衆議院

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第4号 平成22年11月12日(金曜日)

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平成二十二年十一月十二日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 田島 一成君 理事 横光 克彦君

   理事 吉川 政重君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      相原 史乃君    石田 三示君

      大西 孝典君    岡本 英子君

      川越 孝洋君   木村たけつか君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      近藤 昭一君   斎藤やすのり君

      阪口 直人君    菅川  洋君

      高橋 昭一君    橋本 博明君

      橋本  勉君    樋高  剛君

      三村 和也君    森岡洋一郎君

      山崎  誠君    吉田 統彦君

      井上 信治君    近藤三津枝君

      齋藤  健君    福井  照君

      古川 禎久君

    …………………………………

   環境大臣         松本  龍君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 梶原 成元君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 関 荘一郎君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            白石 順一君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  鈴木 正規君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  岡本 英子君     三村 和也君

  阪口 直人君     高橋 昭一君

  玉置 公良君     吉田 統彦君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 昭一君     阪口 直人君

  三村 和也君     岡本 英子君

  吉田 統彦君     大西 孝典君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 孝典君     橋本  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  勉君     菅川  洋君

同日

 辞任         補欠選任

  菅川  洋君     玉置 公良君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五五号、参議院送付)


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     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十六日火曜日午前十時、参考人として財団法人日本自然保護協会常勤理事横山隆一君、電気事業連合会環境委員会委員長・東京電力株式会社常務取締役相澤善吾君及び早稲田大学大学院法務研究科教授大塚直君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として環境省大臣官房審議官梶原成元君、環境省大臣官房審議官関荘一郎君、環境省総合環境政策局長白石順一君、環境省自然環境局長鈴木正規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎誠君。

山崎(誠)委員 おはようございます。民主党の山崎誠でございます。

 本日は、環境影響評価法の一部を改正する法律案について、さきの国会に引き続きまして質問をさせていただきます。

 冒頭、貴重なお時間ではございますが、少々私ごとに触れさせていただくことをお許しいただきたいと思います。

 五日前の日曜日に私の母が他界いたしました。昨日、告別式を済ませましたが、その間、母との思い出について思い返すこととなりました。

 母は、新潟の糸魚川市に生まれました。家族は東京・練馬に住んでおりましたが、私が小学生のころ、毎年、母に連れられて、糸魚川で夏休みを暮らしておりました。

 その当時の糸魚川には、ハマヒルガオが美しく咲く砂浜が広がり、北アルプスの清らかな水が川を流れ、豊かな緑に輝く水田が広がっておりました。また、畑に行けば、むせるような香りのトマト畑。まさに日本の原風景と言える里山、里地、里海が広がっておりました。母の思い出はそうした美しい自然と重なり、今でも私の心を豊かにしてくれております。

 こうした糸魚川の豊かな自然は今どうなっているか。例えば海岸は、川がコンクリートで固められ、港が建設されました。海の流れが変わり、砂浜の砂が侵食され、今は砂浜はありません。堤防が続く海岸線、テトラポッドが並んでいます。緑のじゅうたんのように広がっていた水田も、宅地化が進み、あるいは工場が建てられ、激変しています。新幹線の工事が進みまして、高速道路、バイパスが建設をされ、里地は壊され、里海と里山は分断されてしまいました。

 今、私の母が与えてくれた豊かな自然との触れ合いの機会、ふるさとを私たちの子供の世代に引き継ぐことができるのかどうか、私は大変な危機感を感じている次第です。もちろん、それぞれの開発にはそれなりの意味がございます。しかしながら、そういった開発を決めるときに、どれだけ失われていく自然の価値に思いをめぐらせたのか。

 今からでも遅くありません。ここで私たちは立ちどまって、真に豊かな自然との共生の生き方を取り戻すためにどうしたらよいか、考えるべきときが来ています。知恵と勇気を持って、新しい自然環境との調和の地域づくり、国づくりに踏み出すときです。

 私は、さきのCOP10の思いはそこにあったと確信をしております。自然環境、生物多様性の大切さを世界で共有することができたからこそ、各国の利害を超えたところで目標を設定することができた、議定書に合意することができた。このCOP10の成功を具体的なアクションに、そして具体的な成果へと何としてもつなげていかなければなりません。

 今述べた糸魚川の例だけではもちろんございません。COP10でこれだけ生物多様性の重要性がうたわれているさなか、まさにその今、貴重な自然が破壊されようとしている事例が残念ながらたくさんあるのが現実でございます。COP10のさなか、例えば、CBD・COP10開催国日本の開発行為に対するNGO共同宣言が出されました。賛同者、国内六十九団体、海外七団体、個人二名が集まって、生物多様性を破壊する事業として二十の事例を挙げて、計画の見直しを訴えております。

 ここで副大臣にお聞きしたいと思います。

 こうした日本の現状について、どのような御認識をお持ちなのか。私は、環境省として、COP10の目標達成のために何らか思い切ったアクションを起こしていただきたいと考える次第ですが、いかがでしょうか。

近藤副大臣 おはようございます。環境副大臣の近藤昭一でございます。

 山崎委員におかれましては、お母様が亡くなられた直後、本当につらい、お寂しい状況の中で、しかしながら、今御自身も触れられた、お母様と一緒に過ごした原風景、それへの思いを込めて環境問題にしっかりと取り組んでいく、そういう中で御質問を準備され、そしてきょうに至っておられる。私の方からもお見舞いを申し上げ、また環境行政にますます一緒に頑張っていきたい、そんな思いをまずお伝えさせていただきたいと思います。

 今御指摘がありましたCOP10、本当に衆議院の環境委員会の多くの皆さんにも、この間、COP10に関心を持ち、またお取り組みをいただいてまいりました。私、副大臣として、日本政府の代表として務めさせていただきましたが、改めて御協力に感謝を申し上げたいと思います。

 今御指摘のとおり、COP10においては、多くのNGOが参加するさまざまなイベントが開催をされました。私もその多くに参加をさせていただいたわけでありますが、その中で、生物多様性に関する取り組みの紹介、課題の指摘、提言が活発に行われたというところでございます。

 御指摘のNGO共同宣言は、その一環として、御紹介のように国内外の七十六団体の賛同を受けて提出されたものであり、開発など人間活動が直接的にもたらす生物多様性への悪影響を心配するNGOによるものと認識をしております。

 二〇一〇年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標は達成できなかったところでありますが、環境省としても、COP10で決定された新しい世界目標、愛知ターゲットと呼ばれておりますが、その達成に向けて、国内施策の充実が必要だと考えておるわけであります。

 提言にある個々の事業については、事業主体や関係機関で自然環境の保全に配慮しつつ対応していただく必要があると思っておりますが、環境省としては、他省庁とも連携して環境保全を一層推進するため、愛知ターゲットの達成のためのロードマップを示すべく、生物多様性国家戦略の見直しに着手をするということであります。また、国立公園など保護地域の拡大や拡充、絶滅危惧種の保護施策をより一層推進してまいっていく、こういう観点から、こういう施策をとり、生物多様性施策の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 それでは、本日の議題でありますが、具体的に環境アセスメントの制度についてお話を伺いたいと思います。

 まさに今お話ししているように、具体的な現場で環境を守っていくためには、環境影響評価法、この制度が大変重要な意味を持っているものと思います。

 COP10と絡めまして、COP10で生物多様性あるいは生態系の保全に対する意識が高まっている中で行われるこの改正について、COP10の趣旨がどのように生かされているのか、お聞きしたいと思います。そしてまた、この改正で、生物多様性の保全に配慮していくためにどのような制度が新たに盛り込まれているのか、お聞きいたします。

近藤副大臣 COP10における歴史的合意にも象徴されておりますように、生物多様性の保全は必要不可欠であり、環境アセスメントにおいて生物多様性を守る積極的な取り組みが必要であることは論をまたないわけであります。今回の改正案は、生物多様性の保全に配慮した事業の実施を図る内容となっているものということであります。

 例えば、御承知であると思いますが、計画段階の配慮書手続を導入することにより、より早い時点で環境面の検討を行うことで、動植物の生息、生育環境等により配慮した事業の実施に資するということとなるわけであります。また、報告書手続の導入により、動植物の移植等を含む、環境保全のために講じた措置等の結果の公表等がなされるということで、生物多様性保全も含めた環境配慮の充実に資する、こういうことが期待されておるわけであります。

 このような手続を通じて、COP10や生物多様性基本法の精神も十分生かされるもの、また生かしていかなくてはならないものと認識をしております。

山崎(誠)委員 ぜひともこの制度、これからもちょっと具体的に何点か議論をさせていただきますが、生かして、本当に生物多様性あるいは自然環境を守る、そういう運用あるいは制度づくりに取り組んでいただきたいと思う次第です。

 まず、今回の改正点で触れたいんですが、政令で定める市からの事業者への直接の意見提出が定められておりますが、この点についてお聞きいたします。

 環境保全におきましては、とにかく現場、本当に環境が今壊されていく、あるいはさまざま影響を受ける、その現場の声をしっかりとお聞きをしなければならない。また、さまざま利害関係者が複数絡む事業ですから、例えば、県だけ、知事の意見だけではなくて、市の関係者の意見を聞く、本当に大変重要なことだと思っています。この政令で定める市から事業者への直接の意見提出について、その趣旨は何か、まずお聞きしたいと思います。

 あわせて、今までも政令指定都市の中には、環境影響評価条例を定めたところ、定めていないところもございます。どのような市を想定して、この意見書の提出を求めるのか。そして、今後、政令で定められた市から事業者に対して直接意見が提出されることになって、どんな効果が期待できるのか、お聞きしたいと思います。

樋高大臣政務官 まず冒頭、山崎先生の糸魚川での思い、感銘をさせていただいたところでございますけれども、人と自然との共生を図る、あるいは生物多様性に対する思い、その思いをぜひ今後とも日本国の未来のために御指導いただきたく、お願いを申し上げる次第でございます。

 さて、お尋ねの件でございますけれども、御案内のとおり、今までの現行法におきましては、方法書段階及び準備書段階において、関係都道府県知事さんが関係市町村長の意見を集約した上で事業者に対して意見を述べる仕組みというふうになっているところでございます。

 しかしながら、地方分権の進展によりまして、今、都道府県が担う公害防止事務の多くが政令指定都市などに移管をされている状況でございます。政令指定都市などが地球環境管理の観点から果たす役割はますます大きくなっているという状況が見られているのが現状でございます。また、大半の政令指定都市においては、独自の環境影響評価条例が制定をされているという状況になっておりますけれども、これらの状況を踏まえさせていただきまして、事業の影響が単独の市の区域内のみにおさまると考えられる場合につきましては、当該市に対して、事業者への直接の意見提出権限を付与させていただくということにしたものでございます。

 どの市にこの意見提出権限を付与するかということにつきましては、今後政令で定めることとしておりますけれども、中環審、中央環境審議会の答申にも示されておりますように、環境影響評価条例の制定や有識者の知見を活用するための審査会の設置の有無といった点を踏まえて検討していく所存でございます。

 以上のように、政令で定める市に事業者への意見提出権限を付与することによりまして、これらの市において十分な審査期間を持って審査がなされるとともに、地域の環境情報に基づく意見が事業者に対して直接述べられることによりまして、事業者の方法書等の作成により一層資するものと認識をしているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 今お話にありましたとおり、地域主権をやはり推進していくに当たって、例えば市町村のレベルであっても、行政が環境意識を本当に高めていくことが何よりも重要だと思います。

 そういった意味で、地域差だとか、それがまだまだ大きいのではないか。場所によっては本当に進んだ、国の制度よりももっと先に行ったような制度を実際に運用しているところもございますし、あるいは政令指定都市でも、先ほども言いました、まだ条例を定めていないところもある。それが今の日本の現状でございます。

 そしてまた、COP10で提案された、例えば里山の保全のようなことを考えるときには、小規模な事業であっても、やはり地域の特性に応じて環境アセスメントを実施していかなければなりません。また、生物多様性の地域戦略をこれから展開していくに当たっても、やはり地域の行政は核になります。

 そういった意味で、これから地域、地方自治体のレベルアップ、これが課題になると思いますが、国がどのように取り組んでいくのか、お考えをお伺いしたいと思います。

近藤副大臣 地域主権の時代であり、地域でそれぞれしっかりと取り組んでいただいているわけでありますが、今御指摘いただいた点も十分に留意をしていく必要があると思っています。そういう観点から、今後、環境保全に対する社会的な意識の高まりを背景として、地方自治体の条例に基づく環境アセスメント制度の重要性がより高まっていく、こういうふうな認識を持っております。

 地方自治体への具体的な支援策としては、地方自治体における実務担当者との定期的な意見交換を初め、研修の実施を通じた人材育成、環境影響評価に関する各種情報を収集したホームページによるネットワークの構築、拡充に努めてきているところであります。

 また、生物多様性地域戦略については、地方自治体が生物多様性地域戦略を策定する際に参考となるような基本的な情報を示した生物多様性地域戦略の手引の策定や地域生物多様性保全活動支援事業等を通じて、地方自治体による取り組みを支援してきているところであります。

 今後も、こうした取り組み、これらを充実させて、法と条例が一体となった環境アセスメントが適切に実施されるとともに、地域特性に応じた生物多様性地域戦略の策定が進むよう、引き続き努力していきたいと思っております。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 非常にさまざま考えていただいている、期待をさせていただきます。ぜひ、地域に任せきりにしないで、国と地方自治体、タッグを組んで進めていっていただきたいと思います。

 時間がございませんので、次の話題に移らせていただきます。

 電子縦覧が義務づけられたということで、環境影響評価の過程のさまざまな情報がインターネットを通して公開されることとなっています。この取り組み、環境アセスメント、地域の環境を本当にみんなで、言うなれば世界でそれぞれの地域の環境を見詰めていこう、そういった意味での取り組みとして非常に重要な取り組みであると評価しています。

 きょう、たまたま私の所属しています横浜国立大学の研究室の仲間が傍聴に来ていただいていますが、こういう学生さんが興味を持って、例えば環境を勉強しているような方々がこういう情報に直接アクセスをしてさまざま意見を言っていく、それが環境を本当に次の世代に渡していくために大事な取り組みだと思います。その基礎になるのがこの情報公開だと私は考えております。

 今まで、さまざま環境影響評価法に基づいて事業者に提出されてきた意見がございますが、これまではどのような取り扱いをされてきたのか。今回の改正では、広く意見を聴取するためにどのような工夫をされているのか、お聞きをしたいと思います。

白石政府参考人 現行法に基づきまして、例えば事業者に対していろいろな意見が提出されるわけでございますが、その提出された意見の概要と、それに対します事業者の側の見解というものが出ます。それを、環境アセスメントのプロセスの次の段階の環境影響評価図書に記載をするという形で現行の運用はなされております。

 また、今回の改正法案におきましては、そうした図書のインターネットでの公表、それから方法書段階における説明会の開催の義務づけ、こういうことによりまして、図書へのアクセスの向上、それからその内容についての住民の方々の理解の助けとなるため、いろいろな幅広い意見聴取、こういったときに役立てていただけるものと考えております。

山崎(誠)委員 今回の改正で電子縦覧を義務づけることとなりますけれども、その趣旨は何か。

 また、このような改正によりまして、さまざまな知見が今まで以上に集まってくる。集まってきたさまざまな意見を適正に評価して事業に反映させなければ意味がありません。恐らくさまざまな意見が集まってきますから、これはコントロールするだけでも大変かもしれない。でも、それをやらなければ意味はないと思います。

 どのように取り組んでいくのか、お聞きをしたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今回の改正案におきましては、方法書、準備書、評価書などの環境影響評価図書について、インターネットを用いて公表するということを義務づけさせていただいているところであります。

 こうしたインターネットを活用するということにつきましては、環境影響評価図書へのアクセスを容易にしていく、そして結果として、専門家を含めたさまざまな主体の意見を聴取しやすくするということでありまして、御指摘の、生物多様性に関する幅広い知見などを事業者が収集することにも資するということが期待をされているところであります。このため、今回の改正で電子縦覧を義務づけたものでございます。

 また、専門家等からの意見の事業への反映については、従来から、方法書に対し提出された意見は準備書に、準備書に対して提出された意見は評価書に反映させることとなっておりまして、今後とも、法に基づいて、事業者において環境保全の観点から生かされるものと認識をしているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 さまざま、このインターネットの活用、やはり時代の流れでもありますし、情報は、今いろいろな話題があって難しいときではありますが、これはやはりうまく活用することがどうしても必要だと思いますので、よろしく取り組みの方を進めていただきたいと思います。

 時間の関係で、少し質問をはしょってまいります。

 次に、事後調査についてお聞きをしたいと思います。

 環境アセスメントに実効性を持たせるために、一通りのプロセスを流してそれで終わり、それではやはり制度として十分ではないと思います。やりっ放しではなくて、しっかりとしたフォローの仕組みをつくることが課題であると思います。

 一問飛ばしまして、今回の改正について、事後調査の結果を報告、公表させることとした理由についてお伺いをしたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 現行法におきましては、環境影響評価手続が終了し、事業に着手をした後の段階では、事業者が、評価書の内容に基づいて、必要に応じて環境保全措置及び事後調査を実施することとなります。しかし、これらの環境保全措置及び事後調査の実施状況について報告及び公表をする仕組みは、御案内のとおり、現行制度には設けられていないということであります。このため、行政や住民などが実施状況を把握することが困難な状況にあったということであります。

 今回の改正によりまして、報告書手続を新たに制度化させていただくということによりまして環境影響評価手続の実効性を担保する、つまり、行われたかどうかがちゃんと後でわかるという仕組みを、生物多様性保全も含めた環境配慮の充実にも資することが期待をされているということでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございました。

 これも、やはり今さまざまな現場で、例えば、環境アセスは終わってしまった、でも、その後にいろいろな調査を独自に民間の方々、研究者の方々が重ねていく中でいろいろなものが見つかってくる。残念ながら、やはり環境影響評価のプロセス自体は、時間も限られますから、十分な検討ができなかったかもしれない。その後にいろいろなことが起きてくる。やはり、こういったものにも目を向けるような制度でなければならないと思います。

 以上、いろいろ今回の改正について触れてまいりました。概して言いますと、やはり大変厳しい改正であろう、事業者にとってはさまざまなハードルを設けるような制度改正であろうと思います。率直に私は、そういう意味で事業者の方々は大変だろうな、御苦労されるだろうなと思っているところでございます。

 しかしながら、冒頭で述べましたように、COP10、環境の価値を本当に正当に評価して、持続性を担保して、豊かな地球を次の世代に受け渡すために、やはり自然環境に影響を及ぼす事業については今まで以上に慎重に進めるべきだ、それが根本的に世界の流れになっていく、そのための今回の改正だと思っています。

 そういった意味で、この環境アセスメントの制度、実際の運用面で各事業官庁が責任を担うわけですが、この点をしっかりとやはり共有していただきたい。

 最後に、環境大臣にお伺いして終わりたいと思うんですが、今申し上げたとおり、COP10の成果を受けまして、すばらしい会議でした、環境省の役割は今まで以上に本当に大きくなっている。人間の活動と自然環境の調和のために、日本じゅう、または地球規模で行われているさまざまな事業を環境の視点からしっかりと監視をし、見詰める必要がございます。

 私は、本日は時間が、深掘りはできませんが、初めての質問でも取り上げました、事業官庁をリードして強い指導力を発揮する環境行政、環境を軸にした国家戦略の立案、組織でも、例えば事業官庁の上に立つような、日本版の、アメリカでいえば環境諮問委員会のようなもの、そういったものをしっかりとつくっていっていただきたいと心から願う次第でございます。

 環境大臣、COP10の議長として、そして日本の環境行政のリーダーとしてこれからどうリードをしていくのか、決意をお伺いして、最後の質問とさせていただきます。

松本国務大臣 お答えいたします。

 まず冒頭、きょうは参議院の本会議がございまして、遅参いたしましたことをおわび申し上げたいと思います。また、小沢委員長を初め山崎委員、とりわけ野党の皆様には御寛容をいただきまして、敬意を表したいというふうに思っております。

 今お話がありましたとおり、COP10の議長として、これからまだ二年間、議長国としての役割があります。愛知目標をしっかり遵守していきながら、また名古屋議定書をしっかり担保していきながら、実施に向けて、途上国の支援もありましょうし、いろいろな意味で頑張っていかなければならない、そういう意味では、これからも努力をしていきたいと思います。

 いずれにしましても、持続可能な社会づくりに向けて、菅総理も先頭に、また関係各省庁とも連携をとりながらしっかり取り組んでいく覚悟でございますので、今後ともよろしくお願いをしたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

山崎(誠)委員 私も、きょう、このCOP10のバッジを外そうかと思ったんですが、外すのはやめました。これからが本当の勝負のときで、私は、この二年間、ぜひこのバッジをつけ続けて、成果が出るまで粘り強く環境行政に意見をしてまいりたいと思います。

 本日は、質問の時間をいただきましてありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、田中和徳君。

田中(和)委員 おはようございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、山崎委員のお母様が御他界をされたということを承りまして、心から御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。

 糸魚川の話をされまして、私も実は、今は川崎市の議員として活動しておりますけれども、もともと生まれたのは山口県下関市、当時は豊浦郡豊田町といった本当の山村でございまして、そこの農家の長男でございまして、承りながら、本当にいろいろなことを思い出しておりました。また機会を見て、ぜひひとつそういうお話もさせていただく質問をさせていただきたいな、こう思っております。

 まず、私は、尖閣諸島沖の漁船衝突事件で海上保安庁が撮影したビデオ映像がユーチューブに流出した問題で、ぜひひとつ大臣に、政府の重要閣僚として御認識を承っておきたいな、こう思っております。

 これは言うまでもなく、国の情報管理上、危機管理上重要な不祥事、大問題でございます。吉野議員が十一月五日に大臣に尋ねたときには、ビデオが流されたということは私はちょっと知りませんでしたので、申しわけありませんけれども、コメントを差し控えさせていただきます、こういう答弁でございました。今は状況が変わっておりますし、事の次第は十分大臣はもう把握をしておられるわけでございます。防災担当大臣ということで、事何かあったときには全く無関係のお立場でもございません。

 どのように感想をお持ちなのか、また、総理大臣、官房長官、国土交通大臣、海上保安庁長官の責任についてはどうけじめをつけるべきなのか承って、その後に質問に入らせていただきたいと思います。

松本国務大臣 お答えいたします。

 この間、吉野委員にお答えができなくて申しわけありませんでした。

 今おっしゃるとおり、情報の保全は徹底して行わなければならないという意味におきまして、結果としてそれができなかったということに対して、私も、内閣の一員として責任を痛感しております。

 いわゆる責任のあり方については、捜査が徹底的に行われて事実関係が確定されたときに検討されるべきというふうに思っております。

 ただ、一点だけ。海上保安庁の職員の皆さん、それぞれ、五年前も私は北海道に行って、いろいろな職務をされている、厳しい状況の中で、船も老朽化している中で頑張っておられる姿、また防災の関係でも、この間奄美大島に視察に参りましたけれども、警察、自衛隊、消防がなかなか寄りつきにくいときに、海上保安庁がいち早く負傷者の運搬でありますとか緊急要員の運搬でありますとか活動をされておりまして、わだつみ苑がありましたあの住用町の皆さん初めいろいろなところから、海上保安庁に対する感謝の言葉を述べておられました。

 要するに、職員の皆さんの御苦労にはある意味で感謝を申し上げたいと思いますし、責任の所在については、先ほど申しましたとおり、これからの解明によってなされるものと思っております。

田中(和)委員 私は、率直に申し上げますけれども、もちろん海上保安庁長官の責任は重大でありますけれども、今いろいろと話が出ておりますが、政治レベルの責任を明確にしていかないと今後の日本に重要な禍根を残すことになる。政治レベルの責任できちっとけじめをつける、こういうことが重要だと私は思います。

 私は、過去に国土交通省の大臣政務官を務め、海上保安庁の海上観閲式に大臣の代理として責任者を務めたことがございます。その後、縁がありまして海上保安庁との関係も深い議員の一人でございますけれども、とにかく、一生懸命、命をかけて闘う、まさしく海の国境を守り抜く海上保安庁の諸君の士気にも影響しますし、私は、今回のことは本当に重要な、国の形を世界にも示す意味で、明確な責任をとっていただく、重要であろうと思っておりますので、申し上げておきます。

 さて、先般のCOP10、大臣、御苦労さまでございました。私も、名古屋議定書、愛知目標が決定されたということで、先般、大臣所信の質問のときにいろいろと申し上げましたけれども、申しわけないことだったと思いますと同時に、大変いい結果であったな、このように思っております。

 そして、いよいよカンクンであります。このCOP16、気候変動枠組み条約第十六回締約国会議、これも国益をかけた極めて重要な会議になってまいります。

 EUはもう、漏れ伝わる話は大変私も遺憾に思うことでございますけれども、どうも向こうは向こうでの事情があるようでございまして、単純延長の方に走っていくのではないか。オーストラリアもニュージーランドもそうだ、当然、発展途上国も目指す方向は京都議定書の単純延長だと。このことについて、国会の場で、総理も含めて、単純延長は我が国としては絶対ないよ、やらないんだよ、こう言い続けておられますけれども、それでも、私の立場から考えれば、やや、日本が孤立するんじゃないかな、大変なことになるんじゃないかなという不安をすべて払拭できるほどの状況に実はない、このように思っております。

 くどいんですが、もう一度、大臣の決意と我が国の戦略を少し語っていただければと思います。

松本国務大臣 私も、大変重要な御指摘だというふうに思っております。

 今月末にもメキシコのカンクンで気候変動枠組み条約第十六回締約国会議がございますけれども、要は、私たちの願いはやはり、世界のCO2排出量を減らしていくということでありまして、そういう意味では、すべての主要国が参加すること、また国際的な枠組みを構築することがしっかり担保されなければならないというふうに思っております。

 しかしながら、この間事務方に調べていただきましたけれども、世界全体の排出量のうち、京都議定書において削減義務が課されている批准国の排出量、つまり京都議定書の枠だけで排出されている割合は、一九九〇年比でいえば、そのとき四二%あったんですけれども一番近い数値の二〇〇八年には二七%。四、五日前までは二八%というふうに聞いたんですけれども、二七%という枠になっております。

 また一方では、議定書を批准していないアメリカや、議定書を批准しているけれども削減義務がない中国の排出量を二つ合わせて占める割合が、一九九〇年では三四%でありましたけれども、二〇〇八年には約四一%に増加をしている。

 まさに逆転をして、こういう京都議定書の二七%という枠組みの中で単純延長といいますか、第二約束期間ということは考えられない、総理がこの間申し上げたところであります。

 京都議定書は気候変動への対処の第一歩ではありますけれども、究極の目標の達成のためには、米国や中国が公平な義務を負わず、一部の国のみが高い削減義務を負う枠組みが固定するような京都議定書の延長は、我が国がとるべき道ではありませんし、この間近藤副大臣には行っていただきましたけれども、EUは、すべての主要国が参加する包括的な枠組みの実現などを条件にというふうに私は理解をしております。そういう意味では、京都議定書の第二約束期間について、その条件をもとに検討する意思を確認したというふうに承知をしています。したがって、EUも、米中を含む法的拘束力のある枠組みをあきらめたわけではないというふうに理解をしております。

 我が国としても、意欲的な目標を世界に率先して掲げるとともに、地球温暖化対策基本法を提出し、低炭素社会にかじを切る決意であります。また、途上国に対しても、COP10同様、支援も着実に実施してまいりたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、昨年のコペンハーゲン合意は、いわゆる八割が合意をしているわけですから、すべての主要国が参加をして、公平かつ実効性のある枠組みをつくっていくために努力をしていきたいというふうに思っております。

田中(和)委員 大臣の強い決意だ、このように受けとめておりますし、戦略性を持って、我が国の主張が十分国際会議の中で反映された結果になりますように、ひとつお力をいただきたいと思っております。

 ただ、万が一のときに、場合によっては多数決、これで採決というようなことに、我が国が乗れるはずはないんでございますが、そのようにならないためにも、いろいろと頑張っていただきたいな、こう思っております。大臣は経験豊かな方でございますから、多数決なんということには、それで採決ということにはならないと思いますけれども、この点、もう一度確認をしておきたいと思います。

松本国務大臣 私も同じような懸念を持って、この天津でのAWGの話を見ておりましたけれども、本当に、孤立してはいけないというのはおっしゃるとおりであります。

 そういう意味では、厳しいけれども我が国の積極的な姿勢を世界に示していかなければならないし、また、我が国と立場を同じくする国もまだたくさんあるわけですから、そういう方々と連携をしていきながら努力をしていきたいというふうに思っております。

 あわせて、COP10の議長国という経験からも、今度メキシコが議長国でありますけれども、そことも連携をとっていきながらやっていきたいと思います。

 締約国会議は全会一致ということで、COP10はありました。そういう意味では大変厳しいものがありましたけれども、これからも、COP16に向けて皆さんのお知恵をいただきながら努力を重ねていきたい。もし国会のお時間が許されれば、私もカンクンに行って、さまざま活動していきたいというふうに思っております。

田中(和)委員 ぜひ大臣もカンクンに行って大活躍をしていただければ、こう思っております。いずれにしましても、我々もバックアップしつつ、成功を念じてまいりたいと思っております。

 それでは、本題の環境影響評価法の一部を改正する法律案、いわゆるアセス法について質問をしてまいります。

 法案の質疑に入る前に一言申し上げておかなければならないのは、前国会では本法案について、我々自民党が欠席のまま、提案理由の説明、そして政府質疑、参考人質疑が行われました。これは公正な委員会運営とは言えず、大変遺憾に思います。先日の参議院選挙で状況も大きく変わって、国会も心機一転、私は、きょうからアセス法の本当の審議が始まった、このように認識しておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。

 まず、今般のアセス法改正に当たり、そもそも平成九年にアセス法が制定された背景を確認しておきたいと思います。

 昭和五十一年に、我が国最初、初の環境アセスメント条例を制定したのは、公害問題で悩んでおりました私の地元川崎市でありました。これを皮切りに各自治体に環境アセスの制度化の動きが広がり、現在ではすべての都道府県、それから十九ある政令指定都市のうちの十五市で環境アセスの条例が制定、施行されております。一般の市町村では、条例化された自治体は七市です。

 要綱を制定している自治体についても環境省に資料を要求しましたけれども、実情の把握ができていないという返事でありました。都道府県の条例でカバーしているとは思いますけれども、国はこの改正案を提出しておるわけですから、当然、全国のそれぞれの自治体の状況についても私は十分把握をしておくべきである、このように付言をしておきたいと思っております。

 国の方はといいますと、昭和四十七年に各種公共事業に係る環境保全対策についての閣議了解がなされ、以降、環境アセスに関する取り組みが本格的に始まり、平成九年にはいわゆるアセス法が成立、平成十一年より完全施行ということになりました。

 世界的に見ると、昭和四十四年にアメリカが世界に先駆けて環境アセスメントを法制化し、その後ずっと進められてきましたけれども、日本が法制化したのは、どうもOECDの中では最後であった、このように認識をしておるところでございます。

 小沢前環境大臣、現委員長殿も、こう述べておられました。地球温暖化や生物多様性の危機といった問題に代表されるように、健全で恵み豊かな環境は、現在を生きる我々のみならず、将来世代にわたる人類の生存の基盤であるとともに、持続可能な経済活動の基盤である。環境と経済といった観点に即して申し上げれば、かつて、環境問題は経済活動の阻害要因、こう言われた時代がありました。しかし、今は、環境は経済成長をもたらす重要な柱である、この認識が一般的だと思っていると。

 私も全くこの認識でございます。この法律の存在意義もここにあるんだ、このように思っておるわけでございます。

 アセス法が施行されてから十年間、着実に全国にも制度が広まり、活用されている、このように思っておるわけでございます。

 我が国の環境への影響への貢献度はどういうことであるのか、また経済成長にはどのように寄与したのか、大臣としても数字をお持ちであれば示していただければと思っております。

松本国務大臣 お答えいたします。

 先ほど、全国の自治体の実態が把握できていないということは、しっかり重く受けとめてやっていきたいというふうに思っております。

 また、環境と経済ということを物すごく私は難しいなと思っておりましたけれども、今経済と環境が近づいて、並んで、そして一緒になってこれからの時代をつくっていかなければならないという委員の御指摘には私も賛成でありますし、そういう時代をやはり環境立国として日本は担っていかなければならないとまず思っているところであります。

 環境影響評価制度は、事業者みずからが市民や自治体と意見を得ながら環境影響について調査、予測、評価を行うことにより、経済的に必要であるが規模が大きく環境への影響が懸念される事業について、環境保全に適正に配慮した事業の実施を確保するという意味では、大きな役割を果たしてきたというふうに思っております。

 また、この制度によって、十年間でさまざまな事業が適正な環境配慮がなされた上で実施されてきており、我が国の持続可能な発展にも寄与してきたものと認識をしているところであります。

 一方で、事業の早期段階における環境面への配慮の必要性等、法の施行を通じて浮かび上がってきた課題、また生物多様性の保全、地球温暖化対策の推進等といった社会情勢の変化もありまして、これに対応する必要性が生じており、今回の改正において事業へのより適正な環境配慮がなされることと認識をしており、同じように大きな意義を持つものと考えております。

田中(和)委員 数字をと言ったんですけれども、なかなか数字にあらわしづらい点だろうとは思うんですけれどもね。

 確かに、法律化したのはOECDの中でも最後だったかもしれませんが、今や、我が国は環境先進国としては世界トップ、まさしくこれをリードする国、このようにお互いに認識をしておるわけでございまして、やはり、世界の会議に大臣が臨まれたときに数字をもってお示しをされる一つの計算方式というものを、政府を挙げてコンセンサスをとられて準備しておかれた方が説得力があるなと、私はこのように申し上げておきたいと思っております。

 時間の関係がありますので、自治体の取り組みと法律の関係についてお尋ねをしてまいります。

 昭和五十二年に、川崎市の条例に基づいて、川崎市麻生区の不動産関係の事業が日本初めての環境アセスメントの対象になりました。これは偶然なのでございますが私がかかわった物件でございまして、環境アセスと田中和徳との関係がここから生まれておるわけでございます。その後、私自身が、昭和六十二年から平成三年まで五年間でありましたけれども、川崎市の環境アセスメントの審議会の委員を務めて、多くの案件を担当したのでございます。

 そういう経過もありまして、地方自治体の環境アセスへの取り組みに対する支援を強化するということも、実は、法の趣旨からして非常に重要なことであろうと思っております。

 現行の制度では、事業に関係する都道府県知事が市町村長の意見を集約した上で事業者に対して意見を述べる、こういう仕組みになっております。しかし、地方分権の進展によって、従来、都道府県知事が担ってきた公害防止事務の多くが政令市に移管されて、地域環境管理の観点から、政令市が果たす役割が非常に大きくなっている。実際に人口も、全国を見て、人口密集地は政令市になってきておりますし、現実は随分変化してきていると思っております。

 今般の改正案では、政令市の市長が都道府県知事を介さず事業者に対して直接意見提出ができる仕組みを盛り込んであるわけでございますが、これは私も評価するところでございます。

 一方、関係政令市の市長と都道府県の知事で意見の不整合が起きた場合、事業者の人たちは、混乱を回避するための配慮があってしかるべきだ、このように実は多くの声があるわけでございますけれども、どのような措置を講じることになるのか、大臣の考えを承りたいと思います。

松本国務大臣 私も、大変重要な御指摘だと思います。

 川崎市で日本で初めてのアセスということで、先生が一番先に取り組まれたことに敬意を表しますとともに、ナショナルトラストも一番最初は鎌倉でございました。神奈川は本当に先進県だなというふうに思って、お話を聞いておりました。

 そういう意味では、昭和六十二年から五年間、審議会を経験されたということで、これからもいろいろな意味で御意見やお知恵をいただきたいなというふうに、改めてお願いをまず申し上げたいと思います。

 今御指摘の点ですけれども、事業者は方法書の段階で対象事業による環境影響が及ぶ範囲と考えられる地域を設定するわけですが、事業者が単一市の区域内に影響評価が限られると考えられた場合であっても、ほかの市町村への影響が懸念されるケース等も想定をされます。このため、都道府県知事も意見提出を行うことができるとしているところであります。

 環境影響評価法に基づく意見は、あくまで環境保全上の観点からの意見を述べるものであって、知事意見と市長意見が矛盾するといった事態は通常は想定をされないと思いますけれども、制度の運用に当たっては、混乱が生じないように、地方公共団体への周知を図ってまいりたいというふうに思っております。

田中(和)委員 事業者側の視点からですけれども、現状では、アセス条例を制定しているすべての都道府県、政令市において、方法書や準備書に対する意見を形成するための審査会が設置されています。したがって、複数の地方公共団体にまたがる事業の場合には、事業者が各地方公共団体の審査会に対応する必要があり、結構な負担になっておるわけですね。

 例えば、合同審査会の開催など、審査手続を効率化して事業者の負担を軽減していく必要があると考えますけれども、その点、ぜひ大臣に確認をしておきたいと思っております。どうですか、これは。

近藤副大臣 田中委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 事業実施区域が複数の地方公共団体の区域にまたがる対象事業については、事業者が各地方公共団体の審査会に対応する必要がある場合があるため、合同審査会の開催等により審査手続を効率化し、事業者の負担を軽減するよう求める意見が中央環境審議会でも示されたところであります。

 このような場合に、審査手続を効率化するため、地方公共団体の判断により運用上対応することも可能であると考えております。国においても、法を適切に運用しつつ、地方公共団体がそのような対応をとりやすくするよう、工夫を行ってまいりたいというふうに考えております。

田中(和)委員 時間の関係で、まとめてお尋ねをしてまいります。

 ことし、平成二十二年三月までのアセスの実績は、国の閣議決定要綱に基づくアセス実施で件数は四百七十二件、国の法律に基づくアセス実施件数が百三十二件、地方自治体の条例に基づくアセス実施件数は九百十七件、地方自治体のその他要綱、指針に基づくアセスについては、さっき言ったように、資料の提出がございませんでした。

 こういうことなんですが、ずっと数字を追っかけてみました。実は、環境省に幾ら言っても数字が出てこないんですよ、ちゃんとした数字が。

 全国トップの届け出件数は、実は私の地元川崎市で二百六十五件。全体が二千四百五十九件ですから、川崎市だけで全体の約一割強、こういうことになるわけでございます。その後は、二番手が東京都の二百六十件、三重県の百三十件、岡山県が百十件、千葉が九十件、こうつながってくるわけでございます。

 そこで、例えば、人口密集地域は政令指定都市もくっついているんですよ。神奈川県を例に引くと、川崎、横浜、相模原。他の地域が神奈川県ということになるのでございます。規模の大きなアセスということになれば、実はこのことを想定しておかないと、またがってしまえば、複数だからといって県知事の方に一気に権限が移るわけですけれども、今度は政令指定都市の意見は、せっかく制度にありながら、生かされてこないわけですよ。

 ですから、ここの部分で、実は率直に言って、政令指定都市の担当者からは、不安の声、不満の声が上がっているんですね。私の方も何件かお話を聞きまして、確かに、ここをきちっとしておかないと大変だな、このように思っておりますが、どうですか。

樋高大臣政務官 大変恐縮でございますが、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 先生は、昭和六十二年から川崎市におきまして環境アセス審議会委員を務められたフロントランナーでいらっしゃるということでありまして、いつも含蓄のある鋭い御指摘をいただいております。どうか今後とも御指導いただきたいと思います。

 今のお尋ねの件でございますけれども、御指摘のように、複数の地方公共団体にまたがる事業につきましては、従来どおり、都道府県知事が関係市町村長から述べられた意見を勘案した上で事業者に意見を述べることとなっております。

 他方、関係地域の全部が一つの政令で定める市の区域に限られる場合に該当する事業も、今後相当程度見込まれておりまして、地方分権の進展により都道府県が担う公害防止事務の多くが政令指定都市等に移管されているという状況が見られること、そして大半の政令指定都市等において独自の条例が制定されていることなどを踏まえまして、関係地域の全部が市内に限られる場合、当該市に対して事業者への直接の意見提出権限を付与することが必要である、このように考えているところでございます。

田中(和)委員 時間が来たから終わりますけれども、樋高大臣政務官、地元の事情はよく御存じの上でお答えになったんですが、少し言葉が足りなかったのではないかと思っております。

 簡単に言うと、政令指定都市の中におさまったものは政令指定都市の方でやるんだけれども、またがっちゃうと県知事なんですよ、県庁なんですよね。だけれども、さっき言ったように、実際には政令指定都市の件数が多くて、しかも人口の密集地域でいろいろな問題があるわけでございまして、そういうことを考えると、どうしても政令指定都市同士、場合によっては隣接の市町村も入れて、ひとつこの法の趣旨が生かされる制度にしなければいけない、このことを申し上げております。

 時間の関係が、特に押しておるということでございますので、大臣に一言だけ、一秒御答弁をいただいて、終わりにしたいと思います。

小沢委員長 松本大臣、簡潔に。

松本国務大臣 お話をお聞きしましたので、よろしく御指導ください。

小沢委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、環境アセス法の改正案について質問をさせていただきます。

 環境アセスメントにつきましては、今もるる御説明ございましたけれども、私は、やはり乱開発による環境破壊を防いで持続可能な社会にするために不可欠なものでありまして、一方で、無駄な公共事業をとめる効果もある仕組みでございます。ほとんどの先進国で法制化が行われておりますけれども、日本ではこれは法制化が大きく立ちおくれまして、本法の成立は一九九七年で、当時のOECD加盟国二十九カ国中、最後の法制化であったわけでございます。

 今般、平成十一年六月の法の完全施行から十年を迎えまして、その間浮かび上がった課題、生物多様性の保全や、また地球温暖化対策の推進、そして地方分権の推進など、変化に対応するために今回、法改正を行うものであると承知しております。重要法案でございます。したがって、一つ一つの法の改正部分、またその効果、実効性を確かめさせていただいて、慎重審議を進めてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最初に、大臣、戦略的環境影響評価、SEAについて一連、御質問をさせていただきます。

 日本の制度というのは、代替案との比較検討がほとんど行われないというところが一つ大きな課題として残っていると思います。日本のアセスというのは、事業の実施計画ができた段階で行われる事業アセスであるために、予定位置や規模を変えれば環境への影響がずっと少ないとわかっていても、後戻りするのが非常に難しくなっているのが実情だと思います。この欠陥を補うのが、政策、構想、立案段階で評価する戦略的環境アセスメント、SEAであるかと思っております。

 このSEAにつきましては、今般、計画段階配慮書に関する事項を新たに定めて、戦略的環境影響評価、SEAの導入ということにしているわけでございますが、いわば日本版SEAであろうかと思います。

 これは、事業計画の立案段階で著しい環境影響を把握して、複数案の環境的側面の比較評価、環境配慮事項の整理を行って、計画の検討に反映させることによって事業の実施による重大な環境影響の回避または低減を図ることが必要という観点から、上位計画のうち、事業の位置、規模等の検討段階を対象とするものでございますけれども、この法制度への導入というのは、以前からその必要性が指摘されていたものでございますから、我が国の環境影響評価制度は一歩前進をしたという点で、非常に意義があるものと考えております。

 そこで、大臣、質問をさせていただきますけれども、本改正案については、第一種事業を実施しようとする者に対して、事業の位置、規模等を選定するに当たって、環境の保全のために配慮すべき事項について検討を行って、計画段階環境配慮書を作成することを義務づけるものでございます。

 本改正案によって導入されるSEAが、一般的なSEAの要件を満たすのかどうか、十分に導入される制度の効果が期待されるのか、こういう点が課題だと思っております。

 現在、欧米諸国はもとより、中国などの発展途上国においてもSEAの制度化が進んでおります。平成二十二年答申においても、「将来的には、今後の社会状況の変化を踏まえた上で、諸外国等で実施されている個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることになる上位の計画や政策の検討段階を対象とした環境配慮の枠組みを、我が国のSEAとして導入することについても検討する必要がある。」と指摘されております。

 大臣、今回の、上位計画での環境影響評価、日本版SEAについての、まずは大臣の評価をいただきたい。そしてさらに、今後、我が国においても上位の計画段階を対象とするSEAを導入する必要があるのではないかと私は考えますけれども、どのようにお考えか、お伺いします。

    〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

松本国務大臣 お答えいたします。

 江田先生には、同じ福岡ということで、大変環境問題について取り組んでおられること、また、さまざまな場面でいろいろな課題に取り組んでおられることに敬意を表したいというふうに思っております。

 環境が荒れてきたということ、COP10もそうですけれども、大変、世界がやはり持続可能な生態系をつくっていかなければならない、生物多様性を守らなければならないという思いが本当に各地であります。そして、OECDの中で一番おくれたということも、私たちはしっかりそのことを見ていきながら、これからの取り組みに励んでいかなければならないと思っています。

 実は、江戸時代から大正にかけて、宣教師でありますとか通商団とか、さまざま学者さんが日本に来て、日本の印象をつづった「逝きし世の面影」という本が渡辺京二さんという人の本でありましたけれども、当時の日本というのは、本当に自然が横溢して、豊かで、これほど自然と人間が共生をしている社会はないとみんなが驚くぐらいやはり自然と共生をしていた。ともすれば、自然を支配するという西洋的な考えから、自然と共生をしているという日本的な住まい方を見て外国人が驚いたという話がずっとその本につづられております。

 まさに今、上位の問題等々言われましたけれども、今回の見直しにおいて導入をするSEA、つまり戦略的環境アセスメントの手続は、実績の積み重ねがある個別事業の位置、規模、配置、構造等の検討段階を対象としております。より上位の計画や政策段階での環境影響評価については、中央環境審議会においても検討の必要性を指摘されているところでありますから、私どもも、今後の課題として取り組んでまいりたいというふうに思っております。

    〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

江田(康)委員 では、続けて質問をいたしますが、SEAに関することでございます。

 配慮書についての意見の聴取について質問をさせていただきます。

 環境大臣、主務大臣は、配慮書について、日本版SEA段階の配慮書についてそれぞれ意見を述べることができることが定められて、その意見は、事業者によって勘案されることにより計画段階配慮事項の項目、手法に反映されることとなっております。

 さらに、この配慮書についての意見の聴取については、環境の保全の見地から、関係行政機関及び一般の意見を求めるように努めなければならないものと規定したわけでございまして、これは当然のことながら、評価できます。しかし、それは努力規定となっているわけでございます。

 しかしながら、関係行政機関並びに一般の意見を聴取するに当たっては、できるだけ早期に、かつ確実に意見内容をしんしゃくして事業に反映させていく、これが非常に大切だと思います。それによって、地域の環境影響が適切に評価されるとともに、事業もその後、大変住民の理解を得ながら順調に進むものではないかと思うわけでございます。

 そのために、本規定で努力義務となっている配慮書についての意見の聴取を義務化する必要も指摘されておるところでございますけれども、これに関して大臣の見解をお聞きいたします。

松本国務大臣 この改正案のSEAの過程においては、地方公共団体の意見、また住民の意見聴取については、事業種等によってその実施が困難な場合があるために、一律の義務化をすべきではないと考えておりますけれども、一方、中央環境審議会の答申においても、「事業の種類、特性等に応じた柔軟な制度とすることが適当」と指摘をされております。

 なお、意見聴取の具体的な方法については、計画段階における調査手法の基本的な考え方を示す基本的事項、環境省告示及びこれに基づく主務省令で定める予定でございます。

江田(康)委員 一律の義務化はできない、主務省令等でこれを規定していくということでございますが、大変重要なSEAの最初の段階であるかと思います。

 続けて、今度はSEAの適用除外について、大臣のお考えを明らかにしておきたいと思います。

 本改正案の第五十二条の第三項では、計画段階配慮事項の適用除外について規定がされております。第二項には、この法の手続の適用除外について、災害時における復旧事業を適用対象から除外しているという政府答弁もこれまでございました。今回新たに創設される第三項というのは、新たな事業としておりまして、具体的には、これはこれまでの政府答弁でございますけれども、大震災等による大量の廃棄物対策として、新たな区域での緊急的な最終処分場の整備等を想定しているとお聞きしております。

 しかし、新たにこうやって設けられる本規定が仮に恣意的に解釈、運用されることになると、SEAの適用除外が乱発されるというおそれもある。もしそういった事態になれば、せっかくのこのSEAというのも有名無実化してしまうわけでございます。そうした懸念について大臣はどのようにお考えか、お伺いをいたします。

松本国務大臣 江田先生御指摘のとおり、第二項は例えば島原とか阪神・淡路ということを想定していると思いますけれども、今言われました配慮書手続の適用除外規定、第五十二条第三項の方は、災害発生後の対応等、社会的要請から事業に速やかに着手することが求められる場合があることから設けられたものであり、具体的な対象事業は政令で指定をすることとなっております。

 政令の制定に当たっては、環境省において検討を行った後に、条文案についてのパブリックコメントや各省との協議を経た上で閣議決定されるものでありまして、法律の趣旨にのっとって適切に対応してまいりたいと思います。

江田(康)委員 これについては政治的にも、いろいろと参議院側でも議論がなされたことでもありますけれども、政令で指定していくその精神は、やはりこういう適用除外というのはもちろん適切な場合における適用除外であろうかと思いますので、それが恣意的な解釈に至らないようにぜひとも努めていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、対象事業の範囲の拡大といいますか、ここについて一連、御質問をさせていただきます。

 まずは、交付金事業への対象拡大ということについてでございます。

 今回、これから交付金化の動きが拡大するということで、本改正案は、補助金と交付金の違い等も考慮しつつ、交付金化された事業についても法対象とできるようにしたわけでございます。本改正案によって、どのような交付金事業が対象事業に加えられるんでしょうか。その見解をお伺いいたします。

 また、これまで補助金事業を対象として、先ほど来お話がありますけれども、日本のアセス事業の対象数というのは諸外国と比べてかなり低い、そういうようなことに対して、交付金化事業を対象とすることによってその対象枠が大幅に拡大するという想定ができていらっしゃるのか、そこについてもお伺いをさせていただきたい。

 また、交付金事業がこれまで法対象となっていなかった、そのためにどんな問題が具体的にあったのか、今回の改正によってそのような事例はどのような対応となって解決されていくのか、そこについて大臣の説明を求めさせていただきます。

松本国務大臣 ちょっと細かな質問でございますので、交付金がなぜ対象事業に加えられると想定されるのかということだけ、お話をしたいと思います。

 今回の改正案によって対象事業の要件として新たに追加される、交付金の交付を受けて行う事業としては、交付決定権者が国であって、その審査の際に個別の事業を審査する等、環境影響評価の結果を反映する担保があるものを想定してございます。

 現行法では、交付金を受けて実施する事業については対象事業となっていません。一方、地方の裁量を高めるために、補助金の交付金化がここ数年進められており、今後この動きが拡大した場合には、従来は法対象となっていた大規模で環境影響の程度が著しい事業が対象でなくなることが考えられます。

 したがって、このような可能性があることを考慮して、本改正案では交付金の交付対象事業についても法対象とするということにしてあります。

白石政府参考人 技術的なことで少し補足をさせていただきます。

 御案内のように、今、補助金の交付金化というのが進みつつある段階なので、今々現在は、そういうふうになったから、今まではアセス法の対象だったけれども外れてしまったという具体的事例はないのですが、今後どんどん交付金化が進むと、例えば、今でもまちづくりの交付金などでは一級河川の河川工事等々が入っております。そういったものが、さらに事業が拡大すると、今までは対象だったものが自動的に外れていく、そういうことになってはアセス法の本来の趣旨から外れてしまいますので、そういうものを引き続き対象にするという考え方に立った改正でございます。

江田(康)委員 次に、一つこれも確認しておきたいんですが、スクリーニング事業についてなんですけれども、必ず環境影響評価を行うものが第一種事業、一定規模以上の事業ですよね。第二種事業というのは、第一種事業に準ずる規模を有する事業として、これは個別の事業とか地域の違いを踏まえて個別に判定する仕組み、すなわちスクリーニングを導入しているわけでございますけれども、現在、これは全く有名無実で、すべてスクリーニング手続を経ずに環境影響評価手続がとられているのが現状だと思います。

 これについて、なぜそのような本来の趣旨に沿わないようなことになってくるのか。また、これに対してどのように対応して、本来のあり方を志向していくのか。ここについてお伺いをさせていただきます。

近藤副大臣 お答えをさせていただきます。

 江田委員におかれましては、環境副大臣もお務めになられ、大変に環境行政に精通されておられる、私も大変に敬意を表しております。

 今御指摘の点でありますけれども、言うまでもないわけでありますが、このスクリーニング制度、第二種事業について環境影響の大きさを判定し、影響が大きければ環境影響評価手続を事業者に義務づける、こういうチェック機能であるわけであります。

 それで、御指摘のように、実績としては三件のみしかないということであります。ただ、これは逆に、この手続を経ずに、事業者が自主的に環境影響評価手続を実施している、こういうことでございまして、政府といたしましては、事業にかかわる環境の保全について適切な配慮がそれぞれの事業者によって自主的にまず行われている、そういう意味では法律の目的が達成をされている、こういう理解でおるわけであります。

江田(康)委員 理由のうちの一つを述べられたかもしれませんけれども、個別の事業や地域の違いを踏まえて環境影響評価の実施の必要性を個別に判定する仕組み、これがスクリーニングだと思うんですが、なぜすべてスクリーニング手続を経ずに環境影響評価をやっているかというと、そのうちの一つに、第二種事業相当の事業が自治体の条例の対象事業に位置づけられているケースが多いと聞いております。ですから、仮に法に基づく環境アセスの手続が不要と判断されても、これはどうせ条例に基づく環境アセス手続の適用対象になるということがあるわけで、ですから、国としてはスクリーニングを経ずに、これを国のアセスの対象ということでなされているかのように思うわけでございます。

 こういうことに対して、本来のあり方というのをどういうふうに国としては考えていくべきなのかということをお聞きしたいわけでございます。

 続けて、次に参りますけれども、法の対象事業のあり方については、国の関与は、最低、ナショナルミニマムの考え方から、できるだけ少なくして、地方の独自性を生かすということも必要ではないかというふうに指摘されております。また、法の対象事業の範囲の検討に当たりましては、法による対象事業の範囲以外にも、条例で法の対象以外の事業も対象としている実態を踏まえますと、地方分権の流れからも、慎重に対応していくことが求められているところであるというのも承知しております。

 しかし一方で、第二種事業の規模要件を引き下げて、法対象事業の範囲を拡大していく、国の責任を拡大していく、こういう必要もあるか、またそういう指摘もあるかと思いますけれども、そのあり方、そしてあるべき姿について環境大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

松本国務大臣 今の指摘は大変大事な指摘だというふうに思っております。つまり、国がどれだけ関与していくのか、そして地方自治体が、地方の実情を一番知っているのは地方の住民ですし、その自治体ですから、そこに国がどれだけ関与できるのか、今の御指摘は大変重要な御指摘だというふうに思っております。

 今の環境影響評価法においては、規模が大きくて影響の著しいおそれがあって、国の関与のある事業を対象とすることを基本としておりますし、小規模の事業や法対象外の事業種については、各地方公共団体が地方の実情も踏まえながら条例において独自に対象事業としております。ですから、法と条例の関係というのが非常に、今御指摘のとおりだというふうに思っております。

 我が国の環境影響評価制度においては、法と条例が一体となって環境の保全に配慮した事業の実施を確保してきており、対象事業種の拡大や規模要件の引き下げ等の検討については、法と条例との役割分担を尊重する観点を十分にこれからも踏まえる必要があるというふうに考えております。

江田(康)委員 それと、第二種事業の規模要件についてでありますけれども、現行法の第二種事業の規模要件というのは第一種事業の〇・七五というふうにされているわけですけれども、この規模要件の根拠をお聞きしたいと思います。

 先ほど申しましたように、国のアセス法に、手続に係るこれまでの実施件数というのは、やはり格段に低いものがある、少ない。そういうような意味から、この規模要件を下げるべきであるという指摘が従来からあるわけでありますが、この場合、一律に〇・七五というのはいかがなものかという議論もあるわけで、それぞれの事業の特性があります、それに応じた規模要件を定める必要があるのではないかと思いますけれども、これについても一応環境省の考えを確認させていただきます。

白石政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、法律上、第二種の規模要件というのは、準ずる規模、この準ずる規模が政令で〇・七五以上というふうに定められております。

 これは、いろいろなほかの法令の用例等を参考にして、準ずるというと大体四分の三ぐらいという用例が多いものですから、それを機械的に当てはめるわけでございますけれども、ただ、〇・七五でよいというのではなく、〇・七五以上というふうに定めておりまして、事業の内容によって、例えば埋め立て、干拓、あるいは廃棄物処分場については〇・七五以上でございますので、例えば廃棄物最終処分場であれば〇・八三、あるいは埋め立て、干拓の場合は〇・八というふうに、それぞれ第一種事業の特性に応じて多少の上乗せをする例もある、こういう運用を行なっております。

江田(康)委員 〇・七五以上ということで、今あるさまざまな指摘からは、この〇・七五を引き下げるというようなことについては、どのようなお考えを持っているかということをお聞きしたわけでございますけれども、次に参ります。

 環境基本法と環境影響評価法との関係について、法対象事業の範囲拡大に関連してお伺いをさせていただきます。

 五月二十八日の環境委員会において参考人質疑がございました。その際、浅野参考人が、環境基本法第二十条がアセスの制度的な枠組みを示すものと紹介をしておりました。しかし、本法では、環境影響評価法が対象とする事業については、環境基本法には記されていない二つの要件、規模が大きく、そして環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるもの、この要件が追加されているわけでございます。

 我が国のような規模要件を導入している例は諸外国ではまれであるということや、また、先ほどもありましたように、我が国の環境影響評価の実施件数が諸外国に比べて著しく少ない、こういう現状を踏まえると、環境基本法との関係を早期に検討すべきではないかと思います。これについて環境大臣の見解をお伺いします。

樋高大臣政務官 大変恐縮でございますが、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。日ごろからの御高説、感謝を申し上げます。

 御指摘の点でございますけれども、国の環境アセスメント制度に規模要件を導入している事例は、ドイツやイギリスでも見られるところでございます。

 我が国の環境アセスメントは、規模が大きい事業について法律に基づく対象事業とした上で、小規模の事業や法対象外の事業種については、各地方公共団体が地域の実情も踏まえながら条例において独自に対象事業とすることによりまして、法と条例が一体となって、きめ細かい環境配慮の確保を図ることとしているところであります。

 先ほどもお話ありましたとおり、法と条例が一体となっているという点、そしてそれぞれ役割分担をしているということでありますけれども、法と条例の役割分担を尊重する観点から、法アセスの規模要件をなくすことや、対象事業を広くとった簡易アセスを導入することについては、大変恐縮でありますけれども、どうしても慎重に対応する必要があるというふうに考えているところでございます。

江田(康)委員 将来的に実施が見込まれる大規模な事業種を法対象とする必要性についてお伺いをいたします。

 放射性廃棄物処分場の建設事業とか、またCCSなど、将来的に実施が見込まれる大規模な事業種で現行法の対象になっていないものについては、事業の特性や実施可能性、社会的要請等について知見を収集、分析した上で対応を検討していく必要があると考えますけれども、いかがお考えか、お伺いをさせていただきます。これらの事業について法の対象事業とするのであれば、その具体的な道筋について示していくべきであろうかと思いますが、その点についてどうでしょうか、お伺いします。

白石政府参考人 御質問と同じような御指摘が実は中央環境審議会の答申の方にもございます。放射性廃棄物処分場、それから二酸化炭素の回収・貯留事業、いわゆるCCS、この二点につきましては、国の関与のもとで何らかの環境影響評価を行う仕組みの検討が必要だ、こういう御指摘があります。

 その一方で、放射性廃棄物の最終処分場での最終処分の開始は大体平成四十年代後半目途ということ、それから、CCSについては平成三十二年までの実用化が目指されているということでございますので、決して後でいいやというふうに考えているわけではないんですけれども、現時点ではまだ実証段階であるということもありますので、まずは、CCSの方について調査は始めておりますけれども、そういったことを通じまして、今々現在は、知見を集積し、実用化の状況を見た上で法律対象への追加ということを検討していく、こんな考え方で現在引き続き知見の収集に努めている、こういう段階でございます。

江田(康)委員 もう一つ、風力発電、今回これが追加されたわけでございますけれども、この風力発電施設については毎年百基程度が新設されておりまして、今後、地球温暖化対策、我が国が二〇二〇年、二五%を目指していくとすれば、大変大きな再生可能エネルギーの拡大が図られていくことになるわけでございますが、このうち、法の対象となる件数はどの程度と想定されていくのか。

 また、これから新たな基準も必要ではないか。例えば風力発電の場合は、今、地域住民の皆さんから騒音や低周波音とかに対する訴えも起きている事例がございますし、またバードストライク、鳥の衝突事故、さらには景観への影響について論争があっているところでもございます。出力要件、規模だけではなくて、こういう騒音やバードストライクの観点、高さやグレードといったものを考慮に入れる必要があるのではないか。こういう新しい環境影響評価の対象とする基準が検討されていかなければならないと思っておりますけれども、その検討状況はどういうものでございましょうか。

白石政府参考人 また中環審の答申の引用で始まって恐縮でございますけれども、今回の改正法案の提出に伴います中環審の答申の中におきましても、これは法律の改正事項ではないわけでございますけれども、風力発電施設の設置を対象事業として追加することを検討すべき、こういう御指摘をちょうだいしております。

 これを受けまして、実は先月、十月から、ではどのような事業の規模がよいのか、それから、今お話がありましたように、騒音、低周波音の問題、バードストライク、鳥がぶつかる話、景観への影響、どのような形でこういったことについて環境影響評価の手法を考えていったらいいか、こういうことに関しまして、学識経験者等で構成いたします検討会を設置いたしまして、実はきょうも夕刻から第二回目をお願いすることにしておりまして、でき得れば来年の夏ぐらいまでにお考えをまとめていただければというふうに考えております。

 今御指摘のありましたような点も含めまして、今後検討会で議論をしまして、よい基準なり基本的考え方が御提示できるようにしていきたいと考えております。

松本国務大臣 今の風力発電のことにつきましては、私からも、騒音等々、実は環境委員長のときにデンマークに行きまして、かなり風力発電の先進国でありますけれども、海の上に並んでいる風力発電を見てそれはもうびっくりしましたし、やはり近寄っていったら騒音とか、今おっしゃったように、バードストライク等々あろうかと思います。そういうことも十分配慮していきながら検討をするようにということを私からも申し上げております。

江田(康)委員 再生可能エネルギーの拡大の中でも風力発電というのは大変重要な役割をこれから担っていくわけでございますので、そういう風力発電の拡大と、アセスが適切になされていくようにしていくべきというのが私の趣旨でございますので、よろしくお願いします。

 次に、残りの時間を使いまして、方法書、準備書、それから評価書、報告書、こういう関係についてお尋ねをさせていただきます。

 まず、今般の改正では、環境大臣の意見を述べる機会が大変多く盛り込まれていることに大きな評価をするものでございます。

 最初にお聞きしたいのは、環境大臣の意見にかかわる審査体制の整備についてでございます。

 現行制度におきましては、環境大臣の意見は評価書段階でのみ述べられることとなっております。そこで、本改正案においては、計画段階配慮書に関する新たな規定を設けるに当たりまして、環境大臣は、配慮書についての環境の保全の見地からの意見を述べることができる、すなわち、日本版SEAの段階から意見を述べることができるとしたわけでございます。

 また、評価書の段階においても、許認可権者が地方公共団体である事業について、環境大臣に助言を求めるよう努める規定を置いております。さらには、方法書段階においても、また事後報告の段階においても報告書に対する環境大臣の意見を求める仕組みが創設をされました。

 このように、今回の改正案においては環境大臣の意見を述べることができる機会が現行制度に比べて大きくふやされているということは、この環境アセス法が充実してくるということをもって評価されるものであると思います。

 一方で、今回の法律の提案理由の中で述べられておりますように、今日の環境政策の課題は一層多様化、複雑化してきておりまして、生物多様性基本法、そして地球温暖化対策の推進、それから再生可能エネルギーの導入促進等の変化がございます。この変化への対応が求められているところです。

 そのような状況の中で、科学的知見や実効性の担保のためには、国の常設の第三者審査機関を設置して、環境大臣の意見にかかわる審査体制の整備を図る必要があるということを我々は前々から訴えさせていただいております。海外においても、イギリスにおける法定協議機関がございます。また、アメリカにおいては環境諮問委員会がございます。韓国においても環境政策評価研究院等がございます。専門家によって構成される審査機関が設置されております。我が国におきましても、我が国においてはなおさらのこと、やはり県条例の審査会とは別に、国のレベルでの審査会を常設する必要があるのではないかと私はこの改正に際して思うわけでございますけれども、環境大臣の見解をお伺いいたします。

松本国務大臣 大変重要な指摘だと思います。

 国の審査については、まず、環境省が助言を求めるための専門家をあらかじめ指名、公表し、環境大臣意見形成の際に必要に応じて助言を求める仕組みを構築し、適切な運営を心がけてまいりたいというふうに思っております。

 今御指摘のとおり、科学的知見というのは大変重要な御指摘でありまして、気候変動にはIPCCがありますし、今度の生物多様性の問題でもIPBESがあって、今おっしゃったように、英国の環境大臣と会いましたけれども、これをしっかりやってくれという話がありました。また韓国の大臣も、IPBES、いわゆるIPCCの生物多様性版ですけれども、そういうことを言っておられた。まさに今の御指摘は大変重要な御指摘だというふうに思います。

 現状も意見の形成に当たっては必要に応じ専門家の意見を聴取していること、また自治体の審査と重複する可能性があること、審査会の義務づけは事務負担の増大や手続の長期化にもつながる可能性があること、行政組織の簡素化の必要が指摘されている流れに逆行している可能性もあるという意見があり、「不要であるという意見が多数を占めた。」とされておりますけれども、常設の審査機関ではなく、専門家を登録して助言を求める仕組みをつくってまいりたいというふうに思っております。

江田(康)委員 さらに環境大臣の意見の反映について、大事ですので、お伺いをさせていただきます。

 今述べましたとおり、本改正案では、環境大臣が意見を述べる機会が非常に拡充されておりまして、専門家の皆様からも関係者からも高く評価されております。このうち、地方自治体が免許等を行う者等である事業については、これまで環境大臣が意見を述べる機会がございませんでした。本改正案により意見が述べられるようになりました。

 この点について、今委員長であります小沢前環境大臣は、現政権は地方分権を推進していく政権であって、地方の自主的判断を尊重する努力義務規定としていると参議院の環境委員会で御答弁をなされました。しかし、環境保全をより確実にしていくという点から考えますと、生物多様性の保全また地球温暖化対策等、国レベルの観点からの環境大臣の意見は大変に重要でありまして、この点、確実に述べられるように制度化する必要があるのではないかと考えております。免許等を行う者等が地方自治体であっても、環境大臣の意見聴取、これを義務化する方向に持っていくべきと考えますけれども、環境大臣の御見解をお伺いします。

 もし義務化ができないというのであれば、環境大臣の意見の実効性をより高めるために、これは評価書段階以外の環境大臣の意見についても同様でございますけれども、免許等を行う者等が許認可の審査等を行うに際しては、環境大臣の意見を反映させるよう努めるとともに、その反映結果を公表するような仕組みを構築すべきと考えますけれども、環境大臣の御見解をお伺いいたします。

松本国務大臣 小沢前大臣を前にしておりますし、小沢前大臣の後を引き継いでおりますので、大体同じような話になると思いますけれども、先ほどの法と条例の関係という意味においても大変重要な御指摘だと思います。

 地方分権の観点からは地方公共団体への義務づけは望ましくないと思っておりますが、環境の保全の観点から環境大臣の助言が必要とされる場面も多いものと考えられることから、今回の改正案では、環境大臣の意見聴取は、以上のことを勘案して義務とはせず、努力規定としたものであります。

 免許等を行う者等が地方公共団体である場合、今回の改正案に基づいて、環境大臣からの意見聴取や、許認可の審査を行うに当たって環境大臣の意見を反映させることについては、地方公共団体が適切に判断するものと考えております。現時点においては、御提案のような制度は想定をしておりません。

江田(康)委員 そういうことができないとするのであれば、私の後段の御提案でございますけれども、環境大臣の意見を反映させるように努める、またその反映結果を公表するような仕組み、これを検討していくべきだと思うわけでございます。その点についてぜひ十分にお考えをいただきたいと思うんですが、これについてはどうでしょうか。

白石政府参考人 ただいま大臣が答弁させていただきましたように、意見聴取、もちろん努めるということも、それは地方分権の観点から法制的にはここまでであったという経緯がありますけれども、現実問題としては、よほどのことがない限り環境大臣の意見を求めてきていただけるものと考えておりますし、そのようなお願いは私どもからもしていくつもりでございますし、そういうふうな形で、御提案のようなことは実効は保てるものではないか、このように考えております。

江田(康)委員 もう一つ、住民への説明会について、これも大変重要でございますので確認をさせていただきます。

 現行法においては、環境影響評価図書についての説明会の開催というのは、準備書段階においてのみ義務づけられていたわけでございます。方法書段階での説明は義務づけられておりませんでした。しかし、方法書、すなわち、事業のより上位の段階でこの説明会が設けられていくことが大変重要でございます。本改正案では、この方法書の目的について理解を深めて、方法書段階でのコミュニケーションを充実させるために、方法書段階での説明会を事業者に義務づけることとしたわけでございます。

 何せ、方法書といっても専門的な内容ばかりで、膨大な量が住民に公表、公開されても、それで事業の環境への影響がどういうふうなものかというところすらもなかなか理解が得られなかったのが実情でありまして、そういう意味においては、この準備段階、そして方法書段階でも、より住民への理解を深めるための説明会の開催のあり方、これが問われるかと思いますし、そのためには、難しい言葉をいろいろと並べるわけではなく、一般的な用語解説とか運用上のガイドラインというものをつくって、事業者の負担軽減にもつながりますし、そういうふうに措置することが必要であると思います。これについては、平成二十二年の答申でもそのように言われております。具体的な取り組み方針をお伺いさせていただきたいと思います。

 それとともに、日本版SEA、上位計画の段階の配慮書でも、住民や知事の意見を聞くように努めなければならないというふうに今回の改正ではなりました。この場合の説明会の開催というのは、方法書と準備書、今方法書が直近ございます。この配慮書の段階と方法書の段階での説明会の開催というのはどういう整合性が図られているのか、このことについて簡潔にお答えをいただきたい。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 まず、前段のお尋ねでございますけれども、方法書段階での説明会の開催のあり方について具体的な取り組み方針をということでございました。

 現在作成されている方法書は、法制定時の想定と比べましてページ数がかなり多く、そして内容も、先生おっしゃいましたように、極めて専門的なものとなっているわけでありますけれども、方法書段階で住民などから寄せられた意見については、調査方法ではなく、方法書そのものの理解を深めるための方法書の趣旨や内容の周知を求める意見が見られているわけであります。このために、今回の改正案において、方法書段階での説明会を義務化することを定めさせていただいているところであります。

 これとあわせて、環境省としては、方法書段階において、事業者の方々が自主的に説明会を開催した事例、あるいはパンフレットなどの添付をさせていただいて住民に理解されるよう努力した事例などを参考に、中央環境審議会の答申に示されたとおり、方法書の位置づけの周知を行っていくほか、運用上のガイドラインなども今後作成してまいりたい。つまり、一般の方々でもわかりやすさを求めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。

 そして、後段のお尋ねであります。方法書段階での説明会の開催が形骸化してしまうんじゃないかというお尋ねでございますけれども、この方法書につきましては、今回の改正案に基づく配慮書の内容に加えまして、配慮書についての主務大臣の意見及びそれに対する事業者の見解、そして環境影響評価の項目、そして調査、予測及び評価の方法も記載することとされておりますけれども、方法書説明会においては、配慮書の内容に加えまして、主務大臣の意見が入ったり、あるいは今後の環境影響評価の項目などについて説明を新たに行わなければならないわけであります。

 これによりまして、住民などの理解がより深まるとともに、事業者の方々が住民などから地域の環境に関する情報を得られることによって、その後の環境アセスメント手続を進めるに当たり、より一層の重点化、効率化が図られるものと期待しておるということでございます。

江田(康)委員 最後の質問をさせていただきます。

 一緒にお聞きをさせていただきますけれども、一つは、改正法施行前の環境影響評価について。

 この改正案というのは、公布の日から二年を超えない範囲内において施行されるために、当然、施行前に環境影響評価が行われる事業については現行法でやられるかと思いますけれども、今回の法制度は大きな改正でございます。その重要性にかんがみて、改正法の施行前であっても、できる限りこの趣旨を踏まえて、事業のより早期の段階から適切な環境配慮がなされるよう指導することが必要であると考えますけれども、この点について、環境大臣の御見解をお伺いいたします。

 もう一点、あわせてですが、検討時期の前倒しの必要性でございます。

 本改正案では、法の見直しを法施行後十年としております。これについては、環境影響評価の手続がおおむね二、三年を要するとされておりますことから、改正法の施行後十年に満たない期間では十分な事例の積み重ねが得られないということで、物理的にある程度の時間を要することは否めないというのが環境省のお考えでございます。

 しかし、公布から施行まで二年程度要するということを考えますと、十年といっても十二年後からでございます。本改正の見直し時期は二〇二二年ごろということになってしまいます。世界の潮流を見ても、二〇〇二年の段階で、OECDからSEAの体系的な実行についての日本への勧告がございました。二〇〇三年には、国連の欧州経済委員会によるSEAの議定書も提出されております。日本のSEAは、既に世界よりもおくれている状況でございます。

 現行法は、施行から既に十年が経過していることから、データも蓄積されていると私は思いますし、データがございます。それを活用して、法施行後の十年を待たずに、十年以内であっても適宜適切に制度の見直しを行っていくべきと考えますけれども、法の見直し時期について、環境大臣の見解を最後にお聞きいたします。

松本国務大臣 しっかりやれという話でございます。

 そういう意味では、この二年間の期間を置いているということにつきましては、改正法の公布から施行まで約二年間置いておりますけれども、これは、施行のための必要な下位法令、政令、省令、告示の検討期間がございます。また、事業者への制度の周知期間として設けているもので、現在は、平成十九年四月に公表したSEAガイドラインに基づき、計画段階から環境面の検討を行う戦略的環境アセスメントが実施されているところであります。

 改正法の施行までの間においても、同ガイドラインに基づく戦略的環境アセスメントがより改正法の精神に沿った形で実施されるよう、関係省庁及び関係地方公共団体と協力をしながら、事業者や関係機関に対する改正法の趣旨の周知に努めてまいりたいと思います。

 二点目、十年を待つ必要があるのかという御指摘であります。

 アセスメントの一連の手続においては、調査を始めてからすべての手続を終了するまで、一般的にはおおむね二年から三年という時間がかかっております。制度見直しに際しては、改正法施行後の事例の蓄積が必要であることから、さっきおっしゃいましたけれども、改正案の附則において、法施行後十年を経過した場合に必要な措置を講ずることとしております。

 しかし、今後、環境政策を含めた内外の社会情勢の変化も想定をされ、中央環境審議会での答申で今後の課題とされた事項についても、不断の見直しをしていくことは必要だと考えております。したがって、法施行後十年以内であっても、適宜適切に制度の見直しを図れるよう努力をしてまいりたいというふうに思っております。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

小沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福井照君。

福井委員 自由民主党の福井照でございます。

 まず、環境アセスメントの法案の前に、大臣から、個人的な見解ということで御教示を賜りたいと思います。

 特に、先週質疑のありました生物多様性の国際会議におきまして、私の分析ですけれども、今までのすべての国際会議の中で、世界じゅうの皆さん方の右脳を史上最大のドライブをされた、プレジデンシーを発揮されたというプレジデントであった大臣の熱意が先進国と発展途上国の利益の相克を克服したというふうに御尊敬を申し上げておりますので、別に褒め殺しにしているわけではありませんけれども、TPPのことについて御見解を賜りたいんです。

 それは環境省行政と全く関係がないかというと、そんなことはなくて、担い手が農水省が言うように本当にいなくなりしたら、まさに生物多様性のフィールドである中山間地帯を初めとして、荒廃するわけですね。特に、里山というのは人が入って、ファーマーが入って、そして都市の人も入って多様な生物が存在し得るということがあって、一方的に農業が攻められるという状況を許すことが容易に想像されるこのTPPのアグレマンを、来年十一月十二日、十三日のAPECの席でマルチの合意が出されていいのかどうか、このままほっておいていいのかどうか。キャビネットの一員として大臣は何か発言される、もちろん閣僚懇談会においてどういう発言をされるかということは公表できませんけれども、きょうでしたら、今からしないといけませんので、御紹介いただけるんじゃないかなと思って御質問させていただいております。

 ですから、環境省、環境行政として、このTPPのことについて、何かコミットするべきものがあるかないか。そして、バイじゃなくて今度はマルチで合意をしなくちゃいかぬわけですね。ですから、生物多様性のマルチの合意を達成された大臣として、逆に、マルチだから今攻められているわけで、バイでやってきたのにマルチだから攻められているので、その辺のナックといいましょうかコツがあるのかないのか。むしろ逆に、我々の立場から言うと、拒否する、例外を設けるというゴールを達成するために、マルチな相談といいましょうか、各国との合意形成について、経験を踏まえてどういうアドバイスを経産大臣なり農水大臣なり官邸にされるのか。いろいろな観点があると思いますけれども、何分かしゃべりましたので、ぜひ個人的な大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。

松本国務大臣 福井先生の御指摘、私も、御指摘としてはよくわかります。

 COP10も、マルチというよりは全会一致ですから、これはABSがまとまっても、みんな喜んでおりましたけれども、もう喜ぶ暇はないぞと言って、それから十二時間後に全部の採択が終わったわけですけれども、ABSが合意したときに、環境省、外務省に、とにかく今から危機管理しろということで、まだかたいものではありませんでしたから、そういう意味ではそれから危機管理して、あそこの国、どこの国、ここの国とかいって、そこに対する処方せんをいっぱいつくって対処をしてまいりました。私の力だけではなくて、途上国も先進国も、譲歩しながら、妥協しながら、それぞれが我慢をして、生物多様性の保全のために頑張ってきたというふうに私は理解をしております。

 そういう意味では、この衆議院の環境委員会、参議院の環境委員会等々、さまざまな皆さんがあの場に来ていただいて応援をしていただいたということが物すごく大きな力になったということをこの場で感謝を申し上げたいというふうに思っているところであります。

 公平である、丁寧に説明をする、信頼をする、そしてあるときはちょっと正面突破もありましたけれども、勇気を持つとかいうこと、いろいろなことを学ばせていただいたところであります。

 今御指摘のTPPにつきましても、高いレベルの経済連携の推進と、我が国の食料自給率の向上や国内農業、農村の振興とを両立させて、持続可能な力強い農業を育てていくことが私も重要だと考えております。今週九日に閣議決定された包括的経済連携に関する基本方針は、そのような基本理念のもとに策定されたというふうに承知をしているところであります。

 関係国との交渉参加の前段階の協議の状況や、国民の理解の深まりぐあいなどを総合的に勘案しながら、交渉参加の判断をしていくことが肝要であるというふうに考えております。

 そういう意味では、国内農業の振興というのは大事なことです。それはもう私も、昔じいさんが田んぼをやったりブドウを栽培したりしておりましたのでよくわかりますけれども、国内農業の振興はもとより、COP10の経験からいうと、実は、途上国と先進国が対立していたというふうにマスコミもすべてが書いていましたけれども、絶対そこの間に共通の利益があるんだということを学びました。そして、マスコミ的には、途上国はお金が欲しいとかなんとか言っていましたけれども、そうじゃなくて、それもありますけれども、実はもっと、自分たちの貧困とか自分たちの周りとか、そして自分たちの周りにある植物とか動物とか、生物多様性を守るという思いがやはりあってあの合意に達したというふうに思っております。

 そういう意味で、日本の食物自給率が仮にそういうことで減るということになると、輸入がふえるわけですから、輸入がふえたら今度はお金で食物を買うわけですから、買ったらその分世界の食料が減るわけですから、そうしたら一番被害に遭うのは最貧国である、一番厳しい目に遭うのはそういう人たちであるということをしっかり腹に入れていけば、おのずとやはり日本の農業もしっかりしていかなければならないというふうに考えているところであります。

福井委員 ありがとうございました。

 橋本龍太郎先生に、ちょうど亡くなる半年ぐらい前でしょうか、自由民主党の本部で首相経験者から、今後の自民党ではなくて、この国の形、この国の行く末について大所高所からお話を伺ったことがありまして、本当にかすれ声で、やっと聞き取れるぐらいの声でしたけれども、もう環境だけでした。環境だけでした。

 まず、水俣病を初め公害を克服した、そういうノウハウを世界に伝えるべきだということ、そして省エネの技術、世界に冠たる技術、今までの経験とそして技術をもって世界に貢献する、環境で世界に貢献する、これがこの国の形であり、それで君たちやりたまえ、こういうことでしたので、そういう意味で、京都も名古屋も日本のリーダーシップで世界じゅうの合意を得たということで進んでいることについては、本当にそのまま、龍太郎先生のそのままでいっていると思うんです。

 しかし、日本の中が、世界には貢献するけれども、日本の足元を見たら国破れて山河もないというような状態ではこれは困りますし、観光立国とかいうことから考えても、日本の売りは、世界の文明の中で、これだけ豊かな生活をして、山を見たら木が植わっているという文明は日本だけなんですね。サステーナブルコミュニティーをずっとまさにサステーンしてきたのは日本の文明だけですから、これからもそれが売りになる。里山も含めて、都市と地方がバランスがとれている、そして何よりも持続可能な社会をずっと経営してきたということが日本の戦略、民主党の今の政権もそうでしょうけれども、になると思いますので、そういう意味でも、これからの大臣のリーダーシップをお願いしたいと思います。何か、敵に塩をやるみたいで。自民党も頑張りますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 しかし、今のはプラスのお願いですけれども、今度はちょっと辛口です。

 今も国土交通委員会でお願いしてきたんですけれども、手柄は自分で責任はおまえという、全く逆なんですね。イベントプロデューサーのコツというのを聞いたことがあって、イベントをやるときに、プロデューサーというのはいっぱい、何百人も関係者がいる、手柄を見つけて手柄を配るのが仕事だというのがイベントをするときのプロデューサーの役割なんですね。

 今の民主党の政務三役、民主党の大臣は果たしてそうだろうか。国家が敵でありという首相と官房長官がいて、そして役人が敵であるという政務三役がいて、役人がついてくるだろうか。くるわけがないわけですよね。今まではそうだったかもしれないけれども、きょう、この瞬間から、大臣はもう既にそうじゃないんでしょうけれども。

 やはり、組織、霞が関の組織、そして志。手柄はおまえたち、つまり自由に、ある程度のインストラクションはするけれども、自由に仕事をしたまえ。問題、課題を特定し、代替案をつくって、そして必要なら法律をつくって、そして事業費を財務省から獲得して、お仕事しなさい、それで手柄は皆さんのものだ。もし何かあったら責任はおれがとるから、どんどん仕事をしなさいと。これは普通ですよ、普通。

 それが、執行職と政治職があってと。あれだけ読むと、海上保安庁長官だけやめさせて、国土交通大臣以下政務三役は何の、辞任して責任をとるわけでもなく、反省するわけでもなく、私が悪かったと言うこともなく、それでいいんでしょうかね。

 政治家として大臣の感想をぜひ聞きたいんですけれども、ここで言える範囲というのはごく限られているということはわかっていますが、一般的に政治家としての、あるいは大臣としての責任ですね。そして、環境省あるいは環境行政、県庁、市町村も含めて、あるいはNPO、NGOも含めて、およそ環境に対して志を持って日々活動している人々に対する責任をどのように考えていらっしゃるか、ちょっとここで御披瀝をいただきたいと思います。

松本国務大臣 お話を聞いて、何かいい話だなと本当に思いました。手柄を言い立てる、イベントのプロデューサーですか、それはある意味では、そういう形態の仕事はそういうことを言わないとだめなことかもわかりませんけれども。

 私が今まで聞いた一番好きな言葉は、受けて忘れず、施して語らずという言葉でありまして、恩を受けたら絶対忘れるなよと。受けて忘れず、施して語らず。そして、何かしてあげたらしゃべるなよ、何も自慢するなよという言葉があって、これは仏教用語だと思いますけれども、その言葉が好きで、大臣になったときも、何ですかというと、受けて忘れず、施して語らずと言いました。

 アメリカインディアンの言葉でも、ドゥー・グッド・アンド・フォーゲットという言葉があって、いいことをしなさい、そして忘れなさいという言葉がやはり世界じゅうであるんですね。忘れなさいというのがどういう意味かというのがよくわからなかったんですけれども、仏教の用語でもあるし、アメリカインディアンでもある。余り言いふらしなさんなよという話でしょうけれども、今お話を聞いて、まさにそういうことを思い出しました。

 国破れて山河なしという話もありました。実は私、二十年前に国会議員になって、一番最初に、拠点都市法という建設省の法律がありまして、ここで代表質問したんです。そのときはもうちょうどバブルが終わりかけですけれども、国破れて山河ありということが日本の言葉ですけれども、国栄えて山河なしじゃ困るぞということも言いました。まさに、国が栄えても山河がなくなっちゃいかぬということは、環境大臣としてこれから肝に銘じていかなければならないと思います。

 多分、尖閣の話だと思いますけれども、情報の保全は徹底して行わなければなりませんし、結果としてこのような事態になったことを、私も内閣の一員として責任があるというふうに思っております。

 ただ、責任のあり方については、検査が徹底して行われて、事実関係が確定された後に検討されることであろうと思いますし、先般、情報管理については、総理から各省庁に対して、職員に対する守秘義務の徹底や情報管理方策についての技術検討などについて指示がありました。これを受けて、早速、環境省内に情報管理の徹底と今後の対策の強化を指示したところであります。

 一つだけ、さっきも申し上げましたけれども、私、海上保安庁を五、六年前に北海道に視察に行ったら、本当に若い人たちが元気で頑張っておられた、そのときの姿を今でも本当に鮮明に覚えています。船が老朽化している、要求はするけれどもなかなか船が直らないとかいうことも受けました。

 今度、奄美大島で十月の二十日に記録的な大雨、二時間で二百六十というのを聞いてびっくりしましたけれども、そのときに、自衛隊、警察、消防がなかなか入れなかったときに海上保安庁がしっかり島にフォローして、負傷者の運搬でありますとか緊急要員の運搬でありますとか、活躍してくれたということを龍郷町や住用町の皆さんが言っておられました。

 そのことも考えると、やっている職員、いろいろな思いがあると思いますけれども、そういう部分もあるということも、私が経験したことで御報告をしたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、しっかり対応していきたいと思います。

福井委員 ありがとうございました。

 レンジャーの方も本当に、それこそだれも見ていないところで日々努力されているということで、まさに大臣の御人徳で、だれかは、少なくとも神様は見ているぞということで、職員の心をぎゅっとつかんでいただきたいなというふうに思います。

 私ごとになりますが、昭和五十一年に建設省に入省して最初にやった仕事はアメリカの道路のアセスメントの日本語訳でございまして、まさにそんな時代でした。昭和五十年の初め、NOx、SOx、要するに環境派じゃないとおよそ人間とは思われないようなそんな時代でもあり、それは首相の青年時代と大体軌を一にするんですけれども、町で生活するには、そういう知識も、そして制度への思いも要る、そんな時代でございました。

 きょうは、戦略的環境アセスメントという概念を日本に導入すべきかどうかという法案でございます。

 アセスメントについてはもう何十年も日本も経験している、そして世界も経験しているということで、局長の方から、事実経過として、厚生省の時代から、そして環境庁ができて、環境省になって、およそ環境アセスメントについて日本がどういう経緯をたどってきたか、その歴史的認識、時代認識を教えていただきたいと思います。

白石政府参考人 大変大きなお尋ねを受けて、ちょっと恐縮しております。

 現在の環境影響評価法、今委員のお話がございましたけれども、私の記憶でも、たしか昭和五十一年ぐらいに初めて環境庁が政府部内での検討の提案をし、しかし閣議決定に至らなかった。たしか昭和五十年代の初めのころからそういう動きがございました。その後、いろいろ長い曲折を経まして、平成九年に現在のアセスメント法案、環境影響評価法が全会派一致で成立を見たわけでございます。午前中の審議の中でお触れになった先生もおられますけれども、当時の記録を読み返してみますと、OECD加盟国の中でそれは一番最後の制度化であった、このような厳しい御指摘も見られる中で導入をされた経緯がございます。

 その後、この十年の施行の中で、正確に申し上げれば昨年の六月が施行後十年の節目であったわけでございますけれども、我が国もその間にいろいろこの制度の定着が図られてきたわけでございます。

 この間、例えば平成二十年には生物多様性基本法が成立しまして、そういった中で、事業計画の立案段階での環境アセスメントの実施を推進すべきだという条文が入ったり、地方分権が推進されたり、あるいはいろいろなインターネット等のツールが普及する、いろいろ制度を取り巻く環境が変わってきた、こういう中での見直しでございまして、こういう施行後十年のいろいろな変化を踏まえた要請にこたえるというふうなことが今回実現されるならば、それは大変意義深いものだというふうに考えております。

 また、今回の法律の改正の提案に至った中で、中央環境審議会でも御議論がいろいろありましたが、まず、御指摘がありましたようなSEAの、日本版の形でございますが導入をする、さらに今後、また経過を踏まえながら、いろいろなさらなる充実を図る、こういうふうなことの検討も引き続き行うように、こういうふうな御指摘も入れている。そういう歴史的な経緯の中で今日を迎えておる、このように考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 きょうは、委員長、各党の理事の御許可をいただきまして、紙を配らせていただいております。

 今局長の方からも御紹介がありました、海外においてもSEAの事例がございます。アメリカ、EU、英国、ドイツとありますが、ここで言いたいことは、いずれも実施主体は政府なんですね。

 前回、大喧騒の中で本会議場で、今の委員長、さきの大臣に御質問をさせていただきましたが、民間に強要するといいましょうか、最初から評価書をつくって地元説明してということをやらせようといいましょうか、民間事業者が策定する計画まで含めてこのSEAの対象となっているというのは、今から決める法律の枠組みがいわば世界史上初めて、こうなるわけでございます。

 要は、責任論なんですね。先ほど、TPPも尖閣のビデオも荒唐無稽みたいにこの場内の皆さんは感じられたかもしれませんけれども、結局、言いたいことは責任論なんです。政治家がとるべき責任とは何か、そして環境行政がとるべき責任とは何か。

 市町村長なんかは、およそ市町村の中の土地と環境については絶対的な、全人格的な責任を持つという覚悟でやられております。各県知事も、県の中のおよそ土地と環境については絶対的な責任を持つというふうに思っております。それはどうしてかというと、各省庁が縦割りだから。幾ら環境省になっても、土地と環境について全人格的な責任を持つというところにまでは至っていない。だから、戦略的ということで、ひとつ概念を今回広げようという意図はわかります。

 しかし、またちょっと話はかわりますけれども、余り人の悪口みたいなことを言いたくないんですけれども、厚生労働省のさきの大臣の、名前は言いませんが、実態を言いますと、とにかく敵が国家公務員だったものですから、厚生労働大臣でありながら、敵は厚生労働省の職員なんですよ。ですから、局長を呼んでいろいろけんかして、局長が相手にしなくなって、課長を大臣室に呼んで、課長も相手にしなくなって、ついには係長を呼んで、係長から係長がやっている仕事のレクを受ける。それで最後に質問が、ところで、この仕事の責任者はだれかねというふうにお問いかけになるわけですね。何だ、それは。だれが責任者ですか。質問しているあなたが責任者です、大臣が責任者ですというふうに係長は答えざるを得ないわけですね。

 そういう感じだったわけですので、およそ環境大臣としてどういう責任を今から負おうとしてこの戦略的な環境アセスメントをされるのか。今から細かく、アセスメントをするデュレーションのことも項目のことも、そして評価する価値観のことも伺いますけれども、今この紙でお示しをして、前回の本会議でも、午前中も質疑があったかもしれませんが、セントラルガバメント、ローカルガバメントは別として、ガバメントが実施をするということから一歩踏み出して、民間事業者にアセスメントをしなさいということを準備する、用意する、予定する法律を今回お出しになっている、その趣旨と意味と思いを、想定問答と違うかもしれません、ちょっとずれているかもしれませんが、御紹介いただきたいと思います。

松本国務大臣 トータルの話ではなくて、今度のアセスの話でよろしいですか。

 おっしゃるとおり、民間事業も含めて一定規模以上の事業を実施しようとする者が環境アセスメント手続を実施することとしておりますし、より早い段階で環境面の検討を行うことが必要と考えております。

 諸外国では、事業実施段階における環境アセスメントの段階で、民間事業等が主体となって実施する場合もあります。国等が行う公共事業だけではなくて、民間事業を含めた事業の計画策定者も対象とすべきだと思います。

 今言われました、全部政府がやっているんじゃないかというふうにお話がありましたけれども、日本版SEAといいますか、今おっしゃったのはある意味では、間違っていたら済みませんけれども、いわゆる上位の、海外のSEAのところでは政府というのが多いと思いますけれども、EUでいいますとEIA指令が今度の日本版のSEAと横並びでありまして、そういう意味では、例えばオランダでありますとかカナダでありますとか、そういうところでは民間もやっているというふうに聞いております。

 答えになっているかどうかわかりませんけれども、そういうことであります。

福井委員 ありがとうございました。

 議事録をきちっと整理しておかなければなりません。やり直しというか、本会議場は別として、委員会で審議の最初の日ですので。

 局長、想定問答の限りで結構ですので、民間事業者が困らないように、政省令その他で柔軟な制度を考えているということをぜひ御答弁いただきたいと思います。

白石政府参考人 中央環境審議会の答申におきましても、事業による特性に応じ柔軟な対応というふうなことがうたわれておりまして、私どももそのような形で、事業の特性に応じた形で実際の政省令あるいは基本的方針には臨んでいきたい、このように考えております。

福井委員 この審議が終わるまでに、その柔軟という意味の具体をぜひこの委員会の席で御紹介いただきたいと思います。

 それでは、私の方からはそれで終わらせていただいて、次に、また大臣の方から、個人的な見解になりますけれども、先ほど龍太郎元首相のお話もさせていただきましたが、やはり環境が戦略的に日本は大事になってくるということで、先ほど申し上げたサステーナブルコミュニティーを世界じゅうの人が学習できるようにするということもあり、そして、山を見せて、ちゃんと間伐して、守るという意味はこういうことだということもあり、そして里山というのはこういうことだということで、まさに、人間と自然とが対立しているんじゃなくて、これは大臣がいつもおっしゃっている、人間も自然なんだと。人間がやることも自然なので、人間と自然が合体して里山をつくり、そして多様な生物もすめるし、人間も果実を得るということも、これはなかなか日本以外のところでは学習できないわけです。

 一方、農地の方は、六百万ヘクタールがどんどんどんどん減りまして、今はもう四百万ヘクタール台、五百万ヘクタールを多分切っている。一方、都市の方は百七十万ヘクタールです。まだ文明学的には自動車を解けていないんですね。ソリューションとして、自動車というのはどう使いこなせばいいのか、住み方、国土と自動車とどう調和させればいいのか、まだわからないんですよ。だから、地方都市中心市街地は、この前、桂文珍さんが言っていましたね、地方中心市街地は首相みたいになっていますよと。首相みたいになっている、地方中心市街地は、商店街は首相みたいですよ。どうしてと。カンサンと言うんですよね。というぐらいシャッター街になっているというのも、自動車と我々の国土経営との調和ができていないからですね。

 イギリスの方は、タウン・センター・マネジメントという制度をつくりまして、自由化で一回認めた郊外のショッピングセンターを、同じサッチャー政権で禁止したんです。以降、一軒もできていないですよ。一つもできていない。自由化で認めて、あの自由主義者が、サッチャーが認めたけれども、地方都市等の中心市街地が荒廃した、これはいかぬということで、その決めた同じ人が禁止をして、一軒も立地をしていない。それで、タウンセンターをマネージしようということで、地方都市中心市街地がまた再び生き返ったということがあるんですね。

 事ほどさようで、要するに環境行政、あるいは戦略的なアセスメントの議論の前提として、大臣は、環境をツールに、環境を戦略として、この国土経営をどう持っていこうとされているのか、日本の国土というのはこれからどうなるのか、どうしようとされているのか。ぜひその哲学の一端を、この席だからこそ御紹介いただきたいと思います。

松本国務大臣 いろいろ勉強をさせていただいて、ありがとうございます。

 橋本龍太郎先生が最後に本当に環境のことだけを言われたという話は、本当に胸にきました。私も、十五年ほど前にお話をしたことがあるんですけれども、いろいろな意味で苦心をされておりましたし、厚生族という形でありましたけれども、当時の年金福祉事業団の話とかいろいろなことも、私は今言いますけれども、いろいろな憂慮をされていたことも思い浮かべております。

 そういう意味では、環境と日本ということで、今イギリスの例を言われましたけれども、中心市街地活性化法案は私が野党の筆頭理事でやりまして、実は橋本総理のときに二十三時間か四時間やりました。恐らく、商工委員会始まって以来、連合審査も含めてありました、最後に橋本総理が商工委員会にお見えになって最後のまとめをされたというのは、商工委員会が始まって初めてだということで、私もうれしかったし、そのころのことを覚えております。

 最後に、私と前の太田公明党代表、野党二人で話して、八項目の附帯決議をつけましたけれども、これは大店法の絡みもあって、建築基準法の絡み、都市計画法の絡み等々あって、八つぐらいつけようやということで、二人で八つのをつけて、ほとんど公明党の太田先生がやられたわけですけれども、私どもそれに乗ったわけですけれども、そういう意味では、地域の電気屋さん、小さな電気屋さんが、この附帯決議は本当にありがとうございますという話をしてくれたことを今思い出しております。

 国と環境、そして国土をどうするかということについては、私は、孔子様が言った言葉が一番心に残っております。二千年ぐらい前でしょうけれども、弟子が政治の要諦は何かと孔子様に聞いたときに、しばらく考えて、近き者喜び遠き者来るという言葉を言ったそうでありますけれども、近き者喜び遠き者来るというのは、物すごく奥が深いなと思います。

 近所にいる人が喜んで初めて、そのうわさを聞きつけて外から人がやってくる、これが地方行政あるいは国の一番あるべき姿だろうと思って、建設省におられたから言うわけではありませんけれども、実は日本の高度経済成長からずっと、近い人は喜んでいないのに、遠くの人が喜ぶように箱物を建てて、いろいろなことをやってきたのがバブルというか七〇年代、八〇年代の姿なんだろうというふうに思っております。

 というのは、遠くから人を呼ぶために箱物をつくったり施設をつくったりして、それがあのリゾート法とかさまざまな、グリーンピアとかいろいろなことがあって、今破綻をしてきた。だから、そういう意味では、今度はやはり、地産地消も含めて、近い人が喜ぶ施策をやっていく。きのう里地里山法が参議院で上がりましたけれども、やはりコンパクトにこれからやっていかなければならないというふうに思います。

 そういう意味では、近き者喜び遠き者来るというのはやはり政治の原点だし、今までやってきた、例えば郵政省であれば郵便貯金会館とかいろいろ昔ありました。全部今民間に売られて、例えば宮崎にシーガイアという施設もありましたけれども、あれも三セクでつくられた、リゾート法でやられたわけですけれども、リップルウッドかどこか忘れましたけれどもアメリカにただみたいに買い取られた。そういう姿がありますから、やはりそういうことに気をつけていかなければならないな。

 そして、ちょっとしゃべり過ぎますけれども、森を守っていくということも、私、二十年前国会議員になったときに、リゾート法みたいに、森を切ったら、木を切ったら優遇措置がある、税制措置があるということが物すごく多くて、木を植えたら何があるかというと、法律は何にもなかった。木を植えたらお金がもらえるという法律は、二十年前はありませんでした。こんな世界はおかしいなと思って、自然再生推進法とか生産緑地法とかいろいろありますけれども、そういうことがだんだんだんだんこの二十年間積み重なってきているということは、ある意味では喜ばしいし、そういう意味では、生物多様性の問題もこれから非常に私たちの課題になってくるというふうに思っておりますので、九月の十七日にたまたま菅総理から指名を受けて環境大臣になりましたけれども、しかし、しっかり今の福井先生のお話も含めて努力をしてまいりたいというふうに思います。

福井委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間も迫ってまいりましたので最後の質問にさせていただきたいと思いますが、水です。

 二十世紀は石油が戦争の原因、二十一世紀は水が戦争の原因になろうかと思います。もうちょっと言うと、環境と水で日本が立国していくというふうにも言えると思いますね。

 ですので、水、これを売るとかじゃなくて、日本で水をいかにマネジメントしているか、それがいかにうまくいっているか、どれだけすばらしいかということを、世界じゅうから来られて、それを学習して、それぞれの国で同じようにマネジメントをしていただくというのがいいと思いますが、一方で、我が国の水源地が中国の方を初め外国人にどんどん買われているという話がございます。

 外国人が土地を買うのを制限している国、制限していない国、半々です。日本は制限しておりませんので、対馬あたりは韓国人の土地になっている率もだんだんふえてきている。ロシアも買っているという状況。日本の山紫水明、山、そしてその中のなかんずく水源地をこのまま奪われてはならないと思います。

 そのための法的な枠組み、あるいは行政のスコープ・オブ・ワークというのは環境省にある。今のところありませんが、ですから、きょうは戦略的環境アセスメントのまさに最初の日ですので、水に対する思い、今はもちろん行政の範囲ではないけれども、水に対する大臣の思い。これから法務省を動かす。そして、国土庁が合併して国土交通省になっても、地下水と河川を流れる水、そして下水道の管を流れる水、また、合体した、フルプランといいますけれども、水資源の計画というのはまだないんですよ、日本で。信じられない状況。それはそれで別の委員会でやらないといけませんが。

 日本人が一番大事にし、そして日本が一番世界に誇れる水ですら行政ではそんな状況、そして、繰り返しになりますが、水源地が奪われようとしている状況をどう感じ、そしてどう課題としてとらえようとされているか。水に対する思い、行政的には地下水でコメントできるかもしれませんけれども、ぜひ最後に聞かせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

松本国務大臣 水に対する思いというふうに言われて、私も環境委員長をしておりましたときにデンマークに行きまして、そのときの環境部の人が水とエネルギーだというふうに言われました。まさにそうだと思います。

 私も、三週間ぐらい前に環境省の幹部をつかまえて、水を戦略に入れろということを言って、水というのは、さっき最貧国の話、飢餓の話等々しましたけれども、やはりいろいろなところが力を合わせて、アフガニスタンとかさまざま、水が足りないところ、アフリカとかそういったところに、ある意味では、私も思いつきでこの間しゃべったんですけれども、さまざまな人たちがODAも含めてそこに行って井戸を掘って、民間の事業者もそこに連れていって、国がそれをバックアップして水を掘るとか、さまざま、職員も動員してやった方がいいというふうなことも言いました。

 本当に水は大切ですし、恐らくここにおられる中で、水飢饉といいますか、昭和五十三年の水飢饉は痛い目に遭いましたし、それから平成三、四年でしたか、そのときも二百九十日ぐらい節水がありました、福岡市は。ですから、そういう意味で、水の大切さ、ふろにもなかなか入れないという状況でしたから、水に対する戦略も、先生と御相談をしながら、これから大切にしていきたいと思います。

福井委員 柔軟な民間事業者の対応、これだけちょっと消化不足でしたので、また議論が深まることを期待して、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。

 松本大臣、COP10、本当にお疲れさまでございました。

 結果につきましては、遡及適用の話、それから派生物の話、私は、大変いい結果を出していただいたというふうに評価をいたしたいと思っております。また、私は、自分自身がかなり厳しい通商交渉をやってきた経験もありますので、大方の想像はできるわけでありますけれども、その経験に照らしても、今回の交渉の進め方、そして最後、私はどうなるかと本当に思っておりましたが、本当によくまとめられたなということをフェアに評価をさせていただきたいと思います。

 その背景には、政治家である大臣の皆さんと、大臣は議長というお立場ではありましたけれども、それから事務方と、それから関係の皆さんのいい連携で仕事ができたことが挙げられようと思いますし、私は、大臣のリーダーシップが適切に発揮されたのではないかと思っております。適切なタイミングで適切な内容の議長の案を最後に出されたというふうに私は思っておりまして、この点もきちんと評価をさせていただきたいと思います。

 ぜひ、来るべきCOP16におきましても毅然とした対応をお願いできたらと思います。せっぱ詰まって不本意な対応をして、せっかくの松本大臣の評判を落とさないように願っている次第であります。先日の予算委員会の方で、京都議定書は暫定延長もないと総理がテレビの前で明言をされたわけですから、ぜひ腹をくくってその方針を堅持して、総理大臣が一度口にしたことは最後まで守っていただきますよう、私は切にお願いを申し上げる次第でございます。

 COP10が終わりましたので、これからこの環境委員会でさまざまな課題について、大臣初めお役所の皆さんと議論を深めていけたらうれしいなと思っているところであります。質問のための質問みたいな質問や、足を引っ張るだけの質問というのは私はしないつもりでおりますので、大臣と本当にきちんとした議論をしていきたいというふうに心から思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日の私の質問項目は、今かかっておりますアセス法案と地球環境問題についての二本立てで御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、アセス法案であります。

 このアセス法案は、御案内のように、同僚議員からも指摘がありましたが、前国会で私たちは早期に成立させるべき法案と考えていたわけでありますが、とにかく参議院選挙を早くやらなくちゃいけない、おくらせるわけにはいかない、早く国会を閉じなくちゃいけないということで、予算委員会すら開かれずに閉会をされて、そのあおりを食う形でこの法案は継続審議となったわけであります。言ってみれば、政局優先で、国民のための法案あるいは自然を守るための法案を後回しにして、その成立がおくれたというそしりは免れないものでありまして、私は極めて遺憾なことであると思っているわけでありますが、この点について、法案を担当する大臣としてどのようにお感じになっているか、御見解を賜れればと思います。

松本国務大臣 今お話を聞いて、まさにこの問題に関して、それぞれの政党の皆さんが問題意識を高く持っておられて議論をしていただいていることに敬意を表したいというふうに思っております。

 アセス法も十年たちまして、さまざまな問題点が、専門家あるいは地域の皆さん、さまざまなところから声が寄せられてこの法案に至ったわけですけれども、しっかり取り組んでいきたいと思います。

 COP10の話にも触れていただきましたけれども、先生も交渉をずっとされて、厳しい状況をくぐられてきて、それこそさまざま、もう半年も一年も二年もされたと思いますけれども、そういう意味では、それぞれの力が相まってCOP10は成功しましたし、二十八日、二十九日、私はもう議長室から一歩も出ずに、外国の人たちを部屋に呼んでいろいろやりましたけれども、そういう意味では、途上国も先進国もそれぞれ譲歩を重ねて妥協を重ねて合意をしていただいた、そして人類の英知が結集したんだというふうに思いますので、これからも自分自身として、環境行政のリーダーとして、COP16も触れられましたけれども、COP16は大変厳しい状況です。今おっしゃったとおりであります。そのことを肝に銘じながら、これからも取り組んでまいりたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 大臣、前回、このアセス法案が政局優先でおくれて、今回、今こうやって議論をしているということにつきましての担当大臣としての御見解は何かありませんかという御質問だったはずなんですが、その点についてお答えいただけたらと思います。

松本国務大臣 そういう事情については承知はしておりますけれども、さまざま委員会運営があったというふうに承知をしておりますし、私は、政局というよりも、やはり委員会が委員会運営でしっかり議論していただいたんだというふうに理解をしております。

齋藤(健)委員 次に、今回のアセス法の改正で、対象事業に交付金事業が追加されるということになっておりますけれども、交付金の事業が追加された趣旨について、改めてお話をいただけたらと思うんです。どなたからでも結構です。

白石政府参考人 いわゆる地方分権に伴いまして、補助金が交付金化される。そうすると、今まで対象であったものが対象から外れる。会計制度の仕組みが変わると対象が変わるというのは、環境アセスメントの観点からするといささかおかしな話でございますので、従来対象であったものが交付金化されることによって変更されないようにというふうな趣旨で、今回改正をさせていただいております。

齋藤(健)委員 これは風力発電を想定したものでありますか。

白石政府参考人 風力発電は、それとは別途、中環審におきまして対象事業に追加するべきではないかと御指摘をいただいたものでございます。

 具体的には、例えば河川も、都市づくりの交付金とかいろいろな形で一括渡されて、そこから事業が選ばれるというふうに地方分権でなりつつある方向がございますので、そういう今まで対象だった事業が交付金化することによって、事業を認可なり許可なり補助金の交付決定なりをするという事業にとらまえて、その前にアセスメントをやりましょうということでございますので、対象が外れることがないように、こういう趣旨でございます。

齋藤(健)委員 ちょっと細かい話になっているんですが、交付金というのは、補助金のように国のコントロールが必要ないという判断で交付金化するのが普通であります。アセスの対象にしなくてはいけないようなものは、本来であれば、補助金のままにしてきちんと国がコントロールできるようにすべきではないか。つまり、交付金に移しながらアセスは対象にするというのは、交付金の趣旨からいって、やや理解が難しいなと。私は、これが大問題というわけではないんですが、ただ、多少御都合主義に過ぎるのではないかなという感じがするものですから指摘をさせていただきました。別にそれで反対をするというわけではありません。

 次の質問に移ります。

 私は、かつて資源エネルギー庁で電力基盤整備課長というのをやっておりました。電力基盤整備課長というのは、特に原子力発電所の立地の担当課長でありました。私が課長をやっている間に、珠洲原発、巻原発、これらが、長いこと努力をしてまいりましたけれども、立地ができないということで、私が課長のときに断念をした、そういう経験もございます。原子力発電所の立地、建設というものがいかに苦しいかというものを自分で肌で経験してきた人間であります。皆さんも、普天間問題で、地元が好ましくないと思っている施設の立地というものがいかに大変かということは最近実感していただいているのではないかと思いますけれども、本当にこれは大変なんです。

 そういう中で、今回のアセス法改正案について、私がみずからの経験に照らして懸念を感じますのは、新たに導入される戦略的アセス制度の中に、立地地点等の複数案の提示というのがございます。

 必ずしも地元で好まれていない施設を、複数案提示した瞬間に、そこの立地はほぼできなくなります。ここしかないということで地元の調整に入らない限り、こっちでもいいかもしれない、あっちでもいいかもしれないという形で提案した瞬間に、立地というものはほとんど不可能になるのが現実であります。特に、民間事業者については行政の強制力というものが最終的にないわけでありますので、複数案を提示すると事業そのものが頓挫してしまうというケースが本当に十分考えられるわけであります。特に、立地地点そのもの、それを複数案提示するということは、私のような経験をしている人間からすると、これは暴挙に近い、そこはつくりませんと言うに等しいぐらい、そういう感じすらするわけであります。

 民間事業者には、申し上げましたように事業遂行のための最終的な強制力というものは持っていないわけでありますので、複数案提示したら本当に施設ができなくなっちゃうということになります。一方で、原子力発電所ですとか最先端の石炭火力発電所みたいなものは、むしろCO2削減の観点からはその早期の建設が逆に求められるわけでありまして、そういう環境重視の観点からも、複数案提示してこういう施設の建設に長時間かかるということは望ましくないという見方もあり得るわけであります。

 だから、強制執行できないような民間事業者につきましては、立地地点等の複数案の検討というものを義務づけずに、施設の配置等に関しても、現実的に可能な場合に限り複数案を検討するという柔軟な運用を図るべきと考えるわけでありますけれども、御見解を賜れればと思います。

松本国務大臣 お答えいたします。

 御経験からおっしゃっている話は、私個人としてはよく理解できます。

 原則的には複数案を対象に評価を行うこととすべきでありますけれども、地域の自然的状況、社会的状況等から複数案の設定が現実的でない場合には単一案をもって検討することも許容されているという考えに基づいて、改正案においては「一又は二以上の」規定としております。

 なお、仮に複数案の設定が現実的でない場合には、その理由を明らかにすべきであると考えております。

 こうした複数案の設定の考え方については、今後、計画段階における調査手法等の基本的な考え方を示す基本的事項、環境省告示となりますけれども、を定める際によく検討してまいりたいと思います。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。ぜひ御配慮を賜れればと思います。

 また、同じ趣旨の質問になりますが、今回新たに導入されます事業実施段階前の手続であります配慮書に関係しまして、これから主務省令を制定していくということになろうかと思いますけれども、これも、余り複雑で時間がかかるような手続あるいは基準を作成してしまいますと、かえって温暖化対策施設の建設がおくれるということにもなりかねないわけであります。そういう笑えないことにもなりかねないわけでありますので、スピード感と、それからきちんとしたアセスの両にらみで現実的な主務省令にしていくことが大事じゃないかと思いますが、この辺についてのお考えも承れればと思います。

白石政府参考人 ただいま大臣の方で御答弁をしたことにあえてつけ加えますと、御指摘のように、いろいろな事情がある、そういうときに弾力的に対応できるように、おっしゃられますように環境への配慮とそれから事務執行が、そういう手続であるがゆえに不必要なことまでやって時間が費やされて本来の目的をなかなか達成できないというふうなことがないように、そういうふうな観点から主務省令を作成させていただく、またそのための基本方針を作成する、そういう形で対応していきたいと思っております。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 そして、そもそも論にちょっと立ち返りたいと思うんですが、今回の法改正によりまして、当然、今までよりアセスをする期間が長期化することが想定されます。事前の事務方の御説明によりますと、実施段階前の手続だけでも半年ぐらいはかかるんじゃないかというお話を承ったところでありますが、そういうことで、アセス期間が長くなる。一方で、先ほど来申し上げておりますように、温暖化対策に資する施設の場合、その対策に逆行することも、長期化というのは逆行にもなりかねない、そういう懸念もあるわけであります。

 したがって、温暖化対策に有効な事業であれば、国が全面的にバックアップをして、全体のアセス期間が短縮されるような仕組みというものを考えるのも一案ではないかと思いますけれども、この点についての御見解を賜れればと思います。

樋高大臣政務官 先生の御経験に基づかれたお話、とても説得力ある話だというふうに私もちょっと勉強させていただいているところでございます。

 今のお話、御指摘の点でございますけれども、例えば原子力発電所の新設やあるいは老朽化した発電所のいわゆるリプレース、最新鋭の発電所の建てかえなどにつきましては、先生御指摘のように、温室効果ガスの排出量削減に大きく寄与するものだというふうに考えるわけであります。しかしながら一方で、こうした事業に当たっても、排出ガス、温排水、生態系や景観等の環境影響が考えられることから、ほかの事業と同様、計画段階の配慮書手続を経ることになり、できるだけ早い段階からの環境面の検討を行うことが必要と考えているわけでございます。

 一方で、環境負荷の低減が図られる案件については早く運用に供されることが望ましいというのも先生の御指摘のとおりでございまして、環境影響評価手続については弾力的な運用で対応することが必要であるとも考えられるわけでございまして、この手続の簡素化に関する検討を開始させていただいたところであります。先生の御指摘も踏まえまして、開始をさせていただき、来年度中、なるべく早くとは思っておりますけれども、結論を得て、必要な措置を講じてまいりたい。つまり、アセスの部分とスピードの部分、両方をしっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

齋藤(健)委員 御答弁ありがとうございます。

 今の御答弁の中で弾力的運用という言葉がありましたけれども、もう少し具体的にお話をいただけませんでしょうか。

白石政府参考人 まだ関係の方々と話し合っていない段階ですので、例えばで申し上げますけれども、同じ場所で施設の更新を行う、全く同じ規模のものを単に建てかえる、しかし、その全く同じ規模のものが非常に高性能、高効率だったりする、こういったときには、通常は動植物あるいは生態系の調査というものをあえて繰り返す必要はないのではないか、このような御指摘というのがございます。例えばそういうことをどうしたらよいかというふうなことを考えてまいりたいと思います。

齋藤(健)委員 余り弾力的な感じに聞こえなくて、ほとんど当然のことじゃないかなという気がするので、もう少しお話ししていただけませんでしょうか。

白石政府参考人 ある意味、お言葉を返すようでございますけれども、当然のことは当然に省略すべきであろうと。その当然の範囲がどこまでかということは、これから関係者の方と二つの価値、環境のこととスピードアップのことと両方を比較考量しながら考えていくわけでございますけれども、そのほか私の記憶で申し上げますと、例えば、原子力発電所に限りませず、温排水が出るということがございますが、その温排水の排出位置が変わらないし、熱量もそう変わらないというときには、もう一回温排水の調査を繰り返すとかそういうことは要らないのではないか、そういうことも御指摘の中にあることは確かでございます。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 私は余り言葉の議論をするつもりはありませんが、ぜひ、だれが見ても、ああなるほど、これは弾力的になったなというようなものにしていただきたいと思います。

 次の質問ですが、温暖化対策に、これは小沢前大臣の本会議での御発言で、五月十一日ですが、「発電所のリプレース事業については、評価項目の絞り込みによる期間の短縮等、弾力的な運用で対応することが必要」というふうに本会議で御発言されております。

 また、九月十日の閣議決定で、新成長戦略実現に向けた三段階構えの経済対策に掲げられた事項の一つでありますけれども、発電所のリプレースの際の環境影響評価の迅速化を検討するということになっていると思いますが、これは具体的にどのような内容になり、いつぐらいをめどにこういうものをおつくりになられるのかというのをお伺いさせていただけたらと思います。

樋高大臣政務官 繰り返しになって恐縮でございますけれども、今先生からるる御指摘をいただきました部分につきましては、来年度中までに結論を得るということで、必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 それでは、アセス法については私の懸念は以上でありますので、次に、私の大好きな二五%削減目標についてお話をさせていただきたいと思います。

 政治家あるいは政府の説明責任ということについてでありますが、私は、前回の質問のときにも申し上げさせていただきましたが、松本大臣にはぜひ十分な説明責任を果たしていただきたいと大きく期待をいたしているところでございます。

 二五%削減がいいのか悪いのかという是非の議論というよりも、そうではなくて、二五%削減を言う以上は、どういうことになりそうかということを説明する責任は提案者の側に当然あるのではないかというふうに思っているものですから、私は、責任ある政治家ならば、それは責務としてきちんと国民に説明をすべきだというふうに思っているものであります。虚心坦懐に考えていただきたいと本当に思います。

 恐らく、大臣の部下であります役人の皆さんから話を聞いても、全員とは言いませんけれども、多くの人は、自分たちのやっていることを擁護するようなディフェンシブなことしか言わないのが通常であります。役人出身の私が言うのだから、間違いないと思います。だから、ぜひ松本大臣には虚心坦懐に、本当にこんなことでいいのか、立場にこだわるのではなくて、本当に何が正しいアプローチなのかを、まだ就任してから時間がたっていないかもしれませんが、お考えいただきたいなと切に訴えたいと思っております。

 きょうは、宿題と言うと失礼になりますけれども、言い方をかえれば早目の質問通告ということで、これから私が述べる懸念につきまして、この環境委員会で実りある建設的議論をしたいと思うものですから、きょう、事前に私が懸念を持っている項目についてお話をさせていただきます。質問はいたしません。ですから、この懸念を持って帰っていただいて、次の私の質問のとき以降に大臣と本当にきちんとした議論をさせていただけたらと思っているところでございます。

 順次お話をしたいと思いますが、まず、二五%削減目標が雇用に与える影響は大体どういうふうになりそうか、この一番肝心のところの説明責任の問題であります。

 先日の予算委員会で、十一月九日ですけれども、私はこの点につきまして総理にたださせていただきました。事前にこの質問は通告をしてありまして、国民にこうだと、雇用についてのきちんとした説明責任を総理として果たしていただきたいということを事前に通告させていただいておりましたが、総理のお答えはこういうものでございました。

 雇用の問題につきましては、グリーンイノベーション、さまざまあります、そういう意味では、新しい技術、新しい産業等々これからは生まれてくるということもありますので、さまざまなモデルがあると思いますけれども、そこに向かって頑張っていきたいというふうに思っておりますと。これでは国民は不安になるだけであります。これは大臣のお答えであります。

 それから、菅総理はこういうお答えでした。そういったことも含めて、新成長戦略に位置づけられましたグリーンイノベーションによる環境・エネルギー大国戦略においては、環境分野を雇用を生み出す成長産業というふうに見ておりまして、二〇二〇年までに五十兆円を超える環境関連新規市場、さらには百四十万人の環境分野の新規雇用を想定いたしておりますという答えでありまして、いささか、事前に通告をして、本当に国民の不安に大丈夫だというきちんとした御説明をしてほしいということを申し上げたんですが、私は、残念ながら、これを聞いている第三者には、そういった説明責任がしっかり果たされたという印象はなかったのではないかと正直に思います。

 ですから、今ここでどうこうということではありませんが、ぜひ松本大臣には、この点につきまして、本当にこんな説明でいいのかどうかお考えいただきまして、今度御議論させていただけたらと思っております。

 次に、GDPに与える影響というものもはっきりいたしておりません。経済成長にどういう影響が出るのかということが明確になっておりません。そんなことで、本当に二五%削減をやるということについての説明責任を果たしたことになるのでしょうか。

 それから、国民負担、これについてもきちんとした説明はございません。本当にそれでいいんでしょうか。これをまた大臣と議論させていただきたいと思います。

 それから、この国会には、前の大臣が出されました小沢大臣試案以外のものは今ないわけであります。この小沢試案というものは今も生きているんでしょうか。撤回されないのかということについて、また今後御議論させていただきたいと思います。

 また、環境問題に関する重要事項を審議すると法で定められております中央環境審議会の審議にもろくにかけていないものをこういうふうに国会に出してきて、分析結果だ、あるいは法案だというようなことで、大臣は本当に説明責任を果たしているとお感じになるのかどうかです。

 それから、各省とも調整しておりません。今我々に提案されている試案というものは、各省との調整もしておりません。そういう状況で、政府として国民への説明責任を果たしていると松本大臣はお考えになられるのか。その点についても今後議論させていただきたいと思います。

 それから、この小沢大臣試案では四つのモデルで定量的な分析をしておりますが、そのうち二つは二五%削減の影響について直接分析をしているんですが、残りの二つはしていないわけですね。国会での答弁で、当時の寺田局長は、類推できるからいいんだという御答弁をされました。分析しなくても、類推できるからいい。私は、ちゃんとやってくれ、類推できるからいいじゃなくて、やれるんだったらやってくれということをお願いしましたが、いまだに返答がないので、そんなことでこの国会での審議はいいんでしょうか。

 それから、これは非常に重要な話だと思うんですが、アメリカの中間選挙の結果、アメリカの法案というものが通る可能性が九九・九%なくなったという状況であります。アメリカは、法案が通る前提で、二〇〇五年比一七%削減というものをCOP16の事務局に提出しているわけでありますが、法案が通らないということは、アメリカの目標そのものがなくなってしまうということであります。

 ですから、アメリカが意欲的な目標を掲げるかどうかという以前の問題として、目標そのものがなくなる。しかも、あと二年間はその状態が続くということでありますから、私は、日本が提案している二五%削減目標の前提条件というものが満たされる可能性はほぼゼロになったのではないかと思っておりますので、この目標そのものの立て直しが必要なのではないか、あるいは、その前提条件が成り立たなくなっているわけでありますので、論理的に、法案そのものも撤回すべきではないかと思いますが、この点も松本大臣と議論させていただきたいと思います。

 また、当初、日本の二五%削減が科学の要請でもないのに科学の要請と言い募った時期がこの政府にはございました。これは、いわば国民をだましたことではないかと言われても仕方がないような話であります。私は、この科学の要請と言ったことを撤回して、改めて、なぜ二五%なのかということを、法案を撤回しないのであれば説明すべきだと考えておりますので、この点につきましても松本大臣と今後議論していきたいと思います。

 これですべてというわけではありませんが、松本大臣におかれましては、ぜひ御自身で率直に御検討いただいて、これらの点についての大臣御自身のお考えをまとめておいていただけたらありがたいなと思います。

 その際、繰り返しますけれども、事務方はややもすれば自己弁護に走る可能性がありますので、事務方だけではなくて、真摯な研究者の方ですとか産業界の方ですとか労働界の方ですとか、そういう方から直接、ざっくばらんにお話を伺っていただきたいなと思います。これはざっくばらんにやらないと、政府の意向に反して意見を言うというのはなかなか勇気の要るものでありますので、うまくざっくばらんにやっていただいて、本音を聞き出していただいて、そういう機会も多く大臣につくっていただけたらと思います。

 これらの点につきましては、いずれ大臣のお考えをこの国会でお伺いして議論を深めさせていただきたいなと思っておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 大変生意気なことを申し上げましたけれども、きょうは質問だけということで、これからの議論をよろしくお願いしまして、ちょっと五分早いですが、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小沢委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。

 アセス法ができてもう十年以上たちます。アセス法の果たした役割、すごく大きいものがあろうかと思います。まず大気の浄化、水質の浄化、生物多様性の保全等々でございまして、私は大いに評価をしている一人でございます。

 さて、今回、戦略的環境アセスメントというものが改正案に盛り込まれました。本来の意味のSEAというのは、政策を決める段階、また立てる段階、その手続の段階。今大臣が提案されたいわゆる事業アセスではなくて、そのもっと上のものを戦略的環境アセスメントというふうに私は理解をするものです。

 この考え方は、この間、COP10、本当に御苦労さまでございました。ここで我々GLOBEが提言をした、生物多様性の価値を国家会計に入れて、その数字でもって政策を決めていく。一番政治家にとって大事なのは、生物多様性をきちんと評価したものを国家会計勘定に入れた中での数字でもって判断をするのが一番大事だということで提言をさせていただき、愛知目標に、ターゲットの二番目に、大臣のおかげで採択をしていただきました。

 これと、このSEAは目的は全く同じなのかな、こう私は思うんですけれども、大臣はどうお考えでしょうか。

松本国務大臣 GLOBEの会に二十六日に行きまして、先生が中心的に頑張っておられる姿を見て頼もしく思い、また、環境委員会の皆さんも、衆議院、参議院、励ましていただいて、それがどれだけ大きな力になってCOP10の成功に導いていただいたかということを改めて今痛感しているところであります。

 生物多様性を国家勘定に反映させるということは非常に重要な指摘でありまして、さまざまな面でこれから、金融とかいろいろな面で、この事業が、あるいはこの開発が、あるいはこのプロジェクトが環境にとっていいものであれば、お金も出すし、また割引もする、これから生物多様性といいますか、環境に対してさまざまな勘定がついてくるというふうに思います。

 先生がおっしゃるとおり、目標の二では採択をされました。国や自治体、企業などにおいて生物多様性の価値を認識し、さまざまな意思決定において考慮されることが求められております。

 SEAの実施もこの目標の達成のための一つの手段というふうに認識をしております。この点、条約事務局が作成した解釈に関する文書にも示されているところであります。

 この目標も踏まえて、より上位の計画や政策段階での環境影響評価について、今後の課題として積極的に検討してまいりたいというふうに思っております。

吉野委員 愛知目標にも掲げられた国家会計へ生物多様性勘定を入れるということ、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。我々政治家は、政策をつくるときに、やはりそういう生物多様性勘定を加味した数字でもってすべての政策判断、そして意思決定をしていかねばならないと思っていますので、ぜひともお願いしたいと思います。

 生物多様性勘定を一つの数字としてあらわす会計システム、これは前回も質問したんですけれども、国連で開発したSEEAという、これは二〇〇三年版であります。これを使って、TEEB、すなわち、生物多様性と経済、生物多様性を保全することが経済にとってもプラスになるんだ、またマイナスになるんだという純科学的に調査をしたTEEBという報告書が、COP10で最終報告が出されました。ここのいわゆる生物多様性勘定を評価する会計システムとしてSEEAが使われたわけなんですけれども、ちょっとやはりイメージ的にまだ私たちわからないので、TEEBで使われた評価をする場合、具体的にどんな形で評価をしたのか、ちょっと教えていただければ幸いです。

松本国務大臣 議長として申しわけないんですけれども、TEEBとかSEEAとかIPBESとかPESとかREDDプラスとか、詳しいことはよくわかりませんので、事務方によろしくお願いします。

鈴木政府参考人 SEEAの二〇〇三年版でございますけれども、これは、環境と経済の相互関係を把握することを目的に、経済活動量をはかる国民経済計算に、環境との関係を示す仕組みを取り入れたということでございますが、SEEA自体は、生態系サービスの経済的な価値を金額表示したということではなくて、経済活動を通じて、森林資源や水資源というのを使いながら、例えば大気を汚染したり汚水を出したり、何トンCO2を出したかとか何トン汚水を出したかというのを示す、経済活動の結果これだけのCO2が総体として出されましたという、そういう数量を組み合わせた仕組みになっております。その数量で出されたものを金額に換算いたしますとこれが金額表示になるという仕組みかというふうに考えております。

吉野委員 そういう形で、森林の持っている価値が三百七十兆とかというのがCOPの会議の中で示されたわけでありまして、本当に、我々はやはり金額に換算しないと頭の中に入ってこないものですから、やはり金額に換算していくというのは大事かなと思います。

 それで、SEEAの改訂版、今使っているのは二〇〇三年版なんですけれども、二〇一二年版というのが今改訂作業中と伺っております。これはある意味での国際ルールでございますので、日本もこの国際ルールづくりに積極的に参加をしていくのと、国際ルールづくりに参加をしないで、できたルールをそのまま使っていくのとでは、やはり国益等の観点から相当違いが出てくると思います。

 今、この二〇一二年版の国際ルールづくりに日本の国としてどういうかかわりを持っているのか、お尋ねをしたいと思います。

白石政府参考人 二〇一二年版でございますけれども、御指摘ありました二〇〇三年版では例えば対象となっていない再生可能エネルギーをどういうふうに取り扱ったらよいのか、あるいは、環境産業につきまして、従来型の産業分野と重なる部分が多いわけですけれども、環境産業という形で単独に切り出して評価することというのがどれぐらい可能なのか、あるいは森林の定義というのをめぐって、FAOあるいはIPCCの定義も考慮してこの際変えた方がよいかどうかなどなど、二十一項目の検討が今行われると承知しております。

 我が国とのかかわりでございますけれども、この改訂作業をしております国連の統計委員会に、統計ということでございますので、総務省あるいは内閣府がその議論に参加しているというふうに承知しております。大変申しわけないことながら、環境省はこの議論になかなかついていけなくてまだ参加しておりません。参加しておりませんけれども、実は、前回の御質問もちょうだいいたしました。甚だ心もとない状況で恐縮ではございますけれども、まずは、どういう改訂で、今言った二十一項目、環境という観点からどういうふうに考えたらよいかということを、参加しております総務省あるいは内閣府にいろいろ教えていただくところから私どもは始めなければならないと考えております。

吉野委員 愛知目標のターゲットツーにも入れた生物多様性を国家会計へ導入するということ、大きな目標となっておりますので、ぜひ大臣の英断で環境省からも国連に人材を派遣して、このSEEAの研究について学んでくるように、またルールづくりに参加できるように、大臣の英断を期待しております。答弁は結構です。

 さて、こういう事例があります。私の身近なところで、開発計画があって、アセスを申請して、数年の時間と数億円、十数億円、ちょっと忘れてしまいましたけれども、数億のお金を使ってアセスをし、結果、事業断念をしたんですね。これは短期的に見ると、もうお金と時間をどぶに捨てたと同じですから、大損害なんです。まずは企業にとっては大損害、国家的にもどぶに捨てたから大損害だと思うんですけれども、長期的に見ればその大損害を補って余りあるものがあるからその事業は断念したのかな、こう私は思うんです。

 大臣、ちょっとその辺のお考え、私と同じなのか、大臣の思いをちょっと聞かせてください。

松本国務大臣 今の、損失があったということは、やはり事業所の損失、あるいはさまざまな損失である、国の損失でもあると結果的には思います。

 そういう意味では、現行法では、事業の位置、規模、配置等の枠組みが決定されている段階で手続が開始されているために、環境影響の回避、低減等が不十分になる傾向があります。

 今回の法改正により導入される戦略的環境アセスメントは、事業者が従来よりも早い段階において環境アセスメントを行うことで、より一層環境保全に配慮した事業の実施を確保することを目的として導入するものであります。

 計画段階の配慮書の段階において既存情報を中心としたデータ収集を行うことで、より早い段階での環境面の検討を行い、その結果を事業内容に反映させていくことが可能となり、今の事例に当てはまるかどうかわかりませんけれども、事業の円滑な実施に資するというふうに考えております。

吉野委員 現行法ではやはり断念しなきゃならないんですけれども、今度の改正法だと配慮書で大臣の意見を言えるということで、今回だめになった私の事例は、配慮書が導入されていれば、ある意味では早い段階に、お金をかけずに事業がマルかバツかという判断ができたのかなと思うので、この戦略的アセスはこういう場合には役に立つんだなというふうに思います。

 ただ、配慮書の段階での環境大臣の意見と、実際にアセスをしていいよという形でずっとアセスをして評価書の段階、いわゆるもう全部調べ終わって評価書の段階で、重大な環境に対する負荷がかかる、それに対応せねばならない大きなコストもかかるわけですけれども、そういうものが見つかった場合、配慮書で環境大臣はやっていいよと言ったんだけれども重大なものが見つかった場合、大臣の意見書としてどういう判断をしていくのか。

 これはちょっと通告にないんですけれども。では、事務方で結構です。

白石政府参考人 理屈の上の世界では、そういうふうに後になってまた逆戻りするようなことがないようにだんだんに絞っていくというのがアセスメントの手続になるわけでございますけれども、そうはいっても、現実の中で、今まで全然予測していなかったようなことが最後の段階に近づいてからわかるというふうなことはあり得ると思います。

 ただ、制度としてはなるべく、そういうことがあって先行投資が無駄になるというふうなことがないような形でアセスメントを進めなければならないということはもう当然のことでございますけれども、それでもなおかつ出てきたときというのは、やはり、大変申しわけないことではありながら、そこの段階で、新たに発見された事象に対応するためにはこのようなことをやらなければならないというふうに大臣意見を申し上げなければならないことは、理屈の中ではあり得るかと思います。

 お答えになっていないような気もしますけれども、そういうことがないように、最初の段階からきちんと手続を踏んで、だんだんに問題点を絞っていくという形で運用していくというふうに考えております。

吉野委員 まさにそこが大事でありまして、短期的な損得と長期的な損得を考えた場合、やはり長期的にはプラスになるんだという判断が役所の方であれば、環境大臣は毅然として配慮書の段階と違った意見を述べるべきだなというふうに私は思いますので、ぜひ環境省としても、今の事務方の答弁に対して、大臣のお言葉で再度決意のほどを述べていただきたいと思います。

松本国務大臣 個々のケース、いろいろあろうかと思います。いろいろな意味で、さまざま、今吉野先生がおっしゃったことを含めて検討してまいりたいというふうに思います。

吉野委員 平成十九年に戦略的環境アセスのガイドラインが示されたと思います。今は平成二十二年ですから、丸三年以上たっているわけですけれども、ガイドラインに基づいてアセスを、SEAをやったものはどのくらいの数があるんでしょうか。

白石政府参考人 ガイドラインに基づきまして環境省意見を述べたところまで至ったものは二事例でございます。那覇空港構想段階のもの、平成二十一年に意見を出させていただきました。それから、関門航路周辺海域における土砂処分場の計画、これはことしの六月に意見を出させていただきました。現在進行中というものとしては、福岡空港の滑走路の増設が手続中でございますが、まだ環境省の意見の提出には至っておりません。出したというところまで行ったものは二件でございます。

吉野委員 そうすると、民間の事業はなかったわけですね。

 民間の方々に対してSEAを最初から、いわゆるガイドラインがつくられて、ガイドラインである程度ならし運転といいますか経験を踏んで、これなら大丈夫だなという形でやるのが私は普通のやり方だと思うんです。民間はゼロ、そして二件という、事例がこんな少ない中で、もっとデータを収集して分析して法制化、いわゆる義務化を図るべきかと思うんです。

 民間へのこの法の適用というのは少し早過ぎるんじゃないのかなと思うんですけれども、民間はある程度の事例が出るまではガイドラインでやるべきかなと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

樋高大臣政務官 吉野先生におかれましてはいつも御高説をいただきまして、感謝を申し上げます。

 今の御指摘の点でございますけれども、とても大切な御指摘であろうかというふうに思うわけであります。

 現行法におきましては、民間事業も含めまして、一定規模以上の事業を実施しようとする者が環境アセスメント手続を実施することとしておりまして、戦略的環境アセスメントにおいても、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれのある事業につきましては、民間事業も含めて、事業者がより早い段階で環境面への検討を行うことが必要と考えているわけであります。

 SEAガイドライン、今先生おっしゃいましたが、平成十九年三月に出されているわけであります。これまでにこのSEAガイドラインやあるいは地方公共団体の制度に基づいて戦略的環境アセスメントの実績が積み重ねられてきたというふうに認識をしておりまして、これを踏まえまして、今回の法改正案におきましても、民間事業も含めSEAを制度化するものとさせていただいたところでございます。

 先生がおっしゃいますように、まずは例えばならし運転からという意味も論理的にはわかるわけでございますけれども、この際、民間の方も、あるいはそれ以外の方も、透明で公正な統一したルールのもとで行ってまいりたいというのが私どもの趣旨でございます。

吉野委員 今の答弁で、実績が積み重ねられてきたというふうに私聞こえたんですけれども、ガイドラインだからやることが手を抜いてやっていい、法のもとでのSEAだから手を抜かないでやるということじゃないと思うんですね、ガイドラインは。

 ですから、法の義務づけを外した中で、ガイドラインはガイドラインで、これはある意味では企業にとっても負担になるし、先ほどの私の、途中でやめた事例でも、SEAを入れればその段階で事業の可否が判断できたということで、プラス面もあるわけなんで、ただ、法で縛るのは時期尚早じゃないのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

白石政府参考人 ちょっと補足をさせていただきます。

 二事例がガイドラインでやっているというふうに申し上げました。確かに、国のガイドラインだけですとそれだけになってしまうわけでございますけれども、幾つかの県、例えば埼玉、東京、広島市、京都市、千葉県等では条例や要綱で、私どもの、国でやっております戦略アセスメントと同等あるいはそれ以上のアセスメントというのが大体二十二件ぐらいございます。さらに、国土交通省が、最もこのSEAガイドラインに沿った公共事業のガイドラインがございますが、それで私どもの方でホームページを拝見しますと、例えば道路事業において二十八件。

 こういう実績が積み重なっておりましたので、これが早いか遅いかというふうなことで考えれば、もうそろそろころ合いかな、皆が知るようになってきたしということがございます。

 それから、現在、このガイドラインには、民間が入るとすると電力会社それから鉄道会社というふうなことがあり得るんですが、これだけの規模の、電力はまだこのガイドラインに参加しておられなかったということ。それから、鉄道で申し上げれば、新幹線は国の事業で、もう既にアセスが終わったものしか今のところございません。鉄道も、これでリニアか何かが入れば対象にはなり得ると思うんですけれども、逆に言うと、リニアが入るようなそろそろというときに民間を除くというふうなことも逆にしがたい。

 そういった意味で、そろそろころ合いではないかというふうに考えて今回御提案を申し上げた次第でございます。

吉野委員 了解しました。

 次に、法の対象事業は十三の事業の種類です。でも、これから大きな事業として、放射性廃棄物の処分場の建設の問題、また、石炭を有効利用するために、石炭から出るCO2を分離して地中に埋めるCCS、この事業等々、直近でやらねばならない事業が見えるわけであります。これらはいわゆるアセスの対象には入っていないわけでありますので、私はこれらもアセスに入れるべきだというふうに思います。

 さて、CCSについてなんですけれども、CCSをやる場合のアセスの基準、環境基準。炭酸ガスが地中にあるわけですから、それが地上に出てこないようにある意味の環境基準を環境省でつくられているはずなんですけれども、その進捗状況、今現在どういう形で進んでいるのか、お聞かせ願いたいと思います。

白石政府参考人 CCSにつきましては、御案内のように、平成三十二年までの実用化が目指されておりますので、それまでにアセスメントの手法なり基準なりがないと困るというふうなことがございます。そういうことで、CCSにつきましては、評価項目はどういうものを入れたらよいのだろうか、あるいは調査・予測手法の調査検討、こういったものを昨年度から始めまして、できれば今年度中にその検討結果を取りまとめ、まず技術資料をつくって、さらなる議論の深化をしていきたい、今はこんな状況でございます。

吉野委員 温暖化対策に資するものとして天然ガス等々あるんですけれども、やはり石炭利用なんですね。石炭利用を我々はやっていかないと、コスト的にも大変だ。石炭は大量のCO2を出すわけでありますので、このCCSの技術が確立されれば全世界の石炭利用に資するわけなんです。

 今、私の町なんですけれども、IGCC、石炭ガス化プラント、これが実験稼働中でありまして、もうほとんど実用化に近い線までいっています。せっかく石炭をガス化するわけですから、そこからCO2を取り除いて、そしてそのCO2を海の奥底に貯蔵しようという壮大な実験が私のところで行われるんですけれども、実用化が三十二年だから、まだ時間があるから今検討中なんだというのではちょっと遅いのかなと思いますね。

 世界に先駆けた、いわゆるこれは売れるんですよ、世界の各国に対して。まさにグリーンイノベーションなんですよ。グリーンイノベーションで雇用もつくるというふうに菅内閣が言っているわけですので、こういう技術開発に対して何でもっと積極的にいかないのか。特に環境省として、それのいわゆるアセス基準、何でのんびりしているのか、この辺ちょっと怒って質問します。

白石政府参考人 御指摘のとおりでございまして、私どもも、少なくとも、アセスメントの手法が開発されていないから実用化を待ってくださいというふうに言うわけにはまいりませんので、実用化に間に合うように、実用化の足を引っ張らないようにアセスメントの手法の確立はしてまいりたいと思っております。

吉野委員 その辺はきちんと経産省のIGCCの技術開発と連係プレーをとってやっているんですか。いわゆるCCSの実験を早急にやりたい、その横の連係プレーの一つもとらないで環境省だけの判断でつくっていたのでは、これは内閣としてきちんと統一がとれていないと思いますので、その辺ちょっとお答え願います。

白石政府参考人 産総研の例えばCCSの開発をしておられます先生を私どもの方でもお招きをしまして、そのアセスメントの手法の開発にお知恵を拝借したりというふうな形での連携はありますが、まだまだ足らないという御指摘を重く受けとめて、これからも頑張ってまいりたいと思います。

吉野委員 重く受けとめて対応するという答弁をいただきました。しっかりとやっていただきたいと思います。

 もう一つ、温暖化対策の切り札、原子力発電所です。やはり原子力発電所、原発を我が国はもっともっと推進しなければ、温暖化を食いとめることはできないと思っています。そういう中で、住宅をつくってトイレをつくらないという話もあるように、原子力発電所を幾らつくっても、そこから出てくる核廃棄物の最終処分場、これをつくらないとバランスのとれない政策になってしまいます。

 そういう意味で、今、各地に公募という形で、手挙げ方式、名乗り出てくださいというのと、国があなたのところいかがですかという逆指名方式と、二つの方式で立地地域を探しているんですけれども、なかなか見つけることができません。そういう意味で、これはエネ庁のNUMOに任せているだけでなくて、環境省としてももっと積極的にこの最終処分場確保、そしてそのための環境基準というものを早急に策定すべきだと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

松本国務大臣 先ほどから聞いておりまして、吉野先生の原子力発電所に対する造詣の深さというか思いが伝わってまいります。さっき怒って言われたのも、本当にそう思いました。

 低炭素社会の実現のためには、発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電は重要な施策の一つだと思っております。安全の確保を大前提として、国民の理解と信頼を得て推進することが必要だと思います。

 このため、環境省としても、放射線防護の観点から安全上問題がないレベルの廃棄物の適正処理の確保、また文部科学省等と協力して大気中の放射線濃度に異常がないかどうかを監視するためのモニタリング等を実施しているところであります。

吉野委員 モニタリングの実施は当然でありまして、もっと前向きに、原子力政策は国策なんですね。国策だから、一エネ庁だけに任せている仕事じゃなくて、内閣が一歩も二歩も前に出て、全員野球でこの問題に取り組んでいかねばならないというふうに私は思うんです。環境省は環境省なりの役割を果たせる分野があるんです。そこについてもっと、今の答弁ではなかなか、不満そのものでありますので、もう一度答弁をお願いしたいと思います。

松本国務大臣 安全性の確保もしっかり大前提としながら、私どもも関係各省と連絡をとり合ってやっていきたいというふうに思っております。

吉野委員 あと、では最終処分場をいわゆる十三の対象事業の中に加えていく方向なのかどうなのか、その辺をお聞きしたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 その前に、先ほど先生がおっしゃっておいででございましたCCSの件でございますけれども、政治主導ということもかんがみまして、私の方でもしっかりと、例えば経産省と連携をとりながら、実証事業につきまして、私の方でも責任を持って監督をしてまいりたい、このように思うところでございます。

 それで、今の先生のお尋ねでございますけれども、いわゆる放射性廃棄物処分場の件でございます。

 この対応につきまして、今回、改正法案の国会提出に先立って取りまとめを行いました中環審、中央環境審議会の答申の中でこのように言われております。放射性廃棄物処分場の建設事業については、国の関与のもとに、何らかの形で環境影響評価を行う仕組みの検討が必要である。そしてそれに続きまして、放射性廃棄物最終処分場での最終処分の開始は平成四十年、つまり二〇二八年、平成四十年代後半がめどであり、約二十年以上先になるということでありまして、現時点では実証試験等の段階にあるということから、知見をしっかりと蓄積をして、実用化の状況を見た上でこの法律の対象に追加するかどうかを判断すべきであるというふうに中環審において答申が出されたということでございます。

 こうした考え方も含めまして、引き続き知見の収集に努めてまいりたいというふうに考えております。

吉野委員 もう最後になりますけれども、事後アセスについてお尋ねしたいと思います。

 今回、事後調査という形で、最後に報告書を提出し、それを公表するということで、いわゆる開発するイニシャルの部分は事後調査という形で完結するというふうに思うんですけれども、私は、それができて、いわゆる活動をして、活動が終わった後、とまった後、その活動中、また事業が終わった後、環境がどう変化しているかということをいわゆる事後アセスという形で見ていくのも、これは大事なことだと思うんですね。

 ただ、事業者にそこまで義務づけをして負担をかけていくということは、これまた大変な負担をかけていこうかと思いますけれども、先ほど私が言ったように、短期的な物の見方、もっと長期的な物の見方からすると、やはり事後アセスも必要な時代になってくるのかなと思うんです。

 ただ、負担をかけないという意味で、少しやはり知恵を出すべきだと思うんですね。一つの方法として、CO2については、ある意味で、CO2の排出量取引で目標を下回った場合、その分はクレジットができるという一つの制度、知恵が出ているんです。そんなような形で、事業活動し終わった後も、事後アセスとして何らかの、ある意味の資金的な負担軽減というところもこれから必要なのかなと私は思います。

 総合して、事後アセスについての大臣の御見解を聞かせてください。

松本国務大臣 先生がずっと質問されて、事業者にもちゃんと配慮されて、そしてアセスの方にもちゃんとしっかりアセスをするという、何か本当に話を聞いていて勉強になることばかりであります。

 現行制度では、環境影響評価書に基づいて事業者が行う環境保全措置及び事後調査の実施状況について報告及び公表する仕組みは設けられていないために、行政や住民等がその実施状況を把握することがおっしゃるとおり困難な状況にありました。

 今回の改正案においては、この環境保全措置等の結果の報告、公表を義務づけることとしており、これにより、行政機関や住民等が環境保全措置等の内容や実施状況を把握できるようになり、住民等からの信頼性や透明性、客観性の確保が期待されているところであります。

 このような仕組みの導入によって、環境影響評価手続の実効性を担保し、事業の実施における環境配慮の一層の確保が可能になるというふうに考えております。

 いろいろ御指導ありがとうございます。

吉野委員 事業者も、そして環境も、環境を守ることが事業活動ではプラスになるんだという、事業者はなかなかここまで理解していないと思いますけれども、結果的にはそういうことになろうかと思いますので、ぜひ環境を大切にする政策をいっぱいやってほしいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

小沢委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十四分散会


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