衆議院

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第11号 平成22年5月11日(火曜日)

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平成二十二年五月十一日(火曜日)

    午後二時三十分開議

 出席委員

   委員長 樽床 伸二君

   理事 太田 和美君 理事 木村たけつか君

   理事 橋本 博明君 理事 山花 郁夫君

   理事 横光 克彦君 理事 齋藤  健君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      石田 三示君    大谷 信盛君

      川越 孝洋君    工藤 仁美君

      櫛渕 万里君    小林千代美君

      斎藤やすのり君    田島 一成君

      田名部匡代君    玉置 公良君

      村上 史好君    森岡洋一郎君

      矢崎 公二君    山崎  誠君

      吉川 政重君    小池百合子君

      近藤三津枝君    中谷  元君

      福井  照君    古川 禎久君

      山本 公一君    斉藤 鉄夫君

      中島 隆利君

    …………………………………

   議員           齋藤  健君

   議員           吉野 正芳君

   議員           江田 康幸君

   内閣総理大臣       鳩山由紀夫君

   環境大臣         小沢 鋭仁君

   環境副大臣        田島 一成君

   環境大臣政務官      大谷 信盛君

   環境委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  福井  照君     中谷  元君

  江田 康幸君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷  元君     福井  照君

  斉藤 鉄夫君     江田 康幸君

同日

 理事江田康幸君同日委員辞任につき、その補欠として江田康幸君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

五月十一日

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 地球温暖化対策基本法案(内閣提出第五二号)

 低炭素社会づくり推進基本法案(野田毅君外四名提出、衆法第七号)

 気候変動対策推進基本法案(江田康幸君提出、衆法第一五号)


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     ――――◇―――――

樽床委員長 これより会議を開きます。

 この際、小沢環境大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小沢環境大臣。

小沢国務大臣 五月二日から五日まで欧州に出張し、ドイツ・ペータースベルクで開催されました気候変動に関する閣僚級会合に出席し、また、オーストリア・ウィーンにおいて国連工業開発機関等を訪問いたしましたので、その御報告をさせていただきたいと思います。

 地球温暖化対策についての二〇一三年以降の国際的な枠組みに関しては、昨年十二月のデンマーク・コペンハーゲンにおけるCOP15の結果を踏まえ、本年十一月末からメキシコ・カンクンで開催されるCOP16に向けた国際交渉が進められております。今回の会合は、気候変動枠組み条約のもとでの交渉を後押しする目的でドイツ、メキシコ両政府の主催により開催された非公式会合であり、四十一カ国・地域が参加し、そのうち三十五カ国は閣僚級が参加いたしました。COP15以降、閣僚級で集まる初めての会合となり、友好的な雰囲気の中で率直な意見交換がなされた重要な会議でございました。

 会合のテーマ、「メキシコに向けたモメンタムの構築」が示すように、会合ではコペンハーゲン合意の内容をもとに議論を進めていくことについておおむねの共通認識が得られ、事務的な会合では得られないCOP16に向けた前進についての弾みが得られたと考えています。

 私からは、会合のスピーチにおいて、地球温暖化対策基本法案について紹介するとともに、コペンハーゲン合意をもとに包括的な法的文書を構築することが我々の目標であること、COP15の教訓を踏まえ議論を効率的、建設的に進める必要があること、低炭素型の技術、製品の普及による削減効果や原子力を含めた技術移転を正当に評価し、民間投資を促進するメカニズムの検討が必要であることなどを主張しました。

 また、欧州連合議長国のスペインのテレサ・リベラ気候変動長官やヘデゴー欧州委員会気候変動担当委員、米国のスターン国務省気候変動担当特使、中国の解振華国家発展改革委員会副主任等とも会談を行い、COP16に向けた交渉の進め方等について意見交換を行いました。COP16に向け、交渉のかぎを握る国の閣僚とじかに議論を行い、交渉上の論点や今後の連携についてさまざまな議論ができたことは非常に重要でした。日本の地球温暖化対策基本法案の審議状況についても関心が寄せられました。

 さらに、ウィーンを訪問し、オーストリア農林環境水資源省のマンク次官、国連工業開発機関のユムケラー事務局長と会談しました。マンク次官とは、先進国による率先した排出削減の重要性を確認したほか、欧州連合内における同国の具体的取り組みの現状について把握することができました。ユムケラー事務局長とは、気候変動対策における技術の重要性を確認するとともに、技術による貢献を適切に評価する仕組みの必要性で一致し、有意義な議論ができました。

 今後、COP16に向けた交渉が本格化することになります。引き続き、世界全体の温室効果ガスの排出削減に向け、我が国が主張する、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築を目指し、環境大臣として交渉の進展に貢献してまいりたいと思いますので、引き続き御支援をお願い申し上げます。

 続きまして、もう一つ発言をさせていただきます。

 四月二十三日の当委員会において、三月二十三日の私の答弁に関しまして齋藤委員から質疑がございましたので、お時間をいただき、改めて私の答弁の趣旨を御説明させていただきます。

 齋藤委員は、真水の割合、国富の流出、産業界やGDP、雇用への影響、一世帯当たりの負担について、いわゆるケース分けではなく政府として一つの見解を出すべきと指摘されております。

 それらに対し、真水の割合や国富の流出については私の答弁を求めない中で齋藤委員が要望として指摘されたり、その後、私から、産業界やGDP等への影響、国富の流出の程度や真水の割合、雇用への影響、また一世帯当たりの負担について、それぞれ「任せてください。」や「それもさせていただきます。」などの肯定的と受け取られる答弁をするなど、さまざまなやりとりがございました。

 ただ、私としては、最終的にこれらすべてに関しまして、「ロードマップは、あくまでもケースを示しながら、そして国民各界の皆さんと議論を重ねて、その上でともにつくっていきたい、」と答弁の中で訂正をさせていただいたと認識していたところでございますが、それが十分に伝わらず誤解を生じさせたとすれば、今日改めて訂正させていただきたいと思います。

 また、四月六日の質疑においては、イメージを持っていただくという意味でロードマップを私の名前で提示させていただいたが、これは法案の成立後に作成する基本計画のベースになるものである、私の責任のロードマップは提示させていただいたので、そこで議論は大いにやっていきたい旨を答弁させていただいているところですが、残念ながらその趣旨を十分伝えることができなかったものと思います。

 改めて申し上げますと、基本法案の国会審議に当たって、私の責任によるいわゆるロードマップを提示しておりますので、これを審議に当たっての参考にしていただきたいということですので、これが私の答弁の真意であったことについて委員の御理解を賜りたいと思います。

 以上でございます。

     ――――◇―――――

樽床委員長 内閣提出、地球温暖化対策基本法案、野田毅君外四名提出、低炭素社会づくり推進基本法案及び江田康幸君提出、気候変動対策推進基本法案の各案を一括して議題といたします。

 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 重要広範議案という位置づけがされております政府の地球温暖化対策基本法の審議に当たりまして、環境委員会に内閣総理大臣もお越しをいただきまして、大変お忙しい中、感謝を申し上げたいと思います。

 時間が限られておりますので、早速ですが、質疑に入らせていただきます。

 環境大臣に冒頭お尋ねをしたいと思います。

 この政府提出の地球温暖化対策基本法案の第十条に「国際的に認められた知見に基づき、」という言葉から始まりまして、二〇二〇年までに二五%の温暖化ガスの削減、これは産業化以前の水準から世界全体の気温上昇が摂氏二度を超えないようにするというIPCCの報告書のモデルを前提とするものと理解することができますが、産業化以前から二度を超えないようにということについて、大変重要な認識ではないかという指摘がこれまで当委員会の中でもございました。

 私は、この条文からそうした前提が読み取れるというふうに受けとめていたんですけれども、このような理解でよろしいでしょうか。環境大臣から御答弁をお願いいたします。

小沢国務大臣 山花委員の御指摘のとおりでございまして、今回の摂氏二度Cの気温上昇にとどめるための排出許容量についてのIPCC報告書のシナリオ分析を前提とするものでございます。

山花委員 このIPCCの報告書については、昨年のCOP15の始まる前などにもクライメートゲート事件というような形で世界ではちょっと話題になっていたということがございますけれども、これは衆法提出者、自民党案、公明党案それぞれの提出者にお伺いをしたいと思います。

 こうした温暖化の問題については、懐疑論と呼ばれる議論もございます。つまり、温暖化しているのは必ずしもCO2がふえているのが原因じゃないんじゃないかとか、それはいろいろな説があって、太陽の周期的な変動の影響じゃないかとか、そういった議論があるんですけれども、そういった懐疑論に対してどのような評価をされているのか、自民案、公明案提出者それぞれにお伺いをいたします。

吉野議員 山花委員にお答えします。

 地球ができて四十六億年たちます。地球の歴史の中で、全球凍結、こういう事態も起こっています。そしてまた、全球温暖化で氷が一つもない、こういう状況も起こっています。これはまさに自然の力でございまして、私たち人間がそこのところに及ぼすということはなかなかできないというふうに思っています。

 CO2が犯人じゃないという懐疑論、太陽の黒点が活発化して宇宙線がたくさん出てそれが影響しているんだ、そんな意見もございますけれども、今世界で各国が納得しているのは、皆さんそうだなというふうに思っているのは、IPCCの第四次報告書でございます。私たち日本も、世界の皆さんと一緒になって、IPCC第四次報告書は納得をしているということでございます。

 そして、基本的に、環境問題というのは予防原則という大前提のもとで、CO2が犯人でなくてもCO2を削減していくことで予防原則が果たされる、そんな観点から、私たちは低炭素社会をつくっていくんだ、こういう大きな目標を掲げております。

 その低炭素社会づくりというのは、まさに温暖化だけではなくて、エネルギーの安全保障や省エネ技術の開発等々、国益に大いに合致するものというふうに理解をしておるところであります。

江田(康)議員 お答えいたします。

 確かに、現在、地球温暖化懐疑論が唱えられて、その一因としてIPCCのデータ捏造論があることは承知しております。先ほどもありましたけれども、IPCCの第四次報告書におきまして個別の事実関係において幾つかの誤りがあったことは確かでございますけれども、英国議会の調査においても捏造はなかったということが行われておりますし、IPCCの報告書の科学的信頼性は揺らいでいないと考えております。

 ちなみに、公明党案は、IPCCが示した複数の科学的知見のうち、次のような有力な知見をもとに政策として選択したものでございます。

 すなわち、ラクイラ・サミット首脳宣言とかコペンハーゲン合意で確認された、工業化が始まった年代から気温の上昇を二度C以内に抑えるという、いわゆる二度C目標を出発点としまして、そのためには二〇五〇年に世界全体で五割減、我が国を初めとする先進国は八割減とすることが必要であること、そのためには二〇二〇年には先進国は二五%から四〇%削減するということが必要とされておりますが、これについて我が国は二五%減とすることが適切であると判断した次第でございます。

 公明党案は、このように、国際的に共有されているIPCCの科学的根拠に基づいて立案しているところでございます。

 以上です。

山花委員 政府案に対して、対案という形で自民、公明それぞれから法案が提出をされておりますけれども、やはり低炭素社会をつくっていこうという方向性については、同じ方向を向いているということは、大変重要なことではないかと思います。

 実は、余りよその固有の国のことを言ってはいけないんでしょうけれども、ある政党の中には懐疑論的なことを主張されるところがあったりとかいうことも伺っておりますが、我が国では、政府案に対してもちろん御意見はいろいろあるんでしょうけれども、そういった方向であるということをここで確認できたということは大変大きなことではないかと思います。

 まず環境大臣にお伺いしたいんです。この点についてはこれまで当委員会でもいろいろ議論がありましたけれども、IPCCの報告書というのは世界の科学者の方がいろいろな知見を持ち寄ってコンセンサスを得てつくったものですけれども、例えば先般も科学の要請かどうかということで議論があったりしました。

 私は、政治の側で科学的にこれが正しいんだとか、あるいは、特定の学説があったとして、これを政府の公式見解とするような話というのは、ちょっとそれは違うのかなと思っています。つまり、そういった知見の前に我々政治の側が謙虚になって、その上で、先ほど予防原則という話がありましたけれども、そういうことがないようにという政治的な決断として、あと日本の成長戦略にとっても極めて重要だということから、今回の法案の中で二五%とか中長期的な目標を提示されたものと私は理解しているんですけれども、環境大臣の御所見を伺いたいと思います。

小沢国務大臣 その点は全く山花委員と一緒でございます。

 この委員会でも何回か申し上げたし、議論にもなったんですが、IPCCそのものの存在の意味というのが、ある一つのグループがある学説を発表したというような話ではなくて、世界じゅうのさまざまなしっかりした学説を総合的に検討して、そしてそれを一つの報告書にまとめながら、そのまとめていく過程においては各国政府あるいはまた学識経験者がそれに加わってこうした結論を得ているわけでありまして、そういったものを謙虚に受けとめる、そして、政治的に勇気を持って総理が決断をされた、そういうことだと思っております。

山花委員 その決断をされたまさに総理にこの点についての所見を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

鳩山内閣総理大臣 山花委員にお答えいたします。

 もう既に小沢環境大臣からもお話がございまして、政治の側が科学的な知見に対してこれは正しいとか正しくないとかいう判断をするべきではない、まさにそのとおりだと思います。

 多くの科学的な知見があのIPCCの第四次報告書の中に含まれておる、それを参考にさせていただきながら、ある意味で最も厳しいカテゴリーの中で、そして、その中ではある意味で最も緩やかなものを採用するということで九〇年比二五%二〇二〇年までに削減するという判断をある意味では政治的に採用させていただいたということでございまして、ミニマックスというか、どの考え方を採用するかという中には政治的な判断が含まれている、当然それはそう思いますけれども、科学的な知見に対してこれが正しい、あれは正しくないというような判断を政治がすべきではない、私もそのように思っております。

山花委員 その上でなんですけれども、先進国はこれまで以上に頑張りましょう、途上国もできるだけ頑張ってくださいというのが世界的な大きな潮流かと思いますが、その中で、昨年、小沢環境大臣、鳩山総理も行かれましたCOP15では、なかなか米国と中国との間、特に中国について環境大臣も大変苦労されたというお話は伺っているところでございます。

 実は、私、この五月の三日から五日まで中国に行ってまいりまして、これは日中友好議員連盟のメンバーとして、高村元外務大臣が団長として行かれました。中国に行って非常に感じてきたことがあるんですけれども、特に気候変動という単語が出るとちょっと身構えるようなところがあるのは本当にそうだなということで、やはり十三億人を何とか養っていかなきゃいけないという中国の指導者の方々の苦労というのもあるんだろうなということも感じてまいりました。

 ただ、対外的には大変厳しい態度をとっている一方で、本当に省エネについてはかなり指導者の方々もこれは本気で取り組まないといけないぞということを考えているのだということを、向こうで会った方々の言葉の端々からも感じてまいりました。

 私ぐらいの世代ですと、昔、天安門前というと、自転車がわあっと来るイメージがあったんですけれども、もう自転車なんかほとんどありませんで、車の数が物すごかったです。また、北京オリンピックのとき一時きれいになったと言われていた北京の大気も、かなりスモッグがきつくて、向こうがもやになって見えないような状態だったりとかしたわけですけれども、そうした中で、例えばある方のお話ですけれども、中国の方が言っているんですよ、これだけ中国人が車を持っていたら幾ら油田開発をしたって追いつかぬぞ、こんなような話であります。

 そして、何名かの中国の要人の方と会談をさせていただいた中に、習近平副主席ともお話をさせていただく機会がございました。訪中団の高村元外務大臣から、万博のキャッチコピーであるベターシティー、ベターライフのためにも日本の環境技術、省エネ技術を活用してほしい、こういった声かけがあったんですけれども、それに対して副主席は気候変動、環境の分野で中日は協力のチャンスがあると。気候変動という言葉をはっきりと使われてお答えになったというのは、私は非常に印象に残りました。

 総理は、特に北東アジアの関係について重視をしておられますけれども、きょうは特に温暖化対策基本法ということですので、環境分野での日中の協力の必要性についてどのようなお考えをお持ちか、御答弁いただきたいと思います。

鳩山内閣総理大臣 これはもう言うまでもないことだと思いますが、日中の両国は今、戦略的互恵という関係をできるだけ具体的に進めていきたいという努力を、これは前政権から引き続いて進めているところでございます。

 その意味では、ただ単に二国間関係だけではなくて、グローバルな、例えば気候変動問題、環境問題などに対してもお互いに協力をしていこうという立場は言うまでもありませんし、今山花委員からお話がありましたように、中国にとっても大変大きな問題になっているということは間違いありません。

 十三億人の人口を抱えて、経済も発展させていかなきゃならない、このままいくと大変環境が厳しくなってくる、何とか抑えなきゃならない、省エネも大変だ。それは、日本が環境先進国として今日までも公害問題などでさまざまな対策を講じてきたわけでございますから、これを解決してきた日本の実績というものがあります。これからも、まさにグリーンテクノロジーというものをさらに発展させていきたいというのが日本の考え方でありますから、その考え方と中国の今の現実というものを考えたときに、環境問題における日中の協力というものは不可避だ、今こそ行っていかなければならない最大のテーマではないかとさえ思うところでございます。

山花委員 そういった御所見の上でなんですけれども、ちょっと公の場で言っていいことかどうかというのがありながら質問させていただきますが、中国の場合、知的財産権の保護というところが、ちょっと我が国の立場からすると懸念があるというのが率直な印象であります。

 環境の問題もそうなんですけれども、中国の特に中央の方は、知的財産の保護についてはちゃんとやらなきゃいけないという認識はお持ちのようです。というのも、議事録に残る形で言うのはどうかと思いながら言っちゃいますけれども、つまりは、やはり外国からの技術をまねして実際に産業として成り立ってしまっている部分があるのも確かなんです。それで十三億人を食べさせていかなきゃいけないという立場もありますので、それこそ外国に対してはまたいろいろ言われるんですけれども、実際、中国の指導者の意識としては、例えば、中国もこれから技術開発をしていかなきゃいけない、環境の分野については日本に追いつけるかもしれないと思っておられる。そのときに、ちゃんと知財の保護をしないと、中国の国内であえてそういう投資をして新たな技術を磨くなんということをやらなくなっちゃうじゃないか、だから、そこはちゃんとやろうじゃないかという意識はあるように少なくとも私は感じてまいりました。

 日本は、今総理からもお話がありましたように、例えば省エネだとか、あるいは、日本の場合は不幸にして、先に工業化をする中で、先般総理も水俣にも行かれたようですけれども、そうした公害病などについても体験をして、そしてそれに対する技術というものを持っております。こういった先進的な技術を、中国に対して、例えば鳩山イニシアチブの中にあるように技術供与をして、そして、例えばの話ですけれども、日中で合弁企業みたいなものができて、省エネとか公害の技術ですよということでやったことが結果的にCO2削減みたいな話になっていけば、中国政府も後押しをできるのではないかというふうに思っております。

 この点について、例えば幾つか先進的なそういった技術について、日本政府としても、この技術については知財としてちゃんと中国政府に保護を求める、中国もそれに対して保証してもらう、こうした仕組みができれば、何とかそういった技術の提供ということも促進できるのではないかと思っております。

 この話というのは、実は私のオリジナルではなくて、中国の大使の方とディスカッションする中で、こんなことができたらなと。ただ、どうしてもこの手の話になると、環境省とか外務省とか経産省とか、それぞれの役割分担があるものですので、なかなかストレートな形でこんなプランというのは難しいかと思うんですけれども、ぜひ、こういったことで中国なども後押しできるようなことを政策的にやっていただきたい。そして、今申し上げたような提案もさせていただきたいと思うんです。

 ぜひ、政治主導といったら本当にこういうことが我々の仕事ではないかと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

鳩山内閣総理大臣 山花委員から大変いい御指摘をいただいたと思っております。

 これまでも、中国政府に対して、二〇〇九年の十一月に、知的財産権ワーキンググループというものを局次長級で東京で開いたり、日中でハイレベルの経済対話を含んださまざまな対話を知財に関して行っているのは事実でございます。ただ、どこまで実質的にこれが効果があるかということになると、まだある意味でこれからだという思いもいたします。

 そういう中で、ぜひ、中国に対する、向こうにとっても環境面に対して急速にある意味で悪化していく環境を何とかしなきゃならない、日本の技術が必要だという状況になっていると思いますので、そのときに、日本からは技術提供をしますよ、しかし、それはしっかりと保護してください、わかりました、その仕組みをつくりましょうと先方からもそのことを保証してくれることがお互いにとってメリットがあるということになろうかと思っていますので、具体的な事案というものを見つけていきながら、ぜひこういう考え方でスタートをしてまいりたいと思っております。

 山花議員からの御提案を踏まえながら、ぜひ知財というものを重視していく方向の中で環境問題の解決に資してまいりたい、そのように考えております。

山花委員 ありがとうございます。

 非常に前向きな御答弁をいただきましたので、もしそういう方向で進んでいただけるんだとしたら、まず第一歩として、現地での需要調査みたいなことをやっていただければよろしいのかなと思います。それをどこの役所が担うのかというのはありますけれども、そのことを申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、幾つか通告していたことをはしょらせていただきます。中期目標のことについて衆法提出者にも伺う予定だったんですけれども、済みません、ちょっと時間の関係で飛ばさせていただきます。

 今回、中期、長期の目標ということで、大変意欲的な目標を掲げたというふうに小沢大臣からも何度か御答弁をいただいておりますし、また、条件がついていることについて議論はございますが、それでも、外交交渉に説得力を持たせようということについて、そのための一つの非常に使い勝手のいい条項であるということは環境大臣から御答弁をいただいているところです。

 今、中国の話をさせていただきましたが、ことし三月の終わりに、日英の二十一世紀委員会というのでイギリスに行ってまいりました。総理も九〇年と九一年に日英の二十一世紀委員会に出席をされたと伺っております。ことしで二十六回を迎えまして、ハンプシャーで開催をされました。英国側の議長はカニンガムさんという労働党の上院議員の方で、かつて総理にもお会いをしたということで、よろしくということでございました。あと、国際会議の予算をできるだけ削らないでくださいという陳情もいただいてまいりましたので、一応お伝えをさせていただきます。

 その上で、セッション5が、コペンハーゲン・サミット後の気候変動に関する課題と戦略というテーマでございました。その中で、イギリスの排出量取引制度の問題点として、キャップ・アンド・トレードの導入に際してキャップのかけ方が甘かったという反省を、向こうの労働党の方、保守党の方、いろいろいらっしゃったんですけれども、これは皆さんが言われていたことでありました。

 日本において、今回この法案が成立をした後、排出量取引制度を導入するということになっておりますが、こうした海外の事情なども参考にしながら公平性が担保できる仕組みを創設していただきたいと思うわけですけれども、環境大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

小沢国務大臣 まさに委員がおっしゃっていただいているように、今回議論をしていただいているのは基本法でありまして、ある意味では理念、方向性を示す、こういう内容でございます。

 これが成立した後に、具体的なそれぞれの制度、これはいつも申し上げておりますが、今までの政府と違う分野ということで言えば、今お話があった排出量取引制度、地球温暖化対策税、さらには再生エネルギーの買い取り制度、この大きな三本柱をしっかりと具体的な制度設計をしていかなければなりません。

 公平で、なおかつ効果がある制度設計といったものは一体どういうものなのか。それから、日本には日本の事情もこれまたございます。そういったことを加味しながら、特に排出量取引制度に関してはマネーゲームに陥らない、こういった強い指摘もあるわけでありますので、そういうさまざまな御意見をしっかり承って、さらにはまた各界各層の意見もしっかりと承りながら、制度設計に向けて努力をしてまいりたいと思います。

山花委員 イギリスに行ったときに、私どもの立場に対して非常に関心を持っていただいておりました。DPJの議員が来たということで、DPJというのは、デモクラティック・パーティー・オブ・ジャパンの略で、DPJ、DPJと言われていました。非常に関心を持っていただいた要素というのは幾つかあって、政権交代が起こった、その与党の議員としてということもありますが、当時イギリスでは総選挙前で、イギリスでもどうやら政権交代が起こるのではないかと言われている前だったということもあったのやもしれません。

 ただ、その中で、イギリスの方々も、日本が非常に意欲的な目標を示したということはよく知っておられまして、むしろ私がびっくりしたくらい皆さん御存じで、そして、政権交代が起こったことによって日本も随分この問題について前向きになったねというような言葉を多くの方からいただきました。ですので、政権交代で日本も随分変わったということ、イギリスの方々もそうやって感じておられるということは、私は現地に行って肌身で感じてまいりました。

 今後とも、こうした気候変動の問題を初めとして、環境の問題について総理にぜひ世界にアピールしていただきたいと考えるところですけれども、その御決意をお述べいただければと思います。

鳩山内閣総理大臣 私が日英二十一世紀委員会にですか、参加をいたしたときには、まだ日英二〇〇〇年委員会という名前でございました。ずっと、やはり継続は力だなという思いがございますが、ぜひ頑張って、日本とイギリスの間のさまざまなグローバルなイシューに関しても解決に向けて御努力を願いたいと存じます。

 イギリスの方々にも日本の政権交代を意識づけていただいた一つが、環境問題に対するメッセージであったということを伺いました。大変うれしく思っておりますし、やはり政権交代して直後に国連に参りまして、ややもすると、EUが主張はしておったんですが、なかなかコペンハーゲン難しいぞという状況の中で、日本が政権交代した後、二五%の目標というものを掲げたものですから、それに対する期待感というものはかなり大きかった、今でもある、そのように思っております。

 したがいまして、コペンハーゲンのCOP15は必ずしもすべてが成功であったとは申し上げることはできませんでしたが、失敗には終わらなかった、何も成果がなかったということではなかったということはよかったと思っています。

 ただ、これからカンクンのCOP16につなげていかなければなりません。むしろ、ある意味で、イギリスを初めとするEUと日本がいかにしてこの環境問題で協力していくかということは非常に重要だと思っておりまして、アメリカや中国に対してもきっちりと物を言っていけるような関係をつくっていかなければなりません。

 そういう意味で、政権を交代した意義というものを環境問題に見出していくことは大変重要な意味を世界に与えると思っておりまして、できる限りの努力をこれから傾注してまいりたいと思っております。

山花委員 時間がもうあとわずかとなりましたが、済みません。私は九九年にこの世界に飛び込みまして、当時、鳩山由紀夫代議士の秘書の肩書をいただき、当時、小沢鋭仁NC情報・通信大臣の補佐官の肩書をいただき、そうしたお二方に質疑をさせていただいて、また大変前向きな答弁もいただきましたことに感謝を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

樽床委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 冒頭、総理におかれましては、五月一日の水俣病犠牲者の慰霊式に歴代総理として初めて御出席をされました。犠牲になられた方々への哀悼の意を表し、被害拡大についての国の責任を認め謝罪をされたことに、地元選出の国会議員の一人としてまず心から感謝を申し上げたいと思います。

 総理は、慰霊式の五月一日を水俣病問題解決の新たな出発の日にしたいと述べられました。その言葉どおり、すべての被害者が救済される全面的な解決になるように一層の御努力をお願い申し上げて、質問に移らせていただきたいと思います。

 総理は、就任直後の昨年九月、国連気候変動首脳会議で、温室効果ガス削減の中期目標として、二〇二〇年までに一九九〇年比で二五%削減するという大変意欲的な決意を示し、多くの国々から高い評価を得ました。環境を重視し、自然と共生する社会を目指すことを総理自身が示したものとして、社民党も目標実現に全力を挙げたいと考えております。

 ただし、総理の国連の首脳会議の演説でも、また、政府提出の地球温暖化対策基本法案においても、公平かつ実効ある国際的枠組みの構築と、すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が中期目標の前提条件とされております。このような前提条件を置いた理由をまずお聞きしたいと思います。

鳩山内閣総理大臣 中島委員にお答えいたしますが、まず、水俣病の対策に関して中島委員が今日まで大変御努力されたことに敬意を表しながら、これからも、新たなる解決、最終的な解決に向けてともに頑張っていきたいと思っております。

 まず、温室効果ガスの二五%、九〇年比、二〇二〇年までという目標に対する御評価をいただきましたが、前提条件をつけた理由は何かということでございます。

 この前提条件に対してさまざまな御議論があることは理解をいたしております。ただやはり、日本のみが高い目標を掲げて他の国々が追随しないということになれば、結果として、地球環境問題が改善されていくという見通しが立ちません。

 したがいまして、他の国々の背中を押して、もっと頑張らなきゃいかぬぞという思いを強く押し出していくためにも、日本としても、日本もやるぞ、しかしながらこういった条件が必要だぞ、すべての国がやはり公平かつ実効性ある国際的枠組みを構築するべきだ、そして意欲的な目標を示せということを強く訴える必要がある、そのように思っておりまして、あえて前提条件というものをつけてこの法案も準備をいたしているところでございまして、御理解を願えればと思います。

中島(隆)委員 もちろん、主要な排出国が削減義務を負うような枠組みを目指すことは、ポスト京都議定書の大きな獲得目標であることは間違いありません。

 他方、先進国の一員として、また、環境立国を目指す日本の意気込みを示すには、国際交渉の結果いかんにかかわらず、今総理が申されました二五%削減という目標を掲げるべきではないかというふうに思っております。

 確かに、京都議定書で削減義務が課されず、世界のCO2排出の四割を占める米国、中国が国際的な枠組みに参加することは、大変重要な点であります。それも含め、中期目標の前提条件が満たされる最低限の基準はどのあたりに想定をされているのか、その点お尋ねいたします。

鳩山内閣総理大臣 今お話がありましたように、アメリカあるいは中国を初めとして、交渉にもっと意欲的に引きずり込んでいかなければならない国々がございます。それを今、日本としても、あるいはEU諸国としても、協力をしながら、交渉にもっと前向きになるように議論をしかけているところでございます。

 ただ、今、次期の枠組みを交渉している状況の中で、最低の前提条件はどこかということをお示しすることは必ずしも交渉上望ましくない、そのようにも考えているところでございます。適当な時期において、あるいは必要に応じてお示しすることが妥当ではないかとは思っておりますが、今、交渉の段階で、どこが最低であるかというようなことをお示しすることができないこともどうか御理解を願いたいと存じます。

中島(隆)委員 現時点でこのようなことを申し上げるのはどうかと思いますが、この法案の中にもうたわれております。万が一、今後の交渉で政府が前提条件とするような国際合意が得られなかった場合、中期目標を新たに検討されることになるのでしょうか。

 私は、さきに述べましたように、このような場合であっても、環境を重視した持続可能な社会を目指すという日本の姿勢を世界に示すためにも、二五%削減という中期目標を堅持すべきだと思います。

 また、法案においても、二〇五〇年までに八〇%の温室効果ガス削減とした長期目標には前提条件がありません。二〇二〇年までに二五%程度の削減がなければ、長期目標の達成も危ぶまれます。中期目標に前提条件をつけたことは、実効性のある国際的な枠組みの構築に向けて日本がイニシアチブを発揮するという趣旨で理解をいたしますが、仮に前提条件がすべて満たされなかった場合において、二五%削減という目標は大変重要な意味を持つと理解をいたしております。

 総理に伺いたいと思いますが、その点もう一度お尋ねをいたします。

鳩山内閣総理大臣 まさに今、中島委員からお尋ねがありましたように、この二〇二〇年の二五%という目標のほかに、長期目標としての二〇五〇年八〇%削減という非常に意欲的な目標というものを私どもは条件抜きで示しているところでございます。これは何としても果たしていかなければなりません。

 そして、二〇五〇年まで、ある意味でゆるゆると行っていきながら八〇%という目的が達せられるはずもありません。したがいまして、二〇五〇年までの八〇%という高い目標を掲げた以上、それに沿ってしっかりと達成に向けて今から行動していかなければならないことも言うまでもないと思っております。したがいまして、法案の中にも、これは十条の四項でしょうか、中期目標が設定されるまでの間におきましても、基本的施策を積極的に講じなければならない、講じていくということにいたしているわけであります。

 したがいまして、中期目標が設定されるまでの間においても、私どもとすれば、いわゆる国内排出量取引制度あるいは地球温暖化対策のための税というもの、あるいは全量固定価格買い取り制度、こういったものを、基本的な施策においてリーダーシップをしっかりとつくりながら、強い決意で制度設計に臨んでまいります。

 このようなことを行っていきながら、高い二〇五〇年までのゴールというものも、中期的な状況の中でも満たされていけるように今からしっかりと議論を進めていく必要がある、私はそのように考えております。

中島(隆)委員 あらゆる政策を動員して、目標実現に向けて努力をいただきたいと思います。

 さて、小沢大臣は、今月初めにドイツで開かれた気候変動に関する非公式会合に出席をされました。冒頭にその報告がございましたが、そこで、名古屋で十月に開かれます生物多様性条約第十回締約国会議、COP10において、森林保全と気候変動に関する閣僚級会議を開催する考えを表明したと報道されております。COP10で閣僚級会議が実現すれば、年末にメキシコで開かれますCOP16で実効性のある合意を得るための重要な機会になるのではないかと思います。

 COP10、それからCOP16、それぞれ開かれるわけでありますが、ここで、COP16の成功に向けてどのように大臣としては考えておられるのか、その点をお願いいたします。

小沢国務大臣 今委員が御指摘をいただきましたように、ボンでの会議において、ことしのいわゆる生物多様性条約のCOP10の会合に合わせて、いわゆる森林問題、森林吸収の問題が気候変動の問題でも大変重要でありますので、その問題と気候変動の問題をリンクさせたいわゆる閣僚級会合を開きたいと日本として呼びかけをさせていただきました。

 私の今のイメージで言いますと、一日前に日本にぜひ来ていただけないか、そういうお願いをしたい、こう思っています。COP10は、先ほど本会議でも申し上げましたけれども、世界各国から恐らく百九十を超える国、国際機関等々の皆さんがお越しになります。せっかくのそういう機会でありますので、COP10はCOP10としてもちろんしっかりやらなければいけないわけですが、COP16に向けて日本としてもぜひ一つの大きな協力をさせていただきたい、こういう思いでございます。そういった意味で、森林吸収といったものを中心とした議論をやらせていただきたい、こういう提案を申し上げたわけでございます。

中島(隆)委員 総理に再びお伺いをいたします。

 温室効果ガスの二五%削減という高い目標値、それを実行するための国内排出量取引制度や温暖化関連税等の創設について先ほど述べられました。しかし、産業界からは、国際的な競争力が奪われるのではないかという懸念が示されております。

 他方、小沢大臣のもとで検討されてきた中期ロードマップにおいては、二五%削減に向けて再生可能エネルギーなどの低炭素投資を積極的に行った場合の方が、温暖化対策を十分に行わなかった場合に比べて経済への影響はプラスになると分析をされております。

 そこで、総理は、産業界から出されております懸念をどのように考えておられるのか。さらに、産業界に対して、二五%削減とそれに伴った施策の実行への理解をどのように得ようと考えておられるのか、お尋ねをいたします。

鳩山内閣総理大臣 御案内のとおり、日本はかつて公害問題に大変悩まされました。そして、それを日本の高い科学あるいは技術の英知によって克服してきたという歴史的な事実がございます。過去においても、大変厳しい条件というものを突きつけられた中で、むしろそのときに踏ん張って世界一の技術というものを見出してきて、そしてそのことによって経済というものの厳しい環境を克服できたという日本の過去における大変大きな成果がございます。

 私は、今回も同じように、この問題、二五%という意欲的な目標であればあるほど、産業界の皆さん方には一見厳しいことは事実だと思います。しかし、その高いゴールというものを示すことによって、世界一の技術を発展させていく基盤というものを十分に兼ね備えることができる能力を日本が持っている、そのように考えております。

 私どもは、その意味において新成長戦略というものをつくり上げていこうと考えているわけでありますが、その骨格の中に、いわゆるグリーンイノベーションということで、日本が世界一、世界一じゃないといけないので、これは二番目でいいとかいう発想ではありません。やはりこれはナンバーワンにならなきゃいけない話だと思っておりまして、ナンバーワンになることによって、その技術力が世界において高く評価をされ、世界の中で利用される。そして、ある意味で日本にその利益というものが戻ってきて、経済を成長させる礎になる、そのように考えておりまして、アジアあるいは世界を視野に入れながら日本が発展をさらに遂げていくための大きな礎をつくり上げていくことができると思っています。

 ただ、必ずしも十分にすぐに御理解いただけない部分もあろうかと思っておりまして、この基本法案の第三十三条、いわゆる民意の反映をさせなきゃならないというこの三十三条の中で、政策形成に当たっては産業界も含めて広く国民の皆さん方から意見を求めるということを定めてまいっているわけでありまして、今後、このような意見交換を通じて、彼らの思い、産業界の皆さん方の思いをしっかりと受けとめていけるような仕組みをつくり上げていくことも大変重要だと思っております。

中島(隆)委員 日本の成長を、環境産業、特に自然再生エネルギーを中心にということで述べられておりますし、そういう方向で今後の産業の発展にも全力を挙げて努力をしていただきたいと思います。

 最後に、温暖化対策で期待されている大きな柱の一つに、新たな産業と雇用機会の創出があります。政府の成長戦略におきまして、温暖化対策の推進で四十五兆円の新たな市場と百二十五万人規模の雇用創出が目標として掲げられております。ただし、そのためには、再生可能なエネルギー利用への国民の理解や、新たな技術開発に向けた政府の強い後押しなど、さまざまな政策を動員する必要があると思います。

 環境政策の推進による雇用機会の拡大に向けてどのような検討を行っているのか、また何が必要であるのか、総理にお尋ねいたします。

鳩山内閣総理大臣 お答えをいたします。

 先ほどの御質問にもお答えをした部分がございますが、日本は新成長戦略というものをつくり上げてまいりたい、そしてその核としてグリーンイノベーションというものをしっかりとつくり上げていきながら環境・エネルギー大国を目指すということにしております。

 今、百二十五万人というお話もございました。小沢試案では百二十五万人ということでありますが、新成長戦略の中ではさらに百四十万人という雇用を新たに見込みたいと考えているところでございます。

 具体的に申し上げれば、再生可能エネルギーというようなものを普及拡大させていくという基本姿勢が必要だと思っておりますし、さらには住宅あるいはオフィスのゼロエミッション化、あるいは省エネ技術をさらに発展させていくということが大事であろうかと思っております。この中には燃料電池なども入っていると思っております。さらには、モーダルシフトあるいは日本型のスマートグリッドのシステムを、世界的にもそうなんですが、日本の中でも普及推進を図っていくということが大変大事ではないかと思っております。また、今申し上げましたように、こういった技術をさらに海外市場に求めていくということで、結果的に雇用を拡大させていくこともできようかと思っております。

 もっと根本的に申し上げれば、これは農林水産の分野に入ろうかと思っておりますが、森林・林業というものを再生させる、そのことによって地球温暖化に資するということも大変重要でございまして、森林・林業の再生という計画も私どもの考え方の中には強く入っているところでございます。

 こういうものを具体的に挙げていきながら、世界全体のCO2の削減に資することにしていかなければなりませんし、同時に、環境と経済を両立させていかねばならないと考えておりまして、新たな雇用及び経済の再生、発展に向けて大きな役割を果たすものだ、そのように私どもは考えております。

 以上です。

中島(隆)委員 環境産業、特に環境先進国として日本の技術を海外に移転するということも大変必要でありますが、私は、内需拡大、国内の雇用拡大のために、この再生エネルギー、新たな産業をぜひ国内の地域に興していただいて、若い人たちあるいは国民の雇用の創出にひとつ全力を挙げていただきたい。

 それと、最後にお願いでありますが、先ほど小沢大臣も決意を述べられました、COP10、COP16がそれぞれ開催をされます。ぜひ、日本が環境先進国として京都議定書後の法的拘束力のある合意の実現に向けてリーダーシップを発揮して取り組んでいただきますように、総理及び大臣に心からお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

樽床委員長 次に、中谷元君。

中谷委員 総理は地球温暖化対策のために国際公約をされておりますが、国家の首脳の発言というのは国際公約でありまして、これは日本の信頼問題であります。しっかり守ってもらわなければならないわけでございますが、これに関連をしてお伺いしたいことがございます。

 昨年の十一月十三日、日米首脳会談が開かれまして、政府懸案の沖縄普天間基地問題、これが米国と協議をされました。その際、米国大統領に総理は、プリーズ・トラスト・ミーと発言をしましたが、このアメリカ大統領に言ったトラスト・ミー、これはどういう意味でございますか。

 私を信じてくれ、これは最大限の約束になりますけれども、日米の政府間には日米合意がありまして、これは国会で審議をされ承認もされていますが、この日米合意を履行するということですか。この日米合意にはロードマップが書かれていまして、辺野古沖に新しい基地、滑走路を建設するということが書かれておりますけれども、これに沿って約束を果たす、そういう意味でございますか。

鳩山内閣総理大臣 中谷委員にお答えをいたします。

 確かに、日米の合意というものがあることは私も存じ上げております。その中で、オバマ大統領が来日をされた折に首脳会談を開きました。その首脳会談の中で、私は、トラスト・ミーという言葉を、その部分だけは英語でありましたけれども、申し上げたことも事実でございます。

 普天間の移設問題に関して、当然、日米合意というものは、それはそれとして重みは感じているけれども、政権がかわった以上、新しい政権として解決を目指してまいりたいというコンテクスト、文脈の中で、私は、具体的にどこにどうするということを申し上げるような環境ではありませんでしたけれども、私を信頼してもらいたいという意味でオバマ大統領にそのことを申し上げた次第でございます。いわゆる普天間の移設問題に関して解決を図っていくという意思を示したものだと御理解をいただければと思います。

中谷委員 これは、政権がかわっても約束というのは約束で、今もこの地球温暖化の協定に基づいて法律もつくろうとしていますけれども、これが、政権がかわるたびにくるくるくるくる、いや、違いますというと、国際間の信頼というものはなくなってしまうわけでありまして、特に安全保障というのは、政権がかわったとしても約束したことは実行しなければなりません。

 そういう観点で、この政権、八カ月、総理みずからこの普天間問題に臨んでこられましたが、昨年の九月以降、昨年中に方向性を見出したい、三月には政府案を決定する、そして五月末までにはこの問題において決着をさせる、時期は変えないと何回も明言をされていますが、この五月に決着をさせるということは、この物事の交渉や検証、議論を終わらせる、そういう意味でございますか。

鳩山内閣総理大臣 私は、今、中谷委員から普天間の移設問題に関してお尋ねがありますから、それに対してお答えをいたしたいと思っております。

 私は、五月末までに、私ども政府とアメリカとの間で合意を目指したい、そのためには当然地元の皆さん方にも御理解をいただきたい、その方向での解決という意味で合意を目指したいということで、オバマ大統領にも、四月十二日の核セキュリティーサミットのときに改めてそのことを申し上げたところでございます。そのことはオバマ大統領の頭の中にもしっかりと入っておる、私はそのように理解をしております。

 したがいまして、今申し上げたような形で、五月末までに約束を果たしていくべく、最善の努力を今傾注しているところでございます。

中谷委員 では、アメリカ大統領とは五月中に合意をするという約束をされたということですね。

 この決着というのは、確かに地元の了解、合意も必要ですし、その前に政府案を決定しなければ話になりません。あした日米実務者協議が開かれるということでありますけれども、それでは、政府案、いわゆる腹案というものはもう決まっているということでございますか。

鳩山内閣総理大臣 当然、腹案というものは持ち合わせながら議論をしているところでございます。政府の考え方の方向性というものは定まってきている、その御理解をいただいて結構であります。

 ただ、同時に申し上げなければならないことは、まさにこれは交渉事でございます。アメリカの理解をもらわなければ物事が決着しないことは言うまでもありません。したがいまして、その意味におきまして、詳細を今ここで申し上げるわけにはまいらないことも御理解を願いたいと思います。

中谷委員 米国に話をする前にやることがあるんじゃないでしょうか。というのは、連立政権ですから、民主党だけの政権じゃありません。社民党、国民新党、これの合意に基づいた鳩山政権であります。

 かつて、自社さ政権というのがありました。総理もその政権の一員でありましたけれども、そのときには、政策調整会議というシステムで、実に丁寧に時間をかけて物事を決定して、非常にオープンでした。

 ところが、今の政権は一体何をやっているのか。この八カ月、この普天間問題、非常にわかりにくいし、アメリカと交渉するといっても、アメリカは、地元が了解していますかということで、明確な返事はできないと思います。また、五月中ということですが、六月になりますとアメリカの議会が始まりまして、グアム移転の予算が審議をされるわけでございます。したがって、この五月中に決着をさせるとなると、どうしてもこの連立政権の合意なくして政府案の決定もアメリカの了解も得られないと思っております。

 この連立政権、社民党は国外でないとだめだと声高に言っておりますし、国民新党は陸上案じゃないとだめだと言っておりますが、連立政権の協議というものはやらないんですか。

樽床委員長 質疑者に申し上げます。

 法案が提出をされておりますので、法案についての質疑もよろしくお願い申し上げます。

 鳩山内閣総理大臣。

鳩山内閣総理大臣 お答えを申し上げます。

 当然、連立政権であることは理解をいたしております。したがいまして、連立政権の社民党さんあるいは国民新党さんに適宜私どもの考え方に関しては申し上げているところでございます。

 当然、それぞれの政党にはそれぞれの政党の思いというものがあることも理解をいたしております。最終的に五月末の決着に向けて、当然ながら、連立政権でありますから、連立政権の合意というものもいただくように努めて、最終的な解決をしてまいりたいと思っております。

中谷委員 その辺がはっきりしなければなりません。要するに、社民党との連立がある限り、この問題は決着しないと思っております。

 そこで伺いますが、この普天間問題の決着を選ぶのか、それとも社民党との連立解消を選ぶのか、そのどちらであるのか、伺います。

鳩山内閣総理大臣 当然ながら、その両方、すなわち、社民党さんの御了解、御理解もいただきながら、日米で合意をしてまいりたいと考えております。

中谷委員 それならお伺いしますけれども、せんだって総理は沖縄を訪問されまして、沖縄の方々に海兵隊のヘリ基地の一部負担もしていただきたいとお願いをされました。そうなりますと、これは社民党は国外と言っているわけでありまして、完全にそれに反対と言っていると、連立政権がまとまるわけはないんですね。この問題に対してどう対処をされますか。

樽床委員長 質疑者にもう一度申し上げます。

 提案されております法案がございますので、法案に対しても質疑をよろしくお願い申し上げます。

 鳩山内閣総理大臣。

鳩山内閣総理大臣 これは中谷委員が一番よく御存じではないかと思っておりますが、私は、やはり普天間の移設先、さまざまな、四十数カ所検討いたしました。最終的にやはり沖縄の皆様方にも御負担をいただかなければならないということも、これは基本政策のもとでのいわゆる沖縄基地問題検討委員会の中でも、平野官房長官からも申しているところでございます。

 私どもとすれば、くどいようですが、社民党さんの最終的な御理解をいただいて問題の最終的な決着を図ってまいりたいと思っておりますので、私ども連立政権、しっかりと三党で歩んでまいりますので、どうぞ御心配なきようお願いいたします。

中谷委員 法案に関連してということでありますけれども、ここで法案を審議して成立したといっても、次の政権がこんなの関係ないということでけっ飛ばすと、ここで審議をした意味もないわけですね。そういう意味において、政権というのは、やはり国益のことを考えてしっかりやってもらいたい。そういう意味で、この法案を生きたものにするためには、今の鳩山政権が、前の政権がやったものに基づいてほかの国との約束をしっかり果たしていく、これがいかに大事なことであるかという点を申し上げたいと思っております。

 そこで伺いますけれども、総理は、沖縄に行かれたときに海兵隊の存在について触れられました。海兵隊の存在は、必ずしも抑止力として沖縄に存在する理由にならないと思っていたが、学べば学ぶほど、全体の中で海兵隊の役割を考えてきたとき、それがすべて連携し、その中で抑止力というものが維持できるんだという思いに至ったとおっしゃいました。

 海兵隊の存在が抑止力にならないというのは、一国の総理大臣、すなわち自衛隊の最高指揮官が口にする言葉といたしまして大変不見識で、かつまた米国に対しても失礼で不適切だと思いますが、この点、総理は、在日米軍の海兵隊の存在意義、また米国に対していかにお考えであるのか、お述べください。

鳩山内閣総理大臣 中谷委員にお答えをいたします。

 今、沖縄での私のぶら下がりのことに関してお尋ねがございました。

 今、それを私も改めて見ているところでありますが、私は、海兵隊というものの存在が決して抑止力にならないとは一言も申し上げておりません。申し上げているのは、必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならない理由があるかどうかということに関して疑問を感じていた時期があったということを申し上げていたところでございます。

 沖縄における海兵隊の抑止力ということに関して、私は、政権を掌握させていただく中で、これは中谷議員もかつて防衛大臣をお務めでありましたからおわかりだと思いますが、野党の時代にはまるで見えないものが、かなり見えてくるものもございます。機密情報などで、今ここでも必ずしも申し上げることができないことも、官邸におりますと見えてくるものもございます。そういう中で、私も認識を新たにしていく部分もございます。

 そういう意味で申し上げれば、沖縄における海兵隊の存在というものに関して、今は私はその重要性を認識しているところでございます。

中谷委員 総理はすべての責任者でありまして、自衛隊のトップにいるわけでありまして、やはりこういった問題におきましては、決して口にしてはならない言葉がございます。特に、日米同盟を結んでいる米軍の海兵隊の存在の力に気がつかなかったというようなことは非常に不見識でございますので、よく勉強していただきたいというふうに思います。

 では最後に、環境的な意味で、今報道されていますけれども、くい打ち桟橋方式をとった理由として、総理は、沖縄の環境に配慮したからということで、今検討されているようなんですけれども、実は、二〇〇二年の普天間基地代替施設協議会というのがありまして、これは、沖縄県、名護市、国が入って、地元の意見を聞きながら協議をしたわけですね。

 その際、第九回目の会合で、いわゆる埋め立て方式にするのか桟橋方式にするのか、これの比較検討を行いました。このときの結論が、サンゴ、そしてジュゴン、藻場がありまして、そこの環境を破壊してはならないということで、その中間にあるリーフの上につくるのが望ましいという結論になりました。

 この桟橋は、そのリーフの上にくいを何千本も立てるわけですね。そうしますと、工法的にも非常に難しいし、沖縄の海域は波が高くて、桟橋であると台風が来た際にどうなるのか、テロがやってきた場合にどうなるのか、安全上の問題、また、工費も高くつきますし、維持をするのにも毎年三億円以上かかってしまうということもありまして、地元の皆さんとの協議の結果、埋め立て方式が望ましいということで、県も名護市も了解の上、埋め立て方式になった経緯がございます。

 総理は、この事実と、また、このとき調査したこと、これは御存じなんでしょうか。

鳩山内閣総理大臣 今、中谷委員からお尋ねがありましたが、普天間飛行場の具体的な移設先とか工法に関しては、現在真剣に検討中でございますので、それに関して一つ一つお答えをする立場ではありません。

 ただ、大事なことは、住民の皆様方のお気持ちというものに十分配慮しなければならないことは言うまでもありません。それとともに、ここは環境委員会でもございますし、環境に関しては徹底的にこだわる姿勢がこれからの新たな問題を考えていくときには非常に重要になってくる、私はそのようにも思っております。

 また、言うまでもありませんが、米軍の運用上の問題というものも考慮しなければなりません。

 そういったもろもろのことを考えながら我々としては最終的な検討を今進めているところであるということは申し上げることができますが、一つ一つの工法に関してのお尋ねに今お答えをするべきではないと考えておりまして、御理解ください。

中谷委員 さきの党首討論で、総理は、十三年かかってくい一本打てなかったじゃないかと言いましたけれども、これは、実に丁寧に地元と協議をしながら一歩一歩合意を進めて、ようやく環境調査までたどり着いたわけでありまして、やはりその間の経緯とか、やってきた方々の努力とか、まして、国のためにやらなきゃならないという沖縄の誠意を踏みにじるようなやり方では、物事は成就しないわけでございます。

 そういう意味におきまして、総理は、普天間問題は五月までに決着をさせると明言しておりますので、ぜひこれを実現すべく、もう残された期間は少ししかありませんが、仮に五月に決着できない場合は、総理への信頼も揺らぐわけでございます、国際信頼も失墜するわけでございまして、今後のことを考えましたら、みずから身を引かれるということが一番よろしいかと存じております。

 そのことを申し上げまして、今回の法案につきましては、国際公約に従った法案でございますので、さらに一生懸命取り組まれることを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。

樽床委員長 次に、齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健でございます。

 まず初めに、総理、本日は、大変お忙しいところこの環境委員会で我々の質疑に参加をしていただきましたこと、まず心から御礼を申し上げたいと思います。

 温暖化問題は、御案内のように、各省横断的な広範なテーマでございます。そういう意味では、総理なり官房長官、各省横断的に見られている方と質疑をさせていただくというのが基本ではないかと私は思っておりまして、きょうは時間も限られているので、一部のかなめの質問に絞って総理に御質問をさせていただけたらと思っております。

 まず初めに、鳩山総理は、日本の二五%削減目標を国際公約とされたときに、その前提として、先ほど来から御議論ありますけれども、世界のすべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築、及びすべての主要国の参加による意欲的な目標の合意、この二点を前提条件として繰り返し述べられております。

 すなわち、今後の温暖化交渉に対する日本政府の基本的な考え方としてお伺いしたいのですけれども、世界の排出量の二〇%以上を出している米国や中国、当然主要排出国だと思いますけれども、こういう国が削減義務を負わない、いわゆる今の京都議定書の単純延長は、総理がおっしゃられている前提条件を当然満たすものではないと考えるわけでありますが、この点につきましての総理の御見解を賜れればと思います。

鳩山内閣総理大臣 齋藤委員にお答えをいたします。

 まさに今、齋藤委員お話しされましたように、この地球環境問題、気候変動問題を解決していくに当たって、アメリカあるいは中国が大変大きなキープレーヤーになることは間違いありません。したがいまして、私が前提条件として申し上げておりますのは、そういった主要な参加国が公平かつ実効的な役割を果たしていかなきゃならぬということで、国際的な枠組みというものがつくられなきゃならないと申し上げているわけでございます。

 したがいまして、こういった主要なプレーヤーが入らないような形での解決というものは、そもそも我々とすれば考えられないということでございまして、日本としては、米国を除く先進国のみが削減目標というものを定める京都議定書の附属書改正のみを二〇一三年以降の法的枠組みとすることは、全くもって受け入れられない話である、そのように理解をいたしております。

齋藤(健)委員 ありがとうございました。大変重要な点を確認させていただきました。

 次に、昨年の九月に総理は国連でこの二五%目標を表明されて、二〇二〇年、九〇年比で二五%削減ということでありますので、これは、自民党の考えに基づいて〇五年比で二〇二〇年がどのくらいの削減になるかといいますと、三〇%強の削減になります。つまり、〇五年から二〇二〇年までの十五年間で三〇%強の削減が必要になる、こういう計算になるわけであります。

 現在我が国は、これはもう御案内のとおり、京都議定書に基づきまして、一九九〇年から二〇一〇年までの二十年間で六%削減するという目標を掲げて努力をしているところですが、その実現もなかなか四苦八苦をしているところであります。二十年で六%で四苦八苦しているのでありますが、それを十五年で三〇%強削減するということになりますものですから、国民各層から、本当に大丈夫なのか、どういう影響が出るのかという懸念の声が出てくるのは、これは当然のことだろうと私は思います。

 そして、私が十一月に衆議院の予算委員会で総理を初め閣僚の皆さんに質問させていただいたときには、私は、例えば、この二五%の中で国内の削減分の真水がどのくらいなんでしょうか、あるいは、経済やGDPに与える影響というのはどの程度と考えればいいのでしょうか、あるいは、国民生活、特に国民負担と言ったらいいかもしれませんが、それはどのくらいになるんでしょうか、それから、海外から排出権を買ってこざるを得ないという状況があるのであれば、国富の流出はどのくらいになるんでしょうか、あるいは、雇用にも影響が出るんじゃないか、十五年で三〇%削減ですから。それぞれの影響につきまして質問させていただいたときには、明快な御答弁は残念ながらございませんでした。まだ十一月でした。

 法案が国会に三月十二日の段階で提出されましたけれども、その法案を国会に出された時点におきましても、これらの重要な点につきまして、政府としての見解は示されておりません。

 これは私個人の懸念ではございませんで、例えば、三月十二日にこの法案を閣議決定した際に、日本基幹産業労働組合連合会、いわゆる基幹労連の神津事務局長がわざわざ文書で談話を発表されております。この文書、どのように書いてあるか。一部読ませていただきますと、「今後の通常国会においては、これらの課題克服に向けた建設的な議論を期待するとともに、様々な負担の姿についても逃げることのない、国民目線に立った審議を求めるものである。」つまり、この通常国会において、さまざまな負担の姿についても逃げることのないよう審議を求めるということを、労働組合の皆さんが求めておられます。

 そして、産業界は、やはり同じ日に、鉄鋼連盟や電気事業連合会等九団体の会長名でこれまた文書を出しておりまして、そこでもこういう書き方になっております。「今後、本法案に関わる国会等における具体的な内容の審議・検討に当たっては、下記の点について明確にし、国民の理解と納得を得られるよう、十分に時間をかけ必要な手続きを踏まえて実施していただくよう強く要請する。」ということで、国会等の審議、検討に当たって、次の点ということで、こういうことが書かれております。「我が国経済、国民生活や雇用に与える影響と、国民負担を明らかにすること。」こういうことを産業界もこの法案の国会審議において求めているわけであります。

 しかし、それでもなお、この法案審議が大分進んではきましたけれども、現時点におきましても、政府として示されたものは何もございません。これでは、二五%削減のよしあしについて国会で議論しろと言っても無理なのではないかと私は思います。

 政府としてこういったものを国会に示さずに国会の議論をお願いしたいということになっているわけでありますけれども、総理は、このようなことで国民への説明責任を果たしていることになるとお考えになっておられるのかどうか。まさに、基幹労連の事務局長の言うように、「様々な負担の姿についても逃げることのない、国民目線に立った審議を求めるものである。」という切実な要望を全く無視して、一切政府としての見解を示さないままこの審議を今後も続けていくのか。国内に与えるさまざまな影響につきまして、国会に対するきちんとした説明責任を政府として果たすべきであると私は考えますが、政府の最高責任者としての総理の御見解を賜れればと思います。

鳩山内閣総理大臣 まさに今、そういった議論を行っていただいているところだと思っておりますが、齋藤委員、この中長期のロードマップ、例えばこういうものをたたき台にして皆様方に御議論をしていただいているところでございます。まずは基本法というものを上げさせていただく中で大綱を前回も決めてまいったわけでありますが、そのようなやり方が今回も適当ではないか、むしろ私はそのように思います。

 例えば真水をどのぐらいにするかということも、事前に今、最終的に決めるということではなく、これからの議論の中で、やはりできる限り真水を多くすることの方が望ましいと我々は考えておりますが、産業界の中では、なかなか難しいぞ、海外からの排出権でというような考え方もあるいはあろうかと思います。

 基本法を上げていただいて、そしてその中で国内あるいは海外の状況というものを十分にしんしゃくしていく中で、最終的なこの国のあり方というか環境政策というものをしっかりと議論してお決めいただくことが、むしろその方が望ましいのではないかと思っておりまして、その前段階として、さまざま、例えば産業界の各セクターにおけるある意味での負担の部分と、あるいは、それを乗り越えたプラスの部分というものを今しっかりと議論をしていただいているところではないかと思っておりまして、私は、今、環境委員会において御議論していただいていることが正しいやり方だ、そのように認識しております。

齋藤(健)委員 総理、確かに小沢大臣試案というロードマップが出されたのは事実でありますが、このロードマップは、一言で申し上げますと、ここの場で議論するに値しないような、まだ不十分なものだと私は思います。

 四月二十八日にこういうものがアピールとして公表されました。「環境省「中長期ロードマップ検討会」の分析について」ということで、これは、地球温暖化問題に関する閣僚委員会の副大臣級検討チームのタスクフォースのメンバーの有志の方々、つまりこれは、この世界で研究者として名の通った方々、全部で八名が文書でアピールを発表しております。

 その中のことをちょっと申し上げたいと思いますが、「今般、環境省から「中長期ロードマップ検討会」の分析結果が出され、またその一部が環境大臣試案にも利用されたことは残念である。」

 その前段にこう書いてあるんですね。

 分析に関する情報の提示が限定的で議論が十分なされることなく、今般、環境省から「中長期ロードマップ検討会」の分析結果が出され、またその一部が環境大臣試案にも利用されたことは残念である。開示されている情報が十分でないため詳細は不明であるが、例えば、以下のような点は、これまでタスクフォースで議論してきた成果を踏まえたものとはなっていないように見受けられ、懸念を有するところである。大きな排出削減は国民生活に大きな影響・変化をもたらすものであり、国民すべての理解・協力なしでは実現できない問題である。そのため、今後、科学的・専門的な見地による開かれた議論の中で、精査されることを望みたい。

ということでありますので、専門家の皆さんがまだまだこれは精査をしなくちゃいけないと言うようなものが、示されたロードマップなんです。

 そして、もう一つ申し上げますと、これは当委員会ではないんですが、経済産業委員会でのやりとりの中で、この小沢大臣試案について経済産業省の増子副大臣がこういう答弁をされています。これは、小沢さんのロードマップの中で、風力発電の導入後の数値について我が党の近藤委員が質問したところで副大臣の答弁があったわけですが、「経済産業省としても、この数値を我々が認めて達成目標に向けてやっていくということではありません。」

 そういうことになりますと、経済産業省とも意見が全く異なるもの。そうなりますと、このロードマップは何なのと。要するに、国会の審議のベースになるようなものとは思えない。少なくとも、経済産業省や厚生労働省、あるいは農林省も関係するかもしれませんが、そういうところがきちんと議論をして、そして政府としてこの国会に出すのが私は最低限の礼儀ではないかと思うんですが、残念ながらそうはなっていないんです、総理。

 総理もお忙しいからなかなか詳細まで把握されていないかもしれませんが、このロードマップの内容を見てみても、分析の結果、雇用がふえるというものだけを載せているとか、いろいろな点で疑問がありますので、私としては、これをもって政府が国民に対する説明責任を果たしている、そして国会に対して真摯に説明責任を果たしていると思えないんです。

 それでも総理は、このロードマップを示しているということで政府の説明責任を果たしているというお考えなのかどうか、この点につきまして御見解を賜れればありがたいなと思います。

鳩山内閣総理大臣 お答えをいたします。

 まず最初に、何か、御意見を寄せられた方、これは前政権のときのタスクフォースから続けてなさっておられた方で、二五%という今回の政府の考え方に基本的には反対の方の御意見だと承っております。ある業界に近い方だというふうにも承っておりますが、そういった方の一つの意見であることは間違いないと思っておりますので、しっかりとその御意見を承ることも大事だと思っております。すべてを否定するつもりはありません。

 そして、今回、いわゆる小沢試案なるものも、これがすべてだ、金科玉条で、これに沿ってやれば大丈夫だと申し上げているわけでもありません。さまざまなお考えがあることも認めたいと思います。

 環境大臣として環境問題を中心に議論してきた中での、ある意味で環境に一番配慮した考え方もあれば、産業界に配慮した考え方もありましょう。その中での議論をこれからしっかりとかみ合わせていきながら最終的に結論を一つに見出していくというプロセスが大事だと私は思っておりまして、それをこれから大いに、基本法をつくっていく中で、例えば、先ほど申し上げましたように、真水をどのぐらいにするべきかというようなことなども、最終的な結論というものを見出していけばよろしいのではないかと思っておりまして、私は、そのようにむしろ柔軟な発想の中で、政府全体としての考え方を皆様方との議論の中でつくり上げていくことが極めて重要ではないかと改めて申し上げておきます。

齋藤(健)委員 総理、まず私が申し上げたいのは、この八人の方というのは、別に二五%反対派だとか産業界寄りの人だとかいうことはありませんので、この点、本当に真摯に申し上げたいと思いますが、正確に、情報を正しいルートからとっていただければありがたいなと思います。

 それから、私が申し上げているのは、各省もまだまだ異論のあるようなものを国会に出す、そしてそれをもって国会で議論してくださいというのは、少し乱暴な議論ではないかと思います。総理として、政府として各省と調整したものを、こういう影響があるというものを国会に出すおつもりがあるのかどうか。

 少なくとも自由民主党は、各省と調整をして、政府内で異論のない形のものをお示しした上で我々の一五%削減目標というものを決定し、国民の皆さん、そして国会の皆さんにお示しをしているわけでありますが、まだそういうものが民主党政権からは出てきていなくて、いろいろな議論のある小沢試案のみが出されているというのが現状であります。

 この現状を改善して、この法案審議で、二五%削減目標というものを法案に書いているわけでありますので、政府としてそういった調整したものをこの国会審議で出されるおつもりがあるかどうか、その点だけ最後に確認させていただきまして、時間になりましたので終わらせていただきたいと思います。

鳩山内閣総理大臣 もう一度申し上げさせていただきますが、いわゆる小沢環境大臣の試案というものは、私は、今回の基本法案を審議するに当たっては十分参考になる試案だ、そのように考えております。

 ただ、それがすべてだと申し上げているつもりはありません。さまざまなお考えがあることも事実でありまして、さまざまな考え方に基づいた経済モデルあるいは環境モデルというものがつくられていって当然だと思っておりまして、それぞれが、国民生活あるいは雇用、産業競争力、違う数値というものを出してくることも十分あろうかと思います。

 ただ、そういったものを基本法案の中で審議していきながら基本法をつくる、そしてその後の段階として、先ほど申し上げましたように、現実問題として二五%というものを担保していくために日本としてどういう生きざまがあるかということを大いに議論してまいればよろしいんじゃないでしょうか。それを我々は、一年かけて、一年以内に答えを見出すということを申し上げているわけでありますから、その間に大いに十分議論をしてまいろうじゃありませんか。私はそのように思っております。

齋藤(健)委員 これで質問を終わりますけれども、私、最後に、大変生意気な言い方になるかもしれませんが、小沢試案というものについて、総理ももう少しいろいろな方からこの評価を聞かれることを心からお勧めします。そうしないと判断を間違えると思います、ほかの問題と同じように。ぜひそうしてください。

 終わります。

樽床委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 きょうは、重要広範議案、大変お忙しい総理を迎えて審議できることを大変うれしく思っております。総理を迎えてのいわゆる審議のスタート、審議の入り口というふうにきょうはとらえております。先ほどお話がございました、これからしっかり議論をして、詰めるべきところは一つ一つ詰めていきたいと思っております。

 ただ、五月四日、総理が沖縄を訪問されて、きょう公明党の議員として最初に質問に立たせていただきますので、ぜひ二、三、法案に直接関係ありませんが沖縄の問題について聞かせていただきます。

 一つは、最低でも県外、このように約束をされ、また総理になられてからもそのようにおっしゃっていた。沖縄県民の期待は非常に高いものがあった。その期待を裏切るものだと思いますが、総理の御所感を伺います。

鳩山内閣総理大臣 斉藤委員に、環境問題以外ということでございますが、お答えを申し上げます。

 いわゆる普天間の移設問題に関して、私は選挙のときに、できれば最低でも県外ということを申し上げてまいりました。党の公約ということになれば、もう御案内のとおり、これはいわゆる沖縄の負担軽減、そのための米軍再編ということを公約としては申し上げてまいりました。

 ただ、やはり私の発言というものは重いことであるという認識は当然感じておりましたから、私としても、でき得れば普天間の移設先を県外に求めてまいりたいという努力をしてまいりましたし、これからも、でき得ればこの機能というものを一部でも県外にという思いを強く感じているところでございます。

 ただ、なかなか、御案内のとおりのアジアの情勢の中で、また海兵隊の現実の抑止力の観点から見て、非常に県外に移設するということの困難性というものも感じております。

 したがいまして、五月四日に沖縄に参りましたときに、そのことに対して心から沖縄の皆様方におわびを申し上げてまいったところでございます。まだしばらくの間、これがどのぐらいになるかわかりませんが、沖縄に御負担をお願いせざるを得ないということも申し上げてまいりました。

 沖縄の皆さん方はなかなか簡単に御理解をいただけるものではないと思っておりますが、やはり日米同盟というか、世界の平和と安定のために日本の果たすべき役割と、その中での沖縄の皆さん方の今日までの御負担を考えれば、御負担をできる限り軽減したいという気持ちは持ちつつ、御負担をこれからも当面の間続けてお願いせざるを得ないという環境に関しても、公明党さんにも御理解を願えればありがたく存じております。

斉藤(鉄)委員 昨日の普天間問題の関係閣僚会議で政府は五月末の決着を事実上断念した、このように報道され、また、実際、各閣僚からも先送り発言が相次いでおりますけれども、総理が半年にわたり国民に対し表明してきた、地元、米国政府、そして連立各党との完全な合意、五月末日までの合意というのは断念されたのでしょうか。

鳩山内閣総理大臣 全く断念はいたしておりません。

斉藤(鉄)委員 五月末日までの約束、決意は変わらないと。もう一度お聞きいたします。

鳩山内閣総理大臣 それは先ほども中谷委員の御質問にお答えを申し上げましたように、対米的にも申し上げてまいったところでもございます。五月末までに日米の間にしっかりとした合意を求めてまいるために最善の努力をいたしますし、当然のことながら、その前に沖縄の皆さん、これは日本のすべての皆さん方に御負担もお願いを申し上げたいと思っておりますが、移設先になろうかと思われる方々にも御理解を深めていただくことは当然必要だと思っておりますが、そういう中で、最終的に五月末までに私としての一つの結論、合意というものに導くために今最善の努力をしているところでございまして、全くあきらめているという報道がなぜ出ているのか、私もはかりかねているところでございます。

斉藤(鉄)委員 最低でも県外ということで、県民の皆さんとの約束を破った。もしこの五月末までの約束も果たせなかった場合は、総理は進退をかけられるべきだ、それだけ重い問題だ、このように私は思いますが、総理の御決意を伺います。

樽床委員長 そろそろ次の質問をお願いします。

 鳩山内閣総理大臣。

鳩山内閣総理大臣 この問題の解決に向けて誠心誠意、心を尽くしてまいりたい、それのみであります。

斉藤(鉄)委員 地球温暖化の問題でございますけれども、アメリカ、中国、この主要二カ国で世界全体の四〇%の二酸化炭素を出しております。先ほど、それらが入らない次の枠組みは意味がない、今回の基本法の前提条件である公平な枠組み、意欲的な目標という条件にも当たらない、そのように答弁をされました。そのアメリカ、中国を含む枠組みをつくる努力をされているんだと思いますが、どうもよく見えてこない。

 また、現実にUNFCCC、国連事務局のもとで、アドホック・ワーキンググループ、AWGKP、京都プロトコルと、AWGLCA、長期条約、つまり二つのワーキンググループが動いている。これは小沢大臣も、このワーキンググループを一体化して一つの枠組みのワーキンググループにしようと大変努力されている。先日もドイツに行かれました。それはよくわかるんですけれども、現実問題として、この二本立て、京都議定書の延長と、アメリカや中国はそこに入らないで別の枠組みで、ある意味ではまた緩い法的拘束力でやっていこうという動きが現実に進んでおります。これをどう総理は打開されようとしておりますか。

小沢国務大臣 総理の前に一言だけ私からも。

 斉藤委員、一番よく御存じのとおりでございまして、いわゆる二つのワーキンググループがあって、そのうちのKP、京都プロトコルのワーキンググループは、二〇一二年で京都議定書が終了した後、何もなくなっちゃう世界というのはおかしいだろう、こうずっと一貫して主張していて、その気持ちは私たちもよくわかる。だけれども、ではその京都プロトコルの延長の中にアメリカが今入ってこれるか、中国が入ってくるかというと、どうもなかなかそこまで彼らは言ってこない。ここがもう最大の悩みでありまして、そういう中で、まさに斉藤大臣のころ、その二つのワーキンググループを一つにしよう、そういう試みもされたと思いますし、私も引き続きやっているわけでありますけれども、なかなかそこはうまくいかない、こういうことも事実であります。

 でありますが、先般も私、そこでも提案をしてきましたのは、一つはコペンハーゲン合意をまず大事にしよう、出発点にしよう、それから、議長国のいわゆる役割というのを大事にしよう。コペンハーゲン合意のときに、要はラスムセンさんをある意味では総理が背中を押してああいった会合をやって、そしてつくったものでありますけれども、なかなかそれがそのまま採択されなかった、こういう反省もあるものですから、今度のメキシコのカルデロンさんもまさにいらっしゃいましたし、議長を中心にした意思決定方式というのも考えよう、こういう話も盛んに申し上げたところでございまして、一方では全体会合でのそういう努力、それから、今度はバイで、アメリカをどう説得するのか、中国をどう説得するのか、その二つを粘り強くやっていく以外はない。そこにおいて首脳級の役割というのも極めて大きいと私は思っていますので、総理にも大いに頑張っていただきたい、こうも思っておるわけです。

鳩山内閣総理大臣 今、小沢大臣から述べられたとおりでありますが、私も、ほとんどすべての首脳会議において、地球環境問題に関しては議論をいたしております。そして、日本に協力してほしい、というよりも、いわゆるCOP16を何としても成功に導いて、法的拘束力のある文書にまとめ上げていかなきゃならない、そのためには、今お話がありましたように、京都議定書の単純延長の中に巻き込まれてしまっては大変だということで、その話はほとんどの首脳会議の中で申し上げているところでございます。

 今お話がありましたように、全体の議論がなかなか進まないのは現実の今の状況かもしれません。すなわち、COP15が必ずしも成功に終わったとは言えない、完全失敗ではなかったとは思いますが、十分な成果は上げられなかった。しかし、そのCOP15のいわゆるコペンハーゲンの合意というものを基礎にしながら積み上げていく、今何かそのモメンタムが必ずしもない状況を、できるだけ早くモメンタムをまた回復させていかなきゃなりませんから、そのためには、バイの会議の中でしっかりとした認識というものを共有することが大事だと思っておりまして、カルデロン大統領も含めてでありますが、多くの首脳会議の中で、私の方から、ぜひお互いに協力をしていこうじゃないかと申し上げているところでございます。

 つい先日もEUの議長方が来られたわけでございます。その中でも、まさにEUと日本がしっかりと組むことの重要性というものを強調したところでございますので、ぜひこれは前大臣のお力も、御協力もいただきながら、世界の枠組みをしっかりとつくり上げていくための御協力を願いたいし、私としても全力を挙げてまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 アメリカ、中国を巻き込む、特に中国を巻き込む、これはやはり、日本とアメリカがまさにタッグを組んで、強力な情報共有と信頼関係のもとに中国を巻き込んでいく、中国を包み込んでいくということしか方法はないような気がいたします。そういう意味では、先ほど、法案とは直接関係がないと言いましたけれども、アメリカとの信頼関係もしっかりと回復をしてこの問題に取り組んでいくことがいかに重要かということを強く感じております。

 この問題、実は法案と非常に関係してまいります。もし今のような状況が続けば、この法案はいつまでたっても機能しない基本法に、政府案はなってしまいます。といいますのは、ずっと何度も議論が出ておりますが、あの前提条件、今のような状況、またコペンハーゲン合意。このコペンハーゲン合意はとても公平な枠組み、意欲的な目標とは言えません。各国が勝手に自分の目標を言っているだけでございます。もしこのコペンハーゲン合意を土台にした次の枠組みというようなことになれば、この法案は前提条件がある限りいつまでたっても有効な基本法にならない。これはきょうの審議で明らかになりました。

 であるならば、もう前提条件はやめて、この前提条件というのは、この間の委員会でも言わせていただきましたけれども、あなたがやれば私もやるというものです。そうではなくて、私はやるからあなたもやろうという形、これが公明党案です。公明党案は、日本だけが厳しい条件を、厳しいオブリゲーションを負うのは公平ではない、そのとおりです。ですからこそ見直し条項を設けて、その見直しもきちんと国会の審議を経て変える。そう簡単に見直しができるような状況ではありません。この見直し条項の方がはるかに合理的だ、このように思いますが、総理、いかがでしょうか。

鳩山内閣総理大臣 私は、公明党案も拝見させていただきましたけれども、法案の中に見直しを入れるということの方が、この二五%の力を結果として、種々、もろもろの環境の変化によって見直すことができるということで、失わせてしまうのではないかとむしろ心配でございます。

 私としては、やはり前提条件をつけたい。すなわち、確かにあなたがやれば私もやるという話でありますが、これは御案内のとおり、AならばBが正しいとしても、Aの否定ならばBの否定ではありません。すなわち、どういう状況であっても努力をすることは当然のことであります。すなわち、八〇%という五〇年の我々の公約というか、ある意味での法的拘束力というものは前提条件なしに存在するわけでございまして、それがある限り、我々とすれば法案の意味は特に十分にあるわけでございますし、また、やはり背中を押すという役割はこれからも必要だと思っております。

 確かに、コペンハーゲンの合意というものが不十分なものであることは言うまでもありません。しかし、全く何もなかったわけではありません。そして、それぞれの国の努力というものをさらに高めていくために、日本が、あるいはEUが果たしていく役割は極めて大きいのではないかと重ねて申し上げておきます。

 アメリカに対しても協力をすることは大変大事で、そのことで中国を押すということも大事だと思いますが、さらに、私はEUとの間の協力というものを高めていくことによって前提条件が満たされる環境をできるだけつくり上げていくという努力をこれからも求めてまいりたいと思っておりまして、私どもとすれば、この基本法案、ある意味で大変重要な前提条件つきの法案だと申し上げておきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 前提条件がついた法律というのは、それも、その前提条件が満たされるかどうかを外国に依存しているというような法律は、これまでの日本の法律の中に多分ないと言われております。そんな他人任せではなくて、日本はある意味で低炭素社会を目指すわけですから、低炭素社会づくりにもう不退転の決意で臨むということをこの基本法に書くことによって、民間も経済界も、では経済構造を変えていこう、そのことが雇用にもなり、新しい産業を生んでいくことにもつながる、グリーンニューディールということにつながっていくわけです。現実問題として、いつまでもいわゆる機能しない法律であってはいけない。

 小沢大臣はこれに対して、いや、二〇五〇年の八〇%目標があると。これは前提条件がついていませんから、どっちみちそちらに努力するんだからいいんだ、こうおっしゃいますけれども、私はここに大きな誤謬があると思います。

 二〇五〇年の八〇%目標、これはやらなきゃいけない。しかし、これはIPCCに根拠を置くとおっしゃいましたけれども、基本的に二度C以内に抑える、空気中の二酸化炭素濃度を四五〇ppm以内に抑えるということが最終的な目標になっております。ということは、ずっと高目にいって、二〇五〇年に近くなったところで急激に減らして八〇%、それでも長期目標は達成したことになりますけれども、そのときはいわゆる四五〇ppm、二度C目標は達成できません。早くから減らしていかなきゃいけない。そのための中期目標でございます。そういう意味では、その中期目標についても早くから法律の中できちっと規定をしておく方がいいと思いますが、総理、もう一度。

 私は、いわゆる公明党案の見直し規定の方が緩いというふうにおっしゃるのは全くの誤解で、この前提条件の方がはるかに緩いというのは衆目の一致したところでございます。

鳩山内閣総理大臣 今、斉藤委員からお話がありましたその考え方は、私もわからないわけではありません。すなわち、八〇%のところだけ合わせればいいということではないと思います。いわゆる、どういうカーブを描くかという、全体の積分値というものが大変重要ではないか、まさにそのように思っておりますので、その積分の値がどういうことになるかということは非常に意味がある話でありますので、二〇年におけるターゲットというものを果たすべきであることも、私もそのとおりだと思っております。

 したがいまして、日本として努力をすること、そのための前提条件がやはり果たされるために努力をしていくことは言うまでもありませんが、それとあわせて、日本国内ではもう既にさまざまな動きが出てきているわけでありますが、全量の固定買い取り制度とか、税の問題とか、そういったものもどんどんと議論を進めていくことは大いに必要だと思っておりますし、それこそ、先ほど申し上げましたように、前提条件AならばBだということと、Aの否定はBの否定であるというのは、それは御案内のとおり一致する話ではありません。そのこともお含みおきいただく中で、我々としては、やはり基本法の成立というものを大いに望んでまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 それでは、こういう考え方はどうでしょうか。

 前提条件はいろいろな今回の法律制定過程で出てきて、なかなかここは外せない。総理の国連演説の中にも盛り込んだ。非常に重要な、AならばBである、そのAというのはなかなか外せないと。では、そのいわゆる二度C目標、究極の我々の目標を目的の中に書く、そして、いわゆる早期のピークアウト、ずっと高目にいって、最後できゅっと目標を達するではなくて早期に、日本はもう既にピークアウトを達成していると思いますが、世界のピークアウト、そのために日本も早期に減じなきゃいけない、だからこそ中期目標があるわけですけれども、この二つを例えば書き込むということでも、前提条件がついたとしても、かなり日本の姿勢を世界に示すことになるかと思いますが、例えばそういう考え方はどうでしょうか。

鳩山内閣総理大臣 私ども、IPCCの第四次報告書に基づいて議論を進めて、ある意味での科学的知見に基づいて政治判断を行ったわけでございます。そこの議論の根底には、いわゆる二度C以内におさめるという議論があったことは間違いありません。

 したがいまして、今、斉藤委員からお尋ねがありましたが、この基本法は基本法として、これから一年以内に基本計画をつくり上げてまいりたいと思っておりまして、この基本計画の中に、例えばそういった数値を具体的に盛り込めないかと今検討しているところでございまして、その可能性をこれからも十分追求してまいりたいと思いますし、そうなるように最大限努力してまいりたいと思います。

斉藤(鉄)委員 もう一つのやり方、基本計画の中にそういう数値目標を書くということについては、かなり踏み込んだ御答弁だったので了としたいと思いますけれども、もう一つはいわゆる真水分の話でございます。二五%のうち、どの程度が真水分か。

 ちょっと公明党の提案者に、時間がないので簡単に確認しておきたいんですが、公明党の二五%は真水分と海外貢献分を含んでいるというふうに認識しておりますが、その確認と、であれば海外貢献分、逆に言えば真水分はどの程度かということを、時間がないので端的にお願いします。

江田(康)議員 お答えいたします。

 公明党案の十三条一項に明確に示しておりますけれども、公明党の中期目標の二五%減は、国内対策のみならず、森林吸収源や国際貢献分を含んだ数字でございます。

 それともう一つ、どの程度の海外貢献分が考えられるかという御質問でございますけれども、麻生政権のときに我々は試算を行ったわけでございます。その試算を行った結果、国内対策としては一五%は我が国としても可能な範囲である、そういうことからして、国際貢献分を一〇%程度は想定していくこと、また検討していくことは可能ではないか、そのように考えております。

斉藤(鉄)委員 一五%真水、一〇%海外貢献分というようなのも一つの考え方ということかと思います。

 総理、あと五分しかないので、質問を二つさせていただきます。

 一つ目の質問は、総理のいわゆる海外貢献分についての考え方、基本認識をお伺いいたします。

 二つ目の質問は、私は、前提条件が外れないのであれば、少なくとも、中期目標の真水分はこれだけで日本がやりますということを指し示すことが必要なのではないか、そのことについてどうお考えになるかというのが二点目でございます。

 一点目につきましては、国際貢献分、先ほども議論の中で富の流出という言葉が使われておりましたけれども、私は、決してこれは富の流出ではないと思っております。これから資金援助ということも国際議論の中での大きなテーマですけれども、資金援助をして海外で減らしていく、これは非常に安く減らすことができます。

 そういう形で日本が貢献をするということは、私は、非常に重要なことであって、真水分を減らすのと同じような価値があると思っております。富の流出と考えていらっしゃるのか、しかし、これからどっちみち国際貢献をして世界じゅう日本の技術で減らしていかなきゃいけないんですから、それは日本での真水分に相当するぐらいの価値があるとお考えなのか、総理の基本認識をお伺いするのが最初の質問。

 二番目は、前提条件をもし外せないということであれば、私はそれとある意味で同じぐらいの価値が、日本は努力をどれだけしますと世界に示すということは、私どもはこれだけやります、海外貢献分は、CDM等、一つの国際約束がなければできないことですから軽々に言えませんけれども、少なくとも国内でこれだけ減らすことができますということは言えるわけですから、それをこの法律の中で言う、もしくは基本計画の中で言うということも、私はやりますという表現になるのではないか、このように思いますが、この二点についての総理のお考えを伺います。

鳩山内閣総理大臣 斉藤委員にお答えをいたします。

 いわゆる途上国に対して鳩山イニシアチブというものをつくらせていただきました。これは、途上国の皆さん方が地球環境問題に資するような形で協力をする場合に日本として資金的な提供をしようではないか、それは大変大きな意義のある日本の海外に対する貢献だと私は思っております。富の流出という考え方以上に、日本の貢献というものは本来大いにやるべきことだと思っておりまして、評価をされるべきことだと思っています。

 ただ一方で、このことばかり、すなわち、海外にゆだねればいいんだという発想になり過ぎますと、真水は、先ほど公明党さんは一五%という話がございましたが、一五%でよいんだなという話になると、努力というものをできる限り行わなければならないことは言うまでもない、その意欲というものがそがれる可能性がある、そのように思っておりまして、むしろ私どもとすれば、真水は大きければ大きいほどよい、そのように思っております。

 全量ということはなかなか難しいかと思ってはおりますし、今お話ありましたように、海外の貢献というものも評価をされるべきだということも間違いないことだとは思っておりますが、日本としての国内での努力というものを最大限に引き出していくために真水は極力大きければ大きいほどよいという思いにとどめさせていただくことの方が、私は、正しい現在の考え方ではないか、そのように考えております。

斉藤(鉄)委員 海外貢献分についての総理の認識はよくわかりました。基本的に私も同じように考えております。

 それから、一五%真水では低炭素社会への努力がそがれるのではないかというお話でしたけれども、一五%真水も、あと残された九年間を考えますと、一つ一つ技術を積み上げていきますと、これはかなりチャレンジングな目標であることは確かです。そのことだけを最後に言わせていただきます。

 このような議論、いよいよきょう、ある意味では総理にきょう来ていただいて議論がスタートしたわけで、しっかりとした議論を積み重ねて、低炭素社会をつくらなくてはいけないというのは三案とも同じ方向でございますので、いい結論が出れば、このように最後に申し上げて、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

樽床委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

樽床委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に江田康幸君を指名いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十二分散会


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