衆議院

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第15号 平成14年2月21日(木曜日)

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平成十四年二月二十一日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 城島 正光君
   理事 原口 一博君 理事 松本 剛明君
   理事 井上 義久君
      伊藤信太郎君    伊吹 文明君
      衛藤征士郎君    小此木八郎君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      上川 陽子君    亀井 善之君
      倉田 雅年君    栗原 博久君
      小坂 憲次君    小島 敏男君
      高鳥  修君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    西川 京子君
      野田 聖子君    葉梨 信行君
      萩野 浩基君    林 省之介君
      菱田 嘉明君    細田 博之君
      松島みどり君    三塚  博君
      宮本 一三君    持永 和見君
      八代 英太君    山本 幸三君
     吉田六左エ門君    阿久津幸彦君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      池田 元久君    岩國 哲人君
      上田 清司君    鎌田さゆり君
      河村たかし君    桑原  豊君
      筒井 信隆君    中沢 健次君
      中村 哲治君    長妻  昭君
      野田 佳彦君    松野 頼久君
      三井 辨雄君    青山 二三君
      赤松 正雄君    漆原 良夫君
      一川 保夫君    達増 拓也君
      中井  洽君    中塚 一宏君
      木島日出夫君    佐々木憲昭君
      瀬古由起子君    辻元 清美君
      東門美津子君    保坂 展人君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣府副大臣       熊代 昭彦君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   法務副大臣        横内 正明君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   経済産業大臣政務官    松 あきら君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            重家 俊範君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房長) 風岡 典之君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   政府参考人
   (国際協力銀行副総裁)  田波 耕治君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十一日
 辞任         補欠選任
  石川 要三君     西川 京子君
  栗原 博久君     松島みどり君
  小坂 憲次君     林 省之介君
  野田 聖子君     伊藤信太郎君
  葉梨 信行君     小此木八郎君
  萩野 浩基君     倉田 雅年君
  宮本 一三君     上川 陽子君
  八代 英太君     菱田 嘉明君
  池田 元久君     中村 哲治君
  枝野 幸男君     長妻  昭君
  河村たかし君     阿久津幸彦君
  中沢 健次君     三井 辨雄君
  野田 佳彦君     鎌田さゆり君
  松野 頼久君     上田 清司君
  青山 二三君     漆原 良夫君
  中塚 一宏君     一川 保夫君
  佐々木憲昭君     瀬古由起子君
  山口 富男君     木島日出夫君
  辻元 清美君     東門美津子君
  横光 克彦君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     野田 聖子君
  小此木八郎君     葉梨 信行君
  上川 陽子君     山本 幸三君
  倉田 雅年君     萩野 浩基君
  西川 京子君     石川 要三君
  林 省之介君     小坂 憲次君
  菱田 嘉明君     八代 英太君
  松島みどり君    吉田六左エ門君
  阿久津幸彦君     河村たかし君
  上田 清司君     松野 頼久君
  鎌田さゆり君     野田 佳彦君
  中村 哲治君     池田 元久君
  長妻  昭君     枝野 幸男君
  三井 辨雄君     桑原  豊君
  漆原 良夫君     青山 二三君
  一川 保夫君     中塚 一宏君
  木島日出夫君     山口 富男君
  瀬古由起子君     佐々木憲昭君
  東門美津子君     辻元 清美君
  保坂 展人君     横光 克彦君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 幸三君     宮本 一三君
 吉田六左エ門君     栗原 博久君
  桑原  豊君     中沢 健次君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、外務省大臣官房長小町恭士君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、外務省中東アフリカ局長重家俊範君、外務省経済協力局長西田恒夫君、国土交通省大臣官房長風岡典之君、海上保安庁長官縄野克彦君、国際協力銀行副総裁田波耕治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。漆原良夫君。
漆原委員 おはようございます。公明党の漆原でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず最初に、司法改革についてお尋ね申し上げたいんですが、昨年、内閣では、内閣総理大臣を本部長とする司法制度改革推進本部を発足させました。そこで、まず、この司法制度改革の意義と実行の決意について官房長官にお伺いしたい、こう思います。よろしくお願いします。
福田国務大臣 委員御指摘のとおり、昨年の十二月に、内閣に、総理大臣を本部長といたしまして全閣僚を構成員といたします司法制度改革推進本部を設置いたしました。この推進本部を設置しましたのは、司法制度改革というものが、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会への転換に不可欠な、そしてまた重要かつ緊急の課題である、こういうような認識を持ちまして、国民の視点から司法の基本的制度を抜本的に見直す、こういうことを目指しております。大変大きな改革であると思っております。
 今後、そういうことでございますので、総理大臣のリーダーシップのもとに、政府全体で、この新しい時代にふさわしい、国民に身近で信頼される司法制度の構築に全力を挙げてまいりたい、このように考えているところでございます。
漆原委員 本年の一月三日付の信濃毎日新聞の朝刊に、この司法制度改革に関する大変ショッキングなアンケート調査結果が載っていたわけでございます。
 その内容は二点ありまして、第一点は、司法制度改革が必要だと考えている人は八〇%にも上っておりますが、実際に、この司法制度改革審議会が昨年六月の意見書で示した改革の内容について、「あまり知らない」と答えた方が四九%、「全く知らない」二五%、七四%の人が、既に準備が始まっているこの司法制度改革の内容を知らない、こう答えていることでございます。
 二点目は、裁判員の制度について、これは国民参加ということで大変重要な制度でございますが、裁判員の制度については六三%の人が必要だというふうに言っておりますが、自分が裁判員に選ばれた場合には、「できればやりたくない」三九%、それから「絶対にやりたくない」一七%、半数を超える五六%の人がやりたくないというふうに答えていることなんですね。
 この世論調査の結果に対して推進本部はどういうお考えを持っているか、お聞かせ願いたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃいますとおり、司法制度改革というものが具体的にこれから進もうとして、いろいろな内容が既に明らかになって、方針が明らかになっておりますにもかかわらず、一般の国民の方が必ずしもよくそのことを承知していらっしゃらないということは、私も、ほかのメディアの調査等にも出ておりまして、残念に思っております。
 しかし、考えてみますと、司法制度というのは、ほかの改革、例えば税制とか政治とか、そういうものの改革に比べますと、残念ながら、どちらかといえば一般国民のふだんの生活に直接かかわるという方はごく一部でございますので、自分に関係がないと思う方が多いのかもしれないというふうにも思うわけでございます。
 しかし、国民の御支持がなければこれだけの大改革は実行できないわけでございますので、できるだけ多くの方に御理解をいただくように、今後も一生懸命PRに努めたいというふうに思っております。私も、微力でございますが、あらゆる機会をとらえてそのようなお話をしたり、また、求めに応じてメディアで発言をしたり、いろいろなことをこれからしていきたいというふうに思いまして、できるだけ多くの方の御理解をいただきましてこの改革が順調に進みますように努力したいと存じます。
漆原委員 今大臣おっしゃったとおり、国民の支持がなければ、国民の理解がなければ司法制度改革はうまくいかない、そのとおりだと思っております。
 そこで、二つ質問をします。
 現在進められている推進本部の議論や作業が国民にオープンなものになっているのかどうか、また、国民の意見が反映されるようになっているのかどうか、この点が第一点と、もう一つは、やはり新聞とか雑誌、テレビなどのメディアを活用することが大事だと思うんですね。そういう意味で、新聞、テレビ等のメディアを活用した広報活動については今どのように考えておられるのか、二点をお尋ねしたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま二点について御質問でございます。
 まず、透明性の確保の問題でございます。
 この改革を進めるに当たりまして、国民の意見を十分に反映することができるようにするとともに、その検討過程の透明性を確保するということが大変重要であるという認識を持っております。
 私どもの推進本部におきましては、重要な事項について審議し、本部長に意見を述べることを任務とする顧問会議を設置しております。また、事務局と一体となって立法等の作業を行うための検討会、これは十ございますけれども、十の検討会を開催いたしまして、その構成員も広く国民各層の意見が反映されるようなものにしているわけでございます。
 また、顧問会議や検討会につきまして、報道機関の傍聴を認めております。また、その審議の内容につきましては、議事概要、それから議事録をインターネット等で一般に公開するなどいたしまして、検討過程の透明性の確保に努めているところでございます。
 それから、二点目の御質問でございます。
 この点につきましては、私どもも、広報の重要性、十分認識しているところでございます。私ども推進本部におきましては、今後、内閣府の協力を得まして、新聞、テレビ等を利用いたしました政府広報の活用を初めとする広報活動を積極的に進めてまいりたいと考えております。
 いろいろ御支援を願いたいと思います。
漆原委員 最後に、官房長官にお尋ねします。
 この司法制度改革の実現には、法曹人口の大幅な増員だとか、法科大学院の設立、あるいは法律扶助、国選弁護の拡充、大きな財政的支出が必要となります。私は、二十一世紀の日本を支える司法制度の構築のために、この際、大胆な財政的措置を講ずるべきと考えておりますが、御所見はいかがでございましょうか。
福田国務大臣 まさに大改革でございまして、その中には人的な増強というものが極めて大事なことでございますので、当然財政的な必要度も高まるわけでございます。そういう面におきましては十分な措置を行っていきたい、このように考えております。
 なお、今、その前の御質問で御指摘のありました、国民の関心が薄いということにつきましては、これは確かに、司法については、一般生活を送る上に余りなじみがないというか、関係が薄いという部分がございますので、それはやむを得ないのかもしれません。しかし、ただいま山崎事務局長から御説明しましたように、その会議を自由にマスメディアが傍聴できるようになっているわけですけれども、どうも、見ておりますと、メディアの方も余り関心を持っていないような感じがするんですね。そうしますと、やはり国民に対するPRというか、そういうものも不足するというか、何をやっているかということも広がらないわけでございますので、やはりメディアにも少し関心を持っていただいて、そして広く国民に何が議論されているかということを宣伝していただきたい、こんなふうに思っております。
漆原委員 官房長官、事務局長、大変ありがとうございました。どうぞ、御退席いただいて結構でございます。どうも、忙しいところ、ありがとうございました。
 続きまして、メディアによる人権侵害とその救済についてお尋ねしたいと思いますが、二十一世紀は人権の世紀と言われております。私ども公明党は、二十一世紀こそ個人が個人として最大限に尊重される社会にしたい。私は、このような観点から、メディアによる人権侵害とその救済方法についてお尋ね申し上げます。
 今日のマスメディアの著しい発展には、明と暗の両面があります。すなわち、メディアによる正確な、またスピーディーな情報の提供は、国民の知る権利、表現の自由に資するとともに、健全な民主主義社会の建設に大いに貢献するところであります。メディアの明るい側面でございます。しかし、マスメディアが報道の社会的使命を忘れ、売らんかなの商業主義に堕するときは、善良な市民の人権を侵害する凶器と化することになります。これは、メディアの暗い部分でございます。最近の裁判例では、この後者のケースが多くなっているように思われます。
 私は、ここで、マスメディアの事実無根の報道によって著しい人権侵害を受けた二つの事例を紹介したいと思います。
 その第一の事例は、松本サリン事件の被害者であった河野義行氏に対する報道被害でございます。
 この事件では、被害者でもあり通報者でもあった河野氏が、マスコミから一方的に犯人扱いをされて報道されました。中でも週刊新潮の報道はすさまじく、「おどろおどろし「河野家の謎」 「毒ガス事件」発生源の「怪奇」家系図」、こんな見出しのもとで、河野さんが犯人であるとの一方的な予断に基づいて、その家系図までさかのぼって報道しているわけでございます。河野さんは、その後、この報道については、無数の報道の中でこの報道が一番許せない、こんなふうに語っておられました。
 その第二の事例は、我が党の女性議員に対する、これは全く事実無根の中傷記事でございました。
 平成十一年十二月十六日発行の週刊宝石は、大見出しにこう書いてあります。「スクープ! 元交際男性が全告白」、もう私は余り読みたくないんですが、「美人国会議員の四十万円買春SEX一部始終を暴露する!」こういう大見出しでございました。中見出しに、「元女優の美人国会議員が年若い男性と肉体関係を持った。それだけなら独身の彼女だけに、問題はない。だが、その関係の実態はオトコの肉体をカネで買うという買春行為だった」、こう記載した上で、この国会議員の顔写真を大きく載せた報道でございました。
 この件は裁判になりまして、先ほど申しましたように、光文社は、大見出しで「スクープ! 元交際男性が全告白」という、この人を証人に出すことができなかったんですね。したがって、この世の中にこの人が存在したかどうかもわかりません。その後、裁判の結果、光文社側が、本件記事が全く根拠のない虚偽内容であったと認めて、全面的に非を認めて、謝罪文の掲載と慰謝料の支払いをして終わった、こういう事件でございます。
 このような二つの事例、虚偽の事実を掲載した週刊誌が、それこそ日本国じゅうに何十万部も販売されるわけですね。そしてまた、この卑劣きわまりない週刊誌の大見出しが、新聞だとか電車の中づり広告という方法で何百万人という人の目に触れる。そういう意味では、本当に強大なマスメディアの洪水が、ある日突然、抵抗するすべを知らない市民に襲いかかってくる、津波のように、洪水のように襲いかかってくる、こんな感じがします。私は、この二人の心中を考えると、本当につらかったろうなと胸がつぶれる思いでございます。
 河野さんは、この名誉回復に一年間かかりました。この間、私は御本人にお会いしていろいろ聞いたんですが、この週刊誌の記事を一方的に信じた一般の市民から、石を投げられて窓ガラスを割られたり、あるいは電話をかけられて罵倒されたり、また、はがきが来るんですね。どんどん来るんです。こんな内容が書いてあります。数多くの殺人を起こし弁解無用である、死をもって償え、こんな内容とか、殺してやりたいぐらいだ、早く日本国じゅうに自分がやったと言え、こんなはがきがどんどん来るわけですね。
 また、我が党の女性議員も、その身の潔白を裁判で証明するのに八カ月要しております。その女性議員は、その間の苦しみを次のように語っておられます。裁判中、私の潔白を信じて私を支持してくださっている方々に対して、まだあんな議員を応援しているのかなどという心ない悪口を言う人がいたことが何よりもつらかった、また、私自身も、ある盆踊り大会で酔った男性にデマ記事に基づく暴言を浴びせられた、報道被害の恐ろしさです、これは経験した者でなければわかりません、こう述懐されております。最後に、議員は、今回の経験を生かして理不尽なペンの暴力から人権を守るために全力で取り組んでいくという決意を述べて、結んでおられました。
 少々長くなりましたが、このお二人の報道被害について大臣はどのような感想をお持ちか、また、現在のマスメディア全体の報道のあり方についてどのようなお考えをお持ちか、お尋ねしたいと思います。
森山国務大臣 今、先生がお示しくださいました二つの事例につきましては、私も前にその新聞報道や週刊誌の広告などを見まして余りにもひどいというふうに思いまして、当事者はさぞお苦しみになっていらっしゃることだろうと、つくづく同情申し上げた次第でございます。
 しかし、そのお二人が大変勇気を持って裁判にも挑戦されまして、それなりの結論が出まして名誉が回復されましたことは、せめてものことでございましたけれども、このようなことが繰り返されないようにしなければいけないとつくづく感じているところでございます。
 それぞれのケースについて、個別のコメントは私の立場では控えさせていただきたいのでございますが、一般論といたしましては、報道とか表現の自由というのは大事であるということは当然でございまして、私が申し上げるまでもございません。しかし、その一方で、昨年五月の人権擁護推進審議会の答申にも指摘されておりますように、報道によるプライバシーの侵害や名誉毀損、過剰な取材による私生活の平穏の侵害といった、報道にかかわる人権問題があるということも指摘されておりまして、この問題は非常に重要な、私たちの抱えているこれから考えなければいけない新しい、そして重要な問題であるというふうに認識しております。
漆原委員 ただいま大臣にお話しいただきました人権擁護法案、政府が今国会に提出を予定しておられます人権擁護法案では、メディアによる人権侵害を人権委員会の特別救済の対象にしております。この特別救済の対象となるメディアの人権侵害、そして特別救済の内容について、御説明を願いたいと思います。
吉戒政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、今委員御指摘の人権擁護法案を今国会に提出するために準備中でございます。この人権擁護法案につきましては、先月末に発表いたしました人権擁護法案の大綱に記載しておりますけれども、昨年五月の人権擁護推進審議会の答申を踏まえまして、報道機関による一定の人権侵害につきまして、実効性の高い特別救済手続の対象にするようにいたしております。
 特別救済の手続の対象にいたします報道による人権侵害でございますが、これはいずれも犯罪被害者の方々に対します報道によるプライバシーの侵害、それから過剰な取材という二つの類型に限定いたしております。
 それから、これらの人権侵害につきましての救済方法でございますが、調停、仲裁、勧告・公表、訴訟援助。訴訟援助の内容は、資料の提供、それから訴訟の参加でございます。こういうふうなことを予定しております。ただ、そのための調査は、これは専ら任意の調査によることにしておりまして、報道機関による報道につきまして、報道の自由あるいは表現の自由を尊重いたしますとともに、報道機関による自主的な取り組みにつきましても尊重するという立場で立案をしているところでございます。
漆原委員 人権擁護局長、ありがとうございました。
 次に、損害賠償の額について御質問させていただきますが、名誉を毀損された場合の回復方法として、民法は、謝罪広告の掲載と、もう一つは損害賠償を認めております。問題は、この損害賠償額でございますが、この報道被害に対する損害賠償額は低過ぎるの一言に尽きております。
 たまたま最近は上昇傾向にあるのですね。一千万認めた東京地裁の判決があります、これは高裁で六百万に減額されましたが。また、五百万円を認めた判決も出ております。しかし、判決全体を見ますと、やはりいまだ日本の裁判は五十万から百万円の範囲にとどまっているというふうに私は考えております。現在の裁判所における認定額の概要について概略的に御説明願いたいと思います。
房村政府参考人 マスメディアによる名誉毀損の損害賠償額でございますが、網羅的に調査した統計資料はございませんが、報道されたものとか、あるいは研究会等で取り上げられているものを見ますと、御指摘のように五百万とか一千万という事例もございますが、同時に数万から百万程度というものが非常に多いというのは御指摘のとおりだと思っております。
漆原委員 これは静岡県弁護士会が五百の判例を調べて一覧表にしていますが、中には五万円だとかというのもありまして、全体として、やはり五十万から百万かなというふうに思っております。
 この名誉毀損における広告を求める裁判とか損害賠償を求める裁判の実務というのは、決して簡単じゃありません。難しい法律論もありますし、時間も相当かかります。ましてや認容額が五十万から百万程度だとすると、弁護を引き受ける弁護士がいません。結局、仮に引き受けても費用倒れになってしまうという結果になってしまうのですね。そういうことでは、被害者は不条理な泣き寝入りをすることになってしまいます。
 これまでの日本は、名誉毀損に対する損害賠償額が安くて、何を書いても百万円というのが、どうもマスコミ界の通り文句になっているようでございます。商業主義に毒された一部のマスコミは、そこにつけ込んで、慰謝料も必要経費のうちだなんという公言をしてはばからない現状のようでございます。
 名誉毀損事案の損害賠償の認容額は低過ぎるということは、これまで衆参の法務委員会でたびたび指摘をされてまいりました。大橋進最高裁判所裁判官、また竹田稔元東京高裁裁判官も同様の意見を述べておられると聞いておりますが、その意見の要旨を御説明いただきたい。あわせて、この件について司法制度改革審議会の意見書ではどのような記載になっているのか、御紹介いただきたいと思います。
房村政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の、まず大橋進最高裁判所裁判官でございますが、最高裁の判決の補足意見の中で、我が国において名誉毀損に対する損害賠償は、それが認容される場合においても、しばしば名目的な低額に失するとの非難を受けているのが実情と考えられる、こういうことをお書きになっておられます。
 それから、竹田稔元東京高等裁判所裁判官でございますが、その著書の中で、我が国における名誉、プライバシー侵害に対する慰謝料額は著しく低額である、こういう御意見をお述べになっております。
 それから、御指摘の司法制度改革審議会の意見書でございますが、この意見書でも、「損害賠償の額の認定については、全体的に見れば低額に過ぎるとの批判があることから、必要な制度上の検討を行うとともに、過去のいわゆる相場にとらわれることなく、引き続き事案に即した認定の在り方が望まれる。」こういう御意見をお書きになっております。
漆原委員 続いて、日米の認容額と法制度の比較をちょっとさせていただきたいと思います。
 司法制度審議会の意見書では、「米国など一部の国においては、特に悪性の強い行為をした加害者に対しては、将来における同様の行為を抑止する趣旨で、被害者の損害の補てんを超える賠償金の支払を命ずることができるとする懲罰的損害賠償制度を認めている。」と指摘しております。そして、実際に認容額も一億円を超える判決が相当出ております。日本の裁判所では到底考えられない。
 そこで、米国で認められている懲罰的損害賠償制度とはどういう制度なのか、また我が国の法制とどのように差異があるのか、御説明を願いたいと思います。
房村政府参考人 お答えいたします。
 まず、我が国の不法行為に基づく損害賠償の制度を御説明いたしますと、違法な行為によって損害をこうむった、そのこうむった損害をてん補する、それを回復するというのが基本的に我が国の不法行為の損害賠償制度になっております。ですから、損害をこうむって、その損害が、例えば三百万であれば三百万の損害を認める、こういうことになっております。
 アメリカの損害賠償制度としては、当然、そういう現実に生じた損害をてん補する損害もあるわけですが、それにさらにつけ加えまして、不法行為で特に加害行為の悪性が高い、違法の度合いが高い、こういうような場合には、一種の懲罰として損害賠償を課する、そのことによって加害者が同種の行為を繰り返すことを防止し、あわせて一般人に対しても警告を与える、そういう目的で、一種の制裁としての損害賠償を民事手続で認める。日本においては、そういう制裁は刑事が行う、民事は損害をてん補する、こういう役割が分担されているわけでございますが、アメリカでは、そういう日本とは異なった制度がとられております。それが、いわゆる懲罰的損害賠償ということになります。
漆原委員 米国における損害賠償額が高額なのは米国が懲罰的損害賠償制度を導入しているからだ、我が国においても高額な賠償額を認容するためにこの制度の導入を検討すべきであるという声を耳にしています。しかし私は、次に述べますとおり、懲罰的損害賠償制度を導入しなくとも、現行法制度のもとでも米国並みの賠償額を認容することは十分可能だというふうに考えておりまして、以下、その観点から御質問をさせていただきたいと思います。
 ここで、一九九〇年代のカリフォルニア州での連邦裁判所及び州裁判所の名誉毀損事件の認容事例を三例御紹介申し上げたい。
 委員長の許しを得て資料をお配りしておりますが、資料の一をごらんいただきたいと思います。
 ウェラー事件、これは二百三十万ドルを認容しました。日本円で二億七千六百万円でございます。原告らは銀の古物商、被告はテレビ会社。被告のテレビ番組で、原告が美術館に売却した銀燭台について、盗品であるとか法外な値段であるとかいう放送がなされた。原告らの名誉が毀損されたとする事件でございました。
 次にソマー事件、これは三百三十万ドル認容しております。日本円で三億九千六百万円でございます。原告はドイツ出身の女優でございまして、被告が提供した情報により、あるドイツの雑誌に原告が破産状態にあるという記事が掲載された。これによって精神的損害、苦痛を受けたという事案でございます。
 三番目にクァワー事件でございまして、百十七万五千ドル、一億四千百万円でございます。原告はフリーのフォトジャーナリスト、被告はタブロイド誌を発行する会社。被告の雑誌に原告がロバート・ケネディ氏の暗殺犯であるかのような記事を掲載されたことによる名誉毀損事件でございました。
 いずれも、先ほど申しましたように、日本では五十万から百万という金額でございましたが、今の三例を見てみますと、驚くほどの金額でございます。大臣の率直な御感想をお聞きしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
森山国務大臣 おっしゃいました事例、日本の実例とは非常にかけ離れた高い額でございまして、かねてそのような話を承知しておりましたが、改めてその違いを強く感じたわけでございます。
 しかし、日本の場合は、先ほど局長が御説明いたしましたような、法律的な考え方が少しアメリカとは違っておりますので、現状のようなことで今のところ推移していると思いますが、ただ、判決において、どのくらいというような上限が決まっているわけではございませんので、いろいろと、これからの社会的な意識の違いあるいは考え方の変化ということによって、裁判官の考え方も変わってくるのではないかというふうに思いますが、残念ながら今のところは、おっしゃいますように、大変違いますのが現実でございます。
漆原委員 次に、資料の二を見ていただきたいと思います。ここで言うアメリカの損害というのを図式にしてみました。
 アメリカで言う損害は二つに大別されます。一つはてん補損害賠償、先ほど民事局長が説明されました、損害をてん補するてん補損害賠償と懲罰的損害賠償の二つに大別されるわけでございます。そして、てん補損害賠償はさらに二つに大別されます。一般的損害賠償と特定損害賠償、こうなります。そして、一般的損害賠償には三つの内容があります。一つは精神的苦痛に対する損害賠償、二つ目は評判低下に対する損害賠償、三つ目は推定損害賠償。
 こういう損害賠償の項目によって、高額な認容額が先ほどの三例で認められているわけでございますが、先ほど局長の方から、懲罰的損害賠償については説明を受けました。てん補損害賠償について、改めてここで説明を受けたいと思います。
房村政府参考人 アメリカ法についてそれほど詳しいわけではないのですが、ここで言われておりますてん補損害賠償というのは、現実に生じた損害をてん補するための損害賠償である。
 その中身で、特定損害賠償というのは、実際の違法行為によって特に具体的に生じた損害があれば、それはそれでもちろん損害賠償します。
 そういう立証がなくても一般的に生じた損害を賠償させるというのが一般的損害賠償で、そのうちの精神的苦痛に対する損害賠償というのは、名誉を毀損されれば精神的苦痛が生ずる、それを金銭に評価して賠償を命ずる。次の評判低下に対する損害賠償というのは、名誉毀損行為によって社会的評価が低下します、それを財産的にどう評価するか、それで認める。この場合は、当然、評判が低下したというようなことを具体的に立証していただく必要があります。次の推定損害賠償というのは、そういうことをしなくて、一般的に名誉毀損行為があれば当然この程度の損害は生ずるはずだということを推定して命ずるというような形になっております。
 日本との対応で申しますと、一般的損害賠償と言われているものが日本では慰謝料という形で一括して認められておりまして、具体的に生じた損害、特定損害賠償に該当するものは日本でも個別の立証によって認められているという形になろうかと思います。
漆原委員 ここで確認をしておきたいと思うのですが、米国における損害は、てん補損害賠償と懲罰的損害賠償の二つに大別されております。我が国の法制では、懲罰的損害賠償は認められておりません。しかし、てん補損害賠償の部分では、米国の法制と我が国の法制は基本的に同一の考え方をしているというふうに私は理解しておりますが、この点はいかがでございましょうか。
房村政府参考人 個別の推定損害賠償とか、細かいことを言い出すと違いもいろいろございますが、基本的には同じ考えに立っているというのは御指摘のとおりだと思っております。
漆原委員 そこで、皆さんにはもう一度、お手数ですが、資料一を見ていただきたいと思います。ここで、カリフォルニア州での三事件の賠償額の内訳を見ていただきたい。
 ウェラー事件、二百三十万ドル、二億七千六百万円認容した事件でございますが、内訳は、精神的苦痛に対する損害賠償百万ドル、日本円で一億二千万円でございます。評判低下に対する損害賠償額八十万ドル、日本円で九千六百万円。評判低下に対する推定損害五十万ドル、六千万円。懲罰的損害賠償は認められておりません。
 ソマー事件、三百三十万ドルを認容した事件でございます。てん補損害賠償額二百万ドル、二億四千万円、懲罰的損害賠償額百三十万ドル、一億五千六百万円でございます。
 クァワー事件ですが、百十七万五千ドル、一億四千百万円の認容額の内訳でございますが、精神的苦痛に対する損害賠償額四十万ドル、四千八百万円、評判低下に対する損害賠償額十万ドル、千二百万円、推定損害賠償額十七万五千ドル、二千百万円、懲罰的損害賠償額五十万ドル、六千万円。
 結論として、私がここで申し上げたいことは、この三事件の賠償額は、我が国の法制と同じ考えに基づくてん補損害賠償の部分に限っても、我が国の賠償額よりもはるかに高額であるということなんですね。すなわち、ウェラー事件では二億七千六百万円、ソマー事件では二億四千万円、クァワー事件では八千百万円、こうなっております。
 てん補損害賠償という点では、先ほど局長おっしゃいました、日米が基本的に同一の法理論に立脚している。だとすれば、懲罰的損害賠償制度を導入していない我が国の法制のもとでも、この部分の補償額については、アメリカ並みの飛躍的な賠償額を認定することは法的に可能だというふうに私は思うのですが、いかがでございましょうか。
房村政府参考人 日本とアメリカと、基本的にてん補賠償についての法制度はそう大きくは異なっておりません。日本において損害額の上限を法律で制限しているということもございませんので、あとはどう認定するかということになります。
 ただ、精神的損害を金銭的にどう評価するかというようなことについては、名誉毀損に対する損害をどう考えるかという社会的な考え方が当然反映してまいりますので、法律の仕組みそのものは変わらなくても、そこの、社会の評価が違ってくれば、それを裁判所も考慮するということになろうかと思いますので、理論的には、御指摘のように相当高額な賠償があり得てもおかしくはないと思います。
漆原委員 私の調査によりますと、米国全体におけるてん補損害賠償額の平均値でございますが、一九九七年では三十八万八千七十五ドル、日本円で四千六百五十七万円。一九九八年では、これが八十四万五千五百六十二ドル、日本円で一億百四十七万円に上がっています。基本的に同じ法理論に基づくてん補損害賠償額、日本の裁判所で百万円前後、米国の裁判所で一億円前後、この格差が一体どこから出てくるのだろうかというふうに思います。東京大学の浜田純一教授はこうおっしゃっております。個人としての人格の価値に対する意識が高まっているので、それに応じて当然人格権侵害の賠償額は上がってきてもおかしくない、こう指摘されております。
 日米における名誉、人格権に対する意識の差が大きな要因になっていると思われますが、いかがでございましょうか。
房村政府参考人 名誉毀損というような人格権の侵害に対する損害賠償をどう考えるかということは、当然その人格権をどう考えるかということが反映するのは御指摘のとおりだと思いますが、損害賠償を算定するに当たっては、そのほかいろいろな諸事情を考慮しますので、必ずしも一概には申し上げにくいわけですが、そういうことが要素の一つになっていることは御指摘のとおりだと思います。
漆原委員 私は今回の勉強で大きな発見をしました。今までは、懲罰的損害賠償制度を導入していない我が国においては、アメリカ並みの高額な賠償額は法制上だめなんだ、認められないんだというふうに思ってまいりました。しかし、これまでに述べてきたように、そうではないんだ、我が国の現行民法でも十分アメリカ並みの損害賠償額の認定が可能なんだということを理解しました。
 私は、これまでこのことを皆様に御理解いただきたくてたくさんのことを申し上げてまいりましたが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃいますとおり、名誉毀損の損害賠償の上限というのは決まっているわけではございませんので、そのときの社会的な全体の名誉毀損に対する意識、あるいは毀損された人格あるいは名誉に対する考え方というものが反映されていくのであろうと思います。ですから、おっしゃいますとおり、場合によっては高額の名誉毀損の認定が行われることもあり得るというふうに思います。
漆原委員 結論としまして、私は、損害賠償における日米の認容額の格差は、ひとえに名誉、人格に対する日米の評価の問題、換言すれば、人の名誉は大事にされなければならないという人権感覚の問題なんだということを指摘しておきたいと思います。
 先ほど民事局長は、なかなかいろいろな要素があるというふうにおっしゃっておられました。確かに、私の言ったこと、そのとおり人権感覚の問題なんだということをお認めになれば、日本の裁判所は人権感覚がないのだ、こういうことになるわけでございますから、なかなか同じ役所の方としては申しにくいのだろうなというふうに思って聞いておりましたが、同じ法制度で、一方は一億円で一方は百万前後という、こんなに差があるというのはやはりおかしいと私は思うのです。そういう意味で、やはりひとえにこれは日米の名誉あるいは人格に対する人権感覚の差なんだということを強く訴えておきたいと思います。
 次に、視点を変えて、名誉毀損に対する抑止力という観点から、我が国の民事、刑事の運用について少し検証してみたいと思います。
 民事の損害賠償額が低くて、到底抑止効果が期待できない、これは今まで述べてきたとおりでございますが、問題は刑事手続の運用の実態がどうなっているかでございます。仮に民事における損害賠償の額が少なくとも、人の名誉を毀損した場合には刑事手続できっちりと処罰されるんだという運用になっておれば、被害者も一応満足し、また一般的抑止力も働くものだと思います。
 そこで、法務省にお尋ねしますが、名誉毀損事件において、どのくらいの人が事件として取り上げられたのか、どれくらいの人が裁判になって、起訴猶予になった人はどのくらいいるのか、その結果何人の人が処罰されたのか、この辺の統計があれば教えていただきたいと思います。
古田政府参考人 平成十年の一年度についてとりあえず数字を持っておりますので、その範囲でお答え申し上げますと、平成十年におきます検察庁の名誉毀損罪による通常受理人員は合計三百人でございました。また、その年度中に起訴、不起訴の処分をした人員は三百五十九人でございます。この起訴、不起訴のいわゆる最終処分をした人員のうち、起訴した人員は三十七人、不起訴の人員は三百二十二人でございます。不起訴人員の内訳で、起訴猶予は五十八人ということになっております。
 一方、起訴した場合の量刑でございますけれども、これはただいま申し上げた数字の人数に対応するわけではございませんが、平成十年中に有罪判決の言い渡しがあったものについて申し上げますと、有罪判決を受けた人員は合計十七人、そのうち三人が懲役刑、これは実刑でございます。それから十二人が執行猶予つきの懲役刑、二名が罰金刑となっております。
漆原委員 今御説明いただきました名誉毀損事件の被疑者として処理された者は三百五十九名、そのうち実に九〇%の人が不起訴になっているわけですね。また、起訴された者は全体の約一〇%の三十七人、実刑判決を受けた人はたった三人ということでございます。三百五十九名中たったの三人が実刑判決なんですね。したがって、名誉毀損罪で実刑になる確率というのは百人に一人にも満たない、こういう結論になります。
 しかし一方、メディアの世界は、今や生き残りをかけた熾烈なスクープ合戦を展開しているわけでございます。行き過ぎた報道によって人の名誉を毀損したとしても、刑事処分を受ける確率は一%に満たない、民事の損害賠償もせいぜい五十万から百万支払えば済むんだというのでは、一般的な抑止力など私は全く働かないというふうに思います。
 大臣にお伺いします。
 このような民事、刑事の運用の実態が、加害者側にとっては規範意識を低下させて、慰謝料も必要経費のうちなどという商業主義的なメディアの人権侵害を誘発する原因になっているんじゃないかと考えます。さらに、被害者側にとってみれば、せっかく高い弁護料を払って長い間難しい裁判をしても、勝ってもせいぜい五十万から百万だというのでは、結局、刑事で告訴してもほとんど実効性がない、民事でやっても大したことにならない、苦労するだけだ、これでは司法に対する国民の信頼を失うことになりかねないと思いますが、大臣のお考えを聞きたいと思います。
森山国務大臣 人の名誉、人格権というのは極めて重大な法益であるというふうに思います。名誉を侵害された者に対する法的な救済が十分なものでなければならないということはおっしゃるとおりでございまして、私も全く同感でございます。
 御指摘を踏まえまして、名誉を侵害された者に対する救済がより実効的なものになりますように、さらに検討をしていきたいと思っております。
漆原委員 私はこれまで、日本の名誉毀損に対する損害賠償額が低過ぎる、もっと飛躍的に増額すべきだ、法制上もまた十分可能だということを述べてまいりました。司法制度改革審議会の意見書でも、過去のいわゆる相場にとらわれることなく、事案に即した認定のあり方が望まれるというふうに指摘をしております。しかし、長年五十万とか百万の認定をしてきた裁判所にいきなり一千万とか五百万認定しろといったって、これはもう無理なんですね、頭の中がそうなっていますから。
 そこで、全く私の私案でございますが、提案をします。
 名誉毀損事件につきましては、その悪質性だとか損害の度合い、すなわち意図的であるか否か、執拗であるか否か、その期間が一体どのくらいの期間だったのか、被害感情がどうだったのか、また、名誉毀損される人の地位は、立場は、仕事はどうだったのか、その辺を全部考慮して、まあ実際の裁判では、先ほど民事局長おっしゃっていましたように、そういうのは類型化されて裁判をされてもいると思うんですね。
 その類型を、法律上類型を規定して、例えば一級から三級くらいの名誉毀損事件、一級名誉毀損事件、二級名誉毀損事件、三級名誉毀損事件を類型化します。そして、その各級ごとに損害額の推定規定を設ける。例えば、一級の名誉毀損事件の場合は損害額を三千万円以上と推定する。推定ですから、これは逆に、反証があればひっくり返るわけですね。しかし、反証がない限り最低三千万と。二級は一千万円以上、三級は五百万以上というふうに、民法を改正して、裁判官の判断基準を法律で明記するという、それ以外に私は飛躍的な損害賠償額の増額は望めないというふうに思うんですが、私の私見に対する御見解をお尋ねしたいと思います。
森山国務大臣 先生の問題意識及び問題提起につきましては、被害者の救済手段としての損害賠償制度を有効に機能させるという観点に立った一つのお考えだと思いまして、大変敬意を持って伺わせていただきました。
 しかし、おっしゃいますように例えば一級、二級、三級というふうに類型化するということが、個々のケースが非常に多様でございますので、事実関係もさまざまでございますから、事件を類型化して、それに対応した判断基準を法文上決めておくということは、非常に困難な問題も一方においてあるのではないかと思いますので、慎重な検討を要するのではないかと考えます。
漆原委員 もう三千万じゃ低過ぎる、一億円にしろという声がたくさん聞こえておりますので、それくらい現状と皆さんの感覚がかけ離れているということを指摘しておきたいと思います。
 最後に、二十一世紀は人権の世紀でございます。個人の人権が最大限に尊重されなければならないということは冒頭に述べたとおりでございます。善良な市民の人権が商業主義的な一部マスメディアの報道によって侵害されるというふうな事態は断じて許してはならない、こう思っております。
 マスメディアがモラルハザードに陥ることを防止するためにも、また司法に対する国民の信頼を維持するためにも、我が国の損害賠償制度を抜本的に見直す必要があると思います。懲罰的損害賠償制度の導入も視野に入れて損害賠償額の大幅な増額を検討すべきであると思いますが、最後に大臣の所見を求めたいと思います。
森山国務大臣 損害賠償制度を有効に機能させる方策につきましては、先生のいろいろな御指摘を踏まえまして、今後とも検討を進めてまいりたいというふうに思います。
 ただ、懲罰的な損害賠償の制度を導入するということにつきましては、現実の損害を超えた賠償を認めるということにもなり得るわけでございまして、加害者に対する制裁としての刑事責任と、損害の補てんを目的とした民事責任とを混同するということになるのではないかという点が指摘されたり、また、加害者に制裁を加えることによって被害者が損害の範囲を超えて利益を得るというのは合理的ではないんじゃないかという疑問もあるわけでございますし、また一方において、乱訴のおそれもあり得るというような問題点が指摘されておりますので、このようなことも踏まえて、慎重な検討をしてまいりたいというふうに思います。
漆原委員 最後に、国会質問と名誉毀損についてお尋ねしたいと思います。
 申すまでもなく、憲法五十一条は、国会議員の発言等については免責特権を定めているところでございます。しかし、間々見受けられるところでございますが、議員がみずから事実関係を調査することなく、週刊誌の記事をうのみにして、週刊誌の記事をそのまま引用する形でこの予算委員会などで質問する場合があります。後日、その週刊誌等に掲載された記事が事実無根であったような場合には、被害者は三回にわたって名誉を毀損されることになります。
 第一回は、当然、事実無根の記事を週刊誌等に掲載されたことによる侵害でございます。第二回は、予算委員会などテレビ中継される委員会等において事実無根の週刊誌の記事に基づいて質問されることによって、その虚偽の内容が全国に放映されるということによる侵害でございます。三番目は、事実無根の記事があたかも真実であったかの外形のまま国会の会議録に永遠に残ることによる侵害でございます。
 第一の場合はこれまで述べてきた問題でございますが、第二、第三の場合は、これは国会の自律権の問題でございまして、国会として被害者の名誉回復のためにどのように対処すべきか、こういう問題でございます。
 二十一世紀はメディア時代、IT時代でございます。私たち国会議員は、自分の言動がメディアやインターネットによって瞬時にして日本国じゅうに発信される、そういう時代で活動している議員だということを私たちはやはり自覚しなければならないというふうに思うわけでございます。週刊誌等を引用する形でなされた事実無根の国会質問が、一瞬のうちに日本国じゅうに発信されて、また会議録として永遠に保管される。インターネットの発達によって、今やだれでも、どこでも、いつでも簡単にアクセスして閲覧することができます。報道被害者にとっては不名誉きわまりないことでございます。
 私は、国会質問等で指摘された事実が、後日、裁判などで事実無根であったことが確定されたような場合には、国会として何らかの名誉回復の手段を講ずるべきであるというふうに考えております。このメディア時代における国会審議のあり方を含めて、例えば議会制度協議会などで検討すべきであると考えるものでございますが、事務総長の所感を求めたいと思います。
谷事務総長 お答えいたします。
 先生御指摘の点は、テレビあるいはインターネットを通じて審議のありようが瞬時に家庭に届くような状況になりまして、今後ますます情報公開というのは進んでまいると思いますので、その裏腹の問題として論議を深めていく必要があるんじゃないかと思っております。
 もう申すまでもありませんが、国会議員の先生方は免責特権が与えられておりまして、それが十分確保されなければ十分な国政活動ができないのは申すまでもありませんけれども、ややもすれば名誉を毀損する、あるいはプライバシーを侵害するようなおそれのあることも生じてくると思います。この問題につきましては、大変広い議論が必要じゃないかと思っております。
 外の関係におきましては、そういう影響を受けた一般の人方の名誉回復をどうするんだとか、あるいは議会とメディアの関係はどう構築していくのかとか、そういう幅広い議論が必要であると思いますが、先生おっしゃるように、議会は自律権を与えられておりますので、これらの問題につきまして、要するに、その対応といいますか、広い意味でいえば審議のありようについて論議を深めていく必要がある。大変意味のある議論になると思います。
 その場合、いろいろなところで勉強する場所はあると思うんですが、議会の中で定着したいわゆる制度上の協議機関としては、議長の諮問機関であります議会制度協議会がありますので、そこで問題を提起してこれから議論していただければ大変結構じゃないかと思っております。
 以上でございます。
漆原委員 以上で質問を終わります。大変どうもありがとうございました。
津島委員長 これにて漆原君の質疑は終了いたしました。
 次に、岩國哲人君。
岩國委員 おはようございます。岩國哲人でございます。民主党を代表して、塩川財務大臣初め各大臣に、新年度の予算の編成及び執行についてどういうお考えを持っていらっしゃるかを質問させていただきたいと思います。
 まず、私の質問を始めます前に、昨日、急遽公聴会の日程がこの場で採決されましたことを大変残念に思います。
 憲法の中に、我々国会が日本国民の生命と財産を守る、そうした大事な役割を果たそうとして審議を一生懸命重ねているときに、とりわけ、好景気で周りじゅうが笑顔の人ばかりではないこういう環境の中で、十分な審議を尽くさなければならないし、また、少しでも国民に希望と勇気を与えるような予算であってほしいという願いの中でこの審議を重ねているわけでありますから、十分な審議を重ねるという大前提を、あのように一方的に公聴会の日程ということを採決されるということについて、強く抗議を委員長に申し上げて、質問に入りたいと思います。
 最近の政策についてよく町で聞かれることは、世界一個人金融資産がある、千四百兆円という数字は私のポケットにもない、皆さんのポケットにもありませんけれども、世界で一番個人金融資産があると言われていることを新聞、雑誌でしょっちゅう聞かされて、それでなぜ世界で一番不景気なんですかと。世界で一番個人金融資産がある日本が、なぜ、塩川財務大臣、国債がどんどん格下げされて、ついに先進七カ国の中で最低のランクにまで。つい十年前までは、強過ぎる日本と弱過ぎるアメリカが世界の問題だと言われておったんです。十年たって、どうですか。弱過ぎる日本と強過ぎるアメリカが、今、世界の問題。
 十年前、日本の国債の格付はトリプルAでした。トリプルAの中でもさらに強いスーパートリプルAと言われたのは日本しかなかったんです。そのスーパートリプルAから次々と下がって、そしてシングルA、さらに格下げされようとしている。この転落の速さだけが日本のオリンピック新記録だ、こう言われております。結局、正しい政策、適正な政策がとられておらなかったんじゃないか。
 また、毎年毎年予算編成をするときに、その年の経済成長率の見通し等を政府は発表されますけれども、これがほとんど当たらない。この四十年間に、ある分析によると、当たったのは六回しかなかったそうです。ということは、残り三十四回は外れておったということですね。
 政策は曲がりっ放し、予測は外れっ放し、景気は下がりっ放し、株価も下がりっ放し、雇用は減りっ放し、そして借金はふえっ放し、責任は投げっ放し。こういう環境の中で、なぜ公聴会の日程をそんなに急いでまで成立させる必要があるのか。私は、予算というのは、効率も大切ですけれども、それ以上に、国民から信頼され支持される、そういう予算でなければ本当の意味の国民のための予算とは言えないと思うわけです。
 そういう前提に立って、最初に総務大臣にお伺いしたいと思います。
 昨日の集中審議を含めまして、どうも役所の中の金の使い方や組織のあり方というのは、どうですか大臣、近年ほど、特にことしになって、社会面を見ると警察がどうとか税務署のOBがどうとか、官の規律が乱れに乱れておる。金の使い方がおかしい。外務省だけではありません。金の使い方や、そして組織の乱れ、こういったことについて、私は内閣を挙げて取り組むべき問題だと思うんです。政治を信用しないのはもう随分前から始まっておりますけれども、役所に対する信頼までが政治と同じレベルまで下がってくるということは、我々政治家としても許せないことです。
 ですから、去年の九月十一日、テロ事件で世界のいろいろな意識が変わってきたということが言われております。世界が変わったという表現があちこちで見られます。価値観も変わった。そして、グローバリズムとか国際化と言えば何でもいいことだと思っていたことに対する反省も相当高まっているんじゃないかと私は思います。
 そういう中で、ある韓国の映画監督の言葉が朝日新聞にも紹介されておりましたけれども、グローバリゼーションというのは、アメリカ製の、ハリウッドの大きなマイクロホンで世界じゅうを声で圧倒する、そういうのがグローバリゼーションではなくて、本当のグローバリゼーションというのは、よその国の人たちの小さな声も聞くことができるようになること、それが本当のグローバリゼーションなんだ。私はその言葉が心にしみました。
 私も、つい最近までは、大きければいい、強ければいい、そういう世界の中におった人間として、グローバリゼーションというものに対する反省がこの十年高まってきたことにつき、私も含めて、いい勉強をさせていただきました。例えば、あの九月十一日の攻撃、テロ事件以降、日本の中に、国を守るのはだれなのか、守れるのはだれなのかという意識が高まってきたということも私はいいことだと思います。
 同時に、今までのような生活のあり方についても、大量生産、大量販売、大量消費、大量廃棄、そういった企業のメカニズム、その中で各企業がチャンピオンになることを競争しておったわけですけれども、私は、企業のあり方も変わると思うし、それから人の生活のあり方も変わるし、また、我々政治家がそれを先導して、生活のあり方も変えていくような方向に持っていくべきではないかと思います。
 小泉改革。小泉内閣も改革を掲げて、そして高い支持率を今でも有しておられる。しかし、その改革の中身そのものも、このテロ事件以降、以前と以降では中身も違う、そしてまた視野も広げていかなきゃならない面が随分多いのではないかと思います。それが、そういった一般の人の生活のあり方であり、そして役所のあり方であろうと思います。
 私は、野中官房長官のときにもお伺いいたしましたけれども、役所の中における男女差別のあり方、男女共同参画社会をということを歴代内閣が掲げておられる。与党も野党も超党派でこの問題について取り組んできております。しかし、肝心のその役所の中で男女差別が行われているということがあるとすれば、これは見逃すことはできないし、現に石川県の鳥屋町の事件については、その当時、私が取り上げましたときは、まだ判決がおりておりませんでした。その後、判決がおりました。
 この事件について、どういう経過で、そしてどのような判決で、それをどのように生かそうと受けとめておられるか、大臣の御所見を伺いたいと思います。
片山国務大臣 冒頭岩國委員が言われましたように、最近の一連の事象で、行政に対する信頼、公務員に対する信頼がやはりやや失われていると私も思います。ぜひこの回復のために全力を挙げたい、こう考えておりますが、その一環で、男女差別の撤廃の問題。
 去年の予算委員会だったと思いますけれども、岩國委員から御指摘いただきまして、あの時点では、全国を調べましたら四十団体が男女の勧奨年齢に差があった、こういうことでございますが、御質問いただきまして、判決のこともありますし、直ちに是正の要請を各団体にしまして、昨年の三月末ですべての団体が男女差別の撤廃を行いました。
 現在は、そういう意味では、全部勧奨年齢は同一でございまして、今お話しのように、やはり男女共同参画社会というのが我が国の大きな政策課題でございますし、今後とも、女性公務員の採用、登用、任用、昇進その他については、一層の男女差別がないような徹底を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。今後とも努力いたします。
岩國委員 その調査をされたという結果を、私は担当の方から伺いましたけれども、具体的にどういう調査をされたんですか。何か、各地方自治体に対してアンケートを送られて、そういう男女差別的な条例その他の規則等があるかどうかをお調べになったわけですね。しかし、実態はどうなっているか。ただ紙の上だけでなくしましたと言って、実態が依然として健在であることでは何にもならないわけですよ。
 我々は別に世論調査会社に調査してくださいとお願いしたんじゃなくて、ある程度行政の上で指導権を持っているところにお願いし、だからこそ私は官房長官に質問したわけです。その後のフォローがどうなっているか。実態もはっきりと、一件残らずなくしましたと言えますか。
片山国務大臣 先ほど答弁を申し上げましたのは、勧奨年齢、退職管理の問題でございまして、全般には、委員御指摘のように、それでは完全になくなったかどうかということは私は確信がありません。会議その他でいろいろな説明、要請をいたしておりますし、また通知も出しておりますけれども、一遍細かいことを含めまして詳しく調査をいたしたい、こういうふうに思っております。
岩國委員 こうしたことは、単に職業の上での差別がないということだけではなくて、私は、これは日本社会を基本的に変えていく大切なことだと思うんです。
 女性も同じように待遇される、そして、役所が変われば市が変わる、役所が変われば町が変わっていくんですから、地方においては特にこれは大事なことです、東京におけることではなくて。これは、地方選出の議員の方だったらよく御存じのことだと思います。役所をまず変えていく、だから日本が変わっていく、私は、そういう小泉内閣であってほしいという願いを込めて、一刻も早くこれをやっていただきたいと思います。
 野中官房長官は、この席ではっきりとそれを約束された。約束された結果は、三年たって、ただ紙の上の世論調査程度のことしか行われていないというのでは、本当に男女共同参画ということについて政府は本腰入れて取り組んでいるかどうかということを疑わせるわけです。九九年六月二日と十日に、私はこの場で質問をし、そしてその後、金沢地裁で昨年の一月十五日に出た判決は、退職勧奨の男女差は違法だと。要するに、自治体が違法行為を犯しているということをもっと真摯に受けとめて、このような自治体が一つ残らずなくなる、なくすこと、それが大臣、あなたのお仕事ではありませんか。
 そういうことを踏まえて、いつまでに、そういう目標だけでもはっきりさせてください。またこれで私が三年待つということは、とてもこれは、日本の社会の今の改革ということに対する期待を裏切ることになると思います。どうぞ一言お願いします。
片山国務大臣 今の退職管理の問題は、これは先ほど申し上げましたように、完全に条例上、あるいは恐らく運用上も男女差別はなくなっていると思いますが、万般につきましては、まず私どもは調査をさせていただいて、それで対策をとらせていただきたい。(岩國委員「調査はいつまでに完了するんですか」と呼ぶ)年内ぐらいをひとつ目標にさせていただきます。調査をやり、対策を立てること、年内と申しますか、もうすぐ本年度終わりますから、来年度早々でも調査を始めまして、その調査をもとに、運用上を含めての万般の対応についてのまとめをさせていただきたいと思います。
岩國委員 それでは次に、もう一つ、公務員制度について大事なことをお伺いしたいと思います。
 寒冷地手当という制度、これは大臣も、またこの委員会の委員の方も御承知だと思いますけれども、日本の中に、寒冷地手当を支給する地域と支給されない地域と、日本には二つの日本があります。寒い日本と寒くない日本と。
 同じ日本の中にそういう地域が存在するというのもおかしな話ですけれども、これは戦後のごく特殊な環境の中で、冬に炭を買う、そのときに値が上がっているかもしれないから夏の安いうちに買いなさいというので、寒冷地手当という名前でわざわざ夏に支給しておったんですね。その古い名残がいつまでも既得権化してしまっている。
 温暖化現象を我々は真剣にここでやっているときに、世界の温暖化現象をどうやってとめたらいいかということを国際会議まで開いているときに、寒い方の手当を一生懸命まだ払っている。昔の寒冷地は、もう今の寒冷地ではなくなっている。寒冷化前線というのはどんどん北上しているわけですから。にもかかわらず、なぜ公務員だけがこのような手当を支給されておるのか。
 民間企業の人も寒いときは同じように寒いんです。あるいは、民間企業の人は懐の中まで寒いんですから。公務員は体が寒いだけでしょう、懐の中は寒くないんですから。本当に寒冷地手当が必要なのは民間企業のサラリーマンじゃありませんか、懐の中まで冷え切っているんですから。
 にもかかわらず、この寒冷地手当を依然として支給しようという、その態度が私は理解できないんです。改革というんだったら、こういうことこそ改革すべきじゃありませんか。大臣の御所見をお願いします。
片山国務大臣 御承知のように、公務員の勤務条件、その中で給与は最も大きいものでございますけれども、これは労働基本権の代償として人事院制度ができて、人事院の勧告に基づいて決めるようになっているんですね。だから、主導権は人事院の勧告で、勧告は最大限尊重する。そこで、今の寒冷地手当の仕組みが人事院から勧告されて制度化されているんですね。国の方は法律で、地方の方は国の法律に準じて条例で、御承知のとおりでございます。
 だから、今委員が言われたような状況も確かにありますので、それは民間との均衡を考えながら、人事院がしかるべく調査をして勧告をしてもらえるものだと私は思っておりまして、それに応じて対応してまいりたい、こういうふうに思います。
岩國委員 公務員の給料についてもいろいろ議論がなされているわけですけれども、とりわけそうした公務員にしかないような手当というのは、これは国民になかなか説明がしにくいものです。
 私は、市長としても経験があります。出雲市の職員がどういう手当をもらっているのか。犬を拾った、あるいは窓口に立った、窓口手当。こんなのは一般公務員がやって当然の仕事ですよ。にもかかわらず、窓口に一日立ったら幾らとか、こういう手当を払う。二十の手当を出雲市は八つの手当に整理統合しました。廃止もしました。一部、余りにも少な過ぎるというものはふやしたものもあります。いつでも情報公開をして、そして職員が肩身の狭い思いをしないで受け取れるような手当に変えていくべきじゃないですか。
 先ほどの男女差別の実態調査と同じように、この地方公務員の特殊手当というものが、実態はどうなっておるのか、そして、時代にふさわしく、納税者にちゃんと説明可能な手当だけになっておるのかどうか、至急実態調査をすべきだと私は思いますが、いかがですか。
片山国務大臣 今委員が言われましたように、特殊勤務手当というのがありまして、勤務の特殊性でそれに対する手当を出しているわけでございますが、これは地方団体によってかなりばらつきがありますね。
 そこで、私どもの方も、地方公務員給与の実態調査をやっておりまして、かなりつかんでおりますけれども、細かいことまできっちり詳細に把握しているかどうかはやや定かでございませんので、一遍、今御指摘のようないろいろな考え方もありますので、特殊勤務手当の実態も調べまして、ある程度そろえていく。しかし、最終的には、地方団体のいろいろな事情や、その地方団体における民間とのバランスや、いろいろなことを考えて地方団体が決めるというのは私はやむを得ないかと思いますけれども、できるだけ今言われたように、少しおかしいんじゃないかというような特殊勤務手当があるとすれば、こういう時世ですから、私はそれは直していく方がベターではなかろうかと考えております。
岩國委員 繰り返すようですけれども、こうした公務員に対する見方は非常に厳しいものがあります。公務員の仕事というのは大切なものであります。私も経験して、公務員それぞれは非常に熱心に仕事に取り組んでいる。しかし、その給与体系あるいは待遇というものが世間から理解されるものであれば、なお気持ちよく仕事ができるだろう。そして、税金を払っていただく多くの民間企業のサラリーマンの人から見ても、公務員というのは聖域なんだ、聖域なき改革と言っている小泉内閣でさえも一向に手をつけようとしない、そのような見方をされることがないように取り組むのが大臣の責任である、私はそのように思いますから、実態調査を急ぐだけではなくて、一年以内にすべての手当というものはきれいに全国の自治体はなったんだと。
 とりわけ、市町村合併ということを現内閣は推進しておられます。私はいいことだと思います。その市町村合併のときに、変な特殊手当が、足し算して余計ふえてしまった。さっきおっしゃったように、地域の特殊事情なるものが優先されて、合併するときに、合併を何とかまとめるために、よくあることですけれども、お互いに厳しい方向でもって整理しようということではなくて、とかく行われることは、温存して、とりあえず残しておいて、そのうちそのうちと言って、また市長がかわる、町長がかわる、そんなことをやってまた二十年ぐらい続いていくわけです。
 市町村合併に対していろいろと支援措置が行われるときに、こうした公務員の待遇ということも十分歯どめをつけながら、それをいい契機として整理していくべきだ、私はそのように思います。
 最後に、公務員の勤務に関してですけれども、なぜ役所は土曜日、日曜日はあけないんですか。あれだけの立派な施設があって、それから、公務員という一つのインフラをしっかり持っておって、それを五日間しか使わない。土曜日も日曜日もあけるべきじゃないですか。土曜日、交番はあいています。日曜日、デパートもあいています。やはり行政が最大のサービス産業であるとするならば、私は、役所こそまず土曜日、日曜日、率先してサービスを提供すべきだと思うんです。それだけのキャパシティー、インフラを持っているわけですから。なぜ役所は、役に立つところと書いておいて土曜日、日曜日、閉めているんですか。
 出雲市役所は、私は、看板外せと言いました。役所は役に立つところと書いて、土曜日閉めている、日曜日閉めている。職員は外したくないと言ったんです。外したくないんだったら土曜日も日曜日もあける。平成元年から出雲市役所は、あけてあけてあけっ放し、閉めたことは一遍もありません。勤務は五日、サービスは七日、職員は一人もふやさないで、交代で休暇をとりながら、小さな役所で大きなサービス。よその市に比べて、大臣も御存じだと思います、出雲市は同じ予算規模、同じ人口規模の市に比べて、七割の職員で十割の仕事をやる。それはなぜか。それは土曜日、日曜日をあけているからなんです。
 月曜から金曜日に来るお客さんを少しでも減らして、そうすることによって、少ない窓口の対応ができれば、全体としての職員をふやさなくて済む。仕事はふえても職員はふやさない。なぜ土曜日、日曜日、役所はあけようとしないのですか。月曜日や水曜日に役所へ何か書類をとりに行く、不便ですよ。そして、各企業も、昔のように暇な人間をたくさん抱えている時代とはもう違ってきたんです。昼日中、役所へ住民票をとりに行ったり、何か届け出に行くような、そんな暇はありません。
 民間企業が少ない人数で対応しようとしているときこそ役所がもっとサービスをよくして、土曜日でも日曜日でも役所へ来なさいよ、そういう姿勢を示すべきではありませんか。役所は役に立つところと書いてあるんですから。そういう考え、そういう御指導をされるお考えはありませんか。
片山国務大臣 今の地方自治法では、土日と祝日、その他については地方団体の休日とすると法律に書いてあるのですよ。閉庁にすると。国も同じですね。だから、それがいいかどうかという根っこの議論はありますが、今委員が言われるように、幾つかの地方団体は、土日、窓口業務だけをあけていますね、限定的に何時間か。それで、恐らく振りかえ休日か超過勤務方式かで私はやっていると思います。
 それはそれで、私は、地方自治の観点からいっても、自分のところはやりたいというところはやってもらうのは一つも構わないと思いますけれども、全部、それを日本じゅうということは、なかなか今の法律の関係からいっても、なお慎重に検討すべき余地があると思いますね。
 それともう一つは、コストベネフィットの関係で、どれだけの方が来ていただけるか。これもやっているところの意見を聞いてみますと、いろいろな意見があるのですね。だから、その辺も含めて、なお検討させていただきたい、こういうふうに思います。
岩國委員 そうした、コストが上がらないいろいろなきめの細かい工夫をし、窓口業務だけでなくて相談業務も、そこに人がいればいいわけです。何も冷たい自動販売機で、駅の片隅の販売機じゃありませんけれども、何かカードを入れたら販売機が住民票をくれる、そういう冷たい窓口サービスではなくて、役所はいつも市民との窓口を絶やさないという心の交流が、五日ではなくて、七日間は常にそこにあるのだ。これからの地方自治、地方の時代には、地方のぬくもりを保つのは、役所と市民との窓口が土曜日、日曜日もあいておるということです。そういう心理的なプラス効果ということもよく考えるべきであると思います。
 ましてや、市町村合併、先ほど申し上げました、だんだんサービスする範囲が広くなれば不便に思う方も当然出てくるでしょう。今までの五日体制よりも七日体制にそれを機に踏み込むということ、これも私は前向きに取り組んでいただきたいし、民間企業と同じように役所も土曜日、日曜日休むものだという時代は変わってきておるんじゃないでしょうか。その点について再考を促して、次の質問に移りたいと思います。
 郵便局についてお伺いしたいと思います。
 同じく総務大臣に対しまして、郵政の改革、これは政府の中にも、今まで違った御意見の方もありました。いまだに政府の見解というものが、統一された見解というのはどうなのか、国民の目にも我々の目にもはっきりしないわけです。いろいろな案が比較検討されているということはいいことでありますけれども、その中で、民営化ということについて、これは決して我が党、民主党も一つの意見にきちっとまとまったということではなくて、中でまだ議論もし、そして党として一つの方向を出そうと努力をしている最中です。
 私の個人的な意見ということになりますけれども、民営化がすぐに可能な地域と、民営化すれば郵便局はもたなくなる、あるいはお客様に大変不便な結果となってしまう地域と、日本には常に二つの日本があると思うのです。
 大阪、東京、名古屋、いわゆる三大都市と言われる地域においては、私は、試行錯誤的に思い切って民設民営の方向で、そしてコスト、あるいは効率、サービスというものを競い合ってやっていただく。しかし、それ以外の日本は、全部従来のように公設で、しかし民営的な方法を大胆に取り入れていく公設民営。三大都市は民設民営で、そして、その結果を見て、あるいは失敗であれば公設民営の方へ返っていかなければならぬかもしれない。それどころか、公設公営の今のところにまで返っていくことが必要になるかもしれない。
 私は、日本じゅうを対象にして民営化がいいか悪いか、日本を一つのマーケットとして議論するのがまず間違いではないかと思うのです。大臣は、こういう考え方、つまり、日本を二つの地域に分けて段階的にやってみようという考えについては、まずどういうお考えをお持ちですか。
片山国務大臣 郵政事業の今後のあり方につきましては、委員御承知のように、来年中に今の国直轄の郵政事業を、国の公社、国営公社でやる、これは中央省庁再編基本法にもう書かれているわけですね。その基本的なフレームもその法律に書いておりまして、自律的、弾力的な運営ができるようにする、なるべく役所や国会が余りチェックせずに、できるだけの裁量権を持たせてやる、単年度の予算でなくて中期的な経営目標でやっていく、事後評価をやる、企業会計でやるとか、いろいろなことを書いておりますけれども。
 そこで、私のところに置かれました公社化研究会の答申が昨年末にあったものですから、それに基づいて現在法案化中でございまして、できれば来月にでも関係の法案を出したい。だから、来年からは公社になるわけです。
 そこで、公社移行後のあり方、公社になった後のあり方について、総理直属の郵政三事業に関する懇談会というものが去年の夏できまして、今いろいろ検討、議論をして意見を集約中でございまして、総理が所信表明でも言われましたように、できればことしの夏ごろまでに意見集約をいたしたいと。ところが、この懇談会もいろいろな意見がありまして、今のところどういうふうにまとまるか定かでございませんが、その結論が夏に出れば、それに基づいてあとまた新たなる検討を重ねていく。
 私は、総理には、やはり郵便局の二万四千七百は、百三十有余年の歴史がある国民のいわば資産、生活インフラですから、このあり方については、最終的には国民的議論の上で国民の選択に任せるべきではなかろうか、こういうことを申し上げておりまして、総理も、結構です、こういうことでございますので、とりあえずは私どもは、公社化をしっかりやる、公社に移行する、その後については、いい案をまとめて広く国会を含めて国民の皆さんの御議論と御選択にまちたい、こういうふうに考えております。
岩國委員 私が質問させていただいたのも、その公社化された後の次のステップをもう議論を始めていかなければならないのじゃないか。
 現に、総理自身がその次のことについていろいろ発言しておられることは、公設公営、つまり公社化だけをやるんだ、公社化だけをやるんだ、そういう講釈はもういいかげん終わって次の段階に移っていくようにしなければ、例えば、地方の郵便局にしても、そこに働いている人にしても、生活の不安、業務の不安、それからもう一つは、また繰り返すようですけれども、市町村合併のときに郵便局という機能をしっかりと使っていくことを考えるのか考えないのか。これによって、これから市町村合併をやった場合のそれぞれの新しい合併した自治体の行政組織にもある程度影響は出てくるでしょう。郵便局は福祉サービスも行政の窓口サービスも兼業が許される方向に二〇一〇年からなるんだという前提でやれば、それぞれの市町村合併のやり方についても、当然それを視野に入れた取り組み方というものが容易になってくる。また、そういうめどを与えることになるんです。
 郵便局はそれをやるのかやらないかによって、十二、十三の市町村が合併するときに、そこにある郵便局はどういうことをやってくれるんだ、あるいは住民に対する説明も、不安感の解消にしても、ちゃんとそこは兼業してこういうことになりますからどうぞ皆さん安心して合併に賛成してください、こういう言い方だってできるわけですから。その辺はまず公社化で実験してそれからそれからと、それでは、ほかの内閣の事業というものが円滑にいくかいかないか、そして市町村合併のでき上がりの姿はどうなるのか見えてこないじゃありませんか。
 郵便局の公社化は実験が許されるかもしれません。まあ、これも問題があります。しかし、市町村合併にはそういう、ではやってみようかという実験は許されない。これは、生活をかけ、その地域の自立をかけた決断をしようとしているわけですから、そのときに、第二の市役所と言ってもいいような存在に郵便局がなるということであれば、これは取り組み方もまた違ってくるのじゃないでしょうか。
 そういう点で、私は、公社化の後の議論は市町村合併の特例期間と言われる期間のうちに結論を出すべきだと思いますが、いかがですか。
片山国務大臣 岩國委員言われますように、我々は市町村合併を地方分権推進の大きなてこにいたしたい、こういうことで今一生懸命やっておりますけれども、その場合、合併した場合の反対論の一つは、役場が遠くなる、きめの細かいサービスが少なくなる、あるいはコミュニティーの拠点みたいなものがなくなる、こういう反対論ですね。
 そういう意味で、そういうことの拠点に郵便局をという議論があるわけでありまして、昨年の秋の臨時国会でも、郵便局に、郵政官署に市町村の窓口事務を委託できる、郵便局でやれるという法案を通していただきました。十二月一日から施行しまして、現在、全国のかなりの市町村で委託契約のいろいろな協議が始まっております。
 各種の証明書を郵便局で申請できて交付を受けられる。あるいは福祉の方でいえば、過疎地等のひとり暮らしの老人に対して一声声をかける、これはひまわりサービスと言っていますけれども、こういうサービスを外務の職員さんに、十三、四万いますから、やってもらう。あるいは日用品の搬送等の代行をやってもらう、その他の公共的な仕事の代行もやってもらう、こういうこともやっておりますし、あるいはインターネット等のいろいろな啓蒙教育というのでしょうか、そういうことも郵便局でやるようなことを実は考えておりまして、そういう意味では、郵便局をコミュニティーのいわばセンターにすることによって市町村合併の促進も図っていこう、こう考えておりまして、これは引き続いてやらせていただきたい。あるいは災害の情報の提供、廃棄物の情報の提供等も、事実上、相当今郵便局で都道府県や市町村の依頼を受けてやっております。
 ただ、今の公社化の後のどうだ、こういうことは、公社化までは国の意思として決まっているわけですが、公社化移行後どうするかはまだ決まっていないのですね。いろいろな意見がありますよ。いろいろな意見がある。そこで、総理直属の懇談会が意見の集約をして方向づけをしたいという段階ですね。そこで私が責任者でございますけれども、私が、こういうあれがいい、こういうあれがいいという私見を今言うような段階でないので、正式な、総理直属の懇談会において意見集約を図っていただく。
 その懇談会の中にも、いろいろな意見が実はあるんですよ。それから、懇談会以外の広い、国民の皆さんの中にも、民営化がいいという意見も、国営公社のままがいいという意見も、それ以外の方法もあるのではないかというような意見も、いろいろな意見がありますから、私は、それは十分議論を熟していって、一定の方向づけを、百三十何年続いた郵便局のあり方ですから、郵政事業のあり方ですから、そういう意味では、しっかりした検討の上で方向を出すべきだ。今の段階でおまえの私見はと言うけれども、ちょっとそれは差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
岩國委員 大臣が熱心に取り組んでおられるようだという意欲は伝わりますけれども、しかし、御答弁を伺っていますと、歴代の内閣と余り変わったところはないのです。いろいろな人の意見を聞いて、いろいろな意見があるから、第三者機関に、諮問機関にと。結局、川柳にもありますけれども、「見直して 先送りして 棚上げし」、今まで行われてきたのは大体こんなことなんですよ。大臣の今の御答弁を聞いて、私はその川柳をふっと思い出しました。やれ見直しだ、議論だ。結局「見直して 先送りして 棚上げし」。これじゃまた、郵政改革といって、一体どこが改革なのか。
 改革の一番大切なことは、私はスピード感覚だと思っているんですよ。五年、十年かけて変化する、それは改革じゃなくて、ただの変化にしかすぎないんです。改革というのは、かなりの意志を持って、スピード感覚を持ってやるからこそこれは改革と言えるわけであって、私は小泉改革はこの郵政改革の看板をまずおろすべきだと思いますよ、今の大臣の御答弁それから取り組みがそういう程度であるならば。
 私はイギリスに七年間住んでおりましたけれども、あのイギリスという小さな地方が、大臣も御承知のように、隅々まで緑があって、隅々の小さな集落が生き生きとまだ残っているんですね。それはなぜか。人口の小さいところでも必ず三つのものがあるんです。教会があります。小学校があります。それとポストオフィス、郵便局。この三つさえ残っていれば、人がみんなそこに住みついて、そして最低限のコミュニティーのぬくもりというものを享受しながら、離れようとしないのです。日本の小学校を安易に統合して数を減らすということについても私が反対するのは、その理由からです。
 そしてもう一つ、郵便局というものが、何も日本の郵便局の肩を持つわけではありませんけれども、そういう別の先進国においても、コミュニティーの一つの基盤として大切にされ、そしてそれがコミュニティーのぬくもりを守っているというこの大切な機能は大事に生かすべきだ。大事に生かすために、今から民設民営かどうかという方向を出しておかないと、さっき大臣がおっしゃいました、いろいろな公文書をそこで渡すといっても、これは公設民営なのか、あるいは完全に民営化されて、民間企業の民設民営のところに公文書を委託するようなことになってしまうのか。それなら、十年後にそれはまた取り返して、見直して、また役所が直接やるという体制に返っていかなきゃいかぬかもしれない。
 したがって、半永久的な、継続可能な構想というものが次のステップとしてなければ、最初の公社化そのものもやる意味がそれだけ少ないのじゃないか。次の構想も余りないようだったら、私は公社化なんか大騒ぎしてやることはないと思います。今のままでやって、あと効率だけを追求する、それで十分かもしれません。世直しができないのだったら、手直しぐらいでやめたらどうですか。私は郵政についてそういう考えがあります。
 それから、最後に大臣にもう一つお伺いしたいのは、郵便局の窓口で、今一千万円まで受け入れておりますけれども、これは今後の方向として、民間銀行よりも巨大な銀行が日本に存在するということは、日本の金の流れを大きくゆがめており、そして民間銀行の経営にとってもいろいろなひずみをもたらしているということは、もう御承知のとおりだと思います。
 全く同じ基盤に立つということは無理としても、こうした郵便局銀行のウエートを低めていく上でも、郵便局で預け入れる貯金の限度というものを三百万円ぐらいに減らして、そういう身近な、生活で必要な、その程度の金額に抑えておいて、それを超えるものはすべて国債の個人消化のために国債を買ってもらう。財務省としても国債の個人消化に今取り組んでおられるようでありますけれども、郵便局というのが銀行と競合する競合性を薄めていく、そのような方向で、そしてまた国債の個人消化を促進させる、そのようなお考えはないかどうか、最後にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 郵便貯金の限度額についての御質問でございますが、御承知のように、郵貯は多いときは二百六十兆前後ありましたが、定額貯金の満期での解約が続きまして、現在二百四十兆ぐらいになっておりまして、ずっと経過的に見ましても、大体一七、八%から二〇%ぐらいですね、全部の金融資産の中でのウエートは。
 そういうことで今下がっておりますが、限度額については、平成三年に一千万に上げまして今日まで来ておりまして、これが高いか安いかというのは実は議論がございますけれども、民間のペイオフにおける一千万が一つの基準になっているようなこと、あるいはいろいろな世帯の貯蓄目標額あるいは現在の貯蓄額等を見まして、一千万は丸い数字でございますし、もう長い間これで定着してまいっておりますので、我々としては一千万が適当な数字ではなかろうか、こういうふうに考えております。
 そこで、国債の関係は、現在、郵貯、簡保も自主運用になりましたのでかなりなウエートを持って国債の引き受けをいたしておりますし、郵便局で国債の販売もいたしております。ただ、仮に限度額を下げても、下げた分で国債を買えと言っても、私は嫌だという人が出てくるおそれもかなりありますので、それはなかなか、それがそのまま国債ということにならないと思いますけれども、国債の消化については我々も自主運用を通じあるいは窓口販売を通じて協力してまいりたい、こう思っておりますが、限度額は、公社移行においても一千万を守らせていただきたい、こういうように考えております。
岩國委員 せっかく柳澤大臣それから石原大臣もいらっしゃいますので、郵政業務、郵便貯金業務の行革について、日本のあるべき金融の姿、あるいは諸外国との比較感から、柳澤大臣、郵便貯金のウエートというものは今で適正か、今よりももっともっと下げなきゃならぬというふうにお考えになっていらっしゃるか、端的にお伺いしたいと思います。
 それから石原大臣には、先ほどの総務大臣の御答弁、しばらく公社化して、いろいろな意見を聞いて審議をして、三年か五年かわかりませんけれども、次の方向は出さないままでこの内閣はことしを暮らしたい、こういう暮らし方について石原大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。
 まず柳澤大臣、お願いいたします。
柳澤国務大臣 郵政事業、今二百四十兆円ぐらいの預金残高がある、こういうお話が片山大臣からございました。それに対して岩國委員の方からは、これだけの預金量を有する銀行がある、預金機関があるということは、民間の金融をかなりゆがめているんじゃないかという問題提起がありました。
 私は、この問題はいずれ民営化というようなことの中で論じられるべきだ、こういうように思っておりますが、心持ちとしては、やはりこの限度額はちょっと大き過ぎるんではないか、こういうように思っております。しかし、じゃ幾らがいいか、これもなかなか今ここでお答えするだけの準備をいたしておりません。ただ、全体としてやはりちょっと多いんではなかろうか、こういうように考えております。
石原国務大臣 ただいま御質問のありました点は所管外ではございますけれども、小泉総理の強いリーダーシップのもと、公社化された後、速やかな組織変更というものがなされていくと私は承知しております。
 また、限度額の問題については、川上川下議論に実はなっておりまして、私の所管しております特殊法人改革は、郵貯のお金等が財投に流れて、真ん中でございますが、それが使われていく川下に特殊法人があり、さらにこの特殊法人の中で、経済財政諮問会議で御議論を今いただいて年内に結論を出す政府系金融機関があるわけでございます。政府系金融機関の総与信の残高というものは、八つの政府系金融機関でおよそ百七十兆ぐらい、これにあと二十ぐらい融資をしておりますので二百兆ぐらい。日本の銀行の総与信が八百兆円弱ということを考え合わすと、このウエートが大変大きい。その源流に郵貯があるということを考え合わすと、個人的な見解ではございますが、やはりこの限度額というものは大き過ぎるんじゃないかと認識しております。
岩國委員 そういった川上川下の議論に関連しまして、この川下の規模の大きさ、今大体二百兆という数字がいただけましたけれども、この二百兆という貸し付け、そこで使われているお金、この中のどれぐらいが不良債権化していますか。新聞によれば、百五十兆というとても大きな数字が出てきたり、民間銀行における不良債権の問題というのは毎日のように登場しておりますけれども、本当は民の不良債権よりも官の不良債権の方が問題ではありませんか。
 総務大臣、どうもありがとうございました。(片山国務大臣「ちょっと済みません、いいですか」と呼ぶ)
津島委員長 片山総務大臣。
片山国務大臣 今ほかの閣僚から答弁ありましたが、川上川下論がありましたが、昨年の四月から資金運用部に郵貯の資金を入れるという義務預託制は廃止になりました。財投は廃止になったんです。したがって、去年の四月からは自主運用でございまして。ただ、七年の預託ですから、七年間は、全部引き揚げると貸付先がどうにも回らなくなりますから、そういう意味で、どんどん返ってきますので、七年後には完全な自主運用です。川上川下は断ち切られているんです。もしそういう種類の今答弁であり、お受け取り方をされているとすれば、そこは改めていただかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。
 それから、郵貯の立場からいきますと、旧の資金運用部に預託したわけですから、これは返済は保証なんですよ。だから、我々の方にとっては不良債権ということはありません。ただ、貸している先の経営がどうか、これはまた別の議論ですから、それはどうぞ関係の方から御答弁をしていただいて。
岩國委員 要するに、川上から川中まではきれいだけれども、問題は川中から先の話であって、川中から川下がどうなっているかということをまた後ほど柳澤長官にもお伺いしたいと思いますし。
 それから石原大臣にお伺いしておりますのも、川下から見た場合の川の流れ、今総務大臣は断ち切られているとおっしゃいましたけれども、断ち切ったように見えて実際には川のバイパスが、財投債に対する政府保証という形でバイパスがつくられているでしょう。それは川の流れが、斐伊川、神戸川の治水事業のように、ちょっとバイパスをつけて、あそこで川の流れが一見変わったように見せているだけであって、最終的に川下の方で不良債権が発生した場合に、川上の川上にいる国民の財布を直撃しないという保証はいまだにないじゃないですか。この点を私はこれから質問したいと思っているわけです。
 何か御意見ありますか。
片山国務大臣 なるほど、自主運用になりましても、経過措置のものを除きまして、あとは自身の資金運用計画として国債を引き受けたり、地方債を引き受けたり財投債を引き受けたり、それはあります、マーケットで。
 だから、そこのところは、そういうことで資金提供は引き続いてかなりのウエートでやることはやるんですが、今までは資金運用部でやったんです。今度は自主的にやるんです。ただ、七年間は経過措置で、七年間の約束で貸しておりますから、これは経過措置があるということ、そこは一緒になっておるということだけ御理解を賜りたいと思います。
岩國委員 大臣の御説明は一応承りましたけれども、要するに、そういった公的資金、あるいは公的貯蓄制、それが公的な保証が与えられているがゆえに結局は国民にはね返ってくる。そのおそれがあるからこの改革を進めようというのがこの小泉改革の大方針じゃありませんか。それが、いやいやそんな心配はないんだということになっては、小泉内閣の存在価値さえもいいかげんなものだと私は思います。
 危険は依然としてあるはずです。そして、民間企業にあれだけの不良債権が発生して、あれだけ毎日毎日それに取り組んできた銀行と借り手でさえも不良債権の問題が大きいときに、お役人さんが三年ごとに交代しているような人たちで、不良債権が一銭も発生しませんでしたということはまず考えられないことだと思うんです。
 官の世界には、民の世界よりもあるいはもっともっと高い確率で不良債権が出ているんじゃないか。その不良債権の額を、私は今こそ政府は公表すべきだと思うんです。民間の不良債権に対して公的資金を今か今かと投入しようという姿勢を内閣は強めておられるときに、我々は、官の方でどれだけ不良債権が出ているのか、官の方がもっと悪いとすれば、それも頭に入れた上で民に対する公的資金投入の問題を議論しなければならないわけです。
 大臣には十分御意見を伺いましたので、どうぞ御退席いただいて結構です。ありがとうございました。
 それで、石原大臣にお伺いいたします。
 そうした政府系の企業あるいは事業財団、外郭団体、特殊法人、こうしたところがいろいろな事業のために国民の金を使っている、これが川上川下議論のそもそもの出発点でしたね。そして、そういうものを、川の流れをきれいにすること、透明性を高めること、同時に、場合によっては川の流れの方向を変えていこう、そういうことも必要です。
 まずここでお伺いしたいのは、その川下の汚れがどれぐらいあるのか、汚れの規模がどれぐらいあるのか、それについて官の不良債権はどれぐらいあるのか、端的にお答えいただきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま委員が御指摘の点は、昨年の当委員会、また内閣委員会等でも御議論になった点でございまして、私どもとしては、財務省の御協力を得まして、これは平成十二年度事業年度ベースでございますけれども、不良債権が官にあるのかないのかというのは、穴があいたら税金で補てんできますので積み立てがないということを考えると不良債権はないのかもしれませんので、不良債権的なるものを、法律の用語では欠損額等という形で公表をさせていただきました。
 このうち、委員が先ほど来御指摘いただいています政府系金融機関、また道路公団等の先行七法人を中心に、当事務局において抽出、推計を行った金額、これも昨年発表した数字を改めて申し述べさせていただきますと、政府から出資金あるいは補助金が出ている特殊法人五十四社、認可法人二十四社、合計七十八法人ベースでございますけれども、欠損金額の合計は二十五兆二千九百九十九億円、余剰金等が二十一兆三千七百二十七億円となりまして、両者を単純に差し引きいたしますと、対象法人全体の欠損金等は三兆九千二百七十二億円となります。
 そして、先ほど推計というお話をさせていただきましたけれども、このうちの大きな九社、九法人の、将来コストとして発生するおそれのある、あるいは貸借対照表にあらわれていないもの、よく議論になります簿価と時価の乖離、あるいは別途重要な会計方針の中に記載されているもの等々、将来国民の負担につながる可能性があるものについて、抽出、推計、推計でございますがさせていただきますと、例えば住宅金融公庫の特別損失金は三千四百十四億円、中小企業金融公庫の貸出債権のうち引き当て不足の懸念があるものが三百五十八億円、日本原子力研究所や核燃サイクル開発機構の所有施設の、これは原子力関係でございますので、廃炉にしたりあるいは放射性物質処理等にかかわる費用として計上されているものとして想定されるのが一兆二千二百億円というふうに想定されると認識をさせていただいております。
岩國委員 こうした二十五兆の欠損金合計、これは民間の不良債権の選別基準で、第一分類、第二分類、第三分類、第四分類、こういう形で分類した場合に、あるいはそういう分類さえもしておられないのかどうか、しておられるのかどうか、まずその点と、それから、それぞれの分類をした場合にどういうふうになるのか、それをお答えいただけませんか。
柳澤国務大臣 特に、金融を通じての融資というか公的な資金の供給というものについて、我々、今度、そういうものの結節点になっている機関は政府関係金融機関、こういうふうに言ってよろしいかと思いますけれども、この政府関係金融機関の貸出金の資産についての評価、査定というものについて、一体どうあるべきであろうかということを論議しておったわけですけれども、つい最近になりまして、この査定という仕事は金融庁にノウハウの蓄積があるのであるから、そういうことで金融庁がそれぞれの担当の所管の省からの委託を受けてこれを行う、こういうことに最近決定をいたしました。
 したがって、これからは、新しい評価の仕組みをどうすればいいかということは若干まだ考えなきゃならぬ点があるかもしれませんが、基本的には民間の金融機関と同じような評価方法でもって資産の評価をしていくということになろうかと思います。
岩國委員 大変いい答弁をいただきました。そういう民の基準と官の基準が全然違っておって、これだけ国会では公的資金がどうとか、あるいは新聞紙上で騒がれているときに、さっぱり官の不良債権の規模が浮かび上がってこない。どれだけ根深いものがあるのか、あるいは民のほかに官の方のしわ寄せがどれぐらい来るかも国民にわからせないままに、知らさないままに、この議論だけを通して予算を認めよというのは私は非常に問題が大きいと思って、実はきょう大臣においでいただいたわけです。
 そうした検査についても一元化していくということは非常にいいことだと思います。各省庁から委託を受けてされるということですけれども、今までは結局、これは全大臣いらっしゃるときに、それぞれの省庁の関係する不良債権、頭の中にどういう数字があるのか、それを伺いたいということを私は予定しておりました。
 今、大臣が委託を受けたと言われても、なおかつ、それぞれの所管の大臣が自分はどれだけの不良債権を抱えている大臣なんだという意識を持っておられるかどうか。不良債権というのは何か人ごとのようなもので、同じ屋根の下で隣の部屋の人がどれだけ赤字を出してどれだけ不良債権を抱えているかも、情報の共有さえもないような寄り合い所帯なのか、官の不良債権という問題は私は早急に実態を明らかにしていただきたいし、そのためにも金融庁の方で徹底的に洗い出すべきだと思います。
 また、民間企業の場合には、どこまで情報公開するかということについては、貸し出した銀行の問題、そして貸し出しを受けている企業の問題、いろいろ問題が大きいとは思いますけれども、公的なお金の行き先、使われ方ということについては、民間企業以上にもっと透明度が高くあるべきじゃありませんか。そういった点でも、私は、民間企業の実態調査について今入っておられるようですけれども、それよりもっと早く実態を明らかにしていただきたい、そのように思います。
 そうした、委託を受けて調査に入る体制はできたということですけれども、いつからその調査に入ることができるんですか。そして、いつを目標に官の不良債権を公表される予定ですか。大ざっぱでも結構ですけれども、大体そのめどを教えていただけませんか。この国会会期中に必ずそれは出していただけるかどうかも含めて御答弁をお願いします。
柳澤国務大臣 これは法律的な基礎が必要だということになっておりまして、この関係の法律案を三月中旬に閣議決定をして提出する、そして御審議をお願いする、こういう段取りになっておりますので、いずれにせよ、施行というか現実の取り扱いが始まるのは、その法律の定めるところによってということでございます。
 今、政府側としてではどう考えているかというと、正直申しまして、私どもの方のそれにかかる体制の整備等もありまして、十五年度を予定しているということが現在の政府が法律案を提案するに当たっての考え方ということでございます。これは国会の御審議によるところだろうと思います。
岩國委員 なぜ十四年度中にできないんですか。人が足りないからですか。国会がその法律を通す手続的な問題ですか。
 私は、これだけ不良債権の問題が毎日毎日もう寝ても覚めても出てくるときに、役所の不良債権というものを、まず隗より始めよ、実態を明らかにして、それから国民に、そういった民間企業の不良債権まで本当は納税者は背負う義務はないと私は個人的には思っておりますけれども、そういうものまでも背負わせよう、予算は通しなさい、予算以外の隠れたツケがあなた方に回りますよ、その隠れた請求書というものをここで一切審議することもなしにこの予算の審議が終わってしまうということは非常に耐えられない思いです。
 そういう意味でも、そういう省庁間の合意ができているのであれば、早く法律を出して、早く作業に取りかかったらどうですか。実態調査すべきじゃないですか。各大臣にしても、自分のところのいろいろな事業の内容について、それだけひどいことになっているという報告があるんだったら、今の任期の間に何か仕事をしたいと思う誠実な大臣も何人かはいらっしゃるはずだと私は思います。
 もう一度御答弁願います。
柳澤国務大臣 基本的に、これは法案の御審議の際に我々また御議論をお願いしたい、こういうように思っておりますけれども、法律案が通りました後に、基本的に今、リスク資産の分野あるいはリスク管理の分野ということで、いろいろな政府関係金融機関の監査というか事後的なチェックというものをしなければならない分野があるわけですけれども、そのうちで金融庁がノウハウを蓄積して専門的な知識もあるのでこれに頼もうという分野が、それぞれの機関でどの分野かということも法律施行後決めるというようなこともございます。すると、それで分量はどのぐらいになるんだということがあって、私どもといたしましても、今何にもやっていないときの人員配置というものとやはり変わってこざるを得ないと思うわけでございます。
 そうした諸準備を考えますと、それが十四年度一年度ぐらいは必要だろうということで、十五年から始める、こういうことになっているというのが現在の政府側が腹案として考えている法案作成中の考え方ということであります。
岩國委員 早急にこの問題に対する取り組みというものを明らかにしていただいて、必要な法的手続あり、国会で何かやらなきゃならないことがあるならば、どんどんどんどん前倒しで作業を進めていただきたいし、そういう姿勢をはっきりとしていただきたいということを私は要望して、次の質問に移ります。
 石原大臣、どうもありがとうございました。
 それから、坂口大臣おいでいただいていますので、少し坂口大臣御管掌の件についてお伺いしたいと思います。
 たばこ税の収入、それからたばこの被害、こういうことについて、たばこ税の収入は財務大臣の方の御管掌でありますけれども、このたばこ税を引き上げた場合に、どれだけたばこを吸う人が減るであろうか。そして、仮に倍増した場合には、仮にですよ、たばこ税を倍にして、国民の健康を守るために、国民の健康に対する配当がどれだけ来るのか。
 たばこ税の引き上げによる健康への配当という点について坂口大臣にお伺いしたいのは、国民の健康を守っておられるお立場から、たばこ税を仮に倍にすればたばこを吸う人はどれぐらいに減るであろうかというシミュレーションは省内でやっていらっしゃいますか。
 そして、たばこを吸う人、これについて日本とアメリカとイギリスとフランスと、統計があるのは残念ながらこの四つの国しか手に入らなかったわけですけれども、たばこを吸う人が二十年前に比べて、男女それぞれにおいての比率を見ていましても、どこの国でも全部減っております。ふえているのは日本の女性だけなんです。そして、日本の男性の喫煙比率、私もつい最近までは吸っている方の仲間に入っておりましたけれども、その喫煙比率というのは、世界で今でも最高レベルは日本の男性なんです。
 二番目に、さっき申し上げましたように、この二十年間のトレンドの中で、すべて下がっている中で上がっているのは日本の女性だけである。国民の健康という観点から、喫煙者による被害、本人の健康、医療費のコスト、そして周りの人に対するそういう被害、こういうものについてどういう分析をし、どういう研究なり調査なりしておられるのか、それを教えていただきたいと思います。
坂口国務大臣 今御指摘をいただきましたような明確なものは、正直申しましてございません。ただ、喫煙をする人と非喫煙者との間に寿命等でどれだけの違いがあるかといったようなことにつきましてはいろいろ研究をしたものがございまして、いわゆる厚生労働省がん研究助成金によります、がんそれから循環器疾患の疫学研究というのがございまして、これによりますと、たばこを吸っている人の死亡率というのは、吸ったことがない人に比べまして、男性は一・六倍、女性は一・九倍、こういう数字が出ています。女性の場合には大体倍ぐらいというふうな数字になっているわけでございます。
 人間、死にますのも、がんや循環器だけではありませんし、ほかのものもあるわけでありますし、また、ほかのいろいろの要因も影響してくるでしょうから、そう一概にはなかなか言えないというふうに思いますけれども、非常に単純化をして、がんやあるいは循環器だけについて見ればそういう研究があるということでございます。
 それで、国全体の中で、たばこの場合に、吸った場合と吸わない場合とどれだけの、税制上あるいは国家のコストがどう違うかというところまでのものは、申しわけありませんがございません。
 先ほどの喫煙率の問題でございますが、我が国の喫煙率は、一九八九年、これは男性が五五・三%吸っておりましたし、女性が九・四%でございましたけれども、十年後の一九九九年、この十年間の間に、先ほど御指摘いただきましたように、男性は四九・二%に下がっておりますし、女性は一〇・三%にふえている、こういう状況にあるわけであります。
 米国、英国、フランスあたりはやはり最近下がっておりまして、現在の状況でございますと、米国では、男性の二五・七%、女性が二一・五%。英国におきましては、ちょっと古いですけれども、一九九二年でございますが、男性が二九%、女性が二八%。フランスにおきましては、一九九三年でございますが、男性が四〇%、女性が二七%。ちょっと古くて申しわけございませんけれども、最近は他の諸国は減少傾向にあることは間違いがないということでございます。
岩國委員 厚生労働省としては、ぜひそういった喫煙の問題、最近、新聞、雑誌等にもよく取り上げられております。私もそういった、マージャンするときには、テンパイしたときのテンパイたばこというのはこれほどうまいものはないんだ、そんなことを教えられたり、カラオケの後の一服、これもまたうまいものだと。私は非常に素直にそういう忠告を聞くものですから、そういう悪い先輩、友人に囲まれて、私も結構そういうときはテンパイたばこにカラオケたばこもやっておりましたけれども、最近は非常に、自分の健康だけではなくて周りの人に迷惑をかける。私は、そういう迷惑ということについては非常に敏感な方ですから、これ以上迷惑な存在でありたくないなと思ってやめることにいたしました。
 しかし、国の財政への迷惑はどれぐらいなのか、それをもう少し数字的に、あした一斉に日本人がたばこを吸わない民族になった場合の国の財政に対する寄与率はどれだけなのか、健康保険財政に対して。こういうことは当然、その治療費、医療費、そういったことも含めて、私は、そういった喫煙被害というものをもう少しみずからの調査をなさるべきではないかな、そういうふうに思います。
 新年度の事業計画の中にそのような喫煙被害について、本人の治療費だけではなくて、周りの人に対する迷惑コスト、そして第二次、第三次の被害、そういうものについて調査し、発表し、啓蒙運動をされる、そのようなお考えはありませんか。そのことのお考えを聞かせていただきたいと思います。
塩川国務大臣 厚生労働大臣の健康問題とは別の問題といたしまして、たばこ税の方とたばこの販売数量という問題は私の方の統計の方が正確であろうと思いますので、ちょっと申し上げたいと思います。
 概略的なことを申しますと、平成元年度から十三年度まで、この十三年間の推移を見ますと、たばこの販売数はそんなに大きい変化はございませんで、すなわち、平成元年度で、本数にいたしまして三千百三十八億本でございまして、このときの税収は全部で一兆九千二百六十六億円、こうなっております。
 そして、平成十二年でございますけれども、十二年度では、販売数が三千二百四十五億本でございますから、平成元年と比べまして百億本の増加でございます、大した増加じゃございませんが。一方、税収の方は二兆三千百十億円となっておりまして、税収の方は四千億円ほど増収になっておる。これはなぜかといいますと、輸入のたばこが相当ふえたということで、販売金総額がふえておるということでございまして、そういうものの関係でございます。
坂口国務大臣 前提条件をどう置くかということによってこれは大分違うと思いますけれども、御指摘いただきましたこと、前提条件を整えまして一遍検討をさせていただきます。
岩國委員 新年度予算を見ますと、平成十四年度予算、地方財政計画によりますと二兆二千九十億円、これがたばこによる税収というふうに予算には計上されているわけですけれども、問題は、二兆円税金はもらったけれども五兆円坂口大臣の方で使っておられるということになれば、国として何やっておるかということですね。もちろん、たばこというのは嗜好品ですから、そういった別のメリットもあるということはしながらも、医療保険その他で、二次三次を含めてそれだけのそういった治療費の増加とか、いろいろな病気を誘発しているということになれば、これは二兆円の税収を捨ててももっと取り組まなきゃならないということになるのではないかと思います。そういう点も含めて、厚生労働省のそういう取り組みというものは、しっかりと私はしていただきたいと思います。
 それから、坂口大臣がいらっしゃるときに、年金の問題についてですけれども、この年金について、仮に日本人の平均寿命が急に一年延びた場合に、年金財政はどれだけ負担がふえるのですか。逆に、年金財政が、一年減った場合にはどれぐらいになりますか。
 また、まとめて伺いますけれども、その前に、先ほどたばこを吸う人によっていろいろな病気の発病率が違うというお話がありました。もう一つの研究としては、たばこを吸う人、吸わない人の平均寿命の違いというものも発表されているはずです。日本人があしたから全員たばこを吸うことをやめた場合には、平均寿命は幾ら延びるのですか、そういう研究に基づいて。
坂口国務大臣 たばこをのむ人のまない人によって、平均寿命にどれだけ資しているかというのは、学者の先生方の御意見、論文というのは確かにあるというふうに思いますが、厚生労働省がそうしたものを出しているということではございませんので、そこはちょっとお許しをいただきたいというふうに思います。
 それから、人口推計が最近出ましたけれども、年金に対しまして、一歳延びたらどれだけか、一歳それが延びなかったらどれだけかという、そういう出し方もなかなか今できておりません、正直申しまして。
 ただ、平均寿命の延びそれから出生率の一層の低下といったような様相にあることは事実でございまして、そうした新しい人口推計がこの年金制度に大きな影響を与えることは、これはもう御指摘のとおりでありまして、この次の改正に向けまして、そうしたことを中心にしてもう一度計算をやり直すということになるわけでございます。
 少子化は、この年金制度の問題にとどまりませず、我が国の社会全体に対しまして大きな影響を与えるわけでありますから、年金としてどうか、それから、それこそ社会全体として受けます影響はどうかといったことにつきましても、我々は十分に考えてやっていかなければならないというふうに思っております。
 これは、次期再計算が迫っているわけでございますから、そうしたことを中心にしてしっかりやっていきたいというふうに思いますが、先ほど御指摘になりましたように、一歳延びたら国民の年金としてどうかといったような、個人個人に、一人一人に当てはまるそういう計算の仕方はしていないものですから、きょうはちょっと申し述べることはお許しいただきたいと思います。
岩國委員 この年金財政というのは、非常に国家にとっても大きな問題であるということは申すまでもないことですけれども、私がこの年金の問題で、やれ寿命の問題だ、たばこの問題だ、税金の問題だ、そんな一見関連のないようなことをさっきからお伺いしておりますのは、日本人の平均寿命が延びるということは、国としては非常に望ましいことであるわけです。
 しかし、年金にとっては悩ましい問題である。たばこを吸う人がふえれば平均寿命が短くなるという学説が正しいとすれば、たばこを吸えば吸うほど平均寿命は短くなって、坂口大臣の年金財政を助けることになる、こういう三段論法になりますけれども、国民に全部たばこを吸ってもらって、平均寿命を縮めてもらって、そうすると年金財政の構造改革につながっていくということになりかねないのではないか、そのように思われますので、こうした喫煙という習慣がどれだけ社会的にコストをもたらしているものなのか、そして税収との見合いでどっちが得なのか。また、仮に税収の面でプラスがあったとしても、たばこを売るということは政治の信念としてやめるべき事業なのか。
 そういったことの結論を出すためにも、年金財政との関連、要するに、寿命が延びるということはどれだけ社会にとってコストがふえるのか、しかし、それでもこういった喫煙というものは積極的にやめていくべきなのだということがお金の面からも裏づけることができるように、ぜひそういう調査、資料というのはできるだけ早く提供していただきたいということをお願いして、大臣に対する質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。株式市場について、柳澤大臣にお伺いしたいと思います。
 この株式市場、世界で一番お金がありながら世界で一番株式市場が不振であるというのは、どうにも説明ができないんです。金がないからあの株式市場は不振だというのはわかりますけれども、そういった振るわないマーケットの上に、最近はもう一つの不信、信用できない。一体公的資金はどれだけ投入されているのか、政府は株式市場についてどういう取り組みをするのか。
 株式市場というものについて、これは、単に売ったり買ったり金もうけをする人たち、そういう人たちのための場と考えておられるのかどうか、大臣の御所見をお伺いします。
柳澤国務大臣 株式市場、これはもう申すまでもなく企業の資金調達の場でございまして、その資金調達を株券という極めて流動性の高いものによって調達しようということで、投資家の方々としても非常に魅力のある投資先、こういうことになっているはずでございます。ただ、その過程で当然、流動性が非常に高いものですから、投資家にとってもうかったり、もうかり損なったりということが非常にある、こういうことでございます。
 私ども、今岩國委員の御指摘の点で申しますと、非常に感動したエピソードがございます。それは、投資家教育の一環として、あるメディアが、中学、高校、大学というようなところで、一種の投資の方針を決めたりというようなことでリポートを出させたわけでございます。
 そうしたら、どういうことが起こったかというと、これから自分たちの投資は、自分たちの役に立つ企業を育てるために、そういう先に自分たちは投資をしなきゃいけない。あるいは、これは女学生のリポートなんですが、自分が欲しいものをつくっている会社に自分は投資をして、その会社が引き続きこれからもその製品をつくってくれるように、さらにいいものをつくってくれるように自分は投資したい、こういうような、非常に我々にとっては健全な株式投資の考え方がそこでリポートされておりました。
 これから、こういう若い人たちがさらに投資の目というものを健全に成熟させていってくれたら非常にありがたいなという感じがいたしまして、私どもの基本的な考え方も、このリポートにあるような考え方であると申し上げてよろしいかと思います。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
岩國委員 大変いいお話を伺いましたけれども、それだからこそ、日本はもっと株式を国民の手に持たせる、第二の株式民主化運動。第一次証券民主化運動というのがマッカーサー時代に行われたわけです。そして、日本の個人所有比率も随分高まり、株式に対する興味も理解も、そして日本の経済に対する関心も、株式を持ったからこそ自分は関心を持って、そして政治家の、政党の政策も少しは読む。
 今は、個人で株式を持っている人がもう二割そこそこ、アメリカの半分以下。年金とか投資信託という形で、間接的な株式市場への参加者というのを見た場合に、アメリカは個人が八五%、日本は二五%。要するに、二割自治とか三割自治とか言われますけれども、日本は完全に資本主義ではなくて、法人という会社、組織が支配している資本主義。社会主義ではないけれども、会社主義、会社資本主義になってしまっている。個人の生き生きとした躍動感というのがマーケットの中に全然見られない。
 したがって、日本の景気がよくなっても悪くなっても、そういう点からの関心が少し薄れている。私は、政治においても、株式を持つということは、政治に対する関心、そして投票率にも、株式を持っているから、自分の株式の価値を守るためにもどの党に一票を投じようかというメンタリティーが高まると思いますし、政治の民主化においても、経済の民主化においても、この株式の民主化運動というものを内閣でしっかりとやっていくべきではないですか。
 学生の間、生徒の間にも、そのように素朴な形で、日本という国をよくしたい、日本をよくしてくれる会社を応援したいという気持ち、それこそ、私はある意味では貴重な愛国心だと思うんです。株式を買えば愛国心がすぐ、とは私は言いません。しかし、これはかなり関係があること。自分の国を守ろうという気持ちが薄れている人が現実に日本の中にもいらっしゃることを私は残念に思います。
 私は、株式を持っている人たちは、自分の国はだれが守るんだ、だれが守らなきゃいけないんだということにもつながっていく、いろいろなことに関係してくる上で、決して私は、以前そういう世界にいたから証券会社の人の仕事の手伝いをするような弁を張っているわけではありませんけれども、今大臣がおっしゃったことが本音であるとするならば、もっと私は株式の民主化運動に取り組むべきだと思うんです。
 にもかかわらず、最近の小泉内閣のやっておられることは、個人株主を追いやるような傾向が強いのではありませんか。塩川財務大臣が提案された、限定したキャピタルゲインには税金をかけない、限定的なことではありますけれども、私はそれに一定の評価はしております。しかし、相対的に見て、もっと株式を買いたくなるような施策というものを具体的に、わかりやすくておもしろい、そういう政策が次々と出てこなきゃいけない、そんなに大事なものであるならば。
 今の日本の活力がなくなっている、元気がなくなっている一つの原因は、株式市場の不振、これが一つ。二番目に、ゼロ金利政策、日本人のお金に給料を払わなくなってしまった、日本のお金を全部失業させてしまった、これが二番目。三番目は、中小企業の税制がわかりにくい。もっとおもしろくて簡単でわかりやすい税制に税制一新、それを中小企業を対象にしてやらない限り、中小企業の活力は出てこない。
 その順番でお伺いしたいと思いますけれども、柳澤大臣、今の株式取得機構、大臣は、民間の銀行をお呼びになって、もっと利用してほしいとおっしゃったようですけれども、あの株式取得機構そのものが余りマーケットで歓迎されておらないんじゃないですか。あれが出ますよとか、あるいは、国会でそれが認められたといったときに、株価はその日幾ら上がりましたか。ほとんど反応しないでしょう。
 そして、民間銀行が株を持ち過ぎているということがいろいろな問題を起こしているということは、宮澤大蔵大臣のときから私はここで議論してまいりました。アメリカの銀行、ヨーロッパの銀行と比べて株式を持っているということが、結局経営上の大きな重荷になっている。それがプラスになった時期もありました。しかし、ずうっとここでは重荷になっている。そして、政治としては、好調なときに銀行がそれを持っていればよかったということよりも、不況になったとき、経済が苦しくなったときに、銀行はどういう役割を果たすべきか、そのためには、その株を持っていることがプラスかマイナスか、そちらに限定して、はっきり言って、日本の銀行の株式を全部取り上げることが必要ではないかと私は思います。
 取り上げるといっても、ただで取り上げるわけではありません。銀行の株式に転換できるような国債という形で、今の日本の個人のたんすや仏壇の引き出しの中に眠っている、そういう地方の資金も吸収して、外国の資金も吸収し、そして、日本の国を救うことにもなると思いますけれども、銀行の株式を缶詰の中に入れた、そういう、私の持論ではありますけれども、転換国債というものを発行し、国債だから買って安心、転換国債だから値上がりの楽しみ、安心と楽しみと二つあるもの、それを私は全国の郵便局の窓口で販売すべきだと思うのです。
 世界一個人金融資産があるといいながら、働いているお金がないのですよ。これはゼロ金利政策の欠点でもありますけれども、そういう何かわかりやすい国債の消化の仕方。あるいは、一石二鳥、三鳥として、今の株式市場に株式取得機構が買ったものがいつか売りに出されると思うから、だれも株式市場の関係者は笑顔を見せないわけです。これが究極的に、終局的に国民の手に渡って、それだけ株式市場に参加する人の数をふやすことにつながっていくんだ、そういうものが必要じゃありませんか。御所見をお願いいたします。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
柳澤国務大臣 岩國委員の御所説は、非常に早いころからメディアを通じて我々知らされたところであります。私ども、手元の資料を見ましても、平成十年十月二十七日の新聞の「論壇」で御主張が初めて展開されたのだと承知をいたしておりまして、今委員がお話しになられたように、法人の保有が多い、しかもそれが持ち合いという形でたくさん法人の株式保有が行われている、こういうことが非常に大きな悪影響をいろいろもたらしているということは、これは私も全く同感です。特に、時価会計が導入されまして、多額の保有株が値下がりするというようなことがありますと、企業の財務状況、特に銀行の場合なども大変な打撃を与えることは言うまでもありません。
 それから、もうちょっと申しますと、今委員も御指摘になられた点ですけれども、コーポレートガバナンスということがきかなくなってしまっている。つまり、あの会社の、企業の経営というのは、我々はこういう文句が本当はあるんだ、しかし、それを株主として表現すると今度は自分の企業の経営についても逆襲をされることもあるから、まあここは言わないでおこう、こういうようなことで、コーポレートガバナンス、本当は物言う株主がもっと物を言うことによって企業の経営というものが生き生きしてくる、活性化される、本来の方向に行くということ、そういうチャンスが非常に失われてしまっているのではないか。これは、株価の変動による財務への影響以上にもっと根本的なことではないか、こういうようなことも私ども考えておりまして、やはりそれには物言う株主、それは具体的な人間なんですね、個人投資家なんですね。そういうようなところにやはり株を持っていただくということが、生き生きした企業を中心とする資本主義の経済が活性化していくゆえんである、こういうように思っております。
 そこで、今委員からは年来の御主張が繰り返されて、このアイデアはどうか、こういうことでございますけれども、私ども、銀行の持ち合い株式を開放する、しかもそれは転換国債という、中間の媒介行がありながら結局は個人投資家の株式保有を大きくするということに効果があり得る、こういうスキームで、その点は我々、非常に敬意を払うべきアイデアだ、こういうように思っております。
 しかし、他方もう一つ、銀行の株式を強制的に買い上げるということ。それからさらに、株が値上がりしたときは転換をすることによって投資家が全部その利益を得ることができるけれども、損をしたときは、結局それは、投資家はとりあえずそのリスクからは解放されて、国なりあるいは保有している銀行なりにその損失が帰属してしまう、こういうようなこと。
 これは本当を申しますと、シンガポールでしたですか、株価が暴落したときにあえてそういうことをやった。ETFに組成させて、ETFを実際の市価よりも安く個人投資家に売って、それで個人投資家を非常に多くして、それが結局は、もともと少し利ざやがあったものですが、株式が上がることによってさらにその利ざやが拡大して個人投資家の定着に非常に寄与したというようなこともこれあり、非常に魅力を感じないわけではないのですが、今そのアイデアで国民の理解が得られるかということについては、私もまだそこまで度胸がないというか、勇気が出ない、こういうことでございます。
 もう一つちょっとあえて言うと、銀行の方に損か、あるいは利益の取得の機会を奪ってしまうということもちょっとどうかなというふうに、あえて問題点を指摘させていただく次第です。
岩國委員 三つの問題点を指摘されましたけれども、銀行から強制的にという場合に、私は、公的資金を投入しながら銀行は大きな本店をまだ持ったまま、持った株にも手はつかない、なのに国民の税金が投入される、そういうことからいえば、素朴な意味の正義感からいえば、ただでそれだけのものを渡すのではなくて、引きかえに株式を引き取ることは私は当然のことじゃないか、それだけの言うことを聞いてもらうのは。
 また、日立を百万株持っているところ、全部五〇%ずつ供出してもらう。それは、銘柄によって、この銘柄は売る、この銘柄は売らない、こんなことを銀行にやらせておったのでは、結局市場の方から不信感、結局目ききの銀行は上がりそうにもないものを株式取得機構に渡しておるんじゃないかというふうに見られてもやむを得ないわけです。いいものも悪いものも全部五〇%、四十兆円持っておる中の二十兆円はそちらに買い付ける、二十兆円は銀行の勘定の中に残して、値上がりした場合にはその二十兆円にも値上がりのメリットはいくようにするということにすれば、銀行も、それを売りません売りませんといって四十兆抱えていていつまでも上がらないよりは、持っている二十兆円が値上がりすることによって、そのときには評価益も売却益も出るわけですから、それは私は説得の仕方が十分あるのではないかと思います。
 それから二番目に、五年後にロスが出た場合にどうするか。これは前例としては、フランスのバラデュール国債なんかも十数年前にやっていることは御存じだと思います。ドイツは、フォルクスワーゲンという株式を使って国民株式という名のもとに証券民主化をやりました。フランスの場合には、そういったいろいろな政府系企業を民有化するときに、プライバタイゼーションの一環として、それを国債という形で、値上がりする国債として売り出した、そういうやり方もあったはずです。
 日本の場合に、五年後に上がっていなかったら、国債として、結局二割下がっているのに一〇〇%で国債を償還しなきゃいかぬ、その損失はだれが持つのか。もちろんこれは国が持つわけですけれども、しかし、大臣、考えてみてください。五年後に今の株式市場がさらに二割下がっているような日本経済は想定できるはずがないでしょう。今の改革をやれば上がる、竹中大臣はお金があったら自分で買いたいとおっしゃっているぐらいに皆さんの経済政策は自信があるんだったら、やるべきです。小泉内閣の経済政策に自信がないからやれないというんだったら、それははっきりおっしゃるべきです。
 五年後にちゃんとその結果が出るような内閣だという前提でこの予算を我々審議している以上、五年後に二割仮に株式が下がっているとすれば、そういう惨たんたる日本経済の中では、二十兆円の二割の四兆円どころか、もう四十兆円ぐらいを今から五年間に投入していかなきゃならぬような経済を迎えることになるんじゃないですか。
 今、いろいろな経済政策の選択肢としては、税金を上げる、これは政策的にできないことでしょう。歳出を半分にする、これも政治的にできないことでしょう。インフレにする、極端に言えば物の値段をあした倍にする、困る人がたくさん出ます。円安にする、円を二百円へ持っていく、これもまた困る人がふえます。労働力の安売り、政府がユニクロ現象、ユニクロ商売を始めるだけの話です、日本のお金を安売りしようというのですから。世界的、国際的に日本政府が日本の通貨をユニクロと同じように安売りします、これもできないでしょう。四つ全部できない。
 最後に残された方法は、株価を上げるということじゃないですか。あした株価が倍になったとすれば、どれだけの多くの問題が解決できるのか。もちろん、一年、二年して下がってしまうような対策ではだめですけれども、ちゃんとマーケットの参加者が多くなって、株式という金融商品に魅力を覚えさせるような政策を断行することによって、日本の今の苦境というものを救うことができる。幾つかの選択肢の中で、私は有力な選択肢だと。
 そして、五年後に二割下がっていたらどうするかといった責任問題よりも、それをやらないことによってより多くの問題を引き起こしたその責任こそ私は問わなければならない、そのように思うわけです。
 大臣、今の株式取得機構というものを活用し、利用もしながらも、それに並行する形で一日も早く、さっき私の三年前のことをおっしゃっていただきましたけれども、あの三年前に本当はそのときの内閣があれを断行しておれば、今の株式市場は私はさま変わりになっておった、そのように思います。もう一言、お願いします。
柳澤国務大臣 委員、いろいろの面で非常によく考えられて立論を組み立てられております。
 ただ、私どもも、実はあの取得機構をつくるときに、何とかこれを、株式民主化という言葉がいいかどうかですけれども、個人投資家が株式市場にもっと目を向けてくれるようにという方策の一つとして、一般勘定というのを置きまして、これはETF、つまり、個別の銘柄ということは個人株主が持つ場合にはやはりいろいろ難しい面があると思うのです。ところが、今委員がおっしゃったように、まさに日本の国の経済そのものの力をより相関関係を高く表現するETFというようなもので、これを個人投資家の皆さんにも買っていただくということでどうだろうかというような考え方、これに基づいて一般勘定というものを置きました。
 そして、今委員が主として念頭にある方の勘定というのは、これは個別銘柄をそのまま取得機構に売り渡すものでございますけれども、これはさっきちょっとおっしゃられたことでありますが、値上がりしそうもない株というようなことをおっしゃられましたが、むしろそうではなくて、トリプルBマイナス以上でしたか、とにかく投資適格のものに限りますよという条件をつけて買い取るということをしておりまして、これは、立法の趣旨からいうと、セーフティーネットとしてそういうものを置く。何のセーフティーネットかというと、株式の保有制限を一方で銀行にはかけましたので、その見合いとしてそういうセーフティーネットを置くという仕組みのもとで、国会の御論議を経ましてつくらせていただいたものでございます。
 せっかくの御提案でございまして、そのままというふうに申し上げることはちょっとできかねますけれども、委員のアイデアというものを参考にしながら、さらにいいものができていければ、我々、常に検討を怠らないように努めてまいりたい、このように思っております。
岩國委員 どうもありがとうございました。ぜひとも、そうした大胆な、わかりやすい、そして日本のマーケット、したがって日本の多くの個人株主も元気が出るような政策というのを、今世の中暗いだけに、私は一日も早く打ち出すべきだ、そのように思います。
 次に、平沼大臣、お待ちいただいて恐縮ですけれども、日銀総裁にお伺いしたいと思います。
 ゼロ金利政策、これはいつまでお続けになるのですか。こんな、世界の中で、世界の先進国で四年も五年もゼロ金利政策を続けている国というのはありますか。これだけ技術力それから企業も多い国で、これがアラブの国で、国内で投資対象が全くありません、国内に企業がなければ流通産業もない、それから大きな消費人口もないという国ならともかく、これだけの大きな消費人口があって、これだけの大きな企業群があって、そして新しい産業を起こす技術水準を持っておる、それでなおかつ、そんな国でゼロ金利を四年も五年も。
 これは、お金に給料を払っておらないということなんです。お金も人間と同じように給料が欲しい。しかし、日本のお金は給料がもらえない。給料がもらえないから、たんすの中か仏壇の引き出しの中でストライキ。どうしてもお金をもらいたい、給料をもらいたいお金は、アメリカへ出稼ぎに行っておるでしょう、パスポートなし、ビザなしで。人間が出稼ぎに行くときには、パスポートが要る、ビザが要る。お金が出稼ぎに行くときには、パスポートなし、ビザなしで、そしてアメリカへ行って、出稼ぎに行ったきり、お盆になっても里帰りもしない。
 アメリカは日本のお金を必要としているということは、総裁、御存じだと思います。日本のお金がアメリカの株価を支えてきた。アメリカの株価は十年間に四倍、日本の株価は十年間に四分の一。向こうが四倍でこっちが四分の一ということは、差し引き十六倍の差がついている。その十六倍の差をつけた一つの理由は、ゼロ金利政策に私はあると思います。
 日本のお金がPKOに出かけておるでしょう。PKOというのはプライス・キーピング・オペレーション。自衛隊はなかなかPKOに行かないけれども、日本のお金はどんどんPKOに出かけていく。アメリカでPKOに参戦してなかなか帰ってこない。こういう愚かな政策を続けているから、世界で一番個人金融資産があって、世界で一番活力があるはずの日本の血液が、よその国に利用されているだけじゃありませんか。
 そして、たまに里帰りするとすれば、山一証券たたき売り、日興証券安売り、日産自動車安売り、日本長期信用銀行おまけ売り。こんな日本の企業や銀行が、どんどん日本のお金がある意味では利用されて日本企業の買収に向かっている。こんな、国家的に見ても私は全く愚かな政策である、そのように思っております。現に日銀の政策委員会の席上でも、ある委員からそういう意見が出ておるんじゃないですか。
 資本主義というのは、釈迦に説法ですけれども、金利というものが調節機能を果たす。金利が、コストであり、時にはペナルティーであり、時には自律心を育てる、そういう柱である。今日本ではゼロ金利で金利政策が死んでいる、したがって、そういうペナルティーにもならなければ、コスト意識もない、そして借金をするときの自律心もない、そのような状態を総裁としてどのように思われますか。日本銀行にとって一番大切な商品そして唯一の商品はお金です。そのお金が給料をもらえない、四年も五年も。お金が死んでいる国で日本銀行の総裁をしておられる心境について、お伺いしたいと思います。
速水参考人 お答え申し上げます。
 中央銀行というのは通貨の番人と言われております。通貨の番人の立場で、今御指摘のように、金融市場の機能が金利が低いためにだんだん小さくなっていっている、あるいは金融政策の範囲がだんだん小さくなっている、そういった情勢がここ数年の日本の経済対策、景気対策。特に、民間需要が起こってこないと、特に銀行が不良貸し出しを、バブルのはじけを契機として資産価値が落ちて、そのしわが全部銀行に寄って、銀行が不良貸し出しをうんと持っている。そういう状態の中で、銀行が新しい貸し出しを見つけて金融の信用の仲介機能を果たすというようなことが活発に行われていないというのが現状なんですね。景気をよくしていくというのがまず真っ先の課題なんです。
 超低金利を長期化する副作用として、今御指摘のようにいろいろございますけれども、構造調整をむしろ阻害する面もあるでしょう。弱い企業までも助けていくような面があると思います。それから、家計等の利子収入が減っていく、せっかくためた貯蓄が金利を生まないということに対する御不満もあるでしょう。元本が減価しないという安心感はありますけれども、利回りが低いということは、やはり家計にとっては文句があるところだと思います。また、機関投資家の運用する先がない、運用難である、いろいろな点が指摘されております。
 しかし、今私どもは、こういった制度を、低金利を一九九五年から、公定歩合は〇・五%、それからさらに下がってきているわけですね。全く心が痛む状態であるということは間違いございません。おっしゃるとおりです。こんなことはほかの中央銀行でもなかったことですね。
 私どもは、今の情勢をどうやってよくしていくか。金融緩和をしていくためには、あるいは景気を下支えていくためには、また企業がリストラ等に取り組みやすい環境を整えていくためには、金融を豊かに出して、それと同時に構造改革を促していく、また家計の収入とか機関投資家の運用環境を改善していくといったようなこと、こういった側面をねらって低金利を続けているわけですね。これをやっている間に必ずや構造改革が実を結び始めて、民間の需要が出始めるだろう。それをむしろ先取りするような形で、潤沢な資金を供給し、ゼロ近い金利まで落とした上、さらに量的緩和というようなことをやっているわけですね。こういう活動が経済活動を活発化させて、それに応じて賃金や金利収入が増加していくということになってきて初めて経済が正常化して、景気がよくなっていくということだと思っております。
 私ども、思い切った金融緩和がここで十分に効果を発揮するためにも、構造改革の推進を通じて何とか民間金融の前向きな経済活動を引き出していくということをねらって、今、小泉政権の動き出された構造改革に、金融サイドから後押しをさせていただいているというのが現状でございます。決してこれは満足しておりません。
岩國委員 どうもありがとうございました。
 金利ゼロということについては満足していない、しかし、これからもじゃぶじゃぶの金融緩和を続けていく、ゼロ金利は続けていく。しかし、こういったことは今まで何回も私は、去年もおととしもこのゼロ金利について同じ答弁をいただいている。そして、ゼロ金利を続けて、雇用はどれだけふえましたか。どれだけ売り上げがふえましたか。どれだけ賃金はふえましたか。賃金は減っていくじゃありませんか。雇用は減ってしまったじゃありませんか。売り上げも下がったじゃありませんか。私は、このゼロ金利政策は失敗だったということをはっきりと認めた上で、小泉内閣に政策転換を迫るのが日銀総裁の役目だと思っております。
 それは現に、元本が目減りしないという安心感とおっしゃいましたけれども、安心感がどこにありますか。百万円持っていても利子が入ってこない元本。不安が増しています。利子の入る元本を持っているならそれは安心でしょう。利子も入らない貯金を持っていて、貯金している人が安心だというのはこれは正確ではない、そのように私は思います。
 私は、金には給料を払う普通の国に日本を変えるべきだと思います。そして、財政政策、経済政策でもって別の形で資金需要を起こしていく。そして、人間にとっても普通の国、お金にとっても普通の国に早く変えるべきだと私は思います。
 どうも総裁、ありがとうございました。柳澤大臣、どうもありがとうございました。
 それでは、平沼大臣に中小企業の税制についてお伺いいたします。
 最近、町を歩けば、大臣ももちろんそういったことを御承知のとおり、特に中小企業、九九・七%の会社、七〇%の雇用、日本の一番大きな株主が元気がない。そこに対して、私は、中小企業の税制を変えてはどうかということを、昨年十一月のこの予算委員会で塩川財務大臣にも御提案申し上げたことがあります。
 そうしたことについて、もっとわかりやすい、もっと元気の出る、中小企業については、規模について一定の基準を設けるとしても一律フラットにして、わかりやすい税制に改正すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
平沼国務大臣 中小企業に対する税制についての御意見であります。
 これまでも中小企業は、今御指摘のように、日本の経済の基盤を支えている、数も九九・七%ですし、そしてまた雇用の七〇%を御指摘のように受け持っていただいています。これまでも、例えば承継税制でありますとか、あるいは投資促進のための税制でありますとか、あるいは技術開発のためにインセンティブを与える税制等々はやってまいりました。しかし、こういう厳しい中で、税制というものをフラット化させて、そして中小企業に活力を与える、そういう考え方をとるべきじゃないか、こういう御指摘であります。
 これは、財務大臣がいらっしゃいまして、財務省が最終的に決めることだと思っておりますけれども、中小企業を管轄している経済産業担当大臣としては、やはり活力を与える方向の税制を構築していくことは望ましい、このように思っています。
岩國委員 ありがとうございました。
 中小企業については、経営者、その会社の五一%以上の所有者、ほとんどがそうであるわけですけれども、その個人の所得税も会社の法人の法人税も合算して、そして連結して、それに一律二〇%のフラットタックス、世界で一番簡単で、世界で一番元気が出て、だからこそ日本のすそ野が生き生きと動き出した、私はそういう税制一新をやるべきじゃないかと思います。
 税制一新は、そういった中小企業の人たちが、わかりやすくて、だからもっと商売やりたい、もっと利益をふやしたい、利益がふえれば、フラットタックスですから当然二〇%財務省の方へ入る。税金は自然にふえていく。元気が出て、笑顔で、税金もふえていく。そういう税制一新こそ、今国民が期待しているものじゃないのでしょうか。
 いろいろな枝葉の議論は、一長一短おありだと思います。それはある意味では不公平な面も当然出てくるでしょう。しかし、公正だとか公平だとかいうことばかり言っておったのでは、日本の本当の活力というのは出てこない。ある程度の不公正、ある程度の不公平というものを乗り越えて、日本の活力が正当にまた再分配できるシステムさえあれば、私は、過渡的にそういう税制は大胆に導入すべきではないか、そのように思います。
 塩川大臣、以前にも同じことをお願いいたしましたけれども、その後検討はなされておるのか、さっぱり進んでいないのか、年内にもあるいは年内の税制改正のテーブルの上にこれはのせていただけることになるのかどうか、お答えいただけますか。
塩川国務大臣 先生の志向しておられるような中小企業のどんぶり勘定でやったらどうだ、そういう税制に取り組むことは今全く考えておりません。
 しかしながら、私は、今の提案しておられることは前からもお聞きしておりますし、これは非常に実利的で本当に率直ないい税制改正だと思っておるんです。しかしながら、先ほどおっしゃった税の公平、公正、要するに日本の税制は、私はそういうことでなかなか解決のしにくい問題をたくさん含んでおると思うんですが、そういうネットに挟まれてしまってできないように思う。
 私は、今、日本の農業政策と中小企業対策が本当に転換しなきゃならぬときにあるのにかかわらず、サボっておると思っておるんですね。例えば農業対策にしましても、専業農家とそれから兼業農家、いわゆる三ちゃん農家と分けなければ農業政策はできない。
 中小企業対策にしましても、なりわいとしてのいわゆる業者とそれから本当に企業としてやっていこうという中小企業とは対象を分けなきゃならぬのに、ごちゃごちゃにしてしまっておるから政策が行き届かないで中途半端になってしまっておると思うので、先生の提案の税制の問題というのは、要するに、中小企業のあり方をどうするかという、この根本に触れてこなければ解決できないんではないかなと思っておりまして、我々もその点につきましてさらに一層の勉強を進めたいと思っておりますが、しかし、このなりわいというのが中小企業の本体でございますから、これはなかなか難しいということをも同時に御認識いただきたいと思っております。
岩國委員 時間が参りましたので、質問を終わります。
 塩川大臣、平沼大臣に、この日本の活力の源泉の一つ、中小企業がもっと元気が出るような、わかりやすい、世界にも例がないという大胆な税制改革こそ私はやっていただきたい、早急に検討していただきたいということをお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
津島委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。上田清司君。
上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。連日御苦労さまです。
 本日は、昨日の外務省にかかわる集中審議を受けて、同僚議員からの引き継ぎの部分が少しありますので、外務大臣にしょっぱなにお願いをしたいと思っております。
 まず、まだ資料が皆様方のところへ届いておりませんが、これは、コンゴ民主共和国駐日大使、クリストフ・ンウエイ・ダンボという大使が、二〇〇〇年十二月二十八日に河野外務大臣にあてた通知書であります。(パネルを示す)
 中身は、外交官として不可欠なIDカードを発行してくれという要請をしたところ、通常は、外務省に私確認しましたけれども、一週間で発行されるそうですが、半年たっても発行されないので善処を頼むという通知書であります。
 中身によりますところ、上の指示で交付できないと伺っております、この上の指示とは、大臣という意味か政治家という意味かは不明であると。通知人及び我が国在留のコンゴ人の間では、貴庁と大変縁の深い政治家、鈴木宗男氏の私設秘書を名乗るジョン・ムウェテ・ムルアカという人物によって、大使館施設の利用を妨害されているにとどまらず、通知人の生命の安全を保障しないと、殺害の予告まで流布されております、こういう内容であります。旧政権とのかかわりを持ってきた政治家によって支配されるということは、外交上の汚点では済まされない問題ではないかというような、こうした論点を出しておられます。こういう論点から、早くとにかく出してくれということで、とうとう出されないままに新しい大使にかわるという事態に至っております。
 そこで、外務大臣にお伺いいたしますが、ジョン・ムウェテ・ムルアカ氏は正式なコンゴ政府の外交官として登録されているのかどうか。
川口国務大臣 されているとは承知しておりません。
上田(清)委員 私も一応、電話での確認でありますが、IDカードも所持していない、こういう回答が出ております。しかし一方では、このムルアカ氏は、飯倉公館に自由に出入りされている、あるいは、IDカードを新聞記者に見せたことがある、また、さる大使級の外交官にも見せている、こういうことを伺っておりますし、現実に、さる大使級のところからコピーをいただきました。
 どうぞお配りください。済みません。ちょっと手続に手違いがありまして、皆さんの手元に今お配りをしていただきますが。申しわけありません。ちょっと時間が足りなくて、大変恐縮です。
 実は、何よりも問題なのは、この紋章はコンゴ政府の正式な紋章でありまして、ここにも書いてありますように、「駐日コンゴ民主共和国大使館通商代表機関代表」、こういうふうな名乗りをしておられて、名刺をさる国の大使級に、正確に言えば臨時大使でありますが、渡しておられます。その写しをいただいてきたばかりであります。
 そこで、そうしますと、外務省では外交官として認めていない、これは間違いありませんか。
川口国務大臣 間違いございません。
上田(清)委員 実は、このムルアカさんは、鈴木宗男議員の私設秘書ということでも、ビッグ・ジョンというあだ名を持つ方でも大変有名である方でありますが、十六カ国の議連の事務局をしておられますし、なおかつ、実はさまざまな報道番組あるいは新聞記事等にも出ておられます。
 例えば、一九九七年七月十七日の産経新聞の朝刊にはこういうくだりがあります。コンゴ政府の一員、また、鈴木宗男衆議院議員の私設秘書、白鴎女子短大講師、東京電機大研究員と四足のわらじで両国の友好に努力しています、こういうくだりがございます。
 これは、一九九九年十一月二十二日、産経新聞であります。私は工学部の第二部の出身です、昼は医療機械会社で心電計の開発、夜は大学に通い、残りの時間はコンゴ大使館の仕事を手伝い、鈴木宗男前内閣官房副長官の私設秘書も務めておりますと。
 それから、ちょっと読み上げるとたくさんあるんですが、なかなかたくさんの新聞やテレビ番組にも出ておられます。機会があればたくさんまた御紹介したいと思いますが、時間がもったいないので、そういうことがあるということだけ申し上げます。各紙に報道されております。ほとんど、六大紙と言われているところに報道されております。
 そこで、一方では芳しくない話もございます。通商代表機関の事務所の家賃を九百万滞納して、不法占拠しているということで訴えがあって、それはコンゴ政府が払うものだ、こういうふうな言い回しをされておりますが、正式な大使館員でない、あるいは、正式なものでないとすれば、当然コンゴ政府は払う必要がないから払っていないのではないかなと思いますが、これは一体どうなのか。
 これは外務大臣に聞いてもわからない、こういう話になっておるわけでありまして、何が問題かと申し上げますと、もし仮にコンゴ政府の大使館員だったとしても、鈴木宗男議員のところには当然、外電や公電、あるいは山のように外交文書が届くわけでありまして、あるいはまた外務省の最高幹部の方々がたくさん出入りされているわけですから、多分、これがもし犯罪に当たるとすると、国家公務員の特別職になっていく方もあったわけですから、何らかの形で罪状があるのではないかと思いますが、外務大臣、例えば外務省の中で秘密漏えいあるいはそういうたぐいの罪状等について心当たりがありませんか。
川口国務大臣 外務省の中の機密については、きちんと管理をされるべきものであるというふうに考えております。それでまた管理されているというふうに私としては考えたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、十の改革、改革の骨太の方針で、こういった点についても一層徹底をする必要があるということで、項目として挙げさせていただいておりまして、今後、「変える会」の御検討を通じ、内部的にも、またどういう一層の機密保持のための仕組みが可能であるかということは考えたいと思っています。
 いずれにいたしましても、外務省の機密については、外に漏れているという事実については、私はそういうことはないと思っております。
上田(清)委員 それでは最初に戻りますが、なぜ、このコンゴ大使に対してIDカードが発行されなかったのでしょうか。
川口国務大臣 コンゴ大使に対してとおっしゃいましたでしょうか。ちょっとそこのことについては、コンゴ大使というのはよくわかりませんけれども。
 コンゴ大使について発給されていなかったかどうかということは確認させていただきます。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 二〇〇〇年の五月にコンゴ民主共和国政府から、ダンボ氏が新たな臨時代理大使に任命されたという通報を受けたところでございますけれども、ンガンバニという人が、引き続き自分が臨時代理大使であるという主張を行っておりました。そういう異常な事態がございましてそういうことになったわけでございますが、結局、二〇〇〇年十二月になりましてコンゴ民主共和国政府から通報を受けまして、一応問題は決着したということでございます。
上田(清)委員 全然わかりませんでした。もう少しわかりやすく説明できませんか、だれにでもわかるような。
重家政府参考人 先ほど申し上げましたように、二〇〇〇年にダンボ氏が新たな臨時代理大使に任命されたという通報を受けておりました。しかし、ンガンバニという人が、引き続き自分が臨時代理大使であると主張する異常な事態が生じたわけでございます。
 それを踏まえまして、外務省から累次本国政府、コンゴ側に、意思疎通と問題の速やかな解決を申し入れておりました。こういう累次の我が方からの申し入れに対しまして、同年十二月に、コンゴ民主共和国政府から我が方に対しまして、最終的に、ンガンバニ氏及びダンボ氏の臨時代理大使としての活動を終了するという通報がありました。
 このように、我が国としては、在京臨時代理大使の問題について、コンゴ側の意思確認を得ずにダンボ氏に外交官の身分証明票を発給することはできなかったものでございまして、結局、二〇〇〇年十二月に、上記コンゴ民主共和国政府の通報を受けるに至った次第でございます。
上田(清)委員 実は――局長、聞いておかないとだめだよ。実は、前任の大使が職務の継続をしなかった。しかし、現実に、このダンボ大使が就任をされて、コンゴ政府からしばしば日本政府の方に、ちゃんとIDカードを渡すようにというちゃんとした公電が入っているじゃないですか。にもかかわらず何で出さないんですか。だれがとめたんですか。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど御説明いたしましたように、先方から通報があったわけでありますが、同時に、ンガンバニという人が、引き続き自分が臨時代理大使であるという主張を行っていたわけであります。そういう異常な事態がございましたので、相手国政府といろいろ連絡をとっておったわけでございますが、それゆえに、先ほど先生に申し上げましたように、ID、身分証を発給することに至らなかったということでございます。
上田(清)委員 外務大臣にお伺いします。外務大臣、聞いてください。
 普通、本国政府から新任大使を大使として就任させて、本国政府から公電でちゃんと証明書を出すように言っているんです。ところが、前任者が粘って、嫌だといって公館を占拠している、大使館を。そういう場合にはどうするんですか。どちらが正しいんですか。それとも、どういう形でするんですか。原則じゃないか、外交上の。外交上の原則を聞いているんだよ。
川口国務大臣 その件についての具体的なことは、ちょっと私、まだ二十日で勉強しておりませんけれども、いずれにしても、革命がありまして政権がかわったということがこの問題の背景にあるのではないかと、私としては今の時点で推測をいたしております。
上田(清)委員 革命があったとしても、日本国政府はこの新政権を承認しています。外交上の原則を聞いているんですよ、大臣。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来御説明させていただいておりますように、非常に異常な事態が生じておりまして、新しい臨時代理大使の通報はある、他方で、前の臨時代理大使が、自分が臨時代理大使であると主張し、物理的にその事務所、公邸に居座っていたということもございまして、相手国政府と種々連絡をとったわけであります。その結果、新しい臨時代理大使が通報されてまいりまして、まだ未着任ではございますが、新しい臨時代理大使が我が方に通報されてきたということでございます。
上田(清)委員 今、いみじくも重家局長は、前の大使が居座っていたと言った。居座っていたと言いましたね。だから、これは不法占拠なんですよ。どちらが正しいかというのは、外務省、わかっているわけでしょう。ちゃんと新しい政権を承認し、そして正式な外交関係を結び、その外交関係の中で新しい大使が赴任した。この赴任した外交官を、しっかり外交活動ができるようにするのが当たり前じゃないですか。これが原則でしょう。それを聞いているんですよ、外務大臣。この原則でいいんでしょうか。
津島委員長 きちんと原則を答弁してください。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 そういう異常な事態が生じておりましたので、外務省は相手国政府に確認をしておったところでございます。
上田(清)委員 確認は何回もされたか知りませんが、何回も公電も入っているわけですから、外務省として原則をどうするのか、そういうことが問われているわけですよ。援交だとか随交だとか社交とか言われないように、外務省が原則を持ってきちっと外交をやるためにどうするのかということを聞いているのでありまして、外務大臣、これは外交の原則を聞いているんですよ。こういう政権交代があったときにどういう対応をしているんだということです。
川口国務大臣 この件につきましては、私、今初めて伺いましたので具体的にはコメントができませんけれども、原則論として申し上げれば、先方から通報があったという人が新しい大使であるということだろうと思いますけれども、恐らくこの件は、よく聞いてみますけれども、要するに、両方から通報があった状態、通報がある人が二人いるということではないかと思いますので、いずれにしても、その事態、具体的なことについては私も話を聞きたいと思いますし、実態について確認をした上で御返事をさせていただきたいと思います。
上田(清)委員 外務大臣、今誤った認識をお述べになりました。両方から通報があったということはありません。もう外務省は、日本国政府は、この新しいコンゴ民主共和国を承認したんですよ。承認した方からの相手先を交渉先としてするのが当たり前であって、両方から通報があるということはないんです。何でそこを間違えるんですか。
川口国務大臣 新しく通報があったということであれば、原則的にはその方が正式なといいますか、正規の大使であるというふうに思いますけれども、ここにいろいろ御質問をいただくような事態の背景に何かあるのかどうかについては、私は現在つまびらかにいたしませんので、そこについては、話をきちんと聞いた上で御連絡をしたいと思います。
上田(清)委員 官房長、原則ですから、もう一度だけ確認いたしますよ。
 とにかく、新しい共和国になって、承認をして……(発言する者あり)あなた方に答える必要はない。向こうが答えればいい。官房長がきちっと答えてください。
小町政府参考人 私が承知しております限り、九七年に承認したというふうに承知しております。
上田(清)委員 ちゃんと新しい共和国を認めて、そしてちゃんと新任の手続をとって、手続的に何の問題もないのになぜ出ないんだということを聞いているんですよ。それとも、手続上何か問題があったんですか。問題があったのなら言ってください。手続上何の問題もなかったわけでしょう。普通一週間で出るのが何で出なかったんだと言っているんですよ。その理由を聞いているんですよ。
津島委員長 重家中東アフリカ局長。委員長としてお願いをいたしますけれども、事実関係を、時系列をはっきり確かめた上でわかりやすく答弁をしてください。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 二〇〇〇年五月二十九日付で、先方から、ダンボという人を五月二十九日をもって新たな臨時代理大使に任命されたという通報がこちらの方に参りました。しかし他方で、ンガンバニという人が、引き続き自分が臨時代理大使であると主張し、先ほど申し上げましたように、物理的にもそこに居続けるという異常な事態が生じたわけでございます。したがいまして、その後、コンゴ側に相談といいますか確認をいたしまして、結局、二〇〇〇年の十二月に先方から新たな政府の通報を受けるに至ったということでございまして、新しい臨時代理大使が現在任命されておりまして、今その着任を待っているところでございます。
上田(清)委員 局長、端的に言ってください。確認した結果どうだったんですか。是だったんですか、非だったんですか。後の経過はいいんです。知っているんですから、私も。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 先方政府の決定として、両名が召還されたということでございます。
上田(清)委員 違う。また答弁をずらしちゃいけないよ。注意してください、答弁をずらしております。
 もうけんか相打ちみたいな形で、コンゴ政府も、IDカードを発行しないから、それで外交活動ができないから、日本政府の怠慢によって外交ができないから相打ちの形で両方とも召還し、そして、このダンボさんは韓国大使になって、新しい大使を入れることで決着をつけた経緯があるんですよ。一年間コンゴ政府は外交ができなかったんですよ、日本で。そういう実態なんですから。確認したときにはどうだったんですか、確認したときは。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、異常な事態が起こっておりまして、政府としては、我が方といたしましては、その解決のために相手国政府と相談、確認をした。その結果、双方が召還されまして、新しい臨時代理大使が任命されることになったということでございます。
上田(清)委員 誠実な答弁を求めるまで、これじゃ次の話ができませんよ。私は邪魔するつもりでも何でもありません。確認した結果どうだったんですかと言っているのに、確認して後は召還したと。違うでしょう。召還したのは次の年じゃないですか。確認したんですよ。いいですか。この通知書を出したのは七カ月後なんですよ、赴任してから。赴任してIDカードが一週間後に出ないから、その段階で公電を出しているじゃないですか、何回も。そうしたら、確認した結果どうだったんですか、どちらを認めたんですか。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 先方政府と連絡をとった結果、二〇〇〇年の十二月十八日付の口上書で、ンガンバニ臨代、ングウェイ臨代双方の活動を終了するという通報が相手国からあったわけでございます。(上田(清)委員「ちょっと時間をとめてください」と呼ぶ)
津島委員長 上田委員に申し上げます。
 答弁が御質問に対して十分に答えていないということでありますので、しっかりと事実を調べて、後日、整理して答弁をさせるように、できるだけ早く答弁させます。
上田(清)委員 外交の原則なんですよ、これは。トラブルはあるんです、どこでも。(発言する者あり)
津島委員長 上田君。(発言する者あり)
 政府委員に申し上げますが、委員長が申し上げておりますが、いいですか。これから時系列で聞かせますから、それにきちっと答弁をしてください。
 上田君。
上田(清)委員 委員長にも聞いていただければわかると思いますが、外交の原則を聞いているんですよ、基本を。
 細かい話をすれば、それはいろいろあります。しかし、ここの一番の問題点は、不法占拠した方にあなた方が味方しているということなんですよ。いみじくも言ったじゃないですか、重家局長、居座っていると。
 そっちに味方したためにIDカードが新任の大使に出なかったんですよ。いつまでたってもらちが明かないから、それで、けんか両成敗みたいな形にして、結果として、ダンボ大使は韓国の大使として赴任し、そして前任の大使は召還されたという経緯なんですよ。それはわかっているんです、私だって。
 それよりも、なぜこんな形をとったのかということなんですよ。七カ月も出ないで通知書を出されて、その後も結局あなた方は無視したじゃないですか、この通知書を。何度も公電を出しているじゃないですか、日本政府に。
 では最後に、もう答えが出ないということを前提に聞きますけれども、では、この経過について時系列的に、日本政府に対してコンゴ政府がどんな対応をしてきたか、あなた方が時系列的にどんな対応をしたか。実は対応していないじゃないですか。無視しているじゃないですか、ずっと。余り無視したから嫌になって、もうコンゴ政府がこれを相打ちにしたんじゃないですか。あなたたちは本当におかしいよ。
 ともかく、らちが明きませんから、もうだれでもわかることですから、時系列的に出していただくことを委員長に要求します。
津島委員長 今の質問に答えられますか。
 重家局長。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 まことに申しわけございませんが、突然の御質問であったこともございまして、よく時系列を調査の上、御報告をさせていただきたいと思います。
津島委員長 それでは、上田委員、この事実関係をきちっと念査して、できるだけ早く答弁させます。
 それでは、上田君。
上田(清)委員 委員長、私は、細かいことを聞いているわけじゃありません。外交の原則を聞いているんです。政権交代はどこでもあります。革命であったりするときもあります。あるいは大統領が暗殺されて急に政権がかわったりするときもあります。そういうときに日本国政府は、新しい政府を認証して、そして新しい大使を迎える過程の中でトラブルがあることもあるでしょう。そういうとき、どういう原則で対処しているんだということを聞いているのであって、何ら細かいことを聞こうとしているわけじゃありません。
 ただ、この通知書にあるように、この鈴木宗男氏の私設秘書と名乗るムルアカ氏が、いろいろな形で介入しているというこの事実をどんなふうに理解されているのか。重家局長、いいですか、この方は、次の大使が来られるとき、かぎを持っていたんですよ、大使館の。いいですか、このムルアカさんは、このダンボさんの、後の大使のときにはかぎを持っていたんですよ。こういう事実もあるんですよ、あなたは知らないかもしれないけれども。
 こういう実態があるということですから、後続の同僚議員に、私はもともと金融問題をやろうと思っておりましたので、後続の方に詳しくまたやっていただきたいと思います。
 とにかく、外務大臣、私は幾つか原則を聞いているので、しっかり答えられないというのはちょっと問題ですよ、本当に。基本的な外交のいわば最初の部分ですから。何か感想ありませんか。何か極めて異常でしょう。
 そして、この鈴木宗男議員の私設秘書が、いろいろな形で議連の事務局をやり、そしてIDカードもない、外務省で外交官という登録もないにもかかわらず、ちゃんと駐日コンゴ民主共和国大使館の通商代表機関の代表だという名刺も持って、しかも、いいですか、国の紋章も使っているんですよ。使えないでしょう、勝手に、普通の民間機関であれば。使えないんです。
 しかもこの方は、多分政治資金規正法に違反すると思いますけれども、この通商代表機関のある同じ事務所にある、いいですか、新日本企画という鈴木宗男後援会の企業ですよ。そこのいわばODAの口ききビジネスをこのムルアカさんというのはやっておられて、それで、月々四十万顧問料をもらっているんですよ、私設秘書が。これは、外国の企業からお金をもらっているような話じゃないですか。これはいいですよ。後でちゃんと法的な問題としてはまたやっていただきますけれども。
 ただ、この異常な事態を、外務大臣、国益に反する、国家の利益に反する、そういう思いはありませんか、感想は。こういう事態を見て、もしこれが事実だとすると。いいですか、どう考えてもおかしいじゃないですか。外務省は発行していないにもかかわらず、この方は、いろいろなテレビや新聞で、コンゴ共和国の大使館の通商代表機関だと、その代表だとか代表理事だとか言っておられる。しかも、名刺も出しておられる。そのレターもそうですよ。レターにも国家の紋章がありますよ。こういう方は、一体どういう存在なんだと。
 そういう方が、外務政務次官もやられた、そして国務大臣もやられた、あるいは議運の委員長もやられた、そういう方の私設秘書で、議連の事務局もやっておられる。官房の副長官もやっておられる。これは、アメリカか何かだったら、国家反逆罪か何かで逮捕されちゃうんじゃないですか、本当に。感想を言ってください。
川口国務大臣 ムルアカさんとおっしゃる方は、私が承知をしていますところでは、鈴木宗男議員の私設の秘書であるというふうに思っておりますので、その方の行動について私の立場から何か申し上げるということではないと思っております。
 ただ、いずれにいたしましても、先ほどお話しになられた代理大使の件につきましては、さっき初めて伺いましたので、これは帰りまして、調べさせていただきます。
上田(清)委員 もう一つ、外務大臣に調査の依頼をいたします。
 駐日コンゴ民主共和国大使館通商代表機関代表ジョン・ムウェテ・ムルアカさんが、こういう名刺を持って、外交関係のところで非常に煩雑にうろうろされておられるということは事実でありますし、各社の報道、各テレビの報道でもこのことを名乗っておられます。調査をしていただきたいと思います。
川口国務大臣 この方は、先ほど申しましたように、鈴木議員の私設秘書でいらっしゃるというふうに承知いたしておりますので、外務省といたしましては、この方が外交官であるというふうには思っておりませんので、この件についての調査は私どもとしてはできないと思います。
上田(清)委員 それでは、委員長にお願いしたいと思います。
 まことに恐縮ですが、鈴木宗男議員に、いま一度この委員会に参考人として御出席いただくことをお願いしたいと思います。
津島委員長 理事会で相談させていただきます。
上田(清)委員 失礼しました。証人喚問をお願いしたいと思います。
 それと委員長、もう一つだけ、確認であります。大事なことを忘れるところでありました。
 昨日の原口議員の質疑に答えて、タンザニアの通称ムネオホールと言われる、鈴木前議運委員長から、八百万の資金管理団体からの送金であります。昨日の答弁では、外務省を通じてということでありますが、私が確認したところ、外務省側の答弁では、現地の口座を教えてくれ、現地に届いたかどうかの確認をしてくれと言われただけで、現実に現地に届いたという確認をお伝えしただけだと。外務省を通じて送金をしたという事実はないと思いますが、このとおりですか。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十二年に、タンザニアの首相府の次官が鈴木議員のところに参りました際に、同議員から、地元の学校建設に対し、アメリカ・ドルで十万ドルを上限として援助する旨の申し出がございました。その後、首相府の次官より、十二年の十一月でございますが、キマンドル中学校の事務管理棟及び講堂建設のため、米貨七万ドルの支援を要請したいということを言ってきました。そういうことを我が方の在タンザニア大使館あてに言ってまいりましたので、その旨を鈴木先生にお伝えしました。
 これに対しまして、鈴木議員から、タンザニアにおける振り込み先の口座の確認、そして振り込みの確認について外務省に対し要請がございまして、外務省よりは、振り込み口座を確認の上、鈴木先生に御連絡し、また、タンザニアから振り込み確認の通知があった旨、鈴木議員に連絡を行いました。
 それが一連の流れでございましたけれども、当該振り込みは銀行により一般手続によって行われまして、外務省の、例えば公的口座が使用されたというようなことはございません。
上田(清)委員 以上、聞かれましたように、昨日の鈴木議員の答弁は、勘違いか、あるいは間違いか、あるいは意図的に、個人的な政治資金管理団体からのお金の送金ですから政府を通した方がきれいに見えるのかなと思ってあるいはそういうお答えをされたのかわかりませんが、いずれにしても、昨日の原口議員の質問に対しては誤った答弁をされておられますので、その辺も確認したいと思いますが、また同時に、これは平成十二年度の政治資金管理団体の報告に出ておらないこともあわせてこの席で発表させていただきます。
 それでは、次に移ります。資料の2を配ってください。
 坂口厚生大臣、もう既に四十分超えましたので、どうもそちらまで行かないような感じですので、あらかじめ切り離しをさせていただきたいと思います。どうも申しわけありませんでした。
 それでは、豊田商事に次ぐ戦後第二の詐欺事件になりました大和都市管財グループの問題について質問をしたいと思います。
 まず、これは、時系列的にある程度確認をどんどんいたしますので、村田副大臣だと思いますが、速やかに御答弁をしていただきたいと思いますし、委員長、お許しをいただければ、そちらにお座りになるわけにはいかないんでしょうか。それはだめなんですか。わかりました。
 それでは、お聞きします。
 近畿財務局と大阪府警は、大和都市管財問題で必要に応じて意見交換をされていたかどうか。
村田副大臣 お答えいたします。
 必要な場合には意見交換をしておりました。
上田(清)委員 大阪府警では、平成六年の時点で大和都市管財が債務超過であったと発表しておりますが、この点について金融庁はどのように判断をされたのか。
村田副大臣 そのような報道記事があったということは承知しておりますが、私どもは、警察がそのようなことを発表したということは把握しておりません。
上田(清)委員 平成六年の検査で業務改善命令を出すことを検討したと、私は、内部からの非常に緩やかな、静かな声を聞きましたけれども、平成六年の検査で業務改善命令を出そうという検討をなされたかどうか。
村田副大臣 そのような検討を行った事実があるとは聞いておりません。
上田(清)委員 実はこのときに、私が伺ったところでは、旧経営陣からさまざまな抵抗というんでしょうか、いろいろな注文があり、そうしたことも含めて業務改善命令を出さなかったと聞いておりますが、そういう話は一切聞いておられませんか。
村田副大臣 結果として平成八年に自主的な再建計画を出していただいたということでございますが、正確に申しますと、業務改善命令の発出は行っていない、こういうことでございます。
上田(清)委員 実は内々に検討されたんですよ。発出をしなかったという正確な答弁に戻られまして、感謝いたします。
 それで、平成七年に那須グリーンコース倶楽部の抵当証券を百三十億で発行しようとしたところ、法務省からクレームが出て百億に訂正した、この事実に関しては御存じでしょうか。
村田副大臣 手元の資料ではそういう事実は把握しておりませんので、要すれば調査をいたしまして、また後刻御報告申し上げたいと思います。
上田(清)委員 誠実な対応、ありがとうございます。
 平成八年の自主的な健全化計画をこの大和都市管財は作成しておりますが、これは近畿財務局が指導なされたんでしょうか。
村田副大臣 そのように聞いております。
上田(清)委員 なぜそうした指導をなされたんでしょうか、その理由を承りたいと思います。
村田副大臣 六年の立入検査においても、抵当証券発行特約つき融資先の経営状態について、抵当証券業規制法に基づく直接の義務はございませんが、その相手会社の財務状況について問題があるという懸念を持ちましたのでそのような指導をした、こういうことでございます。
上田(清)委員 今御発言のとおり、大和都市管財本体は黒字の状態でありましたが、いわば発行先、抵当証券を発行する、つまり、抵当証券を発行するかわりにこのゴルフクラブ等々に、関連会社に融資をする形をとっておりますので、それを細切れにして投資家に買っていただくというこの抵当証券の仕組みですが、その子会社グループはほとんど赤字だったというふうに私は認識しておりますが、村田副大臣の認識は同じでしょうか。
村田副大臣 おおむねそのような事実があると認識しております。
上田(清)委員 平成八年の自主的な健全化計画書をまだいただいておりませんので、八年の実態についてはまだまだ十分ではありませんが、私は、九年、十年、十一年、十二年と細かく健全化計画書を四冊、隅から隅まで読破いたしまして、極めてこの経営健全化計画書がいいかげんなものであるということを発見いたしました。
 例えば、AならAというゴルフ場が、平成八年度に六十なら六十の会員権を売ったといたします。翌年の計画では三百売ることになる。しかし、実際はやはり百ぐらいしか売れなかった。しかし、また次の年には五カ年計画の中で相変わらず三百を売るというような、極めてずさんな計画になっておりまして、こういうずさんな計画の部分を果たしてどうして認めるようにしたのか。あいにく、この外務省騒ぎで、私、事務所にその健全化計画書を置いてきて、どの箇所がどうだということを全部引いているんですけれども、きょうは持ってきておりませんが、この論点はしようがないのでまたの機会にいたしますけれども、そういう計画書になっています。
 事実、お手元に配付しました「大和都市管財グループの資本の推移」ということで、大和都市管財の本体、平成九年度と十年度と十一年度と十二年度、大体六億前後の黒になっております。ところが、グループ全体では、平成九年度に百四十億、そして十年度が百八十億、二百億、そして二百三十億と、毎年二、三十億の赤字をふやしている、こういう実態になっております。
 既に平成九年の検査で、これだけグループ全体で赤字で、どうしてこの会社がまともな会社と思われたのか、なぜここで登録更新を認めたのか、極めて不自然でなりません。ぜひ、この単体と全体との関係についてどのような判断をされたのか、御答弁をお願いしたいと思います。
村田副大臣 上田委員が御指摘のとおり、抵当証券発行特約つきの融資の相手先、これが赤字を重ねておったわけでございますが、登録の更新時におきまして、法律によりまして、その財産的基礎あるいは人的基礎が存在しているかどうかということを調査の上登録の更新を認める、こういう形になっておりますが、その財産的基礎というのは大和都市管財本体のものでございまして、私どもとしては、その融資の相手方の経営状態、財務状況について懸念は持ったわけでございますが、しかしながら、本体の方につきましては、その財産的な基礎を欠くに至っていないということから、登録の更新を認めたわけでございます。
上田(清)委員 もう既に、超低金利時代に運用利回りを四・五とか五・五というような形で抵当証券を発行されておりましたが、この金利について内部の御議論はなかったでしょうか。
村田副大臣 当然、そうした金利の状況についてはフォローはしておったと思いますが、具体的にどういう検討をしていたかということについては、ただいまのところ、私は承知しておりません。
上田(清)委員 それでは、運用先の実態についての確認はされましたか。
村田副大臣 先生今御指摘の点は、融資の相手先の子会社、関連会社ということだと思いますが、本体を通じまして資料等の提出をお願いしていた、こういうことでございます。
上田(清)委員 実は、本体が何ら運用の実態なく、集めた金をひたすら飲み食いに使い、何ら運用の実態がないということは捜査当局の調べでも明らかになっておりますが、近畿財務局においてはなぜこのことが確認できなかったのか、不思議でなりません。
 この点について、いま一度副大臣、当然、四・五なり五・五の利回りを消費者に保証しているわけですから、もうはっきり言って、この単体の収支バランスなど、こういうのはもう作り物です。これは作り物です、はっきり言って。このそれぞれのゴルフ会社とかそういうのは、当然営業がありますからそれなりにありますけれども、本体は適当につくっただけなんです、はっきり言って、数字は。何せ、何の運用もしないで使っているんですから、どんどんどんどん。なぜそれが、運用の実態について確認をされなかったのか。普通、怪しげな会社だというのはこの時点でもう明らかだったでしょう、政治家から電話がかかってくるし。大体政治家から電話がかかってくるようなところは、まともなところはないんですよ、苦しくなったらかけるんだから。
 そういう意味で、ぜひ、この運用先の実態についてどのような調査をされたか、確認したいと思います。
村田副大臣 私ども、本体についての財産的な基礎についての調査検討をやってきたわけでございまして、その意味では、その資金繰り状態、それから債務超過になっていないかどうか等々についてやってまいりましたが、ただいまの点につきましては、もう一度財務局に、当時の状況についていかなる検討がなされたのか、その調査をしてみるように命じてみたいと思っております。
上田(清)委員 村田副大臣も、また柳澤大臣、ちょっとお休みの傾向があるかと思いますが、これは単純に――今、銀行の引き当て問題等々も非常に、銀行だけじゃなくて、さまざまな金融機関の引き当てについていろいろな議論がされているので御理解いただけると思いますが、これを見てわかりますように、抵当証券の仕組みもよく御承知だと思いますが、当然、このグループ全体がこれだけの赤であるという状態の中で、何らかの引き当てをしないと、もし一つぽんといったら当然本体がかぶるわけですから、そういう意味で、引き当てをしなけりゃいけなかったんじゃないか。そうすると、もうしょっぱなから赤字ですから、債務超過ですから、これは登録の更新できませんね、こういう話があってしかるべきではないかと、私は素人ですけれども、玄人の金融担当大臣にお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。――副大臣が答えるそうです。
村田副大臣 最終的に十二年の登録更新の拒否をしたということも、そういう相手先に対します債務というものが、簿外債務というものが出てきたということで、委員御指摘のような事実が行われていたのではないかということが発覚いたしまして、実質的に債務超過になって、財産的基礎を欠くということになりまして登録の更新を拒否したということになっておるわけでございます。
 先生今御指摘のように、もっと前から貸付先の状況を正確に、的確に把握して引き当てを積むべきではなかったか、こういうことでございますが、私ども、本件によりまして多くの抵当証券の購入者が大きな被害をこうむっているという事態は大変重く受けとめまして、大変遺憾に存じておるわけでございますが、当時の、平成九年とかそういう状況にしてみますと、金融機関一般についての引き当てにつきましても、今私ども考えているような十全な体制がとられていなかったということを考えれば、そしてまた、抵当証券業規制法の規制、登録制という実態、法律上の規制にかんがみれば、まことに残念でございますが、そういう状態にあったということでございます。
 私どもの検討は、本体の財産的な基礎を見る、資金繰り等を初めとしまして、そういった状況を見るという行政であったということでございます。
上田(清)委員 このグループ会社、大体、今急いで資料を届けていただいているところですが、ほとんど一つの住所に三つ四つの企業が入っているんですね、御承知だと思いますが。これは御承知ですか。ほとんど、このグループ会社、一つの住所に三つ四つ入っておりますけれども。
村田副大臣 事務所の所在ということでございますか。そこは私自身はまだ把握しておりません。
上田(清)委員 ぜひ副大臣にも把握していただきたいんですが、幾つも、これは以前、ちょうど藤井先生がここにいらっしゃると金融安定化特別委員会を思い出すんですが、江戸城の名前だとかあるいは地下鉄の名前だとか、面倒くさいときにはそういうふうにしてペーパーカンパニーをつくるんですが、まさにペーパーカンパニーもどき、同じ事務所に幾つもグループ会社が入っている、こういうのを普通臭いと思うんですね。そういうふうな印象を私は持っておりまして、もし近畿財務局がまじめにやるんであればそういうふうに思わなきゃいけないんですが、そんなふうにやっていない。なぜそんなふうになったのかという疑問を持ちます。
 それで、公認会計士や不動産鑑定士に、こういう平成九年の時点でヒアリングをされた事実がありますか、ありませんか。
村田副大臣 近畿財務局がということだと思いますが、私は承知しておりません。
上田(清)委員 きょうは参考人で呼んでおりませんから、また調査をお願いしたいと思いますが、委員長、よろしいでしょうか、この件について調査をお願いしたいと思いますが。
村田副大臣 相当昔のことでございますので、そういう記録があるかどうかでございますが、責任を持って調査をいたします。
上田(清)委員 先ほど申し上げました健全化計画、九年、十年、十一年、十二年と四部ございますが、なぜ毎年毎年健全化計画書を出すようなところが登録が更新されるのか。国鉄再建もそうでした。毎年毎年、三カ年計画、五カ年計画と再建計画を出していて、結局は破綻しました。こういうところは大体破綻するんですね、毎年出さなくちゃいけないようなところは。毎年、三カ年、五カ年とか、こういう形をやっているわけですね。
 それで、極めていいかげんな数字を並べております。まあ、一つ二つ申し上げれば、例えば、マンションをつくりますとかいって、コテージをつくりますとか、これは那須グリーンリゾート計画なんですけれども、首都が移転すれば土地の値上がりが見込まれますとか、そういうことを平気で書いてある。よくまあこういうことをお認めになったなと。近畿財務局、ちゃんと印鑑が押してありますね。もう本当に、一つ一つ見るとこれは大変な計画書でありまして、勝手に、ゴルフの会員権も売れなくなった時代にどんどんふやしております。
 こんなことをなぜ毎年毎年、九年、十年、十一年と健全化計画書を出させたのか。なぜ出させたのか、この理由をお伺いしたいと思います。
村田副大臣 九年、十年と計画を出させ、そして、それに対します実績の方が未達でありましたことも事実でございます。
 ただし、私どもとしては、そうした計画の見直しによりまして、その計画どおりの実現を図っていただくということ、これがこの抵当証券の購入者を守る道である、すなわち登録という制度でございまして、その意味では、私ども、計画を達成させることによって購入者の保護を図っていこう、こういうふうに考えた次第であります。
上田(清)委員 後で、村田副大臣、ゴルフの会員権の募集状況、購買状況だけでも見てください、全然でたらめ書いてありますから。これは副大臣も問われますよ。本当に、きちっと、今度は改めて財金の舞台で質問させてもらいますから、どうぞお待ちください。
 それで、委員長、実は、グループ会社の専務支配人をやった方から、テープも、ちょっと忘れてきましたけれども、あったとしてここで聞けるわけじゃありませんが、テープ起こしをしまして、これだけの分量になっているんですけれども、お名前は、それこそいろいろさわりがありますのであえてお出ししませんが、この中に政治家の関与が出ておりまして、もう既に参議院の財金の委員会等で、村田副大臣が、三人、内部調査した限りにおいて問い合わせ等を行った、こんなふうに私は委員会の議事録を拝見しておりますが、村田副大臣、少なくとも、大和都市管財に関して、政治家の関与ということに関して言えば三人、御答弁されておられますが、これは間違いありませんか。
村田副大臣 そのように答弁したことを記憶しております。
上田(清)委員 もう既に、坂井隆憲議員は記者会見等でその関与について述べておられますが、大阪支店長の既に逮捕されている方は、中山太郎先生の元秘書であるというのは御存じでしょうか。
村田副大臣 私自身、承知しておりません。
上田(清)委員 ぜひ事務方に聞いていただきたいんですが、間違いもなく元秘書であります。
 そこで、中山先生からお話がありませんでしたか。
村田副大臣 この話が国会で話題になりまして、質問をいただいて、新聞で取り上げられましてから、私をキャップといたしまして、金融庁の中で調査のチームをつくりまして、調査をいたしました。
 しかしながら、何分かなり前のことでございますので記憶がうろ覚えの人もありましたので、そういう意味では、三人という人数は申し上げましたが、実名だけは、本人に確認できたわけでもありませんので、答弁を控えさせていただいてきたところであります。
上田(清)委員 私どものいわばテープの掘り起こしでは、かかわりについて触れておられます。また、三塚元大蔵大臣のかかわりについても触れておりますが、このことについては御存じありませんか。
村田副大臣 実名が二人出ましたものですから、それではあえて申しますが、私どもの調査では、お二人の名前は出てきておりません。
上田(清)委員 それではもっと人数が多いということになってしまいますけれども。まあ、事は個人の名誉にかかわることでありますから、正確を期しますので、またの機会に改めてこの点についてはお伺いしたいと思います。
 そこで、平成九年の検査がもしまともであればこのような被害はなかっただろうということで、被害者の弁護団からも強い問題点の指摘等々もありますが、特にこの九年には、独立系の不動産抵当証券が破綻しております。そのとき配当がゼロです、親会社も何もありませんから。こういう結果がありまして、この会社も実は二年前から業務改善命令が出されておって、現実には破綻した。同じ時期に同じように、八年には自主的に健全化計画を出されて、その時期に同じように不動産抵当証券株式会社が業務改善命令が出されて、そして同じように破綻していく。こういうことがもうほとんど前後して起こっている。
 にもかかわらず、しかも、グループ会社が一つの事務所にある。そして、この健全化計画書を見ると、ゴルフの会員権が無限に拡大して売られるというようなずさんな計画、あるいは建ちもしないマンションを建てる計画、あるいは何も決まっていない那須に、新都が来るから土地の値段が上がって含み資産がふえるとか、こうしたことを平気で書いているようなものになぜ近畿財務局が登録更新を許したのか、このことが私は大変残念でなりません。
 しかも、現実に、接待大魔王で有名な、財務局長は墳崎さんですけれども、この墳崎さんをしても、「貴社の経営健全化計画は初年度(平成八年)より大幅未達となっていることから、結果的に貴社の経営が困難となる可能性がある。」として、この後にも「貴社の抵当証券の購入者は被害を被る蓋然性が高く、抵当証券の購入者の利益を害する事実があると認められる」、こういうことをもう言っているわけですよ、平成九年の段階で。わかっていたんじゃないですか、本当は。それを政治家の関与や接待大魔王が、どこで接待されたか私わかりませんが、こういうことがあったんじゃないですか。
村田副大臣 私どもは、法律にのっとりまして、登録の停止あるいは登録更新の拒否というものができる状況になかったということでございまして、業務改善命令に従ってその計画の実現というものを、本体の大和都市管財を通じまして、融資先に対してその計画の実行を促していた、こういうことでございます。
上田(清)委員 いみじくもちょっと、墳崎さんの名誉にかかわる接待大魔王と言いましたけれども、その事実関係はここに山ほど、私は、何月何日にどこで何したというのは全部わかっていますから、あえて申し上げました。ただし、大和都市管財が接待したという事実は、私は確認しておりません。ただ、当時、ありとあらゆるところから接待を受けていたということだけは確認しております。
 そこで、もう一度、資料にちょっと戻らせていただきます。
 金融担当大臣に最後一言お伺いしたいんですけれども、村田副大臣も大変丁重に、それなりにわかる限りにおいては丁重にされておられますが、やはり平成九年の立入検査の後、なぜ登録更新を許し、そして十年、十一年、十二年と毎年健全化計画を出して、しかも、その健全化計画書が極めてずさんでいいかげんなものであるということを私も発見いたしました。ぜひ、再度この平成九年の実態について、もうその後間違いなく水膨れ的に累積赤字がふえていっているわけですから、ただ移しかえをやっているだけです、本体の赤を子会社に。まさにこういうのを飛ばしというんです。この飛ばしの実態をもう一回、平成九年度に関して調べていただきたい。そうしないと、これは本当に浮かばれませんよ。ぜひこのことについて御答弁をお願いしたいと思います。
柳澤国務大臣 これは村田副大臣が責任者になっていろいろとやってくれたんですけれども、私ももちろんその報告を受けております。なお、上田委員におかれて、そのいきさつをよく調べてくれ、こういう御要望でございますので、またわかる限りにおいて努力をいたしたい、このように申し上げます。
上田(清)委員 ぜひ、この財務のバランスシート等々について見ていただきたいと思います。
 それから、財務大臣、失礼しました、この後ちょっと質疑いたしますので、申しわけありません、一番最後になりまして大変恐縮です。出番が少ないのに、長い時間待機していただきまして恐縮です。それで……(発言する者あり)担当大臣でありました、失礼しました。
 それで、資料の3、4、5を見ていただきたいと思います。
 実は、3の方は、破綻金融機関と受け皿金融機関の関係であります。ふらちなことに、兵庫銀行の受け皿であったみどり銀行は二次破綻して、また、みなと銀行も阪神銀行に吸収合併されるという事実上の三次破綻というようなこういうことでありますし、なみはや銀行に至っては、特定合併というわざわざ法律までつくって、弱い銀行同士をくっつけるというふらちな法案をつくって、十カ月後に破綻するという醜態を見せたりしております。
 塩川財務大臣に、私は、一次破綻は当時の当該金融機関の責任だと思いますが、二次破綻、三次破綻というのは、どうなんでしょう、監督官庁の責任じゃないんですか。
塩川国務大臣 私は、こういう金融業務に関係したことを実は詳しく存じませんが、なかなか金融機関の実態が検査官の人も把握できなかったんではないかなと思うたりいたしておりまして、それが何か、合併後においてそういうことが出てきたのではないかと思います。
上田(清)委員 当時の検査は、なかなか検査官として検査が十分できなかったんじゃないかと塩川財務大臣はおっしゃっておられますが、私もそのとおりだと思いますけれども、金融担当大臣、もちろんこういう兵庫銀行の後のみどり、あるいはなみはや、あるいはこの朝銀から近畿、この時点において柳澤金融担当大臣が当該の責任者ではありませんでしたが、しかし行政は継続しておりますので、塩川財務大臣の検査官の検査能力に疑問ありという答弁に関してどのように御答弁なされますか。
柳澤国務大臣 金融行政、今次のというか、一九九七年、九八年の金融危機に際して、いろいろと過去について反省を行いまして、そうして検査の体制、法律を変えました。そして、早期是正措置を導入するということを前提に、引き当ての正当性、適正性もこれを検査の対象にするということ、さらには一九九九年の七月からは、金融検査マニュアルというようなものをつくって、従来やや断片的に基準がいろいろなところに盛り込まれているというのを体系的に再整備し、また、その内容についてもよりエラボレートしたと言わせていただきたいんですが、そういうようなことをやりまして、検査の体制というものをしっかりいたしたという事実が過去の経緯としてあるわけでございます。
 そういうようなことから、逆にさかのぼってみますと、やはりこのころについて、検査官の個人の能力ということではなくて、むしろ、基準であるとかあるいは検査の対象であるというようなものが、より今に比べて徹底しないものがあったということが、遺憾ながら反映した結果ではないか、このように考えております。
上田(清)委員 大変率直な御意見をよしといたします。
 そこで、私が心配していますのは、三月末を控え、ペイオフ解除を含めて、それで、既に朝銀大阪が朝銀近畿に受け皿機関として移った後破綻したのはそう昔の話ではありません。十一年の三月でありまして、極めて直近であります。どうも二次破綻、三次破綻しているのは、近畿財務局の管轄の中ですよ。
 そこで、私は大変心配しておりまして、資料の4に、韓国系の信用組合の今破綻処理が行われているところであります。
 この4の図を見ていただければわかりますように、旧京都シティ信用組合、これは一店舗のところでありましたが、まずは京都商銀の受け皿になって大変大きな金融機関になってきておりますが、それ以上に大きな、地銀の中クラスと言われた関西興銀、破綻前は一兆一千億ぐらいの預金がありました。こういう極めてでかい、役職員八百二十一人から二十三人が受け皿。それから、大阪商銀の役職員百九十三人、この超でかい金融機関の受け皿になるべく、今入札で、契約の優先契約人というんでしょうか、こういう形の中で検討されているところであります。
 なぜこれを出したかと申し上げますと、過去の受け皿を見ていますと、それ相応にやはりでかいところが受け皿になっております。若干の例外はあります。しかし、資本だけはでかいとか、全部、人員、預金、資本がそれぞれ劣ることは、過去のいわゆる譲渡の中ではありませんでした。(発言する者あり)まさに、本当にハエの頭に馬がとまっている。例えて言い得て妙な、本当にすばらしい、本当にしっぽが体を振り回さんばかりに、こういう受け皿になっておりますが、とてもこれは、こういう事態でなぜこうなるのか、なかなか私には理解ができなくて、二次破綻が危ぶまれます。
 どのような御見解を持たれているのか、この優先権をなぜ与えられたのか、その理由についてお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 韓国系の、在日韓国の皆さんが主体になっておつくりになっているこの信用組合の破綻の処理につきましては、私どもとしては、できるだけ在日韓国人社会の総意が一元化されるということを率直に言って望んでおりましたが、事態はなかなかそういう方向に進みませんで、結局、複数の候補者がこれを競い合うということに相なりました。
 そして、費用最小化の原則、それから、その後における、今先生御懸念になられた、まさに譲渡後における経営の安定性というようなものをポイントといたしまして審査に当たったわけでございますけれども、結果は、今この表にございますような形になりました。
 この審査におきましては、非常に慎重を期した取り扱いをいたしまして、今まさに委員が御説明というか御指摘になられた言葉でもって、私どももその経営の安定性というものについて各面からチェックをいたしましたけれども、結果において、私どもは、このようなことが今の基準に照らして最善であるというふうに決定をした次第であります。
上田(清)委員 私も朝銀、もう一つの朝銀でありますが、朝銀問題もかねてから研究をさせていただいておりますが、この破綻処理についても、小が大をのむような形にはなっておりません。なぜかこの韓国系に関しては、次の五を見てわかりますように、福岡商銀の受け皿に熊本商銀がなり、東京商銀の受け皿に北東商銀がなる。とりわけ、東京商銀の受け皿の北東商銀は、極めて役職員あるいは預金あるいは出資金等々についても規模のレベルが違う。そして、それぞれのディスクロージャー誌を読んでおりますが、もちろんバランスシートはそれなりに出ております。
 しかし、実はこの破綻した福岡商銀も、東京商銀も、大阪商銀も、関西興銀も、京都商銀も、ディスクロージャー誌は全部債務超過じゃなかったんですよ、破綻したところも。ところが、ちゃんとディスクロージャー誌は正常な状況になっていながら、突然破綻するんですよ。
 だから、このディスクロージャー誌も私は信用がなかなかできかねるし、極めて短期間、増資をして、資本を集める作業も、見せかけ増資はなかったですか。私は、幾つかありますよ、持っていますよ、この席ではあえて出しませんけれども。また改めて、ないと言われるのを聞いてから、あるぞと言って出そうと思っていますので。ないぞという答弁をまず聞きたいんですけれども、ないんですか。
柳澤国務大臣 この点も、先ほどしっぽが体を振るみたいな話も、審査の過程で私どももこの議論をいたしました。それからまた、今御指摘のバックファイナンスで本当の資本と言えるのかという点は、非常に、競争相手からもむしろ指摘された点でもありまして、これについては、十分に念査をして、そうではないということを確認した上でこうした決定を行ったということでございます。
上田(清)委員 バックファイナンスはなかったと、予想どおりの答弁で間違いありませんね。
 それで、金融担当大臣、とりわけ、この四で出しております三つの韓国系信用組合の受け皿になった京都産業信用組合でありますが、十三年三月末の現在の役職員、預金、出資金、資本でありますが、この数字を挙げております。見ていただければわかりますように、昨年の三月の段階でこういう状態だったんです。
 ところが、まず、京都商銀の受け皿になって約十倍の規模になりつつあって、そしてまた、大阪商銀と関西興銀を、そのまた半年後に受け皿になっていくということですから、一年もたたないうちにこのような形で肥大化するというんでしょうか、巨大化する。こういうときに、人事の構成や経営の形態として、これはうまくいくんですか、一般論で恐縮ですけれども。極めて私は心配しておりますが、こういう懸念というのは内部でどんな検討をされたんでしょうか。
柳澤国務大臣 これは、今、突然の詳細にわたる御質問ですから、私自身が具体的にいろいろ申し上げる準備はもとよりないわけですけれども、このそれぞれの、大阪あるいは関西興銀というようなところも、最初はちょっと違う構想でいろいろ役員とか職員の構想を持っていたわけでございますけれども、最終的に自分たちの受け皿としてはこの京都産業信用組合でいこうと、いろいろ迷いが多分あったのだろうと思うんです。そして、そういう、かねて違う構想でいろいろ準備していた役員さんなぞがここで統合されて、そして、この信用組合の運営に当たっていくということを決断された。
 そういう、何と申しますか、いろいろそのあたりのことを、しかも、この具体の処理に第一線で当たってくれている金融整理管財人は、非常に人心の動きとかあるいはそれぞれの人たちの考え方の変遷なぞもずっと追っかけて、最終的にこれでいこうという決断に乗ったというのが概略の、印象的な話で恐縮ですが、そういうふうに記憶をいたしておりまして、そういうようなことを総合して、これはかなり我々も行きつ戻りつしたんですけれども、これでいこうという決定をしたということでございます。
上田(清)委員 総合的な見地、行きつ戻りつもあったけれども、こうした決定をなした。もちろん、今、優先譲渡契約ですから、必ずしも最終的に受け皿銀行になるかどうかはまだわかりませんが、一般論からすれば確率が高い、こういうふうな理解をするわけであります。
 それで、今いみじくも申されましたように、この京都産業信用組合が京都商銀の受け皿になって六カ月後にまた大阪商銀と関西興銀の受け皿になるというこの仕組みであります。
 なぜ私がこのことを問題にしているかというと、また担当大臣には大変気にしていただきたいのは、御承知のとおり、債権債務のさまざまな処理をして資金贈与をしなきゃならない、あるいは、場合によっては、債権回収機構に買い取りもしてもらわなければならない、こういう現実がすぐそばでもう待っているわけであります。
 とりわけ、この関西興銀というのは、当時、破綻時においては一兆一千億の預金量を誇っておりまして、韓国系二兆五千億の半分近く持っておったという経緯があります。
 御承知のとおり、現在もそうですが、都心の、都心のというよりも、ビルの空室率は大阪圏が一番であります。さまざまな形で資産の下落も大阪圏があるいは大変大きな幅を持っている。こういうことも考えると、相当数の資金贈与をしなければならない事態が起こり得ると私は考えるがゆえに、この問題について相当丁寧にやらなきゃならない、こういう認識を持って今回問題提起をさせていただいているわけであります。
 そこで、金融担当大臣、もう一度確認いたしますが、こういう場合は大臣はどの程度報告を受けられるのか、どの程度長官なり事務方から受けられるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 これは、手続的に申しますと、私は大臣庁の大臣ではないんですが、事の実態は、大臣庁の大臣であるかのように部下からいろいろな報告を受けます。そういうことで、いわば私と部下の事務方、長官ももちろん入るわけですけれども、そういうことの中で、いろいろと状況を報告し、私が疑問を呈してそれに対して答える、あるいは調査をするというようなことで進むわけでございますけれども、もう一つ、私ども、金融再生委員会の解散後も、実は委員の方々に顧問として残っていただいておりまして、顧問会議ということで、ほとんど再生委員会当時とほぼ同じような合議制のもとでの審議ということもさせていただいているわけでございます。
 そこには、直接、例えば関西興銀ですと預保が法人として金融整理管財人ということで入っておりますので、預保が法人として入っている中で、実務的に金融整理の管財の職に当たっている者、それからまた預保自体の担当の理事者、こういうような者の出席を求めて、彼らから直接にいろいろな話を聞いて、そこは合議体でございますけれども、審議をする。
 こういうようなことで、二つのチャンネルを使って、今現実にこういった問題については対処している。今というか、三月三十一日でこれは終了いたしましたけれども、これの審査に当たったときはそういう状況でございました。
上田(清)委員 先ほど、私は担当大臣に、バックファイナンスの実態があれば、ないと答弁されるでしょうから私いずれ御報告しますと申し上げましたが、それはこの次にさせていただきます。
 もしバックファイナンスの実態が幾つも出たら、これはどういう取り扱いになるのですか。やり直しですか。
柳澤国務大臣 これは、出資の払い込みというのが最も最終的な決定、優先交渉先の決定の大きな要因です。これについて瑕疵があるということになろうかと思いますので、手続の進行上も、もしそういうことが万が一あればかなり重大な事態ということになるのではないか、このように考えます。
上田(清)委員 実は、私もそんなふうに思っております。
 見せ金で資本を充実させてそれで受け皿になり、見せ金が抜けてしまったら過少資本になって破綻するというようなことになれば、資金贈与したものが全部パアになりますからね。まさに金返せという話になりますから。金融庁の皆さんは決してそういうときにお金を返してくれませんから。
 ここに、コリア・ツデーという、二〇〇一年十月、昨年の十月の雑誌があります。今この4のところで出てまいりました京都産業信用組合のオーナーの、タクシーで有名なエム・ケイのオーナーの青木氏であります。
 極めて、この中には、金融監督庁が、関西興銀を引き受けてくれ、こう頼んでいる、こういう文章が出ているのですけれども、具体的に名前も出ている。後でコピーしてまた事務方にお渡ししますので全部読んでいただきたいと思いますが、具体的にお名前も出てきておりまして、ここに出てきますね。関西興銀の分を見込んで引き受けようとされているんですか、「そうです。まあ、私は金融監督庁から頼まれたからしぶしぶやっただけです」という形で、京都商銀を受けた経緯を述べておられます。そこで具体的に、近畿財務局の当時の理財部長の大森泰人さんの名前が出ております。
 大森泰人さんから勧められているということですから、金融再生委員会の前職は再生委員会事務局総務課企画官、その後近畿財務局理財部長、そして現在は金融庁総務企画局企画課調査室長兼総務企画局企画課法務室長という、重要な一連の金融再生委員会からのこうした仕事をやっている方ですね。言われたとおりなった形になっているのです。
 偶然ですかね、こういうのは。大森さんが受けてくれよという話を私にしているということを、ひょっとしたらこの方はうそかもしれませんけれども、しかし、こういう雑誌にちゃんと具体的に名前も入れて、金融監督庁から頼まれている、渋々受けたとか言っておられる。一体どういうことですかね。そういうことを事前にいろいろ打ち合わせするのですか。
津島委員長 上田清司君に申し上げます。
 質疑時間が来ておりますので。
上田(清)委員 済みません。では、終わります。最後に一言だけ。
柳澤国務大臣 これは、具体的な記憶は私は、その点まさにどんぴしゃあるかと言われれば、ございません。
 しかし、受け皿探しというのは、やはりそれぞれの部署に携わっている者にとっては非常に努力をしなければならないというようなことが考えられるわけで、その過程でそういうこともあろうかと思います。
 ただ、私、あえて言いますと、今度は逆に、何というか、韓国の方の一種の謙譲な表現かと思うのですけれども、よくそういう言い方をされるという面が、私、ほかの例でちょっと同じような表現をされましたので、ちょっとそんな感想もあえてつけ加えておきたい、このように思います。
上田(清)委員 ありがとうございました。
 時間が参りましたので、また財金や続いての予算委員会で御質疑をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
津島委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。
 次に、一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫でございます。
 昨日来、大変いろいろと、この委員会もにぎやかないろいろな報道がされておりますけれども、私は、今回この予算委員会の中で、予算の本当のこれからのあるべき方向みたいなところを、まず公共事業問題をオーソドックスにとらえてみたいというふうに思っておりますので、財務大臣と国土交通大臣にひとつよろしく御答弁をお願い申し上げたいと思います。
 御案内のとおり、昨今、公共事業のあり方という問題も含め、こういった予算の中で公共事業の位置づけ、その規模をどうするかということも含めて重要な課題だと思いますし、一つの大きな転換期にあることは間違いないというふうに私は思っております。
 そういう中にあって、近年、最近では一年ごとぐらいに内閣がかわるわけですけれども、財務大臣はどういう感想をお持ちか知りませんけれども、私、各内閣ごとに、今回も五兆円・二兆円の哲学ですか、そういう中でめり張りをつけようという考え方がございますけれども、それぞれの内閣は、特に公共事業関係費について重点配分ということを、いろいろな柱立てをしながらその都度取り組んでこられたというふうに思っております。
 当然ながら、その時代時代のいろいろな社会的な背景、経済社会情勢を踏まえて、どこに重点を置くかというのは当然のことなんですけれども、ただ、私は、公共事業、要するに公共投資という中の社会資本を整備していくという分野は、余り毎年毎年何か柱立てを変えて重点的なものを変えても、そう簡単に実効性の上がるものじゃないんじゃないかという思いを持っております。
 御存じのとおり、公共事業的なものというのは、相当大規模な予算をつぎ込んで、相当の年月を通してそういう事業が完成するケースが非常に多いものですから、ですから、そこのところを財務大臣に率直にお聞きしたいわけですけれども、今回も七つの分野に重点的に公共投資も配分したいということをおっしゃっています。恐らく、その以前の、毎年、ちょっと予算の書類を見たときに、それぞれの内閣は重点配分の項目が少しずつ違っていると思うんですね。
 例えば、情報通信関係だとかあるいは高齢化に対する対応だとかいうものは最近ちょっと重なっておりますけれども、そういう公共投資みたいなものは、そういう毎年重点配分と称しても、先ほどちょっと私が触れましたように、そんな単年度で効果が出るはずがないじゃないか。それは単年度で終わる工事も当然ありますよ。ありますけれども、基本的には、社会資本として世の中に必要なものは、しっかりと腰を据えてやるべきものはやるべきだというふうに私は思いますけれども。
 また、そういった各内閣で政策目標として掲げたそういう重点配分が、では、その後、財務省なら財務省、旧大蔵省でちゃんとそれをフォローアップされているかということを見たときに、どうもそれが余りやっていないような気もするんですね。そういったところを財務大臣はどのような印象をお持ちですか。
塩川国務大臣 私たちは、とりあえず、十三年度の予算は、小泉内閣ができる、政権が確立する前にできておった、森内閣のときにできておった予算でございますね。したがいまして、私たちの配慮しましたのは、十三年度の第一次、第二次補正予算、そして、今回提出させていただいております十四年度予算ですね、この点に関しまして、私たちが言っている公共事業の考え方というものを、これを実現していきたいと思ったのです。
 その根本的な考え方は実は二つございまして、公共事業の従来からの投資の配分でございますけれども、その補正予算を大型でずっと毎年やってまいりましたけれども、全部それは、長年、五カ年計画とか七カ年計画とかいった計画にのっておるものの前倒しで、とりあえず応急の措置をしていったということなんですね。
 私たちの今度の考え方は、その前倒しのものもそれは必要でございます。先ほどおっしゃるように必要でございますけれども、そうではなくて、公共事業の範囲というものをもっと広げたらどうだろうと。つまり、公共施設も公共事業並みに扱ったらどうだろうということで、今回は施設の関係に思い切り配分をしていったということでございます。
 したがって、一般公共事業、従来から言われるところの長期計画に基づくところの公共事業のペースを少し落として、新しく公共施設的な、例えば病院であるとか教育機関とかいうのを公共事業並みに考えて、そちらの方の配分を十分に配分をしていったということでございます。
 したがいまして、従来の公共事業のペースは少し配分は悪いけれども、新しい分野でふやしている、これが重点配分ということでございます。
一川委員 要するに、そういった施設、箱物的なものを重点的にというようなお話なんですけれども、どうも公共事業関係省庁の予算書を眺めてみても、先般の第二次補正予算、第一次補正予算もそうかもしれませんけれども、例えば、補正予算の段階では、構造改善に資する、そういう公共事業を計上するんだというような、当時いろいろな説明があったと思うんですね。
 では、そんな補正予算でそんなに構造改善にすぐ資するなんというようなことも、そういう効果も余り期待できるものじゃないというふうに私は思いますけれども、今までのお話を聞いておりましても、何か小手先のことで、国民の皆さん方が今公共投資に対して、公共事業に対していろいろな関心を持っているときに、何かその矛先を、ちょっと関心をそらすような形で、根っこのところにでっかいいろいろな公共的な仕事が、額としては私は動いていると思うんだけれども、そこに対するいろいろな見直し的なものも含めて、余り大胆に切り込んでいないんじゃないかなということも含めて、非常に端的に言いますと、国民の目をちょっと、そういう面では素直にわかるような姿にしていないんじゃないか、国民の方々から見るとわかりづらい形になっているんじゃないか。
 恐らく各省庁の担当者も、従来ある事業なり制度を今言われているような一つの重点項目に合わせて、それを並べかえているだけじゃないかというような感じもしないでもないわけです。
 そういったところが、今、公共事業というもの、社会資本の整備のあり方みたいなものがいろいろと関心を持たれているときのやり方としては、余り、七つの重点項目に公共投資を重点配分するんだというふうに言われても、何かちょっと信じがたいところがあるわけですけれども、そのあたり、もう一度、いかがですか。
塩川国務大臣 おっしゃいますように、それは思い切って額を切りかえたということは、これはなかなかできないことでございますので、その点で、ちょっと時間をいただいて恐縮ですけれども、具体的なものを申しますと、例えば、十三年度から十四年度でどう変えたかということで、環境関係ですね、環境関係につきましては大体二%ちょっとの額をふやしておるのです。それから、少子高齢化関係におきましても約一・五%ぐらいなんですね。それから、都市再生の観点を見まして三%程度、それから、科学技術におきましては大分ふやしておりますし、それから、人材育成の方でも少し、二・二%、IT関係も二・三%と、そういう程度のふえ方でございます。
 ですから、額としては大したふえ方ではないけれども、一方、道路関係とか港湾とか河川とかいうのは十何%という額で減ってきておる、そこにめり張りがついてきておるということでございますので、御了解いただきたいと思います。
一川委員 従来余り予算措置のなかったものに、ある程度、わずかなものをつければ大きな伸びになると思いますけれども、やはり根っこのところには、従来から取り組んできている公共事業、今、国土交通省でいえば道路事業とか河川事業とかいろいろな都市開発に関する事業とか、今度、旧の運輸省関係の事業も入ってきておりますように、そういうものが金目としてはでかいものがあるわけです。
 そういうものについても、今、国土交通省も、新しい省庁誕生を契機にしっかりと改革に取り組んでいきたいという意気込みだというふうに聞いておりますけれども、今、小泉内閣は聖域なき改革に取り組むということを言っておりながら、どうも中身的には、予算の中身はそこまでいっていないのではないかなという感じを私は素直に受けます。そこのところは、また我々もいろいろな場面場面で政策を提言しながら、皆さん方の御意見も聞きたいというふうに思います。
 そこで、ちょっとまた国土交通大臣にお話を伺いたいわけですけれども、最近、公共事業に対するいろいろな批判めいたものが大きく聞こえてきます。そこは、大臣自身も、もう大臣に就任されて大分時間も経過しておりますからいろいろな感想をお持ちだと思いますけれども、素直に国土交通大臣として、国民あるいはマスコミ等も含めたいろいろなところからの公共事業に対するそういう批判というのですか、問題点というのはどのあたりにあるというふうに認識を持っておられますか。
扇国務大臣 大きな御質問でございますから一言で言えないと思うんですけれども、私どもは戦後今日まで、我々日本人の生活水準というものを何を目標にするか、社会資本整備はどこまで達成されれば充実感があるんだろうか、私は、そういう相対的なものを考えられると思うのです。
 例えば、道路一つとってみても下水道一つとってみても、我々は、欧米先進国並みにするのか、あるいはそのまだ途上にある、もともと社会資本整備というものが欧米先進国より百年おくれてスタートしているんだと。けれども、より私たちは生活水準を上げていくという意味で、国民の生命の安全と財産を守りながらも、下水道はせめて目標を達成しよう、少なくとも六〇%以上下水道整備をしよう。
 あるいは道路勘定も、世界の物流コストから見れば、日本がある程度物流コストを下げなければ、今のような高物流コストでは世界に追いついていけないのではないか。そういう意味での集中投資をして、より世界レベルの中で日本が生き残れるように、また、日本人の生活レベルの水準をより快適にするために、どれくらい社会資本整備をするべきか、その辺の集中投資をどれから持っていくかということを配分しながら予算の配分を考えて、前の内閣の四分野、そして今度の小泉内閣の七分野、重なっているところは当然ございますけれども、限られた予算の中で、どの目標を、目標値をどこにするか、その水準を私どもは皆さんとともに考えながら集中投資をしているというのが現状でございます。
一川委員 今おっしゃった話も理解できますけれども、公共事業に対するいろいろな批判めいたこと、今取り組むべきいろいろな課題ということは、相当幅広いものがいろいろとあると思うのです。
 一番単純な話としては、公共事業は非常にむだが多いんじゃないかとか、あるいは何か公共事業の入札から契約にかかわる、そのあたりのいろいろな手続には不透明さが目立つんじゃないかとか、あるいはまた、いろいろな政治家がそういうときにかかわっているんじゃないかとか、いろいろな不審なことも含めてそういう不透明性が指摘されております。
 また、事業の効果もなかなか上がらないじゃないかということ、また、いろいろな面で、仕事のやり方を見ていましても、元請、下請、孫請みたいな形態で現場では仕事がやられておりますように、なぜ、そういう形態をとってもなおかつ現場で仕事をしている業者は採算がとれるんだ、何かそこに大きなむだがあるんじゃないかというようなことも含めて、それからまた、年度末になるとやらなくていいような仕事が集中しているじゃないかというようなことまで、いろいろと言われる時代です。
 そういう中にあって、こういった財政が非常に厳しい中で、やはり、公共事業の今日的な役割をしっかりと踏まえながら、これからの公共事業はどうあるべきかというところをしっかりとにらんだ上での私は投資であっていただきたいと思うし、予算の中身もそういうものに即したものになってほしいなというふうに思うわけです。
 そこで、もう一回財務大臣にお聞きするわけですけれども、我が国の予算全体の中で、今、今回の公共投資は約一〇%削減だという形に一応位置づけされておりますね。額そのものは、一割というのは切りがいいから一割というみたいなものだと思いますけれども、要は、仕事の中身をチェックしながら、これから地方分権という一つの大きな流れの中、あるいはまた、いろいろな補助金等もやはり一括地方に交付すべきじゃないかというような声もだんだん強くなってきております。
 そういう一つの大きな時代の流れの中で、一〇%を削減したからいい姿になってきたという判断なのか。要するに、予算の中で公共投資というものはどういう姿が望ましいというふうに大臣はお考えですか。
塩川国務大臣 今、予算の中といいますよりも、予算は、地方行政と国の行政との関係で合計で見ておりますけれども、GDPに対します比率で申しますと、ことしで六・二%に公共事業がなるわけでございます。よろしゅうございますか。GDPに対しまして、大体六・二%ぐらいになるんです。
 これを十年後には二・二から三%ぐらいにしたい、こういう目標でございまして、今、ヨーロッパ等におきましては大体二%、GDPに対して二%を切っておる状態なので、私たちは、先ほど国土交通大臣が申しましたように、まだ社会資本の充実は必要だということは認識しておりますので、そのペースは緩やかに削減していくということで、十年で二・二から三%に持っていく、こういう予定で進めていこうということでございます。
一川委員 ちょっとまた国土交通大臣にお聞きするわけだけれども、先ほど来、公共事業のいろいろな批判的な問題点みたいなもののところをちょっと触れましたけれども、現時点で、ではこれまでのいろいろな公共事業のやり方とか内容については、当然こういったところを見直しして、これからの公共的な仕事というのは少なくともこういうふうにあるべきだという、何かそのあたりのお考えがございましたら、どうぞ。
扇国務大臣 公共工事のむだを省け、また公共工事の率が多過ぎるのではないかという御批判もあることはたしかでございますけれども、例えば、全国眺めてみますと、その地方によっては公共工事が主幹産業になっているところもあるわけでございます。そして、少なくとも、例えば例を挙げますと、一兆円の公共事業によって大体十三万一千人の雇用を誘発している、そういうことも事実あり得るわけでございます。
 けれども、今まで長期計画といって十年の公共工事の計画を立てたものが、では十年計画だから毎年同じだけの予算をとれるというのではなくて、私は、その長期計画を見直そうと言っています。それは、この事業をするために事業別予算をとって、それを決めて、なるべく早く、十年かかるところを八年、八年かかるところを七年、六年に短縮すればコストダウンができて、コストダウンができる分だけ次の工事にかかれるのではないか、それが私は有効な公共工事費の利用の仕方であろうと思います。
 今の予算の組み方では、事業別予算ではなくて単年度予算になっておりますので、その辺が国民に見えていないという部分は確かにあろうと思いますので、今までの長期計画の予算というものを事業別予算に、なるべく国民の目にわかって、より早く、よりスピーディーに、よりコストダウンというふうに私は誘導していきたい。そうすれば、私は、もっと国民の皆さんに目に見えた公共工事というものを、まして自分の町が、自分の市が、自分の県がどう変わっていくかというのが目に見えるのではないかと思っていますので、そういう方向に持っていきたい。ですから、長期計画の見直しも含めて、私は有効に使っていきたいというふうに思っております。
一川委員 そこで、次に、公共事業に絡んだ問題でもう一つ、近年非常に気になることは、公共事業が景気対策の一環として非常に使われ過ぎているというとおかしいのですけれども、公共事業というのは、先ほどちょっと大臣が触れられましたように、いろいろな効果があろうかと思うのです。
 今おっしゃったように、フローの効果としてのいろいろな建設資材を生産する波及効果とか、それからまた雇用を拡大する、そういう工事期間中のフローの効果というのは当然あって、それは要するに景気対策として特に重要視されてきた部分であろうと思うのです。
 片や、要するに、俗に言うストック効果と称するような、そういう施設なりそういう基盤を整備した暁に、それを基礎としていろいろな産業活動が活発になるという効果、それが本来的な効果だと私は思いますけれども、どうもその本来的な効果のところをねらうような施策が十分詰められないままに、何となくフローの効果をねらったような、何か補正予算になると公共事業積み増しだとか、公共事業をふやせば景気がよくなるだとか、最近は、景気が悪くなってきたから、公共事業は景気に対しては余り効果はないだろう、だから公共事業をやめてしまえ、そういう短絡的な議論も一方で出てくるわけです。
 私は、本来、公共事業、社会資本の整備というのは、やはりストック効果というものをしっかりとにらみながら計画的に物事を進めていくというところが非常に大切ではないかなと思います。波及的には今言いましたようないろいろなフローの効果というのは当然出てくるわけだけれども、ただ、近年、いろいろな、景気が低迷している、長期化している中で、公共投資というものが、景気対策として、どっちかというとフローの効果を期待しての景気対策として使われ過ぎたんじゃないかなという印象を私は持っているんですけれども、両大臣、いかがですか。ちょっとお二方、また、印象をどうぞ。
扇国務大臣 一川先生がおっしゃった面も私はなきにしもあらずと思いますけれども、私たちは、今日的な日本の姿を見たときに、果たして国際的に日本が、あるレベルをとってみても、どの辺の位置にあるんだろうか。例えば公共工事という中の一つで、空港一つとってみても、果たして世界の中で国際空港たり得るんだろうかという、都市一つとってみても、少なくとも東京都の例を挙げましても、都市計画というものが、戦後今日までたってまだ五五%しか道路計画ができていない、都市計画が達成されていない、まだ四五%も残っている。そういうことから考えますと、発展してきた日本の中で残された部分がまだかなりある。
 そのために、私は、一昨年、公共工事というものの、不正部分は正さなきゃいけないということで、公共工事の入札と契約に関する適正化法というものを通していただいて、公共工事の入札とか談合とか批判される部分は是正しようということで、今度電子入札というものも入れるようになりました。そうすると、一年間四万件の入札が、電子入札で不正ができなくなるわけです。
 そういう意味で、私は、より国費の活用、そして国民生活に疑義を持たれないということで、日本の発展をし得るにはどうすればいいか。そのところが今後大きな課題でございますし、二十世紀はハードの世紀でしたけれども、二十一世紀は、そのつくったハードをいかに品質を保持し、そして老齢社会に向けて、私たちはソフト部分、そういうものを今後どう加味していくか。そこが私どもの今後の大きな公共工事の転換期にあると思っていますので、二十世紀につくったハードの大きなものを大事にしながら、二十一世紀のソフトを私たちは図っていきたい。そういう公共工事の転換と、そして国民の皆様の目に余る不正は正す法律をつくっていただきましたので、両々相まってより二十一世紀型にしていきたいと思っております。
塩川国務大臣 私は、公共事業が、おっしゃるように、ストックはできたけれども、これがフローに余り還元されておらないじゃないかということ、これはいいところをついておられて、私もそう感じておるんです。
 実は、日本の公共事業の主体は、やはり高度経済成長を目指しての産業基盤の造成であったと思っております。ですから、高速道路なり、あるいは新産・工特という制度をつくって高度経済成長に備えてきた。それは一応完成したけれども、そこで、要するに産業構造の転換を行って、重厚長大から小さい情報産業に変わってきた。そうしますと、そのストックが十分にフローの活躍の方に回ってこなくなってきたということ、これは一理あると思うのです。
 そうするならば、これからの公共事業は、そういう産業基盤の造成というよりも生活基盤の造成の方に公共事業を振り向けていくべきではないかと思っておりまして、そのことが今回の補正予算におきましたように、要するに重点七項目に振りかえていったということは、そういう思想を生かしたいと思ってやったことでございます。ですから、重点七項目の中に盛られておりますことは、生活関連に必要な公共的施設に思い切った拡大をし、これに公共事業としての投資を振り向けていった、そういう転換を図っていったということであります。
一川委員 私も今、公共事業のこれからのあり方ということを考えてみた場合に、完全に自分自身の考え方を整理しておるわけでもございませんけれども、ただしかし、やはりそれぞれの地域、いろいろな課題を抱えながら、いろいろなそういう社会資本的なものを着実に整備していきたいというのは、どこの地域も皆同じだと思うのです。ただ、その地域によっていろいろな整備水準が、差が出てきているところも当然あろうかと思うんですね。
 そういう中で、これからの公共事業というものをどういうふうに進めていくべきか、また、これからの公共事業というか社会資本の整備というのは、従来とやや変わってくるのではないかなというふうに私は思っております。
 御案内のとおり、戦後五十年余りの中で、初めのうちは国土そのものをいろいろな面で安全な姿にするという国土保全的なものを中心にしながら、片や電源開発とかいろいろなものもやってこられました。それから、産業的な基盤もだんだん整備するようになってまいりまして、そして、その後は生活関連重視型にだんだん移ってきたというふうに思います。
 その過程では、相当大型のプロジェクトというのがたくさんあったと思うんですね。山を切り開いてきたとか大河川に大きなダムをつくるとか、今でもまだちょっと一部やられていますけれども、山を切り開いて大きな道路をつくるとかということも含めて、相当大規模な事業がたくさんなされてきたと思いますけれども、これからは今までつくり上げたそういう施設をちゃんと管理しながら、また、耐用年数が来ればそれを更新しなきゃならないということになるわけですね。
 そうすれば、今までの公共投資のやり方と、若干、仕事の中身もそうですし、取り組み方も変えてこないと、非常に時代のいろいろなニーズに対応できないんではないかなということを思うわけです。そのあたりのかじの切りかえをもうそろそろやらないと、私はまずいんではないかな、そのように思います。
 そういうところで、ちょっと一つの例として国土交通大臣にお聞きするわけですけれども、今、国土交通省も河川の工事、従来のいろいろなやり方、例えば、一年前には長野県の知事が脱ダム宣言というものを言われて相当話題になりましたように、ああいう一つの河川の敷地の中でいろいろな洪水を防御するというやり方には、要するに人工的な工作物で防御していくというのは非常に無理が出てくるんじゃないか。ましてや山間部にコンクリートの塊をつくるというのは、いろいろな面で環境に対する負荷がでか過ぎるということでの一つの思いだと思います。
 国土交通省も、大きなダムの計画については見直しをかけて、新たに実施調査ですかに取り組みをしないというようなことまで取り決めたように、これまでのやり方の一つの反省も込めながら、新しい時代に向けてのやり方を今模索しているんだろうというふうに私は理解しますし、それから、従来、蛇行した、曲がりくねった河川をできるだけ直線にしてやりましょうというのが河川工事の計画だったんですよね。今度説明を聞くと、逆に、曲がりくねった河川をそのままにして、環境にマッチした姿にして残しましょうというようなこともおっしゃっています。
 そういうことになってまいりますと、どうも河川行政一つ取り上げてみましても、相当大幅に変わってきているんじゃないかなという感じを受けますけれども、大臣、いかがですか。
扇国務大臣 今、一川先生がおっしゃったとおりでございまして、近年の河川事業一つとりましても、ダムの事業一つとりましても、欧米先進国とともども変わってきたことは確かではございますけれども、地形的に、日本という国の地形を考えてみますと、少なくとも日本の地形、日本全土の一割の面積を占めます洪水はんらん区域というのがございます。これはマップで調べますとわかります。そして、そこに、その水域のマップの中に、五割の人口と七割の財産が集中してあるわけですね、河川の。
 そういう意味では、やはりこれは大事なことであって、国土交通省、旧建設省の河川と今先生おっしゃいましたけれども、私たちは大事な公共工事の一つだと思って、生命財産を守るためにというのは大事なことだと思っております。
 今先生がおっしゃいましたように、自然回帰ということで、今まで直線の川というのを、今言ったような勾配、国の地形のあり方から考えますと、例えば信濃川とヨーロッパのライン川と比べましても、少なくとも、ライン川は約七倍の勾配があるんですけれども、信濃川はライン川の七倍の速度の水の流れ方をする。そういう地形でございますので、私たちは何としても今後、ダムのむだは省きながら、直線ではなくて蛇行して川の流れを適度に自然回帰にしようということで、私たちは、今先生がおっしゃったような蛇行の河川というものを自然回帰に使おうというふうに考えております。
 また、あっという間に、まだ記憶が新しいところですけれども、少なくとも、死者が十名、負傷者が九十八名、七千七百億円もの被害を出したというあの一昨年の東海豪雨。ここにもその被害を受けた先生方もいらっしゃいますけれども、そういうことのないように、最低限私どもは、ふだんの公共工事の中でも、大きなダムは今後、利水と治水、両方考えて、利水よりも治水という重点を置きながら、私も、先生がおっしゃったように今後の日本の公共工事、しかもダムのあり方、あるいは河川のあり方というものは変わってきた。
 また、御存じのとおり、既に百五十の市町村でハザードマップというものを私どもも国土交通省で出しておりますので、その百五十の市町村におきまして、今までの既存のストックの一層の有効活用というものを、このハザードマップと組み合わせて、地方のそれぞれのハード、ソフト両面の今後の効果的な政策を、ぜひ地元の意見を尊重しながら実行していきたいと私は思っております。
一川委員 だんだん時間もなくなってまいりましたので、一応、国土交通大臣に対する質問は最後にしたいと思います。
 私も、今大臣もちょっと触れましたように、例えば河川事業について例示的に挙げましたように、これまで取り組んできた仕事のやり方を、今後はいろいろな面で見直すケースが非常に出てくるわけです。そうした場合に、これまでのいろいろな制度なりいろいろな事業の内容を、当然これからはそのあたりを大胆に見直しをかけて、地方に任せるところは地方に任せるということも含めて、それで、予算の中身もしっかりと見直しをかけていただかないと困るというふうに私は思っております。
 今回、小泉内閣も、都市の再生ということも一つのキャッチフレーズになっておりますけれども、私は、地方に住む人間からすると若干心配な面もございます。ただしかし、今のやり方では、何ぼ予算をふやしても都市の再生というのは要するに無理だと思うのです。やはりそこには、新たな制度の改正なり、そういう手法を取り込んでくるということも含めて、今一部、何か法律をつくられるということも聞いておりますけれども、やはりそういう大胆ないろいろな制度の見直しということも含めての公共事業というものに対する取り組み方を真剣にやっていただきたいと思いますし、また我々も、別の機会にしっかりと提言をしてまいりたい。
 それで、私は、国土交通大臣に対する質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
 では、次に農林水産大臣にお願いします。
 農林水産大臣ということで、すぐBSEの話題になってしまって恐縮ですけれども、最近のいろいろな、我々がお聞きした話の中に、イタリアからの肉骨粉を輸入したものは、イタリア政府から、当時のいろいろな加熱処理の基準をどうも満足していなかったというような趣旨の回答が来たというふうにお聞きしているわけですけれども、それに対する対応というのは、今どうなっていますか。
遠藤副大臣 感染源については、絶対に迷宮入りしてはならぬという大臣の強い意思を受けまして、我々は、国の内外に専門家を派遣したりしまして、徹底的な調査を行ってきたところであります。
 その結果の一つとしてというか、一つの結果としてと言う方が適当なのか、九八年六月以前に輸入されたイタリア産肉骨粉については、三気圧の加熱処理がされていなかったというイタリア政府からの回答が二月八日にございました。これについて、我々は、では、今まで加熱処理をしてきたという回答をいただいておったわけですが、それとの整合性はどうなんだと。とりわけ、昨年、BSE発生後、昨年だけで十八回、ことしに入りましてから六回、公文書等によるやりとり、あるいは担当専門官とのやりとり、行き来ですね、往来を行ってきたわけですが、それらの輸出証明書の記載との事実関係はどうなるのか、これが非常に重要なことだと。
 もう一つは、では、三気圧かけていなかった場合には、どのような加熱処理をしたのかということも問題になってくるわけでありまして、その辺を今、在京のイタリア大使館を通じて徹底的に照会をしているところであります。
 また、先般、その結果、イタリア政府からコメントというか回答が二月十五日付でありました。それによりますと、九七年十月から九八年五月の間に日本に輸出した肉骨粉は、百三十六度、三十分の湿熱処理をしているけれども、三気圧はかけていなかったと。その理由はなぜかというと、ECの決定により、圧力処理の義務を規定していない、圧力処理を義務づけていない血液とかゼラチンとか骨などを原材料としたものである、こういう言い方なのであります。
 しかし、我々が調べている範囲では、肉骨粉には加圧が免除された原材料以外の原材料が含まれている可能性がある、また、湿熱処理の具体的な方法などが不明であるといったことから、イタリア政府に照会することとしております。また、場合によっては専門家をイタリア政府に再度派遣したい、このように考えております。
 さらに、九八年六月以前のイタリア産肉骨粉の国内流通経路については、九六年に三菱商事が輸入した百五トン以外は、ペットフード及び養魚用飼料原料として使用されたことが判明しておりますが、百五トンについては販売などの記録がございません。そこで、聞き取りに基づく調査を行ったところ、大部分は養鶏用の飼料原料として使用された可能性が非常に高い。しかし、一部はほかに販売された可能性も否定できないわけであります。だからといって、BSE、これまで三頭が確認されたわけですが、この感染源かともまた言い切れないところがあります。
 そんなわけで、輸出国がこれまで正当としてきた基準等についても、徹底的に洗い直すという作業に今入っているところであります。
一川委員 遠藤副大臣、対策本部長だということでお聞きしましたけれども、農水大臣、一月の何日の委員会だったですかね、十日だったと思います、農林水産委員会でもって、当時、我が党の山田委員が、要するにこういう基準を満足していないんじゃないかというような趣旨のやりとりがありました。農水大臣は、いや、イタリア産の肉骨粉についてはそういう、ちゃんと加熱処理をした検査証がついたものしか輸入していないんだ、だからそこは心配ないんだという――心配ないと言わなかったですか。
 何か、要するにそれは大丈夫だという趣旨の御答弁を、相当激しくやりとりがあった委員会だったんですけれども、それが、やはりこういうことがあったということになると、私は、このBSEの問題というのは、要するに国民に対するいろいろな不信感の今真っ最中にあるものですから、こういうことをしっかりとやはり大臣は責任を持った対応をしないと、ますますその不信は募っていくんじゃないかという感じがしますけれども、当時のそういう答弁をされた大臣としては、今、所見いかがですか。
武部国務大臣 お答えいたします。
 今、遠藤副大臣からお答えしましたように、イタリア産肉骨粉については、加熱処理条件または輸入時に確認していた加熱処理条件の内容をもとに、OIEまたはWHOの基準を満たしているという検査証明のあるもののみ輸入していたという答弁はしているわけです。それはそのとおりでございます。
 しかし、今、遠藤副大臣も言っておりましたように、私は当初から問題がないという認識は持っておりません。あり得ないと思っていることがあり得るという考え方で再調査すべしということを指示しておりまして、各国に職員を派遣して、今再調査しているということは御案内のとおりでございます。その結果として、今までのイタリア政府からの回答及び検査証明書の記載内容について問題があるということも明らかになってきたところでございます。
 さらに、今回の回答のそごについてもイタリア政府に照会したところ、先般回答を得たが、内容に不明な部分があり、さらに照会を行うこととしているわけでございまして、今後も、これまでも輸出国が正当としてきたことについても、徹底的に調査する必要があるという認識でございますので、あり得ないことがあり得べしという観点で、今後も感染経路の解明を徹底して行ってまいりたいということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
一川委員 大臣、もうそういうことはしょっちゅうおっしゃっているわけですけれども、あり得ないことが起こるかもしれないみたいなことは、余りいつまでもそういうことをおっしゃっていると、いつまでたってもその不信感が解消できないということになってしまいますので、何かもうちょっと別の表現を使われたらいいんじゃないかと思います。
 しかし、大臣、ではそれなら、先ほど副大臣もおっしゃいましたけれども、このBSEの感染源とか感染経路を解明するというのは、大臣は一時期ちょっと軽率な発言もされましたけれども、私は非常に大事なことだと思うのです。これは大体どういう段階まで進んでいるんですか。どこに焦点を当てて、何をやっておられるんですか、今。
遠藤副大臣 委員も既に御承知と思いますが、プリオンの運び屋は肉骨粉であるというのが世界共有の認識のようであります。BLE、OIE、WHOあるいはフランスやEUの保健当局もそのように申しております。しかし、このプリオンには非常に不明な点が多く、まだまだ解明されていないものがある、こういうことであります。しかし、肉骨粉が一つの運び屋だとしたら、これは徹底的に調べなきゃならぬということで、川上、川下にわたって調べております。
 そこで、具体的に申し上げますと、二例目、三例目の農家に飼料を供出していた飼料工場、六工場ございますが、これを徹底して調査しました。ところが、その飼料には肉骨粉は使用されていないということが判明いたしました。しかし、鶏、豚飼料に使われていた肉骨粉の混入の可能性というのは完全に否定できない工場が、一つだけ判明しております。
 さらに、一例目に関係する工場も含めて、合計四工場、肉骨粉の混入の可能性を否定できない工場が使用していた骨粉は、一部が豪州、一部がニュージーランド、そしてその他を除けばすべて国産でございました。
 また、魚粉等について、三例目に関係するわけです、この飼料工場。その三例目の魚粉への肉骨粉の混入の可能性について、エライザ法、PCR法等による検査を行っているところですが、この結果は、再度立入調査をして、いわゆる哺乳動物性のたんぱく質というふうなものが考えられております。
 今、話題となりましたイタリア製肉骨粉については、湿熱百三十六度、三十分の加熱処理基準を満たしていなかった可能性のあることが判明しましたから、今後は、我が国が要求してきた加熱温度、時間等を満たしていたと回答してきたこれまでの回答等の検証を徹底して行いたい。
 同時に、オランダ製の油脂もあるわけですが、これはいわば原料として代用乳がオランダ製のもので使われておった……(一川委員「簡単にお願いします」と呼ぶ)はい。そこで、オランダに派遣をしましたところ、動物性油脂の原料ではあるが感染のおそれのない牛の脂身であるということがわかっています。
 以上のようなことを含めて、この二月中にはすべて分析を終了するようにということをさせております。
一川委員 二月中にはその分析を終了するということで、それは期待をしたいと思います。
 しかし、先ほど、そのイタリア産の輸入した肉骨粉も、三菱商事が扱っていた百五トン分については記録が残っていないといったように、何となく不信が漂うわけですけれども、やはりこういう問題、全頭検査に入ったから安全だろうというような安易なものじゃなくて、私は、生産者なりいろいろな流通の関係で商売されている方々も含めて、やはりその仕事に対する生きがいというものを感じない限りは、今後日本は、こういった肉にかかわった仕事はもう成り立たないと思うのです。だから、全頭検査をやっているから大丈夫だというようなやり方は、私はまずいと思うんですね。だから、あくまでも感染源、その経路を早急に明らかにしていただきたいというふうに思います。
 それに関連しまして、農水大臣に、私はこの際に、我が国の農政を転換する一つのチャンスとしてとらまえたらどうかというふうに提言するわけですけれども、一昨年の口蹄疫の発生、あれも九十何年ぶりというふうに言われました。今回のこのBSEの問題、要するに、余りにも日本の畜産が海外に依存し過ぎている、えさを含めて。この体質を直さない限り、常に国民全体がそういう食料の安全性に対して不信感を持たざるを得なくなってくる。中国からもたくさん入ってくる。こういうことを考えれば、やはり、国内の自給体制を早急に強化する農政に大胆に転換すべきだ。そのことで、私は、ある程度コストがかかったとしても、国民の皆さん方は応援していただけるんじゃないかというふうに思いますけれども、農水大臣の力強い御所見をひとつよろしく。
武部国務大臣 全く委員御提案のことは重要なことだ、このように思っております。
 飼料作物の生産振興を図るには、我が国の飼料自給率の向上と国産粗飼料の利用による安全、安心な畜産物生産を図る上では極めて重要でありまして、私は、生産者と消費者の関係も顔の見える関係を構築していきたい、このように思っているわけであります。
 平成十二年に、飼料増産推進計画を公表しまして、平成二十二年度を目標といたしまして、飼料作物作付面積を九十七万ヘクタールから百十万ヘクタールに拡大しようという計画を持っております。
 国内産粗飼料自給率を二五%から三五%に向上させることとしているわけでありまして、関係者一体となった飼料増産運動を展開するとともに、飼料作物の生産基盤や機械施設の整備に対する助成を積極的に実施してまいりたい、このように考えておりまして、平成十二年三月の口蹄疫の発生を契機といたしまして、飼料自給率の向上と海外からの悪性疾病侵入防止の観点から、国産稲わらを収集し、畜産農家に供給する事業等を実施しているわけでありまして、今後も、飼料作物生産基盤の拡大、稲発酵粗飼料の生産、利用の拡大、国産稲わらの飼料利用等、自給飼料増産対策の積極的な推進に努めてまいりたい、かように存じます。
一川委員 私はこれで質問を終わりますけれども、私の質疑中に財務大臣が、何か予算審議に不適切な不規則発言をされたというふうに聞きましたけれども、どういうことですか、財務大臣。
津島委員長 財務大臣に申し上げます。
 今後の当委員会の審議について、大臣の誠実な対応を求めたいという趣旨であろうと思っております。
塩川国務大臣 私は、誠実にお答えしておるつもりでございますが、不服な点がございましたら、十分心得てやってまいります。
津島委員長 これにて一川君の質疑は終了いたしました。
 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 私は、昨日の予算委員会での我が党の佐々木憲昭議員の質問に続きまして、外務省の北方四島人道援助事業に関連する鈴木宗男議員の関与の問題について質問をいたします。
 昨日、総理は、既に私は外務省に対して、この案件の選定理由、確認する、そして入札が適正であったかどうか、この確認、そして支払いも、これは適正だったかどうか、こういう点を重点的に調査するように指示を出していると答弁をいたしました。
 既に、佐々木議員が最初に指摘したのは、一週間以上も前の十三日であります。調査はどのように行われているんですか。官房長官の答弁を求めます。
福田国務大臣 ただいまの御指摘の点につきましては、外務省で調査に着手いたしました。できる限り早く調査結果を出すように指示をいたしておるところでございます。
木島委員 いまだに調査がまともに行われていない、まことに不誠実だと思います。
 昨日、鈴木宗男議員は、参考人として当委員会に出てこられまして、佐々木議員の質問に答えて、友好の家、いわゆるムネオハウスの入札に関与していない、こう発言をいたしました。これは明確なうそであると私は思います。
 私は、鈴木宗男議員が友好の家の入札に介入したことを示す重大な文書を入手いたしましたので、委員長のお許しを受けて、きょう質問に使う文書を一括して配付させていただきたいと思います。
津島委員長 はい、どうぞ。それでは配付してください。
木島委員 九九年十一月二日、支援委員会事務局作成名義の文書であります。「国後島緊急避難所兼宿泊施設建設工事に係る日本工営との面談メモ(その五)」と題する文書であります。この避難所兼宿泊施設が、いわゆる友好の家、世上言われるムネオハウスであります。
 その面談の日時が、平成十一年十一月二日火曜日十七時二十五分から十八時まで。出席者、先方は日本工営株式会社地域計画部の山田部長、当方は、支援委員会事務局の林次長、植原第一事業部長、岩本、そして、オブザーバーとして外務省ロシア支援室の宇山首席事務官が参加をしております。この文書が事実とすれば、作成された九九年十一月二日というのは、友好の家が竣工したすぐ後の時期であります。
 支援委員会事務局会議室において、設計を受注した日本工営株式会社の山田部長と支援委員会の林事務局次長以下の皆さんが面談をした記録なんですね。この会議に、先ほど言いましたように、外務省ロシア支援室の宇山首席事務官が参加している。
 外務大臣、外務省はこの会合をつかんでおりますか。九九年当時、外務省ロシア支援室に宇山という首席事務官がおったことは間違いないですか。
齋藤政府参考人 お答え申し上げます。
 当時、ロシア支援室の首席事務官は宇山でございました。
木島委員 つかんでいるかどうか、この会合。最初の質問、答えていただけますか。
齋藤政府参考人 失礼いたしました。
 けさほど報じられたことについて調査をいたしているところでございます。
木島委員 どの程度調査は進んでいるんですか。この日こういう会合が行われた、宇山氏が参加していた、事実をつかんでいるんですか。メモは見つかっているんですか。調査結果、答弁してください。
齋藤政府参考人 ただいま鋭意調査しているところでございます。
木島委員 メモは見つかっていないんですか、まだ。こんなもの、すぐ出てくるはずのメモですよ。メモは見つかっていないんですか、いまだに、この時点。答弁してください。
齋藤政府参考人 ただいま調査いたしているところでございます。
木島委員 外務大臣は、外務省改革の中で、こういう事件が起きたらスピーディーに事実を調査するということを言っているわけであります。こんなの、口先だけだというのは今の態度で明らかじゃないでしょうか。
 この文書には極めて重大な、私、最初に三つにまとめますが、事実が書かれております。
 一つ、設計を受注した日本工営の石井建築士が、建設入札の公告が初めて北海道新聞や北海道建設新聞に掲載されたその九日前である平成十一年六月三日に、恐らく建設受注をねらっていたであろう日揮、昔の日本揮発油という会社でしょうか、東京証券所一部上場の国際級エンジニアリング会社であります、この菊池、箱田の両氏とともに、釧路にある鈴木宗男事務所を訪問したこと。
 二つ、鈴木事務所で石井建築士は、鈴木宗男議員の宮野秘書から、今日第一秘書であります、後にこの建物建設を受注することとなる渡辺建設工業渡辺社長と犬飼工務店の犬飼社長の両社長を紹介されたこと。
 三、建設業者の選定に関し、石井建築士が、日揮とジョイントベンチャー二社という文章になっておりますが、これはもう間違いなく、実際受注をした渡辺建設工業と犬飼工務店のジョイントベンチャー二社であることは明らかであろうと思いますが、このJV二社になるであろうとの印象を持ったのはその六月三日の会合のときのようであること、これがこの文書からはっきりと読み取れるわけであります。大変な事実であります。
 競争入札が公告される前の六月三日の時点で、既に落札者が渡辺建設工業と犬飼工務店のジョイントベンチャーであること、そのようにうかがわせる印象を持ったというようなことが、鈴木宗男事務所で、宮野秘書のもとで事実上決められていたんじゃないかということを示す、本当にゆゆしき事態、事実ではないでしょうか。
 事実だけ確認しておきます、外務省。九九年のいわゆるこの国後島の友好の家、ムネオハウスの設計はどこの企業が受けたんですか。日本工営株式会社に間違いないですか。その設計受発注の年月日はいつでしょうか。
齋藤政府参考人 当該プロジェクトのコンサルタントは日本工営でございます。
 受注年月日でございますが、コンサルタントが決まった……(木島委員「そうです、設計契約」と呼ぶ)平成十一年七月十四日に業者と契約をしてございます。
木島委員 コンサルタント契約、いわゆる設計契約、一番かなめの契約でありますが、平成十一年七月十四日契約と答弁なされました。
 これは競争入札ですか、随意契約ですか。
齋藤政府参考人 お答え申し上げます。
 コンサルタントの選定はプロポーザル方式によってございます。
 なお、先ほど、業者との契約が平成十一年七月十四日と申し上げましたが、コンサルタントにつきましては、平成十一年四月九日にコンサルタント契約が結ばれてございます。
木島委員 そうすると、プロポーザル方式というのは何ですか。平成十一年四月九日、コンサルタント契約と言いました。では、平成十一年七月十四日というのは何の契約をしたのですか。
齋藤政府参考人 複数の業者を指名いたしまして、これら業者からプロポーザルを提出していただきまして、それを技術的に評価して選定する方式でございます。
木島委員 だから、コンサルタント契約締結が平成十一年四月九日ということですね。では、それだけ押さえておきましょう。
 そうすると、この平成十一年六月三日というのは、まさに日本工営がコンサルタント契約を受けて、いよいよこの建物の設計をするということはもう確定した時期ですね。そんな時期ですね。
 昨日二十日、そして二月十三日に、当委員会における我が党の佐々木憲昭議員が明らかにしましたように、友好の家、いわゆるムネオハウスの入札は、形は競争入札でありながら、鈴木宗男議員の介入によって、これは建設請負の方です、入札参加資格を、根室管内の業者で、この地域に施工実績を十分に有する者などというとんでもない条件をつけることによって、事実上、一つのジョイントベンチャーしか入札できない仕組みが完璧につくり上げられたのですね。その結果、渡辺建設工業と犬飼工務店がジョイントを組んで、案の定受けた、これが鈴木宗男議員の関係者であることを、政治献金をしていたことを佐々木議員が明らかにしたところであります。
 この今配付した文書によって、鈴木議員の事務所で、しかも、建設請負の競争入札だというのに、入札公告の前に、受注した渡辺建設工業と犬飼工務店の社長が、絶対に秘密を表へ出しちゃならぬはずの、設計を担当することになっている日本工営の山田部長と会っているということ、このこと自体でも大変な問題、しかも政治家の事務所で会っているということ自体でも大変な問題、すさまじい事実をこの文書は示しているんです。
 これは、競争入札公告の前に、事実上、受注業者が決まってしまっていたということを意味するんじゃないのでしょうか。まことにゆゆしいことだと思います。そして、受注したこの二つの会社がジョイントを組んでいた、先ほど述べたとおり。
 当時、鈴木議員は内閣官房副長官でありました。法務省、この一連の全体の構造、重大な汚職になりませんか。
古田政府参考人 個別の具体的な事情を前提にしてのお尋ねでございまして、もうこれは委員御案内のとおり、何らかの犯罪の嫌疑があるかどうか、そういうようなことにつきましては、捜査当局において証拠に照らして判断すべきものでございますので、法務当局としてはお答えは差し控えさせていただきます。
木島委員 昨日の委員会で、佐々木議員から、九九年一月、あるいはその年じゅうに作成されたと思われる二つの文書を示しました。そこでは、鈴木宗男議員が、当局はオール北海道的に入札対象の業者を考えていたのを絞り込んでしまった、そういう圧力をかけたような文書になっておったわけでありますね。
 皆さんに配付した資料の二枚目、これは表に出ている献金ですよ。鈴木宗男議員への献金、北方四島に対する人道援助事業の受注業者からどうなっているか。上から三段目、問題の国後島緊急避難所兼宿泊施設「友好の家」、一九九九年でありますが、このジョイントを組んだ二つの企業からの献金の欄を見てください。犬飼工務店の方は、九七年、九八年、九九年、毎年十二万円でありますが、渡辺建設工業の欄を見てください。受注をしたのは九九年、二百五十万。前の年、九八年百五十万。前々年、九七年五十万。三倍、五倍とふえているんですね。これは表の金額ですよ。この、まさに九九年に渡辺建設工業が受注をしている。そして、その入札の経過には非常に疑問が大きい。対価関係も、これは法務省、あるんじゃないでしょうか。
 確認しますが、政治資金規正法上の届け出があったかないかということは贈収賄罪が成立するかどうかを決める対価関係の存否に関係ない、政治資金規正法上届け出があっても、それが対価関係があるということも事案としてはあり得る、そういう贈収賄罪の法解釈、それは間違いないですね。判例もそんな状況になっていることは間違いないですね。確認だけしておきます。
古田政府参考人 具体的な事案を前提にしての点についてはお答えを差し控えますけれども、一般論として申し上げまして、わいろとしての対価性があるかどうかは職務との関連があるかという事実による、政治資金法上の届け出の有無とはかかわらないものと理解されていると承知しております。
木島委員 確認をいたしました。
 もう一つ。この事業の発注者は外務大臣でしょう、事実上。鈴木宗男議員は内閣官房副長官という地位にあった、衆議院議員であった。これは、ロッキード事件以来、職務権限の範囲は非常に広がっている。
 確認をいたしますが、この北方四島の人道支援事業についても、内閣官房としても広い意味での職務権限があると伺っていいでしょう、法務省。あるいは外務省。
齋藤政府参考人 一点だけ申し上げますけれども、本事業の発注者は支援委員会事務局でございます。
木島委員 それは形であって、実際上、支援委員会は外務省が統括しておる、金は全部外務省からのお金が行くわけですから。実質を聞いているんですよ、私は。
 それで、贈収賄事件というのは実質で見るんですよ。職務権限というのは、形式的じゃなくて実質で見る、それで職務権限の範囲は広がってきたというのが経緯じゃないでしょうか。そこだけきょうのところは詰めて、法務省は、もう一度聞きますが、これだけの事実が表に出てきているんですから、これは事件として立件できるんじゃないですか。捜査の端緒じゃないでしょうか。答弁願います。
古田政府参考人 個別の案件につきまして犯罪の嫌疑を認めて捜査するかどうかは、これは、先ほども申し上げましたとおり、捜査当局がさまざまな証拠あるいは情報に照らして判断することでございますので、私の方から答弁することは差し控えさせていただきます。
木島委員 もちろん、法務省、検察当局、国家公務員だれでもそうです、犯罪が行われたと疑うに足る事実をつかんだら、これを申告する責務が、告発する責務が刑事訴訟法上ありますね。法務省、確認します。
古田政府参考人 刑事訴訟法上、公務員は犯罪があると思料するときは告発しなければならないという趣旨の規定が置かれていると承知しております。
木島委員 外務大臣、そういう責務が外務大臣にあるんですよ。徹底的にこの事実を洗って、犯罪の嫌疑があると思料したなら直ちに告発すべきだと思いますので、決意だけ聞いておきます。
川口国務大臣 ただいま外務省参与の園部参与、この方は監察査察担当でいらっしゃいますけれども、この方にお願いをいたしまして、調査中でございます。
木島委員 法務大臣に聞きます。
 もう一つ、刑法第九十六条の三「偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札の公正を害すべき行為をした者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。」とあります。これは、今まさに、株式会社業際都市開発研究所の尾崎光郎被疑者、元代議士秘書にかかわる事件が、この偽計に基づく公正入札妨害罪が適用されて事件が立件されているわけであります。
 法務省、公正入札妨害罪の要件はどんなものですか。
古田政府参考人 刑法九十六条の三第一項の競売・入札妨害罪、これは、ただいま委員から御指摘がありましたように、偽計または威力を用いて公の競売または入札の公正を害すべき行為をするということが構成要件になっております。
木島委員 法務大臣に伺います。
 さきに文書を示しました。どういう点が重大であるか、私、三点挙げました。その三点が事実とすれば、これはこちらの方、公正入札妨害罪にも当たるんじゃないか。どうですか、法務大臣。
森山国務大臣 先生がお示しになった文書を拝見いたしました。
 ただ、この事実が今おっしゃいました条項に違反して犯罪を形成するかどうかということにつきましては、さらに証拠を集め、その証拠に基づいて調査していくということが必要でございまして、今ここで私がコメントをすることは差し控えたいと存じます。
木島委員 次に移りましょう。
 この文書は、さらに読み込んでいきますと二つの重大な事実が浮き彫りになってくるんです。読んでみてください。
 一つは、当初想定したゼネコンのみならず、日揮株式会社がこの建設事業に加わることで、この建物、いわゆるムネオハウスの適正な事業費積算よりも水増しされている可能性があるので、設計を請け負った日本工営において事業費積算書の再検証をすること、これを支援事務所がコンサルタント会社日本工営に指示しているんですよ。すさまじいことがこれは書かれているんですよ。物すごい事実ですね、これは。もう一つ、外務省が、事実上大きな談合がつくられたんでしょう、こうした状況についてずっとこの時期まで承知をしていた事実、この二点が明らかにされます。
 端的に言ったら、鈴木宗男事務所において驚くべき談合が競争入札の公示前にもう既に行われてしまって、そして、工事代金の水増しがなされた疑惑も発注者の方から指摘されている、発注者が水増しした疑惑を指摘して、コンサルタント会社に積算書を見直せ、そういう指示まで出しているというすさまじい文書ですよ。
 入札に関して不正な介入、談合等が行われて発注価格がつり上がったとなっていれば、それはもう国の財政にとっても重大なこと、まさに公金をはむものと言わなければなりません。
 外務大臣、ここに書かれた事実、どう受けとめますか。
川口国務大臣 御指摘の文書につきましては、先ほど申しましたように、これから、園部参与にお願いをしてしている調査の中で、特に念入りに調査をしていただきたいと考えております。
 したがって、事実関係が一体どういうことであるかというのは調査の結果を待ちたいと思っておりますけれども、もし本当にこういうことがあったといたしましたら、私としては大変遺憾に存じます。
木島委員 この会合にオブザーバーとして参加している外務省ロシア支援室の宇山首席事務官、今何をやっているんですか。
齋藤政府参考人 現在、ポーランドの大使館に勤務しております。
木島委員 それなら、直接電話一本かけりゃわかるじゃないですか。けさ、ある大手新聞に出ましたよ。やったですか、外務省。
齋藤政府参考人 文書はただいま拝見いたしましたので、まだ本人には連絡をとっておりません。
木島委員 本当に、こういうみずからのうみ、これをみずからえぐり出すということをやろうとしない姿勢がこの問題でもありありじゃないでしょうか。だから私は、昨日佐々木憲昭議員も指摘したように、外務省に調査を任せたんじゃだめなんだ、外務省は調査の対象なんだということを指摘しているのは当然だと思うんですね、こんな姿勢では。官房長官が記者会見でいなくなってしまったので、そのことだけ再度厳しく指摘しておきたいと思うんです。
 さらにもう一点、資料を見てください。六ページ目であります。
 平成十一年十二月二十八日、コンサルタントを受注した日本工営株式会社代表取締役社長中礼俊則氏の支援委員会事務局長末沢昌二氏に対する文書、「国後島緊急避難所建設関連業務に係るお詫び」と称する文書であります。
  このたび、貴委員会より契約頂きました国後島緊急避難所建設関連業務におきまして、貴委員会始め関係方面に多大なご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。
  日頃より業務情報の機密性について教育して参りましたが、事情の如何を問わず工事入札以前に関連情報を外部に漏らしたことに関し深くお詫び申し上げます。
自認しているわけですね。
 九九年六月三日、鈴木宗男氏の釧路の事務所でこのコンサルタント会社の山田部長が、後に一般競争入札であり事実上一つのジョイントベンチャーしか入札に参加しなかった渡辺建設工業と犬飼工務店の社長と初めて会った。そしてこの文書。業務情報を漏らして申しわけないと。これは明らかに、もう入札前から見積単価等々が受注が予定されていたこのジョイントベンチャーに流されていたということを当然合理的に推測させるすさまじい文書でもあります。入札に関してこんなことがあっては本当にならぬ、大変な文書ですね。
 外務大臣、こっちの方の事実、報告を受けていますか。日本工営に対してはどんな処分がなされていますか。
齋藤政府参考人 友好の家の設計担当業者が平成十一年十二月二十八日に支援委員会に対してわび状を提出している旨報じられている点については承知しておりますけれども、事実関係につきましては現在調査中でございます。
木島委員 こんなもの、すぐ調査できるんじゃないですか。
 先ほどの、この建設工事に係る日本工営との面談メモ、九九年十一月二日に支援委員会事務局が作成したと思われる文書の中には大変なことも書いていますよ。要するに、うやむやにしてしまえという趣旨です。一番最後のところ。「また、当方より、」当方というのは支援委員会事務局でしょう、「当方より、石井氏」これは日本工営の方でしょう、「石井氏は現在別案件に携わっているようだが本件落着を第一と考えて尽力願いたい旨申し入れたところ、先方了承。」もうこれで手打ちしちゃう。そんなことが読み取れるんですよ。とんでもないことじゃないですか。
 外務大臣、どうですか。これだけの事実があって、一件落着で手打ちしちゃうなんて、わび状一本で手打ちしちゃうなんていうのはとんでもないことだと思うんですが、どうですか。
川口国務大臣 この資料に書かれているような事実があったかどうかについては至急調査をしたいと考えます。いずれにしても、もしこういう事実があったとしたら、言語道断であると考えます。
木島委員 私は本当に、昨日の鈴木宗男議員の参考人としての発言は、昨日来の、文書を示しての真相解明から浮かび上がってくる事実に照らして、もう明らかにうそだと思います。
 そこで委員長に、この一連の問題の真相を解明するために、証人として、鈴木宗男議員は既に要請しておりますが、宮野秘書それから支援委員会事務局の林次長をお呼びいただきたい。
 それから、この委員会に、外務省関係の文書として、一つ、九九年一月の、ロシア支援室作成「平成十一年度北方四島住民支援(集会所兼宿泊施設の設置) 設計・施工・監理業者(コンサルタント)及び施工業者の選定について」と題する文書、二つ、九九年五月二十八日作成日付、外務省が所持していると思われる「国後島緊急避難所兼宿泊施設メモ」と題する文書、そして本日私が皆さんに配付した、九九年十一月二日「国後島緊急避難所兼宿泊施設建設工事に係る日本工営との面談メモ(その五)」これを提出願います。
津島委員長 理事会で協議をいたします。
木島委員 そこで、入札の問題について質問をいたします。
 皆さんに配付した資料の一であります。「「北方四島支援事業」の入札手続き 一般の手続きとの比較」というものを私は出しました。これは、私の方で、外務省と海上保安庁の提出資料を精査して、外務省の支援室ですが、北方四島支援事業の中の、二〇〇一年度のいわゆるはしけ友好丸の建造、九九年度の国後島友好の家、いわゆるムネオハウスの建設、そして九八年度の国後島桟橋改修の入札手続、この経過を一覧にして示したものであります。
 外務省にお聞きをいたします。
 この三事業について、その入札の種別、一般競争入札とか随意契約とか、いろいろありますが、その種別は何か。ここに指摘した入札説明会及び入札そのものに参加した企業数はそれぞれ何社だったか、明らかにしてください。
齋藤政府参考人 自航式はしけ友好丸についてでございますが、これは一般競争入札でございます。入札説明会は平成十二年七月十四日に行われております。(木島委員「いや、それは書いてありますから。何社ですか」と呼ぶ)参加したのは二社でございます。
 次に、国後島の桟橋改修の事案でございますが、これは公募型指名競争入札でございます。平成十年二月十二日に入札説明会が行われておりまして、十四社参加したと承知しております。
 また、友好の家でございますが、これは一般競争入札でございまして、平成十一年六月十六日に入札説明会が行われておりまして、六社が参加したと承知しております。(木島委員「入札説明会でしょう、それは。だから入札そのものの参加数も聞いたんです」と呼ぶ)大変失礼いたしました。
 入札に参加した会社は、友好丸につきましては二社でございます。桟橋につきましては二社及び二ジョイントベンチャー、友好の家につきましては一ジョイントベンチャーでございます。
木島委員 明らかですね。私は参加事業者数はもう既に外務省からとっております。入札に参加、友好丸はわずか二社、友好の家は一ジョイントベンチャー、国後島桟橋改修事業は二社プラス二ジョイントベンチャー。一般競争入札と言いながら、こんなものは事実上一般競争入札じゃないでしょう。
 なぜそうなったかの理由は明々白々。昨日、我が党の佐々木憲昭議員が文書に基づいて明らかにしたとおりであります。
 一つは、特別の参加条件がつけ加えられたからであります。
 友好の家、ムネオハウスの問題で明らかにしたとおり、鈴木宗男議員の介入で、オール北海道なら二百社ぐらい関係企業がある、参加資格の企業がある、しかし根室管内だけに絞ればこれだけだと、事実上無競争入札になるように、とんでもない特別の参加条件がつけられたからであります。
 私、もう一つあると思うんです。この資料をよく見てください。もう一つは、公告掲載日と、入札資格が失われる入札図書の購入申請とか入札説明会への参加日時、これが入札公告の日からわずかに三日ないし四日に設定されております。これに参加しない企業はもう入札資格がない、そこではねられてしまう。こんなのはめちゃくちゃでないんですか。あらかじめ落札企業が前もって決まっているから、こんな三日なんていうことで入札説明会に参加しろ、入札説明会に不参加なら入札資格はない、こんなばかげたやり方がこの問題では行われた。
 どうですか、あらかじめ落札企業が前もって決まっているとしか考えられない。外務大臣、これを見てそう思いませんか。どうですか。
川口国務大臣 一般的にそういった入札に絡む手続の標準的なあり方について、私は承知をいたしておりませんので申し上げられないんですけれども、いずれにいたしましても、そういうものに照らしてこの進め方が非常に不適切であるということでございましたら、これは園部参与にも実はお願いをしてございまして、今後、十の改革の中で、より透明性を増しということで議論をしていきたいというふうに思っておりますので、問題点についても同時に考えてみてほしいということもお願いをしてございますので、もし一般的な常識と非常に違うということであれば、改革を進める中でこれはぜひ改めるべきであるというふうに考えております。
木島委員 ればという仮定じゃなくて、こんなものを一般競争入札とあなたは考えますか、どう思いますかということを聞いているんですよ。仮定の質問じゃないですよ。こんなものは一般競争入札と見えますか、それを聞いているんですよ。
川口国務大臣 私は、こういった税金を使うものにつきましては、可能な限り透明で、入札もできるだけ多くの方に参加をしていただいて、わかりやすい形でやるべきであるというふうに思っております。
木島委員 国土交通省を呼んでいますから、では、国土交通省の直轄工事における入札方法として、どんなルールをあなた方はやっているのか。特に発注金額と競争入札の形との関連、入札公告から入札までの期間について、概略どんなものなのか。外務大臣があんな態度ですから、国土交通省、どうやっているか、きちっと教えてください。
風岡政府参考人 国土交通省の直轄事業の状況につきましてお答えをさせていただきます。
 まず、入札の手続でございますが、一件当たりの工事の予定価格の金額に応じまして、例えば七億五千万以上の比較的大きな工事につきましては、これは一般競争入札で実施をしております。また、二億円以上七億五千万円未満の工事につきましては、指名競争の中で公募型指名競争入札という方式をとっております。その下の一億円以上二億円未満の工事につきましては、工事希望型の指名競争入札というのをとっております。一億円未満の形はいわゆる通常の指名競争という形で、四種類の入札方式をとっているところであります。
 それから、入札にかかる標準的な日数でございますけれども、一般競争につきましては、まず公告をいたします。その後、速やかに入札説明書というものを交付いたしますが、最終的な入札日までの期間というのは、工事の内容によって若干幅がありますけれども、標準的には大体五十日ぐらいというように考えております。
 それから、公募型の指名競争入札につきましては、これは技術資料を提出してもらう手続が入りますが、一般競争よりは期間は短縮されまして、大体標準的には三十日程度でございます。
 それから、工事希望型につきましては、もう少しそれよりも短いというようなことでありまして、おおむねそういうような内容でございます。
木島委員 海上保安庁をお呼びしております。
 ちょうどこの北方四島人道支援事業と地域的にも近いところですから、時期的にも近いものとして、二〇〇一年度に海上保安庁が灯台見回り船というものを建造されました。ここに公告掲載日、入札説明会、入札日、書いておりましたが、このとおり相違ありませんか。入札説明会に参加した企業数、入札に参加した企業数、答弁ください。
縄野政府参考人 海上保安庁の水路測量船あるいは灯台業務船につきましては、一般競争入札で会計法に基づいて契約をしております。
 このスケジュールにつきましては、委員が先ほど資料にお示しされたとおりのスケジュールでございます。私どもとしましても、おおむね官報公告から入札まで約五十日をとるということを、これは政府調達の運用指針に基づいてやっておるところでございます。
 この年の入札説明会と入札に参加した業者数は、いずれも七社でございます。
木島委員 最後になりますが、国土交通省に聞きます。
 私、この一覧表にあるように、入札説明会に不参加の企業はもう入札すらできないなんということ、まことに異常と。また、いつ幾日までに入札説明会への参加を支援委員会事務局に連絡しなければだめだなんていう、こんな条件を一般競争入札でつけるなんということは考えられないと思うのですが、こんな例ありますか、国土交通省。そこだけ確認しておきます。
津島委員長 時間が来ていますので、簡潔にお願いします。
風岡政府参考人 国土交通省では、説明会について、参加することを入札条件にはしておりません。資料を交付することによって十分周知徹底が図れるということで、そういうやり方をとっております。
木島委員 もう当たり前ですね。それだけに、この北方人道支援事業がいかに異常か、その裏にどんな問題があったかということをこれは推測させるものでもある。徹底的に真相を解明することを求めまして、時間ですから、終わります。
津島委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門でございます。
 私は、今後、在沖米軍基地の問題についてかかわっていかれる川口外務大臣に、その沖縄の基地問題についての基本姿勢について質問をしたいと思います。
 まず、川口外務大臣にとって沖縄とはどういうものでしょうか。沖縄の米軍基地の現状、どのようにお考えでしょうか。まずその点からお聞かせください。
川口国務大臣 沖縄は、我が国の全体の中で七五%の米軍の施設・区域が集中している地域であって、県民の方には、その意味で非常に御負担をおかけしているというふうに思っております。
東門委員 大臣、これまでに沖縄においでになったことはございますか。
川口国務大臣 数回ございます。
東門委員 それでしたら、沖縄に初めておいでになったときの印象あるいは御感想をお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 実は、初めて沖縄を見ましたのが空の上からでございまして、一九五八年に私が高校生でアメリカに留学をした帰りに、飛行機で沖縄の上を飛びました。そのときに、たまたま私が一緒だった友達のお父上が沖縄で亡くなられた方だったものですから、空の上から二人で一生懸命に沖縄を見ました。その当時、非常に全体が茶色い雰囲気、印象でございまして、その私の友人のお父上がそこで亡くなられたのかということをしみじみと感じました。
 実際に地に足を踏み入れましたのは、その後何年たってからか、ちょっと覚えておりませんけれども、非常に日本の中でも自然が異なるという印象が強かったことを覚えております。
東門委員 空の上から見た沖縄、あるいは実際に足も踏み入れられたということなんでしょうけれども、最近ではどうですか、最近おいでになりましたか。
 那覇空港で飛行機をおりまして、国道五十八号線に出て、そこを左折して北上していくということを多分なさると思います。那覇の市街地へ入っていくにはそこを通りますから。そこを北上していくときに、道の両側、本当に那覇を過ぎてすぐですけれども、両側に米軍のフェンスがあるのはお気づきになりましたでしょうか、結構長く続きますが。
川口国務大臣 認識をいたしております。
東門委員 そういう沖縄の基地の状況、米軍基地、先ほど大臣も、七五%あるということは承知しているということだったのですが、これから大臣は、好むと好まざるとにかかわらず、外務大臣という職務上、沖縄とかかわっていくことになるわけですね。その広大な、いわゆる日本全国にある四分の三の米軍基地を抱えている沖縄の問題、それは沖縄県の問題と御認識なのでしょうか、それとも日本国全体の問題だと考えておられますか、お聞かせください。
川口国務大臣 当然、日本国全体の問題であるというふうに考えておりまして、その中で、沖縄県民の方には特に御負担をおかけしている問題だと思っています。
東門委員 私、川口大臣で三人目の外務大臣と質疑するわけですが、どの方にお聞きしても、負担をかけておられるという言葉はあるんですが、その後が聞こえないんですね。だからどうするかと言うと、SACOの最終報告の着実な実施というのがぽっと返ってくる。
 今そういう現状でこの一年以上続いているんですが、それは後でお聞きしますけれども、その前に、このたび、ブッシュ・アメリカ大統領、沖縄にその大きな基地を置いている国の大統領が来日されました。その際、小泉総理大臣は、ブッシュ大統領との会談において、沖縄の米軍基地問題については閣僚レベルの議論を申し入れたと報じられておりますけれども、首相から大統領に対して、SACO最終合意に基づく基地の返還あるいは整理縮小、普天間飛行場代替施設の十五年使用期限問題を具体的に申し入れられたかどうか、お聞きしたいと思います。
川口国務大臣 私は全部の首脳会談に立ち会ったわけではございませんけれども、私が知っている範囲でございますと、総理から、沖縄の負担を軽減するために閣僚レベルで議論をさせたいということをおっしゃられて、大統領から、沖縄については建設的な議論を行いたい、閣僚間でこの問題について緊密に協議をしていきたいというふうに述べられたということでございます。
東門委員 閣僚間で緊密に協議をということですが、では、パウエル国務長官との間では、大臣は十五年問題について提起されたと新聞では報じられておりますが、SACOの最終合意以降、具体的にはほとんど進展していない施設・区域の返還あるいは移設に向けての要請は、大臣として国務長官に具体的に行われたのでしょうか。また、十五年期限の問題では具体的にどのような合意の中身になったのか、成果を伺いたいと思います。
川口国務大臣 総理と大統領の間の閣僚にその話をさせようということを受けまして、私とパウエル長官の間でお話をさせていただきました。
 私から、在日米軍の安定的な駐留のために、沖縄については、日米両国がSACO最終報告の実施のための協力を継続していくことが必要であるということを申し上げました。また、日本側として十五年使用期限の問題に係る米国の態度は承知をしているけれども、普天間飛行場の移設、返還について、引き続き国際情勢を踏まえつつ相談をしていきたいということを私から申し上げました。
 パウエル国務長官よりは、これに対しまして、そのとおりである、十五年使用期限問題についてのお互いの立場はよくわかっているけれども、普天間飛行場の移設、返還についてよく相談をしていきたい、自分は、沖縄については統合参謀本部議長であったときから詳しくフォローをしているというお話がございました。
東門委員 そうしますと、使用期限問題は、ただ難しいとか、あるいは立場が違うからということではなくて、今後とも継続して閣僚レベルで協議をしていかれるというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
川口国務大臣 よく相談をしていきましょうということでございます。
東門委員 よく相談をしていきましょうという意味がよくわからないんですけれども、ただ、私がお聞きしているのは、十五年使用期限問題について、これは大臣も先刻御承知だと思います、環境大臣としてもその場に出席しておられたわけですから。いかに沖縄県が、あるいは代替施設が建設予定されている名護市の市長が、それをやっていただかなくては困りますよと、何度も多分その代替施設協議会ですか、そこで話されていると思うんですが、その件についての大臣としての御見解を伺いたいんですよ。
 今までは環境大臣という立場から、今度は外務大臣になられたわけです。担当者です、アメリカとの交渉をしていく。そういう観点で、私は、大臣としての決意のほども込めてお伺いしたいということです。
川口国務大臣 この件につきましては、今後とも、平成十一年末の閣議決定に従いまして、適切に対処したいと考えております。
東門委員 それでは次に、日米地位協定の問題についてお伺いしたいと思います。
 昨年の二月、沖縄県の北谷町における放火事件の容疑者として米兵の身柄引き渡しを要求したところ、米軍が拒否をしたということから、当時河野外務大臣でございましたが、河野外相は、運用改善について米国側と議論をして、納得いく状況にならなければ地位協定の改定も視野に入れる、その旨の見解を示されましたし、また、田中前外務大臣も外務委員会などにおいて同趣旨の見解を示しておられました。
 また、昨年六月には、同じ北谷町において、在沖縄米空軍兵士による女性暴行事件が発生しまして、外務委員会は、閉会中でしたけれども、七月の五日に現地調査を行うとともに、十日に委員会を開いて、日米地位協定の見直しに関する委員会決議を採択いたしました。
 地位協定の見直しを求める声は沖縄ではずっと前からあったのですが、もう現在、沖縄だけではなくて、国民の大多数の声となっております。四十年前につくられたこの地位協定、当時の力関係を反映して、米軍に特権的、優越的な地位が与えられるなど、対等のパートナーシップであるべき日米関係にとって全くふさわしくないものであり、さらに、たび重なる事件、事故により、基地を抱える住民の不満は限界ぎりぎりのところまで来ています。
 川口外相は、この不平等条約ともいうべき地位協定の現状をどのように認識しておられるか、そして地位協定の改定についてどのような見解を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
川口国務大臣 地位協定につきましては、先ほど委員もおっしゃられた、例えば河野元外務大臣のお話しなさったことと私も全く同じ見解を持っておりまして、その時々の問題につきまして運用の改善に努力をするということと、それから、これが十分に効果的でない場合には、相手もあることでございますけれども、改正も視野に入れていくという意味で、河野大臣のおっしゃったことと全く同じでございます。
 それから、先般、パウエル国務長官とお話をさせていただいた際には、日米地位協定の問題につきましては、刑事裁判手続に関する協議の決着が必要であること、また、環境問題について十分な注意を払って、個別の問題に関しまして緊密に協議をしていくということで一致をいたしております。
東門委員 といいますと、現時点では運用の改善で十分間に合っているという御認識なのでしょうか。それで文句はないということなんでしょうか。
川口国務大臣 まず、運用の改善のために最大限の努力をしていくということだと私は考えております。
東門委員 改善に努力をしていかれるということは、じゃ、必ずしも今、現時点で、それがよろしいということではないというふうに理解していいのでしょうか。それとも、運用の改善で事足れりというふうにしておるのか。それをお聞かせいただきたいと思うのですが。
川口国務大臣 運用の改善は必要だと思っております。
東門委員 では、大臣にどのようなレクが入ったかわかりませんが、これまでに外務省、北米局になるのでしょうか、本当に地位協定の改定について、沖縄県から、前県政から現県政、ずっと要請が出ております。そして、渉外知事会でも要請は毎年のように出されていると思います。先ほど申しましたように、外務委員会でも全会一致で決議をいたしました。
 そういうことを受けとめて、どのように動いておられるか、実際にアメリカに対して交渉しておられるかどうか。しているか、していないかだけでも結構です。お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 まだ現状では私は不勉強であるということを自分で認めざるを得ませんけれども、今まで日米地位協定の運用改善九項目ということがSACOでだったと思いますけれども取り上げられて、それは、例えば日米合同委員会合意の公表ですとか、米軍公用車両の表示ですとか、そういったことが取り上げられて、それについてはすべて実施をされたということを私は勉強いたしております。
 それから、現在幾つか問題が沖縄との間ではあることについては、それぞれの問題について鋭意努力をしているという話も聞いております。
東門委員 大臣、済みません、こういうことをお尋ねするのはどうかとは思いますけれども、やはりお聞かせください。地位協定は全部お読みになったのでしょうか。現行の地位協定です。もちろん、現行一つしかありませんから。
川口国務大臣 非常に重要な協定だとはもちろん考えております。
 今のところ、就任をいたしまして二十一日目でございまして、国会ですとか、あるいは改革の骨太の方針ですとか、あるいはイワノフ・ロシアの外務大臣との会談、ブッシュ大統領御一行の訪日と、矢継ぎ早にこの二十一日間にございまして、まだそれを、全項目を見るという時間的な余裕は残念ながらございませんけれども、今後、できるだけ早い機会に読みたいというふうに思っておりますし、あわせて、できるだけ早い機会に沖縄にも伺いたいと思っております。
東門委員 時間のようですからちょっと急ぎますけれども、去る二月三日、今月二月三日ですね、普天間飛行場の代替施設が建設される予定地である名護市の岸本市長が再選されました。
 岸本市長は、十五年期限問題とあわせて基地使用協定を締結する、それをしてもらわなければならないと強く常々おっしゃっていまして、それに、飛行時間や飛行ルートについても制限するよう日米間で担保がとられなければ普天間代替施設建設は受け入れられないとの公約をなさって再選されました。
 日米地位協定の改定なくしては使用協定の実効性は担保できないはずなんですね。そういう中で、名護市民あるいは沖縄県民の期待に外務省はどういうふうにこたえていかれるか。これから外務大臣あるいは外務省挙げてどのように対米交渉をしていかれるか、その見通しをお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 だんだんにお答えをするのが実は難しくなってまいりまして、これから鋭意勉強をいたします。
東門委員 確かに三週間ということはわかるんですが、しかし、優秀なスタッフが後ろにはついておられます。対米交渉をしていかれる中でこういうことをしっかりとやっていきたいという大臣のお考えは、私はこれまでにできておられると思います、できていなければならないと思います。
 ブッシュ大統領も来られました。日米同盟が本当に大切な基軸と、総理の口から、あるいは川口大臣の口からもう何度も出ております。そういう中で、七五%という本当に信じられないような大きな基地のある沖縄県、私、それを軽く見てもらっては困ります。短い時間だからという話ではありません。
 沖縄県民が本当にそれを願っているという思いを込めて私はここに立っているわけですが、本当に対米交渉、どのようにしていかれるかということをもう一度、これからやりますじゃなくて、どのようにしていかれるか、決意のほどをもう一度お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 沖縄県民の方の御要望を十分に踏まえ、日本の平和と安全、また、それの基礎となる世界の平和と安全といったことを視野に十分に入れまして、これから交渉をしっかりやっていきたいと思っております。これからこの沖縄の問題についてはしっかり取り組んでいきたいと考えております。
東門委員 大臣、今移設が予定されている辺野古という地域のことは、環境大臣として何度もお聞きになっておられると思います。そういうこともぜひ考慮していただいて、これからの対米交渉にはしっかりとした毅然とした態度で臨んでいただきたいと思います。それを要望して、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
津島委員長 これにて東門君の質疑は終了いたしました。
 次に、保坂展人君。
保坂委員 社民党の保坂展人です。
 きのうの参考人質疑におきまして、これは外務省の佐藤主任分析官について、田中眞紀子元外務大臣からお話がございました。ロシアの、国際情報局にいる方、何とその方に、一月二十九日、更迭された日に、その期に及んで、鈴木先生の許可がないとさわれないんですよという、これは小町官房長の発言があった。その点について、昨日、辻元議員が質問を繰り返しました。
 その際、何回目かの後に、小町官房長から、継続性の観点から重要な点がございますので、鈴木議員との関係、これを申し上げました、こういうふうに答弁されていますね。そして、鈴木議員との関係について説明しなければいけない、そういうことを田中大臣に申し上げましたと。その中身ですね、何を一体言ったのか。これを明らかにしてほしいんです。
 田中大臣はここで、きのうの参考人の質疑で、人事異動のリストに入ってないんじゃないのというふうに言ったら、鈴木先生の許可がなくてさわれないんですよ、こういうふうに聞いた、こうおっしゃっているわけなんで、その点確かめたい。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、一月二十九日に私が田中大臣に御説明したのは、三年以上の同一ポストにいらっしゃる方のリストでございます。そのときに、具体的に田中大臣の方から佐藤主任分析官の件について御指摘があったとは記憶しておりませんけれども、それ以前の段階で、田中大臣の方から主任分析官の件について御指摘があったことがございます。
 そのときに、私の方から申し上げましたのは、佐藤主任分析官のやっております仕事が情報分析でございます。これにつきましては、短期間でいろいろな成果を上げることができませんし、かつ、彼のやっております仕事が継続性の観点から積み重ねが必要だということと、それときのう申し上げましたように、鈴木議員との関連がございますということを御説明いたしました。
保坂委員 もう本当に一問だけですから、明快に答えていただきたいんですよ。
 きのうは、一月二十九日、そしてこの方については鈴木先生の許可がないとだめなんだ、こういうふうに言ったというふうに田中元大臣は証言されているんですね。これを言ったのかどうか、それだけですよ、官房長。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 許可がないと人事ができないという言い方はしておりません。ただ、鈴木先生との関係がございますので、何らかの形で御説明をした方がいいというふうに申し上げました。
保坂委員 何らかの形で御説明をした方がいいということは、結局、鈴木議員のオーケーをとらなければいけない、そういう意味ですね。確認します。
小町政府参考人 そういう意味ではございませんで、説明をした方がいいというふうに申し上げたわけでございます。
保坂委員 これは聞いていると、鈴木先生の許可というのは今もなお必要なのかという気がしてくるんですね。きのうの答弁をずっと聞いていても、外務省とそして鈴木議員は運命共同体なのか。外務省じゃなくて宗男省、こうなっているんじゃないか。
 今なお必要なんですか。そういう呪縛はばっちり解くという勇気は持てないんですか。一言答えてください。今もなおそういうふうになっているんですか。人事の異動については御説明が必要だという呪縛は、今現在も生きているんですか、官房長。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のような誤解あるいは印象を与えておりますことを謙虚に受けとめまして、これから対応していきたいと思っております。
保坂委員 まだまだ呪縛が解けていないと思いますが、きょうは、ケニアのソンドゥ・ミリウのダムについて、中身に入りながら、時間がありませんので端的に答弁願いたいんです。
 まず西田局長に伺いたいんですが、このケニアの案件、実際に事前通報をしてから着工までに時間がかかっているわけなんですが、債務削減をケニアが求めてくる、やはりこういう懸念があって交換公文がおくれているということでよろしいでしょうか。
西田政府参考人 お答えを申し上げます。
 先般の委員の御質問にお答えしましたとおりでございまして、まさに事前通報をし、EN交渉を行っている最中に、先ほどのような、ケニア側から、場合によっては債務削減ということもあり得るかなということが入ってまいったわけでございます。
保坂委員 資料の方を配っていただきたいんですが、では、再度西田局長に伺います。
 やはりこのODAの問題については、大変金額の点、どのように各社それぞれ分担をして工事をされるのか、情報の公開がありません。特に二期工事分については金額等も定かではないんですが、ここについてやはり情報公開するべきだと思いますが、いかがですか。
西田政府参考人 お答えを申し上げます。
 ちょっとまだその配付された資料は見ていないでお答えをいたしますけれども。
 もちろん一般論で申し上げれば、御案内のとおり、情報公開の努力は、非常に今、事前の評価あるいは中間評価、事後評価も含めて行っているところでございます。
 ケニアの件の先ほどの話も、第二期につきましては、この前御説明しましたように、まだ政府として行うかどうかは決めていないということでございますから、それについては公表しておりません。
保坂委員 今お配りしたのは、国際協力銀行、JBICの資料で、きょうも参考人で副総裁来ていただいていますけれども、これでまずお聞きをしたいのは、これは発電の予定が二〇〇〇年三月だった。これは二〇〇〇年のたしか十月には第二期の工事をしなければいけなくて、かなりこれはおくれていますよね、第二期工事に入るのが。そして、私どもが聞いているところによれば、第一期工事の分、これはもうほぼ使い果たしていて、このままだと工事がストップするというおそれも大きくなってきたというふうに聞いています。
 そこでなんですが、こちらの、これは予定額というふうに二枚目に書いてありますよね。第二期工事の内容なんですね。内容で、四つのロットに分かれて、土木、そして水圧、水門、バルブ、発電機器、送電線、変電所、このようにありますよね。この総計は六十一億余りと思いますが、これは現在もそのとおりでしょうか。
田波政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、当初の予定より若干進捗がおくれているということはあるんだろうと思いますけれども、一期工事に関する限り、私どもの承知しているところでは、ほぼ終了に近づいているということだと思います。
 それで、どのくらい不足額が出るかという御指摘だと思いますけれども、それについては、やはり最終的にもう少し工事を進めて、結果が出ないと私どもとしては申し上げることはできない、こういうことでございます。
保坂委員 今度は西田局長に伺いますが、この段階では六十億なんですけれども、私ども調べると、第二期工事は百五億なんですね。四十億ふえている。どうしてふえているんですか。端的に答えてください。
西田政府参考人 私の理解しております限り、借款契約の予定額については百億程度ということであったと思いますが、内容についての内訳等々はもちろん何もまだ決まっていないという状況でございます。
保坂委員 JBICの方にもう一度伺いますけれども、第一期工事の六十九億というのは、もうこれは確定された額で、このとおりなんですね、第一期工事は。ところが、第二期工事については、一期工事の追加分で二十億円、鴻池組というのが入っているんじゃないですか、このお配りした表にはないですが。それから、予備費の十一億ですか、こういうのも入っているんじゃないですか。これは入札はすべて終わっていて、あとは交換公文締結を待つばかりなんですよ。正直に答えてくださいよ。これは焦げついたら大変なことになるんですから。
田波政府参考人 お答え申し上げます。
 一期分の借款金額については、これは決まっていることでございますけれども、二期分がどうなるかということにつきましては、ただいま経協局長からお答えがありましたとおり、これから最終的に正式に決まってくる、そういうものであるというふうに理解をしておるところでございます。
保坂委員 これはもう一回、じゃ局長に聞きますけれども、ケニアの国内の経済状態も余りよくないですね、現在。そして、おっしゃっているように延滞の危険もあるわけです。あるいはやはり削減を求めてくるかもしれないという懸念もある。私は、こういう有償援助、二国間援助というのは、もうほとんど実情に合っていないんじゃないかと思いますよ。本当に、これは返す当てもない巨大な借金をケニアに押しつけて、今がよければそれでいいという、不良債権の問題と一緒ですよ。
 これは西田局長、今この国会において、実はこの案件の入札は済んでいるわけですから、どのような条件で現段階は済んでいますということを資料を出してください、ちゃんと。議論できないじゃないですか、それじゃないと。はっきりこの資料を国会に提出するように、局長に求めたいと思います。
西田政府参考人 お答えいたします。
 委員の御趣旨は必ずしもよくわからないのですが、どういう資料を出していいのか、もうちょっと具体的にお話しいただければと思います。
保坂委員 時間稼ぎしないでくださいよ。
 局長、二期工事の入札は、突っ走ってやっちゃったわけです。鈴木宗男さんが八月に行って、九月には事前通報しちゃったわけですよ。しちゃったら、これは本当は所定の手続が進むだろうということで、入札を終わっているわけですね。終わって、現在どういう金額になっているのか。JBICのこの資料と私ども調べた数字は全然違う。そしてはっきりと、資料を見ると、皆さん方が検討している資料の手元には、第二期工事百五億円と書いてあるじゃないですか。そういうものをちゃんと出しなさいよ。そうじゃないとこれ、まともに審議できないですよ。ODAの問題なんて議論できないですよ。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 繰り返しになって恐縮でございますが、第二期につきましては、これはケニア側が当時自己の責任において行ったものでございまして、日本政府としてはこれを認めていないというものでございますので、それ以上のものということではないと思います。
 御案内のように、日本政府として第二期のものについてこれを採択するかどうかについては、今御指摘のいわゆる債務の問題も含めて、慎重に検討しているということを累次御説明させていただいたところであります。
保坂委員 じゃ外務大臣にもう本当に端的に伺いますが、この資料の二ページ目を見ると、合算すると六十億なんですよね。ただ、今皆さん方、JBIC、それから外務省の担当の皆さんの中で検討している数字は百五億なんですよ。それをこういう答弁ですり抜けて、しかも重債務国ですよ。これは本当にケニアとの信頼関係の問題も、大ごとになりますよ。きちっと調査をして、国会に提出していただきたい。これが情報公開ですよ。ODAの透明化ですよ。骨太の方針でうたっているじゃないですか。はっきり答弁してください、そういう姿勢を持つかどうか。
川口国務大臣 私がこのソンドゥ・ミリウにつきまして勉強した範囲では、今西田局長がお答え申し上げましたように、二期工事については先方がやった話で、日本政府としては認めていないということでございますので、これ自体についての資料をお出しできるかどうかということについては、私は難しいんじゃないかと思いますけれども、ただ申し上げたいのは、経済協力については、この前、総理からの御指示もありまして、調査をするようにということでございましたので、外務省の中できちんと今調査を、大量な調査でございますけれども始めておりますし、それから園部参与にも、まずロシア支援の話が終わった後で、これについてはチェックをしていただきたいと私は考えておりますので、調査はきちんとする必要があると思っております。
保坂委員 今の川口外務大臣の答弁は、やはり、役人の皆さんにあるいは国際協力銀行に任せているんだからそういう資料は出す必要がない、そういう答弁なんですよ。
 私が資料として出しているのは、ここに第二期工事で六十億円とありますよね。ところが、本当に今動いているのは、第一期の追加分というのもあって、そこが二十億ついているわけです。この金額にもプラス、加算されているんですよ。
 なぜなら、じゃ西田局長に答えてもらいましょうか。この資料の七のところを見てください。今ほとんど工事が終わっているというふうに言われています。それで、この遅延によるコストへの影響と書いてあるじゃないですか。コンサルタントに対しては月千八百万円払わなきゃいけない。それから、第一期施工業者、これは鴻池組ですか、月一億と書いてあるじゃないですか。こういうコストが発生して、膨らんでいくんですよ。それを押しつけるんですか、重債務国に。はっきりしなきゃいけないじゃないですか。情報公開して、それこそ国会に報告するべきですよ。その意味がわからないんだったら資格がないよ。どうです。
西田政府参考人 ただいまの御指摘の問題も含めて、第二期でいかなる事業の規模あるいは借款の規模になるかも含めて、当然のことながら政府としては対応することになると思います。
保坂委員 官房長官、お話しして、財務大臣にも伺いますけれども、今、ODAの問題というのは、これはなるべくいい事業で、相手国にも喜んでもらって、国民の大切な税金でそれこそ補てんするかもしれない危険を含んでいるわけですから、これは不良債権問題でもそうですよね、しっかり審査しなきゃいけないわけですよ、問題が生じてくれば。今の外務省の当局の答弁ではとても納得できない。やはり政府としてきちっと、ODAの財務内容がどうなっているのか、これは官房長官と財務大臣に、それぞれ姿勢を聞かせていただけますか。じゃ、財務大臣からお願いします。
塩川国務大臣 私は、ODAの予算につきまして、とりあえず一〇%削減しろと。そして、その間に実態をよく調べて、行政効率と、それから本当にその国が喜んでくれておる施設であるのかどうかということを見直していけということで、今それを査定をやっておるというところでございます。
福田国務大臣 ODAというのは、もう申し上げるまでもなく、日本の外交政策の中においても、また日本の国際社会の中においてどうすべきかということを考える上に極めて大事な要素でございまして、また政策手段でもあるわけでございますので、このことについて、この透明性というものはもう十分確保されていなければいけない、こういうふうに思っております。
 そういうことで、信頼のあるODAというものを築くために、外務省におかれても、今回のことにつきましても、今調査をしておりますけれども、なるべく早くこの調査結果を出して、国民の信頼にこたえるべきであるというように思っております。
保坂委員 この調査は、政治献金の調査という小さな問題じゃないんです。やはり大事業ですから、これは六十億円なのか百五億円なのか、えらい違いですよね。そういうことについてもちゃんと明かしていただきたい。そういうことを要請いたします。
 そして最後に、もう一度JBICの方に伺いますが、この資料はやはり率直に書かれていまして、この三ページ目の方を見ると、こういうことをそのまま放置していると、これはケニア国内でしょうかね、政局にもなりかねず、そして日本の援助姿勢が問われると書いてありますよね。その認識について、これはどういう意味なのか、説明していただけますか。
田波政府参考人 私ども、実際にODAを実施する機関といたしましては、やはりODAを受ける国のいろいろな状況というものはよく頭に入れて対応しなければいけないと思っております。
 この遅延が若干起きているということ、あるいはまだ交換公文が結ばれていないということは事実でございますけれども、その理由というのは、やはり先ほど来先生が御指摘のように、例えば返済について確実性があるかどうか、あるいは事業性があるかどうかということについて、それだからこそ、より慎重に検討していかなければいけないということでございまして、それを肝に銘じてやってまいりたいと思っております。
保坂委員 もう一度官房長官に伺いますが、これは鈴木官房副長官が、当時のモイ大統領、ゴダナ外務大臣に会って、そしてケニアはやはり削減を求めないということを確認したんですね。応答要領も外務省の方でつくったというふうに言っていますよ。
 削減を求めない、それなら日本はこれについて第二期を進めましょうということで、鈴木さんが帰ってきてから進めるように指示をしたとありますけれども、しかし、それが本当に正しい認識であれば、財政当局だってこんなに長く引っ張って、この件というのは宙づりになっているんですよ、今。ですから、私は、これはケニアの本当に貧しい人々の中で多数の人を雇って工事が続いているんでしょうし、大変なことになる危険があると指摘しているんですね。
 ですから、そのときの判断が正しかったのかどうかも含めて、財務内容をきちっと出させて、我々は国会できちっとこれを検証して、本当にこれをODA改革のエポックにするべきだと思うんです。その認識について伺いたいと思います。
福田国務大臣 経緯とか、また事実関係の解明に努めて、そしてその適切なる対応をすべきであるというように思っております。
保坂委員 本当に、こういう大き過ぎる計画がいろいろな意味で不透明、全く我々国会議員に資料も出てこないんですね。今の資料だって、恐らく初めて見る方も多いと思いますよ。そういうことをきっちり審査して議論しなければ、ODA改革なんてできない。
 ですから、ぜひそこはODA全体の体質を透明化するということを強く要求して、質問を終わりたいと思います。
津島委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。
 この際、塩川財務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 午前中の委員会終了時に、不適切な発言があったとの御指摘を委員長から受けました。今後、誤解のないよう、発言に十分注意をいたします。
津島委員長 次回は、明二十二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十三分散会


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