衆議院

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第18号 平成13年5月28日(月曜日)

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平成十三年五月二十八日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 坂井 隆憲君

   理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君

   理事 佐藤 観樹君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    池田 行彦君

      石川 要三君    大原 一三君

      岡下 信子君    亀井 善之君

      栗原 博久君    谷川 和穗君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      中山 正暉君    丹羽 雄哉君

      葉梨 信行君    萩野 浩基君

      蓮実  進君    三塚  博君

      宮本 一三君    森岡 正宏君

      八代 英太君    五十嵐文彦君

      岩國 哲人君    生方 幸夫君

      海江田万里君    金子善次郎君

      城島 正光君    仙谷 由人君

      筒井 信隆君    平岡 秀夫君

      松野 頼久君    山花 郁夫君

      白保 台一君    東  順治君

      若松 謙維君    鈴木 淑夫君

      達増 拓也君    中井  洽君

      中塚 一宏君    穀田 恵二君

      佐々木憲昭君    藤木 洋子君

      山口 富男君    植田 至紀君

      辻元 清美君    横光 克彦君

      井上 喜一君    松浪健四郎君

      森田 健作君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         片山虎之助君

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   財務大臣         塩川正十郎君

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       武部  勤君

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   国土交通大臣       扇  千景君

   環境大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   法務副大臣        横内 正明君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   文部科学副大臣      岸田 文雄君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      南野知惠子君

   経済産業副大臣      古屋 圭司君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   内閣府大臣政務官     阪上 善秀君

   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   経済産業大臣政務官    西川太一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   会計検査院長       金子  晃君

   会計検査院事務総局第一局

   長            石野 秀世君

   政府参考人

   (警察庁長官)      田中 節夫君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    漆間  巌君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  奥野 誠亮君     森岡 正宏君

  高鳥  修君     岡下 信子君

  海江田万里君     山花 郁夫君

  白保 台一君     東  順治君

  鈴木 淑夫君     中塚 一宏君

  山口 富男君     穀田 恵二君

  辻元 清美君     植田 至紀君

  井上 喜一君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     高鳥  修君

  森岡 正宏君     奥野 誠亮君

  山花 郁夫君     海江田万里君

  東  順治君     白保 台一君

  中塚 一宏君     鈴木 淑夫君

  穀田 恵二君     藤木 洋子君

  植田 至紀君     辻元 清美君

  松浪健四郎君     井上 喜一君

同日

 辞任         補欠選任

  藤木 洋子君     山口 富男君

    ―――――――――――――

五月十七日

 予算委員会においてKSD汚職事件関係者の証人喚問と真相究明を求めることに関する請願(藤木洋子君紹介)(第一六九八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(経済・外交等)




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、委員長から外務大臣に対して申し上げます。

 去る十五日の本委員会における民主党岡田克也君の質疑に対し、外務大臣は、来日されたアーミテージ米国国務副長官に関する件で、事務方から報告を受けていない趣旨の答弁を数回にわたってされております。ところが、翌十六日に、この答弁と異なる発言をされたと報じられております。

 これが事実ならば、本委員会において事実と異なる答弁を繰り返したこととなり、ひいては本委員会の権威にかかわることでありますので、理事会の総意により、この場で外務大臣から釈明を求めます。田中外務大臣。

田中国務大臣 おはようございます。

 ただいま委員長より提起されました去る十五日の本委員会における私の答弁につき、御説明申し上げます。

 日米安保体制、核不拡散、ミサイル防衛問題についての米側の考え方などについては、着任後、事務方から簡略な説明を受けていました。

 しかし、八日に行われた外務省幹部とアーミテージ副長官との会談については、たび重なる私からの督促に対して、事務方が十五日の衆議院予算委員会の最中に記録を届けてきました。しかし、余りに大部なものであったため、もっとやりとりのわかりやすい形で整理したペーパーを至急届けるようにと委員会の最中に再三督促しました。その結果、十五日午後四時三十分ごろ、委員会終了近くになってまとめのペーパーが届きました。

 十五日午前の衆議院予算委員会における岡田議員の質問では、アーミテージ副長官と私が会談しなかった理由についてただす旨の通告があったため、同副長官の訪日の際の、同副長官と事務方の詳細なやりとりも含めた考え方を聞かれたものと思い、あのようなお答えとなりました。

 なお、その際、説明を受けていないと申し上げたのは、事務方と同副長官との会談についての説明は、岡田議員の質問の時点では受けていないとの趣旨でした。

 以上です。

野呂田委員長 次に、柳澤金融担当大臣から発言を求められておりますので、これを許します。柳澤金融担当大臣。

柳澤国務大臣 去る五月十五日の本委員会における私の池田委員への答弁のうち、委員の見解が公的資本の再注入を主張されているものとの誤解に立って行った部分がありましたので、改めておわびさせていただきます。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 本日は、経済・外交等についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁警備局長漆間巌君、法務省入国管理局長中尾巧君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 小泉総理は、大変支持率の高い小泉内閣をスタートされたわけでございますが、本日の毎日新聞を見ておりますと、発足のときの支持率が八五%、一月たって八七%になった、このような支持率のようでございます。

 大体、新内閣というのは、いわば期待相場みたいなもので、初めは大変高い支持率があって、急速に落ちてくるというのが通常のようでございますが、一月たってまだ上がっていらっしゃる、こういう大変な支持率でございます。ハンセン病の控訴の断念ということが、大変国民の皆さんに、支持率を上げた一つの大きな原因ではないか、このように思うわけでございます。

 構造改革を目指してやっていらっしゃるわけでございます。ぜひ頑張っていただきたいというように思うところでございます。

 それで、まず初めに、これはきょうの朝通告をさせていただいたんですが、昨日の新潟県の刈羽村の住民投票でございますね。プルサーマルの是非を問う住民投票の結果が出たわけでございます。反対が千九百二十五票、賛成が千五百三十三、保留が百三十一、無効が十六、投票率が八八・一四%、反対が五三・四%、こういうような状況のようでございます。反対が投票総数の過半数を上回ったわけでございます。

 このプルサーマルの計画、国の核燃料サイクル政策と申しますか、いわばエネルギー政策全体の問題になるわけでございますが、このような住民投票の結果を踏まえて、総理、また平沼大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 プルサーマル計画というのは、我が国のエネルギー政策にとって非常に重要で、そして国のエネルギー政策の基幹的な部分に相なっています。きのうの刈羽村の住民投票の結果、私は、ある意味では非常に残念には思っているわけであります。

 ただ、現時点では、当事者である刈羽村の対応をやはり見守っていかなければならないと思っておりますし、また、事前了解をしていただいております新潟県と柏崎市、こちらとのいろいろな話し合いもあると思いますし、その成り行きも我々見守っていかなければならないと思っております。

 今までも、事業者である東京電力が住民の皆様方にその必要性、安全性を含めて随分PRをしてまいりましたけれども、その結果がまだ十分ではなかった。また、我々国といたしましても、エネルギー庁長官もじかにお伺いして、賛成・反対派の方々ともに、いろいろディスカッションをして、理解に努めるようにしてまいりましたけれども、まだ国としてのそういった対応も十分ではなかった、このように思っております。

 したがいまして、我々といたしましては、今後、電気事業者、そして国としても、やはり国民の理解が第一番でございますから、この結果を踏まえまして、さらに体制をしっかりと整えて、よりよい理解を得ていただくように最大限の努力を傾注していかなければならない、そのように思っているところでございます。

小泉内閣総理大臣 原子力に対する安全性、そして必要性、そういうはざまに揺れた結果ではないかなと思っています。

 国としても、また事業者としても、原子力エネルギーに対する理解をどう国民に求めていくか、より一層の努力が必要だと思っております。

谷口委員 電力の安定供給という大変重要な問題もございますし、また住民の皆さん方の考え方が極めて重要なわけでございますが、今後、エネルギー政策全般にとって大変重要な問題でございますので、ぜひまた慎重にお考えいただきまして対応していただくよう望む次第でございます。

 その次に、ハンセン病の控訴の断念の問題についてお聞きをいたしたいと思うわけでございます。

 小泉総理が政治的リーダーシップをとっていただきまして、本来なら極めて異例な対応だというようになるわけでございますが、控訴の断念を決断していただいたわけでございます。私ども公明党も、私自身も、この控訴は断念すべきだというように考えておりましたし、党内でも過半がそういうような意見でございまして、総理にも神崎代表が申し入れをするというような状況があったわけでございます。また、我々の公明党から出ていただいております坂口厚生労働大臣も、御自身は控訴を断念すべきだというようなお考えを持っていらっしゃって、大変お悩みになったということをお聞きいたしておるわけでございます。

 国民の皆さんは、総理のこのリーダーシップと申しますか政治決断に、先ほど申し上げました支持率の高まりの状況を見ましても、大変な支持をされておるんだろうというように思うわけでございます。

 原告団の協議会副会長の竪山さんという方が、我が党の代議士会に来られまして、ごあいさつをされました。本当に、一度故郷の空を見て死にたいというような患者の皆さんにこの控訴断念ということを報告しますと、わんわん泣いて喜んでおりましたというようなことでございました。

 いろいろな問題があるんだろうというように思います。国会の立法不作為の問題だとか、ほかの訴訟に与える影響だとかいうようなことがあるんだろうと思いますが、私は、この総理の決断、大変敬意を表しておる次第でございます。

 そこで今、与党三党、また政府の方でも、この患者の皆さんに対する損失補償の問題について検討していただいておるというようなことなんだろうというように思いますが、まず初めに、総理並びに坂口厚生労働大臣に、今回のハンセン病の控訴断念に至った経緯と、また、今後の対応についてお聞きをいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 ハンセン病患者に対する極めて厳しい偏見、差別が存在してきた事実を深刻に受けとめまして、患者、元患者の方々に多大な苦痛、苦難を与えてきたことに対し、深く反省をし、おわびを申し上げました。多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に対する哀悼の念もささげたところでございます。

 先ほどお話ございましたように、政府といたしましては、去る二十三日に総理の英断をいただきまして、控訴を行わないことと決定したところでございますが、ハンセン病問題に対する全面的な解決に向けての本格的な取り組みは、これから始まるものと思っております。

 今後、立法措置に基づきます適切な補償を行いますとともに、名誉回復、それから、かなり高齢化をされておりますので、その皆さん方の福祉の問題あるいはまた社会復帰の問題等々につきまして、可能な限りの措置を講ずるよう、患者また元患者の方々と十分にお話し合いをこれからさせていただきたい。おくれないように、早期にお話し合いに入らせていただきたいと考えているところでございます。

小泉内閣総理大臣 私は、この判決が出てから、当初から、法務省、厚生労働省初め関係者とよく協議の上、適切な判断をしたいと言っておりました。そういうことから、あのような決定になったわけでございますが、今後、このハンセン病問題に対して早期かつ全面的な解決を図るためにも、国会等の御協力をぜひともお願いしたいと思います。

谷口委員 いずれにいたしましても、患者の皆さんの気持ちをよくお聞きしていただいて、また、今までの状況もかんがみて、患者の皆さんの意に沿うような決定をしていただきたいというように思う次第でございます。よろしくお願いいたします。

 それで、今度は緊急経済対策に入るわけでございます。

 私も、与党三党の証券市場の活性化のプロジェクトチームに入らせていただいて、今回の緊急経済対策につきましては深くかかわらせていただいたわけでございます。

 御存じのとおり、この十年近く景気が低迷しておって、また、本年に入って、例の三月の株式市場の低迷というような状況の中で、一刻も早くこのような景気の回復を図っていかなければならないということの意味合いで、この緊急経済対策は、いわば当面の対策と、中長期的な、構造的な意味合いの対策も含めて、今回、立法化されたものもございますし、まだ一部先送りをされているのもあるわけでございますが、そういうようになったわけでございます。

 それで、一番初めにお伺いをいたしたいのは税制でございまして、特に証券税制についてお伺いをいたしたいわけでございます。

 今回法案を提出いたしております、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度、いわゆる、一年以上持っている株を売却した場合に売却益の百万までは非課税にしてやろう、こういう税制が今これから審議をされようとしておるわけでございますが、これ以外に、与党三党の中で協議をされたものが数点あるわけでございます。

 一つは、御存じのとおり、現在、申告分離と源泉分離という二本立てでやっているわけですね。申告分離が現在、税率が二六%でございますが、個人投資家に証券市場に参入してもらうということの一つのインセンティブと申しますか、そういうことも含めて、税率を引き下げる必要がある、こういうような観点で、二六%の税率を二〇%に、こういうようなことを申し上げたわけでございます。

 それと、損失が出た場合に、これを五年間繰り越そうというようなことでございますが、このことであるとか、その他、長期保有の株式を譲渡した場合にはこの税率を半減しようというようなものであるとか、個人の受取配当金課税を二分の一ぐらいに軽減しようとか、あと、少額配当の申告不要制度の限度額を引き上げよう、現行十万のものを二十万ぐらいにしよう、このような問題が議論をされたわけでございますが、まだ実現に至っていないということでございます。

 総理は、所信表明で、「証券市場の活性化のために、個人投資家の積極的な市場参加を促進するための税制措置を含む幅広い制度改革を短期間に行います。」このようにおっしゃったわけでございますが、この国会の終わるまでの間に一定の結論を出して、秋の国会にこれを成立させるというような意気込みで私たちはおるんですけれども、このようなことにつきましてどのようにお考えなのか、御所見をお伺いいたしたいと思います。

塩川国務大臣 今、谷口さんがおっしゃいました諸案件は、確かに検討に値することでございますし、また、早急に解決したいと念願いたしております。

 そのうち、とりあえずは、先ほどおっしゃいましたように、特別控除制を百万円導入いたしまして、この法案を提出させていただいておることでございまして、この法案が成立いたしましたら、十月一日から実施したいと思っております。

 他の案件につきまして、例えば申告課税と源泉徴収の二本立てになっておりますけれども、私たちといたしましては、この際、でき得れば申告納税制にするのが公平であり、かつ、私は正確に申告されると思っておりますので、その方向に行きたいと思っておりまして、二年後には一本化にしたい、そのときには、おっしゃるように税率を考慮いたしまして、どの辺がいいかという妥当的な線を見出していきたいと思っております。

 現在の二六%というのは、確かに不動産の処分益とかそういうものと相勘案いたしましてバランスをとって行っておるのでございますけれども、証券の個人参加というもの、証券市場に個人が積極的に参加するためには、ある程度優遇措置も考えざるを得ないと思っておりますので、一本化のときにはそれをぜひやっていきたいと思っております。

 それから、申告の益金の最低限を十万からもっと引き上げろという問題がございますけれども、この問題につきましても、そういう証券税制全体の改正、そしてまた、土地、不動産に対する税制の関係も絡んでまいりますので、早急に検討していただきたい。

 おっしゃるように、六月じゅうにということはちょっと難しい、この国会じゅうにということはちょっと至難なように思いますけれども、いずれ各党、特に三党協議の中で問題点を指摘していただいておりますので、これをできるだけ早く軌道に乗せて結論を出してもらうようにいたしたいと思っておることは事実でございます。

谷口委員 塩川財務大臣は私たちの大阪の大先輩でございまして、ぜひまた頑張っていただきたいというように思うわけでございますが、若干消極的なように思うので、今申し上げた税率の引き下げは、ある程度今二本立てになっておりますけれども、二年後に一本化された段階ではなくて、今の現状の中で二〇%にというように我々は考えておりますし、自民党の議員の方もそういうふうにおっしゃる方もいらっしゃるわけで、ぜひ前向きに考えていただきたい。総理は短期にやりたい、こういうようにおっしゃっていらっしゃいますし、そういう観点でぜひ早急に対応していただくようお願いをいたします。

 その次に、緊急経済対策の都市再生ということについてお聞きいたしたいわけでございますが、今地価がどんどん下落いたしておりまして、地価をどのように有効利用していくかということが都市再生の一つの大きなポイントになるわけでございます。

 それで、地価の下落、最近、余りこの地価について議論されることがなくなったわけでございますが、旧国土庁の二〇〇〇年版土地白書によりますと、全国の土地取引面積は十五万七千ヘクタール、これが九八年ですね。九〇年にはこれが二十三万九千ヘクタールということで、三五%少なくなったわけでございます。東京圏に限って見れば、九八年の取引面積は九〇年度に比べまして四二%下回っておる。このように土地の取引が大幅に減少してきた、こういう実態があるわけでございます。

 また、日本不動産研究所によりますと、全国市街地の地価が、昨年の九月末時点で、九〇年のピークのときに比べまして二七・七%の下落と。これは、特に大都市はもっと下落をいたしておるわけでございます。この地価の下落が、きょうも柳澤大臣に来ていただいておりますけれども、不良債権の問題と大きくまたかかわっているところでもあるわけでございますが、現行地価についてどのようにお考えなのか、小泉総理、お考えを。

扇国務大臣 今、谷口先生おっしゃいますとおりで、ほとんど動かないところと、また土地によっては大変二極化が進んでいるというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 そういう意味では、十三年度の地価公示によりますと、東京の都心部、先生がおっしゃいますように、かなりマンションの売れ行きがよかったわけですね。そのマンションの売れ行きがよかったことに関しまして、住宅地の地価というものも、大体年間の一・六%の下落という、ほぼ横ばいになってきた。そして商業地に至りましては、IT関連や外資系の企業等々が入ってまいりましたので、前回の公示の年間七・四%下落から今度は六・〇%と、大体横ばいになってきたなという感じはなきにしもあらずではございますけれども、今先生がおっしゃいました、ある地域によってはまだ大幅に下落している、そういう二極化というものは顕著になってきております。

 その点においては、私たちも、住宅地と商業地とも、あるいは利便性、そして皆さん方の希望が、職場に近いところからなるべく通勤したい、そういう御希望もありまして、下落幅が大体下げどまりということで、都市に入ってくる人も多くなって、住宅地もかなり売れ行きが上がってきている。ですけれども、逆に、地方によっては、都心に移られたために下落幅が広くなるという二極化というのはなきにしもあらず、先生のおっしゃるとおりだと思います。

谷口委員 そこで、総理にこれはお聞きしたいのですが、総理は、都市再生本部長として、みずから都市再生について頑張ろうというようにおっしゃっておるわけでございますが、今扇大臣がおっしゃったような地価との関係で都市再生を考えていらっしゃるのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 地価が、平成三年のピーク時に比べると、全国では、住宅地が六七%程度に落ちている、商業地は四一%程度に落ちている。特に三大都市圏に至っては、住宅地は五一%といいますから、約半分に値下がりしておる。商業地は二六%ですから、四分の一近くまで落ち込んでいるわけですね。

 あのピーク時のときには、日本はアメリカのカリフォルニアよりも狭い面積なのに、地価の値段からいうとアメリカよりも高いと言われて、これはおかしいんじゃないかとみんな言っていたのですよ。多くの人が半分以下になっても、あるいは十分の一ぐらいが適正じゃないかというぐらいに言った人もいたぐらい、高過ぎる高過ぎると。今度は低くなると、これは問題だという議論が出てきますが、私は、この地価が低くなったということを都市再生に生かしていくべきじゃないかと思います。そこが今後の知恵の働かせどころじゃないかなと。この地価が下がった状況を都市再生にいかに活用していくかということを真剣に検討していくべきじゃないかなと思っております。

谷口委員 いずれにいたしましても、我が国戦後の経済が土地本位制と言われるような部分があったのは間違いのない話でございますので、そういう観点で都市再生をまた進めていただきたいというように思う次第でございます。

 あと、不良債権の債権放棄ガイドラインについてお聞きいたしたいのですけれども、今、経団連と全銀協と、また金融庁も入ってガイドラインづくりをされているということでございます。

 どうも、聞いておりますと、全銀協の方は、経営の拘束を嫌うという意味で、なかなか真剣にこの中に乗ってこない。経団連の方は、過剰生産力を解消するためにもだめなプレーヤーは出ていくべきだ、こういうようなお話で、血を流す構造改革を望んでいらっしゃる、安易な適用を警戒されているというような状況の中で、総理が二、三年のうちに不良債権をやりたいというようなことで、もう既にこの四月から始まっておるわけですけれども、どうもガイドラインができませんと実態的に進まないというところがあるわけでございます。

 それで、今見ておりますと、現実はこのガイドラインづくりが進んでおらないという状況があります。これは金融庁の方は民民でやるべきことだから一歩退いて見ているというような状況にも私は見えるわけですけれども、こういう状況は大変好ましくないわけで、もし経団連また全銀協が積極的にやらないということであれば、例えば金融庁がリーダーシップをとってやるというようなことをやらざるを得ないのじゃないかと思いますが、これについてどのようにお考えでございましょうか。

柳澤国務大臣 不良債権の最終処理の手法には幾つかあるわけでございますけれども、その中で、再建型の中に、一つは法的な再建型の処理というものがありますし、また私的なものもあるということで、私的なものについても随分行われてきたのですが、世の中の受けとめ方というものについて、若干、積極的な評価という点で欠けるところがあるわけでございます。

 そういうようなことから、もう少しこの透明性を上げる等のルール化を図るということが考えられるということで、私ども、関係の民間の方々に働きかけをいたしまして、現在その検討の場を設けていただくべく、大変精力的な動きをしていただいておるわけでございます。

 なかなか微妙な問題もありますので、ちょっとした行き違いみたいなものもあったことは否定いたしませんけれども、今や大体お気持ちがそろって、このことについて研究をする場でやっていこうじゃないか、こういう機運が認められるようになっております。

 私どもといたしましては、財産の処理の問題だものですから非常に微妙なものがありますし、また、その微妙なところにいろいろの決断をしていくということについては、専門的、実務的な面もありますので、政府が何か仕切るというようなことはやはり、それはちょっと力に余ることでもあるし、また筋も違うのじゃないか。

 しかし、政府が一生懸命この促進というか、促していくということは、我々の責任である、このように考えて鋭意進めているところでございます。

谷口委員 いずれにしましても、膠着状態が続くということは好ましいことではありませんので、ぜひこのガイドラインづくりを進めていただくように。私が申し上げたのは、もしできない場合は金融庁が引っ張らざるを得ないのじゃないか、こういうことを申し上げたわけで、そこをよく検討していただきたいというように思う次第でございます。

 それで、景気の回復ということでちょっとお聞きいたしたいのですが、先週、平沼プランというのですか、十五項目についての「新市場・雇用創出に向けた重点プラン」が出されました。

 第二項目に「戦略基盤・融合技術分野への重点投入」というのがありまして、環境だとかバイオテクノロジーだとか情報通信だとかナノテクノロジー、こういうようなところに集中的にやろう、こういうことなんですけれども、総理、私は、集中的産業振興といいますか、森内閣のときにはIT産業を中心にして予算もそこへつぎ込んでいろいろやったわけですね。確かにこの十五項目の中に入っておるのですけれども、十五項目の一分野でございますので、平沼大臣の考えていらっしゃることはよく理解できるのですけれども、集中的に業種指定をしてそこに重点的に予算もぶち込んで、この数年内に諸外国の中で競争力のある産業を構築していく必要がある、このように思うわけでございますが、最後に総理の御答弁をお願い申し上げたいと思います。

平沼国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、やはりこれから集中的に予算配分もして、そして、経済構造改革を進めながら、これから発展性のあるそういった産業を育成していく、そこにインセンティブを与えていくということは大変必要なことでございますので、十五項目の中に入れさせていただいて、そして、それをたたき台として、これから鋭意私どもは英知を絞ってやっていかなきゃいかぬ、このように思っております。

谷口委員 時間が来ましたので、終わります。

野呂田委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。

 次に、五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 故福田赳夫先生にゆかりの者として、小泉純一郎総理大臣の誕生を心からお祝いを申し上げるところであります。

 福田先生と親しくさせていただきまして、人の悪口を全く言わない方でありました。その中でも、私は、期待をしておった人物がだれだったかよくわかっております。一人はまさしく小泉純一郎さんであり、若手では、我が党に今おられる鹿野道彦さんを大変評価していたということを知っております。

 それは、政治家にはいろいろ妥協があったり、政治をやる上ではお金が必要だったりすることもあるだろうけれども、究極のところで、我執を捨てて、我を捨てて人のために尽くせるかという、その純粋さを福田さんは一番評価しただろうと思っておりまして、そういう意味で、ぜひその特質を生かして、福田先生の期待におこたえをいただけますようにお願いを申し上げるところであります。

 また、私は、そういう観点から見ますと、我が党の鳩山由紀夫という人物は、やはり同じように純粋な、人に対して仕えるという精神を持った人間でございますので、ぜひ協力し合って、改革を進めるという部分については、よく党首討論等を通じて鳩山の意見を十分に聞き、受け入れていただきたいというふうに思うところであります。

 まず最初に、ハンセン病の問題について私もお尋ねをしたいと思うんですが、立法の不作為の指摘があったということで、与野党の間で大分もめているようでございますけれども、私は、素直に、謙虚にやはり反省をし、国会としての意思の表明をすべきだというふうに思います。

 三権分立の立場はありますけれども、自民党総裁としてこの問題についてどうお考えになるか、まずお尋ねします。

小泉内閣総理大臣 このハンセン病に対する判決に対しまして、私の考え方は政府談話で表明されているとおりであります。今後、この趣旨が生かされるように、国会等でもぜひとも御議論をしていただきたいと思っております。

五十嵐委員 三権分立の立場はありますけれども、与党の最高のリーダーでもあるわけですから、リーダーシップを発揮されて、きちんと反省すべきところは反省するというお立場で、与党の側をおまとめいただきますようにお願いをする次第であります。国会の協力をお願いしたいということの中には、そういう思いもこもっているというふうに受けとめさせていただきたいと思います。

 それから、これも前内閣からの引き継ぎの事項でありますけれども、KSDの問題ですが、豊明会を通じて、豊明支部を通じて自民党費の立てかえ問題が出てまいりました。森前総理がこれについて調査を約束されているわけでありますが、あの約束の時点から三カ月以上たちました。もう既に結果が出たころかと思いますが、もし出ていなければいつまでにやるのか、出ていればどのように公表し、どのように措置していただけるのか、お尋ねをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 我が党の幹事長に、できるだけ早く調査をし、結果を出し、公表してもらいたいと指示しておりますので、その点を再度督促して、できるだけ早い機会に明らかになるよう努力していきたいと思います。

五十嵐委員 できるだけ早い機会にというのは結構でありますけれども、国会が終わってしまえばそれを審議する機会もなくなるわけですから、できれば時間を区切って、今国会中にというような言葉をいただきたいわけですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 できるだけ早く出せるように努力していきたいと思います。

五十嵐委員 さて、本題の改革についてお話をさせていただきたいわけですけれども、改革という点で言うと、私ども国民は、まだにおいをかいだだけという段階であります。

 総理を割烹ウナギの亭主に例えて大変恐縮でございますけれども、かば焼きのにおいだけで国民はもうどんぶり飯を三杯も食べてしまったという状態で、満腹感にあるわけですけれども、しかし実際には、かば焼きはまだ最初の一枚も焼けていないのであります。

 問題は、ウナギを入れた水槽にウツボが入っておりまして、これが、寝たふりをしながら、主人にかみつく機会をねらっているということであります。ですから、ウナギを割いて焼くはずの主人が、ウツボに手をやいて、ウナギを焼かずに手をやいて、えさをまく役に変わってしまいはしないかと私ども野党も、実は国民の皆さんも心配をしているわけであります。

 そして、においで人気が出た、お店に客が行列をしているというだけで、だから、ここで解散をしてしまおうというお話もウツボの皆さんを中心にあるようですけれども、ウナギが焼き上がる前に解散してしまうということは、これはまずいと私は思います。

 なぜならば、それは一気呵成に改革というのはやらなきゃいけない。一気に、人気が高まって、改革に期待が高まっているときにやらなきゃいけないのに、そういう衆参ともに解散をして、なくなって、空白をつくるということでは、これは永遠にかば焼きが焼き上がらないということになってしまいますので、この解散問題について、私は、我が党は受けて立ちますよ、そのときは。だけれども、それとは別に、それは改革という立場からどうかと。

 純一郎さんは、小泉さんはまさに純な純一郎さんですから、先ほど申し上げましたように、福田先生の意を体するならば、改革に邁進されて、そういうことはないだろうと私は思うのですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 参議院選挙が七月に行われる予定であります。衆議院の場合においては、まだ一年しかたっておりません。任期はまだ三年以上残っているわけであります。そういうことを考えれば、衆議院選挙はまだまだ遠い先の話だなと私は思っております。

五十嵐委員 いや、そういうことではないのです。改革のためにこの今の機運をどういうふうに使うかということが問題だという真剣な話なんですね。

 構造改革の意味を問うていかなければならないと思います。構造改革というのは何かということなんですが、基本的には、日本の資本、これはお金も含まれれば、お金以外の財も含まれると思うのですが、それが働いていない。パフォーミングというような言葉がありますけれども、要するに、稼働していないお金や財が満ちあふれていて、働くという構造になっていないということが問題なんだろう、これを働かせるということが本来的な構造改革だと思っているわけであります。

 国際競争力の年次報告書というのがあるのですが、かつて一位、二位を争っていた日本が、今や二十六位、一方的に落ち続けていて、これに対してその報告書の中では、日本はニューエコノミーへの対応がおくれていると書いてあるのですが、ニューエコノミーへの対応がおくれているというのは、ニューエコノミー、オールドエコノミーにかかわらず、両方とも、その生産効率性、生産性あるいは収益性が落ちているということを指摘しているんだろうと思いますが、こういう認識について、どのように思われますでしょうか、財務大臣。

竹中国務大臣 基本的には、私たちが持っている人的な資産、物的な資産を含めて、リソースがやはり非常に非効率にしか活用されていない。総理の所信表明にもありましたように、そういった意味での潜在力を自由に発揮させて、同時にその潜在力を高めるということがやはり構造改革であろうかというふうに思います。

五十嵐委員 そのとおりなんですね。国民は貯金に走っている、そして企業は過去の失敗を補うための借金返しに走っている、銀行は自己資本を保つための内部の留保と、あるいは安全な投資先であると思われている国債を買うことにきゅうきゅうとしていて、これがいずれも不稼働に近い状態になっているということであります。

 このときに、量的な拡大というのも一つの方法としてあるのかもしれません。それを過去の自民党政権は追求してきました。しかし、量的な拡大というのは、公共事業とあるいは金融の両面での量的な拡大でありますけれども、副作用もあるわけですね。

 それからもう一つ、量的な拡大をする価値があるということは乗数効果が働くということであります。金融でいえば、信用乗数が上がるということが、これは不稼働なものを稼働させる一つの力になると思うんですけれども、しかし実際には信用乗数は上がらない、短資会社に資金が積み上がるだけというような状況になっていっている。あるいは公共事業もその乗数効果が上がっていない。逆に、国債を大量発行して、臨界点に近づくことによって国民に将来の増税を予感させるというようなことで、逆の萎縮作用が起きている。いわゆる量的拡大の方が、実際には景気の足を引っ張る方向に動いているということではないでしょうか。

 だから、二兎を追う者というよりむしろ構造改革の方が、根本的な、不稼働資産を稼働させる政策の方が大事だというふうに転換をされたはずではないんでしょうか。いわゆる二兎論というのがあるんですけれども、実際にはそこに気づかれたから政策転換をされたんだとはっきりおっしゃられるべきだと私は思うんですね。その辺についてはいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 御指摘のとおり、だからこそ構造改革なくして景気回復なしという方針のもとに、今後聖域なき改革を断行していかなければならないと思っております。

五十嵐委員 ところがまだ、例えば人事の面を見ましても、麻生太郎さんは総裁選の最中も、いや、量的な拡大がある程度必要なんだというようなことをかなり強くおっしゃって、マイナス成長も受容するような小泉さんとは一緒にやっていられないという発言までされている。すなわち、政策的にいえば、亀井静香さんと麻生さんとは非常に近い仲に入るというふうに思うわけですね。その方を政調会長に起用されたということ、あるいは、総裁選の途中で、亀井静香さんの属する江藤・亀井派と派閥単位の合意を結ばれたということは、やはりこれは路線のはっきりした転換という意味からいうと矛盾があるのではないか。

 私どもは、こういった問題をやはりきちんと整理をつけていかないと本当の意味での政策転換ができないんではないかということを思うわけですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 その点が、自民党というのは極めて柔軟な政党でして、意見が違っても、党員、国会議員が決めた総裁には協力していこうという美風があるんですよ。戦いは戦い、終わったら、敗者も勝者に協力していこう、勝者も敗者の考えをおもんぱかりながら、お互い協力して一つの方向に向かおうということでありまして、小泉内閣の方針に協力するということで、それぞれの方々が今努力していただいているわけであります。

 道路財源の問題一つとってみても、これは今まで見直しすら反対の意見が強かったわけでありますが、今は党内において、中身はともかく、見直そうという方向でだんだん意見集約ができてくると思います。

 今までの考えと違った人を全部排除したら、政党政治は成り立たないですよ。党首選挙は自民党だけじゃない、恐らく民主党も行われると思います。党首選挙のときは意見の違いがある、しかし、その違いを克服して、どうやって協力していこうというのが政党政治では大事だと思います。

 役所もそうですよ。今まで考えの違った人を起用するのはおかしいといったら、役人全部首切らなきゃできないじゃないですか。そうでしょう。役所というのは、政権交代すれば、今までの考えを違えて、全部政党政治に従っていくのが役所なんですよ。

 だから、政党政治でも、意見の違いがあっても勝者に対しては敗者が協力する、そういう前提で小泉を総裁に選んだ、総理就任に異議なく賛同してくれた自民党でありますし与党でありますから、私は、過去の考えは多少小泉と違っても、今、小泉内閣の方針に協力しようという姿勢に自民党も理解をしてくれるのではないかと思っております。

五十嵐委員 総理としてはそう思われたいんでしょうけれども、しかし、例えば本会議場の様子を見ていますと、小泉総理の改革の熱弁に対して、拍手するのは民主党側、そして、一、二年生の間にぱらぱらとしか拍手がないのは与党席という状況を見ると、あるいは、総論では賛成でも各論にいくとやはり強い反対があるという状況が見てとれるわけですから、これは、国民の皆さんも、自民党と小泉さんは違うんだなというのはもうわかり始めていることだろうと思います。

 話を先に進めたいと思いますが、この緊急経済対策、最初のお仕事だということを小泉さんはおっしゃいました。総理はおっしゃいました。けれども、この緊急経済対策、まさに構造改革に資する対策なんですかということを問わなければいけないし、一方では、本当に緊急に役に立つ対策なんですかということも問われなければならないんだろうと思います。

 まず、その対策の目玉であります、銀行保有株式を買い取り機構をつくって、必要とあれば公的資金も注入をしていこうという話になっているわけですが、これは、資本主義の常識からいくと大変おかしなことだということを申し上げなければならないと思います。

 これは何も銀行保有株式に限りません。一般の株式会社間の持ち合いでも同じことなんです。すなわち、株を一株も持っていない持ち合いの相手方の社長さんが、会社としては持っているけれども個人としては持っていない方が支配権を行使ができて、本当の株主、一般の株主はその支配から排除されるという意味を持つわけですね。このことを、やはり資本主義の原則から外れる、コーポレートガバナンスという観点からも大変おかしいことだというのが基本的な考え方なんだろう。だから、持ち合いを解消しなければいけない。

 このことがいわば、日本がROEが上がらない、配当を高くできない、配当性向が低いということに結びついていく。あるいは、いわゆるモラルハザードというのを生む、日本の株式市場なり資本市場が公正でない、フェアでない、こういうことの大もとになってきている。だから、これを解消しましょう。これは非常にいいことなわけでありますけれども、そこで国がかわりにこれに乗り出してくるというのは、まさに国家規模での金庫株であり、国家規模でのモラルハザードに結びつきかねないという点があるわけです。これは逆に言うと、まさに構造改革とは一部合っているようでいて、全体的に見ては合っていない話になるのではないかという指摘をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 金融機関と企業が株を持ち合っている、このことによって、株主としてその発行会社の企業経営に対して十分な監視というか、そういう発言ができなくなっている構造にある、これを解消するということは、いわばコーポレートガバナンスを上げるという意味でプラスの評価ができるんじゃないか、これは私も同じです。

 ところが、いろいろ聞いてみますと、ある論者は、銀行を通じてやはり発行会社に対してこれまでコーポレートガバナンスを求めてきた面もないわけじゃないぞ、こういう議論があって、私も、へえ、おもしろい議論もあるものだとこのごろ思ったりしていますが、私個人としては、あくまでも前者、つまり五十嵐委員と同じ立場に立っております。

 そこで、そういう面だけじゃなくて、実は今度この問題が持ち上がったのは、金融機関の資産の健全性、株価の変動リスクからどれだけ金融機関を守るかという観点があったことは既に御案内のとおりであります。そういう観点から、一定の保有制限をするということをかけた場合に、これをオーバーする株が一挙に、どのぐらいの期間かという問題もありますが、株式市場に放出されたならば、一時的に株式市場の株の需給関係に大きな変動を及ぼすので、それを一時的にバランスさせるような装置がショックアブソーバーとして必要なんじゃないか、ここから買い取り機構の構想が出てきたわけであります。

 これは御指摘のとおり、株式市場という資本主義の中でも最もマーケットらしいマーケットの中でそういうマーケット以外の力を差し挟むわけですから、これはもう極小のものでなければならないということで、今、鋭意検討しているところでございます。

五十嵐委員 基本的に考え方に問題がある。例えば、国による株価操作になりかねないということですけれども、では一方では、ぼろ株だけを機構に放出したらどうなのか。市場では優良株だけを売る、あるいは優良株は持っているということになると、やはりさらにまた別の問題も出てくるんではないか。この点についてはどういうようなことを大体イメージされているのか。細かいことは決まっていないでしょうけれども、その辺をどういうイメージでこの機構を今つくろうと考えられているのか、大まかな方向だけでも教えていただかなければならないと思います。

柳澤国務大臣 金融機関の保有株の放出については、緊急経済対策の中でも、一定のルールに従いということが既に書かれておるわけでございます。そこに含意することは、もちろん金融機関の側の意思をどのぐらい尊重するかということもルール化の対象なんでしょうけれども、とにかくそこのところを、不当に自分たちだけが利益を上げないようにするということは、既に私、国会答弁でも申し上げておりますけれども、そういう観点を含めてルールをつくり上げていかなきゃいけない、このように考えております。

五十嵐委員 ある意味で論理が逆転しているんですね。いいことなんだけれども一挙に放出してきたら株価が下がってしまうから、そこを防ぐためにショックアブソーバーだとおっしゃるんですけれども、もともと、しっかりとROEを上げるという方向に努力する、あるいは市場を透明にする、あるいは公正にするということをおやりになれば、ああ、日本の株式市場なり日本の経済界は変わったんだ、粉飾決算だらけじゃなくて、粉飾決算は許さないという市場に変わったんだとなるだけで株価は上がるはずなんですよ。持ち合い解消をきちんとすれば、公正になったんだということで株価は上がるはずなんですよ。

 ですから、ショックアブソーバーで、株価を落とさないためにさらにそこをあやふやにして、国家ぐる、国家がかんで株価維持のためのPKOをやるというのではなくて、逆の方向から株価を上げるということをお考えになればいい。

 むしろ、私は主張させていただいているわけですけれども、例えば東証一部の上場基準に二年後からあるいは三年後からROEの要素を入れる、ROE何ポイント以上でなければ上場を許さないというようなことになれば一生懸命やるかもしれません。そうなれば株価は上がりますよ。そうした別の方策というのを考えられるべきです。どうも発想が安易で、逆転しているんではないかということを思うんです。

 そういうことを起こさないような妙手があるのか、自信がおありになるか。九月まで幾らもないわけですから、八月に、夏の暑い間に国会を開いて長々とこの議論をしなければいけない、今のままでいけばそういうことになるんですが、本当にだれもが満足するような仕組み、システムができ上がるのか、自信がおありになるかどうか、もう一度お伺いをいたします。

柳澤国務大臣 要するに、株主を大事にする、もっともっと大事にする、そういう政策が実現されたならば、それがもう株価を何よりも引き上げる要因になるのではないか、これは私も十分承知をしておるところでございまして、その線でのいろいろな発言もさせていただいているわけでございます。

 しかしまた、じゃ需給というものが全く価格に関係ないのかといえば、それはなかなか否定し切れないという面もあります。そういうようなことで、私どもとしては細心の注意を払ってやっていかなきゃいけないということを考えているということでございます。

 自信があるかと言われれば、さあ、百点満点の答案が書けるか、これはもう初めから望むべくもないと思います。いかにそういうことで合格点を何とかいただけるようなものが書けるかということだろうと私は思います。

五十嵐委員 そうなんですね。亀井静香前政調会長が今国会中にやれとおっしゃったことができないということは、なかなかこれは難しいぞ、下手するとこれによって逆に日本の信用を落とすぞということなんだろうと思います。その辺はぜひ慎重に、よく考えておやりをいただかなければいけないし、そういう意味でも、前政権からの継続ということではいけませんよということを申し上げなければならないと思います。

 もう一つ、金庫株の解禁についても問題があります。

 金庫株自体は私はあり得ることだと思っています。しかし、ただでさえインサイダー天国と言われている。ダイエーの前社長が、あれはどう見てもインサイダーだと私は思いますけれども、あのダイエーの前社長の取引がインサイダーとしては認定されなかったというか刑事罰を免れたということから見ても、日本はインサイダー天国なんですよ。金庫株を解禁すれば、このインサイダー天国をさらに助長しかねないという問題があるわけです。

 それで、金庫株を解禁する場合には、これはどうしても日本版SEC、アメリカの証券取引委員会のようなSECをつくって、インサイダー規制を厳しく取り締まり、罰則も厳しくするということが絶対欠かせないと思うわけですが、この点について金融大臣の御所見を伺います。

柳澤国務大臣 緊急経済対策を決める、その中に金庫株の問題もあったわけですが、その際にも、今先生の御指摘のインサイダー取引あるいは相場操縦、こういうようなものを誘発する機会がふえるという厳しい認識に立ちましてそこにはっきり言及がなされておりまして、証券取引法を改正してそういうものをきちっと、いわゆる重要事実ということで、公表前には一切それを知っている者は取引はできないというようなこと等を手当てすることによって、そういったものに対処していく、こういう考え方で今実施されているところでございます。

五十嵐委員 ちょっとはっきりしないんですが、日本版SECと呼べるようなものにするという認識でよろしいんですか。

柳澤国務大臣 証券取引等監視委員会の強化ということもその際にうたっていただいておりまして、その陣容の強化、それから技量のアップ、こういうようなものに努めていくということになっているわけでございます。

五十嵐委員 私は、この面では人をどんどん入れてもいい、いわゆる一般的な行革というものとは違う範疇にしてもよろしいんだと思うんですね。これは、人員を増強するあるいは予算をつけるとかいうことではなくて、権限を圧倒的に強化する必要があるというふうに思うわけです。

 また、全面的な改正、私は金融犯罪に対する罰則は緩いと思います。何億も稼いだ人に罰金五十万円だ、百万円だというのでは話にならない、痛くもかゆくもないわけですから、金融犯罪については厳罰に処する、体刑に処するということが私は必要だと思うわけですが、金融犯罪に対する対応としては、所管が違うかもしれませんが、どういうふうにお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 かねて、金融犯罪に対する罰則のレベルが低いんじゃないか、こういうようなことはたびたび御議論にもなっているわけですけれども、法務省御当局でもこの点を最近においても検討して、最近罰則のレベルを改定したばかりというふうに聞いておりますが、今後とも不断にその妥当性について検討をしていただけるものと考えております。

五十嵐委員 それから、税制も一部つまみ食い的に改正がなされるというふうに私どもは思っておりまして、そもそも二六%の税率を二〇%に落とす方がいいかどうか。私どもはむしろそれをやってもいいと思っているわけですが、そういうような全体のバランス論を考えずにこの部分だけ動かすというのは、やはり問題があると私は思うのですね。

 その百万円の控除をイコールフッティングさせる、イコールフッティング自体は悪くはないと実は私も思うのです。だけれども、一方では日本は貯蓄過剰でしょう。貯蓄過剰で少額貯蓄への過度の優遇があると私は思っているものですから、その他の貯蓄の限度額を、例えば郵貯の限度額をもっと減らさなきゃいけないのじゃないか。預け入れ限度と優遇限度と両方ありますけれども。そういうような時代に、こちらが大きいから株の利益の方もそちらに合わせようというのは、むしろその合わせ方が逆なのかもしれないというようなこともあるわけですね。

 ですから、つまみ食い的な税制の改正については問題だという立場なんですが、この点についてはいかがでしょうか、財務大臣に伺います。

塩川国務大臣 お尋ねの中に二つあったと思っておりますが、一つは、貯金のもっと流動化、例えば郵貯等を増額してということがございますが、これは当然検討されるべき課題であると思っておりまして、それは郵政全体の改正と結びつけて行われると思っております。

 一方、税制のことについてでございますけれども、先ほどお尋ねの中にございました、税率を引き下げて申告課税の推進を図るべきだということでございます。

 先ほどもお答えいたしたのでございますけれども、現在、源泉と申告と両立てになっております。二年後に一本化するということになっておりますけれども、できれば私たちは早く一本化したいと思っております。そのためには、一つの誘導措置として、申告税制のときにはこういう特典を与えますよということをやりたいと思いまして、長期譲渡益に対して百万円までとりあえず設けたようなことでございますが、これは要するに、二本立てになっておりますものを申告税制へ誘導していくという一つのインセンティブである、こう考えていただいて、できるだけ早く一本化するように努力したい、そのときには税率の問題も考えていきたい、こう思っております。

五十嵐委員 それから都市再生の問題です。まさにこれは表紙だけでありまして、法律の改正も出てこなければ何もないという状態でありまして、これは緊急対策に本当になるんだろうか。看板だけの、表紙だけの話じゃないかという指摘をさせていただかなければならないと思います。

 以上のようなことを考えると、小泉内閣の最初の大仕事であると称しているこの緊急経済対策、本当にこれは構造改革なんだろうか、あるいは緊急対策なんだろうか、こう疑われてくるわけですが、今までの私の指摘全般について小泉総理の所見を伺います。

塩川国務大臣 都市再生の問題につきましては、国土交通大臣がちょっと今席を外しておりますので、私からかわりましてお答えいたしたいと思うのでございます。

 都市再生本部の一番の任務と申しましょうか、課題は、都市開発に関するあるいは都市の環境整備に関するいろいろな規制が余りにも多過ぎております。しかも、その規制が古いものがたくさんございますので、これを改正して再生を図っていくというのがねらいでございますのと、それから、都市におきますところの面整備がおくれておりますので、これを積極的に進めていきたいということが、過日、都市再生本部の会合をいたしましたときの意見でございました。それに沿いまして私たちは努力してまいる。

 改革、改革と言って改革は進んでおらないじゃないかとおっしゃいますけれども、そうではなくして、今までの、右肩上がりでずっとまいりました諸制度というものを、それを右肩ではなくして平準化していくという大きい方向転換でございますので、相互に絡み合っておる問題をほぐしながら右肩から平準化していくということはなかなか難しい、容易ならぬことではございますけれども、そこに変革の時代を迎えたんだ、こう認識していただいて、それによりまして、逆に経済は新しい創造が起こってくると思っておりますので、そのことが結びついて経済の回復へつながっていく、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 ウナギのにおいだけで中身はウツボじゃないかというお話でありますけれども、国民の多くは、小泉内閣はウナギを提供してくれるのではないかという期待があるからこそ、これだけの支持を与えていただいているのではないかと思っております。

 かば焼きをつくるにしても、時間がかかります。ウツボを出したら私の支持率は急激に下がるということを自覚しながら、できるだけいい案を出して、国民も理解し、協力して支持してくれるような案を、知恵を出して検討していきたいと思います。

五十嵐委員 例えば、先ほどの都市再生の話でいいますと、もうかなり面的な整備の仕組みもできているんですね、実は。ブロック単位で話し合いができれば容積率も上げましょうなんというような制度ができているんですよ。わざわざあそこで、知恵がないところを無理やり何とか本部をつくって、知恵がないときは箱物をつくるというのは役人の世界の常識ですから、知恵がないときは話し合いの機関をつくるというのは。これは大先輩笑っていらっしゃいますけれども、まさにそうなんです、それは知恵がない証拠なんですよ。

 だから、早く中身を入れていただきたい。それには時間をかけないということがむしろ大事だということを申し上げておかなければいけないと思います。

 時間がありませんので、知恵を使えばいろいろなことができる、不稼働資産を稼働させられるということの幾つかの例を申し上げたいと思います。

 まず、坂口大臣いらっしゃいますが、平成十一年度までの社会福祉施設、特別養護老人ホームそれから身障者の各施設等に措置費が節約された分が繰越金、積立金の形で不稼働で置いてあるはずであります。全国で四千カ所の例えば特養があるわけですが、一億円ずつあったとして、四千億円、動いていない。これは、制度によって、もう総理もよく御存じだと思いますけれども、措置費というのはがんじがらめにされていますから、ほかへの流用がきかないということであります。

 しかし、これは法律改正が要らないと思うのですね。むしろ、指導なり政省令の改正でできるのではないかと思うのですが、今求められている特別養護老人ホームの個室化、これは公明党さんも主張されているのですが、この個室化や、介護、養護、健康維持事業などに再投資できるようにすれば、四千億円、あるいはもっとあるかもしれません、その額が実は活用されるということになるんではないでしょうか。

 一体、全体で額が幾らあるのか把握をされているのか、あるいはそうしたお考えがないのか。いわゆる死んでいるお金を生かすという方向にもっと知恵を働かせるべきだという観点から御質問させていただきます。

坂口国務大臣 二つありますが、一つの方のどれだけあるのかというのは、申しわけないのですけれども、ちょっと調べていないのですね。調べていないというか、役所として調べていないんですね、聞きましたら。これは一遍調査しますが。

 しかし、今御指摘になりました、今まで繰り越されておりますものはそのまま使えなかったわけでございますけれども、介護保険になりましてからそこは取っ払われましたので、現在は自由になったわけで、従来の措置制度から介護報酬として支払われることになりましたので、基本的には使途の制限というのは撤廃されたわけでございます。

 それから、それ以前のものが御指摘のようにされているということがございます。これにつきましては、都道府県知事の承認を得た上で一定の流用を認めるということにしておりまして、今御指摘になりましたように、個室の整備費用なんかに流用することはできるように今なっております。だんだんとそういう方向で今検討をいたしておりまして、せっかく蓄えられたものが何らこれから先のことに役に立たないということではいけませんので、そこは御指摘のような方向で今進めているということを御理解いただきたい。

 初めのところだけちょっと申しわけありませんが、そういうことであります。

五十嵐委員 調べようと思えばこれは簡単に実は調べられるはずなんです、書類は全部上がっているはずですから。それは早急にお調べをいただいて、御報告をいただきたいと思います。

 それからまた、都道府県知事が裁量できるようになっているということですが、これは当然ばらつきがあるはずでありますから、これは、個室化を進めようという意見をお持ちの大臣の方から都道府県知事さんなりにそれなりの文書を出して、お話をお進めいただきたいというふうに私は思います。

 それから、都市再生ということでいいますと、私は、今ちまちました都市をどうするかというような話よりも、もっと大きな国策を考えるべきだ。それは、一つは、日本の将来を考えるならば燃料電池というものに注目をすべきだと思っておりまして、ダイムラー・クライスラーも六千億円ぐらいかけてエコカー、燃料電池車の開発、五号車までできている。バスを二年以内には欧州で二十数台走らせるということになっております。

 この戦い、開発はグローバルなことになって、アイスランドという国は国策としてやろうとしている。あるいはアメリカでも、ロサンゼルスを含むカリフォルニアは熱心に取り組んでいるというようなことがあるわけですが、この競争に立ちおくれると、これはこれから非常に需要を生み出す分野であると同時に、立ちおくれたら非常に困るということになると思います。

 そして、これが道路財源の問題と絡んでくるわけです。要するに、ガソリンから税金を取ることばかりを考えて、これを既得権化していくと、これを手放せないということになると、逆にこうした無公害の非常にいいシステムである、水蒸気しか廃棄物は出さないという車の開発。車だけではありません、これはダウンサイジングですから、各家庭で発電ができるということになってくるわけですね。大きな発電施設や送電施設も要らないということになってくるわけで、社会的な影響の大変大きい分野の開発なわけですが、これについて日本は一体戦略的にどう取り組もうとしているのかというのが全く見えてきていない。

 こういうことをやることの方が、むしろ国民に元気を与え、寝ている資産を活用させ、日本の国力を復活させるもとになるのではないかなと思うんですが、こうした戦略をお考えにならないのか、高い立場から総理大臣にお伺いをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 燃料電池については私も大いに関心を持っておりまして、各国が今この実用化に向けてしのぎを削っているというのも承知しております。

 私は、燃料電池の研究開発というのは、今後の、環境問題のみならず、エネルギー問題を考えても大きな影響を世界に与えていくものと思っております。私は、まず政府として身近なできるものから始めようということで、全官庁の公用車を低公害車に切りかえるということを発表し、これをできるだけ早急に実現するようしておりますが、それも燃料電池等環境を重視した、今までの経済開発、科学技術の研究開発が環境問題があって制約を受けていたのを、逆にこれを成長産業に向けるような発想の転換が必要ではないかということから、まず手始めに断行したのがこの低公害車に全公用車を切りかえるということであります。

 将来に向けてはこの燃料電池開発も、国としても、積極的に各企業がこの研究開発投資に全精力を傾ける、世界に遜色ない科学技術をどうやって今後の環境政策、エネルギー政策に生かしていくかということを政府としても真剣に考えていきたいと思います。

五十嵐委員 その割には政府全体の動きは極めて鈍いと私は言わざるを得ないと思います。民主党は早くからこの問題にも取り組んでおりますので、ぜひ私どもの意見を聞いていただきたいということを申し添えておきます。

 時間がありませんので急ぎたいと思うのですが、郵貯の問題です。

 自主運用に入ったわけであります。そうすると、なおさら金融機関としての責任が重大になってくる。こういう面から見ると、郵貯、簡保は当然金融庁の監督下に入るべきだというふうに私は思いますが、監督検査の行政についてどうお考えになるか。お待たせいたしました、片山大臣、簡潔にお願いをいたしたいと思います。

片山国務大臣 今御指摘の点は、現在は国の機関がやっているわけですよ、郵貯も簡保も。したがって、所管大臣の監督のもとにやっている、国の機関がやっております、会計検査院その他のチェックは受けるということでございますが、御承知のように二年後には公社に移行する、あるいはその後のあり方については議論を始める、こういうことでございますから、今五十嵐委員が言われたような御意見も私も多々聞いておりますので、それを踏まえて、そういうことも中に取り込みながら具体的な検討に入りたい、こういうふうに思います。

五十嵐委員 大変失礼ながら総務省は金融の専門家とは思えないわけでありますから、私は、検査監督はきちんと金融庁のもとに、今でも入るべきであるし、公社化になれば、当然ながらさらにそういうことでなければならないと思います。金融担当大臣に、その意味では、現時点でと公社化になった後と、どういうふうにお考えになるか、伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 私どもは、預金者の保護あるいは仲介機能、いろいろありますが、基本的には預金者の保護のためにその銀行の健全性について検査監督をする、こういう立場でございます。国家がまるっきり全部保証している機関の場合には、何にも預金者の危険はないわけでございますので、私どもの監督にはなじまない、このように考えています。

五十嵐委員 それは違うのですね。それは違うのです。それは最後は税金で補うという話になるわけですから、これは毀損されることには変わりないわけですね。むだ遣いをされて利益が上がらない、赤字、もう現に赤字になっているわけですから。赤字になることは、単に将来の国民の皆さんの税金で賄う、補うというにすぎないのですから、それは預金が毀損されていることに実は変わりないと思うわけです。ですから、それは違うので、私はしっかりとした検査監督が必要だと思うわけであります。

 それからまた、柳澤大臣に続けてお伺いしますけれども、銀行の危機はないのだ、システミックリスクはもう起きないのだとおっしゃっていたわけです。それはBIS基準に従った自己資本の査定をきちんとしているからだ、こうおっしゃるのですが、マーケットの方は依然として税効果会計や公的資金を除いた正味資本で見ているのであって、危なっかしいと見ているわけですよ。マーケットの見方を無視して本当にいいのかというのが一つです。

 それからもう一つは、銀行自体が、東京三菱銀行が自己査定の甘さを反省いたしまして、このほど要注意先債権を見直しするというようなやり方で、引当金を積み増しするということになりました。

 要するに、各銀行ごとに問題債権の処理が違っているじゃないか、見方が違うじゃないか、くし刺しにすべきところをしていないじゃないか、それを容認してきたのはやはり金融庁の査定そのものも甘いんじゃないかという見方があるわけで、私は、システミックリスクはあり得ないとは思えないという立場に立つわけですが、その点についてもう一度伺います。

片山国務大臣 今、委員は、郵貯、簡保が赤字だと言われた。何を根拠に言われたかわかりませんが、郵貯は今までは、自主運用が四月から始まりましたが、これは義務預託なんですよ。あと若干の自主運用をやっておりますよ。簡保は自主運用ですが、いずれも評価益はちゃんと出ておりまして、赤字じゃありませんので。

柳澤国務大臣 マーケットが金融機関をどう評価しているか。これは、マーケットということでどういうことを想定されて、御念頭に置かれておっしゃられているかですが、九七年、八年のころ、我々がこれはシステミックリスクではないのかというふうに考えた一つのメルクマールは、やはりジャパン・プレミアムの存在でございます。そういう意味から申しますと、現在はジャパン・プレミアムが、小幅ではありますけれども、むしろマイナスであるというようなことからいって、私どもは、今現在、日本の金融システムが市場の信認を損なっているとは全く考えておりません。

 今般発表されました一連の大手金融機関の決算の状況につきましては、私ども、今これを分析途上でございまして、特に個別の銀行のことについて私ここでちょうちょう申し上げることは差し控えたい、このように考えておりますけれども、私どもは、金融検査監督におきましても、金融検査マニュアルに基づきまして整々としてチェックをいたしておるということだけ申し上げさせていただきます。

五十嵐委員 やはり甘いということは疑うべくもないと思うのですが、時間がありませんので、次に、金融緩和をして量的緩和をしているのですが、量的緩和というのは円安の傾向をもたらすということと、長期金利がやはり上昇する方向に向かう政策だと私は思うわけですね。

 そうすると、今たまたま運がよくて、外国の投資機関が、アメリカ国債が黒字で出さなくなったというようなこともあって、先進国の国債で大量発行しているのは日本だけですから、ポートフォリオ上、日本の国債をどうしても買わざるを得ない。そういうようなこともあって、たまたまラッキーで金利上昇がないということがあるわけですが、今の量的緩和策をやれば、実質的には金利上昇があると想定しなければいけない。金利上昇リスクを見ないで、今の状態がずっと続くというふうな想定をして、財政あるいは国債の管理あるいは金融というものを考えていくのは間違いじゃないか。

 特に、ムーディーズが今もう、ダブルAからシングルAへの格下げを検討していると発表されているわけです。スリーAからシングルAというと二段階も落ちるということになるわけですから、この金利上昇懸念を考慮しない、金利が上昇したら一遍に三十兆円以下というのは大変苦しくなってくるわけですね、このことをどうお考えになっているのか。財務大臣から伺います。

塩川国務大臣 私たちは、国債の発行に際しまして、そういう点は非常にシリアスに検討いたしておりまして、仰せのとおり、私たちと同じような心配をしておるということでございます。十分に注意を払いながら、発行の時期、量というものを調整していきたいと思っております。

五十嵐委員 そういう状況の中で、財政を引き締めて、引き締めてというのは健全化させて、むだを省いていくというのは大変な決意が要る。ウツボがいっぱいいる世界の中で生きておいでなわけですから、相当な決意が要る。

 その決意のあかしとして、私どもは、三十兆円以下というのを、法律でむしろみずからの手足を縛ってみたらどうかという御提案をさせていただいているのですが、総理大臣、これについて、その決意のあかしとして私どもが主張している三十兆円以下に抑えるという問題についてどうお考えかを伺って、私の質問を終わります。

小泉内閣総理大臣 年間五十兆円程度の税収しかないところに三十兆円以下に国債発行を抑制していこうというのは、緊縮財政だと考えるのは私はもうおかしいんじゃないかと思っています。

 それと、何のために今まで行財政改革を多くの政党、政治家が言ってきたのか。むだな金遣いをやめよう、簡素で効率的な政府をつくろうということでやってきたんです。郵政民営化のみならず、むだなことを役所がやっている、たくさんあるじゃないですか。その聖域に手を突っ込んだのは初めて小泉内閣だ。まず歳出の徹底的な見直し、むだな役所の仕事はないか、こうすることによって、私は、もっと引き締まった、税の有効な使い方ができるような機構、制度の改革をして、できるだけ国民の理解を得ながら構造改革、財政再建の道を進んでいかなきゃいけないなと思っております。

五十嵐委員 終わります。

野呂田委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 総理並びに関係大臣に、主に外交問題について質問をしたいと思います。一カ月たちました。日本の外交はどうなったでしょうか。世界の中で、果たして私たちの国が安心して他の国としっかりと手を携えていけるようなそういう外交をやってきたのか、そのことを中心に聞いていきたいと思います。

 まず第一点、外務省官房機密費の問題についてであります。

 きょうのニュースで、また松尾元室長がさらに二億円の横領容疑で再逮捕されるというニュースが流れていました。総理、一体幾らとられているんですか。最初告発をしたときには五千七百万、それが、次々と明らかになって、今ではもう億のお金です。そして、政府の答弁も逐一違っている。一秒前に言ったことがその次には違う、あるいは各大臣がおっしゃっていることが、あの松尾元室長に渡したお金、このお金は官房機密費、そこからであるというようなことを福田官房長官はこの予算委員会でおっしゃいましたが、ほかの大臣はそうじゃないということをおっしゃっている。一体どうなんだ。

 総理にまずお尋ねをしますが、私たちの大切な税金をこの松尾元室長に幾らとられているのか、そしてそれはいつになったらはっきりわかるのか、総理にお尋ねをしたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 今捜査中のことでありますので、その金額の全容はわかっておりません。

原口委員 会計検査院にお伺いします。

 私たちはこの予算委員会で、本当に、さっきむだをなくすということをおっしゃいました。むだじゃないですか、馬に使うお金、あるいは愛人のマンションに使うお金。一体どうなっているんですか。それはいつ返してくれるんですか。会計検査院、可及的速やかにこの委員会に報告するということを三月の予算の通過の前にお約束されました。今の段階でもまだ来ていない。いつ出すんですか、そしてどういう調査をしているのか、簡便に御答弁をお願いします。

金子会計検査院長 ただいまの会計検査院の検査の基本的なスタンスということでお答えをいたしたいというふうに思います。どういう形で検査をやっているかということについて、お答えを申し上げます。

 会計検査院では、個々の事実の取り締まりあるいは責任追及ということではなくて、報償費という予算の執行が適正に行われているか、また報償費という予算を使用して行われている事務事業が適正に行われているか、それを確保していくということが会計検査院の任務であるというふうに考えております。

 したがって、現在、今回の事案についての事実解明をすると同時に、報償費あるいは機密費の執行についてのシステムがどうなっているのか。また、そのシステムに従って、どのような慣行に従ってこれらの費目が使用されているのか。そしてさらに、これらの……(原口委員「委員長、短目に聞いたことに答えるように言ってください」と呼ぶ)どういうふうに検査をしているかということで今申し上げているので、そういうチェック体制がどうなっているか。

 さらに、外務省においてGAOの内部コントロールに従ったチェックについての検討をしているという話も伺っております。GAOでは、一つの重要な項目として、幹部職員の支出に対するコントロールに対する体制がどうなっているか、認識がどうなっているかということが極めて重要であるということを指摘しております。

 こういうものを総体的に調べて、そして、二度と今回のような事態が起こらないように再発防止を図っていくということが我々の任務であるというふうに考え、そして、現在鋭意そのような検査を執行しているというのが実情であります。

原口委員 今のような答弁をするのだったら、もう質問できない。あなたは三月の予算委員会のここで、可及的速やかに出すとおっしゃったじゃないか。二月に検査に入って、そして、松尾一人がだれかの、上司の決裁を得ないで内閣にどこどこ出ていってお金が来るなんてことはあり得ないんだ。そのことを早く出してくださいと言っているにもかかわらず、今の答弁ではとても納得できません。

金子会計検査院長 私は、無制限に検査をするというふうに申し上げたのではなくて、今回の事態について、できるだけ早急に事態を解決することが大切であるということで、可及的速やかに検査を終了したいということを申し上げたわけで、現在、先ほど申し上げました検査方針に従って鋭意検査を行っております。

原口委員 私たちは立法府で、予算を審議しているんです。まさにそれがこの委員会なんです。

 そして、その実態もわからないうちに、どんどん詐欺の額が膨れているじゃないですか。そして、外交機密費から官房機密費に上納があった。十六億ですよ、官房機密費は。これだけとられていたら、ほとんど松尾にとられているじゃないですか。

 各省庁の方、きょう大臣もお見えでありますが、皆さんの省で海外に職員を派遣される、そのお金は官房機密費じゃないんでしょう。宿泊費の差額は、御自身のところでちゃんと払っていらっしゃるんでしょう。違いますか。官房長官、どうですか。

福田国務大臣 お答えいたします。

 今の御質問は、各省庁に対してどういうことかということだと思いますけれども、これは実態はわかりません。今まさに捜査をしている最中でございますから、その結論を待ちたい、こう思っておりますけれども、私どもが聞いている限りにおいては、各省庁でその辺はばらばらであるというように聞いております。自分のところで出している分もあるし、官房機密費で差額を出しているというものもあるというように聞いております。

原口委員 それはどういう意味ですか、ばらばらとは。この間の予算委員会では、そうはお答えになっていないんですよ。官房機密費で差額を出しているとおっしゃっているんです。

 総理、こういうことが政治に対する不信を生んでいるんですよ。各省庁や公益法人あるいは特殊法人、これをスリムにして、そしてGDPの五百兆のうち三百十兆も中央、地方合わせて政府歳出がある、これはもうほとんど自由主義の国じゃない、この国を自由にしよう、これは私たちも同じです。そして、国民に血税をいただくんだから、その税金を有効に使おう、これが私たちの願いです。

 しかし、今の答弁で、どうやってそれができますか。総理、明確にお答えください。

福田国務大臣 今の私の答弁、もう少し正確に言いますと、各省庁も首脳外交で行っていただいた方にはすべて官房機密費で出している、こういう認識でおったわけです。実際にこの事件が発生して、いろいろ各省庁の方から回答があったことによりますと、そうでない、自分の省庁で出しているんだ、こういうことでもあったわけです。そうなりますと、私どもが考えていた分とそうでない分、こういうものがあったんだというように認識しております。

 今現在は、そのような出張差額というものは出しておりません。全部実費で各省庁で精算する、こういうシステムに変わっておりますので、その点、御懸念あるようでございますけれども、そういう御懸念は今現在ないということを申し上げます。

原口委員 そんなに大昔じゃないんですよ、これは。この間まで室長をやっていたんですよ。私はそのことを聞いているにもかかわらず、それが明らかにならない。

 いいですか、三月十日、松尾逮捕。詐取総額約四千二百万円。対象となった総理外国訪問、サウジアラビア訪問、ベトナム訪問、ヨルダン訪問。四月四日、また再逮捕。詐取総額約一億一千九百万円。対象となった総理外国訪問、インドネシア、ロシア、フランス、イタリア及びドイツ。まだあるんですよ。今度、五月八日、詐取総額約一億六千万円。対象となった総理外国訪問、英国訪問、また英国訪問、韓国訪問。

 総理が外国に行くたびに多額のお金をとっているじゃないですか。どうしてこんなお金があるんですか。なぜですか。だれか答えてください。なぜこんなことができるのか。それは答えられませんか、外務大臣。

福田国務大臣 それは、結局、内閣官房の方にそういうことを正確にチェックする機能がなかったということがございます。また、もう一つは、それだけに、外務省の方にすべてを依存しておった、外務省がやるんだからというような気持ちでもってお任せをしておった、こういうことの結果だというように思います。

 しかし、結果的にこういうことになったものでございますから、そのことについて大変責任はもちろん感じているわけでございますけれども、しかし、先ほど申しましたように、今現在は、昨年の春からはそのシステムは変えておるわけでございますので、今もそうでございますが、これからはそういうことはあり得ないということを重ねて申し上げておきます。

原口委員 あり得ないのは当たり前なんですよ。でも、私は、これは外務省機密費から官房機密費への上納がなければこんな額にはならないと思うんです、差額をずっと一つ一つ足していくと。これは簡単な足し算なんです。

 外務大臣、上納はなかったということを言い切れますか。

 外務大臣は、この外務省機密費に思いっ切り切り込んでいくんだ、情報公開するんだ、そういう決意を持って外務大臣になられたはずです。そして、その後、官僚とのいろいろなものがあった。しかし、私はこの部分をまず第一に明らかにしない限り国民は納得しないと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 原口委員にお答え申し上げます。

 上納の問題につきましては、とにかく関係者に再三再四、過去の経緯について伺っておりますけれども、ないということでございますから、それはそのように申し上げざるを得ません。

 しかし、機密費について今精査をしておりまして、その中でそのような足跡があれば、それは問題であると思います。そして、事実を、私がこの職を拝命しましてから一カ月たちましたので、その間、もう着任と同時に、機密費の問題についてはすべてつまびらかに見せてほしいと。大変時間がかかっています。そして、私はもう折を見て、毎回毎回、担当者それから秘書官も通じて言っておりまして、今、三回、四枚ペーパーが渋々出てまいりました。それを今一生懸命見ております。それだけではなかなかわかりません。

 前回、私は、これは参議院だったと思いますが、御答弁申し上げているんですけれども、会計課に、トータルではどのぐらいあるのかと。膨大だからそんなものはまとめるのに時間がかかると。それで一カ月たったらしいんですけれども、じゃ私が見に行くと。すると、いや、どのぐらい膨大かわからないんですと言いますから、だってあなた、見ていないで何で膨大とわかるのかと言ったら、それはそうですね、あははと次官が言っていまして、私は、何だったら本当に見に行こうと思っているぐらいなんですけれども。

 それで、本当にやっと渋々四枚出てきています。それを過去の何年間についても、とにかく違いを出すようにと。その数字が正しいかどうかも、私たち今すぐ、ほかの仕事をばんばんやりながら、できません。

 したがって、小泉総理が初めからおっしゃっていたように、所信表明演説のときもおっしゃっているように、減額はとにかくするということが一つ。

 それから、ことしまでの間に必ず、これは前内閣から言ってきたことなんでしょうか、このことについては改革会議をつくって提言。もう日にちがないんですけれども、これも、いつ出てくるんだいつ出てくるんだと言っても、また、そのうちそのうちと言って一カ月たったわけですけれども、それが二つ目。

 それから三つ目は、私は、副大臣等を中心として、この問題を精査するチームを具体的につくって、精査といいますか、中身をどうやって改革してよくするか、そのことについてグループをつくってもらっています。

 ですから、今そういう状況であることを御報告申し上げます。

原口委員 外務大臣、そうであれば、私たちこの予算委員会に、その資料を出してくださいよ。あなたがごらんにならなくて、私たちが予算をつくるんですよ。皆さんがおつくりになったものを審議するんですよ。

 今おっしゃったのは、半分正しい。明らかにしようというその姿勢は私は買います。しかし、半分は間違っている。なぜならば、事務方が見せない何が見せないって、あなたの部下なんです。あなたに罷免権があるんです。そういう部下はやめさせればいいじゃないですか。

 そして、委員長、私たちは、もうこの問題を半年近くこの委員会でやってきました。政府に今の膨大な資料をこの委員会に出すように理事会でお計らいをいただきたいと思います。

 そして、機密費に関しては、オーストラリア大使館における公金流用報道というものもありました。そして、今おっしゃった調査をされていると思います。この中でもみ消しをしているという疑いが出てきた。私は、ここで名前の出た人お二人、この方を当委員会に参考人として呼ぶべきだ、外務大臣の答弁によっては、そのように思います。

 在オーストラリア大使館における公金流用、一九九三年ですが、どのように調査をされていますか、外務大臣。

田中国務大臣 本件の疑惑につきましては、荒木前副大臣を長として一カ月にわたって徹底した調査が行われて、その結果については、四月九日に参議院の行政監視委員会で既に報告されておりまして、先週杉浦副大臣に対して、調査結果をレビューするように指示を出してございまして、今、客観的で公正な判断、結果が出るのを待っているところでございます。

原口委員 院が違いますからね、参議院は。衆議院にしっかり出してください。そして、この隠ぺいにかかわったとされる人物、私は、きょうの理事会でこのことを取り上げて、そしてつまびらかにする、この責務が我が予算委員会にはある、国会にはあるということを申し上げます。

 さて、金正男問題について、幾つか御質問をします。金正男と言われている人物の入国問題と言った方が正しいでしょうか。

 私は、十人の超党派の国会議員があの処置に大変な疑義を持ち、即座に抗議をしたのと同じような気持ちを持っています。

 幾つか事実関係についてお尋ねをしたい。

 過去三回累積して犯罪を起こしている、そういう疑いのある人間を、ああいう形で、処罰をしないで、そして逮捕もしないで外に出すということが過去にあったのかどうか、法務大臣にお尋ねをしたいと思います。

森山国務大臣 これまで、本件同様に、偽造旅券上の記載から過去に複数回不法入国の疑いがあると思われる者につきましては退去強制手続をとってまいったものでございまして、この件も従来の処理例と同様の処理を行ったのでございます。

原口委員 続いてお尋ねしますが、パン・シオンと目されている、名前がそう書いてあった、その人物について、入国の過去三回の証印があったはずです。この証印は偽造ではないというふうに思いますが、イエスですか、ノーですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 証印自体は偽造ではございません。

原口委員 この人物が過去三回、日本の証印を、入管の証印を打ってもらって入ってきている。そして、これはマイクロフィルムカードに残されている。累犯であるということはすぐわかるんじゃないですか。確認しましたか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 三回の証印がございますけれども、その三回の証印のある偽造旅券を、委員御指摘のパン・シオンなる人物がそれを三回とも使ったという点については、私どもの方では確認をとれておりません。それに関係する入国の際のEDカード、出国カードというものはございますけれども、それはその都度マイクロ化しておりまして、現物自体はその都度廃棄しておりますので、現存いたしません。

原口委員 そういうことで日本の治安が守れるんですか。何のためにマイクロフィルム化するんですか。こういう累犯を防ぐためじゃないでしょうか。テロリストかもわからない、何かもわからない、何をするかもわからない人が何回も入ってきている。そして、証印もある。それを照合したんですか。照合してできなかったんですか。日本のシステムというのはそういうものなんですか、法務大臣。

森山国務大臣 先ほども申し上げましたように、入管局の手続といたしましては、従来のケースとの均衡上適切な処置であったと思いますし、その人物の特定ができておりませんので、ほかに方法はなかったと思います。

原口委員 私は、それは大きな間違いだと思いますよ。午後の同僚委員がまたこのことについては詳しく聞きますが。

 警察庁長官、法務当局が今のようなことを繰り返しているわけですが、このような入国管理及び難民認定法違反の累犯も人定確認もせずに国外に退去させるような国で本当に日本の治安は守れるというふうにお思いでしょうか、長官の御答弁をいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 今回の事案につきましては、法務省が入管法の手続にのっとりまして適切に処理したものと承知しておるところでございます。

原口委員 長官、失礼な答弁しないでくださいよ。これで守れるかと聞いているんですよ。何回もこの人は北朝鮮に帰っている。何となれば、総理、ここに退去強制令書というのがございます。この退去強制令書に、その氏名、生年月日、国籍、居住地、職業、これを書かなきゃ外へ出られないんですよ、送れないんですよ。北朝鮮と書いているじゃないですか。

 そして、これは何条で退去させましたか、入管法の何条で。五十三条の二項でしょう。直接北朝鮮とは国交がないから、そこに直接送ることができないからそれを使ったんじゃないですか。違いますか。

 警察庁長官、質問にお答えください。そして、後段の質問は、法務大臣、もう一回お答えください。

田中政府参考人 お答えいたします。

 先ほど法務大臣からも御答弁がございましたように、諸般の事情をすべてお考えになられまして、入管法の手続にのっとり、適切に処理したものというふうに承知しているところでございます。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 入管法五十三条二項によりまして、本人の希望する中国に送還したということでございます。

原口委員 五十三条二項で送っているんですよ。つまり、北朝鮮の人なんです。

 私は総理にお伺いしたい。総理は、この処置は正しい処置だというふうにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 適切な処置だったと思います。

原口委員 この処置が長引けば予測しない事態が起こるということを本会議場でおっしゃいました。それは何ですか。

小泉内閣総理大臣 まさに予測し得ない事態が起こると思ったから、こういう措置をとったわけであります。

原口委員 私は国会に来て、まだ二期目です。しかし、もうこういう答弁は飽き飽きしているんです。あなたが日本の国会を活性化した、それはとてもいい。しかし、一般の退去措置でやっているんですよ。一般の退去措置でやったら、どうしてこんな予測しないことが起こりますか。そんなことをどうして考える必要がありますか。明快な答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 具体的に予測し得ないんですよ。長期間放置すれば予測し得ない混乱が起こると思ったからこそ、混乱を最小限にとどめなきゃならないということで、速やかに適切な処置が行われたと今でも思っております。

原口委員 百歩下がって、では、それが適切な処置だったとします。そうしたら、あなたがこのことを、第一報を聞かれたのはいつですか。

小泉内閣総理大臣 具体的な日にちは忘れましたけれども、よく詳しい事務当局に答弁させます。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 本件は五月一日に発生いたしましたが、五月一日の夜に、私どもの方から総理秘書官を通じて総理の方に御連絡申し上げました。

原口委員 その日の八時五十五分に聞いたというふうに私は事務局から聞いています。

 この人物が入ってきた時間、総理がそこからお聞きになるまでの時間、不測の事態が起こるということはお考えになりませんでしたか。

小泉内閣総理大臣 不測の事態が起こる起こらない、それはわかりません、当初は。しかし、混乱させない処置はどうなのかということを考えて、適切な処置を行わなきゃならないという判断をした結果、あのような措置になった。御理解いただきたいと思います。

原口委員 私が何を申し上げたいかというと、あの処置が百歩下がって正しかったとする、しかし、その不測の事態が起こるかもしれない時間というのが、彼が入管で身柄を拘束されてから総理にその情報が上がるまでのタイムラグ、このラグをどう考えればいいかということをお尋ねしているわけです。国の最高責任者に情報が上がっていく。

 私は、田中外務大臣にもう一回お尋ねをしたいのは、人定をしなさいという指示をされましたね。そして、そのことを外務省は忠実にやってくれたんでしょうか。

田中国務大臣 これは基本的に入管、法務省のマターですので、人定と入国目的について問い合わせてもらいたいということは指示いたしました。

原口委員 その結果はどうですか。

田中国務大臣 この事件発生後、るる委員会等で答弁申し上げていることに尽きます。

原口委員 今の答弁はやはり余りにもよくないですよ。だって、さっきもこの冒頭で、岡田委員の質問に対して随分違うことをおっしゃっていた、それを訂正されているわけですよ。私の質問にもお答えくださいよ。

田中国務大臣 これは法務省の見解でございまして、北朝鮮出身者であるとは認められたものの、本名等を確認することはできなかったものと承知しております。

原口委員 法務省の見解を聞いているんじゃないんですよ。あなたが外務省に人定と入国目的を明らかにせよと命じられているんですよ。それはこの予算委員会でおっしゃっている、海江田委員の質問に。そして、事実そうしてくれました、これもおっしゃっている。議事録にあるわけです。だから、人定ができたんですね、はいそうですというのが答えのはずなんです。違いますか。

田中国務大臣 ですから、これは法務省マターですから、法務省から来たものがこれであるということです。

原口委員 本当に言葉が空回りするだけ。そして、それぞれの国益は、本当に正しく私たちは守れているんだろうかというふうに思います。イルクーツクの会談の中身をテレビでしゃべる、そんな総理がいらしたでしょうか。あるいは官房機密費についても、財務大臣、私もあのビデオを見ました。本当に誠実に正しく答えていらっしゃるんだろうと思います。ここでは、忘れたという答弁だけがございました。あれは今も忘れていらっしゃるんですか。上納があったんでしょう。そのようにお答えになっていますが、違いますか。

塩川国務大臣 上納の問題は、私は否定しております。全然そういうことには関係いたしておりません。

原口委員 そうはおっしゃっていないんですよ。総理の外遊のときなどは外交折衝が多いですからね、それは官邸の報償費ではありませんからね、外務省からもらっていますとちゃんと答えてあるんですよ。それを委員会で、忘れた、あるいは野党の対策費に使った。私は、おっしゃっているのが悪いと言っているんじゃありません。森総理がイルクーツク会談の中身をおっしゃるのとは違う。それを本当に解明して変えようというのであれば、それは立派な姿勢だと思います。しかし、一回口にしたものを忘れただの、答弁もどんどん変わっている。

 私は、先ほど総理、申し上げましたが、本当に改革をしなきゃいけない、自由を獲得しなきゃいけない、そして日本を再生しなきゃいけない、そういうときに、今のような答弁で本当に大丈夫なんだろうか。財務大臣がまたおやめになって、そして、その後に、同じような秘密の秘密を財務大臣は、総理もそうでしょう、知る立場にある、そういう人たちがこういう半端な形で言うこと、このことは国益を損なうんだということを私はここで声を大にして申し上げ、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございます。

野呂田委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 この十年間、日本経済は停滞を続け、社会は凶悪犯罪がどんどんふえてきている、また、あすを背負う子供の教育現場も乱れているということで、日本の国民はいわば出口のない閉塞感に悩んでいた。そこに小泉総理があらわれて、聖域なき構造改革をやる、こうおっしゃったものですから、暗やみで一条の光を見出したような気持ちで、今、日本国民の期待が小泉総理に集まっているんだというふうに思います。

 総理、覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、十年ほど前、総理が郵政大臣のときに、郵政事業の民営化を打ち出されました。まさに四面楚歌、郵政官僚はそっぽを向くし、自民党内でも郵政族を中心に強い反対があって孤立された。あのとき、私は野村総合研究所の理事長でしたが、大臣室で孤立無援になっているんじゃないかと思われる小泉当時の大臣に直接電話を入れました。その電話はつながりました。

 総理は、大臣室で私の電話を受けられた。それで私は申し上げた。私は野村総研の理事長であるが、経済専門家は総理が打ち出された郵貯、簡保の民営化あるいは郵便事業に対する民間参入、これは正しい方向だ、歴史的に見て絶対そうしていかなきゃいけない方向だ、みんな支持していますよと。ですから、そのとき使った言葉は恐れず、ひるまずだったか覚えていませんが、とにかくひるんじゃいけない、絶対国民の支持は集まる、そういうことを総理に申し上げました。覚えていただいているかどうかは知りませんが、あのとき以来、時々いろいろな会合でお目にかかったときもそのことを申し上げました。

 私、今、全く同じ気持ちで小泉総理を見ているわけであります。何とか、おっしゃっているとおりの改革を実行してほしいものだというふうに思っております。きょうはそういう観点から、私の目で見ると、ちょっと危ないぞ、こういう点に注意されないとおっしゃっているような改革は前進できないよというふうに感ずるところを幾つか申し上げた上で、総理の御自身の見解をお聞かせいただきたいと思います。

 総理が直面している問題を私流に整理しますと、構造改革という長期の問題が一つありますね。それから不良債権処理、これは比較的中期の問題があります。そして、一番短期のところは、足元の景気から来年ぐらいにかけての景気の問題があります。

 総理は、構造改革あるいは不良債権処理なくして景気回復はないと言っておられます。それはそのとおりです。私もそう思います。私どもの小沢党首なんというのは、自民党を離脱した後ずっとそう言い続けていますし、自由党としてもそう言っています。だから、それはそれでいいんです。

 しかし、それだけでは、総理、完結していないんですよ。この三つの関係は、一方方向じゃなくて、もう一つの逆方向があります。つまり、景気を維持していないと不良債権がふえますから、不良債権処理が進まないという因果関係がありますよ。それから、景気が悪くなっていたら、ただでさえ痛みを伴う構造改革を実行しようとすると痛みが大きくなり過ぎて、国民が耐えられなくなっちゃうという問題もあります。これ、双方向の関係なんですね。

 双方向の関係であるにもかかわらず、私が懸念する第一点は、総理、今足元の景気がどうなっているかについて十分な自覚をお持ちなのか。つまり、構造改革を手術に例えると、出血しても構造改革しないとこの患者はよみがえらない。しかし、出血を恐れず手術をすればこの人は健康体に戻ると言って小泉医師が手術室へ入っていった。そうしたら、まだメスを入れないのにその患者は出血多量です。つまり、景気後退が起きているということですね。そういう場合には、まず出血多量をとめなかったら構造改革はうまくいきませんね。私は、日本経済は今そういう状態にあると思いますが、総理はそういう自覚をお持ちですか。

小泉内閣総理大臣 改革には痛みが伴う、その痛みを和らげる措置をどうやってとっていくかというものも重要であります。今回、不良債権処理を二、三年以内に何とか処理しようと、最終処理を目指して努力するのも構造改革の一環であります。

 確かに現在、景気は弱含みでありますが、これは、鈴木議員も御指摘のとおり、景気が先か構造改革が先かということでなくて、自由党の皆さん方はむしろ、構造改革なくして景気回復なしという方針に御理解をしていただいていると思います。

 よく見立ての話が出ますが、今の日本経済が糖尿病か肺炎か、それぞれ見方があると思います。病名で一言言うのは適当ではないと思いますけれども、構造的な問題に起因しているということは大きいと思います。それは一様ではありません。複合だと思いますね。包括的に取り組まなきゃならない。しかし、現在の問題を処理する場合には、やはり中長期的な視点で、望ましいなという観点から現在の状況をどう打開するかという点が大事ではないかと思う。

 ともかく、目先だけよければ、後のことは後で考えようというよりも、中長期的な点を考えながら現在の窮境を打開していくという視点が大事であるからこそ、私は、構造改革なくして景気回復なしという言葉を使っていることも御理解いただけるのではないかと思います。

鈴木(淑)委員 そこは全くおっしゃるとおりなんですよ。私ども自由党もそう考えております。

 だけれども、景気を維持するのと構造改革をぐんぐん進めるのは車の両輪であって、構造改革の方だけ見て、こっちの車がもう脱線しそうだ、外れそうだというときにそれをしっかり自覚していないと、結局脱輪して転覆する。

 ここに、総理にはこんなグラフは来ていないんだと思いますから持ってきました。これは鉱工業生産が一番上に書いてある。その次は出荷です。下は在庫率です。こんな勢いで生産は落ち始めている。出荷も落ち始めているんですよ。これ、七四半期ぶりに、徐々にほとんど増加がとまった後、七四半期ぶりに一―三月の実績では前期比三・七%どんと落ちました。さらに、四月と五月の予測指数は続けてさらに下がっていくんですね。そうすると、四―六まで生産は落ち続けることは確実です。しかも、在庫率が上がっているということは、在庫調整をこれから先しなきゃいけないから、四―六でとまる保証はないんですね。この引き金になったのは、総理も御承知のとおり、米国の成長鈍化、輸出減が引き金になっています。

 しかし、ここでこれだけの勢いで生産が下がってくる。もう前年比マイナスまで落ちていますから、これはもう既に求人の減少、求人倍率が、新規は、去年の十月、有効求人倍率も去年の十一月をピークにしてぐんぐん悪化しているんですね。やがて失業率も上がってきますよ。二月と三月、失業率四・七で横ばいと言っているけれども、あれは四捨五入したからなんで、下まで見たら四・六八から四・七二にもう上がっているんですね。こういう形で個人所得が崩れてきます。ベア率も去年より低かった。夏のボーナスは間違いなく低いんです。そうすると、個人所得面からこの先消費が崩れてくる。

 もう一つ大事なのが設備投資。設備投資は、その先行指標である機械受注の民需を除く船舶、電力というのがこの一―三月期にマイナスになったんですよ。ということは、六カ月から九カ月先行指標だから、早くて七―九、遅くとも十―十二に設備投資も落ちてくる。在庫調整で四―六までマイナスですが、七―九、十―十二は消費と設備投資が落ちてくるおそれがあるんですね。非常に深刻なところへ来ております。一―三のGDPは辛うじてプラスだと思いますよ。だけれども、これも家電リサイクル法の買い急ぎの影響なんですね。その反動は四―六以降出ますよ。

 このことについて別にこれ以上総理にただしませんが、これに対して、今審議している緊急経済対策というのは、今私が申し上げた景気後退を阻止する力を全然持っていません。これはなぜかというと、構造的なことだけ考えておられる。それはそれでいいですよ。遅きに失するとはいえ若干の構造対策が入っている、十月以降に動き出すのですけれどもね。それはいいが、緊急経済対策では今のこの事態はとまらない。そうした場合に小泉総理の改革が非常な困難に直面すると私は思うものですから、総理、しっかりと目を見開いて現実の景気をごらんなさいということを一つ申し上げておきます。

 時間がないものですから、実はここで、緊急経済対策ではいかにだめかということを、答弁いただいて申し上げたいところなんですが、ごく簡潔に、緊急経済対策で景気をとめられると思いますか。一体何がそういう効果を持つと思いますか。総理はどういう理解をしておられますか。

小泉内閣総理大臣 今指摘された指標をもとにして対策を講じますと、今までだったらば、減税をして、国債を増発して、公共事業なりなんなりお金をつけていくという手法だったと思います。私は、もうそれは通じないと思っています。増税はできないから、結局国債増発に頼るでしょう。そうすると、逆に副作用が出てくると思います。だから、今までの手法は通じない。

 確かに鈴木議員からは、私が郵政大臣当時、将来の郵政民営化の方針は正しいと御激励をいただいて感謝しているのは今でも記憶に残っております。その後、何回かお会いして、省益よりも国益を優先すると当時私は言っていました。郵政大臣よりも、国家全体を眺めればこの国営路線維持はおかしいということをはっきり言って、四面楚歌だった。そういう中にあっての激励というのはうれしかった。

 しかし、鈴木議員と若干違ったなと思ったのは、当時から鈴木議員は、国債をもっと増発していいんだという考えを持っておられたと思います。そこの点は私は違うなと。今も、そういう点では若干違うんではないかと。私が言っているのは、五十兆円しか税収がないのに三十兆円も国債を発行していいということ自体、そんなに緊縮路線じゃないと。

 ただし、私は、一律削減法はとらない。まさに、どの分野にこれからこの国の税金を使っていこうか。各省一律に削減するというんだったら、必要なところも削減しなきゃならない。だからこそ、必要な部分をふやしてむだな部分は削減するところに、これから予算編成で難しい点がある。

 そういう点が、むしろ、景気が弱含みだからもっと国債を増発して、削減するよりも予算を使う方にもっと配慮すべきだという点では若干違うかもしれません。その点は、今後いろいろな議論を深めながら、国債三十兆円以下の中でどうやって有効的な財政配分ができるか、これは関係省庁とよく協議しながら、またいろいろな御意見を伺いながら決めていく問題ではないかなと思います。

鈴木(淑)委員 在来型の景気対策を打てなんて私は言っていません。しかし、今ぐんぐん景気が下がっている原因の中に、次の二つがあることを覚えておいてください。

 一つは、現時点で、十―十二月期までしかGDP出ていないけれども、GDP統計上の公共事業というのはどういう状況になっていますか。前年比マイナス四%までもう下がっているんですよ。在来型のことをやったってだめだと言うが、その逆が起きている。もう公共事業は下がり始めているんですね。

 それからもう一つ、十三年度予算で国民負担率が〇・四%上がりますよ。なぜだ。三兆円近い国民負担増が起きるんです。四月から雇用保険料を引き上げたから、そして、十月から介護保険料を倍にするから。これは三兆円近い所得増税と同じ効果を持ちますよ。既にそういう逆方向のデフレ的な財政政策が進行しているのですよ。

 だから、何かもう既に大盤振る舞いしてしまったところへもっと国債を出せと僕が言っているように聞こえる御答弁をされましたが、私は、ちょっと現実を見てくださいな、公共事業はもう下がっていますよ、その上三兆円国民負担増をしようとしているのですよと。

 一つだけ、私、申し上げましょう。介護保険の倍増なんかおやめなさい。あの社会保険料の引き上げはストップすべきですよ。そして、まさに構造的な社会保障制度の改革に踏み出すべきです。その一環として、まずストップしなければだめですよ。三兆円の増税と同じようなことをやっていて、立ち直るわけがない。

 私どもは、社会保障制度の立て直しという場合に、短期で物を言っていませんよ、これはまさに中期、長期の課題ですよ、だけれども、基礎的な社会保障、介護、高齢者医療、基礎年金、この三つだけは今の社会保険方式では破綻するに決まっているから、じりじりと消費税方式にウエートを移そうと言っているわけですね。それが財源の話であります。

 時間が制約されてきていますので、あと二つ総理に御注意申し上げたいことがあります。

 中期の不良債権処理、これは金融ですから私の専門分野ですが、柳澤大臣とは実は財務金融委員会でもうやりとりをしました。時間もないので、申しわけないですが、御質問いたしません。

 二人で何を確認したか。総理は、二年以内に不良債権を処理する、こう言っておられますね。財務大臣と私で確認し合った、それは主要行だけですねということです。主要行だけなら、今ある破綻懸念先債権以下、十二・六兆円ですから、既にかなり引き当て等の手当てはしているし、主要行なら三・三兆円ぐらいの業務純益が上がるから、これは確かに二年間でできるかもしれない。しかし、これは地銀を入れた全国銀行にしますと二十四兆円、さらに信金その他を入れた預金取扱金融機関全体にすると三十四兆円。この規模で見たら、業務純益から見たって、既に手当てしてある点から見たって、二年間で処理なんか絶対できませんよ。算術的にすぐわかる話。

 どうぞ総理は、これから主要行と断ってください。そうしないと海外の人たちはわからない。総理大臣が、二年間で今あるのを処理する、三年間で新たに発生する不良債権を処理する、頭から信じて今、日本の株式市場へ入ってきたのですよ。それがだんだんと今、あれ、待てよ、違うなと思い始めている。きょうの前場も株が下がっていましたけれども、そうすると、五営業日連続で下がっていることになります。

 総理、御注意されないといけません、情報発信は。海外に向かって不良債権を全部処理できるようなことを言ってはいけない。大手行だけです。だから、端緒をつくるというふうに言っておかないと危ないですよ、これがわかったときにばっと外資が逃げたら。

 最後に、構造改革の一番大事なところ、時間が制約されていますので、申し上げます。

 それは、道路特定財源の一般財源化であります。

 私ども、これは賛成しています。しかし、それは、それによって公共事業の構成比が、今まで道路に偏っていたものから、例えば大都市圏の防災とか環境の方にウエートが少しシフトしてくる、これは結構なことですよ。だけれども、構造改革というのは、構成比を変えることを言っているのじゃないですよね。その背後にあるシステムを変えることを言っているわけですね。

 そうしますと、道路特会二・九兆円ぐらいありますが、この中の一・一兆円ぐらいは事業補助費として実際に出ている分です。これは言うまでもなく中央省庁の、今なら国土交通省の五カ年計画にあったプロジェクトを地方自治体へ持ってくれば、審査した上で、よしよし、これは補助事業として半分補助金つけてあげようと、あの仕組みです。あの仕組みをたたき壊してしまう。

 つまり、人口三十万以上の自治体だったら、どこへ投資するかは自分で判断しなさいといって、事業補助金は一括渡してしまう。一々中央官庁が、おれのところがつくった計画に合っているかどうかなんといって配賦する方式はやめなさい。この方式こそが、みつに群がるハチか何かのように、いわゆる族議員、それから官僚、業界が道路特定財源に群がってきて、そして箇所づけまで口を出して分配する仕掛けそのものなんですよ。

 総理、ここまで手を加えなきゃ本当の構造改革ではない。ただ道路特定財源をほかへちょっと使いましょうなんという、構成を変えるだけじゃ、こんなものは構造改革じゃない。システムに手を加えて初めて、構成が結果として変わるときに構造改革というのですから。総理、いかがですか。

野呂田委員長 時間が参っておりますので、簡潔に御答弁願います。

小泉内閣総理大臣 この道路財源の見直しも、今までできなかったことを今回見直して、当然見直しは構造改革に資するような見直しがなされるべきものだと私も思っております。

柳澤国務大臣 ちょっと鈴木委員に申し上げますが、要するに、外国の人たちに理解をしてもらうというのは非常に難しいということを私はこの金融の問題をやってずっと感じているのですが、例えば大手行についても、後ほどまたいろいろ御質問いただきますが、かなり今は実は中小企業の皆さんとおつき合いしていますが、その中小企業の皆さんに対しては、大手行は地域銀行と協調融資している。したがって、大手行がそういう人たちに対してある働きかけをすれば、当然それは地域銀行も同調してやっていただかなきゃならない。こういう面があるということは、なかなか外国の皆さんには理解できないのですが、もう先生は専門家でいらっしゃいますので、ぜひ正しく御理解賜ればありがたいと思います。

鈴木(淑)委員 どうぞ、規制撤廃と地方分権でシステムを変える、これが構造改革でございます。ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 この間の五月十五日の衆議院予算委員会での私の機密費に関する質問に対し、塩川大臣は、私が取り上げた官房長官時代の体験を語ったテレビ朝日のインタビューのビデオを見た上で、二十八日、きょう答えると約束されました。きょうは真相を明らかにする大切なその機会です。だから、忘れたとか記憶にないとか言わずに、明確な答弁を求めておきたいと思います。

 その上で、その後行われた参議院で大臣は、テレビを見た上でこう言っています。「何か週刊誌にいろんなことが書いてあったのが、何かさも自分が経験したようなことのつもりで錯覚に陥ってしまって、ああいうことを言ってしまった」と発言しています。

 そうすると、要するに、聞いたこと、読んだこと、そして推測に基づいてテレビで作り話をしたということを言っているのかどうか、そこをまず確かめておきたいと思います。

塩川国務大臣 一月から二月にかけまして、幾つかのマスコミから取材を受けたことを思い出しました。そして、予算委員会で御質問があったテレビのインタビューについては、突然のことでございましたので、私は覚えていないということを申したのでありますが、しかし、テレビのビデオを見まして、ああ、こういうことを言ったのかなということを思い出したようなことであります。

 その後、わずか二カ月しか務めていなかったので、いろいろなことが錯綜しておりました。また、いろいろな報道機関からの、週刊誌とかいろいろなことを聞いておりましたものが、実はごちゃごちゃに頭がなっておって、それがために正確なことを言っていなかったと思っておりますが、錯覚に大分基づいて言ったことは事実であったと思って、今はそれについて反省をしておるわけであります。

穀田委員 私は、大臣が、言っている意味がおわかりなのかと思わざるを得ません。

 大体、錯覚だと言いますけれども、例えば、竹下登さんの回顧録の「政治とは何か」という本があります。その中に、内閣がかわったときには報償費についての引き継ぎはあるんでしょうかと言っているのですね。それで、「ありますよ。極端にいいますと、内閣官房長官の引き継ぎ事項は、これだけなんです。」と言っているのですね。つまり、これぐらい大事な問題だということを竹下さんは当時言っておられるのです。だから、その意味が一つある。

 それから、大臣がインタビューに応じているときはどういう時期か。それは、機密費の流用問題が政治の最大の焦点になっていた、そして事は国民の税金の使い道という点で関心を集めていた、さらに外務省の機密費の上納問題の存否が問題になっていた、そしてその使途をめぐって国会対策やせんべつ問題が焦点になっていたときである。だから、宇野内閣時代の官房長官だったあなたに当然、機密費の問題について取材が殺到したわけです。そうすると、機密費というものがどういう性格のものであるか、どのような使い方をするかということを熟知していたはずなんです、肝心かなめの問題なんですから。

 ですから、あなたはわずか二カ月だとか錯覚だとか言っているけれども、問題は、熟知していたあなたがそれに答えて、天下の公器であるテレビや新聞で何度も国民に作り話を大々的に広めたことになるのかということを言っているのです。どうです。

塩川国務大臣 作り話とは私は思っていませんが、錯覚があったということは言っておるのです。

穀田委員 あなた、そう言うから、私、辞書で錯覚というのを持ってきましたよ。そうすると、「事実と違ったように見たり聞いたりすること」というのですよ。

 では、どこから事実で、どこから錯覚か確かめましょう。資料を配付してください。

 実は、今度お配りするのは、機密費問題での塩川大臣の発言をまとめたものです。新しく大臣は、この間は私は一月二十八日のテレビの話をしましたが、二ページ目をめくっていただくとわかるように、実は今度は日本テレビで「ザ・ワイド」という番組に出演し、そこでも同様のことを話している。これがそのビデオです。私の質問に、あなたは当時、誘導尋問に答えたとか、それから何となく一回だけの勘違いだということでは決してないのです。全部が共通しているわけです。一目瞭然なんですよ。だから、時の人みたいにあっちこっちでしゃべっているわけですよね。

 では、しゃべった内容は事実ではないのか、それともうそというのか、そのどっちなのかということをもう少し明確に言ってください。

塩川国務大臣 そこが私は混乱しておって、いろいろな錯覚が入り込んでおるということを申し上げておるということです。

穀田委員 混乱などという話で済まされる問題じゃないのですよ。

 では、聞きますけれども、資料の五ページを見てください。これは読売新聞であなたが語ったことです。左の方を見てください。「官房機密費の使い方について前任者から申し送りはあったか。」「ない。しかし、官房長官就任後、首席内閣参事官(当時は古川貞二郎官房副長官)に出費の仕方を聞いた。そうすると「それはいつも出している」「初めてだ」などと教えてくれた」。これもあなた自身の体験じゃないですか。これは錯覚なんですか。

 もう一つ聞きましょう。今度は、資料の四ページ、前を見てください。これは産経新聞の二月七日付。「機密費に関する引き継ぎは」、同じようなことを言っています、「「月割りでいうと(使えるのは)この程度……」という話。普通の金庫で、暗証番号もかぎもある。暗証番号は変える。」この発言もあなたの体験を語っているんじゃないですか。これも錯覚なんですか、体験なんですか、言ってください。

塩川国務大臣 首席内閣参事官、そこから引き継ぎを私は聞いておりませんよ、本当。ですから、私はこれ、ちょっと待ってください、これを本当にこう言ったのかどうかなと私は今思うんですよ。本当にそう思いますよ。この古川さんとそんな引き継ぎなんて私はしたことがない。

 ただ、穀田さん、引き継ぎというのは、書類がこうありまして、それでサインする程度のことで、中身は今度後でぐるっと見ておるものであって、引き継ぎ当時、短時間で引き継ぎしますから、全部それは中身を見ておりません。ですから、書類があったとかおっしゃるけれども、私は全然覚えがないということを申し上げておるんです。

 それからもう一つ、暗証番号、これも私、暗証番号なんて言ったかなと思うんですがね。本当です。しかし、私は、例えばこう言ったと思うんですよ。金庫の番号とか何かはある、しかしそれは何か変わるんじゃないのかというようなことは言ったような感じがありますけれども、暗証番号なんて私は言ったことがないと思います。

穀田委員 今のお話は、私の質問にまともに答えていないですよ。これは引き継ぎの話をしているんじゃない、その引き継ぎの文書の話をしているんじゃないんですよ。あなたが言った、「出費の仕方を聞いた。そうすると「それはいつも出している」「初めてだ」などと教えてくれた」、これは錯覚なのかと言っているんですよ。あなたは錯覚の話をしているから、錯覚とは言えないでしょう、これはあなたの体験の話でしょうと言っているんですよ。四の五の言ってごまかすわけにはいかないんですよ、こういう問題については。質問の話をよく聞いてください。もう一つ、その点を答えてください。

 その上でもう一つ、あなたの話した内容について、では、内容が事実かどうかについてもわからないんですか。例えば、あなたは、大体共通しているこのすべての内容の中で、野党対策に使っているということと、上納しているということ、この二つについては全部言っているんですよね。だから、私は、これをもし野党対策に使っているとしたら、事は重大だと。意味はわかりますよね。大体、ほかのところでいいますと、法案を通すために使っているということを野坂浩賢さんはおっしゃっています。機密費というのは国民の税金であって、この血税を、政府案を通すために事実上野党を買収する、こういうやり方、これでいいのかということが問われるわけですね。だから、これも錯覚、事実も体験も錯覚、これも錯覚なんですか。

 二つの点についてお答えください。

塩川国務大臣 一つは、野党対策の問題でございましたが、私はそれは、お金を渡したどうのこうのということは言っておりませんよ。ですから、そこを機密費で結びつけてしまって、それに使ったということを言っておられますけれども、以前は、今はそんなこと全然ないと聞いておりますけれども、以前、十数年前は、よく法案の勉強会を与野党でやったことがありますよ。そういうときの、勉強会をやったときのことを私は言っておるのであって、お金を渡したとかそんな話は全然しておりませんし、あなた自身も委員会で聞いておられたと思うんですが、私はそういうことは言っておりません。

穀田委員 しかし、小泉さん、今お話あってわかるとおり、都合のいい話だけは覚えているんですよ。だけど、ここの文書で全部言っているのは、直接渡していないという話は一カ所出てくるんですよね。では、これはあなたの体験だということは認めるということになるじゃないですか。だって、ここだけはあるんですよ。三ページ目の資料の中に、「直接というのは絶対しませんけどね。」と、ここはあなたは認めているんですよ。だから、全体としては、こういうことについてやはり事実だということの証明なんですよ、やっていることは。

 しかも、この間の衆議院の他の委員会でも、今お話あったような、お金を使っているということはもう既にお認めになっている。だから、今大事なことは、私どもはどこか長屋で談義しているわけじゃないんですよ。やはり重要な国政にかかわる真実を問いただしているんですよ。何が錯覚かわからない、時々真実をぽろり言う、全体としては漠とした話でもう堪忍してくれやというような話をしている、こういうことでしょう。そんなことで済むのかということなんですよ。どうです。

塩川国務大臣 私は、先ほども言っていますように、私が官房長官になりましたのは十四年前です。ですから、その当時のことであったことは、事実いろいろなことが行われたことと現在とは大分違っておりますし、また長い年月たって、現在はそんなことは全然ないし、私はその当時のことを思いまして、先ほども言っていますように、いろいろな報道がおもしろおかしくされたこと等も錯覚に頭に残っておって、それもあったことだということを申しておるのでございまして、決して全部が全部、私は事実ではないということは言っておりません。経験したことも多少あります。ありますけれども、それはいろいろなものが錯綜して言っておるのだということを御理解していただきたいと思います。

穀田委員 これほど人をばかにした話はないと思うのですよ。だって十四年前というけれども、現在というような話をしているんじゃないんですよ。当時あなたは、機密費の流用問題が政治の焦点になったときに、自分が覚えていないといって話を拒否したのならいいんですよ。堂々としゃべっているんですよ。しかも一回じゃない、二回じゃない、五、六回しゃべっているんですよ。そして、全部同じ共通した内容を、全部あなたにお見せしたようにやっているんですよ。だから私は、同じことを証言してどうして忘れたと言えるかと。これは第一のうそなんですよ。

 二つ目に、それだけではまずいというから、全体を漠とした話にして錯覚にする。ところが、今お話ししたように、それには無理がある。結局、全部否定するわけにはいかないし、あなたが体験したオリジナリティーが当然入っている。したがって、その点は認めざるを得ない。ところが、では全体が事実かというとあいまいにする。どこが錯覚だったかもはっきりしない。ここでもうそを言っているにすぎないんですよ。

 だとすると、私は、もう一度お聞きしますけれども、では十四年前の話をこの間聞かれたときに、五回も六回も、もう一回テレビでしゃべっているんですけれどもね、出ていますように。そうすると、公然と、自分がどこまでが真実かどこまでが錯覚かわからないけれども、平気で公器で何度も、国民に対して全体としては違ったことを言ったということになるんですか。その責任はどうなるんです。

塩川国務大臣 あなた、五回も六回もとおっしゃるけれども、そんなに私インタビューやっておりませんよ。(穀田委員「出ているじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、やっておりません。やっておりません。それはインタビューじゃなくて、要するに立ち話で、後ろからちょこちょこっと聞いたもの、それをインタビューと言われるのはだめだ。

 インタビューはやりました。それは私は、テレビ朝日だったと思います。そのときに私は前提を言い含めました。正確なことを覚えていないぞ、けれどもいろいろなことを言われておるから、なんだったら聞いてくれということで言ったのでございまして、あとのところはインタビューはやっておりません。

 ただ、ぶら下がりとよく言いますけれども、ぶら下がりみたいなことでやったことを断片的に報道としてされておるということは私は事実だと。したがって……(穀田委員「事実です」と呼ぶ)いや、断片的にやったということを言っておるんですよ。

 ですから、私は、報道のあり方についても、もうちゃんとして、正確にインタビューすることはそれはいいだろうと思いますけれども、ぶら下がりでやるということは非常にいろいろな誤解を生んできて、私もそこはいろいろなことを錯覚してやった。ですから、今はもう深刻にその問題等について反省しておるなということを言っておるのです。

穀田委員 そんな言い分は通用しませんよ。いずれのテレビもちゃんと座ってしゃべっているじゃないですか。何を言っているんです。全然そんな無責任なこと通用しませんよ。

 私は、忘れたとか錯覚だとか全体として漠とした話だとか、一回もテレビで言っていないのならいいですよ。何回もテレビで言ってそういうことをやっているというのは、まさに政治の不信をつくり出す以外の何物でもないですよ。

 総理に最後に聞きたい。一連のそういう証言に対する塩川さんの対応というのは、国民の政治に対する不信を招く以外の何物でもありません。テレビや新聞という公器で発言したことが国会での発言と相反しているわけですから、そういう問題として、政治家として許されるのかということについてお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 人それぞれによって記憶力も違いますし、やはり発言には慎重を期さなきゃいけないなと。特に何年か前というのは、人はいろいろ忘れることもあるし、錯覚するときもあると思います。しかし、今回のいろいろなお話を聞いていまして、発言にはやはりよく慎重に気をつけなきゃいかぬなと思います。

穀田委員 記憶力が違うとかという問題じゃないのですよね。こういう国政の焦点になっているときに、わざわざ官房長官の経験者として取材に応じられているのですよ。本当に記憶力が確かでないのだったら断るべきですよ。断らずに言った。そういう事実は消えないんですよ。国民に対して、少なくとも機密費という事実について、上納問題や野党対策に使った、生々しいリアルな発言をしたという事実は消えないじゃないですか。

 私は、今度の問題というのは、国民の税金がいかに使われたかという根本問題があるから問うているわけですね。肝心な問題として、塩川大臣は官房長官経験者として、先ほど来私がお話ししたように、二つの事実を明確に述べておられる。一つは、野党対策にして使ったということと、もう一つは上納があったという二つのことを繰り返し言っておられるんです。だから私は、この肝心な問題で、忘れたとか錯覚とか漠とした話としては通用しないということ、それは政治の責任として問われているんだということを改めて言いたいと思います。

 だから、公器で、テレビや新聞で何度も言ったことが、内容がうそなのか、それとも国会で言ったことがうそなのか。いずれにしても、政治家として重大な責任が問われる問題だ。このような点をあいまいにして改革とは言えないということを最後に指摘して、私の質問を終わります。

野呂田委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 冒頭、質問通告をしておりませんが、簡単な質問ですので、総理に一言だけお答えいただきたいのです。

 昨日の新潟県の刈羽村のいわゆるプルサーマルの是非を問う住民投票の結果にかかわって、私どももその結果を十分重く受けとめていただきたいと思うわけですが、この点、ちょっと冒頭、端的にお答えいただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 原子力に対する安全性と必要性のはざまでそれぞれの住民の方は悩んだと思います。それがああいう結果に出ているのではないかと。

 今後、我々も原子力エネルギーという現下の重要性は大方理解しておりますが、その面についての安全性というものについて、どうやって多くの国民に理解を得ていくか。これは国としても、また事業者にしても必要なことではないかなと思っております。

植田委員 では、本題に入っていきたいと思います。

 この間、小泉総理の所信表明演説等々をお伺いいたしまして、例えば新聞の報道等々でも、心意気は理解するけれども、具体的にはどうなのか、そういう指摘もあっただろうと思うわけですが、実は私は、必ずしも具体的なことについて、はしの上げおろしまで総理が別にお述べになる必要はないと思うのです。具体的なことはこれからどんどん出てくるでしょうから、その都度、我々も検証させていただくわけです。

 ただ、小泉総理が指し示しておられる未来構想の、言ってみれば哲学が、私たち国民の未来を本当に指し示しているかどうか、そういうことはやはり私は問いたいなと思うわけです。確かに今、小泉さん、すごい人気です。野党にも応援団がたくさんいらっしゃるようですけれども、残念ながら私ども社民党は応援団ではないわけですが、その意味で、真摯に検証させていただきたい点が幾つかございます。

 その意味で、きょうはそんなに細かい話というよりは、いわば小泉総理のおっしゃる構造改革の入り口の部分にかかわって、お話を何点かお伺いしたいんです。

 まず、総理は総裁選に出られたときに、構造改革のためにはマイナス成長も辞せずというふうに確かにおっしゃいました。そのおっしゃったというのは、当然、この間、十年来てこずってきた不良債権の問題をほんまに処理しようとすれば、やはり数年間のマイナス成長というものは否めない、マイナス成長転落は必至だということを総理自身がその時点でも十分御理解なさっていたからそういうふうにおっしゃったと私は理解するわけですが、その点についてはいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 改革には痛みが伴うということで、その痛みを一切なくせということは無理かもしれませんが、これからの構造改革を進める場合におきましては、具体的に言えば企業が倒産する場合があるでしょう。そうした場合には、心ならずも職をかえなければならない、離れなければならない場合もあるでしょう。そういうことに対しては、新しい雇用対策等、しかるべき対策も打っていかなければならない。

 同時に、今努力すれば、あすに対して希望が持てるような対策も並行してとっていかなければならないということから、私は、多少の痛みは覚悟しても前向きの姿勢、あすはよくなるという将来的な希望を持った対策が必要ではないか。今さえよければ後はどうでもいいという考え方よりも、今の財政状況を考えれば、国債をどんどん増発していいことはありませんから、そういう点も踏まえながら、あるべき改革に向かって進む必要があるということを所信表明でも表明したつもりであります。

植田委員 改革のためには痛みを伴うとおっしゃるわけですが、我々国民にしてみれば、もうさんざん痛い目に遭っているというのが実感なんです。まだこれから痛いことが待っているんですかというのが、やはり私ら庶民感覚、ごく普通の市民感覚だと思うのです。

 その意味で、経済政策を進めるに当たって、処方せんは既に示されていると所信の中でおっしゃいましたね。恐らく、この政府の緊急経済対策なるものにもその処方せんが書いてあるだろうということなんでしょうが、少なくとも、国民の生活再建という視点は欠落しているのと違うやろうかと、素朴に私読ませていただいて思いました。

 例えば、不良債権の最終処理の結果、倒産、失業が生じる、確実に生じるわけです。そのための対策としてのセーフティーネットの整備というより前に、まず今の痛みを和らげるためのセーフティーネットの備え、そっちが先だと私は思うわけですけれども、その点、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 そういう点、雇用対策等いろいろ措置が講じられていますから、その中でやっていくべきこともあるでしょう。将来より大きな雇用対策が必要ならば、その中で打っていく必要もあるということを述べているわけであります。

植田委員 要は、私申し上げたいのは、今の小泉政権がまず取り組まなければならないのは、そういう意味では、私たち一人一人が、私も雇用不安を抱えながらこうして仕事をしているわけですけれども、雇用への不安を払拭するためのことではないのか。

 仮に不良債権の最終処理をやるときに、実際さまざまなデータが出ていることは当然御承知だろうと思いますが、例えばニッセイ基礎研究所の試算では、失業率は一・九%上昇する、GDPを一・四%押し下げる、そして新たに百三十万人の失業者が生まれる、六兆八千億の雇用者所得の減少が生まれるわけです。

 そしてまた、いわゆる不良債権の最終処理をめぐっていろいろな御見解があるようですけれども、少なくとも、不良債権があるから、そのことが景気回復の妨げになっている最大の要因だということが果たして当たるのかどうなのか。不良債権が膨大にあることによって資金の供給能力が落ちているのであれば、金利は上がるはずですね。むしろ、銀行の資金の供給能力が落ちていることもさることながら、民間の需要が、みんな借金を返すので手いっぱいで、そういうニーズがないというところにこそ問題があるのじゃないか。そういう中で、勤労者はやはり雇用不安、将来不安というものを抱えながら生きている。

 だから私は、要するに雇用対策、まずメニューを出す方が先と違うかという話をしておるわけですが、その点、端的にいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、雇用対策だけの問題ではないと思っております。現在の景気停滞はいろいろ複合的な理由が重なっている、そういう点から、かなり包括的な対策が必要ではないかと思っております。

植田委員 いや、もちろんそれは包括的なものだろうと思います。その中で、私たちは、少なくとも雇用不安とか年金の不安、そうした将来不安をどうして払拭していくかということを通して、GDPの六割を占めておる家計消費、個人消費をどう伸ばしていくのかというところに直接プッシュする政策をどう出していくべきかということで、私も小泉内閣の政策に因縁をつけるわけじゃなくて、私たち社民党もちゃんとそういう意味で政策を発表しているわけです。「「人」から元気にする経済活性計画」というものを発表させていただいています。

 ここでの我々の一つの問題意識は、金融や財政のスキームの話から入るのじゃなくて、一人一人の人間のありように着目するというところです。そういう意味で、その観点から包括的な政策を進めていくということが必要だというふうに私は言っているわけなんです。

 確かに、緊急経済対策の中にも、雇用の創出とセーフティーネットの整備、IT、医療、保育、介護、循環型社会とメニューはそろっています。それは認めます。しかし、新規産業の創出であるとか既存の企業の雇用吸収力の回復というのは、それは一朝一夕にはできへんことは百も御承知だろうと思うわけです。

 そういう意味で、今本当に緊急に必要なのは、失業者に再起を促すセーフティーネットの構築、言ってみれば敗者復活戦が可能な仕組みをつくっていくことじゃないのかというふうに思うわけですが、産業構造改革・雇用対策本部というのも発足したそうですから、その辺でぜひ有効なメニューを優先的に御検討いただきたいと思うのです。

 そこで、こういうことも取り上げていただきたいなということを一つ二つ申し上げたいのです。

 一つは、この間、不良債権処理に伴うデフレ圧力を、日銀が量的緩和を通じたゼロ金利政策によって金融面から支えてきている。しかし、今後は財政面からのデフレインパクトの緩和というものが必要だと思われます。といったときに、私は、雇用保険を通じた財政支援というのが、中長期的に就業構造を下支えする観点からも効果的じゃないだろうかと思うておるわけですけれども、例えば、保険料負担で賄えぬ部分を全額国庫負担でやるぐらいの、そういうことを検討したらいかがかと思うのですが、その点いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは全体的な中で、私は今増税を考えていませんから、たしか社民党は国債発行を三十兆円以下にするのは甘過ぎるという考え方ですね。一方では、これはきつ過ぎるという意見もあるわけです。恐らく社民党も増税には反対だと思います。そういう中で考えていかなきゃならない問題だと思っています。

植田委員 実際、大ざっぱに今計算してみましても、失業保険の給付にかかる費用が年間三兆円程度、そして国庫負担が三千億から四千億というふうにとどまってきたわけですが、仮に不良債権処理で百十万人ぐらいの新規の失業者ができた場合、大体追加的な支出が一兆円ぐらいだろうと思うわけなんです。一兆円。確かに私にしてみればごっつい額ですけれども、従来型の公共投資に支出される額を考えれば、決して高い額ではないと思うわけです。私は、結構有効な策だと思うのです。

 その辺、総理、余りしわいことをおっしゃらずに、もしこれも検討の素材の一つだと言うてもらったらうれしいのですけれども、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、あくまでも一兆円というのは見通しだと思うのですね。それが一年で一兆円かかるのか、何年で一兆円かかるのかも、これからいろいろ専門的な分析も加えて判断しなきゃわからない点もあると思います。

 そして、恐らく社民党の皆さん方も、場合によっては三十兆円以下に国債発行をもっと抑制しようという御意見のようですから、その点は財政配分の中で考えていかなきゃならない。雇用対策に対してどの程度ふやさなきゃならないのかというと、恐らく公共事業をもっと削減しろということだと思うのですけれども、では公共事業のどういう分野を削減しなきゃならないかというのは、これから予算編成にかけてやらなきゃならない大事な作業だと思っております。

植田委員 ですから、今私なりに素人目に計算すると大体一兆円ということで申し上げたわけですけれども、少なくとも総理の頭の中にそれを入れといてもろうて、検討の素材にはしていただきたいなと思うわけです。それはいいですよね。そういうことも検討に値するとお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは包括的に考えなきゃなりませんから、雇用対策の充実というのは当然考えております。検討しております。

植田委員 あと、こういうことも考えてええん違うやろか。

 私、財務金融委員会にいるんですが、最近、緊急経済対策の関連でばあっと法案がおりてきました。株やってはる人の特別控除をやると。一年以上持っていたら特別控除をやりますなんという法案が出てきたんですけれども、私、やりませんから、大体、プロの相場師が一年以上も後生大事に株なんか持っているやろかと思うんですが、まあ、ないよりある方がましという法律かもしれませんが、もっとほかにやることあるん違うやろかということで、同じそういう税制面での優遇を加えるんであれば、実際、雇用吸収力を本来的に持っているのは収益企業ですよね。そういう企業が失業者を積極的に雇用する、そういう企業に対しては優遇税制を課してみる。例えば、法人税等の軽減とか免除の措置なんというのを講じていくというのも雇用対策として私は有効やと思うんです。こういうことも考え得ると思うんですけれども、どうでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 そういう問題、これから税制調査会等、あるいは経済財政政策を考える点でいろいろ御議論が出てくると思います。そういう点も含めて検討すべき問題ではないかなと思います。

植田委員 私どもも、今お聞きになってわかりますように、小泉さんの言っていることが、小泉内閣の言っていることがけしからぬ、けしからぬと言っているつもりはありません。具体的な提案をさせていただいているんです。

 そういう意味で、残念なことに、せっかく総理は変人やとお伺いしているのに、すぐれて永田町の常識人のような御答弁をされるので、ちょっと残念にも思っているところでございます。もっと変人らしく小気味よく、それやったらちょっと考えてみるかと言うてもろたらうれしいのに、なかなか口が重とうございますね。

 そこで、時間もありませんから最後お伺いしたいんですけれども、先ほどのやりとりでもありましたが、かつて橋本内閣で一律に歳出を抑制することでしくじったという恐らく御認識だと思うんです。私も間違っていると思います。だったら今度、やはり総理としては、財政構造の進め方というのを、やはり非効率な、また不公平な歳出歳入の制度改革を実施した上で、借金一遍に返そう思うても六百六十六兆もあるわけですから、中長期的に財政赤字を管理する、そういう発想でこれからの財政構造改革を進めていくのが肝要かと思うんですが、その点は総理は御意見いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 その点は重要な視点だと思っております。

 これからこの多額の借金返済をどうするかということは国民の生活にじかにかかわってきますし、かつては国債の発行は孫子の代にツケを残すからということで心配されたのが、現在では、現在の納税者も困っちゃっているんですね。借金の利払いに二十兆円ですよ。今、二十兆円近いお金をこれから当分新規の政策需要に使えない。今までの借金の利払い、償還に回ってしまう。これは孫子の代のツケどころじゃない。現在の納税者が何のために税金を納めているのか、今までの借金の利払いにだというところで、私はもっと国債を増発しろという考えはとらない。せめて三十兆円以下に抑えなさいというのでも私は結構緩い基準じゃないかと言っているんだけれども、現実にはそれでもきついという議論が多いでしょう。

 だから、この点をやはり発想を転換してもらわなきゃならない。常に国債を不景気になったら増発しようという手法が通じなくなっているからこそ構造改革が必要だと。構造改革なくして景気回復なしということもぜひとも御理解いただきたいと思います。

植田委員 私どもも三十兆でも生ぬるいと言うているのは、ほんまに聖域なき構造改革をやるんであれば生ぬるいん違うかと。一方で、もう八月には概算要求するわけですが、三十兆でほんまにでけんのというふうな気もいたしています。それは、午後、夕方、また財務大臣にお伺いしますので省きますが。

 最後に、六月には骨太の方針が出るそうなんですが、やはり国民の英知を結集した議論を行う意味でも、私の提案として、国会の中に、財政構造改革特別委員会でも調査会でもいいですやんか、つくってみて、そこで集中した議論をやるぐらいやってみたらどうですか。せっかくこの立法府でそういう議論の場があるわけですから、そういうのを一遍つくってやってみたらおもしろいのと違うやろかと思うんですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 国会での議論というものは我々政府の閣僚も大変参考になりますし、そういう点も踏まえて、内閣で責任を持って一つの政策を実現して上げなきゃならない。当然内閣には経済財政諮問会議等ありますけれども、その中の具体的な政策というのは国会の中での議論も十分参考にさせて形成していくというのが私は大事じゃないかと思っております。

植田委員 だから、委員会をつくって、そのことについてみんなでもう箱詰めになってやりましょうやということを私提案しているんですから、せっかくですから、そんなのもおもしろいですねぐらい言うてもうてもいいんじゃないでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、予算委員会もありますし財政金融委員会もありますし、いろいろな委員会もあるんですから、いろいろな委員会をつくって屋上屋に重ねることもないのではないかと私は思っています。現在の委員会というものを有効に使えれば、それなりの役割は果たしていけるのではないかなと思っております。

野呂田委員長 これにて植田君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小林興起君。

小林(興)委員 自民党の小林興起でございます。予算委員会におきまして三十分貴重なお時間をいただきまして、光栄に存じます。

 本日は、外交そして経済、財政、こういう問題に的を絞っての集中審議でございますので、要点を質問させていただき、また簡潔なお答えをいただきたいと思います。

 まず最初に外交問題でございますが、小泉内閣の柱にして花であります田中外務大臣に対します国民の、そして我が自民党の期待は大変大きなものがあるわけでございまして、大いに頑張って、ひとつしっかりとした外交手腕を発揮していただきたいと思います。

 就任されましてから事務当局をびしびしと御指導いただいて、外務官僚に、しっかりせよ、こう叱咤激励をしていただいておるお姿を見て、大変心強く思っている者の一人であります。さらに一層、むちだけではなくてあめも上げなきゃいけないときもあるでしょうけれども、しっかりと御指導をいただけたらと思っております。

 さて、先日、中国に行かれたようでございますが、日中の外相会談があったと報道をされております。アメリカと並んで中国というのは日本の外交相手として非常に大事な国でございますし、二十一世紀のこれからのアジアの平和と繁栄、こういうことを考えましても、日中の問題というのは非常に大きなものがあろうかと思っております。

 そういう中で、よく新聞などで読ませていただく中には、日本と中国と話をすると、中国の方から靖国問題だとかあるいは教科書問題とか、そんなことが言われると書いてあるわけでございますが、何であんなに、大国がこういうことばかりいつまでもぐちゃぐちゃ言っているのかなと思う国民も多いわけであります。勘ぐるに、ひょっとしたら日本の軍事大国化を恐れてという意見もあるようですけれども、しかし、恐れなければならないのは中国の軍事大国化だというのが、私は、アジア、世界の常識だと思っております。

 中国の軍事力は、核兵器を含め、すさまじいものがあるわけでありまして、日本の軍事大国化よりも中国の既にある軍事大国としての存在の方が、はるかに諸外国、周辺諸国に、特に近隣アジア諸国に大きな脅威となっていることは言うまでもない。そういう国からああだこうだと言われるのも不愉快な限りでございますが、ところで、せっかくの日中外相会談があったときに、それならば、向こうに対して、あるいは向こうからまず率直に、我が国が非常に貴重な国民の金も使いまして中国に対して経済協力を非常に大きくしている、このことについて、必ずそういうときに向こうから感謝の言葉はあるんでしょうか。

田中国務大臣 小林委員に申し上げます。

 もちろん、感謝の言葉は常にいただいておりますし、今回もそういう御発言がございました。

小林(興)委員 中国も日本について評価していることをきちっと話をしているようでございますけれども、こういうことも、話があった場合には、やはり日本に対して大きく報道も私はしていただきたいな、そんなふうに思うわけであります。

 この経済協力を日本がしている一方で、経済協力を受けた中国が、お金がないからあるいは貧しいから協力というのは大体受けるんでしょうけれども、自分の方で勝手に第三国にみずから経済協力をしている。いわば人を助けている大国なんですね。その大国に対して日本が経済協力をするぐらいだったら、直接日本がそういう国に経済協力もしてもいいと思うわけでありますけれども、いずれにいたしましても、本日はこの問題は深く追及いたしませんが、そういう非常に大きな国であるという中国と日本とが本当の意味で対等に、そしてまた形式論だけではなくて実質的に友好関係を深めていくことが私は大事だと思っております。

 そして、この大国中国は、日本に対して、この間日本に来られました李登輝さんの訪日問題について、何か向こうからお話がございましたでしょうか。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 委員は、個別の問題でかなり突っ込んだ話し合いがあったかというふうな前提でお聞きになっていらっしゃるかと思うんですが、全体的には、大変難しい問題が両国間にあるにもかかわらず、旧知の仲であった、それも本当に古い友達といいますか、つき合いがあったというおかげで、本当に冷静かつ率直に難しい問題について話ができた、そういう雰囲気であったということをお話し申し上げます。

 そして、台湾問題ですけれども、李登輝さんの問題についてはもちろん言及がございました。

 そして、そのほか靖国とかトータルのことをちょっと申し上げておきますが、靖国とかそのほか、教科書問題も、あちらから切り出されるということはありませんで、むしろこちらからお話をさせていただくというか、説明を申し上げるというふうな雰囲気であったということを、ちょっと多分先入観念と違うと思いますので、お話し申し上げます。

 これは、一九七二年の日中共同声明が基本であるということはこちらが申し上げておりますし、あとは、台湾との関係は民間と地域に限られているというふうなことですね。それから、今後のことにつきましては、そのときにいろいろな要因をよく見て、そして慎重かつ注意深く判断をしていくということを申し上げまして、あちらも私どもの、予測がついていた答えかと思いますけれども、それを聞きおくという感じでございました。

小林(興)委員 これは田中外務大臣の前のことでございますので、御本人としてはお答えにくいことかと思いますけれども、直前のことではあったわけですね。

 その中で、我々の知るところによれば、日本国の当時の政治の最高責任者であります森総理が、いいじゃないか、そういう肯定的な御意見であったにもかかわらず、外務省の中国担当の役人が、ああだこうだ、滑った転んだというような形でスムーズにビザを発給しなかった。それが新聞等に漏れて必要以上に問題を大きくさせたというふうに我々は承知しているわけであります。

 李登輝さんが病気を治したいために、その分野で権威のある日本のお医者さんにかかりたいという非常に普通のことであったにもかかわりませず、そういう外務省のお役人がいじくり回したためにかえって問題がこじれたというふうに承っているわけでありまして、当時田中外務大臣であれば、そんなことを事務当局はがたがた言うんじゃない、総理も決めていらっしゃるんだからさっさとやりなさいと言ってこの問題はすぐに終わったんじゃないかというふうに私は思っているわけでございます。

 そういう意味で、特に出入国管理についてはきちっと法律が書いてありますが、それでオーケーという事案について、外務省が外交的配慮から、国家が外交的配慮からある人についてビザを発給しないということはあり得るわけでありますが、外交の最高責任者であります総理がいいじゃないかと言われたときには、それについて外務官僚がどうだこうだと言うのはおかしいわけであります。

 そういう意味では、やはりきちっと政治が主導権を発揮しなければならない、そういう外務省にしていってほしいと思うわけでございますが、その点についての田中外務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 小林委員が先ほどおっしゃいましたように、小泉内閣ができる前の段階のことでございますけれども、やはりそれは、基本的に、その内閣がそのときのすべての状況を勘案して判断なさったことでありますので、役所の人が私見といいますか、いろいろそれぞれの立場はあるのかもしれませんけれども、内閣の決断、判断というものを尊重するのは当然だろうというふうに思います。

小林(興)委員 政治家としてのお考えをお伺いしまして、安心をしたところでございます。

 御承知のとおり、アメリカでは既にこの李登輝さんについては五年間の数次旅券、ビザも出しているという状況でございまして、もうとにかく李登輝さんは総統ではないわけでございますから、一民間人になられた方について、しかも非常に親日的で、また、かつて日本との深い関係も持っておられた方でございます。そういう方が日本に来たいというときには、別に病気を理由ではなくて、お気軽にひとつ日本にお越しいただける、そういうような環境といいますか、そういうことを日本国政府として考えてあげていただきたいと思います。

 次に、時間も限られておりますので、経済問題について、景気対策、財政問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 ことしに入りまして、御承知のとおり、アメリカの経済も減速し、そしてそれが日本に影響して、日本の景気もまた一段と悪い方向に向かっているのじゃないかと私は思っております。そして、十年以上にわたりますバブル崩壊後の後遺症がいまだいえていないこの日本経済が、そういうアメリカの経済の影響等を受ければ、これから先、また非常に危ないなという感じがするわけでありますが、それを受けて緊急経済対策を与党三党で取りまとめたところであり、政府としても、それを受けて頑張ろう、こういうことを言ってこられたわけでございます。

 総裁選、いいこともあれば悪いこともある。いいことは、おかげさまで非常に人気のある総理も今持たれて、そして内閣としてはさらに一層仕事がしやすい形にはなっているかと思うんですが、この総裁選のある意味での空白期間において、緊急経済対策がストップせざるを得ない状況になった。この実現に向けて、今、法律が少しずつ法案化されて出てきておりますけれども、既に午前中の質疑でもお話が出ましたが、緊急経済対策の中身から見ますと、本当に序の口にしかないような状況であります。

 もう間もなく国会も、この夏前は一たん閉じるわけでありますが、少なくとも秋に再開される国会において、早急にこの緊急経済対策に取り組んでいただきたいと思うんですけれども、今のお気持ち、塩川財務大臣にお伺いしたいと思います。

塩川国務大臣 私も、緊急経済対策、これは時宜に適した対策であると思いまして、願わくはもっと早く成立させてもらったらなと思っておったのですけれども、総裁選挙のその事前の交渉とか、いろいろな雰囲気がございましておくれてきたのは残念に思っておりますけれども、それにいたしましても、この政策を緊急に実施に移すべく、いろいろな面で、予算の配分、あるいはその執行状態の監視、そういうものに努めております。

 同時に、おくればせでございましたけれども、都市再生本部が成立いたしまして、これに今精力的に取り組んでおるところでございます。

 それから、税制に関する問題でございますけれども、とりあえず、証券の税制について、一部、長期譲渡益に対しましては特別控除の百万円を設定いたしました。

 しかし、これで十分とは思っておりませんので、できるだけ早くいろいろな証券に関する税制の案件を処理して実施できるようにいたしたいと思っておりますが、極力努力いたします。

小林(興)委員 塩川大臣は、自民党の税制調査会の会長さんも務められまして、税についても非常にお詳しい方でございますので、私は大変期待をしておるところでございます。

 今、財政構造改革、予算について非常に話が進んでおりますが、財政の中身もいろいろと変えていく必要があると私は思っております。これは予算ですので、国民も非常に興味を持って見守っているわけでありますが、そういうことにつきましては国会の中でも非常にいろいろな議論が行われるわけであります。

 私は、景気対策ということを考えますと、財政も大事でありますけれども、それと並んで税制問題そして金融問題、これが非常に重要だというふうに思っているわけでありますが、どうもやはり税の問題、金融の問題といいますと、予算に比べると国会議員の関心も多少薄いといいますか、そういうこともあって、なかなか議論が進まない点もあろうかと思うんです。

 私は、いろいろな思い切った予算の中における構造改革を今塩川大臣も考えて、徐々に出されつつありますけれども、ぜひ税制の面でも、これはという思い切った、しかもシンプルなもの、例えば今、長期保有の株式についての少額譲渡益非課税の話が出ましたけれども、こんな小さい話ではなくて、やはり前から言われております、株を売買したときの譲渡益二六%なんという高い税率を二〇%にすぱっと下げる。これは、金利に対する税も二〇%で、整合性がとれているわけですけれども、せめてそういう骨太の税制改革に切り込んでもらいたいと思うのですけれども、こういう点についてはいかがでしょうか。

塩川国務大臣 私も小林さんの御意見に全く賛成でございます。

 したがって、今の段階におきまして、証券に対する税制で、譲渡益に対する申告の方法が二つございまして、一つは源泉徴収、一つは申告税制でございますが、これを一刻も早く申告税制に一本化して、そしてその上で税率を思い切って下げるということをやっていきたいと思っておりまして、この二年間の間に実現するということでございますけれども、でき得れば、もう少し早目になってもいいから、税率を下げる方を進めていきたいと思っております。

小林(興)委員 塩川財務大臣のお考え等を新聞等で見させていただいているわけでございますが、小泉内閣の基本方針として言われておりますとおり、民間でできることは民間でする、行財政改革を進める中に特殊法人も整理していく、そういうことが言われているわけでありまして、スリムな政府の方向に向かってそういう面では進むことがあろうかと思うのですけれども、その結果、財政から支出されるお金が減る、それはまことに結構なことでありますが、その結果、民間にお金がその分残るということになりましょう。

 本来、その残ったお金が民間の経済活力に使われるように今度持っていくことが大事だと思うのですけれども、今の国税当局の流れを見ておりますと、とにかく少しでもありそうなところから根こそぎ取る、こういうふうに言えるぐらい税金をよく取るところでございまして、ちょっとすき間があくとすぐまた持っていっちゃうということですと、実は、民間の中に活力をみなぎらせる、そういう基盤がなかなかできにくいということは、塩川大臣ならば御理解をいただけると私は思うのであります。

 例えば、これからの新規産業も、経済構造改革を進めていきますから、どんどん不況業種といいますか、これから生産性の低い分野については業種も整理されるかもしれません。それにかわって雇用を吸収する新しい産業も必要だ、ベンチャー対策だ、こんなことも言われているわけでありますが、ベンチャー、ベンチャーといっても、これはそこに最初に何の担保もあるわけでなくて、事業に着目してお金を出すところが必要なのですね。これは今の銀行なんかびびって金を出さないわけでありまして、個人投資家と言われる者がそこに大きなお金を出す。

 それで、ベンチャーですから、十のうち三つ成功するか一つ成功するか、そんなレベルでありますから、リスクも大きい。という中には、それに耐え得るかなりの個人投資家、資金を持った人が必要でありますけれども、日本はアメリカに比べますと、まず個人投資家が全然育成されていない。つまり、ちょっと個人に資金がたまりますと、みんな税当局が根こそぎ持っていっちゃうのですから、個人がお金を持てない。やっと所得税も五〇%台に下がってきましたけれども、なかなか稼いでも稼いでも税金に持っていかれる。その上、この国は相続税がまことに高い。

 したがって、ある程度資金を持った方が最後に亡くなられるときに、ではせめてお世話になった学校に思い切って寄附しようとかいろいろなところに寄附しようと思っても、みんな、寄附も余り許さずに、そして最後は相続税でどんと持っていってしまう。これでは、財政で私学についても措置をしないと、講堂を寄附する人もいないのですから、自分で建てなければいかぬ、そのためには国から助成金をもらわなければいかぬ、こういう悪循環になるわけでありまして、もう少し豊かな個人、まじめに働いて税金を納めた後、残してやる、そういう思想を私はそろそろ持つべきときではないか。

 特に、このベンチャーを見ますと、我々は税金の素人であります。素人でございますので、例えば前の大蔵省、今は財務省ですけれども、税当局が新しい税制をつくりました。ストックオプションです。このストックオプションで株を手に入れて、そして売った場合に、これからは二六%で結構ですと言うと、ああ、それでは、どんともうけた人がそれを資金にして次の新たなベンチャーに投資できるんだな、こういうところで我々は満足する。ところが、実際どうなっているかといいますと、これはよく見ると日本の法人だと書いてあるんですね。

 最初、日本にベンチャーなんかほとんどなかったころ、日本の優秀な人はみんなアメリカに例えば引き抜かれて、アメリカの外資系の会社で働いたんですね。優秀ですから、例えば日本の子会社の社長さんにされる。そうしますと、社長さんにうんと頑張ってもらおうと思って、アメリカは親会社もストックを渡してストックオプションの権利を与えるんですね。それで、頑張って社長としてうんと働いてストックオプションの権利を行使する。ところが、日本の税法で二六%の税金と思っておりますと、これはアメリカの会社の株だから、それは所得税を取る。今だったら五〇%、前だったら六〇%でどんどん取っちゃうんですね。

 こういうことだと何かだましているような感じがするわけでありまして、やはりストックオプションで得た権利は、アメリカの会社だろうと日本の会社だろうと、そこから得た、株式で得たんですから、同じようにして次のベンチャー資金に回すような、そういうきめの細かい配慮もしてやらなきゃいかぬですし、これだってアメリカに今度住居を移しちゃいますとアメリカの安い税金で済むんですから、日本に住む人なんかいなくなっちゃいます。向こうに住んでいて飛行機で日本に来ればいいんですからね。そういう形になりかねない。

 そろそろ、そういう意味で、日本から外国へ逃げていくという人は、ますますグローバル化の時代で、こんな税制を続けておりますと大事な人材を失うおそれもあるということを、ぜひ塩川大臣のお心にもとめていただいて、抜本的な税制改革に突き進んでいただきたいと私は思っております。

 それからもう一つは、税の問題はもう時間がございませんのでこのくらいにしまして、次は金融ですね。これがもう大変でございますよ、金融。我々は金融なんというのはほとんど素人でございますからよくわからないという中にあって、この金融問題で非常に多くの中小企業が実は苦しめられている。

 一つは、私は、我が政府のあり方。つまり、実際に今言いました細かい案をつくるのはみんな役所がやっているんですね、官僚がやっている。その官僚が、最近の官僚はどうかといいますと、これは一面政治家にも責任があるんですけれども、民間とつき合っちゃいけない、何かそんなルールをどんどんつくったみたいでありまして、それが我々ですと、癒着するほど悪いことはいかぬだろう、こんなふうに思っているんですけれども、そうではなくて、普通におつき合いすることも全くいかぬというふうに今の法律がなっているというんですね。そんなことで、民間の人から話を聞くことがない。

 それは日中呼んでこういうヒアリング、形式的なことはできますけれども、本当は日本でございますから一杯飲みながら腹打ち割って話す、そういうチャンスを全く与えていない。こんな机上の空論だけ生かしていく官僚で、本当にきめ細かい民間の悩み、苦しみが、また制度の、行政の問題点がわかるのか。

 かつて役所にもいらっしゃった柳澤金融大臣、どうですか、昔の自分と今の若い役人との生活を比べて、今の役人の方が本当に金融について働くような環境を我が政府は与えておりますか。

柳澤国務大臣 御高見を伺いまして、大変ありがとうございました。

 ちょっと質問がお答えしづらいというか、私も知見が限られておりますので、私の役所の人間がどういう外部とのおつき合いをしているかということについて、必ずしも十分に承知をしていないわけでございます。むしろ、今は仕事が非常に多くて、夜夜中まで、また休日も返上して働いてくれているというのを、体を心配しながら感謝をしているという状況でございます。

 ただ、民間の実情を知るということは非常に大事なことでございまして、食事をしながらの方が打ち解けるというのは日本人の国民性かとも思いますけれども、そうでなくても、いろいろ勉強会等でしかるべき必要な情報は得てもらっている、こういうように考えますし、私自身はそのように努めておりまして、時々、世の中の状況はこんなんじゃないかというようなことで役所の事務方にもアドバイスをしている、こういう状況でございます。

小林(興)委員 なぜこんな質問をいたしたかといいますと、金融問題について、およそ世の中で苦労している方の御苦労と、形式的な金融検査マニュアルでびしびしとくる役人との、行政との間に私は非常に大きな乖離がある。役所は役所で、本当に金融をまじめにしっかりやらなきゃいかぬと思って正義感でやっていますから、それはもうびんびんくるわけですよね、びしびしと。しかし、そういう正義感が本当に世の中の正義なのかということをやはりもう少し皆さんのお話を伺いながら考えることが行政官にとってまず必要じゃないかというふうに私は思うものですから、あえてこのお話を今申し上げたわけであります。

 今、この信用金庫、信用組合、そういうところが町場の皆さん方に、私どもの親しい商店街の皆さん方に貸している金融機関なんですね。そこに、大銀行とほぼ同じような感覚でもって検査しよう、そういう気持ちを持った検査官が、信用金庫、信用組合にも入って検査している。マニュアルは同じだ、違うんだ、必ずしも同じじゃないなんという答弁もありますけれども、そういう形式的なものは別として、意識はそういう形で来ているんですね。その結果、本当に、銀行ともともと形が違う信用金庫、信用組合では非常に困ったという形になっているんですね。

 例えば、今バブルが崩壊して不況でございます。そういたしますと、例えば商店街に、お店に貸して、その上に少し建物も貸して、人も住まわせながらマンション形式にしてやっているなんというお店がたくさんあります。そうすると、そういう小さなお店でも、上に建っておりますから、億というお金を信用金庫や信用組合が貸している。そういたしますと、最初は月々百万円返しましょうという話でございますけれども、この不況が来て、家賃が払えなくなって上から出ていった人もいる。その後が埋まらない。

 そういたしますと、普通は、そんなものはもう信用関係にあるんですから、わかりました、では、今月から百万じゃなくて八十万にしましょう、そのかわり、今まで二十年だったものを極端に言うと三十年にするとか、年数を延ばしてつじつまを合わせる。こんなことはみんな、信用金庫、信用組合が町の方と契約してやってやった。

 ところが、今はこの恐るべき金融検査マニュアル。何で百万を八十万にするんだ、これはもう完全に不良債権になっているんじゃないか、絶対にまかりならぬ、こういうことになるわけでございますから。では、二十万払えなくなった人はどうするか。町金に行って借りるわけですよ。そこから、町金で高利で借りたら、もう返せなくなる。そうして自分で自分の首を絞めていく。これが例えば中小企業の実態なんですね。

 何でそんなものを、百万を八十万に少しぐらい減らしたからといってだれが困るのか。そんなものは信用金庫、信用組合をがんがん政府がそういう形で指導しなければ済む話でありまして、やはり信用金庫、信用組合に対する検査と銀行に対する検査とは少なくとも違うんだという気持ちでもって検査官が対処しなければならないと私は思っております。

 この信用金庫、信用組合と銀行の問題について、私は、金融庁、名前が違うんだから、もし同じだったら最初から全部銀行と呼んでもらいたい。しかし、あるものを銀行と呼び、あるものを信用金庫、信用組合と呼ぶならば、例えば、お金を集めているところには、郵便局は余り貸していませんけれども、郵便局みたいなものもある。いろいろな金融機関がある中で、違うのであれば違うなりの働きがある、そういうところについてはやはりいろいろと考えていくことが必要だ。

 この間までは護送船団方式、この国は、全部含めて、象のようにでっかい銀行まで守ってあげたんですよね。こんなところは最初から守り過ぎたんですよ。だから、ふにゃふにゃな、ひ弱な銀行になっちゃった。

 ところが、今度は、護送船団方式をやめるとなったら、かつて象を猫かわいがりしていたその政府が、今は猫のように小さなあれしかない信用金庫、信用組合をトラやライオンと一緒に競争させようとする、そんなんじゃ猫だって生きていけないですよ。

 それが例えばペイオフの問題でありまして、ペイオフだって、大銀行なんかもっと早くペイオフをちゃんとやっちゃえばいいんです、そんなものは。だけれども、信用金庫、信用組合についても本当に一緒にやるべきかどうか。名前が違うんだから、これは金融機関といったって質の違う金融機関なんだから、それについて本当にするべきかどうかというような、今度はそういうきめの細かい行政、そういうことを。

 日本はこれまで考えてきた。考え過ぎたことはいかぬけれども、やめるとなったらまたすべてやめてしまう。右に行くときは右に振れて、左に行ったら左に振れる、こういう振れ方の激しいことについては、私はぜひ考えていただきたい。このことについて柳澤大臣、いかがお考えですか。

柳澤国務大臣 金融検査について、今先生御言及の信用金庫、信用組合のような、そういう小規模な地域金融機関に対する場合には、非常にいろいろな配慮をするようにということがございます。逆に、金融検査マニュアルには、金融検査マニュアルを引用して厳しい検査をしていないかどうかをチェックするという項目が明文でうたわれているくらいでございまして、十分に検査官も、一定の研修のもとで心得た検査をしてくれているもの、このように考えております。

小林(興)委員 時間が終了したようでございますので、まだまだ御質問したいことはたくさんございますが、終わらせていただきます。

野呂田委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。

 次に、松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 田中眞紀子外務大臣におかれましては、北京で行われましたアジア欧州外相会議に御出席をしていただいて、必要以上とも思えるような報道もありましたけれども、大変厳しい日程の中、御苦労さまでした。

 余りにも報道が多過ぎて全部読むことができなかったし、余り興味もなかったんですが、最初にお聞きしておきたいのは、小さなコラムであります。

 大臣は、トウショウヘイ氏の長男であられるトウボクホウ氏とお会いになられた。そこでどんな話が出たのか、ちょっとかいつまんでお尋ねできますか。

田中国務大臣 昨年だったと思いますけれども、目白にも遊びにいらしたりしていまして、個人的に政治家の子供同士としておつき合いがありますので、ごあいさつをしたということでございますが、多分、オリンピックのことですか。

松浪委員 目黒の家まで来てくれたし、知り合いの仲だから……(発言する者あり)目白か。済みません。気が弱くて、上がっているんです。

 大臣は、親しい仲だから冗談を言われたんだと。私は、田中眞紀子が好きだから、いいように理解しようと思いますけれども、産経新聞の今堀記者の記事によれば、外務大臣は北京五輪にエールを送ったとあります。

 これ、うそかほんまか、冗談で言うたんか、その辺のところを大臣、聞かせていただけますか。

田中国務大臣 マスコミもいろいろな報道がありまして、一々お答えできませんが、これはそういうことではありません。

 多分、皆様は、私が中国に頻繁に行っているだろうというふうに思っていらっしゃると思いますが、私は、逆に余り中国というのに行ったことがありませんで、前回行ったのも七、八年前です。

 それで、最初に、そのずっと前にも国交回復後に一回行っているわけですけれども、あのころに比べて、あのころはホテルなんというのは二つあったかないか、たしか二つだったと思います、外国人の我々が泊まれるところが。それが、今はもう本当に選べるほどたくさんあったので、余りの変わりようにもう目を見張る思いがいたしました。そこで、これだけ人がいっぱい宿泊できる、ホテルを選べるようになったなんということは、私はもう想像がつかない状態でした。

 したがって、これだけお客さんも泊まれるようになって、町も変わったのだから、例えばオリンピックなんかというと、まず東京でもどこの国でも、人が世界から来るわけですから、宿泊施設というのが一番頭にぱっとあったもので、オリンピックもできるような状態に、すごい目覚ましい変わりようですねと申し上げたら、ああそうですよ、びっくりしたでしょうと。それだけです。

松浪委員 それだけのことが、北京のオリンピックにエールを送ったと書かれるから、外務大臣が発言に注意をしていただく必要があるということをまずお願いをしておかなきゃいけない、また指摘をしておかなきゃいけない、私はこう思うわけであります。

 ちょうどこのとき、IOCの評価委員会のレポートが出て、大阪の市長が必死になって額に汗して反論書を送っているときに、外務大臣がこういうふうに北京にエールを送ったとなるから、一生懸命やっている人はどないなんやということになるわけです。

 しかもこれは、外務大臣、大阪市が勝手にやっているのと違うんですよ。閣議了解して、必死になって応援してやっていこうということでやっている。しかも外務省は、出先機関に、徹底して大阪を宣伝せい、それを言わなあかん立場にあるのが外務大臣であります。ところが、北京にエールを送られたんでは、これは大阪の人間はやっていかれへんのですよ。恐らく大臣は言うてないと言うのかもわからぬけれども、大阪の人にちょっと謝ってくださいよ。

田中国務大臣 二〇〇八年ですか、次のオリンピックは。イスタンブールとかパリとか、それから、あとどこがありますか、もちろん大阪が一番にありますが、北京とか、五つ、六つが手を挙げているということはわかっておりまして、もちろん政府としては大阪バックアップ、閣僚としてはもちろんです。

 ただ、余りの変わりようで、言ったことが、あのとき共同通信しか入っていなくて、ほかの人が書いていないのに、何で産経新聞だけが又聞きでそういくのかいなと思います。

松浪委員 私は、大臣に大阪の人に謝ってくれと言うたんです。間違いだったら、間違いです、もしそう伝わったんならごめんねと、一言ぐらい言うてくれていいんじゃないですか。

田中国務大臣 それでは、政府の公式な見解をお読み申し上げます。これは閣僚としてです。

 オリンピックの大阪誘致への政府の取り組みにつきましては、先般のオリンピック委員会による大阪に対するやや厳しい評価もありますが、政府としては、引き続き大阪への誘致を目指して、大阪への、先生の選挙区とは書いてないけれども、大阪への誘致を目指して鋭意努力を続けてまいりたいと思うというのが公式見解でございますから、松浪先生がまた強力に頑張ってくださるように応援いたします。

松浪委員 この話は横に置きまして、教科書問題であちこちからいろいろなことが言われておるわけでありますけれども、中国から八カ所、韓国から三十五カ所、修正せい、こういうふうに言われております。しかし、中国の教科書にも日本についての記述があります。これはごついようけあります。

 外交というのは相互主義が原則なんです。我々は言われる、だけれども我々も中国や韓国の記述に対して文句を言う、あるいは注文をつける、それをやって初めて外交であります。しかし、近年、一方的に韓国と中国から訂正を求められる。これは外交がしっかりしていないからこんなことになっているんじゃないのか、私はそう思っているんですよ。

 それについて、今までの外務省のあり方がおかしかったというのは大臣の持論であります。これからは相互主義に基づいてこの教科書問題も処理していくのかどうか。もちろん、日本の教科書についての精査は文部科学省できちんとやる、これはさきの本会議での総理の答弁にもありました。恐らく文部科学省は一生懸命やられている、こう思うんですけれども、外務省の考えについて、また今までの、外務省が教科書についてほんまに相互主義でやってきたのかどうか、それらの感想をも含めてお尋ねしたいと思います。

田中国務大臣 私が外務省のお仕事をやらせていただくようになってちょうど一カ月でございますから、先生がおっしゃる相互主義については、外務省、これはもう過去ずっと諸先輩が累々と積み上げてこられたことが前提になって御発言なさっているというふうに思いますし、また、今後私はそれを踏まえてどのように将来発展させていくかということだと思います。それはもう相互主義、間違いありません。

 私は、大臣を拝命しますときに冒頭申し上げていますけれども、お互いの国益、まず日本は自分の国益、そして世界の平和と安定にいかに資するように判断するか、その物差し一つでもってはかっていくということを申し上げています。

 ただ、もう御専門ですからあえて言うことはありませんけれども、教科書のことはもちろん文部省がやっておられますし、それから、外務省認可の公益法人の国際教育情報センターというところがあるのを御存じでしょうか、国際教育情報センターというのがあるんです。そこを通じて幅広く、定期的に、専門家レベルで意見の交換もしておりますということをお伝え申し上げます。

松浪委員 御丁寧に国際教育情報センターについて指摘をされました。十分に知っております。外務省はここに丸投げしておるんですよ。ここは、一応、中国や韓国の教科書に日本のことをどういうふうに書いてあるかは調べておるんです。それで終わっているんですよ。そして、外務省はそれに丸投げして、外務省は教科書についてやっていますよ、こう言うんですね。しかし、これでは不十分なんです。

 外務省の組織令では、海外広報課の所掌事務として、「教育資料その他の外国の資料における日本に関する事項の調査及び是正に関すること。」が規定されているわけです。ですから、教科書の問題も、実は文部省の問題の以前に外務省の問題なんです。

 それで、外務省はそれを、大臣が指摘されました国際教育情報センターに丸投げしているから、結局は、相互主義に陥らずに、我々は中国や韓国の教科書に強く是正を求めることなく、一方的にやられるというありさまになっているんです。これをきちんと、田中大臣が就任されたから是正していただけるかどうか、お尋ねしたいと思います。

田中国務大臣 教科書検定問題は、あくまでも最終的には文部科学省マターでございます。ですが、今おっしゃいました指摘も踏まえまして、今後、文部科学省ともよく相談をしたり検討をしたいというふうに思います。

松浪委員 田中大臣に御期待を申し上げたい、こういうふうに思います。

 次に、防衛庁長官にお尋ねいたします、余り大したことを聞きませんけれども。

 あの市ケ谷の一号館、これは、防衛庁が移るときにえらいもめましたね。議事録を取り寄せたら、物すごいいろいろな意見がありました。

 あれは、移築というのか、どういうふうにお呼びしていいのかわかりませんけれども、結局、移築したという形で残しましたけれども、あれは残してよかったんですか、それとも、最初から防衛庁の言うとおり全部つぶしてしまった方がよかったんですか。

中谷国務大臣 市ケ谷一号館初め市ケ谷台には、戦前の陸軍士官学校とか、また大本営の陸軍部とか陸軍省とか、そういう歴史的な場所であります。また、東京裁判も行われまして、その講堂があります。

 結果的に、大講堂、旧便殿の間、旧陸軍大臣室等、可能な限り市ケ谷の中に記念館として残しまして、昨年の六月一日より一般の方々が見学をできる、現在、四万五千人の方々に見学をいただいておりまして、非常に皆さんに喜んでいただいておりまして、保存してよかったというふうに思っております。

松浪委員 防衛庁は当初、この建物をつぶしてしまうということでありました。そして、最終的に、この国会でも大変な議論を巻き起こして残したわけであります。

 それと似たような問題が、文部科学省が計画しておりますナショナル・ギャラリーの建設問題についても当てはまります。

 六本木にあります、現在、東京大学の生産技術研究所として使われておった、日本で最初のコンクリートづくりである第三歩兵連隊の兵舎、これは二・二六の舞台となったゆかりの地でありますけれども、これを全部つぶしてしもうて、そしてナショナル・ギャラリーをつくられる、こういう計画だとお聞きしております。

 私は、貴重な我が国の歴史、文化、これはとどめ置かなければならない、そして建築学的にも貴重な建物である、さりとてナショナル・ギャラリーも必要だ、では共存共栄させるような形でうまいこといかないのか、このことを文部科学大臣にお尋ねをしてまいりましたけれども、以後、どのような形になっておるか、お尋ねをしたいと思います。

遠山国務大臣 松浪委員の文化財保護の重要性についての大変情熱にあふれるお話、いつも感服をいたしております。

 東京大学生産技術研究所の建物は、二・二六事件に参加した旧陸軍歩兵第三連隊が兵舎として利用した建物でありますけれども、実際に東京裁判が行われた市ケ谷記念館とは、必ずしも同一には論じられないものと考えております。そのようなことで、ナショナル・ギャラリーの話が今起こっております。

 我が省といたしましては、文化財登録制度になじまない建物でございますけれども、生産技術研究所の建物の歴史的経緯にかんがみまして、その存在をどのように後世に伝えるかということについて、今後とも検討してまいりたいと思っております。全部をというわけにはまいりませんけれども。

野呂田委員長 松浪君、時間が超過しています。

 これにて松浪君の質疑は終了いたしました。

 次に、城島正光君。

城島委員 民主党の城島正光でございます。

 私の方からは、緊急経済対策、なかんずく不良債権処理に伴うセーフティーネットの必要性が言われているわけでありますので、特に雇用問題を中心に論議を進めさせていただきたいというふうに思います。

 今、日本の雇用情勢、失業情勢が極めて深刻な状況がずっと続いているということは、もう御案内のとおりであります。その直接的な原因というのは、いろいろ言われているわけでありますけれども、まさしくこの数年間の経済のグローバル化、あるいはそれこそ十年近くなると言われる、いろいろな浮き沈みはありますけれども、景気の低迷、さらには経済産業の構造の変化等々、あるいは市場競争の激化といったようなことの理由によって、いずれにしても、企業の倒産あるいは自営業の皆さんの廃業といったようなことが多発をするというようなこと、さらには、こうした状況に対応した企業サイドにおいてもさまざまな人員削減といったことが進んでいるということによるものが非常に大きな要素だろうというふうに思うわけであります。

 そういう状況に対応した形では、前回の予算委員会でも、ここで坂口大臣とも論議をさせていただきましたけれども、率直に言って、この深刻な今の状況に対応した政策あるいは施策というものが十分に出されていない。今の雇用情勢が悪化している状況に対しては、政策がどちらかというと後退しているんじゃないかというふうに私は思っているわけであります。

 そうした中で、本来、小泉総理に最初お尋ねしたいわけでありますが、官房長官に内閣を代表した形でぜひお尋ねしたいのは、これは新聞報道でありますけれども、まず、小泉総理が雇用改革の部分について、特にこれからの経済対策も含めてでありますけれども、多様な雇用形態が必要じゃないかという中において、いわゆる有期雇用の問題ということを検討せいというような指示を厚生労働省に出されたというような報道がありました。新しいこの内閣のスタートとして、雇用のあり方について一体どういうふうに思われているのか、見解をお持ちなのか、この辺からお尋ねをしたいというふうに思います。

福田国務大臣 我が国の雇用というのは、長期雇用というものが、これが当たり前というような、そういうような受けとめ方をして、これはもう労使ともそういう認識を持っていたと思います。しかし、時代が変わり、こういうふうに経済や社会が変化していく中でもって、企業も労働者も、長期雇用ではなくて短期間の雇用を望むというような場合も見られるようになってきたわけでございます。また、女性とか、または高齢者を中心に労働者のニーズが多様化している、こういうふうなこともございますので、それぞれの状況に応じて雇用形態を選択できるようにしてさしあげることが重要なのではないか、このように思っております。

 こういうふうなことから、長期雇用の利点も踏まえながらも、新しい時代に適した雇用形態のあり方、これを検討することが必要でございまして、政府として、産業構造改革・雇用対策本部、これは先週末に第一回目の本部会議をいたしましたけれども、そこでもって、就業形態が多様化する中で一人一人の労働者が安心して働ける就業環境の整備ということについても検討を行っていく、こういうふうに考えておるところでございます。

城島委員 やはり、かなり認識に違いがあるんじゃないかというふうに私は思うのですね。

 今大変大事なことは、こういう雇用情勢も含めて、後でもちょっとお尋ねしたいのですけれども、やはり日本企業の中での産業ですけれども、リーディング産業をどうつくっていくかということが今大変大事なときなんだろうというふうに思うのですね。

 国際競争という観点からしても、日本の地理的な問題も含めてみると、周辺国が非常に人件費の安い国で占められている。よく中国の人件費は二十五分の一だ、こう言われるわけであります。であるがゆえに、そうすると、一見、今おっしゃったようなことを聞きますと、例えば、安い人件費の国に日本が合うまでいろいろな形で辛抱せいというようなことにしか、場合によっては聞き取れない。

 そうではなくて、今、例えば優位な労働条件やあるいは生活条件の差があるとすれば、それをある面で確保していくには、それにふさわしい能力だとかあるいは付加価値の高い国にどうつくりかえていくか、あるいはそういうふうに持っていくかということが一番大事じゃないかというふうに思うのですね。

 そういうことからすると、小泉総理のこういった部分に対する第一声が今言ったようなことであるとすれば、これはちょっとやはり、ど真ん中の直球じゃなくて、とてもじゃないが振り切れないような変化球の、ボールもいいところのボールが投げられてきたなという感じがして仕方がない。

 日本の今の状況と同じようなときに登場した、例えばアメリカのクリントン大統領にしても、あるいはイギリスのブレアにしても、何を言ったかというと、クリントンも最初出てきたときに、やはり今のアメリカの国際競争力のなさを何とかしなければいかぬというときに、一番国際競争力に通じるのは働く人たちの能力開発だ、人材競争力こそがアメリカの競争力強化だということで、あのライシュを労働長官に任命して、予算の重点的なところを教育投資に回した。ブレアも、今イギリスにとって一番大事なのは何かと言ったときに、一に教育、二に教育と言ったのは有名な話ですよね。そして、三に教育と。

 まさに今、例えばイギリスも、そこをスタートにしたニューディール政策で、徹底した勤労者の教育というのが有名な国になっている。そのこともあって今のイギリスの状況があるんじゃないかと思うし、アメリカの状況があるんじゃないかというふうに思うのですね。大事なところは、私は、そこがど真ん中の直球でなければいかぬ。

 今、雇用形態の話をおっしゃいましたけれども、どうも認識が違うんじゃないかと思うのは、確かに、いろいろな雇用の形態を望む若い人たちというのがふえていることも事実だし、そのことが重要でないということは申し上げるつもりはありません。しかし、全体から見ると、今、正規従業員というのと非正規従業員、いわゆる有期雇用の分も含めて、パートあるいは派遣労働も含めて、日本の今の状況というのはもう二八%が非正規従業員で占められているわけですね。千人以上の大企業も、ちょうど四人に一人は、二五%は、もう今や派遣労働やパート、アルバイト、非正規従業員で占められている、そういう状況になっているわけです。

 御承知のように、まさに長期雇用というのはどちらかというと非常にすぐれた雇用制度だということも、今や逆に欧米から、かつてじゃないですよ、今ですよ、こういう状況になって非常に評価されてきている部分があるわけです。なぜならば、長期雇用ということが、いろいろな面でリスクテークをする、そして、いろいろな冒険や、あるいはチャレンジするという面においても、あるいは能力開発においても、やはりそういう雇用のあり方がいいんだなと、そういう状況に今欧米の方はなりつつある。

 しかも、今言ったように、全体の雇用形態から見ると、今、欧米と日本の雇用のそういう大きな面から見た雇用形態というのは、ほとんど差がない状況にあるのです。

 そういう状況の中で、第一声というか最初のあれが、今申し上げたようないろいろな雇用形態の検討ということでは、まさしく今の雇用の状況ということに対して、あるいは日本の現実的な状況について、やはりちょっと、ちょっとどころじゃない、大きくピントがずれているのじゃないかという感じがして仕方がない。改革の方向が違うのじゃないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 今私は、雇用形態が社会経済の変化に伴って変化しているのだということをお話しし、それに対応する方策を考える、そのために産業構造改革・雇用対策本部というものも立ち上げまして、そこで検討していこうと。

 その中身は、そこでどういうことをこの本部で検討するかといったらば、まさに委員のおっしゃる、人材育成、能力開発の推進とか、そういうふうなこともそのうちの一つとしてあるわけなんですよ。ですから、そういうことをこれから議論を深めて、そしてそれが現実に政策としてあらわれるような、そういう努力をこれからしていこう、こういうことでございます。

 日本の雇用形態、長期雇用形態が今欧米でもって参考にされているというお話がございました。まさにそういうこともあるのです。特に経済が非常に調子がよかったというバブルのころ、あのころは日本のやり方を一生懸命欧米企業が学んでおった、こういう事実もございます。ですから、それはそれなりにいいところもあるわけで、それをすべて捨て去るとかそういうことでないので、そういうことはひとつこれから雇用対策本部、ここでどういう議論がなされるかを注目していただきたい、このように思っております。

城島委員 あえて言いますと、かつてのときに、日本のバブル時代の、景気というか調子がよかった時代に日本の雇用を評価されたのじゃなくて、まさに今、さらに新たに産業を復興させていくという状況の中においてもこの雇用のあり方というのは非常に、長期雇用がいいなというふうに、現時点でそういう認識が広がっているということを申し上げておきたいと思います。

 あえて言えば、そういうことであるがゆえに、日本の中において見ると、ああいうアメリカ的なドラスチックなレイオフをやらなくても、日産が見事に復活したのに代表されるように、大幅な、ある面でいうと解雇じゃない中で人員削減というのがスムーズに進んでいく、そういうことはあるわけでありまして、ぜひそういうことも含めた雇用の実情というのはしっかりととらえておいていただきたいなと思います。場合によっては、後ほどまた触れるかもしれません。

 そういう中で、今回、先ほど触れられましたけれども、産業構造改革・雇用対策本部ということで、雇用創出プランということが検討されているようであります。これは、小渕内閣のときにこれも緊急雇用対策として七十万人の雇用創出プランが策定されて、今年度末で終わりになると思いますけれども、この成果が一体どういう状況であるのか。そしてまた、この新たにつくられようとするプランは、この関連においてどういうものなのか、どこが違うのか。この二点についてお尋ねしたいと思います。

坂口国務大臣 まず、平成十一年の緊急雇用対策の方の現状でございますが、御指摘いただきましたように、今年度、平成十三年度いっぱいあるわけでございますから、まだもう少しございます。

 現在の状況でございますが、現在のところ、七十万の中でトータルで見ますと約三十万、半分までちょっと至っておりません。

 その中で、もう少し詳しく申し上げますと、一番中心でありますのが、七十万の中で三十万というふうに言っておりましたのは、御承知のとおり、地方公共団体が民間企業等に委託をし実施する臨時応急の雇用、いわゆる就業機会の創出事業への支援、これが三十万を立てたわけでございますが、ここのところで、平成十一年と十二年、両方で約二十三万何がしでございます。大きいところはそれでございます。

 それからもう一つは、新規・成長十五分野への事業主が労働者を前倒しして雇い入れる際の支援というのがございまして、これが十五万予定をしていたわけでございますが、ここが少なくて、約三万でございます。二万九千七十九人というのがこの数字でございます。約三万でございます。

 こういう状況で、ほかにももう少しぱらぱらとございますけれども、初め予定をしておりましたこの七十万の中で、例えば、生産高が減少している事業所の労働者を出向や再就職により受け入れをする事業主への支援といったようなところ、これはもうこの三月で終わったわけでございますが、これも一万三千七百人ぐらいで、初めの予定の七万人に至らず、二割ぐらいで終わったということでございます。

 それから、そのほかに、一番大きい三十万に続きまして二十万というのがあるわけですが、これはそれぞれの地域で、いわゆる地域別に見て非常に雇用状況が悪化しましたときに発動するものでございましたが、これは、おかげさまでと申し上げるべきか、そんなにたくさん出動することがなかったものでございますから、この辺のところは非常に、約六千人弱という数で終わった。ここは予定しておりましたけれども、そこまでいかなかったので、これは幸いであったというふうに思うのです。

 それにいたしましても、ほかで予定をしておりましたのとかなり食い違う数字になっている。それは我々の方のPRが不足をしたのか、あるいはそれを使用していただくのに使用しにくい内容であったのか、もう少し我々としても吟味をしなきゃならないというふうに思っております。いずれにいたしましても、現在のところ、七十万中三十万という状況でございます。

 それから、もう一点の方でございますが、これは、十一年と今回とどこが同じで、どこが違うのかというお話でございます。

 十一年の六月というふうにいいますと、ちょうど非自発的失業者が百十八万になりまして、有効求人倍率が〇・四三と最低になり、失業率が百十八万というのは今までの中で最高というふうに思います。一番悪かったときでございます。そのときにできたものでございまして、これは、緊急を要する雇用対策と、しかし、このときにも、新産業の育成と申しますか、競争力の強化ということもその中でうたわれておりますから、産業の育成ということもございましたけれども、どちらかといえばこのときには緊急を要する雇用対策、緊急対策の方にアクセントがあったというふうに思います。

 今回の方も、この緊急対策のこともございますが、今回の方は、これは新産業の育成と雇用創出、どちらかというと新産業の育成という、より基本的なところで、先ほども御指摘になりましたように、新しい産業をどう創出していくかというリーディング産業の問題のところにアクセントがあるというふうに思っている次第でございます。

城島委員 まだそういう面でいうと、緊急の雇用対策、小渕内閣のときの政策というものが、成果としては半分以下ですか、今のところそういう状況だということでありますから、確かに、そのウエートが、今度は新しい産業をどうつくっていくかというところにある政策ということでありますが、今の状況からすると、雇用の部分においてまず足元をきっちりと固めるということも極めて、ということがと言った方がいいかもしれませんが、大事な時期じゃないかと思うので、ぜひその辺の検討をよろしくお願いしたいと思います。

 ちょっと中身を聞く前に、平沼プランと言われているプランでしょうか、それが今度のたたき台になるようであります。全体的にはまさに新産業育成ということが重点的になっていると思いますが、それは、ポイントはそういうことでよろしいのでしょうか、確認をさせていただきたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 金融サイドの不良債権でありますとか、産業サイドの不良債務、これを処理するに当たりまして、やはり新規に市場を切り開いていかなけりゃいけない。そのためには、御指摘のように、やはり新たな、そういうベンチャーを含めた企業を創出していかなきゃいけない。

 こういう考え方に立ちまして、実は、二十五日に立ち上がりました産業構造改革・雇用対策本部、ここへたたき台といたしまして、やはり新規にそういう形で雇用が創出される、構造改革を抜本的に行いながらそういう雇用が創出される、それを平沼プラン、こう言っていただいておりますけれども、十五の提案をさせていただきました。

 その中では、例えば、一つの具体例では、大学発のベンチャー企業を千社つくろうじゃないか。これは、例えばアメリカなんかは今、年間三百社が出ているわけでありまして、産学官の連携、それから学から産への技術移転、そういうことを大胆にやっていけば、決して日本も不可能ではない。

 ですから、そういったことも目玉にして、やはり新たな新規産業の育成をして、そこに雇用を吸収していく必要がある。その際、私どもが留意しなければならないのは、やはりこれからは、特に、知的な、そういう特許といった問題でしっかりとした体制を整えなければならない。

 今、日本の場合には、随分IT化をされたとはいえ、まだ二十一カ月、平均かかっているような現状がございます。そういう中で、でき得る限り、例えばヒトゲノムの解析の問題のバイオの問題でありますとか、あるいはその他の知的財産、知的所有権に関するそういう体制を、一日も早くこの二十一カ月を短縮しなきゃいけない。そういったところに重点を置いて、実は、三極の特許庁長官も一堂に寄り寄り集まって、そしてそれぞれイコールフッティングになるように今努力を傾けているところであります。

 いずれにしても、新しい産業構造改革・雇用対策本部、そのたたき台として、十五分野にわたる、新しい雇用を創出する、そういうプランを出させていただいた、そういう認識で私はやらせていただいております。

城島委員 そういう新しい産業を起こすということが、雇用を生み出す、あるいは雇用対策の王道であることはもう間違いないと思いますから、単に絵にかいたもちじゃなくて、それが実効上がるように、これを強力にしていただきたいというふうに思います。

 そういう中で、ちょっと個別的ではありますけれども、概略、どちらかというと国内の、今おっしゃったように、新しい、国内の産業を中心としたテーマが挙がっているわけでありますが、二点ほど提起をさせていただきたいんですけれども、まさに科学技術立国を目指すということからすると、特許の審査をする人というのが、ちょっと調べてみますと極めて少なくて、この部分も、知的所有権の問題も含めて見るとやはりかなり重要じゃないか、ここへの投入というものも必要じゃないかなというのが一点。

 これは外務省だと思いますが、こういった国際化の中で、海外回ってみますと、特に海外青年協力隊あたりに対する要請も非常に強い。外務省機密費をこの辺に使えば余りだれも文句を言わないんじゃないかというふうに思いまして、この海外青年協力隊あたりの増強を御提案させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 委員もよく御承知だと思いますけれども、特許庁というのは相当早くからIT化が進んでいる役所でございますけれども、しかし人的な、今御指摘の点がございまして、今申し上げたように二十一カ月平均かかる。これはやはり国際標準に照らして、今ドッグイヤーと言われておりまして、昔の七年が一年、こういう状況でございます。

 小泉首相も行政改革、そういうことを断行する、しかし、必要なところにはやはり人員はふやしていかなければならない、むだなところは徹底的に省くけれども、必要なところには必要な人員を確保する、こういう基本方針を小泉内閣、総理自身がお持ちでございますから、今御指摘の点は私どもも非常に重要な点だと思いますので、そういうことを含んで、力強い政策を遂行していきたい、このように思っています。

田中国務大臣 高齢化が進んでいる中で、中高年の方たちが、特に技術を持っている方たちが青年協力隊、青年でなくてもですけれども、まさしく技術指導等で海外で働くということは、生きがいにもつながるし、また新規の雇用の創出にもつながるということで、大変いいことだと思います。

 もちろん、城島委員御本人も多分インドネシアで食品の関係とかお仕事やっていらして、そういうことに御関心をお持ちになったというふうに拝察いたします。

 私自身もこれは実態を見たことがあります。主人が昔、外務政務次官を仰せつかっておりましたときに、カリブ海の沿岸諸国に参りまして、そこで、医療ですとか、それからまさしく食品関係とか、それから建設関係で、あの当時、若い方もおられましたが中高年は少なかったんですね。日本国内の人口構成も今変わってきていますから、したがって、やはり中高年の技術者が出ていくということは、本当に海外に対する貢献になるし、すばらしいことと思いますので、どうぞまた親しく御指導いただきたいというふうに考えます。

城島委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。

 次に、竹中大臣にお尋ねしたいんですが、これから二、三年のうちにいわゆる不良債権の最終処理をする。前回だと思いますが、この委員会の中でも、それに伴う失業増はどうかということの中で、率直に言うとかなりアバウトな数字を言われて、さらに詰めが必要だと言われていたと思うんですけれども、もう一度この部分について、一体どれぐらいの失業増が考えられているのか、見込まれるのかということを改めてお尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 アバウトな数字という御指摘がありました。確かにアバウトでありまして、各民間機関が出している数字も、この問題の性格上、やはりアバウトにしか議論できないという状況だと思います。

 一つぜひ御理解いただきたいのは、よく失業、失業というふうに言われるわけですけれども、各機関が出している数字、私たちが参考までに申し上げた数字も、失業の増加ではありません。いわゆる離職者の増加なんですね。離職した人がその瞬間に新しく就職できれば、失業にはならないわけです。議論できるのはせいぜいその離職者の話でありますけれども。

 数字について言いますと、大小いろいろな数字が出ていますけれども、おおむね今まで起こったいわゆる不良債権の処理と、その間での離職者、失業等々の増加を考えますと、一兆円処理で大体、これも幅があるし、どこの年次をとるかにもよるんですけれども、大体数千人から一万人というようなことになってしまいますので、そうすると、十二、三兆円の処理に当たって出てくる増加というのは数万人から数十万人である、そういうふうな形で申し上げたわけです。

城島委員 これは、物すごく、働くサイドにぜひ立ってほしいんですよ、大臣。もう私はここで何度も今の雇用情勢、特に失業情勢の構造的な、大変深刻なことを何度も言ったので、きょうはあえて言っていないんですけれども、いわゆる働いているサイドからすると、この問題というのは本当に深刻な問題。

 今おっしゃったように、それは離職者イコール失業者じゃないということはよくわかっていますけれども、しかし、今の状況からいうと、ほとんどイコールになりかねないという状況になっているわけですから、ここは本当に極めて重要な政策を実行する段階ですから、一体どれぐらいの失業になっていくのかということをきちっと把握した上で、それに対して、でも安心ですよ、こういう政策をきちっととっていくから大丈夫だというメッセージを送らないと、これはかつての、山一がああなった日を私はよく覚えていますけれども、あの日から突然生活必需品の売り上げが落ちていったわけです。家庭の主婦が、うちのだんなもひょっとすればそうなるかもしれないということで、一斉に消費が落ちている。そういうことと同じように、今の不良債権処理の問題というのは、実はぐうっと今実際働いている人たちの心の中に重くのしかかっている。これが一層景気の足を引っ張る可能性がある。

 要するに、またデフレになっていく、悪循環になっていく可能性を秘めた問題であるがゆえに、私は、ここはもう少し働くサイドに立って数字を出していただき、また、こういう政策を用意するんだということを言っていただかないと、これは大変大きな問題だと思います。

竹中国務大臣 離職者の見込みがこれだけだということが即働く側の立場になっていないということは、これは全くそんなことはないわけで、申し上げたいのは、その一方で、経済財政諮問会議の専門調査会では、可能性として、これだけの雇用がふえるような可能性もあるんだということを今の段階で示しているわけですね。

 これはもう何度も申し上げましたけれども、私たちは、雇用の問題を非常に重要な問題というふうに位置づけています。だからこそ、もう少し正確な数字をもとにする試算を今やらせていただいていますし、正確な数字、これにはマクロモデルが必要ですから、これをすぐに出すということは技術的に難しいのですが、それでも約一カ月以内ぐらいに考えている経済財政諮問会議の骨太の方針では、経済再生のシナリオの中で、委員がおっしゃったように、一体経済の姿がどのようになるのか、雇用問題はどの程度深刻になるのかならないのか、どういう対策を打つのかということは、これはぜひはっきりと示していきたいというふうに思っています。

城島委員 今、これからまさに新しい産業、受け皿がどれぐらい出てくるのかという論議であって、そこにはやはりタイムラグがあるわけですね。一遍にそれこそ受け皿になる産業が出てくれば、これはもう全然問題ないわけでありますけれども、したがって、今これだけ雇用情勢が厳しい中で、この二、三年の中でこの処理がされていくとすれば、大変大きな不安が働くサイドから出てくるというのは当たり前だというふうに思うんです。ですから、五百万とも言われる、新しいサービス産業で出てくると言われても、その間の問題はどうしていくかというのはもう切実な問題であるということを強く申し上げておきたいと思います。

 時間がかなり迫っておりますので、そういう中で、特に労働移動ということについて、少し厚生労働大臣にお尋ねをしたいと思うのです。

 今の状況を含めて、ある部分でいうとやはり、厚生労働省の表現をかりれば、失業なき労働移動、こういうふうに表現されているわけでありますが、できれば、それは生活条件が悪化しない中での移動がスムーズに行われるということが極めて大事だというふうに思うのですね。

 そういう状況からすると、いろいろな問題があると思うんですけれども、私は、今二点ほど提起をさせていただきたいのは、今どういう職種にどれぐらいの人が、そして、できればどういった能力を持った人たちが求められているかという、数字でいけば有効求人倍率の各業種別の指数が出ているわけでありますが、各職業別に一覧表がありますが、さらにこれにどういった能力が必要かということがつけ加わったようなものがいわゆる一般的に周知される、多くの人が認知できるような状況にある、しかも地域単位でそういうことがオープンになっているということと、時間がないのであわせて申し上げますと、したがって、どういう能力開発あるいは教育が必要かということが有機的にセットになって、できれば地域単位でそういうことが行われる、こういうことが今物すごく大事じゃないかという感じがしております。

 これは率直に言って、連携も極めてウイークだし、データはあるんだけれども、これがなかなか一般に周知されていない。ここが労働力の移動あるいは再就職にもう一つ大きくネックになっていると思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 そこは御指摘のとおりだと私も思っております。

 それで、今進めておりますのは、能力開発も、今までは企業の中で企業が要求する能力開発が行われてまいりましたが、そうではなくて、みずからの能力開発、自分はこういうふうな能力を身につけたいという自発的な能力開発というものをずっとやれるようにしないといけないというので、そういうシステムを今つくりつつあるわけでございます。

 自発的な能力開発を行うことによって、今まだお勤めになっております皆さん方に対しましても、まだ離職だとかあるいは失業だとかというようなことが起こっていない、今お勤めになっているけれども、この機会にもう一つ新しい能力をつけておきたい、こういう皆さん方に窓口を提供する、それに対して企業の方も協力をしていただくように、その協力をした企業に対しては、それに対してまた援助をするといったようなことを今やっているところでございます。

 それからもう一つは、官民協力しての能力評価ですね。特にホワイトカラーなんかは、それがどれだけの評価をされるものなのかということが明確でないものですから、その能力評価というものをちゃんとやっていこう。それも、今までは官だけでやっておりましたけれども、官民協力をしてやっていただくようにしよう。ここを強力に今進めているところでございます。

 もう一つ、今御指摘になりました、それだけではなくて、一般の人はどこでどういうものが求められているのかということがよくわからないというお話でございますが、私もそこはそうだというふうに思っておりまして、それで、インターネットをできるだけ開放いたしまして、そしてその中でわかるように今いたしております。このインターネットの内容も、これはもう全国どこででもわかっていただけるように早くしたいというふうに思っております。

 それから、ハローワークの中で、お越しいただいたらそこでごらんをいただいて、そして自分でわかっていただけるようなシステムというのも各ハローワークに今拡大をいたしているところでございます。ここは今は中心的なところだけでございますけれども、そうではなくて、もっと全体にこれを広げていきたいというふうに思っておりまして、御指摘の方向に向かって今ここも進めているところでございます。

城島委員 労働のスムーズな失業なき移動には、今大臣全部お触れになりましたのでもう繰り返しませんが、そういうことをやらないとスムーズな移動はできませんから、単にかけ声だけじゃなくて、ぜひそこをやっていただきたいと思います。

 時間が来ましたけれども、最後に一点だけ。

 そうはいいながら、先ほど竹中大臣は数万から数十万というふうにおっしゃいましたけれども、それを信じたいわけでありますが、一般的には、場合によっては五十万とも百三十万とも言われるこの不良債権処理に伴う失業増というようなことが言われているわけであります。こういったものに対しても、やはりセーフティーネット、それこそそういったものが緊急的に必要じゃないかというふうに思いますが、政府の方は、状況を見ながらというようなことになっているようであります。

 簡単なポイントだけの、中身についてはありませんが、(パネルを示す)今回の、特に不良債権処理に伴って出るであろう大幅な失業者に対して、最悪の場合にやはりこうしたセーフティーネットが必要じゃないかということで、こういう民主党案をつくっているわけであります。

 骨格は大きく二つありまして、この雇用保険制度につきましては、四月からスタートしていますので、この骨格は変えないというふうにしたときに、しかし、大幅な失業が出た場合、やはり財政は厳しくなりますから、これについては二兆円規模の基金を用意する必要があるんじゃないか。

 一番大事なことは、先ほどから力説しているように教育ということだと思いますので、これは再チャレンジ教育支援制度というふうに名をつけておりますけれども、そういう、新たに仕事につこうという人について、あらゆる機関をぜひ使っていただきたい。きょうはちょっと時間がなくて文部科学大臣にも聞く時間がなかったのですけれども、大学や大学院も含めてフル動員をするというようなことが必要じゃないか。そのためには、優秀なところであれば我々としては年間約六十万円程度の支給をするということを含めた、国民総動員ではありませんが、そうした教育を、国民学びの教育みたいなことで広げる必要もあるんじゃないか。

 それから、再チャレンジ生活支援制度、これは、雇用保険制度の支給が切れた人にも、なかなか今就業できない人が多くなってきているということもあって、二年間にこれは限るわけでありますが、生活支援制度をつくったらどうか。これは大体、今我々考えておりますのは、失業給付基本手当の最低の日額が三千四百三十円でありますが、これを今考えているわけであります。

 ただ、ここで我々としての一つのポイントは、これは何も勤労者に限ったわけじゃなくて、最近多い、自営業者の皆さんがやむを得ず廃業に追い込まれる場合もありますから、そうした方々も含めて、全体の名前を職業能力開発支援制度というふうにつけておりますけれども、この制度を適用して、新しい産業を起こし、なおかつ完全雇用の社会にもう一度戻すというところの一つの大きな切り札にしていったらどうかということでつくっているわけであります。ぜひ、御検討をいただければというふうに思います。

 もし御感想があれば、大臣からいただきたいと思います。

坂口国務大臣 民主党の案も、簡単に書いてありますけれども、もう少し詳しいのがあるのだろうというふうに思いますが、私たちももう少し詳しいのがございますので、また見ていただけたらと思います。

城島委員 終わります。

野呂田委員長 これにて城島君の質疑は終了いたしました。

 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 最初に、外交問題についてお聞きをします。

 私は、中国やあるいは朝鮮半島というアジア諸国、極めて大切だと思いますし、日本の国益のためにも仲よくしていかなければいけないというふうに考えております。日本はどうもアメリカ一本やり過ぎる。日米基軸そのものは間違いではありませんが、しかし、アジア基軸との二本立てぐらいを考えて、そういう外交の転換も必要ではないかというふうに思っております。

 しかし、同時にまた、そういうアジアに対しても、基本的に、言うべきことは言う、筋を通すべきことは筋を通す、そういう姿勢が必要だろうというふうに思っておりますし、田中外務大臣は、当然筋を通す人だというふうに、我が同じ郷土としても期待をしているところでございます。

 そして、その点から考えますと、幾つかやはり問題が日本の外交にはある。

 一つは、先ほど小林議員が聞いた中国に対するODAの問題でございまして、もう十数年以上、毎年軍事費を一割以上増大させている、その国に多額のODAを出している。これはやはり問題だろうというふうに思うわけでございますが、きょうはその点は聞かないで、きょうは、田中大臣が誕生した最初、小泉内閣が誕生した最初に起こりました金正男事件、これについてお聞きをしたいと思います。

 この事件に関しては二つ問題がある。一つは、日本の法律をきちんと適用したのかどうか。やはりどんなに偉い人でも、どんなに怖い人でもきちんと日本の法律を適用するのが法治国家だし、また主権国家である。偉い人だから、怖い人だからといって日本の法律を適用することをやめたり、日本の法律を無視してしまったら、これはもう法治国家も主権国家も成り立たない。最近、アメリカで、ブッシュ大統領の娘十九歳が、ビールを飲んで未成年者飲酒の罪で起訴されました。現職の大統領の娘でも、ビールを飲んで、そして起訴をされる。これが法治国家だろうと思うんです。

 これは否定されるだろうから聞きませんが、どうも報道によりますと、田中外務大臣は、金正男らしき者が入ってきたら、マスコミに知られる前に早く追い出しちゃえ、外へ出せというふうに言ったと報道されております。もしこれが事実とすれば、ブッシュ大統領の娘がビールを飲んで捕まった、そのときに、ブッシュ大統領の娘のようだ、これはマスコミに知られる前に逃がしちゃえ、不問に付せ、こういう形でして、この姿勢はやはり法治国家、主権国家の姿勢とは全く矛盾するのではないか。これが一点目の問題だろうと思うんです。

 それからもう一点目は、どういう処置をしたにしろ、今度の処置が正しかったか間違ったかは別にしろ、その事実関係は、隠さないで、うそを言わないで、やはり明確に国民に明らかにすべきですよ。金正男らしいので特別の処理をしたのに、特別の処理は一切しなかった、日本の法律にそのまま従った、一般不法入国者と同じように扱った、こういうふうな言い逃れをしている。しかし、国民は、金正男だから特別の取り扱いをしたんだ、みんなそう思っているんですよ。だけれども、政府は全然違うことを言っている。こういう矛盾というかそごが起こっていることが、日本の政府に対する、あるいは政治に対する信頼感をなくしてしまう。

 やはりこういう処置自体が私は問題だったと思いますが、そういう処置をしたとすればその中身を正確に国民に訴える。その点でも田中外務大臣は、行政の透明性を今まで主張してきて、そんな、うそを国民に訴えるなんて、こんなことを今まで主張してこなかったわけでございますから、この場合でも明確に事実を言っていただきたいと思うんです。

 この二点の問題点から、やはり金正男問題は不問に付すわけにはいかない、はっきりたださなければいけないというふうに考えております。

 それで、最初にお聞きしますが、普通の法律にのっとって、一般の不法入国者と同じように適正に処理をした、これを田中大臣も総理大臣もそれから法務大臣もそう言っておられます。この普通の法律というのは出入国管理法が主となると思いますが、出入国管理法の規定に従って、それを守って適正に処理した、こういう意味に聞いてよろしいですね。

森山国務大臣 先生がおっしゃいますとおり、どのような立場の人であっても法律を公平に適用するということは大変重要なことであり、そのいきさつをできるだけ御説明申し上げてまいったつもりでございます。

 今の御指摘の点も、これまで、この事件と同様に偽造旅券上の記載から過去にいろいろな問題があったということがある人は、すべてこのような処置をいたしたのでございまして、従来の処理に照らして公平公正なやり方をとったと申し上げます。

筒井委員 先ほども今の趣旨のことを言われましたが、それがすごい答弁だということは認識されていますかね。

 出入国管理法で、こういう不法入国罪は三年以下の懲役、禁錮に処す、こう規定されておりますよね。これを今回、金正男さんと思われる人は五月一日に不法入国罪を犯した、まず一回既遂を犯した。その前に三回不法入国罪を犯した疑いがある。計四回不法入国罪を犯した疑いがある人なわけでございまして、四回も犯した人を、出入国管理法で三年以下の懲役の対象になるのに、それに処するというふうにはっきり規定されているのに、それを全部不問に付した。これ自体がもう出入国管理法の無視じゃないですか。

森山国務大臣 その偽造パスポートによって前に三回入国した印があったということはわかっておりますが、それを使った人がその本人であったかどうかははっきりしておりません。

筒井委員 だから私は厳密に聞いたので、その今確認できなかったという点も後で聞きますが、私が聞いたのは、一回は現行犯で不法入国罪を犯した、あと三回不法入国罪を犯した疑いがある、だから、計四回不法入国罪を犯した疑いがあることは事実でしょう。それをこの出入国管理法で処罰するというふうに書いてあるのに処罰しなかったのはこれ自体が、まあ処罰するとまで言いません、逮捕もしなかった、捜査もしなかった、これ自体がもう出入国管理法の無視になるんじゃないですかという質問なんです。私は、だから、疑いがあった場合のことを言っているんです。

森山国務大臣 出入国管理法の規定に基づきましてあのような措置をさせていただきましたのでございます。

筒井委員 私の質問に全然答えていない。出入国管理法上は三年以下の懲役、禁錮に処すると書いてある、そういうふうに規定されている。それで四回も犯した疑いがある。その疑いも何にも晴らさないで結局は釈放してしまった。これ自体がもう出入国管理法の違反ではないか、無視ではないか、こう言っているんです。

 その関連でもう一つ、また同じ答えだろうから聞きますが、今ほかの人の場合もそうだと言われた。これはすごい答えですよ。大体、ほかの人の場合も、四回以内だったらみんな今まで不問に付していたのですか。今すべてと言いましたね。物すごい答えですよ。もう完全な法律違反、無視ですよ。

森山国務大臣 今までの例に照らして公平に処置したのでございます。

筒井委員 だから、そんな一般論を聞いていないので、きょう午前中の原口さんの質問に対しても、原口さんはこう質問したのですよ。四回も犯した疑いがある人をこういうふうに不問に付した例があるかと言ったら、ほかの場合もみんなそうしていますというふうに答えた。今は明確にすべてそうしていると。例えば麻薬の不法所持とかなんかがあるものはそれは別ですよ。麻薬の方で逮捕すれば、これも一緒に逮捕、起訴されるでしょうから。そうじゃなくて、不法入国罪だけの場合は、では今法務大臣の答えによれば、五回以上の場合でなければ一切逮捕しないということですか。もう一度確認します。

森山国務大臣 個々の例によっていろいろございますので、一つ一つの内容を私は詳しく存じておりませんが、一般論で申しますと、先般のような例が皆無であったわけではございませんので、その例に照らして同様の処置をしたのでございます。

筒井委員 全然今度は趣旨が違ってきている。さっきは、すべて四回以下の場合は、こういうふうな場合はすべて逮捕も捜査もしていないという趣旨を言った。今は、今度みたいな場合は皆無ではなかったと言っている。全然さっきの答えと、答弁が違うじゃないですか。正反対じゃないですか。

野呂田委員長 法務大臣に申し上げますが、明確な答弁をお願いいたします。

森山国務大臣 私は違ったことを申しているつもりはございませんが、なお詳細については、入管局長から御説明申し上げます。

筒井委員 全然今と答弁が違うのだけれども、さらに続けます。その中で、入管局の方で答えてください。

 今までの例を見ますと、不法入国罪だけで平成十年で千百五十二人送致している。送致というのは逮捕ですよ、ほとんど。逮捕して、その中で起訴ですよ。千百五十二人。それから、十一年では八百三十四人逮捕している。その中のほとんどは起訴だと思いますが、ほとんどと言えるかどうかわからないけれども。いずれにしても、このほとんどは逮捕している。これはまたほとんどが、これは入管局の方でいいですが、一回の不法入国罪で送致しているんでしょう。五回以上なんというのはないでしょう。その点、どうですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来私どもの大臣がお答え申し上げておることに若干付言して申し上げたいと存じますが、お許し願いたいと思います。

 まずもって、刑事手続と入管法上の退去強制手続とは、別個、独立のものでございまして、私どもの方の退去強制手続上の話を私どもの大臣の方が申し上げたわけでございます。

 先ほど委員御指摘の、送致の件数が千件以上あるとかそういうお話がございましたけれども、これは、警察が送致、送検した件数だろうと思います。基本的には、理論的に申し上げますと、告訴、告発というのは捜査の端緒でございますので、警察といたしましては、告発がなくても強制捜査に着手できるということに理論的にはなるわけであります。

 私どもの方で告訴した件数につきましても、委員御案内のとおり、平成十二年は二十一件でございます。通報件数が、大体百二十件ぐらい通報しております。そういうことでございまして、私どもの方で一応通報すべきものは通報し、警察の方で強制捜査に乗り出すものは、それは別の手続でございますので、その別の手続でやっていただく、こういうふうになっております。

 かつ、先生が御指摘になった、何回入った者がどうかということになりますと、私どもの方は、そういう点についての捜査権限も持ち合わせておりませんけれども、行政手続上、必要な範囲で調査をいたしますけれども、個々の不法入国事犯につきまして、その者が当該、過去に何回入ったとか、そういうものについてまでは統計もとっておりませんし、その辺のところは、本来退去強制手続でございますので、退去強制手続上、国外に退去する、そういう退去する手続の中でやっておるわけであります。

 その手続の中で、例えば警察の方で逮捕するということになれば、私どもの手続がそのまま進む、こういうことでございます。

筒井委員 いろいろなことを言っているけれども、全然違うんですね。一般人の場合には一回の密入国でも逮捕して、起訴している。

 具体的な例を挙げますが、中国の女性が妊娠をして、中国は産児制限しておりますので、そのまま中国にいると強制中絶をさせられる。中絶を避けて何とか子供を産みたいということで密入国をした。もちろん一回だけです。それが逮捕されて、しかも起訴されました。

 松江地裁は、平成十年の七月二十二日に判決を下しました。これは余りにもかわいそうだ、不法入国罪であることは確かだと。その点では金正男さんのそれと一緒です。不法入国罪であることは確かだけれども、子供の、胎児の生命と自分の体を守るために不法入国したんだから、これは刑を免除する、こういう判決を下した。これは当然だと思うのですけれども、刑の免除を下したのですが、今度は、これに対して検察官は、それは不当であるといって控訴した。

 これほど、一回しか密入国していなくて、しかも、本当に自分の胎児と自分の体を守るためにやむを得ず密入国した、不法入国した。これを逮捕して、起訴して、免除の判決が来たら、さらに控訴した。

 今度の金正男さんは、報道によれば、ディズニーランドとか大阪に遊びに行くという目的だそうじゃないですか。しかも、過去三回入っている、そういう疑いがある。本当にこれは全然正反対の取り扱いをしている。全く正反対。(発言する者あり)子供のことはまた別の方法で解決できるんです。今言っているのは、一回しか不法入国していないのに逮捕して起訴した、これと金正男さんの場合と正反対の処遇じゃないか、どっちが正当なんだと。

 この中国人女性の場合、逮捕したのは、それで検察庁に送ったのは警察庁ですが、警察庁にお聞きしますが、この処置は正当だったんですか。

漆間政府参考人 お答えいたします。

 今議員の御指摘のあった件につきましては、これは集団不法入国でありまして、集団不法入国につきましては、法務省等の間でこれは厳しく処分するというふうにやっております。したがって、これについては警察が捜査をいたしまして、それで検察庁で起訴していただいた、こういう手続になっております。

筒井委員 法律違反という点では、今度四人で入ってきて、しかも過去三回あって、しかもどうも遊びが目的だったと。こっちの方が中国人女性よりずっと悪質であることは確かでしょう。その点を全く不問に付したという点を問題にしているんです。

 もう一度森山法務大臣の方に戻りますが、では、さっきの答えは、ほかの人の場合も全部、四回ぐらいまでは不問に付しているんだ、こういう答弁は、これは間違いじゃないんですか、訂正じゃないんですか。

森山国務大臣 同様のケースについては公平に同じような適切な措置をしておりますが、先生が引かれました中国人女性の問題はちょっと性格が違うように私聞き及んでおります。

 平成十年の二月十九日に島根県の漁港で発生したということですが、中国福建省の福州市から韓国の漁船によって約五十人の集団密航の事件があった、それがいわゆる蛇頭というものの手引きによって、送り出す方また迎える方それぞれ待ち構えていたというような組織的な集団不法入国であったそうでございまして、今回の件とは非常に性格が違うのではないかと思います。

筒井委員 それと、森山大臣、先ほど本人の確認ができなかったと言われましたが、海江田議員の質問に対しても答えておりますように、過去三回の入国の際に、入国をした人の署名はとってある、それがマイクロフィルム化されている、これがまずありますね。それから、今回の入国の際にも金正男と思われる人間から署名をとってありますね。全部で何回とってありますか。

中尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 議員指摘のように、偽造旅券の記載上は三回の入出国がございます。その関係の、いわゆるEDカードと申し上げますが、出入国記録はマイクロフィルム化しておりますので、そこで当該カードを記載した者の署名はマイクロフィルム上ございます。かつ、本件の場合には、五月一日に入国いたしておりますので、その時点で出入国カードが記載されております。そういうことで、両方ございます。

筒井委員 そうすれば、その筆跡は簡単に比較することができますね。鑑定はすぐできますね。それをしようともしなかったんですか、それともしたんですか。

中尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 一応両者につきましては確認をとりましたけれども、お尋ねの件につきましては、同一のものかどうかは確認できていないのが実情でございます。

筒井委員 簡単にできることでしょう。マイクロフィルムは確かに筆圧はない。だけれども、文字はそのまま残っている。その文字同士を比較すれば、これが同一人であるかどうか確認できるでしょう。もう一度答えてください。どうしてできなかったんですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 同一の者かどうかが確認できていない、こういうことでございます。

筒井委員 それは、筆跡鑑定をしたけれどもわからなかったのですか、しなかったのですか、どっちですか。

中尾政府参考人 筆跡鑑定をしておりません。

筒井委員 では、先ほど確認できなかったと言ったけれども、確認できなかったんじゃなくて、確認しようとしなかったんじゃないですか。さっきの答弁、訂正してください。森山大臣が先ほど確認できなかったと言ったけれども、今は確認しなかったということじゃないですか、要するに。

野呂田委員長 正確に答弁しなさいよ。あなたたち何やっているんだ。入管局長。

中尾政府参考人 先ほど申し上げましたように、鑑定はしておりません。が、確認は、私どもの範囲の、行政目的の範囲内の調査の過程においての確認はとりましたけれども、私どもの方からすれば、同一の者かどうかの確認はできていないということでございます。

筒井委員 大臣は、そういうふうなきちんとした鑑定をしなかったし、ただ自分たちの目で見ただけだ、そこで確認できなかったというだけの話じゃ全然信用できない。大体、科学警察研究所とか鑑定する機関があって、頼めばすぐできるんですよ、そんなものは。同一人であることを確認しようとしなかったというのが正しい答弁じゃないですか。もう一度答えてください。

野呂田委員長 だれが答弁するんですか。――入管局長。

中尾政府参考人 鑑定はしていないということで申し上げておるわけでありまして、先ほど委員、御異論いただきましたけれども、確認と鑑定は違いますので、私どもの範囲では確認はできておりませんということを申し上げておることであります。警察等に対しての鑑定はお願いはしておりません、こういうことでございます。

筒井委員 これは、本当の話は、確認は初めからするつもりはないので、早いところ、もう特別扱いで外へ出しちゃおうというつもりだったと思うんですよ。だから、そうならそうと言えばいいんだけれども、一生懸命隠してうそのことを言っているから、私は追及するんですよ。

 一応確認したとかなんとか言ったり、いろいろなことを言っているけれども、要するに、本人であるかどうか、はっきりこれを確かめようという捜査は一切しなかったんでしょう。それはするつもりもなかったんでしょう。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、旅券上の記載の名前ではなく、旅券の記載以外の名前を申し立てました。その者として私どもは退去強制手続をとったわけでありますけれども、先ほど来話題になっております金正男氏であるかどうかの確認はとれておりません、こういうことでございます。(発言する者あり)

野呂田委員長 ちょっと、静粛に願います。

筒井委員 確認しなかった、確認しようとしなかったんだろうと聞いているんですよ。

 それと、今回はパン・シオンの名前では署名をとっていないんですか。今、そんな答弁をされましたか。

中尾政府参考人 当初、出入国カード上は、パン・シオンとこれは署名をしております。これも途中、事件の関係でございますが、最終的にはパン・シオンという署名ではございません。

筒井委員 最初の入国の際の証印ではパン・シオンの署名をしている。だから、それは前のEDカードと同じ名前を書いたんだから、なおさら筆跡鑑定は簡単にできるでしょう。

 それもさらに聞きますが、さらにその後、いろいろ上陸審査とか口頭審理とかあって、そして入国警備官の違反調査をしていますね。そこで読み聞かせの上、署名させた供述調書を作成していますね、これも出入国管理法で当然やらなきゃいかぬのだから。この署名をした供述調書、これはどういう署名ですか。

中尾政府参考人 違反調査の当初はパン・シオンとまだ言っておりましたので、パン・シオンと署名がなっておる状況でございます。

筒井委員 その後、収容令書を発行して収容いたしましたね。この収容令書ではそもそも、二点聞きたいんですが、そこで氏名とか国籍とかいろいろな要件を書かなければいけないと思うんですが、居住地も国籍も、それから氏名等を記載しなきゃいかぬのですが、これはどう収容令書に記載したのか。

 それから、収容令書を発行する条件として、不法入国罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がなければ収容令書は発行できないわけで、もちろんその疑いがあったから、だから発行したわけですね。この二点、確認したいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、不法入国の容疑でございますが、偽造旅券を所持して本邦に入国したわけでありますので、不法入国罪は、有効な旅券を所持しないで本邦に入国した者が不法入国の容疑ということに入管法上なっております。それで、本件につきましては、三条違反ということで立件して、収容令書の発付がなっております。

 収容令書の段階では、先ほど申し上げたようなことで、本人のパン・シオンというようなことで収容令書が発付されているように記憶しております。

筒井委員 その後に入国審査官の違反審査があって、強制退去のことを決定して、それで本人に強制退去の理由も通知をして、本人からその強制退去に異議がありませんという書面をとっていますね。そのときの署名はどういう名前だったんですか。

 それから、さっきのあれで、収容令書における国籍とか居住地をどう書いてあったかは言わなかった。それも答えてください。

中尾政府参考人 収容令書の点は、ちょっと私じかに当たっていませんので、国籍のところは記憶ございません、申しわけございませんが。

 後の最終的な、口頭審理の放棄の際に本人の方から署名をとって退去強制手続は終了するわけでありますが、そのときはパン・シオン以外の名前を署名しております。(筒井委員「どういう名前」と呼ぶ)それはちょっと申し上げられません。

筒井委員 入国審査官が、不法入国罪を犯したと信じるに相当な理由がある場合には検察官に告発するものとする、告発することを義務づけられておりますね。告発できるとか、しなくてもいいのじゃなくて、この退去強制令を発付した入国審査官は、不法入国罪を犯したと信ずるに足りる理由がある場合には告発する義務があるんじゃないですか。その点はどうですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の入管法六十三条三項には告発に関する規定がございます。ただ、この規定につきましては、解釈上、すべてのものを告発する義務まで課されたものとは解釈されておりません。その範囲内の告発義務として、そこの範囲が規則的な義務とまでは解釈されておりません。

 なお、一般的に私ども入管局では、通常、告発が必要な場合には、刑事訴訟法の規定によりまして入国管理官署が告発を行っているのが実情でございまして、入管法六十三条の三項の規定による告発はほとんどないと承知しております。

筒井委員 本来はもうこの段階に来る前に警察の方に告発するのが当たり前なんで、そうすべきだったと思いますが、少なくともこの時点で告発するのが法的な前提になっている、こう聞いているんです。

 そして、この後、送還に関する規定もいろいろありますが、送還する際の費用とか負担に関する規定もありますが、今回の北京までの送還の費用はどうなっていますか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 これは自費出国でございます。本人らの、みずからの航空券で出国しております。

筒井委員 そうしますと、法務省と外務省職員計六名同行していますが、この費用関係はどうなっていますか。

中尾政府参考人 入国警備官三名については私どもの方が負担しておりますが、外務省の関係は存じ上げません。

筒井委員 当初申し上げましたように、そもそもこの処置自体が正しかったのかどうかということが問題になるわけですが、金正男と思われるからこういう扱いをしたんだろうと思うのですが、それを隠しながら言っているから、いろいろ聞いているんです。

 小泉総理大臣は、今おられませんが、不測の事態が予想されるからと言いましたが、一般人の場合も一々不測の事態を予測しますかね。それはありっこないんです。それから一般人の場合も今度のように総理、法務、外務大臣に報告しますかね。それから一般人の場合も官房、法務、外務、警察庁、これらの幹部が何回も協議しますかね。

 この三つの点、一般人の場合、そんなことないだろう。法務大臣、どうですか。

森山国務大臣 金正男の可能性もあるのではなかろうかという未確認の情報がありましたので、そのような協議を行ったと承知しております。

筒井委員 金正男の可能性があるから、だから、こういう特別の対応をとったわけでしょう。特別対応であるということを認めたらどうですか、そんなのは。みんな一般人、一般人だと言って隠しているからおかしなことになるので、特別な対応をとったことは確かですね。それをもう一回、法務大臣。

森山国務大臣 今申し上げましたような、関係担当者が協議をしたということは、先ほど申し上げたように、未確認情報で、そのような可能性があるかもしれないということだったものですからとった措置でございますが、一般人の場合とおっしゃいますが、そのケースによっていろいろございますので、何とも、そこの点はお答えのしようがございません。(筒井委員「最後、何とおっしゃいましたか」と呼ぶ)一般人とおっしゃいましても、いろいろございますので、それぞれ対応が違うかと思います。

筒井委員 もう一回だけ確認しますが、要するに、そんなことはありっこないでしょう、不測の事態を予測して、各官庁がみんな集まって、総理大臣や大臣まで報告するなんということが。今度はそういう特別な場合だから特別な対応処置をとったんでしょう。そのことだけ認めてくれればいいんですよ。何で抵抗するんですか。

森山国務大臣 いや、別に抵抗しているわけではございませんで、申し上げておりますとおり、いろいろ配慮しなければならないことになるのかもしれないと思いまして、協議をしたのでございます。

筒井委員 田中外務大臣にもお聞きをしようかと思いましたが、我が新潟県で久方ぶりに出た大臣でございまして、ぜひ、外務省の改革とか、それから外交の改革、これには全力を挙げていただきたいというふうに思います。

 ただ、どうも外交の改革に関しては、外務大臣が就任したあたりまでに、中国や韓国が怒らざるを得ないようなことが五つ立て続けに起こりました。さっきの李登輝ビザ問題もそうですし、それから歴史教科書の問題もそうですし、集団的自衛権、セーフガード、靖国神社の参拝問題、いずれも、アジア諸国を怒らせる行為を日本としてはやったわけでございまして、これについて、当初、歴史教科書問題や李登輝問題について外務大臣が主張した点の方に私は賛成でございます。しかし、その後それが変わった。今は何かあいまいになったりあるいは言い方が変わってしまった。これが、やはり私としてはもとに戻っていただきたいというふうに思う点が一点。

 それからもう一点は、外務省の改革の問題ですが、やはり外務省の官僚の官僚主義とか事なかれ主義とか、それから外交の継続性という名前の改革否定の姿勢、これをやはり変えなきゃいかぬ。機密費の上納問題に関してもそうですが、それらに関しても、田中大臣は当初言っていたことをその後あいまいにしたり撤回したり、変えている。この点でもやはりまたもとに戻ってほしい。

 外務省の今の官僚体制、事なかれ主義、これを改革するためには、ある意味で革命なので、革命には間違いも行き過ぎもつきものなんだから、それにしてもちょっと間違いが多いんだけれども、だから、そういうことをやったとしても、ある程度自信を持ってやっていただきたい。だけれども、それがどうも最近、当初の姿勢があいまいになって、わかりにくくなっている。私は、その典型がこの金正男の、事なかれ主義、これは外務省の体質そのものに外務大臣自体がなっている、こう言わざるを得ないと思うんですが、最後にそれらの点について外務大臣にお聞きします。

田中国務大臣 同じ越後の者として、ヒとシの発音が違っているところを懐かしく伺いました。

 それとはまた別問題としまして、先ほどおっしゃった五つの点、それらがどのように今評価されているかというのは、それぞれ視点によって違うと思いますからコメントはいたしませんけれども、それは前の内閣のときに起こったことで、そのときは私も、先生方と同じように、一般の国民の皆様と同じように、メディアを通じてしか知る由もありませんでしたし、それから大臣になってみましたら、随分とメディアが、例えば先ほどのオリンピックの話もそうですけれども、一元化して言ったにもかかわらず、ほかの会社が同じように報道しても、一社だけが違ったように、故意かどうかは存じませんが、報道することもある。

 それから、やはり閣内に入りますといろいろな情報がほかの省庁からも入ってきますので、そういうことで情報量がふえますから、いろいろと判断する材料がふえるということもあります。メディアからの情報もありますが、同時にほかの省庁やらいろいろな説明もふえますので。

 ですから、それは、やはり私たちが一議員で、普通の市井の人間でいたときとそれからまたバッジをつけたときと違うように、議員になったら情報がふえると同じように、国務大臣になりますと、また少し、やはり情報も違ってきますので。ですから、そういうふうなことであって、決して大きくぶれているとかそういうことではありませんので、まだ不勉強ではございますけれども、今後をしっかりと見守って温かく育てていただきたいし、適切な御助言を期待いたします。

 ありがとうございます。

筒井委員 今のお答えは、国会議員時代に情報は少なかったけれども、大臣になったら情報が多くなったので変わったんだという正当化づけなんですが、これじゃ正当化づけできないと思うんですよね。要するに、以前勉強していなかったから、その点はよく勉強したら今度考えが変わったんだ、こういうことを今答えられたと思うんですよね。もちろん温かく見守っているつもりなんですが、じゃ、間違ったということを認めたらどうですか。以前とは違うことを言ったのなら、あのときに言ったことは間違いだった、今度はよく勉強したらこうだったと、その点も明確に認められたらどうですかね。

田中国務大臣 とにかく、勉強することによっていろいろと知識もふえてきますし、成長にこれがつながるように努力をいたします。

筒井委員 もう時間もあれですので、経済財政問題についての質問に移ります。

 柳澤金融大臣にぜひお聞きをしたいんですが、ペイオフの解禁問題、これも先ほど小林議員から意見が出されておりましたが、私はあれには余り賛成じゃありません。預金保険の一千万円を限度とするこのペイオフを、一たん、二〇〇一年四月から、ことしの四月から解禁をする、そういうふうに決定した、これは政府の約束であり、公約である、こう思うんですよね。それをその後、つまり一昨年の十二月になって一年間延期をした。つまり、政府の約束を破った、公約違反、これは完全な間違いの政策だ、政府の間違いだった、こう思うんですが、どうでしょうか。

柳澤国務大臣 簡単、簡潔にお答えしますが、一九九九年の四月から、信用組合がこれまでの都道府県の所轄から国の所轄に変更されたわけでございます。ですから、その検査が終わり、そして、問題になった各金融機関、信用組合等がちゃんと善後措置をとってペイオフに備える体制ができるという時間的な余裕は、どうしても必要なわけです。

 当初の考え方では、金融庁はこれに間に合わすべくやろうと思ったのでございますけれども、いろいろ推移を見ますと、やはりそれはかなり難しいことだということがわかりまして、一年延長いたしたわけでございます。

 結果において、私は、その方が事務がスムーズに流れたということで、やむを得なかった措置である、このように評価しています。

筒井委員 これは、政府は約束を破ったから、政府に対する国民の信頼感をなくしてしまうし、それだけではなくて、日本の経済の再建、財政の再建、これもおくらせてしまった。まさに全く間違いの政策だった。しかも、こういうことを最近政府は幾つも積み重ねている。

 例えば、これも同僚議員が聞きましたが、医療改革、これについても、二〇〇〇年までに必ず抜本改革やる、こうあれほど何回も、小泉総理が厚生大臣時代を含めて何回も約束していたのに、これも約束を破って先送りされてしまった。それから、これも先ほど出ましたが、証券税制の源泉分離課税、これに関してもそういうことがありました。それから、農業者年金や国民年金に関しても、当初約束していた支給をその後カットいたしました。特に農業者年金の場合には、既裁定者に関してまでも約束を破ってカットした。

 こういう、政府が一たんした約束を破って、そして別なことをする、これは政府に対する信頼を全くなくしてしまう。これから、何か政府が絶対これはこうやりますから大丈夫ですと言ったところで、全然国民から信用されないし、説得力もなくなってしまう。しかも、このペイオフの解禁に関しては、財政状況、金融の再生問題、これにも直接大きな影響を与える問題だから特に強調しているんですが、竹中大臣、どうでしょうか。

竹中国務大臣 ペイオフ解禁の延期等々に象徴されるような、政府が一たん約束したことを延期するというのは、これはやはり政府のクレディビリティーといいますか信用を損ねるという意味では大変残念なことだと思います。

 そういうことがやはり絶対起こらないような経済運営をぜひしていかなければいけない、これはもう御指摘のとおりだと思います。

筒井委員 竹中大臣は就任直前に、経済再生がこのペイオフ延期でさらに遠のいた、内外から日本の政治姿勢に対する露骨な不信を招いている、二%成長軌道への復帰がペイオフ延期でさらに一、二年おくれた、先延ばしによって失われるGDPは十五兆円だ、この景気回復のおくれと金融再生先送りによる破綻コスト拡大によって財政再建も大幅におくれると。

 私はそれは賛成なんですが、ペイオフ延期によるコストというのは物すごく大きいわけですよ。こういうことを政府は反省しなければ、こんなことをずっと繰り返して反省していなかったら、またこういうことを繰り返しちゃうんですよ。だけれども、柳澤金融大臣は、私は人間的には尊敬しているんですが、全くこの問題に関しては反省も何もない。それを逆に正当化している。きょうも正当化していましたが、この前のときも正当化していた。今の竹中大臣の言っていることと正反対のことを言っている。

 もう一度聞きますが、どうですか、これは間違いだったんですか、それとも正しかったんですか。

柳澤国務大臣 先ほど、私、一九九九年と申しましたけれども、漢字を間違えまして、二〇〇〇年の四月から所管が移ったということでございます。訂正させていただきます。おわびを申し上げます。

 それがどうだったのかというおっしゃられ方なんですけれども、やはりこれは制度的な基礎が変更されたということが一つ加わっているという事情をぜひ御賢察賜りたいというふうに存じます。

筒井委員 だから、相変わらず正当化しているので、同じ内閣の中で意見が全然違うわけですよ。

 ペイオフ解禁、まさにこれからも大きな問題になるわけでございまして、今この点ではみんな一致していると思いますが、金融再生をいかに果たすか、不良債権をいかに処理するか、金融問題が物すごい今の景気の焦点になっているんですよ。この中で大臣間で意見が違う。しかもペイオフ解禁延期ということに関して全く一方は正当化して、一方は明白に間違いだと言っている。これはやはりこのまま済ますわけにはいかないんじゃないですかね。

 竹中さん、もう一度ペイオフ解禁延期について。

竹中国務大臣 私は学者として随分いろいろなことを批判してまいりましたから、ペイオフだけではなくて、そういうことを挙げたら、多分三百、四百ぐらい挙がるのではないかというふうに思います。

 詳しく言いますけれども、ちょっと直前の発言という御指摘があったと思いますけれども、それは多分一年以上前の何か論文ではないかというふうに記憶していますけれども、学者としてそういう判断をしていたということは、これはもう私は別に特に反省もしておりません。

 現実には、しかし、両方、先ほどちょっと田中大臣の方からお話がありましたけれども、学者としての情報のセットと大臣としての情報のセット、特に担当大臣の情報のセットが違うでしょうから、その意味での見解の相違というのはあり得るのだと思います。

 繰り返しますけれども、今の時点で私は、私と柳澤大臣との間で特に現状認識や政策評価についての違いはないというふうに思います。

筒井委員 今のはおかしな発言で、では、学者時代の発言は余り責任持たないけれども、これからの問題なんだと。だけれども、政治家だって自分が過去において発言したものはちゃんと責任持たなきゃいかぬのですよ。それは学者だって一緒なんですよ。

 今度竹中さんが大臣になってもらった。これについて小泉総理はこの予算委員会でこう発言していますね。「竹中教授の今までの発言、提言なりがこれから二十一世紀の日本に必要だと思って大臣に就任をしていただいた」。今までの提言とか発言とか、これを生かしてもらいたいから大臣になってもらったと言っているわけで、しかも竹中さんは、先ほど私が読み上げた、ペイオフ解禁延期がいかに日本経済と日本の政治に悪影響を与えたか、完全な間違いである、こういうふうに主張されているのは今も正しいと思っているんでしょう。

竹中国務大臣 まさに今ちょっと御引用いただいた小泉総理の答弁の中にあったと思いますけれども、私は、自分の判断は正しかったと思っております。ぜひともそういったことが起こらないような運営を党としてやっていきたい、そうすべきだというふうに総理もみずからそのときおっしゃったというふうに思います。

筒井委員 だから、そこで全く正反対じゃないですか、柳澤大臣。ペイオフ解禁を正当化している。それでもって何か余り問題が起こらないとすれば、これは何か表面を糊塗しているだけですよ。

 さらに、竹中大臣は、ペイオフ解禁の延期どころじゃなくて前倒しもすべきだというふうにも言っているんですが、その点に関して柳澤さんはどうですか。

柳澤国務大臣 要するに、民間の金融機関といえども破綻をしたらみずからの関係者の中でそれぞれ損失を分担する、これは大原則でございます。それを一時、日本の一つの金融機関が破綻をするとかなんとかじゃなくて、そういう金融機関がつくり上げるシステムが危機に瀕したわけです。ですから、破綻したからその金融機関の関係者のみで責任をとりなさい、損失を分担しなさいということを言うことが、そういうことを貫くことができなかったわけです。

 そこで、ペイオフを凍結して、金融再生法その他で、もし破綻をした金融機関があればそれは全額国民の税金でもって損失の補てんをしましょう、こういう体制ができたということでございまして、このような体制は、私は、本当に臨時、危機に臨んでの措置であるし、異例であるし、これはもうできるだけ早くこれを脱却しなければならない、こういう考え方であります。

筒井委員 今のは答えになっていないかと思いますが、同じことばかり聞いていたってしようがないので。

 これからの経済対策の問題で、私もペイオフは延期どころか前倒しすべきだと思うし、それから、つぶれるべき企業や銀行は、取引先とか従業員に対する対策を明確に打った上でしっかりつぶす、こういう政策が必要だろうというふうに思っております。だから、そのためには、不良債権処理の方式が、私的整理による債権放棄が中心ではなくて、原則はやはり法的整理、本当に債権が確実性があるものは例外的に私的整理による債権放棄だというふうに考えております。

 まず、竹中大臣、今言った三点、ペイオフの前倒しをできたらやった方がいいんだ、それから、つぶれるべき企業や銀行は取引先や従業員の対策をしっかりとった上でしっかりつぶす、これが二つ目、そして三つ目は、だから償却は私的整理による債権放棄を原則とするんじゃなくて法的整理を原則とするんだ、この三つの考え方についてはどう考えられますか。

竹中国務大臣 基本的には、その金融機関が今後の状況下で生き延びられるかどうか、バイアブルかどうかというふうに言いますけれども、バイアブルかノンバイアブルかということをはっきりさせて、その一つのチェックメカニズムがやはりペイオフのシステムになるわけですけれども、それをどのようにシステムの中に組み込んでいくかということに尽きているんだと思います。

 今後、具体的な対策を今の新しい状況下でどのようにしていくかということは、まさにその骨太の方針等々で今議論を詰めつつありますので、その過程では当然のことながら担当の柳澤大臣とも議論を深めて、その一つのはっきりとした見通しなりシナリオというのを、これもぜひ責任を持って示したいというふうに思っています。

 その中で、私的か法的整理かというのは、私の認識では、これはどちらがいいかという問題ではないと思います。先ほど申し上げましたように、ノンバイアブルかバイアブルかということがマーケットの中ではっきりとモニタリングを通して判断されて、結果として不良債権が着実に減っていくいうことが大事なのであって、その過程でバイアブルがいいかノンバイアブルがいいかというのは、これは基本的には当事者が責任を持って判断して、ただし結果には責任を負う、そういう形になっていくべきだと思います。

筒井委員 そうすると、不良債権償却の方式、直接償却の方式は法的整理が原則であるとか私的整理が原則であるとか、どっちが例外であるとか、そういうことは言えないという今の答弁ですか。

竹中国務大臣 どちらがよいかは一概には言えません。

筒井委員 ちょっと直接はあれかもしれませんが、石原大臣はどう考えられますか。

石原国務大臣 筒井委員にお答え申し上げます。

 本当に、一九九〇年ごろ政治改革を一緒に議論していたことが非常に懐かしく思いますが、今も筒井委員の議論を聞かせていただきまして、相通ずる部分が多々あったと思います。

 そんな観点でこのお話をさせていただきますと、私はやはり、私的整理、公的整理、そしてもう一つの方法と三つあるわけでございますけれども、私的整理と言われるいわゆる損切りがその都度その都度、ゼネコンで二兆二千億円の債権放棄を行いましたけれども、完全な損切りになっていない。ここに私的整理の問題点がある。荷物がちょっと軽くなっただけで、本当はもっとその企業が傷んでいるというようなこともあったような気がいたします。

 こういうことを考えて、どのケースがその企業が生き残れるのか、また、どの企業が生き残ることができないのかということをはっきりするということが重要なのではないか、また、そういうことを筒井委員はおっしゃりたいんじゃないかというようなことを、今議論を聞かせていただいていて感じたところでございます。

 担当ではございませんので、この辺で御勘弁をいただければと思います。

筒井委員 その点では、柳澤金融大臣はどう考えておられますか。

柳澤国務大臣 定性的には、私、いつか申したように、片っ方は法律制度なんです。これはもう、万人に基本的に行き渡るという制度としてしつらえられているわけでありますから、当然、定性的には法律でもっていろいろ処理していくということが基本であるということは、もうこれは言うをまたないわけでございます。

 しかし、世の中は、そういう法律がかぶってくる前に、その関係の民間の人たちで知恵を出し合って、別途の行き方をしようじゃないか、そういう動き、これをすべて、大体私的自治の世界でございましょうから、そういうようなものを全否定するというのはやはりおかしい。それは例外的に、もっといい、公正で透明なものでなければなりませんけれども、そういうものとして相談をして、ある再建の方法を考えようというものについてはこれをやはり認めるべきだ、こういうように私は考えるわけでありまして、本当に抽象論を言えば、それは法的整理が原則で私的整理は例外だ、こういうことになるんです。

 ただ、ここであえてもう一つだけちょっとつけ加えさせていただきますと、私はこのごろつくづく考えているわけですが、日本の金融というのは要するにコーポレートファイナンスで行われている。アメリカなぞはプロジェクトファイナンスで行われている。そうすると、これがもう本当に債権ごとに切り分けられて、この債権はもう、まさに先ほど竹中先生がお使いになった言葉で申し上げれば、バイアブルでなくなったねということで、これを整理してしまう。しかし、本体の、本来の事業は、これはもう堂々とこれまで同様に生き残っていく。そういうようなシステムの違いがあるわけでございまして、今我々が直面しているものは、コーポレートファイナンスであるけれども、ちょっとあえて言うと、事後的なプロジェクトファイナンス化というような知恵があり得ないのかという問題に直面しているんだということをひとつ御理解賜れればと思います。

筒井委員 今、抽象的だという条件つきながら、法的整理が原則で、例外が私的整理だと。私、それでいいと思っているんです。もちろん、原則の問題ですから、抽象的なんです。具体的には、本当に私的整理で再建が確実な場合も中にはあるわけでございまして、私も弁護士として一件それをやって、逆に銀行の方から法的整理でやれと言われたことがあるぐらいですから。それはそういう場合があるし、例えばその場合は、カナダに進出したこと、それが唯一失敗の原因で、国内的には黒字だったから、これは再建がちゃんとできるんだ、だから私的整理でやるという方向で私は主張したわけですが、それは銀行がまた、そうじゃないとだめだというふうに言われたんです。だから、私はそれでいいんです。

 ただ、今までの柳澤さんの答弁を聞いていますと、ゼネコンやなんかの場合もみんなもう私的整理で、下請企業がいっぱいいるから、だから私的整理だ、私的整理だ、これを強調されているから、何か原則私的整理でという判断なのかなというふうにこっちは判断したんですが、それは誤解だったんですね。

柳澤国務大臣 要するに、私的整理が、これまでやられたのは非常に不透明だ、本当の意味でバイアブルなものだけしか残さないという形になってないじゃないかというようなことで、世間からも余り高く評価されない。こういうものを、不良債権の処理のためには、もっと透明性で本当にバイアブルな部分だけ残るようなルールというものをつくってやっていくという考え方があるのではないか、こういう問題提起を私はこの一月からさせていただいたわけであります。

 したがって、勢い説明はそういうものを説明する機会が多かったということでありまして、私は、その場合でも注意深く、三つの整理の仕方があるんです、法的整理、私的整理、それからまた売却もあるんですというようなことは何回も、これは誤解が起きないようにやってきたつもりなんですが、非常に話が、言葉がどうしてもそっちが多くなりました関係で、若干誤解を招いたとすれば私の不徳だと言わざるを得ないと思います。

筒井委員 わかりました。

 それと、竹中さんの方にもお聞きしますが、七〇年代、石油危機があった。しかし、このときは日本は世界にいち早く経済の再生をして、早く対応した。しかし、九〇年代は世界的に見ても最も対応がおくれた。この日本経済の対応の違いが、七〇年代と九〇年代で正反対の結果が出たのはなぜだというふうにお考えになりますか。

竹中国務大臣 期末試験のレポートのタイトルには非常にいいような試験問題をいただいて、これは大変難しい問題だと思います。

 少なくとも、専門家の間でこうだというふうなはっきりとした見解はないというふうに認識していますけれども、幾つかの要因を挙げるとすれば、日本は非常に強い大きな外的なショックに、そのときでいえば石油の相対価格は一気に四倍になった、そういう外から与えられた相対価格の変化には企業を挙げて見事に対応するわけでありますけれども、今回の場合、そういった意味での外的な変化というのが目に見えない形で、資産デフレという形でじわじわとやってきたという点が、私は一番対応がおくれた大きな要因ではなかったかと思います。

 特に、九〇年代前半の政府経済見通しが現実をかけ離れて高く見積もっていたということ、それをジャーナリズムが特に問題にしていなかったということ等々に象徴されるように、やはり資産デフレに対する見方が社会で成熟していなくて、対応がおくれてしまったというのが一つの対応。

 もう一つの対応は、新しい、マーケットがどんどん拡大して、同時にIT革命が進んで、非常に世界全体のマーケットが、ハイリスク・ハイリターン、リスクをいかにとれるかというような状況になってきたのに対して、日本は常に、いわゆる右肩上がりといいますか、経済的には高い成長が常に見込まれて、そんなにリスクとリターンに対する社会的トレーニング、これは企業も個人もでありますけれども、そういう問題に対して対応ができていなかった。その二点が結果的には大きかったのではないかというふうに思います。

 もちろん、それに対する政策の対応が部分的におくれたということも、これはあったというふうに思います。

筒井委員 日本企業、大企業を含めて、経営者層が高齢化して改革に対する対応ができなくなってしまった、この点が大きな理由だというふうには考えませんか。

竹中国務大臣 恐らく私の何かの発言を先生は引用しておられるんだろうと思いますが、確かにそういう発言をしたことがあります。現実に、幾つかの大会社では、さまざまな不祥事によって取締役以上が一気にかわってしまったところがある。そういうところというのは確かに業績がよくなっているわけで、いろいろな意味での、マーケットの見方、技術の体系が変わった中で、そういう世代的な問題というのも確かに一部にはあったと思います。

筒井委員 それと一緒にぜひお聞きしたいのですが、日本は、そういうふうに七〇年代に物すごい対応をしたし、それから技術とか人材も決して他国にまさらずとも劣らずのものを擁しているというふうに思うのですが、IT革命がこれほどおくれてしまった理由。アメリカにおくれたことはもちろん、シンガポールとか韓国、台湾、発展途上国に対してまでおくれてしまった。この理由はどこにあるというふうにお考えになりますか。

竹中国務大臣 二点大きくあると思います。

 一つは、インフラの整備、特に高速のインターネットインフラの整備がおくれてしまったという点でありますけれども、これは、実は日本には、御指摘のように技術があるわけですね。光ファイバーの技術は世界一である。投資する資金も日本は世界一持っている。技術とお金がある国で、なぜ御指摘のようにアジアの発展途上国よりおくれたのか。私は、これは一つには、やはり競争政策、この部門での競争政策がおくれてしまったという点が非常に大きかったというふうに認識します。

 もう一つの大きな要因は、これは私は、やはり国民の側にあるのだと思います。これだけ所得が高くて教育水準が高いにもかかわらず、インターネットの利用人口というのは、これはちょっと古い去年の数字ですけれども、韓国を下回っている。これは、やはり国民の側で、新しい時代に前向きに対応するという姿勢がどこか欠けていた。これは、私を含めて、日本人一人一人が反省すべき点だと思います。

筒井委員 どうも竹中さんは、学者時代と今と全く違うことを言われますね。今のIT革命がおくれた最大の理由としては、学者時代においては、情報通信省庁、この機構が問題だったのだ、そのために情報インフラの整備がおくれたのだと、それを唯一最大の原因として挙げていたのじゃないですか。

竹中国務大臣 きょうは専門分野でたくさん質問をしていただいて大変うれしいのでありますけれども、ちょっとそれは何の引用かは知りませんけれども、それを唯一最大の理由とした覚えは私は全くありません。

 それは多分、競争政策がおくれてしまった、競争政策がおくれた理由の一つとして省庁の問題があったと。恐らく一九九〇年代の後半に、少なくともアジアの発展途上国ではほとんど、情報省ないしはそれに類する特別の部局をつくっていると思いますし、監視する体制についても非常にはっきりしたものをつくっている。

 私は、先ほど言ったように、ぜひこれはお願いしたいのですけれども、学者時代と全く違ったことを言われるというと、私としては大変、後々のことを考えると困ってしまいますので、これはちょっとぜひ訂正させていただきたいので、繰り返します。競争政策がやはり問題で、その一つの要因としてそういった意味での体制、政策の体制があったというふうには思います。

筒井委員 ほかのところでIT革命がなぜおくれたか、理由を言っていればまた別ですが、幾つかの場所で私の確認したところでは、まさに省庁の問題、これを言っている。それで省庁再々編が必要だと。現在の省庁再編、この前行われましたが、あんなのは単なる省庁の合併にすぎない、もう一度省庁再々編が必要なんだ、この省庁が、通信情報省庁に関していえば情報インフラの整備を、競争政策を全然進めなかったから、だから日本はおくれたのだ、こう主張していたのじゃないですか。

竹中国務大臣 私は、省庁の再編、再々編というのは常に継続的に議論する問題だと思います。一月六日に中央省庁が再編になったその日から、私は次の省庁再編を議論すべきだという趣旨のことは確かに申し上げています。今でもそう思っています。特に今回の問題では、やはり幾つかの問題が残されている。

 もう一つ、私が再編が必要だということを申し上げたのは、多分合併云々という、合併はしたけれども再編はしていないというどこかでの発言を先生は引用しておられるのだと思いますけれども、これは、アメリカの金融機関等々で、合併したことによっていかに共通部門を削減していくか、ないしは強いところを強めて弱いところを弱めるという戦略的MアンドAを行っていくか、そういう戦略が重要なのであって、まさに一月六日の省庁再編は新しい出発であるというふうに申し上げたのだと思いますし、その意味での思いは今も非常に強く持っております。

筒井委員 政治家になったらなかなか、丸く言わざるを得ないことはある程度わかりますけれども、情報通信省庁に関しては、三権分立が全然ないのはこの世界じゅうで日本だけだ、これほど日本はおくれているのだ、これがIT革命が開発途上国よりもおくれた最大の原因だ、こう主張しておられたのじゃないですか。もう一回だけその点をお聞きします。

竹中国務大臣 競争政策を促進するためにチェック・アンド・バランスが必要だというのは、私は当然今でも思っております。これは、IT戦略本部でこの点を含めて新しいチェック・アンド・バランスの仕組みをいかにつくっていくかというのは、ゼロベースから議論するということで基本的には合意をしておりますので、恐らく今年度の後半の一つの大きなIT戦略本部のテーマになるというふうに考えています。

筒井委員 最後に、もう時間が来ましたから、石原大臣に、省庁再々編についてはどう考えられるか。今特殊法人等で一生懸命頑張っておられるようで、ぜひそれは頑張っていただきたいと思いますが、もっと広い意味の省庁再々編についてどう考えられるか、考えをお聞かせいただきたいと思います。

野呂田委員長 石原大臣。

 時間が経過しておりますので、簡潔に願います。

石原国務大臣 簡潔にお話しさせていただきます。

 竹中大臣が御答弁されましたので重複は避けますが、行政改革の始まりにすぎないと思っておりますし、今後も、行政のあり方すべてをゼロから見直して、またその中で特殊法人、公益法人あるいは公務員制度等の改革を進めていかなければならない、こんなふうに考えております。

片山国務大臣 お尋ねはありませんが、ずっと委員のお話を聞いておりましたので。

 私は今、旧郵政省、総務省の責任者として申し上げますが、なるほど言われるように、企画立案と規制監督と監視、これを三権分立と言われたと思いますけれども、アメリカは御承知のFCCというのがあるのですよ。FCCはありますが、これは全部同じところでやっているのです。ただ、あれは合議制の執行機関で、私どもの方は議院内閣制で独任のちゃんとした責任大臣の仕組みでやる、こういうことでございまして、ヨーロッパも調べていただければわかりますけれども、その三つの機能をどうやってうまくやっていくかということが勝負なので、仕組みの問題じゃございませんので。

 まだ言いたいことはたくさんありますが、時間がありませんからやめます。

筒井委員 こっちも言いたいことはいっぱいありますが、やめます。

野呂田委員長 これにて筒井君の質疑は終了いたしました。

 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 先週水曜、金曜と、塩川財務大臣に新しい内閣の財政運営のあり方ということをずっとお尋ねをしてまいりまして、きょうも、先週お聞きをしたことで明らかになったことに沿って、今後の財政運営のあり方についてお伺いをしたいというふうに考えます。

 それで、先週の金曜日に財務大臣にお聞かせをいただきまして、来年、再来年度は国債発行は三十兆円以内に抑制をするのだ、三年目には景気が回復をしているだろうから、そこから税制その他を見直してプライマリーバランスの回復に着手をしていくということでよろしかったですね。

 それで、ここで何で財政赤字を削減すると三年目からぽんと景気がよくなるかということについて、そのことについても私はまだいまだに納得できないのですが、それはさておいても、来年、国債発行額を三十兆円以内に抑えるということで、総理は参議院の予算委員会で、社会保障系関係、地方へ行くお金、公共事業という、三つ挙げていらっしゃいましたね。それで、いきなり社会保障は減らせないというふうに総理はおっしゃっていて、聖域なき構造改革という話だったのだけれども、いきなり社会保障は聖域なのかなというふうなイメージを私は持ったのですが、この部分に手をつけないで、どういうふうに三十兆円以内に国債発行、新発債を抑えるのかということについて、やはりこれは明らかになっていないのだろうなというふうに思うのですね。

 社会保障は、財務省が予算と一緒にお出しになっている「財政の中期展望」というのがございますよね、あれを見ても、もう毎年兆円単位で伸びていくわけです。だから、そういった兆円単位で伸びていくものについて、まずは減らせない、減らせないというか、減らす云々は別にしても、改革はしないということになってしまうと、これは本当に三十兆円以内に新発債を抑えるというのはできるのかなというふうに思うわけです。

 十四年度は、この「財政の中期展望」によれば、補正予算を編成しなくても三・三兆円の予算削減はしなきゃいけないということになっていますよね、三十兆円以内に抑えるということだと。その「財政の中期展望」の前提自体が、名目成長率二%ということを見込んでいるわけですね。そうすると、本年の経済成長見通しが一・七なわけですから、もう既に二%ということ自体、かえって赤字のギャップというのは大きくならざるを得ないということが明らかになっているわけなんです。だから、来年度の国債を三十兆円以内に抑えるということ自体、もう破綻をしかけているのではないのかというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

塩川国務大臣 それは私たちも、概略的に見ましたら、今おっしゃるようなそういう傾向を感じることもございますけれども、しかし、今ここで国債を増発して予算のつじつまを合わすということ、それは簡単なことではございましょうけれども、しかし、それはもう避けて、この際厳しい措置をとらざるを得ない。

 そこで、三十兆円に設定いたしましたけれども、一つは、行政経費の見直しというものは今すぐに深刻に取り組んでいかなきゃならないんじゃないでしょうか。しかも、ここ数年、行政経費の単価を見ましたら、全然変わっておりません。しかし、一方では、この五、六年の間に物価は相当変わってきておりますので、そういう意味から、行政経費は相当削れていくということを見ております。

 それからもう一つは、地方財政を概観しました場合にも、基準財政需要額のあり方というものについて、おおよその方々は皆そう感じておられると思うのでございますけれども、ここにもう少し基準財政需要額を絞ってもらって、地方行政の有効な予算執行をやってもらいたい、こう思うのであります。

 それからもう一つは、いろいろな行政全般について言えることでございますけれども、その中でも、社会保障につきましても案分の方法はいろいろあるだろう、確かに、自然増が非常に大きいから、それをカバーしてなおかつ三十兆円に抑えるということは非常に難しいことではございますけれども、私は、この際に、社会保障関係についても、一部見直すものは見直してもらいたい、それはやはり公平中正の原則に基づいて見直してもらいたい、それは経費の節減の一環としてやっていきたい、こう思っております。

中塚委員 別に国債を増発しろと言っているわけじゃないんですよ。三十兆円ということをいきなり天井、シーリングをはめてしまうということについて、ちゃんとお考えになった上でおやりになっているのかどうかということをお伺いしているのであって、何も国債をどんどん出せばいいなんていうふうに言っているわけではないんです。

 今、社会保障の経費についても一部の削減というふうにおっしゃいましたけれども、それは具体的にはどういうことなんですか。

塩川国務大臣 具体的にこれということはまだ決めておりませんけれども、補助率の見直しなんかはやらざるを得ないものもあるということでございまして、当然増に来るものは負担いたします、しかし、現在までやっておりますいろいろな政策的助成措置等の中で、ある程度これが浸透してきたもの、あるいは他の行政と比べてまだ余裕のあるような分野に対しましては、見直していって削減をしたいと思っております。

中塚委員 今、だから、図らずもおっしゃいましたけれども、具体的にはというお話がありましたが、やはりその具体的なところがないから三十兆円という目標が大丈夫なのかというお尋ねをしておるわけです。

 さっき、地方の財源の話もお触れになりましたけれども、今、地方交付税と地方の財政の需要額のギャップというのは、交付税特会で半分借入金を起こして、半分は、その半分ずつを国と地方で折半をして、赤字国債、赤字地方債を発行することになっていますよね。これが来年からは、特会の借入金はなしに、国、地方がおのおの全額赤字国債、赤字地方債を出すということになっているから、この「財政の中期展望」の地方交付税のところだって、もう十四年度は三兆円近く伸びることになっておりますね。こういうこともあって本当に三十兆円以内におさめられるんですかというお尋ねをしているんですが、本当に交付税を見直すことによって三兆円も削減することはできるんですか。

塩川国務大臣 交付税を削減することによって三十兆ということは私言っておりません。

中塚委員 いや、交付税を削減するということではなくて、要は、折半で出していく赤字というのはもう必ず決まってくるわけですね。「財政の中期展望」を見たって、三兆円の交付税というのがふえることになっていますね。だから、その部分を減らすための方策というのは具体的には何かお考えなんでしょうかというお尋ねなんですが。

塩川国務大臣 それは、具体的に申しておりますのは、基準財政需要額を一兆円ほど減らしてもらって、それに対する地方財政計画を編成してもらう、それに合わせた予算措置を私どもはしていきたい、こういうことです。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

中塚委員 そういった地方財政の話も、景気のことと密接に絡んでくるんだろうと思うのです。

 次に、社会保障の話をちょっとお伺いしたいんですけれども、社会保障は、さっき申し上げたとおり、ほっておいても一兆円近くぼんぼん伸びていくわけですね。ところが、ここで、基礎年金の国庫負担率が三分の一から二分の一に引き上げられるということが今の法律の附則の第二条に書いてあるわけです。この三分の一から二分の一に引き上げるというだけで、二・五兆円ぐらいは要るんでしょうね、本年の予算ベースで考えても。

 こうなってくると、次、坂口大臣にお伺いをしたいんですけれども、大臣はかねてから、二〇〇二年には二分の一に持っていきたいというお話を会見等でされておられましたね。二〇〇二年というと、これはもう実は来年なんですが、来年からの国庫負担率の引き上げというのは、三十兆円内に国債発行を抑えるということが前提になると、もうほとんど無理なんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

塩川国務大臣 それは十分に検討して、ぜひ実現したいと思っております。

坂口国務大臣 財務大臣にぜひ実現したいというふうに言っていただきましたから、私が言う必要ございませんが、社会保障全体で見ましても、やはりこれは聖域ではなくて、あらゆる分野で見直さなければならないだろうというふうに思っています。

 やはり年金につきましても、年金それ自身の見直しということはなかなかできませんが、しかし、事務的な問題、保険料の徴収等につきましては、一元化の問題を何とかできないかというようなことで今検討もいたしておりますし、いろいろな面で削減を私たちも考えていかなければならないというふうに思っております。それから、医療費につきましても、いわゆる高齢者がふえることによって増加する部分、これは私はやむを得ないというふうに思っておりますけれども、それ以外のところにつきましては、やはり見直しを行うということは当然やらなければならないだろうと思っております。

 これらのことを含めながら、先ほど財務大臣が御指摘になりましたようなこともトータルで見て、そして削減すべきところは削減をし、そしてやはりふやさなければならないところはふやしていくということにしなければならない。全体としては、御指摘のように、厳しい状況になってきていることは私も認めますけれども、しかし、その中でどうこれを実現していくかということを最後までやはり模索しなければならないと思っております。

中塚委員 難しい状況になっているとか、財務大臣、頑張りますみたいなことをおっしゃいますけれども、来年から国庫負担上げて、そうすると二・五兆円ぐらいお金要るわけですね。ただでさえ「財政の中期展望」だと三・三兆円は国債を発行を抑制しなきゃいけないわけです。そうすると、足すと六兆円近くのお金を削らなきゃいけないという話になってくるわけです。そうすると、公共事業はもうほとんど三分の一ぐらいの規模にしなきゃいけないということですよね。

 だから、そういった中で、来年、二〇〇二年度から国庫負担の引き上げというのはもう無理なんじゃないんですかというお尋ねなんですが、厚生労働大臣、いかがでございましょう。

坂口国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたとおり、トータルで考えなければならない問題でありまして、社会保障全体の中で見ながら、そして節減できるところは節減をして、その中で一体可能なのかどうかということを探る以外にない、そう思っております。

中塚委員 二〇〇二年というのは、もうだからほとんど実質的に国庫負担率上げというのは無理なんですね。二〇〇二年でなくても、法律の附則自体は二〇〇四年ということになっておるわけですね、その国庫負担率の上げということは。坂口大臣は、できるだけそれは前倒しするべきだということで、御自身は二〇〇二年からやりたいというふうにお気持ちをおっしゃっておったわけですけれども、小泉内閣になって、それも必然的に拘束をされるような事態になってきているんですねということなんですね。財務大臣、よろしいですか。いかがでしょう。

塩川国務大臣 私は、先ほど厚生大臣がおっしゃっているように、保険制度全体を見直した上で決めるべきであろうと思っております。それは当然でございますけれども、私はできれば、できるだけ早くそれを実現していきたい。国民の強い要望ですから、努力するのは当然じゃないかと思っております。

中塚委員 それは、確かに強い要望であるのは当然ですし、実現をしていくべく努力をするのもこれまた当然のことだと思いますけれども、現実問題、そういうふうに三十兆円という枠を決めちゃえば無理なんでしょうという話をしているわけです。

 それで、ここで附則の方には、国庫負担率を上げるときは安定した財源を確保するという言葉も入っているわけですね。ここで、二〇〇四年までに安定した財源を確保して、そしてそこで国庫負担を二分の一に上げる。二〇〇四年ということが、財務大臣がおっしゃっていた三年目のプライマリーバランスの収支均衡を目指し出すということとぴったり一致しているんです。だから、これは三年後には収支均衡を目指して、そのころには景気もよくなっているだろうから、何でよくなっているかわからないんですが、三年後には景気もよくなっているだろうから、そこで二分の一の引き上げのための新たな税源を見つけてくるということでよろしいんですか、財務大臣。

塩川国務大臣 私はそういう、何といいましょうか、用器画できちっとかいたようなことにいかないと思いますね。ですから、それは確かに目標ではございましょうけれども、例えば来年度において、おっしゃるように、六兆近くの国債の削減をしなきゃなりませんね。ことしの分が落ち込みがございますのと、それで来年は三兆三千億円ふえるのでございますから、合計したら六兆円近くなってまいります。

 これは、しかし、苦しいことはわかりますけれども、他の方法を、先ほど言いましたような行政経費なんて思い切って切れるところは切ってみたらどうだろう。そしてまた、国費だけではなくして、借入金で賄えるもの、あるいは民間資金の導入できるものはやってみたらどうだろう。あるいはまた、めり張りをつけて効率的な予算の配分をしてみたらどうだろう。

 そういうことの努力を一度やってみた上で、私は実現できる方法をとっていきたいと思っておりますが、この数年の間、私は予算の編成でそういう努力はされていなかったと思うのです。今度は、私は、一生懸命それをやってみて、その実現に全力を挙げて取り組んでいきたい、こういう決意です。

中塚委員 だから、書いたようなことにいかないだろうというふうにおっしゃるその一番の原因というのは、三十兆円以内に国債の発行を抑制するということなんでしょう。だから、私はそのお話をしているんであって……。

 それともう一つ、今借入金とおっしゃいましたよね、大臣。借入金というのは、これはどういうことですか。何か隠れ借金をふやすような話なんですか。

塩川国務大臣 隠れ借金ではございませんで、これは公然として出てくる借金でございますが、一部では返済期限等、利率とかいろいろなものを考慮することによって、その分の借入金の活用は十分可能であろうと思っております。

中塚委員 結局、ボンド、債券を発行するんではなくて、借入金によってつじつまを合わせるということで三十兆円以内を達成するということでは、何の意味もないじゃないですか、それだったら。それでは一体何のためのプライマリーバランスの回復とか、三十兆円以内に国債を抑制するということになるんですか。それは絶対おかしいですよ。

 それで、厚生労働大臣に、さっきの財務大臣に対する同じ質問をしますけれども、二〇〇四年までに二分の一の国庫負担上げということになっておりますね。財務大臣は、三年後には収支均衡を目指し出すんだ、そのころ景気もよくなっておる、収支均衡を目指し出すというふうにおっしゃっているのですが、そのときの新たな安定財源ということで、やはり三年目にはそういった財源をちゃんと見つけていくべきだというふうにお考えなんでしょうか。いかがでしょうか。

坂口国務大臣 どういう内容になるかはわかりませんけれども、その財源を見つけ出さなければならないことだけは間違いないと思います。

中塚委員 いずれにしても、今お話しした話というのは、財務大臣が以前おっしゃっていたように、二〇〇四年、三年後までに景気が回復をしていたらという話ですよね。景気が回復をしていなかったときには、そういった税制の問題もいじれないわけでしょう。そうすると、年金の国庫負担上げの財源というのもやはり見つからないということになってしまいますよね。だから、そこで、何で二年間財政赤字を三十兆円以内に抑えることができれば景気がぽんと上がってくるのかということなんです。

 確かに、それは累次の財政出動によって債務残高が積み上がっている、事実でしょう。これは減らしていかなければいかぬというふうに私も思います。でも、ではこれを規制緩和、不良債権処理ということだけで、本当にそれで景気がよくなるのかということですね。それこそ、欧米であれば金融政策ということもあり得るんだとは思いますが、今もう日本銀行はアクセル全開ですね。金融緩和、ずっとやり続けておるわけですね。そういった中で、本当に経済を回復させていくことができるのか。それも二年という短期間ですね。来年、再来年は三十兆円以内に国債発行を抑えるということになると、補正予算すら編成しないということと同じになるんじゃないですか。

 どうやって景気を立て直すおつもりなのか、ちょっとお聞かせいただけませんか。

塩川国務大臣 これは政府の力も大きく作用することは当然でございますが、何としても民間が力を出してくれなければ経済はよくなりません。そのためには、その方向に誘導するということでございまして、民間の活力が、経済が活力を出すためには、やはりそこに規制緩和をするとか、一つの新しい、技術開発をするとか、そういう新しい分野を切り開いていく。これはまさに政治の責任であろうと思いますし、そのために、構造改革なくして景気回復なしというのを小泉総理が言っているのは、まさにそういうところでございます。

 今のお話を聞いておりましたら、ずっとこのまま、現状のままでずっと継続していく中における算用であろう、あるいはまた予算の見通しであろうと思っておりますが、私たちは、ここで思い切って規制緩和等をして経済に刺激を与えて、活性化を図って、そこに景気の回復を見出そうと思って努力しておるのでございまして、その点も御理解いただきたいと思います。

中塚委員 規制緩和も大変結構なことだと思います。どんどんやっていただいたらいいと思いますけれども、では、それが本当にそんなに即効性のある、二年でぽんとできるような規制緩和というのがあるのですかということなんですね。

 もう一つお伺いします。

 プライマリーバランスの収支均衡を図るということですが、三年目から着手するわけですね。何年かけてプライマリーバランスの収支均衡をとるおつもりなのでしょうか。

塩川国務大臣 これは、そんなところまで見通せるようなものを私、才能を持っておりませんけれども、しかし、大体三年後ぐらいからプライマリーバランスをとる努力を始めなければいかぬということを私は申しておる。そこで、その年に均衡がとれるということではございませんで、そこから均衡をとれるように入らなければならないということを言っております。

 一応学者の方々がおっしゃるのは、三年ということは無理だろう、せいぜい五年ぐらいかかるのではなかろうかということは話がございますが、私は、三年、五年では難しい、相当なやはり長い努力が必要であろうということを認識しております。

中塚委員 たしか総理は五年では無理だというふうにおっしゃっていたと思いますよ。

 何で収支均衡を何年かけてとるのかというふうにお尋ねしたかといいますと、その何年かけて収支均衡をとるのかということについて、まさに規制緩和の効果というものがあらわれてくるからなんですね。だから、そんな二年で、短期に効果があらわれる規制緩和というようなことを、あるのだったらそれは大変結構ですけれども、多分ないでしょうが、そういったことをねらうのではなくて、やはりプライマリーバランスを最終的に均衡させるそのときをねらって規制緩和なりなんなりというものは使っていかなきゃいけないわけで、来年、再来年、三十兆円以内に抑えるということは、財政に大変な足かせをはめることになると私は思います。

 そもそも、単年度の赤字を抑制するということ自体にそんなに意味があるのかどうかという問題もあると思うのですね。それよりは、長期間にわたって歳出の削減計画というのをつくる。例えば十年間で国と地方を合わせて一割の削減計画をつくるとか、必要だったらそれを法律にするとか、そういったやり方によって長期的に財政の削減というものを考えていかないと、目先の来年、再来年のことだけで三十兆円以内に財政赤字を抑えるというふうなお話をされていますと、それに財政が縛られて、それこそ橋本内閣のときの二の舞になりかねないというふうに思いますよ。大臣、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 それはおっしゃるように、長い計画でやる方が楽でありましょう。それはそうだろうと思いますが、しかし、何かのきっかけをつくらなきゃならない、一つの節度の踏み出しをしなきゃならぬ、その意味において、来年は三十兆円に絞ったという意味であります。

中塚委員 いや、だから、長い計画でいく方がいいだろうというふうにおっしゃいますけれども、実際、プライマリーバランスで、着手するのじゃなくて、最終的に収支均衡をとるときまでは長い時間がかかるのでしょうということを私は申し上げているのです。

 時間が来たので、終わります。

野呂田委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 小泉内閣は、構造改革を当面の最大の柱だと。それで、その中心として不良債権の最終処理というのを掲げておられます。しかし、これを実行すると、大量の倒産、失業が出てくるのではないか、それが下降局面に入っている景気を一層後退させて、大変な事態をもたらすことになるのではないかという不安が国民の中に広がっております。きょうはこの点についてただしたいと思います。

 まず、平沼経済産業大臣にお聞きしたいのですが、中小企業は、企業の数でいいますと九九・七%、雇用の七割、大変重要な比率を占めていまして、地域経済をいわば底辺で支えている大変大きな役割を果たしていると思いますが、この中小企業の役割について、大臣としてどのように認識をされているか、端的にお答えをいただきたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 委員御指摘のように、今日本では企業が四百八十五万社と言われておりますけれども、そのうち中小企業というものが四百八十四万社でございまして、御指摘のとおり九九・七%でございますし、また、どれだけの従業員を雇っているかといいますと、これも御指摘のとおり七〇%です。

 したがいまして、この経済大国、経済立国のいわゆる経済の基盤を支えている、これがまさに中小企業の役割だ、このように思っておりますし、また、その中小企業は、中小企業基本法にもうたってありますとおり、やはり日本の経済の、いろいろ就業の機会でございますとか、あるいは経済の拡大、そういった面で中枢的な役割を担っている、このように認識しております。

佐々木(憲)委員 この大事な、中心的な役割を担っている中小企業が、今回の不良債権の処理でどうなっていくのかという問題がございます。

 塩川財務大臣にお尋ねしようと思ったのですが、ちょっと今、突然いらっしゃらないんですが。

 では、竹中経済財政大臣にお聞きをしたいんですけれども、四月二十七日の記者会見で、中小企業について問われまして、「日本の中小企業の中では、世界に冠たる中小企業がたくさんある」とおっしゃいながら、「ただ、一部のいわゆる非効率な中小企業が残されているということも事実ですから、その部分の効率性が高まるような措置というのは、これはある程度はとらなきゃいけない問題だと思います。」と述べておられますね。

 そこでお聞きしたいんですけれども、あなたは、不良債権の最終処理に伴う中小企業の倒産、これも効率性を高める上で必要な措置だと考えておられるんでしょうか。

竹中国務大臣 中小企業というのは規模が大きいか小さいかの判断でありますから、その中には当然、非常に一生懸命、しっかりと経営しているところと、いろいろな要因で必ずしも経営がうまくいっていないところがあるわけです。

 そういったところの非効率な部分については、先ほど午前中の会議でもありましたけれども、ある意味では、私たちが持っている人的な資産とか物的な資産とかをやはり効率的に使うことによって初めて景気の回復、経済の発展があるわけですので、その過程では、実はそういった意味での資本と労働の組みかえ、それは、端的に言えば整理される企業も一部には当然出てくるわけでありますけれども、そういったことを進めるということが部分的には不可欠になってくると思います。

佐々木(憲)委員 そうしますと、不良債権の最終処理を今後二年から三年という短時間で進めようというわけでありますから、極めてドラスチックなことをやることになるわけで、痛みを伴うという、今、整理される企業も出てくるとおっしゃいました。そうしますと、当然、中小企業にどれだけの影響が出るか、国民に示す責任があるだろうと思うんですね。

 竹中大臣にお聞きしたいんですけれども、最終処理に伴って、どれくらいの倒産が出ると予測しておられますか。

竹中国務大臣 企業の数ないしは、しかも企業の大小別、しかもさらにそれを業種別というようなことになると、これはちょっと、私たちが今持っている技術的な予測水準では不可能だというふうに思います。

 究極的には雇用の問題が重要であるということでありますので、雇用に対する影響というのを私たち、今、経済財政諮問会議で雇用を中心に議論を進めているところです。

佐々木(憲)委員 倒産が避けられないということを先ほどおっしゃったわけでありますが、そういう政策だけはどんどん進めるけれども、その影響は後から考える、これは極めて無責任だと私は思うわけであります。

 では、あなた方が実際進めようとしている不良債権処理でどういう結果が生まれるか、具体的にお尋ねをしていきたいと思います。柳澤金融担当大臣にお聞きをしたいと思います。

 まず数字を確かめたいんですけれども、最終処理というのは、銀行のバランスシートから不良債権を切り離し、オフバランス化するということだと。その対象となる不良債権の範囲、それからその金額、それは幾らと見込んでおられますか。

柳澤国務大臣 緊急経済対策に、この不良債権処理の最終処理の問題がのせられているわけでございますけれども、これはまず、破綻懸念先以下の債権について、モニタリングのもとでこれをできるだけオフバランス化するように働きかけていく、これが一つあるわけでございます。

 それともう一つは、要注意先の債権についても、こちらはむしろ健全化するようにいろいろと相談に乗っていく。この両方をやることによって不良債権のオフバランス化を進めていこう、こういうふうになっているわけでございますので、言ってみると、要注意先以下のすべての債権が対象になるとも申し得るわけでございます。

 特に御関心の、パブリックプレッシャーのもとでモニタリングをして金融機関に格別の努力をお願いするということを考えておるオフバランス化の対象としては、破綻懸念先以下に区分される債権でございまして、その金額は十二・七兆円、十二兆七千億円というところでございます。

佐々木(憲)委員 次に、お聞きしたいんですけれども、この十二・七兆円という範囲にとどまるのかどうかという問題であります。

 午前中の柳澤大臣の答弁にもありましたけれども、大手行の不良債権処理に伴って、協調融資をしている地銀、中小金融機関も処理せざるを得なくなると、その分、当然処理対象はふえると思うんですね。それで新たな倒産、失業がふえれば、それはそれとして消費を落ち込ませることになり、さらにそこから新たな不良債権が発生する。

 ですから、この要注意先も、先ほど健全化するとおっしゃいましたが、同時にまた要注意先の債権も破綻懸念先に落ちる可能性もあるわけでございます。それも政府の方針では三年以内に処理する、こういうわけでありますから、処理される不良債権というのは十二・七兆円よりは当然その枠を超える、実際にはもう少し大きな規模になると思いますが、これはいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 十二・七兆円というのはいわば主要十六行の破綻懸念先債権そのものでございまして、先ほど言ったような手続に乗せてできるだけこれを最終処理するということでありますけれども、そうしたら地域金融機関には何も関係がないのかといえば、それはそうではありませんと。

 十二・七兆円の処理をするに当たって、協調融資をしているという地域金融機関がある場合には、それもいろいろ相談に当然あずかるし、その処理というときには、なかなかこれが、本当に参加して損失を負担してくれるかどうかというのは非常にいろいろ、そのあたりがまさに難しい問題なのでございますけれども、そういうそれなりの影響を受けるということが当然言い得るわけでございます。

 今先生ちょっと要注意先以上の点についても御言及になられて、その中で、破綻懸念先以下に落ちるものもあるだろう、こういうふうにおっしゃられたんですが、我々のアクションで落ちるということはまず考えられないというふうにお考えいただいていいんであろう、このように思います。

 それもいろいろ、特定の銀行、名前を挙げるわけにいきませんけれども、そういったものについてはコンサルタントだとかそういうものを編成して、これを本当に活気のある企業にしていくというようなことをこれから指導していくというような、我々も大体そんなことを望んでいるわけでございますけれども、そういう中で切り捨てられる債権もありましょうけれども、あと残るものは逆にもっともっと現在の状態よりも元気のいい企業になってもらう、そういうことを考えて、そういう形でオフバランス化される。

 今、現にオフバランス化されている債権の中にも、これはもう正常化したのでオフバランス化しましたという申告をいただいている債権も現在でもありますので、これも、これから要注意先以上についてそうした働きかけをしていく場合には、そういったことが十分期待される、こういうことでございます。

佐々木(憲)委員 ちょっと私が質問をしたことに答えていただいていないんですが、つまり、その十二・七兆円を超える部分が生まれるだろう、協調融資も伴った処理を行うということになりますと。その点について確認をしたわけであります。

柳澤国務大臣 ですから、数字は挙げることはできませんけれども、それなりに影響を受けるでしょうと言いました。しかしまた、なかなか地域金融機関の中にはこの話に乗らないよと拒否する向きもあって、そういうものが現実の経済界の中では起こっているということをちょっと言及したわけでございます。

佐々木(憲)委員 十二・七兆円を超える部分というのは、地域金融機関も含めて処理をするということになれば当然生まれてくる。その要注意債権の中で正常化するものもあるとおっしゃいましたが、しかし私は、同時に、不良債権処理をやって倒産、失業がふえるということになりますと、それに関連をして、業況が悪化して債権の状態が悪くなる部分も新たに生まれてくるというふうに思いますけれども、そういう点はいろいろな議論のあるところだと思います。

 そこで、十二・七兆というのは、いわば処理対象の最低ラインというふうに考えていいと思うのですね。問題は、この十二・七兆円強の処理される不良債権の中に中小企業がどの程度含まれているか、この点についてお聞きをしたいと思います。

柳澤国務大臣 これは先生お申し越しでございましたので、ここに答弁があるわけでございますけれども、中小企業が占める割合はおおよそ六割台である、こういうことでございます。

佐々木(憲)委員 今大臣は六割台というふうに御答弁になりました。しかし、それは、金額で六割台ということですね。

 配付いたしました資料を見ていただきたいのですけれども、これは金融庁からいただいた資料と帝国データバンクの資料を載せてありますが、大手十六行の貸出残高に占める中小企業の割合、これは不良債権だけではなくて全体を示したものですが、確かに六五%でございます。しかし、件数で見ますと、貸出先数に占める中小企業の割合というのは九九・五%でございまして、企業数ではほとんど中小企業と言えると思うのです。帝国データバンクの資料もほぼ同様でございまして、圧倒的多数が、貸出先では中小企業ということであります。

 そこで、これをベースにして考えてみたいと思うのです。処理対象となる不良債権十二・七兆というのは、この十六行の貸出総額二百七十八・一兆円の四・六%なんですね、計算をしますと。この比率というのは、金額ベースの比率であります。つまり、全体の貸出債権のうちの不良債権の比率は、金額で四・六%ということになります。

 そこで、貸出先の件数はどうかということでありますが、総貸出先数は、帝国データバンクの資料では、十六行ベースで八百六十七万件でございます。ですから、その四・六%、単純計算をいたしますと約四十万件になるわけですね。ですから、件数で申しますと、これが処理対象ということになりますが、その中の九九・五%が中小企業でございます。

 ただ、統計上、この中小企業の中には個人向け貸し出しもありまして、住宅ローンなども入っております。金額でいいますと、約三割が個人向けというふうに言われております。その分を除いて考えますと、少なくとも二十万から三十万の中小企業、これが処理対象となる、そういうことになると思いますが、柳澤大臣、大体そういう計算が成り立つのではないでしょうか。

柳澤国務大臣 これは件数的には、我々、なかなかデータが備えられておらないものですから、中小企業等、この等はまさに個人向けということでございまして、それが一体どのくらいの比率にあるか、今先生は、大体五割ないしは四〇%ぐらいですか、そのぐらいにお考えになられたようですが、ちょっと私ども、この計数の持ち合わせがございません。

佐々木(憲)委員 今、持ち合わせがないとおっしゃいましたが、こういう計算が成り立つということを否定はされなかったわけでございます。

 そうなりますと、大部分の中小企業が清算型の倒産に追い込まれはしないだろうかということであります。

 この資料の次の2を見ていただきたいのですけれども、東京商工リサーチの調査で二〇〇〇年の全国企業倒産白書、これを見ますと、民事再生法や会社更生法などの再建型というのは、昨年一年間で六百十八件にすぎません。銀行取引停止処分や破産、特別清算などの消滅型、清算型ですね、これは一万八千百五十一件でございます。これだけで消滅型が大体九七%近い、九六、七%でございます。銀行が回収に走ると、圧倒的多数の企業は、再建されずに清算に追い込まれるというのが実態であります。ですから、二十万から三十万の中小企業は処理対象になる。こういうことを前提としますと、これらのほとんどが清算型に追い込まれてしまうのではないかと思いますが、柳澤大臣はどのようにお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 先生が言っておられることを全面的に否定するデータはこっちに持ち合わせておりませんが、常識的に承知をしているところでは、やはり中小企業の場合には、清算型がとかくスピードを持って実現化してしまうことが多いということでございます。

 というのは、やはり小規模なものですから、清算型ということでやろうとすると、どちらかというと簡単というか、それで非常に件数として多く出てくる。それに反して、全体的に再建型というのはなかなか話し合いに時間がかかるという面もありますが、そういうようなことが一つあるということ。

 それからもう一つは、中小企業といえども、やはりのれん、技術、こういうような、いわば本当にその存在に企業としての価値があるというようなものについては、私ども、いろいろ企業実態等に配慮してという文言を入れさせていただいておりますけれども、こういうものについては、これを簡単に世の中から葬ってしまうということについては果たして経済社会のあり方としてどうかというようなことを考えながらこれを進めていこうというふうに考えている。

 この二点だけちょっと、御答弁というわけにはまいりませんけれども、申させていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 清算型にどんどん追い込んでいく、単純にそういうふうにしたくはないけれどもという、そういうお気持ちはわかりますが、しかし、過去の実績からいいまして、実態的にいいまして、つまり再生する企業というのは三%程度なんですよ。

 ですから、不良債権処理で二十万、三十万という中小企業が資金回収に追い込まれる、あるいは売り払われる、こういう対象として倒産に追い込まれていきますと、これはかなりの部分が再生できない、九割以上は消滅する、こういう大変重大な事態になるのじゃないか。

 この十年来、倒産はふえ続けております。昨年の年間倒産は一九九〇年の三倍でございます。年間の倒産件数は一万八千件でありますから、その十倍もの中小企業を倒産させるというような政策を経済政策の名で進めるということは、極めて異常だと私は思うのです。

 中小企業の役割を平沼大臣は、大事だと、非常に基幹的な経済を支える部分として大事にしなければならぬというふうにおっしゃいましたが、どうも実際には中小企業の役割を否定することになるのじゃないだろうか。また、それは日本経済の基盤そのものを掘り崩すことにもなってしまう。

 中小企業は、デジカメですとかプリント基板ですとか半導体、DVDあるいは携帯電話、こういうIT産業の先端を担いまして、日本の物づくりを支えてきている部分が大変多いわけであります。それが、今の不況の中で受注がばったりなくなったとか、大変な苦境に追い込まれているわけでございます。その部分というのは、景気がよくなればまた持ち直すというような部分でもあるわけですね。

 しかし、今度の不良債権処理で一挙に処理を進めるというふうになりますと、その部分が崩壊してしまう、大変危険な状況になるのではないか。仮に債権放棄をしたという場合でも、ゼネコンの不採算部門、これは下請が切り捨てられるとか、あるいはリストラで雇用削減につながる、連鎖倒産も生まれる、こういうことも想定されるわけですね。まさに、こういうことをやっていくと、終わりなき最終処理ということになっていくのではないだろうか。

 政府は、今の日本を、デフレ状態にある、このように認定をされているわけですね。最終処理を進めると景気を当面後退させるということになるのではないかと思いますけれども、この点、平沼大臣、どのようにお考えでしょうか。

平沼国務大臣 お答えさせていただきます。

 やはり、企業サイドの不良債権でありますとか、産業サイドの不良債務というものを処理していかないと、日本の経済の再生ができない。それを果敢にやる。その場合には、今佐々木委員御指摘のように、痛みが伴うことは私は事実だと思っています。

 ちょうど平成十年のときにバブルが崩壊して、そして金融機関、大変な貸し渋りが起こりました。そのときに一番大きな被害を受けたのは、委員も御承知のように、中小零細企業の方々でありました。そのために、国といたしましては、民間金融機関というのが、いろいろBIS規制ですとか、自分たち自身の体質改善のために貸し渋りというのが顕著でございましたから、これは御承知のように、当初二十兆円の特別保証、さらにそれを十兆上乗せして三十兆で特別保証をさせていただきました。

 その結果、利用してくださった方が、この三月三十一日で締め切りますと百八十七万を超える。こういう中小企業の方々が現に利用していただいて、その中でやはり倒産も防げたし、雇用もある面では御承知のように確保できたと思っています。そして、保証させていただいたのも、十兆上乗せしてよかったなと思っているんですけれども、まだ若干ふえる可能性があると思いますけれども、その中で、三十兆のうち二十九兆を超える保証、こういうこともさせていただきました。

 したがいまして、私どもといたしましては、特別保証制度は一応貸し渋りということで焦点を絞ってやりましたので、一応その使命は終わった、こういうふうに思っております。

 しかし、こういう不良債権、不良債務を処理するに当たっては、やはり痛みを伴いますから、それに対する、今申し上げたような形の中でセーフティーネットを構築して、まじめに業をやっておられる、そういう中小企業の方々に対しては、やはりしっかりと対応させていただかなければならないということで、これももう委員よく御承知だと思いますけれども、一般保証の制度の枠を拡大させていただくとか、あるいは連鎖倒産をするような状況に追い込まれたときは、その八千万円をさらに倍して一億六千万円の保証まではさせていただきますとか、その他この他きめ細かい対応をさせていただく。

 そしてさらに、そういう一時的な痛みの中で失業者が出てくる、その失業者をやはり救済する受け皿も同時につくらなきゃいけない。こういうことで、この二十五日に立ち上がりましたいわゆる産業構造改革・雇用対策本部で、十五から成る、特に新規産業と雇用に力点を置いたそういう政策も私は打ち出させていただきました。

 そういうことで、痛みを伴うことは御指摘のとおりですけれども、やはり国としては、国のいわゆる経済の基盤を支えてくださっている中小零細企業にはきめ細かい対応をして、痛みを少なくする、そういうセーフティーネットを構築し雇用を吸収する、そういう政策もやっていきたい、このように思っています。

佐々木(憲)委員 今、大臣の答弁で、痛みを伴うけれどもやるんだということでありますから、当面のデフレ状態、景気の急速な下降局面を加速する作用を及ぼすということは否定できないわけであります。

 そこで、セーフティーネットのお話をされましたけれども、倒産を防ぐセーフティーネットは今度提案されているんだろうか。倒産したらそれで終わりであります。

 つまり、先ほど三十兆円の中小企業金融安定化特別保証制度のお話をされましたね。しかし、これは三月でもう終わっているんです。それで、十二月に一般保証の限度額を引き上げる、枠の拡大をされた。これは一般保証であります。今度新たに不良債権処理として出されてきたこの政策に対応する中小企業を救うセーフティーネットはありません。出ていないわけです、新しく。

 ですから、いろいろ、ああであればいいな、こうであればいいなというお話は抽象的にはありますけれども、具体的に、今こういう形で実行していくと、中小企業の倒産が非常に激しく進んで、経済の活力そのものが失われるんじゃないだろうか。新しく企業が起こるという話もありますけれども、しかし、こういう中で本当に新しい企業が生まれるのかどうか。

 倒産件数は急増していますから、そういう中で不良債権処理でさらに二十万、三十万という会社がつぶれるというようなことになれば、しかも倒産以上に、廃業の数というのはその二十倍あるわけです、産地中心に調査しますとね。一体どこで新しい企業が生まれるのか、全然保証はないわけであります。

 中小企業白書によりますと、企業数はこの八年間約三十八万社減っております。中小企業は三十七万社減っております。あなた方がふやすと言っているサービス産業でも、開業自身が非常に大きく減っております。

 この資料を見ていただきたいんですけれども、開業率と廃業率を見ますと、廃業する企業の方が開業よりもどんどんふえておりまして、そういう点でいいますと、まさにセーフティーネットどころか、中小企業はどんどん犠牲を押しつけられている。今でも大変な痛みを強いられているのに、さらに痛みを我慢しろ、こういう政策というのは、これは大変冷たい政策であり、経済にとってもマイナスになるんじゃないだろうか。

 東京大田区の中小業者、中小企業の経営者の話を私たち聞きますけれども、四月から仕事がなくなった、不良債権処理をやられるとばたばた倒産する、こう訴えているんです。あなた方の政策を実行していくと、再起不可能な中小企業を大量に発生させることになる。一方では、ゼネコンあるいは大手流通業界には、いわば大企業には債権放棄で借金棒引きだ、まあ、それはリストラを前提としてやる。大銀行に対しては巨額の税金投入をやる。こういうやり方は私は余りにも逆立ちしていると思います。

 一体、経済対策という名で、倒産や失業が出るのは当然だ、あるいは大量に発生させる政策というのを実行している国があるだろうか。アメリカではつい先日、減税政策が可決されました。まさに減税による個人消費の拡大であります。ヨーロッパでは労働時間の短縮によって雇用拡大であります。これが経済政策の名で実際に実行されているわけであります。

 しかし、日本だけが、倒産、失業を生み出すということを政策の柱にしている。日本のような国はありません。将来の展望は果たしてあるのか、全然その保証はない。私は、今大事なのは、実体経済の基本にある家計消費、ここをどう温めるか、そういう政治にやはり切りかえていくということが大事だと思うのですね。景気を回復軌道に乗せる、そうしてこそ不良債権も優良債権に変わる、こういう立場で日本の経済を再生させるということが大事であって、これを徹底的に追求するというのが本来の政策のあり方だということを申し上げまして、もう時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。

野呂田委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 まず、財務大臣にお伺いしたいわけですが、「財政の中期展望」の中では、名目経済成長率が二%、消費者物価上昇率ゼロ%を前提にして、来年、二〇〇二年度の一般歳出を四十九・五兆円、国債費を十八・四兆円、地方交付税交付金等を十九・五兆円、合計で八十七・三兆円の一般会計規模を見込んでいるわけですね。そうして、税収はここで五十・四兆、その他の収入が三・六兆、そして国債発行が三十三・四兆ということになっているわけです。

 先ほど、自由党の先生の方からかなりこの辺について適切な指摘があったかなと思いながら私もずっと拝聴しておったのですが、財務大臣の御答弁の中でも、じゃ、三十兆に抑制するにはどうするんやという、これといった抑制策というのが、先ほどもちょっと答弁を聞いていまして、聞けなかったかなということを思いましたので、改めてお伺いするわけです。

 実際、この中期展望もこういうことになっていますけれども、景気が悪うなれば税収の数字が下振れすることはあるわけですから、そういう意味では、国債の増発圧力もかかってきますし、当然ながら歳出を切り込むといろいろな抵抗もあるでしょう。そういう中で、もう概算要求の時期というのがあと数カ月に迫っているわけですが、実際どんな姿勢で予算編成に当たられるおつもりなのか。まず、ちょっと大ざっぱでございますけれども、その御所見をお伺いしたいと思います。

塩川国務大臣 まず、概算要求の作業の根本になりますのは、来年度、十四年度に自然増収は実際どのぐらいあるんだろうかという見積もりなんであります。私は、先ほど申し上げなかったのでございますけれども、中期展望の中では、当然増の見方がちょっと多過ぎるような感じもいたしておりますけれども、これはわかりません。私はまだ正確に調べたのではございません。まずこれを見直すということが一つあるのです。

 それからその次に、行政経費を一回全部見直してみたいと思うております。そういたしますと、何も公共事業だけではございませんで、一般歳出予算の中の行政経費をずっと見直すことによって相当な差額が出てくるのではないかと私は思うておりまして、それに大きい期待をかけております。そうして、一部申しましたように、行政の政策的目的がもう既に達成しておるものか、あるいはまた、自己努力によって、一般国民の方々の自力によって達成していただけるような分野、こういうところに向かっては積極的に財政の削減をしたい、私どもはこう思っております。

 それともう一つは、大きな柱として、地方行政の見直しがあるわけでございまして、地方行政でも、先ほど申しましたように、交付税を切るとか切らぬとかいうのじゃなしに、それは当然その話でございますけれども、その前に基準財政需要額というもの、その基準財政需要額のもととなりますシビルミニマムというもの、ここの問題につきまして各地方自治体の方で厳しく見てもらう、見直してもらうと。そして、自治省と交渉いたしまして基準財政需要額の適正な算定というものをやる、それによって一兆円近くを地方財政計画の中で削減していく、こういう手順を考えておるところです。

植田委員 今のお話を伺いましても、当然歳出削減するといいましても、生半可な方法ではできませんし、私がやはり非常に危惧するのは、増税ということが、いつかの段階で、そういう形で日程に上ってくることを危惧するわけですが、確かに国債発行を三十兆円以内に抑制する、うちの土井党首はそれでも多過ぎるということを言っておるわけですが、それでも実際三十兆円の枠内におさめようと思うたらかなり大変だろうと思います。

 先月になりますけれども、四月二十五日の朝日新聞を読んでおりますと、ある大学の先生が、「三十兆円の国債発行をしばらく続けるならば、財政再建というには極めて甘い」という指摘をした上で、この方の試算では、増税をやらぬと借金が大幅にふえぬ財政に八年かけて改革する場合でも、国と地方の公共事業を毎年一〇%ずつ減らして社会保障費の伸びをゼロにせぬとあかんというふうな指摘もされているわけなんです。

 そういう中で、確かに今おっしゃったようなことでかなり絞っていくことになるんだろうと思うわけですが、増税しないというふうに断言されたとしても、実際それのない財政改革というのに疑問符がつくわけなんですが、そういう意味で、やはり景気低迷が続いてきた場合、需要喚起するような公共事業についても、それとはなかなか決別しづらい場面もまた出てくるだろうと思うわけです。

 そういう意味で、三十兆円の抑制、そして増税なき財政再建、これを二つ一緒にセットで進めようとした場合、先ほどの自由党の方とのやりとりでも、少なくとも二〇〇四年度からは例の基礎年金の国庫負担を二分の一にせないかぬということもあるわけでございますから、そういう意味では増税が不可避の情勢になってきはしまいかということを非常に私は心配するわけですけれども、それについて、安心できるような御答弁と、改めて今後の財政の構造転換に向けた具体的な構想をお示しいただければうれしく思います。

塩川国務大臣 ずっと委員会等におきましても、あるいは本会議でも、ここ一、二年は増税をするほど国民の経済に余力がございませんし、力がございません、ましてや今は企業関係に増税を要請するということはとても不可能だと私は思うております。したがって、ことしの一年、二年の間は専ら歳出の削減に努力をして、そして事業量は減らさないように努力する。二律背反のようでございますけれども、こういう非常の事態をせざるを得ない状態になっておるということを御理解いただきたい。

植田委員 そういう意味では、歳出構造をかなり大胆に見直していかないかぬということで、いろいろと、例えば道路特定財源の話等々も出てきているわけですけれども、道路特定財源を見直すのであれば、もう特別会計の廃止をやって一般財源化する、そこまで走っちゃったらいいかなと私は思うんですが、その点は端的にいかがでしょうか。

塩川国務大臣 特定財源を直ちに廃止することは、これは御存じのように難しいと思っていまして、私、それに対してイエスなんて今言ったらえらいことになってしまいます。そういうことでございますから、それはできない。

 けれども、なぜかといったら、やはりそれだけの法律の裏づけがあって、十四年度まで特定財源のいわゆる使命といいましょうか、拘束されておるわけでございますから、したがって、特定道路関係の財源の中でできるだけ幅広くこれを応用して活用したい、こういう考えでやっております。

植田委員 せっかく総理が構造改革にわざわざ聖域なきというまくら言葉をつけておられるわけですから、本来、構造改革というのは聖域があってはならぬと思うわけですから、この聖域というものはやはり取っ払っていただきたい。

 特に、やはりそこで道路特定財源にかかわらず、一般会計の予算規模の大体四・五倍ぐらいの特別会計、三百九十兆ほどあるわけですよね。実際、ここは国会のメスもなかなか入らないし、所管官庁がやるわけですが、財務省もなかなか手を突っ込めへんというか口を出せへん分野でございますね。私は、ぜひそこに口も出して手も突っ込んでほしい。やはり中には必要なさまざまな特別会計がたくさんありますけれども、少なくともここにメスを入れぬ限り、小泉内閣は構造改革政権とか改革断行政権とか、そういうことがなかなか言えへんやろと思うわけです。

 そういう意味で、その辺のところの新たなルールを確立するおつもりがあるかどうか。少なくともきょう、あしたの話ではないと思いますけれども、そういうことも射程に入っているのかどうか含めて、財務大臣、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 特別会計等につきましては、現在、主計局の方で相当厳しく査定に入ってきております。具体的に会計をどうするかということは概算要求の段階までかかるであろうと思いますけれども、作業に入っていることは事実であります。

植田委員 時間がありませんので次に進みたいわけですが、竹中経済財政担当大臣の方に幾つかちょっとお伺いしたいわけです。

 一昨年、九九年の経済白書の中で、日本経済を再建するには雇用と設備と債務という三つの過剰を解消するのが重要だという指摘がありますけれども、設備、債務はともかくとして、雇用の過剰を解消せい、言ってみればお上がリストラの勧めを御披露したわけでございます。

 その結果、どうなっているのか。企業による大量首切りを言ってみれば国策として正当化してしまった。その結果、では、企業が大量リストラの断行の結果業績が回復したのかというと、やはりさらなる景気の悪化というものを招いている状況があるんじゃないか、こうしたありようがまず誤りではなかったかというふうに私は指摘しておきたいのです。

 その点についての御見解に加えて、ちょっとここは、せっかく学者の先生でいらっしゃいますので御教示賜りたいんですが、ちょっとちまちまと勉強させていただきまして、オランダの奇跡という、オランダの経済再建の事例についてちょっと勉強させていただいたのです。

 オランダが、八〇年代半ばに失業率が二けた台になっていた。そして、オランダ病と言われていたわけですけれども、この十年で画期的な復活を遂げた。政府、企業、労働者のいわゆる三者の合意の形成によって、言ってみれば、ポルダーモデル、干拓の国という意味らしいんですが、賃金抑制による雇用の確保ということで、そのことによって社会保障改革、雇用改革というものを可能にして、パートタイマーの導入によるワークシェアリングの実現につながっていった。そして、失業率が今では大体二%台、経済成長も三%台の安定成長を持続させている。

 むしろ、日本の国情から考えると、何につけてもイギリス、アメリカというよりは、オランダのこうした事例に学ぶべきところがたくさんあるんじゃないかなと思うんですけれども、これについての御見解を竹中先生にお伺いしたいのです。

竹中国務大臣 第一の質問は、リストラの話であります。

 国が国策としてリストラを進めたということではないと思います。白書というのは分析でありますから。

 しかし、御承知のように、日本の場合、人件費が実質、企業から見ると固定費になっていて、それが実は企業の非常に、場合によってですけれども、不振な企業のおもしになっていて新たな投資ができない。前も申し上げましたけれども、やはりリスクを背負って投資して初めて市場経済が発展するわけですから、そのリスクを負えないような体質になっていた。だから、とりあえずは、そのおもしから解放しなければいけないというのがその当時の分析の趣旨だったと思います。

 その結果、リストラでマクロ的に雇用が悪くなっているか。もちろん、痛みを受けた方というのはいらっしゃるわけですし、痛みを受けた地域というのもあるわけです。もちろんこれも否定できないわけですが、現実には、例えば九〇年から二〇〇〇年までの実は雇用者を見ると、何と、これは改めて数字で確認して私もちょっと驚きましたけれども、日本は五百万人ふえているんですね。つまり、イメージですけれども、企業から雇われてサラリーをもらっている人の数というのは十年間で五百万人ふえているのです、この国は。

 では、何が雇用で苦しい実感をもたらしているかというと、先ほども実は開業の話がありましたけれども、自営業者が減っているのです。その意味では、もちろん痛みがあったということは事実だと私は思いますけれども、つまり、数字から見る限り、雇用者を全体的に減らしてマクロ的な問題になっているという状況ではないと私は思います。ただ、この問題はもちろん重要でありますから、引き続き、やはり痛みを緩和していくような、それでいて経済の構造改革を進めるようなことを進めなければいけないと思います。

 第二のオランダ・モデルについては、私も学者として大変興味を持っています。オランダ・モデルの中身というのはなかなか難しいかもしれませんが、要は、合意形成のもとに一種のワークシェアリングをして、しかし同時に、事後的に見てやはりはっと気がつくのは、実質賃金を抑えているということなんですよね。賃金を抑えているから雇用を確保できている。これは市場の数量と価格の関係から見ると当たり前のことが実は起こっているわけで、そういった実質賃金を抑えるということを社会的な合意というふうに見るならば、一つの参考になるモデルだと思います。

 ただ、日本の場合は、やはりオランダと比べてマーケットが大きいですから、あのモデルがそのまま当てはまるかどうかという社会的な問題もあると思います。

植田委員 いわゆる賃金は、確かにオランダ・モデルは抑制するわけですけれども、実際、たくさんの人を雇用するという意味においては、時短もやっているわけですよね。

 そういう意味では、働く時間も減るし、その分賃金も減りますよということですから、これはちゃんと労働組合も十分理解できるような話をすれば、少なくとも、特にこのことを紹介されている本を読んでいますと、むしろ日本の場合、政労使三者のコンセンサスが比較的得られやすい伝統を持っている国なんじゃないか、そういう指摘もありますし、また、パート労働者への調査を見ても、パートの労働者の方々が、正社員として働ける会社がないからパートをやっているんだというのは一三・七%らしいです。むしろ、自分の都合のよい時間に働きたいというのが五五%とか、そういう結果も出ているところを考えると、かなり参考になるんじゃないか。

 しかも、一番大きなのは、いわゆる米型の雇用調整ではなくて、むしろそういう意味では、賃金調整、労働時間の調整というところに着目することでリストラなき経済再建の展望というものが一つ浮かんでくるんじゃないか、もちろんあれをそのまま移入しろということではなくて、かなり参考になるんじゃないか、やはり、弱肉強食の米型じゃなくてそういう例にも結構着目していいんじゃないかなというふうに思ったから、お伺いしたんです。

 これから産業構造改革・雇用対策本部でいろいろな雇用対策を検討されると思うんですけれども、もう一度竹中大臣にお伺いしたいのは、そういう意味での働き方革命ともいうべき、そういう雇用対策を前向きに検討していってほしいですし、学者としてのさまざまなこれまでの研究の成果をそういうところで反映していただきたいと思うんですが、御見解をお願いします。

竹中国務大臣 個人的には大変関心を持っている一つの調整手法だと思います。

 一方で、これまた容易に想像できることは、私はたくさん働いてもうけたいんだ、これが自由だと思っている人をどうしたらいいかという問題なのだと思います。

 繰り返しますけれども、それはやはり一種の社会的コンセンサスがどう得られるかということでありますけれども、一つの方法として、おっしゃるような形で単位当たりの賃金を抑制しながらシェアするというのは、特に経済が非常に悪くなった場合には考慮すべき一つの考え方だと思います。

植田委員 時間がありませんのであと一問だけお伺いしたいんですが、いわゆる雇用調整型の対応をすると、必ずそれは今ある勤労者のいわゆる雇用に対する将来不安というものが解消できないですよ、ちょっとそこは切り口を変えたらいかがですかという意味で念頭に置いていただければありがたく思います。

 最後、実は柳澤大臣に詳しくお伺いしたかったんですけれども、もう時間がありませんので、私、財務金融委員会に属していますので、できれば、またそれぞれの法案の中でいろいろと拝聴したいんですが、一点だけ、これは竹中大臣、柳澤大臣、双方にお伺いしたいんですけれども、ちょっと古い日経新聞ですが、いわゆる不良債権の最終処理について、どうも御見解がやや違うというか、全く違うということが指摘されているわけです。

 私どもは、実際、最終処理をほんまにやるんやったら数十兆円規模の公的資金の注入というのは不可避だと思っています。その点についての論争をきょうはしようとするわけではございませんが、この報道によりますと、竹中大臣の方は、場合によってはそういう再注入もあるべしという発想に立たれている。柳澤金融担当大臣は、必要ないとはっきり断言されておられますけれども、そのお二人の御見解だけ改めて伺いまして、終わりたいと思います。

竹中国務大臣 担当大臣にはしっかりと後で話していただく方がいいと思いますので。

 私が申し上げているのは、場合によってはというのは、実はもうそれ以上の説明がないわけで、必要だったらやるしかないということでありまして、必要かどうかの御判断は、やはり担当大臣、まさに総理の決断だと。

 必要があったらやる、この反対というのは、必要があってもやらないというか、必要がないけれどもやるというか、そのチョイスしかないわけで、やはりそれはあり得ないなと思いますので、必要があったらやる、その御判断は担当大臣の柳澤さんがしっかりやってくださるというふうに思います。

柳澤国務大臣 私ども役所の方でも、今まで世間でいろいろ取りざたされていたことに余りかかずらわるということをしてこなかったのですが、私は、最近銘じまして、やはりそういう論に対してきちっとこういう論を、別に反論とかじゃなくて、お互い、いい金融システムをつくっていこうというわけですから、そういうことなんだけれどもどこが違うんだということを世の中にはっきり言ってやる必要があるんじゃないか、このように考えているわけです。

 それは、これからおいおいお話ししますけれども、要するに、日本のあれはあと二十兆、三十兆残っているんだというような発想、これはその根源がどういう考え方から出ているか、これはまあ、ああいう考え方をすれば当然そういうことが出てくるんですが、そういうことを前提にして、まだ資本注入が必要だろう、そういう考え方をしているんです。我々の方は、実務的に物を処理している立場から、そういうことが必要だということを感じませんということを申し上げているんです。これはまたおいおい明らかにしていきたいと思います。

植田委員 終わります。

野呂田委員長 これにて植田君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして経済・外交等についての集中審議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会




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