大臣が言われたことでひっかかったことがあったんですね、今の検査の話とつながるのですけれども。一%か〇・一%かというさっきの含有率の話のときに、〇・一%に直す場合、非常に測定が難しいという話だったんですが、現在、PRTR法は既に〇・一%で運用しているわけですよね。検査の仕方がそれほど違うんでしょうか、それとも同じような検査なんでしょうか。お尋ねします。

竹本政府参考人 含有濃度の測定法でございまして、大気汚染防止法におきましては、非常に、全国で規制を義務づける、そして普遍的な方法でないといけないということで、厳密性も踏まえまして、きっちりとこの測定法を定めておるところでございます。

 それから、委員の御指摘のPRTR法の世界でございますが、これはきっちりと、その有害物質を含有している物質を受け渡しする、そういう情報の提供をきっちりとやるという観点からでございます。そういう意味で、同じ測定法というわけではないと思います。基本的にきっちりと規制を義務づけるという上では、いろいろな観点から、幅広く普遍性、それから、きっちりとどこにおいても公平な結果が出るような観点からやっているものでございます。

村井委員 今の答えは、要するに、PRTR法と大気汚染防止法で違う検査をしているということなんですか。

竹本政府参考人 済みません、失礼いたしました。

 PRTR法は、製造した物そのものでありまして、測定法という問題ではなくて、どういうものが入っているかということでありますので、測定法そのものを比較するということはできないということです。失礼いたしました。

村井委員 大気汚染防止法だけじゃなくて、労働安全衛生法だったら同じものを含有率で扱いますよね。それについては、検査はPRTR法と労働安全衛生法の施行令で一緒ですか、一緒じゃないんですか。

小野政府参考人 先ほど申し上げました労働安全衛生法に基づいて石綿に係る作業環境測定を行う分析機関、これは石綿の作業環境測定が可能な登録作業環境測定機関六百四十七というふうに申し上げました。もちろん、個々の測定の中で、これは特に石綿ということに限っておりますので、石綿を非常に細密に測定する、そういう専門的な技術も必要ですので、これは一律にどういう形で、技術が全く同じかどうかということになりますと少し違う面はあると思いますけれども、この六百四十七機関につきましては、石綿に特化した形で登録をされている機関である、そういうことでございます。

村井委員 ちょっと話が深く入り過ぎたんで、これ以上突っ込んでもだめかなと思うんですが、少なくても別の法律で〇・一%の基準を既に出して、既にもう運用しているわけです。そうしたら、では、一%のものを〇・一%に下げたら検査があいまいだとか言うけれども、実際はそうじゃないんじゃないのかということを私は言いたかったんです。

 さて、次に、別の話に移らせていただきたいと思います。

 大気汚染防止法の改正で適用を予定している工作物がありますよね。この工作物というのは、建築基準法で定めている工作物というのと一緒ですか、違うものですか。

竹本政府参考人 同じものでございます。

村井委員 そうしたら、建設リサイクル法に関する工事届けの手引によると、建築物とは、建築基準法第二条第一項第一号で規定するものであり、工作物とは、道路、橋、トンネルなどのように土地に定着する工作物で建築物以外のものと法律上なっています。法案の骨子の中を見れば、工場のプラントなどとの例示があります。工場のプラントなどというのは幅広く適用していると思うのですが、それ以外に幅広く適用する範囲はどういったものが具体的にありますか。

竹本政府参考人 御指摘のとおり、工作物そのものとしましては、工場のプラント等以外、幅広く適用をすることにしております。

 具体的には、煙突でありますとか、それから、実際の工作物、先ほど委員の方から例示がございましたけれども、吹きつけ等によります工作物、道路、橋、トンネルに関する工作物であって、そういう吹きつけの実態があるものというものについてはすべからく対象に入るということでございます。

村井委員 それでは、次の論点に移りたいと思います。

 特例制度で、民間の所有する溶融炉などについて、国が個別に安全性を判断し認定できるというふうにしています。その国のチェック制度についてお伺いしたいと思うのです。

 今、マンションなんかも、チェック制度があるあると言うておったけれども、こんなことになったんです。さて、そこのチェック体制に問題はないのかどうなのか。それから、地域住民の理解を得られるためにはどういうふうにしているのか。事故が起こった場合の責任の所在はどこにあるのか。それぞれお答えください。

由田政府参考人 お答えします。

 アスベスト廃棄物の無害化処理の認定に当たりましては、現在行っております実証試験の結果や廃棄物処理の技術に詳しい学識経験者の意見を踏まえ、安全性のチェックに遺漏がないように対処してまいりたいというふうに考えております。

 また、環境大臣が認定を行う際には、無害化処理施設の設置に関し、地域住民等利害関係を有する方々の生活環境保全上の見地からの意見書を提出できる仕組みを設けているところでございます。

 認定に当たりましては、これらの関係者からの意見も踏まえて科学的に判断をしてまいりたい、このように思っております。

 それから、環境大臣が認定を行う際には、十分に安全性を確認した上で認定する所存でありますが、万一、認定を行った無害化処理施設におきまして事故が起こったような場合には、環境大臣が、認定を受けました事業者に対しまして、処理方法の改善や生活環境保全上の支障の除去を命じまして、この命令に基づいて事業者が適切な措置を講ずることになる、このようにしております。

村井委員 今、事業者が適切な処理を行うと言いました。事故が起こった場合の責任の所在はどこにあるのかという問題は、今はやりと言ったらなんですけれども、マンションの話と一緒なんですよね。チェックは国がやっておるけれども、どこに責任の所在があるのか。

 同じような話になる可能性があると思うんです。事故が起こった場合の責任は、事業者ということでいいんですね。チェックしたと言うても、事業者ということでいいんですね。

由田政府参考人 そのとおりです。

村井委員 あと、住民の理解を得られるために、具体的にどうやって理解を得たということにするのか、もうちょっと具体的に教えてもらっていいですか。

由田政府参考人 現在の廃棄物処理施設の設置の手続におきまして、いわゆる、通称、生活アセスと呼んでおりますが、そういうものを実施しまして、これを公告縦覧しまして、地域住民等関係住民の意見が提出できるという仕組みをこの制度に関しましても設けておる、こういうことでございます。

村井委員 さて、最後の質問にしたいと思います。

 もちろん、これで解体工事が増加していきます。中間処理はする、最終処分する、あらゆる面のことがあると思うんです。

 今、解体処理したりアスベストを最終処分したりするのにコストが非常に高いというふうに言われています。そのコストに対して適正な処理価格の維持などが望まれますが、その対策はどのようにされますでしょうか。

由田政府参考人 お答えします。

 建築物の解体などに伴いまして、大量のアスベスト廃棄物が発生することが予想される中、地域住民の方々の不安を背景としまして、アスベスト廃棄物の受け入れを避ける動きも実は見られております。今後、その処理が滞りまして、不法投棄や不適正処理につながることも懸念されるわけであります。

 このために、埋め立てによる処分に加えまして、無害化処理という新たな処分のルートを早急に確保することが不可欠であるとの認識のもと、国によります無害化処理認定制度を提案させていただいております。

 このように複数の処分ルートを整備することによりまして、市場での価格や、より安価な無害化処理ができる技術の開発を促すことを通じまして、不法投棄など不適正な処理を招かないよう、できるだけ処理コストを抑制してまいりたい、このように考えております。

村井委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉でございます。

 同僚議員に引き続きまして、私の方もアスベスト対策関連法案、質問をさせていただきます。

 先日、私の議員会館の事務室の方に、患者さんの、そして家族の会のメンバーの方に寄っていただきました。報告提言書というのをいただいたわけでございます。短い時間でございましたけれどもお話をしまして、何かその方々の苦悩というのを肌で感じることができました。

 いろいろ先ほどからお話が出ていますけれども、昭和四十七年、三十年前ぐらいからこのアスベストというのは危険だと国際的に指摘されていたわけですが、日本も、対応が、国の規制の方がおくれてしまった。そのために、アスベストを吸ってしまって、三十年たって発病する、しかしながら治療法がまだ確立されていない、そういう状態に陥った方々の無念さといいますか悔しさというのはいかほどかと思ったところでございます。

 先ほど、大臣のお話にもございましたけれども、アスベスト問題は、実はこれからであります。四十年から五十年にわたって起こってくるという、いわば国家的な課題ということだと思います。そのときに、患者さんというのは犠牲者でございますから、犠牲者を手厚く支えながらこの苦難を乗り越えるということだと思います。先ほど、田島委員の質問等も聞いていますと、今回の救済新法、やはり手厚いとは言えないのではないかというのが私の実感であると申し上げざるを得ません。

 さて、今回の新法は、経済的な、金銭的な救済というのがメーンの新法でございますが、私がいただいた患者さんの提言書などを拝見すると、経済的な問題ももちろん多くの方が言っておられますけれども、治療法を含めて、何とか医療体制を早く確立してくれという御要望も大変強いというふうに私は感じました。そこで、私の方は、医療の問題、そしてさらには代替製品の問題について、大きくこの二つについてお伺いしたいと思います。

 最初に、医療体制についてお伺いするわけですが、その前提として、一体今までどれだけの方がアスベスト由来の病気にかかったのか。そして、今後については、その数を、これから発症する患者さんの数をどう見るべきなのか、お伺いいたします。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 アスベスト関連疾患の患者数につきましては把握をしておりませんけれども、人口動態統計における中皮腫の死亡者数は、統計をとり始めました平成七年から直近の平成十六年までの間で約七千名でございます。また、アスベストによる肺がん及び中皮腫に係る労災の支給決定件数は、平成十六年度までの間で八百五十六件でございます。

 今後の患者数の見込みにつきましては、吹きつけ石綿の禁止や、あるいは大気汚染防止法の改正等、これまでに講じられてきたさまざまな規制や対応の効果をどう見込むかといった技術的な点で困難な点が多く、政府として公式に予測を行ったものはございません。

 ただし、我が国の石綿の輸入実績は一九七〇年から一九九〇年がピークであったこと、それから、石綿による疾病の潜伏期間は三十年から四十年と言われていることを踏まえ、また、近年中皮腫による死亡者が増加していること等を考慮するならば、少なくとも当面は石綿による健康被害を受けた者の数は増加していくものというふうに考えているところでございます。

吉田(泉)委員 そうしますと、患者さんの全体像、アスベスト由来の病気の全体像という数字はないということであります。今後についても、増加はするだろうけれどもどのぐらいの数かわからないということでございます。そうしますと、救済制度はできるわけですけれども、この救済制度の対象になる人の数がわからないということだと思います。

 先ほどの議論で、年間九十億円、事業者に基金の方に負担をお願いするんだという話がありましたけれども、そうすると、患者さんの基本的な発症数、予測数がなしによく九十億円という数字が出たなという気もするんですが、いずれにしましても、患者さんの数、これからの予測数というのは基本的な数字だと思いますので、何とかこれは詰めていただきたい、これは要望しておきたいと思います。

 今いただいた数字、平成十六年までの累計の数字で、中皮腫で死亡された方が七千名、一方で、労災認定された肺がん、中皮腫の方が八百五十六件というお話がございました。先ほど近藤委員の方からもこの違いが取り上げられました。

 私も改めてちょっとお聞きしたいと思います。要するに、七千名に対して八百名ということであります。この患者数と労災認定数が大きく乖離しているという原因を政府の方はどう見られているのか、お伺いします。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 この乖離の原因でございますけれども、石綿暴露から発症までに三十年から四十年という大変長い潜伏期間を経て発症するという中皮腫の特質によりまして、患者とお医者さんの双方において、業務による石綿暴露と中皮腫の発症との関連性についての認識がないままに労災請求に及んでいないという事例が相当数存在しているというふうに考えております。

 このため、これまでも労災補償制度の周知に努めてきたところでございますけれども、さらに一層この周知に努めてまいる所存でございます。

吉田(泉)委員 私も、お医者さん、それから患者さんともに、暴露と発症の関係の認識がやはりなかったということが大きいんだろうと思います。

 しかしながら、この労災保険、せっかく入っているのに、労災の病気になっても補償されないと、一体何のための労災保険だということでございますから、何とか政府としても周知徹底していただきたい。これは十二月末の総合対策にも入っているようでございますので、ぜひ御努力をお願いしたいと思います。

 先ほどの話で、フランスでは職業暴露が九五%だというようなお話がございました。恐らく、フランスでは九五%の方が労災認定を受けているということなんだろうと。何とか日本もそのぐらいの数字を出せるようにしたいというふうに思うところでございます。

 さて、お医者さん、病院の問題であります。

 衆議院の調査局の方からいただいた資料等を見ますと、アスベスト関連の病気を正しく診断できるお医者さんというのは全国で五十人前後じゃないかというふうに書いてありました。専門的なお医者さんの数が非常に限られているということだと思います。

 そうしますと、その限られた先生方を中心にして、健康相談、それから検査や診断、治療というものを専門的に行える病院をやはりある程度はっきりさせた方がいいんじゃないか。つまり、アスベスト対策病院というような指定をする。そういう拠点病院を全国的にネットワークをつくって、発症される方、心配のある方に対処するということを考えなくちゃいかぬと思いますが、拠点病院の問題、いかがでしょうか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 拠点病院の関係でございますが、独立行政法人労働者健康福祉機構におきましては、昨年九月からアスベスト関連疾患の診断、治療の中核となる医療機関としまして二十二の労災病院にアスベスト疾患センターを設置いたしまして、アスベスト関連疾患に係る健康相談、あるいは診断、治療、症例の収集、それから地域医療機関あるいは医療関係者からの相談対応を行っているところでございます。

吉田(泉)委員 そうしますと、既にその二十二の労災病院の中にセンターができて、一応、拠点のネットワークというべきものがもうできているという解釈でよろしいですね。

 それから、今度は、専門的な拠点以外に、アスベスト由来の病気を判断できるたくさんのお医者さんの育成がまた急がれるわけでございます。要するに、お医者さんに研修を受けてもらう。きょう岡本委員の方からもお話がございましたけれども、専門のお医者さんに改めて研修を受けてもらう、そういう研修制度が必要のような気がいたします。

 それから、大きな病院にはメディカルソーシャルワーカーという方々がおられます。生活、それから資金の面等で患者さんの相談に答えるという役割だと思います。その方々も、今回新しくこの救済新法という制度ができたわけでございますから、この制度をよく勉強していただいて、多くの方に使えるような指導をそのソーシャルワーカーにしていただく。そのためにも、お医者さんとソーシャルワーカー両方の研修制度が必要というふうに考えますが、いかがでしょうか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 私の方から専門医の研修の方をお答えさせていただきます。

 アスベスト関連疾患に関する診断技術あるいは治療方法等を医療関係者の方々に広く普及していくことは重要であるというふうに考えております。

 独立行政法人の、先ほど申し上げました労働者健康福祉機構におきまして二十二のアスベスト疾患センターを設置しておりますけれども、そこにおきまして、石綿関連疾病の症例やあるいは診断画像の読み方等につきまして研修を実施しているところでございます。

 国におきましても、平成十八年度において、労災病院の有するアスベスト関連疾患に関する診断技術等を一般の医療関係者へ広く普及するための研修事業を行うこととしております。また、保健所における相談の充実を図る観点から、平成十八年度より、保健所の医師、保健師等に対しアスベストによる健康被害に関する相談への対応についての研修も行う予定にしております。

 こうした取り組みを進めることによりまして、アスベスト関連疾患の診断、治療等に対応できる医師等の確保に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

中島政府参考人 私の方からは医療ソーシャルワーカーの方についてお答えをさせていただきます。

 病院等におきまして、社会福祉の立場から患者様の抱える経済的、心理的、社会的な問題の解決、調整を援助いたしまして、社会復帰の促進を図るという医療ソーシャルワーカーがおられるわけですが、その役割は非常に重要であるというふうに認識しておりまして、厚生労働省では、病院等で現に勤務をいたします医療ソーシャルワーカーを対象として、研修事業を従来から実施しております。

 平成十八年度の研修におきましては、アスベストの健康被害の内容について、それを講義の中で行うこととしてまいりたいというふうに考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 今度は健康管理手帳という問題でございます。

 そういう制度がもう既に労働安全衛生法に基づいてできております。もう退職された方、暴露があって退職されたような方の健康管理を目的とするということであります。その手帳を持って随時健康診断を受けてということでございますから、早期発見につながる大変大事な制度だと思います。何とかこの制度の対象者を拡大したいというふうに思います。

 例えば、仕事をしたときに三カ月以上の暴露があったような方は全員手帳を持ってもらう、要するに、対象者を拡大する。それから、この手帳の交付手続をもう少し簡単にしたらどうだろうか、事業者の方の責任で交付できるようにしたらどうだろうか。さらには、その手帳を持って無料健診を受けられる医療機関を、どこの病院に行っても健診を受けられる、そういうようなこの制度の拡大というのが必要ではなかろうかというふうに思います。

 また、別な面からいきますと、この健康管理手帳をもらえない方、暴露の可能性があるが健康管理手帳をもらえない、要するに、一人親方それから住民、こういう方にも同じような趣旨の健康管理制度、これが手帳という名前になるかどうかはわかりませんが、同じ趣旨の制度を創設すべき、両方相まって早期発見につながるというような制度を工夫したいと思いますが、いかがでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 今、先生お話にございました石綿作業に従事しておられて退職をされた方につきましては、やはり継続的な健康管理が必要だということで、労働安全衛生法に基づいて健康管理手帳が交付されるということになっております。年二回、無料の健診が受けられるということでございますけれども、その内容の見直しにつきましては、現在、昨年八月から立ち上げた研究班の中で、職種別のアスベストの暴露のリスクについての研究を専門家の方にしていただいております。

 その結果を踏まえまして、今後、この健康管理手帳の交付要件ですとか、今御指摘のありました交付手続の見直しの問題、そういうことも含めて検討したいというふうに考えております。

 また、手帳を持っておられる方、受診可能な医療機関につきましては、現在でも所持されている方の利便性に配慮した医療機関を選定できるようにいろいろと配慮しておりますけれども、現在、手帳の交付数が非常にふえております。そういうことに応じて、より受診可能な医療機関をふやすなど弾力的な対応をしていきたい、こういうふうに考えております。

吉田(泉)委員 もう一つの方はよろしいですか、一人親方、住民等にも同趣旨の制度をつくれないかという問題ですが。

中島政府参考人 失礼いたしました。

 不安を抱えておられる住民の方に対してでございますけれども、無料で相談を受け付けておりまして、その結果、一定の石綿暴露の可能性があると認められた方については、石綿関連の調査研究の一環といたしまして、自己負担なく必要な検査が受診できるようにするということなどにつきまして、現在、環境省とともに検討を進めているところでございます。

吉田(泉)委員 それからもう一つは、データベースの構築という問題であります。

 アスベスト関連の病気の発生状況を地理的に把握する、そして、今どの地域に一番発生が多いのか少ないのか、それが発生源の特定ということにもつながるわけでありますが、そういうデータベースを何とか構築すべきというふうに思います。

 そのために、患者さんに、特に中皮腫の患者さんに登録をしていただく。そして、いろいろなデータを、どこに住んでいて、どういう仕事をしてきたというようなことも含めてデータを提供していただく。それを積み上げて、病気の発生状況を地理的に押さえていくというような制度を考えるべきという提言がございますが、いかがでしょうか。

中島政府参考人 先ほどお答えいたしました調査研究についてですけれども、その細部を固めていく中で、ただいま御指摘の中皮腫患者等の情報についても、その集積とそれから中皮腫の発生動向の把握のあり方、こういったものについても環境省とともに検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

吉田(泉)委員 最後になりますが、アスベスト被害というのは、世界じゅうで今起こっているわけでありますが、どこの国もまだ完治させる治療法が見つからない、そういう状況であります。かつてエイズという病気がありました。そのときに、各国が同じようにエイズで困っているときに、国連が関与した国際機関をつくって、そこで治療法とか予防法とか研究をしたということがございました。

 先ほど、岡本委員の方からペメトレキセドという抗がん剤、今治験中ということですが、そういうお話もありましたが、この治療法を確立するために政府としてどういうふうに取り組むおつもりなのか。これは、十二月の総合対策にも入っている項目でございますけれども、その決意と、そして、来年度、十八年度予算はどのぐらいついたものなのか、その辺も含めてお答え願います。

中島政府参考人 中皮腫の診断、治療の確立のためということでございますが、中皮腫については、御指摘のように、がんの中でも発見、治療が難しいという実態がございます。これまで、がん研究助成金によります研究あるいは労災病院における臨床研究などで治療方法などの研究を進めてきておりますが、昨年の秋からは、文部科学省とも連携をしつつ、早期診断及び治療方法の基盤整備に関する研究を国立がんセンターを中心に行うなど、その取り組みを強化してきたところでございます。

 今後とも、海外の研究の動向等も踏まえまして、中皮腫の治療法についての研究に一層取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 それでは、質問の大きな二番目でございますが、代替製品について幾つかお伺いいたします。先ほどもちょっと出ましたけれども、まず、アスベスト全面禁止という方針について、再度お伺いいたします。

 去年の十二月二十七日、関係閣僚会合というところで総合対策が決定されたわけであります。そして、それに、アスベストの全面禁止を、今までは平成二十年度とされていたわけですが、これを前倒しするんだ、前倒しして、平成十八年度中に措置をするという方針が総合対策、十二月二十七日に出されたわけでございますが、その方針は変わっていないと考えてよろしいんでしょうか。

中野副大臣 吉田委員の御質問にお答えしたいと思いますが、特に、全面禁止を前倒しして平成十八年度中に措置するとの方針は変わっていないかということでございますが、この全面禁止につきましては、アスベスト問題に係る総合対策の方針を踏まえまして、平成十八年度中にできる限り速やかに法的に措置をすることにしております。

 また、そういう意味で、先般一月十八日に、関係事業主団体に対しまして、禁止対象となるアスベスト製品の速やかな使用中止を要請するなど、既に実質的にも全面禁止を措置しておるところでございまして、今御指摘のとおり、全面禁止の方針は変わっておりません。

吉田(泉)委員 全面禁止の方針は変わらずということでありますが、今副大臣がお触れになったように、一月十八日付厚労省の検討会報告書によりますと、五種類のアスベストについてはこの全面禁止の例外であると除外されたわけであります。これは新聞も書きましたけれども、全面禁止でなくなったんではないか、方針が変わって後退してしまったのではないか、こういうふうにも言われているわけですが、いかがでしょうか。

中野副大臣 今委員の御指摘でございますが、一月十八日の検討会の報告書におきましては、まずアスベスト製品の製造等を全面的に禁止する、したがいまして設備の新設等については使用を一切認めないということにいたしました。ただし、既存の化学工業施設等の設備のいわゆる接合部分に用いる、そういうものにつきましては、高温高圧下の厳しい条件のもとで使用されるものでございまして、それにつきましては、爆発とか災害など、国民の安全の確保に重大な障害のおそれがあることから、この点の製品につきましては、暫定的かつ例外的に認めたことにしたものでございます。これによりまして、平成十四年の使用量との比較は、約九九・六%が削減をされたことになっております。

 なお、その中で、今お話しのとおりの五種類のポジティブリストの方式というものは、欧州諸国でいわゆる全面禁止を措置、そういうもののときにでも採用されておりまして、これは、例えばイギリスだとかドイツとかフランスとかアメリカの例もございますけれども、そういうことで、ポジティブリストという方式については、これは全面禁止の中でやっているということでございますので、こういう点から、全面禁止についての、後退したものではないというふうに私どもは理解をして推進しております。

吉田(泉)委員 そうしますと、現在の全面禁止は九九・六%の全面禁止であるということだと思います。

 そうしますと、一〇〇%の全面禁止というのはいつごろになると考えればよろしいんでしょうか。

中野副大臣 今、例外なき全面禁止はいつかという話でございますが、先ほどの検討会の報告書において、例外的にそれからまた暫定的に禁止を猶予した製品がございますが、これにつきましては、一月十八日に、関係事業主団体等に対しまして、速やかに非アスベスト製品への代替化を行うように要請をいたしております。

 既に実質的な全面禁止が措置されているものの、完全なものをこれから、今委員がおっしゃるとおり、完全な全面禁止に向けて、なお残された例外品について関係省庁が連絡してできるだけ早期に、これ以上は申し上げませんけれども、できるだけ早期に代替化を進めてまいりたいという決意でございますので、御理解賜りたいと思います。

吉田(泉)委員 いずれにしましても、ノンアスベスト社会という言葉がありますけれども、それが我々共通の目標だと思います。何とかその代替品の開発を促進していただきたいと思います。

 ただ一方、代替品が既にいろいろ開発されているわけですが、今度はその代替品についてもいろいろ、がんの原因になるんじゃないかという心配が出ているものがあります。例えば、フィルターに使われるようですがマイクログラスウール、それから耐火材などに使われるセラミック繊維、この二つのアスベストの代替品については、国際がん研究機関、これはWHO傘下だそうですが、そこの二〇〇二年における評価で、発がん性の可能性がある、こういう評価が出ました。二つの新しい代替品について出ました。

 翻って、日本はその二つの新しい製品について今のところ法規制は全くないということであります。アスベストはなくしたけれども新しい第二のアスベストが出てきたということでは困ります。その国際機関の評価をどういうふうに受けとめて、どういうふうに対応されるのか、お伺いいたします。

小野政府参考人 お答えさせていただきます。

 今委員御指摘のとおり、石綿の代替繊維につきましては、御指摘のマイクログラスウール、セラミック繊維、さらにはグラスウール、ロックウールといったものがございます。国際がん研究機関では、グラスウールやロックウールにつきましてはがん原性があるとは言えない、こういう評価も一方ではしております。

 それから、先生がおっしゃったように、マイクログラスウール、セラミック繊維についてはがん原性となる可能性がある、こういう評価が出ておりますので、こういった国際機関の評価を踏まえまして、事業者に対して、有害性の低い代替物を使用してもらう、あるいは必要な健康障害防止対策がちゃんとできるようにしっかり指導していきたい、こういうふうに思っております。

吉田(泉)委員 最後になりますけれども、ナノテク時代と現代は言われております。今出ましたセラミック繊維等の代替品以外でもいろいろ、非常に極めて小さい新素材というのが開発されている時代であります。それらは、ナノ粒子、ナノマテリアル、そういうふうに呼ばれているようでございます。極めて小さい、細い、そういう新素材でありますので、これもアスベストと同じような心配が一部でされております。

 例えば、カーボン・ナノチューブという新素材、アメリカの学会では、これは動物実験をやった結果、毒性ありという結果が報告されたようであります。これも、日本では今、法規制なく使われている。そういういわゆるナノテク時代の新素材に関する危険性をどういうふうにとらえて、どういうふうに対応するのか、お伺いいたします。

小野政府参考人 お答えをいたします。

 極小の素材でございますナノ粒子、ナノマテリアルにつきましては、現在、その物性ですとか応用の方法等についていろいろな研究が進められている段階だというふうに承知をしております。その有害性につきましては、いろいろな文献で今徐々に指摘をされつつある、こういう段階ではないかというふうに承知しております。

 したがいまして、これらの物質の有害性等に関しまして、国内外の文献の収集等を通じまして科学的な知見の収集に努めますとともに、必要に応じてこれからの適切な対応のあり方について検討していきたい、こういうふうに思います。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。時間ですので、終わります。

木村委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。最後の質問者でございますので、よろしくお願いいたします。

 二十五問ほど質問通告していたんですが、民主党の先生方にほとんど質問されてしまいました。なるべく重ならないように、ちょっと視点を変えて質問をさせていただきたいと思います。

 両法案の前提としてちょっとお尋ねをしたいんですが、アスベスト問題に関する関係閣僚会合で、政府の過去の対応については、それぞれの時点において、当時の科学的知見に応じて関係省庁が必要な対応をとってきたところではあるが、過去において、関係省庁間の連携に必ずしも十分でなかった面があるなど、反省すべき点があったと考えているとの見解が示されております。

 先ほど来、寺田審議官の方から、法的な責任はないんだという何度も何度もお話がありました。それはよくわかるんですが、今の表現は、私も法律家出身ですので、非常にわかりづらい、何が言いたいんだと。先ほど来、民主党の先生からもありましたけれども、とにかく責任は負っていないんだということを言いたいのかというような御質問でしたが、先ほど来の説明、また諸外国の規制状況を見ますと、それぞれの時点において、当時の科学的知見に応じて関係省庁が必要な対応をとってきたと本当に言い切れるのか。

 法的な責任はあるとは言いません、私も一応与党ですから。ただ、四十七年に発がん性がもうわかっていて、平成元年になって初めて規制する、そして、全面規制が、今までの説明だと十八年度中に何とかしたいと。今の民主党の委員の質問に対して、十八年度中に全面禁止でもないというような発言が出てきてしまっている。

 こういうふうな時系列を見ると、国民の皆さんから見たら、やはりちょっと遅いんじゃないのというのが自然の感じだと思うんですけれども、そこはどうですか。

小野政府参考人 改めて、この間の経緯を御説明させていただきます。

 ILO、WHOにおきましてアスベストが発がん物質であることが認められたことを受けまして、当時の労働省におきましては、一九七五年、昭和五十年にアスベスト等の吹きつけ作業を原則禁止する。この時点での原則禁止は、諸外国にかなり先んじていたというふうに客観的に言えると思います。

 使用等の禁止に向けた対応としましては、今先生お話しのとおりでございまして、クロシドライト、アモサイトにつきましては、平成七年、一九九五年に禁止をいたしました。

 クロシドライトにつきましては、それまでの行政指導等によりまして、平成元年に使用の実態がなくなっていたことを確認しております。ドイツが一九八六年、フランスが一九八八年でございますが、この時点で両国は依然使用の実態があったという面があります。実態面では、そういう意味では欧州諸国に必ずしもおくれをとっていなかったというふうに考えております。

 また、アモサイトにつきましては、平成五年、一九九三年のドイツ、それから平成六年、フランスに比べまして、我が国は平成七年でございますので、時期的な大きな差というものはないのではないかというふうに思っております。

 そういう意味で、我々といたしましては、当時の科学的な知見に応じて、随時必要な対応をとってきたというふうに考えております。

    〔委員長退席、石崎委員長代理着席〕

富田委員 先んじてもいいわけですよ。ほかの国で規制しているから次の年にみたいな、今の答弁だと、そういうふうにどうしても聞こえてしまう。科学的知見というんだから、日本の方が先んじてやったということがあってもよかったと思うんですね。そのあたりは十分反省していただきたいなと思いますし、もう一つ、関係省庁間の連携に必ずしも十分でなかった面があるというふうに関係閣僚会合で言われていますが、これは一体具体的にはどういうことなんですか。

竹本政府参考人 私ども環境省が行いました過去の対応についての検証結果におきまして、昭和六十年代以降につきまして、重要な検討会の報告書などの作成時、また学校施設の石綿問題が起きた時期等において、関係省庁に書類の送付とか対応の依頼などを行ってきた、そういった形跡がございます。

 一方、昭和五十五年におきまして、第一次アスベスト発生源対策検討会、当時環境庁でございますが、当時その報告書を環境庁の方で取りまとめたところだったのでございますが、私ども、この検証作業におきましては、関係省庁にその報告書を送付した形跡は見出せなかったところでございます。

 このように、当時のそれぞれの行政機関を中心にいろいろ実施してきた調査とか研究、そういった成果が政府全体として共有され、また、関係省庁の十分な連携が図られていたかということにつきまして、必ずしも十分ではなかった面があったのではないかというように考えております。

富田委員 それを踏まえて、関係閣僚会議で、政府の過去の対応の検証についてというところでも相当検討されたようですが、大臣はメンバーですので、関係閣僚会議の中で、今のような不手際がないように、各省庁は今後どういうふうに連携をとっていくというふうに決められたんでしょうか。

小池国務大臣 たしかこの関係閣僚会合の、ちょうど静かな爆弾というのが急にメディアにも出てくるようになって、その日の閣僚懇で私も提案させていただいて、その日のうちにつくろうという話になったことを覚えております。

 その場におきましては、反省点が、縦割り行政の中で情報の共有ができなかったのではないかということ、これなどもあるわけでございまして、その意味では、関係省庁が一体となって取り組んで、そして、五回この関係閣僚会合は開かれました。

 そこで、健康被害者の救済、被害の未然防止、そして不安への対応、この三つの観点から、今回の法案のベースとなります、アスベスト問題に係る総合対策ということを十二月に取りまとめさせていただいたわけでございます。

 また、今回の石綿の問題を契機として、関係省庁間の連携をさらに確実なものにしていこう、また、今アスベスト問題というのに取りかかっておりますけれども、一方で同じような問題が同時並行しているのではないかというようなことから、同時に、昨年の十月でございますけれども、人体に影響のある化学物質に関する関係省庁連絡会議というのを設けまして、化学物質の規制に関しての取り組みなどについての情報交換を行っているということでございます。

 いずれにしましても、私も、環境省内のこれまで何をしてきたのかということを検証いたしまして、いろいろな問題点が出てくる、モニタリングをする、数値はそう高くないというような状況がこの間続いてきた。

 ただ、私は、当時の環境庁、もっとパワフルだったら、また違うこともできたのかななんて思ったり、経済優先の時代とか、いろいろございます。今水俣病の検証をしているのと、時代背景など、ほぼ重なり合うところなどもあるなと思いながら、これではいけないという思いで、この新法をできるだけ早急に実施をして、できるだけ早く安心していただけるような状況をつくっていく、このような思いを抱いているところでございます。

富田委員 今大臣の方から、有害化学物質に関する関係省庁連絡会議を十月に設置したというふうに御答弁いただきました。

 環境委員会の調査室の方からいただいた資料ですと、せっかくそういうのをつくっているのに、地方自治体から見ると、まだまだ関係省庁間の連携がきちんととれていないんじゃないか、同じような調査がいろいろな省庁からやってくるというような意見も出ているようです。ここをしっかり機能するように、大臣にぜひリーダーシップをとっていっていただきたいというふうに希望いたします。

 次に、救済給付の水準についてお尋ねいたしますが、先ほど来、民主党の先生から何度も質問がありました。特に田島議員からかなり詳細な質問がありまして、よく検討されているなというふうに後ろで聞いておりました。

 寺田さんが言われるように、補償法ではないとしても、救済法であるということを前提としても、やはり被害者救済の観点から見た場合、今回の法案はまだやはり不十分なんじゃないか。特に、被害者の皆さん、また被害者の御遺族の皆さんは、もうそう思っていると思うんですね。補償法とは違うんだというのは、それはもういいです。被害者救済という観点から見たときに、この金額等で本当に十分だというふうに環境省は考えていますか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来何度も同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、確かに、十分かどうかということでありますれば、被害者の皆さんは甚だ悲惨な状況にいらっしゃるわけですから、それを完全にお助けする、完全に損害をてん補する、こういうことはできないわけでございまして、その観点からいたしますれば、それは、何度も繰り返すようでございますけれども、そういう悲惨な状況に立ち至った方々に対して、国なりあるいは別の産業界等による給付、救済の水準として、我が国国法体系においてどのような救済の水準があるのかというようなバランスというものも考えながら決定していく、そうした総体の中で、我々は今なし得る範囲で十分なものだというふうに判断しているということでございます。

富田委員 いろいろな救済制度があるという御指摘がありました。先ほど来、大臣や寺田審議官の方から答弁で出てきたのは、原爆被爆者の救済、あと医薬品副作用被害救済制度、犯罪被害者救済制度というのが出てきました。

 これも調査室の資料をちょっと見させていただいたんですが、医薬品副作用被害救済制度では遺族一時金が七百十八万円。これはちょっと私自分で調べたわけじゃないのではっきりしませんが、そういうふうに出ていました。犯罪被害者救済制度では遺族給付金が三百二十万から千五百七十三万まで段階的にある。この二つの制度と比べても、今回の方は、もうちょっと何とかならぬのかというふうな思いが、やはり被害者の皆さんから見たらなると思うんですよ。

 先ほど大臣の方からも、これは財政当局といろいろ調整した、与党PTでもいろいろな議論があったというふうに伺っています。大臣の方から、これは新法だ、これからまたいろいろな科学的知見もふえてくる、そういったことで、見直しの中で考えていくんだという答弁もありました。だとしたら、やはりほかの救済制度でこれだけの金額が出ているんですから、今後見直しに向けて、こういったほかの制度での救済の額というのも今後検討していくべきではないかと思うんですが、その点はどうですか。

    〔石崎委員長代理退席、委員長着席〕

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん、それぞれの救済制度はそれぞれ個々特別な事情のもとに立案されたものでございます。例えば、今お話ございました医薬品の副作用の救済制度でございますけれども、これは救済制度と言っておりますけれども、かなり医薬品メーカーによる補償保険的な色彩の強いものでございまして、そういった観点から、ただいま御指摘のありましたような給付も存在するものだというふうに理解しております。

 いずれにいたしましても、ただいま御指摘がありましたように、この給付額あるいは給付の項目等につきましても、当面これでスタートはいたしますけれども、その水準等につきましては今後も見直されるものと考えております。

富田委員 ぜひ積極的に見直していただきたいと思います。

 あと、ちょっと先ほど来の質問を聞いていて考えたんですが、特に田島議員の方から通院費と就学等援護費のことを大分言われていました。

 資料を見させていただいて、この就学等援護費は、緊急の奨学金とかそういったいろいろな制度があるわけですから、ぜひ環境省の方からも文科省に働きかける等して、被害者の御遺族等に対して政府全体としてきちんとフォローしていくんだというような体制をとっていくべきじゃないかなと田島議員の質問を聞いていて思いましたので、大臣、要望ですが、これはまた閣僚懇等で、この制度では就学等の援護費は出ませんけれども、文科省所管の緊急の奨学金とかそういった制度で、本当に学校をやめなきゃならないようなお子さんがいるような場合には、そちらできちんとフォローしていくというふうに働きかけをしていただきたいというふうに思います。これは要望しておきますので、よろしくお願いいたします。

 費用負担についてちょっとお尋ねしますが、先ほど年間九十億という数字が出たんですか、ちょっと私席を外していて聞いていなかったんですが、ある記述だと、産業界は被害者に対する給付総額の四分の三を負担することになり、二〇〇七年度からの四年間で負担は二百七十億円程度と見込まれている、個人事業主を除く約二百六十万の全事業主から労災の仕組みを使って薄く広く徴収する、一社当たりの負担は単純計算で年間数千円程度というふうに言われているというような報道がありましたが、これは間違いないですか。

寺田政府参考人 今御引用の報道でございますけれども、若干私どもの算定をしておりますものと違いがございます。

 若干アバウトな数字で恐縮でございますけれども、まず、私どもは、今後規制等による効果が生ずるであろうということから、当面五年間についての試算をしております。五年間について、また丸まった数字で恐縮ですけれども、大体七百六十億円ぐらいが総費用というふうに考えているところでございます。そして、国につきましては、既にただいま御審議いただいております補正予算におきまして三百八十八億という支出を予定しておりますから、これはもう二分の一を超える、こういうことになろうかと思っております。

 それからさらに、企業の負担についてでございますけれども、これも本日御答弁申し上げましたけれども、九十億というものをすべて一般拠出金で賄う、こういうことをした場合に、そのいわゆる料率といいますか総賃金に乗ずる率は一千分の〇・〇六ということになると申し上げました。これをそれぞれ企業に当てはめますと、当然、当該企業の規模によって違いが出てくるわけでございまして、例えば、その中で年間数千円程度というお話がございましたけれども、これは例えばの話で恐縮でございますけれども、従業員十人程度の零細企業であれば年間三千円程度ではないか、こういうことでございます。

富田委員 具体的な数字を教えていただきましたが、原因者負担の考え方ではない、産業界がすべてアスベストによる利益を受けているんだという考え方に立って、そういうふうに全体的に負担していただくという先ほど来の御説明でしたけれども、やはり石綿との関連が特に深い企業に本来は負担させるべき筋合いじゃないのか、石綿が原因だというふうに言っているわけですから。一般的に広く浅くは今回はやむを得ないのかなと思うんですが、いわゆる二階建ての部分というか、そこの部分の企業をどのように認定して、二階建て部分の企業に対してどの程度の負担を求めていくのかというところが大事になると思うんですよね。

 これは今後どういうふうに認定作業を進めていくのでしょうか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 特別拠出金、今御質問の中で二階建てというお言葉で表現されましたけれども、ここについての細目につきましては、今後、学識経験者による検討会などの検討を経て細目を決定してまいりたいというふうに考えております。

 ただ、ただいま御指摘の中で、本来は石綿とかかわりが深い企業が負担すべきではないか、こういうお話がございましたけれども、この負担の前提として、二階建て部分の企業につきましても、これはあくまで損害賠償的なものではなくて、個別にこの制度を損害賠償的なものとして構成するのであれば、当然、それは原因者がすべて負担するべきでありましょうし、おっしゃるようなことになると思いますけれども、二階建ての企業といえども、やはり個々の因果関係はなかなか明確にならないという前提の中で応益に応じた応分の負担をお願いするということでございますので、あくまで一般拠出金に対するこの二階建て部分についてはやや補足的なものにならざるを得ないのではないかと考えているところでございます。

富田委員 それは了解します。

 あと、肺がんの患者の皆さんの認定基準について、先ほどかなり詳細なやりとりをしていただきましたけれども、一点確認しておきたいのですが、被害者の方が手術を受けなきゃならない、被害者の方が新たな負担になるような形の認定にはならないというふうに理解していいんですか。そこの部分だけをお伺いしたいんですけれども。

滝澤政府参考人 御指摘の御趣旨は、認定申請する、いろいろ準備するといいますか、その手前の診断のためにという御趣旨かと思いますが、そういう意味では、今専門的な議論をしていますが、なるべく該当する方の身体的負担が少ない形でチェックできないだろうか、エックス線とかCTというふうに申し上げましたが、そういうぎりぎりのところの基準を、かなり突っ込んだ議論を今しております。

富田委員 ぜひ新たな負担になるようなことがないように配慮をしていただきたいというふうに思います。

 あと、先ほど民主党の先生の方からも治療に関する質問がかなり詳しくありましたが、救済法の八十条では、「国は、石綿による健康被害の予防に関する調査研究の推進に努めなければならない。」というような規定があります。「健康被害の予防」としか書いてないんですね。ここは、予防も大事ですけれども、治療に関する調査研究こそ大事なんじゃないかというふうに考えるんですが、これは、我が党のアスベスト対策本部が本法案を了承する際、最後の段階で質問が出てきまして、これについて治療も含めているんだというようなお話だったので部会としては了承したんですが、治療については、この法文上、どういうふうな位置づけになっているんでしょうか。

寺田政府参考人 本法は、既に発生した被害に対する救済制度ということでございますけれども、今後、このような石綿による甚大な健康被害が生ずることのないよう、国としても予防のために必要な調査研究を行うべきことも規定しておるところでございます。早期発見や早期治療といった取り組みも被害の発生予防のために必要な措置に含まれるものと解釈しております。

富田委員 わかりました。

 治療については、今がんセンター等を利用して研究が進んでいるという答弁が先ほど厚生労働省の方からありましたけれども、昨年、我が党の福島豊議員が質問主意書を提出させていただきました。

 中皮腫の早期発見のための検査方法については、我が国においてはいまだ十分な研究開発が行われていないという観点に立って、福島さんは米国の専門誌を引用されて、米国の医学専門誌における最近の悪性中皮腫についてのレビューでは、悪性中皮腫の血清マーカーとして、血清メソテリン関連たんぱく質やヒアルロン酸、オステオポンチンが有用な血清マーカーであることが報告されている、こうした血清マーカーについて我が国においても早急に検討を進め、悪性中皮腫の早期発見のための検診方法の確立を図るべきではないかというふうに質問されて、政府の方でも答弁いただいているんですが、現段階で、ここの点についてはどういうふうなところまでいっているんでしょうか。

滝澤政府参考人 健康管理の必要な人、フォローアップの必要な人について、どのようなチェックをしていけば効率的かというような議論も含めまして、今、健康管理の関係の検討会を厚生労働省においても持っておりますし、私ども環境省においてもあわせて検討会を開催して、最終的な議論を進めております。

 ただ、一般的に、例えば肺がんを見つけるとか、あるいは昔の結核検診のように集団スクリーニング的にチェックしていくという方法は効率的ではない、あるいは被曝の問題もあって、消極的な議論が専門家からございます。ただ、ある程度リスクの高い人、それから、エックス線なんかで一定の所見のある人、そういう方をきちっと管理して早期発見に結びつけようと。福島先生の御指摘のような要素も含めて、それをどうしていったらいいかという議論は最終的にまとめていきたいと思っております。そういう状況でございます。

富田委員 よろしくお願いいたします。

 抗がん剤の治療についても質問通告していたんですが、これについては何度も答弁いただきましたので、はしょりまして、非飛散性のアスベスト廃棄物の今後の処理について先ほど御答弁いただいた中に、十七年八月二十二日付で「非飛散性アスベスト廃棄物の適正処理に係る廃棄物の処理及び清掃に関する法律上の取扱いについて」ということを発出して、不法投棄対策をきちんとしていますというような御答弁をいただいたんですが、この文書の第三項を見ますと、先ほどは、マニフェストの中で産業廃棄物の種類のところに非飛散性アスベストだということをわかるように記載して、排出も処理の方もきちんとしているんだというような御説明をいただいたんですが、この文書を見ますと、「排出事業者は、非飛散性アスベスト廃棄物の処理を委託する際には、委託契約書に非飛散性アスベスト廃棄物である旨を明記するとともに、」これは契約書に書けということですよね、その後、「産業廃棄物管理票の交付に当たっては、「産業廃棄物の種類」の欄の余白に「非飛散性アスベスト」である旨を記載し、他の廃棄物と区分して排出するよう指導を徹底されたいこと。」これは要するにマニフェストの余白に非飛散性アスベストだと書けということですよね。

 これだけ問題になっているものを、これまでの産業廃棄物の処理の中に組み込むわけですから、こういう表現で今回やむを得なかったのかなと思うんですが、本当にここをきちんとやっていくということであったら、マニフェスト自体をもう少しアスベスト対策用に変えるなりして、非飛散性のアスベストなんだということがはっきりわかるような、そういう記入欄を設けるということぐらい考えていいと思うんです。これ、欄外に書けって、こんなのはっきり見ませんよ。私も産業廃棄物業者さんの法律の顧問弁護士をやっていてマニフェスト等をいろいろ事件で扱いましたので、実際の現場でこんなことを欄外に書いたら、だれも見ませんよ。どうですか。

由田政府参考人 お答えさせていただきます。

 当面の対応としまして、アスベスト廃棄物の適正処理の確保のために、御指摘の、昨年七月二十八日に環境省より都道府県知事に対しまして、アスベスト廃棄物の排出事業者及び処理業者への重点的な立入検査など徹底をしまして、また、八月二十二日に、排出事業者が委託契約書を締結する際、それから、今御指摘の産業廃棄物のマニフェストを交付する際に、非飛散性アスベスト廃棄物である旨の明記をすることを指導するよう通知をさせていただいたところであります。

 これにつきましては、今後、廃棄物処理法の改正とあわせましてこの政省令の改正をいたしまして、措置するつもりでございます。制度としてしっかりとやらせていただきたいと思います。

富田委員 時間が来ましたので、これで終わります。しっかり取り組んでください。ありがとうございました。

木村委員長 次回は、来る三十日月曜日午後四時二十分理事会、午後四時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時三十八分散会


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