衆議院

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第14号 平成22年5月28日(金曜日)

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平成二十二年五月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 樽床 伸二君

   理事 太田 和美君 理事 木村たけつか君

   理事 橋本 博明君 理事 山花 郁夫君

   理事 横光 克彦君 理事 江田 康幸君

      石田 三示君    大谷 信盛君

      川越 孝洋君    工藤 仁美君

      櫛渕 万里君    小林千代美君

      斎藤やすのり君    田島 一成君

      玉置 公良君    中野渡詔子君

      村上 史好君    森岡洋一郎君

      矢崎 公二君    山崎  誠君

      吉川 政重君    中島 隆利君

    …………………………………

   環境副大臣        田島 一成君

   環境大臣政務官      大谷 信盛君

   参考人

   (福岡大学法学部教授)  浅野 直人君

   参考人

   (日本弁護士連合会公害対策・環境保全委員会委員)

   (弁護士)        西島  和君

   参考人

   (東京工業大学大学院総合理工学研究科長・教授)

   (国際影響評価学会(IAIA)前会長)      原科 幸彦君

   環境委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  田名部匡代君     中野渡詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  中野渡詔子君     田名部匡代君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

樽床委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ち、自由民主党・無所属の会所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

樽床委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、自由民主党・無所属の会所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として福岡大学法学部教授浅野直人君、日本弁護士連合会公害対策・環境保全委員会委員、弁護士西島和君、東京工業大学大学院総合理工学研究科長・教授、国際影響評価学会(IAIA)前会長原科幸彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

樽床委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

樽床委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず浅野参考人にお願いいたします。

浅野参考人 福岡大学法学部の浅野でございます。

 本日は、環境影響評価法改正につきまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、委員長初め委員の皆様に心からお礼を申し上げたいと存じます。

 今回の改正法案でございますが、中央環境審議会の答申を反映させたものであると存じます。審議会の答申につきましては、この赤い参考資料の六十九ページに参考資料二として出ておりますけれども、この答申を反映させたものであると思います。そして、現行法が制定された当時から検討すべきであると考えられてまいりました課題、それからさらに、現行法を施行してから十年間を経て明らかになりました課題といったようなものについて、現在の環境基本法の二十条というのが制度的には枠組みを示すわけでございます。

 これは私の概要の二枚目のところに記しておりますけれども、念のために確認をいたしますと、環境基本法の二十条は、国がこういうことについての措置を講ぜよということを定めておりまして、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う場合に、事業者が、その事業の実施に当たって、あらかじめ事業に係る環境への影響についてみずから適正に調査、予測、評価を行う、その結果に基づいて、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進する、このことを推進させるために必要な措置を講じるのが国の役割、こういうふうに記しておりますので、これが言ってみれば現在の環境影響評価法の枠組みをつくるものでございます。

 この枠組みに沿い、さらにまた、同じく資料の三ページ目に記しました、二〇〇八年に制定されました生物多様性基本法の二十五条でも環境影響評価に関する規定を置いておりますが、この要請を受け、これに沿った形で、現段階で関係するさまざまな主体がおられるわけですが、必ずしもみんなの意見が一致しているわけではございませんので、最低限度合意ができる部分について可能な手直しを行なったものであると評価するわけでございまして、私は、この改正案に賛成をさせていただきたいと存じます。

 ところで、環境影響評価というのは、もう先生方御存じのとおりでございますけれども、広い意味でいいますと、これからあるプログラムやプロジェクトを始めようとするに当たって、それが環境に与える影響を事前に調査、予測、評価して、それを決定に反映させる、こういうシステムでございます。ですから、それを社会制度あるいは法制度としたものが環境影響評価制度であり、あるいは環境影響評価法であるというふうに考えることができます。

 このような環境影響評価、アセスメントのシステムというものは、三ページに記しましたようにさまざまな機能を持っております。決して一つの機能だけではないわけでございまして、一々は申し上げませんが、ここにありますようなあらゆる機能を含むという可能性を持っております。

 ただし、これらがすべてあらゆるアセスメントの制度の中に入るかといいますと、それは必ずしもそうではございませんで、制度、法をどのように構成するかによっては、ある部分が落ちるというようなことも出てまいります。いずれにせよ、どういう制度、どういう法を構築するにせよ、共通して基礎的であると考えられますのは、第一に掲げております、情報を把握しそれを解析する、こういったような機能でございます。情報を収集し、それがどうであるかということを解析する、そのことを踏まえた上で、第三番目に掲げております、意思決定者に対して情報を提供する、このことがアセスメントの共通の役割ということになるわけでございます。

 なお、この意思決定者への情報提供というのは、ただ単に情報提供に終わりませんで、そのことを通じて意思決定者が環境保全措置を積極的に行うという、そのための誘導という機能も果たすことになるわけでございます。

 アセスメントの役割、目的というふうにいいますと、私の資料で五番目に書いております合意形成機能ということが強調されることがとかく多いわけでございますけれども、環境影響評価のシステム、制度というものは、意思決定を支援するためのサブシステムであると私は考えておりまして、意思決定システムそのものでないことは当然でございます。意思決定のシステムや、どうやって物事を決めるかということに関しては、それは別にまた定められることでありまして、環境影響評価が意思決定そのものだというふうに考えることは避けるべきだろうと思います。

 ですから、先ほど御紹介いたしましたように、環境基本法の二十条も、事業者がみずから環境保全に配慮することを推進するための制度だ、このようにしているわけでございまして、この考え方は基本法二十条も示すところだと思います。

 このような理解を前提といたしまして、以下、改正法案について五点ほど申し上げさせていただきまして、あわせて、改正法案には盛り込まれませんでした三つの点について申し上げたいと存じます。

 まず第一の点でございますが、改正法の三条の二以下に、方法書の公表に先立って計画段階配慮書を作成することを義務づける、このことが新設されることでございますが、事業計画の検討の早期の段階での環境配慮の必要はかねてから指摘されておりまして、諸外国では既に採用されておりますいわゆる戦略的環境影響評価制度、SEA制度を我が国へ導入することによってこれを実現すべきであるという意見が強く出されていることでございました。

 しかしながら、先ほど御紹介いたしましたように、環境基本法二十条の持っている制度の枠組みということを考えますと、諸外国と全く同じようにかなりの上位計画の段階でSEAを全面的に取り入れるということについては、法律構成上の無理がございます。

 ところで、現行の環境基本計画、第三次の計画が今動いておりますけれども、これは、SEA導入のための共通的ガイドラインを策定せよということを定めておりました。そこで、環境省は、二〇〇七年の四月に、現行法の枠組みとの整合性も考える、さらに、予測、評価についての知見が蓄積している、こんなようなことを考慮いたしまして、現行環境影響評価法の対象事業に関して、上位計画のうち位置、規模等の検討段階での予測、評価及び環境配慮の導入ということに関する共通的ガイドラインを定めてございます。これにつきましても、この赤い参考資料では、九十九ページに参考資料四として導入された共通的ガイドラインが紹介されておりますけれども、こういうものがございました。

 この共通的ガイドラインをつくる段階で特に強く意識しておりますのは、計画の詳細が必ずしも完全に定まっていない段階で環境配慮をしてほしいということでございますので、これは柔軟に対応できなければ動かないということを考えておりました。

 とりわけ、事業の性格というんでしょうか、私ども事業種と申しますけれども、どういう事業かによって特性が異なるわけでございます。例えば道路事業のようなもの、これを長物というふうにいっておりますけれども、そんなようなものと面開発ではおのずから性格が違うということがございますし、事業主体が公共である場合と民間事業である場合には違いが出てまいりますから、そういったような違いについて十分な配慮も必要であるということを強調しているわけでございます。

 公共事業に関しましては、国土交通省がこの共通的ガイドラインに基づきましてさらに具体的なガイドラインを策定されまして、これによって日本での事情に応じたいわゆる戦略的環境影響評価、SEAの考え方が第一歩を記したということになるわけでございます。

 先ほど御紹介しました生物多様性基本法の二十五条も、事業の構想段階から実施段階に至るあらゆる場面で環境配慮を事業種の特性に応じながら多元的に推進していかなきゃいけないということを記しておられますけれども、改正法案の三条の二以下は、これまでのこういったような経過を踏まえながらこれを明文化したものというふうに見ることができるわけでございまして、事業種の特性に応じ、これを勘案しながら、柔軟かつ確実に早期の段階から環境の配慮を事業者に行わせることを制度化したものと考えるわけでございまして、今後の実績に大いに期待したいと存じているわけでございます。

 なお、地点に関して複数地点にわたる検討を必ずしも必須としていないという点については、いろいろ御意見があることも承知しておりますけれども、やはり事業種によっての事情の違いということを考えますと、改正法の中でこのようになっていることについてはやむを得ないと考えている次第でございます。

 第二番目は、方法書の説明会義務づけでございます。

 方法書は、環境影響の調査、予測、評価の対象項目と、調査、予測、評価方法を明らかにするものでございまして、これを公表する目的は、地域の環境についての情報はより多く行政や住民の方が持っておられます、また専門家も情報を持っておられますから、こういう方々からの情報をいただき、あるいは御意見をいただいて、もう既に存在するような情報を重ねて調査するというような無駄なことは避ける、あるいは、後になって情報が不足であるといってまた手直しをやらなきゃいけないというようなことを避ける、これが方法書を公表するということの主な目的であると理解しております。

 しかし、これまでのところは、こういったような方法書の趣旨が必ずしも理解されておりませんで、必要な情報が方法書の公表という段階で寄せられないという状況もございますので、方法書の説明会を行うことによってこういったような点についての改善に資することは、早い段階での情報提供を徹底して得ることができるという意味で、意味があることではないかと存じます。

 第三に、方法書及び準備書の縦覧を電子化しようという点でございます。

 これは、併用するということでございますが、法改正を準備するためには、先生方御存じのとおり、この資料の八十九ページにございますけれども、中央環境審議会に先立って研究会を開きまして、問題点をいろいろと検討したわけでございますが、その研究会の席でも、あるいは中央環境審議会の審議の席でもほとんど異論なく認められていた点でございまして、現在の方法書や準備書の縦覧の制度というのは、行政その他の分野で電子化が進められる以前の状況を言ってみればそのまま温存していたということが言えるわけでございます。

 ですから、もちろん企業秘密とか希少動植物に係る情報の秘密保持というような点については懸念の面もございますけれども、しかしながら、紙媒体でやったって同じことなんですから、それが電子化を否定する理由にはならないだろうと思います。

 ただ、電子情報化いたしますと、悪意のサーバー攻撃のような従来なかった事態への不安は残るわけでございますけれども、しかし、これも環境影響評価に固有の話ということではございませんで、犯罪的行為によって物事が妨害されるという危険はどんな場合にもあるわけでございますから、そのことを理由にこれを否定することも適当ではないと存じます。

 第四番目は、地方公共団体の長等の意見提出についての改正でございます。

 当初は、政令市の区域内にのみ影響を及ぼす案件については政令市の長の意見だけで済ませようじゃないかということも考えられたわけでございます。しかし、そうはいっても周辺自治体の長の御意見ということもあるでしょうから、やはり都道府県知事にもそれらを取りまとめて御意見をお出しいただくということは必要だろうということで、両者を並列するということになったわけでございますが、他方では、アセス審査についての第三者機関を持っていない、つまりアセス条例のようなものを持っていない政令指定市もあるということがわかってまいりました。これを都道府県と全く同様に扱うということにも疑問がございますので、結果的には改正法案のようになったわけでございまして、すべての政令市というわけではございませんが、逆に、政令市でなくても要件を満たしているところは独自に意見が出せるということになったと理解しております。

 市の第三者機関に、都道府県の第三者機関と同じようにある程度時間をかけて慎重に御検討いただくということができるようになりますので、多少、事業者の方には対応しなきゃいけない相手が二つになるという御不便をおかけするかもしれませんけれども、これは有意義なことではないかと思います。

 それからさらに、地方分権改革によって環境大臣の意見提出機会が消滅しております部分がございますので、これを回復させるということを含めた環境大臣の意見提出機会をふやすという変更についても、先ほど申しました研究会では当然のこととされていたところでございます。

 最後は、事後調査の取り扱いに関する改正についてでございます。

 手続を経て環境影響評価書が確定いたしまして、その環境影響評価書の中に記された環境保全措置というものが事業着手後に確実に所期の効果を上げているかどうかを確認する、場合によっては追加的な保全措置を講じるというようなことが必要になりますところから、環境影響評価書に事後調査を実施するということを明記している場合がございます。しかしながら、現行法では、事後調査の結果を公表するということは任意とされておりますので、これを義務化しようという改正法案の内容は、妥当なものだと存じます。

 事後調査の実施を評価書に記載させる目的は、調査、予測、評価の段階ではよくわからないということがあるわけでございますので、これを率直にわからないと書いて、事後調査でちゃんと補いますということをはっきりさせる、そういうことができるようにしましょうということが大きな目的であったと思います。現行法をつくるときにも、そういうことを考えてこういう規定を設けたところでございましたが、残念ながら、どうも実際のアセスを見ていますと、わからないことでも、悪い言い方ですけれども、わかったふりをして、大して影響はないというようなアセスメントが散見されるところでございます。やはりわからないことは正直にわからないと言うのは当たり前のことでありまして、そのようなことがこれによってちゃんとできるようになるということであれば、大変よろしいことではないかと思います。

 もっとも、事後調査をだれがいつまで何について行うか、事後調査の費用を一体だれが負担するのかといったような問題は残っておりますので、環境影響評価制度の趣旨、目的を考えながら、詳細については慎重に検討されなければならないと存じます。

 特に、いつまでやるのかということがはっきりしていないと、場合によっては大変無駄なことをエンドレスでやるというようなことがあり得るわけで、私が知っている例でも、毎年毎年同じような報告書を十年近く読まされてうんざりしているという例がございますから、それは要らないんだと思うんですね。だから、形式的に、形骸的にやるということではなくて、本当に実質的に事後調査ができるということがこれによって促進されることを期待したいものと思っております。

 最後に、今回の改正に当たって、制度の対象事業を拡大してはどうか、あるいは、国の審査手続の透明化を図るべきである、環境影響評価をめぐる争訟手続がちゃんとしたものになるべきだといったような点も議論されたわけでございますが、この点について少し意見を述べさせていただきたいと思います。

 対象事業種を広げる、あるいは規模をもっと引き下げるということにつきましては、これは既に多くの自治体で条例アセスがございまして、条例でそういったようなものを取り扱っているということがございますので、法律制度でこれを引き上げてしまうというようなことになりますと、これは、地方分権、地域主権ということが強調されております今の状況でございますから、この辺の調整が必要になってまいります。その点を考えまして、今回大幅な見直しを見送ったということについては、私はやむを得なかったというふうに思っております。

 それから、今後想定される新たな事業種をアセス制度の中に取り込むということにつきましても、調査、予測手法の検討といったような点も必要になってまいりますので、直ちに全面的にこれを取り入れることに至らなかったということでございまして、多少残念ではございますけれども、やむを得なかったのではないかと思っております。

 次に、環境大臣のもとでも、地方公共団体の長以外にも審査が行われるわけでございますが、この審査手続を透明性のあるものにするために第三者機関を設置すべきだという御意見が強く出されていたわけでございます。地域の審査でも、第三者機関が関与することがほとんどでございます。それから、国に新たな機構、組織をつくるということは昨今慎重であるべきだろうということでございましたし、さらに、アセスの内容というのは非常に多岐にわたりまして、特定の少数の委員で審査をするということはバイアスがかかるという危険性がございますから、必ずしも適当ではないと考えたわけでございます。そこで、改正法の立場はやむを得ないというふうに思うわけでございます。もちろん、専門家の意見をちゃんと聞くということをできれば法文化した方がいいというようなことも考えたわけでございますが、現行法の立場はやむを得ないと考えているわけでございます。

 さらに、手続の過程に不服がある者がその違法を争う法定手続を導入するということにつきましても、研究会や審議会で議論いたしましたけれども、今回は結論には至りませんでした。現行の制度のもとでも実は行政訴訟というのは起こっているわけでございますから、そういうことを考えますと、特にこの法に限って特別制度を設けるということに関しては、他の類似の制度との整合性あるいは環境影響評価制度の特性というものを考えながら、引き続き慎重にかつ急いで検討すべき課題であるということで審議会としてはまとめたわけでございます。

 なお、諸外国での戦略的環境影響評価制度のように、上位の政策や計画の策定に当たって環境配慮を行うということに関しては、資料の最後にも記しておりますが、実は、現行環境基本法十九条には、「国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。」とはっきり書いているわけですね。ということは、つまりどういうことかと申しますと、国は、あらゆる施策を策定、実施するに際しては、それが環境に影響を及ぼすかどうかを調査、予測しなければこの条文は生きてこないわけで、最初から影響を及ぼすことが自明であるかどうかはわからないわけでありますから、そういう意味では、あらゆる上位計画、上位の政策に環境配慮しなきゃいけないということは、もう既に環境基本法の十九条に定められているわけでございます。これは二十条とは別枠ということになりますので、そのことも勘案しながら、かつまた、政策や計画の策定手続や過程というものは一つ一つが一律に決まっているわけでございませんで、違いますので、現行法の枠にとらわれることなく、もっと幅広い検討をする必要があろうかと思います。この点は今後の大きな課題ではないかと思います。

 それから、民主党の勉強会に出させていただきましたときに御指摘をいただいたんですが、ダムの撤去のような、これまでのように新しく物をつくるということだけじゃなくて、古いものを壊すというようなときの環境影響についても考えなきゃいけないのではないかという御指摘がありました。これはかねてから私どもも関心を持っておりまして、原科参考人ともども、環境アセスメント学会でもそのことをシンポジウムで取り上げたことがございますので、大変関心を持っておりますけれども、これは残念ながら現行二十条の枠の中ではなかなか難しい面もございますから、これらについては、今後、積極的な検討を継続する必要がありますし、場合によっては、環境基本法そのものを見直すというようなことを含めて検討しなければならないだろうと思っております。

 以上のようなことをつけ加えさせていただきましたが、私の意見の発表は以上で終えさせていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

樽床委員長 ありがとうございました。

 次に、西島参考人にお願いいたします。

西島参考人 日本弁護士連合会の西島でございます。よろしくお願いいたします。

 日本弁護士連合会では、二〇〇八年十一月に、環境影響評価法に係る第一次意見書を発表させていただきました。お手元にお配りしております資料でございます。

 初めに、日弁連のアセスメントに対する取り組みについて簡単に御紹介させていただきたいと思いますけれども、かなり古くから取り組んでおりまして、昭和四十七年、環境保全に係る法律試案要綱の提案というものを公表させていただいております。これを紹介しました山村恒年弁護士の論文を簡単に紹介させていただきたいと思いますけれども、ここでは四大公害の被害について触れられておりまして、「事後的救済は四大公害訴訟で見られたように、金銭による賠償である。これがいかにむなしいものであるかは患者の人達が訴えているとおりである。」「そこで現在必要なのは、実効性のある事前予防法である。それは健康被害の予防という狭い範囲のものでなく、生態系の保全を含めた良好な環境に対する侵害の予防という巾広い事前予防法を作る必要がある。」というような問題意識でもってアセスメント制度についても提言をしているところであります。これは古くて新しい問題意識かと思いまして、紹介をさせていただきました。

 その後も、昭和五十年、五十二年、五十三年、平成八年、平成九年というふうに意見書などを公表させていただいておりまして、弁護士会のアセスメント制度に対する期待、つまり、環境アセスメントというのは、情報公開と住民参加、意思形成参加を本質とした制度であるという認識のもとに、そのような制度が確立されれば住民が実効的な環境保全の道具を手にすることができる、そうすれば、開発事業による大気の汚染、河川や海の汚染、貴重な動植物の生息地の喪失というような事態が防止されて、健康被害の発生の防止、そもそも紛争の発生が防止される、こういう期待を持って意見書を提出させていただいておる。

 平成九年にはようやく、待望の環境アセスメント、環境影響評価法の制定ということに至るわけであります。この制定法の評価ですけれども、意見書にも初めの一ページ目に書きましたけれども、これは、多くの問題点を抱えたまま制定されたものであるというような厳しい評価をさせていただいて、それでもってこの意見書を二〇〇八年に出させていただいたということであります。このほかにも東京弁護士会から団体訴訟制度に関する意見書も出ておりますし、弁護士の環境アセスに対する関心の高さということで紹介をさせていただきたいと思います。

 今回の改正法案に対する評価でありますけれども、先ほど浅野参考人から御紹介ありましたとおり、本当に前進した部分は少なくない。皆さんの御努力の成果だと思いますけれども、ただ、さらにこれを前進、進化させる余地というのはあるのではないかという立場から本日は意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、特に弁護士会から申し上げたいのは、争訟制度の導入であります。

 これは、意見書の八の一、八の三というところで書いておりますけれども、「環境アセスメント手続に不当・違法事由があると主張する団体を含む住民等は、当該事業に係る許認可権者等に対して、その是正を求める不服申立てができることとする。」それから、八の三でいきますと、「環境アセスメント手続において不服申立てを行った者は、当該事業の許認可等の処分の違法性を争う原告適格が認められるものとし、環境保護団体等の団体原告適格については明文規定を設ける。」こういうような提言をさせていただいております。

 この理由ですけれども、先日、二十五日のこちらの委員会の審議では、山崎議員から、事業アセスの限界というような問題点、課題が指摘されたと思いますけれども、事業者という立場は、目的達成のために事業を行う。ですから、見方を変えると、環境を破壊する、環境に影響を与えることによって目的を達成する、そのための手段として事業があるということですから、これをいかに環境に配慮してもらいながら事業を進めてもらうというふうに法律で規制していくかという課題があるかと思うんですけれども、現在の制度では、この点に関してのチェックがちょっと甘いのではないかというような問題意識であります。

 アセスにちょっと消極的な事業者がいいかげんな調査であるとか結論ありきの評価をしてしまったような場合に、司法審査がなされるということがないと、手続の実効性というものがなかなか確保されづらいというふうに認識しております。きちんとやった事業者といいかげんな事業者との公平性という面からも、争訟制度、不服申し立ての手続というのが不可欠でありましょうし、アセスメントに参加する住民ですとか学識経験者の方、農家の方とか漁民の方とか、そういう参加する側にも最終的にはきちんと裁判所の判断を仰ぐことができるということが制度的に保障されていれば、言うだけ無駄だというようなことで参加に消極的になることもないでしょうし、参加の意欲につながるというふうに考えております。住民だとか学識経験者とかいう方たちというのは広い意味での有識者だというふうにとらえておりますので、そういった方の知識が生かせるような手続にしていただきたいというふうに思っております。

 それから、特に代替案の義務づけについては、意見書の四項で提案をしております。これは、コミュニケーションの充実のために不可欠であるということもありますけれども、アセスメント手続の中で代替案の検討が行われていれば、後に争訟になったときに、裁判所の方で、きちんと考慮すべき事項が考慮されたかどうかという審査をしてもらいやすいんだろうと。裁量統制の一つの有力な手がかりになるだろうということで、ぜひ代替案の義務づけはしていただきたいということを提案させていただいております。

 それから、六の一と六の三というあたりで、評価の基準や方法等を省令ないしは法律で定めて手続を客観化してくださいという提案であります。そうすることで司法統制になじみやすくなるだろうということであります。

 それから、五の二と五の三は、環境保全審査の基準の明確化と環境保全審査結果の公表ということで、これも最終的な裁判の場での判断がしやすくなるという見地から提案をさせていただいております。

 ただ、裁判というのは本当に最後の手段だと思いますので、本当は、訴訟まで行かずに早い段階で事業計画が適切に見直されるということが一番望ましいというふうに思います。今回、配慮書手続ということが入りまして、少し前倒しにはなったわけですけれども、さらに上位計画でのアセスメントの実施、戦略的環境アセスメントというものが必要であろうというふうに思っております。これは、きょう配付されております赤い表紙の資料の七十ページ、七十一ページで中環審の答申が引用されておりますけれども、ここでも、「戦略的環境アセスメントとは、本来、個別の事業に先立つ「戦略的な意志決定段階」、すなわち、個別の事業の実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)、さらには政策を対象とする環境影響評価である。」というふうにありますので、これはぜひ今後早急に検討していただいて、導入していただきたいということであります。

 それから、配慮書段階での住民意見の聴取が義務づけられていないであるとか、この段階でも代替案検討は法的義務ということになっておりませんので、このあたりは今後の課題ということで検討していただきたいということであります。

 あと、せっかく前進した、配慮書手続が入ったんですけれども、適用除外事項があるということで、五十二条三項という条文について、参議院でもかなり詳しい質問もなされておりました。この規定自体はかなり広い内容を含み得る規定のように思いますけれども、具体的な内容は政省令で定めるということで、これも赤い資料の四十一ページ、ここでどういう事項を見込むかということが、「大地震などによって大量の廃棄物が発生し、新たな区域での最終処分場の整備が緊急に必要となる場合について、当該事態に対応するための事業を必要に応じて指定することを想定している。」とありますけれども、ここは今後定められるところだと思いますので、弁護士会としても注視していきたいというふうに思っております。

 それから、課題ですけれども、手続の客観性や信頼性の確保のために審査会の設置をという議論が参議院でも審議されておりましたし、先日の委員会でも山崎議員から指摘があったところだと思います。日弁連としても、必要性については非常に高いというふうに考えておりますので、この点も今後ぜひ検討していただきたい。法律で正面から位置づけられるということが必要だというふうに考えております。

 あと、環境大臣意見を述べられる余地が広がったというところですけれども、これも必ずしも、例えば自治体のアセスに対して主体的に意見が述べられるというふうな手続になっておりませんので、そういったところも課題が残っているかというふうに思います。

 情報公開と意思決定参加ということが本質だというのが弁護士会のアセス観、アセスというのはそういう本質を持ったものだというふうに考えておるわけですけれども、なかなか法文を見てそういった本質が見えてきにくいというふうに思います。せっかく時間をかけて、費用をかけて環境影響評価をやっていただくわけなので、先ほども申しましたように、住民、漁民、農民、学者といった幅広い意味での有識者の意見、知恵と情報を反映させていくことが保障された手続になるということが今後の課題ではないかというふうに考えております。

 まだまだ改善の余地があろうかと思います。この赤い資料を見ますと、前回の制定時の審議では地方公聴会というものも実施してその審議をしたというふうなことも書いてありましたので、ぜひ時間があれば今回も、上関、長島ですか、委員会でも事業の例が挙がりましたけれども、辺野古でもよろしいかと思いますけれども、そういった貴重な、すばらしい自然のあるようなところで公聴会をしていただくと非常に前進するように思います。

 そういうことは難しい、なかなか時間がない中でこの改正手続が進むということであれば、せめてその見直し時期というのは、十年ということが法律では予定されておりますけれども、早目に改正作業を始めていただきたいということで、さらなる環境影響評価法の進化を期待いたしまして、意見陳述とさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

樽床委員長 ありがとうございました。

 次に、原科参考人にお願いいたします。

原科参考人 東京工業大学の原科でございます。

 私は、実は四月の八日に開かれました参議院の環境委員会における参考人質疑でもお話しいたしましたので、その後の様子もずっとウオッチしてまいりまして、その場では、皆さん、アセスが本来どうあるかということをかなり御理解いただいたように思います。

 ということで、この改正案、私もかなりいい方向に行ったと思いますが、ただ、抜本的な改正まで行かなかったのはちょっと残念なんですね。そういうようなことをお話しして、もう少しこれを直していただきたいと思いまして、申し上げました。ただ、ここまで来ましたので、この段階で大きく直せませんので、できるだけ早い段階で見直しをお願いしたい。この趣旨は、実績が後で集まってからではなくて、本来あるものはどうかという理念的な議論をもう少し加えていただいて、まさに国会でございますから。そういうふうなことで、三年以内には見直しの議論をしていただきたいと申し上げました。

 そんなことがございまして、そういうことを御理解いただいたようでございまして、環境委員会では修正が通りまして、環境委員会で通ったので本会議でもそういくことを期待しておったんですが、本会議ではそういったことをまだ十分御理解いただけなかったのが残念でございまして、政府原案に戻りました。私は、政府原案自体は基本的には今のものに比べ本当によくなったと思いますから、それは評価しておりますけれども、ただ、環境アセスメントの基本理念のところがまだ十分でないということがございます。

 この件に関しまして申し上げますと、先ほど、最初に浅野参考人がおっしゃったとおりでございまして、環境基本法二十条の規定からいって、この範囲で考えなきゃいけないというのはそういうことなんですが、私は、その範囲で考えた場合に、まだ欠けているという点を申し上げたいと思います。

 浅野先生の資料、環境基本法二十条、この部分、ちょっともう一回申し上げますと、「事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、」云々という規定でございます。「あらかじめその事業に係る環境への影響について」となっております。

 ところが、現行法の規定は、第一条に「目的」がございますけれども、私の資料を見ていただきたいんですが、下の方、四番目の「持続可能な社会を作るものへ」というところでございます。第一条は現在、これに相当する部分は、「規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業に」、規模が大きくという部分と、それから環境影響の程度が著しいものとなる、この二つを追加しているんですね。

 基本法二十条は、これはついていないんですよ。ですから、この点では、基本法二十条に沿うのであれば、環境影響のおそれのある事業にと目的自体を書き直さないと基本法に沿わないでしょう。ですから、そういう意味で抜本的な改正になっていないのが残念なんです。

 私も総合研究会のメンバーでした。浅野先生の見事なチェアマンぶりで、議論はかなりできました。ただ、二年間、十回だけでした。やはり回数が少ないですね。ということで深い議論まで至らなかったのは残念でございますので、そういった機会をぜひ与えていただきたいと思います。

 同じ二年間、私、たまたま国際協力機構、JICAの、環境社会配慮ガイドラインの改定をするということで座長を務めまして、この二年間で何と三十三回議論しております。一回三時間から四時間かけています。総合研究会の時間は二時間ぐらいですから、総合研究会の回数にするともう五十回ぐらいやっているんですね。それだけやったから、JICAのガイドラインは大変高く評価されておりまして、私は国際学会の理事・会長職を四月まで務めておりましたが、その場でも世界銀行のスタッフがJICAのガイドラインはすばらしいと、国際的にも高く評価されております。それだけの時間をかけたからです。

 ですから、時間はやはり必要でございますので、ぜひとも基本理念をもう一回しっかり見直していただきたい。基本法二十条に沿った形で、規模が大きいとか、環境影響の程度が著しいものとなる、こういうようなことを外していただきたいです。

 これは、前政権のもとのお考えでやられたのでそのような制約が残ったのでございますけれども、私は、新政権に大変期待しまして、民主党ならこれはやるだろうと思ったんですが、そこまでやっていただかなかったですね。これは、ある意味ではやむを得ないんです。つまり、総合研究会は前政権のもとですから、そういう制約がありますから、浅野先生がおっしゃったとおりで、そういったことを踏まえてつくったものですから、この時間の範囲内ではやむを得ないんです。しかし、新政権になった以上は、ポリシーを変換していただいて、そして環境基本法二十条に沿った形に、新政権らしい、民主党らしいものにしていただきたいと思います。

 私は、民主党にそういうことを期待していたんですが、今回は残念ながら。それはつまり前政権の研究会の成果がベースだからそうなったのでございましょう。ということで、そんなことをぜひお願いしたい、まずそれを申し上げます。

 そこで、環境アセスメントはどんなものであるべきかということに関しましては、実は放送大学で環境アセスメントという授業を十五年間担当してまいりました。テレビ放送です。昨年まで十五回、三つのシリーズをやりましたけれども、そのためのテキストを書きまして、これはちょっと回覧いたします。ぜひこれを読んでいただきたいんですけれども、番組も見ていただくと中身がよくわかります。その中に、アセスメントはどんなものか書いてあります。ポイントは、環境アセスメントは持続可能な社会をつくるための基本的手段なんです。そういうふうな位置づけでぜひお願いしたいと思います。

 民主党はそういうことが基本コンセプトだと私は考えていますので、だから今の改正案はまだ不十分だと。ただ、この段階でやるのは難しいですから、数年以内に改めて基本理念に立脚した議論をしていただきたいということで、附則にそういったことをつけていただくと大変ありがたいと思います。

 現在の改正案に対して、そういう制約の中で考えた場合に、かなりの程度の前進があるというのは私も同じ考えでございまして、この資料の頭のところに「改善された主要な点」が七項目書いてございます。これは、浅野参考人が御説明になったとおりでございまして、全く同じように考えております。

 それから、「残された問題点」も、浅野参考人が御説明になったとおりでございまして、つまり、我々はまだ議論が必要だったんですね。ただ、時間の制約上、そこまではちょっと答えが出せなかった、そういうふうな状況でございます。

 これをめくっていただきますと、「環境アセスメントの本質は…」と書いてあります。これは少し前になりますけれども、私のことを紹介してくれた記事で、「意思決定過程の透明化」と書いてあります。これは、まさに意思決定を支援する、サブシステムとおっしゃったとおりということで、そのためにどうしたらいいかなんです。日本は環境研究の成果はかなり出ている、しかし、それを実践できない、残念ながら社会がおくれているといったようなことを最初に書いています。それが政権交代によって社会の様子が少しよくなるだろうと期待しておりましたので、そんなことでいいますと、その期待にぜひこたえていただきたいと思います。

 環境影響評価法ができ上がるのに二十五年かかりました。四半世紀かかったんです。英語で言うとア・クオーター・センチュリーですね。そんなにかかって、できたときは、OECDのメンバーカントリー二十九カ国の中で二十九番目ですから、我々としては大変恥ずかしい思いをしております。

 その意味では、ようやく法律ができたときは一種の妥協もあってつくったので不十分であった、それで今回改正しました。ただ、それも政権交代前の仕組みの中でやったので、まだ十分でないと思うのです。ですから、それをぜひ改善をお願いしたい。

 それから、SEAに関しまして、これもまた浅野参考人と同じでございます。浅野先生はこの法律の分野の大権威でございますから、よくおわかりで、全くおっしゃるとおりでございまして、SEAに関しましては、第十九条の方で基本的には対応するものだと思います。十九条というのは基本法ですね。基本法二十条で対応するもので考えるならば、「事業の実施に当たり」ですから、今のように、位置、規模等の検討段階までが、さかのぼってもせいぜいだと思います。ですから、そこまでは頑張っていただきますけれども、その上は十九条だと思います。情報公開ということがベースでございます。

 環境の政策手段は大きく三つのグループに分けられますけれども、一つは法規制ですね。二つ目、三つ目は、これは誘導するものですが、経済的手段、三つ目が情報提供手段と私は整理しておりますけれども、環境アセスメントはまさにこの情報的手段でございまして、情報公開をベースに進めてまいります。これがポイントなんです。

 次をあけていただきますと、朝日新聞での報道です。これはことしのものでございます。「環境エコロジー」という欄に、三月、この法案審議に入る直前でございます。「環境アセス法 抜本見直しへ」と期待を込めた見出しでございますが、残念ながら、今申し上げたことでは抜本とは言えないんですが、改善はありました。下に、「「簡易型」米など先行」と書いています。

 つまり、私は、規模が大きいものだけに限ってやるという考え方はもう古いと。世界はそんなことはありません。規模が小さくても対象にします。規模だけで決めるのは合理性がないんですよ。科学性がないですね。規模が大きくても影響が少ないものはあります。逆に、規模が小さくても影響の大きいものはあるでしょう。これは簡単に思いつきますね。ということで、規模だけで決めるのはおかしいでしょう。

 科学の方法はどうするか。まず試してみるんですよ。余りお金も時間もかけないで、簡単な方法、簡易アセスメントを試してみるんです。そして、どうもこれは影響が大きそうだと思ったときに詳しく調べるんです。今の仕組みは、まず規模で区切りまして、最初から時間もお金もかけてやるから大変なんです。だから、アセスメントのイメージはよくないですね。時間が一年も二年もかかる、何億円もかかってしまう、大きな事業は大体問題が起こりやすいですからたくさん意見が出てややこしい、こうなるわけです。そうなると、アセスメントはどうもイメージがよくなくなる。

 ところが、本来は、国が行う事業、国が行う意思決定、こういったものに関しては、まず影響があるかを簡単にチェックしましょう。持続可能な社会であればそうですね、いろいろなことが意思決定されるわけですから。その上で、どうもこれは怪しそうだという場合には詳しく調べる。こういう二段構成です。

 例えば、辺野古の問題を考えてください。辺野古は、本当に首相があの場所を変えるのであれば、当然、アセスメントをやらなきゃいけないでしょう。そうすると、今の仕組みだと二年ぐらいかかっちゃうんですよ。五月いっぱい、きょうまでですね。もともと不可能なんです。だから、首相に、アセスメントは今はこんなものですということを御進講申し上げたい感じです。

 ところが、私が申し上げる方法だと、簡単なチェックをやりますから、これは私の大学でもう実践しましたけれども、三カ月、四カ月で終わってしまいます。だから、ほかの立地点を、明らかに影響がないと思われるところを選べば、三、四カ月のアセスメントで答えが出てしまうんですよ。これは本当に実現可能性があります。今のアセスは仕組みが悪いからこうなってしまうんです。

 ですから、この基本法は基本理念をぜひ考え直していただきたいと思います。科学というのはそういうものです。

 たまたま岩波の「科学」に、私は頼まれて書きました。これがきのう届きました。何かきょうのためにつくっているみたいな感じです。これは回覧しますけれども、そのコピーを用意しましたので、ちょっとごらんください。その次のページです。これは六百二ページに出ておりますね。「環境アセスメントを持続可能な社会づくりの手段に」と書きました。これが私のメッセージです。つまり、そういうものに本当はなるはずなんですよ。

 環境アセスメントの国際学会、IAIA、インターナショナル・アソシエーション・フォー・インパクト・アセスメントといいますけれども、この学会はとても大きな学会で、国連で特別に認定された団体でございます。大変権威があります。百二十カ国以上のたくさんの国からメンバーが入っております。これはどういうことかといいますと、通常の理工系の学会は五十から六十ですから、その倍はありますよ。つまり、先進国だけではなくて途上国も、世界じゅうでやっているんですね。大変グローバルな、ユニバーサルなものであることがわかります。ということで、アセスメントがなぜ世界に広がったかといいますと、そういう考え方に大変合理性があって普遍性があるからということでございます。

 「環境影響評価法の見直し」と書きました。これはもうスキップしましょう。次に参ります。

 その次のページでございますが、改正案の審議のことを、ちょうど原稿を書いていたらそういうようなタイミングになったので書きました。次のページの左側、「改正案は、目的を記載した第一条には手をつけていない」、こういうことなので、私は、ここのところはやはりきちんと、何とか早い段階で直していただきたいと思います。

 環境アセスメントの理念とはどういうことか。これは、世界のアセスメントは、一九六九年、アメリカの国家環境政策法、ナショナル・エンバイロンメンタル・ポリシー・アクトといいます。ニーパと呼んでいますけれども、あるいはネパと言ったりもしますけれども、これがベースです。その中に持続可能な開発あるいは持続可能な発展という概念がはっきりと示されております。

 大事なのは目的なんですね。目的の記載をここに書いてありますが、「本法の目的は、人間と環境との間の生産的で快適な調和を助長する国家政策を宣言すること、環境と生物圏に対する損害を防止、または除去し、人間の健康と福祉を増進するための努力を促進すること、国家にとって重要な生態系と天然資源についての理解を深めること、そして、環境諮問委員会を設置することである」と書いてあります。

 環境諮問委員会は英語でカウンシル・オン・エンバイロンメンタル・クオリティーといいます。環境の質なんですね。これに対する諮問委員会ということでございます。

 その冒頭に、人間と環境との間の生産的、プロダクティブで、快適な、これはエンジョイアブルという言葉ですけれども、調和を助長する国家政策を宣言する、そういうポリシーをはっきり言っているんですね。そのための具体的な手段としてアセスメントがあるわけでございます。

 このNEPAには既に、現世代が将来世代のために努力するとはっきり書いています。これは、第百一条の(b)の責務内容の一番目の項目として、将来世代に対する現世代の責務という概念が示されておりまして、こういうことがアメリカで始まったんです。こういう概念が世界に広がっていきまして、アセスメントはアメリカが発明した最も有効な方法の一つだとよく言われますけれども、例えば世界銀行を通じて国際協力分野でも使われておりますし、そんなことで広がってまいりました。

 一九八七年の国連のブルントラント委員会のレポート、この中でサステーナブル・ディベロップメントという言葉が特に広がってまいりましたけれども、しかし、その概念自体はもうこのNEPAの中に入っているんですよ。ということは、アセスメントは本来、そのための手段だということがおわかりになると思います。詳しくは私の先ほどの本にも書いてございます。

 そこで、持続可能な社会をつくるためには、賢明な、合理的で公正な判断ですね。合理性のためには科学、サイエンスが必要です。私は理工学の専門ですから、これはもうそのとおりだと思います。ただ、我々は、科学だけではすべての答えは出ないとわかっています、ニュートンが言ったとおりでございます。ほんの一部しかわからないんです。だから、わからない部分をどうしたらいいか。何とか工夫して情報を集めるわけです。そこで人々のいろいろな知見が必要なんですね。ですから、デモクラティックな社会、民主制です。具体的には、参加と、そのための基礎としての情報公開でございます。そういうようなことでアセスメントの仕組みができております。

 これはあくまでも、事業をする主体の自主的な環境配慮を促進することなんです。そういう意味では、規制ではありませんから、自主的な環境配慮をするためには地域住民とかいろいろな専門家の声をしっかり聞かなきゃいけないでしょう。ですから、アセスメントはコミュニケーションということが大変重要でございます。言いかえれば、アセスメントはコミュニケーションと言っていいかもしれないです。

 それで、参加のプロセスというのを考えますと、参加にはいろいろなレベルがありまして、ここのページの右下に書きましたけれども、五段階モデルで申し上げますと、一番低い段階は情報提供。二番目は、それに答えて意見を聞くんですね、情報提供者に。三番目は答えていきます。従来のアセスメントは、形だけの応答に終わる場合が多かったんですね。しかし、アセスは本来の意味ある応答になっていきます。ちゃんと疑問に答えるんですね、意味ある応答。こういったことで、意味ある応答がキーコンセプトだと私は考えております。

 五番目の段階はパートナーシップでございますが、これは、事業をする主体と、それから他の主体とがイーブンということになりますから、これは常にそういう格好になりません。しかし、レベル四というのはかなり普遍性がありますので、そこはやらなきゃいけないと思います。

 そこで、次のページに書きました、図一がありますが、「アセスメントにおける「公共空間での議論」」と書きましたけれども、これは、そのプロセス、意思決定過程を透明化するという考え方で情報公開を進めてまいりますと、これは一種のハーバーマスの言う公共圏です。ただ、環境や地域が限定ですから、むしろ公共空間と言った方がいいですね。ハーバーマスは社会学者で、社会全体で考えます。でも、アセスメントは特定の地域ですから、公共空間でのオープンな議論をするという。これは文書をベースにして、方法書とか準備書とか評価書、そしてそれに対する意見は意見書ですね。そういうことで、意見の内容は公開されますから、公開なプロセスで意見のやりとり、一種の議論ができるわけです。だから、議論をしっかりやることが意味ある応答をすることになるということでございます。

 そこで、環境への影響ということを考えると、最初に規模などで切る、こういうようなことをやっているから十分な配慮ができないと申し上げました。簡単なアセスをやるという発想に切りかえますとどうなるか。これは、スクリーニングをしっかりと講じますね。つまり、数カ月で終わるような簡易アセスをやって、そして、そのことによってどうもこれは詳しく調べた方がいいと思う場合には詳細なアセスに移る、こうなってまいります。

 この方法は、NEPAの方法がそうでございますし、それだけではございませんで、実は、世界銀行を通じまして、国際協力分野で各国の制度がそうなっています。日本でも、実は国際的な場合はそうやっているんです。さっき申し上げたJICAのガイドラインはこの考え方です。特に大きな影響があると思われるものはAという分類に分けまして、若干影響があるかなというのはBです。Cはもう最初から明らかに影響がない、そういう分類をするんですよ。そのときは簡単なチェックをするんです。その上で詳細なやり方を決めます。そういう考え方は当たり前でしょう。それをやっております。ということで、そういうような考えをぜひお願いしたいと思います。

 そういうことになりますと、対象事業の拡大になりますけれども、この拡大は、今やっている形のアセスメントをばんと拡大するという意味ではありません。簡単なアセスメントをまずやりましょうということですね。現在、大変に詳細なアセスしかやらないので、というのは、大変大規模なものしか対象にしていないので、日本のアセスは大変少ないんですね。

 ちょっとめくっていただいて、次のところに「スコーピングと代替案」と書いてあるのがございます。これは方法書段階について書いたものでありますが、お読みいただくことにして、ちょっとスキップします。

 次に、英語でニューズレターとありますね。バリエーション・オブ・エコシステム・サービス・アンド・SEAとSEAのことが書いてありますが、これは生態系保全が大変重要だということ、これも最初に浅野参考人がおっしゃったとおりで、こういったことを我々の学会で議論しております。

 裏側に、エシックス・アズ・ア・プロフェッショナル、専門家としての倫理の問題が書いてあります。私が会長のときにたまたま、コード・オブ・コンダクト、あるいはコード・オブ・エシックスといいますけれども、年次総会におきまして、その下に書いてあるIAIAコード・オブ・エシックス、これを採択しました。アセスメントをやる専門家はやはり倫理観をしっかり持って、専門家として揺るぎない形で意見あるいは情報を提供していくんだというようなことでございます。

 その次のところ、実は、このIAIAの大会、昨年はアフリカ・ガーナのアクラで開催しまして、そのとき、中国政府の方から、私、会長からインビテーションレターが欲しいと来ました。それは、そういう正式のレターが来れば我々は派遣できると。そのときは、政府高官、担当局長の方は通訳をつけてこられて、何と三十数名、大代表団です。

 その高官が、私が開いた特別のフォーラムで、世銀のメンバーみんないる前で、中国はアセスメントを年間三万件やっていると言うんです。日本のアセスは二十件ですからね。自治体のアセス五十件を足して七十でしょう。三万件ですよ。では、アメリカはどうか。NEPA、連邦政府のもとの制度で、三万件から五万件やっております。アメリカは州の制度がほかにあり、これが三万件ぐらいあります。両方足すと六万から八万でしょう。まるで違うでしょう。

 このことには極めて大きな意味があるんですね。「日中文化交流」、これに書いてあるのは「中国の環境アセスメント」です。私は問題がいろいろあることはわかっていますけれども、しかし三万件やるというのは大したもので、それはいろいろな影響があります。

 例えば、人々がみんな環境情報に接する機会がふえますから、環境問題の意識が高まるでしょう。アセスメントの手続がわかるでしょう。そうすると、手続自体が結構スムーズにいくようになりますね。日本はどうですか。国と地方合わせても七十件ですから、一生に一遍アセスの機会に会うか会わないかですよ。みんな素人です。ところが、年間数万件やったらどうなりますか。一生に何度も接するでしょう。そうすると、手続もスムーズにいくし、それから、何といっても環境情報に対するみんなの意識が広まりますね。事業をする主体もそうです。アセスメントをやるのは持続可能な社会をつくるためのお作法だとなりますから、簡単に広まり得るんですよ。そういうことで、非常に社会が、まさに環境に配慮するマインドができるんです。人々のマインド、これをハートウエアと私は呼んでいますけれども、ハートウエアができますと、本当に持続可能な社会になるんですよ。

 民主党であったらそのぐらいのことをやってくれないと、我々の期待がここで崩れてしまいますから。ですが今すぐにこの法律を変えていただくことは日程的に無理なので、ぜひ早い段階で見直しの機会をつくっていただきたい、そういうことを申し上げているんですね。

 この「日中文化交流」の次のところ、最後に、では隗より始めよです。そんなアセスができるのかということを言われますので、実は、私の大学でこれをやりました。私は研究科長をやっておりますので責任もありますので、言うだけでやらないというのは恥ずかしいことですからやりました。自主ミニアセスメントです。ごらんのように、二月にスタートして、四月の末に審査会が終わって、五月、これもたまたまちょうどきょうなんですけれども、この結果をホームページで全部、評価書を掲載します、電子化します。東京工大ですから当たり前だと思われるかもしれませんが、そういうのをやってまいります。

 最後に、ここに写真がありますけれども、これは二十階建てのビル、しかも既存のものに隣接して増設するだけです。ですから、これは日本の今の仕組みではアセス対象になりませんけれども、自主的にミニアセスをやりました。費用は数百万です。事業予算が四十億円ぐらいかかりますから、〇・一%ぐらいですよ。その程度でできるのが簡易アセスなんです。だから、何ら負担感はないと思いますね。ということで、ぜひこういう仕組みに変えていただきたいと思います。私のお願いでございます。

 最後に、一枚つけましたけれども、これは私の本からです。ぜひこの前後を読んでいただきたいんですが、このフローチャートはアメリカのNEPAの制度です。簡易アセスをやって詳細なアセスに行くプロセスはどうなるかを書いてあります。

 これは、ちょっとごらんいただくと、右の方の図の左上に「提案行為の決定」「除外リストの対象か」と書いてあります。つまり、明らかに影響がないものはまずリストから外すんですね。それ以外について、EA、簡単なアセスメントをやります。この簡単なアセスメントの数が年間三万件から五万件なんですね。そしてチェックするんです。公衆、パブリックの意見を当然聞きますね。そしてフィードバックします。その結果、詳細なアセスに至るものは何件か。年間大体二百件から二百五十件です。だから、三万から五万というと四万が平均ですから、二百分の一、わずか〇・五%です。だから、大部分は簡単なアセスで終わっちゃうんですよ。

 辺野古の問題も、本当にだれが見ても影響ないところだったら、簡単なチェックをやれば、代替地はアセスのプロセスはそんなに時間はかからないです。ただ、今の仕組みではかかります。だからこそ、仕組みを変えていただきたいです。

 明らかに影響がないものにただ規模が大きいだけで時間やお金をかけるのは全く合理性がありません。逆に、規模が小さいからといって影響があるものを見過ごすのは大変に残念なことです。例えば、経済規模は日本はアメリカの半分ぐらいですから、アメリカで二百件から二百五十件、詳細なアセスをやっているということは、日本でいうと百から百二十でしょう。ということは、今たった二十件ということは、百件ほどは見逃している可能性があるでしょう。これはとても大きな問題ですよね。そういうことがなくなるんです。アセス逃れがなくなるんです。

 最後に、もう一言だけ申し上げます。

 このことは、これも民主党の政策ですね、コンクリートから人へとおっしゃっているでしょう。アセスを広げるとどうなりますか。無駄な公共事業が減りますね。そして、アセスの方は産業クリエーションですよ。例えば、三万件やりますと、一件一千万弱でできたらどうですか。三千億円の市場です。今はどうですか。一件五億とかかかりますね。たった二十件で百億円ですよ。全く違ってくるでしょう。だから、アセスは新しいグリーン産業をつくるんです。実際、アメリカはそうです、各国もそうなんですよ。だから、産業の面で大変おくれていまして、情けないことです。しかも、そうやってアセスの数がふえますと、アセスの技術が高まりますね。国際競争力も高まりますよというふうなこととか、それから人材も育ちますね。ということで、アセスをたくさん行うということは大変に効果があります。

 最後に申し上げますが、ワインの名産地は、質が高いだけではなくて量も多いですね。ボルドーを見てください。あの地域一帯はすごいたくさんの生産量があって、その中で質の高いものができます。同じことで、アセスメントもたくさんやっていけば、本当に質の高いアセスメントができて、それこそ日本型モデルといいますか、世界に示すことができると思いますので、ぜひそのような検討をお願いしたいということを申し上げます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

樽床委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

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樽床委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村上史好君。

村上(史)委員 おはようございます。民主党の村上史好でございます。

 先生方におかれましては、貴重な御意見をそれぞれ賜りましてありがとうございます。今後の本委員会の質疑に資するような質問に私も努めたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。ただ、私は環境の専門家でもございませんので、素朴な質問になるかと思いますけれども、ぜひその辺も御理解をいただきたいな、そのように思います。

 まず、西島先生にお尋ねをしたいと思います。

 先ほど、争訟手続の導入について特に強調されてお話しいただきました。

 今後の検討課題という状態だと思うんですけれども、訴訟といえば、素朴な疑問として、乱発されるんじゃないかという懸念もないわけではない。特に、正当な訴訟であればいいんですけれども、事業の内容によってはかなりイデオロギッシュな、イデオロギーが入り込む余地のある事業もあるという中で、結局、事業そのものが大きく遅延するのではないかという思いも若干いたします。

 そういう面で、法律家、弁護士さんのお立場として、その辺を詳しく、今後どういう形で争訟手続を入れていけばいいのか、この辺をまずお尋ねしたいと思います。

西島参考人 この点については、法案に先立つ専門委員会ですとか、そういうところでも審議がされたというふうに認識しておりまして、総合研究会で大阪大学の大久保規子先生が、この点について、ぜひ司法的統制の手段を前進させるべきだという意見を述べられると同時に、濫訴の危険ということにつきましては、諸外国の例を引かれまして、かなり訴訟に対する間口を広げている国でも濫訴というのは少ないんだという例を引かれました。

 それで、やはり強調したいのは必要性ということでありまして、現在の法制度ですと、例えば学界が事業者に対して何か要望をする、その要望に応じられないというようなときにでも、結局、それで学者の主観的な利益とか権利とかは侵害されないわけです。そうすると、現在の制度だと裁判で争うことができないということになります。しかし、主観的な利益や権利は侵害されなくても、その背後にある公益ですね、生態系の保全なんというのは典型的な例だと思いますけれども、そういうものを保障していく、保全していく手段がないということになるのは、本当に実効性のあるアセスという観点から非常に残念なことだと思いますので必要性が高い。

 弊害ということですけれども、現在でも、訴訟を起こしたから必ずしも手続がとまるということでもないんです。本当はもう少し緩やかな基準でとまってもいいのかなとは思いますが、ただ、そういった意味でも遅延ということはないと思いますし、民事事件ではかなり間口が広いですけれども、それでもイデオロギッシュな訴訟というのはそうそうない。

 実際、一度訴訟されてみるとおわかりになるかと思うんですけれども、非常に大変です。起こしてみたはいいものの、相当きちんとした根拠がなければ裁判所というのはきちんと見てくれませんので、すぐに打ち切られて終わりということになってしまいます。今ある訴訟にかかわっておられる弁護士も、相当な苦労をして訴訟を維持していると思いますので、そういった御懸念は要らないのかなというふうに思います。

 こういう回答でよろしいでしょうか。

村上(史)委員 ありがとうございます。

 私も法律の専門家ではありませんので、今先生の方からお聞きして、決してアセスそのものに大きな悪影響はない、それどころか、より一層進化させるためにも必要だというお立場というものはよくわかります。またこれからも、この問題については委員会においても質問をしてまいりたいなというふうに思っております。ありがとうございます。

 続きまして、原科先生にお尋ねをしたいと思います。原科先生といえば、先ほどの話でもありましたように簡易アセスの問題ということで、その一点についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど、中国では導入後、年間三万件もアセスをしている、それが可能なのは簡易アセスという手法を導入しているからだというふうなお話でございました。

 日本の場合は、御承知のように百件、二百件というレベルだということです。ただ、これも素朴な疑問なんですけれども、他国のことをとやかく言う必要はないと思うんですが、中国の環境の状況を見ますと、決して環境に積極的な取り組みは見受けられない、また、環境にさまざま大きな問題を抱えている今の状況であるという中で、アセスが簡易アセスによって数が多くなるから環境がよくなるということになるのかどうか。それよりも、今度の改正案を含めて、それを徹底してやっていくということによって環境保全に役立てていくという考え方もあろうかと思うんですけれども、その点、先生の御見解をもう一度お伺いいたします。

原科参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 数が多いだけでいいというわけではない、おっしゃるとおりでございます。私は大学の教員でございますから、学生のいいところを評価してこれを伸ばしたいという気持ちなので、中国のいい点は数が多いところでございます。問題はもちろんあります。中国の留学生は毎回来ていますし、今も中国の教員が私の研究室に来ておりますので、よくわかります。

 やはり数が多いことは大きな意味がありまして、それは中国を見るとそうなっていますが、同じように数が多いアメリカを見ますと、アメリカは国だけで三万件から五万件、州で三万、足すと物すごい数ですね。ということで、アメリカは環境意識が大変高くなっております。これはもう御存じのとおり、昔からいろいろな人がいますからすべての人がそうではありませんけれども、例えば、環境関係のNGOというのは、世界的に知られたシェラ・クラブとか、たくさんあります。環境の意識がそういうようなことでさらに広がってきたと思うんです。アメリカの場合には、もともとそういう組織があってできたという面もありますから、相互の関係はあると思います。

 ということで、私は、数をふやすことは、そういうような意味で、特に社会を変えていく大変大きな力になると思います。中国は、全体のシステムの問題としてはまだまだ改善しなきゃいけないんですけれども、例えば、最近、環境問題が中国でこれだけ騒がれてきた。それは、逆に言えば、アセスメントを三万件もやっていますから、環境情報が伝わるわけです。参加のレベルというのはそんなに高くなくても、まず、第一段階の情報提供、これをやっているわけです。第二段階、意見聴取、これもやっています。第三段階のレスポンスだとか、この辺が問題なんですけれども。ですから、やはり第一段階の情報提供でばっと広がることがあるんです。そういうことで、中国によっていろいろな問題が我々もわかるようになったのは、逆に言うと、そういった情報提供をしてきたおかげなんです。

 ということで、これから先は、私は大いに期待して日中友好で頑張っていきたい。日中韓の東アジア三国、トライアングルでやっているわけでございますから、中国にはいい面もある、逆に、私たちの経験も伝えたいと思います。ということで、環境情報が伝わることがやはり国民の意識を変える。

 それから、特に大事なのは事業者です、事業主体。CSRといいます。アセスメントは本来CSRなんですよ。究極のCSRです。つまり、ちゃんとした手続があって、その上で、あとは環境にどこまで配慮するかは事業者の自主的判断ですから。法律で決まっているのを守るのは当たり前でしょう。法律で決めていないことでいろいろ問題が出てくる可能性がありますね。それに対して、人々の声を聞いてどこまでこたえるか。これはあくまでも事業者の判断です。ですから、そういうようなことで、数をふやすことによって、本当に各事業主体がしっかりこれをやっていく。

 実際に、環境に配慮することは国際社会で大変に価値があることと思われておりまして、私の分野で申しますと、エクエーターバンクスというのがあります。エクエータープリンシプルズといいまして、赤道原則と訳しますけれども、これは、環境配慮をしっかりするということを世界に対して公表した超一流銀行のグループです。最初は三十行でスタートしました。日本で言うと、みずほ、三菱東京、それから三井住友。つまり、だれが見ても一流銀行が世界の三十行の中に入ったわけですよ。これは大変評判がいいので今では八十行近くにふえてまいりました。ということで、環境配慮を事業者が行うことも、これはレピュテーションが上がるわけですね。そういった効果もあります。

 ですから、申し上げたのは、中国はそれだけ数があることでそういう可能性をはらんでおりますので、ぜひ、そういうことで新しい方向に進んでいっていただきたいと思います。

 お願いいたします。

村上(史)委員 先生から懇願されるとは思いませんでしたけれども、確かに環境問題に国民が触れる機会がふえるということは環境保全また環境問題を考える上で本当に有益だとは思いますけれども、また引き続き委員会でも質疑をしていきたいなというふうに思っております。ありがとうございます。

 それでは次に、浅野先生にお尋ねをさせていただきたいと思います。今回の戦略的アセスメント導入に当たりまして、二、三質問させていただきたいと思います。

 まず、実施対象主体についてお伺いをいたします。

 日本版SEAでは、主体に民間も含まれております。諸外国の例を見ますと、ほとんどが政府が実施対象主体になっているということでございます。素朴な疑問として、なぜ日本の場合は民間も含まれることになったのか、その辺についての背景をお尋ねしたいと思います。お願いいたします。

浅野参考人 ただいまの村上先生の御質問でございますが、最初に私の意見発表の中で申し上げましたように、上位計画で政府がイニシアチブをとってつくるような計画についての戦略アセスメントであれば、当然それは政府がやるというのが中心になるわけです。ただ、我が国の今回の日本型SEAという制度は、その段階を全面的に取り入れるというのはなかなか難しいということがあって、一応、現行法の制度枠組みの中で早期の段階での環境配慮を極力やっていただきたい、こういう仕組みにしておりますので、その結果、必然的に現在のアセス事業の中には民間事業が含まれております。

 それから、今後は公共事業が次々に民営化されていくということがございますので、それを外してしまいますと大変問題がございますから、やはりやっていただくことは当然お願いしたい。ただし、やり方についてはそれぞれの事業主体の特性を十分に配慮してやればいいんだろうということで入れた次第でございます。

 諸外国でも全くないわけではないようでございまして、いろいろな段階をSEAというふうに呼びますので、限りなく我が国のEIAに近い段階では当然民間がやる場合がございますし、それから、たまたま我が国と同じような状況で、ある種の事業について形式上民営になっているというような場合には、その民営の組織がSEAをみずから行うという事態が出てまいります。

 私がちょっと調べてみた限りでは、例えば水資源に関する長期計画のようなものを、水道事業者が民間という形になっているものがSEAを行う例がイギリスなどにございますので、全くないわけではないと理解しております。

村上(史)委員 ありがとうございます。

 次に、計画段階配慮事項の検討についてお尋ねをいたしたいと思います。

 本法律案の第三条の二関係に、事業の種類ごとに、環境大臣と協議して、主務省令で定めるところにより、一または二以上の当該事業の実施が想定される区域における環境の保全のために配慮すべき事項についての検討を行わなければならないとございます。

 また、中環審の環境影響評価制度の専門委員会の最終報告書の中に、事業の種類、特性に応じた柔軟な制度とすることが適当との取りまとめもございます。

 いわゆる比較検討するための複数案の検討が義務づけられているのかいないのか。また、事業の特性に応じて柔軟な対応がとれる制度設計になっているという意見もございますし、複数案の設定が事業の内容によっては現実的ではない場合、単一案をもって検討することが認められるのかという点について、浅野先生にお尋ねをしたいと思います。

浅野参考人 ただいまの御質問につきましては、先生お見込みのとおり、法文上も、一または二ということになっておりますから、必ず複数でなければならないということはないと思います。

 考え方としては、既に環境省が定めました、さきに御紹介したガイドラインの中にも同じようなことが出てまいりまして、参考資料の赤い本の百三ページをおあけいただけますでしょうか。ここに「複数案の設定」ということが書いてございまして、この中にも、地域の自然的状況や社会的状況等から複数案を設定することが現実的でない場合には、その理由を付して、単一案で調査、予測、評価を行って環境配慮事項を整理することとするというふうに既に記しているわけでございます。

 これは、心はこういうことでございます。形式的に複数案ということを義務づけてしまった場合に、いわゆる相見積もりみたいなものが行われたのではほとんど意味がございません。つまり、もう本命は決まっていて、ダミーのようなものをもう一つ見積もりでつけて、それでこっちがいいというようなことを言うのではほとんど意味がございませんので、やはり実質的に意味のあるものを複数案として検討する必要がある。だから、置かれた状況の中で実質的に環境面で大きな差がある複数案は検討のしようがないというような場合に、無理やりむちゃくちゃな複数案を用意するということは、時間の無駄でもあるし、さまざまな面で問題が多いというふうに考えましたので、それはしようがないのではないかと考えたということが一つございます。

 それからもう一つは、公共事業のように、特に立地の場合には、用地の強制取得手段を持っている場合と、それから、将来にわたって民間事業がどんどんふえていくということを仮に想定いたしますと、民間事業者の中には用地の強制入手手段を持たないという者がいます。そうなりますと、事実上は、それはやってはいけないという答えしか出せないということになってしまいますので、それは甚だ非現実的だろうということで、立地ということに関して言えば、決められた立地の中での複数案を検討することはあるかもしれないけれども、場所を必ず二カ所用意しなきゃいけないということはないのではないか、そういうことを義務づけるということは少し無理だというのがガイドラインのときの考え方でございましたので、これは、今回の法案についても、基本的にはそのような考慮はせざるを得ないということを考えております。

 それから、もう一点だけつけ加えさせていただきますと、複数案の検討というものがもともと出てまいりました我が国での状況は、定量的に数字で基準値が決まっているようなものについては、数字をクリアできるかどうかということを旨に環境影響評価がやられてきたわけですけれども、そうなりますと、数字で基準を設定できないような、いわゆる生き物系とか景観であるとか、あるいは温暖化であるとかといったような問題が、全くアセスでは取り上げようがないではないか。だったら、定量的じゃなく定性的な比較をすることによって、この方がより負荷が少ないということが論証できるならば、それをやるべきだろう。

 ですから、複数案の検討というのは、そういう定量的に評価できないようなものに対する評価手段として、あるいは意思決定のときの参考資料を整えるために複数案を考えておりますから、そのことは、ちょっと余計なことでございましたけれども、つけ加えさせていただきたいと思います。

村上(史)委員 ありがとうございます。内容がだんだんよくわかってまいりました。

 それと、この問題に関してですけれども、今の先生のお話の中で、事業主体によってはそういうことも義務づけできない部分もあるということで、何か具体的な事業というものを想定してそういう義務化をしなかったということなんでしょうか。

浅野参考人 具体的な事業一つ一つを丁寧に検討するという余裕がございませんでしたので、専門委員会ではこの事業はというような形の想定は特にはしておりません。

 ただ、一般的に申しますと、面開発的なものと、それから線状の開発のものというのは当然特性が違う。例えば、面開発の場合には、極端に言いますとその面については全部用地取得が必要になってまいりますが、線状のものに関しては、その線の上の土地だけを取得すればいいわけですから、おのずからそのときの困難さというのはいろいろな意味で違ってまいります。ですから、そういったようなことは少し頭の中にございましたけれども、しかしながら、先生が御質問でございましたけれども、この事業についてはというような明確な線引きはやっておりませんで、そこは主務大臣にお任せするということで逃げている面がございます。

村上(史)委員 ありがとうございます。

 それでは、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、今参議院の方で地球温暖化対策基本法の審議がなされております。政府としても、また、我々としても、少しでも早くこの法案が成立をして、環境問題に取り組んでいく、地球温暖化対策、CO2対策を進めていこうという思いで今それぞれが頑張っているところなんですけれども、そういう面ではCO2の削減は喫緊の課題でもあります。

 しかし、一方で、環境の保全にもあわせて取り組んでいかなければならないという面で、今後、この二つの課題を解決すると同時に、二つが高い次元で両立できるような状況をつくっていくということが今我々政治の方に求められていると思っております。

 そういう面で、浅野先生にお尋ねをしたいんですけれども、日本版SEAの導入の中で、着実にCO2削減を前進させるエネルギー政策と、また一方の環境保全も十分にやっていく、そういう政策の中の整合性をどういう高い次元で推進していけばいいのか、先生のお考えをぜひお示しいただきたいなというふうに思います。

浅野参考人 私も、温暖化の基本法は早く成立することを心から願っているものでございます。

 先生のおっしゃるように、二つの、エネルギー政策、温暖化の政策、環境保全の政策というものをどう高い次元で調整するかということはおっしゃるとおりでございまして、私の率直な意見を申し上げさせていただきますと、基本計画レベルのところで本来さまざまな配慮が行われるべきだ。例えば、エネルギーの長期計画の中にどこまで温暖化対策という視点が入るのか。このことがないと、やはり現実に事業者の方々がどういうところにどのように時間をかけて資本投下をするのかという方針すら立たないのではないか。現在のように、個別事業の中で大状況のエネルギー政策の話と個別の地域の環境政策の話とをごちゃごちゃに議論しなきゃいけないというのは、大変不幸なことだと思っております。

 ただ、御質問に対してのお答えになるかどうかわかりませんけれども、やはりエネルギー政策と申しますと、これはこの地域のという地域性というよりは、オール・ジャパンという性格が大変強くなります。これに対して、環境政策の観点ということになりますと、例えば温暖化の対策でしたらオール・ジャパン的な視野でやっていけばいい面がございますけれども、一方で、例えばここの土地を改変するとか、ここにいる生き物をどうするのかというような問題は極めて地域性の強い問題でございますから、アセスというのはある意味では地域性の強い問題にも取り組まなきゃいけないという役割分担がございまして、その意味では現場ではぶつかるというようなことがあると思います。これは多分、大臣か副大臣とお話をしたときにたびたび私も聞かされたんですけれども、急がば回れということがあるんだよねとおっしゃっているんです。私もそうだと思います。

 先般、おとといのことでありますけれども、九州で今工事中の揚水式発電のサイトへ見学に参りました。実は、工事を始めた後にクマタカが出てまいりまして、一年間丸々工事がとまってしまったということで、大変現場の方は苦労なさった。もう工事が始まっていますから、ゼネコンの方は全部本社に引き揚げるというようなことまで起こってしまったということを聞いたわけです。

 ですから、早い段階でそれがわかっていれば、一年間とまらなくて半年で済んだかもしれない。あるいは、前に半年余計にかけていれば、そんな一年のストップというのはなくて済んだかもしれないというようなことをつくづく思ったわけでございまして、やはり地域的な問題に関しても、地域の問題だからといって切ってしまいますと、結局は時間がかかるというようなことになると思います。

 私は、今回の法改正によって、事前の配慮ということでむちゃくちゃにお金をかけなきゃいけないとは思いません。これはさっき原科参考人が言われた簡易のアセスということと若干通じる面があるわけですが、早い段階でとにかく既存のデータだけでもよく見ておいて、怪しいなと思うところはできるだけ避けるとか、本格的に調べたらこういうことが将来起こるかもしれないということの心の準備があればそれなりの対応ができるわけでございますから、それも、今まで実際の事業者は、ちゃんとした方は事実上やっておられたと思うんですけれども、それをきちっと制度化することによってそれができるということは、これまでよりももっと合理化できるのではないかというふうに考えている次第でございます。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 質問は終わらせていただきますけれども、きょう、本当に私自身の問題としてまだまだ理解力が足らなかったなという部分もわかりましたし、また、今後の委員会で質疑をする上において大変貴重な御意見をいただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございました。

樽床委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時六分開議

樽床委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、参考人の先生方には、お忙しい中、大変重要なこの環境アセスメントの法律の参考人質疑ということで環境委員会においでくださいましたことを、心から御礼を申し上げます。貴重な、有益な御意見を先ほど来お伺いしたところでございます。私の方も幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 御承知のように、環境アセスメントは、乱開発による環境破壊を防いで持続可能な社会にするために不可欠であり、無駄な公共事業をとめる効果もある非常に重要な仕組みであると承知しております。

 これはほとんどの先進国で法制化が行われてきたわけですけれども、先ほども先生おっしゃっておられましたように、日本では法制化が大きくおくれました。本法の成立は九七年でございます。OECDの二十九カ国中最後の法制化でございました。したがって、現行法の成立に国会の中でも十二年かかっている、そういうような中で、やはり国際的な環境評価の流れに乗り切れず、また、自治体の条例がその間先行したというようなところもありまして、多くの問題点もはらみながらともかくスタートをしてきたのが現行法であるかと私は思っております。

 耳の痛い話かもしれませんけれども、第一の問題点は、事業主体である省庁や民間企業自身が評価を行う点でございまして、この欠陥を補って信頼性を高める方法の一つが第三者機関を設置することだと私は思っております。各国も、ほとんどの国が審査委員会等を設置しておるわけで、この第三者機関を国レベルでも設置することが求められているという問題認識を持っております。

 また、第二の問題点として、アセス対象が限定されている点があるかと思います。アメリカでは環境に著しい影響を与える行為を広く対象にしておりますけれども、日本においては、大規模なものに、十三業種に限定してスタートしたわけでございます。このため日本のアセス実施件数が極めて少ないことは、先ほども参考人の先生から言っていただきました。

 そして、第三の問題点というのは、やはり代替案との比較検討がほとんど行われない点であるというように思います。日本のアセスというのは事業アセスということでありますから、予定地や規模を変えれば環境への影響がずっと少ないとわかっていてもなかなか変えられない、後戻りするのが非常に難しいというような難点もあるのかと思います。これらの欠陥を補うのが戦略的環境アセスメント、SEAであろうか、そのように承知をしております。

 こういうような現行制度の欠陥、問題点を改正していく本改正案、大変期待が大きいわけでございますけれども、やはりその改善というのは、先ほど来先生方の問題点の指摘でもされておりますように、今後の課題というのが残っているかと思います。

 このような不十分な内容の見直しにとどまっておると思いますものですから、参議院の環境委員会において公明党は修正案を提出して、賛成多数で一たんは可決されたところでございます。

 前置きが長くなりましたけれども、そのような問題意識から、先生方に、修正案に明示しました幾つかの課題について御質問をさせていただきたいと思っております。

 まず第一に、原科先生と浅野先生にお伺いをしたいと思います。

 まず、配慮書についての意見の聴取についてでございます。

 本改正案の第三条の七では、配慮書についての意見の聴取について、第一種事業を実施しようとする者は、主務省令で定めるところによりまして、配慮書について、環境の保全の見地から関係行政機関及び一般の意見を求めるように努めなければならないものと規定しております。しかし、これは努力規定でございます。

 しかし、先ほど来先生方にも陳述していただいているように、できるだけ早期にかつ確実に意見内容をしんしゃくして事業に反映させていくことが今は大変必要であるかと思います。

 そのために、本規定で努力義務となっている配慮書についての意見の聴取、これを義務化する必要があると我々は考えますし、また、修正案にも今後出していこうと考えておりますけれども、その点について、両先生の御意見をお伺いしておきます。

原科参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 配慮書に対しての意見聴取、これはもう当然だと思っております。このことは、私が先ほどお配りした資料の、めくって最初のところに書きましたけれども、環境アセスメントの本質は意思決定過程の透明化ということでございますから、とにかくコミュニケーションなんですね。ですから、当然、いろいろな意見をお聞きしないとうまくいきません。

 そういうことで、実は、先ほど私の発表の中で最後に御紹介しました、本学における、東京工業大で行った自主ミニアセスメントですね。これは、方法書段階を丁寧にやりました。ですから、説明会を二回やっています。説明会及び意見交換会と名づけまして、その場で意見をいただいています。ミニアセスをやりましたので、わずか三カ月ちょっとで早く終わったんですけれども、丁寧にやったおかげで、周辺住民の方々もかなり御理解いただいて、結果的にはスムーズにまいりました。これは、浅野参考人が先ほど、やはり早い段階からやれば結果的にスムーズにいくんだとおっしゃったのと同じことだと思うんですね。

 ですから、これは、義務づけるといったって、むしろ事業者の方はウエルカムじゃないかと思うんですね。やってまずいということはまずないと思います。特に、中身が固まっておりませんので、対応もしやすいわけです。ほとんど固まった段階だと、意見を伺ってもなかなかお答えできない。まだ固まっていないということが前提ですからね。そうしますと、まさにちゃんとお答えする、意義あることができますよね。

 ですから、私は、これは当然のこととして進めていただきたい、義務づけをお願いしたいと思います。

浅野参考人 私は、義務づけをしておらない政府案でよろしいのではないかと思っております。

 と申しますのは、やはり柔軟性が求められるということがございまして、かつ、引き続いてすぐ方法書の手続があります。方法書がむしろ早い段階で公にされて、そこでどういうアセスをやるのかということを議論する中で、配慮書記載事項に関しては当然含めて議論をすることは可能であろうかと思いますから、柔軟にやるという意味で、全件そうしろと言っているわけではありませんで、配慮書から方法書までにかなり時間を要するような場合には意見をお聞きになる方がいいと思いますけれども、かなりスケジュールが立て込んでいるというようなケースの場合には、方法書のところで一括意見を聞くということもあり得るだろうと思います。

 この点について、余りがちがちと手続的な要件を厳密に決めてしまうということが、かえってこのようなシステムを導入するということの趣旨に反することもあるかもしれません。したがって、できる規定であるということについて、私は余り違和感を感じておりません。

江田(康)委員 第一点目から両先生の御意見は違っているわけでございますけれども、しかし、私は、ここは日本版SEAの導入において大変重要な視点と思っておりまして、十年を経て大改正をしていくアセスメント法でございます。そういう中において、やはり結果的には、地域の環境影響を適切に評価して、地域住民との情報交流とか合意形成が円滑に進むという御意見も原科先生からはございましたが、やはりそういうような中で確実に意見内容が事業に反映していく、そういうことが、どれだけ必要としているか、大事であるかという点での判断をすべきだと思います。両先生の御意見はそれぞれ大変ごもっともでございまして、そのように受けとめながら判断をしていかなければならない事項ではないか、重要な事項であると考えております。

 さらに、日本版SEAの項目についても議論に入らせていただきましたけれども、本改正案では、戦略的環境影響評価、SEAとして、事業計画の立案段階から環境影響評価を行っていく、こういうことは画期的なことではあります。これまで現行案ではSEAの段階にはまだ踏み切っていなかったわけでございますから、これは一歩前進したというところで、一定の評価を私もしているところでございます。

 そこで、浅野先生それから原科先生、また両先生にお伺いをさせていただきます。

 SEAのあり方でございます。直接的な質問かもしれませんけれども、本改正案によって導入されるSEAが一般的なSEAの要件を満たすのかどうか、そして導入される制度の効果が十分に期待できるのかどうかというところが問題、課題になるかと思います。このSEAの要件について、それぞれの先生はどのように思われるか。

 また、私としましては、参議院の修正案にも盛り込んでまいりましたけれども、SEAの対象をより上位の政策計画段階に引き上げる必要がやはり残っていると。そのことについて御意見をお伺いしたいんです。

 修正案にも我々は明示して訴えさせていただきましたけれども、事業の実施を目的とする施策の変更の立案段階においても、戦略的環境アセスメントを本改正案の施行後三年をめどとして実施する必要性、また、そのことを検討するというような内容を、やはりこの十年来の改正に大きく踏み込むべきではなかろうか、そのように思いますが、いかがでしょうか。

 その際、あわせてなんですけれども、先ほどから原科先生は、事業を実施しない案、ノーアクション案を含めて複数案を検討していく、代替案を検討していく、こういうようなことが義務化されていかなければならないというようなことも考えておりますけれども、これら一連、どう考えておられますでしょうか。

浅野参考人 まず第一点でございまして、一般的なSEAの要件と照らしてみて本改正案がどうであるかということでございます。

 この御質問についてはなかなか答えにくい面がございまして、先ほどからるる申し上げておりますように、諸外国のSEAと今回我々がここで検討して法案化された日本型SEAというのは少し場面が違いますので、それをどう評価するかということは難しゅうございますけども、一般的に言いますと、早期段階での環境配慮をするべきであるということ、それから策定主体がアセスメントを行うということは、ほぼどこでも一致しておりますし、それから、スクリーニング、スコーピング、そして環境部局が関与する、合理的な複数案は可能な限り検討すべきであり、それがきちっと文書化されるということが重要だということを含めて、最終的には意思決定過程というものが透明性を持って人々に示されることになる。

 そういう意味では、先ほど申し上げましたけれども、従来は、実は配慮書的なものを、濃淡の差はあれ、多くの事業者は実際に行っておられたはずだと思います。いわば水面下でやっておられたことが今回のこの制度によってちゃんと文書化されて表に出てまいりますから、そういう意味では、先ほど言いました透明化ということに若干は寄与するかなという気がいたします。お答えになっていないかもしれませんが、お許しください。

 第二点でございます。

 第二点は、これは国会がお考えになることでございますので、私がとやかく申し上げる筋でもございませんけれども、ただ、見直しというものについて、検討を早く始めるということと、実際にその成案を得るということの間に、若干のゆとりは欲しいなということは常々考えております。といいますのは、前のガイドラインをつくったときも、ちょっと、急いで結論を出せとせっつかれてしまったものですから、実は、十分な議論ができなくてやや心残りというようなことがございました。

 このSEA、先生がおっしゃるような意味で、上位計画の段階からもっときちっとしたSEAを行うということに関しては、私、必要性を感じるということは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、このためには、この国の物決めのシステムというものをもう一遍よく整理をしてみなければいけない。そのことなしにSEAから始めるということはなかなか難しくて、下手をしますと、SEAの枠組みで取り上げることができる計画とか物決めについてのみSEAということになってしまうと思うんです。

 ですから、例えばオランダのような例ですと、全件Eテストを行うというようなことが、法定制度ではありませんけれども、政府の中では閣議決定で行われているわけであります。そういう柔軟性ということも含めて考えるならば、法制度化というときには、私は必要だと思いますけれども、できるだけ射程距離の広いものをつくっていく必要がある。ですから、場合によっては環境基本法そのものの見直しから考えていく必要もあるのではないかというようなことすら、やや乱暴でありますけれども、申し上げた次第でございまして、少し時間をかけるという必要がある。

 ただし、しばらく寝たきりで何もしなくていいということではございませんで、私は、許されるなら、法案が通ったらすぐ勉強会を始めろと言われることを期待しておりますけれども、その上で十分に時間をかけて検討するということは必要かもしれないと思いました。

 最後のノーアクションでございますけれども、これにつきましては、ガイドラインでは必ずしもノーアクションということを要求しないというふうに明示をしたわけでございますけれども、これは、場合によってはというよりも、多くの場合、現況がどうであるかという記述でノーアクションということにほとんど代替できるという意味では、我が国は、アセス手続の中で現況記述というのを非常に詳細にやる。場合によってはやり過ぎぐらいで、そこを読む間にもう本を読むのは力尽きちゃって、肝心なアセスのところはだれも読まないということすら起こっているぐらいでありますから、それからいうと、それをもってかえることができるのではないか。

 ただ、現況記述の問題点は、このままいった場合に、何もしなかったときには将来どうなるのか、場合によっては悪くなるということもある。例えば道路の新設というようなものを例にとりますと、この道路がこの場所にできることによって、従来の市街地の、交通の非常にふくそうしているところの周辺の環境負荷はかなり低減するというようなことがあり得るかもしれない。そういったようなことについての記述はあり得るだろうというのがガイドラインの考え方でございましたので、もちろん、ノーアクションというんでしょうか、それを書いていけないとは申しませんけれども、現状では、現況記述のようなもので代替できるならそれでよい。それから、何もしないことによる環境悪化が想定される場合は、そのことを明示することが決定の合理性担保ということになるだろうということで、それは推奨されるかもしれない。

 こういう整理を前にいたしましたので、現在でもその考え方は変わっておりません。

原科参考人 それでは、私の考えを申します。

 まず、戦略的環境アセスメント、SEAの定義でございます。

 私、こういう研究をしておりますので、私の考えを申し上げますが、国際的な考え方としては三つか四つのポイントがあります。

 一つは、当然、どういう段階であるか、政策あるいは計画段階という上位の意思決定段階ですから、これをどの範囲でやるかはなかなか難しいところです。そういった意味では、基本法十九条で規定したところがまず基本ですが、それよりもうちょっと事業に近いところでやる、こういうのを含める場合もあります。この辺がボーダーライン、微妙ですね。しかし、そういう上位の意思決定です。

 そうすると、微妙なので、境をどう考えるかなのですが、理工学の分野ですから明確な定義をしたいですね。私の定義は、ストラテジックという意味は、意思決定に対してきちんとした影響を与えるということでございますから、その事業、プロジェクトの実行を場合によってはとめることもできるという段階と定義しております。ですから、それが戦略的なという意味だと思います。大体これに近い考えの方が多いですけれども、そうではない方もあると思います。

 二つ目は、そのためにどうしたらいいか。そうしますと、さっきの三つ目の質問にお答えすることになりますが、当然、その事業を行わなかった場合どうなるか、ノーアクションと比較しないとわからないですね。ですから、ノーアクションとの比較検討は私の定義ではマストになります。そのことによって無駄な公共事業が減るわけです。本当にこの事業をやる価値があるかどうか、これをその段階でチェックできますから、無駄な公共事業を減らす効果があります。

 しかし、これを環境影響評価法の枠の中でやるのがよかろうかということは、今、浅野参考人がおっしゃったように、意思決定機構の問題がございますので、その辺はやはり十分検討する必要があるとも思います。

 私は、四月までは国際学会のそういう理事・会長職を務めておりましたけれども、実は国内では日本計画行政学会というプランニングの世界の会長を務めておりまして、むしろプランニングは専門なものですから、その辺は浅野先生のおっしゃったのはよくわかります。だから、それはやはりそういうプロセスをしっかり整理した上でないとこの議論はできないと思いますが、その上で、私の定義でいえば、事業をストップできる段階でやるのが本来のSEAだと思っております。

 それから、三つ目の条件がございまして、そうなりますと、環境面だけ評価したのでは、実は多くの事業は何にもやらない方がいいということになってしまいますね。ですから、そうなると、評価の枠組みを広げなければいけないんです。環境面と経済面、社会面に広げまして、環境面とほかとのバランスをどうするか、こういうことになります。

 ということで、そういった新しい枠組みになりますから、これは、環境だけで考えるのは、私は難しいかなと思います。少なくとも経済社会面への効果も参考として比較して、その上で、どこまで環境に負荷をかけることができるか、こういう考えになると思います。ですから、このSEAというのは、環境省だけが所管するのではなくて、あわせて財務省とか、そういうようなところと共同で管理していただく新しい法律をつくっていただくと、今のことはかなりうまくいくと思います。

 そういう考え方は、今、国際学会で結構ありまして、むしろサステナビリティーということを考えるべきだと。サステナビリティー・アセスメントという言葉があります。実際にそういった方に、SEAからもっとサステナビリティーの方に広げて、そして本当にこのアクションをしていいかどうか、それはやはりプラス面がありますから、少々環境負荷がかかっても経済社会にプラス面があれば国民の福祉には貢献しますから、そういうような立場でやるべきだというのが三つ目のポイントでございます。

 四つ目は、当たり前のことでございますが、透明性でございます。プロセスの透明性、参加ですね。さっき私、最初の御質問にお答えしたとおりでございまして、そのプロセスに透明性がなければアセスメントの意味がないということで、そういう情報公開、透明性ということが当然入ってまいります。

 以上でございます。これが一つ目ですね。

 あと二つ。三つ目はさっきお答えしました。二つ目、見直しですね。

 そういうことでございますので、環境影響評価法の見直しはさっき申し上げたようなことで、環境基本法二十条に照らしても余りにも対象事業を制約し過ぎておりますので、基本法の趣旨に沿った形で見直しをお願いしたいと思います。

 これは実は温暖化対策にも大変効果があるということを申し上げておきたいと思います。仮に年間三万件、四万件アセスをやりますと、これは例えば十階建てとかそういったビルもすべて対象になりますから、そうすると、今、建築の世界では、低炭素建築、低炭素都市とか言っていまして、低炭素ということがキーワードですよ。建築学会がそういうことを進めていまして、そういうアクションがアセスメントのプロセスを通じて社会に伝わるわけです。そういうコミュニケーションができるんですね。ですから、事業をする主体にとってアピールできるチャンスですから、悪い話ではないんですね。ということで、それだけ数をふやすということは、温暖化対策上も極めて大きな効果があると思います。

 仮に、国で三万、四万やれば、自治体はさらに小さいものも対象に見ますから、数万件。そうしますと、掛け算してわかる、大変な改善効果が見えてまいります。ということで、見直すということはそういう意味もありますので、ぜひ低炭素社会を進める、温暖化対策ということで、あわせてこれをお考えいただきたいと思います。

 もう一つ、さっきも申し上げたように意思決定過程の問題がございますので、そういう意味では、基本法十九条に対応したものは、これは私も浅野先生と同じような考えですけれども、やはり別途法律をつくるような格好を考えてもいいんじゃないかと思います。

 この件に関しましては、私の研究室では戦略的環境アセスの研究をずっとやってまいりましたので、いろいろ基礎情報は持っておりますので、お役に立てていただけるとは思います。

 以上でございます。

江田(康)委員 お二人とも、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 残り時間も短くなってきましたので、次の質問をさせていただきます。

 環境大臣の意見にかかわる審査体制の整備ということなんですが、先ほど冒頭に申しましたように、この審査体制について、今回の法改正では、配慮段階において、また方法書段階において、事後報告の段階において、環境大臣が意見を述べることができる、そういう仕組みが導入されてきているのは大変前進的であると思います。

 一方で、科学的知見とか実効性を担保していくために国の常設の第三者審議機関を設置していく。これは、海外においても、イギリスにおける法定協議機関、また米国における環境諮問委員会、韓国における環境政策評価研究院、こういう専門家により構成される審査機関が設置されております。我が国においても、県条例の審査会とは別に国のレベルでの審査会を常設する必要がやはりあると思うんですけれども、これについてお伺いをさせていただきたいと思っております。西島参考人の御意見、そして原科参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

 残り時間が少ないので、もう一つあわせて。

 検討時期の前倒しということについても、法の見直しを施行後十年としております。私ども、どう考えてもこれはやはり遅いのではないかと。いろいろ御意見はございます。二、三年要する、十年に満たない期間では十分な事例の積み重ねができない、そういうようなこともあるかと思いますが、十年となりますと、施行までに二年かかりますから、十二年後ということになります。そういう中で、状況の変化に対応できるような日本の本格的なSEA、これがやはり今現在大変おくれているような状況だと思いますが、早い段階での見直しというのが必要であるかと思い、修正案では、見直し期間を五年ということにしていくべきではないか、このように訴えさせていただきました。

 これについて、原科参考人と浅野参考人にこの件をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

西島参考人 常設の審査会の設置につきましては日弁連の方からパブリックコメントを出させていただいているところがありますので、そこを読み上げさせていただきますけれども、「環境大臣の意見提出手続の透明性を確保するためにも、環境省の所轄の下に中立的な環境保全審査会を設置して、環境大臣を意見提出手続にも関与させる必要がある。」

 手続の重複ということが、後ろ向きな、必要ないのではないかという理由になっておるところについて、それについては、「環境省における審査プロセスにおいて、「外部の有識者の知見を得ながら必要な調査・検討を行い、その結果を踏まえて審査を行っている」ことを論拠とするものだが、このような仕組みを審査会制度に発展させれば手続の重複もなくなる。」ということで意見を述べておりますので、参考にしていただければと思います。

原科参考人 私は二つの点で申し上げます。

 一つは、この法律ができたときの状況と今では違うんですね。できましたときは、環境庁は対象事業はありませんでした。二〇〇一年、環境省になってから廃棄物の最終処分場が対象になりましたので、以前、法律については第三者視点があったんですよ。今はないんですよ。ですから、まず論理としては、仕組みとして当然だと思います。

 もう一つは実務の段階でございまして、環境省の担当の職員が余りにも少なくて、お気の毒な状況です。公務員を減らせ減らせと、減らし過ぎですよ。人口当たりアメリカの半分以下しかいないんだから。国と地方合わせてですよ。だから、倍増、あるいはもっとふやしてもらいたいです、特に環境行政は。EPAは一万八千人おります。環境省は千ちょっとでしょう。千二百ですか、百ですか。まるで違うんですよ。だからチェックできる。

 だから、アウトソーシングです。つまり、環境省の担当者に頑張っていただいて、専門的知識を補う。ですから、審査諮問機関でございまして、審査をするわけじゃない。審査諮問機関、助言するんですよ。ということで、これをつくるべきだということでございます。

 それを常設した場合に、当然、あるコアメンバーは固定的ですけれども、臨機応変に、いろいろな専門の方がおられますから、ケース・バイ・ケースでどんどん臨時委員を雇っていただければ対応できます。その考え方をJICAの新しいガイドラインではしております。JICAでは助言委員会をつくりまして、コアメンバーが二十人弱ですよ。それで、ケース、ケースで、JICAの場合にはいろいろな地域がありますから、地域ごとにまたプラスアルファの専門家に入ってもらうということで対応していく。そうすると、幾つかできますから、そういうようなことで効率的に進めていただいていると思います。

浅野参考人 私は、お尋ねの点に関しましては、先ほど既にお話し申し上げましたように、機械的に十年がいいかどうかは別として、最終的にはそれは国会の御判断だろうと思っております。

 審査会に関しては、意見陳述の中で申し上げましたけれども、私は、常設の制度というものの持っているいい点もありますけれども、どこだと具体例はちょっと差しさわりがありますから申し上げませんが、非常に問題を起こす場合もある。つまり、コアメンバーといっても、どうしてもすべてのことに精通しているわけではありません。それから、実際に地域の問題に関しては地域の方がより情報が多いということがございますので、私は、むしろ名簿方式のようなものがいいというふうに考えておりました。これは既に、生物に関する、外来種についてはそういうことが法文上ありますので、これはできるんじゃないかと思ったんですが、いろいろ諸般の事情で法文には入らなかったんですが、運用ではなさるということですので、期待しております。

原科参考人 まあ、三年ぐらいで。趣旨は、実績を見るという意味ではなくて、今の基本理念を見直していただきたいので、三年でございます。

 それから、さっきの常設委員会は、コアはほんの少しでいいんですよ。だから、基本的には、浅野先生がおっしゃったように、リストがあった上でコアメンバーがセレクションする、そんな考えでございます。

江田(康)委員 時間が過ぎてしまいました。

 先生方、大変有益な御意見をいただきましてありがとうございました。大変重要な環境アセス法の審議に十分に反映をさせていきたいと思いますので、本当にありがとうございました。

樽床委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島でございます。

 本日は、三名の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして、まず心からお礼を申し上げます。私も、何点かにわたりまして、参考人の皆さんに質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の環境アセス法、施行から十年を迎えての改正であります。この間、地球温暖化問題、生物多様性の保全など、国民の環境に対する関心は飛躍的に高まっております。自然環境といかに共生していくかが社会の大きな課題となっております。

 そこで、その意味でも、今回の法改正は環境に配慮した事業の実施を図る上で、前進していることは間違いないと思うんですけれども、今後に向けての課題も今のお話の中でもたくさんございます。そこで、それぞれ項目を分けてお尋ねをしていきたいと思います。

 まず一つは、日本の環境アセスの現状についての評価ですけれども、三名の参考人の皆さん、浅野さん、西島さん、原科さん、それぞれにお聞きしたいと思うんです。

 先ほど来話が出ておりますが、環境影響評価法が日本で施行されて、一九九九年から十年ですけれども、加盟国二十九カ国で最下位というお話もございました。しかも、件数で二十件。総数では百三十二とか百七十九ありますけれども、カウントの仕方が違うとも思いますが、今、二十件ということで公表されております。それから、米国、中国では数万件という、環境保全に向けた姿勢が評価されております。

 なぜ日本の場合こんなに件数が少ないのか、その原因なり状況なり、それぞれ参考人の方が考えておられる問題点はどこなのか、ひとつ簡単に御説明をお願いしたいと思います。最初に浅野さん、西島さん、原科さんの順でよろしくお願いいたします。

浅野参考人 現在までの制度の評価でございますが、もちろんいい点もあり、課題も残っているということに尽きるかと思います。

 いい点といいますと、恐らく、我が国で情報公開制度がまだ十分に機能していなかった時代にアセスが先行したという意味では、情報公開制度を強化するという機能を果たしたと思いますし、さらにまた、行政手続法も何もなかった時代に、アセス制度は、手続をきちっと法制化するという意味で、その後の行政手続の制度化にも大きく寄与した、そのような貢献は大きいと思います。

 何より大きいのは、やはり事業に際して環境配慮しなきゃいけないということがかなり徹底してきたということは言えると思いますが、ただ、残念ながら、その点に関していいますと、どうも余計な手続をやらされるという印象がいまだに強い。何となく、手続を踏めばいいという考え方から必ずしも自由になっていないというふうに思われます。

 例えば、アセスが終わらないと次の検討は一切しないというようなことが実際にあるわけですが、これは迷惑千万な話でありまして、アセスが終わらなくたって、必要な検討は幾らでもやれるはずなんです。ところが、アセスが終わらない限りはほかの検討は何もしないといって、事業が長引くのはアセスのせいだと言われるのは迷惑千万で、場合によってはひどい話でありまして、予算がないからしばらくこのまま事業はとめようというときに、アセスがまだ終わっていませんといってとめる材料に使われるというような場合すらありますから、これはゆゆしい問題で、アセスをやっている者から言うと迷惑千万。

 こんなこともございますので、そういう単なる手続のための手続というような利用のされ方はないようにしてほしい。あるいは、方法書についても、その本来の趣旨は余り生かされていないというようなことはこれまでるる申し上げてまいりましたので、今後、それが改善されればいいのではないかと思っております。

 なぜ件数が少ないかということに関しては、原科参考人とここでディベートをやってもしようがありませんので余り申し上げる気はないんですが、しかしながら、条例アセスは結構機能しているわけでございまして、自治体を見ていきますと、かなり多くの件数、例えば東京都などは毎月一回やっても間に合わないぐらい案件があるというようなことも聞いておりますから、それと両方見なければならないというふうに思っております。

 それから、国のアセスについては、確かにある規模要件で切っているということがあるんですが、この減っている原因ははっきりしておりまして、まさに公共事業が減っているからでございます。私としてはそのような認識でございます。

西島参考人 まず、現行法の評価ですけれども、意見書に書かせていただいたとおり、不備があるのではないかということです。それは、アセス法が制定された後も、環境保全に関する訴訟が絶えない。

 第二東京弁護士会から出ております意見で、これは要綱案に対する意見ですけれども、具体的な事件の名前も挙がっているので御紹介させていただくと、「小田急線鉄道施設変更工事合格処分差止請求事件、新石垣空港建設事業違法公金支出金返還等請求事件、泡瀬干潟埋め立て事業住民訴訟等、環境影響評価法施行後も、事業反対を訴える住民運動や事業の許認可の効力を争う訴訟等は後を絶たない。」と。

 早い時期に住民と意見交換をしながら意思形成がなされていれば、こういう訴訟というのは起こらないのではないかという問題意識が根底にあります。そのあたり、現行法にはまだまだ不備があるのではないかという認識であります。

 それから、対象事業が少ない。法律では、環境影響が著しい、規模要件も相当程度大きいということで、案件がその分狭まってしまう。法律アセスと条例アセスで総合で見るべきだというような意見もあるんですけれども、そもそも法令アセスと条例アセスとでちょっと手続に格差があるという問題点もあるかと思いますけれども、まずは法令アセスを条例アセスレベルにまで少し機能を格上げして、それでもって法令アセスの範囲を広げるというのは、一つ意義あることだというふうに思っております。

原科参考人 私は、環境影響評価法ができたことによって世の中の仕組みが大分変わってきたというのはそのとおりで、情報公開とか行政手続の問題が進んできた、そのとおりだと思いますが、これはむしろ順序が逆でございまして、本当は、情報公開制度をしっかりつくって行政手続もした上で環境影響評価法をつくるべきなんですよ。

 アメリカはどうなっているのか。一九四六年に行政手続法ができましたね。そのときにあわせて情報公開の制度もできたんですよ、四六年ですよ。それで、二十年たって、いろいろやはり問題が生じたので、六六年に情報自由法ができました、一九六六年。そういった準備万端整って、六九年に国家環境政策法ですからね。これはポリシーを示す。その上でアセスメントです。だから、行政手続の仕組みがあって、情報公開が進んで、そしてポリシーを示して、そしてアセスメントだからうまくいくんですね。

 日本はそういう意味では大変残念な状況でございまして、順番が逆でございましたけれども、ようやくそろってきたので、だからこそ理念に沿ったものをもう一回つくってもらいたいということなんです。

 現行のアセスメントは対象事業が余りに少ないということは、特に巨大事業しかやらないので、もう本当に迷惑なことだという印象をみんな持っていますよね。手間暇がかかる。ところが、私が申し上げた方法はほんの数カ月で終わりますから、まず、簡単にチェックしていただきましょう。基本は情報公開ですから、きちんと情報公開して意見もいただく、そういうコミュニケーションを進めることなんです。社会の進歩だと思います。

 そういう進歩をどうして現政権はやらないのか、ということをまた申し上げてしまいますが、そういうことでございます。

 少ない理由は、あくまでも巨大なものしか対象にしないからでございまして、自治体を全部合わせたって五十です。東京都は多いといってもその程度ですよ。全国で五十ですからね。そんなことでございますから、これは、そういうためにむしろ資源投入していただければいいことでございまして、十分できます。

 JICAも随分苦労して議論してまいりましたけれども、資源投資することを決めたわけですよ。きちっとした事業をやらないと、事業仕分けにまたかかっちゃいますからね。

 例えば、ちょっと余計なことを言いますけれども、五月五日、あれはちょうど鳩山首相が沖縄に行かれる直前ぐらいに「朝ズバッ!」という番組でビデオ出演しまして、何を言ったかというと、辺野古のアセスのことです。これをやると大変だというわけですよ、二年かかるから。そういうのを専門家として聞かれたので、言いました。だけれども、それは今の仕組みが悪いから。仕組みがよければ、いいところを選べば短く終わる可能性はあります。いいところさえ選べば。今の仕組みですと、どんなにいいところを選んでも二年ぐらいかかっちゃうんですよ。だから、仕組みの改善が大事だということを申し上げたわけでございます。

中島(隆)委員 ありがとうございました。

 それぞれ、日本のアセスを評価する点もございましたし、また、件数が上がらない理由、公共事業の減少なり、あるいは規模の問題、そして、事前の十分なる説明が不足している、こういう点等々を挙げていただきました。

 そこで、私も、今のアセス法が十三種で非常に対象事業の規模が大きい、ここが一番大きな要因ではないかなというふうに思うんですが、多くの国民の声には、今後、事業規模の大小を問わず、環境影響があるすべてを対象にすべきではないか、こういう声もあるんですが、規模をどういう形で、環境影響評価をするために一定の基準はやはりどこかで設けなければいけないと思うんです。それについてのお考えを原科参考人にひとつお尋ねしたいと思います。

原科参考人 申し上げます。

 これは国の法律ですから、国が関与するということですね。逆に、明らかに影響がないものは除外リストをつくればいいです。除外リストでまずチェックして、それ以外は対象にするというような考え方で十分いけると思います。

 このことは実はもう、さっき申し上げたようにJICAはやっておりまして、JICAだけじゃなくて、国際協力銀行もやっています。ジェトロもそうです。日本の国際協力機関はみんなやっているんですよ。日本貿易保険もそうです。これは、まず最初に全部が対象になると考えた上で、除外リストに入っているものは外します。それ以外は、A、詳細なアセスをやるか、B、簡単なアセスをやるか、こういうチェックをするんです、スクリーニングを。

 現実に国際協力の世界でやっているわけですから、日本社会でできないということはないと思います。国内でできないという理由が逆にわからないですね。ということで、これは十分に対応できます。

 それで、何万件あるこの成果、さっき申し上げたとおり、世の中が明るくなると思います。

中島(隆)委員 ありがとうございます。

 それと、先ほど原科参考人から、アセス事業が今後の日本の経済、雇用問題を非常に活性化するというような御説明があったんですが、簡易アセスについて第二種事業の下限の規模を大幅に下げる、今もお話があったんですが、スクリーニングの問題、これの方法をもう少しちょっと詳しく、どういう形でこれを導入したらいいか。

原科参考人 そのためには、数カ月で終わらすためには新しい調査はなかなかできないですね。ですから、既存の調査あるいは過去のアセスとかデータを蓄積しまして、そういうものを活用することが大変大事でございます。その上ですと、これは可能性があります。

 実際、本学で行いました事例でもそうでございまして、既存のデータをまずベースにして判断します。しかし、そのときに、問題は、それでは十分じゃないんじゃないかという声が出ます。ですから、参加が大事なんです。つまり、地域住民の方に意見を伺いまして、これとこれが心配だから調べてくれ、そういうお声をお聞きした上で、では、このようなデータを使ったので大丈夫でしょうかとお聞きするわけですよ。それでやってきました。そうしますと、例えばいろいろな事例がたくさん積み重なりますと、大体見当がつくでしょう。だから、今は数が少ないので見当をつけにくいんですけれども、この例ではそういうようなことで見当がつきましたので、速やかにいきました。

 そういうことで、そのような簡単な調査をやって、次にスクリーニング。だからスクリーニングの情報がそろうわけですね。その上で、どうもこれは怪しいといった場合に詳細なアセスをするかどうか決めるわけです。

 そういう仕組みで、さっき申し上げたアメリカでは、三万から五万件やっているうちの、詳細アセスに入るのは二百件から二百五十ですから、〇・五%ということで選ぶことができます。これに関して、実はアメリカでもまだ批判がありまして、スクリーニングはもっとやるべきじゃないか、きちんとやるべきだという声もNGOにはあります。しかし、アメリカEPAの方は、いや、ちゃんとやっているということで、これまでも、制度ができてもう三十年、四十年ぐらいたって、やってもう十分実績がありますから、従来懸念されたことは大体解決されたと思います、ということで進めております。

中島(隆)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、戦略アセスをどの段階で実施すべきかということでありますが、今回の法改正では、戦略的環境アセスメントの導入を図ることについて、意義は非常に大きいと思います。今回、戦略アセス導入に当たりまして、事業の位置、規模と、あるいは構想段階をアセスの対象に想定しているわけでありますが、これは事業の実施を半ば前提とするために、そうではなくてその前段の政策、計画の意思決定の局面で環境配慮を徹底させるべきではないかというふうに指摘があるわけですが、この戦略アセスの段階的な実施、これについて浅野参考人にお尋ねいたします。

浅野参考人 今回の改正法は、位置、規模を構想する段階で環境配慮をしてほしいという制度になっているわけでございますが、これは、事業の実施を前提としているという見方をなさる方がおありであることは否定はいたしませんけれども、あくまでも構想の段階ということでありますので、従来でも、アセスメントをやって、いろいろ審査をして、いろいろ議論している過程で事業そのものを取りやめるというような例も全くないわけではございませんが、構想段階で議論をしていくことによって、取りやめるなり、あるいは大幅に、最初から環境負荷の少ない計画に変えるということができるという効用があるんだろうと思います。

 これは、実際にアセスメント事業者の団体と一緒に話し合ったときにも、特に生物系についての予測評価を専門にしておられる事業者の方々がお話しになりましたのは、ちょっと位置を変えるだけで環境負荷が大幅に減るんだが、それを全く考えないでいきなり計画を立てて、ここでやるからアセスをやれと言われるからおれたちは泣くんだ、こういう話がありました。

 だから、もっと早く聞かせてもらえば、ちょっとずらすだけで全然違う、後のアセスもすごく楽になるというようなお話がありますので、私は、事業の実施を前提とするということで、これでは不十分であるという御意見には必ずしも賛成いたしませんけれども、しかし、確かにもっと早い段階でやることが望ましいということも事実でございます。ですから、次には、長期的な課題か短期的な課題かは別として、さらに検討しなきゃいけないということは、るるきょうも発言を申し上げたとおりでございます。

中島(隆)委員 ありがとうございます。

 ゼロオプションについてもお尋ねしたいと思うんですが、浅野参考人にお願いいたします。

 改正案における戦略的アセス、今お話がありました。事業の位置や規模を対象にしているわけでありますが、一また二、あるいはその案件、今の選定がありました。ゼロオプションも含めた複数案の検討ですけれども、どういう形でこれを判断あるいは進めていくのか、その点をちょっともう少しお話をいただきたいと思います。

浅野参考人 まず、前提でございますが、ゼロオプションを必ず含めた複数案の検討をするという改正案になっているという理解はしておりません。しかしながら、論理的には、このまま何もしない場合にはこういう状況になるであろう、だから、これはやった方が環境面での負荷をより低減する可能性があるといったようなことはあり得るかもしれません。しかし、複数案の検討という場合には、実際の環境への影響をどこまで具体的に、この案とこの案では違いがあるのかということを明確にしない限り、複数案の検討ということの意味は持たないというふうに思います。

 それにいたしましても、詳細に検討して詳細にデータを出すことがより望ましいことはわかっておりますけれども、これをやり始めますと、実際には今やっている事業段階のアセスメントに限りなく近づいてしまって、しかも、そこで複数案ということになりますと、現実には採択されそうもないようなことについてかなり膨大なお金をかけるということになりかねません。

 それは必ずしもいいことではないので、最初の段階でやる場合の複数案と申しましても、これはディテール、細かい点にわたる調査を丁寧にやるというようなことよりも、既存の情報を可能な限り集めて、足りない部分は少しは調べるということがあったとしても、それをちゃんと集めることによって、比較的コストをかけないで、これとこれではどっちがいいのか、より詳細に調べるとして、どれだけのことを調べなきゃいけないのかがA案とB案では違ってくる。

 例えば、A案では三つぐらいを重点的に調べれば済むけれども、B案だと六つか七つ調べなきゃいけないというようなことであれば、それは調べる方が少ない方がコストが安いだろうとか、いろいろな判断が出てくるだろうと思いますので、複数案の検討と申しましても、SEA、今回の改正法で言うところの複数案検討、準備段階での検討というものはそんなようなイメージで理解をするべきではないかと思っております。

中島(隆)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、西島参考人にお尋ねいたします。

 国による常設のアセス審査会の設置、第三者機関、専門委員会等が言われています。そこで、環境大臣の意見を述べる際の環境省内の議論の透明性、こういう問題もあると思いますが、先ほども指摘がありました、各地域の住民の皆さんの声をどういう形で反映させるべきか、そこが一番この環境アセスの地域の同意をとる上では非常に重要だと思うんですが、第三者の外部の専門委員会の設置に対するそれらのもろもろの意見反映、これをどういうふうに考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。

西島参考人 審査会を設置した上で、地域住民の意見を吸い上げるということですか。

中島(隆)委員 第三者機関、専門部会が常設をされます。そこで、諮問機関を設置するわけですけれども、その中に地域の声、住民の声、電子閲覧とかいろいろあるわけですけれども、そういう意見を、住民の皆さん方の意見反映、どういう形の組織あるいはシステムを持ったらいいか、そこをどういうふうにお考えか。

西島参考人 審査会の委員そのものにNGOとか住民を入れるというのも一つあるのかもしれませんけれども、済みません、ちょっとこれは弁護士会の中で議論して詰めて出していることではないんですけれども、むしろ公聴会というようなところで自治体では今やられていることなのかなというふうに思います。日弁連の意見でも、公聴会も法アセスでもやったらいいというふうな意見は述べさせていただいております。

 審査会というよりは、制度としてはそういう制度なのかなというふうに思います。

中島(隆)委員 ありがとうございます。

 特に、環境アセスの問題については、住民訴訟、地域からの反対が早くから起きますし、いろいろな訴訟も起こるかと思います。

 そこで、西島参考人に再度お尋ねしたいと思いますが、資料の八の三でしたか、訴訟の手続等について御説明の資料がございました。ここで、団体に原告適格性を認めるとしたときに、敗訴判決の既判力はどこまで及ぶのか、非常にこれが大きな問題だと思うんですね。訴えた人と地域の人と、どこまで既判に効力があるのかという、この問題の見解とか今後のあり方、ちょっとお尋ねしたい。

西島参考人 基本的には、やはりクラスアクションといっても、その団体なりが代表している範囲の原告対被告の間の相対的な効力であって、それが拡張される合理的な根拠はないんだろうというふうに考えております。やはり同じ手続を問題にしていても、主張される事実ですとか立証方法等々が違ってまいると思いますし、拡張するということは原則としてないのかなというふうに思います。

中島(隆)委員 それでは、最後にお三方にお尋ねしたいと思います。

 住民との合意形成の必要な手続等についてでございますが、自然環境や住民の生活に影響を与えるような事業を実施する際には、何よりも手続の透明性が必要でありますし、住民との合意形成を図ることが十分保障されていることが必要だというふうに思います。

 この点、今回の法改正では、方法書段階での事業者による説明会の実施の義務化や、インターネットを利用した環境影響評価書の公表、あるいは閲覧の義務化が盛り込まれております。今後さらに住民の合意形成や情報の透明化を図るために必要な施策があるとしたら、どのようなことが考えられるか。三方の参考人の御意見をそれぞれお伺いしたいと思います。

浅野参考人 多分、他の参考人がお話しにならないだろうと思う点だけ述べておきたいと思います。

 やはり、アセスの制度というのはどういう制度なのか、その個々の手続の中で期待されていることはどういうことなのか、この点についての、大変申しわけないんですが環境省の国民に対する啓発普及が極めて不足である。そのために、アセスメント制度の本来持っている役割、あるいはアセスメント制度に期待される役割を超えた役割を負担させられてしまうために、とかく事業者の方々からこれまた誤解に基づく御批判を受けることになっていることは大変残念なことだと思っています。ですから、手続の透明性、それから合意形成に資するという意味では、アセスメント制度の持っている射程距離や役割を明確に示すことが必要だと思います。

 これまた名前を出して申しわけないんですが、原科参考人もアセス学会の副会長で、私は前の会長なんですが、私どものアセスメント学会でもそういうことのために啓発の文書を出したりして、広く国民の方々に趣旨をわかっていただきたいという努力をしておりますけれども、何しろ貧乏な学会でございまして、お金がございませんものですから、せっかくパンフレットをつくっても広く行き渡っておりません。そういう点について、今後ぜひ政府も御配慮をいただければと思っている次第でございます。

西島参考人 浅野先生がおっしゃったとおり、アセスメント手続が想定している問題解決方法というのは一定程度限られているので、何でもかんでも解決するということではないと思いますけれども、そういった理解が浸透するという前提で、もう少し住民ですとか市民というものを信頼していただきたいなというふうには思っているんです。

 現行法ですけれども、例えば説明会は、たしか住民に事業の内容を周知させるというような文言でありまして、しかし中環審の答申でも、説明会というのは充実したコミュニケーションを図るためのものである。ということであれば、法文もその趣旨がわかるように書いていただいて、住民というのはコミュニケーションのパートナーですよということを法律の考え方としても明確にしていただきたいなというふうに思っております。

原科参考人 本当に環境アセスメントに誤解がありまして、あくまでも意思形成のための支援のシステムでございますから、合意形成はまた別なんですね。私は、合意形成研究をずっとやってまいりましたので、これは明確に分けています。ただ、環境アセスメントによる情報の公開、情報の交流が進みますと、合意形成のために大変役に立つことは確かでございます。そういうような情報基盤をつくるということでございます。ですが合意形成のためには別のシステムが必要になってまいりますということを申し上げます。

 そのために、では、きちんとしたアセスをやるにはどうしたらいいか。やはり、これは手続がちゃんとできる担保でございます。だから、やはり司法制度と連動ということがまず基本だと思いますが、それはまた大変なことになりますので、もっと簡便にそういった対応ができるという意味では、アセス法の中に異議申し立て制度の簡単な初歩的な仕組みをつくるとより効果的だと思います。

 これは、先ほどJICAの例を申し上げて、ここでも思っていまして、コンプライアンスということで、ルールをちゃんと守ったかどうか。これは、例えば国際的な活動をやっていて、現地の法律で裁判で訴えられることもあり得ますね。その前に、自分たちのルールをきちんと守るんだ、コンプライアンスということで、異議申し立て制度がありますから、今たまたま審査役をやっておりますから、異議申し立てを私のところで処理するわけですよ。司法じゃないですね、司法的ですけれども違います。ということで、緒方理事長をサポートする役をやっております。そういう簡便な制度を組み込むと、より制度の信頼性は高まると思います。

 もう一つは、情報でございますから、そういう意味では審査会の透明化を図ることです。多くの審査会が今ではもう公開になっておりますけれども、まだそうでないところもあります。国の段階で審査会に相当する審査諮問機関をつくるべきというのはそこなんです。

 つまり、審査諮問機関をつくることによって、環境省がせっかくいい判断をしても、環境省の中でやっているからわからないと言われるんです。ところが、審査諮問機関があれば、これはすべてやらなくていいんです、みんなが心配している重要案件です。それに対しては審査諮問機関でもチェックしてもらえば、そしてそのプロセスを公開すれば国民の理解を得られるでしょう。だから、そういう情報公開をベースにすれば、これはその先の合意形成のための基盤形成になると思います。そういった意味でございます。

中島(隆)委員 ありがとうございました。

 今、三方の参考人の皆さんの貴重な意見、環境アセス、特に他国に比べておくれて発進をして、今からこの改革、新たなこの法案で肉づけをするわけでありますが、これについても、参考人の皆さん方、まだまだ不十分な点があるということがございました。先ほど江田さんのお話でも、十年を五年にして短期に見直して、より国民の生活の安定、安全に寄与する取り組みが必要ではないかという御指摘でした。

 そこで、私も最後に意見を申し上げますが、やはり環境アセスというのは、企業のためのアセスではなくて、地域、国民全体の生活をどう守っていくのかという、持続可能な社会をつくるという先ほど提案がありました。そういう視点でのアセスにすべきではないかなということを、今御意見を聞かせていただいてさらに感じたところであります。

 どうもありがとうございました。

樽床委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見を御述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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