衆議院

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第5号 平成22年11月16日(火曜日)

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平成二十二年十一月十六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 田島 一成君 理事 横光 克彦君

   理事 吉川 政重君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      石井登志郎君    石田 三示君

      石森 久嗣君    磯谷香代子君

      岡本 英子君    川越 孝洋君

      木村たけつか君    工藤 仁美君

      櫛渕 万里君    小林 正枝君

      阪口 直人君    瑞慶覧長敏君

      橋本 博明君    樋高  剛君

      森岡洋一郎君    森山 浩行君

      山口 和之君    山崎  誠君

      井上 信治君    近藤三津枝君

      齋藤  健君    福井  照君

      古屋 圭司君

    …………………………………

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   参考人

   (財団法人日本自然保護協会常勤理事)       横山 隆一君

   参考人

   (電気事業連合会環境委員会委員長)

   (東京電力株式会社常務取締役)          相澤 善吾君

   参考人

   (早稲田大学大学院法務研究科教授)        大塚  直君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     小林 正枝君

  石田 三示君     石森 久嗣君

  斎藤やすのり君    瑞慶覧長敏君

  玉置 公良君     石井登志郎君

  古川 禎久君     古屋 圭司君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     玉置 公良君

  石森 久嗣君     石田 三示君

  小林 正枝君     山口 和之君

  瑞慶覧長敏君     森山 浩行君

  古屋 圭司君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  森山 浩行君     磯谷香代子君

  山口 和之君     相原 史乃君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     斎藤やすのり君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 動物の愛護及び管理に関する法律の改正を求めることに関する請願(生方幸夫君紹介)(第一五〇号)

 地球温暖化抑止のために国内対策の抜本的転換を求めることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第二六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五五号、参議院送付)


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     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、財団法人日本自然保護協会常勤理事横山隆一君、電気事業連合会環境委員会委員長・東京電力株式会社常務取締役相澤善吾君及び早稲田大学大学院法務研究科教授大塚直君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、申しわけありませんが、御了承ください。

 それでは、まず横山参考人にお願いいたします。

横山参考人 ただいま御紹介いただきました、日本自然保護協会で常勤理事をしております横山隆一と申します。

 本日、環境影響評価法の一部を改正する法律案の審査に際しまして、意見を述べる機会をいただけましたことに厚く御礼を申し上げます。

 お配りしたA3一枚のメモに基づいて意見を述べさせていただきます。

 初めに、私が勤めております財団法人日本自然保護協会は、過去にありました沖縄県石垣島の新空港計画などのサンゴ礁生態系にかかわる環境影響評価ということに長年かかわってまいりました。また、東北や、あるいは日本全国で起きておりました大型のリゾート計画、代表的なのは秋田県駒ケ岳山ろくに計画されたリゾート計画ですが、この中で、山地性大型猛禽類といいますが、イヌワシとかクマタカという絶滅危惧種でありまして、大変広い範囲を動き回る生き物がいるんですが、こういう指標種という生き物を使った環境影響評価など、多くの環境影響評価とそれに伴う社会問題に対応してまいりました。また、中央環境審議会では、今後の環境影響評価制度のあり方という検討が続いておりましたが、これにも意見具申をさせていただいております。

 環境影響評価制度といいますのは、自然性を守ろうとする人たちにとって、大変関心の高い制度であります。

 ここから、意見を申し上げます。

 四つに分かれておりますが、まず一つ目は、生物多様性の保全、確保ということに対する緊急性、それから重要性が高まったということでございます。

 これは御承知と思いますが、先月名古屋で開催された生物多様性条約第十回締約国会議、略してCBD・COP10というふうに言っておりますが、この中で、新戦略計画、略称で、あるいは愛称で愛知ターゲットというふうに呼ばれておりますが、これが決議されております。この中で、全締約国に対するこれから十年間のミッションとして何をするべきかという文言が決まりました。その中身は、生物多様性の損失をとめるために効果的かつ緊急な行動を実施することとされております。

 また、そのための内容、それから達成目標というのが細かく分かれておるんですが、中でも目標の二というふうにされているものは、そこに書きましたとおり、二〇二〇年までに生物多様性の価値が戦略及び計画プロセスに統合されることという目標が書いてございます。それから、目標の五というのがあるんですが、これには、二〇二〇年までに森林を含む生物の自然生息地の損失の速度というものを少なくとも半減させる、可能な場合にはゼロに近づける、また、それらの生息地の劣化と分断というものを顕著に減少するという目標が決まりました。

 また、生物多様性基本法というものが私たちの国にはありますが、事業計画の立案段階等での生物多様性にかかわる環境影響評価の推進というものがその法律の中で規定されていることからも、我が国の今後の環境影響評価制度のあり方、あるいは水準の速やかな向上というものは最も重要な要素の一つと考えられると思います。

 大型のいろいろな事業が自然環境を消失させたり劣化させることは防がなくてはなりません。そして、できれば修復の方向に向けていく時代に入ったと思っております。

 二つ目です。この改正で評価できる主要な点というのを列記してみました。たくさんあるんですけれども、主要なもの六つを書きました。

 一番は、対象事業の範囲が拡大されていること。これには風力発電所が追加されることになっております。交付金が与えられている事業に範囲の拡大があったということであります。

 二番目は、事業の計画段階での環境影響評価の実施の第一歩が踏み出されようとしているという規定になっております。これはSEAと呼ばれておりますけれども、実施の第一歩を踏み出す形で導入されております。

 三番目は、方法書という段階がありますが、社会への説明会が義務化されていること。これは、何をどう調べるかの項目と、その必要性や根拠というものを解説することになりますが、これが義務化されたということは大変評価されております。

 四番目は、評価項目というものがありますが、この選定をする段階で環境大臣が技術的な助言ができるというふうになっている。それから、海面の埋め立てなど許認可権者が地方自治体等である場合、環境大臣から意見を出す手続が加わっていること。環境大臣の発言機会がふえたということは評価点だと思っております。

 五つ目は、方法書、準備書等のインターネットによる電子縦覧が義務化されていること。これは、これまでは出向いて、コピー代をお支払いして、一ページずつめくりながら得ていたものであります。これが電子縦覧になるということは画期的であると思っております。

 六つ目が、保全措置とされたものの、保全措置とされた項目です、事業が着手された後の状況の公表の手続が含められていること。これは、きちんと措置が機能しているのかどうかというのはこれまで実はわかっておりませんでした。したがって、これの公表の手続が含められたことは大きいと思います。

 これらが今後の環境影響評価の手続に含まれ、環境省によって検討や審査の体制が整備される、これは具体的には多様な専門性の確保という点ですが、これが伴うことになれば、自然保護のための一定の機能を発揮してくれると思っております。

 右側のページに移ります。

 三番目です。今回の一部改正と見直しという行為との関係について簡単に述べたいと思います。

 今回の一部改正によっても、望まれている効果というのを十分持つ環境影響評価の方法とするにはさらに改良すべき点が実は多くあります。これは例えば、関係する事業の計画段階の立地の複数案化ですとか、ゼロオプションという何もしないという選択肢を含めるということです。これらをどのように法律の中に規定していくべきかについては、研究をして見直していく必要がある項目となっています。

 しかし、我が国の環境影響評価法については、そこに書きましたとおり、昭和五十五年に、三年の期間を使ったにもかかわらず廃案になり、次にようやく環境影響評価法が成立いたしましたのは平成九年ということで、二十年近くの長期間、閣議決定という極めてあいまいな制度で行われてきた大変苦い経験を私たちは持っております。

 また、望まれる効果を十分発揮していくためには、環境基本法などの上位に当たる法律の規定を変えたり、また、これは例えば、全国計画のない公共的な事業というのがあります。例えば一般の鉄道、これを一体どこに、どういうふうにネットワークさせるかについては全国計画はありません。民間の事業者それぞれにお任せされております。あるいは、全国計画があっても量だけであって、立地の配置計画がないというものは大変数多くあります。または、環境影響評価とその適用除外事業のような、国の最も重要な事業の場合については適用除外にすることができるというふうに読み取れるところがありますが、これらとの関係を明確にする必要があると考えられております。

 完全性を高めたものにしてから改正をするという選択肢もあるんですけれども、高めたものを求めることは重要でありますが、その間これまでの法律のまま進めていくということは不利益が大きいと考えられます。

 この点で、見直しのタイミングというのは、改正法施行後十年というふうに案には記されておりますが、土壌汚染防止法などの規定ではやはり十年なのですが、六年から七年で見直した例があります。このような例に倣って、速やかに今回の改正結果というのを検証し、あるいは方法論を研究し、見直す必要があると考えております。

 最後、四番目ですが、このような環境対策というのは、温暖化、生活環境の保全、生物多様性の保全、この三つの両立というのを目指すべきものではないかということを述べたいと思います。

 この法律の改正で加わったSEA、戦略的環境影響評価を目指す第一歩の手続ですとか、方法書段階の説明会などで、事業者に大変なコストや時間がとられ、経営に負担をかけて、温暖化対策が進まなくなるのではないかという御意見があると伺っております。

 しかし、CSR、企業の社会的責任という観点から、それから国際的に通用する日本企業であるためにも、地域社会や関係者に早い段階できちんと説明ができるかどうか、あるいは事業を実施するに際して生物多様性保全への配慮が的確にでき、義務化されていないものでも行っていく、そういう姿勢というのがあるかないかが、現代社会に通用する企業として必要な要件であろうと思われます。したがって、こういうことが義務化されているいないにかかわらず、やっていく資質が会社には必要であろうというふうに思っております。

 現在の風力発電所、例えば福島県にあったり、あるいは原子力発電所、例えば山口県にあるものは、新聞等で御存じと思いますが、各地で地域の生活環境や生物多様性の保全に抵触する部分が見られ、環境問題の原因となっております。また、現在の発電事業、特に風力を初めとする自然エネルギーを利用して二酸化炭素の削減をやっていこうという、その趣旨というのは賛成なのですが、効果というのには疑問があり、特に、他の国あるいは他の者に火力発電所を減らしてもらうことで成り立つような形に見える。それから、現在のレベルの温暖化対策を続けて、生活環境や生物多様性保全を差しおいて進めるべきものだともし考えるのだとすれば、これは誤りであると考えます。

 二〇〇五年、平成十七年ですが、本法律の基本的事項に追加された、基準達成型からベスト追求型ということへの転換、基準達成型というのは、御承知のとおり、決められた制限を守ればよいというものでありますが、ベスト追求型というのは、できるだけよい状態をつくることを追求するという、これへ転換が行われました。それから、客観性、透明性、わかりやすさの向上というものについての必要性等を強く打ち出しておりますが、これらを強く認識する企業には、今後、社会的プラスの評価が与えられ、利益を生み出す要素になると考えられます。

 トータルに見て効果があって、かつ生活環境や生物多様性の保全と両立する温暖化対策が期待されているのではないかと思われます。

 以上、四つ述べましたが、私は、今回の一部改正については進めていただき、環境アセスメントの制度を、水準を一歩でも上げていくということをお願いしたいと思っております。

 以上で私のコメントを終わりにしたいと思います。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 次に、相澤参考人にお願いいたします。

相澤参考人 電気事業連合会環境委員会委員長をしております相澤でございます。

 本日は、環境影響評価法改正案について電力業界から意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。

 電力業界においては、地球環境問題の解決に向けた低炭素社会実現、これはまことに喫緊の課題であるというふうに認識しておりまして、低炭素社会実現の切り札となるものは、やはり原子力発電の新増設や火力発電の高効率発電設備へのリプレースということであることは間違いございません。そういった意味で、火力発電設備であればリプレースを早急に進めていかなければならない、原子力発電であれば新増設を進めていかなければならないというふうに強く認識しております。

 そのような中で、今回の環境影響評価法改正において、事業構想段階での検討事項の公表を義務づける、いわゆる戦略的環境アセスメント、SEAの導入が低炭素社会実現をおくらせることにもなりかねないことから、大きな関心と並んで懸念を抱いているところでございます。また、民間事業者、とりわけ競争環境にある民間事業者にとって、事業構想段階での検討事項の公表を義務づける戦略的環境アセスメントは、環境への配慮のためとはいえ、まさに経営戦略にかかわる重要情報を開示することになるわけでございまして、事業経営に影響を及ぼすことにもなりかねないというふうに懸念をしているわけでございます。

 お手元の資料に沿って、引き続き御説明いたします。

 まずは一ページでございますが、ここでは、電気事業、すなわち発電所建設に関する現行の環境影響評価、アセスの取り組みについて御説明させていただきたいというふうに思います。

 発電所におけるアセスについてでございますが、アセス法制定以前の昭和五十二年から、省議アセスによりまして他の事業に先駆けてアセスを実施しており、既に百三十三件の実績がございます。また、平成九年のアセス法制定後のアセスにつきましても既に九件の実績があり、私どもの取り組みについては社会の信頼を得ているものと考えている次第でございます。

 二ページ目でございます。現行のアセスでどのような手続が実施されているかを御説明しております。

 発電所の建設においてアセス手続は、環境影響評価法並びに電気事業法で規定されております。

 まず、事業の概要、現状、あるいは調査項目と方法を記載いたします方法書の手続では、住民意見、知事意見を踏まえて経済産業省での審査が行われ、その後経済産業大臣の勧告が出されます。この審査の段階においては、専門家の先生方で構成される環境審査顧問会の意見も公表されます。

 次に、現状調査結果、あるいは予測・評価結果といったものが出てまいります準備書手続では、説明会を経て、住民意見、知事意見を踏まえた経済産業省での審査が行われ、その後経済産業大臣の勧告が出される。この審査の段階においては、専門家の先生方で構成される環境審査顧問会の意見及び環境大臣の意見も考慮されるというわけでございます。

 このように、発電所建設に係るアセス手続では、さまざまなステークホルダーの意見を取り入れており、その意見を踏まえ調査や予測を行い、その結果、アセスを開始した後であっても計画の中止、変更も可能であり、また、その実績もございます。

 三ページでございますが、次に、これらの発電所建設に係るアセス手続を踏まえ、現行のアセスにおいてどのような環境配慮がなされているかについて説明いたしますが、その前に、SEAの意味するところについて考えてみますと、事業に先立つ上位計画、政策レベルでの環境配慮であるとか、事業の位置、規模等の検討段階での環境配慮であるとか、いろいろ解釈があるかとは思いますが、その本質的な意味するところは、事業計画の早い段階からの環境配慮の評価ということではないかと考えております。

 こうした観点から現行のアセスにて説明してまいりますと、まず建設計画公表後に続いて開始される方法書段階においては、事業実施に当たっての背景、経緯及び必要性をできる限り明らかにするとともに、地域特性並びに環境保全の配慮にかかわる検討の経緯及びその内容について把握することとなっており、これに基づき、計画早期段階での環境配慮を行っておるわけでございます。

 例えば、排煙諸元を当初計画より低減することで、大気環境への影響を低減しつつ煙突高さを低くし、煙突本数も二本から一本に変更することなどにより景観への影響も低減した事例、あるいは、資材ヤード等と住宅エリアとの間に工事用仮設事務所を配置することにより、工事中の騒音の遮へい効果を図った事例など、さまざまな環境影響低減のための配慮を行った実績がございます。

 四ページ目でございますが、次に、生物多様性への配慮ですが、発電所のアセス手続の詳細を規定した省令において、「生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素」としまして、「動物」「植物」「生態系」の三つの要素が定められており、我々電気事業者はこれに従って現況調査、予測あるいは保全措置の結果の評価を行い、重要な種及び注目すべき生息域の保全といった必要な措置を講じております。

 生物多様性基本法の第二十五条には、「国は、」中略でございますが、「生物の多様性に影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者等が、その事業に関する計画の立案の段階からその事業の実施までの段階において、その事業に係る生物の多様性に及ぼす影響の調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る生物の多様性の保全について適正に配慮することを推進するため、事業の特性を踏まえつつ、必要な措置を講ずるもの」ということになってございます。

 現行の発電所のアセスでは、この生物多様性の保全について既に適正な配慮がなされていると考えておる次第でございます。

 例えば、計画地で確認した貴重種の移動、移植による貴重種保護等、生物多様性の保全についても適正な配慮を行っておるわけでございます。

 以上のことから、現行の発電所アセスにおいて、その評価項目の一つとして生物多様性の確保も含んでおり、計画早期段階からの環境配慮は十分実施されていると考えておるわけでございます。

 次に、五ページから六ページに参りますが、現行のアセス手続開始後の計画変更についてですが、SEAの議論がなされるときに、よく現行のアセスでは手続を開始してしまえば計画が変更できないという意見が出されますが、実際にはそういうことはありません。配付資料の六ページに中止や変更を行った事例を示しておりますが、先ほども申し上げましたとおり、現行の発電所アセスにおいて、住民の意見、知事の意見、環境審査顧問会の専門家の意見が反映され、地域や専門家、自治体の意見を考慮する仕組みとなっており、これらの意見や評価結果による建設計画の中止、変更も行われております。

 七ページでございますが、こうした中、今回アセス法改正案が提示され、現行のアセスの前の段階で新たに日本版SEAというべき手続が設けられようとしておりますが、電気事業者としては、次のような問題点があると考えております。

 一つ目は、仮に、SEAを建設計画公表前の事業の構想段階における意思決定プロセスの途中で、まさに経営戦略、事業の根幹である技術的ノウハウ、重要情報の開示を求めるものだとすれば、競争環境にある民間事業者としての経営上の利益を著しく毀損することとなります。また、計画の公表により、ケースによってはさまざまな意見が寄せられ、反対運動等も起こることが想定され、投資計画の不確実性が増すことを意味しますので、競争環境にある民間事業にとって、建設計画公表前の事業構想段階におけるSEAは困難であるということでございます。

 今回のアセス改正法では、地点以外でも、燃料種や出力など事業計画の根幹を決定する前のタイミングでSEAの実施を求められることも懸念されるため、主務省令を定めるに当たっては、中央環境審議会の答申でもありますように、事業の種類、特性に応じた柔軟な制度というものが必要不可欠であると考えてございます。

 二つ目は、発電所建設のための意思決定プロセスには、地点、燃料種、出力、発電方式等の重要な要素がありますが、エネルギーセキュリティー及び立地制約等からその選択肢が限定されるため、すべての条件を満たす複数のプロジェクト案というのは現実的には存在いたしません。したがって、事業計画の根幹である地点、燃料種、出力、発電方式については、複数案の提示というものは困難であると言わざるを得ません。

 特に地点につきましては、もし仮に複数案が存在したといたしましても、建設計画公表の前後にかかわらず、それを提示することによって地元等の混乱を招くことになり、さらには将来の開発地点をも失うおそれがあることから、地点の複数案の提示、公表は不可能でございます。

 複数案については、先日の衆議院環境委員会で自民党の齋藤議員が御質問され、それに対して松本環境大臣が、原則的には複数案を対象に評価を行うこととすべきであるが、地域の自然的状況、社会的状況等から複数案の設定が現実的でない場合には、単一案をもって検討することも許容されていると回答されました。地点についてのこの御発言は我々といたしましても歓迎いたしますし、改正法案もこの方向であると認識してございます。

 また、施設の配置等については、配慮書手続の趣旨にのっとり可能な限り検討を行ってまいるものの、現実的には施設の配置においても、例えば十分な開発区域を確保できない等、さまざまな制約から複数案を設定できない場合もあると考えております。このようなケースも許容される制度設計となるようお願いいたします。

 三つ目は、現行のアセスの前に別途SEAの手続を義務づけるということは改正案に盛り込まれましたが、たとえ建設計画公表後であっても、先ほど御説明しましたとおり、従来、方法書で対応してきた環境配慮の手続を別途方法書の前に課すこととなり、さらなるアセス期間の長期化やコストアップといった計画の不確実性を増大させることにつながり、低炭素社会実現に向けて不可欠な原子力発電所の新増設や火力発電所の高効率プラントへのリプレースを遅延させるおそれがあるということでございます。

 八ページに参ります。

 火力発電所のリプレースにつきましては、平成二十二年九月十日に閣議決定されました新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策に挙げられた規制・制度改革事項の一つにある「発電所のリプレースの際の環境影響評価の迅速化」として、環境影響評価に要する時日の短縮が可能となるような手続の合理化を行うための方策の検討を行うというふうに伺っております。本検討については、火力の高効率発電へのリプレースを促進する意味で重要であることから、ぜひとも検討を進めていただきたいというふうに考えてございます。

 もちろん、環境への配慮が十分行われているかどうかということを確認するという観点から、アセスをしっかりと実施することは重要であり、私ども電気事業者も従来どおり早期からの環境配慮を十分実施する所存でありますので、今回の検討で、手続の合理化が図れる部分についてはしっかりと合理化していただき、アセス期間の短縮にもつなげていただきたいというふうに考えております。

 ただいま申し上げました問題点の二点目と三点目に関しましては、今回の改正法案では、複数案の検討内容や一般からの意見聴取の方法など、詳細については基本的事項や主務省令で規定されることになっております。したがって、これらを規定するに当たっては、燃料種、出力、発電方式等の提示不可能な複数案の検討が規定されることや、アセス手続がさらに長期化するような過重な手続が規定されることが懸念されますので、こういうことに配慮した、事業の種類、特性に応じた柔軟な制度としていただくようお願い申し上げます。

 九ページでございます。

 最後に、繰り返しになりますが、我々電気事業者は、現行のアセスにおいて、計画早期段階から生物多様性も含め環境配慮を十分実施してきており、今後とも十分な環境配慮を実施していく所存でございます。

 また、提示不可能な複数案の検討や、アセス手続がさらに長期化するような過重な手続が規定された場合、電源開発の着実な推進が妨げられることが懸念されます。我々電気事業者としては、地球環境問題の解決に向けた低炭素社会実現が喫緊の課題であると認識しており、低炭素社会実現の切り札となる原子力発電所の新増設や火力の高効率発電へのリプレースを早急に進めていかなければならないと考えており、今回のSEA手続導入により低炭素社会実現を遅延させないよう、十分な配慮が必要であるというふうに考えておることを繰り返し申し上げさせていただきます。

 以上、本日は、環境影響評価法改正案について意見を述べさせていただきました。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

大谷(信)委員長代理 ありがとうございました。

 次に、大塚参考人にお願いいたします。

大塚参考人 早稲田大学大学院法務研究科教授の大塚直でございます。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。環境影響評価法の一部を改正する法律案について、私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 お手元の、パワーポイントのスライド版とそれから文章のもの、二つレジュメを用意させていただいております。適宜、両方御参照いただければと思いますけれども、パワーポイントの方を使ってお話をしていきたいと思います。

 時間も限られておりますので、最初の現行アセスの特色等については飛ばしまして、スライドの六から申し上げていきたいと思います。

 三ページのスライドの六でございます。

 現行アセスメントの問題点について、まず簡単に申し上げておきます。特に不十分であったという点につきまして、三点ございます。

 一つは、代替案としての複数案の検討が義務づけられていないということでございます。二つ目は、環境大臣の意見につきまして、評価書の段階にとどまっていたということでございます。第三に、事後調査につきまして、規定は置かれていたとはいえ、事業者さんの方の任意性の極めて強いものであったということ。以上三点が特に重要な問題点であったと考えております。

 改正法案がどのような内容を持つものかについてでございますけれども、これもちょっと時間の関係で飛ばしまして、スライドの十一、六ページの方を御参照いただければと思います。

 改正法案の主要点でございますけれども、箇条書き的に申しますと、次のとおりでございます。

 まず第一に、対象事業につきまして、三位一体改革の一環としての補助金の交付金化をしていることとの関係で、交付金の交付対象事業を法対象事業とするということでございます。

 第二に、計画段階配慮書手続を新たに設置するということでございます。第一種事業を実施する方については、事業の位置、規模等を選定するに当たって、環境の保全のために配慮すべき事項について検討を行い、計画段階配慮書を作成することを義務化するということでございます。

 第三に、方法書段階での説明会の開催を義務化するということでございます。

 第四に、評価項目等の選定段階で、環境大臣が主務大臣に対して技術的助言をすることができるようにするということでございます。現行制度におきましては、環境大臣の意見は、先ほど申しましたように評価書の段階にのみ述べられることになっておりますけれども、評価項目等の選定段階においても述べることができるようにするということでございます。

 第五に、環境保全措置等の公表等の手続を義務化するという点であります。

 さらに、その他の点といたしまして、一つ目は、インターネットの利用等による環境影響評価図書の電子縦覧の義務化をするということであります。

 二つ目に、政令で定める市から事業者に対して直接意見が提出できるようにするということでございます。これは、地方分権を推進するという趣旨からでございますけれども、事業の影響が単独の政令で定める市の区域内にとどまるという場合にのみ、このような直接の意見の提出を認めるという考え方でございます。

 三つ目でございますけれども、公有水面埋立事業のように、地方分権推進一括法の施行をきっかけにして、環境影響評価手続の中で国の関与がなくなってしまったというケースにつきまして、許認可権者である地方自治体が国からの助言を求めるように努めなければならないという規定を置くということであります。これによって、その中で環境大臣の意見が提出できるようになるというわけであります。

 さて、評価と論点の方に移りたいと思います。

 改正法案の評価でございますけれども、スライドの十三でございます。

 今回の改正は、現行法の制定のときに残された課題の重要な部分について対処しようとするものでありまして、基本的に、積極的に評価できると考えております。さらに、今回の改正は相当大きな改正であると認識しております。

 まず第一に、計画段階の配慮書の手続の導入でございます。

 これにつきましては、代替案の意味での複数案を実質的に義務づけるというものでございまして、法律に基づく環境影響評価制度が欧米に言います環境影響評価本来の目的をようやく果たし得るものになるということは、大変望ましいことだと考えております。より早い段階での環境面での検討を行うことによって、環境影響の回避を図ることができるようになるということですので、大きな効果が期待できると思います。

 二つ目の点でございますけれども、第三者機関と言うことができる環境大臣の意見を述べる箇所をふやしたということも重要な進展であると考えております。

 現行法におきましては、環境大臣は、先ほども申しましたように評価書のところでだけ意見を言う機会がございましたが、今般の改正案におきましては、配慮書、方法書、評価書、事後調査の報告書という四つの箇所で意見を言えるようになったわけでございます。

 三つ目でございますけれども、市民の意見聴取に関しまして、現行法は既に、閣議要綱のころとは違って、方法書段階と準備書段階の二つの意見聴取の機会を設けております。さらに、関係地域以外の者の意見聴取も認めております。

 しかし、今般の改正案によりまして、配慮書の段階でも意見聴取の努力義務を課したということでございまして、これによって意見聴取の機会は三回となります。また、縦覧に関しまして電子化をするということ。それから、方法書段階での説明会を義務づけている、こういうことは、住民に、事業の内容を理解して意見提出の基礎をつくる機会を設けたことになります。さらに、電子縦覧によりまして専門家もアクセスしやすくなるということがございますので、これらの点には大きな効果が期待できると思います。

 四つ目でございますが、環境保全措置等につきましては、これも先ほど申しましたように、従来、事業者の自主性にゆだねられていたということがございますけれども、許認可権者に対する報告の義務づけ、公表の義務づけを今回の改正案は導入しようとしているということが重要でございます。

 なお、先ほども御説明がありました発電所のいわゆるリプレースの問題について、若干申し上げておきたいと思います。

 確かに、原子力発電とか高効率の火力発電は温暖化対策として重要でございます。しかし、まず第一に、道路とか鉄道などでも同じような問題があるということを申し上げておきたいと思います。それから二つ目に、発電所につきましては、電気事業法の手続を簡素化することもむしろ検討してよいのではないかということも指摘しておきたいと思います。この問題につきましては、中環審の答申にもございますように、ベスト追求の観点を踏まえながら、方法書における評価項目の絞り込みを通じた環境影響評価に関する期間の短縮など、弾力的な運用で対応するということが必要であると考えられるわけであります。

 以上のうち、特に注目されますのは、第一点の計画段階配慮書の手続の新設と第四点の環境保全措置等の公表等の手続の義務化でございます。この二つについて、やや詳しく触れておきたいと思います。

 まず、計画段階配慮書の手続の新設でございます。

 今般の制度の見直しにおきましては、実績の積み重ねがある個別事業の位置、規模または施設の配置、構造等の検討段階を対象としたSEA、戦略的環境アセスメントの導入を図ったものでございまして、これは、欧米で導入されているSEA、つまり、より上位の計画や政策段階での環境影響評価とは必ずしも一致しません。その意味で、日本版戦略アセスメントでございます。この点は、計画段階配慮書について民間事業者が対象となっていることとも大いに関係がございます。

 計画段階配慮書の手続の導入の最大の眼目は、代替案の検討を基本とすることでございます。条文上は「一又は二以上」とありまして、正確には単数案もあり得るわけでございますけれども、基本は複数案であると考えられます。区域以外にも、施設の構造とか配置等の内容が含まれます。

 この点に関しまして、現行の国の環境影響評価におきましては複数案の検討が八割を超えていると言われているわけでございますけれども、これは環境保全措置を含めておりまして、欧米で言われているような代替案ではございません。代替案に当たるものはごくわずかでございます。そして、従来の環境影響評価におきましては、早期段階での、早い段階での案の選定に関しまして市民の関与とか主務大臣など第三者の参画がなく、環境影響の低減が図られなくて問題になったという事例が存在しておりました。また、方法書の段階では既に事業の位置、規模、配置などの枠組みが決定されておりますところから、環境影響の回避、低減などが十分でないという傾向があることが今回の改正案に直結しているわけでございます。

 代替案は、環境影響評価の先進国であるアメリカでは、環境影響評価のハートである、核心であるというふうに言われていまして、今般の法改正によりまして、代替案という意味での複数案が基本的に検討されるということ、つまり、回避を含めて対応するということになりましたら、環境配慮の促進に格段の効果があると考えられるわけでございます。また、早い段階での環境面での検討が行われることによりまして、事業者がより柔軟な措置をとるということが可能になり、環境影響の回避を図ることができるようになります。生物多様性基本法が、事業計画の立案の段階等での生物の多様性に係る環境影響評価の推進について規定していることからも、本法のこのような改正が求められていると考えられます。

 もっとも、改正法案におきます計画段階配慮書手続の導入に対しましては、幾つかの論点がございます。

 第一に、配慮書としてはどの程度のものが要求されるかという問題がございます。

 この点につきましては、配慮書の段階では、早期の段階でございますので、既存の情報からの複数案が検討されるのに対しまして、その後の方法書の段階ではより調査が進んだ段階での複数案が検討されるわけで、両者は違っていると考えられます。例えば、埋め立ての場合には、配慮書の段階では藻場があることがわかる程度、方法書の段階では、水位が上がるかどうかなど、より詳細な調査をした上での判断がなされることになると考えられます。

 他方、配慮書が非常に大ざっぱなものになるのではないかという懸念もございますけれども、この点につきましては、配慮書の内容は後の方法書の方に反映されますので、もし配慮書と方法書が大幅に違うということが出てきますと、市民の方から直ちにそれが明らかになってしまうということになります。また、方法書につきましては、今回、事業者が説明会を開き説明する責任が発生しますので、事業者の方も大ざっぱな対応をするわけにはいかなくなるということが予想されるわけであります。

 第二に、今般、計画段階配慮書の手続が入ることによって、事業全体の遅延に影響して、また、コストがかかるようになるのではないかという問題がございます。

 この点につきましては、環境影響評価の手続はそれだけで独立して行われるわけではなくて、ほかの法令の手続とか自治体との調整など、事業の実施に当たって不可欠な手続と並行して進められるわけでございまして、環境影響評価によって時間がかかる部分というのはそれほど長くはないと考えられます。

 また、今般導入される予定の計画段階配慮手続に要する期間につきましては、現在でも方法書を準備する以前から既存情報などを用いた調査が行われていることが多いことから、半年程度までの増加にとどまると考えられます。

 このように、半年程度までの期間の増加はあり得るといたしましても、むしろ、後になって時間がかかるよりも、早目に市民の意見を聞いて、それを参酌して合意形成をした方が、結局は早く事業を実施できると考えられます。

 例えば、高速横浜環状北線道路につきましては、パブリックインボルブメントをせずに手続に入りまして、準備書段階で市民から二十九万通の意見が提出されました。一方、高速横浜環状北西線道路につきましては、パブリックインボルブメントをして十三のルートを提案して比較検討したところ、意見はほとんど来ず、特に反対運動もなかったということがございます。このように、早い段階から市民意見を聴取するということは、合意に基づく事業の円滑な実施につながると考えられます。

 なお、既存情報による調査が主になるところから、配慮書手続の新設による金銭的負担、コストの増加というのは限定されたものになると考えられます。

 第三に、我が国で計画段階配慮書の手続を導入しても、それほど離れた場所での複数案というのは、国土が狭いこと等もあって、検討できないのではないかという問題がございます。

 これにつきましては、例えば、生物多様性について見ますと、絶滅に瀕した種が特定の条件を満たしたホットスポットにしかいないことが多いということを考えると、少し離れた場所に設置するというだけでも大きな意味があると考えられます。

 第四に、配慮書手続の導入によって、事業を中止させることができるかという問題がございます。

 これにつきましては、もちろん、場合によっては事業者がそういうふうに判断することはございますが、それは事業者がさまざまな状況を勘案して判断された結果ということでございます。また、事業の許認可等の意思決定に当たっては環境影響評価の結果が適切に反映されますけれども、行政庁の意思決定におきましては、環境面だけでなく、ほかの公益も含めた総合判断によって行われます。このように、事業が中止されるかどうかということは、まさに個々のケースごとの判断とか意思決定の結果行われることでございまして、環境影響評価と直結する問題ではないと考えています。

 二つ目の今回の目玉でございますけれども、環境保全措置等の公表等の手続の義務化ということがございます。

 事後調査というのはそもそもどういう利点があるかということについて、若干申し上げておきたいと思います。

 事後調査は、まず、評価書の内容について事後的に検証を図ることができるという、当該事案についての問題ということがございます。さらに、予測し得ない要因による環境影響の回避とか周辺住民とのトラブルの防止が可能になるというような効果もございます。さらに、その後で出てくる事案との関係で、予測の手法の改善につながるということがございます。また、ミティゲーションの実施状況とか効果の確認が可能になるという利点もございます。

 このように、事後調査、環境保全措置等というのは非常に重要であるわけでございますけれども、現行法におきましては、事後調査の結果、環境影響が著しいということが明らかになった場合に環境保全措置をとることを準備書、評価書に記載しておき、それによって、必要に応じて事後調査等を行うとしています。この場合、事後措置についての準備書及び評価書の記述は環境の保全のための措置に関する指針に従うということが必要になりまして、許認可等の際にはこの点が考慮されることになります。しかし、実際に事後調査、事後措置を行うのは許認可等の後であることからすると、この方法では実効性に疑問の余地もございます。また、現行制度におきましては、行政とか住民等が環境保全措置や事後調査の実施状況を把握するということは難しい状態にございます。

 今般の改正案によりますと、環境保全措置等が公表され、許認可権者に報告されるということになりますので、許認可権者が事業者に対して適切な指導を行うことが期待されます。これによって、環境影響評価手続の実効性が確保され、事業の実施における環境配慮が促進されると考えられます。特に、環境保全措置等が失敗に終わった場合には、公表義務を課するということは相当なインパクトがあると考えられます。

 なお、事後調査の終期はどういうふうに判断されるかという問題がございますけれども、この点につきましては、最終的には事業者が判断するものと考えられます。事業の種類によって異なってくると考えられますので、基本的事項及びこれに基づく省令で整理されると思われます。

 最後に、結びにかえまして、簡単に幾つかのことを申し上げておきたいと思います。

 本法が将来の課題として残したものもまだ少なくございませんけれども、環境影響評価に伴う時間的、金銭的なコストについても一定の配慮はせざるを得ないということはございますし、また、本法が本来目的としておりますベターデシジョンに向けて、事業者と住民とがコミュニケーションをとり合えるような運用方法を我々自身の手でつくっていくという必要があると考えています。そのためには、制度の改変を一歩一歩行わざるを得ないという面があると考えられます。国土交通省の那覇空港等におけるパブリックインボルブメントの手続はその一例でございます。欧米の先進的な制度を取り入れるということは極めて重要でございますけれども、他方で、我が国には一九九九年の法の施行から十年以上運用してきた経緯がございまして、その実施状況を踏まえて、不断に前進していくということが必要であると思われます。

 将来的な課題として残されたものとしましては、四つほど挙げておきたいと思います。

 一つは、欧米で行われているような本格的なSEAの導入ということがございます。二つ目に、対象事業としてダム等の取り壊しを入れるということがございます。これは政令事項ではないかと思います。三つ目に、行政庁が許認可等を行った場合に、行政庁が環境影響評価の結果をどのように考慮したかについて公表していただくということがあると思います。四つ目に、アセスメントに関する不服申し立てとか訴訟を導入するということがあります。

 もっとも、環境影響評価は業種によって異なるということを考えますと、将来の改正に当たりましては、各業種について、SEAから事後調査までのいわゆるフルのアセスメントが幾つか出てくること、少なくとも三事例ほどは各業種について出てくるということが望ましいと考えております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

小沢委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。工藤仁美君。

工藤委員 民主党の工藤仁美でございます。

 本日、三人の先生方には、大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。

 早速ですけれども、質問に入らせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回の改正案では、アセスメントの過程での情報の公開、情報へのアクセス、市民の参加といった点について、私はかなりの前進が見られたと思っております。私は、特に、各段階における電子縦覧の義務化、また方法書段階での説明会の開催の義務化といったものを評価したいと思っております。といいますのは、その事業が住民や市民に受け入れられ、不要なトラブルを避けるといった意味でも、これらの点について評価をしたいと思っております。

 環境アセスメントの実効性を高めるためには、さらにアクセスしやすい情報公開と市民参加を進めることが求められると思っておりますが、そこで、横山参考人と大塚参考人にお尋ねいたします。今回の電子縦覧の義務化、また方法書段階での説明会の開催といった改正点も含めまして、環境アセスメントにおける情報公開と市民参加について、それぞれ御見解をお聞かせいただければと思います。まず、横山先生からよろしくお願いいたします。

横山参考人 横山でございます。

 私も御説明を申し上げた中に入れたと思うんですけれども、今回の電子縦覧それから説明会の開催、これについては、一つは情報の公開という点で、なるべく早い時期に細かな情報が説明されるという機会はできるだけ多い方がいいと思います。

 電子縦覧につきましても、今までの重たいファイルによる閲覧というのは、本当に、生データから大事な最後の結論の一行まで、どこにあるのかというのを手で重たい報告書を持ちながら見なくてはいけなかったというところから、大変大きな前進になるかと思います。そういう意味で、情報をとても細かいものまで必要な方にもサービスは上がりますし、それから、要するに結論と要点を知りたいという一般の方にもきちんと情報が届くようになりますし、情報公開の点で非常に前に進むであろうと思います。

 それから、市民参加という点については、やはり大きな事業というのは、市民に受け入れられ、その地域にとってプラスになり、その地域の人たちの誇りになるような事業でなくてはならないと思いますので、そういう意味では、あらゆることが市民参加で行っていくことになろうかと思います。例えば、その現場で何が起こっていくのか、何か事業をやった後のモニタリングというのが入っておりますが、そういうものも、その地域に住んでいる市民の人たちの協力がもしあるとしたら、何かおもしろいことがあったり、あるいは困り事が起きたりといったときに、その困り事の要点というのがすぐさま事業者に連絡をされる、そういう効果だって期待できると思うのです。したがって、市民参加の観点からも大変前向きだと思っております。

 以上でございます。

大塚参考人 どうもありがとうございます。大塚でございます。

 私も、今回の電子縦覧及び方法書の説明会の義務化につきましては、市民参加、住民参加という意味で大きな前進であると考えております。

 アセスメントの意見を提出する際に、情報がないと、意見を提出しても余り重要な意見が提出されないということになってしまいますけれども、今般の改正案による前進によって、住民の意見が充実したものになると考えられまして、大きな市民参加の基礎ができると思います。

 さらに、先ほどもちょっと申しましたように、これは世界じゅうに見られるようになるというふうにも言えますので、専門家も見られるようになるという点も非常に大きいと思います。アセスメントによって専門的な知識を持っている人が情報を提供してくれるということも大きな意味がございますので、そのような観点からも重要な前進であると考えています。

 さらに、方法書の説明会の義務化につきましては、方法書の段階で五百ページを超えるような資料が出てくるというようなこともございまして、そのようなことになってまいりますと、住民の方も、意見が言いたくても何が重要なのかよくわからないということがございます。今般、説明会を義務化するということによって、この点に関しても住民が意見を言うという観点から大きな前進であると考えております。

 以上でございます。

工藤委員 大変ありがとうございました。

 続きまして、相澤参考人に二点についてお尋ねをいたします。

 まず、発電所というのは極めて環境に対する影響が大きい施設であり、環境アセスメントにおいても大変重要だと思っております。しっかりしたアセスメントを行うには、ある程度の時間といいますか期間が必要だと思いますが、先ほども、相澤参考人におかれましては、これまでの実績について件数などもお話をいただいておりますが、過去の実績として、通常、発電所の環境アセスメントにどのぐらいの期間を要しているんでしょうか、ぜひお教えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

相澤参考人 お答えします。

 おっしゃるとおり、発電所、火力発電所につきましても、原子力発電所につきましても、環境に与える影響というのは決して少なくないわけでございます。十分なアセスを実施していくというのはおっしゃるとおりでございます。それで、その期間でございますが、大体、短くて三年、長くて五年というのが標準的なパターンでございます。

 以上でございます。

工藤委員 ありがとうございました。

 相澤参考人に重ねてお尋ねしたいんですけれども、先ほど御説明いただきました資料の中で、一ページ目に省議アセスの実績と件数が書かれております。今三年から五年というふうに教えていただいたのですが、この中で特に長期にわたって期間を要したというようなものがありましたら、簡単に事例でも御説明いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

相澤参考人 お答えします。

 一言で申し上げますと、残念ながら、一番長いところで何年ぐらいかかったのかというものがデータとして手元にございません。大変申しわけございません。ただ、長くても大体五年ぐらいということでございまして、途中で中断したというのはまた別にありますけれども、そうじゃなくて、継続的にやっていてそれ以上というのは、なかなかなかったというふうに認識してございます。

工藤委員 ありがとうございました。

 相澤参考人にもう一点お伺いしたいんですけれども、先ほども横山参考人のお話にもありましたけれども、現在、企業の社会的責任、CSRというものが非常に重視をされていると私は思っております。この意味では、環境アセスメントへの取り組みというものもますます重要になっているのではないかと思いますけれども、この点について、CSRの観点から、相澤参考人にお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

相澤参考人 お答えします。

 大変幅広い御質問でございますので、なかなか御期待に沿えるような答えが申し上げられるかどうかでございますが、企業のCSR、とりわけ電力会社におきましてのCSR、これはもちろん、すべての企業と同様に大変重要なものであるというふうに考えております。

 とりわけ電気事業におきましては、まさに多くの方々の御支援と御協力の上に成り立っている事業である。同時にまた、お客様も大変多くの方がいらっしゃる。そういった意味で、他の企業以上にCSRというものが重要であるというふうに考えてございます。

 そういった意味では、よく私ども、エネルギー供給者として三つのEというものを重要視しております。一つは、エネルギーセキュリティーの確保。もう一つは、経済性の確保、エコノミーですね。そしてもう一つは、エンバイロンメンタルということで環境性の確保という、この三つを非常に重要なものと考えており、どれもがベストな状態になるように、我々としては日夜努力をし続けているわけでございます。

 そういった意味で、環境アセスメントというのは環境を重要視するという、最も大事なものの一つであるというふうに認識しておりまして、今後とも環境アセスメントのより質のよい進め方というのを目指してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

工藤委員 大変前向きといいますか、意欲的なお答えをいただきまして、ありがとうございました。

 先ほど来、相澤参考人もお話をされていますように、発電所というのは極めて環境に対する影響が大きい施設でありまして、また、電力会社というのは、今御発言にもありましたように、公益性が高く、社会的存在の大きな企業ですので、どうぞ今後も前向きにしっかりと環境アセスメントに取り組んでいただきますよう、私の方からもお願いをしておきます。ありがとうございました。

 今、相澤参考人にお尋ねをしましたところ、発電所のアセスというのは非常に長期間を要する、三年から五年というお答えでしたけれども、発電所に限らず、各種の対象施設についてそれぞれ複数の事例が蓄積されるには、ある程度の年数といいますか期間が必要になるのではないかと考えられます。この点も踏まえまして、大塚参考人にお尋ねをいたします。

 大塚参考人は審議会の委員もされており、今回の法改正の準備段階、検討にもかかわってこられました。今回の法の見直しの際の検討におきましては、例えば各種の対象施設についてそれぞれ複数の事例を蓄積するなど、一定程度の実績の蓄積があることが有効な議論を行うためにも必要でないかと思っておりますが、この点についてはいかがでしょうか。大塚参考人の方からよろしくお願いいたします。

大塚参考人 お答えいたします。

 今回の見直しの検討におきましても、今までの現行のアセスメントの状況を踏まえた上で検討を進めてまいりました。例えば、代替案という先ほど私が強調した点につきましても、代替案を検討している事例はどのぐらいあるのか。最近のパブリックインボルブメントというのはどういうふうに行われているのか。さらに、戦略アセスメントのガイドラインというのが二〇〇七年に環境省の通知でできておりまして、国交省の方もそれで通知を改正したりしておりますけれども、それがどういう状況にあるのかということを踏まえて、検討を進めてきたところでございます。

 ですから、今おっしゃっていただきましたように、今後何か改正をするということを行うときにも、実際の事例がある程度蓄積するということが非常に重要であると考えております。

 ありがとうございます。

工藤委員 ありがとうございました。

 最後になりますけれども、先ほど大塚参考人のまとめのお話にもございましたけれども、私は、アセス法の意義というのは、国が法律で何でもかんでも規制するというのではなく、その事業を行う事業者みずからが環境への影響を配慮してアセスをするというところにこの法律の意義があると思っております。また、その施設、建物が建設される地域住民また市民というものは、早い段階からその計画を知ることによって、市民、住民の立場でさまざまな情報を提供し、また、その参画にかかわっていくといいますか、そういった事業者と市民とが相まって、今後、地球温暖化の防止、それから生物多様性の保全というものにかかわっていくというのが、私は市民社会の理想的なあり方ではないかというふうに思います。

 私のつたない私見かもしれませんけれども、この点について、大塚参考人とそれから横山参考人に一言ずつ御所見をお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

大塚参考人 お答えいたします。

 今おっしゃったとおりでございまして、環境アセスメントの根本のところは三点あると私自身は考えております。一つは、今おっしゃっていただいたように、事業者自身がアセスメントを実施する、その中で環境への影響をできるだけ低減していくという点でございます。二つ目は、今御指摘にはなかったんですけれども、そのアセスメントの結果を行政庁の許認可等に反映するという点でございます。実は、この点も結構大きなところでございます。第三が、今またおっしゃっていただいたように、アセスメントを実施していく中で、その手続の中で住民の意見を聞いてベターデシジョンをしていくという点でございます。

 この三つがアセスメントの根本でございまして、おっしゃっていただいたとおりだと考えているところでございます。

 以上です。

横山参考人 お答えいたします。

 私も、事業者の方々は今でもいろいろな努力をされていると思いますが、より積極的な自身の御努力というのが求められていると思いますし、そうやっていかなければ社会からの信頼を得るということは難しいのではないかと思います。

 事業者の方々が大変ないろいろな努力を行っていけば、各種の専門家たちというのも、その事業に協力をしていく。賛成をするという意味ではありませんが、何かわからないことが専門分野の中で起きたときに、助言をするというような協力は求められると思います。

 また、住民の方々とのコミュニケーションというのは何よりも大事なものだと思いますので、この手続の中で住民の意見を集めるという手続が幾つか入りましたが、これらを心を込めてやることで住民の人たちの賛同を得るという努力をしていくことがこれからの時代は何よりも重要なことだと思っております。

 以上でございます。

工藤委員 まだ時間がありますので横山参考人にお尋ねしたいんですけれども、今言われた点について、先生も自然保護の活動を長くされてこられたと思いますので、これまでの御経験で何かお教えいただけるような事例がございましたら、ぜひお話しいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

横山参考人 これまで、例えば公的な、公共事業をされている方々が何度も地域の説明に出向いたりというような事例というのは確かにございます。手続の中でやればよい、あるいは、義務化されていることのクリアを目標にしている仕事が多い中で、それではなく、ベスト追求型という言葉になっておりますが、こういった行為をされている方々というのも確かにいらっしゃいます。

 これまでの環境アセスメントの事例の中でモデルにできる、あるいはお手本にできるようなものというのは、残念ながらまだないのが実情だと思いますが、今回の改正の結果として行われていく手続の中では、そういうものが次々に出現してくるということを期待しております。

 以上でございます。

工藤委員 ありがとうございました。

 大変お答えしづらい質問も私したかもしれませんけれども、参考人の皆様方には本当に貴重な御意見を賜りまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小沢委員長 次に、福井照君。

福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。

 まず、相澤参考人からお伺いをさせていただきたいと存じます。

 きょう、相澤さんからお配りいただいたレジュメの中で、「SEA制度に対する問題点」ということで、「構想段階におけるSEA(公表)は困難」であるということで、キーワードは、競争環境にある民間事業者がアセスメントを行うということだと思います。

 そんなことを言ったって、諸外国でやっているんだから、そして、構想段階から、計画段階からやれば、もっと事業が早くなるのではないかという御意見もあり、ということで、今般の法律を今質疑させていただいているわけです。

 まず、事実関係として、相澤さんが今認識しておられる、海外での競争環境にある民間事業者を対象としたSEA、これが行われているのか、行われていないのか。まず、この御見識からお伺いさせていただきたいと思います。

相澤参考人 よくそういった、SEAの導入は世界の常識であるというようなことをおっしゃる方がおるのでございますが、競争環境にございます民間事業を対象とした場合ということで考えた場合には、その考えは本当にそうなのかというふうに疑問を持っております。

 なぜなら、競争環境にある民間事業者に対して、事業アセスの前に今回の改正案のような配慮書の手続を求めているという国は、私としては、ないというふうに認識をしております。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 ですので、この委員会でさんざん議論をしております柔軟な制度というのが必要になるというふうに、相澤さんも先ほどおっしゃいました。

 そこで、また前提条件としてお伺いをさせていただきたいのは、地点の複数案、例えば原発のロケーションの複数案、これを出すとどういう問題があるのか。きょうも少しおっしゃいましたけれども、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。

相澤参考人 発電所の建設計画というのは、環境保全性それから経済性といったものにも十分配慮しながら、安定供給を果たすために広範な検討を行いまして、その結果、最良の選択となるような計画の絞り込みを行い、その上で、地域の関係者の方との調整や、あるいは用地の取得の見通しなども含めて、最終的に総合的な判断をしているわけでございます。

 こういうプロセスを考えますときに、プロセスが完了する前に複数案、例えば仮想地点等も含めて何点かを公表した場合、とりわけ地元関係者を中心としてさまざまな混乱を招くことになり、その当該地点はもちろん、将来、次の地点として考えている候補地点をも失いかねないという懸念がございます。そういったことで、発電所の立地に多大な影響を与えるものというふうに我々は評価、認識しております。そんなことで、なかなか難しいというふうに考えておる次第でございます。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 では、地点はいいというふうにおっしゃっていただいたとして、さらに、燃料種、発電方式、そして出力について、地点以外のこういう項目について複数案を提示する、提示しなさいというのが概念になっているわけですけれども、このことについてはどういう困難があるのか。具体的に、また相澤さんの方から御紹介いただきたいと思います。

相澤参考人 今おっしゃったような出力ですとか燃料ですとか発電方式といった複数案の検討につきましても、地点と同様に、エネルギーセキュリティーあるいは立地制約等からその選択肢が限定されてくるわけでございます。したがって、最終的にすべての条件を満たす複数のプロジェクトというのは現実的にはないというのが実態でございまして、そういう観点から、複数案の検討というのは困難である、こういうわけでございます。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 そしてさらに、松本大臣からの我が齋藤議員の質問の答弁にもございました。わかりました、地点と、先ほどおっしゃったような問題があるので、燃料種、それは一つで結構ですと。

 では、例えば発電所のレイアウトといった、施設のロケーションは決めておいて、その中身、配置や構造についてならば、複数案を提示し、検討し、そしてアセスメントの手続のフローに乗せることができるのかどうか。さらにまた具体的なイメージが出ますように、相澤先生の方から御紹介いただきたいと思います。

相澤参考人 レイアウトにつきましては、建設におきまして施設の配置や構造についてということも含めて申し上げますと、環境への影響を可能な限り低減しつつ、社会的、経済的な観点から最適な発電所を開発するという目的から、これまでも十分な検討を行ってまいりました。

 今後とも、しっかりと施設の配置や構造について検討を行っていきたいと思っておりますし、配置、構造につきましては、複数案というものもある程度可能であるというふうに考えております。

 ただし、施設の配置は、例えば十分な開発区域が確保できなかったり、あるいは、古い発電設備を取り壊して新しいものにつくりかえる、先ほどのリプレース、こういったことになりますと、限られた敷地の中での話になりますので、必ずしも複数案が提示できないということはあることも御理解いただきたい。そういった前提で、複数案というのは不可能ではないというふうに考えております。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 レジュメの一ページ目にございます、今まで百三十三件の省議アセスを実施された、そして法アセスも九件実施された。社会的な信頼を得ているというふうに自覚、実績がございますということですが、しかしそれでも、計画段階、構想段階からアセスメントを強要されると、経営戦略についての重要情報を開示することになりかねない、このことについて大変大きな懸念を持っているということを、冒頭、最初に主文として相澤さんがおっしゃっていただきました。

 それでも、しかもなおかつ、競争環境にある民間事業者として、このSEAの手続がもし強制されても、いわば国益、国家意識を持って公益事業をやっていらっしゃる、電気を供給されている事業者として、国家に御協力をしましょうという覚悟でいろいろ御答弁いただいたわけでございます。

 そこで、さらにまた、実際にやるときに、このSEAが導入されたら想定される事業者としての新たな負担はどのようなものか、具体的にどういうふうに想像されているか、御紹介いただきたいと思います。

    〔委員長退席、横光委員長代理着席〕

相澤参考人 おっしゃるとおり、私ども電気事業者といたしまして、先ほども少し申し上げましたが、エネルギーの安定供給、それから経済性、どちらも、これは多くの方々に御利用いただいている電気でございます。さらに、エネルギーの自給率というのが四%の我が国におきましては、非常にエネルギーセキュリティーというものは大事でございますし、また、より使いやすい電気をお送りするという意味で、経済性というものも非常に重要になってまいります。

 さらに、三つ目のEと申し上げました環境性につきましても、エネルギーをこれだけ使う事業者といたしまして、最大限の環境性の向上を考えております。例えば、火力発電設備について見た場合に、世界の中で日本の熱効率というのはずっと一位でございまして、すなわち、CO2もキロワットアワー当たり最も少ない、そういう発電設備の運転をしておるわけで、こういったことは、日本の国のために、あるいは日本の国民の皆さんのためにやらなくてはならない我々の責務であるというふうに考えてございます。

 そういった中で、新しいSEAというものが導入されるということで、その結果、我々としても負担が大きくなるわけでございますが、それはやはり、皆さんの大きな意思ということであれば、我々なりにできる限りのことをさせていただきたいというふうに考えるわけです。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、経営情報の開示というのは非常に難しい。あるいは、複数案が必ずしも提示できる場合ばかりではないというようなこと。そしてさらに、低炭素化のために原子力の増設や火力発電施設のリプレースを早急に進めなければいけない中で、アセス関係の負担や、とりわけ長期化というものによって低炭素化がおくれるという事態を避けていかなければならない。こういった課題があることも事実であるということを改めて御説明申し上げまして、さて、それでは事業者の負担が増すということになりますとどの程度かということでございますが、配慮書における環境配慮の内容というのがこれから詳細に検討されてまいるわけでございますので、現時点では、どのようなものになるかということは私どもは明確にはつかんでおりません。

 しかし、配慮書の公表後の手続だけ考えた場合には、最低三カ月以上はかかるというふうに認識しておりまして、そういったもので長期化するおそれがあるということでございます。そもそも、環境影響評価につきましても、これまで少なくとも三年以上かかっており、今回の改正によって、事業者は、一事業ごとに、配慮書、方法書、準備書、そして評価書、さらに事後調査報告書を作成しなければなりません。

 競争環境にある民間事業者である電気事業者としては、最大限環境に配慮した発電所の建設を進める所存でございますが、これらの環境影響評価に係る費用や期間といった負担が非常に大きいことは御理解いただいた上で、柔軟な制度の展開というものをよろしくお願いしたいというふうに考えているわけでございます。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 柔軟な政省令、制度設計の本質がこの委員会でまた問われることになりました。

 そこで、さらに具体的に、火力発電所のリプレース、先ほども質疑がありましたけれども、私の方からも、火力発電所のリプレースは温室効果ガスの削減に資するわけですから、大変なアセスメントでロードをかけられると非常に困るんだというようなこともおっしゃったわけでございます。

 そこで、リプレースについての手続の合理化その他、どういう制度設計、法律、政省令についての御要望をお持ちか、また具体的に教えていただきたいと思います。

相澤参考人 とりわけ火力発電所のリプレースといった場合には、技術開発の進展ですとか、あるいはよりよい技術の普及拡大という観点から、性能としてはよくなる場合が多うございます。その結果、出力がある程度大きくなったとしても、環境負荷というものがふえる場合ばかりではなく減る場合が非常に多い、こういうわけでございます。

 既に、新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策という中にリプレースの手続の迅速化が盛り込まれていると私どもは認識してございますが、引き続き、リプレースによって評価項目ごとに環境負荷の低減が図られる場合には当該評価項目を省略できる等の手続の合理化が図れるような仕組みをぜひとも御検討いただきたいというふうに考えてございます。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 最後に、パブリックをインボルブするわけですので、広報といいましょうか、メディアリテラシーのことをちょっとお伺いさせていただきたいと思います。

 植物は光合成ができますから、光合成でエネルギーを得る。しかし、私たち動物は食べないとエネルギーが吸収できない。そして、国家の目的はおなかいっぱいおいしいものを食べさせることだということになりますと、まさに電気事業は国家の義務だと私自身は思っております。

 だから、民間会社から始まった電気事業者を統合して国有化するという歴史も、この百三十年間で私たちは経験している。たまたま今、セクター論といいましょうか、事業形態論からいくと、まさに競争をしている民間事業者というセクターに分類はされるわけですけれども、志、それから職員の士気、そして国家意識、義務意識、一秒たりとも電気エネルギーを毀損することがないようにという気概でやっておられると思います。

 それと比べると、従来の、今までのメディアのアセスメントに関する取り扱いというのは、必要悪ですよ。最高でも必要悪ですね。だけれども、やはり悪なんです。ですから、歯を食いしばって戦略的なアセスメントもやっていただける、しかし、それは柔軟な制度設計のもとでどうしてもお願いしたいということだと思うんですけれども、一方、やはりこの席だから申し上げないといけないのは、では、今まで、この百数十年間、電気事業者として国民に必要な情報、国民一人一人が得ていなければならなかった知識、知恵、それを情報として供給してきたのかどうか。その反省も含めて、そして、今はもうテレビ社会です。テレビで世論が決まるんですね。世論が与件じゃないんです。ギブンコンディションじゃないんですね。世論というのはつくっていかなければならないものだということだと思います。

 そういう意味で、世論、国民を巻き込んだこれからの電気事業のあり方、そしてそのツールとしての戦略的な環境アセスメントということについてどういうお気持ちか。そして、広報戦略があるのかないのか。簡単で、三十秒ぐらいで結構ですから、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

相澤参考人 確かに、おっしゃるとおり、どちらかというと、電気事業者というのは今まで積極的に我々の事業内容、あるいは、みずから申し上げるのもおかしいんですが、苦労どころと申しましょうか、そういうところを余りアピールしていなかったという反省は間違いなくございます。

 今後は、原子力発電設備も含めまして、あるいはCO2、低炭素化社会に向けた対応も含めまして、そしてそれに関連するアセスに関しても含めまして、広く我々の考え方を主としてメディアを通して国民の皆さんにアピールしていかなくてはならないというふうに最近強く我々の会社の中でも議論されている次第で、あるいは我々の業界の中でも議論されているわけでございます。

 おっしゃるように、今後とも、そういったことについて努力をしてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 それで、多分予想されていなかったでしょうけれども、大塚先生、今と同じ質問なんですけれども、私自身は、直轄の道路事業で、まさに熱湯をかけられたり反対の大合唱の中を地元説明会をしたりした経験がございますので、まさにPIというのが、それはそうなんですけれども、それが心にすとんと落ちてこないんです。きれいごととは言いませんけれどもね。それはよくわかりますけれども。

 それで、横浜の環状道路の事例も出していただいて大変感謝を申し上げたいんですけれども、今この現状は、民主党から自民党に、三百議席を与えたり、スイングの幅が極端なんですよ。それはどうしてかというと、世論をつくる場所がテレビだからですね。そのテレビという舞台、場所と、PIで予定されている、大塚先生が考えられるパブリックの評価、心の中の価値観と満足感、これをどうつくっていこうと思っていらっしゃるのか。あるいは、それはやはり与件なのか。大塚先生がずっと研究し、そして考えておられてきた国民の価値軸というのを、この際、今のままでいいのか、これからどうしたらいいのか。いや、それは政治の責任だとおっしゃっても結構でございますけれども、せっかくの機会ですから、ちょっと時間がなくなっちゃいましたので一分ぐらいでぜひ私見を、公的なコメントは結構ですから、私のコメントでぜひお教えをいただきたいと思います。

大塚参考人 お答えいたします。

 政策的な問題でございますけれども、おっしゃっていただいた点はわからないわけではないんですけれども、アセスメントの関係では、住民とか市民の意見というのは、基本的にその地域に根差したものが多いと思います。それ以外に、専門家の意見とかももちろんありますけれども。その場合に、テレビによって今の一般的な世論のように簡単に揺れ動くものとはちょっと違うかなというふうに私自身は認識していまして、もちろん、どういうふうに事業者の方が説明をするかというところに大いに関係してくると思いますけれども、一般的な世論とは少し違って、もう少しかたいものではないかというふうに私は考えているところでございます。

 ですから、さっきの高速道路の話とかにもありましたように、ちゃんとした説明を早い段階からしていくということによって、意見を変えていただくとか、あるいはちゃんとした意見を持っていただくということは可能であると考えているところでございます。

 ありがとうございます。

福井委員 時間が参りました。終わります。

 ありがとうございました。

横光委員長代理 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 きょうは、大変貴重な御意見を三人の参考人の先生方からお伺いをさせていただいております。心から感謝を申し上げます。

 今回の法律改正でございますけれども、これは、前回から十年を迎えて、その間、さまざまな課題が浮かび上がってまいりました。また、生物多様性の保全、COP10が今回あったわけですけれども、そういうこと、さらには地球温暖化対策の推進や地方分権の推進、こういう変化に対応するために今回の改正を行うわけでございますけれども、今回の戦略的アセスメント、日本版アセスメントでございますけれども、その導入を初めとして、私もこの改正においては基本的には評価するものでございます。

 そこで、幾つか重要な観点について質問をさせていただきたいと思っておるわけでございますけれども、まずは、今回の戦略的環境影響評価、SEAについて確認をさせていただきたいと思っております。

 今申し上げましたように、戦略的環境影響評価、SEAとして、計画段階配慮書に関する事項を新たに定めた。これは評価できる。すなわち、事業計画の立案段階で、早い段階で評価をしていくわけでございますから、事業を実施するに当たって、重大な環境影響を回避したり低減させたりということができるわけでございます。上位計画のうち、事業の位置、規模の検討段階を対象とするものである、そういう意味からすれば、これは日本版SEAでございますけれども、長い間要望されてきたところでもあり、大変評価はするものでございます。

 そこで質問でございますけれども、先ほど来、電事連の相澤参考人の方から御指摘がございました。この日本版SEAでも、それを導入するに当たって問題点があると。それはよくわかります。

 三つ挙げられました。

 一点は、建設計画公表前の事業の構想段階におけるSEAというのは、経営戦略上、またノウハウ、重要情報の開示というようなこと等から、その公表は困難性があるという問題点が挙げられました。

 また、地点、燃料種、出力、発電方式に関する複数案の提示は困難、こういうすべての条件を満たす複数案はなかなか現実的には存在せずに、これは難しい、こういうような問題点も指摘されました。

 さらには、事業アセス前に別にSEAの手続を義務づけるという必要性についても、先ほど来ありますように、低炭素社会を実現する原子力発電の新増設とか高効率化、これが遅延する、こういうような御指摘がございました。

 確かにこれらは現実的な課題でございます。これらに対して、今回の日本版SEAの導入というものについてどのように評価されるか。最初に申し上げておくべきでしたけれども、大塚参考人と相澤参考人にお聞きをしたいわけでございます。

 まずは、SEA、先ほど来挙げられました現実的な問題点、それにどう対応していけるのか、その点についてお伺いをさせていただきます。

大塚参考人 お答えいたします。

 今般の改正案におきましては、複数案を基本的にはとっていくということを計画配慮書の段階で規定しているわけでございますけれども、義務化については、一または複数案という形で、単数案もあり得るということにしています。

 この点が先ほどの電力会社さんの方の話と関連してくるわけでございますけれども、先ほど来言われておりますような、また今御質問いただきましたような経営戦略上の問題とか、あるいはリプレースの問題とか、電力に特有な問題も含めて多々問題がございます。一般的に言えば、経営戦略上の問題というのは、鉄道とか道路とかについてもございますので、電力だけの問題ではないと考えているところでございますけれども、電力特有の地域調整が必要だという問題もないわけではないと思います。

 そのような観点から、複数案が基本的に非常に重要でありますけれども、単数案もあり得るということで今回の改正案は解決しているということだと考えています。

 日本版SEAについてどうかというふうに御質問いただきましたので、もう一点、補足させていただきたいと思いますけれども、民間事業者に関してSEAを求めるのはどうかという問題がございます。

 これにつきましては、先ほど私も説明させていただきましたように、これはあくまで日本版SEAですので、位置、規模等についてのアセスを早い段階からするということでありまして、諸外国においてはEIAに当たると言ってもよいものも多いわけでございます。そのような観点からいたしますと、民間事業者にやっていただくということ自身は、諸外国に比べても全く問題ないことだというふうに認識しております。

 以上でございます。

    〔横光委員長代理退席、委員長着席〕

相澤参考人 今のお話の中で、それだけ問題点があると言っておったが、では要するにどうするんだという御質問かというふうに思います。

 まず、地点の複数案につきましては、今先生からもお話がありました一または二以上ということで、そこにつきましては、一ということもございますので、何とか対応させていただきたいというふうに思っています。

 さらに、燃料、発電方式云々につきましては、先ほども申し上げましたとおり、複数案の提示というものはかなり厳しい状態の方が多いというふうに考えております。

 そして三つ目は、アセスが長くなっていろいろな弊害が出てくるんじゃないかということを申し上げました。

 この二点目と三点目につきましては、事業の特性や特質に応じて柔軟な対応ができるような、そういう制度をぜひとも展開していただくということが我々としての切なる願いであり、また、我々にとって非常に重要な制度であるというふうに考えております。ぜひ、その柔軟な制度を御検討いただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

江田(康)委員 大塚先生にお聞きいたします。

 今の柔軟な制度、事業の特質に合わせたそういう制度も政令等で検討していくということが大変重要になるかと思うんですが、もう一つ、これはやはり日本版SEAでございまして、さらに上位の計画段階を対象とするSEAの導入というのが、今回は日本版SEAになったわけでございます、それは種々の現実的な対応もあったかと思うんですけれども、将来的にはこれを、さらに上位計画を対象とするSEAについてどのように今後考えていくべきなのか、それについても一言お伺いをさせていただきます。

大塚参考人 簡単にお答えしたいと思います。

 これは欧米で行っているSEAを参考にして考えていくことになると思いますけれども、まさに国とか自治体が行うSEAでございまして、早い段階から基本構想を練って、どういうことをやっていくかということについて早い段階から意見を聴取するということになると思います。

 必ずしも環境問題だけに限らず、国土をどうしていくかとか地域をどうしていくかということとの関係から検討していくことになりますので、環境基本法の改正も必要だと思いますし、国土関係の法律の改正も必要だと思いまして、それなりに大々的な問題になってくると思われますけれども、ぜひ導入していくことが必要だと考えております。

江田(康)委員 次に、今度の改正案の中で、環境大臣の意見にかかわる審査体制の整備、すなわち常設の第三者機関について、横山参考人と大塚参考人にお聞かせをさせていただきたいと思っております。

 今回、環境大臣の意見は幅広く反映されることになった点は大変評価できるところだと思います。今までは評価書段階でのみ述べられたわけでございますけれども、今回の改正によって、方法書段階においても、また事後報告の段階においても環境大臣の意見を求める仕組みが創設されている、これは今回の評価できる点だと思います。

 質問でございますけれども、今日の環境政策の課題は一層多様化、複雑化してきているわけでありまして、生物多様性基本法を国会でも成立をさせていただいたこと、また地球温暖化対策の推進、再生可能エネルギーの導入促進、こういう状況の変化への対応が求められているわけであります。

 そのような中で、科学的知見や実効性を担保するというのが非常に大事かと思うんですが、先ほど来からお話もあっています。しかし、やはりそれは一つには、国が常設の第三者審査機関を設置して、環境大臣の意見に科学性、客観性を持たせる、こういうような審査体制の整備を図ることが必要になってくるのではないか。その方が、多くの主体に対する理解が迅速に進むのではないかと思います。

 海外においても、イギリスにおいて法定協議機関があり、またアメリカにおいても環境諮問委員会がございます。それから、韓国においても環境政策評価研究院等が設置されていて、専門家により構成される審査会、審査機関が設置されているところでございます。

 我が国はどう考えるか。そして、国レベルの審査会が必要だと思うんだけれども、しかし、これにかわる対応が今できるようになっているのか。そこについて、お二人に御意見をお伺いさせていただきます。

大塚参考人 お答えいたします。

 おっしゃっていただきましたように、第三者機関を充実させるということは非常に重要であると一般的には考えているところでございます。

 ただ、これにつきましては、現在、各自治体において審査会がありますので、それとの重複という問題がございます。それから、新しく機関を設置するということになりますと、財政上の問題もあろうかと思います。また、諸外国の例を見ましても、独立した第三者機関をつくっているのはカナダとオランダのみでございまして、これらは非常に先進的だという意味では注目されますけれども、欧米で一般的に行われているというほどではございません。

 ということで、当面は名簿方式をとって、常設ではなくて、リストをつくっておいて、その中から選んでいくというのが適切ではないかと私自身は考えております。一人の専門家がすべてについて通じているということでもございませんので、リストをつくっておいて、その中から各事案に応じて適切な人を選ぶというのが最も適当ではないかと考えているところでございます。

 以上でございます。

横山参考人 横山でございます。

 そういう適切な審査ができるようになっているのかという御質問だと思うんですけれども、日本というのは生物の多様性がもともと大変高く、生物の種数、数だけを見ても、陸上の生き物でもイギリスの四倍以上は日本の場合いると思われます。そういう日本の特性から考える場合、今回の審査の場合、常設の会議体を用意するということは極めて大事だと私は思っているんですが、常設の会議体の中のメンバーというのは、対象事業にフィットした専門家の構成を用意できるようなスタイルにしないと、どんなに優秀な先生でいらしても、全く分類群が違う生き物のことに意見を出さなくてはいけないということになると、無理だというふうに思われます。例えば、鳥についても、小鳥をずっと研究されている方と大型の海鳥を研究されている方では日常のフィールドも全く異なるというようなことがあって、どちらの生き物に関係している案件かによって、どちらの方が出るべきかということが自動的に決まってくると思います。

 したがって、ここの点は下位の法令で定めるというふうになっておりますけれども、検討対象に合わせてメンバーが組織できるような固定の会議体というか常設の会議体というようなものが現実的なのではないかと思います。

 以上です。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 もう一つ、最後に御質問させていただきますけれども、今回、戦略的アセスメント、日本版アセスメントが導入されたところでございます。しかし、その課題は、いわゆる一般的なSEAの要件を満たしていくことができるのかどうか、また導入される制度の効果が十分に期待できるのかというような点も指摘されているわけでございます。

 今回、COP10で、今後のポスト二〇一〇という世界の目標も採択をされたわけでございますし、また生物資源の利用とその利益配分、ABSについても名古屋議定書が採択されてきた。こういう状況の中で、さらには、生物多様性基本法においては、国は事業に関する計画の立案段階での生物多様性に係る環境影響評価を推進することとされている、そういう趣旨に今回の戦略的環境アセスメント、日本版SEAの導入が合っているのか、こういうようなところがこれから大変重要な課題になってくるかとも思います。

 そこで、留意しなければならないこととして、これは改正法が施行されるわけですが、施行前の事業に関しても、できるだけ早い段階からこれらの趣旨を踏まえて、適切な早期の段階からの環境配慮がなされるように指導をしていくことがまた国には求められると思っておりますが、その点について御意見をお伺いしたい。

 それと、検討時期においても、やはり前倒ししていく必要性があるのではないか。本改正案では、法の見直しを施行後十年としております。これは、よく理由はわかっております。これまでも十年であったし、今回改正されるこの結果を、データを集めていくのに時間がかかる。しかし、施行するまでに二年かかる。そうすると、十二年ぐらい、検討は先に延ばされるわけでございます。

 そういう意味から、法施行後の十年を待たずに、十年以内であっても適宜適切に制度の見直しを行っていくべきである、そのように思っておりますが、大塚先生の先ほどのお話にもそのような趣旨があったかと思いますけれども、改めて法の見直し時期について大塚参考人の御意見をお伺いして、終わりたいと思います。

大塚参考人 お答えいたします。

 生物多様性関係の条約の締約国会議との関係で新しい動きが出ておりますけれども、それとの関連につきましては生物多様性の国家戦略において既に定められていると思いますので、それに関連した動きが恐らく出てくるのではないかと思います。

 おっしゃっていただきましたように、本格的なSEAとしての上位計画あるいは政策についてのアセスということをすることは、生物多様性の保全との関係では今後非常に重要になってくると考えているところでございます。ただ、アセスメントに関しては、今回かなり大きな改正をするということがございますので、これの検証をするということは、新しい改正との関係では重要になってくると思っております。

 先ほどもちょっと申し上げさせていただきましたように、全体で五つぐらいのタイプに大きくアセスメントは分かれると思いますけれども、それぞれについてそれなりの事例が、二、三でよろしいかと思いますけれども、集まってきた段階で、それを踏まえて新たな改正をしていただくのが適切ではないかと考えているところでございます。

 それから、改正前の事案についても早い段階から環境配慮をするように指導するということでございます。これは、指導していただくのは結構だと思いますけれども、ただ、事業者の方がそれを聞く義務まではちょっとなかなか難しいかと思いますが、企業のCSRの観点から、そういうことをやっていただくのは大変望ましいと考えているところでございます。

 以上でございます。

江田(康)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

小沢委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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