衆議院

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第2号 平成19年2月23日(金曜日)

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平成十九年二月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西野あきら君

   理事 石崎  岳君 理事 宇野  治君

   理事 桜井 郁三君 理事 鈴木 俊一君

   理事 竹下  亘君 理事 末松 義規君

   理事 田島 一成君 理事 江田 康幸君

      赤澤 亮正君    新井 悦二君

      飯島 夕雁君    北川 知克君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      篠田 陽介君  とかしきなおみ君

      並木 正芳君    野田 聖子君

      藤野真紀子君    馬渡 龍治君

      盛山 正仁君   山本ともひろ君

      市村浩一郎君    太田 和美君

      近藤 昭一君    高井 美穂君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      田端 正広君    江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         若林 正俊君

   環境副大臣        土屋 品子君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   環境大臣政務官      北川 知克君

   政府特別補佐人

   (公害等調整委員会委員長)            加藤 和夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (林野庁林政部長)    島田 泰助君

   政府参考人

   (環境省大臣官房長)   小林  光君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       上田 博三君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  冨岡  悟君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     新井 悦二君

  中川 泰宏君     飯島 夕雁君

  荒井  聰君     高井 美穂君

  長浜 博行君     太田 和美君

  吉田  泉君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     赤澤 亮正君

  飯島 夕雁君     中川 泰宏君

  市村浩一郎君     吉田  泉君

  太田 和美君     長浜 博行君

  高井 美穂君     荒井  聰君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     盛山 正仁君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     上野賢一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境保全の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西野委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官本田悦朗君、林野庁林政部長島田泰助君、環境省大臣官房長小林光君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君、環境省総合環境政策局環境保健部長上田博三君、環境省地球環境局長南川秀樹君及び環境省自然環境局長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬渡龍治君。

馬渡委員 自由民主党の馬渡龍治でございます。

 きょうは、生物多様性について、大きく分けて三つの質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、私の選挙区でもあります名古屋市が、さきの閣議におきまして、生物多様性条約第十回締約国会議、いわゆるCOP10の国内候補地として決定がなされました。

 言うまでもなく、生物多様性条約は、地球上の多様な生物の保全とその持続的な利用を目的としたものであり、人類の生存基盤である自然生態系を守る上でも大変重要な条約であるかと思います。このCOP10は、生物多様性二〇一〇年目標の達成の年でもあり、次期目標の枠組みを議論する節目ともなる会議であります。

 愛知県では、愛・地球博の成功に続き、このような国際的に重要な会議が私の地元で開催されるということは、自然との共生を求めて環境問題に取り組んでおります私にとりましても、大変に大きな喜びでもあります。

 ですから、ことしの三月にブラジルに名古屋の市長さんが行かれて、既に開催をした市長会で、ぜひ日本の国でということでお願いをするようでありますが、環境省を初め関係省庁、特に環境委員の先生方には、その候補地として決まるまで大きなお力をおかしいただきますように、よろしくお願いいたします。

 しかし、この会議が日本の国で開催されるとすれば、当然、開催国としてこの会議をリードしていかなければなりません。そうなると、日本国内の生物多様性保全に向けて急いで対策を講じていかなければならない点が幾つかあろうかと思います。

 目標を達成しなければならないことが三つあります。一つは、生態学的な地域ごとに、少なくとも一〇%が効果的に保全されていること。そして二番目としては、絶滅のおそれのある種の状況が改善されていること。そして三として、侵略的外来種となり得る主要な種の侵略経路が制御されていること。これをしっかりとやっていかなければなりません。

 そこで、今私たちの日本の国の生物多様性はどのような状況にあるのか、お聞かせいただきたいと思います。

土屋副大臣 馬渡先生が今最初にお話しになりましたように、生物多様性条約、閣議決定をして、日本としては名古屋を候補地としてということで一生懸命頑張ってまいりますので、先生方にもぜひよろしくお願いしたいと思います。

 今お話がありましたように、日本の生物多様性というのは、日本は南北に長い国でございまして、四季があり、そして海に囲まれているということでは、大変豊かな生物多様性の国であると認識しております。

 しかし、今先生がお話しになりましたように、三つの問題、人間活動による開発、それから里地里山などにおける人為の働きかけの後退による危機、それから外来生物等による生態系の攪乱の危機、この三つが進んでいるということも認識しております。

 環境省並びに関係各省では、連携して新生物多様性国家戦略をつくりまして、これに盛り込まれた取り組みを進めてまいりました。中央環境審議会からは、生物多様性保全に関する国の施策は前向きに進んでいるという評価もいただいているところでございます。

 一方で、それにもかかわらず三つの危機というのは進行しているわけで、これをいかに食いとめていくかということが今後の課題でありますけれども、本年中に予定している第三次国家戦略の策定等を通じて、生物多様性保全施策の一層の充実強化を進めていこうと思っております。

馬渡委員 ただいま土屋副大臣から、国家戦略を持って前向きに進めているとのお話をいただきましたが、実は、昨年十二月に発表されましたレッドリストには、例えば哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類、汽水・淡水魚、植物などの絶滅の危惧のある種が増加をしているように思えるんですが、これについて、どういったところに原因があるのか、お聞かせいただければと思います。

冨岡政府参考人 ただいま先生のお話にございましたように、環境省におきましては、日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト、レッドリストを作成いたしまして、随時公表いたしております。

 鳥類、爬虫類、両生類及び無脊椎動物につきましては、昨年十二月に新たなレッドリストを公表したところでありまして、そのほかの分類群につきましては、現在、専門家の意見をお聞きしまして、作業を進めているところでございます。

 今回改訂したリストについて申し上げますと、前回のリストに比較しまして、絶滅のおそれのあるランクが低くなった種もありますけれども、総じて申し上げますと、絶滅のおそれのある種の数は増加しております。

 この理由につきましては、一つは、生息に関する科学的な情報の蓄積によりまして、絶滅のおそれの有無についての詳しい評価がなされるようになってきたという点がありますが、これも要因でございますが、やはり生息環境の悪化、それから、沖縄県におきますヤンバルクイナのように、外来生物による影響などによって危機が増大している、このようなこともあるかと思っております。

 環境省といたしましては、新しいレッドリストの内容を踏まえまして、今後、それぞれの生物種ごとの絶滅のおそれの状況に応じた対応を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

馬渡委員 冒頭申し上げましたように、日本の国でCOP10が開催される、これは日本の国が環境立国宣言をしようとしている中で極めて重要なことだと思いますので、さらに進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ところで、この生物の多様性を保全していくというのは、幾ら国が頑張っても、国民の理解と協力をいただかなければ、それを実現するのは不可能だと思っております。

 そこで、今回の、仮に日本の国でCOP10が開かれるとしてもしなくても、政府として、民間の団体、NPOやNGOの方たちと連携をとりながら、この保全を進めていくということが極めて重要なことだと思いますが、それについてのお考えはあるのでしょうか。

土屋副大臣 馬渡先生がおっしゃったように、生物多様性を国民一人一人に理解していただくためには、政府が広報として頑張るだけではとてもとても理解は難しいと思います。そういう中では、行政と、それからNPOとか地域住民とか専門家とか、本当にあらゆる方たちに参加していただいて、ともに連携をとって取り組んでいく、推進していくことが非常に重要なことだと思います。

 先ほど、名古屋がCOP10に手を挙げた、これは私はチャンスだと思っております。すばらしいチャンスを名古屋市が与えてくれたと考えております。

 今、招致に向けて国際的にも私たちは働きかけをしていますけれども、この働きかけをしていく中で、やはり国内的にもしっかりと、今言ったようにNPOとか専門家とか地域住民とか、あらゆる角度から働きかけをして、生物多様性とは何であるか、生物多様性を守るためにみんなはどういう行動をしたらいいか、そういうことを啓蒙していくように頑張っていきたいと思っております。

馬渡委員 先ほど、絶滅の危惧種がふえている要因の一つとして外来種によるものがあると局長からお話をいただきました。

 続いて私がお尋ねをしたいのは、やはり生物の多様性に関連することなんですが、ツボカビ症についてお尋ねをいたします。

 私は、昨年の十二月、新聞やテレビ等でニュースを見ましたが、実は、その認識を深く改めたのが、衆議院の環境調査室が毎月発行しております「エコトピックス」というものがありまして、これは非常に、一般の方が読んでも理解していただけるのかなというような内容なんですけれども、ただそこにはデータも入れて、私はそれを読んで、本当にこれはしっかりしなきゃいけないと思ったんです。

 実は、昨年の十二月二十五日に、埼玉県のペットショップで販売をされたアフリカツメガエルというのがありまして、これにツボカビ症が認められたというものです。これは、もともとアフリカに生息をしていましたアフリカツメガエルがアメリカの実験用に輸入をされて、そこから世界に向けてツボカビが拡大していったということであります。

 このツボカビというのは、真菌で、実は二〇〇〇年にIUCN、国際自然保護連合の種の保存委員会が世界の侵略的外来種ワースト百に挙げているもので、世界的にも注意を要するものとしてリストアップされているものなんです。

 IUCNの二〇〇二年版のレッドリストで、世界の両生類五千七百四十三種のうち、百二十種が一九八〇年以降に絶滅したとされていて、千八百五十六種が絶滅のおそれがあると言われています。この原因の一つにツボカビ症があると言われているんです。

 発症から二週間から五週間で死亡に至るこのツボカビ症は、両生類のうちサンショウウオとかカエルとか九十三種に感染して、感染性が非常に高い、しかも、感染したとすればほとんど死んでしまう恐ろしい真菌による感染症であります。

 今や世界じゅうで猛威を振るっていて、既にオーストラリアや中米の両生類が壊滅的な打撃を受けていて、パナマでは、ツボカビが侵入してわずか二カ月でそこの生息群が絶滅をしてしまったという事例があります。

 この防除方法というのは、今、薬とかでは確立されていませんので、野外に一たん放されるとそこの生態群が絶滅をしてしまう。ですから、どうしたらいいかということをこれから検討していただきたいんですが、まず今は、飼育しているものを外に出さない、飼育下で封じ込めることが最優先課題であると思います。

 このツボカビ症によってカエルが感染すれば、当然、今までカエルが食べていた昆虫類がふえてしまったり、ひょっとしたら、その地域でカエルが絶滅したとすると、異常に虫が発生して多大なる農業被害が予想されるし、カエルを捕食していた蛇だとか、例えばワシだとか猛禽類、鳥などがえさがなくなるわけですから、生態系に大きな影響を与えてしまうことは確実であります。

 そこで、今の法律ではツボカビの国内侵入をとめることができません。両生類の規制とか検疫の義務化についての法整備が必要だと思うんです。

 これは環境省ではなくて農水省の関係だと思うんですけれども、今や環境省が私たちの国の環境問題のリーダーシップをしっかりとっていただいて、この恐ろしいことをぜひ農水省の方にもお伝えいただきながら、協力をしながら、どうやったら水際で防ぐことができるのか、そういったことをお考えいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。これは、ぜひ北川大臣政務官にお答えいただきたいと思います。

北川(知)大臣政務官 馬渡議員には御指名をいただきまして、ありがとうございます。

 今、馬渡議員のおっしゃいましたように、今回のカエルツボカビの問題でありますけれども、このカエルツボカビだけではなく、いろいろな形で、一つの種が異常を来したときに、生態系全体に及ぼす影響というものは多大なものがあると私も思っております。

 今回のカエルツボカビにつきましては、議員御指摘のとおり、海外でも、ツボカビによって両生類が激減をしているという事例も出てきております。そして、我が日本におきましても、両生類を初め生態系に多大な影響を及ぼすおそれがあると認識をいたしておりますので、今回の飼育個体の発症確認を重く受けとめております。早い段階での対応が重要であると認識をしており、環境省のホームページでも、飼育者や業者に向けた注意喚起を今行っているところであります。

 一方で、ツボカビは目に見えない菌でありまして、さまざまな侵入経路が考えられるわけであります。両生類の輸入規制や検疫でどこまで侵入を防止できるのか、さらなる検討が必要であると考えております。

 こうした点を含め、今回のツボカビの侵入経路等を十分に今後把握した上で、蔓延防止のためにとり得る手段とその実効性など、さまざまな角度から慎重に検討することが必要であると考えております。

 環境省といたしましては、今、馬渡議員の御指摘のように、輸入検疫等々につきましては、担当省庁とも十分な情報交換を今後図ってまいりたいと思っておりますし、こうした検討に必要な知見を早急に収集するとともに、野外への感染拡大を防止する観点から、さらに、飼育者等への注意喚起など必要な対策を講じてまいりたいと考えております。

 どうぞ、また御協力のほど、よろしくお願いいたします。

馬渡委員 今、日本国内には五千匹以上のカエルが輸入をされているという話があるんですけれども、これはあくまでも自主申告ですから、その実態は今つかめていないんです。

 動物愛護管理法に、動物取扱業者の対象が定められています。両生類をその中に入れられないものか。そして、業者さんが顧客に対して、遺棄の禁止、適正飼養に対して情報提供を行う。そして、地方自治体は、さっきおっしゃっていただいたように、国民に向けて、住民に向けて、同じように、注意が必要だということで、適正な飼養と遺棄の禁止を啓発普及するように行うことが必要だと思いますが、このことについていかがお考えになられていますでしょうか。

冨岡政府参考人 動物愛護管理法での対応という点について申し上げますと、御案内のように、この法律は、動物を愛護する気風の招来や、動物による人の生命等に対する侵害を防止するという同法の目的に沿って、対象となる動物の範囲が定められたものでございます。そういうことで、こういう目的から実は両生類は入っておらないわけでございます。

 この法の目的ということから、現在のところは対象となっておりませんが、そういうことから、ただいまの御指摘の点につきましては同法全体の基本的な考え方に関係する部分がありますので、その辺のことを関連から検討する必要があるのではないかと考えております。

 ただ、いずれにしましても、ツボカビの蔓延防止のための対策のあり方につきましては、政務官からただいまお答え申し上げましたとおり、総合的な検討を関係方面の方と一緒になって早急に検討していく必要があるというふうに痛感しておりまして、その方向で努力してまいりたいと考えております。

馬渡委員 そのようにお答えいただくかなと思っていましたから、環境省の方から取扱業者さんの方に、例えば紙一枚でも、今こういう状況が起きているので、販売したときにはぜひお客さんにそのことはお願いしてくれというようなお願いだったらできると思いますから、よろしくお願いします。これは私からのお願いですから、答弁はいいです。

 続いて、実は、今アフリカツメガエルの話をしましたけれども、ウシガエルでいうと、今、日本国内では、大学では百機関ぐらい、そしてその他の施設、医療関係の研究機関とか専門学校では五十機関ぐらいがカエルを使って実験をしているという事例があるそうなんです。

 そのように実験動物として扱われている実態もまだ恐らく把握されていないと思いますが、せめて、それを供給している業者さん、これをしっかりと把握していただいて、先ほど申し上げましたように適正な飼養とか、みだりな野外への遺棄とかをしないように、情報提供を行っていただきたいと思うんですが、このことにつきまして、いかがでしょうか。

冨岡政府参考人 ただいま御質問がございました実験動物を扱っている関係の機関、団体等への、よく情報を提供してしかるべき対応をという点につきましては、私どももその必要性を感じておりまして、ホームページで情報を提供するなり、団体を通じて提供する、それからポスター、チラシといったものもつくりまして、できるだけその徹底、発見したときの対応、そしてその処理、それから蔓延の防止、こういった点につきまして、情報の提供につきましては万全を期してまいりたいと考えております。

馬渡委員 生物多様性の保全を願っている方たちにしてみれば物すごい衝撃的な事件だと思いますから、これは環境省だけではなくて国の問題としてさらにその対策の強化を進めていただきたいと思います。

 続いて、同じく多様性を保全していく関連の話なんですけれども、ビオトープについてお伺いしたいと思います。

 ビオトープというのは、もともとドイツ語で生息場所という意味なんですけれども、近ごろは、生物、特に小さな動物、小動物が生きられる環境を再現した場所を指します。一九七〇年代に、ドイツで公園とか河川の状況を整えて野生生物を呼び戻す運動が起こりまして、最近日本でも関心が高まってきました。

 ですから、安易に外来種を入れるのではなくて、過去失われてしまったその地域の本来あるべき生態系を取り戻す、これが必要だと思いますので、このビオトープはそれに十分資するものだと私は考えているんです。

 例えば、今までそこに生えていた草が、植物がなくなった。でも、それをまた新たにそこに植えてそれが生息するようになると、必ずそこにはそれを求めて昆虫が、例えばチョウが食草とするものがあればどこかから飛来をしてきます。これは不思議なんですけれども、ちゃんと気づいてやってくる。その昆虫を求めてまた昆虫が、そして鳥がやってきて、すべてきれいに完璧に再現をするとは思いませんけれども、それに近いものが今実際に日本の各地であります。大きな企業なんかも、屋上につくったり敷地の中につくったり、今進めているんです。

 ある小学校でつくったビオトープでは、二十種を超えるトンボ、私は言われても四つか五つぐらいしかわからないんですけれども、そのぐらいのトンボが来て、それをお子さんがそれぞれ自由研究というか一生懸命やっていて、とてもいい環境、単に自然環境だけじゃなくて、お子さんの学習の場としてもいい環境ができ上がっている。

 そこで、大臣が所信の中で、環境教育、学習の推進に力を入れていきます、生物多様性の保全と自然との共生も重要なテーマです、そして、集中的な屋上緑化の推進などヒートアイランド対策等と述べていらっしゃいます。

 これらを総合して解決できる方法が、私は学校ビオトープじゃないかと思っているんです。そして、安倍総理から提言があった二十一世紀環境立国戦略のこれは目玉にならないかなと、私の私的な意見でございますが、環境省と関係する機関が協力をしながら、全国二万三千ある小学校の校庭にビオトープを造成するようにいろいろ力をかしていただいて、そのネットワークが全国各地ででき上がっていくと、これはもう本当にいろいろな昆虫や小動物がやってきて一つの生態系を再現できる。

 しかも、ある学校では、ビオトープをつくって、引きこもりぎみだった子が学校に行くようになった。たとえ風邪を引いて熱が出ても、それを逆に大丈夫だと言って学校に通っている、そういう話を聞いたこともありますので、これはいろいろな意味で有益なものだと思います。

 ですから、これを、何か予算的にいくとすごい大きな額になりそうなんですけれども、ただ、何カ年かで少しでも先に進めないかな、そんな願いがあるんですけれども、ここのところはどのように受けとめていただけるか、一番私とは近い思いを持っていらっしゃる北川環境大臣政務官に御答弁いただければと思います。

北川(知)大臣政務官 馬渡議員には再度、私の方に近い考えということでありますけれども、個人的な考えと役所の立場とございますので、答弁の方で御理解をいただければと思っております。

 今馬渡議員の方から御指摘がありましたビオトープづくりと環境教育という観点から申しますと、私も先日、出前教育というか環境教育の一環で、横須賀の野比小学校へ行ってまいりました。そこで、生徒たちが五年、六年の二年間で、総合学習の中で子供たちが自主的にみずからビオトープづくりを始めておりまして、五年の中で二、三カ月かけてビオトープの土台をつくって生態系を観察していく、こういうことを自主的に行っておりまして、地域の方々も協力をし、先生方も協力をして、子供たちが自主的にこういう問題に取り組んできていただいておる現場を見て、ありがたいなという思いをすると同時に、心強い思いをしてまいりました。

 子供のときに、直接肌に触れる、こういう五官に触れる環境教育を受けることによって、それこそその子供が大きくなったときに環境の問題に興味を示していく、これがやはり環境問題を解決していく大事な点であろうと思っておりますので、学校の現場でこのようなビオトープづくりを積極的に行っていただければありがたいなという思いをいたしております。

 ただ、予算をかければいいというものでもございませんし、やはり小さいときにこのようなことをすることによって、我々大人から褒められたり、それこそ、私ども環境省の方で、全国学校ビオトープコンクールの後援及び環境大臣表彰等も行っております。こういう点を踏まえ、子供たちの励みになるような施策をできればなと思っております。

 今後とも、このような問題については、文部科学省等とも連携をしていかなければならないと思っておりますが、今回の、六月までに策定をいたします二十一世紀環境立国戦略におきましては、この環境教育、学習や身近な自然を含めた生物多様性保全の重要性等も踏まえながら策定をするものと考えており、私もこの点について尽力をしていきたいと考えておりますので、また馬渡議員初め皆様方の貴重な御意見をいただければありがたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

馬渡委員 ありがとうございました。

 それでは、一層の環境立国を目指して頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

西野委員長 次に、篠田陽介君。

篠田委員 自民党の篠田陽介でございます。

 きょうは、大臣所信に対する質疑ということでお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 名古屋の馬渡先生から、私も名古屋の篠田につないでいただきまして、ありがとうございます。

 COP10誘致に向けて、一丸となって頑張ってまいります。二〇一〇年開催ということであります。まずは、我々は二〇一〇年のときに果たして議員でいられるかどうか、それも含めて地元で頑張っていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、初当選させていただきましてから、やはり、若い世代の代表として、日本の将来にツケを残してはいけない、また、地球にとって、人類が住めていけるような地球であり続けなければ、何もすることができないと思っております。

 国内においては、財政再建の分野に一生懸命取り組んでいきたい。その中で、今の国債、その六十年償還ルールというものも、メスを入れて議論をしていきたいというふうに考えています。

 また、もう一つは、地球温暖化対策であります。これはやはり、日本が世界の中でリーダーシップをとって取り組んでいかなければ、これから大変なツケを残してしまう、また、年を追うごとにそのコストがより大きくなってしまうというふうに私は危惧をしております。

 やはり、これから生まれてくる子供たちのために、いい地球を残さなければ、最低でも人類が生きていられるような地球環境を残していかなければ、政治が何を言ったって、まず人類が生きていられなきゃ話にならないわけですから、そういったことを私はライフワークとして取り組みをさせていただいています。

 その中で、大臣所信に対する質疑ということであります。

 今般の環境大臣の所信表明は、まず地球温暖化から入っております。それで多くのページを割いておるということをさきの委員会で聞かせていただきました。やはり日本が取り組むべき課題だと思っております。

 私は、きょうは、その地球温暖化対策につきまして幾つか質問をさせていただきながら、また環境税についても、私なりの持論もちょっと述べさせていただきたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 さて、二月二日に公表されました気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCの報告書が出されました。その中では、温暖化は既に起きており、これはもう九割が人類が起こしたものだという報告書でありました。そういった人が起こした起因によりまして地球温暖化が起きているという報告書が出ました。これは第一次作業部会であります。またこれから第二次、第三次という報告書が出てまいりますが、まず、この第一次報告書が出て、環境省としてこの報告書をどのように受けとめられているか、質問をさせていただきます。

土屋副大臣 この報告書は、世界的にも大変衝撃的に受けとめられていると思います。温暖化は既に顕在化しているだけではなくて、スピードが加速している、大変厳しい状況であるということを科学的に明らかにしたということで、これまで以上に温室効果ガスの削減を急ぐ必要があり、警鐘を鳴らしているものと考えております。

 私自身といたしましても、この問題は、今や人の健康、食料、水問題、そして居住地の問題、平和と安全の問題など、すべての分野において大変脅威であるという認識を持っておりまして、最近、非常に多く言われている気候安全保障、クライメートセキュリティーという問題として、しっかりと取り組むべきだと考えております。

篠田委員 ありがとうございました。

 このIPCC報告書、また次は第二次作業部会が四月に出る。この中身につきましては、第一次は科学的知見での報告でありましたが、気候変動による実際の影響、それに対する適応策について報告書が出るのが四月だと言われております。

 この第二次作業部会での報告書、どのように環境省として予想をされているのか。また環境省として、このまま温暖化が進行した場合、我が国にとってどんな影響が出てくると予想しているのか、そういったことをお尋ねいたします。

南川政府参考人 現状でございます。

 篠田委員御指摘のとおり、四月に第二分科会の報告が出ます。その中で、IPCC、世界の多くの学者、研究者から構成されておりますけれども、我が国では国立環境研究所の職員が大変大きな役割を占めております。

 その中で、具体的に、世界全体としての影響、適応策のみならず、地域に絞って、例えば東アジアで何が起こるかとか、アフリカで何が起こるか、そういったこともその中で予測をする、提言をするということになっております。

 したがいまして、まだまとまっておりませんけれども、私ども、さまざまな形で国立環境研究所の職員と連絡をとり合っております。

 まず、全体としまして、平均気温でございますけれども、現状の状況が続けば、既に今世紀、二・四度から六・四度の温度上昇になる、その中で最も可能性が高いのが約四度Cの上昇だということでございまして、真夏日が現在に比べて倍増するということでございます。

 その結果といたしまして、具体的に、気象あるいは害虫、水資源の変化から、例えばリンゴが赤くならなくなるとか、それから、米に虫がつきやすくなる、味が落ちる、そういった農作物への悪影響が心配されます。また、日本の自然の一つの象徴でございますブナ林が大幅に減少する、さらに、熱中症が増加する、感染症がふえる、そういったこともございます。また、海水の温度の上昇などから、台風の強大化、豪雨の増加、そういったことも予測されるわけでございます。

 私ども、研究者と連絡をとりながら、最新の状況を把握してまいりたいと考えております。

篠田委員 ありがとうございます。

 今、世界各地で、いわゆる異常気象と呼ばれているものが多発をしております。日本国内においても、北海道で起きました竜巻、今までこんなことは起きなかったわけであります。また、今アメリカにおきましては、東部では非常に暖かい冬を迎えている、西部では逆に非常に寒波になっている。いわゆる地球温暖化というのは、徐々に平均気温が高くなっていっていれば影響はないんですが、やはりその気候の振れ幅が大きくなってくるんだと思っております。

 これから国内においても、夏になったら物すごい豪雨が降る、また冬になったら、逆に北海道で大雪が来たり、あるいは極端に雪が降らなかったり、そういった振れ幅が大きくなってくるのが一番心配されるところであります。

 そこで、今、特に米国、アメリカの動向が一番世界の中では注目をされているのかなというふうに考えております。

 実は、私、国会議員になりまして、GLOBEという組織に所属をさせていただきました。たしか土屋副大臣もお入りかと思いますが、政務官もお入りですか、地球環境国際議員連盟という組織であります。小杉先生らが立ち上げられて、今、世界の中の三分の二を占める排出国の国会議員で構成されている組織であります。

 そのGLOBEジャパンの中で、私も所属をさせていただきまして、昨年はベルギー・ブリュッセルで行われました気候変動のための国際対話、さらには、十月には、北京で行われました国際会議、二度にわたり、その一員として参加をさせていただき、いろいろ議論を交わさせていただきました。

 また、実は先週ですが、二月の十四、十五と、アメリカ・ワシントンでの国際会議が開かれたところであります。これも私、参加をしたいということで申し出たんですが、国対の方から一回生は行っちゃいかぬと言われまして、残念ながら参加することはできませんでした。ですが、これからもこういったテーマに頑張って取り組んでいきたいというふうに思っております。

 それで、アメリカの動向について質問をさせていただきます。

 アメリカというのは、基本的に京都議定書に最終的には批准をしなかった国であります。しかしながら、今私が注目している技術は、いわゆるCCSと言われる技術であります。これは、二酸化炭素を回収して貯留をする、あるいは地中に埋める。アメリカは、油田の掘った跡、あるいは昔の炭鉱の跡地等々で、二酸化炭素を閉じ込める地盤がかなり潜在的にある、数百年のキャパシティーを持っているということを承知しております。これをうまく活用して、次の議定書づくりに向けてアメリカにも参加をしていただきたいというふうに私は思っております。それで中国にも働きかけていくということであります。

 しかしながら、アメリカはいまだ京都議定書に参加しておりませんが、近年、民間や州あるいは連邦レベルでさまざまな動きが出ていると承知をしておりますが、米国の動きとそれに対する環境省の認識がどうなのかをお尋ねいたします。

若林国務大臣 委員が御指摘されましたとおり、昨今、米国では地球温暖化に対してさまざまな前向きな動きが出てきていると承知いたしております。

 それは、ゴアのテーマになっておりますけれども、映画「不都合な真実」などによりまして、市民レベルでも地球温暖化に対する関心が大変高まってきているわけでございます。

 ブッシュ大統領は、先月行った一般教書演説において、初めてですが、地球温暖化問題は重要な課題だというふうにしておりまして、温室効果ガスの排出削減策とか、あるいはエネルギー安全保障の観点から、バイオ燃料の利用拡大や乗用車等の燃費向上などの具体的な政策を発表いたしております。

 また、連邦議会でも、国際交渉への積極的な参加を求める決議が出され、また排出量取引に対する法案が複数提出されているという状況になっております。

 州レベルでは、カリフォルニア州が、排出量を二〇五〇年までに一九九〇年比で八〇%削減することなどを定めた法律を制定いたしましたほか、ニューヨークを含む北東部諸州では、排出量取引の検討が進むなど、温暖化対策が積極的に進められております。

 環境省としては、こうした動きは歓迎でございますが、同時に、人類共通の課題である地球温暖化に対しては、中長期にわたり、アメリカも含め世界が一致協力して、積極的に取り組むというような体制づくりが必要だと考えております。

 世界最大の温室効果ガス排出国として、米国の取り組みが極めて重要でありますので、引き続き、あらゆる機会をとらえて米国政府に対して建設的な対応を促してまいりたい、このように考えております。

篠田委員 大臣、ありがとうございました。

 今、世界の各地で排出権取引制度というのが活発に進められております。

 これは私、本当に疑問に思ったんですけれども、北京に行って、確かに中国というのは、排出国であり、途上国と言われております。その排出権をめぐって、ヨーロッパ、米国がしのぎを削っておるというのがかいま見られました。

 残念ながら日本が余り、たまたまそこの場で行われたのがカーボンエキスポということで、世界の排出権取引制度の見本市でありました。残念ながら、日本の企業は最後になってばたばたと数社参加してきたということでありまして、トータル二百社ぐらいの欧米の企業を中心として、いわゆる排出権取引制度の見本市ということでのカーボンエキスポ・イン・アジアということを私も視察させていただきました。

 ですから、この取り組みの中に日本もおくれちゃいけないなと思う反面、議定書の批准をしていないアメリカの会社がいっぱい参加をしているというのも、やはりちょっとおかしいんじゃないかなという矛盾も感じて帰ってきた次第であります。

 その中で、アメリカも動いて、EUも既に次期枠組みを見据えたさまざまな動きをしております。この動きに日本が負けちゃいけない。やはり日本がそのリーダーシップをとってイニシアチブを握っていかなければ、後手後手の対策になってしまう。後手後手の対策になるということは、やはり足元を見られて、いろいろ取引でも高いお金を吹っかけられるんじゃないかとか、そういったことを私は実は心配をしております。

 その中で、アメリカが動いて、EUも動いております。このような世界の動向を踏まえて、次期枠組みづくりが急がれておると思います。その中で我が国がリーダーシップを発揮すべきだと考えておりますが、大臣のその決意を再度お尋ねしたいと思います。

若林国務大臣 先般の所信表明におきまして紹介をいたしましたが、EUはもちろん、アメリカにおいても大変前向きな議論が進められてきているというふうに理解をいたしております。

 しかし、気候変動枠組み条約の究極目的である温室効果ガス濃度の安定化のためには、今後、中長期的に世界全体の排出量を半分以下にしなければならない、そういう状況になっているわけでありまして、これに向けて世界が一致協力して取り組みを積極的に進めていかなければならない、そういう状況が生まれております。

 したがって、我が国としては、次期枠組みについて、すべての国がその能力に応じて排出削減に取り組むことを可能にするような仕組みをつくっていくと同時に、アメリカ、中国、インドを含む主要排出国による最大限の削減努力を促す実効のある枠組みの構築が必要であると考えております。

 現在、国連のもとで、米国を含むすべての国が参加する長期的協力に関する対話が実施されておりますが、次期枠組みに向けた議論が本格的にここで始まっております。

 また、G8プロセスでも、主要排出国二十カ国による気候変動に関する対話が実施されております。

 我が国としては、二〇〇八年のG8日本サミットに向けて、G8プロセスでの議論に有意義な貢献を行い、そしてそこでの議論が実効ある次期枠組みの形成につながるように、主導的な役割を果たしていくつもりでおります。本年三月には、ドイツでG8環境大臣会合が開催されますが、このような機会も活用をしてまいりたい、このように考えております。

篠田委員 大臣、どうもありがとうございました。

 それで、G8の会議、サミットが日本で行われるのが二〇〇八年でありますね。その八年から約束期間が始まってくると承知をしております。

 やはり、京都議定書に基づいた目標達成計画、これは日本が達成できなかったら大変恥ずかしいことになってしまう、その見通しすらつかなかったら世界に対して大変恥ずかしいサミットになっちゃうなというふうに私は大変心配をしております。

 そこで、資料をお配りさせていただきました。

 京都議定書目標達成計画ということでの二〇〇五年度の速報値、基準年であります一九九〇年と比べての数値、あるいは二〇一〇年に向けてどのぐらい削減しなければならないかというグラフをもとに私が話をさせていただきたいと思っております。

 実際、私もちょっと計算をしてみました。

 一九九〇年の排出量、二〇〇五年の速報値の排出量、それで今大体世界の排出権取引、CO2大体一トン六ドルぐらいで推移をしているということを承知しております。これを円に換算しますと、例えば目標が全くそのまま、二〇〇五年の速報値と変わらず推移をした場合、大体千三百億円ぐらい、もし全部買うとするのであれば、そのぐらいのお金がかかってしまう。さらに、こういったものは時期が、目標年度が近くなってくればくるほど、またその取引価格というのは上昇するのが常であります。

 たしか政府の方では、今年度からでしょうか、そのクレジットのための予算づけができていると承知はしておりますが、やはり大変な費用がかかってくるんじゃないかということを私は心配しております。

 そこで、質問させていただきます。

 まず、この京都議定書目標達成計画を達成するためには、一四・一%を削減することが必要でありますが、この削減対策、内訳をここにも書いてありますが、国内排出量の削減で八・七%、森林吸収源三・八%、京都メカニズムで一・六%とあります。

 私が注目しているのは、この排出量の削減、マイナス八・七%が本当に達成できるのか。

 たしかきのうのニュースでは、環境省、経済産業省の審議会におきまして、一般の、普通の例えば娯楽施設だとか、そういった民間の会社、企業、事業者にも目標達成計画を通達する、ただ、これは義務づけではない、あくまでも自主的に達成をしていただくということを通達するということでありますが、特にこの国内排出の削減において、民生の分野あるいは工場の分野、どういった割合で削減計画を組み立てていられるのか、それをお尋ねさせていただきます。

南川政府参考人 私ども、昨日、中央環境審議会、産業構造審議会を開きました。その中で、これまでの企業の取り組みについて点検をしたわけでございます。非常に熱心にやっておる企業もございますし、また非常におくれている部分もございます。

 特に、産業につきましては、残念ながら、いわゆるメーカーというところについては、かなり従前からこの問題について真剣に取り組んでいただきましたが、学校とかあるいは病院その他を含めて、まだまだその取り組みがおくれているところがございます。私ども、これからしっかりとそういった業界にも働きかけをしていきたいということが一点でございます。

 それから、もっと大変なのが、いわゆる業務用のオフィスビルでございます。これにつきましては、一九九〇年から二〇〇五年までの十五年間で四割以上のCO2の排出が伸びております。そういう意味で、これにつきましてどうするかということが非常に大変な問題でございます。業務用ビル自身の容積が大変ふえております。その中でいかに省エネを図るかということをこれからどう働きかけていくか、大変難しい問題でございますけれども、最重点を置きたいと思います。

 家庭につきましても、三割を超える増加がございます。これにつきましても、例えば家庭の省エネ、具体的には、例えば冷蔵庫を古いものについては最新のものに買いかえていただくことを含めて、それから、もちろん小まめな省エネを含めて、働きかけが必要でございます。

 総じまして、私ども、点検の中で、どこがおくれているのか非常に明快になってまいりましたので、その部分を中心にこれからやってまいります。

 なお、もう一つでございますけれども、国内的な排出削減の八・七%の中で、やはり原子力について非常に大きな問題がございます。具体的には、二〇〇二年には原子力発電所の操業が八五%程度あったものが、不祥事などで今七五%を切っておりまして、相当下がっております。これが旧に復するだけで二・三%の減が見込めるわけでございますので、原子力発電の稼働率がもとに戻るということもぜひ期待したいと考えております。

篠田委員 ありがとうございました。

 今、オフィスビルで四割がアップしている、一般企業さんは比較的進んでいるという御報告もいただきました。しかしながら、このマイナス八・七%を含めたマイナス一四・一%、私の一般的な感覚で見ると、これは達成は無理なんじゃないかなと私は残念ながら考えているんです。

 達成できれば、それはそれで言うことないんですが、しかしながら、足りない分は、目標を達成するために、達成させなきゃならないですから、達成させるためにどうするかといったら、やはりクレジットを購入するしかない、残念ながらそういったことになってしまうのではないかと私は心配をしております。

 それで、お尋ねをさせていただきますが、目標達成に必要なクレジットを取得するのにかかる費用、大体どのぐらいで見積もられておるのか、また、その財源はどこから持ってくるつもりなのか、そこを、なかなかお答えづらいかと思いますが、お尋ねさせていただきます。

南川政府参考人 まず、現在の予算案でございますけれども、私ども環境省と経産省で、若干の多寡はございますけれども、連合してお願いをしております。百二十九億円の予算要求をお願いしておるところでございます。

 ただし、現状を申しますと、もともとのクレジットが幾らになるのか、トン当たり幾らかというのは、大変実は不確定な要素が多うございます。

 先ほどございましたように、ほかの国、ヨーロッパの国が非常に買いに走っております。といいますのも、実は、ヨーロッパは森林吸収源がほとんど計算できませんので、基本的には八%の減を燃料転換などで行うとしておりました。それでうまくいっておるのがドイツとフランスとイギリス程度でございまして、あとの国は実は軒並み大幅にCO2の排出がふえております。そういう中で、オランダなどは、対策の半分弱はクレジット購入で賄うんだということを言っております。そういう中で、少しずつ値上がりをしております。

 したがいまして、現状でも、確実性も含めた料金でございますから、なかなか難しいんですけれども、トン当たり十ドルを超えるものでないとなかなか実際には市場に出回っていないという中で、できるだけ安くて確実にCO2削減が見込めるものを買っていきたいと思います。

 ただ、百二十九億で、そのままで済むのかどうか、それについてはなかなか厳しいと思いますので、ある程度は、予算、また検討の時期には、その増額も検討せざるを得ないというふうに考えております。

篠田委員 ありがとうございます。

 平成十九年度予算で百二十九億、環境、経産省で要求するということでありますが、やはり、先ほど答弁されたように、だんだん高騰してくるんです。これはもう商売ですから、取引ですから、しようがない部分はあるんですが、ですから、いち早く手を打っていきたいということを私は申し述べさせていただきたいと思っております。

 その中で、環境省さん、非常に理念がすばらしい、やはり地球環境、いろいろな環境保全のためにやられている。しかしながら、残念ながら財源が乏しいのが環境省であると私は昔から見てきております。たしか、この委員会での平成十九年度予算案についても、二千百九十九億円ということであります。一役所が二千百九十億円ということは、ちょっとやはり予算的にも少ないなというふうに思っております。

 そこで、きょう林野庁さんにお越しをいただいています。

 林野庁さん、当然、森林保全の分野でいろいろと事業を行われていると思うんですが、やはり今この御時世、林野分野もなかなか、人手が足りなくなったり、いろいろ森林問題を抱えていると思います。

 その中で、やはり環境対策という名目のもと、あるいは温暖化対策という名目のもと、いろいろ事業を展開されているんじゃないかと承知をしておりますが、実際、林野庁分野で大体どのぐらい環境対策、温暖化対策という名目で予算を計上されているのか、また、十九年度どのぐらいを予定しているのか、お尋ねをさせていただきます。

島田政府参考人 平成十八年度当初予算におきまして、林野庁関係予算といたしましては四千二十六億円が措置されているところでございます。

 森林の役割につきましては、国土保全、水源の涵養といった機能のほかに、自然環境の保全、地球温暖化防止等の公益的機能を有しておりまして、森林・林業対策に関する予算は何らかの形で環境対策につながっているものでございまして、こうしたものの中から環境対策として明確に切り分けていくことはなかなか難しい面があるというふうにして考えているところでございます。

 ただし、この中でも、間伐等の森林整備など、特に環境保全に結びつくと考えられる経費といたしましては、平成十八年度当初予算におきまして二千四百六十八億円が措置されているところでございます。

篠田委員 どうも済みません。ありがとうございました。

 今答弁で、二千四百六十八億円、林野庁内での環境関係に関する予算。他方、環境省は二千百九十億円。私はやはり、私の持論でありますが、将来的にはぜひ、林野分野と環境省分野、一緒になってもらいたいというのが私の持論であります。

 そこで、環境省さん、少ない予算の中で一生懸命頑張られている。しかしながら、環境税がなかなか導入できないということであります。

 時間が押し迫ってまいりましたので、私の持論と、最後、大臣の決意を聞かせていただきたいんですが、環境税、これまで税制でなかなか受け入れられませんでした。私は、これまでの議論を見てまいりまして、やはりどうも環境税というネーミングにちょっと無理があるのかなと。

 私は、これから地球温暖化という問題について、今世界で機運が高まってきている、日本国内でも高まってきているというのであれば、明確に、地球温暖化対策のためにそのお金を使いますよということで、環境税改め、地球温暖化対策税ということで、明確な、明快な名前に変えて、各事業者、個人、あるいはそういったところに働きかけをしていきながら、ぜひ地球温暖化対策のためにお金を使いますよ、そういったことで皆さん協力をお願いしますよというふうにして、明確な地球温暖化対策という税制だということで打ち出していくことが、私は、国内世論あるいは関心が高まっていく、皆がそういった地球温暖化防止に向けて省エネに取り組んでいく、そういった機運が高まることにもつながっていくと思います。

 このままの環境税という名前でいくと、私は、どうしてもやはり、いろいろ経済界等々の理解が得られないんじゃないかなということを考えており、地球温暖化対策税に改めて、この税制を理解いただくために求めていく必要があると思っておりますが、最後、この私の持論につきまして、大臣のお考えを聞かせていただき、私の質問を終わらせていただきます。

若林国務大臣 委員がかねて、地球温暖化対策、環境政策について大変深い御理解をいただき、その財源の一部として環境税を積極的に推進いただいておりますことに敬意を表しているところでございます。

 環境税は、言うまでもなく地球温暖化対策を主眼とするものでございまして、昨年の要望でも、環境税を含め地球温暖化対策のための税制のグリーン化、これは自動車その他、他の税目がございます、それらを全部含めまして、税制のグリーン化として各般の税制上の措置を要望したところでございます。

 御提案のように、地球温暖化対策税とすれば、使途が地球温暖化対策であることが明らかになる、国民の理解が得やすい、そういう考え方も確かにあると私も思います。

 ただ、このような新税を創設するということについてはなかなか困難がございまして、昨年の与党の税制改正大綱では、「総合的に検討する。」というふうにされておりますので、御指摘の案も含めまして、さまざまな御意見を参考にしながら、より広く理解が得られる方策について、工夫、検討をしてまいりたいと思います。

 いずれにしても、京都議定書第一約束期間の開始を来年に控え、待ったなしの状況にございますので、あらゆる手段を講じてまいりたい、このように考えております。

篠田委員 どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 きょうは、温暖化の問題、また、水俣病あるいは東京の大気汚染の裁判、公害裁判についてお伺いをいたします。

 環境省に質問に入る前に、私ども民主党の国対の方から指令が出ておりまして、二問についてしっかりと関係大臣の意見及び説明を聞けという話でございますので、まずそこからやらせていただきます。

 先日、柳澤厚生労働大臣が、女性を指して、産む機械という発言をしたことに対して、大臣の御感想あるいは大臣の御認識をお伺いします。

若林国務大臣 柳澤厚生労働大臣の、女性は産む機械だという発言をされたことが大きな問題になっていることは、御承知のとおりでございます。

 御本人自身も、これは不適切だったということをおっしゃり、謝罪を繰り返しているわけでございますが、その発言自身につきましては、私も不適切だというふうに考えております。

末松委員 あと一点でございますが、閣僚の選挙収支報告書で、これは各新聞で報道されているんですけれども、その中で若林大臣が載っておりまして、若林環境大臣は、二〇〇四年の参議院選で約四百八万円の余剰金が出たため、自民党支部の金庫に保管していたが、同支部の収支報告書には入金記載がなかった。

 これについて、大臣の御説明をお伺いいたします。

若林国務大臣 委員が今御指摘になりましたのは、あるメディアがそのように報じたわけでございます。

 その前に、私の方に、私の事務所の方に、どうも余剰金が出るんではないか、そのことが表示されていないということ、どうなっているんだという問い合わせがございました。

 直ちに、事務所、特に会計責任者の方に詳細を調べるように指示をいたしました。調べてみましたら、こういう経過でございました。

 この選挙の収支報告書というのは、皆さんも共通に選挙をやっておられるからおわかりのとおりですが、まず、支出を各項目別に全部明らかにいたします。こちらに、寄附その他の収入を明らかにします。この収支報告書の支出には、公費助成、公費負担の部分も含めた支出を書くようになっておりまして、それを含めて書いております。収入の方は、公費負担というのは、ポスターならポスターの印刷その他の事業者の方に流れるようになっておりまして、事務所の方に来ないんですね。したがいまして、左右、収入、支出が合うということではない、合わないはずのものになっております。

 ただ、公費負担の支出時期の関係なんかございますから、私の方は、自由民主党の選挙区支部の方であらかじめ選挙対策事務所の方に資金を渡しておきまして、それで対応をいたしました。その渡した資金が千五百万あるんですが、その渡した資金を入れると大体バランスできるようなことで選挙の収支報告書は終わって、届け出をしているわけですね。

 当然、そこに余剰金が出てくるはずであります。つまり、収入、バランスしているということは、公的負担部分が別途あるわけですから、それはどういうことになっていくのかということでございます。

 これは総務省の方の見解でございますが、この余剰金というのは候補者自身に帰属するものであって、それをどう保有していくのか、どう使うかというのは候補者の判断になっており、法的な規制はないということだそうであります。

 しかし、私は、やはりこの種の性格のものですから、これは有効に政治活動に充てるということがその趣旨だ、こういうふうに思いまして、余剰金相当額を第一選挙区支部の方に戻し入れをするという措置をとりまして、第一選挙区支部に渡したんですね。その第一選挙区支部の方は、それを経理上でいえば収入金として、これを戻し入れ金として記載をし報告をすべきところだったと思いますが、その記載をしていなかった。

 これは、もう全く事務的な取り扱いのミスでございまして、選挙管理委員会に対しまして、その部分の、四百万余でありますが、これを修正、訂正をするように申し入れているところでございます。

末松委員 わかりました。説明は説明としてお伺いいたしました。

 それでは、時間も短いものですから、きょうは、大臣の本来任務である地球温暖化の防止の方からちょっとお聞きをしたいと思います。

 IPCCの第四次レポートで、温暖化というのは、これは人災だというふうに確認をされたわけでございますけれども、京都議定書実施を一年後に控えて、先ほど環境税という話もございましたけれども、さまざまな仕組みをつくってやはり目標を達成していかなきゃいけないことに違いはないわけです。

 そこで、私は、この環境税というものも進めていくのがよろしいだろうと思うし、また、今ヨーロッパ、EUがやっているんですね、CO2の排出権取引市場制度、これを日本で実際に創設をしていく、あるいはヨーロッパとの市場の連携でやっていく。将来的にはアメリカ等全世界が加わればいいんですが、そういう形でやっていくことがかなり実際的な方法であるのかな。今、自主的にやられていますけれども、やはりそれをキャップ・アンド・トレードという形でやっていく時期に来たのではないかと思うんですが、大臣の御認識及び御決意はどのようなものか、お伺いしたいと思います。

若林国務大臣 地球温暖化対策に対しましては、あらゆる手段を講じて、当面は第一約束期間の六%を我が国は達成しなければなりませんし、同時に、中長期的に見れば、現在の世界の総排出量を半分以上の削減をしていくということが必要になるわけでございます。

 そういう課題に対しまして、いろいろな税制での対応、あるいは排出権の市場メカニズムを活用した方法など、いろいろと工夫が凝らされているわけでございまして、EUにおいては既にこれを実施されているところでございます。

 我が国では、京都議定書目標達成計画におきましては、義務型の国内排出権取引制度については、他の手段との比較やその効果等、幅広い論点について総合的に検討していく課題だというふうに、政府としてそのように位置づけているわけでございます。

 排出量取引について、なかなか実行上の諸問題もございますので、その知見、経験を蓄積するという目的で、平成十七年度から、みずから定めた削減目標を達成しようとする企業の参加を募りまして、自主参加型の国内排出量取引を実施しているところでございます。これも、自主的にキャップを定めまして、そのこと自身が達成できないときにはこれを取引することができる、こういう仕掛けにしているわけでございまして、知見を今積み重ねている、こういうことでございます。

 今後は、このような自主参加型の制度での蓄積を踏まえながら、それを念頭に置きながら、排出量取引制度全体について、関係者の理解を得ながら検討していきたいと思っております。

 また、国際協力銀行が世界のカーボンマーケットについて一連のセミナーを予定しておりまして、環境省にも協力の要請があり、多くの人に世界の最新の動向を知っていただくということは意義深いこととして、積極的にこのことに協力をしていく。

 委員おっしゃるように、今の段階で排出権取引に方向づけをするというような状況になっておりませんけれども、この問題は、次期枠組みをどのように決めていくかということ、これからその枠組みの検討協議をしていくわけでございます。我が国が、そういうような、さらに六%を超えた次期枠組みにどのような責任を負っていくかというようなことと関連させまして、この排出権取引の導入につきましても大きな検討課題だというふうに認識しております。

末松委員 この排出権取引の問題は非常に大きな問題だし、これは大臣の方で検討課題だということでございますので、きょうはこれだけにとどめておきます。ぜひ、今後の議論にさせていただきたいと思っております。

 次に、東京大気汚染の公害裁判についてでございますけれども、昨年九月二十八日の東京高裁の解決勧告を受けて、ことし二月二日、若林環境大臣が、解決に向けて最大限の努力をしていきたいと。具体的におっしゃったことは、若林大臣が閣議後の記者会見で、この裁判は提訴から十年以上が経過しており、原告の中には既に亡くなられた方も多い、和解による解決を促している東京高裁の意向を国としても真摯に受けとめ、いたずらに訴訟を長引かせるべきではないという思いを強く持っている、解決に向けて最大限の努力をしていきたいと述べ、和解に向けて強い意欲を示しました。

 これはなかなかいい方向であるなというふうに考えておったんですが、一番急がなきゃいけないのは被害者の救済だということは当然なんですけれども、この被害者の救済で、和解勧告で、国が責任を認めていく中で、金銭的な補償についてもやるべしというのが勧告の内容なんですけれども、その点について大臣のお考えはいかがでしょうか。

若林国務大臣 委員が御指摘のように、東京大気汚染公害訴訟につきまして、高等裁判所の和解の勧告があった、こういうことでございますが、実は、この和解自身の勧告というよりも、東京高裁からは、高裁としての判決の作成に当たりまして、一方で和解の可能性、可能な場合の条件などについて関係者の意見を聞いていきたいという裁判所側の考えが示されまして、東京高等裁判所における原告、被告双方への意見聴取が行われるという段階になっているわけでございます。

 そういう東京高等裁判所の意見聴取を受けるに当たりまして、当然、原告側と国側との間でそれぞれが意見を言っていただけでは、裁判所の方も、その可能性を探るという趣旨からいうと、それに前進的な意味合いを持ちませんから、私は、先ほど委員がお話しになりましたように、もう十年以上も経過している、被害者、原告の中には解決を待たずに亡くなっている方も多いといったような状況等も踏まえまして、この裁判所の意向というものを真摯に受けとめて、いたずらに訴訟を長引かせるものではないという思いを強く持ちましたので、解決点を探るべく、原告との話し合いを積極的に進めたい、こういうことでやっているわけでございます。

 しかし、和解の状況については、現段階で中身にわたって御説明はできませんけれども、環境省としてできることは、やはり自動車排ガス規制などの公害防止対策ということであると考えておりますので、今後は、この点について何ができるかということを、原告の要望や裁判所の意向も踏まえながら、訴訟解決に向けて努力をしていきたいと思っているところであります。

 金銭補償の問題につきましては、今までの公害訴訟でもそうでありますが、国は、金銭上の補償を和解などでやったことはございません。

 この東京の汚染訴訟の東京地裁の判決が第一次的にあったわけですけれども、これにつきましては、医学的に十分な知見がない中で、本件の各道路からの自動車排ガスと気管支ぜんそくとの因果関係があるんだというふうに東京地裁は認めたわけであります。

 また、道路管理者の責任についても、国家賠償法第二条の適用をするということがございましたが、その解釈の適用について、国全体として見るとこれに不満があるということで、控訴をしたというケースでございます。

 今、環境省として、ぜんそくというのは、アレルギー、ダニ、喫煙など、多岐にわたる原因によって発症し、悪化する非特異的疾患であって、大気汚染とぜんそくとの因果関係につきましては、これまでの調査結果から見る範囲では、現在の我が国の一般環境としての大気汚染は、ぜんそくの主たる原因とは考えられない。

 一方、幹線道路沿線の局地的な大気汚染の影響につきましては、現時点でなお科学的知見が十分でないというふうに考えているところ、まずは調査研究を推進する必要があるということで、環境省としては、現在、幹線道路沿道の局地的な大気汚染とぜんそくに関する大規模な疫学的な調査、いわゆる「そらプロジェクト」というものを立ち上げまして、これを実施しているところでございます。

 科学的に信頼性の高い結果が得られるように鋭意努力をしてまいりたいと思いますが、このような因果関係について調査をしているということを踏まえますと、国側として、法的な責任を前提とした金銭的な支払い、あるいは補償的な措置というようなことは、和解の中でも取り上げることはできない、こういう考え方で対応をいたしております。

    〔委員長退席、竹下委員長代理着席〕

末松委員 金銭的補償という中で、医療助成ということで、医療費の助成、これのことをおっしゃっているんだろうと思うんですけれども、これは、先ほど大臣がおっしゃられましたけれども、地裁で、一九九五年の西淀川判決から五回連続して、大気汚染公害の発生がやはりぜんそく等に非常に関係があるという因果関係を裁判でも認めた例があるわけなんですね。

 そういった経緯を踏まえて、国と東京都と首都高、旧首都高速道路会社ですか、あとメーカーが、費用を拠出して、都内のぜんそく患者の医療費を助成する制度案を、確かに裁判所が意見聴取をした中で、東京都も、いいよ、認めて払いましょう、メーカーもそれを払いましょうという話になって、そういった意味で、東京都が助成制度の三分の一、そしてメーカーの七社が六分の一、それを負担しようと。

 ただ、国が三分の一ということ、また、旧首都公団ですか、これは六分の一という、国が決断をしないとこの和解の案が成立しませんねということで、そこで、今大臣がおっしゃっているように、因果関係がわからないということですね。でも、十年も経過しているから、早く解決したいと大臣がおっしゃった気持ちはそうだろうと思うんですね。

 今大臣がおっしゃった「そらプロジェクト」というのは、それに基づいてやっているのだろうという推測をしているんですけれども、それはいつごろ調査が終わるんですか。

 ちょっと私、思うんですけれども、そんなに時間的なものがかかるものなのかなと。こういった地裁で国が敗訴している例も多いわけですから、東京地裁もそれは因果関係ありと認めているのに、どうしてそれが、因果関係ない、はっきりわからないということだけでもって延ばしているというのは、ちょっと私には解せないんですけれども、大臣、説明していただけますか。

若林国務大臣 実は、裁判所の方が因果関係ありとして損害賠償を認めたのは、ごく一部の原告になんですね。それは、そういう意味での因果関係は、道路上の五十メートル以内で、ある一定の特定の地域の中に長年居住した人についてでありまして、他の原告については、因果関係ありとして損害賠償を認めているわけではないんです。しかし、その少数の人についても、なお我々は、因果関係があるかどうか明確でないとして、そこは争っているわけですね。

 そこで、いわゆる医療費助成の問題、東京都知事の方から、東京都は応ずる、こういう話をしているんですけれども、わかりやすく言えば、小笠原だとか多摩の奥だとか、そういうところのぜんそくの人にもみんなそこから金を出すということになるんですね。したがって、これはもうぜんそく医療に対する医療費助成ということの性格を持っているわけです。

 これは、東京都としては、都民の健康を守る、健康対策というような意味で、東京都はそれなりの理由はつくかもしれませんけれども、道路沿道沿いとかそういうようなこととは関係がなく広く一般のぜんそくについても面倒を見るというのが東京都の考え方で出ていますから、東京都の考え方と同一にするわけにはいかないというふうに思っております。

 この「そらプロジェクト」でございますが、局地的な大気汚染とぜんそくの因果関係というのは、疫学的にも、学者へいろいろ聞いても非常に難しいものでございます。

 そこで、このプロジェクトでは、関東、中京、関西の大都市圏地域、その中で、まずは小学生を対象とした学童コホート調査をいたします。対象は、一万六千人を対象にした調査でございます。平成二十二年度までかかるということで調査をいたしております。

 それから、一歳半、三歳健診を利用した幼児症例の対照調査、これは、対象者は約十万人の幼児を健診の場を利用して対照調査をする。これも平成二十二年までかかる。

 次に、しかし成人についてどうだということがございますので、十九年度以降に成人調査を実施する。

 こういうようなことをいたしまして、医学的、科学的に信頼の高い結果が得られるようにするという調査でございますので、今、因果関係の問題を前提として、一定の給付をする、国がそれに対応するというようなことはできないという考え方は変わっておりません。

末松委員 いつ終わるんですか。いつ終わるんですか、聞いているのは。

若林国務大臣 今お話ししましたように、この調査が終わるのは平成二十二年でございます。(末松委員「終わるわけですか」と呼ぶ)調査が終わるんです、平成二十二年に。

 その調査結果を、明確であれば早く結論が出るでしょうし、調査が終わった後、それを取りまとめて判断をするのは、また医学的、科学的な検証のチームをつくってやらなきゃいけないだろう、こう思いますから、二十二年の調査が終わったからといってすぐ結論が出るというわけじゃありませんが、調査が終われば、調査結果からの分析、検討ですから、そう長く時間をかけるものではない、こう思っております。

    〔竹下委員長代理退席、委員長着席〕

末松委員 東京都の石原都知事は、都民の健康を考えてという立場から、彼は、彼ら自身の調査に基づいたんでしょう、そこで、そういった都民の健康を守るという立場から、しっかりとした判断を下したわけですよね。

 国は、では今から調査をやりますという話で、二十二年に第一次的な調査を終わって、それから検討をして、そして因果関係があるのかないのかそこでまたまとめて、またひょっとしたら二年、三年かかるかもしれない。

 こういうことは、これはもっと前からできないものなんですかね。私は本当に、若林大臣はちょっと一部に懸念を抱かれました。東京都はそれでいいでしょう、私たちは全国相手にしていますからという話なんですが、ただ、そこで肝心なのは、安倍首相もこの案件について、何ができるかも検討していきたいというようなことをおっしゃっているわけですけれども、やはり国民の健康を守るというのが環境省の一番の公害について責任を有しているところだと思うわけです。

 若林大臣は、最大限努力をやっていきたいとおっしゃったのであれば、本当に、最大限の努力の具体的な中身というのがその「そらプロジェクト」だけなのか。あとは何かほかに、そういった、いろいろと被害で苦しんで、ぜんそくで苦しんでいる人、彼らは毎日苦しんでいるわけですよね。それに対して、やはり、因果関係がわからないからという、科学的知見が不明だということでずるずる延ばしていくというのは、余りこれは感心されたことじゃないですよね。

 ぜひ、その最大限の努力という中身をもう少し私どもにお伝えいただけますか。

若林国務大臣 まず、「そらプロジェクト」にこんなに時間をかけて、有効にそれが活用できないじゃないかということだと思います。(末松委員「いや、可能性」と呼ぶ)可能性が。

 ただ、これは、この和解を受けて解決するということの直接的なことを考えて「そらプロジェクト」を始めたわけじゃありませんで、このスタートを切ったのは、平成十七年からスタートを切っているわけです。それだけの大規模な調査をどうしても必要とするという設計を当時したわけでございまして、この結果が出ないと、東京の大気汚染訴訟についての話し合いというのは、そこの部分でそれが出ないから進められないということじゃないと思っております。

 それで総理が、国として検討をする、こういうふうに言ったこと、私の方の理解といたしましては、訴訟の解決に向けて、原告の方々の意見をよく聞きながら、国としてできることを幅広く、誠意を持って検討する、そういうふうに言っているんですね。

 そこで、国としてできること、今の状況で判断をいたしました。

 健康被害そのものに対する助成、補償的助成ということについては、因果関係の問題が解明されていないということから、これはなかなかストレートに受けることはできない。

 しかし、では国としてできることは何だといいますと、例えばこれは局地的な汚染に対する対策でございます。そこで、自動車排ガス対策を一層充実させていく。道路構造とか、交差点だとか、そういうところで渋滞をしていてガスをいっぱい発生しているということをできるだけ少なくして、原告側もそのことを非常に言っていますからね。

 そういう道路構造上の問題だとか、あるいは外から入ってくる車。外から入ってくる車について、今、内部の局地については規制をしていますけれども、外から入ってくる車については何も手当てしていないんですね。こういうものについて、そういう局地的な汚染のところについては、交通政策上、そこのところを調整した上で、外から入ってくる車について、これを抑制するような仕組みを考えるとか、また、健康に関して言えば、かつてもいたしましたけれども、健康相談。健康相談で、何かおかしいと言っている人たちに対する予防的な相談業務などは検討の余地がある、こう考えておりまして、そういうようなことを話をしていきたいと思っております。

西野委員長 時間が来ておりますので、時間内でお願いいたします。

末松委員 ですから、そういう排ガス対策はがんがんやっていただきたいというか、我々も党としてそれは打ち出しているわけですけれども、本当に道路の沿線上でぜんそくに苦しんでいる方々、それは一般の人とはちょっと違うということですので、それについては早急に救済策をしっかりと示していただきたいし、「そらプロジェクト」との関係も、やや、「そらプロジェクト」がどう位置づけられているのか、ちょっとそこは、この裁判とは関係ありませんよと今おっしゃったけれども、では全く関係なしにやっているんですかというのも変な話だから、そこのところはしっかりと位置づけてやっていただきたいと思います。

 いずれにしても、これはキックオフということで、これからこの問題についても、またお話をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西野委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。きょうは三十分というお時間をいただき、大臣所信に対しての質疑をさせていただきたいと思います。

 きょうは、環境省に加えて、経産大臣政務官にもお越しをいただきましたので、温暖化対策を中心にお尋ねをしたいと思います。

 安倍総理が施政方針演説の中で、最後六行ほどでしたか、環境についてお述べになられました。その中で、二十一世紀環境立国戦略を六月までに策定するということを表明されたわけなんですけれども、環境立国、たしか去年、議員立法で観光立国基本法というものを成立させたところであります。立国ブームなのかなと、ふと私は耳を疑ったんですけれども、読んで字のとおり、環境で国を立てると私は解釈をいたしました。

 この六月までという短い期間の中に、二十一世紀の環境で日本という国を立てる戦略を策定する。一体、どんなイメージでこの環境立国戦略をおつくりになられるのか、また総理からいかがな指示があったのか、そのあたり、まず大臣からお聞かせをいただけますか。

若林国務大臣 総理からこのような構想が示されたことでございますが、その際に、総理は、さきのイギリスあるいはドイツ、フランスなど欧州諸国を歴訪した際に、各首脳との間で環境問題の重要性が論じられまして、地球温暖化への対応として我が国が積極的に国際貢献を果たしてもらいたいということを強く要請されたということがありまして、また国内的にも、地球温暖化あるいはスリーRなどの重要性、国民の関心が非常に高まっております。

 環境政策というのは非常に広範多岐にわたっておりますので、そういう国際的な貢献、あるいは国内における非常に多岐にわたっている環境政策について、これを国として方向づけをする、そして、これからの政策を進めていく際の一つの指針となるようなものを示してもらいたい、こういうものとして受けとめていたわけでございます。

 そこで、私どもの方は、既にスタートを切っておりますが、中央環境審議会が御承知のようにございます。中央環境審議会に特別部会を設けまして、そこで各界の皆さんのお知恵もちょうだいしまして、今鋭意検討を始めたところでございます。特別部会長は、中央環境審議会の会長自身が当たる、こういうことでございます。三月ごろまでにおおよその骨格を、いろいろ意見をいただいて整理をして、それを踏まえて六月までに策定する、こういう考えでございます。

 国内外のこういう環境問題に的確に対応する、そして日本が環境問題に対する世界の枠組みづくりに貢献していく、日本が国として世界に対して発信し、アピールしていくということに大きな力点が置かれているものと理解をいたしております。そういう意味で、この環境立国ということで戦略性を持った取りまとめをする、こんなことを考えているわけでございます。

田島(一)委員 言ってみれば、環境政策の取りまとめということですね。立国というキーワードに随分私も踊らされたのかなというふうに実は思ったんですね。ややもすると、環境がすべての経済活動や生活よりも優先するんだ、それが日本のこれからの二十一世紀のあり方なんだ、それぐらいの位置づけでこの戦略を練られるのかなというふうに私は思っていたわけです。

 これまでも、いわゆる環境基本計画であるとかさまざまな環境政策を、ずっとこれまで戦略また政策として取りまとめてこられた経緯があります。この字面だけに追われることなく、六月というタイムリミットがどういう意味を持つのかも含めると、拙速にやって何とかの基本法のような穴だらけのようなことにならないように、この点だけはぜひ大臣、注意をしていただいて、中環審に対しても適切な指導助言もしていただきながら、いいお取りまとめをぜひしていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。

 さて、今回、地球温暖化対策が、世間一般でも、随分認識とまた関心が持たれるようになりました。冒頭、大臣も、それこそ施政方針演説の中でも、かつてない深刻な地球の危機的な状況に瀕しているということをおっしゃられました。もちろん、私もそう感じる一人であります。

 そんな中で、先ほどもお話があったアル・ゴアの「不都合な真実」、あの映画が日本でもう十万人以上が鑑賞し、しかも追加上映されるといった事態にまでなってきました。関心が高まってきているあらわれだとは感じますが、しかし、その危機的な状況にあるという認識まで伝わっているのかどうかを考えると、私は、まだまだ足りないんだろうな、そんな気がしております。

 きょう、実は皆様に資料をお配りいたしました。こちらは、環境省が、去る二月七日、平成十九年度の京都議定書目達計画関係の予算案についてお取りまとめをいただいたものの資料から抜粋をしたものであります。京都議定書の六%削減約束に直接の効果があるもの、これが十九年度の予算では五千三百一億円と、前年度よりも五%アップしたということであります。それ以外にも、A、B、C、Dというふうに四つに分類をされまして、Bは温室効果ガスの削減に中長期的に効果があるもの、そして、Cは結果的に温室効果ガスの削減に資するものというような分類をされたわけであります。この分類は私たちが見ても非常にわかりやすく、また、どれくらいの予算が温暖化対策に使われているのかを理解するに非常にいい資料だというふうに私も思いました。

 そこで、きょうお配りをしたこの資料、とりわけA分類の直接効果があるものについて絞ってお話を聞かせていただきたいと思うのでありますが、この表を見ていただいてもおわかりのとおり、実は五千三百一億円の五五%は環境省ではなく、何と経済産業省の予算であります。先ほども議員の質問で、環境省の一般会計予算が非常に少ないという御指摘もありましたとおり、私たちも地球温暖化対策は環境省がイニシアチブをとってやっていくんだということをあらわすデータとして非常に残念に思っているところでありますが、結果的に京都議定書の六%削減約束に直接効果があるのならば、環境省以外の、経産省であれ、農水省であれ、国土交通省であれ、どこがやっても効果があるのならば、それは行ってよしとしていくのも、これは我々政治にあずかる者の使命だというふうに思いました。

 そこで、経産省、とりわけきょうは政務官にもお越しいただいていますので、経産省の五五%、二千九百五億円のことについてちょっとお尋ねをしていきたいというふうにも思うんですが、まず環境省として、直接効果があるとされている経産省の電源立地地域対策交付金、これは千五十四億円と環境省の一般会計予算の半分ぐらいを占めているわけなんですけれども、これが直接効果があると言われる根拠でありますとか、どのように認識をされてA分類の中に入れられたのか、環境省の方からお答えをいただけますでしょうか。

南川政府参考人 原子力発電は、その立地が円滑に行われること、またその後円滑に稼働されることによりまして、大変大きな効果を持っております。例えば、原発一基が完成いたしまして、正常に稼働いたします、それが石炭なり石油にかわるということでございますと、一基当たりで〇・五%から〇・六%の削減が期待できるということでございます。

 また、先ほども答弁いたしましたけれども、原発が当初想定された稼働率で稼働するならば、現状に比べて二・三%の減も期待できるということでございますので、原発の円滑な稼働また立地というものが極めて温暖化対策上大きな意義を持つ、そういう考えからAに分類しているものでございます。

田島(一)委員 政務官、今の御説明で、この六%削減に直接効果がある項目として適切だというふうにお考えかどうか、端的にお答えください。

高木大臣政務官 今、端的にというお話でございましたが、少し経済産業省の取り組みにつきまして概略をお話しさせていただきたいと思います。

 経済産業省といたしましては、平成十七年四月に閣議決定いたしました京都議定書目標達成計画に基づきまして、安全確保を大前提とした原子力の推進や省エネ、新エネ対策等の温暖化対策を進めております。また、産業界の自主行動計画のフォローアップを通じ、所管業界の排出削減を促進しております。また、さらに、二〇〇七年度に行われます京都議定書目標達成計画の評価見直しを通じ、産業部門に加え、排出量の伸びが著しい業務、家庭などの民生部門の対策を推進することにより、目標の確実な達成に向けて最大限努力をしてまいりたいと思います。

 これらの対策を推進していく上で、予算措置は重要な施策の一つであると考えております。平成十九年度予算案では、京都議定書目標達成計画の達成のために、経済産業省として総額約四千億円を計上しております。具体的には、今御指摘のありました電源立地地域対策交付金等を初め、高効率給湯器等の省エネルギー設備や太陽光、風力などの新エネルギー設備の導入に対する補助金等が含まれておりまして、これらの予算を通じ、温暖化対策の後押しを図ってまいりたいと思っております。

 ただいま御質問ございました、電源立地地域対策交付金は第一約束期間における排出削減に貢献するのかという問いでございますが、電源立地地域対策交付金は、電源立地地域の自治体に交付することによりまして、原子力、水力等の設置及び運転の円滑化を図ることを基本としております。

 すなわち、この交付金の交付に伴い原子力発電所等の新規立地や設備利用率向上のための環境が整備されることを通じまして、二〇一二年までの第一約束期間における温室効果ガス排出削減に貢献するものと考えております。

田島(一)委員 今、御説明をいただきましたこの電源立地地域対策交付金、私は原発を抱えていただいている地域に対して出されるこの交付金制度自体を否定するものではありません。もちろん、その地域がさまざまな問題を抱えて、そしてまたその地域が原発を受け入れることの理解を深めるための重要な目的を達成するものだというふうにも思っております。

 しかし、この項目を大きく見れば、確かに原発でCO2対策だとは言えるんでしょうけれども、この支出されている交付金の使途一つ一つを見たとき、これが、環境省が今回府省別でA、B、C、Dと四分類されたAランクの六%削減に直接効果があるというふうに本当に言えるのかどうか、私はそこにちょっと問題提起をさせてもらったところであります。

 資料の裏をごらんください。4にこの電源立地地域対策交付金を活用した事業一覧ということで、これは福井県の敦賀市や美浜町に交付されている事業を抜粋したものであります。看護専門学校の運営費に交付金が五千七百万円。そして、真ん中下にあります敦賀病院の医療機器の整備費に六億一千五百万円。この事業一つ一つまで細かく掘り下げていったとき、病院の医療機器を整備したり、また専門学校の運営をするのがどうして六%削減に直接効果があるのか、私は疑問を感じずにはいられません。これだけ見ると、大変失礼な言い方かもしれませんが、地球温暖化対策の予算を偽装しているのではないかとさえ私は受けとめてしまいました。

 大臣、実際に今危機的な状況にあるという御認識で今国会冒頭で方針をお述べいただきました。何としてもこの京都議定書の目達、六%削減を達成しなければならない、そのために限られた予算を有効に使っていこうというその姿勢は私も共有しているつもりでありますが、果たして、本当にこうした予算の使われ方が六%削減に効果があるとお考えでしょうか。

 それ以外にも、例えば、「電源立地制度の概要」というエネルギー庁がお出しいただいている資料を読ませていただきますと、地域活性化事業、ソフト事業が、今回、交付金対象事業にも追加されることになっています。例えば、観光パンフレットを作成することもこのいわゆる対策交付金でオーケーです、ALT、外国人講師による英語教育を進める予算もこれで使われていますと。

 何でもありのこういう予算分けで本当に六%削減が達成できるとお考えなのか。私は、この分類も含めて、もう一度精査をし直す必要があるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

若林国務大臣 委員御指摘の電源立地地域対策交付金の問題でありますが、その一つ一つの中身は、それぞれその地域の人が要望し、その地域の活性化につながっていく、そういう意味で、地域が活性化するということがその地域における原子力発電などの円滑な運営に寄与している。原子力発電がいろいろな地域の不信を買う、いろいろなトラブルになって、あるいは協力が得られないというようなことで、万が一にもこれがとまったりしますと、それは電力会社の方の事情でとまってくるわけですけれども、ただ、再開をするに当たっても、地域の人の理解がないと原子力発電などは管理運営できないわけですね。

 そういう地域の理解を得られる、地域の皆さん方が、自分の地域に原子力発電所が設置されて、いわば地域としてはそれだけ危機感、危険度を感じているわけですから、そういう人たちが納得するような形で支出が行われているということは、やはり原子力が地球温暖化に、石炭やあるいは石油などの使用にかえて、温暖化ガスの排出を抑制する効果が大きいわけですから、そういう意味で、私は、そのこと自身は直接的に原子力の供給を安定化させる、増大させるということに寄与しているという意味で、今の状況でいいんじゃないかと認識しております。

田島(一)委員 大臣、それはこじつけですよ、はっきり言って。

 表向き、原子力発電によってCO2削減に効果がある、そのことは理解をいたします。しかし、私が言いたいのは、この直接効果があるという分類のA分類の中にわざわざ、ALTの外国人講師を受け入れる費用であるとか、観光パンフレットをつくったりする費用まで結果的には入っているんだということ、このことによって、日本政府としては、五千三百一億円も地球温暖化対策に直接効果のあるものにお金を投入していると言っているけれども、実はその中の二〇%近くは、表向きそうなっているけれども、実際は使われているのは違うんだよということをもっと明らかにするべきだと私は思うんですね。

 だから、私は何度も申し上げますけれども、電源立地の地域の活性化を否定するつもりは毛頭ありません。しかし、なぜこれが六%削減約束に直接効果があると言えるのか。直接じゃないですよ、これは。間接以下ですよね。私はそう考えますけれども、大臣、どうでしょうか。

若林国務大臣 先ほども申し上げましたように、原子力発電による電力の安定的な供給が確保されるというのは、まさにその直接的な効果なわけであります。そのために交付する地域諸対策というのがこの交付金の中身でありますから、一つ一つの中身が、あるいは観光パンフレットであったり、あるいは専門学校であったりと御指摘のようないろいろなことがありましても、そのことによって地域が、原子力発電所が我々の地域にあり、そして、それにかかわっていることによって、いわば地域活性化に寄与するような事業が助成事業で行われているということ、そのことを念頭に置きながら、原子力への関心を持ち、原子力の適正な運営が図られていくという意味で、私は、そのように説明をすれば御理解をいただけるものと考えております。

田島(一)委員 もう解釈の違いで済ますしか仕方がないような違いが今浮き彫りになってまいりましたので、これ以上申し上げてもせんないこととは思いますが、ただ、本当にこういった予算をつけるだけで直接効果があるのかどうか、このことはこれからもぜひ議論を重ねていきたいと考えますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 さて、環境税については、先ほど末松委員も御質問されましたので、私は今回あえて通告はいたしておりません。ただ、所信の中にも、環境税について大臣もお触れになられましたが、総合的な検討ということで、結果的には、何年か前に環境省から案が出されて以来、これといった進捗が全く見られていません。

 皆さん既に世界各国の環境税導入の状況等もお調べになっていらっしゃいますから、あえて私が申し上げるつもりもありませんけれども、やはり待ったなしという状況であるならば、具体的な手をもっと打っていかないとだめだ。そして、先ほど私が例示させていただいた環境省のA、B、C、Dの四分類、それぞれ予算はこれだけついていますよというふうに出ておりますけれども、では、この予算をつけることによって具体的に何%の削減に貢献、寄与できるのか、それぞれ予算別に、項目別に、本来ならば細分化の数値まで示すぐらいの姿勢を環境省にぜひ持っていただきたいと私は思うんですね。

 予算が少ないから、そして、他の省庁にその足りない部分をゆだねていかないとこの京都議定書の目標は達成できないという状況を考えると、もうちょっと環境省自体が、予算がないけれどもしっかりと主導を握ってリーダーシップを発揮していく、そんな姿勢をやはり示していただかないと、これはもうあきらめなきゃならないんじゃないかな、そんなうわさすら出てきております。このことは、私が申し上げるまでもなく、学識経験者等も随分危惧をされています。

 とりわけ、来年は日本でサミットが開催されます。このサミットでの課題は地球温暖化に絞られるのではないかとさえ予想されていますが、このポスト京都議定書の議論で日本が発言権を確保することができるのかどうかを考えると、非常に難しい状態に今あると言わざるを得ません。

 それだけに、環境立国戦略ですか、それに加えて、この地球温暖化対策の具体的な効果と成果を上げていく道筋を今からお示しをいただかないと、本当に間に合わない、取り返しのつかないことになるのではないか。大臣が所信でおっしゃった待ったなしの状況が本当に待ったなしどころではなくなってくると私は感じるわけであります。

 最後に、大臣に締めくくりとしてお聞きをしたいんですけれども、本当にマイナス六%が達成できるのか、そして、これから先、環境省が政府の地球温暖化対策にしっかりとした道筋と、そしてリーダーシップを発揮していけるんだという覚悟も含めて、その御意向をぜひ聞かせていただきたいと思います。

若林国務大臣 これを達成しなければ我が国が世界に対して発言力を失うというふうに考えておりまして、ナイロビでのCOP12の場合に私もスピーチいたしましたが、スピーチの冒頭、いろいろ困難を伴うけれども、我が国はこの六%は確実に達成をするということをお約束する、こう言ってから話をしないと、諸外国のそれぞれの皆さん方は、果たして、日本はそういう立派なことを言うけれども本当かね、こういう空気を感じておりました。それだけに、そこのところは国際的にもしっかりと約束した上で、ポスト京都議定書といいますか、二〇一三年以降の問題も含めまして、取り組みをする、いろいろな提言をしたりしているわけでございます。

 この困難性は、ヨーロッパの場合も、それぞれ、そう楽ではないんです。楽ではないことを、だから難しい難しいということを余り言いますと、では、やはり難しいからやらなくてもいいんじゃないかという空気が出てはまずいと僕は思うんですよ。これは、ヨーロッパも難しいけれども乗り越えようとしている、我々も難しいけれども乗り越えるんだ、それで、頑張ればできるんだ、そういうような国民的認識、関係者の意識がないと、本当にこれはできなくなるおそれがある、私はそういうふうに思っているんです。

 そして、いよいよ来年から目達計画の初年度が始まるわけでありますから、本当にこれはできるのかねということを、項目にわたって全部点検いたしております。目達計画に掲げられている約六十の対策の削減効果につきまして、定量的に示していきまして、その進みぐあいについては地球温暖化対策本部において点検をしていくということにいたしております。本部長は総理大臣でありまして、私は副本部長になっております。

 これらの対策を具体化していくに当たっては、今言いましたアイテムごとに関係省庁があるわけでございまして、関係省庁の方で、関係の事業者、自治体、そういうところに、本当にこれができるのかということを今点検しているところでございます。見直しを要することがあれば、二〇〇七年中に見直した上で、来年、スタートに当たって、確実にできるという見通しを立てた目達計画を定めて、つまり改定をしてでも定めて、実施に入っていく、こんな決意でおります。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 具体的にちょっと一例を申し上げたいと思います。

 ドイツでは、環境税を時限措置として四年間導入されました。このことはもう既に省も御承知のことと思いますけれども、二〇〇〇年から二〇〇三年の四年間で五百七十九億ユーロ、約八兆円の環境税を集められたと聞いています。もちろん、これは、その使途として、年金保険の保険料率を引き下げるというふうなことに充てられたり、また、新規雇用六万人を生んだ、そんな話も当然出てきておりますが、もちろんCO2削減にも大きな効果を出しています。

 太陽光の発電装置、これの年間設置容量は日本は断トツの一位だったんですけれども、残念ながら、ドイツでは、環境税の一部がこの再生可能エネルギーの普及に回されたことによって、日本を上回る年間設置容量に達しています。その一方で、日本はどうかといえば、来年度から、太陽光発電への政府補助、これは新エネ財団ですけれども、この補助を打ち切ろうとしています。

 やっていることが本当に効果があるものに予算をつけていく、このことにだれも文句を言わないと思います。しかしながら、ぱっと見たときにわかりにくい、そしてまた、本当にこれが目達に効果があるのかと言われたとき、修飾語で飾らないとやっていけない、説明がつかない、これでは、本当に効果が出るのかというふうに私は疑問を呈さずにはいられません。

 どうか大臣、各省庁のいろいろな利害が絡む問題でもあります。ドイツでも、確かに、この環境税導入のときには経済界は全然歓迎していませんでした。でも、そういった批判を乗り越えてやらなければならないテーマでもあり、課題でもありますから、どうぞリーダーシップをしっかりと発揮していただいて、私たちも一緒に頑張っていきたい、協力もしていきたいと思いますので、御精進を心からお祈り申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

西野委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 私も引き続き地球温暖化の問題に取り組みたいと思っているんですが、温暖化という言葉自身を私はちょっと否定的にとらえています。

 私は富山県の議員でして、ことし、いや、温暖でいいねというふうによく言われるんです。毎年毎年、私たちは非常に雪で大変な思いをしています。東京とかと違って、富山の場合、道路のほとんどが真ん中に穴があいているんです。そこから水が出て雪を解かす。何が一番大変か。そうなんです、朝、車で行く前に、車の窓ガラスが凍っていて、そこにお湯をかけて解かす。それから、すぐにエンジンはかからぬがです、暖めにゃならぬがです。もちろん、雪をどかす、そういった作業もある。ところが、ことしは全くもって雪が降らない。いや、ことしの冬は温暖でいいねという話になってしまうんです。

 温暖という言葉は非常にプラスで、ぬくい、暖かい、つまりプラスの言葉なんです。地球温暖化という言葉自身では本当に危機感がない。むしろ、こんなすばらしいことがあるのかというのが、私たち日本海側、雪国の言葉になってしまうんです。

 そこで、私はちょっと考えました、地球温暖化という言葉が本当にいいのかなと。むしろ危機感を持っていただくためには、地球過熱化もしくは地球高熱化と言った方が危機感を持ってもらいやすいんじゃないかと思っているんです。大臣の所見をお伺いします。

若林国務大臣 地球の気候変動の枠組みというのをどう表現するかというのは、なかなか難しい課題だったと思います。

 しかし、この地球温暖化という用語は、法律を制定しながら、温暖化対策法をつくったわけですが、かなり普及し、政治的な用語としても科学的用語としても既に広く使われておって、定着してきているもの、こう考えますけれども、温暖化問題というのは国民に広く危機感を持っていただかなきゃいけないという必要性については、委員御指摘のとおりだというふうに思います。

 クライメートセキュリティー、気候の変動の安全保障、こういった概念も出てきておりますので、この温暖化という表現の中にそういう問題もあるんだということをあわせて使いながら、その重要性と緊急性をアピールしていきたい、こう考えているところでございます。

村井委員 かつて、痴呆症という言葉も定着しました。法律の用語でも痴呆症というのが当たり前にあった。いや、だけれども、やはりこれはよくないなということで、一たん定着したものでも、よりいいものに変えた実績はあるわけです。私は、やはりここで、きちんと皆さん方に危機感を持ってもらえるような言葉、いろいろな工夫をしていただければいいと思っています。

 英語で言うと、グローバルウオーミングなんです。これが例えばグローバルオーバーヒートになると、どれだけ多くの人に危機感を持ってもらいやすくなるのか。COP/moPとか、いろいろな国際会議でも大臣からちょっとそういう言い方をしていただければ、これはコストがかかる話じゃありません、今後呼び方を変えましょう、地球過熱化問題の対策をしましょうというふうに議論をするだけで、大きく危機感を持ってもらえるんじゃないかなと思うんです。

 この話はちょっとこれまでにしまして、さて、本題の方に入っていきたいと思っています。

 それは何かというと、この地球温暖化問題は、いろいろなことを言っていても、争点は大きく一つだと私は確信をしています。そして、自民党の環境派の議員の中でも真っ二つに意見が割れるところがあります。それは何かといえば、一九九〇年度比からCO2の排出量を実質削減すればいいという方と、実質増加を容認して京都議定書を達成しようという方と二種類のグループに分かれます。当然、NGOでもそうですし、学識経験者の中でも実質削減派と実質増加派の二つに分かれるわけです。京都議定書を否定しようという方はこの国には全くいません。ただ、実質増加派と実質削減派がいるというだけなんです。

 さて、大臣にお伺いします。

 二酸化炭素の排出量を一九九〇年度比から実質的に減らそうという側ですか、つまり実質削減派ですか。それとも大臣は、一九九〇年度比からはふやしてもいいけれども京都議定書を達成しようという実質増加派ですか。どちらでしょうか。

若林国務大臣 私は、申しわけないんですけれども、実質削減派とか実質増加派とか、そういうのは実は初めて聞いた概念でございまして、我が自由民主党の中におきましても、そういうような仕分けの中で議論が行われているということは承知しておりません。

 ただ、お互い共通認識として明らかなことは、中期的に見ますと、二〇三〇年―二〇五〇年、現在のCO2、温室効果ガスの発生量は、海だとか森林だとか吸収できる力の倍になっているわけですよ。だから、中期的にいえば、実質半分以下にしないと地球の気候変動の問題を安定化させることはできないわけですね。ちょうど財政におけるプライマリーバランスに擬せられて言われますけれども、そのためにどういう段階を踏んでそこに到達していくかということの第一歩が京都議定書だ、こう認識しておりますから、排出を削減していかない限りはそこに到達できない、そういう考えで取り組んでおります。

村井委員 大臣の中長期的な考え、これはここにお集まりの皆さんみんなが一致しているところですし、大臣のそのお考えは私もすばらしいと思うんです。

 その上で、この京都議定書の問題を議論する中で、大臣自身は、京都議定書の約束達成期間のラストまでに、一九九〇年度比からCO2の排出量を削減する予定なのか、それとも、実質増加させてでも京都議定書を達成しようという側なのか、どちらなんでしょうか。

若林国務大臣 実質増加しながら目標を達成することはできないと思っています。

村井委員 済みません、大臣。京都議定書目標達成計画で今環境省が出している案は、エネルギー起源CO2、温室効果ガスを〇・六%ふやすことを容認して、京都メカニズムとか、いろいろなお金を払って京都議定書を達成しようというプランなのは御存じですよね。

 つまり、大臣は、一九九〇年度比からCO2をふやすことを容認して達成させようという側なんですか。それとも、ちゃんとCO2の排出量を一九九〇年度比から削減しようという側なんでしょうか。どちらなのかということを大臣に聞いております。

南川政府参考人 恐縮ですが、若干説明だけさせていただきますと、まず全体としまして、削減していく中で、吸収につきましても吸収力を増すことによって達そうと。それから、京メカにしましても途上国などの削減に協力することで減らしていこうということですから、あくまで減らすことでございます。

 それから、国内における排出について申しますと、確かに、エネルギー起源の二酸化炭素につきまして、何年間かの精査の上で〇・六%ふやすのを見込みました。ただ、その過程において、ふやすだけじゃなくて、深掘りできるところは深掘りしたいということで、セメントなどから出てくるエネルギーではないCO2発生とか、メタンとか、そういったことについての削減、あるいはフロンガスの削減、そういったことを入れております。

 したがって、全体としては決してふやすことになっていないということで計算をしております。

若林国務大臣 今委員が御指摘になった数字は承知いたしております。しかし、その他ガスを含めましたすべての温室効果ガスでは、大綱、目達計画、いずれも基準年排出量に比してマイナス五%という水準になっておりまして、温室効果ガス排出削減対策全体としては、大綱策定時と比べまして京都議定書の目標達成計画が緩くなったというふうには認識しておりません。

 京都議定書の第一約束期間についていえば、吸収源の対策あるいは排出源の補完的な扱いということも中に組み込んでの六%でありまして、これを決める際に大変に困難を伴った中で決めたわけでございますが、私は前進、第一歩だと申し上げました。これを最終的に半減をするという中で位置づけた上で、減らしていくということであることを申し上げておきたいと思います。

村井委員 この質問は一問で終わるはずだったんです。質問していることに明確に一回で、一言で答えれば終わるはずの質問なのに、何で、質問している内容に答えずに、吸収源の話だとか、CO2以外の温室効果ガスの話をされるんでしょうか。

 もう一回、的確に。イエスかノーかで答えていただければいいんです。大臣は、京都議定書の目標達成期間の中で、CO2の排出量を一九九〇年度比からふやす派ですか、減らす派ですか。ふやす派か減らす派かだけ答えてください。

若林国務大臣 ふやす派と減らす派というような仕分けは、私の方はそういう認識をしておりません。

 京都議定書によります目標達成計画というのは、もう既に閣議決定をして実行に入っている計画でございます。その計画を着実に実施するということだと思います。その計画の中での目標数字でいいますと、CO2、二酸化炭素については〇・六%の増加が見込まれたわけでございますけれども、温室効果ガス全体とすれば、先ほども申し上げましたように、総排出量として減らしているわけでありまして、温室効果ガスをどうするかという意味では、第一歩としてそういう姿勢を示したということであります。

 これが達成が難しいわけですから、その難しい中で、これだけでもまずは達成をした上で次なる展開を図っていく、こういうことと理解をしていただきたいと思います。

村井委員 最後までふやすか減らすかという答えはお答えいただけなかったんですが、閣議決定の中では、CO2の排出量はふやすということで決定されています。

 初めに、地球温暖化防止大綱の中では、自民党の環境派議員の皆さんの頑張りもあり、また民主党の環境委員会の皆さんもあって、ふやす案ではなかったんです。ところが、いつの間にかCO2排出量はふやす案に閣議決定されてしまったことに、この問題はきちんと議論しなければならないはずなんです。ところが、ふやす案を出しながら、CO2の排出量を減らすかのごとくいろいろなコマーシャルをしたり宣伝をしたりしていることはやはりおかしいな、ちゃんとそこを議論しなければならないんじゃないかなと私は思っているんです。

 さて、そこで、京都メカニズムというものをやってうまく数字をごまかしたりしていますが、この京都メカニズムは、どうしても減らせなかった場合、つまり、減らすという目標をつくってそれでもどうしても失敗した場合の最後の補完的措置だというふうに私は考えているんですが、大臣の御意見はどのようなものでしょうか。

若林国務大臣 委員御指摘のように、京都メカニズムの活用は、まずは排出削減対策と国内吸収源対策を基本として位置づけておりまして、そのために最大限の努力をするということが前提でございます。

 したがいまして、京都メカニズムについては、目標達成計画において、国内対策との関係でいえば補足的であるというふうに位置づけておりまして、この補足性の原則を踏まえて、どうしても国内対策としては不足が見込まれる一・六%分について、京都メカニズムを用いるということにしたものでございます。

村井委員 次の質問は少々細かいので、政府参考人答弁をお願いしたいのですが、今、日本が批判されている理由、それは、議長国でありながら、当初の目標と違って、もちろん当初はCO2排出量も削減派だったわけです。ところが、議長国でありながらCO2排出量を増加容認政策に切りかえたこと。

 さて、そこで、今、私たち日本はそれで大きく批判を受けているわけではございますが、温室効果ガスを、温室効果ガス自身はいいんです、温室効果ガス自身の話ではなくて、CO2の排出量は一九九〇年度比から少しでも減らすということはできないんでしょうか。物理的に可能か、それとも、不可能になった理由、その他の見積もりを政府参考人の方からお答えいただければと思います。

南川政府参考人 御指摘の数字でございます。

 確かに、私ども二〇〇二年に決めました推進要綱の中では、エネルギー起源CO2につきまして、ふやさない、あるいはそういったことで考えておったわけでございます。それで、三年後の計画の中で、今度は〇・六%プラスということを入れざるを得なかった経緯がございます。

 これは、具体的には、やはり事業所、事業所というよりも、むしろ業務ビルが実は大変ふえております。面積がどんどんふえていまして、特に、中でもレストラン関係が実は大変ふえております。それを考えますと、そこまでの規制はできませんので、そういう中でどれだけ省エネが徹底できるか、燃料としてCO2が出ないものを使っていただくか、それは相当見込んで考えておりますけれども、やはりそういったビル面積がふえる以上は、それを前提にどこまでやれるかということで見ざるを得なかったところもございます。

 それから、家庭につきましても、家庭がだんだん、少子化でございますけれども、二人世帯がふえる中で、人数がふえなくても世帯が割れることによって基礎的な消費はやはり残りますので、なかなか減らせない。

 そういったことから、結局、そういった現状をかんがみれば、エネルギー起源のCO2についてはふやすということでしか目標が立てられなかったという、残念なことではございますが、そういう経緯がございます。

村井委員 さて、今、日本のCO2排出量増加プラン、これによって大きな批判を受けているわけですが、さて、そこで、資料をお配りしました四ページ目と五ページ目。四ページ目は、大綱のときのCO2の量、これは目標値プラス・マイナス・ゼロ%になっているわけです。ゼロ%、つまり減らさないけれどもふやさないというときですら多くの世界的な批判を受けていた。でも、ふやさないだけましかという声もあった。ところが、五ページ目、目標達成計画になった途端にCO2排出量増加政策に変わった。

 さて、大臣、この変わったときのいきさつ、その他理由について、簡単に御説明をお願いします。

若林国務大臣 実は、いきさつということまでは私は承知しておりません。

 ただ、日本が国際社会の中で、この温暖化対策に積極的な姿勢を示して、数量的目標を定めるということについては、大変な反対、抵抗、不可能だというような意見が非常にあったわけであります。しかし、日本は、リードしながら、そういう中長期的な目標を達成するための第一歩を踏み出さなきゃいかぬというようなことで、当時の関係者が大変御苦労をされました。各国も、最終的には、日本のエネルギー効率が非常に高いという説明を前提にして、了解をして、この吸収源対策を特別に盛り込んで、この六%という水準を決めたというふうに理解をしております。

村井委員 これもまたちょっと難しいので政府参考人でも結構なんですが、ふやさないというプランのときも、十億五千三百万トンは積み上げ方式でつくった数字なんです。例えば、公共交通機関の利用促進で三百八十万トン、エコドライブで百万トンといって、全部積み上げてCO2排出量ふやさないプランをつくったはずなのに、いつの間にかCO2排出量増加プランに変わった。具体的に、何で増加させることに政策転換したのでしょうか。

南川政府参考人 御指摘のとおり、六十近い施策を全部積み上げました。その結果で、それを精査した上で、やむを得ず、そういった増加になっております。

 これにつきましては、業務関係のオフィスビルの面積の伸びを前提にせざるを得ない。また、家庭の戸数の増加、そういったことも前提にせざるを得ないということで、その分について、いろいろ省エネ機器を入れるとかいうことで努力するにしても、どうしても限界があるということで、結局、こういった〇・六%増ということになってしまったわけでございます。

村井委員 今政府参考人の方から、結局CO2排出量増加ということを含めて、この話がようやく本論に入ってこれたんですが。

 さて、ちょっとした雑談で大臣に聞きたいんですが、よく環境省がいろいろな広報物で使っているもの、環境省は京都議定書目標達成計画においてCO2の排出量の削減プランをつくっていますとか削減に取り組んでいます、これはうそですよね。CO2排出量を少しだけふやすという案で抑えることに取り組んでいますにすべて直さないと、これは民間だったらJAROに訴えられるような詐欺的な内容になっているわけです。初めのプランだったら当然いいんですが、CO2排出量増加案に変わった以上、そういった環境省の広報物も直さないと詐欺だと思うんですが、大臣はどうでしょうか。

若林国務大臣 さて、詐欺であるかどうかということは考えてもみないことでありますが、京都議定書第一約束期間中の、EUが八%とか日本は六%、それぞれこれに義務を負うことを了解した国別に決めた水準というのは、国際的な約束の前提の中で、通常CO2の削減目標、こういうふうに言われているわけでございますから、我が国の場合は、そういう意味で、吸収源対策も含めた上で六%と決まっている。その六%の説明は、国際的な了解の中で、これは削減目標というふうに説明をすることは詐欺だとは思っておりませんけれども。

村井委員 CO2の排出量の削減と書いたら、明らかに今の答弁はおかしくなりますよね。CO2の量を吸収源も含めて削減というふうに書かないと、明らかに、普通、JAROだったらこれはやられてしまうような広報物ばかり。もちろん、初めは大丈夫なんです。初めは大丈夫だったんです。環境省の政策転換後、CO2排出量増加案に変わってからおかしくなっただけ、私はそんなふうに感じています。

 さて、私たちは今、ゴアさんのあの映画、大臣も見られたと思うんです。まさか、これだけ危機感を持っている、みんなでCO2排出量を減らそうという中で、政府が京都メカニズムだ何だと、お金を払う形でCO2排出量増加を認めてしまったということ、これはとんでもないことだし、今、日本が何で世界的に、京都議定書の議長国でありながら批判を受けて、ひんしゅくを買ってしまったのか。世界じゅうから批判を買った理由はたった一つです。CO2排出量の増加プランを認めて政策転換したからです。

 さて、そこで大臣にお聞きします。

 ポスト京都の国際的信用力は、大臣はどのようになっていくと考えますでしょうか。CO2の排出量の増加プランを認めたということと京都議定書後の信用力についての、議長国としての信用についてのお答えをお願いします。

若林国務大臣 先ほど来委員は、CO2の量的な……(村井委員「排出量の増加」と呼ぶ)排出量の量的な増が入っていることによって、日本は大変な批判を受け、あるいは信用を失っているとしきりとおっしゃっておりますが、私も、いろいろな国際会議に出たり、ゴアさんにもお会いしたり、いろいろしていますけれども、決してそういうことについて、日本に対する批判あるいは日本に対する不信感というのを言われたこともないし、感じたこともございません。

 日本は、京都議定書という名が示すように、その責任を負う立場にあるので、一生懸命取り組んでいるね、しかし本当に大丈夫かね、我々も苦しいけれども日本も苦しいと思うがどうかねということはあります。それに対して、苦しいけれども、必ずこれは達成しないと、日本としては皆さん方とお話しするような立場に立てないという意味で今努力をしているというふうに説明しているわけでありまして、委員が今おっしゃられたような、そのことで日本が国際的な批判を受けているとか、あるいはまた不信感を買っているとか、そういうことを感じたことはございません。

村井委員 もう時間が来たので、質問じゃなくて御意見だけで終わらせていただきたいんですが。

 世界各国は、CO2排出量の削減に取り組んで、本当に大変な思いをして、困難を乗り越えていきます。日本は決してCO2排出量の削減に取り組んでいるのではなくて、増加をしつつ京都議定書の数字のつじつま合わせに取り組んでいるということをお伝え申し上げ、私は、真摯に地球環境問題に取り組むんだったらCO2排出量の削減をやるべきだということを御意見申し上げ、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 大臣、御苦労さまでございます。先ほど来からも質問が続いておりますが、地球温暖化対策というものと循環型社会の構築という政策は我が国の環境政策の車の両輪でありまして、二本柱でございます。

 先ほど来から温暖化対策については質問がなされておりますけれども、この件につきましては、私、二十六日の月曜日の予算委員会でぜひとも集中的に質問させていただくこともございまして、本日は、循環型社会、特に国際的な循環型社会の構築、ここに焦点を当てて質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 アジアの各国では急速に経済成長が遂げられているわけでございます。廃棄物の発生量はそれとともに増大しておるわけでございまして、資源需要の逼迫を背景に、廃棄物が貴重な資源として利用されるようになってきております。

 他方、循環資源の国際取引が活発化する中で、途上国におきましては不適切なリサイクルにより環境汚染が引き起こされていることも、事実、そういう指摘が多くございます。

 中国やインドの貧しい農村や大都市の郊外に、壊れたパソコンなどの電子ごみがあふれているとの報道が続いております。中国の広東省では、世界各地から使えなくなったパソコンやプリンターなどの電子ごみが集まってくると言われますが、村の一角の家々からパソコンがあふれ出して道路に山積みにされているような状況であるようでございます。河原とか田畑で、あちこちから黒煙が上がって、プラスチックやビニールが野焼きされているわけですね。

 ごみとはいっても、状態がよければ基板などの部品が売れる、また、壊れたものからも銅や金などの貴金属が取り出せるわけで、例えば、従業員四、五人の零細企業でも、月の売り上げが何と二百万元、日本円にして約三千万円になると言われます。サラリーマンの月収が千から千五百元という地元では、この電子ごみというのは破格のビジネスとなっているわけでございます。

 今や、循環型社会の構築ということにつきましては、我が国のみならず国際的な重要問題となっております。廃棄物・リサイクル対策の経験とすぐれた技術を我が国は有しているわけでございますが、スリーRを通じた国際的な循環型社会の構築に向けて積極的に我が国は貢献していくべきと考えて、これから質問をさせていただきます。

 まず第一でございますが、アジア各国では、先ほど来言っているように、経済成長によりまして廃棄物の発生量は急増しているわけでございますが、持続可能なアジアを実現していくためには、各国の能力向上と越境移動の管理を含めた広い視野でスリーRに関する国際的な取り組みを進めていくことが必要であると考えます。

 アジアにおけるスリーRの推進につきまして、環境省の取り組みはどうでしょうか。

    〔委員長退席、竹下委員長代理着席〕

土屋副大臣 今委員がお話しになりましたように、アジアにおいては本当に廃棄物の問題は大変深刻な問題でございます。

 さまざまな国の、経済格差も相まって、対策も非常に差が出てくるわけでございますけれども、日本といたしましては、ここを重点的に今後スリーRの取り組みをしていきたいと思っております。

 具体的に言いますと、JICAによるベトナムでの生ごみスリーRプロジェクトなどの二国間協力、それからまた、バーゼル条約のもとでの国際連携強化などに取り組んでまいりました。

 私が副大臣になった直後でございますけれども、二〇〇六年十月三十日から十一月一日にかけて、アジア・スリーR推進会議を東京で開催いたしました。これは、アジアの十九カ国の担当部局長の参加を得まして、非常に活発に意見交換されました。私も各部局長さんともお話しさせていただきましたけれども、すごくやる気でございました。そういう意味では、今後さらに協力を推し進めたいと思います。

 それから、二国間でのスリーRに関する政策対話といたしましては、韓国と、昨年来、廃棄物・リサイクルに関する部局長級の会合を開催しておりますし、また、江田議員が副大臣のときでございますけれども、シンガポールとスリーRに関する協力が昨年度に合意されたわけでございます。それから、中国とも政策対話を行うことについて合意をしております。

 今後、また多国間、二国間、両方ともしっかりと強化していって、アジアにおけるスリーRの推進に積極的に取り組んでいきたいと思っております。

江田(康)委員 今ありましたように、アジアにおけるスリーRの推進、大きく進めていくべきであると私も強く思うわけでございますが、シンガポールに行きました、そこで、ヤコブ大臣との話の中で、スリーRの分野で日本はすぐれた技術を持つ、協力をしていこうというお話がそのような形で実現しているのは大変に喜ばしいと思います。

 一方では、近年、日本では使用済みとなりましたテレビ、パソコンが途上国に輸出されまして、不適切な方法でリサイクルされて、それが、電子機器の中に含まれる有害物質で健康被害また環境被害が引き起こされているという指摘がございます。

 いわゆるEウエースト問題でございますが、パソコン部品に含まれる鉛や水銀、カドミウムといった有害物質が大気中に飛散したり、分解の際に使った溶剤が垂れ流しされたりすることによりまして、住民の健康被害というのは大変深刻である。

 先ほども言いましたように、至るところで煙が出て、そして熱をかけながら、そして溶剤を使いながら、住民がマスクも一つぐらいでやっているというような状況でございますので、その健康被害は深刻であるかと思います。例えば、地元の大学が行った住民健康調査というのによりますと、一歳から六歳までの子供百六十五人のうちには百三十五人が鉛中毒であった。

 さらには、先ほどの広東省の廃棄物の中には、平仮名キーボードとか、表に通信工事課とかデータ消去済みというような日本のシールが張られたパソコンもあったようでございます。

 我が国から出た廃棄物が原因で相手国で汚染が起きているとするならば、これは重大な問題でありまして、こうした問題に対する環境省の取り組みについてはいかがでしょうか。

    〔竹下委員長代理退席、委員長着席〕

由田政府参考人 Eウエーストの不適正処理によります輸出先国で健康被害や環境汚染が指摘されていることにつきまして、我が国は、現地の状況等に関する正確な情報の収集を進めているところであります。

 こうした指摘があることを踏まえまして、Eウエーストの不法輸出入防止のために、国内、国際両面からさまざまな活動を行っているところであります。

 国内活動としましては、事業者に対しまして、関係法令を周知するためのバーゼル法などの説明会を開催しておりまして、平成十七年度の実績では全国十一カ所で開催しておりますし、今年度も既に十一カ所の開催、全部で十二カ所の開催をする予定にいたしております。また、事業者からの輸出の個別の相談に応ずる事前相談も実施をいたしておりまして、平成十七年度の実績では一万三千五百件程度の実績でありますし、本年度もおおむね二万件を超えるのではないかという実績になっております。また、税関の輸出申告時におけます慎重な審査あるいは検査なども行っているわけであります。

 また、国際的には、平成十六年度から毎年、アジア各国からの参加を得まして、有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークのワークショップを開催いたしておりまして、不法輸出入の防止のための情報交換等を行っております。

 さらに、アジア各国におけますEウエーストの環境保全上適切な管理を目的に、バーゼル条約が、現在、アジア太平洋地区におけるEウエーストの環境上適切な管理プロジェクトを実施いたしております。これを支援することとしておりまして、一昨年十一月には、これのスタートとなりますワークショップを東京で、我が国とバーゼル条約事務局の方で共催いたしまして開催しましたり、あるいはEウエーストのアジアにおけるインベントリーづくりを行うなど、アジア各国の基礎情報の整備支援なども行っているところであります。

 今後とも、これらの活動を通じまして、不適正な輸出の防止に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今、バーゼル条約の話も出ましたけれども、電子ごみにつきましては、有害廃棄物を規制するバーゼル条約で、輸入国の同意がない限り、これは輸出できないということになっておるわけでございます。しかし、実際には、中古パソコンとか混合金属という名称で取引されているわけであります。

 これは新聞からの情報でもございますけれども、最近の報道でもございますが、中国のリサイクル業者によりますと、輸出元は欧米や日本またタイやオーストラリアということで、船で一たん、例えば中国、香港に運ばれる。香港には複数の密輸業者がいて、そして輸入元になるというわけです。書類上は中古品とかくず鉄、そういった別の品目で正規の輸入手続をするわけでしょうけれども、厄介なのは、業者と税関が結びついていたりすることもあるかもしれませんが、そういうことで中身を調べられることはないままに、その後、再び船で中国本土に運ばれる、税関の検査はないというような指摘もあるわけでございます。

 インドでも、欧米から入ってきた電子ごみが二〇〇二年からふえておりまして、現在、年間推定約五万トンに上るようでございます。また、アメリカのNGO、バーゼルアクションネットワークなどの情報でございますが、アジアの電子ごみというのは、推定するのはなかなか難しいと思うんですけれども、このNGOの推定からいくと、アメリカからの輸出分だけで約一千万トンと見積もっているようでございます。

 家電リサイクル法の対象となっている廃家電製品、エアコン、テレビ、冷蔵庫、冷凍庫そして洗濯機、これらについても、法に基づくリサイクルのルートに乗らないで、中古品等として海外に輸出されているものが相当量に上ると聞いております。現在進められている家電リサイクル法の見直しにおきましては、こうした問題も考慮しながら、早急に検討を行っていく必要があると私は考えますが、家電リサイクル法の見直し作業の進捗状況、また今後の方針についてはどのように考えていらっしゃいますか。

由田政府参考人 家電リサイクル制度の見直しにつきましては、昨年六月から、中央環境審議会、産業構造審議会の合同会合の場で検討を行っているところであります。

 その審議の中で、現行制度では、製造業者などによりますリサイクルなどの面で一定の成果が上がっている一方、不法投棄対策の強化やリサイクル料金のあり方など、さまざまな検討課題が指摘されております。

 その中で、現行制度のルートに乗らず、中古品として海外に流出する使用済み家電が約六百万台に上っているとの推計がなされているほか、輸出先国におきましてEウエーストの不適正な処理が行われているという事例も報告をされております。このような国際的な動向も含めまして、状況の変化に即した的確な対応を検討していく必要が明確になってきておるというふうに考えております。

 環境省としましては、経済産業省などと連携いたしまして、これまでも実態把握や調査に努めてきましたが、現在は、審議会の議論を受けまして、さらに中古品としての輸出など、使用済み家電製品の流通、処理等に関します把握を進めまして、その実態や問題点の明確化に向けて現在全力を挙げているところであります。

 今後は、その結果を踏まえまして、家電リサイクル制度の見直しの議論を一層深め、早急にその具体的な内容につきまして、成案を得られるよう努めてまいりたいと考えております。

江田(康)委員 この件に関しましては、大変な国際問題であり、今注目されているわけでございます。したがって、今のお話にもありますように、中古品等として海外に輸出されているもの、家電リサイクルのルート外、六百万台というようなことも調査されているわけでございますが、早急に見直しを進めて、そして成案化できるように努めていっていただきたいと強く申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、今度は、我が国のリサイクル技術についてちょっとお尋ねをさせていただきます。

 我が国には、金属製錬等で培った技術をもとにしまして、電子基板など有害物質を含む廃棄物から希少金属、レアメタルを回収するすぐれた技術があります。これらの分野では世界の三本指に入ると言われますDOWAホールディングスという企業がございますが、私、昨年の六月、秋田県の小坂町と大館市にあるDOWAグループの小坂製錬所と花岡鉱業を訪問いたしました。

 まさに世界に誇るすぐれた技術を私つぶさに見させていただいたわけでございますが、この小坂製錬所では、解体された自動車や家電製品から、金、銀、銅、プラチナ、またインジウムとかロジウムなどの希少金属を回収しております。特にインジウムとかロジウムは金よりもはるかに高価でありまして、IC分野ではもうなくてはならない希少材料であるわけでございます。この小坂製錬所は、戦前、戦後と日本の高度成長を支えてきた歴史を有しておるわけですが、百年以上前から、含有する金属が多様で分離しにくい鉱石から効率よく高品質の金属を取り出す技術を確立しておりまして、これらの伝統的な日本の技術をリサイクル技術として有効に活用しているわけでございます。

 大臣の質問は最後になりますけれども、大臣、世界一の金山はどこであると思われますか。これはもう私の方で言いますけれども、我が国の鹿児島県の菱刈鉱山でございます。鉱石一トン当たりの金の含有量というのは約八十グラム、一方、携帯電話の基板一トンからは、何と三百グラムの金が抽出されるわけでございまして、まさに電子基板類というのは世界一の金鉱脈というか、天然の鉱石よりもはるかに良質であるというふうに言われているわけでございます。

 花岡鉱業の方では、私、鉱山における選鉱技術を活用して有害物質で汚染された土壌を浄化する、そういう技術も見てまいりました。このように、我が国には世界に誇るすぐれたリサイクルの技術があるわけでございます。

 有害物質を含む廃棄物につきましては、外国に持ち出すのではなくて、むしろ外国から我が国が引き受けて、すぐれた技術によって環境汚染を起こさずに資源回収を進めていくべきと考えます。また、これこそ目に見える大きな国際貢献であると思いますけれども、環境省の見解と、その取り組みについて教えていただきたいと思います。

北川(知)大臣政務官 先ほど来から、江田議員におきましても、廃棄物を初めアジアのリサイクル等について御指摘をいただいておりまして、今委員御指摘のとおり、電子機器の発達する中で、レアメタルの存在というものが重要視をされてきております。

 御指摘のとおり、諸外国におきましても、リサイクルが困難な重金属や希少金属を含む廃棄物については、環境保全上適切であることを前提に、我が国が有する高度な技術でリサイクルをすることは、経済的にも環境的にも有意義であると考えております。

 実際、バーゼル条約に基づく輸入実績を見てみますと、主にアジア諸国から我が国へ輸入を行い、銅や希少金属等の有用な金属回収を行うケースがほとんどであります。また、近年、その量、件数ともに増加傾向にあるところであります。

 そして、先ほど委員の方からもお話がありました、我が国の民間企業でありますDOWAエコシステムでございますか、この企業等がバーゼル条約事務局と協力して、タイ、マレーシア、シンガポールの三カ国で携帯電話を回収し、我が国に輸入を行い、金属回収などのリサイクルを行うというパイロット事業を実施しようといたしておられます。環境省といたしましても、このような先駆的な取り組みに注目をしているところであります。

 このような、先ほど来からお話がありますすぐれたリサイクル技術を活用した取り組みを支援するために、今後、金属精錬業等で廃棄物処理法に基づく再生利用認定制度が活用できるよう、現在は制度の対象外となっている有害な特性を有する金属類について、制度の対象とする方向で、現在、中央環境審議会の専門委員会で審議中ということを聞いておりまして、環境省といたしましても、我が国が世界的にもすぐれたリサイクル技術を有していることを踏まえ、廃棄物から有用な金属類を回収する取り組みをできる限り支援していきたいと考えております。

江田(康)委員 今、北川政務官からもおっしゃっていただきましたが、我が国のリサイクル技術、金属回収技術というのは歴史もあり、大変にすぐれた技術でございます。こういうような技術をもとに、国際的な循環型社会の構築というものに関して日本がリーダーシップをとっていく。その際に、やはりこういうような技術を支え、支援していく、そういうような取り組みもまた必要かと思いますので、この点については、先ほども北川政務官からございましたけれども、大きく支援策も図っていっていただきたいと思うわけでございます。

 このように、私、きょうは国際的な循環型社会の構築ということに関して質問をさせてもらっているわけでございますが、途上国の経済成長、また循環資源の越境移動の活発化といった背景の中で、この循環型社会を国際的に構築していく必要性というのは大変に高まっていると思います。

 アジアはもとより、世界各国が力を合わせて循環型社会の構築に取り組んでいくことが、やはり持続可能な社会を築く上において大変に重要でございますが、我が国の提唱によりまして、G8サミットの枠組みのもとでスリーRイニシアチブが進められていることは極めて有意義であると思います。今後、この日本発の国際的イニシアチブであるスリーRイニシアチブを着実に推進していくことが重要と考えます。

 来年は、二〇〇八年は京都議定書の第一約束期間のスタートの年でもあり、また、G8サミットでは日本が環境政策で国際社会をリードしていく、そういう年でもございます。

 大臣の御決意を最後伺いまして、終わりたいと思います。

若林国務大臣 委員がスリーRの推進について大変な知見をお持ちで、そしてまた情熱をかけてこの問題に取り組んでいただいておりまして、委員が環境副大臣時代からシンガポールとの間の協力を取り進めて、今二国間の協力という形ででき上がってまいりました。

 今委員がおっしゃられましたように、スリーRイニシアチブというのは、まさに二〇〇四年のシーアイランド・サミット、G8で、そのときの日本の総理の提案によって合意されたものでございます。

 その後、翌年に東京で閣僚会合が開催されまして、ゴミゼロ国際化行動計画を発表するなど、これまで我が国は、スリーRイニシアチブの推進について、国際社会に積極的な働きかけをし、リードをしてきたと考えております。

 こうしたG8の取り組みに加えまして、我が国のすぐれた廃棄物処理、リサイクルに関する制度や技術、経験を生かして、アジアでのスリーR推進の取り組みも進めております。

 具体的には、国連環境計画やバーゼル条約事務局とも連携をしまして、インドネシアなどのスリーRに関する計画策定の支援などの協力を進めておりますし、二国間の政策対話や協力も実施してまいっております。

 さらに、多国間の取り組みとして、昨年十月にはアジア・スリーR推進会議を主催いたしました。私もその会議に出席をいたしまして、ごあいさつを申し上げたところでございますが、スリーR推進の意義について、お互いにこれを共有したところでございます。

 日本がG8議長国となる二〇〇八年に向けまして、我が国としては、多国間、二国間の協力の強化に努めまして、国際的な循環型社会の構築にリーダーシップを発揮してまいりたいと思いますし、そのような考え方は、環境立国戦略の中の重要な要素として、温暖化に並ぶ重要な要素としてこれを位置づけていくべきだと私は考えているところでございます。

江田(康)委員 大臣、力強い御決意、ありがとうございました。

 以上で終わります。

西野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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