衆議院

メインへスキップ



第4号 平成22年3月30日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十二年三月三十日(火曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 樽床 伸二君

   理事 太田 和美君 理事 木村たけつか君

   理事 橋本 博明君 理事 山花 郁夫君

   理事 横光 克彦君 理事 齋藤  健君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      石田 三示君    大谷 信盛君

      川越 孝洋君    川島智太郎君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      小林千代美君   斎藤やすのり君

      田島 一成君    田名部匡代君

      玉置 公良君    村上 史好君

      森岡洋一郎君    矢崎 公二君

      山崎 摩耶君    山崎  誠君

      吉川 政重君    小池百合子君

      近藤三津枝君    園田 博之君

      古川 禎久君    山本 公一君

      吉泉 秀男君

    …………………………………

   環境大臣         小沢 鋭仁君

   環境副大臣        田島 一成君

   内閣府大臣政務官     泉  健太君

   国土交通大臣政務官    藤本 祐司君

   環境大臣政務官      大谷 信盛君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            鷺坂 長美君

   環境委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  工藤 仁美君     山崎 摩耶君

  矢崎 公二君     川島智太郎君

  中島 隆利君     吉泉 秀男君

同日

 辞任         補欠選任

  川島智太郎君     矢崎 公二君

  山崎 摩耶君     工藤 仁美君

  吉泉 秀男君     中島 隆利君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

樽床委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として環境省大臣官房審議官伊藤哲夫君及び環境省水・大気環境局長鷺坂長美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

樽床委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

樽床委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉川政重君。

吉川委員 おはようございます。民主党の吉川政重でございます。この委員会での初めての質問となります。

 まず初めに、小沢大臣、田島副大臣、大谷政務官におかれましては、この間、COP15の取り組み、あるいは懸案となっております地球温暖化対策基本法案の取りまとめ、さらに、控えております生物多様性条約第十回締約国会議の日本での開催に向けまして、御就任以来、息つく間もないほどの激務をこなしていただいていると御推察を申し上げます。一議員として感謝を申し上げておきたいと思います。

 私は、今提案をいただいております大気汚染防止法、水質汚濁防止法の改正については賛成の立場ではございますけれども、今回改正の発端となっております法令違反事例の根絶には今後さらなる改善が必要との認識もあわせて持っております。そういう意味からも、幾つかの問題点も指摘をさせていただきながら、提案も行わせていただきたいと存じます。限られた時間でございますので、どうぞ的確なる答弁をお願いいたします。

 まず、今回の大気汚染防止法そして水質汚濁防止法の改正の背景には、排出基準を超過しているにもかかわらず測定データを改ざんするなどの法令違反事例が近年多発をしているということがございます。

 しかも、データ改ざんといいましても、何もその実態は手の込んだ巧妙なものではありません。ごく単純な手口が多いわけでございます。立入検査時の排水に川の水をまぜてこれを薄めたり、あるいは、排出ばい煙の測定の針、これは多分、時間で回転する記録紙の上にインクのついた針が乗って記録をすると思うんですけれども、超えている時間、担当者がその針を押さえて、一時間、二時間押さえて針が上に振れることをとめるといったごく単純な手口なんですね。

 しかも、これらが起こった事業所は、日本を代表する一流企業が多うございます。しかも、三年や五年、長期にわたってこのようなデータ改ざんが行われてきたという事実も明らかになっているところでございますから、私は、手口は単純であっても、この問題の根の深さをかいま見るような気がいたします。

 極めて残念ではありますけれども、これら発覚したケースはあくまでも氷山の一角ではないか、現実に今も同じようなことが行われているのではないかと危惧をするわけでございますけれども、まずこの点についていかがでしょうか。

田島副大臣 お答え申し上げます。

 企業によるデータの改ざんにつきましては、平成十七年に判明いたしました大手鉄鋼メーカーの事案以来、こうした事案が発生するたびに、自治体を通じまして各企業に対する立入検査等を求めまして、製紙メーカーでありますとか電気事業者等においては同じような事案が相次いで明るみになってきたところでございます。

 しかしながら、最近におきましても、これらの調査におきましては確認ができなかったデータ改ざんが明らかとなっておりまして、御指摘いただきましたように、環境省におきまして把握している事案が必ずしもすべてではないというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、今回の改正によりまして、測定記録の保存を新たに義務づけるとともに罰則を創設するとしたところでございまして、あわせて自治体による立入検査の効果的な実施を促進することによって適正な測定記録の確保を図っていきたいと考えているところでございます。

吉川委員 本当にそうだと思いますね。わかっているのは本当に一部で、この二つの法律の目的を達成するためにより実効的な手段を講じていく必要があろうかと思います。

 この対策を考えるときに、今も副大臣おっしゃったように、二つの視点からこれを考えていくべきだと思います。一つは、ばい煙の排出や排水を行っている事業所、企業側の問題、いま一つは、それを監視する自治体側の問題、この二つの視点から実効性の確保を考えていくべきだと思います。

 まず企業側の問題でございますけれども、今回新たに、排出状況の把握や排出削減の取り組みについて、改正案で事業者の責務規定が盛り込まれております。

 過去に発生した違反事例においては、基準を超えても操業をやめる権限が社内の環境管理担当者に与えられていない、そんなこともあります。あるいは、直接の利益を生むわけではない環境管理部門がコスト圧縮のために真っ先に人員削減の対象にされてしまう、そんなことがこのデータ改ざんの背景にあるんじゃないかと思うわけでございます。

 実際、ある企業のデータ改ざん事例の当事者は、排出超過があっても操業停止ができない、だからといって法令違反もできないということで、やむなくデータを改ざんしてしまったと述べています。企業活動と環境保全の板挟み、言葉は語弊があるかもわかりませんけれども、まじめな人ほど陥りやすい落とし穴があるのではないかというふうに危惧をするところでございます。

 こういう意味でも、公害防止統括者と公害防止管理者の確保、あるいは業務と権限の明確化、身分保障が極めて重要でありますし、これが現場での未然防止という観点からも不可欠であろうと思うところです。

 この点、ことしの一月に出された中央環境審議会の答申では、「「公害防止管理者」から経営者等に提案できる仕組み、「公害防止管理者」がその適正な業務の遂行に当たって不利益な取扱いを受けないような方策等を検討することが有用である。」と指摘をされております。

 これを踏まえて、事業者による公害防止管理体制整備の促進を図るため、早急にこれらの方策の検討がなされるべきであると考えておりますけれども、今後の政府の取り組み方針はどのようになっているのでしょうか。

 違反発覚の経緯は、他の事項が発端となった事例も多うございます。一流企業の長期にわたるデータ改ざんを許してきた構造的な問題が根底にあるのではないか。これらを踏まえて、政府の御所見をお伺いいたします。

田島副大臣 御指摘をいただいておりますような御懸念も十分承知をした上で、今回の法改正に至ったところでございます。

 これまで、環境省といたしましては、事業者における公害防止管理体制の整備の促進を図っていくために、経産省とも連携をいたしまして、平成十九年三月に事業者向けガイドラインを策定してきたところでございます。

 このガイドラインにおきましては、まず、基準値超過等の情報を経営層に報告できる体制やその仕組みを構築すること、本社に対する設備また体制面の改善を提案していくこと、さらには、現場からのリスク情報の通報ホットラインの整備、また、通報者が不利益処分を受けることのないような措置などを掲げまして、この趣旨について周知徹底を図っていかなければならないと考えているところでございます。

 さらに、先進的な企業の中にありましては、測定結果を経営者と共有したり、また経営管理の部署にも緊急時には工場のラインをとめるといったような権限を与えるなど、全社的に公害防止に取り組んでいるところもありますので、このような優良事例の情報提供等もしっかり図っていき、御懸念いただいている問題に対応できるよう取り組みを進めていきたいと思っているところであります。

吉川委員 ありがとうございます。

 さらに、現場の実態として深刻なのは、いわゆる環境認証、ISO14001の認証企業でも、五九・二%が、今回の事例も含む環境不祥事が起きる可能性があると、環境管理の担当者が回答しております。

 このデータは、ISO14001の認証を受けている全国三千の事業所についての日本適合性認定協会の調査でございますけれども、同じ調査で、ISO担当者の実に七三・八%が、みずからの担当業務遂行についての悩みがあると答えております。環境基準遵守についての社内の意識の低さやあるいは企業の本業との壁などが主なものとなっています。

 しかも、その悩みをどこに相談して解決するのかという問いに対して、問題点を当該部署に指摘して改善を勧告する、これは本来の解決策だと思うんですけれども、そう答えたのはわずか二一%であります。一番多い相談相手は何と他社の担当者、これが三一%、次が他部門の担当者、これが二四%、相談相手がいないが二一%もあります。あと、社外の専門家が一六・五%と続きまして、孤独な環境管理担当者の姿が浮き彫りになっていると思うわけでございます。

 先ほども申し上げましたとおり、この種の違反事例は、決して特定事業だけで見つかった悪質な行為ではありません。実は、どのような企業にも同じような落とし穴が潜んでいるということであります。企業現場はぎりぎりの合理化の中で業務を余儀なくされる一方で、環境に関する規制や社会の目は厳しくなるばかりであり、性善説ではこれは対処できないと思います。だからといって、私は、すべて性悪説で対処しろと申し上げるつもりはございません。むしろ性弱説、現場は弱いという認識に基づいた対処が必要であると思うわけでございます。

 これらの事例の根絶のために、今回改正の罰則強化、三十万に引き上げる、あるいは新設をするということだけで果たして対応し切れるのかと危惧するものであります。やはり事業者任せだけではなくて、外部監査など第三者のチェックが入るシステムこそが再発防止のためにも必要ではないかと考えますけれども、これについての大臣の御所見を賜りたいと思います。

小沢国務大臣 吉川委員の性弱説というのはなかなか意味深いなと思って聞かせていただきました。私なんかも、性悪だと言われると、ちょっとなと思いますけれども、性弱だなと言われると、確かにそうだと自分自身も省みてそう思うところもあるわけで、そういった御指摘の中で、その担当者が、公害の管理者の皆さんが悩んでいらっしゃる姿というのは、非常にある意味では的確な表現かなと思いました。

 御指摘の第三者委員会とか、あるいはまた第三者機関ということでありますが、委員も御案内のように、この大気汚染防止法や水質汚濁防止法は、いわゆる第三者チェックというよりも、地方自治体が事業所に立ち入るあるいはまた必要な検査をする、こういう体系でできております。でありますので、確かに委員の御指摘は御指摘として、当面、環境省としては、地方自治体の公害防止監視体制の充実を図り、自治体職員に対する研修、自治体間でのノウハウの共有化等を進めて対応してまいりたい、こう思っているところでございます。

吉川委員 そうであるならば、なおさら、次に触れさせていただきます自治体側の監視体制の強化がより重要になってくると思いますけれども、現実は、現場は非常に弱体化されるというふうに指摘をされているところでございます。

 今回の改正案では、自治体が改善命令等を広く発動できるように、所定の改善を提案いただいております。今まで二つの条件、まずは排出基準超過のおそれがある場合で、もう一つ、健康被害があると認められる場合に限って自治体が改善命令や施設の一時停止を命じることができるとなっておりましたけれども、今回の改正で、後半の部分、健康被害があると考えられなくても、排出基準を超えているという判断ができれば直ちに自治体がアクションを起こせるという改善でございますので、これは確かに大きな前進であると私は評価をさせていただきたいと思います。

 しかし、先ほど申しましたように、一方で、自治体側の監視体制が近年大きく弱体化しているという実態がございます。例えば、大気分野担当職員数が減少している自治体が全体の四四%、水質分野でも約四〇%の自治体で担当職員が減少しているという実態がございます。

 これと連動して、排水施設への立入検査数も大きく後退をしております。ばい煙施設では、平成十年に二万八千六百九十二件、これが、平成二十年、十年間で一万六千三百十二件に減少しております。排水についても、特定事業場への立入検査も、平成十年、六万九千四百七十五件ありましたのが、十年間で四万三千五百九件に激減しております。自治体現場におけるマンパワーの不足が深刻だと言わなければなりません。

 そこでお尋ねするんですけれども、自治体における担当職員の監視能力の維持のために、これまでさまざまな研修制度等対策を講じていただいていると思うんですけれども、さらにそれをやはり強化する必要があろうかと思います。その充実のために今後具体的にどのような施策をお考えなのでしょうか、御所見をお聞かせいただきたいと思います。

 さらに、自治体による効果的な監視体制強化、これも急務の課題でございますから、このことも、さきの答申でも指摘されておりますけれども、やはり現実の地方自治体の財政状況から、人員及び予算の確保を行っていくことは現状では困難であります。しかし、規制の実効性確保のためには、自治体の体制整備は何としても必要であります。この点、来年度の予算には盛り込まれていないようでございますけれども、政府として、この点いかなるお考えをお持ちなのか。

 二つの質問をちょっとさせていただきました。それぞれ御答弁を賜りたいと思います。

大谷大臣政務官 委員おっしゃるように、地方自治体における人づくりというのは一番キーになってくるんだというふうに思っております。

 環境省としては、監視能力を高めるために、一つが大気・交通環境研修、もう一つが水環境研修を毎年実施しており、大体百名弱ぐらいの方に研修を受けていただいております。

 また、二年前、平成二十年からは立入検査の研修みたいなものも入れさせていただいておりますし、もう一つ、地方自治体の皆さん方の持っているノウハウや経験みたいなものを交流、交換できるような場でもって人材育成また能力を高めていくような取り組みも、環境省としてはさらに充実、応援していきたいというふうに考えております。

小沢国務大臣 測定や記録義務の実効性の確保ということで体制整備が必要ではないか、こういう御指摘でありまして、そのとおりだというふうに思っています。

 先ほど来、副大臣、政務官も答弁をしておりますが、自治体の担当者に対する研修の充実や立入検査のマニュアル作成への支援、自治体間のノウハウの共有化等々、自治体の体制整備に当たって、環境省としてできることはしっかり行い、さらなる体制整備の改善に対する要請もしっかりとしてまいりたい、こう思っております。

 予算については今後しっかり検討させていただきたい、こう思います。

吉川委員 自治体の現場の担当職員の皆さんのスキルアップの観点から、そして今大臣もおっしゃっていただきましたけれども、やはり人員の確保ということでは予算の拡充ということも重要でございますので、ぜひ今後さらなる御努力を賜りますように、これは要望しておきたいと思います。

 時間がありませんけれども、最後の質問ということで。

 私は、今回のデータ改ざんの事例の背景のもう一つは、直罰規定というのがかえってデータ改ざんのインセンティブになっているのではないかとかねがね思っております。

 通常は継続的に基準以内で操業されているのが、ちょっとしたアクシデントや、あるいは偶発的に排出基準を超えてしまう、今の法律ではそういう場合でも三月以下の禁錮または三十万円以下の罰金に処されてしまうということで、これはやはり記録に残ってしまいますので、このことが現場でもデータ改ざんの誘因になっているのではないかというふうに思うわけでございます。

 この点、事業者がそういう事例を未然に防止するというのがやはり一番の目的でございますので、そのような場合、速やかな届け出があり、そして自治体の指導を受けて原因究明や再発防止の策が講じられるということであれば、直罰規定の適用についてやはりもう少し柔軟性を持った対応が必要ではないかと思うわけでございます。

 例えが適当かどうかわかりませんけれども、自動車の交通の速度制限でも、一応法律では四十キロのところを、ちょっとでも超えたらこれは法を犯したことになるんでしょうけれども、現実はそういう形では摘発されていないというふうに思います。

 この点、審議会の中でもいろいろ御議論があったというふうに聞いております。排出基準の適用についてもう少し弾力的な運用がなされるべきだと思いますけれども、最後のこの点について政府の見解を求めたいと思います。

大谷大臣政務官 委員おっしゃるとおりだというふうに思います。

 施設を始動したときにはぎゅっとエネルギーが上に上がっていくので、ある一定の基準ラインを超えてしまうようなことというのはあるんだというふうに思います。そこは、おっしゃるとおり、実態に即した運用でやっていかなければいけない。それだけに、ふだんのコミュニケーションが大事になってくるのかなというふうに考えております。

吉川委員 ありがとうございました。

 この二つの法律の法令遵守の実効性確保のためにさらなる取り組みをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

樽床委員長 次に、石田三示君。

石田(三)委員 おはようございます。民主党の石田三示でございます。

 私は、新人議員ということで、今回が初の質問になりますので、よろしくお願いいたします。

 大臣初め副大臣、政務官の皆さんには、就任以来大変御苦労されながら私たちを引っ張っていただいていること、大変感謝し、御礼を申し上げる次第でございます。

 さて、今回の改正の背景には、一部の企業ではありますけれども、ばい煙や排水の測定結果改ざん等の行動があったということ、非常に残念に思うところでございます。また、改正に当たって大変重要なのは、なぜ改ざんが起きたのかということを検証し、再発を防ぐための改正になっているかということであろうというふうに私は思います。

 基本的には、企業のコンプライアンス強化を通じた、企業の自主的取り組みを通じた仕組みづくりを後押ししていくことだろうというふうに思いますけれども、それを補完する意味で、いわゆる公に対する見える化が必要であろうというふうに考える次第でございます。監視ではなくいわゆる第三者機関、市民に風通しのよい状況をつくっておくことが改ざん等の不適正事項や事故を未然に防ぐことにつながるのではないでしょうか。

 そこで、一月の答申にも、情報公開等を通じた地域住民や団体との適切なリスクコミュニケーション及びパートナーシップによる公害防止の取り組みや、住民、NPO等が持つノウハウを生かした地域の公害防止の推進を図るべきとあります。

 折しも政府は、鳩山総理の所信表明を受けて、新しい公共の担い手との協働を目指した円卓会議を発足させたところでもございます。民主党も、NPOの皆さんとの協議会、新しい公共をつくる市民キャビネットを設立いたしました。

 いわゆるNPOと企業というのは、長く対立関係にあったというふうに認識をしております。私は、二十一世紀というのは、いわゆる新しい公共、NPO初め多様な担い手とともに社会をつくっていく時代であろうというふうに思います。答申にもあるように、地方自治体や企業での公害防止対策の専門家がいわゆる専門知識と技術を生かして地域社会に貢献するためのNPOを組織している例もあると伺っております。今回のこの法律改正においても、新しい形のパートナーシップを後押しするような、そういった運用をしていくべきだろうというふうに考えております。

 こうしたNPOとの連携を図りながら、情報開示も含め、いわゆる見える化でございますが、住民理解やコミュニケーションを広げていくべきだというふうに考えておりますが、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。

小沢国務大臣 委員が御指摘の、まさに公害分野においても、NPOとの協力、あるいはまたNPOの皆さん方の役割を評価し、ともにやっていったらどうかという御指摘は、全く同感でございます。

 さらにまた、鳩山内閣における、鳩山総理の言う新しい公共という概念にも触れていただきました。まさに、私は、ある意味ではこの環境の分野こそ新しい公共という役割を最も活用できるところというふうに思っておりまして、閣議の中でもそうした発言もしてまいっているところでございます。

 これからの日本の成熟社会の中で、いわゆる公ということを考えたときに、ただ単に官という話だけで済むのかということを考えれば、さらにはそういった官を退職した人たちも、退職した後も新たなるそういったNPO法人をつくる、こういう活動も実際に行われてきているわけでありまして、まさに官も、あるいはまた一般の市民も、ともに力を合わせてそういった公の分野に取り組んでいきたい、これが鳩山内閣の目指すべきところでございまして、石田委員の御指摘と全く同じでございます。

 具体的な活動をどうしていくか、円卓会議等でさらに詰めてやらせていただきたい、こう思っております。

石田(三)委員 ありがとうございました。

 NPOとの協働がより一層深まりまして、公害防止、あるいは暮らしやすい社会が形成されるように、今後とも私も力を注いでいくつもりでございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 また、聞くところによりますと、本法律が制定された四十数年前には、公害防止管理者というのは大変花形の職業であったというふうに伺っております。また、近年、公害については、こういった言い方が正しいかどうかわかりませんが、一応一段落をして、企業内でも少し日の目を見ない仕事になっているというふうなことを伺っております。

 企業活動の現場を支える大きな職責を果たしていながら、非常に報われない、現場から声を上げることを疎まれるような仕事になってはいないんだろうか。縁の下の力持ちであります現場の管理者が評価される仕組み、現場から声を上げやすいような権限を持たせることがやはり必要なのではないでしょうか。答申の中にも、「同制度の効果を高めるため、「公害防止管理者」から経営者等に提案できる仕組み、「公害防止管理者」がその適正な業務の遂行に当たって不利益な取扱いを受けないような方策等を検討することが有用である。」とございます。

 改正法では、測定結果の未記録、虚偽記録等に対する罰則規定の創設、事業者の責務規定の設置等が再発防止のために提案されておりますけれども、これらの法改正の実効力を高めるために、答申にもございましたように、公害防止管理者が物を言いやすい状況をつくるべく対策を講ずるべきではないでしょうか。また、時には会社にとっては耳の痛いことをあえて言わなければならない立場にいる管理者の日ごろの地道な業務を第三者が評価し、誇りを持って仕事に取り組めるような制度の創設等も検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。所見をお伺いしたいと思います。

田島副大臣 先ほど吉川委員の質問に対してもお答えを申し上げましたけれども、事業者向けガイドラインの中で、このような、御指摘いただいている不利益等の扱いを受けないような方策につきましては今後も周知徹底を図っていきたいというふうに考えているところでございます。また、今し方御指摘をいただきました、報われない業務というような、非常にやる気をそぐようなことになってはなりません。それだけに、日ごろの地道な業務自体をしっかりと評価される、そういった光を当てていく対策もしっかりとやるべきだというふうに考えております。

 具体的には、先進的な公害防止活動、またすぐれた対策技術を取り入れた公害防止管理者に対する表彰制度などについても、御指摘いただきましたように、ぜひこの際、検討していきたいというふうに考えております。

石田(三)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、誇りを持って管理者が仕事ができるような体制をおつくりいただきたいというふうに思います。

 それでは最後に、汚水の流出事故対策についてお尋ねを申し上げたいと思います。

 環境省に作成をしていただきました全国一級河川における水質事故の件数の変化についてでございますけれども、この表によりますと、公共用水域における水質事故件数は、平成十年度から十年間で約三倍に増加しているということでございます。事故の深刻度合いによっては、この表の見方は大きく変わってくるというふうに私は認識をしております。

 化学物質の種類がふえて原因不明の突発の事故があったこともふえた原因として挙げられるとのことでございますが、もう一つ、市民の方が非常に関心を持って、連絡をされている件数が非常に大きくなったというようなことも伺っております。後者に関しては、市民の皆さんが環境に関心をお持ちになってきたということであれば、非常に理解をするところでございます。市民意識の高まりということで評価をするところだというふうに考えております。

 さて、それに関連いたしまして、水質汚濁防止法の事故時の報告対象物質の範囲の拡大についてお尋ねをしたいというふうに思っています。

 現在、対象物質は、約四十年前に決められたものが今日まで運用されておりまして、今回、政令で範囲の拡大をするということでございますが、過去四十年の間に、化学物質審査規制法に登録されている化学物質の量も約一・四倍、昭和四十八年の制定時が二万物質、平成二十一年七月時が新規八千五百物質ということでございます。そういったことからも、広い範囲での対象拡大が必要ではないかというふうに思います。

 さらなる汚染の拡大を防ぐことはもちろんでございますけれども、事故原因となった物質を含め、行政が状況を把握することで、今後の対策に生かし、事故を未然に防ぐことが可能になるというふうに考えます。事故件数の多い物質であれば、規制を強化することも考えられると考えます。よって、対象物質の範囲はいわゆる予防原則に応じてなるべく広く解釈をするべきだというふうに考えますが、御所見を伺いたいと思います。

大谷大臣政務官 石田委員御指摘のとおりでございまして、対象物質は拡大していかなければいけないというふうに考えています。

 例えば、トルエンという物質がございますが、印刷会社でこのトルエンを入れているタンクが破損した、そこから地下に流れ出て、地下水やわき水や川に行ってというような事例もございます。ですので、高度成長が終わって工場の施設というものが老朽化してくる中、パイプが腐ってそこから出ていくとか、いろいろなことが考えられますので、事故が三倍にふえてきた、それは、ありがたいことに意識が高くなって発見がしやすくなったということもあるんでしょうが、それと同時に、あわせて、さらなる予防を踏まえて拡大をしていかなければいけないというふうに考えております。

 これまでの委員の地元鴨川における取り組みを見てまいりまして、まさにNPOを初めとする人と人とのつながりの中で予防できることもこれまた多いと考えますので、ぜひとも御指導いただきながら、ともどもに取り組んでいきたいというふうに考えております。

石田(三)委員 通告した質問はこれで終わったんですが、もう一つよろしいですか。

 いわゆる未規制の小規模事業場への対応でございますけれども、本来、法規制に当たらないところではございますが、この部分がある程度大きい部分だろうというふうに私は考えるところでございます。これについて、法規制の中で対応できないところではありますけれども、先ほど申し上げましたNPOあるいは市民の中でそういった部分を盛り上げながらやっていく必要があるというふうに考えていますが、その辺の所見をひとつお伺いしたいというふうに思います。

小沢国務大臣 やはり、水と大気、水と空気は、本当に人間が生きていく基本ですよね。人間だけではなくて、あらゆる生物が生きていく基本だというふうに思います。

 そういった点において、まだ規制外の地域あるいはまた会社等に対する対応をどうしていくか、大変重要な御指摘をいただいた、こう思っておりまして、先ほどお話もありましたNPOの皆さんとの協力活動も含めて今後の課題にさせていただきたい、こう思います。

石田(三)委員 ありがとうございました。

 今回の法改正に伴いまして実行が非常にスムーズにされるように、今後ともひとつよろしくお願いをしたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

樽床委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 おはようございます。社会民主党の吉泉秀男です。

 質問の機会を与えていただきましたことに心から感謝を申し上げ、早速質問に入らせていただきたいと存じます。

 長く苦しみながら闘い続けてきた水俣病患者、昨日、熊本地裁から出された案で和解がされました。そこには大臣の並々ならぬ努力もあったと聞いております。本当にこの間の大臣の努力に感謝を申し上げさせていただきます。まだまだ全面解決については闘いが続くだろう、こういうふうに思っておりますけれども、長い間の闘いに敬意を表するとともに、政府関係者の皆様のなお一層の御努力をお願いしたいと存じます。

 経済成長を余りにも追い求め、大気、水、土壌を汚染し、人体に大きな被害を与え、命まで奪った公害問題を二度と起こしてはならない、こういう決意のもとで大気汚染防止法や水質汚濁防止法等の公害防止法令や条例などを策定し、努力なされてきた関係者に敬意を表しながらも、今現在、まだ農地が汚染されたままの状態や係争中の事件など、環境省で扱っているものが残されているんだろうというふうに思っております。まず、その現状についてどうなっているのか、お伺いをさせていただきたいと存じます。

大谷大臣政務官 お答えさせていただきます。

 大気汚染防止法の関係で国が被告になっているものということでいうと、大きく分けて二つございます。アスベストですが、大阪泉南地域と兵庫尼崎地域の訴訟、それから農地の土壌の汚染については、四百三十五ヘクタールで十二地域が今対象になっているというふうに把握をしております。

吉泉委員 自分自身、農村地域でもございます。まだカドミが出てきています。カドミが出るということについては、まさにその土地で何も作付されない、こういう状況があるわけでございます。

 私自身調べた段階では、今、十二件というふうに答弁があったわけでございますけれども、もっと多くあるんだろうなというふうにも思っております。しかし、この間、全体的に取り組みがなされ、そしてまた、土の入れかえなり、いろいろな形で努力をなされてきた。このことについては認めさせていただきながら、今後とも一層の努力をしていかなきゃならない、こういうふうに自分自身思っております。

 命を守る、地球の命を守りたいと鳩山総理は所信表明で何度も繰り返し、そして命を守る予算と名づけ、今提案されている法律案や消費者基本計画など、今国会で議論、さらには審議をされております。

 食品会社では、既に偽装事件などで倒産に追い込まれた会社も出てきております。日本を代表するメーカーが排出基準超過やデータ改ざんを行っている、そして何年も前から何社も出ている、こういう状況は、私としては理解ができないのでございます。人体に大きな被害を与え、大地を汚染し、今なお苦しんでいる大勢の人たちを思うとき、単に経費削減、公害防止管理体制の不備ということでは済まされないんだろうというふうに思っております。

 発覚してからの対応について、二十年四月に出された検討会報告では述べられておるわけでございますけれども、人体に与える被害、周辺に対する影響について事後の調査がどういうふうになされてきたんだろうか、こういったことについてお伺いさせていただきます。

鷺坂政府参考人 今回、さまざまな不適正事案の発覚となった契機の事例について御説明したいと思いますが、例えば鉄鋼メーカーにおける測定データの改ざん事例におきましては、事案発覚となった海面の水濁等は見られたものの、人への健康被害があったとは承知しておりませんし、他の事案についてもそのような報告は受けておりません。

 なお、自治体の対応といたしまして、事業者に対し、排出水の排出の一時停止命令あるいは汚水等の処理方法の改善命令等の措置を講じ、改善報告書を提出させております。そして、着実に改善され、排出基準等が守られているものと承知しております。

 また、事業者側においても、その後の取り組みとして、例えば排出口での管理状況等、ホームページ等で情報公開にも取り組んでいる、このように承知しております。

吉泉委員 幸いにも大きな事件にはならなかった、措置は済んでいる、こういう状況について今自分自身も安堵はしているわけでございますけれども、しかし、やはりそれぞれ周辺の住民、さらには多くの関係団体については、こういう問題だからこそ、いろいろな関心があるんだろうというふうに私は思っております。そういう面では、ぜひ力を入れてお願いをしたいというふうに思います。

 そして、今回、内部告発ではなく立入検査で発覚したという状況、そして、先ほど質問でも出されたわけでございますけれども、こういう状況というものがまだまだ多いんじゃないか、自分自身こういうふうに疑いたくもなるのでございます。それは、現行法では、排出状況の測定データの管理はすべて事業者が行う、そしてこういった部分は、データの改ざんが意図的に行われたという状況であっても、内部告発でない限り、それを摘発することについては難しい状況にあるんだろうというふうに思っています。

 消費者特別委員会でも論議されたわけでございますけれども、私は、事故が起きれば社会の批判を浴びる、こういう状況の中で倒産にまで追い込まれる、こういう厳しい状況の中で、事件が起きてからでは幾ら罰金を科しても遅過ぎる、こういうふうにも思っております。いかに事故を起こさないか、こういう部分が一番大きな論点として問われなければならないんだろうというふうに私は思っております。

 今回の法改正で、事業主に対する抑止力の効果はある程度期待はできるだろうというふうに思っております。しかし、今回の事例、そういった部分があったときに、強制力を伴った調査で発覚した、こういうふうなことを思ったときに、この部分の地方自治体の役割、大変重要な部分というものがあるんだろうというふうに私は思っております。

 そして、先ほどの質問の中でも、件数等は出ました、減っております。なぜこういう状況になっているのかという面では、私は、やはり環境省として自治体による立入検査の促進をどう図っていくのか、こういった部分について、少し方針的なものも含めて考え方をお聞かせ願いたいと存じます。

田島副大臣 お答え申し上げます。

 委員が御指摘をいただいたとおり、水質そして大気、どちらにおきましても立入検査の件数が減っているという事実は、大変ゆゆしき問題だというふうに思っております。

 しかしながら、御承知のように、昨今の自治体における公害防止対策に関しての人員でありますとか予算につきましては大変厳しい制約が生じておりますので、その事実等々も踏まえながら、さりとて、住民の安全、安心をしっかりと確保していくためには、効果的、効率的な公害防止対策も進めなければならないと思っております。

 そういった状況におきまして、今回のこの改正では、大気汚染、水質汚濁の排出基準の超過、また、事故が発生したときに自治体が事業者に対してタイムリーな対策を求めやすくなる制度改善というものを実施してきたところでございます。

 今回、環境省といたしましては、法律の改正に加えまして、自治体の担当者に対する研修を充実させていくこと、立入検査のマニュアルをつくっていくことに対して支援をしていくこと、また、それぞれ自治体間のノウハウをしっかりと共有していくための体制整備等に協力、また取り組みを進めていきたいと考えているところでございます。

吉泉委員 本当に、それぞれ事業主、事業所に対しても、さらには自治体に対しても、環境省の一層の努力、こういった部分が大変見えるわけでございますし、そのことには感謝もさせていただきたいというふうに思います。

 しかし、現状というものを考えていったときに、やはり財政問題、特に人員、そういう一つの専門性を持った職員がどんどん職場を去っていく、やはりそういう現状もあるんだろうというふうに思っておりますし、その面では、ぜひ現状に合った一つの方向性というものをてきぱきとお願い申し上げたいというふうに思います。

 平成二十年四月にまとめられた効果的な公害防止取組促進方策検討会報告を自分自身読ませていただきました。その中で、事業者と地方自治体の間で情報を共有して公害防止を進めていく上で、排出測定データが事業者から地方自治体に常時送信されるテレメーターシステム、そしてまたデータ収集システムが非常に有効だというふうに検討会の報告の中では指摘をしております。

 実際、私は、自治体と事業者で協定を結び、そこから進んでいく、こういうような状況まで持っていくということについては、各自治体、さらには事業者として大変多くの努力が必要だ、こういうふうに認識はしております。しかし、今の現状からいうならば、待ったなしという部分もあるんだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、今現在取り入れられている自治体と事業者は全国でどのくらいあるのか、また、環境省としてこのシステム導入を普及させていくための手だてがあるのかどうか、こういった部分についてお聞かせ願いたいと存じます。

田島副大臣 今御質問いただきましたデータ収集システムの全国の導入状況でございますが、大変申しわけございませんが、今、全体としての把握はさせてもらっていない状況にございます。

 しかしながら、例えば大気につきましては、一例ですけれども、神戸市におきましては、主に大規模な工場また事業場からの大気汚染物質の排出量の把握のために、窒素酸化物等の濃度、燃料使用量や排出ガス量についてのシステムを設置しているというふうに承知をしているところでもございますし、水質におきましても、例えば横浜市などにおいては、事業場から排出される水質汚濁負荷量の把握のために、COD、窒素、燐についてのシステムを設置しているというふうに聞いているところでございます。

 効果的な公害防止、とりわけ排出基準の遵守の確保といった観点から申し上げますと有効な手段であるというふうにも認識しておりますので、今回のこの法改正を契機にいたしまして、自治体に対してこの旨を改めて周知徹底していきたいというふうに考えております。

吉泉委員 しかし、二十年の四月にまとめられた検討会報告でございます。そして、私方が見るならば、やはり経済成長を追い求めてきて、そして公害、こういう状況の中でなお苦しめられている。こういう現状からいった場合に、約一年以上もあったわけでございますから、その部分が全体でどうなっているのかというものは恐らくつかんでいるんだというふうに思っております。自分自身、急遽の質問で大変迷惑をかけているわけでございますけれども、その辺についてはぜひしっかりとした一つの対応というものについてお願いをさせていただきたい、そういうふうに思います。

 今のこの一部改正の段階において、これからそれぞれの記録の保存といった部分をつけ加えているわけでございますけれども、ことしの一月の中央環境審議会の答申、「今後の効果的な公害防止の取組促進方策の在り方について」では、事業者による排出測定データ等の公表、開示の推進の必要性が盛り込まれているわけでございます。そういう状況の中で、明らかにしていくということについては、地域住民にとっても安心感が増すことになるわけでございますし、さらには事業者への信頼も高まる、こういうメリットがあるんだろうというふうに思っております。

 そういう面で、今の現状の中で、この点について環境省として議論はしてきたんだろうというふうに思っておりますけれども、残念ながら今回の法改正には盛り込まれなかった、こういった状況であるわけでございますけれども、その辺の経過、さらにはまた、情報開示といった部分について今後どう検討していくのか、この点についてお伺いさせていただきます。

田島副大臣 お答え申し上げます。

 事業者の排出測定データの公表につきましては、委員御指摘の中環審答申のとおり、事業者の排出測定データを含めた環境負荷等の状況の公表に努めるとされている環境配慮促進法に基づいた対応を活用することが有効と考えております。

 これに加えまして、中小企業者などへの負担を一定考慮しつつ、インターネットや環境報告書などを活用した事業者による排出測定データ等の公表、開示についてのガイドラインを策定いたしまして、その普及に努めてまいりたいと考えているところでございます。

吉泉委員 時間もなくなったわけでございますけれども、本当に一歩間違えればまさに企業そのものが社会から抹殺される、こういう状況でもございますし、そんな面を含めて、いわゆるモラルの高揚を含めてお願いをしたいと思います。

 最後に、水基本法の制定に向けた所見を大臣にお伺いさせていただきます。

 水行政は、環境省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省など多くの省庁に及ぶ縦割りの管理となっております。そういう中でも、私は、環境省のリーダー的な、そして一番引っ張っていく、水基本法の制定についてはそういう任務があるんだろうというふうに思っております。

 そういう中で、大臣として、この水基本法、どういうふうにして今のこういう縦割り、さらには横の連携といった部分をまとめて進めていくのか、このことについて決意も含めてお願いをさせていただきます。

小沢国務大臣 先ほども申し上げましたように、水は人間だけではなくあらゆる生命体のまさに生きていく根源だ、こう思っているわけでありまして、その水の大切さ、同時にまた、限りある資源であることの認識、そういったものをしっかり持つことが必要だというのは委員と全く同じ意見だと思っております。

 水に対する基本法をつくってはどうか、こういうお話でございます。

 この話は、いろいろな意見があるのは委員も御承知のとおりでありまして、ざっくばらんに申し上げると、一つは、水というのはやはり公的なものだという考え方から、あるいは、やはり水は地下水を含めて私的なものだ、こういう基本的に百八十度違う考え方等もございます。

 そういった中で、環境省としては、今、大谷政務官のもとで水問題に関するワーキングチームをつくらせていただいて検討させていただいているところでございまして、今後、そういったいろいろな議論を踏まえて対応してまいりたい、検討をまずさせていただきたい、こう思っているところでございます。

 水の大切さに関しては全く委員と同じでございますので、何とぞ御理解をいただきますようお願い申し上げます。

吉泉委員 オーバーしました。大変ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

樽床委員長 次に、古川禎久君。

古川(禎)委員 自由民主党の古川禎久です。

 先日も水俣病に関しまして動きがございましたけれども、振り返りますと、戦後の我が国の高度経済成長期におきまして不幸にして起こりました公害事件、こういうものに対して正面から取り組もうということで我が国の環境行政の出発があった。そして、その後も努力を重ねることによって着実に成果が上がってきている、このように私は考えております。

 一方で、産業や技術が大変高度化、複雑化してまいりましたし、ナノ物質、ナノ粒子というような今までにない物質が世の中に登場するようになり、また、さまざまな要因が全地球的に発散するという状況にもなってまいりました。人類が直面する危機はむしろ深刻化している、この半世紀の間に考えもしなかったぐらいに変化が起きてきている、このように思っております。

 環境立国日本は、自然環境、生活環境を守るんだ、そして国民の健康を守るのだ、この目的を願うのは当然のことですが、今や、この新しい時代においては地球規模の人類の福祉という新たな理想もまた射程に入れる、そういう時代に立ち至ったと思っております。

 したがって、私は、環境省には大いなる志を持って事に当たっていただきたいと思いますし、きょうも幅広い視点から期待を持って御質問をさせていただきたいと思っております。

 早速ですが、今回の法改正の背景となっております企業の排出データの記録不備についてでございます。

 大気汚染、水質汚濁の防止に関しましては、これまでも随時、規制、監督の適正化が図られてまいりました。今回の改正も、その意味で、これまでの行政の延長上にあって、法の目的をより確実に達成することを期しているものというふうに理解をいたしております。

 ところで、私、素朴に思いますのは、大変時代が変わったということであります。電子情報技術が格段に進歩をいたしております。排出データの記録、管理は格段に容易になりましたし、かつ、極めて低コストでできるようになってまいりました。記録の電子化によって、例えば将来起こり得る複合汚染、複合被害の分析、原因究明ですとか、未知の化学物質の研究調査、そういうものに活用できる。つまり、高い環境水準を追求する上で貴重な資源となり得るというふうに思っております。

 つまり、企業の排出データの記録は、生活環境を汚さない、自然環境を汚さない、国民に健康被害を与えない、そういう企業の本来の責務を超えて、データ蓄積による社会貢献、データという社会的公共財の提供、そういう意味を持つに至ったのではないか、このように思うわけです。イベントに資金を出すということだけが企業の社会的責任ではない。地味だけれども、こうして将来につながるような取り組みをするということは大変重要だと思うわけです。

 法改正は、あくまでも企業に義務を課して、場合によっては罰則も科すということですから、最低限のものでなければならないということは当然ですけれども、時代が変わっておるわけですから、ぜひ企業にもそのような使命感を持って今の時代に臨んでいただきたい。三年の保存とありますが、自主的に二十年ぐらいはデータを管理して何かのときに役立てるように、そういう高い志を企業には期待したいというふうに思っておるわけです。

 このように思う私の考えにつきまして、大臣、何かお感じになることがありましたら、お答えください。

小沢国務大臣 古川委員が環境問題に長い間御尽力を賜っておりますこと、本当にまず心から敬意を表したいと思います。

 今回の改正は、ある意味で事業者における法令遵守を確実なものにするために排出データの記録、保存に罰則を設けた、こういうことでありますけれども、それにとどまらない企業としての役割、あるいはまたデータとしての意味づけ、さらにはまた、それを可能にするITの発達、そういった御指摘があったわけでありまして、その意味においては、今回の改正は改正として、一般論としてそういった観点は重要かな、私もこう思っているところであります。

 環境報告書の整備だとか、さらにはそれをしていただくために、いろいろな環境報告書を比較できる、そのためのガイドラインをつくって、各環境報告書をしっかり比較できるつくり方をしてもらうこと等々も取り組んでいるところであります。

 さらにはまた、地球規模で環境問題が本当に重要な課題になってきておりますので、まさに、例えば水俣の教訓、あるいはまた大気でいえば、さまざまなぜんそく問題の教訓等々を踏まえて、そういったデータの蓄積というのは企業としても必要であろうと思いますし、行政としてもそういったものをもって経済発展の段階の国に教えていける、指導もしていける、そういうことも重要ではないかな、こう思っておりまして、環境省としてもそういった取り組みができないかということを検討している段階であります。

 今後とも、御指摘、御指導を踏まえて頑張りたい、こう思います。

古川(禎)委員 大臣、ありがとうございます。

 環境立国日本ですので、ぜひ意欲的にお願いを申し上げます。

 さて、法改正の背景として、もう一つ、担当者の大量退職という人材、人的資源の問題がございます。

 率直に、これは社会的損失だというふうに思います。昭和三十年代、四十年代にかけまして整備されました法制のもとで公害防止の実務に携わってきた優秀な人材です。このまま退職をされて、その技能が埋もれてしまうということは、地域的損失にとどまらず国家的損失だと言わなきゃならぬと思うわけです。

 練達の実務者が減って、また同時に、地方自治体も財源が苦しいわけですから、人材を育てるということも簡単にはいきません。何とか、これら練達の人たちを活用する、あるいはさらに頑張っていただく工夫ができないものだろうかというふうに思っております。

 先ほど、やりとりの中で大臣も少し触れておられましたけれども、今度は副大臣にお尋ねしてみたいと思うんです。

 これは一つのアイデアですけれども、例えば、大学あるいは大学の機能の一部を社会的企業として改組して活用する道はないかということを思うわけです。大学の役割を教育、研究というぐあいに一律にとらえるのではなくて、地域における実務と訓練、それにかかわる研究拠点としても機能させる。公害防止等の行政の実務経験を有する人材を大学に送り込むことによって、大学と実務の現場、これをフィードバックさせることによって技能を生かしていただける、そういう一つの工夫というのはどうかなと。もちろん、文科省ともこれは一緒に考えていっていただかなきゃならぬことですが。

 といいますのは、私、およそこの高齢化社会におきまして、定年後も技能、経験、知識を生かして生きがいを持って社会貢献をしていただける、働き方の新しいサイクルというんでしょうか、こういうものがぜひとも必要な場面だと思っております。

 例えば、近年、いわゆる公務員改革、官僚の天下りの問題とか、国民的な議論を呼んでおりますけれども、ただ天下りがけしからぬということで官僚を攻撃して、物事の一面だけを見たところでなかなか解決しないのではないか。さまざまな有能な人材がいろいろな場面で社会で働き、貢献できるというトータルでのシステムをつくっていかないと、事は解決しないのではないかなというようなことをかねて思っております。

 ぜひ、今回の公害実務においても、せっかく行政実務の経験を持っている方がおられる、この方々に何とかしてさらに頑張っていただかなきゃいけないというこの場面において、例えば私が今申し上げたような一つの提案について、副大臣はどう思われるか。あるいはまた副大臣なりのお考えがあればそれもお聞かせいただきたいし、心構えといいますか意気込みといいますか、そういうものもお聞かせいただければと思います。

田島副大臣 長年積み上げてこられた技術や知識経験を定年という一つの区切りで使うことがない、これは今委員が御指摘いただいたとおり、社会的な損失であり国家としての大きな損失だと私も考えております。

 しかしながら、今や定年後の皆さんがこの日本を引っ張っていると言っても過言ではないぐらい、多くの皆さんがいろいろなステージで御活躍いただいていることも事実であり、これは何も公害防止の舞台だけではなく、日本全体で考えなければならない大量退職問題ではないかと私も考えているところでございます。

 そういった中で、とりわけ昭和三十年、四十年代に花形の職業として御活躍いただいてきたこうした公害防止取り組みの人材の皆さんに、今、委員が御指摘いただいたように、大学等で新たな舞台をつくり、そしてそこで持っていらっしゃるノウハウ等々を次世代の人材育成に投入していただく。このことについて大変私自身興味もありますし、また、新たなステージとして期待ができるのではないかというふうに思います。

 それ以上に、まず即戦力として経験者の今持つ力を発揮していただきたいというようなこともあり、今や、地方自治体や企業で頑張ってこられた経験者の皆さんが定年退職後NPOを設立し、そこで専門知識や技術等々を発揮しながら地域で公害防止活動を展開されているという動きが、大阪や滋賀県等々でもう既に起こっております。

 残念なことに、そういった取り組みが進められてはいるんですけれども、まだまだ認知度が高まっていなかったり、そういった方々の働く機会とマッチングができていないというような問題等もございます。

 環境省といたしましても、先ほど委員が御指摘いただきました取り組みの検討ももちろんでございますけれども、NPOを組織して先進的に取り組んでいこうというような事例をできる限り収集いたしまして、全国でこうした優秀な人材が定年後も力を発揮していただけるようなステージづくり、しっかりと普及に努力を重ねていきたいと思っております。

古川(禎)委員 副大臣、ありがとうございました。まさに新しいモデルを創造するという、政治主導として一番面目躍如、そういう場面だと思いますので、ぜひ意欲的に御検討、お取り組みをいただきたいと思います。

 続きまして、規制の内容につきまして、一点だけお尋ねいたします。

 健康被害を生ずるおそれのある物質の自然界への放出は防がなければなりません。しかし、これが事業者にとりまして余りに過大な負担となってしまう場合には、何らかの形で国からの支援をしていく必要があるのではないかというふうに思っています。

 例えば、温泉旅館業です。硼素、弗素及びその化合物が人の健康に被害を生ずるおそれのある物質として指定されております。温泉はそもそも千年以上前から日本人になじみのあるものですけれども、ただ、近年のように大量にくみ上げられるようになってきますと、有害物質があれば除去措置というものも必要になるだろうというふうに思います。

 しかし、温泉旅館業は古い産業で、さらには経営状況の苦しい中小の零細の事業者が多いわけです。国もこうした事情を配慮して除去装置の設置義務の適用を延期してきました。ただ、この期限もことしの六月三十日までということになっておるわけですけれども、これは延長される見通しなのかどうなのか。今後の見通しについて、大臣政務官、よろしくお願いいたします。

大谷大臣政務官 今まさに検討、取りまとめの真っ最中でございまして、排出の実態それから処理技術、二十一業種ございます、その中の温泉も含めて、近日中に取りまとめて発表させていただきたいと思っておるところでございます。

古川(禎)委員 ぜひ事業者の実態に即した形で妥当な結論を出していただくようにお願いをするわけですが、ただ、現在、適用の延長ということで処理されているわけですけれども、業界の、例えば温泉業の実態を見ますと、この規定は必ずしも現実的ではないんじゃないかなという気もいたしております。有害物質を出しちゃいけません、これを除去しなさいと規制をかけるという単線的な対処のみでは、資力にも限界のある事業者としてはクリアできないんじゃないかという現実的な問題があります。

 そこで、私はここで一つ大きな枠組みの中でこの問題に取り組むことはできないかという問題提起をしたいんです。

 我が国は観光立国を掲げておりますが、その重要な観光資源の一つは温泉です。ですから、温泉旅館、温泉街の改築や修景といった観光振興策、これをトータルのものとして図る中で自然環境の保全というものも達成する、そのような仕組みが工夫できないかなということを考えているわけです。

 我が国の農産物は高品質で安全度が高いということで世界から日本ブランドとして評価を得ているわけですから、同じように、日本の温泉も、快適はもとより安全で体にいいんだというふうに外国のお客さんから思ってもらわなきゃいけない。こういうぐあいに、自然環境の保全というものを観光振興とトータルな仕組みで達成することはできないかということについて、いかがでしょう、藤本政務官、お願いいたします。

藤本大臣政務官 古川委員にお答えいたしたいと思います。

 観光振興を進めていく上では環境との調和が大変重要でありまして、観光の中にもいわゆるサステーナブルツーリズムという概念がございます。これは持続可能なツーリズムということになろうかと思いますし、環境面でもいわゆるエコツーリズムとか、本当に環境に配慮をした観光というか、これは進めていかないといけないというふうに考えております。

 今御指摘の温泉の問題として、規制物質除去装置の導入というのは温泉旅館には大変厳しいと。温泉旅館というのは、基本的には地方で、割と中小企業が多いものですから、そのあたり大変厳しい環境であるということで、費用負担がなかなか難しいというお話が今いろいろなところで上がってきているというのは承知をしております。

 これは環境省さんと協議をしながら、総合的な環境面に配慮した形でやっていくことが必要であるというふうに思いますし、まさに、温泉だけではなくて景観であるとかさまざまな自然ですとか、それを保全しながら、それが売り物になるんだ、それがまさにその地域の魅力であるという位置づけをきちっとしていくということで、今我々は取り組んでおります。

 先ほど、かなり財政的に厳しいということでありますので、我々としては、やはり観光振興を進めていく上では温泉旅館に限らず旅行の需要をふやしていかないといけない、これが一義的に我々が考えなければいけないことだというふうに思っておりますので、旅行需要を拡大していく、そういうさまざまな施策を打ちながら、環境に配慮した観光というものを進めていきたいと考えております。

 以上です。

古川(禎)委員 藤本政務官、ありがとうございました。

 法案からちょっと離れますけれども、ことしは阪神・淡路大震災から十五年目を迎えます。先日、私は、災害対策特別委員会におきまして、中井防災担当大臣に対して質問をいたしました。大災害が発生したときの緊急事態、その危機管理体制について、あらかじめ法体系を十分に整備しておかなきゃいけないんじゃないか、その必要性について問題提起をいたしましたら、中井大臣からは大変意欲的な、前向きな御答弁をいただきました。泉政務官、おいでいただいていますが、お聞きいただいたと思います。

 大気汚染、水質汚染の防止という今回の改正の範疇からは外れますけれども、例えば、想定される首都圏直下型大地震の際、さまざまな有害物質が飛散、流出することはあり得ることです。考えられるありとあらゆるケースについて、やはり抜かりなく備えをして心構えをしておかなきゃならないと思いますが、泉政務官、何かコメントをお願いいたします。

泉大臣政務官 古川委員におかれましては、先日も災害対策特別委員会で大臣と本当に有意義なやりとりをしていただきまして、ありがとうございます。

 まさに御指摘のとおり、首都直下型地震等々を含めて、さまざまな有害物質が出る可能性があるということで、防災基本計画の方にも種々定めておりますけれども、例えばコンビナートであれば、警察、消防そして経産省等々が連携をして、あるいは事業者にも一定の責務を課して、自衛消防体制等々も整えているところですし、被害の拡大防止というところをしっかりと計画に定めさせていただいております。

 その他、病院や研究施設やいろいろなところに有害物質、化学物質というものがあるということでございますので、これは厚生労働省も含めて、まず管理リストというものをちゃんとつくって、そしてその中で一つ一つの管理体制というものをしっかりとつくらせていただいているという状況です。

 平時の大気や水質の法律というものは公害防止や監視ということが主であると思いますが、特に災害の場合は緊急性を要しておりますので、やはり安全そして緊急対応ということに特に主眼を置いてこういう対応を組ませていただいているということでございます。

古川(禎)委員 ありがとうございました。今後も非常事態での危機管理に備えた総合的な法体系の整備ということをともに考えてまいりたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。

 大気汚染防止法も水質汚濁防止法も、ともに国内の事業者による排出を規制することによって生活環境保全、国民健康の保護を目的としておるわけです。お手元に配付をさせていただいております資料をごらんいただきたいのですが、直観的に御理解をいただけるものと思いますけれども、地球は一つでありまして、物質の移動に国境はないのでございます。つまり、国内を監視するだけでは、国民の健康を守り、生活環境、自然環境を守るということは難しい、そういう時代だと思います。

 実際、九州では近年、光化学スモッグ警報がたびたび発令されておりますし、学校閉鎖も続いております。これは本当に深刻です。どこからその物質が来ているかというと、近隣の国に発生源があることは明らかなんです。

 考えてみると、日本列島はユーラシア大陸の東にあって、太平洋の西にあって、海流もぶつかるわけです。ですから、近隣の国々からやはりいろいろなものが集まってくるというロケーションであります。逆に、これを前向きにとらえると、日本列島はこの位置で網を張ると近隣の情報も全部とれるという位置取りでもあるわけですね。つまり、周辺地域の実態調査をすることによって国際貢献ができるんだという考え方もできると私は思うんです。

 環境立国日本ですから、やはりそれぐらいの視野を持って臨むべきだと思っておるんですが、こういう海外由来の有害物質について、日本近海もしくは大気中において定点観測等の監視をしているのか、どのようなデータを集めておるのかということについて、簡単にお知らせください。

鷺坂政府参考人 海外からの環境汚染物質の監視をする仕組み、あるいはデータ収集ということでございます。

 酸性雨等につきましては、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク、これは十三カ国が参加しておりまして、酸性雨、あるいは大気の汚染物質でありますSOxとかNOx、こういったものの観測を実施させていただいております。

 それから、黄砂につきましては、二〇〇三年から黄砂の飛来情報をモニタリングいたしまして、環境省のホームページを通じて情報提供する仕組みを二〇〇八年に構築させていただいているところでございます。

 それから、漂流・漂着ごみにつきましても、北西太平洋地域海行動計画、これは国連環境計画の地域海計画と呼ばれる取り組みの中の一つでございますけれども、そういった仕組みによりまして、この計画は四カ国、日本、中国、韓国、ロシアで採択されておりますが、各国政府による漂着ごみに関するモニタリング、情報交換あるいは海岸清掃キャンペーンの実施とか、そういった取り組みが行われているところでございます。

古川(禎)委員 ありがとうございます。これはやはり貴重なデータだと思いますので、さらに範囲も広げる方向で蓄積をしていっていただきたいと思います。

 人工衛星の「いぶき」、地球温暖化対策を目的として、全地球的なデータをとることを目的に日本が打ち上げたわけですけれども、これに限らず、例えば津波の予測情報についても、やはり我が国が世界に対して重要な役割を担っていると思います。同じように、地球規模での有害物質汚染あるいは有害物質の移動というようなことに関して、地球規模でデータを収集して、そして同時にこれを世界に公開し発信していくということも、環境立国日本の一つの役割ではないのかなと私は思うんです。

 かつて、チェルノブイリで事故がありました際に、放射性物質がヨーロッパに及ぶ、そのデータが非常に役に立ったというようなことがあったわけです。実際、中央アジア地域では核実験等が行われておって、その放射性物質がどのように飛来しているのかしていないのか、そういうことも明らかになっていないんです。これは考えようによっては恐ろしいことだと僕は思っています。

 放射性物質に限らず、PM、粒子、その他さまざまな物質が現代はあるわけですね。こういうものに対して、日本の近海や日本の大気に限らず、全地球的に日本が率先してデータの収集、公開を目指すということは日本の使命ではなかろうかというふうに私は考えておりますが、大臣の御所感をお伺いいたします。

小沢国務大臣 まさに地球規模での日本の役割、そういったものを環境先進国として果たすべき、こういう委員のある意味では御指摘、激励、本当に私も前向きに対応させていただきたい、こう思います。

 冒頭の質問でも申し上げたんですが、本当に、日本は公害を経験した国として世界に果たすべき役割も大きい、こう思っているところでございまして、そういった意味では、「いぶき」の例も挙げていただきましたが、温暖化のみならず大気の状況、水の状況、そういったあらゆることに対するデータも、地球規模でとれるものはしっかりとって、あるいはまたその対応策もしっかりと各国に示していける、そうした環境先進国を目指していくためには何が必要なんだろうか、そういう観点で今検討させていただいているところでございます。ぜひ御指導をいただきたいと思います。

古川(禎)委員 環境先進国としての意欲を持っていただいておるというお話で、大変ありがとうございます。

 環境先進国を自負して、それを目指していくという、これは大事なことでありますけれども、同時に、私たちは、自然への畏敬の念といいますか、知っていることよりも知らないことの方が多いんだという、人知の限界への謙虚さというものを失わずにやっていかなければならないなと思います。

 いずれにしても、新しい時代が参りまして、その中で我が国の環境行政が世界を引っ張っていくんだ、人類の福祉に貢献するんだ、そういう志を持って今後ともお取り組みいただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

樽床委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、大気汚染防止法、また水質汚濁防止法の二法の改正案について質問をさせていただきます。

 我が国では、高度成長期の昭和三十年代から四十年代にかけまして、水俣病に代表される深刻な公害問題が発生し、大きな社会問題となったわけでございます。公害対策は環境問題の原点。これらの公害を克服するために、我が国では、長年にわたって公害防止対策が環境行政の中心に据えられて取り組みが進められてまいりました。

 しかし、近年、大企業による測定データの改ざんなど、あってはならない不適正な事案が発生しており、現場における取り組みに緩みが生じているのが現状ではないかと思います。

 例えば、平成十七年の二月には鉄鋼業者による水質データの改ざんがあり、また、平成十八年の三月には石油精製業者によるばいじんデータの改ざんがありました。さらには、平成十九年二月、電気業者によるばいじんデータの改ざん、平成十九年七月には製紙業者によるSOx、NOxのデータの改ざん、さらに、平成二十一年三月には製紙業者による水質データの改ざんがあり、直近では平成二十二年の一月に化学業者によるこれも水質データの改ざん等が行われているわけでございます。

 このため、この機会に公害問題に関する取り組みの現状を総合的に検証して、改善が必要な点については改善を強く促すことが肝要であると考えます。今回の大防法、水濁法の改正案について、そのような視点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、小沢環境大臣にお伺いをいたします。

 これまで政府は公害対策を環境行政の中心に据えて取り組んできたにもかかわらず、なぜこのような不適正事案が多発しているのか。環境問題の多様化や公害業務の構造的変化も含めて、その原因をどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。

    〔委員長退席、横光委員長代理着席〕

小沢国務大臣 委員御指摘の公害防止行政、これが環境行政の原点であるということは全く同感でございます。

 そうした中で、委員の発言の中にもありましたけれども、高度経済成長の時代にそういう公害問題を体験してきた日本が、そういったことに対する対応がある意味では整ってきたこともあって、昨今では大型のいわゆる公害問題という話はなくなりました。

 しかし、同時に、今委員が御指摘をいただいたようなさまざまなデータの改ざんが行われてきたところでございまして、それが今回の大防法、水濁法改正の必要性になっている、こういうことだと思います。

 その原因は何か、こういう委員の質問でございますが、その原因を特定するというのはなかなか難しい、こういうことだろうと思います。今委員自身もおっしゃっていただいたように、地球温暖化を初めとする環境問題の多様化や、また、経験豊富な公害防止担当者の大量退職等、そういった事柄を背景として、公害防止業務に対する重要性の認識の低下、組織的な管理体制の不備、設備の管理・点検体制の不備といった要因が複合的に生じてきているのかな、こう思うところでございますが、さらにそういった分析を引き続きしっかり行ってまいりたいと思います。

    〔横光委員長代理退席、委員長着席〕

江田(康)委員 今回、大防法及び水濁法におきまして、測定データの記録改ざんに対する罰則の創設や、改善命令発動要件の緩和が予定されております。今回の未記録や虚偽記録等に対する罰則は近年発生している事業者の不適正事案の抑制策の一つとして有効であると考えられますが、測定されたデータ自体は公表、開示が義務づけられておらず、事業者が保存しているものであり、内部告発や自治体による立入検査が実施されない限り不適切な測定や記録が行われたかどうかを判明することは大変難しいのではないかと考えます。また、実際に現場で事業者に対する指導や監視を行う自治体の体制が十分でなければ、実効性がなく絵にかいたもちになりかねないのではないかとも思います。

 そこで、大臣にお伺いをしたい。

 自治体の公害防止の予算や人員が縮小化しつつあるという状況の中で、自治体による立入調査の実効性の確保など、自治体による公害防止の取り組みをどのように充実強化させていくおつもりか、そこを大臣にお伺いいたします。

小沢国務大臣 自治体において、公害防止対策に関して人員や予算の面で制約が生じている、御指摘のとおりだと思います。しかし、そういう中で地域住民の安全、安心を確保していくためには効果的、効率的な公害防止対策の推進が必要だということでございまして、環境省としては、法律の改正に加え、自治体の担当者に対する研修の充実や立入検査のマニュアル作成への支援、自治体間のノウハウの共有化を進め、自治体の体制整備に取り組んでまいりたいと思っております。

江田(康)委員 それでは、さらに質問をさせていただきます。

 温対法やPRTR法では、事業者による二酸化炭素や化学物質の排出量データの公表を求めております。公害分野においても、安全、安心の取り組みを促進するとともに、地域の信頼感を醸成するように、測定データ等の公表、開示を促進すべきではないかと思います。

 これにはさまざまな意見があるのは承知しております。例えば、公表、開示を義務づけていくべしとする意見、また、機密事項に触れるので自主的な判断にすべきとする意見、さらには、中小事業者の過度な負担となるとの懸念まで、多くの意見がございます。

 そこで、測定データ等の公表のあり方についてどのように考えていくのか、副大臣にお伺いをさせていただきたい。

田島副大臣 お答えを申し上げます。

 委員も御懸念をいただいているとおり、公表、開示を義務づけていくかどうか、これについては本当にいろいろな方面の御意見があることも承知をしております。機密事項に触れるので自主的な判断にすべきだと。しかしながら、その一方では、地域社会の安心、安全のために公害防止に関する情報はやはり共有していくべきだというふうに私どもは認識をした上で、今回の法改正に当たらせていただいたところでございます。

 中には、一部の事業者におきましては、ばい煙でありますとか排出水に関する測定データを環境報告書に掲載して公表しているという事例もございます。

 その一方、委員も御指摘いただきました、中小事業者の過度の負担にならないよう考慮もしていかなければならないというふうにも考えますので、こうしたことをトータルで考えますと、現在ありますインターネットでありますとか環境報告書などを活用した事業者による排出測定データ等の公表、開示についてのガイドラインを策定いたしまして、その普及にまず努めていきたいというふうに考えているところでございます。

江田(康)委員 公表、開示のためにインターネット等を利用して、環境報告書等で自主的な公表、開示を進めていく、そういうようなことでもございました。ぜひとも、このガイドラインをしっかりと周知徹底していただいて、公表、開示ということができるようにされることで、先ほどありましたように不適切な事案を防止するための実効性が大きく進むように、そのように強く要望をしたいと思います。

 今回の大防法の改正におきましては、ばい煙に関する測定データの記録改ざんに対する罰則が設けられております。しかし、大防法では、ばい煙以外にも揮発性有機化合物、VOCやアスベストなどの規制が行われております。これらについても測定データの記録改ざんに対する罰則を設けないのはなぜなのか、それで安全は担保されるのか、お伺いをしたい。

 また、アスベストについては、製造所はないとしても、アスベストが使われている建物からの除去作業や廃棄物処理において極めて厳しい規制管理が求められておるわけで、どのようにして安全性を担保するのか、そこも含めてお伺いをします。

田島副大臣 お答えを申し上げます。

 今般相次いで発生しております記録改ざん事案はばい煙に関する測定データに関するもののみでございますが、御指摘をいただいております揮発性有機化合物、VOCにつきましては、ばい煙とは異なりまして人の健康等に直接影響を及ぼすものではなく、自主的な取り組みと規制を組み合わせた対策を行っておりまして、排出基準違反に対する直罰規定は設けていないということから、記録改ざんに対する罰則まで設ける必要はないものというふうに考えておるところでございます。

 また、アスベストにつきましては、もう既に、敷地境界における濃度測定が義務づけられておりますアスベスト発生施設は平成十九年度末までにすべて廃止をされておりますので、こういったことから、VOCまたアスベストに関する記録改ざんの罰則等々を設ける必要はないというふうに判断をさせていただきました。

 ただ、アスベストにつきましては、建築物から除去する際には、大気汚染防止法に基づいて、事前に都道府県知事に届け出を行うとともに、工事を実施する際にはアスベストを除去する区域の隔離でありますとか高性能の集じん装置の使用など、作業基準を遵守するようにというふうにうたっております。

 アスベストを含む廃棄物につきましては、廃棄物処理法に基づいた形で、破砕によって飛散をするとか、また他のものと混入することがないように、収集から処理までの各段階において厳密な基準の遵守を求めているところでございます。

 これらの措置を担保させていただくために、両法律においては、基準に適合しない行為が行われた場合は都道府県知事による作業基準適合命令や改善命令が規定されておりますし、また、命令違反等に対する罰則も規定されておりますので、こういった形で対応していきたいと考えております。

江田(康)委員 大防法においてはばい煙が特に規制されているわけですけれども、ばい煙以外の、今言ったVOCとかアスベストの規制というのが大変に重要になっておりますので、今確認をさせていただいたところでございます。

 次に、現行の水濁法では、汚水の事故が生じた場合に、事業者による応急措置の実施と自治体への届け出の義務づけを事故時の措置として規定しておりますけれども、対象物質や対象施設が限られております。今回の水濁法の改正案では、事故時の措置の対象の拡大によってどれだけ対象物質や対象施設が拡大するのか、また、どのような効果が期待できるのか、さらには、事故時の届け出を行わなかった場合の罰則を創設する必要はないのか、これについてお伺いをいたします。

 それとあわせて、今回の改正で、水濁法の事故時の措置の拡充が盛り込まれております。事故については発生後速やかに汚染の拡大防止策をとることも重要でありますけれども、そもそも事故の発生をできるだけ減らすための対策が重要かと思います。このため、事故の原因を究明して、未然防止のための取り組みを進めることが必要であると考えますが、政府の取り組み方針について、あわせてお伺いをいたします。

田島副大臣 水質事故の原因の一つでございます工場また事業場からの汚水の流出については、今回の改正で、従来事故時の措置の対象となっていなかった事故につきましても、より幅広く汚水のせきとめなどの応急措置を求めるとともに、早期通報によりまして自治体等の対応の迅速化がなされるものというふうに期待をしているところでございます。

 事故が起こったときの届け出につきましては、事故の態様がさまざまでもありますし、流出先の水域によっても影響が随分異なってまいりますので、一律に届け出が必要かどうかの判断基準を定めて、また、届け出を行わなかったことに罰則を設けるということは困難でございます。しかしながら、事故時の措置のあり方につきましては、改正法の施行状況、また、効果を踏まえた中で検討をさせていただきたいと思っております。

 未然防止の取り組みについてでございますけれども、私どもも、事故の原因の究明、また、これを踏まえた未然防止の取り組みを進めていくことは大変重要だというふうに認識をしております。

 既に先進的な事業者においては、液が漏れないように防ぐ堤のようなもの、いわゆる防液堤であるとか、非常用の水槽、そして排水センサーなどの設備を有して、事故による流出の未然防止のための措置を講じているケースもありますし、事故を起こしにくい構造を施設として活用しているケースもあるというふうに承知をしているところでございます。

 今後、事故の原因究明の調査でありますとか、先進的な取り組み事例の収集等々を行うなど、実態を踏まえまして、未然防止の取り組みの促進方策についても検討をぜひしていきたいと思っております。

江田(康)委員 次に、公害防止管理にかかわる人材の育成、人材活用の促進について、これは大臣にお伺いをいたします。

 深刻な公害問題の解決に取り組んできた自治体、また事業者の職員が、先ほども大臣がおっしゃいましたように、大量退職期を迎えるなど、公害防止の経験や技術の継承が困難な状況になっております。また、公害防止管理者による測定データの改ざんが発生するなど、公害防止管理者制度が十分に機能していない状況が見受けられます。

 さらに、今まで自治体や事業者で公害防止対策を実施してきた経験者が退職後、その専門知識と技術を生かして、地域においてNPO法人などを立ち上げて公害防止活動の展開を図ろうとする動きが見られます。

 政府として、このような状況や動きを踏まえて、今後の公害防止管理にかかわる人材育成や人材活用の促進について、どのように具体的に考え、取り組もうとされているのか、環境大臣にお伺いをいたします。

小沢国務大臣 委員が御指摘いただきましたように、本当に担当者の大量退職、こういう事態でありまして、そこはもう人材育成を早急にやらなきゃいけない、こういうふうに私どもも思っておるところであります。

 同時に、大量退職をされた皆さんたちも大変有益な能力あるいは知見を持っておるわけでありまして、そういった皆さん方を再度、委員の御発言の中でもありましたが、NPOとしてあるいは活用していく、こういうことも至急の対応としてはできるのではないか、こう思っているところであります。企業や自治体のOBがNPOを組織した事例などもこれまたございますので、そういった事例を収集して、自治体や企業等に我々からもそういったことをお伝えして、啓発活動を行ってまいりたい、こう思っておるところでございます。

江田(康)委員 それでは、大防法並びに水濁法の二法に関連して質問をさせていただきます。

 一つは、子供の健康に着目した環境基準についてお伺いをさせていただきます。

 化学物質が原因と見られる子供たちの健康への影響が世界的に今大きな問題になっています。日本の小学生のぜんそくの罹患率は、一九六〇年度の〇・五%から二〇〇七年度には四%となって、八倍も増加しています。そのほか、アレルギー、アトピーなどの免疫性疾患が増加している。また、小児肥満や小児糖尿病などの代謝・内分泌系の異常が増加しています。さらには、不妊、流産、男の子の出生率の低下などの生殖異常も増加している。さらに、自閉症とか切れやすい子とかLDなどの神経系の異常などの増加が今報告されているところでございます。

 化学物質というのは、大人がわずかにさらされただけでも、頭痛や疲労感、集中力、思考力の低下などに見舞われることがあります。シックハウスとかシックスクールとかいう、大人であればシックハウスですね、それを代表とするようなものです。まして子供というのは、大人と比べて呼吸量が多いほか、小児は床をはう、物を口に入れるなどの特徴的な行動が見られるわけでありまして、化学物質が育ち盛りの子供の心身に与える影響ははかり知れないと思います。

 環境省は、こうした子供の発達異常に対して環境要因、特に化学物質が与える影響を明らかにするために、来年度より、十万人の妊産婦を対象として、胎児期から十三歳までの子供をフォローする、子どもの健康と環境に関する全国調査、いわゆるエコチル調査を実施するとしております。これは公明党が早くから主張してきたものであって、大変高く評価をしたいと思っております。

 そこで、環境大臣にお伺いをいたします。

 この調査により、何が解明されて、どんな施策が講じられ、そしてどのような効果が期待されるのか、伺います。また、対象とする化学物質はどのようなものなのか。さらには、学校や保育園、遊具と公園といった子供環境で使用されている化学物質や殺虫剤、ワックスなど、家庭用品に含まれている化学物質についても調査を行うべきだと考えます。そして、各省横断的な実態調査を実施すべきだと提案したいが、いかがでしょうか。最終的に、化学物質に対して子供の脆弱性を考慮した安全基準を設定していくべきだと考えます。また、化学物質の健康影響を未然に防止するための国のガイドラインを策定すべきではないかと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小沢国務大臣 江田委員並びに公明党が長らくこの分野で大変な御貢献をされたことにまず敬意を表したいと思います。今、もう委員の方から大部分の内容について御発言がございましたので、重複を避けて答弁をさせていただきたいと思います。

 エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質への暴露を中心に、環境要因が子供の心と体の健康に与える影響を解明することが目的でございます。調査結果については、適宜、関係省庁、事業者、国民各層とのリスクコミュニケーションを推進するとともに、化学物質のリスクの度合いに応じた適切な管理体制の強化につなげてまいりたい、こう思っております。

 これによって、将来生まれてくる子供たちの中で、免疫・アレルギー疾患、先天奇形や精神神経など健康に問題のある子供の数を減らし、安全、安心な子育て環境を実現していくことが目的でございます。調査対象の化学物質としては、水銀、鉛等の重金属、ダイオキシン、DDT等の化学物質、農薬、殺虫剤、内分泌攪乱物質等のいわゆる環境ホルモンなど、専門家や国民の皆さんの関心の高い物質を選定しております。

 さらには、いわゆる学校や保育園、遊具と公園といった子供の環境での調査のあり方に関しましては、厚生労働省あるいはまた文部科学省等が調査を行っていると承知をしているわけでございますが、環境省としては、平成二十二年度から実施する子どもの健康と環境に関する全国調査の推進に従って得られる知見などを踏まえた上で、調査すべき場所及び化学物質も含めて、関係省庁とも十分連携をとってまいりたいと思っております。

 さらには、子供の脆弱性を考慮した安全基準を設定していくべきだという御指摘に関してはそのとおりと思っておりまして、エコチル調査によって得られた知見をもとにそうした安全基準を設定していくことが重要、こう思っているところでございます。

江田(康)委員 ぜひとも、大臣、力強く進めてもらいたいと念願いたします。

 特に子供環境で使用されている化学物質等について広く、しかしこれは環境省だけではできない部分があり、各省横断的にやはり実態調査を、十年以上もかけて、また十万人の妊産婦を対象に、胎児期から十三歳までの子供たちを対象にやられるわけですから、重要な後世に残る調査になるかと思います。ぜひとも、各省横断的な実態調査も含めて検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 時間になってまいりまして、最後に、公害問題の原点である水俣病対策について、大臣の決意をお伺いさせていただきたいと思っております。

 私も、熊本選出の国会議員でもあり、この問題には長年取り組んでまいりました。すべての被害者の救済と全面解決を実現すべく、全力で取り組ませていただいてまいりました。二十九日の熊本地裁での和解協議にて、被告であるチッソ、国、県と原告の水俣病不知火患者会の間でついに基本合意が成立したわけでございます。

 従来より、私どもは、訴訟による和解と昨年の国会で成立をした特措法による救済は車の両輪であり、新たな混乱を地域に生じさせないためにも同時期、同一条件が必須であると訴えてまいりました。この和解の基本合意により、救済法による基本方針が四月にも閣議決定され、救済を求めている患者団体に和解と同一の条件で提示されることになります。五月一日の水俣病犠牲者慰霊式までに救済手続を開始することを目指すものと考えます。

 残された重要な課題も多くあるかと承知をしておりますけれども、政府としては、特措法の前文に我々が示した、すべての被害者の救済に向けて全力を傾注してもらいたいと願います。五十年以上の長い水俣病の歴史の中で重要なときを迎えております。水俣病問題の最終解決に向けて、小沢環境大臣の決意をお聞きしたいと思います。

小沢国務大臣 昨日の和解の受けとめは、その他の裁判をしていない団体の皆さんたちも含めて、半世紀を超えた長い水俣病の最終解決に向けた大きな一歩であった、こういうふうに認識をしておりますし、和解を受けとめていただいた皆さん方には心から敬意を表するところでございます。

 さらにはまた、江田委員が今御指摘いただきましたように、昨年いわゆる特措法ができましたこと、このことも大変重要な一歩でありまして、関係の皆さん方には本当に心から私からも感謝を申し上げたい、こう思います。

 そうした中で、最終決着に向けてとにかく政府は全力を尽くしてまいりたい、こう思っているところでございます。いわゆる最終決着によってこの問題が風化してはいけない、それは思うわけでございますけれども、とにかく、日本がある意味で直面してきたこの半世紀、それをしっかりと受けとめながら、まずは目の前の患者の皆さん、救済すべき皆さん方、その救済に全力を尽くし、その後また、この問題を風化させないための地域での取り組み、あるいはまた疫学的調査のやり方等々もしっかり行ってまいりたい、こう思っておるところでございます。

江田(康)委員 年齢制限や居住地域の問題、また地域における対策等々、さらに大事なところも残っておりますけれども、ぜひとも、水俣病の長い歴史を踏まえて、すべての被害者の早期救済、幅広い救済の実現に向けて全力で取り組んでいただくことを念願して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

樽床委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

樽床委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

樽床委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

樽床委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

樽床委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.