第7号 平成21年4月10日(金曜日)
平成二十一年四月十日(金曜日)午後一時十五分開議
出席委員
委員長 水野 賢一君
理事 小野 晋也君 理事 北川 知克君
理事 小杉 隆君 理事 土屋 品子君
理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君
理事 伴野 豊君 理事 江田 康幸君
あかま二郎君 上野賢一郎君
小島 敏男君 木挽 司君
近藤三津枝君 坂井 学君
杉村 太蔵君 鈴木 俊一君
福岡 資麿君 藤野真紀子君
船田 元君 古川 禎久君
馬渡 龍治君 山本ともひろ君
末松 義規君 田島 一成君
田名部匡代君 村井 宗明君
吉田 泉君 古屋 範子君
江田 憲司君
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環境大臣 斉藤 鉄夫君
環境副大臣 吉野 正芳君
環境大臣政務官 古川 禎久君
政府参考人
(内閣府沖縄振興局長) 清水 治君
政府参考人
(水産庁増殖推進部長) 成子 隆英君
政府参考人
(国土交通省大臣官房技術審議官) 関 克己君
政府参考人
(環境省大臣官房長) 南川 秀樹君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 鈴木 正規君
政府参考人
(環境省総合環境政策局長) 小林 光君
政府参考人
(環境省自然環境局長) 黒田大三郎君
環境委員会専門員 吉澤 秀明君
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委員の異動
四月八日
辞任 補欠選任
あかま二郎君 浮島 敏男君
近藤三津枝君 林 潤君
馬渡 龍治君 とかしきなおみ君
山本ともひろ君 盛山 正仁君
同日
辞任 補欠選任
浮島 敏男君 あかま二郎君
とかしきなおみ君 馬渡 龍治君
林 潤君 近藤三津枝君
盛山 正仁君 山本ともひろ君
同月九日
辞任 補欠選任
田名部匡代君 川内 博史君
同日
辞任 補欠選任
川内 博史君 田名部匡代君
同月十日
辞任 補欠選任
中川 泰宏君 杉村 太蔵君
同日
辞任 補欠選任
杉村 太蔵君 中川 泰宏君
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四月八日
危険な気候を回避するための法律制定を求めることに関する請願(江田康幸君紹介)(第一七三〇号)
同(馬淵澄夫君紹介)(第一七三一号)
同(奥村展三君紹介)(第一八一三号)
同(穀田恵二君紹介)(第一八一四号)
同(三日月大造君紹介)(第一八一五号)
同(村井宗明君紹介)(第一八一六号)
同(山本公一君紹介)(第一八一七号)
地球温暖化抑止のために国内対策の抜本的転換を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一七三二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)
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○水野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府沖縄振興局長清水治君、水産庁増殖推進部長成子隆英君、国土交通省大臣官房技術審議官関克己君、環境省大臣官房長南川秀樹君、環境省大臣官房審議官鈴木正規君、環境省総合環境政策局長小林光君及び環境省自然環境局長黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○水野委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬渡龍治君。
○馬渡委員 自由民主党の馬渡龍治でございます。
きょうは、自然公園法と自然環境保全法の改正の中で、特に生態系維持回復事業の創設について質問させていただきたいと思います。
これと極めて密接な関係にある来年名古屋で行われますCOP10について、まずお尋ねをさせていただきたいと思います。
来年十月に私の地元の名古屋市で、このCOP10、生物多様性条約第十回の締約国会議が開催されるわけで、地元の皆さんも、こんなすごい国際会議が行われるということで大変喜んでいただいているんです。私も本当に光栄に存じます。ところが、重要な会議だということは知っていても、一体どういう会議なのと聞かれることが結構ありまして、もっと生物の多様性ということについて国を挙げてこれを機にいろいろ啓発をやっていかなきゃならないな、そう思うんです。
ちょっと前の資料、データなんですけれども、平成十六年に生物多様性国家戦略関係省庁連絡会議のアンケートをとったときに、生物の多様性というのは聞いたことがあるなというのが大体三〇%ぐらい、では一体何をして、国の戦略はどういうことがあるのかというのを知っている人というのは何か六・五%ぐらいしかなかったという寂しいデータが出てきたんです。
今回のCOP10は、生物多様性の二〇一〇年の目標達成の年でもあって、また次の目標を議論する重要な場でもあろうかと思います。我が国は議長国でありますから、広く国民の理解と協力を得て、ぜひともこれを成功に導いていかなければならないと思います。ですから、そのためにも、この生物の多様性に対して一層の理解をしてもらうための啓発というものを強化していっていただきたいなと。
もう一つは、日本の国として世界に向けて、これだけ取り組んでいくんですよという姿勢を示すときでもあろうかと思います。
そこで、今回自然公園法と自然環境保全法の改正をして、その中で生態系維持回復事業の創設をする、こういう発信をするというのは、議長国として積極的な姿勢を示すとともに、国内の生物多様性の確保を進める上で大変意義深いし、まことに時宜を得たものであると私は考えています。
この生物多様性条約には、一つは生物多様性の保全、そして生物多様性の構成要素の持続可能な利用、それから遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分という三つの目的がありますけれども、今回のCOP10でこれらの議論がされるように聞いています。
そこで、この保全に関連して、また保護地域の強化に対する議題も含まれていると聞いておりますから、ここでこの来年のCOP10に向けて、どうやって成功させようか、その取り組みについてぜひお聞かせいただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
○斉藤国務大臣 来年名古屋市で行われるCOP10の世界会議、馬渡委員にも地元で大変御指導いただいておりまして、この場をおかりして感謝を申し上げる次第でございます。
議長国として、何としても成功させなくてはいけない。ここ十年に日本で行われる国際会議の中で、一万人を超える方が世界から集まってきて、最大の会議になるとも言われております。そういう意味でぜひ成功させたいと思っておりまして、私も名古屋に行った際には、行政の方それから産業界の方、また学術界の方々にも協力をお願いし、国としても全面的な体制のもと取り組むという姿勢を示させていただいているところでございます。
今委員お話ございましたように、今回のこの法律改正も、生物多様性保全事業等、生態系維持回復事業等、この生物多様性のCOP10に向けた大きな一つのステップ、このように考えております。全力を挙げて取り組んでいきたいと思っております。
啓発事業という話もございました。生物多様性というと言葉が難しいんですけれども、わかりやすく「地球のいのち、つないでいこう」というふうな標語もつくりまして、国民の皆様への啓発もいろいろなチャネルを通して頑張っていきたいと思っております。
○馬渡委員 環境問題というと、地球温暖化とか低炭素のことは今やほとんどの国民の方に意識を持っていただいていると思うんですけれども、どうも、今大臣がおっしゃったように、生物の多様性というと言葉が難しいのか、命を守っていく、つないでいくということを、できれば小学校、中学校の中でお子さんたちにもしっかりと教えてあげるような、そういう動きもぜひ加えていただければなと思います。
さて、次に、人類のわがままでいろいろな動植物が絶滅危機にあるし、過去いろいろありました。これからお尋ねするのがシカのことなんです。
シカの個体数が異常にふえた一つの理由としては、過去、明治のころに、家畜に危害を与えるということで、やたらニホンオオカミを殺してしまった。だから、シカの上に立つ、捕食をするものがいなくなったがために、随分とそういった野生動物の秩序が乱れて、異常な形になってきていると思うんです。シカとかイノシシとか猿などによって農業被害も随分とふえてきて、農家の皆さん方にしてみれば大変な思いをされていると思います。一方で命を守らなければならない、この二つのことをどうやってうまくやっていくかというのは大変なことだと思うんです。
だから、ここ最近、全国的にシカの生息地の拡大とか個体数が増大していて、中山間地域を中心に深刻な農林業の被害が出ていると思います。今回のプランでは、そういった国立公園なんかの樹木を守るために防護策を講じて、木や草を守ろうというのも一つのプランに入っていると思うんですけれども、今各地で、鳥獣保護法の特定鳥獣保護管理計画とか、鳥獣被害防止特措法の被害防止計画に基づく取り組みが進められています。
このシカの食害による被害は、高山帯の植物の群生地など、自然公園や自然環境保全地域などが多く指定されている奥山自然地域にまで及んでいます。したがって、中山間地域などの農林業に係る被害が深刻な地域において効果的なシカ対策の推進を図るのはもちろんのこと、自然公園においてもその対策に適切かつ積極的に取り組んでいくことが必要と思います。
そこで、今回の改正において、シカ対策を初めとした生態系維持回復事業創設について環境省のお考えをお聞かせください。これは吉野副大臣からいただけますか。
○吉野副大臣 馬渡先生がおっしゃるとおり、シカまたはイノシシとか、特にそういう農業被害が今頻繁に起きております。
私も、この間、立山にちょっと行ってきました。そして、高山植物等々が荒らされて、それを植物復元事業とか自然再生事業という形で、一たん壊れてしまった生態系を回復するというのはもう本当に大変なことなんです。ですから、生態系維持回復事業というのを新たにつくりまして、そういう被害が起こる前に、特にシカ等々、有害動物が生態系を荒らす場合に予防的に個体数管理をしていこう、適正な範囲で駆除をしていこう、また生態系がどれだけ壊れているかというところのモニタリングもしていこう、こういう制度でございます。
その場合に自然公園法で許可が要るわけなんですけれども、国立公園は国が計画をつくり、また国定公園は都道府県が管理しているんですけれども、こういうところがきちんとしたモニタリングの計画、シカ等の防除計画を定めれば自然公園法の許可が要らない、こういう制度を新たにつくらせていただきました。これによって生態系というものをきちんと維持していこうというところでございます。
以上です。
○馬渡委員 昨年からですか、環境省として全国的な野生動物のモニタリングをしていくということで、たしか一億円かっきりでしたか、本当に寂しいなと。それは、山の奥まで入っていってその日じゃ帰ってこれないこともあるでしょうし、そういったことを考えたら、もっともっとそこのところは力を入れていただいて、とにかく我が国の野生動物の実態というのを正確に把握できないと、こういった対策も適正な措置を講ずることも難しいと思いますから、そこもパッケージでぜひとも推進していただくようによろしくお願いいたします。
それでは、ちょっと具体的なことをお尋ねします。
この改正で生態系維持回復事業計画を創設する、その計画の中には大きく分けて二つの目的があると思います。一つは生態系維持回復事業計画の目標を立てる、もう一つは生態系維持回復事業を行う区域を決めていくということだと思うんですけれども、この計画の目標というのは一体どういうものなのか。今回の制度創設に当たってどういう議論をされてきて、例えばその目標に対して定量的な評価というのができるのかどうか、そこのところはどうなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○黒田政府参考人 お答えします。
生態系維持回復事業計画の目標でございますけれども、維持回復すべき生態系の状況などに応じまして個別に定めるものでございます。したがいまして、個々の計画によって異なってまいります。
生態系維持回復事業そのものが、国だけではなくて、例えばNPOとか幅広い参画を得ながら推進するということでありますので、その目標というものが、一つは科学的であること、またできるだけ明確なもの、わかりやすいものにすることが重要であろう、こういうふうに思っておるところでございます。
具体的な目標の内容といいますか形といいますか、さまざまなものが考えられるところでございます。例えば、対象とする生態系を構成するいろいろな生物種がいますが、その中でその生態系を代表する生物に着目しまして、それらの個体数やあるいは生息、生育の面積、こういうものを指標として目標を定めていくというようなやり方、または、その維持管理すべき生態系に被害を与える動植物の個体数あるいはその密度、こういうことを指標にして目標を定めていく、こんなことが想定されるんじゃないかと思っております。
いずれにいたしましても、多数の参画ということを考えますと、わかりやすく目標を共有できるようにする、これが大事だろうと考えております。
○馬渡委員 例えば絶滅の危機にある動物、アホウドリの個体数が倍になりましたとか、植物であればレブンアツモリソウの株の数が今までの何倍になりましたとか、そういう数でカウントすることができると思うんですけれども、生態系の維持回復の目標とか達成というと、さっきの話の中に一部かかわると思うんですけれども、どうやって確かめるのか。これは大変なことだと思うんですけれども、そこのところを教えていただければと思います。
○黒田政府参考人 生態系というのは、いろいろな生き物などが相互に関係して成り立っているという非常に複雑なものであります。そういうものを直接把握し評価するのはなかなか難しいというのは、お話のとおりだと思っております。
このために、生態系維持回復事業計画の中では、先ほど申し上げましたとおり、例えば指標種といいますか、生態系を構成する生物の中で評価するにふさわしい代表的な生物に着目して、それに関する個体数であるとか生息面積等を指標に定める。これが最初のステップでありまして、そういう種の生息状況をモニタリングすることで目標の達成状況というものを評価していくことができるだろう、そういう方向で検討をしているところでございます。
○馬渡委員 今回の改正というのは、生態系の維持回復を行わなければならない状況があるからこの事業を創設していく必要がある、そういったことなんでしょうけれども、今ある国立・国定公園とか自然環境保全地域の何カ所ぐらいでこの生態系維持回復事業を必要としているのか、そこのところがわかれば教えていただきたいと思います。
○黒田政府参考人 生態系維持回復事業につきましては、例えば高山植物群落など自然の植生、あるいは海でいうとサンゴ礁など、そういういろいろな生き物が生息するそれぞれの地域固有の生態系を対象として、それが具体的に言えばシカの食害を受けているとか外来生物が侵入して生態系に影響を与えている、そういうような地域を対象として、とりわけその中で生態系の維持回復が必要だという区域について地域を指定していく、こういうことを想定しているわけです。
今、全国でどのくらいの数だというところまで言える情報は整理されておりませんが、例えば尾瀬国立公園であるとか南アルプス国立公園、こういったところでは既にシカの食害によって植生が大きく変貌、変化しておりまして、生態系維持回復事業を実施することによってそれこそ生態系を健全な形にするという必要があるんだろうというふうに考えております。
その他の地区につきましては、自然環境に関するモニタリングの結果などを踏まえまして、できるだけ早く事業の具体化を必要なところで図っていきたい、このように考えております。
○馬渡委員 恐らく、この生態系維持回復事業の創設ということで、例えば国立公園とか国定公園の予算というのはこれからふえていくんでしょう。これは質問じゃありませんけれども、例えば歩道の整備とか、トイレが古くなったから新しくしようとか、そういったニーズもあろうかと思うんですけれども、回復のための事業にぜひとも力を入れていただきたい。外側がふえたけれども、実際の新設された事業でどのぐらい使われていくのかというのは大事だと思います。
今、都道府県単位でレンジャーをふやしているところがかなりあるみたいなんですけれども、国としてももっともっとふやしていかないとこういった事業の所期の目的をしっかりと達成するための実施というのは難しいと思いますので、そこのところは斉藤大臣、ぜひともお力を発揮していただいて、いっぱい予算をとっていただきたい。後ほど言いますけれども、総務省の方にも何かいただけるものがありそうなので、そこのところも後で時間が余ったら話しますけれども、ぜひ大臣、お願いいたします。
次に、生物多様性の確保とグリーン・ニューディールのことについてちょっとお尋ねします。
大臣は、環境対策を通じて景気回復、雇用創出と地球温暖化など環境問題の解決を同時に実現すべく、「緑の経済と社会の変革」の作成を本年一月六日の日に提案されています。また、翌々月の三月十八日には、第七回経済財政諮問会議において、「緑の経済と社会の変革」について検討中の案を発表されました。
その際提出された「緑の経済と社会の変革」と題された資料を見せていただいたんですけれども、生物の多様性については「都市に緑をもたらすビオトープ」ということがありました。
ここで指す「緑」というのが、私の考えでは、なるべくそこに生息すべき日本在来の生き物が生きることができる自然のことを指すんだ、そういうふうに推測をしているんですけれども、そこのところはどうなんでしょう。
○黒田政府参考人 委員御指摘のとおり、「緑の経済と社会の変革」には「都市に緑をもたらすビオトープ」という表現がございます。
この中での「緑」という言葉でございますが、これは、その地域に本来生息する多様な生き物が生息できるような身近な自然空間を指しているということでございます。身近な自然空間を積極的に創出していくということは、土地利用が高度になされて環境負荷が集中する都市域におきまして生態系のネットワークを形成するといったような、生物多様性の保全を図る上で大変重要な意味のあるものである、こういうふうに考えております。
なお、付言しますと、平成十九年に第三次生物多様性国家戦略を閣議決定しておりますが、この中でもこうした取り組みの重要性については触れておるところでございます。
○馬渡委員 ビオトープというのは、私は前から環境委員会とか文部科学委員会でたびたびしつこいぐらいにお願いをしているんですけれども、学校ビオトープのことなんです。
その一つのルールというのが、外来種を持ち込まない。そこでもともと生息をしている食草を植えると、自然とそれを求めてどこかからトンボが飛来してくる。だから、すべての公立の小学校に学校ビオトープをつくることができれば、そのネットワークで、都市の中心部にも大昔にいたような生物が飛来してくることだってある。それに、子供たちがそういったものを探求心を持ってやることで、日ごろ引きこもりぎみだった子が、多少熱が出たって逆にお母さんに熱なんか出ていないよとうそをついて学校に行くという話も聞いたし、算数ができない子がトンボ博士になってクラスメートからすごく尊敬されて生き生きと勉強しているという話も聞きます。
そういった意味でいくと、もともとあったそういう生き物をまた復活させて、今の子供たちに何十年か前の命というものを見せてあげたい、それがひいては情操教育につながって、国としてはいいことずくめなんじゃないかな、そう思うのであります。
その「緑」にこだわったのは、安易に外来種を持ち込むと、やはり不思議なもので、同じようなものでも日本のが負けちゃうんですよね。それは魚だってそうですけれども、今、至るところの湖沼にブルーギルとかバスなんかが放されていて生態系が壊されているところもありますから、そこのところをぜひ御認識いただければな、そう思うんです。
次に、平成十九年六月に閣議決定された二十一世紀環境立国戦略では、持続可能な社会は、一つが低炭素社会、次に循環型社会、そして自然共生社会と整理され、これが三つの柱だと思うんです。
ところが、「緑の経済と社会の変革」と題された説明資料には、生物多様性に関連することは先ほどの「都市に緑をもたらすビオトープ」くらいしか見当たらないような印象があって、地球の温暖化防止と比較して多様性の問題がちょっと軽いのかな、そう受けとめたんですけれども、それは私の認識が違っていたのかどうか、そこのところを、そうじゃないと言うんだったらそうじゃないと言っていただければ。よろしくお願いします。
○鈴木政府参考人 ただいまお話ございましたように、「緑の経済と社会の変革」ということで、環境大臣の御指導をいただいて今作業を進めておりますが、大臣からも繰り返しお話しされておりますのは、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会を統合的に実現する三つが大事なんだということを発言していただいております。
今御指摘いただきました説明資料でも、こういう考え方はきちんとお示ししたような内容になっているのではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、自然環境の保全と活用により活力ある地域づくりをしていくということも書いておりまして、この具体的な中身につきましては今現在作業しているところでございますが、先生今御指摘のようなお話も含めまして、里地里山の保全とかエコツーリズムとか環境保全を生かしたような農業とか、さまざまな内容も盛り込みたいというふうに考えております。
こうしたことで考えておりますので、ぜひ、この「緑の経済と社会の変革」につきましても、三つの柱ということで頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○馬渡委員 その答弁をお伺いして安心しました。ぜひ、そのようにしっかりと進めていただきたいと思うんです。
もうこれは質問ではありません、ちょっと意見というかあれなんですけれども、国定公園というのは都道府県がその管理をするわけですよね。今回、回復事業の創設をして各都道府県に積極的に参画をしていただければよろしいんですが、それには今の財政状況の中で果たして、自治体が環境というものは大切だとよくわかっている、わかっているけれどもお金がないからできないという状況があろうかと思います。
そんな中で、きょうは総務省の方に来ていただいて本当は質問しようかと思ったんですけれども、私の恩師の総務大臣の鳩山プランというのがありまして、この中にいろいろいいことをうたっているんですよ。その中でこれはもしかしたらヒントになるかなというのが一つの項目にあったので、大臣、チャンスがあったら、そういったお金を自治体に応援してやってくれと言ってほしいんですけれども、自然と共生するエコライフの展開という中に、ビオトープの形成など生物多様性の保全ということで、この鳩山プランの項目の中に入っていました。だから、ここのところは、そういったお金を利用して自治体に積極的に参画をしていただかないと、国だけじゃどうしても……。さっきの生物多様性の認識について、やはりもっともっと国民の皆さんがきちんと理解していただくようにお願いをしたいんですね。
最後に、実は地球上で生物が、これは動物だとか植物だとか昆虫だとかいろいろなものがかなりの勢いで絶滅しているんです。ある本によると、大体十五分間に一種は絶滅しているんだろうと。となると、年間で三万五千種がこの世から消えてなくなっている。今しっかり把握している種が大体二百万種あると言われているんですが、まだ知らないものもありますから推測なんですけれども五千万種ぐらいいるのかなと。となると、三万五千で割ると、千四百年たつとこの地球上から生き物というものがすべてなくなる計算にはなるんですが、そこは大丈夫なんです。その前に地球を壊している人類が滅亡するので、人類が滅亡した後はまた豊かな自然が回復をしてくるわけです。よく地球が破壊されるというけれども、これは松井孝典先生もおっしゃっているけれども、地球が破壊されるんじゃなくて、その前に人類が消えてなくなるんだということなんですね。
だから、そこのところは少しでも環境への負荷を少なくして、持続可能な社会をつくっていくために、そろそろ人類も目覚めなきゃならない。要するに、地球の支配者という傲慢さがいろいろなストックを奪い取っている。だから、自分も地球上の動物の一種だという自覚をみんなが持てば、もちろん生物多様性の保全も理解していただけるでしょうし、無駄な殺生もしなくなるだろうし、そういった理念、小島先生も一緒に勉強していただいていますが、吉野先生も時々一緒になってやっていただいていますが、今こそ人類の環境革命、これが必要なのかな。
これは、今度COP10の議長国であります日本国の環境大臣が、ぜひ斉藤大臣に議長国の代表になって頑張っていただきたいんですけれども、これをぜひとも発信していただくように環境省に頑張っていただくことをお願いして、大臣の御活躍を願って、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○水野委員長 次に、古屋範子君。
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。きょうはよろしくお願い申し上げます。
我が国は、北は流氷が訪れる北の海、また南はサンゴ礁の海までということで、大変多様な海の姿を見ることができる、そういう国でございます。我が国の環境は、取り巻く海域を抜きにしてはやはり語ることはできないと思っております。
漁業を初めとする産業を支え、そして海洋レクリエーション、また自然との触れ合いの場、さらには私たち日本人の心のふるさととして、また人類共通の財産として、その恵みを将来にわたり享受するためにも、海の自然環境を守ることは大変重要であると考えております。海の環境を保全し、また海の生物多様性保全を進めるためにも、我が国における生物多様性の確保を実現するためにも、大変重要なことであると考えております。
このような状況のもとで、今回、自然公園法及び自然環境保全法の改正におきまして、海の自然環境保全の問題についてどのように対処していくのか、また、今回の改正内容のうち、特に海域保全にかかわる内容を中心に確認をしてまいりたいと思います。
私も、神奈川県の横須賀市に住んでおります。小高い山の上に住んでおりますので、東京湾、お天気がいいときは千葉まで見ながら毎日生活をしているわけなんですが、我が国を代表する自然のすぐれた地域を指定する国立また国定公園は、海域の保全の上でも最も重要な役割を果たすものと考えております。
そこで、まず初めに、海域を含む国立・国定公園は現在どのくらいあるのか、またその中で、海中公園地区として保護されている海域はどれほどあるのか、これについてお伺いいたします。
○黒田政府参考人 今全国では二十九の国立公園、それから五十六の国定公園が指定されておりまして、このうち、国立公園では十五、国定公園では二十五の公園が、海域をそれぞれの区域内に含んでおるところでございます。面積にいたしますと合計およそ百七十万ヘクタールの海域が国立・国定公園に含まれている、こういうことになります。
また、国立公園などに含まれます海域のうち、熱帯魚やサンゴ、海藻などが豊富であったり、あるいは海が清く澄んでいるといった、海中のすぐれた景観を維持すべき区域を対象として海中公園地区を指定しているところでございます。
国立公園、国定公園合わせまして、現在六十九地区、面積にしますと約三千七百ヘクタールが海中公園地区になっております。この海中公園地区の中では、例えば埋め立てを許可制にするというようなことで、そこに有するすぐれた海中の景観というものを保護しているという実態でございます。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
国立公園で二十九のうち十五、また国定公園で五十六のうち二十五、約半分が海域を有するということでもございます。そうした海域でさまざまな自然を保護する取り組みがなされているというお答えであったかと思います。
次に、国立公園など自然公園が、海域保全の上で一定の役割を果たしてきたということでございますけれども、海域の生物多様性の保全について、環境省ではどのような考え方で取り組もうとされているのか、この点について古川大臣政務官にお伺いいたします。
○古川大臣政務官 お答え申し上げます。
海域の生物多様性に関しましては、第三次生物多様性国家戦略並びに海洋基本計画におきまして、幾つか保全の方針が明記されております。例えば、海洋の生物多様性に関する情報の収集、整備でありますとか、自然公園法等に基づく保護地域の拡充でありますとか、干潟、藻場、サンゴ礁等の保全、再生といったようなことが明記されております。
環境省としましては、これらの計画を受けまして、これまで十分に保全できていませんでした干潟や岩礁域等の海域の自然環境を保全するために、今回の改正によりまして、新たに海域公園地区等を創設することとしたところでございます。今後、必要な施策を推進するために、関係省庁と連携をとりながら頑張ってまいります。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
そうした第三次生物多様性国家戦略、また海洋基本計画に基づき、さまざまな対策をとられているということでもございます。その上での今回の法改正につながっていくんだろうと思います。
そこで、今回の改正案では、現行の海中公園地区を海域公園地区に改めるということが盛り込まれております。そのことによりましてどのように海域の生物多様性の保全を図ることができるのかということに関しまして、環境省のお考えをお伺いいたします。
○黒田政府参考人 現在の海中公園地区制度でございますが、これは海中の景観のみが保全の対象になっております。したがいまして、干潟であるとか岩礁域など、海中と海上が一体となって美しい環境、景観を形づくり、また豊かな生物をはぐくむ海域全体を保全する、こういう制度にはなっておりません。
このため、今回の法改正によりまして、海中だけではなくて海上の景観も含めて保全の対象となる海域公園地区制度にしていこうということで、これによって海域の生物多様性の保全が推進できる、このように考えているところでございます。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
これまでは海中の景観のみであったところを、さらに海上まで含めて保全をしていくということですので、当然海中も海上もつながっているわけですので、さらに強化をされていく、そういう法改正であると考えております。
次に、小笠原国立公園の話題に移りたいと思っております。国立公園の海域の具体的な話といたしまして、先日も新聞に若干載っておりましたけれども、小笠原国立公園を例にしてお聞きしてまいります。
関東地方でも、この小笠原諸島が国立公園に指定をされております。東洋のガラパゴスとも言われており、世界でそこだけにしか見られない動植物が生息するような貴重な自然に恵まれている。その小笠原諸島に、日本本土では見られない美しい亜熱帯の自然環境を求めて、若者を中心に非常に国民の人気が高く、多くの利用者が訪れていると聞いております。新聞によりますと、この小笠原には、アカガシラカラスバトであるとかオガサワラオオコウモリ、ハハジマメグロなどなど、貴重な生物がいるということでございます。
このため、小笠原の自然環境を適切に保全しながら利用を進めるということは、国としても重要な課題であるというふうに考えております。この小笠原国立公園につきまして、環境省におかれましては公園計画を見直す方針というふうに承っておりますけれども、具体的にどのような見直しをされようとしているのか、お伺いいたします。
○黒田政府参考人 小笠原の国立公園につきましては、公園の区域あるいは公園計画に関しまして、自然環境保全上の課題であるとか、あるいは利用の多様化、こういったものに対応するために、小笠原独特の生態系、自然景観等の保護とその適正な利用を推進するために、全般的な見直しを行っているところでございます。
具体的な見直しの方向でございますが、陸域につきましては、小笠原固有の動植物の生息地等、約百九十ヘクタールを新たに国立公園に編入いたしますとともに、非常に厳格に保護しております特別保護地区を約二千ヘクタール拡張いたしまして、現行の二千九百ヘクタールから四千九百ヘクタールにするという方向でございます。
また、海域につきましては、幾つかの列島に分かれますが、父島、母島、聟島列島の沖合などでホエールウオッチングなどに利用されている、こういうことでございますので、十万ヘクタールの海域を新たに公園区域にするとともに、海中公園地区を現在の一・七倍に拡大いたしまして、保護の強化を図っていきたいとしております。また、自然再生施設や適切な利用を誘導するための施設、そういうものの追加を検討しておるところでございます。
現在、こういう中身を盛り込みました環境省原案を作成いたしまして、NGOを初め関係者の意見を広く聞くためにパブリックコメントの募集を実施しているところでございます。この結果を踏まえまして、また関係省庁との協議、東京都への意見聴取を行いまして、夏ぐらいまでには中央環境審議会に諮問をしていきたい、こんなふうに考えております。
○古屋(範)委員 そうした国立公園の指定地域も拡大をする、また特別保護地区も拡張していく、大幅な拡充を考えられているようであります。国民にとっても、そうした自然環境と触れ合う機会を多くつくることは非常に重要であり、また一方で、そうした自然環境の保護、バランスのとれた推進が必要なのかな、そのように感じました。
そこで、小笠原周辺の海中公園地区の拡大を図られるということを今お伺いいたしましたけれども、具体的に何をどのように保全していくお考えなのか、また、拡張する予定の海中公園地区は法改正によりどのように取り扱われることになるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
○黒田政府参考人 小笠原の周辺の海域でございますが、委員のお話にもございましたとおり、サンゴであるとか熱帯魚、それからウミガメなどが見られることが特徴でございまして、亜熱帯の海を実感させる、そういう自然体験が小笠原を訪れる利用者の大きな魅力になっているという実態がございます。
そうした中での今回の海中公園地区の変更案でございますが、先ほど一・七倍と申し上げましたが、細かい数字を申し上げますと、現行の四百五十ヘクタールに、サンゴ礁が発達しているという三百三十ヘクタールを追加することにしておりまして、こういう海中の景観について保全をしていきたいという中身になっています。
今回の改正法案が施行された場合には、現行法に基づく海中公園地区は海域公園地区に移行する、こういう仕組みを考えておりまして、こういう仕組みに従いまして、将来にわたって海域の景観が保護されるように努力していきたいと考えています。
○古屋(範)委員 そうしたサンゴ礁また希少な生物のいる小笠原国立公園でありますけれども、この小笠原国立公園を含む小笠原諸島は世界遺産の登録に向けた動きがあると伺っております。世界遺産の登録に向けた現状と今後の見通しはどのようなものか、お尋ねいたします。
○黒田政府参考人 小笠原諸島につきましては、世界的に非常に顕著で普遍的な価値を有する地域である、こういう評価をもって、世界自然遺産の登録に向けた取り組みを進めています。平成十九年一月には、世界遺産の暫定リストに既に記載をしております。
世界遺産の登録のためには、これを遺産として長く残すための保護担保措置が重要でございまして、小笠原国立公園の公園計画の見直し作業が非常に重要になってきますので、これを完成させる。また、課題となっております外来種の問題というのがございます。これの対策について登録の前までに一定の成果を得ることが不可欠だろう、こういうふうに思っています。
そういうことですので、現在は、平成二十三年夏ごろに開催されるであろう世界遺産委員会での登録決定を目指しまして、関係省庁や地元自治体との連携協力のもとに、必要な作業を進めているところでございます。今後とも、環境省として、関係機関、関係者の協力も得ながら、世界遺産の登録に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。
○古屋(範)委員 現在暫定リストに載っているということで、さまざま外来種の問題ですとか多くの課題はあろうかと思いますが、ぜひともそれをクリアして、世界遺産への登録を目指していただきたいというふうに思っております。私たちもしっかり応援をしてまいりたいと思います。
再び、先ほどの法改正の内容に戻ってまいります。
海の利用についてでございますけれども、過去は、やはり海のレジャーといえば海水浴が主流であったかと思います。私の住んでおります近くに三浦海岸などもございます。かつては非常に多くの海水浴客が訪れていたんですが、だんだんその人数も減っているということでもございまして、近年では、海域に生息する動物をボートを使って観察する、またスキューバダイビングなど、こうした海の自然と触れ合う活動がさまざまに多様化をしているというふうに思います。
豊かな自然環境と触れ合う国立公園の利用は、自然環境への理解を深め、また生物多様性保全を進める上で重要なことであると考えております。一方で、こうした利用によって自然環境への影響が生じているような、そういう状況もあると聞いております。国立公園の目的は保護と利用を図ることでありますけれども、海域利用の状況を踏まえますと、自然環境保全上の問題も懸念されるわけです。海域の利用が多様化している中で、利用の適切なコントロールを行うことも必要ではないかと考えております。
今回の法改正において、海域利用の適正化に向けてどのような措置を講じていかれようとしているのか、これにつきましてお伺いをいたします。
○古川大臣政務官 海域における適正な利用ということでございますが、先生御指摘のように、旅行業や観光船の運航業者、こういう関係者の方々に法律上の規制をかけるということのみならず、やはり自然環境への影響というものもしっかり理解を深めていただいて、そして質の高い持続できる利用の仕方というものをしていっていただくというように期待するということは大事な視点だと思っております。
環境省としましては、平成十九年度からエコツーリズム総合推進事業というものを行っておりまして、ここでは、エコツアーガイドあるいは自然学校のインストラクターなどの地域リーダーの養成、あるいは旅行業者そして地域住民の皆様の勉強会の開催などの啓発活動、こういうものに取り組んでいるところでございます。
このような形で、この美しい国土、自然を大事にする、そういう心を本来私たち日本人は持っておるわけでございますので、そういう規制ということだけではなくて、自然を大事にするという心を大事にしていきたいというふうに考えております。
○黒田政府参考人 今政務官から御答弁申し上げましたとおり、地域で人材を育成するソフトの対策というのは非常に重要だと思っております。また、それと並行する形で、いろいろな問題、課題に対応した規制策というものも、一方でこれを一緒になってやっていくということが大事かなと思っております。
国立・国定公園の中の海での利用状況というのを見てみますと、残念ながら、例えばモーターボートなどの動力船が野生動物の生息に影響を与えるというような事例が見られたり、特定の海域に利用者が集中して、その海域の環境に悪影響が生ずる、こういうような事例が散見されます。もう少し具体的に申し上げますと、動力船に関しましては、海鳥の繁殖地に例えばウオッチングクルーズの動力船が近づき過ぎて海鳥の生息とりわけ繁殖に悪影響が生ずる、こういうような事例が報告されておるところでございます。
こういう事態に対処するために、海域公園地区の中では一定の区域で、海鳥というのは季節によってはいない季節もあるというようなこともございますので、必要な期間内に動力船を使用することを規制できるようにしたいと考えております。
それから、利用の集中ということに関しましては、野生動物のそういうウオッチングツアーが無秩序に行われて、広い意味で、鳥だけではなくて野生動物の繁殖放棄というような影響というものも報告されておるところでございます。
陸域につきましては、利用者の立ち入りを制限するための利用調整地区を指定することができるとされておるところでございますが、海域におきましては、こういう利用調整地区制度はこれまで設けられておりませんで、こういうような状態に対処をしていく必要がある。
このため、今回の改正法案におきましては、海域の景観の維持とその適正な利用を図るということのために、ダイビングや船などによる利用をも対象として、海域においても利用調整地区を指定するということができるようにしたい、こう思っております。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
国民にとって、自然と触れ合う機会を持つ、これは非常に重要なことでもございます。また、特に子供たちにとってはそうした環境教育は重要なことであるわけなんですが、それによって環境を破壊してしまう、例えば、今おっしゃったようにモーターボートが動植物を侵してしまう、あるいはさまざま利用者が多くなり過ぎる、こことのバランスが非常に難しいんだろうな、本当にそこは自然を保ちつつバランスをとりながらそうしたことを進めていかなければいけないんだろう、このように考えます。
次に、今まで自然公園また自然環境保全の視点から海域保全についてお伺いをしてまいりました。しかし、こうした保護施策だけではなく、海域の管理には、関係するさまざまな機関と連携した施策が必要になるというふうに考えます。
そこで、水産庁にお伺いをしてまいりますけれども、私の近くにある三崎漁港というところは三崎マグロで有名なんです。よく漁業関係の方々ともお話をするんですが、そこのはえ縄漁法というのは、一本ずつ釣って、そしてちゃんと次の世代に漁業資源を残す、そういう非常にすばらしい漁法なんだといつも誇らしげに語ってくださるんですけれども、こちらの干潟ですとかサンゴ礁の沿岸区域は、生物多様性保全の観点からも大変重要な場所でございます。
こうした日本の沿岸域は、漁業等を含め、さまざまに利用が進んでおります。水産業においても、沿岸域における環境保全を内部化するとともに、自然保護関係の制度と連携した施策を推進することが、海域での生物多様性保全の推進において極めて重要であると考えます。
そこで、水産業に関係する政策での沿岸域の生物多様性保全に関する考え方、また取り組み状況はどうなっているのか、この点に関してお伺いいたします。
○成子政府参考人 お答え申し上げます。
水産業は、豊かな海の恵みの上に成り立っております環境依存型の産業でございます。漁業生産力を支える健全な生態系を保つことが必要でございまして、そのためにも生物多様性の保全が重要であると考えております。
例えば、藻場、干潟でございますが、沿岸域における多種多様な水産資源の生育、産卵場となるほか、海中からの栄養分を吸収して海水を浄化する機能も有しております。また、亜熱帯水域におきまして、サンゴ礁は水産資源の産卵場、えさ場、幼稚仔魚の育成場ともなっております。生物多様性が豊かで生産力の高い健全な沿岸域を実現する上で、このような機能を有します藻場、干潟、サンゴ礁を保全することは極めて重要ではないかと思っております。
水産庁といたしましては、まず一つとしまして、藻場、干潟造成のための自然石や砂の投入に加え、漁業者等が取り組みます藻場、干潟、サンゴ礁等の保全活動に対する支援ですとか、波や海流の影響等によりまして厳しい条件下にございます海域でのサンゴの増殖技術の確立等、こういった事業を推進しているところでございます。
こうした事業を通じまして、沿岸域の生物多様性の保全に積極的に取り組んでまいることとしております。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
ただいまのお答えを踏まえまして、環境省におかれましても、沿岸域の保全について、そこで生活をして漁業を営んでいる方々と連携して取り組んでいくことが非常に重要であると思います。こうした漁業者との連携、また調整にこれからしっかり取り組んでいただきたい、このように要望しておきたいと思います。
最後になりますけれども、大臣にお伺いいたします。
今回の法改正を踏まえまして、海域での自然環境保全に関する大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
○斉藤国務大臣 今回の法改正におきまして、いそ、干潟、岩礁等、命の宝庫を守っていきたいと思っております。
先日、瀬戸内海の海ごみの調査を今環境省がやっておりまして、そのシンポジウムに参加しましたところ、海ごみを調べてみたら、川の流域全体から集まっているごみが海の底に沈んでいるという実態がわかりました。これは国民全体で海を、我々の命、我々の祖先は海から生まれたわけですけれども、その水の惑星、この生物多様性を守っていくために、全力を挙げて頑張っていきたいと思っております。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
命の宝庫を守る、今そういう御決意を伺うことができました。しっかりまた、今回の改正案が一日も早く成立をし、環境保全に資するものとなりますよう要望して、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○水野委員長 次に、村井宗明君。
○村井委員 民主党の村井宗明です。
きょうは、自然公園法の問題について質問させていただくんですが、その前に、今回の立法の目的を一個、確認させていただきたいんです。
今回は、自然公園法の「目的」に生物多様性の確保というのを盛り込んだんですが、それはこの生物多様性基本法が、与野党が一致して、自民、民主、公明、それから各党がみんな一致してつくった議員立法である生物多様性基本法がもとになっての法改正という認識でよろしいでしょうか。
○黒田政府参考人 今回の自然公園法それから自然環境保全法の改正に関してでございますが、これは平成十五年四月に施行されました改正自然公園法の附則第二条におきまして、施行後五年を経過した場合に法律の施行状況を勘案し、必要があると認めるときに改正後の自然公園法の施行状況について検討を加え、必要な措置を講ずるものとされているということが一点でございます。
それから今委員からお話がありました、昨年、平成二十年六月に生物多様性基本法を制定していただきました。この法律の附則におきましても、生物の多様性の保全に係る法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされております。
さらに、平成十九年でございますが、第三次生物多様性国家戦略が閣議決定をされておりまして、国立・国定公園の生物多様性の保全の屋台骨としての役割の一層の拡充が求められております。
こういう背景を踏まえまして、平成二十年の十月、中央環境審議会に対しまして、「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」ということで諮問をいたしまして、この平成二十一年二月に答申をいただいたところです。
今回の改正は、この答申を踏まえて、国立・国定公園における生物多様性の確保を推進するための施策の充実を柱として、自然公園法及び自然環境保全法を改正しようとするものでございます。
○村井委員 さて、ではその上で、この生物多様性基本法、これはもう自民党の皆さんにも公明党の皆さんにも御協力をいただいて、みんなでつくったこの法律の中で最大の論点になっているのは、当時も環境委員だった皆さんは覚えておられると思うんですが、この法の根幹は第二十五条にあります。つまり、生物多様性を確保するために、ありとあらゆるものに対して戦略的環境アセスメントをかけて生物多様性を確保するというのがメーン、根幹になっているはずです。
そして、そのときに、今までだったら第一種事業と言われる、本当に大きいものだけ、つまり、特定の狭い範囲にだけ戦略的環境アセスメントを適用していたのに、これからはそうじゃないんだ、もっと幅広い範囲においても生物多様性を守るために戦略的環境アセスメントをかけようというのがこの法の根幹だと思うんです。だから、「著しい」という言葉を今まで入れて制限していたものを、幅広くするために「著しい」という文言をとった。
というふうに、二十五条をつくるときに与野党で議論をしたんですが、環境大臣の、二十五条における「著しい」を外した戦略的環境アセスメントの意義などについてお答えいただいていいですか。
○斉藤国務大臣 この生物多様性基本法をつくるに際しまして、村井委員がまさに御指導いただきまして、中心的役割を果たされたことに対して、まず敬意を表したいと思います。
その上で、環境影響評価法には「著しい」という言葉がございますが、生物多様性基本法の中にはこの「著しい」という言葉がなくなっている、そのことの意義をどう認識しているかという御質問でございます。
御指摘のように、生物の多様性は微妙な均衡を保つことによって成り立っております。したがって、事業の実施段階のみならず計画の立案段階から、生物多様性保全への配慮を行っていくことは極めて重要でございます。
この生物多様性基本法第二十五条については、お示しいただいた質問主意書、前もって出されておりますこの質問主意書にお答えしているとおり、影響が著しい場合のみならず、事業に係る生物多様性に及ぼす影響の調査などを行いまして、生物多様性の保全について適正に配慮することを推進するために、事業の特性を踏まえつつ必要な措置を講ずることを一般的な責務として規定しているもの、このように認識をしているところでございます。
○村井委員 というふうに今大臣がおっしゃられたように、お配りしている、昨年の六月に私が出しました質問主意書とその回答をいただいています。
さて、そのときに何が問題だったかというと、この生物多様性基本法をつくる前に戦略的環境アセスメント導入ガイドラインを策定した。この策定時点では、第一種事業、つまり、著しいものだけに限っていて当然だったんです。ところが、この上に生物多様性基本法というものをこうやってつくった。そうなった場合、これとこれとが、後でこっちができたわけですが、こっちが基本法で上位法なわけですから、こっちとこっちの間に矛盾ができた。
例えば、そういうときに、本質的であれば、こっちとこっちが矛盾する場合、基本法とガイドライン、つまり、国会で与野党で合意してつくった基本法と省庁がつくったガイドラインで中身が違う場合、どっちがどっちに合わせるのが通常は筋でしょうか。どうお考えでしょうか。
○小林政府参考人 担当局長でございますけれども、大変厳しい御指摘だと思っております。
私ども、アセスメントのやり方につきましては、生物多様性、これは個別事業の段階でのアセスでもなかなか難しい問題がございまして、予算をとりまして検討している段階ということでございます。
私どもの考え方といたしましては、御指摘のとおり、多様性の基本法のもとにいろいろなアセスメントをしていかなきゃいけない、これは重々認識をしているところではございますが、マニュアルの変更につきましては今お勉強をしているということで、まだ一例しかございませんけれども、まずは実施事例を積み重ねて、変更が必要であればそういった対応をしていきたいということでございまして、私どもの視野にももちろんそういうことは入ってございますけれども、今は法律とその具体的なマニュアル、ガイドラインの間に差があるということで御承知をいただければというふうに考えてございます。
○村井委員 さて、今環境省の方からそういうふうにお答えいただいたので、大臣の認識としても、生物多様性基本法と、この下に省庁がつくったガイドラインとの間にずれがある場合、こっち側を、ガイドラインの方を見直すのが当然と考えるかどうかと、そして、そのガイドラインの見直しについて、具体的な期限があるかどうかはともかくとして、どのように考えておられるか、お聞かせ願っていいですか。
○斉藤国務大臣 基本法が大きな枠組みとしてございますので、その大きな枠組みの方向性に沿って、一つ一つ、個別具体的な方法を考えていかなきゃいけないというのは当然でございます。
そういう基本的な考え方にのっとりました上で、戦略的環境アセスメントにつきましては、先ほど局長が答弁申し上げましたとおり、現在まさに実施事例を積み重ねつつある段階でございまして、今後、この実施事例を踏まえて、生物多様性基本法第二十五条の趣旨に沿って必要な見直しを検討していきたい、このように考えております。
現在のところ、いついつまでにそれをやりますということをお答えできる段階にございませんけれども、この実施事例の積み重ねをしていきたいと思っております。
○村井委員 この生物多様性基本法は、つまり生物多様性を守るという認識の中では、実はこれは環境省だけでは足りない部分もあります。公園なんかでもほかのところでもそうなんですが、非常に国交省ともかかわってくる分野が多いんです。
例えば、もう一つ、ここにあります公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドラインというのを、平成二十年の四月に国交省が出しておられます。これも当然、生物多様性基本法ができた以上、そして、COP10を迎えて生物多様性を日本が守ろうという以上、現場で重要視されるこっちも変わらなければ、実際に生物多様性が守られることはありません。
だって、例えば、それぞれの建設会社の皆さん方が、こっちの生物多様性基本法を読み込むかといえば、そんなに読み込むことはないけれども、現場でやられる方は、こっちの国交省が出したガイドラインをよく読んで、これに基づいて対応するわけです。
通常は、この法律ができたら、こっちのガイドラインが見直されて、そのガイドラインを読んで、それぞれの建設会社さんたちがやるのが通例だと思うのですが、残念ながら平成二十年四月に発表されてから今のところ変更はされていませんから、この中に生物多様性という文言が入っていないし、生物多様性を重んじられている状況には今のところなっていません。
さて、大臣、そんな中で、この問題について国交省とすり合わせ、COP10を迎えるんだから、国交省も生物多様性に協力してください、現場の方のガイドラインも見直してくださいと言うおつもりはありますでしょうか、どうでしょうか。
○斉藤国務大臣 この戦略的環境アセスメント、SEAにつきまして、先ほど御答弁申し上げましたとおり、まず、今事例を積み重ねて、環境省としてこのガイドラインの中に入れ込む、今そういう作業を、その事例積み重ねの作業をしているところでございます。
環境省の中に入れましたら、当然これは他の省庁ともよく連携をいたしまして、見直しを踏まえた取り組みを求めていく考えでございます。
○村井委員 それでは、そう大臣がおっしゃっていただいたので、国交省の参考人の方にお聞きしたいと思うんです。
まず最初に、国交省ではなく、環境省のガイドラインの中に生物多様性という話が盛り込まれていった場合、かつ、もちろんこの環境省のガイドラインの中で、対象範囲を生物多様性基本法に基づいて第一種事業以外に拡大した場合、国交省のこちらのガイドラインも見直すお考えはありますでしょうか、どうでしょうか。
○関政府参考人 お答えをいたします。
先生御指摘のように、国土交通省では、平成二十年の四月に、公共事業の構想段階における計画策定プロセスの透明性等を確保するということで、公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドラインを策定し、いわゆる戦略的環境アセスメントを含む計画策定プロセスのあり方について標準的な考え方を示しまして、適切な社会資本整備の推進に現在努めているところでございます。
この計画策定プロセスガイドラインにつきまして、私ども、まずは具体的な実施事例の蓄積に努め、そして社会経済の変化等に柔軟かつ適切に対応するため、必要な見直し、充実を図っていくことが必要だというふうに考えております。
なお、今後、仮に環境省の方で戦略的環境アセスメント導入ガイドラインの見直しを行われる場合には、環境省を初め関係省庁と連携をしながら検討してまいりたいというふうに考えております。
○村井委員 日本はCOP10を迎えます。少なくてもそのCOP10を迎えるまでに、日本はちゃんとやっているんだよとメッセージを示さなくて、どうして議長国が務まるのか。一応、雲の上で基本法はつくったんだけれども、まだ現場ではやっていませんということで、本当にCOP10の議長国が務まるかどうかは、私は非常に疑問に思うんですが、どうでしょうか。
環境省の参考人の方にお聞きしますが、このCOP10の開始のときまでに、日本も現場でちゃんとガイドラインが見直されるようになるべきだと考えるんですが、どのようにお考えでしょうか。
○小林政府参考人 COP10が大変重要な機会である、また生物多様性を保護する上で大変大きな意思決定が行われるということで、議長の大役を日本が務めることは大変重要なことだというふうに思っております。
もちろん、そのときに、なるべく日本の生物多様性の政策が立派であることが本当に望ましいということで、私どもも努力はしてございます。ただ、先ほど大臣の方から答弁をさせていただきました、いつまでということはなかなかお約束ができないところではございますけれども、私ども、ちょうどアセスメント法自体の見直し時期も迫っておりますので、鋭意勉強を重ねております。
生物多様性をどういうふうに事業あるいは構想段階の中で保全できるように評価していくのか、予測していくのか、そういうことは大変難しい問題もあります。そういうことで、出口が必ずしもすぐあるということをお約束できないことは大変心苦しいところではございますけれども、一生懸命勉強して、期待にこたえられるように努力はしたいというふうに思っております。
○村井委員 さて、今度はまた国交省の方にお聞きしたいんですが、一応このガイドラインは、二十年四月に発表し、五年ごとの見直しですから、少なくても二十五年四月ぐらいにはまた次のを出すだろうというふうに推測されるんですが、当然、二十五年四月になっているとCOP10は終わっているわけです。議長国として強いメッセージを出すために、環境省さえ了解して、環境省のガイドラインも環境省が強いリーダーシップを持って進めていった場合、二十五年四月になる前でもこれを変更する可能性はありますか、ないですか。どうでしょうか。
○関政府参考人 お答えをいたします。
先ほども申し上げましたように、私どもの認識としましては、現在、この計画策定プロセスガイドラインに基づきまして、具体的な実施事例を蓄積し、そして社会経済の変化等に対応しまして、必要な見直しを今後行っていきたいということを考えております。
さらに、繰り返しになりますが、環境省の方で戦略的環境アセスメント導入ガイドラインの見直しをお考えになる場合には、環境省を初め皆様方とよく連携して、検討してまいりたいというふうに考えております。
○村井委員 つまり、国交省の方も、こうやって環境省が見直して進めていけば、この二十五年四月になる前に、COP10の前にも見直すことは可能ではないかと言っておられる。ところが、環境省さんは、今のところ実績を蓄積しという話をしておられました。
さて、その実績を蓄積しの中で、戦略的環境アセスメントを今までやった事例は一件だけですよね。そんな中で、では今まで何件、本当を言えば戦略的環境アセスメントをやろうと思えばできたのに、つまり、この制度ができて以降、何件アセスメントをやって、そのうち一件だけ戦略的環境アセスメントの実績を積み上げたのか、数字で教えていただいていいですか。
○小林政府参考人 この戦略アセスメントにつきましてはまだ始まったばかりということでございまして、潜在的な候補がどれだけあったかというような統計はとってございません。一件だけでございます。
それからまた、今後どういうものが来るかということについても、私ども調査を今しつつありまして、例えばこういった事業ができるのではないかというようなことを提案していきたいというふうに考えてございます。
なお、ちなみに、平成十一年から平成二十年まで約十年、環境影響評価法、これは事業アセスの方でございますけれども、これが実施された件数が百七十七件ということで、事業段階で著しい影響があるのではないかということでこのアセスメント制度の対象になったものが十年で百七十七件、こういったペースであるということでございますので、一年当たりにすると、そのぐらいの件数、ペースというのが著しい量の大きさかなと、ちょっとお答えにはなっておりませんけれども、そういった目安を申し上げたいと存じます。
○村井委員 国交省にお聞きします。
今、一年当たり平均で十七件ぐらいで、そのうち一件をやったんだという説明でしたが、では、国交省が所管しておられる部分で、二十年四月にこのガイドラインを出してから、構想に着手したのが何件あって、そのうち一件、戦略的環境アセスを実行されたんでしょうか。どうでしょうか。
○関政府参考人 お答えを申し上げます。
今、そういう意味では構想段階にあるものということが一つ御質問かというふうに思っておりますが、私ども国土交通省の計画策定ガイドラインにおける構想段階、これは、計画策定者が、事業の公益性及び必要性を確認するとともに、当該事業により整備する施設のおおむねの位置、それから配置及び規模等の基本的な事項につきまして、事業の目的に照らして検討を行うことによりまして計画を決定するまでの段階を言うということでございまして、その性格からして、構想段階に幾つあるかという意味での件数を把握することは困難だというふうに考えております。
○村井委員 では、二十年四月以降、やろうと思えばできたのにという件は何件あったんでしょうか。それとも、そもそも、つくったけれども、一件だけやるつもりで、それ以上はやろうかどうかということも統計すらとらないし把握すらしていなかったんでしょうか。どうでしょうか。
○関政府参考人 いわゆるガイドラインの適用件数ということでよろしいかと思うんですが……(村井委員「いえ、適用しようと思えばできた件数です」と呼ぶ)適用についてでございますけれども、国民生活あるいは社会経済また環境への影響が大きいものに関する計画で、構想段階にあるものを適用するというところを基本としてございます。特に、事業特性等を踏まえながら、これは柔軟に適用していこうということであります。
また、平成二十年四月策定以前から、先行的な取り組み、これは幾つか事例がございますが、取り組みをしているものがあります。また、小規模な事業についても、その趣旨を踏まえて、適用できる部分を適用する、こういった対応を進めております。そういう意味では、御指摘のような適用件数を把握することは性格からして困難であると思っております。
いずれにいたしましても、私ども、この計画策定プロセスガイドラインを積極的に活用しまして、適切な社会資本整備の推進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○村井委員 これ以上やっても水かけ論になるかもしれませんので、最後に、大臣に今の議論の感想をお聞きしたいと思うんですが、これが日本の生物多様性の現場なんです。つまり、法律で、雲の上で立派なものをぼんとつくったけれども、では現場にこれがおりてきたかといえば、現場で使っているガイドラインには盛り込まれていない。
では、これを、生物多様性ということで現場のものも見直してよという話をこうやってやったら、今までは一件だけやりましたと。全部見直してくださいよと言ったら、いや、実績を積み重ねてと言うんです。でも、実績を積み重ねたといっても、ことし、つまり去年の四月ぐらいから、何件実際やろうと思えばやれたかもわからないけれども一件だけやりましたと言うんです。実績を積み重ねようといっても、実績を積み重ねる努力すら一件しかやっていなくて、では、これでいつ実績が積み重なって終わったという話になるのか。
一種事業だけに絞ろうと思ったからほとんどできませんでしたじゃなくて、では二種事業だってほかの事業だって、どんどんいろいろな形で実績を積み重ね、研究をし、実験しながら、試行錯誤でやっていくことによって初めて我々は知見を得ることができるし、本当に生物多様性を、議長国として、大臣が誇りを持って議長を務めようと思うんだったら、雲の上の形だけでなく現場まで、生物多様性を守るためにしっかりとガイドラインを見直して、現場で実践するべきだと思うんですが、最後に、大臣の所信や感想を聞かせていただきます。
○斉藤国務大臣 この戦略的環境アセスメントというのは、生物多様性基本法の中で出てきた新しい考え方で、私は、これからの環境アセスメントの方向性を指し示しているものだと思っております。
しかしながら、新しい考え方であるからこそ、いろいろな現場でそれを適用しようとするといろいろな困難もあるし障壁もあるということで、一つ一つ、いろいろな障壁を乗り越えながら、今、実績を積み重ねようとしているところでございまして、決して、これを嫌だ嫌だといって逃げているわけではございません。
そこら辺はぜひ御理解をいただいて、この戦略的環境アセス、SEAが日本の中に根づいて生物多様性が保全されるように今後も全力を挙げていきたいと思っておりますので、また御指導をいただきたいと思います。
○村井委員 そうしたら、話をちょっとかえるんですが、配った資料の裏面を実は見てもらえたらと思うんです。
この自然公園法の七条二項の話、それと生物多様性基本法の二十一条の話、この市民参加の部分で、生物多様性基本法、つまりこの上位法の方では、審議会以外のいろいろな人たちもさまざまな形で市民参加して政策決定に参加しようということでこれをつくったわけなんですが、なぜか、今回の自然公園法の改正案は、また話はもとに戻って、役所の人に選ばれた審議会の人だけ意見を言いに来る。でも、大体、審議会というのは、本当に反対反対という人はめったに選ばれることはないんです。
そんな中で、実際、この市民参加について、環境省の方は、この七条の二項の文言の解釈についてどのように考えておられるのか。そして、その生物多様性基本法の二十一条との兼ね合いで、ワンランクトーンダウンしているように見えるんですが、環境省はどのように解釈しておられますでしょうか、どうでしょうか。
○黒田政府参考人 例えば、自然公園法に基づきます国立公園の指定、あるいは公園計画の策定手続、こういうものに関して、従来からすべてにおきましてまず環境省がパブリックコメントを実施して、幅広い、NGO、地域住民等を含めて、いろいろな意見を聴取してきています。また、こういう公園計画の策定などに先立ちまして、それぞれの地元がございますので、地域の自然保護団体、森林組合、あるいは漁業協同組合、こういう関係団体との意見交換、地元説明会等を機会あるごとに重ねて、積極的に実施してきています。
今回の自然公園法の改正に関しましても、中央環境審議会の中に、陸や海の自然環境あるいは景観の保護という分野の専門家、学識経験者や観光、林業等の事業、こういう分野の方々から成る自然公園のあり方検討小委員会というものを置きまして、ここでいろいろ御審議いただき、答申を得て、改正の運びとなったところでございます。
また、この審議会の小委員会の検討の過程の中で、例えばダイビングの関係の事業者団体とか、全国レベルあるいは地域レベルで活動する自然保護団体の方々などからの御意見を聞く機会を設けて、さらに答申案についてもパブリックコメントが実施されたという経過がございます。
環境省といたしましては、生物多様性基本法も念頭に置きまして、今後とも、パブリックコメントの実施のほか、いろいろな機会を通じて幅広く国民の意見を聞いていきたい、こういうふうに思います。
○村井委員 最後の最後に、大臣にその感想を聞きたいと思うんです。
審議会の話でいうと、この生物多様性とかの話以外も含めまして、審議会の議員の選び方、ここは私、すごい難しいなと思うんです。だって、学者先生とかが言うんです。学者先生が審議委員になって、選ばれて行った。それで、役所の言うことに賛成しておったら次のときもまた審議委員として選ばれるのに、行って否定的なことばかり言うとったら、いつの間にか次の改選のとき外されてしまう。
実際、どうやって審議委員を選ぶかというのは、私、ちょっと考えないかぬと思うんです。審議会というのは何かというたら、多様な意見を聞く場だと思うんです。それは、当然、物事は大体賛成の人もおれば反対の人もおります。反対の人もやはり一部入ってきて初めて多様な意見を聞く場の審議会となるはずなんですが、残念ながらどうもそうじゃない。
もちろん、新しい事業をやろうというときに、いや、生物多様性のためにこの事業に反対ですという人が入ってきたら事業は進めづらいかもしれないけれども、審議会の意見は一〇〇%じゃないんです。だから、当然多様な意見を集めるために、いや、これは開発しようという側もおれば、生物多様性を守るためにここをもうちょっと見直そうという人もおっていい。
審議委員の選び方について、賛否両論含めて、もっと多様な人選をやるべきだ。そして、役所の人にやってもらおうと思ったら、それはうまくいくような人選をしてしまいます。政治がリーダーシップをとって、賛成派も反対派も含めて、しっかりと意見を聞く審議会に変えるべきだと思うんですが、大臣の所感をお聞きします。
○斉藤国務大臣 審議会のあり方についてはいろいろ御議論があるところだと思います。まさに多様な意見を聞く場でありますし、そうであらなくてはならないと思っております。
私の実感ですが、環境省の場合、かなり多様な意見を述べる方が入ってこられているというふうに実感をしております。
○村井委員 ありがとうございました。
○水野委員長 次に、田名部匡代君。
○田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。大臣、よろしくお願いいたします。
今の村井委員の質問をお伺いしておりまして、大変すばらしい指摘をしていたなというふうに思っております。大変大事なことだと思いますので、環境省として、また環境大臣として、これから日本の立場で、世界に向けてリーダーシップをとりながら自然環境を守っていくんだと堂々と発言できるような取り組みを今後もしていただきたい。そのことを踏まえてきょうは質問していきたいと思います。たくさん質問項目があるので、早速質問に入ります。
最初に、ちょっと細かいんですけれども、幾つか確認をしておきたいので、お伺いいたします。
法律の第二十二条三項の七、法律第二十二条「海域公園地区」についてのところでございますが、その七のところに、「環境大臣が指定する区域内において当該区域ごとに指定する期間内に動力船を使用すること。」というところがあるんですが、この「環境大臣が指定する区域内」というのが一体どういう基準なのか、また条件なのか、教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 動力船が海鳥の繁殖地に過度に接近して影響が生ずる場合があるというようなケースで、そういうときに動力船の使用禁止区域を定めるということになるわけでございます。
一定の区域で必要な期間を定めるということですが、実際に区域の指定をするときには、繁殖地等に動力船が接近して海鳥が直接的な影響を受けるというケース、あるいはそういう影響が生ずることがほぼ明らかである、こういうような動力船の使用を規制しなければその影響をどうしても回避できない、こういう区域などを対象とすることを想定しております。
○田名部委員 そういった区域がどのぐらいあるのか、もう既に調査はされて、どういった地域を指定するかというのは大体環境省の方で把握しておられるんですか。
○黒田政府参考人 今回の改正に基づきまして、現在ある海中公園地区からさらに広げて海域公園地区にする、そういう範囲をどこにするかということを、いろいろ基礎的なデータの収集等を行っている段階でございます。
したがいまして、現段階では、海域公園地区の指定範囲のエリアの選定といいますか検討にとどまっているところでございまして、まだ具体的に動力船の規制範囲を検討するという段階には至っていないという状態でございます。
○田名部委員 この指定される区域が、そういうことを定めたのはいいけれども、エピソードだけに終わらないように、しっかりとした調査と、指定区域というものを選んで実行していってほしいと思うんです。そのときに、あわせて、今回動力船だけが規定をされているわけなんですけれども、ほかにもカヌーだとかカヤックだとか、いろいろなものがあるわけですが、今回、動力船に限ったのはなぜなのか、またほかのことを規定する必要がなかったのか、そういったことがきちんと検討されたのか、教えていただけますか。
○黒田政府参考人 動力船の規制に関しましては、その動力船以外のレクリエーション利用による野生動物の生息への影響というものは、その二つ、動力船とそれ以外を比較しますと、やはり動力船に比べますとそれ以外のものは小さい。例えば、カヌーとかそういうものよりも動力船による影響の方が大きいだろうということで、今回はカヌーなどの利用自体は許可を要する行為とはしていないところでございます。
今後、そういうカヌーなどの利用によって野生動物等への影響が認められる場合には、今回の改正で同様に追加されます、海域における利用調整地区制度を活用いたしまして、影響の防止、あるいは適正な利用の誘導を図っていくことが適当と考えております。
○田名部委員 比べて大きい小さいではなくて、影響があるかどうかということが大事なわけですので、しっかりと調査をしていただきたいんですが、それを、大変広い海域の中でそういった実態調査をしていくというのはまた非常に困難でもあると思うんですが、どういった体制でその調査を実施していかれるおつもりなのか、教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 海域の自然環境の現状把握、あるいは変化の把握に関して少し幅広く申し上げますと、昭和四十八年度から自然環境保全基礎調査を環境省は実施してきております。この中で、海につきましては、藻場、干潟、サンゴ礁など、主に沿岸域の重要な生態系を対象として、その分布状況等について把握をしています。また、平成十年には、こうした調査の企画、実施の拠点といたしまして、生物多様性センターを設置しております。
さらに、平成十五年度からは、全国を対象に、生態系の異変、変化をいち早くとらえて適切な保全施策につなげるように、モニタリングサイト一〇〇〇事業という事業を実施しております。この中で、海域の関係では、藻場、干潟、サンゴ礁を初め、鳥類、ウミガメなどを対象といたしまして、非常に多くの研究者、NPO、市民ボランティアなどの協力もいただきまして、長期的な生態系の変化の把握に努めています。
このほか、平成二十年度からは、海洋関係の省庁や独立行政法人などが持っております海の生物多様性情報を収集あるいは統合いたしまして、海洋自然環境情報図をつくるという取り組みにも着手したところでございます。
動力船の規制をどこにすべきかという具体的な施策を進める上でも、みずからこういう調査をし、あるいは関係機関の協力を得たり、いろいろなところが持っている情報も集めて、そういうものをもとに重要な場所を見出して的確に対応していきたいというふうに考えております。
○田名部委員 海域においては動力船だけじゃなくて釣り人であったりとかダイバーであったりとか観光船であったりとか、漁業もそうですけれども、いろいろな利用者がいる中で、それが適正にきちんと利用されているのか、生物多様性の保全の観点からしっかりとした調査とその取り組みをしていくことが大事だと思うんですね。
特に海域の場合は、陸域だと目で見てすぐに変化に気がつくということがあっても、海の中のことであるとなかなか変化に気がつきにくい、そういうこともあると思いますので、ぜひ調査体制もしっかり整えていく必要があると思うんです。これは何も海域にとどまらず、今のモニタリングだとか調査、管理体制について非常に人手が足りていないんじゃないだろうかというような疑問をいろいろ見ていて感じました。
そこで、海域にとどまらず陸域においても環境の保護、保全といった管理がしっかり行われているのかなということをお伺いしていきたいと思うんです。
今、レンジャー、アクティブ・レンジャー、グリーンワーカー事業など、いろいろな、ボランティア団体も含めて、お願いをしながら管理をしているわけなんですが、現在、こういった現場で実際に活動していらっしゃる方々、これはきのう資料をいただいたんですけれども、レンジャーだと二百六十六人、アクティブ・レンジャーは八十名ということです。
この予算が多いのか少ないのかはあれですけれども、グリーンワーカー事業というのもあって、国立公園などの貴重な自然環境を有する地域において、地域の自然環境や社会条件を熟知した地元住民の方々をボランティアではなくてグリーンワーカーとして有償で雇用しているという事業ですよね。各種自然環境保全活動を実施するというもので、野生動植物の保護、保全業務など、また環境美化業務などが各地で行われているということです。
さっきのレンジャー、アクティブ・レンジャーも含めて、ちょっと私の持っている資料のこの人数が正しいのか、どのぐらいの人たちがここにかかわっているのか。グリーンワーカーについても教えていただきたいんです。どのぐらいの人数で、またどのぐらいの予算で活動しているのか、これまでの実績というのがどうなっているのか、教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 まず体制でございますが、生物多様性あるいは自然環境の保全、保護を担当する現地職員としてレンジャー、自然保護官ですね、またこのレンジャーを補佐するアクティブ・レンジャーを配置しておることは、先生からお話のあったとおりでございます。
数字につきましては、ちょっと資料に正確さを欠くところがございまして、今年度末までに二百五十五人のレンジャーが配置できるように、そしてアクティブ・レンジャーは八十名が確保できるようにということで、そういう人数を配置して、全国で業務に当たらせておるところでございます。
しかしながら、例えば国立公園でいきますと、全国で二百万ヘクタールある、非常に広いところでございます、二十九の国立公園すべてにレンジャーを駐在させておりますが、そういう国立公園の仕事だけではなくて、外来生物なんかも含めて、野生生物に関する非常に多種多様な仕事、業務がございます。
こういう業務が幅として非常に広がってきているという実態にありますし、国立公園につきましても、社会から求められるいろいろな要請というものも、幅が広く高まってきているということでございます。そして、現場では一層よりきめ細かな公園管理が必要になってきている、こういうことでございますので、予算的にもおのずから限りがございますし、全体の定員の状況というものも厳しい中でございます。
しかし、しっかり仕事をしていかないといけないし、我が国の自然環境、生物多様性をやはり現場で支えてもらわないといけないということでございますので、私どもとしましては、例えば配置を効率化というか合理的な配置を進めていくとか、もちろん現地の職員の数をできるだけ確保していくということを第一にし、それから、そういう職員などについて研修を行ったりしていわゆる対処能力の向上といったものも進めて、全体としてしっかり現場の管理ができるようにしていきたいと思っています。
○田名部委員 アクティブ・レンジャー、またレンジャーもそうなんですけれども、実際には現場で活動するというよりもデスクワークが非常に多い。実際に現場に出て活動をすることが困難な状況にあるのではないかというふうに考えています。環境省さんの方でそういう状況であるかどうかというのを把握しておられるかどうかわかりませんけれども、幾つかこれで重要な事故とか問題も起こっている。
一つは、例えば立山のアルペンルート。これは、非常に繁殖力の強い外来植物の駆除のために除草剤の使用がありました。もちろん、生態系を守っていくために除草剤の使用がいいかどうかということを言えば、私は、それは余りよくないことだろうと思うんですが、実際、この方々は十年以上前から手作業で除去作業を行ってきたんです。十年以上前からですよ。今言ったように広大な区域の中で、少ない人数で、何とかこれを守ろうと思って、手で抜いても抜いても追いつかない。そこで除草剤の話が出てきたんですが、やはり人手が足りない、もっとたくさんの人手で管理をしていけば、こんな十年間も手作業の除去作業なんかしなくてよかったかもしれないなと、大変御苦労もあった。
もう一つは、これは私の地元青森県十和田湖の奥入瀬渓流、これは裁判も行われてこの間結論が出たんですが、御存じでしょうか。奥入瀬渓流の遊歩道において、観光でいらしていた方が、そこの木が落ちちゃった、これは特別保護地域なんですね、奥入瀬渓流は。木が落ちて下半身不随になってしまった、下半身麻痺になってしまった。これは管理をしている県と国に責任があるんじゃないかということで裁判が行われました。約二億の損害賠償ということであったんですけれども。これも、もちろん被害に遭われた方にはお見舞いを申し上げますし、大変なひどい事故だったというふうに思っています。
ただ、やはりこういうことを防ぐという意味においても、本当に現場に張りついて管理をしていくという人員の確保をしなければならないんだろうと思うんですね。ここは、まさに大臣初め環境省の皆さんがほかの省庁としっかりとやり合って予算を確保してくる、そしてその体制をしっかり整えて環境を守っていくんだということをやっていただかなければならないというふうに思うんです。
このアクティブ・レンジャーですけれども、これは非常勤職員でありまして、最長でも任期が四年で、これは更新できないということになっているんです。きのうお話を伺いましたら、四年間丸々いる人の方が少ない、若い人も結構、大学が終わってすぐにそこで仕事に、非常勤として働く人もいるということだったんですが、やはりこういったことを見直していく必要があるんじゃないかなと思うんです。
私は、今、消費者特別委員会にもいまして、その議論の中に加わっていて、実際、消費者相談員の方々というのも三年ぐらいで雇いどめに遭ったりする。ようやく現場のことがわかってきて、現場で能力を発揮できるというときに仕事をやめざるを得ないというような状況もあるんですね。
ですから、やはりこれは、仕事を覚えてきたという人たちを四年間でやめてもらいましょうということではなくて、人手が足りないわけですから、こういったことをしっかりと見直していただくことも重要なのではないかなと思うんです。ぜひ皆さんの知識と経験を生かす、もしくは、環境省をやめられた方々でもそういった能力がある方がたくさんいるかもしれませんので、そういった方々を活用するだとか、そういうことも含めて御検討いただけないでしょうか。これは大臣から御答弁いただきたいんですけれども。
○斉藤国務大臣 レンジャー二百人強で二百万ヘクタールを見ている。一人当たりにすると一万ヘクタールになるわけですから、いかに大きな労働がそのレンジャーにかかっているか。しかし、そのレンジャーにつきましては、今年度末をもって二百五十五人にしたいということなんですが、今、定員を減らす中で、ここ五年で二十人増員を行ったところでございます。
今、田名部委員の御指摘は、このアクティブ・レンジャー、今八十人おりますけれども、そのアクティブ・レンジャーの制度等を見直して、ある意味ではまたボランティアの人も含めて、国立公園を守っていく人員を拡充すべきではないかという御趣旨、私もそのように思います。
いろいろな局面で、予算の拡充、人員の確保、そして、その人たちがまた事務手続の仕事に追われて現場に出られないという現状も御指摘になりました。私も現場に行ってそういう声も直接聞いております。本当の仕事ができるように、また予算の拡充、人員の拡充等、頑張っていきたいと思っております。
○田名部委員 ありがとうございます。
それともう一点、さっき申し上げましたグリーンワーカー事業なんですけれども、具体的な実績だとか予算とかということはなかった。ごめんなさい、私、グリーンワーカーについて通告していなかったんでしょうか。
一昨年からのまさに百年に一度の経済危機、リーマン・ショック以降深刻な経済危機の状況にあるわけです。そういった中で、ぜひ、国立公園などの生物多様性の確保、また雇用の創出として、このグリーンワーカー事業に力を入れていただきたいなというふうに思うんですね。今、大臣から、予算をとっていきたいという御決意をお伺いしましたけれども、ぜひ、予算を大幅にとって、ここで雇用を創出するんだ、そして自然を守るんだということを、リーダーシップを持って行っていただきたい。
私たち民主党が政権をとれば、ぜひともこのことには相当な力を入れて実現をしていきたいというふうに思っているわけですが、ぜひこのことも、さっきのレンジャー、アクティブ・レンジャーのみならず、このグリーンワーカー事業は非常にいい事業だと思うんです。大臣、今ボランティアというお話もありましたけれども、ボランティアといった善意の力のみならず、やはり経済、雇用の問題ということをあわせて、今の社会情勢にこたえるような取り組みを環境省として行っていただきたいと思います。
もう一度御答弁願えますでしょうか。
○斉藤国務大臣 「緑の経済と社会の変革」、いわゆるグリーン・ニューディールの構想の中でも、自然共生社会を構築するということは一つの大きな柱になっております。雇用創出、社会の活性化という意味からも、この事業に力を入れていきたいと思います。
○田名部委員 ありがとうございます。ぜひ期待を申し上げたいと思います。
そこで、もう一点。青森県世界遺産の白神山地、御存じでしょうか。この世界遺産白神山地は林野庁の管轄になるんですね。ここで最近、木が傷つけられる、木が切られる、そういう問題があったんです。こういうことを考えると、世界遺産白神山地というだけではなくて、特別保護地区ということも含めて、さっき言った、青森でいうと奥入瀬渓流、十和田湖がそうなんですが、利用する側の意識、認識というか、そういったことも非常に重要なんだと思うんです。
私、実際、恥ずかしながら、十和田湖には何度も何度も行ったことがあって、私たちは遠足でも十和田湖、奥入瀬渓流を歩くということがあったんですが、では、そのときに、ここは特別な地域であるんだとか、どういうことをしちゃいけないだとかということを考えていただろうか、知っていただろうかなと思うと、何にも知らずにただ遠足で歩いていた。きれいだなとか、空気がおいしいなとか、お昼御飯が楽しみだなとか、いろいろなことを思いながら歩いていたと思うんですが、やはり、今現在、観光客の方もたくさんいらっしゃるわけですが、そういった意識をしっかりと持っていただくということが大事。つまり、教育なんだと思うんですね。
それとあわせて、例えば全国の中ではマイカー規制などを行っているところもある。マイカー規制は国土交通省さんの方でしょうか、後でまたお答えをいただきたいと思うんですが。例えば、現場まで行って、ここから先はマイカーは利用できないんですよ。それは一体なぜだろうと考える。バスに乗りかえて、その中でいろいろな教育、ここはどういう地域なのかという話を聞きながら、理解をしながら自然を楽しんでもらう。こういったことが自治体また地域の自主的な取り組みだけで十分なのかなというような気もするんですけれども、これからの教育の体制のあり方、また、地域のマイカー規制などを含め、環境省としての自然を守るという視点からの取り組み、こういったことを今後どうお考えなのか、教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 国立公園の自然あるいは生物多様性の状況を見る、自然を体験するという意味で、たくさんの方々が訪れます。その結果として、残念ながら負の影響が出るというようなケースがございますので、そういう利用にうまく対応するために利用調整地区の制度があったり、あるいは特別保護地区の中では、場所を限ってということになりますが、立ち入り規制ができる、生態系への悪影響を防止する。
また、マイカー規制、これにつきましては、今、全国十七の国立公園、二十九カ所でマイカー規制を実施しているところでございます。このマイカー規制は、非常に交通渋滞が起こるというようなところで、交通混雑を緩和して自然環境の保全と快適な公園の利用というものを両方確保しよう、こういうものでございます。実施に当たりましては、環境省だけではなくて、もちろん、道路管理者それから警察、こういうところと連携しながら具体的な対応をしているところでございます。
こういった利用による影響を防止して国立公園の自然に親しんでもらう、こういうための施策、対策につきまして、これからも力を入れていきたいと思っています。
こういう規制の趣旨であるとか、どこでやっているというような情報を、私どものビジターセンターであるとか、あるいは地元の関係機関などを通じて情報提供を広くしていきたいと思っておりますし、そもそも、こういう対策をとるべき場所というものを、必要なところで一カ所でも多く実現できるように努力を重ねていきたいと思います。
○田名部委員 ぜひ、今、学校教育の中でも、環境について学んでいこう、そういう方向になっていますので、これもかけ声だけにならないようにしっかりと、子供たちが環境についてのしっかりとした考え方を持てるような環境教育ということにも環境省としてお取り組みをいただきたいと思います。
もう一点御指摘をしますと、さっき言った世界遺産の白神山地は、林野庁がいろいろな管理をしている、環境省さんもかかわって一緒に合同で今やっているというようなことですけれども、ぜひ、そこの連携をしっかりと深めていく必要があるんだろうというふうに思います。縦割りでいろいろなところに弊害が出てきている中、環境省さん、ぜひこれは連携をとって行っていただきたいと思いますし、さっき村井委員からも御指摘があった、国土交通省の皆さんとの連携ということも含めて、しっかりとした体制をつくっていただきたいなというふうに思います。
例えば、この利用者の意識ということでいえば、これまでも何度か議論に出ていると思うんですが、利用者の一定の負担です。それは利用料とでもいうんでしょうか。それが三百円なのか、五百円なのか、千円なのか。そういうこともこれからも継続して議論していく必要があるんじゃないかな。社会全体、今、日本としても、環境税をどうするのか、そういうことでの国民の意識を高めましょうというようなこともあるわけですので、こういった自然を利用することへの利用者としての負担ということについても検討していく必要があるんじゃないかと思うんですが、大臣、そこに関してはどんなお考えでしょうか。
○斉藤国務大臣 これは、これまでにも大変長い議論がございます。また、大変難しい議論です。日本の国立公園はいわゆる地域制公園というそうですが、例えば、アメリカのナショナルパークなどは全部国家が持って、中の造営物はすべて国がつくるという造営物公園、こういう二つの種類があるんだそうですが、日本のようにその区域に民有地等を含む地域制公園ということでは、入園料や入山料等を徴収するというのは法制的な面でも非常に大きな課題がある、このように思っております。
また、自然公園法の「目的」には国民の保健、休養、教化という言葉が使われておりますが、こういうことに資することを目的とするということも慎重な配慮が必要と思います。
しかしながら、維持するために一定の負担を利用者に求める、先日もある大きな新聞の声の欄にそういう声が載っておりました。ということでございますので、今後、地域の関係者とも連携して検討を進めて、国立公園の適切な維持管理による質の高いサービスの提供に努めていきたいと思っております。
○田名部委員 この前の質問でも出ていましたけれども、バランスということが非常に大事であるし難しいという、私も、きのういろいろ御説明を聞いていて、なかなか簡単にはいかない問題なんだなということも理解はしましたけれども、しかし、やはりこの議論をとめてはいけないと思うんです。自然を守るというその視点から、常に、ではどうするべきなのかという議論をし続けていただきたいというふうに思います。
だんだん時間が来たので、質問というよりはちょっと話をさせていただきますと、こういうところを指定したい、守りたい、自然保護したいと思っていても、土地の所有者との調整がうまくつかずに、なかなかそれが進まないという実態も現実にあるわけです。それを地域が嫌だと言ったから、所有者がだめだと言ったから、だからそれはできなくて仕方がなかったんだということではなくて、国としてどう責任を持ってどう調整を図っていくのか、どうリーダーシップをとるのかということが求められているんだと思います。
その観点から一つお伺いしたいと思いますが、沖縄の泡瀬干潟について、きょうは内閣府の方もお越しいただいていますので、まず内閣府の方に先にお答えいただいて、大臣の御見解を伺いたいと思います。
この泡瀬干潟でありますけれども、そこには百七十四種の絶滅危惧種が生息をしています。この生態系の貴重さというのは、専門の研究者、学会、環境保護団体、また、ラムサール条約事務局長やオーストラリア環境遺産大臣など、外国の皆様からも、非常に重要だ、世界レベルの自然遺産だと言える、こういうことが言われているんですね。しかし、そこで公共事業が進もうとしている。
本当にこの生物多様性基本法をつくり、また、ことしは日本でCOP10が行われる、世界に日本は自然環境をこのように守っていくんですよと堂々と言えるような私は取り組みをするべきだと思っていますが、まず内閣府の方から、これについてどういうお考えなのか、そして、大臣として何を守るためにどういうことをこれから提言していくのか、お考えをお聞かせください。
○清水政府参考人 泡瀬地区の埋立事業でございますが、沖縄市における国際交流拠点の形成を目指す東部海浜開発事業の一環ということで、沖縄振興計画、沖縄市総合計画に位置づけられたものでございまして、これまで地元の沖縄県、沖縄市の要請に基づき、国としても県と市に協力する形で取り組んできたところでございます。
本事業につきましては、計画段階で干潟の埋め立てを最小限とするよう出島方式を採用してございます。また実施に当たっては、適切に環境影響評価を実施し、委員会において専門家等の意見を聞きながら、環境への影響に十分配慮しつつ工事を実施しているところでございます。
国としては、県と市の考え方も十分聞きながら協力して進めてまいるべきものと考えてございますし、今後とも環境への影響に十分配慮しつつ取り組んでまいりたいと考えております。
○斉藤国務大臣 保全についてお尋ねのございました泡瀬干潟における埋立事業でございますけれども、これまでのアセスメントや、公有水面埋立法の手続を行う中でやらなくてはならないとされた環境保全上の配慮を十分に行っていただくことが重要であると考えております。
環境省といたしましては、泡瀬干潟の重要性は十分認識しております。今後とも沖縄県の環境部局と連絡をとりながら、事業者における環境保全上の措置が確実かつ適切に実施されるよう注視してまいりたいと考えているところでございます。
また、今般の土砂投入等の工事に関しましては、工事区域内にあるサンゴの移植について地元のNGOなどから要望が出され、私からも、直接できることがないか、佐藤沖縄担当大臣に対応をお願いしたところでございます。サンゴが良好に生育できる形で適切に移植が実施されるよう期待をしているところでございます。
○田名部委員 今回の改正に関する資料に、生物をはぐくむ豊かな海域の適切な保全ということがあるわけです。自然は一度壊れたら取り戻すことができない。今まで、環境だとか自然よりも公共事業だとかそういうことに重きを置いて国が進んできてしまった。そこをもう一度、何が大事なのかを見直そうという、今まさに国が進むべき方向が大きくいい方向に変わろうとしているわけですから、環境省の役割、大臣の役割、私は本当に大きいと思うんです。ぜひここは負けずに、何を守るべきなのか、何が次の世代のためになるのか、そのことをお考えいただいて、適切な判断をしていただきたいというふうに思います。そのことを期待して、終わります。
ありがとうございました。
○水野委員長 次回は、来る十四日火曜日午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時十六分散会