衆議院

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第7号 平成26年4月15日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十六年四月十五日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 伊藤信太郎君

   理事 泉原 保二君 理事 うえの賢一郎君

   理事 田中 和徳君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 吉田  泉君

   理事 河野 正美君

      赤枝 恒雄君    穴見 陽一君

      井野 俊郎君    井林 辰憲君

      井上 貴博君    石川 昭政君

      岩田 和親君    小倉 將信君

      大野敬太郎君    神山 佐市君

      木内  均君    小林 史明君

      助田 重義君    武村 展英君

      中谷 真一君    福山  守君

      藤原  崇君    牧原 秀樹君

      荒井  聰君    生方 幸夫君

      百瀬 智之君    佐藤 英道君

      大熊 利昭君    中島 克仁君

      林  宙紀君    野間  健君

    …………………………………

   環境大臣政務官      牧原 秀樹君

   参考人

   (一般社団法人大日本猟友会会長)         佐々木洋平君

   参考人

   (公益財団法人世界自然保護基金ジャパン事務局長付)            草刈 秀紀君

   参考人

   (兵庫県農政環境部環境創造局長)         田中 基康君

   参考人

   (角川農業組合電柵部会長)            池田 計巳君

   環境委員会専門員     仲川 勝裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     福山  守君

  穴見 陽一君     神山 佐市君

  岩田 和親君     武村 展英君

  大久保三代君     中谷 真一君

  浮島 智子君     佐藤 英道君

  中島 克仁君     大熊 利昭君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     木内  均君

  武村 展英君     岩田 和親君

  中谷 真一君     大久保三代君

  福山  守君     大野敬太郎君

  佐藤 英道君     浮島 智子君

  大熊 利昭君     中島 克仁君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     赤枝 恒雄君

  木内  均君     穴見 陽一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人大日本猟友会会長佐々木洋平君、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン事務局長付草刈秀紀君、兵庫県農政環境部環境創造局長田中基康君及び角川農業組合電柵部会長池田計巳君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず佐々木参考人にお願いいたします。

佐々木参考人 大日本猟友会の会長の佐々木でございます。

 私から、いわゆる鳥獣保護法の一部を改正する法律案について意見を申し述べさせていただきます。

 最近、ニホンジカあるいはイノシシなどの鳥獣が急速に増加をし、その結果、農林水産業を初め生活環境にも大きな被害が出ておる。同時にまた、自然生態系にも影響を及ぼし、大きな社会問題、深刻な状況になっております。

 このような状況を踏まえまして、環境省は、今回、鳥獣保護法の改正に踏み切り、特に、その基本理念であります鳥獣保護から鳥獣保護管理と大転換をしたわけであります。遅きに失した感もありますけれども、私は高く評価をしたい、このように思っております。

 本題に入る前に、日本の狩猟文化、そしてまた鹿などの鳥獣行政について若干申し上げておきたいと思います。

 日本の狩猟は、ヨーロッパのスポーツハンティングとは違って、農村文化から発祥したと言われております。

 江戸時代は、日本には百五十万丁の火縄銃が存在し、世界一の銃保有国であったわけでございます。それはなぜかといいますと、当時、農家は、農繁期になりますと、庄屋さんから火縄銃を借りて有害駆除を行う。そして、農閑期にはそれをまたお返しして一カ所に管理をした。いわゆる銃は農具という形になるわけであります。当時、江戸時代はもちろん鉄砲の厳しい狩りもあったわけでありますが、また、仏教では、生類憐みの令といいますか、四つ足を殺しちゃだめだ、そういう法律もあったわけでございますが、しかし、銃は農業生産に絶対欠かせないということで、当時の政府は容認しておったということが言えるんだろうと思います。

 明治、大正、そして昭和、戦前になりますと、鹿は、イノシシもそうなんですけれども、食材として大変に、あるいは、鹿、ウサギ、タヌキなどは毛皮製品として地域の活性化に大いに役立ったわけであります。例えば北海道の開拓時代は、エゾシカがまさに地域経済の救世主とまで言われておったわけでございまして、年間十三万頭ですから、今大体北海道では十三、四万頭捕獲しておりますけれども、そのぐらい捕獲されたと伝えられております。当時、鹿は、缶詰あるいは皮製品ということで、欧米に輸出をしたという経過もあります。

 また、昭和の初期、いよいよ戦時中になりますけれども、戦前は、軍部の要請によって、鹿、イノシシはもちろん缶詰、食材として、あるいはウサギ、鹿、イノシシ等は毛皮、あるいは鳥類は羽毛として、猟友会は全員でその捕獲に当たったということで、軍部に対して供出をしたということで、軍の方から大変な感謝の意を表されたわけであります。その結果、御案内のとおり、乱獲につながって、鹿、イノシシは激減するわけでありますが、戦後、一転して、今度は保護政策というふうに転じ、それなりの成果をおさめたというふうに理解しております。

 本題に入りたいと思いますけれども、なぜ、今回、このように、鹿、イノシシが世界で類を見ないような急増をした原因なんですが、いろいろ言われております。暖冬ではないのか。あるいは、やはり農業が衰退していった。特に中山間地域ですね。そういうものもあるのであろう。また、狩猟者の減少というものも当然あったわけであります。そういうことが原因であろうと思いますが、それ以上に、私は、いつも心配しているのは、行政もなんですが、行き過ぎた保護思想、何でもかわいそうだという保護思想が今回大きな過ちを犯したのではないのかなという思いがしてならないわけであります。

 昔、北海道でキタキツネというのがいたんですが、エキノコックスという伝染病があって、猟友会は大変苦労して駆除をしたわけです。そして、駆除をして、えらい苦労したんですが、一転して、ある小説が、「キタキツネ物語」というものができました。それで、一瞬にしてハンターは悪者になったわけであります。そのように、行き過ぎた保護思想というのは非常に危険なものだなという思いが私はします。

 それとやはり、環境省は、鹿、イノシシ等の生息状況、実態、それをよく把握しなかった、モニタリング調査というものもしなかったんじゃないのかなという思いがします。と同時にまた、いろいろな捕獲を規制していったわけですね。流通はもちろん禁止したわけでありまして、そういうことが大きな原因ではないのかなという思いがいたします。

 昨年八月に、環境省は、ニホンジカ、イノシシの全国の生息数について、推定値ですけれども、発表されたわけであります。それによると、ニホンジカは三百二十五万頭、北海道が六十四万頭ということになります。イノシシは八十八万頭。初めて発表したわけであります。また、十年後には、平成三十五年には、ニホンジカ、イノシシの生息数を半数にしようという方針を立てられたわけであります。

 この環境省の方針を受けて、我々大日本猟友会も、どのような捕獲体制で、あるいは捕獲方針で行うか、検討に入ったわけであります。

 まず、現在行われている、農水省の特措法による有害捕獲でありますけれども、これは市町村が担当しているわけでございますが、現在どういう捕獲状況になっているかといいますと、ニホンジカ、イノシシですけれども、ちょうど七年前になりますか、平成十九年が十八万三千頭であったわけですね。それが六年後、一昨年ですけれども、五十一万一千頭と二・八倍捕獲したんですね。今は、二十五年度は、恐らく三倍以上になっているんだろうと思います。

 猟友会は、いろいろとやゆされております。高齢化だ、会員の減少だ、もう組織力が全くないんだと言われておりますが、しっかりと農水省の目標のとおり捕獲をして実績を上げていることをあえてつけ加えさせていただきたいと思います。

 特に、有害駆除は、夏場の捕獲ということで、暑い中、あるいはまた、木の葉があって獲物が見えにくいんですね。と同時にまた、一般人が山野に入っている部分がある、非常に危険な部分があります。また、今はダニとかヒルとか感染症が出ておりまして、非常に厳しい中にも今三倍もの捕獲をしているということで、我々も本当に苦労に対して敬意を表しておるわけであります。

 一方、狩猟は、御案内のとおり、十九年ではわずか二十五万六千頭、そして、二十四年度は三十五万五千頭というから、わずか一・三倍、ほとんどふえていないんですね。これは、狩猟期は、我々ハンターは、必要以外のものは一切捕獲しません。ですから、これらは、自分たちで必要とする部分だけを捕獲しているということでありますので、余り変動がないということでございます。

 そこで、ちょっと先生方に御理解を賜りたいと思うんですが、今、狩猟は趣味だということで、その行為自体を否定する人がおります。あるいは、偏見を持っておる人がいます。狩猟行政から脱却をして新たな体制をつくるべきだということが堂々と論調に出ておるような状況でございます。私は、ちょっと違うんじゃないのかな。狩猟という行為そのものはまさに鳥獣の保護管理をするということではないのかということを、非常に私は今危惧をしているわけであります。

 国際自然保護連合というのがあるんですが、IUCNという団体で、これは世界の団体なんですが、この野生鳥獣の保護管理の理念というのは、これをやるのはまさに狩猟だということを明確にうたってあります。生物多様性の確保、すなわち野生鳥獣の絶滅を回避し、ふえ過ぎた鳥獣を捕獲して、良好な環境で次世代に引き継ぐ。

 もう一つは、鳥獣の肉、食材というものは、永遠の可能性を持っているわけであります。そういうことで、資源として活用する、これが世界の保護思想なわけであります。それがまさに狩猟なわけでありまして、私は、そういう意味で、狩猟に対してもう少し国民の理解を得られるように努力をしなければと心を新たにしているところであります。

 さて、本題にまた入りますけれども、今後、大日本猟友会が、特別鳥獣と言われる鹿、ニホンジカ、イノシシ、それから猿、カワウ、これらは広域的に捕獲しなければなかなか難しいという状況になっております。

 そこで、我々の提案は、現行の農水省の特措法における有害駆除はこのまま踏襲する、これは行っていく。同時に、今後、個体数の調整等々を行う場合に、都道府県が管理計画を策定し捕獲に当たる。これも今回の法整備の中に盛り込まれております。

 また、環境省が実施する個体数調整については、通年許可というふうなことになるんだろうと思いますが、それを狩猟期を中心に捕獲する。そうすれば、恐らく今後捕獲せざるを得ないのは、鹿は今の捕獲数の大体倍の捕獲をしなければならないと思いますので、狩猟期にその倍捕獲することは十分に可能だというふうに私は思っております。

 そういうことで、ぜひそういう対応をしていただきたいと思うし、環境省がこれから、国の特別交付金を使えるような仕組みにするとか、そういういろいろなことを今後やっていただきたいというふうに思っております。それらについては環境省と詰めているところであります。

 また、我々組織も、これからこういう鳥獣被害対策を何としてもしっかりしたものにするために、都道府県の中に広域専門捕獲隊を設置することにしております。今は各市町村に、法で定めた実施隊あるいは捕獲隊があるわけでありますけれども、県の段階にはありませんので、県の段階にそういう広域専門捕獲隊、プロハンターを設置しようとしております。

 主にこの人たちには、特別な場所、鳥獣保護区であったり国定公園であったり、特別な鳥獣、猿とかカワウといったもの、あるいは、ふえ過ぎた鹿やイノシシは当然でありますけれども、狩猟者がいないところ、そういうところも含めて、そういうところにしっかりと、地元の隣接のハンターとともどもに対応していきたい、このように思っておるところであります。

 ちょっと各論に入って恐縮なんですが、今回の法改正の目玉といいますか、認定鳥獣事業者、認定事業者の導入というのがあります。私どもは、環境省とも何回も議論させていただきましたけれども、どうしても落としどころというのが見えないんですね。先が見えない。どれだけの費用対効果があるのかどうかということが全くわからないわけです。この導入ということによっていわゆるいろいろな管理捕獲をしよう、こういうことなんでしょう。また、新たな捕獲従事者の創出というふうにも書いてあるんですね。新たに事業者を募ろうということなんですが、これもまた具体的にどうなのかというのがわからないんですね。

 一人前のハンターになるには約十年かかります。というのは、ハンターになって、ライフル銃を持つまでに十年かかります。鹿を捕獲するには、ライフル銃以外は無理です。ですから、十年かかるんですね。そうしますと、新たな担い手をつくるといっても、そうじゃなくて、今資格を持っている、例えば狩猟免許を持っている、銃の所持許可を持っている、そういう人たちを寄せ集めて事業体をつくるというふうにしかとれないんですね。ですから、私は、逆に猟友会組織を弱体化するものだというふうに思います。

 ですから、私は、すばらしい上場企業が参入してくれるとか、そういう場合に、大いに歓迎したいんです。大いに歓迎ですよ。一緒にやりたいんです。だけれども、法人といっても、いろいろな法人があります。NPO法人全てを否定するものではないんですが、小さい、一人、二人の法人もあります。それも法人ですよ。また、九州では反社会的勢力がそういうNPO法人をつくってわなをかけて、その資金源にしているというようなことも聞き及んでおるわけでございますので、ぜひ認定については慎重に行うべきだというふうに思っております。

 いずれにしても、それらこれらも、これから具体的に、法律が通った時点で調整をし、議論を重ねていきたい、このように思っております。

 もう一点は、夜間発砲について議論が出ておりますが、私は、これははっきり言って反対です。非常に危険性があるということなんです。ライフル銃というのは、二キロ、三キロ先まで飛ぶわけですから、必ずバックストップがない限り発射しちゃだめなんですね。ですから、夜ですとなかなかそれが見えにくい、わかりにくいということで、事故の原因にもなりかねないと思います。また、捕獲したものは回収はほとんど不可能だと思います。心臓に仮に命中しても大体百メートル、二百メートル走りますから、そういうことで、問題が多いと思います。

 銃声も、やはり住民に恐怖を与えるということもありますので、これは慎重にしていただきたいと思うし、まず最初に、日の出三十分前、日没三十分後ぐらいまで広げて、それをやった上で、あとはまた慎重にこれは検討すべきものだというふうに思っています。

 また、麻酔銃の使用でありますけれども、これは猿を想定しての話と聞いておりますけれども、麻酔銃は十五メーターぐらいがせいぜいの確率なんですね。十五メーターまで猿に近づくというのは非常に難しいので、現実的じゃないなという思いがします。私どもの団体でも所持しておりますけれども、ほとんど錯誤捕獲、熊がわなにかかって、麻酔を打って放獣する、そのときに使う。これはもう吹き矢でも十分間に合うんですね。ですから、果たして麻酔銃というのはどれだけの効果があるのかなと。我々がちょいちょい出動するのは、家畜が暴れてどうしようもないというので出動したことは何回かありますが、余り使い道がないなという思いがいたします。

 この辺もひとつ検討した上でその実行に当たっていただきたい、このように思います。

 いろいろ申し上げたいことは多々あるわけですけれども、時間でありますので、以上で発言とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、草刈参考人にお願いいたします。

草刈参考人 公益財団法人の世界自然保護基金ジャパンの草刈でございます。

 私の組織のことについては、お手元に資料を配らせていただいておりますので、それをごらんください。

 きょうは、パワーポイントをもとに意見を発表させていただきますので、よろしくお願いします。

 まず、今回、ニホンジカ、イノシシがすごくふえていて、農林水産業に深刻な影響を与えている、これについては、私も全くそのとおりだと思います。ですから、このことについて、何らかの対策をしていかなきゃいけない、それは私も理解します。

 しかしながら、今回の鳥獣法の改正の仕組みに幾つか問題点があるというふうに考えております。

 まず、特定鳥獣保護管理計画、これが結構保護に偏った制度であったがためにふやしたという答弁がございましたけれども、事実関係はそれではないというふうなことを考えております。

 それから、法律の名称を変えるということについても問題があるというふうに考えております。

 定義をつくるということについても、幾つか問題があるんではないかなと。

 それから、その後、その特定鳥獣保護管理計画を第一種と第二種に分ける、これについても問題があるというふうなことを考えております。

 私は、この四点について、きょうは絞ってお話をしたいと思いますが、このほかにも、先ほど大日本猟友会の先生がおっしゃったように、夜間発砲、これも私はすごく危険であるというふうに思っております。それはなぜかというと、専ら日中狩猟をしております。日中は鹿が山の方に上がっております、ハンターがおりますので。でも、今まで夜間発砲をしていませんでしたから、鹿は河川敷なり里におりてきます。それを発砲する。ますます人の近いところで発砲する。これは非常に危険であると思います。

 それから、認定鳥獣捕獲事業者制度でございますけれども、これも反対であります。むしろ、公務員を、公務員ハンター、ガバメントハンターとして雇ってやっていくというのもできるんではないかな。これは、後ほど質問していただければ、ガバメントハンターについてもお話をしようと思います。

 それから、先ほど猟友会の会長もおっしゃったとおり、麻酔銃の許可についても慎重に行うべきというふうにおっしゃっていました。

 それぞれ四点について御説明いたします。

 まず、特定鳥獣保護管理計画が保護を図る目的でやってきてふえたというふうにお話しされていますけれども、私、環境省の資料を使って御説明しますが、平成十一年、特定鳥獣保護管理計画制度ができたときでありますが、このときから以降、特定鳥獣保護管理計画という計画のもとで鹿をたくさんとっております。また、有害鳥獣駆除もふえているというふうな現状です。したがいまして、決して特定計画が保護に偏ったものではないというふうに思います。

 もう一つ、これは鹿の捕獲数の推移でございますが、雌鹿と雄鹿のグラフでございます。なぜ雌鹿、雄鹿のグラフがあるかと申しますと、特定鳥獣保護管理計画をつくると、雌鹿が狩猟できます。また、狩猟期間も延長できます。そういう制度です。ですので、積極的に都道府県に特定鳥獣保護管理計画をつくるよう推し進めてきたのが環境省の制度であります。冬季の妊娠中の雌鹿を捕獲することによって二頭減らすことができるわけですね。そういう形で、特定計画ができて以降、雌鹿もたくさんとられている、そういう現実がございます。

 イノシシでありますけれども、イノシシについても、特定計画以降、捕獲が非常に上がってきているというふうなことで、結構、現行の特定鳥獣保護管理計画はうまく進んでおります。

 また、ヒグマ、よく熊がかわいいとかというお話がございますが、熊についても有害捕獲がいろいろ行われてきている。

 また、ツキノワグマについても、捕獲が非常に進んできております。ここに二本高い棒がございますが、これは、これまで大量出没があったときのグラフでございまして、熊の特定鳥獣保護管理計画をつくっている県は、その捕獲頭数の上限をはるかに上回って実際にとっているという現状があります。したがいまして、熊の特定計画が保護に偏るということではなく、特定計画も、たくさん出没したときにはとるというようなのが仕組みとしてございます。

 また、四国のツキノワグマですけれども、数十頭前後が今いるところで、非常に絶滅のおそれが高いという状況が今ございます。

 先日、人身被害のお話がございました。これは熊類の捕獲と人身被害の表でございますが、被害件数と捕獲数、やはり大量に出没するときには人身被害が起こるというのがこのグラフからもわかるのではないかなと思います。

 また、熊類による負傷者数の推移でございますが、これも大量出没が起こったときにふえてきている。年々、けがをした人もふえてきているというのが今の現状でございます。

 ここにちょっと書いておりますけれども、これから認定事業者が大量に山中で鹿、イノシシを捕獲する。今までは、捕獲した個体を埋めるとか持ち帰るというシステムでしたけれども、これから大量に捕獲することによって、ある程度野外放置もやむを得ないというふうに考えているというふうに聞いておりますが、そうなると、本来冬眠する熊が、野外にあった、殺された鹿の肉を食べて、越冬しない熊も出てくるんじゃないか、そういう心配事もございます。

 こちらは、環境省の第四次のレッドデータブックでございますが、環境省のレッドデータブックでは、絶滅のおそれのある地域個体群というカテゴリーがございまして、地域的に孤立している個体群で絶滅のおそれが高いものというのが挙げられています。

 この中には、北海道のヒグマからツキノワグマまで、これだけリストアップされているわけでございますが、北海道については保護管理計画がございますが、ツキノワグマについては、東中国と西中国で計画が立てられているものの、下北半島とか紀伊半島とか四国については、特定計画はまだ立てられていません。保護に重点を置いた計画は、本当はこういうところでも立てるべきではないかと思いますが、まだ立てられていないという実態がございます。

 後ほど質問をしていただければと思いますが、カモシカの問題も議論がありましたので、後で指摘をしたいと思います。

 私が心配しているのは、第一種と第二種の計画を立てる、要するに、管理して減らすということと、保護するというのがありますが、こちらは保護する計画を立てる、こちらは結構個体数がふえてきているから減らす計画を立てるとなったときに、どういった問題が起こるか。個体数がふえたときに、こちらとつながるわけですけれども、つながったらどんなことが起こるか。

 また、四国ですけれども、四国はここに本当に数十頭の熊がいるわけですけれども、四国も鹿の被害が非常に深刻な状況になっておりまして、四国で管理計画を立てられるときに、今度はツキノワグマはどういうふうな問題が起こるか、そういうことも心配しております。

 また、鳥獣法のタイトルを変えるというふうなことがありますけれども、鳥獣保護法自体、第二条に、「この法律において「鳥獣」とは、」というふうなことで、鳥類と哺乳類に属する野生動物というふうなことが書いてあります。これはどういうことかと申しますと、この鳥獣保護法が対象とする生き物は、哺乳類百三十種、鳥類六百五十種、これを対象にしている法律でございます。

 しかしながら、一九九九年から鳥獣法の改正でずっと議論されていることは、この特定鳥獣六種の議論を徹底してされてきております。決して、この特定鳥獣の六種がこれらの鳥獣を代表しているわけではございません。本来であれば、こういう種類をきちんと調べた上で管理というものを法律に入れなきゃいけないということであればまだまだ理解できますが、ちょっとそれは筋が違うのではないかなというふうに思っているわけでございます。

 鳥獣の保護と鳥獣の管理、今回、明確に保護と管理を分けるということで、定義も分けますし、特定計画もきちんと第一種、第二種に分けるというふうに方針はなっておりますけれども、私が先ほど申したとおり、現行の特定鳥獣保護管理計画制度でも、著しく個体数が増加したものについても、著しく個体数が減少した種についても、ちゃんと運用できる仕組みになっております。そういうことをやるということがいわゆるワイルドライフマネジメントという仕組みでございますが、生態系の変化に柔軟に対応できる仕組みとして動いているのが今の制度でございます。

 ツキノワグマについては、先ほどもお話ししましたとおり、絶滅のおそれのある地域個体群でございますが、いまだに計画が立てられていないということです。

 鹿は生態系の一員というふうなことで、昔は、ニホンジカが健全にいたときは、適当に樹木の芽生えを食べて、ササを食べるということが起こっていたわけですけれども、先ほども猟友会の会長がおっしゃっていたみたいに、本来の生態系の機能が不完全になってしまっている。そもそもは、鹿というのは、生態系のエンジニアというふうなことで、生態系をうまくつかさどる生き物であったというものであります。やはり、そういうことを念頭に置いてやっていく必要があるというふうに思います。

 鹿の生態系機能の暴走をとめるための措置として、生物多様性基本法では「生息環境又は生育環境の保全、被害の防除、個体数の管理」というふうなことが書いてありますけれども、これを総じてワイルドライフマネジメント、鳥獣の保護管理と申します。

 九九年に鳥獣保護の計画が立ったときは、こういう個体群の管理と生息環境の管理と被害防除、この三角形が、うまく運用することによって、生態系のふえたものを抑える、減ったものをふやす、これがうまく機能するというのがそもそもの仕組みでございました。

 ワイルドライフマネジメント、保護管理の成功の鍵は、こういう三つの仕組み、要素を順応に駆使して、地域の住民と合意形成を図りながら問題を解決していく、そのシステムが大事です。これを進めるためには、専門的知能、技能を有する司令塔がどうしても必要になると考えております。

 都道府県に鳥獣保護管理計画官、これを法律の条項に基づいて置いていくということが大事ではないかな、これがNGOが言っていることでございまして、こういう鳥獣保護管理計画官をきちんと職員として配置していく、これを法律の制度に基づいて配置していく、これが大事だと思っております。

 これからスライドを二枚お見せしますけれども、これから兵庫県の方もお話しされますが、兵庫県の森林動物研究センターでは、こういう体系で物事が動いています。県立大学の自然・環境研究所が森林の動物系を担当し、森林動物研究センターは研究部のスタッフが動いていて、かつ、県の行政職員と連携をしながら適切な捕獲とか推進を進めている。こういう体制が整っておりまして、この連携がうまくいくことによって、個体数を減らす、または守るということがうまく進んでいるわけです。

 ここに研究員と森林動物専門員というのがありますが、研究員については、森林の環境、生態系とか、リスクマネジメントですとか、野生動物の行動の抑制とか、こういった知識を持っている人を募集し、その方々が、調査研究や、生物の保全と管理とか行動の抑制とか被害対策をする、そういう役割の方々であります。また、森林動物専門員については、技術系職員というふうなことで、そういう研修を受けた方々の専門家が動いていってもらう。かつ、狩猟の免許、ちゃんと資格を取った方々が、調査研究結果に基づいて、獣害に強い集落づくり、野生動物の出没の対応ですとか人材育成をする、こういうふうな仕組みがあります。こういう仕組みの中で運用するということが求められているというふうなことでございます。

 ここで、ちょっとわかりやすく図を持ってきました。改正される鳥獣保護法を車に例えるならどうかというふうなことでございます。

 今までは、二〇一三年までは、鳥獣の担当者、これは研修で運転ができたというふうなことです。都道府県には特定鳥獣保護管理計画の検討会がありますので、年に数回便乗して、うまく運用していますかというチェックをしています。著しく個体数が減少した、またはふやしたものについて特定計画を立てる、こういうふうに進められていました。

 これから政府がやろうとしていることは、これまでどおり、鳥獣の担当者は研修で運転しても構いません。ブレーキとアクセル、これを明確に第一種と第二種に分けるというふうなことをやっていますが、問題は、認定鳥獣捕獲事業者をやる、これが常時乗車することになります。いわゆるこれは第二のアクセルがついたというふうなことです。こういうことで鳥獣の計画が進んでいくわけですけれども、では、このドライバーは本当にそれを運用していけるのか、そういうところに危惧をするというところでございます。

 別添、きょうお手元に配った資料をちょっとごらんください。こちらに特定鳥獣保護計画官の配置についてという資料を準備させていただきました。これの二ページ目をごらんください。

 環境省が以前、人材の確保ですとか、行政職員がどのような研修を受けているかというふうなものを、アンケート調査をやっております。これを見ますと、下の方に枠組みが書いてありますが、その中には、専門的な教育を受けた職員とかの配置の数ですけれども、一人しかいないのが七県、二人から三人が三県、五人、六人とかというのが各一県ずつ、それも任期つきで非常勤という現状でございます。また、職員に対する研修受講の実施を行った県でございますが、一回しかやっていない県が十六県、二回以上が十八県、こういう状況でございます。

 三ページ目以降、幾つか書いてありますけれども、環境省の審議会で、国は、こういった鳥獣保護管理に関する専門的な知識、技術の評価、必要な人材を確保することが必要だという議論がたびたび行われてきております。これは、国の答申の中にも明記されておりますし、過去数回、国会で審議された中にも、附帯決議で明記されております。過去に何度も指摘されているにもかかわらず、まだこういう体制ができていない。ここはやはり大きな欠陥ではないかなというふうに考えるわけでございます。

 私どもが考える安心で安全な適正な運転は、やはりきちんと鳥獣保護管理計画官、これはちゃんとドライバーのライセンスを受けた人が乗っていただいて、ブレーキとアクセル、著しく減少した種を保全しますし、個体数がふえた種についても対応する。こういった専門家がいて、ドライバーが運転をするのであれば、鳥獣認定事業者もきちんと運用できるのではないかなというふうに思っているところでございます。

 ここまでが特定鳥獣保護管理計画の意見でございますが、先日、衆議院本会議で、アザラシ、トドの質問がありました。アザラシ、トドについて、アザラシは対象ですが、トドは対象外です、この際、海洋哺乳類も鳥獣保護法の下に置くべきではないかなという御意見がございました。これは、置けない現状が八十条の除外規定でございます。

 しかしながら、やはりアザラシやトドなんかもきちんと鳥獣保護法の対象にすべきだというふうに考えます。もし環境省がきちんと管理を徹底するということであれば、八十条は削除して、海生哺乳類も対象にしてやっていくべきではないかな。

 それを考えますと、もう一つ言えるのは、生物多様性基本法の第二十六条に、国際的な連携の確保、国際協力の推進という条項があります。残念ながら、この海生生物については、国際的な協力についてうまくいっていないところがございます。

 それは何かというと、ボン条約という条約がございます。これは、移動性の野生動物の保全に関する条約という条約でございまして、世界百十カ国が加盟している条約でございます。これは、渡り鳥を含む移動性の野生動物の保全を目的とした条約でして、絶滅のおそれのある移動性の種を、きちんと対応するとかいうふうな仕組みでございます。この仕組みの中でもきちんと、アザラシとかウミガメなんかも運用されております。

 国も、このボン条約を日本が批准するように、ぜひ検討、議論していただければありがたいと考えているところでございます。

 最後になりますが、私のまとめでございます。

 お話ししましたとおり、現行法の鳥獣保護管理制度は、保護に偏った制度ではございません。この現行の制度をうまく運用することによって、大量に捕獲することも可能でございます。したがいまして、保護管理の定義を二つに分けることもよくありませんし、現行法の特定鳥獣保護管理計画の制度の仕組みでも十分対策は可能です。

 さらに、都道府県に鳥獣保護の管理官を置くよう、努力規定で、義務は難しいんですけれども、都道府県に置くよう努めなければいけないという条項は書けるはずであります。ぜひこれを入れていただきたい。

 それから、やみくもに殺すことでは解決できないことですから、適切なワイルドライフマネジメントが不可欠です。八十条を削除して、海生生物も対象にすることと、ボン条約の批准について積極的に検討していただきたいということでございます。

 以上であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございます。

 この際、参考人に申し上げます。

 規定の時間内で御発言願いますようにお願い申し上げます。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 兵庫県の環境創造局長の田中でございます。

 本日は、本県の野生動物の被害対策の取り組みについて御説明させていただきます。

 おめくりいただきまして、まず二ページでございます。

 本日は、森林動物研究センターというものについて御紹介しにやってまいりました。これは、平成十九年に本県が県立として設立したものでございます。地図の方を見ていただきますと、ちょっと線がわかりにくいのですが、京都府との境あたり、丹波地方旧青垣町というところに設定しております。写真がこの施設でございまして、十九年、五億円程度の費用で整備したものでございます。

 おめくりいただきまして、三ページですけれども、ワイルドライフマネジメントを行う。これは、先ほどジャパンの草刈先生の方から御紹介がありましたが、生息地管理、個体数管理、被害管理、こういう観点を総合的に研究し調査し、そして実践活動を行う場として設立されました。

 そして、おめくりいただきました次の四ページも、実は先ほどのスライドの中に出てきたのでありますが、若干だけ補足いたしますと、この左側の県立大学という姿と、森林動物研究センターという姿が表裏になっているということでございます。この真ん中の研究部というところが、大学の教員が兼ねておりまして、大学の性格とそれから行政機関としてのセンターの役割を両方兼ね備えている。そこに、一番右側、行政職員が入り込んで、研究と実践を両方行う場にしてございます。

 ちなみに、この河合先生あるいは林先生というのは、哺乳類の研究では世界レベルの先生でいらっしゃいますので、こういう先生を慕って研究がなされるというところも一つの強みかと存じております。

 おめくりいただきまして、五ページ。

 これも、くしくも先ほどのスライドの中に出てきたのでありますが、研究員は、森林環境や生態系、リスクマネジメントを行う。これを大学教員として行っている部分があるということでございます。しかし、左下の四角の方に目をやっていただきまして、保全、管理、行動制御、動物医学、生態系というふうに、甚だ研究めいたテーマが書いてございますが、研究員の先生方は非常に実践的な視点というのを強く持った上で、行政課題への即応に対してバックアップをとってくださっているということがございます。

 一方、右側の森林動物専門員、これは県職員でございます。御承知かどうか、県職員には農業系の技術職、それから林業系の技術職というのがございますが、実は、鳥獣保護ということを主に専門にして入ってくる職員はおりません。特に林業系の職員、農林事務所というところに配置されておりますが、林業系の職員の中で、鳥獣保護関連を担当する中で育成されていく、実践を通じて育成されていくというのが通常の姿でございますが、こういう職員の中からさらに研修を受講させまして、このセンターに配置することによって専門性を高めていく、こういう育成がなされております。

 したがいまして、ここに参った専門員は、研究員と力を合わせて、研究員の成果をこなしつつ、そして地域に還元するといったことを相当やっております。例えば、年間二百回以上のセミナー、講習等に出かけまして、延べにしますと大体一万人ぐらいの皆様にお話をしたり、あるいは手とり足とりの指導ができたりしているということがございます。あるいは、年間二百回以上、集落に入り込みまして、例えば集落の方のわなの仕掛け方あるいは管理について、手とり足とり御指導を差し上げているという状況がございます。

 おめくりいただきまして、六ページですけれども、主な機能としまして、まず、何といっても、大学という性格を持ちますので、調査研究機能ということがあるわけです。基礎データの収集、調査。そして、生息実態調査、これは出猟カレンダーと申しまして、狩猟者の登録をしていただきますときに、二千人を超える狩猟者の方がいらして、そのときにカレンダーというものをお渡しして、狩猟が終わったらこれを出してくださいねということで、いつ、どこで、どのような狩猟を誰とということを記録していただきます。このカレンダーの結果が非常に生息実態調査のもとになるということでございます。

 それから、試料。個体分析として、もちろん死体の分析もいたしますし、ふんを大量に集めまして、定点観測もしております。

 こういったデータを加工分析しまして、将来予測、推定をするということで、センターとしては、やはり科学的データ、ある程度客観的なデータを集めるということに非常に注力しているということでございます。

 おめくりいただきまして、七ページですけれども、施策の企画立案の支援としまして、センターというところは、名前に言われますように、研究だけでなくて、行政機関としてつくる特定鳥獣保護管理計画の策定を支援するということで、ちょうどこのセンターができたのは十九年度でございますので、鹿とツキノワグマの第三期、これについては改定を支援しました。それから、イノシシ、猿の第一期策定については、全面的に乗り出していただいたということがございます。そして、平成二十四年度からの四本については、まさにセンターの方で御尽力をいただいたということがございます。

 またおめくりいただきまして、八ページ。

 これは、兵庫県におけるニホンジカの生息実態の把握ですけれども、この四角は五キロメッシュ、五掛ける五のメッシュになっております。こういった中で、目撃効率という概念をつくりまして、狩猟者一人が一日に一体何頭見るのかということを、先ほどの出猟カレンダーをもとにはじきます。そうしますと、非常に濃いところ、薄いところがわかってまいります。

 ちなみに、一といいますのは、一人の狩猟者が一日に一回狩猟すれば一頭はいつも見ているという状況があるということでございますが、やはり北部の但馬地方が非常に濃い。

 そして、右側になりますと、これは経年の変化を見ております。真ん中の方は少し青が目立っておりますが、これは若干減少したのかなという結果が出ております。しかし、南の方、神戸、阪神地区の方に接するあたり、あるいは姫路に接するあたりというのは赤くなっておりまして、この境界が少し南下している、赤が少し南下しているという状況があるというふうにわかっております。

 さらにおめくりいただきまして、九ページです。

 これは、農業被害と、それから森林の下層植生の衰退状況。やはり北の方、茶色が濃いところは非常に農業被害が多いということ。それから、下層植生、下の写真に出ておりますが、特に、右側の写真に比べて左側は山肌がむけております。衰退度二の状況ですけれども、こういった状況が兵庫県の真ん中あたり、森林が非常に衰退しているという状況が出ているということもつかまえております。

 さらにおめくりいただきまして、十ページ。

 先ほどの出猟カレンダーあるいはふんの状況などを総合的に解析いたしまして、頭数を推定するという手法を確立させております。これはいずれも、もちろん推定によるものでございますので幅がございますが、赤い線、これが真ん中、大体中央値ということで我々がよく使うものですけれども、ピーク、平成二十二年には十五万三千頭程度いた。これが一応ピークで、峠をおりたというふうに思っておりますが、平成二十四年度の段階で十二万二千頭、これは捕獲の効果が随分出ているというふうに見ております。今の捕獲の状況を続けると、今後六万頭程度まで減らすことができるのではないかという推計をしております。

 おめくりいただきまして、ちなみに十一ページですけれども、これは、現在、県の方が市町と連携しまして、そしてセンターの指導も仰ぎながら捕獲を強めているという姿でございます。特に、平成二十二年からは三万五千頭オーダーを捕獲するということで、これは狩猟が半分強、それから有害捕獲が半分弱ということで、特に報奨金等を出して奨励をする結果、こういった形が生まれております。

 ちなみに、御紹介しますと、一番下の行、狩猟期間のところが、大体、平成十年代は一万頭オーダーのところが平成二十二年以降は二万頭オーダーということで、狩猟期の捕獲も、狩りといいましょうか、二倍程度になっている。

 それから、これはちょっと行政的な区分で恐縮ですけれども、個体群管理、一般有害と書いてあるところ、これはいずれも有害捕獲を指しておりますが、特に二十四、二十五に向かって非常にふえているということがございます。これは、国の方の措置していただきました基金を使うことによって、非常に捕獲のインセンティブが高まったという結果になっております。

 おめくりいただきまして、十二ページ。

 センターの方の役割に戻りますが、大きな役割として、やはり地域の獣害を減らすということが大きな使命になってございます。そのために、兵庫県では、ストップ・ザ・獣害という名前をつけておりますが、捕獲班、これは猟友会と言うべきですけれども、集落、行政の三者が協力しまして、捕獲効率をアップするということで、個々に集落に入って指導するということでございまして、実は、この左下の表を見ていただきますと、捕獲実績が二頭以下であった二十九集落について、一生懸命指導した、現地に行って指導したという結果、右のように、捕獲数が十六倍に伸びました。これはやはり、なれていない方に対して、ちょっとコツを教えてあげるというところを指導するということによって、捕獲は随分伸びるということをあらわしております。

 そして右側の表は、こういう、細かな指導項目を守れば守るほど捕獲頭数も伸びていくということで、やはり小まめな指導が物を言うという世界かというふうに思います。

 めくっていただきまして、十三ページ。

 これは市町、県民局、県民局というのは県の機関でございますが農林事務所が入っております、そしてセンター、この三者が一体となって、協力し合って、写真のように、現地に出向いて指導するということにしてございます。

 それから十四ページですけれども、さらに、センターの方では、科学的知見を応用しまして、AIゲートというものも開発いたしました。これは、効率的なタイミングで自動的に作動する電子制御ゲートでして、あらかじめ獲物の出入りをセンサーで監視しまして、一番頭数が入る、鹿が入った状況というのを解析しまして、例えば一頭入っただけで扉が落ちるのではなくて、一番鹿がたまったと思われる瞬間を電子制御で選びまして、それで扉が落ちるということで、五頭、十頭が一度にとれるということを目指したものでございまして、これは特許もとっております。

 それから、おめくりいただきまして、十五ページです。

 さらに、生息地管理としまして、バッファーゾーン整備というものも監修いたしております。漫画の絵を見ていただきますと、山の方からおりていったところに、黄土色で少し、犬がワンワンとほえておりますが、このあたりは抜き刈りをしております。要は、開けたところをつくることによって、いわば昔の里山をできるだけ再現しているわけで、こういうことによって動物は警戒する、したがって入りにくくなるというゾーンをつくっております。

 これを防護柵とあわせて整備することによって、農村環境の方ではこれは非常に人気の高い事業になってございます。特に、警戒心の強いイノシシですと、柵がなくても、こういうものがあるだけで、人目に触れるという恐怖心でもってなかなか出てこないという状況がございます。ただし、なれもございますので、防護柵をあわせて設置するということでございます。

 さらに、十六ページ。

 十六ページは、全国的な状況と同じですので省略させていただきますが、要は、狩猟者が大変減っているということ。そして、右側の表は、これは赤の斜線が高齢者の方ですので、六割ぐらいが六十代以上の方になっているということで、ここ五年、十年が勝負になるというふうに考えております。

 さらに十七ページ。

 こういったことを見据えまして、兵庫県では、狩猟者の育成講習、スクールというものも本格化して立ち上げることにいたしました。狩猟に関心ある人の掘り起こし、あるいはよい師匠、同年代の狩猟仲間との出会いというようなものをつくるために、県が先導しましてスクールを立ち上げるということで、初心者に近い方を有害捕獲隊に参加できるレベルにまで、その入り口にまで誘導していこうというのが目的でございます。

 こういった取り組みも始めたところでございます。

 それから、めくっていただきまして、一方、肉の活用といった側面もございます。とるばかりではなくて、生物資源として利用するといったところに関しまして、シカ肉活用ガイドラインの作成といったことも支援をいただいております。もちろん、これはセンターだけの能力ではございませんで、県の中の生活衛生課のような保健部門にも入っていただいてつくったものです。

 このガイドラインといいますのは、下の表に出ておりますとおり、食品衛生法、これは、食肉であれば、鹿の肉に限らず、食品製造上の衛生を定めた法律として作用するものでありますけれども、真ん中の四角の、「家畜の衛生的なと殺・検査等を定めた法律」、と畜場法は家畜にしか適用されていないということがございまして、野生動物から由来する鹿肉というものには適用されていないので、ここは空白になっております。したがいまして、これを独自にガイドラインとしてつくりまして、捕獲、搬入、屠殺解体、処理方法等の取り扱いを定めております。

 最後になりますが、広域的な視点も持ちまして活動しております。

 関西広域連合、私ども兵庫県知事は関西広域連合長も務めておりますので、特に、本県森林センターの持つ知見というのを関西の中で活用するといった視点も十分に持っております。特に、広域連合では、今年度から、ニホンジカ、外来獣などの捕獲についても対策を強化するということにしてございますので、一体的な活用をするということにしてございます。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、池田参考人にお願いいたします。

池田参考人 ただいま御紹介いただきました、角川農業組合の電柵部会長の池田といいます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 平成二十二年に鳥獣被害対策優良活動で農林水産省生産局長賞をいただいたことにより、今回、この機会が与えられたと考えています。よって、そのときの内容を、お手元にありますこの資料によりまして、私たちの活動内容を説明させていただきたいと思います。

 「地域ぐるみで防ぐ獣害対策の取り組み「集落ぐるみによる基本に忠実な取り組み」 滋賀県高島市「今津町角川地区」」。

 私たちの住んでいる地区の概要について御説明させていただきます。

 滋賀県北西部の高島市は、県内でも最もニホンジカの生息密度が高い地域で、農作物被害だけにとどまらず、車両との接触における人身被害、さらには森林内における植生被害など、多岐に及んでおります。

 当角川地区は、高島市の北西部に位置し、福井県嶺南地域に近い山間集落で、雪深い地域でもあります。世帯数は四十六世帯、人口は八十九人で、そのうち六十五歳以上が六七%を占めている限界集落です。農用地面積は約二十ヘクタール、石田川の豊かな水を利用して、十六ヘクタールで水稲の作付がされています。ほとんどの圃場で区画整理が完了しています。畑は自家用として季節の野菜を栽培しております。

 そういった地域の中で、野生獣による農作物などの被害状況はどうであったかということで、平成二年ごろ、イノシシによる水稲の踏み荒らし、また、畦畔の掘り起こしによる被害がありました。平成七年ごろは、猿による水稲収穫期における稲穂の食害、家庭菜園の食害がふえてきました。平成十七年ごろから鹿が急速にふえて、水稲作付直後や収穫期の食害、踏み荒らしの被害が多発しました。山林では、下草を食べ尽くし、樹皮を食べる、樹木が枯死する。大変、土砂災害のおそれが懸念されています。

 山林については、昔のように、炭焼きや森林の管理に人が山に行かなくなったことにより、里山が荒れた状態になっています。

 以上のような被害があり、何とかしなくてはと、集落ぐるみによる獣害対策の始まりとなりました。

 平成十九年に始まりました、世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策への取り組みを契機に、獣害対策抜きに集落の活性化はあり得ないと、集落の活性化に対する議論が活発になり始めました。

 同じころ、県や市が開催した獣害防止研修会に参加して学ぶことによって、人任せにするのではなく、みずから行動することで被害が軽減できる新たな志が芽生え始めました。

 平成二十年度に若手五人が、わな免許に挑戦し、全員が合格し、免許を取得しました。これにあわせて、角川農業組合では、箱わな五基、くくりわな五基を購入し、集落も被害防止活動の担い手を育成していこうとする機運が高まりました。

 また、他人任せから自主防衛へと発想を転換し、集落参加型による獣害防止活動の展開が始まりました。当初は、五人のわな免許取得者が中心となって野生獣の捕獲を始め、箱わなの見回りや処分のときに地域の人も応援してもらい、次第に協力者がふえ、餌の提供などもしてもらえるようになってきました。

 では、具体的な活動として、獣害防止柵の整備。平成二十年度以前は、個々の農家がネットやトタンで水田を囲い、また、猟友会に依頼して、有害鳥獣の捕獲を行ってきました。しかしながら、被害の軽減には結びつきませんでした。ネットやトタンの囲いは、毎年、設置と撤去の繰り返しで、大変な負担でした。

 平成二十年度、電気柵設置委員会を設置しました。構成員は、わな免許取得者五名、非農業者二名、高齢者二名、区の役員を含めた十一人です。全ての野生獣に対応できる恒久電気柵導入の検討を始め、柵導入のみならず、集落の環境改善も含めた対策を実施しました。

 角川地区を野生獣の餌場としないために、区内で申し合わせを行い、実践をしました。水田に生ごみや収穫残渣を放置しない、水稲のひこばえ、二番穂を早期にすき込む、不要な果樹は伐採する、家庭菜園は各自で防衛対策を行う、墓のお供え物は必ず持ち帰る、以上の項目を取り決めて実践しています。

 電柵工事については、平成二十一年度から工事を着手しまして、農家及び非農家を含め、自力施工で恒久電気柵を設置しました。整備延長は五・六キロメートル、一期工事が三・二キロメートル、二期工事が二・四キロメートルです。区民の負担金は十アール当たり二万九千円、市の補助金が一メートル当たり四千円でした。

 電気柵設置で一番の問題点は、個々の負担金をいかに理解して快く出してもらえるかでした。そこで、委員会を何回も招集し、話し合い、農地を守らなくては集落としての存続がないことや、先祖から引き継いだ農地を荒れ放題にしていいのか、また、土地改良により農地が整備され賦課金がやっと払い終わるのに無駄になるのではないかと、電気柵の必要性を説明して理解を求めました。

 また、負担金についても、施工を業者に委託すれば、試算で十アール当たり九万四千円になり、これではみんなに負担が重く、反対する意見もあるため、自力で施工することにより経費を抑え、また、区から二百万円、農業組合から百万円の協力金が支出してもらえることになり、全員集会では、出席者全員の賛成を得ることができました。

 加工に当たり、近隣で既に電気柵を実施している場所の見学や、業者に聞きながら工事を進めました。初めてのことで戸惑いもありましたが、みんなが知恵を出し、適材適所で自分のできる仕事を一生懸命頑張り、完成することができました。

 設置後の維持管理ですが、毎月一回から二回、柵の点検を行い、水稲作付期は、毎日門扉の点検を実施しております。電気柵内の不耕作地は役員が草刈りを行うなど、柵の維持補修を徹底しています。

 平成二十三年度から、電気柵設置の維持管理規定をつくり、電気柵敷設地域内の耕作者に対して十アール当たり千円の維持管理費負担金の取り決めや、草刈り等の維持管理のための出入り口の門扉を増設することも決まっております。自前で行うことによって愛着心が強くなり、集落で団結した獣害防止への取り組みが一層高まりました。

 電気柵設置で鹿とイノシシは防ぐことができましたが、猿については完全に防ぐことができません。そこで、猿は追い払いを徹底する。角川農業組合が、猿鉄砲、塩化ビニール管を細工した道具を集落全戸に配付し、猿を見たらロケット花火で追い払いを実施しています。高島市の主催する研修会で猿鉄砲のつくり方を学び、高齢者でも安全に利用できるように工夫されています。

 七日間から十日間ぐらい徹底して実施し、数人の男性で行うのが効果的です。また、一定の場所で実施した場合、これ以上は安全と猿が認識するため、山の方まで追いかけて追い払う必要があります。

 最後になりますが、まとめとして、取り組みの成果。

 恒久電気柵の導入を契機に、長老と若者が集まり、集落の将来について徹底した話し合いを行いました。その結果、一致団結して、合意形成を得たことで、集落内が活性化することになりました。

 また、柵設置に当たり、自発的な動きと役割分担ができ、野生獣から守れる集落にしていこうとする取り組みが行われてきました。

 さらに、被害防止対策を地域みんなで考え、何が原因で被害を引き起こしているのかを話し合った結果、共通認識が図れました。

 昔と比べて、人間と野生獣との見えざる境界線が縮まってきていますが、地域の事情に合った対策を、農家が主体となり、猟友会と連携しながら、日々被害防止に向けて取り組んでいます。

 こうして仕組みができ上がり、現在、箱わな六基、囲いわな二基を用いて、効果的な捕獲実績を上げています。ちなみに、平成二十一年時は、鹿五十三頭、イノシシ二十二頭の捕獲をすることができました。

 以上で終わらせていただきます。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石川昭政君。

石川委員 自由民主党の石川昭政でございます。

 本日は、参考人から、現場で御苦労していただいている大変貴重な意見をお聞かせいただいて、ありがとうございます。本法、鳥獣保護及び狩猟の適正化に関する法律の改正案につきまして、さまざまな立場から御意見を拝聴したところでございます。心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 もとより我が国は、三十八万平方キロメートルの国土のうち、実に七割が森林ということでございます。その狭い国土面積の中に、約三十万種という生物種がいるというふうに言われているところでございます。

 私の地元、茨城県の県北地区でございますけれども、やはり中山間地を抱えまして、イノシシが餌を求めて、畑や田んぼ、あぜを破壊する行為は、もう今や日常茶飯事ということになっているところでございます。

 全国的な農作物の被害は年間二百億円ということで、かなり被害も深刻化を増している。そんな中での鳥獣法の改正でございますので、私は一定の合理性はあるんではないかというふうに考えており、そうした立場に立った上で、皆様に御質問をしたいというふうに思います。

 まず、全参考人にお尋ねをしたいと思います。

 本法の改正案に、鳥獣の管理を図ることが追加をされることになりました。平成二十五年の十二月に、環境省そして農林水産省が、抜本的な鳥獣被害対策、鳥獣捕獲強化対策ということを打ち出しまして、当面の目標として、今後十年間で、鹿、イノシシの生息頭数を半減するという目標を掲げて今取り組んでいるところでございます。

 本法の改正に当たりまして、さまざまな施策が取り込まれているところでございますけれども、こうした施策によって、十年間でイノシシ、鹿の生息数を半減することが果たして可能であるかどうかということを、参考人の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

佐々木参考人 今、石川先生からの御質問でありますけれども、私は、先ほど申し上げましたとおり、まず可能だというふうに思います。

 といいますのは、私の岩手県の例をちょっと申し上げます。実は岩手県は、被災しておりまして、鹿が、移動禁止になっております。そういうことで、県が独自で、県単で狩猟期に捕獲をしております。実は岩手県では、今までは大体おおむね千五百頭ぐらいを狩猟期に捕獲しておったんですが、一昨年は三千頭、倍の捕獲をしようということで計画を立てました。あっという間に三千五百頭、四千頭を捕獲しました。ことしは四千頭ということでしたんですが、五千頭をあっという間に捕獲をしました。

 そういうことで、もしそういうことを狩猟期にしっかりとやるとするならば、今の倍の捕獲をすることによって十年後には当然半分にするということは十分に可能だというふうに私は思っております。

 以上です。

草刈参考人 私の方は、まず前提として、専門家をきちんと現場に配置するということが大事かなと。それはなぜかというと、先ほど兵庫県からのお答えもありましたけれども、現実的にどのぐらい個体数が減ったかどうかを見きわめるためには、専門家の目がどうしても必要になります。その配置をした上で、現実的に半減できたかどうかを見きわめていくということがまず第一に必要かなと思います。

 私の今までの経験ですと、千葉県ですとか、愛知県ですとか、そういったところで特定鳥獣保護管理計画の検討会の委員をしておりますが、現状ですと、その各猟友会のマンパワーに若干プラスアルファをしてとるというのが今の現実でございます。それを何倍も捕獲していくというふうなことになりますと、猟友会の方もよくおっしゃっていますけれども、弾代にもならないお金で駆除しろというふうなことがあります。

 やはり、今回、きちんととっていくためには、農水省の特措法と同じぐらいにきちんと予算をかけて、専門家を育成してとるということがない限りは、きちんととれないのではないかなというところを危惧しているところでございます。

 以上でございます。ありがとうございました。

田中参考人 先ほどの十ページの資料にもございましたが、現在十二万二千頭程度いる、そして五年後には六万頭程度にできるというふうに予測しております。

 これは、鹿といいますのは、自然増殖一五%程度、二〇%近いというデータもございます。したがいまして、五年程度たつと一万頭が二万頭にほっておいたらなるという状況でございます。そのときに、十二万二千頭としまして、一五%としますと約二万頭。したがいまして、二万頭を超える捕獲を続ければ母体のところを減らすことができる。こういうことで、三万五千頭オーダーの捕獲を今後継続して続けるということにしてございます。こういうことにすれば六万頭に達することができるのではないかなというふうに推定しております。

 ただし、これには、高齢化した捕獲者、このマンパワーを維持し、育成するということが課題というふうに考えてございます。

池田参考人 私の立場ではなかなか、半減できるということはちょっとわかりませんので、よろしくお願いします。

石川委員 ありがとうございました。

 おおむね、参考人の皆様は肯定的、あるいは目標が達成可能であると。前提条件はいろいろあろうかと思います。

 そもそも、この鳥獣被害でございますけれども、人口減少によりましてやはり限界集落がふえ、耕作放棄地がふえる。こうした今回の法改正による諸対策が根本解決につながるのか否かというところは、私は一つ問題点があろうかというふうに思います。

 その原因として挙げられますのは、やはり猟友会の皆様の高齢化の問題でありますとか、捕獲圧の低下、食物連鎖の乱れ、あるいは、広葉樹林が皆伐に遭いまして、そのかわりに針葉樹林が大量に植林され、山林の中の餌が少なくなった、その結果、餌を求めて人里に出現するようになった、このようなことを指摘する研究者もいるところでございます。

 その根本解決の一つの具体例といたしまして、やはり今の針葉樹林ですね。一定区域に広葉樹林あるいは果樹を植えまして、そこに鳥獣を自然に寄せ集められるような、そういう取り組みも必要ではないか。特に兵庫県でも、先ほどの参考人のお話の中でも、バッファーゾーンを設ける、その奥には広葉樹林地帯をつくるんだということが述べられておりましたけれども、こうした私の考え方について御意見を賜りたいというふうに思います。

佐々木参考人 まず、我々猟友会の内部の話でございますけれども、会員が減少しておる、高齢化、全くおっしゃるとおりであります。

 これにはいろいろな原因があるとは思いますけれども、やはり、平成二十一年ぐらいから急激に減っております。毎年、前年度対比七%ぐらい減っております。これは、非常に厳しい銃刀法の問題が、やはり猟友会の皆さんは耐えがたいということなんでしょう。

 そこで、質問でありますけれども、やはり日本は、はっきり申し上げまして、鳥獣に対する保護というか、ある部分はかわいそうだという保護思想がすごくあるんですが、例えば高速道路なんかを見ても、けもの道といいますけれども、そういうところも全部閉鎖しちゃう。そういう中で、鳥獣の生息が寸断される。

 外国に行きますと、高速道路は、どこであろうとも、必ず鳥獣のためにトンネルがあるという状況があります。日本はそういう部分が一カ所しかないそうですので、これは国土交通省だろうと思いますが、非常に問題があろうと思います。

 また、林道なんかにもU字溝が埋められておりまして、例えばキジであれヤマドリであれ、ひなを親鳥が連れて歩くわけですね。そうしますと、親鳥はぽんと越えるんですが、ひなが全部U字溝に落ちて餌になるというような、そういう部分の保護施策といいますか、そういうものが全くないというところが我々は非常に危惧するところでございます。

 いずれにしても、しっかりと中山間地を守ることによって、多少問題はあるにしても、鹿、イノシシへの一つの大きな方策ができるのではないかなと思います。

 以上です。

草刈参考人 まず、中山間地域についてでございますが、決して獣害があるから中山間地域が過疎化したわけではないと思います。学校の統廃合ですとか、そういういろいろな要素がありますので。そもそも、中山間地域の社会構造が今どうなっていて、将来どうしていくかというふうなことをきちんと議論していく必要がある。それはなぜかと申しますと、中山間地域に活力のある人たちがいることによってけものを山に押し込めることができるわけですけれども、そのパワーがなくなってきている、そこに根本的な問題があるというふうに思います。

 それから、広葉樹の植林でございますが、広葉樹の植林は、被害防除とセットで植林をしないとだめです。私も今まで埼玉県の秩父の国有林で広葉樹の植林をしておりますが、そこも、広葉樹を植林するだけではすぐに鹿が出て被害がありますので、いわゆるツリーシェルターというヘキサチューブをつけて、ある程度の、広葉樹が大きくなるまでは被害を防除するとか、そういったことをセットでやらないと難しいと思います。

 もう一つは、水源税を取って山を管理するということをよく聞きますけれども、水源税を取って山を管理するために下草刈りをしたりとか森林伐採をするわけですけれども、そうすると、伐採したところの空き地に草がまた生い茂って、その草が逆に鹿をふやしているというふうな話も聞いております。

 したがいまして、各省庁の施策をうまく統合して被害対策をしていくということを考えていかないといけないのではないかな、そう思う次第であります。

 ありがとうございます。

田中参考人 ワイルドライフマネジメントの原則に従いまして、もちろん、被害防止対策、柵をつくる、それから個体数管理、わな、銃でとるという荒っぽい方策もございますが、三番目としましては、もちろん、生息地環境を整備するということが重要です。

 そうしまして、私どもでは、バッファーゾーンとしまして、畑のたもとに抜き切りしたような少し開けたエリアをつくる、そして奥山に広葉樹林をつくるといった取り組みで、やはり、こういうソフトな、いわば中長期的な対応の部分というのはどうしても必要かというふうに思います。

 ただし、実は、私どもが広葉樹林を植えようとしましても、現在は、その植えようとした広葉樹林を食われてしまうという、非常に苦慮しております。これはやはり鹿の数が非常に多いということがございますので、当面はやはり、とるということでまず数を減らさないとどうしようもないという現実はございます。

 ちなみに、このバッファーゾーンの整備は、私ども、県民緑税と申しまして、超過課税、均等割を八百円増額いたしまして、その財源を用いまして、いわば災害に強い、いろいろな自然災害の中に獣害も入っておりますので、こういう獣害に強い森ということで整備もさせていただいております。

 以上でございます。

池田参考人 中山間地域ということで、まさに私たちは限界集落にいるんですけれども、限界集落のあり方としては、やはり高齢化、それから若い人が住まない。というのは、そこに問題としまして、やはり働く場所の問題があるのかなというふうに思います。私の息子も、滋賀県に住んであれですけれども、大阪、京都の方に、大学を出たらそっちの方で就職すると。地元に帰ってきてもなかなか、農協とか市役所とか、勤める場合に範囲が狭められてきますので、そういう働く場所がないからなかなかふえないかというふうに思います。

 それから、私どもも、そういう果樹の伐採というのは、山林地域に近い、柵の外についても、動物が侵入してきてもわかりやすいようにということで、山林部の一部の方はずっと刈り込みを入れて、余分な樹木の伐採をしていました。

 以上でございます。

石川委員 では、ここから本法の各論にちょっと入ってまいりたいというふうに思います。

 自民党の環境部会で、全国の猟友会の皆様にアンケート調査を行いました。このたびの法改正におきまして、捕獲事業者の認定制度を新たに導入するということでございます。先ほど佐々木参考人から、やはり懸念があるんだということは御指摘がございました。

 この点につきまして、どういった懸念材料があるのか、また、導入することによって、一体これは効果が上がるのかどうか、このあたりにつきまして佐々木参考人から見解をお伺いしたいというふうに思います。

佐々木参考人 先ほど申し上げましたとおりでございまして、私ども、今回のこの認定事業の奥の方がはっきり言って見えません。なぜそういうことが必要なのかどうかということですね。やる必要があるのかどうかということでございます。

 認定事業の要件は法人であるということ。法人といってもいろいろありますので、果たして一人、二人で、先般、環境部会でも、二人ですか、NPO法人が見えられたわけですが、ああいう方々が、もうほとんど自分たちがとっているような話を言っておられましたが、現実に二人で猟をしてどれだけ捕獲できるのかなというふうに私も心配しております。そういう人たちが全国津々浦々歩くようになるそうですので、土地カンもない、そういうところで、果たして本当にそういう捕獲が上がるのかどうかと非常に私は逆に心配をしているわけであります。

 ですから、その要件についてはしっかりと、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、九州の方では反社会的の人たちがそういう団体を組んで、わな、仕掛けをし、免許を取って資金源にしておるということで、いろいろトラブっておる状況もございます。なかなかそういうことを見抜くことも難しいんだろうと思いますが、いずれ、そういうことのないように。

 また、費用対効果を見た場合にどうなのかな、本当に能率が上がるんだろうかという思いがいたします。

 我々は、猟友会、はっきり言って、老齢化あるいは会員が減少しておると言われておりますけれども、先ほど申したとおり、今の段階では、しっかりと対応していくだけの能力がまだまだあると信じております。必ずそれに応えられるような体制を整えて、必ずや皆さんの期待、国民の期待に応えられるように努力をしたい、このように思っております。

 いずれ、全て賛成でオーケーということではない、少し心配の部分を込めながら、ひとついい方向に認定事業制度が進むように期待をしたい、このように思います。

石川委員 ありがとうございました。

 佐々木参考人から、新たな認定事業制度は慎重にという声が全国から寄せられているところでございます。こういった示唆に富んだ意見でございますので、しっかり本法に反映できるようにしていかなければならないというふうに思います。

 重ねて佐々木参考人にお尋ねをいたします。

 今回、さまざまな規制が緩和をされ、先ほどのお話で、夜間の銃使用あるいは麻酔銃での捕獲等々が可能になる。それに加えまして、捕獲するための体制強化の一環として、わな、網猟の免許取得年齢の引き下げということを今検討しているところでございます。

 また、あわせまして、先ほど草刈参考人から、専門家の育成が必要ではないかという御指摘がございました。まさにそれはごもっともでございます。環境省におきましては、新たな取り組みとしまして、専門家、エキスパートを募集しますというような形で、都道府県に派遣をする事業も行っているところでございますけれども、これにつきまして、佐々木参考人の御見解をお尋ねしたいというふうに思います。

佐々木参考人 今いろいろと御指摘がございました。先ほど夜間発砲あるいは麻酔銃については申し上げました。なお、それ以外のいろいろな規制緩和について今後行っていくということでございます。その辺についても慎重に対応していきたいと思います。

 一つここで申し上げておきたいことは、我々、今までいろいろな狩猟行政を見ておって、問題は、それぞれ、例えば、環境省は環境省の鳥獣法、あるいは農水省の特措法であれ、警察庁の銃刀法であれ、いろいろな法律がばらばらの形で運営されておる。

 野生鳥獣の管理というのは非常に難しい。世界でもあらゆる地区で苦労しているんですね。しかし、ヨーロッパを初め各地域では、そういういろいろな各省庁を横断した組織、野生鳥獣の管理体制というものがきちっとできております。

 例えば、行政においては、環境省や、農水省であれ、警察庁、厚生労働省ももちろんジビエの関係があります、あるいは国交省もあるでしょう、防衛省もあるでしょう。それと同時に、学校、大学とかで専門的に勉強される方、あるいはまた学識経験者、あるいは狩猟団体、保護団体等々、そういう人たちが一堂に会して議論をして、しっかりとした鳥獣保護行政をやれるような、そういう仕組みをぜひつくっていただきたいと思います。

 同時に、先ほど草刈先生の方からありましたとおり、専門官の育成ということも私は非常に大事なことだろうと思います。ぜひ、国はもちろんでありますけれども、都道府県において専門官を配置して、そういう専門官制度をいち早く導入して、しっかりした狩猟行政をしていただきたい、このことを要望して、終わります。

石川委員 貴重な御意見、ありがとうございました。示唆に富む参考人からの御意見を体しまして、これからも取り組んでいきたいというふうに思います。

 それでは、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 順番に各参考人の先生方にお伺いしたいと思います。

 まず、佐々木参考人にお伺いしたい点は、これまでも出てまいりましたが、狩猟者の方々が高齢化しているということのようなんですが、若い方あるいは私ぐらいの中年の方々の狩猟というものに対する関心そのものが低下してきている、そういう要因が一番大きいんでしょうか。それとも、先ほど銃刀法が非常に厳しくなってきてという御指摘がありましたけれども、この辺の一番大きな背景、要因というのはどういうふうに考えたらいいのか。

 あとは、聞くところによりますと、イギリスなんかでは、いわゆるハンティングをスポーツとしてやっている面もあるんだろうと思います。これは、日本ではそういうことに今のところなかったんだろうと思いますが、わかりません、素人の考えなんですが、こういったものを取り入れていくことを検討していくことで狩猟者の数そのものをふやしていくんだというのはどうなのかな、この点、もし可能であれば教えていただければと思います。

佐々木参考人 ただいまの担い手の育成ということでございます。

 我々も、いろいろな方々、若い人たちから、狩猟をやりたいという人に対するアンケート、あるいは環境省もいろいろなフォーラムをやっておられまして、いろいろな意味で初心者のための対策を講じておるところでありますけれども、実は、銃を持って有害駆除、社会貢献したいという方、若い人でいっぱいいます。ただ、銃を所持するまでのプロセスというのが非常に難しい、厳しいわけであります。

 例えば、一つ例を言いますと、私が初めて銃を持ちたいといった場合、警察署に行って、試験を受けるための申請書、講習と考査が実際のところありますが、それをもらいに行くわけですね。もうその時点で警察署からいろいろな欠格条項が示されます。銃に対するいろいろな知識がどうだとか、いろいろなことを聞かれるんですね。例えば、なぜ銃を持ちたいのか、誰から持てと言われた、家族は知っているのか、上司に聞いているのか、そういうこと。あるいは、まだ試験も受けていないわけですけれども、弾の保管庫を所持しているかどうか警察は見に来ます。また、まだ試験を受けていないんですよ、近所を聞いて、あるいはまた会社に行って、家族に聞くことはやむを得ないと思いますが、そういう厳しいことを言われますので、その時点でもうやめたというのが実態であります。

 ですから、試験ぐらいはきちっと受けさせていただいて、その後、試験に通った場合に、銃を所持していいかについては、徹底して欠格条項に照らし合わせて、この人に本当に銃を持たせていいかということをきちっと精査することは私は当然だと思いますけれども、今の現状ではその前の段階でそういう厳しい欠格条項がある。これでほとんどの人がやめちゃうんです。八割ぐらいの人は、もう面倒だ、やめた、こういうことで、わずか二割ぐらいの人がやっとそれを耐えていくというような状況であります。そういう銃刀法の問題もあります。

 今、やはり銃に対する日本人の意識もなかなか微妙でありまして、銃に対する偏見とは言いにくいんですが、家族も含めて、銃を持つということに対してまだまだ理解をしていただけていない。その辺は、我々が今まで鳥獣被害等々に対していろいろやってきたことに関してもっと国民にアピールして、狩猟に対する重要性というものをもっともっと喚起すべきだったなと今反省をしながら、これからはそういう形で取り組んでいきたいと思っています。

 以上です。

大熊委員 貴重な現実の情報、まことにありがとうございました。

 続きまして、草刈参考人にお伺いいたします。

 資料をいただいた「まとめ」の中の3で「現行法の特定鳥獣保護管理計画制度の仕組みの改定で十分対策は可能である。」ということで、運用の改善というような対応でできるのかなという理解をさせていただいたんですが、一方で、実際に農作物等の被害が出ているということで、法律をつくるということはより強力な手段ではないかなと思うんです。

 あえて強力な手段、法律の修正でいくというより、法律そのものは要らないんだよ、現行の運用でいけるんだよということなのか。閣法で提案されている今回の法律のこことこことここを直せ、例えば、先ほど六種類の動物に限定すればという御説明もあったんですが、法律そのものが要らないのか、それとも法律を修正していくべきなのか、そのあたりについて、もうちょっと具体的に教えていただければと思います。

草刈参考人 現行の制度と申しますのは、今の改正ではなく、この特定鳥獣保護管理計画制度の中をもうちょっといじるということはできないかなと。それにきちんと専門家を養成するという条項を設けるですとか、そういう専門家の条項を設けることによって、その専門家が事業者を認定するとか、そういう仕組みがないと動かないと思いますね。あと、現行法の中でも、捕獲数はもっとふやしなさいという指針もできると思います。

 今回の鳥獣保護法で一番の問題は何かというと、鳥獣保護法では、都道府県が鳥獣保護事業計画を立てなければいけません。これは義務となっております。しかしながら、国は鳥獣保護事業計画を立てる仕組みになっておりません。そこは一つの大きな問題かなと思います。やはり国がきちんと鳥獣保護事業計画を立てて、その中で、どういう地域にはどういう頭数が適正ですよという指針を示すということが大事だと思います。

 国の答弁では、国の鳥獣保護事業計画は生物多様性国家戦略がそれを担っているという御答弁がございましたが、鳥獣保護法の中に、国は鳥獣保護事業計画を国としてきちんと立てて、地域地域でどういうふうな施策をするかという方針を見せることが重要なところではないかな、そういう改正が必要なんではないかな、そう思っているところでございます。

大熊委員 ありがとうございました。

 草刈参考人の資料ですと、鳥獣担当者のドライバーの絵のところが、今御指摘していただいたところの若干関係なのかなと思います。一方で、田中参考人の資料の中の動物研究センターの組織、こういう中にも、県の職員の方と、それから大学の先生、研究者の方なんでしょうが、広い意味で民間人だと思うんですが、一緒にやっていますよという、そういうセンターの組織というのがあるんです。

 草刈参考人は、とにかくこれは官僚といいますか地方公務員なんだ、単純に言うとそういうことだろうと思うんですが、一方で、兵庫県の田中参考人ですと、これは必ずしも県の職員だけじゃないよ、こういう理解をさせていただいたんです。違いはミックスか地方公務員だけかという話なんですが、そのあたりについて草刈参考人と田中参考人に、要は、平たく言うと、役人だけにすべきなのか、それともミックスでいくべきなのか、その辺の御意見をそれぞれお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

草刈参考人 そこら辺は議論をして、どういう制度がいいかというのは落としどころを決めなきゃいけないと思います。やはり、国でもたびたび議論されていますけれども、答申とかでも書いてありますけれども、では、具体的にどういう人がいいのかというのが結構重要になってくるかなと。

 兵庫県でも、きちんと、行政職のある程度のポストで、予算をとられる人がいないとお金はとってこられないというところもあるので、そういうレベルの人がどうしても必要になってくるのではないかなというふうに思います。

田中参考人 兵庫県の森林動物センターのこの大学の方ですけれども、これは、実は準備段階から、全国から公募したという経緯もございます。しかしながら、あくまで県立大学の教員としておりますので、今は大学法人ですけれども、いわば県職員というふうに我々も考えております。

 一方で、純粋たる農林事務所で育った県職員、いわゆる行政職の職員というのの合わせわざにしておりますのは、地域に入ったときに市長と相対する、あるいは集落の方と相対する、そして県自身の農林事務所というんですか、あるいは県民局というセンターがございますが、こういうところと相対する中で、やはり大学の先生では少し、例えば、人脈がないとか、ちょっとコツが、勝手がわからないということがございますので、こういったところに純粋な県職員がいるところの意味というのはございますし、それから、もちろんながら、繰り返しになりますが、やはり科学的な部分というのを押さえるということで大学の教員があるということでございます。

大熊委員 いろいろな知恵の中で、適切な形態、組織形態とか、その方の所属といいますか、そういったことが決まってくるんだろうな、必ずしも、しゃくし定規に全員地方公務員じゃなきゃならないよということでもないなというふうには理解をさせていただきました。

 続きまして、田中参考人の資料の中から、私も実は都会の選挙区でございまして、こういう関係はほとんど無知に近いわけでございますが、九ページ目、これはちょっとおもしろいなと思ったのは、兵庫県の地図の左側の茶色の濃いところ、要するに、県の北部ですか、こちらが非常に農業被害が大きいよと。ところが、右側の下層植生の衰退、これが無被害あるいは衰退度ゼロ、こうなっている、これがデータ的にちょっと不思議に思えて、これはなぜでしょうか。単純に言うと、濃い茶色であれば、右側も赤とか茶色になっていなければおかしいのではないかと思うんですが、これはなぜなんでしょうか。

田中参考人 確かに、ここはちょっと誤解を招くかもしれませんが、実は、右側の下層植生の衰退状況の表は二〇一〇年のデータでして、少し古いというところがございます。

 したがいまして、戻っていただきまして、八ページの絵を見ますと、右側の絵で、目撃効率が一二年度にかけて北の方は赤になっております。つまり、ふえているということですので、調査の時点の問題で、九ページの絵の方は衰退する前が少し出たのかな、タイムラグというふうに御理解いただくのがよろしいかと思います。

 恐縮でございます。

大熊委員 わかりました。データ的な問題だということで、特に強い論理性というか相関性があるということでもない、そんな理解をさせていただきました。

 続いて、田中参考人の同じ資料の十八ページ目の鹿肉の活用という御指摘がありました。ここで初めて伺ったんですが、ジビエについては法律がないんです、と畜場法というのは家畜だけなんですということで、右側のところ、丸く囲ってあって、そういったガイドラインが平成二十三年の一月にできていますよということなんです。

 ここの部分については、もちろん田中参考人個人としての御意見で結構なんですが、法律をつくった方がいいんじゃないか、ないからしようがないからガイドラインでやっているということであろうと思うんですが、むしろ、法律をつくってほしいというお考え、法律の中身はありますけれども、その辺についての御意見をお願いいたします。

田中参考人 ガイドラインの関係でございますが、二面性があるのではないかなというふうに思います。こういうふうに確立されていないので、市場に出たときに、信用といいますか、野生だからちょっと危ないんじゃないかということをお思いになる方があるというところがございます。したがいまして、こういう側面からすると、やはり法律で整備して、きちっとできているよという発信ができればこれにこしたことはない。

 ただし、野生のものをとるということですので、それをとって、運び込んで、処理するまでには、企業ベースの一定のレールがあるのではなくて、相当さまざまな形態があると思いますので、そこで柔軟な体制を定めることができれば、一定の効果があるのではないかなというふうに思います。

大熊委員 ありがとうございました。

 法律をつくるにしても、中身あるいは運用のハードルがちょっとそれなりになかなか高いなという理解をさせていただきました。

 最後に、池田参考人にお伺いいたします。

 御説明いただきました現在の高島市今津町の角川地区の被害状況というのは金額的に言うと大体どのぐらいなのかという点と、仮にこの法律ができましたとなった場合に、被害はその何割ぐらい減る、半分ぐらいになるだろうとか、相当効果が期待できるんだよと。その辺についての御意見、感触、感じでも結構なんですが、教えていただければと思います。

池田参考人 被害についてですけれども、平成二十一年度で、ニホンジカによるものが三万五千円とか、イノシシが九万円、ニホンザルが一万五千円。二十三年度になりますと、ニホンジカが一万九千円ぐらい。これは共済の部分で出てきた分で、そこからの数字で知れていると思いますけれども、現在、数字的にはほとんど半減以上というんですか、柵が張りめぐらされていますので、今、中には入れない状態で作物をつくっておりますので、ゼロに近い状態で来ているというようなことでございます。

 以上です。

大熊委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日は、参考人各位におかれましては、大変お忙しい中お越しいただきまして、心より感謝を申し上げたいと思います。

 まず、私は、もともと精神保健指定医でございましたので、銃刀法の厳しいこととかはいろいろ関心を持っていたところでございます。今回、本会議の方でも代表質問させていただきまして、そのときに、国家公安委員会委員長である古屋大臣の方から、ライフルは十年以上たたなければ所持できないということで、この御答弁では、認定事業者については十年未満でも持っていいようにするようなことを環境省と検討しますということをおっしゃっていました。

 そういった中で、佐々木参考人にお尋ねいたしたいんですけれども、委員長の御地元も関連されるかと思うんですが、東日本大震災におきまして銃が流失した方々、この方々は技能としてはしっかりした技能を持っておられると思うんですけれども、こういった、銃がなくなってしまった、亡失してしまったがゆえに最初からやり直しというようなこともお聞きしたわけですけれども、この点について、御意見ございますでしょうか。

佐々木参考人 ただいまの御質問でありますけれども、先般の東日本大震災におきまして猟銃を流失した人が約二百七十名ほどいらっしゃいます。これは、当然ながら銃を失効するということになるわけでありますけれども、我々も、何とか特別措置法でそれを救うことはできないのかと。

 ああいう状況の中で銃を何丁も担いで逃げられるはずがないじゃないかということで、警察庁に大変いろいろなお願いをしたんですが、やはり今の一銃一許可という一丁ずつの許可制度においては絶対認めないということで、全員が初心者となったわけでありまして、初心者の資格を得て、それで今やっております。しかしながら、御案内のとおり、今度は、ほとんどの人がライフル銃を所持しておったんですが、十年間持てないわけですから、当然、もうその皆さんはライフル銃を撃つことはない、ほとんどあり得ないと思います。

 そういうことで、言葉は悪いですが、非常に不条理としか言いようがないということで、何とかライフル銃の所持だけでも認めてもらえないのかなという要望をいたしておるところでございます。

 以上です。

河野(正)委員 委員各位におかれましては、今お聞きになったように、技能はそのまま持っていらっしゃるにもかかわらず、被災をしてしまったがために、優秀なハンターの方もおられたでしょうけれども、そういった方々が十年間持てないということで、一方では養成しなければいけないということでありながら、今参考人もおっしゃったように、そういった非常に不条理なことが起きているので、今後考えていかなければならないのかなというふうに思っております。

 猟友会さんの方では、後進の育成については何かお考えなんでしょうか。

佐々木参考人 今、国では、環境省は、御案内のとおり、まるわかりフォーラムといって、各都道府県で年間四十二、三カ所で森林の育成のためのフォーラムをやっていただいております。また、都道府県によっては、兵庫県もそうだと思いますが、県がいろいろまた、その試験を受けるために、狩猟試験、銃の所持許可試験等々、大体十三万円ぐらいかかるんですね、そういう試験だけで。そのほかにも、銃を買う、あるいはガンロッカーで、弾のロッカー等々、結構お金がかかるんですが、その試験の部分を、十三万ぐらいを補助してやっている、あと、猟友会が補助してやっているというところもあります。それはそういうことで、今、国の方に対しても、それを少し応援できないかなという要望をしております。

 また一方、育成。しからば、どうやったらハンターの皆さん方がスムーズに試験が受けられるような、所持の許可を受けられるような方法ということで、今北海道では、西興部の猟区でもやっております。結構、射撃場で狩猟学校、ハンタースクールを開設して、大体五、六回座学、いろいろ試験の勉強をして、実際に現場に行って有害駆除に参加して、勢子をやったり、また解体をしたり、いろいろそういう勉強をして、卒業して、スムーズに銃の所持ができるように、今いろいろな意味で、わなも含めてですけれども、やっておるところでございます。

 ただ、残念なことに、できることならば、狩りの免許を取って、そうした人に対しては射撃場で、射撃場にある銃で実際に実射訓練をできれば、本当に立派なハンターとして育成できるんじゃないかなと思いますけれども、これまた銃刀法という厚い壁がありまして、難しい。

 以上でございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 今おっしゃったように、育成も非常に大変でございますし、そういった幾つかの不条理な問題点もあるやに思います。

 また、認定事業者という民間が入ってくれば、いろいろな問題、乱獲という問題もあるでしょうし、先ほどからお話に出ているように、反社会的な勢力が入ってくる可能性もあるという懸念がございます。

 そういった意味で、先ほどちょっと草刈参考人の方が触れられましたけれども、ガバメントハンター、公務員による狩猟者ということについて、若干補足してお話しいただけたらと思います。

草刈参考人 ガバメントハンターでございますが、これまで、環境省の審議会の議論でも、ガバメントハンターを導入したらどうかという議論は幾つも出ております。

 実際には、下仁田町で、猟友会の負担を減らし、捕獲後迅速に対応するため、職員をガバメントハンターに指名して、狩猟の有資格を養成する仕組み、こういうのも実施している、そういう自治体もございます。

 もう一つは、北海道でもこのガバメントハンター、いわゆる公務員ハンターを配置して、公務員ハンターが捕獲者と一緒に捕獲事業をするというふうなことも進んでいるというふうに聞いております。

 このガバメントハンターで捕獲を管理するというようなところでは、幾つか具体的に議論されておりまして、役割分担等も議論されております。

 国では、これも、法制度に基づいた配置規定の整備及び国家資格制度の創設が必要なのではないか、配置に対する財政的な支援が必要なのではないか。

 これは北海道で議論されていますけれども、道においては、広域的な保護管理を担う専門職員の配置が必要ではないか、市町村を超えた広域的な体制づくりの調整、支援が必要ではないか等々、このガバメントハンターを担う役割分担なんかの議論もされております。

 むしろ、今回、環境省がそういうふうな管理を表立ってやっていくということならば、環境省の鳥獣保護を担う方々も狩猟の免許を取っていただき、かつ、地方環境事務所にも狩猟免許を取った人を配置して、みずから実施していく、そのぐらい堂々と行って法律を改正する、そのぐらいの意思を表示していただきたいと思うところでございます。

 ありがとうございました。

河野(正)委員 乱獲防止というものもありますので、やはりそういった多様な選択肢があってもいいのではないかなと考えております。

 次に、田中参考人にお尋ねいたしますけれども、これはやはり、今乱獲ということをお話ししましたけれども、しっかりと、どれぐらいの生息数があるのか、生息域がどこにあるのか見きわめた上できちんと研究をして、そして、司令塔がきちんとしてやっていかなければいけない問題ではないかなと思っております。

 そういった意味で、森林動物専門員制度等々をされて、しっかり、中には、この専門員の方は狩猟免許を持っている方とかいうことも書いてありますので、本当に先進的なことを兵庫県はされておられるなと思って、敬意を表するところでありますけれども、この森林動物専門員制度、あるいは、ワイルドライフマネジメントということから、司令塔の役割についてどのようにお考えか、お聞かせください。

田中参考人 センターを中心にやっているということでございますが、先ほどのジャパンの先生のレジュメの中にありました自動車の絵という意味から申しますと、専門員という行政職、それから研究員という大学教員を置くということで、二人、運転者と優秀なナビゲーターを置いて運転していくという状況なのではないかなというふうに、先ほど、あの絵を見ていて思った次第です。

 時に運転をかわりながら、必ずしも一方が運転ばかり、ナビゲーターばかりということではなくて、両方が両方を行き来しながら、そして、二人でコントロールしているので非常に注意も行き届くというふうな形になるのではないかなというふうに思います。

 一方で、司令塔という観点に関しましては、今のセンターは、ここで話に出ておるような管理官というようなイメージとはちょっと違うのかもしれません。あくまで科学的なバックボーンと、それから実戦部隊であるということで、もちろん保護管理計画をつくるということについて指導的役割をしておりますが、やはり実行部隊で、行政が主導になるというところがございますので、その辺、やはり両者相まって、二人で運転をしているというイメージではないかなというふうに思っております。

河野(正)委員 済みません、改めまして田中参考人にもう一度お聞かせいただきたいんですが、やはり、私どもとしては、各県こういった制度を設けて、兵庫県に倣ってやっていくべきではないかなと思いますけれども、これについてちょっとコメントを、難しいでしょうが、もしいただけたらと思います。

田中参考人 そうした御質問を多分お受けするだろうというふうに思っておりましたが、御紹介しましたように、本県のセンターは、河合先生と林先生という、世界的な大家でいらっしゃいます。河合先生は、もちろん、霊長類の研究所を一線引いておられますが、月に何度か必ず来られて、研究員の成果、進捗状況を管理されます。林先生も同じです。

 こういった非常に強いリーダーシップを持った、しかも見識のある先生を抱えるというのは、恐らく、例えば四十七都道府県が全部というのはなかなか難しいのではないかなというふうにちょっと思うわけです。

 しかし、一方で、おっしゃるように、例えば近畿、私ども関西では関西広域連合という場でもこのセンターは役割を果たそうというふうに考えておりますが、これぐらいの広域レベルに一つずつはあればいいのではないかな、なかなか難しいけれども、というのが率直なところでございます。

河野(正)委員 今、関西広域連合という言葉が出ましたけれども、私も実は代表質問のときに、こういった鹿やイノシシ等は県をまたいで行動してしまうわけですから、私は九州ですけれども、いろいろな県にまたがっていくわけでございます。そういった観点からしますと、道州制を導入してやっていった方がいいんじゃないのか。我々日本維新の会はそういった道州制推進の政党でございますので、そういった意味でお話をさせていただきました。非常に大きな問題があるからということで、新藤担当大臣からは、今後検討するということで終わってしまったわけなんですけれども。

 済みません、また田中参考人にお聞きしたいんですけれども、兵庫県も、隣接した県が山間部でたくさんあると思います。他県との連携について、関西広域連合という意味で、どのように連携をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

田中参考人 関西広域連合は七府県四政令市ございます。今、特にこの分野でいいますと、広域環境保全分野というものが、七つの取り組みのうちの一つとして、きちっと規約にうたわれまして、進めております。

 その中で、例えばですけれども、この獣害対策ということに関して言いましたら、有害捕獲をしますのに証拠物が要ります。例えば歯、耳、尻尾等を行政機関に持ち込んで報奨金の手続をとるといったことが必要ですけれども、一方の県で歯を持ち込み、一方の県で耳を持ち込むということにしますと、これはダブルもできてしまいます。甚だ卑近な例でございましたけれども、歯でもって統一をするといったようなことも、せんだって、広域連合の中で調整が進みつつあります。

 それと、本センターの研究員が関西広域連合の検討部会の中に入り込みまして、この先生は中央環境審議会にも参画しておられますが、こういったメンバーを抱えるということで、かなり指導的な役割を果たしておられるということがございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 ちょっと話は多少前後するかもしれませんけれども、草刈参考人にお尋ねしたいんですけれども、先ほどボン条約というのが出てまいりました。ボン条約というのが、今既に百十カ国ですか、二〇〇八年十月現在で締約国があるということで、我が国が未締結であるというふうに伺っております。

 我々の同僚議員の中にも、やはり、海獣といって、海生の動物、鳥獣保護に対して先ほどお話がありましたけれども、そういった漁業被害のことを言っている議員がおります。

 そういった意味から、この条約を何で我が国が締結していないのかなという思いもあるんですけれども、一説には鯨ということもありましたが、その辺、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

草刈参考人 ボン条約の件でございますが、これまで、生物多様性国家戦略の中でもボン条約の議論はされております。ただ、国家戦略では、まだ日本はボン条約は批准しないんだけれども、個体の種としての協定とか、そういうことができるという議論までは行っておりますが、まだ条約の批准というところまでは行っていません。我々からすると、国際的な責務を持っている先進国でございますので、そういう面からも日本はボン条約に批准すべきではないかなというふうに思っています。

 それはなぜかと申しますと、日本は島国で、南から北まで幅広い島でありますし、南からいろいろな生物も渡ってきます。また、ウミガメなどもきちんと対象にするということができていないですね。今、ウミガメも世界的には非常に絶滅の危機があるものですから、そういう面でもボン条約にきちんと批准するということは大事だと思います。

 ボン条約を批准した上で、鯨なりイルカなりはどう扱うか、それを考えるべきであって、鯨、イルカがあるからボン条約に批准しないというのはちょっと流れではないかなというふうに思うので、ぜひ、ボン条約の批准について、前向きに国としても検討をしていただきたい。これはやはり、日本の国際的な使命でもありますし、生物多様性基本法でもそういうふうにうたっておりますので、重要な条約だというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 それでは、池田参考人にお聞きしたいんですけれども、角川地区を囲ってしまうということで、入ってこられないようにするということなんですが、囲われた外の方にある周辺地区に対する、角川地区が守られることによって周辺に波及する影響とかいうことはどのようになっているんでしょうか。

池田参考人 お答えします。

 周辺地区についても、私たちの柵の設置状況を見て、徐々に普及してきたというんですか、同じような形の柵をこしらえるようになってきております。

 あとは、捕獲の方について、市の方も積極的に、毎年三千頭以上の捕獲をしておりまして、最近では日中に鹿を見かけることがなくなるようになってきております。

 以上です。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 この鳥獣保護法を鳥獣保護管理法というべきものに変えていこうというものではございますけれども、非常にいろいろな問題があると私どもでは考えております。やはり、先ほどお話ししましたように、銃刀法の問題でありますとか夜間銃猟の解禁についてですとか、また、住宅地での麻酔銃使用について、そういったこともありますし、非常に多くの問題があるかと思っています。

 時間も多少ありますので、もう一点、済みません、佐々木参考人に振り返ってお聞かせ願いたいんですが、住宅地での麻酔銃使用ということは、果たしてリスク以上に効果があるものなんでしょうか。石原大臣の方からは、余り飛ばないから安全なんだということだったんですけれども、飛ばなければ今度は、では捕獲できるのかという問題もございます。先ほどちょっと触れられたと思うんですが、最後によろしいでしょうか。

佐々木参考人 麻酔銃ですけれども、私は、せっかくの環境省の御提案なんですが、非常に難しいなと思います。

 十五メーターや十メーター、命中率はそれしかありません。それも夜間にやると。そういう中で、必ずしも事故がないとは言い切れないわけです。麻酔の量によって、自由に決められますので、仮に大きなものがあって人間にもし当たった場合は、当然ショックをする、死亡するということがありますので、もっとやり方があるのかなと。

 特に猿をということでございますので、猿はわなで捕獲するのが一番ベターなんですね。猿ほどわなにかかりやすい動物はいないそうです。大変利口な顔をしていますが、おりには全く無能だそうでございまして、そういうやり方もあると承知しています。

 以上です。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 やはり、いろいろな問題が含まれた法律だと思いますので、しっかりと今後も議論しながら、人類と鳥獣、動物たちが共生できるような社会、国家になっていけたらいいなと思っております。

 また、先ほど兵庫県の例もありました、兵庫県は有名な学者さんがおられてという。うらやましい限りではございますけれども、そういったリーダーを育てていくということも我々の使命ではないのかなと思っております。

 本当に、鳥獣と人類が楽しく仲よく暮らせる世の中を願いまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道でございます。

 私は北海道でございますので、四人の参考人の先生方の御意見は大変に傾聴させていただきました。特に、北海道はエゾシカの問題が、かなり大きな問題として直面しておりますので、そうした観点で幾つかお聞きをさせていただければと思います。

 特に、北海道、エゾシカにつきましては、北海道全体に急増しているところでありまして、深刻な農林業被害をもたらしておりますし、森林内の植生に過度な採食圧がかかって、それによる植生の著しい変化は、そこに生息する鳥類や昆虫などの生息状況にも大きな影響を与えていると今言われているところであります。さらに、近年では、大雪山や夕張岳、アポイ岳など、山岳地帯にまで生息域が広がりまして、希少な高山植物にまで被害が確認されています。

 また、道内各地では、自動車や列車との衝突事故もふえ、時には、本来の生息適地でない市街地、札幌などにもあらわれて、マンションの中にも飛び込んでくるなど、住民生活にも大きな支障を与えているような状況でもございます。

 平成二十一年度においては、推定生息数が初めて約六十万頭を超えました。そしてまた、農林被害額も、平成二十三年度においては六十四億円というような状況でありまして、私、前職は北海道議会議員をさせていただいておりまして、北海道庁にはエゾシカ対策室と、室を設けるなど、やはり北海道を挙げての取り組みをしなければならないような状況になっているのも事実であります。

 そんな中で、私ども北海道の自然環境は、変化に富む山岳や、天然林を主体とした広大な森林、広漠な湿原や大小の湖沼が織りなす北方的な景観と多種多様な動植物にも恵まれておりまして、地域の暮らしや産業を支えるだけでなく、観光やレクリエーションの場としても、魅力ある、優位性の高い資源となっております。

 日本の財産とも言える私ども北海道の豊かな自然を守り育てていくためには、バランスのとれた生態系が保たれるような環境づくりに努めることは、最も大事なことであると思っているところであります。

 さまざまな自然環境とそこに暮らす野生生物の適切な保護管理は、近年注目されている生物多様性の保全に直結するものであり、次世代に向けてこの貴重な財産を引き継いでいくことが、北海道における最も重要な責務の一つにもなっているわけであります。

 特に北海道は、平成十年度から、エゾシカの特定保護管理計画を策定しました。餌でおびき寄せて捕獲するシャープシューティング、地域をまたいで管理していく広域管理などを実施しております。

 こうした取り組みの背景には、専門家の方々の活用があります。専門家の方々を配置し、その力を活用することによって、農業被害の原因となっている有害鳥獣の管理により高い効果、成果を得ることができているわけであります。

 と同時に、鳥獣の駆除について、ライトセンサスで各地域の個体数を事前に十分に把握もしています。専門家の方々の科学的根拠に基づいた個体数管理によって、生態系への影響について、不測の事態が起きないような取り組みも行っているわけでございます。

 今後、専門家を全都道府県に配置していく必要もあると考えておりますけれども、この問題については、まず、草刈参考人、田中参考人にお伺いさせていただければと思います。

草刈参考人 北海道のことでございますけれども、今まで、先進的な保護管理を進めているということで、兵庫県とか北海道はよく話題に上げられるわけでございますが、きょうは、参考人の意見陳述をする前において、北海道で、いわゆる兵庫県がやっている、専門の研究者の方にヒアリングをいたしました。そこからのお声をかわりにお話ししようかなと。

 北海道では、北海道環境科学研究センターが連携して行政をサポートしている、いわゆる先ほどの兵庫県のサポート体制と同じような体制でございます。しかしながら、行政の中に野生動物の管理の専門家を配置する仕組みがない、そういう悩みがあります、そういう声を聞きました。獣医職はいますけれども、野生動物の管理の専門家を配置する仕組みがない。これはやはり北海道には配置する仕組みが必要ですよということはおっしゃっています。

 行政内に獣医職の人が多いけれども、野生動物を管理する、これを実行する上には以下のような問題点があるというふうなことを伺っておりまして、一つは、家畜という視点、個体というベースの視点しかなく、その個体群の生態ですとか野生動物という観点を理解していないという部分。今まで、いろいろなところが、生物多様性、生態系、野生生物のことを理解しながら管理していく、そういう視点がやはり担当者に欠けている。

 例えば、個体群管理には大きな努力が必要とされるのに対して、現実は、傷を負った傷病鳥獣に多大な労力がかかっているなどのアンバランスな状況が今起こっているというふうなことですから、そういったことを解決しながら、北海道にもそういう、行政の中に専門職を配置することが今早急に求められていることではないかなというふうに考えているところでございます。

 ありがとうございます。

田中参考人 先ほど来出ておりますように、大変お褒めをいただいておりますセンター、ここに働きます県職員は、御紹介もしましたように、農業関係、林業関係の職員、獣医もおります。

 林業関係の職員は、入ったときは、林業そのものを専門にする職員が多うございますので、鳥獣関係を大学時代の授業で少しかじったかなという程度で入ってまいります。農林事務所に配置されますと、鳥獣保護、狩猟ということを所管しますので、担当者としてそれを学んでいきます。そういう担当者の中で、よりそういう経験が深い者が結局、鳥獣保護の専門家、本県でいえば自然環境課というところになりますが、こういったところの人材を担うという形になってございます。

 ただし、それだけでは不十分ですので、おっしゃいましたように、センターの方との人事交流を通じまして、この専門員というのは、本県の自然環境課でありますとか農林事務所でそういったことを担当していた職員が専門員として異動で配置され、そして何年か学んで、また、農林事務所であるとかあるいは県庁の本庁に戻ってきて、行政そのものの立場からまた果たしていけるということを繰り返しておりますので、まさに人材育成に役立っているということは言えるのかなというふうに思います。

佐藤(英)委員 どうも貴重な御意見をありがとうございます。

 私は北海道議会で、鳥獣保護、エゾシカ対策を担う環境生活委員会というのがありまして、そこで委員長を務めたこともございました。特に、そこの対策室には、狩猟免許を持って実際に狩猟に当たられる方なんかもいましたので、もうざっくばらんに、けんけんがくがく議論もさせていただいてまいりました。

 特に本年、北海道では、狩猟免許を持つ北海道の職員でチームを結成いたしまして、正式に公務として北海道各地を転戦していくことを今検討されております。

 ハンターの方々の高齢化で、人材確保はより困難になっております。銃による捕獲は依然重要だと考えますけれども、これまで人材の確保やハンターの育成、安全対策など、猟友会の方々が大変に大きな役割を果たされてきたと私も認識をしております。

 今回の法改正で事業者の方々の参入が可能となるわけでありますが、事業者の方々が勝手でよいというのではなく、私はやはり猟友会の持つノウハウを十分に生かしながら進めていくべきであると思っております。

 新規参入者も猟友会の方としっかり連携しながら取り組むべきと思いますけれども、率直な御意見をお伺いさせていただければと思います。これにつきましては、佐々木参考人、池田参考人、そして草刈参考人にもお話をいただければと思います。

佐々木参考人 ただいまの御質問でありますけれども、認定事業者制度の導入についてですけれども、非常に私も心配をしております。今まで何回と環境省ともお話し合いをして、何かもう少し違う方向がないのかなと思いながら、議論させていただきました。

 特に、先ほど申し上げましたとおり、法人という中で、我々は公益あるいは一般という財団法人になっていますけれども、やはりそういう厳しい審査の上での法人であります。しかしながら、中には、NPO法人といった、割合に簡単に設立ができて、なおかつ、中には責任を余り持たないような団体もあって、社会問題になっている部分もあります。もしそういう方々が参入するとするならば、これは銃を持っているわけですから、社会的に大きな問題になる可能性も秘めておるということでございます。

 私は、あえて言いますけれども、やはり我々だけでやれるものではないとは思っています。当然ながら、立派な企業も、いろいろな御意見を今いただいております。そういう上場企業の皆さん方も、今こういう被害が出ておるんだ、我々も参加したい、参入したいということでありますから、私はそういう部分については大いに歓迎をして、一緒に今のこの厳しい時代を乗り越えていきたい、このように思っております。

 まだまだ心配な部分、認定要件ですね、多々あります。その辺を、今後も環境省と、これから省令、政令等いろいろな細かな部分に入っていくわけでありますので、この認定制度が国会を通ったときに、それからじっくりと詰めて、絶対間違いのないような組織、そしてなおかつ、我々も、先ほど申し上げましたとおり、県の段階において、広域専門捕獲隊というものを地域から選ばれたまさにハンターが組織するわけでありますから、それに向けて認定が受けられるような組織、そうすることによって、県あるいは市町村の自治体等としっかりと連携を組んで、地域の皆さん方にも御指導賜りながら、従事者としての使命を果たしていきたい、このように思っています。

 ありがとうございます。

池田参考人 私どもは小さな集落で、わな免許は持っていますけれども、猟友会に入っているハンターというのですか、それはいなくて、少し離れた今津の方、市の方から要請すると、そこで入ったあれをしとめてくれるというような形になっております。

 また、私も農業委員をやっていまして、獣害対策の中で、高齢化してハンターの人が少ないということで、これからは、担い手さんとか、農業の中で、やってこられる方に対して、狩猟免許を取ってもらうようにしていったらいいかというようなことを市の方に対して要望していることもあります。

 以上です。

草刈参考人 認定事業者の問題については、意見陳述で述べたとおりでございます。

 今回、北海道というふうなことでございますので、先ほど私も北海道の心配事を語りましたけれども、北海道もぜひそういう専門家を配置するということがまず最優先で重要かなと。その上で、どういう認定事業者が適切なのかというようなことですね。北海道はかなり長く研究者の方々が被害問題ですとかを科学的に調査研究されておりますので、北海道でも、どういった認定を受けるような人たちがいるかというのを調べられているかと思います。

 私も、ぜひ北海道の担当の方に、北海道で本当にそれが可能なのかどうか聞いてみたいと思います。もし聞くことができましたら、後ほどまたメール等で御回答しようかなと思います。

 ありがとうございます。

佐藤(英)委員 せっかくの時間、もうちょっと残っておりますので、今の問題について、田中参考人の方からもし御意見があれば、一言いただければなと思います。

田中参考人 認定事業者の関係は、私どもも、行政そのものとして、県の猟友会各支部に全面的に御協力をいただいて、報奨金の制度も整えて、捕獲をやっていただいております。したがいまして、現状を見るに、捕獲の中心というのはやはり猟友会さんにお願いするのが穏当だろうなというふうに思いますが、ただ一方で、担い手、そういった方々の人材の枯渇というんでしょうか、高齢化がございますので、この制度というのは、一点を切り開くものであろうかと思います。

 ただ、この制度が定着するまでに少し時間がかかるのかな。地域に入っていきますと、ドンと鉄砲が撃たれる、それは誰だということになったときに、猟友会の支部の方を思い浮かべながら、あの人が撃っているな、あの集団が撃っているなということと、それと、いわば違う方々が活躍している姿というのは、少しやはりびっくりされるだろうというふうにも思います。

 ですので、猟友会主体の活動の中にこういう認定事業者も補完する形で入ってくる、そういうところがうまくランディングすればいいのではないかなというふうに思っております。

佐藤(英)委員 本当にありがとうございます。

 この問題は、北海道に限らず、やはり全国的な課題であると思っております。

 特に北海道は、大変に気候が厳しく、それこそ雪解けを待って農家の方々が、収穫を目指して、一生懸命毎日汗を流して収穫を試みているわけであります。それで、本当に我が子のように育てた作物がある日全くなくなっている、そうした農家の方々の悲嘆さ、これは何度も何度も私は見てまいりました。そうした農家の方々の御苦労。そしてまた、北海道は、自然また食文化、そうした重要なものもありますので、こうした自然の生態系、そしてまた第一次産業との共生というものをしっかりと目指していけるような世の中のために、四人の先生方の御意見を踏んまえまして、私もまたしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 きょうは、貴重な御意見をありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党の吉田泉でございます。

 きょうは、四人の参考人の方、本当にありがとうございます。

 お一人ずつ順番にお聞きしたいと思います。

 まず、佐々木会長の方ですが、先ほどの意見開陳の中で、狩猟期の問題がございました。特措法の狩猟というのが今、夏場にも行われておる、しかし、いろいろな問題がある、入山者が多いとか、虫が多いとか、そういうこともあると。

 今回の特定計画に基づく捕獲についても、環境省の方は通年捕獲ということを考えているかもしれないんですけれども、佐々木参考人が、いわゆる狩猟期に限ってやった方が効果が上がるんだ、かつ安全なんだということなんだろうと思うんですが、その辺の根拠をもう少し詳しくお話しいただけますか。

佐々木参考人 ただいまの御質問でありますけれども、今、特措法では、御案内のとおり、許可狩猟ということで、狩猟期以外でも捕獲をやっているということで、先ほど申し上げましたとおり、この五、六年で当時の三倍近い捕獲をしているということでございます。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、大変な暑さの中で、あるいはまた、どうしても木の葉があって獲物が見えにくいという部分があります。また、いろいろな方々が山野に入山されているという状況の中で、事故の問題も本当に真剣に考えていかなければならないというような、いろいろな問題があります。そういう意味で、はっきり言って、今は限界だなという思いがいたします。

 そこで、今回、環境省が個体数調整を行うについては、先ほども言われたとおり通年ということになるんだろうと思いますが、ぜひ、登録狩猟、狩猟期間中での捕獲をしっかり都道府県が担当してやっていただく。そうすることによって、狩猟期では、大変捕獲しやすい環境にあります。

 といいますのは、例えば鹿ですと、夏場はどうしても住宅とかそういう居住地に近いところに生息をし、いろいろなものを食べておるということでございます。一方、冬になりますと、雪が降りますので、そういう雪が降る地域においては、全て鹿は山の方に登っちゃうんですね。そして、山の上でのいろいろな木の皮とか、そういうものを食べて冬越しをするということでありますので、割合に事故の防止にもつながるし、捕獲は非常にしやすいということでございます。

 また、私が一番大事にしたいなと思うのは、やはり、せっかく我々がこれから、鹿だけを考えても、百万頭近い鹿を捕獲するようになるわけですね。今の有害捕獲ですと、それを利活用することはほとんど不可能なんですね。夏場ですと、何十分で肉が腐り始めます。ですから、利活用は全くできないということになります。

 そこで、冬場、狩猟期間ですと、立派な食材としての活用ができます。私はぜひ、せっかく百万頭近い鹿の肉を、また施設も、今全国で九十カ所ぐらいの処理施設があります。ただ、先ほどちょっと話がありましたとおり、HACCPの問題とか、ハンターが衛生的な部分がまだ欠如している、そういういろいろな問題があります。そういったことも含めて衛生管理をしっかりして、食材として国民の皆さんに食してもらう。

 要は、そういうことで、鹿の肉を食べることによって、また国民の皆さんが食することによって自然の生態系も守れるんだという、何かそういうことをアピールしながら、ただただかわいそうじゃなくて、これはぜひ、そういうことが大事だというふうに認識しておりますので、いずれ、狩猟期での捕獲について、もし御指示があるならば、間違いなく今の倍は捕獲することを約束したいと思います。

 以上です。

吉田委員 ありがとうございました。

 次に、草刈参考人にお願いいたします。

 先ほどのお話の中で大変印象的だったんですが、ヒグマとツキノワグマ、実はレッドリストに載っておって、地域的に孤立している、絶滅のおそれがあるという指定を受けているわけですが、実は、特定計画制度が始まっても、著しく減少したこの二種に対する特定計画がつくられて、三カ所においてはつくられていない、つくられている四カ所については、どちらかというと捕獲すべしという計画になっておると。何か私も矛盾を感じました。

 それで、こういう獣種については、今後どういう対応をすべきなのか。特定計画でうまくいかないときは、先ほど、国全体の事業計画をつくるべしというお話もありましたが、そういう方向がいいのか、何か希少鳥獣の指定のようなこともできないのか、その辺の今後の対応策について教えてください。

草刈参考人 ツキノワグマについては、いずこの計画も、ある程度の捕獲上限というのを決めてとっております。したがいまして、その生息地をちゃんと保護していくとかというよりは、ある程度の問題があったら捕獲するというのがほとんどでございます。

 もっとも、四国のツキノワグマは今数十頭というふうなことで、最も絶滅のおそれが高いところで、環境省も数年前に、九州のツキノワグマは絶滅したという絶滅宣言をしております。

 次に絶滅のおそれが高いのはやはり四国の熊でございまして、今四国の熊が生息しているところは、四国山地の山頂部分にある、本当にわずかにある広葉樹の森の中で細々と暮らしているというのが現状でございます。

 この四国の熊を、では、本土から熊を入れたらどうかとかという議論もございました。そのときに、IUCN、世界自然保護連合の熊のスペシャリストに聞きました。そうしたら、熊が生息する生息域をまず確保することが大前提、その生息域を確保して、もし導入するなら持ってくるということなので、今の生息地は、鳥獣保護区とか、環境省の保護区なんですけれども、この保護区の拡大ができないというのが非常に大きな問題となっております。

 これができないのはなぜかというと、四国には、鹿がすごく大きな問題となっておりまして、鹿をとれ、とれという声が非常に大きいんです。なので、鳥獣保護区の期間が切れて、今度新しく期間を延長するという議論のときに、ぜひ鳥獣保護区も、熊が生息する範囲を確保できるように拡大してほしいという話をしたんですが、結局、鹿の問題が余りにも大き過ぎてそれができなかったという現状があります。

 ですから、環境省が持っている鳥獣保護区とかそういうところがございますので、ぜひ環境省みずから入ってきて、高知県の方々と一緒に、ツキノワグマをどのように保全管理してふやしていくか、生息地をどうやってつくっていくか、議論することがどうしても必要かなと。地方分権で現地に丸投げでは、四国の熊は近い将来絶滅すると思います。やはりそのぐらいの手だてが必要ではないかなというふうに考えるところでございます。

 ありがとうございます。

吉田委員 もう一つ草刈参考人にお願いします。オオカミの問題です。

 せんだっての委員会審議でも、鹿対策として、イノシシ対策でもあるんですが、オオカミの再導入ということを検討したらどうだという意見が委員の中でもございました。

 アメリカのイエローストーン公園で成功しているということもあります。「オオカミが日本を救う!」という本が二、三カ月前にも出版されたようですけれども、そういう意見もなかなか根強いものがあると思いますが、環境省は極めて慎重姿勢なんです。

 生態系に詳しい参考人の御意見を頂戴したいと思います。

草刈参考人 特に生態系に詳しいということではございませんが、オオカミの再導入のことで、国会で議論されたのは私も傍聴して聞いておりました。

 オオカミが一九〇五年、要するに百十年前に絶滅している。もう既にいなくなったオオカミを、近縁の種類を持ってきて再導入しようという議論ですけれども、百十年前の環境と現代の環境はかなり違っていると思います。人口もかなり違っていると思いますし、もっとも法制度も、かなり複雑な法制度がたくさんあると思います。例えば、人畜共通感染症ですとか、動物の検疫の問題ですとか、鳥獣保護法の問題、動愛法の問題、それから外来生物法も、明治以降日本に導入したものを外来種というふうにするというようなことがラインとして決まっておりますので、今回入ってくるオオカミについてもこれは外来種として考える、そのときにどうするかという議論をしなきゃいけない、まずそういうところがあると思います。

 イエローストーンですとかヨーロッパのオオカミの再導入の議論がされておりますけれども、あれはあくまでも大陸の議論でございます。日本は島国です。ですから、非常に広い大陸を持った国では人間とのあつれきがそれほど、大陸では余り近いところではないんですけれども、いろいろなところに今、日本人はいる。やはり島国で本当にそれができるかどうか、島国ベースできちんと考える必要があるかなと思います。

 考えるのに一番手っ取り早いのは、再導入のためのIUCNのガイドラインというのがございます。これは、IUCNの種のスペシャリストグループというところが、いろいろな生き物をいろいろな場所に再導入するときに、こういうふうな手順、方法によって再導入すべきですよというガイドラインを書いております。

 このガイドラインは非常にページ数もたくさんございますが、その中で再導入の狙いとかということが書いてありますけれども、例えば、オオカミの個体群が地域で自立してやっていく、定着していける環境をつくらなきゃいけないというふうなことがあります。ただ単に鹿をとってもらうためのツールとして入れることではないんですね。やはり、日本に定着するということは、それが本当にできるのかどうかということが書いてありますし、長期的にその種を存続させなきゃいけないということと同時に、地域や国家の経済に対して長期的に利益が提供できるかどうかということも考えなきゃいけない。これは、ガイドラインの中に幾つか書いてあります。

 非常にたくさんガイドラインに書いてありますけれども、ぜひ、このガイドラインを見ていただいて、本当にこういうことが可能かどうか国の方でも判断していただいたらいいのではないかな、そう思うところでございます。

 ありがとうございます。

吉田委員 ありがとうございました。

 田中参考人にお願いします。

 今回、今まであった特定計画というのを二つに分けて、一種計画と二種計画に分けますということになります。環境省の方は、分けた方がより目的がはっきりして保護管理しやすいんだという理論なんですが、草刈参考人などは、広域的な管理がかえって困難になるというお話とか、そもそも一種、二種と動物を差別するのはいかぬという考え方もあったり、賛否両論あるように思うんですが、お考えがあればお聞かせ願いたいと思います。

 一種、二種の上に県が鳥獣保護管理事業計画という全体的な計画もつくるということになっているとは思うんですが、御意見をお願いします。

田中参考人 例えば、今話題に上っております四獣種、鹿、イノシシ、猿、熊とございますが、鹿とかイノシシというのは、今はどちらかといえば、とれというような、捕獲、管理という側面、それから、熊、猿は、本県ではどちらかというと、保護色が若干強いのでございます。

 そういう意味で、二大別を粗っぽくはできるのですけれども、鹿といえども、やはり、先ほど御紹介した、生息地環境を整えることによって、自然で生きられるようにというような考え方を持っておりますので、どちらかが保護で、どちらかが管理ではないということは、これは間違いなくございます。

 したがいまして、保護、管理の両方で、どちらが濃くてどちらかが薄いというような二大別は可能かというふうに思います。

 ただ、本県でたまたま、御紹介したいのですが、例えば熊。熊は狩猟鳥獣ですけれども、本県では狩猟禁止にしております。どちらかというと、若干、保護の要素を持っているということで、例えば、繰り返し出没して、かなり恐怖心を与えるような場合にのみ有害捕獲をする。その場合でも、まずは一度、ちょっと怖がらせてから、学習放獣するといったような工夫もしております。

 こういうことを、ケース・バイ・ケースに応じて、特定保護管理計画の中で定めておりまして、その中には、やはり保護色と管理色というのが共存するというのが現実ではないかな。その中で、どちらかにウエートを置くといった形で運用させていただくことが、逆に言うと必要ではないかなというふうに思っております。

吉田委員 ありがとうございました。

 最後に、池田参考人にお願いいたします。

 御地元で、わなを中心に、それだけじゃなくて電気柵を置いたり、それから餌場にしないような手入れを入れたり、いわゆる防除の方策を、工夫を大分されていると。その両者相まって、今成功しているということだと思うんです。

 せんだっての委員会の議論の中で、昔は犬を放していた、そうすると、犬が走り回って、排せつ物をその辺にまき散らすと、イノシシがそれを嫌がって寄ってこない。この昔の知恵をもう一回、中山間地に入れたらどうだという御意見もあったんですが、いかがですか、何かお考えがあれば。

池田参考人 お答えします。

 犬については、今電柵という柵をする前は、山沿い側には犬をひもでくくって置いておくというような方法をとっておりまして、多少の効果はあったかなとは思うんですけれども、鹿は割とふえましたね。余り効果がなかったということなんです。

 この間の賞をもらったときに、牛を放牧というんですか、山林の方にして効果が出ているというようなことで、同じ賞をもらったところも言っておられましたので、牛の放牧は何か効果があるように聞いております。

吉田委員 ありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀と申します。

 本日は、四人の参考人の皆様、本当にお忙しい中、ありがとうございます。

 ここまでの議論で、大変示唆に富んだ、また、興味という意味での非常にくすぐられる内容の御答弁をいただいておりまして、すごくお話に耳を傾けさせていただきながら、皆さんがいろいろな質問をされていく中で、では、私はどんな質問をしようかなというふうに思っていまして、ちょっと細かい話になるかもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。

 まず、田中参考人にお伺いをしたいなと思います。

 いただいた資料の中で、もしかしたら御説明の中にあったかもしれないんですが、もし聞き逃していたら申しわけございません。

 お伺いしたいんですけれども、十一ページのグラフ「県・市町と連携した捕獲支援」というところを見たときに、平成二十二年から捕獲数が急にふえているというか、データとしてはかなり数が大きくなっている。色で見ますと、これは捕獲専任班の部分がここから新たに加わっているんですけれども、その影響を除外したとしても、純粋に狩猟期間中に捕獲したという数が物すごくふえているということがあるんですね。

 ちょっと戻って七ページの方なんですけれども、何か要因があるのかなと思って、七ページに戻って見てみたんですが、とりあえず、鹿に関しては平成十九年から第三期ということで、二十二年に関して、二十二年というか二十一年の方が大事かもしれませんが、このときに何か特にやられたということはここからは読み取れないんですけれども、この急にふえている要因についてはどのようなことが考えられるのか、まず教えていただければと思います。

田中参考人 ここで急にふやしておりますのは、先ほどちょっと御紹介いたしましたが、自然増殖率一五%から二〇%という数の中で、十万頭を超える鹿がいるというふうに判断した以上、やはり確実に二万頭をしっかり上回らないと減らないということをもう一度この時点で再確認をいたしました。

 したがいまして、二十二年度から、予算上の措置として、こういう専任班の仕組み等をつくりまして、いわゆる狩猟者、捕獲した鹿を持ち込んだ者に対する報奨金の制度、例えば、一頭当たり幾らでありますとか、あるいは一日活動すれば幾らでありますような、そういう報奨金の制度をしっかりつくりました。

 そして、このとき三万六千頭という数になっておりますが、目標としては三万頭で出発いたしました。その中で、予算措置もしっかりつけたということでもって、結果として、三万六千頭、三万四千頭、二十四年度は少し雪が少なかったということもございましてちょっと減っておりますが、こういうオーダーの量が確保できたということでございます。

 こういう報奨金の制度といいますのは有害捕獲につきものということでございまして、このたび、二十五年度に導入されました国の基金の制度も有害捕獲というのが当然ながらベースなんですけれども、兵庫県では、ここの二十二年度からは、報奨金をいわゆる狩猟の分野にも一部導入をいたしました。

 こういうことによって、いわば都市部から郡部へ入ってこられるという狩猟者の方にも少しインセンティブをつけるという意味で、有害捕獲ほどではないけれども、そういう制度をつくったということでもって、一万頭オーダーが二万頭になったというふうになっております。

 以上でございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 今の御答弁で物すごく感じましたのは、目標をしっかりと定めて、その目標も高いものに定めて、それなりの措置をしていけば、水準の高い低いはあるかもしれませんが、やはり結果はついてくるものなんだなということを非常に感じましたので、今回の法改正におきましても一定の効果が見込めるんじゃないかなと期待するところはあるんです。

 草刈参考人にお伺いしたいなと思うんですが、私、まだ漠然としか理解できていないので改めて教えていただきたいんですが、今回のこの保護と管理というところを区別する必要はないというような趣旨のお話があったんですけれども、私がイメージするに、第一種、第二種と分けて、保護ですよ、管理ですよということにした場合でも、それをうまくミックスした組織というかやり方をしていけばうまく運ぶところもあるんじゃないのかなと思うんですが、これを分けると具体的にどういった弊害が起こり得るのかというところを、もしあればお願いします。

草刈参考人 参考人の意見陳述でも申し上げましたとおり、例えば、これは事例ですけれども、四国の場合ですと、ツキノワグマは非常に絶滅のおそれが高い。一方、同じところに鹿は非常にたくさんいる。そうなると、今までの特定計画でも、個体数が著しく減ったものについての計画自体は立てられておりませんので、そういう現状の中で、四国で鹿の大量捕獲が行われますと、場合によっては誤射して熊が撃たれるという問題もございます。

 ただ単に個体数が多いからそれを削減するということではなくて、その生物がいるところのほかの生物、絶滅のおそれのある種がいるところもあると思います。そういうところでほかのインパクトが起こる可能性がありますので、そこら辺をきちんと考えていかなきゃいけないのではないかな。

 例えば、鹿を大量捕獲しなきゃいけないというところで、事業者の方々が入られるわけですけれども、では、その事業者の方々は、入られる場所の生態系なり生物相なりということをわかっていて入るかというと、そうではないと思いますね。そうすると、逆に、希少な植物を踏み荒らすということもあると思います。そういう面でも、やはり専門家をきちんと置くということが大事だと思います。

 先ほど兵庫県の方もおっしゃいましたとおり、現行の鳥獣保護法の特定計画の中で、著しく減らす、ふやす、これがきちんと共存して、これを運用できているというのは、先進県でもうそういうことができているということでございますので、あえて二つに分ける必要はないというふうに思っているところでございます。

 ありがとうございます。

林(宙)委員 非常にクリアになりました。ありがとうございます。

 続いて、もう一度草刈参考人にお伺いしたいんですけれども、鳥獣保護管理の専門家というのを行政にも入れていきましょうというお話、非常にそのとおりだなと思っているんですが、今現状で、恐らく、野生動物管理というところに、適正かどうかは別として、獣医学部を卒業した方とか、獣医関係の方が担われているケースというのもやはり多くあるとは思うんです。

 これも一ついいことだと思ってはいるんですが、ただ、もしかして獣医の方では専門家としてちょっとカバーし切れないものがあるとか、例えば獣医という観点から見た場合と野生保護管理と見た場合は、もしかしたら違う点があるんじゃないのかなと思うんですけれども、その点については何か御意見はありますでしょうか。

草刈参考人 先ほど私の意見陳述にも兵庫県の方の意見陳述にもございましたとおり、兵庫県のセンターのように、獣医だけではなくて、やはり生態系、生物多様性をちゃんと見るですとか、リスクマネジメントという話ですとか、そういう人材を育てる、こういうのも、どうやって人材を育成するかということもありますので、こういう多岐にわたるスキルを持った人がやっていかなきゃいけないという状況なんです。ですから、獣医さんだけでそれが済むかというと、そうではないかなというふうに思うところであります。

林(宙)委員 済みません。私がちょっとほかの委員会と重複していますものですから、そちらに行っている間に、もしかしたらその御質問があったのかなと思います。失礼しました。

 では、続きまして、佐々木参考人にお伺いしたいんですけれども、これまでの質疑の中でも幾つか出てきました。やはり、夜間に猟をするというところを非常に危険度を感じている方も中には多いなと思っておりまして、先ほど佐々木参考人のお話の中では、夜間についてはちょっといろいろリスクが大きいんじゃないのかなというようなお答えがありました。

 これも、先日私も環境委員会で政府側に質問させていただいたときには、効果としてはそう大きくないかもしれないんだけれども、一応やれることは全部やっておきたいということで、今回、この辺も計画次第ではしっかりと認めていくというようなお話なんですが、実際に現場で狩猟をされているという立場から、効果としてはどのぐらい見込まれているのか、あるいは、先ほど御懸念になったリスクを考えても一応やった方がいいかということを、もう一度ちょっとお伺いしたいなと思います。

佐々木参考人 夜間の発砲については、シャープシューティング、アメリカでは当然夜間にやっているわけでありますので、その辺のことは別として、私が一番心配するのは、やはりアメリカのああいう広い国土じゃないところで、山岳地帯で仮にした場合に、さっきも申し上げましたように、ライフル銃というのは、三キロ、四キロ飛ぶわけですよ。夜間ですと、バックストップがわからないんですね。ですから、非常に危険な状況があるんだろうと思います。また、スコープも夜間用のスコープじゃないわけですから、目は見えますけれども、体はわからないという部分もあります。ですから、私は、確かに、効果は全然ないということではないと思いますけれども、そう大きな効果は期待はできないんではないのかなと思います。

 と同時に、また、どうやって一般の人たちに、夜間やっているんだよということを、銃声というのはすごく恐怖を与えるものですから、その場合にはサイレンサーをつけることになるのかどうかわかりませんけれども、そういったいろいろな問題があろうかと思います。

 いずれにしても、私は、その前に、先ほど申し上げましたとおり、まずは、日の出三十分前あるいは日没三十分後、その間を許可いただいて、そのときに徹底して鹿を捕獲する。まだ学習していないですから、必ずその成果が出るだろう。その後これを考えるべきではないのかなというふうに思います。

 以上です。

林(宙)委員 どうもありがとうございます。

 サイレンサーについては非常に厳しく規制されているということですので難しいだろうなと思っていますし、実際に、環境省の方も、やはり日の出前と日没後のその短い時間というところが恐らく現実的だろうということはおっしゃっていましたので、多分、佐々木参考人のおっしゃるとおりの運用の仕方でいくんだろうなというふうに思っています。

 ただ、効果がリスクを上回らないのであれば、やはりどこかで一回ちゃんと見直さないといけないかなと思いますので、これは環境省の方にもしっかり、そこら辺のデータというんですか、日中とそんなに捕獲数が変わらないとかそれよりもちょっと成績が悪いとか、そういうことがあるんだったら、そこは少しもう一度見直した方がいいんじゃないかなというふうに思ったりしているところはございます。

 もう少しだけ時間があるので、最後に池田参考人にお伺いしたいんですけれども、もう非常に漠とした御質問になりますけれども、今回の法改正の内容で重立ったところというのは、やはり狩猟のところというのは非常に大きい要素だと思うんですね。ただ、池田参考人の角川のところでは、決してそこではなくて、むしろ集落の皆さんの協力というか、そういうところが非常に大きい要素であるということで、今回の改正で、参考人の集落のところに何か大きなメリットはあるんでしょうか。その観点からいくとどうでしょう。

池田参考人 先ほど言われたように、地域ぐるみでそういうようなことをつくって、それはあくまでも防衛で、それだけでは数は減っていかないということで、やはり、猟友会の皆さん、あるいは箱わなとかくくりわなとかのわなでの捕獲、そういうことをしなければ自分のところだけしか守っていないという形になりますので、やはり、猟友会の方にまたたくさんとってもらうというようなことは必要なわけです。

 今、温暖化の傾向で、今はあれでも、ほっておけばだんだんふえていくというような形で、やはりその分減らさなくては数が減らないということですので、今回の法律改正の中で、またそういう猟友会さんの立場から先ほども答えておられますので、若手を育てるとかそういう部分も含めてやっていただければ、私らの村も助かるなというふうに思います。

 以上です。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 先ほどの池田参考人の陳述の中で、こういうことを機会にして、年齢が上の先輩方と若い人たちとが一緒に話をして集落が活性化したというお話がありました。私はまさにここが実は一番大事なことなんじゃないかなと思っていまして、こういった取り組みをぜひ、今回の法改正とはまた別の話かもしれませんが、これをきっかけに進めていっていただきたいな、私たちも努力をしていきたいなというふうに考えている次第でございます。

 では、時間が来ましたので、これで終わります。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、野間健君。

野間委員 私は、無所属の野間健と申します。

 本日は、四名の皆さんから大変貴重な御意見を頂戴しまして、本当に勉強になりました。ありがとうございます。

 私は地元が鹿児島県の薩摩半島でありまして、中山間地が多くて、非常に農業の鳥獣被害が深刻であります。多くの農家の皆さんや行政の皆さんからも、何とかしてほしいという声を毎日のように聞いている立場であります。

 まず、佐々木参考人に御質問したいんですけれども、やはり、行政の皆さんや猟友会の皆さんのお話をお聞きすると、二十四年度の補正予算、農水省で始まりました緊急捕獲対策事業、いわゆる都道府県の基金による報奨金、イノシシ、鹿、猿、八千円、プラスまた市町村で六千円とか五千円が出る。

 これで非常に弾みがついて捕獲が促進されていると思うんですが、これは三年間、二十七年度までなんですけれども、やはりこれをぜひ継続してほしいという声が大きいですし、これがあるないには相当違うわけですね。そのあたり、いかがでしょうか。

佐々木参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの質問でありますけれども、先般補正予算で、百二十九億という大変な税金が投入されまして、基金として三年間に使用するということで、猟友会の皆さん方は一生懸命それに向けて体制を整えてやっておるわけであります。

 ただ、私は、個人的に言いますと、この報奨制度という言葉が非常に何か心に刺さる部分がありまして、今まで、私ども猟友会は、どちらかというとボランティアという形の中で捕獲をしてきた。そういう中で、確かに、いろいろな経費がかかります。今、ライフル弾一発でも五百円、六百円かかるんですね。一頭撃つには大体七発かかるそうです。やはり、油や、いろいろかかるんですね。そういう実費の部分については当然いただける、これが今私どもが期待をしているわけであります。

 極力、報奨金という言葉でなくて、実費をいただけるということで、今後も続けていきたいと思うし、必ずやまた、来年になりますか、またその分の補正予算を組んでいただいて、基金としてもししていただければ大変我々も弾みがついて、今示しておられるような、十年後に鹿やイノシシを半分にする、絶対そういう方向で努力することをお誓い申し上げたいと思います。

 以上です。

野間委員 それともう一つ、今も質疑でお話が出ておりましたけれども、通年狩猟ということで、現在は十一月十五日から二月十五日が狩猟期間、この間、いわゆる報奨金は出ないということになっているわけですね。この期間、本当であれば、イノシシや鹿などは子供を身ごもっているときなので、そこのときに捕獲すれば本当に一番効果が上がるわけですから、ここが解禁されれば相当な収穫が望めるということですね。わかりました。

 それと、ちょっとあと二点。

 麻酔銃の話なんですけれども、麻酔銃の弾というか、その入手というのはかなり通常と違うということをよく聞くんですけれども、何か簡単に入手できるものではないんでしょうか。

佐々木参考人 麻酔銃の麻酔の弾ですけれども、これは当然、厚生労働省の管轄になっておりまして、それを取り扱うためには獣医さんの資格が必要になってまいります。ということで、銃を撃つ人は当然でありますけれども、もう獣医さんとセットでいないとその任を果たせないということになります。

 麻酔ですから、その体重によって量がきちっと決められております。今はやっと県の段階でそれを認めていただけるように、前は厚生労働省に直接申し出てしないとなかなかそれが許可を受けなかったということです。

 ただ、先ほど来申し上げているとおり、果たしてそれだけの効果が見込まれるかどうかということは、私も自分で実際にやってみて、なかなか命中しないです。ですから、その辺はやり方も、猿の問題でしたら、もう少し何かあるのかなという思いでいます。

 ただ、いろいろな形でまた利用することもあると思います。例えば錯誤捕獲、熊が間違ってわなに入ったあるいは違うものが入ったという場合には麻酔銃で眠らせて放獣をするとか、そういういろいろなやり方があると思いますので、全て麻酔銃を否定するものではございません。

 以上です。

野間委員 続いて、草刈参考人にお尋ねしたいと思います。

 先ほど鳥獣保護管理計画官というお話が出ましたけれども、これは、いろいろ海外などの例とか、何かいい先進例などあったらまた教えていただきたいんですけれども。

草刈参考人 いろいろな学会で海外の例の発表は出ております。ただ、今ちょっと手元にその資料がございませんで、実際、アメリカでもそういう専門家を養成するような大学があったりとか、ヨーロッパでも狩猟学を学んでそういう管理ができるコースがあったりとかというところがあります。

 残念ながら、日本ではそういうふうに狩猟の保護管理ができるような学校が非常に少のうございまして、そういう学校の整備も必要なんではないかなというふうに思うところでもあります。

野間委員 次に、兵庫県の田中参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほど、若手のハンターの育成で、マイスター育成制度、二十六年度から始めるということなんですけれども、これは、ちょっと今どの段階かわかりませんけれども、かなり応募とか、そういうことをやりたいという方、希望というのはあるんでしょうか。

田中参考人 この事業そのものに関しましては、現在、募集を開始するための準備をしているところでございまして、狩猟免許の試験、六月あたりから始まっていきますので、このときに合わせて始動するということでございます。したがいまして、まだ準備期間中であると。

 ただし、この事業、実は、全県ベースとしては今年度からですけれども、県北部の但馬地域というところでは、一部これに準ずるような取り組みというのは既にしておりまして、いって十名といった、そういう単位ではございますけれども、育成行為をしているということはございます。

 かなり引きがあるものなのか、それとも警戒されるものなのか、これはちょっと私どもも予測しかねているところでございます。

野間委員 もう一つお聞きしたいんですけれども、先ほど、生息地管理、バッファーゾーンの整備ということで、確かに、動物は隠れるところをなくすことで近寄らないということもあるんですけれども、しかし、だんだん私どもの地元なんかでも、なれてきて、人がいても結構当たり前のように入ってきて被害が出てきている例も出ているものですから、何か根本的な、やはり柵とかそういうことになるのかと思いますけれども、一部、例えばトウガラシをまいたらいいとか、薬草をそこへ植えたらいいとか、いろいろなあれがあるんですけれども、ぜひまた、その辺の研究とか、何か御示唆があれば教えていただければと思うんですけれども。

田中参考人 バッファーゾーンに関しましてはおっしゃるとおりでございまして、動物というのは、やはりなれると非常に警戒心を解いて大胆に近づいてくるというところがございます。

 一方で、初見では非常に警戒心が強いということがございまして、バッファーゾーンの発想もそういったところにあるわけですけれども、ここに書いてありますように、防護柵とあわせて設置ということで、防護柵だけですと、例えば設置しているからいいやということでほったらかしになります。一方で、バッファーゾーンも、バッファーゾーンだけではやはりなれが来るということがございますので、そこに人が出入りをするスペースをつくるということを、物理的にもそういったスペースをつくりますと、集落の方々もそこに実際入っていきます。そして、柵の管理がしやすくなるということがあろうかというふうに思います。

 したがいまして、バッファーゾーンも、何も整備するだけではなくて、集落の方と維持管理の協定を結びまして、中長期的にそれが維持されるようになるということが大前提でございますので、そのあたりでこういう仕組みというのは生きていくということになろうかと思います。

野間委員 ありがとうございました。

 池田参考人にお尋ねしたいと思います。

 今、農地を、ある意味で全て、一〇〇%電気柵で囲んでいるという状態かと思いますけれども、それにもかかわらず、やはり猿はそこを乗り越えて入ってきているという状況なんでしょうか。

池田参考人 電気柵を全てやっているわけなんですけれども、個々の田んぼの出入り口は、各自で網にして出入りができるようにして農作業ができるようにしている部分、その部分については電気柵も上は通っていませんので、そういう弱いところをついて入ってくるというようなことがございますので、花火等のあれをしております。

 しかし、猿もだんだん、そういう電気柵全体がやはり怖いなというような意識があるのか、それ以外の場所から入る、下を掘るとかいうふうな感じで被害が、今のところそんなに被害は出ておりませんけれども、そういうところもあります。

 一番肝心なのは、ことしの冬でも、木が倒れて電気柵を壊して、そういうのをほったらかしにしておくと、やはりそこから出入りするということで、そういう最終的な、日ごろの点検とか、そういう修理というのをやはりしていかないけないなというふうに思っております。

 以上でございます。

野間委員 最後の質問にいたします。

 佐々木参考人にちょっと聞きたいんですけれども、先ほどから何度も出ているんですが、認定事業者の問題であります。

 先ほどの報奨金のこととも関係するかと思うんですが、そういう事業を行うのは、猟友会の皆さんと違って、ボランティア精神で本当に果たしてそういう事業者の方がやってくれるのかどうかですね。

 やはり、営利を目的に法人をつくってやるとなりますと、利益を上げようということで、法人をつくってやったり、あるいは、一部、警備会社がこういう事業に参入するとかという話もあります。そうなりますと、何か、極端に乱獲のおそれもありますし、また、利益が本当に見込まれなければ全然参入もしないということもあるでしょうし、非常にこの制度はわかりにくい、先ほどから、よくわからないというお話なんですが、こんなもの、本当に成り立つとは余り思えないんですが、繰り返しになりますけれども、いかがでしょうか。

佐々木参考人 先ほど来お話し申し上げておりますように、わかりにくいというのは率直な気持ちであります。

 認定要件が、いろいろ今協議をしておるわけでありますけれども、今言われたように、本当に、営利を目的としたNPO法人、どんどんそういうものが認定されて、そしてなおかつ、全国どこに行ってもいいというような話も聞こえてきますので、そうしますと、あるとき、先ほど話がございましたが、全然土地カンがない、あるいは生態も、鹿は九州の生態と北海道でまた違うんですね。ですから、やはり地元、せめて県内ですと、おおむね土地カンがあってわかるんですが、そういう中でどんどん入ってくるということになりますと、地元のいろいろな猟友会との摩擦は当然出てまいります。

 先般、NPO法人の方が来て、環境部会で話しておりましたけれども、あれを聞いて我々は非常に愕然としたわけでございます。地元では全く反対で、ああいう人たちが入っては困る。特別捕獲というものにこれを持って自由に歩ける、それで、どこへ行っても、今、車の上からどんどん撃ったり、そういうことを平気でやっている。そういうのが果たしていいのかどうかということです。銃ですから、やはりきちっとした組織の中で認められて、皆さんから尊敬される人がそういう隊を組んでやるということが前提になるんじゃないでしょうか。

 今せっかく環境省がそういうことを事業認定しようとしていますので、それはそれとして、我々がそれをきちっと受けとめて、それになれるような組織体、立派な組織をつくって、国民の皆さんから信頼される、尊敬される組織にしたい、このように思っております。

 ありがとうございます。

野間委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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