衆議院

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第8号 平成13年12月17日(月曜日)

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平成十三年十二月十七日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 坂井 隆憲君

   理事 自見庄三郎君 理事 城島 正光君

   理事 仙谷 由人君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      伊藤信太郎君    伊吹 文明君

      池田 行彦君    石川 要三君

      大原 一三君    奥野 誠亮君

      亀井 善之君    栗原 博久君

      近藤 基彦君    高鳥  修君

      谷川 和穗君    津島 雄二君

      中山 正暉君    葉梨 信行君

      萩野 浩基君    蓮実  進君

      三塚  博君    宮本 一三君

      八代 英太君    五十嵐文彦君

      岩國 哲人君    生方 幸夫君

      大石 尚子君    首藤 信彦君

      野田 佳彦君    古川 元久君

      松本 剛明君    山口  壯君

      白保 台一君    若松 謙維君

      達増 拓也君    中井  洽君

      中塚 一宏君    佐々木憲昭君

      中林よし子君    保坂 展人君

      横光 克彦君    井上 喜一君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   財務大臣         塩川正十郎君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       武部  勤君

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   法務副大臣        横内 正明君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   経済産業副大臣      古屋 圭司君

   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青

   少年局長)        遠藤純一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   参考人

   (日本銀行総裁)     速水  優君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十七日

 辞任         補欠選任

  萩野 浩基君     伊藤信太郎君

  北橋 健治君     大石 尚子君

  五島 正規君     生方 幸夫君

  山口 富男君     中林よし子君

  辻元 清美君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     萩野 浩基君

  生方 幸夫君     五島 正規君

  大石 尚子君     北橋 健治君

  中林よし子君     山口 富男君

  保坂 展人君     辻元 清美君

    ―――――――――――――

十二月七日

 一、予算の実施状況に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君、文部科学省スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、厚生労働省健康局長下田智久君、厚生労働省医薬局長宮島彰君、農林水産省生産局長小林芳雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 きょうは、ある意味でマーケットそして金融機関に対する評価が極めて厳しい段階で、これからの経済運営あるいは金融行政について誤りなき運営を進めていっていただかなければなりませんので、そしてまた、現在では、そのことが、国民に対する説明がきちっとなされている、説明責任が果たされているという状況がつくられませんと、この局面は乗り切れない、容易ならざることだというふうに考えておりますので、そういう観点から経済閣僚の方々にお伺いをいたしたいと存じます。

 まず、青木建設の倒産でございますが、小泉総理大臣が青木建設の倒産について、構造改革が順調に進んでいるあらわれではないか、こういうふうに割と平然と語られたわけでございますが、財務大臣、これは財務大臣もほぼ同じ感慨といいましょうか感想をお持ちなんでしょうか。そしてまた、この場合の構造改革が順調に進んでいるというのは、何を指しておるのでしょうか。

 といいますのは、私、小泉内閣の構造改革というのは、声はすれども姿は見えぬ、ほんにおまえはというような感じがしておりまして、とりわけ、現実には制度的に何か改革的なことが行われたというふうには承知をしていないわけでございます。三十兆円枠の問題も、まあこれは財政構造改革という観点から評価ができないわけでもないわけでありますが、しかし、現在執行されている予算は森内閣のときにつくられた予算でございまして、別に小泉さんの三十兆円枠がどうのこうのという話でもない。

 そうすると、青木建設の倒産というのは、どのような構造改革的施策のあらわれとしてこの倒産劇が起こっているのか。その点について、財務大臣の御感想といいますか、お考えをお伺いしたいと思うのです。

塩川国務大臣 バブルが崩壊しましてから長い間にわたりまして、それぞれの関係しておりました企業は必死の努力をしてまいりまして、また関係金融機関もこれの救済、立ち直りについて努力をしてまいりましたけれども、青木建設の場合は、不幸にして受注の面がうまくいかなかった、そういう点から、資金繰りのやりくりから民事再生法の適用を受けるということになったと聞いております。

 これを構造改革の進展であると見るかどうかは、これはそれぞれの人の見方によっておると思うのでございますが、総理も、あえてそれをいわゆる構造改革の問題とは見ないで、不良債権の整理が進んでおる過程であらわれてきた現象である、そう見ておると私は思っておりますし、私自身も、青木建設は頑張ってきたけれども、やはりそこに、これからの将来の見通しが非常に楽観的なものじゃない、悲観的なものであった、こういうところから早期に整理をしたい、こういうことで踏み切ったことだと思っております。

仙谷委員 同じ質問を構造改革を進めていらっしゃる竹中大臣にお伺いしたいのでございますが、青木建設は、一九九九年の四月段階で約二千億円強の債権放棄を受けておりますね。もうその時点からいわば実質的な会社整理の段階に入っておるということは、これは常識論として当たり前の話だったわけですね。それが今の段階に来て倒産というところに来てしまったわけでありますけれども、何か青木建設の倒産というのは構造改革の施策と関係があるというふうにお考えですか。

竹中国務大臣 構造改革という言葉自体が、時によって、人によって、ちょっと幅のある使われ方をしているのではないかと思います。

 よく申し上げるように、受け身の、守りの構造改革と攻めの構造改革がある。その守りの構造改革の中心が、不良債権の処理を急ぐことであり、さらには財政赤字の拡大に歯どめをかけることである。その意味でいいますならば、不良債権の処理をやはり加速させる、そのために金融庁はさまざまな努力を、新しい努力を重ねられて、例えば特別検査を実施するというようなことまで発表されているわけですが、そうした中で、不良債権を、銀行としても従来にも増して資産査定を厳しくやっていかなければいけない、そういう中で今回の淘汰というのが出てきたのであるというふうに理解をしております。

 私自身は、個別の企業を見る立場にはございませんので、十分な知識は持ち合わせておりませんが、そういった一連の流れの中で位置づけるということは可能なのではないかと思います。

仙谷委員 それでは、そういうふうに問題が振られてきますと、これは柳澤金融担当大臣にお伺いしなければいけないわけですが、特別検査というのは、先般十月に私が改革先行プログラムとの関係でお伺いしたときには、まだ来年に入ってから行うんだとか行わないんだとかという話をやっていましたよね。この青木建設の倒産というのは、何か特別検査と関係があるのですか。

 つまり、特別検査は既に始めておるのか、そしてまた、本件の場合、つまり青木建設の場合については、青木建設のいわばメーンバンクであるあさひ銀行と日本興業銀行、みずほフィナンシャルグループの興業銀行に対する特別検査が入って、そしてその検査の結果として、青木建設に対する融資が絞られたとか、できないとか、あるいはこの両行が見放したとか、そういう結果でございますか。いかがですか。

柳澤国務大臣 あのような破綻をしたとはいえ、今後まだいろいろな問題が残っておる個別の企業の問題でございます。したがって、我々の特別検査との関係で当該企業がどういうことであったかというようなことについては、これはコメントを差し控えるべきものであろう、このように考えます。

 ただ、先ほど来取り上げられている不良債権の処理、しかもそれが直接的な処理を行われることということは、私はかねてから申しておりますように、構造改革の一環だというふうに理解をいたしております。

仙谷委員 個別の問題にお答えになりにくいということでございますが、柳澤大臣、これは土曜日でしょうか、十五日、野中広務元幹事長が神奈川県で講演をして、深刻な状況は何といっても金融問題だ、来週あたりから非常に大きな動きにならなければいいがと思う、今そういうところに危機管理がいっていない、日本発の経済恐慌を世界に起こしたら大変だと語った、こういう談話が新聞で報道をされております。

 柳澤大臣も、金曜日、土曜日、講演をされたり記者会見をして、この金融の危機、世上言われている事柄について柳澤大臣がある種の主張をなさっているわけでございますけれども、こういう野中元幹事長の見解というものは、柳澤大臣から見れば全く当たっていない、こういうことになりましょうか。いかがですか。

柳澤国務大臣 私が申しておることは、金融機関の、基本的なというか、まさかに備える体力、これは資本でございますけれども、この自己資本比率の推移、実態というものを見ていただく限り、今二けた台を維持しておる、こういうような状況が危機であるというような認識を持つとすれば、その見方は当たっていないということを申し上げたわけであります。

 しかし、今仙谷委員のお言葉の中にもあったかと思うんですが、今、マーケットの金融機関に対する見方というものには非常に厳しいものがある、これは私も十分に認識しておるわけでありまして、そういう意味合いで、私も最大の関心、注意力を持ってその推移を見ておるということでございます。

仙谷委員 それでは、大臣、お配りした資料、そちらに届いていますでしょうか。二枚目をごらんください。「TOPIX銀行株価指数の推移」というふうに書かれてございます。山のてっぺんは、一九八九年十二月、一四七七・二〇〇ポイントということでございます。これはバブルの頂点でございますから高いのは当然でございますが、その銀行株の株価指数が、一四七七から何とことしの十一月には二二一・二五〇と、七分の一のところまで落ちている。さらに、ことしの十二月十四日、つまり先週金曜日でありますけれども、これは一九三・三六〇というところまで銀行株価指数が落ちている。つまり、八〇%ぐらい株価がはげている、こういうことですね。

 これは、この曲線をごらんいただければわかりますように、傾向的に下降曲線になっておるわけですから、自己資本があるから大丈夫だ、株価が示すような悲観的な見方は当たっていないと幾ら柳澤大臣が外へ向かって頑張ってみても、マーケットの方はせせら笑うかのように、きょうの株価だって、多分、銀行株ははね上がったりはしていません。私がごく一部を見た段階では、まだ年初来安値をつけそうな銀行すらも出てきている。これはどこに原因があるんですか。

柳澤国務大臣 株価の問題についてはいろいろな複雑な要因があるわけでして、マーケットの内部にあるいろいろな見方というのも区々でございます。

 そういう中で、私ども、これは客観的なことかと考えておりますのは、やはり本年の九月期の決算においても、不良債権と株価の低迷の中で、現実に赤字の決算をしなければならない銀行が主要行の中でもかなりの数に上ったということ。それからまた、そのときに同時に発表された三月期、通期の見通しにおいても同様な厳しい決算が見込まれるということ。こういうことはもう客観的な事実で、見方の問題ではありませんので、私どもも、そういうことも一つ影響しているということは納得できるというか、そういうことは腑に落ちるというか、そういうこととして理解をしております。

仙谷委員 常識的ですよね。つまり、配当がつかない株式に株価が上がってくるということはないというのは常識で、要するに、本年度末、二〇〇二年三月期に多分配当をできるような決算ができない、こういうふうなことを先読みして株価が下がっている。これは常識的なマーケットの見方ということになろうかと思うんです。

 そうだとすると、では、これは再来年の三月期に配当ができるようにこの銀行群がなるというお見通しなんですか。それとも、依然として全国銀行ベースで業務純益が、これは三枚目をごらんいただきますとわかりますけれども、三枚目の上からの一、二、三、四、五、業務純益が大体四兆四、五千ですね。この九三年から二〇〇〇年までの累計で業務純益は三十八兆五千八百三十億円、こういう金額なんですよ。

 業務純益が四兆から五兆の間という全国銀行ベースの銀行が、先般金融庁ですら発表されているような不良債権に、少なくともオフバランスじゃなくて償却、引き当てという償却をするだけでも、まあ単純計算でいっても三年や四年、あるいは五年か十年、そのぐらいの期間は不良債権処理にかかってしまうじゃないか、こういう想像力というか推測が働くんですね。

 というのは、以前は、ここにちょっと書いてございますけれども、八年間で含み益で十九兆四千億という膨大な額を益出しをして不良債権処理に突っ込んできた。だけれども、もう含み益はなくて、御承知のように、含み益は多分現時点だと八兆円ぐらいのマイナスになっているんじゃないか、こういうふうに言われておりますね。三月期末までこの含み益が回復するというふうな見通しを立てるというのは、いかにも甘い。このまま推移してくれたらいいんじゃないか、TOPIXが一〇〇〇を割らなければ望外の喜びぐらいのことを考えなきゃしようがないんじゃないか。

 こんな状況の中で、当然のことながら、不良債権処理をやればやるほど業務純益はすべて吐き出してすってんてんの丸裸の状態が何年間も続く、こういう見通しになっているんじゃないですか。いかがですか。

柳澤国務大臣 本年度は不良債権の処理を率直に言ってかなりアクセルレートしたということは、これはいろいろな施策の反映としてそういう結果になるということは、委員もお認めいただけるかと思うわけであります。私どももそういうふうに考えております。このテンポが今後数年かそういう期間を通じて起こるとは、私どもは考えておりません。

 そういうようなことですので、私どもとしては、もちろん銀行が経費の節減に努めるとか、あるいはそれなりに今利ざやの拡大に努めているというような、そういう地道な努力もここに加わってくるだろうと、業務純益の方でいいますとですね。

 そういうようなことを考えておりますし、不良債権の処分損については、今言ったように、本年度はかなりこぶっ玉のような形の処理損というものになるんだろう、したがって、翌期以降はもうちょっと平常のペースに戻ってくるだろう、こういうように考えておりますので、この結論がどういう数字になるか、これはほかにもいろいろなファクターが影響いたしますので、私自身、ここで今、この私の立場にあって予言をするということは適切でない、このように考えます。

仙谷委員 お渡しした資料の一枚目をごらんください。これは、民主党の政策調査会のスタッフが、九月期決算、特に公的資本増強を受けた金融機関、特にメガバンクと言われているような大きいところ、この税効果分、それから注入を受けた公的資金、これを控除して正味自己資本というものをはじいてみればどうなるかということで、もう既に財政金融委員会等々でもこの計算表が、大臣の手元でもごらんいただいて、議論の対象になっていると思うのですが、「正味自己資本比率」というふうに書いてあります。あるいは「修正自己資本」というふうに書いてあるところでございます。これをごらんになって、民主党が作成したこの一覧表、これは間違いでしょうか。それとも、大体こんなものなんですか、正味自己資本というふうな観点から計算をすると。

柳澤国務大臣 これは、足し算、引き算をされれば、そう高等数学でもありませんのでこういうことになろうか、こういうように思いますが、前提として、あれだけ銀行監督にいろいろ厳しい規制をつくっていこうとしておるバーゼルの銀行監督委員会で認めているルール以外のルールをこうしたものに適用して、こうなった場合どうか、ああなった場合どうかということについておっしゃられることに、私が今ここでいろいろそれに応酬をするというか、そういうことはやはり、それはそういう見方をされる方がそういう計算をすればそうなるでしょうというふうに、私としては尽きる話だと受けとめています。

仙谷委員 柳澤大臣、優先株は不良債権の償却に使われてはならないという前提なんじゃないのですか。

 つまり、注入された公的資金を不良債権の償却に使ってしまう、あるいは五年間も先取りした税効果会計があるからといって、それが必ずしも不良債権償却の原資になるというふうに考えるのは甘い。これは、マーケットウオッチャーは必ずそう見ざるを得ない。つまり、体力問題としては、正味自己資本というか、正真正銘の不良債権を処理し、かつ配当できる、そして金融仲介機能を十全に果たせる金融機関になっているのかどうなのかというのが今の大問題じゃないですか。

 それを、そんな居直ったように、こんなものは足し算、引き算をやったらこうなるかもわからぬけれども、こんなものはバーゼルの自己資本比率の観点からいうと公的資本が入っても何してもいいんだみたいな議論をされると、今の金融危機と言われている、これは先ほどお見せしたTOPIXの指標から見ても、九八年九月というのは二九一・七三ポイントあったんですよ。そこからもう一〇〇ポイントも下がっているんですよ。つまり、あの金融危機、クライシスと言われたあのときから、一〇〇ポイントも株価指数がTOPIXで下がっているんですよ。これを危機と言わずして何と言うのかというのが、あなた方が批判する雑誌のみならず、日本有数の経済紙である日経新聞のこの二日間の社説とか記事を読んでごらんなさいよ。敢然と公的資本注入をやらなきゃならないと書かれているじゃないですか。担当大臣のおっしゃった認識とは全然、それこそ大変な山と谷の懸隔がありますよ。ここはもうちょっと正直にならなきゃいけないんじゃないですか。

 本来は、平沼経済産業大臣にも柳澤大臣の後にお伺いしたいと思っているんですけれども、もう少し十全な金融仲介機能を果たせるようにならないと、これは銀行の値打ちがないじゃないですか。どうですか。

柳澤国務大臣 私も、先ほど冒頭の御答弁で申し上げたとおり、マーケット、特に株式市場の金融機関を見る目については非常に厳しいものがあって、私もこれに対しては重大な注意を払っているということは申し上げたとおりであります。

 ただ、今、こういうことを言うと少し論争的になりますけれども、仙谷委員だって、だから公的資金を入れろと言っているのをおまえは聞いていないか、こう言いながら、その前には、公的資金は傷つけちゃいけないから、資本性はないからこれを引いて考えなきゃいけないというようにおっしゃると、これはもうなかなか、その限りでは出口がない話になる。

 我々も、私は当初、この任に当たるに当たって、終局的には収益力で積み上げていくものしかないんだと。もちろん、第三者割り当てその他の増資もあり得るわけですけれども、何といっても、本当の資本性のある資本というのは、営々たる努力で積み上げていく、そういう、昔でいえば利益準備金だとか剰余金というものしか本当はないんだ、だから収益力が大事だということは随分強調させていただいてきたつもりであります。

 今日、そういうことを論ずるのではなくて、もう資本がどう目減りしていくかというようなことを論じなければならないというのは、まことに不本意きわまりないことであります。

仙谷委員 お言葉を返すようですが、私は従前から、中途半端な公的資金の注入などをやるからこうなるんだと。今回だって、中途半端に公的資金の注入をやれなんということを一言も言ったことはないですよ。もう公的資金の注入で事がおさまる事態は一九九九年に終わっている。これは私の今の実感でありますし、感想ですよ。今はそんな生ぬるい程度の話では事はおさまらない、こういうふうに見ているんですね。

 だから、それは公的資金の注入をすれば、おたくの森長官が言っているように、後で言いますけれども、もう一遍公的資金の注入をすれば国家管理になるじゃないか、中途半端な国家管理になるじゃないかと言っている、それはそのとおりですよ、事態の認識としては。私は、そんな中途半端なことをやってまた三年ぐらい引き延ばしたって事態は変わらないと思っていますから、そういう中途半端な提案はいたしません。

 そこで、これを見てください。五枚目から六枚目、それから七、八、九と。これは七枚目からは日銀のDI、業況判断でありますが、まず五枚目、六枚目は、何と九八年から二〇〇一年までで中小企業、中堅向けの国内銀行の貸し出しが四十一兆円減少しているんですね。大企業に対しては四兆円ふえているんですよ。それで、次の六枚目は、日銀にそのことを年次で棒グラフでつくってくれとお願いをしたのがこれですよ。

 平沼大臣、これは平沼大臣の御所管の中小企業、中堅企業の活性化という観点から考えて、この金融機関の態度というか実態というのはどういうふうにお考えになるんですか。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 本年三月末における国内銀行の中小企業向け貸出残高は、御指摘のとおり大変下がっているわけでございまして、平成十年の三月末に比して九%も減少しております。

 他方、我が方がやらせていただいている政府系中小企業金融三機関、この貸出残高というのは、三機関の合計で、同じ期間ですけれども、一・二%の増加を見ている。

 この三年間で民間金融機関の貸出残高が減少しているというのは、幾つかの要素が考えられると思いますけれども、不安定な経済状況等の中で設備投資の低迷等によりまして資金需要が弱いということも一つあると思います。また、金融機関が不良債権処理問題を重い課題として抱えている等厳しい環境に直面しているため、中小企業に対して貸し出しの抑制、債権回収の強化による貸し出し圧縮、これが行われている、このように私どもは見ております。

仙谷委員 速水日銀総裁、業況判断DIも、地域別のをわざわざおつくりいただいたのをここに資料として出しております。それから「資金繰り判断」、「金融機関の貸出態度判断」というのも、これは日銀の資料でありますけれども、資料として提出をさせていただきました。

 九月、十二月、中小企業、中堅企業、大変厳しい資金繰り、あるいは金融機関の融資の態度ということになるわけでありますけれども、せっかく日銀が八兆円にも九兆円にも上る余剰資金を市場に出しても、これは中小企業には回らない。後から申し上げますけれども、本来は大企業に回るはずのない融資が大企業に、ある種潤沢に回っている。これは、私の判断では追い貸しではないか。大企業には追い貸しして、中小企業には貸しはがしをする、こういうことは今の金融機関で、全国銀行で、あるいは私どもが実感するのは、都市銀行の地方支店で最も極端な格好でやられているというふうに実感しているんですね。

 この点、日銀総裁の御判断はいかがですか。

速水参考人 最近の銀行貸し出しの減少につきましては、基本的には、景気が低迷するもとで企業の資金需要が減少傾向を強めているということが背景にあることはもちろんでございます。ただ、金融機関の方は不良債権問題への取り組みを強めておりまして、そうした中で信用力の低い企業に対しては貸し出し姿勢を慎重化させる傾向もうかがわれております。これが短観における中小企業の貸出態度判断DIなどにあらわれている面もあるように思います。

 この十二月の数字をごらんになっても、全規模での貸出態度判断DIは十二月は五〇、五〇なんですね。緩いという方ときついという方が五〇、五〇。そのうち大企業は、緩いという方が一四多い。中堅企業は五〇、五〇でゼロです。それから、中小企業は確かにきついという方が六多いんです。それは九月よりもちょっと、九月のときは四でしたけれども、十二月は六になっているということで、少しふえております。

 こういう健全な企業あるいは再生が見込まれるような企業をサポートしていこうという基本姿勢というのは堅持されていると思いますし、前向きの経済活動に対しましては資金の供給が行われていると思っております。

 いずれにしましても、金融機関の信用仲介動向につきましては今後とも注意深く点検してまいりたいと思いますが、大銀行の方はこのところ、ここ一月ぐらい、非常に大きな政策の前進をしていることを私は一言だけ、先ほどの問答を聞いておりまして、つけ加えたいと思います。

 この一カ月ぐらいで、大銀行はかなり思い切った自己再生策を打ち出していると思います。一つは、不良貸し出しを早期整理していく。それによって引当金などもふえていくわけですが。二つ目は、自己資本の充実、株価対策といったようなものを考えている。三つ目は、大銀行再編の推進を進めている。四つ目は、貸し出しの効率化ということを考えていることです。

 これは、収益をふやしていく、収益をふやすことによって今後資本金も充実していくし、それから不良貸し出しの償却もやりやすくなっていく。多少もうけが出るような貸し出しに、いい方へ貸すということは、これは自然の動きだと思います。そのかわり金利は安い。悪い方へは金利が多少高くなるかもしれない。こういう貸し出しの効率化ということをやり始めていることを御注目いただきたいと思います。

 そういうことで、銀行としては懸命に努力しておるわけですが、市場の方は大変信認が薄くて、そして同情がないということは、これは確かなことでございます。しかし、そこのところは、私どもも銀行が大切でございますから、一生懸命銀行のそういった前進への努力を応援してまいりたい。何か思わぬことが起こっても、準備を十分整えてかかっていく心づもりでおりますことを申し添えたいと思います。

仙谷委員 日銀総裁の優しいお言葉はわかりましたけれども、そうだとすると、全国銀行ベースでも都銀ベースでも、じゃぶじゃぶの日銀がマーケットに流したお金を使って国債を買いまくって、その利ざやで、国民の税金である利ざやで稼いで何とかしようなどという、ことしのこの四月以降のあるいは四月以前からの傾向というのは極めてゆゆしい。私は、中小企業に貸し出しをこれだけ減らしながら、国債を買いまくるという、ある意味でリスキーなことをやってしまうというのは甚だ、何なんだこれはというふうな感を否めないのであります。

 その答えはまた後日いただきますが、ところで、この四枚目を見てください。これは財務省の二〇〇一年三月期、つまり二〇〇〇年度の法人企業年報を一生懸命分析をした方がいらっしゃいまして、その人からお借りをしてきたわけです。

 日本というのは、企業の総数が二百五十四万、そのうち上場企業というのは三千三百九十八、非上場企業が九九・九%の二百五十四万五千、こういうことになっておるんですね。この全企業の、つまり、上場企業は一応数字が公表されていますから、この上場企業に対する数字を分析して、そして非上場企業は一まとめでしか分析できませんけれども、これから見ると何が見えるのか。

 つまり、簡単に言いますと、上場企業というのは、この下の方に書いてありますが、無借金企業が二百七十七、実質無借金会社が九百七十七、自己資本が純有利子負債以上、これは字が間違っておりますが、自己資本の方が純有利子負債よりも上回っているのは千二百二十一。つまりほとんどの企業が、ここに書いてございますように九二・七%が、上場企業のうち、これはほとんど問題がない、心配がないと思われる会社であります。

 そこに、「上場企業(不良債権予備軍)」と一番右の欄に書いてございますが、これは、各企業の純有利子負債と営業利益率を比べてみましたら、六%以下の企業でなおかつ株価が百五十円以下の企業をとってみますと二百四十七社、割合でいいますと七・三%であります。ここは、純有利子負債営業利益率というのが平均して二・五%しかありませんから、現在の貸出金利も二・四とか二・五というのが平均かと思いますし、元本は払えない、それから上乗せ金利がもし実施されるようだったら払えない、いわば限界的な企業と思いますが、これが二百四十七社あって、そこが抱えているというか借りている銀行借り入れが二十九兆四千億円ぐらいある、こういうことが出ているんですね。

 それから今度は、そういうのを除いた非上場企業の方を見てみますと、銀行借り入れが三百二十六兆円、そして純有利子負債営業利益率は平均すると五・六%。問題は従業員の数のところでございまして、従業員は、全企業で三千九百万人のうち、中小企業と思われる非上場企業に二千九百八十万人、七五・六%存在するというのがこの表からわかると思うんですね。

 要するに、先ほどの話を前提にしましても、中小企業は銀行借り入れに依存をしている経営をしているというのがこれを見たらすぐわかりますね。従業員も非常に多い。ここに従業員が多い。上場企業の方は、限界企業というのはパーセンテージでいうと大したことない、しかし、約三十兆円の不良債権予備軍的不良債権を抱えているということもわかりますね。

 これを、つまり中小企業と大企業を一緒くたにだだっと整理する、あるいはこの三年間の傾向では中小企業の方に厳しく当たっているんじゃないか。結果としてかあるいは方針としてか知りませんが、こういうやり方をすれば、共産党がおっしゃるように、不良債権処理というのはまさに弱い者いじめの不良債権処理みたいになってしまう可能性があるんじゃないか、こう思うんですが、平沼大臣、いかがですか。

平沼国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたように、この三年間で民間金融機関の貸出残高が減少しているのは事実でございますし、また、金融機関による貸し渋りというような現象も顕著になってきたことは事実であります。

 そういう中で、今お示しをいただきました、全体の企業の九九・九%を占め、雇用の七五%を受け持って日本の経済の屋台骨を支えている、日本経済の原動力になっている中小企業が大変厳しい状況に置かれている、こういうことはそのとおりだと思っておりまして、私どもといたしましては、政府系金融機関等を通じて、セーフティーネットでございますとか、また、三年間特別保証制度を実施し、さらには、新たな信用保険制度、こういったものも創出をして、私どもとしては、この日本の経済の原動力になっている中小企業にきめ細かく対処し、この年末も金融庁と相談をしながら綿密に対応していかなきゃいけない、このように思っています。

仙谷委員 柳澤大臣に最後にお伺いしたいわけですが、やはりそこでお示ししたように、不良債権総額は、これからこういう景気、経済が続いていくとふえるというか、あるいは潜在的な不良債権が顕在化するということは相当蓋然性が高い。そのことを処理する体力が、先ほどから申し上げているように、都市銀行だけではなくて果たしてあるのかないのか。これは甚だマーケットから見ると懸念を持たれる状態になっている。そういう意味では危機だ、そういう本気の危機意識を持って、今までのその日暮らしのような中途半端なやり方が間違っていたという厳しい自己反省のもとに物事に対処していただかなければならないんじゃないですか。いかがですか。

柳澤国務大臣 非常におもしろい計表を見せていただきまして、私も、今も興味深く見ておりましたが、さらによく検討させていただきたい、こう思います。

 しかし、一応二・五%、先ほど言った純有利子負債営業利益があるということで、それに対して支払い利息は二・二でございますから、しかも二・五というのは平均だとすると、その上も半分ぐらいあり下も半分ぐらいあるという感じだろうと思いますので、したがって、仙谷委員は非常にこれを深刻にごらんになられて、私も深刻だということは変わりはないんですけれども、これは、後にまたよく分析してみますが、まあそんなに望みもないことはないじゃないか。

 それからまた、設備投資の資金というのは、これはやはりキャッシュフローもありまして、償却がどのぐらいできているかということもあるはずですから、さらに二・五に何がしかの償却が上乗せするということであれば、全く見込みのない話ではないということをこの表は示しているんではないか。

 まことに仙谷委員には恐縮ですが、そんなこともちょっと思いましたが、いずれにせよ、委員が私への質問のたびに警告をしてくださるような緊張感を持って私自身もこの問題に取り組んでいきたい、このように考えております。

 ありがとうございました。

仙谷委員 かわります。

野呂田委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、古川元久君。

古川委員 民主党の古川元久でございます。

 最近、デフレという言葉を聞かない日はないくらいあちこちでデフレという言葉が飛び交っているわけでありますけれども、きょうは、そのデフレ対策について御質問させていただきたいと思います。

 先日発表されました年次経済財政白書でも、日本経済がデフレの状態にあるということを指摘されておりますし、このデフレについてはかなりのページ数を割いて言及しておられますが、また、同じ日に発表されましたOECDによる対日経済審査報告でも、日本はデフレがさらに深刻化し、デフレスパイラルに陥る可能性が否定できない、そんな指摘がされていると思います。

 先ほど竹中大臣は、構造改革には攻めの構造改革と守りの構造改革があると言われましたけれども、その攻めの構造改革をしていくためにも、守りの構造改革としてのデフレ対策というものをどう打っていくのかということは、これは喫緊の課題だというふうに私は考えております。中長期的には、このデフレにどう対応していくかというのは、これは構造改革を進めていくということが重要なのはもちろんだと思いますけれども、しかし、構造改革の進展というものは同時に強いデフレ圧力をもたらすことも事実でありまして、その構造改革を進めるためにも、デフレ阻止をどうしていくのか、短期的に効果的なそういう対策というものを考えていかなきゃいけないんじゃないかと思っています。

 その短期的にデフレを食いとめる政策手段としてどのようなものが考えられるかというふうに考えてみますと、白書などでは、それは、これまでの一連の金融緩和策に加えて物価安定目標の導入を考えているように読むと見えますし、また、新聞報道などによりますと、先週の十四日に行われた経済財政諮問会議の中で示された経済財政の中期展望の素案の中で、インフレ目標といいますか物価安定目標というものを、具体的に導入を検討するというようなことが議論されたというような報道もされております。

 このデフレ阻止の政策手段としては、物価安定目標の導入というのが効果的で好ましい政策手段として考えておられるかどうか、竹中大臣の御所見を伺いたいと思います。

竹中国務大臣 デフレという大変重要な問題に関する御質問であります。

 委員よく御承知のように、実は、経済学の教科書を引きますと、インフレという章はあるのだけれども、デフレという章は全くない。それだけ非常に新しい現象に我々は直面していまして、政策のフロンティアで試行錯誤を繰り返しながら新しい政策面での挑戦をしなければいけないというところに直面しているのだと思います。

 先般の経済財政白書等々では、実は、そういったデフレの問題点を厳しく指摘させていただいた上で、幾つかの政策を検討しなければいけないということを議論させていただいているわけでありまして、今の時点で、どの特定の政策が必要であるというような結論を得ているわけではございません。また、諮問会議でも、今御指摘のあった物価政策目標が必要であるとか、そういうような結論に達しているわけではございません。

 議論としては、やはり、デフレとは一体そもそもどういうふうな状況であるのかというような議論の整理をまずしなきゃいけないという段階でありまして、その意味では、スタディーグループというのを関係省庁等々で結成してその議論を整理するという、今はまだそういう段階でございます。

 前半でお尋ねの短期的な対応としては、これは、やはり金融政策の効果がうまく浸透するように不良債権の問題を解決していかなければいけない。一方で、やはりある程度の実需、需要をつくっていくような対策も必要だ。そうした問題につきましては、さきの改革先行プログラムでありますとか緊急対応プログラム等々でそれなりの措置をさせていただいているという段階であります。

古川委員 今の段階だと、まだ勉強している、そういうことの理解になってしまうのですかね。しかし、この白書なんかを見ていると、つらつらと物価安定目標を導入することのプラスとマイナス面を比較しながら、最後のところでは、「日本銀行はデフレ圧力を和らげるためのさらなる施策を積極的に検討すべき段階にあると考えられる。」ということが書いてあるわけですね。

 そうなると、これを素直に読むと、今は、物価安定目標については、別にプラスでもマイナスでもない、非常にニュートラルのような考え方のように聞こえましたけれども、実際にはこれは前向きな方向で検討を進めていく、そういうふうに読めるのじゃないですか。違いますか。

竹中国務大臣 前半で申し上げましたように、新たな政策的なチャレンジをしていかないとこの新しい問題は解けないというふうな認識を持っているわけです。では、どういうチャレンジがあるかということに関して、一つの検討すべき視野に入ってくる問題としてこのような物価安定目標というのはある、そのような認識を持って実はこの経済財政白書を書かせていただいております。

 しかし、かといって、これをすぐ政策に移せるような状況であるかとか、そういう点については、そこにまさに書きましたように、これはメリットもデメリットもありますし、御承知のように、専門家の間でも意見がもう真っ二つに分かれている状況です。政府の中で幅広いコンセンサスを得るために、こうした問題を視野に置いて今まさに議論をしたい、そういう状況であります。

古川委員 あえてもう一歩お伺いしますけれども、これは一つの手段だということであれば、ほかに手段があるのですか。つまり、書かれているものを見ると、これしか挙げられていないわけですよね。政策手段として幾つかのオプションというのであれば、この物価安定目標以外に、では、短期的なものとして考え得るものとしてどんなものが具体的にあるのですか。示してください。

竹中国務大臣 物価安定目標というのは、目標であって、実は手段ではないわけです。たとえ目標を設定したとしましても、では、その目標を設定するためにどういう手段があるのか、そういう議論の組み立てになるのだと思います。

 手段としては、これはもちろん今議論の整理の段階でありますけれども、当然幾つかのものが考えられると思います。まず、何といっても、これは金融的な現象でありましょうから、金融面での対応が必要ではないのだろうか。いやいや、需要と供給のギャップ、需給ギャップという、実需によっても影響を受けているはずだから、やはり実需をつけるための政策が重要だ。恐らく、これをやれば必ずうまくいくというような魔法のつえはないので、幾つかの政策をきめ細かく組み合わせるということになるのだと思いますが、これは、通常議論されているデフレの要因の分析、それに対応策として必要とされる金融的手段、実需面での手段、そういったものの組み合わせになるということだと思います。

古川委員 ぜひ、その具体的な手段についてちょっと議論に入っていきたいのですが、では、もし仮に物価安定目標を設定するとしたら、この設定する主体については日銀と、あと政府と、そして日銀と政府との合意で設定というその三種類が考えられるというふうに書いてあるのです。しかし、最後の方を見ていくと、これはどう見ても、何か最終的には主体は日本銀行というように書かれているように思うのですけれども、もし物価安定目標を設定するとすれば、この白書を見ていくとなると、まあ新聞報道ですからどこまで正確かわかりませんけれども、経済財政諮問会議なんかでの導入を検討するというインフレ目標の場合には、やはりこれは日銀が設定する、そんなふうに考えていらっしゃるのですか。

竹中国務大臣 そういう物価安定目標がいいかどうかということの議論を始める段階でありますので、それをやるとしてどこがやるかというのは、ちょっと仮定の質問になりますので、いかんとも今の段階ではお答えのしようがないわけでありますけれども、今一般的に議論されている段階では、やはりこれは幾つかのタイプのものがあるということなのだと思います。

 これは、実際にインフレ目標を掲げている国で見る限り、中央銀行が掲げているところもあるし、政府が掲げている、ないしは政府と中央銀行が協力して目標を議論しているところもある。これは、それぞれその国の制度のあり方、政府のあり方、中央銀行のあり方、根本的な問題とかかわっているのだと思います。であるからこそ、やはり性急にその答えが出せる問題ではない、じっくりと議論しなければいけない問題だというふうに思います。

古川委員 私がなぜこれを質問しているかというと、そうであれば白書でもやはり中立的な書き方をすべきだと思うのですけれども、これを見ると、どう見ても、主体は三つあると言いながら、最後のところのパラグラフで「日本銀行はデフレ圧力を和らげるためのさらなる施策を積極的に検討すべき段階にあると考えられる。」という形で、どう見てもこれは日本銀行を想定しているように読めるのですけれども、速水総裁、いかがですか。

速水参考人 私どもは、物価の安定ということをまず第一に目標として掲げなければならない。物価の安定を通じて経済の安定的成長を図っていくというのが日本銀行の目的でございます。白書に物価安定数値目標といった言葉が使われて、これがいわゆるインフレターゲティングのことになっていくと思うのですけれども、私どもは、金融政策運営の透明性を高めるというそのための手段として、インフレターゲティングということは一つの検討課題かもしれません。しかし、我が国の物価動向や金融政策を取り巻く環境を踏まえますと、現時点でこれを採用することは適当でないと考えております。

 長期国債の買い入れ等につきましても、銀行券の発行残高という歯どめのもとで増額するということも決めております。これまでのところ、潤沢な資金供給を行ってきておりますので、長期国債の買い入れ増額も、今必要な状況になっているとは考えておりません。

 日本銀行は、デフレを防止するという強い決意のもとで、世界の中央銀行の歴史にも例のないような思い切った金融緩和策を継続してまいりました。今後とも、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針であります。白書でも指摘されておりますとおり、金融政策というのは現在の経済を全快させる万能薬ではあり得ません。日本経済が現在の不況から脱するのには、不良債権処理や経済産業面での構造改革、適切な財政運営が極めて重要であることを改めて強調させていただきたいと思います。

 金融はかなり先に、先んじて緩めております。これで構造改革が出始めて効果が出始めてくれば、金融緩和の効果はさらに大きく出ていくことだというふうに確信いたしております。

古川委員 今、日銀総裁のお答えによると、これに幾ら書かれても日銀がそういうことを設定するというつもりはないとおっしゃっているわけですよね。であれば、やるのだったら、もし設定するのだったら、これは政府しかないということになるのじゃないのですか。

 そこで、どこが設定するかというのはまだ仮定の話で答えられないというのであれば、それ以上ここでは聞きませんけれども、では、先ほどの竹中大臣の話で、要は目標だけ設定したって、それは何の、まあアナウンスメント効果はあると思いますけれども、それ以上、実際にデフレを阻止するような効果的な効果は及ぼさないと思うのですね。それであれば、では具体的にどういう手段があるか。

 まさにそこの、竹中大臣がおっしゃった部分になると思うのですが、そこについては、今速水総裁が先回りしてお話をいただいたのですが、この白書の中では長期国債の買い切りをふやせということが指摘されているわけですね、一つの手段として。一つの手段というか、ほかに書いていないですよね、これ。ほかにここで具体的な政策手段として効果の出そうなものとして書かれているのは、長期国債の買い切りの増加だけですよね。ところが、それについては速水総裁は、それも必要ないというふうに言われるわけなんですけれども。

 では、この白書で規定されている中で、ほかにどんな、具体的な効果のあるような政策手段というのはあるのですか、大臣。

竹中国務大臣 まさにそれが政策のフロンティアであって、専門家の間でも意見が分かれているからこそ議論を詰めて整理したいというふうに何度も申し上げているわけであります。

 物価の水準目標の観点に関しても、例えば日本銀行はゼロインフレに戻るまで金融緩和を続けるというふうにことしの三月に言っているわけですから、これは実は、分析者の中には、非常に緩やかな物価目標を既に持っているのではないだろうかというような見方をする人もいる。金融の緩和の実態についても、金融は確かに過去にないほど緩和している、しかし、名目金利から物価上昇率を引いたいわゆる実質金利は相当にまだ高いのではないかという議論もある。専門家の間でもそういった議論が分かれている段階で、したがって、そういった議論をすべて集約してみようというのが今の段階です。

 それで、直接お尋ねの、どういうやり方があるか。国債の話はそこの例示として出てくるわけですけれども、マネーとは遠い関係にある資産を何らか購入するというのが当然のことながら考えられる方法で、マネーと代替的ではないということだと思いますが、そういう意味では国債というのが一つ考えられますが、ほかの資産についても、当然、これは御承知のように、さまざまな方がいろいろな資産を挙げておられる。今の段階では、したがって、そういうものを一つ一つ検討するということを申し上げるしかないと思います。

古川委員 ということは、これは白書では触れられてなくて、そこは一定の良識があるのかなと思ったのですが、例えば、CPや社債など民間の債務とか、株式や土地など、そういうものまでオプションとしてはこれからの中では入り得るということですか。そんなことになったら、これは相当な、逆に構造改革をおくらせるような、そういうリスクもあるのではないですか。

竹中国務大臣 今、土地というようなものも挙げられましたけれども、そこまでいきますと、やはり中央銀行として別のリスクが多分大き過ぎるのだろうと思います。もちろん、それを判断するのは金融専門家としての中央銀行。これは、政策手段は政府から独立して御検討いただくということになると思いますが、私が理解しているエコノミックスの常識からいいますと、土地とかそういうところまでいきなりいくというのは、いかがなものか。しかし、そういう極端な話にむしろいかないまでも、先ほど申し上げたように、マネーと代替的な資産というようなことは、これは専門家の立場で御検討をいただいてよろしいのではないかなというふうに思っています。

古川委員 もちろん土地はリスクがあるわけなんですけれども、今や世界の見方は、やはり日本の国債だって、これは相当リスクがあるものというふうに見られているわけですよね。ことしになってから国債が何回格下げされたか。S&Pもムーディーズも、ことしになってから三回格下げしているのですよね。

 こういう格下げが続いているわけなんですけれども、かつては、大蔵省時代は、格下げするのはけしからぬというような声もあったのですが、今は、これは三回格下げされても何ら当局からは文句もなければ反応がない、全く無視という状況なんですけれども、この格下げが三回もことし行われたということについて、財務省としては、これからもこういう形でずっと無視を続けていくつもりですか。

村上副大臣 古川委員の御質問にお答えします。

 格付機関への対応については、御高承のように、委員もMOFに在籍されておわかりのように、各機関の格付チームが日本に訪問する際に、先方の求めに応じて国債市場の状況について適正に説明を加えているつもりであります。そういう民間会社の最終的判断については、国債の当事者である政府としてはコメントをすることは差し控えたいと考えております。

 また、先ほど来お話ございますように、構造改革についてやはり積極的に推進することによって、財政の構造改革、それから金融の構造改革、それで経済の構造改革をやって、そういう経済基本を運営としてやっていって、今お話のあったデフレスパイラル等を回避しながら、十二月十四日の緊急対応のプログラムを実質的にやっていく。そして、十三年度の第二次補正の編成や平成十四年度の実質的な予算に対応して、その実績を見ていただきながら、日本経済についての信認が高まっていくことを期待している次第であります。

 そういうことで、国債は正直言って円滑に消化されておりまして、国債発行の当局としましては、国債の安定的な消化について現時点においては問題があるというふうには考えておりません。

 以上であります。

古川委員 政府としては、民間のやることには口は出さない、消化できるんだから問題ないじゃないか、そういうお答えですよね。

 ここで柳澤大臣にちょっとお伺いしたいのですが、先日十日の記者会見で森金融庁長官が、二〇〇五年から始まる予定の新しい自己資本比率規制での国債の取り扱いについて、格下げが続いても銀行による国債の保有リスクを引き続きゼロとみなすというふうに発言されたという報道がされたのですが、柳澤大臣、この発言は金融庁として決めたことというふうに受け取ってよろしいですか。

柳澤国務大臣 金融庁として決めたことかと言われますと、別段そうしたことを形式的に決めたという措置をとったことはないのですが、そもそもが、今御案内のように、BIS規制、こう言いますけれども、バーゼルにあります銀行監督委員会の方で新しい信用リスクの計測を精緻化する等の協議をしているわけです。そういう中で、国債についても論議があるわけですが、今のところ原案が各国の議論の対象になるということではない、つまりいわば原案が見過ごされているという状況であります。

 それは恐らく、政府、中央銀行の自国通貨建て借り入れについては、当局の考え方で低いリスクウエートを適用してよろしいですというようなことがあるせいだろうと私は思っておりますが、いずれにせよ、国債のいわゆるデフォルトのリスク、信用リスク、こういうものについて、格付のいかんにかかわらず、私は日本国政府に何か考えなければならない問題がそこに存在しているとは思いません。

 日本は外債であってもデフォルトを起こしたことはない名誉ある伝統を持っておるわけでありまして、私は、この点は古川委員よくお考えいただきますように、国債が政府によるデフォルトの危機にさらされるというようなことを考えなきゃならないなんということはおよそないんではないでしょうか。

 日本国の政府は、まだ税負担も一般的にいったら非常に低いですね。消費税も世界のレベルからいったら非常に低いレベルにあるわけでありまして、私はそれだからといってサチュレートさせていいというようには思っておりません。これはもう、まさに今の小泉総理はそこを非常に危機感を持ってコントロールしようとされているわけでありまして、そういうことからいって、私は別に、今、バーゼルもそうだし、我が国もここを大議論しなければならない問題が横たわっているとは認識していないのであります。

古川委員 竹中大臣、今のお二人のお話を聞いていてどう思われたかですが、要は、政府の方は、とにかく消化できているんだし問題ないよ、一民間機関が格付しているだけだと。リスクウエートをゼロにすれば、今でも日本の銀行は、国債はリスクウエートがゼロだからと国債を買っているわけですよね。世界のマーケットの中では、日本の国債は、明らかにこれは格付が下がっていけばリスクウエートが高まってくる。しかし、日本の中だけでは、これはリスクウエートもゼロで、銀行はリスクウエートがゼロであればということで、自己資本を減らすこともないからというので買っていく。そういうふうになると、日本の中だけで、身内の中だけで、国債は消化されているし大丈夫だ、そういうまさに共同幻想に酔いしれているような、そういう状況になるんじゃないですか。

 今や、IRという言葉がありますよね。今構造改革と言われている中で、民間の企業に対してはとにかくそういうインベスターリレーションズ、投資家の人たちにちゃんと説明しろ、そういう関係についてやはり努力をしろというふうに言われているわけですね。コーポレートガバナンスがまさにその一つですよね。

 そういう中で、国もマーケットから資金を調達するという、国債を発行する立場にあっては、やはり同じようなインベスターリレーションズ、投資家に対してちゃんと説明するというのはやはりあるんじゃないですか。それがなくて、内輪でちゃんと回るからと。リスクがなければ、それは買いますよ。そういう世界をつくって本当にこれでいいと思いますか、大臣。いかがです。――柳澤大臣じゃなくて、竹中大臣。

柳澤国務大臣 大変恐縮ですが、ちょっと補足させていただきます。

 銀行が、だからといって信用リスクがないから野方図に買うという構造にはなっていません。これは、銀行は、もう一つ存在する市場リスク、金利の変動、つまりこれは価格の変動ですね、国債においては。それについては非常に敏感なんです。ですから、今古川委員が前提とされてお話を展開されたようにはなっていないんです。

 ですから、非常に期近なものにするとか、あるいは数量もある程度減少させたり、いろいろな工夫をしているということが他方ありますので、そこは信用リスクの問題と市場リスク、金利リスクと言ってもいいんですが、これは分けて議論をしないと正確な議論ができないというふうに思いまして、ちょっと補足をさせていただきました。

竹中国務大臣 国債の格付が下がっている中で国債の金利は上昇していない、これは大変ある意味で、考えてみたら興味深い事実があるわけです。これは、考え方は、物すごく単純化すれば、格付が間違っているか、市場が御指摘のように共同幻想を持って何か間違っているか、どちらが正しいかはよくわかりません。しかし、こうしたことがリスクがあるということを考慮に置いて運営していくのが政策当局の責任だと思います。

 したがって、まさにこの格下げという、これは一民間機関が行っていることでありますけれども、市場の声の一つとして我々は謙虚に聞かなければいけない。そのためには、やはり財政の規律が回復されて、その財政が持続可能性、サステーナビリティーを回復していけるんだということを政府としては示さなければいけない、その点に尽きるんだと私は思います。

 それが委員の言われるまさにIRだと思いますが、今回、今議論させていただいております経済財政の中期展望、これは五年、中期展望でありますけれども、その中で、マクロ経済、財政収支、国債残高がどのような形で推移しているか、その中で、将来的にプライマリーバランスを回復するということが可能だという姿を示すことによって、委員が言われるIR、財政の規律回復は可能なんだということをぜひ示したいと思っています。

古川委員 そうであれば、この白書で書かれてあるように、まさにデフレ阻止の一つの政策手段として長期国債の買い切りをやるなんというのは、やはりリスクが大き過ぎるんじゃないですか。むしろ、本当にデフレ対策、デフレ阻止だということを短期的なことで考えるんであれば、そうした金融政策というよりも為替政策を前面に立てて、これは為替政策について責任を持っている政府が主導して円安政策をとるというような形でやはり明示すべきじゃないですか。

 ここのところ、急速に円安が加速していますけれども、いろいろな報道を見ますと、これは政府が円安を容認しているからだとか、あるいはエンロンショックだとかいろいろな話があるわけなんですが、ここのところの円安の加速については、これは政府も、そういう円安政策、そういうものを容認している、そういうふうに理解してよろしいですか、塩川財務大臣。

塩川国務大臣 私は、為替はやはり市場原理で決まるものだ、そういう信念を持っておりますので、今ここで、円安であるとか円高であるとかいうことの言明は避けたいと思っております。

 しかし、先ほど来ずっと聞いておりまして、国債の格付について政府が無関心であるとおっしゃっておるが、これは大変な間違いだと私は思っております。

 そうじゃなくて、国債に対しましては、絶えず我が方としては十分な配慮をし、国際的に信用を維持するような努力をしてきておりますし、また現に、国債の格付の一つの理由をいろいろただしてみますと、やはり不良債権の整理がそれほどスピーディーにはという、欧米諸国と日本との違いが十分認識されておらないところに一抹の誤解があるように私は思っておりますし、そういうようなものがそこにあるということは、私は一つの大きい理由であると思っております。

 それともう一つ、国債の増発はもうこれで極力抑えていくということは国際的にも認知されましたので、私は、国債の格付について、当面の間はこれで安定した推移をするのではないかと思っておりまして、国債の格付並びに国の通貨の維持ということにつきましては、政府は一段の関心と努力をしておるということは言明しておきたいと思っております。

古川委員 時間が来ましたので最後に一つだけ、日銀総裁と、あと竹中大臣にお伺いしたいと思います。

 日銀の中でやOECDの報告の中でも、日銀の外貨資産とか外債の購入を求める声なんかが出ていますけれども、私、今も申し上げたように、やはりデフレ阻止ということであれば、政府がまず円安を目指す、そういう姿勢を明確にした上で、政府がまず主導権をとった上で、それに日銀もこたえるという形で、外債、特に米国債の購入というものをやっていく、そういう形で踏み切るべきじゃないかと思います。そういう形でなら日銀総裁も受け入れることは可能じゃないかと思うんですが、その点について日銀総裁の御意見と、そして竹中大臣の御意見をお伺いしたい。それで質問を終わりたいと思います。

速水参考人 為替につきましては、今、塩川大臣言われましたとおり、これは市場が決めるものでございまして、政府がいろいろ動くというのは難しいことでもありますし、まして私どもはそういう権限を持っておりませんから、外債を買うということはやはりドルの需要をふやすということで、為替は動きます。そういうことを私ども単独でやることはできません。

 また、私が将来の、これからの政策につきましてここで申し上げる立場にはございませんので、ここで失礼させていただきます。

竹中国務大臣 為替、円のあり方に関しては、やはりこれはファンダメンタルズに基づいて、経済の内生変数として決まってくる。ファンダメンタルズからかけ離れたときに為替当局がその修正をするということはあり得るわけですけれども、むしろ、委員の御指摘からいうと、そのファンダメンタルズがそういう方向に行くような国内のマクロ政策の組み合わせが重要なのではないかということなのかと理解をいたします。

 もう一つ。外債は、これはテクニカルな手段の問題でありますから日本銀行が御検討になることだと思いますが、現実問題として、日本銀行は外債を持っていらっしゃいます。そうしたことも踏まえて、先ほど申し上げましたように、円と代替的な資産を購入して国内に流動性をどのように供給できるかというような範囲で御検討いただくべき問題だと思います。

野呂田委員長 これにて古川君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 限られた時間でありますので、きょうはペイオフとその背景の金融システムへの認識についてお伺いをいたしたいと思うんですが、その前に、与党の事前審査について少しお伺いをさせていただきたいと思います。

 総理の方から、与党の事前審査を受けないと政策が決定できないということにいろいろ弊害が言われているとか、政調会、総務会の審査を受けないと決定できない形だと果たして改革が進むのかどうか心配だと、また、与党の事前審査、承認を簡略化する方向を検討するように、こういう指示が出ているとも言われておりますが、とりわけ与党との関係で御苦労されておられるんではないかと思います柳澤大臣に、与党の事前審査について、省略をするという総理の方向についてどうお考えか、通告をさせていただいていませんが、お伺いをしたいと思います。

柳澤国務大臣 いろいろな考え方があろうかと思うんですが、私の考え方はいまだに少数説ですね。しかし、せっかくのお尋ねですから、あえて申させていただきます。

 どういうことかというと、議院内閣制で、議会に多数を占める党の党首が内閣の首班になるわけですね。その場合に、議会の多数派勢力との間の調整は何で行うかというと、一般的に言って、この調整は人的に行う場合と事項的に行う場合があるという考え方を私は持っているんです。事項、政策。

 私は、やはり原理的に言っちゃうと、政策的事項によるコントロールはすべきでないというふうに思っています。もしその政策が気に入らないんだったら、その人間を首にすればいい、その立場からずりおろせばいいということです。だけれども、それは原理論であって、そうは言い条、実際仲よく円滑に、日本的に政治の効率を上げるには、やはりその原理のとおりにはいかないだろうというふうに私は思っています。

 ですけれども、何もかも党が決めた政策でなければだめだと。ここで私、今はそういう立場にないんですが、質問に答えなきゃならない説明責任を持っていますね。その人間が、自分が決めたでもない政策を説明しなきゃならないというのは、何ですか、これは一体。全くこっけいきわまりないことだということを私はかねて思っているんです。

 ですから、私は、それをコントロールするのは、やはり人的に基本的にやるべきだと。もしその人間が展開する政策が気に入らないんなら、それをやめさせれば事は済むわけです。自分らの気に入る政策をやる人間を首班に送り込めばいいというだけの話。これは原理ですよ。原理論的に言うとそうだ。だから、しかしそうはいかないから、実際にはいろいろ調整あるんですが、それはその原理を踏まえてやらなきゃいけないというのが私の考え方です。

松本(剛)委員 極めて明快にお答えをいただいたのではないかなというふうに思います。

 もう一つ、これはもう大臣にお願いだけでありますが、今与党と政府の関係についてお伺いをさせていただいたわけですが、政治と官僚組織の問題についてもいろいろな改革が今求められている時期ではなかろうかと思います。

 これからペイオフについてお伺いをさせていただきたいと思うんですが、大変残念ですが、国会での審議を有意義なものにしていくために、幾つかあらかじめお伺いをできるようなことはお伺いをしたいという思いで、実は金融庁さんにもお問い合わせをさせていただいたわけでありますが、ペイオフについていろいろと資料をお願いして、最初に私のところにいただいた資料は、日銀さんの金融経済月報のコピーと預金保険法のお届けをいただいたわけでありまして、金融庁さんからもっと勉強しろと御指摘を受けたのかなと思いながら拝見したわけであります。

 特にペイオフについて、この影響を考えるときに、今のそれぞれ金融機関が持つ資産が来年三月のペイオフで、対象も、引き続き全額を保護される流動性のもの、一千万上限になるもの、また今回から保護対象から外れるものの三種類に分かれるかと思うんですけれども、そういったデータについてもお出しいただける範囲でお願いをしたいということでお願いをしたんですが、最初は、そういうデータはないというお話でありました。ウオッチをするというお話であったので、そういうデータがないというのはおかしいのではないかということを申し上げると、いや、実はウオッチをしていて、データはあるけれども出せない、こういうお話でありました。中身をきちっと御説明いただければ我々も納得できるものは納得するわけでありまして、最初からそういう形であると、国会の審議そのものも非常に、数字のようなところから積み上げなきゃいけないということで、中身、時間がむだではないかと思いますので、ぜひお願いをしたいということを申し上げたいと思います。

 本論のペイオフの話に入りたいと思います。

 もう何度も聞かれておるので柳澤大臣もあれかと思いますけれども、先日の財務金融委員会でも、もしペイオフ解禁が延期になれば、それにふさわしい政治的責めを負うというようなことを我が党の長妻議員の質問に対してお答えになっておられましたが、今のままこの三月を順調に迎えてペイオフを実施することができるという御認識、予定どおり実施をするという御認識でよろしいわけでしょうか。特に追加的施策が要るとかいうことではなく、今のまま順調にいけばいい、こういうお考えでよろしいのでしょうか。

柳澤国務大臣 ペイオフをするということを全体として考えた場合に、来年の四月の一日に、金融機関の窓というか、ドアをあけるところはすべて健全ということでなければいけないと思うんです。しかし、それがずっと続けばこれはもう何の問題もないわけですけれども、経済は生き物で、経済の推移があり、その中で金融機関の財務内容というのもいろいろに変遷をするわけです。そういう中で不幸にして破綻というようなことが起こるわけですけれども、私どもとしては、なるべく四月一日以後、通常の経済の変動には耐えられるような財務体質、財務状況を持った金融機関にしたいものだということでございまして、できればそういう無事な状況というものが長く続くような体制で四月一日に臨みたい、こういうように思っているわけであります。

 それと同時に、仮に将来そういうペイオフの事態になったときにも、私どもとしてはできるだけ早くこれを処理して、現実にペイオフということで預金者の皆さんに迷惑をかける負担の率というものはもうできるだけ小さいものにしたい、これが私どもがこれからの金融行政で目標にすべき事態であろう、こういうように思っているわけでございます。

 しからば、今のままという松本委員のお話ですが、どれをどういうふうに考えていらっしゃるかでございますけれども、私どもとしては、これから先三月三十一日の間に、ドアをあける金融機関ができるだけ健全な、ある程度の、防衛用語で言えば抗堪力ですね、いろいろな経済の変動に対してこれにあらがい耐える力を持ったものに、そういうものをラインアップしたい、こういうことのために検査もやり、また場合によってはいろいろな早期の措置をしていくということがもちろん前提でなければならない、こういうように思っているわけであります。

松本(剛)委員 もう残された期間は四カ月ということになろうかと思います。今早期の措置とおっしゃったのですが、必要があれば、検査を行った結果、資本の注入を行う、こういう理解でよろしいのですか。

柳澤国務大臣 基本的に資本の厚みということですから、早期是正措置というスキームがありますので、もしそういった、やや資本が少ないというようなところについては、今言ったようなシステムのもとでその是正を求めていくという措置が必要になる、こういうことでございます。

松本(剛)委員 資本注入が必要ないということではなくて、場合によっては必要だ、こういう理解でいいわけですね。

柳澤国務大臣 資本注入は、現在、三月三十一日までにできるのは、協同組織形態の金融機関でございます。それ以外のものについては単純に早期是正措置で資本注入ができるということではありません。早期是正措置というのは、すべからく自力でやるというのが前提になっているというふうに私どもは解して、これを運用させていただいておるわけでございます。

 その他の協同組織形態でない金融機関の資本注入については、私どもは、預保法百二条、いわゆる危機対応というのでしょうか、そういうものに対応したものを考えている、こういうことでございます。

松本(剛)委員 危機対応の方は特に必要なくて三月三十一日のペイオフを迎えられるということでよろしいのでしょうか。

柳澤国務大臣 危機対応については、私、従来から申し述べておりますように、そうした事態がいつあらわれても、そういう事態であると我々が認識をすればこれについてちゅうちょなく法律の発動を考えておるということは、かねてから申し上げているとおりであります。

松本(剛)委員 必要ならば行うという理解をさせていただいていいのかな、このように思います。

 速水総裁にもおいでをいただいておりますが、総裁の会見等をお伺いして、このペイオフについて、経営課題への取り組みなどをさらにスピードアップさせてペイオフ解禁に移行することを強く期待したいということは、現段階ではまだ一定の条件が残っているというふうにも読み取れるわけですけれども、速水総裁の御意見を伺いたいと思います。

速水参考人 ペイオフは、もともと解禁するかどうかは国が適切に判断さるべきことでございまして、私どもがそういう立場にはございませんけれども、私どもとしての意見を申させていただきますと、やはり今おっしゃいましたように、この問題の大きなポイントは、金融システムの安定度合いというものをどう見ていくかということがあると思います。

 円滑にペイオフ解禁を実施していくためには、各金融機関が今年度末までに不良債権問題を初めとする重要な経営課題を克服していく道筋を明確に示して、市場などの信認を十分に回復することが不可欠であるというふうに思います。

 来年四月のペイオフ解禁までに残された時間は多くございませんけれども、各金融機関がこの課題についての取り組みをさらにここでスピードアップさせて、円滑に進めていくことが必要だと思っております。

 どういうことかといいますと、各金融機関が不良債権の克服を初めとして経営課題について明確な克服の道筋を示すということ、またそれを通じて市場の信認を回復していくということが大事だと思います。

 来年四月のペイオフ解禁までに残された時間は多くございませんけれども、私どもとしては、各金融機関がそうした経営課題への取り組みをさらにスピードアップして、円滑にペイオフ解禁に移行することを期待しております。解禁時期をずるずると先延ばしさせていくことはやはり内外の不信認につながりかねないと思いますので、予定どおり進められていくことができればよいというふうに思っております。

松本(剛)委員 一つお聞きするのを忘れておりました。先ほどの与党の事前審査のところで、柳澤大臣の大変明快なお答えをいただきましたので私お伺いをするのを忘れておりましたが、このペイオフについて、与党の一部でははっきりと再延期論というのがございます。そのことも念頭に先ほどの御回答をいただいたのだろうというふうに思います。

 武部大臣は、私お願いをしていなかったのでお帰りになったと思うんですが、麻生政調会長のどこかの御発言で、銀行を信用しろと言っても、それは牛を食えと言っているのと一緒だ、こういう表現がございました。ここでなぜ牛が出てくるのか私もよくわからないのですが、これはどちらの意味からも大変議論の余地のある御発言ではなかろうかというふうに思うんですが、また野田党首も、ペイオフ解禁をタリバンのように言わない方がいいと。

 今の情勢でタリバンというのは決して、肯定的な意味でお使いになっているとはちょっと思えないわけでありますけれども、今のシステムでは、与党の政調会、総務会で事前に審査をされて政策が出てくるというシステムになっているのではないかと私は理解しているわけですが、私案とはいえ、一つのかなめの政調会の会長がペイオフ再延期をはっきりと御提案になっておられるわけでありますが、柳澤大臣としては、そのことにかかわりなく予定どおりペイオフを実施する、こういう理解でよろしいわけですね。

柳澤国務大臣 私どもとしては、今申したような考え方について、先ほど言ったように、与党の方々に御理解を得て、円満にそういうことが実現されなければいけないということを考えております。

 ただ、ちょっと一つだけ申しますと、今度の場合、新しいアクションをもしとらなければ予定どおりの行動がとられ得るということでして、むしろ、これを違う方向にやるということは新しいアクションが必要である、こういうことになっておることをちょっと申し添えておきます。

松本(剛)委員 ですから、特に何もやらなければ今までどおりだということでしょうけれども、しかし、与党の第一党の政調会長が、私の案、個人的な案とはいえ、きちっと御提案をされても政策決定には何ら反映をされないということになる、そういう仕組みの理解でよろしいのかということになるかと思うんですが、それでよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 ですから、私の原理論は原理論として、調整が不要だとは言っていないわけですから、皆さんの理解を得た上で政策を遂行するのが当然だ、こういうことを申したわけでございます。

松本(剛)委員 調整が必要だということになると全然話が変わってくると思うんです。ペイオフはやるかやらないかということではないかと思いますが、やるということでよろしいですよね。――はい。

 麻生政調会長は、与党第一党の政調会長におつきになったのに政策形成に御意見が反映されないというのはお気の毒だなと思いながら、話を先へ進めさせていただきたい、このように思っております。

 残りの時間もわずかになりましたが、金融システムの安定度合いということを先ほど速水総裁からもお話がありましたが、竹中大臣におかれましても、今回発表された経済財政白書でも不良債権処理について一章を割いておいでになられるわけで、金融システムが健全性を取り戻すことが経済の再生に大変重要である、こういう御認識であろうかと思うんです。

 その中で、この不良債権処理が引き続き発生する原因に、経済環境もありますが、査定が厳格化されたということも不良債権が発生をする原因としてお挙げになっておられるわけであります。これから金融システムを健全化していかなきゃいけない中で、素直に読めば、問題が指摘されれば、その解決方法はそれをクリアするということですから、査定の厳格化が原因であれば厳格化をやめるということに、まあ、そうはならないとは思うわけでありますけれども、現在の金融のシステム、銀行の中間決算について大変いい方向に進んでいるので、引き続きその方向でというようなコメントをお出しいただいていたように理解をしておりますが、現在の状況、それから、これから査定の厳格化も引き続き必要だという御認識なのかどうか、お伺いをさせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 白書におきましては、不良債権が社会に多額存在することによって一体どういうメカニズムが働いているかということをマクロ的に分析させていただきまして、やはりこの不良債権の処理というのが経済の健全化のためには大変重要であるというポイントを指摘させていただいております。

 では、そのためにはどうするかということで、骨太の方針以降、資産査定をより厳格に行う、これはこれまでももちろん厳格に行われてきたのだと思いますけれども、それをさらに厳格化して、この厳しい経済情勢に見合ったような形で厳格化をしていただく。そういうことが現実に、先ほど申し上げた特別検査をやるというアナウンスメント等々も効果があり、現実にもそういう方向になってきているのだと思います。したがって、これはぜひそのような方向で処理を早めていただきたい。

 しかし同時に、これは先ほどからも議論になりましたけれども、その次の段階に議論が移行しつつあるのかなというふうにも私は思います。その原資をどのように今後ひねり出していくのか、そのために収益力を高めるようなビジネスモデルを本当に構築できるのか。しかし、これは厳格化された次の段階としてこういう議論が出てきているわけでありますから、いずれにしても難しい問題ではありますけれども、政策論としてはこれは前進しているというふうに思っております。

松本(剛)委員 御指摘をいただきましたけれども、原資が難しい問題だという御認識だというふうに思いますが、それでよろしゅうございますか。不良債権の査定を厳格化する、処理をする銀行の体力が必要だ、その原資という意味だと理解しますが。(発言する者あり)

竹中国務大臣 これは私、銀行の構造を分析しているわけではございませんので、まさに柳澤大臣が的確にお答えくださるんだというふうに思いますけれども。

 収益力を高めるということ、これまた骨太以来ずっと御議論して、柳澤大臣にもいろいろと御努力いただいていることでございますので、そういう議論の土俵に今入ってきたというふうに考えているわけです。

松本(剛)委員 非常に時間が限られているんであれですが、これはしかし、査定の厳格化が経済の再建のために必要だ、不良債権処理が必要だということであれば、当然それを処理しなきゃいけないわけで、その原資をどうするかということは、これは竹中大臣にとっても極めてかかわりの深い問題だというふうに私も認識しておりますので、これはしっかりしたお返事をいただきたいところでありますが、幾つかどうしてもお聞きをしたいことがありますので、先へ進めさせていただきたいと思います。

 銀行の健全性についてということで、先ほども金融システムの安定度合いということ、速水総裁の方からお話がございましたが、特に税効果会計について速水総裁の方からも会見等でお話が出ておりまして、マーケット等の評価も勘案し、税効果会計を、アメリカ並みに見ると七%というようなお話も会見でおっしゃっておられるようであります。この税効果会計についてちょっと私どもの方で質問をさせていただいておりますが、数字をお願いできますでしょうか。金融庁の方にあらかじめ御通告を申し上げておるかと思うんですが。

 最近の決算において、主要行が計上されている繰り延べ税資産は幾らなのか。また、過去五年分の課税所得掛ける実効税率というんでしょうか。それから、二〇〇〇年度だけで五倍をした場合。また、バブル最盛期の八九年、九〇年の課税所得を五倍、掛ける実効税率、それぞれの数字が幾らになっているかというのをお願いしたいと思います。

村田副大臣 松本委員から幾つかの数字について御質問をちょうだいいたしましたけれども、二〇〇〇年度の単年度の税効果につきましては今ちょっと調べてもらっておりますので、そのほかのことについて御説明申し上げたいと思います。

 主要十五行の平成十三年度中間決算において計上しております繰り延べ税金資産の額は、これは単体ベースでございますが、七兆四千億円でございます。

 そして、過去五年分の課税所得累計額ですが、これは課税申告ベースでマイナスの一千三百五十九億円でございます。

 それからバブル期の八九年、九〇年度の単年度の課税所得でございますが、法人税関係の書類の保存期間が七年ということでございまして、私どもの手元には資料がないということで、調査は大変困難だということを御回答申し上げたいと思います。

松本(剛)委員 大臣、最初に申し上げたように、これは金曜日に私お願いをさせていただいておる案件でありまして、二〇〇〇年の分を今調べていると。ペーパーでお願いしておりますので。

 本当に、速水総裁も御指摘になられたように、この税効果というのがマーケットからも非常に、懸念というんでしょうか、見られている。こういった部分がしっかりと数字で出てこないと問題があるのではなかろうかと思います。

 この税効果会計を含めて、金融システムの現在の認識について、改めて速水総裁からも、税効果会計についての御発言もありましたのでその御認識と、それから最後に柳澤大臣から御認識のお言葉をいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

速水参考人 繰り延べ税金資産という、私がかねて申し上げている趣旨は、これは目先の話でなくて、金融機関の中長期的な課題だということを申し上げたいわけでございます。

 すなわち、繰り延べ税金資産というのは、五年間分とれることになっているわけでしょうけれども、無税化が起こりますと、そのときは資本金が要るといっても、キャッシュ化できないですね。それではやはり、形の上では自己資本が多いぞと。まあバーゼルもこれは認めてくれていますからこれでいいんですけれども、アメリカなどはもう少し比率が低いんですね。そういうこともありますから、市場参加者の中では金融機関の将来の収益力の向上に対する不透明感ということがやはりぬぐい切れないところがあると思います。

 したがいまして、申し上げたいのは、中長期的に見れば収益力の向上ということと、それによって資本基盤、コアキャピタルと私ども言っていますけれども、コアキャピタルのさらなる強化を図っていくということが、金融機関が内外市場からの信認を回復するために基本的に重要なことだというふうに思います。

 そのためにはやはり収益をふやしていかなきゃだめだと思うんですね。それをここへ来て先ほども仙谷さんに申し上げたんですけれども、銀行はその方向で今貸出政策を非常に効率化しようとしております。そういう努力をしておりますから、今市場が銀行に対して非常に冷たい感じで株価が下がっていっておりますけれども、銀行自身は、この前の六兆四千億といったような不良貸し出し、不良債権整理のため、収益のほか準備金も整理に充てようとしているわけですから、この三月までに。

 そういうことを初めとしてかなり大きな改革を行っておりますから、私どももこれをよく見ながら、何か必要なことが起これば日本銀行としても、それはロンバート貸し出しとかあるいは特融とか、いろいろ緊急措置は十分ありますから、九七、八年のころに比べてそういったセーフティーネットは完備していると思うんですね。そんなことを余り心配しないでひとつ銀行に頑張ってもらいたい、そうすれば信用もふえて株価も上がっていくんじゃないかということを期待しております。

柳澤国務大臣 税効果については、私ども、企業会計の公認会計士協会における実務指針、あるいは具体的には監査法人の監査において適正といういわばお墨つきをいただいて計上しているということで、恣意的な計上じゃないということをまず申し上げたいと思います。

 しかし、それにしても、例えば今速水総裁が、アメリカの場合もっと少ないというのはもっともなんですね。その前提としては、アメリカでは、税の実務において、現実にもう処理したものを損として認めてくれるということがあるんですね。

 ですから私は、そういう意味で松本委員なぞが運動を起こしていただいて、納め過ぎている過納の分を現ナマで還付をしてもらう、そういうことをしていただくと、紙の上のものじゃなくて現実の資本として頼りがいのあるものになるんではないか、このように思っておりますが、私どもも、そういうことでいろいろな方面から実は検討をさせていただいているわけでございます。

松本(剛)委員 終わります。

野呂田委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 年末になりまして、来年度の予算編成、税制改正、また加えて二次補正予算の編成ということも話題になっております。税制改正なんかは党の方で大綱もできたし、予算編成大綱というのもできたようですけれども、拝見しておりまして、また新聞なんかで報道されるような、マスコミ報道なんかを見ましても、本当にもうはちゃめちゃで、本当にこれが構造改革なのかと言わざるを得ないものばかりだというふうに思うわけですけれども、まず二次補正予算について、竹中経済財政担当大臣にお伺いをします。

 竹中経済財政担当大臣は、以前、決算行政監視委員会で議論をさせていただいたときに、「裁量的に財政を動かすということは、現実問題としては非常に大きなデメリットを伴う」というふうに御答弁になっておられました。もう一つは、デフレギャップを埋める。現時点では、というのはその当時ですね、現時点では大丈夫だけれども、デフレギャップが開いてスパイラル的な落ち込みをするようなときには二次補正予算を編成しなければいかぬかもしれぬということをおっしゃっていたわけですね。

 今、二次補正を編成されるということは、そういう状況になったということなんでしょうか。

竹中国務大臣 確かに、以前議論をさせていただきましたときに、御指摘のような財政運営の基本的な考え方のお話をさせていただきました。したがって、現状認識でありますけれども、今、日本経済がデフレスパイラルの中に入っているのかというふうに聞かれたら、私はそういうふうには認識していないというふうに申し上げたいと思います。

 しかし、例の九月十一日の事件以降、世界の経済が非常に不安定化する中で、日本、アジアも非常に大きな影響を受けて、デフレスパイラルのリスクを感じざるを得ない状況になってきている。御承知のように、七―九月期のGDP統計、GDPそのものはマイナス〇・五%でありましたが、消費がかなりのマイナスになっておりまして、そういったリスクを感じる、そのリスクを回避するためにこういった形での第二次補正が必要であるというふうに判断したわけであります。

中塚委員 ということは、竹中大臣、デフレギャップを埋めるためのものではないということでよろしいのですか。

竹中国務大臣 デフレギャップがあるからこれを埋めるというのではなくて、デフレギャップが追加的に拡大するリスクがあるからそれをストップさせる、そういうことになるんだと思います。これは、需要をつける以上、結果的に需給ギャップは埋まるわけでありますから、そういう政策になるということでございます。

中塚委員 今いみじくもおっしゃいましたけれども、要は、結果的であっても何であっても、デフレギャップを埋めなければいけないような経済状況に陥ってしまったということですね。

 次に、二次補正予算の財源について伺いますが、三十兆円の国債発行枠というものがあります。そのこと自体は否定はいたしませんが、今度の二次補正予算は、そういう枠があるために、NTT株の売却益なんかを使うというふうな話を聞いております。これはまさに国債整理基金そのものなわけですね。今までは前年度剰余金を半分繰り入れないで補正予算をつくったということはありますが、国債整理基金そのものに手をつけるということにまでなってしまっているわけです。

 例えば、具体的にNTTのBタイプなんかを使えば、将来は建設国債を発行して返さなきゃいけない。目先の三十兆円の枠というのを守るために、今の国債は発行しないけれども、将来に国債の発行というのを先送りするだけの結果になってしまっているのではないか。こういうふうなやり方というのが、三十兆円を守るかわりにあちこちから財源を調達しようというふうなやり方自体が財政の不透明さを助長する、また、見た目だけを重視して本質をごまかす、小泉内閣の一番悪いところじゃないかというふうに思うわけですが、塩川財務大臣、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 十四年度は国債発行三十兆円でやることにいたしておりますし、十五年度以後におきましても、その展望の前提にして、これからの経済運営を進めていきたいと思っております。

 しかし、デフレスパイラルという言葉が今流行語になっておりまして、皆さんおっしゃいますけれども、デフレスパイラルというのが実際どういう形であらわれていくかということは今のところまだ未定な状態だと私は信じておりますし、また、その言葉に言われる意義がいろいろと、言う人によって解釈が違ってまいります。日本の経済は確かに悪い、企業が悪い、もうからないので悪い、それはもう私たちも十分承知いたしておりますけれども、そこで、一般の国民の方には生活力のまだ十分ある間、この現在まだ維持している間に何とかして企業の再生を図っていきたい、ここが一番大事なところだろうと思っておりまして、そのためには規制緩和等を積極的に行って活力ある社会をつくっていきたい、こう思っておる、それを経済の基本方針にしておるところでございます。

中塚委員 では、その二次補正予算案を編成するときに、国債の発行をしないがために国債整理基金特会のNTT株の売却益に手をつけるようなことをするということは、今は国債は発行しないけれども、将来に国債の発行を先送りすることになるのではないかというふうな質問なんですが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 いやいや、そうではなくして、国債発行で現在の二兆五千億円、今度予算を組みましたのを償還するという、そんな単純なことを考えておりませんで、後年度において、いろいろな事業の補助金等、いろいろな財政のミックスをもって解決していきたいと思っております。

中塚委員 そうではなくて、二次補正予算案に限ってのお話をしているわけですね。特にNTTのBタイプなんかは、建設国債を五年後に発行して整理基金に返金するということになっているわけですよ。だから、今年度の補正予算をNTT株の売却益でやるということは、五年後には建設国債を発行して、その分の借金を返さなければいけないということになっちゃうわけですね。だから、そのことをお伺いしているわけです。

 もう一つ、企業がもうからないというお話がありましたので、今度は税制改革ということについて伺いたいと思います。

 三十兆円の国債発行枠ということは、本来は、財政の制度、仕組みを見直すことによって歳出を合理化していく、そうすることによってむだを省いてこれを達成しなければいけないということだったはずですね。ところが、来年度の税制改革、私は、税制改革こそが構造改革そのものだと思っているのです。税のあり方が社会のあり方を決める、経済のあり方を決めるという意味で、もちろん行政のあり方も決めるわけですね、税制改革こそが構造改革の大部分を占めるというふうに思っているのですけれども、結局、減税額は三百億円程度。

 それと、塩川財務大臣が以前、損して得とるというふうにおっしゃっておられました連結納税制度についても、付加税を導入するというふうなことがあったり、あと、課税ベースを拡大してその分の減収を補うというふうになってしまっているわけですね。だから、連結納税制度が利用できる大企業はいいかもしれませんけれども、連結納税制度が利用できない企業にとっては、課税ベースが広がるということは単なる増税にほかならないわけですよ。

 そして、中小企業の交際費の損金算入額を引き上げるというふうな話もあるわけですけれども、こういったやり方、本当にもうからなくて苦労している中小企業に対して、課税ベースは広げるわ、飲み食いしたらその分税金をまけてやるなんというふうな税制で、本当に日本の経済が立ち直るんですかということなんですね。

 竹中経済財政大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 税の話は財務省で御検討いただいている問題でありますので、ちょっと私、直接タッチしているわけではございませんけれども、基本的に、委員言われたように、やはり税負担を軽くして経済を活性化させるというのが本当の理想の形だと思います。しかし、容易に御想像いただけるように、今の財政事情で税負担そのものをトータルで軽くするということはできないわけですね。そうすると、税収のニュートラルの中で活性化させていく仕組みを当面は、年度の編成としてはやらざるを得ない。そこで今、財務省は大変御苦労なさっているのだと思います。その場合はやはり、重点的にどこかの税負担を軽くするに当たっては、できるだけ広く薄くその分を負担していただく、そういう形にならざるを得ない、そういう立場で今作業が進んでいるというふうに認識をしています。

中塚委員 それでは、もう一度伺いますが、ネットで増税になるようなケースだって多々あるわけですね、課税ベースを広げていくということですから。そのことと構造改革というのはどういうふうに関係するんですか。

竹中国務大臣 ネットで増税になる場合もあるというのが、ちょっと何を想定しておっしゃっているのか、私は担当でもございませんからよくわからないのでありますけれども、そういう形で、増税にならないような形での予算の編成を今基本的にはなすということなのではないかと思います。

中塚委員 本当は負担を軽くして構造改革を進めていくべきだというふうに今経済財政担当大臣もおっしゃいました。

 そこで、塩川財務大臣にまた伺うわけですけれども、構造改革というのは、人、物、金を不効率な部門から効率のいいところに移していく、それによって潜在成長率を高めていくというのが本当の構造改革のはずなわけですよね。だから、三十兆円の国債発行枠ということにしても、やはり歳出の切り込みということが、これは必要かつ十分条件なんですね。

 歳出を切り込むことによって、そのことで浮いた財源で減税をしていく、それによって構造改革を促していくというふうな形になっていかなければ、このデフレギャップを埋めないというふうな、需要の管理というものを余り慎重には考えないというふうな中で構造改革を進めていくことはできないというふうに思うのですが、いかがでしょう。

塩川国務大臣 前段でおっしゃいました、歳出を思い切り切り込んで、そして余裕財源をつくってその分を減税に回す、それは一番オーソドックスなやり方だと私は思っておりまして、現に今、国債の発行枠三十兆円というかんぬきを入れて歳出の削減をし、そこで少なくとも予算の支出構造そのものもニーズに合うたものに転換したいと鋭意努力しておるところでございます。

中塚委員 大臣、先ほど、規制緩和のお話もされました。竹中経済財政担当大臣に伺いますけれども、需要の管理、デフレギャップを埋めるということを余り中心に置かないということであるならば、やはり構造改革というのは強烈なスピードで進めていかなきゃいけないはずだと思うのですね。

 そういう意味において、規制の緩和にしてもそうだし、この来年度の税制改正にしてもそうなんですけれども、これでは余りにも不十分過ぎるんじゃないですか。いかがでしょう。

竹中国務大臣 改革を本当に急がなければいけないということは、日々私たち、もう痛感をしております。

 御指摘の中で、その根本的な規制のフレームワークでありますとか税のフレームワークでありますとか、議論がまだもちろん十分煮詰まっていないという点もあろうかと思いますが、規制改革に関しては、先般の総合規制改革会議で、これは一つ一つ見てみるとかなりのものが私は進みつつあるというふうに認識しております。

 これは宮内議長の言葉で大変印象に残っておりますが、規制改革というのは、一つ一つとるとこれは一体どういう意味があるのかなかなかわかりにくい、しかし、そういうものがたくさん集まることによってじわじわと社会を変えていく、そういう方向に私は進んでいると思います。

 また、税につきましては、目下のところは予算編成に当たっての改革が議論されておりますが、これは総理の方から経済財政諮問会議において、来年早々から税の骨太の枠組みについての長期的なあり方についての議論をしろというふうに仰せつかっていますので、その中でぜひともしっかりとやっていきたいと思います。

中塚委員 この間、ムーディーズが国債の格付を引き下げたときも、構造改革が進む前に日本の景気が失速をする、そのことによってまたさらに借金がふえるんじゃないかということが国債の格付の引き下げの一番大きな理由になっているわけですね。

 だから、何かぼちぼちやっていればそのうちよくなるみたいな話だからこそ、なかなか信頼もされないし景気もよくならないということを申し上げまして、私の質問を終わります。

野呂田委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。

 次に、達増拓也君。

達増委員 外務省裏金プール事件について質問をいたします。

 先ごろ、三百人を超える処分の発表がなされたわけでありますが、三百人の処分があったにもかかわらず刑事告発がなされなかったというのは、これは驚きであります。

 今回のこの事件は、官僚不祥事というのはこの十年間いろいろな省庁でたくさんあったわけですが、ほとんどが贈収賄だったわけであります。贈収賄、わいろは、もらったもらわないのほかに職務権限に当たる当たらないという問題もあって、グレーゾーンというのがありまして、それで、犯罪には当たらないけれども疑惑を持たれるようなことをした、行政の信頼を損なったということで内部で処分が行われたりする。

 しかし、今回の外務省の裏金プール金事件は、もろに税金を猫ばばしているわけであります。そこにはもうグレーゾーンなんというのはないわけでありまして、たとえ一円であろうが、それを本来の税金の使われ方と違うことで私的に使ってしまうというのは、窃盗か横領か、あるいは詐欺に当たるのか、いずれにせよ、これはもろに刑事犯罪に当たるはずなんでありますけれども、一切そういう刑事告発がなかったということは、これはもう政府として、刑事犯罪に当たる事例はない、そういうふうに判断しているということなわけですか。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 プール金の問題は極めてゆゆしいことでございまして、不適正会計ということは決して許されるものではないと認識はいたしております。ただ、そのプール金につきまして、外務省は、今回の調査の結果で判明した事実関係に関しまして、関係者の意思でありますとかそれから行為が犯罪の構成要件に該当するか否か、要するに証拠ということだというふうに思いますけれども、そういうことにつきましても、捜査当局にも相談をしながら慎重に今検討をする考えでおります。

 要するに、告発するとかしないとかいうことではなくて、今現在慎重に検討いたしておりまして、前、最高裁の判事をしていらした園部参与にも御相談をしております。今現在はどちらということも決めているわけではなくて、極めて慎重に検討をしている段階というふうに申し上げさせていただきます。

達増委員 裁判あるいはその前段階の告発、検察にこの問題が取り上げられて、情状酌量で起訴猶予とかいう、そういう検察サイドの判断はあるかもしれませんけれども、仮に起訴猶予になるくらいの情状酌量の余地があったとしても、外務省としてはあえて告発するという判断があってしかるべきなんじゃないでしょうか。今の段階になってもまだ刑事告発するしないが検討中というのは、これは理解できません。

 なぜ検討中なのかというと、実は、その事実関係というのをきちっと明らかにせずに、あいまいなまま、ほとんどすべての部局で行われていたということで、いわば外務省総ざんげ、全員が一定の基準でお金を返せばそれでみそぎが済んだということにして、うやむやにしようとしているんじゃないですか。この点どうでしょうか。

田中国務大臣 確かに、全員で負担をしていかなければならないということは決めておりますし、そのための努力もいたしておりますけれども、しかし、公金をとにかく不適正な会計によってプールして、結果的に私的な流用をした、しかもそれが、ケースは物によっていろいろありますけれども、例えば浅川事件のように横領のような認識があったというようなものに比べまして、今回の場合は、例えば家族が外国に行っていて国際電話を公金からかけてしまっていたとか、それから会食だって、一円たりとももちろんやってはいけない、許されてはいけないことではありますけれども、しかし、告発を絶対しないというふうに私どもは申し上げているわけではございませんで、それについて検討中ということでございます。

 いずれにいたしましても、この予算委員会の場でございますが、私が事務方にいつも言っていますことは、何でもぎちぎちに締め上げていくとかいうことも決していいと思いません。また同時に、今までのようにそういう慣習があったら見て見ぬふりをするということは絶対に許されることではないというふうに思いますので、したがって、私が思っていますことは、やはりある程度のバッファー、必要経費というものはとっておいて、そして、それが残ったものについてはちゃんと国庫に返納するというようなことをしなければならないということを申しております。

 そして、今までも委員会でずっとるる申し上げておりましたけれども、職員の意識改革のための研修でありますとか、調達の一元化とか、監察査察制度でありますとか、そうした制度は整えてきておりますが、しかし問題は、私は、意識のルーズさというものにやはり帰結するというふうに思いますので、今申し上げたようなことを決めていくということも大事だろうというふうに考えております。

達増委員 意識の問題もあるかもしれませんけれども、会計制度の問題、そういうところもあるわけであります。

 ぎちぎち締め上げるのはだめと今おっしゃいましたけれども、税金の使い方については、これはもう極力ぎちぎち締め上げなければだめなのでありまして、予算委員会もその務めを、責任を担っていると考えております。

 大臣の答弁の中で、家族との電話など犯罪に当たらない、グレーゾーンにあるような例もあるとのことでしたので、そういった材料を予算委員会に与えていただかないと、予算委員会としても来年の予算の審議ができないと思いますので、来年度予算の審議の前には、河野外務大臣のときには曲がりなりにも不完全ながらも松尾事件に関する報告書が出ました。今回、そのような、プール金事件に関する報告書を出していただけるとお約束いただけますでしょうか。

田中国務大臣 持ち帰りまして、前向きに検討いたします。

達増委員 日本史上、理想の外務大臣で思いつくのは陸奥宗光大臣、小村寿太郎大臣だと思いますけれども、お二人の共通点は、激務のために過労で病気になって亡くなってしまったということであります。理想の外務大臣というのが激務で亡くなってしまうという、それは実は外交というものが持つ非常に厳しい本質を意味するものであると思います。もちろん田中大臣には健やかで元気にお仕事をしていただきたいわけでありますけれども、一方では、外交体制、外交の中身に対するそういう先人の厳しさも学んでいただきたいと思う次第であります。

 次に、最近の経済情勢、非常に危機的な中で、地元で仕事や生活の現場の声をよく聞いているのでありますけれども、先週、ある地元を代表するような企業の社長さんでありますが、もうリストラは終わっている、リストラは徹底してやった、しかし需要がないんだ、だから困っている、そういう言葉を聞きました。

 今度新しく出た経済財政白書の方にも、最近の経済の分析として、九九年七―九から二〇〇一年一―三月期までの分析として、企業のリストラ努力は進んでいるとあります。

 製造業の大企業においては、人件費の抑制を早くから続ける中で、売上高の大幅な増加が企業収益を押し上げていたことがわかる。しかし、需要が減退し、生産が減少する中で、二〇〇一年四―六には、逆に売上高の減少となっている。また、製造業の中小企業においては、人件費を削減することで収益増を維持している云々などとありまして、実は、痛みを伴う改革といいますが、民間は本当に痛みを伴う改革を徹底してやっている。しかし、政府の総需要政策を含む経済財政政策の誤りで、今おかしくなっている。

 政府としては、さらに企業のリストラ、まだ足りない、もっと痛みを伴わなきゃだめか、だめだ、そういう認識でありましょうか。竹中大臣、お願いします。

竹中国務大臣 リストラという言葉にはいろいろな意味があるわけでありますから、それに依存するのだと思います。

 確かに、業態を一定にした上で従業員の数を減らす、賃金を減らして皆さんに我慢していただく、それもリストラであろうかと思います。しかし、リストラクチャリングというのはまさに再構築でありますから、さらに事業が発展できる分野にその資源をシフトさせていく、新たな分野を切り開くということも、これまたリストラ、これがむしろ本来のリストラであろうかと私は思います。

 需要がないというお話、これは確かに大変厳しい状況ではありますが、政府の経済見通しの見直しによりますと、今年度はマイナス〇・九%なわけですね。今まで売り上げ一万円だったところが九十円売り上げが落ちるというのがことしの経済でありますから、経済全体で見ると、需要はもちろんマイナスではありますけれども、そんなに大幅に落ちているわけではないわけです。

 確かに一部の業種は物すごく落ちている。というところは、別の伸びているところもあるわけでありますから、そういうところにシフトさせるためのリストラ、こういうものは個々のベースでいきますとどんなふうに進捗しているかというのはなかなか見えないわけでありますけれども、しばらくこういった意味でのまさに再構築というものは幅広く続けていかなければいけないのではないかというふうに思っています。

達増委員 人員削減等のリストラの狭い意味については特に反論なく、新たな分野を切り開くという意味でのリストラがまだまだこれから余地があるのではないかということだったと思います。

 まさに、新たな分野を切り開くというのは構造改革の眼目、この新しい白書にも書いてありますけれども、構造改革は、労働力、経営資源、資本、土地といった我が国が持てる貴重な資源を生産性の高い分野に振り向けることによって、日本経済の潜在成長力を高めると。構造改革の定義、構造改革の本質としては、これは的確な表現だと思います。構造改革というのは、単なる機構いじり、制度いじりでもなければ数字合わせでもなくて、生産性の低い分野から生産性の高い分野への資源の再配分、資源配分のシフトが行われなければならない、全くそのとおりだと思います。

 そういう意味で、新たな分野が切り開かれて、そこに資源が流れていけばいいんですけれども、なかなかそういかない、それはなぜなのかということであります。これは、エコノミストのリチャード・クーさんがいろいろなところで言っているんですけれども、もし、そういうこれから参入すればいいような新しい分野というものが今あれば、とっくにみんなそこに参入している、今全然そういうところがないから、みんな困っているんだという指摘があります。

 竹中大臣に引き続き質問しますけれども、理論的にはそういう新しい分野にシフトすればいいんでしょうけれども、そういうまさに構造改革そのものが進まないでいる、これは一体なぜなんでしょうか。

竹中国務大臣 資源が生産性の低いところから高いところに行く、その引っ張る要因と押し出す要因、両方に問題があるということだと思います。

 引っ張る要因に関して言うならば、やはり幾つかの規制、特に通信分野等々での規制があって、その発展分野でなかなか新しい分野へ入っていけない、これは現実問題として、財界人の方がかねてから指摘する。だから、先ほどからも議論になりましたが、やはり規制緩和で新しい分野を開いていけるような引っ張る要因が必要だ。

 もう一つ、押し出す要因が弱いというのも日本にはあるんだと思います。これも二つあろうかと思います。

 本来でしたら、そんな生産性の低いところに資源が張りついているはずはないんだけれども、それを支えようとしているような一種の所得の移転、トランスファーがあるということではないでしょうか。例えば、これも規制で守られているところで参入障壁があったりすると、生産性が低いにもかかわらず高い価格をつけることができて、結果的に見かけの利益だけは上がってしまっている。つまり、制度としてのトランスファーがこの社会ではやはりまだ残っているということ。

 もう一つは、生産性の低い会社なら、それならば株主がもっと騒ぐはずなんだけれども、いわゆるコーポレートガバナンス、企業が株式を持ち合いしている等々でその機能がうまく働いていない、そういうことのまさにミックスであろうかと思います。

 こういったシステムそのものをやはり転換していくことが構造改革であるというふうに考えております。

達増委員 最後のコーポレートガバナンスの問題、これは、生産性が低いにもかかわらずその情報が適切に表に出ていないというのは、政府部門について大きく言える話だと思います。

 あと、その前に指摘された、押し出す要因としての、一種の所得移転が行われている、これはまさに本質だと思います。本来、生産性が低くてもうからない、したがって、そこで働いていても給料が上がらない、むしろ下がるというようなところで、実は給料が高いままにあったり、上がったり、ボーナスがたくさん出たり、そして見かけ上もうかったようになっている。

 きょうは、不良債権問題についても先ほどから質問があって、それは現場の実態という金融担当大臣への質問ではなく、今言ったような白書的な分析の観点から質問いたしますけれども、結局、不良債権処理というのも、論理的に言えば不良債権最終処理というのは、最終処理の対象というのが明らかになった瞬間最終処理されるべきもので、それに二年、三年かけるというのは矛盾なんですね。

 したがって、何で二年、三年かけるという話になっているのか、そして解決しないのかというと、結局、所得のトランスファー、公的資金注入があるんじゃないかという期待があるし、過去実際あった、だから銀行の給料が高いままとどまっていて、生産性が見かけ上高くなっている、収益があるようになっている、そういうところが不良債権問題の処理についても本質としてあると思うんですけれども、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 金融というのは一つのインフラでありますから、通常の事業会社と違って決済システムを持っている。その決済システムというインフラを持っているから、生産性が悪くても一時的に支えなければいけないときがある。その意味では、先ほど申し上げたことと同列には扱えないというふうに私は思いますけれども、現実問題として、そういった公的なサポートが九九年からあったわけですけれども、その中で期待していたほどの生産性の改善が進まなかったというのは、これは事実であろうかと思います。

 白書の中でそれに関連した一つの分析をしておりますけれども、例えば、収益力を縦軸にとって貸出額を横軸にとると、収益力が高い企業にどんどんたくさん貸していくのが普通であるのに、実は右下がりになって逆のことをやってしまっていた、そういう問題もございますので、やはりその意味では、その競争のメカニズムをもっともっと働かせていって、不良債権を処理するということは大事ですが、不良債権を二度と起こさないような金融システムにしていかなければいけないということだと思います。

達増委員 やはり、本当に市場が健全に機能していれば、銀行というのは、より生産性の高い、もうかるような企業に貸し付けをシフトしていくわけで、自然に不良債権処理というのは行われる。

 ですから、不良債権処理問題ということが問題になっている、政策のテーマとしてそれが大きく取り上げられていること自体が、実は経済主体の側には、銀行への資本注入があるんじゃないかとか、あるいはゼネコン救済的な財政出動の大規模出動があるんじゃないかとか、そういう期待が大きくなって一層不良債権処理が進まない、そういう悪循環になっていると思うのですね。ですからそこが、今の小泉内閣の構造改革、不良債権処理をその第一番に持ってきているわけですけれども、その一番のネックになっているんだと思います。

 さて、構造改革とは資源配分の適正化である、そういう観点から塩川財務大臣に質問いたしますけれども、一番の資源配分が問題になる、ちゃんと生産性の高いところにお金が行くようになっているのかということの一番大きい問題は、政府の財政だと思います。

 そこで、効率のいい財政、予算の配分ということを考えれば、かつて細川内閣のときに、それまで大体縦割り、省庁ごとに予算要求が決まっていて、シーリングとかもありまして、大体各省、各局、各課の事業別のそういう予算の額というものは割合がそれほど変わらなかったのが、細川連立内閣のときに、歴代内閣で一番その変化率が高かった、そういう分配の改革を行ったわけでありますが、小泉内閣最初の本予算、来年度予算の編成、もうすぐ閣議決定がなされるんだと思いますけれども、どのくらい大きくその資源配分を適正化、大きく変えていこうとしているんでしょうか。

塩川国務大臣 細川内閣のときでございますが、平成六年でございますけれども、そのときは、予算の配分の事業別構造の配分が大きく変わったということではございませんで、変わったことは変わったんですけれども、それは小差な関係でございましたけれども、大きく変わったのは、公共事業の配分を大分変えましたね。それは今も事実として残っておりますが、その公共事業の配分も、実は都市政策関係に大きくシフトしておったということであります。それ以降をずっと見てまいりますと、予算の配分が、やはり不況につれまして公共事業の方がどんどんとふえてまいった、そういう予算配分になっております。

 平成十三年度の補正以降をきっかけといたしまして、十四年度に向けて、公共事業は御承知のように一〇%削減するということにいたしまして、そして、ソフトの面、例えばIT関係であるとか都市再生であるとか、あるいは教育、福祉、そういうソフトの面に公共事業で削減したものを回していく、そういう手法をとりましてバランスをとってきたということでございまして、その意味において、十四年度の予算の配分は、十二年度以前のものとは相当変わってくると思っております。

達増委員 各省庁別の概算要求というのは既にチェックできるようになっているのですけれども、かなりの部分、従来型の積み上げ、あるいは名前をITと変えただけの同じような予算の要求が各省から上がっているように見受けられておりますが、いかなる予算が閣議決定して出てくるのか、そこは検討させていただきたいと思います。

 資源配分の適正化、生産性の高い低いという最大の問題が政府である。行政というのもまた、生産性のより高い行政になっていかなければなりません。

 そういう意味で、行政改革でありますとか公務員改革というものも、単に制度をいじればいい、四つ五つのものを合わせて一つにすればいいとかいうことではなくて、そこにはきちんと生産性の向上でありますとか、あるいは生産性が低い、例えば、先ほど民間の例で申し上げましたように、本来、生産性が低くて給料が下がるべきところが高どまりになっているような分野、実は政府、役所、特殊法人といったところはまさにそういう問題があるわけでありまして、構造改革という戦略にのっとって行政改革、公務員改革にきちんと取り組んでいるのか、どの程度の改善を見込んでいるのかを行革担当大臣に伺いたいと思います。

石原国務大臣 達増委員にお答えいたします。

 直接の関係というのはあるようでないというような感じがいたすのですけれども、なぜ行革をやっているかというところからお話をさせていただきますと、世の中が大きく変わりまして、冷戦が終わりまして、ボーダーレスの時代になってグローバル化した、そしてITの進歩によって情報も世界を一瞬のうちに回るようになった。そんな中で、これまでの国は、もう達増委員が一番御存じのことだと思いますが、どちらかといいますと中央の主導型の、官主導国家として、経済からいろいろな分野まで指導してきた、主導してきた。そういうものが結果として、俗な言葉で言いますと行政の肥大化を起こしてきた、そんなものの反省に立って実は行革を始めております。

 そう考えますと、先生の御指摘のとおり、生産性が低いということが、行政のいわゆる非効率で高コストの体制、これまで続いているシステムと置きかえることができるかもしれませんし、そういうものを小泉内閣では、民間にできることは民間にゆだね、地方にゆだねることは地方にゆだねるとの原則で今検討を進めさせていただいているところでもございます。

 もう少し細かく話しますか、特殊法人とか。いいですか。

達増委員 自民党の行政改革推進本部の討論から今抜けてこられたと伺っているのでありますけれども、戦略的に、きちんと生産性とかそういう数字も意識して行うべき特殊法人改革を含む行政改革、公務員改革というものが、単なる制度いじり、見かけだけの改革に終わって、実質的にはむだが温存されるということがあっては何をか言わんやになるのでありまして、その点が今問われているということを指摘させていただきたいと思います。

 公務員改革についてですけれども、先ほどの銀行の例を踏まえますと、やはり給与の高どまり、こういう問題があるのだと思います。一方では、天下りをなくす分、給与を高くすべきだという議論もあるのですけれども、公務員の給与体系についてはどのような見直しをしていくか、伺いたいと思います。

石原国務大臣 公務員の給与の話に触れる前に、先ほどちょっと言い足りなかったと思うのですが、まさに委員の御指摘のとおり、効率的、すなわち生産性の低い部門から生産性の高い部門へ移すというような観点も、今回の特殊法人改革では私どもも重要な点ではないか、そういうふうに考えております。

 公務員の給与でございますが、これも、どちらかというと年功序列賃金、画一的と言われてきたわけでございますけれども、今回の改革では、能力や業績を重視した人事制度を確立して、公務員の皆様方がその持てる力を最大限発揮していただけるようにするにはどうしたらいいか。あるいは官民交流、今までの法体系の中では、どちらかというと官民交流が、悪とは申しませんけれども、しづらいシステムになっておりますが、これもできるようにして、双方向で人材の交流が図れるようにいたしますし、また、各府省がみずからの判断と責任において人事や組織管理を行うような体制の整備によって、行政全体が機動的かつ効率的な行政運営をできるような公務員制度改革の実現を目指して、これも最終的な調整の局面に来ているところでございます。

達増委員 では、財務大臣に伺いますけれども、来年度の税収が四十六兆円台に落ち込む見込みであるということが報じられております。構造改革ということで、資源の再配分ということでやっているわけでありますけれども、その資源自体がどんどん目減りしていくような経済状況をつくり出している。一体何のための国債三十兆円枠の公約なのかという疑問がわくわけであります。

 そうした数字、最初に唱えたスローガンを守るためだけのことでいろいろ隠れ借金を新たにつくってみたり、あるいはそもそも現下のマクロ経済政策としてあえて資源を目減りさせてしまうような形の財政運営をするのか、そもそも戦略が不在だったのではないか、戦略よりもスローガンが先行しているのではないかと疑問を持つんですけれども、この点いかがでしょうか。

塩川国務大臣 先ほどから生産性の問題と、それから資源の問題の議論になっておりますけれども、私は、達増さんにちょっと認識を変えていただきたいと思いますのは、生産性ということは、要するに、行政、政治の面でいいましたら行政ニーズ、そういうぐあいに解釈してよろしゅうございますね。結局、そういうことだろうと私は思っております。

 そうすると、今三十兆円に枠を抑えておりますけれども、その三十兆円の枠内において私たちは行政の効率化はいかにあるべきかということを中心にやっておりまして、そこに達増さんのおっしゃる生産性の効率性というものを見出したい。でございますから、予算の規模は確かに締めておりますけれども、その金でもって、その資金でもってどれだけの行政ニーズに的確にこたえていけるか、要するに、むだをどれだけ省いていくかということがこの予算編成上の中で一番の考慮を払っておるところでございまして、そういう方向での予算の考え方を持っていきたいと思っております。

達増委員 まさに生産性とは効率の話でありまして、私もそういう効率という意味で言っております。ですから、単なるニーズの大きさではなく、いかに少ないお金で、少ない人数でその行政ニーズに的確にこたえるかという話であります。

 しかし、今結果として経済全体が縮小過程に入ってしまっているというのは、明らかにこれは当初の戦略からの逸脱だと思います。このまま現実が戦略から逸脱する中で年を越えることになるのか、新年を迎えることになるのか、大きく疑問を抱きつつ質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 年末の経済情勢というのは極めて深刻でありまして、七―九月期のGDPは二期連続マイナスであります。十二日に発表された日銀短観によりますと、景況感が四期連続悪化している。中小企業の倒産も大変ふえております。十四日に発表された帝国データバンクの企業倒産統計によりますと、十一月としては戦後最悪という状態であります。二カ月連続して倒産が千八百件を超えている。不況型倒産、これも過去二番目という状態であります。

 こういうときにこそ、地域経済の担い手である中小企業をどう支えるかというのが大変重要だと思うんですね。そのためには、身近で、いわば顔の見える融資といいますか、そういう努力をしている信用組合、信用金庫、これは大変役割が大きなものがあると思います。地方銀行なども含めまして中小の金融機関というのは非常に重要だと思うわけであります。

 まず平沼大臣にお聞きしますけれども、信用組合、信用金庫の役割、これをどのようにお考えか、基本的な認識をお聞きしたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 信用金庫それから信用組合というのは、法令上、会員または組合員たる地域の中小企業等への資金を振り向けることを義務づけられておりまして、中小企業の円滑な資金供給に大きな役割を担っている、このような認識を持っております。

 こうした意味で、信金、信組が健全に業務を行うことは、円滑な中小企業金融の確保にとって重要なことでありまして、かかる認識を十分に踏まえまして、金融当局において適時適切な対応がなされる、こういうふうに認識しております。

佐々木(憲)委員 柳澤金融担当大臣にお伺いをいたします。

 信金、信組、地銀など地域密着型の中小金融機関の果たす役割というのは大変大きいと思うんですが、特にこの信金、信組というのは、相互扶助の精神を基調にしまして地元の有志で設立され、いわば七十年以上も歴史のある金融機関であります。ところが、最近、この信金、信組がばたばたつぶれております。地域経済や中小企業にとって大変ゆゆしい事態が起こっているわけであります。

 そこで、柳澤金融担当大臣にまず数字を確認したいんですけれども、信金、信組が、九月、十月、十一月、十二月、それぞれ幾つ破綻をしたか、月別に示していただきたいと思います。

村田副大臣 本年九月以降に破綻をいたしました信用金庫、信用組合の数を月別に申し上げたいと思いますが、九月は破綻はございません。そして十月は、信金三件、信組一件、計四件でございます。十一月は、信金四件、信組十三件、計十七件でございます。十二月は、まだ終わっておりませんが、信金はありません。信組がこれまでのところ四件破綻しておるわけでございます。

佐々木(憲)委員 これは大変な破綻の数でありまして、中小企業は今不況で大変業況が悪いわけですけれども、雇用を守り、地域経済を支えているわけであります。頼みの綱の信金、信組がこんなにつぶれたら、これは年末を控えた中小企業にとってはもう大変な状況だと思うんですね。何でこんなに急増しているのか。金融庁の検査に問題があるんじゃないか。

 柳澤大臣にお聞きしますけれども、信組は、昨年の春に都道府県から金融庁に所管が移りました。その後、一斉に検査をやっているようですけれども、何のために検査をやっているのか、その目的を示していただきたいと思います。

柳澤国務大臣 金融検査はすべて、基本的には金融機関としての健全性を検査させていただく、これは金融監督の一番のコアであります。もちろんそのほかに、コンプライアンスであるとかいうようなことも検査をいたしますけれども、そうしたことでございます。

 これが信組の場合には、これまで都道府県にゆだねられておったわけですが、先生御指摘のとおり、昨年四月に国に移管になりまして、やはりペイオフというようなものに備えてこれをよく検査するようにということが当然の行政に対する要請というふうに心得まして、私ども、昨年度いっぱいかけましてこの検査をいたした、こういうことでございます。

佐々木(憲)委員 ここに金融検査マニュアルというのがあるわけです。この検査マニュアルは、大手銀行に対して適用するだけではなくて、当然、信金、信組、このマニュアルで検査をしているのかどうか、これを言っていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 これは、業態によって区別はいたしておらないわけですので、金融機関全般に適用される検査のマニュアルということになるわけです。

佐々木(憲)委員 この中には、こういうふうなことが書かれているわけであります。例えば、「金融機関の規模や特性を十分踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮する必要がある。」しかし、これは一律に、この同じ金融検査マニュアルで検査を押しなべて同じようにだあっとやるわけですね。そうすると、機械的、画一的な適用に当然なってしまうわけですよ。

 我々が、破綻した信金、信組の関係者あるいは地域の商工会、商工会議所で話をお聞きしますと、都市銀行も信金、信組も同じ基準というのは納得できない、金融庁の検査でひどい目に遭った、大銀行と同じような基準で査定するのはおかしい、こういう声が本当にたくさん寄せられているんですよ。

 具体的にお聞きしますけれども、信金、信組の場合、機械的、画一的な運用にならないように配慮するというわけですけれども、例えばこのマニュアルに書いてある債務者区分あるいは償却や引き当て基準、これは具体的にどういう配慮をするんですか。

柳澤国務大臣 マニュアルの中にございますように、要するに、債務者というものの特性を配慮して債務者区分あるいはそれに伴う引き当て等を考えなければいけないということになっておりますので、この債務者の特殊性を見るということについては、各検査官は格別の配慮をすべきということになっておるし、そのように現実に事案を処理しているというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 それは、債務者の特性を配慮する、つまり、大手の貸出先あるいは中小の貸出先、そのそれぞれの特性を配慮するということであって、大手の銀行に対する検査のやり方と中小の信金、信組に対する検査のやり方、これは差があるということにはなっていないんでしょうか。それとも、そこは信金、信組に対しては特別の配慮をするということになるんでしょうか。

柳澤国務大臣 もちろん、検査マニュアルの建前は、先生ごらんになっていただきますとわかるように、要するに、各金融機関がリスクの管理をしっかりやっているかというような体制を見ることになっております。

 そういうことで、では、リスクの管理をやるという場合に、大手の銀行ですと、それを独立の機関で監査しなさい、あるいは、例えば支店が債務者区分してきたものを独立の本店のそういうチェック機関が見るというようなことが求められているわけですが、信組のような小規模な場合には、そういう独立の機能というか組織まで要求するのは、これは少し要求のし過ぎだというようなことで、そのあたりについてはよく配慮するようにということで運用しているわけでございます。

佐々木(憲)委員 そうしますと、大手の銀行の場合はそういう資産管理についてのしっかりした組織がある、しかし、中小の場合にはそういう体制がない、その区別はあるけれども。

 問題は、貸出先の例えば中小企業に対して、その資産査定をやる場合に、大手の場合も中小の金融機関の場合も、債務者区分については特別の配慮をするということはないということですね。

柳澤国務大臣 これは基本的に、債務者について、その債務者が例えば中小零細の場合には画一的な基準の適用をしてはならない、よくその債務者の特殊性に配慮した、そういうことをしなさいということになっているんですが、それが大手銀行の中小零細の顧客であるか、あるいは中小金融機関の中小零細企業たる債務者であるかということは、明示的にはそういうふうになっておりません。おらないんですが、私が考えますところ、やはり現実には、信用組合なら信用組合のお客さんというのはそういう人ばかりなわけですね。上場企業なんというのに貸しているというようなことはまず考えられません。そういうようなことで、全体として、その配慮をされる先が非常に大きな固まりになっている。

 片や、大手の金融機関の場合には、これはある種大宗にはなっていないというようなことになろうかと思います。

佐々木(憲)委員 ですから、そこがやはり機械的、画一的だというんですよ。

 最初に確認したように、中小企業というのは地域経済にとって極めて重要な役割を果たしているわけで、この不況の中で、信金、信組の貸出先というのは七割が赤字だと言われている中小企業です。赤字になっても、返済が多少おくれても、必死になって債務を返そうと努力をして、歯を食いしばって頑張っているわけですね。ところが、金融庁は、信金、信組に対して、圧倒的に中小企業が多い、そういう場合に、その特殊性を考慮しないで、大銀行にも同じようなことを適用する、中小信金、信組に対しても同じような基準で債務者区分をいわば押しつけているわけであります。

 だから、例えば三期連続赤字あるいは返済が六カ月延滞した、こういう場合に、直ちにこれは破綻懸念先あるいは実質破綻先というところに債務者区分を変更していくわけですよ。実際には、今まで中小の信金、信組は、そういうところでも相手の顔を見て、おやじさんが信頼できる、だから多少のことがあってもしっかりと貸し出しを継続する。ところが、このマニュアルでは、そういうところに対しても、大銀行と同じような一律のやり方でこの基準を当てはめて、これは債務者区分が間違っている、もっとこれは倒産しそうな破綻懸念先あるいは実質破綻先だ、あるいはもう破綻している、こういうことで、どんどん輪切りにして、その実情を無視して債務者区分を下げる。

 そうなるとどうなるかといえば、それに対して引当金を積まなきゃならぬ、あるいは償却をして切り捨てなきゃならぬ、こういうことになるわけですよ。それで、引当金の積み増しで、これは大変だ、何十億という引当金積み増しを要求されて、信金、信組は、これはもう耐えられないということで次々と破綻に追い込まれるということになるわけであります。

 ちょっと資料を配っていただけますか。

 これは、例えば昨年の破綻を見ても、信組は十三、信金は五、合わせて十八の信金、信組が破綻しておりますけれども、この表を見ていただくとわかりますけれども、ことしに入ってから経営が破綻した信金、信組はもう本当に大変な規模であります。

 この表はことし一年だけの今までのデータでありますけれども、手元の資料だけでも、七つの信金、三十以上の信組が破綻しているんです。しかも、年末にかけてこれが急増しているという状態です。そのほとんどが、金融庁の画一的な検査で、そして債務者区分、これはもっと厳しくやるんだ、引当金を積みなさいということで破綻させられている。

 例えば、十月十九日に破綻した、一番上にある栃木の宇都宮信金、これは三十億の償却・引当金の追加を求められたのが破綻の引き金になっているんですよ。債務超過は二十三億円。

 同じ十月十九日に破綻した愛知県の常滑信用組合、これは二枚目の上から三番目にありますけれども、私も現地を調査してまいりました。ここでは、厳しい資産査定で債務者区分を変更させて、償却・引き当ての積み増しを三十七億円要求されたんです。増資に走り回ったけれども、実際にはそれがうまくいかないということで破綻をした。債務超過は二十二億円であります。

 十一月二日に破綻した大栄信組、これはことしの六月二十九日に検査結果が通告され、二十九億円の引当金を積むように言われた。九月には引当金を七十五億円にするように求められて、結局、四十一億円の債務超過で破綻させられている。

 ですから、一々挙げたらもう切りがないわけですけれども、この一覧表を見ると、かなりの部分は、金融庁の画一的な検査で債務者区分の変更を迫られて、引き当てを積まされて、積まなきゃならぬという状況に追い込まれて、それで破綻しているわけです。健全性を確保するなんて言うけれども、健全性どころか、一生懸命努力をして、本当に今経営が大変な状態になっているにもかかわらず、これが何で検査によって破綻させられなきゃならぬのか。

 柳澤大臣にお聞きしますけれども、大量破綻の原因というのは、やはりこういう検査マニュアルによる画一的な適用、この検査にあるということは明らかじゃありませんか、これだけ大量の破綻が出ているというのは。いかがですか。

柳澤国務大臣 ちょっと先ほどの補足を具体的にしますと、中小零細企業の場合には、いわば法人化してあっても、実際その経営に当たっている人との間というのは、これはもう極めて特殊に密接であるというケースが多いわけでございます。

 例えば、その法人から家賃を取る、給料を取る、そうすると、その法人の経理としては赤字になるというようなことがあります。これは赤字企業ですね。ですけれども、実際にどうされているかというと、例えば利息や何かはまた今度は経営者の方がその企業に貸し付けて、そして、それでもって返済が行われるというようなことがあるわけでございます。そういうものについては、赤字企業といえども、これを赤字というふうに断定してそういう処置をとることは避けるというような扱いをいたしているわけでございます。

 それから、さらに言うと、そういうことをやっていれば赤字が累積していきます、それで資産との関係では債務超過になっちゃうというようなことがあって、しかし、それじゃそれは債務超過かというと、そうやって累積していった借入金というのは、その経営者からどんどん入っている借入金というのは、ある意味で資本的な役割を演ずるということもあるというふうに考えなきゃならないケースもあるわけです。

 そういうようなことをいろいろきめ細かく見ていって、債務者区分とかあるいは必要な引き当てというものをするということが、非常に抽象的に、当該企業が中小零細企業の場合には、財務状況だけではなくて、いろいろ各般の問題を総合的に勘案しなさいということの意味合いでございまして、やはり、今先生がおっしゃっているように、そんなに画一的にやっているわけではない、それが実際の運用だ。

 しかし、私がこういうことをいろいろ言うと、今度は、現場に行って、これはケース・バイ・ケースの判断ですから、その債務者を見ての判断ですから、そういうことを答弁として申し上げると、大臣がこうやって国会で答弁しているじゃないかとまたそういうことを、本来そこはなかなか適用できないような方も引用してそういうことを主張される。これは現場の混乱のもとなんですよ。

 ですから、我々は、今先生そこまでおっしゃって、もう何でもかんでも全部、金融庁が画一的なことをやっている結果だというので、私はあえて踏み込んで、そういうケースもあって、ケース・バイ・ケースで我々は判断しているんですということを今申させていただいたということです。

 そして、今これが急増しているというのは、確かにそういう感じを与えているわけですけれども、これは、ずっと流れがありまして、昨年度いっぱいで全部、信用組合というのは調査を終えるべきだ、こういうことになっていて、それからその後、早期是正措置だとか、あるいは報告の徴求だとかという手続をずっと踏んでやっていた結果、こういう時期に、経営継続困難というような申し出を受けて処理に当たっている、そういうタイミングになってきた。それは、一斉検査していますから、ある意味で固まってこういうものが出るという形になるのも、これはもう結果としては御理解賜らなけりゃならない点だ、このように考えます。

佐々木(憲)委員 今お認めになったように、一斉検査の結果ですよ。一斉検査をどんどんやって、大銀行と同じような金融検査マニュアルでだあっとやったら、全部つぶれるじゃないですか。何を言っているんですか。

 結局、お認めになったことは、この検査の結果、ばたばたつぶれるような事態になっているということであります。ケース・バイ・ケースと言うけれども、これをケース・バイ・ケースと言うのは、大銀行の場合も中小金融機関の場合も同じ基準なんですから、だから、画一的なやり方で一斉にやったら、債務者区分が悪くなるのは当たり前じゃないですか。健全性を確保すると言うなら、協同組合の本来の性格を逸脱したようなやり方はよろしくないよとか、あるいは、投機的な分野で本来の組合員の利益を損ねるようなやり方をするのはよろしくないよというチェックをするのが金融庁の役割なのであって、本当に地域経済が大変な事態になっているときに、その弱っている金融機関を検査によってばたばたつぶすなんというのは、金融庁の仕事じゃないですよ。

 地域金融というのは大変な状況でありまして、信金、信組がつぶれたら、これまで取引していた地域の中小企業は、受け皿の金融機関に本当に行けるんだろうか、新たな融資が受けられるんだろうか、あるいは、RCCに送られたらもう本当に先はないとか、こういうことで、実際には、信金、信組が破綻することによって、中小金融機関が破綻することによって中小企業はばたばたつぶれている状況であります。地域経済は崩壊する、失業者がふえる、何がこれが健全なんですか。私は、血も涙もないやり方だと思うんです。

 平沼経済産業大臣にお聞きしますけれども、たしか十三日だったと思いますが、地域の中小企業の方々が、我が党の筆坂政策委員長などと一緒に申し入れをさせていただきました。そのときに、金融庁が求めている基準というのは非常に画一的である、あるいは、信用金庫、信用組合などの地域中小金融機関の実情にはそういうやり方は合わないとか、きめ細かな対応をするように金融庁に要請をしたいというようなことを言明されたそうですけれども、そういう考えに変わりありませんね。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 御党の筆坂先生初め、特に大変な技術集積がある大田区のそういう中小企業の皆様方が私の部屋に来られまして、厳しい現状をお聞きさせていただきました。

 中小企業の景況というのは、今御指摘のように、極めて厳しいものがあります。円滑な資金供給の確保には私どもは全力を尽くしているわけでありまして、このため、経済産業省といたしましては、政府系中小企業金融機関とか信用保証協会、これに対して、各中小企業の個別の実情に応じて、一層、柔軟かつきめ細かに対応するように指導しておるところであります。

 一方、今御指摘の信用金庫、信用組合を初め民間金融機関による中小企業への円滑な資金供給の確保を図るため、当省といたしましては、金融庁と密接に連携をとらせていただいて、これまでもさまざまな要請や働きかけは行ってきているところであります。

 金融検査マニュアルにつきましては、その策定時に中小企業への適切な配慮を求める意見を私どもから出させていただき、それを踏まえて、委員も御承知だと思いますが、マニュアルには、要注意先債権の判別において中小零細赤字企業に配慮することなど、さまざまな配慮規定が盛り込まれていることになっています。

 このようなマニュアルの規定に基づいて適切な運用を図るべく金融庁が努力をされているところでございまして、私どもといたしましても、実際の金融検査に当たって、先ほど柳澤大臣も言われましたけれども、中小零細企業に対して、個別企業の実情に即してきめ細かな対応がなされるように金融庁に対して御要請をさせていただいておりますし、今後一層、金融庁との連携を深めながら、中小企業への円滑な資金供給の確保に努力をしていきたい、このように思っています。

佐々木(憲)委員 私は、柳澤大臣にお聞きしますけれども、こういう金融検査マニュアルによって、まあ中小企業に多少配慮しているとは言いましたけれども、大手銀行も中小金融機関も同じ形でどんどんやっていく、こういうやり方というのはやはり画一的だと思うんですよ。やはり今までのようなやり方ではなくて、もっと中小金融機関、地域経済、中小企業、そこで働く労働者、こういう方々のことを念頭に置いてやるべきだ。この検査マニュアルによる今までのようなやり方の再検討、これを求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 ただいま経済産業大臣が言われたとおり、この検査マニュアルをつくるときにパブリックコメントというものを求めました。そのときに一番私の記憶で多かったのは、中小零細企業に対する配慮であった、また中小金融機関に対する配慮であった、このように思っております。そういうものを盛り込んでこの検査マニュアルはつくられたという経緯がございます。そういうものでありますので、私どもとしては、この検査マニュアルを的確に運用していくということが我々の使命だというように考えております。

佐々木(憲)委員 私は、この検査マニュアルそのものによる信金、信組に対する画一的な検査を行うということ自体の撤回を求めたいと思います。そうしなければ、今これだけ、ことしに入って四十というたくさんの信金、信組がばたばたつぶれている、これがさらに破綻が広がる、もう本当に異常な状況になると思うんですよ。年末年始にかけて、本当に中小企業は年を越せるのか、こういう状態があるんです。だから私は、この画一的なやり方に対して徹底的な再検討、そしてそのやり方を撤回するということを求めたいと思います。

 失業問題について坂口大臣にお聞きしようと思いましたが、ちょっと時間がなくなりまして申しわけございません。せっかくおいでいただきましたが、中林議員と交代の予定ですので、以上で私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

野呂田委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、中林よし子君。

中林委員 私は、牛海綿状脳症、BSE問題について質問をいたします。

 きょうは非常に時間が短いので、今すぐ解決が求められている問題、差し迫った問題に絞ってただしたいというふうに思います。

 私は、この間、一頭目の千葉県、二頭目の北海道猿払、三頭目の群馬県宮城村というふうにずっと回ってまいりました。千葉県では、三カ月たった今どういう状況になっているかということも伺ってまいりましたが、どこに行っても私は身を切られるような、そういう思いで皆さんの要望を聞いてまいりました。酪農家、肥育農家というのはもう深刻の度を増すばかり、こういう状況になっております。

 とりわけ、牛肉の価格の低迷です。ホルスタインでB2ランクという比較的安い部類のところですけれども、それでも従来キロ七百円から五百円したものが、実に、ここに農家の人から数字をいただきました、何とキロ三十二円、二十分の一まで下落している、こういう状況ですし、A3ランクの牛肉は、千四百円していたものが今では三百円にまで下がったということで、四分の一から五分の一の価格という状況です。特に肥育農家からこういう悲鳴が上がっているだけではなくして、廃用牛を屠畜に出すことができなくなっている酪農家から、大変困難な実態が寄せられました。

 屠畜場自体が、自分の屠畜場でBSEが発生したら屠畜場の経営に深刻な打撃が出るということで、廃用牛の受け入れを事実上拒否している、こういうことにもなっておりますし、生産者自身も、自分の農家からBSEの四頭目、五頭目が出たら大変なことになるということで、この廃用牛の扱いに困って立ちすくんでいるというのが現状で、行き場がありません。このままでは酪農家の牛の更新ができなくて、日本の酪農家は来年六月にはもう行き詰まってしまう、このようにもおっしゃっているわけです。多くの産地からは、廃用牛を国の責任で買い上げてほしいという強い要望が出ております。

 政府として直ちにこの廃用牛の買い上げに取り組むべきだと私は思いますし、また牛肉の価格を戻すのは今やもう待ったなしの状況ですから、農畜産業振興事業団の買い上げを直ちに行うべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

武部国務大臣 お答えします。

 我が国は合計百七十二万頭の乳用牛がいるわけでありますが、毎年三十万頭が順次廃用となっております。屠畜場へ出荷され、すべてBSE検査を受けた後に食肉として流通することとなっているわけでございます。これらの牛肉は安全なものでありますから、かつ、国産牛肉の約二割弱を占める貴重な牛肉資源であるということからいたしましても、廃用牛を国が買い上げて処分することは適切でない、かように考えます。

 また、BSE感染牛をきちんと摘発することがまず消費者の信頼を回復する基本であるということを酪農家の皆様にも十分御理解願えるよう努力をしていかなければならない、かようにも考えております。

 なお、廃用牛の出荷が滞る状況が見られることから、まず屠畜場における乳廃牛の受け入れについて理解を求めていくとともに、廃用牛の出荷が円滑に行われるような方策について検討するよう指示しているところでございます。この乳牛の更新が円滑にいかなければ大変なことになるということにつきましては、私どもも十二分に認識している所存でございます。(中林委員「事業団買い上げ、もう一つの答弁漏れ」と呼ぶ)

野呂田委員長 中林君、ちゃんと質問してください。ささやいちゃだめだよ。起立して質問しなさいよ。

武部国務大臣 畜産事業団の買い入れのことでありますが、牛肉の卸価格は、九月十日のBSE発生後、国内消費の減退から低下しまして、安定基準価格を下回って推移いたしました。このような状況に対処して、価格の安定を図るため、十月二十六日から調整保管を開始しているところでございます。

 牛肉の卸売価格は、調整保管の開始後、安定基準価格を上回って推移いたしましたが、屠畜頭数の急速な回復に伴いまして、十一月十五日以降は弱含みとなっているのでございます。このような中で、二頭目、三頭目のBSE患畜の発生によりまして、十二月に入り牛肉卸価格がさらに低下して推移しているということは御指摘のとおりでございまして、このため、生産者団体等は調整保管による買い上げ規模を拡大して対応する、農林水産省としても、消費者の不安を払拭し、牛肉需要を早期に回復させることが価格安定のかぎであるというふうに考えておりまして、マスメディアの活用やシンポジウムの開催等のPRを行っているところであります。

 さらに十二月十四日には、十月十七日以前の市場隔離牛肉について、すべて焼却処分するとの方針を決定したところでございまして、いずれにいたしましても、市場からの買い入れを通じて需給の適正化を図ることが基本でありまして、引き続き調整保管の機動的な実施により対応してまいりたい、かように考えております。

中林委員 大臣、私は、廃用牛の問題では、非常に貴重な肉資源だということは、これはもう農家の人たちも十分承知の上ですよ。承知の上だけれども実際動かない。

 しかも、これは北海道の標茶の畜産農家の方々、酪農家から、もう死ぬよ、死にそうだ、こういう声も上がっていますし、別海町では、地域経済は酪農が支えている、商店も土木建設も酪農がだめになればみんなだめになるということをおっしゃっているわけですよ。つまり、今廃用牛の問題が解決しなければ地域崩壊につながっていく、こういうところまで来ております。

 それから、こういうことをおっしゃる農家の方もありました。自分たちは時限爆弾をもらったようなものだ、そっと農水省にお返ししたい、農水省は受け取ってもらえますか、このようにおっしゃるわけですね。今、BSEが見つかっているのは、みんな廃用牛から見つかってきているわけですよ。だから、出すに出せないというこのせつない思い。

 そして、屠畜場にとっても、それがうちから出たということになると取引が停止になるという非常に大変な状況になって、廃用牛の国の買い上げ、これは大した予算ではありませんよ。本当に今暗やみの中にいる人たちが、一筋の明かりを見て、そして新年を迎えることができるか、まさにそこにかかっているというふうに思います。

 多分、大臣、きょう群馬県の宮城村からもこういう要請書を受け取られたかと思います。その中にも切実にその要求は出ているんですよ。どうですか。年が越せないからといって廃用牛をこちらに持ってきていいんですか。行き場を失っているんですよ。そういう人たちのために、その屠畜場に受け入れてもらうように検討していると。それも一つの選択肢でしょう。だけれども、屠畜場が受け入れられないというような今のすくんでいる状況を解決していくためには、政府の買い上げ、これが必要なんじゃないですか。

 それから牛肉だって、私は無理難題を言っているんじゃないんですよ。事業団には予算もあります。財源はあるんです。しかも、法律によって買い入れることができる、こういう法律要綱がある。豚ではやったことがあるんだけれども牛ではやっていない。調整保管では効果が出ていないじゃないですか。だからそこを迫っているんで、ぜひ、その廃用牛の国の買い入れを含めて、それも選択肢の一つとして検討いただけますか。

武部国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、廃用牛も有力な国産食肉資源なんです。これは、全頭検査体制のもとで検査合格したものは安全なものなんですね。それはもう説明しなくてもおわかりになりますね。そういうことを否定するかのようなことはできません。ですから、調整保管、あるいは生産者団体も含め、また都道府県の屠畜場を管理している皆さん方を含め、正しい御理解をいただくような最善の努力をいたします。さらに、この乳牛の更新というのはそれこそしっかりやらなくちゃいけません。

 そういう観点から、私どもは今対策を指示し、構築中でございますので、必ずや皆さん方に御理解いただけるような努力をいたしますので、また、生産者の方々を初め関係者の方々も今が本当に辛抱どきだ、このように思っております。やはり科学的な根拠とかそういったことを貫いていくということも非常に大事なことなので、ぜひ御理解いただきたいと思います。

中林委員 とても納得いきません。

 それは、本当に農家の人たちは家族同然に牛を飼ってきている。その廃用牛の行き場がなくなっている。どうするんですか、こうお聞きすると、どうしようもないんです、だから野良牛にするしかないかな、こういう声さえ出ているような状況なんですよ。農水省の周りで野良牛が出たらどうなりますか。そうならないための施策ですよ。

 だから、これが貴重な肉資源だということは酪農家の方々も肥育農家の方々も百も承知の上で、泣く泣く、だけれども消費者の信頼も回復しなければ消費が拡大できない、そうであるならば、この問題の対策、解決が必要だ、こういうことを言っているし、価格が戻れば、また経営もやろうか、こういう状況になるわけですから、ぜひここは、年末、年を越していくために、検討を前向きにやっていただきたいと思います。

 私は、もう至るところで自殺の話を耳にしたんですよ。子供を大学をもうやめさせなきゃいけない、仕送りがストップしている、こういうせつない農家の方々の思いをどうしても受けとめていただきたいというふうに思います。

 十七日以前の肉を買い上げて焼却処分にすると決めたと。私どもはもっと早くからそれをやるべきだと言ってきましたよ。決定が遅いんです。いわば政府の後手後手の施策、これも今多くの国民の怒りを買っておりますけれども、私は、農水省の責任、政府の責任問題をこれまでも追及してまいりました。

 農水大臣、あなたは、九六年のWHO勧告を受けての行政対応、これはどうだったのかと聞いたときに、専門家の意見を聞いてやってきた、このように答弁を繰り返してまいりました。しかし、それがうそであったことがわかりました。九六年四月二十四日、農業資材審議会家畜飼料検討委員会の議事録で明らかになったんです。これがそうです。速記録です。

 WHO勧告を受けて開かれたこの検討委員会は、飼料安全法第二条の二に基づく飼料における新たな基準の設定、使用禁止とすべきかどうかを審議するために開かれたものです。

 二人の委員が、「禁止すべきだと思う。」「公衆衛生も兼ての見地からすると、ある程度禁止措置というのは法的なものも必要なのかなと感じる。」こういう主張も加わっております。ところが、当時の横山流通飼料課長が、「また五月にでもお集りいただいて結論を出していただこうかと思う。」と結論を先送りにして、そして、とうとうことしの三月までは審議会を開かなかったわけですよ。だから、法的措置を求めた委員の声を葬り去りました。

 このとき法的禁止措置をとっていればBSE発生は防げたということは明らかですよ。この責任、大臣、認められますか。

野呂田委員長 武部大臣、時間が参りましたので簡潔にお願いします。

武部国務大臣 先ほどの廃用牛対策については、諸般の安定対策に全力を尽くします。また、農協等の協力を得ながら、屠畜場への計画的な出荷を促進する等の検討もいたしておりますので、御理解いただきたいと思います。

 ただいまの御質問でございますが、十三名中二名の委員から法的措置も必要との意見が出されたということでございますが、WHOの勧告内容が正式に決定された後、その内容及び各国の状況を踏まえた上で改めて審議されることとなった、このように聞いております。

 いずれにいたしましても、私自身、何度も予算委員会あるいは農林水産委員会等で御答弁申し上げておりますように、今回のBSE感染牛の発生は、危機管理意識の至らなさ、それに伴う検査体制の甘さということなどが原因であります。そういったことが今お話しされたようなこと等にも由来するのかどうか、第三者調査検討委員会を設置して、私どもは、これまでの、過去のいろいろやってまいりましたこと等を検証するという必要性を感じて、今、第三者委員会で御議論をいただいているところでございます。

 私どもは、何度も申し上げておりますように、今後、そういったことを通じて、畜産、食肉、食品衛生行政のあり方というものを抜本的に見直していかなきゃならぬ、かように考えている次第でございまして、御理解をいただきたいと思います。

中林委員 時間が終わりましたので、今の点なんですけれども、ぜひ委員長に、この当時、この審議会に出席していた横山流通飼料課長、それからつるが流通飼料課長補佐、当時の畜産局長、熊澤局長ですね、ぜひこの委員会に証人喚問を要求したいということを申し上げまして、質問を終わります。

野呂田委員長 理事会で相談してみます。

 これにて中林君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂委員 社会民主党の保坂展人です。

 私も、きょうのテーマとしてBSEの問題、武部農水大臣そして政府参考人に具体的な詰めの議論をさせていただきたいと思います。

 武部大臣は、この九月以降、衆参両院で、私も議事録に目を通させていただきましたけれども、これは十分だったかどうか、これは国会の作業としてもっともっと本当は議論すべきだと思いますけれども、しかし、多方面で議論が行われたと思います。

 そして現在、先ほどの答弁にもありましたように、全頭検査体制、つまり、消費者に汚染された肉が行かない、そこを閉じるということで対応していただいているということは理解をしております。しかし、にもかかわらず、食肉あるいは消費の面で、価格の面で、指摘されているように、まだまだ不安は除去し得ていない。出口のところはとまっているんですけれども、入り口のところ、つまり、どういう経路で感染が起こったのか、どういう経路で汚染された恐らく肉骨粉が飼料に入っていったのか、ここの部分についてまだまだ解明はされていないというふうに思います。

 私は、さきの決算行政監視委員会で、農水省の九六年四月の行政指導以降、汚染された肉骨粉は使わないんだ、そして、牛には肉骨粉を食べさせないという原則で飼料検査が行われてきた、中身を聞いたんです、中身を。どうやって検査したんですか。資料、大臣の手元にもあるでしょうか。

 こちらは本日、農水省からいただいた資料なんですけれども、そのときの答弁で、基本的に飼料の形状、色、光沢で検査する。つまり、飼料を手にしてみて、そしてきょうの報告には、においや味、指による触感、これも加わっていますね。つまり、飼料をこうやって広げて、手でさわってみて、においをかいでみて、こう手でさわったりして五感で判断する。これを聞いて驚いたんです。大変驚いた。いや、そういうことをやっていたのか。

 まず局長に伺おうと思いますけれども、こんなことで判別できないんじゃないか。肉骨粉が混入していた場合に、こうやって手でとって、においや色、形、これは相当量入っていれば別ですよ、だけれども、判別できないんじゃないか。このことについて明快にお答えいただきたいと思います。

小林政府参考人 今御指摘ございました立入検査現場における飼料の感覚による品質の鑑定でございますが、これは、肉骨粉の混入につきまして、立入検査場所で目視検査を行っております。

 これは、検査実施要領がございまして、その要領に基づきまして、飼料を収去するときに製品を、この写真にございますように、開封し、広げた後に行っておりますが、主として感覚による鑑定で、色、におい、感触等を行い、肉骨粉を確認しまして、要するに、こういった形で肉骨粉の色とかにおいとかこういうものを確認しておるわけでございまして、そういう意味で、特にこういった熟練といいますか、そういった技量も必要ですが、こういったことで確認をしております。また、熟練した方の力が、熟練したことによって対応できるということでございます。

保坂委員 今、全然答えていないんですよ。また来てください。

 こういうことで判別できるのかどうかと聞いているんですよ。判別できるんですか。ちゃんとまじめに答えてよ。どっちか、イエスかノーか。

小林政府参考人 鑑別も相当程度できます。

 これは、こういった収去をして、色、においがありますし、それから、必要に応じましてフレームも使いまして、そこの粒度別に分別しております。そこで、その分別されたものごとに感覚を見るという形で、拡大鏡なんかを使いながら目視を行う。こういった形を進めてきてございまして、それなりの確認ができるわけでございます。

保坂委員 では武部大臣、率直にお答えいただきたいんですね。

 この資料をごらんになって、今答弁にあったように、九六年の行政指導以降、飼料の、肉骨粉が混入しているかどうかという検査は、こうやって手でさわって、そしていわば五感を働かせて検査をしてきた。こんなことじゃいかぬでしょう。いけないから検査方法を変えたんじゃないですか。

 御答弁願います。簡潔にお願いします。

武部国務大臣 検査方法その他あらゆることをより的確にやれるような努力を今しようということを指示しているのでございます。

保坂委員 武部大臣、率直にお答えいただきたいんですが、検査方法をより的確にということで顕微鏡に変えたんですよね。ということは、顕微鏡に切りかえる前、五感で見ていたときには、これは見落とした可能性もあるじゃないですか。そういう危険が除去できない、こう思うんですが、この点についてきちっと答えてください。

武部国務大臣 私は、絶対という考え方を持つ男ではありません。ですから、大臣に就任以来、起こり得ないと思うことが起こり得るという時代なんだ、そういう考え方で対処しなきゃだめだ、そういうことですべてを総点検すべしと、そういう指示をしているわけでありまして、ごく専門的なことは、残念ながら私もそんな立派な知見を持っているものではありませんので、私の可能な限りのことを指示している次第でございます。

保坂委員 武部大臣から率直な答弁をいただきました。私ももちろん専門家じゃありませんので。ただ、少なくとも、この検査の方法を見て、これはとやはり思わざるを得なかったわけです。ですから、今あらゆる可能性を想定しているということであれば、今回の顕微鏡の検査に至る前、肉骨粉が混入した可能性もあったということで、これはしっかり調査をしていただきたいと思います。

 さて、その上で、今度は資料の二の方をめくっていただきたいんですが、現在は、ことしの一月からは顕微鏡で検査をされています。ふるい分けして、比重分離して、ろ過して、アルカリ処理ということで、顕微鏡で鑑定をする。我々は、ああなるほど、これでこの飼料の中の肉骨粉混入については識別できるんだなというふうに思ったわけですけれども、実は、なかなかこれも識別できるとは言いがたい、こういうふうに聞いております。

 肉骨粉の見分け方、肉骨粉には空洞があるそうなんですね。この空洞を注目していく、そうすると、ある程度は肉骨粉は見出せるんだと。ところが、その空洞のある肉骨粉の割合は三分の一で、ないものが三分の二ある、そういうことなんですね。ということは、これは万全ではない。この点について、じゃ、政府参考人、いかがですか。顕微鏡で完全にその肉骨粉を識別できないんじゃないか、こういうことなんですけれども。

小林政府参考人 顕微鏡検査はことしの一月から始めております。また、EU諸国でも進めておりますが、確かに精度は先ほどの検査に比べれば相当高まりますし、また、最終的にろ紙に残ったものを五%の水酸化ナトリウム液で三十分煮沸して、静置して、沈殿したものを顕微鏡で検査いたしますので、そういう意味での精度というのは相当高いというふうに考えております。(保坂委員「高いじゃなくて、答えてないじゃないか、識別できない場合は」と呼ぶ)相当の確度で識別できると思っております。(保坂委員「識別できない場合はあるんですか」と呼ぶ)全くないということは否定できませんけれども、相当の確度で行えると思っております。

保坂委員 私ども調査してまいりました、独立行政法人の肥飼料研究所、鑑定課長さんにお話を聞いたんですね。実は、鑑定課長さんのお話なんです、私の今紹介した。

 要するに、肉骨粉に空洞があると。これは三分の一しかない。そしてまた、大型魚のマグロなんかにも空洞はあるらしいんです。なかなかこれは全部というのは難しい、こういうお話でした。これは間違いないですね。いかがですか、もう一回。

小林政府参考人 お示しの写真の下の方にありますように、空胞の特徴というものは存在いたします。(保坂委員「ちょっと、ちゃんと答えてくださいよ」と呼ぶ)空胞が生ずることがございます。

保坂委員 ちょっと、これは続けられないですよ、こういうふまじめな形じゃ。今、質問を聞いていただければ、そんなの、質問をしているわけだから、ちゃんと答えてくださいよ。ちゃんと独立行政法人の肥飼料研究所に行って、顕微鏡では肉骨粉、全部識別しかねる、こう言っているんです。これが本当かどうか、農水はどういうふうに認識しているのか、こう聞いているんです。はっきり答えてください。

小林政府参考人 まず、先ほどございましたように、これですべて完全にチェックできるかということは、もちろん完璧でなくてはいけないんですが、ただ相当の確度で行っていることと、それから、今の、先生、私どもの事務所でお聞きになったということについては、私、確認させていただきます。今の、先生がお聞きになったということを確認させていただいた上で、またお答えします。

保坂委員 委員長、じゃ、今確認してもらえますか。これ以上質問できませんよ。農水省にちゃんと質問予告して、この点聞きますよと言って、顕微鏡で今やっているわけですから、飼料の中に肉骨粉が入っているかどうか、それ、答えられないんでしょう、確認しなきゃ。じゃ、確認してください。

野呂田委員長 生産局長。――大臣どうですか、大臣。

保坂委員 今から確認すればいいじゃないですか。後で聞きますよ、じゃ。(発言する者あり)今電話で聞きなさいよ。

野呂田委員長 いや、時間は延ばしませんよ。質問時間は延ばしませんよ。

 局長、答弁しなさい、ちゃんと。

小林政府参考人 先生が私どもの検査所でお聞きになったということについての御確認でございますので、それは至急調べたいと思いますが、ちょっと、調べるのに若干時間がかかりますので、調べた上でまた先生に御報告させていただければありがたいと思います。

保坂委員 委員長、これはもうどうしようもないですよ。ちゃんと予告もして、そして、ちゃんとその研究所で公式に聞いているわけですからね。今、研究所でそういうことを言ったことを早く確認してくださいね。確認をすれば、もう顕微鏡は万全じゃないというのはわかっているわけです。

 次に、そのPCR、エライザ法を使ってこの飼料の中身を見るということについて、これは実現できるんですか。局長、答えてください。

野呂田委員長 ちょっと申し上げますが、農林水産省、ほかの質問進展中に、今の件、確認してみてください。

 生産局長。

小林政府参考人 肉骨粉の検出方法の中で、PCR法による検査方法のお尋ねでございます。

 その実用化を今進めておりまして、肥飼料検査所が、農業生物資源研究所なり農業技術研究機構の畜産草地研究所の協力を得まして、このPCR法とエライザ法を組み合わせた検査法の実用化に向けた取り組みを進めております。

 PCRにつきましては開発の最終段階にありまして、順調に進みますれば今月中にも実用化できるというふうに考えております。

 以上でございます。

保坂委員 武部大臣、いろいろ檄を飛ばし、そしてまた、さまざま率直じゃないことについては注意をするということをたびたびおっしゃっていますけれども、私はこれは大事な問題だと思うんですよ、感染ルートの問題ですから。今、顕微鏡でやっているんです。ただ、顕微鏡でやっていることについて、万全じゃないというか、識別できない場合があるというふうに言っているわけなんですね。

 それで、私ども確認したところでは、実は金曜日の夕方まで、今答弁したような内容の、この顕微鏡以外のエライザ法などの検査の方法については今研究開発中で、急いでいるけれどもまだできていないというふうに答えているんです。

 ところが、では大臣、めくってください。資料の、これは何ページ目でしょうか、資料の五。これはもう魚粉の問題に入りますけれども、ここに、検査に当たっては、肥飼料研究所が独自に開発したエライザ法を用いて分析を行う予定ですと書いてあるんですよ、魚粉の内容について。ちょっと質問の順番が前後していますけれども。

 私が金曜日に確認した時点で研究開発中で、これは金曜日に出ているんですよ。やはり、国会から今どうなっているんだと実態が問われたときに、私、正直に答えてほしい。

 今のやりとりを聞いていかがですか、大臣。

武部国務大臣 私からも今委員におわびを申し上げたいと思いますけれども、役所というところは、私も、何でこんな無用な面倒くさいことをやらなくちゃいけないのかと思うことが多々あります、正直申し上げて。それは私どもが、点検と確認とか報告、連絡、相談を徹底せよということを再々言うものですからそういう意識を持っていると思いますが、私がけさ報告を受けたところによりますと、肥飼料検査所の肉骨粉の混入検査は、これまで顕微鏡により実施してきたところであるけれども、より検出精度を高めるためにエライザ法を利用した検出技術の開発を進めてきたところであって、今般その実用化に成功したということから、本日からエライザ法による検査を実施することとしたという報告を受けているわけであります。

 今、委員とのやりとりを聞いていて、何ではっきりそのことを申し上げなかったのかなと。大臣に遠慮してそういうことを言わなかったのかなということであればこれはつまらない話だ、このように思いますので、今後、気がついたことは責任ある立場でしっかり情報を新たにしていくということを指導したいと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。

 なお、今後ともこの検出技術の開発というのは日進月歩なんだろうと思います。そういう意味で、さらにもっと新たな技術が開発されるかもしれませんし、私ども、後で出てくるかもしれませんが、今一番頭を痛めているのは、このBSEの検査というのは牛を屠殺しなきゃならぬということが問題なんですね。生きているうちに検査できる方法はないのか。きょうの朝日新聞を見ましても、また私もある学者からも聞いておりますし、そういったことを、さらに強力にそういうことが行えるように、安全な飼料の確保等も含めてしっかりやっていきたいと思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

保坂委員 武部大臣にそういう御答弁をいただきました。

 私は、きょうは入り口、つまり感染ルートだけに絞ってお聞きしますので、その点だけの議論にさせていただきたいと思います。

 もう一回局長に答弁いただきますが、それでは、これで一番ひどい被害を生んだイギリスでは、この飼料の検査はどういう方法でやっていますか。簡潔に述べてください。

小林政府参考人 イギリスだけについて申し上げますと、一九九六年二月からエライザ法による検査を進めております。

保坂委員 今答弁を聞いて、どうですか、大臣。イギリスはエライザ法でやっていた、そして日本では、手でこうやって見ていた、そしてその後、ちゃんとやらなきゃいかぬということで、一月から顕微鏡にした、しかし、顕微鏡でも識別しかねる、それでエライザ法にした。これはイギリスではやっているんです。そういう情報をきちっと、国民が安心するように全部出して万全な検査をする、こういうふうにぜひしていただきたい。この点についていかがですか。

武部国務大臣 ぜひ、知り得る限りのことを情報公開していこうと思っておりますし、過去の問題については、先ほど申し上げましたように、第三者による調査検討委員会を開いております。そこにありとあらゆる資料を出しますし、求められるものは全部出します。これはやはり根本的に、すべてを客観的に科学的に検証する必要がある、こう思って、そのためにそのような委員会を設置しているわけでありまして、私ども、これは国会の議論から逃げるためにそんなことをやっているわけじゃありませんので、どうぞ、委員は私の性格も御存じだと思いますので、御理解をいただきたいと思います。

保坂委員 そうなんです。性格を知っているからこそ、この点について、率直におかしいことはおかしいということを言われるというよい点があられると思いますので、このことについて、先ほど魚粉の話をしました。

 資料にもつけていましたけれども、先週、一斉に報道がございましたよね。つまり、生産ラインの問題が議論されていたんですよ。この飼料の中で、例えば鶏、豚用の肉骨粉入りの配合飼料と、それを入れてはならない牛用のものがまじってしまっているんじゃないかという議論があったんですけれども、しかし、この配合飼料の中の魚粉の中に、実は肉骨粉の混入が認められた、こういう報道がございました。

 ここで検査ということが指示をされているんだと思いますが、私はこれを見て、どうせこういう検査を即断即決でやられるのであれば、この期間、本日から一月の末までかかるんです。これは工場を全部立ち入りして検査をすればそれはかかるでしょう。だけれども、大臣、いいですか、私の言いたいのは、そういうことが認められたのならば、本日ただいま、全国一斉に指示をして、今の流通段階、倉庫にあったり、あるいは運送業者の倉庫にあるかもしれない、あるいはその会社にあるかもしれない、それを、まず現物を速やかに押さえて、検査はそれからゆっくりやればいい。数日でできますよ。

 そういうことで即断即決していただけないですか、これは不安が増しますから。それで、感染ルートがはっきりしていけば、今度は入り口の問題に、ある程度、なるほどこうだったのかという問題が出てくれば、これは不安の解消にもつながりますから。いかがでしょうか。

武部国務大臣 直ちに今正確なことを申し上げることは少し難しいと思います。やり得ることならばすぐやればいいだろうと思います。しかし、さまざまな事情があって、直ちに難しいとか、少し時間がかかるというようなことがあるならば、やはりそれはやむを得ないんじゃないかと思いますが、いずれにしても、可及的速やかにやることが私は必要じゃないか、そういう認識でございます。御不満かもしれませんが、よく状況を調べた上で適切な指示をしたい、指導をしたい、かように思います。

保坂委員 これはそんなに論理的に難しい話じゃありません。

 魚粉をつくっている工場がたくさんありますよね。八十ある。そこに検査の体制を組んで一つずつ入っていくにはこれは時間がかかります。数日ではできませんよ。しかし、現段階で生産をし終わったこの品物、サンプルをとりあえず出してもらうなり集めるなりして、それを一斉に検査にかければ、これはそんなに時間がかからないでしょう、この点について即断即決してくださいと言っているんです。

小林政府参考人 今、先生御指摘の点も参考にさせていただきながら、できるだけ早くやれるように、エライザ法も準備できましたので、進めていきたいと思っております。

保坂委員 早くやっていただけるということなので、大臣からも改めて念押しをいただきたいと思います。

 それで、資料の方にやはりつけておきましたけれども、「畜産の情報」という専門誌の中で書いてあるのです。やはりEUでも、魚粉飼料を反すう動物に与えることについては、BSE感染源ではないけれども、顕微鏡で検査をする際に肉骨粉と区別が難しいので使用が禁止されている。こういうEUの取り扱いもあるようでございます。

 ぜひ、この点について、感染ルートの解明に向けて一歩でも早く手を打っていただきたい。一言、その点についていかがですか。

武部国務大臣 私どもは、まず第一優先は、人の健康に影響を与えない体制、全頭検査体制ということに優先して取り組んでまいりました。

 それから、風評被害と言われれば、農林水産省がしっかりしていないから風評が拡大した、こういうおしかりも受けますが、いずれにいたしましても、今、生産者から焼き肉屋さんに至るまで大変な経営の厳しい状態に置かれているわけでありまして、この安定対策に全力を尽くす。さらに、少し時間はかかるかもしれないけれども、感染源、感染ルートを解明しないと最終的な解決にならぬ。そういう決意でおりますので、委員の御指摘を踏まえてさらに努力してまいりたいと思います。

保坂委員 それでは、資料の最後に、イギリスにおけるBSEが発症してしまった牛が生まれた年ごとの表を出しておきました。

 これを見ると、一九八八年には、反すう動物由来の肉骨粉を反すう動物に与えるのを禁じております。九〇年には、牛の特定臓器由来の――ちょっと静かにしてもらえますか、静かに。全家畜に与えるのを禁止しています。九一年の十一月には、これを肥料に使うのも禁止しています。それで、九六年の三月には、哺乳動物由来の肉骨粉の販売、供給、全家畜への禁止をしていますね。

 EUではことしの一月よりそういった取り扱いをしていて、防疫上の取り扱いも日本もそう対応しているというふうに聞いていますけれども、これは、この表で見ると、豚や鶏その他の家畜に完全に不安が除去されてしまえば肉骨粉の問題も心配ないのでしょうけれども、やはりこういう進行形で不安が広がっているときにはそこからしっかり根元を断つという対応で、イギリスはひどい被害でしたけれども、こうやって最近は減ってきている。

 何でこの肉骨粉の全面禁止を早々と一部解禁をしてしまったのか。このイギリスの例に学ぶべきじゃないかというふうに思いますが、いかがですか、武部大臣。

武部国務大臣 肉骨粉の取り扱いについては、BSE対策検討会でいろいろ御議論をいただいて対応するということにいたしているわけでございます。

 当初、豚、鶏は科学的な根拠がないじゃないかという議論もございました。あるいは、肥料だとかペット用のフードなどはEUも禁じていないというような御指摘もございました。しかし、私は、一度きちっと徹底させるという必要性を感じて全部禁じたわけでございます。

 しかし、その後の取り扱いについては、専門家等によるBSE対策検討会で議論をしていただいた上で、そこでいいということであればこれは解除してもいいのではないか、そういう認識に立っていたわけでございます。

保坂委員 これはきちっと、特にイギリスの扱いなどを注目して学ぶべきだと思います。

 そして、EUの、これはないと言われていた最終報告の全文が、これは毎日新聞が十二月十三日に報道していますよね。ごらんになったと思いますけれども。このEUの報告書の中で、牛への肉骨粉使用を禁じた九六年通達指導が飼料会社や飼料製粉会社に行き渡らなかったという点があるのですね。これについて農水省は抗議したそうなんですが、この抗議や今の議論を聞いていて、やはりこれは明らかにEUの指摘の方が正しかったと思うのです。その点、反省していますか。

小林政府参考人 EUとのやりとりの中で、私どもの九六年の通達が関係飼料会社に十分行き渡っていないじゃないかという指摘がございましたけれども、九六年通達を各会社、関係機関、すべてに流しておりますので、そういった説明、指摘をしたところでございます。私どもとしては、九六年通知をきちんと関係機関にすべて周知いたしました、そういう趣旨でございます。

保坂委員 こういう答弁をやっているようじゃ全然信頼の回復はないと思いますよ。だって、これは自粛なんですから、法的な罰則もないのですから。これはEUも、抗議して、出すな出すなといって、今、これだけの議論をして、そして反省のつゆ一つもない。こういう態度は非常に、今回のいわば畜産農家の方々、流通関係、販売店あるいは飲食関係、大変怒っていますよ。これはひどい。

 厚生労働大臣に伺いますけれども、現在、こうやって日本で見つかってきた。これだけにおさまればいいけれども、もっと広がるかもしれない。人に対しての感染例はこれまでないというふうに聞いていますけれども、これは本当にないのか、そして今後はどういう予想をされているのか、一言お伺いします。

坂口国務大臣 今のところございません。

 ただ、これからのことにつきましてはわかりませんので、今後の経緯を見たいと思います。

保坂委員 これからのことはわからないということ、大変に重く受けとめながら、この問題、入り口の議論を徹底的にやはりやるべきだ。つまり、感染ルートの問題というのは、今も飼料の売り上げはかえってふえているわけですよね。ですから、今現在、ひょっとしたらその飼料の中に汚染された肉骨粉がまじって、どういうルートかわかりませんよ、しかし、それをチェックする体制もまだまだ不備だということを指摘して、次のテーマに移りたいと思います。

 厚生労働大臣においでいただいていますけれども、これは、風邪薬を飲んでスティーブンス・ジョンソン症候群という恐ろしい、いわゆる激しいやけどの状態、こういうふうになり、そして苦しんでいる方たちが相当いる。これは厚生労働省と大分議論をいたしましたし、坂口大臣にもその患者さんに会っていただきました。そして、質問主意書も出させていただきましたし、予算委員会の分科会でも議論させていただいた。

 その結果、大変にスピーディーに、多分、医学的な研究の分野においては一歩も二歩も、この痛みや症状を和らげる、そういう措置をとっていただいたと思います。ただ、これは時間がかかりますよね、結果が出るのに。

 私は、何度もこれは厚生労働省と議論をしてまいりましたけれども、例えば、この問題について、医薬品機構の制度も使えない部分があります。五十五年以前にその薬を飲んでそういう状態になって苦しんでいる人には使えない。そしてまた、難病とか特定疾患の、これも当てはめようにもなかなか難しい。

 坂口厚生労働大臣に、ぜひ、この患者さんたちの叫びを受けとめて、これはある確率で必ず起きてくる。日本だけではありません、御存じのように。そのスティーブンス・ジョンソン症候群の患者さんたち救済のための制度をつくるべきだというふうに思うのですが、その点に関していかがですか。

坂口国務大臣 スティーブンス・ジョンソン症候群につきましては、ことしの初めの予算委員会の分科会でございましたか、委員からお取り上げをいただきまして、私も詳しい実情を聞かせていただきました。また、患者さんの皆さん方にもお会いをさせていただきまして、非常に厳しい現状というものにつきましてもよく理解をさせていただいたところでございます。

 しかし、今御指摘になりましたように、現在あります法律等によりますと、なかなか皆さん方を救うことのできる法律が実はないわけでございます。どこかにこの皆さん方に当てはまるところがないかと私も随分いろいろと研究をしてみたんですが、現在ございます法律の中ではなかなか難しいということがわかったわけでございます。

 ただ、非常に厳しい現実があることだけは間違いがないというふうに思っております。これはスティーブンス・ジョンソン症候群だけではなくて、ほかにも、例えばライ症候群とかほかのものもあるわけでございまして、これらの皆さん方で、しかも現在の法律の範囲を超えているところの人たち、この人たちに対してどうするかということは私は大きな問題だというふうに思っているわけでございまして、いろいろ今まで考えてまいりましたが、今までのところ、なかなかいい方法がなかったものですから、今日を迎えておりますが、もうしばらくお時間をちょうだいしたい、少し、どうしたらいいか、新しい道を考えさせていただきたいと思っております。

保坂委員 坂口大臣も直接の訴えを聞いて、三分に一回ですか、目薬を差さないと、涙が出ないわけですからもう目が乾いて、寝るときにはグリースを塗って寝るような、そういう状態で、角膜移植を何回も繰り返したり、塗炭の苦しみにおられる。本人は何の責任もないわけですね。これはぜひ救済制度をいち早くお願いしたいというふうに思います。

 それでは、残るテーマは法務関係なので、お二人は結構でございます。

 実は、十二月十三日、朝日新聞を見て私は非常に驚きました。私どもは超党派で、つい最近、自由民主党の亀井静香議員に会長になっていただいて、死刑廃止のための議員連盟、こちらの活動の方を重ねて行っておりますけれども、死刑執行文書を廃棄してしまった、捨てちゃったんですね、情報公開法の施行の前に。

 これは本当に驚いたんですけれども、きょう副大臣に来ていただいていますけれども、森山大臣は、たしかスウェーデンの王妃が来られていて、そして国際的なシンポジウムで応対をしなければならないのでこの委員会には出席できない。国際的な、しかもスウェーデンがイニシアチブをとった児童買春・ポルノ禁止だとか、そういうテーマについては大変大事だというふうに思いますので、副大臣に来ていただいてお話を伺いますけれども、そのスウェーデンもまた、EUの中で死刑廃止を日本政府に求めていく、こういう立場なんですね。

 副大臣、この死刑執行の文書を廃棄したということ、例えば文書の量にしてどのぐらいの量を廃棄したのか。つまり、倉庫がすごくいっぱいで大変でということがあったのかどうか、おわかりなら。

古田政府参考人 具体的な関係文書そのものの量については今ここで把握はしておりませんが、昭和の二十年、二十一年以降の……(保坂委員「量はどのぐらい」と呼ぶ)それはもう、今ここで、どの程度のボリュームになるか、ちょっと私自身正確には把握しておりません。

保坂委員 これはいろいろな点で問題があると思うのです。

 例えば、七十歳を過ぎて、自分が三十年、三十五年前に本当はこの事件の真犯人だと、そういうことを自分の命のあるうちに世間に告白しておきたい、こういうケースだって現実にはあるわけです。しかし、その真犯人とされる方の告白の前にいわば誤判が行われて、そして、犯人でなかった方が処刑台の露と消えていった、こういう可能性もあるわけです。

 こういった書類の扱いは慎重じゃなきゃいけない。そして、死刑の確定判決は百年保存を義務づけられている。判決書以外の記録も五十年。何でこれは十年で捨てちゃうんですか。副大臣、いかがですか。

横内副大臣 死刑執行に関する文書の保存期間でございますが、平成十二年以前は、これは永久保存ということにされておりました。しかし、政令その他が変わりまして、十年ということにしたわけでございます。

 死刑の執行というのは、確かに大変に厳粛な重要な事項であるということではおっしゃるとおりでありますけれども、しかし、判決で確定したものの執行ということでございますので、国の重要な政策の決定に関する文書というようなものではないというふうに考えますので、これを長期間保存をしておく必要性はないのではないか、十年というのが適当ではないかということでございます。

 そしてもう一つ、こういったたぐいの文書というのは、執行を受けた人とかあるいはその遺族の名誉にかかわるという面もございまして、そういう人たちの心情ということも考えますと、余り長期間にわたって保存をしておくというのは適当ではないんじゃないかという判断もございまして、保存期間を十年としたということでございます。

保坂委員 これはちょっと法務省の官僚主義というか、まさに情報公開の時代で、この死刑制度も、つい最近私、韓国へ行ってまいりましたが、韓国の国会では、二百七十三人の国会議員のうち百五十五人が提案者になって死刑廃止法案が出されて議論されているんですよ。ですから、やはりこういう問題は慎重かつ国民の参加を得て議論しなきゃいけない。そういうときに、肝心かなめの書類を捨てちゃう、これは本当に不謹慎だと思います。

 副大臣に伺いますが、森山法務大臣、直接伺いたかったんですが、記者会見の席で、死刑執行の命令書にサインしましたかというふうに新聞記者に問われて、いえ、していません、そんな話も出ていませんというふうに率直にお答えになったそうですが、これは事実ですか。

横内副大臣 森山大臣がサインをしたかどうか、私は承知しておりません。

保坂委員 では、刑事局長、どうですか。記者会見、記者の前で、報道にもちゃんと流れています。こういう発言があったんですか。いかがですか。記者会見ですからね。

古田政府参考人 私自身が直接聞いているわけではありませんが、そういうような御発言があったということは聞いております。

保坂委員 今後とも、この問題、与野党を超えて議論をしていきたいと思います。

 さて、やはり法務省に対して、最後になりますが、本日、これは熊本の方なんですが、福岡の入管の方で裁決の言い渡しがあったというニュースが飛び込んでまいりました。

 これは、中国から帰国された方のいわば連れ子の方が、九六年と八年、二回に分けて、実子であるという、ここは偽って入ってきたと。七人ですか、身柄を収容して送還の手続に入るということなんですが、これは、お子さんが中学生だったり、学校の先生や級友たちが、いや、何とか一緒に勉強させてほしいという運動が広がっているというふうに聞いているんです。

 そして、収容された場合でも、大阪入管で過去、やはり教育権という観点に立って仮放免をしたということもあると聞いています。そういう扱いをもう一度考えていただけないか。この点について、副大臣、いかがでしょう。

横内副大臣 委員の御指摘の点は、二家族七名、一家族は三名、もう一家族は四名でございますが、おっしゃるように、十数年前に不法入国、実子と偽りまして不法入国をいたしました。その容疑がはっきりしたものですから、退去強制手続をとっていたというところでございます。彼らは、全員が容疑事実を、要するに、偽って入国をしたんだという容疑事実を認めた上で在留特別許可を希望していたわけでございます。

 本件につきましては、違反の形態とか、家族の状況とか、生活の状況その他の点を総合的に勘案したわけでありますけれども、そういった判断の結果として、退去処分とせざるを得ないというふうに我々としては判断をしたということでございます。

保坂委員 その十数年前というのは間違いじゃないですか、十数年前というのは。九六年、九八年の間違いじゃないですか。ですから、その点ちょっと確認をしていただいて、やはりよく事情をきちっと見ていただきたい。そして、子供がいる、そして学ぶ権利ということで声も広がっているということについてお答えをいただいておきたいと思います。

 九六年、九八年と私は聞いているんですね。新聞などもそう報じているんです。十数年前に不法入国されたというのは間違いではないかということと、やはり教育を受ける権利ということで、先生あるいは周りの級友たちからの声もあると聞いていますので、その点についてお答えをいただきたいと思います。

横内副大臣 失礼いたしました。入国をいたしましたのは、一家族が九六年、もう一家族が九八年でございます。

 そうやって不正入国をした者に対して在留特別許可を与えるという場合ももちろんございます。個々の事案で、違反の形態だとかあるいは家族の状況、その他人道上の配慮も含めて在留特別許可ということももちろんあるわけでございますけれども、しかし、今回の場合には、我々としては総合的に判断をして、それは難しいんじゃないかと。

 例えば、中国残留孤児が中国で暮らしている間に一緒に暮らしている家族が、たまたまその残留孤児が日本へ帰ったために家族として完全に別れてしまった、離散家族になってしまった、そういうふうな場合には特別な人道上の配慮ということもあり得ると思うんですけれども、今回の場合には、中国にいるときにもこの御家族と残留孤児の家族とは全く別々に暮らしておりますし、また、日本へ入ってきても全く別々に暮らして、生計をともにしているわけじゃないわけでございます。そんなような事情を考えると、今回の場合は、やはり我々としては退去の処分にせざるを得ない、そのように判断したものでございます。

保坂委員 時間が来ましたので、ぜひ、人道的な教育を受ける権利の取り扱いを求めて……

野呂田委員長 ちょっと待ってください。

 保坂委員の質問時間は終わりましたが、先ほど委員長、農林水産省に対しまして、しっかり調査して答弁するようにということでありました。特例でありますが、委員の皆さんの御協力を得て、今から農林省から説明させたいと思います。

 小林生産局長。

小林政府参考人 確認のお時間をいただき、ありがとうございました。

 今、肥飼料検査所の担当官に確認いたしましたところ、鑑定の一つの難しさといたしまして、マグロの骨が例えば肉骨粉の骨と似ておりますので、肉骨粉と間違えて検出してしまうことがある、こういったことを先生に御説明したということでございます。(保坂委員「ということは、言ったとおりだったんですね」と呼ぶ)そうです。

保坂委員 終わります。

野呂田委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会




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