衆議院

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第7号 平成13年2月16日(金曜日)

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平成十三年二月十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 自見庄三郎君

   理事 細田 博之君 理事 池田 元久君

   理事 佐藤 観樹君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      池田 行彦君    石川 要三君

      大原 一三君    奥野 誠亮君

      亀井 善之君    栗原 博久君

      左藤  章君    塩川正十郎君

      七条  明君    田中眞紀子君

      高木  毅君    高鳥  修君

      津島 雄二君    中山 正暉君

      丹羽 雄哉君    葉梨 信行君

      萩野 浩基君    牧野 隆守君

      宮本 一三君    八代 英太君

      吉野 正芳君    五十嵐文彦君

      岩國 哲人君    生方 幸夫君

      海江田万里君    金子善次郎君

      城島 正光君    仙谷 由人君

      中田  宏君    平岡 秀夫君

      松野 頼久君    白保 台一君

      若松 謙維君    一川 保夫君

      鈴木 淑夫君    達増 拓也君

      中井  洽君    大森  猛君

      佐々木憲昭君    植田 至紀君

      辻元 清美君    横光 克彦君

      井上 喜一君    金子 恭之君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   法務大臣         高村 正彦君

   外務大臣         河野 洋平君

   財務大臣         宮澤 喜一君

   文部科学大臣       町村 信孝君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       谷津 義男君

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   環境大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      斉藤斗志二君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)           橋本龍太郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 麻生 太郎君

   国務大臣

   (防災担当大臣)     伊吹 文明君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府副大臣       坂井 隆憲君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   防衛庁副長官       石破  茂君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   法務副大臣        長勢 甚遠君

   外務副大臣        荒木 清寛君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   厚生労働副大臣      増田 敏男君

   経済産業副大臣      松田 岩夫君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   環境大臣政務官      熊谷 市雄君

   会計検査院長       金子  晃君

   会計検査院事務総局第一局

   長            石野 秀世君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  柴田 雅人君

   政府参考人

   (外務大臣官房長)    飯村  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  谷川 和穗君     七条  明君

  葉梨 信行君     左藤  章君

  三塚  博君     吉野 正芳君

  達増 拓也君     一川 保夫君

  山口 富男君     大森  猛君

  辻元 清美君     植田 至紀君

  井上 喜一君     西川太一郎君

  森田 健作君     金子 恭之君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     葉梨 信行君

  七条  明君     谷川 和穗君

  吉野 正芳君     高木  毅君

  一川 保夫君     達増 拓也君

  大森  猛君     山口 富男君

  植田 至紀君     辻元 清美君

  西川太一郎君     井上 喜一君

  金子 恭之君     森田 健作君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     三塚  博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算、平成十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官柴田雅人君、外務大臣官房長飯村豊君、厚生労働省労働基準局長日比徹君、水産庁長官渡辺好明君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博でございます。

 質問に入る前に、先日殉職された自衛官のみたまに心から御冥福をささげるとともに、御遺族にお悔やみを申し上げたいと思います。そして、一刻も早く、えひめ丸の行方不明の皆さんが御無事で見つかりますように、お祈りさせていただきます。

 官房長官が途中でお出になるということで順番を少し変えますが、まず防衛庁長官にお尋ねをします。

 二月十四日、ロシア空軍機による領空侵犯があったということを伺っていますが、それはどういうものなのか、お尋ねをいたします。

斉藤国務大臣 お答えを申し上げます。

 御指摘の件は、平成十三年二月十四日、昼の十一時五十九分から十二時二分にかけまして、北海道は礼文島北方において、国籍不明機四機が我が国領空を侵犯し、うち二機は、十三時十分ごろ、ロシア空軍のツポレフ22バックファイア二機と判明をいたしました。また、同日十四時三十六分から十四時三十九分にかけまして、ツポレフ22と判明した二機が再び、二回目でございます、北海道礼文島北方において我が国領空を侵犯したものでございます。

原口委員 ちょうど、イルクーツクでの日ロの首脳会談、そういう日程が上がるか上がらないかのときに、こういう領空侵犯が行われる。前回の領空侵犯が平成七年の三月であることを考えると、極めてこの事態は重い。しかも、この領空侵犯の事案を地図にして持ってきていただきましたが、礼文島の上を、TU22と言われる二機は二回通過をしている。

 防衛庁の方から、年度の緊急発進回数も、そして緊急発進回数の国別の割合もいただきました。それはどういうふうになっているのか、防衛庁長官、お尋ねを申し上げます。

斉藤国務大臣 今回の件についても緊急発進をさせていただいたわけでございますが、御質問の緊急発進回数の国別の割合を申し上げます。

 平成十二年ということで申し上げますと、ロシアが約七〇%、中国が約五%、台湾が約五%、その他が約二〇%となっております。

原口委員 緊急発進回数についても、やはりロシアの七〇%という数字を裏づけるように、北部航空方面隊の発進回数が圧倒的に多い。こういう状況だということを、まず皆さんと情報を共有しておきたいというふうに思います。

 その中で、今、日ロ交渉をされておられるわけでございますが、外務大臣、昨年首脳レベルでも五回会談が行われた。これは近年にない会談であって、そしてそのこと自体は私は多とするものであります。外務省の皆さんが大変な努力をされ、大臣を中心に精力的に交渉を行われたその結果だというふうに思います。

 ただ、幾つかお尋ねをしておかなければいけないことは、暮れの外相の会談、あるいは九月、そういう中でさまざまな御確認をなさっています。その中で、私がどうしてもわからないのは、一九五六年の日ソ共同宣言、これも確認をするということも両国でお話があったかに聞いておりますが、それは事実でございましょうか。

河野国務大臣 一九五六年の日ソ共同宣言は、御承知のとおり両国の首脳が署名をして、両国がそれぞれ、日本では国会において承認しているわけでございまして、これは両国でもう決まったものということになっていて、これについてとやかく言う必要は全くないものだというふうに私どもは考えております。

原口委員 なぜこんなお話をするかと申しますと、あそこでなぜ平和条約が結ばれなかったか。もうこれは皆さんにお話をする必要はない。我が国は、その後の東京宣言あるいはクラスノヤルスク合意、そして、橋本大臣がいらっしゃいますが、川奈での提案、そういう中で、我が国固有の領土である北方四島、この問題を解決して平和条約に臨むという大原則をそこで確立をして交渉に当たってこられたわけでございます。

 ところが、昨年ぐらいから与党の中で二島返還論というものが一定の高まりを見せてくる。一体日本というのはどういうメッセージを持っているのか。先日、私も樺太、サハリンの方へ行ってまいりましたけれども、実際に先方の皆さんとお話をすると、日本側のさまざまなメッセージが正しく伝わっているのだろうか、その危惧を大きく抱いたものであります。

 外務大臣にお伺いしますが、東京宣言で確認をされたように、我が国固有の領土である北方四島を返還し平和条約を結ぶ、このことについて今も政府の立場は変わらない、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。

河野国務大臣 日ロ交渉におきます四島の返還に対する我が国の態度、姿勢は一貫しておりまして、何らの変更はございません。

 昨年暮れに、私、ロシアを訪問いたします前に総理大臣、そして橋本担当大臣とも十分打ち合わせをしてまいりまして、そのときにも私は、ロシア側に、万が一、二島の返還のみで日本がよしとするのではないかというような間違ったメッセージ、あるいは間違ったイメージを持っているとするならば、そうしたことはないということをはっきりさせた方がいいということも打ち合わせでいたしまして、私は、ロシア側に対して、そこは明確に申し上げてきております。

原口委員 しっかりとした、揺らぎのない御答弁をいただいたというふうに受け取ります。

 実際に、ロシア側も大きく変わっている。七十年間のいわゆる古い体制が壊れ、この十年間で大きく民主化をしています。先日お会いした国境画定委員会の委員の中のお一人も、法と正義を大変重んじる検事出身の州議会議員でいらっしゃいました。そういう状況が今ロシアに起こっている。

 これは、二島返還ということで功を焦るのではなくて、今外務大臣がお話しになりましたように、じっくりと法と正義に基づいて両国の信頼関係を構築する中で返還の悲願を達成していく、こういうことが最も大事であるというふうに思いますが、外務大臣の御決意を伺いたいと思います。

河野国務大臣 先ほど御答弁を申し上げたとおりでございますが、そうした我々の基本的な主張を実現するために、政府・与党一体となって、何としてもこの我々の主張を先方に納得させる、我々の主張に合意するように努力をしようということで全力を挙げているところでございます。

原口委員 そのためには、国内外のこの問題に対する理解、国民の協力というのが本当に欠かせないわけでございますが、実際に日ロの間のさまざまな、橋本・エリツィン・プランを初め多くの問題にかかわってこられた、そして北方の対策の担当大臣であられます橋本大臣にも同じような御質問をさせていただきたい。

 どのような形で進むのが望ましいのか。もちろん、外務大臣が所掌であるということはよく存じ上げています。存じ上げている上でお尋ねをするのと、そして、担当大臣としてどのような国内での啓蒙活動あるいは運動を考えていらっしゃるのか、この二点についてお尋ねを申し上げます。

橋本国務大臣 明日、私は久しぶりに北方領土の見える場所まで行こうと考えております。そして、北方対策担当大臣としての立場でこれを見るのは初めてでありますが、過去に何回か現地も踏んでまいりました。その上で、今だんだん関係者が寂しい思いをしておられるものをどうすれば熱意を持ち続けていただき、また一般の国民にも関心を持っていただけるのか、苦慮いたしております。

 しかし、四島返還を求めるという日本政府の姿勢には、先ほど外務大臣から御答弁がありましたとおり、何ら揺らぎはございません。そして、もし現地でそうした点に御不安が出ておるようであれば、改めて私からもそうしたことを申し上げたいと思いますし、関係者に私どもができる限りの努力をしているという状況も御説明をしたいと考えております。

 その上で、去年は実は私はそれをする時間がなかったのですけれども、ロシアのメディアの中心の人々、編集局長クラスの方々に私は何回かモスクワに参りましたときにお目にかかり、日本の考え方、そして実態の内容、そうしたものを説明する努力を繰り返してまいりました。なかなかそれがロシア国内に反映しないという悩みはございます。あるいは、青少年交流、スポーツ交流等の機会を私自身もつくってきましたけれども、本当に実態が知られていないというのが実感であります。

 それだけに、そうした地道な努力をできるだけ私どもとしては続けながら、総理、外務大臣の外交交渉の足場を少しでも確保していきたい、そうしたことに努めてまいりたい、そのように考えております。

原口委員 実際に北方四島は今大変な、例えば生態系だけとってみましても、汚染の問題で我が国固有の種が失われる、そういう危惧もございます。ただ、その中で両国が、文化やあるいは学術やそういった交流をする中でパートナーシップ、交流を深めていく。そして、この問題はひとえに、法と正義に基づいて、ロシアの民主化が問われている、こういう問題であるというふうに思います。

 次に、外務省の機密費の問題についてお尋ねをいたします。

 四日間質疑がございまして、すべての議事録を精査するわけにはまいらなかったわけでございますが、その重立ったものをひもといてみても、一体この松尾さんに渡ったお金が何だったのか、そしてそれがどのように使われたのか、これが、官房長官あるいは外務大臣、そして内閣の官房職員が総理と一緒に出ていったとき、外務省の職員が出ていったとき、他省庁の職員が出ていったとき、それによって答弁が随分揺れている。あるいは馬の頭数についても、四頭になってみたり、五頭になってみたり、一体これはどういうことなのか。中井委員に答えられたことと佐藤委員に答えられたこと、それと平岡委員に答えられたことが違う。これは、なぜこんなふうなことが起こるのか。議論が大変散漫になり、散逸をしてしまう、このことを心配しています。

 官房長官、もう一回整理をして、一体松尾さんに渡ったお金は何だったのか、そしてそれは幾らで、どのような性格を持つお金だったのか、お答えをいただきたい。

福田国務大臣 松尾元室長に渡したお金は、内閣官房職員の規定分の宿泊費と内閣官房職員、外務省職員及び他省庁職員の宿泊費差額であります。

 松尾元室長在任期間中の内閣官房職員の規定分の宿泊費は、平成七年度から十一年度分で約二千八百万円であります。宿泊費差額は内閣官房の報償費から支出されており、松尾元室長に渡した額は約九億六千五百万円であります。

 以上、以前にもそのように答弁いたしております。

原口委員 同じことを外務大臣にお尋ねを申し上げます。

河野国務大臣 松尾元室長は、内閣官房職員につきましては宿泊費規定額及び宿泊費差額を、外務省同行者については宿泊費差額を官邸からお預かりしていた。

 内閣官房職員の宿泊費については、松尾元室長が一括してホテルに支払った。

 外務省職員分については、当初は松尾元室長が宿泊費差額を各人に支給し、各人が個別にホテルに支払っていた。その後、松尾元室長が外務省の所管部局より宿泊費規定額も預かり、官邸で受け取った宿泊費差額とあわせて一括して支払う方法が比較的多くなってきた。

原口委員 他省庁の職員についてはどうですか。それは外務省としては、五億四千五百万が、宿泊費の差額として松尾さんが官邸から取っていった、こういうお金で、他省庁ですから、ほかの省庁に聞かないとこれはわからない。ただ、外務省が可及的速やかに出されるとされた旅費、各職員へ支給された、これは幾らですか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省の支払いました宿泊費規定額は、平成七年度から平成十一年八月までの総理の外国訪問に要した外務省の宿泊費規定額の総計約九千三百万円でございます。

 なお、平成六年度以前につきましては、会計関連文書の保存期間が、これは五年でございますけれども、過ぎておりますために記録が残っておりませんので、算出し得ませんでした。

原口委員 これだけのお金が、個人一人でどうやって、今外務大臣がお話しになったように、差額宿泊費分は各職員に手渡しているときもあればホテルに一括払いもする、どうしてこんなことができるのだろうか。聞けば聞くほど疑問でなりません。

 そして、きのう外務省の方々と御議論をさせていただきましたが、それを上司が知らなかった、あるいは、今その元上司にも聞き取り調査を外務省の方でなさっているそうでございますが、そこで明らかになっていることはどういうことですか。

飯村政府参考人 松尾元室長の所属しておりました要人訪問支援室の直接の上司は総務課長でございますけれども、松尾元室長在任中の総務課長全員には聞いております。そこで明らかになっておりますことは、既に調査報告書で出ておりますように、チェック体制の不備ということだと思います。

原口委員 副大臣にも命じられて、さらなる調査を外務省はされているということを漏れ聞くわけでございますが、どのような調査をだれに行っていらっしゃるのですか。

河野国務大臣 私から、政治主導で内部調査をさらに継続しようということで、調査委員会の長に、すなわち調査委員長に荒木副大臣を任命いたしました。荒木副大臣は、引き続き内部の関係者からの聞き取りをしております。これは、今飯村官房長から御答弁申し上げましたように、かつての松尾元室長の上司等から聞き取り調査をいたしております。

原口委員 今この時点でわかっていることはどういうことですか。

飯村政府参考人 さまざまなお調査を行っておりますので、結果について随時外務大臣に御報告申し上げるということでございますけれども、私ども、どうしてこういったチェック体制に不備があったかということでございますけれども、一つの体制上の不備の背景といたしましては、要人訪問室長に対する指揮系統の不明確さがあったのではないかというふうに考えております。

 と申しますのは、平成二年に新設されました要人外国訪問支援室は、外務省の組織構成としては官房総務課のもとに置かれているわけでございますけれども、実際の総理の外国訪問支援業務を遂行するに際しましては、この訪問を主管する部局課との緊密な連携のもとに動いていたということでございまして、指揮系統が総務課長のもとに統一されているとの認識が当事者にやや薄かったのではないか、こういった不備は、私どもが今まで調査している中で一つ出てきております。

原口委員 その聞き取り調査をなさっている中で、上司の方々が松尾さんが扱っているお金、このお金についても随分議論があるわけですが、とにかくお金としておきます、このお金が、今御報告がありましたように、官房報償費であるという認識はあったのですか。

飯村政府参考人 宿泊費の差額といたしましては、官房報償費という認識はあったと思います。

 他方、この支払いにつきましては、これまで御説明申し上げておりますように、クレジットカードで支払っているとかあるいは現金で受け取っているとか、そういうことについては上司は承知していなかったというふうに理解しております。

原口委員 きょう朝報じられたところでは、会計の責任者の皆さんたちは官房報償費であることも知らなかったということが流されているわけでございますが、当時の官房総務課、会計の責任者皆さんがそういう認識ではなくて、ちゃんと松尾さんが官房報償費をそういうことに使っているんだという認識があったというお答えでいいですね。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、体制上の不備がございましたので、直接の上司そのものは、その差額が内閣官房の報償費から来ているという認識はなかったというふうに理解いたします。

原口委員 直接の上司そのものが何のお金を扱っているかわからない、こういうことがあるんでしょうか。さっき答弁されたことと真反対のことを今言われたわけですが、どちらが正しいんですか。

飯村政府参考人 大変に失礼いたしました。後に申し上げた方が正確でございます。

原口委員 本当にこれは大事なことなんですよ。なぜかというと、再三再四、これは松尾さん個人の犯罪だということをおっしゃっているわけです。しかし、本当にそうなんだろうか。私たちは立法府として、今内閣から御説明いただいている、外務省から御説明いただいているのは、本当にそうなんだろうか。松尾さんはここで何の抗弁もしていません。何のことで告発されたかということも、皆さんからの言を信ずる。そうすると、ひょっとすると、立法府のこの予算委員会という大変重大な委員会の委員の一人として、本当はこの個人を大きな組織が追い詰めているんじゃないか、そのことさえも疑われるような今の答弁だと言わざるを得ない。

 内閣の方に伺いますが、官房長官、秘書官、いわゆる機密費の管理をされるわけでございます。当然、松尾さんが内閣官房の方に来られたら支出をする人がいる。その支出に決裁を与える人がいる。もちろん、その最終責任者は官房長官でございますが、事務方の最高責任者は当時どなたですか。

福田国務大臣 通常、出発日の数日前に、外務省から内閣官房の担当窓口に宿泊費についての見積書が届けられ、担当窓口から見積書を受け取った首席内閣参事官は、この見積書に基づいて必要経費を内閣官房長官に説明し、そしてその指示を受けて担当窓口を通じて外務省要人外国訪問支援室長に手渡していたのであります。

 担当窓口というのは、外務省との連絡調整を担当している内閣事務官でございます。内閣事務官併任の内閣総理大臣秘書官付でございます。

原口委員 担当窓口についてはこの間御答弁がありましたから存じ上げていますが、今お話しになった方々、私が手元にいただいた資料によると、平成四年から七年の間が現在の厚生労働省顧問をされている方、それから七年から十年、この間の首席内閣参事官が現在の環境事務次官、それから十年の一月から十三年の一月までが今の内閣大臣官房長という形になっています。この方々は、その証明書、明細書があればそのまま出金をされていたのか。少なくとも松尾さんの上司の決裁といったものがなくてどうしてこんなことができるんだろうか。そこの点については何をもって決裁をしていたのか、お尋ねをしたいと思います。

福田国務大臣 宿泊費差額の支出につきましては、在外公館を擁し、現地の情報に精通している外務省との役割分担ということでもって事務処理を行ってきております。これは外国のことでございまして、そういうことについて内閣官房として十分な状況というものは把握していない、そうなりますと、やはり外務省にお願いするしかない、こういうことでやってまいったわけでございます。

原口委員 先ほど外務省の方は、指揮に当たるのはその当時の官房総務課長だ、だからここの決裁が要るはずなんですよ。それもないものが、では、どうやって個人が、松尾さんは昔からこれをやっていらっしゃるわけじゃない、あるときにこのことが彼の仕事になった。とすれば、個人だけでこんなふうなことができるわけがない。内閣官房との間でしっかりとした意思疎通がなければ、あるいは上司の決裁がなければあり得なかった事件であり、事案だというふうに思います。

 この三人の当時の首席内閣参事官、この方々についても事情を聞いていらっしゃるんでしょうか、官房長官。

福田国務大臣 事情は聞いております。

原口委員 そうすると、何をもって決裁したとおっしゃっていますか。明細書だけで決裁をするんですか。そんな簡単な官房報償費なんでしょうか。

福田国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、現地情報に精通する組織として外務省が、訪問団の現地拠点となる宿泊の宿舎の確保、そしてこれに伴う必要な宿泊費の見積もりなどを、実務面の支援業務として行っているということであります。

原口委員 こうこうこういう決裁が来たから出しますということを、これほどの、今申し上げました、それぞれ枢要な位置に今おられる方々ですよ。この責任者の方々が、技術的なことはわかります、その方が現地の状況に精通をされている。ところが、そこに付与されている書類があるはずですよ、上司の決裁だとか。そういうのもなしに、こういうことが起こるんだろうか。

 一義的には外務省で、さっきお話しになりました、指揮系統がはっきりしなかった。これは本当でしょうか。九七年に注意をされているんでしょう。本委員会の中でも、るるお話がありました。きょうはそれを一々お話をしません。ということは、一回注意を喚起されていて、どうして上司が官房報償費から来ているということを知らないということが言えるんですか。松尾さんのこの在任期間中の上司全員が知らない、そう理解していいですか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 これは何回も申し上げている点でございますけれども、松尾元室長は、平成五年の十月の室長就任以降、宿泊費についての見積もりの作成から支払い、精算までの事務を、上司の決裁を得ることなくすべて一人で取りまとめていたのが、まことに残念ながら実態でございます。

原口委員 まじめに答えるように委員長の方からも御注意をお願いしたい。

野呂田委員長 官房長、先ほどから答弁が変わったりしておりますので、正確に、明確にお答えするように要請しておきます。

原口委員 ありがとうございます。

 九七年に注意をされている。九七年も松尾さんはこの職にあったんじゃないですか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 二点ございますけれども、一つは、松尾元室長は九七年にはこのポストにおりました。

 それからもう一つは、九七年に注意をしておりますのは、これとは全く別件でございまして、それは松尾元室長ではございません。

原口委員 それはまた、前々回で質問した人たちの質問をもう一回繰り返すことになって、この官房機密費であったということは、上司が知らないということ自体が説得力を何も持たない。

 それでは、角度を変えてお尋ねをしますが、松尾さんが室長になったときに、官邸に対して官房報償費をこういうことに使えるというふうに決裁をしたのはだれですか。

飯村政府参考人 これも調査報告書に出ている点でございますけれども、決裁を得ることなく彼の業務が始められております。

原口委員 今本当に大変な御答弁をされているんですよ。検査報告書にそう書いてあるとおりに、上司の決裁なく、一外務省の職員が官房に乗り込んでどうしてこんなことできるんですか。私たちの国というのは、そんないいかげんな国ですか。

 官房長官、今の御答弁でいいんですか。内閣官房というのは、だれの決裁も得ない人が来てお金をくれと言ったら出すんですか。とてもじゃない、こんな予算は審議できない。官房長官、お答えください。

福田国務大臣 報償費の使途として、これは適切であるということは何度も繰り返して述べたところでございます。

 そして、今回のこの問題については、外務省の要人外国訪問支援室が行っていた経理面での支援について、外務省として責任持ってチェックすべきであるということであったと思います。にもかかわらず、この元室長が上司の了解を得ることなく単独で処理していたことをチェックできなかったという、そのことに起因する問題であるというふうに私は思っております。

原口委員 九三年、彼が室長になったときに、そのときのことを簡単に想像してみればわかりますよ。例えば、私でもいい、室長になる、だれかがその権限を付与しなければ、官房の中に入るなんということはできないでしょう。

 今外務省は告発をされて、我が国始まって以来、官邸の中にも司直の手が入るかもわからぬ、こんな異常な事態を起こしているんですよ。今みたいな答えでは納得がいかない。もう一回御答弁をお願いします。

福田国務大臣 このやり方は、松尾室長が担当する以前から行われていたというように承知しております。

原口委員 今、大変な、大事な御答弁をされました。

 ということは、松尾個人の犯罪であるということをおっしゃっているが、これはその前にもこういうことは行われていた。それは外務省も御存じだったわけですね。いや、横領をしていたということを言っているんじゃないですよ。差額の補てんを、官房に行って、そしてお金をもらってくる、しかも上司の決裁もなしにやれということをやっていたんですね。いかがですか、外務大臣。

河野国務大臣 この仕事は、総理が外国を訪問されるときに、内閣官房から外務省に対して、例えばアメリカへ行く、あるいはイギリスへ行くということを内閣がお決めになって、アメリカへ行くことになったからそのための準備をしろという指示が内閣から来るわけですね。その指示を受けて、支援室はそのためのホテルの準備、アクセスの準備その他について現地と連絡をとって、このホテルはどの程度のレートです、アクセスはどうなっていますということを確認して、そして見積もりをつくってお届けをするということから始まっているのだというふうに思うんです。

 したがって、松尾元室長といいますか外務省の作業は、まず内閣からの外国を訪問するという決定といいますか指示があって、それを受けて作業をするということになっているわけでございます。

原口委員 質問にお答えになってないわけですけれども、どういう作業をしていたかということは今お答えいただいたわけですが、官房長官がお話しになりましたように、松尾さんの前も同じようなシステムをとっていたんですね。イエスかノーか、答えてください。

飯村政府参考人 松尾元室長の前は主管部局、地域局が差額補てんを官邸から受け取っておりました。ただ、それがいつから始まったかは確認できません。

原口委員 もう本当にいいかげんにしなさいと言いますよ。上司の決裁もなしに、そしてそれがいつから始まったかも確認できないようなことで、どうやって公金の支出を私たちチェックできるんだろうか。本当に物すごいことを皆さんおっしゃっているんですよ。聞いている方も、どこの国の国会でお話を伺っているんだろうかと。

 ことしからいわゆる政治主導ということが始まって、党首討論もイギリスを見習って始まりました。しかし、私たちがその中で魂を入れるためには、本当にこの改革の実を上げるためには、イギリスの中には、ある方がおっしゃっていましたが、どんなことがあっても内閣に入らない、バックベンチに座って議会人としての本分を全うする、そういう三権の、しかも最高機関としての議会人の本分、これをしっかりと守った人がいて、それが内閣をきっちりチェックをしているから機能がするんだと。

 今お話しになったようなことを野呂田委員長を初めとするこの委員会で是とできるでしょうか。とてもできない。いつから始まったか、そしてだれの決裁でそれが行われてきたのか、上司はなぜそれを知らなかったのか、明確に出してください。

河野国務大臣 私から申し上げさせていただくならば、いつからこういうやり方があったかと言えば、総理が外国を訪問するということがあれば、必ず内閣は外務省にそういう指示があるわけでございますから、その数の多い少ない、それからどのぐらいスムーズにやれたかどうかということは別にして、内閣と外務省が一体となって総理の外国訪問を支えるわけでございますから、総理が外国訪問をされるようになってから、しかもそれがかなり数が徐々にふえるようになってからは、これが一つのパターン化してきたということを言っていいと思うんです。

 したがって、それはいつからかといえば、もう五年とか十年とかというものではなくて、もっとずっと以前から、総理が外国を訪問されるとなれば外務省がロジスティックの分野でもこれをバックアップするというのは当然の仕事であって、それはいつから始めたということを明確に今申し上げられないという官房長の答弁も御理解をいただきたい。

 ただし、それをさらに組織化し直して支援室というものをつくったのはいつかと言われれば、それは御答弁を申し上げておりますように、たしか平成二年に支援室をつくって、つまりそれを組織的に一つの室に集めて、そこが、総理の外国出張についてはこの室が全部ロジスティックの支援をするということになったのは平成三年からでございまして、そして松尾室長がその室長になったのは平成五年からであるということは申し上げていいと思うんです。

原口委員 上司の決裁がいわゆる指揮系統の中でなくて、そしてそれもずっとその状況が続いていたからこういう事案が起こったんですよね。しかも、今は外務省だけが言われているけれども、出す方も、明細だけで本当に出していいのか。

 会計検査院に伺います。会計検査院は、差額であったということも御存じなかったということでは、松尾さんの上司とほとんど同じだ。これまで独立機関として公正な行政をチェックされてきた会計検査院の歴史の中で、とても残念な事案だというふうに思います。今まで検査院はどのような検査をされていたのか。何をもって検査の書類としてきたのか。そして、今回の事態に対する検査ももう行われました。いつ公表されるのか、それはどういう細目でやっているのか。額を言ってくださいとか使途を言ってくださいと言っているんじゃありません。上司の決裁書も何もないようなもので事が進んでいる、このことが不思議でたまらない。

 そして、口を開くと松尾個人が悪うございましたということだけれども、私は、委員長に再度お願いをしますが、一方からだけ聞いていたのでは全くわからない。ここは、松尾さんにここに来ていただいて、本当に外務省や皆さんがおっしゃっていることが実態に合っているのか、あるいは松尾さんが何をやったのか、このことをしっかりと立法府の責任として国民に説明する義務があるというふうに思いますので、理事会でお諮りをください。

野呂田委員長 わかりました。

原口委員 検査院、いつまでに公表されますか。

金子会計検査院長 現在、事実関係及び原因についての究明を行っております。この究明に基づきまして、公表の可否、時期、内容等について検討していきたいというふうに考えております。

原口委員 それには時間を区切るべきですよ。少なくとも私たち国会に対する説明、国会に対する説明というか、国民に対する説明ですね。

 私たちは、今、大事な予算を審議しています。九州の中でも、電気をとめられて、ろうそくの火が燃え移って亡くなったという中学生の悲報もあります。そういう中で、私たちは、さまざまな改革のあるいは問題解決の中身を議論しなきゃいけない。しかし、それがこの前段で、内閣そのものの信頼が、政治そのものの信頼が今大きく揺らいでいる。それを復権させることが、与党、野党問わず、私たちの務めです。

 期限を区切ってほしい。望むらくは、今月中に、中間報告でも結構ですから、お出しになりますか。

金子会計検査院長 会計検査院としては、最大限の努力をしたいと思います。その意味で、できる限り早急に結論を出して御報告したいというふうに考えております。

原口委員 私は、今そういう簡単な意味でおっしゃっているんじゃないと思うけれども、抽象的な言葉ではとてもここは引き下がるわけにはいかない。

 実際にこの予算でいいのか。本当だったら減額が必要なんじゃないのか。あるいは同じようなことがまた起こるんじゃないか。個人の犯罪ではなくて、組織としてやっているんじゃないか。それを松尾さん個人に矮小化しているんじゃないか。そんなことまで考えなきゃいけない。

 在外公館に行くと、しっかりと日本の、私たち国民の利益を背に背負って頑張っている人がたくさんいますよ。ほとんどがそうです。その中で、こういう残念な事件は早く解決をしなきゃいかぬ。予算審議の妨げにもなる。今月中に出すというお答えを下さい。

金子会計検査院長 今回の事件に即しまして、内閣官房の報償費について、その執行の事実関係及びその管理体制、それについて、法律的な観点から違法、不当がなかったかどうか、また、執行体制が、適正に執行されるように行われていたのかということを明らかにして、その上で対応を考えていきたい。

 その点については早急にそのような作業を実施していきたいということでありまして、いつまでにという形では私申し上げることができませんけれども、早急に作業を終了したいというふうに考えております。

原口委員 少なくとも、だれの決裁でどういう出金が行われていたか、このことぐらいは出していただかなければ、本予算のこの項目についての判断の材料が私たちはないんです。それは、野党だけじゃなくて、与党もないと思いますよ。

 私は、完全なものを出してください、そんなことを言っているのではありません。中途で、これが中間報告でも結構ですから、しっかりと出してくださいということを申し上げているわけです。

 委員長にお願いをいたしますが、後で理事会で諮って、この会計検査院の中間報告、この時点での中間報告を、一定の時期を御協議いただいて出すようにお諮りいただきたいというふうに思います。

野呂田委員長 理事会で相談いたします。

原口委員 最後に、この項の最後ですが、官房報償費に対する差額の補てんがいつから始まったのか。官房長官、外務大臣、お二人にお聞きしたい。いつからこの差額の補てんは始まったんですか。

福田国務大臣 先ほど外務大臣から答弁がございましたように、首脳外交が始まった、総理の海外出張が始まったというときから行われていたのではないかと思いますけれども、正確な開始時期というのはわかりません。

飯村政府参考人 私ども、会計書類の保存期間が五年でございますので、いつから差額補てんが始まったかということについては正確には申し上げられません。ただ、相当以前から行われていたというふうに現時点ではお答えするしかございません。

原口委員 もう聞けば聞くほどわからぬ。これはまた別の機会にお尋ねをしますが、今ここで明らかになったことは、いかにずさんで、しかも責任がないお金がこれほど多くのことに使われていたかということがわかったわけです。私は、これがはっきりするまでは与野党で協議をして、本予算については減額あるいは凍結も含めて、私たち立法府としての態度を、このいいかげんな内閣に対して示さなければいけないというふうに思います。

 あと時間がわずかになりました。

 環境大臣そして農水大臣、今、諫早湾干拓事業あるいは有明海の漁業被害、とても深刻な状況です。ノリの漁業者は、もう一回同じことが起こればもう立ち直れない。実際にあのノリをお口に含んでお食べになりましたけれども、私は、過去の環境調査あるいは今回の調査、早急に行われるべきであるというふうに思います。

 しかも、谷津農水大臣がくしくもおっしゃっていただいたように、海のことは漁民に聞け、私たちも多くの漁民の皆さんに伺いました。そうすると、潮位が一メーターも上がった。防災だとおっしゃるけれども、福岡や佐賀の、あるいは熊本の潮位は、二十センチも三十センチも、場合によっては一メーターも上がっている。あるいは今までなかったようなプランクトンが出ている。

 しかも、総理は九月の中ごろまでには調査の結果を見てということをおっしゃいますが、有明海は、四月、五月、六月がいわゆる有明海に住む生物の産卵の時期であります。私は、予断を持たずに調査をし、そして漁業被害と漁民の再建に向けての対策を練られるべきだと農水大臣に強く求めて、御決意を伺いたいと思います。

谷津国務大臣 今般の有明海のノリの不作は、昨年に比べまして六〇%以下の生産量となっておる。私は、深刻にこのことについてはとらえているところであります。

 そういう中から、今お話がありましたように、ノリの網入れが九月下旬、十月に入るということでありますから、できるだけ早く三者委員会を立ち上げまして、そして、この調査を徹底的にやってもらって、できるだけ早くこの調査結果、中間でも結構ですから出していただいて、その対策をしっかりやっていきたいというふうに考えております。

原口委員 諫早湾は有明海の中でも最も美しい海であります。そして、そこは有明海の子宮であり、そして腎臓でありました。干潟の生物がいかに多くのものを捕食し、そして微妙な生態系の中でそれが保たれていたか。

 ここに、これは魚釣島の現在の状況でございます。生態系が大きく破壊をされている。これはなぜか。一九七八年に持ち込まれた二頭のヤギ、これによってこれほど、もう海岸線がほとんどヤギに食われてなくなっている。これもそうです。これは父島です。父島で繁殖しているヤギ。

 本当に私たちは微妙な生態系の中で、そして自然を相手にしている人たちはそれを尊重しながら日々の営みを行っていらっしゃいます。有明海は一潮でカキの葉一枚といいます。干拓事業が前から宿命づけられてきたところです。しかし、それを、今回のように一挙にやる、そしてかくも無残に干潟を壊す。私は、水門をあけて調査をすべきだと思います。

 そして、環境大臣にお伺いしますが、包括的な、生態系を守る、こういう法律それから施策をやるべきだ。一回こうやって生態系が失われてしまうと、戻るためにどれほどの時間がかかるかわからない。これは、そこに住む生物だけではなくて、私たちの暮らしやあるいは私たちの生きるそういう環境の中にも大変な被害をもたらす。環境大臣に生態系保護のための決意をお伺いして、私の質問を閉じたいと思います。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、干潟というのは、水質の浄化機能ですとか、それから渡り鳥が渡来するとかいう機能を持っておりまして、そこにすむ生物あるいはそこに立ち寄る生物の微妙なバランスの上に成り立っている生態系でございまして、その機能を保全するということは非常に重要なことだというふうに考えております。

 そういう、一度そこに変化が加えられた生態系をいかに保全するかということについては、一部ヨーロッパ等で議論がなされているわけでございますけれども、そのやり方については、環境省も非常に関心を持っておりますが、今の段階ではまだ研究が必要だというふうに思っております。

原口委員 この予算に百億の諫早湾干拓事業の継続がのっていますが、水門をあけるとなれば、ここは一時凍結をしてでも有明海の海を宝の海に戻す、そういうことが政治に求められている。私は、大臣の御勇断をお願いし、質問を閉じたいと思います。

 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。民主党・無所属クラブを代表して質問をさせていただきます。

 まず、質問に入ります前に、今回ハワイ沖で事故に遭われたえひめ丸の皆さんに心からお見舞いを申し上げたいこととともに、今行方不明の九名の方が発見されますことを心からお祈り申し上げたいと思います。

 さて、政府の危機管理についてお伺いします。

 まず、我が党の中田議員もきのう細かくやっていらっしゃいましたが、この今までの議論の中で明らかになったこと、これをちょっと確認したいと思います。

 まず、八時四十五分、海上保安庁の遭難信号を受ける。そして四十七分に、EPIRBの識別信号からえひめ丸と確認をしています。十時十五分に内閣情報集約センターに海上保安庁から第一報が入っています。そして約十時半から十時四十分の間に、福田官房長官、伊吹大臣、また安倍官房副長官にこの集約センターから第一報が入っています。そして十時五十分、ここで総理に第一報が入ります。また、十時五十八分に総理に第二報が入る。そして、第三報が総理に入りますのが十二時二十分。

 これで、総理が確認をするまでの経緯というのは間違いないでしょうか。安倍官房副長官、お願いします。

安倍内閣官房副長官 そのとおりでございます。

松野(頼)委員 最初に総理に第一報が入ったときには、このときはまだ、日本の高校生の実習船が米原潜と接触、そして今救出しているという、これだけの情報だったんですか。お伺いします。

安倍内閣官房副長官 総理に十時五十分に第一報が入りました時点では、愛媛水産の練習船ということでございまして、高校生、いわゆる水産高校という情報ではなかったものでございますから、その辺はつまびらかではなかったということでございます。

松野(頼)委員 それで、第二報が五十八分に入っているんですけれども、このとき総理は、官邸の危機管理としてどう対応できるか検討してくれという指示を秘書官に出されています。そして、次の連絡までそこにいてくださいということでゴルフを続行された、これで間違いないでしょうか。安倍官房副長官、お願いします。

安倍内閣官房副長官 総理は、引き続き人命を第一に情報集約に当たるように、新しい情報が入ればすぐ速報せよということでございまして、それは第一報に対する指示でございます。

 そして、第二報に対する指示といたしまして、人命救助と情報収集に最大限の米国側の協力を要請せよ、つまり、外務省、防衛庁を通じてそういう要請をせよという指示がございました。

    〔委員長退席、自見委員長代理着席〕

松野(頼)委員 それで、十二時二十分に第三報が総理のもとに入ります。このときに、ここで初めて行方不明者が九名いるというふうに知られて、これは大変な事態だと判断せざるを得ないから直ちにここを動くと言って、ゴルフ場からクラブハウスに移られ、そして十二時五十四分にゴルフ場を出発されている、これは間違いありませんか。

安倍内閣官房副長官 そのとおりでございます。

 さらに、その段階では、複数の死傷者が出たという米国報道もございましたので、それもあわせて総理に報告がなされたということでございます。

松野(頼)委員 ここで、ちょっと不思議なことが私はあるのですが、十二時二十分まで総理が行方不明者を知らないということなんですね。十時五十二分には日本テレビが、ハワイで日本の訓練船が米潜水艦と衝突、沈没し、十名不明と流しているのです。十一時六分にNHK、十一時十五分に共同通信、十一時十七分に時事通信ということで流しているのです。

 やはり一番ここで問題なのは、国の最高責任者が十二時二十分まで不明者がいるということを知らない、この連絡体制にあるんじゃないか。また、この知らなかったことが大きな問題じゃないかと思うのですが、これについてどうお考えですか。

安倍内閣官房副長官 総理への報告につきましては、最初の報告の際に、正確に申しますと、私どもに入りました一報、二報が合わさって総理に一報として伝わっているわけでございますが、一番最初に十四名救出をされたという報告でございまして、次に二十五名救出されたということでございまして、さらにその後一名ふえるわけであります。そういう中で、その報告の時点では次々に救助されつつある、そういう印象を受けたわけでございますが、ただ、その段階ではもちろん乗組員の数はわかっていたわけでございますから、まだ救命、捜索中という方々がおられるということは承知をしていたのだと思います。

松野(頼)委員 救命、捜索中で行方不明の方がいらっしゃるというのは、もう一回伺いますが、どの時点で総理は知っていたのでしょうか。

安倍内閣官房副長官 総理は、第一報、第二報を受けた後もそうでございますが、乗組員に負傷者また不明者が確定になった時点ですぐに知らせてもらいたいということをおっしゃっておられましたので、そういう不明者が確定された時点というのは、総理の御認識としては十二時二十分だったのだ、こういうふうに思います。

松野(頼)委員 もう十一時の時点でテレビでは流れているのです。これをどうも十二時二十分まで総理が御存じじゃないということがやはり不思議なことなんですね。その間、十時五十八分の第二報から十二時二十分の第三報までの間に電話が入っていない。

 この間、いろいろ動いているのですよ。例えば、十一時にクレーマー米国防次官補が柳井大使に電話で謝罪をしているんです。それで、海上保安庁が遭難事故対策室を設置している。また、十二時には首相官邸の危機管理センターに官邸連絡室がつくられる。十二時には河野外務大臣が外務省に入られ、同省に対策本部が設置をされているんです。

 ですから、この一時間二十分の間にいろいろなことが動いている。そして、十時五十分と五十八分と立て続けに二本の電話が入っているにもかかわらず、十二時二十分までの約一時間二十分、これが空白なんです。これについてちょっとお伺いしたいと思います。

安倍内閣官房副長官 いずれにいたしましても、総理としては、十時五十分の段階で第一報を受けた後指示を出し、そして第二報に対しても、外務省、防衛庁を通して米側に要請をして、その要請のもとに事態が動いていた、こういうことだと思います。

松野(頼)委員 私たち国民一億二千万人が命を預けている国の最高権力者に、これだけ世の中が動いて、これだけ事務方はいろいろ動いているときに、一時間二十分全く連絡が入らないというのは、ちょっとこれはおかしいんじゃないかというふうに思うわけでありますので、その辺、もう一回伺いたいと思います。

安倍内閣官房副長官 私自身は、十一時前後に三谷総理秘書官と連絡をとりました。私もテレビ等でもちろん見ておりましたし、私のところには逐一情報が入っておりましたから、そうした情報はもちろん伝えているわけでございますが、秘書官の方も承知をしておりました。

松野(頼)委員 秘書官には連絡をされているということですが、その秘書官が総理には連絡をしていないんでしょうか。お伺いします。

安倍内閣官房副長官 ただいま委員がおっしゃった途中経過につきましては、それはその詳細については報告をしていたかどうか、私は存じ上げませんが、いわゆる事態が大きく動いたということにつきましては、一報、二報、三報という形で総理に御連絡をしたんだ、こういうことだと思います。

松野(頼)委員 ちょっと意味がわからないんですが、事務レベルの皆さんはこの官邸の危機管理対応というマニュアルに従いまして動かれているんです。大体十時十五分には官邸の危機管理センターに第一報が入りまして、そして十時半にはその危機管理センターが大体立ち上がりました。ここからもう緊急体制に入っているんです。各省庁から、事務レベルで見てみますと、警察庁を初めとして、いろいろな優秀な方がこの危機管理のマニュアルに沿って動かれているわけですが、その一番トップの総理にここで空白の一時間二十分ができるというのが、どうも解せない。もう一回伺います。

安倍内閣官房副長官 正確に申し上げますと、十時半に危機管理センターが立ち上がったということではございませんで、危機管理センターというのは、ある意味、場所でございまして、そういう機関をつくるとか組織をつくるとかいうことではございませんで、情報集約センターには二十四時間常時四人在勤をしておりまして、そこには情報が入っているわけでありますが、その建物の危機管理センターの部屋に随時職員が集まり始めたという状況だ、十時半の段階では。

 そして、総理に対しては、例えば渋谷総領事が抗議をされた、そういうこと等については、タイムリーにはもちろんなかなか報告はできなかったんだと思いますが、それと総理への連絡経路としては、必ずしもその危機管理センターを通してということではなくて、外務省、防衛庁あるいは海保と、それぞれ直接のやりとりで秘書官は情報収集をされていたんだ、こういうふうに思います。

松野(頼)委員 危機管理センターに関しては、本当に迅速に動かれていると思うんですよ。ただ、やはりどう考えてもこの一時間二十分が非常にわからない。もしこの一時間二十分の間に本当に総理に連絡が入らないとしたらば、これはやはり大きな問題ではないかと思うんですね。ゴルフ場にいたとか、場所に関しては今までいろいろ議論がありますけれども、やはりこの一時間二十分、国の最高の責任者に連絡が入らないという、ここはちょっとおかしいんじゃないかというふうに思うんですが、もう一回伺います。

安倍内閣官房副長官 総理はもちろん確実に連絡がとれる状況になっておりましたし、そういう判断をされてそこを動かないということになったわけでございますが、そういう中で第一報、第二報、第三報が入ったわけでございますが、途中の詳細の情報を、それは総理に入れるかどうかというのは事務方の判断だったんだ、このように思います。

伊吹国務大臣 今先生ずっと御質問していただいているところは、私も今回の経験に即して考えてみなければいけないところなんだろうなと思うんです。大変大切な、ポイントをついた御質問なんで、私ちょっとお答えをさせていただきたいと思うんです。

 今危機管理マニュアル、危機管理マニュアルとおっしゃっているのは、内閣には危機管理マニュアルというその文書はないんです、おっしゃっているのは多分内閣官房初動対処マニュアルというものだと思うんですね。

 この中に、緊急事態とは別紙一に記したものだということがありますね。そして、内閣情報集約センターにたくさんの情報が入ってまいります。内閣情報センターにたくさんの情報が入ってきたときに、まずその中で緊急事態に当たると思われるものを内閣危機管理審議官に連絡するということがお手元の資料に書いてあると思うんです。その連絡を受けた審議官は、当該事案について内閣危機管理監に報告し、官邸対策室もしくは連絡室の設置の必要等の対処体制について指示を受ける、こういうふうに書いてあります。

 その流れの中で、連絡室を立てた場合と対策室を立てた場合とがございます。対策室を立てた場合に、実はこのマニュアルを見ますと、初めてそこに政治家の名前が出てくるんです、政治家の肩書が。「設置した旨を内閣官房長官、危機管理担当大臣及び内閣官房副長官に直ちに報告する」と。

 しかし、現実に起こっていることは、対策室を立てていない、連絡室を立てる前に、実は情報を逐次入れているんですね。私は、この対応は、マニュアルには書いてありませんけれども、今先生の御質問からいうと非常に正しい対応だと思うんですね。その対応を受けた場合に、たくさん情報が入ってまいります。これは各省独自で対応してもらう事項、事案だ、あるいは連絡室をつくって、各省を、内閣官房長官の総合調整機能として対応していくべき事案だ、あるいは対策室を立てて、これは国家の危機管理として総理大臣が出てきて対応すべき事案だ、実はこの判断を立てるまでに、対策室を立てるか連絡室を立てるかまでに、むしろ政治家がやるべきポイントを入れていかなければならない、これが私、今回の大きな反省材料だと思うんです。ですから、先生のまさに御指摘になっているところは正しいわけなんです。

 ですから、この問題は、今後の危機管理のあり方として私は重大に受けとめさせていただきたいと思います。ただ、今は、多くの方がまだ行方不明でございますので、そもそも論をちょっとやっている暇がないなというのが政治家としての実は私の気持ちなんです。

 ここで私が独断でということを再三答弁の中に使っておるのは、これは多分、内閣官房長官の調整権限を使って、外交、安全保障上大きなことになる事故として、国家の大きな、阪神・淡路大震災とかハイジャックされたとかいうのではなく、対処すべき事案じゃないかなと一瞬思ったんですが、行方不明者がいる段階でそういうことを言っている暇がないというので、実は私が独断でやったというのを言っておるので、先生のおっしゃっていることは僕はすべて正しいと思うんですが、あえて言えば、マニュアルどおりやってしまいますと、対策室を立てるまで実は政治家の名前が、肩書が出てこないということなんですね。ここは大きな問題だと私は受けとめております。

松野(頼)委員 確かに緊急事態だったということはあると思いますが、ただ、ぶつかった相手がアメリカの原子力潜水艦だということで、やはりこれは政治が前に出ていかなきゃいけないんじゃないかというところはあるんじゃないでしょうか。事務方の皆さんが、確かにこのメンバーを見ると、私も今回初めて調べて驚いたぐらいに、各省庁の優秀な方が出てこられているわけです。せっかくこれだけ優秀な事務レベルのシステムを、やはり政治家がしっかりと使っていかなきゃいけないという思いがしてなりません。

 ただ、どうもここ、ちょっと腑に落ちないところがもう一つありまして、本当はこのとき、総理に連絡が入って、それでも総理はゴルフを続けられていたんじゃないかという新聞記事が実はありました。これについてちょっとお伺いしたいと思います。

安倍内閣官房副長官 総理も、また官房長官も再々御答弁をさせていただいておりますように、総理は、第一報を受けて指示を出し、また第二報を受けて米国に対して最大限の協力を要請するようにという指示をされたということでございまして、その時点時点で正しい指示を出された。そしてまた、その段階では情報を受けるということが大変大切であったということで、情報を受けやすい場所にとどまったということでございます。

 しかしながら、そのことに対して国民の皆様から厳しい御批判があるということは、私ども重く謙虚に受けとめていかなければいけない、このように思っております。

松野(頼)委員 もう余り時間がありませんので、この問題は次に行きたいと思いますが、どうか、やはり私たち国民として、私たち国民の命を政府がしっかりと守ってくれるんだ、何かあったとしても、ああ、我が国の政府はしっかりしているんだなという安心感が欲しいと思います。

 ついでに伊吹大臣にもお伺いしますが、伊吹大臣が第一報を聞かれたのが京都市内、これが十時四十分というふうに報道されていますが、それは間違いありませんか。

伊吹国務大臣 間違いございません。

松野(頼)委員 それで、伊吹大臣が官邸に入られたのが四時五十分、やはりこれもちょっと遅いんじゃないか。要は、新幹線で、のぞみであれば二時間十八分で着くわけですし、ひかりでも二時間四十五分で東京まで着くわけですから、何でこんなに遅くなったのかというのをちょっと伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 お答えいたします。

 御承知のように、のぞみは一時間に一本しかございません。それで、それを受けまして、私は先ほど先生にお話ししたような指示を出しまして、その後状況がどう動いているのか報告をしてほしいと言って、実は私の事務所でそれをとっておりました。その間の時間のずれがあったと思います。

 私は、政治家になりましてからできるだけ自分のプライベートなことは削り取ってやっておりますし、特に大臣になってからはそうすべきだと思っておりますが、同時に、政治家として、もう当然これは御承知のことですが、講演を頼まれるとか同志の応援だとか、いろいろなことがございます。そういうことはございますが、今御指摘を受けたように、今回の事態を考えると、やはり拳々服膺しなければならないと私は自戒いたしております。

松野(頼)委員 繰り返しになりますが、きのうのテレビを見ていますと、宇和島高校の皆さんは相当なショックを受けられて、また、いまだに九名の方が行方不明だということで大変心を痛められている。テレビによりますと、今、怒りの声というものが随分高まっている。やはり国としてしっかりと、我が国の政府は信頼できるんだ、私たちの命を本当に重く受けとめて、いざというときにはちゃんとした対応をしてくれるんだという信頼感を持たれるような対応をぜひ今後お願いしたいと思います。

 次に、河野外務大臣にお伺いしますが、きのう、一たん捜索が打ち切られるんじゃないかということで大きな動揺が走ったようですが、今後の日本国政府としての対応はどのようになさるのか、伺いたいと思います。

河野国務大臣 捜索活動が打ち切られるのではないかという情報があったというお話ですが、正確に言えば、沿岸警備隊、コーストガードの捜索をここでやめる、海軍についてはずっと続ける、こういうことであったようであります。

 それはそれとして、我々としては、まだこういう状況下で捜索を打ち切るということは了承するわけにいかない、ぜひ捜索活動は継続をしてもらいたいということを、総理からの御指示もございまして、ハワイにおります桜田政務官はハワイで、それからワシントンでも在米大からアメリカ当局にそれぞれ強く申し入れをいたしました。

 昨夜、私は、フォーリー大使を呼びまして日本の考えというものを伝えまして、今こういうことで捜索活動をやめるというようなことは我々は到底納得できないということを申し入れしたところでございます。フォーリー大使は、私の申し入れに対して、申し入れを注意深く聞いて、これを本国に伝えますということを言っておられまして、当初、昨日の昼前後にコーストガードの方は打ち切るという話がございましたけれども、その後、これは打ち切られずにずっと捜索活動は続いているというのが現状でございます。

松野(頼)委員 いまだに行方不明の方がいる限り、政府としてはどうするつもりですか。もし、例えばきのう報道で流れたように、アメリカ側がもうこれで打ち切るんだと言われた後の対処というのはどうされるつもりか、お伺いしたいと思います。

    〔自見委員長代理退席、委員長着席〕

河野国務大臣 今はとにかくアメリカに対して、九名の行方不明者がまだ確認できていないのだから、行方不明者を捜索する、救助するために引き続き捜索を続けてくれということを強く言い続けているわけです。

 一方、えひめ丸の船体の引き揚げというのも、地元からの非常に強い御要望もございますから、これについてもアメリカにえひめ丸の船体を引き揚げるという努力を始めてもらいたいということを言いまして、今アメリカは、その深さといい、いろいろな状況も考えながら、まずは無人の探査機を使って、船体がどこにあるかというところから始めなければいけませんから、その捜索を始めると。昨日は、天候の状況で捜索は始められなかったわけですけれども、状況が整えば直ちに始めるというふうに私どもは承知しております。

松野(頼)委員 相当この件については日本国民みんな注視をしているわけです。どうかしっかりとした対応をアメリカに遠慮せずに求めていっていただきたいし、やはり九名の命というものが今かかって、行方不明でいられる御家族の気持ちをよく考えていただいて、しっかりとした対応を求めていきたいと思います。

河野国務大臣 外務省といたしましては、事故の一報を受けまして直ちに桜田政務官を現地に派遣いたしまして、彼はそのまま現地で現地の総領事館と一緒にこの問題に対応しておりますが、昨夜、衛藤副大臣を急遽ワシントンに派遣いたしまして、衛藤副大臣から、国務省、国防省にそれぞれ日本の状況を伝えるという作業に今入っているところでございます。

松野(頼)委員 ちょうど今官房長官お戻りになったので、きのうから随分騒がれています総理のゴルフ場会員権の問題について伺いたいと思います。

 このゴルフ会員権ですが、知人が買ったものを十六年間知人から借りていたということです。これは名義も総理で、年会費も総理がお支払いになって、そしてプレーされているのも総理、これで自分のものじゃないということが本当に言えるんでしょうか、お伺いします。

福田国務大臣 この会員権につきましては、長年の総理の友人がいらっしゃいまして、そしてその友人との間で書面によりまして、会員権の所有権はその友人の会社にあること及び会員権の名義貸与をやめたいという場合には三カ月以内に名義を移転することを確認しております。そういうことから、森総理本人が会員権の所有者ではないということは明白になっております。なお、この合意書の日付は、昭和六十年三月三十日、こういうことになっております。

松野(頼)委員 確かに、その話を聞いても、では、車を買おうが、家を買おうが、これは自分のものじゃないんだ、契約書があれば借りているんだということで済んじゃうんですか、お伺いします。

福田国務大臣 この株券は、おっしゃられればまさにそういうように……(発言する者あり)ゴルフ会員権、実際、株券のようでございますけれどもね。

 これは、実は、その会社が所有しているというふうに申しましたけれども、その会社の方の資産として計上しているのですよ。そういうことで、これは、所有権はどちらかになきゃいかぬわけですね。森総理の方には所有権が、資産として公開しているわけでもないし、資産として登録しているわけではない、会社の方で資産計上しておる、こういうことになっておりますので、そういう疑念は当たらないというふうに思っております。

松野(頼)委員 今までの議論を聞いても、確かにその場その場ではつじつまが合っているように見えますけれども、どうも国民の皆さんは釈然としない気持ちでいるというのが現状じゃないかと思います。きのうも、夜、この質問をつくって議員会館にいましたら、デモが出ていました。やはり国民の怒りというものが頂点まで達してきているんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。

 時間が余りありませんので、ちょっと違う質問に移らせていただきたいと思いますが、平沼経済産業大臣にお伺いしたいと思います。

 大臣は、一月十九日の閣議の後の記者会見で日本の電力について発言されているんですが、日本はこれから完全に自由化をするんだということをおっしゃっていらっしゃるんです。日本のエネルギーの、特に電力のこれからの自由化の問題というのが今非常に、カリフォルニアの電力の自由化に伴う停電の問題で、やはりどの方向に向かうのかというのが今一番問われているんじゃないかと思います。今まではずっと自由化の流れが強く来ていました。やはりもう一回ここで、完全自由化に持っていっていいんだろうかということを、私たちは立ちどまって考えなきゃいけないんじゃないかというふうに思うわけですが、その辺のことをお伺いしたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをいたします。

 たしか一月十九日の閣議後の記者会見で、私は、正確に申し上げますと、電力というのは安定供給が担保されなきゃいけない。昨年の三月に改正電気事業法で大口需要家に対する小売の自由化を認めた。世界のグローバライゼーションの中で完全自由化というのは一つの方向である。しかし、カリフォルニアでああいう大変な停電の実態がある。ですから、これを他山の石としてやはり検証しなければならない。そういうことで、今月末から、カリフォルニアあるいはペンシルベニア、そして既に完全自由化をやっている英国、ノルウェーに調査団を派遣いたします。そういうことで、十分検証しまして、そして一部自由化をした後、三年をかけてじっくり検証するということになっておりますから、安定供給、安全性、環境、そういったことを十分勘案をしまして、いろいろ選択肢がございますから、しっかりと検討していきたい。しかし、大きな流れの中でやはり完全自由化というのは一つの方向である。

 私はこういう認識でございますけれども、御指摘のように、やはりいろいろな問題がありますから、しっかり検証してまいりたい、こう思っております。

松野(頼)委員 どういう方向に行くんだろうかということは非常に皆さん注目しているところであります。本当に今この時点が、これがどちらに行くのかという分岐点じゃないかと思うのですね。

 ですから、ちょうど私も昨年、ヨーロッパのエネルギーの電力の事情というのを実は見に行ったのです。イギリス、ドイツ、フランスと行ったわけです。それぞれの中で今、イギリスはプール制というのを導入して自由化に向かって進んでいる、フランスは、三割は自由化しているけれども、余り自由化の方向に向かっていない、こういう状況があるのです。

 やはりここが日本のエネルギー政策、電力政策の一つの大きな分岐点になると思いますので、できればもう一回、向かっている方向性というのを示してもらいたいと思います。

平沼国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、いろいろな問題点があるし、各国もいろいろな事情でいろいろな対応をしております。したがって、私は、完全自由化が完全な方向であるということは申し上げておりませんので、選択肢の一つでありますから、やはりそういう危機的な状況が起こったら実際に国民に多大な迷惑をかけることになります。ですから、そういうことを考えて、やはりよく検証しながら、三年じっくり考えて我々としては一つの方向をこれから出していきたい。そういうことも含めて総合勘案させていただきたい、こう思っています。

松野(頼)委員 続きまして、もう一問伺いたいと思いますが、宮澤財務大臣、我が国の今の国債発行残高は、国と地方を合わせますと六百六十六兆円という大変な数字になっているわけです。

 ちょっと私が驚きましたのは、最近、女性の作家が「日本国債」という経済の小説を書かれて、これが大変売れているのです。また、書店に入りますと、日本国破産だとか国債累積のツケをだれが払うのかとか、こういう、とにかく日本が破綻するんじゃないか、この国債の累積増が大変なことなんじゃないかという世論があるわけであります。

 また、財政演説の中でも、大臣もこれから財政構造改革をしなければいけないというふうにおっしゃっていますが、今の国債を発行しているこの日本の財政の姿、これもやはり大きな国民の不安だと思うのです。これを今後どういうふうに変えていくのかということをお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 国民の間にそういう関心が高くなってまいりまして、ある意味では、国民がそういうことに関心を持っていただくことは極めて健全なことであると思いますが、しかし同時に、国民としては非常に心配をしておられる、それだけの大きさの債務であることは確かでございます。

 こういうよって来るところはもう省略するといたしましても、しかし、これをこの二十一世紀に向かってどういうふうに処理していくかということは決して易しい問題ではありません。もちろん、処理し得る我が国の力があることを私は別に疑いませんので、慌ててはおりませんけれども、容易ならない問題でございます。

 したがいまして、財政再建ということが当然火急の問題になるわけですが、さしずめ、毎年の歳入が、税収がどのぐらい入るかということの見通しができませんと、この話が始まりません。今までのようにゼロ成長でございますと、歳入はむしろ減る傾向にある。あるいは、政府の歳入見通しが、年度初めに国会に申し上げまして、年度が終わったときには実は足りなかった。減額補正を何度もさせていただきましたが、そういうようなことでは、とてもプランが立たないというところでは困ると思っておりまして、ようやくここへ来まして、歳入見積もりが結果としては最初よりはふえてきたというところまで参りました。

 これがまず循環をするということになりましたら、そこで少なくとも歳入についての見通しは立つということになりますが、ごらんのように、財政再建といいましても、やはり一番、それは税制の問題であるし、地方財政の問題であるし、何よりも社会保障の問題でございますから、給付と負担の問題は。やはり、それらの相反する問題を一義的に、一つの答えでシミュレーションをして出すとしますと、モデルをつくらなければ作業はできないと考えておりまして、先般、経済財政諮問会議でそのことを議論いたしまして、まず、経済社会総合研究所にモデルを一つつくることを申しまして、その上で具体的な数字の議論を始めようと。これですと、もう待ったなしになりまして、これもあれもいいような答えは出ないことになりますから、非常につらい作業になりますけれども、そういう決断をしなければならない。そのモデルをまずつくろうというところにただいまおります。

松野(頼)委員 今いろいろ伺ったのですが、ちょっとよくわからない。

 では具体的にどうするのかということを、もうちょっと、もう一回伺いたいと思います。

宮澤国務大臣 簡単に申しますと、例えば社会保障で申せば、どれだけの給付を必要とするのか、そのための負担はどれだけということは当然問題がございますから、給付が大きければ負担は大きくなるということになります。そこにそういう選択があります。

 そこで、そういう負担を今度は税制の上でどうするか。それは所得税による負担もあるだろうし、間接税による負担もあるはずでございますね。そちらをどっちにするんだと。

 それから、今度は当然地方財政が絡んでまいりますから、国と地方がどういうふうに分け合うのか、これは地方行政の改革にもかかわりますから。

 それらの問題を全部一つにして、これにはこれがいいんではない、一義的にこの答えなら全部が満足できる、そういうシミュレーションをする必要があって、その結果は、あっちにもいい、こっちにもいいという話はできませんので、そこへいかなければこの問題を解決する方法は見つからない、こう申し上げておるわけであります。

松野(頼)委員 でも、そう言いながら、基幹三税の税収が約四十兆ぐらいしかないわけですよ、上がったとはいえ。支出は相変わらず八十兆円台を出しているわけですから、そうして議論をしてシミュレーションしている間に、また来年度予算、国債を増発しなきゃいけない、累積はどんどんたまっていくというのが日本の現状なんじゃないでしょうか。

 特に私は若い世代でありますから、昭和三十五年生まれでありますから、これから十年後、二十年後、三十年後と、ではどれだけ、どういう形になっていくんだろうか、どんどん増税になるんじゃないか、こういう不安を、多分皆さん、僕らぐらいの世代の人間は持っていると思うんです。

 ですから、これから具体的にどういう方向で行くのか。ある程度、経済成長率と同じぐらいのキャップをかけていくとか、アメリカがOBRAをやったときも、ある程度支出のキャップをかけていく、国債発行のキャップをかけていく。やはりこういう議論をしていただかないと、えらい拡大していくんじゃないか、野方図に広がっていくんじゃないかということが国民の中では大きな不安として出ているんじゃないかと思うのです。

 ですから、そういうことを、どういう方向に向かっていくのか、歳出歳入のバランスをどうしていくんだということを伺いたいと思います。

宮澤国務大臣 それが正しい御理解だと思います。

 歳出にキャップをかけるとすれば、これから歳出の一番難しい問題はやはり社会保障でございます。そこにキャップをかけるということは、負担と給付との関連において給付にキャップをかけるということになります。そうでございますね。

 しかし、それが国民に入れられるところになるのかならないのかということは、やはり国民の選択に問わなければなりませんから、そのための基本的なシミュレーションをつくらなければならない、こう申し上げておるわけです。

松野(頼)委員 この国債の問題、きょうはちょっと時間がありませんので、また次の機会にゆっくりとやりたいと思いますが、特に私たちの世代、みんなに話を聞いても、いや、これは本当にまずいぞという認識を持っている人間がたくさんおりますので、どうかその声をしっかり酌み取っていただいて、これからしっかりとした財政の方向性に向かっていただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

野呂田委員長 これにて松野君の質疑は終了いたしました。

 次に、一川保夫君。

一川委員 自由党の一川保夫でございます。

 私は、きょうは、総務大臣中心にいろいろなことをお尋ねするわけでございますけれども、この予算委員会で最近いろいろなやりとりを聞いておりまして、本論の質問に入る前にちょっと自分自身の感想でございますけれども、私自身は、実は森総理大臣と同じ選挙区で選挙をやり、また、常日ごろそういう政治活動をさせていただいている人間ですけれども、きのうきょう来の新聞等のいろいろな報道を見ておりましても、今我々地元に帰っても、石川県の有権者の皆さん方も、森内閣そのものが今その危機管理を問われているような状態に来ているということについて、いろいろな批判を中心に大きな報道がされておるわけです。

 私は、こういった日本という国のこれからの将来、それからまた国民の幸せ、また地元の皆さん方も、せっかく生み出した総理大臣のいろいろな言動等についての大きな批判に対して、石川県民自体が堂々と政治的な話題に入っていけないということすらおっしゃる方もおりまして、そういう面では、ここにも与党の先生方もたくさんいらっしゃいますけれども、これからの政治を健全な姿に取り戻すために、私は、やはり国家国民、それから御本人のためにも、これからの進退等も含めたその判断について誤りのない御指導を心からお願い申し上げたい、そのようにまず思っております。

 さて、最近、地方の時代だというふうに言われて大分時間も経過しておりますし、地方分権ということもいろいろな場所で言われているわけでございます。そういうこともございまして、私は、常日ごろいろいろな市町村等にも顔出しをしながら、またそういう関係者ともいろいろなお話をさせていただきますけれども、今までとちょっと違った印象としまして、市町村の合併問題という話題が非常に出るようになりました。

 御案内のとおり、明治の大合併だとか昭和の大合併と言われた大きな市町村の合併の歴史的な経過を経て今日に至っているわけでございますけれども、最近、御存じのとおり、経済が非常に低迷しているという状況の中、国もそうですけれども、各市町村、地方公共団体も財政事情が非常に逼迫しているという状況です。こういう中にあって、国民、住民のいろいろな行政に対するニーズも非常に高度化しておりますし、多様化もしてきております。また一方では、非常に活力を失ってきている、そういう地域もたくさん見受けられるわけですね。

 そういうことを考えてみた場合に、私は、この市町村合併問題というのは、やはり早急にある一定の方向を出しつつ指導していく必要があるのではないかというふうに思います。決してこれは各市町村に対して強制すべきような政策ではないとは思いますけれども、しかし、いろいろな情報を提供しながら、住民の皆さん方と議論をしながら、これからそれぞれの地域が本当に活力を持って幸せな生活ができる、そういった基盤をつくっていくということは政治家の大きな役割でもございますので、そういう観点で幾つか御質問をしたいというふうに思っております。

 前の自治省時代から、都道府県に対し、また間接的には市町村に対しても、いろいろな指導をされてきておるというふうに思います。そういう中にあって、また、各都道府県に対して、合併に関する具体的な内容についていろいろと検討をされるようにという指示のもとでそういう指針が出されてきておるわけですけれども、各都道府県で具体的な要綱をつくりなさいというような指導をされてきておるというふうにお聞きしておりますし、もう相当の都道府県からそういうものができ上がって公表されているというふうにお聞きしております。

 まず、今、現時点でその策定状況というのはどのようになっているかということと、今後、総務省としまして、そういうものを踏まえてどういうような基本的な方向で取り組んでいかれるのか、基本的なそのスケジュールも含めてお聞かせ願いたいというふうに思います。

片山国務大臣 今、一川委員から市町村合併について大変適切なる御指摘をいただきました。市町村合併についての大変な御理解、感謝申し上げたいと思います。

 私も、二十一世紀はとにかく地方の時代に本当にしなきゃいかぬな、こういうふうに思っておりますが、私は、その地方の時代は市町村の時代だろう、住民の基礎的な自治体として最も住民に身近な市町村がやはり中心になる、そのためには市町村の規模、能力を強化するということはどうしても必須の課題だろう、こういうふうに思っております。

 そこで、いろいろなところからの強い御要請もございますので、我が省としては、市町村合併を大いに推進しよう、こういうことで、都道府県ごとに市町村の合併の推進についての要綱をつくってもらおう。今、一川委員御指摘のものでございますが、現時点で三十四都道府県が策定しておりまして、本年度中には、といってもあと一カ月半しかありませんけれども、すべての都道府県で策定される。

 現在、市町村合併特例法というものがありますけれども、これが平成十七年の三月までなんですね、あと約五年間。できれば五年間に合併の大きな盛り上がりをして成果を得たい、こう思っておりまして、本年中に合併の動きがあるところは、やるやらないは別にしまして、合併協議会をつくっていただこう、こういうふうに考えております。

 それで、つくっていただいたら、推進するためにもそれをいろいろ活用するわけでありますけれども、さらに一歩突き進みますために、市町村の合併の推進についての指針を総務省の方で作成しよう、それによって都道府県に全庁的な支援体制を整備してもらったり合併重点支援地域の指定などをやっていただこう、こういうふうに思っております。

 お金の方も、平成十二年度から合併する市町村側に対する補助金の制度はつくりましたが、十三年度はそれを応援する都道府県の方にも補助金を出そう、こういうふうに考えておりまして、これも予算が成立すれば直ちに使っていこう、こう考えているわけであります。

 さらに、地方自治法の一部改正で住民投票の制度を入れまして、合併協議会を関係の市町村の議会がノーと言っても住民の投票で協議会がつくれるようにしよう、こういうことを含めていろいろな対応を考えているところでございます。

一川委員 今ほどの大臣のお話によりますと、もう三十四の都道府県からそういう具体的な検討の成果としての要綱が出されているということです。

 それで、その要綱の中身というのは当然担当レベルでは十分見ておられると思いますけれども、今大臣が担当者の方からお聞きしている範疇のことですけれども、どうなんですか。その三十四の都道府県から出ている要綱の中身から見まして、もうこれだったら相当合併がいけそうだというような感触を持っておられるのか、あるいはちょっとなかなか難しい新たな課題もあるなというふうな印象を持っておられるのか、そのあたりいかがでしょうか。

片山国務大臣 この要綱は、都道府県ごとに、できればこういう形での合併があるよという目安ですね。あるいは参考のパターン化をしてもらっているんですよね。

 それじゃそのとおりになるかというと、一川委員、これが大変難しゅうございまして、一部では盛り上がったところもありますが、大変慎重な向きもあるわけでありまして、我々はこれから大いなる啓蒙をし、やはり地域社会の将来にとって市町村を強くすることが必要なんだという認識を広く持っていただく必要があるんじゃなかろうか、二十一世紀の地域社会のビジョンとあわせて、そういう意味で、もっともっと関係の首長さんや議員さんや広く住民の各界各層の方の御理解を広げていかなきゃいかぬな、こう思っておりますが、なかなか簡単じゃないと思ってもおります。

一川委員 合併特例法の期限が平成十七年の三月までということで、当然そこに焦点を当ててのいろいろな指導がなされているというふうに思います。

 私の地元である石川県という県は、四十一市町村現在ございますけれども、全国平均の市町村の数が、都道府県当たり、一県当たり六十九だというふうに聞いております。昭和の大合併の折に、割と合併が促進された県が幾つかあると思うんですね。そういうところは、今回の合併については若干出足が遅いかなという感じもしないでもないわけです。

 そういうことをいろいろと考えてみた場合に、やはり、いろいろな情報を提供しながら、またいろいろな議論を踏まえながら、それぞれの地域の持ついろいろな立地特性なり伝統、文化的なものも踏まえた、そういうことを尊重しつついろいろな議論を踏まえていけば、ある時期に、そこの首長あるいは議会の議員の皆さん方、各地域のリーダー格の皆さん方の判断がごろっと合併に向かう可能性だって私はあると思うのです。そうした場合に、一気に合併というものが促進されていく可能性だって私はあると思うのです。

 今、当面与党の方でも、全体の数を、今三千二百二十七ある市町村の数を、千ぐらいにまず目標を置きましょうということで進んでいるというふうに思いますけれども、我々自由党は、最終的には三百ぐらいでいいじゃないかという目標を持っております。どうなんですか、今いろいろな要綱の中のいろいろなたたき台の中では、相当大胆に持っていけば千よりも数が減ってしまう可能性だってあるような気もしますけれども、その千という目標に相当こだわっていらっしゃるんでしょうか。そのあたり、いかがでしょうか。

片山国務大臣 今一川委員が言われましたように、昭和の大合併というのは、昭和二十八年に町村合併促進法をつくりまして、二十八、二十九、三十、三十一、二ぐらいまでやったんですね。あのときは、新制中学校に学校制度が変わりまして、小学校と中学校は市町村が設置、管理する、新制中学校をちゃんとマネージできる、設置できるだけの能力を、八千以上なきゃいかぬだろう、こういうことで大々的な合併を推進したわけですね。

 今の合併は、それじゃ何をどうかということは、介護保険が去年の四月から始まりましたけれども、私は、市町村が強くなったら、これからは、福祉、保健、環境、都市計画なんというのは、やはり市町村中心にやってもらう、そして、そのためには、幾らとは言えませんけれども、私は、相当規模の広がりや人口を持つ市町村にならざるを得ないのではなかろうか、こう思っております。

 そこで、与党が千という数字を出されまして、その与党が出された千という数字を政府の行革大綱の中に入れたわけですよ。与党が言われる千という数を踏まえて市町村合併を促進しようと。ただ、私は、千というのは積み上げた数字じゃないと思いますよ。丸い数字で大体、今三千二百二十七ですから、三分の一ぐらいにしたらどうか、三つぐらいを合併させたらどうか、こういう発想だと思います。

 与党がせっかくお決めいただいたんですから、私は、千は十分念頭に置きますけれども、それは千じゃなきゃいかぬということでは必ずしもないと思いますが、今都道府県から出てきているパターンを見ますと、割にそれに近い数字になるんじゃなかろうかと私は考えております。大体広域圏をちょっと小さくしたぐらいでしょうかね。そういう感じでございますので、それを尊重しながら、しかしそれにこだわることなくやろう、こういうように思っております。

一川委員 その千という数字は、そういった相当丸まった数字ですから、余りその数字にこだわること自体も不自然だとは思いますけれども、こういった合併問題も、ある程度段階的に進めていくという発想も大事なことがあるんではないかというふうに思いますので、先ほどちょっと触れましたように、余り強制すべき問題でもないと思いますけれども、そういう自主性といいますか、そういうものを尊重しながら、それぞれの地域がこれからまた一方では自立しなきゃならない、そういう時代でもありますので、そういった面での指導が非常に大事ではないかというふうに思っております。

 さて、先ほど大臣もちょっとお触れになりましたけれども、この市町村合併の手続の上で、今度特例法の改正を検討中だ、住民投票制度を導入していきたいと。これは、各首長さんなり、またそれぞれの議会での決議なり、いろいろな採択めいたもののほかに、直接住民の意向をこの合併の手続の中で位置づけをしていきたいという趣旨だと思いますけれども、町村長の、いろいろな組織の皆さん方からは、余りそういうことを強引にやってくれるなという意見も一時期あったような気もしますけれども、これをあえて法律を改正して入れていこうというそのねらい、またその概要的なところについてひとつ教えていただきたいと思います。

片山国務大臣 委員先ほど言われました段階的な合併というのは、私も一つの考え方だと思います。短兵急にばたばたといっても、なかなかある程度意識がそれだけ盛り上がらなきゃ無理でございますので、段階的な合併も十分考慮に入れながらやる。

 それから、よくこういうことを言われるんですけれども、押しつけ的に、半強制的に、画一的にやるんじゃなかろうかと。しかし、今の時代にそういうことははやりませんから、私は、あくまでも自主的な合併、お互いの話し合いで自主的な合併、こういう線はぜひそれは守っていこう、こういうふうに思っております。

 今回の地方自治法の一部改正をこの通常国会に出させていただこうと考えておりますが、何点かあります一つが、合併協議会を住民が発議して上に持ち上げたときに関係の市町村の議会で協議会をつくることが拒否される。その場合に、再度、協議会を置くことについて住民投票にかけて、住民投票の過半数の同意が得られたら、議会がノーと言うても合併協議会を置ける、こういう制度にしよう。ただ、合併協議会を置くということは即合併じゃありません。この合併協議会で合併の議論をするということですから。

 だから、住民発議で出た合併協議会が関係の議会で拒否された場合に、救済として、住民投票で協議会を置き得るようにしよう、こういうふうに考えておりますし、また、協議会を置いた場合に発議者の代表の方にもメンバーになってもらったり、あるいは意見を言える道を保障しよう、こういうのを考えておりますから、町村会や町村議長会の一部で、これは代議制民主主義に対する侵害ではないかというような御疑念もありますけれども、そういう心配がないようにしよう、こういうふうに思っております。

一川委員 これは法律改正を伴いますので、またその段階で具体的ないろいろな質疑を行いたいというふうに思っておりますけれども、今回の一連の市町村合併に向けての対策の中に、いろいろな支援策が当然盛り込まれているわけです。合併特例債だとかあるいは交付金の扱いの特例的なものとか具体的にいろいろあると思いますけれども、今最も力を入れてこのあたりを支援策として、用意しているんだというようなところは、もう既にスタートしておるものもあると思いますけれども、大臣としてはどういう御認識を持っておられますか。

片山国務大臣 合併推進のための優遇措置はいろいろあるんです。しかし、一番メリットがあると関係の方が受け取られるのは財政援助ですね、財政支援。そこで、これは大きく三つあると私は思うのです。

 一つは、普通交付税が、合併した場合には規模が大きくなりますから、割損になるんですね。それを割損にならないように保証するというのが、今までは五年間なんですよ、合併算定がえをきちっと、今までの交付税の額を確保してやるというのが。それを今度は十年にいたしました。それが一つ。

 それからもう一つは、合併特例債という特別の起債を認めまして、これはかなり弾力的にいろいろなものを対象にして、例えば補助裏だとか庁舎の建設だとかそういう種類のもの、基金だとか、基金の造成なんとかもこの合併特例債の対象にする。そしてその元利償還の七割は交付税で見てやる。これが大きく二つ目だと思いますね。

 それからもう一つは、特別交付税で、三年間は合併の市町村の数や人口に応じて包括的に交付税を措置してやる、特別交付税を。この三つが財政では大きい支援策ではなかろうか、私はこういうふうに思っております。

一川委員 そういう合併に向けての一種のあめ的な政策と、また、ちょっと合併を渋っている消極的なところに対しては、これから若干また冷たい扱いがあるのかなという心配もちょっとありますけれども。

 今いろいろと財政支援を中心とした対策をお話しになりましたけれども、先ほどの話題にもありましたように、今、国、地方合わせての債務残高が六百六十六兆円、そういう大きな額に上っているのが今日の状況でございますし、また、十年ほど前にはまだ三百兆円にも満たなかった、当時二百八十兆円ですか、そのあたりだと思いますけれども、それが今その三倍を超えたような状況になっているわけですね。

 一方では、こういうような国、地方の財政事情の中で、今大臣が説明されましたような財政支援を中心に、相当手厚いものを用意されているというようなお話なんですけれども、それは、恐らく合併をこれから考えておるところにとっては非常にありがたいことだろうと思いますが、何か将来的にまたそのツケが来るのではないか、本当に大丈夫かねという心配はだれだって持っていると思うんですけれども、そのあたりの見込み、見通しといいますか、何かある程度そういったものを試算されてそういうことになったのか、本当に大丈夫なのかというところを、直接大臣のその決意のほどをお聞かせ願いたいと思いますけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

片山国務大臣 今一川委員、あめとむちと言われましたが、あめの方は今お話ししました。

 今、普通の町村の心配は、合併をしないと、むちといいますか、そういうことを考えられるのじゃなかろうかという心配が実はあるようですが、私は、合併しないからむちをというようなことは全く考えておりません。

 ただ、今大変人口の少ない町村は、交付税その他で相当優遇しているんですよ。一人当たりの交付税は、人口が少ないほど多くなっているのです。それは優遇なんですね。だから、その優遇をいつまでも続けるかどうかはいろいろな方面で議論があるので、それは検討させていただきます、むちは加えません、そういうことを申し上げているわけでありますが、今財政上の措置を当面は優遇するというのは、これは短期ですから、しかも今私が言いました合併特例債や交付税の算定がえだとか特別交付税というのは、そう大した額じゃないんですね。ただ、これは、合併しますと、中長期的に見ると、私は財政上相当有利になると思う。

 例えばこの前、保谷市と田無市が合併しまして、西東京市ができました。そこで、両市の試算では、十年間に百九十億ぐらい経費が浮く、それだけ財政にメリットがある、こういう試算をしているんですね。私は、中長期で見ると、やはり合併するということは地方財政にとって大きなメリットがある。ただ、短期的には、今言いました優遇措置をとりますから、それは幾らか持ち出しになるかもしれませんけれども、中長期では大変有利になる、こういうふうに考えております。

一川委員 私も、この合併のねらいというのは、幾つかある中に、一つは、いろいろな行政コストを下げていくというのは当然あるわけでして、長期的には、それは国にとっても地方にとっても財政負担を軽減させるというのが根底にあろうかと思うのです。

 ただ、短期的には、いろいろな面で対策を講じますから、そういう経費がかかるのは当然でございますし、ただ、余り楽観的なことがちょっと先走ったような印象まで与えますと、逆に合併に対する不信感みたいなものが出てくる危険性がありますので、そこのところはひとつよろしく御指導をお願いしたいと思っております。

 そこで、もう一つは、今総務省が中心になっていろいろなことをやっていらっしゃいますけれども、当然関係省庁の連携の中でこういう問題に取り組んでいかなければ、各地方などというのはいろいろな各省庁の補助金を含めた、また、いろいろな行政指導的なものを含めた関与があるわけでございますので、各省庁の連携というのは、どうもそういった組織も含めた対応が十分なされていないというふうに思いますけれども、それはいかがでしょうか。

片山国務大臣 今、総務省の中だけは、合併をしっかり推進するための本部を設けておりまして、これは事務次官が本部長でやっております。

 ただ、今一川委員御指摘のように、一総務省だけじゃなくて、オール内閣でやる、こういうことになりますと、この本部では私はちょっと頼りないと思いますので、例えば総理を本部長にした、各関係大臣を本部員にしたそういう推進本部をつくるか、あるいはそこまで大げさにしないというなら、例えば総務大臣を本部長にして、関係省庁の副大臣に本部員になってもらって、これが各省庁の連携をやる。それからもう一つは、国民の啓発、啓蒙をやる、こういうことにしたらどうかと思っております。

 今省内で検討をして、関係の方面とも、内閣その他とも今協議したりしておりますので、いずれにせよ、近々にはそういう合併推進のための仕組みを立ち上げよう、こういうふうに思っておりますが、一川委員の御指摘、十分参考にさせていただきたいと思います。

一川委員 これで質問を終わりますけれども、今ほどちょっと触れましたように、関係省庁とのいろいろな連携というのは非常に重要な当面の課題だというふうにも思いますので、その立ち上げに向けての仕組みを早急に設立していただきたいということ。

 それからまた、今各都道府県が、基本的には市町村合併ですから、中に入っていろいろな御努力をされているわけです。ですから、十七年三月までの合併促進期間までは、当然各都道府県はいろいろな面で調整役で頑張ると思いますけれども、それまでの都道府県の役割と、ある程度合併が達成された後の都道府県の役割というのはおのずと変わってくると思うのですけれども、そういったところも含めて、これから各市町村、いろいろな議会が始まりますので、また総務省を中心とした政府全体としてのそのあたり、住民の皆様方に的確な判断ができるような指導をひとつよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わりたい、そのように思います。

 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて一川君の質疑は終了いたしました。

 次に、大森猛君。

大森委員 日本共産党の大森猛でございます。

 先ほどもありましたけれども、米軍、米兵による日本国民に対する犯罪的な言動、こういうものに対する怒りが今ほど広がっているときはないと思います。沖縄における四軍調整官の暴言、放火事件、少女に対する許しがたい犯罪、それに加えて今回の原潜による事故、それをめぐる一連の人命軽視の米軍のやり方に今ほど怒りが広がっているときはないわけであります。米軍基地が沖縄に次いで集中いたします神奈川県では、米原潜の事故なども含めて、これは人ごとではない、一連のアメリカ、日本の政府の説明は神奈川県民として納得できない、こういう投書も連日のように出されているわけであります。

 同時に、神奈川県民など、この米軍によるさまざまな被害、とりわけNLP、空母艦載機による夜間の離発着訓練、これは昨年の九月、すさまじい訓練が行われて、何千件もの苦情が周辺の自治体に寄せられる、こういう状況で、地元の大和、綾瀬の両市長が、友好関係を断絶する、こういう異例の態度を表明される。さらには、ことしになって、関係の五市、青森県の三沢、東京の福生、神奈川県の綾瀬、大和、そして山口県の岩国と、五市の市長がNLPの中止を求める共同の声明を出すかつてない事態も今生まれているわけであります。

 そういう中で、今またもや米軍側から、二月の二十三日から二十六日まで、これらの三沢、横田、厚木、岩国で訓練をやりたいと通告が行われてまいりました。二十三日から二十六日といえば、これはもう、土曜日、日曜日も含みますけれども、とりわけ高校受験の追い込みの期間、綾瀬市など一連の中学では期末試験を行っている真っ最中であります。

 これほど今米軍に対する国民感情が大きく怒りや不信として広がっている中で、外務大臣はよもやこの通告を黙認する、黙って見過ごすという態度をとられるのではないか、とらないと思いますけれども、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。

河野国務大臣 余り私ごとを言ってはいけませんけれども、私も神奈川県民でございますから、この問題に無関心でいるはずはないわけでございます。

 それはそれといたしまして、日米安保条約は、我が国の平和を守るための重要なものでございます。この日米安保条約を基軸にして我が国の平和、安全というものは守られているということを考えますれば、日米安保条約によって日本におりますアメリカの空母、艦船あるいは空母の艦載機が訓練をするということを、我々は、やめろ、訓練を禁止しろと言うわけにはまいりません。

 アメリカは、安保条約の約束によって日本を守るために練度を上げる、そしてその能力を維持するための訓練をしているわけでございまして、その訓練を中止しろということは我々として申し上げるわけにはいかないわけでありますが、しかし、基地周辺住民の方々の生活にできるだけ邪魔にならないようにそれはやってもらわなきゃならぬということを言うことは大事なことだと思っております。

 議員も御承知のとおり、NLPが、とりわけこれはその名のとおり夜間に行われるわけでございますから、夜間の離発着訓練によって周辺住民がこうむる影響というものを考えて硫黄島にNLPの訓練基地をつくって、できる限り硫黄島で夜間の離発着訓練はやってほしいということを米側と話し合って、米側としてもそのことは十分承知をしているわけでございます。

大森委員 関係の一県七市の首長さんも、今回の通告に当たって、基地周辺での訓練は中止してくれという要請を新しく今回についても出されたわけです。そういう意味では、神奈川県民とみずからおっしゃったわけなんですが、そういう地方自治体、住民の意向を受けて、少なくとも基地周辺ではやってくれるなという要請を強い態度で行うべきだということと、あわせまして、もともとNLPについては、横須賀に空母が入港する、母港化されるという時点で、訓練は行わないということになっていたわけであります。実際、母港化されてから約十年間は厚木基地での訓練は行われなかった。こういう点からいっても、きちんとこれは、この機会に、こういうNLPのあり方、見直し等について率直に米軍側と、米政府側と話し合ってほしいということを要求して、次の問題に移りたいと思います。

 今申し上げた米原潜をめぐって森首相がとった態度、その後出たゴルフ会員権の問題等々で、総理の資質やあるいは政治姿勢、これもまた今厳しく問われております。雇用の問題でも、戦後最悪の雇用失業情勢がずっと長期にわたって続いている。中高年の失業あるいは青年の失業は本当に深刻な状況で、日本の経済及び日本の社会の将来にとっても危機的な状態と言える今日の事態なのに、そういう危機意識が余り感じられない。

 サービス残業、この間たびたび取り上げてまいりましたけれども、これについても、森首相は昨年の予算委員会で、一律に悪じゃないというような本当に見識を問われるような発言をされるということで、森内閣は雇用問題でも厳しくその政治姿勢や政策が問われているわけであります。

 私、きょうは、ごく短時間でありますので、その中でサービス残業問題について伺いたいと思います。

 サービス残業問題、これは本当に国会で何回となく取り上げられております。何回取り上げられたか。大臣、見当はつかないと思いますけれども、これはインターネットで検索をしました。何と二百十七回であります。それほどたくさんのいろいろな機会にこのサービス残業問題は取り上げられているわけであります。

 歴代の首相、歴代の労働大臣は、なくすために努力する、指導を要請すると言ってきましたけれども、これは、なくなるどころかますます蔓延している。最近の全労連やあるいは連合の調査でもそれは明らかであるわけであります。これほど国会で取り上げられながら、なくすために努力すると首相や労働大臣が約束をしながら、なぜこういう事態になっているのか。これはもう政治の責任は極めて大きい。そういう点で、なぜこれが解決できないのか、私は、まず厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 御指摘いただきましたサービス残業につきましては、当然のことながら、なくしていかなければならないというふうに私も思っております。

 しかし、雇用形態というものが非常に多様化をしてまいりましたこのときに、どういうふうにしていくかということにつきましては、なかなか難しい面も出てきていることも事実であるというふうに思っております。しかし、原理原則としましては、サービス残業をなくしていくという方向性は、当然のことながら進めていかなければならないと思っているところでございます。

大森委員 なくすなくすはもうこれまで何人も言っているわけです。どうしてなくすのかを伺っているのです。お答えいただけますか。

坂口国務大臣 昨年十一月の中央労働基準審議会におきまして、サービス残業の解消についての建議がございました。これは、始業、終業の時刻の把握について、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなど、所要の措置を講ずることが適当である、こう述べているわけでございます。

 厚生労働省としましては、事業主が講ずべき措置として、タイムカードでありますとかあるいはICカードの適切な利用などの方法を示しますとともに、十分な指導を行うこととする通達を出すべく、現在準備中でございます。

大森委員 通達を出すというお話がありましたが、始業、終業時刻を把握する上で、本当に有効にする上で、何をどのように盛り込んでいくのか。今、タイムカード、ICなどのお話がありましたけれども、どういうものを盛り込もうとしているのか、さらに突っ込んでお聞きしたいと思います。

日比政府参考人 お尋ねの点でございますが、現在まだ検討中、準備中でございますが、私ども考えておりますのは、サービス残業の場合、始業、終業時刻の個々人の分をどう把握するか。そういたしまして、労働者の申告あるいは持っている時間と、事業主が把握している時間というものの食い違いが多うございますので、まず事業主の、ただいま把握と申し上げましたが、実は十分な把握がなされていないのではないか。

 したがいまして、把握するということが重要な点でございますので、先ほど大臣から御答弁申し上げましたタイムカード一つをとったときに、これを実際にどう利用するか。利用するかと申しますのは、労働者の持っている方との時間の突合あるいは実際の労働時間の割り出し、ここら辺について、どこまで実効あるやり方というものをお示しできるか。そこら辺が工夫の点だと思っております。

 なお、その点などにつきましては、現在準備、検討中でございますので、また詳細については別の機会にと思っております。

大森委員 十分に時間が把握できないというお話もありましたけれども、私は、この問題で重要なことは、不実記載あるいは改ざんなどを許さない、そのための保障が必要だ。そういう点で、労働者が、記入された、そういう把握された時間を閲覧できる、そのことを保障すべきだということで、これを当然お話しになった通達などの中に入れ込むべきだと思いますが、この点、大臣から御回答いただけますか。

坂口国務大臣 今も申しましたとおり、現在準備中でございます。大原則は、先ほど申しましたとおり、それはもう決まっているわけでございますが、ただ、これから働き方が多様化をしてくる、その中で、始業時間、終業時間というとり方も多様化をしてくる。そうした中で、この始業、終業の時刻をどういうふうにしていくかということは非常に難しい面も含まれている。それらのことを勘案しながらこれから進めていくということでございまして、これは大原則に基づいて、できる限り誤りなきようにしていきたいと思っております。(大森委員「閲覧権を含めてどうですか」と呼ぶ)

 そこのところをどうするかというところまでは、現在検討中でございますから、今お答えすることはできません。

大森委員 それでは、閲覧権も含めてぜひ検討をいただきたい。

 これは後で一緒に御回答いただきたいんですが、問題は、私は、通達、それを出すことは大いに結構だ、そういう趣旨を大いに徹底していくことは必要だと思います。しかし、問題は、本当にそれでサービス残業、重大で悪質なこういう犯罪をなくすことができるのかという点であります。これまでにもサービス残業に関する通達は出されました。しかし、残念ながら、それは効果は出ていないわけであります。

 そこで、なぜそういうぐあいにどんどんサービス残業が広がっていくのかという点で若干手口を紹介しますと、つい最近、大手の自動車メーカーの労働者から内部告発のメールが入りました。簡潔にその手口が書いてあります。

 毎月初めにその月の予定を提出する。月末に実績を正直に提出する。それを見てチームリーダーが残業枠に応じて社員に配分。配分額と同じになるように書き直しを求められる。書き直して再提出。社員から不満が上がると、チームリーダーは、「わしにはどうにもできん、これに関してはわしは事務手続をしているだけ」で終了。私は書き直しが面倒なので、初めから五時間を目安に提出しています。

 つまり、会社ぐるみでこういうことが、サービス残業が制度的に行われているわけであります。

 それでは、今回検討される通達でこういうことが解消されるのか、なくすことができるかどうか、これはどうでしょうか。

日比政府参考人 大森議員も御案内のとおりでございますが、労働基準法は、これこれはしてはならない、あるいはこれこれをしろということで、罰則をもって担保している法律でございますが、今御指摘いただきました労働時間、残業時間に伴う賃金の支払いの点もそうでございますし、他にもいろいろと義務づけておるところがございます。

 ただいまサービス残業の点の御指摘でございますが、多項目にわたる基準法の義務づけ事項について、残念ながら、多年にわたり指導等も行ってきておりますが、いろいろ違反事案がまだ絶えないところでございます。

 サービス残業につきましても、私どもとしては、賃金の不払いということで法律違反でございますので、当然指導をし、監督もしてまいってきたわけでございますし、今後におきましても、いろいろなノウハウ面的なことも含めましてそれをやってまいろうと思っております。それによって私どもは法違反状態の解消を目指すつもりでございますが、先ほども冒頭申し上げましたように、残念ながら法律違反というのはまだ後を絶たないということも現実でございますので、そういう点はぜひ御理解賜りたいと思っております。

大森委員 今も局長の答弁がありましたけれども、あれをしてはならない、これをしてはならないと罰則を設けて行為を定めてあるとおっしゃったわけなんですが、しかし、この労働時間の管理、これについて、明文上は使用者について義務づけられていない、したがって罰則もない、このことが一番の問題だということをたびたび私ども指摘したわけであります。使用者の始業、終業時間の把握、労働時間の管理義務について法律上明確にすべきだということを、当然の前提だからといって政府はこれまでこれを拒否してきたわけでありますけれども、しかし、今回こういう通達を出さざるを得ない、そこにこういう当然の前提がもうつぶれてしまった現実があると思うのです。

 そういう中で、我が党は、サービス残業根絶法案、一つは、とにかくサービス残業、ばれても通常の割り増し料金を払えば終わりということじゃなくて、こういうものがもしばれたら、やはりやったら損だな、そういう当たり前以上の割り増し金をちゃんと課するということと、今申し上げた労働時間の管理、これを使用者に法律上明確に罰則の裏づけを持った義務づけを行うということが必要だと思うのです。これをきちんと行ってこそ、私は、サービス残業を本当に根絶するその道を開くことができる、こう思うわけですが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 サービス残業は、先ほど局長が申しましたとおり、労働基準法違反として解消に努めるべきものであるというのは、これは前提でございます。この労働基準法の違反であるという前提があるわけでございますから、さらにこれに上乗せをして、労働時間制度につきましても、ここに輪をかける、歯どめをかけるというその法律が必要なのかどうか。そういうことをせずにこれを現実にする方法はないか。それらのことを含めて我々は今検討しているわけでございまして、今先生が御指摘になりましたように、これは何が何でも法律で縛ってしまわなきゃだめなんだ、こういうお話でございますけれども、そこは、必ずしも法律だけで縛ってしまわなければそこはきちっとできないものなのかどうか、ここはもう少し考えさせていただきたいと思っております。

大森委員 法律だけだと言いますけれども、その法律が今不十分になっているわけです。

 私どもが今言いますように、労働時間の管理、これを使用者にきちんと罰則を設けて義務づける、法律上明記するということがなぜできないんでしょうか。当然、サービス残業は違反だから、これをさまざま行うと御答弁ありましたけれども、今なお一向になくならないじゃないですか。ですから、今こういうぐあいに、労働時間の管理義務、それをきちんと法律上明記して、罰則もちゃんと設けるということがなぜできないのか、お答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 何度か申し上げて恐縮でございますが、サービス残業をなくさなければならない、それは私たちもそう思っております。そのために、今、通達もまた改めて用意をしているところでございます。

 しかし、だからといって、それをなくするために新しくまた法律をつくって、そして罰則をつけることだけがいいことなのかどうか、そういう方法でなくてもここを打開する道はないのか、その辺のところを私たちは今探っているわけでございまして、ぜひその辺のところの時間を少しいただきたいと思います。

大森委員 ほかにもいろいろ方法はあるでしょう。私がお聞きしたのは、法律に明記するのがなぜ悪いのかということをお聞きしているんですが、その点をお答えいただきたいと思うのです。

 この間、労働省、歴代の労働大臣、いろいろ言われてきました。しかし、それがなくならないどころか、いろいろな形でそれが広がっているわけです。その大もとに、労働時間の管理、この点での使用者の責任が非常にあいまいにされているということがあると思うのです。だからこそ、それを法律できちんと明記し、違反したら罰則を設けるということを要求した。法律で書くことがなぜ悪いのか、どういう弊害が生まれるのか、ぜひ説明いただかないと、私は納得できないと思います。

坂口国務大臣 罰則をつけることが悪いとかいいとかということを私は申し上げているわけではないんですが、すべての法律、全部罰則だとかいうようなことで縛ることが、この世の社会の中でいいことなのかどうなのか。そういうことではなくて、お互いに守るべきは守っていくというのが労使の慣行として確立することが大事であるというふうに思っておりますし、それが守られないというところはどこに問題があるのか。その辺のところを私たちはもう一歩探って、そしてこれをなくするようにしたいという私たちの方針を今述べているわけでございます。

 そういう法律をつくってという先生方の方の御方針は御方針として、それは尊重しなければならないというふうに思いますが、それが悪いとかいいとかということを申し上げているわけではありません。

大森委員 既に社会経済生産性本部でも、サービス残業をなくすだけで九十万人の雇用を拡大できる、こういう試算が実際の労働組合の調査をもとに行われている。これほど雇用問題が深刻な中で、労働時間を短縮して雇用を拡大する、大きくそういう方向に立つ。中でもサービス残業をなくすだけでこれだけの雇用を拡大できる。ですから、連合も全労連も、今度の春闘の大きな課題の一つに、サービス残業をなくすということを掲げているわけであります。

 そこで、どこに問題があるのかということで先ほど大臣おっしゃったから、管理責任が使用者において極めてあいまいにされているという現状があるから、ここにメスを入れるべきだと私は要求しているわけです。それについて明快な、それがだめだという御見解がないわけであります。私は、今本当にサービス残業をなくすという立場に立つかどうか、その試金石は、労働時間の使用者における義務、これをどれだけ本当に実効あるものを求めていくか、そういう姿勢、そこに試金石がある、このように考えます。

 そういう意味で、今回の通達、それは一定の前進ではありますけれども、本当になくしていくという立場にやはり森内閣、そして坂口厚生労働大臣は立っていないということを私は指摘して、引き続きそういう面で真剣な検討をされることを要求して、私の質問を終わりたいと思います。

野呂田委員長 これにて大森君の質疑は終了いたしました。

 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。よろしくお願いいたします。

 きょう私が取り上げる課題、一点だけですけれども、こういう案件をわざわざこの予算委員会の場で取り上げなければならないということは、私自身極めて残念でございます。しかし、先週の金曜日、九日の日ですけれども、この予算委員会において、我が党の所属議員、私の先輩でもあります、中学校の先輩でもありますが、この議員を少なくとも名指しで誹謗中傷する文書が配付されたということ、そしてその内容からしてみれば、当然ながらこれはセクハラである、セクシュアルハラスメントであると断ぜざるを得ないわけでございます。わざわざそういうことを言わずもがなのことですけれども、皆さんお読みになられたでしょうから。

 ただ、こうした個人の人権を著しく侵害する明白な行為に対して、これが白昼堂々良識の府たる国会の中において行われたということ、このことは当然ながら懲罰すべきものであるというのは至極当然である。わざわざ懲罰に値するかどうかということを議論するまでもなく、懲罰に値するということは、私は至極当然だと思っております。

 さて、委員会の委員長というのは、国会法の中で、委員会の議事を整理し、秩序を保持することがその職務であり、権限であります。こういう意味で、今回の件、委員長がその職務を果たし得たのか。残念ながら、現段階においては私は甚だ疑問だと言わざるを得ないわけです。

 しかし、こういう場合海外では、いろいろな例を聞くと、この種の事例があった場合、国会議員がやめざるを得ない、そういう事例も私、いろいろと教えられております。少なくとも今この件に関しては、国会法の百二十条に基づいて、当該人権侵害をこうむった議員が既に懲罰の申し立てを行っているところでございますけれども、既に明らかになっている事実を含めて、まず予算委員長の見解をお伺いしたいのです。

 みずから差配する委員会でこういう事態、国会の品位が汚されるような事態が起こったということを、むしろ一番怒るべきはやはり委員長だと思うからです。まずその点について御見解を求めます。

野呂田委員長 今、事柄の実態を調査しておりまして、どういう措置が適切かということを理事会において鋭意協議しているところでございますので、もう少しお待ちいただきたいと思います。

植田委員 まず、調査するのにかなり日数がかかっていますが、この人権侵犯の事例というのは実に端的な事例であるということを改めて申し上げておきます。

 委員会の皆様方の良識ある御判断をお願いしたいと思うんですが、わざわざこの問題を取り上げさせていただいているのは、ただ単にセクハラや人権侵害を犯した方を弾劾するためだけに私は取り上げているのではないということは理解いただきたい。というのは、この審議を通じて改めて、人権確立に向けた課題、また問題意識をこの国会の場で、与党であるとか野党であるとかという立場を超えて共有したい、そういう思いがあるからなんです。

 この人権を著しく侵害した責任にかかわっては、当然その当事者は懲罰を受けるべきでありましょう。しかし、その方もその機会に反省をされ、そして総括をされて、みずから人間形成されて、むしろこれから、その反省の地平に立って、男女共同参画社会の形成を初めとする人権問題について積極的にこの機会に取り組まれていけばいいんじゃないか、そういうことを私は希望しているわけです。ですから……(発言する者あり)お静かにいただければと思います。そういう意味で、私は、今回この案件を質疑として選ばせていただいたわけです。

 さて、まず官房長官にお伺いしたいんですが、男女共同参画社会基本法十条、国民は、職域、学校、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならないと定めています。当然国会議員も、国民である以上、むしろ国民の代表である以上、そのための範を垂れるというのは当たり前のことだと思います。しかし、差別的言辞を弄してセクハラまがいの、特定の個人を誹謗し、またそうした情報を流布する行為というのは、少なくともこの男女共同参画社会基本法に課せられている国民の責務に当然反する行為だとごく自然に、ごく単純に理解するわけですけれども、一般論でも結構ですから、官房長官の御認識をお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおり、男女共同参画社会基本法十条において、「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。」ということにされておりまして、当然国会議員についても、国民の一人として、同法の基本理念にのっとり男女共同参画社会の形成に寄与することが求められていると考えております。

植田委員 とすると、官房長官、お伺いしたいんですが、この責務に反するような行為があれば何らかのやはり対応方というものも要求される場面も出てくるだろうと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

福田国務大臣 一般論として申し上げれば、今の考え方にのっとって我々は行動すべきだ、こういうふうに思っております。

植田委員 具体例を出して私も質疑をしたいわけですけれども、私自身、一年生議員ですが、その具体例を議事録に載っけてもらうのは甚だ遺憾なような言辞を弄したビラがこの予算委員会で配られたということですから、そのことだけは事実認識として持った上で、引き続き進めていきたいと思います。ですから、あえて具体的なことを私は申し上げないわけです。

 さて、次、厚生労働大臣にお伺いいたしますけれども、男女雇用機会均等法二十一条、これは、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により女性労働者がその労働条件につき不利益を受けることであるとか、性的な言動により女性の労働者の就業環境が害されることを、事業主は防止のために雇用管理上の配慮をしなければならないということになっています。もちろん、この雇用機会均等法が、ではここの場合に適用されるかされないかということを言っているわけではございません。

 また、平成十年の労働省の告示第二十号では、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針」ということで、ここでは、「「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等」となっているわけでございます。

 これも、当然、雇用管理上事業主が配慮すべきことですのでということは十分承知した上で、例えばこの均等法もこの国会の場で審議され、そして成立したわけでございます。社会的に見て、その審議に当たった、そしてそれを成立させた我々国会議員が、その法律を社会に定着させるに当たってその法律に責任を持つということ、また社会的にも率先してそれを遵守するということは、当然我々議員一人一人の責務であろうと考えます。

 そういう観点から、少なくとも男女共同参画社会形成にかかわって重要な役割を担っておられる厚生労働大臣、そして議員でもあるわけでございますから、御見解をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 ただいま御質問になりましたその具体的なことにつきましては、私は全く存じません。

 ただ、男女雇用機会均等法では、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止につきまして、雇用管理上の配慮を事業主に義務づけておるところでございますし、その前提として、セクシュアルハラスメントが女性の人権を侵害するものとして許されないということは言うまでもないことでございます。この大前提に立ってすべては行わなければならないと思っておるところでございます。

植田委員 今度は法務大臣にお伺いしたいのです。

 昨年、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律というものが成立いたしました。これは与党の皆様方が提案されて成立したものですけれども、我々野党も、私も法務委員会で質問させていただいて、やはり人権の確立というものが普遍的な課題としてこの場で共有できることを喜び合いたいと賛辞を送らせていただいた記憶があります。

 ちなみに、改めて見ますと、この法律案の賛成者にそのビラを配付されたとされる議員の方も加わっておられます。本当に私は落胆いたしました。残念ですし、情けない。この法律の意義というものをどういうふうに皆さん御理解されているのか、この議員は理解されているのか、非常に残念に思ったわけです。

 この法律の六条にも、国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなあかん、こういうことが書いてあるわけです。差別的言辞を弄して特定の個人を誹謗したり、またそうした情報を流布する行為、国会内外、そういう行為というものは当然この六条にも反すると思うのですけれども、法務大臣の御見解を。

高村国務大臣 一般論で申し上げれば、法六条に規定する内容というのは日本国民であればだれでも尊重しなければいけないことである、こういうふうに考えております。

 ただ、国会内で行われた具体的行為について、行政を所管する者として、この具体的な行為がどうであったかということは差し控えたい、こういうふうに思います。

植田委員 その具体的行為の中身が、この法律に照らして、やはり責務を果たしたとは言えない、責務に反するぞというふうにもし現認されるならば、どういうふうな御見解をお持ちになられるでしょうか。仮定の話で結構です。

高村国務大臣 仮定の話にどう答えるというよりも、私が先ほど申し上げたように、一般論として、法六条の内容は国民であればだれでも守らなければいけない、だれでもどこでも守らなければいけないことである、こういうことを申し上げているわけです。

植田委員 法務大臣もおっしゃられたように、だれでも守らなければならないということは、国会議員も守らないかぬということです。それを破るような行為があった場合、それは当然懲罰だということは、当たり前のことだろうと思います。

 さて、文部科学大臣にお伺いしたいのですが、一昨年七月に、人権擁護推進審議会、教育、啓発に関する答申が出されました。ここで、学校教育における人権教育のあり方について、「生命を大切にし、自他の人格を尊重し、お互いの個性を認め合う心、他人の痛みが分かる、他人の気持ちが理解でき、行動できるなどの他人を思いやる心、正義感や公正さを重んじる心などの豊かな人間性を育成することが重要」だと述べられております。

 当然文部大臣も、こうした答申を踏まえられて、人権教育の推進、積極的になさっていただけるのだろうと思いますけれども、もし大臣が学級の担任の先生だったとして、性的にそういういじめをしたり、紙を二枚か三枚か、配ったか渡したかは関係ありません、そういうことを生徒たちが、特定の生徒に対していじめのような行為をやっているとき、その現場を見たときに、町村先生はどういうふうにその生徒たちに対して諭されるでしょうか。

町村国務大臣 一般論で申し上げるならば、いじめ等々という実態を把握した場合に、教員は適切に指導することが求められると思います。

植田委員 当然、その適切に指導ということは、そういうことをどんどんやりなさいということではないはずでしょう。やはり、そういうのはだめよ、他人の心を思いやるようにしなさいよということだろうと思います。大臣、うなずいておられますから、もうあえて聞きません。

 そこで、もう一点だけ、もう時間がないので一人ずつどんどんお伺いしておるんですが、総務大臣にも聞きたいのです。

 総務庁、総務省として地対室というのがございます。長年そこで同和対策事業が行われてきました。これは、部落差別の解消のみならず、あらゆる人権の問題、その差別の問題の解決にかかわって、やはりその施策の展開というものは大きな影響を与えてきたということは事実でありましょう。そして、いろいろな評価があるにしても、九六年の地対協意見具申、これはやはりそうした成果と政策手法というものを幅広く人権問題に広げていこうという問題意識に貫かれていたと思うのです。

 その意味で、まさに総務庁さん、総務省さんというのは、人権政策にある意味で先鞭をつけてこられたと私も評価すべきだろうと思います。そういう先鞭をつけてこられた立場からして、それに逆行するような行為が例えばこの国会の中で起こったとしたならばどういう感想をお持ちか、そのことを一点だけお伺いできますか。

片山国務大臣 委員御指摘のように、私どもの方の総務省は地域改善対策室というのがありまして、古くは同和問題の解決、今は地域改善対策ということでやっておりますが、特に差別をなくする、差別意識を解消するということで、それに関する教育、啓発につきましては、幅広い人権教育、啓発に再構成して今推進しているところでありまして、その徹底を今後とも図ってまいりたいと考えております。

植田委員 徹底されるということは、その徹底の阻害要因は当然取り除かなければならないということでございますね。これも大臣、うなずいておられますから、それで結構でございますが、今回の国会におけるこの人権侵犯事例、私はもうごく素朴に許しがたいものだと思います。当たり前のことです。当然、さっきもいろいろとひとり言がこちらの方から聞こえますけれども、懲罰を受けなければならないことは言うまでもない、私はそういうふうに考えているわけです。

 しかし、冒頭申し上げましたように、そのことのみをただ指弾するだけでこの問題、人権問題ということは解決しないということを私は申し上げたいのです。人権侵害を行った者が、それを機会にみずからの行為を反省し、改めて人権意識を高めていただく、そういうことが必要になってくると思うのです。

 人権侵害というものを厳しく糾弾していくということは、何もその方をいじめたり、ましてその方の人権を侵害したりということのために行うものではありません。ただ、人権をじゅうりんした者とそれを受けて傷ついた者が真摯に向き合いながら、改めて、この場で言うならば、国会全体の人権水準というものをどういうふうに高めていくかということをもっともっと真摯に語り合いたい、そしてまた考え合いたい、そういう場にしていかなければならないと思うのです。

 今の国会、コップの水が飛び交う、やじが飛び交う、委員会の採決のときにしか人が集まらない委員会もある、あげくの果てにビラがまかれる。これはまさに、文部大臣、どういう御認識かわかりませんが、学級崩壊以前に国会崩壊という状況を呈しているわけです。まして森総理は、今回の国会は教育改革国会だとわざわざおっしゃっておられる。それだったら、我々自身、国会議員としての自己教育というものをすべきでしょう。

 そういう意味から、私、官房長官に最後にお伺いしたいのでございますが、人権教育のための国連十年の国内行動計画では、「特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進」ということが盛り込まれています。そして、私も毎年、どんなことをやっているんだということを常々聞いておるわけですけれども、我々国会議員もいわば特定の職業に従事する者であります。我々の人権にかかわる認識が極めて疑わしいということ、今回の実例は残念ながらそのことを示してしまったと私はやはり認識せざるを得ないわけです。

 ただ、だから、それがけしからぬ、それを懲罰したら終わりだではない。これを機会に我々自身の人権感覚というものをもう一度考え直す、私はそういう機会にしたい、それを考えることをしたい。そういう問題意識を共有したいがゆえに、冒頭申し上げたように、この質問を議題として取り上げたわけです。

 実際、国会議員、我々も特定の職業に従事するんですから、人権教育の研修をすればいいじゃないですかと思うんですよ。

 また、ここで官房長官に申し上げたいのですが、国会議員がやるやらないというのは当然国会議員が決めることですけれども、大臣、副大臣、政務官と、省庁再編でそういう偉い人がたくさんできました。大臣、副大臣、政務官も、しっかりと人権教育を推進する。この国内行動計画を書き加えるなりなんなりして、「特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進」には、その対象に大臣も副大臣も政務官も入れたらどうやと思うんですよ。

 せっかくこういう話をしているのですから、やはり最後は、私、前向きな結論を共有し合いたい。そういう意味で、最後にそのことだけ申し上げて、質問を終えたいと思います。

福田国務大臣 人権教育のための国連十年に関する国内行動計画は、政府としての施策の推進について作成したものであるということでございます。立法府に属する国会議員については、この行動計画の施策の対象には含めていないのであります。

 今御指摘の、国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範、これは、営利企業との兼職規制、関係業者との接触規制等、国務大臣等としての立場にある者が守るべき服務規律等について定めたものでありまして、一般的な人権の尊重に関する記述は本規範にはなじまないというふうに考えております。

植田委員 一般になじまないというよりは、実際こういう事実があるということも踏まえながら、我々自身が範を垂れるという意味で、やはり、この行動計画に今さら書き加えることあたわずというのであれば、いろいろな知恵を働かせる必要はあると思うのです。

 省庁再編して、大臣、副大臣、政務官ができた。そういう人たちの高潔さというものが問われているわけですから、そのことはいろいろな場を通じてこれからも引き続き検討していただきたいということを強く要請して、この場での質問を終えたいと思います。

野呂田委員長 これにて植田君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十九日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会




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