衆議院

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第6号 平成19年4月13日(金曜日)

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平成十九年四月十三日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 西野あきら君

   理事 石崎  岳君 理事 宇野  治君

   理事 桜井 郁三君 理事 鈴木 俊一君

   理事 並木 正芳君 理事 末松 義規君

   理事 田島 一成君 理事 江田 康幸君

      稲田 朋美君    上野賢一郎君

      岡部 英明君    北川 知克君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    篠田 陽介君

      とかしきなおみ君    中川 泰宏君

      野田 聖子君    橋本  岳君

      藤野真紀子君    馬渡 龍治君

      増原 義剛君   山本ともひろ君

      石川 知裕君    小宮山泰子君

      近藤 昭一君    高山 智司君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      田端 正広君    江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         若林 正俊君

   環境副大臣        土屋 品子君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   環境大臣政務官      北川 知克君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  宮田 年耕君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       上田 博三君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            竹本 和彦君

   参考人

   (福岡大学法学部教授)  浅野 直人君

   参考人

   (弁護士)        原 希世巳君

   参考人

   (財団法人ひょうご環境創造協会顧問)       小林 悦夫君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     岡部 英明君

  竹下  亘君     増原 義剛君

  石川 知裕君     高山 智司君

  長浜 博行君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  岡部 英明君     稲田 朋美君

  増原 義剛君     橋本  岳君

  小宮山泰子君     長浜 博行君

  高山 智司君     石川 知裕君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     坂井  学君

  橋本  岳君     竹下  亘君

    ―――――――――――――

四月十一日

 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律案(愛知治郎君外三名提出、参法第一号)(予)

同月十三日

 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律案(参議院提出、参法第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)


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     ――――◇―――――

西野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、福岡大学法学部教授浅野直人君、弁護士原希世巳君、財団法人ひょうご環境創造協会顧問小林悦夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず浅野参考人にお願いいたします。

浅野参考人 福岡大学法学部の浅野直人でございます。

 本日は、意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことにつきまして、委員長初め委員会の皆様方に感謝を申し上げます。

 本日審議されるいわゆるNOx・PM法、すなわち、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案は、中央環境審議会の意見具申を踏まえて提出されたものでございます。審議会は、大気部会自動車排出ガス総合対策小委員会の報告に基づきまして、精度に限界はございますものの、交通量、低公害車普及が現状のままに推移する場合、交通量が増大し、低公害車普及が伸び悩む場合のいずれの仮定のもとで推計をいたしましても、NOx・PM法の対策地域全体では、平成二十二年におおむね環境基準を達成するものと予測をいたしました。これらのデータはお手元の資料に記されているとおりでございます。しかし、交通量が極めて多い道路が交差したり重層構造になっていたり、あるいは大型車の通行割合が多い沿道など、十一から十五の地点において環境基準が非達成という予測をいたしました。

 その予測を前提にいたしました上でのNOx・PM法の今後のあり方についての審議会の結論は次のようなものでございました。

 環境基準のおおむね達成実現のために現行法による対策を着実に進めるべきであり、さらに、環境基準がおおむね達成した後にも、その維持のために対策を緩めてはいけない。また、環境基準の達成ができない可能性がある局地については、対策の強化がさらに必要である。

 そして、目標、対象物質、対策地域の範囲、車種規制の対象や猶予期間などについては現行制度を変更する必要はない。微小粒子、超微粒子対策や、光化学オキシダントの対策については、これまでの対策の推移を見きわめることが適当でございますけれども、他方、事業者の自動車管理計画制度は、運用の改善を図り、義務違反者への厳正な対応が必要である、このようにしております。

 さらに、局地対策につきましては、自動車対策だけではなく、都市構造及び道路構造の改善など抜本的対策が重要である。さらに、自動車交通抑制に資する道路計画、自動車に過度に依存しない都市構造を実現できる都市計画の検討が必要であり、あわせて、速やかな局地周辺での対策の実施が必要である。このためには、個々の場所の事情に精通する自治体を中心に取り組むことを可能とする法的枠組みを構築すべきである。また、都市構造対策のためには、新規立地に関する環境影響の事前確認を行う等の環境配慮の制度化の考慮も必要であると述べております。

 また、流入車を含めた交通量対策を講じることが必要ではあるけれども、しかし、このために、対策地域外に一律に負担を負わせる手法の取り入れは不適切であって、当面、荷主、自動車輸送事業者、荷受け先での自動車が集中する施設管理者の連携を促す枠組みを構築する。このための自主的取り組みを強化するとともに、将来はITSやスマートプレート等の技術の進展に結びつけたステッカー制度の検討も必要であろう、このような指摘をしている次第でございます。

 以上の中央環境審議会の意見に照らしまして、本法案を拝見いたしました場合に、まず、局地対策に自治体を中心とした取り組みを進めてまいりますために、知事が窒素酸化物等の重点対策地区を定めることができるようになること、その地区内での計画を策定し、重点的に対策を講じることができるようになるということは、審議会の考え方に沿ったものとして評価できるものと存じます。また、交通需要を増大させる特定建物を新設する際の届け出義務及び届け出をした者に対する知事からの意見提出、勧告、公表及び特定建物の維持管理を義務づける制度は、早期段階での環境配慮を可能にする仕組みでございまして、評価できると考えております。

 また、これまで野放しにされてまいりました対策地域の周辺地域内自動車に関しても、自動車排出窒素酸化物等の排出抑制の措置についての報告義務等を課すことは、現行法制定当初からの課題の解決の第一歩になるものであると評価できると思います。

 さらに、荷主の役割に関しては、積載効率の向上等、窒素酸化物等の排出抑制について幅広く努力義務を課し、貨物運送事業者と協力するなどによってこれを促すこととしておりまして、これによって運送事業者の努力を促進させる、また、荷主の努力を促進させる、こういうことを認識させることができますので、行政が適切な啓発をするということも相まって、うまくいきますと、従来よりも取り組みが進展するものと期待しているところでございます。

 さて、残された課題でございます。次のような点を挙げることができると存じます。

 お配りしました資料の最後の方にちょっと図みたいなものをくっつけておりますので、それをごらんいただくとよろしいかと思いますが、現行法制定の段階でいろいろな手法の取り入れを検討したわけでございますけれども、例えば事業所別総量規制というような案を提案して検討いたしました。私はそれが採用されなかったのは実は個人的には大変残念でありまして、法制局がこんなのは不公平だからだめだというばかなことを言ったというのをいまだに根に持っておりますけれども、結局、指定地域内での車種による走行制限を伴うステッカー規制というのも検討はいたしましたが、難しいだろうというので、最終的には、車両登録の制限による車種規制方式を採用いたしました。そこで、法制定当時は、こういう方式で本当に十分効果が上がるだろうかと個人的には懸念もしておりましたけれども、やはり時間が経過してまいりますと、次々に車両の入れかえができていくということでございまして、審議会でも検討いたしましたように、全体としてはこのやり方でも効果があったということが実証されたと考えております。

 事業所別総量規制につきましては、直接の形では採用されておりませんけれども、前回の法改正の際に院でお諮りいただきまして、自主的な取り組みを促進する対策としての事業者の報告制度の形で部分的には導入されたと私は理解しております。ただし、個々の自動車の道路上の具体的な走行の規制ということになりますと、これは、これまでのところは、本法とは全く別個の大気汚染防止法による公安委員会への知事からの要請と、それに基づく道路交通法の発動のシステム以外には制度がございません。しかし、この方法をさらに拡大していくということは、社会的、経済的影響も考慮しますと、難しい点が多いわけでございまして、これまでも慎重に取り扱われてきたところでございまして、NOx・PM対策ということで申しますと、汚染が改善されるという見通しが立つ中で、緊急措置としての局地対策の中で、強制的な走行規制を優先度を上げて検討するということは困難であろうかと思われます。

 そこで、個々の局地の特性と課題に応じた手法を自治体が柔軟に考えることを可能とするように、余り型にはまった対策を並べるのではなくて、局地での重点対策計画に盛り込み得る施策の自由度を保障することが必要だろうと考えているわけでございます。

 局地の重点対策計画が、審議会が指摘しております総合的な都市構造や道路構造の見直しを含む長期的対策につながるものとして機能し得るかどうかは、改正法十六条二項四号とか、あるいは十八条二項四号の運用の問題ということになるわけでございますが、余り手法が限定された計画になってしまいますと機能が限られてしまいますので、こういう計画の策定に際しても、必要な関係行政主体、その他多くのものが参画できることを十分に確保するということによって、この点を補うことができることを期待したいと考えております。

 また、改正法二十条の特定建物新設届け出制度でございますが、知事意見が形式的なものになることがないように、適正に環境配慮が行われるように運用されることを特に期待いたしたいと存じます。また、運用に当たっての透明性確保というのは大事なことでございますので、制度運用上の自治体での工夫がさらに必要ではないかと考えているわけでございます。

 最後に、周辺地域内自動車使用事業者の計画策定義務制度でございますが、これは対象事業者を的確に把握できるような、その点の担保の仕組みが整備されるということが必要だろうと思いまして、特に、自動車登録所管官庁からの情報入手等の運用上の支援体制の充実は、ぜひとも必要であろうかと存じております。

 以上、要点のみを申し述べましたが、本法案が成立いたしますならば、自動車排出ガスによる大気環境の問題の解決のみならず、さらに、うまくいきますと、自動車起因の温室効果ガスの排出削減という効果をも期待することができると考えている次第でございます。

 以上で私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

西野委員長 ありがとうございました。

 次に、原参考人にお願いいたします。

原参考人 御紹介いただきました弁護士の原でございます。

 こういう場に、貴重なお時間をちょうだいして、意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。

 私は、一九九六年の東京大気汚染公害裁判の原告、被害者の代理人ということで、東京を中心とする自動車排ガス公害問題に関与してまいりました。長年、さまざまな患者さんともおつき合いをさせていただきまして、その中で感じたことなどを中心に意見を申し上げたいと思います。

 現在の排ガス公害問題は、一九七〇年代からガソリン乗用車の排ガス規制が画期的に進んでいく、他方、ディーゼル車の排ガス規制が遅々として進まない、そういう状況の中で、自動車メーカーが一斉に従来の中小型ガソリントラック、バスなどをディーゼル化していった。また、ディーゼル車の中でも比較的汚染物質の排出の少ない副室式のエンジンを燃費、出力がよいという理由で一斉に直噴式エンジンに切りかえていく、こういった経過の中で公害問題が深刻化して、大勢の患者さんが生み出されたために社会問題となりました。

 我が国でディーゼル車に対するPM、微粒子の排出規制が始められたのが一九九三年ないし九四年、米国などと比較して、皆さん御承知のとおり、十年もおくれている。しかも、その規制値がアメリカ等と比べて極めて緩い状態がまた長年続いた。その間二十年近くにわたり、自動車メーカーはアメリカなどの厳しい規制に適合するディーゼル車を輸出しながら、国内では高濃度の排出車を製造、販売してきたわけであります。

 このような事態を許してきたのは、言うまでもなく国の環境対策の怠慢であるというふうに考えます。それによって、東京都内を初め全国で大勢の公害被害者が生まれ、命を奪われていったということに思いをいたすべきであろうと思います。

 私たちは、平成十三年に自動車NOx・PM法が成立して、初めて使用過程車も含む本格的なディーゼル規制が開始されたということについては、大変期待いたしました。

 この法律に基づく政府、自治体の政策が一定の効果を上げたということは、私も評価をしております。しかし、公害被害という観点から見ますと、残念ながら、必ずしも改善しているとは言えないというふうに思われます。

 例えば、ぜんそくの罹患率を示す全国的な統計であります厚労省の学童保健統計を見ますと、都内のぜんそく児童の罹患率は年々上昇して、この十年間で二倍、倍増しているというような報告もございます。

 この点について、私は、二つの点が問題だというふうに考えております。

 第一点、NO2については、総務省の政策評価などでもありましたけれども、対策地域の濃度の改善に十分進展が見られないということがございます。

 それから第二点、SPMについては、現行の環境基準値に極めて大きな問題があると考えます。現行の環境基準は、PM一〇、十ミクロン以下の粒子について定められておるものでありまして、健康に対してより深刻な影響を有するとされる微粒子については、何の基準も定められておりません。

 資料で配付しておきましたけれども、先生方御承知のとおり、米国では、一九九七年、十年前からPM二・五の環境基準が定められ、昨年の一月には、米国環境保護庁は基準の大幅な強化を提案しております。この資料にあるとおりでございます。また、EUでは、二〇〇五年のWHOレポートを採用して環境基準を設定しました。ところが、我が国の環境省は、PM二・五について、いまだに調査研究段階として、環境基準設定のための作業を先延ばししているというのが現状でございます。

 現在、首都圏でPM二・五の濃度を継続的に観測している測定局は、この資料にあります六カ所ということであります。その測定値をそこに記しておきましたけれども、ごらんのとおり、自排局でも一般局でも、また年平均値で見ても日平均値で見ても、欧米の環境基準と比べて、これを大幅に超過しているという実態がございます。

 このように、現在の東京を初めとする我が国の大都市の大気環境は、まだ安全なレベルとはほど遠いというふうに言わざるを得ないと思います。

 今回のNOx・PM法の改正論議については、現在の大都市の大気環境がこのように国民の健康、安全にとって引き続き危機的な状況にある、しかも、事は人の生命にかかわる問題なのだという認識から出発しなくてはならないと思います。

 中環審の意見具申などを拝見しましても、大気汚染が深刻なのは特定の交差点など限定された局地にすぎない。したがって、そのような局地の対策をとればよいのだ、極端に申し上げると、そのような論調が私は目につくように思います。全体としてこのような危機的な認識を欠いているように思われ、この点、極めて残念であるというふうに思います。

 今回の改正案につきましては、私ども、率直に申し上げまして、大変期待をしておりました。対策地域外からの非適合車、流入車の規制をいよいよ本格的に国としては初めて検討するということでありました。対策メニューを見てもさまざまなことがございます。今回法案化された地域外の事業者に対する一定の義務づけなどを初め、さらには対策地域内の非適合車の走行を禁止する、あるいは車種規制を全国に適用するなどの直接的な規制も検討されて、メニューに挙げられているというような点も私どもは大変注目いたしました。これは、いよいよ国も流入車対策の検討に本格的に着手するということを期待いたしました。

 しかし、その後の経過、でき上がった法案を拝見しますと、はっきり言いまして、残念ながら、期待を裏切るものというふうに言わざるを得ません。

 まず第一、平成十九年二月の中環審の意見具申では、対策地域外の自動車所有者に車種規制のような重い負担を強いる手法は適切ではないとして、流入車を直接規制するような対策は否定された。その理由とするところは、環境基準未達成の地点が特定の局地に限定されつつあることを考慮したんだとされております。しかし、これは同じ意見具申の中で、対策地域全体において排出量抑制を図ることが必要であるということから流入車への対策が必要であると述べていることと整合しないように思われます。

 現在の大都市における、さきに申し上げたような汚染実態を考えれば、やはり、地域外からの未対策車は大都市部への乗り入れを基本的に禁止するというような対策が欲しかったというふうに思います。

 第二に、荷主や自動車集中施設、これは特定建物という表現で法案になっていますが、の設置管理者についての義務づけも、今回の法案では完全に抜け落ち、わずかに荷主の努力義務と特定建物の新設者に対する届け出義務が規定されるだけとなった点であります。

 荷主は確かに間接排出者ということになりますが、荷主がいなければ交通需要はそもそも発生しない。しかも、特定地域内の事業者に比較して、買いかえコストなど、地域外の事業者はコストが少ないということが考えられます。したがって、荷主の負担する運送コストを節減できる可能性がある。負担の公平を維持して規制の実効性を高める上でも、荷主に対する規制は重要であったというふうに思います。

 特定建物の新設者に届け出義務を課す今回の法案、これは大変結構だと思いますけれども、これも重点対策地区内のものに限っているという点は、まだ不十分ではないかと思います。大都市圏において新たな交通負荷を発生させるような施設をつくる場合は常に環境への負荷を最低限に抑えるための努力を求める、対策地域全体の新設者に届け出義務を課すということも検討されてしかるべきだったと思います。

 環境省は現在、東京大気汚染裁判の早期解決ということで、可能な限りの公害対策を推進していくということで、原告側と協議が進められております。

 この協議においても、環境省関連の対策としてはNOx・PM法の規制強化、今回の問題ですね、それとPM二・五の環境基準の策定及び常時測定体制の拡充という問題が、和解協議の中でも解決のための大きなかぎになっております。私たちは、これらの課題は環境省がやる気になればすぐにでもできる課題であると考えております。

 今回の改正案をまとめるに当たって、環境省の担当者の皆さんが大変御努力をなさったということは大変推測できますけれども、結果としてはまだまだ実効性に疑問があるものでしかないというふうに言わざるを得ず、およそ裁判の解決につながるような内容とは残念ながら言えません。原告、患者さんたちは大変失望しております。

 国は、西淀川公害裁判から始まって、五回、公害発生原因者として責任を認められております。今こそ公害発生の責任者として、公害根絶のための徹底的、抜本的な対策を講じてほしいというふうに思います。

 PM二・五の問題については、せめて欧米並みに環境基準を設定して、系統的な環境対策を行っていくということが必要だと思います。

 また、本法に関連しても、荷主、集中施設設置管理者に対する規制強化のみならず、未対策の車は大都市地域には乗り入れさせないというようなことなどを早急に具体化して、排ガス公害をなくしていくという確固たる姿勢を国民に示していただければというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

西野委員長 ありがとうございました。

 次に、小林参考人にお願いいたします。

小林参考人 財団法人ひょうご環境創造協会、小林でございます。

 このたび、私にこのような場で発言の機会を与えていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

 私は、地方におきまして、兵庫県の職員という立場で実務を行ってきた経験を踏まえまして、兵庫県の状況を考えながら意見を述べさせていただきたいと考えてございます。

 兵庫県では、国道四十三号線の往復十車線、阪神高速道路神戸線の四車線、合計十四車線を中心とします阪神・神戸地域の自動車公害によるNOx・PMを初め、騒音、低周波振動等の公害に悩まされてきたわけでございます。

 阪神高速神戸線が開通して以来、交通量は飛躍的に伸び、NOxや浮遊粉じんによりますぜんそく患者が増加し、大きな問題となりました。公害訴訟にも発展していったわけでございます。国を初め、関係の府県、市は、排ガス規制の自動車単体対策を初め、多くの対策をとってまいったわけでございますが、自動車交通量の増加に追いつけず、その対策、改善は遅々として進まず、地元におきましては大きな苦情の種となっていたわけでございます。

 しかし、平成七年の阪神・淡路大震災をきっかけといたしまして、また同年七月の西淀川訴訟の判決が推進役となりまして、ソフト事業といたしましては、自動車NOx・PM法の改正によります車種規制の強化が進み、またハード事業では、国道四十三号線の大幅な車線削減等の道路構造の対策、また環境防災緑地の整備等沿道対策、NOxの土壌浄化実験等、各種対策が進みました。また、有料道路におきましてはロードプライシングによります実験が始まったわけでございます。

 このような中から、阪神間の大気環境は少しずつ改善し、自動車排ガスに起因する浮遊粒子状物質や一酸化炭素につきましては、近年、すべての地域で環境基準を達成するか、または改善の傾向が見られております。

 ただ、窒素酸化物につきましては、まだ改善の傾向が見られず、昭和六十一年ごろまで上昇傾向にありましたものが、その後横ばいの状況、平成七年の阪神・淡路大震災後、少し改善の状況にはありますが、環境基準を達成するという状況にはなってございません。しかし、これらの対策を積極的に進めようとする姿勢が評価されつつあり、環境保護団体等とも今までの対立姿勢から協調姿勢へと変わりつつあるというふうに認識しております。

 兵庫県では、平成五年に兵庫県自動車排出窒素酸化物総量削減計画を策定し、実情に合わせてその後改正を進めたわけでございますが、具体的には、国土交通省等の関係者と協調しながら、車種規制の徹底指導、低公害車、低NOx車のテスト導入、民間事業者へのモデル貸与等の普及啓発、また系統管制等によります交通規制の高度化、公共交通機関によりますノーマイカー通勤の実践、日本初の条例によりますアイドリングの禁止、またそのアイドリングをした場合の違反時の罰金つきというような新たな施策を展開し、普及に努めたわけでございます。

 またさらに、兵庫県では、阪神地域におきます自動車公害は地域内に車庫を有する自動車以外の他の地域からの流入による自動車に起因していることが多いということも考えまして、自動車排ガス規制、また自動車NOx・PM法によります規制のみでは対策が不十分であると考えまして、条例によります他地域からの流入車両の規制をするということになったわけでございます。具体的には、自動車NOx・PM法の排出基準を満たさない車両重量八トン以上の自動車が阪神東南部地域の一般道に流入することを禁止するという措置をとらせていただいたわけでございます。

 規制は厳格に行い、規制対象地域内の道路でカメラによる監視を行う、また立入検査を行う等々、行ったわけでございます。

 既にカメラの検査では百二十万台を検査いたしました。運行規制対象車両が、県内車両で五万五千台、その中で、違反車両が二百八十台、〇・五%、県外車両が十一万六千台、そのうち違反車が九百三十台ということで、〇・八%の違反を確認した状況にございます。また、街頭調査で千台について検査をさせていただきましたが、違反車が十二台ということで、一・二%というふうに考えてございます。これは違反が高いとは言えませんが、事前の想定では大体一〇%ぐらいが違反車ではないかというふうに考えたところから考えますと、この対応が十分効果を発揮しているというふうに考えてございます。

 また、国道四十三号線の自動車公害の地域ぐるみでの対策を進めるということで、近畿地方整備局が中心になりまして、関係する国の機関、兵庫県、周辺の市、それから地元の自治会、社会福祉協議会、また裁判の原告団等の環境団体、商工会議所、それから沿線の大手企業と、それに学識者が入りました国道四十三号周辺環境会議というのを設置いたしまして、現状の認識確認、また対策の措置状況の確認等々を進め、対応をさせていただいてございます。平成十六年七月の設立以来、既に十回が開催され、多くの成果が得られているというふうに考えてございます。

 今までの自動車公害対策の進展によりまして、大都市地域での道路環境の改善、これはほとんどの地域におきまして環境基準が達成され、また環境が改善されるというふうに期待しておるわけでございます。しかし、大都市の自動車交通量の多い道路の交差点付近の局地汚染については、依然改善がなされず、局地対策が必要というふうに考えてございます。特に、排ガス量が多い大型車の交通が多い地域や、また排ガスがたまりやすい道路構造のある地域につきましては、さらなる要求があると考えてございます。

 今回の法改正によりまして、このような大気汚染が著しい地域を重点対策地域として指定し、都道府県がその対策計画を定めるとともに、地域内の建物を新設する際の措置、また、流入車対策といたしまして周辺地域の事業者に対策計画を策定させることは、これまで進めてきた自動車公害対策の中で、今後課題の残る局地汚染地域の対策としては重要な施策でございまして、これらの施策が、従前から行われてきた車種規制等、また兵庫県等が行っております独自の対策と相まって相乗効果が発揮されるということを期待するものでございます。

 ただ、これらの施策、対策につきましても、例えば都道府県が対策計画を策定したとしましても、その事業の実施に当たっての事業費が確保できなければ、この計画は絵にかいたもちになるわけでございます。また、周辺事業者におきましても、この状況は同様でございます。

 そのようなことから、政府におかれましては、この対策の遂行に必要な財源の確保、また対策に係る直営事業の実施、府県等に対する交付金の確保、事業者に対する税制上の優遇措置等について要望する次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

西野委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

西野委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤三津枝君。

近藤(三)委員 本日は、三人の先生方、参考人の方々には、大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。私の持ち時間十五分でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回の改正法案のポイント、大きく二点あると思います。

 まず一点目は、重点対策地区の指定でございます。自動車NOx・PM法の対策地域内で、長期にわたり二酸化窒素や浮遊粒子状物質の大気環境基準が確保されていない地区などを重点対策地区に指定し、局地的な重点対策を講じていくこと、そして、改正法案で定める新築される特定建物などについての事前届け出制度を設けたことにあると思っております。

 二点目でございます。流入車対策です。現行法では、NOx・PM対策地域内に本拠地を持つ車両に対する車種規制を、今回の改正法案では対策地域の周辺地域の事業者にも広げ、流入車対策に先鞭をつけたことにあるのではないかと理解しております。

 ただいま三人の先生方から、改正法案に対する評価そして課題など、非常に貴重な御意見を具体的に伺わせていただきました。改めまして、お三方それぞれのお立場から、今回の改正法案で最も注目されている点、それを実際に現地で適用する際に留意すべき点などについて、ポイントを御指摘いただけないかと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

浅野参考人 ただいま先生御指摘のように、今回の改正法は、いろいろな点でこれまで取りこぼしになっていた部分が埋まったというふうに考えております。

 私、局地対策について、特に審議会の立場では、局地である以上、余り国が画一的に一つの方針を押しつけるというようなことは無理であろうと。やはり局地の問題というのはそれぞれの場所の特性がございます。例えば、北九州市でかつて局地の対策がうまく進んでいないところについて調べたんですが、同じ市内でも一つ一つの場所で全く特性が違うんですね。ですから、そういうことを考えますと、何としてもこれは自治体が中心になってお考えいただく、さらにそれを国も支援するというような体制が必要だと考えました。

 そういう意味で、ちょうど公害防止計画と同じような発想でこの重点地区についての取り組みが必要だということを審議会では述べたわけでございますが、その点がうまく計画の中で実現していくことができますと、かなり進展するのではないかというふうに考えるわけです。

 本当に車の走り方も違う、それから周辺の建物の状況が違うとか、なぜここでは局地で達成できないのかということについても、我々がシミュレーションで出しました十五地点というのは、やはり一つ一つ完全に特性が違うわけですね。ですから、これは繰り返しになりますけれども、余り画一的に、ちょうど、よく法律をつくりますと、国が通達を出してこんなふうにやりなさいとやるわけですが、あんなやり方はぜひとも避けていただきたい、それができることが大変大事だというふうに思います。

 それから流入対策については、私が申し上げました、今先生御指摘のとおりでございまして、現行法をつくるときには、当時は地価が結構高いということがあったものですから、まさか拠点を外へ出しちゃうようなばか者はいないだろう、大抵中でうまくいくんだろうと思っていたんですけれども、その後、少し地価が下がってしまったものですから、悪質な事業者は場所を外へ移すというようなことが出てまいりました。

 ですから、そういう意味でも、今回の対策を広げたということは、当時予想しましたこととは若干状況が違ってきたことに対する対応としては、適切な対応ではないかと考えている次第でございます。

原参考人 原でございます。

 今の御質問、流入規制については大分私は先ほど申し上げたので、重点対策地区の問題について一言述べたいと思います。

 こういう規制の枠組みができたということは、私はやはり一歩前進であるというふうに思っております。ただ、その中で、例えば東京でいいますと、大和町であったりそれから上馬であったり、本当に象徴的な地域があります。これまで、環境対策、いろいろなことを自治体も考え、いろいろな努力をされてきたのも間違いない。それでもやはり結果として環境基準の達成ができない状態が十年以上にわたって続いておるという状況が各所にございます。

 この場合、今回、重点対策地区、せっかくそういう制度ができたので、その中で、自治体と道路管理者も含めて、抜本的な道路構造、交差点の構造の改善みたいなもの、それから、意見具申でもありました都市のあり方も含めた都市計画、そういう検討がなされることを期待しています。例えば、技術的にいろいろ問題があるのかもしれませんが、交差点を何とか地下化することであるとか、ドームをかけるとか、そういったようなことも含めて、ぜひとも抜本的な対策がとられるよう、これは自治体の権限でですけれども、国がしっかり助言していくあるいは援助していくという体制をつくっていただければ、ようやくこういった東京の本当に象徴的な高濃度局所、高濃度地区が解消に向かっていく第一歩になるのかなというふうに思います。

 以上です。

小林参考人 私からは、流入車対策、これが、関係します都道府県からの要望によりまして、この際実現したということで、大変評価をさせていただきたいと考えてございます。

 ただ、この流入車対策でございますが、届け出制というふうになってございます。これの徹底というのが大変重要ではないか。まじめな者が損をするような政策というのは大変問題でございます。そういう意味で、まじめな者に対してはそれなりの優遇措置をとるということも重要ではないかと考えてございます。

 そういう意味では、先ほど申し上げましたように、財政対策が必要である。地方の今の財政状況から考えまして、計画はつくったもののということになります。また、まじめにやろうとしている事業者に対して、それなりの優遇策をお考えいただきたいというのをぜひお願いしたいと考えてございます。

 もう一点、これは全体的な問題でございますが、やはり都市構造そのものを見直していかなければならないというふうに私自身考えてございます。今まではよく、環境配慮のまちづくりという言葉があったわけでございますが、私は最近、環境主導のまちづくりというのが必要ではないかというふうに考えてございます。そういう意味で、交通公害また温暖化対策等も含めましたこれからの新しいまちづくりというのを志向していっていただければと考えるわけでございます。

 以上でございます。

近藤(三)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございます。

 それでは、もう少し質問を進めさせていただきます。

 それでは、浅野先生にお尋ねさせていただきます。

 浅野先生は、中央環境審議会委員として、そして環境分野のいろいろな局面で御指導を賜っております。本当にありがとうございます。

 二点お伺いさせてください。

 まず一点目でございます。改正法案に新たに定められる施策に関する権限関係についてお伺いいたします。

 今回の法改正では、重点対策地区の指定は、関係市町村長の意見を聞き、都道府県公安委員会、関係道路管理者に協議した上で、都道府県知事が指定することとなっております。重点対策計画についても知事が策定します。重点対策地区内で特定建物の新設を行う者は知事に届け出を行い、この届け出に対する意見、勧告権限も知事にあります。指定地区の指定だけは都道府県知事の申し出に基づき事業所管大臣に協議した上で環境大臣が指定し、これに関する周辺地域は指定地区ごとに省令で指定します。以上が、今回の法改正に含まれる国、それから都道府県、市区町村の主な関係ではないかと理解しております。

 先ほどの浅野先生からの御発言にありましたように、都道府県などの自治体が中心に取り組む制度設計になっていると考えておりますが、今回の法改正が効果的な施策となるために、このような権限関係の妥当性などについて、さらに浅野先生の御所見をお伺いさせていただきます。

浅野参考人 権限関係についての御質問でございます。

 私、先ほど自治体が中心になってというふうに申し上げましたが、やはり自動車の問題ということになりますと、どうしても市町村レベルだけで考えるということには無理がございまして、その意味で、広域行政を担当する都道府県に権限を与えるということは適切なことではなかったかというふうに考えております。

 ただ、都道府県知事という場合も、大都市域に関しては概して政令市のような場合が多いわけでありますし、そのような場合に、実際の情報や、実力と言っては失礼なんですが、制度を動かしていくということに関しては、かなり政令市の方にも力がございます。むしろ場合によっては都道府県の方がやや弱体だというようなこともあり得るわけでありますから、このあたりのところは、権限関係は確かに都道府県知事に一元的に差し上げて、そこで広域的に調整をしっかりやっていただくということは必要でありますが、実際の動かし方とかさまざまな取り組みに関しては、政令市を中心とする市町村との連携が重要だろうと思います。

 ただ、そのあたりを法律上余り細々書き込み過ぎますとややこしくなりますし、あるいは権限委任という形でおろしていきますとそこで切れてしまうということがございますから、法制度上の取り扱いとしてはこのような形で、後は運用上の問題で実際に行うということになることが適当であろうと思います。

 それから、先ほどの繰り返しになりますけれども、計画をつくるに際してはぜひとも、法令上ははっきり明言されておりませんけれども、道路管理者等については国の機関が入っておりますから、ちょうどこれは景観法などではそのような形で、道路管理者のようなものが計画づくりとか運用の中に入り込めるような仕組みになっております。それも運用上参考になると思いますので、このあたりは今後の運用の中で適切にお願いをできないかと思います。

 特に、公安委員会だけが特出しになっておりますので、どうしても交通規制関係のところだけを見ればいいという印象を与えてしまうんですが、繰り返し繰り返し申し上げて恐縮でございますし、原参考人からも御発言がございましたが、私ども、都市計画とか都市構造の問題が一番のポイントだと思います。そういう意味では、公安委員会ではちょっと弱い面がございますから、特出しになっているということで、そこだけでいいという理解をするのは適切ではない。場合によっては院として何らかの附帯決議のようなものをつけておいていただくと、なお政府もそのあたりをしっかりやるのではないかと思います。

 よろしく御検討いただきたいと思います。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 実は、もう一問先生にお願いしたいところなんですけれども、ちょっと時間が迫ってまいりましたので、もしお時間がありましたら後ほどよろしくお願いします。

 続きまして、小林先生にお伺いさせてください。

 小林先生は、豊富な行政経験をお持ちでいらっしゃいます。兵庫県における自動車交通による公害対策に取り組んでいただいておりまして、私も、近畿ブロックの選出議員として大変深く感謝申し上げております。

 今回の法改正から生み出されます制度を地域に根づかせ、そして効果を最大限上げていくためには、国と地方公共団体、事業者、住民の方々の連携、すなわち、先ほど御発言いただきました地域ぐるみの対策が非常に大切だというふうに私も考えております。また、先ほど御発言いただきましたように、まじめな者が損をすることのないような取り組みがこれからも求められるものだと思います。

 NOx・PMの総量削減対策を地域ぐるみの、そして国民的な運動としてさらに発展させていくために、この改正案を現地で実際に運用するに当たって、どのような点に配慮していくべきなのか、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。

小林参考人 具体的な問題につきましてはこれからということでございますので、実際の対応についてはまだ今イメージを持っているわけではございませんが、やはり一番重要なのは、おのおのの間での情報交換、情報の伝達が明確にいくということが必要ではないか。役所の垣根を取り除いて、お互いの間で情報交換をしながらより効果的な対策を進めていく、特に、国の関係機関におかれましては、地方の都道府県または政令市に対して十分なる情報を提供していただくということが重要であるというふうに考えてございます。また、先ほどから繰り返し申し上げますが、やはり財源確保というものが重要ではないかというふうに考えてございます。

 以上でございます。

近藤(三)委員 地域実践の御経験からの御意見、本当にありがとうございます。今回の検討に多分生かさせていただくことと思います。

 それでは、もう少しお時間がありますので、先ほどの二問目の質問をさせていただいてよろしいでしょうか。もうお時間ですか。

西野委員長 はい、時間です。

近藤(三)委員 それでは、また次の機会に託させていただきます。どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 本日は、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。

 この委員会のスケジュールも大変急で、皆さんの予定を調整していただくのに大変御苦労いただいたのではないかと、委員長にかわって改めておわびとお礼を申し上げたいというふうに思っております。偉そうなことを言って申しわけありません。

 今回のNOx・PM法、実は私、代表質問の機会もいただきまして、冒頭からこの中身について勉強させていただきました。正直、全体を眺めまして、失礼な言い方かもしれませんが、非常に腰の引けた、実効性が本当に上がるんだろうかという疑問を持つ改正の中身でありました。

 その中で、きょう、参考人の三人の先生方が、それぞれのお立場、研究領域の中で、また中環審の委員というような立場も踏まえて、ただいま御報告をいただいたところでありますが、今回問題となっている環境基準が未達成の大きな元凶というのは、流入車対策の部分、それと環境省が積極的にもっと前へ進もうという意欲、やはりそのあたりに私はポイントがあるのかなというふうに考えてまいりました。

 とりわけ流入車対策でございますけれども、対策地域外から入ってくる流入車、これが総務省の行政評価でも、排出基準に適合していない自動車の流入割合が高い点であるとか、長年にわたって大気汚染が著しい局地汚染地域においては他の対策地域よりも流入車の交通量が非常に多い点というのが随分指摘をされてきています。

 そんなことを考えて、小林先生の地元でもある兵庫県などでは、それこそ流入車対策として条例で規制をされ、どこに車両登録がされていようとも対象となる地域内の走行は禁止をすべきだというような、そういう手を打ってこられたわけなんですが、残念ながら、今回その点については大きく踏み込むことがありませんでした。

 お三人の参考人の先生方に、この流入車対策の公平感、公平性というような点も踏まえて、もう一度改めて、今回の法改正の中で踏み込むべきではないかという考え、先ほど浅野先生も、流入車対策としてということで、ITS、スマートプレート、それからステッカー制度の検討も必要だというふうにあったんですけれども、私は今回の改正でも十分にステッカー制度なんかはやろうと思えばできたんじゃないかというふうに思うんですけれども、そのあたり、審議会で御議論をいただいた中で大変じくじたる思いがあるんじゃないかと私は思うんですが、その点も踏まえて、先生のお考えを聞かせていただけたらと思います。

浅野参考人 ただいまの御質問の点でございます。じくじたるものがあるかというお尋ねでございますが、これは、私が法律をつくるわけではございませんので、別にじくじたるということでもないわけでございます。

 むしろ、審議会の中での考え方としては、おおむね達成という法そのものの全体としての目標はかなり達成できているという一応のシミュレーションがございますので、それを前提に考えてまいりますと、やはり、全国に域外対策という形で広げてしまいますと、不必要な負担をかけるということがあり得るだろうということがございます。そうしますと、ある程度広げていくとしても、どこまで広げるかというところの線引きというのがなかなか難しいものがございますから、やはり強制手段を講じるということについては限界があるんではないか。

 ステッカー方式についても、もし仮にやるとすれば、全国全部にそれを要求するということになってまいりますので、そのコストというのはかなりのものでございます。私は九州に住んでおりますから、東京都などが行いました対策にしてみても、九州の零細な運送業者というのは大変な負担を強いられていて、しかも、めったに行かないけれども全部対策を講じなきゃいけないということについては、相当の不満があるということも聞いております。

 そうなりますと、本当に緊急事態が、かなり広域で深刻であるという、原先生はそういう御認識でございますから、そのようなことももちろんないとは申しませんけれども、しかし、私どもの前提といたしましたデータでは、改善の方向に向かいつつあるという状況の中では、当初法案をつくったときにもっと厳しくやるということは必要だったと考えているぐらいでございますけれども、この段階で、今から十年前ぐらいにさかのぼっての厳しい取り組みをあえて行うということには若干問題があるだろうということでございます。

 そのスタンスで、しかし、局地については局地なりの対応の仕方がある。その中には、場合によっては、既にもう条例でやっておられることについては、これを今さらやめろというようなことはあり得ませんし、むしろそれを必要に応じて強化されるということは大いにあり得るだろう。むしろ、自治体が地域でおやりになろうということについて、どっちかというと表現が悪いんですが、国がいろいろな形で邪魔をしないような手だてを講じることが今回一番大事なことだというスタンスでやっておりますので、その意味では、法としては邪魔をしない法律、できることをできるようにしてさしあげられるような条件づくりという意味での法改正が行われたと一応考えている次第でございます。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 不必要な負担というキーワードに、私、どうしてもひっかかってしまうんですね。もともと、例えば自動車メーカーも、それこそディーゼルエンジンには、今回のNOx・PMの排出の低減装置等もきちっと備えたものを欧米には輸出している。しかしながら、国内ではそれをつくっていない。同じような、いわゆるナショナルスタンダードでつくっていけば、こういった問題、ステッカー制度の導入すら必要のないような状況ができ、環境基準だって設定することができたと思うんですね。

 いわゆる経済界、自動車業界の問題も私はあるというふうに思うのですが、その点について、浅野先生と原先生にそれぞれお答えいただけないでしょうか。

浅野参考人 ただいまの点でございますけれども、新しく製造され、上市される車については、先生のおっしゃるとおり、しっかりした対策を講じるべきだろうと思いますし、そういう意味での単体対策はかなり厳しいものを要求しているわけでございます。

 私が不必要なと申しましたのは、ちょっと表現が悪うございましたけれども、むしろ既販車、既に出回っている車については、やはり後から対策を講じるというのは大変な負担がかかるという意味で申し上げました。

 ただ、そうは申しましても、私の個人的な見解から申しますと、少なくとも耐用年数を超えてしまった車がかなり長期にわたって使われているという状態については、やはり好ましくないと思います。ですから、耐用年数を超えてしまった車に早くリタイアをしていただいて、適合車にどんどん入れかわっていくということは必要でございます。

 その点では、例えば税制面で、グリーン税制がございますけれども、逆の税制だってあっていいんではないか。つまり、耐用年数を超えるということは、業者さんにとってはそれだけ利益が上がってくるわけでありますから、その分はむしろ税金のような方法で取り上げてしまって、代替を促進するというようなことは必要だと思っておりますが、今回はそこまであれやこれやと議論するゆとりがございませんでしたので、こういう形になっております。

 申し上げたかったのは、むしろ既販車に関して、新たに設備を設けて、そのまま走らせるというようなことを続けることには無理があろうということを申し上げたかったわけでございます。

原参考人 今の御質問ですけれども、まず流入車規制ですけれども、今浅野先生がお話しされました、やはり不必要といいますか、広範な負担を地域外の業者さんにかけるのはどうか。当然、これは考慮しなきゃいけない問題だと思います。

 しかし、東京の大気汚染の現状、東京に限らず大都市の現状を見ますと、それはやはり、国民全体でそれを何とか努力していくための負担というのは負わなきゃいかぬのではないか。また、買いかえが必要になった場合の業者に対する国、自治体からの援助、そういったことについても、これは当然拡充していかなきゃいけない。こういう問題とセットに、私は、当面ステッカーなどによって規制をしていくということはすぐにできる課題ではないかなというふうに考えております。

 メーカーの問題ですけれども、おっしゃるとおり、PMについては、もう十数年前にはほとんど無規制に近いような車をつくっていた。それがこの間の公害の根本的な原因になっているというようなことを考えれば、例えば買いかえに当たってメーカーに一定の負担を求めていくことであるとか、これは責任を前提にするのかあるいは社会貢献なのかというような議論もありますけれども、そういったことなんかも含めて、総合的に、全国的に車種の転換、より無公害な車をふやしていく、転換していくという政策が今は必要なのではないかなというふうに私は考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 あともう一点、大きな課題として、私は、このPM二・五の環境基準の未設定の問題に今回重きを置いております。

 もともとこのPM二・五が、いわゆる小さいがゆえに肺に沈着して、気管支ぜんそくであるとかがんが発生してきた。その延長線で今回の東京大気汚染訴訟にまでつながってきているということからすると、一日も早くこのPM二・五の環境基準を設定することが何より大事だろうというふうに考えるんですが、残念なことに、これまで、いわゆる知見の蓄積に努めるという域を全然超えておりません。

 私も実は代表質問でも指摘したんですけれども、もうアメリカは既に約十年前にこのPM二・五の環境基準を設定しておって、なぜアメリカでできていて日本ではできないんだろうかというような疑問をずっと持ち続けてまいりました。まだこの上蓄積をしなければならないような段階にあるのか、もうそろそろ検討に入って環境基準を設定していかないと、これは打つ手がなくなるのではないかというふうに考えるわけです。

 お三人の先生にそれぞれ、今回のPM二・五の環境基準の設定について、まだ本当に蓄積しなきゃいけないというふうにお考えなのか。この点をやはりクリアしていかないことには前へ進めないと私は考えるんですけれども、その点についてどうお考えかをそれぞれお答えいただきたいと思います。

浅野参考人 環境基準については、不断の見直しが必要であると法も定めておりますし、全般的にあちらこちらにほころびを来しておりますから、見直しをしなきゃいけないということについては、私は全く同感でございます。

 PM二・五に関しましては、アメリカで、私が知っている限りでは、やはり死亡率の増加にかなりの影響を与えているということははっきりしているという情報を得ておりますので、そういう意味では、国民の健康を守るという観点から、早急な取り組みが必要であるというふうに考えております。

 ただ、我が国の環境基準の設定の仕方というのは、従来の例からいいますと、やはりかなり細かいデータをきっちり積み上げて数字をはじくというやり方をしておりまして、その手法をそのまま使っていきますと、外国でこうやっていますから、さっとそのまま持ってきますというのはなかなかなじみにくいですね。

 そこで、従来からの環境基準の設定の方式というか、そういう環境基準設定文化と申しますか、そういう文化的風土の中で慎重になっておられるということについては、私どもも、審議会の中では、折あるごとに、検討を加速すべきであると。

 特に環境基準というものについて、もう一つは、やはり国民の受けとめ方が非常にナーバスでありまして、それが出てくると、超えたらすぐ人が病気で死ぬというような受けとめ方をされてしまうということが一方であるものですから、あくまでも予防的な、予防原則に基づく対応を政策的にしなきゃいけないという観点から、危険性のあるものについては積極的に取り上げるというのが本来の環境基準でありますけれども、どうしてもそれが直ちに違法性基準のようなものと連動するという認識を持たれてしまう。その点も行政がやや慎重に対応しなきゃいけなくなっている原因ではないかと思いますから、やはり環境基準というものの持っている本質をよく理解していただくという作業とあわせて、しかしながら、やるべきことはやるべきだと私も考えております。

 先生の御意見にかなり近いところで考えているということでございます。

原参考人 私は、PM二・五、環境基準の問題について専門でも何でもありませんので、明確なことは、先生のようなことは申し上げにくいんですけれども、少なくとも、米国の今回の改定提案なんかでの文書を見ていますと、大変たくさんの文献も引用され、一つ一つ私は見てはございませんけれども、やはり相当綿密な検討をされているのは間違いないですね。

 我が国においても、環境省はこれまで動物実験初めもう何年もやっております。これは、恐らくことしにはその結論が出るというような、取りまとめが出るような話も聞いておりますので、いよいよ具体的に評価をして、環境基準を改定していくことが具体的に検討できる状態になっているんだろうというふうに私は思います。

 ですから、それはもうぜひ早急に、先生方、政府のおしりをたたいていただいて、促進させていただきたいというふうに思います。

小林参考人 私もこの辺に関しましては専門家ではございませんので、すぐにどうだということではございませんが、やはり必要なものについては早くやっていただきたい。特に、研究がまだまだということであれば、それなりに研究をさらに進めていただきたいということをお願いしたいと思っております。

 あわせて、環境基準そのものを安易に設定することによりまして、逆に環境基準そのものの権威を落としてしまうということも問題でございます。そういう意味で、やはり慎重なる対応、対策が必要であるというふうに考えています。

 ただ、やはり、疑われているものでございますので、除去措置等の技術開発によりまして、環境基準が決まらなくても、それなりの対策をとっていくということはできると思っております。そういう意味で、排ガスの除去装置等々についての開発もぜひ進めていただければと考えてございます。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので終わらせていただき、私どもの同僚議員にバトンを移したいと思います。どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、末松義規君。

末松委員 末松でございます。

 きょうは参考人の皆様に本当にお忙しい中お越しいただきまして、まことにありがとうございます。

 私の方からは、今同僚の田島議員の方でPM二・五とかそういうお話、または規制についてのお話がございましたけれども、今からこの予防をしっかりとやっていくというのが大気汚染の問題の本質であることは私も重々承知しておるわけでございますが、では、大気汚染と人体との関係が今までどうだったんだということ、それで今PM二・五の話とかいろいろとあったんだろうと思うんです。

 まず私は、原先生の方にお聞きしたいのは、今まで、では科学的知見のもとで、この大気汚染等、特に自動車公害と言われているものと、それから被害者の方々、今東京大気汚染訴訟等ありますけれども、科学的知見がないからなかなかそれは認められないんだということで裁判でも非常に厳しい状況に置かれている方々も多いんですが、先生は弁護団をお務めになっておられるということですので、その辺についてちょっと参考になるお話を賜れればと思っております。

原参考人 自動車排ガスと人体被害の因果関係という面での科学的知見ということの御質問だと思いますけれども、これは、私どもの立場からすると、その因果関係を裏づけるような知見というのは山のようにございます。

 現実に、これは裁判の場面、まあ私ども裁判が専門ですのでその局面からの話になるんですが、私ども、もう一貫して、大量のそういった科学的知見、疫学であるとか動物実験とか、さまざまなものを裁判所に提出して、明らかであるということを主張してまいりました。

 ところが、国はこれまた一貫して、明確じゃないんだと言う。明確じゃないんだということの知見というのも若干あるにはあるわけですね。つまり、因果関係は明確に見出すことができなかった、ある意味では失敗した知見というのは山ほど、山ほどと言っていいかどうかあれですけれども、ございます。そういったようなものを根拠に、因果関係は明確でないという主張をしてきておるわけです。

 ところが、裁判所としては、先ほども言いましたけれども、五回続けて因果関係はあるんだという判断をしているんですね。私どもの東京大気裁判でも、今控訴審が結審しましたけれども、その中でも国は同じことを言っています、因果関係は明確でないと。では、控訴審で何かその新しい証拠を出すのか、何か証人が出てくるのかと思いましたらば、何も出てこない、証人も立たない。ただ、はっきりしない、はっきりしないと言うだけという形で控訴審を争っている。

 はっきり言いまして、控訴審で国の主張が認められる可能性は全くない。国もそれはわかっていると思います。わかっていてそういうふうに言って因果関係を争うという、これは裁判の対応としては私は大変問題がある。つまり、引き延ばし以外の何物でもないのです。相手は、患者さん、高齢者の方も多い。その中で、大勢の方が決着つかないまま亡くなっているという現実があります。

 やはりこういう事態は即刻改めるといいますか、国としては、今までのそういう因果関係を認めた判決が五回も出ているということを前提に早期解決をきちんとしていくということが求められているのだろう、ちょっとお答えになったかどうかわかりませんけれども、そういうふうに考えております。

末松委員 そういった、科学的知見で争うのであれば、やはり科学的知見のお互いの主張の中で、説得性ということで争わざるを得ないと思うんですね。

 そこで、ちょっと私の方は、前々から疑問に思っておりましたのは、実はその因果関係を争う中で、調査をするというようなことが、一九八七年の法の改正のときに附帯決議で、早急に調査をしろと。そのかわり政令で地域の指定をリフトアップというか外したというのが公健法でございましたね。調査をしろということで、その調査が、やるべきだという話で附帯決議があったにもかかわらず、どうもそれからの結果が余りよく見えないんですね。

 今環境省の方でやっているのが、「そらプロジェクト」というんですか、大々的に調査をしましょうということでやり始めて、結果が、私の質問に対しては平成二十二年に終わるということでございました。

 ちょっと私はお三方にお聞きしたいんですけれども、その調査というのは、何万人とか結構、拠点を決めていろいろと全国でやる話なんでしょうけれども、一九八七年から二十年たって、そんなに調査というのは難しいものなのか。

 いろいろと健康被害者が出ているのであれば、それは随時やられていいはずだと思うんですけれども、どうも今行政の答弁を聞いていると、「そらプロジェクト」をやっているところだからと。これは平成十七年から二十二年ですか、そういう形でやっているというふうにおっしゃっているんですけれども、その前にどうしてそういった調査が徹底してきちんと行われなかったのかなというのが、私は常々思っていた疑問なんです。

 そこに対して、専門家のお立場からどういうふうな御所見がございますか。可能な範囲でお答えを賜れればと思います。

浅野参考人 調査は、公健法の改正のとき以来サーベイランスなどの調査が行われているということは、私、存じております。私も折に触れて中間のデータの公表をちゃんとする方がいいのではないかということを申し上げておりますけれども、なかなか医学の専門の先生方というのは慎重な方が多くて、中間で余り中途半端な結論を出したくないというような方が多いようでございます。ですからなかなか出てまいりません。

 健康被害の問題に関しては、結局のところ、一つの疾病が一つの原因でストレートに判断できるような場合はいいんですけれども、呼吸器疾患というのは多様な原因がございますし、例えば住宅環境がどうであるかというようなことがございまして、そういう交絡因子をしっかり見ていかないと、なかなかはっきりしたことが言えないということがございます。

 自動車の排ガスの問題に関して、私も素人でございますから、余り責任を持った発言ができないということを前提に申し上げますけれども、どうも我が国の研究というのは、原因物質が何であるかという特定の物質とのつながりということにこだわった研究が多過ぎますので、複合影響的なものについてはなかなかデータが出てこない。しかも、そういう複合影響的なものというのは、データをとったからといって、おいそれとその程度のものでドクターが取れないなんという話を聞きまして、どうも原因がはっきりしないようなことをもやもややっていてもだめだというような傾向が強いように思います。

 ですから、単一物質を追っかけて研究していく限りなかなか答えが出てこないということがあるわけですが、ただ、複合影響のようなものも現実に調査はあるようでございますけれども、影響がないという答えを出すためにはかなりの金と時間がかかるということを聞いております。

 といいますのは、時間を短縮するために、実際よりもかなり高濃度の暴露をさせて時間を短縮して実験の成果を上げて、それをあとは時間を延ばして外挿するというような研究方法が多いんですけれども、それをやりますと、どうしても急性毒性に近い研究になってしまったりするので、そういう形で、影響ありという答えは出しやすいんですが、影響なしの方は、今度は通常の濃度でやっていきますからうまく答えが出てこないんだそうです。というわけで、なかなか答えが出にくいということは聞いたことがございます。

 しかし、確かに先生おっしゃるように、これだけ長期間、金をかけて調査をしているわけでありますから、そういうものについては、環境省は、中途半端なものを出したくないというのはよくわかるんですけれども、積極的に努力をして中間報告を出して、どういう結論であろうと、国民の不安を解消するとか必要な対策があるならば、はっきり答えが出ない段階でも速やかに対策を講じるということが必要だろうと思います。

 ですから、今後とも、私ども、審議会ではその発言を続けますので、どうぞ先生も国会の方でもそのような御発言をいただければと思います。

原参考人 「そらプロジェクト」の問題については、一番問題なのは、確かに立派な研究なり調査が試みられているんだと思いますけれども、その結論が出るまで何もやらないというのが今の環境省の対応なんですね。そこが一番最大の問題だと思います。

 こういう疫学調査等は、精密にやろうと思えば、それは時間と金があれば幾らでも精密なやり方というのはできるんだろうと思います。その方が確かに学者的にはすっきりとした確信の持てる結論が出るのかもしれません。それはわかりません。

 ですから、そういうようなものを試みられるのは私は結構だとは思いますけれども、しかし、「そらプロジェクト」以前に、それはいろいろな調査を環境省もやっている、いろいろなところでやっているわけですね。さらに諸外国の調査研究もたくさんある。そういったようなものから、当然因果関係が疑われる事態があるわけですから、それに対応したような政策というものをきちんと、今現に苦しんでいる被害者がいっぱいいるわけですから、そういうものを早目早目に打っていくというような姿勢が一番大切なんじゃないかなと私は思います。

小林参考人 私は、地元兵庫で、現実にサーベイランス調査等、環境省の委託を受けて実施したわけでございますが、大変面倒でございます。予算の割に、人海戦術で物すごい人がかかります、かかった上に、なかなかデータが集まらないという状況にございます。

 このデータが、実際には個人情報に相当かかわってまいります。その人の生活履歴がきちっと押さえられないとなかなかデータ解析ができない、学者の先生方はそういう御発言をされます。それについていろいろなデータを整理していく上で、その生データを全部各先生方に公開して、各先生方から意見をいただくというのが重要だと思うんですが、ただ、先ほど申し上げましたように、相当の個人情報が入ってしまいますので、その辺の個人情報をどう確保していくかという問題をやっていくという意味で、大変苦労したという経験を持っております。

 この辺につきましては、ぜひ早く答えを出していただきたいというのも本音でございますが、それには相当の費用と相当の対応、また人がかかわらなければできないというふうにも考えてございます。そういう意味から、ぜひ、その辺について十分なる対応をしていただいて、早く答えを出していただきたいということを要望したいと思っています。

末松委員 ありがとうございます。

 もうほとんど時間がないんですが、一点、今東京都がやっているのが、全国に対して、ステッカーを張って、流入車対策でやっているわけなんですね。今回の場合、ポイント、ポイントを決めて、そして指定地域で対策を打つ。そうしますと、指定されたところの範囲内の人は規制がかかるんだけれども、範囲をちょっと超えたら規制がかからない。先ほど田島先生も言われましたけれども、不平等というのですか、不公平の問題が起こって、そういうことであれば、東京都がやっているように、全国一律にすれば公平という意味ではいいんだろうと思うんですけれども、今、あえて環境基準が守られていないところを個別にやっていくのと、その公平性の問題について、浅野先生、もしよろしければ、審議会をやられたということでお伺いしたいと思います。

浅野参考人 公平性という言葉は非常に便利な言葉でございますので、先生がおっしゃるような意味での公平ということは確かにあるかもしれません。しかし、やはり原因者負担というような、もう一つの法原理になるものを考えていきますと、より原因者としての可能性の高いものと可能性が余り高くないものを同じように扱うことを公平ということも、またやや法的にははばかられる面がございますから、そういう意味では、限りなく原因者に近いところにとりあえずまずは網を張る。

 本当に事態が極めて深刻で、全国一律にやるのが最も公平であるという状態であるかつての公害問題の時代のように、あるときはそうかもしれません。例えば公健法ですら、排出地域とそうでない地域では負担率をこういうふうに変えるというようなことをやってきたわけでございますから、その時代でもその程度の配慮をした公平性はあったと私は理解しております。

末松委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

西野委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、この自動車NOx・PM法の改正に当たりまして、参考人の先生方には、大変お忙しい中、このように貴重な御意見をお伺いしておりますことに感謝を申し上げる次第でございます。

 私の方からも、今議論は続いておりますけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 現行法による基本方針における目標というのは、窒素酸化物対策地域並びに粒子状物質対策地域において、平成二十二年までに大気環境基準をおおむね達成するという目標のもとで進めているわけでございますけれども、現状としては、大気環境は着実に改善はしているものの、やはり自動車交通量の多い一部の交差点等の局地においては大気環境基準を達成していない。そういう局地的な汚染が継続しているということは、参考人の先生方からの御意見もあるとおりでございます。また、そのような局地的な汚染につきましては、この現行法の車種規制の及ばない、対策地域外からの流入車による影響が大きいという結果もございます。

 そこで、今回の法改正でございますけれども、局地汚染対策と流入車対策、これを二本の柱としてさらに対策を講じていくということでなされたものと解しております。

 そこで、まずはこの局地汚染対策でございますけれども、これは浅野先生にお伺いをさせていただきます。

 こういう重点対策地区の指定を行って計画を策定させるということは、法律に定めなくとも、一方では、ある一定の対応は可能という考えもございますけれども、法律においてこの局地汚染対策を制度化した意義、その効果、それについて浅野先生から、どのようにお考えなされてのことかということをお聞きしたいと思います。

浅野参考人 先生御指摘の点でございます。確かに、法律がなくても、運用上やろうと思えばできるというのはそのとおりではございましょうけれども、やはり、法律に基づいて指定が行われ、計画がつくられているということの重みが非常に大きいと思います。

 つまり、これは国会で国民の意思に基づいてやるぞということが決まったということになるわけですから、単なる行政判断以上に重みがございますし、そういう法定計画としてつくられたものについては、たとえ直接に罰則などの規制がかかっていなくても、法に基づく計画であるということが関係事業者や関係主体に対して説得力を持つ、従ってくださいということが言えるということがございますから、私は、罰則のようなものがないのは法律として意味がないという議論には余り賛成じゃございませんで、やはり国会の権威にかけて、国会でお決めになったということの重みを重視したいというふうに思っております。

 今回、特に、国が命令してつくるんじゃなくて、自治体の方が手を挙げて、やりたいというときにやれるというところにかなり重要なポイントがございますので、これによってやはりそれぞれの自治体の首長さんの熱意がわかるという面もございましょうから、余りいいかげんなことをやっていますと住民から首長さんが怒られるということもあって、この制度をつくる、一方的に国がトップダウンで指定をするんじゃないということに、かえっておもしろい展開が期待できるんではないかと考えている次第でございます。

江田(康)委員 今、浅野先生から申されましたが、やはり、今回の法改正、法律に基づいて行うということの効果は大きいというお話がございました。

 確かに、三大都市圏の共通のルールづくりということのためにも、また、各関係機関が協力をしていくというような意味において、さらには、そこには自治体の自由度にも配慮されているというような意味で、今回の改正は大変大きな意義があると私も思っております。

 さらに伺わせていただきますが、これは三人の先生にお伺いさせていただきます。

 法律上、重点対策計画等を制度化しましても、中身を伴わなければ仏つくって魂入れずということになるわけでございます。局地というのはもう長年にわたって環境基準が未達成というところでございますから、局地汚染対策というのは相当大変なものになると予測されるわけでございますけれども、この法制度を実効性あるものにしていくことが何よりも重要でございますが、この点についてどのように取り組むべきとお考えか、よろしくお願いを申し上げます。

浅野参考人 先生御指摘のとおり、幾ら制度をつくり、計画をつくっても、実効性が上がらなければ意味がないということは、全くそのとおりでございます。

 私、先ほど意見陳述の中でも申し上げ、また先生方からの御質問にもお答えしたわけでございますが、やはり関係する主体が非常に多いということをしっかり認識すべきだというふうに考えております。

 従来は、ともすれば、道路管理者は道路管理者として、一生懸命やっておられるんですけれども、道路管理者の枠の中だけでおやりになるということで、結局は効果を十分上げていない。あるいは、公安委員会、警察も、一生懸命警察の権限内でやれることはやろうとお考えになるけれども、効果を上げていない。それから、都市計画は都市計画で、都市計画の論理だけで動いてしまうというようなことがございますから、私、審議会の立場といたしましても、公害防止計画のようなということを特に書いておりますのは、そういう関係する主体がお互いにこの一点では協力するとか努力をするというようなことを集中していくということが絶対に必要なことではないかというふうに思うわけですね。縦割りではまずい。

 ですから、自治体の中でも、自治体というのは、割合、縦割りじゃなくて、首長さんのもとで横割りで物が動くという体質を持っておりますから、それにさらに縦割りになりがちな国の出先などがしっかりとかんで、そこで全体協議会的なものがうまく動いていくということになればうまくいくだろう。

 それからもう一つは、民間事業が割合に勝手な自分の論理で立地をしたり動いたりしてしまうということがございまして、そのことが、結局対策を相殺するというようなことがございます。

 今回、ですから、その中で、新築建築物についての届け出とそれに対する知事からの意見というのは制度化されましたが、できれば、これを既存の建物の改築とかといったような場合にも及ぼしていくことができればなお効果的ではないかな。全くの新設の場合だけということに限りますと、もう既に問題の局地の地域というのは新たに物が入る余地というのは余りない場合が多いと思いますので、その辺は今後とも実際の運用上は考えられていく必要があるだろう。

 このあたりも、一つのヒントを法律が示しているということが言えますから、現場ではもっと柔軟にそれを広げていくということができると思いますし、この法律をもとに、さらに条例を強化していくというようなこともできるんではないかと思いますから、そういう運用も期待できるということを考えております。

原参考人 私も、今浅野先生がおっしゃったこと、ほぼ同じことを考えておりました。

 今回重点対策地域という枠組みができた、これは初めて自治体と、それから道路管理者、さらには交通規制者、警察ですね、さらには都市計画まで含めた総合的な対策をとる枠組みができた。枠組みができたことに今回の意味があるのかな。

 あと、その枠組みの中で、どうしていくのか。これは本当に、地域住民だとかいろいろな関係者の意見なども反映させて、効果的なものをつくっていく努力がこれから自治体に求められるし、国としてはそれをバックアップしていくという体制が本当にできるのかどうかで、まさに今回の法律の実効性が決まってくるのかな、効果が決まってくるのかなというふうに思います。

小林参考人 既に御発言がございましたので、私自身の方から新たというのは余りないわけでございますが、やはり今回の計画づくりというのは都道府県が行うわけでございまして、今まで大体、都道府県が計画をつくりましても、国の機関がほとんど協力をしていただけないというのが実情でございます。

 そういう意味で、今回、この計画をつくったものにつきまして、ぜひ、中心になりますのは国土交通省でございますが、十分協力し、一体となってやっていただくということが重要でございます。

 特に局地汚染対策につきましては、単に自動車単体の問題ではなくて、そこの道路構造の問題、それと、交通流をどう分散させていくかというのが重要な問題になります。そういう意味では、警察も当然でございますが、やはり国交省における道路政策というのが大変重要になります。そういう意味で、ぜひこの辺についてこれからの対応が重要ではないか。

 私どもでは、先ほども御説明申し上げましたように、国道四十三号線につきましては周辺地域環境会議というものを設けておりまして、これは関係者がすべて入っております。自治会とか地元の方も入っておられます。ここでいろいろな情報が入ってくるというのは大変今効果的に動いております。こういうことがこれから重要ではないかなと思っております。

 以上です。

江田(康)委員 今三人の先生からお伺いさせていただきました。

 確かに今回の法改正は、総合的な対策の枠組みができるということで大変に重要でございまして、やはり国としてもその計画を実効的なものにしていくためにも、関係各主体が協力してやっていくということが大変に重要ということ、今回の改正の審議においてもしっかりとこれを審議していくべきであるということを思っております。

 時間が大変短いので、あと一つ、二つでございますけれども、流入車対策についても、これは大変重要な改正項目でございまして、小林参考人にお伺いをさせていただきますが、兵庫県におかれましては、本当に早い段階から流入車対策に大変尽力をなされてきた。また、そういうお話が先ほどもありました。

 実施に当たって、お伺いしておかねばならないこととして、どのような御苦労があったか、また、その上で、いわば条例だけでは進まないところを、今回の法改正でどう期待していくことができるか、その点について忌憚のない御意見をお伺いしたいと思います。

小林参考人 今回の問題、条例による流入車規制でございますが、これ、実は私が県を退職した後、私の発案がベースにあったかもしれないんですが、その後制定されましたので、具体的に苦労した内容については、仄聞ということではございますが、流入車をチェックするのにどうやっていくのか、なかなかチェックが難しいという問題がございました。実際にやっておりますのは、歩道橋等にカメラを設置して、そこで自動的にナンバープレートを拾い出して、どこから来た車かというのをチェックするというやり方をとっているというのが最大の仕事でございますが、相当の人手がかかってございます。

 そういう意味で、大変なことにはなっておるわけでございますが、ただ、そういうことが他府県に普及しまして、予想よりも相当低い検挙率になっているということは、相当効果があったというふうには思っております。

 ただ、他府県がどのような状況で対応されているかということについては、やはり地方自治体というのは大変難しい対応にございます。そういう意味から、今回の法律によりまして、他府県からのそういう計画づくり等の情報が入ってくるということは大変効果が出てくるのではないかという意味で、県が実際にやっております流入規制と、今回の法改正によります各事業者等との計画づくりが相まって、効果が高まっていくのではないかというふうに期待してございます。

江田(康)委員 先ほどもございましたけれども、これは、流入車対策並びに局地汚染対策としても大変重要なポイントだと思うんですけれども、小林先生、兵庫県において、国道四十三号周辺地域環境会議のお話がございました。地域ぐるみの対策として大変参考になるわけでございますけれども、この点について、具体的に最後に御教示をしていただいて終わりたいと思うんですが、よろしくお願いいたします。

小林参考人 国道四十三号周辺地域環境会議でございますが、これは事務局は、国土交通省の近畿整備局が事務局を持っておられまして、地元のほとんどの方がメンバーとして入ってございます。そこでいろいろな意見交換がなされるわけでございますが、ほとんどの意見について、握りつぶしという言い方は悪いんですが、そういうことが全くございません。すべてについて意見を出していただいて、それをみんなで真摯に検討してという形で、繰り返し繰り返し、もう既に十回開催されてございます。

 そこでいろいろな意見を調整していくという意味で、やはり関係する機関がお互いに何ができるかという議論をするという意味では、大変有効な手段であるというふうに考えてございます。そういう意味で、こういう会議というのがこれからも各地域でつくられていくということを期待したいと思っております。

江田(康)委員 時間でございます。参考人の先生方、大変にありがとうございました。

 終わります。

西野委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

西野委員長 引き続き、内閣提出、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官本田悦朗君、国土交通省道路局長宮田年耕君、環境省総合環境政策局環境保健部長上田博三君及び環境省水・大気環境局長竹本和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西野委員長 これより政府に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤三津枝君。

近藤(三)委員 自由民主党の近藤三津枝でございます。

 本日は、自動車NOx・PM法の改正法案について、その内容、法の実際の適用方針などについて御質問いたします。

 この法案と関係の深い環境基準の達成状況を見てみますと、平成十七年度の全国の二酸化窒素、NO2及び浮遊粒子状物質、SPMの観測データは、一般環境大気測定局、自動車排出ガス測定局ともに、九〇%以上が環境基準を達成しております。全体としましては、これまでの官民そして地域を挙げての自動車排出ガス対策の効果が測定値の値にあらわれてきているのではないかと思っております。

 一方で、自動車NOx・PM法の適用を受ける対策地域には、大阪府、兵庫県の関西圏、そして首都圏、中京圏の八都府県が地域指定をされております。このNOx・PM対策地域内の自動車排出ガス測定局について、二酸化窒素の値を見ますと、八五・一%の測定局で環境基準を達成していますが、個別に見ますと、東京都の自排局の達成率は五七・九%でございます。非常に地域的なばらつきがあるということがわかります。十年連続して環境基準を達成できていない測定局も多いと聞いております。

 このような現状の環境基準の達成状況についての政府の御見解と、今回の法改正の必要性について、環境省の御所見をお聞かせください。

    〔委員長退席、石崎委員長代理着席〕

若林国務大臣 近藤委員にお答えいたします。

 委員が御指摘なさいましたように、大気の汚染状況につきましては、自動車NOx・PM法に基づく各種の対策と自治体関係者、さらにその関係しておる皆さん方の御努力の結果、全体としては改善の傾向にあるということでございます。

 しかしながら、自動車交通量の多い一部の局地については、長期にわたり、環境基準が未達成の状況が継続いたしております。こうした局地については、流入車の占める割合が高いというのが一つの特徴でございます。

 このような状況にかんがみまして、局地における大気環境を早期に改善し、大気環境基準の達成を確実なものにするために、自動車NOx・PM法を改正することが必要だという判断をしたものでございます。

近藤(三)委員 局地対策として、今回の法改正の重要性についてよく理解できました。ありがとうございます。

 次に、具体的な改正案の内容などについてお伺いさせてください。

 今回の法改正の第一のポイントは、NOx、SPMの局地対策として、重点対策地区を設け、計画を立案し、この地区で重点的な対策を行うことにあると思います。重点対策地区の指定については、都府県知事が行うことになっています。それぞれの地域で指定の仕方について大きなばらつきがありますと、現地での混乱も予想されます。

 環境省としては、知事が、大気環境がどのような地域を重点対策地区に指定することを期待しておられるのか、また、指定についてのガイドラインなどをどのように都府県などに示されようとしているのか、お伺いいたします。

竹本政府参考人 ただいま御質問いただきました重点対策地域につきましてでございますが、この法律の対策地域内で、長期にわたりまして二酸化窒素など大気環境基準が達成されていない地区でありますとか、またこれに準ずる地区でありまして、大気の汚染の防止を図るということが特に必要であるという地区につきまして、都道府県知事が指定をするということを私どもとして期待しておるところでございます。

 また、この重点対策地区の指定に当たりまして、先生御指摘のとおり、地域によって大きなばらつきが生じることがないように、国の方で閣議決定で定めることとしております基本方針というものにおきまして、重点対策地区の指定に関する基本的な考え方を示してまいりたいと考えているところでございます。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 重点対策地区の指定のガイドラインを法の第六条、第八条の総量削減基本方針の中で明らかにしていくということは理解させていただきました。

 例えばなんですけれども、十年連続してあるいは長期にわたって環境基準を達成できていない地区につきましては、重点対策地区に指定するなど、明確な指針を総量削減基本方針にお示しいただき、地域による取り扱いに大きな差が生じないように御配慮いただければと考えております。よろしくお願いいたします。

 さて、続いてまいります。

 改正法案で、重点対策地区に建設される、新たな交通の集中、発生の可能性のある、一定規模以上の劇場、ホテル、事務所などの特定建物を新築する際に、NOxなどの排出抑制に配慮するよう、事前届け出制度が用意されております。この特定建物の届け出制度を生かすためにも、重点対策地区は、幹線道路沿いやふくそうする交差点などの発生源だけではなく、対象となる幹線道路、交差点を利用して流入する周辺の建築物も視野に入れる必要があると考えております。このため、ポイント的なエリアではなく、一定の広がりを持ったエリアを重点対策地区に指定するべきではないかと考えております。

 環境省としては、幹線道路などからどの程度の広がりを持ったエリアを知事が重点対策地区として指定することが望ましいと考えておられるのか、また、この点について、都府県とどのように連携を図ろうとされておられるのか、お考えをお示しいただけますでしょうか。

竹本政府参考人 今お尋ねの重点対策地区の具体的な範囲ということでございますが、局地汚染のあります交差点等の周辺を想定しておるところでございます。具体的には、地区によりまして状況が異なることでもございますので、当該地区の汚染の状況でありますとか、また土地の利用の状況、交通の状況等を勘案いたしまして、都道府県知事が定めることとなるところでございます。

 いずれにしましても、重点対策地区の指定に関する基本的な考え方、先ほど申し上げましたとおり、総量規制の基本方針に盛り込みまして、都道府県知事による指定が円滑になされるよう努めてまいりますし、都道府県とも密接に連携を深めてまいりたいと考えております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 重点対策地区の範囲、エリアについては、基本方針の中で明らかにされていくということは理解させていただきました。

 繰り返しになりますけれども、特定建物の届け出制度を有効に生かしていくためにも、高度な土地利用がなされている地域では、ポイント的な地区指定ではなく、一定の広がりのある地域指定を行い、そのエリアに建築される特定建物の新設に対し、排ガスの抑制策がなされるよう御配慮いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 続いてまいります。

 今回の法改正におきまして、事前の届け出の必要な特定建物は、一定規模以上の劇場、ホテル、事務所、オフィスビルに限定されていますが、一方、不特定多数の人々が集まります大規模小売店舗は、今回の特定建物の届け出対象外になっているのではないかと思います。今回の法律改正で、大規模小売店舗を届け出対象外とされた理由をお伺いします。

竹本政府参考人 今回の改正法案及び大規模小売店舗立地法は、両方とも自動車の交通需要の増加に着目をしまして、交通渋滞の解消など、交通流の問題に対処しようとするものでございまして、対策は共通するものでございます。

 そこで、大規模小売店舗の新設につきまして、届け出義務の重複を避けるために、大規模小売店舗を特定建物の定義から除外するということにしたものでございます。

近藤(三)委員 大規模小売店舗立地法の規定により既に駐車スペースの確保などに配慮する事項を事前に届け出るなど、本改正法案と一部共通、重複していることは理解しております。

 しかし、今回の改正法は、そもそもNOx・PMの発生抑制という環境対策に力点を置いて、自動車排出ガス基準に適合した車両の流入を促す措置などがそれぞれの立場から実行されることを期待しているのではないかと理解しております。この点から、今回は大規模小売店舗が特定建物から除外されるといたしましても、新設そして既設の大規模小売店舗に対して、今回の法改正の目的について、十分な理解を求める必要があると思います。

 大規模小売店舗に搬入、搬出する車両の排出基準適合車への転換を促進することは大切だと思っておりますし、また大規模小売店舗を利用するお客様にも、車以外の交通手段を呼びかけたり、低公害車の利用の促進をお願いするなど、店舗事業者として必要な事柄、幾つかあると考えております。この点については、後ほど質問させていただきます改正法第四十条の事業者の努力規定なども活用して実質的な効果を上げていただきたいと考えております。

 続きまして、たくさん質問を用意させていただいておりましたので、順番を少し変えさせていただきます。

 排出抑制の前提となります自動車排出ガス低減対策について、先にお伺いさせてください。

 平成十七年の中央環境審議会第八次答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」で、ディーゼル自動車の排出ガスの二〇〇九年目標が定められました。この二〇〇九年目標はPM及びNOxの大幅な低減を図り、基本的にガソリン車と同じレベルの排出ガス規制をディーゼル車にも行うことになります。

 また、先般の中央環境審議会から環境大臣への意見具申におきましても、単体対策による窒素酸化物及び粒子状物質の削減効果が最も高いことにかんがみると、自動車製作者は、二〇〇九年目標達成車についてできる限り前倒しで市場に投入できるよう努めるべきであると、高い水準の規制適合車の速やかな市場化を求めております。

 世界最高水準の排出ガス規制を実施するということになります二〇〇九年目標を満足する自動車が一日も早くマーケットに送り出されることを私も期待しております。二〇〇九年目標についての自動車排出ガスの量の許容限度についての環境省告示の改正時期及び自動車メーカーによる適合車の販売見通しについて、お伺いいたします。

    〔石崎委員長代理退席、委員長着席〕

竹本政府参考人 二〇〇九年目標に対します自動車排出ガスの量の許容限度の改正でございますが、目標値が現行規制と比較して大幅に低減される厳しいものでございまして、メーカー各社とも、おおむね要素技術の開発は終了したということでございますが、車両全体では開発段階であるというように考えておるところでございます。

 環境省といたしましては、メーカーの技術開発を促進し、早急に規制の実施時期を見きわめまして、二〇〇七年中を目途に許容限度告示を改正する手続を行う予定としております。

 このような状況から、〇九年目標に対応しました自動車については、恐らく早いものでは二〇〇九年ごろには発売されるものではないかなというように考えておるところでございます。

近藤(三)委員 お答えいただきまして、ありがとうございます。

 自動車メーカーそして関係省庁の連携の中で、二〇〇九年基準適合車が一日も早く市場化されるために、その前提となります環境省告示の公表を期待しております。

 さて、先ほどからお伺いしております今回の法律改正の柱の局地汚染対策について、もう一つの柱について今度はお伺いさせていただきます。流入車対策の方でございます。

 ことしの二月二十三日に、中央環境審議会から環境大臣に対する今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について、意見具申がなされました。その中でも、以下の点について指摘があります。「流入車対策については、対策地域外からの車両が無規制であるということは制度全体の公平性の面から問題である」「対策地域全体において排出量抑制を図ることが必要である」と指摘されております。

 このような意見具申を踏まえますと、流入車対策はNOx・PM対策地域全域について実施されてもよいと考えておりますが、改正案では、NOx・PM対策地域の中に設定される重点対策地区の箇所から環境大臣が指定した箇所を指定地区に定め、流入車対策を適用することとなっております。このように、今回の法改正では、流入車対策が実施される地域は、対策地域全体に図るべきとする意見具申に比べ、かなり限定されているように思われます。

 なぜ、このままでは環境基準の達成が難しいと考えられます重点対策地区全域を指定地区とし、流入車対策を実施されないのか、その理由をお聞かせください。

竹本政府参考人 ただいま御指摘いただきました指定地区の考え方でございますが、この指定地区というのは、流入車対策を講ずる上での一つの要件として構成をしておるところでございます。したがいまして、交通量全体に占める流入車の割合が通常よりも相当程度高い地区を指定地区として対象とするということとしております。

 したがいまして、こうした考えのもと、環境省におきまして、重点対策地区のうちから流入車の割合等を勘案しまして指定地区を決定することとしております。

 したがいまして、必ずしもすべての重点対策地区が自動的に指定地区として指定されることとは限らないわけでございますが、いずれにしても、局地汚染対策また流入車対策、あわせて実効のあるものとするように私どもも努めてまいりたいと考えております。

近藤(三)委員 指定地区の指定につきましては、意見具申の考え方も踏まえていただきまして、流入車対策は局地対策として効果のある制度となりますように、都府県、そして地元関係者、関係省庁との前向きな連携をとっていただきたいと思っております。

 さて、今回の法改正による流入車対策では、NOx・PM対策地域の外側の周辺地域に本拠地がある運送事業者などで、一定以上の台数を使用し、かつ指定地区内を一定回数以上運行する事業者が流入車対策の対象となっております。そして、そのような周辺地域の事業者がNOx等の排出抑制計画を作成し、計画書を知事に提出する必要があります。

 法の適用の対象となる事業者の所有する車両の台数や指定地区内への流入回数は、それぞれ政令、省令で定めることになっておりますが、環境省としては、この台数、回数について、具体的にどのような数値を定めようとしておられるのか、お伺いします。

 また、それぞれの指定地区ごとに周辺地域の範囲は省令で定めることになっていますが、指定地区の隣接地域からどの程度の範囲を周辺地域に指定しようとお考えなのか、この点についてもお聞かせください。

竹本政府参考人 まず最初に、所有する自動車の台数の要件についてでございますが、政令で定めることとしておりますが、周辺地域内の一つの都道府県内に所有している自動車の台数が三十台以上とすることを現時点で想定しておるところでございます。

 また、指定地区におきます自動車の運行回数の要件につきましてですが、継続的かつ頻繁に指定地区を運行するような事業者を義務づけの対象とするということを想定しておりまして、具体的な水準については今後検討をさせていただきたいと思っておるところでございます。

 また、周辺地域の具体的な範囲につきましては、今後、指定地区が定まり次第、当該指定地区において運行されている流入車の登録地につきまして調査を行った上で定めていくこととしているところでございます。

近藤(三)委員 周辺地域の範囲、そして指定地区内への輸送については、流入車対策の適用を受ける事業者の範囲は関係者にとっては非常に関心が高い事項と考えております。運行回数については具体的な数字について御答弁いただけませんでしたけれども、これらの指定につきましては、法律改正の効果が発揮される適正なものとなりますよう努めていただきたいと考えております。

 さて、周辺地域の範囲、事業者の所有台数、指定地区への流入回数が政令などで決まりますと、この基準に基づいて、流入車対策の対象となる周辺地域内事業者は、みずからの事業活動に照らして、排出抑制計画などを作成し、知事に計画を提出することになります。一方で、法の適用を受ける以上の台数、流入回数の実績がある事業者であるにもかかわらず、排出抑制計画を策定しない事業者があるかもしれません。

 法律の適用の公平性を確保する観点からも、このような事業者をどのように把握し、適正な対応を求めていこうとお考えなのか、その具体的な対応策についてお伺いします。

竹本政府参考人 先生御指摘のとおり、この改正案の施行に当たりまして遺漏のないようにしていかなければいけないということはおっしゃるとおりでございます。

 改正案におきましては、指定地区に係る実態調査などを踏まえまして、都道府県知事が周辺地域内事業者に対しまして、使用する自動車の台数でありますとか、また指定地区における運行の状況等の報告を求め、また立入検査を行うことができるということになっているところでございます。これによりまして、該当する事業者を把握し、必要な対応を求めていくことと考えております。

 また、こうした対象者に対しましては、都道府県知事による指導や勧告などの措置を厳正に実施することによりまして、義務の履行を確実に確保してまいりたいと考えております。

近藤(三)委員 ぜひ適切な対応をお願いいたします。

 さて、今回の改正で定められます周辺地域を本拠地とする自動車運送事業者などの流入車対策も重要な施策と考えておりますが、一方で、この法律の適用を受けない規模の運送事業者や一般車両の指定地区への流入などに対しても、排出抑制に協力がいただけるよう、制度全体の公平性を確保していくことが必要だと考えております。

 この点につきましては、先ほど取り上げました中央環境審議会から環境大臣への意見具申の中でも、流入車も含めた適合車への転換の促進策の必要性について、次のような提言がなされております。「容易に車両が自動車NOx・PM法上の車種規制に適合した車か否かが識別可能なステッカー制度等を構築する必要がある。」このように提言されております。

 この点につきましては、先ほどの参考人質疑でも、ステッカー制度の有効性について浅野先生からも御発言がありました。私も、一目でわかる適合車ステッカー制度は、わかりやすい、非常に有効な施策だと考えております。そして、一般への適合車の使用の促進につながるとも考えております。

 ステッカー制度について、今後、環境省としては、関係省庁などと連携し、どのような制度の実現を図っていこうと考えておられるのか、環境大臣のお考えをお聞かせください。

若林国務大臣 近藤委員が御指摘になられましたように、先般の「今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について」の意見具申の中に、委員が御指摘のような提言をいただいているところでございます。

 ステッカー制度は、車両が自動車NOx・PM法上の車種規制に適合しているか否かということとを容易に識別可能とするという意味では大変効果があるものと考えておりまして、中央環境審議会での意見具申を踏まえまして、この提言をどのように実行していくか、検討したところでございます。

 このステッカー制度は、流入車対策の実効性を担保するとともに、自動車輸送業者による適合車の使用を促していくという効果も期待できるわけでございますので、環境省としては、具体的な枠組みづくりにつきまして、今後、国土交通省や関係事業者等と連携、相談をして、効果的にこのステッカー制度を実現させていきたいと考えております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 ステッカー制度の導入は、排出基準適合車の普及のための一つの国民運動につながることと考えております。本件につきましても、今後の環境省のお取り組みを期待するとともに、私もこの導入に向けた動向を引き続き注視させていただきたいと考えております。

 さて、先ほど、大規模小売店舗の特定建物への適用についての質問をさせていただきました。その中でも指摘させていただきましたが、改正案の第四十条では、事業者の努力が規定されております。

 第四十条の第一項では、周辺地域内の自動車がNOx・PM対策地域内を運行する場合、その車両について、道路運送車両法の技術基準に適合していること、第四十条の第二項では、NOx・PM対策地域内で貨物輸送を継続的に行わせている事業者は、使用する輸送事業者に対し、排出抑制について対応することを求めています。

 この第四十条第一項、第二項で言う事業者の範囲は、具体的にどのような事業者を指しているのでしょうか。その範囲をお聞かせください。

竹本政府参考人 今回の改正法案におきまして、お尋ねのございました流入車対策に関する努力義務を課すこととしている事業者は、次の二つの種類と考えてございます。

 まず第一は、対策地域内におきまして、周辺地域内に登録されている自動車をみずから運行する事業者、そして第二は、運送事業者に、周辺地域内に登録されている自動車を使用しまして、対策地域内におきまして、貨物の運送を継続して行わせる事業者、いわゆる荷主、これら二つをこの事業者の対象範囲と考えております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 第二項については、いわゆる荷主を指すということですから、対策地域内の工場や大規模小売店舗も含まれる、このように理解いたしました。

 先ほどの特定建物に大規模小売店舗が適用除外といたしましても、この規定をうまく活用し、大規模小売店舗に周辺地域からの荷物を搬入、搬出する車両が排出基準適合車に転換していくよう、効力を高めていただきたいと思います。また、努力義務を上回る必要な措置の義務づけなどにつきましても、引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 さて、本日は、自動車NOx・PM法の改正案の内容、そしてその運用及び関係する排出ガス基準などについて質問をさせていただきました。

 政府は、平成二十二年度までに大気環境基準をおおむね達成することを目標に掲げておられます。あと、残された年限は三年です。

 最後に、この目標達成に向け、環境大臣は、関係省庁、地方自治体、自動車関係団体などとの連携の中でどのようにリーダーシップを発揮されようと考えておられるのか、取り組み方針と御決意をお聞かせいただけますでしょうか。

若林国務大臣 この改正法案を成立させていただきましたら、これに基づきまして、局地汚染対策及び流入車対策を的確に実施し、低公害車の普及の促進、物流、人流、交通流対策等窒素酸化物等の排出抑制対策をさらに積極的に講じてまいりたいと思います。

 これらの対策はいずれも関係省庁などの所管にまたがるものでありますので、お互いに協力することが不可欠であります。このために、この施策の推進に当たりましては、環境省がみずから先頭に立って、関係省庁、都道府県などと協力、連携しながら、施策が実効あるものとなりますように、全力を尽くしてまいりたいと考えております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 最後に若林大臣から非常に力強い御発言をいただきました。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

西野委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 参考人質疑に引き続きまして、この自動車NOx・PM法の改正案について質問をさせていただきます。

 大都市圏におきましては、自動車交通量が大変多く、また交通渋滞が多発しております。そういうことから、二酸化窒素さらには浮遊粒子状物質を原因とする大気汚染が依然として発生している状況でございますが、この問題を可及的速やかに解決していくということが喫緊の課題であり、我々の目標でもございます。

 そこで、最近の大気汚染状況について見ますと、全体としては改善傾向にはあるものの、やはり自動車交通量の多い一部の局地においては、長期間にわたり、環境基準が未達成の状況が継続しているわけでございます。また、このような局地においては、流入車の占める割合が高い、そのように報告がなされておるわけでございます。

 こうした状況の中で、局地汚染対策及び流入車対策を柱とした自動車NOx・PM法の改正が行われるということは、時宜を得たものと考えます。

 我々は、大都市圏の大気環境を改善して、健康で住みよい社会を実現するという強い決意のもとで、今後とも自動車排出ガス対策を進めていかなければならないと思うわけでございます。

 ここで、環境省にお尋ねをさせていただきます。

 今回の改正案の柱であります局地汚染対策についてお伺いをさせていただきます。

 重点対策地区における対策としまして、オープンスペースの確保、また右折レーンの整備、信号機制御の高度化等を具体化していくことが考えられますが、現に東京都板橋区大和町交差点におけるオープンスペースとしての整備、それから愛知県安城市の国道一号線における右折レーン整備による走行速度向上などの先行事例におきまして、窒素酸化物の排出抑制や濃度減少に一定の効果が出ていると聞いております。

 環境省としましては、この重点対策地区に係る制度の実効性を期すために、こうした事業の実施について国や地方の関係行政機関にきちんとした働きかけを行っていくべきではないかと考えますが、環境副大臣のお考えをお伺いいたします。

土屋副大臣 江田委員が今おっしゃったとおり、この対策というのは今回の法律の柱でありまして、大変重要であると思っております。そういう意味で、連携をしっかりとりまして、地方に対して、また関係機関に対しましても、密接な情報交換をしながら、しっかりと進むように頑張っていきたいと思っております。

江田(康)委員 大変シンプルな御答弁でございます。

 私、先ほども参考人質疑の中で参考人の皆様にも確認をさせていただいたところでございますが、こういう法改正、局地汚染対策等において制度化をしていくとしたとしても、それが実効性あるものにしていかなければならないわけでございまして、そういう中において、国、地方、さらには関係するあらゆる機関が協力をしていくということが大変重要かと思っております。

 先ほども参考人の方からありましたけれども、今回の法律の改正は、関係するすべての主体が総合的に取り組む枠組みが示されたものとして大変に重要ということの御指摘がありました。国の支援等が、またリーダーシップが大変重要になってきますので、その点で力強いリーダーシップを発揮して、働きかけをしっかりと関係機関に行っていただきたい、そのように申し上げさせていただきます。

 次に、国土交通省に関連して御質問をさせていただきますが、重点対策地区における具体的な事業推進には、道路管理者としての役割が大変重要でございます。大都市圏の環境基準を長年達成できていないような地域に対して、環境改善に向けた今後の国土交通省の取り組みについて伺いたいわけでございます。

 やはり長年達成していないところをどう、ハード的にもソフト的にも、環境基準を達成するために持っていくか、ここが大変重要でございまして、今回の法改正を踏まえてどのような対策を、取り組みを講じていこうとされているかをお伺いさせていただきます。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 道路管理者といたしまして、やはり地区の交通がまずもってスムーズに流れることというのが重要なのではないかなと思っております。

 例えば、NOxについて見ますと、走行速度が二十キロ、それに対しまして走行速度が四十キロに上がりますと、NOxの排出量が三五%低減をいたします。そういう観点から、例えば大都市の環状道路でありますとか、あるいは交差点の立体化でありますとか、あかずの踏切対策、そういうものでやはり走行速度を上げる対策というのが全般的には必要かなと考えておりますし、これは首都高、阪高の方でやってございますが、住宅地を通る路線と湾岸部を通る路線、料金を変えまして湾岸部の方に誘導するようなロードプライシング、有料のロードプライシングもやってございます。

 今委員お尋ねの局地対策でございますが、先ほどお触れになりました交差点の対策、それが有効かなと思っております。例えば右折レーンを設置しますとか、あるいは全体的な車線数の増減を考えていくとかというのがございますし、あるいは緑地帯、環境施設帯というのも、スペースがどういうふうになっているか、いろいろ場所によってあると思いますが、そういう即地的な配慮もしながら、道路管理者としてできる限りの対策をしてまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今国土交通省の方から申されました点を含めて、道路管理者としての国土交通省の強いリーダーシップで進めていただけるように強くお願いをしたいわけでございます。また、ここは国土交通省と環境省が本当に協力してやっていかなければ実効性は上がらないわけでありまして、その点、国土交通省の力強い御協力をよろしくお願いしておきたいと思います。

 次に、対策地域における車種規制の問題に関して質問をさせていただきます。

 自動車NOx・PM法は、環境改善の成果を上げてきた一方で、対策地域内に使用の本拠を有する排出基準に適合しない車両については、使用過程車であっても車検証の交付を受けられない制度となっているため、この車両の代替を強制される中小トラック事業者等の経営基盤を揺るがして、事業者の中には廃業を余儀なくされる、そういうケースも出てきているわけでございます。我々は国会議員でございますので、地域、地方を回れば、その声は大変多いのは皆様方も実感されていると思います。

 財源をやりくりして環境対策を講じる事業者に対する公的な支援措置が重要であり、また、それがなければ、そういうインセンティブがなければ、絵にかいたもちになりやすい、そういう意味で、まず、これまでに講じられた支援措置の内容と効果についてどのようになっているか、その点について伺わせていただきます。

竹本政府参考人 ただいま委員の方から御指摘のございました、事業者において大変御努力をいただいておる、また御協力をいただいているということを私どもも承知させていただいているところでございます。

 今お尋ねの事業者に対する支援ということでございまして、次の三つの点を柱として支援を展開してきております。

 まず第一が、自動車取得税の軽減などの税制上の優遇措置、これが第一点でございます。二点目は、ハイブリッド自動車でありますとかCNG自動車の購入に当たりまして補助を行う、これが二点目でございます。三点目は、政府系の金融機関からの低利融資でございまして、具体的には、中小企業金融公庫、また国民生活公庫などの政府系の金融機関からの低利融資、以上三点を柱に御支援をしてまいりました。

 この結果でございますが、自動車NOx・PM法に適合しましたディーゼル車や低公害車の導入が促進をされまして、対策地域内におきます自動車窒素酸化物等の排出量が削減をされてきたところでございます。

 具体的な数字を申し上げますと、私どもの把握している資料で申し上げますれば、窒素酸化物につきましては、平成十四年度から十七年度にかけまして対策地域内の全体の排出量が一九%削減、また、粒子状物質につきましては、同じく十四年度から十七年度にわたりまして、排出総量でございますが、三九%の削減ということで効果を見出しておりまして、私どもといたしまして、大気環境の改善に向けまして効果が着実に上がっているものと考えておるところでございます。

江田(康)委員 今回の改正を受けて、事業者に対する支援措置というのはさらに今後充実強化をしていかなければならないと思うんですが、その点、環境政務官、どのようにお考えでしょうか。

北川(知)大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 従来までの取り組みについては、今局長の方からお話をさせていただきました。そして、先ほどの参考人の御意見の中にも、やはり買いかえ制度の拡充等々の御意見もありました。

 それを受けまして、今後はやはり事業者の皆様方の負担を軽減する支援措置を強化していくということは我々も認識をいたしておりまして、例えば、車両の更新に係る事業者の負担を軽減するため、今年度から新たに政府系金融機関、先ほども局長の方からお話がありましたけれども、中小企業金融公庫及び国民生活金融公庫におきまして、低利融資の対象にNOx・PM低減装置の装着を追加いたしているところであります。

 そして新たに、重量車の燃費基準を達成し、かつ最新排出ガス規制にも適合したディーゼルバス、トラックを導入する事業者等に対する補助を実施することといたしております。適合車とそうでない車との価格差の二分の一を補助する、こういう方向で取り組んでいきたいと考えております。

 このような追加措置を通じて、今後とも事業者に対する支援を進めてまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今政務官からも御説明があったように、これからまた新たにこれらの支援措置が講じられていくことになるんですが、特に、次の流入車対策でもそうなんですけれども、新たに流入車対策で規制される事業者等に対しては、特にこれまでも要望が大きいんですが、NOx・PMの低減装置の装着等において、低利融資というよりも補助が必要であろうというような声も大変大きいものがございます。

 これらの支援措置が今後講じられますけれども、その状況を見ながら、やはり効果が、これまでの効果は上がったという御説明がございましたけれども、その支援措置と対策、効果の結果を分析して評価して、実効性のあるような支援措置というのをさらに考えていくべきときには考えなくてはならない、そのように申し上げて、次の質問に行かせていただきます。

 対策地域における車種規制の結果、対策地域内外の事業者の間に不公平感があるという意見があります。そこで、次に、流入車対策について質問をさせていただきます。

 対策地域内に使用の本拠を有する自動車につきましては法規制により代替が進められるのに対して、対策地域外の事業者に関しては、自動車の平均使用年数が延びていることもあって、代替が進んでおりません。一方で、対策地域内における流入車の交通量割合を見ますと、例えば平成十七年度の貨物車で一八%を占めているわけでございます。この流入車対策の実施に当たりましては、対策地域内と対策地域外の自動車について、それぞれへの影響なり双方のバランスをきめ細かく考慮して、大気環境の改善を進めていくことが重要でございます。

 今回の改正案で講じようとしている流入車対策の内容、それから対象者がどのような対象者なのか、さらにコスト負担などによって事業者の対応が困難とならないのか、環境省のお考えをお伺いしておきます。

竹本政府参考人 今回導入いたします流入車対策でございますが、まず、対策地域に隣接いたしました周辺地域において自動車を一定台数以上保有している、またその自動車を指定地区において反復継続して走行させる事業者を対象といたしまして、窒素酸化物などの排出抑制に関する計画を作成していただき、提出していただく、また定期的に報告をすることなどを義務づけるものでございます。

 この計画の具体的内容でございますが、例えば、貨物自動車の積載率の向上などを通じました車両使用量を削減するとか、またエコドライブの実施に当たりまして具体的に職員の研修を進める、そしてまた低公害車など計画的な導入を図る、こういったものを、事業者の可能な範囲での取り組みを促すものでございます。そういう意味では、過大な負担を伴うことなく実効性を上げることができるものというように考えているところでございます。

江田(康)委員 先ほどの事業者の負担ということにもつながりますけれども、やはりそのような、今局長がおっしゃったような対応、車種の買いかえをせずとも、そういう配車計画を立てたり、またエコドライブを推進したり、そういうような対応もできるんだというきめ細かい指導も、やはり事業者また流入車対策の対象になる方々に丁寧に説明をしていくべきだと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、地球温暖化対策との関係について質問をさせていただきます。

 京都議定書目標達成計画の実行は、もう今や国民的課題でございます。また、六月に開催が予定されるG8サミットにおきましては環境問題が大きな議論のテーマになると言われておりますし、さらには、来年のサミットは日本で開催されるわけでございまして、議長国として地球温暖化への我が国の強いリーダーシップが問われることになるわけでございます。

 この運輸部門における温室効果ガスの削減も大変重要な課題でございまして、そうした状況を踏まえますと、例えば、エコドライブや物流の合理化、公共交通機関の利用促進などの対策というのは、窒素酸化物などの総量削減と同時に地球温暖化防止の双方に効果があるわけでございまして、一層強化していく取り組みが今後必要かと考えますが、これについては環境省のお考えはどうでしょうか。

竹本政府参考人 委員御指摘のとおり、エコドライブや物流の合理化、公共交通機関の利用促進などは、窒素酸化物等の排出量を削減すると同時にCO2の排出量を削減するという点で大変重要と私ども認識しております。

 京都議定書目標達成計画の中におきましても、省CO2の観点からエコドライブや物流の合理化などが位置づけられておるところでございます。

 環境省といたしましては、この改正法案の実施に当たりまして、先生御指摘の点を十分に踏まえまして、関係機関とも連携をいたしまして、しっかりと対応させていただきたいと考えております。

江田(康)委員 しっかり対応をしていきたいし、またいっていただきたいと思うわけでございます。

 次に、微小粒子状物質についての環境基準策定に関して質問をさせていただきます。

 都市における大気汚染防止が急務であります。汚染物質の健康影響をきちんととらえた対策の推進が求められております。粒径が二・五マイクロメーター以下の微小粒子状物質、いわゆるPM二・五につきましては、粒径が小さいということで、浮遊粒子状物質の中でも、特に呼吸器症状や循環器症状などの健康影響を示唆する知見があるわけでございます。

 アメリカでは、一九九七年に環境基準が設定された後に、昨年九月に見直しがされております。また、EUにおきましては、現在、環境基準設定に向けた検討が進められています。さらに、世界保健機構におきましては、昨年の十月にPM二・五を含む浮遊粒子状物質のガイドラインが策定されているわけでございます。

 平成十三年五月に、我が国では、自動車NOx・PM法の制定に係る国会審議を行った参議院の環境委員会の附帯決議においても「PM二・五については、調査研究を急ぐとともに、諸外国の知見、動向を踏まえ、できるだけ早期に環境基準を設定すること。」とされております。

 このPM二・五の環境基準策定に向けて環境省の取り組みをお伺いしたいと思うわけでございますが、これはもう参考人質疑でも、またこれまでの審議でも多くの先生方が御指摘をされているところであり、私もこのPM二・五の環境基準設定は早期に行っていくべき大きな課題だと思いますが、いかがでしょうか。

竹本政府参考人 PM二・五につきましては、環境省におきまして、現在、各種基礎調査研究を実施しているところでございまして、日本国内におきます健康影響に関する科学的知見の集積に鋭意努めているところでございます。

 また、委員御指摘のありました、米国、EU、WHOにおきます動向なども含めまして、諸外国の知見に関する情報収集をも行っておるところでございます。

 これらの科学的知見や情報を踏まえまして、このたび、今後の大気環境保全対策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的といたしまして、学識経験者などから構成されます検討会を環境省内に設置いたしまして、PM二・五に関する健康影響評価を行うことを予定しておるところでございます。

 現時点では環境基準を直ちに設定するという状況ではございませんが、今後とも、これらPM二・五に係る健康影響評価の検討につきまして、精力的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

江田(康)委員 時間が参っておりますので、最後に大臣にお伺いをさせていただきます。

 今回、自動車NOx・PM法の改正を行うわけでございますけれども、やはりここで柱とする局地汚染対策にしても、また流入車対策にしても、それらが実効性のあるものになるためには、関係省庁、また県、自治体、さらには関係業界等の大変強い協力が必要でございます。力強いリーダーシップが環境大臣に求められているわけでございますけれども、この大気汚染対策全般の現状評価と今後の取り組みにつきまして、大臣から御所見をお伺いさせていただきます。

若林国務大臣 委員が御指摘になられましたように、自動車に起因する大気汚染の状況につきましては、大気汚染防止法に基づく排出ガス規制だとか、あるいは自動車NOx・PM法に基づく対策等を総合的に講じ、かつまた自治体に努力をお願いしてまいりましたし、また車両の更新などについては、事業者の並々ならぬ努力がございました。そういう御協力の結果、全体としては改善の方向に進んでいるというふうに評価されるところでございます。

 しかし、先ほど来御議論がございますが、自動車交通量の多い一部の局地については、長期にわたって、この環境基準が達成できないという状況が続いているということが大きな問題でございますので、これらを受けまして、環境省として、今回、自動車NOx・PM法の改正をお願いするところでございますが、やはり大気汚染の問題は、自動車の単体の規制、また低公害車の普及といったような各種の対策を総合的に推進しなければ、目的を達成することが困難でございます。

 関係する省庁、あるいは地方公共団体、そして自動車に関連するメーカー、また輸送業者、さらには荷主といったような範囲にわたりまして、非常に関係する範囲が、関係者が多うございます。それだけに、今環境省が先頭に立ってリーダーシップを発揮しまして、それら関係者の皆さんに御協力をお願いし、さらに一層の努力をお願いするなど、この環境基準の達成を確実にするために全力を尽くさなければならない、このように考えております。

江田(康)委員 時間でございます。大臣、力強いリーダーシップをよろしくお願いさせていただきまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西野委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時一分開議

西野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 自動車NOx・PM法改正案について、幾つか質問させていただきたいと思います。

 この間、委員会の質疑、あるいは法案に関する質疑、あるいは一般質疑等々で、私も申し上げてまいりました。さまざまな行政の、上と言うと言い方に語弊があるのかもしれませんが、やはり環境をまず大事にしていこう、環境の中で人間が生きていくんだ、そういったことから、何よりも人の命、人が生きていく環境というものが大事にされなくてはいけない。そういう意味で、ぜひとも環境省、大臣に頑張っていただきたい、そういう思いでいろいろと質問させていただきたいと思います。

 特に、日本は環境立国だと、安倍総理も、また小泉総理もおっしゃっていらっしゃると思います。そして、私は、その環境立国というものが生まれてきた、そういう言葉が出てきたというのは二つあると思うんですよ。

 それは、日本が本当に自然に恵まれた、風光明媚であり、四季があり、そういう中ではぐくまれたすばらしい自然がある。そして、そういう自然を大事にしようという中で、環境を守る技術が進歩をしてきた。その環境技術が進歩をしてきたという中にも、今申し上げたすばらしい環境の中で人々が生きてきた、それを大事にしたいという根本的な思い。

 そしてもう一つは、やはり環境省といいましょうか、環境庁、環境省と日本の政府が頑張ってやってきた。あるときに、産業界と言うと語弊があるかもしれないが、一部大変に反対がある。そういう中でも、日本のこういった自動車の排気ガスあるいは大気汚染の規制のことを思うと、やはりアメリカのマスキー法のことを思うわけでありますが、アメリカではマスキー法という非常に先進的な法律ができて、それに影響されて日本も規制が始まった。ところが、マスキー法は大変な反対にあって本国では廃案になってしまう。そういう中でも、日本は非常に厳しい法律をつくることによって、当初はそんなことがクリアできるのかという中で、しかし、日本の産業界、自動車業界が頑張って、その基準をクリアすることによって逆に日本車が世界で評価をされ、アメリカにも輸出がふえていく、そういうようなことがあったと思うんです。

 ですから、現実的なものというよりも、現実的にはこうだからじゃなくて、やはり目標を立てて、環境を大事にしていくんだという目標の中で、ときには厳しいという声があっても、それを押し切って頑張って基準を設けていくことによって、私はより発展をした社会に向かっていくんだと思うんですね。

 そういう中で、今回、NOx・PM法、少しそういった観点から、さまざまな基準がクリアされてきた部分もある。ところが、まだ基準が達成されていない部分がある。そこに対してもう一度改正をして施策をしていくんだということはよいことだと思うんですが、しかしながら、必ずしもそんな中での施策が十分ではないのではないかという危惧をしております。

 まず、少しお伺いをしたいわけでありますが、我が国における自動車排ガス規制の歩みということであります。

 今も少しお話をさせていただきましたが、自動車排ガスによる大気汚染の問題は、一九七〇年代以降、自動車の普及台数や走行距離が大幅に伸びたことによって深刻化をしてきた。そして、それに対して対策がとられてきたということであります。そして、本法案でも、自動車の排ガスの中でも特に窒素酸化物、粒子状物質に関する規制を強化するわけでありますが、まず、NOx・PM以外の有害物質の規制について伺いたいと思います。

 我が国における自動車の排ガス規制、これについて、NOx・PM以外の有害物質、二酸化窒素や二酸化硫黄、一酸化炭素、光化学オキシダントの現在の環境基準の値はいつ制定されたものかということをまずお聞きしたいと思います。

竹本政府参考人 先生御指摘のとおり、現在、二酸化窒素のほかに、環境基準といたしまして、二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダントや有害物質など合計十種類の物質につきまして、大気の環境基準が設定されておるところでございます。

 具体的に、その環境基準が設定された時点でございますが、まず最初、一酸化炭素は昭和四十五年、浮遊粒子状物質は昭和四十七年、二酸化硫黄及び光化学オキシダントは昭和四十八年、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンは平成九年、ダイオキシン類は平成十一年、ジクロロメタンは平成十三年にそれぞれ設定をされております。

 なお、二酸化硫黄については昭和四十八年と申しましたが、それ以前に既に四十四年に一たび決定をされておりますが、四十八年にその後の科学的な知見を踏まえて改定をされておるというものでございます。

近藤(昭)委員 その時代とまたさまざまな所見あるいは状況によって、それぞれの規制をしてきた、こういう歴史であると思います。

 ただ、その中で、非常に気になるのが二酸化窒素の部分であります。二酸化窒素は、一九七八年、昭和五十三年七月十一日にそれまでの基準よりも緩く改定されたということでありますが、その経緯はいかがでありましたでしょうか。

竹本政府参考人 委員御指摘のとおり、二酸化窒素に係る環境基準、当初、昭和四十八年当時の科学的知見に基づきまして設定されておったものでございます。

 その後、二酸化窒素の健康影響に係ります内外の科学的知見が充実してきたことから、昭和五十二年、当時の環境庁長官から中央公害対策審議会に対しまして、二酸化窒素の人の健康影響に関する判定条件について諮問をしたものでございます。この環境基準というのは、先生も御案内かと思いますが、公害対策基本法の第九条の中で、環境基準については常に適切に科学的判断が加えられて必要な改定がなされなければならないとする趣旨の規定がございまして、この趣旨にのっとりまして、環境庁長官から中央公害対策審議会に対して昭和五十二年に諮問したところでございます。

 審議会におきまして、この諮問に基づきまして、その時点の最新の科学的知見を検討、評価いたしまして、その審議結果を踏まえまして、昭和五十三年三月、環境庁長官に答申をしたところでございます。環境庁におきましては、この答申を踏まえまして、国民の健康を保護する上で維持されることが望ましい水準として二酸化窒素の環境基準を決定しました。これが、先ほど先生御指摘のとおり、昭和五十三年七月に環境庁告示をしたところでございます。

近藤(昭)委員 それぞれの知見に応じて見直していくということは、第九条の三項というところで見直していくということは非常にいいことだと思うんですが、ただ、私は、普通に考えれば、今までの基準がこうだった、それに対して知見があって、これでは不十分だというのならわかるんですが、そうではなくて、緩やかにするというのは、どうもなかなか理解がしがたいわけであります。もちろん、百歩ぐらい譲って、その値でも大丈夫なんだということで仮にあったとしてでも、厳しい基準であれば、いわゆる大は小を兼ねるといいましょうか、クリアをしているわけですから、なぜそこで緩やかな値になったのかというのがどうしても理解がしがたいわけであります。

 また、数値も〇・〇四から〇・〇六という、何かその中だったらいいですよみたいな幅がある。普通ですと、やはり基準があって、それよりも下回らなくちゃいけないというのではなくて、〇・〇六、もちろん〇・〇四よりも低ければいいということも含んでいるのかもしれませんが、何か数値に幅がある。

 なぜそういうようなことになったのか。たとえ知見が進んできたとしても、厳しいままであっても何も問題はなかったんではないかと思うんですが、いかがでありましょうか。

竹本政府参考人 その当時の、私の前々任者になるんでしょうか、担当の局長が国会で答弁している資料をひもといたところでございます。

 先ほども申し上げましたとおり、公害対策基本法第九条に基づき、その時点その時点で適切な科学的判断が加えられて必要な改定がなされなければならないということで、実際、昭和四十七年六月までの最善の科学的な知見に基づいて当初の環境基準が設定をされていたところでございます。その時点におきましては確かに当時としては最善ということではございますが、その後、いろいろな知見の集約がなされてまいりまして、この資料によりますと、特に疫学データというのは、極めて乏しい中から、当時ではやはり最善のものとして検討したというようなことも披瀝がございます。

 そういうことで、その後の科学的知見を踏まえまして最善の検討をしたということでございまして、中央公害対策審議会におきましても、大変長期にわたる審議をなされたところでございまして、最終的に今回の基準となっております環境基準、日平均で〇・〇四から〇・〇六、これは環境基準として設けられたわけでございますが、審議会としては、長期暴露の観点から、年平均値として、この判断の基準、指針として、年平均〇・〇二から〇・〇三ゾーン内ということで答申が得られたところでございます。

 繰り返しになりますが、そのときそのときの科学的知見に基づいて検討を行っているということでございます。

近藤(昭)委員 その知見の中で、そういう値の中であれば大丈夫というお答えは、わからないでもないわけでありますが、ただ、私は、今申し上げたみたいに、厳しい値であればよりいいはずであるのに、なぜそういうことがまた見直されるのかなというふうに思うわけであります。

 私の手元にある、一九七七年三月二十八日ですか、これは環境庁長官のコメントでありましょうか、「二酸化窒素の環境基準は「一時間値の一日平均値が〇・〇二ppm」と一九七三年に定められた。しかし、諸外国の基準値と比べると厳しい値であったため、その達成が難しいとされ、大気汚染対策の重点がSO2からNOxに移行しはじめた七〇年代、見直しを求める意見が経団連や日本鉄鋼連盟などから出されるようになった。」こういうようなコメントが出ているのでありますが、いかがでありましょうか。

竹本政府参考人 先ほど申し上げた科学的知見という点もございましたし、今先生が御紹介をされた、さまざまな議論があったということも事実として承知をしておるところでございます。

 一方で、繰り返しになりますけれども、科学的な観点から議論をしていただきまして、最終的に検討、評価をしていただいた結果を踏まえて、この指針値というのを答申いただいたというところで、その指針値をもとに環境基準の改定を決定したということでございます。

近藤(昭)委員 知見、知見とおっしゃるとあれなんですが、知見を始める、これは当時、中央審議会ですか、審議会に環境庁長官が諮問をし、当時の環境庁長官がどなたであったかということと、その中央審議会、どれぐらいの時間で答申が出たかということをお教えいただけますでしょうか。

竹本政府参考人 当時の環境庁長官は、石原大臣でございました。

 公害対策審議会での議論については、その詳しい検討の時間は持ち合わせておりません。しかしながら、諮問をいたしましたのが五十二年ということで、その後、五十三年の三月、答申に至るまで、さまざまなレベルで御検討されたというように聞いております。

近藤(昭)委員 そうすると、諮問が出て、基準値を見直すまでにどれぐらいの時間がかかったのでしょうか。

竹本政府参考人 諮問がなされてからちょうど一年、昭和五十三年の七月に告示でございましたので、ちょうど一年ということでございます。

近藤(昭)委員 随分とスピーディーに、いや、一年が本当にスピーディーかどうかは別として、この間、さまざま議論をさせていただいていることで見ると、随分スピーディーだなというふうに思うんです。

 私も環境委員会で幾つか質問をさせていただいて、例えば健康被害等々でさまざまな問題が出ている。そこで出てくる問題に対して、因果関係ですね、あるいはそれに対してどういう規制値を設けるかということに対して、さまざまお答えがあるときには、その基準、まず検査の仕方をどうするか。その検査のための準備の期間とか、正直言って、何年もその準備のための準備にもう随分時間がかかる。そしてまた、その結果、知見にも随分時間がかかっている。そしてなかなか出てこない。

 少し質問の順番が変わるかもしれませんけれども、きょうの午前中の委員会の中での質問にもありました。問い合わせの中にもありました。例の二〇〇一年の法改正の際の参議院環境委員会の附帯決議において非常に懸念がされていた「浮遊粒子状物質の中でも特に健康影響が懸念されているPM二・五については、調査研究を急ぐとともに、諸外国の知見、動向を踏まえ、できるだけ早期に環境基準を設定すること。」そういうことに附帯決議でなっている。ところが、これはいまだ改正がされていない。ここについてはどういうふうにお考えでありましょうか。

竹本政府参考人 このPM二・五でございますが、御指摘ございました平成十三年の参議院附帯決議の内容も踏まえまして、環境省におきましては、現在、各種の基礎調査研究を実施しておるところでございます。まずは、日本国内の科学的知見の集約、またあわせて、米国、WHOなどにおきます諸外国における知見についても情報収集を行っておるところでございます。

 そういう検討の中で、今後さらに一層、このPM二・五に係る情報また知見を踏まえまして、今後の大気環境対策の検討に必要な基礎資料を得るということを目標といたしまして、学識経験者などから構成されます検討会を環境省内に近々設置いたしまして、さらなる健康影響評価を行う予定としておるところでございます。

近藤(昭)委員 少し戻りますけれども、先ほどの二酸化窒素の基準が緩和された、知見とおっしゃいますが、当時は幾つかの自治体は反対をして、従来の規制で、それぞれの自治体の条例といいましょうか、それでやっていたというような事実はありますでしょうか。

竹本政府参考人 具体的に直接お答えする資料は手元にございませんが、基本的に環境基準は国の責任でつくっていく、そういうものでございまして、公害対策基本法第九条の趣旨にのっとって、あくまでも国の方で責任を持って、国民の健康を保護する上で維持されることが望ましい水準ということで、二酸化窒素の環境基準の改定決定をしたということでございます。

近藤(昭)委員 いや、ちょっとよくわからなかったんですが、そうすると、自治体で以前の規制のままでやったというところはありますでしょうか。

竹本政府参考人 環境基準の改定決定後、これは環境省の方から都道府県に対して、地方公共団体に対して、環境基準に係る実施の通知をしております。それに基づいて、新たな環境基準ということを目標として地方公共団体も環境政策を実施しているということでございます。

近藤(昭)委員 そうすると、当時のまま、当時というか従来のまま、厳しい基準でその地域の自治体として規制をしてきた、そういうところはないということですか。

竹本政府参考人 私の承知しているところによりますれば、特にございません。

近藤(昭)委員 そうですか。私も詳細に承知しているわけではありませんが、国の基準に基づいてそれぞれの自治体も基準を設けているかもしれませんが、やはり国が基準値を緩めることに対して、かなり意見があったところもあるんではないかというふうに思っているんです。

 それで、先ほどのPM二・五の部分につきまして、PM二・五というとディーゼルの排ガスからも出てくるんですかね。そうすると、私はちょっとおもしろいなと思うのは、東京都がディーゼル車の規制をして、石原都知事がそこで頑張っておられた。ディーゼル車の規制をされた。一方で、過去の、いや、それは悪いとかそういうことではないし、知見がそうだと。でも、当時環境庁長官であった石原長官が諮問をして、その結果、知見が出たけれども、そういうふうに環境値が緩められた。

 PM二・五についてどうでしょうか。私はやはり随分と時間がかかり過ぎているというふうに思うんですね。これについて、もう六年以上もたっている。今後どうしていかれるのか。大臣、いかがでありましょうか。

若林国務大臣 PM二・五につきましては、委員御指摘のように、参議院の附帯決議がございました。その附帯決議の内容も踏まえながら、環境省において各種の基礎的調査を実施してまいっております。日本国内におけるPM二・五の健康影響に関する科学的な知見を集めるために鋭意努力をいたしているところでございます。

 この附帯決議前からでもございますが、平成十一年には疫学調査、動物実験あるいは暴露調査などの調査を開始いたしております。平成十二年には、大気中のPM二・五質量濃度測定方法の暫定マニュアルを策定し、そして平成十三年に長期疫学調査を開始いたしておりますが、長期疫学調査は五年間の実施が必要であるというようなことから、最終年度は平成十八年度ということになっているわけでございまして、十八年度に本調査研究の実施が終了をする、検討の状況はそのような状況になっております。

 また、米国やWHOなどにおける環境基準の設定に関する動向、昨年からことしにかけての動きがございます。これらも含めまして、諸外国の知見に関する情報も収集をしているところでございます。

 これらの科学的な知見や情報を踏まえまして、今後の大気環境保全対策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的としておりまして、長いことかかってまいったということも、それらの資料の収集もかなり進んできたところから、実は学識経験者などから成ります新たな検討会を省内に設置して、PM二・五に関する健康影響評価を行っていくというようなことを、私自身はことし手をつけたらどうかという考えでおります。

近藤(昭)委員 知見には時間がかかる、ただ、それにしては先ほど申し上げた二酸化窒素については随分と早いなという思いがするんです、大臣。それで、今最後に大臣、ことし手をつけたらどうかなということでおっしゃってはいただきました。手をつけるというか、今知見が始まって、既にある種の手はついているんだと思います。ぜひ、実現に向けて大臣のリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思うんです。

 私は、冒頭申し上げましたように、今回の法改正は、ゼロではない、少しは前進するのかもしれませんが、どうもそこに本当に実効性があるのかということを大変に危惧しております。そういう意味で、ぜひきちっと対応していただきたいですし、これにはスピードも必要であります。何か、緩めるときには妙にスピードが速くて、厳しくするときにどうぞ頑張っていただきたいというふうに申し上げるしかないような気がしております。

 それで、もう余り時間がなくなってまいりましたが、この間、非常に現実的なというところもあるのかもしれませんが、流入車対策について少しお聞きをしたいと思います。

 規制がかかっているところに本拠があるというか主体がある、そうでないところに車が置いてあるところが規制の区域に入っていくことには規制がない。いわゆる不公平、またそういう中で車庫飛ばしというような問題も起こってきている。これについて、今回の法案の中でも少し触れられているわけでありますが、どのように対応されていかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。

北川(知)大臣政務官 近藤委員御指摘の、対策地域外から規制がかからない車の流入、そして対策地域内の事業者との競争の不公平感等も含め、いわゆる車庫飛ばし等への対応と思うのでありますけれども、現行の自動車NOx・PM法におきましては、対策地域内に使用の本拠の位置を有する自動車は、対策地域内を走行する蓋然性が高いため、汚染物質の排出抑制を図る必要性がより高いと認められることから、車種規制は対策地域内に限定して実施してきたものであります。

 そこで、今回の改正案では、対策地域の外の事業者であっても、対策地域内の局地において流入車を走行させる一定の事業者は計画策定等の義務を課し、これに基づき排出抑制の取り組みを促すこととしたものであります。こうした取り組みの実効性を上げるべく、今後とも努力をしていきたいと考えております。

 また、今委員御指摘のいわゆる車庫飛ばしについてでありますが、これは自動車の保管場所の確保等に関する法律等で禁じられております。これにより、このような行為が起きないように、警察庁や国土交通省などの関係省庁との連携を今後とも密にとりながら、引き続き対応していきたいと考えております。

近藤(昭)委員 車庫飛ばしはそれぞれかなり連携が必要だというふうに思いますが、随分と車庫飛ばしというのは事例としてはかなり多かったんじゃないでしょうか。その辺はいかがでしょうか。

竹本政府参考人 最新の情報を、警察庁の調べでございまして、十七年度版道路交通の現状と対策によりますと、いわゆる車庫飛ばしの検挙件数というのが百三十三件という資料がございます。

近藤(昭)委員 百三十三件、多いのか少ないのか、随分多いのかなと。実態はもっと多いんではないかと思います。

 今政務官にお答えいただいた、車庫飛ばしを連携してきちっと取り締まっていく、特に、今回の法改正の中でも出てきている、不公平感をきちっとなくしていくこととともに、そういった流入車の対策、その流入車を含めてすべての車が出す、そういう排ガスを実質的に抑制していかなくてはいけないというふうに思うんですが、その点についてはどうでしょうか。ロンドンとかシンガポールなど、ロードプライシング等々が導入されて排出ガスを減らしていく、そういうような措置も各国でさまざま試みがあるようでありますが、いかがでありましょうか。

竹本政府参考人 ロードプライシングのお尋ねでございます。

 中央環境審議会の意見具申の中でも、先生御指摘のございましたロンドン、シンガポール等で導入がなされているロードプライシングについては、大変流入抑制対策としても有効である。一方で、いろいろなその導入に当たっての有効性であるとか社会的受容性、技術的な問題とか等々、こういったものの検討をする必要がある、こういう御指摘でございまして、私どもも、経済面への影響であるとか公平性の確保、合意形成の進め方など、いろいろな知見をそれこそ集約していきたいと思っておりまして、さらに検討を進めていく必要があると私ども思っております。

 同時に、いろいろな形での、ロードプライシングに加えて、効率的な物流システムの構築とかモーダルシフト、基本的に交通量を抑制するようなそういう対策もあわせて講じていきたいと考えているところでございます。

近藤(昭)委員 それぞれの国によって事情は違うところもあると思いますが、ぜひ積極的に、よい方法は研究、採用していっていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、きょう少し午前中の中でも出ていました、参考人の方からも話が出ていた、私もステッカー制度というのは非常に有効ではないかなというふうに思うんです。ただ、ステッカー制度ということに対して、政府はどのようにお考えなのか。何か難しいところがあるとか、必ずしもがっと行っている感じではないんですが、ステッカー制度というのは非常にわかりやすいし、それぞれのトラックの主要業者あるいは委託をしている業者、特に主要業者さんのいろいろな使用計画の提出等々も必ずしも十分に守られていないところもあるようです。

 そういうことを考えると、ステッカーによって、ステッカーもうそをつけばつけるのかもしれませんが、やはりそのステッカーによってわかりやすいという、みんなで監視するというかチェックする、こういうのは非常にいいと思うんですが、いかがでありましょうか。

土屋副大臣 近藤委員のおっしゃるとおり、ステッカー制度というのは私も大変有効に働くんではないかと考えております。

 中央環境審議会でも、意見具申の中で具体的な提言がされておりますので、この点については、流入車対策の実効性を担保する意味でも非常に大きいですし、自動車輸送業者による適合車の使用を促すものになると思いますし、そういう意味で、ぜひ具体的な方向を探っていきたいと思っております。

 環境省と国土交通省としっかりと連携していくことが大事だと思いますし、今後、また事業者がやりやすい、実行しやすい方法を連携して相談していこうと考えております。また、一般の人も本当に目で見てわかる、これは非常に制度としてはいいと思いますので、しっかりと進めてまいりたいと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうすると、これから具体的に国交省と環境省で何か委員会といいましょうか、何かつくられてやっていかれる、そんなようなことでありましょうか。

竹本政府参考人 特に委員会というようなモダリティーについてまで詰めておりません。しかし、これは実態的に、先生御指摘のとおり、ステッカー制度というのは非常に有効なものであるということで、実質的に私ども行政の範囲で実施が可能というように考えておりまして、国土交通省、もう既に担当者レベルではいろいろな意味でコミュニケーション、連絡をとったりしてきておりますので、これからまた引き続き国交省など関係する方面とも連絡調整をしっかりとやっていきたいと思っております。

近藤(昭)委員 ぜひ具体的に進めていただきたいというふうに思います。

 それで、今もちょっと質問の中で触れさせていただきましたが、旅客自動者運送事業者に対して自動車使用管理計画の提出義務が課されておるわけでありますが、旅客の方は何か九八%と聞いております。貨物自動車運送事業者は十四年度、十五年度とも約三割が提出していないということでありますが、これについてはどのように実質的に担保していかれるつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。

竹本政府参考人 この点について、御指摘のとおり、貨物の事業者につきまして、提出率が、十四年度六七%、十五年度七〇・四%ということになっております。

 自動車使用管理計画を通じたいろいろな取り組みというのは、事業者の自発的な排出抑制を促す上で非常に有効であると私ども考えております。このため、自動車使用管理計画を提出していない事業者に対しては、関係省庁を通じて指導が徹底されるように、一層強力に協力を要請していきたい。具体的には、この所管省庁でございますが、国土交通省が中心となろうと思うんですけれども、こういった、関係する、実際に指導するところに徹底をぜひ強く要請していきたいと思っておるところでございます。

近藤(昭)委員 何でもかんでも罰則をつけることがいいことだというふうに思うわけではありませんが、三割も提出をしていないというのはいかがなものかなというふうに思いますし、今回の法案改正でも、規制のかかるところの業者、運送する業者及びその運送業者を使用する業者、それぞれに対して、排ガスを抑制するような計画を立てなさいということでありますが、それに対してどの程度実効性があるのか。正直にやるところは、実務も含め、あるいは費用も含め、やるけれども、そうでないところがどんどんとそのまま見過ごされていってしまうというのは、大変に不公平でありますし、実質的にも問題があると思うんです。

 それで、大臣、最後にお伺いをしたいと思います。

 私も幾つか危惧を申し上げましたが、今回の法改正で、環境基準がいまだ達成されていないところに対して規制を強化していくということでありますが、達成は可能でありましょうか。

若林国務大臣 委員に大変御心配をいただいておりますが、本改正がなされますれば、関係省庁あるいは関係の自治体、業界、非常に関係者が多うございますが、改めてこの法改正の趣旨を徹底させまして、流入車対策など新たに講ずることとなったことを中心に、さらに一層この対策を強化し、総合的にこれを進めてまいりたいと思います。

 そのような努力によりまして、平成二十二年の環境基準における基準達成はおおむね達成できるということに持ち込んでまいりたい、このように思っております。

近藤(昭)委員 ぜひ大臣に頑張っていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 私の方は、きょうは東京の大気汚染訴訟を含めて、率直な意見交換をさせていただければと思っております。

 まず、ちょっと質問に入る前に、前回の積み残しといいますか、外務省の方に、環境健康被害者に対して北欧諸国の取り組みということでお願いをしてあったんですが、北欧の方ではそういった環境健康被害者に対してどういうふうな取り組みをしているか、御回答をお願いしたいと思います。

本田政府参考人 お答えいたします。

 スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドについて調査した範囲では、それらの国は公害病等の認定制度を有しておりません。被害の救済は、基本的に司法制度、裁判制度によって解決が図られています。

 また、公害病等に係る訴訟に際しての政府による被害者への特段の支援制度はないものと理解しております。

末松委員 本田審議官がどこまで御存じかよくわかりませんが、認定制度がないということは、環境の影響被害といったら広範囲にわたるわけですけれども、裁判所で認定を一つ一つして、それで裁判が決まっていくということ、それが前例となっているということで、行政はタッチしていない、そういう解釈でよろしいですか。

本田政府参考人 各ケースについてはつまびらかにしておりませんけれども、基本的に、民事訴訟といたしまして、ある程度の原因それから結果におきまして、事実を認定していくということであると思います。もちろん、場合によっては、裁判外の和解といったことで決着がつくということもあるかと思います。

末松委員 本田審議官は、これは門外漢ですから、それ以上は私はお聞きしませんけれども、またちょっと、必要があれば外務省にお聞きしますので、よろしくお願いを申し上げます。今、大きくうなずいていただいて、それで御協力いただきたいと思います。

 さて、この法案につきまして、まずちょっと一点、党内で審議をしておりましたときに、これは大臣もやりとりをされたと思いますけれども、我が党の中川正春議員が、この法案の不公平性といいますか、そういうことで予算委員会で審議をしたことがございます。

 これはどういうことかといいますと、対策地域の中で登録されている、車庫登録している自動車と、ちょっと先の域外になったところで登録をしていない車、それによって大きな、規制の網がかかるかかからないかによって、競争上非常に不利なことがあるんだということで、むしろ、規制するのであれば、東京都がやっているような、ステッカーを張って一律に規制をしていった方が、法の執行の公平性という意味ではいいんだというお話がございましたけれども、質問通告をしているのは、競争力に差が生じてしまい不公平なのではないか、これについて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 予算委員会における質問をいただきまして答弁を申し上げたところでございますけれども、対策地域内に使用の本拠を有している自動車、これはその地域内を走行する蓋然性が高い。確かに、線引きとしていえば、ちょっと外れたところとどれだけ蓋然性が違うのかといったような、どこで引いてもそういう問題は起こると私も思いますけれども、事業者が営業上この車を走らせるというような場合に、かなりそこを的確に把握して、きちっとした規制をかけるということになると、範囲を広げていくと、規制の程度というのは、ステッカーを張るとかいろいろなことはありますが、薄く広くなってしまうということはあります。やはり地域を絞って、きっちりと規制をしていこうということになりますと、今度は、それを全部に広げるというのは難しくなる。

 そういうバランスというものを考えまして、蓋然性の高いと思われる地域につきまして排出抑制を図る必要性がより高いということに着目をして地域内に限定をしたと思います。

 そしてまた、それでは地域外についてそのまま放置していいのかという問題が当然ございます。それらの問題の指摘を受けまして、今回の改正で、地域外の事業者でありましても地域内に流入する車を走らせる一定の事業者につきまして、御承知のように、計画策定等の義務を課して、これに基づいて排出抑制の取り組みを促していく、求めていくというような形で効果を上げていこうとしているものでございます。

末松委員 その議論はもう私もわかっていますので。

 要は、中川先生のおっしゃっているのは車庫飛ばしということ。そこを考えていくと、飛ばせない人というのは非常に不公平じゃないかとか、ある意味ではそういった議論が出てくるということ。

 特に中小のトラック業者さんを含めて、そういったところが車の買いかえをしなきゃいけない、そういったときに、非常に負担が大きい。そういうふうな配慮というものは都道府県でしんしゃくがなされるようなことがあるのか。それとも一律にずばっとやっちゃうのか。その辺が中川委員が議論をしていたところなんですけれども、その辺について、私の方からも改めてお伺いをしたいと思います。

竹本政府参考人 中小事業者への支援ということで、先ほど来の答弁の中で申し上げましたが、国の方も低公害車切りかえの補助でありますとか低利の融資とか、そういうものをやらせていただいているところでございます。県もそれぞれにまた仕組みがあろうかと思いますが、基本的には、国の方では、私ども環境省それから国土交通省と連携をして、できるだけの支援をしてきているところでございます。

末松委員 できるだけそこはしっかりと、中小の方に不利にならないようなことを国を挙げてやっていただきたいと思いますが、そういう理解で、また今後ともそういうことをやっていくということでよろしいですか。念のため答弁をお願いします。

竹本政府参考人 はい。そういうことでしっかりやっていきたいと思います。

若林国務大臣 御趣旨をしっかり受けとめて、中小事業者に過重な負担がかかることがないようにできるだけの対策を講じてまいりたい、このように思います。

末松委員 あと、懸念が示されたのが、例えば耕運機とかあるいは消防団の消防車とか、こういった車で活動できなくなったらどうするんだという意見も出たんです。これは突然の質問になるかと思いますが、そこは政府参考人、いかがですか。

竹本政府参考人 御指摘のありました消防車、いろいろなところからも御心配をいただいてきております。

 基本的に例外というのはなくて、一定の猶予期間をこの制度の最初……(末松委員「どれぐらい」と呼ぶ)買いかえをするときに、普通、一定の期間を置きますと、基準を当てはめまして、その基準に適応した車に買いかえないといけない。消防車じゃなくて一般のトラックですね。それよりも少し緩やかな猶予期間、一定期間を長く置いて、できるだけ長く使えるように、そういう配慮をしてきているのがまず一点でございます。それで、ここはやはり、ディーゼルの排出の大きい自動車については、一定の配慮をしていただかなければいけないということで、買いかえの対象ということにはしております。

 それで、一方で、中川先生も御指摘あったかと思うんですけれども、地方の田舎の方でいろいろ頑張っている消防団なんかも、自治会でやっている、そういう消防車に対しても同じ規制がかかるというので、いろいろな御心配をいただいております。そういったところについても、いろいろな補助金、地域によっては自治体の方で補助金があったりするものですから、そういったものを活用してやってきていただいているところがございます。(末松委員「耕運機は」と呼ぶ)済みません、今すぐにわからないので、後で、すぐ調べます。

末松委員 できるだけそういった特殊事情は地域の方で、当然全国的にはこういった形できちんとやっていく、ただ、地域の事情においてもある程度の必要に応じて配慮をやっていくということは、ぜひそこはお願いしたいと思います。

 それでは、私の方で別途また話題をかえますが、先ほどからPM二・五、浮遊物質の話が出ております。そういった中で、この前、二月の二十三日でしたか、環境委員会、東京大気汚染の裁判の関係で大臣ともお話をしたわけでございます。そのときに大臣の方から、因果関係の解明なくんば、その前提がなければ国として補償、あるいは謝罪も含めて、やることは全くないんだというお話でございました。

 つらつら考えていくと、では因果関係の解明というのは、一体その基礎に何があるのかというと、先ほど近藤委員が詰められていましたけれども、医学的、科学的な知見が必要だということですね。これが因果関係の一番のポイントだ。

 大臣も、二月二十三日の環境委員会の席で私の質問に対して、東京の汚染訴訟の東京地裁の判決についてコメントされていまして、「医学的に十分な知見がない中で、本件の各道路からの自動車排ガスと気管支ぜんそくとの因果関係があるんだというふうに東京地裁は認めたわけであります。」こう答弁されておられる。

 「医学的に十分な知見がない中で、」という御判断は、大臣がされた、あるいは環境省がされたことなんですが、となると、環境省は、十分な科学的知見があると言わないとすべては進まない、こういうことになるわけですね。

 では、十分な科学的知見、これが一体どこまで進んでいるんですかといったら、どうも、先ほどのPM二・五についても、平成十一年というから一九九九年ですか、プロジェクトをやって、アメリカの方は十年ぐらい前からもう基準としてしっかりしたものが出てきて、そしてヨーロッパも二〇〇五年の十月にはWHOのレポートを踏襲してPM二・五の規制をかけている。アメリカはもう十年ぐらい前ということは、国際的には、アメリカも欧州もかなりそこは、そこのところで規制の基準ができるということは、その前から問題意識を持ってさまざまな科学的知見を蓄えておったということですから、十数年前ぐらいからもうそれは実質的にやっておったわけです。

 対する我が国は、この前、田島委員の、四月三日の本会議の席上で、米国の基準に対して、どうして日本はそういうことを全くしないのかという質問に対して、今情報収集をやっているところですという話があります。

 先ほど大臣が言われたように、参議院の附帯決議、これは二〇〇一年ですか、そのときにもうPM二・五についてしっかり調査しろということがなされている。となると、本当に十分な科学的知見を得るための努力をしているんですかというのが、先ほどからも議論が出ておりましたけれども、私はそこは信じられないんですね。

 そこまで国際的なところがやっていて、日本の場合はどうしてこの研究が進まないのか。あるいは、アメリカはアメリカで、EUはEUだから、うちは全然関係ありませんということが、同じ人間で同じガソリン車とかディーゼル車に対してそこまで反応が大きく違うとは思えない。

 国内の観測所、測定結果についても、例えば六カ所ぐらいしか測定局がないという。これはどうも不作為、怠っているんじゃないかということを言わざるを得ないんですが、そこはどうお考えなんですか。

若林国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、実は、このPMについての基礎的な調査、情報収集、附帯決議をいただく前、平成十一年から調査に入っております。もっと早く調査に入らなかったのはなぜか、こう言われますと、確かにそういう組織的な公的な調査に入っていなかったという意味で、私もそのことを答弁するのは難しいんですけれども、少なくとも、この問題意識を持ちまして、十一年から各年、いろいろ委託費を計上しながら、調査を専門家にお願いして積み重ねてきたということでございます。

 その中でも、特に疫学的調査の部分、これが実は、お医者さんたちなんですけれども、大変に難しい調査になるようでして、その調査の結果、標本の分布とかそういうものを考えますとなかなか大変な調査で、心理的な影響も与えたりするということがありまして、どうしても五年間ぐらいかかるということなんだそうです。それは疫学関係の専門家がそういうようなことを言っておられて、それで調査を今やっているわけですけれども、その調査の結果が平成十八年までかかるという、十三、十四、十五、十六、十七、五年間の、それで十八年に取りまとめをする、こういうふうな専門家の見解でございまして、その見解に従いまして、できるだけ早くこの問題も取り組まなきゃいけないという認識でございますけれども、十九年を目途に詰めていくということになるのかなと思っております。

末松委員 政府参考人に聞きますけれども、毎年、予算はどのくらいとっているんですか。

竹本政府参考人 済みません、今手元に数字がございません。すぐに調べたいと思います。

末松委員 そこの辺は、なぜ、いや、私も別に無理難題を言おうとしているわけではないんですよ。というのは、同じく大臣が二月二十三日の答弁の中に、こう書いてあるんですね。ぜんそくについて、どういうことかというと、ぜんそくが大気汚染と余り関係ない。読みますと、「今、環境省として、ぜんそくというのは、アレルギー、ダニ、喫煙など、多岐にわたる原因によって発症し、悪化する非特異的疾患であって、大気汚染とぜんそくとの因果関係につきましては、これまでの調査結果から見る範囲では、現在の我が国の一般環境としての大気汚染は、ぜんそくの主たる原因とは考えられない。」と言っている。

 大臣、この言葉も重いんですよ。というのは、PM二・五も調べていないわけですよ。科学的知見がまだまだわかっていない中でここまで言い切るというのは、では、一体ぜんそくというのは、どういう調査をしてこういうことを言い切っているのかというのが、一般論としてのぜんそくを話しているわけではない、これは裁判の関係ですから、道路に近い、例えば裁判所では、道路から五十メートルとか、数十メートルとか、そういうのがありましたよね。こういった方々のことを全部調べていって、そして科学的知見だということの結果こういうふうな答弁をなさっているのか、わからないんですよね。

 だって、道路に近い人がぜんそくにかかりやすいというのは、これは我々はよく認識していますよ、私もそうだろうと思いますよ。でも、それは主たる原因ではございませんという話をされた場合に、ではちょっと証明してくれよという話になるわけですよ。そこはいかがですか。

若林国務大臣 私は、もう全く関係がないということを申し上げたわけではありませんで、主たる原因ということについては、いろいろな専門家の意見などから見て、それが主たる原因だと言い切れる状況にないということを申し上げたわけでございます。

 前にも委員に御答弁申し上げたことがあるかもしれません、何でそんなに時間がかかるんだとありますが、あの「そらプロジェクト」の調査ですね。これも結局、沿道周辺の、沿道に近い人たちと、そこから離れている人たちとの間で、ぜんそくの発生率とかそんなものがどうなんだということを今調べているわけなんです。つまり、排ガスとの関係を詰めなきゃいけないわけですから、一般的に、先ほど言いました、ぜんそくは、アレルギー疾患でありますとかダニだとか、私などヘビースモーカーで、そのせいだとよく人に言われますが、やはりそういう喫煙とか、いろいろな要素が絡まってぜんそくになっている。そういう要素との分離をしていかなければ、因果関係があるとは、主たる原因だとは言い切れない、こういうことであります。

 最近、テレビで見たんですけれども、小学生が、小学校でぜんそくがふえているんですね。この間、テレビのNHKのニュースだと、小学生、大変ふえてきている。それは必ずしも沿道だとか、あるいは……(末松委員「たばこですか」と呼ぶ)いえ、そういうことではなく、全体的にふえているという、かなりショッキングな報道がなされております。

 その意味で、排ガスとのかかわり合いがどれだけ、どの程度あるのかというのは、やはりかなり調査をしてみないとわからないということでございます。

末松委員 大臣がおっしゃったじゃないですか、わからないんですよ。調査もそんなにしていないわけでしょう。つまり、沿道だからということをざっと調査して、そして、では、何百メートル離れた人の調査をして、綿密な調査をしてから、そういうお話は、これは関係あるかどうかというのが言えるわけですよ。主たる原因かもしれないし、ないかもしれないんですよ。そこを、何かあたかもこれは綿密な科学的知見に基づいたような言い方をなされるというのは、私はそれはおかしいと思うんですよ。これは訂正していただきたいんですよ。

 というのは、大臣がもしここで、いや違う、こういうふうな調査で数年間やってみた、五年間かかる、やってみた。そこで、PM二・五ですけれども、やってみたから、それはこういう主たる原因ではありませんと、これは大臣が言っているんじゃなくて、環境省が言わせているんだろうと思うんですよ。それは、環境省として、本当にそういうことが科学的知見に基づいて言えるのかどうか。では、ちょっと言ってください。

上田政府参考人 大臣がさきに答弁されました根拠でございますけれども、私ども、六十三年に公害の指定地域を解除して以降、平成八年度から毎年、大気汚染に係る環境保健サーベイランスというものをやっております。そういう中で、地域を定めて、その地域の大気汚染状況とぜんそくの発症率というものを見ておりまして、必ずしも大気汚染の状況がよくない地域に全般としてぜんそくの患者さんが多いわけではないということが一つ。

 それから、これは繰り返しになりますけれども、ぜんそくの原因というものはさまざまなものがあるというのは、これは学界でも定説になっておりますので、そういう観点から主な原因とは考えられない、このように御説明を申し上げた次第でございます。

末松委員 それでは、排ガス規制とかそういうことは何のためにやっているわけですか。気管支関係とかそういうことは余り関係なくて、では、ほかの要因というのは何なんですか。

上田政府参考人 これは、公害指定地域を解除する以前に、非常に大気汚染がひどかった時代、やはり大気汚染とぜんそくの関係はあった、そういうことで公健法による指定をやっていたわけでございます。

 現状としては、当時ほどの大気汚染の状況はないということで、そういう関係はないのではないか、このように考えているところでございます。

末松委員 東京の大気汚染の裁判の人たち、原告なんかを見ると、あなたが調査する前からやっている人たち、この人たちに対しても、因果関係がわからないからということではねているんですよ。それはどういうことなんですか。今、その前はあったと、でも、あったということはちゃんと科学的知見に基づいて言っているのか、どうなんですか。

上田政府参考人 前からあったということの御主張の、ちょっと中身が、私よく……(末松委員「つまり、国が因果関係はまだ明らかじゃありませんということで突っぱねているんですよ、裁判で。一回も補償もやったことはないし、謝罪したこともない。それは、彼らは別に数年前から急になったわけじゃないんだよ」と呼ぶ)ですから、その当時は、さまざまな要因でなられたんですけれども、やはりその指定地域の中においては大気汚染の状況が非常によくないということで、因果関係があったんだろうということで認定をさせていただいた、このように考えているところでございます。

末松委員 正確に答えてください。それは科学的知見に基づいて、あなたのおっしゃっている、あったんだろうという、そんな言い方はしないでくださいよ。今まで裁判で、科学的知見がないからということで、ずっと突っぱねてきたんだよ。それは、ではその前はあったんでしょうという話は、それはないでしょうと私は言いたいわけです。だから、どんな調査でどのぐらいのお金をかけてやったんだと聞いているわけですよ。

上田政府参考人 ぜんそくと大気汚染の関係というのは、これは大気汚染が非常にひどい場合には明らかだ、このように思っています。ですから……(末松委員「だから、それを、根拠を言ってくれと言っている」と呼ぶ)

西野委員長 答弁中です。発言しないでください。

上田政府参考人 それは、いろいろなこれまでの学問的なデータとか、あるいはこれまでの審議会の議論で当時の、ただ、地域指定を行うときには制度的な割り切りを行ったことは事実なんですけれども、ある一定の地域に住んでおられれば、それは因果関係が明らかでない場合でも認定患者とするという割り切りを行ったわけでございます。

 ただ、現状の状況としましては、必ずしも現状の大気汚染の状況ではぜんそくの発症との関係は主な原因とは考えられない、このように考えているところでございます。

末松委員 では、上田部長さんにお聞きしますけれども、そうしたら、二〇〇一年に指定解除された。指定解除される前はそういったことがあったという認識ですよね、主たる原因としてあったと。今あなたはそうおっしゃいましたよね。もう一回確認してください。

上田政府参考人 二〇〇一年ではなくて、昭和六十三年だと思いますけれども、それ以前の公健法で認定患者を認めていた時期、この時期には大気汚染の状況が非常に悪かったということで、そういう大気汚染とぜんそくの関係はあった、こういう認識でございます。ただ、そのときに、ある程度の制度的な割り切りをして幅広く補償の対象にしていた、こういうことは事実でございます。

末松委員 ただ、補償の対象にしていたというけれども、公健法ですか、大臣が、科学的知見がない中で、例えば、金銭補償の問題につきましては、今まで公害訴訟でもそうでありますが、国は、金銭上の補償で和解をやったことはありませんと言うし、それと同時に、実際に、法的な責任を前提とした金銭的な支払い、あるいは補償的な措置といったことは一切やらないという話が書いてあるんですけれども、それは、この今の法改正の前はやっていたということですか。あるいは、それ以降はやっていないということですか。どっちなんですか、大臣がこの前答弁していますけれども。

上田政府参考人 法改正というのは昭和六十二年、六十三年のことというふうに理解いたしますけれども、それ以前は制度的割り切りとしてその認定をしていた。要するに、大気汚染とぜんそくには関係がある、因果関係があるということで。ただ、地域については、制度的割り切りをもとにして認定をしていたということでございます。

末松委員 では、その認識として、私は思うんですけれども、その指定を解除したということは、それ以降はNOx・PM、こういった問題がなくなったよねという認識なんですかね。

上田政府参考人 当時の状況としては、大気汚染がかなり改善をされたということで、その現状の大気汚染の状況で新たな患者さんが出ることはないというふうな判断をされた。ただ、そのときに附帯決議がございまして、言うまでもなく、沿道の問題は今後も議論をすべきである、こういうふうになっていたわけでございます。

末松委員 ただ、そういった時期で、まだ海外からの、例えばPM二・五にしたって、ずっと集め始めた時期ですよね。そういったことは因果関係が全くわからない、そういった生半可な状況の中で指定解除をしたなんていうのは、私はおかしいと思っているんですよ。

 科学的知見、科学的知見とあなた方がすごくおっしゃるから、では、どこまでの科学的知見なんですか。その後の科学的知見は何なんですか。海外の事例に対してどのくらい勉強して、それはいつそこがまとまるんですか。例えばPM二・五だって、いつまとまるんですか。何か大臣が先ほど、自分としては声を上げようかなと思っていらっしゃるという話をしていましたけれども、それがないと科学的知見がまとまらないんですかね。それはどうなんですか。

竹本政府参考人 PM二・五の環境基準の話でございますので、私の方からでございますが、先ほど大臣の方から答弁申し上げましたとおり、検討会で健康影響評価をこれからやっていくということでございます。いつになったらどういう結果になるか、とりあえず検討を始め……(末松委員「これからじゃないんだ、今までなんだよ」と呼ぶ)済みません。それで、この環境基準は、現時点で直ちに設定をするというところではございませんが、これからもしっかりと検討会の場を通じまして、検討を進めていきたいと思っています。

末松委員 済みません、私もちょっと役所にいて、努力宣言をすればいいという話じゃないんですよ。今までのものがどうだったんだということを、その責任を問うているわけじゃないですか。

 今から「そらプロジェクト」をやりますと、平成二十二年、二〇一〇年、そこまでに調査を終わって、それからまた数年かけて結果を分析するとかいう話。そうやっている間に、私は、東京大気汚染の訴訟の方々なんか、また体調を崩して、とんでもない状況になるよと。

 つまり、何が問題かというと、結局、環境省が科学的知見だと認めない限り科学的知見じゃないということなんですよ。そこで、環境省が不作為で、あるいは調査がのろくて、五年とおっしゃったけれども、大臣、もう五年以上たっていますよ、十年近くたっているわけですよ、それで私たちは科学的知見は認められませんと言ったら、だれもそこは救われないんですよ。そこの責任をぜひちょっと自覚していただきたいんです。

 別に私は、ここで大臣の発言一つ一つ責任論でけちをつけているわけじゃないんです。ただ、要はそこなんですよ、みんな、科学的知見、最後は、因果関係がわからない、全部そこで切られまくっているんですよね。だから、実際に体調の悪い人がいても、結局、因果関係がわからないからといって全部切り捨てられていくというのは、それは私として、政治家としても許されないだろうと。だから、今度、民主党の環境健康被害者救済基本法というんですか、それをつくって、そういった暫定的な救済も含めて、そして科学的知見と暫定救済を整合できるような形のものをやっていこうとしているわけなんです。

 大臣、ここまで私は申し上げたので、大臣の先ほどの、ぜんそくの主たる原因とは考えられないというのは、これは時期的に、前はそうじゃなかったということは今この部長さんが言ったことで明らかだと思うんですけれども、そこはきちんと訂正をしていただければと思うんですね。

 今の状況だけではなくて、それはいろいろと前は非常にひどかった。今だって、前よりもある程度よくなったというのは統計で環境省が示していますよ。でも、本当にそうなのか。PM二・五なんというのは調べてなくて、どうしてそれがよくなったと言えるんだということがあるわけですから、そこはきちんと前提の上で、もう一回ちょっと御発言賜りたいと思うんです。

若林国務大臣 ちょっと問題を私なりに整理させていただきたいと思います。

 先ほど部長が答弁をいたしております、昭和六十二年の公健法改正で地域指定が解除されたと。その前は、こういうガスと健康との関係、因果関係を制度的に認めていたわけですね。それを、指定を解除することによって、その地域について、一つ一つの因果関係を明らかにしないでも、そこに一定期間住んでいたということで因果関係があるんだということを推定する法律の制度になっていたわけですね、前は、六十二年までは。そういう意味で、それは明らかに、その地域内におけるぜんそくの発生患者と、違う地域におけるぜんそくの発生患者とが倍以上も大きな差があるということから、一つ一つの因果関係を検証するということではなくて、その地域内に居住してぜんそくになった人はこの因果関係があるものと法的に推定しちゃったわけです。ところが、その後、改善が進んで、他の地域と大体同じような発生状況になってきたというようなことで、そういう法的推定の規定をなくした、こういうことであります。

 しかしながら、法的に推定することがないからといって、個別の人のぜんそくが全く関係がないということを言ったわけではないと私は理解をしているわけでございます。ただ、それは、一つ一つがどこで救済されるんだといえば、まさに一人一人の、今の仕組みの中でいえば、それによって損害を受けたとする被害者が訴訟の中で明らかにする、一人一人の救済についてはそういうふうになったわけですね。

 そこで、沿道の一定距離の中に住んでいる人については、やはりかつて指定地域の中であったように、法的に推定できるのかという問題が残されているんだろうと思います、今の指摘されている中では。それで、私どもの方は、その沿道の一定距離内に居住しているということでそのような法的推定をしてもいいほど明確であるかどうかということについては、今のところ、そういう法的な推定をするに足りるだけの根拠を持ち合わせていないという判断をしているわけですね。

 それで、今の東京訴訟の中で、私どもの方は、御承知のように、東京地裁判決に対して不服があるということで今控訴しているという状況なわけでございまして、その控訴理由の中には、医学的に十分な知見がない中で決められた、判決が行われているという意味で、異議を申し立て、控訴をしているという状況でございます。

 そのことについても、含めて、裁判所の側からは和解の道がないかどうか探るというような話が出ているわけでございますから、裁判の上で控訴をして、それに同意していないという状況を踏まえた中で、では、どこまで和解の中で、話し合いで解決できるのかということに問題が絞られてきているというふうに思うんです。

 そういう意味で、一人一人が全く因果関係がないというふうに決めつけているわけではありません。ありませんが、一定の道路の近くに住んでいるということでそのことを推定していいのかどうかということについて言えば、異論を持っているものですから、そこの意味で、私の答弁が舌足らずであって誤解を招いているとすれば訂正させていただかなきゃいけないわけですけれども、全く関係がないと言っているわけではないんです。私が申し上げたのは、そういう医学的に見て十分な知見がないということを申し上げているわけでございまして、その意味で、主たる原因として、因果関係があるという前提で補償的措置、金銭的補償をするというわけにはまいらない、こう申し上げたわけでございます。

西野委員長 時間がオーバーしておりますので、よろしく。

末松委員 すぐ終わりますから。

 午前の参考人質疑でも、調査は、部長さんも苦労しておられると思うんですよ、いろいろと調査すること自体が、やはりプライバシーとか個人情報の話になって大変だと。それは参考人の話にもよくあったんです。あったけれども、ただ、医学的な知見、科学的な知見と言われる、これを振り回してやっているので、そこの辺が、もしそこまで言うんだったら、しっかりした根拠を常にきちんとモニターしてくれよと、それは当然ですよね。そこを私の方からお願い申し上げて、質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 あと四十分間、大臣以下、どうぞよろしく御答弁をお願いしたいと思います。

 きょうは、国土交通並びに経済産業の政務官にもお越しをいただきました。環境省の所管の今回の法案審議ではありますけれども、どうしても関連するということからあえて御出席をいただきましたので、あわせて御答弁もよろしくお願いをしたいと思います。

 さて、今回のこのNOx・PM法案、代表質問に始まりまして、きょうは午前中、参考人からもいろいろと意見を聞かせていただきました。この法改正の重みを非常に感じながらこの中身をひもといてみたとき、どうも環境省として腰砕けになっているんじゃないかな、そんな印象を禁じ得ませんでした。現在の大気汚染の状況がなかなか改善を見ないという問題からしても、これは環境省だけが独自で取り組むような中身ではない、それこそ、その主たる原因をつくってきた国としての大きな責任を省庁を超えて感じていかなければならないだろう、そんな思いを実は強くしたところであります。

 そんな中で、きょうは国土交通省そして経済産業省にもお越しいただきましたが、今回のNOx・PM法案、この改正の意義について各省としてどのように受けとめていただいているのか。大気汚染がなかなか改善されないという現状を踏まえていただいた上で、それぞれの省で御答弁をいただけたらと思います。お願いします。

    〔委員長退席、並木委員長代理着席〕

吉田大臣政務官 今ほどの田島理事の御質問に、まず、国土交通省、たくさん道路をつくって、このNOxについて、おまえたちも出しているじゃないかというような御質問なものですから、どんなふうに考えているのかということについて、一言ですけれども、答弁させていただきます。

 これまでも、今おっしゃるとおり、各省と連携をとりながら、自動車の排ガス規制の強化並びに自動車NOx・PM法に基づく対策、いわゆる低公害車の開発、普及、推進、そして自動車からの排出量を軽減させる対策ということで、道路の交通環境対策等に取り組んできた経緯があります。

 このような国の各種対策や自治体による努力、業者の車両更新などの協力の結果、大気環境については改善が進んできている、こう認識はしております。

 しかしながら、都市部における自動車交通量の多い、局地的、東京で言うとテンポイントぐらいは二十二年になかなかクリアすることが難しいというような、基準未達成の状況が継続しておりますものですから、大気環境の改善に向けて対策を講じていく必要がある、こう認識をしております。

 以上です。

高木大臣政務官 経済産業省からお答えさせていただきます。

 経済産業省は、自動車NOx・PM法に基づきまして、これまでも対策地域の自家物流事業者が計画的に取り組むべき判断基準を整備しまして、NOx・PMの削減に資する共同輸配送、また物流拠点の整備などの物流効率化対策や、適正運転の実施などの取り組みを促してきたところでございます。また、この法に基づきます車種規制等に対応するため、排出基準適合車へ買いかえる事業者に対する低利融資や税制上の優遇措置を講じてまいりました。さらに、燃料電池自動車や電気自動車の技術開発や、低公害車の一層の普及を図るための低利融資や税制上の優遇措置に加えまして、補助金による導入の支援も行ってまいりました。

 本法につきましては、そうした取り組みによりまして、おおむね改善傾向にあると認識をしております。しかしながら、自動車交通量が多い道路が交差している一部の地区等では、大気環境基準の非達成の状況が長期間にわたって継続しておりまして、適切な対策を講じることが必要と考えております。そういう状況のもとで、本法律案におきまして、改善が必要な地区の指定や建物の新設に係る届け出等の局地汚染対策や、同地区への流入車対策について新たな規制が設けられますことは、改善のために大変有意義であると考えます。

 経済産業省といたしましても、大気環境基準のできるだけ早期の達成を図るために、例えば判断基準作成、また支援策等におきましても、関係省庁と連携をいたしまして、製造事業者など自家物流事業者の流入車対策の着実な実施等に取り組んでまいりたいと思っております。

田島(一)委員 経済産業省並びに国土交通省、それぞれ改善傾向にあるという前提に立ちながら、それでもこの局地汚染の対策については、今回のこの法改正は意義があるという認識で受けとめさせてもらいました。

 それぞれの省で所管されている範疇が非常に大きいわけなんですけれども、例えば経済産業省としては、今この車両代替、とりわけ低排出自動車への買いかえという部分で、いわゆる自動車産業に対してもう少しインセンティブを与えていくような手だてだとかが、私はその対策としてかなり有効ではないかなというふうに思っておりました。

 とりわけ低排出の自動車に買いかえといいますと、かなりの費用負担が発生してくるという点から、経済界にも及ぼす影響は大きい、そう批判される方もいらっしゃると思うんですけれども、例えば、せめてNOx・PMの低減装置を車両に搭載していくために、何らかの補助事業であるとか技術開発等に関して経産省として前向きな取り組みをするとか、何らかのそういったことをやることによって、この前提となる、いわゆる排出抑制をきちっと図っていく手だてにこそ、私はもう少し力を入れていくべきではないかな、そんなふうに実は考えるわけであります。その点について経産省としてどのようにお考えか、お願いします。

高木大臣政務官 ただいま御指摘がありました排出ガス規制に適合した自動車の開発と普及を進めていくことは、環境対策からも、また自動車メーカーの競争力を高める上からも極めて重要な課題でございます。

 そのため、経済産業省では、自動車メーカーに対しまして、排出ガス規制に対応した車体の技術開発を進めるよう、プロジェクトを初め、さまざまな形で働きかけを行ってきております。まず、買いかえにつきましては、国土交通省、環境省と共同で、NOx・PMの排出が少ない自動車の購入に際して税制面での優遇を行っております。

 ただいま委員から御指摘ございましたNOx・PM排出低減に資する後づけ装置の購入につきましては、今年度、国土交通省、環境省と共同で、政府系金融機関の低利融資による支援を拡充しております。

 今後とも、このNOx・PMの排出を削減します後づけ装置の開発も含め、自動車メーカーが積極的に技術開発を進めていくよう働きかけを行ってまいりたいと考えております。

田島(一)委員 実は、欧米向けのディーゼル車は、もうほとんどこの低減装置というのは標準に装備されているんですね。でないと、向こうの国では走らせることができません。ですから、日本の自動車メーカーというのは、技術はもうほとんど持っているわけなんですね。ただ、日本では、この規制が緩いからというので、低減装置がついていないディーゼル車をどんどん販売している、それを野放しにしている。こう考えると、やれるのにやらないという問題が、今回のこの改正の柱にもなってきている、いわゆる大気汚染に全然効果を発揮していないんだということにつながるかと私は思うんですね。

 低利融資であるとかいろいろな取り組みをこれからされるというようなお話もありました。しかし、この辺はやはり情報がきちっと末端のいわゆる運送業界等にも行き渡らないと、しょせん融資なものだから、これは返さなきゃいけないというようなこともあって、なかなかそれがインセンティブにはならない可能性もあります。その点は、もう要望にとどめておきますけれども、やはり国内の自動車産業がしっかりと牽引していくような意欲を持てるように経産省の方からも強くぜひ声を出していただきたい、このことだけ強くお願いをしておきたいと思います。

 さて、国土交通省並びに環境省の方にお尋ねをしたいんですけれども、低排出自動車への買いかえを促していく、これはこれで非常に大事なことだと私も思います。しかしながら、自動車一台当たりの排出量を減らしたところで、交通量が全体的にふえていくのであるとすれば、結果的には、全体として大気汚染物質の排出量がふえるわけであります。ですから、低排出自動車をふやすということ以上に、全体の大気汚染物質の排出をやはり減らすということが何より大事だと思うんですね。言いかえれば、走っている自動車の台数を減らすということであります。

 もちろん、そういうことを考えると、走行抑制の措置として、ロードプライシングであるとか何らかの手だてをもう少し具体的に考えていかないと、低排出自動車がどんどんふえればいいんだというような誤解を招いてしまって、根本的な解決にはならないんじゃないかと私は考えるんですけれども、環境省として、そして国土交通省としてどうお考えか、お答えください。

    〔並木委員長代理退席、委員長着席〕

若林国務大臣 委員御指摘のように、個々の交通、車の規制をやっても、総体的に量がふえれば全体の排出量はふえるじゃないか、こういうお話、もっともでございます。

 基本的には交通の、交通流対策といいますか、交通の流れをスムーズにするといったような、そういう対策とか、あるいは道路構造上の問題、立体交差の整備を進めていくとか、さらに都市構造の問題といったような問題を総合的にとらえていかないと、総量としての抑制ということにはならないというふうに思います。

 その意味で、この自動車排ガスの総合的な対策というのは、各省庁にわたり、各業界にわたり、非常に幅広く関係者が多いわけでございますので、今申し上げましたような総合的な対策を講じていくというものが基本だ、こう思っております。

吉田大臣政務官 今の御質問、まさにおっしゃるとおりだと。前段は大臣がお話しされましたものですから、特に、環状道路等の幹線道路ネットワークを整備するとか、あるいは交差点の立体化という、このボトルネックを解消しようというようなことは、今一生懸命取り組ませていただいております。

 さらに、高速道路の路線間で料金を格差つけまして、今理事がおっしゃったロードプライシングなんかは大変有効な手だてだというふうに認識しております。逆に、高速道路ができた、そこを大型トラックが料金を払いたくないから、みんな下へ回っちゃったということの、その逆の例もかつてあったりするものですから、そのことなど考えますと、ロードプライシングはとても有効だと思うんですね。

 それから、バスの利用の促進、いわゆる減らす方向にやはり努力をしていく、このことが大事だ、そのように思っています。都市内の交通を適切に誘導する施策ということで取り組んでいきたい、今後とも積極的に推進していきたい、このように思っております。

田島(一)委員 やはり交通流対策それから都市構造、もちろんこれにも問題は大いにあるかと思いますし、もちろんそのことがあって今回の改正につながってきたんだと思います。

 しかし、先ほども話がありました、平成十三年五月、参議院の附帯決議の大きな二番目に上がっております。ちょっと読みます。「大都市地域において環境基準が達成できない原因は自動車走行量の増加等にあることから、自動車交通量を抑制するとともに、道路に係る環境保全対策の抜本的見直しに取り組むこと。」というふうに決議されているところであります。

 若林大臣からさかのぼることちょうど四代前の川口大臣のころであります。大臣がなられて、この改正案というわけでありますから、それまでの四人の大臣が、平成十三年に改正案が通過をしてから四代かわってきたわけなんですけれども、一向にこの大気汚染の状況が進んでいない。しかも、交通量の抑制を図れというふうに参議院でも御決議をいただいている。この決議は一体何だったんだろうかな、そんなふうに実は振り返らせてもらうんですね。

 私たちも国会でこのように真剣に議論をして、少しでもその対策に効果が出るように、そんな思いで意見を述べさせてもらい、また、ただしているところではありますが、こうした附帯決議の中身自体もなかなか効果として出てきていない。対策は本当に打たれているのかな、そんな疑問すら感じるんですけれども、大臣、この交通量の抑制という点については、有効性が何か余りないような印象をお持ちなのか、そこを含めて、もう一度お答えいただけますか。

若林国務大臣 ロードプライシングの導入などに代表されるわけでございますけれども、交通量を抑制するということの難しさというのは、私もいろいろ関係者から話を聞いて、つくづくその困難な状況に戸惑っているということでございます。

 お話ありましたロンドンだとかシンガポールだとかいったようなことで、具体的にそういうことを実施しているところがあるわけでございます。それらの状況などについても改めてしっかり把握をし直した上で、そのような抑制策というものが、経済や社会生活などにどのような影響を及ぼしていくのか、その規制の手法として、どの程度のコストがかかっていくものなのか、具体的に詰めて検討しなきゃいかぬ、こんなふうに思っております。

田島(一)委員 実は先月、三月二十七日に、国土交通委員会でこのNOx・PM法が取り上げられていたんですね。その方の発言をそのままちょっと引用させてもらいます。議事録からです。「NOx・PM法みたいなくだらない法律をいつまでも置いておくからなんですよ。明らかにおかしい、国交省関係者はみんなそう思っているはずですよ。物流という、流入車という概念のないNOx・PM法なんというのは、私は、環境省みたいな物流がわからないところがつくった法律だというふうにかねてからも申し上げていました。」残酷な発言ですよね、環境大臣。こういう発言が国土交通委員会の中でまことしやかに語られている。しかも、与党の議員さんから出ているんですね。大臣、どうでしょう、これは本当に残念だと思うんですけれども。

若林国務大臣 私に対しましては、与党内のみならず、業界筋からも大変なプレッシャーがかかっておりまして、このようないわば規制の強化の方向ということについて、大変な困難を受けております。しかし、そういうのを一つ一つ説得し、場合によってはこの壁を乗り切っていく、そういうイニシアチブを発揮するのが環境省、環境大臣の責任だというふうに思いながら、頑張っているというのが実情でございます。

田島(一)委員 少なくとも私は応援団のつもりでありますから、そこは理解してください。

 くだらない法律だというふうにののしられて、それを提出する環境省もくだらないのか、それを議論している我々もくだらないのかと非常に残念でならないところでありますけれども、やはり少しでも効果を上げていくのが今回の法改正の目的だと思うんですね。

 個別の問題にそろそろ入りたいと思うんですが、とりわけ流入車対策の部分で、今回、さまざまな提出義務を課すであるとか、まだ努力義務だという点で、私は非常に残念な部分も感じているところであります。

 例えば、自動車を運行する事業者そして荷主に対して、今回、努力義務を課すことになりました。この努力義務の規定に基づく取り組みの内容について、私自身、見ておりますと、もう少し荷主に対しても強力な措置というものを講じていくべきではないかなというふうに思うわけですけれども、その点について、環境省、いかがか、お答えください。参考人で結構です。

竹本政府参考人 荷主に対する努力義務を今回新たに導入したところでございます。努力義務の規定に基づく取り組みに関しまして、自動車を運行する事業者については、対策地域内を走行する際には、自動車NOx法に基づく排出適合車を使用するよう努めていただく。

 また、今委員御指摘のありました、荷主につきましては、運送事業者に対する貨物運送の計画的な発注によりまして、まとまった貨物を少ない頻度で運送させる、そういうことを内容としてございまして、詳細につきまして、今後関係者と調整をしていきたいと思っております。

 また、流入車対策として、この努力義務に加えまして、もう既に御案内のとおりでございますけれども、事業者の排出抑制計画の提出義務を課しまして、新たな対策をさらに講じて、総合的な対策の一助として、また、主要な柱として、今後、地域の環境基準早期達成に向けて努力をしてまいりたいと思っております。

田島(一)委員 先ほどの近藤委員の質問にもありましたとおり、実際のところ、貨物自動車運送事業者の提出状況、平成十五年度でも七〇・四%と、約三割がこれを提出していない。実態をやはりきちっと把握していかないと、私たちが今回法改正をしても実効性というのはなかなか上がらないと思うんですね。

 行政として、指導それから勧告などを厳正にやはり実施していかないと流入車対策が進まないんじゃないか、私はその点を非常に心配いたしますし、対象となる事業者をまず的確に把握すること、それから、義務を確実に履行させることが何よりも重要だというふうに考えますが、その点についてどう手を打っていかれるつもりか。環境省、お答えいただけますか。

竹本政府参考人 今御指摘ございましたとおり、実効を上げるために、新たに導入されました制度についてきっちりと把握をしていくということでございます。

 先ほど近藤委員の方にもお答えいたしましたけれども、事業者の方からの、現行法の取り組みでございますが、特に貨物の運送事業者について七割ということで、我々、この課題について、中央環境審議会の方からも、しっかりと厳正にこの法律を運用するようにという御指摘もいただいております。私たち直接でないところが残念でございますが、所管でございます国土交通省とも緊密に連絡をとりまして、実効が上がるように努力していきたいと思っております。

田島(一)委員 せっかく法改正に盛り込んだわけでありますから、実効性を上げなければ意味がありません。またぞろ次の改正のときに同じことを言わなくてもいいようにしていただきたい、そのことは強くお願いをしておきたいと思います。

 さて、時間も限られております。東京大気汚染の公害訴訟関係の質問に入らせていただきたいと思います。

 もう既に同僚の末松委員そして近藤委員からも質問がありましたので、重複は避けていきたいと思いますけれども、大臣として、今回の和解協議に国としてどのような決意で対応をしていこうと考えるのか、まず冒頭、そこから入らせてください。お願いいたします。

若林国務大臣 御承知のように、この訴訟は提起されてから非常に長い期間を経過いたしております。個々の被害を受けられた方々は、大変に苦痛に満ちた月日を送ってこられているわけでございます。

 そういう意味で、裁判所の方から和解の可能性について打診がございましたことから、原告側との話を始めているところでございますが、原告の要望あるいはまた裁判所の意向ということを踏まえながら、本訴訟の和解による解決に向けまして、最大限の努力を尽くしてまいりたいと思っております。誠意を持って対応をしたい、こう考えております。

田島(一)委員 日本語というのは非常に難しいんですね。誠意を持って対応するということはきちんと加害者責任を認めるということなのかどうか、そのあたりのことも都合よく解釈してしまいがちなものですね。

 しかしながら、行政の不作為による公害加害責任を認めるかとなったとき、今いみじくも大臣は首を横にお振りになられましたけれども、窒素酸化物に比べて粒子状物質に対する国の規制がおくれたために、今回、大気汚染の改善がおくれてきたんじゃないか、私はそう考えるわけであります。そう考えると、今、首を横にお振りになられましたけれども、公害加害責任をやはり認めていかないとこれは前に進めない、私はそう考えます。

 もう一方で、東京都がそれこそ大気汚染訴訟の和解に向けた新たな医療費の助成制度の提案をされたことは、もう既に御承知のとおりであります。迅速なぜんそく患者の救済を行うために、ある意味では思い切った対策、うがった見方をすれば都知事選の前だったということもあったのかなと、笑っていらっしゃいますけれども。

 その背景はさておいて、国が応分の負担をするということの提案について、環境省も検討をしていくべきではないかというふうに私は考えるわけですが、大臣、いかがですか。

若林国務大臣 東京都が腹構えをして、ここまでぜんそく患者の医療費について考えていくということを申しておりますのは、実は、排気ガスと直接因果関係があるないということと全く関係なく、具体的にわかりやすく言えば、小笠原諸島であろうと青梅の多摩の地域であろうとそういうぜんそくの患者についてはみんな医療費を負担しましょうというようなところまで含んだ東京都の提案になっているわけでございます、これは極端な話ですけれども。

 そういう意味で、先ほど来からお話し申し上げていますように、主たる原因が窒素酸化物などの排気ガスによるものであるということがはっきり認められないものについて、法的な責任を負うという意味合いを持つ給付というのはするわけにまいらないという原則の中で話し合いを今しているところでございます。

田島(一)委員 今、小笠原や多摩の地域の話が出てきましたけれども、その辺を除いてだったら払ってもいいよというニュアンスがあるのかなと私はふと思ったわけですね。

 東京都が提案してきているこの比率が必ずしもいいとも私は思いません。正直申し上げて、自動車メーカーがもっと負担をすべきだぐらい実は思っているわけです。その比率云々で議論をしてもせんないことでありますから、それは避けますけれども、それこそ自動車メーカーも、今回の東京都が提案してきた医療費助成制度の拠出は協議に応じようとしています。そのこともやはり重く受けとめていただいて、国はもう既に敗訴しているわけですから、拠出に応じるべきだと私は考えます。これは議論をやっても、多分答えはきょうのこの時間、何時間かけても落ちつかないと思いますので、ぜひ、そのことだけは強く要望しておきたいと思います。

 さて、国土交通省、せっかくお越しいただきましたので、道路管理者としての省に対してお伺いをしたいと思います。

 西淀川の判決以来もう五連敗、見事に敗訴し続けてきたところであり、もう既に責任は認容されているわけでありますけれども、原告から要求されている一時金であるとか謝罪に応じる、もうそろそろ覚悟を決められていいんじゃないかなと思うんですけれども、いかがですか。

吉田大臣政務官 これまでの訴訟につきましては、原告に理解をいただき、損害賠償を破棄して、道路管理者は道路環境対策を実施するという内容で和解を原告と結んでおります。

 今お話しの、今度は東京訴訟についてでありますが、裁判長から、和解の可能性を探るために各当事者の話を聞きたいとの発言がありまして、これを受けて、現在、関係省庁と相談の上、解決点を探るべく、原告との話し合いを真摯に進めているところでありまして、委員のおっしゃられることもこの話し合いの中に加味しながら結論を模索していきたい。

 いずれにしろ、道路管理者としては、これからは、できることは道路構造とかそういったものを整備して、交通流の円滑化でありますものですから、今後とも、原告の要望や裁判所の意向を踏まえて、環境対策に何ができるかということを、誠意を持って検討と言うとこれはうまくないようでありますので、本気に努力をしていく、こう申し上げて、答弁にさせていただきたいと思います。

田島(一)委員 いや、大変心強く思っております。環境大臣、ぜひ今の答弁を受けとめていただきたいところですね。

 何はともあれ、私、冒頭に申し上げましたけれども、交通量の全体をやはり減らしていかないと解決にならないというふうに実は考えております。私が言うまでもなく、環境白書、環境省の方でもう既に指摘をされていることでありますから。

 やはり道路をつくればつくるほど大気汚染はどんどん広がる、地球温暖化もどんどん悪化していく、この原点はきちっと認識をしていかないと、何か道路改善、改良を図って、交通流の円滑化を図れば、もうすべてNOx・PM低減は解決できるんだというようなニュアンスで今なお道路建設が進んでいる、そんな印象が私は払拭できません。

 これを考えると、国土交通省として、もうそろそろ省益を超えた、今の現状問題、地球温暖化ももちろん大切な、大きな喫緊の課題です。そして、NOx・PMの濃度をどんどん下げていかなきゃならないというこの緊急の課題も含めて、長い歴史の中から、大気汚染対策それから温暖化対策として、そろそろ道路中心の政策から大きく転換しなきゃいけない、そんなふうに私は感じるんですけれども、政務官、どうでしょうか。気前のいいところで、ぜひ御答弁いただきたいと思います。

吉田大臣政務官 まさにおっしゃるとおりでありまして、車の数を減らしたいという、これは今真っ正面の政策であります。

 オムニバスの政策とか、都心に入る前に車はどうぞ置いてください、パーク・アンド・ライドで少しでもマストランスポーテーションを使って町へ来てほしいというようなことで、徹底してその方向に政策を今展開しているということでありまして、必ず委員言われるような方向に向けて結果が確実するんであろうと信じております。

田島(一)委員 お招きした国土交通省から大変励みになる答弁をいただいたところであります。

 環境大臣、国土交通省はきちっと前向きに応援すると言っていただきました。

 今回、省庁間の壁を乗り越えて、いろいろな問題が浮き彫りになってきたと思います。そういった中で、いろいろな利益団体の代表の政治家なんかが、悪法だ、くだらない法律だということもおっしゃっているようですけれども、ぜひ現状の問題、そして、二十年近く苦しんでいらっしゃる方々もまだ今なお解決できずにもがいていらっしゃる。こういった現状の問題を考えたとき、本当にこの改正だけで環境基準が達成できるのか。そして、この改正を踏まえて、大気汚染を少しでもよくしていこうという意気込みみたいなものをきちっとやはり受けとめさせていただきたい。そうしないと、採決に入れないと私は思うんですけれども、大臣、最後にその点をお伺いして終わりたいと思います。

若林国務大臣 私は、もう二十五年ほど前ですけれども、国土交通省で勤めていたことがございます。国土交通省の中に総合交通課というのがございました。課長が運輸省の方から来たときは、課長補佐は建設省の方から来てもらう、人事異動で課長が建設省の方から来ますと、課長補佐は運輸省の方から来てもらう、そうしないと総合交通というのは企画もできなければ実行もできない、こんな認識のころでございました。

 今は、御承知のとおり、国土交通省ということで、道路行政、自動車交通を担当している行政責任部局と鉄道とが、トラックあるいはまた船舶も含めてですけれども、そういうことを担当している昔の運輸省部局、ここが一つの役所として総合的にまさに検討をするということになってきたわけでございます。

 委員がお話ございましたように、地球環境の観点から見ましても、やはり住み方、都市づくり、地域づくりということと非常にかかわっているわけでございまして、今のような大都市の、しかも一定の中心地に集中をしていく、そういう問題点を共有しながら、それぞれの地域で住み分けていく、そして、住み分ける地域にあっては公共交通機関をもっと積極的に利用していくようなシステムというようなものを考えていく、まさに総合的な交通体系の中で都市づくりが行われなきゃいけないんじゃないかという気持ちが非常に強うございます。

 今回のこのNOx・PM法の改正というのは、もちろん起こってきています局地的な現象に対してはきちっと対応しなければなりませんので、全力を挙げてその局地対策そして流入車の問題も取り組んでまいりますが、基本的には、委員がおっしゃられましたような、もっと総体的に、総合的な交通体系を考えていく、また都市づくりを考えていく、そういうところに及んでいろいろな知恵を出し合っていかなきゃいかぬ、こういうふうに思います。もう精いっぱいの努力をしてまいりたいと思います。

田島(一)委員 ぜひ実効性を上げていただきたい。このことだけ強く要望しておきたいと思います。

 この東京大気汚染訴訟も含めると、もう既に百人以上の被害者がこの係争中に亡くなられている。非常に問題は多岐にわたっておりますけれども、長い長い私たちの暮らしの歴史の中で起こってきた問題でもあります。アスベストのときには、因果関係が明らかでない場合でもしっかりと手を打っていこう、そんな思い切った決断も環境省はされました。そう考えると、今回のこのNOx・PMにまつわる大気汚染に関しても、ぜひそういった英断をしていただきたいというふうに私は思っております。

 これから先、実効性を上げていただく過程でさまざまな取り組みをいただくと思いますが、地方自治体の現状も含め、まだまだ問題が山積するかと思います。どうか、次の改正のときに、あのときこう言ったじゃないかというようなことを言う必要がないような、実効性の高まる取り組みを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西野委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)

    ―――――――――――――

西野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、桜井郁三君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田島一成君。

田島(一)委員 私は、ただいま議決されました自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して、説明にかえさせていただきます。

    自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 大都市地域における自動車排出窒素酸化物等による局地的な大気汚染により、環境基準が長期にわたり未達成であることから、早期にすべての地点で環境基準が達成できるよう、自動車交通量の抑制を図るための有効な施策の早期導入を検討すること。

 二 対策地域に流入する排出基準非適合車は、対策地域の周辺のみならず全国各地より流入している現状を踏まえ、対策地域内を走行する排出基準非適合車の走行抑制が効果的に行われるよう、容易に排出基準適合車であるか否かを確認できるステッカー制度等の早期導入を検討すること。

 三 重点対策地区の指定に当たっては、社会情勢、経済情勢の変化等により環境基準の達成が危ぶまれる地域を幅広く積極的に指定していくよう適切な助言を行うこと。

 四 重点対策計画の策定・実施に当たっては、交通流の円滑化対策、交通量の抑制対策のみならず、交差点改良、道路拡幅、立体化、環境施設帯・植樹帯の設置などの道路構造対策等、さらには都市構造の改善も含んだ抜本的、総合的なものとするため、関係地方公共団体及び道路管理者等と緊密に連携して実施するよう、都道府県知事に対し適切に助言すること。

 五 貨物自動車運送事業者に対策地域外から対策地域内への運送を行わせる荷主等に対しては、自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制に積極的に努めるよう、促すこと。また、都道府県知事は、特定建物の設置者に対して、その維持及び運営に当たり、自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制について適正な配慮がなされることとなるよう、的確に要請等を行い、必要な場合には積極的に報告を求めるよう、都道府県知事に対して適切に助言すること。

 六 自動車走行量の抑制及び総量排出削減のための交通流対策や、道路構造対策及び都市構造対策等の施策の推進に当たっては、地球温暖化の防止等のための二酸化炭素の排出削減の観点も踏まえ、関係各省の連携の下で総合的かつ抜本的な対策の実施に努めること。

 七 総量削減基本方針の改定に当たっては、既に実施されている施策の施行状況が十分に点検・分析されていない状況等にかんがみ、地方公共団体、市民団体及び貨物自動車運送業界等からの意見も踏まえ、関係者による実効ある対策を実施することを促し、かつ、実施した施策の効果を十分に点検・検討することを促すものとなるよう創意工夫すること。

 八 国は、地方公共団体が条例において独自に実施している排出基準非適合車の流入規制等の取組を十分尊重するとともに、地方公共団体が行う対策に対し積極的な支援・協力を行うよう努めること。

 九 浮遊粒子状物質の中でも特に粒径の小さい、いわゆるPM二・五については、健康影響が指摘され、既に諸外国において環境基準が設定されていること等の状況を踏まえ、諸外国における科学的知見や基準の設定状況も参考にしつつ、国内の健康影響に関する知見をとりまとめ、早期に環境基準の設定を行うこと。

 十 「局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査(そらプロジェクト)」の着実な実施、かつ、その調査結果の速やかな評価・解明を図り、その結果に基づき、必要な措置を速やかに講ずること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

西野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。若林環境大臣。

若林国務大臣 ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力する所存でございます。

    ―――――――――――――

西野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十四分散会


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