衆議院

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第17号 平成13年5月15日(火曜日)

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平成十三年五月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 坂井 隆憲君

   理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君

   理事 佐藤 観樹君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    池田 行彦君

      石川 要三君    岡下 信子君

      奥谷  通君    奥野 誠亮君

      亀井 善之君    栗原 博久君

      谷川 和穗君    谷本 龍哉君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      中山 正暉君    丹羽 雄哉君

      西川 京子君    葉梨 信行君

      萩野 浩基君    蓮実  進君

      林 省之介君    松島みどり君

      宮本 一三君    八代 英太君

      吉野 正芳君    渡辺 具能君

      五十嵐文彦君    岩國 哲人君

      生方 幸夫君    岡田 克也君

      海江田万里君    金子善次郎君

      鮫島 宗明君    城島 正光君

      仙谷 由人君    筒井 信隆君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      白保 台一君    若松 謙維君

      鈴木 淑夫君    達増 拓也君

      中井  洽君    山岡 賢次君

      穀田 恵二君    佐々木憲昭君

      山口 富男君    菅野 哲雄君

      辻元 清美君    横光 克彦君

      井上 喜一君    森田 健作君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         片山虎之助君

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   財務大臣         塩川正十郎君

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       武部  勤君

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   国土交通大臣       扇  千景君

   環境大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当大臣)     村井  仁君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)

   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   法務副大臣        横内 正明君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   文部科学副大臣      岸田 文雄君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      南野知惠子君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   経済産業副大臣      古屋 圭司君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   内閣府大臣政務官     阪上 善秀君

   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   環境大臣政務官      西野あきら君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    尾原 榮夫君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君

   参考人

   (日本銀行総裁)     速水  優君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  大原 一三君     松島みどり君

  奥野 誠亮君     林 省之介君

  亀井 善之君     渡辺 具能君

  高鳥  修君     岡下 信子君

  三塚  博君     谷本 龍哉君

  城島 正光君     鮫島 宗明君

  松野 頼久君     岡田 克也君

  鈴木 淑夫君     山岡 賢次君

  山口 富男君     穀田 恵二君

  横光 克彦君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     高鳥  修君

  谷本 龍哉君     吉野 正芳君

  林 省之介君     奥野 誠亮君

  松島みどり君     西川 京子君

  渡辺 具能君     奥谷  通君

  岡田 克也君     松野 頼久君

  鮫島 宗明君     城島 正光君

  山岡 賢次君     鈴木 淑夫君

  穀田 恵二君     山口 富男君

  菅野 哲雄君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  奥谷  通君     亀井 善之君

  西川 京子君     大原 一三君

  吉野 正芳君     三塚  博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として法務省入国管理局長中尾巧君、外務省大臣官房長飯村豊君、財務省主税局長尾原榮夫君、国税庁課税部長村上喜堂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 それでは、基本的質疑を行います。

 この際、昨日の菅君の質疑に関連し、昨日に引き続き、岡田克也君から質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 きょうは、外交問題から質問をしていきたい、議論したいというふうに思っています。

 まず、総理にお尋ねしたいと思います。

 アメリカのブッシュ新政権が発足をいたしまして、政権がかわったから当然なんですけれども、新しい幾つかの注目すべき動きがあるというふうに私は思っております。総理も六月には日米首脳会談を考えておられるという報道もありますけれども、現時点において、日米首脳会談が行われたとすれば、何を一番ブッシュ新大統領とお話しになりたいというふうにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まだいつ会談が実現するか決まっておりませんが、サミット前には、できたら直接話し合いの機会を持ちたいとは思っております。

 その中で私が第一にお話ししたいことは、戦後の平和と発展は日米友好関係の基礎に成り立っている、今後とも日米安保条約を堅持して、この日米安保条約が有効に機能し、日米協力が緊密であればあるほど、隣国を初め各国との協力関係が発展できるのではないか、日本の国益を考えた場合、日米友好関係こそ最も大事な外交関係である。一部には、日米関係が多少損なわれても、ほかの関係国との協力関係を深めていけばいいのではないかという議論がごく一部にありますが、私はそういうことは断じて考えていない。日米友好関係がよければよいほど、他国ともよりよい友好関係が築けるものだ、私はそういうふうに考えているということを申し述べるつもりであります。

岡田委員 日米重視であるという総理のお考えはよくわかりましたが、ただ、今総理の答弁を聞いていて、私は気になりました。言葉が非常にあいまいであります。

 つまり、三つの言葉があったと思います。今おっしゃった中でも二つあった。日米安保条約が有効に機能する、そして日米友好関係。所信表明演説では、同じコンテクストの中で、日米安保体制が有効に機能するように努めると言われた。今は、日米安保条約がと言われた。これは従来、違う意味で言われてきたと私は思いますが、どちらが真意でしょうか。

小泉内閣総理大臣 大枠の中で考えていただきたい。日米友好関係の中には、安保条約が有効に機能しないと友好関係は保てない、友好関係は大事だということを重点的に言ったということを御理解いただきたいと思います。

岡田委員 それじゃ、この所信表明演説の中で、総理は日米安保体制がより有効に機能するように努めるというふうに言われておりますが、そのことの具体的意味をお教えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日米安保体制というのは日本とアメリカの安全保障を考える上において最も重要なものでありますから、これが有効に機能するようにその場その場でお互い協力していく。

 具体的な点と言われたが、どういう事態において具体的な点かということを御指摘いただければお答えいたしますが、総合的に有効に機能されるように各省庁と連絡をとりながら判断するという基本方針に私は変わりないと思っております。

岡田委員 この中で述べられているのは、日米安保体制がより有効に機能するよう努めるということでありますから、現状よりも変えたい、そういう総理の何か具体的な意図が含まれているのか、こういうふうに思って質問したわけですが、今の御答弁ですと、むしろそういうものは具体的に考えていない、こういうことでよろしいんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 いろいろ細かいことまで言われますが、それは日米友好関係がより発展するという意味と同じですよ。日米安保体制がより有効に機能する、日米友好関係、もういろいろな分野で協力関係を進めていきたい、そういう意味で使っているわけであります。

岡田委員 今の細かいという表現は取り消していただきたいと思いますが、具体的な話はないというふうに理解をしておきます。これは本当は大事な話ですよ。

 それじゃ、次に外務大臣にお尋ねしたいと思っています。

 先般、アーミテージがやってまいりました。それにお会いにならなかったことについてはきのう説明を聞きましたので、きょうは申しません。ただ、ブッシュ大統領の唱える新たな戦略的枠組み、これは私は非常に重要な内容だというふうに思っています。

 簡単に申し上げると、一つは、脅威の概念を変える。従来のソ連、ロシアの大量破壊兵器じゃなくて、一部の無責任な国の少数のミサイルが脅威であるというふうに認識を変える。そしてそのための、ミサイル防衛を可能にするための枠組みが必要である。三番目に、従来の戦略核について大幅な削減をする。こういう一つのパッケージであります。

 このことについて外務大臣は、アーミテージの方は同盟国である日本と協議するために来日したということでありますが、外務大臣、お出にならなかったようですが、このブッシュの新しい提案に対してどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 お答えいたします。

 私も、日米の関係は大変重要だというふうにずっと考えてきております。

 それから、お尋ねとはあれですけれども、どのようなメッセージを持ってアーミテージさんが来られたか、お目にかかっておりませんので、まだ事務方からも、報告を早く上げてくれというふうにお願いをしてありますが、中身を聞いておりません。したがって、もう少し時間をいただいてからでないと、中身を吟味してからでないとお答えいたしかねます。

岡田委員 ちょっと今のお言葉は、私には理解しがたいことであります。

 このブッシュの提案は、冷戦後の枠組みを大きくがらりと変える、非常に大事な提案だと私は思っています。

 もちろん、問題はいろいろあります。日本にとっても、例えばミサイル防衛というのは本当に技術的に可能なのか、あるいはこれに参加するときに今の憲法のもとでできるのかという問題もあります。

 しかし、私はこの提案に対して非常に魅力を感じるのは、冷戦時代の象徴であった米ソ両国の、何回でも人類を殺せるという大量破壊兵器を、それを下げていこう、そういう考え方のもとで組み立てられている。私は、それだけの大量破壊兵器を持つということは極めて非人間的であるというか、あるいは反人間的であるというふうに思っておりますが、そういうものを変えるという可能性を持った提案でありますから、これは、我が国としてもどういうふうに対応していくかということは重要な課題であります。それを外務大臣が御存じないということは、御存じないというか事務方から上がっていないということは、この国の外交が動いていないということを意味しているんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。

田中国務大臣 岡田委員のおっしゃっている趣旨は十二分によく理解しておりますけれども、まだ詳しく、最終的な決定も何も出ておりませんので、内閣一体となって協議をしてからまたお答え申し上げる機会があればというふうに考えます。

岡田委員 それでは、もう少し具体的に聞きますが、この中で、ABM条約を新たな枠組みに変える、そのために米ロが協力しなければいけないという提案が含まれております。この点について、外相はどういうふうにお考えでしょうか。

田中国務大臣 ロシア、中国等の対応もはっきりいたしておりませんし、事務方からまだ上がってきておりませんで、きのうもおとといも、私は北米局長に……(発言する者あり)そうなんですよ。ところが、新米なものですから、北米局長に今ほども三回目の、早目にということを申しておりますので、それを見て検討させていただきます。

岡田委員 私は、これは事務方が議論する話ではなくて、アーミテージは政治家として議論をしに来たと思うんですね。あなたがいろいろな御都合でお会いになれなかったことはさておくとして、それでは、副大臣がお会いになっているわけで、事務方がという話じゃないはずであります。副大臣からはお話は聞いていないんでしょうか。

田中国務大臣 先生方がおっしゃる趣旨は私も全く同じ思いがしておりまして、したがって、私が、ちょっとこれは別件ですが、議員立法をやっておりますのも、役所のところで官僚ばかりが情報を掌握していて、殊に幹部がですね、それによって政治家に情報が上がらないことによって国益があるいは世界との関係がミスリードされて損なわれてしまうことはならぬという観点で議員立法を、もう法制局ででき上がっておりますけれども、そこでちょうど拝命をいたしましたので、それをまさしく事務方に指示をしておりますけれども、なかなか、百三十年も歴史のある官僚制度というものは、まだ二週間ぐらいの内閣では動きませんので、頑張っておりますので、ぜひ応援をしていただきたいと思います。

岡田委員 私は、今のお話を聞いていて、本当に日本の外交というものが動いているのかどうか懸念をするわけであります。

 事務方がとおっしゃるが、アーミテージに御都合でお会いになれなかった、それなら即座に、どういう議論があったのかということを、事務方でも副大臣でも結構です、まず事実をはっきりと押さえて、そして、今何も御答弁できなかったわけですけれども、こういう大事な問題について、外務大臣としてのきちっとした見解をお持ちになっていないということは、私は信じられないわけです。

田中国務大臣 全く同感でございます。

 それで私は、副大臣と、それから、ほかの方はわかりませんが、総理とどのような、親書の中身も、すべて少しでも早く知りたいと思って、そこはすぐに速やかに上げてきました。

 ところが、事務方が、朝一時間半ぐらい会ったんでしょうか、副大臣がお会いになる前に、それから、お昼も一緒に一時間半ぐらい幹部がしております。それから、最後は、きのうになって次官が、実は私飯食っていますとおっしゃったので、それらの話の中身を、骨を何度私が言ったらあなた方出すんですかということを言っております。

 ですから、思いは同じですので、お互いに共通ですので、与野党の対立図式に持ち込むのではなくて、みんなお互いバッジをつけている者同士として、やはり共闘できるところはぜひお願いをしたいと思います。今も私、部屋に入ってきて、まだなのということを秘書官に言ってあります。

岡田委員 私は、機密費の問題など徹底的に解明していこうという外務大臣の姿勢には敬意を表しております。ただ、今のお話は、私は、今、日本に外交がない、そういうふうに理解をせざるを得ません。事務方が事務方がとおっしゃるが、それはあなたの責任です。そのことを認識していただきたいと思います。

 それでは、総理に聞きます。

 総理もアーミテージとお会いになっているようですが、この提案に対して、例えばABM条約をどうするか、あるいは戦略核の大幅な削減の提案、そういうものについてどのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私も、ブッシュ大統領の演説というものを理解する上において、主要点については私なりにブッシュ大統領の情勢認識を勉強しておりますが、まず、核兵器の一層の削減を表明したということは歓迎すべきことだと思っております。そして、弾道ミサイル、この拡散が安全保障上の深刻な脅威となっていることにつきまして、私はアメリカと共通の認識を持っております。米国がこれに対処するため各般の外交努力を行っておりますので、今後ミサイル防衛計画をアメリカが検討していることを我が国としても理解しているということを既に表明しております。

 我が国は、このミサイル防衛問題が軍備管理、軍縮努力を含む国際安全保障環境の向上に資する形で扱われていくことを望んでおりまして、米国側が、関係国、特にロシアや中国等と十分協議したいと言っていますので、我々としてもそういう方向は歓迎すべきだと思いまして、この問題につきましても引き続き米国と緊密に協議をしていきたいと思っております。

岡田委員 今のお話の中で、ABM条約について、新たな枠組みに変えるという方向でロシアと議論を始めるということについては、日本としてそれで基本的に結構である、そういうお話だったのでしょうか。

小泉内閣総理大臣 その点については、日本も歓迎すべきだと思っております。ロシアとその削減条約、協議してもらいたいという方向で、我々は歓迎しております。

岡田委員 歓迎するというか、アメリカが話し合って、ロシアはそれに対して必ずしも今その方向に賛成をしているわけではありませんので、私は歓迎という話じゃないと思うんですけれども、ただ、ロシアときちんと話ができるのであれば、そういう方向で議論することは私は結構なことだと。別にABM条約が金科玉条ではなくて、新しい枠組みに向かって議論していくことは、私は一つの可能性として後押しをしていいんじゃないか、そんなふうに思っているところでございます。

 それではもう一つ、集団的自衛権の問題について一言お聞きしておきたいと思います。

 先般の本会議の代表質問で、自民党の山崎幹事長は、日本の平和と安全に重大な影響を与える周辺事態に限って国会決議を行うことで集団的自衛権の行使を容認していいんじゃないか、そういう提案をされました。それに対して総理ははっきりお答えになっていなかったように私は思いますが、この山崎提案に対してどのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、私は、いろいろ状況の変化、時代の変化に応じて研究するのはいいことではないかと言っております。山崎自民党幹事長が国会で決議したらどうかという御発言をしているようでありますが、それも一つの方法ではないかなと。議論をよく見きわめていく必要があると思っております。

岡田委員 そういたしますと、国会決議をもって解釈改憲をする。しかも、山崎さんの言っていたことは、周辺事態において集団的自衛権の行使を容認するということですから、解釈改憲というより集団的自衛権をはっきり認めるわけですから、かなり今の憲法の解釈をがらっと変える。本来、こういうものは、私は、やる必要があるかどうかは別にして、もしやる必要があるのであれば憲法改正でやるべきだという総理の従来の見解、そちらの方が正しいように思うのですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私も基本的には同じ考えです。

 しかし、いろいろ研究についてまで否定することはない。特に、憲法の改正については十分な配慮が必要ですし、国民的な議論も見きわめなきゃならない。私自身も常々申し上げておりますように、政府の解釈については、長年国会の審議等積み上げられたものがあります。これをもし変えるというのであれば、よほど慎重な十分な配慮がなされなければなりませんし、そういう点も含めまして、私は、幅広い議論が行われることが必要であり、もしも変えるということがあったとしても、これは十分に慎重に検討しなきゃならない。

 本来望ましいあるべき姿は、そういう――賛否両論があります。また、解釈によってもいろいろ違いがあります。ということで、望ましい姿を言えば、それはきちんとそういう誤解のないような形で憲法改正という手続をとってやった方がより好ましいというのは、岡田議員と同様の考えを持っていると私は認識しております。

岡田委員 私は、武力行使、集団的自衛権というのは武力行使するということであります。これは、憲法九条の根幹の問題であります。

 私は、基本的に、今までの解釈の積み上げ、これは非常に大事だというふうに、そこは総理もおっしゃいましたけれども、思っておりまして、もし集団的自衛権というものを一般的に憲法が認めているという考え方、解釈に立ちますと、じゃ憲法九条の存在価値は何だろうか。それは、結局侵略戦争を禁じているにすぎないということになる。そうすると、日本の憲法というのは、いわば手を縛ってきたわけです。みずからの手を縛ってきた。そのことをいわば否定することになってしまう、こういうことだと思います。

 それはそれで一つの我が国の選択かもしれません。普通の国になる。しかし、それを解釈改憲でやるのは私は絶対反対であります。もし必要であれば、それはきちんと議論して、国民的理解を得て憲法を変えるということなら、それは可能性としてはわかりますが、憲法の解釈でそこまで認めてしまうということは私はあり得ない、そういうふうに思っておりますが、そこの基本認識は総理は同じだと考えてよろしいでしょうか。

小泉内閣総理大臣 基本認識は同じと言ってもいいと思います、やるべきことは。

 日本の憲法には非常に制約がある。その中で、いろいろ苦労しなきゃならない点もある。現実の状況が変化しておりますので、憲法の範囲内の中で何が可能か、そういう点については研究してもいいのではないか。しかし、今言ったように、きちんとやれるというためには、根本的に憲法を改正した方がいいのではないかという基本認識は、私と共有する面がかなり多いと思っております。

岡田委員 それじゃ、次に参ります。

 緊急経済対策に関して、幾つかお聞きしていきたいというふうに思っております。

 まず、与党三党の合意の中で、連立政権の継続の三党合意の中で、今国会で所要の予算措置、法整備を行うというくだりがございます。予算措置というのは補正を考えておられたのではないか、こういうふうに思いますが、聞くところによると、この国会で補正は出ない、こういうことであります。

 そうしますと、三党合意はこの時点で変更した、こういうことでしょうか。自民党総裁である小泉総理に聞きたいと思います。

小泉内閣総理大臣 変更したということではなくて、今のところ補正予算を組んでやる必要はないのではないかというふうに私は考えております。

岡田委員 ですから、合意の中で今国会で所要の予算措置を講ずると書いてありますから、予算措置というのは補正しか私はあり得ないと思うのですが、それが補正をやらないということであると、この合意はその部分は変わったのですねということを聞いているわけです。

塩川国務大臣 予算の必要な措置といいますのは、何も補正予算だけが措置じゃございませんで、予算の配当並びに使用、そういうものにつきましても予算の必要な措置ということになってくる。ですから、当面のところ、補正は考えてはおりません。

岡田委員 ちょっと何を言ったかよくわからないのですが、予算はすべて箇所づけされていますから、それを今さら変えるということではなかろうと思うのですが、趣旨不明でありますが、次に参ります。

 株式買い取り機構についてお尋ねしたいと思います。

 株式買い取り機構については、九月まで法案の提出は見送る、そういうことだと聞いておりますが、少なくとも株式買い取り機構の骨格だけはお示しをいただけないでしょうか。というのは、かなり具体的な話が前政権で、例えば亀井政調会長のもとで議論されておりましたし、報道もされておりました。それはどうなったのか。九月に検討する、あるいは経済財政会議で検討する、総理のお得意の言葉でありますが、しかし、やはりこれも基本的な枠組みぐらいはお示しいただけないか、そう思って質問させていただきます。

柳澤国務大臣 金融機関の保有する株式は当然価格変動をするわけでございますし、そういう中で十三年度一番最初に来るのはこの九月末ですけれども、そこから時価会計が導入される、そういうようなことを考えまして、これはもう明らかに金融機関の財務の安定性というものを損なうので、まずこの金融機関の保有する株式というものをどう考えるか、これをやはり一定の規制のもとに置くべきじゃないか、こういう問題意識が生じているわけでございます。

 そして、その保有制限と保有規制というものを考えた場合に、仮に数字的な目標を決めた場合に一体いつまでにそれを実現されるか、これもまだ検討をさせているわけでございますけれども、そのいつまでにという期限との関係で、大量にいわば規制をオーバーした部分については市場なりなんなりに放出をさせなければいけない、こういうことを考えますと、一時的に市場の需給に非常に大きな影響を与える。

 これを何とか、もうちょっと緩やかな形で、通常あるようなそういう市場の需給関係というものを実現しながらうまくこの保有規制の実現を図っていくという方法はないだろうか、そこに買い取り機構というものを一つショックアブソーバー的に置いたらどうだろうか、こういう発想で先般の緊急経済対策におけるこの保有制限と買い取り機構がワンセットとして実は規定された、こういういきさつでございます。

 我々は、小泉内閣になってからは殊にそうだと私は認識をしておりますけれども、もう市場原理というものをできるだけ生かしていきたいということを考えているわけでございまして、しかし、この保有規制にしても、あるいはそれの受け皿としての買い取り機構にしても、やや扱い方によっては市場をゆがめるということは否めません。そこで、これを一体どうやって両立させるのかということを非常に思い悩むわけでありまして、私も今本当に苦悩をしているわけでございますけれども、何とかそういったものを考えたいというふうに思っているわけでございます。

 骨格を示せということでございますけれども、緊急経済対策の中に言っていることは、まず基本的には、出資というものには銀行自体が参加することが必要ではないか、こういうことを言っている。それからもう一つは、買い取りの資金については、これについては政府保証をするというような形で公的な支援というものが、結果として非常に最小限に抑えなきゃならぬけれども、そういうものを考えていくということではないかというようなことが「等」というような若干のゆとりを持った表現でそこにされておるわけでありまして、私ども、現在鋭意そういうラインに従って検討をしておる、こういう状況でございます。

岡田委員 ちょっと答弁が長いものですから、もう少し端的にお答えいただければありがたいと思いますが、今のお話の中で一つ気になることがあります。これは総理にお聞きしたい。

 損失補償について考慮するという、もちろん検討中であるという前提ではありますが、補償すべきではないか、そういうお話がありました。私は、これは容認できません。今言われているスキームは、仕組みは、基本的に銀行を中心にその保有機構の株主になる、そしてそこに銀行の株を移す、五年間に売却していく、細かいことはまだ決まっていないということでありますが。

 そうしますと、それで売却益が出たときには、最終的には株主たる銀行にその利益は行く。では、損したときはどうか。そこで、今の柳澤さんの話では、最終的にそれを補償する、つまり税金で穴埋めをするという可能性を否定されなかった。しかし私は、それは絶対におかしなことだと。損したときも得したときも国に帰属するというならわかる、あるいは損したときも得したときも銀行に帰属するということならわかる。しかし、得は銀行で、損は国民の税金で負担をするという考え方は、私は断じて容認できませんが、総理、いかがなんでしょうか。そこだけ明確に否定しておいていただけませんでしょうか。

柳澤国務大臣 基金造成の一番のもとになるコアの、資本金というんでしょうか、そういったようなものについても、私は今、緊急経済対策で書かれていることを申し上げたんですね。「銀行等」と書いてありますので、銀行ということを例として挙げたわけでございます。

 したがって、今岡田委員御指摘のように、得をしたときは銀行の株のもうけになるということ、それから、損をしたときは政府保証で政府の負担になる、今我々が決めるスキームが一義的にそういうことになるということにはなっておりませんので、それらのことを含めて今検討しているということで、御理解を賜れないでしょうけれども、一応現在段階の状況はそういう状況だということを報告申し上げるという意味でございます。

岡田委員 御理解はできません。きょうは明確な答えはなかった。場合によっては税金投入の可能性がある、そういうことだというふうに理解をしますが、それは私どもは理解をいたしません。そのことをはっきり申し上げておきたいと思います。

 総理から明確な答弁がなかったのは非常に残念なことであります。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私より柳澤さんの方がはるかに詳しいんですよ。柳澤さんが言っているとおりでありまして、今、得したら金融機関、損したら税金で補償する、そういうことに必ずしもならないようなことを検討していると言うんですから、その検討状況をよく見て判断したいと思います。

岡田委員 それでは次に、雇用の問題について一言申し上げたいと思います。

 二年ないし三年で不良債権を思い切って処理する、これは我々の考えと一緒であります。ただ、我々は、不良債権はもっと多いと思っていますから、もっと大変なことになるというふうに認識しています。そして、そのときに最低限やっておかなくてはいけないことは、失業者がふえる、そのことに対するセーフティーネットを張っておく、こういうことだと思います。

 このことは本会議でも何回も議論されていますが、実はここも雇用対策についての具体策がございません。いろいろ答弁されますけれども、これもこれから検討するというお答えに終始していますが、私は、情勢認識が甘過ぎるのじゃないか。本気で不良債権の処理をするのであれば、ここをパッケージでしっかりやっておかないと大変なことになる。逆に言いますと、そこをないがしろにして不良債権処理というふうに言っておられるのを見ると、不良債権の処理は実は本格的にはやられないのかな、そういうふうにうがって見てしまったりもするわけであります。

 雇用対策について、具体案をぜひお話をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 御指摘のように、不良債権の処理が進みますと雇用の問題が大変重要になることは御指摘のとおりでございます。それで、その不良債権の処理の規模、そしてそのスピードによってそれはかなり違うというふうに思っておりますが、しかし、いずれにいたしましても、この雇用に対する準備は、セーフティーネットはしておかなければならないというふうに思います。

 一つは、やはり日本の中でまだまだこれから雇用の開拓のできる分野というのは、第三次産業だというふうに思っております。第三次産業に対して、アメリカは七〇%まで行っておりますけれども、日本はまだ六〇%台でございますから、まだまだここは開拓ができるわけでございますので、この分野における雇用の開拓ということをまず目指して、そして具体策をやっていくというのが一つ。

 それからもう一つは、ミスマッチでございます。ミスマッチの問題もいろいろ言われておりますが、しかし、若い皆さん方の場合のミスマッチの一番最初にまいりますのは賃金の格差、賃金に対する一致が見られない。それから、中高年にまいりますと年齢制限でございます。入り口のところでストップしている。賃金が合わないというのはなかなか難しい面がございますけれども、中高年の年齢格差ということにつきましては、取り払う努力を早くしておかないといけないというふうに思います。これが二番目。そうしてやっていかなければならない。

 そして三番目は、不良債権を抱えます業界というのは、かなりこれは限定されていると申しますか、建設業でございますとか流通業でございますとかサービス業でございますとか、大体決まっているわけでございます。そうしたところ、個々の分野におきますところの個々の雇用対策を一体どうしていくかということも検討しなければならない。この分野につきましてまだ今のところ十分でございませんので、早急に個々の分野につきましても手をつけていかなければならない。

 その三点に絞り込んで雇用対策をやっていかなければならないと考えているところでございます。

岡田委員 今の坂口大臣のお話でありますが、不良債権の処理の規模やスピードによって変わるとおっしゃいましたが、実は、もうこれは決まっているんですね。総理の所信表明演説の中でも、「二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します。」つまり、二年から三年で不良債権は一掃する、こういうふうに言っておられるわけですから、そういう前提で考えていただきたい。今までいろいろな対策が本会議等で語られておりますが、それはすべて不良債権の処理を本格的にやると決める前の対策であります。状況が変わった、そういう中で本格的な雇用対策を考えていただきたいと思っています。

 今、三点について大臣から御説明がありましたが、民主党が考えているのは、そういったことも大変大事なことだと思いますが、同時にやはり、我々が考えているのは、一つは、雇用保険を安定させる。今の状況は赤字であります。これを安定させるために一般会計から二兆円つぎ込もう、こういうことが一つであります。

 そしてもう一つは、雇用保険が切れた後、なお職がない人がたくさん出るだろう、そこに対して最低限の生活費を二年間に限って保障していこう。もちろん、そのためには教育訓練、職業訓練を受けていただくことが前提になります。そして、この失業対策の中で、そのネットからこぼれている廃業した自営業者の方も、その制度に乗せていこう。合計で四兆円ぐらいのお金がかかる大変な話でありますけれども、これを三年間、不良債権処理の期間とセットで時限措置でやっていこうというのが我々の提案であります。

 ぜひ、政府におかれても、こういう我々の提案についても真剣に取り上げ、検討していただきたい。そのことを申し上げておきたいと思います。

 それでは次に、規制改革の話、一言申し上げたいと思います。

 総理も、規制改革というのは非常に大事であるということを強調されているわけですが、いろいろな議論がある中で、具体的な規制改革の考え方が出てきても、それが結局、いろいろな既得権その他、もちろん規制改革をすれば痛みを伴うわけですからそういう動きが出ることはわかりますが、しかし、そういう動きに押し戻されてしまって一度決めたことがころころ変わるようでは、規制改革は進んでまいりません。

 そういう意味で、一つの例を挙げて総理の規制改革に対する態度というものを確認したいと思いますけれども、私が申し上げたいことは、お酒の免許のことでございます。

 これについてはもう既に閣議決定もなされて方向性は出ておりますけれども、それに対して、酒販店に酒販管理者を置くということを義務づける法案が自民党の中で検討されているというふうに伺っております。そして、その中身を見ますと、例えば夜の十一時から翌朝の五時までは売り場にその人がいなきゃいけない。ほかの時間はその人は売り場にはいなくていい。ということを見ると、これは明らかにコンビニをターゲットにした法案であるというふうに言わざるを得ません。

 こういうことに対してはっきりノーと言う、決めたことはしっかりやっていく、そういう姿勢を示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 その話は、自由民主党だけではなくて、民主党の中の方も一定のそういう法案を考えておられることも聞いております。

 私たちは、規制緩和した以上は、その執行についてはやはり十分に方針どおりやりたいと思っておりますが、しかし今、酒販の実態を見ますと、乱れておることも事実でございます。そうでございますから、いろいろと検討は進めておりますけれども、まだ管理士の方向で意見がまとまったということは私は聞いておりませんし、またそのような事実はございません。

岡田委員 今、民主党もというお話がありましたが、では、具体的に名前を挙げてください。

塩川国務大臣 民主党の方のどなたと私はわかりませんが、うわさで聞いておりまして、民主党の方でもそういう検討を進めていくということは聞いております。

岡田委員 これは驚きでありますが、答弁の中で、うわさをもとに大臣が答弁されるというのは前代未聞であります。取り消してください。取り消してください。

野呂田委員長 この扱いにつきましては、お昼の理事会でちょっと……。(発言する者あり)

 それでは、財務大臣塩川正十郎君。

塩川国務大臣 いや、民主党のどなたということは申しません。けれども、そういううわさがあったということも、私は取り消しておきます。

岡田委員 もちろん、未成年者に対して酒を売るということは規制されなければなりません。しかし、そのことは、例えば罰則の強化、そういったことでできるわけですから、単に管理者を置いたからそれができるということではもちろんありません。社会的規制に名をかりた経済的規制の強化の典型例でありますから、こういうことに安易に乗らないように、小泉内閣としてぜひしっかりとした対応をお願いしておきたい、そういうふうに思います。

 それでは、次に参ります。

 総理は、所信表明演説の中で、保育所の待機児童ゼロ作戦、あるいは放課後児童の受け入れ体制整備、こういうことを言われました。私は非常に評価をいたします。

 具体的に、こういったことを進めるためにどのようなスケジュールを考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これは、男女共同参画会議の専門調査会において今審議をいただいております。その中で、仕事と子育てを両立する上において、今言いました、保育所待機児童をゼロにするというのに対して非常に要望が強い、放課後児童の受け入れ体制整備、これは重点的に取り上げるということで、近いうちに、これはどのぐらい時間がかかるかわかりません、時期も明示して、所信表明どおり、実施に向けて着実な整備を進めていきたいと思います。

 その具体的な時期とか目標につきましては、もう少し時間をいただきたいと思います。方針ははっきりしております。

岡田委員 またまた具体案がないのは残念ですが、私ども、基本的方向は賛成ですから、もしいいものが出てくればもちろん協力していきたいというふうに思っています。

 その上で、我が党の提案を二つ申し上げたいと思います。

 一つは、無認可保育の話なんです。

 これは、スマイルマム事件というのがありましたけれども、無認可保育について、できたものについては、今、厚生省の方でも無認可施設に対する指導基準というのをおつくりになっていろいろ指導されている。しかし、あるかないかというところの把握ができない仕組みになっております、無認可保育が存在するのか存在しないのか。そういう意味で、我々は今、児童福祉法の一部改正によって届け出を義務づける、こういうことを考えているわけですけれども、その考え方について賛成いただけるでしょうか。

坂口国務大臣 無認可保育所の問題につきましては、御指摘のように、私も問題意識を持っております。現在のところ、これは届け出をしなくてもいいということになっているわけでございますから、岡田議員がおっしゃいましたように、どこでやられているかということがわからないケースもあるわけでございます。したがいまして、それらの点につきましては、もう少しやはり全体で把握ができて、指導すべきことは指導がきちっとできるような体制にしていかないといけないというふうに思っておりまして、事務当局の方に、その無認可保育所と言われております保育所のあり方について早急に検討するように今言っているところでございます。

 名案がございましたら、またお聞かせをいただきたいと思います。

岡田委員 届け出を義務づけるということはそう難しいことではございませんので、急いで検討していただきたいと思います。我々、法案を出しますので、ぜひ賛成をしていただきたいと思います。

 もう一つは、育児休業制度の充実の話であります。

 一つは、政府の方も法改正をお考えのようですが、子供の看護休暇の問題であります。政府の御提案は、これを、事業者に対する努力規定を置いているにすぎないということでありますが、我々は、年間十日程度の看護休業というものを認めるべきだという法案を用意しております。

 そしてもう一点は、同じ法案の中で、今までの育児休業制度は一歳までですね、一回きり。しかし我々は、もう少しそこを弾力的に、小学校に上がるまでの期間で複数回とれるような制度に変えるべきだ、こういう主張をしております。

 この二つの点について、どのようにお考えでしょうか。

坂口国務大臣 政府の方も、御指摘のように、育児・介護休業法の改正法案というのを今国会に提出しているわけでございます。今お話しいただきましたように、これは努力義務でございます。

 ただ、これも、強制的にそういうふうにできるようにしようというのには、なかなか、そこの合意を得るのにはもう少し時間がかかるというふうに私は思っておりまして、やはり第一歩を踏み出すことが第一。そして、何はともあれ、気兼ねをして休まなければならない、休みをとらなければならないということではなくて、みんながそのことに応援をしてもらうような雰囲気がその職場に出てくるということが大事だというふうに私は思っております。そうしたことを含めて、まずスタートをするということが一番ではないかというふうに思います。

 年齢の問題、一歳まででありますとかあるいは学校に行きますまでの問題でありますとか、年齢の問題もございますが、まずはともあれ第一歩を踏み出させていただいて、そして順次それを充実させていくという手順を踏ませていただきたい、そんなふうに思っているところでございます。

岡田委員 私はそこを、基本的考え方は異なります。第一歩を踏み出して順次やっていくというやり方ではなくて、ここは思い切って大きな一歩を踏み出す、こういうことじゃないかと思います。

 どうして先進国の中で日本だけが、育児期間の女性の就業率ががくんと落ちて、いまだにM字型カーブを維持しているのか。先進国はみんなそういうのはもうなくなって台形になっている。つまり、子供ができても就業率は落ちない。それはよっぽど思い切ったことをしないと変わらないというふうに私は思っております。

 そこの基本的考え方について、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 女性の仕事は家事、育児というのはかなり前のことで、最近は女性も男性も家事、育児をしないとやっていけないということについては、もう若い世代では当たり前になってまいりました。

 しかし、私以上の世代になると、育児で仕事を休むということに対して、必ずしも一般社会の理解度がそれほどでないというのが現実の中であると思います。それをどう変えていくかというのが、これから男女共同参画社会を実のあるものにしていく上において大事だと思っています。

 こういう点は、今できるだけ、育児で仕事を休むにしても、一般が、男も、ああそれは大事なことだなと快く理解を示すような環境を整備していくのも大事だと思っております。

岡田委員 私は、日本経済の活性化という点から見ても、能力ある女性がその能力に応じてきちんと働ける仕組みをつくるということは非常に大事なことだというふうに思っております。一歩一歩も大事ですけれども、そこはぜひ大きな一歩が踏み出せるように御努力をいただきたいというふうに思っております。

 それでは、時間も非常に限られておりますけれども、医療制度の改革について一言申し上げたいと思います。

 実は、私が厚生委員会で野党側筆頭理事をしておりましたときに、小泉総理は厚生大臣でありました。いろいろな議論をさせていただきました。特に、医療制度の抜本改革の時期でありまして、総理からも、例えば当時の厚生省は「二十一世紀の医療保険制度」、総理、これを覚えておいでかどうかわかりませんが、そういうものをお出しになって、そして医療制度の抜本改革をやるということを何度も答弁をされました。

 例えば、平成十年六月十一日の予算委員会で、私が、当時の二兆円の負担増と構造改革はセットである、政府も負担増の前提として構造改革をやると言ったじゃないか、ちゃんとできるのか、こういうふうに言いましたが、総理の方は、法案の国会提出は確かにおくれているが、平成十二年度を目途に実施するという基本方針は変えていないということを二回にわたって答弁されました。

 あるいは薬価の問題について、私が、これは厚生委員会、平成九年でありますが、価格メカニズムが生きる形での薬価の決め方について抜本的検討をやるよう厚生大臣の決意を聞きたい、こういうふうに言いました。厚生大臣、小泉大臣は、薬価の問題についても思い切って現行制度を改正したい、その際、市場取引の実勢にゆだねるという原則に立って踏み込んだ改革案を出してみたい、こういうふうに答弁をされているわけです。

 しかし、残念ながら、今振り返ってみると、そういった改革は何一つ実現していないと言っても過言ではありません。これはなぜなんでしょうか。私が懸念するのは、同じことが今起きようとしているのではないか、そういう心配をしておりますから、なぜ、ではあのときはできなかったのか、そして今回はできるのか、そのことについて明確に御答弁いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 岡田議員の質問、よく覚えています。私も、あの岡田議員の質問に対して、当時の厚生大臣としてかなり評価した上で答弁した記憶がございます。

 実際やってみて、この医療関係の利害関係の調整、大変なものがあるということがわかりました。しかし、薬価制度の改定にしても診療報酬の改定にしても、言った方向は、あの当時決めた状況は基本的に正しい。それについて、我々としても努力が足りなかったなと反省しております。

 何とか、あるべき改革、当時提案された方向に向けて、せっかく総理大臣に就任したわけですから、その実現に向けて全力を尽くしていきたい、御協力もお願いしたいと思います。

岡田委員 今の御発言はかなり重い発言だと私は理解をいたします。この小泉大臣がおつくりになった厚生省案、その後、いろいろな提案もありますが、基本的にそういう方向で医療制度の抜本改革を総理として進めていく、そういうふうに理解をしてよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 そういう方向で進めていきたいと思います。

岡田委員 厚生委員会の中で、私、もう一つ聞いたことがあります。それは中医協の話です。中央協議会の話であります。結局、総額三十兆円の医療費を、これは保険料の部分と税金の部分と自己負担の部分がありますが、全体をどういうふうに分配していくかと決めるのが中医協であります。

 この中医協の構成について、現在では、支払い側が八名、医療提供者側が八名、中立委員が四名という構成になっております。これはいろいろな経緯があってそうなりました。しかし、私は、これは絶対おかしい。当時も申し上げたわけですが、国民の税金あるいは保険料をどのように有効に使っていくかということを決める場が、そういった利害関係者が多数を占めているという状況は絶対におかしい、だから中立委員を過半数以上にすべきだ、そういうふうに私は主張をさせていただいたところでございます。平成九年八月二十六日の厚生委員会であります。

 そのときの小泉大臣の答弁は、国民の信頼を高めていくとの観点から現在のあり方を見直していきたい、よりよい構成にしていきたいと、かなり踏み込んだ答弁をされたわけですが、ここも先ほどの答弁と同じというふうに理解してよろしいでしょうか。

小泉内閣総理大臣 答弁は同じだと思って結構です。

岡田委員 ということは、中医協の構成の見直しに着手をするということですね。

小泉内閣総理大臣 より透明性、信頼性、中立性を高めていく意味において検討を進めるべきだという認識であります。

岡田委員 ちょっと後退したんじゃないですか。前の答弁は、よりよい構成にしていきたい、つまり構成を変えると言っているんですよ。先ほど言った人数、八人、八人、四人、構成というのはそういうことですから、それを変えるというふうにおっしゃった。ここはどうなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、今の御意見を踏まえまして、厚生労働大臣とも相談して、どういう今よりも進んだいい方法があるか、もう少し検討の時間をいただきたいと思います。

岡田委員 今の総理の答弁に典型的にあらわれていると思いますが、詰めないと非常に前向きなことを言われますから、それで、ああ、私の意見が通ったのかなと思うと、詰めていくと、いや、もう少し時間をくださいと言う。これは決まったパターンで、よほど国会質疑は気をつけて詰めていかないと、何か表現だけでごまかされてしまったんじゃないか、そんな感じもいたします。

 私は、この問題でやはり日本医師会の存在というものをどう考えるかということ、そこを避けては通れないと思います。

 まず、日本医師会自身は、例えば政治献金はできない。だから日本医師連盟をつくっておられます。しかし、日本医師連盟というのは、日本医師会と同じ建物にあって、会長も同じ人、つまりダミーであります。そして、そういう中で、例えばここ三年間で約二十億ぐらいの献金が自民党に対してなされている。そういう状況の中で本当にそういった医師会の意向と違う改革ができるんだろうか。私は、小泉厚生大臣の時代にいろいろ提案されながら結局できなかったのもそこに帰着をする、こういうふうに思いますが……(発言する者あり)

 我々がいろいろ言うと今のやじが出てくるのは、やはりそれだけ痛いから出てくるわけですね。自民党にとって痛い。そういう痛みを伴う改革を本当に総理はできるのか、医師会との関係を基本的にどう考えていくのか、御答弁いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この医療改革というのは、診療側も支払い側も国民の医療、治療を受ける立場も総合的に勘案しなきゃなりませんから、医師会の役割も重要であります。しかし、医師会の言い分が全部通るわけではない。当然それぞれが支え合っていくのが社会保障制度ですから、その点も含めまして、私は、医師会の言い分は聞きますけれども、医師会の言い分が全部通ると思ったらこの改革はできませんから、支払い側の立場も考えなきゃいけません。いろいろな利害関係者は多いんですから。そういう点も含めて、私は、一特定団体に左右されないような、より公正な改革を進めていかなきゃ国民の理解は得られないと思っております。

岡田委員 もちろん、お医者さんの中にも国民の健康を本当に考える立派なお医者さんもたくさんいらっしゃいます。しかし、どうも医師会の過去の活動を見ておりますと、国民の健康のためにという観点から言っているんではなくて、自分たちの利害で言っているんじゃないかと思われる節がある。そういうものはやはりきちっと排除していかなきゃいけない。そして、プロフェッショナルとしての、国民の健康を守る立場からの意見について耳を傾けるのは当然でありますが、みずからの利益のために言っているとしたらそれは排除していく、そういう姿勢が非常に大事だと思いますが、果たしてこれだけの献金を受け取っていてそれができるのか、国民は見ています。

 総理がかわったから簡単にできることじゃないと私は思いますが、もう一度総理の決意を聞かせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 それは私も、厚生大臣をやってみて、簡単にできるものではないと思っていますが、この医療改革というのは社会保障制度の根幹をなすものでありますから、持続可能な制度のために、医師会の理解も求めて何とか改革に着手したい、また実現させたいと思っております。

岡田委員 私は、この点が一つ小泉総理のリトマス試験紙だというふうに思っています。どこまでできるか、そのことで小泉総理の基本的姿勢が決まるというふうに私は考えております。

 時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、二時間お話をさせていただいて感じることが二つあります。

 一つは、やはり具体論がない。それはまだ一カ月だからというのもわかりますけれども、しかし、やはり総理として基本的な方向をきちんと示して、その上で具体論を議論していく、その基本的方向すら余り示されなかったのは非常に残念なことであります。そのことを一つ申し上げておきたいと思います。

 そして第二は、特に、きょう最初に聞きました外交であります。今の外交の状況は大変私は問題がある、つまりこの国に外交が存在していない、先ほどの外務大臣の答弁を見ていてそう思いました。これは、早急にそういう状態を正常にしていただきたい。もちろん、機密費の問題その他、官僚が問題であればそこをきちっと正していく、あるいは制度を抜本的に変えていく、そのことは大事なことであります。しかし、そのことと、今大臣と事務方が全く切れてしまって機能していないということは別の問題でありますから、そこをきちんと、総理のリーダーシップで日本に外交がきちんと機能する状態を取り戻すように御努力をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 以上です。

野呂田委員長 この際、池田元久君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。池田元久君。

池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。

 まず、同じ神奈川県人として、小泉純一郎総理の誕生を心からお祝い申し上げます。ぜひ頑張ってください。自民党の抵抗でうまくいかないときは我々の方に来ていただければと思います。

 私、小泉さんの答弁を聞いていまして、やはり福田赳夫元総理のお弟子さんだなと思います。福田さんは昭和元禄とかいろいろ造語の名人でございまして、小泉さんのキャッチフレーズは余りオリジナルはないんですが、連発をされております。聖域なき構造改革、構造改革なくして景気回復なしとか解党的出直しとか、キャッチフレーズの使い方が非常にうまい。私は本当に、そういう点で小泉さんを見習いたいと思っております。

 しかし、昨日来、委員会の論議を聞いておりますと、キャッチフレーズあって中身なし、そんな感じがいたしますので、これから金融問題等について詳しく質問をさせていただきますので、具体的にお答えをいただきたいと思います。

 まず、国民の皆様が貴重なお金を預けている、そればかりか多額の税金を投入している銀行の問題から取り上げてみたいと思います。

 このところ、超低金利、ゼロ金利が続いておりまして、国民の預貯金の金利収入が減る一方です。通帳を見ても利息がほとんどない。特に、年金で生活されている方は大変お困りだと思います。一方、銀行を初めいわゆる預金を取り扱っている金融機関はどうか。バブル崩壊後、毎年三十五兆円前後の利子収入を上げながら、不良債権の処理は一向に進まない状況です。

 日銀の調べによりますと、一九九〇年から九九年までの十年間、住宅ローンなどの軽減分も入れて、家計から約十七兆円の利子所得が減っている。一方、企業は十七・一兆、ちょうど見合う額でありますが、利子所得が軽減されています。

 この点、日銀総裁に確認をしたいと思います。

速水参考人 お答えいたします。

 国民所得統計で家計の純利子所得というのを見ますと、金融緩和を開始した前年の平成二年度、この年で十一・一兆円ということでございます。その後は金利の低下を背景にして減少をたどっておりまして、平成十一年度にはマイナスの五・九兆円となっております。したがいまして、この間、平成二年度と十一年度の間で純利子所得の差を単純に差し引いて計算すれば、十七兆円の減少ということになります。

 この間に、企業の利子の支払い額の方はほぼ同額の減少になっております。このことは確かでございます。

池田(元)委員 今のように、預金を持っている国民が大変な犠牲を強いられているにもかかわらず、銀行の経営状況、金融システムは一向によくなっておりません。バブル崩壊以降今に至るまで主に政権を握ってきた自民党と財務省の前身の大蔵省金融行政には大きな責任があるのではないか。

 小泉さんも決して無縁じゃないですよ。大蔵政務次官、大蔵常任委員長、そして、つい最近まで政策集団と言っている派閥の長も務めているわけです。責任の一端があるんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 それは国会議員として、与党の議員として、責任は当然あると思います。その責任を感じて、これからよりよい方向に持っていこうというのも責任だと思います。

池田(元)委員 よくある責任論ですが、ぜひこれからやっていただきたい。果たしてそれがしっかりとした構造改革に沿うものであるかどうか、我々は監視をしていきたいと思います。

 不良債権の実態でございますが、総理は所信表明の演説の中で、三つの経済、財政の構造改革の第一として、「二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します。」こう言っています。これを普通に読みますと、不良債権すべてを処理すると受け取るのが普通だと思います。

 不良債権は、債務者区分によっては要注意先、破綻懸念先、実質破綻先と破綻先に分けられておりますが、ここで言う不良債権はこの全部を言うのか、そして対象の金融機関はどこなのか、お聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 後ほど竹中大臣、柳澤大臣からお話があると思いますが、不良債権というのが全部なくなるということはあり得ないと私は思っています。どんな状況でも必ず一部は残るわけです。

 具体的な、不良債権を二、三年以内に最終処理を目指すということについては、私よりも柳澤大臣、竹中大臣の方がはるかに詳しいですから、そちらに答弁を譲りたいと思います。

池田(元)委員 これからたっぷり聞きますので、総理に総括的なことを聞いているわけですから。突然総理になったわけじゃないですね。三回も総裁選に出ていらっしゃる。この世の中をどうしようかということは真剣に考えていた。それで中身がないといったら困りますよ。

 この所信表明では、何も前文なし、「二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します。」と。これは何ですか、全部やるんですか。全部の金融機関をやるんですか。不良債権の中の一部をやるんですか。普通だったら、全部をやるということですよ。

 不良債権は、できるだけ早く私は処理すべきだと思います。この文言どおり私はやっていただきたいと思っております。そうでないと、これは誇大広告ということですよ。では、次にまた検証していきたいと思います。

 次に、この日本経済の大きな足かせになっている不良債権の現状についてこれから検討しますが、先日、民主党の要求で、金融庁は、経営不振に陥っている問題企業向け債権は全国の金融機関で百五十一兆円あることを明らかにしました。しかし、金融庁は、そのうち三分の二、つまり百三兆円はいわゆる要注意先で、元利返済に支障が出ていないと言っておりますが、それでよいのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 不良債権をどのようにとらえるかということについては、私、前国会以来かねがね、二つのメルクマールがあり、また、いろいろないきさつから金融機関が、引き当ての準備作業及びその結果としてあらわれている自己査定の状況という三つの資料が開示されていることを申し上げてまいりました。

 しかし、いろいろ私ども考えて、また国際的な比較等をした結論として申し上げているのは、我々がリスク管理債権として開示をさせていただいている資料でございまして、このリスク管理債権というのはどういうものかといいますと、利息の支払いあるいは元本の償還といったようなものが当初の約定どおりに行われていない、こういうことを一つのメルクマールにいたしまして、そういう債権を開示させていただいておるということでございます。

池田(元)委員 私も、この百五十一兆円が全部不良債権とは見ていません。しかし、中身の検討に入る前に、金融庁はなぜこのような実態を進んで明らかにしなかったのか、私は大変不満であります。

 百五十一兆円マイナス百三兆円、少なくとも四十八兆円の不良債権が明らかになったわけですが、それにとどまるのかどうか。不良債権とするかどうかの判断、つまり資産査定の仕方、甘さがよく指摘されております。

 金融庁でつくった金融検査マニュアル、これですね、金融検査マニュアル。これは、検査官の手引書です。このマニュアルでは、借り手を正常先、要注意先、破綻懸念先などの区分に分けて判定することになっています。これは御存じのとおりです。本来、破綻懸念先や要注意先にランクされる借り手であっても、これを読みますと、非常にハードルの低い条件をつけて、言ってみれば上方に修正できる。つまり、破綻懸念先から要注意先への変更ができる。要注意先から正常先への変更ができる。

 したがって、不良債権は四十八兆円といいますが、残りの膨大な百三兆円の要注意先の中にも、破綻懸念先などの不良債権があるんじゃないですか。

柳澤国務大臣 先ほど申しましたように、不良債権をどうとらえるかということでございますけれども、いろいろないきさつの上で、アメリカなどでも公表されていない、開示されていないたぐいの資料を、我が国においてはこのところずっと開示しているわけでございます。

 アメリカが特にSECの基準でもって開示しなさいということを言っている、その方針に従って私どもが出しておりますのがリスク管理債権でございまして、私どもとしては、自己査定の状況というものについては、これはアメリカも開示していない、いわば銀行と検査当局の応酬の中から結論として出てくる、そういうものであるわけでございまして、これをもとに今後とも議論を積み重ねるということになりますと、これは私、ことしの開示においても、ちょっとこれは参考資料に落としておいたらどうだ、今すぐやめるわけにはいくまいけれどもというようなことも申して、今度は参考資料に落としてあるわけでございますけれども、こういうようなことを、他国で行っていないようなことまで我が国の金融機関だけについて行うことを果たしてどう考えるかという問題が実はあるわけでございます。

 そういうことで、今、さらに続いて検査マニュアルによる検査の状況ということについて申し上げましたが、この検査マニュアルにつきましても、私ども承知いたしておるところでは、外国の検査マニュアル等を倣い、そして、これが制定される経過の中ではパブリックコメントまで付しまして、そして、皆さんどうぞおっしゃりたいことがあったらおっしゃってくださいということをやりまして、それを踏まえて制定されたものでございます。そういうことで、むしろこの検査マニュアルではきつ過ぎるというような声もあの当時あったことは御案内のとおりでございまして、私どもはこの検査マニュアルに基づきまして厳正な資産の査定を行っておるということを申し上げたいのでございます。

池田(元)委員 金融機関の規模によっては厳し過ぎるという話は私も聞いております。しかし、アメリカと日本ではでこぼこはあっても、ようやく日本の開示基準が前進してきたということなんですね。

 そして、金融検査マニュアル、私言いましたけれども、具体的にこう書いてあるのですよ。破綻懸念先に当たるものでも、五年から十年の経営改善計画があり、計画の実現性が高ければ要注意先と判断してもよいという趣旨の規定もあるわけです。大丈夫ですか。ですから、私は、百三兆円の中には不良債権が含まれている疑いが大変強い、また予備軍でもあると思います。

 我が国の金融の混迷は、政府も銀行業界も、金融機関の実態、現実の経営の状況を把握して明らかにすることを怠ってきたからなんですよ。

 先週金曜日、きょうはこんな厚いので持ってきませんでしたが、これは前の要旨でありますが、あの悪名高いと言っては失礼なんでしょうか、金融危機管理審査委員会が、私たちの要求を入れて、非常に急いで、金曜日の夕方公表をいたしました。

 この九八年初めにつくられたいわゆる佐々波委員会は、当時、長銀や日債銀を健全な銀行だとして、長銀に一千七百六十六億円、日債銀に六百億円の公的資金を、つまり税金を投入したわけです。しかし、御存じのように、この二行は間もなく破綻した。二千三百六十六億円の国民の貴重なお金は全部損失になった、むだとなったわけです。二千三百六十六億円がむだとなった。これは真剣に考えなければいけない。

 私たちは当時からこの税金投入に強く反対して、警告をしていました。二千三百六十六億円の国の損失について、だれが責任をとるんですか、どのような責任をとるんですか。どなたか答えてください。

柳澤国務大臣 これは当時から論争のあったところでございますけれども、従来の検査の体制、これにはもう欠陥があったわけです。引き当ての方の適正さも全く見ていなかった、こういうようなものに基づいての投入が行われたということで、それは緊急を要したわけです。

 ですから、我々は、あの当時としては、あの制度のもとではベストを尽くした判断だったということを申しているわけでございまして、だからといって、私もこのごろ、つくづく、私どもの開示している不良債権についていろいろなことが言われる、このことを一体どういうふうに我々は解消していくべきだろうか、こういう問題意識を持ちまして、今、部内の検討を始め、長官にもそのことを申したのです。

 私としては、当時の制度と今度の制度、今我々が立っている制度とは、さま変わりな制度的基盤の上に成り立っているということを、それはもう池田委員なんかも御存じで、池田委員なんかの御協力も得ながら今回の制度ができ上がっているということをぜひ……(池田(元)委員「そういうことじゃない、つくったんだ」と呼ぶ)おつくりになられた、そういうものでもって今日の制度がつくられている、そういうもとでの御議論をぜひ賜りたい、このように思います。

 なお、言っていいですか、私。いろいろあなたはおっしゃって、私の方は短くしろ、短くしろ……(池田(元)委員「佐々波委員会のことですよ」と呼ぶ)いや、佐々波委員会、だからそれは、当時としては最善の判断をした、こういうことです。

池田(元)委員 柳澤さんともあろう方がと申し上げますが、最善の選択、とんでもない。これはもう論外だというコンセンサスがある、だから、反省して、佐々波委員会を反省材料にしてこうしたというのは、金融庁の文書だって出ているわけですから。冗談じゃありませんよ。何が最善なんですか。

 特に問題なのは、銀行の健全性を判断する一番大事な物差しであります自己資本比率、これが何と長銀は、あの長銀が当時トップクラスの一〇・三二%。三井信託の一〇・四〇%に次ぐ高いランクなんですよ。何たるいいかげんさですか、これ。何が最善なんですか。二千三百六十六億円、だれが責任をとるんですか。

 反省の言葉が聞かれないのは大変残念であります。むしろ最善の選択、これは本当にテークノートしておきたい。小泉総理、この点、非常にわかりやすい話でありますので、答弁をいただきたい。簡単にお願いします。

小泉内閣総理大臣 政治の責任というのは、最終的にとるのは選挙だと思いますね。これ、結果責任。今、池田議員が言われている批判を国民が、当然だと、今までの与党は何しているんだと憤慨したら、今の与党は野党になっていますよ。そうだと思うんです。

 そうならなかったことに、我々は、今いろいろな批判を謙虚に受けとめて、いろいろ反省すべき点があったなと。この反省を今後、いかに実際の行政に生かしていくかというのが現政権の責任だと私は思っております。(発言する者あり)

池田(元)委員 我が同僚の意見も聞こえてきますが、私は、素直に受けとめて、ぜひ変えていただきたいと思います。

 そごう問題でも、当委員会で興銀の西村頭取は、そごうは九四年から債務超過であったと認めたわけです。去年の八月ですね。そのそごうに対する債権についても、金融再生委員会は九九年の二月の資産査定で、破綻のおそれのない債権、つまり譲渡するのが適当な資産、要注意先Aと判定して、長銀の売却資産に入れたわけです。

 私は、去年の夏の当委員会で、資産判定の基準はあいまいで融通無碍であると指摘をいたしました。当時の相沢前金融再生委員長は、景気への影響に対する考慮もあったという趣旨の答弁をしています。

 これは金融行政の基本的な点ですから、また総理にお尋ねしますが、金融機関の経営内容、とりわけ不良債権の実態の把握が甘かったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 金融検査は、検査の基準に基づいて行われるということでございます。その場その場で恣意的、裁量的にこれを行うわけにはまいらないのは言うまでもございません。

 そこで、そういう基準に照らして、平成十一年二月、これはまさに再生委員会による資産判定時でございますが、そのときの判定は、十年二月におけるそごうの決算状況を踏まえてこれを行いました。

 その十年二月期の決算の状況はどうであったかといいますと、前期に引き続き黒字を計上している、それから、新四カ年計画も予定どおり実施されて四十九億円の返済が行われている、こういうようなことで資産判定時は要注意先というふうにしたわけでございますけれども、平成十一年の二月の、そごうの一年後の決算が非常に問題になりまして、それを踏まえた平成十一年三月期の長銀の決算におけるそごうの判定、それから平成十一年九月中間期のそごうの譲渡直前の決算期の判定では破綻懸念先というようになっておりますので、これは何回も御説明いたしましたとおり、そごうの決算状況に応じて、そごう債権についての長銀の決算というか、資産の判定が行われているということに尽きるのでございます。

池田(元)委員 経過は柳澤さんのおっしゃるとおりでしょう。しかし、ちょっと私は、再生委員会を提案した者として、本当に悲しくなりますね。石原さんもそう思われるのじゃないかと思うのですが。

 私は、その経過は経過ですよ、経過は認めますよ。要するに、九四年から債務超過であったものを、金融再生委員会が破綻のおそれのない債権と判定したというただ一点が間違いだと僕は言っているわけですよ。経過はいいですよ。

 次に、銀行の体力について、ネット自己資本、一番大事な指標ですので、この点、ちょっと論議をしたいと思います。

 不良債権は、新規発生分を十分処理ができないで、その額が根雪のようにたまってきている。この銀行の状況、柳澤さんも最も重く見ている指標である金融機関の自己資本の状況を取り上げたい。銀行主要十六行の自己資本、自己資本比率はどうなっているか、端的にお答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 ちょっと手元に正確なあれはないのですが、連結と単体でもちろん違うのですが、単体では一二・〇二ぐらいでございます。それから、連結では一一・半ばというところです。

池田(元)委員 今大臣のおっしゃるとおりでありますが、資料一を見ていただきたいと思います。

 銀行の本当の実力を調べるため、金融庁からデータをすべていただいて、私自身がまとめたものです。

 直近の二〇〇〇年九月期、主要十六行合計で、右側の欄にありますが、株主資本は二十二・九兆円、そのうち公的資金は六・二兆円、繰り延べ税金資産が五・五兆円、土地再評価差額金が一・一兆円、これらを株主資本から引いて、いわば自力の、ネットの自己資本は、下の網かけに書いてあるように十・一兆円になる。これは数字はよろしいですね。大臣、いいですね。(柳澤国務大臣「はい」と呼ぶ)これは金融庁からすべていただいたものですから、計算したのは私でございますが。金融庁はこういう計算はしないと思います。

 一方、全国の銀行百三十四行も集計してみましたが、百三十四行で、公表されている株主資本三十六・三兆円に対して、ネットの自己資本は二十・六兆円、ネットの自己資本比率は、全国の銀行で四・〇%、主要十六行で二・八%となっております。それぞれの個別の銀行を見れば、ばらつきがあるわけですね。

 しかし、押しなべて我が国の銀行は自己資本が、公的資金、繰り延べ税金資産、いわば見せかけの資本でかさ上げされているわけです。実態は、資本が大きく損なわれている過少銀行であることが明らかになったと思うんですが、柳澤さんの御見解を端的にお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 先生御案内のように、資本は、自己資本と書いてございますけれども、株主資本というような言葉も最近では使われておるように、株主がどれだけ出した資本であるかということと、それから、預金者と債権者の立場からいって、自分より先に破綻をしたときに負担を背負ってくれる、そういうものがどれだけあるか、こういう両面から、BIS等では今資本の規制というものをいたしておるわけでございます。

 私どもが、この公的資本あるいは繰り延べ税金資産、土地再評価差額金、それから生保等の劣後ローン、劣後債等をこの自己資本の勘定の中に入れているのは、BISの自己資本規制との関係で、BISの基準に基づいて入れているわけでございまして、BISが八%と言っているのも、BISの基準におけるあるべき比率として提示されておるということでございまして、そういうものとしてひとつ御理解を賜りたい。

池田(元)委員 まさにおっしゃったように、BIS基準として、そういうものとして理解をしていただきたい、理解いたします。

 それはあくまでも計算上の話なんですよ。実態の話ではありません。BIS基準で認められたといっても、それは会計上のことなんです。それに、十六行で五兆円から七兆円もの繰り延べ税金資産、税効果会計算入分などが入っている。大変過大ですね。これは、業績が悪化すると、将来、資本から減らされるものなんです。あくまで私は、実態から資本は見るべきだ、特に危機に当たってはそうだと思います。特に主要十六行では、ネットの自己資本が、かさ上げされた、厚化粧をされた部分より少ないんですよ。大変なことなんです。

 いずれにしても、銀行の資本構造は脆弱です。この銀行システムの安定のためには、まずこの現実を直視することから始めなくてはならないと思うんです。銀行システムの安定どころか、このような資本不足、脆弱な内容になっている。私は、なぜこうなったか、これから検証したいと思います。

 九九年三月、公的資金の投入をしましたね。佐々波委員会の二兆円近くはその前、ちょうど一年前の九八年の三月です。九九年三月には、地銀一行を含む大手行十五行に対して七兆四千五百九十二億円の公的資金を注入いたしました。

 金融再生委員会は、この公的資金を注入する前、スタートしたばかりのときに、再生委員会は御存じのように危機管理の司令塔として私たちが提案したものなんですが、初代の金融再生委員長に就任されました今いらっしゃる柳澤さんは、スタートに当たって運営の基本方針というものを定めた。そこでは、施策を迅速かつ集中的に行い、少なくとも大手行については本年、つまり一九九九年三月期に不良債権問題の処理を基本的に終了する、九九年三月に基本的に終了するとはっきり宣言をした。

 この点、私は、当然のことながら、ああ、やっているな、そんな感じがいたしました。これは我々がつくった金融再生計画の内容に沿ったものだったからです。ここまではよかった。しかし、この後どういうふうなことになったか。

 ちょっと話を先に進めて、一九九九年三月に資本注入したこの問題、七兆四千五百九十二億円の税金を投入した。これは、計算によると、毎月百万円使っても二万年かかるという大変な額なんです。銀行が本当に全部健全だと判断してこれだけの巨額の資金を投入したのか、お答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 池田先生ともあろうお方が少し誤解をされているんじゃないか、このように思います。それは、もし我々が投入した資本が税金で行きっ放しのものであるならば、まさか池田先生も水増しの資本金とは言われなかったろうと思います。

 なぜ先ほど先生が公的資本は水増しの資本金だと言ったかといえば、それは、優先株であるとかあるいは劣後ローンだとか劣後債というような形で我々が償還を期待しているものだと。税金ではないんです。現在段階では税金ではありません。そういうものでありまして、この場ではこういう言葉を使い、あの場ではああいう言葉を使って国民の皆さんに誤解を与えないように、もうエキスパートでありますから、そういうようにお願いをしたいと思います。

 それから、我々は、あの資本注入のときに、不良債権の処理をすると言ったときは、あのときは民主党も、十分な引き当てをもって不良債権の処理というふうな考え方に立っておったわけです。我々もそのような考え方に従ってあの処置をしたということでありまして、除却をしてあの不良債権の処理というようなことを言ったのは、あえて言うと、きのうお立ちになった菅さん一人なんです。菅プラン、一人だったんです。あとは、我々の党の元幹事長の梶山さんも、民主党の党議として決められた不良債権の処理、これについても、いずれもこれらは十分な引き当てをすれば処理をよろしいということを言ったということを申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

 最後にお答えを申し上げます。

 我々は、子細な検査の結果、十分健全な銀行だという認定をしまして、これに投入をいたしました。

池田(元)委員 やはり、健全だったと判断したことについては言いたくないと、その他のことをおっしゃっていました。誤りであります。

 この文書があるから、もう言いましょう。だんだんこのあたりに入ってくると、答弁は矛先をかわすということになります。十年九月期において債務超過ではなく、健全な自己資本の区分にあるというふうに金融再生委員会はこの文書に出しております。私は、金融行政はこの間、長銀、日債銀の資産判定、そしてまたこの資本注入が大変問題がある、大きな誤りを二つ犯したと思います。どうしてかはこれから申し上げます。

 まず、もう時間がありませんので、あといろいろありますから、資料の二を見ていただきたい。

 まずは上の部分、これは最近も関係の委員会でちょっと取り上げられましたが、「引受条件について」という九八年十二月八日付の資料の抜粋です。柳澤担当大臣は、金融再生委員会にこういう資料が提出されたという記憶はないと参議院でもおっしゃっていますが、私は、前からこの資料とともに別の資料を持っておりました。抜粋のもとは、この「引受条件について」という、こういう資料です。私が前から持っていたのは、同じ「引受条件について」という、これを版を変えて読みやすくしたもので、中身はそっくりでありますが、これは後で十分見てほしいのですが、内容、体裁からいって、当局の資料に間違いない。

 そして、中身。これはごらんのように、私が先ほど示したネットの自己資本比率ではなくて、不良債権の要償却額までを控除した正味自己資本比率というものを算出している。各行ごとに算出をしております。中段のところは算出の方法ですね。これを見るとびっくりしますね。行名は余りにもひどいので伏せてありますが、都銀と長信銀と信託銀行。これは大変な資料です。破綻した銀行を除けば、資本注入行の六行がマイナス、つまり債務超過になっている。これは柳澤さん、どうですか、一言。

柳澤国務大臣 何回聞かれましても私どもの答弁は同じでございまして、これは私がそう答弁しているだけじゃなくて、当初、これらのことが明らかにされたという根拠を持って質問されたときの、当時の金融監督庁日野長官も同じことを申しているのですが、あのときには日野長官は、私は今議事録を持っておりませんけれども、適用している計数等も自分たちの考え方と違うのだということをもって、これは当庁が関知しない資料である、こういうことをおっしゃられたことを思い出していただければと思います。

池田(元)委員 そう言うと私も言わざるを得ないのですが、正確に言うと、これは金融再生委員会の事務局の前身であります金融監督庁の分室に置かれた組織が作成したものなんです。十二月八日ですから。確かに存在はするが記憶にはないというのはよくあります。よくある逃げ言葉であります。そのことを申し上げたいと思います。

 では、もう一つの点を指摘したいと思います。

 この資料二の最下段についてごらんをいただきたい。公的資金を投入した後、投入した銀行の自己資本比率は平均一〇・六四%になりました。しかし、個別の銀行の自己資本から公的資金を引いて逆算するとどうなるか。三つの銀行の自己資本比率は、六・九から七・三%になる。これは、早期健全化法に定める八%以下の過少資本行ですね。直ちに早期是正措置が発動される不健全な銀行ではなかったのか、お尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 池田さん、大変見事なレトリックをお使いになられて、あたかもそうであるかのような印象を与えられているのは見事だと敬服をいたしますが、結局、私どもが資本注入に先立って資本注入をすべき銀行かどうかということを見たときの自己資本比率というのは、あくまでも彼らの自己査定とそれから引き当てに基づいてこれを出してきた。これは当然公認会計士が監査をしているわけでございますが、そういうものを見て我々は注入を決定したわけでございます。

 そこで、注入をするに当たって、彼らが依拠していた公認会計士の実務指針というものと離れて、私はかなりあのとき強引にやったのです。こういうめどで、あの引当金の率で引き当てをしない限り、これはせっかく資本注入するのに、先ほど来御指摘のような自己資本の非常にもろい銀行になるということで、私はもう無理やりに引っ張り上げてこういう資本注入をさせていただいたんで、無理やりに引っ張り上げた資本注入を前提として逆算をすればこういうことにもなろうということは、池田さん、大変御勤勉な方で、計算をしてくださって、我々に明確な形で教えていただいたのは我々多といたしますが、私どもの考え方の筋道は、以上申し上げたとおりであります。

池田(元)委員 そういう操作をして、不健全である銀行を健全だという銀行にしたから今日の混迷があるわけです。そうでしょう。

 もっと言いましょう。あなたは、引き当ての基準のガイドラインというものを一生懸命やられた。メディアも評価をした。私も評価したかった。しかし、この資料三の下に書いてあるように「資本増強額の審査に際して、」これを拡大解釈して、九八年七月の銀行の数字をもとに、引き当てをするのに、何と古い基準を使った。わざわざ新しい基準をつくったのにですよ。上に書いてあるでしょう、「金融再生委員会が定めるところにより、適切に資産の査定を行う」「適切に引当て等を行う」ですね。

 私たちは、金融再生法、早期健全化スキームという新しい枠組みをつくって、金融再生委員会が新設された。法の趣旨からいって、再生委員会が定める基準は当然新しいものでなければならない。にもかかわらず、再生委が定めたのは旧来の基準であった。これは金融再生法をじゅうりんしていますよ。

 そして、先ほどおっしゃりたかったのでしょう、その基準のガイドライン、確かにおやりになりました。途中いろいろありました、柳澤さんが事務当局と折衝したということもおっしゃっております。しかし、結果としては、そのせっかくつくった基準は適用が先送りされた。資本注入の銀行に対しては適用されなかった。これは実に巧妙なんですね、この金融再生委員会関係の告示とかなんとかを読むと。まさに官僚主導ですよ、小泉さん。こんなことでいいのかと私は思います。

 私は、先ほどから、七兆四千億円余りの公的資金の投入は、そしてその際の判断は、金融再生委員会は健全だと言っていたが、実際は健全ではなかった。この資料を見れば明らかですね。これは壮大なる虚構なんですよ。日常語で言えば、うそということです。七兆四千五百億円が、こういう壮大な虚構のもとに、仮説のもとに投じられたことが、今日の金融行政の混迷の原因の一つなんです、小泉総理。

 といいますのは、健全な銀行に公的資金を投入することが可能だったのは、自自公三党がつくった早期健全化法なんですよ。健全行にも資本注入が行われるという規定があるわけです。しかし、我々民主党がまとめた早期健全化法では、厳格な資産査定をして資本の少ない過少資本行にのみ資本を注入することにしていた。

 そして、経営者の責任も、この早期健全化、自自公の法律によって、健全だとみなして公的資金を注入したので、経営者の責任は不問にされた。わずか役職員の抑制など経営合理化を求めただけだったんです。私たちの法案では、代表取締役や代表権を持っていた会長、相談役などの退任を求める、そして減資などの株主の責任も追及するということになっていたわけです。

 まあ、これは確認しなくてもいいでしょう。もう石原さんに確認しなくてもおわかりだと思いますね。あの三年前に、金融危機を何とか回避したいということで夜中まで折衝をいたしました。そのとき危機管理スキーム、そういうものが我々の間でできて、それを早期健全化という名前をつけた、その記憶がよみがえってまいります。しかし、それを台なしにしちゃった。

 この間の銀行業界、経営陣の空気はどうであったか。本来は大変な緊張感を持たなければならないときだったにもかかわらず、健全行だ、資本不足の銀行に健全行だといって責任もとらされなかった。公的資金は大量にもらった。これは緊張感は欠けますよね。モラルの低下さえ指摘されております。

 銀行が提出した健全化計画の達成状況を見ますと、昨年九月期では十一行、合併行があるので十一行なんですが、そのうち六行が、つまり半数が本支店の統合などについて年次計画を達成していない。

 特に、金融再生委員会が改善の評価項目にしております相談役、顧問を廃止しているかどうかについては、資料五を見ていただきたいと思います。

 ごらんのように、現役役員を迎え入れる顧問の数は、一向に減っていない、一時はふえ、三十一人もまだおります。特に問題なのは相談役ですね。たばこを吸って、秘書がいて、車がかいてありますが、これはお茶を飲んでいてもいいんですが、ここはたばこということに、余り最近トレンディーではないんですが、こういうイラストどおり。

 高齢の相談役は実務もやらないのに多額の報酬を受けていたので、私はとっくにもうこういうものはなくなったと思っていたんですが、何と、健全化計画の履行状況について聞いてもらったところ、健全化計画で言っている相談役をどうするのかということについて、相談役制度は六銀行でまだ存続をしている。そして、二つの銀行では相談役が合わせて三人いらっしゃる。これは驚きました。これを確認したいと思います。

柳澤国務大臣 ちょっとその前に、わずかでございますのでお時間をいただきますが、まず、いわゆる資産査定と引き当ての基準でございますが、これは、国際的にも今いろいろの交渉が行われて、その結果生まれてくる会計基準というものがあるわけでございまして、行政の面でもそれと違ったことをやるということについては、それ相当の理由がある場合以外にはできないわけでございます。

 私どもは、資本注入後のでき上がりについて、こういう手厚い引き当てをして、それで必要な資本注入をしたことによって十分な自己資本比率を今後維持するということが健全な金融機関をつくるゆえんだろう、このように考えてそうしたことをしたということでございますので、その点は一言申し上げさせていただきます。

 それから、今の健全化計画の状況ですが、支店の存続、廃止が十分に行われていないんじゃないかということについては、合併等があったために、単体で何でも自分で裁量できたときと比べて、どの支店を残すかというようなことについてなかなか話がまだできなかった面があって、そのために少しおくれが出ているということでございます。

 相談役につきましては、規定はともかく三人いるということ、二行三人でございますが、これについては厳重に注意しなきゃいけない、このように思います。

 なお顧問、これは、私は本当に何かビジネスを開発するために必要だというものの顧問もあると思うんですね。ただ、それ以外の顧問が本当にないのか。私はそれについては、この時刻から厳しい目を向けていきます。

池田(元)委員 前段の話は何か反論されたようですが、資産査定、引き当て、先ほどから金融検査マニュアルも言って論議してまいりましたね、私。日銀総裁がいらっしゃるので、これは時間がないのでちょっと一言、御紹介だけしますけれども、日銀総裁は四月十二日の信託銀行の大会で、既往の債務者区分や引き当てが適切かどうか注意深く検証しと、経済財政諮問会議の議事録は非常にマイルドに書いてあるが、これはそのまま書いてある。既往の債務者区分や引き当ては注意深く検証し、要するに金融庁の検査は信頼がないということですよ。

 それで、相談役、顧問の件でございますが、この点、柳澤金融担当大臣の答弁は立派なものです。ぜひそういうふうにやっていただきたい。

 なおつけ加えますと、巨額の公的資金を受けている大手銀行では、ある大手銀行では九九年六月、会長と頭取がそろってやめた。それぞれ、銀行関係者の話などによりますと、およそ六億円と三億円の我々では信じられない退職金を出したと言われております。話題になりました。この二人は、調べていただいたところ、いまだ相談役を務めていらっしゃる。

 言うまでもなく銀行が巨額の公的資金を受けている。これ、公的資金は保証だから何とかとおっしゃいますが、とんでもない。佐々波委員会を出すまでもなく、今でも果たして銀行のこの公的資金回収ができるかどうか、真剣に我々は国の資金を心配しているのです。損失となる可能性があるわけですよ。税金で補てんせざるを得ないのです。そのことは一致すると思います。

 その公的資金を、中には一兆円も、一兆円ですよ、一兆円も受けている銀行がある。銀行は、高齢の相談役のためにこうしたむだな金を使っている。そればかりではないんですね。本人たちは、バブル以降不良債権を積み重ねた、張本人とある人は言いますけれども、大きな責任のある人なんですよ。本当にあきれました。

 テレビの画面で見ますと、FRBのグリーンスパン議長は、黒いトレンチコートを着て通勤してくる。日本の産業界では、一ついい話がありますね。リストラを進めている伊藤忠の丹羽社長は、無給で、電車で通勤している。私も電車通勤族ですが、一流商事会社の社長が無給で、しかも電車通勤、車はトヨタの大衆車、こういうことなんですね。

 私は、巨額の公的資金を受けている銀行経営者がこんなことでいいのか、ほうっておいてよいのか。やはり健全化計画の履行状況のチェックが甘かったのではないか。柳澤さんが就任されて、モニタリングを強化するということをおっしゃっているようですが、私もかねてから言っていましたので、厳しくやっていただきたいと思います。

 小泉総理大臣、預金者が、バブル後、低金利で利子所得が少なくとも十七兆円も減っている中で、銀行経営者が巨額の公的資金を受けながら経営責任をとらない、これをどう思いますか。

小泉内閣総理大臣 今お話を伺っていますと、経営健全化計画の履行が甘かったのではないかと私も思います。この経営健全化計画が、今御指摘のような、本当に経営者が責任を感じて、自覚を持って取り組んでいるのかという状況について、柳澤担当大臣も恐らく私と同じ認識だと思います。しっかりやってもらいたい、そう思います。

池田(元)委員 ここまで九八年秋以降の金融行政を見てきたのですが、これをまとめると、柳澤さんのことを言わざるを得ません。

 柳澤大臣は、初代の金融再生委員長として就任直後、先ほど言ったように、大手行については九九年三月期で不良債権の処理を基本的に終了するといわば宣言をした。しかし、長銀や日債銀の処理では、そごう問題で見られましたように、的確でない甘い資産判定をして問題を先送りにしたと言っていいと思います。

 また、先ほども言いましたように、大手を中心に十五の銀行に資本注入、公的資金を投入するに当たっては、実態として健全ではなかった、資本不足の銀行であったにもかかわらず、すべての銀行を横並びで健全だとして、経営者、株主の責任を不問に付した。結局、金融行政は緩み、忌まわしい先送り体質に戻ってしまったわけです。

 その結果、柳澤さんが当初掲げた、二〇〇一年三月、今ですね、三月期までに揺らぐことのない金融システムを再構築するという基本方針は、みずから覆してしまった。私たちがせっかく努力して金融再生法、早期健全化スキームを用意したにもかかわらず、そんなことはほとんど生かされませんでした。本当に残念です。

 一部で改革者と言われているのも承知しております。しかし、最近の大蔵大臣も一部では平成の高橋是清と言われているわけでありますから、柳澤さんは当初はしっかりとやってくれるのではないかと思いましたが、これまでるる見てきたように、あなたの責任は極めて重いと思うのです。

柳澤国務大臣 私がこの金融再生の仕事あるいは金融健全化の仕事に携わったことに伴うもろもろの結果についての責任は、もう十二分に私はありとあらゆることについて感じなければならない立場だ、これは十分自覚をいたしておるわけであります。

 ただ、一つ申し上げたいことは、あのときに一番の火急の問題は何だったかというと、金融機関の健全性の回復でありました。何とかしてジャパン・プレミアムが一%に上っているような状況を脱却しなければいけない、こういうことでやったわけでございます。そのために、みんなで十分な引き当てが大事なんだということでやったわけでございます。その結果どうなったかと申しますと、やはりジャパン・プレミアムは、先般の日銀の資料ではマイナスの〇・〇〇一でしたか、そういうように、むしろマイナスになっているというようなことが今現在段階でも一応実現しているということでございます。

 それでは、残された問題というか、未達成の問題は何なんだというと、実は、引き当てではだめだったことがあったわけでございます。それが収益性の問題でもあるし、さらに、どんどん資産が劣化する。これはデフレの経済。名目成長率では、最近でもプラスの成長を示していません。これらは財政と同じで皆名目値で、金額でございますから、運行される経済の分野でございますから、この中で、なかなか大変なんですけれども、しかし、私は今、日本の金融機関が行っている知的な情報産業としての金融機関の業務が期待どおりであるかといえば、全くそれはないということで、今後この面を督励してまいりたい、このように考えているわけでございます。

池田(元)委員 大事なところを聞いていただけなかったようであります。よく議事録も後から見ていただきたい。

 この二年半の金融行政について具体的に問題を提起してきた。長銀、日債銀の資産判定の誤り、そして七兆円以上も公的資金を投入する際には、不健全な銀行であったにもかかわらず全部健全だと言ってお金を入れ、そして経営者の責任などを不問に付した。大変重大な責任があると私は言っているわけです。

 一言だけ答えてください。端的に一言答えてください。

柳澤国務大臣 まず、先ほどのどこやらの資料に基づいて、私どもの資本注入の対象行になったところが不健全行であったというようなことを前提にした御議論というのは、私どもやはり見解が違うと言わざるを得ません。

 それからもう一つは、経営者の責任を問えなかった、問わなかった。この点についても、実は、私どもが、行政がよって立つところのその健全化法では、かくかくしかじかの条件があるときにこの経営者の責任を問え、こう書いてありまして、それは過少資本行でございます。しかも、著しい過少資本行であったと思います。

 そういうようなことで、我々は、皆様方、先生方がおつくりいただいた法律にのっとった運用をしているわけでございますので、私は、そこのところを言われると、ちょっと違うんではないか、このように言わざるを得ません。

 しかし、再生法が期限切れになったこの時期にこのような状況にあるということについては、私も十分、胸にいろいろ考えているところがあるわけでございます。

池田(元)委員 行政をしっかりと把握してやっていらっしゃれば、一番最後のところが先に来なければいけない、あなたは高らかに宣言したわけですから。具体的に私は裏づけているわけですよ。よく考えていただきたいと思います。

 今も、結局、早期健全化のせいといいますか、理由にもされました。確かにそれはそうでしょう、その早期健全化法が極めて甘いものだったわけですよ。我々がつくって、自民党の塩崎恭久君などが賛同した、幻の最初の早期健全化法はそうじゃなかったわけです。

 次に、この間の金融行政の責任、もう少し幅広く考えてみたいと思います。九九年末に、政府・自民党など与党三党は、ペイオフの解禁を延期した。銀行などの預金の払い戻しを一定額までにするペイオフの解禁を、当初予定の二〇〇一年四月から延期をしました。

 竹中経済財政大臣、すばらしくわかりやすい議論を展開していらっしゃる。ペイオフ延期は選挙を意識した与党政治家の腕力によって決定された、改革の流れに決定的に水を差す、さらに言えば、住専に公的資金を投入した九五年の政策決定と並ぶ失政として、後々厳しい歴史的評価を受けるだろうと述べております。極めて厳しい発言、最大級の批判をしている。

 竹中さんは、私たちが例えば超党派などでやっている勉強会にも来ていただいたこともございますが、国会は講義ではございませんので、きのうは随分自民党の政調会長にレクチャーをされましたが、講義ではなく、その考えが変わらないかどうか、端的にお答えをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 学者にはたくさんの役割があるというふうに思っています。その中で、問題を、プロボークという言葉がありますけれども、こういう問題があるのではないだろうかということを前広に展開することが、私は学者の大変重要な役割であると思っておりまして、その信念に基づいてそういう発言を行いました。

 その時点での発言は、私はもちろん間違っていないと思います。そういうことを言った人を大臣に迎えるんだから、なかなかすごい内閣だなというふうに思っています。

池田(元)委員 いや、すごいと言っても、さっきはもう何かすべて竹中さんに振るような感じがしていますから、これは将来というか、近々大変じゃないか。本来の竹中さんの考え、ここは我々の考えと同じですよ。果たしてこういうセンスで、この自民党政権の中であなたの考えが生かされるかどうか、それは我々、注目していきたいと思います。

 あなたがわかっているとおり、このペイオフの延期というのは失政なんですよ。それでよく自民党中心の内閣に入られたな、大変な決心があったんじゃないかと私、思います。

 ペイオフの延期だけではなく、金融再生委員会ができてから、小泉さん、自民党出身の金融再生委員長が、失言とかそれから政治資金絡みの不祥事で二人も辞任をする。この二年の間に六人も交代したんですよ。(発言する者あり)これは自民党に言っているわけですよ。過去といいますか、問題点を検証しなければ実効ある対策が生まれないから、そうですね、竹中さん、今言っているわけです。

 私は、金融行政はすっかり緩んでしまった、我々がやっていたあのころからして。のど元過ぎれば熱さを忘れる、これは、金融再生という重要な課題に対して、政府と自民党の取り組む姿勢が極めて安易、真剣さを欠いていたと言うしかありません。

 この間の政府・自民党の金融行政をどう見るのか。また大蔵関係に通じていらっしゃる小泉さん、先ほども申し上げましたように、最近では森内閣の後ろ盾にもなっていた小泉総理の考え、責任の一端があるのではないか、お伺いをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 竹中大臣の学者としての発言も引用しながら、池田議員はいろいろ厳しい御指摘をいただきましたけれども、私は、そういう竹中教授の今までの発言、提言なりがこれから二十一世紀の日本に必要だと思って大臣に就任をしていただいたわけであります。自民党も、そういう気持ちで新しい総裁として私を選んでいただいたんだと思っています。

 これからは、今までの失敗もあるでしょう、反省すべき点も多々あると思います、これをどう生かしていくかは私の内閣の大事な仕事でありまして、二十世紀の自民党さようなら、二十一世紀、これが新しい自民党だという気持ちで取り組んでいきたいと思います。

池田(元)委員 時にはそういうキャッチフレーズもいいですが、もうちょっと具体的にお伺いをしたかった。

 それで、小泉総理、変えるんだと今おっしゃった。では、ひとつこれはどうですか。

 自民党は、公的資金を受けている銀行からの献金を九八年十月まで受けていた。私は、この政権与党、政治家としてもこの感覚がわからない。わかりますね。しかし、だれもはっきり言わないんですよ。小渕さんもそれほどはっきり言わなかった。

 それで、私は改めて小泉総理にお尋ねをしたい。しっかりとこの献金問題を考えていただきたい。

 これは、今までの自民党は、公的資金を受けた銀行に平気で献金要請をしていた。そうですね。どうしますか。あなたは総裁になったわけですから、当然これは、献金の要請はしない、そして受領はやめるということになると思うんですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 公的資金投入行からの献金は受けません。

池田(元)委員 銀行業界からはどうですか。公的資金を受けている以外の銀行からはどうですか。

小泉内閣総理大臣 正当な献金は政党活動について欠かせないものでありますから、それは法律にのっとって堂々と受けたいと思います。

池田(元)委員 単なる小さな民間企業と国の決済システムを持っている銀行というのは違うんです、銀行法で規定されているとおりです。私は、それは小泉さんらしくない、極めて安易だと思います。

 あなたが改革を言うんなら、私が質問をするのではなくて、こういった政治倫理の話は幾つかの項目を当然打ち出すべきだと思いますよ。三木総理大臣はそうしました。昔の話ですが、福田さんももうちょっと具体的にいろいろ話をした。献金を受け取らないというのはいいのですが、やはり率先してこういうことをやるべきであると私は申し上げたいと思います。

 さて、不良債権の最終処理、私たちは前から言っておりました。この二、三年で不良債権の処理はどの程度進むのか。また、あわせてお尋ねしたいのですが、それによって日本経済の足かせになっている不良債権の処理は完了するのかどうか、端的にお尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 不良債権、これは先ほど冒頭先生がおっしゃられたとおり、債務者区分で申しますと、実質破綻先と申しますか破綻先、それから破綻懸念先、さらに要管理先、要注意先、こういうようにあるわけでございますけれども、これらについて、私どもは、とにかく極力これら全体の残高を減じていきたい、このように考えております。

 そしてその方法として、要管理先、要注意先についてはむしろ予防的に、むしろそれが正常先に行くように、そういう手当てを銀行側から貸出先に対してお願いをしたい。それから、今度は破綻懸念先にまでなった、そういう先の債権については、これを法的整理、それから私的整理、さらには売却、こういうような形のいずれかをとってこれをバランスシートから外していく最終処理をしたい、このように考えております。

 そういうことを一定の期限を区切って、既存のものについては、特に破綻懸念先でございますが、二年間、そして新規に残念ながら破綻懸念先に入ってきたものについては事業年度三年間、その後の三年間を使ってこれを処理する、こういうように一つ一つの不良債権の処理のスピードアップを図ることによって全体として残高が減じてくる、こういうようなことを考えたいわけでございます。

 そうして、できるだけ早くに、アメリカ並みとは一挙にいかないかもしれませんけれども、不良債権の全貸し出しに対する比率の圧縮に努めていって、早く正常だ、正常というのは別に全くなくなるわけでは先ほど総理の御答弁にありましたようにないわけでございますけれども、経済の運行のいわば足かせにならないように、むしろ経済の運行を助けるような、そういう金融機関の状況を実現していきたい、このように考えているということでございます。

池田(元)委員 所信表明では、単にといいますか、まさに条件をつけないで、「二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します。」それを本当にやればいいと思うのです。

 だけれども、今おっしゃったように、要するに破綻懸念先以下を処理する、それを二、三年でやると私は聞いたのですが、そうしますと、それによって日本経済の足かせになっている不良債権の処理が完了するかということについては、答弁がなかった。完了できないんでしょう。そうですね。

 先ほど申し上げましたように、日本の銀行は過少資本の状況です。資本構造が脆弱です。また、時価会計がことし九月期から導入されて、銀行の財務状況は、為替や国債の市場の動向によっては再び悪くなる、悪化する、不安定になるおそれがある。この認識はどうなのか。先ほどの、二、三年以内に完了するのか、また、今の認識について端的にお答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 いろいろなことを先生お触れになられたわけでございますけれども、私どもは、今申したような、また、この間与党と政府の間で決定された緊急経済対策を実行するということによって、やはり構造改革が進む、そういう期待が経済界に波及してくるということを期待できるというように思います。経済の中には非常に期待という要素がありますから、こういうことを現実に進めることによって、算術的な、ミクロ的な効果以外のことを私どもは本当に期待できるだろう、このように考えておるわけでございまして、この点は、そういう考え方に立っているということをお話し申し上げておきたいと思います。

 それから、時価会計その他については、これはなかなか実は難しい面があります。率直に言って、有価証券という観念でつかまえますと、必ずしも、株価が下がっているものが有価証券の、今回は含み損ですけれども、含み損にならない、ほかの債券の値上がりがあるものですから、それと相殺してむしろ余ってしまうというような状況もありまして、なかなか難しいところでございますけれども、これらについても、特に価格変動リスクについては、先ほど来申し上げたようなスキームを使ってこれの圧縮を図っていくということでございます。

 それから、何よりも我々が不良債権処理、これは不良債権とは何ぞやという最初の問題にも戻るわけですけれども、これは不稼働の資産なんですね。ノンパフォーマンスの資産でございまして、これを圧縮することによって収益力を回復したい。こういうことによって、自分の本当の収益から出た資本、先ほど来先生がおっしゃるような政府の金であるとか税効果だとかそういうものじゃなくて、自分の利益を積み重ねた結果持つような資本を厚くしていきたい、こういう考え方を持っているわけであります。

池田(元)委員 いろいろ長く答弁されておりますが、二、三年で終了するのかどうか、時間がないのに二度お尋ねしたのに、答えていただけない。残念です。本当に協力していただきたい。

 フランクリン・ルーズベルトは、大恐慌の後、恐怖それ自体を恐れるというような言葉を言いましたが、危機に当たって、状況に対する認識が極めて重要ですね。銀行の自己資本の状況、その脆弱性を認識することが重要だと思います。

 そこで、そういう状況の中、各方面から、銀行に再び公的資金を投入するべきだという主張が出されております。財務大臣、どう考えていらっしゃいますか。短く答えていただきたいと思います。

塩川国務大臣 私はまだその判断につきまして十分に認識しておりませんので、御答弁は勘弁していただきたいと思います。

池田(元)委員 インタビューに答えて、銀行は慎重に考え過ぎている、不良債権処理の促進に必要なら再注入すべきだ、これは財務大臣、インタビューで答えていらっしゃるんでしょう。それを確認したいのですが。

塩川国務大臣 私は、そのとき、必要があるならばということを強調して申し上げたと思っております。

池田(元)委員 私は別に認識が誤っているとは言っていませんよ。

 では、竹中経済財政大臣はどう考えるのか。同じ質問をさせていただきます。端的に答えていただきたい。

竹中国務大臣 この判断は、金融の問題というのはそもそも、私は、厳密なルールに基づいて情報開示を進めていくと同時に、最後の最後は極めて大きな裁量権が残るところだと思います。これはアメリカのLTCMの例なんかを見てもそうだし、イギリスの例を見てもそうだ。結局のところ、そのオーソリティーの中核にいる柳澤大臣が総合的な判断をすべきところで、それを受けて総理が最終決断をする問題だというふうに思いますので、これは担当大臣でない私がどうこう言うべき問題ではないと思います。

池田(元)委員 しかし、閣僚になったからといって人間が全部変わるわけじゃございません。しかも、就任後の会見で、竹中さんは、場合によっては再注入もあり得る。論文でも、資本不足について、他の研究所の調査結果などを引用されている。私は、小泉内閣はどうなっているのかと思いますよ。一番大事な点ですよ。柳澤さんはもう何度も言っていますよね。要するに、資本の注入は必要ない、適切な引き当ても積んでいると言っています。資本不足を認めない立場ですからね。再注入は不要と言っている。

 総理もこの柳澤さんと同じ考えなんですね。(柳澤国務大臣「ちょっと先に……」と呼ぶ)いやいや、時間がないんだから。総理に聞いているんです。(柳澤国務大臣「ちょっと一言だけ」と呼ぶ)委員長、要らない。

野呂田委員長 金融担当大臣柳澤伯夫君。

柳澤国務大臣 恐縮ですが、今先生おっしゃって、先ほど公的資本は非常にもろい資本であるというお話をさんざんした上で、今ここへ来てその公的資本をもっと入れたらどうかというのは、私は、どうも池田先生らしくないな、こう一言申し上げます。

池田(元)委員 今の発言は大変遺憾でありますので、後でちょっと議事録を精査して、また言うべきことは言わなければならないと思います。

 今出ましたように、資本注入についてはいろいろ閣僚の発言はありますが、ちょっと時間がむだになりましたけれども、小泉総理大臣から端的に答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これはどういう状況が起こるかにもよると思いますが、柳澤金融担当大臣初め関係大臣からその時期が来れば話を伺い、最終的には総合的に判断して決めたいと思います。

池田(元)委員 スタート時には、財務大臣と経済財政担当大臣、それに総理大臣、金融担当大臣が大事なところで食い違っていることは事実でしょう。自分の発言を否定するんですか。特に、小泉総理ではなくて、竹中さんであれ塩川さんであれ、今はという話でしょう。言葉を変えたりしないでくださいよ。言ったことは言ったこと、今は今ということを明確に言ってください。

塩川国務大臣 先ほども申しましたように、必要があるとするならばということを言っておりまして、現在で必要があるとは認識していないということでございまして、必要があればということでございますから、誤解ないように。

池田(元)委員 必要ならばという条件つきでもそういうふうになっています。

 小泉総理は担当の柳澤さんの報告を尊重してというふうに理解していいと思うんですが、柳澤さんにはもう申し上げたくなかったんですが、もし資本再注入ということになると、過去の資本注入は効果がなかった、検査、引き当てが不十分だったということで責任を問われる立場ではないかと言う人がおります。そこは考えなければならない。

 いずれにしても、日本の銀行の資本構造の脆弱さ、過少資本、資本不足という言葉もございますが、明確ではないかと思います。その意味で、どれだけ認識されているかどうかは別として、私は塩川さんや竹中さんの認識は正しいと思います。

 ですから、このような状況、今は株価が、一二七七、TOPIXの月末の値からちょっと上がってきた。しかし、状況は厳しいのではないか。

 小泉総理に、大きく見て今のこの金融再生をどうするのか、この資本の少ない状況をどう打開するのか、お尋ねしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 経済再生で現下の重要課題は不良債権の処理だと思っているのです。これをしないと、本格的な経済構造、財政構造改革にもつながっていかない、新しい産業の発展にもつながっていかないということで、現下の重要課題として不良債権処理を考えているわけであります。

 しかし、経済は生き物であります。原則は原則として、大胆かつ柔軟にそれぞれの状況に対応していかなきゃならないということであります。

池田(元)委員 大きな認識としては私はそうだと思います。きょうは随分時間をかけて金融行政をいわば総ざらいといいますか、してきましたが、やはり何といっても私は、一番大事なのは、何よりも現実を直視することから始めなければならないということを申し上げたいと思います。

 最後、三分間ぐらいになりましたが、一つ提案がございます。金融といえば金融ですが、都市部の住民、都市部というよりも、とにかく住宅ローンを払っている方々の問題をやはり考えざるを得ません。

 この住宅ローンを返済している世帯、一千五百万世帯あるのです。全国全世帯の三五%で一千五百万ですが、その住宅ローンの返済をしている世帯と返済のない世帯を比べると、消費の支出は、特に最近この返済世帯の消費が落ちてきている、何と一九八五年以下になってしまった、こういう状況です。

 そして、こうした家庭では、バランスシートが、銀行と同じですね、この六年間ぐらいずっと債務超過になっている。それで、なかなかこういった方々は動きがとれない。要するに、こうした世帯は債務超過ですから、一部繰り上げ返済は無理なんですね。裸になるわけにはいかない。担保である住宅価格が大幅に下落したから、差額の含み損を抱えて低金利への借りかえもできない。売れば多額のロスが出る。少数の人間じゃないのですね、大勢いらっしゃるわけです。しかも、これは現役世代ですよ。消費支出の減退は明らかです。

 これは経済活性化のためにも対策を講じる必要がある。私は、ローンを抱えている方々にやはり対策を講じる、それは銀行ローンであれ、それから住宅金融公庫であれ。まずは、一九八六年から始めた住宅取得促進税制、この税額控除期間の切れる人に対して、利子支払いを所得控除する。まず、そこから始める。民間の銀行ローンは、それが住宅資金であるかどうか確認する方法をこれから研究しなければならない。まずはそのようにすべきではないかと思うのですが、これは、何でもいいことはやるという小泉さんですから、お答えをいただきたい。

塩川国務大臣 今、やはり住宅ローンの支払いというのが非常に消費に圧迫要件となってきておることは承知しております。

 したがいまして、いろいろな面で、税制上あるいは住宅金融公庫の金利の操作等によりまして措置をいたしております。その一つといたしまして、御承知のように、譲渡したりいたしましたときの特別控除をしたりいたしまして、買いかえをいたしましたときの制度を設けたりなんかして軽減措置をしておりますし、また、金利につきましても、過去において高い金利の方の負担を軽減するために五%以内におさめるように努力しておる。そういう努力を努めて、できるだけ緩和したいと思ってはおりますが、しかしながら、住宅ローンを使っていない一般の方々のいわば消費税に対するところの負担というものと権衡をとらなければならぬ、そういうことも一方においては考えなければならぬと思いますので、その権衡は非常に難しいですけれども、努力していきたいと思っております。

池田(元)委員 ぜひ大きな努力をしていただきたいと思います。最近の傾向はもう明らかですからね。住宅ローンを返済されている方の世帯の支出というのは八五年以前に戻っちゃった。六年前から債務超過、バランスシートがマイナスになっています。その現実を直視して、ぜひ努力をしていただきたいと思います。

 これで終わります。

野呂田委員長 この際、海江田万里君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。海江田万里君。

海江田委員 民主党の海江田万里でございます。

 昼までの時間は限られておりますので、できるだけ、各大臣、総理、短い時間での御答弁をお願いしたいと思います。

 まず、小泉総理は大変な支持率で、私どももこの九〇%という数字を目の当たりにしますと、私は細川内閣ができましたときに国会にやってまいりましたが、あのときも大変な国民の細川内閣に対する支持というものを肌で感じた一人でございますが、あのときも七〇%ですから、それをさらに二〇%も上回る高支持率ということでございます。ただ、私どもはやはり、野党の立場として、是は是でございますが、非のあるところをやはりきちっと打ち鳴らしていかなければいけない、警鐘を乱打していかなければいけないと思っているわけでございます。

 小泉総理は、まだ一カ月になっていないんだから、これからだから、これからだからということをよくおっしゃいますけれども、ただ、これまでに代表質問、その前にもちろん所信表明、代表質問、それから昨日来の予算委員会の審議で、私は幾つか、本当に小泉さんこれでいいのかと思う点がありましたので、その点についてお尋ねをいたします。

 一つは、きのうの予算委員会で、本委員会で、年金の問題に対する質問が公明党の委員からございました。これは恐らく、その前々の日、先週末に社会保険庁があるデータ、調査を発表いたしました。その調査は新聞各紙にも載りましたけれども、国民年金の未納者が二百六十五万人いる、三年間で九十二万人ふえた、これは年金の空洞化というような言葉を使っておるんですが。それに対しまして小泉総理は、きのうの委員会では、公的年金というのはとても有利な制度で、特に民間の個人年金なんかと比べると極めて有利な制度で、そして税金も三分の一出ているんだからということが有利な制度だという根拠になっておるわけでございまして、このいい点をアピールしていけばまた人々が国民年金に加入をしてくれるようになる、そのように受け取れる発言があったわけですけれども、そのような認識で果たしていいんでしょうかどうなんでしょうか、改めましてお尋ねをいたします。

小泉内閣総理大臣 未納者が多いということは非常によくないことだ、これをどうやって多くの方に納めてもらうかということを考えなきゃならないのは事実であります。

 と同時に、未納者の中で民間保険に入っている方がいたり、あるいは個人年金に入っている方がいたりするから、これは必ずしも低所得者だから公的年金に入っていないんじゃないというのが調査にあらわれている。中には、一部の報道で、もう公的年金はつぶれるよとか、民間に比べれば不利なんだよととられかねないような報道も一部に出ている。

 だから、そういうことに対して、それはない、いかなる民間保険に比べても、長い目で見れば、本来、公的年金制度は自分に得だ損だといって考えるべきものじゃないんだけれども、そうはいっても中には損得で考える人もいるから、そういう点をあえて、本来言わない方がいいということはわかっていますけれども、自分の負担で高齢者が給付を受けるんだ、そういうことで損と考えないでくれ、支え合う制度なんだということを言いたいんだけれども、では、損得を考えてみれば、税金も投入されている、そしていろいろ税制面の優遇もある、物価スライドもあるという点を考えれば、民間保険にない有利な点がたくさんありますということで、有利不利を考えてもこの公的年金制度は有利なんだから、そういう点もよく理解していただいて、できるだけ未納者も納めていただくようにしたいという趣旨を言ったわけであります。

海江田委員 まず一つ、いろいろなお考えを盛り込まれましたので、整理をしていかなければいけないのです。

 未納者がこれだけふえてきている。このデータを読みますと、これは平成十年度まで、一九九九年三月末、この二年間にきちっとまじめに保険料を払った人は九百四十九万三千人で、全体の五七・五%しかない、六割に来ていない。こういうデータもあるわけで、未納者がこれだけふえているということは、一つの考え方によると、未納者は、自分で払わないかわりに将来自分も年金がもらえなくなるからいいだろうという考え方も一つあります。

 だけれども、未納者がそれだけふえているということは、さっきもお話がありましたけれども、年金の制度は世代間で支え合いますから、最初は積立方式でしたけれども、それが修正積立方式になって、今はもう賦課方式に限りなく近い方式になっていますね。

 ですから、今の、例えば国民年金それから厚生年金も含めた基礎年金というのがある。この基礎年金の一年間に支払いの額が幾らですかということをまず決めますね。それを、国民年金の第一号被保険者、つまり今ちゃんと保険料を払ってくれている人たち、この中からは未加入の人であるとか保険料を払っていない人は除外をして、だからぐっと少なくなるわけですよ、それから第二号被保険者、厚生年金だとか共済年金だとか、あるいは第三号被保険者、これはサラリーマンの奥さんたち、こういう人たちが集まって、第一号、第二号、第三号、それでもってこの一年間に必要な基礎年金の額をこの三者で分けるわけですよ。

 そうすると、国民年金のところの加入者がどんどん減っていくから、サラリーマンの人たちがまじめに払っているわけですから、本来だったらそこで、つまり今の世代に対する基礎年金として払う金額が、少なくなるはずの分がふえちゃうんですよ。この理屈はおわかりですね。

 ですから、その意味でいうと、これは単に損だ得だとかいう前に、私はやはり、現在の時点でこれだけ未納者がふえている、厚生大臣は、それは年金手帳を送ったんだから未加入者が減って未納者がふえたんだというような言い方もきのうありましたけれども、それだけの問題じゃなくて、むしろこれは大変深刻な問題だというような認識をまず持たなきゃいけないんですね。これはいかがですか。

小泉内閣総理大臣 よくお聞きいただければわかると思うのですが、最初に言ったわけです。この状況はいいことじゃない、深刻に受けとめなきゃならない、ただし、有利不利というのは本当は言いたくないんだけれどもといって言ったわけです。

 この年金制度というのは、有利不利という問題じゃない。世代間の支え合いなんだからということで、できるだけ、有利だから損だからという宣伝はしたくない。しかし、そういう面もある、誤解がある、公的年金は損で、もたなくて、民間の方が有利だという点があるから、そういう誤解を解いていく努力もしなきゃならないんだ、そういう点を私は言ったわけでございます。

海江田委員 その点でいうと、私は、小泉総理の言い方はむしろ別な誤解を呼んだんじゃないか。

 税金も入りますよ、税金は民間はありませんよという話、確かに税金が三分の一入る。だけれども、この税金の三分の一というのは、さっきお話ししましたけれども、その基礎年金を支払う段階でもって、それぞれの第一号被保険者、第二号被保険者、第三号被保険者について三分の一ずつ入っていくわけですよ。そうですよね。最初のところで掛金を払っている。一万三千三百円払っている。この一万三千三百円に対して三分の一入ってくる話では全然ないわけですよ、これは。

 しかも、先ほど来お話をしているように、これは今の若い世代が今のお年寄りの世代を負担しているわけですから。そうするとここでは、民間の個人年金だって基本的に積み立て型ですよ。だから、これは制度が違うんです。制度が違うから、そこでもって有利不利ということを言うと大変大きな誤解を与えるし、では果たして本当に有利になるのかというと、必ずしもそうとは言えない。

 特に民間の場合は、自分の払っている保険料のほかに企業の払っている部分もありますから、それと合計をして、将来もらえるであろう年金の額と合計をした計算額を、これは社会保険庁、厚生省も、「二十一世紀の年金を「構築」する」というところでちゃんと出していますけれども、一九九九年の三月の時点で、三十歳以下の人は、自分と会社の合計をした保険料と将来もらえるであろう年金額とで比べると少なくなる、逆転してしまうのですよ。そのことが明らかなんですよ。

 だから私は、むしろ今総理がやらなければいけないことというのは、この年金の制度について一日も早くしっかりとした考え方を出すことで、言いたくないんだけれども有利だなんというようなことは言うべきことではない、むしろ違うというふうに私は思うのですが、いかがですか。

坂口国務大臣 大枠のことだけ少し言わせていただきますと、現在、六十五歳以上の方が一七%を占めております。そして、二〇二五年を過ぎますと、七十五歳以上の人が一七%になります。

 したがいまして、これからの高齢化社会においてやはりやらなければならないことは、中高年者と女性に働いてもらいやすい社会をつくっていかなければならない、いわゆる働き手をもう少しふやしていかなきゃならない、高齢者はふえるけれども働き手は減らないという社会をひとつつくっていかなきゃならないということが前提条件としてあるというふうに思います。そして、その中で、年金制度そのものをどうしていくかということにあると思います。

 年金制度そのものにつきましては、今お話がありましたように、基礎年金のところを、まずここが充実をするということが大事。これは、もう既に国庫負担三分の一から二分の一へというのはお決めをいただいておりますように、どういう形でいつからこれを入れるかということでございますが、二〇〇四年までにということになっておりますから、その財源のことも含めまして、早くここをやらなければならない。

 そして、出していただく保険料の方はできるだけ抑えて、もらっていただくのは今よりも減らさないという体制をつくり上げていくというのが大事ではないかというふうに思っております。

 その二点、もう時間があれでございますから、お昼からまた時間がありましたらお答えさせていただきますが、二点だけ、まずお答えさせていただきます。

海江田委員 あともう一つ、これはぜひ総理にお願いをしたいわけでございますが、年金の会計。

 これは保険料を払うと、それが年金の特別会計に入る。まさに、最初は収入ですから保険料収入という形でカウントされますけれども、それで直ちに今度は保険給付費という形で、さっきお話をしましたけれども、給付の方に回るということですが、それだけじゃありませんで、実は、例えば特別会計の中に福祉施設費等業務勘定なんというのがありますね。これは例の、今度財投の改革で廃止になることが決まりましたあの年金福祉事業団、あそこはグリーンピアなんというのを全国十三カ所つくったりして。個人の人は、年金の保険料を払っている人は、まさか自分のお金がそんな形で、そういうグリーンピアの施設の建設費だとか、あるいは厚生省のお役人の天下りの財団の給料になっているとか知らないんですよ。

 だから、年金福祉事業団、今度閉鎖するんだったら閉鎖するんでいいんですけれども、もうこれは決まったことだけれども、これまでどれくらい年金の会計からお金を引っ張ってきて、そしてそれを使い込んで、そしてそれが結果的に回収ができなかったか、そういう経理を当然明らかにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 海江田議員の指摘は、私が橋本内閣で厚生大臣になった最初にやった仕事ですよ。

 厚生年金福祉事業団、何なんだと、これは。保養地とか、年金還元融資とか、本来こういうサービスは必要ないのではないか。年金を掛けている人から見れば、一番望むサービスは何かというと、保険料負担を低くしてくれ、できる給付は多くしてくれ、これさえやってくれればあとは文句を言わないはずだ、ホテルなんかへ行って、保養地なんかへ行って温泉につかっている人はごく一部だ、圧倒的多数の人はそれを使っていないんだ、だから、こういうむだなのはやめろといって廃止したわけです。全く御指摘のとおりです。

 それで、これからも行政改革はそういう視点が大事なんですよ。会計も明らかにする。すべての特殊法人にそういう傾向がなきにしもあらず。一部の人だけの利益を考えないで、もっと最大多数の最大利益を考えるのが政治じゃないかという視点を貫いて、石原大臣もその方向でこれから、特殊法人と会計についても情報を明らかにして、今の行政機構にこんなむだがあるということをもっと明らかにして改革に進みたいということでありますので、そういう視点は私は共通していると思います。

海江田委員 ぜひそれは数字を出して、数字を入れて、これまでの福祉事業団のやったのがこれだけで、それこそまさにお話をしたように、本当に国民が掛けた掛金をこれだけ、私はさっき流用という言葉を使いましたけれども、流れていて、そしてそれがどういう形で、今あの施設も売らなければいけないが、一体幾らで売れたか、その後始末をきっちりやるということは、これはうなずいているからそうだろうと思います。

 あともう一つだけ提案をさせていただきますが、我が国の国民年金というのは、日本は長寿ですから、年金をもらうための加入期間が長過ぎるのですよ。国民年金は二十五年ですよ、厚生年金は二十年ですけれどもね。基礎年金は二十五年ですよ。二十五年払い続けた実績がないと将来の年金権が発生しない。ドイツなどはたしか五年ですし、アメリカで十年、イギリスで男性が十一年、女性が十年となっている。特に今、三十代のフリーターなんという人が多いわけですよ。そうすると、今からいってももうこれは年金に結びつかないということで、それならもう年金に入るのをやめようかということを考える人たちもたくさんいるわけですよ。この二十五年なんというのは長過ぎるので、これをもっと短くすべきだと私は思うのですが、いかがですか。

坂口国務大臣 確かに、日本は二十五年、アメリカは十年、ドイツは五年というのは、それはそのとおりでございます。そのかわりに、もらう期間も五年であったり十年であったりするわけで、それはそこも考えなければいけないわけでございます。だから、そこをどうするかということもございます。

 そして、日本の場合には二十五年になっておりますが、これはやはり二十五年ぐらいでないと今のだけの年金が実現をできないわけでございますから、ここを余り短くしてしまうと今よりも全体としては年金の額が少なくなってくるということも考慮しなければならない。そこの合意が得られて、そして短くするのだったら、それは一つの方法ではあるというふうに思います。

海江田委員 私が言っておりますのは、雇用も流動化をしておりますので、何も満額の年金をもらわなくたっていいわけですよ。もちろん、若年でもって減額の支給開始というのはあるけれども、それも受給権が発生するのは二十五年ということになっていますから。今までは空期間とか、いろいろなものがあったからそれでもよかったんですよ。だけれども、今はむしろ空期間とかなんとかよりも、主婦の人たちがそういうものを利用するよりも、いろいろな形の雇用の形態もあるのだから、少なくとも、公的年金の制度に少しでも多くの人に入ってもらおうという考え方からいけば、当然これは検討の一つの課題として、実はこれまでの検討課題の中に入っていないんですよ。どうですか。総理がこれはお答えください。検討の一つの課題として考えるということでいいのじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 今厚生労働大臣が答弁されたとおり、いろいろ外国の制度もあるし全体の年金の給付の問題もある、よく国民的議論を参考にしながら、検討としてはしたいという答弁をされたのじゃないですか、厚生労働大臣は。私はそう理解しております。

海江田委員 それでは、正午になりましたので、この後は午後一時から続けさせていただきます。

野呂田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。海江田万里君。

海江田委員 民主党の海江田でございます。午前中に引き続き、質問をさせていただきます。

 まず、午後の冒頭は田中眞紀子外務大臣にお尋ねをしますが、大分おやせになったんじゃないですか。

 きのうの当委員会で、八日のアーミテージ国務副長官が日本にお見えになったときに田中大臣は面会ができなかった、それは当初からしっかりとした約束があったわけではないということでございますが、恐らく事務方は約束をしていたというふうな理解をしているんじゃないだろうかというふうに思います。私は、やはり事務方との意思の疎通というものができていないんじゃないだろうかと。

 もちろんそれは、これは外務省だけに限りませんけれども、官僚の情報の秘匿でありますとか、なかなか政治家に情報を上げてこないとか、そういうこともあるだろうと思いますが、田中外務大臣も官僚に対して、外務次官が大臣室に入れないなんというのはやはりおかしなことであります、やっとそれが解けたということでありますが。

 もう壊れる寸前、あるいは壊れて、図書館に行って休んでいたんだということでございますが、私はその話を聞きまして、神話で、天の岩戸にアマテラスオオミカミが隠れて、そしてタジカラオノミコトはだれですかね、中谷防衛庁長官ですかね、それで出てきたような気もするのですが。私は、まず内向きのところに、官僚との対応に力を注ぐのでなしに、本当にやはり日本の外交の責任者として、本来の仕事の場で頑張っていただきたいと思うわけです。

 それからあともう一つ、アーミテージさんとの約束が、まあ約束があったかなかったかはきのう説明がありましたけれども、キャンセルになった。あれは確約じゃなかったんだという話がありましたけれども、記者会見でもって、自分の私用が前からあってそっちを優先させたんだというようなことを言っていまして、きのうお話を聞いたら、私用があったんじゃなくて、もう本当に心身ともに疲れたから国会図書館に駆け込んだんだということであれば、これは記者に対して会見で事実と違うことを言っていたわけで、その辺も含めて、やはり今回のことに対する反省の弁を私は聞きたいと思います。

田中国務大臣 冒頭の、やせたことにつきましては、お気づきいただきまして、ありがとうございます。苦労が多くて、もうお嫁に行けなくなっちゃうんじゃないかと思ったら、久間先生は、やせたから今度行けるんじゃないかとおっしゃっておりました。

 それは別でございまして、私は、おっしゃるとおりだというふうに思います。ただ、記者会見も、歩きながらぶら下がりもありますし、とにかくきちっとした形で今度記者懇を、もっと霞クラブと頻繁にお茶でも飲みながら話をしたいからそういうことをセットしてほしいということを私の方から申し入れてありますけれども、やはり立ち話とか大勢対一人で私のように早口で話をしますと、そごも生じる。

 しかし、私用であるということは事実でございまして、それはもう私、すべてを集約して一言で言うには、言いようがなかったわけです。

 原因は、繰り返しになりますけれども、選挙後の極度の過労ということと、それから外務省が、機密費等があって、上層部の中で大変な綱引きというか、独特な雰囲気がありました。それが二つ目。そして三つ目は、いわゆる外務省イシューのレクチャーがいっぱいありましたけれども、一度聞いて全部頭に入るほど頭もよくございませんので、それを整理しないでどんどんどんどん集積していってしまうとこういうときに間違いを生じると思いましたので、図書館で頭の整理と少し体を休めることをいたしました。

 ただし、アーミテージさんとは、何度でもゆっくり繰り返して申し上げますけれども、これは役所がしっかりと調整をするということを先方に伝えてありました。したがって、現在もアメリカ側からは、総理みずから会ってくだすって親書をお受けくださったのですから、田中眞紀子が会わなかったからけしからぬとか不満であるとか、そういうものは噴出していないというふうに私は思っております。

 ただ、私が一番事務方にあの後からずっと言っておりますことと、けさ、午前中の議員さんの質問にも触れることですから、関連しますので申し上げますけれども、メディアやこういうところの質問で、なぜキャンセルしたのかしないのか、そんなふうなことばかりをおっしゃる。それは大事なんですよ、もちろん。ですが、私が一番プライオリティーを置いて、優先だと思うことは、事務方が、三回に分けて、初めは会談をやって、副大臣が会って、それから各大臣が会って、最後は総理ですか、真ん中でまたビジネスランチをやっていて、三時間強の時間を過ごしています、その報告を私に上げてくれること。

 ですから、これが午前中の質問に対するお答えになるのですが、アメリカからどういう実務的な話、クエスチョンがあり、アンサーをしたのか、その骨子を私にしっかり教えてくれないと、私はパウエルさんとは、五月二日の段階でカウンターパートと電話で話はしてありますけれども、そういう方とお目にかかったりするときに、本当に政治家として日本の国益にかなったような、判断材料がなければしようがないわけです。ですから、そういう中身がどういうことであったのかという、まことに実務のことについてしっかりと報告をしてほしい。

 先ほど、九時に質問がありましたので、そのことについて事務方に何度か指示してありますが、まだ完璧なものが出てきておりません。

 以上です。

海江田委員 午前中の質問の答弁をここでやられたのでは、ただでも持ち時間が少ないわけですから、それは御勘弁をいただきたいと思います。

 今話がありましたけれども、外交機密費の問題でも、大変内部がいろいろな動きがあったということでございますが、きょう、九三年のオーストラリア大使館の館員の処分をせずにアフリカの公館に異動をさせるということで、ただ、これについては、川島次官は外務大臣に指示を仰ぐということが新聞報道にあるわけでございます。外務大臣、この問題についてはどういう指示をお出しになるのか、もうお出しになったのか、お尋ねします。

田中国務大臣 このことは次官からはまだ、指示を仰ぐというようなお話は、先ほども一緒にお昼のときにおりましたけれども、そのような言葉は発せられておりません。

 私が実際に聞いたのは、五月十三日日曜日の夕方、本省で四時間ほど勉強をしておりましたときに、全部のスタッフとやったのですが、そのときに、実はと言って帰りがけに、読売新聞のきょうの朝刊に載っているのを御存じですかといって見せられたのが事実、ファクトでございます。

 そして、役所からのペーパーがここにありますけれども、これは何だかフィリピンでも似たようなことをやっている方のようですので、やはり事実関係を聞きまして、そして客観的で公正な判断をいたします。

海江田委員 こういう人こそ本当に呼び戻しをして、そしてきちっと事実関係を調べて、時期的にいうと、これが九三年ですから、その意味では、この時点からそういう外交機密費のいいかげんな使い方ということがあったわけですから、やはりこの問題もぜひきっちりとした調査をやって、しっかりとした処分をしていただきたい。それでよろしゅうございますね。うなずいているから、はい。これ以上また答弁を要求しますと、長々と、時間がございませんので。

 次に、ことしは、七月に参議院の選挙がありまして、それから六月の、もうこれは投票日が決まっていますけれども、二十四日は東京都議会の選挙があるわけでございますね。

 今回、小泉さんは自民党の中の総裁選挙でもって大変多くの方々の支持を得て総裁になられたわけです。それは、予備投票などによって国民の声というのがどこにあるかということが一つわかったということもあるのですが、やはり参議院の選挙があるし、それから都議会の選挙もありますから、議員の方々だって、できるだけ戦いやすい総裁のもとで選挙をやりたいということが当然あるだろうと思うわけです。そういう意識が、とにかく参議院選挙向けには小泉さんが一番いいだろう、都議会の選挙には一番いいだろう、そういうような動きも恐らくあったんではないだろうかと私は思料するわけでございます。

 問題はやはり政策の中身でございますから、特に小泉さんは所信表明の中で、これから都市再生ですね、「都市の再生と土地の流動化を通じて都市の魅力と国際競争力を高めていきます。このため、私自身を本部長とする都市再生本部を速やかに設置します。」ということをお話しされている。

 実はこれにさかのぼりまして、これはもう説明の必要がないかもしれませんけれども、この都市再生本部あるいは都市再生委員会というのは、平成十一年の二月二十六日の経済戦略会議の答申のところで「首相直轄の「都市再生委員会」を設置する。」それから、平成十三年の四月六日、前の森総理のときの緊急経済対策の中で「都市再生、土地の流動化」「「都市再生本部」の設置」ということが出て、その流れだろうと思うわけですね。

 ただ、最初に平成十一年に経済戦略会議が答申をしましたときは、「都市構造の抜本的再編、居住・商業機能の回復に向けた土地の有効利用を不良担保不動産等の流動化と一体的に推進するとともに、情報、環境、バリアフリー、国際化等二十一世紀に相応しい都市の構築に向けた国家戦略を策定するため、首相直轄の「都市再生委員会」を設置する。」ということで、情報、環境、バリアフリー、国際化、この四つが一つのセットになっているわけですね。

 それが、ことしの四月六日の森内閣のときの緊急経済対策では、この「「都市再生本部」の設置」で、これは「内閣総理大臣を本部長、関係大臣を本部員とする「都市再生本部」を内閣に設置し、環境、防災、国際化等の観点から都市の再生」ということで、実はこのバリアフリーの観点が抜け落ちてしまっているわけですね。

 この総理が所信表明の中でお話をしたところでも、都市の魅力と国際競争力を高めるということで、私は、バリアフリーの問題というのは、これからの高齢化社会を前にして、もちろん地方、山間地域も高齢化というのは進んでいるんですけれども、それ以上にやはり都心部、あるいは都市部といったものも高齢化が大変進んでいるわけで、このバリアフリーの考え方というのはこれからの二十一世紀の都市再生の非常に重要なポイントになるんだと思うわけでございますが、総理もそういう認識をお持ちか、それから、あえて言わなかったのか、言わずもがなだったのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 今お話がございました都市再生本部、これは、総理が本部長として、官房長官と私が副本部長として設置したものでございます。第一回は今週中に開かれると思いますけれども、設置だけはもう店開きをいたしまして、この間、私、開会に行ってまいりました。

 少なくとも私、今先生がおっしゃいましたように、バリアフリー化というのは本年の重要課題の一つでございますし、十三年度の予算の中でもこれは金額を明示して、そして五千人以上乗ったりおりたりする乗降客の人数のところには、上りも下りもバリアフリーを、エスカレーターをつくったりいろいろなことをすると、これは決めてございます。

 ですから、それは大事なことだと思っておりますし、また情報化、それも都市再生の大事なことでございまして、国際都市という、国際という看板をつけるためには何が必要かというのは、海江田先生一番御存じの、情報を完備しなければビルも入る人がないわけですね。ですから、東京等を例にとってみましても、外資系が入ってくるためには、情報完備をしなければ、光ファイバーを通してなければ借り手がない、そういうようなことでございますので、今おっしゃいました情報化、そしてバリアフリー化、あらゆることも、道路も含めて、私は、きちんとした二十一世紀型の都市を作成する基本的な政策の立案をこの都市再生本部でしていきたいと思っております。

海江田委員 本当に、情報化は言わずもがなですけれども、私は、やはりバリアフリー化というのを、ぜひこれは総理自身の口から言っていただきたい。

 それから、今、民主党の東京都連では、実際に自分たちの住んでいる町が、この東京がどのくらいバリアフリー化が進んでいるかということで、そのチェックをやっているところであります。

 私も先週の土曜日、地元が新宿ですから行ってきました。さっき五千人以上というお話がありましたけれども、あの新宿の西口なんかはもう地下化が進んでいて、ずっと地下の都庁への歩道がある。あれは、広場だとか広場じゃないとか。今建造物、広場じゃなくなっているんですけれども、バスのターミナルは全部地上のところに、上にある。JRだとか小田急線だとか、そういうのは全部地下にある。

 あそこはエスカレーターなんか一つもないんですよ、実際に車いすに乗って動いてみると。しようがない、どこにあるかと探したら、小田急百貨店の中に入らないとエレベーターがないわけですよ。小田急百貨店というのはお客さんもたくさんいるわけですから、土曜日だとか日曜日だとか、なかなかそこは、特に車いすで入っていくということになると入っていけないというようなことがありますので、本当に東京の都庁のあるところでもありますが、そういうところがその状況ですので、バリアフリー化というのを、私ども民主党も一生懸命になってやっておるところですが、それはぜひ予算面でも。

 それから、交通バリアフリーの法律というのは、去年の暮れに成立をしてこの四月一日から施行になりましたけれども、私どもも実は交通のバリアフリー化の法案というものを出しまして、やはり今扇大臣も言いましたけれども、政府の交通バリアフリー化の法案ですと、たしか三分の一が国の補助、そして三分の一が自治体の補助、残りの三分の一をそれぞれの交通事業者がやらなければいけないということでありますが、今本当に果たして三分の一を事業者が負担ができるのかどうなのかということですね。

 だから、私どもは、それを四分の三を国が補助しろということも言っているところでありまして、本当にこのバリアフリー化に取り組もうということであれば、小泉総理も一度ぐらい実際に車いすに乗ってそういうところを歩いてみるとか、あるいは、これで予算をきちっと組むわけですから、それをやはりバリアフリー化に重点的に配置する。バリアフリーという言葉はまだ私は小泉総理の口から聞いていませんけれども、やはり御自身の口でバリアフリーということを言って、そしてそれの充実に向けて最大限努力する。民主党のそういう法案もよく見て、私も今持っておりますけれども、総理、後で見てください、これは大変いい法案ですから。そして、いいところはどんどん取り入れてもらいたい。そのように思うわけでございますが、総理、御見解を。

扇国務大臣 今おっしゃいましたように、少なくとも乗降客五千人というところでやっていますし、バリアフリーはことし二百億円、予算に組んでおります。今、三分の一ずつではできないんじゃないかということをおっしゃいましたけれども、これこそ特定財源を今回こういうことで二十一世紀型に使うということも私は大いに意義のあることだと思っていますので、今後そういうことも含めて、私は都市再生本部できちんとしたものを出していきたい、そう思っております。

海江田委員 それでは次に、いわゆる金正男事案で幾つかお尋ねをしたいと思います。

 これは、やはりまず最初に総理にお答えをいただかなければいけないわけでございますが、いわゆる金正男事案で政府のとった措置、これは適法であるというお話が何度も代表質問などでありましたけれども、やはり多くの国民はこの総理のお話では納得がいかないということが実際だろうと思います。

 私も周りの人間何人かに聞いてみました。確かに、最終的な手続というものは、ああいうことも一つの方法だったんだろうというような声もありました。だけれども、政府がこれまでやってきました説明というのは、もう何が何だか全くわからなくて、それこそこれまでの森総理がおやりになっても恐らく同じこと、特に説明などについて、国民の納得を得るということについては同じじゃないか。何だ、小泉さんにかわって一体どこが変わったんだということをやはり言っておる人が多いわけですよ。こういう声に対して、総理はどういうふうにお答えになりますか。

小泉内閣総理大臣 速やかに、大した混乱なく、適切な措置ができたと思っております。違う措置が行われればどういう状況が起こったかということを考えましても、私は適切な措置だったと思っております。

海江田委員 非常にわかりにくいというか、質問するのも非常に難しい事案なんですよね。

 やはり少し事実関係を明らかにしなければいけない点は明らかにしなければいけないと思いますけれども、まず、この四人の持っていたパスポート、これは鑑識の結果、三名のパスポートは偽造で、残る一名のパスポートは不正取得であるということが判明したというふうに報告を受けておりますが、この不正取得というのはどういう中身でございますか。

中尾政府参考人 委員お尋ねの件でございますが、三名のパスポートについては、身分事項ページが全ページ偽造になっておりまして、明らかに偽造であることが判明いたしましたが、一名のものにつきましては、偽造部分がないということでございました。

 したがいまして、不正取得の疑いということで当初調べておりましたけれども、結局のところ、本人が、旅券に記載しておる国籍の人間でない、こういうことを認めましたので、その限りにおいて、それ自体偽造だということを最終的に判断いたしまして、立件をいたしました。そういうことでございます。

海江田委員 旅券に記載している国籍がその本人の国籍ではないということなんですが、旅券に記載してあります名前、四名の名前、それぞれどういう名前が記載をしてあったのか、御確認をお願いしたいと思います。

中尾政府参考人 旅券上の名前の記載についてお尋ねであると思いますけれども、幼児が一名おりますので、幼児についてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 残りの三名について、種々検討いたしましたが、やはり明らかにすべきだという結論に達しました。

 男は、国籍としてドミニカ共和国、パン・シオンということでございます。あとの二名の女性は、一人が、ドミニカ共和国国籍シン・ジョンヒ、もう一人の女性につきましては、国籍ドミニカ共和国、リ・ギョンヒであります。いずれも、旅券上の記載でございます。

海江田委員 ちょっと年齢もついでに言ってください、恐縮ですが。

中尾政府参考人 生年月日につきましては、男につきましては一九七一年五月十日でございました。女性のシン・ジョンヒでありますけれども、一九七一年九月七日でございました。次に、もう一人の女性、リ・ギョンヒでありますが、一九六八年七月二日と記載されておりました。

海江田委員 かなり重要なことがわかりました。一人の金正男氏でないかと言われている人は、パン・ションという名前だ。パン・ションという名前は、これは実は韓国や朝鮮の名前じゃないのですよ。中国の名前なんです。パンというのは、さんずいに一番二番の番という字を書きます。ションというのは、英雄の雄です。この人が三十歳。

 それ以外の三人は、韓国並びに朝鮮の名前である。一人がシン・チョンヒ、これは三十歳ですね。若い、サングラスをかけた女性の方です。それから、リ・ギョンヒ、これは三十四歳、少し太った女性の方であります。そして、もう一人の名前は、これはあえて触れなかったのでしょうけれども、四歳であるということが判明した。これは、もう皆さんおわかりのとおり、姓はキムという名でございます。

 そうしますと、この一名の方は、その意味では、中国の名前を使っているわけですから、これは明らかに名前自体が、この名前というのは信憑性が置けないということでございますが、残る三名、とりわけ二人の女性の名前は、これは実在する人物であるわけでございますね。しかも、これはつとに有名で、シン・チョンヒという方は、言われておりますのは北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国唯一の航空会社である高麗航空という、朝鮮に出かける方皆さん、北京から行ったりする飛行機でございますが、あそこの社長の娘さんであるということ。それから、このリ・ギョンヒという方、この方は恐らく親戚筋ではないだろうかということが言われているわけでございますが、供述で、この三人ないしは四人の関係というものはどういうような関係であるという供述が得られておりますか。

中尾政府参考人 お答え申し上げる前に、委員お話しの女性については逆でございます。サングラスとおっしゃっておられたのがリの方でございます。

 そういうことでお話をさせていただきますが、三名の関係等については、供述にわたることですので詳細に申し上げることは差し控えさせてもらいたいと思いますけれども、偽造旅券上の氏名で申し上げますと、シン・ジョンヒとパン・シオンは、これは夫婦ということになっております。リ・ギョンヒはシン・ジョンヒと親戚関係というふうに聞いております。

海江田委員 あと、これは当委員会の理事会に提出をしました資料でございますけれども、このパン・ションなる人物が過去に、去年三回日本に入国をしていたということでございますが、それがいつ幾日なのか、上陸の日時と出国の認印年月日、これを改めて発表していただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 本件、パン・シオンなる偽名旅券上の記載での旅券につきまして、我が国への旅券上の上陸許可証印及び我が国からの旅券上の出国証印の年月日は以下申し上げるとおりでございます。

 上陸許可年月日、平成十二年十月三日、同年十二月二日、同年十二月二十五日。出国証印年月日でありますが、平成十二年十月六日、同年十二月九日、同年十二月二十九日でございます。

海江田委員 問題になっておりますのが、パン・ション名義のパスポートが三回使われたけれども、それはいわゆる金正男が使ったものであるかどうかはわからない、これは総理自身もお答えになっています。

 これは御案内だろうと思いますけれども、入国に際してはみんな入国のカードを書くわけですよね。ここにサインをするわけで、今もお話がありましたけれども、一番直近なところで十二月の二十五日に入ってきた。まさにクリスマスなわけですが、入ってきたわけで、これが果たして保存されていないのか。今は、聞きますと、これをマイクロフィルムに撮って、そして保存をしているということなんですが、ここにサインがあれば、マイクロフィルムに撮ってもそれは残っておるはずでありますから、それが本当にないのかどうなのか、そういうような確認作業というのはしたのかどうなのか、これもあわせてお尋ねをします。

中尾政府参考人 委員御指摘のとおり、いわゆるEDカード、外国人のEDカードにつきましてはマイクロカード化しております。マイクロカード化後、直ちに廃棄という処分をしております。

 マイクロフィルム上、一応の確認をさせていただきましたけれども、確認はとれておりません。

海江田委員 とれていないというのは、これは、なかなかとれましたということは言えないわけでありまして、とれましたと言えないから確認がとれていないという言い方しか私はできないと思うんですが。

 いずれにしましても、このパン・ション、私は恐らくいわゆる金正男という人だろうと思いますが、あと残りの三名の入国の記録、これはパスポート上あるんでしょうかどうなんでしょうか、我が国への入国の記録。

中尾政府参考人 委員がおっしゃっておられる三名につきましては、旅券上、出入国証印はございません。

海江田委員 あと、もう一つお尋ねします。

 このパン・ション名義のパスポートを持った人物でございますけれども、日本に来る前は、シンガポールから日本に来たということははっきりしておるわけでございますが、その前の立ち寄り先ですね、これも当然パスポートを見ればわかるわけでございますが、一説には豪州に立ち寄っておるとか言われておるわけでございますが、この事実はどのようになっておりますか。

中尾政府参考人 本件の四名につきましては、本年五月一日シンガポールから日本航空機七一二便で成田空港に到着したものでございますが、それ以前の経路については確認できておりません。

 旅券上の記載はどうかという御質問がございました。

 パン・シオンにつきましては、四月二十一日シンガポール入国証印、五月一日シンガポール出国証印、シン・ジョンヒにつきましては、四月二十一日シンガポール入国証印、五月一日シンガポール出国証印、リ・ギョンヒにつきましては、四月二十九日ドミニカ共和国出国証印、こういうふうになっております。

海江田委員 それでは、今回につきましてはシンガポール以外は行っていないということになるわけですね。

 そうすると、さて、この人の国籍はどこだろうかということと、それから、今回は中国に帰ったわけでございますが、シンガポールへはどういうふうに行ったというふうにこの本人は供述をしているのか、あるいは聞かなかったのか、聞いても言えなかったのか、そこはどうでしょうか。

中尾政府参考人 委員御指摘の点については、この場でお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。

海江田委員 これは、つまり聞いた。当然聞かなきゃ、シンガポールの人じゃないわけですから、これは当然どこかを中継してシンガポールに行ったということなわけですね。それはちゃんと供述は得られたけれども、ここでは言えない。言えないというのであれば、何で言えないのかということはおっしゃってください。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 これは違反調査、つまり退去強制手続上必要な範囲で調査を行っておりますけれども、その範囲でこの場でお答えできるのは、種々の観点から、その辺のもろもろのことを考えた上で最低限のことを申し上げている次第でございます。その辺で御勘弁をお願いしたいと思います。

海江田委員 最低限じゃなくて、これは言い間違いで最大限、言える範囲で最大限言ってくれなきゃね、まさに今までの答弁というのは全部最低限だったわけでございますから。

 あと、これは違反をして、偽造旅券であるということははっきりしているわけですから、これはインターポールなんかの取り決めでも、その経由地の国のそういう当局に対して当然のことながら連絡をしなきゃいけないわけですね、こういう名義の人間が、こういう形で、このパスポートを使ってお国を通過したと。そういう通告は当然やっていますね。

中尾政府参考人 その点については、今手持ちに資料はございませんが、私自身はやっていないと承知しております。

海江田委員 何でやっていないかだけお聞かせください。偽造パスポートを持って通過したわけですから、これは言うのが当然じゃないですか。

中尾政府参考人 シンガポールの先の話でございますので、シンガポールについては……(海江田委員「シンガポールに言ったんですか、インターポールなんかを通じて」と呼ぶ)今そのところは私、申し上げたように承知しておりませんので、その事実は、もしあれでしたら、調べた上で御返事いたします。今のところ承知しておりません。

海江田委員 今度は大臣にお尋ねをしますが、まず森山法務大臣、この事案を最初に聞いたのはいつですか。そして、この事案について何回報告を受けたかということもあわせて。

森山国務大臣 私が最初にこの報告を受けましたのは、五月一日の夕方、七時ごろではなかったかと思いますが、その時点で、四人の中の一人が北朝鮮の金正日総書記の長男であるかもしれない、そのような未確認情報もあるがということも加えて報告を受けました。そして、その時点では、今局長から申し上げたような細かいことはほとんどわかっておりませんでしたが、偽造旅券であることは明らかであるということでありましたので、とりあえず偽造旅券ということで、普通に行うべき法的な措置を進めるようにということを申しました。

 そして、五月の二日になりましてから、関連の省庁、外務省とか官邸とか、あるいは警察庁も入っておりましたでしょうか、相談を、情報交換をするという話を聞きまして、そこで法務省がその前の日からとっております措置について皆さんに御報告し、ほかの省庁の情報もちょうだいして進めるように、相談もするようにということを申しました。

 同じ二日の日の夜、再度、情報交換があるということで、その二回目の会議の前にも、もう一度詳しい話を、その時点でわかったことについて聞きましたが、そのときも、それほど詳しいことがさらにわかっていたわけではございません。しかし、現に進行をしておりました退去強制手続を粛々と進めるようにということ、それが法務省の方針であるということで第二回目の打ち合わせにも出るようにと申しました。

 それらを受けまして、その各省庁との情報交換の席でも、法務省の考えがよろしいのではないか、その方針で進めていこうということになりまして、外務省が、今度は外務省のチャネルを通じまして、送還先となる中国側との調整を行うことになりました。

 これらのことは、内閣官房長官もこの方針を了承されまして、さらにその後、総理大臣にも御報告し、御了承をいただいたというふうに伺っております。

海江田委員 田中外務大臣にもお尋ねをしますが、この問題では、きちっと事務方から情報は上がってきていたんですか、どうですか。

 それから、総理とは、相談をしたとすれば、いつどこで御相談をなさいましたか。

田中国務大臣 この件は非常に速やかに報告がなぜか上がっておりまして、私が聞きましたのは二日の午前十時半でございまして、役所で次官とそれからアジア局長からじかに話を聞きましたが、役所の方には一日の夜に法務省から一報が入っていたそうでございます。

 そして、後は、もうこれは法律にのっとって粛々とといいますか、法務省、警察と連絡をとりながら事務的に進めたわけでございますけれども、私が指示をいたしましたことは、偽造パスポートによる入国の目的とそれから人定がどうなっているかということの二点だけを指示し、ほかの省庁、警察と法務省と緊密に連絡をとって情報を上げてくれるようにと指示いたしましたし、また事実、してくれました。

海江田委員 あと、これも田中外務大臣にお尋ねしますが、この四人が出国をするに際しまして、全日空のビジネスクラス、二階部分を借り切りにしまして、それから外務省から審議官プラスお二人の職員が同道しているわけですが、こうした対応を指示したのはあなたですか。

田中国務大臣 これは、事務方からは、そういうふうに決めていたしましたという報告を結果的に受けました。

海江田委員 そのとき、どうして、だれだかわからない人にこんなに過剰なサービスをするとお思いにならなかったですか。不思議に思わなかったですか。

田中国務大臣 本件が国会でこれだけ問題になっているということの理由をごらんになってもおわかりのように、本人は最後まで身分を特定できなかったわけですが、普通の密入国者であるか、あるいはそうじゃないのか、そのグレーゾーンのところで、ではないかという話が走りましたので、それがまたマスコミに出て、もしも不測の事態が起こったら困りますので、したがって、事務的に、混乱防止のために外務省からも人がついていきました、つけましたという報告を受けました。

海江田委員 もう時間がありませんので、本当にあと幾つか限られた質問になりますが、総理は、先ほどの私の質問に対する答弁でも、それからたしか代表質問の中井洽議員の質問にもお答えになりまして、処理が長引けば内外に予期しない混乱が起きるおそれがあるというふうに述べておられましたが、これはどういうことを念頭に置いているんですか。

 それから、それを余り軽々に言いますと、日本はそういうテロでありますとかあるいは脅迫だとかに屈する国家だ、そういうふうに思われるんじゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 総合的に判断した上で、混乱のない措置として一番よかったのではないかと私は思っております。

海江田委員 いやいや、私が聞いたのは、判断をしたのは当然、総理でしょうけれども、総理が答弁の中で再三再四、予期せぬ混乱が起きる、だから早目に措置をしたんだと言うけれども、どういうような予期せぬ混乱を念頭に置いたんですか、これは。

小泉内閣総理大臣 あれこれ人に言う必要なく、自分の頭の中で予期せぬいろいろな事態を想定して、速やかに適切な処理をどう決断すべきか、法に従って処理するのが一番いいということで、退去強制手続を法務省も考えておりますので、私はそれがいいのではないかということで了承して、今でもこれは手際よい、いい、適切な処理だったなと思っております。

海江田委員 どうも総理の今回の処理というのは、いつも、それこそ恐れず、ひるまず、とらわれずとか言っていますけれども、やはり恐れて、ひるんで、とらわれて、しかも国民に対しては見ざる言わざる聞かざるですよ、これは。

 やはりこの問題は、残念ですが、きょうは時間がもう限られておりますので、これで私の質問は終えますが、ほかの委員も聞きたいことはたくさんありますので、たっぷりと時間をとってやっていただきたいと思います。集中審議をお願いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 いろいろな批判に恐れず、ひるまず、とらわれず、適切な措置がなされたと思います。

野呂田委員長 これにて菅君、岡田君、池田君、海江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、山岡賢次君。

山岡委員 自由党の山岡賢次でございます。

 小泉総理の政治姿勢についてお伺いをしたいと思います。

 こうやって小泉総理に相向かいますと、感慨深いものがあるのでございます。大分前の話かもしれませんが、福田赳夫先生、安倍晋太郎先生のもとで、党風刷新連盟、そういう政治活動をともに一生懸命やっていた。その中にあって、小泉総理は、まあ我々若者の兄貴分、こういうところで、私どもも一緒にその政治活動をやっていたわけでございました。福田官房長官も安倍晋三さんも、当時は国会議員じゃありませんでしたけれども、同じ若手で、同じ志で、そして、政治をよくしよう、自民党をよくしよう、こういうことで、我々のまさにエネルギーをそこにかけていたと思います。

 しかし、現在は、こうやって相対する立場になりました。それはそれで、とやかく私は申し上げるつもりもありません。私自身は、当時から、もし福田先生、安倍先生の志、同志をやっていったら、この自民党にいてはできないと思っただけでございまして、そして、今日のこの自民党の姿を見て、それぞれ立場は異なるけれども、しかし、改革の志は今でも変わっていないんじゃないか、こういうふうに信じながら、ここで今いろいろと質問をさせていただきたいと思っております。

 三月の二十七日ごろでございますが、小泉総理のお顔は、今のお顔とは大分違っているような感じがいたしました。今のように、何となく落ちついて、余裕しゃくしゃく、演技も含めてお答えをされる、どうもそんな姿ではなかったのでございました。まさに革命の志士のような、目は血走り、そして決意に燃えている、総裁選の前の姿でございました。

 おれのことを寄ってたかって総裁候補からおろそうとしているんだ、おれが総裁に出て、勝っても自民党は困る、今日の姿でございます。そして、負けても、小泉をつぶしたと言われるから困る、だから、おれが総裁に出ないことが一番いいんだ、何としてもおれをおろそう、こういうことで、大変な圧力の中にあるというようなお顔でございました。そして、そのときの決意は、この自民党がある限り日本はよくならない、この自民党をつぶしても、自民党を壊しても、自分は世直しをするんだ。

 総理は、いろいろ歴史的な表現をされております。越後、長岡藩の小林虎三郎、米百俵の話、それから新世紀維新というお言葉も使っておられる。多分、明治維新になぞらえて言っていらっしゃるんだと思います。

 そういうことですから、私もせっかくですから歴史的表現でお尋ねを申し上げますが、総裁に立ったときの小泉総理のお気持ちというのは、あの当時でいうなら勝海舟、山岡鉄舟の心境じゃなかったかと思います。この時代を見ると、徳川が妨げになる、この幕藩体制では世界の趨勢の中で日本はやっていけない、自分は幕府の要人、自民党の幹部ではあるが、しかし、この自民党をつぶしても、壊しても、日本を直さなきゃいけない、そういう決意で総裁選にお立ちになった、そういうふうにお見受けをいたしました。

 ところが、そんなことを言っちゃ失礼ですが、思わぬ風が吹いた。総理御自身も予想していらっしゃらなかったんじゃないかと思います。小泉ブームと相なって、勝海舟、山岡鉄舟のはずが、ふたをあけてみたら、第十五代将軍徳川慶喜公におなりになった。さあここでどうされるのか、私はお聞きをしたいのでございます。

 慶喜公になってからのお言葉というのは、所信表明、あるいはいろいろな質問がありました。そして、それに対して総理は改革と称するメニューを数点提示されております。しかし、そのメニューについては、すべて料理はこれから考える、まだつくっていない、つくってみなきゃわからないじゃないか、あるいは、つくってから意見を言ってほしい、さらには、料理人をこれから選定する、その料理人の意見を聞いてどれがいいかおれが判断する、こんなような言い方に変わられました。

 はっきりとここでお答えをいただきたいのでございます。総理は、総裁選に出て国民の皆様に約束したように、勝海舟になって自民党を壊しても日本をよくしようとするのか、あるいは慶喜公になってしまった以上、徳川幕藩体制を守り、何とか改革と称して糊塗しながらこれをやっていこうとされているのか、お答えをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 総裁選挙に立候補する前から今日まで、私の胸中をそんたくしていただきまして、いろいろお話しいただきましたこと、違う点もありますが、意気を感じていただいて、ある面においては激励をしていただいているのではないかと思いながら拝聴しておりました。

 私は、もとより歴史上の人物ほどではございませんが、捨て身になって総裁選挙に出よう、無になって戦えば道が開けるだろうという気持ちで打って出ました。結果的に、想像を超える、大方の予想を裏切るような結果になりましたが、こうして多くの皆様方の推薦を受け、自民党の総裁、日本国の総理に就任したからには、あの総裁選挙に立候補したときの、捨て身になって日本国総理大臣の職責を果たすべく全力を尽くそうという気持ちに変わりはありません。そういうことから、所信表明演説には、総裁選挙中、私が国民に訴えたことをすべて盛り込んだつもりであります。

 これからおいおい私の目指す新世紀維新の具体化に向けて努力をしていきたい。既に現実に動いているものも幾つかございます。そして、具体案を示すためには二週間や三週間でできるようなものは少ないと思いますが、方向なり方針なりは感じられるであろう幾つかの方針も出すことができたと思っております。これから具体案をつくる際には、個人の独断専行に陥らないように、日本国総理大臣として多くの国民の理解と賛同が得られるような、そういうものを出していきたいために、多少時間がかかるのはやむを得ないと思いますが、必要な時間だと思っております。その点を山岡議員なら御理解いただけるのではないかと期待しております。

山岡委員 総理の総裁選にお立ちになったときのお気持ちが今でも変わっていない、私はそう信じております。意気込みもそうであろうと思っております。しかし、政治は結果責任でございまして、立場が変わったからというわけにはいかないと思います。そういうことにおいては、決意も意気込みもまだ十分伝わってはまいりますが、しかし、それが結局はもとのもくあみということであれば、それは時代の進む歯車を単におくらせたにすぎないのでございまして、言うなれば、よく効く薬だと思って打ち続けていたら、結局は効かなかった、そうなれば、悪い免疫ができて病気が治るのが遅くなるだけなのでございます。そういう点では、志した以上、そこを突き抜けなかったら、私はかえってマイナスだと思っております。

 そこで、もう少し具体的にお伺いをいたしますと、総理は、新世紀維新というお言葉をお使いになりました。維新ということは、総理も言っておられるように、革命でございます。新世紀になって革命をするんだ、こういう意味で言われているわけでございます。解党的出直しとも言っております。ここに的というのがついているのが若干ひっかかるのでございますが、解党して出直すというのならわかりがいいのでございますが、解党的とついているところが、まことにこの辺がいま一つすっきりしないのですが、そう言っておられる。

 そして、聖域なき構造改革、こう言っておられるわけでございます。この聖域と言っているのは、自民党の中で聖域がないのか、あるいは自民党自身もそのなくす聖域の一つなのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 聖域なき構造改革でありますから、今までの自民党的な考えで直さなきゃならないこと、解党的出直しをしなきゃならないこと、改革すべき点、こういう点につきましても聖域なき構造改革の気持ちで取り組んでいきたいと思っております。

山岡委員 先ほどから申し上げましたように、気持ちは、もともと小泉純一郎でございますから純粋にそうお考えになっているということは理解はしております。しかし、先ほどから言っているように、政治は結果でございます。自民党の中で全力を挙げて、その意気込みで、幾らそう言われても、結果が出なきゃ意味がない。

 この間、初日ですか、自民党の麻生政調会長が質問に立たれました。小泉総理に徳川三大改革のことについて問われていたわけでございますが、いつの時代においても、その時代を直さなきゃならないんだと言う人は出てきております。この八代将軍吉宗も、松平定信さんも、あるいは水野忠邦さんも、それぞれ小泉総理にまさるとも劣らない立派な方であり、しかも命をかけて、本当にこの徳川を直していかなきゃならない、時代を変えていかなきゃならない、そこに彼らは全知全能を傾け、まさに一生をかけた人たちでございます。しかし、結果的にはそれは成りませんでした。今私が申し上げたように、むしろ改革の歯車をおくらせた役割をしてしまった。なぜか。それは、行き着くところ、徳川を壊せない、自民党を壊せない。そういう改革はもはや、見解の相違かもしれませんが、今の日本の中においてはでき得なくなってしまっている。当時もそうなんです。

 当時、徳川のことを言えば、フランスはフランス革命が起こって、市民革命が起こって、産業革命が起こって市民中心の社会になった。しかし、一方においては、封建領主や騎士が幅をきかせて天下を握っていた。それではやっていけないんです。アメリカも、南北戦争を経て市民革命を起こして、だから黒船が日本へ来たんです。徳川の大名という政治家、役人という刀を持った侍、そして年貢米を集めてそこ中心の、利権政治とは言わないが、そういう政治家や役人のための政治をやっている徳川の幕藩体制を守りながらの改革というのは結局はできなかった。したがって徳川は倒せない、改革はできない。

 例えば、吉宗公は、尾張のぜいたくをやめろ、言うなれば今と同じ。赤字財政を直そう、利権政治家や悪質代官を排除しよう、悪質金融業者の弊害を除去しよう、市民層の人材を登用しよう。何か今やっていることと全く同じ。しかし、結局それがいかなかったのは、現体制という壁があったわけでございます。

 麻生大臣にちょっと言っておいてほしいんですが、ちなみに吉宗さんの改革は寛政の改革じゃありませんから、享保の改革でございますから、伝えておいてください。

 その享保の改革、何と言われたか。こう言いましたね。吉宗は財政再建をやっていったけれども、必ずしもいい政治だとは思わない、むしろそんなことをしないで、あの元禄はよかったじゃないか、自分が今住むなら元禄時代のあそこで住みたい、こう言いましたよね。何を言っていると思いますか。あれは、本人も言っていたとおり、正直な人ですね、総裁選でついこの間まで全く正反対の立場で戦っていた、積極財政論者ですよ。だから、小泉総理の言っているようなそういう財政再建、構造改革、そんなことをやったってだめですよということを吉宗さんを通して言っていたんですけれども、総理、お気づきになりましたか。

小泉内閣総理大臣 さすが御尊父が「徳川家康」を物された山岡荘八先生の御子息だけあって、徳川時代の歴史にお詳しいなと思います。

 その徳川家康公も、人生とは重き荷を背負い坂道を行くがごとく、焦らず、急がずとか言っていたようであります。私も、急がなきゃならない改革もありますけれども、焦らずに、国民の理解と協力を得て、しっかりとした具体案を示して、粘り強く目的に向かって進まなきゃならぬ。多少時間がかかりますが、徳川家康公に倣いまして、しばしの時間的な御猶予も与えていただきまして、これから実績を積んでいくのを見守っていただければありがたいと思います。

山岡委員 まあ坂道というお気持ちはわかりますが、ちなみに、遠き道を行くがごとし、急ぐべからずというのが人生訓でございますから、御理解をいただきたいと思います。

 総理は、時間の余裕がほしいと。おれが総理になった、気持ちはわからないでもないし、意気込みもわからないではありません。しかし、現実に日本はどうですか。

 今、日本をずっと支えてきた製造業の実態、おわかりになると思います。今や倒産とリストラのあらしじゃないですか。日本のこの傾いている以上に、製造業は今成り立たない。

 お勤めの皆さんは給料が実質減ってしまっている。組合さんに怒られちゃうかもしれないが、残業もない。やったってサービス残業。そして、言うなれば、いつ解雇になるのか、首になるのか、その不安でおののいているんです。余裕なんて全然ないんです。

 商店街を見てください。もうどこもここも青息吐息。商店街が新しい計画を立てて出店するのなら望ましいんですけれども、どこの商店街もみんな、今立てている計画は、さていつまで続けられるか、いつ閉店しようか、来年のいつやめようか、こういう計画ばかりです。

 農業はどうですか。どんなうまいことを言ったって、あと二十年もすれば日本の農業は壊滅です。武部さんが嫌な顔をしてこっちを見ていますけれどもね。なぜかというと、後継者がいないんですから、どんな立派な高い機械を持ったって、日本の農業はこのままは続けていけない。

 お年寄りの皆さんはいかがですか。日本は千四百兆の預金があるんです、五十五兆のたんす預金がどこかにあるんです、そうは言われていますが、そんなお金がある気持ちがどこにあるでしょうか。年金、医療、介護の将来は真っ暗。今持っている汗と血と涙のこのお金は一銭も使えない。金利だってもらえない。孫にお小遣いもやれない。だから、消費は起こらない、景気はいつになったってよくならない大きな原因となっているじゃないですか。

 お子さんたちだって同じことです。親がすさめば子供もすさむというのか、教育のことを考えても、日本の子供は気の毒だと今思うわけでございます。

 そういう中にあって、小泉さんの人気というのは大変な人気でございます。これは、ただ単にあこがれの人気じゃないと私は思います。この小泉人気というのは、裏を返せば、何とかしてくれ、助けてくれという国民の皆様の悲鳴じゃないかと思います。

 なぜ期待できるのか。あなたは自民党らしくない変人だから期待できるんじゃないですか。自民党の異端児だから期待できるんじゃないですか。つまり、自民党でないから期待できるんですよ。国民にとっては、あなたはわらどころか助け船に見え、ノアの箱船に今見えている。ところが、待ってくれ待ってくれ、メニューが出たから、こう言っているが、もう生きていけないこの状態なのにわらをつかまされているだけでは、これじゃ地獄に行ってしまうんじゃないか、そういうのが今国民の皆様の心境であるわけでございます。

 あなたが言う、あなたが乗っている自民党、こっちの辺から騒然たるやじがこれから飛んでくるんでしょうけれども、しかし結果を見れば、まさに政官業癒着の党そのものです。幕末の大名や侍のための党になり切っちゃっている。少なくとも、私がいたころの、福田先生や安倍先生のころの党はそうじゃなかった。こうなるとは思っていたが、ここまでなるとは思っていなかった。

 どうですか、その後。自民党をザ・KSD党と今言う人がいますよ。その中から出てきたうみ。ついこの間の村上正邦参議院議員の問題、小山参議院議員の問題。もう多くは言いますまい、みんな知っているから。額賀大臣も辞職をされた。中尾栄一建設大臣の問題。言われてみたら思い出すほどいろいろあって、遠い昔のことのように思っているが、ついこの間です。

 中島洋次郎衆議院議員の防衛庁汚職、中村喜四郎元建設大臣のゼネコン汚職事件、阿部文男さんの共和事件、稲村さんの脱税事件、藤波さんのリクルート事件、許永中事件、日興証券利益供与事件、新井将敬さんは自殺されましたけれども。泉井のやみ献金事件、そして興銀の不正融資事件。私は、これはもう自民党にいるときに私自身が追及したことでございます。(発言する者あり)三面記事しか読んでない人はやじを言わないでいただきたい。構造的問題を言っているのです。そして、富士銀行の赤坂不正融資事件。

 役所も同じ。もう外務省の松尾さんの話はわかり切っているから言いませんが、農水省の構造改善局も何と二百人もの人が検察から捜査を受けている、役人がですよ。そして、捕まったのは溝上課長補佐、上甲課長補佐、そういう人たちが言うなれば代表選手になったのでしょう。そして、大蔵省の過剰接待事件。きのう麻生さんがここで言っていましたね、ノーパンしゃぶしゃぶなんという言葉を使っていましたけれども。麻生さんが言ったからその言葉を言いますけれども、言うなれば田谷とか中島、そういう事件がありました。また、厚生省の特別養護老人ホームにおける岡光事務次官の事件。もう読んでいくだけでくたびれちゃう。

 この構造的な自民党丸の中で、純一郎総理がどうやってかじをとって、そしてあなたの言う改革ができるのか。こんな船はかえた方がいいんじゃないですか。御返答願います。

小泉内閣総理大臣 暗い面、悪い面だけを取り上げればこれは切りがないのはわかります。しかし、日本を全体で眺めてみれば、偽造旅券を使ってまで日本に来たいとか、多くの国民が日本に来たいとか、何とか日本に来たがっている人もたくさんおられるし、電車で旅行してみても、新幹線にしても、飛行機にしてもよくこれほど時間どおり離発着するなと。もちろん、日本国民の努力であります。私は、余り物事を一面的に見る必要はない。

 何とか、日本においては、これだけ短期間に多くの国から平和で豊かな国だと言われるようになった。しかも、世界で一番長生きできる国になった。そして、これから自信と希望を持って生きる社会にしていきたいなというからこそ、今言われたような嫌な点を、悪い点をいかに改革していくかというのが私の内閣に課せられた責任である。

 それゆえに、構造改革なくして日本の経済再生はない、景気回復はないということで、聖域なき構造改革で今取り組もうとしているわけであります。もろもろの今までの悪い点をどうやってよくしていこうかということに、政治家としての責任も、またやりがいもあると思っております。

 これから、いい面、悪い面、よく見ながら、基本的には、日本国民というのは一つの目標に向かって英知を、活力を結集していけば、その目標を達成し得るにすぐれた能力を持っている民族だと私は信用しております。その潜在力をいかに高めていくか、これが政治の大きな役割ではないかと思いますので、これから私は、所信表明で何をやるのかわからない、わからないと言っていますけれども、現に、派閥にとらわれない閣僚人事、今まででき得ないことをやったじゃないですか。

 そして、これから進めようと、目標におきましても、いろいろ、ごみゼロ社会にしよう、自然と共生、環境をよくしていこう、男女共同参画時代を実のあるものにして、女性も男性も育児と仕事の両立ができるようにいろいろな施策を充実していきましょうということをはっきり所信表明で述べているんです。これから具体化をしていく。こういう方針を出すことが、内閣として、総理として大事なことじゃないですか。それを今中身がないと言うのは、心外ですよ、私は。

山岡委員 いよいよ今の御答弁は十五代将軍に腹の底からおなりになってしまったのかな、こういう失望感を禁じ得ないんですが、言っていることは半分当たっていて半分違っています。

 日本はすばらしい国です。しかし、自民党がすばらしいわけじゃないんです。勘違いしないでいただきたい。あなたが言っているとおり、日本民族がすばらしいんです。自民党がつくってきた、こういうふうにここで言っているが、少なくともこの十年は、この自民党が壊してきているんです。その自覚がない限り、日本はよくならないということを私は申し上げているんであって、日本が頭の先から足の先まで悪いなんということは言っていないんです。

 しかも、私が言ったのは、自民党の外で国民を見なきゃいけないと言っているのに、自民党の中の派閥をなくした、そんなことは我々には関係ない。国民にも関係ない。そんなこと、今までできないことをやったというのは、自民党の中の話だ。そんなことをもって国民が幸せなんぞ言われたら、大変な迷惑。

 だから、私が申し上げたいのは、言うなれば日本のこのよさがなくならないうちに、自民党を気にすることなく日本の世直しをしていったらどうですかということを最初から申し上げているんです。それを具体的に、それじゃそういうことをおやりになろう、そういう気持ちはおありになりますか。もう一回聞きます。

小泉内閣総理大臣 この十年間のいろいろな自民党の失政なり、改革が進まない点は御指摘いただきました。これは謙虚に反省しなきゃなりません。

 しかし、これを多くの国民が感じたならば、昨年の総選挙で自民党は野党になっているはずであります。しかし、依然として国民は、自民党に第一党の議席を与えてくれた。

 我々はこの責任を逃れてはいけないと思います。苦しくとも、そういう批判に謙虚にこたえながら、よりよきものをつくり出していくのが政権を与えられた政党の責任ではないか。正すべきは正していく、悪い点は直していく、そういう方向で、第一党の議席を与えていただいた国民の信託にこたえるのが我々の責任であると思っています。

山岡委員 小泉総理、民主主義を誤解しないでいただきたい。第一党はオールマイティーじゃないんです。過半数を握った者が民主主義においてオールマイティーなんです。第一党だから何でもできるんだという言い方はお間違いです。(発言する者あり)今そう言っているでしょう。

 したがって、自民党は、第一党にはなったかもしれないが、選挙において過半数はとっていないんです、ここのところ。そうでしょう。選挙が終わってからどういう手段をおとりになっているのかわからないけれども、そこら辺で一生懸命大きな声でやじっている人も含めて、多数派工作をしたんでしょう。それは、国民の実際の声じゃないんです。

 そこで申し上げますが、小泉総理、この自民党の体質そのものを批判されている大きな理由が、政官業癒着の構図、こういうことです。そのことは総理もお感じになっていると思う。たびたび指摘がありましたけれども、その最も典型的な図式が、言うなれば参議院の比例候補であるわけでございます。

 その比例候補の村上さんとか久世さん、KSDの問題で村上さんは逮捕されましたけれども、しかし、現実に、この村上さんの大きな問題というのは幽霊党員の問題があるんです。久世さんも同じです。それで大臣をおやめになりました。そういう皆さんが今でも立っているわけでございまして……(発言するものあり)党員はやっておりません。わかっていて物を言っていただきたい。そこら辺でやじっている人は、身に覚えがあるから隠ぺいしたくて、なるべく言わせないようにしている。私は、党員は一票たりともやってもらっていない。党員をやってもらったら、ずっとトップで当選していますよ。だから、私は言えるのですよ。

 だから、選挙制度を変えたのもそうでしょう。このままいったら、そういうものが白日のものになる、自民党は壊滅する、うまくない。だから、一度決めたことも、途中で党のためには何としても変えなきゃいけない、そういうことで選挙制度も強引に変えました。

 もし小泉総理が、百歩譲って、自民党をよくしよう、それじゃだめですけれどもね、結論からいいますと。しかし、そういうお気持ちでやろうというなら、この参議院の候補を全部差しかえたらどうですか、少なくとも政官業癒着だと言われている。それをおやりになる決意があるのかないのか。あるなら評価します。お答えください。

小泉内閣総理大臣 先ほど、私が派閥とか党のことを言ったら、そんなの聞きたくないと。

 私の内閣の大事なことは、政策をいかに推進するかであります。私の内閣の方針に賛成してくれる方が、できるだけ選挙で当選してもらいたい。そして、私の内閣の方針に沿って、何とか政策を実現していきたい、させていきたいという気持ちで、国会内の多数の理解を得るための努力は、これから必要だと私は思っております。

山岡委員 これもまた国民の皆様が錯覚する詭弁を弄しておられますけれども、決めるのは政策だ、こう言いましたが、政策を決めるのが人なんですよ。自分一人で、独断でやるつもりはないとも言いましたよね。それじゃファッショじゃないですかなんて言っていたじゃないですか。だれがそれを支持して決めるのですか。人でしょう。あなたの政策を、それは表向きは賛成と言うかもしれませんよ。しかし、政官業癒着の、その体質の候補者、その皆様に支えられ、乗っかり、その自民党であなたの改革はやれないでしょう、こう言っているのです。やろうとするなら、候補者をかえたらいいじゃないですか。あなたの政策にも体質にも合う人にかえたらどうですか。

小泉内閣総理大臣 確かに、自民党には、一部の団体から支持されて当選されている議員もいるでしょう。しかし、それは各党に存在するところでありますが、全体、多数がどういう決定をするかというのは、よく見ていただきたいと思います。自民党は、一部特定の団体に左右されるような、そういう政策は慎むようにこれから私は考えていくべきだ。そこがやはり自民党としての改革の大きなしどころの一つだ。

 ですから、私の方針に沿って、自民党の中で反対も起こるでしょう。これから掲げる政策について、抵抗も起こるでしょう。しかし、それは、自民党全体から考えてみれば、自民党は話せばわかる政党だ、全体の議論を進めていけば、必ずそういう意見も賛成に持っていけるような議論をこれからの自民党はしてくれるはずだ、そういう期待を持って、私はこれからやるべき改革に向かって進んでいきたい、そう思います。

山岡委員 結局、具体的に参議院の候補をどうするのかという返事はない。つまり、かえない、そのままでやる。そして、おれの言うことを聞いてもらう。

 私が一番最初から申し上げておりますが、徳川幕藩体制の中で、それを守りながらやろうと思ってもできないんだと言っていることを具体的にお聞きをしていったわけでございまして、そういう点では、本当に、今はまだかすかな期待をしておりますけれども、その期待がかなうように、ぜひ御努力をいただきたいと思います。

 次に、新世紀維新ということについてお伺いをしたいと思います。

 先ほど申し上げたように、維新というのは革命という意味でございまして、新世紀の革命を起こす。二十世紀はどういう世紀であったか。まあ、これはいろいろ言い方はあると思いますが、一言で言うなら、私は、物と戦争の世紀じゃなかったかと思います。二十一世紀は、格好のいい言い方かもしれませんが、人間性の世紀にしていかなきゃならないんだと思います。

 それじゃ、その中身は、大きく分けると、両極ですが、二つあると私は思います。

 一つは、やはり今日のような、中央集権、官尊民卑、護送船団、こういった言葉にあらわれているような、言うなれば、国家統制や規制の世の中から、もっともっと個人の自由な能力やアイデンティティーが発揮できる、そういう世の中に変えていかなきゃならないのじゃないかと思います。我が党の言葉で言えば、フリー、フェア、オープン。自由、公正、公開の社会をつくるという言い方をしておりますが、中身はそういうことでございます。

 一方においては、自由な活力を出すのはいいけれども、人間とはそんな立派なものじゃないところがありますから、やはりみんなでやらなきゃならないものもある。その一つが環境だと思います。そして、ある意味では福祉もそうです。親が子供を、子供が親を面倒を見ればいいんだ、そうはいったって、現実なかなか見れるものじゃない。だから、福祉も国家や社会、みんなで見ていかなきゃならない範疇に二十一世紀は入ると思います。また、教育もそうだと思います。親の背を見て子は育つ、こうはいいますが、しかし実際に母親も共稼ぎ、家はなかなか子供の面倒は見られないという現実も直視しなきゃならない。こういうものに対しては、やはり社会や国で目配りをしていかなきゃならないものだと私は思います。

 そして最後に、見落とされがちでございますが、忘れちゃならないのが食糧という問題でございます。今は飽食の時代、食べ物は幾らでもありますからそういうことは全く感じないけれども、二十一世紀、どういう世紀か。環境も含めて、ある意味では人類最大の問題、我が日本国の最大の問題は、食糧不足にいかに対応するか、これが政治の課題じゃないかと思うわけでございます。

 もう今さらここで言うまでもありませんが、人口は急増しているわけでございまして、今六十億、三十年前までは三十七億、そしてあと三十年たてば八十億あるいは九十億になると。もう人の数が地球上の食物の数を間もなく追い越すわけでございまして、だれがどんなうまいことを言っても人類は生きていけない。

 さらに、数がふえるだけじゃなくて、文化的に生活するのは我が日本人だけでいいやというわけにはいかないんです。世界どこの国の人だって生活水準は上がっていく。上がっていけば、当然起こるものは、それは地球環境が悪化するわけです。二酸化炭素、フロン、もう今だけでも大変な量になっているわけでございます。そういう点じゃ、もうそういうものだけでも、エルニーニョ現象とかラニーニャ現象とか、異常気象が続いて穀物はとれなくなっている。

 しかも温暖化は進む。これが全く予測できないんですけれども、来世紀中に二度上がると言う人もいる、五十センチ上がると言う人もいる。一メーター海面が上がれば、これは地球の農耕のできる耕作地の三分の一が沈むと言う人もいる。誰もわからない。しかし、現に黄河は、あの黄河がですよ、言うなれば下流の水がなくなっちゃっている、こういう現象が今起こっているわけでございます。

 砂漠化、緑の破壊、こういう中にあって、我が日本国はどうしなきゃいけないか、二十一世紀の最大の課題じゃないかと私は思うわけでございます。

 今飽食の時代ですから、幾らこう言ってもなかなかぴんとこないと先ほど申し上げましたが、一九七三年、アメリカで大豆がとれなかった、禁輸された。日本はどうなったか。豆腐の値段が倍になったことを契機に、狂乱物価というのが起こった。覚えている人もいらっしゃるんじゃないかと思います。

 また、一九八〇年にはソ連がアフガンに侵攻しました。アメリカはソ連に農産物の禁輸を行った。そしてそれがもとで、十年後にソ連が滅んだと言われております。

 また、一九八九年、ベルリンの壁が崩れました。我々はどんなしっかりとしたイデオロギーを持った人が機関銃に撃たれながらあのベルリンの壁を突破したんだろうかと思っておりましたら、実は本人は、西側に行けばバナナが腹いっぱい食えるというのが動機だった、こんな話を聞いて私はびっくりしたのでございまして、いかに食べ物ということが、場所によって、時代によっては切実な問題か。

 一九九三年にはトウモロコシが禁輸をされました。はしけが壊れたというだけのことで日本に来なくなっちゃった。ミシシッピ川のはしけです。幸い、日本は備蓄があったから事なきを得たんですが、あれがなかったら大変なことになった。

 同じく一九九三年には、みんな記憶に新しいと思うけれども……(発言する者あり)私の質問時間なんだから、騒がないで結構です。そのときには、言うなれば日本じゅうが冷害で不作ですよ。これだけ、そばがあり、麦があり、パンがあり、まんじゅうがあり、お菓子があって、飢えなんかに苦しむことは全くない。しかし、この現代において、日本じゅうで米騒動が起こったわけです。

 みんな米を買い占めて、東京の親戚に送ってやる、棚に積む。そして、自主流通米が横行して、今が一万五千円であるのにかかわらず、当時は四万円、六万円、一番高いので一俵が八万円までした。なぜか米泥棒がはやった。何も米なんかとらなくたって、金をとればいいものを、わざわざあんな重たい米を盗んでいく。なぜなんですか。異常心理なんです。食べ物がなくなるということは異常心理なんですよ。

 だから、そういうことを考えたときに、我が国の食糧のことを考えて、今はだれも何も考えないで、こうやってやじっている。しかし、一たびなくなったときに日本はどうなるか。今、世界の先進国は、その自給体制を整えるために必死に努力をしているんですよ。アメリカは一三二%、フランスはカロリーベースの自給一四一%、ドイツは一〇〇%、そしてイギリスは七八%、我が日本国は四六%が平成六年、今四〇%ですよ。

 この自給率について、総理は、我が日本国は幾らぐらいにしなきゃいけないか、どうしなきゃいけないか、感想で結構ですから、まず言っていただきたいと思います。

武部国務大臣 山岡先生の御見識に敬意を表したいと思います。

 御案内のとおり、昭和から平成に移るその時点は、我が国の自給率は五〇%程度でありました。現在はお話のとおり四〇%であり、このままの趨勢でいきますと、三八%ぐらいに十年後には落ちてまいります。

 そこで、農林水産省としては、新しい基本法に基づきまして、何とか将来五〇%程度に、こういう目標を持っておりますし、基本計画では四五%にしようという目標を立てております。しかし、これはお話のとおり大変至難なことだ、私はかように認識しております。これは、やはり生産サイドの努力、食品産業関連、こういった方々の努力、さらには、特に国民の皆さん、消費者の皆さん方の御理解と御協力が大事だと思いまして、このことは国家の最も重要な基本政策だ、かように心得て努力してまいりたい、こう思っております。

 これからもまたぜひ御協力をお願いしたいと思います。

山岡委員 武部農水大臣は、私は個人的にも親しくさせていただいておりますし、農水省のお立場でそういうふうにお答えをされるのもよくわかります。

 総理、どのくらいなきゃだめだと思いますか。感想でいいですから、言ってください。

小泉内閣総理大臣 今、武部農水大臣が言われたように、四五%を目標にしていきたいというお話でありますが、今、山岡議員のお話を聞いていまして、食糧に対する思いというものは非常に大事だなと。特に、異常事態が起こる、異常心理によるパニック。これは、私初めて当選したのが昭和四十七年ですから、翌年中東戦争が勃発しました。まさに洗剤、トイレットペーパー、狂乱物価、一年生議員のときに経験したことでありますから、今でも鮮明に覚えております。いかにふだんでは想像し得ないような行動を一般国民がとるか。それに対する異常心理、これは怖いなと。

 石油でああであります。もし食糧で起こったら、今言われたような大豆の問題をとりましても、お豆腐の問題をとりましても、これは食糧安全保障、また、金さえ出せば食糧は買えるものではないということを考えますと、食糧に対する、特に農業に対する重要性というのは、今後、農村、都市を問わず非常に重要な視点である。

 いろいろの過去の具体的な事例を引きながら、そういう思いを改めて起こさせてくれたということに対しては、敬意を表したいと思います。

山岡委員 見識はお伺いいたしましたが、質問にはお答えをいただいていないんですけれども、何%かと私は聞いているのでございますが……(小泉内閣総理大臣「四五」と呼ぶ)四五でしょう、総理の考えもそうですか。農水省の考えは四五だとわかっているんです。同じということですね。それはそれで結構ですけれども、四五%を目標としておりますけれども、実質、武部農水大臣も含めて、これはできるわけがないとみんな思っているんです。なぜできないか。

 例えば、いろいろなことを言います。専業化をするだとかあるいは法人化をするだとか、そういうことを言っています。武部さんが言うんだろうと思うから先に私は申し上げておきますけれども。

 しかし、法人化をしてどこがよくなるんだ。二百三十万戸あるいは合計で三百万戸ある中の、わずか一万戸ですよ。せいぜい目標が三万戸。そんな詭弁で、自給率が高まるなんてことはまるでない。

 そして、仮にそれが高まったとする。そうすると、すぐ減反をしろ、こういうことになるわけですから、片や高め、片や減反で、自給率が高まるはずがないわけで、日本だけが、金さえあればいつでも食物は手に入るんだと、政治も国民も挙げてそういうキリギリス国家に今なっていることを大変憂うるのです。

 そして、そのほかにも言えるのは、自給率を上げようといったって、現実、日本の農家はこのまま行ったら立ち行かないじゃないですか。

 現に、新しく就農する人は二千二百人しかいない。途中からやめて来る人を入れても合計一万一千人。四十七都道府県で一県当たり二百四十人ぐらいですよ。だから、どんなうまいことを言ったって、日本の農業はもう続けられない。

 そして、農家をやっている人の平均年齢は、若手で六十歳ですよ。中堅で七十歳。そして、八十歳で現役。その六十歳の人がどんなに頑張ったって、八十歳になれば限界です。あと二十年。今のうちに手を打たなきゃならないと思います。

 そして、今の農家の方は、減反で苦しみ、専業農家でようやくつくれるようになったら、減反をしろ、つくったものは買い入れ価格は安い、これじゃやっていけませんよ。そして、土地改良をしてくれた、ありがたいのかと思ったけれども負担が募るばかり、こういうことで、農機具代がなきゃ農業はできない、しかし、あればまた借金の山だけ。これで後継者をつくれと言ったってできるはずがないんです。

 一言で言えば、今の農政を農家が聞けば、農業はやめるな、農家は生きていくな、そういう政治、政策をやっているとしか受け取れない。私もそう思う。

 しかし、農家はこれで滅んでしまって、気の毒でしたで済むかもしれませんが、済まないけれども、もっともっと重要なことは、日本国民の食糧のことを考えなきゃいけないということ。単に農業への同情だけでやるというわけじゃない。(発言する者あり)だから、農家は大事なんです。農家の大事な話をしているんですよ、今。日本国民の、単に農家のことだけじゃなくて、我々の子供や孫たちのことを考えたときに、これをやっていかなきゃならない。

 今、日本の最大の問題は、この問題に対して大変おざなりだ。総理のこの所信表明演説もわずか二行。お答えも、ここに書いてありますけれども、今、武部大臣が言ったこととか、ちょろちょろとこういうふうに言っておられる。まずこういう認識を変えていかなきゃならない。農は国の基であり礎であり、農民は国の宝です、農林族はみんなそう言うんです、農家の前じゃ。しかし、やっていることは正反対じゃないですか。

 では、どうするんだと、ここでこういうふうに言っていますから。それを言うために、きょうここに出てきたんです。

 まず、農政については考え方を変えなきゃだめだと思います。日本の農業の農産物を商品という扱いの位置づけから変えない限り、日本の食糧は確保できないと思います。つまり、通産省的発想ではだめだ。防衛庁的、前から言われているように、食糧安保の、国民の食糧なんだという位置づけに変えていかなきゃならないと思います。商品である限り少ない方が値が高くなる、値が高くなるから減反をする、それをやっている限り、日本の自給率は確保されないんです。だから、そういう点では、商品じゃなくて、言うなれば食糧で国民の基本的なものだ、こういう範疇に入れなきゃいけないと思います。

 具体的に我々の政策を申し上げます。

 第一点は、少なくとも主要穀物の一〇〇%の自給を目指すべきであります。これが第一点です。

 ちなみに申し上げますが、例えば今、フランスは一九一%、アメリカは一三五%、イギリスは一一六%、ドイツは一二八%、我が日本国は二七%なんですよ。これで平気な顔していられますか。この辺でやじっている人たちは、農業を食い物にしてきたからこういうことを言っている。しかし、本当のことを考えたら、こんな状況でいいわけがないじゃないですか。

 二番目を申し上げます。

 減反政策は直ちに廃止をしなきゃいけないと思います。減反政策は直ちにやめなきゃ農家は成り立たない。(発言する者あり)言われる筋合いはないと言っている人たちがどう言おうと、減反政策はやめなきゃならない。

 そうすれば、お米は当然今の状態じゃ余ります。余ったお米をどうするか。それは備蓄にしなきゃだめなんですよ。備蓄が大切なのは石油だけじゃないのです。石油がなくなったって、家を壊せばまきはできるのです。食べ物がなくなったらそうはいかない。したがって、その備蓄政策をやっていかなきゃならない。三年ぐらいしかできないとここでおっしゃっているが、そうじゃないのです。

 時間がないからそれ以上申し上げませんが、今のように、高く売れる、ぜいたくで飽食のための備蓄は三年ぐらいしかできないのです。私が申し上げているのは、飢餓状態のときに子供や孫たちが飢えないように備蓄をしようと言っているのですから、これは十年だって二十年だって三十年だって、冷凍で、もみ殻で保存ができるのですよ。ですから、そういうことで備蓄をやるべきだ。

 さらに言えば、農業に限っては、ほかのものはだめです、やはりセーフガードを適用していかなかったら日本の農業は生きていけません。我々の子供や孫たちの食糧を守るためにも、農産物に限ってのセーフガードは適宜的確に適用すべきだ、これが第四点です。

 そして第五点においては、本当に必要なインフラ設備、水道とか下水、こういうものをもし国でやるなら、農家の負担はなくすべきです。そして必要のないものはやるべきじゃない。

 以上が我々の提案です。

 小泉総理、こちらでザ・自民党がやじっていますけれども、もし小泉さんが本当に日本のことを考え、農業を考え、我々の子供たちや孫たちのことを考えるなら、このことをぜひ実行していただきたい。

 そのお金はどこにあるか。例えば、今農業土木改善事業に一兆一千億ぐらい使っているのです。二兆五千億ぐらいの予算の中の一兆一千億が土地改良ですよ。そして、その土地改良をしてお米がとれるようにしてくれる、ありがたいことですよ。そして、できたら、減反をしろと言うのでしょう。やってくれない方がいいですよ、それなら。

 何のために土地改良をやるんだ。つまり、それは土木をやる業者がもうかるからですよ、そこからの利権が上がる人がいるからですよ、ザ・自民党があるからなんですよ。だから、そのお金を農家の方に回すべきだ、農家のためにお金を使うべきだ。そして減反をやめて、備蓄をしていく。十年分とは言わない。一年間九百万トン、お米は今でも使っているんだけれども、せめて三年でも備蓄をしていくべきなんです。そういうところの倉庫を整えていく、備蓄設備を整えていく。百五十万トンしかないのです。そういうことをやっていくようにしていっていただきたい、そういうふうに私は思うわけでございます。

 もうあと十分というこれが入ったものですから、本当は一回一回聞きたかったのですけれども、結論だけを申し上げましたが、私は、このことについてはこれから委員会でも十分論議していただきたい、したいと思っている。しかし、小泉総理の感想でもいいから聞かせていただきたいと思います。

武部国務大臣 先生のお考えもたくさん聞かせていただきましたけれども、我々は、あらゆることを想定して、理想と現実を考えながら対応している次第でございます。先生のお話のとおりできるなら本当に心配は要りません。

 それは、農業土木とおっしゃいますけれども、おっしゃるとおり、基盤整備をしっかりやらなかったら生産力は上がりません。ですから、私どもは、農林水産業の構造改革をゼロベースで徹底してやろうというところにスタート台があるのです。農山漁村の新たなる可能性を切り開いていこうということでございますので、もう少しやっていることを正当に評価いただいて評論いただきたいと思います。

 以上です。

山岡委員 達増先生の時間ですから、最後に申し上げます。

 一生懸命御努力しているのはわかりますが、ただ、現実を見てください。目標を幾ら立てても、現実がよくならなければやったことにならない、それが政治だと申し上げているのです。だから我が党の案を申し上げているのです。一々やじることはないと思います。検討すればいいじゃないですか。

 そこで、総理、きょう読売新聞で、総理に対する各国の批評が出ておりました。ドイツのハンデルスブラット社、「レトリックたっぷりだが、大きな意外性はなかった」。そして、韓国日報、「新政権が早くも大衆迎合政治に流れていることを示すもの」だと。そして、イギリスのタイムズ社、「魅力的なのは演説の見かけだけ。彼が日本の現在求めている革命家だとはとうてい断言できない」。これは私が言っているんじゃないですよ。

 私は、日本国総理として、党派を問わず、日本国をよくしていただきたい、頑張っていただきたいという気持ちはある。しかし、それには、最初に申し上げたように、外国から見てもこういうふうに見えてしまう。本当の意味での改革をきちっとやっていく、自民党をなくしても、自民党を壊しても、こういう人たちと別れても、自民党を出ても、日本をよくする、こういうことで、ぜひ小泉総理に頑張っていただきたいと思います。

 以上でございます。

野呂田委員長 この際、達増拓也君から関連質疑の申し出があります。山岡君の持ち時間の範囲内でこれを許可します。達増拓也君。

達増委員 さて、外務省です。今の外務省の混乱は、これはもう見るにたえないものであります。一日も早くこの混乱に終止符を打たなければならないと思います。

 田中大臣によれば、外務省は伏魔殿だそうでありますけれども、伏魔殿のその外務省に潜む魔物の正体、鬼の正体は何なのか。最近はやりの陰陽師になったつもりで、魔物の正体、鬼の正体を解き明かしてみたいと思います。

 田中・アーミテージ会談拒否事件についてでありますけれども、やはり、今この時期、日本国の外務大臣がアーミテージ国務副長官に会わないというのは、どう考えても理解できないわけであります。

 しかも、その会談拒否について、田中大臣は三つのうそをついておられます。

 一つは、パウエル国務長官との電話会談の中で、パウエル国務長官に対して、副長官にお目にかかるのを楽しみにしていますと言ったにもかかわらず、会わなかった。これは、もう外交上の公式の場でうそをついたことになります。

 二番目。当初、私用が入っていたという理由で会わなかった、記者団に私用が入っていたので会わなかったと言った。ところが、実際は、図書館に行ったということであります。先ほど答弁の中で、図書館に行っていたこと、それが私用だということだそうですけれども、図書館に行くというのは、これは不要不急のことでありまして、普通そういうのは私用とは言わない。正確に言うのであれば休憩していたということでありましょうが、いずれにせよ、図書館に行っていたというのを私用だったと言うのは、これはうそでないにせよ、少なくともごまかし。そういう意図を公式的に示すのは好ましくないと思います。

 三番目のうそ。結局、あれは心身パニック、疲労の極限だったので会わなかったという理由でありますけれども、五月八日であります、前日、小泉総理大臣の所信表明演説、大臣皆さん、ひな壇に並んで、全然そういう心身パニック、疲労の極限には見えませんでした。ゴールデンウイークが明けたばかりであります。むしろ、英気を養って元気はつらつに見えました。また、当の八日にも、人事にまつわる記者会見で元気いっぱいの様子を見せておりまして、すべての国民が、あれを見た人たちは、心身パニック、疲労の極限というのは、これはうそだろうと思ったと思います。

 これだけうそを重ねるというのは、もはやこれは虚言癖、精神分析の対象であります。なぜこのような異常行動をとり続けるのか。

 田中大臣のアメリカとの関係での異常行動は、今回が初めてではありません。

 政府の公式な内閣の一員として、かつて科学技術庁長官時代、日米科学技術ハイレベル会合というのがありまして、アメリカからギボンズ大統領特別補佐官、科学技術担当の補佐官が、関係局長、関係課長を引き連れて日本に来て、東京で田中科学技術庁長官と会議をする。当初、田中当時長官は、それには出ないと言い張った。事務方が必死に説得して、一日半の会議のうち半日だけ辛うじて出ることになりました。異常であります。

 また、日米宇宙協定の交渉、担当の課長が交渉のためにワシントンに飛び、さあこれから交渉だというときに、田中長官は、私はそういう交渉を聞いてない、呼び戻しなさいということで、担当課長は空港から出ることもままならず、そのまま東京に呼び戻された。空港から出さずに課長を呼び戻すというのは、もはや田中大臣のおはこになった感がありますけれども、前からそういうことをしていたわけであります。

 この日米関係について、どうも冷静さを欠く異常な行動がある。当時の内閣の方針でも今の内閣の方針でもないとすれば、何か個人的な理由でアメリカに根深い不信感を抱いているとしか思えないわけであります。

 そこで、大臣に質問いたしますけれども、あのロッキード事件は、アメリカが田中角栄さんを陥れ、田中角栄さんが有罪になったのはアメリカのせいだ、アメリカが悪いと田中大臣は考えていらっしゃるんじゃないでしょうか。

田中国務大臣 発言をする前に委員長に申し上げたいと思いますが、うそであるとか虚言癖であるとか精神分析云々とか、そういう人格、私は初めて今近くでお目にかかりましたが、そのような発言はまず撤回していただきませんと、私もお答えはできません。

達増委員 精神分析は、きょうの産経新聞の「産経抄」が一面で田中眞紀子さんの精神分析を試みております。私は、そういう国民的な議論をもとにここで発言しているのであります。

 ロッキード事件についても、けさの日経の「春秋」、そして産経の「産経抄」、もはや田中眞紀子長官の日米関係に関する異常行動についてロッキード事件とどう関係があるのかというのは国民的な議論になっておりまして、それを代表して発言する私の発言を恫喝によって封殺しようとするのであれば、私は断固、恫喝には屈しないと委員長に申し上げます。

野呂田委員長 外務大臣に申し上げますが、質問者が質問したことに答弁することによって反論していただきたいと思います。

田中国務大臣 外務省に前お勤めになっていらっしゃったんでしょうか。外務省の職員でいらしたんですか、以前。だというふうに思いますけれども、外務省の何かしっぽをまだ引きずっていらっしゃるのか何かがあるのかよく存じませんけれども、そういう人格攻撃のような、週刊誌で、新聞とおっしゃいましたか、そういうものに基づいて、一国会議員が同僚議員に対して、政党は違っても、それから、あなた様の過去が外務省の職員でいらっしゃったかどうか、私の親が何であったかは別問題として、やはり一対一、客観的な、議員同士として政策の議論をさせていただきたい。(発言する者あり)拒否じゃないんですよ、これは。ですから、お答えするんですが、こういうようなベースでもってこの衆議院の予算委員会の品格、それから、すべてをおとしめるようなことは、誤解を生じるようなことをおっしゃることは厳に慎んでいただきたい。まずそれを申し上げます。

 それから、私は、調整中と。では、これはしっかり何度も申し上げさせていただきますが、会談はセットされておりません。あなた様の親しい外務省にお聞きください。外務省の次官以下皆さんがずっとこれは確認しておりまして、会談というものがセットされていなくて、非常に極めて忙しい、したがって、これを調整する。その意味はおわかりになると思いますけれども、スケジュールの調整なんです。そして、これがうまくいかなかった場合にはキャンセルになるということであって、ましてやドタキャンなどはいたしておりません。

 しかも、総理がお会いになって親書をみずから受け取られ、官房長官が会われ、防衛庁長官が会われ、そして副大臣二名が会われ、しかも実質は、外務省の事務方が、午前中一時間半、それから昼食を挟んで一時間半近く、夜は、先ほども確認いたしましたけれども、次官が一緒にホテルオークラで、彼の言葉によりますと一杯飲んできたと、親しい友達だそうでございますから、それだけのことをしております。

 それで、私はもちろん、アイム ルッキング フォワード ツー シーイング ミスター アーミテージということをパウエルさんに電話で事前に申し上げてありました。楽しみにしておりました。ですけれども、私が、テレビで見て健康そうだと見えたかもしれませんけれども、人間は生き物でございますから、走っている列車にずうっと乗っている状態でありますので、非常に心身が疲れ果てておりまして、しかも、マスコミやら、もう自宅もどこもマスコミに包囲されっ放しでして、あのフラッシュで眼科にも行った経緯がありますけれども、大変疲れておりました。それで、自分がちょっとでも一人になって休む場所が必要でありましたので、ホテルの部屋というわけにもいかず、一番至近距離の国会図書館、行きつけたところに参りました。それはもう国会図書館の職員に聞いていただければよくわかることでございます。

 それから、あとは、外務省の中が、機密費の問題そのほかがあって、私が着任したときから大変な状態で、私は皇居から着いて本当にびっくりいたしました。最初の会談、これは申し上げません、中身については。またあなた様に申し上げて誤解をされるといけませんので。

 それから後は、外務省イシューについてのたくさんレクがございましたけれども、それを私は、自分の勉強の仕方として、言われたものをペーパーで読むのではなくて、ましてやこの国会改革の中で、自分でそしゃくして、自分の哲学、もちろん役所や内閣全体の、総理以下皆様との考えの整合性をとりながら発言をしなければいけない。

 連休中も、私は、お祝い品の片づけですとか事務所じゅう全員が出て働いておりまして、それで私たちはもう本当に疲れていたんですけれども、その疲れた頭ぼうぼうの状態でテレビに映るわけにもまいりませんし、本会議場のひな壇に並ぶわけにもまいりませんので、もう本当にとまらない列車の状態でおりました。

 したがって、そのときは、皆様が会われるということがあったので、それではちょっと私は失礼させていただいてよろしいかと事務方にもそれを相談いたしまして、オーケーが出まして、調整中ですから大丈夫ですよと言っていただいた結果でございますので、きょう、官房長かどなた、事務方を呼んでいらっしゃるそうですから、どうぞ御確認ください。

 なお、先ほどのような人格攻撃、何ですか、うそをつくらしいとか、虚言癖であるとか、精神分析の対象であるとか云々、それから、何か私が親のことについて云々とおっしゃいましたが、あなた様はどれだけ私のアメリカや外務省での人脈、お友達、御存じでいらっしゃいますか。逆に、反論権ありますから、伺います。

 ですから……

野呂田委員長 達増拓也君。

田中国務大臣 まだ発言中です。(発言する者あり)いや、あれだけのことをおっしゃったのですから。ですから……

野呂田委員長 外務大臣、席へ着いてください。答弁が終わったら席へ着いてください。

田中国務大臣 はい。以上です。

達増委員 今のすべてが異常行動であります。

 近代日本百三十年の歴史の中で、外国から来た外国要人に対してこんな失礼なことをしたことは、日本の歴史上ありません。百三十年、我々の先輩が営々として築き上げてきた日本の外交を根本から破壊してしまうことが今目の前で行われている。これはどうしても我慢ができません。文明国として決して恥ずかしくないような、礼を失しないようなことをやっていこうと昔から先人が努力してきたことを、今このような形で壊されていくのは、本当に見るに忍びありません。

 調整中、調整中と言い続けて、結局会わないでしまうことは、これは会談拒否です。失礼なことです。僕はキャンセル、ドタキャンとは言っておりません。会わなかったこと、会談を拒否したことが問題なんです。

 ことしはA50、サンフランシスコ講和条約から五十周年記念で、官民を挙げて日本がアメリカに対して、今までの復興から高度成長、アメリカに感謝の気持ちを伝えていこうという、そういう企画を、もう何年も前から官民、朝野を挙げて準備してきている。その冒頭、外務大臣がアメリカに対してこういう失礼な振る舞いをしたことは、これはもう日米の心ある人全員に謝っていただきたいと思います。パウエルさんにも謝ったのですか、アーミテージさんに会わないでしまったことについて。そういう謝罪をすべきだと思いますけれども、どうでしょう。

田中国務大臣 事前に、私のカウンターパートのコリン・パウエルさんとよくお話をしてございますので、その後のことにつきましては、謝罪をする、電話をするというふうな気持ちは今ございません。

達増委員 時間が参りました。終わります。

野呂田委員長 これにて山岡君、達増君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。共産党を代表して質問をいたします。

 小泉総理は、自民党を変える、日本を変える、こう言って総裁に選ばれ、小泉内閣を発足させました。これまで自民党の中枢におられた小泉総理が、自民党政治のどこをどう反省し、どう変えるのか、多くの国民が注目しています。

 機密費の問題について、森内閣は肝心の点を何ら解明してきませんでした。この問題は、外務省の一室長が飲み食いや遊興費に公金を流用したという個人的犯罪にとどまるものではありません。問題の核心は、七十二億円もの国民の税金が国会対策やせんべつに使われていたという、機密費の党略的な流用にこそあります。

 ところが、その機密費がどう使われていたのか、その使い道は一切明らかにできないというのが森内閣でした。ここに国民の怒りが集中した。小泉総理は機密費について、抜本的見直し、減額も含め厳正に執行すると言われています。しかし、抜本的に見直す、減額もといっても、これまでどういう使い方をされていたのか、そこをはっきりさせなければ、抜本的見直しはありません。ここが肝心です。

 そこで、小泉内閣で新たに入閣された塩川正十郎財務大臣に聞きたい。

 塩川さんは、宇野内閣で官房長官を務められました。本年一月二十八日放映されたテレビ朝日の「サンデープロジェクト」という番組で、機密費について発言をなされています。私は何度もそのビデオを見て確認しましたが、こう言われています。

 野党対策に使っていることは事実です。現ナマでやるのと、それから、まあ要するに一席設けて、一席の代をこちらが負担するとかと述べ、どなたが金庫に入れるのかとインタビュアーの質問に答え、官邸にあります会計課長です。それは、参事官がおりますが、それと相談して入れます。幾らぐらい常時入っているのですか。私が官房長官のときは四、五千万ですかね。一週間に一遍ぐらい、あるかどうか会計課長がのぞきに来て、それで足らなかったら、ちょっとふやして入れてくれるという状態ですね。大体百万円単位で袋に入れています。

 こんなふうに語っています。この発言は事実ですね。

塩川国務大臣 発言したことを忘れてしまいました。

穀田委員 それはないでしょう。幾ら何でも、ことしの一月二十八日にみずからの体験を聞かれた話を、そしてお答えになってテレビで放映されて多くの国民が見られたことを、三カ月ほど前の話を忘れたとは、余りにも無責任ではありませんか。もう一度お答えください。

塩川国務大臣 昨年のことですし、新聞、雑誌の方でどのようにアレンジしたのか、もう私は知りませんし、忘れてしまいました。

穀田委員 それは余りにもひど過ぎます。ちゃんと、どう考えたって、そんなことをやっていたのじゃ、三カ月前の話を忘れるような方が、どうして大臣ができるのですか。だって、新聞に語ったとか……(発言する者あり)皆さん、大臣、新聞に語ったとか報道機関に語ったという一般論の話じゃないのです。テレビに、みんなが見ている、一月の二十八日放映されたテレビにあなたがお語りになっているのですよ。

 では、もう一度聞きましょう。野党対策に使ったことも忘れたのか。

塩川国務大臣 いろいろなことを、私聞いたことを、それは質問の仕方によっていろいろあったと思いますが、どういう質問で答えたのかということについては忘れました。

穀田委員 だからわざわざ読んだのですよ。あなたがお忘れになることはいけないと思ったからちゃんと読んだのですよ。そのとおりお話しになったんでしょう。

 では、どういう野党対策に使ったかは覚えておいでなんですか。

塩川国務大臣 覚えておりません。

穀田委員 それは余りにも無責任ではないですか。昔の話ではありません。ちゃんとお話をしていただきたいと思います。

 ことしの一月の二十八日に、三カ月前のお話なんです。五年前、十年前という話じゃないんです。この機密費の問題が国会で大問題になり、そして森内閣の帰趨を決める問題として議論をされていた時代にあなたはお話しになったんです。いいですか。自分が、それはその後、新しい内閣にお入りになるつもりはなかったかもしれないからそういうことをお忘れになったかもしれない。それでは大臣という名が泣くんじゃありませんか。

 しかもこれは、あなたが行ってきた官房長官の時代の話を極めてリアルに言っているんですよ。いいですか。北方領土の返還の運動の問題や、それから総理大臣から官房長官に、何とかやってくれという話まで含めて、団体の名前まで挙げるほどリアルにお話しになっているんですよ。それは覚えているんです、その時点で。そしてそれを、たった三カ月も過ぎないのに、テレビでお話しになったことも忘れる。それでは、残念ながら、申しわけありませんが、大臣自身が務まらないということになりませんか。

塩川国務大臣 大体、私は、思い出してみても、そのようなことを言った、殊に中身のことについては忘れてしまったということでございまして、いろいろと職責上やったことはあるのかもしれませんが、そのことについては思い出すことができません。

穀田委員 それは私、どう考えても、では、後でテレビのビデオを見ますか。それをやりましょうか、その時間をとって。あなた、見ますか。それじゃ、見て、それでやりましょう。それは余りにもひど過ぎると私は思います。お笑いすることじゃありませんよ、大臣。しかも、これはきちんと議員会館のお部屋みたいな感じでやっているのですよ。そして、私は何度も見て確認しているのですけれども、余りにもそれは私は情けない話だと思うのです。

 では、私は、質問を変えて聞きますが、では野党対策に使ったこともお忘れですか。

塩川国務大臣 忘れてしまいまして、ありませんですね。忘れました。

穀田委員 忘れたけれども、では、あったということですね。

塩川国務大臣 あったかないかも忘れてしまいました。

穀田委員 普通考えて、一月の二十八日にお話ししたことを、総理、忘れるってありますか。これでは次の話は進められませんよ。

野呂田委員長 財務大臣に申し上げますが、テレビに出演なさって、現物があるそうですから、もう少し思い出して答弁してください。

 財務大臣、答弁を求めていますから、どうぞ。

塩川国務大臣 いろいろと言われましても、私は記憶が出てまいりませんので、答えられません。

穀田委員 だめですよ、答えてください。おかしいじゃないですか。きょう答弁したことを、では三カ月たったら忘れるんですか。答えなさいよ。

野呂田委員長 財務大臣、答弁がなければ委員会はとまりますので、ひとつよろしくお願いします。

塩川国務大臣 私は、官房長官の時期が短かったし、そういう事実は知りませんし、また、私は、そういうインタビューのときにも、いろいろな誘導尋問があったことに対するものの一点の陳述であったと思っておりまして、その点がどのように言ってきたかということにつきましては、私は記憶を思い出すことができません。(発言する者あり)

野呂田委員長 財務大臣。

塩川国務大臣 それじゃ、お答えいたします。

 穀田さんのおっしゃるように、そのビデオを見た上で検討させていただいて、二十八日ですか、集中審議があるんですから、そのときに一応お答えいたします。(発言する者あり)

野呂田委員長 委員会の皆さんに申し上げます。

 ただいま理事と協議の結果、財務大臣にビデオを見ていただきまして、二十八日の集中審議で穀田さんの質問をやってもらうということにしたいと思いますが、どうぞよろしく。

 どうぞ、穀田君。

穀田委員 私は、こういう問題について、やはり内閣の姿勢が問われたと思いますね。自分の発言自身に責任を持てないで、どうして国民に責任を持てるでしょう。そして、問われた問題にまともに立ち向かってこそ、公開とか改革とか言えるんじゃないでしょうか。そういう内容について、みずから行った行動や、またみずからインタビューを受けた内容について忘れたということで済まそうとする態度に、私は納得ができませんし、国民みんなが納得しないということを申し上げておきたいと思います。

 では、二十八日にもう一度、今度は包み隠しなく相まみえるということにしたいと思います。

 しかし、私はもう一度言っておきますけれども、大臣として、一言言わせていただければ、塩川さん、本当に大事な職責を果たしておられるのに、三カ月前のことについて、問われたことやテレビで言ったこと、公器で言ったことすら忘れるようではおぼつかないということだけ私は申し上げておきたいと思います。

 それでは次に、小泉内閣の最大の看板としている構造改革について、時間がありませんから、聞きたいと思います。

 総理は、所信表明演説の中で、「構造改革なくして日本の再生と発展はない」と言い、その構造改革を進めることで生じる痛みを恐れないと言っています。そして、今の痛みに耐えればあすはよくなる、こうおっしゃっている。

 そこでまず、構造改革の実施によって国民はこれまで痛みを十分過ぎるほど受けてきた、限界を超えているということを申し上げたいと思います。

 九七年、橋本内閣が構造改革元年といって、消費税の増税や医療制度の改悪などで九兆円の国民負担増を押しつけました。これによって回復しかかっていた景気を一気に失速させ、今日の深刻な不況の大もとになりました。そのときの厚生大臣が小泉さんです。健康保険本人二割負担や難病患者への医療費一部負担という医療制度の大改変を行いました。まさに構造改革の名で国民に痛みを押しつけました。

 この医療改革について、総理は十日の本会議で、この医療制度改革は、制度の破綻を防ぎ、国民皆保険を維持するために行われたものであり、必要な医療を抑制するものではありませんと述べました。総理は必要な医療を抑制するためではないと言うけれども、果たしてそうか。まず、難病患者への医療費一部負担が何をもたらしたかについてお聞きします。

 難病というのは、病気の原因が不明で、病気を完全に治す治療方法が見つかっていない疾病です。国が難病と指定する四十五の疾患だけで約四十三万六千人の患者がおられます。難病患者とその家族の苦悩ははかり知れません。治療法もない、治療薬もない、難病患者の医療費は膨大になる。だから、保険が適用されない自己負担を公費で負担をしてきた。当然のことです。この絶対に負担を強いてはならない人々に一部負担を導入しました。その結果どうなったか。難病患者が病院で医者にかかるのを我慢する、受診を抑制したりということが明らかになっています。

 難病患者とその家族で構成する日本患者・家族団体協議会が昨年の十二月に調査結果を発表しています。自己負担が導入される前の九八年四月と導入一年後の九九年五月を比べると、受診件数は一万九千件減り、一七%も受診が減ったという驚くべき実態が出ています。

 総理、これは必要な医療が抑制されたということではありませんか。総理の見解を求めます。

坂口国務大臣 私が先に少しお答えをさせていただきたいというふうに思いますが、やはりその時々、医療保険制度等を改革しなければならないときがあるというふうに思います。

 今御指摘になりましたのは、今から三年前でございますか、私はそのときは野党でございましたけれども、そのときにもたしか医療改革がございました。そして、そうしたときに、今御指摘になりました難病の患者さんの問題も含めまして、医療改革全体につきましては、全体の医療制度というものを維持していくためには、やはり制度改革というものをやっていかなければならないということは当然でございます。その時々、保険料を皆さん方にお願いしなければならないこともあるだろうというふうに思います。

 今後のことにつきましても、やはり皆さん方にお願いをしなければならないときがあるだろうというふうに思っておりますが、しかし、そこは皆さん方によく御理解をいただいてお願いするということでなければならないのであろう。やはりそこの情報公開と申しますか、こういうことになっているということを皆さん方にお願いしなければならないだろうというふうに思っております。

穀田委員 聞いていることにお答えになられていると思いますか。では、全体の問題は後で言いましょう。

 私が聞いているのは、一部自己負担の導入で受診抑制が起こっている、それが起こっているかどうかについて、総理がそういうものは必要な医療が抑制されたということじゃないんだということを全般について言っておられるから、この部分はどうなんだと。そして、あなたがやった制度改革によってどんな事態が生まれているかということについてお聞きし、日本患者・家族団体協議会などが行ったような調査をしたのか、この二つを聞いているんですよね。それは総理がお答えになったことなんだから、総理に聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 私のときに法改正が行われてその後どうなったかということでありますので、今厚生大臣に答弁をしていただこうと思って、されたわけであります。

 当然、私の場合のときには、この保険制度を継続させるために、ある程度患者さんに自己負担をしていただこうと。しかしながら、低所得者に対してはしかるべき配慮がなされる、受診抑制にならないような、必要な医療行為は行われるような形で改正がなされたと思っておりますが、今御指摘の点について、三年たってどうなってきたかというのは、当然、調査なり、よく調べてみる必要もあるのではないかと思っております。(穀田委員「ちょっと、もう一遍最後のところを言ってください。調査の何」と呼ぶ)今言われたように、改正後の状況がどうなっているかという点については、調べる必要もあるのではないかと思っております。

穀田委員 私、調査したかと言ったのですけれども、調査する必要はあるということをお認めになったけれども、したのですか。

坂口国務大臣 先ほど、私、若干勘違いをいたしておりましたが、いわゆる公費負担医療の見直し、そのことを今御指摘になっているわけで、法律の改正の問題ではなかったわけでございます。ちょっと勘違いをいたしておりました。

 これが行われたことは事実でございますし、この公費の負担の見直しが行われたことによって、若干、後、変化が起こったということは、それはあるのかもしれません。現在、その後の調査をしたかどうかは、私も今急に聞かれましたので、一遍厚生省に帰りまして、調べてみます。

穀田委員 私は、これは大変なことだと思うのですね。変化があるかもしれないというようなことでしょうかね。あなた方がやった大きな一つの一部負担導入によって起きた事実が、調べたか調べないか、こういう事実があるけれどもどうかとお聞きしたのですね。痛みだけ押しつけておいて、その結果がわからない、あるかもしれないなどということを言うこと自体に、今日の構造改革によって押しつけた痛みについてまともに感じていない証拠だと私は思います。

 私は、難病患者さんと家族の皆さんから話をお伺いしました。難病患者は働きたくとも働けない人が多く、生活は大変です。難病は生涯の病気で、受診を中断することなど本来できないのに、これだけの受診抑制が実際起こっているというふうにお話しになって、受診を手控えざるを得ないということがどれだけ大変かということをお話しされていました。

 まず、就労が大変です。吹田難病連絡会会員の方に聞きますと、九十一名会員さんがおられるのだそうです。それで、就労されている方は十名でしかない。また、パーキンソン病の場合のお話をお聞きすると、手の震えや筋肉の硬直などがあるためになかなか働けない。ベーチェット病は、内科、眼科、皮膚科、多数の科目の診療が必要で、いわゆる二千円で済まない。月二千円という限界で済まない。全部行きますからね。それから、膠原病では血漿交換のために一泊入院をせざるを得ない。そうすると一万四千円かかる。これ以上例を挙げることはしませんけれども、多くの方々の願いは共通しています。だから、この点は、何とか命の綱の復活をしてほしいということなんです。

 医療が削られている。必要な医療を抑制しないと言うのだったら、難病患者の一部負担だけはせめてもとに戻すべきではありませんか。たかだか六十数億でできるのですよ。総理、どうです。

小泉内閣総理大臣 その後の実情をよく調べて、今言った点も含めましてよく調査して、少し時間を与えていただきたいと思います。

穀田委員 今私が述べた事実をさらに調べていただいて、それがそういう実態があれば、やはりぜひそのための一部負担金をもとに戻す、それぐらいはやるべきだということを申し述べておきたいと思います。

 二つ目に、健康保険本人の問題について聞きます。

 先ほど、持続可能とか維持できるということをおっしゃいます。そういう制度をつくると言うけれども、健康保険本人負担を一割から二割にしたために、健康保険問題でも難病患者と同じく受診抑制が起こっているのですね。

 厚生省の発表した九九年患者調査、ことしの三月の十二日に発表されました。それによると、外来については、患者数の動向を見ますと、三十五歳から六十四歳、働き盛りですね。その年齢階級で、患者数、受診率とも大幅ダウンし、前回の九六年の調査に比べて三十五万人、一二・四%の減も起こっています。これはよく御存じだと思うのです。

 総理は、一二・四%もお医者さんにかからなくなって、受診抑制が起こっているということについては、重大な問題だと思いませんか。

小泉内閣総理大臣 医療保険というのは、保険料負担、税金投入、そして患者さんの自己負担ということで成り立っております。

 それは負担は軽い方がいいでしょう。しかし、全体的に考えまして、確かに健保の場合は一割から二割へ負担を上げました。今、国保は三割負担です。今、高齢者は一割負担になりました。そういうことで、最近では、月百万どころか、月に一千万かかる医療行為も出てまいりました。しかしながら、三割負担、二割負担といっても、一千万かかった場合に、三百万負担いただいているか、二割負担をしている場合に二百万いただいているかというと、そうじゃないです。上限がたしか六万三千六百円ぐらいで切ってあります。

 ということについて、私は、健保に加入している方も、一割ではなく二割負担していただくのはそんなに無理な負担ではないだろうということで、保険財政のことも考えながら、健康な方々にも保険料をいただいている、これ以上増税はできないという中で、ある程度患者さんにも一割から二割の負担をいただこうということでありますから、これは私は必要な改革ではなかったかなと思っております。

穀田委員 いや、改革の話をしているのではないのです。必要な医療を抑制しているということに実際上はなるじゃないかという話をしているのですよ。大きく減っているのはお認めになられますね、受診率が一二%ぐらい減っているのだから。

 問題は、その調査結果の内容を見ますと、受診減が大きいのは、先ほどお話ししたように、三十六歳から六十四歳の働き盛りなんですね。しかも、病気の中身で見ると、高血圧症や胃、十二指腸など消化器系の疾病といった慢性疾患なんですね。その外来が約十五万七千人減っているのですよ。

 そうすると、皆さんもよくおわかりだと思うのですけれども、病気は当然早期発見、早期治療が原則ですし、そのことによって治すことができるし、その後の財政負担も減る。これはみんな知っていることですよ。

 要するに、歯科とか慢性疾患という、歯科も減っているのですね、今すぐ命にかかわらないからという形で我慢して放置すれば、病状が悪化したり、高齢になってからそれこそ重症になったりする、医療費の増大にもつながる。だから、こうした慢性疾患などを早期に治療するというのは、まさに必要な医療そのものなんですよ。だから、そういう二割負担の導入によって必要な医療が事実抑制されている、そこに私は問題の焦点というのを当てている。

 金の問題で言うならば、制度全体の問題で言うならば、私は、基本的な問題は、社会保障への国庫負担、一九八〇年代から今、二十年間を比べますと、国の負担が一〇%減っているという問題を抜きにそういうことは言えないと思うのです。ですから、肝心かなめの問題は、必要な医療が抑制されているという事態をどう見るかということをお聞きしているのです。

小泉内閣総理大臣 医療の問題は非常に難しく、深い問題があります。だれでも負担は軽く無料だという形は望ましい姿なんでしょうが、今の治療行為においても乱診乱療という行為も一部で批判されているように、医療全体で本当に必要な医療がどうなのか、適切な医療はどうなのかという点も含めまして、なおかつ、この医療保険財政を考える上において、それはお金があればできる点もあると思いますが、この医療費の伸びというものも国家財政を考えると考えなきゃいけないということで、私は、税金をどの程度投入するのか、保険料をどのぐらい負担してもらうのか、患者さんの自己負担をどの程度にするかという問題の中でこれを考えないと、すればするほどいいという意見もありますが、逆に、ある面においては不必要な治療行為もあるのではないかという両方の批判がありますから、この点はもっと総合的な視点で、増税もいけない、保険料負担もいけない、それで必要な治療はどうなのかという中で考えなきゃ、一部だけ見てもこれは論じられない点だと私は思っております。

穀田委員 だから、今必要な医療が抑制されているという事実から出発をし、私は、例えば財政の問題や、それから医療費の伸びという問題についても先ほど言いました。

 考えますと、いつもお話しになるのは、高齢者がこれだけふえるからだ、こうおっしゃいます。しかし、諸外国の例と比べても、大体八〇年代から九〇年代にかけて、日本は先進国で一番高齢者がふえたのは御存じのとおりです。ところが、唯一社会保障の額を減らしているわけなんですね。ドイツと比べたら、ドイツなどは社会保障の負担率をふやしているのに、日本は一番高齢者がふえているのに減らしている。こんな逆さまなことをやっておいて、そんな大仰なことをよう言えたものだと私は思うのですよ。

 その上で、やはり高齢者の医療費一割負担の結果も、これは今言いました健康保険本人だけじゃなくて、高齢者も大変です。この間、全国保険医団体連合会が行った、会員のお医者さんと患者に対するアンケート調査を見ますと、やはり高齢者の患者でも治療を我慢しているという例が出ているのですね。

 これは、先ほど言った、ことし一月実施された新しい制度の導入によって、やはり高血圧症や高脂血症、糖尿病、こういう慢性疾患で受診中断が起こっているんですね。こういう疾患というのは、適切な受診や管理で長く通常の生活を送ることが可能であると言われています。中断すれば重篤な合併症を引き起こしたり生命を脅かす場合もあるということで、そういう警告をこの保険医団体の連合会は行っています。

 そして、医師の調査で、治療を我慢しているという指摘があるわけです。もともと必要であるか必要でないかというのは医師が判断すべき話だと私は思うんですね。そういう角度からいっても違うということも改めて言っておきたい。

 したがいまして、今述べましたように、難病患者、それから健康保険本人、そして高齢者、やはりそれぞれに痛みを伴わせてきたと私は思います。みずからの命や健康を削って受診抑制に追い込まれている。先ほど申しましたように、社会保障の給付水準が欧米諸国に比しても低い。その一方で、国民の負担はさらにふやす。こういうやり方自身が制度の空洞化をもたらすものだと私は断言しておきたいと思います。

 私どもは、大筋の話で言うならば、公共事業には毎年五十兆円使う、社会保障には二十兆円しか使わないという、この財政構造全体を大きく転換するということをやれば社会保障も充実できるということが私どもの立場だということを述べておきたいと思います。

 次に、では今後の問題についてお聞きします。

 総理は、痛みを恐れずと言っています。構造改革の名でやろうとしていることの第一に掲げるのが、緊急経済対策そして所信表明、いずれの中にも、二年、三年以内に不良債権を処理することだとおっしゃっています。そして、不良債権の早期最終処理などの構造改革なくして景気回復なしとまでおっしゃっています。

 しかし、今の不良債権の実態を見れば明らかなように、景気が悪いから不良債権がふえているのであり、景気がよくなれば、今経営困難に陥っている中小企業の売り上げも回復し、不良債権だった債権が正常に戻る道も開かれる。だから、問題の立て方が私は間違っていると思うんです。不良債権の最終処理なくして景気回復なしではなくて、景気回復なくして不良債権の解決なしだと私は考えます。

 そこで、第一にお聞きしたいのは、不良債権の最終処理とは何かという問題です。そして、何が起こるかという問題です。

 これまでに政府の説明では、一つは、大手ゼネコンなどの大企業に対しては、債権放棄という徳政令、借金棒引きをする。しかし、この場合でも、不採算部門の切り捨てなど過酷なリストラや下請機関に対する整理などによって大量の失業者が出ます。二つ目が中小企業で、中小企業にとっては資金が回収されるということになりますから、当然、倒産や廃業に追い込まれ、ここでも失業者が生まれます。

 一気に不良債権の最終処理をやれば、大倒産と大失業を招くことは明らかです。この二年、三年で最終処理をやるということを方針にする以上、どれくらい失業者が出るのか、きちんとした見通しを示すのが当然だと思うんです。ところが、小泉総理は本会議で、定量的にはわからないと、明確な答弁を避けています。国民にとっては、失業はあすは我が身という重大な問題です。

 そこで、このパネルを示したいと思うんです。

 各種のシンクタンクが、不良債権の早期処理に伴ってどれだけ失業者が出るかということで、大変衝撃的な数字が出ています。

 ニッセイ基礎研究所の試算では、百三十万人という失業者が生まれると試算しています。直接償却の対象となる債権が金融機関全体の貸出総額の四・八%に当たる、その割合で全就業者が影響を受けると見て試算したのが百三十万人です。

 そして、第一生命の場合には、不良債権処理によって、卸売業、小売業で二十八万人、建設業で二十二万人、全体では百十一万人が新たに生まれると。

 あなたは計算できないと言い張りますけれども、破綻懸念先以下の不良債権の最終処理をすれば、百万人から百三十万人ぐらい生まれるとの認識は共通しているんですね。だから、定量的にはわからないなどとは冗談じゃないと私は思うんですね。ちゃんと見込みについて示すべきだと思うんです。答弁を求めます。

柳澤国務大臣 先生がおっしゃるように、現在、我が国金融機関の不良債権が、何というか、微増と申しますか横ばいの状況にあるわけですが、この背景には、一方で、多分、法的処理を中心とした処理だろうと思うんですけれども、そういうものも進めている。しかし他方、今申したようにその残高が横ばいということの中には、御指摘のような、現在の日本経済が不振のために新たな不良債権が発生しているという側面、これは否定すべくもないんじゃないかと私自身は思っているわけでございます。

 しかし、私は、それではどうしてこういう不良債権が生ずるのか、そのことについて今度は、金融機関の側に原因というか責任がないのかというふうに問題を立てているわけでございまして、そうだとすると、特に今の日本の経済の苦境を脱却するには、構造改革というか、要するに適切なミクロ政策の積み上げこそが最も有効な手段ではないか、このように考えておりますので、そういう立場に立って、私自身が担当している金融機関の不良債権の処理を進めることによって、今言ったような構造改革に寄与するというか、そういうことを考えているという次第でございます。そういう構造改革をやることによって不良債権の発生をむしろ抑えていく、そういうことを考えている。

 それで、今穀田委員が言われた失業者との関係でいいますと、穀田委員は、例えばゼネコンに徳政令をやることによってというようなことを前提にし、そして下請企業に大変な災厄を失業者その他でもたらすというようなことをおっしゃられたのですが、我々がゼネコンに対して私的な整理の方がいいじゃないかと考えるその理由は、この人たちが大量な下請企業を進めている、だからこの人たちの影響をできるだけ局限する、そういう方法を弾力的にやるには法的整理より私的整理の方がいいんじゃないか、こういう配慮のもとにそういうことを、決定したわけじゃないのですが、考えているということもぜひ御理解を賜りたいと思います。

野呂田委員長 穀田君、両方にまたがりますので、経済財政政策担当大臣。

穀田委員 ちょっとお待ちください。いいです、まず私が言いますから。

 今のお話で、やはり二つ大事だと思うのですけれども、まず、たくさんの失業者が生まれるということは否定できない。もう一つは、おっしゃったように、経済が、景気が不振のために生まれていることも否定できない。この二つは私の言っているとおりだと思うのです。では、ゼネコンなどで生まれている私的なやり方、そのことによって何も起こらないかというと、やはりそれも起こるんです。それは当然なんです。

 ですから問題は、私が聞いているのは、そういうことをわかった上で、総理がわざわざ定量的な数字が出せないというふうにおっしゃったから、それでいいのか、総理はどの程度見込んでいるのかと。私は、共通の認識として百万人から百三十万人生まれるじゃないか、そういうことを否定できるのかということを総理に聞いているのです。そこを話しているのですよ。大きな経済論は今やりました。だからそれはいいのですよ。

 だから、どの程度生まれるのか。しかも、政府が出している緊急経済対策でも、中小企業の分野でさえそういう失業は生まれると言っているのです。あなたが、緊急経済対策に基づいて、しかも今度の所信表明で不良債権の処理なくしてと、やると言っている、失業者も出ると言っている。どの程度出るのかと聞いているのですよ。

野呂田委員長 総理が答弁しますが、まず、経済財政政策担当大臣、答弁してください。

竹中国務大臣 まず、前半で穀田先生が聞かれた、景気と不良債権の一種の悪循環というのは確かに存在しています。しかし、では悪循環をどこで断ち切るかということなんです。

 景気が悪いから不良債権がふえているという面は確かにある。では、景気をよくするにはどうしたらいいか。それには不良債権を償却するしかないというのが実は専門家の明らかな考え方なんです。これは、最近のアメリカ等を中心とした経済学の成果をぜひとも一覧していただければ、私が申し上げたのが少なくともメーンストリームの専門家の常識的な見解であるということは、すぐわかっていただけると私は申し上げます。必要があれば幾らでも解説を申し上げたいと私は思います。

 さらに、第二の問題であります。

 一体、どのぐらい失業が出るのか。これは大変難しいからわからないと総理はおっしゃいました。そのとおりです。これは今までの我々が積み重ねてきた知識をもってしても、こういう大きな構造変化のもとでどのぐらいの数字が出るのか、計画経済じゃない限りそんなことは簡単にわかるはずはない。そんな方法があったらぜひ教えていただきたい。これは、私たち経済財政諮問会議の骨太の方針の中で私たちは幾つかのめどを出すつもりです。

 民間の研究所がやっているというふうに言われました。あの研究をやっているのは、数字を出したのは、みんな私の友人たちです。どういうやり方でどういう前提をやっているか、私は全部承知しております。もちろん、前提を置いて。正直言いましてあの数字は、私の印象では、これから経済の骨太の方針の中で幾つかの数字を出しますけれども、一般に言う我々が想定される感じではあの数字は少し大き過ぎると思いますが、それもその範囲の中でのめどをきちっと出したいと思っておりますので、それについてはぜひ専門的な立場から御議論をいただきたいと思っております。

穀田委員 いろいろな学説があることは承知していますよ。どうしてこの悪循環を断ち切るか、それは、私どもは、やはり景気を立て直すためには個人消費を温める以外にないと言っているんですよ。それは、そういう問題でいうならば、緊急経済対策でもそういう分析をしています。それは後で言います。

 問題は、そういう大量の失業者が生まれるということだけは、これは五十万と言おうが百万と言おうが百三十万と言おうが、そういうけたの大きな数字が生まれるということを大体共通の認識にしている。だから、あなた方のそういう経済諮問会議などでも五百三十万人ぐらいを支える体制をとろうというんでしょう。言ったじゃないですか。自分たちでそういうものが出るだろうということを予測して会議をやっているんですよ。問題は、じゃどういう努力をして、これのセーフティーネットをやるのかという問題についても聞いてみたいと思います。

 大体、政府はこれまで、そういう雇用の危機が生じる可能性が出てくるたびに、百万人、七十万人の雇用の増を図ると言って雇用対策を行ってきました。それは御承知ですよね。これ自身が絵にかいたもちだったと私は思います。

 そこで、政府のこの緊急経済対策にある雇用対策ではいろいろ書いています。おおよそどのぐらいの雇用が確保できると考えていますか、総理。

坂口国務大臣 雇用問題でございますから、私の方からお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 先ほどもいろいろの数字をお挙げになりました。建設の問題でも、失業者が二十二万とおっしゃいましたでしょうか、それは建設の場合には全体で約五百万の雇用者がございます。また、不良債権の多いところといいますのは、一番多いのはサービス業で、これは大体雇用者としては千五百万、そして流通関係のところで約一千万、これが大体一・九兆円ぐらいの不良債権がございます。建設が約五百万ございます。大体、全体で、一番大どころのところで約二千万の人たちがいるわけです、ずっと考えてみますと。

 ほかにも不動産とかなんとかいろいろございますけれども、ここはそんなに人数は多くはない。全体で見ますと、大体、あらあら二千万あるいは若干それ強になるかもしれません。その人たちの中で、一体そこで新しい雇用をどう見つけ出していかなければならないかということを考えていかなきゃならないというふうに思っています。

 そこで、今考えておりますことは、一つは、この中での一番大事なことは、一番大きいのは、やはり第三次産業のところで新しい産業をつくるということを我々は念頭に置いて今やっております。第三次産業。ここは崩れる部分もありますけれども、新しい部分ができてくるところもありまして、これはもう入れかわりが非常に激しいというふうに思っております。ここはかなりできる。

 それから、ミスマッチのところでございます。ミスマッチのところを、職業のいろいろの訓練を今も五十万ぐらいやっていますが、ことしは八十万ぐらいにふやしていきますけれども、どんどんここをふやしていかなきゃならないというふうに思っておりまして、ここをミスマッチをなくしていく。

 しかし、その前に、さまざまな問題がございますけれども、年齢の問題が大きな問題になっておりますので、中高年に対しまして年齢制限というのがあるもので、これを取っ払うように努力をしていく。

 これらの問題を、ここはつくり上げていかなければならない。これらの問題を中心にして、そうして新しい雇用をつくり上げていく、そこを着実に今やっているところでございます。(発言する者あり)

穀田委員 驚きました。これでわかると言う人がいた。驚いたね。

 何万人ふえるのか、幾らふえるのかという話を聞いているときに、聞きましたか、対策で増減がある、だから第三次産業を念頭に置いている、しかしこれは減もある、ミスマッチだ、年齢制限。年齢制限があっても、全体ミスマッチと言うけれども、全体の求人倍率は上がらないわけでしょう。そういう実態があるということを百も承知でよく言われますな。だから、さっき言いましたけれども、ついでに言っておきますと、こんなふうにして、実は、もし失業者を出せばGDPも低下するわけですよね。さらにこれが景気悪化を招くということはもう火を見るよりも明らかだ。

 漠とした話をしていますねんけど、政府は、さっき言った九八年以降の百万人の創出、それから七十万人を上回る雇用の増大など計四回やっていまして、二百五万人の雇用創出計画を立てたんですよね、合わせますと。ところが、結果は、その実績を合わせても二十七万人程度なんですよ。そして、その中の目玉と言われた緊急雇用創出特別奨励金、六百億円、二十万人、計上しているんですよ。総理、聞いておってね。二十万人、計上しているんですよ。そして、その実績は五千八百五十六人、たった三%なんですよ。

 だから、今のお話全体を聞いていたらわかるように、政府の不良債権処理中心の緊急経済対策によってどの程度失業者が生まれるかということについては、もう一つわからない。それで、失業者が就職できる新しい受け皿が、さっき言ったように三つばかり話があるけれども、どの程度かというとさっぱり漠としている。こんな無責任なことがあるだろうか。私言いましたように、失業率がふえればさらに所得減によって個人消費は落ち込む、そして景気をさらに悪化させる、そういうことになってしまうわけですよね。私は、そういう点が明らかだと思うんです。

 そこで、じゃ、私どもはどうするかという問題についてもありましたから、はっきり言って、あなたが言っている構造改革なくして景気回復はないという点は違うということを先ほど言いました。それは、国民の暮らしを痛めつけるような施策をやっていたんじゃだめなんだ、景気の回復はないというふうに私は考えます。

 そこで、今の日本経済の最大の問題点というのは、日本経済の約六割を占める個人消費が冷え切っているところにあります。ここを温め、そして支える政策に転ずる必要があることは明白です。これまでの政府の経済対策の基本的立場というのは、企業の収益が上がればいずれ家計の消費も回復するというものでした。ところが、政府が四月六日に発表した緊急経済対策は、こう言っています。

 生産・企業収益が回復し、民間設備投資も持ち直しを示すようになった。

今は下がっていますけれどもね。だから大変なんですけれども。

  企業部門のこのような復調は、本来ならば家計部門の回復をもたらし、自律的景気回復に向けた好循環の端緒となるはずであった。しかし、企業部門の復調にもかかわらず、所得・雇用環境の改善は遅れ、個人消費の回復は見られていない。

こう述べています。

 ですから、今まで言ってきた、企業に収益が上がれば回ってくるということでいくとどうもうまくないというのがこの分析なんですね。そういう話は、当時、前財務大臣の宮澤さんはお話しされていました。それは知ってはりますわな。だから、その分析というのは、私は、極めて的確だと思うんです。だとすると、今までの従来型の景気対策から、国民の家計を直接温める経済対策への転換こそが必要だと考えています。そして当然だと思う。

 日本共産党は、その方策として三つの転換を主張しています。一つは、消費税の税率を三%に引き下げて個人消費を温める。そして二つ目は、社会保障の改悪を凍結し、国民の将来不安をなくす。そして三つ目に、今行われているようなリストラについてストップして、雇用の拡大と中小企業への手厚い対策をとる。この道以外に、政府がこれで分析をなすっている個人消費を直接温める道はあるのかということを総理にお聞きしたいと思います。

塩川国務大臣 消費税の問題が出てまいりましたので、私からちょっとお答えいたしますが、消費税を下げろということが第一の条件でしたね。そして社会保障の改悪を停止しろ、二番目でしたね。それから失業を抑えるが三点目。

 ただ、そうしますと、一番目、消費税を下げて、給付の方はどんどん出せということになってまいります。それは、先ほども総理が説明しておりましたように、給付と負担の均衡をとるという精神からいいますとなかなか難しい話ではございますし、しかも、消費税というのが今日では基幹的な税収になってきておりまして、これがためには国家の財政の基本問題に触れてまいります。それが一つ。

 それともう一つは、消費税は福祉関係に充当するということが予算総則にうたってあります。したがって、消費税を下げるということは、やはり社会保障関係、福祉関係を下げろということに通じてくるということになりますし、我々としてはそういう方法はとれません。

 したがいまして、消費税の減税ということは考えることはできないということであります。

小泉内閣総理大臣 今の御意見聞いていますと、一部では確かに当たっている点もあると思いますが、私は、全体を考えますと消費税引き下げは無理だと思います。

 五%に引き上げたというのは、これは、所得税の税率が高いからもっと所得税を減税しろという所得税減税の財源のために消費税を三%から五%に引き上げた。それと、社会保障につきましても、これは今後社会保障関係の費用はふえてまいります。委員も御承知のとおり、年金にしても医療費にしても、これは、高齢者がふえていきますから、この費用もふえていきます。

 そうなると、共産党の皆さんは国債を増発しろという態度はとってないと思います。かといって、増税もするなという態度だと思います。そうすると、ふやす方だけを考えますけれども、これはどこの財源を探してくるのか。そういう全体のことを考えながら政府の予算は組まなきゃいかぬ。

 私は、そういう点からして、今五%を三%に引き下げますと、大体一%二・五兆円ですから、五兆円の税をどこから持ってくるのか。社会保障関係も、保険料も上げるな、受益者負担もふやすな、ふえた分は税金投入しろとなると、これまた幾らかかっていくのかという点も考えなきゃいかぬ。

 我々は、そういう全体の国民の負担の、余り増税したら活力なくなっちゃう、そういう点も考えていかなきゃいかぬという総合的な考えから、私は、今、聖域なき構造改革といって新しい改革をしていかなきゃならぬなと。これは全体の財政状況、これも見ながら、整合性のとれた改革をしていかなきゃならないなということも御理解をいただきたいと思います。

穀田委員 大きく言いまして、私は大きな間違いがあると思うのですね。

 例えば、基幹税というけれども、こういう経済発展の状況の中で、例えばアメリカという話が出ましたけれども、アメリカなどは直接税を中心にしていますから、経済全体が大きく膨らんだときは税収もうまくふえるのですよね。しかも、社会保障に使ってきたからなどということだけは覚えておいでですけれども、それほど使われていない、これもお忘れじゃないかと思うのですね。日本では一九八〇年代からそういう全体の財政に占める割合というのは随分減っているのですよ。そういうこともそうだ。

 そして、所得税の財源と言われましたけれども、これは当時、高過ぎるか低過ぎるか大問題になって、金持ち減税と大きく批判が出たところであるわけなんです。ですから、そういう問題ではもう決着済みなんです。

 しかも、ではその一方で何をやっているかといいますと、この十数年間、宮澤さん以来、十二回も経済対策を行って、その中で百三十四兆円ぐらいのお金を経済対策につぎ込んで、そのうち百兆以上の公共事業をやってきたんですね。そういうところ自身にむだがあるというふうに我々は考えています。

 そこで、私どもが行った緊急提言に示した三つの転換について、その財源の裏づけも私どもは示しているんです。そう言うだろうと思ったんです。だから、先ほど言いましたように、世界に例のない、公共事業に五十兆円使う、そして社会保障に二十兆円という異常さを正していく、そして、そのために今ゼネコンや銀行なんかにうんと金を使っているという事態、せめてこのゼネコン型の公共事業をやめて、そして段階的に半減させるという展望を出しています。

 それで、総理は、大体、国民に痛みをと言いながら、問題となっている諫早湾の干拓や川辺川ダムなどの中止については、従来の政府の答弁と同様、結局大型な公共事業の継続を繰り返すのみなんですね。

 そこで、私聞きますけれども、総理は、財政構造改革の一段階として、来年度予算から国債発行を三十兆円に抑えることを目標として掲げました。しかし、財務省が発表した「財政の中期展望」によれば、公共事業、歳出の方ですね、それは横ばいだ、そして社会保障費は当然自然増分だという前提で、そして歳出に対する歳入の不足分を賄うためには、来年の二〇〇二年度では三十三・三兆円の新たな国債発行が必要としているというのが財務省の中期展望なんですね。

 そうしますと、二〇〇三年度は五兆四千億円足りないわけですよ。だから、国債発行額を三十兆円で抑えようとすると、来年度は三・五兆円、再来年度は五・四兆円、それぞれ国債の発行を減らさなければならないことになる。そうしますと、これを減らすためには、歳入の方は当然、増税なし、こう言っているわけだから、その分歳出の方でカットせざるを得ない。だとしたら、どこをカットするのかということは当然問われますやんか。それはどうなんですか。

小泉内閣総理大臣 いいことを聞いていただきましたけれども、来年度予算でも三兆円程度削減するのは大変な努力を要するのは事実であります。

 先ほど、公共事業が莫大に何百兆と言って、福祉が二十兆円程度とか言っていますけれども、政府の予算は、今福祉関係予算は十七兆円を超えて、公共事業は十兆円程度ですよ。それを今、地方まで入れたら福祉なんかもっと膨大な額を使っていますよ。国の予算の中で一番使っているのは、地方に行く金と社会保障、そして借金で今苦しんでいるから、この借金をいかに減らしていくかということで、行政改革もしなきゃいかぬということでやっているんで、一部だけを見てとらえてやると、では、消費税四兆円の財源をどこから持ってくるのか。公共事業費を四兆円削減するというのも大変だし、もっと大きな点で見ていただきたい。私は、来年は三十兆円以内におさめるというんですから、今の規模で考えて三兆円削減するということを考えますと、公共事業も当然削減しなきゃならない。そういう点を努力しようというんです。

 なおかつ、むだな仕事をしている公務員もいるかもしらないから、公務員も減らそうと言っているんでしょう。

 そういう点も考えてやっていただかないと、一部だけをとらえてこの負担はどうだというと、これまた誤解を与えるから、その辺をよく気をつけていただきたい。

野呂田委員長 時間でございますから、簡単にお願いします。

穀田委員 やはり公共事業費は行政投資額実績ベースで四十七兆やっているんですよ、国と地方公共団体を合わせて。それで社会保障費全体はそういうもんなんですよ、公益がやっているものは。それはもう論争済みなんですよ。問題は、そういうところの公共事業に大なたを入れるという話はなかったということなんですよ。

野呂田委員長 穀田さん、後の質問者に迷惑がかかりますから、やめてください。

穀田委員 私は、その意味で、構造改革で痛みを押しつけるという断行はやめさせるということのために頑張りたいと思います。

 終わります。

野呂田委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 まず、小泉総理、御就任まことにおめでとうございます。

 総理は、自民党を変える、日本を変える、そして聖域なき構造改革を断行すると叫び、多くの圧倒的な国民の支持を得ているわけでございます。しかし、改革、改革と、これは一見国民の皆様方には心地よく聞こえるわけでございますが、なぜ改革をしなければならないのか、改革をしなければならないような状況にしたのはだれなのか、その責任はどこにあるのか、ここのところをまずしっかりと認識して、そして反省してから改革に取り組まなければならない。

 これは、ほかの政権、自民党以外の政権でこういった状況ができたわけではなくて、紛れもなく自民党を中心とした政権でこういった状況ができ、それを改革せざるを得ない状況をつくったということを、まず総理も認識していただきたいということでございます。

 総理は、所信表明を含めて、政治への信頼を取り戻すんだ、このようにおっしゃっておりますが、これはとりもなおさず、政治への不信がいかにすさまじいところまで来ているかということを認識しているということでありましょうが、国民が今のような政治不信に陥った最大の原因はどこにあるとお思いでしょうか。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 いろいろな事情があると思いますが、まず、経済状況が思わしくないという点もあると思います。それと、今、国民の税金が、今までの借金の利払いに回ってしまって、有効な事業に使われていないという点もあると思います。同時に、政治家に対する信頼、政党に対する信頼、これがいろいろな不祥事で損なわれている。

 もろもろの原因が重なって、何とか政治を変えてほしい、新しい時代に対応した体制をとってもらいたいという気持ちを多くの国民が持っているのではないでしょうか。それに対して政党も政治家も国民の期待したような行動をとっていないという不満が、根深く国民の間に存在しているのではないかと思います。

横光委員 もろもろの原因があるというお話です。確かにそうでしょう。経済もこういった状況です。税の問題もあります。そして、政治家の不祥事ということもつけ加えられました。私は、まさにそこだと思うのですね。国民の政治に対する信頼を一番失った原因は、やはり政治腐敗ですよ。これがやはり政治不信の最大の原因だと私は思う。

 つまり、これまで毎年毎年、次から次へと国民を愚弄するかのような政治家の金権汚職事件、この姿を見たときに、次から次へと政治への信頼を失っていった。そして、この汚職事件を起こす議員はどこの政党の人ですか。ほとんどと言っていいぐらい、自民党の方々でしょう。

 その自民党を変えるとあなたは言ったんです。それに多くの皆様方が今賛同している。自民党員のみでなく、国民の多くが、あなたの、自民党を変えるということに賛同している。その賛同している、今一番変えてほしい、改革、改革の中でまず最初に改革してほしいのは、自民党のそういった政治腐敗の一掃だと私は思うのですね。これができたら、さらに支持率が上がるかもしれません。(発言する者あり)いやいや、それが政治不信の最大の原因だと私は思います。

 そこで、総理にお尋ねいたします。

 例のKSD事件のときに、二月、あなたは、疑惑を持たれた人は国会で堂々と語るべきだ、そしてそれができないなら議員をやめるべきだ、これは地方の講演で語られております。至極もっともなことを、国民が全く同じ感じだなというようなことを言われた、自民党の中で。勇気のある人だなと私も驚いたり感嘆したことがあるのですね。あれから三カ月、あなたは何と総理になられた。よもや、あのときのお気持ちは変わっていないでしょうね。

小泉内閣総理大臣 変わっておりません。

横光委員 信念の人ですからね。変わっていないとは思っておりました。

 であるならば、総理、あのKSD事件、まだまだ多くの疑惑が残っておるのです。村上、小山両前議員の議員辞職や逮捕だけであのKSD事件を幕引きするのではなく、まだ疑惑が残っておる人がいるならば、同じように国会へ出て語るべきだと今またおっしゃられました。

 例えば、額賀議員はどうですか。政倫審に出て一度釈明をいたしました。しかし、一千五百万円という金をなぜ受け取ったのか。そして、返却した過程も不透明。まだまだ多くの疑問が残っている。ですから、我々は本予算委員会でずっと証人喚問を要求し続けているんです。しかし、自民党がずっと拒否し続けているんです。

 あなたは今、最初の言葉は変わっていない、疑惑を持たれている人がいるならば国会で語るべきだと言われた。同じ考えを持っている。であるならば、疑惑を持たれている額賀議員に、堂々と国会に出て語るべきだと今ここではっきり明言してください。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 だれであろうと、疑惑を持たれたら、自分の疑惑を晴らすために、しかるべき場所に出て、その疑惑に答える態度をとるべきだ、そう思っております。

横光委員 だれであろうとということは、もちろん額賀議員も含まれているということでございます。委員長、このことを今よく覚えておいてください、我々はずっと要求し続けているのですから。疑惑を持たれている議員はだれでもここで語るべきだと、今総理の言葉ですから、自民党の総裁の言葉ですから重いです。委員長、よろしくお願いいたします。

 次に、いわゆるゼネコン汚職で、一審に続き高裁でも有罪判決を受けました中村喜四郎議員、この議員の辞職勧告決議案を、国会の自浄能力を示そうということで、野党四党が提出しております。公明党も賛意を示しております。しかし、自民党だけが腰を引いている。賛成するどころか本会議で採決することさえ認めようとしていないのです、今議運で協議しておりますが。

 自民党を変えるとあなたは言ったんですよ。一番変えなきゃいけないのはここの体質なんじゃないんですか。やはり国会の自浄能力を示す意味からも、自民党もこぞって議員辞職勧告決議案に賛成すべきだ、本会議で採決すべきだとお答えくださいよ。

小泉内閣総理大臣 これは参議院でも、辞職勧告決議案が可決されてもやめない議員もいますね。こういう点について、私は、本来議員というのはみずからの判断で出処進退を決めるものだと思います。そして、中村議員についても、有罪判決は受けたと思うのですが、選挙民は当選させていますね。

 そういう点も考えて、私は、本来国会議員の出処進退というのはみずからが判断すべきものではないか、そう思っております。

横光委員 許諾請求のときには不逮捕特権があった。その請求のときには自民党も賛成しておるんです。このときは、まだ要するに容疑者ですね。そのときには賛成しておるんです、国会への許諾請求。そしてその後、司法の審判を受けて二回とも有罪を受けた。いわゆる汚職の疑惑は濃くなっている段階に来ているわけです。ですから我々は、さらにもう一回議員辞職勧告決議案を出そうとしているんです。それの前には賛成していて、今度はしない。

 それから、友部議員のときには辞職勧告決議案にさえ自民党は賛成しているんです。ですから、そのときは他党ですね、他党の議員なら賛成する、自分の党に関係あった人ならば賛成しないというふうに国民はとってしまうんですよ。ここのところがやはり、あなたが言う一番の国民の信頼を取り戻す原点だという気がするのですが、なかなか前向きのお答えがない。

 それで、あなたは構造改革を断行すると言われております。すごいことです。構造改革を断行するためには、言われております政官業の癒着構造、これを打破していかなければなりません。そして、いわゆる既得権益の確保、あるいは省庁や業界の代表者と言われておりますいわゆる族議員の人たちは、あなたのこの政官業の癒着打破ということになりますと猛烈に抵抗すると思います。あなたは、自分の内閣の方針に反対する勢力はすべて抵抗勢力だと言い切っております。ということは、既得権益を確保しようとするいわゆる族議員は、あなたの改革にとっては抵抗勢力になりますね。

小泉内閣総理大臣 自民党のことを言いますと、いろいろな問題が出てくると、賛否両論、かんかんがくがくの議論をします、賛成する議員、反対する議員。しかし、時間をかけて議論しますと、反対者も、自分の意見に違う者が多ければそれに従う、そういう習性があります。ですから、私の方針に反対する人間がこれからも何人か出るでしょう。しかし、そういうことは党内で議論していけば、多数に従ってそういう方も従ってくれるという場合も多々あるわけであります。

 今後のことでありますけれども、私は、最初例えば小泉内閣の方針に反対する、あるいは政策に反対する方がいても、いろいろ議論を積み重ねていくことによって賛成に回ってくれる方も出てくるのではないかと期待しております。

横光委員 大分あの最初の改革の決意が鈍ってきましたね。私はそういう気がしますよ。

 国民が一番望んでいるのはそこなんですよ。いわゆる政官業の癒着があるからどうしても政治腐敗が起きてしまう、そして何をやっても政治を信頼できない、そこのところにメスを入れなきゃだめ、そしてメスを入れることができるのはあなたなんです。自民党の総裁で今までそんなことを、改革するなんて言ったことはないのですから。そこに国民の皆様方は圧倒的な、党員以外の人たちだって今そこに期待しているのですよ。

 総理、今度の参議院の比例区の候補者ですが、いわゆる各省庁のOBの皆さんがずらっと並んでおります、新人の方でですね。これはもう、郵政局長、地方農政局長、農水省局長、厚生省課長、運輸省審議官、自治省審議官、いわゆる省益を代表する方々ばかり。団体を代表する人たち。

 国民は、こういった人たちのことを族議員の象徴的な、最も強力な省庁、関係団体の代表者だと思っているのです。こういう人たちが当選してくれば、結局あなたの構造改革、規制緩和、いろいろなことに既得権を確保するために相当な抵抗をしますよ。しかし、あなたはもちろん総裁ですから当選させなければならない。そうしますと、矛盾しませんか。当選させるということは、あなたの構造改革に抵抗する人たちをふやすということになるのです。矛盾しませんか。

小泉内閣総理大臣 そこが余りにも短絡的だと言うのです。そういう一部の議員に振り回されちゃいかぬと私は言っているのです。恐らく野党も労働組合からの推薦候補を抱えていると思いますよ。しかし、その一部だけに動かされたら国民は信頼しないでしょう。自民党だってそうですよ。

 それは役所の関係者はいます。では、これからの私の方針に反対するかどうか見てごらんなさい、賛成する議員が出てきますから。今まで反対していても、違うと。現にそうなっています。たとえ一人二人いても、多数がそんな意見はだめだよと言えば従うのですから、そんな御心配なく。

横光委員 しかし、それは、一つの組織とか団体とか業界が大きな固まりになって自民党という支持団体がある、そういったものというのはなかなか崩れるものじゃないし、総理が改革、改革と言った、そして国民が一番望んでいる、まずやってほしい改革である政治への信頼を取り戻す、そのための構造改革あるいは政官業癒着の打破、いろいろなことで今意見を聞いたのですが、なかなか国民が期待していたような答弁ではなかったような気が私はいたします。

 あなたは午前中の質疑で、二十世紀の自民党にさようならするということまで言われた。今私が事例を挙げて総理の意見を聞いたほとんどは、二十世紀の自民党の姿なんですよ。あなたは、午前中、二十世紀の自民党にはさよならすると言った。ちっともさよならしていないじゃないですか。二十世紀の自民党よこんにちはと言っているようなものじゃないですか。国民だってそう思っていますよ、恐らく。ここではっきりと改革の断行の姿を示すような答弁を今してくれれば、恐らく国民はさらに小泉さんに期待するんだろうなと私は思う。ここのところがやはり一番の原点ではないかという気がいたしております。

 次に移ります。

 国連に加盟しておりますのは世界百八十九カ国、現在あるそうですが、この中で、首相公選制を採用している国はあるのでしょうか。

小泉内閣総理大臣 首相公選制というのがどういうものかはまだ具体的にわかっていないですね。大統領制的なものがあるとか、あるいは議院内閣制とどう違うのかとか、イスラエルの首相公選制とか例を挙げています。私は、日本型の首相公選制を考えていきたい。世界のどこにも例がない。天皇制も世界に例がありません。

 それぞれ、国の独自の制度があっていいんじゃないでしょうか。

横光委員 総理は、我が国の元首はだれだとお思いでしょうか。

小泉内閣総理大臣 憲法でも、天皇陛下のことを元首と規定していません。象徴と言っています。しかし、外国の中では、ある意味においては元首的な行為を陛下はとられているなと思っている向きもあるでしょう。政治的な権力、最高権力者は総理大臣ですね。しかし、天皇陛下に対しては、権力以外の長年の歴史的な伝統、重みがある。権威の面においては、天皇陛下の重みはすごい大きなものがあると私は思っております。

横光委員 外交儀礼的には、やはり天皇陛下が日本の元首の役割を担ってくれていると思うのですね。ですから、そういったあなたの言われる元首とは、主権の存する日本の国民の総意に基づいて初めて天皇は、外交儀礼的とはいえ日本国の元首たり得ている、このようにお考えでしょうか。

津野政府特別補佐人 天皇が元首であるかということにつきましては、これは従来から国会で、私どもの方からいろいろ答弁をさせていただいております。

 天皇が元首であるかどうかは、要するに元首の定義いかんだろうというふうに思われるわけでありますけれども、かつて帝国憲法におきましては、元首とは内治外交のすべてを通じて国を代表し、行政権を掌握している存在であるということで、帝国憲法上は天皇が元首であるということも明記されておりました。しかし、現憲法下では、そういった定義の上から見れば元首というわけにはまいらないわけでございます。

 ただ、今日では、実質的な国家統治の大権を持たなくても、国家におけるいわゆるヘッドの地位にある者を元首と見る見解も有力になってきているわけでございまして、この定義によるならば、天皇は国の象徴でございまして、さらに、一部ではございますけれども、外交関係におきまして国を代表しているという面もございますので、現憲法下においても元首であると言ってもいいであろうというふうに考えております。

横光委員 元首法とか元首を定めた規定はないわけですから、今のような説明でありましょう。

 あなたの提唱されております首相公選制というのは、いわゆる全有権者の投票によって、全有権者の総意によって選ばれるということになろうかと思います。例えば、任期が四年だろうか五年か六年かわかりませんが、そういった形で、全有権者の総意によってそのヘッドが選ばれる。いわゆる統治権を持っている国家の一番の長になるわけですから、元首ということになりますね。その人を選んだ瞬間に天皇陛下は元首でなくなるのではありませんか。

小泉内閣総理大臣 その意見は私も理解できないのですが、なぜ国会議員が選んだ首相が弱くて、国民の選んだ首相が元首にならなきゃいけないのですか。私は、今、国会で指名した総理大臣候補を天皇陛下が任命する、国民が選んだ首相候補を天皇陛下が任命する、天皇制と矛盾しないと思いますよ。そして、元首かどうかというのは、今、天皇陛下は国民の象徴なんですから、法制局長官が答えられたように元首ではない。しかし、外国から見れば、元首的な国事行為をする場合もある。しかし、厳密に法的な解釈からすると元首とも言えない。いろいろ解釈があるわけです。

 私は、首相公選制を考える場合も、天皇制と共存できる首相公選制を考えていますから、何にも矛盾しないと思っております。

横光委員 今、首相は、いわゆる議会の中で選ばれているわけですね、議院内閣制の中で。ところが、今度、国民の、選挙という有権者の総意によって選ばれる。直接なるわけですね。そうしますと、やはり私は、この問題は、元首という言葉から天皇の地位に非常に影響を与えるんじゃないかという気がいたしておりますし、また、国会の存在、議会の位置づけ、こういったところにも非常に多くの問題を抱える。国民には、みずからの一票で首相を選べる、非常にこれもわかりやすいし、賛意を示している人も多いんですよ。しかし、多くの問題がまだまだ残っているということもやはりこれから論議していかなければならない非常に重要な問題であると私は思っております。

 次に、憲法第一章は「天皇」から始まっております。この七条の十項に、天皇は「儀式を行ふこと。」というくだりがございます。天皇が、国民統合の象徴ということで、多くの儀式や行事に出席されておるわけですが、この中で、国民と接する行事といいますか、これは行幸啓というんだそうですが、いわゆる国体とか植樹祭とか、あるいはスポーツ観戦、大相撲とかサッカーとか、そういったことで出席される行事が大体年に五十回ぐらいあるということをお聞きいたしております。

 そんなに多くないなという印象がするんですが、これは、そんなに軽々しく天皇を扱うことはできないんだということだと私は思うんです。総理もそのようにお考えでしょうか。

津野政府特別補佐人 この第七条の第十号に、国事行為として「儀式を行ふこと。」というのがございます。ここに儀式と申しますのは、国家的な性格を有する儀式を申しまして、私的な性格を持つものは含まないということでございます。立太子礼とかがこれに当たり……(横光委員「植樹祭とか国体とか、そういったことを聞いておるんですが」と呼ぶ)そういうのはこれには当たらないと存じます。

横光委員 こういった天皇の出席される行事、これは非常に重要でございますし、当然、国民みんなが天皇の出席される行事はとうとばなければならない、このように考えておりますが、総理も同じお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 天皇陛下の存在というのは、私は日本国民にとって非常に重いものがあると思います。

 今、各行事の出席回数が多いか少ないかというお話なんですが、その前に、私は……(横光委員「回数じゃない。重いかどうかです」と呼ぶ)重いものがありまして、これは、議会制民主主義が始まってから百二十年そこらでしょう。首相公選、たとえ国民から首相が選出されたとしても、天皇陛下をしのげるような権威のある方が首相になれると思われません。

 それと、将軍の時代から天皇制はあったんですから、もう絶大な権力を持った時代から天皇制というのはあったんですから、これから儀式も、私は、多いか少ないかわかりませんけれども……(横光委員「回数じゃない。とうとばれるかどうか」と呼ぶ)とうとばれるものと思います。これは大変重いものがあると思います。

横光委員 そのように、大変重い、とうとばなければならない儀式、行事の中で非常に大きい儀式が、八月十五日、終戦記念日、いわゆる政府主催の全国戦没者追悼式がございます。

 これは、三権の長も出席する、国民も出席する。そしてその日は、高校野球でも、甲子園でプレーを中断して、十二時になりますと観客の皆様方とともに黙祷をささげる。また、多くの国民が、八月十五日お昼になりますと、強制ではなくても、それぞれが戦没者の皆様方に慰霊をささげる。こういった儀式が、八月十五日、天皇が出席される全国戦没者追悼式がございます。

 ここの中で、総理がいつも言われております、戦没者のとうとい犠牲の上に今の平和が築かれ、また平和憲法を持つことができたことに対して思いをいたして、戦没者を慰霊しているんですよ、天皇陛下が出席する追悼式で。

 あなたは、国民とともに天皇、皇后両陛下の出席される戦没者追悼式は不十分だと考えているのでしょうか。それとも、十分である、改善の余地なんかないんだ、このようにお思いでしょうか。どちらでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、不十分だとかどうだとか、今とっさに聞かれまして、そう思ったことはないんです。

 戦没者慰霊祭自身は大変重い行事だと思いまして、そこに天皇陛下が御臨席されるのは、やはり今日の日本の平和と繁栄は戦没者の方々のとうとい犠牲の上に成り立っているんだという思いを込められての御出席だと理解しております。

横光委員 つまり、先ほどから天皇の出席される儀式が重いという認識をされております。そしてそこで、先ほど言いましたように全国民とともに戦没者追悼式が行われる、そして今のその儀式が決して不十分だとかいう考えもない。であるならば、あなたが言われております靖国の参拝というのはどうなるんでしょうか。

 そこであなたの意識が十分にあらわせない、戦没者の方々に敬意と感謝をあらわしたいとあなたは言っていますが、そこであらわせないから、なお物足りないから、いろいろな問題が残るけれども靖国に行かれるということなんですか。そういうことになるんじゃないですか。

 天皇、皇后両陛下をお迎えして行うこの行事を、あなたは一体どう考えているんですか。

小泉内閣総理大臣 なぜそんなに靖国神社に参拝するのがいけないのか、批判されるのか、私は理解にいまだに苦しんでいるのです。

 私は、戦没者慰霊祭にも出席するつもりです。千鳥ケ淵のあの霊園にも参拝するつもりであります。そして、靖国神社にも参拝するつもりであります。それは、二度と戦争を起こしてはいけない、今日の平和と繁栄はとうとい命を犠牲にされたああいう方々の犠牲の上に成り立っているんだという思いを込めて、心から敬意と感謝をささげたいという気持ちで参拝するので、それが国会の場でいけないとか批判されるというのが毎日毎日こういうふうに続いていることに対して、私は理解できない。なぜ戦没者に対して敬意を表する行為がこんなに批判されなきゃならないのか、いまだに理解に苦しんでおります。

横光委員 総理のおっしゃるとおりなんです。あなたのおっしゃるとおりなんです。みんなでこぞってお参りできるような環境整備がなぜつくれないのか、戦後五十数年たって。ですから、そこで多くの問題があるから、こうして論議されてきたのでしょう。あなたの先輩の中曽根先生や橋本先生も一回行った、でもそれから続けていない。なぜそういった問題が起きるかということなんです。

 ですから、やはり国民が自然にお参りできる、総理や閣僚の皆さんこぞって自然にお参りできる、外国の人も自由にお参りできる、そういった環境整備をして、そして初めてあなたの言う、戦没者の方々、今日の平和を築いてくださった方々に感謝できるんじゃないですか。それが戦没者の方々に報いる道であり、遺族の方々の気持ちにこたえる道じゃないんですか。

 そこのところを、むしろ、いたずらに国民やあるいは近隣諸国の混乱や不安を引き起こすようなことをするのではなく、やはりそういった環境整備にこそ尽くすことが、今あなたの最大の、総理になったときのチャンスだと私は思うんですね、あなたの願いを成就させるためには。そのようなことを強く私は要求いたしておきます。

 最後にちょっと総理、これは国会議員としての、質問ではございませんが、お願いなんです。

 五月十一日にハンセン病の判決がございました。その前日の五月十日の土井党首の質問に対して総理は、判決を見守りたいという答えでした。そして判決が出たわけですね。これは非常に厳しい判決、行政府、立法府ともども厳しい判決を受けたわけでございます。この元患者の皆様方は、もう平均年齢七十四歳になっている。どうかこういった現実を見て、総理、控訴など考えているはずはないと信じておりますが、どうでしょうか。

小泉内閣総理大臣 昨日も坂口厚生労働大臣が面会されたようであります。いろいろその問題については今検討を進めておりますので、しかるべき時期を見て適切な判断を下したいと思っております。

横光委員 終わります。

野呂田委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。横光君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 社民党、社会民主党の辻元清美です。

 きょうは、小泉総理の変人問題と軍人問題について質問を最後にしたいと思います。総理のことを変人というふうに言う人がいますけれども、果たして、変革をする変人なのか、それとも単なる変人なのかということを解明していきたい。

 私も確かに、小泉総理、変わった人やなと思うときはあるんですよ。しかし一方で、非常にオーソドックスな、派閥的な保守政治家であると感じることも多々ありました。そして、気に入らぬところもあります。総裁選の最中によくこういうことをおっしゃっていました。負けるかもしれない戦いでも逃げないのが男だ。女は逃げるのかと。最近は女の方が腹が据わっているんですよ。私は、男、男と連発する人ほど信用ならぬなと実は思うています。

 さて、そういう中で、女性大臣の数をふやされました。しかし、こういう発言をされると、男女共同参画社会の理念がきちっとおわかりなのかしらというように疑問に思ったりしますし、国際舞台にデビューされる前には、きちっと男女共同参画社会の理念を勉強されてからデビューされた方がいいと、まず忠告を申し上げておきます。

 さてそこで、変人問題から行きたいと思うのですが、総理がおっしゃっていますこの変革の中身です。

 この中身、構造改革について総理が示されたキーワードの一つに、痛みを恐れずというのがあります。先日、元検事の弁護士で、さわやか福祉財団理事長の堀田力さん、皆さん御存じだと思いますが、こういうことをおっしゃっていました。構造改革を断行すれば国民の血が流れると言う以上、どのあたりからどれくらい血が流れ、どれほどの影響が生じるのか、それが明らかにされなければ国民は痛みに耐える覚悟ができず、不安におびえるばかりである。問題の輪郭が見えて初めて適切な処理の期間や方法も決まる。

 私も同感なんです。人々に痛みを分かち合ってほしいと言うならば、やってみないではわからないとかでは、これは無責任と言われます。その輪郭やその先のビジョンを示すのが政治の役割だと思うのです。

 さてそこで、総理がおっしゃるこの痛みというのは、だれのどういう痛みと考えていいのでしょうか。具体的にお答えください。

小泉内閣総理大臣 まず、新しい産業社会に適応するためには改革しなければならないというと、考えられるのが、時代に適応できない、市場に、国民から歓迎されない産業というのは衰退していきます。そうしますと、倒産する企業が出てくると思いますね。となると、離職者とか失業者が出てくる可能性があります。

 そういう点については、雇用対策等、次の会社に勤務できるような、次の職業につくような、いろいろな措置が必要ではないか。当然痛みを伴う。今まで職についていた人が心ならずも職を失うということは、相当な痛みであります。しかし、その痛みにくじけないで、新しい職場についてみよう、新しい職を探してみようという意欲を持ってもらうような措置が大事ではないか。

 ですから、構造改革には当然そういう面での痛みも、一例でありますが、出てくると思います。その対策が必要だと私は思います。

辻元委員 今のを突き詰めて言えば、失業するかもしれぬけれども、痛いかもしれぬけれども我慢してや、そういうことやと思うのですね。

 しかし、その前に、きょうの本委員会で、例えば不良債権処理に至る過程での経営者責任の議論などが出てきました。私は、一般の人々に痛みをと言うならば、経営者であったり政治の側にいる者がまずどれだけ自分たちの痛みを、そしてきちっと責任を果たすのかというところが欠如していたから、人々に痛みを我慢してくれと言わなならぬ社会になってしもうたのと違うですか。

 そこで、私はまず、不良債権処理に伴って、特に金融機関の経営者の経営責任については今まで以上に厳しく処罰すべきだと思っています。

 実例を挙げますと、いろいろこの処罰については、例えば監督官庁に虚偽の報告をした場合を見ても、日本は懲役一年または罰金三百万円です。この間まで三十万だったのですよ。アメリカを見てみると、禁錮三十年、罰金百万ドル、一億二千万円ですわ。この議論のときに、他の刑罰との関係でこのようにしかしようがないとなったわけですよ。小泉総理は、過去の経験にとらわれずとおっしゃっているじゃないですか。私は、企業の経営者の責任をあいまいにして、責任をとるべき経営者たちがのうのうとして、一方、普通の人々にだけ痛みをと言うのは、これは傲慢きわまりないと思うのです。

 私は、この刑罰の見直しも含めて、きちっと経営責任をまず問うところから始めないと、一般の人々に痛みをとは言えません。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私も、いろいろお話を聞いていて、甘過ぎるという点がたくさんあると思います。刑罰も軽過ぎると思います。

 そういう点は、今後、議論して、より適切な方向に変えていくのは大変必要なことではないかと私は思っていますが、包括的にそういう改革を進めていくべきだ。これをやらないとほかはやらないということではない、雇用対策などは緊急にしなければなりませんから。

辻元委員 この刑罰の軽過ぎるということも含めて、これは社民党がずっと言ってきたのですよ、示しがつかぬやないかと。

 さてそこで、政治の側に移りたいと思うのですが、きのう総理は、派閥のパーティーは急にやめられへんというような話をしはりました。

 私、思うのですけれども、人々に痛みをと言うているのに、政治家はパーティーで一晩で何千万の、これは上がりですよ、上がりを取って政治をして、構造改革の議論を高級料亭でしているじゃないですか。それで人々に痛みをと言えません。ですから、きのうの答弁は、私はすごく不満足ですね。ここに至ってもまだ派閥のパーティーもようやめぬのかと思いました。

 さてそこで、機密費の問題です。

 先ほど財務大臣、あれは忘れたでは済みませんわ。私は、そんな人、財務大臣をやってほしくないと思うたもの。宮澤さんにもはらはらしましたが、塩川さんにももっとはらはらしましたよ。

 そういう中で、この機密費については、特に官僚や政治家が機密費に、はっきり言えばたかっておったのです。こういう疑惑をきちっと晴らさない限り、人々に痛みを、失業しても我慢してくれ、言えません。

 そこで、田中外務大臣にお伺いします。

 田中外務大臣は、当時の木寺昌人会計課長が、機密費問題の疑惑解明の最中、二月に、病院に入れと本人の意思を無視して入院させられたというようなことを記者会見で発言されました。

 実は私は、この委員会で、何だか機密費問題の関係者がいきなり、議論が始まったらまとめて三人も入院しちゃって、不審だなと思っていて、ここで質問したんですよ。田中外務大臣、委員でいらっしゃったかもしれません。

 さて、この木寺前会計課長はどのようなことを外務大臣におっしゃったんでしょうか。

田中国務大臣 こんにちは。

 プライバシーでございますから細かいことは申し上げられませんけれども、彼は私の友達の弟さんでございまして、某月某日、五月八日ですけれども、突然、ノーアポで朝、大臣室に寄られまして、そのような発言がございました。

辻元委員 そのような発言というのは、本人の意思に反して入院させられたということですね。(田中国務大臣「ちょっと違うんです。じゃ、後で」と呼ぶ)

 そこで、飯村官房長に、きょうお呼びしていますが、入院させられた阿部官房長の後を引き継がれて、木寺さんが入院された件について田中外務大臣が記者会見でおっしゃった、御存じのとおりだと思いますが、それは正しいと理解していいわけですね。どうですか。あなたは今出入り禁止になっていらっしゃるらしいですけれども、あえて聞きます。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 私自身、木寺前会計課長がぐあいが悪くなったときからそばにおりますので申し上げさせていただきたいと思いますけれども、木寺前会計課長は、年明け以降、松尾事件にかかわる対処のため激務が続いておりまして、医師の判断を受けまして、当面、入院の上加療を要するという判断がございました。二月五日に入院して、三月四日に退院しております。退院直前の医師の診断に基づきまして、木寺が早期に会計課長の職務に復帰することは困難であるということで、三月六日付に官房付になっているわけでございます。

辻元委員 これは出入り禁止になっているからかどうか知りませんけれども、私は、田中外務大臣が記者会見でおっしゃったことと今の官僚側の答弁、違うと思いますね。これはきちっとしてほしいんですよ。診断書の提出まで本委員会で問題になったことなんです。ここはきちっと調べていただくという点と、もう一点、引き続き、上納問題を含めて、きのう、田中外務大臣は再調査をしますとおっしゃいました。そのとおりでよろしいでしょうか。

田中国務大臣 誤解がありますからちょっと申し上げますけれども、彼が、恫喝という言葉は強かったか、彼はその気がなかったかもしれませんけれども、当分部屋に見えなくて結構ですと私が申し上げたのは彼でございまして、ほかの次官とか審議官じゃございませんので、マスコミの皆様、誤解がありませんように。(辻元委員「ちょっと、今の点について」と呼ぶ)はい、答えます、時間の関係でしょうから。上納の前のことはよろしいんですか。(辻元委員「いや、上納問題も」と呼ぶ)待ってください。彼が言ったのは病気のことじゃないので、正確にお聞きくださいね。

 五月七日の日に発令をされて、フランスへ行けと。それも大使館じゃないんですね。小寺さんも木寺さんも国際問題研究所という別のところに行かされるんですね。それもえらく不思議なんですが、なぜかそういうのがあって。そして、七日に発令されて、八日にびっくりして私の部屋に朝来られたということが事実です。

 次、上納について申し上げます。

 これは、きのうの菅先生の質問を受けて関連しておっしゃっていると思いますが、これは私自身、弁解じゃありません、着任後にまだこれで二回目の予算委員会ですし、こういう話については本会議でもありませんでしたし、それで、きのうお話を受けてから事務方に聞きました。これはないと。上納はしていないというのが、まだ時間、きのうからきょうまでまだ二十四時間ちょっとぐらいでしょうか、の段階でございます。

 ですから、それらをすべて含めて、やはり内閣はもちろんですけれども、これは前内閣と前外務大臣がそのような結論をつけていらっしゃることですので、副大臣ももちろんいらっしゃいますので、どのぐらいファンクショナルか、一緒に、やはりトータルでどういうふうにするかということについて検討をさせていただきます。

辻元委員 要するに、上納問題についても改めて調べるというのが、田中さんがおっしゃってきた疑惑の再調査ということなんですよ。それを一方では、いや、官僚方が隠していることがあるかもしれない、一方では、上納については官僚に聞いたらないと言われた、それじゃ全くつじつまが合わないですよ。ここは疑惑解明されるんであれば、きちっと上納についてももう一回されるべきです。

 そしてさらに、この委員会で、この「報償費について」という古川官房副長官の文書、この上納問題の文書が問題になって、筆跡鑑定までした党もあるわけです。古川さんだろうと言われています。

 そうであるならば、田中外務大臣は、古川官房副長官がいらっしゃるわけですから、お聞きになったらどうですか。これを受け取ったのは塩川さんだと言われているわけですよ。塩川さんにも、同じ閣内にいらっしゃるわけですから、お聞きになって、最低ヒアリングでもされるというぐらいのことを言っていただかないと、あなたの今までの言動はつじつまが合わないと私は思いますよ。ですから、言いわけは結構です、最低限、ヒアリングをされるつもりがあるのかないのか、これだけをお答えください。

田中国務大臣 物事、おっしゃるように単純明快にすべていけば、政治も余り必要ないのかもしれませんけれども、そう単純でないところもありますので、すべてを閣内とかそれから関係者とやるかどうかについて検討をさせていただきたいと申し上げております。

辻元委員 私は、これは単純な話だと思うんですよ、ヒアリングすればいいんだもの。ですから、単純明快にいかないものと、単純にやれるところはやるというのが改革ですよ。すぐに着手するというのが改革ですよ。私はそう思っています。今の御答弁はがっかりしました。

 さて今度は、軍人問題もきょうはやりたいですので、小泉総理大臣にお伺いをしたいと思います。

 特に小泉総理の、私いろいろ調べてみましたら、ここに三回前の選挙のときの選挙の公報があります。ここで小泉総理はこうおっしゃっています。PKOについて、「PKO協力法の国会審議では、血を流しても国際貢献をすべきだという議論にはなっていなかったはずだ。欧米と一緒になって、できないことを敢えてしようとするのは間違っている。」「日本は、軍事以外の分野で国際貢献できる方法を考え、各国に理解を求める努力を、積極的に展開していくべきだと思います。」と、ここに政治姿勢、公約としておっしゃっています。

 そして一方、きのうは国連の常任理事国入りについて、こういう御答弁をされました。国連常任理事国は、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、いずれも国際紛争を解決する手段としての武力行使を放棄していません。日本は、国際紛争を解決する手段として武力行使を放棄している国であります。そこで、常任理事国になって同じようなことができると国際社会に思わせちゃいかぬ。だから、日本国民に対しても、後から、入った後に、国連常任理事国なんだからこんなことをやるのは当たり前だといって、そういう形で日本国民に理解を強制してはいかぬと。これはきのうの答弁ですから、きょうも変わっていませんね。

小泉内閣総理大臣 私の選挙公報ときのうの答弁と、どこか違いありますか。(辻元委員「いやいや、違う。変わっていないかどうかです」と呼ぶ)変わっていないからきのうの発言をしたわけであります。

辻元委員 ところが、集団的自衛権の議論になると、ころっと変わるんですよ。どういうことかというと、総理はよく集団的自衛権という言葉をお使いになりますが、その具体的な中身を一、二例を挙げて検証しましょう。

 ベトナム戦争におけるアメリカ軍の介入は、集団的自衛権の行使ですか。

 もう一つ、ベトナム戦争のときに韓国軍もベトナムに出兵しているんです。これは、韓国軍はベトナムになぜ出兵したかといえば、韓国とアメリカの間に、米韓相互防衛条約第四条のもとで、韓国は集団的自衛権を認めていますから、当時出兵しているわけですよ。そして、日本は日米安保条約がありましたが出兵していません。これは、憲法九条のもとで集団的自衛権を私たちは放棄しているからなんです。

 ですから、集団的自衛権を行使するというのは、このベトナム戦争の例で申し上げれば、ベトナム戦争に米軍が出兵したことや、それから韓国軍が出兵したこと。ちょっと事務方、紙渡すのやめてくださいよ。一国の総理が集団的自衛権ということについて軽々しく言ったらいかぬという意味はわかると思います。

 このベトナムの事例は集団的自衛権の行使に当たるとお考えかどうか、まずお答えください。

小泉内閣総理大臣 日本が他国の領土まで行って武力行使することなんて考えていません。あり得ないことです。

辻元委員 違うんです。ベトナム戦争の過去の歴史で、アメリカがベトナム戦争に出兵していったこと、韓国とか行きましたよ、こういうことを集団的自衛権と言う、これは国際的合意じゃないですか、どうですか。

 ですから、客観状況を聞いているわけです。日本がそんなことせえへんとかするじゃないです。ベトナム戦争におけるアメリカ軍の行動は集団的自衛権であるかどうか、どうお考えかということをお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 これは日本の自衛じゃないですから、こういうことまで含めて集団自衛権の議論というのは、ちょっと飛躍があり過ぎるのではないでしょうか。

辻元委員 では総理、個別的自衛権と集団的自衛権の違いを説明してください。あなたが今おっしゃっているのは、日本の自衛ではないということをおっしゃいました。それは個別的自衛権の話で、あなたこそ集団的自衛権の中身をよく理解されずにおっしゃっているのじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 法的には私よりはるかに詳しい法制局長官がおられますから、今それは説明していただきたい。

野呂田委員長 内閣法制局長官。(辻元委員「いや、これはすごく総理の御認識を聞きたいわけですよ。だって、そんなことも答えられずに言うていたわけですか」と呼ぶ)

 委員長の指示に従ってください。

 内閣法制局長官。

津野政府特別補佐人 国際法上の概念でありますが、国際法上、国家は集団的自衛権、すなわち……(辻元委員「違う。ベトナムの例を言っているのですよ」と呼ぶ)これは前提ですから……(辻元委員「国連法五十一条ですか。存じ上げていますよ」と呼ぶ)いや、そうじゃなくて、中身を御説明しているのですから、聞いてください。

 自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される、そういう地位が国際法上国家はあるわけでありますが、そういうものにつきまして集団的自衛権というふうに考えているわけです。

 ですから、自国と関係のない外国に対する武力攻撃に対して、条約とかいろいろなものに基づきましてその国を援助する、実力をもって阻止するというようなのが、これが集団的自衛権です。

 個別的自衛権は、もちろん、我が国に対する武力攻撃がありましたときに、我が国がそれに対して防衛するというのが個別的自衛権でございます。

辻元委員 今法制局がおっしゃったとおり、今おっしゃった定義で言えば、ベトナム戦争に対してアメリカが介入していったことは集団的自衛権の行使ですよ。どう考えてもそうです。それを違うと国際社会の舞台の中で言えますか。言えませんよ、中谷さん、こっちをごらんになっていますけれども。

 この話は、安保委員会や日米新ガイドラインの集中審議で、私は委員でした、さんざん議論をしてきましたよ。その上で申し上げているわけです。

 総理、集団的自衛権というのは、要するに、今ベトナム戦争の例を申し上げましたように、日本はなぜベトナム戦争に行っていないのか、それは集団的自衛権を放棄しているからですよ。憲法九条があるからなんです。

 では、もう一つ聞きましょう。

 総理が集団的自衛権の行使に踏み切るようなことを思われるような発言をしてきました、総裁選で。そうであるならば、これくらいは御存じだと思いますが、日米新ガイドラインと集団的自衛権の行使の関係はどうなっていますか。お答えください。

 というのは、総理、そういうことがお答えいただけなくて、集団的自衛権の行使というようなことを、何か気分でおっしゃっているとは思いませんけれども、非常に感覚的におっしゃっているんじゃないですか。

 日米新ガイドラインの……(発言する者あり)ちょっと聞いてください。日米新ガイドラインの議論のときに、後方支援と後方地域支援の議論が物すごくここで闘わされましたよ。そして、今自民党の山崎拓幹事長が何とおっしゃっていますか。あの後方地域支援というのはまやかしだと。あのとき山崎さんはこの委員長席に座っていらっしゃったわけです。要するに、日米新ガイドライン関連法というのは、後方支援と言えば武力行使と一体化する。ロジスティックスと英語で言いますね、兵たんです。それに日本は参加することができないから、後方地域支援、リアエリアサポートとかいうわけのわからぬ造語をつくって、ごまかして、押し切って通したと山崎幹事長がテレビでもおっしゃっているわけです。

 そして、今、アメリカから、このごまかした後方地域支援、これを後方支援に、きちっと軍事行動と一体化する米軍との行動に日米新ガイドラインを持っていかな機能できへんから、集団的自衛権の行使について日本にあちこちからプレッシャーをかけてきているじゃないですか。そういうことじゃないですか。

 総理、総理大臣が集団的自衛権の行使ということを口になさるときには、日米新ガイドラインのときにどれだけのことがここで議論されたのか、今までの歴史の中でどうなのか、そして、今ブッシュ政権がどういうことをしてきているか御存じでしょうか。

 例えば日本の、総理も乗られると思いますが、JALとか全日空とかJASってありますね。こういう飛行機会社に対して、今防衛施設庁を通して、アメリカ国防総省が定める輸送資格を取得するよう要請してきているわけですよ。これは、米軍の兵士や武器弾薬をきちっと運べるように資格を取得しろということをアメリカから言ってきていますよ。こういう中で、今集団的自衛権の問題がどれだけ大事な議論なのか。私たちは反対です。

 それに、総理がここで、PKOの問題やそれから国連常任理事国入りの問題で、日本は憲法九条があるから血を流してもいいとは言っていない、だから非軍事で頑張るんだとおっしゃってきたわけです。集団的自衛権の行使に踏み込むということは、この憲法九条の枠の中でできることをしようと総理が言ってこられたことと全く違うんです。米軍と一緒に後方支援として行く、そして韓国が行ったように他国に一緒に出兵していくということを、集団的自衛権を認めたら防ぎ切れないですよ。

 総理、いかがですか。総理、今の私に反論があるんだったら総理みずからの言葉で反論してください。私はずっとこの問題を、この四年間、この国会の中で真剣に議論してきたんです。どうぞ、総理、反論してください。

小泉内閣総理大臣 憲法の枠内でどこまでできるかということを考えるのが今までの議論であって、後方支援にしても、武力行使を伴わないような支援はどういうことができるかということに対して、より研究が必要ではないか、憲法の枠内でそれを考えよう、研究しようというのが私の真意だということを御理解いただきたい。

辻元委員 今の御答弁も非常に情緒的だと思うんです、失礼ですが。

 憲法の枠内で集団的自衛権を解釈で行使に踏み切るということはできません。私は言い切れます。ですから、私は、例えば今アメリカがいろいろ日本に言ってきていますよ、けれども、ここで憲法九条があり、そして集団的自衛権を今まで日本が認めてこなかった、その蓄積の議論をきちっと御認識なさってから一国の総理大臣であろう方が集団的自衛権という言葉を口にされるべきだと思います。私は、この件については譲ることはできない。

 小泉総理、あなたは、手法について、例えばここで自分の言葉で言う、議論すると。そんなの当たり前の話なんですよ。今までの国会がひど過ぎたわけでしょう。そして、その中身一つ一つ、特にこの集団的自衛権の行使の問題については、やってみなきゃわからないよで済む話じゃないんです。歴史認識と現状認識と、そして洞察力が必要です。

 ですから、総理は憲法九条の範囲の中で集団的自衛権の行使ができるかどうかを議論すると言っていますが、それは議論の余地なしです、できません。できるのであれば、どういう方向性があるとお考えですか。(発言する者あり)久間さんに聞いていません。静かにしてください。

 総理、いかがですか。ちゃんと答えてください。総理にお聞きします。これは総理がおっしゃっていることです。すごく大事なことです。すごく大事なことですから、総理、総理、総理、総理、最後に答えてくださいよ。私は中谷さんにはもうさんざん議論してきたんです。もういいですよ。そういう総理の態度はがっかりしますよ。だって、中谷さんに聞いていないよ。これすごく大事だ。総理の御認識ですよ。中谷さんはいいです。あなたとはさんざん議論してきましたじゃないですか、この件については。

小泉内閣総理大臣 集団的自衛権はあるが行使は認められていない、そういう憲法の枠内で我々はどういうことができるかということをいろいろ研究してみる余地はあるのではないかということを私は言っているんですよ。何がおかしいんですか。

辻元委員 総理はもうこの公報でもおっしゃっているんです。答えは出ているんですよ。「欧米と一緒になって、できないことを敢えてしようとするのは間違っている。」とおっしゃっているわけです。これが集団的自衛権の行使なんです。非軍事でできることをやりましょうとおっしゃっている、そこの原点に立ち返った方がいいですよ。

 最後になりますが……

野呂田委員長 もう時間は終わりました。

辻元委員 総理、本当にこの安全保障の問題についての総理の発言は慎重になさってください。アメリカに間違ったサインを送りますよ。それを最後に申し上げて、総理の答弁は結構です。

 質問は終わります。

野呂田委員長 あなたはもう質問時間がなくなりました。

 総理に答弁を認めます。

小泉内閣総理大臣 これはいろいろな時代の変化によって解釈は違っているじゃないですか。PKOはどうですか。自衛隊が海外に行くのすら海外派兵ととらえる人がいた。(発言する者あり)

野呂田委員長 静かに聞きなさい。

小泉内閣総理大臣 しかし、武力行使はしない、そうでないPKO活動は自衛隊を出しても海外派兵ととられないという解釈があったじゃないですか。そういう、時代によって、一兵たりとも自衛隊を出しちゃいかぬというところから、そういう武力行使をしない活動ならばいいという合意ができて、法律ができたじゃないですか。時代状況によって変わってきているんですよ。

 その中で我々は、武力行使でない、そういう憲法の枠内でどういうことができるかということを考えようと言っているんですから。

野呂田委員長 これにて横光君、辻元君の質疑は終了いたしました。

 この際、柳澤金融担当大臣から発言を求められておりますので、これを許します。柳澤金融担当大臣。

柳澤国務大臣 大変恐縮ですが、午前中の私の池田委員への答弁のうち、委員の見解が公的資本の再注入を主張されているものとの誤解に立って行った部分がありましたので、この点は誤解であったことを申し上げ、おわびさせていただきます。

 以上です。

野呂田委員長 次回は、来る二十八日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会




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