衆議院

メインへスキップ



第8号 平成14年2月12日(火曜日)

会議録本文へ
平成十四年二月十二日(火曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      麻生 太郎君    伊吹 文明君
      石川 要三君    衛藤征士郎君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      小坂 憲次君    小島 敏男君
      高鳥  修君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    野田 聖子君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      細田 博之君    松宮  勲君
      三塚  博君    宮本 一三君
      持永 和見君    八代 英太君
     吉田六左エ門君    渡辺 具能君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      池田 元久君    石井  一君
      岩國 哲人君    岡田 克也君
      河村たかし君    筒井 信隆君
      中沢 健次君    野田 佳彦君
      松野 頼久君    松本 剛明君
      青山 二三君    赤松 正雄君
      北側 一雄君    達増 拓也君
      中井  洽君    中塚 一宏君
      大森  猛君    佐々木憲昭君
      春名 直章君    辻元 清美君
      横光 克彦君    井上 喜一君
      小池百合子君    西川太一郎君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         大木  浩君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       熊代 昭彦君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   総務副大臣        若松 謙維君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            重家 俊範君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月十二日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     麻生 太郎君
  亀井 善之君     金子 恭之君
  栗原 博久君     松宮  勲君
  松野 頼久君     岡田 克也君
  松本 剛明君     石井  一君
  青山 二三君     北側 一雄君
  山口 富男君     大森  猛君
  井上 喜一君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  麻生 太郎君     衛藤征士郎君
  金子 恭之君     亀井 善之君
  松宮  勲君     上川 陽子君
  石井  一君     松本 剛明君
  岡田 克也君     松野 頼久君
  北側 一雄君     青山 二三君
  大森  猛君     春名 直章君
  西川太一郎君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君    吉田六左エ門君
  春名 直章君     山口 富男君
  小池百合子君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
 吉田六左エ門君     渡辺 具能君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺 具能君     栗原 博久君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君、外務省大臣官房長小町恭士君、外務省中東アフリカ局長重家俊範君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。麻生太郎君。
麻生委員 哲学者ヘーゲルの言葉だったと記憶をしますが、時代は課題の提出者であるという言葉が述べられておりますが、戦後と言われて約五十七年、世紀も変わりまして新しい二十一世紀になりましたが、官僚主導、業界協調型体制で、この半世紀、日本は経済復興を進め、いろいろな成功をおさめてきたことは間違いない、私どもはそう思っておりますが、人々の価値観の多様な変化というものにはついていけないことになって、戸惑いながら新しい出口というものを求めているというのが、私どもに今新しい課題を突きつけているんだ、さように理解をいたしております。
 それらの課題に挑み、未来を切り開いていく、そういう時代が今小泉政権に課しております役割と考えておりますので、ぜひ、小泉政権を支える政府・与党としては、自民党の役目として、着実に提出者の課題にこたえるように頑張っていかねばならぬと思っております。
 時代は課題の提出者であるというなら、同様に、時代はその課題に挑む人材を選ばなければならないと思っております。そういうような歴史的な使命の原点に常にここにおられる閣僚の方々は立っていただいて、国民の声に謙虚に耳を傾けながら、みずからの信念に基づいて政局の運営に当たっていただきたいということをまず冒頭にお願いを申し上げ、質問に入らせていただきたいと存じます。
 平成十四年度当初予算につきまして伺います。
 平成十四年度の予算編成に当たりましては、いわゆる五兆円削減、そして二兆円のめり張り等々、いろいろな表現がありましたけれども、財政の支出等々に改善を進め、そしてむだを省くとともに、重点分野には予算配分を厚くするなどの方針によって、改革色の強い予算編成となったと考えておられると思いますが、予算委員会における審議の冒頭に当たりまして、今回でき上がりました平成十四年度予算に対します総理大臣の御見解、御感想をまず最初に伺わせていただきたいと存じます。
塩川国務大臣 基本方針でございますので、総理からお答えするのが至当だと思うのでございますけれども、予算編成の責任者といたしましてお答え申し上げたいと思っております。
 まず最初に申し上げたいと思いますことは、今まで国債の発行によって財政のつじつまを合わそうという努力をしてまいりました。それはそれなりで、日本経済の底割れを防ぐという意味において非常に大きい効果があったと思っておりますが、しかしながら、ここで新しく発展をするためには、一応国債に依存せずして自力で更生するという姿を政府自身が示していく必要があるだろうということから、国債の発行を三十兆円ということを一つの基本方針にしてかんぬきを入れていった、こういうことでございました。
 これに対しましていろいろ批判はございますけれども、しかし、税収が五十兆円を割って、四十七、八兆ぐらいになろうという中で国債の発行三十兆円、借金三十兆円入れてやっていくということは、あながち緊縮でも何でもない、非常に緊迫した財政状況であるという認識に立ちました。
 その上で、それじゃまず何をやるべきかということで、予算の効率的な執行と、それから有効な配分が行えるかどうかということに重点を置きまして、そのために、総理の指示から、五兆円をまず削減してみよう、そして二兆円を新しい分野に再配分する、こういうことによって三兆円の国債発行する予定のものを削ろう、こういう発想に基づいて予算編成いたしました。
 それじゃ、その二兆円の予算配分を、重点をどこへ置くかということでございましたので、七分野について我々想定いたしまして、これは経済財政諮問会議の議を経ていたしました。この中においては、閣内におきまして各省の意見を十分に聞きまして、重点を七分野に絞ったということでございました。
 その方針のもとにやりまして、現在におきましては、公共事業それから福祉事業、教育、あらゆる分野において経費の見直しをいたしましたけれども、特に公共事業とODA、地方行政それから特殊法人に対する助成というようなものを合わせまして五兆円の削減に努力してきた、こういうことで編成してきたということでございまして、この執行につきまして、現在、主計局を中心といたしまして、補正予算で組み上げてきたその概略に基づいて、実行予算がどのように配分されておるかということを鋭意検討して、配分について間違いのないようにして、そこで効率化を図っていきたい、こう思っておる次第でございます。
麻生委員 財務大臣から見られて、昨年の末から十二月、一月にかけまして、この予算編成、でき上がったところのできぶりを見て、悪くない、そう自信を持っておられるということと理解してよろしゅうございますか。
塩川国務大臣 私は、十三年度、十四年度を通じまして、まさにこれで財政に一つの節度ができたと思っておりまして、また、各省の行政担当者としての、国家資金の使い方について認識を非常に厳しく持ってきてくれておるということは、一つの効果であったと思っております。
麻生委員 今、平成十四年度末の国と地方とを合わせての長期債務残高は六百九十三兆円になるという見込みで極めて厳しい状態ということがよく言われるところなんですが、いわゆる負債の話であります。
 しかし、同時に、金を借りますときには、負債と、こちら側に担保になります債権というものがあるんであって、いわゆる負債だけの大きさの話をしてもそれは甚だ偏っている話なんであって、こちら側の、反対側にあります資本とかそういった担保というものの話は全然抜きでということになりますと、これは極めてバランスを欠いた話になると思っております。
 全体としてマクロ経済というものの刺激がないといわゆる経済というものはうまくいかなかったというのは、一九二九年、ウォールストリートの株の暴落以降、一九三〇年代、ルーズベルトが出てくるまでの状況を見て思い出していただければわかるところでありますので、一九三〇年代のあのアメリカのニューディール、今でいえば財政出動と同じことですが、ニューディールというものをやって、結論、アメリカが三〇年代後半からだんだんよくなってきたという状況を思い出しますときに、私どもは今やはり、一千四百兆円を超える個人金融資産、そしていわゆる対外債権というものは多分今世界一の対外債権を持っていると思いますが、そういったものの活性、利用というものを考えていかないと、これは何となく、今の状況のままではなかなかうまくいかないという意識をほとんど多くの方が持っておられるところだと思っております。
 今後、今の中で、数々の構造改革を、前提条件が今までとは全部変わってきておりますので、そういったもので進めていかれることになるんだと思いますが、構造改革というと財政構造改革が一番に出てくるというところが、ちょっと優先順位のつけ方としては、数々ある構造改革の中で財政構造改革が最初に出てくるところが何となくひっかかってくるところなんであって、今、約十年近くになります不況下の中で、日本経済が今大手術を施そうということになって小泉内閣のもといろいろ進んでおりますが、この手術期間の間にこれはある程度痛みが伴うことをもう覚悟して支持率が高いわけですが、その痛みの問題で、それに耐える手当てというものをある程度考えておかないと、これはやってみたらとても痛かったとか、やれ出血多量になって輸血が必要になるかもしらぬとか、いろいろなことを考えておかないといかぬ立場なんだと思います。
 今、いろいろな構造改革というのを進めていかれるに当たって、財政構造が一番最初に来るように見えるということに関しては、どのような御見解をお持ちでしょうか。
小泉内閣総理大臣 まず最初に来るのが行政改革なんですよ。そこを誤解してもらっちゃ困る。行財政改革で一体で入れますけれども、その中に当然財政構造改革が入っているけれども、まず手をつけているのが行政構造改革。政府機関がやらないでいい仕事、かなりあるんじゃないか、行政の面で税金を使わなくてもいい部分もあるんじゃないかということが先なんです。その中で、財政の中でも配分を見直していこうと。現に財政支出は減らしていないんですから。
 三十兆円枠を取っ払え、取っ払えという中で、やはり、六百九十兆円も債務がある中で、国債をこれ以上増発して果たして景気にいい効果を及ぼすんだろうか、むしろマイナスの副作用も考えなきゃならないんじゃないかという状況であります。だからこそ、政府関係機関、特殊法人を初め今の行政の仕事というものが、このまま役所がやっていいんだろうかという、行政改革、税金のむだ遣い構造をなくそうということから、いわゆる特殊法人に対して一兆一千億円を超える一般会計、特別会計の税金投入を削減したんです。当初だれも、一兆円を超えるなんというのは三年かかると言われたんです。一年でできると思っていなかった。しかし、実際やろうと思えばできたんです。
 財政の分野だって、国債増発しろ増発しろという大合唱の中で三十兆円枠にとどめられたということは、今までの自民党だったら想像できないことですよね。財政の配分構造でも、これだけ不景気で公共事業をふやせふやせという中で一兆円削減している。ODA、外交から考えてみればODAというのは日本にとっては戦略的にも非常に重要な予算であります。それでも、ODAの中にもやはりむだがあるんじゃないかということで一割削減した。やればできるんですよ。
 そういう中で、財政構造改革も、今の不況を考えると、削減すればいいというものじゃない。そういう中で、まずは三十兆円枠にとどめることができたということは、見直しをすればできる。財政の規律というものも考えなきゃいけないということで、一歩を踏み出した。今までどおり一律削減じゃない。五兆円削減して二兆円ふやす。むだなところは五兆円、必要ないところは五兆円カットしよう、そして重点分野、科学技術とかあるいは福祉とか環境面、IT面、そういう分野についてはふやしていこうという財政の配分の仕方、構造にも手をつけることができたということで、まずは、財政再建というよりも行政改革をすることによって財政の面においても見直しを進めていこう。急激な財政再建路線をとっていると言う方もいますけれども、はたから見れば、三十兆円も国債増発して何が財政再建だという声もあるんですから。
 そういう中で、私は、行財政改革という中でも、現在の不況、景気にも十分配慮しなきゃならない極めて難しい状況の中での予算編成をした。日本にとっては、今、財政金融政策、限られております。その道は極めて狭い。そういう中で、これからの新しい改革への第一歩を踏み出すことができた予算編成だなと思っております。
麻生委員 そこで、伺います。
 財務省は、「平成十四年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」を本委員会に提出されました。内閣府においても、先日「改革と展望」の資料として内閣府試算を出しておられます。二つの資料は計数が異なっているということは御存じだと思いますが、この中で、今の三十兆枠ということと関係してくるところなんですが、政府としては、両者をどのように位置づけて政策に反映させるおつもりなのか。
 これは竹中大臣と財務大臣と両方関係されるところですが、財務省の出されたのは従来どおりの話ですから、これは簡単に言えば、勉強しなかったら試験は落ちるよということが書いてあるだけのことなのかもしれませんけれども、この内容は明らかに中が違っておりますので、今後これは両者をどのように位置づけて政策に反映をさせるおつもりなのか、伺っておきたいと存じます。
竹中国務大臣 内閣府の試算と財務省の影響試算の位置づけの話であると思います。
 御承知のように、経済財政諮問会議が昨年からスタートいたしまして、経済財政諮問会議という枠組みを使っての初めての予算編成ということになります。その中で、内閣府としましては、将来展望というのは大変難しい問題ではありますけれども、幾つか想定されるものの中から一定の前提を置きまして、そのもとで、しかしマクロ経済的な動きと財政の動きを一体化させて、具体的には、マクロモデルを使って、マクロの経済と財政を整合的に見た場合にどのような姿が想定されるかということを経済財政諮問会議における参考資料として提出をさせていただきました。
 財務省の試算の方は、これは財務大臣からお話があるかと思いますが、従来から行われていましたように、現状の姿を想定した上で将来どのような姿が想定されるだろうか、そういう二つの試算が今回存在しているわけであります。
 これは、いろいろな考え方があるかと思いますが、この財政と経済という非常に難しい問題を考えるに当たって、異なった前提のもとで、異なった手法のもとで、それぞれ多面的に、立体的に経済と財政を判断していただくという意味では、複数の試算があるというのは、むしろ情報量がふえるという意味で好ましいのではないだろうかというふうに判断しているわけであります。
 しかし、これは、経済財政諮問会議、内閣府ができてとにかく初めての試みでありますので、ぜひ皆様方にも御議論いただいて、どのような情報提供を政府がなすのがより好ましいのかということは、試行錯誤の中で、我々も改良すべきところは改良していきたいと思っております。今の時点では、少なくとも情報量が多いというのは大変好ましいことではないかというふうに思っております。(発言する者あり)
塩川国務大臣 いや、ちょっと待って、今、両方に質問ございましたので、私の方は財務省の方で説明します。
 このことは、やはり財政を本当に考えていただく政治家が一番関心を持っておる事項だと思いますので、私の方も竹中大臣との間で、意見をちゃんと疎通を図りまして、一つの公式的な見解として申し上げておきたいと思っております。
 先ほど御案内いたしましたように、内閣の試案というのは、多様な可能性の一つを前提として、財政と経済との相互関係を考慮した経済財政モデルによる一つのモデルをつくりまして、それによる試算であるということで御認識いただきたいということでございます。そこに、いわばモデルでございますから、いろいろ試行錯誤的なものが働いたかもしれませんけれども、モデルを設定してやった。
 私ども財務省の方は、そうじゃございませんで、毎年ずっと積み重ねてまいりました予算の上に、現在の制度と習慣とそれから緩急度というものを、先ほど言いました七分野配分、そして、一般には削減は一〇%削減する、こういうことを入れまして、その上で積み重ねて十七年度まで変化を見るとこうなるというので、全く機械的に積み上げていったということでございまして、その間に多少のそごはあるかもわかりませんけれども、そこが政策で調整していく一番大事な問題点だと思っております。
 このことを踏んまえて中期的な経済政策にかかるわけでございますが、ここでこれから一番問題になりますのは、それじゃ税制をどう組み合わせていくかということとの関係が出てくると思っております。したがって、この発表いたしました中期展望並びに「改革と展望」というようなものも一つの試案として、これをベースにして今後とも経済全般の運営とそれから税制との関係を考えていきたい、こう思っております。
麻生委員 大蔵省のときから出ておりましたこの中期展望というものにつきましては、前々からいろいろ御意見のあるところであったもので、昨年の予算委員会で、たしか当時の宮澤大蔵大臣の方から、いわゆる中期展望というものを試算すべきだ、いわゆる経企庁の方に試算すべきだということで、今、竹中大臣の方のお話がありました中期展望というのが出てきたという経緯があったと思うんですが、大蔵省のこれを、二つ出すと話が非常に込み入ることになりかねぬと思いましたので、一枚中期展望が出ただけでいいと思っておりましたら、委員会からの要望もあったそうで、何か両方出されることになったそうですが、そこのところで、要望があったのを受けて出されたと伺っておりますので、ひとつその点につきまして、何となく話が込み入らぬように、そこのところの整理だけはしておいていただきますように重ねてお願いを申し上げます。
 そこで、次に経済情勢について竹中大臣に伺っておきたいと思っているんですが、経済政策を実行いたします、マクロ経済政策を実施するに当たって、状態は、平時から明らかに非常事態になってきておるという認識に立っております。いわゆる既存の政策の前倒しとか重点化とかいうようなものだけではだめなんじゃないかと。要は、この種のことをやるには、スピード感も要るし、見えるように、政策が見えるようにする、スピード感でやる、思い切ってやるというような、その三つが多分こういったときには重要なんだと思っておるのです。
 少なくとも先ほどの、時代が課題の提出者というのであれば、明らかに、戦後五十七年と言われるこの中にあって、少なくとも、大前提条件でありました、人口はふえる、土地の値段は上がる、インフレはゆっくりだけれども少しずつ進む、そして経済成長はしていく、そして、あとはGDPの成長もある程度前提になっていた、すべてのそういった前提がマクロとしては崩れて、またミクロの中においても、年功序列とかベースアップとか終身雇用とか、そういったものを含めまして、これは一つの神話みたいな話だったものが一つ一つ確実に壊れたというのがこの十年間の間の現実だったと思っておりまして、デフレーションなんというものは、少なくとも戦後、先進国の中でデフレ下での不況というのをやった国はありませんから、その意味では、この日本において、今までとは全然前提条件が変わった、時代は新しい課題を提出したということなんだと思います。
 したがって、これまで成功してきた手口というのは、今申し上げたようなのを前提にした成功ですから、その前提が全部違ったのであればそれに対応する手口も変わらなきゃならないのは当然だと思うんですが、成功した過去の成功経験というのはおよそ当てにならぬものになってきたというのが今の状況だと思っておりますので、ぜひとも、そういった状況の中で、いわゆる確実にいろいろなものが起きている経済状況というものにつきまして、竹中財政大臣としてはどのようにお考えになっておられるのか、伺っておきたいと存じます。
竹中国務大臣 まさに今、麻生委員御指摘のように、今までの経済を支えていた幾つかの前提が非常に大きく変わってしまった。人口の動向というのが潜在成長力そのものを非常に大幅に下げてしまったし、これまでの成功体験に基づいて非常に高い技術進歩率を重ねてきた日本経済が、そのトータルとしての生産性上昇の力を非常に弱めてしまった。そういったことに加えて、実は一方で、政策を行うに当たっての制約条件がこれまた従来以上に増してしまったということであろうかと思います。
 その制約条件の最もわかりやすいものが、私は、財政の赤字、国債の重みということなのだと思います。その国債の重みを、今までは国内の高い貯蓄率で何とかこれをファイナンスすることができたがゆえに、短期的な財政刺激というのもそれなりの効果を持った時期があったわけですが、最近の国債市場の動向に見られますように、それも極めてはっきりと限界に達してきた。その意味では、前提条件が大幅に変わって、さらに、我々が使える政策の手段も大幅な縛りを受けてきたという状況なのだと思います。
 結局のところ、その前提条件が非常に大きく変わったということに対応して、やはり社会の仕組みそのものを大きくつくりかえる以外にこれはどう考えても方法はない。それが、いつも総理がおっしゃる、やはり民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、そういった言葉に象徴される経済の構造改革を断固進める以外に方法はないということなのではないかと思います。そのために、実は、今後二年間を集中調整期間というふうに位置づけて、その間に構造改革の最初の問題をぜひクリアしていきたいというふうに思うわけです。
 それに当たって、では、マクロ政策についてはどういう枠組みをとるか。これは最初に麻生委員がお尋ねになったことだと思いますけれども、実は、非常に強い縛りの中で、政府としては、まさに狭い道を目いっぱい歩めるような、目いっぱいの政策をとったつもりでおります。
 これは、財政が例えば緊縮財政になっているというような御批判がありますけれども、実は、現実にはそうはなっておりません。これは、第二次の補正予算において四・一兆円の事業費を確保して、それの効果がほとんど二〇〇二年度に出てくるものですから、財政だけについて見ますと、GDPに対する効果はほぼ中立、ニュートラル、ややプラスになるという計算になります。その意味では、決して緊縮財政ではない。一方で累増する国債に対する配慮をしながら、一方で経済全体を安定して運営させるという、総需要の管理にも配慮した、まさにそのぎりぎりの線を確保しているつもりでおります。
 これは、自分たちで言ってしまうとなんでありますが、絶妙のバランスを確保するための財政を用意したつもりでありまして、その中で構造改革を強力に進めていく、これを行っていくことが私たちになし得る十分な、重要な政策であるというふうに思っております。
麻生委員 明らかに今までの状況とは違ってきているのに対応するということになってくると、先ほど申し上げましたように、官僚主導、業界協調型の経済体制で戦後支えてきた前提が狂ってきているので、競争というものがないと競争力が培われない。競争がないと競争力が培われないわけですから、やはり規制緩和が新しい産業というものを創造するんだと思っています。
 そこで、石原行革担当大臣に伺いたいと思いますが、銀行法、石油業法等々、いわゆる法律で保護されている業界、その業界を保護する法律がある業界ほど国際競争力がない。他方、例えば今世界一の競争力といえば多分金型ということになるんだと思いますが、金型等々は、それを助成するもしくは保護する法律は全くない。しかも、中小企業のみしかない。また、アニメーションなんという、最近では千と千尋の物語あたり、強烈な利益が上がっているアニメーションというものもあろうと思います。こういった業界の国際競争力、これは世界一で、他の追随を全く許していないと思っているんですが、たしか昨年だったと思いますが、スイスの国際開発研究所で、技術開発力は日本は一九九二年まで世界一、だけれども今の状況の二〇〇一年では二十六番目になるという話があって、競争力が下落ということになってきているんです。
 そういった意味では、思い切った規制緩和によって国際競争力をつけることが重要なんだという、これは新しい仕事を創造することにもなりますので、そういった意味ではここらのところが一番肝心なところかなと思っておるんですけれども、これはおよそ金がかかる話でもないし、財政支出を伴う話でもないように思いますので、そこらについて石原行政改革担当大臣の御見解を伺っておきたいと存じます。
石原国務大臣 麻生委員御指摘のとおり、やはりこれからの世界経済あるいは日本の経済を活性化していく上で一つの重要なキーワードはコンペティティブ、いわゆる競争という分野だと思います。いかに競争的であるかということだと思います。
 先ほど総理が行財政改革という言い方をされて、行政改革があって財政改革がある、特殊法人改革があり、公益法人改革が今回小泉内閣の中で一つの重点課題になっているとかは、まさに委員御指摘のとおり、公的なパブリックカンパニーも、民間、先ほど委員は金融の話もされましたけれども、同じ土俵で競争する、そこに新たなビジネスチャンスも生まれますし、競争することによって、今まで保護されてきたものの淘汰が起こってくる。これは競争でありますから、淘汰は必ず起こってまいります。そこに対してどういうふうな対処をしていくかということが、もう一つ重要になってくる。これが規制緩和という言葉から規制改革という言葉に三カ年計画の名称も変えて行っているゆえんではないかと思っております。
麻生委員 次に、今話題になっておりますデフレについて伺ってみたいと存じます。
 少なくとも今、御存じのように、戦後大前提でしたインフレというものは、物が値が上がるわけですが、今は逆に、下がらないものは金、あとはみんな総じて物は下がっていくということになりますので、企業を経営する立場からいえば、物が上がるときは物を売る、そのために設備投資もする。しかし、今は、いわゆる売り物は下がる、下がらないのは金だけということになれば、それは減価しない金の返済というものを当然のこととして優先する。したがって、企業用語でいえば、利益の最大化をやめて債務の最小化の方を図るということになっているという流れなんだと思っております。
 結果として、いわゆる企業が一九九〇年代前半では年間五十兆円ぐらい金融機関から金を借りていたと思いますが、今は逆に、この二、三年間は二十兆円ぐらいの返済超、返済金の方が多いという事態になっておりますので、銀行に対する、金融機関に対する設備投資の需要は、実にプラスマイナス七十兆円の差が出てきておるという状況にあるというのが一番大きな問題なんだと思っております。
 加えて、御存じのように、物価はこれでいきますとほぼ三年連続の対前年度比マイナスということになろうかと思いますので、そういった意味では、持続的な物価下落ということになるんだと思いますが、きょうよりあしたの方が安いとなれば、あしたまで買い控えるのは当然の消費者心理ですから、そういった意味では、今いろいろ言われております内容の中で、この状況の中に、少なくとも今我々として考えるべきことは、政府と日銀としてはこのデフレ阻止ということに向けていろいろ対策を講じなきゃいかぬはずなんです。
 日銀に対して、日銀法二条というのがありますので、そういった意味では、日銀としてはいわゆる物価に責任を持ってもらわなきゃいかぬ。インフレのときは責任を持つけれどもデフレのときは責任を持たぬというのは筋が通りませんから、これは両方ともやってもらわなきゃいかぬところでしょうが、これは金融だけでできるかというと、さようなわけにはいくはずがないんであって、金融と財政の両輪で回らない限りはうまくいかないということになるんだと思うのです。
 そういった意味では財政と金融の一体が必要なんだと思いますが、このデフレ阻止に向けて政府としてどのような措置をとろうと考えておられるのか、まずその基本的な考え方について、財務大臣でも竹中先生でも、どちらでも結構です。お答えいただければと存じます。では、両方お願いします。
竹中国務大臣 昨年の前半に、まさに麻生委員が経済財政政策担当大臣でいらっしゃったときに、日本経済はデフレの中にあるというデフレ宣言をされました。それ以降、このデフレをめぐってはさまざまな議論が行われてまいったと思います。
 現実問題として、物の値段が下がるのは消費者にとって悪いことではないのではないかというような議論もなされました。しかし、そういうことを言う方は、必ず暗黙の前提として、自分の給料は下がらないということを前提にした、そういう議論が成り立つわけでありますが、しかし、現実には、経済はお互いに非常に密接に関連し合っていますから、物の値段が下がることによって賃金にも究極的には影響が及んで、やはりこれは解決しなければいけない問題だという強い認識が社会的にも醸成されてきたというふうに思います。
 今、日本銀行と政府との協力について特に御指摘がございましたけれども、経済財政諮問会議の中で、スタディーグループとしまして、これは財務省、経済産業省、内閣府、それに日本銀行にも加わっていただきまして、このデフレの問題点を整理するためのスタディーグループの作業を終えたところでございます。これに基づいて今夕にも諮問会議がまた開かれますけれども、このデフレについての強力な議論を進める、総理からもそのような指示を受けて、その考え方を今整理しているところであります。
 基本的には、デフレには、物の値段が下がるということには幾つかの要因がございますけれども、しかし、金融仲介機能が低下している、これはやはり金融的な現象である、そういったことを踏まえて、一方で需要を、財政を、切れ目なく予算を運用することで刺激しながら、一体となった政策をぜひ打ち立てたいというふうに考えております。
 ただ一点、ぜひ重要なことは、日本銀行総裁もメンバーになっていらっしゃる経済財政諮問会議において、例の中期展望を議論して、その中期展望の中で、集中調整期間、二年をめどにデフレを克服するということを目標に掲げております。これはある意味で、非常に緩やかな形で物価目標を設定して、その中でお互いに協力しようということを既に確認しているわけでありまして、デフレ政策に向けては大変重要なステップになっているというふうに考えております。
塩川国務大臣 私の方として、従来から日銀との間で意思疎通を図っておりますけれども、原則として政府は日銀の政策に直接介入できないんです、日銀の独立がございますので。その意味において、お互いがディスカッションの中であうんの呼吸を求めておるというのが現状でございます。
 そこで、日銀の方としても我々の意向を受けて流動性資金の供給を潤沢にしておる。これは一つの大きい政策であると思っております。これによりまして、一つは金融の円滑な運営に資すると思っておるし、同時に、これが物価対策にも非常に大きい影響がございまして、デフレ阻止の一つの柱として考えられるのではないか。
 具体的なこととして、現在、日銀は毎月八千億円の国債の買い入れをしておりますが、私の方としては、議論の中で行いましたのは、でき得ればもう少し上げてほしい、一兆円ぐらいの規模で買い上げてほしいということでございますけれども、日銀の側からいいますと、まだ銀行間においてそれだけの資金需要が起こってきておらない、もっと設備投資等で起こってくるはずであるのにまだ起こってこない、けれども、絶えず潤沢で余り過ぎるほどの資金供給をしていって、それによって物価と金融対策に万全を期したい、こういう方針で臨んでおるというところでございます。
麻生委員 基本的には、今の中で頭に入れておいていただかなければいかぬのは、これは、やはりデフレになっておりますものを、少なくとも、今二年後と言われましたけれども、二年後には、二年前よりは物価が下がっていない、その程度の物価目標ぐらいは立てられてもおかしくないのであって、インフレターゲットなんて、ハイパーインフレーションを抑えるのに成功した例はあっても、デフレをインフレにしたなんていうインフレターゲットというのは世界で聞いたことがありませんので、そういった意味では、物価を、今より二年後は下がっていない程度の物価目標を掲げられてもおかしくはないのだと思っておりますので、ぜひ、デフレについて、今後につきましての考え方を頭に入れておいていただければと思います。
 次に、税制。
 税制につきましては、直間比率が偏っている等々、昔からいろいろあるところなのですが、税制に関しては一体国民はどのような意識を持っておられるのか。これは、自民党としては別に、いわゆる国民の税に関する意識調査を開始しております。近々御報告が申し上げられるところまで来ると思って、それを参考にしていただければと思っております。
 税制の見直しということにつきましては、この間総理からも、また財務大臣からもお話があっておりましたが、総理大臣の言われる、あるべき税制の構築に向けてという言葉が出てきておりますが、この税制の見直しをどのように行おうと思っておられるのか、総理としてはどのような姿勢で取り組もうとしておられるのか、税制につきましての基本的な考え方を伺っておきたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 税金というのは多くの国民が一番関心を持つ課題でございますが、実際、税金について何か感想を聞かせてくれというと、一様に言うのは、日本は税金が重い、重税感がある、あるいは、こんなに税金を払うのは痛い、痛税感、一様に言いますね。それは、税金を多額に納めている方もそうでない方も一様に言います。
 しかし、現実に統計を調べてみますと、いわゆる主要先進国の中で、国民所得に対する税負担というのは日本が一番低い。課税最低限、これも日本が一番高い。そういうことから、野党でさえも課税最低限を下げるべきだという声が出ているということは、今の税制についてはいろいろ問題点があるということは御承知のことだと思います。
 私は、消費税、所得税、法人税、地方税、そういうあらゆる税項目について、それぞれ問題点があるわけですから、これからは率直に意見交換をしながら、簡素で公平、しかも中立な税制というものをもっと深く掘り下げて議論し、一つの結論を出す方向に来ているのじゃないか。
 しかも、今までの例からいいますと、税制というのは十月から十一月議論して、一カ月か二カ月で議論をし、そして予算編成に反映するというのが通例でございましたけれども、それではあるべき基本的な税制を考える場合には時間が足りないのじゃないか。また、毎年毎年一カ月や二カ月でやりますと、税制でいろいろ国民の声を聞きなさいと言いますと、出てくるのは全部減税要求です。税金を上げてという声なんか全く出ない。そういうことで、日本はいろいろ現行税制の中で減税を積み重ねてきたわけであります。
 そういう中で、総合的な見方というのが欠けているんじゃないかという御指摘も踏まえまして、十月、十一月から始まる税制をことしは正月、二月からじっくりと議論して、そして夏ごろには一つの方向性を出していこう、どういう点を変えていくかということを目途に早くから税金を取り上げていこう、そして十月、十二月、その辺にかけては具体的な税項目の検討を始めて、その結果を十五年度予算編成から反映していこうと。
 その中には当然、経済活性化に資するような税制を考えていくべきではないか、単なる増減税という、そういう考えにとどまらないで、国民の努力が報われるような税制というものも考えていかなきゃならないということで、総合的に考えていきたいということで、ことしは早々から税制の論議を始めようということになったわけでございます。
麻生委員 今の中で、やはり年末ではなくて年初からこの種の話をずっとやっていこうという姿勢は、これは今までとは全く違う方向なのであって、大変、税というものは、何となくこう、喧騒とした中でやるよりはきちんと落ちついた形で話をするのは、これは正しいことだと思いますので、まことにいい方向なんだと思います。
 ひとつこの中において、戦後、何となく、貧しかった時代にでき上がったシャウプ勧告に基づきます税体系というものを、この際、一回根本的に見直そうというようなことを含めまして、これは非常に大きな問題だと思いますので、ぜひ活力が出てくるような税制というところが一番肝心なのだと思いますし、また、所得税を払っている人と払っていない人は、同じ所得がありながら、払っている人と払っていない人の比率につきましては、払っていない人の比率等々が非常に大きな問題になっておりますし、課税最低限の話もよく聞かれるところでもありますので、課税最低限の額プラス幅というものも同時に考えておいていただきますように、重ねてお願いを申し上げておきます。
 次に、よく話題になりますペイオフについて伺います。
 ペイオフにつきましては、四月一日に予定されておりますところなので、二カ月を切ったということになろうかと思いますが、これは一貫して、ペイオフは解禁の方向で予定どおり実施されると思っておるんですが、昨年ペイオフを延期したときに比べまして、今の銀行の状態はあのときよりよくなっているかといえば、よくなっておらぬように見えるんですな。
 こういった意味では、国民が非常に関心を寄せているところなんでありまして、私どもはちょっと、いわゆる浜口雄幸ですから昭和五年かな、昭和五年、浜口雄幸内閣のときにできましたあのグローバルスタンダード、当時、金の輸出解禁はグローバルスタンダードだと言われたんだと思いますが、そういったものに乗っかって、世論の支持も非常にありましたので実施したんですが、結果としては、御存じのように昭和の恐慌を引き起こしたというのは、これは歴史で出てくるところでして、やはり政治というのは結果論ですから、その意味におきましては、これは勇気を持ってやらなきゃいかぬところはやらなきゃいかぬところなんでしょうが、理屈だけじゃなかなかうまくいくとは限らぬので、これは政策的知恵が必要ということになろうかと思います。
 ペイオフをするにしても、いわゆる取りつけ騒ぎ等々が起きて、今のアルゼンチンみたいないろいろな形、また日本とは少し状況が違いますけれども、そういった意味では、ペイオフを進められるなら、もし何か起きたときにどうするかというのをあらかじめ考えておかないと、ここのところが一番問題なので、そこのところに関しましてはどのような対策を考えておられるのかという点につきましては、柳澤大臣が御担当と思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
柳澤国務大臣 私どもといたしましては、本来でしたら昨年の四月からペイオフの解禁を実施する予定であったものを、金融機関の一部である信用組合がまだ国の所管に移っていない、所管を移してしっかり検査をした上で、大丈夫というところで解禁をしよう、こういう予定で、本年の四月からということに延期になりました。したがって、この延期の期限も来るということで、予定どおりペイオフの凍結を解除させていただきたい、こういう考え方でございます。
 そういうことを行うに当たっては、これはしっかりした環境整備、あるいは諸情勢に対応した対応というものがいつでもできるようにしておくべきだ、これはお説のとおりであります。
 私ども、まず第一に大事なのは、金融機関で四月から店をあけるところの健全性というものに、とにかくそこが非常に脆弱であるというようなことであってはならない。こういうことで、私どもほとんど、今度、信用組合を含めてそうした金融機関の検査をいたして、そしてその検査の結果に基づいて、補強あるいは改善といったようなことの必要なところは必要だ、残念ながら、そういったことに応じられないというところについては、これは仕事を中断していただく、こういうことをやって、基本的にまずそういう押さえをいたしたわけです。
 それから、その次に何が必要かというと、やはりディスクロージャーです。これは、特に預金者の側から見て、本当に時間の推移の中でその健全性がどういう変化をたどるか、これをやはり見れなければいけない。この見る材料を私ども提供しなければいけない。これがディスクロージャーの問題でありまして、これは銀行法の改正によってリスク管理債権をその都度発表していく。それから、特に大手行については、これからは年度を二つに分けて半期ごとということではなくて、もう四半期ごとにそうした財務の主要な状況についてはこれを公表していくというようなことで、ディスクロージャーのレベルを上げていく、こういうことをやらせていただきました。
 それから、そうは言っても、金融というのは、麻生委員も非常によく御存じのとおり、風説、風評といったようなもので現実に流動性の危機が起こるというようなことが間々あるわけでございます。こういうときに金融機関はどういうふうに対応するんだと。最終的には日本銀行の融資をもらって流動性の補強をするということですが、そういう体制というか手続というのをきちっとあらかじめその手順を決めておかなきゃいけない。こういうコンティンジェンシープラン、これをしっかりと各行ごとに整備をしていく、こういうこともやらせていただきました。
 最後は、何といっても、これはセーフティーネットです。一つの銀行ではなくて、それが連鎖的に倒れるというような金融システムの混乱というのは、これはもう微動だにさせてはいけないということでセーフティーネットが預保法百二条で張られている。こういうようなことがきちっとできているということは、平成八年ころに五年間のペイオフの凍結をしようというようなときと比べても、断然、格段とこの環境整備というものが進んでいるということでございます。御理解を賜りたいと思います。
麻生委員 平成八年に比べて格段に進んでいることは、大臣、私もそう思うんですが、そう思っても、自己資本比率が、八%が八〇%でも風評被害で一発取りつけ騒ぎというのは起きるわけなんで、一〇〇%あっても取りつけ騒ぎが起きたらもたぬわけですから、その意味では、そういうのが起きたときにどうするかというところが、日銀がぱっと見せ金を見せるとかいろいろなやり方はありますよ、それは。いろいろなやり方はあるんだと思いますが、ぜひそこらのところにつきましては、よほどきちんとしておかないとえらいことになっちゃうんで、私どもは、この緊急事態にどう対応するかというところが、これは柔軟かつ大胆にされると総理の方が言われているのに、対応できなかったら、これはできない方に問題が起きますので、ぜひそこのところだけはきちんとしておかないと、私どもは、非常に問題になるというのが一番の心配だと思っております。
 もう一つは、これはお答えは要りませんが、ペイオフで、郵貯は多分一千万円以上のものは金利だけ除いて対象外になっていると思いますので、何となく風評被害になると、出てくると早い。郵貯に金があるとさらにどんどん集まって、総理の言っておられる郵政の民営化と全然別の方向で、結果として郵貯に金がさらに集まって、郵貯だけは民営化に絶対反対みたいなことになりかねない、そういうことになりかねぬ、このペイオフのおかげで。だから、思っておられることと全然別の方向に結果として行きかねぬと思いますので、そこらのところが私どもとして非常に心配なところであります。ぜひその点を頭に入れて対応していただくようにお願いを申し上げます。
 次に、ODA等々を含めて外務省の話を伺いたいと思います。
 正直言って、外務大臣の更迭に伴う一連のごたごたの騒ぎは、これはまことに迷惑な話というのが正直なところだろうと、ほとんどの人は皆そう思っていると思っているので、私どもは、これは本来の仕事をきちんとやっていただかにゃいかぬところで、そういった意味では、いわゆる政府部内、省内のもめごとをばさっと切っていただいたという点に関しては、総理の判断としてはこれはまことに英断だった、私は率直にそう思っています、その点に関して。
 それから、国民の皆さんが、これは何となく、役人というか、外務省の役人に限らないんだと思いますが、役人に求められているのは、おたくら、毎日税金を使っているのよという意識が、お役人さん、どれくらいありますというところが多分一番の言いたいところなんだと思うんですね。これは、税金を扱っておるんですから、ODAというのは自分の金じゃなくて政府の金、イコール国民の税金ですから、そういった意味では、一連のお粗末の不祥事というのは、これは絶対一番、最も頭に来るところだと思います。
 そういう税金を使っている自覚のないというのは、これはやめてもらわにゃしようがないんですが、そういうところで、国民の怒りというのは多分そこらが一番なんだと思いますので、川口大臣、その後を受けられて外務省に入られていくわけですけれども、この役所は中央にいるだけでなくて世界百八十カ国に人は散っておりますし、いわゆる役所としてなかなか目の行き届きにくいところだと思います。この改革については、これは結構難しい話なんだということはよくわかりますので、そういったものに関して役人の意識改革がないと、これは当然外に出ちゃいますので、そういった意味では、ぜひ、今後の改革作業をどのようにして進めていかれようとしておるのか、まずその御決意を伺わせていただきたいと存じます。
川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、外交というものは、国民の理解、それから御支援がないと進めることができないと思います。それで、その国民の御理解、御支援のベースになければいけないものは、外務省に対する信頼だと思います。幸い、不幸なことなんですけれども、これにつきまして、一連の不祥事件がありまして外務省への信頼が地に落ちてしまったということは、外務省として反省をすべきでありますし、それから、実際に大いに反省をしていると思います。
 私は、外務省の改革をまず進めることが非常に大事だというふうに思っておりまして、先週の火曜日に骨太の方針を発表するというふうに申し上げまして、時間がうまく調整できましたら、きょうの夕方にもそれを発表させていただきたいと思います。
 国民の税金を使って官庁が仕事をしているということはおっしゃるとおりでございまして、それについての自覚を十分に持たない公務員は、公務員である資格がないと私は思っております。そういう意味で、外務省の予算を効率的に、効果のあるような形で使うようなことが必要でございますし、それから、国民の意識の改革というのが――済みません、ちょっと今混乱をしているのですけれども、申しわけありません。外務省の職員の意識の改革というのが……(発言する者あり)申しわけございません。さっきからちょっと言葉を間違えておりまして、上がっておりますけれども。そういう意味で、外務省の職員の意識の改革というのが非常に大事だと思っております。
 この意識の改革、あるいは外務省の人事、あるいはその他の問題について、どういうふうにやっていったらいいか、どういうふうに改革をしていったらいいかということは非常に難しい問題でございまして、私は、骨太の方針をつくるために、外務省の職員の方々、それから外務省の外の皆様方から御意見をいただきました。全く私の存じ上げない方が御意見を自発的に、大変にいい意見をおっしゃっていただいたこともございます。こういった御意見を私は十分に読ませていただきましたので、それをベースに骨太の方針をつくらせていただきました。今後は、タイムスケジュールをつくって、これを実行していくのみだというふうに思っております。
 言葉を間違えましたことをお許しいただきたいと思います。
麻生委員 これは、本当に、海外に行っている方の方が圧倒的に多いようなことになりますので、管理、意識改革なんていったってなかなか難しいところだと思いますので、随分手間暇かかるところだとは思いますけれども、基本的に意識改革が進まないと、組織だけ改革してもなかなかうまくいかないのが常でありますので、ぜひその点を、重ねて御努力、御尽力、御指導を心からお願いを申し上げるところです。
 そこで次に、教育について遠山大臣に伺いたいと思うのですが、二点あります。
 昔から言われるように、教育というのは知ることですか、やることですかという話。知ることか行うことかとか、昔からよく言われるところですが、教育というのは人を立派にしていくための手段であって、教育は目的ではないのであって、教育は単なる手段であって、立派な人間をつくるのが目的なんですから、そういった意味では、先ほどから、外務省の話に含めまして、やはり個人の意識というところが一番肝心なところなんだと思います。
 自民党としても、制度の話ばかりよく出ますけれども、教育の根本であります教育基本につきまして、私どもとしても、これは日本人として、戦後、やはりいろいろバランスを欠いていたものが幾つもあるのだと思うのです。進歩と伝統といえば古いという一言で進歩に偏ったし、また、個人と団体といえば個人に偏り過ぎたし、物と心といったらどうしたって物質、物の方にわあっと偏ったしというような、バランスを幾つか欠いたというところは確かだと思いますので、そういった中で、やはり一番の根本は、多分教育というところがやはり何となく戦後の中でぼそっと、昭和二十年以降の前と後が切れたみたいな形の状況というのが長く続いた結果、多くの問題を提起していることは確かだと思います。
 この教育の基本法の見直しというのをいろいろ諮問をしておられるように伺っておりますが、遠山文部科学大臣のお考えをこの点について伺っておきたいと存じます。
遠山国務大臣 麻生委員御指摘のように、今後の日本を担うのはまさに人でございます。その人の心の根底、それから、しっかりした学力、力を持つ、それは大変大事でございます。その基本にかかわる教育基本法、これは制定以来半世紀以上たちました。それは、教育の根本理念を定めた法律でございますけれども、その後の社会的な変動あるいは人々の価値観の変動、いろいろなことがございまして、今この時期に、二十一世紀を生きる子供たちを育てる教育の基本を定める法律として確かかということは、見直すことが必要かと思っております。
 その意味で、昨年十一月、中央教育審議会に諮問を行ったところでございまして、この見直しにつきましては、現在の基本法にございます個人の尊厳や真理と平和の希求など、基本的な理念は大切にしながら、今後のあるべき教育の姿を考えて、現行法に不足しているものについては広く検討していく必要があると思っております。また、教育の理念を実現する手段として、教育振興基本計画についても検討していく必要があろうと思います。
 いずれにいたしましても、中央教育審議会での検討を踏まえながら、幅広く国民の皆様の意見を聞きながら、この問題についてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
麻生委員 もう一つ伺っておきますが、科学技術の振興費というものがこの文部省関係の中で約一兆二千億くらいあったと記憶いたしますけれども、この大学での研究成果をベンチャー企業の創出に役立てていく、いわゆる産学官の連帯という話やら何やらが、クラスターの話を含めていろいろ出てきておりますが、地域の科学技術の振興というのは、これはいわゆる地方経済にとりましても、直接間接に関係する非常に大きなところなんですが、この点につきましても文部科学技術大臣の担当と思いますので、その点につきまして重ねて伺います。
遠山国務大臣 日本の将来の発展を支えますには科学技術の振興がまことに大事だと考えておりまして、科学技術行政の中核を担っております我が省といたしましても、この問題について真剣に取り組んでいるところでございます。
 お話しのように、来年度の予算案におきましても、全体が大変厳しい中で七・六%アップ、七千五百億円余の予算案を計上させていただいております。私といたしましては、委員おっしゃいましたように、この科学技術を真に力あるものにしていきますためには、研究者の自由な発想を大事にしながらそれを社会に還元していく、そのことが大事だと思っておりまして、このことにつきましては、最近は、大学の研究者たちも大変そのことについて意識を持って、実際にいろいろな活動が行われております。
 ここのところにつきましては、総合科学技術会議及び関係省庁と連携をとりながら、研究者の自由な発想を基盤としながら、それを社会的に還元していくこと。また、その他ライフサイエンス等の重要分野についてもしっかりと取り組み、また、国家において非常に大事な宇宙でありますとか原子力等のことも取り組んでまいりたいと思いますし、いずれにしましても、産学官連携のような形で地域の経済力の活性化ということも大変大事だと思っております。力を尽くしてまいりたいと思います。
麻生委員 思ったより時間がたつものだな、早いんだなと私は改めて、たまにやると時間の配分を間違えて、有事の話やらその他の話やらいろいろ伺いたいところがいっぱいあったのですが、時間が参りましたので、これにて終わらせていただき、あと藤井孝男君にお願いして、質問をお願いしておきながらお答えする時間を与えなかったことをおわび申し上げて、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
津島委員長 この際、藤井孝男君から関連質疑の申し出があります。麻生君の持ち時間の範囲内でこれを許します。藤井孝男君。
藤井(孝)委員 私は、きょうのこの質問に際しまして、何をまず質問しようかなということを考えました。現下の経済情勢、景気の状況というのは大変厳しいものがあるということは、ただいま我が党の麻生太郎政調会長からその点について御質問がありました。
 総理、総理は、構造改革なくして景気回復なしというお言葉をよく発せられますが、私もそのとおりだと思います。
 しかし、ここは二つに分けなきゃいけない、同時にやらなきゃいけないのですが、一つは、現下の景気の状況、経済状況、これをどう打破していくか、そして、ペイオフの問題も先ほど取り上げられましたけれども、現下の景気状況を、まず政治として、総理、内閣の責任としてどう進めていくか、これは喫緊の課題だと思います。そのことが一つ、まずありますね。もう一つは、我が国の置かれている状況を考えまして、今後、将来にわたる中長期的な構造改革、改革ですね、これをどうしていくかということも、私は一方、大変大事なことだと思っております。
 きょうは私、時間が限られておりますので、後段の、日本の今置かれている現況、これをどう中長期的に考えていくか、どう政治的課題としてとらえていくか、この点について絞って質問をさせていただきたいと思います。
 まず、総理にお伺いいたしますけれども、たしか昨年の十二月ですか、公務員制度改革大綱、こういうものを閣議決定された。その中に、国家の基本戦略スタッフ、そういう構想が出されているとお聞きいたしておりますが、これはどのような制度で、総理としては、この国家基本戦略スタッフというのをどういう形で、どう持っていこうとするか、まずこの点についてお伺いいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今まで政策を考える場合に、各省中心に、いろいろ一つの課題に向けて案を練り上げて持ってまいりました。そうしますと、省の中でも同じ分野を担当している部門が幾つかございます。重複する場合もある。あるいは、一つの問題に対しましても、各省の考え方で、ここは自分の分野、それ以外の分野は考えませんと。あるいは、自分の分野にかかわってくる問題を他省庁が関与してくると、余計なお世話だと言って耳をかさない面もあった。
 そういうことでは、最近の複雑な、いろいろな社会現象に対して、総合的な見方が必要だと言われている今日において、手抜かりも出てくるのじゃないかという面もあります。そうしたいろいろな御指摘も踏まえまして、一つの問題に対して、各省縄張り意識を捨てて、持てる権限、持てる機能を柔軟に、各省庁と連携をとりながら対応していこうということが必要ではないか。
 特に、災害が起こった場合にも、単に国土交通省だけの問題じゃない。あるいは国家公安委員会の問題にも重なってくる場合もあります。あるいは防衛庁の問題にも携わってくる問題があります。今回のBSE問題につきましても、農林水産省だけの問題じゃない、厚生労働省の問題があるじゃないかという点もあります。情報面においても、外交の問題一つとっても、これは外務省だけかというとそうじゃない。公安の問題も関係ある、防衛庁の問題も関係ある、あるいは経済産業省の問題にもかかわってくる。貿易一つとっても、経済問題があるから、では経済産業省だけかというと、最近の貿易摩擦というのは経済だけじゃありません。農業の問題でも貿易摩擦がある。農林水産省もかかわってくる。医薬品の問題一つとっても、これは厚生労働省だけの問題じゃない。水産業問題一つとっても、水産庁に任せておけばいいかというとそうじゃない。経済水域の問題があると、外務省まで問題がある。
 一つの省庁だけで任せられない問題がある。結局、政府全体として総合的に対応しなきゃならないという問題がありますから、これは一つの省庁に限らないで、全体で、国家戦略と考えて、縄張り意識を捨てて、おれの権限、あいつの権限、こっちの権限ということを捨てて、国家としてどういう対応が必要かという視点が重要じゃないかということで、これは国家戦略的な視点も政府に設けていかなきゃいかぬなということであります。
藤井(孝)委員 よくわかりました。
 最後の、国家戦略という言葉が出てまいりましたね。私は、今総理の答弁を聞いておりまして、我が国の政府、各省庁、大変立派なスタッフがおられます。それぞれ国家国民のために、どうあるべきかということを一生懸命やっていらっしゃる、汗をかいている、これは私も認めるところであります。
 しかし、残念ながら、今お話がありましたように、縦割り行政と申しましょうか、世界は非常にグローバル化しているし、壁は低くなっている。あらゆる問題は、一省庁にとどまらない、国家全体の問題としてとらえていくということもおっしゃっている。まさに、これからの日本、喫緊の課題もありますが、五年後、十年後、あるいは五十年後の先を見据えたときに、日本のいわゆる基本的戦略をどう具体的にしていくのか、どうあるべきかということにおいて、今私質問いたしましたけれども、総理がそういった考えを持っている、大変結構なことだと思います。そういった点を踏まえて、これから具体的に質問に入ってまいりたいと思います。
 先ほど麻生委員が触れられませんでしたが、有事法制、安全保障の問題、あるいはさまざまな外交問題、教育というのも国家百年の大計と言われる、これも大事な国家基本問題だと思います。きょうは、私は、特にその中でも食料とエネルギー、できれば、時間があれば環境問題に触れていきたいと思っております。
 まず最初に食料問題でございますけれども、まず基本は、やはり、これは食料に限らずすべてだと思いますが、国民が政治に求めているものは安心と安全と安定だと思います。しかし、今回のBSE問題に端を発しました農林水産省のとった行動、こういった問題については、残念ながら、この安心と安全というものを非常に信頼を失ったということもあろうかと思います。武部農水大臣、これは答弁でも何度も繰り返されている。それに対する危機意識が薄かったとか、さまざまなことをおっしゃっておられます。私は、まさにこうした安全、安心感というものをどう政治が国民に対して与えるかということは非常に大事なことであります。
 そこで、BSEの問題につきましては、これはイギリスやドイツ等でも発生をいたしました。そして、その後の行動、私は、今申し上げましたように、厚生労働省も関係しますが、農水省と厚生労働省のいわゆる連携というのが的確であったかどうかという点に非常に疑問を持っておる一人であります。それは、今まさに総理自身がおっしゃったように、そうした縦割り行政というものの弊害がむしろそこにあったのではないか、連携がうまくいかなかったのではないか。
 そういったことを踏まえますと、例えば今申し上げたドイツ、イギリスの例をとりますと、これはいち早く行政組織を統括して、一元化して、そして食品の安全行政をどう持っていくかということに取り組んできたわけであります。そしてその問題点の根幹は、どういうものがどういう要因によって起きたのか、あるいは科学的にも分析し、そして何よりも大事なことは、そういった分析が行われ、検討が行われた結果を国民に対して情報開示している、これが大事だと思います。
 そうしたことで、今回のことも、これは大変残念な結果が出たわけでありますが、今後のことを踏まえまして、このようなイギリス、ドイツの例を見るまでもなく、やはりこうした問題について一元化して、今省庁の壁を取り外していくべきだ。そういう意味では、今後の我が国の食料の安全確保のためにどのように考えておられるか、これも基本的なことでございますので、いま一度総理に、この点につきましての、食品の安全確保についての御見解をお聞きいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今回のBSE問題というものは、国民に対して、牛肉だけの安全のみならず、食品に対しての不安、これを何とか払拭しなきゃならないということを教えていると思います。
 私は先日、自民党の金田英行議員が、このBSE問題にかかわる各国の状況、特にイギリスとドイツとフランスに回って、どういう対応をしているかという話を伺いました。その際に、イギリスでもドイツでもフランスでも、この狂牛病、BSEの問題に対して、今の日本の農林水産省だけの対応ではないなという、これを契機に各省庁のあり方を見直した、そして食品全体に対する安全の担当部局を、各省庁にわたっていた部局を統合したという話を伺いました。
 なるほどなと。今言ったように、BSE問題一つとっても、農林水産省だけじゃなくて厚生労働省にかかわっている問題だと。これから、食に対する国民の大きな関心、健康を維持するためにはまず食物が大事だという観点が非常に大きくなってまいりました。そういうことから、私は、イギリス、ドイツ、フランスの、そういう食料安全に関して、各省庁が今までの機能を統合して、食品の安全に関する政府の統合機関をつくったという話を聞きまして、非常に参考になりました。
 今の日本の縦割り行政、これに対する御批判もありますので、今の日本のあり方のよくない点もよく謙虚に受けとめながら、そして、イギリス、ドイツ、フランスの、このBSE問題から新たな組織をつくったという、それも参考にいたしまして、よく検討して、食品に対する安全、これの対策を政府全体で考えなきゃならないのじゃないか。その際には、現在の省庁のあり方にとらわれず、ある面においては、省庁の中での食品安全に対する部局を組織改革してもいいんじゃないかという点も含めて検討していきたいと思っております。
藤井(孝)委員 これは、ある意味では大変画期的といいましょうか、いわゆる縦割り行政を打破して、乗り越えて、政府全体として考える、そういう部局を、総理自身が、イギリス、フランス、ドイツのやり方も参考にしてやる、これは大変大事なことだ。ぜひしっかりとした、例えば、これはまあ名前はどうかわかりませんが、食品安全庁とか、どういう部局の名前にするかは別としまして、総理直轄でやるかあるいは内閣府につくるか、そういった点で、早急に実現して、国民に対する安心、安全の信頼回復をぜひ構築していただきたいと思うわけであります。
 そこで、この食料の問題については、今、安全、安心につきましてはそうでありますが、もう一つ安定というものがあります。
 後ほどエネルギー問題のときでも触れますけれども、我が国は大変な食料の輸入国であります。例えば、我が国の耕地面積というのを一つとりましても、武部農水大臣、これは約五百万ヘクタールぐらいですね、日本の耕地面積というのは。しかし、これだけでは日本人の食料、カロリーを満たすことはできない。それを海外、各国から食料を輸入しているわけですね、穀物を含めまして。あらゆる食品を、食料を輸入している。それを耕地面積に換算しますと、千二百万ヘクタールということに計算が出てまいります。ということは、日本の耕地面積の約二・五倍の耕地面積を、外国の耕地面積を利用して我が国の国民の食料、カロリーを充足している。これは大変日本にとってはありがたいことでありますけれども、しかしある面では非常にこれは脆弱な基盤に立っているなということを思うわけであります。
 例えば小麦にいたしましても、これはほとんど、九六%海外から輸入、主にアメリカ、カナダからの輸入に頼っている。あるいは、日本の大変代表的な食品であります豆腐であるとか納豆、代表的な庶民の食品でありますけれども、しかしこの大豆も、九〇%を超える大豆を海外から輸入している、こういう現状である。ですから、エネルギーもそうでありますけれども、日本の置かれている現状というのは、食料に関してもある面では非常に脆弱な基盤に立っていると言わざるを得ない。
 そういう中で、今後安定して、安全な、安心して食料を確保していくためには、中長期的な観点からの見方がぜひ必要だと思います。その点について、武部農水大臣、こういった中長期的なことを踏まえて、今、農水省、それから将来にわたっての食料安全確保のための御見解をお伺いいたしたいと思います。
武部国務大臣 委員御指摘のように、中長期的には世界の食料事情というのは逼迫してくるということがFAOの統計でも示されております。今、御案内のとおり、毎年五百万ヘクタール、東京ドームのグラウンド七個ずつ一分間に砂漠化が進んでいるというわけでございます。なお、地球上の人口は六十一億でありますが、今世紀半ばぐらいには九十億を超えるという事態になります。
 現在でも八億の民が栄養失調に悩んでいるということを考えますと、私は、まず第一義的には、我が国内において食料の自給率を向上させていかなければならない。食料・農業・農村基本法によりましてはこのことを柱に掲げているわけでありますけれども、今後十年間に今四〇%の自給率を四五%まで引き上げていこう、そういう目標を立てて鋭意計画を立てておりますが、そのためには、意欲と能力のある経営体、あるいは法人化の推進等によりまして、国内での自給体制というものを強化しなければならない、かように考えております。
 さらに、輸入の問題については、私どもは、食料の自給率向上のためにも、消費者が何を求めているかということが非常に大事であります。より安く、より安全で、より新鮮で、おいしい食料というものを求めているわけでありますので、そういう意味では、食と農の一体化、生産者と消費者がお互いに顔の見える関係、このことを今後の農政の非常に大きな柱にしていこう、こんなことで、自給率の向上をまず第一に考え、次に、足らざるところは輸入や備蓄等の組み合わせが必要であろう、かように考えております。
藤井(孝)委員 今農水大臣がおっしゃったとおり、例えばイギリスあるいはフランス、ドイツは、先ほども出ましたけれども、かつては穀物等の輸入国だったんですね。しかしこれを、ずうっと一九三〇年代以降努力しまして、例えばイギリスは、一九八〇年代には穀物の自給率は一〇〇%を超えて一二〇%というふうになっています。フランスはもともと農業国でありますけれども、このフランスも、一九九一年には穀物自給率は二一五%、完全な輸出国です。ドイツも、同じく九一年には穀物自給率は一一四%。そういう中で日本だけが非常に自給率が低い。したがって、自給率そのものだけでいきますと、二七%程度というような数字も出ている。
 こういった問題を考えますと、私は、政府の方でも、今農水大臣がおっしゃったいろいろな今後の考え方、それを基本にして頑張っていただきたいと思いますが、やはり国民の皆様方にも、こうした状況の中で我々は食料を輸入し、そして食しているということ、そういった実態を踏まえてもらわなきゃいけないと思うわけです。
 もう一つは、国内の自給率を高めるためには、今ちょっと触れられましたけれども、生産者、それから食品業者、そして消費者、この間の連携、そしてどういったものを消費者が求めているのか、あるいは生産者もコストダウンをどうやって図っていくのか、そういったことで、間に立つ食品業者が、雪印食品なんて、ああいうのは問題外でございますけれども、要するに、どういった消費者のニーズをどう生産者に伝え、そういった連携というものもやることによって、コスト削減はもちろんでありますけれども、やはり国内の農産物を、国民の皆様方一人一人がこれにも理解を示していただくということも大事だと思いますので、ぜひお願いいたしたいと思います。
 そして、一言で言えば、国民の皆様方、我々がすぐできる食料安保と申しましょうか、実行できるということは、簡単でございますけれども、私も時々もったいないと思いますが、食べ残しをしないということでありますね。食べ残しをすることは大変むだだし、それは環境問題にもなってくる。こういったことを踏まえて、これからの食料の安全、安定、安心な確保のためにぜひ頑張っていただきたいと思う次第でございます。
 食料問題につきましてはこの程度にしまして、次に、エネルギー問題について質問させていただきます。
 今申し上げましたように、食料についても日本は脆弱な基盤に立っているということをあえて申し上げました。石油を初めとする天然ガス、こういったエネルギー問題についてもしかりであります。
 我々は、たしか四十八年ですか、第一次オイルショックの苦い経験をいたしました。当時は九〇%ぐらい、中近東を中心とした国々に石油の依存をしてまいりました。その後、省エネだとか代替エネルギーだとか原子力だとかいろいろな努力があり、そして、その比率はだんだん下がってまいりました。たしか一九八〇年代初めには、大体、石油に対する依存率が六七%ぐらいにまで下がったわけです。五二%ぐらいにまで下がったと思います。
 このことは結構ですが、しかし、最近、もう一度これを調査しますと、確かに石油に対する依存率は下がっているけれども、相変わらずその主力は石油及び天然ガスという主力商品に、いわゆるエネルギーに頼っている現実はございます。残念ながら、原子力発電というのは、遅々として進まないいろいろな問題があります。
 そういう中で、これからの石油に対する、あるいは天然ガスに対するそういった安定した、またこれも、今、アフガンの問題がありますから、いろいろなきな臭い問題があります。例えばイラクに何か事が起きれば、このことによってまたペルシャ湾が、あるいはあの近海が非常な危険地域になる。そうすると、安定したエネルギーの供給というのはできるかどうかという懸念さえも考えられます。
 そういう中で、いかにこれからのエネルギー政策というものを、また、これは石油、天然ガスにかかわらず、その他の分野におきましても、どう経済産業省、主たる官庁でありますから、平沼大臣の方針をお伺いいたしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 日本は、御承知のように、天然のエネルギー資源というのがほとんどない国でございまして、自給率でいいますと四%しかありません。九六%のエネルギー、一次エネルギーはすべて海外に依存しているわけであります。
 先ほど委員御指摘のように、石油は、一九七三年のオイルショックのときは石油の依存度が七七%でございましたけれども、今、原子力発電も伸びてきた、あるいは新エネルギーが入ってきたということで、御指摘の数字、五二%になっています。
 しかし、問題なのは、当初、今から十五年前は中東の依存度というのが六七%でございましたけれども、今、中東の依存度が八八%になった。それは、中国が大慶油田等で、自分で使わざるを得なくなった、インドネシアもそういう事情になってきた。そういう中で、非常に中東の依存度が高いわけです。
 そこで、我々としては、一つは石油公団、これは官民合同、こういう形で、整理合理化計画の中で、民営化をする、廃止をする、それで一部民営化する、こういうことにいたしました。しかし、石油公団の持っている重要な機能であります、いわゆる自主開発の部分、あるいは備蓄の部分、それから技術の部分、これはやはりしっかりと国が責任を持つべきだ、こういう形で私どもは基本的な戦略を立てさせていただいています。
 それから、お触れになられました、新しいエネルギーを伸ばしていくということは非常に重要です。
 今、原子力というのは全国で五十二基稼働しておりまして、電気エネルギーの実は四割を賄っているわけですね。ですから、ここはいろいろな制約があって非常に厳しいのですけれども、やはり環境の問題等を考えていくと、その発電過程においては一切二酸化炭素を出しませんから、安全性を担保して、ここをいかに安定的に伸ばしていくかということも、必要な重要な課題です。
 それからさらに、新エネルギーというのがありまして、例えば太陽光発電というのは、日本は、実は世界に先駆けて、世界の太陽光発電の四五%は日本がやっている、そのぐらい先進国になっています。それから、この前、総理はみずから試乗されましたけれども、燃料電池というような新しい分野で、これから非常にその発展性が期待できますし、日本の企業も非常に先端的な役割を担っているわけです。
 そういう中で、私どもは、既存のエネルギー、そして新しいエネルギーというものをしっかりと組み合わせてやっていかなきゃいけない。その中で、石油は重要な部分ですから、一つは、石油に対しては一定量の安定的な確保をするための自主開発というのをやっていかなきゃいけませんし、あの七三年のオイルショックのとき大変なパニックが起きました、したがって、それ以来備蓄というのに努めておりまして、石油の備蓄も今百七十日分ある、こういうふうに確保しています。それと、やはり資源小国の日本はこれから資源外交というものを基軸に、この三つの柱でしっかりとやっていかなきゃいけない、そう思っております。
藤井(孝)委員 今、平沼大臣から日本の置かれている状況、今後の課題について御答弁がありましたけれども、総理、我が国がエネルギーをほとんど海外から輸入している、依存している、これはもう皆さん御承知のとおりであります。
 一方、アメリカという国はどういうふうになっているかといいますと、これは案外国民の皆さん方は知らない点があるんじゃないかと思いますが、アメリカというのは世界最大の産油国であります。そして、アメリカのエネルギーの消費の半分はアメリカの石油で賄っている。そして同時に、ではアメリカのそのほかの海外に対する石油依存度、それもどちらかというと中近東に頼っているのかなと思うと、あに図らんやそうではない。アメリカの中近東の石油に頼っている依存度というのは一割程度でしかない。日本は今八八%になっているという非常に偏った形になって、それは、そこにしか安定した石油、天然ガスの供給源がないということに端を発しているのかもしれません。
 ですから、アメリカは五割を自国で自給できる。にもかかわらず、今、クリントン政権からブッシュ大統領にかわりまして、このエネルギー政策を大きく転換させております。それは、もう一度これを見直して、原子力発電をやっていこうではないか。それからパイプライン、いわゆるアラスカを想定したんでしょう、環境に配慮しながらパイプラインというものも、またこの計画も立てていく。そしてもう一つは、やはり節約はもちろん、省エネもそうでありますが、そういった意味で、アメリカは戦略的にタスクフォースをつくっているんですよ。それは、チェイニー副大統領がその最高責任者として、アメリカは五割の石油エネルギーというものを充足できる国でありながら、そういった国家戦略としての、チェイニー副大統領を最高責任者としてタスクフォースをつくっている。
 こういうことを考えますと、総理、食料もそうでありますように、この石油というものも、石油公団を廃止される、民営化される、それは結構でありますが、やはりこれも、中長期的に日本がどう安定してこのエネルギー源を確保していくか、これも大変大事なことである。そういう意味では、国家戦略の一つとして、これは内閣府に置くとかそういうことじゃなくて、食料であるとかこういう石油といった国家基本にかかわる問題は、総理直轄の中の、やはり直属の機関の中で総合戦略として位置づけるべきだと私は思うのであります。
 といいますのは、なぜかといいますと、先ほど冒頭に申し上げましたように、日本の各省庁はそれぞれ優秀です。そして、民間人もこれからどんどん登用するという総理のお言葉がありまして、これは結構です。ですけれども、やはり日本に欠けているものはそういった総合的な国家戦略ではないか。個々の部分では非常に優秀である、しかしその中で、まさに食料も脆弱な基盤、あるいは石油はもっと脆弱な基盤に立っている国であるという認識を持った上で、これを中長期的にどうあるべきかということを、ぜひ総理、総理直轄のそうした総合戦略機構、今度新しく総理官邸もできるようでありますからスペースも大分広くなると思いますから、そういった点からもぜひお考えをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 先ほどもお話し申し上げましたとおり、これは各省庁にわたる問題であります。国家戦略という立場からも極めて世界的な視点が重要であります。それぞれの縦割り行政の弊害を正すという観点からも、また中長期的に国家の戦略として考える上からも、内閣全体で総合的に考える視点がぜひとも必要だと思っております。
 特にこれからは、エネルギー問題と環境問題とそして経済開発問題、これをうまく両立していかなきゃならない問題でありますので、全体の視点から国家戦略として取り組むということはぜひとも大事だと思っています。
 ただ、アメリカと日本と違うところは、アメリカは、工業の最先進国でもあり、エネルギーでもやろうと思えば自力でできる、食料も全部自力でできる、防衛も全部自力でできるという観点と違って、日本は、食料にしてもエネルギーにしても、国際協調なくして発展を図れない国であります。
 そういう中で、いかに自主独立という観点から協調が大事かという。自主独立なき協調は隷属につながりかねませんから、あくまでも、協調はしていきますけれども、日本独自の自主的な努力というものがまず大事であるという視点から国際協調の体制を探っていかなきゃならないと思っております。
藤井(孝)委員 私も同感であります。
 ですから、私が申し上げたいことは、総理、やはり日本は資源がない、そして食料も先ほど申し上げたとおりの状況である。それから、今ちょっと環境に触れましたけれども、後ほど環境にも触れますけれども、二十一世紀は環境との闘いの時代であるとも言われています。これは言ってみれば、わかりやすく言えばごみとの闘い。これは、同じごみといっても、一般廃棄物あるいは産業廃棄物、そして生ごみといった、こういった問題をいかに、ごみを出すことを少なくし、あるいはごみが出た場合、それを単に燃やすとか廃棄するということじゃなくて、リサイクル、いわゆる循環型社会形成というのが、これはもう法律が一昨年できましたけれども、そういった調和、いわゆる産業も日本はこれから育成していかなきゃならない。
 日本はもう営々として物づくりを中心として大変な優秀な技能と技術を持っている、そして産業の基盤に立って日本の国は成り立っていることはこれからも大事なことであります。しかし一方では、環境、そういった問題をどう調和していくか、どう共生していくかという問題もしかりあるわけであります。そしてまた、それは外交にも通ずるし、今総理がおっしゃった国際協調、日本は独自ではやっていけない、国際協力が必要である。
 私が先ほど申し上げたのは、そういう観点からしてでも、やはり総合戦略というものを打ち立てるためには、総理直轄のそういった総合戦略システムというものをぜひ、何も環境に限らず、食料、エネルギーあるいは外交を含めた、いわゆる安全保障の問題等々も含めた、そういったタスクフォースと申しましょうか、ぜひともそういったことをお考えいただければありがたいなということをあえて申し述べておきたいと思います。
 そこで環境問題にちょっと入りますが、もう時間が大分迫ってまいりました。今一つ触れましたけれども、二十一世紀は環境の世紀とも言われております。きょうは時間がございませんので詳しくは申し上げませんが、二つの視点があると私は思います。
 大木環境大臣、御苦労さまでございます。大木大臣は、COP3でしたか、京都議定書のときの議長として、取りまとめに大変御苦労された。ちょうど私はあのとき運輸大臣でございまして、私の方は国鉄長期債務の方で大分苦労いたしましたけれども、よく大木大臣、まとめられました。あれから大分たっておりますが、そのときに、地球温暖化をいかに防止するかという観点と、それから先ほど申し上げた循環型社会形成、この二つだと思っていますね。ですから、ことしは、多分この京都議定書が批准、発効する年だという大変重要な年になります。
 そういう中で、地球温暖化を引き起こす要因の最大のものはいわゆる二酸化炭素とされるわけでありますが、そうした石油、石炭、化石燃料に起因する温室効果ガスをいかに減少させるか、こういった問題をどうこれから解決していくかということ。一昨年には、通常国会で循環型社会形成推進基本法が制定されました。そういったことを踏まえて、また就任早々ですが、再任でございますから、ぜひその点を踏まえて、大木環境大臣の方針をお聞きいたしたいと思います。
大木国務大臣 ただいま藤井委員から、環境問題で、地球環境問題、今目の前には温暖化の取り決めの問題があるわけですが、それともう一つは、言うなれば、国内問題だけではありませんけれども、我々の身の回りの、まずは国の中できちっと環境を整える。問題が二つあると思います。
 これは私は、根っこにおいては、そういった国際問題と国内問題というのはつながっていると。例えば、温暖化を防止するためにいろいろな措置が必要である。御存じのとおりに、CO2の発生源を三つに分けると、産業と運輸交通それから民生、我々の国民の生活と、三つあるんですが、それぞれがやはり、ある意味におきましては、地球温暖化のためにこれから日本がどういう努力をするかという中の問題でもあるし、また我々の身の回りをこれからきちっとしておく。これは、私どもも地方へ参りますと、本当に各市町村長の最大の関心事の一つは環境問題でございまして、ごみをどうするかというようなわけであります。
 ですから、これは先ほどもお話ございましたけれども、もちろん環境省が一生懸命やらせていただきますけれども、縦割り行政の枠を超えて各省庁で協力をしていただきまして、一つは私は、やはり科学技術が非常にどんどんと日進月歩でございますから、そういうものによりましてCO2ならCO2の排出を阻止するための方策というようなことも考えていくということであります。
 今まではどちらかといいますと、日本におきましては、一九七〇年代のあの石油ショックのときに省エネということが非常に中心になりましたけれども、省エネはもちろん続けていただくわけでございますけれども、同時にいろいろな分野で、例えば新しい分野でバイオマスだとか、先ほどもお話に出ておりますけれども、太陽エネルギーあるいは風力、いろいろあります。そういったものを総合的に活用する。そのためにはやはり実際に、環境省で計画は一生懸命考えますけれども、それを実施していただくためには、やはり各省庁の御協力も願わなきゃいかぬということで、ひとつ頑張ってまいりますので、よろしくお願い申します。
藤井(孝)委員 総理、先ほど来ずっと共通する点というのは、まさに省庁の壁、これですね。大分低くなったとはいえ、縦割り行政、もうそんなことでは済まされないということでありますよ。
 そこで、先日総理も、私が議院運営委員長のときにですが、国会の広場を使われて燃料電池の自動車を試乗されましたね。大変すばらしい技術が進んでいるなという御感想だったと思いますが、総理、今、バイオマスだとか燃料電池だとか、あるいは水と油を混合して燃やして一酸化炭素等や窒素を大幅に削減するエマルジョン技術とか、もう日本の技術は、この環境に対する技術というのは日本が世界のトップを行っていると私は思うんですよ。
 だから、日本はこれからいろいろな意味での新しい産業を興していかなきゃならない。私は、環境の技術をどんどん日本がリーダーシップを発揮してやるということは非常に大事だと思っています。二十一世紀は環境の時代と言われている、そういった中で日本が、環境に対する技術はこういうものがあるんだ、そういったことを踏まえて総合的な戦略というものも、環境も加えてぜひ構築していただきたいと思っております。
 時間が参りましたけれども、交代しなければなりませんが、私が冒頭から申し上げましたように、構造改革なくして景気回復なしという言葉はそのとおりだと私は思いますが、むしろ私自身は、国家戦略なきところに構造改革はないんだというふうに思っております。
 そういった意味で、今後とも、総理が構造改革路線を歩んでいくということは私も支えてまいります。そういった中で、一番欠けているのは、やはり総合戦略がまだ日本は欠けているんではないか。そういう意味で、今後のこうした日本の国家百年の大計、中長期的な問題として、今申し上げたことに対しまして、ぜひ総合戦略というものを、そういった部局というかそういったスタッフ、タスクフォースと申しましょうか、そういったものをぜひつくっていただきたいと思うわけであります。
 いろいろまだほかに申し上げたいことがあるんでございますが、時間になりましたので、最後に、私からも総理に贈りたい言葉があります。
 先日、我が党の山崎幹事長が、本会議でネバーギブアップという言葉を総理に贈られた。総理は、ネバーギブアップの精神でやっていきたい。大変結構だと思います。頑張っていただきたいと思います。
 また、総理は、アメリカへ行かれましたね。そのときにもエルビス・プレスリーが大好きだということでございますが、実は私も同じ世代でございまして、プレスリーの曲を多く知っております。そういう中で、やはりアメリカにはデキシーランド・ジャズという有名な分野がありますね。たしかそのデキシーランド・ジャズの名曲の一つに「ザ・ワールド・イズ・ウエーティング・フォー・ザ・サンライズ」という曲があります。総理、御存じだと思います。これは、訳せば「世界は日の出を待っている」。
 日本は、日の出る国日本であります。我が国民も、今この状況というのは暗やみの中にあるかもしれない、しかし、一日も早い光を、そして日の出を待っている。しかし世界も、ザ・ワールド・イズ・ウエーティング・フォー・ザ・サンライズ、世界も、日本の再生、日本がこれからまた二十一世紀も頑張っていただきたい、そういう気持ちで待っていると思います。
 そのためには、総理自身がやはり強いリーダーシップを発揮して、我が国民のためにも、世界各国の期待にこたえるためにも、ぜひ、より一層のリーダーシップを発揮して頑張っていただくことを心から期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
津島委員長 これにて麻生君、藤井君の質疑は終了いたしました。
 次に、北側一雄君。
北側委員 公明党の北側一雄でございます。
 きょう私は、総理初め閣僚の皆さんに、特に経済問題、景気また雇用を中心とする経済問題を論議させていただきたいというふうに思っておるんですけれども、その前に、改めて冒頭、政治倫理の問題につきまして、政治と金をめぐる問題、これに触れなければならないのは極めて残念だというふうに思っております。
 御承知のように、公共事業の発注をめぐりまして、自民党の加藤元幹事長の私設秘書でございます事務所代表による脱税疑惑事件、また、民主党を離党されましたけれども、鹿野元副代表の元公設秘書による競売入札妨害容疑事件が明らかとなっております。双方の事件に共通をしておりますのは、政治家の周辺の人間が公共工事の口ききによって報酬を取る、国民の貴重な税金で賄っている公共事業を食い物にしている、こういう事実であります。全く言語道断でございまして、また、一部では政治家自身も本当に何の関与もしていないのかというふうに疑惑を持たれているわけでございます。
 改めて申し上げますけれども、私どもの国会の政治倫理綱領には、「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」というふうに定められているわけでございます。
 総理も、先般の自民党の党大会で、いかなるいい政策でも、政治、政党、政治家への信頼を失えば遂行できないと。全く私はそのとおりだと思います。信なくば立たずでございまして、私はやはり、こういう政治と金をめぐる事件が起こった場合には、疑惑を持たれた政治家みずから国会の場で積極的に釈明し、疑惑を解明し、その責任を明らかにしていく、そういうことが大事であるというふうに思いますが、総理、御意見はいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 せっかく政治倫理審査会を設けて、今まで起こった不祥事に対して政治がどうして国民の信頼を取り戻すかということでこの政治倫理綱領ができ、政治倫理審査会が国会に設置されたわけであります。それがうまく機能していないなということもあると思いますが、私は、その政治倫理綱領にあるとおり、まず、疑惑を持たれた政治家は国民にその疑惑を晴らすためにきちんと説明をすべきだと。そういう場として、各党の権力闘争とか政争を離れて、政治倫理審査会をもっとうまく活用すべきだと私は思います。
 そのために、政治家が消極的であってはならない。まず、疑惑を持たれた議員はその政治倫理審査会へ出て、自分はそういう疑惑に対して、違う、あるいはこうだと、疑惑を晴らすための行動をはっきりととるべきだと思っております。
北側委員 私も全く同様に考えております。
 それで、今、与党三党の協議会ができまして、その事件の解明とともに、今後の再発防止に向けて何をすべきかという議論を与党三党の協議会でしております。今進行中でございますけれども、一つは、一昨年成立しましたあっせん利得処罰法の適用対象に私設秘書等の拡大をやはり検討すべきだと。ただし、もちろん、総理もおっしゃっているとおり、その定義はきちんと明確にする必要があると思いますが、その上で、やはりこのあっせん利得処罰法の改正をすべきだというふうに思います。
 二点目に、これはちょうど私が一年前のこの予算委員会、この場で提案をさせていただいたのがきっかけだったんですが、官製談合防止法案、これはちょっと誤解されている向きもあるんですけれども、公共事業の発注側の国とか地方公共団体の職員が事前に受注業者を決めるなど入札談合に関与しているような事実を公正取引委員会が探知する場合がよくあるんです。そういう場合に、当該官庁とか地方公共団体の長に対して、必要な措置をとるように要求する。その要求を受けた官庁や地方公共団体の長は、調査をする等の必要な措置をとる、さらに公表するというふうな法案でございまして、簡単に言いますと。何か新たな罰則を設けようというものじゃございません。行政措置をきちんとやろうという法律でございます。
 これは、昨年この予算委員会で提案をさせていただいて、その後、当時亀井政調会長だったんですが、亀井政調会長も、それ、ぜひやろうということで、与党三党でプロジェクトチームができました。ずうっと、延々と九月二十一日まで、合計十四回にわたって与党三党で会議をやりまして、そして九月二十一日に与党三党のプロジェクトチームでこの法案骨子について、これはもう当然各省庁の意見も聞いた上でですよ、法案骨子についてプロジェクトチームでは了承したんです。公明党、保守党は持ち帰ってそれぞれ了承したんですが、自民党が党内に持ち帰られて、まだなかなか党内手続が終わっておらないというのが現段階なんですね。
 この官製談合防止法案につきましては、実を言いますと、私もちょっと知らなかったんですけれども、何と去年九月の改革工程表の中に、改革工程表ですよ、竹中大臣、この改革工程表の中に、何と官製談合防止法案について触れてございまして、そこは競争政策のところで書いてあるんです。競争政策のところで、臨時国会までに措置するとなっているんです。去年の秋の臨時国会までに措置するとあって、何と書いていますかというと、「官製談合を防止するため、与党において入札談合に関与した発注者側に対する措置の導入を含めた法整備の動きがあることを踏まえ、必要な検討を行う。」こういう文言が入っておるんです。
 今回のような事件も起こったわけでございますし、私は、この国会でいわゆる官製談合防止法案というものをぜひ成立させるべきであるというふうに思っております。総理のお考え、いかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 改革工程表に触れておりますように、そういう議論もしているわけです。そして、いかに政治が国民の信頼を得た上でいろいろな政策を進めていくかという点が重要だということは、今回のいろいろな不祥事が出てきまして、改めて国会議員も認識しているところだと思います。
 そこで、今言われたような点も含めまして、公明党においても、保守党においても、それぞれの案が出ております。自民党としても、これを真剣に受けとめよう、そして、この政治に対する不信を持たれている危機をこれからの再発防止に向けたチャンスととらえて、今国会で実効ある措置をしなければならないという認識では自民党も一致しております。
 よく議論を詰めていただきまして、少しでも前進できるような、また国民の政治に対する不信、政治家が襟を正すことができるような措置を今国会で講じたいと思います。
北側委員 それでは、経済問題に入らせてもらいますが、やはり今の経済の現状というのは、私も、地元なんかに帰りまして、本当に厳しいなというのを肌で痛感しておるんですけれども、経済問題では三つの大きな問題があるのかなと。
 一つは、先ほど麻生政調会長も議論されておられましたけれども、デフレの問題です。特に構造改革とデフレの問題、これをどう考えていくのかという問題が一つ。それと二つ目が、後でお話をさせていただきますが、雇用の問題。本当に厳しい雇用情勢になっております。三番目に、やはり金融の問題です。金融システムの安定、これだけは断じて守らないといけないというふうに思っているわけでございます。
 この三つが、やはりこれから当面の大きな経済の課題であるというふうに私は認識をしておるんですけれども、まず、この構造改革とデフレという問題でちょっと議論をさせていただきたいと思っております。
 ただ、前提として、あくまで我々政府・与党は、これは十三年度におきまして、十一月に一次補正予算を成立させました。中小企業、また雇用対策を中心とする一次補正予算でございます。これが効果がようやく今ごろ出始めるころでございます。そして、先般、ついこの間、十三年度の二次補正予算、これは公共事業、施設整備を中心としての二次補正予算が成立しました。
 ですから、ともかく、この一次補正予算と二次補正予算について早期にきちんと執行していくということがまず大前提でございますし、さらに言わせてもらいますならば、今かかっております十四年度の予算案を早期に成立させるということが大事なわけでございまして、それを踏まえた上で論議をさせていただきたいと思っているのです。
 まず、デフレの現状の認識なんですけれども、きょうはテレビ中継もございますので、デフレの現状がどうなのかというようなことも少しお話をさせていただきたい。私、経済学の専門家じゃございませんので、間違っていたら、竹中大臣、教えていただきたいと思いますが。
 まず、一枚目のパネルでございますけれども、これは、名目と実質のGDPの推移を書いてございます。赤い線が名目のGDP、青い線が実質のGDPでございます。
 八〇年代、ごらんになってわかりますとおり、ずっと青の実質GDPよりも赤の名目GDPが相当高いんですね。この差がGDPデフレーターというふうに考えていいんですね。名目と実質の差がGDPデフレーターと言いまして、デフレもしくはインフレの一つの数字なわけでございます。
 この八〇年代というのは、要するにプラス、インフレ傾向がずっと続いているわけですね。九〇年代の初めまでそれが続くんですけれども、九四年からこれが、九七年の消費税の引き上げのときを除きまして、ずっと今度は逆転するのです。そして、名目GDPの方が低い、実質GDPの方が高い、こういう状況がずっと続いています。
 要するに、GDPデフレーターでは、この九四年からずっとデフレ傾向が続いておって、どちらかというとここ最近はそれが広がっておるというのが、このデフレをあらわしている数字の一つでございます。
 それから、今のはGDPデフレーターの話でございますが、先般、二〇〇一年の消費者物価指数が出ましたけれども、その数字は二年連続のマイナスになっております。これは生鮮食品を除く総合指数ですけれども、二〇〇〇年を一〇〇としまして、二〇〇一年は九九・二で〇・八%下落。昨年はやはりマイナスで、二〇〇〇年は一九九九年に比べますと〇・四%下落。二年連続、消費者物価指数も〇・四、〇・八というふうにマイナス。
 ちなみに、この二〇〇二年、ことしですけれども、これは見通しですけれども、ことしの見通しも消費者物価指数はマイナスの見通しでございます。恐らく三年連続消費者物価指数がマイナスになる、こういう状況でございます。
 今のは名目GDPと実質GDPの差のGDPデフレーターと、それから消費者物価指数を見たわけですが、もう一つ、資産デフレ。これは言うまでもございませんけれども、もうバブルが崩壊してからこの資産デフレの状況というのは悲惨なものがございます。
 例えば土地ですと、都市部におけるピークは九一年なんですが、その九一年に比べますと現在どうなっておるかといいますと、九一年をピークにしまして、九〇年三月の値を一〇〇としまして、今現在、商業地は、これは六大都市の商業地で、二〇〇一年九月段階で、この一〇〇あったものが一六・八。それから、住宅地で四二・二。全用途平均で三一・七。全用途平均でも三割強まで土地の評価が下がってしまっておる。株式の方も言わずもがなでございますけれども、こういう資産デフレの状況が続いておる。
 こういう状況の中で、特に私が強調したいのはこの図なんです。これは、デフレが進行していく中で実質金利が――これは私が勝手につくった表じゃなくて根拠のある表なんですけれども、この青い線が名目金利です、赤い線が実質金利でございます。何と、日銀は、きょうも総裁いらっしゃっていますけれども、日銀はどんどん金利を緩和して努力されているんですけれども、名目金利はずっと下がっているんですが、実質金利は決して下がっていないんですね。九九年からむしろ上がっておる、こういう状況にあるわけなんです。私は、これは非常に重い事実だと思うんですね。ここをしっかり押さえて経済運営をしていかないといけないというふうに思っているのです。これは、実質金利の話ですね。
 もう一つは、実質債務の話なんです。先ほどもちょっと麻生会長おっしゃっていたんですかね。実質債務というのは、こういう消費者物価なり卸売物価なりが下がっているときに、例えば百万円借金がございます。こういうデフレが引き続き続く中では、百万円の借金というのから仮に十万円一年間で返済したとしましょう。したとしても、仮に一〇%デフレになってしまいましたならば、これは十万円返済している意味がほとんどないんですね。九十万の負担が事実上百万近くになってしまっていますから。ということで、こういう実質債務が負担増になっている状況ということもよく押さえないといけないということでございます。
 こういう実質金利が高い、先ほどの図ですと三%を超えておるんですよ。こういう中で、例えば企業に設備投資せいというふうに言うても、実質金利を見ますから、実質金利が高いのに設備投資できない、なかなか前に進まない。住宅投資も同様です。住宅投資も、こういう実質金利が高いときには、お金を借りるわけですから、実質金利が高いときにはなかなか住宅投資も前に進まない。
 さらに、実質債務の問題でいいますと、名目の借金額が変わらなくてもデフレ下では実質の負担は重くなるわけですから、もともと企業もそれから家計も、あのバブルの時代に相当な借金を負っている企業、家計がたくさんあるわけですね。企業、家計に過剰債務を負っているところがたくさんあるわけです。この過剰債務を、今一生懸命、企業も家計も汗を流して借金返済に努力している。借金返済に努力しているんだけれども、一方で実質債務の負担が重くなってしまっていますから、こういう状況にあるわけですね、過剰債務がなかなか減らないと。そういう中で、個人に消費しろ、企業に投資しろと言っても、なかなかそっちの方に向かない。専ら一生懸命返済の方へ回るというのが今の状況ではないのかというふうに思うわけでございます。
 竹中大臣、ちょっとここまでの認識で何か間違っているところがあったらおっしゃってください。
竹中国務大臣 北側委員御指摘のとおりだと思います。
 マクロ経済の専門家の間ではそのような議論を実はかなり以前からしていたのでありますが、生活者の実感からしますと、先ほども少し申し上げましたように、今まで日本の価格は高過ぎる、国際的に高いと言われていたんだから、それが下がるのは悪いことではないんではないかというような、いわゆるよいデフレ論というのがありまして、社会的なコンセンサスとしてデフレを退治しようというところにはなかなか至らなかった。
 しかし、結局、物の値段が下がっていくと自分の給料も下がっていくんだ、まさにこれは合成の誤謬なわけでありますけれども、デフレはやはり悪である、解決しなければいけない、そういったメッセージを十二月の経済財政白書では明確に送りまして、先般決定した「改革と展望」の中でも、したがって二年以内にこのデフレを退治するということを明記しました。
 たまたま先般、ニューヨークのダボス会議に出席いたしましたけれども、その中でも、実は今、日本だけではなくて近隣のアジア諸国もこのデフレ傾向が出ておりまして、このデフレというのをやはり退治しなければいけない、内外ともにそのコンセンサスができた、そういう状況であると思っております。
 この問題は大変重要であるというふうに認識しています。
北側委員 そこで、構造改革との関係なんですけれども、総理、ここは誤解しないでいただきたいんですが、私も、構造改革は必要だ、構造改革なくして景気回復なし、そのとおりだというふうに思います。例えば、総理主導でされておられます特殊法人改革、行政改革、さらには財政構造改革等々のこうした改革というのは避けて通れない。規制改革もそうです。これはやっていかないといけない。
 ただ、一方で、経済情勢自体が非常に厳しいデフレが続いておる、そういう中で構造改革をするというのは、なかなかこれは容易なことではない。
 一つの例を申し上げますと、これが当たっているかどうかはまた御意見を賜りたいんですけれども、これは、先般発表されました主要行の破綻懸念先以下債権の不良債権処理の状況の図をかいてございます。
 これは去年、四月の経済対策でしたでしょうか、それからその後の骨太の方針でも承継されていると思うんですけれども、まず、おととしの九月期にあった不良債権、主要行ですよ、破綻懸念先以下の不良資産十二・七兆、これは二年以内に処理しましょう、こう決めました。そして、去年の三月期に出たものには、新規に発生したものについては三年以内に処理しましょう、こういうふうに去年決めたわけですね。二年ないし三年で処理しましょうと。
 それがどうなっているかという数字なんですが、このおととしの九月期にあった十二・七兆の分については、半期で、去年の三月期までの間に四兆四千億、金融機関は不良債権処理しました。さらに去年の九月期、ですから丸一年です、丸一年たって、ここで、半期で一兆七千億。合計でこの一年間で、この十二・七兆あったものは六・一兆。ですから、十二・七兆の約半分ですね、これを一年間で処理したということなんです。だから、これはある意味では予定どおりなんです。ここは二年間で処理すると言ったものを、一年で半分になっているわけですから。柳澤大臣、そういうことですよね。半分になっているんです。
 新規発生したものは三年でやりましょうと。これは、去年の三月期に新規発生した三兆四千億については、この半期で八千億円の不良債権処理しました。これは三年間ですから、半期ですというと六回あるわけでございますので、この三兆四千億を三年間で処理するという意味では、この八千億も、これはクリアしているわけですね。
 ところが、この九月期、去年の九月期になったら、新規発生で三兆円がまたプラスされているんです。半期で三兆円またプラス。去年の三月期も三兆四千億、去年の九月期も三兆発生した。というふうに、結果としては十二・二兆で、去年の三月期よりふえてしもうとるんですね。
 まあ、これはいろいろな見方があるんですよ。いろいろな見方がありまして、そもそもこの新規発生というのは、もともとこの青いところにあったん違うんかい、もともと古い不良資産じゃなかったのかという意見もあります。多分日銀なんかそういう見方が強いんですがね。そうではなくて、やはりこういう資産デフレ、特に資産デフレですけれども、デフレが続く中で、景気が悪化していく中で、新たに従来不良資産じゃないものが不良資産になってしまっているというふうに、相当私は現場の状況を見ていて思うんです。
 やはり、このデフレ下で、この不良債権問題というのを解決していくというのは容易なことじゃないというふうに、私、これからも思っておるんですが、柳澤大臣、いかがでしょう。
柳澤国務大臣 御指摘の事実はそのとおりでございまして、私も間違いなくそのように認識をしております。
 それで、この不良債権のうち、破綻懸念先というものがどのようにして生まれるかというと、破綻懸念先というのは、基本的に、債務超過に陥って、それがなかなか一過性のものと言えない、こういうものを基本的コンセプトと考えていただいてよろしいかと思うんです。
 それは、ではどうして債務超過になるかといえば、やはりバランスシート上、資産の評価が、先ほどおっしゃったように地価とかあるいは株価でもって下げざるを得ない。ですから、債務の方は下げるわけにいきませんから債務超過に陥るという、資産の価額の下落、価値の低下によって起こるということが一つ。それから、フローの世界で赤字が続いている、それはやはり累積をしていく、そういうことがついにはストックの方にも影響して債務超過に陥る、こういうことでございまして、今、冒頭から委員が御指摘になられているように、フローの方のデフレ経済が名目ではどんどん収縮していくということ、それからまた、それとは異なった側面であるところの資産のデフレ、この両方で債務超過が生まれ、破綻懸念先が増嵩するということになる、なりがちということは、これは否定できない事実であろう、このように思います。
 ただ、だからといって、それでは不良債権の処理というものをしなくていいのかというと、これはやはりそうではない。これはもう御同意いただいていることかと思うんですけれども、我々としては、不良債権の処理をして一刻も早く金融機関の側の健全性を高めていく、こういうことがやはり、リスクをとって融資をしていくという金融仲介機能の向上、このために必要だということで、まことに悩ましい問題でありますけれども、そういうふうな考えで取り組んでいるということです。
北側委員 全くそのとおりで、不良債権処理をしないと金融の仲介機能がもとどおりにならないわけですから、そこは大事だというのは前提なんです。
 私が今申し上げているのは、そういう構造改革を進める中で、一方でデフレ対策というものをしっかりやっていかないと構造改革もうまくいかないんじゃないですかということを申し上げたいのですね。
 これは、財政の健全化の問題でも同じ問題がありまして、これだけ名目GDPがずっと下がっているわけでしょう。塩川大臣も苦労されていると思いますけれども、税収がふえないのですよ。税収というのは名目GDPにかかわりますから、ふえないのです。むしろ、去年みたいに減っていっているのですね。ことしですか、去年ですか、減っていっているのですね。
 また、さっきの実質債務負担が高くなっていますよという話は、家計も企業も、もっと言うと国もそうなんですよね。国、地方の借金だって、実質の負担は、こういうデフレ下では重くなっているわけでございます。ちょっと計算しますと、仮に六百六十兆と計算すると、その一%は六兆六千億ですね。仮に一%の実質債務負担増がありましたら、六兆から七兆、この債務負担の実質はふえるわけです。
 そこで、いや、私はそれを批判しているのじゃないですよ。公共事業も苦労して一兆削る、ODA一〇%削る等々、努力をして一生懸命出しても、五兆削って二兆ふやすの話で五兆でしょうという話なんですね。やはりここはこの状況の中では、政府を挙げて構造改革を一方で着実に進めるとともに、このデフレの総合対策というものを政府を挙げてとっていかないといけないということを私は強く主張したいわけでございます。
 先ほどは竹中大臣もおっしゃったように、昨年の暮れ以来、そのことを相当意識なされて、さまざまお考えになられていると思いますが、このデフレ克服に向けて、竹中大臣、どういう対策をとるべしと考えていらっしゃるのか。余り時間がございませんので、簡単におっしゃっていただけませんか。
竹中国務大臣 極めて総合的に考えなければいけないということになるわけでありますけれども、そのための準備としまして、既に経済財政諮問会議の下に日本銀行、財務省、経済産業省、内閣府から成るスタディーグループをつくりまして、今、議論の整理をしております。
 総合的にと申し上げましたけれども、やはり四つぐらいのことを最低限考えなければいけないと思います。
 一つは、やはり金融仲介機能が滞っていることによって総需要が抑制されているという、その輪をどこかで断たなければいけないということで、不良債権処理の終結に向けて一層の努力をしなければいけないというのが第一点だと思います。
 第二点は、これはやはり金融的な現象でありますから、日本銀行におかれて、一層の金融緩和に向けて、できることを柔軟かつ大胆にやっていただくということ、金融政策の面があると思います。
 三つ目は、これはやはり市場を活性化させる。特に資産デフレに関しては、市場を活性化させるために即効性のあるものというのは幾つかあると思います。株式買い取り機構の制度を早く活用すること、空売りに対してやはり合理的な規制を課していくこと、そういうことが考えられると思います。
 四つ目は、特に中小企業を中心とする金融面でのセーフティーネットを確保する、中小企業に対する金融面でのしかるべき措置をとる、そういった四つの視点が最低限必要であるというふうに思っております。
北側委員 それでは、今、金融緩和の話も出ましたので、日銀総裁にお聞きをいたしたいと思いますが、私もやはり、さらなる思い切った金融の量的緩和が必要なのではないのか、このデフレの本当に深刻な状況を考えますと。これまでも日銀は相当な努力をされているというのはよく理解して申し上げているのですけれども、さらなる金融の量的緩和が必要ではないのか、長期国債の買い切りの増額をさらに検討すべきではないのかというふうに私は思いますが、総裁、いかがでしょう。
速水参考人 お答えいたします。
 日本銀行は、物価が継続的に下落することを防止するために、断固たる決意のもとで、内外の中央銀行の歴史に例を見ないような思い切った金融緩和措置を講じてきております。
 この結果、金融市場におきましては、強力な緩和効果が生じております。すなわち、金利は、一年物国債金利で〇・〇〇一%と、ほぼゼロに低下しております。また、マネタリーベース、これはハイパワードマネーといって、日本銀行から直接出していく金でございますけれども、これは一月には前年比二三%の増加ということで、これは、第一次石油ショック、狂乱物価のときに出て以来の高い水準で日銀から金が出ているということでございます。一九七三、四年のあのときのことを皆さん御存じだと思いますが、あのころぐらいの勢いで金が出ているということを御承知いただきたいと思います。
 日本銀行としましては、今後とも、金融市場の安定確保と緩和効果の浸透に向けて、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けてまいる方針でございます。
 それと同時に、デフレを防止していくという上では、粘り強い金融緩和の継続と並んで、金融システム面や経済産業面の構造改革を通じて、家計や企業、金融機関の前向きな活動、需要を引き出していくということが不可欠だというふうに考えております。
 また、昨日まで、G7で日本の金融政策のことを説明させてもらいましたけれども、私どもとしては、今の総理の言っておられる改革なくして成長なしというこの信念、この政策を何とか金融サイドからバックアップしてまいりたいと思いますし、これなくして、物価の正常化、デフレの解消ということはないというふうに考えております。
 以上でございます。
北側委員 これ以上日銀の総裁とやっても余りいい御答弁はいただけないと思いますので、また改めてにさせていただきますけれども。
 総理、平成十三年、去年の十二月にOECDが対日の経済審査報告書というのを出しました。この中に、これはOECDが言っているんですよ、OECDが言っているその金融政策の中で、こういうことを言う表現がございます。これは、「為替レートの安定の維持を目的とした場合の外貨資産購入の決定は財務省の権限であるものの、日銀による資産購入の範囲を、外貨資産にまで広げることが望ましい。」こういうことを言っているんですね。そのためには、「外国資産の購入が為替誘導を目的としたものではなく、金融緩和のためのものであるというメッセージを発することができるかが重要な点」だ、こういうふうな報告書も出ておりますので、ぜひこれは参考にしてもいい指摘じゃないのかなというふうに私は思っておるところでございます。
 それで、日銀にはまた後でちょっと質問させていただきますけれども、財務大臣、税制改正ですね。今、経済財政諮問会議、また政府税調等で税制改正の論議が始まっております。これは中長期的な議論も当然されてしかるべしなわけでございますけれども、それも重要でございますけれども、今申し上げたデフレ阻止に向けて、税制としてどういうことができるのかということも私はぜひ検討すべきじゃないのか、当面の税制改正の一つとして検討すべきじゃないかと思っているんですね。
 例えば、資産デフレの関係でいいましたら、これは去年の年末の税制改正でも相当論議させていただいたのですけれども、土地の流動化を阻害しているような税目がございます。例えば、流通課税ですね。不動産取得税、登録免許税、これは不動産取得税も地方税の絡みがあるので、なかなか地方の財源どうするんだという問題は一方であるんですが、ただ、やはり土地とか住宅の流通を一方で阻害しているような税目については、こういう資産デフレの中では思い切った軽減を暫定的にもすべきだというふうに私は思うんですね。そういう主張を去年も大分させてもらったんですけれども、なかなか聞いてもらえなかったんですが。それとか、先ほども出ていました住宅ローン減税なんかも検討の余地があると思います。
 本当に、こうした大胆な税制改正を、このデフレという対策を一つの視点に入れてやるべきだと考えますけれども、財務大臣いかがでしょう。
塩川国務大臣 この主張は北側さんがずっと言っておられたことで、私たちもこの前の税制改正のときには十分に認識して議論したものでございますが、私も同様でございまして、現在、税に対する考え方が、やはり古い観念と新しい時代に適応しようという観念と非常に入りまじって複雑になっておると思われます。
 率直に申しまして、やはり財務省としては、国の財源を守らなきゃならぬというので、どうしてもバランスをとろうと、片っ方で減税すれば片っ方では増税をするという、そのバランスをとって数合わせをしようという傾向がございます。
 一方で、税は、公平に、給付と負担の関係を思い切って見直して、それにふさわしい、不公正のない税制にするということと、もう一つは、経済の活性化のために思い切った経済政策としての税制をとるべきだという二つの考え方がございます。
 私たちは、今度の十四年度税制改正をこれから検討していただくわけでございますが、その際には、ぜひ、経済政策を重点にした税制改正と、それから負担と給付との公平を実現した内容にしたいと思っておりまして、その結果として、できればつじつまが合えばいいということでございますが、つじつま合わせを先行して税制改正をやったんでは私は時代に合わないと思っておりまして、仰せのとおり、やはり経済政策を重点に置いた税制を考えていきたい、こう思うております。
北側委員 塩川大臣、念のために申し上げますが、去年の税制改正の議論のときには、我が党の方からは決して減税ばかり言ったんじゃないんですよ。途中までは増税の話もちゃんとしていたんですよ。だから、決してええとこ取りばかりしていたんじゃなくて、増税の話も考えていいよ、検討の余地があるよというふうに一方で言いながら、ああいうことを言っていたんですよ。ところが、こっちがだめだと言うからこっちもだめだという話になったわけでございまして、そこはぜひ覚えておいていただきたいなというふうに思っております。
 本当は一つ一つ聞かせてもらったらいいんですけれども、私の提案として聞いていただきたいんですが、デフレの問題というのは、一方では私は多くは都市問題だと思うんですね、資産デフレに象徴されますように。都市の問題が非常に多い。そういう意味では、都市の再生、都市を再生させるような事業。
 また、都市には、もう本当に低・未利用地がまだまだたくさんございます。それをしっかり国が、また公団が取得をして、開発をきちんとやって、民間ももちろん活用してやっていくだとか、こういう都市の再生に向けての事業に向けて、都市の低・未利用地を積極的に取得をしていく。
 さらには、中小企業の関係でいいましたら、これも私の主張ということでお聞き入れいただきたいんですけれども、政府系の金融機関の見直しの問題がございます。これは年内に経済財政諮問会議でやるということになっておりますけれども、先ほどのような、一方で金融機関は仲介機能が不十分、一方でデフレが進行する、過剰債務の負担が重くなっている、こういう中で、現実には、政府系の金融機関の役割というのは今物すごく重いと思うんですね。もう現場に行ったら中小企業はみんな口をそろえて、これはいい中小企業もそう言うんですね。その辺のところをよくわきまえていただいて、ここ何年かの、本当に経済再生をするまでの間については、政府系金融機関の役割は重いということを私は思っております。
 また、去年の一次補正で売り掛け債権担保融資、これも新しい制度で、創設されました。アメリカではすごく発展しています。これができたことは非常によかったんですが、ところが、平沼大臣御承知のように、全然実績が上がっていないんです。どうしてなのか。もっとこれが活用されるように、金融機関に対してもぜひ指導をしてもらいたいというふうに私は思っております。一言、平沼大臣。
平沼国務大臣 いわゆる都市の活性化、それが資産デフレを防ぐ非常に特効薬だということは、私も同感でございます。
 そういう意味で、経済産業省といたしましては、例えばバイオの国際拠点都市を大阪につくる、こういう形で、そういう土地を流動化して利用する、こういうこともやっておりますし、またさらには、中心市街地の空き店舗を保育所に利用するだとか、あるいは、お年寄りが集まる、そういうミーティングの場を提供する、そういう形で中心市街地を活性化していくとか、あるいは、今、リサイクルの中でエコタウン計画、こういう形で、やはり都市の再生というものを図っていくことが必要だと思っています。
 それから、売掛金債権の新しい制度ですけれども、これは、九七年の貸し渋りが起こったときに特別保証制度をやらせていただきました。そのときも、PRという形で立ち上がりがなかなかはかばかしくなかったことも事実です。
 ですから、そういう観点に立って、今我々としては各金融機関に鋭意説明をしておりますし、これをスタートしたのが昨年の十二月十七日でございまして、これからどんどんふやすように、せっかく両院の御賛同をいただいていい制度をつくりましたから、このPRを徹底的に進めていきたい、このように思っています。
北側委員 ちなみに、二月一日までの一カ月半で、保証の付与が決まったのはわずかに九件ですからね、これは。融資総額二億円強、これじゃだめですよ。これはたしか、事業規模は二兆円ぐらい予定したんじゃなかったですか。二億と二兆じゃえらい違いでっせ。もっと私、特に金融機関に対して、中小企業は物すごい関心を持っていますから、金融機関に対してぜひしっかり啓蒙をしていただき、そういう制度を活用した金融をやるように言ってもらいたいというふうに思うのですね。
 そこで、総理の所信表明でも、このデフレスパイラルに陥ることを回避するために細心の注意を払う、政府は、日銀と一致協力して、デフレ阻止に向けて強い決意で臨みます、このようにおっしゃっておられます。竹中大臣も同様な趣旨のことをおっしゃっております。政府、日銀一体となって、政府、日銀一体となってというふうに、お二人の演説からそこが非常に強調されておるわけでございますけれども、ほんまに一体となっているんかいなという話ですね。
 財務大臣、私、いろいろな会合で財務大臣、G7に行かれて御一緒だったと思いますけれども、いろいろなオフィシャルな会合で御一緒のこともよくおありかと思いますが、日銀総裁と何か意見交換、率直な意見交換というのはしょっちゅうされておられるんですか。
塩川国務大臣 しょっちゅうというわけじゃございませんが、大事なときにはちゃんとやっております。そして同時に、日銀が政策委員会を開会されますときには、政府側として財務省の方から、今現在は藤井総括審議官が出席して意見も言っております。
 ただ、そこで問題は、日銀の独立性というものがございますので、それだけにやはり踏み込めるべき範囲ということは限界がございますけれども、しかし、財務省の意見をまず聞いて、審議会の方にそれを諮っていただいておるということもございますので、そういう点において、私は意思疎通はしておると思っております。
 また、私と総裁との間でも、個人的にもいろいろと話しておりますし、先日も飛行機の中で十三時間一緒におったのでございますから、いろいろなことを話しておりますけれども、それがすなわちそのまま政策に出ているかどうかということは、これはいろいろ、それぞれの独立がございますので。
北側委員 竹中大臣、このデフレの現状認識それからデフレ阻止に向けての基本的な取り組み、そういうことについては、やはり政府の中もいろいろあります。財務省あり、経済産業省あり、金融庁もありと、さまざまな経済担当のところがあるわけでございますけれども、政府間、また日銀、ここが、こういうデフレの現状認識、デフレ阻止に向けての基本的な取り組みの考え方、この辺のところでは認識を共有していないといけないと私は思うんですけれども、大臣、この点はいかがですか。
竹中国務大臣 政府と日銀との協調、一方で、財務大臣が指摘されましたように日本銀行の独立性、それをどのように調和させるかということに関しては、幾つかの考え方があると思います。
 これは私の解釈ですが、日本は、現状ではイギリス型になっているというふうに申し上げてよいかと思います。イギリス型の意味は、政府と日銀が、中央銀行が議論して政策目標を決める。その政策目標に向かってどのような政策手段をとるかに関しては、つまり手段の独立性、手段決定の独立性は中央銀行に与えられる。
 なぜかといいますと、日銀総裁も入っておられる経済財政諮問会議において、二年後にデフレを収束させるということを目標として掲げているわけでありますから、その意味では、まさにデフレを収束させるということに関しては、諮問会議の場において、政府と日銀は一体した共有感を持っているというふうに思います。
 しかし、具体的にどのような政策をとっていくか、これは技術的にも大変難しい問題でありますし、そこはやはり独立した日本銀行の判断にゆだねられるべきである、そのような位置づけに、結果的には私はイギリス型になっているのではないかというふうに解釈をしています。
北側委員 金融政策の決定については独立であるべきなんですね。ただし、意見はどんどん言っていいと私は思うんですよ。意見はどんどん言って、あくまで最終の金融政策の決定は日銀にあると、そこは侵さないということが日銀の独立性だと思うんですね。
 今、竹中大臣、二年後にデフレを阻止するとおっしゃったわけですね。先般の中期展望では二〇〇四年度に名目GDP二・五%、実質で一・五%以上の成長というふうに書かれているんですね。これはGDPデフレーターでいえば一%ですよね。インフレ一%ということでございます。これは一種の物価安定数値目標を政府として定めたのではないのかというふうに私は理解しておるんですけれども、大臣、いかがですか。
竹中国務大臣 そこに示されていた数字は政府の目標ではなくて、基本的には一つのシナリオとして描かれているものでありますが、しかし、まさに委員おっしゃったように、非常に緩やかな物価目標を政府はもう既に持っている、非常に緩やかな形で持っているというふうに私自身は解釈をしています。
北側委員 日銀、いかがですか。日銀総裁。
速水参考人 今度の中期展望についても、デフレ解消のために政府と一体となってやるということは、はっきり私どもも決意を持っておりますし、そのつもりでおります。
 日本銀行は、昨年の三月に、物価の継続的な下落を防止するために強い決意を表明しました。そのとき以降、金利じゃなくて量を調整していこうというアグレッシブな、前例のないような資金供給を実施しているわけです。政府も、「改革と展望」におきまして、集中調整期間はゼロ近傍の成長を甘受せざるを得ないが、構造改革を進めていくことで経済がデフレから脱却していくシナリオを明確にされて、小泉総理もこの点に関して断固たる決意を表明しておられるのです。このように、デフレ脱却の決意というのは政府と日本銀行でしっかり共有されております。
 デフレ脱却のためには、諸制度の見直しなど、先ほど申し上げましたように、構造改革の具体的な取り組みを一刻も早く実行に移していくということが重要だと思います。
 日本銀行としては、今後とも、粘り強い資金供給を続けて、金融市場の安定と緩和効果の浸透ということに努めてまいりたいと思います。
 また、金融システムが万が一不安定化するといったようなおそれがあります場合には、政府と協力しつつ、中央銀行として断固たる対応を講じてまいりたいと思います。
 先ほど北側先生のおっしゃった、価格が下がれば債務者が困ると。債務者というのは政府と企業です。ところが、債権者の方は逆なんですね。債権者というのは家計なんです。千四百兆円持っている家計が、債務の方は四百兆しかありませんから、千兆は持っているわけです、ため込んだもの。それに、年金生活者には定められた年金が入ってくるわけです。その購買力が落ちるようなことがあればやはり彼らは怒るわけです。その辺のところは、私どもは独立性を持って間違いのない判断をその都度してまいりたいというふうに思っております。
北側委員 その辺の認識が私は全然違うんですよ。
 今過剰債務を負ったのはどうしてなんですか、一体。信じられないようなバブルが起こって、それが急落して過剰債務を負っているわけでしょう、企業も家計も。企業にとっても家計にとっても自分たちには責任ないと思っていますよ。そちらの、過剰債務を負っている人たちに対することを考えないで、一方で預金をいっぱい持っている人たちのことを考えているのがおかしいんですよ。それだけ指摘しておきます。
 それで、最後に総理、私はずっとえらい長い時間やってきましたけれども、構造改革も大事、着実にやらなきゃいけない。一方で、やはりデフレの阻止というのを全力を挙げてやっていかないと構造改革がなかなかうまくいかないというふうに思います。総理、いかがです。
小泉内閣総理大臣 非常に重要な点を今までの議論の中で指摘していただいていると思っています。
 構造改革を進めていく上において、デフレ阻止、金融不安を起こさせない、これに向けた断固とした決意を持って日銀と協力していくということを施政方針演説でも明確に示しております。
 きょうも、この委員会が終わりますと経済財政諮問会議が行われます。デフレ阻止に向けて日銀とも協力して進めていきたい、そして構造改革を進めていくということであります。
北側委員 それでは、もう時間も迫ってまいりましたので、ちょっと別の質問をさせていただきたいと思います。雇用の問題はちょっと午後からに回させていただきまして、BSEの問題を取り上げさせていただきたいと思うんです。
 このBSEの問題、八六年十一月にイギリスで初めてBSEが確認され、その後、ヨーロッパの国々でBSEが発生した、こういういきさつがございます。九〇年には、フランス、ドイツは牛への肉骨粉使用を禁止しました。EUは九四年に牛等への肉骨粉の禁止等の対策を行っております。それを受けたような形で、九六年四月に、御承知のように、世界保健機関、WHOの勧告がございました。この勧告の内容は、御承知のとおりでございますけれども、すべての国は反すう動物の飼料への反すう動物の組織の使用を禁止すべきである、こういう勧告があったわけです。この勧告を受けて、日本、農水省は行政指導でとどめてしまったわけですね、結果としてとどめてしまった。アメリカ、オーストラリアは九七年に肉骨粉の給与を法的に禁止しています。それにもかかわらず、まだ日本はしなかったんですね。
 私は、どう考えても、この九六年、WHOの勧告があった際に、一片の行政指導、それも課長の行政指導ではなくて、きちんと法的に禁止をすべきであった、そこはやはり農水省に大きなミスがあったと言わざるを得ないというふうに私は思っているんですけれども、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 BSEの発生によりまして、私も、何でこういう事態になったのかということを考えたときに、危機管理意識の希薄さ、また、行政に構造的な問題があるなということを痛感いたしました。したがいまして、これは、この問題を徹底究明することが私自身の責務、こう思って取り組んできている所存でございます。
 ただ、今委員御指摘の過去の問題につきましては、当時としては、専門家の意見を聞いたり審議会を開いたり、中には、審議会では、法規制をするべきという方も十三人中二名おりました。また、九七年の家伝法改正の際の国会における附帯決議がございます。衆参両院の農水委員会において、両院とも農水委員会では、行政指導を続けること、こういうふうにもなっているわけでございます。
 したがいまして、私は、今にして思えば、法規制をすべきだ、このように思います。そのことをいろいろな機会で申し上げておりますが、私は、やはりこうした問題については客観的な検証ということや科学的な知見を得るということが大事だろう、こう思いまして、BSE問題に関する調査検討委員会を設置しまして、これにも当初は、行政側といいますか、役人の間からは相当抵抗がありました。しかし、今、五回会を重ねて、いろいろ御検討いただいているわけでございます。
 こういった御検討いただいた報告を待って、私どもといたしましては、何でこういう事態になったのかということを厳正に受けとめて、二度とこういうことが起こらないような体制づくりをしていかなきゃならない、このように思っております。
 なおまた、今一番大事なのは、屠畜検査が、全頭検査によって安全を証明された牛以外は流通しない体制になっていますが、しかし、安全ということをいかに証明していくかということが大事でありますし、消費者の皆さん方が食品の安全問題に対して極めて神経質といいますか、シビアな受けとめ方をしておりますので、この畜産・食品衛生行政の一元的なあり方、先ほど総理からもお話がございましたが、こういった問題について一元的な仕組みというものを真剣に考えなきゃならぬ。これも調査検討委員会の御報告をいただいて、これを待って、そういったことも真剣に取り組んでまいりたい、かように考えている次第でございます。
北側委員 今、BSE問題に関する調査検討委員会が設置されて、精力的に行政対応の検証とか再発防止体制について調査検討されておるということでございます。
 三月に結論が出るということでございますので、総理、この調査結果が出ましたら、これだけ重大な事態になってしまったわけでございますので、私は、この調査検討結果に基づき、やはりその責任というものを明らかにしないといけない。組織のどこがおかしかったのか、そこは明らかにしないと、国民は納得しません。私は、その責任を明確にするとともに、先ほどおっしゃった食の安全という観点からの組織改革もしないといけないというふうに思うんです。総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 どういう点に問題があったのか、どういう点を正さなきゃならないのか、調査委員会の検討を待ちまして、組織のあり方、各省庁の連携のあり方、機構のあり方等含めてしっかりとした体制をとる、これが極めて大事なことだと思っております。
北側委員 これは、個人の問題もさることながら、やはり責任の所在をはっきりさせるということは非常に大事なことだと私は思っております。その当時のどこがおかしかったのか、だれがすべきだったのか、そこはきちんとけじめをつけるべきだ、これだけ大変な事態になっているわけですから。そうしないと国民は納得しないというふうに思っております。
 それともう一点、このBSE問題の解決のためには、先ほども農水大臣ちょっとおっしゃっていましたが、消費が拡大しないとだめなんですよね。幾ら入り口のところで一生懸命政府が支援しても、出口の消費のところで広がってこないと、このBSE問題は解決しません。
 BSE問題の解決のためには、消費者、さらには消費者と直接面している小売業者、それから焼き肉業者等の直接消費と直面しているそういう業者に対して、もっとしっかり支援をしないといけないと思うんです。物すごい被害が広がっているわけですね。
 私は、生産者とか流通業者に対する支援がこれで十分だなんて言っているわけじゃありません。それもさらに検討する必要があるかもしれませんが、もっと農水省は、消費者とか消費者に直接面している小売、焼き肉、そういうところに目を向けて、そこに支援の手を差し伸べないといけないということを痛感しておりますので、そこへの融資制度、もう詳しくはやりませんけれども。結局、農水省としては余りやっていないんですよ。中小企業庁のセーフティーネット保証、貸し付けを活用してやっているとか。ところが、中小企業には定義があって、大きいところは入ってきません。
 もっとそういう消費と直面しているような業者のところに対する融資制度というものを、これはBSE問題に端を発しているわけなんですから、現に損失をこうむっているわけですから。単に損失をこうむっているだけじゃなくて、焼き肉業者なんか大変なんですよ。焼き肉じゃ売れないから豚を入れる、鶏を入れる。いろいろな設備投資を変えなあかんわけで、また金がかかるんです。そういうところの金も出ないんですよ。
 小売業者、焼き肉業者に対する支援というものを、外食産業に対する支援というのをぜひやっていただきたいというふうにここで強く求めておきたいというふうに思います。
 それと、最後にもう一点、このBSE問題に関連して、雪印の問題ですね。これも本当にむちゃくちゃな話でして、総理。これは、今消費者の間では、食品表示なんというのは信用できない、そう言われていますよ。とんでもない話です、これは。今回の輸入牛肉を国産牛肉と偽ったこの件だけかなと思ったら、まだそうじゃなかったんですね。ほかにもいっぱい出てきたわけです。
 JAS法とか食品衛生法の罰則の強化も含めて、私は、法改正が必要なんじゃないのか、この食品表示に対する信頼回復のためにしっかり措置をとらないといけない、対策をとらないといけないというふうに思っておりますけれども、総理、いかがでしょう。
武部国務大臣 委員御指摘のことは全く同感でありますし、私どもも大変心を痛めているところでございます。
 消費者の安心と信頼の回復に向けまして、JAS法に基づく食品の表示制度の見直し、制度の改善、強化を急ぐべく、二月八日に、私が総括本部長で野間副大臣を本部長にいたしまして、対策本部を設置いたしました。監視体制の強化や表示事項の見直しを検討するなど、表示制度の改善、強化という問題に真剣に取り組んでまいりまして、今法規制のお話もございましたが、御発言の趣旨を踏まえて、省を挙げて取り組んでまいりたいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。
津島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。北側一雄君。
北側委員 午前中に引き続きまして、質問させていただきます。
 総理、この絵本をちょっとごらんになっていただきたいんです。閣僚の皆様には同じものを。
 これは「地雷ではなく花をください」という絵本なんですが、難民を助ける会というNPOの方々が、こういう絵本を自力で出版しまして、その売り上げを全額地雷除去支援、これまではカンボジアが中心でございましたが、地雷除去支援費や義足の製造など、被害者支援事業に充てていらっしゃるんですね。本当にとうとい努力を粘り強く、地道に継続してなされていらっしゃっております。この本自体も、ここの帯に書いていますとおり、全国の学校図書館の選定図書になっているんですけれども、これは一冊千五百円なんですね。この売り上げで十平米分の敷地の地雷除去費が捻出できるということだそうでございます。
 アフガン支援の問題でございますけれども、やはりNPO、NGOに対する支援というのが非常に大事であるというふうに私は思いますし、また、日本の支援として、この対人地雷除去技術、日本のロボットというのは世界一でございます。これはもちろん地雷除去だけじゃございませんけれども、福祉の問題、また災害救助等々、このロボット技術というのは世界一でございまして、このロボット技術を、対人地雷除去技術の支援をぜひすべきだというふうに思っております。
 産官学の拠点を設けるなど研究体制の確立にぜひ努めていただきたいと思いますし、外務大臣いらっしゃいますか、外務大臣、これは昨年五億円の予算がついているんですけれども、この五億円、全然使われていないんですよ。ぜひ一度調べていただきたいんですけれども、研究支援無償資金が五億円、全く使われておりません。等々、しっかりこの対人地雷の除去技術研究への支援をしていただきたいというふうに思っております。
 そこで総理、この対人地雷についても国際的な枠組みがありまして、対人地雷禁止条約というのがあるんですね。これはもちろん我が国は批准をしているわけでございますが、アメリカが批准をしておりません。まだこの枠組みに入っておらないんですね。地雷の処理支援だけではなくて、地雷をつくらせない、他国への輸出をさせない、そういう枠組みづくりがやはりこれから非常に大事だというふうに私は思います。
 もう一つ、地球温暖化防止に向けての京都議定書の問題でございますが、今国会で我が国はぜひ批准をしなければならないというふうに思っておるんですけれども、こちらの方も、この国際的な枠組みにアメリカは参加のめどは依然として全然立っておらないという状況でございます。
 こうした状況が続きますと、地球温暖化を食いとめることも非常に難しくなってくるわけでございまして、私は、ブッシュ大統領も来日をされるわけでございますので、この京都議定書の国際的な枠組みに参加をしていくということ、もう一つは、対人地雷禁止条約の加盟国にぜひアメリカが参加をすべきと、ここをぜひ総理の口からブッシュ大統領に強く要請をしていただきたいというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 地雷にしても温暖化防止京都議定書の問題につきましても、米国も中国もなかなか一緒にやっていこうという状況にはないことは承知しておりますが、折に触れ、この問題について建設的な協力を呼びかけていきたいと思っております。
北側委員 ぜひ、このたび来日されるブッシュ大統領にもその旨お伝え願いたいというふうに御要請をさせていただきたいと思います。
 そこで、雇用の問題に入らせていただきたいと思いますが、先般発表されました昨年の十二月の雇用失業情勢でございますけれども、失業率が五・六%、四カ月連続で過去最悪を更新しております。失業者三百三十七万人、リストラ、倒産等による非自発的な離職者が百二十五万人、もう極めて厳しい雇用情勢でございます。
 さらに、この十二月の雇用失業情勢をよく見てみますと、最近の景気情勢を反映しまして、雇用情勢の先行指標でございます新規求人数が減少を続けております。特に、これまでこういう失業者の方々の受け皿になっていましたサービス業、もちろん今でもサービス業が大きな受け皿なんですけれども、十二月の新規求人数が、これは前年同月比でございますが、マイナス五・八%、三十一カ月ぶりのマイナスになりました。これまで雇用の受け皿となってきたサービス業の雇用吸収力にやや陰りが見え始めている。今後の雇用失業情勢についても、こうした先行指標から考えますと、まだまだ厳しい状況が続くというふうに言わざるを得ないと思います。
 坂口大臣、雇用情勢の現状と今後の見通しについて、どのような認識を持っていらっしゃるのか、御答弁をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 今御指摘いただきましたように、十二月の完全失業率は五・六%、そして有効求人倍率は〇・五一倍となりまして、非常に厳しい状況にあるというふうに認識をいたしております。
 とりわけ、その数字もさることながら、その中身でありますが、今御指摘になりましたように、新規求人が減少している、五カ月連続して減少をしているということもございます。今お話しになりましたように、唯一昨年に比べまして増加を続けてまいりましたサービス業におきましても、昨年同月に比較をいたしましてマイナスに転じたということがございますし、それから、非自発的失業者がここ五カ月連続で増加をしている。あるいは雇用者数が四カ月連続で減少をしている。
 こうした中身を見ますと、かなり厳しい状況が続いているということがわかるわけでございまして、これから先の経済動向を思いますと、この非常に厳しい状況はいましばらく続く可能性がある、そういう認識をいたしております。
 そして、これに対する対応をどうしていくかといったことをこれからひとつ積極的にやっていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
北側委員 総理、今のこの雇用情勢は本当に深刻でございまして、これはもう厚生労働省一省で何とかなるというふうな状況ではなくなってきている。本当に政府を挙げて、これまでも政府を挙げて取り組んでいただいているわけでございますが、本当に政府を挙げて取り組むべき最優先の課題だ。私、先ほども、デフレ対策とこの雇用対策が非常に大事だというふうに思っておりまして、政府を挙げてこの雇用対策にやはりしっかりと、去年の九月に総合雇用対策をつくりましたが、この雇用対策に全力を挙げていくという決意を、総理の御答弁をいただきたいというふうに思います。
小泉内閣総理大臣 構造改革を進めていく上で、デフレ阻止の対策と雇用対策、これはぜひとも必要な対策でありまして、これをあわせて進めることによってもろもろの構造改革が実施できるというふうに考えておりまして、政府全体でこの問題に取り組んでおります。
北側委員 そこで、厚生労働大臣にもう一問質問したいんですが、今、ワークシェアリングの問題が大きな話題になってきております。
 景気の悪化が進む中で、企業において、これ以上失業者を出さないために、いわゆる緊急避難・雇用維持型のワークシェアリングの導入の動きが出ております。労働時間の短縮によって賃金の削減をする、そして企業全体としての雇用を維持しようとする。先般も、三洋電機の、四月一日から基本給最大二〇%削減のワークシェアリング導入で労使が大筋合意したという報道もなされておりました。
 時短と賃金カットによるワークシェアリングの導入というこうした動きについて、厚生労働大臣はどう認識し、私はこうした動きに対して政府としてしっかり支援をしていくべきだというふうに考えておりますが、大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 昨年、総理からも、ワークシェアリング、ひとつ早く考え方をまとめてほしいというお話をいただきました。政労使三者の間の会談を今ずっと続けているところでございまして、まあ三月上旬にはというふうに思っておりましたが、今までいろいろのことを検討していただいておりますが、ちょっと上旬は難しいので三月中にはということでございますけれども、三月中には三者の意見をまとめまして、そしてこのいわゆる緊急避難型のところは即刻実施できるようにしたい。それから、中長期的な立場での展望のことにつきましてはさらに引き続いてお話し合いをいただくということにしたいというふうに思っております。
 この緊急避難的なものだけは早々におまとめを願いたいというふうに今申し上げているところでございまして、三月中にはそうしたものがまとまりますので、それを中心にして、政府として何をなすべきか、あるいは経営者として何をなすべきか、あるいは労働者の側でどういう御負担をいただくかといったことを、一つのモデルみたいなものをつくって、そして、それぞれの立場があるというふうに思いますが、御検討いただきたいと思っているところでございます。
北側委員 アメリカのシリコンバレーでこの緊急避難型のワークシェアリングが導入されておるのですね。アメリカといえば、レイオフや解雇が自由ですから、むしろ首切りをするんじゃないのかというふうに思うんですが、そうじゃなくて、シリコンバレーではこの緊急避難型のワークシェアリングを導入しているんです。なぜそうしたかというと、首を切ってしまうと技術、技能の空洞化につながるというふうに考えて、賃金カットしてでも雇用を維持しよう、した方がいいという判断をシリコンバレーではしておるというふうに私は聞いております。
 ぜひ政府としての支援策について積極的に検討をお願いしたいと思いますし、それから、今坂口大臣の方からお話ございました、もう一つのワークシェアリング、それは、むしろ多様な就業形態を確保していくためにワークシェアリングをしていこう、ライフサイクルに応じたさまざまな雇用形態、就業形態を広げていこうと。これはもっと大きな問題だと思うんですが、これは中長期的な問題としてとらえていただきたいんですけれども、ただ、パート労働の方々のふえ方というのは、すごいふえ方です。
 これはその表なんですけれども、短時間雇用者の数の推移でございますが、年々年々ふえまして、平成十三年は女性の方の四割近くがパート労働、短時間労働です。全雇用者のうちの二二・九%がパート労働です。やはりこれからはこのパート労働のあり方について、ワークシェアリングの検討の中で、例えば、短時間の正社員制度の問題だとか、それからフルタイムからパートタイムへの相互転換制度だとか、そういうこともぜひ今後検討していただきたいと思うわけでございます。
 そこで、もう一つ、ちょっと深刻なといいますか大事な問題について大臣にお聞きしたいんですけれども、若年者の雇用の問題です。二十四歳までの失業率が八・一%、非常に高いわけですね。なおかつ、今春の高校新卒者の就職内定率は六七・八%で、過去最悪でございます、これは十二月現在でございますけれども。極めて厳しい雇用情勢。
 もっと言いますと、より深刻なことは、総理、ここをちょっと聞いていただきたいんですけれども、幸いに就職が決まった新規学卒就職者でも、中学卒の方ですと七割、高校卒の方ですと五割、大学卒の方ですと三割の子が三年以内に離職するというんです。これは、私もこの間初めて聞いたんです、七五三現象と言うらしいんですけれども。
 また、いわゆるフリーターと言われている不安定就労若年者、これが今約二百万人いると言われています。この二百万人のうちに、一日契約社員、オンコールワーカーと言いまして、登録しておいて、電話一本で、ある日はどこどこへ、ある日は違うところへという、全然継続した雇用の場所ではなくて、その都度その都度呼び出されて、オンコールワーカーというような日雇いフリーターの数が、この二百万人のうち十六万人ぐらいいると言われております。こうした子たちの多くは、仕事を通じて技能とか能力とかを身につけられないまま失業状態や低賃金職がずっと続いておる、そういう状態です。
 私は、こういう若年者の方々の雇用の実情というのは本当に大変な問題で、単にその子たちにとっての人生の大きな問題であるのはもちろんなんですけれども、私、将来の社会とか国家ということを考えても大変大きな問題だというふうに思わざるを得ません。
 この若年者の雇用をめぐる実情の認識というものを、私は政府を挙げて一遍きちんとしてもらいたいんです。その雇用対策についてどのように考えていくのか。これも、もう厚生労働省だけではなくて、文科省はもちろんです、経産省も。これは政府を挙げて、若年者の方々の雇用の実態、そしてこれからあるべき雇用対策、それをどう実行していくのか、これをぜひ取りまとめ、対応をぜひしていただきたい。これまでももちろん文科と厚生労働の間でやられていると思いますけれども、この問題も本当に知れば知るほど深刻な問題でございまして、政府を挙げて取り組んでいただきたいと思っておるところでございます。
 厚生労働大臣、また総理から答弁をいただきまして、終わりたいと思います。
坂口国務大臣 確かに若年者の問題、大きな問題でございますし、私たちも、今真剣に取り組み、そして経済産業省あるいはまた文部科学省とも連携を密にいたしまして、この問題、やっているところでございます。
 いずれにいたしましても、一遍お勤めになっても、先ほどのお話のようにすぐやめてしまう方もあるわけです。これらは、若い人の問題であると同時に、それから雇う側の企業のあり方の問題も影響している。今までのような、同族会社的なことであって落胆をしたとか、いろいろなことがやめる方にもありますので、そうしたこともあわせて、今全体でこの問題の解決をしなければならないというので取り組んでいるところでございます。
小泉内閣総理大臣 終身雇用制度というものも既に崩れている一つのあらわれだと思いますが、この問題については、それぞれの企業の分野にいろいろ出ております。これは役所においても一流大企業においても、今までは考えられないような、多くの応募者になってやっと入れた、普通だったらば、当然、この会社に一生骨を埋めていってくれるんだなと思っていた人でさえも、一、二年たつとさっとやめていくというのを聞いております。あらゆる職種に、あらゆる年齢階層にこういう面が今進んでいるんだと思います。
 こういう面におきましても、いろいろ社会情勢の変化をにらみながら、どういう調査が必要か、きめ細かな調査と同時に実態把握に努めまして、少しでも就職の機会を多くできるような対策をとっていかなきゃならないと思っております。
北側委員 以上でございます。ありがとうございました。
津島委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。
 次に、西川太一郎君。
西川(太)委員 保守党の西川でございます。
 小泉総理も、また、多くの国会議員の皆さんもそうであろうと存じますが、私も直接有権者の皆様のお声を聞く機会が非常に多いわけであります。私ごとで恐縮でありますが、昭和五十二年に東京都議会議員に当選して以来、今日で二十五年目になるわけでありますが、その間、二万回に近いミニ集会を毎日のように開いておりまして、いろいろな御意見を承っております。きょうは、その中で、実は、最近、中小企業の金融問題について大変厳しい御意見があります。
 小泉内閣は中小企業をいじめるのかというようなことをおっしゃる方々もおいでになりますが、私は、そうじゃない、小泉総理が掲げておられる改革を実行すれば、必ず日本のよみがえり、経済得意わざの復活があり得る、こういうふうに私も信じて、そのことを一生懸命説いているわけであります。
 そこで、総理も十分御案内のとおりでありますが、帝国データバンクの調査によりますと、二〇〇一年の倒産件数は一万九千四百四十一件と、五年前に比べて、何と三四%も増加をしております。
 中小企業の倒産の場合には、最大の問題は、いわゆる融資の保証について、本人はもとよりでありますが、親兄弟や妻子、こういう方々まで連帯保証している、こういうケースがほとんどでありまして、万に一つの場合にはいろいろ大変なことになる。悲劇的な結果、自殺というようなことも、決してすべてがその原因ではないと思いますが、交通事故の倍もある、三万人もの自殺事件がある。
 こういうことを考えますと、私は、まずこの中小企業金融ということをしっかりとやっていく必要がある、このことはもう総理も十分御承知だというふうに思います。
 私、かつて、元総理の橋本龍太郎先生が通産大臣のころに商工委員会でお尋ねをしたことがあるんですが、暇地獄という言葉を御存じですか、暇地獄。それは、当時、アエラという朝日新聞社が発行しておりました週刊誌に出ていた言葉であります。東京の京浜工業地帯で、腕っこきの職人の皆さん、町工場のおやじさんたちが、仕事さえあればおれたちは金なんか借りなくたってちゃんとやれるんだ、借りた金は返さなきゃならないじゃないか、仕事がないんだよな、これはもう暇で暇で地獄の苦しみだ、こういうことからきた言葉だそうであります。それが、失われた十年のちょうど初めのころのことであります。
 今日、この現象はいささかも残念ながら変わっていない。そういう中で、とりあえず企業生命をつなぐ意味でも中小企業の金融というものをきちっとやっていかなきゃならない、こういうわけでありますが、こういった実態につきましてまず総理にお話を伺いたい、こう思うわけでありますが、総理から金融監督庁長官に御指名がありました。
 そこで、私は、総理に伺いたかったのでありますが、監督庁長官が先にお答えいただくならば、もう少し追加をいたします。
 金融担当大臣に伺いますが、実は、今町の中で起こっている声は、例のマニュアルの問題。
 あのマニュアルには、小規模零細企業、例えば中小企業基本法の八条に規定されているように、税制においても金融面でも助けなきゃいけない、特別な配慮を払わなきゃいけない。そうすると、マニュアルには、そうした範疇の企業はたとえ赤字であってもお金を貸していい、こういうことになっているはずなんですね。
 ところが、実態は貸しはがしに遭っているのですよ。べた貸しという言葉は大臣も御存じだと思いますけれども、元金はじいさんの代から借りているなんというのはうんとあるんですよ。しかし、ちゃんと金利を払っている。しかし、それも監督庁の検査官が乗り込んで、これは要管理先ですよ、うんと言うまで検査をやめないのだそうですよ。これが実態なんです。
 つまり、マニュアルにはちゃんと貸してもいいと書いてあるのに、検査官が、昔は都道府県がやっていたのだけれども、このごろ監督庁がやって、五百人もの人が大きなものをやっているから、ある意味では目が肥えているんでしょう、全然認めてくれない。定量的なことばかり、これは赤字だとか決算がどうだとか、そういうことばかり言って、やる気がある、まじめなんだ、おじいさんの代にはこうだった、今の若社長もとてもよく勉強していてうちとしては育ててあげたいんだと地元の金融機関が一生懸命言ったって、だめだと言うのですよ。マニュアルどおりやれば貸せるのにやらない。これは、役人が政治家の言うことを聞かないいい例じゃないですか。
 大臣、監督しているのだから、そういうことはきちっとやらせるべきだと思いますが、いかがですか。
柳澤国務大臣 今、西川委員の方から、ちょっと名前の方をまず訂正させていただきますが、今、金融監督庁改め金融庁でございますので、それも国民の皆さんにも少しでも知っていただきたいという意味で、まず申し上げておきます。
 この金融庁から、検査局というのがあって検査官が派遣される、あるいは財務局から検査官が派遣されるということがあるわけですけれども、この検査官が準拠している基準というのは、検査マニュアルと今先生御指摘の文書、書類でございます。
 そこに一体どういうことが書いてあるかというのは、先生もう御指摘になられたことですけれども、まず、マニュアルの中にこれでもか、これでもかというように、今ちょっとこれをお見せいたしますと、線が引いてあるところ、全部中小企業への配慮の文言なんですね。一カ所だけじゃなくて総括的にも書いてある、それからそれぞれのところにも書いてある。念には念を入れて書いてございます。
 その趣旨とするところは、「マニュアルの適用にあたっては、金融機関の規模や特性を十分踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮」しなさい、こう書いてある。あるいは、債務者区分の検証において、「特に中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、」こういうようなことを書いてあるわけですね。
 そこで、私もこの点は本当に徹底しなきゃいけないということで、私、検査局長に言い、それからまた検査局の研修会ではこういうことを徹底するように言っております。したがって、これに反するようなことをやれば、これは検査マニュアル違反なんですね。そういうことであってはならないというふうに我々は考えて事務を運営しているということでございます。
西川(太)委員 心強い応援団が、自由民主党の皆さん初め、ここにいる全部、与野党超えて、大臣、実態は違うということを選挙区で我々は強く言われているんですよ。実態は違うんですよ、これは。だから、大臣にぜひ私はそこのところを厳しくやっていただきたい、こういうふうにお尋ねしているのです。
 例えば、私のところに相談に来る方の中でこういう方がいましたよ。三百万を地域の金融機関から借りることになった、そうしたら百五十万を定期預金に積めと言われた、何だと言ったら、貸倒引当金だと言われた。これは本当の話なんですよ。こういう実態を、大臣、御存じですか。
 だから、マニュアルにはそういうふうに書いてあることを、私も質問に先んじてマニュアルは十分読みました。しかし、実態としてそのように検査官がやっていないのですよ。そして、検査官は、その金融機関の人に、それが要管理先であるということをその人が承知するまで、毎日、毎日、毎日、毎日検査を続けて、嫌になるほど。これじゃ拷問じゃないですか。そういう実態がある。
 私は与党ですよ。私は、野党みたいに勘違いされると困るけれども、与党だ。与党でも、これは私はやはりしっかりやっていただかなければ困ると思うのですよ。もう一度、ぜひお願いします。
柳澤国務大臣 同じく検査マニュアルのところにどうあるかというと、「金融検査マニュアルを理由に、健全な事業を営む融資先に対する資金供給の拒否や資金回収を行うなどの不適切な取扱い」を行っていないかということをチェックしろと書いてあるのです。そういうふうに、この検査マニュアルを理由にして、いろいろな中小企業者に対して検査マニュアルに反するようなことをしていないかをチェックしろ、こういうことも書いてあるのです。
 ですから、そういうことで、我々としては、この検査マニュアルを作成するときにも、実は、パブリックコメントといって、皆さん、御意見があったら言ってくださいということの中で、随分この中小企業の条項というものは入ったといういきさつもあるわけですけれども、それをきちっと遂行してもらわなきゃいけないというのが私の立場だし、また、この検査の事務に携わっている幹部職員は、そのところを十分承知してやっているわけでございます。
 ですから、御指摘のことでただ一つだけ申しますと、こういうことなんです。
 昔の金融機関は、ついこの前も、私、ある銀行の方とも話をしたのですけれども、金融機関の方と話したのですが、金融機関ができるだけリスクをとらないように考えた。だから、担保が欲しい、それから保証が欲しい。これは全部リスクをできるだけ少なくしようということです。リスクをとろうという金融はどうなるかというと、その信用リスク部分だけは金利については少し勘案してもらわなきゃならない。これはどちらかなんですね。保証をとるか、あるいは少し金利を配慮してもらうか、こういうことです。
西川(太)委員 今の大臣の御答弁は、私、重々承知の上でお尋ねしているのです。
 例えば、国債買うのはノーリスクだから、全然自己資本比率に関係ないからいいわけですよ。それから、住宅ローンみたいに担保をしっかりとっているものは五〇パーでいいわけですよ。しかし、本来の地域金融の担い手である金融機関が、さっき申しました定量的な判断で縛られちゃっている。定性的な、もっとやる気のある中小企業を育てようという融資をやるときには一〇〇%リスクを負わなきゃいけないから、できないんですよ。
 だから、私は、そこのところで二つ提案があります。
 一つは、大臣、ぜひテレビの前で、みんなが安心するように、マニュアルどおり検査官にやらせるとおっしゃってください。これが一つ。
 もう一つは、研究して、いわゆる五段階、六段階の分類じゃなくて、もうちょっと小口の融資を優先できるようないろいろな、要するに分類をもう少し大ざっぱにできるとか、何か工夫があるはずなんですね。少なくとも、最初の、マニュアルどおりきちっとやるということをちょっと御答弁いただきたいと思います。
柳澤国務大臣 私、今マニュアルをここで朗読させていただきました。そういうことで、国民の皆さんも、ああ、マニュアルというのはああいうふうになっているのかということがおわかりいただいたと思います。
 もちろん、我々はマニュアルどおり検査も実行させていただくということをはっきり申し上げます。
西川(太)委員 中小企業に冷たい小泉内閣でないということを、やはり小泉内閣の閣僚として柳澤大臣はぜひ実行してほしい。
 小泉総理、いかがでございましょうか。今大臣から伺ったのでありますから、これで十分といえばそういうことでありますが、しかし、国民に向かって総理からも、中小企業には決して冷たいんじゃないというメッセージを、ぜひ答弁の形でお願いしたい。
小泉内閣総理大臣 中小企業支援に積極的に取り組んでいるところでありますし、前から言われていることであります、金融機関は晴れのときに傘を貸して雨のときに傘をとっちゃう、そういう批判も金融機関は謙虚に受けとめなきゃならないと思います。
 今、柳澤大臣が言われたように、検査の基準、マニュアル、これを悪用しないように、さらに周知徹底をしたいと思います。
西川(太)委員 ありがとうございました。ぜひそうしていただきたいというふうに思います。
 平沼大臣に伺います。
 さっき申しましたとおり、暇地獄を解消しなきゃいけない。それには新規産業をどんどん起こしていかなきゃいけない。私はやはり、三年以内に大学発一千社、そして開業と廃業を逆転させるという平沼プラン、これをぜひ実施していただきたい。
 私は、ドーハでWTOのために大臣が本当に努力をされて中国や台湾がこれに加盟ができるようになった、平沼さんのお力はすばらしかった、もっともっと高く評価されてしかるべきだ、こう思っているわけでありますが、中国の話をあえてするのは、いわゆる産業の空洞化、またはセーフガード、いろいろな意味でこれから日本の中小企業に直接間接、影響を与える大きな問題であります。
 しかし、的をベンチャーに絞って、私はこの間、十二月にアメリカのペンシルバニアに行ってまいりました。そして見てまいりましたけれども、感じたことは三つあります。
 一つは、リスクマネーを州レベルで非常にしっかり出しているということ。それから、連邦が力を入れて、あちらにもこちらにも、いわゆる創業のための精神的なバックアップも含め、やる気のある経営者をどんどん育てている。そして三つ目は、これはちょっと深刻なんですが、日本の大企業が、マサチューセッツ工科大学のようなところに多大の援助をして、そして向こうの研究成果を年に一つぐらいもらって、それをビジネスに変えているような実態があります。これは文部科学省にも関係あることでありますが、日本の大学の研究レベル、こういうものをもっと上げていくという施策が必要なんじゃないかと思います。
 総合的にお尋ねをするんですが、ベンチャーをしっかり育てるためのシステムを大臣はどのようにおやりになるか、改めてお答えをいただきたいと思います。
平沼国務大臣 非常に重要な御指摘だと思います。
 日本の場合には、アメリカに比べまして、ベンチャーキャピタルというのが二十分の一というような大変低調になっております。ですから、経済規模がアメリカの半分としましたら、少なくともアメリカの二分の一ぐらいなければならないわけであります。
 したがいまして、新規産業を育てていくということは非常に雇用の面から考えても重要なことでございまして、私どもは、既にエンゼル税制等をやりまして、その辺にインセンティブを与えることをしておりますけれども、御指摘のように、やはり大学発のそういうベンチャーが育つ、そのためには産学官の協力体制を構築しなきゃいかぬ、こういう形でTLOを含めてやらせていただいているところであります。また、新規産業創出のために、両院の御同意を得まして、新しい法律で、新しい企業が立ち上がるためのそういう法律も通させていただきましたので、そういうことを軸にこれからベンチャーを育てていく、そのことに全力を尽くしてやってまいりたい、こう思っております。
西川(太)委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。総理も、ぜひこのことをバックアップしていただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思います。
 最後に、景気対策の一環として、総理の本会議での御所信を踏まえて、観光の振興についてお尋ねをして、質問を終わりたいと存じます。
 我が国の観光というのは大変盛んなように見えるんですけれども、実は何と、我が国から海外に行く人は非常に多いんでありますけれども、海外から日本に来る人は世界の中で三十六位なんですね。調べてみました。非常に低いんです。アジアでも八位なんです。だから、極めて我が国への海外からの旅行者数というのは低水準なんです。例えば、一九九八年には四百七十六万人しか来ていないです。こういうようなことは、これは平和のパスポートという言葉もありますけれども、お互いに交流をするということは、軍事費をある意味では削減しても観光を盛んにするということは、その波及効果が雇用においても非常に大きいんですね、国内。
 そのためには、実は日本の高コスト体質も改善しなきゃいけなかったり、いろいろするんでありますけれども、それは扇大臣の方も一生懸命やっていただいているわけでありますが、どうぞひとつ総理、観光立国という観点からこのことを一生懸命やる。ワールドカップもあることでございますし、ぜひこのことを小泉内閣の方針としてやっていただきたいというふうに思います。
扇国務大臣 今、西川先生が御指摘になりましたように、残念ながら、海外へ行く人たちは千七百八十二万人、おっしゃるとおり世界の十位でございます。そして、入ってくる外国人は四百七十六万人、世界で三十六位というのはおっしゃるとおりでございます。もう一つ、かてて加えて、日本人が海外へ行って使うお金、これは世界の三位でございます。外国人が日本へ来て使うお金は世界の中で二十四位と、本当に残念な結果でございますけれども、御指摘になりましたように、本年はワールドカップサッカーが日本で韓国と共催で行われます。そういう意味で、観光立国として日本をPRするには二度とないチャンスである。
 そういう意味で、私どもも、ワールドカップの羽田のチャーター便、深夜、今四便を七十便、そして昼間も十便チャーター便を受け入れて、多くの皆さん方にも日本を知っていただきたい。ワールドカップだけではなくて、それに付随して日本じゅうを旅行していただくメニューをたくさん御用意して、ウエルカムで頑張っていきたいと思っています。
西川(太)委員 よろしくお願いします。
津島委員長 この際、小池百合子君から関連質疑の申し出があります。西川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小池百合子君。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。
 私は、広い意味での安全保障、国の安全保障についてまずお伺いをしていきたいと思っておりますけれども、手短にお答えをお願い申し上げます。
 まず、不審船の問題でございますけれども、この引き揚げ、これについては、これまで何度かお答えの中で、気象条件等が整えばというような、そういうニュアンスであったかと思っております。とともに、外交努力も必要かと思いますけれども、そういったことが整えば政治的な意思としてこれを引き揚げるということ、この意思をお持ちなのかどうか、確認をさせていただきます。総理、お願いします。
川口国務大臣 不審船の引き揚げについてのお尋ねでございますけれども、今回の事件につきましては、関係の当局においてただいま鋭意捜査を進めておりまして、引き続き、事実関係の解明につきまして全力を尽くしていくものと承知をいたしております。
 これまで、船体の引き揚げ、潜水調査を行っていませんが、この季節における現地海域の気象条件のもとでは困難なためであるというふうに聞いております。現場は、我が国が事実上中国の排他的経済水域として扱っている海域でございますことから、中国とも調整を図りつつ適切に対処をしてまいりたいと存じます。
小池委員 答えが非常にまどろっこしいといいましょうか、ですから、気象条件と外交条件が整えば政治的意思として引き揚げる、その意思がおありなんですねということをお伺いしたので、その点だけお答えください。
川口国務大臣 現在、鋭意捜査をしているところでございます。引き続き、関係当局において事実関係の解明に全力を尽くしていただけるものと考えております。
小池委員 今のは本当に、政治的な意思があるのかどうかを伺っているわけでございまして、事実解明であるならば、引き揚げるのが一番早いのではないかというふうに思うわけでございます。ここは、気象条件、そしてまた私ども、先ごろ訪中団ということで北京にも行っております。そういったことを踏まえて質問をしているわけでございますので、私は、ここは我が国の安全保障の観点から、引き揚げることを断固としてすべしということをまず申し上げておきたいと思っております。
 もう一点でございますけれども、これはせんだって朝鮮総連の方にも初めて捜査が入った問題でございますけれども、いわゆる朝銀の問題でございます。
 これは、金融面でいうならば、これからの流れというのは十分考えられる法律的な措置ではございますけれども、英語でよく、ポリティカリーコレクトという言葉がございまして、政治的にそれが正しいのか否かというのは、ここはまた政治の意思の判断にかかわってくるというふうに思うわけではございますけれども、今申し上げた点について総理はどのようにお考えになるのか、まず、総理の見解を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日本にある金融機関としては、日本の法令に従う、そういう状況のもとに、柳澤担当大臣が今その状況をよく調べておられると思います。
小池委員 いえ、ですからそれは、今の私の質問の中に含まれていたことをもう一度おっしゃっただけでございまして、それが政治的に正しいのかどうかということはすごく総合的な判断が必要になってくるわけでございまして、そのことの是非を今総理にお伺いをしたわけでございますので、もう一度お答えを願います。
小泉内閣総理大臣 そのとおりだと考えております。法令を考え、政治的情勢を考え、政治的にいかなる判断が適切かということで対処したいと思います。
小池委員 しかし、今のお答えもそうでございますけれども、金融的、法律的、その是非、そして政治的な判断、これは私は、同じ場合もありますし、また、違う答えが出てくるときもあろうかと思います。
 特に、この問題につきましては、他の日本の邦銀、金融機関とは異なる点がございまして、架空口座、借名口座がおびただしく存在するわけでございます。そしてまた、そこのところを使って、それが融資に使われている、それもとんでもない融資に使われている、融資かどうかもわからないというようなことで、まさに今それを解明していただいているとは思うわけでございますけれども。
 さて、三月三十一日のペイオフ期限までに調査し尽くせるものではないのではないかというふうにも思いますし、また、破綻の朝銀の処理のために、公的資金による資金援助を架空口座にまですべきかどうかということでございます。これはまた別物として扱うという必要があるのではないかと私は考えますが、金融担当大臣、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 朝銀といえども、先ほど来も小池委員が御指摘のとおり、我が国法に基づいて設立され、また、預金保険の特例措置についても当然、これは法のもとの平等ということで、その特例措置を受ける立場にある、これはもう明々白々のことでございます。そのことを行うためには、その前提として、私どもが派遣している金融整理管財人が諸般のことを調べなくちゃならないということです。
 今、三月三十一日までに、こうおっしゃいましたけれども、三月三十一日までに行う必要があるのは資金援助の申し出のところまででございまして、実際に資金援助が行われるのは、譲渡先が決まって譲渡が行われるというところでございますので、これは必ずしも三月三十一日というわけではない。そういう期間内に、できるだけ仮名、借名についてはその関係を明らかにすべく、金融整理管財人は最大限の努力を払っていく、こういうことです。
 最後は、ではどうするんだということでございますけれども、これについては、とにかくぎりぎりまで調べた結果を考えて、またいろいろ、我々としてもその事実に基づいて、諸般のことを考えなければならないかもしれないし、通常どおりいくかもしれない。それはぎりぎりの、事実が明らかになった段階で考えざるを得ない、このように考えています。
小池委員 この問題は、金融の一方で安全保障にもかかわるという認識で私はずっと御質問をさせていただいているわけでございます。ですから、ポリティカリーコレクト、本当に総合的に、政治的に正しいこと、そしてまた国民の納得がいく、これは必ず必要なことである。ですから、そこのアカウンタビリティーも必要になってくる。また、実際に日本で生活されておられる方は、狂牛病のあおりなども受けて大変お困りであることも事実でございます。よって、この問題は、三月三十一日という期限つきではございますけれども、しかし、うやむやな中で公的資金の援助をすることは私は決して国民全体の理解を得るものとは思っておりませんので、まさにポリティカリーコレクトな判断をしていただくように強く要請をしておきたいと思っております。
 それから次に、これも今の三月三十一日、ペイオフの話に絡んでくるのでございますけれども、ペイオフが実施をされる、そして金融機関が破綻をする場合、一千万円までは保護されるということでございます。企業の預金の場合は、それは一種、その預けていた金融機関が破綻いたしました場合には、いわゆる貸し倒れということで税的な措置も後でとることはできるんでございますけれども、個人の場合は、まさに一千万円までは保護されますけれども、そのほかの部分ということになりますと、これは例えば泥棒に盗まれちゃったというのは、後で所得税からの控除という形がありますね。例えば、ペイオフが急に始まる、日本の歴史にとっては、個人の金融感覚、意識からすれば本当に初めてなことでございますので、しばらくの間ある種、法人に対しての措置のようなものを設けるべきではないかというふうに思いますが、これは税制のことになろうかと思いますので、塩川財務大臣、よろしいですか、今のことを聞いて。お願いいたします。
柳澤国務大臣 恐縮です。時間もよくわかっていますので手際よく申しますが、一千万円まで保護されるというと、一千万円以上は全部だめみたいな印象を国民の皆様はお持ちだと思うんですが、そういうことではありません。一千万円を上回った部分については、金融機関の支払いの能力に応じて負担をするかどうかという問題が決まるということですし、また、普通預金なぞは、来年四月一日以降も一年間の間は何も、全額保護の規定が働きますので、その点もちょっと申し添えさせていただきます。
 多分、今の御質問に答えるとしたら、後から塩川大臣が訂正されて結構なんですが、雑損控除の対象になって、やはり同じく申告のときに雑損になるんじゃないか、このように考えています。
塩川国務大臣 今柳澤大臣が答えたとおりでございまして、個人の資産が消滅した場合、災害であるとかが生じた場合ございますが、これは雑損控除というのが認められております。社債のデフォルトなど資産が滅失したときのバランスを考慮して考えられておりますけれども、ペイオフの場合は、これは所得税法上、今の法条から読みますと配慮されることがないということになっておりまして、残念ながらそういう扱いになっております。
小池委員 今の考え方ではそうなんですけれども、ペイオフというのがまさに新しい金融の歴史のページを開くわけでございまして、その意味で、一定期間だけそういう形を認めてもいいのではないかということで私は提案をさせていただいているわけでございます。
 一方で、日本の金融の情勢は非常に厳しいということが世界の認識、共有した認識になっております、残念ながら。そしてまた、ニューヨークで開かれましたあのダボス会議でございますけれども、フレッド・バーグステインという有名なエコノミストがバンクホリデーのことをこれまでも再三訴えてきているというか、日本はそれぐらいまでいってしまうのではないか、そういう懸念も踏まえて発言をされているわけでございますけれども、このバーグステイン氏が指摘するところのバンクホリデーの導入ということについて、どういう御所見をお持ちなのか。柳澤大臣、よろしくお願いいたします。
柳澤国務大臣 大変著名なエコノミストの方についてこのように申し上げるのは恐縮なんですが、御発言は問題にも何もならないということでございます。
 つまり、要するに日本の金融についていろいろおっしゃる方というのは、基本的にマクロエコノミストとかそういうような方々なんです。その人たちがいろいろ言うことは、それはちっとも我々構いません。また私は、オープンでそういう人たちの意見にもできるだけ耳を傾けよう、こう考えていますけれども、我々がやっているのは、一つ一つの債権について、司法の場、法廷の場に出ていってもちゃんとその権利義務が主張されるというような極めてマイクロ、ミクロの世界の積み上げの問題でございます。こういう作業をマクロ分析の見地から一体どれだけ正当に評価できるのか。私は、随分マクロの人たちというのは度胸のある方々であるな、こういうように思っております。
小池委員 確かにバンクホリデーというのは大変な荒療治でございまして、戦後間もなくのころ、それを記憶しておられる方々にとっては悪夢ということになるのだと思います。
 ただ、私は、いろいろな意味で、危機管理という観点、システミックリスクをいかにして回避するかということでは、ありとあらゆることを考えて、そしてそれがうまくいかなかったときにはこれで、そしてそっちがうまくいかなければ別の案でということを二重三重に考えておく必要があるのではないですかということを申し上げたいわけでございまして、別にこのバーグステインさんにこういった点を指摘されるまでもなく、我が国がきちっとそれをやっているんだという、その信頼感が世界的に欠けているからこういう発言も出てくるんだと私は思っているんですね。
 ですから、こういった点、システミックリスクを回避するための方策ということをもっと明確にアピールして、クレディビリティーをもっと高めるということが今日本にとって最も重要な観点ではないかと考えているわけでございます。
 もう一つだけ、ちょっと時価会計のことで若干混乱があるのではないかと思いますが、せんだって経団連の会長が銀行時価会計の凍結の話を記者会見などでお出しになっておられるようでございます。これは非常に大きな話でございまして、また先送りかということでマーケットへの影響も出てしまうということで、金融庁とすればどうお考えになっているのか、お聞かせを願いたいと思います。
柳澤国務大臣 手短に話します。
 第一点ですけれども、バンクホリデー云々ということを考えるまでもなく、我が国金融システムについては、預保法上も御案内のように百二条に危機対応の諸規定がございます。もっと言いますと日本銀行法三十八条、これは何でも必要なことができるんです、金融秩序の維持のためには。このように、日本の危機対応のためのセーフティーネットについては、もうほぼどういう事態にも対処できるということがあって、したがって、日本発の金融恐慌なぞというようなものは絶対起こさないという体制ができていますよということは、重ね重ね申し上げているところです。
 それから時価会計の点ですけれども、私ども十三年度から既に実施に移しておりまして、大きな銀行については十三年九末から、中間決算からもうこれを適用しておるわけでございまして、この点を変更する意思はございません。
小池委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、昨年のテロ、そして現在の金融経済情勢を考えますと、この予算委員会というのは一つの分水嶺になるかもしれないな、そういう思いできょうは質問をさせていただきました。小泉総理におかれましては、これまでも何度も口にしておられますように、恐れず、ひるまず、改革の姿勢を貫いていただくということで、最後に支援のエールを送りまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
津島委員長 これにて西川君、小池君の質疑は終了いたしました。
 次に、岡田克也君。
岡田委員 民主党の岡田克也です。
 まず、問題になっておりますNGOの参加問題、参加不許可問題についてお聞きをしたいと思います。
 まず、NGOの参加不許可に関しまして、総理の答弁と局長の答弁の間に矛盾があるという指摘がこの委員会でもなされました。その後、理事会等で政府の見解も述べられたと伺っておりますけれども、本当に総理の答弁と外務省の局長の答弁に矛盾がないのかどうか、もう一度御答弁いただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 矛盾はありません。
岡田委員 どこに矛盾がないかと聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 矛盾がない、どこにないかと、質問してください。
岡田委員 理事会で政府の見解が示されました。その見解について国民の前できちんと説明をしろ、こう言っているわけです。
小泉内閣総理大臣 私は今までの答弁で矛盾ないと思っていますが、理事会で、外務省は外務省の判断として参加、不参加の決定をしたと。それで、政府見解で、私の答弁とどこが矛盾がありますか。
岡田委員 理事会で政府としての見解を安倍官房副長官が読み上げられましたね。そのことについて説明しろと言っているわけです。
 そうすると、あの安倍官房副長官の見解はでたらめだったということですか。
川口国務大臣 NGOの会議への参加の問題でございますけれども、官邸で改めて調査を行っていただきました。その結果が八日に発表されていますけれども、鈴木議員から大西さんの属するNGOの会議への参加を認めるべきではないという意見が出されたことはないということが確認をされております。
 先月の二十八日の政府見解でも表明をしておりますとおりに、アフガニスタン復興支援国際会議へのNGOの参加決定に当たりまして外務省が特定の議員の主張に従ったことはございませんで、これは田中前大臣も含めて関係者が一致していることでございますので、この点についての矛盾はないと私も考えます。
岡田委員 今外務大臣がお答えになりましたが、基本的に今のお答えは政府の統一のお答えだというふうに理解いたしますが、今のお答えの中で、そうすると、外務大臣は鈴木議員の関与について否定をしたということですか、前外務大臣。前外務大臣は、鈴木議員がこの問題で関与したということはないということを明言したということですか。
川口国務大臣 もう一度御説明をさせていただきたいと思いますけれども、アフガニスタンの復興支援国際会議にかかわるNGOをめぐる外務省の対応については、改めて官邸で調査をしていただきまして、八日にその結果が発表されております。この調査の結果にございますとおり、鈴木議員から個別のNGOの参加、不参加について意見が述べられたことはないということでございます。NGOの不参加は、外務省自身の判断として決定をいたしたものでございます。
 外務省の判断において参加、不参加の決定を行うに至った直接の要因は、一月十八日の朝日新聞の記事でございました。
 他方で、外務省がこの判断を行うに当たりまして、昨年来のODAによるNGOの支援を含めてNGOのあり方について与党で議論がなされる過程で、外務省に対してさまざまな意見表明がなされたことが脳裏にありまして、この過程で草の根無償の使い方に関して意見を表明された、自民党の経協特委員長でいらっしゃった鈴木議員のことを気にし過ぎて影響を受けたことは否定できないという報告を、私としても受けております。
 今回の経緯を見ますと、外務省として反省すべき点というのは大変に多いと思います。これらを含めまして、私は、外務省改革の中で取り組んでいきたいと考えております。
岡田委員 今の答弁は、外務大臣としての答弁であるとともに、政府全体の見解だと思うんですが、今のその答弁に対して、田中前外務大臣は了承しているんですか。
福田国務大臣 政府見解としてお出ししたものがございまして、この政府見解は、田中大臣も了承した上で出しておるわけでございます。
岡田委員 そうすると、田中前大臣はこの国会の場で鈴木議員の関与を何度か発言いたしましたが、それはうそだったということですか。
福田国務大臣 政府見解でもって述べているとおり、特定の議員の主張に従ったことはない、こういうことでありまして、本件に関して、これは一月二十四日、問題の起こった予算委員会において、田中外務大臣の答弁と外務省事務当局の答弁との間に相違がある、したがって、「政府としては、引き続き関係者の申述等を聴取し、事実関係の確認に努める。」こういうふうになったわけでございます。その後、申述書を提出したということでございます。
岡田委員 今の御説明ですと、田中大臣はこの国会で虚偽の答弁をした、こういうことになると思うんです。これはやはり国会で、出てきていただいて、その点についてきっちり国民の前で説明していただかなきゃいけない、そういうふうに思います。いかがでしょうか。
津島委員長 岡田委員に申し上げます。
 理事会で協議をいたしております。
岡田委員 明らかに、私が聞いている田中前大臣の考え方というのは、今おっしゃったことと違うわけですね。だから、田中前大臣も含めて今の答弁について了解をされたということであれば、本当にそうかどうかということをぜひ確認する必要があるというふうに思います。
 外務大臣にもう一つお聞きしたいと思いますが、いろいろ資料も出てきているわけですけれども、ピースウィンズ・ジャパンの大西代表あるいはピースウィンズ・ジャパンの職員と、そして鈴木議員との間のやりとり、政府の方から出ている調査結果は非常に客観的なものであります。しかし、ピースウィンズ・ジャパンの方からは全然違ったものが出てきております。
 例えば、十二月十四日ごろ、鈴木議員「挨拶にもこないでなんだ。」「またあいさつに来い。」十八日、「国民の税金を集めているのは、俺なんだ。」「この会議への政府からの支援は一切できんし、こんな行儀の悪いNGOへのこれからの支援も考え直さなきゃならんな。」「これからは逐一チェックさせてもらうからな。簡単には許しませんよ。」十二月二十日、「外務省は、NGOが勝手にやっているのを許しているのか。任せっきりなのはけしからん。また、与党が政府なのに、野党も同等に扱うのは許しがたい。」
 これは、野党と公明党の議員に対してもピースウィンズ・ジャパンがアフガンで案内をしているということに対する鈴木議員の反応であります。
 そして最後に、「もうこいつらへの援助はストップするからな。」
 こういう議事録がピースウィンズ側からは発表されておりますが、こういうやりとりは現実にあったんでしょうか。すべてのやりとりの中で、外務省の官僚は同席していますから。どうなんでしょうか。
川口国務大臣 今岡田委員がおっしゃった日付の中で、十二月十四日とおっしゃったのは恐らく十二月十三日の誤りではないかというふうに思いますけれども、私が承知をいたしておりますところでは、十二月の十三日、十二月の十八日に鈴木委員長を訪問を大西さんがなさっていらっしゃいます。そのほかにもう一日どこかにあったと思いますけれども。
 それで、そのときに鈴木委員長から厳しい調子で以下の指摘があったというふうに聞いております。
 外務省が自民党内の異論に配慮してNGO東京会議への支援を撤回したと報じた一部報道に関して、対外的にきちんと説明を行うべきである。NGOの支援も国民の税金であり、適正に使用すべきである。アフガニスタンでは、高橋前国連政務官のように国際的に高く評価されている外務省員が活躍をしており、NGOだけが活躍しているということではない等でございます。
 岡田委員がおっしゃったほかのところについては、ちょっと私は聞いておりませんので、確認をさせていただくことはできません。
岡田委員 私は、外務省に先週の段階で、具体的にやりとりを確認をして、大臣に承知をしていただくようにということは申し入れてありました。
 今大臣がおっしゃったのは、これは政府が出した調査結果そのものですよね。だから、その調査結果の淡々とした客観的な書き方が真実なのか、それともピースウィンズ・ジャパン側が公表しているやりとりが真実なのか。真実は一つですから、それはどうなんですかというふうに私はお聞きしているわけですよ。いかがですか。
川口国務大臣 先ほど私申し上げた中で、十二月十八日については大西さんは御出席ではなかったということのようでございますが、十二月十三日及び大西さんの御出席でなかった十二月十八日には、鈴木委員長の御指摘は先ほど申し上げたようなことであるというふうに聞いております。
 それからさらに、十二月二十日に鈴木委員長を訪問した際には、鈴木委員長から、自民党議員のマザリシャリフ出張をピースウィンズ・ジャパンが支援していることに関しまして、ピースウィンズ・ジャパン関係者に経緯について、それから外務省に便宜供与についてそれぞれ御質問があったと承知をいたしております。
 一月八日には、ピースウィンズ・ジャパンより活動の状況を報告して、鈴木委員長がこれに耳を傾けたというふうに聞いております。
 それぞれおっしゃったことは、厳しい調子で批判があったというふうに承知をいたしております。
岡田委員 私の質問に全く答えていただいてないわけですが、私は、外務省の調査結果をここで読み上げろと言っているわけではありません。確かに、例えば一月八日は、今言われたように、鈴木委員長はピースウィンズ・ジャパンの活動状況についての大西代表の説明に対してこれに耳を傾けた、こう書いてありますね、調査結果は。しかし、ピースウィンズ・ジャパン側は違うんですよ。
 「おい、おまえ(机たたく)、新聞記事なんかでもてはやされてるからって調子にのるな。」「大西、おまえが裏で操作してかかせたんだろう。」「ふざけるんじゃないよ(なんども机たたく)。もっとはやく挨拶にこい。NGOってのにはとんでもないのがいる。こんなやつらに税金をだすっていうのはどういうことだ。とりあえず、アフガン会議ではNGOには一銭も金はやらぬからな。覚えておけ。」全然違うじゃないですか。だから、どっちが本当だと。
 もし川口大臣が、今私が読んだところは間違いだというなら、はっきり間違いだと言ってください。
川口国務大臣 二月の八日に、官邸でいろいろお聞きいただいたことについての取りまとめていただいたことが公表されておりますけれども、それにも、今私が申し上げたのと同じようなことが書いてあるわけでございます。
岡田委員 私、あらかじめ通告をしておきました。そして、真実は一つであります。大臣がきちんと把握をされれば、私はピースウィンズ側が言っているようなことは事実なんだろうと思うのですね。
 大臣は外務省改革の中で、骨太の改革の中で情報公開ということも言われている。いろいろな議員から働きかけがあったものは情報公開の対象にするということも言われているようですが、もう最初からこれでは、とてもそんなことできないじゃないですか。いかがですか。
川口国務大臣 外務省の同席をしている者の記憶によりますと、御指摘のような発言が、おっしゃったような、私が申し上げたことがその記憶でございまして、岡田委員がおっしゃった、私が申し上げなかったもののうち岡田委員がおっしゃったものにつきましては、そのような記憶はないというふうに聞いております。
岡田委員 大西代表と外務省の間でそれだけはっきりした違いがあるということであれば、同席した外務省の職員も含めて、もちろん鈴木議員、田中元大臣、そして大西代表、野上元次官、そして関係の外務官僚も含めて、やはりきちっとここは事実関係を明らかにする必要があると思います。ぜひこれは参考人として呼んでいただくように。
 今テレビを見ておられる国民の皆さんも、これで呼ばなければ、やはり全部隠した、そういうふうに思われると思いますが、総理、何か御意見ありますか、そのことについて。
小泉内閣総理大臣 前から言っているように、大西さんと鈴木さんの間で交わされた議論はどうでもいいですよ。それに左右されるかどうかは、外務省が適切に判断すべきだ。今回、そういう中で不適切な面もあったと。
 これからは、議員がいろいろなことを言ってきますよ、与党も野党も。そういう中で、その意見が適切かどうかということはしっかりと判断すべきだと。国会議員だからいろいろな役所に意見を言ってきますよ。それをどういう意見でも、いいものは取り入れて、適切でないものは取り入れるな、そういう点に、今回の事件を契機に、よく反省すべき点は反省しなさいと言っているのです。
岡田委員 私、二つ申し上げますが、一つは、NGOの人たちというのは本当に一生懸命やっていますよね。総理は実際ごらんになったことがあるかどうかわかりませんが、例えば、難民支援のために、私もコソボに行って本当に日本の若い人たちが、二十代、三十代の人たちが危険な中で一生懸命男性も女性も活動している、そういう姿を見ているだけに、そのNGOの一人である大西さんに対してあるいはその職員に対して、政治家がこんなことを言うことは許されないわけですよ。
 そのことをまず申し上げて、そして同時に、外務省の職員も同席していますから、そういう場でこんなことを言われたら、これは、ピースウィンズ・ジャパンや大西さんに対していい待遇を与えたらやばいというふうに、外務官僚がその分自分で、もし言われるように本当に鈴木議員が言わなかったとしても、その分そんたくして判断しちゃうということは十分考えられることなんですよ。そういう意味で、関係ないわけじゃないんです。そういうことをぜひ申し上げておきたいと思います。それでは私は、総理の答弁は本当に残念だというふうに思っています。
 外務関係ですから、続いて機密費の問題を一言聞いておきたいと思いますが。
 まず、川口大臣、あんまり川口大臣をいじめているようでやや気が引けますが、機密費の上納問題について、今まで、ない、あるという議論があるわけですが、大臣として上納問題についてどう考えておられますか。
川口国務大臣 外務省報償費が内閣官房に上納されているかどうかということにつきまして、これまでも国会の議論の場で、総理、官房長官、それから歴代の外務大臣等によりまして、そうしたことはない旨今まで説明をされてきているというふうに私も思って聞いております。
 したがいまして、いわゆる上納問題につきましては改めて調査をする必要はないというふうに考えますが、私としましては、外務省の報償費の使用の問題につきましては、これから十分に関心を持っていく考えでございます。
 既に外務省におきましては、例えば、十万円を超える支出につきましては副大臣以上の決裁を要するというような改善措置を講じております。こうした措置を通じまして予算が一層効率的に執行されますよう、そしてそれを通じまして国民の信頼が回復されますよう、私といたしても努力をしていきたいと思います。
岡田委員 外務省の機密費は、先ほどおっしゃった外務省改革の中で大臣決裁になったのですね、基本的には大臣決裁だと。ということは、上納していればその分も大臣決裁になっているはずですから、あなたは知り得る立場にあるわけですよ。だから、ここで否定をされるということは、ないということをあなた自身が調査をして、そして断言した、そういうふうに理解していいですか。
川口国務大臣 外務省の報償費につきましては、来年度の予算では前年度と比べまして約四〇%減というような予算になっておりまして、効率的に使っていく必要があるというふうに考えております。
 上納問題につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、歴代の大臣がそういうふうにお答えになっていらっしゃる、総理、官房長官もそういうふうにお答えになっていらっしゃるということでございますので、私としては、それをさらに調べるということは必要ないと考えております。
岡田委員 歴代の大臣、官房長官が言っているから自分は調べないというのは、私は、本当にこの問題についてみずから責任を負ってやっていこう、そういう意欲はないというふうに見ざるを得ないわけであります。
 そこで、官房長官にお聞きします。
 官房機密費ですけれども、外務省の機密費については、額の減額あるいはきちんと別に予算を立てるということで、トータルで四割減らしたということでありますが、官房機密費は一割減らしただけであります。官房機密費についてどういう改革をおやりになったのか、お聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 官房機密費は、総理外国訪問に伴う宿泊費差額、このことについて問題が発生したわけでありますけれども、平成十三年度からは、同種の問題が生じないというようにするために、庁費による施設借り上げ費として措置するなどの改善措置を講じております。
 それから、平成十三年度から、これは総理の海外出張でございますけれども、現地で必要となる自動車の借料等の庁費の支払いについては支出委任を行うという形をとりまして、会計責任の明確化を図るというような改善措置も講じております。
 さらに、平成十四年度におきましては、総理の外国訪問に必要な経費のうち、内閣官房の職員の宿泊費等に要する経費以外は外務省において予算措置を講ずるということにしておりまして、内閣官房と外務省との間における事務分担及び経費の分担の明確化というものを図っております。
 改善したところは以上のとおりでございますけれども、この内閣官房報償費につきましては、その性格からしまして、使途等の公開に関しておのずと限界があるということでございまして、その性格を損なわない範囲内で透明性を高めるよう、現在必要な措置を検討しております。会計検査院とも今後協議をしてその内容を詰めてまいりたい、こういうふうに思っております。
 さらに、この報償費の執行に当たりましては、一層厳正かつ効率的な執行の徹底を図るということによって国民の信頼の回復に努めてまいりたい、このように思っております。
岡田委員 村山総理のときの官房長官をやられた野坂浩賢さんがマスコミのインタビューで答えられているわけですけれども、常時金庫には八千万の現金が入っていた、百万ずつ封筒に入っていて、一日で五百万から一千万ずつ配った、翌朝には減った分が自然に補てんされる、最も多い使い道はせんべつだ、国会議員が海外に行く場合に渡した、そして、国会対策委員会幹部に渡したこともあった、領収書はもちろんない、こういうことを述べているわけですが、今も同じような状況ですか。
福田国務大臣 過去においてそれぞれの政権でどのようにやっておられたか、私はわかりません。わかりませんが、私どもとしては、ただいま申し上げたような趣旨に徹して厳正なる支出を行っている、そういうことに努めておるところでございます。
岡田委員 結局、機密費について私がこれだけ言うのは、これは税金なんですよね、国民の払った税金。それに対して、幾ら多少必要があるからといって、領収書もとらずにそれを配分しているということは異常だという、そういう認識にやはり立たないとおかしいと思うんですよ。昔からやってきたから今もやる、それが何で改革なんですか。今までと違うというのが小泉政権なんでしょう。
 しかも、外務省の室長の問題。これは、外務省の機密費じゃないんですよね。官邸の機密費を現金で渡して、そして松尾室長はそれを横領したということじゃないですか。もとは官邸の機密費なんですよ。だから、ここについてきちんと制度を変える。例えば外務省が全部大臣の決裁にしたのなら、どうしてそれができないんですか。逆に言うと、できないような使い道をたくさんしているからできないわけでしょう。そこにもう少しきちんとメスを入れるという、そういう考え方はないんですか。
福田国務大臣 先ほど私申し上げましたように、随分私が担当して変えております。そして、過去のことはいろいろ問題もあったわけですけれども、その問題のあったことについて、その問題が再び発生しないようにというような措置を講じておりまして、支出委任をするという、委任行為をするというふうなこともあわせやっておるわけでございます。
 領収書をとらないと。領収書をとれるものはとっております。とれないものはとっておりません。しかし、使途については申し上げるわけにはいきません。
岡田委員 外務省の場合、大臣決裁にしたということは、きちんと運営していればそれは文書で残っているということですよね。決裁するということは、それが文書で上がってきて大臣なり副大臣がそれに対して決裁するわけですから。だから、そういうふうに外務省はなった。なぜ官邸はそれができないんですか。
 私は、もちろん、すぐに明らかにできないものがある、そのことは認めていますよ。でも、それは十年、二十年先に公表するとか、いろいろなやり方は可能なはずですよ。全然何に使ったかわからない、全部官房長官が領収書もとらずに勝手に決める、それはやはり私は民主主義国家としておかしいんじゃないか、そういうふうに思いますが、いかがですか。
福田国務大臣 何にもないということはありません。きちんと整理をしているつもりでございます。そして、これはできるだけダブルチェックをするようにというように心がけておるところでございます。
岡田委員 総理、十二月十九日のロイター通信のインタビューで、ここにおられないのが非常に残念ですが、田中前外務大臣がインタビューに答えているんですよね。その中で、総理は総裁候補だったときは機密費を批判したが、機密費を管理、使用する立場になったら機密費に対する態度が突然変わった、こういうふうに述べておられるんですが、何か思い当たることはありますか。
小泉内閣総理大臣 極めて遺憾であり、残念であります。そんなことを田中大臣が言ったのかどうかわかりませんけれども、私は、機密費については、正すべきところを正しなさい、機密費でありますから表に出せないのもあるでしょう、しかし、きちんとチェックできるような体制は整えておきなさいということを言っているのであって、外務省も官房も、私は、正すべきところは正していると思います。
岡田委員 もしチェックするというのであれば、先ほどの外務省のように、最終的な決裁権限を官房長官にきちんと与える。決裁権限を与えるということは、文書でそれが基本的に上がってくる、こういうことで説明責任が果たせるじゃないですか。
 それを別に、直ちに情報開示しろと言うつもりはありませんけれども、そういう形で、わかる形で使っていけば国民も安心できるわけです。結局、従来の発想で国民の払った税金をわけのわからない形で政治家が勝手に使っているんじゃないか、そういう疑念に対してきちんと答えること、これも大事な改革じゃないか、そういうふうに私は思います。
 今のお答えを聞いていると、従来型の政治と一体どこが違うんだろうか、そういうふうに思えて残念でありますが、何かもしコメントがあれば、おっしゃっていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 何でも政府のやることは残念である、今までと変わらないと言われますけれども、機密費にしても、きちんと正すべきところは正しているんです。守秘義務もあります。機密費ですから表に出せないこともあります。その点はやはり御理解をいただかないといけないと思います。
岡田委員 ですから、私は全部出せと言っているんじゃなくて、外務省がやったように、官房長官に最終的な決裁権限をきちんと認めて、そこに文書で上がってくるようにしたらどうかということを申し上げているわけであります。
 では、次に参ります。
 医療制度の問題であります。
 きのうようやく、ニュースで知るところによりますと、政府の中では決着がついた、こういうことでありますが、いまだに自民党の中では厚生族と呼ばれる人たちを中心に、あるいは委員長もそうかもしれませんが、いろいろ異論を述べている、こういうことであります。政府が決めたけれども、自民党の中がまだ異論を述べている、こういう状況について総理はどういうふうに思われますか。どういうふうにしてこれに対応していこうということですか。
小泉内閣総理大臣 最終的には自民党も私の方針に協力してくれると思っております。この間、いろいろ賛成、反対、かんかんがくがくの議論がありましたけれども、多くの方々が協力をしていただきまして、きょう時点におきましては、自民党の執行部も、公明党、保守党も、三党執行部がともに私の方針に沿ってまとめていこうという確認をしていただいておりますので、今までいろいろ異論を唱えてきた方々も、最終的には私の方針に沿って協力をしていただけるものと思っております。
岡田委員 私もそう思います。多分自民党は、今はいろいろ言っていますけれども、最後は政府に従うんでしょう。小泉総理に従うんでしょう。
 これは私は、一連のものを見ていまして、マスコミは非常に大きく取り上げますが、やはり総理お得意のパフォーマンスだと思うんですね。つまり、この医療制度改革の本当に大事なところじゃないところで、つまり三割国民に負担をさせるというそこのところをわざわざ争点にして、そして与党と総理がここでもめている、抵抗勢力が頑張っている、それに対して総理が自分の意見を通していく。一つの見せ物としてはよくできた見せ物だと思いますが、しかし私は、本当に大事な争点はそこじゃないと思うんですよ。本当に大事なのは、私は、三割国民に負担させるというのが何で構造改革なのか、よくわからないんですよ。
 まず、その点を総理にお答えいただけますか。なぜ国民負担を三割に上げることが構造改革なんですか。
小泉内閣総理大臣 抜本改革を進めていくうちに、将来三割負担は避けられないであろう。抜本改革をしてから三割にするということになると、抜本改革がおくれる。抜本改革の方針と三割負担というものを同時にやることができるんじゃないかということで、改革のスピードを上げるためにこういう方針を出したわけであります。
岡田委員 三割に来年四月からするということを法律に書くと、なぜ抜本改革が進むんですか。
小泉内閣総理大臣 これから少子高齢化が進んでまいります。抜本改革、この方針も本来はもっと早く出しているべき状況でありましたけれども、なかなか進んでおりません。今回、私の方針に対していろいろな意見があった方々は、まず抜本改革をしてから三割負担をさせようという意見と、そうなると私は抜本改革がおくれると。これは三割負担というのは、今国保も三割であります。そして家族も三割であります。そして、将来の高齢化、少子化を見ていけばいずれ三割負担をせざるを得ないという状況にあるならば、岡田議員もわかると思います、将来の問題として。
 結局、患者負担と保険料負担と税金投入、この三つの組み合わせしか国民皆保険を維持していくためにはないわけですから、その調整を図るならば、私は、抜本改革を早く進めなきゃならない。そして、一年あれば抜本改革の方向性は示すことができるであろう。そして、抜本改革をしてから三割負担であるということになりますと、これが抜本改革をおくらせる口実になるんじゃないかと。
 ですから、私は、抜本改革の方針と、これを明らかにすることと、来年四月から三割負担を明記することと、一緒にやった方がいいということでこの方針を進めていたわけであります。
岡田委員 九七年の改革のときを思い出すんですけれども、橋本総理のもとで小泉さんは厚生大臣、そして坂口さんは野党第一党の影の厚生大臣、私が厚生委員会の野党側の筆頭理事、委員長はたしか自民党側の筆頭理事だったと思います。それがこういう形で議論しているのは、何らかの縁を感じますが。
 あのとき総理が言ったことは、つまり一割を二割に負担を上げるということに対して、我々はあのときに、やはり構造改革をセットですべきだというふうに申し上げたんです。坂口さんもそう言ったはずです。そのときに総理が言ったのは、いや、二割に上げるぐらいのことは、これはどういう改革でも必要なことなんだから、まずこれをさせてくれ、抜本改革は必ずやる、こうおっしゃって、結局、総理御自身が、当時は厚生大臣ですが、その抜本改革を結局やらなかった、二割に上げただけが残った。今回と全く同じ状況じゃないですか。
 そして、また今回、まずとにかく三割に上げることが必要なんだ、それが抜本改革を進めるために必要なんだとおっしゃるが、結局残るのはその負担増だけじゃないですか。いかがなんですか。
小泉内閣総理大臣 あれ以来、岡田委員の質問を私は厚生大臣として受けておりまして、なかなかいいことも言っているなということを感じながら聞いていたこともあります。そして薬価の引き下げとか、かなり進んでいます。今回、診療報酬の引き下げも、今までにないことをやっているわけです。この間いろいろな議論があって、各利害関係者が多い、進んでこなかった、しかし、もうこの抜本改革をおくらせるわけにはいかぬということで、私は、この国民皆保険制度というのは、国民にとっても大事な制度ですから、効率的に、そして将来も持続可能な制度に維持していかなきゃならないということで、今後も、あるべき改革に向かって、三割負担と同時に進めていかなきゃならない問題だと思っております。
岡田委員 私は、診療報酬を下げたことをそれなりに評価しますが、しかし、それは抜本改革ではありません。例えば、診療報酬を多少下げたといっても、一・三%下げたわけですが、過去二年間見たときに、一般の診療所、個人の診療所の収入は過去二年間で五%ふえています。これは厚生省の調査。しかし、全世帯の年収は二年間で五%マイナスです。そういう状況の中で、診療報酬を一・三%下げることが構造改革なのか。私には、それはとても構造改革とは少なくとも言えない、多少のことは認めますが、前進は認めますが、そういうふうに思います。
 さて、坂口大臣に確認しますが、坂口大臣は、先ほど総理が言われた三割負担増を法律に書かないと構造改革が進まないという論理は、これは承認されるんですか。
坂口国務大臣 今回の医療制度改革、これは、次の世代にどうこの医療制度を結びつけていくかということで非常に大事なものだというふうに思っております。人生九十年時代の医療制度をどうつくるかということだというふうに思っておりますが、当面の課題につきましては、三割の自己負担、そして保険料のアップ、そして構造改革、この三つは三位一体で行わなければならないというふうに思っています。しかし、その三位一体ですが、その中でやはり構造改革は先行させなければならないというふうに思っています。構造改革を先行させるということも、それから、将来は三割負担が必要だということも、私は総理と同じ意見でございます。
 ただ、若干違いましたのは、私は、構造改革を先に行ってから、そして三割負担を決定する、こういうことを言っておる。総理は、先に三割負担を決定して、それから構造改革をその間にやる、こういうことをおっしゃる。それは、平成十二年までにやるというふうに言うたけれども、厚生労働省はやらなかったではないかという強い御不満が総理の中にはある。したがって、一番の、その先を決めないことには、平成十五年四月一日なら四月一日という日を決めないことには、それまでにまたやらないことになるではないかというのが総理の御主張であります。
 私は、若干、期間よりも内容のことに重点を置いていたものですから、その日を決めたらもうやらなくなるということがありますから、先へやったらどうですかということを申し上げていたわけですが、しかし、総理の御意見にも一理あるということで、私は、その総理の御意見に従ったわけであります。
岡田委員 私は、お聞きしていて、坂口先生は極めて正しいことをきのうまでは主張されていたと思うんですね。どこでお考えを変えられたのか、大変残念な気がします。
 もちろん、こういう議論をしていますと、我々は、構造改革をまずやってから負担増だ、こう言っているわけで、何か自民党の中によく似た意見の方が大分いらっしゃるようですが、しかし、私は、自民党の厚生族あるいは族議員と言われる皆さんがそういう論理をしていることは、全くおかしいということは申し上げておかなければいけません。つまり、今まで構造改革をずっと先送りしてきた張本人が、構造改革なければ負担増できないなんて、そんなの全く通用しませんよ。そのことはまず申し上げて、それと我々は全然違うということを申し上げた上で、きのう合意をされたわけですね。
 きのうの合意の中で、法律の中に書かれるということですけれども、例えば、医療保険制度の体系のあり方とか、あるいは、新しい高齢者医療制度の創設とか診療報酬体系の見直しというようなものについて基本方針を策定するということを附則に書く、こういうことなんですが、基本方針を策定するということと実際にやるということは別ですよね。本当にこれで十四年度中に、つまり来年度、通常国会に、ここに挙げた三項目についての具体的な法案が出るということを、総理、約束されますか。
坂口国務大臣 それはやります。私が責任を持ってやりたいというふうに思っております。省内にプロジェクトをそれぞれつくりますけれども、全体を含めまして、そして私が本部長になって前線指揮をやりたいというふうに思っています。
 今お挙げになりました三つの課題、それに加えまして、社会保険病院の今後の統廃合の問題、それから年金、医療、介護、雇用等の徴収の一元化の問題、それから社会保険庁の今後のあり方の問題等につきましては、ことしの八月までにその決着をつける。
 全責任を持ってやりたいと思っております。
岡田委員 坂口大臣の決意はいいんですが、しかし、九七年のときに当時の厚生大臣、小泉さんですが、約束してもできなかった、そういうことがあるわけですね。あのときには、具体的な厚生省案、これは小泉さんが出されたものですが、これがもう既に十月に出ていて、今はまだ何もないんですよ。あのときはこれが出ていて、そして、この中には、次期通常国会に向けて抜本改革法案の取りまとめをすると書いてあって、それでもできなかったわけですよ。
 今回は、そういう具体案がない、基本方針を決めるというふうに書いてあるだけ。それで本当にできるんですか、総理。いかがですか。総理から答えていただきたい。
小泉内閣総理大臣 今回も、今まで、私がこういう方針を堅持しない限り、自民党が、多くの方々が反対した、それに引きずられたでしょうね。しかし、当時は私は厚生大臣だった。総理大臣じゃなかったのです。今回、私が総理大臣なんです。そして坂口さんが厚生大臣、やると言っているのです。そして、反対していた方もこれに従おうという気になって協力してくれるのです。だから、私は、前回と全く違うし、そしてこの改革にかける熱意も意欲も四年前とは格段に違っていますから、これをぜひともなし遂げたいと思っております。
岡田委員 私は、厚生省で本当にできるんだろうかという気がしてなりません、今までのことを見ているだけに。ですから、ここは総理お得意の第三者機関を総理官邸につくられて、総理が直轄でこれをやられたらどうですか。そのくらいの決意を示せば、これはできるかもしれないなと国民は思いますよ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 もうあれだけ坂口厚生大臣が決意を新たにして、厚生省も今までなかなか利害関係者の意見を聞いて、あっちに行こう、こっちに行こう、自民党の異論にも、ああこの人の意見に耳を傾けなきゃいかぬな、こっちも気にしなきゃいかぬ、外務省みたいになるなと言っているから、私はきちんと厚生労働省もやってくれると思います。
岡田委員 少なくとも、法案の中に基本方針を策定すると書くだけではなくて、次期通常国会に法案の形で提出するというふうに書くことをお約束いただけませんか。
小泉内閣総理大臣 まず、十四年度中に基本的方針を明らかにします。そして、法案に書くかどうか、どのぐらい時間をかけなきゃならないか、かけなくていいのもあるかということを、やはりその時点でよく調べなきゃいけないと思います。法案にできるものは法案にしたい。
 そして抜本改革につきましては、私は診療報酬体系一つとってみても、この病気はどのぐらい、技術料が何点なんだと、これは実に専門的な意見を要します。ある程度時間がかかるものもあれば、時間がかからなくてもできるものもあります。その辺は、やはりこれからの抜本的な方向を示す中でよく検討していかなきゃならない。できるだけ早くやりたいと思っています。
岡田委員 だんだん、お聞きしていると、本当に次の通常国会で抜本改革の法案が出てくるのかどうか、かなり疑問ですよね。結局、だから、総理が最初おっしゃったことと矛盾しているんですよ。三割負担となぜ法律に書くか、それは抜本改革を急ぐためだ。でも、聞いていくと、抜本改革は、まあ来年の国会に出るかどうか中身を見ないとわからない。全然おかしな論理じゃないですか。いかがですか。どうですか。
小泉内閣総理大臣 私の意見を勝手に解釈してだめだ、だめだと言うのは民主党の常套手段だけれども、そんなに勝手に解釈しちゃいけないですよ。抜本的な方向性を示すと言っているのですよ。そして、それから、できるものから順次進めていく。それを、できない、できないと決めつけることないじゃないですか。
岡田委員 来年の四月に負担を三割に上げる、来年の四月が一つの大きな期日なんですよ。それまでに法案を出すか出さないかというのは非常に大きな話でしょう。あなたの話は方針を出すだけで、実際に法案を出すのはいつかわからない、その後だということだったら、最初に戻って、どうして三割負担とこの法律に書く、来年四月からと書くということにこだわったのか全然わからないと言っているわけです。
小泉内閣総理大臣 はっきりしているじゃないですか。抜本的な方向性を出すのですよ。方向性を出してから法案の作業に取りかかるのですよ。何が矛盾しているのですか。
岡田委員 方向性を出すのじゃなくて、具体的な法案の形で負担増と構造改革をセットでやってください、こういうふうに申し上げているわけです。いかがですか。
坂口国務大臣 内容、いろいろありますから、法律にかかわるものと法律にかかわらないものとあると思います。法律にかかわらないものは、これはその方向性と将来の計画を示せばいい。しかし、法律を変えなきゃならないものは、当然のことながら、これは法律の改正をするということにいたします。
岡田委員 その法律を来年の四月に、つまり来年の通常国会にその法案の改正案を出しますねと確認しているわけです。いかがですか。
坂口国務大臣 平成十四年度いっぱいでその議論を終えるようにという総理の御命令でもございますしいたしますから、その命令に従いまして、早期にこの改革を進めます。見直しを行いまして、できるものは来年の四月から出したい、こういうふうに思っています。
岡田委員 坂口さんは正直ですから、正直にしゃべっちゃうのですね、できるものはやります、できないものもあるでしょうと。結局、総理は、そこをレトリックでごまかしておられた。(小泉内閣総理大臣「レトリックじゃないよ」と呼ぶ)いや、もしレトリックじゃないと言うなら、来年の四月にちゃんと抜本改正の法案を出すと言ったらいいじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 そこが違うのですよ。抜本的な方向は示します。そして、法案にできるものと法案にしなくてもできるもの、いろいろ整理しなきゃならないのです。法案にできるものは直ちに法案にする、そこを言っているのですよ。
岡田委員 法案はちゃんと出すということですね。法案化しなきゃいけないけれども、さらに一年、二年と先送りするということはないということですね。先送りはしないということですね。
小泉内閣総理大臣 抜本改革の方向性を出すこと、この六項目、書いてあるもの、先送りはしません。
 方向性を出して、法案にできるもの、法案にしなくてもできるもの、その方向性を出した時点でわかるじゃないですか。そこで判断すればいいのです。
岡田委員 だから、法案にできるということの意味が、間に合わないからできないという意味も含んでいるのじゃないですか、こういうふうに申し上げているわけです。まあ、これはここでやめましょう。結局、見ている人が今の議論を聞いてどう考えるか、これだけの問題であります。
 それでは、経済問題に入りたいと思いますが、まず、小泉総理、ちょっとこれを。(パネルを示す)小泉総理が総理になられてから、いろいろな経済の数字が変わってまいりました。株価は、これは先週と比べれば変わっていますが、先週末であります、大体三分の一ぐらい下がりました。三〇%ぐらい下がりました。それから、格付はワンランク下がった。長期金利は上がった。失業者は五十五万人ふえた。失業率は〇・九ポイント上がった。こういう状況であります。
 特に、長期金利でありますとか株価でありますとか、あるいはここに書いてありませんが、為替でありますとか、そういったことについて、マーケットは小泉さんが総理になってから非常に厳しく反応しています。そのことについて、まずどのように考えておられますか。
小泉内閣総理大臣 確かに厳しい経済情勢が続いておりますが、私は、構造改革、着実に進んでいると思いますが、マーケットの方は、もっと速く、もっと速くというふうに催促しているのでしょう。しかし、その点については、私は、いかにいろいろな分野で改革が進んでいるかということをもっと見てほしいという気持ちであります。
岡田委員 小泉改革の進み方が遅いということの一番の典型が不良債権の処理だ、こういうふうに思うわけです。
 ちょっと話は変わりますが、午前中の議論もありました。G7でデフレ対策ということが問題になって、きょうも午前中の審議の中で、竹中さんもデフレ対策の一つとしての不良債権処理ということを挙げられましたが、ここをもう少し、なぜ不良債権処理がデフレ対策なのかということについて、簡単でいいですから、一言説明していただけますか。
竹中国務大臣 物価が下がる、デフレの要因は何かということを、昨年十二月の経済財政白書の中で、その要因を三つ挙げさせていただいております。
 一つは供給側の要因。技術進歩が速い、PCとか、それとか中国、グローバリゼーションで安いものが入ってくる。これは供給側の要因。需要側の要因、これは、御承知のように大変経済状況が厳しい中にある。三番目として金融要因。これは、金融仲介機能が滞ることによって、なかなか必要な設備投資資金とかそういうものが供給できなくなる可能性がある。さらには、金融不安ということで消費者心理が冷え込む。したがって、金融要因、金融仲介機能が不良債権問題によって低下することによって、そのことがデフレの一つの要因になっているというふうに考えるわけです。
岡田委員 政府が考えておられる四項目の一つ、デフレ対策の四つの一つ、一番最初に言われるのが不良債権の処理だ、こういうことであります。
 私は、不良債権の処理がおくれたということがこの国の経済にとって致命的になっている、こういうふうに思うわけですね。そのことの責任はだれが負うべきか。詳しいことは明日また同僚議員がやりますけれども、私は、思い出すのは、三年半前の金融国会で当時の宮澤財務大臣に、不良債権の処理、きちっと検査して引き当てをやる、こういうことを申し上げました。きちっと引き当てをして、そして不良債権の処理を急ぐべきだ、こういうふうに申し上げましたが、それに対する宮澤さんの答えを私はいまだに覚えていますよ。岡田委員の言うことは、論理的には正しいが、現実にはできないんだ、そういうふうに言われました。そうやってどんどん先送りして、先送りした結果が今の現状じゃないですか。そのことの責任はやはり与党にあるんですよ。自民党にあるんですよ。
 先ほど、今、三月末を控えて中小企業の皆さんが貸しはがしに遭って苦しい、そういう話がありました。現実はそのとおりですよ。だれがそんなことをしたんですか。不良債権の処理をおくらせてきた結果、いよいよもうどん詰まりになって、ペイオフを控えて、そしてこの貸しはがしが起こっているんじゃないですか。きちんと処理していればこんなことはないんですよ。だから、今景気対策が必要だとか、中小企業のためにとか言っている与党の皆さん、皆さんがその原因をつくっているわけですよ。そのことをまず認識すべきなんです。
 柳澤さんにお聞きするつもりはありませんが、私は、財務金融委員会でも、そごうがつぶれたときに、そごうの不良債権としての位置づけが甘かったのじゃないか、要注意先になっていたのじゃないかということを申し上げました。そして、過去倒産した企業について、どういうふうに分類されていたのか、もう一回調べてきちんとやるべきだということを申し上げた。しかし、その後そういうことはほとんどなくて、マイカルが倒産して初めて特別検査なんということになってきた。物すごくおくれたと思うのですね。その責任は、私は柳澤さんにも問いたいと思いますが、いずれにしても、もうこれは歴代自民党の政権、そして小泉さんもこの五月以降の不良債権のおくれについては責任があるわけです。
 その点の認識、総理、おありですか。
小泉内閣総理大臣 それは、今までの歴代政権の責任と言われれば、それは甘受しなければいけないと思います。
 そういう反省の上に立って、今後不良債権処理を進めていく上においては、確かに理論どおりにいかない点もあると思います。どんどん不良債権処理を進めていけば、それは企業の倒産も起こってくるでしょう。生き延びる企業、再建いかんによっては再建が可能な企業、そういう点についても金融機関はよく見きわめる必要があるし、その点につきましては、現実でどんどん企業を倒産させて不良債権を処理することによって構造改革が進むという意見と、やはり現実を見ながら景気回復を待って不良債権処理をやれという議論が錯綜しているように、なかなかいろいろな議論が交錯している中で、それでもこれからの将来の持続的発展を考えるならば不良債権処理を進めていくべきだということで今鋭意進めているわけでありまして、今までの厳格な資産査定については、現実の株価とかあるいは風評とか現実の状況について甘かったなという点も反省しつつ、今、より速やかな構造改革に資するようなそれぞれの査定なり引き当てなりあるいは情報公開を進めていくために、鋭意努力しているところであります。
岡田委員 私は、総理の認識はかなり甘いというふうに思います。
 民主党は、三月末までに相当思い切ったことをやらないと、このまま、金融の安定がないままでペイオフを迎えると相当ひどいことが起こるだろう、だからペイオフを延ばせとはもちろん言いません。その前にきちんとやるべきことをやらなきゃいけないというふうに考えております。そこは、あす、同僚の五十嵐議員の方から、具体的なものについてはお話しさせていただきたいというふうに思いますが、大変な危機感を持っているということを申し上げておきたいと思います。
 この不良債権の処理が一つの例なんですけれども、小泉さんの言われる構造改革が本当に額面どおり受け取れるのかどうか、ちゃんとできているのかどうか、やはりここがマーケットからも見られている。言葉はいいけれども、現実には抵抗勢力と適当に妥協しながら、改革になっていないんじゃないか、こういうことが言われていると思うんです。そのことについて、これから具体的に一つずつお聞きをしていきたいと思います。
 まず、来年度予算であります。
 来年度予算についていろいろ問題がある。例えば、隠れ借金方式をとったとか、それから公共事業については一〇%カットと言っているけれども、第二次補正と合わせると減っていないとか、そういう議論がありますが、ここでは省略します。
 一つ申し上げたいのは、来年度予算は改革断行予算だということで、五兆円削減して、重点七分野に二兆円を再配分するということを強調しておられるわけですね。それが本当になされているのかどうか、私は、これは非常に大事なところだと思うんですね。やはり、旧来の予算配分を根本から改めて、より効率の高い、あるいはより成長を促すような分野に予算を集中投資していく。考え方はいいんです。現実どうなのかということを、一つの例を挙げて申し上げたいと思います。やや細かい話で恐縮ですが、具体的に言わないとわかりにくいものですから。
 この二兆円配分、具体的には二・七兆円ということでありますが、「少子・高齢化への対応」「科学技術・教育・ITの推進」「都市機能の再生・高度化」「環境に配慮した地域の活性化・まちづくり」、こういう分野に二・六兆円配分しました、五兆円を少なくして、こういう話であります。
 その二・七兆を全部議論できればいいんですが、限られた時間ですから、その中で大きなもの、例えば児童扶養手当の制度改正、これは二千六百三十七億円、二・六兆の約一割ですね。それから交通連携推進事業、これは二千七百億円。この二つが一番タマとしては大きいんです。
 しかし、この二つを具体的に見ていくと、どこが変わったんだ、ほとんど従来と違わないじゃないか。例えば交通連携推進事業を見たときに、ほとんどが既存のものの継続であります。新しいものも若干ありますが、ごく一部なんですね。それが、いや、全く新しいもので二・七兆円でというふうに言っておられるが、本当は変わっていないんじゃないですか、こんなふうに思っています。
 財務大臣、私は、これは財務大臣の御答弁をぜひ聞きたいというふうに申し入れてあったわけですが、この交通連携推進事業や児童扶養手当の制度改正、これは中身はあるというふうに断言できますか。
扇国務大臣 先生御存じだと思いますけれども、今まで、例えば交通の連結、立体交差等々、上に通っているものが私鉄であったり、国鉄でないものも当然ございます。全国の、この連結する場合に、今までは助成金が出せない分もございました。また、これを連結して立体交差するために、道路の幅も少し広げなければ立体にできないということもございました。
 そういうことも、今まではできなかったことを今回は改めてそれを一体として考えていく、そしてそれを、道路特定財源の活用範囲も広げてつくるということで、今までと違うという点は、岡田先生も御存じのとおり、御理解いただいているものだと思っております。
岡田委員 全体の二千七百億円の中で、新規というのはごくわずかなんですよね。これは箇所づけをまだしていませんからどのぐらい新規になるかわかりませんが、ほとんど継続ですよ。何でこれが新しい重点分野なんですか。
扇国務大臣 今まで十年かかったものが八年、七年あるいは五年でできるということで、アップして、そしてコストダウンが図れるということで、私は、大いに今回の活用というものが広がっていくということで、早めればコストダウンするのは当然ですから、そういう意味では、今までと全然使い方が、重点項目として使っていくという点で違います。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
岡田委員 何か今の御答弁で、制度がどう変わったという説明はなかったと思うんですけれども、それは、予算つければ早く終わりますよね。制度がどういうふうに変わったのですか。それがこの二千七百億のうち何十%を占めているんですか。ほとんど占めていないのですよ。だから言っているんですよ。
 余り細かいことを大臣に聞いてもいけないと思いますが、結局、二・七兆、新しい分野に予算再配分したと言われるけれども、中身は相当お寒いですよということを私は言いたいのです。財務大臣、いかがですか。反論ありますか。
塩川国務大臣 そうおっしゃいますけれども、全体の予算、全部見まして、一般歳出予算が四十七兆でございましょう。そうすると、その四十七兆の中で、二割近くのものが変わっていく、いや、五〇%近くのものが改革されてきているということは、やはり相当な改革になってくるということ。これは、今までの予算から見まして、対前年度何%という考え方だったのですが、そういう考え方を除いて、取ってしまって、全部新しいものの見直しをしてきたということです。
 先ほど扇大臣がおっしゃっていますように、交通の連結というのは、連続立体交差一つ見ましても、土地収用法が変わってきたことに伴いまして、思い切りこれが促進されるようになったというところに重点を置いてやったということでございますので、個々の事業について見ていただくと、相当新規なものが入ってきておるということは御承知いただける。
 全体としては、確かに額から見ましたらそんなに大きい額ではない、これはわかりますけれども、しかし、何といっても、私たちが政権担当してたった二、三カ月の間に事業の新規をつくり出すということはなかなか至難なことでございましたけれども、幸い、各省が協力してそういうところへ持っていった。したがって、十四年度は相当違ったものが出てまいります。
岡田委員 私は、この予算の組み替え、本当に大事なことだというふうに思っています。そういう意味で、民主党としても、あるいは野党四党としても、組み替え要求をやがて出そう、こういうことで準備していますが、とにかく、どういう中身を盛り込むかということが一番大事なところですから、今、財務大臣、率直に、時間が余りなかった、来年度は、次の年度はとおっしゃったけれども、やはりそこは、予算の編成のやり方から含めて、もう一度ゼロベースで考えないと、これはもう時間が足らなくなってしまう、間に合わなくなるということを申し上げておきたいと思います。
 それから、雇用の問題について一言聞きたいと思いますが、雇用対策については、午前中にもいろいろ質疑もありましたが、一次補正でいろいろ手当てをしたということはわかりますが、来年度予算で何しようとしているかというのが実は余りよくわかりません。政府として、雇用対策として来年度、具体的に何やろうとしているのか。
 特に、私は、これは常々主張しておりますが、雇用保険が切れた人が約百万人いる。つまり、離職して一年以上たっている人が百万人います。あるいは自営業者の方で廃業した人、あるいは学生で就職できない人、そういう人たちに対して、従来の雇用保険制度では対応できない。ここに対してどういう手を打つかというのは非常に大事なことだと思うわけですが、雇用対策について、今言ったようなところについて、大臣、どういうふうにお考えですか。
坂口国務大臣 今御指摘のように、雇用問題というのは大変大事な問題であり、重要な局面に来たというふうに思っています。
 今までから、過去からずっとやってまいりました雇用政策、これもやはり続けてやらないといけない。一つは、できる限り新しい雇用の創出に努力をする。もう一つは、既にやめてしまった人に対する雇用保険をより充実し、そして、そこで何かを身につけたいという人には延長給付をする、ここはやっていかなきゃならない。いわゆるセーフティーネットのところをちゃんとする。それからもう一つは、ミスマッチのあるところをどうするかということ。大きく言えば、今までやってまいりましたこの三つのことは大きく延長しなきゃならないというふうに思っています。
 しかし、同じ切り口だけでいいかといえば、それだけではやはり足りなくなってきている。新しい切り口として何をやるかということは、一つは、それぞれの地域における雇用というものをどう生み出していくか、どう考えていくかという、地域別の対策というものをつくっていかなければならないというので、昨年の八月から、これは経済産業省と協力をいたしましてスタートさせたところで、ここを充実していく。そして、地域に合った雇用をつくり出していくということが一つ。
 それからもう一つは、今までミスマッチがある、ミスマッチがあるということを言ってきましたけれども、なかなかここが前進をしない。ここを前進させるためには、やはり今までのような状況ではいけないので、それでキャリアカウンセラー制度というものをやっていく。私もハローワークに行きましていろいろ聞きましたら、ここはやはり、新しいそういう人たちが大きな雇用を生み出している、つくり出している。そういうキャリアカウンセラー制度をつくりまして、この補正予算で千百人体制にいたしましたが、十四年度の予算におきまして一万人体制に持っていきたいというふうに思っています。そして、そこできめ細かな御相談に応じるということをしていく。それが一つ。
 もう一つは、御承知のとおりの、政労使三者によって今進められておりますところのワークシェアリングの問題でございます。
 これらの新しい切り口をそこに加えてやっていく。
 全体の額といたしましては三兆八千億ぐらいの雇用に対する予算でございますから、大変大きな予算でもありますし、これをきめ細かくして、むだのないように、できるだけこれを有効に使うということに全力を挙げていきたいと思っております。
岡田委員 坂口大臣はこういうときによく訓練延長給付の話を持ち出されるんですが、基本的に三カ月で十六万人規模という政府の姿なんですが、私はこういうものも、やはり半年、一年で、人数も五十万人ぐらいにはしないととても機能しないというふうに思うんですね。
 我が党は従来から、何回か申し上げておりますが、能力開発支援特別措置法案というものを準備して、この国会にも出すことにしております。そういった、今申し上げたような雇用保険が切れた方や、あるいは自営業者で廃業し、雇用保険に入っていませんからその適用のない方に対して、しっかりとしたセーフティーネットを準備すべきだというふうに考えていることを申し上げておきたいと思います。
 さて、この予算の中で女性政策というのを一言ちょっとお聞きしたいと思うんですが、先般、厚生省の関係団体が、少子高齢化ということで将来の人口推計の見直しをいたしました。これはかなりショッキングな数字でありまして、前回調査と比べて、夫婦の出生数は一・九六人から一・七二人、夫婦当たりの子供ですね、二人いたのが一・七人になる。それから生涯未婚率が一三・八%から一六・八%に上がる。つまり、もう間もなく、十人のうち二人が結婚しない、そういうことになってくる、一六・八%であります。
 そういう前提で計算をいたしますと人口は当然減っていくわけで、やや前提の置き方が違いますが、今の出生率一・三六で計算すると、今から百年後、二一〇〇年の人口は約四千四百万人、つまり、今の三分の一になる。もう少し延ばして三〇〇〇年になると百人になるそうですけれども。千年先の話はともかくとして、これだけ子供の数が減って人口が減っていくということに対して、政治としてどうこたえるかという問題だと思うんですね。
 私は時々海外に行ったときに感じるわけですが、例えばワシントンに行って、ワシントンにいる日本人の関係者に、集まってください、いろいろ意見交換しましょう、こういうふうに言いますと、例えばアメリカのワシントンのシンクタンクで働いている人、あるいは政府関係機関で働いている人、国連機関で働いている人、二、三十人集まってくれます。見ると、大体二十代、三十代の、しかも女性が多い。ということは、結局、彼女たちに対して日本はきちんと活躍する場を与えていないから、彼女たちは日本を出るわけですね。
 そういうところをきちんとしていくということ、これは日本の経済社会を活性化していくという意味でももちろん重要だし、やはり政治がしなきゃいけない分野じゃないか、こういうふうに私は思うわけであります。
 総理は、保育所の充実とか、あるいは放課後児童クラブの拡充を言われるわけですが、そこはある程度やっておられるということは私も認めますが、やはりこれだけでは十分じゃないと思うんですね。根本的に考え直さなきゃいけないんじゃないか。そこについて、もし総理のお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
小泉内閣総理大臣 これは社会的な、その国による考え方によっても随分違いがあると思います。今、アフガンのタリバン政権みたいに、女性が教育を受けなくてもいいとか、そういう制度以前の社会的な考え方、その社会的考え方もアメリカと日本とは大分違うということを前提にしても、日本としても、これから女性の社会進出をどう支援していくかということに配慮しなければならないと思っています。
 現に、社会的通念の考え方におきましても、我々の親の世代は、女性の仕事は家事、育児ということに対して女性もそんなに疑わなかったです、私の子供のころは。しかし、今はそんなことを言ったらとんでもない。また、男も女も、そんなことはない、女性も男性も、ともに家事も育児も仕事もしようというのが当たり前になってきたということ自体は、私は社会通念の考え方に大きな変化がある。
 そういう中で、私が総理大臣に就任してから、女性の子育て支援、社会進出を考える上で制度的に何が一番必要かということを女性の方たちに伺ったら、まず男女共同参画委員会の方々に伺ったら、第一優先順位に挙げたのが保育所待機児童ゼロ作戦だと言うんですよ。だから私は、それならやろうと。最初の所信表明演説に、保育所待機児童ゼロ作戦を、三年間でこの作戦を実施しますと。今どうなんだと言ったら、十五万人足りないと。だから、五万、十万、十五万、三年間でやりますと言って、ことしも予算措置を講じました。
 こういうふうに私は、今女性のベンチャー、チャレンジ支援という、そういう施策もしなきゃいかぬなということで、男女共同参画時代に対して、女性が子育てをしながら社会に進出するということに対しては、いろいろな意見を伺いながら具体的な予算措置を講じつつ、なおかつ、社会通念ですね、男も女も本質的に変わらないんだと。女性だって政治家になりたい人もたくさんおられる。女性は野心がない、そうじゃない。男と同じに、仕事を持てば女性だって仕事を一生懸命やりたいという野心が出てくるだろう。出世したいという野心も、男に劣らず女性だって持っているんだろう。そんなに変わらないんだ、男も女も。そういうことでだんだん変わってきている。だから、これは大事なことだと私は思います。
 離婚した場合も、男の人は、ああ、かわいそうだねと言うけれども、女性は、そう言うと、とんでもない、せいせいしたわと言って、むしろ、そんな同情しないでよという女性がふえてきた。これまた社会通念の変わり方ですよ。
 だから、そういう意味において、私は、社会通念を変えるのと同時に、女性の社会進出を支援するための予算とか制度面の改革を、両方考えていくということが大事だと思っております。
岡田委員 ポイントは、やはり多様性を認めるということだと私は思うんですね。いろんな生き方が男性も女性もある。私は、もちろん仕事をせずに家庭で育児、家事をしっかりやるというのも一つの選択肢、そのことが悪いというふうには思いません。しかし、外で男性に伍して働いていくという、これも選択肢。
 問題は、制度がそういうことに対して中立になっている、つまり、男性が世帯主で働いて片働きになっているという制度を、よりニュートラルなものにしていくということが非常に大事なことだと思うんですね。これは税制や社会保障。そういうコンテクストの中で、そういう意味合いの中で、我々は、実は、配偶者控除や配偶者特別控除について、これを廃止して、そしてその財源でもって育児やあるいは子供手当を充実しろ、こういうことを言っているわけですね。課税最低限を下げることに意味があるんじゃなくて、そういうものを廃止した結果下がる、そして、その金はむしろ手当で出した方がより公平である、所得の低い人にも同じように行く、こういうふうに考えております。
 税制の議論はこれから始まると思いますが、何かそういった人的控除が将来の増税の財源として考えられている。そういう節がありますので、そうじゃなくて、そういうものはきちんとそういう子育てという大きな課題のために使っていくんだ、そういう考え方に立つべきだと思いますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 御指摘のところは、私は、非常に今度の税制改正で大事な点だと思っております。やはりすべて公平に負担していただいて、そして、そういう重点にこそ思い切った対策を講じていくというのが時代の要請だと思っておりまして、御意見はよく聞いておきます。
岡田委員 予算の関連ですからもう一つだけ、少し飛びますが、ぜひ触れておきたいのが国会議員の年金の問題です。いろいろ国会議員の、例えば永年議員についての交通費や肖像画などの廃止については、今議論が進んでおります。
 きのうもたまたま我が党の議員で議論しておりましたら、これから肖像画がなくなるということですから、では今ある肖像画をどうするか、もう全部取っ払っちゃえ、こういう議論も出ておりました。まあ、もとの所有者にお返しをするということでいいと思いますが、今ある人だけずっと飾って、これからないというのは絶対おかしな話であります。
 そういうことも大いに意識改革になると思うんですが、この国会議員の年金ということについて、これからいろいろな年金の議論も進んでいって、今の少子化の中でさらに厳しい議論も予想されるわけですが、この国会議員の年金が一体どういう現状にあるか。
 在職十年以上、六十五歳以上の人に支給をするということなんですが、今見ると、法律の建前上は互助なんですね。そして収支の均衡が保たれるように努めなきゃいけない。つまり、払ったその掛金で年金が支給される、そこに基本的に均衡がある、これが法律の建前であります。しかし現実は、例えば二〇〇二年度の予算でいいますと、納付額が九億円、それに対して給付額が二十九億円、約三倍であります。
 別の言い方をしますと、前回の総選挙で落選されたり引退されたりして受給権の発生した前議員は七十九名いらっしゃいます。その七十九名の方がやめるまでにお払いになった納付金額は、平均でお一人二千四百八十四万円であります。ところが、皆さんが平均年齢まで生きると仮定したときの受給額は、一人当たり六千五十四万円であります。つまり、二千四百八十四万払って六千五十四万もらう、その差額は税金ということになるわけです。私、やはりこれは制度として絶対おかしいんじゃないか、こういうふうに思います。
 そういうものについて、例えば自営の方だったらどうなるか。自営の方なら国民年金。総理はわかりませんが、私も国民年金です。そして、足らない分は国民年金基金というのに入っている、これは任意加入ですが。自営の方はみんなそうだと思うんですよ。
 なぜ我々だけそういう優遇された年金があるのか。これはやはり考え直してみる必要がある。少なくとも我々の掛金の中で運営していくという、そういうものにすべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 この互助年金のあり方については、私も前々から見直してもいいんじゃないかという考えを持っておりました。そういうことから、いろいろな特典があるわけですが、今まで、市長とか知事は四年ごとにやめて退職金が出るんですよ。これもおかしいなと私は思っているんだけれども、国会議員は何年やっても退職金は出ないという観点から、いろいろ互助年金については与野党で議論を継続していると思います。
 しかし、今みたいに、国会議員の数が七百人ぐらいですか、そういう中で受給者が四、五百人ということになりますと、負担と給付を考えると、国会議員だけの互助制度で成り立つわけがない。ある程度税金を投入しないとできないでしょう。そういう点も含めまして、今後、私は、与野党でどういう点を見直すべきか、よく議論をしていただきたいと思っております。
岡田委員 いかにしても、払った掛金の三倍もらっているというのは、これはやはり説明できないと思うんですね。そういうふうに申し上げて、ここはぜひこれから議員の中で議論していくべき問題だというふうに申し上げておきたいと思います。
 さて、「経済財政の中期展望」、経済財政諮問会議で一月十八日に出ました。これについて一言申し上げておきたいというふうに思います。
 先ほども、これと財務省の出された中期試算との関係も少し議論になっていましたが、私は基本的に、この「経済財政の中期展望」と従来の中期試算の違いは、「経済財政の中期展望」の方は、政府としてのきちんとした方向性を持ったものだということ、中期試算の方は、これは機械的な前提を置いたものだ、そこは全然違う、こういうふうに思うわけですね。
 この中で、二〇〇六年度までに一般政府の支出規模を対GDP比で横ばいにして、そしてプライマリーバランスの対GDP比の赤字を現状の半分ぐらいにするというふうに書いてあるわけですね。これは政府の意思だと思うんですね、そういう目標を設定してやっていくと。しかし、それを現実にできる、そういう自信はありますか、竹中さん。
竹中国務大臣 これは閣議で決定したものでございますが、強い意思を持ってこのシナリオに沿って政策を実行していく、そういった決意が込められているというふうに思っています。
岡田委員 ところが、具体的な方法論がほとんどないんですよね。例えば社会保障や総人件費あるいはその他一般歳出について、こういうふうに表現されているんですね。社会保障は「可能な限り抑制する。」総人件費は「極力抑制する。」そして、その他一般歳出は「厳しく抑制する。」これはどう違うんですか。表現を書き分けるのはいいんですが、問題は、どうやってそれを実現するのかということなんですね。そこについての具体案がないんですよ、この展望の中には。
 本当はもっとこれはきちんとしたものとして出すはずだったんじゃないですか。これが私は、例えば三十兆、ことしどうする、来年どうする、こういうことも大事かもしれませんが、やはり二〇〇六年度にプライマリーバランスの対GDP比赤字を半分にする、そのためにこういうことをやるということをきちっと述べるということの方がずっと大事だ。その具体論がいつの間にかなくなってしまったというのは、これはなぜなんでしょうか。
竹中国務大臣 岡田委員、いつの間にかなくなってしまったというふうにおっしゃいましたけれども、決してそういうことではございませんで、これはマクロ経済的な枠組みを示すということが目的でありますから、例えばプライマリーバランスについて今お尋ねがありましたけれども、現状四・三%のものを計画期間で半分にする、それで十年でそれを解消に向かわしめる。それは、四・三%を十年でゼロにと、単純に考えますと、GDP比で毎年〇・四%ぐらい改善するということを一つのめどに、目途に置いているわけですね。
 私は、これは十分可能であるというふうに思います。もちろん大変な努力が要りますが、これは、アメリカやイギリスの財政再建の健全化のプロセスを見ますと、GDP比でやはり〇・五%。GDP比一%というのは、これはきつい。そういった中で一つの枠組みを示す。それを実行するための手段として、それぞれの項目について年々の予算の議論の中で厳しい管理をしていくんだということを意思として述べているわけです。
岡田委員 これは別冊の中で、例えば数字が挙げてあるんですね。人件費については、人員数を前年度比マイナス〇・五%で機械的に削減する。また、一般歳出についても、前年度比、二〇〇三年度以降、一%で機械的に削減する。
 しかし、機械的にというのは、これはおかしいと思うのですよ。やはり政府の意思でできることなんですから。できる、あるいはやるということが示されないと、この展望の意味がないんですよね。それがだんだんトーンダウンしていった。財務大臣が、最初計画になっていたのを展望にしろと言ったということも議事録の中で出てまいりますが。
 結局、中長期にどういうふうにして財政赤字を減らしていくかということが、きちっと手順と意思が述べられているというのが本来この展望のあるべき姿だと思いますが、総理、この点についてはいかがですか。もう一回これをやり直すつもりはありませんか。
小泉内閣総理大臣 機械的に現状を維持するとどうなるかという展望と、ある程度の前提を置いて、こういう方式にやるとこうなりますよという、二種類を出して参考に供したわけでありますが、これは経済情勢の変化によって、機械的にやるよりは、そのときの情勢を見て、あるときは、この分野においては一〇%削減がいいだろう、この分野においてはあるいはふやした方がいいだろうという問題も出てくると思います。
 ですから、前提として私は、参考になる問題としては機械的な計算というのもいいのではないか、参考になるのではないかと思っております。
岡田委員 私は何でこんなことを言っているかというと、例えば当初案では、これは十二月四日の案ですが、公共投資の数値目標というのが入っていたんですね。二〇〇一年度までに四分の三程度に下げる、これはなくなりました。結局、自民党の中で公共事業族と言われる人たちが、数字を入れるのはまかりならぬということでこれを削除しちゃった。そういう形で、結局、小泉政権としてこういうふうにやるという当初の意図があっても、それが与党の調整の中でどんどん抽象論になってしまった、その結果がこの展望じゃないかということで申し上げているわけです。やはり、ここに政権としてのきちっとした意思がないと、これをつくった意味が私はないと思うんですね。そういう意味で申し上げておいたわけでございます。
 答弁、特に言いたくないんであれば求めませんが。
津島委員長 竹中大臣。
岡田委員 いや、竹中さんに聞いてもしようがないです。これはやはり総理としての意思を聞いているわけですから。
小泉内閣総理大臣 経済は生き物ですから、これからもよく金融経済情勢を注視していかなくてはなりませんし、今後、構造改革を進めていく上において、すべて削減するという状況にもいかないと思います。どの分野を削減して、どの分野をふやしていくかという点については、私は、経済全体の情勢を見ながら考えていくべきものではないかと。今あらかじめ削減方向を決めて、これをずっと継続するというのは、これはちょっと危険な面もあるんじゃないかと思っております。
岡田委員 いろいろな状況が変わるということはわかりますが、やはり、そこに政権としての意思と手順が示されているべきだ、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
 時間も押しておりますので、税制改正について一つだけ聞きたいと思います。
 自動車重量税について、どうも政府の中で見解が違うんじゃないかというふうに思われるわけですが、扇大臣の方は、今回の自動車重量税について、二〇〇三年度以降の一般財源化は約束していない、総理からも言われていない、そういうふうに記者会見で述べられていますが、これはそういう理解でいいんですか。自動車重量税というのは来年度限りの一般財源化であって、それ以降はそれは約束していないということなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 この自動車重量税のみならず、特定財源の問題についても、これからの税制の論議の中でいろいろ議論が出てくると思います。
 私は、まず来年度におきましては、自動車重量税は一般財源にしようということでやってきたわけでありますが、この問題を見ますと、重量税を廃止するんだったら減税しろという声が必ず出てまいります。そして、特定財源、ガソリン税にしても、これを一般財源にするんだったら、今だってガソリン税高いのに、ではガソリン税をなくせという議論が出てきます。あるいは環境問題が出てくる、環境税に使えという議論も出てきます。
 そういう点もありますから、この問題について税制議論の中で議論してもらいたい。その中で、この特定財源をどうしていこうかということを決めていきたい。今、いろいろな意見が出てくると思いますので、そういう議論をよく見きわめながら判断しなければならない問題だと思っております。
岡田委員 私は、今のお話は一般論としてはわかりますが、自動車重量税はわからないんですよね。自動車重量税はそもそも特定財源じゃないのです。単なる国会の一局長の答弁をもって、それを根拠にして特定財源として扱われてきた。それを来年度予算で一般財源化して、そして、それを一たん壊した、一般財源化したというふうに考えるべきなのか。それは来年度だけの特別扱いで、やはりあの局長答弁は生きている、たかが局長答弁一つでこれをまた特定財源だ、こういうふうに言い続けるのか。そういうことなんですが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 この問題一つとりましても、確かに法律にないんですけれども、慣例として、自動車重量税は全部自動車、八割道路に使うということが慣例になっていたわけですよ。だから、暫定税率を認めていたんだと。これを一般財源にするんだったら暫定税率を廃止せよという議論も出てくるわけです。そういう点も含めてこれから議論していこうということであります。
岡田委員 法律に書いてあるならともかく、書いてないようなことをきちっと変えていくのが小泉さんの改革だと私は思っていましたけれども、何か、結局何も変わってないじゃないですか。(小泉内閣総理大臣「いや、変えていくんだ」と呼ぶ)変えていくはいいんですが、税制全体の議論の中にそれを一般化してしまって、道路特定財源、ガソリン税だって、小泉総理はかつて、これを一般に使うんだと明言されたことがあるんですよ、CNNのインタビューの中で。
 しかし、何か今、最近の答弁を聞いていると、みんな税制改革の中で議論しますという、そこに逃げてしまっておられる。だから、大分私は、道路特定財源についての考え方は後退しているなというふうに見ているんですが、いかがですか。
塩川国務大臣 自動車重量税につきましてはそうじゃございませんで、もう既に実績をつくってまいりました。十四年度予算の中で約二千三百億円、正確には二千二百六十何億でしたか、これは完全に一般財源化して使ってきております。
 でございますから、使途を明示するということと納税者との関係というのもございますけれども、この実績をもとにいたしまして、どういうふうに一般財源化に使っていくかということの説明をちゃんとしていけば、自動車重量税を納めていただいている方も納得してくれると思うておりますし、したがって、その方向で、自動車重量税を一般財源化するという方向で我々はこれから作業を進めていきたい。そのかわり、きちっと説明して納得を得るようにしなきゃならぬ、この努力をしなきゃならぬと思っております。
岡田委員 今の財務大臣の説明で、扇大臣、よろしいですね。
扇国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますし、十四年度の予算を見ていただいたとおりで、わかると思います。
 ただ、そのときに暫定税率という、御存じのとおり、総理がお答えになりましたけれども、その部分については、多くの皆さん方がそれを減税に回すべきだ、受益者負担だと言ったんだけれども、これを二年ごとの自動車の車両検査を受けるときに、大体この暫定税率で二万円ぐらい多く取られるものですから、それを、だったら受益者負担で返すべきではないかというお話もございますけれども、今総理と財務大臣がお答えになったとおり、十四年度予算の中には既に一般財源化したという実績が残っております。
岡田委員 そこで、話題をかえまして、道路公団の問題をちょっと聞きたいと思うんです。
 先般、総理の方は、道路公団の人事は国会承認にすべきじゃないということを言われて、自民党といろいろもめて、最終的な確認事項も紙になったというふうに聞いています。
 まず、総理にお聞きしますが、第三者機関の人事を国会承認にしないということを抵抗勢力に対して認めさせるその見返りとして、抵抗勢力に対して何を約束したんですか。
小泉内閣総理大臣 国会同意人事にしなきゃいけないという方が、自民党の道路調査会を初め建設関係部会でたくさんいたわけでありますが、私は国会同意人事は必要ないと。しかし、最終的には私に協力してくれたわけです。
 そこで、条件などそんなのありませんよ。第三者機関というのは、私は、改革意欲に富んだ公正な人選を進める。そして、個別路線というのは、それは第三者機関は専門家でありませんからわかりませんけれども、基準は出してもらいます。そして、最終的には国土交通省、政府で決めるわけですが、基準を出せばはっきりしますから。
 これまた、国土交通省でやると勝手にやるんじゃないかと言いますけれども、そうじゃないんです。これは、第三者機関ではっきりと費用対効果とか分析して決まりますから、大枠が、この道路はつくった方がいいかつくるべきでないか、税金投入しないとつくれない場合は、本当に税金投入してつくる必要があるかどうかという基準が出てまいりますから、そういう点を含めて、最終的には国土交通省でやるのが普通なんですよ。妥協でも何でもないんですよ。
 知らない人に個別の道路、全国やれなんというのはそもそも無理なんであって、それを妥協と言うのは全く当たらないんです。それを、この前も三十年を五十年にしたら妥協だというのは、全く誤解も甚だしいんであって、私の言うとおりやると、何か妥協したんじゃないか、それはもう勝手な勘ぐりですよ。そういうことはもうやめていただきたい。
 民主党も国会同意人事しなさいという意見が中にはあるようでありますが、それは私は、自由民主党も、そこら辺は余り民主党の言うとおりになって私の方針を邪魔しちゃいかぬなという良識を働かせていただきまして、やはり小泉首相の言う方針に協力しようというところがまた自民党の自民党らしいところであって、最後のところには良識を発揮してくれるなということで、協力していただいたことに私は感謝しているんです。
岡田委員 私が聞いていない個別路線の話まで総理はされたわけですが、人間弱みがあるとつい過剰的に説明してしまうということじゃないかと思うんです。
 私がまず聞きたいのは、人事ですね、「公正な判断をなし得る者を選定し、政府において任命する」、こう書いてありますが、これは、任命するに当たって自民党と御相談されますか。
小泉内閣総理大臣 私は、各方面からいろいろ意見を伺います。自民党からも公明党からも保守党からも、そしていろいろな識者からもいろいろ意見を聞かせていただきます。いい人選を選ぶということであります。
岡田委員 これは、国会承認にしないということを議論していたときに、国会承認にすると自民党の中で事前に調整があるからそういうことはしないという話だったんではないんですか、もともと。それが、いつの間にか何か人事、相談するというのなら、結局最初に言っているのと全然違うじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 また勝手に質問者は自分のいいように解釈するから困っちゃうんだけれども、何でいろいろな人の意見を聞くのが悪いんですか。どの役所だって与野党の意見を聞きますよ。私は、どういう意見を言ってもいいけれども、最終的には改革意欲に富んだ公正な人を選びたいと思っております。
 そして、なぜ国会同意人事、しなきゃいけないかということでありますけれども、私は、もう道路公団は民営化が決まっているんだから、国鉄再建委員会みたいに民営化するかどうかもわからない時点とはわけが違うんです、大枠は決まっているんです。そういう中で、いい意見を出してもらおう、また客観的な国民の納得できるような基準も出してもらおうということで人選するわけですから、その辺は私を信頼してくれてもいいんじゃないか、しかし、意見を言ってくるのは拒否しませんよと。そういう中で私は適切な判断をしたいということでございます。
岡田委員 私は小泉総理を買いかぶっていたのかもしれません。ですから、いろいろな意見がある、ただ、国会事前承認にするとそういう調整が必要だから、自分の意思をしっかり通すために、自分で決められるために国会承認を求めないというふうに誤解をしておりました。もともと相談するつもりだったということですね。わかりました。(小泉内閣総理大臣「また勝手に言っている」と呼ぶ)だって、そういうことでしょう。今の説明はそういうことじゃないんですか。違うんですか。
小泉内閣総理大臣 私がいろいろな方の意見を聞くのが、何で勝手に国会の意見に引きずられるというふうになるんですか。それぞれ与野党からも、国会同意人事にして、この人はいけない、あの人はいい、私はそういうことをしたくないんです、名前を出して。選ばれた人はいいですけれども、否定された人のやはり名誉も考えなきゃならないということを考えると、これは国会同意人事にする必要はないなというふうに私は考えておりますし、その辺については私に任せてほしいということを言っているわけでありまして、何も変な人を選ぶわけじゃないんですよ、適材を選ぶということで私はやっているんですから。
岡田委員 与党と事前に調整するんであれば、国会でそれが否定されることはあり得ないわけですが、ちょっと説明がよくわかりません。
 それではちょっと違う質問をしますが、道路公団の整備計画九千三百四十二キロ、これは全部やるという前提で第三者機関で議論するんですか。それとも、これはやらないものがあるという前提で議論されるんですか。どっちでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、いろいろ整備計画というものも第三者機関で議論していただくでしょう。そういう中で決まってくると思います。
岡田委員 そうすると、今のお話は、整備計画九千三百四十二キロをすべてやらないこともある、こういうことですね。
小泉内閣総理大臣 どういう道路が必要か、またそのためにはどういう基準が必要かということも議論していただきます。
岡田委員 ここは、自民党の道路調査会長が絶対この部分はやるんだとおっしゃっているから、それに対してどうなんだということをお聞きしているわけですが、明快な答えを余りいただけなかったと思うんです。
 今お話しの中で、個別路線について検討しないということなんですが、しかし、結局、どこまでつくるかということをきちんと個別路線にわたって検討してトータルの投資量というのを決めないと、本当に五十年で返せるかどうかという数字は出てこないんじゃないですか。そこはどういうふうに考えておられるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 そういう点については、法案が出てから議論してください。
岡田委員 総理は民営化ということに非常にこだわられるわけですが、民営化ということは結局何かというと、自分で投資が決められるかどうかというのが一番のポイントなんです。これだけ投資しなさいということをどこかで勝手に決めてやらせる、そして、そこでちゃんと利益も上げろ、そんなことはあり得ないわけですよ。やはり企業にとって一番大事なのは投資計画。ここについて自立性がなかったら、これは民営化じゃないですよ。だから、そこについて、少なくとも第三者機関でしっかりたがをはめるとか、こういうことをしなければ民営化の意味はありません。どうなんですか。
小泉内閣総理大臣 民営化の前提で議論していただければ、公正な改革意欲に富んだ方々たちを人選しますから、そこで議論していただきたいと思っております。
岡田委員 投資計画について、あるいは投資規模について、民営化された道路公団あるいはその他の機関が自己決定権を持つという前提でいいですね。そのことだけ確認したいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、法案が出た段階で議論をしていただきたいと思います。
岡田委員 この道路公団の問題というのは特殊法人問題のハイライトで、そして、去年から小泉総理が随分これをいろいろおっしゃってきた。結局、今のお話だと、法案を見てから議論してくれ。そして、肝心なところの、民営化の一番大事なところも決まっていない、あるいは先ほどの整備計画についてもはっきりしない。これでは、私は第三者機関に任命された人も困っちゃうと思うんですね。やはりきちんとたがをはめて、法律の中で、ここまでは前提として議論してくださいということにしないと、結局答えは出てこない、こういうふうに思います。
 違う違うとおっしゃるなら、もう一度説明してください。
石原国務大臣 岡田委員にお答え申し上げます。
 整理合理化計画を取りまとめました所管大臣の立場でお話をさせていただきますが、総理が申されておりますように、採算性の確保ということを重点的にこの第三者機関で御議論いただきます。
 その要素としては、金利の動向もございますし、交通量の需要の見通しなんかがございます。それによりまして、新たにつくられる組織の形態、今委員の御指摘は、一体型で民営化した場合は、もちろん委員御指摘のとおり、どこに投資をするのかということの権限がなければその民間会社が成り立たないというのはごもっともでございますが、どのように民営化するということも、組織形態についても、実はこの第三者機関で御議論いただきますし、総理が先ほどから申しましたように、この第三者機関で決めます採算性の基準というものを、扇大臣が所管されています国交省のいわゆる建設会議、ここで、建設会議等の意見を踏まえて、建設会議の議を経て最終的に政府で決定するわけでございますから、委員御指摘のようなことは心配しないでも十分可能だと思っております。
岡田委員 今の石原さんの答弁で意味があったのは、私は、当然上下一体で民営化するんだと思っていましたが、そうじゃないことも考えておられるということがわかったことですよ。しかし、上下一体化じゃなかったら、これは民営化の意味がないじゃないですか。上下一体化しない場合はあるんですか。今、石原さんはそういうこともあると言ったじゃないですか。(発言する者あり)いや、解釈じゃなくて、そう言ったじゃないですか。
石原国務大臣 新たな組織形態をどのようにするかということも第三者機関で決めていただくということに、整理合理化計画ではなっております。
 私は予断を持って言ったわけじゃなくて、世界各国の道路公団の民営化の例は、コンセッション契約あるいはリース契約、一体型、さまざまなケースがあります。これと、日本のケースは一体どういうものがいいかということを、改革意欲に富んだ公正な中立的な第三者機関の方が決めていただく、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
岡田委員 総理、今、いすに座ってぶつぶつ言っておられますが、では私、総理に確認します。
 上下分離という選択肢はあるんですか、ないんですか。どうですか、総理。総理に聞いているんですよ。総理にお聞きしているんです。ぶつぶつ言っているんですから答えてください。あなた、座って意見言っているなら、ちゃんと答えてくださいよ。
扇国務大臣 まず岡田委員のお話で、私は、一番基本が、少なくとも第三者機関で論議されることで、国費を投入しないということと、少なくとも最大限五十年で償還を、上限を設けてしまったという、この縛りの中でどうあるべきかという、これだけは間違っていないわけですから、その中で、今石原大臣がおっしゃったように、公平で公正で、なおかつ金利等々償還期間を考えながら判断するということで、上下分離してこれをしなさいという、その先入観を持たれること自体が私は問題だと思いますので、それはありません。
岡田委員 これは、閣内不統一ですね、石原さんは可能性を否定しなかったんだから。国土大臣はないとおっしゃった。まあ、時間も限られていますから……
津島委員長 石原伸晃国務大臣。
岡田委員 ちょっと待ってください。
 総理、私は、何でこんなことを聞いているかというと、そもそもむちゃくちゃな議論をしているわけですよ。もともとの、例えば税金投入しない、五十年という前提で考えると、実際には二十・六兆の事業費のうち半分ぐらいしか戻ってこないというのが国土交通省の計算なんですね。そういう、五十年で半分しか戻ってこないということは、結局全部はできないということですよ。にもかかわらず、何か整備計画を全部やるようなことをおっしゃるから、もう国土交通省の計数……(小泉内閣総理大臣「全部やるとは言っていないじゃないか」と呼ぶ)いや、だから、絶対できないですねと言っているんです。絶対できないですねと言っているわけです。そのことを明確におっしゃるべきだと言っているわけですよ。あなた、座っていないで、ちゃんと答えてください。
小泉内閣総理大臣 勝手に解釈されるから困っちゃうんだけれどね。
 まず、道路四公団、一体で民営化ですよ。税金を投入しない、上限は五十年、その中でいい機関を考えてもらいたい。十分じゃないですか、方針として。
岡田委員 だから、そういう前提で考えれば整備計画は全部はできませんね、それは国土交通省の計算ではそうなりますねということを申し上げているわけであります。だから、できないとお答えになればいいわけですよ。そこでできるようなことを言われるから、話がおかしくなってしまうわけです。(発言する者あり)
津島委員長 岡田克也君、質問をしてください。
岡田委員 いや、できるというのじゃなくて、できないですねと言ったのです。できないですねと確認しているわけです。できないというふうに答えてくれと言っているわけですよ。
小泉内閣総理大臣 できる、できないとは私は言っていませんよ。道路四公団、民営化、一体で。税金は投入しない、五十年を上限。その中で、できる、できないと、あと議論してもらう。当然、今の計画はできないでしょう、恐らく。今の計画はできませんよ、そうなれば。
 しかし、コストを削減して必要な道路はつくる、むだな道路はつくらないということはできている。今の計画なんか、できるわけないじゃないですか。
岡田委員 まあ、幾らコストを削減しても半分しかできないわけですから、私は限界があると思いますが……(発言する者あり)
津島委員長 御静粛にお願いします。
岡田委員 最後に、選挙制度の話を一言聞いておきます。
 今、政府・与党の方では二増三減案というのが議論されていますけれども、この二増三減案というのは、私は、法律違反であることは明らかだと思うのですね。まず五百議席を一議席減らす、それから……(発言する者あり)
津島委員長 御静粛にお願いします。質問が聞こえないそうです。
岡田委員 五百議席を一議席減らすというのは、これは法律違反でありますし、それからもう一つは、各都道府県に一議席を配分した後、人口比例で都道府県に議席を配分するという考え方にも反しているのですよ。ですから、法律で決めた手続に従ってきちんと出てきたものに対して、それを全部無視して、全然前提を変えて議論しているということは、私は、全くおかしなことだし、それは政府としてあり得べき姿じゃないと思うのですが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 選挙区画定審議会の答申は尊重しなければならないと思っています。そういう中で、今、与党内で議論が進んでおりますので、私は、与党の案は案として、できるだけ早い機会に選挙制度の結論あるいは定数是正の結論を出さなければいかぬと思っております。
岡田委員 つまり、今の法律を尊重し、そして法律に基づいて出てきたものを尊重するというお考えですね、基本的に。
小泉内閣総理大臣 今、抜本改革の議論をしております。しかし、これをだらだら続けていいとも思っていません。できるだけ早い機会にそれができないのだったら、画定審議会の答申を尊重すべきだと思っております。
岡田委員 今の答弁は、五増五減という考え方を尊重するというふうに受けとめましたが、それでよろしいですね。もう一度確認しておきます。
小泉内閣総理大臣 それは勧告ですから、尊重すべき問題だと思っております。
岡田委員 終わります。
津島委員長 この際、石井一君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石井一君。
石井(一)委員 石井一です。
 小泉総理を初め閣僚の皆さん、大変御苦労さんです。あと一時間ですから、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
 一番最初に、いわゆるNGOの政府統一見解について。二十日に集中審議をされるというのでありますから、ここで余り事情のわからない皆さんに無理をして聞く必要はないというふうに思うのでございますが、ただ、私がこの統一見解を拝見し、また議論を聞いておりまして、問題はもうはっきりしておるという感じがするのです。
 総理はやはりこの問題については正しい見識を持っておられるな、こういう感じがするんです。二月四日の当委員会における我が党の原口議員の質問に答えて、あなたは、変な議員の変な言うことを聞かないように、こう言っておるんですが、これはなかなか味のある言葉ですよ。変な議員が変でないことを言う場合もあるという話もあるんでしょうけれどもね。
 そして、これを見ております世論が、実に的確にこれを判断しているんですね。世論調査はいろいろございますけれども、ほとんど大体その傾向は統一いたしております。産経の二月四日、田中更迭は支持しないというのが七五%、野上更迭は支持するというのが八一%、それから鈴木辞職を支持するというのが八七%、こうなっているんですよね。また、外務省の騒動で責任をだれが一番とるべきかというのに関して、世論は、鈴木と言っておるのが四七%、小泉と言っているのが三一%。小泉、国民は見識あるね、外にいても。それから野上八%、田中四%、こうなっているんですよ。
 これがすべてで、にもかかわらず、統一見解というのは、やれだれが言ったとか言わぬとか、田中外務大臣がうそをついたとか、特定の議員の影響力がなかったと書くから、いつまでたってもこの問題が解決しないんですよ。それを強弁しようと思っても、真実は一つ。それは総理の発言どおり、変な議員の変なことを聞くなと。それは言葉を返せば、変な議員が変なことを言うたからこうなった、こうなるんじゃないか。
 だから、これ以上これを申し上げませんが、二十日の審議は重要であります。これは当委員会として厳粛に取り上げていただきたい。だれを出すか出さぬかというのは、委員長、理事の権限ですけれどもね。
 ここで田中さんは出ると言っている。そして鈴木議員も、見識ある男だ、そして堂々と物の言える男です。それを外して官房長官や副長官でやるなんというようなことを言ったら、国民が許さぬよ。直ちに一五%ぐらいまた支持が下がるよ。私は強くこれを要請しておきたいと思います。
 津島さん、あなたはここで強行採決をした。あなたは良識ある人だ。やはり内心じくじたるものを感じたでしょう。それから、ここらの筆頭理事も、済まぬ済まぬ、国対の命令だ、約束をして三時間も四時間も待たせてと、こうやったんですよね。
 しかし、ここでけじめをつけてください。しっかりとした関係者を呼び、もちろん田中、鈴木、それプラス、そしてこの問題は、この重要な不景気の審議をもうここでやってしまう、私は、今言ったとおりでありますけれども、御異存はありませんか。
津島委員長 石井委員に申し上げます。
 今申された点については、今真剣に協議をいたしております。
 質問を続けてください。
石井(一)委員 私は総理を相当持ち上げているんだから、この件に対する個人的な見解を、ここで審議はしますよ、それであなたも出てこられると言っておるんだからいいんですけれども、ひとつお聞きしておいて、この問題を終えて次へ進みたいと思います。(小泉内閣総理大臣「質問は何」と呼ぶ)いやいや、私の意見に対して。
小泉内閣総理大臣 意見は意見として結構ですし、委員長を初め理事の方々、良識がありますから、いろいろ適切な判断をしていただけると思います。
石井(一)委員 田中外務大臣が更迭されたということですが、その理由は何なのですか。
小泉内閣総理大臣 これは、国会の審議を正常化したい、外務省内の問題で部下とのいさかいに余りエネルギーを費やすことなく、もっと外交という重要な問題にエネルギーを注がなきゃならない事態を考えまして、総合的に考えて、私はこのような措置を下したわけでございます。
石井(一)委員 更迭の理由が、国会を混乱させたと言いますが、私は、国会を混乱させたのは、当事者能力のないいわゆる官邸と、そして族議員の実力者のその圧力を排除できない皆さん方が行ったり来たりして、いつまでたっても結論が出なかったというのが理由であって、野党が審議を拒否したり、我々はいちゃもんをつけたりしたことは一回もございませんよ。いかにも、国会が混乱をしたというたら野党が審議を拒否したというふうにお考えになるかもわからぬが、少なくとも民主党は何でも反対じゃない。特に今の状況のときには、予算の審議は積極的にやります。審議を拒否するようなことはいたしません。今回、国会が混乱したのは、一に、政府内と、その当事者能力を欠如したからそうなったんだ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 この混乱の責任は私にあると思ったから、私が出て事態打開に取り組んだわけであります。
石井(一)委員 それならお伺いをしますが、この更迭の理由は何だったんですか。一国の国務大臣をやめさすにはそれなりの理由があるはずです。行政的な瑕疵があったとか、政治的な問題で引責を迫ったとか、あるいは道義的な問題だとか、あるでしょう。どういう理由でそうされたんですか。
小泉内閣総理大臣 国会の審議を早く正常化して、一日も早く補正予算を成立させなきゃならないということと、外務省内の問題で大臣と部下が争っていてもしようがない、エネルギーは外交本来の仕事に注ぐ体制を早く整えなきゃならないという観点も含めまして、総合的に私の責任で措置したわけであります。
石井(一)委員 国会の混乱は、政府内の統一見解がまとまらない混乱であります。野党に責任はございません。そして、第二の、外務省の中における混乱というのは、私よく存じませんけれども、要は政府内の不始末によってこういう問題が起こったわけであって、我が党なり他の野党の皆さんは、一刻たりとも補正予算をおくらすというふうな意思がなかった、このことを明快に申し上げておきたいと思います。
 しかし、それにしましても、引き継ぎが行われていないというのは、これは前代未聞だと思うんですよね。あなただって何回も閣僚をやっておられますし、皆さんもあれですけれども、何の引き継ぎもなくここに来たら、一体外交の継続性というのはどうなるんだろうか。外交は、一たんここで、田中さんのところでとまったままなのだろうか。
 これは一体どうなんですか、この引き継ぎの問題について。
川口国務大臣 さまざまな考え方があるとは思いますけれども、私は、けさというか昨日の時点で、田中前大臣に御連絡を、事務ベースで秘書を通じて申し上げまして、引き継ぎを申し上げたいというふうに言いました。
石井(一)委員 私が知っておりますのは、小泉総理が三日間外務大臣を兼務されまして、それから川口さんに引き継がれた。これは結構です。そこはできているんですよ。問題は、田中前外務大臣から小泉臨時代理に対する引き継ぎが行われておりません。更迭をした後、そこには何の行政的措置もない。
 私は、これは問題だなと思いまして、たまたま自民党顧問の松野頼三先生にお目にかかった。先生、こんなことはありましたかと。なかなか見識のあることを言われましたね。吉田総理のときに何回もあったよ、あの人はいつも大臣を首にして、それで兼務をした、けれども手続だけはちゃんとやったよと。これは前代未聞だと言っておられましたが。
 あなたは前外務大臣にやめてくれということを言って、彼女はあっけにとられて夜家へ帰った。その後、会ってないじゃないですか。それじゃ何の引き継ぎも行われてないんじゃないですか。いかがですか、総理。
小泉内閣総理大臣 引き継ぎが行われなければ、私は外務大臣兼任していませんよ。
石井(一)委員 そういう答弁は、それは官房長官が書類をつくって、それで、しかし、あなたたちが書類をつくって引き継ぎをやった時点は、田中さんは署名を拒否して家へ帰った、その間に起こっているんですよ。それは内閣の中まで入って検証をすることはしませんけれども、引き継ぎが起こっているなんということは、国民には理解できません。そこは非常に大きな問題が残っておる。そういうことを、田中さんだって引き継いでくれと言っているんですから、引き継がせてくれと言っているんですから。それは、あなたたちがこの大臣はだめだと思われたのかしらぬが、福田官房長官なんか、今度はいい大臣が来るなんて言うから、いかにも前の大臣は悪かったようなことを言われた。
 しかし、どうでもいいけれども、もうやって、遮断したまま今これ続けているじゃないか。それなら川口大臣は、前任者の認めない、あなたは認めるかしらぬけれども、底に完全に溝のあいた欠陥商品だ、こう言わざるを得ないんじゃないですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは、川口大臣が外務大臣に就任する際にも、田中前大臣とお会いしてよく御意見、御相談をしてくださいということで、川口大臣はそのとおり面会を申し込んで、今日に至っていると思います。
石井(一)委員 いや、だから、そんなことも言ってないし、そういう申し込みをしたけれども、向こうもやはりそれにこだわって、そして、九カ月の外務省に対する、改革に対する事務の引き継ぎが現実にできてないじゃないですか。こういうことは問題ですよ。
 中谷防衛庁長官が高知の自民党の県連大会で、外務省の対応は余りにもお粗末だ、外務次官の見送りもない、全職員への最後の訓示もない、お別れのいわゆる記者会見もない、事務引き継ぎの手続もないと。
 私だって、私は自治大臣をやりましたときに、次に引き継いでもらったのは野中広務さんですよ。仲よく座りまして、お互いにサインしまして、そして入り口では花束を贈ってもらって。これは当然ですよ。欠落しているじゃないですか。それは間違ったことは間違ったことで、強弁しなさんな。
小泉内閣総理大臣 それは時と場合によって違いますよ。私は、それぞれの役所によっても引き継ぎの方式は違うと思いますよ。私は、郵政大臣をやめたときも、たしか引き継ぎしなかったんじゃないかな。いろいろ引き継ぎの仕方はあると思いますよ、それは。
石井(一)委員 私は、次の川口大臣にも仕事をしやすくしたい。日本の外交というものは継続性を持つべきである。これほど重要な日本の国際的地位を問われておるときはないというときに、ささいなこのことで引き継ぎもできぬというふうなことは前代未聞、これほどの醜態はない。松野先生が言われておるとおり、吉田ワンマンでもそんなことはしなかった。
 あなたは、田中さんに対してまともなことを言えぬから、そういうことを言っているんじゃないですか。今からでも、川口さんと田中さんとあなたとで一遍やったらどうですか、外務省で。
小泉内閣総理大臣 もう既に引き継ぎといいますか、形式ではなく、実際に外交関係の仕事はしているわけですから、これから機会があれば、実質的にいろいろな御意見を聞くのはいいでしょう。引き継ぎは整然と行われているわけですから。
石井(一)委員 引き継ぎは整然と行われておりません。あなたから川口さんには整然と行われたかもわかりません。しかし、田中さんからあなたに対して、今の議論、だれが聞いても、整然と行われておらない。
 それじゃ、官房長官、記者会見でしょう。後でそれは聞きますけれども、書類で書いたというだけじゃないの。三人が集まって、重要な日本の外交のために話し合いをするのは当たり前じゃないの。それぐらいのことはやりなさいよ。川口さん、やってもらった方が、あなた、仕事しやすくなるでしょう。いかがですか。
川口国務大臣 私は、外務大臣を拝命いたしましたその夜に実は田中大臣にお電話を申し上げまして、ぜひお話を伺わせていただきたいと申し上げまして、田中前外務大臣は引き継ぎを……(発言する者あり)そうですね、申しわけありません、元です。ということでございましたので、先ほど、きのうと申しましたけれども、実際に御連絡が田中事務所についたのはけさだそうですけれども、引き継ぎをと明確に申し上げて、お電話を申し上げております。
 引き継ぎが何であるかということは、組織によりまして、紙をつくるところもありますし、紙がないところもありますし、さまざまございますので、私は、田中大臣とお話をさせていただく時間が早く設定できるといいと思っております。
石井(一)委員 今の答弁のようなのを言語明瞭、意味不明瞭というんですよ。要するに何を言っておるかわからぬ。私は、あなたは要求して、引き継ぎをして教えてくださいと言ったんだから、それをやってもろた方がいいでしょうと聞いているんですよ。だから三人でおやりなさいと。そうしなきゃ日本の外交というものの権威がなくなっちゃいますよ。私は強くこれを要望して、次に行きたいと思います。
 特定の政治家と官僚が結びついて独断で外交交渉を進めるということは、大変な国益を阻害することになると思うのでありますが、最近、日ロ交渉、北方領土の返還において、私は国益を損ねる大きな動きが出てきておるというふうに感じます。北方領土はこれまで四島一括返還論を主張しておったのですが、最近、二島先行返還論、歯舞、色丹の返還と国後、択捉の帰属の問題を別々にして同時並行的にやる。しかし、それは、ある人はゼロより二の方がいいじゃないかと言いますが、そうすれば潜在主権のある我が国の二島を切り離すことにもなってしまう危険性がある。
 ここへ入るということは、過去の外交の積み重ねを見てもまことに重要な問題だというふうに思うんですけれども、これを決定したのが退陣直前の森総理ですよ。イルクーツクの森・プーチン会談でこれを決めた。そしてその後、APECにおいて、総理、あなたも森総理のその路線を継承するというふうなことをプーチンさんとお話しになったというふうに報道されておりますが、いずれにしても、この問題を最初に交渉したのが鈴木宗男議員であります。鈴木宗男議員は、一昨年十二月、親書を携えて訪ソをいたしました。当時の安全保障会議事務局長、現在の外務大臣であるイワノフ氏と会見をし、そして、そこにおった東郷欧亜局長なり丹波ロシア局長を退席させてさしで交渉した、こういう経過があるのであります。
 私は、特定の議員に親書を渡し、そして国益を、最も大きな影響を与えるというような、このような重要な問題を、外交権はもちろん憲法七十三条で総理そのもの、内閣そのものです。こういうことをやっていいのか。今の事態が非常に悪化してきております、日ロ関係において。このことについてどういうお考えを持っておられますか。
小泉内閣総理大臣 日ロ交渉におきまして、四島の帰属を明確にして平和条約を締結するという方針に全く変更はありません。
石井(一)委員 だから、今私が前段申しましたようなことが起こっておりますために、今ロシアでどういうことが起こっていますか。
 あなたが、北方領土の日の七日、四島返還の方針であるということを表明したところ、直ちにロシアの下院では、外務大臣を招致して、二島先行の議論をやるだけでも許さぬ、ドミトリー・ロゴジン国際委員長は、こういうふうな勝手なことを言うのなら一島たりとも返還しないとの強硬路線に転じた。下院は三月に領土問題をめぐる公聴会を開いて、領土返還反対の声明を出す。ロゴジン氏は、日本人のメンタリティーは理解しがたい、日本は戦争に負けて領土を戦勝国に渡したのだ、日本が愚かなことを言い続けるならロシアも国内世論のために同じような発言を行うと領土問題を門前払いした、こういう事態にまで事態が悪化し、発展してきておるんですよ。
 あなたは今四島なんてここで言っている悠長な状態じゃない。ある種、今の関係というものはどういうふうに動いているか、お答えいただきたい。
小泉内閣総理大臣 ロシアの国会議員もいろいろなことを言うでしょう。
 私はイワノフ外相と会談しましたよ。今の方向で進めていこう、平和条約を締結すれば日ロの関係は発展的に広がる。もちろん、四島、北方領土の帰属を明確にして平和条約を締結する、そういう中でいろいろ議論を進めていきましょうと。
 それはいろいろな議論を言いますよ。ロシアと日本の立場は違うから交渉なんじゃないですか。合わせる必要はないですよ。
石井(一)委員 あなたの言うようにいけばいいですが、相手も相当なものですね。
 私が憂慮いたしておりますことは、このことによってすべてがぶち壊しになってしまうのではないか。この間イワノフ外務大臣が来られましたときにも、鈴木宗男君、議員は――済みません、後輩ですからいつもそういう言葉を使うのですが、川口外務大臣と、正規の外交権を持っておる外務大臣と会う前に二回会っていますよ、森さんと一緒に。
 いずれにしたって、このような事態。そこで、私が申し上げたいのは、鈴木議員もなかなか精力的に動いているんだなというふうに思うんですけれども、ここに、きょう私、外務省で調べさせたところ、ここ三年間で約三十回外国へ行っておる。これがほとんどロシアとアフリカ、それからアフガニスタン周辺ですね。
 彼はアフリカの議員連盟の会長を十六したり、あるいは、今言ったように、ロシアへ行ったらそれだけのことをやったりしながらやっているが、驚くなかれ、これで八回ほど政府が親書を出しているんですよね。親書を出しておるのも外務省のところに書いてありますから、一々、時間がありませんので言いませんけれども、平成十年のイスラエル、パレスチナ、平成十一年のウガンダ、ケニア、タンザニア、平成十二年のモザンビーク、そして平成十二年のロシア。
 一番問題は、平成十二年十二月二十五日から二十六日の間にロシアへ行っている。そして、欧亜局長やロシア大使をほうり出してテタテ、テタテというのは一対一にしてくれ、こういう会談をやってこういうことを決めた。その後も、平成十三年十月にはウズベキスタンへ行っている。その後また、平成十四年、ロシア、タジキスタンへ行っている。
 こういうことが外務省を鈴木劇場にするんですよ。政府の責任ですよ。親書を八回も九回も出して、これほどの重要な国益の問題を、力があるとしても一議員にさすということは、あなたはこれはまともだと思いますか、小泉総理。
小泉内閣総理大臣 それは、与野党議員が行く場合に親書を出す場合があるでしょう。そういう際に、どこの国と一番親しい人脈を持っているかというのは議員によって違います。その時点で適切かどうか判断すべき問題だと思っております。
石井(一)委員 しかし、八回も親書を出し、まあ、アフリカへ行けばODAに絡む利権の問題もあるでしょう。何かアフリカでは、議員の名前のついた橋か学校か井戸か何かあるというようなことも聞いた。きょうは時間がもったいないからそんなこと一々追いませんけれどもね。
 アフガニスタンに対しては、今後すごい経済援助というふうなものが予想されておるというふうな状況。ロシアについては、ロシアの議員が何言っても勝手だというのは、あなたはそういうことを言われますけれども、こういうことをしたら外交交渉をこじらせますよ。どれだけ先人が、鳩山一郎の時代から、このことについて田中角栄にしても外交を積み重ねてきたのか。ある軽率な二島先行論というふうなことから、それも激高さすというようなことが起こっておりかねない。
 そこで、外務省に佐藤優という外務官僚がいる。これがほとんどロシアへ行くのにも同行をし、今は主任分析官ということなんだが、現実には鈴木事務所へもう入り浸りで、そこで勤務しておる。外務省では、もう機密費も旅費や経費の使いぶりも自由である。
 そして、さっき申しました、その重要な会見にはロシアの大使も東欧局長もほうり出して、通訳として彼がそこへ付き添うておるという、こういう事実があるかどうかだけ、イエスかノーかだけひとつお答えをいただきたいと思います。
小町政府参考人 お答えいたします。
 佐藤主任分析官は、現在、国際情報局におきまして、特定分野の情報分析機能を設けるために設けられた役職であります、今先生御指摘の主任分析官というポストについております。具体的な業務としては、分析全般に関すること、ロシア、中央アジア等の内外政に関する情報分析を行っております。
 それから、当佐藤主任分析官は、職務の一環として、鈴木議員のロシア、中央アジア等への出張に当たって、その時々の必要に応じて、通訳を含む必要な支援を行うために同行することがございます。今の、一昨年十二月の会談、イワノフ安保会議事務局長との会談に際しましては、先方の要請によりテタテト、小人数ということで、佐藤分析官が通訳として同席した、こういうことでございます。
石井(一)委員 これはゆゆしい問題だと思うんですよ。外務省を私物化し、そして議員が外国を訪問するのに、それが通訳官であれ何であれ同行し、その費用は一体どこから出ておるのか。これはいろいろな問題がありますが、時間がございませんので。
 きょう、私、外務省から、過去、鈴木議員の三十六回の外遊、そのうち八回の親書を携えた外交交渉、このリストがございます。
 この中で、彼はほかのところへは行かないと思いますが、ロシアの関係だったらどこへでも行く、相当な人脈も持っている、日本のある意味ではいい外交官ですがね。だから、外交官プロパーで仕事をしてくれたらいいんですけれども、それが個人の秘書のようなものになり、そして昼も夜も一緒におり、こういうことになってくると公私混同も甚だしいわけですが、この三十六回の鈴木議員の外遊の中で、彼が同行した旅はどれとどれであったか、このことについて後ほど、今すぐ答えが出る、簡単に出るんなら言うてください。どれだけこれは同行しているのかということをお答えいただきたい。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 まず第一に、佐藤主任分析官が鈴木議員の秘書をしているという点でございますけれども、これは出勤簿等でも明らかなとおり、佐藤主任分析官は、出張または休暇の際を除きまして、外務省に毎日出勤し、外務省職員としての職務を行っております。鈴木議員の秘書をしているとのうわさがあれば、それは事実に反しております。
 今の二つ目の同行の問題でございます。三十六回と今先生がおっしゃいました鈴木議員の外国訪問のうち、佐藤分析官が同行したのは約半分でございます。
石井(一)委員 総理、外務大臣、お聞きになりましたね。私は、これは、あと何時間でもやる資料を持っていますが、次回に譲りたいと思います。
 ODAで、本年一〇%カットしまして九千百六億、すごいODAの金が計上されておるわけですね。最近、きのう、おととい、ホノルルの日本総領事館で、ODAの渡切費が、庁内のクリーニングだとか植木を買ったとか、その他ずっと細かいものがありますよ。これも言うだけの時間がありませんが、これは明細から何から全部ここへ来ている。日本のオンブズマンが行って調べてきている。
 私は、何かきょう外務省のコメントを見ていたら、これは正当に公金で使ったんだと言うんですけれども、どうしてもわからぬのは、ODAがなぜアメリカで使えるのか。これはイタリーもフランスも使っておるようですが。こういうことがあったんなら、さっき草の根資金なんという問題もこれにありましたけれども、アフガニスタンの復興のことについてだって、国内で使ったらいかぬとツルの一声でとまるのが、そんなものがとまるというほど筋を立ててやるのなら、ODAの渡切費がなぜアメリカのホノルルやらヨーロッパで使われるのか。それはまやかしですよ。
 私は今、あなたの釈明は要らぬ。(発言する者あり)それは時間がかかるんだから、君。それでは、簡単にやってください。
小町政府参考人 なるべく簡単に申し上げます。
 ODAに関連いたしまして、行政経費をODAの実績に計上するということについては、一九八二年にOECDの開発援助委員会で合意を見ております。自来、外務省は、ほかの援助国と同じように、在外公館のうちで、ODAの行政経費を在外公館に関連して報告をしてきております。
 その際に、専ら在外公館で外交事務に専念する職員の中で、ODAといいますか経済協力関係に従事する人間の割合を算定いたしまして、その割合をすべての在外公館に一律に適用しております。こうした事情を踏まえまして……(発言する者あり)簡単に申し上げます。したがって、一律に適用しておりますので、ホノルル総領事館の渡切費につきましても、ODA分と非ODA分の両方が支出されております。
 なお、ホノルルにおきましては、日米政府間の援助政策協議が定期的に開かれております。ほかの援助国も同じように行政経費をODAとして報告していることは、申し上げたとおりでございます。渡切費は、平成十四年度予算においては計上していないことは御承知のとおりでございます。
 いずれにしましても、適切な執行に努めているところでございます。
石井(一)委員 だから、今の答弁を聞いて、これも良識ある総理、外務大臣、おかしいと思いませんか。政府開発援助資金といって、ちゃんとその国、ここへ書いてありますけれども、何の国でと書いてある。そこへ計上されて、渡切費とそうでなくで、それは、この金銭出納帳を見たら、そこで使われること自体おかしい。こういうことは、川口外務大臣、きっちりと処理されなければいかぬ問題ですよ。答弁は要りません。今、就任されたところですから。私は、注文をつけておるのだから、何カ月かしたらまた聞くから、そのときにしっかりと答えるようにしてください。
 外交機密費といいますか、内閣官房の機密費について、先ほども議論が出ておりました。私もこのことを余り触れたくないんですよね。私も与党におりましたし、事情をよくわかっていますよ。国対で苦労したこともありますよ。
 ただ、聖域なき構造改革と言われるのなら、これまでの森内閣までだったら、自民党内閣としてそれは認められるでしょう。しかし、小泉さん、あなたの内閣ではこれをけじめをつけていただきたい。くどくど申し上げません。国民に申し上げるのも気の毒な気持ちがする。
 外務省に計上をされる金、今年大分少なくなったけれども、大体七十億。そのうちの二十億は、外務省に計上をされて官邸へ納入されるわけですよ。そして、それは領収書の要らぬ金ということで使われるということは、これは常識ですよ。政府は上納を否定し続けられますけれども。
 福田さん、もうこういうことで、これ以上危ないこと言うたら首飛ぶよ、虚偽の発言で。通る時期と通らぬ時期とがあるんだ。あなたは森内閣の官房長官だったんだけれども、今は小泉内閣の官房長官だ。腹を据えて答弁しなさい。
 国家機密の隠れみのに、虚偽であるこの金を隠して、そして湯水のように使い、しかも、去年出てきた松尾元室長の姿。競馬馬を買うた五千六百万以外、あとまだベールに包まれたままですよ。
 だから、私も政治家として、外交機密費は要ると思う。スパイをせいとは言わぬが、領収書の出せない外交官の苦しい仕事もあると思う。しかしながら、この金が、一室長が要求をすることによって、競馬馬が買え、マンションが買え、その他ができてというふうな状況にまで乱れたら、ここは確実にやらなければいかぬ。
 私は、外務大臣に、これは外務省に計上されておる金ですからね、あなたは外務省改革をやるんだといって、一番にうたわれておるのが透明性と言っておる。このことについて、透明にしていただけますか。私の質問は簡単な質問なんです。役所から持ってきた紙は離して、日常会話でやりましょうよ。あなたは透明性ということを言われて、こういう外交機密費がある場合に、これを透明にしますか、イエスかノーかと聞いているんです。どうぞ。
川口国務大臣 外務省改革というのが大変に重要でございます。私は、透明性、スピード、それから実効性という三つの言葉をキーワードにさせていただいております。
 機密費につきましては、外務省の報償費につきましては、外務省は既に、十万円以上の支出につきまして決裁ということに、副大臣以上の決裁ということになっております。
 それから、官邸への上納の問題でございますけれども、これにつきましては、歴代の外務大臣もおっしゃっていますとおり、そういうことはないということでございますので、私はそういうふうに思っております。
石井(一)委員 そう言われておるのとそうであるのと違うということを言っておられたようですが、本当に国民の気持ちになっていただきたい。
 裏金四十年、国家のうそ、一九六〇年ごろ日韓の交渉をやったりなんかして、その後これが定着化しておるのであり、私は、これは絶対なしにせよとは言いませんよ。しかし、もっと透明にしなければ、不透明な部分が多過ぎるということを申し上げておるわけであって、今ここで官房長官に答弁を求めても、これまでと同じようなことを今は言わざるを得ないでしょうけれども、発想の転換、同じようにその場所に座っておっても、この内閣は改革をするんだという意気込みを、官房長官、持ってくださいね。
 それから、塩川元官房長官、あなたのこの忘れましたというのがあるわけです。私も、そのときここで聞いておったんや。はあ、塩川さんやから貫禄ある、塩じいやからあれで通るんやなと。僕らがそこでそれをやったとしたら、もう一発で翌日首やね。
 あのとき、新聞社は、あの古川メモが出てきて、官房長官経験者全部に聞いたんよ。私、たくさんその人たちから聞いた。そこで口を開いてくれたのが塩川さんと野坂浩賢さんやった。その記事はもうここに全部ありますよ。産経から読売から、そのとき、あなたの写真入りで、野坂浩賢さんの写真入りでこうありますよ。金庫にどうして入ったとか、そのときの首席内閣参事官、当時は古川貞二郎さんであったが、これは全部細かく書いてある。札束がどういうふうに入っていてどうのこうのというのも、微に入り細に入りここに書いてある。それを忘れましたと。
 まあ、あなたが言われたときには、気安いつもりで言われた。それから三カ月後、それこそ図らずも財務相の任命を受けられたんじゃないかと思うんですが、いや、そうじゃない、やはりもともとからあなたを小泉さんはねらっておったのかもしれませんよ。そのことは別として、これは偽証ですよ。公の場であなたはそういうことを言っておるわけですよ。もし答えられないことであれば、そういうことを言うべきでない。他の官房長官が慎んだように、わからぬとか知らぬとかそれは言えないと言うべきである。あなたは、堂々とテレビやマスコミでそれを全部言われて、そうして、ここで知りませんということで通っておる。
 私、きのう、あなたはG7に行かれて、一%来年成長する、こんなことを言うていいのかなと、今の経済の事情で。しかし、この人、来年またG7に行くかどうかわからぬが、行って、忘れましたと言うのかなと。それは国際社会では通じませんよ。そのことだけを申し上げておいて、答弁は求めません。
 私は、野党精神旺盛で何でも暴いていいというような気持ちで言っておりません。しかし、外務省でこれだけの不祥事が起こり、そして陰に隠れた部分がどれだけ大きいか。そして、それに挑戦をした田中眞紀子前大臣に対する支持が高かったのもそれなんですね。それをこの際、小泉内閣であれば、明らかにしてもらいたい。川口外務大臣におかれては、川口さんで外務省改革ができるかという質問に対しては、できると答えたのは一七%。世論調査ですから当てにならぬかもわかりませんよ。できないと答えたのが七五%なんですよ。田中大臣のときはそれが逆だったんですよ。そこを考えてもらいたい。
 だから、今、私が、ODAの乱脈きわまるその金の流れ、外交機密費という、この国は世界のなぞだということを言われておる、こんな国どこにあるのかと言われている、そういう外務省の体質というものを、透明性と言われるんなら、しっかりと出していただきたいということを強く要望をしておきたいと思います。
 さて、時間が限られてまいりました。一内閣一閣僚制ということを言われましたが、田中大臣の更迭によってこの原則は崩れました。しかし、国民の中には、田中さんがやめるんなら、もっとほかにやめてもらいたい人もたくさんいるんじゃないかな、こういう声はあると思うのですが、きょうは時間がありませんので、少し早口に言います。
 そこで、まず武部農林大臣、あなたが今、国民注視の的であなたの動向が見られているということはわかりますね。私、いろいろ調べましたが、任期途中で辞任した大臣、たくさんあるのですよ。例えば、三塚大蔵大臣。大蔵省の金融検査部が査定に手心を加えて接待を受けたということで辞任したんですよ。それから額賀防衛庁長官、防衛装備のいわゆる背任事件でこれまた責任をとっておるわけです。あなたが今抱えておる問題というのは国民的な広がりを持っておるんですね。
 私は先週、北海道から来られた農民の人に会いましたが、涙を流して訴えられたね、つらい、苦しいと。一頭の牛を飼うのにどれだけ努力をしたか、それがこんな状態になってしまった、農民には何の責任もありませんよ、しかし、政府はだれが責任をとってくれるんですか、こういう悲痛な叫びがあるんです。
 エイズの問題でも、引責をした人もたくさんあります。過去の例を全部見ても、これは今や深刻な状態になっておる。
 BSE問題調査検討委員会において御検討いただいておるのでその結論を待ちたいということをあなたは四十六回、国会で答えておるということを我が党の専門家が言っておるが、そのときになってやめるのでは遅いですよ。あなたは将来ある、相当腹の据わった政治家だ。こんなところでもじもじするんでなしに、それまでに処理をつけるべきであると思いますが、あなた、いかがですか。
武部国務大臣 先般、立法府で信任を得たわけでありますが、一連の経緯については真摯に受けとめつつ、謙虚な気持ちで職務を遂行してまいりたい、さように考えております。
 BSE問題につきましては、初期段階で混乱がございました。私はそのときに、危機管理意識の希薄さに正直驚いた次第でございます。このことについては、行政上構造的な問題があるということを痛感いたしまして、これは政治主導で徹底究明をしなければならない、そういう思いで、今、間断なく対策を講じつつある次第でございます。
 過去の検証、科学的な知見というものが私はやはり必要だ、このように思っておりまして、したがいまして、役所間では当初抵抗がありましたけれども、今第三者による調査検討委員会を設置いたしまして、そこでいろいろ御検討いただいているわけでございます。その御検討いただいた報告をいただいて、いかにして二度とこういう事態にならないような体制をつくるか、あるいはまた影響を受けている方々に対する関連対策、原因等の徹底究明、このことに全力を尽くすのが私の最大の責務、こう心得て、今頑張っている次第でございます。
石井(一)委員 一々御答弁をいただいておりますと時間がなくなってまいりますが、雪印食品は大変なことをやったと思いますが、業界の皆さんの声を聞いていると、これだけじゃないんだ、スケープゴートだ、どこでもやっているという声もある。今保証しておるのだって、肉も脂も何が入っておるかわからぬというようなことを言っておる。これぐらい大きな問題を抱えているものはない。
 私は、これ以上ここであなたに辞任を迫りませんが、あなたの勇断を求めておきたいと思います。
 それから、時間がありませんので、私、問題点を指摘させていただきたいと思いますが、何も言うことがすべて閣僚として不適任だとは言っておりません。しかし、田中さんが更迭されるんなら、もっと行政的な、政治的な責任を感じてもらわないかぬ閣僚はたくさんおられるんじゃないか。
 アメリカのフォーブスという経済誌が「タイムズ・アップ、ジャパン」という記事を最近出しております。日本経済は時間切れだ、日本経済は十二年間の低迷を経て完全な危機に陥った、多数の経済指数から見て一九三〇年代の大恐慌期の米国だ、小泉政権は九カ月たってもほとんど成果を上げていないと。
 これは、塩川大臣、そして特に竹中大臣、柳澤大臣の責任というものは大きいと思う。三月危機だどうだと言われておるけれども、これからやってくる経済危機に対して、政治は結果責任ですよ、私は、しっかりした責任を感じていただきたい。
 竹中さんは、一九八九年から九六年まで、住民票を一、二、三、四、五、六、七、八回、アメリカと日本、移した。なぜ移したのか。これは節税だと言っておられるが、一月一日に日本にそれがなければ節税できる、課税されない。一学者としてはそういうことでもいいかもしらぬけれども、閣僚としてはそれは許されませんよ。どれだけ苦しんでいる国民があるのかということを考えたとき、それは節税でなく脱税か逃税だ。私は、あなたの猛省を求めるとともに、大きな経済の責任を持っておられるんですから、本当はこれは良心に従って返却されるかどこかの貧しいところへ寄附されるということをあえて進んで申し上げておきたいと思います。
 柳澤金融大臣においても――それは答弁はわかっておるのよ、わかっているから、後で、意見があったら言うていただいても結構ですけれども、要するに言いわけになるんだから。
 それから柳澤金融大臣、私は道義的な問題は申し上げませんけれども、あなたはその前にも金融再生委員長か何かやっていた。そうすれば、この不良債権を初めとした今の金融危機の問題の総責任者だ。答弁は長いし流暢ですよ、しかし結果は何も出てないじゃないの。不良債権はますますふえているじゃないか。四大銀行の株だって十五兆円も下がっている。皆、震え上がっておるという状態になっておるんですよ。ここで議論をするんじゃない、結果を出してくれ、そういうことを申し上げておきたいと思います。
 塩川大臣は、官房機密費に関して十分なアドバイスを川口さんに上げていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 次に坂口厚生労働大臣、私、あなたはいい政治家だと思って見ていたんですよ。しかし、最近、医師会やらそれから健康保険政治連盟、それから薬品メーカー、あなた、平成十一年はほとんど政治資金を集めてなかったんだね。しかし、十二年以降急激にこれがふえてきておる。いや、首を振っているけれども、平成十二年は一挙に一千四百万円の献金を集めておる。その中でひときわ目を引くのが、日本医師政治連盟三百万、健康保険政治連盟百万、医療団体や薬品メーカーがほとんどだよ。これは去年の報告ですけれども、ことし、在任中、これはまだやっておられるのかな。
 あなたは今知らぬと言われるかもわからぬが、一遍よくチェックしてください。あなたは公明党の代表で、クリーンな政治家の象徴だ。東海の比例やったら選挙の金も要らへん。それだけのことをやっていて、毎年一兆円一兆円ふえておるこの医療費に対して――まあ自民党の厚生族というのはすごいですよ。それは小泉さんだって厚生族ですから、医師会一千万円とか、それから歯科医師会、神奈川県歯科医師会三百万円とかいってずらっと並んでいる。
 だから、要するに、丹羽医療基本問題調査会長を初め、これらの人々が、こういう献金を受け取りながら医療行政を仕切るというところに大変大きな問題があるということを国民が考えるんじゃないですか。患者の痛みに比べて、医師会とかあるいは業界の切り込みというものが甚だ甘い。私は、この点に対しても、今現役中にどういう政治献金を受けておるかということと同時に、猛省を促しておきたいと思います。
 それから、あと五分です。石原行革大臣、特殊法人の整理合理化計画、これは看板のかけかえと先送り。財政再建もなければ人員の削減もなかった。十二月二十五日に決めた公務員制度改革大綱でも、キャリア制度を温存し、天下りをまだやりやすくし、そうして国家公務員の、百十万という下で働いておる人々の、協議もせずに一挙にこれを決めてしまっている。大変な抗議が来ていますがね。
 私は、あなたはサンドバッグになってくれと、自民党の若手として最も嘱望されてこの職についたはずである。今やぶら下がっておるコンニャクみたいなものと違うか。まさに……(発言する者あり)当たり前よ。何を、結果を見ずして、これでは、小泉さんだってそういう気持ちを持っておると思います。(発言する者あり)いやいや。それだったら、この公務員の改革と行政改革をどうしたんかということを出せ、答え。(発言する者あり)静かにせい。おれが何が悪いんだよ。何を言わんとしているんだよ。静かにせい。
 さて、時間がありません。官房長官、あなたの留守に引き継ぎや機密費のことを申し上げましたが、これまでどおりの官僚答弁は要りませんが、さっき申しましたように、しっかりと調べていただきたいと思います。
 まあ明朝、私の時間がございますので、明朝、議論を詰めさせていただいて、きょうはこの程度で終わらせていただきたいと思います。
津島委員長 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.