衆議院

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第2号 平成19年10月23日(火曜日)

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平成十九年十月二十三日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 小島 敏男君

   理事 小野 晋也君 理事 大前 繁雄君

   理事 木村 隆秀君 理事 北川 知克君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    上野賢一郎君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      鈴木 俊一君    土屋 品子君

      とかしきなおみ君    中川 泰宏君

      並木 正芳君    藤野真紀子君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      末松 義規君    田島 一成君

      田名部匡代君    村井 宗明君

      吉田  泉君    高木美智代君

      江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         鴨下 一郎君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   環境大臣政務官      並木 正芳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 平工 奉文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小川 富由君

   政府参考人

   (環境省大臣官房長)   小林  光君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       石塚 正敏君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  櫻井 康好君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境保全の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小島委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官小原雅博君、資源エネルギー庁次長平工奉文君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長上田隆之君、国土交通省大臣官房審議官小川富由君、環境省大臣官房長小林光君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君、環境省総合環境政策局環境保健部長石塚正敏君、環境省地球環境局長南川秀樹君及び環境省自然環境局長櫻井康好君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。

小野(晋)委員 皆さん、おはようございます。

 二十一世紀、もう既に七年ということになるわけでありますが、二十一世紀というとよく言われる言葉が、二十一世紀は環境の世紀という言葉でございます。十八世紀の後半より、産業革命の波の中に工業を中心とした社会が築かれてきたわけでありますけれども、二十一世紀を迎え、この工業中心の社会の組み立て方というものに一定の反省が加えられる中で、社会の仕組みも、また人々の考え方も含めて、新しい時代を環境の問題を中心として切り開いていかねばならないという思いがこの言葉の中に込められているような気持ちがいたします。

 きょうのこの委員会は、鴨下大臣、就任されて初の環境委員会での御答弁ということになろうかと存じます。また、私にとりましても、環境委員会に所属したのは実は初めてでございまして、初質問ということになるわけでございまして、少し大局の中に、非常に良識をお持ちになられ、広い御関心をお持ちになっておられる鴨下大臣でありますだけに、この際に、新しい環境政策の方針というようなものをめぐっての質疑を行わせていただいて、一定の成果を生み出してみたいと思っている次第でございますので、何とぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。

 まず、環境という問題でございますけれども、この環境という言葉、私たちはごく当たり前のようにこの言葉を使います。しかしながら、一体どういう含意があるんだろうということで広辞苑を開いてみますと、これにはこんな意味がつけられておりました。「人間または生物をとりまき、それと相互作用を及ぼし合うものとして見た外界。」これが広辞苑に示された環境の意味であります。この言葉の中で非常に大事な部分は、相互作用という言葉が語られている部分だろうと思うのであります。

 鴨下大臣は、心療内科医として御活躍された上でこの政界に入られたわけでありますし、心療内科の問題を中心としてさまざまな御著作も出しておられるわけであって、特にストレス治療を専門としておられると聞いております。私は、この相互作用というのは、言いかえれば、ストレスという言葉と非常に似通った言葉であるような気持ちがいたします。

 単独で人間が存在する、また、単独である生物が存在する、そういう状況ではその生物体と外界との間のストレスというのはないわけでありますね。やはり、外界のある存在そしてみずからの存在、その間にある一定のギャップを伴うからこそ、そこにストレスが生まれてくるということでありまして、私はストレスが悪だとは思っておりませんし、恐らく鴨下大臣もそうだろうと思うのであります。

 適切なるストレスと基本的な調和、これが存在するということが人類にとってもその進化のプロセスを生み出す原動力であるということを考えますと、適度のストレスということはむしろ生物の存在にとって非常に大事な要素であると言うことができるわけでありましょうけれども、そのストレスが過剰になった場合に、人間においてさまざまな精神症を引き起こすがごとく、この人類社会全体にあってもいろいろな不調和が生まれ、そしてそこに社会の病ともいうべきものが生まれてくる、これが実は環境をめぐるところの基本問題のとらえ方ではなかろうか、こんなふうな気持ちがしてなりません。

 とかくこれまでこの環境問題というのは、個別の問題を取り上げて、その個別の問題の周りにさまざまな感覚的な議論を付随させていきながらそのことが語られることが多くて、なかなか総合的な解決というものを導くことが困難な問題であったような気持ちがしてなりません。

 そこで、大臣の専門でございますストレス論というようなものをもとにして、外界と人間社会、また外界と人間個人の肉体や心理、これらの間に生ずるストレスというものが基本的な問題であるという論点から、一度環境問題の整理が必要ではなかろうかというのが率直な私の思いでございます。

 このような根本的な問題意識をもとにして、国際的な合意を生み出すような形で、日本の環境行政、環境への取り組みというものが国際的な大きな貢献を遂げるというようなことを構想されてみてはいかがか、こう思っている次第でありますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。

鴨下国務大臣 小野先生とはある意味で同志でありまして、いろいろなところで勉強をさせていただいているわけでありますけれども、先ほどのお話の中で、地球環境の問題、あるいは人が生活する上でさまざまな負荷が地球にかかってきたという話の一つのきっかけが産業革命、こういうようなお話がありました。

 我々は、そういう意味でいうと、地球の自然と人間の経済活動との間である種の相互作用があるわけでありますし、加えて言うと、この地球に存在している人類として、人として、ある意味で、これは、主体でもあるし客体でもあるわけですよね。ですから、それは、環境という中においては、我々が主体であるときには外は環境ですけれども、全体的に見ると人間の生活を含めてこれは環境そのものであるわけですから、そういう意味でいうと、先生おっしゃるように、お互いの相互作用の中でやってきたんだろうと思います。

 ただ、先ほど、私が心療内科の医者だったというお話で御紹介いただきましたけれども、そういう意味でいうと、自然に対しての働きかけという意味においては、多分、西洋的なものと東洋的なもの、かなり違うんだろうと思います。そして、ちょうど産業革命ごろに、例えて言えばデカルトあたりが心身二元論というようなことで、心と体、物質と魂のようなものを二つに分けて考えるという意味において見ると、場合によると、自然というのは克服するべきものであって、調和して一緒に存在するものではないというようなことがもしかすると欧米の中で産業革命以降台頭したんだろうと思うんですね。

 ですから、我々はそういうような今までの歴史的な経緯を経て、いよいよ環境というもの、あるいは地球環境というものが経済の発展に対しても制約要因になってきたということはまさしくそういうことでありますから、今までは、ただ一辺倒に、産業を発展させるという意味においてのグローバリズムのようなものが是とされてきましたけれども、今、それぞれ、サミットだとか何かのときにも、NGOだとか何かがアンチグローバリズムだとかいわゆる地域主義のようなものを掲げて、大変大きなデモが起こったりなんかします。

 ですから、我々は、多分その両方のところにお互いの言い分があるんだろうというふうに思っておりまして、小野先生おっしゃるように、ある種のグローバリズム、それからリージョナリズムといいますか、そういうものの相互作用の中に初めて環境というものを、地球温暖化も含めて、環境を克服していくためのいわば解決策があるのかなというふうに思っておりまして、小野先生のいろいろな御提案を十分に拝しながら、これはもしかすると日本でないと言えない部分もあるかもわかりませんので、大いに検討させていただきたいというふうに思っております。

小野(晋)委員 まことに明快なる御答弁をちょうだいしました。

 大臣の指摘のとおり、デカルトに発する二元論というのは、自然界のいろいろな問題を整理して論ずるには非常に便利でありましたが、必ずしもすべてを包含できるものではあり得なかったからこそ、現在さまざまな、環境問題もそうでございましょうし、各地で起こるテロもそうでございましょうし、人間の心の中におけるさまざまな病気、これに苦しむ人たちが日本社会にも何百万人といるということでございますが、いろいろな問題がこのあたりから発しているというふうに感じられてなりません。

 今も大臣言われましたとおり、私は、日本でなければ語れない部分というのはこの環境問題で非常に多くあるような気持ちがしてなりませんので、ぜひ大臣の深い御見識のもとに、新しい時代のビジョンを環境問題を中心にして描き出す努力もお願い申し上げたいと思う次第でございます。

 そこで、大事な問題は、私は、この環境問題だけではもちろんございませんけれども、物の考え方の基本的な視点というものが、必ずしもこの日本でも人類社会でもきちんと合意されていないという点にあるような気持ちがしてならないのであります。

 私は、陽明学者の安岡正篤先生の著作も随分多く読ませていただいた一人だと自負をいたしておりますけれども、この安岡先生がおっしゃられる「思考の三原則」というものがございます。第一原則は、目先にとらわれず、長い目で物事を見ること。第二原則というのが、一面だけを観察しないで、多面的、総合的に観察をすること。第三原則というのが、枝葉にとらわれず、根本においてその問題をとらえること。特に、激動の時代、混迷の社会にあって一つの道を切り開かんとするには、こういう三原則に立った考え方を樹立しないことにはその混迷を脱することはできない、これが安岡先生の主張でございます。

 環境問題を考えてみました場合に、これまでの環境問題は局所的な環境問題であり、さらに、ある意味では短時日のうちに解決のできる問題というのが非常に多かったんだろうと思います。地域における排ガス問題でありますとか水質汚染の問題でありますとか、こういうような問題は、局所の表面的な対処である一定の成果を得ることができるものでありましたでしょう。

 しかしながら、これから我々人類が立ち向かわねばならない地球環境問題のような大きな規模の問題ということになってまいりますならば、目先の問題解決を目指してみたり、一面からだけの取り組みを行ってみるということ、ないしは表面的なつじつま合わせと言われるような対処ではとても解決が得られてこないに違いない。

 というようなことで、この三原則の考え方というものが、地球環境問題を解決する上での非常に重要な考え方であるような気持ちがいたします。

 かつて福田赳夫総理は、アジアとの関係の中において福田ドクトリンというものを打ち出して、友好的な関係を長期にわたって維持していくためには日本外交はこの方針でいくと三原則を打ち出したのでありますが、日本の環境行政にあって、鴨下ドクトリンというようなものをこの三原則をもとに打ち出されることを考えてみられてはいかがだろうか、こんな御提案を申し上げたいと思うのでございますが、大臣、いかがでございましょうか。

鴨下国務大臣 小野先生がおっしゃるような安岡正篤先生のようなことは我々にはなかなかできないわけでありますけれども、今おっしゃっていた、目先のことにとらわれるな、あるいは一面だけを見るな、さらには枝葉にとらわれずに根本においてその問題をしっかりと見定めろ、こういうようなことは、これはまさに、特に地球環境の問題においては重要な観点だろうというふうに思います。

 そして、例えば、私たちは毎日の日常活動の中で二酸化炭素を排出しているわけですけれども、その二酸化炭素がどういうような影響を持って、そして例えば北極の氷にどういうふうに影響を及ぼしているか、こういうふうなことの因果関係というのはなかなか自分たちに体感できないことでありますので、特に、因果関係がはっきりしない、あるいはそれを体感できないというところがこの地球温暖化対策の最も重要な特徴だろうというふうに思っておりまして、我々は、大きなある種のイマジネーションを持たないといけませんし、あるいは根本原因に何があるのかというようなことも見定めないといけない、こういうような意味においては、小野先生のおっしゃることはまことにもっともだと思います。

 ただ、今回、IPCCがノーベル賞を受賞した、こういうようなことでありますけれども、これは、多くの学者たちが各地、各場所でそれぞれのモニタリングを行って、そしてさまざまないろいろな事象、影響を勘案した上で、人為的な、経済活動から出てくるいわば温室効果ガス、これがまさに地球環境に影響を与えているんだろう、こういうようなことが評価されたというふうに我々も認識しておりますので、そういう意味では、全体を見て、しかもそれを科学的な知見も裏づけとして持ちつつ、しっかりと今の環境問題に取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

小野(晋)委員 IPCCのお話も大臣は触れられたわけでありますけれども、ことし初めに、IPCCが地球環境問題についての原因をめぐっての報告書を出しました。それを見ると、かなり高い確度でCO2を代表とする温室効果ガスが温暖化を引き起こしている、こういうレポートが出されてきたわけでありますが、これには別の視点からのレポートも他の分野から出されているというのも事実なのであります。

 例えば、日本人でありますが、アラスカ大学で名誉教授をしておられます赤祖父俊一さん、この方は非常に国際的に有名な方で、特に極地研究の面で世界を代表される方なのでありますが、この方がいろいろなことを検証する中では、温室効果ガスによる温暖化効果はせいぜい二五%程度にとどまるのである、こういうことを言っているんですね。

 それよりも大きな温暖化要因は何か完全に解明はまだされないけれども、長期的な自然現象として起きている可能性がある。というのは、過去、大臣御存じのとおり、CO2を人類が今のように排出していない時代であっても、地球上にはいつも、温暖化時期が起これば次は氷河時代が来る、こういう自然の波動があったわけですね。その波動によって現在温暖化が起きていると判断すべき状況があるのではないかというような視点も提示されているところでございます。

 これらの問題というのは、地球というのは非常に大きなシステムでありますだけに、完全な解明はなかなか困難であり、ある一定の推定を含みながらその問題に対処せねばならないというのは宿命的な課題であるとは思いながらも、CO2削減のためにこれから投入しようとされている資金ないし人力、これが必ずしも地球温暖化をとめる上に確実なものではないということになるならば、これが空振りに終わってしまう可能性を否定できない部分もあるわけでありますので、ぜひ、現実的にはIPCCの方針に基づいて対処をとられるということは私は当然の指針だと思いますが、同時に、これが確定されたものであると決定してしまわないで、他の可能性に対しても十分な検討を、まさに先ほどの長期的、多面的、根本的に取り上げていきながら、全世界での検討を進めていくという部分も必要であると考えている次第でありますが、この点、いかがでございましょう。

鴨下国務大臣 小野先生おっしゃるように、さまざまな要素を総合的に考えなければいけないのは、もうまさしくそのとおりであります。

 ただ、IPCCの第四次評価報告書では、二酸化炭素等以外にも、例えばオゾンだとか地面の反射率の効果、それから火山活動の影響など、こういうようなこともある意味で織り込んで、総合的に評価して、最終的には、人為的な温室効果ガスが現在の地球温暖化には最も寄与しているだろう、こういうような話であります。

 先生おっしゃるように、これをもっと長期といいますか、十万年、百万年の長期のスパンで考えれば、我々が存在しないころに、さらに地球は暖かいときもあったわけですから、ですから、それ自身はいろいろな要素が入ってくるというのはもちろん考慮しないといけないと思いますし、例えば天災のようなもので大きな火山活動があったら、それだけで地球の気温がかなり影響を受けるわけで、我々の人為的なもの以上のマグニチュードというのはいろいろな意味であるんだろうと思います。

 ですから、そういうことも十分に視野に入れながら、しかし、足元で今やらなければいけないことは、少なくとも化石燃料を燃やして、そして炭酸ガスを排出している、こういうようなことについては温暖化にかなり寄与するだろう、そういうようなことでは、これを対策するというのは我々環境省の仕事だろう、こういうふうに思っています。

小野(晋)委員 大臣おっしゃられるとおりで、CO2の削減を初めとする温暖化ガス排出を抑制するというのは、単に温暖化対策というのみならず、この地球上に存在する資源をより有効に活用し、子孫のためにできる限り残していくというような意味合いにおいてもこれは取り組むべき課題でありますから、決してこれを否定するものではありません。むしろ、これは全面的に推進すべきであると考えつつも、ただ、対策が必ずしも地球温暖化問題の解答になるかどうかということについては、一定の疑問をはらみながらこれは議論すべき問題であるという点についての御理解をいただきたいと思う次第であります。

 ここで具体的に、二つちょっと御提案申し上げたい点があるわけであります。

 一つは、この十月初旬でありますが、ヨーロッパ、ローマで欧州宇宙会議というものが開かれました。これは欧州諸国の国会議員の方々が、欧州が共同でESA、ヨーロッパ宇宙機関というものを支えて宇宙開発を推進しているわけでありますが、国会議員が集まる場でありまして、日本・宇宙議連というところを代表して私もそれに出席をしてきたわけであります。

 そこで議論された点は幾つかありましたが、その大きな一つにはGMESという衛星の問題がございました。

 これは、グローバル・モニタリング・フォー・エンバイロンメント・アンド・セキュリティーということで、地球観測を環境と安全保障の両面から取り上げていこうという衛星の問題であったわけでありますが、これに関連して、非常にヨーロッパ諸国が地球環境問題に対して深い関心を持ち、それに取り組みを共同してやっていこうという強い熱意を私は感じました。

 そこで私の側からも提案をさせていただいたのは、ちょうど来年は洞爺湖サミットが日本で開催される。その主要テーマは、もう既に予備的な会談の中で地球環境問題が大きな課題になる、こういうふうになっているわけでありますから、日本といたしましても、宇宙の面から、宇宙のアクティビティーから地球環境問題を考えようという一つの共同の場を創設し、共同研究していくということについての提案と、それからその場づくりへの取り組み、こういうことを進めてみてはいかがだろうかということを申し上げたわけであります。

 これについての見解をまずお問いしたいと思います。

 それからもう一点御提案は、地球温暖化現象が異常気象を引き起こし、これが甚大な被害を地球上に起こしているというわけでありますが、その問題の最も大きな被害がどういう形で出ているかといえば、私は、広大な地域が乾燥化し、今まで植生があったところが砂漠化しているという問題、そしてそれと逆に、雨が降ると豪雨が降って、その豪雨に伴う洪水被害、これが人類社会に大きな影響を及ぼしていっているということを考えましたときに、気象現象というのは基本的に海流と気流によって起こっているということがよく指摘されているわけであります。

 流れというのは御存じのとおりシンギュラーポイントがあるんですね。この一点にエネルギーを入れれば流れが変わるという可能性があるということを考えれば、我々が気象をコントロールする可能性というのは十分にあり得るわけでありまして、それを通して、乾燥地帯には雨を降らせ、そして豪雨になりそうな雲塊がやってきたときには、陸上に上がる前に雨を降らせてしまう、こういうことができるならば、大きな被害を軽減することが可能になってくるわけであります。

 この気象、特に人工降雨という発想に立つ気象コントロールの問題ですね、これに取り組みを行う形でこの地球温暖化問題への回答を与えてみる努力をしてはどうかと考える点があるわけでありますが、この点も、大臣の所見、いかがでございましょうか。

鴨下国務大臣 まさに小野先生の御専門でありますけれども、宇宙の分野から、例えば地球環境にどういうような形で貢献ができるだろうか、こういうようなことは私たちも考えているわけですが、その中で最も今現実的なのは、例えば地球環境をモニタリングすることを宇宙空間からしていく。

 こういうようなことで、環境省は、衛星から地球の温室効果ガスの濃度を観測する温室効果ガス観測技術衛星、GOSATといいますが、これに搭載するセンサーにつきまして、今、宇宙航空研究開発機構と国立環境研究所と共同開発しておりまして、来年度中に打ち上げを目指しているところであります。

 また、もう一つは、途上国における森林減少に伴う二酸化炭素の排出、これをコントロールする、こういうような意味においては、環境省は、人工衛星のデータを活用する熱帯林のモニタリングの手法について今調査研究をしているということでありまして、先生おっしゃるように、さまざまな、宇宙から地球を眺めるというようなことにおいて的確にデータをきちんと把握する、そして現状を見る、こういうことについては、先生おっしゃるような技術をさらに促進していくというのは極めて重要なことだろうというふうに思います。

 また加えて、例えば地球環境温暖化が進んでいくと、あるところは干ばつに、あるところは豪雨に、こういうようなことで極端になってくる、これをコントロールする方法を研究せよ、こういうふうなお話でありますけれども、私も、そういう意味においては、具体的に言えば、例えば人工降雨、降雪に対する総合的な研究、こういうものは推進するべきだというふうには思いますが、反面、小野先生冒頭におっしゃっていたように、自然と調和していくという意味において、果たして人工的にそういう雲あるいは降雨をどこまでコントロールするのがいいのだろうかどうかというようなことについても十分にアセスメントしながら進めませんと、思わぬしっぺ返しがまた別のところに出てくるというようなこともあるのかもわかりません。

 ただ、そういう技術をある意味で集積していくということは重要でありますので、今後とも、これは環境省だけではできない仕事でありますけれども、各省庁と調整をしながら検討を進めていく、こういうようなことを申し上げておきたいと思います。

小野(晋)委員 大臣の言われるしっぺ返しの話というのはよくわかるのでありますが、地球が病気になれば、病気になった人に医療行為を行うのはある意味で当然のことかと思います。ですから、どこまでやれるかという議論はいろいろあると思いますが、ぜひこの点も御検討をお願いしたいと思います。

 最後の質問になろうかと思います。

 心理の問題をやはり大臣に対しては行っておきたいと思うんですね。

 私は昭和三十年の生まれ、当時は高度成長時代の真っただ中に少年期を過ごしました。工場から上がる煙を見ながら、みんながこれが発展の象徴だと語ったんですね。ところが、私が高校、大学のころ、昭和四十年代後半以降になりますと、これは、公害の原点がここにある、人々を傷つける存在だと。

 全く同じ工場から上がっている同じ煙が、あるときは発展の象徴として人々に喜びを与え、全く同じものが次の段階では人々を傷つける悪の象徴になる。人々の心の受け取り方によって随分その姿が違うものになってしまうということを感じたわけであります。

 私は、環境問題には非常に大きくこういう要素が含まれていると思います。ですから、心理的な側面を十分に考慮していただいて、あいまいな部分があるからそこに想像が加わって大げさな受け取り方が起こるわけでありますから、できる限り適切な情報を流していきながら、しかも受けとめ方を十分に考慮された環境行政、これが私は必須のものだと思っている次第でありまして、大臣の御所見をお伺いいたします。

鴨下国務大臣 小野先生おっしゃるように、危機感を余りあおり過ぎるというのは、例えば子供たちに無用な混乱を与えるということにもなりかねませんし、しかし、地球環境については皆さんで行動していただかなければいけないわけで、そういう意味において、適切な、いわば科学的な知見にのっとった客観的なデータをきちんとお示ししながら、しかし着実に歩を進めていく、こういうようなことが重要だというふうに思っておりますので、そのことについては十分にこういうさまざまな状況を配慮しながら前に進めたいと思います。

小野(晋)委員 鴨下大臣初めとして環境省の皆さん、非常にこれから重要な仕事になってくると思います。皆さんの御活躍を心からお祈りさせていただいて、質問を終えます。

小島委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。

 民主党を代表いたしまして、鴨下大臣、また環境省の皆さんに御質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、いよいよ来年は環境をテーマとしたサミットが我が国で初めて開かれる、こういう大変世界的な注目を浴びる大事な時期に大臣に就任されたという責任は重く感じていらっしゃると思いますし、また先日、この委員会で大臣から抱負を聞かせていただきました。我々も大いに期待しているところであります。

 そうした立場で、来年の環境サミットで、日本だからこそこういうメッセージが出てくるんだ、二十一世紀の世界じゅうの国が期待しているこの環境サミットに、この日本からどういうメッセージを発信しようとされているのか。いろいろな御抱負はおありだろうと思いますけれども、とりあえず三つに限ってどういうメッセージを発信しようとされているのか、それをお聞かせいただけませんでしょうか。

鴨下国務大臣 もちろん、今回の洞爺湖サミットの主要な議題には、地球温暖化というようなことを中心とした、いわゆる環境問題が最も重要な柱の一つになると思います。

 そういう中で、私どもは、ハイリゲンダム・サミット等でこれまでも提案してまいりましたけれども、例えて言えば、地球温暖化の問題、そして生物多様性の問題、さらには、これは特に途上国との連携でありますけれども、スリーRを推進していく、こういうような三分野について、世界の中で我々は、日本という国が貢献したい、こういうふうに思っておりまして、これを中心にメッセージを発信していきたい、こういうふうに考えているところであります。

岩國委員 今の御答弁ですけれども、そういったことはもういろいろな方がそういう表現を使って話されていることでありまして、やはり日本だから、そしてこういう時期だからこそ、こういう言葉が、こういう表現が出てくるんだという、新鮮なインパクトを持ったメッセージをぜひ用意していただきたいと思うんです。

 日本という国は、そういう自然と共生する、山川草木ことごとく仏性あり、大乗仏教の考え方でもありますし、仮に宗教にこだわらなくても、ごく素朴な自然の中から、山にも、川にも、木にも、そして石にも、すべてのものにそういう仏性がある、精神がある、生命が宿っているというのはごく自然な日本の、日本だけではありませんけれども、そういう日本で開かれるからこそ、自然との共生ということを大きなメッセージとして世界じゅうに打ち出すべきではないかと私は思うんです。

 私もいろいろなところで、海外で講演し、つい今月もスイスで、また先週は韓国の学会でも講演してまいりました。いずれも環境がテーマになっております。そういう中で、また外国の大学でも、私は一部の大学で教えておりますけれども、最近はこういう哲学が必要ではないかと思う。

 二十世紀までの資本主義、そこで優秀な経営者と言われるのは、みんな三つの目標を持っていたんです。私もそういう経済の世界に三十年おりました。一つは、よい商品、よいサービスを顧客に提供してお客さんに喜ばれること。二番目に、社員の給料、職場を安定させること。三番目、最後ですけれども、株主に十分な配当ができること。この三つを目標とし、この三つを達成すればすべて優秀な経営者と言われてきたんです。

 しかし、二十一世紀の経営者はそれだけでは足りないと思うんです。企業を支えるのはその三者だけか、私はそうではないと思うんです。そこに地球という最大のステークホルダー、そしてシェアホルダーがいるのではないか。地球という環境、そして資源をいろいろな企業はどんどん使って二十世紀までの資本主義が発展してきたんです。その結果はどうですか。先ほど小野委員もおっしゃったように、地球が病気になっている、地球が怒っている、その現象が至るところです。年々ひどくなっていきます。

 地球が今や我々の配当を必要としているんじゃないか。地球にこそ配当を払え、ペイ・ディビデンド・ツー・ジ・アースということを私はビジネススクールでも教えてきました。地球にも配当を払う、そういう哲学が今必要になってきている。そういう発想なり表現というものをぜひこの資本主義国の日本の中で、そして先進国の一つと言われている日本から、自然との共生、そういうごく素朴な思想に裏づけられて、そして世界じゅうの企業に、地球にも配当を支払え、そういう時代が来たということを私はぜひ打ち出していただきたい、そのように思います。

 大臣の御意見があれば、ちょっと聞かせていただきたいと思います。

鴨下国務大臣 今お話しになったことは私も共感するわけでありますし、先ほど小野委員にも答弁させていただきましたが、やはり日本でなければ提案できないことというのはあるんだろうと思います。

 おっしゃるように、自然と日本は共生をして、その中で、ある意味で自然と人間がウイン・ウインの関係であったんだろうと思いますけれども、西洋文化の中ではむしろ、自然を克服して、木を切り倒して、そして石炭をとり、石油を掘り、こういうようなことがいわばフロンティアだったんだろうというふうに思っておりまして、微妙にその感覚というのは我々と違う部分があるんだろうと思います。

 ですから、今、岩國議員がおっしゃるように、日本がこのサミットの中でどういう提案ができるかというようなことは、きょうの先生方の御意見も踏まえまして我々なりに十分に検討して、日本が提案して、そして世界の中で御理解いただけるようなものをつくっていきたいというふうに、ある意味で野心的に考えております。

岩國委員 そういう新しい発想というメッセージと、そしてもう一つは、メッセージだけではなくて、具体的に日本はこういう行動プランを持っているんだ、美しい星の国といったような表現もありましたけれども、具体的に、一つ一つ日本でできること、来年の新しい年度からもう始めておるとか、あるいは既に制度を設計したとか、新しく法律をつくったとかいうことが、よその国に対して、言葉だけではなくて、発想も考え方も大切ですけれども、具体的な行動プランの中で、よその国がやらないようなことを日本は始めたなと思われるようなこともぜひ皆さんと一緒に検討したいし、大臣のそういうリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 福田総理にも私が毎週書いておりますものを読んでいただいておりましたけれども、あるとき福田総理から、総理になられる前の話ですけれども、私の書いたものの中に、この環境問題で、世界の中で日本の役割は地球のドクターとなることだと。

 今病気になっている、そういう地球が病んでいるときに、日本の持っている自然との共生という哲学、それを踏まえて、そして日本の持っている技術、人材、ある程度の資金力、日本にとって一番のはまり役、適役は、どこかの戦争にすぐに鉄砲を持って出かけていくということではなくて、戦争のときには一番出足は悪くても、戦争のないときに一番汗をかいているのはどの国なんだということを示すような、そういう地球のドクターとしての具体的な行動プランというものを打ち出すことではないかと私は思います。

 それに関連して、私はお伺いしたいことがありますが、今までの世界地図、いろいろな不正確なことがあります。日本がイニシアチブを持って、今、グローバルマップ、地球地図というものが完成しつつあります。既に百五十七カ国が参加し、九五%の地球の表面が覆われようとしています。

 手前事になりますけれども、これは出雲市が、一九九四年、今から十三年前に、出雲市に中国、ロシア、韓国、アメリカ、EU、代表者が集まって、出雲宣言というのをつくりました。それに基づいて、日本が中心になって、国連が応援して、そして十三年かかって地球表面の九五%が、これからの環境対策、森があると思ったところがいつの間にかなくなっている、湖の位置が変わっている、川がなくなっている、衛星からそれを正確に読み取って、そしてこれからの環境対策に役立てていこう、そういうことについて、私は、大臣あるいは総理が国際会議の場で今までそういう日本の行動あるいは実行というものを説明されたことがおありかどうか、お伺いしたいと思います。

鴨下国務大臣 地球地図、こういうようなことにつきましては、一九九二年に建設省が提唱して開始したプロジェクトだ、こういうふうに承っておるわけでありますけれども、ある意味で、地球の全陸域において、標高だとか植生だとか、それから土地の利用状況、こういうようなことを八項目にわたってデジタル地理情報として開示してある、こういうことであるというふうに了解しているわけであります。

 環境省として、これについて、植生や土地利用などの地理情報を提供してくださっている、こういうようなことには着目をしてまいりたいというふうに思っておりますけれども、多分、今までの状況においては、委員が御提案いただいた、今我々は認識を新たにしたというようなことが現実だろうというふうに思いますので、この有用性について国際的にもさらに認識が高まっていくように我々も努めてまいりたい、こういうふうに思います。

岩國委員 決して、出雲が始めたから、そういったことではありませんけれども、そういう古代文化の発祥の地の一つでもあるところから、自然との共生、いろいろな考え方が綿々として流れてきて、そういうところに世界の各国は、中国、ロシアでさえも参加し、そして日本がこういうことにイニシアチブをとることは少ないわけですけれども、幸い世界じゅうのほとんどの国が参加してやっていることですから、私は、大いにこういうことについては日本自身の実績の一つとして認識をさせるということも大切ではないかと思います。

 もう一つお伺いしたいことがありますが、私が市長に就任してから一番最初にやった仕事の中に、木のお医者さんをつくることでした。

 人間にはお医者さんがいる、これは大臣には釈迦に説法ですけれども。動物には獣医さんがいる。木にも命がある。木にも命がありながら、その木にだけはお医者さんがいない、私はそれは間違いだと思いました。

 生命のあるものにはすべてお医者さんが要る、そういう思いで樹医制度を発足させ、最初の年はわずか十人で、しかし、今、林野庁、農水省がそれを応援して千五百人の木のお医者さんが、木のドクターが日本じゅうにいます。恐らく世界の国の中で木のお医者さんを持っているのは日本だけだろうと思います。

 これこそ、日本がそういうことを世界に呼びかけて、自衛隊が出ていくのは遅くても、木を守る樹医部隊は一番最初にどこかに行って、そして、緑の地球を守っているのは日本の樹医部隊ではないか、こういうこともぜひ認識を持っていただいて、いろいろな、今週もまた国際会議にお出かけになるようですけれども、そういう既にやっていることは、これからやることも大切ですけれども、既にやっていることも正当に評価していただいて、しかも国の予算をつけてやっていることさえも外国にそれも十分にPRもしていないということでは私はおかしいと思うんです。

 これが五年、六年たってどこの国もやってからではなくて、環境サミットそして国連でさえも、森元総理が演説をされましたけれども、日本に注目し、日本の言葉に期待している、そういうときに、この地球地図にしても樹医制度にしても、もっともっと私は環境省としてもこれを利用していくべきではないかと思うんです。

 それについて、この樹医制度について御意見を伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 岩國先生はいつも極めて有効な提案をしていただくわけでありますけれども、私も大臣になる前から樹医というようなことについては注目していました。そして、数百年の樹齢の木が弱ってきたところを手入れして、そしてうろのところに何か詰め物をしたりしてよみがえる木があるというようなことを報道等でもよく知っておりましたので、そういうような存在は知っておりましたけれども、これをいわば環境行政の中にどう結びつけていくかというようなことについては、今、先生から御提案いただきました。

 そして、ある意味で我々は、木を切るとか利用するとかというようなことについては今までいろいろと工夫はしてきましたけれども、大事にして、そして弱った木をよみがえらせるというようなことについての感覚というのは、多分世界の中でも日本が唯一なのかもわかりません。

 ですから、そういう文化といいますか、そういう精神というか、そういうものを多くの方々に知ってもらうというのは、日本がどれだけ木を大事にしているかというある種の象徴的なことにもなるんだろうというふうに思いますので、いろいろな意味で、これは私も、国際会議に出ていくときに、こういうようなことがあるんだというようなことも御紹介をしたいというふうに思っておりますし、きょうは大変いい御提案をいただいたというふうに考えております。

岩國委員 こうしたいろいろな環境政策を進めていく上で必要なのは金と教育だと思うんですね。金の面についても教育の面についても後ほどお伺いしたいと思いますけれども、そうした例えば身の回りに木のお医者さんがいるということを子供たちに教えるだけで、子供たちにはすぐわかるんです。人間のお医者さんと同じように木にもお医者さんがいるんだ、木にお医者さんがいるということは木にも命というものがあるんだということ、子供たちでさえもすぐにわかるんです。

 出雲の子供たちは、木に命があるということを知っています。毎年夏休みになると木の塗り絵ノートをもらって、どこでこの木を見つけたか、そして塗り絵をして、木の名前を覚えて、そして六十人の木の友達をつくって夏休みが終わるんです。木を友達にする、木にも命がある、木にもお医者さんがいる、身の回りの木にも緑にも命がある、私は、こういう素朴な原点から環境教育というのは始めるべきだと思うんです。

 そういう点から、この環境教育について、どの程度環境省は文科省とすり合わせをしていらっしゃるのか。

 かつての国語の教科書は、以前私は本会議でも紹介いたしましたけれども、小学校一年生の読み方の第一ページ目を「サイタ サイタ サクラガサイタ」、こんなことで始めておったんですね。要するに、木に花が咲く、その喜び、こういうすばらしい環境の国に生まれた喜びを小学校一年生の子供に四月に教えたんです。

 今の教科書は桜が出てきますか。竹が出てきますか。桜も竹もどこにも出てこない。新幹線が出てきたり自動車が出てきたり、排気ガスを出すようなものばかりが出てきています。排気ガスを吸収するようなものから始まっておらないんです。そういう教科書をごらんになったことがあるかどうか。

 十年間に、この環境ということが叫ばれてから、環境教育というものが教科書の中に、学校教育の中にどのように着実に反映されてきているのか。大臣としての評価をお伺いしたいと思います。

鴨下国務大臣 今御紹介いただいたように、私たちのころには、まさに自然との関係性を一番最初にうたった、こういうようなことが教科書のテーマでありましたけれども、だんだんと自然と子供たちの間に少し距離が出てきて、多分、今の子供たちはなかなかすぐに環境あるいは自然というようなことに共感ができない、こういうようなことになったのは、場合によると、教育の部分があるのかもわかりません。

 そして、そういうようなことについては、これは環境省の中でも、私も、ついせんだって安田講堂で、子供たち二百五十人ぐらい集まったところで、環境の重要性あるいは地球温暖化というのはどういうことかというのを講義させていただきましたけれども、できるだけ環境省としてもやっていきたい。

 ただ、これはもう、所掌の範囲を超える部分については文科省にも御協力いただかなければいけないわけで、せんだって七大臣会合というのが開かれまして、その中で、私たちは、環境の問題については、例えば文部科学省それから厚生労働省、こういうようなところにも御協力をお願いしたいということを環境大臣として申し上げたところでありますけれども、先生御指摘のように、これからは、子供たちにいかに自然が大事かということをわかってもらうか、あるいは触れてもらうか、そして自分たちもその中で生かされているんだというような意識を持ってもらうか、こういうようなことが極めて重要なんだろうというふうに思います。

西尾政府参考人 大臣の御説明したところに尽きておりますけれども、私ども、学習指導要領といった観点でいえば、平成元年に環境保全、資源・エネルギーというのが大きく取り上げられるということになりましたし、その後、平成十年、平成十一年の学習指導要領の中でも環境の内容の拡充が図られた、それに従って教育がされていると思いますし、それから総合的な学習の時間というのは非常に環境ということで活用されておる、こういうことでございます。

 ただ、今、先般、教育基本法でも、生命をとうとび、自然を大切にして、環境の保全に寄与する態度を養うということも書いていただきました。より環境という面ではどういう教育をしてどうやっていくか。今のところ、理科の教科書にこう書いてあります、社会の教科書にこう書いてあります、こういう状態でございまして、全体として一体どうやっていけばいいんだろうか、そういうねらいというものもしっかりさせてこれから充実させていっていただかなければいかぬ。

 これにつきましては、文科省等の協力を得て、来年の予算の中でもしっかりとやっていきたい、そういうふうに思っております。

岩國委員 文科省も一生懸命取り組むべきことだと思いますけれども、環境省ももっと文科省の方にいろいろなリクエストを出していただいて、環境政策というものを担うのはすべて人なんですね。人の教育がきちっとしていない国には環境政策を実行できるはずがないんです。ですから、出雲市が素朴な形で始めたように、木にも命がある、すべてのものに命がある、子供たちにそれを教える、そこから始めています。同じようなことを学校教育の中でぜひ徹底していただきたいと思います。

 また、そういう森林を守る、木を守るということからいえば、それが地球のドクター、先ほど福田総理のお話を申し上げましたけれども、福田総理は私のを読んでいただいて、この地球のドクターという表現、とてもわかりやすくておもしろいね、そういうコメントをいただいたことがあります。

 ぜひ鴨下大臣、私もドクターの一人ですと自己紹介をされて、そして、内閣そのものが、日本という国が丸ごと地球の中のドクターになれるような方向に、私は、日本は努力すべきではないかと思います。

 次に、また木にこだわるようですけれども、私は木が好きなものですから。資料の一をごらんいただきたいと思います。

 資料の一は、京都議定書運用ルールに基づく森林のCO2吸収量とその評価額、これを県別に見てみました。今、内閣ではそうしたふるさと納税という発想もあるようですけれども、ふるさとのほとんどは、山林が多くて、そして工場が少ないところ。そして、そういうところは、収入が少ない、貧乏な県だと、みんな寂しい思いをしています。

 しかし、そのいろいろな寂しい県の中で一番活躍をしているのは山です。山は一年三百六十五日、土曜日、日曜日なしに一年じゅうCO2を吸収して、そしてCO2を排出している県のために奉仕しているわけです。県別のこのばらつき、これを計算してみました、いろいろな環境省、農水省からのデータをいただいて。これを見て、どの県からどの県にそういう森林交付税を支払うか。私の表現で言いますと、山に給料を払うべきだと思うんです。

 県庁の役人は、給料をもらって土曜日、日曜日は休んでいます。しかし、日本の山は、土曜日、日曜日、休みなしに働き続けているんです。その山にこそ感謝と給料を払うべきだと思うんです。

 山に給料を払え、森林交付金というもの、そして、自分たちのあの大きな山が給料をもらっているんだ、そう思えば、いろいろな雇用の場もそこから広げてくるでしょう。山を大切にする。山を大切にすることが山が受け取る給料を確保することにもつながります。

 私は、地方の活性化のためにも、日本の緑を守るためにも、環境税という大きな構想もあるでしょうけれども、ぜひこうした県別の、CO2をたくさん出しているところと一生懸命吸っているところ、この不公平というものをこういう新しい制度で、そして日本じゅうの人に山を見るたびに感謝の念がわいてくるような、そういう心と金とが一致した政策というものが必要ではないかと思います。御所見をお願いします。

鴨下国務大臣 発想としてはわかるところもあるんですが、それでは現実にどうしていこうかというようなことについては、多分いろいろと検討しないといけないことが出てくるんだというふうに思います。

 今まさに、森林の吸収量、こういうようなことについては、これは金額換算について、例えば森林経営から生まれる吸収量を対象にした排出量というようなことの取引が行われているというような実態はないわけでありますので、なかなか今すぐに現実的に、ではどの程度交付税をどうするかという話というのは難しいんだろうというふうに思いますけれども、先生おっしゃるように、森を守るというようなことにおいては、まことにそのとおりでありますので、今のところは林野庁と連携をして、吸収源の確実な確保、こういうようなことに努めてまいりたいというふうに思っておりますけれども、よりそれを意識してもらうという意味においては、先生おっしゃるようなことも今後検討をするということについては、多分、これは各自治体あるいは林野をつかさどっている当局、こういうようなところと十分ないろいろな検討が必要なんだろうというふうに思います。

岩國委員 私は、森元総理と当時お話ししたこともあります。歴代の総理の中で、お名前にきへんを使った方はたくさんいらっしゃる、森さん、あなたは名字に木という字を三つも使っていらっしゃる、その割には木に対する気遣いが足りないんじゃないかと。私は、木を大切に、森を大切に、それをずっと出雲市長のころから言っているんですから。

 そういった点からも、ぜひ、森林を守るということに対してもっと、難しいからもうここであきらめるということではなくて、地球のドクターを目指すんだったらそこまでやるべきだ、私はそのように思います。

 時間がなくなりましたが、最後に一問だけ。

 自動販売機。日本という国は自動販売機が多過ぎる。恐らく、人口当たり一番多い国じゃないかと思います。自動販売機が使っている電力、これは原発一基分に相当します。

 この自販機を全部なくせというわけではありません。しかし、その中でも、特に問題はお酒の自販機。出雲市はお酒の自販機を全部撤去しました。一九九一年にWHOから、酒の自販機を撤去しなさいと日本は警告を受けている。それに対して返事もしていないんじゃないですか。それからもう既に十六年を経過しています。出雲市はWHOの警告の前に撤去しました。

 なぜ日本はそれに対して返事もできないのか。対応もできないのか。お酒を機械で売らせるということはおかしいということはおわかりでしょう。これについて、大臣のお考えを聞かせてください。

鴨下国務大臣 自動販売機につきましては、ある意味で、夜まで、終夜電気がついているということについて、あるいは、同じ清涼飲料水あるいはアルコール飲料が競うように並んでいるというようなことについては、私自身は多少違和感は感じております。

 加えて、もともと医者でありますから、イージーにアルコールが買えるというような状況が果たしていいのかどうかということについても多少の疑問は感じているというのが私の所感であります。

岩國委員 時間が来ましたので質問を終わります。ありがとうございました。

小島委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 大臣にまず質問させていただきたいと思いますが、前の大臣のとき、そして通常国会のときに、環境省は、さまざまなマスコミからある一点でたたかれました。テレビや新聞などでも報道されたように、他の省庁の広報予算は当然政治的流用などはなく、タレントなどを使って、政治的にも中立に予算が執行されていたわけでございますが、環境省の広報予算だけは特定政党の政治家ばかりをどんどんと使った。中立的なタレントを使う方が、そして国民に親近感のあるタレントを使う方がはるかに広報効果があるにもかかわらず、他の省庁からは、環境省の予算だけは特定政党の選挙予算みたいなものだなどと陰口をたたかれる始末でした。

 私は大臣に期待しています。新しい環境大臣はきっと、環境省の広報予算は、特定政党の宣伝などに利用されることなく、結果的に中立に使用するべきだと思うんですが、大臣はどのように思われますでしょうか。

鴨下国務大臣 環境省としましては、広告に関する政治的中立性を保つことに努めておりますが、今後とも、特定の政党や候補者を支持する、あるいは、これらに反対することを目的としているとの誤解を与えないよう配慮をし、政治的中立性を欠くことがないように一層配慮することが必要と考えております。

 したがいまして、広告に関する出演者については、人物を使用しない、または、人物を使用する場合には著名なタレントなどを使用する広告とする、こういうようなことにいたします。

村井委員 環境大臣の英断、本当にうれしく思います。そして、すばらしいと思うんです。

 一応確認しますが、著名なタレントなどを使うということを言っておられるわけですが、その著名なタレントというのは、例えば参議院の比例区などに立候補しておられるような人ではないと思ってよろしいわけですね。

鴨下国務大臣 今申し上げましたように、著名なタレントというのは、本来の環境省のキャンペーンがより国民に御理解いただけるためのある意味でタレントでありますから、先生の御心配はないというふうに思います。

村井委員 ありがとうございました。

 これからは政治的中立性について、私ども民主党としても安心をさせていただきました。もちろん私ら民主党が政権をとっても、その辺は政治的中立性を保っていくべきだと思っております。

 さて、次の問題に入らせていただきたいと思うんですが、民主党の、次の内閣環境部門会議に環境省から資料を提出していただきました。内容は、天下りのあっせん状況と天下り団体への金銭交付状況、わたりの状況、そして随意契約の状況についてです。ペーパーとしてはいただいているんですが、この環境委員会でも一応確認をさせていただきたいと思います。

 環境省が天下りのあっせんをしたのは、今回、ことしは課長級以上の人が七人退職をされましたが、ことしの分、あっせん人数はゼロ人だった、一人もあっせんしなかったということでよろしいでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の資料、民主党の環境部門会議に提出させていただいた資料でございます。

 御指摘のとおり、平成十七年の勧奨退職人数が七人、平均年齢五十六歳、それに当たりまして、再就職あっせんの現状といたしましては、私どもが組織的にあっせんしたものではないというふうに返答をさせていただいております。そのとおりでございます。

村井委員 続きまして、過去五年間で天下りのあっせんをされたことはありますでしょうか。どうでしょうか。

小林政府参考人 過去五年間ということになりますと、私ども、管理職以上ですとたしか二十一人ぐらいだと思いますけれども、あっせんをしておりません。

村井委員 過去五年間も天下りのあっせんがゼロだったというふうに今お話しいただいたんですが、天下り人材バンクをつくるときに安倍さんが言っておられたことは、今各省庁の天下りあっせんが大変だから、だから天下り人材バンクをつくらなければならないということだったんですが、ちょっとその辺は、全くゼロだったということについては少し疑問に思うんですが、とりあえず、この辺はここまでにします。

 では、もう一つペーパーをいただきました。ことし課長級以上の人が七人退職をされておられます。国連大学高等研究所に行かれた方、富士急に行かれた方、地球環境戦略研究機関に行かれた方、国民公園協会に行かれた方、理容師美容師試験研修センター、道路緑化保全協会、産業廃棄物処理事業振興財団と七カ所に行っておられますが、この中で一カ所でも環境省からの補助金などを入れている団体はございますでしょうか。どうでしょうか。

小林政府参考人 補助金を少し広く解させていただきまして、恐らく御指摘の点は、例えば契約とか請負とかそういうことも含めてだと思いますが、そうした団体はございます。例えば、今御指摘ありました中では、地球環境戦略研究機関といったようなことですと委託研究をお願いしてございます。また、国民公園協会というようなことでございますと、新宿御苑とか京都御苑とか、ちょうど皇居の周り等の国民公園でございますが、その管理の委託契約をしてございます。

 それ以外は少し、環境省の所管でないものもございますけれども、そういったところで、幾つかについては環境省と金銭的な関係がある、こういうことでございます。

村井委員 事実関係は以上のようにお話ししていただいたのですが、大臣の所感をお聞きしてもよろしいでしょうか。

 今おっしゃられたとおり、天下りのあっせんはなかった。天下りのあっせんはなかったんですが、七人のうち、例えば二カ所、環境省から委託を受けている地球環境戦略研究機関や国民公園協会などにそのまま、退職して、あっせん的天下りではないんですが、そこへ就職されるということについては、大臣はどのように思われますでしょうか。

鴨下国務大臣 原則的に、癒着的な天下り、こういうようなものは厳に慎まなければいけないと思います。

 ただ、環境省の中には極めて専門的な方がいまして、そういうような人たちがそれぞれの専門機関で自分の能力を発揮する、こういうようなことと、いわば補助金等がそこに交付されているというようなことがたまたま一致するというようなこともあるのかもわかりませんけれども、それは十分に公開して、そして、世論も含めて政治も含めて、皆さんが納得いくような形での再就職、こういうようなことであれば、これは私はある意味でいたし方がないし、むしろ、その能力を生かすというようなことについては、大いに、そういうような場合はあってもしかるべきだというふうに思っております。

 ただ、先生おっしゃるように、環境省は、そういうところでいうと、権力的にあるいは資金的に、天下りをあっせんしてというようなことはなかなか現実的にはないわけでありますけれども、これからもそういうような疑いを持たれるようなことは厳にないように私も努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

村井委員 であるならば、きょうは今すぐ、細かい話になるので、全部お答えいただかなくて結構なんですが、少なくても過去五年間、環境省で課長もしくは企画官以上だった方が次に就職された場所、二十一カ所ぐらいあると思うんですが、二十一カ所のうち何カ所が環境省から仕事の委託を受けられているところなのか、そして、それぞれ金銭は幾らぐらいずつお支払いしているんでしょうか。どんなものでしょうか。

小林政府参考人 二十一人というのは過去五年間でございますが、今手元には、かねて退職をいたしまして在籍している人がいる法人ということ全体の数字だけは持ってございますので、それについてお答えをさせていただきます。

 まず、そもそも契約全体の中で競争性のない随意契約というのが、平成十七年度、全体で六百四十八件、百七十三億円ということでございます。平成十八年度におきましては、御案内のとおり、契約の改革ということでございまして、こういった競争性を持ち込むということになりまして、全体といたしましては、競争性のない随意契約は三百十二件、百二十一億ということで、件数ベースで見ますと五〇%以上削減をした、こういうことではございます。

 さらにそれを分母ということで見てみますと、平成十八年度現在におきまして、環境省OBが常勤役員として再就職している公益法人等との間で締結をした随意契約、こういうことになりますと、二十一ではございません、十六法人ということでございます。件数合計は六十七件、合計金額が二十三億円ということでございまして、よく議論になります競争性のない随意契約ということになりますと、そこに占める割合が二一%、金額では一九%ということでございます。

 ただ、ちなみに、これが大きいかどうかということでございまして、例えば、環境省OBが在職していない公益法人等と締結しました競争性のない随意契約ということを見ますと、合計で八十六件、五十一億円と、むしろそちらの方が金額が多くなっているという現状でございます。

 いずれにいたしましても、今大臣が答弁させていただきましたように、こういったことの疑いのないように、契約の改革といったことを引き続き続けてまいりたいというふうに考えてございます。

村井委員 そうしたら、今ちょうどお話しいただきました随意契約の話に移行したいんですが、こちらも事前に民主党の方には資料をいただいたんですが、平成十八年度になって、随意契約は六二%から四三%へ金額ベースで減らした、そして企画競争入札では三四%から四四%にふやしたというふうになっております。

 その上で、今後はさらに随意契約を減らして入札をふやしていくお考えはありますでしょうか。どうでしょうか。

小林政府参考人 先ほどは言葉足らずで申しわけございませんでしたけれども、十八年の六月以降、契約の改革というふうにしてございます。

 そういうことでございますので、先ほど御紹介いただいた数字、それはそのとおりでございますけれども、実は中途のものでございます。平成十八年の例えば四月、五月、六月に結びました契約、こういったものは競争性のない契約であったりするということで、こういったものも含めて見直しをしていきたいというふうに考えてございます。さらに数字は変わるということで御理解いただきたいと存じます。

村井委員 それでは、今、天下りそれから随意契約の話から次の話へと移らせていただきます。

 地球温暖化に対する国連ハイレベル会合が開かれました。世界各国の首脳が集まった。そして、洞爺湖サミットへ向けて、日本としても当然首相が出席すべきであったと思うんですが、残念ながら、諸事情がありまして、森元首相が出席されました。

 本来、首相が出席すべきだったと思うんですが、大臣はどのように考えられますでしょうか。

鴨下国務大臣 本年の九月二十四日に開催された国連気候変動に関するハイレベル会合、これは、もう先生おっしゃるように、各国の総理大臣が出席してというようなことでありましたけれども、御存じのように、我が国は森元総理が政府代表として御出席をいただいたわけでありますけれども、この中で、気候変動交渉を加速化される、適応、緩和、技術、資金、こういうようなことで極めて有効な議論ができた。

 特に、今回のハイレベル会合の一番の主眼は、潘事務総長が国連の枠組みの中でこのことを進めていこうという強い意思を示されたわけでありまして、日本にとってみれば、それは極めてありがたい話であるし、これから明年の洞爺湖サミットに向けて、国連のイニシアチブ、国連の枠組みの中で進めよう、その中にはもちろんアメリカも参加していただくし、インドも中国もブラジルも南アフリカもみんな参加していただくような、こういう枠組みをつくろうというようなことについての合意はこのハイレベル会合で行われたわけでありまして、総理が出なかった、出たということではなく、日本にとっては極めて実りの多い会合だった、こういうふうな認識をしております。

村井委員 その上で次の質問なんですが、この国連ハイレベル会合、洞爺湖サミットで本当に日本がリーダーシップをとるつもりがあるんだったら、当然、首相が日本も出なければならなかったと思いますし、また、このときに一つ問題が生じました。アメリカの方がなかなか出席していただくことができず、そのかわり、その直後に地球温暖化ガス主要排出国会議が開かれました。

 まず、この地球温暖化ガス主要排出国会議に対しての大臣の評価と、また、そういった状況の中で、そういったものにも首相が出席しないということで、洞爺湖サミットを控え、日本がリーダーシップをとっていけると本当に考えていますでしょうか。どうでしょうか。

鴨下国務大臣 日本は、京都議定書以来、世界の中で環境においては主要な役割を果たしていきたい、こういうようなことにおいては過去も今も変わっておりません。

 加えて、二十四日に開かれたいわゆる気候変動に関するハイレベル会合、これには米国はライス国務長官が出席をしまして、そして、その後に行われました主要経済国会合、これはMEMと言っていますが、それに、今度はアメリカがある意味で調整してこの会合を開かれたわけですけれども、これは、ハイレベル会合から数日を経て、多分、そこに参加してくださった首脳あるいは主要閣僚がこっちのMEMに出席してくれる、こういうスケジュール観で設定された、こういうふうに理解しています。

 その中で、我が国は高村外務大臣が御出席になりまして、そして、これはある意味で、アメリカが今まで、京都議定書から離脱した後に、今度は、次のポスト京都に向けてアメリカも参画しようという意思のあらわれだというふうに我々は理解しておりますので、このハイレベル会合、そしてその後のMEM、これはおのずとつながったもので、しかも、これはさらに先に、今度は十二月にはバリでのCOP13がありますから、そういうことに向けての一連の流れだというふうに思っておりまして、いずれの機会にも日本はそれなりに主要な役割を演じたい、こういうふうに考えているわけであります。

村井委員 次の、地球温暖化の話なんですが、国内で、先日メディアの方に出ていましたのは、民主党は、今、皆さんも御存じのとおり、CO2の見える化、カーボンディスクロージャー制度を強く訴えているわけですが、その一部として、環境省としても、電化製品の中の省エネ、つまり電気使用量などを記載してはどうかということが検討されているという記事が出ていました。実際に、そのことの是非、本当かどうかということが一点目。

 そして、私たち民主党は、それぞれの電化製品というものだけではなくて、家全体、家や工場全体の電気使用量の検針票の横にCO2の排出量などを記載していくべきだ、つまり、一個一個の電化製品ではなく、家トータルのCO2の排出量が見える方がはるかにこういった削減効果があるのではないかと考えているわけですが、大臣はどのように考えられますでしょうか。

南川政府参考人 技術的なことでございますので、お答えさせていただきます。

 まず、地球温暖化対策推進法でございます。これにつきましては、先ほどの七大臣会合の中で、鴨下大臣の方から、その見直しを行っているという旨を話をしたところでございます。その一環といたしまして、CO2排出量のいわゆる見える化ということを進めたいということでございます。

 これは、委員御指摘のとおり、一定規模以上の工場につきましては、この温暖化対策推進法の中で、既にCO2をどれだけ出しておるかということについての政府への報告を義務づけておりますし、政府としましても、既に第一回の報告が来ておりますので、できるだけ早い機会にその結果を発表したいと思っております。

 ただ、それに加えまして、例えば、製品ごとに、そもそもつくるのにどれだけCO2を使ったのか、あるいは、電気製品であれば、使えばどれだけCO2を出すのかとかいうことも課題でございます。それから、家庭におけるさまざまな活動によるCO2の排出量をどういうふうに把握するか、そういった形で、製品の購入、使用、あるいはいろいろな活動がCO2でわかるということをできるだけ制度にしていきたいと考えております。

 どこまで制度にできるかは今後の検討でございますけれども、やはり各人が、自分の行動がどういう形でCO2を出しているかということがよりわかるようにしていくことが理解を求めて対策を進める前提だということで、検討しているところでございます。

村井委員 大臣にお聞きしたいんですが、今、参考人の方から、そうやって検討していきたいということをいただいたわけですが、大臣自身の御意見を聞きたいと思うんですが、こういったCO2の見える化について、私たち民主党は、家全体でのCO2の排出量をしっかりとわかるようにするべきだと考えています。もちろん、環境省で一個一個の電化製品についてのCO2排出量を書くのは結構なんですが、その上で、例えば、電気の検針票の横にCO2の排出量を記載することはそれほど難しいことではありません、係数を掛け算すれば簡単に出せるわけなんですが、そういった、家全体でもCO2の見える化を進めるべきだと思うんですが、大臣は検討する気はありますか。どうですか。

鴨下国務大臣 見える化の話は、国民運動という意味において、あるいは業務・家庭部分の排出抑制という意味において、私は極めて重要なツールの一つだろうというふうに思います。そして、国民の皆さんが協力してくれなければ、ある意味で六%削減目標というのはなかなか難しいわけでありますから、そういう運動を進めるということは重要だというふうに思います。

 ただ、そのときに、では、法的にあるいは何らかの義務化をするというようなことまでやるかどうかというようなことについては、これはそれぞれ世論もあるでしょうし、いろいろな調整が必要なんだろうというふうに思います。

 ただ、自発的にそういうことをやっていただくということについては、私は大いに結構だというふうに思いますし、ぜひ国民の皆さんにも協力を呼びかけたいというふうに思います。

村井委員 自発的にやっていただくのは結構だとおっしゃられたんですが、その上で、電気使用量の横にCO2の排出量を掛け算して出すということ、それからガス使用量の横にガスから基づくCO2の排出量を記載してもらうということは、自発的にはなかなかできません。それはやはり、環境省の方から電力会社やガス会社に呼びかけなければできないと思うんですが、大臣はどのように考えられますか。

鴨下国務大臣 CO2削減に対して何が一番効果があるか、あるいは国民の皆様がどれが一番協力をしてくださるか、こういうようなことについて、例えば、省エネ家電を買っていただく、あるいは、村井委員がおっしゃるように、見える化で、家全体でそういうようなメーターをつける、さまざまな方法があるんだろうというふうに思いますけれども、その中の優先順位を、我々としては、ある意味で、費用対効果といいますか、そういうようなことを勘案して、一番効果があって、しかも皆さんの御協力をいただける、こういうようなことを一つ一つやっていく、こういうようなことなんだろうというふうに思います。

村井委員 大臣、この間のこれまでの環境委員会での議論を知っておられると思うので、当然、カーボンディスクロージャー制度をずっとこの間議論してきましたから御存じだと思うんですが、メーターをつけるわけではありません。これまでの電気使用量のメーターに、各電力会社ごとの一キロワット当たりのCO2排出量を掛け算さえすれば簡単に出るわけです。それだけすれば、全くほとんどコストがかからない上で簡単にCO2の排出量が見えるようになるわけなんですが、それを進めていくおつもりはありますか。

 それとも、各一個一個の家電製品のCO2排出量を計算する方がはるかに難しいのに、それでも最後、毎月毎月、電気の検針票で、何キロ使った、家全体というのは必ず見えているわけです、その横にCO2の排出量を書くだけなんですが、それでもコストはかかるとお考えですか。どうでしょうか。

鴨下国務大臣 環境省としての立場からいうと、先生おっしゃることは傾聴に値するわけでありますけれども、では、これを各電力会社に御協力をいただけるかどうかということについては、これはまた別の次元の話ですから、検討はさせていただきたいと思います。

村井委員 検討していただくということで、本当に一歩進んでありがたいと思うんです。

 次の話へ行きたいと思うんですが、さらにもっと一歩を進めれば、今、環境報告書はたくさん出ているんですが、これも前から議論しているとおり、みんなばらばらの基準になっているわけです。そして、しかも、記載の仕方も提出も任意になっている中で、有価証券報告書への記載を入れるだけで完全にすべて見える化になっていくわけなんですが、有価証券報告書への記載を検討する気はありますか。大臣、どうでしょうか。

西尾政府参考人 済みません、先回御指導いただいた件でございますので、その先のところの御説明をしたいと思います。

 有価証券報告書にCO2の排出量といったものをきちんと位置づけることはできないか、こういう御指導でございました。それにつきましては、これは、有価証券報告書に環境情報をどのように入れるかということにつきましては、金融の実態等についてやはり調査をする必要があるんだろうということでございまして、どのような環境情報をどのような形で提供するということは、これは、元来の有価証券報告書は投資家に向けたものでございますから、投資家のニーズにも即して、企業にとっても過度の負担にならないでやれるのかということについて、実態に即して把握することが必要だということでお答え申し上げました。

 私ども、必ずしもこの点、詳しくございませんので、その後、公認会計士協会の関係者とか投資顧問会社、いろいろな方にも聞きまして、どういうような調査をすると、例えば企業にアンケートを出すとか、どういうようなことをしたら対象とか範囲とか項目とか検討できるんだろうかというようなことを少し勉強してまいりまして、近く実地の調査にもかかりたいというふうに思っております。本年度内にもそういう実地の調査をまとめた上で、御指導いただきました点もいろいろと検討していきたいというふうに考えております。

村井委員 今でも各企業は環境報告書を出しているわけですから、その記載ルールを公平に、任意ではなく公平に統一化するだけで非常に難しくなくできるはずですので、ぜひ、今おっしゃられたように検討を進めていただければと思います。

 そして次に、CO2、これも前の大臣にも何度もお聞きしているんですが、新しい大臣の認識をお聞きしたいことがあります。

 CO2削減について、世界各国は長期目標を打ち出しています。世界各国は長期目標、中期目標を打ち出しているんですが、日本だけは、世界全体での長期目標には賛成したものの、残念ながら、国内の長期目標、中期目標、削減目標をまだ打ち出していません。新しい環境大臣は、日本国内のCO2削減、例えば五〇%削減や二〇%削減などという長期目標や中期目標を打ち出すつもりはありますか。どうでしょうか。

鴨下国務大臣 おっしゃることはよくわかるんですけれども、来年は、洞爺湖は我が国がホスト国であります。その中で、前回の京都議定書の反省というものも我々はいろいろと考えなければいけない。それはなぜかというと、アメリカが離脱したことです。

 ですから、我々が一番最初に、ある意味で実現可能ぎりぎりの高目の長期目標あるいは短中期目標を掲げることによって、逆にそういうところにコミットできないという国が出てくることも我々は恐れるわけで、安倍前総理がクールアース50で提案した三原則の中に、すべての国が入っていただける、そして加えて、京都議定書を超える、こういう枠組みを構築したいというのは、これは我々の至上命題であります。

 そういう中で、順次枠組みをつくり、そしてある意味で各国が逃げられないような状況をつくり、なおかつその中で我々はある意味で内々に準備を整えて、EUに劣らないような、こういう短中期あるいは長期目標を立てたいというふうに思っておりますけれども、まず最初は我々は調整役に徹して、そしてなおかつ全体を整える、こういうようなことが我々の一義的な目標だというふうに今考えております。

 先生のおっしゃることは、我々も準備をして、いずれのときにかは必ず、EUに劣らない、こういうような目標を立てたいというふうに思っております。

村井委員 そういう長期目標を早目に出していただければと思うんです。

 最後の質問をしたいと思います。

 日本経団連は今環境税に反対をしているようなんですが、先日マスコミで、経済同友会の桜井代表幹事が環境税の効用を記者会見されました。そしてまた、そのときに、排出権取引についても容認する発言をされたと報道されているわけですが、大臣はそれについてどのようにお考えでしょうか。

鴨下国務大臣 それぞれの経済団体がいろいろなことをおっしゃっているのは承知しております。そういう中で、私たちは環境省の立場ですから、もちろん、六%削減のためにはさまざまな行政ツールを使わなきゃいけない。それは法的なもの、あるいは税制、さらには国民の皆さんの協力、こういうようなことではあらゆる方法を動員しないといけないと思っています。そういう中で、先生がおっしゃるように、環境税あるいはキャップ・アンド・トレード、こういうようなものについても私たちは主張をしてまいりたいし、今回のこの暮れの税制論議についても、環境税はぜひということで訴えてまいりたいというふうに思っています。

 ただ、経済界の中にはいろいろな御意見もありますから、そういう意味でいうと、政府全体の中では、例えば中環審、産構審、こういうようなところでの総合的な御審議をいただいて結論が出てくるんだろうと思いますが、環境省としては、環境税については、ぜひお願いしたいというようなことは引き続き言い続けてまいります。

村井委員 どうもありがとうございました。

小島委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 大臣以下皆さんから適切なわかりやすい答弁をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 御承知のように、十月十三日でしたか、アル・ゴア前アメリカ副大統領と、そして気候変動に関する政府間パネル、IPCCがノーベル平和賞に輝きました。この評価については、それぞれ皆さんいろいろな思いをお持ちだと思いますけれども、それこそ、平和活動であるとか軍縮に貢献した方々、団体が受賞されてきた平和賞の範疇が大変拡大をされ、二〇〇四年のワンガリ・マータイさんの受賞に引き続き、環境をテーマに、環境分野での活動が認められての受賞だというふうに私も思い、大変評価を高くしているところでございます。

 何としてもこの温暖化の対策を急がなければ、そんなメッセージをこのノーベル賞委員会が世界に向けて発信したんだというふうに私自身は受けとめておりますが、大臣は、今回のノーベル平和賞をゴア氏、そしてIPCCが受賞したことについて、まず、どのように評価をされているのか、お答えをいただきたいと思います。

鴨下国務大臣 先生おっしゃるように、アル・ゴアさんあるいはIPCCがノーベル賞をとったということは、世界のトレンドが環境に非常に関心を持ち始めたというようなことの証左だろうというふうに思います。

 特に私は、アル・ゴアさんが平和賞をとられたというようなことについては、これは多分、地球温暖化の問題が、いずれのときにか、食料危機だとか水の問題だとか天災だとか、こういうようなものによって全体的に平和に対して脅威になる、こういうようなことをノーベル委員会はお考えになったんだろうというふうに私ながら考えているわけでありまして、環境問題で平和賞という趣旨は非常に重いというふうに思います。

 加えて、IPCCにつきましては、先ほどもお話ししましたけれども、数千人に及ぶ世界の地球物理学者初め多くの方々が集まって、いろいろな意見があるわけでありますけれども、その意見を集約して最終的にIPCCが受賞されたというようなことは、これは、いわば人為的な温室効果ガスが温暖化に影響を与えている、こういうようなことを疑いもなく証明したというようなことなんだろうというふうに思っておりまして、それぞれ、アル・ゴアさんとIPCC、その受賞の本意といいますか、それは、少し違っている二つの理由があるというふうに今理解しています。

田島(一)委員 御承知のように、二〇〇〇年のアメリカの大統領選挙で、アル・ゴア氏はブッシュ氏に小差で敗れました。その翌年には、ブッシュ新政権が京都議定書から離脱を表明し、そして議定書自体は最大のガス排出国であるアメリカを抜きにしてスタートした、そんな経緯もありました。

 もちろん、ゴア氏も、温暖化に関する主要な情報攪乱源の一つはブッシュ・チェイニー政権であると映画や著書でも述べているとおり、この手厳しい批判を私たちはしっかりと受けとめながら、今回の受賞というものを評価していかなければならない、そんなふうに思っております。

 いよいよこの十二月にはCOP13がスタートいたしますが、ちょうどその時期にノーベル平和賞の授賞式も行われる。何とも皮肉な、また世界に向けての大きな関心を呼び起こすきっかけが、この年末に行われるわけであります。

 そういったことからも、大臣には、このCOP13に向けてどのような姿勢で取り組もうとされているのか、この点についてぜひ聞かせていただきたいと思っております。

 冒頭、今度、あしたからですか、二十四、二十五とインドネシアでCOP13の閣僚級準備会合に出席をされるというふうに承っておるわけですけれども、日本政府がどのような姿勢で臨み、またどのような姿勢で今後取り組もうとしているのか、この点についてやはり確認をしておきたいと思います。

 これまで、マスコミ対応で記者会見を重ねていらっしゃる。その中で、十月五日、大臣の会見で、日本がどれだけのプレゼンスを示せるかこれから考えていきたいというようなことを述べていらっしゃり、ぜひこの会合の中での日本の存在感を示していきたいというふうに思っていらっしゃるというふうに受けとめたわけであります。

 このCOP13の中で日本の存在感を示すに、具体的にどのようなことを方法としてお考えなのか、お示しをいただけないでしょうか。

鴨下国務大臣 国会の御了解がいただければ、きょうの夜からボゴールに行ってまいりますけれども、十二月のCOP13ではどういうような形になるかというようなことのいわば準備会合が、ボゴールで、あした、あさってと開かれるわけです。

 その中で、私たちは、バリのCOP13でどんな次期枠組みを構成する要素や実現手段、こういうようなものが提案できるかというのをこの準備会合の中で今提案しようとしております。

 加えて、いわゆるバリ・ロードマップと言われるようなことが、先ほど九月の二十四日のハイレベル会合あるいはその後のMEMを含めて国連の枠組みの中で議論をしていこうというような流れはできてきたというふうに申し上げましたけれども、今委員おっしゃっているように、アメリカが離脱したら意味がないわけでありますから、そういうようなことを含めたロードマップをどう描き切れるかというのが、今回の、ある意味でバリまでの重要な問題だろうというふうに思っています。

 そういう中で、中国、インドも含めてすべての国が参加してもらえるような、そして、これは対話ではなく交渉のできる枠組みをどうつくるかというのが今回ボゴールに行く大きな目的の一つでもあるわけでありますから、そういうようなことで、一つ一つ、一歩一歩、目の前のハードルを越えていきながら、最終的に来年のサミットにしかるべき成果を上げるための着実な歩みをしていきたい、こういうふうに思っているところであります。

田島(一)委員 着実な歩みを示していきたい、そして交渉の枠組みをつくっていきたい、そのような思いは理解をするところであります。

 しかしながら、会見の中でのお答え、また今回の大臣の所信の中でも、国際的なリーダーシップを発揮していくとおっしゃっているかと思えば、会見の中では調整役に汗をかいていくというような、本当にリーダーシップであるとか存在感を示す覚悟がおありなのか疑問を、どうしてもやはり私どもはぬぐえないところがあります。

 リーダーシップ、存在感を示していくためには、先ほど村井委員の方も質問いたしましたけれども、日本としてやはり中長期目標をしっかりと掲げていくことが何よりも私は最優先すべきことではないかというふうに考えます。

 先日の参議院の予算委員会でも、民主党の福山哲郎参議院議員が質問をした折に、大臣の方は、いわゆるほかの国がいわば脱落するような目標を立てても意味がありませんというようなことをおっしゃったと議事録で拝見をいたしました。日本国内の総量削減目標を設定するわけですから、他国の動向を踏まえるとはしても、それにとらわれて弱腰の目標設定をしているようではおっしゃるリーダーシップや存在感を示すことには到底つながらないでしょうから、現実的にやはり目いっぱいの数値目標というものを設定していかなきゃいけないと私は思うんですね。

 お答えは結構ですけれども、私ども民主党は、それこそ二〇二〇年までに九〇年比の二〇%、それから二〇五〇年までには五〇%という中長期目標、削減目標を示しました。これを超える、もしくはこれを十分に満足していただくような中長期目標を設定していただかないことには、国際的なリーダーシップ、存在感を示すことにも当然ならないと思います。

 その点だけは、ぜひ肝に銘じていただいて、COP13ももちろんそうですし、今後の日本でのいわゆる温暖化対策に当たっていただきたい、このことを強く要望して、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 二〇〇七年、二〇〇八年は、ありとあらゆるテーマでの国際会議がメジロ押しであります。もちろんG8関係もそうですが、温暖化関係、そして生物多様性の関係やスリーRの関係など、それぞれの分野で国際会合がメジロ押しである中で、日本もいよいよ野生生物、生物多様性に関しては二〇一〇年のCOP10の日本開催誘致を閣議決定されたというニュースが流れてきているところであります。

 大臣所信の中でも、「自然と共生し持続的に発展する社会を目指し、私たち人間も地球という大きな生態系の一部であり、地球によって生かされているという認識のもとに、豊かな自然を次世代に引き継ぐ責任があります。」と述べられました。

 現在、今年度中に策定予定というふうに伺っている第三次の生物多様性国家戦略ですけれども、これがどのあたりまで今作業が進められているのか、非常に関心のあるところであります。国民的な関心を呼び起こしつつもその対策を幅広く展開していくと大変耳ざわりはいいんですが、一体この幅広い対策というのは何なのか、また具体的にどのような施策を盛り込もうとされているのか、この点について、私ども、どうしてもイメージがつかめません。どのようにお考えなのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。

櫻井政府参考人 第三次の生物多様性国家戦略の策定についてでございますが、本年四月に中央環境審議会に諮問をいたしまして、自然環境・野生生物合同部会に設置されました生物多様性国家戦略小委員会において、九月までに六回の審議を経て同戦略の案をまとめていただいたところでございます。

 現在は、その案に対しまして、十月十四日までの一カ月間実施しましたパブリックコメントの結果を整理中でございまして、今後、その結果も踏まえて、合同部会で改めて御議論をいただいた上で、答申を得た後に、本年中に生物多様性国家戦略を決定するということを目指したいというふうに考えておるところでございます。

田島(一)委員 十四日で締め切られたパブコメ、もちろん、いろいろな意見が集められた中で、それの集約作業にこれから入るという御答弁でありましたが、それこそ、今後、二〇一〇年の第十回の締結国会議を立候補するのであるならば、いわゆる国家戦略という取り組みのみならず、ある意味では、今多岐にわたっている野生生物を取り巻く法体系をきちっと整備していく、野生生物に関する基本法なるものをやはり制定していくべきだということを、我々民主党はさきの参議院選挙でも訴えてまいりました。

 やはり、締結国会議の議長国として立候補する以上は、そういった姿勢をきっちりと示していくこと、また、さまざまな利害の関係の中に野生生物を取り巻く環境が今置かれている中で、非常な問題が随分起こってきております。そう考えると、私どもは、基本法なるものをしっかりとつくって、それぞれの各省庁にまたがっての問題意識をきちっと認識していくことが何よりも先決ではないかというふうに考えるわけでありますが、この国家戦略の第三次の作業状況と相まって、この基本法なるものをつくるという考え方は全くお持ちでないのかどうか、その辺のお考えをぜひ聞かせてください。

櫻井政府参考人 自然と共生し持続的に発展する社会を築くというためには、国民的な関心を高めるということが何より大切であろうというふうに考えておるところでございます。

 先ほど申しました生物多様性国家戦略の案では、今後の取り組むべき四つの基本戦略というものを挙げておりますけれども、その筆頭に「生物多様性を社会に浸透させる」ということを挙げているところでございます。

 また、この生物多様性国家戦略におきましては、「地域における人と自然の関係を再構築する」、あるいは「森・里・川・海のつながりを確保する」、あるいは「地球規模の視野を持って行動する」というようなことを基本戦略として掲げておるところでございます。

 それらに沿って、幅広い施策を関係省庁と連携して展開するということを通じまして、生物多様性の保全、あるいは自然共生社会の実現に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

田島(一)委員 通告の中に盛り込んでなかったからかもしれませんけれども、国家戦略の見直しで十分にそれは補えるというふうにお考えなのかどうか、お聞かせいただけますか。基本法なるものは必要ないというふうにお考えなのか。いかがですか。

櫻井政府参考人 現在、生物多様性国家戦略の中では幅広い施策を盛り込んでおるということを今御答弁申し上げましたけれども、生物多様性の保全に関する基本的な考え方、あるいは国としての行動、さらには地方公共団体あるいは民間の取り組みを促すというような基本的なことは、この生物多様性国家戦略でカバーをしておるというふうに私ども今考えておるところでございます。

田島(一)委員 基本法としてつくり上げるのか戦略としておまとめになられるのか、これは意味合いとしては随分大きく違うと思うんですね。今度締結国会議の議長国として立候補されるのであるならば、その体制を整えていくこと、日本としての野生生物また生物多様性確保についての姿勢をきちっとした法律で示していくことが何より大事ではないかというようなことを考えて、提案をしているものであります。恐らく、局長のレベルではまだそのようなことを思い切ってお答えできないのかもしれませんけれども、私は、国家戦略だけに満足していただくようでは、他の省庁との関係等々から見てもまだまだ大変弱いというふうに思っております。

 その一つ、鳥獣の保護管理について、例示を示しながら申し上げたいというふうに思うんです。

 大臣も、鳥獣の保護管理については、広域的な管理や担い手の確保などの取り組みを強化していくということを所信の中でも盛り込まれました。クマにしてもイノシシにしても、自然との共生として、環境関係者側からすれば保護管理ということになるわけですが、農林業関係者からすれば害獣、いわゆる駆逐、駆除という対象になりがちであります。こういった折り合いをつけていくことが大変大きな課題として私ども受けとめておるわけでありますが、残念なことに、今この流れは、必ずしも、環境省なりが国家戦略をおまとめになろうとしている、その流れに沿っているとは言いがたい状況があります。

 せんだって報道で知りましたが、自民党の有害鳥獣議員連盟が鳥獣対策で特別措置法を検討しているという、そんなニュースが入ってまいりました。実りの秋に入り、それこそクマや猿、シカ、イノシシが、冬眠を前にして、いわゆる農林業に従事されている方々の田畑、そして森林にかなり多くの被害を及ぼしている、この被害を拡大させているという認識は、私のみならず皆さんが御理解をされているところだというふうに思います。

 ただ、現状の背景を探るというような努力、言ってみれば、生息環境の把握であるとか野生鳥獣の生態の把握、また、被害対策の専門アドバイザー等々を育成するというような対策が不十分なまま、この自民党の有害鳥獣議員連盟は、中山間地域での野生鳥獣農作物被害の拡大の対策として自衛隊を出動させろというようなことをおっしゃっているというふうに聞き及んでいるところであります。

 私は、この中山間地域での鳥獣被害対策をするのは、これは農林水産業の分野だけではなく、やはり環境省も決して黙っているわけにはいかないだろうというふうに考えますし、果たして、自衛隊に出動していただいて、それで一気に鳥獣被害を駆除してしまおうという短絡的な発想が環境省として本当に受け入れられるのかどうか。今、この生物多様性の国家戦略、第三次を作成しようとしている流れの中で、いわゆる短期的に、一気に駆除してしまえというような非常に乱暴な発想が自民党の中で起こっている、議論されているということに、大変な危惧を持っているわけであります。

 大臣がこの議連に所属していらっしゃるのかどうか存じ上げませんけれども、果たして有害鳥獣の駆除が自衛隊出動によって本当に問題解決になるのかどうか、この点について、派生をした質問になりますけれども、大臣のお考えをぜひ聞かせていただけないでしょうか。

鴨下国務大臣 二つの難しい命題があるわけでありまして、一つは、農林業の関係者からすると、先生おっしゃるように、ある意味で害獣であるわけでありますけれども、生物多様性から見ればこれはもしかすると重要な問題なんだろうというふうに思って、この二つの命題をどうするかという話を私はいただいたんだろうと思います。

 この問題をいつも思うときに、先生ごらんになったかわからないけれども、「もののけ姫」という映画があって、あのときに、たたら場だとか何かにイノシシが出てきて、それで、イノシシにとってみればもともとの住まいなのにというような、あれをすぐ思い出すんですが、先生おっしゃるように、両面をきちんとバランスをとるということが重要だろうと思います。

 ですから、そのためには、今お話しになったようなさまざまな専門的な方々を動員して、単純に出てきたから撃ってしまえというわけにもいかないし、でも、例えばニホンジカのように、天敵だとか何かの生態系の中で頂点にあって、そしてどんどんふえてきて、さまざまな問題が起きている、こういうようなところはある程度適正にしなければいけない。こういうようなところの部分がありまして、必ずしもどっちがいいとか悪いとかというのではなくて、冷静に議論をして、そしてバランスのいいところというようなことを考えるのが、私の今のところの申し上げられる範囲であります。

田島(一)委員 大臣の答弁としては、私はちょっと落第点だなというふうに思うんですね。担当部局から、この生物多様性の国家戦略をどのように組み立てようとしているのかをもう一度ぜひレクを聞いていただきたいというふうに私は思うわけであります。

 なぜ今の中山間地域で鳥獣被害がこれだけ大きくなってきているのか。このメカニズムをやはり解明していくことこそ、私はまず優先すべき課題ではなかろうかと思います。

 当然、過疎化が進みました。人間が、先ほど「もののけ姫」を引用されましたけれども、元来人が踏み込まなかった中山間地域にいわゆる集落を形成し、田畑を開墾し、そして人間が我々の営みを中心としてこの自然界に君臨をしてきたのが今日のありさまであります。当然ながら、野生生物にしてみれば、そのような実態はわかるわけはありません。しかし、そういった原始の部分だけに議論を終始するのではなく、それ以降、例えば中山間地域が過疎化をした、高齢化をした、そしてまた耕作放棄地が増大をしてきたといったいろいろな社会的要因があっての被害であります。

 自民党の有害鳥獣議員連盟は、鳥獣被害を自然災害だというふうに受けとめていらっしゃるようであり、自然災害だから自衛隊が出動するのはおかしくないというような御意見のようでありますけれども、駆除しか鳥獣被害対策はないというような発想に立てば、今おつくりになっている国家戦略自体も意味が全くなくなってしまいます。環境大臣は、環境省のトップでありますから、どちらの視点も大切にする、これはもちろん政治家として当然のことではありましょうが、ぜひ生物多様性を確保するという視点での鳥獣被害対策に取り組んでいただきたい、私はこのことだけを切にお願いしておきたいと思います。

 最後に、本当に自衛隊が出動をすることによって鳥獣被害がなくなるとお考えかどうか、それだけ、イエスかノーかで結構です、お答えください。

鴨下国務大臣 イエスもノーも答えられないのが現実だろうというふうに思います。

 先生おっしゃるように、生物多様性の中には生態系というものもありますから、かつてはある意味でバランスがとれていたところがなかなかうまくいかないというのと、今おっしゃるように中山間地の里山だとか何かの管理が行き届かないというようなこととのバランスもあるのかもわかりませんが、これは我々にとっては大変重い課題でありますし、環境省としてはそれなりに、生物多様性をきちんと踏まえた上での害獣をどういうふうに扱うかというようなことでありますけれども、このバランスはなかなか難しいということだけ申し上げておきます。

田島(一)委員 きょうはこれぐらいにしておきますけれども、ぜひ大臣、逃げないで、真正面からとらえてくださいね。これはやはり大臣としての私は使命だというふうに思っておりますので、生意気なことを申し上げて大変恐縮ですけれども、よろしくお願いします。

 最後、五分となりましたので、水俣病問題、そして健康被害対策についてお尋ねをしたいと思います。

 先般、水俣病救済のいわゆる決着のために、一時金支給について与党プロジェクトチームの方から百五十万円という額で提示をされ、二団体が受諾をするというような報道がなされているところであります。もともと、大臣の所信の中でも、いわゆる与党PTと連携をし、水俣病被害者の救済に向けた取り組みを進めていくというふうに、余り主体性のないごあいさつをなさったところでありますけれども、歴史的な経緯であるとか被害者の皆さんの実態等々を把握したとき、与党PTと相談をしなきゃならない立場はわかるところでもありますけれども、本気で環境省がすべての被害者を対象に全面解決をしていく覚悟があるのかどうか、そのあたりを私はぜひ所信演説の中で伺いたかったところであります。まず、その思い、どのような方向で救済を進めていこうと考えるのか。

 中には、いわゆる不知火患者会であるとか互助会は政治決着を拒否する構えというような報道もなされておりますけれども、とりあえず、今回の政治決着は、私どもが言うのは大変僣越ですけれども、あの九五年の政治決着からすると随分トーンダウンをしてしまった、何か紛争を押さえ込む手だてではないかというふうに評価を実はしているところなんですけれども、大臣が本当に全面解決をする覚悟がおありなのかどうか。その点、答弁をぜひお願いしたいと思います。大臣に聞いています。

鴨下国務大臣 平成七年の政治決着、これは、私も多少あのときにかかわらせていただきましたけれども、最終的かつ全面的だ、こういうようなことであったわけでありますけれども、その後、前提条件がいろいろと崩れてまいりまして、結果的には、認定基準を満たさないものの救済を求める人たちを広く水俣病の被害者と受けとめる。それからもう一つは、あらゆる関係者の理解を得て、早期の、かつ最終的、全面的解決になる最後の政治救済策を取りまとめる。こういうようなことで、今与党のプロジェクトチームが動いているわけであります。

 そして加えて、その中心になっている先生が各患者団体とも折衝しているわけで、マスコミでも、金額についてあるいは手当についてそれぞれ報道がされているようでありますけれども、まず、今、交渉の舞台は与党のプロジェクトチームとそれから患者団体でありますから、それを受けて我々はどういうふうに最終的に政府として判断するか、こういうような段取りになっておりますので、先生にはしかられるかもわからないけれども、今のところはそういうようなことしかお答えしようがないわけであります。

田島(一)委員 これまでの取り組みの中で大きな問題点というのは、やはり実態把握に全力的に取り組んでこなかったという問題だと思うんですね。この実態把握を十分にやらなければきちんとした解決にならない、これは私の考えであります。隠された実態、それから隠れている実態、そしてまた自覚意識のない、そういった被害者の実態というものがまだまだ山積をしております。

 与党PT等の解決策を受けての環境省としての取り組みということでありましたけれども、やはり全面解決をしていくという覚悟が、それこそ九五年のときのあの解決にかかわっていただいている大臣でありますから、十分にその実態の結末は御承知のことだというふうに思います。

 その点をぜひ踏まえていただいて、今度こそ本当に解決していけるんだ、そのためには実態把握もきちっとやるんだという意気込みをお示しいただかないと、またぞろ同じことを繰り返し、引き延ばしになるのではないかというような不安が私はどうしても頭をよぎってなりません。その辺について、大臣、最後の答弁としてお答えください。

鴨下国務大臣 おっしゃることはよくわかるわけでありますけれども、ただ、利害関係者はそれぞれありますので、それぞれの意見を調整するというのが最終的に政府の役目でありますから、今の段階で、与党の間あるいは関係者等の間での折衝が行われているわけでありますので、私が今ここで、ではその先どうするという話は申し上げるべきでないというふうに思っております。また改めて、すべての方向が定まった段階で、環境省としての方針について申し上げさせていただく時期が来ると思います。

田島(一)委員 ぜひ、また次の機会での議論をさせていただきたいと思いますので、きょうはこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、地球温暖化問題を中心に質問をさせていただきます。

 鴨下大臣におかれましては、私と同じ分野、これまで厚生労働行政の方を大きく引っ張ってこられた、まさにお医者様でございます。ドクターでございます。これからは、それこそ、先ほどからも出ておりますように、地球環境のドクターとして、大いに国際的な環境問題、日本がリーダーシップをとれるように力強いお力を示していただきたい、そのように期待しているところでございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 ハイリゲンダム・サミットがことし開かれました。それ以降、非常に活発に、国連のハイレベル会合、また米国主催の主要経済国会合などが、気候変動問題にかかわる国際的な動きが大変急でございます。十二月にはCOP/moPも開催されるところでありますが、こうした国際的な動きを踏まえつつ、来年の北海道洞爺湖サミットに向けてリーダーシープを我が国は発揮していかなければならない、そのように強く思うものでございます。

 そこで、質問でございますが、ことしのハイリゲンダム・サミットに際しまして、政府は、クールアース50、美しい星50において、二〇五〇年、五〇%削減を世界の共通目標とすることを世界に提案したわけでございます。世界における議論の促進に貢献したと私も以前より評価しておるところでございますが、ただし、二〇五〇年に世界の排出量を五〇%削減するということは大変困難を伴う、そういうものでございまして、これはひとつパラダイムシフトが必要かと思います。

 今後は、二〇五〇年、五〇%削減を行っていくための具体的な道筋を描いていくことが求められるわけでございますが、これをどのように達成していくのか、環境大臣の見解をお伺いしたいと思います。あわせて、洞爺湖サミットに向けての大臣の決意も伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 江田議員、大変お世話になっております。

 クールアース50については、二〇五〇年に半減、こういうような目標でありまして、残念ながら、基準年をいつにするかとか、そういうような問題についてはこれからの議論であります。

 ただ、私たちは、今の技術の延長線上では、多分達成は難しいだろうというのは、先生御指摘のとおりであります。ある意味で、技術的にも、それから場合によるとライフスタイルにおいても、パラダイムを変えていく、こういうようなことがどこかで行われなければいけないんだろうというふうに思っておりまして、そういう意味でいうと、今回ハイリゲンダムで安倍前総理が提案させていただいたのは、革新的技術の開発というようなことと、それから低炭素社会づくり、この二つがいわば大きな基軸になるわけでありまして、そのためにあらゆる方途を探っていこう、こういうようなことであります。

 そして、低炭素社会の具体的なビジョンとその実現への道筋は、これはG8の来年のサミット、洞爺湖サミットに向けてより明らかにし、なおかつ各国に理解と協力を求めていく、こういうようなことでありまして、当然、今、京都議定書の第一約束期間に明年から入っていくわけでありますけれども、この五年間で達成するべきマイナス六%だけではなく、その後のポスト京都に向けてのいわば低炭素社会、こういうようなものがどういう社会なのかというようなことについて、洞爺湖サミットでより具体的に提案をさせていただきたい、こういうふうに考えております。

江田(康)委員 今大臣おっしゃいましたように、二〇五〇年、五〇%削減の道筋というのはこれから大変重要な時期に差しかかってくると思われます。

 やはり、ポスト京都の議論を、また国際社会の合意づくりを進めながらということになってくるかと思いますが、一つ、洞爺湖サミットにおきましては、やはり二〇一三年以降のポスト京都の交渉で、すべての主要排出国が参加する新たな枠組みをつくること、これが何よりも重要になってまいります。

 世界の排出量の大半を占める、過半を占めるといいますか、途上国、とりわけ中国、インドから、世界の排出量の半減というこの長期目標に向けてどのような貢献を引き出していくか、これが決定的に重要に今後なってくるかと思います。

 しかし、途上国は、共通だが差異のある責任という原則に基づいて、まず先進国が削減の義務を負うべきであるとして、経済発展と貧困撲滅が優先課題であることから、これを阻害する可能性のある排出削減義務には反対を表明している、これが現状だと思うんですね。これを打開するという戦略が、今、日本から提案をしている、途上国に対するコベネフィット型の温暖化対策ではなかろうかと私も思います。

 日本は、先ほど来出ていますけれども、あの高度成長期に水俣病、またイタイイタイ病や川崎病などの悲惨な公害を経験して、これを克服してきた経験と知恵があります。公害対策で培った高度な技術やノウハウを途上国の大気汚染や水質汚濁また廃棄物処理に生かすことで、途上国の温暖化対策を後押しするという戦略であるかと思います。

 中国では、大気汚染、水質汚濁、大変な公害問題が生じているわけでございます。公害の解決と一緒に温室効果ガスの排出削減に取り組むコベネフィット対策については、公害による健康被害の防止の問題が残る中国を初めとする途上国にとって、取り組みやすくて、またインセンティブもあるものであるかと思うわけでございます。

 中国やインドなど新興国が最大限排出削減に努力する仕組みが必要である二〇一三年以降の枠組みにつきましても、公害の解決と一緒に温室効果ガスの排出削減に取り組むコベネフィット対策を推進することが大変重要と改めて思っているわけでございますが、大臣、中国の温暖化防止と公害防止のコベネフィット対策をどのように進めていくおつもりか、お伺いしたいと思います。

鴨下国務大臣 今先生おっしゃっているコベネフィット対策、これはいわば地域あるいは各国の公害対策と、それからその対策をするがゆえに地球温暖化対策にもなっていく、こういう意味で、私たちはある意味で一石二鳥の環境対策だというふうに申し上げているわけでありますけれども、中国やインドなどの新興国にとって、いわば最も喫緊の課題というのは公害対策であります。

 委員が今おっしゃっていたように、例えば、水あるいは大気、こういうようなものに対する公害対策をしっかりとしながら、同時に温暖化対策にもなっていく、こういうような意味でのコベネフィットアプローチを、ぜひ新興国のニーズに合わせて効果的に支援をしていきたい、こういうふうに考えているところであります。

 特に、主要排出途上国である中国に対しましては、これは、私の前の若林環境大臣が本年の八月に訪中した際に、中国の環境大臣とコベネフィットアプローチによる協力について議論をさせていただきました。さらに、専門家によるセミナーの開催等を通じて関係者の理解を醸成していき、その後に、協力の具体化に向けて担当部局間で話し合いを進めている、こういうようなところまで今至っております。

 また、これは国会のお許しがいただければ、きょうの夜にも、ボゴールでCOP13の閣僚級準備会合がございますけれども、その中で、時間があれば、中国の環境大臣ともバイの会談をさせていただいて、こういう問題についても取り扱っていきたい、こういうふうに思っています。

 また、いわゆるCDM、クリーン開発メカニズムについても、中国を初めとする途上国において関心が高い、こういうようなことから、プロジェクトの実施可能性の調査や人材育成等を通じまして、コベネフィットを実現するようなCDMプロジェクト、こういうようなことも支援していきたい、こういうようなところでございます。

江田(康)委員 CDMプロジェクトとして、またこのコベネフィット対策を大きく提案し、また進めていく、これは私も大変重要なこれからの我が国の貢献であり戦略であると思います。

 続いて、外務省にお聞きしたいのでございますが、中国は、今も大臣もおっしゃられましたように、アメリカを抜いて世界一の温室効果ガスの排出国になるであろうと言われているところでございますが、二〇一二年以降の新たな枠組みへの参加を促して、最大限取り組んでもらうためには、何らかの促進策が必要ではないかと強く思っておるところでございます。その意味においても、新規の対中円借款は二〇〇八年に終了いたしますが、環境対策については別途の新しい知恵が求められるのではないでしょうか。

 我が党の太田代表が党訪中団として、ことし一月、中国を訪問いたしました。胡錦濤国家主席と日中友好の促進について対話をしたわけでございますが、四月には温家宝首相の来日の際にも懇談をしまして、戦略的互恵関係の重要項目に環境とエネルギー問題での協力を挙げて、日中環境基金というのを公明党としても提案させていただいたところでございます。

 その後の首脳会談や日中共同声明で、水、大気、廃棄物対策分野での日本との技術協力や、気候変動問題での協力が盛り込まれたところでございます。

 このように、我が党が提案しているところのこの日中環境基金について、政府としてはどう思われておるのか、外務省にお聞きしたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 中国の環境問題は、我が国及び我が国を含む地域にも直接影響を及ぼし得る重要な問題であって、我が国としても、その動向を注視し、改善に向けて、二国間及び多国間の枠組みを通じて種々の協力を実施してきております。

 本年四月、温家宝中国国務院総理の来日時には、環境保護分野での協力といたしまして、共通の戦略的利益に立脚した互恵関係の基本的内容として、協力の重点分野に位置づけました。そして、その上で、日中環境保護協力の一層の強化に関する共同声明を発表いたしました。

 九月には日中環境保護合同委員会を開催し、この共同声明のフォローアップのための作業を加速していくことで合意いたしました。また、年内開催に向けて努力することで合意しております日中ハイレベル経済対話におきましては、環境問題も取り上げられる予定でございます。

 外務省といたしましては、環境省を初めとする関係省庁と連携をしつつ、環境分野での中国との協議や協力を強化していく中で、ただいま先生からお話がありました御提案の考え方も踏まえながら、我が国の有する高い技術、知見、経験を生かしながら、環境分野における日中間の具体的な協力について検討をしていく考えでございます。

 また、このような協力も通じまして、地球温暖化問題の解決に向けた二〇一三年以降の国際的枠組みへの中国の積極的な参加を促していきたいと考えております。

江田(康)委員 中国は、二酸化炭素の排出量は世界で二番目、二酸化硫黄は世界でトップ、酸性雨は中国全土の約三〇%に被害が及んでいる。また、水が絶対的に不足して、世界平均の一人当たりの必要量の四分の一であるとか、砂漠化も大きく進んでいる。そういうような中国に対して、また、サミットに向けて、新たな二〇一三年以降の枠組みに参加するためにも、やはり何らかの促進策というのは具体的に必要だと思います。そういうような具体的な取り組みについての一つの提案として、日中環境基金を公明党は主張しているところでございますが、しっかりとその検討の場で具体的に詰めていくことを強く要望しておきます。

 さて、国際問題から足元の我が国の国内の事情に目を転じれば、京都議定書六%削減約束の達成は、これは容易ならざる課題ではないかと思います。政府は、来年の三月までに新しい京都議定書目標達成計画を策定することとしておりますけれども、個別の対策の実現につきましてはそれぞれ課題がいろいろあると思われます。この個別の対策の実現について、その対応についてお聞きをしていきたいと思います。

 まずは、国土交通省に省エネ住宅の普及についてお伺いをさせていただきます。

 住宅やビルの省エネにつきましては、排出量が伸びている業務・家庭部門の排出削減の非常に有効な手段だと思われます。例えば、天井材とか壁面材、床材についても断熱材を使う、また気密材を使う、あるいは、直射日光が室内に入らないようにひさしとかブラインドをつける、また、窓ガラス、開口部、ガラスの多いところにおいては、二重窓、二重ガラスにするとかあるいは二重サッシにするとか、こういうようなことを行うことで驚くべき効果が、温室効果ガスの削減につながる効果が上がるわけでございます。

 最近では、これは環境省がやられているかと思いますが、住宅エコ再生プロジェクトということで、老朽化アパートを再生していく、その際に、壁断熱性能の強化をしていくとかいうことで、エコ住宅の普及を、エコビルの普及を促進するというものです。これは、老朽化しているアパートは一九六〇年、七〇年代に住宅ブームでつくられたものでありますから、もう築四十年、五十年を迎えているわけでございまして、これを解体するとなると、その建築廃棄物は年間八千万トンということになって、これは産業廃棄物の約二〇%を占める、こういうような課題があるわけですね。しかし、コンクリートでつくられている住宅の基礎部分というのはかなり強固で、それは改修でさらに長期間住める物件も多い、こういうことから、老朽アパートのエコ再生を行っていくという事業も環境省としてはスタートしていきたいという考えがあるのは承知しております。

 以前から、私、これらの省エネ住宅、省エネ建築物の新築またはリフォームについて、所得税とか固定資産税の減免を図ること、エコビル、エコ住宅減税、これを実施することで、省エネ住宅、省エネ建築物を普及させることができるのではないかと提案しているところでございます。

 そこで、省エネ住宅、省エネ建築物の普及率についてはどうですか。新築と既存住宅ストックにおける割合に分けて教えてもらいたい。また、どのように省エネに取り組むのか。制度改正や予算要求、税制改正要望など具体的な対応についてお聞きしたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 省エネ住宅及び省エネ建築物の普及率でございますが、省エネ法に基づきます最新の省エネ基準、これに適合します住宅・建築物の割合、これは、平成十七年におきましては、新築の住宅については三〇%、それから、床面積二千平米以上の新築の建築物については八五%程度充足をしているというふうに把握をしております。

 ただ、一方、ストックということになりますと、この新しい今の最新の省エネ基準、平成十一年の基準ということがございまして、既存の住宅のストックでは四%、あるいは既存の建築物では六%程度であろうというふうに推計をしております。

 普及に向けての取り組みでございますが、国土交通省におきましては、これまで、省エネ法に基づきまして、床面積二千平米以上の住宅・建築物の新築、増改築につきまして、省エネ措置の届け出を義務づけする、あるいは、政策融資を活用いたしまして誘導する、それから、省エネ性能をわかりやすく表示するということで、住宅性能表示制度を普及促進する、また、地域住宅交付金制度の活用によりまして、地方公共団体における主体的な取り組みを促進するというようなことを図ってまいりました。

 二十年度に向けまして、既存住宅につきましては、一定の省エネルギー改修を行った場合に、所得税及び固定資産税の特例措置が講じられるよう、経済産業省、環境省と共同をいたしまして、省エネ改修促進税制の創設の要望を行っております。

 また、先導的な省CO2技術、こういったものを導入しました住宅あるいは建築物のモデル事業、こういうものを推進する、あるいは、中小の事業者の方に省エネの施工技術を普及するといったことについての予算要求をいたしております。

 また、京都議定書の目標達成計画の見直しということでございますので、現在、社会資本整備審議会の関係部会におきまして御議論いただいておりまして、こういった検討を踏まえて、一層の省エネ性能の向上に取り組んでまいるというふうに考えております。

江田(康)委員 次、経産省にバイオエタノールの普及についてお伺いをいたします。

 運輸部門については、政府目標である二〇一〇年度までに、経済産業省はちょっと時間の関係上聞けないかもしれませんが、環境省にお聞きします。

 運輸部門について、政府目標である二〇一〇年度までに、輸送用バイオ燃料五十万キロリッターの導入の達成に向けて、バイオマス燃料の普及を推進していくことが必要でございますが、ガソリンにバイオエタノールを三%混合したE3については大きく普及を図る必要がございます。

 経済界また政府関係省庁、力を合わせてこのE3の普及促進を図る必要がございますが、最近、トウモロコシによるバイオエタノールの急激な生産、これはブラジル、アメリカ等においてなされておりますが、そのことによって麦、大豆等の生産が低下していく、いわゆる穀物価格の上昇などの問題も引き起こしたところでありまして、我々公明党としては、食用系ではなくて廃棄物系バイオマスを活用したバイオエタノールの普及が重要ではないかと常々主張しているところでございます。

 モデル事業として、大阪堺市、環境省がやられている事業では、廃木材からエタノールを生産する。今月からもう発売が開始されるというところまで来ているということを聞いておりますし、また、北九州市においては、生ごみからバイオエタノールを生産する。

 こういうような廃棄物系バイオマスを活用したバイオエタノールの普及策やE10の開発等について、制度改正や予算要求、税制改正要望など具体的な対応についてお聞きしたいと思います。特に、揮発油税のエタノール分の非課税化について、大変重要な課題でございまして、ぜひとも年末の税制改正で実現したいと思っておりますが、いかがでしょうか。並木政務官にお聞きいたします。

並木大臣政務官 委員御指摘のように、飼料あるいは食料と競合しない廃棄物系のバイオマスを利用したバイオエタノールの開発、普及というのは大変重要であると考えております。

 今お話しのとおりで、E3等の実証事業を大阪で行っております。また、都内においても、政府公用車を対象としますE3の供給ということで今準備をさせていただいています。E10につきましては、既に一部の自動車メーカー等ではエンジンの安全面等において問題ないということで完了している、そういうこともありますけれども、環境省としては、十勝あるいは大阪で技術開発、実証事業を開始したところであります。そういったところで、これからますますバイオエタノールの普及という面で検討を行っていきたいというふうに考えております。

 また、経済的な面でインセンティブを与えるということが大変重要でありますので、特に揮発油税等におきましては、これまでも非課税要望を行っているところでありますけれども、今後とも引き続き要望し、そして普及促進に向けて頑張ってまいりたいと考えております。

江田(康)委員 揮発油税の二重課税の問題、これは普及において大変阻害する要因になっているかと思います。製油所からガソリン出荷時に揮発油税が課税されておりますけれども、ガソリンスタンドなどでバイオエタノールをまぜてE3をつくるその時点で再び課税されてしまう。したがって、ガソリンよりも価格が高くなって、これではバイオエタノールの普及というのはおぼつかないと思うわけでございます。

 ぜひとも、揮発油税のエタノール分の非課税化については、我々政治側としてもこの年末の税制改正で実現したい、そのように思いを強くしているところでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 時間が来ておりますので、用意していただきました御答弁をすべてできませんが、国内における問題も、このほか太陽光発電の普及促進においても、例えば補助制度がなくなったことによって住宅への太陽光発電の普及が今滞っているというようなことに対して、私、さらに京都議定書の第一約束期間中に限って復活させていくというような大胆な策も必要かと思っております。きょうは意見だけにしておきます。

 また、排出権取引制度の導入についても、これは総合的に検討することとされておりますけれども、今アメリカ、オーストラリア、カナダでも検討が進むなどの状況にかんがみれば、検討、準備を粛々と進めておく必要があると思います。

 最後に、桜井副大臣にお伺いいたしますが、この検討状況についていかがか、そして、自主的取り組みにより知見を集積させていると聞きますが、どれだけの成果が上がっているか、これをかいつまんで、最後の御質問にさせていただきます。

桜井副大臣 お答えを申し上げます。

 環境省では、排出量取引についての経験や知識の蓄積を図る目的で、平成十七年度より自主参加型の国内排出量取引制度を実施しております。

 平成十七年度に開始した第一期の参加者については、基準年度排出量について、当初約束されました二一%削減から、さらに八%上回る二九%の削減を達成いたしました。また、二十四件の排出量取引が成立しておりますので、合計八万トンCO2以上が取引されております。

 今後は、本事業から得られる知見などを活用しつつ、排出量取引制度について関係者などの理解を得つつ、検討を進めてまいりたいと思います。

江田(康)委員 以上で終わります。

小島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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