衆議院

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第9号 平成19年5月11日(金曜日)

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平成十九年五月十一日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 西野あきら君

   理事 石崎  岳君 理事 宇野  治君

   理事 桜井 郁三君 理事 鈴木 俊一君

   理事 竹下  亘君 理事 末松 義規君

   理事 田島 一成君 理事 江田 康幸君

      上野賢一郎君    北川 知克君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      篠田 陽介君  とかしきなおみ君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      藤野真紀子君    馬渡 龍治君

      山本ともひろ君    石川 知裕君

      近藤 昭一君    津村 啓介君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      田端 正広君    江田 憲司君

    …………………………………

   参議院議員        川口 順子君

   参議院議員        福山 哲郎君

   環境大臣         若林 正俊君

   環境副大臣        土屋 品子君

   環境大臣政務官      北川 知克君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           吉田 岳志君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            橋本  牧君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 平工 奉文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       上田 博三君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  冨岡  悟君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  長浜 博行君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  津村 啓介君     長浜 博行君

    ―――――――――――――

五月十一日

 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律案(参議院提出、参法第一号)

 環境保全の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西野委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房審議官吉田岳志君、水産庁漁港漁場整備部長橋本牧君、資源エネルギー庁次長平工奉文君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長上田隆之君、環境省大臣官房審議官寺田達志君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君、環境省総合環境政策局環境保健部長上田博三君、環境省地球環境局長南川秀樹君及び環境省自然環境局長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石川知裕君。

石川委員 おはようございます。民主党の石川知裕でございます。

 現在、この環境委員会でも、地球温暖化を防ぐためにどうあるべきか、また地球温暖化によって弊害が出てきた部分をどう回復していくのか、さまざまな議論がなされているところでございます。現在の地球温暖化により、地球上のさまざまなところでその弊害が目に見える形で出てくるようになりました。

 二日前の朝日新聞の「地球異変」という記事でも、大きく、オーストラリアの干ばつによって、一九五六年のオリンピックのボート競技などが行われたウオータースポーツのメッカだったところが、湖が全くなくなって干上がってしまった、湖が消えた、こういう記事が載せられておりました。

 また、そのほかにも目に見える形で、この地球の上では、地球温暖化によって大きく今地球が悲鳴を上げているのが現状だと思います。地上の異変というものは大変目に見えやすい形で起こります。ですから、例えば、森林の違法伐採等によって、これは大変だということで、植樹祭などが行われたり、さまざまな対策が行われるわけでございますけれども、ただし海中の異変というものは、一般的にはまだまだ関心が薄いと言えるかもしれません。

 私ども島国に暮らす日本人は、古くから海の恩恵、漁場の恩恵を受けてきた民族でございます。しかしながら、現在、それにもかかわらず、まだまだ対策が不十分、おくれてしまったために、海の砂漠化と言えるいそ焼けのような、こういう海洋環境の破壊に対しての関心は、ほかの取り組みに比べて、まだ残念ながらおくれているのが現状と言えるのではないでしょうか。

 かつては無尽蔵と思われていた日本の水産資源も、現在は悲鳴を上げているのが現状だと思います。環境破壊という面だけではなく、水産業に従事している人々の生活までもが大変苦戦を強いられているわけでございます。また、世界的な魚食ブーム、すしのブーム。また、魚食が大変体にいいということで、今、世界じゅうで魚を食べる国々がふえている中、水産物の値段の高騰などが起きている現在、沿岸漁業の再生についての対策というのは、食料自給率や雇用の問題からも大変急務であると思います。

 本日は、サンゴ藻の付着により海藻類が減少して海の生態系に大きな影響を与えているいそ焼けの現状と対策について、また藻場の再生による沿岸漁業の活性化が食料自給率の向上と雇用の拡大につながる可能性について御質問させていただきたいと思います。

 まず、お尋ねをしたいのでありますが、日本の沿岸におきまして、いそ焼けによる藻場の焼失が今著しいわけでありますが、海洋環境における藻場の重要性等について、政府の認識をお聞きしたいと思います。

冨岡政府参考人 ただいま先生御指摘の藻場の重要性につきましては、平成十四年に策定いたしました新・生物多様性国家戦略におきまして、アマモなどの海草や昆布、カジメ、ホンダワラなどの海藻の群落である藻場は、多くの小動物等のすみかとなっているだけでなく、魚介類の産卵、生育の場となっているとしているところでございまして、我が国の豊かな生物多様性を保全する上で、非常に重要な生態系であると認識いたしております。

石川委員 藻場が回復をされることによって、小魚等が来て、またそれより大きな魚が来て、回遊魚が来て、海が再生されるわけでございますけれども、今お答えにあったとおり、藻場とは、海底で大型水生植物が群落状に生育する場所、種子植物であるアマモなどの海草により形成されるアマモ場と藻類であるホンダワラ、昆布、ワカメなどの海藻により形成されるガラモ場等があるわけであります。

 しかし、この藻場というのが大変消失をしてきているのが今日本の沿岸において大きな問題となっているわけでございますけれども、その藻場の消失によって起きる現象、これがいそ焼けというものでございます。いそ焼けという言葉は、明治時代に、伊豆半島東岸の漁民が、テングサ等の有用海藻類が生えなくなった現象の際に使われたのが最初と言われているわけでございます。

 浅い海域に生えている海草、海藻類が減少して、サンゴ藻、石灰質になるいわゆる石灰藻が海底の岩の表面を覆い尽くした状態をいそ焼けと言うという定義だと聞いております。

 このサンゴ藻は、表面からほかの海藻が付着するのを防御しようとする物質を分泌したり、表層細胞を剥離して上にほかの海藻が生育しないようにしているために、いそ焼けになると大型海藻類の生育は困難になり藻場は消失すると言われております。その結果、魚類の産卵場がなくなり、いわゆる魚が来て卵を産まなくなる。ということは、それらから小魚が出なくなる。そうして、魚自体が来なくなる。また、そこに貝類がいなくなる。そういうことによって、それらが生育の場を失い、藻場生態系が破壊をされる。これは日本沿岸だけでなく世界的に見られる現象で、今、海洋環境に大変大きな影響を及ぼしていると思います。

 さらに、一度藻場がいそ焼けになってしまうとなかなか自然回復は困難と言われているわけでございますけれども、現段階において、いそ焼けの被害状況はどの程度把握をされているのか。地域的なものと、また漁業に対する被害等、詳しくお答えをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 我が国の沿岸におけるいそ焼けの状況等についてのお尋ねでございますが、藻場は、御案内のとおり、魚介類の産卵あるいは稚魚などの育成の場であるとともに、海水を浄化いたしまして、水産資源の維持のために不可欠なものだと考えております。

 この藻場が衰退いたしまして長期間回復しない、いわゆるいそ焼け現象が広範囲で発生している。そしてそのことから、水産業への悪影響が懸念されているところでございます。

 水産庁では、平成十六年、いそ焼けの実態を把握する目的で、海に面しております三十九の都道府県を対象にアンケートを行いました。この調査の結果では、過去に藻場の衰退が確認されまして、それが現在も継続している地域が二十六の都道県に上っておりまして、このことから、いそ焼けはほぼ全国的な規模で発生をしているということが判明したところでございます。

石川委員 ありがとうございました。

 今、いそ焼けの現状についてお答えがございました。漁業に対する被害というものがどういう形になっているかというのはわかりますでしょうか。

橋本政府参考人 漁業への悪影響ということの御質問だと思いますが、藻場がなくなることによりまして、そこに産卵をしに来る魚がそれができないということで被害があるということとか、それから海藻を主食にしているウニだとか巻き貝が、えさがないということで大幅に減少しているというような状況があるように聞いております。

石川委員 昨年の新聞ですが、「水産庁 磯焼け対策に本腰 フェンスや網設置」、こういう記事も掲載をされておりました。

 このいそ焼けの原因について、幾つかの類型があると言われております。さまざまな類型があって、どれが原因かというのを今調査をされている段階だと思います。

 いそ焼けの原因に、まず一つは、世界的な異常気象によって、温暖化による海水温や海流の変化、こういうものが挙げられると思います。せんだって、テレビで、エルニーニョ現象によってカリブ海等のサンゴが大変被害を受けた、それによって、そこに暮らしている、海の中で生活をしている魚やまた動物が大変苦しんでいる、こういう報道もございました。この異常気象、海水温や海流の変化だけでなく、埋め立てに起因する潮流の変化に伴う汚泥の堆積、こういうのもまた原因だと思います。

 そして、ウニ類など藻食動物による食害、今回の磯焼け対策ガイドラインを拝見いたしますと、ウニですとかまた貝類、そしてブダイなど、海藻を食べる魚による被害をどう防いで海藻類をふやしていくか、こういうことが一番の対策に掲げられてあったと思います。

 また、大量の河川水流入による汚泥の堆積や、汚水、生活排水ですとか農業排水、そういったものが川を下って海を汚していく、そういったものもまた原因であり、そして、テトラポットや消波ブロックの汚損やアルカリ成分の流出、また、養殖場の海底に堆積をした、残ったえさやふんの汚泥、そして、海洋汚染による海水汚濁がもたらす海藻の光合成の作用障害、こういったことが挙げられると思います。

 いそ焼けは世界的に被害が報告をされているわけでございますが、原因は、今私が御説明したような類型があると思われますけれども、現段階でいそ焼けの原因究明がどの程度進んでいるのか、因果関係がどの程度わかっているのか、また、世界的な、ほかの国で因果関係の解明のためにどういう研究が行われているか等、詳しくお答えをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 いそ焼けの原因究明がどの程度進んでいるかというお尋ねだと思いますが、水産庁がこれまで行ってまいりました調査によりますと、委員御指摘のとおり、多くのいそ焼けというのは、海藻がみずから生えて量がふえていく量と、他の生物がそれを食料として摂取してしまうことのバランスが近年著しく崩れてしまったということのために、結果としては海藻が減るということで起こっているというふうに考えております。

 それで、食害を引き起こす生物といたしましては、北日本ではキタムラサキウニというのが有名でございまして、また西日本ではアイゴ、ブダイ等の魚類が考えられているところでございます。

 また、この他にも、いそ焼けの原因といたしましては、水温の上昇、それから海域の変化、あるいは陸域から流れてくるいろいろな濁りなどの負荷だとか、こういったさまざまな要因が影響していると考えられますので、海域によって適切な調査を行って、その原因を明らかにする必要があるのではないかと考えているところでございます。

 また、世界、外国でのいそ焼けについてのお尋ねでございますが、日本と同じような緯度の関係にある、例えばアメリカでありますとカリフォルニアの沿岸でございますとか、あとはアメリカとカナダの国境のセントローレンス湾などでも大規模ないそ焼けがあるということを承知しております。ここでも、結果としては、ウニが大量発生をいたしておりまして、それにより海藻が減少しているという状況であるというふうに聞いております。

 私ども、外国のそれらの知見というのはこれからも集積してまいりたいと思いますし、また、私どもがいそ焼けに関していろいろ調査を行っているものも、関係の先生が学会等で発表することで、外国のいそ焼け対策にも寄与できればというふうに考えております。

石川委員 このいそ焼け対策でございますが、今まで国内でもさまざまな対策が行われてきたと思います。もちろん、原因の究明は、先ほどおっしゃられたように現段階でさまざま取り組みを行われていると思いますけれども、今までのいそ焼け対策に、いそ焼けが発生をいたしますと長期的に藻場の回復が困難になるため、大型海藻類の付着が可能なコンクリートブロックを海底に置くなどの人為的な藻場回復の試みが各地で行われてきたと思います。

 ただし、従来の藻場回復の技術の問題点、もちろん御案内のとおりでございますが、幾つか指摘をされているところだと思います。

 天然海藻を利用した場合、そのままでありますと、台風や海流による散逸、また、先ほどお話ありましたウニ等、またブダイ等による食害などが原因で、なかなかそれが根づかない。また、合成樹脂の人工藻場、プラスチック製の人工藻場には、沿岸水浄化などの機能や植食性生物のえさとしての価値、生理活性物質、情報伝達物質の生産機能を期待できない、こういうものがあったと思います。

 また、原始的な昔の方法として、岩石の投入、また、今は禁止されていると思いますが、岩ごとダイナマイト等で破壊をしてしまう、また、チェーン振りというんでしょうか、チェーンを使っていかりをがらんごろんがらんごろんとやっていく、また、それぞれ漁民が手で洗ったり、そういう人為的なことも試みられてきたと思います。

 いそ焼けの因果関係がまだまだ明らかでないために、適切な対応策としてはまだ、これが適切な対応策というものは解決がなされていないと思いますけれども、政府が、いそ焼け対策、そしてその技術開発への財政的な支援の規模は現在どのような状況か、また、今までどういう対策をして成果が実証されたか、お答えをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 いそ焼け対策に対する水産庁の取り組みを御説明させていただきたいと存じます。

 水産庁では、平成十六年度より三カ年間にわたりまして、磯焼け緊急プロジェクトという調査を実施しております。そして、この成果を今年二月に取りまとめまして、磯焼け対策ガイドラインという形で取りまとめさせていただきました。このガイドラインを全国に普及いたしまして、そして、いそ焼けの解決のために御利用いただくというために、また、いそ焼けに取り組んでいただいている漁業者の方たちに今度は専門家を派遣して、そして技術的な面でのサポートを行うということもことしからやらせていただくということをしているわけでございます。

 また、ハードのお話でございますが、平成十九年度から新たに、これまでは、藻場造成を行うためには、委員がお話しいただきましたように、石材であるとかコンクリートブロックを設置して、そこに海藻が生えるという施策をとってまいりましたが、これに加えて、いそ焼けの原因になっているウニやアイゴを事前にとる、あるいはそれらを防御するといったような、食害生物の駆除だとか防御といったような施策であるとか、それから、ブロックにあらかじめ海藻の種をつけておくというようなことであるとか、あるいは、公共事業を実施している中に、途中でちょっと休みまして状況を見る、モニタリングを行いながら進めていくといったようなことをあわせて実施できる磯焼け対策緊急整備事業というのを創設いたしまして、これを進めていきたいというふうに考えているところでございまして、ソフトの面、そしてハードの面で、地域の実情に合わせて実施していくように支援をしていきたいと考えておるところでございます。

石川委員 私も、この紹介版の磯焼け対策ガイドラインというものをちょうだいいたしまして、拝見をいたしました。この中で、ウニを防ぐ、いわゆる食害生物に対する対応についてどうするのか、さまざま、るる書かれておりました。

 この中でも書かれているように、いそ焼け対策というのは、もちろん昔からブダイやアイゴだとかウニだとかはたくさんいたわけでありまして、ウニなんかはおすし屋さんでも大変高級な食材でありますから、たくさんとれるにこしたことはないと思われるわけでありますけれども、それらが食べる量以上に海藻が、いわゆるそのまま循環して十分な量があれば一番問題はないわけだと思いますけれども、その海藻をふやすという対策については今どういう取り組みをされていらっしゃいますでしょうか。

橋本政府参考人 海藻をふやす対策についてのお尋ねでございます。

 海藻をふやす対策といたしましては、まだ残っております良好な藻場の周辺にブロックであるとかそういう海藻がつきやすい基質を設置いたしまして、そして今の良好な藻場を少しずつ拡大させていくというのが一番とられているやり方でございますが、それの中にも食害等により藻場がふえることが阻害される場合は、先ほどお話をさせていただきました食害生物の駆除であるとか、こういったことをあわせながら進めていこうと考えている次第でございます。

石川委員 先ほど申し上げたように、十分な海藻があれば、それぞれウニ等の貝類も居ついて、沿岸漁業も大変活性化をすると思います。

 今ちょうど、こんぶサミットというのが、せんだって、平成十九年の四月二十二日から二十七日まで、海の森づくりということで行われたということでございます。中国の沿岸部でそれぞれ真昆布を大変増殖するところから、この海の森づくり、いわゆる人工の海中林をつくっていこうということで取り組みをしているということでございます。

 もちろん、今、原因究明のために、それぞれ駆除した場合、その後どうなるのかということをやられているんだと思いますけれども、元来はやはり海藻をどうふやしていくかということが原点だと思いますので、本来、海の森づくりということをぜひお進めいただきたいと思います。大金を投じてコンクリート礁を投じるより、そういったところにぜひ力を入れていただきたいと思うわけであります。

 しかしながら、現在たくさんの魚礁等がこれまで投じられてきたと思います。また、それぞれの部分、そこだけでなく、いそ焼けになった部分がたくさんあると思います。一度いそ焼けになった石灰質の部分は、ウニなど食害生物が除去された場合にはもとに戻るのかどうかということは把握をされていらっしゃいますでしょうか。

橋本政府参考人 委員がお尋ねの、石灰藻という石灰質を多く含んだ海藻が生えることによって大型の海藻が生えにくくなるということのお尋ねだと考えますが、通常の海におきましても、光が届くある程度浅いところまでは普通の海藻が生えているんですが、それより少し深いところになりますと石灰藻というのが覆い尽くす群落になっておりまして、その境目がお互いせめぎ合っているというような状況になっているというふうに認識しております。

 それで、いそ焼けの状況と申しますのは、大型海藻が生存できないような、食害の圧力であるとかということで減少いたしますと、その海の底の方にあった石灰藻がだんだん広くなってくるという状況になりまして、ですから、これを改善するためには、やはり大型海藻が生えにくくなる要因をいかに取り除くかということが重要ではないかと考えておりまして、その施策を進めているところでございます。

石川委員 食害生物等、そういったものが原因でない場合に、いそ焼けになった部分というのは、そのままにしておくと、その後どうなるんでしょうか。

橋本政府参考人 食害生物以外の要因のいそ焼けでございますが、例えば、海藻も植物でございますので、海の中に濁り等が発生をいたしまして、海の光が届きにくいような場所でもいそ焼けが生じているということがあると伺っております。このような場合は、やはりその要因を取り除かない限り海藻が生えるということはできないものですから、それぞれいろいろな要因を取り除くということが必要ではないかと考えております。

石川委員 一度いそ焼けになった場合、石灰質が覆った場合、それは人為的なものを加えないでもとに戻るということは、実証のような結果は何かありますでしょうか。また、何か把握されている部分はありますでしょうか。

橋本政府参考人 水産庁が行っております緊急磯焼け対策事業の中で、現場で民間のダイバーの方にも協力をしていただいて、一区画のウニを取り除くという実験をやってみました。この結果、そこでは石灰藻の除去をやっておらないんですが、一年後に海藻が生えたというのがございまして、すべて当てはまるとは限りませんけれども、そういうような現場も把握しております。

石川委員 今、ダイバーの方々がウニを除去したことによって一年後には海藻が生えてきたというお答えでございましたけれども、そこの海藻が生えた部分は全くきれいになったという形でありますでしょうか。

橋本政府参考人 そのエリアについては、海藻が生えて、その状態が維持されているというふうに聞いております。

石川委員 どうもありがとうございました。

 このいそ焼けの対策について、もちろん根本から変えていかなければいけない、そのための対策に、今こちらのガイドラインの中で、まずは海藻の生産量と植食動物の摂食量、これのバランスをどうとっていくか、ここに一番重点が置かれていると思います。

 しかしながら、一度いそ焼けになった石灰質の部分をまたどうやって取り除いていくかということも大変大事な課題であると思います。

 このいそ焼けの対策にウオータージェット工法という新しい技術が開発をされているようでございますけれども、その工法についての政府の知見、評価というものがどういうものか、お聞かせをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 ウオータージェット工法に関しての見解ということでございますが、雑海藻、昆布など以外の海藻が生えた岩礁域で、それらを取り除きまして、昆布などの利用価値の高い海藻を生やそうという対策として、漁業者が藻場に生えておりますほかの海藻を取り除くというようなこと、そしてその基質面を新しくするというようなことをやるということがございます。このウオータージェット工法でございますとか、あと、先ほど委員が御紹介いただきましたチェーン振りであるとか、こういったようなものについては、この基質面を更新する一つの施策としてやられているというふうに考えております。

 いそ焼けの対策としてこのウオータージェットがどの程度の効果を有するかということ等については、水産庁としてはまだ十分に把握をしておりませんけれども、このいそ焼けの原因というのは地域によってさまざまでございまして、その対策も地域に応じてやっていかなければいけないということでございますので、いそ焼け対策として有効な新しい技術などの情報収集についても今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

石川委員 もちろん、これだけ日本は広い海域でございますので、太平洋側、日本海側、オホーツク側、さまざまな海域でそれぞれ状況が違うということは当然でございます。

 そこで、さまざまな魚礁で、またいろいろな沿岸でたくさんのコンクリート等また魚礁のためのテトラポッド等が投入をされてきたと思いますけれども、いわゆる石灰藻の剥離については、もちろん、ウニ等そういうものを除去することによってまたきれいにするということも考えられますけれども、それらをきれいにしていくということについて政府は今後どのようなお考えを持っているか、お聞かせを願いたいと思います。

橋本政府参考人 いそ焼け対策を行います中で原因を究明いたしまして、その中で、そのような剥離とかこういうものが必要である現場であるかどうかを十分に確認した上で適切な措置をしていきたいと考えております。

石川委員 このウオータージェット工法というのは、高圧水噴流でそれぞれ、必要な海藻類を切除しないように、コンクリート等また岩盤等についたものを除去していく、ちょうど自動車工場のエアコンプレッサーみたいなものでございます。政府としてもさまざまな取り組みをこれからなされていくと思いますけれども、これらの工法の一つについて、また御検討いただきたいと思います。

 次に、沿岸漁業の活性化等についてお尋ねをしたいと思います。

 国連海洋法条約、一九九六年六月に比準をして、排他的経済水域内における生物資源の保存、利用に関する漁獲可能量の設定があり、資源管理体制の確立が必要であるわけでございます。また、海洋環境の保護、保全への努力義務も規定されておりますが、その取り組みの一環として良好な漁場環境の整備に当然努めるべきだと思います。

 また、多様な生物が生育でき、豊かな環境を保全していくための国際的な枠組みとして、一九九二年に地球サミットで生物多様性条約も採択をされました。九三年十二月に発効され、冒頭に私が述べました藻場生態系の回復というのは、この生物多様性条約の理念にかなっているのみならず、アワビ、サザエ、イセエビなどの魚介類、各種の幼稚仔の生育環境を整備することで日本沿岸の豊富な水産資源を回復することになり、沿岸漁業の活性化、ひいては食料自給率の向上に資するものと思います。

 今の日本の沿岸漁業の現状は、日本人の動物性たんぱく質の約四〇%は水産物が占めていると言われるわけでございますが、マグロなど遠洋航海上の漁業資源の減少ばかりが今注目をされているわけでございますけれども、日本人の食卓になじみの深い沿岸の漁業資源の減少も相当程度深刻化しているものと思います。また、そのことが漁業就業者また海洋関係就労者の減少をもたらし、漁業を主とする自治体の衰退をもたらしていることも現状だと思います。

 漁業就職者は、平成十年度で二十七万七千人。また、昭和三十八年から平成十年までで三十五万人減少、実に一年に一万人の減少となっているわけでございますけれども、これらの魚礁をきれいにする、藻場を回復するということも一つのまた雇用の活性化につながると思いますけれども、そういったことについて政府は今後どのようにお考えをしているか、お答えをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 委員御指摘のとおり、藻場を適切に維持していく、そして海の環境をよくしていくためには、漁業の担い手の方たちが漁業を行ったり、あるいは海を見て手を入れることでこれらを維持しているということもあるのではないかと考えておりまして、現在、水産庁では、藻場であるとかそういうことを維持するために、漁業を通じてどのように効果があるか等について調査を行っているところでございます。

石川委員 地方と言われるところが今大変厳しい現状にある中でも、海岸部というのは本当に厳しい現状にあると思います。環境を守るということと、そして、一石二鳥という言い方は大変不見識な言い方かもしれませんけれども、税金の使い方というのは国民に理解を得るということが大切でありますので、環境を守るということと雇用の拡大を図るということで、この藻場の回復ということにぜひ取り組んでもらいたいと思います。

 そこで、もう一つ、技術的な点について、この藻場の回復についてお聞かせをいただきたいのであります。

 本来、水産資源は再生可能で持続可能な資源、循環型の資源であると思います。しかし、魚介類が再生産される海洋環境を整備しなければ、そうはならないわけであります。

 水産庁は意欲的な漁業者支援を打ち出していらっしゃいます。しかし、その対象の中心は、水産物の加工流通コストの削減に努めているという色彩が若干強いのではないかと思います。もちろん、それも大変大事なことでありますが、大前提となる漁場の整備や海洋環境の回復に対しての支援もぜひ拡大をしていただきたいと思います。

 東海大学の上野さんという海洋学部長が、生物に対して高度な親和性を有する、炭素を大変高く含んでいるポリエチレンを使用した人工藻場を検証したところ、早急に確実な効果があったということでございました。この上野教授の実験の中に、幼稚仔の保護、保育を目的に海洋マンションと名づけたものを設置したそうでございます。炭素を高く含んでいるポリエチレンを使用した人工藻場、海洋マンションを使うことで、大変水産振興に効果が期待できるということでございました。

 こういう技術が事業化されれば、沿岸漁業の復興と再生による地域経済の活性化と食用水産物の自給率の向上にもつながることができると思います。もちろんさまざまな事業を組み合わせることが大事だと思いますけれども、この海洋マンションについて政府としてはどういう知見を持っておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 魚介類の幼稚仔の保護育成に効果的な海洋マンションにつきましてのお尋ねでございますが、魚介類の幼稚仔の保護それから育成につきましては、漁港漁場整備事業におきましては、投石、コンクリートブロックなどの設置による魚礁それから干潟の造成などの増殖場などを整備しておりまして、御指摘の海洋マンションについては知見は有しておりませんが、さまざまな取り組みを行っているところでございます。

 なお、漁港漁場整備事業につきましては、地方公共団体が事業主体となりまして、補助事業という形で実施をさせていただいておるところでございますので、新しい具体的な工法を、事業実施主体が効果を勘案して選定することとしておりますので、水産庁といたしましても、工法の適格性等を判断して適切に指導していきたいと考えております。

石川委員 本日質問してきたいそ焼けを初めとする海の生態系の保全には、河川環境の改善にも努めなければならないと思います。例えば、農村の里山を保全しなければ、河川に土砂が大量に流入をして、結果的に汚泥の堆積によるいそ焼けも引き起こすわけでございます。コンクリートの護岸に囲まれた河川を自然の川岸に戻すことや、そこに自然の森のような複層林を植林することで、河川環境が改善をされ、淡水漁業資源の保護育成を図れるだけでなく、海洋への汚水、土砂の流入も防ぐことができるわけであります。こういう川上から川下までの総合的な視点での取り組みを、今後、ぜひ大臣にも期待をしたいわけでございます。

 そして、その中で、これらも含めて、漁場の回復、海洋環境保全の取り組みに対する今後の財政支援の見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。

橋本政府参考人 漁場の回復に関します国の支援ということでございますが、水産庁といたしましては、委員御指摘のとおり、漁場環境の保全創造というのが、沿岸の水産物の生産力の向上を図るためには大変重要な施策であると認識しておるところでございまして、従来より、漁港漁場整備事業におきまして、藻場、干潟の造成などを推進するとともに、漁場の生産力の回復あるいは水産資源の生息場の環境改善を行ってきたところでございます。

 また、今年度から新たに、全国的な課題となっているいそ焼け対策のための事業を創設しますとともに、林野庁と連携をいたしまして、漁場の保全の森づくり事業というのを創設いたしました。これらによりまして、漁場保全に対する事業の一層の充実を図っていきたいと考えているところでございます。

 この三月に水産庁は水産基本計画を新たに策定いたしまして、そのもとに今後施策を進めてまいりますが、藻場、干潟の造成、保全による漁場環境の改善であるとか、資源回復の着実な推進といったものも位置づけておりまして、推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

石川委員 今、原因究明の段階で、それらの食害生物を調べるために駆除をしていると思いますけれども、本来は、先ほど申しましたように、海の森づくり、海の森をつくっていこうということにぜひお力を入れていただきたいと重ねて申し上げたいと思います。

 また、海は地球の総面積の七〇%も占めておるわけでありますけれども、当然、日本には海というものは欠かせない資源でございます。最初申しましたように、地上の変化というものは目に見えやすいわけでありますが、海中、海底の地球温暖化による影響というものは見えにくい。ですから、まだまだ関心も低いわけでありますけれども、地球環境全体の保全のために一人一人の意識改革が最も必要なことだと思っております。

 私、最初の質問に、環境教育の大事な点を御質問させていただきました。ぜひ環境教育の充実に、より力を入れていただくことをお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 きょうは話題のバイオ燃料について質問をさせていただきたいんですが、その前に、最近の報道でちょっと気になった環境に関するニュースが幾つかありましたので、そのことについてお聞かせいただきたいと思います。

 まず、先日バンコクで開かれましたIPCC、気候変動に関する政府間パネル第三作業部会の報告についてでございますが、大変興味深い報告だったと思います。

 産業革命前と比較した気温上昇を三度以内に抑えるには、遅くとも二〇二〇年までに世界の温室効果ガスの排出量を減少に転じさせ、二〇五〇年には二〇〇〇年より半減させる必要がある。その場合のGDPの損失は、二〇三〇年時点で最大三%。さらに大きな気温上昇を容認する場合は、コストは下がるが温暖化被害は増すなどといった指摘がされております。そして、六段階のシミュレーションが提示をされ、時間とコストが明示をされて、さらに対策も盛り込まれているという大変興味深い報告でございました。

 二月の第一部会、四月の第二部会の報告も大変ショッキングな内容でございました。この第三部会の報告で一つの流れがそろい、後日トータルな報告がされると思いますけれども、今回の報告について政府としてこれをどう評価し、日本政府としてどうコミットされるのか、お伺いします。

土屋副大臣 この第三作業部会での、温暖化の緩和対策についての分析を含めた報告を取りまとめたというもの、これはまさに本当に大きな意義があると思っております。

 これから各国が政策決定に生かすことのできるオプションが示されたものであると認識しておりまして、どのように受けとめるかは各国の政治的な判断にゆだねられてくると思います。

 このことから、オプションをどのように組み合わせ、対策を講じるのか本格的な検討に入る準備が整ってきたと考えておりまして、我が国も、今後、ドイツでのG8サミットもありますし、それから十二月に行われるCOP13、そして来年の我が国で行われますG8サミットなどを通じて、いかにリーダーシップを発揮していくかということの中で重要になってくると思います。

石崎委員 そういう流れの中でかどうかはちょっと正確にはわかりませんが、これも報道でありますが、政府は、来月のドイツのサミットで、二〇五〇年までに世界の温室効果ガスの排出量を現状から半減させる数値目標を提案するとの報道がございました。

 今、先ほど申し上げました第三部会の報告の中の六段階のシミュレーションの中の第一段階あるいは第二段階にかかるぐらいかどうか。この報告を日本政府としてしっかり受けとめて、それを着実に実行していくことを国際的にアピールしようというようなお考えなのかなというふうに思いますが、来月のサミットで提案するという予定はございますか。

土屋副大臣 御指摘のような方針を固めた事実は、今ございません。

 地球温暖化問題がハイリゲンダム・サミットで重要な課題になるというのはもちろん考えているわけでございますけれども、我が国といたしましては、積極的な貢献を行うべく、今現在、鋭意検討を進めているところでございまして、数字は出ておりません。

石崎委員 サミットでこういう提案をするという政府の方針を固めるということは、一環境省だけの判断ではなくて、総理大臣を含めて非常に高度な政治判断に基づいて国としての対応が決まっていくというふうに思いますが、極めて重要なポイントだと思いますので、ぜひ、国としての方針を今後固めていただきたいというふうに思います。

 そういう中で、非常に残念なニュース、今度はカナダが京都議定書の目標達成を断念するという報道がございました。現状でも、アメリカが抜け、オーストラリアが抜け、中国などはもともと対象外ということでありますから、京都議定書というものを実現していくためにその関係する国というのは非常に少ない、そういうことが非常に問題だというふうに以前から指摘されているわけでありますが、批准をした国がその目標達成を断念するというのは非常に残念な、悲しいニュースであります。

 日本も、マイナス六%という目標に対して現状でプラス八%ということでありますから、日本もなかなか苦しい立場にある、しかし、それを歯を食いしばって目標達成計画をつくり、頑張っていこうということであります。

 カナダは、同じくマイナス六%に対して、現状でプラス二十数%ということでありますから、大変厳しい状態である。しかし、早々と目標達成を断念するというのはいかがなものかなというふうに思います。

 そういった意味で、日本国内には、日本も人ごとではない、日本も心の準備をしておくべきだというようなことをおっしゃる方もいるやに聞いておりますけれども、今回のこのカナダの断念ということについては、どうお感じになっておられますか。

土屋副大臣 カナダの今回の離脱はもう本当に残念でございます。

 先生も御存じのように、自由党政権から保守党政権に昨年二月にかわりまして、ハーパーさんが、就任後、京都議定書の枠組みに関しては見直す、残るということを言いつつも、見直すような話をしておりました。その結果、何とか残るんじゃないかと思っていたところが、こういう結果になったということでございます。

 私の個人的な見解で申しわけないんですけれども、私はカナダ・日本友好議員連盟の事務局長をしておりまして、昨年、ちょうど私が就任した後、カナダの方から議員が参りまして、お互いに毎年交流しながらお互いの政策の討論をしているんです。そのところで、自由党と保守党も両方来たんですね、目の前で京都議定書の環境問題について討論が始まってしまいまして、ハーパー政権の方の保守党の議員は無理だよと、自由党の方は、そんなことはない、我々は今まで環境問題を一生懸命やってきたんだというようなけんけんがくがくがございまして、そのことを、今回、カナダが離脱したことで思い出しました。

 いろいろカナダの政治情勢を聞いていますと、いつ選挙かわからないというのが去年あったんですけれども、今後も政権がひっくり返る可能性もあるかなと。不安定な状況にあるということを理解しておりますけれども、いずれにしましても、日本としては、あらゆる面でまたいろいろアプローチして、二〇一三年以降に向けても、カナダにともに歩んでいこうということは言っていきたいと思っております。

 それから、現在、京都議定書の、今先生御心配の、日本も危ないのではないかというお話でございますけれども、我が国といたしましては、目標を断固として達成するというつもりで頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

石崎委員 副大臣におかれましては、日加議連の事務局長として、ぜひカナダを説得していただいて、督励をしていただけたらというふうに思います。

 こういう地球環境問題でありますから、世界各国が協調して、全体として取り組んでいかないことにはもう成果が上がらない、意味がない。ある国は一生懸命やっているけれども別な国は全然努力しないということでは意味がないというふうに思います。

 それと、政権がかわって対応が変わるというのも、この環境という問題について言えば、政権がどうなろうが、かわろうが、継続して取り組むということが日本でも外国でも重要ではないかなと。自民党内でも、環境税をめぐる議論なんかも、賛成、反対、随分いろいろ、かんかんがくがく議論になりますけれども、やはり環境という問題の持続性、永続性、そういったものが大事ではないかということを、今回のカナダのことについてもつくづくと感じた次第でございます。

 それでは、バイオ燃料について質問させていただきたいと思います。

 これも、つい先日、連休前でしょうか、首都圏のガソリンスタンドでバイオエタノール入りのバイオガソリンの販売が始まったという報道、これもテレビ等で大変大きく取り上げられておりました。ドライバーの反応はどうなのかなというのがちょっと知りたいところでありますが、状況はわかりませんか。お願いします。

上田(隆)政府参考人 御指摘のバイオガソリンの試験販売の件でございます。

 これは、二〇〇七年の四月二十七日からでございますが、二〇一〇年度からのバイオエタノールの本格的な導入に向けまして、関東圏、東京、神奈川、埼玉、千葉県の五十カ所のガソリンスタンドで、バイオガソリンの試験販売というのを開始させていただいたところでございます。大きく報道されているのは御承知のとおりのところでございます。

 まだ始めたばかりでございまして、私のところに具体的な状況等々は届いてございませんけれども、環境に関心の高いドライバーの方々の大きな関心が示されているやにいろいろなところから承っておる状況でございます。

石崎委員 このバイオ燃料、バイオエタノールでございますが、植物の生育段階でCO2を吸収しているという前提の中で、カーボンニュートラルという言葉がございますが、CO2の削減に貢献をする点がある、また、ガソリンの消費がその分だけ減るという、代替燃料としての特色があるということであります。

 いろいろな資料をちょっと拝見させていただくと、そのCO2の削減効果についてはいろいろな意見がある。非常に積極的に評価するという見方もあれば、いや、そうでもないんだ、大した効果はないんだというような分析をしている資料もいろいろ散見されるわけでありまして、実際はどうなんだろうかなと。

 我々素人から見ると、本当に効果があるのかどうか。ましてや、原料を生産し、エタノールに交換して輸送して供給するまでに、いろいろなプロセスがあり、肥料や燃料というのをその間使う。あるいは、輸入をするとなると、その輸送のときにまた燃料を使う。そんなような状況がありますから、実際の削減効果というのが科学的にどうなのかというのをちょっと教えてください。

南川政府参考人 石崎委員が御指摘のとおり、当然ながら、車で実際に走るとき以前にさまざまな形でエネルギーを使っているわけでございます。

 バイオエタノールを燃やすこと自身は、カーボンニュートラルということで、京都議定書上、CO2の排出にカウントされません。ただし、原料生産あるいは途中の輸送などの段階で、当然ながらエネルギーを使っているということでございます。

 これは、もちろん石油であってもそういったことは使っておりますので、それを含めまして、私ども、例えば二つ計算をしておりまして、一つは国内で廃木材から製造したエタノール、もう一つはブラジルでサトウキビから製造して輸入したエタノールにつきまして、原料の生産から実際に輸送をしてそのエタノールを燃焼させるというところまでを全部計算しまして、それを現在のガソリンによるさまざまなCO2発生のデータと比較をいたしました。

 その結果でございますけれども、まず国内で廃木材由来のエタノールを使った場合でございますが、同じ量のガソリンを使った場合に比べまして、CO2排出量は八八%少ない、また、ブラジルのサトウキビ由来のエタノールで走った場合でございますけれども、同じ量のガソリンに比べてCO2が八一%少ないという結果が得られております。

 私どもは、これからもこういう検証もしっかりしながら、バイオエタノールが地球環境対策上すぐれているということをぜひ示していきたいと考えております。

石崎委員 政府として、バイオマス・ニッポン総合戦略をつくり、推進会議をつくり、取り組んでいるということでございますが、今回販売が開始されましたのは、いわゆるETBE方式のバイオ燃料ということでございます。環境省の方は直接混合のE3方式というのを研究して始めるというようなお考えだと聞いておりますけれども、二つの方式が併存しているという状況であります。

 このETBE方式の方は、バイオエタノールの量というものについては限界があるんじゃないかというふうに聞いております。しかも、今はフランスからそのものを輸入しているという状況でありますから、量的な限界がある。一方、直接混合のE3方式、これはコスト面などから石油業界が及び腰であるというふうに聞いております。

 こういう状況の中で、二〇一〇年には五十万キロリットル、二〇三〇年までに六百万キロリットル、六百万キロリットルというのは農水大臣がおっしゃった数字だと思いますけれども、こういうバイオ燃料を拡大していくということが可能なのかどうか心配になるわけでありますが、この点、いかがでしょうか。

上田(隆)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、政府は京都議定書目標達成計画というのを作成しておりまして、この中で、二〇一〇年度にバイオマス由来燃料を原油換算で五十万キロリットル導入するということを目標といたしております。それから、六百万キロリットルというのはやや性格が違いまして、これは農水省さんによる国産バイオエタノールの生産の可能量の試算ということでございます。

 それで、先ほど申し上げました、現在、石油業界がETBEと混入した形でバイオガソリンの試験販売を始めたわけでございます。このETBEというものは、エタノールとイソブテンというものを原料としておりまして、こうした原料の供給安定性、あるいは量の確保というのが大丈夫かという御懸念かと思います。

 国内の製油所から副生されますイソブテンというのが基本的にはございますが、これで当面必要な量は賄っていけるんじゃないかと試算しておりますし、また、イソブテンそのものを製造したり輸入したりするということも考えられます。

 今回の試験販売では、石油業界は、ETBEをフランスなどから輸入するということでございますが、その本格的な導入に当たっては、みずから国内でETBEを製造するといったことを検討していると承知しております。

 また、二〇一〇年五十万キロリットルの目標そのものは、ETBEによる導入目標、それからE3の利用の推進、さらにバイオディーゼルといったものを含んでおりまして、京都議定書の目標達成計画というものの実現に向けて、私どもとしては、こういった施策を組み合わせながら取り組んでまいりたいと思っております。

石崎委員 ちょっと気になったのは、ETBE方式の安全面ということでございますが、アメリカでは、この方式はもう選択されないというふうに聞いております。その前のMTBEというものについて、環境面、安全面で問題があった。それと関係の深いETBE、これはアメリカでは選択をされない、ヨーロッパでは使われているそうでありますが、これが今、日本で販売が開始されたということであります。

 ですから、アメリカで選択されないものが日本で販売が開始されたということについて、安全面での問題はないんでしょうか。

南川政府参考人 御指摘のETBEでございますけれども、MTBEと化学構造が極めて類似をしております。かつて米国では、MTBEが相当広範に使われておりました。これはガソリン添加剤としてでございます。ただし、結果的に、MTBEがガソリンスタンドの地下タンクから漏出をいたしまして地下水汚染を引き起こしたということから、一部の州で使用禁止などの措置がとられております。

 このため、MTBEと類似の化学構造を持ちますETBEにつきましても、米国ではほとんどと言っていいほど利用されておりませんので、カリフォルニア州などのところでは、MTBEとともに、ETBEについても使用が認められていないというのが現状でございます。

 こうしたこともございまして、米国ではエタノールの直接混合が進んだ面もございますし、また、近年それに加えまして、温暖化対策として、エタノールの混入をさらに進めよう、直接混入をさらに進めようということになっております。

 なお、ETBE自身の科学的な安全性の問題については、経済産業省の方で引き続き調査をされているというふうに聞いております。

石崎委員 既にもう販売が始まっているんだけれども、安全性は引き続き調査しているということはどうなんですか。

上田(隆)政府参考人 実は、化学物質に関する法律というものがございます。これは、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、いわゆる化審法と呼ばれている法律がございます。それで、新しい化学物質を使用する場合につきましては、この法律に基づいて、たしか届け出だったと思いますが、一定の安全性のチェックを経た上でやっていくことになっているところでございます。

 ETBEにつきましても、その新規化学物質に該当するということで審査が行われまして、現在、第二種監視化学物質というものに指定されているものだと承っておりまして、これは、製造あるいは使用を禁止するとかそういうことではございませんで、製造、使用を前提としながら一定の監視を行っていく、そういう物質でございます。そうした物質といたしまして、今後とも引き続きその状況をウオッチしていく、そういう段階であるところでございます。

 なお、ETBEにつきましては、世界の中でも、ヨーロッパの幾つかの国々におきましては現在使用されているところでございまして、アメリカでは、先ほどお話のあったとおりでございます。世界の中でも、直接混合方式とETBEを使う方式と両方の方式というのが併存をして行われているところであると承知しております。

石崎委員 いずれにしても、この問題は、バイオ燃料は、輸入に頼るのではなくて、国内でバイオエタノールを生産する、また国内のバイオマス資源を幅広く利活用するということが環境面でも経済面でも非常に大事ではないかというふうに思います。

 先日、沖縄の伊江島で行われております、アサヒビールと九州沖縄農業研究センターによるバイオエタノールの実証試験について説明を受けましたが、地産地消という意味でも、すばらしい取り組みだというふうに印象を受けました。

 政府が目指すバイオマスの利活用というのは、やはり海外に依存しない、国内の農業や産業の育成、地域の活性化に資するということが大事ではないかなというふうに思っております。国内には廃棄物系のバイオマス、未利用のバイオマス、資源作物からのバイオマスなど、エネルギーポテンシャルというものがかなり存在しているというふうに言われております。例えば間伐材などの残材、休耕地を活用した資源作物の生産などということが考えられるわけでありますが、エネルギーポテンシャルについて、現在どのような技術開発が行われ、今後どのような見通しを持っているのか、お聞きします。

    〔委員長退席、竹下委員長代理着席〕

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 国内のバイオマスを利活用いたしましてバイオエタノールを生産するということにつきましては、今先生御指摘のように、地球の温暖化の防止だけではなくて、地域の活性化ですとか、それから農林水産業の観点からしますと、農林水産業に新たな領域を開拓できるものであるというふうに認識をしておりまして、非常に力を入れていきたいなというふうに考えておるところでございます。

 ただ、現実を見ますと、我が国におけます国産のバイオ燃料の生産というのは、極めて小規模な実験段階、平成十八年度で日本全体で三十キロリッター程度という小規模な状態にとどまっております。これを飛躍的に大規模にしていくためには、やはり技術開発が極めて重要であろうというふうに考えてございます。

 技術開発につきまして、幾つかの段階があろうかと思っております。まず一つは、木材ですとか稲わら、これを効率よく低コストで収集する、機械開発も含めて、そういう収集のための、あるいは運搬のための技術開発、これが一つ重要であろうというふうに考えてございます。また、もう一つは、エタノールを低コストで大量に生産できる作物、資源作物と我々は称しておりますが、こういったものの開発。それから三つ目が、こういう稲わらですとか間伐材ですとかそういったものの、特にセルロース系ですが、これからエタノールを効率的に製造する技術の開発、この三つが極めて重要であろうというふうに考えてございます。

 今の研究段階は、まだいずれも緒についたところというのが、総じて言えばそんな段階ではないかなというふうに思っておりますが、これらの技術開発がなされれば、二〇三〇年ごろには、稲わら、間伐材、あるいは資源作物などを原料といたしまして、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大が可能というふうに考えておりまして、その量を農林水産省では六百万キロリットルというふうに試算しているところでございます。

石崎委員 そのバイオ燃料の生産を国内で進めていくためには、バイオ燃料事業を軌道に乗せていくための生産者や生産設備への補助制度あるいは税制での支援、そういったことも具体的にやっていかなければならないというふうに思いますが、現在の支援制度、あるいは今後この分野での支援を拡大していくという考えはいかがでしょうか。

吉田政府参考人 バイオ燃料に関します支援策でございますが、今農水省の方で用意しています支援策としましては、予算額としましては、平成十九年度で百九億円を用意しておるところでございますが、その主なものを申し上げますと、国産バイオ燃料の本格的導入のために、原料調達から製造、販売まで一貫した大規模な実証事業を行おうということで、これは八十五億円の予算を用意しているところでございます。

 この事業は、規格外農産物などの非常に安い原料を用いまして、年間一万五千キロリッター級のバイオ燃料を生産するプラントを整備いたします。そして、あわせまして、五年間、技術実証に対する支援を行おうということにしてございまして、その間のランニングコストも含めた実証経費を支援していくということでございます。これによりまして、五年後には単年度で五万キロリッター以上を導入することを目指しておるというところでございます。

 もう一方、研究開発でございますが、稲わらや間伐材などのセルロース系原料、あるいは資源作物の導入に向けた研究開発を実施することにしておりまして、この費用として二十一億円を計上しているところでございます。

 一方、税制でございますが、本年二月に総理に報告いたしました工程表におきまして、制度面等での課題といたしまして、税制措置を含めた多様な手法について検討するというふうにしておるところでございます。

 農林水産省としては、今後とも、工程表に基づきまして、関係省庁と連携をして国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

石崎委員 ありがとうございました。

 いろいろ今動きがスタートしたばかりという部分もたくさんございます。これからそれを育てて広げていかなければならない、そういう分野だというふうに思いますけれども、どうも、いろいろ調べていきますと、総合戦略推進会議というのをつくってはいるんですけれども、それぞれの、農水省は農水省の考え、経産省は経産省の考え、あるいはその背後にいる業界の考え、そういったものに引きずられた部分がいろいろあるなという感じがします。その中で、環境省が、予算も少ないのかもしれませんけれども、いま一つ総合調整というのがし切れていない、そんな印象を受けました。

 これから伸ばしていかなきゃならない非常に大事な分野でありますので、このバイオ燃料はやはり長期的に、総合的に、持続的にやっていかないと、結局何のためにやっているのか、結局環境面にマイナスになったり産業に対してマイナスになったり、そういう結果をもたらしかねない非常に難しい分野でありますので、政府として、やはり総合的に調整して、国家戦略という形の中でこれから取り組んでいただきたい、そのことを心からお願い申し上げます。

 終わります。

竹下委員長代理 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松義規でございます。

 きょうは、冒頭、大臣がおられないということなので、政府関係者の方あるいは副大臣の方、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 まず、環境健康被害者についてお伺いをしたいと思うんですが、今アスベストの救済法で救済を図っているところだと思いますけれども、実際にこの法律のもとで救済をされた方の延べ人数、これはどのくらいいるのか、お伺いしたいと思います。

上田(博)政府参考人 お答えいたします。

 石綿健康被害救済制度で救済を行っているわけでございますが、環境省が所管しております救済給付につきましては、平成十九年度三月末時点で、医療費等の支給に係る認定の申請、これは現在療養中の方でございますが、これについては七百九十九名、それから、施行前死亡者に係る特別遺族弔慰金等の請求については一千五百九十人ということで、合計二千三百八十九人が認定をされているところでございます。

 また、厚生労働省の方で所管しております特別遺族給付金につきましては、平成十八年十二月末時点で、七百九十五人が支給決定を受けているところでございます。

末松委員 これはちょっと質問の通告にないんですが、関連で、もしわかったらということで教えていただきたいんですけれども、今、二千三百数十人救済を受けたという話なんですが、アスベストについては、三十年から四十年、潜在期間も長いという話もあります。学界での想定される人数で結構なんですけれども、これから大体どのくらい認定されるのか、なかなか今お答えにくいのは重々承知の上で、ある程度、どういうふうな学説があるのか、それを御紹介ください。

上田(博)政府参考人 ちょっと今手元にそういう推定の資料を持ち合わせておりませんけれども、外国なんかの動きを見ますと、各国での石綿の使用量と、それから何十年かおくれて、要するに石綿に起因する疾病で亡くなる方、特に中皮腫でございますが、これが連動するということでございますので、我が国の石綿の使用量をある程度推定できれば、それに基づいてこれぐらいというふうな推定もできるのではないかという推計があるというふうに聞いております。

末松委員 何か数字的なもので、日本の学界で、例えば最大もって十万人じゃないかとか、そういうふうなことを言われている方もおられるのですけれども、その辺はいかがですか。別にそこは、そういうことを聞いたことがある程度で結構なんですけれどもね。

上田(博)政府参考人 ちょっと私も具体的には忘れてしまいましたけれども、おっしゃるとおり、学界あるいは研究でそのような推計をされている方がおられるというふうに聞いております。

末松委員 それでは、公健法で救済をされた方、これについての延べ人数、これをお願い申し上げます。

上田(博)政府参考人 公健法でございますが、公健法の施行以降、これまで認定されました患者の延べ人数でございます。平成十七年度末現在で、慢性気管支炎、気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎及び肺気腫並びにこれらの続発症という形で認定される方は十七万八千五百五十名でございます。また、水俣病での数は二千九百五十五名、イタイイタイ病は百八十八名、慢性砒素中毒症では百九十四名となっております。

末松委員 そういった中で、公健法で補償を受けている者がその後病状回復してこの補償の対象から外れたケースというのは何人ぐらいいますか。できたら、その割合はどのくらいでしょうか。

上田(博)政府参考人 公健法で認定をされて、その後その制度を離脱された、外れたという方でございますけれども、まず、気管支ぜんそく等の旧第一種地域に係る被認定者については、制度施行から平成十七年度末までに八万二千六百四十一人ございます。これは、当該疾病における延べ被認定者が先ほど申し上げましたように十七万八千五百五十名でございますので、その四六・三%になります。

 ただ、死亡以外の理由で制度を離脱された方の中には、認定更新をしなかった方、また治癒以外の理由で辞退された方も若干含まれていると考えておりますので、必ずしもすべてが病状回復したとは言えませんが、今申し上げました八万二千六百四十一名の大部分は病状が回復したことにより制度を離脱したものと考えております。

 また、水俣病、イタイイタイ病及び慢性砒素中毒については、疾病が治癒したことにより制度を離脱された方はございません。

末松委員 水俣病、イタイイタイ病そして慢性砒素中毒については、皆さん病状が回復されたという人は今おられない、そういうことですね。もう一回言ってください。

上田(博)政府参考人 おっしゃるとおりでございまして、水俣病、イタイイタイ病及び慢性砒素中毒症については、疾病が治癒したということにより制度を離脱された方はおられません。

末松委員 この健康被害というのは典型的な七公害を前提としていると思うわけですけれども、環境基本法の二条三項に言う公害の定義なるものがあると思うんですが、そのときに、「相当範囲にわたる」という文言がございます。この「相当範囲にわたる」というこの具体的基準というのはどういうふうな基準でもってやられているのか。通達とかあるいは何かそういった指標というものを環境省の方でつくっているんでしょうか。

西尾政府参考人 環境基本法二条第三項の公害の定義の中に「相当範囲にわたる」という用語が使われておりますけれども、同項においては、公害という概念を定義するということに当たりまして、社会問題になっていて対応を要するというようなものをあらわすために、大気汚染や水質汚濁等の汚染が、単なる相隣関係的な問題にとどまらず、ある程度の地域的な広がりを示して汚染の現象が見られる、それを前提とするんだということを説明するために、この用語が置かれているというふうに解されます。

 その「相当範囲にわたる」ということの具体的基準があるのかというお尋ねでございますけれども、これは、あらゆる公害現象一般に、相当範囲というのは、例えば何キロメートルの範囲だとかといったような具体的な広さ等の基準があるわけではございません。それぞれの汚染事例に応じまして、今申し上げましたようなこの規定の置かれている趣旨に照らして相当範囲かどうかを解釈していく、こういうことに相なるかというように思っております。

末松委員 広がりは、地理的には一般的な社会常識の中で考えて何キロメートルとかそういったことはないという話ですが、人数的にはどうなんですか。

西尾政府参考人 環境基本法では、公害の規定を置きますときに、相当範囲というのは現象の広がりのところにだけ言っておりまして、被害の上にはかけておりません。

 したがいまして、大気汚染がどのぐらい広がっているか、例えば、隣の家のふろをたいている煙がどんどん家に入ってくる、そういうようなものは相隣関係で相当範囲ではないだろうということはわかるわけでございますが、どのぐらい広がっていれば相当範囲かは、それぞれの事案に照らして考えるということになっております。

 それから、今、人数というお尋ねは、被害の人数、例えば公健法には実はもう一つ別のことが書いてありまして、相当範囲にわたる大気の汚染等が生じて疾病が多発しているというふうに書いてございます。

 ですから、公害ということで対策をしていく、規制やいろいろなことを打っていくというときと被害を救済するというときでは、違った標準を置いているというふうに思っております。

末松委員 ただ、そういった相当の範囲という地理的なものはあるわけですよね。それとともに、今言われた、人的被害が出ている、それを称して社会問題になっているという話なんですね。

 ということであれば、気管支ぜんそく、水俣病、イタイイタイ病、慢性砒素中毒、これが公健法の対象になっているわけなんですけれども、それ以外のものというのは公健法の補償の対象になっていないということですか。

    〔竹下委員長代理退席、委員長着席〕

西尾政府参考人 今私がお答えをしたことに関しての質問だと思いますので、ちょっとそこを御説明させていただきます。

 公健法で相当範囲にわたる大気汚染等が生じて疾病が多発しているというのは、これは基本的には、こういう公害病というのは疫学等を通じて因果関係が明らかになるであろうということを前提にして、それは疫学というのはどういうことかというと、ある程度の広がりのある地域の現象を観察して、それで被害の医学的な所見とかそういうものと照らして、ある程度の人数の方が健康を訴えておられるとか、いろいろ医学的所見があるとか、そういうことと照らしてわかるものでありますから、そのように規定をしているのだと思っております。

 環境基本法の方では、まずは、そういう現象としての大気汚染等があれば対策を打っていかなきゃいかぬということでございますので、多発とかいう要件を置かずに、被害があるものは公害だというふうに言っているという点でございまして、ちょっとわかりにくい御説明をいたしまして恐縮でございます。

末松委員 例えば、不幸にも被害者になったという方が、原因はよくわからぬ、なぜか体調が悪い。その地域、ひょっとしたら地下水かもしれない、大気汚染かもしれない、そういった場合に、具体的に、さっきの質問にまだお答えしていただいていないんですよ、今の気管支ぜんそく、水俣病、イタイイタイ病、慢性砒素中毒、これ以外にそういったものはないんですかということなんですが、そこをまずお答えいただきたいと思います。

上田(博)政府参考人 ちょっと長くなりますけれども、今おっしゃいました水俣病等につきましては、公健法の第二条二項で、第二種地域ということでまず地域を指定しております。そうした上で、第三項で、第二項の政令においては、第二項の疾病を定めなければならないというふうになっておりまして、現状では、この第二種地域については、水俣病、イタイイタイ病、慢性砒素中毒症が該当する、それから第一種地域については、いわゆる大気汚染による疾病が該当する、こういうことになっております。

末松委員 だから、それ以外は該当者がないんですかということを聞いているので、それを素直に言ってください。

上田(博)政府参考人 現状では該当するものはございません。

末松委員 そうしたら、公害病というのは基本的にこれだけなんだと、何かいろいろな地域でありそうなんじゃないかというふうに私は予想していたわけですけれども。

 例えば、地域の人はどういう仕組みで、環境省がそういったお決めになるようなことを、具体的に即して言えば、どういう形で、申請か何かをするんですか。あるいは、病院に行って、そういう人が多発してきて、おかしいな、おかしいなといって、そこで医者から環境省に何か言ってくるのか。あるいは、新聞記者か何かが何かここはおかしいぞと書いて、例えば、毒ガスの爆弾か何かが昔あって、それがずっと地下水へ漏れてきたというようなケースがもしあるとするならば、原因が特定されない前に、一群の方々が何かおかしいなという話になってくる、それから原因の特定だ何だかんだという話になるんですけれども、そういう場合というのは、どういうふうな公健法の補償というのがあるんでしょうか。

上田(博)政府参考人 現状では公健法は今申し上げた疾病だけでございますけれども、いわゆる公害ということであれば、先ほど環境基本法の関連で申し上げましたように、典型の七公害、例えば振動とか騒音とかがございます。もしこれで健康被害が生じたということであれば、例えば、それぞれの法規制に基づいて各自治体等に申し出るとかあるいは公調委に訴え出るという方式がございます。

 ただ、現状では公健法上は先ほど申し上げた疾病に限られているということで、もちろん、これが公健法に該当するような広がりを持つようなことになれば、あるいは原因の関連がはっきりしたようになれば、公健法の適用を受けるようなものになるんだろう、そういう幾つかのルートが用意されているというふうに理解をしております。

末松委員 先ほど、公調委に訴えるとか都道府県に訴えるとかいう話がありましたけれども、それはみんな組織的にやろうぜといってやる話ではなくて、おかしいよなといってまず病院に行くところから始まるんだろうと思うんですね。

 そして、やってきて、それから、今政府参考人の方がお答えになられましたけれども、そこで、公健法を適用するような広がりを見せた場合にと言われましたよね、そうしたら公健法の適用になるんだという話でしたよね。

 ということは、広がりというのは一体何なんだというのは、やはりそこはどうしても聞きたい話なんですよ。

 そういう話で、さっき西尾さんの方から話したのが、いや、キロメートルとかそういうことは関係ないし、人数とかいうのも、ちょっとその辺は具体的にはないような言い方をされたんですけれども、個々それぞれのケースという話で、確かに言いにくいといえば言いにくいんだと思うんです。

 公健法が適用するよう、やはり何か適用の具体的な基準みたいなものがないと、結局、環境省が、あるいは中環審ですか、これが何か決定しないまではそういったものは法的には適用されないという話なんでしょうけれども、何かそこのところの、何が適用の基準になるのか、ちょっとそこをもう少し詳しく言っていただけませんか。

西尾政府参考人 環境汚染が起こりまして、あるいは毒物、そういうものが世の中に出ていく、それによって疾病が起こっているということが本当であれば、これは環境省としては全く看過できないことでありますので、これは今までもそうです、保健所でもあるいは自治体の窓口でも、何かおかしいことがあるんじゃないかという訴えがある、その訴えも、極力環境省に話が上がってきます。そのときには、やはり、そういう心配のあることであれば、必要なことは調査をするなり、あるいは外国の文献も見るなり、一体そういうことが本当にあり得るのか、原因は何なのかということを解明するということが必要だと思っております。

 そういうことで解明ができて、何か一対一で、隣のだれだれさんの何々がストレートにそういうものだということになれば、こういう公健法のようなものはなくても直接やっていただければいい、多分こういうことになるんだと思います。

 公害現象の多くは、その辺が、それは実は水俣病とか、そういうふうにだんだんわかってきて、ここだということになるものもございますが、多くのものは最初の取っかかりが疫学でございまして、やはりある種の汚染とその地域での健康影響というものにどうも因果関係があるんじゃないか。そういう段階で、しかし、司法で一々、それぞれの関係が確定に至るまでも救済をしなきゃいかぬというようなことで、そういう場合には公健法というものを用意したものでございますから、公健法はそういう面では疫学をなぞっているものですから、ある程度の広がりがあって疾病が多発しているような場合ということが確定できたときに発動できるという基本設計になっております。

 それは、広がりとか、それから人数はどうなのかということですが、それは基本的には恐らく、疫学などを行って、因果関係、影響があるのか、被害が起こっているのかどうかを判定できるその学問の範囲と、基本的にはそれを踏まえて判断するという広がり、人数だというふうに考えております。

末松委員 そうしたら、お伺いします。

 今でなくて結構なので、ちょっと後で数えて、私の方に報告を下さい。あるいは、理事会の方に報告をいただきたいんですけれども、東京大気汚染訴訟の勉強をいろいろとしてきたときに、非常に原告の方々の大きな不満は、調査がなされていないという話があったんですね。調査がなされていなくて、そして裁判をしていったら、科学的知見がないと言われた、因果関係はわからないと言われた。だから、結局主張が認められない。

 だから、今西尾さんのおっしゃった、一つ一つ調査を丹念にやっていくんだということが本当になされているんですかというのが、私は非常に疑問なんですよ。それは国家として、あるいはそういったときに、疫学的調査をしなきゃいけないという義務事項はありますか。

上田(博)政府参考人 今、義務事項というお尋ねだったんですけれども、義務事項としてはないわけでございますけれども、当然、その法を的確に施行していく上では、例えば公健法の中でも、著しい大気汚染が生じ、その影響による疾病、こう書かれておりまして、影響という観点というのは因果関係ということを前提にしておりますので、そのことについて解明をする責務はやはり我々も負っているというふうに考えておりまして、現在、例の「そらプロジェクト」を実施しているところでございます。

末松委員 「そらプロジェクト」というのはいつからでしたか。

上田(博)政府参考人 平成十七年度からでございます。

末松委員 もう十数年前からああいう東京大気汚染訴訟というのはやられているんですよね。今さら何さというのは、それはみんなそう思っちゃいますよ。

 だから、そういったことを初動的にやるというのが、やはりそれを担当している部署の責任じゃないですか。多少それはおくれることはありますけれども、大気汚染訴訟については非常に大きな広がりを持っているわけですし、まさしくこの十七万八千人の方が認定されているわけですから、そこはしっかりとした調査をやはりやっていくべきだと思いますが、「そらプロジェクト」だけ言われたので、何か反論があったら言ってください。

上田(博)政府参考人 「そらプロジェクト」が十七年度スタートになったじゃないかという御指摘でございますが、決して我々はサボっていたわけじゃなくて、その前の十数年間、「そらプロジェクト」を実施するためのさまざまな開発、例えば暴露をいかに的確にはかるかとか、あるいは疫学的ないろいろな議論の詰めをやって、決してサボっていたわけじゃないということでございます。確かに、時間がかかっているという御指摘はそのとおりでございますけれども、サボっていたわけじゃないわけでございます。

 それからもう一点、「そらプロジェクト」の問題というのは、非常に局地の汚染との関係でございますけれども、これは確かに、これまでも附帯決議でもあったわけでございますけれども、この局地の問題というのは、全般的には、局地以外のところ、要するに、一般的な大気環境等を見れば非常にこれは改善をしてきているので、そういう前提では、例えば現在の気管支ぜんそくの増加というものは相半した関係にあるので、一般的な大気汚染の状況から見れば、現状の気管支ぜんそくの増加というものは大気汚染が原因とは言えないだろう、こういうふうないわゆる環境サーベイランスという形での調査事業をずっと継続して実施してきているところでございます。

末松委員 では、後で結構なので、そのサーベイランス調査及びそういった疫学調査をやった実績、それからそれに対する予算、それをちょっと表にして、私の方、あるいはこの理事会の方に提出していただけますか。

上田(博)政府参考人 では、理事会と相談をいたしまして、対応……(発言する者あり)資料としては存在しておりますので、対応したいと思います。

末松委員 では、そこは理事会の方でよろしくお願い申し上げます。

西野委員長 では、後日、理事会に提出してください。

末松委員 それとの関連で、高圧電線とか、そういった電磁波障害というものがございますよね。これは、環境問題ではあろうかと思うのですが、そこはどういうふうに認識をされておられますか。

上田(博)政府参考人 環境基本法第二条におきまして、公害の定義がございます。

 公害とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭、この七つによって、人の健康または生活環境に係る被害が生ずることをいう、このようにされておりますので、したがいまして、電磁波障害については、この定義からは公害に当たらない、このように認識をしているところでございます。

 しかしながら、電磁界暴露につきましては、未解明な点が多うございます。環境を経由した健康影響への懸念に対処するため、環境省では、経済産業省等関係府省と連携しつつ、現在、所要の調査を行い、知見の収集に努めているところでございます。

末松委員 さっきのは、何か、各省庁の連絡会議があるということ、資料をいただいたんですけれども、取りまとめは環境省の方になっているんですね。これは、公害じゃなくて、何に当たるんですかね、ちょっと私わからないので。ただ、環境省が何か取りまとめになっているわけだから、何なんだろうということなんですけれどもね。

西尾政府参考人 公害の概念は、先ほどのようなことで、典型七公害というものを決めておりますので、基本的にはそういうものについてきちんと対策を打つということでございますが、環境基本法で、さらに公害の概念を、公害以上に環境行政の対象を非常に総合的なものにいたしました。

 そういう面では、もし何かこういうものが環境を通じて影響があるのであれば、何か影響があって対処しなきゃいけないということであれば、環境基本法に言う環境保全上の支障があるじゃないかということでございますから、それに応じた手を打っていくということにはなるんだろうと思いますが、今保健部長から申しましたように、どういう影響があるのかとか、そういう科学的なことを今詰めている、これから、今そういう知見を得たり勉強しているという段階でございますので、そこがわかればそれに応じて対応するということではないかと思います。

末松委員 さっきの調査にも関係してくるんですけれども、典型七公害というのは、典型なんですよね。それ以外は実は公害じゃないよという話でもないんでしょうね。

 ですから、先ほど、大気汚染だけの調査じゃないですよ、その疫学的調査はどんなことをどういうふうにやっているのかと。だから、電磁波の関係は、今その研究とかと言われましたよね。これが言われ始めたのは、そんなに、きのうやきょうの話じゃないんですよね。

 そこは、ヨーロッパなんかでもかなりそれは事例があるので、ぜひちょっと大臣にも、ここは質問通告はしていませんけれども、そういった、人の、日本人の、環境による健康被害、これがどうなるんだということを常にアラーミングにいつもチェックをしていくのがやはり環境省の日本人に対する、国民に対する一番大きな役割だと思うんですよね。

 だから、ぜひそこは、調査をいつもやっているんだということ、やっていくんだということは、やはりちょっと大臣の方は、そういう御所見をいただきたいんです。

 その前に、電磁波についても、どのぐらい調査をやってきたのか、そしてそれはどうなんだということを、技術的な点をちょっと説明してください。

上田(博)政府参考人 まず、電磁界の健康影響に関する研究は多くの省庁で実施をされているわけでございまして、私どもも、一九九〇年以降研究を実施しているところでございます。

 また、関係省庁が情報交換等を行う目的として、平成八年四月に、電磁界関係省庁担当者連絡会議が設置をされております。

 この会議は、総務省、文科省、厚労省、経済産業省、国土交通省及び環境省の六省から成っておりまして、これはそれぞれの電磁波の所管もございますので、経済産業省では、送電線に関する超低周波電磁界等について、それからまた、厚労省では、電磁界による健康影響について、環境省では、環境を通じた電磁界暴露について、調査研究を行っているところでございます。

 なお、現在、WHOにおきまして、電磁界に関する環境保健クライテリアの作成作業が進められておりまして、近く取りまとめられる予定と聞いております。このようなWHOの動きについて情報収集するとともに、今後とも、省庁連絡会議の中でいろいろ議論をして、適切に対応していきたいと考えているところでございます。

若林国務大臣 末松委員が電磁波障害についていろいろと御質問をいただいておりまして、私も伺いながら、かなり以前から国民の中に広く電磁波障害というのがあるのではないかという不安の声というのは、私自身も聞いておりました。しかし、なかなか具体的にどのような健康上の障害が出ているかというようなことについて明確な現象把握がない、ないまま、今答弁をいたしておりますような状況に立ち至っているというふうに承知しております。

 WHOの方も、各国それぞれそういう問題を抱えておりますので、この問題を調査しているわけでございますので、この機会にそういうWHOなどを通じての外国の障害事案についての研究の知見というものも集め、そしてまた関係省庁の連絡会議をいたしておるわけですから、環境省におきます調査のみならず、この会議に参加しております関係省庁における調査の現況、こういうものを私のもとで一度ちゃんと整理をしてみて、何が解明されていないのか、どの部分を解明していけばその点が明らかになるのか、改めて整理をしてみたいと思います。

 多分、ここで整理をしたからといって明快な結論が出るというふうには思いませんけれども、どこまでがわかっており、どこまでがわかっていないのか、何を解明しなきゃいけないのか、そういうようなことについて一度整理をして、その整理の結果は御報告をしなければいけないと思います。早急に整理をしたいと思います。

末松委員 大臣の、そこは本当に信頼できるお言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 WHOが一番情報が集まるという話でしたら、担当の方を張りつけてでもやって、環境省の目と耳をしっかりと外国に対しても広げていく、そういった中で国民の生活をぜひ守ってほしい、健康を守ってほしいと思います。

 先ほどの資料、また電磁波関係も、ちょっと委員会の後で、理事会の方に提出をお願いします。

 それから、ちょっと私も余り、時間を食い過ぎたので恐縮ですけれども、財源なんですけれども、公健法の補償する費用の財源、これはどういうメカニズムになっていますか。簡単にちょっとお願いします。

上田(博)政府参考人 お答えします。

 公健法は、本来、汚染原因者と被害者との間で民法上の損害賠償として処理されるべきものを迅速かつ公正に解決することを目的とした制度でございます。こういうことから、補償に必要な費用は、全額を汚染原因者が負担するというのが原則でございます。

 相当範囲にわたる著しい大気汚染による気管支ぜんそく等の疾病が多発していました旧第一種地域については、大気汚染の原因と考えられる汚染物質の工場、事業場と自動車の排出比率を踏まえまして、補償に必要な額の八割は、工場、事業場からの硫黄酸化物の排出量に応じて事業者から徴収をしております。残る二割については、自動車重量税から引き当てているところでございます。

 なお、水俣病やイタイイタイ病など原因者が明らかな疾病、これにつきましては、原因物質を排出した施設を設置した事業者が費用を負担することとしているところでございます。

末松委員 では、国の負担というのはほとんどないんですか。と同時に、ちょっと何か特別会計風なことをやっているんですか、それとも基金的なものでやっているんですか。

上田(博)政府参考人 まず、徴収、交付については、基金でやっているということでございます。それから、国については、事務的な経費を負担しているということでございます。

西尾政府参考人 公健法の救済の費用でございますけれども、この費用につきましては、独立行政法人環境再生保全機構に、国のお金はそこへ交付する、それから環境再生保全機構は事業者からのお金を徴収する、それを集めまして、八対二のものが十になります。そのものにつきまして、それぞれ給付事務を行っている地方公共団体にその費用を渡すという仕掛けで運用されております。

末松委員 今、上田さんがおっしゃったのは、国は事務費だけ払っているんですか。補償そのものは、関与するものは払っていないんですか。

西尾政府参考人 補償そのものの費用につきましては、いわゆるPPP、汚染者負担の原則ということでございますので、国から二割のものは自動車重量税から引き当てておりますけれども、その趣旨は、自動車の汚染ということを勘案した分を持っている、八割は全国の煙突が汚染をしているという分で持っている、その二つを合わせまして、やはり全体としては汚染者負担、事務費ではなくて、その本体の補償費用は汚染者が負担している、そういう考えでございます。

末松委員 となると、国が不作為で規制とかをやられなかった、そういったものに補償をするような発想そのものがないわけですね。だから国の責任はそこには一切ない、要するに、PPPという企業とかそういったところがだけ明らかなときに補償がされて、国原因はほとんどない、まずない。そういう発想からいくと、原因がわからない、あるいは因果関係がよくわからぬ、こういった人は救われない、こういうことになりませんか。

西尾政府参考人 環境汚染によりそういう被害をこうむったという因果関係は、やはりどうしても前提として必要だと思っております。ですから、因果関係がわからないけれども何か救済をしなければということにつきましては、そこはやはり困難でございまして、環境汚染の程度、どういう蓋然性をもってするかということがございますから、因果関係というのが前提だ、こういうふうに思っております。

末松委員 私が調査費、調査としつこく言っているのは、そういった努力が本当に十全になされていて、やっていればいいんですけれども、その調査がなされていなくて、因果関係や科学的知見、こういうものはそう簡単に、すぐにはわかるものではない。でも、そういったところが完全に、パーフェクトにわかって、それでPPPという原則ですか、責任者がわかって、それから初めて救済されるというんだったら、それまで人間の体は持ちこたえられますかねという話があるわけですよ。

 そこのところがエアポケットになっている話であって、それは後で、私ども民主党で今、健康環境被害者救済基本法案というのをつくっていますけれども、むしろ、そこのところをしっかりとやっていくということが重要だと私は思うんです。それはまた政策論の中で論議をいたしますけれども、そんなに簡単に因果関係というのはわかるわけじゃない。先ほど大臣が言われましたよね、電磁波だってわかるわけじゃない。そう言ったら、では、因果関係がわかるまで。

 先ほど、義務事項が国にないのかと言ったのはなぜかというと、そういったことを調査しなきゃいけないという事項がなかったら、それは環境省のマンパワーの限界とか、あるいはお金の限界とかでどんどん延ばされていくわけですよ、別にやらなくたって、義務事項じゃないんだから。そういうことでやられた被害者の人は大変ですよね、国民は大変になりますよね。そこはぜひしっかりと考えていただきたいということを改めてこの場で要請しておきます。

 あと、残された時間ですけれども、まず大臣にお伺いしたいんです。

 これもちょっと、先ほど土屋副大臣が言われたところなんですけれども、報道で、政府は環境問題、地球温暖化防止で何か、二〇五〇年までに、一九九〇年レベルの五〇%、日本もCO2を削減するんだということが新聞報道にあったんですが、それは政府としてお決めになったことではないんだということを土屋副大臣がおっしゃいました。

 それは、この記事はだれが書いたのか、そこはよくわかりませんけれども、大臣としておっしゃったわけではないんですね。

若林国務大臣 土屋副大臣が御答弁申し上げたことと承知いたしておりますけれども、今委員が御指摘のような報道の事実を政府として決めたといったようなことは全くございません。

末松委員 ちょっともう時間がなくなったので、多分最後になりますけれども、築地の豊洲への移転問題ということで、同僚の川内議員がるる質問してきたわけです。

 私から一点だけなんですが、今度東京都が、日本の台所の築地卸売市場を汚染地域と言われていた、東ガスがやっていた豊洲に移すというのは、どうもやはり抵抗があるということで、いろいろと反対運動もあるんですね。

 それを踏まえた形で、今度東京都が、今月の十九日からですか、再調査が必要かどうかということで、九月に結論を出すようなことを言っていますけれども、その調査を含めて、これをまた国がきちんとさらにチェックをするのかどうかということと、その調査は、土壌汚染対策法ですか、これのレベルまでその調査のレベルというのは適合するようなレベルなのか。東京都の環境規制条例ですか、東京都が調査することが、今の土壌汚染対策法、そのレベルまで達したもので、環境省がチェックするのかということをお聞きします。

 ちなみに、これは非常に大きな問題なので、ぜひ、川内委員が言ったように、都知事とか農水大臣をこの場に参考人として招致をしたいと私どもは理事会で今話し合っているところですけれども、重ねて、環境委員会としてもこの地域に一回視察を行っていただきたいということを要請いたします。

 委員長にお願いを申し上げます。

西野委員長 理事会で検討いたします。

末松委員 大臣の答弁をお願いします。

若林国務大臣 委員も既に御承知のことだと承知いたしておりますけれども、土壌汚染防止法自身は、土壌汚染による人の健康への影響として、汚染土壌に直接接触し摂取するというものと、地下水の飲用という二つの経路を対象として、汚染が広がることを遮断するということを目的として制定されている法律なんですね。

 その限りにおいて、実は、一般的に食の安全というものを確保する、そういう視点の法律、制度ではございません。

 その意味で、土壌汚染法は食の安全そのものを直接の法目的としておりませんので、市場における食料品の安全、安心に関するあらゆる事象を念頭に置いて土壌汚染法上の対象になっているということではございませんので、ちょっと食い違いがあるかもしれませんが、土壌汚染法上の基準で土壌汚染調査が東京都で改めて行われるのかということについては、私は、東京都の方の調査は、土壌汚染法の範囲をもう少し超えて広く東京都として調査検討が行われるものではないかと期待をいたしております。

 東京都の立場というのは、土壌汚染法上の法定事務処理としての東京都知事の立場と、それから食品安全という意味で卸売市場法の設置者でもあるんですね、自分が運営者でもあるという両方の立場を持っている東京都知事が、豊洲という具体的な地域において卸売市場を設置すると決めたことが本当に食品の流通を通じての食の安全にとっていいのか。そういう意味での汚染土壌のある地域の上でそういう卸売市場の設置をしてもいいのかという問題を検討するために置かれた検討会であろうかと思いますし、そのような視点で検討をしてもらいたいなというふうに思っております。

 なお、その意味で、土壌汚染法が豊洲における卸売市場の取り扱い食品の安全、安心について担保できるかと問われれば、土壌汚染法で直接担保するというような仕組みになっていないというふうにお答えをせざるを得ないと思います。

末松委員 終わります。ありがとうございました。

西野委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉であります。

 私の方からは、地球の温暖化問題について幾つか基礎的な質問をさせていただきます。例えば、温暖化の原因、それから京都議定書の評価、さらにはポスト京都の考え方というようなことでございます。

 まず最初に、地球温暖化もしくは気候変動とも言っておりますが、その原因についてお伺いします。

 御存じのように、これは自然起源のものと人為起源のものに分けられております。IPCCの報告書でも、そういう区分で文章が書かれております。

 そこで、まず最初に、自然起源の原因というのはどういうものがあるのか、お伺いいたします。

南川政府参考人 お答えいたします。

 自然起源ということにつきましては、太陽放射による影響、そして火山噴火による影響、この二つが自然起源の影響として主に考えられておるところでございます。

 一九五〇年までの大体七百年程度、ですから一二〇〇年ごろからでございますけれども、その間の七百年間の北半球の気温の数十年単位の変動の主な要因につきましては、この自然起源である火山噴火と太陽放射量の変化ということによる可能性がかなり高いとされているところでございます。

吉田(泉)委員 一九五〇年ぐらいまではその二つでほとんど、二つに限られているということでございました。

 その二つによって、過去、地球の気温はどのように、どのぐらい変化してきたものなのか、観測データがある範囲でお答えください。

南川政府参考人 私どもは、主にネイチャーという科学雑誌がネタでございますけれども、それをできるだけ定期的に見るようにしております。

 その中で比較的新しいのが、一九九九年に掲載された論文でございます。これを見ますと、十万年に一回ぐらいの頻度で、最大十度Cぐらいの幅で気温が大きく変化したことがございます。ただ、この十度の変化でございますけれども、約一万年かけて十度変わっているということで、百年当たりでは〇・一度C以下。そういった、短期間で見るとごく少しの変化、ただし一万年かけて十度変わっている、こういった変化が約十万年に一回程度起きているということがわかっております。

吉田(泉)委員 十万年単位で見ますと十度ぐらいの変化が自然起源の原因によって起こっているということだと思います。

 その間、炭酸ガスの濃度はどのように変化してきたんでしょうか。

南川政府参考人 炭酸ガスの変化につきましても、やはり私どもは主にネイチャーの論文などを参考にデータを整理しておるところでございます。

 やはりこれも十万年に一度ぐらいの頻度で、大気中のCO2が二〇〇ppmを下回る程度から三〇〇ppmをやや下回る程度まで、つまり一〇〇ppm程度でございますけれども、その間でCO2の上がり下がりの変化があったことが把握をされるところでございます。

 ただし、これも先ほどの気温と同様に、約一万年かけて一〇〇ppm弱の変化、つまり一年当たりでは〇・〇一ppm以下の緩やかな変化となっていることが報告をされております。

吉田(泉)委員 今、気温の変化と炭酸ガスの濃度の変化についてお答えをいただきました。この二つは、つまり気温の上がり下がり、それからCO2濃度の上がり下がり、この二つのタイミング、それから上がり下がりの方向、これは一致しているということでよろしいんですか。

南川政府参考人 タイミングとしましては、比較的同じような時点でCO2が上がり、気温も上がっているということでございます。

 それから、これにつきましては、実は私ども科学者じゃないものですから、昨日御質問の通告をいただきましてから、これに詳しい国立環境研究所の研究者に問い合わせてみました。

 そのまま聞いたことを申し上げますけれども、十万年の周期で、地球の自転や公転軌道の周期的な変化があるということで、これによって地球に降り注ぐ日射の分布が変わる。また、この日射の分布の変化がきっかけとなって気温が上昇することによって、CO2濃度が増加する。ただし、また、この気温上昇がさらに湿地からのメタン発生に拍車をかけて温室効果ガスが増加する。温室効果ガスが増加してさらに気温が上昇するという意味でタイミングが合ってくるんだろうという話がございました。

 ただ、ちょっと蛇足ですが、その国環研の先生の言葉を追加しますと、過去十万年周期の変化につきましては気温変化がきっかけだということは言えるかもしれないけれども、近年の温暖化については明らかに二酸化炭素の増加がきっかけであって、両者は矛盾しないということを伺ったところでございます。

吉田(泉)委員 両者が矛盾するかどうかの前に、ちょっともう一度この因果関係を確認させていただきたいんです。

 一九五〇年ぐらい、産業革命と考えてもいいですが、その辺までは、温度とCO2は同じように上がったり下がったりした。それで、その因果関係は、今おっしゃったのは、太陽が、太陽といいますか地球の自転の関係だそうですが、十万年周期ぐらいで日射が変わる、それがきっかけで気温が上がって、その結果CO2も上がるんだ。しかし、それにとどまらず、今度はそれがまた気温を上げたり、そういう追加的な影響が出てくるということでよろしいんですね。

南川政府参考人 御指摘のとおりでございます。

吉田(泉)委員 IPCCは、この自然起源と人為起源と両方考えて、これからの予測そして我々がしなければならないことを今一生懸命研究して発表しているわけですけれども、もし自然起源だけを考えたら、我々のこの地球、あと百年、二百年、一体この気温と炭酸ガス濃度はどのように推移していくのか、十万年周期の中で考えるとどういう立場に我々はあるのか、わかったら教えてください。

南川政府参考人 IPCCの検討を私どもも全部読ませていただきましたが、その中で、過去一万年前から工業化以前、産業革命以前までのCO2濃度は、ほぼ一定であるということが示されております。

 また、そのIPCC報告書では、二〇〇〇年以降二一〇〇年までの温室効果ガス濃度を一定と仮定した気温の予測もしておりますけれども、これによりますと、二〇〇〇年以降、温室効果ガス濃度が一定に保たれれば、その後の気温上昇の影響は、一部残りますけれども、ほぼ一定の地上気温で推移する、したがって温度が上がらないということも予測をしております。

 こうしたことから、今後百年程度のスケールにおいては、自然起源の影響だけであれば、気温とCO2濃度はほぼ一定に保たれて推移するということでございまして、次に地球の軌道の要素の変化によって地球の気温が大きく下がる、例えば次の氷河期が来るとかいうことについては、少なくとも、早くとも数千年から数万年といったことが述べられております。

吉田(泉)委員 先ほどの自然起源のお話、十万年という単位のお話ですので、百年ということで考えればほとんど変化しないということだと思います。ただ、この因果関係を考えるときは、私は、やはり長期的なデータをよく分析した方がいいだろうというふうに思っているところでございます。

 それで、ちょっと話を進めますけれども、そうしますと、一九五〇年になりまして、いよいよ人間の産業活動が盛んになってまいりました。そして、地球環境に対する影響が無視できなくなってきたということは確かにあると思います。

 ただ、我々の産業活動が、地球というスケールで考えたときに、一体自然起源の原因に対してどのぐらいの重さを持つのか、そこについて疑問を持つ専門家もいるわけですよね。実はこの委員会でも、去年の十二月だったですが、公明党の赤松先生がそういうお話をされたというふうに思います。

 そこで質問ですけれども、ことし二月にIPCCの第一作業部会から第四次報告書というものが発表されたわけです。そこでは、先ほどもお話に出ましたが、最近五十年間の地球温暖化というものは九〇%の確率で人為起源である、こういうふうに発表したわけですが、改めてその根拠をお伺いします。

南川政府参考人 ことし出されましたIPCC報告書の中で、一九〇六年から二〇〇五年までの期間をとりまして、人為起源それから自然起源、この二つを考慮した気候モデルをつくりまして、詳細なシミュレーションを行っております。特に、今回は、大陸、世界を六つに分けまして、各地域ごとに詳細なデータをとっております。

 大陸それから海域を含めてシミュレーションを行っているところでございまして、例えば、アジア地域とかオーストラリアとかアフリカ、ヨーロッパ、北米、南米ごとに、全体として、自然による太陽放射と火山による影響、それから人為起源による影響、またそれをあわせた場合ということで、非常に詳細な分析を初めて行って公表しておるところでございます。

 このいずれのシミュレーションを見ましても、特に二十世紀半ば以降の観測された気温変化につきましては、自然起源の影響だけを考慮したシミュレーションでは全く説明ができない、あくまで人為起源も含めてその計算をする、考慮する、あわせて考えるということでなければ説明ができない、逆に言えば、人為起源の説明を加えれば六つのシミュレーションすべてにおいてそれが説明できるということが明らかになったわけでございます。

 こうしたことから、二十世紀半ば以降に観測された世界平均気温上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高いということでございまして、ベリーライクリーというのは、ある種こういった学界で使う最も高い予測だというふうに私どもとらえているところでございます。

吉田(泉)委員 このシミュレーションの中身がよくわからないんですね。つまり、専門家はわかっているんでしょうけれども、シミュレーションが私はブラックボックスになっていると思うんですよね。シミュレーションでやってみたらこうなんだから、人為起源は九〇%の確率なんですよ、こういう説明でございました。

 素人考えですけれども、私は、シミュレーションというのは因果関係を示すものではないというふうに思います。そして、本当は、因果関係というのがはっきりしないと、我々は温暖化に対する究極の対策というのは立てられないんじゃないか、私はそんなふうに思って、もう少しこの問題は慎重に考えた方がいいんじゃないかなというふうに、赤松議員と似たような気持ちも持っているところなんでございます。

 次に、お手元に資料が配付されていると思いますが、この資料をちょっと見ていただきます。

 これは、日本物理学会誌の槌田敦教授の論文のコピーであります。この表の右上にグラフが書いてありますが、これをちょっと見ていただきます。

 これは、英語で書いてありますが、キーリングという研究者、教授が、ハワイのマウナロアという観測所で過去三十年にわたって観測した結果をまとめた表でございます。右下のグラフは、日本の学者さんがそれをベースに修正をしたグラフでございます。

 右上の方を見ていただくと、実線が温度です。そして、破線がCO2、つまり炭酸ガスであります。よく見ると、実線の方が破線よりも先行して変化している、一部例外もありますけれども、大体この三十年間にわたって、温度が上がった後で炭酸ガスの濃度が上がってくる、こういうふうに読めるグラフですが、この読み方についてどうでしょうか。

南川政府参考人 この図はキーリングさんという方がつくられたデータをベースにつくられております。ちょっと読み方の前に、済みません、一言だけ、余分かもしれませんが、キーリングさんにつきまして。

 吉田委員はよく御存じだと思いますけれども、私どももこの仕事をしますと、必ず、キーリングさんの研究あるいは著書については読ませていただいております。大変すぐれた科学者でございまして、こういったCO2の大気汚染、温暖化問題が問題になる前から地道にこの問題に取り組まれた方でございます。したがいまして、この方のデータを使った論文は多いわけでございますが、ただ、きょう、委員からお示しいただきました論文またこのデータの使い方につきまして、その後、日本気象学会の学会誌に若干その解説が出ております。

 そして、その中で、お示しされた上の図一でございますけれども、この図につきましては、二酸化炭素の長期的な上昇傾向が省いてあるということで、今、温暖化の原因と言われているのはまさしくその長期的な上昇傾向であって、それが取り除かれたこの図であらわされているものは自然起源の変動だということで、この図をもって温暖化と二酸化炭素濃度の因果関係の説明をすることは適切でないというコメントが、別のそういった学会誌でなされているところでございます。

 それから、この図に示されておりますCO2の濃度の変動幅でございますけれども、〇・五ppmということで非常に小そうございます。そういう意味で、温暖化で問題にされる人為起源のCO2濃度に比べまして、こうした自然起源のCO2の変化というのは、全く変化の大きさもタイムスケールも違うというふうに考えております。

 それから、シミュレーションにつきまして、吉田委員がおっしゃるとおりでございまして、シミュレーションについてかなりブラックボックスの部分があるということは、幾つかの場合に私も経験しておるところでございますし、それについては、常に、何か、式に織り込んですべてが正しいということではないというふうに考えておりまして、当然ながら、因果関係というものをしっかり各方面からチェックした上でなければいけないというふうに、私ども日ごろから気をつけているところでございます。

吉田(泉)委員 このグラフでは長期的な傾向が除かれているというようなコメントでした。ちょっと意味合いがよく理解できませんけれども、私は、温度の方が先行しているという事実は認めざるを得ないんじゃないかなというふうに思っているところであります。

 いずれにしても、IPCCも、温暖化の原因は人為的だ、人為起源であると言うものの、九〇%の確率だ、まだ完全に一〇〇%解明されたわけではない、こういう姿勢ですよね。

 私は、地球温暖化という人類的な問題をどうやって解決するかというときに、やはり一〇〇%解明するということが一番大事なことだと思いますので、ぜひ、日本からも優秀な方がIPCCに行っておられると思いますが、そういう認識でやっていただきたい、こういうふうに思います。

 それから、大きい二つ目の問題で、今の京都議定書の枠組みの評価といいますか、それについてお伺いいたします。

 御存じのように、第一約束期間が間もなく始まる。そうしますと、先進国で五%CO2を削減しよう、こういう約束を実行する時期が間もなく来るわけですけれども、カナダが脱退したということもありましたけれども、各国がこの第一約束期間の約束を果たした場合、一体どの程度温暖化を防止する効果があると考えていいんでしょうか。

南川政府参考人 もともとこの京都議定書自身が、先進国がまず五%減らそうということでスタートしたわけでございます。その後アメリカとオーストラリアが離脱し、今回は丸々離脱ではございませんけれども、カナダが、当面の目標はギブアップしてまた別の目標を立てたというようなことでございます。

 それで、アメリカと豪州が抜けたことによりまして、全体の三割程度の排出国がその五%を減らすということでございます。そういう意味では三割の五%ですから一・五%、そういう数字になりますけれども、なおかつその間、途上国を中心に排出がふえておりますので、そういう意味ではなかなか定量的に、効果という意味では出しづらいものがございます。したがって、正確なそういう効果についての計算はしておりません。ただ、算数上、三割についてその〇・〇五が減ると言うことしかできないのが現状でございます。

 ただ、先ほど御指摘いただいていますとおり、IPCCの報告を見ましても、気温上昇を産業革命前から二度とか二・四度に抑えるためには、二〇五〇年までに二〇〇〇年に比べて五割以上削減する必要があるんだということを言っておりますので、そういう意味で見れば、京都議定書の対応というのは、それによって対策が始まったという意味で、あくまで第一歩というふうに考えて対応していきたいと考えております。

吉田(泉)委員 そうしますと、数字としてはCO2削減効果は一・五%程度、ただ、では、それが一体温度を何度下げることにつながったのかは、数字がないということだと思います。

 我々は、非常に大きな人的エネルギーと予算を使って何とか約束を果たそう、先ほど副大臣の御答弁にはありましたけれども、そういうつもりでおるんですけれども、約束を果たしても、実際、地球温暖化に対する効果がわからないというのが今、現状だと思うんですよね。ちょっとこれでは私、盛り上がりに欠けると思うんです。

 やらないと大変だ大変だということなんですけれども、では、やったら、黙っていたらこうなる温度が、ここまで行くんですよということを、やはり最初の五年間についても何とか工夫をして計算して、国民に知らせるべきじゃないかな、私はこういうふうに思っております。

 それから、次の質問は、よく使われる数字ですけれども、経済産業省の方で、GDP当たりの一次エネルギー供給量国際比較、要するに国ごとの省エネの効率を比較した表をつくっております。それによりますと、二〇〇六年の段階で、EUは非効率が日本の一・九倍、アメリカは二・〇倍、中国が八倍強、ロシアは十八倍。日本がこの表に限っては世界の最優等生、こういう数字が経産省から出ております。

 そこで、この厳然たる各国のエネルギー効率の差を第一約束期間の削減率に十分反映、加味されなかったんじゃないか、そういう意味では、主として日本にとって不公平な枠組みだったのではないかという指摘が根強くあるわけですが、その点はいかがでしょうか。

南川政府参考人 今、吉田委員御指摘の数字でございます。

 GDPの比で見ることがどこまで適切かどうか、いろいろございます。ただし、全体として、日本が省エネ化を進めておるということは事実でございますし、エネルギー危機がございましてその影響をもろに受けたのは日本でございまして、早い時期から省エネに取り組んできたということは事実でございます。それがまた非常に各国からも評価されております。

 ただ、なかなかその国際比較は難しい部分がございまして、例えば、途上国に言わせますと、では今度、人口当たりでやると、例えば中国はまだ日本よりも圧倒的に少ない数字も出ます。そういう意味では、国際比較自身、なかなか効率比較が難しゅうございますけれども、全体として、日本の省エネ技術が世界の最先端だということは、私どもは事実だと受けとめております。

 ただ、京都議定書につきまして、そういった議論はございました。そういう中で、政府としましては、日本として六%削減が厳しいという中で、例えば吸収源について、日本は三・八%分の吸収源の枠をある意味ではとってきたということがございます。ヨーロッパは、これにつきましては〇・四%しか吸収源の割り当てがございません。

 それからまた、京都メカニズムということで、かなり高い数字、今、日本は一・六を想定していますけれども、そういったこともできるということで、マイナス六%の目標ではございますけれども、そういった政府が中心になって行う吸収源対策とか京都メカニズムで五・四%までが対応としてカウントできるというようなことで、できるだけ、過去の省エネの反映と直接リンクはしませんけれども、国内的にも、別に日本が特に不利ではない、みんな同じように苦しいんだから頑張ろう、そういったことを政府としても率先して条約交渉の中で闘ってきたということについてはぜひ御理解を賜りたいと思います。

吉田(泉)委員 省エネの国際比較は難しい、経産省はこういう比較をしていますけれども、実は難しいところもあるんだ、しかしながら、日本の省エネ技術は世界一だろう、もし不公平なことがあったとすれば森林吸収源でカバーされたんだ、だから結果的に一応公平な枠組みだったんだ、こんなふうに理解をいたします。

 私は、この問題が次期の枠組みづくりに非常に大きな要素を占める、占めるべきだというふうに実は思っておるんですが、続けて、次の、ポスト京都と言われている枠組みづくりについての考え方をお伺いいたします。

 もう随分いろいろな方から言われておりますけれども、この地球規模の温暖化対策、作戦を実行しようというときに、今、参加率が三〇%なわけですね。これはいかにも、どうしようもない参加率だと思います。第二約束期間の枠組みづくりに当たっては、やはり、アメリカ、中国、インド、少なくともこの三つはどうしても入れるんだという、それを最優先にしたらどうかな、最優先すべきだろうというふうに思うんですが、どうでしょうか。

若林国務大臣 吉田委員のおっしゃるとおりだと思います。

 そういう考え方に従って、米国、中国そしてインド、このような排出量の多い主要な国はどうしても参加してもらわなければ、今後、地球規模で温暖化にストップをかけるということに効果が出ない。そういう考え方で、我が国は来年議長国になるわけでありまして、第一約束期間、二〇一二年が終わった後、間を置かずに次の枠組みを決めなきゃいけないという考え方、つまり、二〇一三年以降の次の枠組みについては、どうしてもこれら主要排出国のすべてが参加する形でなければ効果が出ない、こういう認識に立ちまして、今、各国との意見交換、調整をしておるところでございます。

 我が国が議長国をいたします来年、二〇〇八年というのは、そのような次の枠組みを決める重大な時期だというふうに考えております。今、EUは、二〇〇九年中に次期枠組みの条約案を決めなければ、二〇一三年からそれぞれの国での条約の批准手続、それぞれの国のことを考えると二〇〇九年中に条約案ができないと間に合わないよというようなことを言っておりまして、先般のドイツにおきます環境大臣会合でも、その点を決めたいという事前の協議がございました。

 私は、二〇〇九年というしりを切ってしまって、そこに参加してきた、会議に参加してきたアメリカや中国、インドなどの国々の皆さんが、そこで賛成をしない、つまり、入るか入らないかも決めていないのに、しりだけ決めるというようなことは無理じゃないか。だから、我が国は、議長国になることを念頭に置いて、アメリカ、中国、インドなど主要排出国のすべてがこういう目標に従ってやろうじゃないかという合意ができることが先で、合意ができてから、では、それをいつまでに条約の形にするのかというのを決めるべきではないかということで、実はそこが議論が対立をしたまま、二〇〇九年中に合意、成約を得ることを目的とするという部分は送った経緯がございます。

 それほど私どもの方は、今、各国との間で、どうしてもアメリカ、中国を巻き込む形で次期枠組みづくりに協議を進めていきたい、このような考え方でおります。

吉田(泉)委員 大臣の御答弁に私も全く同感でございます。要するに、問題は、どういう枠組み、どういう指標ならば米、中、印が参加しようという気になってくれるか、そこだと思うんですね。

 そこで、先ほどからちょっと出ましたけれども、単純な国別のCO2削減率、第一約束期間は結果的にはそういうことだったと思いますが、そういうことではなくて、省エネ率を十分加味したものを工夫して指標にすべきではないか、随分いろいろな方がそういうことを言っております。私もその方がいいんじゃないかというふうに思います。

 つまり、中国などがGDPを今どんどん一〇%ぐらいでふやしているわけですが、ふやしてもいい、しかし、エネルギー効率が日本の八倍というのを日本と同レベルにしてくださいよ、そういうことなら、中国も、よし、参加するかという気になってくれるんではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

若林国務大臣 日本のように省エネ技術が大変進んで世界でも冠たる技術を確立している国からしますと、それが一番都合がいいことは間違いないんですよ。日本の産業界はみんなそう言っているんです。経済産業省の方も、どちらかといえばそういう主張であります。

 ところが、おくれている国からしますと、今委員は中国のお話をされましたが、中国がそれで納得するかどうかというのは、大変問題だと思うんです。さらに、インド、あるいは南アフリカ、ブラジル、そういう国々は、エネルギー効率を上げていくためには大きな投資をしなけりゃいけないわけですね。

 そういうような投資の負担をだれがやるのかといったような問題もみんなセットにして合意が成り立たなきゃならないという問題がありますので、委員のおっしゃる、産業界あるいは経済産業省が言っておるこの主張も念頭に置きながら、これから各国との合意形成を図っていくというふうにいたしたいと思うところでございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 私は特に産業界を代表して言っているわけじゃないんですけれども、一人の個人、議員の立場で、冷静に考えると、その方が地球全体のためになるだろうということなんでございます。どちらかというと、私は、省エネ第一という姿勢を貫いた方がいいんじゃないか、こういうふうに思っているわけです。

 そこで、最後の質問ですが、せんだって法律が通りましたけれども、炭酸ガスを地下に埋める、地下貯留、CCSと言われておりますが、こういうことに関する法律が通ったわけでございます。

 私は、このCCSという手法、確かにCO2を減らす効果はありますけれども、よく考えますと、省エネ効果は全くないわけですよね。一〇〇%ないと思います。

 こういう手法を、例えばIPCCの報告書では、世界の排出温暖化ガス削減の半分以上をこのCCSでやろうというような計画がIPCCサイドにもある。日本の国内でも、RITEでは、そういう計画といいますかアイデアがあるようですが、私はそれはどうかなというふうに思います。このCCSという手法は、あくまで二次的な手法にとどめるべきだというふうに思うところですが、いかがでしょうか。

南川政府参考人 御指摘のとおり、やはり温室効果ガスを大量に減らす、それからもう一つは、最近世界で言われていますのは、ローカーボンソサエティー、低炭素社会をつくるということで化石燃料から出てくるCO2が少なくて済む社会をつくろうということでございます。

 そのためには、委員御指摘の省エネを徹底的に推進する、それからもう一つは、再生可能エネルギーを普及するということが重要でございまして、やはり、これに最大限取り組むことがまず対策としては必要だというふうに考えておるところでございます。

 ただ、世界的に見ますと、吸収量と排出量を均衡にしなければいけない、なおかつ、吸収量自身は炭素にして約三十一億トン前後でふえないということを考えますと、現に七十億トン程度の炭素が出ているわけでございまして、ますますふえる状況になっている。その中で、一つの方策としてCCSということで、石炭の火力発電所なんかから出てくるCO2を集めて吸着して、それを地下に埋め込むということも一つの選択肢としてはやはりあり得るというふうに思っておりますし、中長期的にはかなり重要な対策というふうに見ざるを得ないんじゃないかというふうに思っております。

 そういう意味で、私ども、当然、これによって環境に影響が出てはいけませんし、また、委員御指摘のとおり、省エネあるいは代エネについてのその努力に怠りがあってはいけないと思います。全体としてその均衡がとれた対策を進めていきたいと考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 きょうは、人為起源、自然起源というところからお話をさせていただきましたけれども、どちらの考えをとる人においても、省エネというのはもうみんな大賛成なんですよね。これは世界規模でそんなものに反対する国も人もいないと思います。

 第一約束期間、我々が約束した、しちゃったものについては、これは何とかやろうということも、恐らく日本の中で反対する人はいないと思います。

 ただ、第二約束期間は、どういう認識で、どういう哲学で枠組みづくりに臨むか。ここは、私は、もう一度、人為起源、自然起源のレベルに立ち返った冷静な議論が必要じゃないか、こんなふうに思っているところでございます。

 本日はありがとうございました。

     ――――◇―――――

西野委員長 次に、参議院提出、国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律案を議題といたします。

 発議者より趣旨の説明を聴取いたします。参議院議員川口順子君。

    ―――――――――――――

 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

川口参議院議員 ただいま議題となりました国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律案につきまして、その提案理由及び主な内容を御説明申し上げます。

 京都議定書が発効したことを受けて、政府は、地球温暖化防止のための政府実行計画において、平成二十二年度から二十四年度までの平均でみずからの温室効果ガスの排出量を平成十三年度比で八%削減することを目標に掲げておりますが、確定している数値で直近となる平成十七年度の温室効果ガスの排出量は、一・二%の削減にとどまっております。

 国全体の温室効果ガスの排出量の削減に向けて、政府は、みずからが率先して目標を達成する必要があります。そこで、庁舎で使用する電気の購入や庁舎の改修事業等については、価格のみで判断するのではなく、温室効果ガス等による環境への負荷についても適切に評価した上で契約の相手方を決定することにより、環境に配慮した契約を推進していくことが必要であると考え、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国等の責務として、その温室効果ガス等の排出の削減を図るため、エネルギーの合理的かつ適切な使用等に努めるとともに、経済性に留意しつつ価格以外の多様な要素をも考慮して、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に努めることとしております。

 第二に、国は、国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針を定めなければならないこととしております。この基本方針には、電気の供給を受ける契約及び使用に伴い温室効果ガス等を排出する物品の購入に係る契約における温室効果ガス等の排出の削減に関する基本的事項、省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項などを定めるものとしております。各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、基本方針に定めるところに従い、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。

 第三に、国が省エネルギー改修事業について債務を負担する場合には、当該債務を負担する行為により支出すべき年限は、当該会計年度以降十カ年度以内とすることとしております。

 第四に、地方公共団体等は、地域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する方針を作成し、これに基づき、必要な措置を講ずるよう努めるものとしております。

 第五に、国等は、国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する施策の策定及び実施に当たっては、公正な競争の確保に留意するものとするとともに、国等の温室効果ガス等の排出の削減等に関係のある施策等との調和を確保するものとしております。

 第六に、国及び独立行政法人等が締結する電気の供給を受ける契約について、総合評価落札方式等に関する検討等を行うものとするとともに、当分の間、入札に必要な資格として温室効果ガス等の排出の程度を示す係数等を定めた上で、価格に基づき落札者を決定する方式によるものとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び主な内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

西野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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