衆議院

メインへスキップ



第6号 平成22年11月19日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十二年十一月十九日(金曜日)

    午後零時五分開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 田島 一成君 理事 横光 克彦君

   理事 吉川 政重君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      相原 史乃君    石田 三示君

      岡本 英子君    川越 孝洋君

      木村たけつか君    工藤 仁美君

      櫛渕 万里君    近藤 昭一君

      斎藤やすのり君    阪口 直人君

      玉置 公良君    橋本 博明君

      樋高  剛君    森岡洋一郎君

      山崎  誠君    井上 信治君

      北村 茂男君    近藤三津枝君

      齋藤  健君    福井  照君

      古川 禎久君

    …………………………………

   環境大臣         松本  龍君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            白石 順一君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  寺田 達志君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  町村 信孝君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     町村 信孝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五五号、参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として環境省総合環境政策局長白石順一君、環境省地球環境局長寺田達志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤三津枝君。

近藤(三)委員 自由民主党の近藤三津枝です。

 松本環境大臣、大臣御就任おめでとうございます。経済と環境が両立し世界の模範となる環境行政の展開に向けて手腕を発揮していただくことを望んでおります。

 時間が限られておりますので、早速、環境影響評価法の改正案について質問をさせていただきます。

 環境省から提出された資料によりますと、宮城県の仙台市高速鉄道東西線建設事業は環境影響評価に要した期間四年十一カ月、鹿児島県の川内原子力発電所三号機増設計画は四年七カ月かかっています。事業に取りかかる前の環境影響評価に五年近くかかっているということになるわけです。場合によりましては、建設に要する時間よりも環境影響評価にかかった時間の方が長い事業もあることでしょう。環境影響評価に要する時間とコストは、社会資本などの完成時期をおくらせる原因となり、事業費の増加にもつながります。つまり、国民の負担、電気料金にはね返ってくる問題でもあります。

 さらに、今回の法改正では、計画段階配慮書、SEAの手続の新設、方法書における説明会の義務化の追加が提案されています。この手続によって要する平均的な時間とコスト、さらにどれほど加算されるのか、端的にお答えください。

近藤副大臣 近藤委員にお答えいたします。

 配慮書手続の新設等によるコストや期間の増加については、事業により異なるため一概に申し上げられないところでありますが、配慮書手続における調査は、基本的に、インターネットや自治体等により公表されている既存の情報に基づくものを想定しており、配慮書手続の新設等による大幅なコストの増加は見込まれないものと考えております。期間についても半年程度の増加にとどまるものと考えております。

 また、配慮書段階において収集したデータを方法書以降の手続においても活用することにより、全体の手続の効率化も見込まれると考えております。また、方法書に関する説明会については、現行手続における方法書の公告縦覧期間中に行われるため、現行手続から期間の上乗せはない、方法書説明会に要する費用も、資料代、会場借り上げ費等であり、大幅なコストの増加は見込まれないものと考えております。

近藤(三)委員 今の答弁なんですけれども、現場の感覚とちょっとずれていると思うんですね。

 方法書説明会が加わりましても、新たに要する費用は資料代、会場借り上げ費などであり、大幅なコストの増加は見込まれないという趣旨の答弁でしたけれども、説明会をすることになりますと、説明会のためのプレゼンテーション資料の作成、現場の設営、それから説明会のお知らせなど、多くの職員を投入しなければなりません。相当のコストと時間が上乗せされるはずです。それを、新たに要する費用は資料代、会場借り上げ費などで、大して増加はしないという環境省のコスト感覚、時間感覚、実際に環境影響評価手続に取り組んでいる事業者の実感とはかけ離れているのではないでしょうか。今後は、この制度が導入されることになった場合に新たにどれほどの時間とコストなどの負荷が生じるのか、きちんと計測していただきたいと思います。

 そして、環境影響評価法も十年やってきたわけですから、環境影響評価に新たな制度を上乗せさせるだけではなく、簡素化させる、簡素化できるところは簡素化していくということが大変重要ではないかと思います。法案の附則第十条には見直しは十年後と書かれていますが、十年とは言わず、五年後に環境影響評価制度の全面的な見直しを行い、それも制度のシェープアップの視点に重点を置いて制度の改善をすべきだと考えます。松本環境大臣の見解をお聞かせください。

松本国務大臣 お答えをいたします。

 先ほど副大臣が、アセスの手続はそのもの自体を独立してやっているんじゃなくて他法令ということがありましたけれども、まさに都市計画法とか農地法とか、保安林の解除でありますとか、ある意味では国立公園等々の関係もあったりとかで、そういうことも同時並行で行われているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

 今御指摘の制度の見直しに関しては、改正法施行後の事例の蓄積が必要であるというふうに思い、改正案の附則においては、法施行後十年を経過した場合に必要な措置を講ずるとしております。

 しかし、今後、環境政策を含めた内外の社会情勢の変化も想定され、適切に不断の見直しをしていくことは必要だと考えております。法施行後十年以内であっても、適宜適切に制度の見直しを図るよう努力をしてまいりたいというふうに思います。

 その際には、蓄積された事例を踏まえて、環境の状況や環境政策を含めた内外の社会情勢の変化を勘案しつつ、幅広い意見を得てさまざまな検討を行い、その結果に基づいて必要に応じて所要の見直しを行うというふうに考えております。

近藤(三)委員 制度のシェープアップの視点を入れませんと、そもそもリスクが大き過ぎて、中小の民間企業などが環境影響評価の対象事業にチャレンジできなくなってしまいます。そんな可能性もあると思います。そして、環境影響評価に要する時間は事業の遅延、おくれにつながり、スピードが勝負である世界との競争において出おくれてしまいます。

 今回の法改正を機に、本制度の次の全面的な見直しの時期を五年後に前倒しし、そしてその際、制度の簡便化の視点を大切な柱として見直しの視点に盛り込むことを強く求め、次の質問に移らせていただきます。

 今回の改正では、再生可能エネルギーの適切な導入の観点から、風力発電を環境影響評価の対象事業に加えようとしていると理解しています。

 私は、風力発電については本年五月十四日、当委員会で取り上げました。そのときの議論を振り返ってみます。

 今お手元に届いている資料をごらんください。私からは、現在の環境委員長、当時の小沢前大臣が発表されたロードマップ、いわゆる小沢試案の中にある風力発電を取り上げました。小沢試案によりますと、二〇〇五年の風力発電量百九万キロワット、これを二〇二〇年に千百三十一万キロワットと、二〇〇五年比で十倍に増加させるとなっています。しかし、我が国の陸上での風力発電は六百四十万キロワットが限界とされています。本当に二〇二〇年までにこの二倍の千百三十一万キロワットにすることができるのか疑問です、このように私は五月に指摘しました。

 お手元の資料の一番左の欄が、私が経済産業省の資料をもとに質問した六百四十万キロワットです。その次の欄、二つ目の欄は、二〇〇五年の実績値百九万キロワットです。一つ飛んだ四つ目の欄、これが小沢試案の二〇二〇年の導入目標千百三十一万キロワットです。

 さて、小沢大臣は、私が説明に用いた陸上の限界値六百四十万キロワットの値は古過ぎると言い切りました。さらに小沢前大臣は、表の一番右側にありますように、現段階では風力発電のポテンシャルは七千万から三億キロワットある、これが今日の推計値である、このように答弁されたんです。

 私が述べました六百四十万キロワットの値は、経済産業省が平成二十一年八月に、長期エネルギー需給見通しの中で政府の責任のもとに示された数字です。そして、経済産業省はこの平成二十一年八月の需給見通しの中で、二〇二〇年の風力発電の導入量は五百万キロワットまで拡大するとしています。経済産業省の見通しは、小沢試案の千百三十一万キロワットの半分程度しか二〇二〇年までに導入できないというふうにしているのです。にもかかわらず、前大臣は、私が言った数字を古過ぎると指摘され、その十倍から五十倍もの数値、七千万から三億キロワットが最新の推計値だと国会答弁されたわけです。

 表の下段に示しています。ごらんいただけたら、現在世界一の風力発電を誇っているのがアメリカですが、そのアメリカでさえ三千五百六万キロワットですから、三億キロワットとすれば、日本はその十倍近くの発電量を見込んでいるということになります。本当にべらぼうな数字です。

 その後、私はこの前大臣の答弁に疑問を持ちまして、質問主意書を提出しました。その中で、この最大値三億キロワットという莫大な数値の根拠について質問したところ、こちらの厚い報告書が根拠だと政府から回答がありました。つまり、環境省が平成二十一年度に実施し、二十二年三月に公表した再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査に基づく数値であることがわかりました。これを見ると、すごいんです、本当に陸上での最大の導入ポテンシャルは三億キロワットあると書いてあります。

 では、この報告書に書かれてある陸上で三億キロワットを生み出すための主な条件を見てみましょう。地上から高さ八十メートルのところで年間の平均風速が五・五メートル以上の地点のうち、標高が一千メートル未満で最大傾斜度が二十度未満、幅三メートル以上の道路からの距離が十キロ以内の地域などに風力発電を設置できる。ただし、国立、国定公園の第一種特別地域などを除くとあります。

 裏返して言いますと、地上八十メートルの高さで年間の平均風速が五・五メートル以上ありさえすれば、傾斜度が二十度近くで、標高一千メートル近くの地域で、しかも国立公園に指定されていても第一種特別地域でなければ風力発電が建設可能であるということです。それを上回るような急斜面に風力発電が設置可能だということです。

 それを上回るというのは、私は思わず、札幌オリンピックの恵庭岳のスキーの滑降競技、あそこの舞台を思い出したんです。実はあそこの滑降競技の平均斜度は十七度なんだそうです。あの恵庭よりも上回る斜度にも風力発電が設置可能というふうにうたっているということですよね。

 高さ四十五メートルの風力発電の風車を建設しようとしますと、縦横十メートルもの基礎が必要で、地盤が悪いと、二十メートルの深さにまでくいを打たなければ建設できないそうです。一千メートル級の急斜面でも国立公園の中でも、森林を伐採して大工事をして風力発電所をつくることになります。本当にこのような地形条件で風力発電を建設することが可能なのでしょうか。

 日本の急峻な地形条件の中で、森林の持つ二酸化炭素の吸収機能、水源を維持する機能などを阻害しないのでしょうか。また、風力発電建設による地形の変化による景観への影響も、防災上の問題も生じないということなのでしょうか。森林の伐採によって生態系に影響がない、本当に実現可能なデータであると環境省は認識しているのでしょうか。

 前大臣の発言した我が国の風力発電のポテンシャル量、最大三億キロワットは、自然環境を守る部署などもある環境省全体としてコンセンサスが得られた数字であるのでしょうか、本当に陸上での風力発電の限界値と言えるのでしょうか、改めて環境省の見解をお聞かせください。

寺田政府参考人 御説明申し上げます。

 ただいま御指摘のございました調査におけるポテンシャルといいますものは、例えば法令に基づく土地利用制限のような社会的制約要因を踏まえまして、年限を考慮せず推計をいたしました、言えば可能性としての最大限の導入量というものでございます。

 もちろん、委員御指摘のように、個別個別の地点においてさまざまな事情もあり、環境保全上配慮せねばならないことがあることは当然でございまして、かかる観点から、環境影響評価法の改正案についても風力発電が取り上げられるようになった、かように理解しております。

近藤(三)委員 もう一度、地球環境局長に確認させていただきます。七千万から三億キロワットという風力発電のポテンシャル量は、私が言います現実的な陸上での限界風力発電量とは違うということですね。イエスかノーかでお答えください。

寺田政府参考人 委員のおっしゃられました限界値が、二〇〇〇年に実施されましたNEDOの調査によるところの限界値のことであるとすれば、その数字は違っております。

近藤(三)委員 私が五月の質問でさせていただいたのは陸上での限界風力発電量、これは、七千万から三億キロワットという数値とは違うということですか。

寺田政府参考人 私ども環境省の調査によりますところの風力発電の陸上での発電のポテンシャルは、七千万から三億キロワットということでございます。

近藤(三)委員 これに関しては、非常に見解のそごがあると思います。

 私は、五月の環境委員会では、陸上での限界風力発電量はいかがなものかということを質問したわけです。未来永劫に関する可能性を聞いたのではない。陸上での限界風力発電量を聞いたわけで、議事録に関しては少々違いがあると思いますが、またこの次に、この質問を続けさせていただきたいと思います。

 次に、リプレース、施設の更新時の環境影響評価について質問をさせていただきます。

 例えば、日本の石炭火力発電所は、環境面、発電効率の両面で世界最高水準にあります。一方で、高度経済成長期に建設された火力発電施設は更新期を迎えつつあります。現在の環境影響評価法では、同じ場所で設備を更新する場合でも、通常の手続と同様の手続が求められています。CO2の排出量を減らすような効率のよい施設にリプレースすることは、喫緊の課題の地球環境対策にも寄与します。

 施設の更新となりますと、今までの経験と知識が蓄積されてきたわけですから、環境影響評価手続を簡素化して事業の促進を図るべきです。本件について、松本環境大臣の見解をお伺いします。

松本国務大臣 お答えいたします。

 今述べられた施設の更新のための事業のうち、環境負荷の低減が図られるものについては、早く運用に供されることが望ましいことから、環境アセスメント手続の迅速化を図るべきとの考えがあります。

 ただし、こういう事業であっても、例えば、温室効果ガスの排出量削減には寄与するものの、排出ガス、温排水、生態系、景観等の面で環境影響が増大するといった場合もあり得ることから、手続迅速化に当たっては十分な検討が必要だというふうに考えております。

 お尋ねの発電所のリプレース事業、老朽化した発電所を新しい発電所に建てかえる分でありますけれども、このことについては、ことし二月の中央環境審議会答申の中で、「弾力的な運用で対応することが必要」と言及をされております。また、ことし九月に閣議決定した経済対策では、環境負荷が現状より改善する場合の環境アセスメントの迅速化が位置づけられたところであります。

 これらを受けて、経済産業省とともに検討を行い、来年度中に結論を得て、必要な措置を講じてまいりたいというふうに思っております。

近藤(三)委員 火力発電所に対する環境省の対応は評価しますけれども、ほかの社会資本、ほかの電力施設のリプレースに対しても、このことは言えると考えています。

 次回の環境影響評価制度の見直しに当たりましては、先ほども申し上げましたけれども、これまでの経験と知識の蓄積を生かして、原位置でのリプレースについての環境影響評価手続の簡素化だけではなく、制度全体の簡素化、シェープアップを改めて要望しておきます。

 最後に、環境影響評価法の改正案についての審議なんですけれども、メキシコ・カンクンでCOP16が間近に迫っています。私、十月二十七日の経済産業委員会で、大畠経済産業大臣に対して、EUがCOP16において京都議定書の延長を容認する方針を固めたことについて、日本の対応をただしました。大畠大臣も、「京都議定書の単純延長には日本国として反対です。」と明快な答弁をしていただきました。

 改めて、松本環境大臣に伺います。たとえEUが京都議定書の延長を何らかの条件をつけて持ち出そうとしても、京都議定書の延長には日本国として反対である、このようにCOP16に対する決意をお示しいただきたいと思います。よろしくお願いします。

松本国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、京都議定書の延長ということでいえば、世界全体の排出量のうち、私、この間調べさせましたけれども、京都議定書の削減義務が課されている批准国の排出量は、一九九〇年のときは四二%でございましたけれども、今、二七%にまでなっています。逆に、米国、中国は、九〇年のときは三四%でありましたけれども、今、四一・三%になっております。そういう世界全体の排出量を減らすという大きな枠組みをしっかり私たちは構築していかなければならないと思っています。

 そういう意味では、米国や中国等の主要国が公平な義務を負わず、一部の国のみが高い削減義務を負う枠組みが固定するような京都議定書の延長は、我が国がとるべき道ではないし、また、EUも、すべての主要国が参加する包括的な枠組みの実現などを条件に、京都議定書の第二約束期間について検討するという意思を確認したと承知をしています。したがって、EUも、米中を含む包括的拘束力のある枠組みをあきらめたわけではないというふうに理解をしているところであります。

 そういう意味では、コペンハーゲン合意等々、八割以上ありますので、そういった枠組みを膨らませていく作業も必要かと思いますけれども、COP16でしっかり頑張っていきたいというふうに思っております。

小沢委員長 質疑時間が過ぎておりますので、端的にお願いします。

近藤(三)委員 はい。

 きっぱりと京都議定書の延長には反対すると御答弁いただきたかったと思っております。地球温暖化問題を取り巻く国内外の情勢は刻々と変化しております。どうぞ大臣、毅然とした態度で国際交渉に臨んでいただきたいと思います。

 これで私の質問を終わらせていただきます。

小沢委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回の改正は、法の完全施行から十年を迎え、その間の生物多様性の保全、また地球温暖化対策の推進、そして地方分権の推進などの変化に対応するため、戦略的環境影響評価、日本版SEAの導入を初めとして、現行制度に残された課題について改正するものであり、大きな前進と評価するものでございます。

 ただし、法の趣旨を実現するにはいまだ不十分なところがあり、公明党は、これまでの大臣質疑や参考人質疑を通して問題点を明らかにしてまいりました。そして、さらなる改善を提案してきたところでもございます。

 本日は、改めてそれらの点について政府の見解を明らかにしておきたいと思います。松本大臣にすべてお伺いをいたします。

 まず、上位の計画段階を対象とするSEAのあり方についてでございます。

 今回導入されるSEAは、この事業の位置、規模等の検討段階を対象とするSEAの導入を図ったものでありまして、これについては高く評価をしております。一方、これは、欧米で導入されるSEA、すなわち、より上位の計画や政策段階での環境影響評価とは必ずしも一致するものではございません。いわゆる日本版環境アセスメントでございます。

 したがって、今後は、改正法の実施例を検証した上で、環境基本法の見直しも含めて、より上位の施策の策定または変更の立案の段階における戦略的環境影響評価の制度化に向けた検討を行うべきと考えますが、大臣の所見をお伺いいたします。

松本国務大臣 お答えいたします。

 御指摘がございましたけれども、朝、新聞を見まして、環境影響評価の成り行きといいますか、もう何十年も前からずっとやられてきて、自民党の皆さんも公明党の皆さんも、当時は民主党はございませんでしたけれども、さまざま与野党が御苦労なさって、あるときは廃案になったり、何回もそういうことがあって、十年前にできたということで、私もその経過をきょう拝見して、本当にいろいろな困難があったんだなというふうに思っております。

 今、より上位のアセスというふうに言われましたけれども、今回の制度見直しにおいて導入をする戦略的環境アセスメントの手続は、実績の積み重ねがある個別の事業の位置、規模、配置、構造等の検討段階を対象としております。より上位の計画や政策段階での環境影響評価については、中央環境審議会の答申においても検討の必要性を指摘されているところであり、関係施策や環境影響評価を取り巻く諸制度を検証しつつ、今後の課題として取り組んでまいりたいというふうに思っております。

江田(康)委員 次に、意見の聴取、審査体制、事業実施後の検証のあり方についてお伺いをいたします。

 今回の改正におきましては、環境大臣の意見が多くの箇所で反映をするようになっている。それは、これまでは評価書段階でございました。しかし、これに加えて、方法書段階においても、また事後報告の段階においても環境大臣の意見を求める仕組みが創設をされております。このように、環境大臣の意見を述べることができる機会が現行制度に比べてふやされている、これは大変評価するべきことでございます。

 こういう中で、これからさらに努めてもらわなければならない課題について、幾つか御質問をさせていただきます。

 まず、配慮書の案または配慮書に関する意見聴取につきましては、その重要性にかんがみて、積極的な実施が図られるように事業者の指導に努めるべきと考えます。これについて、大臣の所見をお伺いいたします。

 また、免許等を行う者は、審査等を行うに際しては、環境大臣の意見を反映させるよう努めるとともに、その反映結果を公表すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 さらに、環境大臣が環境影響評価法に基づく意見を述べようとするときは、あらかじめ専門家の意見を聞いて、可能な限り大臣意見に反映させるよう留意すべきと考えますが、これについても大臣の所見をお伺いいたします。

 公明党は、これにつきましては、これまで再三にわたって、今、生物多様性基本法や地球温暖化対策の推進、再生可能エネルギーの導入促進等の状況の変化、さまざまな環境影響評価をめぐる対応が求められているところであるわけで、したがって、県の条例の審査会とは別に、国の常設の第三者審査機関を設置することが必要であるということを述べてまいりました。しかし、現状も踏まえた上で、環境大臣が意見を述べようとするときに少なくとも専門家の意見が反映されるよう、この仕組みについてしっかりと踏まえていただきたいと思うわけでございます。

 さらに、改正法の実施例を検証した上で、事業実施後の環境の状況等の把握のための調査そのほかの環境影響評価に係る検証が行われて、その成果が地方公共団体、また事業者、住民等に提供されること等により、その後に行われる環境影響評価等に活用される仕組みについて、検討を行うべきと考えます。

 以上について、大臣の所見をお伺いいたします。

小沢委員長 質疑時間は四十二分までなので、それを頭に置いて答弁をお願いします。

松本国務大臣 今の御指摘、大変重要な御指摘だと思います。

 この間の参考人質疑の様子も拝見させていただきましたけれども、そういう意味では、皆さん大変御熱心に、有意義な時間だったというふうに拝察をいたしております。

 事業者による配慮書に関する住民等への意見聴取について、積極的な実施が図られるべきという御指摘でありました。

 事業の特性を踏まえて、個別事業ごとに事業者により判断されるものと考えますけれども、早期段階における意見聴取により、環境に配慮した事業の実現が図られるとともに、事業の円滑な実施にも資することを踏まえて、事業者に意見聴取の実施について周知をしてまいりたいというふうに思います。

 審査会の件でありますけれども、審査等において環境大臣意見を反映させ、その結果を公表すべきという点については、許認可等権者において御判断いただくものではありますけれども、引き続き、適切に対応していただくよう、許認可等権者と十分連携をしてまいりたいと思います。

 専門家の意見を反映させるという御指摘でありましたけれども、環境省が助言を求めるための専門家をあらかじめ指名、公表し、環境大臣意見形成の際に必要に応じて助言を求める仕組みを構築することとなっており、適切な運営を心がけてまいりたいと思います。

 最後の実施の問題ですけれども、環境アセスメントの実施例を検証してその成果を活用すべきという御指摘については、これまでも、環境アセスメントの適切かつ効率的な実施を促進するために、個別事例等の検証を行い、その結果を取りまとめて公表しております。引き続き、これらの活用に努めてまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

江田(康)委員 最後に、改正法施行前の環境影響評価並びに法の見直し時期について質問させていただきます。

 改正法の施行前に環境影響評価が行われる事業につきましては、改正法の趣旨を踏まえて、事業のより早期の段階から適切な環境配慮がなされるよう環境大臣は指導すべきと考えますが、大臣の所見を改めてお伺いいたします。

 また、環境影響評価全般についてでございますが、その実施状況を見ながら、見直しに係る検討条項に規定する検討時期を待つことなく、不断に見直しを行い、適時適切に制度の改善を図るべきと考えますが、大臣の所見をお伺いいたします。

松本国務大臣 お答えいたします。

 二点、御指摘をいただきました。

 改正法の施行前においても、より早期の段階から環境配慮がなされるよう指導すべきという御指摘であります。

 下位法令の検討期間や事業者への制度の周知期間として、改正法の施行まで約二年の期間を置いておりますけれども、この施行までの間においても、SEAガイドラインに基づく戦略的環境アセスメントがより改正法の精神にも沿った形で実施されるよう、関係省庁及び地方公共団体とも協力をしながら、事業者に対する改正法の趣旨の周知徹底にまず努めてまいりたいというふうに思っております。

 また、改正法に規定する検討時期を待つことなく見直しを行うべきとの御指摘でありますけれども、制度見直しに際しては、改正法施行後の事例の蓄積の必要ということから、施行後十年を経過した場合に必要な措置を講ずることとしておりますが、今後、環境政策を含めた内外の社会情勢の変化も想定をされ、適切に不断の見直しをしていくことは必要だと考えております。法施行後十年以内であっても、適宜適切に制度の見直しを図るよう努力をしてまいりたいと思います。

江田(康)委員 時間でございますのでこれで終わらせていただきますが、以上、環境大臣に確認をさせていただいた、今後の大変重要な事項でございます。環境省、政府としてしっかりとその実現に鋭意努めてもらうよう要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小沢委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、田島一成君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。江田康幸君。

江田(康)委員 私は、ただいま議決されました環境影響評価法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    環境影響評価法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 改正法の実施例を検証した上で、環境基本法の見直しも含め、より上位の施策の策定又は変更の立案の段階における戦略的環境影響評価の制度化に向けた検討を行うこと。

 二 配慮書の案又は配慮書に関する意見聴取については、その重要性にかんがみ、積極的な実施が図られるよう、事業者の指導に努めること。

 三 免許等を行う者等は、審査等を行うに際しては、環境大臣の意見を反映させるよう努めるとともに、その反映結果を公表すること。

 四 環境大臣が環境影響評価法に基づく意見を述べようとするときは、あらかじめ、専門家の意見を聴いて可能な限り大臣意見に反映させるよう留意すること。

 五 改正法の実施例を検証した上で、事業実施後の環境の状況等の把握のための調査その他の環境影響評価に係る検証が行われ、その成果が地方公共団体、事業者、住民等に提供されること等によりその後に行われる環境影響評価等に活用される仕組みについて検討を行うこと。

 六 配慮書に関する基本的事項及び主務省令を策定するに当たっては、我が国における事業の特性及び事業計画の決定プロセスの特性等を踏まえ、事業の種類及び特性等に応じた柔軟な制度となるよう十分配慮すること。

 七 環境負荷の低減に資する更新のための事業については、環境影響評価に要する期間の短縮等、環境影響評価手続の迅速化を検討すること。

 八 改正法の施行前に環境影響評価が行われる事業についても、改正法の趣旨を踏まえ、事業のより早期の段階から適切な環境配慮がなされるよう指導すること。

 九 環境影響評価制度全般に関して、その実施状況を見ながら、見直しに係る検討条項に規定する検討時期を待つことなく、不断に見直しを行い、適宜適切に制度の改善を図ること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

小沢委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小沢委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。松本環境大臣。

松本国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして努力をしてまいる所存でございます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.