衆議院

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第18号 平成14年2月26日(火曜日)

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平成十四年二月二十六日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      伊吹 文明君    石川 要三君
      衛藤征士郎君    大原 一三君
      岡下 信子君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    北村 誠吾君
      栗原 博久君    小島 敏男君
      高鳥  修君    竹下  亘君
      中本 太衛君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    野田 聖子君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      細田 博之君    三塚  博君
      宮本 一三君    持永 和見君
      八代 英太君    山口 泰明君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      池田 元久君    岩國 哲人君
      河村たかし君    筒井 信隆君
      中沢 健次君    野田 佳彦君
      前原 誠司君    松野 頼久君
      松本 剛明君    山田 敏雅君
      青山 二三君    赤松 正雄君
      達増 拓也君    中井  洽君
      中塚 一宏君    佐々木憲昭君
      塩川 鉄也君    菅野 哲雄君
      辻元 清美君    原  陽子君
      横光 克彦君    井上 喜一君
      西川太一郎君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   法務副大臣        横内 正明君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            重家 俊範君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局ア
   フリカ審議官)      小田野展丈君
   政府参考人
   (国税庁次長)      福田  進君
   参考人
   (金融庁長官)      森  昭治君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   参考人
   (預金保険機構理事長)  松田  昇君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十六日
 辞任         補欠選任
  大原 一三君     岡下 信子君
  亀井 善之君     北村 誠吾君
  細田 博之君     竹下  亘君
  山口 泰明君     中本 太衛君
  岩國 哲人君     山田 敏雅君
  松本 剛明君     前原 誠司君
  山口 富男君     塩川 鉄也君
  辻元 清美君     原  陽子君
  井上 喜一君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     大原 一三君
  北村 誠吾君     亀井 善之君
  竹下  亘君     細田 博之君
  中本 太衛君     山口 泰明君
  前原 誠司君     松本 剛明君
  山田 敏雅君     岩國 哲人君
  塩川 鉄也君     山口 富男君
  原  陽子君     菅野 哲雄君
  西川太一郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  菅野 哲雄君     辻元 清美君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 分科会設置に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 分科会における会計検査院当局者出頭要求に関する件
 分科会における政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、参考人として金融庁長官森昭治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として法務省大臣官房長大林宏君、外務省大臣官房長小町恭士君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、外務省中東アフリカ局長重家俊範君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官小田野展丈君、国税庁次長福田進君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 本日は、特に金融、財政、景気、雇用問題について質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐でございます。
 最初に、金融問題をめぐるさまざまな疑惑や不祥事が起きております。幾つかただしておきたいと思いますが、最初にまず、破綻をいたしました石川銀行の件についてお尋ねをしたいと思います。
 金融庁は、一昨年、平成十二年の九月期について検査をしているんですが、そのときに債務超過、自己資本比率でいきますとマイナス八・六七%、大変な債務超過であったということを確認していると思いますが、その後どういう指導等、手を打ったんでしょうか。金融庁、お答えいただきます。
柳澤国務大臣 石川銀行の件でございますけれども、確かに今先生がおっしゃられるように、基準日におきまして検査をいたしたわけでございますけれども、その検査の結果が出るまでの間に、石川銀行は増資の手続をとり始めまして、そして一部増資にも成功をし、それからさらにまた追加の第三者割り当て増資を行う等をいたしたわけでございます。
 そういうことでございましたが、そのいわば増資の前の決算期の決算について検査の結果はマイナスの八・六七%である、これは単体ベースですけれども、そういうことが判明をいたしまして、そして今度はまた、それを石川銀行の方も認めた上で、さらに次の期、つまり十三年三月期の決算を組み上げまして、そしてそれは四・〇八%、同じく単体ベースですけれども、そうした、いわばすれすれですけれども、健全な水準に自己資本比率があるということを発表いたしております。
 しかし、再度私どもがその決算を対象にいたしまして検査に入りました結果、これが債務超過になるということを石川銀行自身も認めるところになりまして、破綻のやむなきに至った、これが経緯でございます。
五十嵐委員 どうも腑に落ちないんですね。かなり大幅な債務超過であった。そこでもっと毅然とした態度をとるべきであったけれども、簡単に増資計画を認めてしまったと。
 その増資も、いろいろなうわさが流れておりまして、融資を条件にして無理やり増資に応じさせたとか、いろいろなことが言われている。かなり詐欺まがいの増資があったのではないか、また査定も厳密にやればもっとひどかったのではないかと。
 増資に応じた人たちは、増資に応じたけれども融資は得られない、あげくの果てに、増資をしてから半年あるいは八カ月で破綻をしてしまったということになるわけで、これはもう詐欺に遭ったようなものです。ペイオフがまだ解禁をされていませんから、そのまま融資で置いておけば戻ってきたわけですね。ところが、増資に振りかえてしまいますと、これは一銭も戻ってこないということになるわけであります。
 この間の金融庁が、なぜここまでひどい内容の銀行を徹底的に検査をし法的な処理をする、あるいは厳しい改善命令等を出すということで手を加えていくということをしなかったのか。私は、これは不作為の責任が金融庁側にもあるのではないか、こう思うわけでありますが、その増資の内容についての疑惑、どういう認識をお持ちなのか、そしてその不作為の責任というものについて監督当局はどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 まず、増資というのは届け出で済んでしまうわけです。そういうようなことで、増資届け出書、それからその有価証券届け出書の提出がありまして、それらに基づいて発行目論見書というものが証券取引法によって提出をされるわけですけれども、これらについて、目論見書に記載をしていることが一体本当なのかということについて弁護士及び監査法人の意見を書面で報告するように求めたり、あるいは、私が言った、いわば二次口の七十億円の増資がさらに行われるというような段階におきましては、その適法性について監査法人及び弁護士の意見を書面で徴するなどの措置をとりまして、いかにもこれが安直に進められるということについては、そうした関係の者にいわば注意の喚起を促す。あなた、これを本当に適法な、あるいは適正な基礎のもとで進めないと、とんでもないことになりますよということは、そうした者に注意喚起の意味で今申したような措置をとったわけでございます。
五十嵐委員 しかし、本来ならば、八%を超えるような債務超過、これはやはり法的に整理すべきだったんではないですか。だと思いますね。なぜそれが行われなかったのか。これはやはり、私は一つは大きな疑惑があると思うんです。
 この石川銀行は森前総理と関係の深い銀行でありまして、そして石川銀行が破綻をした大きな原因の一つに不明朗な融資があるわけですけれども、亡くなられた小針暦二さんの関係するゴルフ場開発事業、それに対する融資、この小針さんの系列の企業と森さんとの関係も深いものがあります。その前に、福岡のホテルに対する不明朗な融資がありまして、これもその主犯の方は森さんと関係のある方でありました。
 森前総理に対するいわゆる今はやりの、配慮し過ぎた、気にし過ぎたというようなことがあって、これは金融庁側にそのような遠慮というようなものが働いて厳しい法的な整理というものに至らなかった、こういうことではありませんか。
柳澤国務大臣 基本的に、財務状況について問題があるところが増資の努力をするというようなことについて、これを否定するようなことはやはりとるべきではない、これは基本的な我々の態度です。何とか増資によって資本の充実を図って企業の立て直しを図ろうとしている、そのこと自体について否定的な態度をとるということは、我々としてはできかねることだ、また適当でない、このように考えております。
 それから、次の問題で、政治家の介在があって我々の処理がおくれたんではないかということでございますが、あくまでも我々としては、検査とその結果に基づいて行政の処分をしていくということが我々に与えられた使命である、こういうように心得ているわけでありまして、粛々とその手続を進めて、結論として残念ながら破綻をいたしたということでありまして、私どもに何か特定の政治家の方への配慮というか考慮というか、そういうようなことがあったかといえば、これは全くございません。
五十嵐委員 ただ、疑われても仕方がないのは、森政権の間はほとんど何もしなかった、小泉政権になってから最後に破綻というところに至ったということがあるわけですね。
 それから、何でもない銀行だったら、それは増資というものも確かに資本を増強する一つの手段としてこれは結構なことなんでしょうけれども、この石川銀行の場合は、非常に不明朗な融資が行われて、警察が入って捜査そのものが経営陣に及ぶんではないか、こう言われていたところですよ。つまり、経営者ぐるみでおかしな融資をし、背任的な疑いもある、そういう事件を抱えている銀行であったわけですから、これは単に増資をするからいいでしょうという問題では済まないんだろうと思いますね。
 私は、こういういいかげんな経営をしてきた、怪しげな経営をしてきたところに対しては、もっと毅然とした態度をとるべきだ、その結果として多くの罪のない方々に大変な損失を与えたということを私は厳しく反省すべきだと思いますが、反省をする必要は全くない、自分たちの処置は完全無欠で正しかった、そうおっしゃるわけでしょうか。
柳澤国務大臣 先ほど来繰り返し申し上げておりますとおり、私どもとしては、定められた手続にのっとって、まず検査をして、それからまたその過程、それと同時並行的に増資の動きがありましたから、それについての適法性、あるいは目論見書の適正性、こういうようなことについてきちっとした報告の徴求を求める等の措置をとったということでございます。
 結果としては、私も、大変遺憾なことである、こういうように感じているところであります。
五十嵐委員 言いわけ名人の大臣も、結果としては遺憾だとおっしゃるんでこの辺にしたいと思いますけれども……(発言する者あり)いや、本当に大変な問題なわけですから、損失を受けた方々にとっては。本来ならば返ってくるものが一銭も返ってこないんですからね、だまされた形になって。それは金融庁の行政の私は大変な汚点だと思いますよ。
 それから、次に移りますが、金融庁長官、やっとお出ましをいただいたわけですが、朝日生命の東京海上グループとの経営統合計画、これをめぐって、金融庁はかなり厳しい口調で、統合計画を白紙に戻したりするな、予定どおりやれと。そして、一部報道によりますと、金融庁長官は、これを白紙に戻すようなことがあったら、東京海上の首脳陣の首をとるとか、あるいは新規の商品を認めないというような脅迫的な言辞さえ弄した、そういうような報道もあるぐらいですが、どういう姿勢でこういう具体的なところに金融庁長官がコミットをしたのか、それをお伺いしたいと思います。
森参考人 お答え申し上げます。
 本件に関しましては、東京海上と朝日生命の交渉が山場を迎えていたときに、私が東京海上に対しまして許認可の件までちらつかせて恫喝したといった報道がなされていることは承知しておりますが、それは全く事実無根でございまして、私自身、東京海上の社長等を呼んで本件について話したことは一切ございません。
 ただ、金融庁全体といたしましては、監督行政の一環として、昨年の四月の統合計画から、さらに昨年の十一月により進んだ形の早期統合計画が両社で発表されまして、それが、一、二カ月ぐらいの後にその構想が白紙に戻って、昨年の四月の統合構想に戻ったわけでございますけれども、そういうことについて、監督行政の一環として、監督局からしかるべく両社に対して事情を聞いている、それは確かでございます。
五十嵐委員 事情を聞いただけですか。強くその統合計画を進めるようにという立場で話をしたんではありませんか。
森参考人 お答え申し上げます。
 基本的に、東京海上と朝日生命がどういうスピードでどういう内容の統合計画を考えるかというのは個社の経営判断の問題でございますので、当方としては、契約者の安心という面から、昨年の十一月に発表した統合計画がもちろん円滑に進んでいくことを望んでいたわけでございますけれども、両社いろいろ相談した結果、昨年の四月の段階に戻るということであるならば、それは経営判断の問題でございますので、それに対して我々が異を唱えるということではございません。
五十嵐委員 異を唱えちゃいけないんですよ。だけれども、やってきたんでしょう。だからこういう話が出てくるわけですよ。
 その裏には、実は生命保険会社の将来収支分析、そういうデータがあって、二〇〇〇年度決算から、今後どのような、将来にわたって生保の契約状況等を分析して、どんな経営状態が予想されるかということをシミュレーションした、そうしたデータがあるんではありませんか。その結果が大変悪かったということで心配して、そのような統合計画、これを進めたということではありませんか。
森参考人 お答え申し上げます。
 二〇〇〇年度から収支計画というものを出していただくということになったことは、先生御指摘のとおりでございます。
 ただ、私は、この両社について、そういうものが悪くなったから統合計画とかそういうふうには聞いておりません。一番直近時点の収支計画は、昨年の九月あるいは三月かと思いますけれども、それに何か問題があったということは聞いておりません。
五十嵐委員 この収支分析というものは公表される予定はありませんか。
森参考人 お答え申し上げます。
 基礎利益、いわゆる死差益と費差益と利差益を足したものでございますけれども、そういう基礎利益とか、あるいはソルベンシーマージン比率は公表しておりますが、収支計画については公表することとはなっておりません。
五十嵐委員 ソルベンシーマージンが一般の方々から見て指標になっていない、信頼性を失っているという状況のもとでは、今後の経営の維持ができるかどうかというのを見るためには、私は、こういう資料を公開すべきではないか、こう思うわけであります。自分のところだけに資料を抱え込んで、そして大本営ですべてを決めていく、こういう金融庁の姿勢に大きな問題を感じるわけであります。
 また、この分析の結果、今後五年間経営を維持できないであろうと思われるような大手生保があったという報道もなされておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
森参考人 お答え申し上げます。
 収支計画上、五年後に経営が成り立たなくなるという生保会社があるとは聞いておりません。全くございません。
五十嵐委員 そういうように隠すところに問題があるんですね。
 私どもが今一つの問題にしようとしているのは、資料を抱え込んだ上で、すべて金融庁で裁量行政を復活させて、判断をしようとしている。
 先日、私が指摘をいたしました破綻金融機関の処理マニュアル、お認めになりました、そういうものが確かにあったと。私、読み上げましたけれども。そこには、なぜか金曜日の三時以降でないとそうした破綻宣告はしない。三時半に破綻宣告、こうなっておりまして、四時に破綻金融機関の記者会見というのが書いてありまして、土曜日に破綻側全役職員自主出勤、日曜日に譲り受け側全役職員自主出勤とまで書いてあるんですね。
 これは、マニュアルとしてはあってもいい、準備をしてもいいという御答弁が柳澤金融大臣からありましたけれども、これは幾ら何でもやり過ぎでしょう。これはまさに金融機関側が自主的に御判断をすべきところで、それを全部決めている。
 私が一つ問題としたいのは、例の大和銀行ニューヨーク支店事件でもそうだったんですが、風評というのは、間違ったうわさを流して、そしてその風評によって倒産をしてしまうというようなことは許されないということなんだと思うんですが、事実は事実として、これは報道の側でも、つかんだらそれを報道していいんですよ。そうでなければ、逆にその間、みすみす損をする人が出てきてしまうとか、あるいはインサイダー取引によって逆にぼろもうけする人も出てきてしまうわけであります。
 月曜日に破綻が確定したら月曜日に発表する、それで私は当然だと思うんですね。何も金曜日の、市場が閉まるまで、マーケットが閉まるまで待って、そこで発表し、日曜日に自主出勤をしなさいというようなところまで金融庁が指図する必要はないじゃないですか。
 私は、かえってこれは疑惑を招くと思いますよ。月曜日に破綻が明らかになった後、金曜日の終わるまでやったら、幾らでもインサイダー取引ができちゃうじゃありませんか。それこそ、こうした金融問題に関する日本側の姿勢を海外に疑わせることになるじゃないですか。
 こんなマニュアルをつくる、私は、どこまで配ったか知りませんけれども、これがあるということは金融機関に配られているんではないかなと思いますけれども、ここまでなぜやったんですか。どうしてこういうことをやる必要があるんですか、金融庁長官。
柳澤国務大臣 これは前回私がお答えいたしましたので私から答弁いたしますけれども、それは一般の、汎用性のあるマニュアルと言っているわけではないんだろうと思います。それ自体、私ども、出所がわからないと先般もお答えいたしましたし、どうも、言葉遣いからいうと、私どもが使っている言葉とはちょっと違いますねというようなことを言う事務方もおりますが、まあそこはそう大した問題と私は考えておりません。私は、ある特定の問題が起こったときに、その処理に遺漏のないようにある種のシミュレーションをしておく、そうして手続の進行に遺憾のなきを期する、これは当たり前のことでありまして、それが何か特段大変な問題があるとは全く思っていません。
五十嵐委員 いや、このこと自体というよりも、このこと自体も私は問題だと思いますけれども、理由は申し述べました、そのほかのこととあわせて、金融庁の、金融業界全体を支配しようという、そういう裁量性が復活しているんじゃないか、そのほかのこともあるから言っているわけであります。
 最近、金融庁の担当記者のお話を聞きますと、何だか、森チルドレンという方々がいて、森さんの周りに集まる記者さんたちには順番でニュースが与えられるけれども、言うことを聞かない人たちにはそうではないと。そして、特だねを抜きますと、これで風評被害が起きたらどうするんだと恫喝をして、直ちに二週間の取材拒否、取材停止、そして、それに追随すると一週間の取材停止だ、こういう話が伝わってきているわけです。
 これは、例えばニュースというのはどこからでもとれますから、地方の日銀の支店へ行って、あの銀行についてこういう問題が起きているということを書くと、そのこと自体が、取りつけ騒ぎが起きたらどうするんだと言って金融庁からそうした圧力がかかるという話を聞いているわけですよ。
 こんな報道統制をしてどうするんですか。まさに、むしろ日本の金融に対する海外からの信用を失墜させる、そういうことになるじゃないですか。これらのことをあわせて、やはり金融庁長官にちゃんと釈明してもらわないとならないと思いますね。
森参考人 お答え申し上げます。
 少し誤解があるのではないかと思うんですけれども、まず、私自身、記者会見なりあるいは記者との懇談会を行いまして、透明な行政という観点からできるだけ金融庁の行政について、私のところの担当しておりますのはいわゆる財研の記者でございますので、財研の記者に広く、通常は二十社ぐらい集まってくるわけですけれども、いろいろな行政についての説明責任は果たしているつもりでございます。
 ただ、国家公務員法上の百条で課されております守秘義務は、私は絶対守っているつもりでございまして、何か特だね的なことを一部の記者にリークしたということは一切ございません。
 その上に立って、ただいま先生がおっしゃられた、報道規制的なことをしているんじゃないか、特に破綻金融機関の前打ち報道をした社の記者に対して報道規制的なことをしているじゃないかという御指摘でございますけれども、これは平成十一年四月、当時、金融監督庁時代に、国民銀行が前打ち報道によって資金繰り破綻したわけでございます。その際、記者の皆様に、やはり国民銀行、最後の浮き上がりの努力というものをしていたわけでございまして、そういう自助努力をいわば減殺するような前打ち報道というのは好ましくない、あるいは預金者に不安を与えるという意味においても好ましくない、こういう見地に立ちまして、記者の皆様方に、そういう破綻金融機関の前打ち報道、つまり、管理を命ずる処分の公表があるまでは待っていただけないかというお願いをした経緯がございます。その金融監督庁時代のルールがそのまま金融庁に引き継がれまして、そういう前打ち報道をした社に対しては、一週間程度、いわゆる個別取材は御遠慮願う。
 ただ、個別取材は御遠慮願っておりますけれども、定例の記者会見とかあるいは記者のブリーフィング等にはそういう方々も参っておりますので、一切の報道、取材の制限というところまではいかないというふうに我々は思っております。
五十嵐委員 一週間程度の停止というのをしているということは、今おっしゃったわけですね。
 要請するのはいいですよ。だけれども、それは事実としてもう破綻が確定をしてしまったというものもあるわけですね、ケース・バイ・ケース。それは書く側も、記者の側も、報道する側もリスクを負ってやるわけですから。誤報を打てばそれだけ自分たちが傷つくわけですから。それは違うと思うのですよ。(発言する者あり)いや、それはそれで、損害が出ればそれでまたいろいろなものが出てくるわけですよ。それは、役所が縛って、そしてペナルティーを科すというような性質のものではないと私は思うわけであります。
 そのほかにもさまざまな問題が金融庁長官及び金融行政についてはあるのですが、時間がなくなってまいりましたので、目下の問題について、日銀総裁、おいでいただいていますから、お尋ねをしたいと思います。
 あさって、あしたですか、総合デフレ対策が決まるということのようですが、この中で、日銀はインフレターゲティングを採用するのですか。
速水参考人 あさっては私は何があるのかよく存じませんけれども、インフレターゲティングにつきましては、私どもは採用するつもりは持っておりません。
 現在、金利はほぼゼロに達しておりますし、資金も極めて潤沢に供給されておりますにもかかわらず、物価は上昇しない状況でございます。このように、金融政策だけでは物価を上昇させていくということは難しいと思います。インフレターゲティングを採用するということは、現状では可能でもありませんし、また適当でもないというふうに考えております。
五十嵐委員 最近、物価さえ上げればいいんだ、そういう表現が政府・与党の中から盛んに出てくるのですが、私はおかしいと思うのですよ。
 なぜならば、こういう状況下にあって、国民は賃金が上がらないことも覚悟していると思いますけれども、上げられない状況に経済的にも企業的にもあるわけですね。こうした中で物価を何らかの手段で上げれば、それは買い控え、消費行動の自粛につながるじゃないですか。これは、まさに逆にデフレ効果をもたらすのではないかと私は思うのですね。デフレをとめるにはただ物価を上げればいいんだ、どんなことをしてでも物価を上げればいいんだという論調が目立つのですが、これは私は大きな間違いだというふうに思うわけです。
 経済活動が活発化して、あるいは実質的な賃金が上昇をして、そして貨幣の流通速度が増して、その結果として多少のインフレになるということは私は歓迎すべきことだと思うのですが、経済の実体がなくして物価だけ上げれば世の中全部片づくんだというようなのは全くの間違いで、逆にこれは消費者の買い控えを招いて何にもならなくなる、私はこう思うわけですが、その点について財務大臣、どうお考えになりますか。
塩川国務大臣 突然の御質問で、どうも恐縮です。
 私は、物価が下がるということについて、生産性の向上によって物価が下がるのだったら、これは結構な話、そういう状態は私たちも大いにつくっていかなきゃならぬと思っておりますが、今はそうじゃのうて、価格破壊というものによってこれがもたらされておるという、そこに問題があると思います。
 したがって、物価の引き上げとか物価インフレとかそういうことではなくして、物価を安定さす方向に持っていきたい。その安定の方向は何かといったら、名目的な係数と実質的な係数が一致するような方向に持っていくということが大事だと思っております。
 それから、一つは、物価の目標として私たち考えておりますのは、一九九七年ごろの物価が一番安定した状態ではないかなと思っておりまして、それ以降毎年ずっと下がってきておりますから、だから、一つの目標というか、望ましい物価の体系というものを一九九七年、八年ごろの状態に持っていくということを目標にして努力しようということを考えておるところであります。
五十嵐委員 私は、単なるコストカットによって物価が下がる、要するに下請を泣かせてただ値段を下げるというようなことでは意味がない、サプライサイドの質的な改善というものが欠かせない、それにはさらに競争力を強化するような政策を集中することだということを前回御説明させていただいたわけですが、そうはいっても、政府側が考えておられる対策というのは、そうじゃない、どうも小手先の物価上昇策であり、あるいはデフレ対策だというふうに思われてならないわけですね。
 一つ出てきている案が、山崎自民党幹事長の発案、こう言われているわけですが、RCCの不良債権の簿価買い取り案というのが出ているようですけれども、これがさすがに評判が悪くてどうもだめだということになったら、どうもむにゃむにゃとおっしゃっているのが、簿価に近い時価の算定を企てているようなお話なんですね。先日の閣議後の塩川さんの記者会見を聞いてみても、よくはっきりわからないのですが、時価の算定の仕方でもっと幅が出るというような趣旨の御発言をされている。
 このRCCの、もっと買い増ししたい、買えるようになるためには買い取り価格をもっともっと弾力化して簿価に近づけたいというような気持ちがあるのじゃないかなと思うのですが、松田理事長、いかがお考えですか。
松田参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の問題でございますが、私どもは、やはり法令に従って現在仕事をいたしております。
 現行法、改正された現行法では、やはり時価ということで買い取りをするということになってございますので、先生がおっしゃっておられます簿価に近づけた時価というか、近づいた時価というか、その概念、必ずしも私鮮明ではございませんけれども、私どもはあくまで時価、そういう合理的な方法により算出した価格、これでやっていくし、それから、その合理性を担保するために当機構内に設けた買取審査委員会を活用していきたい、このように考えています。
五十嵐委員 くれぐれもでたらめな弾力化ということをしないように、あらかじめくぎを刺しておきます。
 時間がなくなりましたので、肝心な点一点だけ柳澤大臣に伺いますが、議決権のない株式を国が取得できる四月以降まで何とかもたせて公的資金注入は先送りしたい、こうお考えになっているのじゃないかなと思われるのですが、その点についてどう思われますか。
柳澤国務大臣 確かに、商法改正で四月一日から、議決権の制限をした株式、優先株というようなものではなくて、いろいろな形の議決権制限株が発行できるようになるというお話は、私も勉強させていただいておりますけれども、私がそんなことを考えて何かタイミングをはかっているのじゃないか、これは本当に専門家の五十嵐委員にふさわしい推測かもしれませんが、逆にちょっとうがち過ぎて、私のような平凡に物を考える人間からするとちょっと高望みのような気がいたして、全くそういうことは念頭にございません。
五十嵐委員 では、もう一問だけ。
 三月末までは、それでは、公的資金の注入は難しいとお考えかどうか。
柳澤国務大臣 私どもは、かねて申し上げておりますように、金融危機と俗に申しますけれども、金融秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあるという事態になれば、これはもうちゅうちょなく諸措置をとるということを申しておりますので、それが三月一日の前であろうと後であろうと、そういうことは全く考えておりません。
五十嵐委員 そのときに、経営責任、それから株主責任、行政責任をきっちり、もし注入するという場合にはとっていただいて、前回のような無責任な注入がないように強くくぎを刺しておきます。
 終わります。
津島委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。
 次に、河村たかし君。
河村(た)委員 河村たかしでございます。
 きょうは金融のことですが、すべての前提になる税についてお伺いするんですが、その前に一つ。
 税というのはすべての根本ですからね。金融も何も、国家の成り立ちは税をおいてないので、国の成り立ちをすべて規定するのが税でございますので、これは後で驚愕の事実を提示いたします。
 何かといいますと、検事総長さんとか検事長さんたちがどれだけ退職金をもらっていて、はっきり言いましょう、検事総長、一億以上です、退職金は。それから、年金も当然あります。なおかつ、納税額で年間二千万とか、納税額で。納税額で二千万というと、所得で多分その三倍ぐらい、六千万とか七千万。これは経費を引いた分ですから、収入でいくと毎年一億近いのではないかという収入を得ている。検事長とか検事総長がですよ。物すごい数の顧問会社を持っているわけです。
 これはなぜか。これはいまだかつて公開されたことのないというか、苦労して調べました。わしが法務省に言ったって出してくりゃせんだ、本当に。夜中の二時半までかかったよ。退職金一つ出してくれへんのですよ。何で出さぬのか。そのことを後で聞きます。
 その前に、前、密会につきまして私御質問をいたしました、外務省関係でございますが。シリア大使館ですね。皆さんのお手元には旧サウジアラビア大使館と書いてありますけれども。変な話、シリア大使館というのは、外務省は、そんなものはそこが借りてないと言っておるのに、シリア大使館と言っておるのですけれども、これはおかしいのですが、これでまた密会疑惑が出てまいりました。なぜ言わなかったのだ、この会を。一月二十四日の後に、また何かこのシリア大使館で関係者の方が会われてお話をされているということがわかりました。
 さて、その一月二十四日以降におきまして、シリア大使館関係についてどういうお話があったのか。これはなぜかほとんど出ておりません、この話は、知りません。それを外務省から御報告いただきたいと思います。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 先生、二月七日の議員会館での会合のことを言っておられるのかと思いますが、二月七日、吉田六左エ門先生より会合への出席を求められまして、外務省関係者が議員会館にお伺いしまして、シリア側、それから議員の先生方、外務省と、その間で会合を二月七日に持った次第でございます。
河村(た)委員 そんなこと本当に今まで全然出てこなかった。
 じゃ、今何かずらずらっと言いましたけれども、どなたが出られたか全部言ってください。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 二月七日に吉田六左エ門先生から会合を開くので来るようにということを言われまして、外務省から松浪政務官、中東第一課長、条約局の法規課長が出席いたしました。それからまた、求めによりまして、途中から条約局長、それから私も、別途日程があったのを終えまして、散会間際といいますか、正確には散会してもう関係者が立っておられるところに私も着いた次第でございます。
河村(た)委員 また隠しておるよ。また隠しておるよ、これ、本当に。
 まず、議員の出た人を全員言ってください。それから、シリア関係って何ですか。ちゃんと全部言ってくださいよ、全部、どういう人が出たのか。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 吉田議員、それから松岡議員が出ておられまして、そのほか渡辺博道先生、松下忠洋先生、それから、シリア側からハイダール・シリア臨時代理大使、それから通訳、それと議員の先生方の秘書の方々、さらに、担当課長の記憶によれば、泉秀樹と名乗る民間人の方一名がいたと承知しております。
河村(た)委員 泉さん。泉さんという方は、この間最高裁判所に我が方の枝野さんが質問したときに出た、谷川さんだったですか、の秘書で間違いないですね。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 担当課長が現地でごあいさつ、ごあいさつといいますか、お互いに紹介し合ったということでございますので、同一人物かよくわかりませんが、とにかく泉秀樹さんという方でありまして、シリア大使館の委任状あるいは委嘱状みたいなものを持っていたというふうに担当課長は記憶をしております。
河村(た)委員 二十四日も会っておるんでしょう、この方とは。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 二十四日の会合につきましては、去る十五日の答弁で、シリア側の関係者でありますので、名前を出すことを差し控えたいという答弁をさせていただきました。そして、十八日に、外務省から駐日シリア臨時代理大使に対しまして、この夕食会に同席していた民間人二名の名前を明らかにしてよいかということにつきまして了解を求めたところでございます。これに対しまして、駐日シリア臨時代理大使より、いかなる照会に対しても答える義務はないという回答がございました。
 そういうことでございますので、御報告させていただきます。
河村(た)委員 その方は、この方ではありませんか。写真がありますので、ちょっと見てほしい。
 委員長、どうですか。写真があります。確認するだけですから、確認するだけですから。当然いいでしょう。こういういろいろな人と会ったかどうかということをオープンにして……(発言する者あり)何でだめなんですか。渡すときあるじゃないですか。何を言っておるんですか。
 外務省、外務大臣、この間、何か新しい方針で、いろいろな、外部から圧力を受けないとか、それから議員のいろいろなアプローチについてはそれをオープンにしていくということを言われましたよね。だから、会った人をこうやって聞いていいんじゃないですか。どうですか。
川口国務大臣 委員会の御判断に従いたいと思います。
河村(た)委員 では、ちょっと理事、集まってもらえますか。済みません。
津島委員長 いや、質問を続けてください。
 河村君に申し上げます。当委員会の議事については、ルールに従って、理事会で相談をさせていただきます。その上でお願いをします。
 河村たかし君。
河村(た)委員 外務大臣に伺いますが、あなたが二月二十二日の記者会見で、これは重家さんと小町さんの交代の問題ですが、「今回の件には、例えば一月二十四日の件とか、それから二月の何日であったか、資料提出に当たって接触をしたという件があるが、」こう述べておられますが、この「二月の何日であったか」というのは、どういう件ですか。
川口国務大臣 これは、国会からの資料要求の細部について確認をする必要があったため、これは企画官でしょうか、がコンタクトをしたというような、国民の不要な疑惑を招く行為があったということでございます。
河村(た)委員 二月何日に、どこでこういう会った件があったんですか。これはほとんど知らされておりませんよ。あなた知らないんじゃないか、これ、下手したら。(発言する者あり)違います。違うんだ、二回会ったんだよ、実は。知らないんじゃないか。知らないのに処分したのかね、これ。大臣、どうだ。
川口国務大臣 二月十一日だと聞いております。
河村(た)委員 それはどういう会ですか。だれが会ったんですか。どこで、だれが会ったんですか。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 二月十二日に石井一先生に対する資料提出に当たりまして、鈴木議員の出張に関しまして事実関係を確認するために、沼田企画官がコンタクトをとりました。
河村(た)委員 どなたが会ったんですか。だれが会ったんですか。コンタクトじゃなく、だれが集まったんですか。だれがどなたと会ったんですか。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 沼田企画官が鈴木議員とコンタクトをとりました。
河村(た)委員 こういうことも、これはもう全然知らされていなかったということですよね。
 それから、なぜこれは言わなかったんですか、十一日の件は。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 私、たった今正確な日にちを申し上げられませんけれども、大臣がこの場でその事実関係についてたしか説明をされたというふうに記憶しております。
河村(た)委員 まず、この写真につきましては、それでは、これは理事会で御協議ということでよろしいですね。
津島委員長 はい。そのとおり、理事会で協議します。
河村(た)委員 とにかく、これ、重家さん、十一月の終わりぐらいに松岡さんと連絡をとられていますよね、この大使館について。これ、何回ぐらい連絡をとられたんですか。で、どう言われました、この大使館問題について。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 松岡先生から何度かこの問題につきまして御照会……(河村(た)委員「何度かって、何回ぐらいですか」と呼ぶ)記憶でございますが、三回ぐらいです。最初は十一月の終わりごろだったように思います。(発言する者あり)
 以上でございます。(河村(た)委員「いや、どういうお答えしたかを言わないかぬよ。途中で、やじで切ってはいかぬよ。何を言っているんだ、おい。どういうことを答えたか、おれ、ちゃんと聞いた。途中で、やじで切るなよ。何やっておるんだ」と呼ぶ)
津島委員長 河村君、ひとつ、ちゃんと起立してしっかり質問してください。
河村(た)委員 何を言っておるんですか。私の言ったことにちゃんと、どういう内容を答えたかと言ったのに答えずに、変なやじで切ってどうするんですか、あなた。ちゃんと言ってください。
津島委員長 重家中東局長、しっかりと答えててください。質問にしっかりと答えてください。
重家政府参考人 お答え申し上げます。
 記憶でございますが、この問題の経緯、現状について御照会があったと記憶しております。(河村(た)委員「どう答えたか」と呼ぶ)私どもの方からは、これは既に司法の判断にゆだねられている問題であるということを御説明したと思います。
河村(た)委員 まあ、何が言いたいかといいますと、十一月の末から、もうそうやって答えられている。
 それで、外務省は弁護士会の照会に対して答えているんだよね、これ。これはやはりだめですと。大使の公館と認めるのはだめなんだということを答えているわけです、もう前から。
 それを、延々とこう続いておりまして、一月二十四日の夜、これも深夜に、わざわざ十一時半に鈴木宗男さんが来て、そういう会でまた打ち合わせをされている。それからまた二月、今の話ですね、二月七日ですか、二月七日にもまたやっているということで、異常に熱心なんだ。異常に熱心。
 最後の、二月七日のときに、わかった今、泉さんというのは、ある代議士さんの元秘書をやっておられた。これこそ最近問題の、元秘書の口ききビジネスを外務省でもやっておったんじゃないのかと、こういうことなんですよ、これは、流れとしては。
 こういうことが一応わかりまして、これからさらに、この疑惑は深まったということでございますので、また質問を続けたいと思いますが、時間もございませんので、国税庁の話にこれで入りたいと思います。
 さて、初めに資料を見せましょう。これをちょっと配っていただけますか。
津島委員長 どうぞ、配ってください。
河村(た)委員 今皆さんにお配りいたします。これは初めてです、この資料は、出るのは。なぜかというと、検事総長とか検事長というのは退職金を教えてくれないんですよ、これ。誤解しては困ります。彼らは、ここにありますけれども、ずっと名前は一応伏せてありますが、これ、別に脱税しておる云々という話ではございません。名誉のために言っておきます。
 しかし、例えば検事総長のトップの方、高額納税額、平成十二年度二千六百五十三万、平成十一年度千九百十三万四千円。これは、皆さん、納税額ですからね、納税額。いいですか、所得じゃありません。ですから、今、三割でしたか、三七%だったかな、最高税率、それを掛けますと、所得はこれの大体三倍、七千八百万ぐらい。それは経費を引いておりますので、経費を足しますと一億近いであろうという年収が毎年あるわけです。
 誤解されたらいけません、これは退職金を当然もらっております。退職金、この方は一億五百万。ずっと下を見てください。何と、検事長以上の方は九千万以上ですね。驚くべき退職金をもらっておられる。これプラス当然年金ももらっておられる。こういう世界。
 プラス、いいですか、言っておきますけれども、問題は、年収一億に近い顧問弁護士のお金、この顧問企業はどうやって契約できたか、こういう問題なんです。法務大臣、これは、どうやってこれだけ検事長とか検事総長の方が、顧問企業、顧問弁護士になれるんでしょうか。
森山国務大臣 それぞれお一人お一人の事情でございましょうから、私としてはお答えすることができません。
河村(た)委員 そんなことを言っていますけれども、国民の目線に立ってくださいよ。私、本当にどえらい悲しいんだよ、これ。検事総長とか検事長なんというのは本当に立派な方ですよ、社会的に言えば。鞍馬天狗か月光仮面か知りませんけれども、正義のシンボルですよ。この人たちが本当に清廉潔白で生きておってほしいというのは、国民の願いじゃないですか。
 いいですか、大臣、そういう人たちがやめると、年収五千万とか一億、そういう顧問弁護士にどうやってなったかということを私は知らないと、そうやって答えるの、あなた。もう一回答弁してくださいよ。
森山国務大臣 今先生がおっしゃったような、非常にすぐれた専門的知識、それから人格、識見を評価されて、それぞれそういう場を与えられていらっしゃるんだろうと思います。私どもとしては存じ上げません。
河村(た)委員 もうだめだ、これは、こんなことでは。
 能力があるから、検事長とか検事総長が能力があるから年収一億に近い顧問会社を持てるの。何が能力なんだよ。おれたちが払った税金で国が、この人たちに正義の使いをやってもらおう、そういって権限を与えた。国民の力なんじゃないか、そういう力があるのは。そんなものをかっぱらうな、そんなものを乱用して。個人の力じゃないんだよ、それは。(発言する者あり)うそだよ、そんなもの。冗談じゃないですよ。
 じゃ、こういうことを僕は一人でできるとは思わないけれども、何か法務省として国税庁からこういうことをあっせんされた例はありますか。
森山国務大臣 御指摘のようなあっせんが行われたということは承知しておりません。
河村(た)委員 じゃ、国税庁も、どうですか。
福田政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもといたしまして、先生御指摘のようなことはございません。
河村(た)委員 じゃ、最高検ですね。最高検とか、そういう検察内部であっせんした事実はありませんか。
森山国務大臣 そのようなあっせんが行われたということもございません。
河村(た)委員 じゃ、どうやって集めたんですか、これは。年収五千万からありますよ、皆さん、五千万。年収五千万から顧問弁護士契約をもらうというのは、どうやって集めたんですか。どう思いますか。
森山国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、それぞれの能力、見識を評価されて、そういう場が与えられているんだというふうに思います。
河村(た)委員 与えられてというのは、だれからアプローチが来たんですかね、これは。
森山国務大臣 お一人お一人の事情だと思いますので、私は承知しておりません。
河村(た)委員 一人一人が頑張られたということですね。大臣。
森山国務大臣 いずれにしても、一人一人の事情だと思います。
河村(た)委員 そういうことは、一人一人が頑張られたということでしょう。事情といったらそれしかないじゃないですか、ほかにあっせんがないというなら。そうでしょう。はっきり言ったらどうですか。ちゃんと答えてくださいよ、それは。早く言ってくださいよ。
森山国務大臣 お一人お一人が頑張られたというふうに先生は表現されましたが、頑張られたかどうかも私、一人一人についてはよく存じておりません。
河村(た)委員 本当にちゃんと言ったらどうですかね。要するに一人一人が頑張ったからこれだけ集まったんですよ。
 となると、どういうことですか。これだけ、年間五千万にも及ぶ、すぐ集まるんですかね、こんな企業が。月五万円、まあ僕が聞いておる話では、顧問弁護士さん、月に大体三十万ぐらいお払いになるようでございます。そうすると、大体月に、どうですか、大体検事長で十社ぐらい、それから検事総長だと大概二十社から三十社、これぐらいの会社が要るんですよね、これは。これを自分で集めるということになると、検事長とか検事総長というのは企業にそんなコネクションがあるんですか。どうですか、大臣。
森山国務大臣 そういうことについても私はよく存じません。
河村(た)委員 そんなことわからぬ大臣ならやめてくれよ、もう。何を言っているんですか。
 あなたが所管している検察官というのは、もっと本当に考えてくださいよ、国民にとって最も正義を代弁してくれる、罪を糾弾してくれる非常に大切な人なんですよ、検事総長とか検事長というのは。こういう人たちがどうやって企業といわゆる癒着、ずぶずぶの関係になるのではないかということを厳しく見てもらわないかぬ。委員長、そうでしょう。
津島委員長 河村君に申し上げます。
 公認の資格に基づいて自由業で行っておられる方の活動について、とかくの風評あるいはあなた個人の判断に基づいて論評をされるについては、ひとつ慎重にお願いをしたいと思います。
河村(た)委員 何を言っておるんですか、ちょっと。問題は、よく考えてくださいよ、検察庁というのは、企業とのこんなつき合いはそうありませんよ。
 はっきり言って違うんですよ。これは国税があっせんしているんです、国税が。だからこれだけ収入があるんですよ。自民党もこんなこと守るの本当に、何もないということを。だから、退職金も多くて、年金ももらっているんだよ、言っておきますけれども。そうじゃないんですか、国税庁。
 それじゃもう一回聞こう。ちょっと官房長に。官房長に来てもらっておりますから。これは検事総長と検事長に来てもらおうと思ったんですよ、悪いけれども。ちょっと答弁をその分、官房長ということでございます。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 退職された検事長等の収入の詳細については、私ども把握しているわけじゃございません。
 ただ、今御指摘の、収入が顧問契約だけということはございません。弁護士になっておられるわけですから、当然、和解とか訴訟、刑事、民事をやっておられる検事長出身者もおられます。ですから、弁護士さんとしての法律事務をやっている収入は当然あると思われますので、その収入すべてが顧問契約であるということではないと、私はそう考えております。
河村(た)委員 いや、そんなこと当然なことです。
 それから、もう一つ言っておきましょう。
 会社が仮に検事長さんとか検事総長さんに顧問契約を申し込むときに、これは個人には電話はかけませんよ、言っておきますけれども。会社になったらわかるでしょう。全然知らぬような検事総長とか検事長とかそんな立派な方に電話をかけたりアプローチして、私のところの顧問税理士になってくださいなんて言いませんよ、言っておきますが。これはみんな役所へ行くんです、役所へ。例えばそれは国税に行くかもしれぬ。それから、まず少ないと思うけれども、最高検とかそういうところへ行って、どなたか紹介してくださいとなるんですよ、これは。うなずいておられる、そうじゃないですか、これ。
 どうですか大臣、そう思うと言ってください。個人にかけるんですか、それじゃ。そのくらい感想を言ってくださいよ。
森山国務大臣 それぞれいろいろな事情があると思いますけれども、既に退職されて、例えば弁護士の仕事をしておられる方に、いろいろな方に紹介を受けて接触されるということはあると思います。しかし、検察庁あるいは国税庁、そういうところからごあっせんという話があるということは承知しておりません。
河村(た)委員 とにかく、もう時間もありませんので、この問題、悪いけれども、今言いましたように、委員長、これ、企業になってくださいよ、社長に。個人の検事長に、あなた、私のところの顧問弁護士さんになってくださいと頼みますか、これ。あるかもわかりません。それはないとは言いません、これは。ほとんどないですよ、ほとんど。ですから、組織的なあっせんというものが、個人のニーズにおいても、一たん役所がプールしたそういうシステムがあるんです、これは。こういうのが資本主義社会をむしばんでいくんですよ。
 だから、検事総長とか検事長がこういうような疑いというか、企業との癒着を連想させるようなことになっていかぬから、ぜひこのことについてきっちり調査していただくように、これ、ちょっとお諮りくださいよ。
津島委員長 河村君に申し上げますが、我が国は自由経済の国であり、そして自由職業に従事しておられる方の活動を制約することはできないということだけ申し上げておきます。
河村(た)委員 最後、これで終わります。
 私は自由主義経済論者ですよ。その自由主義経済が検事長とか検事総長とか、恐るべき権限のもとでむしばまれているんじゃないかという疑問を呈しているんですよ。顧問契約は、自由経済、当たり前ですよ。しかし、なぜこんなに膨大な顧問先ができるんだということを当然疑いを持って当たり前じゃないですか、納税者として。お願いしておきます。
 終わります。
津島委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。
 次に、原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博でございます。
 金融、そして外交といった問題について、政府の姿勢をただしていきたいと思います。
 まず第一に、先ほど五十嵐委員の質問にお答えになった金融庁長官、私は、ある一定の制限を報道機関に独自の御判断で課される、一週間ほど御遠慮いただくというふうに聞こえたんですが、どういう場合に御遠慮をいただくのか。
 我が国は、先ほど委員長がお話しになりましたように自由の国であります。自由の国で金融当局がある言論の一定の方向性を決めているとすれば、これは看過できないことだと思いますので、どういう場合に一週間あるいは二週間、報道機関が金融庁に入れないのか、教えてください。
森参考人 お答え申し上げます。
 まず、誤解を解きたいのでございますけれども、前打ち報道を打った社に対して、いわゆるぶら下がり等の個別取材だけを一週間御遠慮いただいているわけでございまして、それ以外の会見等、あるいはブリーフィング等には出ていただいております。
原口委員 私は、そういうことが極めて問題だと。これはお昼の理事会で委員長に提議をさせていただいて、私たちの自由を守るため、報道の自由を守るために、理事会で御協議いただきたいと思いますが、委員長、いかがでございましょうか。
津島委員長 はい、理事会で協議をいたします。
原口委員 次に、外務大臣にお伺いします。
 けさ、たくさんの新聞に出ていますが、いわゆる北方人道支援の問題について、鈴木議員のさまざまな疑惑が、この委員会でもあり、そして参考人にもお見えいただいたわけでございますが、今調査をしていただいています。その調査の中途がきょうの朝の各紙に出ていた。鈴木議員の関与が北方人道支援事業の発注に関してあったという報道でございますが、外務省はどのように今調査を進め、そしてどのような結果を得ていらっしゃるのか、お尋ねを申し上げます。
川口国務大臣 外務省といたしましては、園部参与に、この方は元最高裁判事でいらっしゃいますけれども、お願いをいたしまして、全面的に必要なことについては御協力をさせていただいて、調査をしていただいております。その途中経過につきましては、私はあえて伺っておりません。したがいまして、きょうの新聞に出ていましたことの内容については、私は確認することができません。
 ただ、私としては、総理から十日以内にというお話がございましたので、調査がきちんと進むようにということで、事務当局にも話をしていますし、園部参与にもそういうことでお願いはいたしております。きちんとやっていただいていると認識しております。
原口委員 御自身ではまだその関与については確認していないという答弁でございました。
 資料を一枚お配りすることをお許しください。
津島委員長 どうぞ。
原口委員 これは、小田野アフリカ審議官が昨日我が理事会で御発言をされたその内容をメモにしたものでございまして、これはアフリカ第一課でまとめていただいています。
 事実関係をお尋ねしますが、外務大臣、今コンゴ大使館はどなたがお入りになっているのか。今コンゴ大使館で行われていることは、コンゴの外交上大変ゆゆしき事態が起こっていると聞いておりますが、どのような状況に現在なっているのか、お尋ねを申し上げます。
小田野政府参考人 お答えいたします。
 去年になりますが、ムキシ臨時代理大使が離任いたしまして、その後に後任の方が発令といいますか来るということで通報は受けておりますけれども、その方は未着任でございます。そのため、留守を預かるという意味で、現地職員が、現地職員といいますのは外交官のステータスを有しませんけれども、この方が管理業務に当たるということで連絡が来ております。それですので、現在のところ、大使館ということでいいますと、臨時代理大使は東京にはおいでになりません。
原口委員 昨日外務省が私にお答えになったのと違うんですよ。ことしの一月十一日にンガンバニさん、前の臨時大使ですね、この方は――これも資料をまとめてお配りください。当委員会の求めによって外務省が昨日出してきた資料でございますが、ンガンバニさんというのは、鈴木代議士の秘書であるムルアカさんと非常に関連の深い方で、ずっとこの間大使館にい続け、そして今も大使館にいらっしゃるんじゃありませんか。そのようにきのう外務省は私におっしゃいましたが、違いますか。
小田野政府参考人 お答え申し上げます。
 私が今申し上げましたのは、在京のコンゴ民主共和国大使館の事務所の件でございまして、これは東京都渋谷区千駄ケ谷にございます。今お尋ねになりました件といいますのは、恐らく世田谷区下馬にございます在京コンゴ民主共和国の大使公邸の件でないかと思いますが、以上、お答え申し上げます。
原口委員 そうじゃないかと。大使公邸はこのンガンバニさんが今もいらっしゃるんじゃないんですか。そして、このンガンバニさんには、コンゴ政府からもう外交官の職を解くという口上書が出ているんじゃありませんか。いかがですか。
小田野政府参考人 お答え申し上げます。
 先方政府からは、このンガンバニ氏につきましては、もう本国に呼び返すことにしたのでということで連絡を受けております。ただし、本人は依然として事実上そこに住んでおるということでございます。
原口委員 今お答えになったとおりでございます、外務大臣。大変な事態に陥っているんです。
 そして、先週、我が党の上田議員が資料を提示しましたとおり、この、今おっしゃったムウェンダさん、ムキシさん、これが初めてじゃないんです、この方々が。私が調べたところによると、一九九九年にもコンゴ政府からこのンガンバニさんに、もうかわるから帰ってこいという口上書が出ているんじゃありませんか。その後ずうっと、これ、ごらんになってください、外務省が当委員会に昨日お示しいただいた、すべてキンシャサ政府からは、このンガンバニさんに帰ってきてくださいという、そういうのが出ていますよ。
 それであるにもかかわらず、この私設秘書なる、ZAINIPの代表であるムルアカさんが、ンガンバニさんと、そして大きな後ろ盾のある政治家の力を利用して、官僚と一緒になって、このダンボさんもムキシさんも、そして今、未着任とおっしゃったムウェンダさんも入れない状況にあるじゃないですか。それをコンゴ政府は、通知書でもって皆さんに、こんなことがあっていいのかと強く抗議しているんじゃありませんか。違いますか。
小田野政府参考人 お答え申し上げます。
 大使の公邸はコンゴ民主共和国の財産でございますので、そこの居住者につきまして、いわば好ましくない状況に――財産でございます。その上で、今、任を解かれた者がいるということは好ましくないことだというふうに思っておりますが、いずれにしましても、これはコンゴ民主共和国政府の中の問題でございますので、なるべく早くこの不正常な状況、異常な状況が解決するように先方政府に善処方を申し入れてきたところでございます。
原口委員 今のような答弁をされるから、あなたがきのう、私と中井理事の前でお話しになったこの最初の紙を、これをごらんになってください。
 外務省は、皆さん、このジョン・ムルアカと頻繁に接触をして、ムルアカのこの意見を参考に、ダンボさんもそしてムキシさんもずうっと排除してきたじゃないですか。今の状況をつくったのはあなたたちなんです。違いますか。
 これをごらんになってください。こんな言葉じゃなかったんです。
 きのうは、私たちには、このダンボさんというのは、なかなか、外交の問題に触れますから一つ一つ言葉を選んで言わなきゃいけないけれども、大変な中傷をして、そしてダンボさんを赴任させないようにしているじゃないですか。その事実をあなたはきのう、そしてきょうのこの最初にお配りした紙で、このムルアカなる人物の意見を聞いたということをお認めになったじゃないですか。
 私はきのう、何で一民間人である、そして代議士の秘書であるこのムルアカさんの意見をこれほど外務省が聞くんですかという質問をいたしました。そしたら答えがこう返ってきました。日本で長い生活をしている人間で、本人から有益な情報と申しますか、有用と思われる情報がたくさん今までに寄せられたからですと。これだけの理由で、キンシャサ政府がずうっと違う大使を、臨時大使を、そしてそのIDカードを求めているにもかかわらず、あなたたちは邪魔してきたんじゃないですか。明確な答弁をお願いします。
小田野政府参考人 お答えいたします。
 まず、普通であれば、後任が来れば前任が帰るというのが通常なところでございます。ところが、この件に関しては、ンガンバニ氏が、自分が臨時代理大使であるということで東京にいたものですので、二人の臨時代理大使がいるという異常な状況となりました。そのために、私どもは慎重に対応することが必要でございました。そういう過程におきまして、日本に長く住んでおりましたコンゴ人であるムルアカ氏から参考の情報もございました。
 私どもは、この件につきましては、円満に解決することが望ましいと思いましたので、そのためには、まずは本国にきちんと照会することが必要だろうということでございました。そのために、その本人からもたらされた話は一つの参考として検討させていただきました。
原口委員 あなたは、本国に確認するとおっしゃいましたね。
 資料の三を皆さんごらんになってください。
 「照会事項四」、これ、キンシャサ政府からずうっと、ダンボさんを、早く臨時大使としての活動ができるようにしてくれということを言ってきているんですよ。そしてあなたたちは、キンシャサ政府に対して確認をした、何回も確認をしたと上田代議士に答えています。それで、どんな確認をしたんですかというので、私に対して答えたのがこの照会事項の四です。
 大使というのは、大臣、副大臣が任命権ですよ、大臣に任命権がある。そして、これは後で言いますけれども、コンゴの大臣は日本に何回も来てこのことを解決しようとしたけれども、あなたたちはそこさえも邪魔しているじゃないか。この人は二〇〇一年に亡くなっていますよ、暗殺で。そしてあなたたちは、私が得た証言によると、このダンボさんに対してもどんな言葉を使っていますか。おどしているじゃないか。命の保証をしませんよと言ったのはだれだ。答えてください。
小田野政府参考人 今のようなおどかしのような発言があったことについては、私は承知しておりません。
 それから、最初の問いの方についてお答え申し上げます。
 本件は、私どものところに、私どもの判断としましては、本国においていろいろな意見があるということでございましたので、それを確認するために本国政府に、本国といいますか、コンゴ共和国の、その本国に照会したわけでございます。その際に、東京にいるムルアカ秘書の方から、慌てて、本国では意見が……(原口委員「ちょっと、全然答弁になっていない」と呼ぶ)
津島委員長 審議官、ちゃんと答弁して。
小田野政府参考人 はい。
 私はきのう、ムルアカ秘書が外務省の人間に言ってきたことについて御説明申し上げました。そのときに、例えば二〇〇〇年の八月十一日には、本国で臨時代理大使の問題をめぐって意見が分かれている、また、それはたまたま前日ではございましたけれども……(原口委員「全然質問に答えていませんので、もういいです。金融も聞かなきゃいけないので。せっかく大臣来ているのに」と呼ぶ)
津島委員長 答弁、終えてください、きちっと。
小田野政府参考人 失礼いたしました。
 また、ングウェイ氏は外交官にふさわしくないというようなことも言ってきまして、ついては、本国でよく確認した方がいいということでございましたが、それは私どもにとっても同じような認識でございましたので、それで、慎重に対応すべく照会した次第でございます。
原口委員 全く答えになっていないんですよ。
 これ、照会事項の四をごらんになってください。
 日本政府が、この方が来られたのは四月なんですよ、その間の説明も、民間から外交官になったとか、全く違うようなことを、たくさん私たちに誤解するようなことを言っているけれども、やっと照会したのは二〇〇〇年の八月十四日ですよ。この十日に、この秘書ムルアカとングウェイさんとンガンバニさん、つまりダンボさんとンガンバニさんとの間で物すごい激しい戦いと言っていいようなものが起こっている。それでやっと照会しているじゃないか。
 それで、照会した相手も、あなたたちは外交顧問に照会しているんですよ、これ。外交顧問に照会して、その後、運輸大臣に照会しているんですよ。何で外務大臣にしないんですか。なぜだ。任命権者に聞くのが普通でしょう。
小田野政府参考人 お答えいたします。
 まず、ングウェイ氏の身分証明書の発給について書類がそろって出てまいりましたのは、最初は六月七日でございましたけれども、それが取り消されまして、その後、八月八日にIDカードの申請がございまして、書類が不備でございまして、その後に、八月十一日に……(原口委員「委員長、全然聞いたことと違う。経緯はここに書いてあるんですよ」と呼ぶ)それで、本国に問い合わせた次第でございますが、まずコンゴ外務省のその人事の件につきましては、外務省の立場というのは明らかになっておりますが、本国の方でのいろいろな意見の違いということがありますので、そのために大統領府の方へ照会したわけでございます。
 そして、運輸大臣につきましては、大統領府の経験者でございまして、人事につきましての話でございますので、余り話を広げることなく、狭いチャンネルでいろいろとやっておりました。
原口委員 今の答弁は大変問題の多い答弁だと思います。全く権限のない人に、そして自分たちが一緒になってこの人を邪魔している。自分たちの思いどおりやろうとしているじゃないか。
 委員長にお許しをいただいて、彼らが、今書類の不備とあなたはおっしゃいました。あなたたちがやっている方が書類不備なんですよ。お許しいただいて、委員長にこれをごらんいただきたいと思います。
 これ、ごらんいただくと、この幾つかの資料をその下につけておりますので、皆さんごらんいただきたい。全部コンゴ政府の旗と印鑑がついて来ているんですよ、キンシャサから。二枚だけ、今委員長にお渡しした資料の中で二枚だけ、旗もなければ印鑑もない、そういう資料があります。その資料はいつの資料かと申しますと、この時系列の十二月十八日なんですよ。十二月十八日は何の日だったかというと、ダンボさんもンガンバニさんも、両方帰ってきなさい、もうらちが明かないから両方帰ってきなさいということをキンシャサ政府が言ったとされる日です。しかし、あなたたちがそういうことを言っているけれども、キンシャサ政府から発せられた書類には、委員長、印鑑もなければ旗もないということを御確認いただけるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
津島委員長 そのように見えますが。
 小田野アフリカ審議官。
原口委員 いやいや、まだ何も聞いてないのだから。ないんですよ。
 そして、私がこのことをやりとりしていた儀典局の首席事務官は、二十日の私の質疑の終わった後も私たちとずっとやりとりしました。その翌日、少女買春で逮捕されているんですよ。IDカードの発給をめぐって不正なお金がなかったか。このムルアカなる人物が六千万のお金を外務省に払っている、こういう疑惑まで出ているんです。
 私は、鈴木さんの北方問題のムネオ発電所というものをきょう取り上げようと思ったけれども、あなたがそういう答弁なんで、さらにちょっと詰めておきますが、とてもおかしいんです。あのスズキホールをタンザニアに寄附されたとおっしゃいました。しかし、重家さんの答弁と鈴木さんのお答えは全く違っています。外務省通っていない。そして、政治資金報告書を見ても、あるいは資産報告書を見ても、どこにもないんです。どこにも減っていないんです。
 タンザニアだけじゃないんですよ。ハノイに行って名誉市民になられたり、あるいは中央アジアに行ってさまざまな私費での寄附をされている。だけれども、どこにも出てこないんです、それが。全然出てこないんです。それで私たちが調べていくと、このZAINIPという大きな財布に突き当たったんです。平成になってから、ロシアのスパイ事件だけで五件検挙していますよ、日本政府は。この五件のうち三件は、肩書何ですか。通商代表部代表あるいは通商代表部部員なんですよ。
 私は、このムルアカなる人物が公用パスポートを持っていたということを確認していますが、外務省、いかがですか。
小田野政府参考人 お答えいたします。
 本人がどのようなパスポートを持っているかにつきましては、我々は必ずしも承知しておりません。
原口委員 いやいや、ちょっと、冗談じゃないよ。
 委員長、そういう答弁であれば、私はこれ以上質問を続けられない。だって、どういう人間かもわからずに、その人の言うことを、あなた、ずっと聞いていたんですよ。
 そして、ンガンバニさんに至ってはこんなことを言っているんですよ。金が本国から来ないにもかかわらず、歯を食いしばって頑張ってきた方だと。このまま帰れと言われても帰れない。本国からお金を送ってこなければ、どうやってこの人は生活していたんですか、ンガンバニさん。今どうやって生活しているんですか。だれかがこの人の面倒見ているでしょう。
 委員長、このムルアカ氏は、九四年の五月十六日から二〇〇一年の五月十六日まで、ザイールの通商関係の公用パスポートを保持しているんです。公用のパスポートを所持するということは、ザイールのミッションを帯びているんです。ザイールのミッションを帯びた人を秘書にして、そして二国間の交渉やいろいろなところに立ち会わせたらどうなるか、おわかりでしょう。あなたたちの外交は、後ろがすとんと抜けているんですよ。
 外交というのは、私たちの生命財産を守る最大の福祉です。外交をつかさどる神に仕えたのはパンドラです。パンドラの箱がまさに今あいている。パンドラの箱から汚いものがわき出している。ぜひ、この人が公用のパスポートを持っていたかいなかったか、はっきり答えてください。
津島委員長 小田野アフリカ審議官、きちっと答えてください。
小田野政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもにつきましては、これはまだ確認いたしておりません。
原口委員 ちょっと質問できない、そんな答弁では。
 委員長、御協議ください。これ、前提なんで、次の質問に移れません。
津島委員長 答弁できますか。アフリカ審議官。
小田野政府参考人 至急確認いたします。
原口委員 では、待ちますよ。
津島委員長 それでは、アフリカ審議官。
小田野政府参考人 これは個人情報ですので、法務省の方においてなかなか出せないということでございましたが、それを踏まえた上で、出していただけるかどうかも含めてこれからやります。照会いたします。(発言する者あり)
津島委員長 ちょっと速記とめて。
    〔速記中止〕
津島委員長 それじゃ、速記を起こしてください。
 原口君、それでは質問をお願いします。
原口委員 私は、こういうことで時間を浪費されて、柳澤金融担当大臣や官房長官、財務大臣のお時間を奪ったことを本当に悔しく思います。
 あなたは、今の答弁は、この人がどういう人か、公用か外交官かもわからずに、ただ鈴木さんの秘書というだけで、これほど大きな外交問題をあなたたちが起こしていたということを認めたことになるんですよ。いいんですか。
 そして、いつまでに、この昼までに、それ出してください。あなたたちは質問の邪魔をしている。明確な答えを求めます。
小田野政府参考人 お答え申し上げます。
 後者の点につきましては、大至急調べまして御報告申し上げます。(原口委員「前者は」と呼ぶ)
 前者の点につきましては、本人がどのようなパスポートを持っておるかは別としまして、鈴木議員の私設秘書ということでございましたので、それで我々は話をいたしました。
 それからもう一つは、それと離れましても、コンゴの件につきましては、コンゴ人としての知見といいますか、そういうのもありましたので、それで話を聞きました。
原口委員 私は、資料が来るまで質問を留保させていただきます。
 一九九三年にこの通商代表部が設立されたこの経緯についても、大変な疑義がある。そして、今のような答えでは、我が国の安全は守れない。
 納得のいく資料を出していただいて、質問を後からまたさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
津島委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。
 次に……(原口委員「違うでしょう。だって、質疑時間終わっていないんだもの」と呼ぶ)
 なお、ただいまの質問についての扱いは、理事会で協議をいたします。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 きょうは、不良債権の処理の話、それに関連して資本注入等について伺います。
 小泉内閣の金看板ということで、公債発行三十兆円枠、そして特殊法人改革、不良債権処理という問題があったと思うんですが、ほとんどがもう全部看板倒れで終わってしまっているわけですね。その三十兆円の公債発行枠にしても、隠れ借金をやりくりして数字を整えただけということになっているし、特殊法人だって、特殊法人じゃなくなって独立行政法人になる、縁故採用もできる、なお悪いというふうな話になっておるわけですけれども、この不良債権の話にしても、全然解決のめどというのも立っていないわけです。
 そもそも、この平成十四年度の予算の審議の途中にデフレ対策ということが言われたわけですけれども、竹中経済財政担当大臣に伺いますが、このデフレ対策の一丁目一番地が不良債権処理ということになっているわけですね。これはちょっとどうにも理解できない。なぜデフレ対策が不良債権処理、不良債権を処理するとデフレ対策になるのかよくわからないわけなんですが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 デフレ対策の中身は大きく四つの柱がありまして、一丁目一番地という表現が適切かどうか、すべてやはりあわせてやらなければいけないという認識を持っております。それにしても、不良債権処理が重要だというふうに考えております。
 その理由でありますけれども、デフレ、物の値段が下がる理由は何であるのかということにつきまして、経済財政白書でかなり詳しく分析をさせていただいております。
 その中の一つとして、金融仲介機能の低下というものが大変重要であるというふうに考えている。この金融仲介機能の低下を食いとめるためには不良債権処理というのが大変重要である。そうすることによって金融政策の効果もさらに浸透しやすくなるという一面もある。その意味で、不良債権の処理がやはり重要な問題であるというふうな認識をしているわけです。
中塚委員 仲介機能が低下しているということなんですが、仲介機能がもとどおりになったら何でデフレがなくなるんですか。ちょっとそこをもう一度。
竹中国務大臣 金融仲介機能の低下というのは、日銀が出したハイパードマネーがマネーサプライの増加になかなかつながらないということでありますから、マネーサプライの増加がデフレに対して二通りのルートを通じていい効果をもたらすということは、よく知られているのではないかと思います。
 一つは、物価そのものにマネーサプライは直接の影響を与えるであろうということ、マネーサプライの増加が、実物経済、投資、消費、特に具体的には投資に対して実物刺激の効果を持つであろうということ。
 この二つのルートを通じて、不良債権の処理が、つまり金融仲介機能の低下をもとに戻すということがデフレに対してプラスの効果があるというふうに認識をするわけです。
中塚委員 やはり何遍聞いてもよくわからないんですがね。金融機関は、貸出先を探すのに苦労しているというふうに答えているわけですね。要は、借りてくれるところがないんだということを金融機関は言っている。ただ、私たちが選挙区を回れば、中小企業の皆さんは、もう借りたくてしようがないけれども銀行は貸してくれないという話をするわけですね。だから、そういった意味において、貸出先を探すのに大変な苦労をしているわけですね。それが、なぜ仲介機能が正しくなればデフレでなくなるのかというのは全くわからない。
 もう一つ、デフレによって不良債権自体はふえているわけですよね。だから、デフレ対策として不良債権処理というのは、もう全くもってトレードオフというか、缶の中に缶切りが入っていて、何か缶があかないようなそんな話で、そもそも、不良債権の処理をしようということになったら、金融機関の収益性というものを上げていかなきゃいけませんよね。要は、借りてくれるところがないから、低金利のままで、全然金融機関は利益を上げることができないわけですね。金融機関の利益を上げるような政策というのだって、ほとんどとられていないわけですよ。
 次に、実体経済がどんどん悪化しているわけですね。これは、三十兆円の国債発行枠等もあるし、あと、景気対策、経済対策というのを全然打ってこられなかったという経緯もあります。そういった中で、倒産がふえて、不良債権の数自体がふえている。
 そしてもう一つは、株価の低迷ということですね。これも、政策が間違っているから株価だって低迷するし、そういうことでもう償却の原資さえないということになっている。
 だから、不良債権を処理すればデフレがなくなるということ、それはもう全然間違っているんだというふうに思うんですね。そういった中で不良債権を処理しようとするから、要は公的資本注入という話になってくるわけでしょう。金融機関も自力で処理ができない、経済環境自体も、それが処理を進めるような環境ではない、そうなると、じゃ公的資本注入をやりましょうかという話になっているのが今の小泉内閣の実態じゃないでしょうか。
 次に、日本銀行総裁にお伺いをしますけれども、総裁は、十九日ですか、小泉総理に会われたというふうな報道があるわけですけれども、このときに、資本注入を総理に進言したというふうな記事を拝見しましたが、総理に対して資本注入を進言されたんですか。
    〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
速水参考人 私は、総理とは最近余り直接お話をしていただく機会がございませんでしたので、若干時間をちょうだいして、金融経済情勢全般について私の考えを、日ごろ思っておりますことをざっくばらんに説明をさせていただきました。公的資本注入だけの話をしたわけではございません。
 それ以上具体的な内容につきましては、申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
中塚委員 これも報道ですけれども、その中で、先ごろ行われたG7で、各国の関心が日本の公的資金注入に集まっていたというふうにも伝えられているわけなんですけれども、財務大臣に伺いますが、G7でそういうふうな事実はあったんですか。
塩川国務大臣 具体的に公的資金注入、そういう具体的な話は出ておりませんけれども、しかし、コーヒーブレークとかなんかのときには、不良債権、大変処理が苦労しているねという程度の会話はあった、これは事実でございます。
中塚委員 今、日銀総裁は、資本注入だけじゃなくて金融経済情勢について報告をしたというお話で、資本注入の進言をしたかどうかということ自体は言及はされなかったわけですけれども、資本注入ということになりますと、特別検査を実施する、その結果として、債務者区分が変更になって不良債権に追加引き当てを行うということになるわけですね。その結果として過少資本に陥る銀行があるということを日銀総裁は想定されているということでよろしいんですか。
    〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
速水参考人 今、現にそういう銀行があるとは私は思っておりません。
 ただ、金融機関は、中間決算発表時に打ち出した不良債権処理方針、これを具体化しようとして今一生懸命努力をしていることは事実でございます。市場の信認回復のためには、こうした努力を通じて金融機関自身が収益力の強化を図ることが最も重要だと思い、今その方向で進みつつあるように思っております。ただ、それが効果をあらわすにはかなり時間がかかる、その間に何が起こるかということを考えると、やはりいろいろ考えておかなきゃいけないこともたくさんあるということでございます。
中塚委員 何が起こるかわからないから考えておかなきゃいけないということなんですけれども、そういうことをお伺いしているんじゃなくて、資本注入に至るような事態に仮に立ち至るということは、それは特別検査の結果として不良債権を追加引き当てして、それで債務超過になったりあるいは過少資本になったりするということがあるから資本注入ということになるわけですよね。
 日銀総裁は、それこそマーケットをずっと毎日ウオッチされているわけです。そして、邦銀、日本の銀行というのは全部日本銀行の取引先なわけですよね。監督当局というのとは別な立場でもそういった中身はちゃんと御存じのはずだし、だからこそこの資本注入の話というのも、やはり、日銀総裁が言ったとか言わないとか、そういったことが話題に上ってくるわけです。だから、そこのところははっきりちゃんと言っていただきたいわけなんです。
 柳澤大臣にまた重ねてお伺いしますけれども、特別検査、要は自己査定を洗い直すということで、その結果として、債務超過にも過少資本にもならないということをずっとおっしゃっていらっしゃいます。ずっとおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、そのことは変わりませんか。
柳澤国務大臣 自己査定を洗い直すと今中塚委員はおっしゃられたんですけれども、自己査定の現場に立ち入って、市場が、その自己査定の対象になる債権の関係先、つまり貸出先、これを市場がこういうふうに見ているんだけれども、あなたの自己査定はそれをちゃんと踏まえてやってくれていますねということを、何と申しますか、確認というか、あるいは注意喚起というか、そういうことをやっているということであります。それはちょっと、検査という名前は冠していますけれども、そういうことだということを、つまり本当は事後チェック型ですから、決算なら決算をやったものが適正かというものを検査するわけですが、この場合は例外として、そういうリアルタイムの市場の評価というものも反映させようということで、自己査定の現場に立ち入らせていただいている、こういうことで御理解をいただきたい。
 そういうことで我々は今やらせていただいておりますが、これはまだ検査の結果が完全に確定しているわけではありませんから何とも申しかねますけれども、しかし、当初、特別検査も想定して、中間期、昨年の九月期の決算発表のときに、三月の決算期にはこういうふうになるでしょうという見込みを各行が言っておりまして、その集計は我々、当然しているわけですけれども、それとのぶれをある程度勘案しても、今先生が御指摘されたようなことは全行において起こることはないであろう、こういうラフな見通しを持っている、こういうことです。
中塚委員 以前、私の同僚議員が財務金融委員会で、三月危機があるのかないのかということをお伺いしたと思います。そのときに柳澤大臣は、三月末で株価が一万円あればなというふうにお答えになったと思いますけれども、過少資本に陥ったり債務超過に陥ったりすることがないというのは、これは株価に関係なくということでよろしいんでしょうか。
柳澤国務大臣 これはかねて私申し上げているんですけれども、自己資本比率に影響するかなり大きなファクターとして、不良債権の処理損というものがあると同時に、株価の評価損というものも時価会計のもとでは想定しておかなければいけない、こういうことでありますから、株価の水準いかんによっては、自己資本比率というのは影響を受けざるを得ないということでございます。
中塚委員 それが一万円だということなんですか。それは腰だめの数字であるとしても、それが一万円だという御答弁だったんでしょうか。
柳澤国務大臣 先ほど申したように、不良債権の方も確定版ではありません。計数が確定版ではありません。そういうことではあるけれども、ある程度の見通し、ラフな見通しを持って計算をいたしております。
 他方、株価の評価損についてもいろいろなシミュレーションの計算をしておるわけでございますけれども、一万円あればまあ十分、こういう見通しをラフに持っている、こういうことです。
中塚委員 ということは、特別検査の結果というのはこれから出るけれども、その特別検査の結果、債務者区分の変更ということだけではなしに、やはり株価もそれに影響を与える重要な要因の一つになるということですね。
 次に、竹中経済財政担当大臣に伺いますが、二十三日に御講演をされて、資本注入をめぐって自己資本の質を検討しなければならないというふうにお話しになったという報道があるわけなんですけれども、この自己資本の質というのは一体どういうことなのか、お聞かせいただけますか。
竹中国務大臣 特別検査の結果に基づいて、自己資本、資産の査定、財務の内容をしっかりと査定をするというのが今の状況であるわけでありますけれども、そういった判定の基準としては、御承知のようにバーゼルの銀行監査委員会の基準、BISの基準というのが大変重要な重みを持っているというふうに認識をしています。ただ、マーケットでは資本についてもさまざまな見方があるというのもこれまた事実であるというふうに私は認識しておりまして、そういった多様な見方があるというような趣旨のことを話の中でさせていただきました。
 現実問題として、一たん問題あれば柔軟かつ大胆に対応するんだということを繰り返し総理も我々も申し上げているわけですけれども、そういったときの判断の基準というのは、これはやはり極めて実態判断といいますか、総合的な判断になるのではないかというふうに思います。そういった観点からの話をさせていただきました。
中塚委員 全然答えになっていないんですが、そのときの報道によると、公的資金投入などによるかさ上げ分を除く実質的な自己資本を重視する考えだというふうにも言われているんですが、本当のところはどういうふうにお考えなんですか。
竹中国務大臣 自己資本の中身については、御承知のように、さまざまなコンポーネント、中身があるわけです。それについては、この部分を除いてはどうか、除いたら比率は違ってくるぞというような話は、マーケットの中では頻繁に行われているわけですね。そういったことにも配慮して総合的に考えるべきだという趣旨のことを述べたまでで、技術的な内容について私はそれ以上申し上げる立場にはないし、その場でどうこう申し上げたということではありません。
中塚委員 今、実質的な自己資本比率、そういったことも考慮しながらというふうにおっしゃったんですが、実質的な自己資本比率に注目をするということでさらに公的資金を注入したって意味ないんじゃないですか。だって、かさ上げしている分にさらにかさ上げするわけでしょう。実質自己資本というのは変わらないわけですよね。だから、それだったら、こういうことをやったって、別に不良債権の処理にもならないし、金融システムの安定にもつながらないということを大臣みずからがお話しになったような話じゃないですか。
 次に、公的資本の注入ということについて伺いますけれども、注入を言う人の中でいろいろな考え方があるわけですね。柳澤大臣にまず確認をしますが、今の預金保険法で注入ができるというのは、これは金融危機の回避のためにしかできないということですよね。よろしいんですか、それで。
柳澤国務大臣 我々預保法の運用に当たっている立場から申し上げますと、実定法のもとで行政を行うということではそのとおりでございます。ただ、論者の中には立法論をする方もいらっしゃるということは、念のため申し添えておきます。
中塚委員 立法論云々はともかく、要は、危機回避のために注入をするということは、いわゆる予防的な資本注入なんかはできないということですよね。
柳澤国務大臣 物の本によりますと、要するに、資本不足解消投入論、それから、今中塚委員が言われた予防的投入論、それから危機対応投入論、この三つが今巷間にあるように言われております。私も、なるほどおもしろい整理だなと思ってその文章を読んだわけであります。
 そこにございますように、危機対応投入論ということでございますが、我々の従っているのはそういうことですけれども、ただし、その危機は、危機が来たら事後的にその危機に対応しろと書いてあるわけではなくて、「おそれ」と書いてあるものですから、そこがやや予防的な投入論ということも成り立ち得る余地が全くないとは言えない、こういうように考えるべきだと考えております。
中塚委員 ということは、大臣は今は金融危機だというふうにお考えじゃないわけですよね。今は金融危機だというふうにお考えじゃないんだろうと思いますけれども、そうすると、おそれがある事態というとどういうことになるわけですか。
柳澤国務大臣 「おそれ」の考え方ですけれども、一つの見方として、もうそのおそれがあるじゃないかということと、現象面にはっきりそのおそれが出てきているということとあるんだろうと思います。私は、やはりおそれというのは、一つの見方としてというほど前広に考えるべきではないし、また、現象面ではっきりあらわれてきたということでもない、そのあたりの中間で絶妙な判断をすべきというのが我々に課された使命だろうと考えております。
中塚委員 今まで、例えば特別検査をしてそれで過少資本になる、そうなったら、危機のときにはどんなことも対応しなきゃいかぬというのは、それは皆さんおっしゃっていますよね。そういった話がどんどん出てくるということは、これは小泉内閣の閣僚でも、あるいは日銀総裁でもそうなんですけれども、では、特別検査を厳格に実施をしてちゃんと引き当てをしたら金融危機が起こるということなんですか。そこをお答えいただけますか、柳澤大臣。
柳澤国務大臣 過少資本、起こりそうもないんですけれども、仮に過少資本が起こるというと、本当は、過少資本の場合には、平時でしたら、これは前から申し上げているように早期是正措置に行くんですね。早期是正措置命令をして、この過少資本状態を早く解消しろ、こういうことで自助努力を求めるわけです。しかし、その過少資本が、いろいろな現象を呼び起こすでしょうけれども、その中に金融の危機的な状況を呼び起こすことも想定されないではありません。そういうことを想定されているのかなと思って、そういう論を張る人の言説には私としても関心を払っている、こういうことです。
中塚委員 何か大分答弁が変わってきたような気がするんですけれども、今までは資本注入なんか必要ないという話だったんだけれども、何かそういう人の論にも関心を払っているみたいなお話をされてきている。
 まさに今柳澤大臣がおっしゃったように、過少資本になったら、あるいは過少資本に近づいていけば、まず早期是正措置を発動するわけですよね。そうでなければいけないのに、そんな話はみんな何にもなくて、資本注入のことばかり言われている。その資本注入自体も、金融危機が起こらなきゃ入れられないというのが第一義じゃないですか。小泉内閣の閣僚自身が資本注入の必要性がある、日本銀行の総裁が資本注入の必要性がある、まさに閣僚だの日銀総裁だのが金融危機をあおっているような、金融危機を大前提とするような発言をしているというのは、これは本当におかしいですよ。
 竹中経済財政担当大臣、いかがですか。
竹中国務大臣 そういうようなことを前提にしているということは全くありません。
 ただ、むしろ私たちとして重要だと思っていますのは、これは、当局はしっかりとまさに銀行を見ているわけであります。しかし、マーケットはマーケットの評価がありますから、当局の評価とマーケットの評価が同じになるようなそういう形での、こちらは情報の伝達もあれば検査の厳格化もある、そういうことを前提にそのギャップを埋めるような努力はしなければいけない、そういうことを皆考えているんだと思います。
中塚委員 今そこにある危機、危機があるのかどうかもそれはわかりませんけれども、そのことを論じるより前に、何で今までここまで来るまでほったらかしておいたんだという話にもなるわけですよ。
 四月一日からペイオフの解禁ということが始まる中にあって、今また特別検査だの、その検査結果を公表するだの、それで資本注入の話がもう連日新聞の、それも一面にずっと書かれているわけですね。こんなの本当に、もうこの国の大臣とか日本銀行総裁というのは一体どうなっているんだというふうに言わざるを得ない、私はそのように思います。
 次に、ちょっと実務的な話を伺いますけれども、また柳澤担当大臣なんですが、公的資本を注入するということになるときに、それは要は株価が下がるということもあるでしょうし、あと引き当てを厳格化するということもあると思うんですけれども、まず利益、剰余金、それを崩しますね。崩したときに、次にやはり減資ということになるんだろうと思うんですね。減資のときには、これは普通株を減資されるのか、それとも以前に注入された公的資金の優先株を減資されるのか、今のところお考えはどうですか。
柳澤国務大臣 損益勘定で欠損が出たり、あるいは場合によって株価について評価損が出るという場合に、剰余金がまずその財源になるわけですが、それを超えて資本に食い込むことは、減資と言ってもいいんでしょうけれども、一般に資本による損失の補てん、こういうふうに考えてよろしかろうと思います。
 その場合にも、資本勘定には資本金と資本準備金というものがあるわけで、以前には利益準備金、その前のまた一つのカテゴリーの準備金もありましたが、いずれにしても、最近では法定準備金というふうに総称されていますので、法定準備金というものでまず補てんしていくというふうに考えます。その法定準備金の中にも実は普通株と優先株の部分があるわけですけれども、それについてどっちが最初に食われるかというようなことについては、別に商法上の規定はないというふうに考えています。
中塚委員 ただ、優先株を減資するということになったら、要は、貴重な公的資金、注入したものが失われていくということになってしまうわけですね。勘ぐる人は、そういったことができないから資本注入に柳澤大臣が反対しているんじゃないかというふうに言う人だっているわけです。まさに、このことはもうちゃんとルールにするべきだろうというふうに思います。
 いずれにしても、資本注入する必要があるのかどうか、これからするのかどうか、皆さん方の中でも意見が分かれているようだし、どうなるかわかりませんけれども、たとえ今回資本注入をしても、金融機関の収益性が改善されるわけでもないし、景気回復のための施策もないし、オーバーバンキングだって解消されていないわけですよ。そうしたら、来年、一年たったらまた資本注入の話をしなきゃいけなくなる、これはもう今のうちから申し上げておきます。
 そして、最後に一つですが、ペイオフが解禁する、そしてまた金融危機、あるのかどうなのかわかりませんが、そういった中で日銀特融ということについて伺いたいと思いますが、これから日銀総裁は、この日銀特融というものを機動的に行うお考えがおありなのかどうかということ。
 それともう一つ、山一証券向けに日銀特融をされて、まだ返ってきていませんね。これについて、政府がちゃんと返してくれるというふうに確約をとられているのかどうか。二つお聞かせください。
速水参考人 先に第二の御質問である山一証券特融につきまして御報告します。
 山一証券特融は、昨日現在で約千九百億円でございます。昨年の三月末時点と比べますと千二百億円減少しております。これは、昨年の六月に山一証券の破産管財人による千億円強の第一回中間配当が行われたことが主たる要因でございます。
 また、破産管財人からは、さらに約四百億円の第二回中間配当が行われるという公告が出されております。こうした中間配当の実施は、山一証券の破産財団所属資産の換価が相応に進んでいきまして、破産手続が終結に向けてさらに前進したことを示しておると理解しております。
 日本銀行としましては、これを機会に、山一証券に対する特融の最終処理に向けて、平成九年十一月に大蔵大臣談話で、また、平成十一年の大蔵大臣の国会答弁におきまして、解決が図られるように関係者と引き続き協議してまいりたいというふうに考えております。
 日本銀行の特融につきましては、単なる風評などで混乱が起こって流動性が足りない銀行が起こったといったような問題が起こったときには、こういうことも役に立つというふうに思っております。
 しかしながら、金融システムが現在既に抱えております本質的な問題というのは、単なる風評リスクの問題ではなくて、不良債権処理の甘さ、またはおくれ、これによるものではないかというふうに思っております。金融機関に対する市場や預金者の評価が極めて厳しいのも、不良債権処理がなかなか進んでいないからだというふうに思います。
 こういった状況のもとで、仮に政府から特融を含む流動性供給の要請があった場合には、私どもが特融を実施する場合に、日銀財務の健全性を含めて、四つの条件を、規則を基準にいたしております。その是非を判断する必要があると思います。
 ちなみに申し上げますと、第一には、システミックリスクのおそれがあるかどうか。二番目には、不可欠性、ほかに方法がないかどうか。三つ目には、モラルハザードの防止がなされるか。それから四つ目には、日銀の財務がこれによって健全性を失わないか。この四つの条件に照らして見ることにしております。
中塚委員 時間がないので、終わります。
津島委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。
 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 私は、地域経済や中小企業に多大な影響を与える信用金庫、信用組合の破綻の問題についてお尋ねしたいと思います。
 信用金庫、信用組合が、昨年一月から累計しますと、信金で十二、信組で四十一、合わせて五十三も連続的に破綻をしております。取引先数は、合わせれば数万件に上ると思います。
 帝国データバンクの破綻金融機関の関連倒産実態調査では、破綻からおよそ三カ月後に中小企業の倒産が急増します。昨年末に大変集中しておりますから、年度末に向けて倒産が集中してあらわれることが予想されます。長期、短期の資金を信金や信組に依存している中小零細企業にとって、その金融機関との取引が切れるということは大変なことです。
 ある住宅関連会社の社長さんは、みずからの取引している信金が破綻したときに、毎月やっていた一千万円の手形割引ができなくなった、地銀や国民生活金融公庫に頼んでいるけれども、断られたら材料代も従業員の給料も払えなくなる、こういう声を上げております。
 そこで、平沼大臣にお聞きします。
 大企業と違い、借り入れ依存度の高い中小企業、特に零細企業にとって、取引先の金融機関が破綻するということがどんなに大変なことか、また、地域経済にとってもどんな深刻な影響を与えることになるのか、どう御認識でしょうか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 昨年からの景況の悪化に伴いまして、それと不良債権処理、こういう形が進みまして、今委員御指摘のように、信金、信組の破綻というのが、昨年の四月から数えても五十一件とか五十三件、そういう厳しい状況になっております。そういう中で、日本の経済の屋台骨を支えていただいている中小零細企業が非常に厳しい状況に至っているということは御指摘のとおりだと思います。
 そこで、こういう中小のいわゆる信金、信組、その破綻の連鎖に巻き込まれて、そして中小企業が大変厳しい状況に陥った場合に、セーフティーネットをしっかり構築しなきゃいけない、そういうことで、昨年の秋の臨時国会の第一次補正予算で、セーフティーの貸し付けと保証、これを拡大をするという形で万全を期させていただいております。
 非常に厳しい状況の中で、我々としては、経済の原動力になっている中小企業、零細企業に対してセーフティーネットを構築をして、そして健全な経営を維持できるように努力をさせていただきたい、このように思っています。
塩川(鉄)委員 この信金や信組の破綻に当たりまして、金融検査マニュアルの問題が挙げられると思います。大銀行と同じ基準を中小金融機関に当てはめることが生み出す問題をこの後指摘をしたいと思うんです。
 この間、各地を調査する中で、破綻している信金や信組の多くというのは、不況の中でいろいろ苦労はあるけれども、地域社会に貢献する堅実な経営を行ってきたのに、金融庁の検査マニュアルに基づく検査をきっかけに倒れているのが実態であります。どこでも、検査マニュアルのやり方がひどい、この声があふれている。
 その一つの典型的な事例が、ことしの一月二十五日に破綻をした千葉県の船橋信用金庫であります。この点について具体的にお話もし、お伺いしたいと思います。
 検査によってこの船橋信用金庫は新たに二十二億円の引当金の積み増しが求められ、結果として、十四億円余りの債務超過に陥り、破綻に追い込まれました。地元では「ふなしん」、この愛称で親しまれております船橋信用金庫は、七十年間地域に根づいてやってきた信金であります。それなのに、なぜあんないい信金がつぶれたのか、こういう不安と怒りの声が上がっております。
 取引先のある建築会社の社長さんは、返済は滞りなくしているけれど、不況だから赤字経営だ、RCC送りにされないか不安で夜も眠れないと語り、三十年間「ふなしん」一本でやってきました、きょうまでやってこれたのは「ふなしん」があったからです、それをつぶしてしまうなんておかしい、一括返済など迫られたら首をくくるしかなくなる、こういう声を上げておられます。
 また、長年保育所の運動に取り組んでこられた方は、自分たちの運動に必要な保育センターの建物をつくるために土地を購入する際、十七もの金融機関を回ったがすべて断られ、やっと「ふなしん」から四千五百万円の融資を受けられた、会員からの会費やカンパで運営している団体で、その中から返済するということで職員さんが苦労して融資をしてくれた、四年前に完済することができたが、「ふなしん」あっての今日だと思っている、それが何でこんなことに、こういう声であります。
 出資金を出しておられる出資者にとっても、自己資本比率を国からきつく言われる中で、「ふなしん」を守り立てようと支援をしてきた、それなのに、つぶしておいて出資金も返さないなんて納得できない、こういう怒りの声であります。
 中小企業と地域から信頼されているこんな信用金庫がなぜ破綻をするのか。柳澤大臣、率直にお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 船橋信用金庫は、非常に古い歴史を持っておりまして、ずっと地域経済の発展に重要な役割を担ってこられたというふうに認識をいたしておりますが、近年、この金庫におきましては、不動産向けの貸出比率が相対的に、二割近くでしたか、高くなるというようなことで、やはりこの不動産全体の不調というか不況というか、そういうものをこうむっておられたということが一つございます。
 それから、預貸率が非常に最近低くなっておりまして、資金の運用ということで株式投信等の有価証券運用のウエートが高まったということの中で、やはりこれも元本割れと申しましょうか、そうした評価をせざるを得ないということで、昨年の十二月末時点で債務超過という状況に陥りました。
 そこで、債務超過を解消する手だてをぜひ努力されるようにということでお願いをいたしておったわけですけれども、なかなか有効な改善策は見出せないということで、事業継続の断念を申し出られたというのがおおむねの経過でございます。
塩川(鉄)委員 二点ほど破綻の理由をおっしゃられましたけれども、不動産向けが多かった、このように言いますけれども、私、「ふなしん」の職員さんにお話を伺いました。大変な努力をして、数年前には不動産関連の不良債権というのは解決をしていた。資金の運用のこともおっしゃられましたけれども、多くの信用金庫が手を出していたマイカル債など特定の投機的なリスクの高い債権も購入していなかった。地元で信頼されていたまともな信金がこうむった極めて異常な破綻だ。
 検査に来た金融検査官の態度も極めて異常なものだったということです。通常、検査官は五、六人で来たのに、今回は倍の十二人がやってきた。どういうことがあったのか。最初から、信金には正常先などはまずないだろう、こういう発言ですよ。ここの何が正常なんですかと机をたたきながら職員にやられる。おどしつけているようなものです。取引先の長年の実績や経営者の人柄、商売の可能性などを総合的に判断しているんだと職員の方が幾ら言っても聞く耳を持たず、私たちはマニュアルに沿って検証する、こういう話です。
 こういうことは一つだけじゃありません。昨年十一月破綻をした岩手県の信用組合では、やはり検査に来た検査官が、検査の冒頭で、あなた方は死に体なんですよ、こう言ったというじゃないですか。最初からだめな金融機関だとレッテルを張っている。信金の取引先の中小企業、零細企業はだめなものと決めてかかって、先入観を持ってやって正常な検査ができるのか、このことが問われていると思うんです。
 その上、そのときの検査のやり方も異常でした。「ふなしん」に対するその前の二〇〇〇年六月の検査のときには認めていたルールを、この十二月、一月で行われた検査のときには認めなかったというじゃないですか。赤字でも延滞していない場合は正常先とか、こういうことについて二〇〇〇年六月には認めておいて今回は認めない、こんなことでいいのか。不動産の担保評価についても、不動産鑑定士のつけた評価はこれまで一〇〇%と見ていたが、急に八〇%と言い出した。
 柳澤大臣にお伺いしますが、この不動産鑑定について、不動産鑑定士の評価は普通何割で見るものなんですか。
柳澤国務大臣 これは、不動産鑑定士の評価については、基本的に、私、ちょっと記憶ですから、もし不正確でしたら後で修正させていただきますが、むしろそれをそのままお認めするということだと思っておりました。
塩川(鉄)委員 不動産鑑定士の方がつけた評価というのは一〇〇%で見るのが常識なんですよ。同じ時期に検査に入った東京ベイ信用金庫では、不動産の担保価値を一〇〇%で見ているじゃないですか。ところが、「ふなしん」というのは、八〇%にするとか、結果として九〇%で見るとなって、十億ほどの引き当ての積み増しが必要となった。こんなように、試合の途中でルールを変えるようなことが行われているじゃないですか。
 「ふなしん」もそうですけれども、破綻したところに共通しているというのは、財務状況だけで見て、財務諸表一辺倒で中小零細企業を評価をし、結果としてそれが引き当てを積み上げさせて破綻に追い込むようなことになっています。
 昨年末に破綻をした大田区の大栄信用組合、東京富士信用組合、この関係者の方の話ですけれども、信用組合というのは人間的な信頼関係でやっている。親、子、孫、三代にわたって取引を続けてきた組合員もいる。五年とか六年赤字の場合でも、上得意先というのは信用組合の中では多いんだ。これまでそういうところ、上得意先と言っていたところが検査によって破綻先にされてしまう。検査マニュアルは、人間の信頼関係はだめなんだと言っているようなものだ。
 埼玉のある信金の役員の方は、つぶれそうでつぶれないのが中小企業だ、長い取引で人もわかる、こういうのは数字にならずマニュアルには生きない。
 柳澤大臣、マニュアルでは人を見ることができない、信頼関係はだめだと言われる、こういう声にどう答えるんですか。
柳澤国務大臣 金融検査においてまず健全性を確保しなければならない、これはお認めいただけるだろうと思うんです。金融機関の健全性というのはもう命なんですね。そういうことについていささかの疑義があって、預金が流出していくというようなことが起これば、それはもう倒れてしまうわけでございます。
 そういう意味合いで、我々は、金融機関として大事な預金をお預かりする、しかもそれは不特定多数の方々の預金でございますから、これは何よりも大事だということで、健全性のチェックということで検査を行わせていただいているわけですけれども。
 その場合に、今度は各資産の側の評価に当たっては、もうたびたび申しておりますけれども、金融機関の規模、特性を十分踏まえて、機械的、画一的なマニュアルの運用は避けるということでありますし、それからまた、取引先の中小零細企業等については、その特殊性ということを申しておるわけでございますけれども、いろいろな観点、例えば当該企業の財務諸表にあらわれた財務状況だけではなくて、当該企業の技術力、販売力、成長力、それから代表者等の役員に対する報酬の支払い状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況、保証能力等を総合的に勘案して、当該企業の経営実態を踏まえて判断する、こういうようにマニュアルの中でうたわせていただいております。
 のみならず、マニュアルにこう書いてあるからということじゃなくて、いろいろそうした、今委員の御指摘になるような声も我々の方にありますので、特に最近においては、若い検査官の方々に従前の研修に加えて特別な研修を行って、この趣旨の徹底を図っているということでございます。
塩川(鉄)委員 信用金庫や信用組合というのは、その経営の健全性を保証するときに、当然財務内容も尊重するでしょう。しかし同時に、中小企業の人を見ることで健全性を担保しているんじゃないんですか。このマニュアルには、中小企業金融の健全性のかなめである人を見るという基準はどこに書いてあるんですか。
 先ほど、経営者の財産の問題も言いましたけれども、それは結局、経営者や親族の個人資産を見るだけで、経営者の人を見ているわけじゃないじゃないですか。中小企業の技術力や販売力や成長性に配慮するというんですが、その基準は何ですか。検査官には見抜く能力があるんですか。柳澤大臣、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 これは、やはり金融機関のいろいろな意見、何と申しますか、そうしたことのあかしというか、そういうものを挙げてのお話を聞くということだろうと思います。
 人を見るということですけれども、その人の点を今因数分解しているというふうに見ていただきたい、こう思います。人を見なさいというときに、金融検査官が金融機関の貸出先の人を見るというのはやはりちょっとこれは難しいだろう、こういうように思います。
塩川(鉄)委員 中小企業の社長にも会ったことがないような金融検査官が、どうして人を見ることができるのか、ふさわしい健全性をどうして保証することができるのか。東京都のある信用組合の幹部の方も、検査官は数字の追及に終始をして、中小企業の特殊性を考えた検査は無理だ、これが実感で言っているじゃないですか。
 信金や信組のように、長年の取引で人を見ていれば、条件変更や長期の赤字であっても融資を続けてきたわけです。それが、今の不良債権処理の大号令のもと、金融検査マニュアルの徹底で、融資の返済条件を変更したり、長期の赤字なら、どんどん区分が落とされ不良債権とされる。
 この前、中小零細企業向けの融資に対する判断を柔軟にする、こういう新聞報道がありましたけれども、これについては、大臣、どのようにお考えでしょうか。マニュアルの趣旨を徹底し、運用の改善で対応するという報道がありましたけれども、その点はいかがでしょうか。
柳澤国務大臣 先ほど申したように、検査官の研修というものを徹底しているわけですけれども、その場合に、いろいろな検査の事例を見て、債務者区分なり引き当ての水準を定める、それはあくまでも検査官の意見として申し上げるわけですけれども、そういうような、むしろ事例を集めて、一種の判例というか、そういうようなものの積み重ねというものをこれから図っていこう、そして、それをより検査官に周知をすると同時に、場合によってはこれも公表していく、こういうようなことを考えて、できるだけ企業の本当の信用力というものの判定、こういうものの正確を期していきたい、こういうことを考えているということであります。
塩川(鉄)委員 職員の方に聞いても、長年の取引で相手が見られるから、いろいろ担保で差しさわりがあっても融資を続けようじゃないか、こういうのが現実に行われているわけですよ。それがどうやって因数分解してあらわれてくるんですか。相手の取引先の実態をしっかり見ている職員の方の意見を聞かずに、六時間かけてやっても、まともに引き受けてくれない、認めてもらえない、こういうのが検査の実態じゃないですか。
 新聞報道にもありましたけれども、中小零細企業向け融資に対する判断を柔軟にする、これは現場の皆さんの怒りの声のあらわれですよ。しかし、運用で柔軟に対応するということは、逆に運用で厳しくやれるということも言っているじゃないですか。結局は、人を見るという基準がないということが、運用で都合よくやれることができる。これじゃ裁量だ、手心と同じになる、それこそ越智さんと同じような話になってしまう。
 マニュアルの趣旨を徹底し、運用の改善で対応するというのは、結局、裁量行政の道につながっていく。結局、財務状況一辺倒で、中小企業の人を見るという基準がないことがこんな金融庁の好き勝手を許しているわけで、大企業と同じ物差しを当てること自体が間違いだと考えます。
 しかも、今回の「ふなしん」の破綻の問題では、大蔵省からの天下りの理事長がさっさと破綻申請に判こを押してしまって、立て直しをする余裕もなかった。「ふなしん」の破綻発表されたその日に、受け皿となった東京東信用金庫が名乗りを上げましたが、この東京東信用金庫の職員が、金融庁が任命した「ふなしん」の破綻処理に当たる金融整理管財人団の中に既に入っていた、「ふなしん」破綻の記者会見の場に東京東信金の理事長も同席するという、普通では考えられないような状況が生まれております。
 一連の経過を見るならば、これは金融庁が主導して破綻させた、こういうことになるんじゃないですか。
柳澤国務大臣 ちょっといろいろ誤解を与えるような表現が委員の口から出ました。
 これは、あくまでも今私が言った、わかりやすく例えを使わせていただいたんですが、技術力、販売力、成長性あるいは代表者自身の資産とか、そういうようなものを総合的に勘案するということは検査マニュアルに書いてあるわけでございまして、検査マニュアルは、できるだけ裁量の余地がないようにということで詳しく書いてあるんですが、やはり最初のところでは総合的にというようなことを書いてあるということであります。しかし、着眼点はしっかりと指示している、指定しているということで御理解を賜りたい、こういうように思います。
 なお、「ふなしん」の受け皿の方が整理管財人のメンバーになっていたというのは、私は、何かのお間違いではないか、こういうように思いますけれども、これはちょっと私自身も精査してみたい、調査してみたいと思っております。
塩川(鉄)委員 私は、今回の「ふなしん」の破綻が極めて異常だ。精査をしたい、具体的に調査をしていただけるということでよろしいですね。
柳澤国務大臣 今、誤解だとは思うけれども調査しますというのは、受け皿の金融機関の役員が整理管財人になっていたというところはちょっと気にかかるところですので、私自身の問題としても調査をしてみたい、こういうことを申したということであります。
塩川(鉄)委員 その関連を含めて大いに調査をしていただきたいというふうに思います。それはもともと一体のものですから、そういう趣旨でぜひともお願いしたい。
 私は、この「ふなしん」の破綻の問題を見ても、例えばここに、取扱注意という御説明資料、金融庁が与党の幹部の方に一月の二十二日に届けた資料であります。この中身を見ても、信用金庫、信用組合の状況の中で、信金、信組については、自助努力や上部団体による資本支援、合併再編、こういった経営基盤の強化とあわせて、幾つかの信金や信組については、破綻処理を実施、早急な受け皿確保に努力、このように書いてあります。
 一月二十二日というのは、「ふなしん」の破綻の三日前じゃないですか。結局、金融庁が破綻を目的にして検査に入ってつぶした。これによって、今、地域の皆さん、職員の家族の方だけでも一千人に上る方が大変な御苦労の思いをされているときであります。中小企業や出資者、その出資金も返ってこない。このような不当なやり方について断固として抗議もし、このマニュアルそのものを見直しをする、このことを改めて要求して、質問を終わります。
津島委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。
 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 まず最初に竹中大臣にお聞きしたいんですが、構造改革を推し進めるということは、デフレ圧力がかかる、一時的であれデフレを促進するという認識はお持ちでしょうか。
竹中国務大臣 これは両面あるんだと思います。後ろ向きのリストラといいますか、そういうものもやはりある程度やらなければいけない。その点に関してはデフレ圧力が出てくるということは、これは総理がそのことを痛みというふうに言っておられるんだと思いますが、同時に、しかし、さらに前向きの改革を進めていく。その中で経済発展の可能性を探していくわけでありますから、これはデフレを克服する効果にもなる。その両面をやはりやっていかなければいけないというふうに認識しています。
横光委員 さきに政府は、中期展望の中で、二〇〇三年までにデフレを克服し、今後、遅くとも三年間で不良債権問題を正常化させると公約をいたしておりますが、公約であるだけにこれは実行していかなければならないと思うんです。
 この日本のデフレ問題の克服というのは、これまで政府が本当に四苦八苦されておりますように、非常に難しい問題、生半可ではできる問題ではないということは大方の認識だと思うんですね。その中でデフレ克服宣言を打ち出したわけですが、余りにも抽象論に偏り過ぎている、また、具体策のブループリントが一向に見えてこない、さらに、対応策が遅い、こういった印象が非常に強いわけです。ですから、政府の経済政策が無為無策で信憑性に欠ける、そういうことを現に株式市場がはっきり示している。それが私は現実だと思うんですよ。
 そこで、小泉政権のデフレ対策について、一つ具体的な側面からお伺いをしたいと思うんですが、景気は気からと申します。この言葉どおり、デフレ問題の根源も、蔓延するデフレ期待、これが大きな要因としてくすぶっている、私はこう思うんですね。
 そのために、企業や家計は、将来の売り上げやあるいは名目所得が今後、デフレでさらに減少をするのではないか、また、借入返済が困難になることを懸念して、結局は、新規借り入れをしてまで設備投資やあるいは住宅投資をするということを見合わせて買い控えをしてしまっている。余裕ができれば今ある債務を早く返済してしまおう、そういうインセンティブが強く働いていると思うんですね。
 企業や家計からしてみれば、デフレ期待のもとで、極めて合理的な守りの行動をとっていると思うんですよ。それが、経済全体で見ると、人々がリスクをとって借り入れをしないために、経済そのものが縮小傾向を示している。この経済の縮小をいかに拡大していくかというのがこれから課題であるし、拡大していくためにリスクをとる姿勢が不可欠だと思うんですが、竹中大臣、いかがお考えでしょうか。
竹中国務大臣 委員御指摘のとおりであろうかと思います。景気という言葉そのものが気の景色という意味でありますから、その意味では期待というのが大変重要で、それが実は非常に今萎縮して、縮こまって、縮小均衡に陥る懸念があるというのが現状なんだと思います。
 それを打ち破っていくのは、将来に向かって果敢にリスクをとって挑戦していく姿勢、企業家精神。その意味では、リスクがとれるような環境をつくっていくということが構造改革の非常に重要な柱になると思っております。
横光委員 今、リスクをとる環境づくりが必要だとおっしゃいました。しかし、デフレ期待や強まるリスクを回避する姿勢、これを公約された時間内でどう直していくのか。即効薬、特効薬、そういったものはわからないんですね。具体的にちょっとお示しいただきたいと思うんです。
竹中国務大臣 これは、まさに総合的に取り組んでいる構造改革の中身そのものであると思います。けさからの議論の中でも出てまいりましたけれども、不良債権問題というのは、不良債権という一つのリスクをバランスシートの中に持っているから、既にそういう大きなリスクを持っているからさらなるリスクがとれなくて萎縮していくということでありますから、実は、不良債権を着実に、早く処理していくということは、リスクをとれる環境をつくるという意味で、これは大変重要な基本であるというふうに認識をしております。
 さらには、骨太の方針の中で、規制改革、これもまたリスクがとれるような環境をつくるということになりますし、もう一つ、骨太の中でチャレンジャー支援ということを強く打ち出させていただいていますけれども、リスクマネーの仕組みをつくっていく、リスクをとる企業家を後押しするような制度をつくっていく、そういうことを非常に大きなトータルなパッケージで考えているつもりであります。
横光委員 トータル的なことを今お示しいただきましたが、やはり具体策というのはなかなかお示しいただけません。
 日本のデフレそのものは九四年から、持続的に見てきた企業や家計には、デフレ期待というのが既に根づいているんですね。そう簡単に変えることが非常に難しいわけです。そのため、仮に政府や日銀がインフレターゲットを導入すると決めたとしても、そのターゲットをどう達成していくのか、かなり明確なプランがなければ、デフレ期待を反転させて政策に対する信頼を築いていくことは非常に難しい、このことを申し上げておきたいと思います。
 また、竹中大臣は、二〇〇三年度までに物価が持ち直す理由として、米国経済で既に回復の兆しが出始めており、輸出の回復も相まって、ことし後半から景気循環的な意味で日本も景気回復し始めるとおっしゃっておられます。
 しかし、前回の景気回復期を例にとりますと、九九年五月、このとき、日本の景気は底打ちをして確かに回復をし始めたんですよ。ところが、アメリカの経済が急に減速を始めた。そして、次の年の二〇〇〇年の秋には、早くも日本の景気が後退し始めた。つまり、景気拡大期間としては戦後最短の短さとなったんですよ。
 今回もデフレ克服のよりどころに米国の景気回復を置くのは、政府としては無為無策をむしろ露呈するものじゃないかという声がありますが、いかがですか。
竹中国務大臣 決してアメリカの経済だけを頼りにしているわけではありませんで、そのときも申し上げたと思いますけれども、現実に主要な産業で在庫調整が進みつつある、その在庫の自律的な転換等々で、循環局面的には、むしろ世界全体が少しよい局面に入っていくという認識を示しております。
 ただ、まさに委員御指摘のように、構造改革をしっかりと行って潜在的な成長力そのものを高めておきませんと、一時的に循環的に高くなっても、またそれがすぐ短期間でしぼんでしまうという懸念は十分にあるわけで、やはりそこは構造改革の重要性が認識されるべきだというふうに思っております。
横光委員 私からすると、何となく楽観的な見方、あるいは対応策を間違える危険性があるような気がしております。これはある意味で警告しておきたいと思います。
 次に、厳しい経済情勢の中で一段と深刻さを増しております失業者問題、雇用問題についてお聞きしたいと思います。
 厚労大臣にお尋ねいたしますが、今後の雇用情勢をどのように見ておられるか。現状よりよくなるのか、それとも悪くなるのか、失業率の見通しもあわせてお示しいただきたいと思います。
坂口国務大臣 失業状況は非常に厳しい状況でございますし、いましばらくこの状況は続くものというふうに認識をいたしております。
 また、先ほどから御議論ございますように、これからの経済状況、とりわけ全体の景気の動向によるわけでございますけれども、その中で不良債権の処理等が進んでくるということになれば、その影響もやはりあるというふうに考えなければなりません。我々は少し、悪いことを前提としてやはり対策を立てていかなければならないというふうに思っております。
 本年度の、平成十四年度の動向につきましては、そうした経済の動向にもよりますから、それらもあわせて検討しなければなりませんが、十四年度の政府見通しといたしましては、平均して五・六%という数字を出しているところでございます。
横光委員 極めて残念ですが、今大臣の御答弁のとおり、雇用情勢は今後ますます、不良債権の処理等も含めて、悪化する見通しであるというお話がございました。これは現実としてしっかりと受けとめなければならないと思います。
 そこで、問題は、今後どの程度まで悪化するのか、それについて正しい見通しを持っておられるのかどうかということが重要だと思うんです。そういった意味から私、失業率の見通しを聞いたんですが、十四年度五・六%という見通しを今示されましたが、これは必ず達成できる、いや達成するんだと国民の前に断言していただきたいと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 これは、五・六%という一つの目標に向かって、やはり少なくともそれを悪くしない、それ以上の成績を上げられるようにやらなければならないというのが我々の立場だというふうに思っております。
 雇用の状況というのは、いずれにいたしましても、景気の動向よりも少しおくれて回復をしてくるということもございますから、その辺のところも十分に考えて我々は政策を立案していかなければならないと思っております。
横光委員 実体経済がよくなってからしばらくおくれるという、これは当たり前のことだと思います。
 私はなぜこういうことを申しますかというと、いわゆる今年度、十三年度の見通しが、昨年の今ごろ、いわゆる四・五%という見通しをお示しになられたんですよ。しかし、一年たった現在、あとわずか残っておりますが、このまま現状で移行をすれば五・二%を超えることが確実な情勢になっておるんですね、四・五%の見通しが。つまり、この当初見通しが達成できなかった、こういった今年度の現実があるだけにお聞きしたんです。
 この見通しが達成できなかったことに対して、政府としてはどのような責任を感じておられるんですか。お示しいただきたいと思います。
坂口国務大臣 確かに、平成十三年度、最初の予測よりも悪化していることは事実でございます。これは、経済全体の動向によって左右されるわけでありますので、この雇用情勢は、その一つの結果と申しますか、総トータルをした結果が示されているというふうに私は思っておりますが、やはり、責任の重大さを感じながら、これを克服するためにどうするかという万全の体制をこれから考えていかなければならないというふうに思っております。
横光委員 経済の動向に応じて変わるというお話でございます。確かにそうです。しかし、経済の見通しも含めて失業率の見通しも立てているわけですから。まあ昨年はちょっと、テロとか突発的な考えられないような事態が起きたことも影響したということは確かにございます。しかし、はっきりとした見通しを示した以上、それに向けて、私は、ただの努力目標ではいけない。これはもう、職を失うあるいは失業するということがどんなに深刻なことであるか、本人にとってはまさに死活問題なんですね。現に、失業あるいは経済問題で自殺者がふえているという現実を見るだけに、決してこれは軽々しく扱うような問題でない、そういった意識でお尋ねをした次第でございます。
 三百数十万人の失業者をよく見ると、自発的に会社などをやめて失業者となる人、いわゆる自発的失業者ですね、こういう方もいるわけですが、自分の意思とは関係なく会社の倒産やリストラによって失業者となる非自発的失業者に分かれる。そして、昨年の十一月以降は、この非自発的失業者が自発的失業者を上回るようになったんですね。いよいよリストラ本番といった様相を示している。このことをしっかり認識していかなければならない。
 そこでお尋ねいたしますが、企業の希望退職者募集で離職した人は、自発的失業者に数えられるんでしょうか。
坂口国務大臣 昨年の四月に施行されました改正雇用保険法におきまして、倒産ですとか解雇によりまして離職をした人につきましては、特定受給資格者として所定給付日数を手厚くするということを決めたわけでございます。
 今お話のございましたように、希望退職の募集に応じて退職した者も、人員整理の一環として行われている場合には、この特定受給資格者として取り扱うことになっております。この希望退職募集の該当要件というのが大事だろうというふうに思うのですが、この中で、希望退職募集の名称がどうであれ、実態が人員整理を目的としたものであるならば、この中に入るというふうに思っています。
 ですから、希望退職基準が導入された時期が離職者の離職前一年以内であるということも、一つの条件にはなっています。それから、募集期間が三カ月以内。年がら年じゅう募集しておるというようなのは、これは入らない。しかし、本格的にこの募集をしたというときには、それは我々としては入るものというふうに理解をしております。
横光委員 希望退職募集で職を離れた人、私は、これは実は隠れたリストラだと思うわけですよ。いずれはリストラされる可能性が非常に高い、であるならば、今希望退職を募集しているので、今は応じよう、やむを得ないという形で職を離れていく人が多いと思うのですね。そういった人たちがわずかなつてを使って職を探す、しかしなかなか見つからない、そういう場合も多いのですね、私、いろいろお話を聞くと。そういう人が、自発的失業者だという理由で失業保険の給付日数が少ないというのは、やはり私は非合理ではないかという気がします。
 今大臣、いろいろ御説明いただきました。確かに希望退職は、基本手当の中では自己都合退職の範疇に入ります。入りますが、こういった状況であるだけに、いろいろな形でセーフティーネットを張るべきだということを私は申し上げておきたいと思います。
 そして、希望退職者と別に、長期失業者、いわゆる失業期間が一年超の長期失業者の数が非常にこれまたふえているのですね。当然のごとく、失業保険の給付は打ち切られます。こういった失業保険の切れた長期失業者の雇用対策はどのようにお考えなんでしょうか。
坂口国務大臣 これは、総務省の方で年に二回ずつ調査をしていただいておりまして、去年の八月でございましたか、最終行われましたものを見ますと、二七%ぐらいがいわゆる長期失業者ということになっております。今まで二二、三%だったわけでございますけれども、この一、二年、五%ぐらいふえてきているということは事実でございます。
 我々の方もここをよく調査をしていきたいというふうに思っておりますが、この長期失業者の中で、いわゆる雇用保険をもらい終わった方がどれだけかという問題と、雇用保険をもらい終わって大体一カ月から三カ月ぐらいの間に就職されるというケースが非常に多いわけでございますので、その辺のところも具体的によく見ながらこれは検討したいというふうに思っております。
 実際やっておりますことといたしましては、いつも申し上げておりますが、訓練延長給付の充実でございますとか、それからまた、もう少しきめ細かく、キャリアカウンセラーによりまして、その皆さん方に、どういうところを御希望なのか、何がその人に適切な能力があるかといったようなことにつきまして詳しく御相談に乗らせていただくということを今やっているところでございます。また、緊急地域雇用創出特別交付金につきましても、できるだけそういう人に優先的についていただけるようにしているところでございます。
横光委員 ぜひとも、そういった、一年たっても職が見つからない人も非常にふえているわけですので、善処方よろしくお願いいたします。
 次に、今はやりの言葉にもなっております雇用のミスマッチ、このミスマッチ論は、雇用失業問題の本質をゆがめるおそれがあると私は思うのですよ。雇用のミスマッチが失業を拡大させているのではなく、失業の増大が雇用のミスマッチを誘発して拡大させていると思うのです。ミスマッチというならば、私は、労働条件のミスマッチの拡大こそを今問題視しなければならないと思うわけです。
 求人者と求職者、これを対等な立場に立たせて、すべての労働者にふさわしい雇用と労働条件を保障するためには、やはり何といっても公的職業紹介機能の抜本的拡充が急がれるべきだと思うのです。
 ところが、実態は非常にお寒い。私たちもハローワークを何度も視察に行ってみましたが、担当職員の方々が求職者に割く時間が何と三分ぐらいしかないという話なんですね、現実では。これでは、求職者の意向に最大限沿うような紹介を行うという本来の職責を遂行しろと言う方が無理だと思うのです。
 実体のない、五百三十万人というふうな雇用創出案ではなく、実際にハローワークに申し込まれている求職と求人のマッチングを図るために、求人開拓部門の抜本的強化を含めた機能拡充や体制整備こそが今求められていると私は思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 そこはもう御指摘のとおりだと私も思っています。だんだんと失業者が多くなりますと、そういう三分とか五分とかというようなことが起こってくるものですから、そこをひとつカバーいたしますのに、この補正予算におきましても、少ないですけれども、約千名、全国にそういうカウンセリングを行う皆さん方をひとつ配置をしておる。そしてまた、新年度におきましても、キャリアカウンセラーを一万人にふやしまして、その皆さん方に対応させていただきたいというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、もう少し丁寧に皆さん方に相談に乗らせていただくということがこのミスマッチにとりましては非常に大事だと思っております。
横光委員 どうもありがとうございました。
 それでは、平沼大臣にもちょっとお尋ねいたしますが、私は前からそう思っていたのですが、今再び我が国産業の空洞化問題がクローズアップされてきております。
 我が国産業の空洞化というのは、世界経済が一段とグローバル化したために、瞬時にして情報は伝わる、日本でできるものとほぼ同一の製品が海外でできるようになったことにあると思うわけですが、現状では圧倒的に海外の方が安いコストなものですから、我が国産業がどんどん安いコストを求めて海外に流出している。その結果、逆輸入という現象が起きている。
 つまり、逆輸入を通じてデフレ輸入もされていると思うのですよ。その結果、さらに国内空洞化が進むという悪循環が今起きているわけですね。当然、空洞化により国内の雇用や所得環境も悪化し、このルートからもデフレをさらに進行させている。これが現実の問題で、大きな課題だと思うのですね。
 逆輸入も、数年前の年間二兆円程度に比べて、今では倍以上に膨らんで、三倍近くまで膨らもうとしているのですが、この逆輸入の問題、非常に難しい問題ではあろうと思いますが、経済産業省としてはどのような対応策をお考えなのか、ちょっとお示しいただければと思うのです。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 委員御指摘のように、確かに逆輸入というのは、一九九〇年に逆輸入が一兆三千億であったものが、一九九九年には、御指摘のとおり、これが四兆九千億という形で非常に拡大をしております。
 そういう中で、バブルがはじけた後、失われた十年間と言われておりますけれども、その中でイノベーションを起こして競争力をつける、そういうことを怠っていた側面が一つあると思います。それから、御指摘のように、その中で逆輸入によってデフレが進行して、そして構造改革のおくれと相まって企業自体の競争力、力が弱まった、こういうことが重なってきていると思っています。
 そこで、対策といたしましては、一つは、セーフティーネットを張って、中小零細企業に対して資金というものが潤沢にまず流れる、そういう仕組みをつくることが一つ前提として必要だと思います。
 それと同時に、日本が、あの七三年のオイルショックの後、第一次空洞化現象が起こりましたけれども、そのときに、イノベーションによって新しい新規産業を創出してそれを克服した、そういう実績がありますから、やはり産業競争力というのは日本はあるわけでございますので、そういったところをもう一度しっかりと見直して、そして、例えば中国の巨大なそういう力がありますけれども、それに一歩先んじたような政策をつくっていく。
 そのために、経済産業省といたしましても、産業競争力戦略会議、こういうのを立ち上げておりまして、今多面的に日本のデフレそして空洞化現象、これを克服する、全力で努力をしていく、こういうことであります。
横光委員 終わります。
津島委員長 これにて横光君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。西川太一郎君。
西川(太)委員 先日、貸し渋りといいますか、貸しはがしといいますか、そのことについてお尋ねをいたしましたところ、早速、何か本日にも、総理の肝いりで、デフレ対策の中で積極的な姿勢が打ち出されるというようなうわさを聞いております。期待をしております。
 そこで、その日に積み残したというと表現が適当でないかもしれませんが、経済産業大臣に一問お尋ねをしたいと思います。
 アメリカの例ばかり引いて恐縮でありますけれども、事業者に対する金融の担い手として、FCという、ファイナンスカンパニーというのがあります。例えば、ボストンにありますマサチューセッツ・ビジネスディベロプメント社というのは、貸出件数三千件という小規模なファイナンスカンパニーでありますけれども、プライムレートに二・五%ほどの利息を上乗せして、五年から七年の融資をやっております。
 日本でも大手の電機会社や自動車会社の、特に電機会社の孫会社ぐらいに当たるところが、お名前はあえて言わなくてもいいと思いますが、例えば開業医などには上限三億円、美容院や床屋さんには五千万から三千万、下限は一千万ぐらいでありますが、大体七%から八%ぐらいの利息で、伺いますと、もう既に三百億の貸付実績がある。
 何でそんなことができるのかと聞きますと、これは、いわゆる銀行法や何かの規制を受けていない、したがって、自己資本比率に関係なく即決して貸せる、もちろん貸金業の規制は受けているわけでありますけれども。それで、十分与信能力もあって、またその親会社が割賦、いわゆるクレジットの会社でありますから、ノンバンクのような、二六パーとか二九パーとかいうようなとんでもない利息を取らずにやれる。
 調べてみると、第二地銀程度の銀行でも、即決して、一日の審査でお金を貸しているところがあります。しかし、こういうところは、九%プラス手数料ということで一四%ぐらい取っている。そういう銀行に比べてこうしたFCが、実際に、日本でもう既に立派に仕事をしているわけであります。
 私は、銀行、信用金庫、信用組合、こういうところがバーゼル協約で非常に苦労して、十分に貸せないでいるということを先回お尋ねをしたわけでございますけれども、一方で、そうした法律に縛られないで、しかも商工ローンとは違う適切な金利で十分にやれるといって、やっているわけですね。ただ、業種が限られているのはちょっと残念でありますけれども、そういうようなものを、金融庁にだけ金融のことを任せておくのじゃなくて、私は、中小企業育成の立場から経済産業省は、アメリカでやっているFCのようなものを育てていく、こういうことが必要ではないかと思うのでありますが、この一問を平沼大臣にお尋ねをしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 今委員御指摘のFC、これは、銀行と某電機会社とその孫会社という形で既に活動しているということは、私どもよく承知をいたしております。そして、ノンバンク等従来の金融機関によらないそういう資金調達の方法というのは、やはり企業にとって、新たなそういう資金調達の選択肢が広がる、こういうことで、私は総体的に言って望ましいことだと思っております。
 中小企業を私どもは所管しておりますけれども、中小企業というのは、どうしても体力的に脆弱なものがありますので、例えば社債等を発行して直接金融ということをやるのは非常に難しいわけであります。ですから、そういう意味では、ミドルリスク・ミドルリターンというような形で、御指摘のようなそういう新たな融資をする、そういう会社なり企業が出てくるということは非常に望ましいと思っております。
 そこで、経済産業省といたしましても、実は、従来は政府系金融機関だとか中小の金融機関に利用していただこうということで、信用リスクデータベースというのを中小企業庁の肝いりでつくりまして、そして中小企業の実態というものをよく把握できるような、そういうシステムをつくりました。ですから、そういう観点も実は込めまして信用リスクデータベースというのをつくっておりますので、こういったところを利用していただいて、新たな御指摘のような資金調達の先ができるということは、日本企業の活性化にとって非常にいい、経済にとってもいい、このように認識しておりまして、私どもも応援をしていきたい、このように思っております。
西川(太)委員 明日午後、経済産業委員会で質問をする機会をいただいておりますので、この続きはその場でさせていただきたいと思います。どうぞ、お引き取りください。
 次に、扇大臣、川口大臣、そして最後に一問、内閣総理大臣に観光問題でお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 国際観光というのは、平和へのパスポートという言葉もございますとおり、国際間の相互理解の増進のために、国民の観光交流の意義というのは極めて大きいわけでございます。特に、この前も少し触れまして、総理もうなずいていただいたのでございますけれども、日本から外国に行く方の数は非常に多いのに、外国から日本にお見えになる方の数は主要国家の中でも三十番台という、非常に少ないし、それから、観光収入として受け取るものを人口割、パー・キャピタというのですか、これで見ても非常に少ないですね。
 例えばスペインなんというのは、観光収入というのは圧倒的に高いのであります。イタリアも高い、北欧三国も高い。しかし日本は、極東にあって遠いということもあるのでございましょうけれども、それらが非常に少ない。こういうことで、数字を申し上げれば、海外を旅行する日本人は一千七百八十二万人もいらっしゃるのに対して、我が国を訪れてくれる外国旅行者は、観光とかビジネスの目的を問わず四百七十六万人、四分の一でございます。外国への旅行者の送り出しは世界で第十位、しかし受け入れは三十六位であります。アジアでは、日本は第二位で送り出しているのに、迎え入れるのは八位、こういう状況でございます。
 総理は施政方針演説で、世界じゅうの注目を集めるまたとないチャンスを活用して海外からの旅行者の増大に取り組むべきだということをおっしゃいました。韓国、アメリカでは、大統領御本人が海外向けテレビコマーシャルに出演して来訪を訴えている、こういうこともございます。政府としてもこうしたことをぜひなさったらどうか。小泉人気は依然として高いわけでありますから、私は、そういうことをしっかりやったらどうか、こう思います。
 そこで、外務大臣に伺うのでありますけれども、河野外務大臣の時代に、在外公館に訓令を発して、訪日観光客の増大の促進、こういうことを一生懸命やられた。パンフレットなんかを私も拝見しましたけれども、いろいろな国の言葉でつくられている。こういうことをやっておられるんですけれども、しかし、どうも効果が上がっていないんですね、残念ながら。それが今申し上げた去年の数字であります。
 そこで新大臣、この問題について、草の根外交という言葉がありますけれども、やはり観光というのは平和へのパスポート、さっき申しましたとおりです。このことをどういう決意で取り組んでいただけるのか、一問お尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、日本を訪問する観光客の数と日本から外国に行く観光客の数との間の差は大変に大きいと思います。
 日本に来ていただく方がふえるということによりまして、日本を理解してくださる方もふえますし、それから日本の観光産業の育成、あるいは雇用の増大といったメリットもあるわけでございまして、御指摘になられましたように、平成十二年の二月に、河野外務大臣のときに、在外公館に対して、我が国の紹介活動を積極的に行うように外務省は指示をいたしております。
 ことしはワールドカップサッカー大会が開かれますので、世界に日本を理解していただく絶好の機会だと思います。小泉総理もこの国会の施政方針演説で、海外からの旅行者をふやすということの重要性についておっしゃっていらっしゃいます。これからも、国土交通省との連携を初め、小泉ライオンハートに御出演いただくことも検討し、それから皆様方からいろいろなお知恵をいただいて、観光客が日本にふえていただくよう私として何ができるか考えてみたいと思います。
西川(太)委員 観光というのは相互交流でありますから、行く人は多い、だから日本人は外国のことをよく知っていますよね。そのことは、外国のいろいろな進んだ制度や文化を我が国に取り入れるという効果はあります。
 しかし、外国から日本に来る人が少ないということは、個人で例えれば、お友達が少ない人、親友がいない、だから気がついたことを言ってくれない、ひとりよがりになる、こういう傾向に国といえどもなるんですよ。
 だから、私はそういう意味で、平和を維持するという意味では、日本を理解していただく。こっちからよそに宣伝して、ジャパン・イヤーとか、何とか日本年とかというのをやって、おみこしを私も手伝ってドイツに運んで、せがれが担ぎに行ったりしたことがあるんですけれども、そういうことも大事かもしらぬけれども、日本に来て見てもらうということはすごく大事ですね。
 私は、変な言い方ですけれども、これは空洞化のない輸出産業だと思っているんですよ。京都だって奈良だって、これはよその国にまねできないんですから、これは空洞化がないんですよ。未来永劫に日本のものなんです。
 しかも、前回、扇大臣がいみじくもおっしゃってくださったように、外国に行って使うお金は世界で二位ですよね。今度は三位、少し景気が悪いので三位に落ちたんだけれども、しかし、そういう意味では、外国の方が日本に来て使ってくださるお金は物すごく低いんですよ。
 したがって、これは私は、売りである、売れる、ちょっと表現が品が悪いけれども、稼げる材料を国内に持っているのにそれを売れていないということ、これをもう少し真剣にやるべきではないか、こう思っております。ぜひ外務大臣にもお力をかしていただきたい、こう思います。
 そこで、扇大臣、実はアメリカ旅行のことについてお尋ねをしたいのでありますが、日本人にとってアメリカというのは、一年間に五百万人も行くんですね、最大の渡航先でございます。アメリカにとっても、カナダ、メキシコという地続きのところ以外では、日本が一番お得意さんなんですね、一番日本から来てくれる。この数をついでに言えば、さっき言った五百万人。それから一方、アメリカから日本に来てくださる方は年間七十万人。これも実は、私が調べてみますと、韓国、台湾に次ぐ第三番目の日本にとってはありがたい国なんですね。
 このために、今まで観光分野でいろいろな協議が行われてきたんですが、残念ながら、アメリカの商務省が観光担当のセクションを廃止された。このこともあって、平成六年以降、日米間の観光の協議が途絶えちゃっているという事実がまずございます。
 そこに加えて九月十一日のあの事件があって、特にハワイやニューヨークについては大変落ち込んでいますよ。ハワイに行く日本人の観光客は四割減であります、四割も減っちゃったんです。それから、ニューヨークに行く人も一割減ってしまいました。よその国は総じて減っていないんです、そんなに。ところが、日本だけがどういうわけだか、これだけ親米的な方がいるのに、危ない危ないということでございましたでしょうか、行く方が少なくなってしまった。これは経済面のみならず、政治、社会、それらのレベルでも非常に重要なことでございますので、この回復を急がなければいけない。
 したがって、今後、日米間の観光促進の方策というものを政府レベルでやはり取り上げていくということが必要な時期に来ていると私は思うのでありますが、需要の落ち込みの著しいニューヨークやハワイ、こういうことについて観光需要回復についての取り組みをまず伺いたい、こう思います。
扇国務大臣 今お尋ねございましたように、残念ながら、日本人は外国へ出てまいります。先生がおっしゃいましたように、支出は多くて収入が少ないという現状は、これはもうずっと続いておりまして、何とか私も、今、第三次産業の中で一番伸びそうなのは観光、先生がおっしゃったとおりでございます。
 ですから、私どもも現在、このアメリカ、少なくとも去年の同時多発テロ以来、おっしゃいましたように、ニューヨークへは最大九割減でございます。そしてハワイは最大が六割減になっています。これを回復しようということで日米の観光促進協議会、これは平成六年に立ち上がったわけですけれども、アメリカの行革ということで、行政改革で観光局が廃止されました。
 けれども、観光需要の回復を図るために、ちょうど、間もなくですけれども、三月の三日より、本来は私が先頭に立って行きたかったんですけれども、国会の御承認が得られませんので、羽生審議官を団長にいたしまして、旅行業界の各幹部、これは官民合同のハイレベルのミッションといたしまして、三日から出発いたします。そして、米国の商務省等のアメリカ側のカウンターパートと今後の需要回復あるいは拡大方策を協議するということになりました。そして、これを契機に定期的な観光協議を開かせていただこう、そういう段取りになっておりますので、御懸念いただきまして、また御心配いただいておりますことを一日も早く回復しようということで、これを立ち上げるということになりました。
 そして、御存じのとおり、ニューヨーク、ハワイ、この激減しております観光客を何とか回復させようと、少しは回復してきたよという空気も、ニュースも入っておりますけれども、完全に立ち上がるまでに、我々は、日本の沖縄だけでもあれだけ打撃を受けたわけですから、諸外国にも、今後は、日本を紹介する意味では絶好のチャンスがワールドカップだと思っていますので、それにひっかけて、より懸命な努力をしていきたいと思っております。
西川(太)委員 今おっしゃるとおりでありまして、アウトバウンドとインバウンドという言葉があるんですけれども、そのアウトバウンドも、日本に来てもらうためには日本から行くということももちろん必要ですが、やはりその比率からいって日本にもっと来てもらう、それから日本国内でもっと国内旅行を充実させる、こういうことが非常に大事だと思うのです。
 いろいろな方法があると思うんですけれども、例えば、国際便で日本に来た人には日本国内の交通の費用を少し何か工夫してあげるとか、それから、大臣も御承知だと思いますけれども、外国の方を、特に日本より少し所得の低いようなお国の方をお招きして、日本でいろいろなところへ招待してあげると大変喜ぶんですけれども、中には、値段を聞いて物すごくびっくりする人たちもいるんですよね。ホテルで朝飯が一カ月の給料より多いなんという国だってあるわけです、これはまあやむを得ない場合もあるけれども。
 しかし、総じて日本のそういう高コスト体質というのは、これは観光事業をやる場合、国内でもいろいろ町づくりという観点がやはり大事だと思いますね。高コスト体質を改めると同時に、迎え入れる町づくり。いろいろなファシリティーが必要になってくるし、それからホスピタリティーというものを、見ず知らずの人に対しても心を開いて歓迎する、こういうものも、教育といいますか、そういうこともしていかなきゃいけない。
 それらのことについて、町づくりを中心に、観光事業を日本の一つの代表的な産業にしようというならば、これは相当の覚悟でやらなきゃいけないと思いますが、その点について扇大臣の御見解を承りたい。
扇国務大臣 今西川議員がおっしゃいましたように、総じて物流コストが高い。飛行機賃それから交通運賃等々が高過ぎるというのは、本当に私は何とかしたいと思っておりますけれども、それも含めて、少なくとも観光が約二十三兆円の直接の消費でございます。ですから、そういう意味で、旅行業者が払います、今先生がおっしゃいました宿泊費とか交通費とか、あらゆるものを含めてこの約二十三兆円の直接の消費を生み出していますし、生産の波及効果というのも、ホテル等を全部計算しますと国内生産の約五・七%に当たるわけですから、少なくとも約五十四兆円。そういう意味でいきますと、雇用効果も、我が国の総雇用の六・三%に当たります約四百二十二万人。
 そういう意味では、この観光産業というものの占める位置の重要性、また今後発展していく上に、どう伸びていくかという可能性を一番秘めている部分でございますから、おっしゃるとおりだと思いますし、私もそれを含めてやっていきたいと思います。
 問題は、地場産業等、先生がおっしゃいます地方の受け入れ体制と、関係の皆さん方がどうして受け入れていくか、そしてこの波及効果というものを地方にどう取り入れるかという、これが今ネックになっておりまして、少なくとも地域づくりの、地域を含めたこの観光地づくりというものを助成していこうというふうに思っておりますけれども、これは、観光客の町づくりのアドバイザーでありますとか、そういう派遣をしております。また、広域観光の支援プログラム、これを全部に共通できるようにしようということで、支援プログラムの作成も果たしていきたいと思っておりますし、都市緑化等々、これは国土交通省にならなければできなかった。公園と交通と町づくり、全部国土交通省が一体になって受け入れの相互メリットをつくろうとしておりますので、この成果を上げていきたいと思っております。
西川(太)委員 扇大臣、もっとたくさん質問を用意していたんですが、時間がないので一問だけお尋ねして、そして最後に、恐縮でございますが、総理にお尋ねをして質問を終わります。
 ことし、言うまでもなく日中国交正常化三十年でございます。二月十九日に日中国交回復三十周年を成功・発展させる議員の会というのが発足をいたしまして、不肖も参加をさせていただきましたが、その際いろいろなお話がございまして、たくさんのイベントが用意をされているということを承知しております。
 日中の関係者の間では、本年の五月に、中国から三千人から五千人程度が日本を訪ねてくださる。東京で日本側関係者との交流記念式典を開催するほか、全国各地に分かれて旅行され、交流行事をなさる。一方、本年九月に、日本全国から一万人程度の方が中国を訪れる。一万人規模で植林もしよう、そして交歓をしよう、こういうようなことも計画をされております。
 このような大規模な相互訪問を内容とする文化観光交流事業を成功させることは、日中関係の大きな促進になると同時に、直接的にも観光交流というものに大きく寄与すると思うのでありますが、これにはやはり民間の方々のお力をたくさんかりなければいけません。しかし、国土交通省も全面的なバックアップが必要だと思いますが、大臣の御決意を伺いたいと思います。総理にお尋ねする時間をぜひ残していただきますようにお願いしたいと思います。
扇国務大臣 御存じのとおり、本年は友好三十年ということで、大々的なプログラムがあらゆるところで上がっております。
 全部のプログラムを消化するために我々としては何ができるかということで、皆さん方からは、平成十二年の八月の日中合意に基づきまして、御存じのとおりその年の九月から、ビザの発給の対象者、北京市と上海と広東省の三地区だけに限っておりましたけれども、これを、限定を千五十六団体に、そしてなおかつ、一万九千八百七十四人が既に日本の旅行をこれで楽しんだわけですね。
 ですから、この区域を広げようということで今回は頑張っておりますけれども、一言だけ残念なことも言わざるを得ません。これは、いいことだけではなくて、今不法滞在となっております方が旅行者の中で六十一人となっているんですね。けれども、中国からの団体観光旅行を受け入れている諸外国の例に比較しても、発生率は極めて低いんです。ですから、その点で、今後も、受け入れは順調に進んだと私は見るべきだと思いますので、これを広げていきたい。
 そしてなおかつ、皆さん方がそれぞれの地域と姉妹都市を組んだりいろいろなことをしていらっしゃいますので、ビザの発給対象の地域の拡大は重要な問題でございますけれども、そのほか、外務、法務、警察等の関係省庁とともに、今後は、ビザの発給とかCIQの問題とか、あらゆる面でより皆さん方に、日本に行ったら楽しいよ、よかったよ、なおかつ中国にないものを見れたと、そういうことをしていただけるように、この三十年を契機にして私たちは、中国からも、一番大きな受け入れ先ですから、日本へ来ていただくように努力していきたいと思っております。
西川(太)委員 観光という言葉は、古くは易経にある言葉であります。当時の皇帝が国の威光を周辺地区に知らしめる、そういう意味で起こった言葉であります。しかし、有閑階級の研究家としておなじみのソースタイン・ヴェブレンが、ヴェブレン効果という言葉が観光学の中にはございまして、金と暇のある人間が観光する時代があって、得意になって、おれはあそこへ行ってきたぞ、こういう時代もあったわけであります。
 しかし、今日、先ほど申し上げましたとおり、私は、これは我ながら気に入っているのでありますが、空洞化のない輸出産業というふうな位置づけを観光業、観光産業というものにするならば、これはぜひひとつ、日本のこうしたことを総理が先頭に立って、国会の御所信の表明の中でも既に述べられておるわけでありますから、ひとつ、ぜひこういうことを率先して頑張っていただくという御決意を承れれば幸いであります。
小泉内閣総理大臣 ことしは日韓共催のワールドカップが行われますが、先日も私は、このワールドカップサッカー大会を、サッカーだけ見に行くよということで終わらせてはもったいない、この機会を活用してできるだけ各地を回ってもらうようなことを考えた方がいいのじゃないかということで、担当省庁以外に、全省庁が協力して、日本にサッカーを見に来ていただく外国の方々に各地を回っていただけるようなことを考えてみたらどうかということで、今それぞれ鋭意知恵を絞っているところであります。
 さらに、日中国交三十周年を受けまして、それぞれ交流事業が盛んに計画されております。今委員お話しのように、アメリカも、ニューヨークとハワイへの日本からの観光客が激減したということで、ブッシュ大統領までがコマーシャルに出て観光に来てくれという、そういう時代であります。私は、もっと観光の重要性を日本が見直してもいいのではないかと。やはり、自分の国に住んでみたい、そういう国にしたいと思うのだったらば、外国の人も日本に来てみたい、そういう国にする、これも大事だと思います。
 私は、観光の重要性、非常に大きなものがあると思っています。よく国会議員が物見遊山の旅行を批判されますけれども、物見遊山というのは非常に勉強になると思うんですよ。できたら、時間があったら、国会議員はぜひとも、何にも仕事がなくて物見遊山で外国を回っていただくということは非常に勉強になると思います、自費でね。
 私は、かわいい子には旅をさせろといいますけれども、何にも目的を持たないで旅をすることほど勉強になるものはないと思っているのです。そういう意味において、これからも、日本としても観光資源がたくさんあります。
 最近おもしろいことを聞いたのです。外国人に日本の旅館というのは合わないと思って、日本の旅館業者が畳をなくす、温泉旅館も外国人用に違うものにしようとすると、むしろ日本に来た外国人は、畳というものを経験してみたい、温泉に入ってみたいと。そこで、そういう和風旅館にも、最近は外国人にも使いやすいような和風旅館にするとどんどん来ているという情報が入ってきております。
 だから、工夫だと思いますね。値段を安くすることも大事であります。むしろ、外国にはない日本のいろいろなよさに触れたいという外国人も多いことを考えますと、観光業界もまだまだ一工夫、知恵を出す余地がたくさんあるのじゃないか。そういうことによって、できるだけ多くの外国人に、ああ、日本というのはいろいろ見るところがあるな、旅して楽しいなということを、これは官民一体となって考える価値のあるものではないかと思っております。
西川(太)委員 ありがとうございました。
津島委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。
 次に、池田元久君。
池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。
 金融問題を中心にお尋ねをしていきたいと思います。金融、とりわけ今中心的な問題をお話をさせていただき、また、要領を得た御答弁もお願いをしたいと思います。
 去る十五日、小泉総理大臣は、ブッシュ大統領訪日を前に、総理大臣官邸に柳澤金融担当大臣を呼んだとされています。総理にお伺いしますが、金融庁の大手銀行の特別検査について指示をされたと聞いております。金融行政について総理の姿が見えたのは大変珍しいと私は思うのですが、どのような指示を出されたのか、まずお伺いをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これからの経済再生を考えますと、不良債権処理、これは大変重要なことであります。そういうことから、私は先日、柳澤大臣に対しまして、特別検査を厳格化するように、そして検査の結果は何らかの形で公表してほしい、四月以降のペイオフ後は預金者が安心できる金融機関がそろうように、それまでにしっかり検査監督してほしい。さらに、ほかにもいろいろありますけれども、全部言うとちょっと時間がかかりますので、あと空売り規制とか、いろいろそういう具体的なことを指示いたしました。
池田(元)委員 銀行の自己資本や体力を気にしないで特別検査をやれということをおっしゃったと。それは柳澤さん、会見でおっしゃったようでありますが、これは当たり前のことですね。
 これまでマーケットでは、不良債権の処理は銀行の体力の範囲内でということが専ら言われておりましたが、総理は、こうした見方から、これまでの検査が厳格、正確に行われていなかったと見ていらっしゃるのでしょうか。
小泉内閣総理大臣 金融庁としては厳格に審査をしているということだと思うのですが、必ずしも市場がそう判断していない向きもあるようだ、そういう世上の批判にもよく耳を傾けて、やるべき点、今までのやり方を見直すべき点もあるのではないかということで、そういう発言になったのだと思います。
池田(元)委員 それでは、柳澤金融担当大臣にお伺いをいたしますが、自己資本を気にしないでやるということは、これまでは自己資本などを考慮に入れていたのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
柳澤国務大臣 日本の金融機関の検査については、大蔵省時代の検査のありよう、それからまた、早期是正措置というものが導入されたときの検査の一つの改革、さらには金融庁というものが独立の機関になったということ、さらには金融検査マニュアルが制定されたことというように、最近数年間の間に制度としても随分改革が行われております。
 それからもう一つは、そうはいっても、今総理がおっしゃられたように、いろいろマーケットにおいて流布されている資料等を見ますと、非常に残念なことに、当時はどういうことを言われておったかというと、動員できる原資の範囲内でということを言われていた時代もあったのです。最近においては、自己資本比率というものを余り下げないような範囲でというようなこともマーケットで言われる、そういう大変残念なことがあったわけでございます。
 我々としては、一切そういうことは考えておりませんでした。特に金融監督庁、金融庁になってからの検査では、そういうことを考えておらなかったのですけれども、従来のいきさつというか、そういうものが尾を引いたのかどうかわかりませんけれども、そういうことを言われてきたことも、私も見て知っております。
 しかし、総理といたしましては、そこのところは、そんな変な疑いの目で見られないようにきっちりやれ、しっかりやれ、こういう御指示をいただいたものだ、このように受けとめたわけであります。
池田(元)委員 従来はそういう自己資本等を考慮に入れていたこともあったと言われます。しかし、それが続いているんじゃないですか。もう一度だけお答えをいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 そういうことはありません。検査は、資産の査定をするときには、そんなことを考えないで検査官はばりばりやるわけでございます。その集計の結果が検査の結果でありまして、私どもとしてはそういうことをしていないし、また、もしそういうようなことが内部で行われるなどというようなことは、私にとっては我慢ならないこと、こういうことで今指導に当たっている、管理に当たっているということです。
池田(元)委員 柳澤さんは、十四日午後の当委員会で質問に答えて、「我々は、本当にしっかりと金融機関を見ているんです。」と胸を張られたその晩に総理に呼ばれて、検査では銀行の自己資本や体力を気にするなと言われたわけですね。今あなたはそうおっしゃるが、金融庁の内部でもこれは大変不名誉なことじゃないかという声もありますが、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 一生懸命やっている、特に金融検査の第一線の者からすれば、自分たちはこれだけ一生懸命やっているじゃないか、そういうときにそういう言葉というのを非常に残念に思う、こういう気持ちになることはあり得るし、私としてはそういう気持ちを大事にしたい、こういうように思います。
 しかし、そういうことが現に、これは随分前からですけれども、市場等に流布される書面等でも見るわけでありまして、そういうところを踏まえられて、総理がそういうことを念には念を入れて注意されたということは、私は重く受けとめて頑張らないといけない、こういうことで、内部の者にもそう申しているわけであります。
池田(元)委員 特別検査で銀行の体力、自己資本を気にしないでというのは、当たり前のことですけれども、大変重要なポイントだと思います。
 その特別検査の結果を公表すると言いますが、全体を丸めて公表するのではなくて、自己査定が甘かった銀行の具体名、引き当ての増加率などを公表すべきであると思うんですが、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 これはかねて申し上げておりますとおり、債務者に着目しての検査というのは、そういうことを銘打ってやっている検査としては初めてのことでありまして、それ以後どういうことが起こったか、週刊の経済誌等々でどういうことが取りざたされたか、これはもう池田委員つとに御承知のとおりです。要するに、風評、風説というものがごまんと流れているわけでありまして、私どもは、そんなものをまさに裏づけるようなそういうデータを出すわけにいかない、これは政府として当然の立場でございます。
 そこで、そういうことに力をかさないような、そういうことで……(池田(元)委員「企業名じゃなくて、銀行ぐらい名前を出してもいいじゃないか」と呼ぶ)どういう形の結果の公表ができるか、これは検討しなきゃなりませんが、今池田委員が言われているような銀行名を出せというのは、はっきり言って無理だと思いますね。(池田(元)委員「ああ、そうですかね」と呼ぶ)当然ですね。
 これはやはり各銀行ごとに、大体いろいろなことで、また、ここはこの企業のメーンだというような話にすぐ結びついて、どんどんそうした憶測が広まる、膨らむ、これは私としては避けたいということであります。
池田(元)委員 融資先の大口企業などの名前をダイレクトに出せと私は言っているわけじゃありません。メガバンク等、主要銀行の数も少ない状況ですね。それで、事後に、特別検査の結果、自己査定が甘かった銀行名を出したらどうかというのは妥当な提案ですよ。それによって銀行の優劣とか、マーケットは判断するわけですから。違いますか。総理、どうですか。
柳澤国務大臣 これは一つ申し上げておきますが、今特別検査に非常に世の中の関心が集まっている、これはこれで私はいいと思うんですよ。
 しかし、我々はその前に、骨太の方針から何をやっていたかというと、大手行については年一回の通常検査をする、しかもそれをフォローアップする、こういう検査の厳格化をしているわけです。こういうものが集まって今度は検査結果が決算結果としてあらわれるわけでありまして、私は、池田委員の目指されているところというのは各行の決算結果にあらわれてくるであろう、このように考えております。
池田(元)委員 そのぐらいもできないということでありまして、大変残念であります。要するに、やはりディスクロージャーの基本はそこらあたりにあるのではないかと私は思います。強く要望しておきます。
 次に、三月危機説がございますが、三月末の銀行の状況、一番重要な自己資本の状況はどうなるのか、金融担当大臣はこれまで何度か発言されておりますが、その点、端的に確認をしたいと思います。
柳澤国務大臣 私どもといたしましては、前回の決算、中間決算でございます九末の決算のときに、各行がこの三末の決算見込みというものを発表いたしておりますので、それらを集計して、私ども、集計概念としての自己資本比率というものを見ているわけでございますが、これはかねてから申し上げておるとおり一〇%内外ということで、私どもとしては、国際的な基準の八%、中には大手行の中にも四%基準行がありますけれども、総合して言いますと八%の基準をも上回る、このように考えているわけであります。
池田(元)委員 たびたびおっしゃっていますね。不良債権の処理額が六兆円規模に膨れ上がっても一〇%台を維持するとか、要注意先に分類している債務の大きい二十社ずつが破綻し、引当金や担保で保全していない部分がすべて損失になっても自己資本比率は一〇%台後半を保つ、このように柳澤金融大臣は発言をされております。
 私は、特別検査をやっても、大手銀行の自己資本比率は一〇%を上回っているので健全だということにして、また先送りにするということではないか、そんな感じがいたします。これは後で議論をしますが。
 では、日本の大手銀行の資本は十分なのかどうか、強い体質を持っているかどうか。
 私は、早くから日本の銀行の自己資本が、公的資金、税金の前払い分、生保からの持ち合いのローンなどでかさ上げされていることを指摘しておりました。昨年五月十五日の当委員会でも、主要銀行のネット自己資本比率を示しました。二〇〇〇年九月期で公表された一一・六%に対して、ネット、正味の自己資本比率は五・六%でありました。
 そこで日銀総裁にお尋ねをいたしますが、日本とアメリカで自己資本比率の算出の仕方はどう違うのか、お答えをいただきたいと思います。
速水参考人 アメリカの場合は、繰り延べ税金の資産を一年分またはティア1の一〇%というふうにしております。これは、公的資金を除くベースで試算しますと、日本の銀行は八%基準ということで大体いいわけでございますけれども、アメリカの方は――この繰り延べ税金の計算の仕方は国によってかなり違うんですね。例えばイギリスなんかの場合は一年限りといったような、ですから、日本の方が少し甘いということは言えると思います。
池田(元)委員 日本の方が少し甘いという発言でしたけれども、この資料二は、ごく一部の計算を除いて全部日銀の資料です。要は、繰り延べ税金資産については、日本は非常に過大にといいますか、かなり見積額を多額に許容する。アメリカは、ここに書いてあるように、一年分またはティア1という自己資本比率の中核にあるものの一〇%という計算をしているわけです。
 最も新しい二〇〇一年九月期の実際のデータで、公的資金を除き、税金の前払い分の繰り延べ税金資産については米国同様に上限を設けて、銀行の自己資本比率を試算するとどうなるか。
 この資料一をごらんいただきたいと思います。主要十五行全部で算出してみたんですが、ここでは国際基準行を中心にまとめておきました。左側が公表された自己資本比率、右側が試算結果です。
 これを見ますと、主要十五行平均、連結ベースで公表されている自己資本比率一〇・五%に対して、米国の基準では三・九%。四%を割っている。四大メガバンクでは、ごらんのように、みずほ二・八、UFJ三・八、三井住友三・九となり、次のページにありますように、アメリカのJPモルガン・チェースが一二%、シティグループが一一・二%であるのに比べて、日本の代表的な銀行の資本は極めて脆弱だと見るしかありません。
 また、国内基準行では、個別行の名前は出していませんが、ごらんのように平均値が出ております。最高で二・二%となっております。
 銀行の状況をウオッチしておられます速水総裁、この委員会で五、六%というようなこともおっしゃっていましたが、正確に試算すれば以上のとおりです。銀行の資本状況は見込みより悪いと思いますが、お考えを伺いたいと思います。明確にお答えをいただきたいと思います。
速水参考人 十三年九月末の主要行の自己資本比率は一〇・五%でございます。池田先生は、ここから公的資本や繰り延べ税金の資産を控除してコアキャピタルを算出されて、過少資本ではないかという御指摘をされたことを覚えております。私も以前、そのような試算を紹介したことがございます。
 今、ここで改めて考え方を説明したいと思いますが、私は、会計ルールにのっとった繰り延べ税金資産の計上とか、それと公的資本のカウントの是非といったようなことを問題にしているわけではございません。私が申し上げたいのは、あくまでも、金融機関が中長期的な自己資本というものを、コアキャピタルといったような言葉を使っておりますが、この中長期的な自己資本の課題でございます。
 すなわち、一つは、公的資本というのは、そのときは不良債権の処理等に使うことができても、長い目で見ますと、いずれは民間資本に置きかわるべきものであります。それから、民間が出資に応じるに足る収益力の強化が必要であります。また、繰り延べ税金資産というものも、将来の収益に対する税金の前払い的なものであります以上、やはり収益力を強化しなければ資産としての意味は乏しいと思います。
 したがいまして、いずれにしましても、今後の収益力の向上と、それによるいわゆる中長期的な資本基盤のさらなる強化を図っていくということが極めて重要なことだと私は考えております。
池田(元)委員 速水総裁は、国会などでは中長期的とおっしゃって、経済財政諮問会議等ではこういう数字なんだと、ちょっとニュアンスが違うように受け取れますが、要は、日本の基準は甘いということをおっしゃっているわけですから、まあいいでしょう。
 現に速水さんのところでつくった資料もあるわけですね。これは三月期、私がつくったのは一番新しい九月期。それで、日本の銀行がアメリカへ行ったら、平均すると自己資本が四%割れ、メガバンクでも二、三%ということに注目しなければいけないと私は思います。
 これは、どこそこでという言葉をよく使われますが、そういう予測ではなく、二〇〇一年九月期の現実の数字なんです。柳澤担当大臣、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 池田委員におかれましては大変緻密な計算をしていただきまして、その労に対して敬意を表したい、このように思います。
 これをどう考えるかということでございますが、まず、池田委員は公的資本投入反対派のようでございますので、公的資金を除いて計算するというのは、一貫性が保たれているということでわかるわけですけれども、私どもの立場としては、やはり金融危機のときに、先ほど日銀総裁も言われたんですが、本当は自分の稼ぎ出した資本でなければ資本性というものについて云々されてもやむを得ない面があるんですね。
 しかし、一時のそういう危機あるいは不安のときに、こういう形で処理をして補強するということは、これは国民の総意として国会でつくられた法律に乗っかってやっていることでございますので、私どもとしては、それはそれとして、早くこういうところから脱却しなきゃいけないにしても、一時の措置としては、これはやはり資本に含めて考えてちっとも差し支えないものだ、こういうように思います。
 それから、繰り延べ税金資産でございますけれども、これにつきましても、これは銀行のみならず全産業に適用されている我が国の会計基準にのっとっているわけでございますし、それから、余りこういうことを言うのはちょっといかがかと思うんですが、例えば、東京三菱は、これはアメリカに上場されている企業ですね。それでも繰り延べ税金資産をこれだけ計上して、それがSECなりアメリカの投資家にそれなりに理解されている、こういうこともあるわけでございまして、余り一方的な議論をされるのはどうか。
 それで、繰り延べ税金資産は、私、たびたびここで申し上げますけれども、日本の国税庁の要するに無税償却の要件が非常にきついんですよ。破綻懸念先に個別対応の引当金を積んでもなお損金として認めてもらえない、税金がかかっちゃう、益金の中へ入って税金が四〇%取られる。
 そういうことの積み重ねの結果が今日のこれだという面もあるということをぜひ御理解賜りたいと思うのでございます。
池田(元)委員 繰り延べ税金資産、そういう細かい議論といいますか、そういう議論があっても、一年分と五年分とか、余りにも違い過ぎる。それはやはり甘いんですよ。それは日銀総裁がおっしゃるとおりです。だって、企業は収益が上がらなかったら税金は返ってこないんですから。収益を上げて税金を払うことを前提にして計上しているわけですから、そこはアメリカ流に厳格に見る必要がある。特にこの資本というのは大事ですから、私は、そこはやはりもっと厳しくしなければならないと思っております。
 公的資金を入れろとか、公的資本は資本性が全くない、そんなことを言っているわけじゃありませんよ。見かけ上、利益の積み上げによる期間償還を前提にしているこういう資本よりも、自分で積み上げた資本、核の資本、コアキャピタルというそうでありますが、それが銀行の本当の健全度を示すものだと私は思っております。この数字を見て、ぜひ経済担当閣僚の方々は真剣に、今日本の金融が置かれている現実を直視していただきたいと私は思います。
 それで、竹中大臣、大手銀行の資本は、上位のごく一部の銀行を除いて、公的資本と繰り延べ税金資産で占められているわけですね。大手銀行の大半は実態として資本が不足しているのではないか、または資本の質は脆弱と言うべきではないか、お尋ねをしたいと思います。
竹中国務大臣 私は金融担当ではありませんので、そういうことを当局として判定する立場にはないわけでありますが、基本的な自己資本の考え方については、まさに柳澤大臣がおっしゃったとおりなのだと思います。
 ただ、もちろん、市場はどのように見ているかということも含めて、これは多様な見方があるんだというふうなことは十分に認識しているつもりでありまして、そういったことも含めて、経済財政諮問会議で、特別検査の結果を待ってその状態を適切に判断しようではないかという議論を深めているところであります。
池田(元)委員 質問に答えてください。大手銀行の大半は実態として資本不足ではないかと聞いているわけです。
竹中国務大臣 いわゆるBISの基準等々で選定されている資本の自己資本比率だけで判断できない難しい問題があるということは認識しておりますが、それをもって、つまり、これからこれを引いてこういう数字になるから資本不足であるというふうな判断は、現時点ではできかねるというふうに思っています。
池田(元)委員 竹中さんの話は変わりますね。資本が不足している。これは、縄張りといっても、金融行政と経済財政といっても、現状認識の、経済の基本的な問題でしょう。日本の銀行の資本が不足しているかどうかについては、別に金融担当大臣の所管でも何でもないですよ。経済財政担当大臣、認識の問題としてマクロ経済政策を預かるあなたの担当の中に入ってくる問題ですよ。
 本当にそれでいいんですか。もう一度答えてください。
竹中国務大臣 これは、もし不足しているということであれば、不足しているとどうこうであるという一つの監督行政の話でありますから、そういう、不足しているかどうか、監督行政に結びつく問題について私が答える立場にはないということを申し上げているわけであります。
 しかし、現状としては、委員御指摘のように、これは委員を初め専門家が、自己資本の見方には幾通りのものがあるということをずっと以前から指摘しているわけで、そういう多様な見方の中で、状況判断が難しい問題であるというふうに認識しているわけです。
池田(元)委員 東京を離れると少し口元が緩んで、資本の質とかそういうことをおっしゃっているわけでありますが、ちょっといただけません。
 塩川財務大臣、資本注入にもともと積極的な論者というふうに伺っておりますが、銀行の資本が不足している、だから資本注入する。これは正直言って、総括的に言って、日本の大手銀行の資本は不足しているんではないですか。
塩川国務大臣 私は不良債権問題について一つの一貫した主張を昨年からずっとやっておりますが、それは、今、銀行とそれから銀行の貸出先、不良債権を生み出している企業との間において、不良債権、相当の額をいわゆるバランスシートから引いてもらう。その結果、銀行が資本不足が起こってきた場合には、これはやはりどうしても、強制的であろうが非強制的であろうが、いずれにしても資本を注入しなきゃならぬ。その責任は、銀行にもあるし、政府にもある。それじゃ、政府の責任は何かといったら、特別検査等でその実態をやはり絶えず把握しておくということでありますが、その判断は、どうするかという判断は銀行そのものが決めるべきものだ、こう思っております。
 したがって、私は、ここの席でいつも言っておりますことは、必要がある場合にはやはりやらざるを得ないだろう、だけれども、今直ちに強制注入するとかいうことは言えないんではないか、こういうことを言っておるわけであります。
池田(元)委員 資本注入の前段の認識を聞いているわけですよ。引き当てをして今おっしゃるようなことをやれば、やはり日本の大手銀行の資本は不足しているんじゃないですか、財務大臣。
塩川国務大臣 それは、不良債権を整理した後においてわかり得ることだと私は思っております。
池田(元)委員 こんなあやふやなことで、マクロ経済政策もそうだし、金融行政も行われている。財務省もそうですね。こんなことでいいんですか。現状はどうなんですか。現状把握もしっかりしない、あやふや、いろいろな意見があるとか。それでいいんですか。総理大臣、どうですか。
柳澤国務大臣 全然ぐらぐらしていませんよ。私はもう一貫して御説明をしております。ですから、そんな金融行政もぐらぐらしているなんて、もうそれはお言葉をお返ししますよ。
池田(元)委員 暮夜ひそかに官邸や何かに集まって経済閣僚がいろいろ調整をしている。それ一つでも足並みがばらばら。いろいろありますよ。十七日の夜で取り繕いをしたということは聞いておりますが、そんなことでは、日本の金融行政を含めて経済政策を任せるわけにいかないと私は思います。
 この現在の銀行の状況については、柳澤さんは、一〇%、三月末には自己資本比率がいくであろう、だから大丈夫ですと。全銀協の会長も同じように、特別検査後も自己資本比率は十分維持できると言っております。
 しかし、私は、金融システムの不安と、株式、特に銀行株の低迷の火種は、銀行の資本の質と量、とりわけ質にあると思います。それにもかかわらず、今までずっと柳澤さんなどの話を聞いておりますと、特別検査をやりました、自己資本比率は一%ぐらい下がっても一〇%は保っております、大丈夫です、そう言ってまた問題を先送りする。
 それで本当にいいんですか。かさ上げした、見せかけの自己資本比率を金科玉条のごとくにして、銀行の悪化した脆弱な資本状況を放置していいと思いますか。総理、いかがですか。
柳澤国務大臣 池田委員も専門家でいらっしゃいますので、今公的資本を入れているというのは、日本の金融が危機に瀕したというときに、これはもう臨時異例の措置としてやっている措置でございます。ですから、本当の力は、収益を上げていく、まあ昔だったら利益準備金だとかそういうことで資本が積み上がっていく、剰余金でもいいです、そういう形のものであるということは、考え方は共通だと思います。
 ただ、こういう臨時異例のところをもって、臨時異例のところだから弱いじゃないか、弱いじゃないか、公的資金はいずれ返さなきゃならないような資本性でしかないじゃないかと言われても、それはみんな承知の上でやったことではないんだろうかというふうに私は考えております。(池田(元)委員「違う、やり方も反対だ」と呼ぶ)反対の方もいらっしゃったでありましょうけれども、国民代表の多数をもってこういうことをやろうとしたわけでございます。その点は御理解の上に立った御議論をお願いしたい、このように思います。
池田(元)委員 大丈夫ですと言うばかりで、三年たっても銀行がこんな状態であるという反省の気持ちなんかないですよ。
 銀行の資本では、もう一つ危ない構造があるわけです。生命保険会社との株の持ち合い。
 研究機関の調べによれば、生保十社が大手銀行に株式や劣後債で十兆円余りの資本を拠出している。銀行は、生保に対して、基金や劣後ローンで二兆二千億円の資本を出している。銀行株の急落が生保の経営を直撃する。そして、生保の危機が銀行にはね返ってくるという大変な連鎖。このような銀行の現状を放置して、問題を先送りしてよいのかと私は思います。
 小泉総理、小泉政権は無策のまま、一時先送りして、危機のマグマを大きくしているとしか私には見えない。総理の見解をお尋ねしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 何をやっても無策と言うし、口だけだと言うし、不安をあおり立てるけれども、やるべきことはやって、金融不安を起こさせないような対応は打つということをはっきり言っているんです。その方向で、特別検査を厳格化しなさい、金融不安を起こさせません、着実に打つべき手は打っております。
池田(元)委員 では、具体的な骨太の政策はあるんですか。お尋ねをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 具体的に今はそれをやっているじゃないですか。(池田(元)委員「何をやっているんですか」と呼ぶ)だから、特別検査を厳格にした、そして十分な引き当てをしなさいと、柳澤担当大臣が答弁しているとおりですよ。
池田(元)委員 検査をするというのはまず実態を調べることですから、大きな政策をやる場合には検査をするでしょう。金融行政についてはないんですよ。私はそこを小泉さんに指摘して、この今の状況からいって、今すぐでなくても、国のために、世界の経済のために考えてほしいということで私は話をしているわけですよ。
 公的資金の投入ということが盛んに言われておりますので、ちょっとその点に、これに関連するので触れたいと思うのです。
 先ほど申し上げましたように、公的資金の注入については、小泉内閣の経済閣僚の間でもいろいろな、ばらばらな意見がありましたけれども、日米首脳会談の前に、現在の時点では必要がないということで、取り繕いというとまた何か反論があるかもしれませんが、調整をしたということです。
 そこで、日銀総裁にお尋ねしますが、はっきり答えてください。総裁は十九日、官邸を訪れ、総理に、銀行への公的資金の再注入について早期の決断を求めたと言われておりますが、進言の内容について、端的に要旨をお伺いしたいと思います。
速水参考人 総理とは最近余り直接お話をさせていただく機会がございませんでしたので、若干時間をちょうだいして、金融経済情勢、それから、私どもが日々携わっております市場動向につきまして、私が日ごろ思っていることなどをざっくばらんに説明いたしました。
 公的資本注入を議論したのかどうかということをお聞きになりたいんだと思いますけれども、もちろんそういう話もいたしますけれども、具体的な、どういう話をしたかということは、これ以上何も申し上げることは差し控えさせていただきます。
池田(元)委員 日銀総裁が堂々と官邸の門をくぐったんですよ。新日銀法は、アカウンタビリティーとかディスクロージャーというのを一番重要視しているわけです。そして、これは税金を投入する話ですよ。もうちょっと詳しく話ができませんか。
速水参考人 具体的なお話をここで繰り返すわけにはいきません。
 ただ、私が日ごろ考えておりますことの一つだけをお答えさせていただきますけれども、今の政府は、やはり構造改革ということを何としても完成しようということで動き出しているわけでございます。構造改革の中で一番最初にやらなきゃならないことは、やはり銀行の不良債権問題を早く解決することだと思うんですね。そのためには、資金が足りないことが起こり得るかもしれない。そういうときには、先ほども申し上げたような公的な資本というものも役に立つものであることだけは確かであると思います。
池田(元)委員 もう一点だけ日銀総裁に聞きますが、資本注入の場合、健全行、自己資本比率八%以上の銀行には投入しないという考えですか。
速水参考人 私は、そういう特別の考えを今のところまだ持っておりません。申し上げるようなことはございません。
池田(元)委員 もっと率直にお話しされた方がいいと思いますよ。
 総理に一言だけ聞きますけれども、過去の資本注入では、健全な銀行に資本注入をした。そして、前の早期健全化法により経営責任も不問にした。こういうやり方で健全行には資本注入をしないというお考えですか。
柳澤国務大臣 これはケースによるんですね。資本注入のケースというのは、金融危機対応です。金融危機は、別に自己資本が低いとか高いとかで起こるだけではありません。そういうことで、自己資本の比率のレベルと関係なくいろいろな措置をとらなきゃならぬことがある、こういうことを申し上げたいのでございます。
池田(元)委員 総理、お願いします。
小泉内閣総理大臣 金融危機を起こさないためには、あらゆる手だてを大胆かつ柔軟に講ずる。
池田(元)委員 だから無策とかなんとか言われてしまうんですよ。
 それで、私は、資本注入をすることによって銀行システムは安定し、金融仲介機能が回復するとは必ずしも思えない。不良債権の抜本処理をしないで銀行の形を今のままにしておくならば、一時的に銀行に息をつく余裕を与えるだけだと私は思います。それは、九九年三月の資本注入からこれまでの経過を見れば明らかだと私は思います。
 過少資本の、資本不足の銀行については、当然経営者の責任、株主の責任の追及、それから銀行の規律の維持はもちろんのこと、そこまでは多くの人は言うんですが、資産内容を厳格に査定して、銀行を新しいもの、古いもの、新旧、または機能別、つまり、情報決済、融資、証券などの機能別に分ける。そして、新しいビジネスモデルなどを構築することなどによって収益力を徐々に高めていく、こういう政策がやはり必要であると私は思います。
 そこで、柳澤さんにお尋ねをしますが、現在の金融行政の混迷の原因は、この九九年三月の資本注入までさかのぼらなければならないと私は思います。当時、大手十五行について、すべて健全な銀行だとして、経営者の責任を問わずに七兆五千億円の公的資金を投入したわけです。昨年五月の予算委員会で、資料をつけて私としては裏づけたと思うんですが、当時大手行がすべて健全だったというのは虚構、偽りであったと私は思います。銀行経営者は一人も責任をとらされなかった。むしろ、健全行と言われて、巨額の公的資金を手にできる。これでは、経営者に緊張感を持てと言っても無理ですね。
 公的資金を投入した当事者の柳澤金融担当大臣、当時の再生委員長の責任は大変重いと思いますが、一言お答えをいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 私ども、十一年三月期を前にしまして資本注入をさせていただきましたけれども、これは十年の九月期、これを基準にしまして、その一斉検査が、当時、日本銀行と私どもで手分けをして検査をしたわけでございます。その検査に基づきまして、資本の区分によって資本の注入の仕方、条件が変わってまいりますので、その認定をいたしました。
 そういうことを踏まえまして、今委員がおっしゃるとおり、いずれも健全行、過少資本行でないということで、法律に基づきますと、これは経営責任を、例えば経営陣の刷新というような条項がないわけでございますので、そういう向きのことについてはあえてこれを行うことなく資本の注入を行ったということでございまして、私としては、国会で成立をさせていただいた法律にのっとって、その定められたところに従って措置をした、こういう認識であります。
池田(元)委員 すべての銀行は健全だったということを今もおっしゃいましたが、一つだけ申し上げれば、これはすべての人が納得されるでしょう。いろいろ材料はあるんですよ、それを健全でなかったという証拠は幾らでもある。
 それは、公的資金投入後の各行の自己資本から公的資金を引くと、三つの銀行の自己資本比率が六・九から七・三%になる。つまり、健全でない銀行だったことがわかるわけです。これだけ見ても、大手行がすべて健全だったというのは虚構であることは明らかだと私は思います。
 さて、柳澤大臣にお聞きしますが、大手十一行に投入している六兆円の公的資金を返済してもらう見通しはあるんでしょうか。
柳澤国務大臣 健全化計画におきましては、どういうふうな資金の回収を図るかということについては、剰余金の積み立てによる消却、返済ということがうたわれておるわけでありまして、私どももそのことを中心に考えております。
 現在のところは、委員御承知のとおりの損益状況でございますけれども、私どもとしては、彼らが、それぞれの各行が言う期限内でその返済が図られるように頑張ってくれるものと思っております。
池田(元)委員 もう少し率直に答弁をしていただきたいと思うんですが、公的資金投入の際は、各銀行は、今おっしゃったように、毎年の利益を積み上げた剰余金で優先株を買い上げるなどして国に返済すると言っていたわけです。しかし、剰余金が大幅に減って、今では優先株の配当原資にも事欠くありさまなんですね。こういう状態で公的資金の返済は到底無理ではないかと私は思います。
 また、主要行の転換型優先株五兆九千億円を普通株に転換したとすれば、銀行の株価が大きく落ち込んでおります、そういった状況から、多くの銀行で転換価格の下限価格を下回るわけですね。転換直後には含み損を抱えることになる。とにかく、配当のやりくりに苦しんでいる銀行が国に公的資金を返済するのは、今の段階、非常に難しい、こう言えるのではないかと思うんですが、再度お願いします。
柳澤国務大臣 現在は、経済のマクロの数字におきましても、日本経済としては一番苦しい時代、こういうことで、いずれ、二年くらいの後にはプラスの成長が行われるということであります。したがって、もう銀行経営といえども、もちろん、一番厳しいところでも健全性だけは少なくとも確保していかなければならないわけですけれども、収益力ということについて、これの拡充ということを考える場合には、やはりマクロ経済の回復というものも大事な要件だと私ども思っております。
 もちろん、それだけにかかわらないで、先ほど来池田委員が言われるように、収益性、収益力こそ銀行の力です。したがって、それを回復、向上させるようにいろいろ考えてもらいたいと思っておりますが、同時に、今言ったように、マクロの経済の動向も非常に大事で、そういうことが満たされるという経済運営を我々今心がけておりますので、そのことによって私は十分、この返済の期限どおりの実施ということも可能である、このように考えているわけです。
池田(元)委員 柳澤さんの金融行政についてさらに申し上げれば、九九年二月のこの予算委員会で、私は、当時の資本注入について、資産査定の基準も引き当て率も甘く、金融システムの不安は解消されない、結局問題は先送りにされる、いずれまた第二弾の資本注入があるのではないかと、三年前にただしたんですよ。
 それに対して、柳澤さんはこう言ったんです。今回の措置、つまり資本注入で、先生御指摘の不良債権の処理については、でき上がることを確信していると明確に述べているわけです。見通しが違ったわけですね。
柳澤国務大臣 なかなか難しい質問でございますけれども、それでは、九九年三月期の資本注入というのは何だったのか。これはもう、大幅な引き当て不足というものが起こっていたわけですよ。バブルの崩壊に伴う大幅な引き当て不足、それのためにやったわけです。
 では、その後の経済の動向はどうだったんでしょうか。経済の動向と全く関係なく、金融の経営状況は、これは普通の産業だって同じですよ、そういうものをやはり相関させて、我々は総合的に判断すべきだと思います。
 私は、言いわけはしたくありません。言いわけはしませんから……(池田(元)委員「言いわけばかりじゃないか」と呼ぶ)しませんので、私は、ただ、実態を見ていただきたいということを申し上げたいのでございます。
池田(元)委員 柳澤さん、私みたいな者でも、三年前に、その金融再生委員会といいますか、あなたのやっている行政は甘いから、また結局、第二弾の資本注入があるのではないかと私言ったんですよ。そうしたらあなたは、もう今回の措置ででき上がる、こうおっしゃったわけです。自分の言葉に責任を持ってくださいよ。
 私はこうも言ったんです。資本注入した三つの銀行については、資本が大きく損なわれている、時価で優先株を普通株に転換すれば、国の持ち株比率は五〇%から六〇%になる、こういう銀行の収益の拡大が見込めるのかどうかあなたに聞いた。そしてまた、後で後悔するのではないかとまで言ったんですよ。しかし、答えはなかった。しかし、現実はそのとおりになった。これでもあなたの責任はないんですか。
柳澤国務大臣 私、よく覚えているんです。
 ただ、あのときの、先ほどもちょっとおっしゃったんですけれども、九九年に入れた後において、そこから公的資金を減らす、そういうことによってその銀行の健全性あるいは自己資本比率を判断するという手法は誤りですということを私申し上げたんです。
 それはなぜか。それは引き当て率が、私が、あの資本注入をするに当たって、その前提として無理やりに引き上げた、したがって、その引き当てというものをやったという前提でやれば、それはやはり資本が低くなるというのは、これはもう算術の単純な結果です。
 そういうようなこともありまして、ただ、もう一つ申し上げたいのは、池田委員が言われた三行、私もよく記憶しております。その後どうか、なかなか難しいですけれども、池田委員があの当時論じたような形になっていない、私はそのように思っています。
池田(元)委員 延命しているだけじゃないですか。
 時間がありませんから、柳澤金融行政について三点を申し上げます。
 私は、今申し上げたように、あなたと当時から議論をして、残念ながらといいますか、あなたにとっては残念ながら、私の言うとおりになったんですよ。私ごときの発言でも、結局、見通しどおり、現実そうなったわけです。要するに、あなたは、健全だと言って経営者の責任も問わずに、銀行業界を緩ませてしまった。我が国の金融を機能しない状態に陥らせたんですよ。また、七兆五千億円余りの公的資金が返済する見通しが立たない、現時点では少なくとも立たない。また、そごう問題も論じたいのですが、そごう問題で表面化したように、長銀、日債銀の資産判定も誤った。
 私は、こういう三点を挙げますが、この三年間は、まさに失われた金融行政の三年と言って言い過ぎでないと私は思います。あなたの責任は重いですよ。率直に反省していただきたい。
柳澤国務大臣 私は、常に自分の施策あるいは政策、こういうようなものの展開に当たって責任も感じておりますので、その裏腹としては反省もしております。
 しかし、だれかが担わなきゃならないのです。私は、ですから、自分の力、任命権者はここにいらっしゃいますけれども、私が力の及ぶ限り、私は日本の金融システムの安定化のために頑張る、こういう所存です。
池田(元)委員 私が申し上げたように、これだけ柳澤さんが主導した金融行政については誤りや判断ミスが多い、そして現在の停滞を招いてしまった。今、任命権者とおっしゃいましたが、最後に総理大臣のお考えを聞きたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今までの池田議員の金融問題に関する御意見、御見識を激励と受けとめて、金融不安を起こさせないようなあらゆる手だてを講じたいと思います。
池田(元)委員 終わります。
津島委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。
 次に、前原誠司君。
前原委員 きょうは、まず朝銀につきまして質問をいたします。チョウギンといいましても、長い方ではなくて、朝の方のチョウギンでございます。
 防衛庁長官と外務大臣、そして国家公安委員長、これは治安、安全保障の問題でもありますのでいつ御質問をするかわかりませんので、ぜひ注意深くお聞きをいただきたいと思います。
 まず、この朝銀というのが信用組合として幾つかございました。幾つかございましたと申し上げたのは、最盛期で三十八の朝銀がありました。そして、今は一体幾つになっているかといいますと、経営をしているだけでいいますと、三つになっているんですね。合併と破綻を繰り返しまして、最終的に今、北東、中部、西、三つになっております。それで、四つの信組が今申請をされている状況であります。
 私は、まず、この問題についてのポイントとしてどういうことをお伺いするかといいますと、一般の金融機関である信組とこの朝銀についてはかなり内容的な違いがあって、公的資金の投入について同列に論じることはまかりならぬ、そういう観点から質問させていただきたいと思います。
 まず、破綻をした金融機関に対して今まで幾らの公的資金が投入されたかといいますと、十の破綻金融機関に対して金銭贈与が五千二百八十六億円、そしてRCCに買い取らせた資産買い取り額が九百四十五億円、そして、合計で現在まで六千二百三十一億円の公的資金が朝銀に投入をされております。
 それで、今、破綻金融機関で救済金融機関として見込みとしてあるのが、その六つの破綻金融機関の平成十三年度三月期における債務超過額が四千三百四十七億円、こういうことでございます。
 そこでまずお聞きをしたいのは、三十八あって、合併、破綻を繰り返し三つになっているわけですね。だれが考えても、この三つ、大丈夫かというのは考えることなのでありますが、今申し上げた北東、中部、西、二〇〇〇年の四月以降は金融庁の検査、監督になっていると思いますが、この三つの金融機関の検査状況について、あるいは金融機関としての経営状況について質問したいと思います。
柳澤国務大臣 今先生御指摘いただきましたとおり、北の方が朝銀北東、それから西の方が朝銀西、それから中部が朝銀中部ということで、この三行が受け皿ともなりまして自主的な営業を行っているということでございます。
 これらにつきましては、それぞれ受け皿銀行になる前に私ども検査を終了しておりまして、それに基づいて、受け皿として営業の譲渡を受けるに当たっての適格性もありというふうに判断をいたしまして、この九行の受け皿になっていただいたということでありまして、いずれも健全な金融機関として経営がなされている、このように認識しております。
前原委員 この三行は健全だということでありますけれども、破綻をしたこの朝銀の典型的な融資の例をちょっと、三つばかり物件を用いてお話をしたいと思います。
 まず、大阪府の高槻市で六百坪ぐらいの土地で、大体典型例というのは、初めは朝銀系が融資していないのです。例えばこの土地は、住銀リースがまず初めにお金を貸して、そして神戸商銀、これは合わせて七十四億円。そしてその後に朝銀大阪が、一体それに加えて幾らの融資をしたかといいますと、百十二億円の融資をしています。
 それから、謄本もございますけれども、東京都の文京区に朝鮮出版会館ビルというのがあります。まず、ここも、拓銀が三回にわたって十億ずつ融資をして、その次、住銀リースが十五億融資をして四十五億円融資をする。そしてその後に、ここからがおもしろい話なんですが、東京の文京区にある朝鮮出版会館ビルに、まず朝銀大阪が三十億円、そして次に朝銀東京が十七億三千万円、それから朝銀神奈川が十億円ということで、合計五十七億三千万円の融資をしている、こういうことなんですね。合わせて百二億三千万円の融資をしているということです。
 それで、これはRCCに送られて競売にかかりました。一体幾らだと思われますか。全部で百二億三千万円の貸し付けをしたこの物件、競売価格四億七千八百八十万円、これだけの価格になっているわけです。
 もう一つ申し上げましょう。東京都台東区にあります朝日輸出入商社ビル、これも、まず拓銀が四回にわたって小口でお金を貸して、合計十九億円。それから、次からまたあらゆるところの朝銀が出てきます。朝銀愛知十五億円、それから朝銀東京が今度は四回に分けてお金を貸しておりまして、その合計金額が三十億円、そして朝銀大阪が十億円で、また五十五億円。拓銀と朝銀この三つを合わせて七十四億円であります。それで、幾らで競売に付されたかということでありますが、二億円です。
 これは典型的な融資の例なんです。つまりは、一般の金融機関がまずお金を貸していって、そして、一般の金融機関がお金を貸さなくなったら、今度は朝銀が至るところでお金を貸していくわけですね。こういう形でどんどん焦げつかせているわけです。これは、後から申し上げますが、普通の融資じゃないんです。つまりは、ここで問題になってくるのは、そのお金が一体どこに流れたかということなんです。
 まず、私が問題だと思うのは、先ほど申し上げましたように、十の朝銀に対して合わせて六千二百三十一億円の公的資金投入がされたわけです。しかし、問題なのは、確かに、この十の朝銀の破綻時はすべて都道府県が監督をしていたころであります。だから、今、直接国には問題はないといっても、しかし、破綻をした金融機関に対して、どういうものだったかということを検査しないで金を入れるとは何事かという話なんです。そこの問題点を確認せずに公的資金投入を行ったことに対して、私は非常に大きな問題点を感じるわけです。
 まず、そこのポイントを、つまりは、どういう融資の焦げつきがあって、そして、なぜこれだけのお金が、預金額に対してこの破綻金額ってむちゃくちゃ大きいはずなんですよ、普通の一般の金融機関に対して。そこをちゃんと把握した上で、あるいはそのお金の流れを把握した上で、公的資金を投入されたんですか。伺います。
柳澤国務大臣 これは、細かいところまで言うとちょっと時間が長くなりますから、大宗のところで申します。
 私は、一昨年十二月に、当時、森改造内閣でしたけれども、入閣しました。一週間ぐらいの間に、私は、この破綻した朝銀に金融整理管財人を派遣しました。そういう決定をしたんです、それよりもはるかに前に破綻をしておったんですけれども。これは通常は、破綻金融機関と受け皿金融機関が名乗り出ますと、受け皿金融機関というのは通常は破綻金融機関と利益相反の関係になる。つまり、自分は変なものを抱きかかえちゃ困りますから、徹底的にデューデリジェンスをかけます、受け皿機関は。ところが、このような金融機関の場合には、果たしてそういうことが期待できるかというと、同じ朝銀の系統ですから必ずしも期待できない。そこで、時間がちょっとたったんですけれども、私は、この破綻した朝銀、それぞれの朝銀の経理内容を明らかにする、責任の所在を明らかにするということのために、改めて金融整理管財人を送ったのです。
 そういうことで、金融整理管財人がそれぞれの破綻金融機関の経営者になりまして、自分たちの資産をしっかり査定した上で受け皿金融機関に譲り渡した、あるいはRCCに買い取っていただいた、こういうようなプロセスをとっているわけですから、このところは、私どもは、通常、受け皿金融機関があらわれると、それはあえて金融整理管財人等は派遣しないで処理することがあるんですが、この場合だけはそういう異例の措置をとって公正を期した、こういうことでございまして、御理解を賜りたいと思います。
前原委員 私の聞きたいこととは話が大分ずれているんです。
 確かに、二〇〇〇年四月から金融庁の監督になりまして、五月に管財人を送られて、検査も行われているということについては、おっしゃるとおりだと思います。これは、いろいろな事案に対する冒頭陳述を読んでいましても、そういう事実が出てまいります。
 また、これも金融庁から事前に御説明いただいたんですが、民事責任の追及も刑事責任の追及もやっている、こういうことなんですけれども、要は、事の本質ではなくて、かなり上辺の事例で民事責任追及や刑事責任追及をしているわけです。
 どういうことかといいますと、これは今係争中の案件でもありますけれども、幾つかのこの問題についての検察から出された冒頭陳述に、これはまた、被告人がそれについては異議ありませんと認めているもののみを抜粋します。否認しているものは抜粋しません。認めているものだけ抜粋をすると、つまりは、それだけの追加融資、追加融資がどこに行ったかというところになると、答えは総連なんです、朝鮮総連。朝鮮総連に金が行っているわけです。それについての話は、一切、この民事責任追及、刑事責任追及ではないんですよ。つまりは、個人の背任、業務上横領とか、そういうものに責任をおろしているわけです。
 例えば、これは東京の朝銀信用組合の事案に対しての問題でありますけれども、総連から依頼があったという、その部分だけちょっと抜粋して読ませていただきます。
 朝銀東京は、かねてから朝鮮総聯幹部の依頼に応じ、債務者名義を康永官など多数の借名及び架空人として事実上無担保で、朝鮮総聯側への貸出を実行していたところ、とりわけバブル崩壊後は、上記貸出金の大半につき利払すら受けられない状態となっていたことから、これを隠蔽するため、朝鮮総聯財政局の康永官らの依頼に応じ、手形書換えによる弁済期の先延ばしを繰り返すほか、新たな借名を債務者名義として、事実上無担保で朝鮮総聯側への貸出を実行し、その金員を原資として既存貸出金の元金返済や利払に充当するなどの方策を採っていた。そのため、上記貸出金は増加の一途をたどっていた。
これを見ても、つまりは、朝鮮総連にお金が渡っていたということが冒頭陳述で示されて、それについて認めているわけです、この捕まった人たちは、名前は言いませんけれども。認めているわけです。つまりは、朝鮮総連の送金のために追加融資などが行われてきたということなんですね。幾つか例はありますが、時間がありませんので。
 では、どういう手口で。先ほど申し上げた、一般の貸し出しはまずは普通の金融機関がやって、その後、追加融資、追加融資で朝銀系がやってきたと。そして、そのものについてどういうやり方があったかということなんですけれども、今回、何人かの元総連の幹部の方々にお話を伺いましたけれども、要は、担保なんて関係ない、希望融資より多目に貸し付けて、浮いた金を献金させ、共和国に送金したりしていた、こういうふうなことを言っている人もいます。
 それから、争われた事案の中での事実ある問題は、架空口座への架空融資、自己貸し付けというのですか、それを行って裏金を捻出していた。そして借名口座、これはおもしろいと言ったらおかしな話かもしれませんが、自分の知らないままにお金を借りられているわけです。そして、朝銀が破綻をして、今、RCCから取り立てが行って、自分がお金を借りていたということが初めてわかる人たちがいっぱい出てきているんです、借名口座で名前が勝手に使われているから。そういう話が出てきている。あとは、先ほど言った追加融資。それから、勝手に預金が引き出される。
 これは、普通の金融機関じゃありませんよ。一番初めに申し上げたのは、要は、公的資金投入をした、しかし、法律に基づいてやられたのかもしれませんけれども、今申し上げたようないろいろな犯罪行為に基づいて、どこに金が流れたのか、そういった実態を把握しないまま公的資金投入するというのはけしからぬ話じゃないですか。総連へのお金の流れがあったかどうかというのは、政府として認められるかどうか。どなたでも結構です。答弁してください。
柳澤国務大臣 これは、一々、事案を私、今ここでにわかに指摘するだけの準備がありませんけれども、当然、貸し付けのものについてもそうした事案が発覚しているということは承知をいたしておりまして、そのこと自体がどうこうというのは、もっと具体のケースでないと何とも言いかねるわけですけれども、当然、民事、刑事の責任が不適当なことをやっている場合には追及されるということで、そういう活動が目下行われているというふうに認識をいたしております。
前原委員 ごめんなさい。要は、総連にお金が行っていた、こういう融資を通じて、あるいはいろいろな借名口座、追加融資、架空融資、そういうもので金が総連に行っていたということをお認めになるということですね。(柳澤国務大臣「そういう事例があった」と呼ぶ)そういう事例があったということは、金が行っているということをお認めになるということですね。
 つまりは、おっしゃるように、総連にお金が行っていたわけです。しかし、じゃ、いろいろな事案が今係争中でありますけれども、先ほど申し上げたように、個人の犯罪として扱われようとしている。これは、私は事実の誤認だと思いますね。あるいは事実を逆に隠ぺいする話になってしまうかもしれない。
 ここから総理にお答えをいただく場面がふえてくると思いますので、総理に向かってお話をしますが、今回、先ほど申し上げましたように、何人かの朝鮮総連の元幹部の方々にお話を伺いました。名前を出しちゃいかぬという方がほとんどでありますけれども、お一人は、全然構わない、国会で、予算委員会で名前を言ってもらうのは結構だ、こういう話もありました。
 その方は、韓光熙さんといいまして、朝鮮総連の元財政副局長の立場にあった人で、後から安全保障の話もいたしますけれども、実際上の、朝鮮総連の資産を預かっている関東興業という会社の専務取締役をやった人、そして、いわゆる朝鮮労働党の裏組織とつながっていたということを御本人もおっしゃっていた方であります。もちろん、その方がおっしゃったのですべて事実、前提としてお話をするつもりではありません。ただ、複数の方々のお話を聞く中で、共通していることがたくさんありました。
 まずは、各信組というのは出先機関だ。そして、朝信協というものがまとめているわけでありますけれども、これは在日本朝鮮信用組合協会というところがまとめているわけでありますけれども、これも事務局にすぎない。つまりは、元締めは朝鮮総連、人事権もすべて朝鮮総連が持っているというのが皆さんの意見です。
 これは、独立したいわゆる金融機関になっていますけれども、全部朝鮮総連の支店扱いになっていたということなんですね。これはきょうは問いませんけれども、これは厳密に言うと中小企業等協同組合法違反にかかわる可能性があるんですね。きょうはこれについては言いません。きょうは、問題の本質ではありませんので。
 つまりは、今申し上げたように、朝鮮総連が元締めで、朝信協は事務局で、そして各信組というものが出先機関であった、そして主要な金策、政界工作は許宗萬責任副議長が行っていた、これは複数の方々すべての共通したお答えでありました。
 つまりは、今回逮捕された康永官という財政局長さんがいるんですけれども、この人は、いわゆる許宗萬責任副議長の指示に従ってやっていたわけであって、使い走りであった、こういう話であります。そして、朝銀は総連の金庫でしかなかったというのが皆さん方の御意見でありました。
 それで、こういうことを今申し上げたわけでありますが、先ほど柳澤大臣が、朝鮮総連へ金が渡っていたことについては政府としてお認めになるということでありました。個人なのか組織ぐるみなのか、次の問題はここなんですね、ここ。
 いろいろ事情聴取を受けている人がいるにもかかわらず、朝鮮総連の本丸にはまだ行っていません。先ほど申し上げた許宗萬責任副議長のところには行っていない。この総連へのお金が、個人の罪状であるような業務上横領なのか組織ぐるみのものなのか、そこをはっきりしないことには、先ほど、一番初めの話に戻りますけれども、公的資金導入の国民的な理解は得られませんよ。
 そこについての認識と、その点をただす意思が政府としてあるかどうか、その点、総理、お答えください。
小泉内閣総理大臣 よく調査すべき問題だと思っております。
前原委員 ぜひこれは、今公の場で発言をされたので、組織ぐるみのものかどうかというものをしっかり調査していただきたいというふうに思います。
 その上で、参考までに申し上げます。複数の方からお話を伺った中で、朝鮮総連に対するお金というものは、先ほど申し上げたように、主要なものはすべてが許宗萬責任副議長からの指令であった。しかし、その指令というものは本国から出されたものである。そして本国に送金が、そのお金がなされていた。これもすべての方々の意見開陳なんですね。
 まちまちだったのは、朝鮮総連が今持っている資産額、これは伺った人によってまちまちでした。あるいは送金額についてもまちまちでした。
 ただ、共通している一つの大きなポイントは、大部分が船によって運んだ、北朝鮮に、そういう証言をされております。
 韓光熙さんも、自分も運んだとおっしゃっているんですよ、自分が運んだと。一九八九年に第十三回世界青年祭というのがあって、自分はそのときに二億円と五十万ドルを自分自身が持っていった、こういうことをおっしゃっています。あるいはほかの例としてよくあるのは、万景峰号というのが行き来をしているわけでありますけれども、その百五十人、二百人ぐらいに百万ぐらいずつ渡して、そして持たせる。こうすると、一億五千万とか二億円がそれで送れる仕組みになるわけですね。そして、税関に対する工作というものもしっかり行っていたということが言われていました。
 先ほど総理がおっしゃった、組織ぐるみの問題なのかそれとも個人の犯罪なのか、よく調べてみるということでありましたけれども、その調べる内容に今申し上げたような具体的な証言もあるわけです、本国送金の。その問題もしっかりとその中に含めて調べていただけるということをここでお答えいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 いろいろな疑惑に対しては、よく調査する必要があると思います。
前原委員 本国送金についても含めてお調べいただく、そういう理解でよろしいですね、総理。はい。それでは、ぜひ調べていただきたいと思います。
 私がここでこういうことを申し上げたのは、この間、ブッシュ大統領が来られました。それで、悪の枢軸ということで三つの国を挙げられました。その中で北朝鮮が入っているんですね、北朝鮮が。話を聞いておりますと、この国会で、テロ支援のための資金撲滅のための法案を政府として出される、こういう話でありますね。ここの問題をおろそかにして法律だけつくっても全く無意味なんです。だから、この問題をしっかり調べることが、実は今テロに対して、九月十一日以後、特に世界全体で取り組んでいこうという問題の核心なんですね。ここの点についておろそかにしたままやったらだめだということであります。
 先ほど、この本国送金についても含めて調査をいただくということでしたが、話をもとに戻します。
 こういういろいろな疑惑がある中で、今までお金が投入されたのが六千二百三十一億円。これは、国民が理解できると思いますか。明らかにしないで公的資金投入したんでしょう。これは私は、金融庁長官あるいは金融担当大臣の責任問題というのは大きいと思いますよ、これを看過したまま単にこの金を入れたというのは。この責任問題についてどう思われますか。これは国民は絶対許さないですよ。
柳澤国務大臣 これは、それぞれが金融整理管財人が派遣されておりまして、それで金融整理管財人が、第一次的には民事、刑事の責任追及の義務を負っているわけです。そういう方々がきちっと事態の調査をして、それで告発すべきは告発する、あるいは告訴すべきは告訴する、こういうことになっておるわけであります。
 したがって、今前原委員のお話を聞いておりますと、あの違反は一体何なんだろうなと。外国為替管理法の違反なのか、あるいは刑事犯としての横領、背任、こういう犯罪をやはりきちっと認識をして、今言ったように告訴、告発の司法手続に入っていくということだろうと思います。
 それから、先ほど個の問題に分解してしまうのはいかがかというのは、なるほど一つの視点だと思いますけれども、我々が与えられた法律というのは、やはり刑事責任、民事責任というのはかなりの程度個に分解されて責任を追及されるという仕組みになっているのは、これはもうそういうものだろうと思います。
 したがって、これが国際的な、例えば外国為替管理法にしても、私は基本的には、その持っていった人が、さあ外国為替管理法に照らして一体どういう違反行為を行っているかと、こういうように換言されざるを得ないというように思います。そういう手続を了した上で、我々としては預金保険法の規定に基づいてなすべきことをなす、こういうことに法律の執行者としてはならざるを得ないというように考えております。
前原委員 大臣、基本的な問題は、今おっしゃったのは、検査が甘い、そして状況把握ができていない、その上で法律を単に使ったという話なんですよ、今の話は。
 つまりは、実態調査は全然できていない。さっき池田議員の質問にかなり気色ばんでお答えになっていましたけれども、ほかの金融機関に対しても本当にちゃんと検査をやっているんですか。つまりは、個々の金融機関に対する検査が事朝銀の問題に対しても全然ざるだったということじゃないですか。
 つまりは、先ほど総理がお答えになったように、総連への送金もある、それはお答えになりましたね。本国送金の問題もある、そしてそれが具体的にどう行われてきたかということも調べるというふうにおっしゃった。まだ調べることがある中で、全体像がわかっていない中で資金を入れるというのは何事ですか。その責任の問題を言っているわけですよ、私は。
 これは総理大臣、今のお話を聞いていただいて、この公的資金導入、国民は納得しますか。
柳澤国務大臣 これは、私どもとしては、金融機関と貸出先の関係、この関係については調査できますよ。その先がどうなっているかというところまでは、私どもは調査の権限もないんです。要するに、そういう実定法のもとにおいて行政というのは運営をされているんです。
前原委員 総理、お答えください。
 要は、自分の庭しか掃除しないと。そして、自分の庭は掃除して、きれいになった部分については、あとはどうでもいいと。しかし、全体の、これは国民の税金を入れて、そして公的資金導入でこれを穴埋めしたわけでしょう。国民の税金を入れたにもかかわらず、自分たちの仕事をしたからそれで済むんだという話じゃないでしょう。
 そうしたら、総理大臣、こういう大臣を任命して、そして、ほかのことについてどこかで行政の責任があるはずですよ、そこには。それをほったらかして国民の理解の得られないような税金投入を認めているということは、任命権者、あなたの責任になるんじゃないですか、総理。答えてください、そのことについて。国民の理解を得られるかどうかということについて答えてください。
小泉内閣総理大臣 いろいろ疑念を抱かせるような過去の事情があったということは、今のお話でわかります。
 今後、よく調査して、実情を調べてみたいと思います。
前原委員 この公的資金導入が国民の理解を得られますかどうかということを聞いているんですよ。その辺について答えてください。――違う違う、総理に聞いているんだから。いやいや、冗談じゃない。総理に聞いているんだから。
津島委員長 柳澤金融担当大臣。(前原委員「いや、もういいよ、委員長は」と呼ぶ)
柳澤国務大臣 要するに私は……(前原委員「いや、あなたはもう自分のところしかきれいにしないと言ったんだから、もういいんだよ、あなたは」と呼ぶ)いや、それは……
津島委員長 答弁を求めました。
柳澤国務大臣 これは前原委員もよくお考えいただきたいと思いますよ。私どもは金融の担当者なんですね。したがって、私どもが命じられている法律というのは、何よりも預金者の保護なんですね。そういうようなことで預金保険法ができ上がっていて、それを執行しているということです。
 それで、民事、刑事の責任については、その金融機関と貸出先の間の問題を論ずる、まあ傍証としてはその先も考慮の中に入りますけれども、その先、その先というところまでは追及の権限はなしで、恐らくこれは、外為法違反とかいうようなことで、刑事犯そのものの問題として、国家公安委員会とか警察の問題になっていくんだろう、私はそのように思います。
前原委員 だったら内閣全体の責任だという話なんですよ、それは。質問に答えてください、総理。国民の理解を得られるかどうか、イエスかノーかだけでいいんです。一言で答えてください。
小泉内閣総理大臣 いろいろ御意見もありますので、よく調査してから判断したいと思います。
前原委員 調査してから判断しますと、もう金は入れているんですよ。金は入れて、戻ってこないんですよ。おかしいじゃないですか。入れたお金を調査してから判断しますと、いいか悪いかわかっていないのに、調査してから判断すると、お金は入っているじゃないですか、これだけ。おかしいじゃないですか、そんな答弁。総理として無責任ですよ。もう一度答弁し直してください、今の。
小泉内閣総理大臣 そういう点も含めてよく調査させていただきたい、こう思います。
前原委員 では、もう一つ質問しましょう。
 先ほど申し上げたように、六つの破綻朝銀に対してまだ未処理なんですよ。これについて、ペイオフが間近ですよね。どうするんですか、この問題。今おっしゃいましたよね、よく調査して判断するというふうにおっしゃいましたよね。
 まず金融担当大臣、あなた長いから。これ、もし公的資金導入するとなると、金銭贈与と資産買い取り額、幾らずつになりますか、入れるとなると。そのことだけで結構です。
柳澤国務大臣 これは、譲渡先が決まりますと適格性の認定をします。その後、ではそこに金銭贈与が幾ら必要かというような意味の必要性の認定というものをします。そういうことを経ないと明確なお答えはできかねる、こういうことです。
前原委員 先ほど申し上げたように、平成十三年度三月期で債務超過額が四千三百四十七億円あるわけです。これを上回るのは必至ですよね。今おっしゃったようなところで、お金を入れるという話になるわけないですよね、これは国民の理解からすれば。
 この点、総理、しっかりと国会で調査をして、そして判断の結果どうするかということを聞いてからこれについて処理をするということをおっしゃってください。
小泉内閣総理大臣 よく今の御指摘の意見を踏まえながら対処したいと思います。
前原委員 委員長にお願いいたします。
 調査の結果を予算委員会に資料として提出をいただきたいと思います。
津島委員長 理事会で相談して対応いたします。
前原委員 先ほど申し上げましたこの新たな公的資金投入問題というのは、これはもろ刃の剣だと私は実は思っています。
 これは、被害者は、大きく言えば二グループあるわけです。つまりは、真相が明らかにされないまま公的資金導入をされる国民、税金が使われる国民と、あとはこの朝銀というものをつくられた方々、在日の方々の、これは預金なんですよ。それがなくなっているわけです。言ってみれば、勝手に流用されたりしているわけです。もう一つの大きな被害者は在日の方々なんですよ、北の方々。
 ここは、私も、質問をする上で非常に悩んだことであります。公的資金投入をしなかったら、例えば、まだまだ人権というか人種的な差別がある中で、お金をうまく貸してくれないところもあるという話を聞きました。だから自分たちで民族系の金融機関をつくったんだと。そういう金融機関が機能しなかったときに、自分たちは仕事をやっていけないという人たちもたくさんおられますよ。となると、どうするかという話ですよね。
 私は、幾つか提案をしたいと思います。
 先ほど、総理が実態調査ということをおっしゃいました。私は、これも一つの大きな前提だと思います。つまりは、組織ぐるみなのかどうか、そして本国送金があったのかどうか、その点について、きっちり調べてもらって、予算委員会に提出をしてもらいたい。
 それと同時に、新たな信組が、先ほど申し上げたように、本店は朝鮮総連なんです。朝信協というのは、これは出先機関。そして、いわゆる金庫と言われている信組があって、そこにいわゆる人事権も何もない、上から言われたら金を出さなきゃいけないということで、こういう融資も今までやってきているわけですよ。
 つまりは、これからもし、先ほど幾つと申し上げたか、あと四つあるんですよ。信組が、救済金融機関の見込みのものが四つあるんです。これについて、明確に朝鮮総連との関係がない形で新たな金融機関が出発できるような担保がないと、私はこれを認可するわけにはいかないと思いますが、総理、いかがですか。
柳澤国務大臣 これら四信組からは、今、設立認可の予備審査の申請が来ておりまして、検討中でございますけれども、当然、私どもは、認可をする場合には、そうした何らかの組織的なものとその関係が断絶されて、確実な独立性というものが担保されなければならない、このように考えています。
前原委員 先ほどの検査の話からしても、言葉だけでは全く信用できませんので、そこのガイドラインというかフォーマットみたいなものをつくらないと、実際問題困っておられるのは、さっきも申し上げたように、在日の方々なんです。そこをしっかりつくって、国民にも在日の方々にも、こういった金融機関については朝鮮総連とは関係ないという形がわかるようなガイドラインをつくるべきだと思いますけれども、お約束いただけますか。
柳澤国務大臣 ちょっとガイドラインということの意味がよくわかりませんが、いずれにせよ、我々は金融業の認可をするわけでありますから、それについては、どこかの言うがままになるなどというような経営判断が行われるおそれがないように、これは確保していかなきゃならない。これは、一般の金融機関の認可におきましても、当然そういうことは確保されなければならない、こういうことになっております。
 ただ、あえてまたさらにその上に念には念を入れてということであれば、これについては何らかの措置ができるかどうか検討しなければならぬ、このように考えます。
前原委員 先ほど申し上げました組織ぐるみかどうかという問題、本国送金の問題、調査をしていただくというお約束をいただきましたし、今お話のあったように、総連との関係を完全に絶った形で、独立した金融機関としてということの担保を、おっしゃったようにお願いをしたいと思います。
 さらに、ちょっとこの問題と関連をするんですが、私は元総連幹部の複数の方からお話を聞いて、非常に怖いお話を伺いました。
 つまり、どういうことかというと、日本のバブルの破綻によって、あるいは朝銀の破綻、あるいはこういう国会の場でも取り上げられるような問題になっているということの中で、資金が送られていないということがあります。
 それで、学習組というのがあって、これは表の裏の組織だという言い方をされていました。どういうことかというと、朝鮮総連の裏組織だけれども、これはまだ表で、裏の裏の組織があると。つまり、これは、朝鮮労働党と直接に結びついている組織があって、不審船の問題とか、そして国内での工作活動というものについてはそういったところが中核を担っているという話を、これも複数の方々から聞きました。
 裏の裏の組織である朝鮮労働党統一戦線部の工作組織が日本にあるということを、国家公安委員長、お認めになりますか。
村井国務大臣 大変微妙なお話でございますけれども、いろいろな形で、いわゆる朝鮮労働党のいろいろな形での国内での動きというものが、それはあり得ることだろうとは私も思っております。
 ただ、それらにつきましては、私ども、いずれにいたしましても、十分な警戒感を持ちながら活動を続けなきゃいけませんが、私どもがどのような情報を現に持っておるかとか、そのようなあたりにつきましては、これは、大変恐縮でございますが、この場で申し上げることは遠慮をさせていただきたいと存じます。
前原委員 先般の海上保安庁と銃撃を交わした工作船、沈没をしましたね、扇大臣。あれについて、ようやく調査が始まったということであると聞いております。
 まず、これは総理がお答えになるのか、どなたでも結構なんですが、政府として、なぜあの船の帰属国の特定をまだやらないんですか。アメリカはあの船は北朝鮮の船であるということを言っているし、この間、アフガン復興会議のときに、あるアメリカの高官とお話をしましたけれども、はっきりドラッグだということを言っていましたね、麻薬だと。この国の特定について、なぜ国として、政府としてはっきりまだ物を申していないのか。
 そして、これから麻薬のものについてはふえていくだろう、防衛庁やあるいは海上保安庁が毅然とした態度をとるということになれば、当然、任務遂行のために、そういった工作船の武装度合いというものも逆に高まっていくだろうということを複数の方々がおっしゃっておりました。
 その船の帰属国の特定、そしてそういう問題について今後防衛庁それから海上保安庁はどう連携をするのか、その点について、まず帰属国の特定、そして海上保安庁、防衛庁の連携について御答弁をいただきたいと思います。
扇国務大臣 前原委員お尋ねのとおり、昨日やっと、ソナーで物体があるということがわかりました。そして、いよいよカメラを入れて、どの程度写るかわかりませんけれども、確実に、船名があるか、あるいはどのような様子になっているかをカメラでおさめます。そして、その次には、今回は人的に潜って、果たして引き揚げ可能かどうか、そういう手順を順次これから踏んでいきたいと思っておりますけれども、思ったよりも海が穏やかであったことだけは、昨日から本当に私はよかったと思っております。
 今先生が、どこの帰属かなぜ明快にしないんだとおっしゃいますけれども、今まであの沈んだ不審船の周りから取得した浮遊物、百数十点ございます。けれども、それらの中、そして遺体が二体、それぞれ、北朝鮮のものの浮き袋であったり、あるいはキャンデーがあったり、たばこがあったり、いろいろございますけれども、逃走途中には中国の国旗も上げてみた。
 だけれども、それがどれが本当なのか、正直申し上げて判断するに至らないというのが現状ですから、なお明快に、皆さん方の御協力を得て、また自衛隊の皆さん方の応援も得て、どこまで引き揚げて検査ができるか、今鋭意努力しているところでございます。
前原委員 もう時間になりましたので、来ていただいた方、申しわけないのですが、最後に総理にお尋ねをいたします。
 悪の枢軸という発言をアメリカがしましたね。そして、その中に北朝鮮が入っているということについて、政府としてそれをどう受けとめるのかということと、先ほど扇大臣が、情況証拠は挙がっているけれども、まだ特定するに至っていないということを言われましたが、これは、情況証拠が整って特定することになったら、国民にすべて情報公開をして、ちゃんとその説明をしてくれるのかどうか。
 その二点について、御答弁いただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ブッシュ大統領の悪の枢軸発言については、これはテロに対して毅然たる決意を表明したものであって、そういう中での北朝鮮に対するいろいろな懸念を示したものであると思いますが、かといって、話し合いの道を閉ざしたものではないということであります。
 また、日本としても、北朝鮮に対しては、正常化交渉、拉致問題を含めまして、粘り強く進めていく、この方向には、今まで変わっているわけではございません。
 また、現在の不審船問題につきましても、鋭意、特定すべく調査中でありますので、調査結果は国民に公表したいと思います。
前原委員 終わります。
津島委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。
 この際、川口外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。川口外務大臣。
川口国務大臣 原口委員から御質問のコンゴ大使館をめぐる問題につきましては、誠実に調査の上、御報告申し上げます。
津島委員長 次に、城島正光君。
城島委員 民主党の城島でございます。
 時間にかなり限りがありますので、ポイントを絞って、雇用政策について総理を中心に御質問をしたいと思います。
 今回の予算の審議を今しておりますが、最善の予算であるという政府側の答弁であります。総理、端的にまずお伺いいたしますが、現下の最大の問題の一つである雇用情勢、どういう御認識のもとにこの予算を編成されたのか、現状の雇用情勢についての御認識を伺いたいというふうに思います。
小泉内閣総理大臣 現下の雇用情勢は厳しい状況が続いております。そういう中にあって、限られた財政状況の中、雇用対策等必要な予算を編成するために今予算案を御審議いただいているわけでありまして、私は、今後も雇用状況には鋭意注意深く見守りながら、必要な雇用対策を打っていかなきゃならないと思っております。
城島委員 それで、竹中大臣にお伺いいたしますが、経済財政諮問会議の基本方針の中で、「構造改革と経済の活性化」という中の、特に「不良債権処理の影響に備えたセーフティーネットの充実」というところがありますが、そこに、「雇用情勢によっては、モラルハザードに留意しつつセーフティーネットの一層の充実を図る。」この「雇用情勢によっては、」というのは、具体的にどういう状況を想定しているんでしょうか。
竹中国務大臣 具体的にこういう何%の失業率を想定しているとか、そういう具体的な想定ではもちろんございません。
 雇用の情勢に関しましては、非常に不確実性が高いものですから、不良債権問題の償却、その進捗をあわせながら、慎重にこの事態を見ていかなければいけない。諸外国の例等々を見ても、押しなべて先進国どこもこの問題に悩んでいるものですから、慎重に見ようという姿勢を示したものであります。
城島委員 今の答弁を聞くと、現状でも厳しい雇用情勢あり、あるいは失業されている皆さんからすると、かなり失望する答弁だと思いますね。
 この数年間、御案内のとおり、雇用情勢は刻々と悪化しておりますが、私は、特にこの一年間の雇用情勢を見ていて、昨年の秋から、昨年七月に五%という危機ラインを突破して以降、一段とさま変わりしたような感じで、深刻化の度合いが一気に増してきているというふうに思います。
 その象徴的なデータが、昨年十一月についに非自発的失業者が自発的失業者を上回った。そしてこの間、さまざまなデータが、何カ月連続、例えば五カ月連続で非自発的失業者がふえている、あるいは月単位で完全失業率が最悪の数字を更新している等々、挙げれば切りがないわけでありますが、昨年の秋からの雇用情勢というのは一気に、危機ラインを突破して以降、さらに深刻化してきた。これは異常事態というふうに私はとらえているわけです。
 したがって、最初、総理の御認識も伺ったし、竹中大臣にもその雇用情勢のいかんによってはと。私は、もう既に「雇用情勢によっては、」というその表現の段階に入っているという認識をぜひ政府にしてもらわないことには、これは、とてもじゃないけれども、総合的な雇用政策、雇用対策はやはり出てこない。なかなか、なるほどと思う政策は、この一年私も随分ここで論議をさせてもらいましたけれども、依然として出てこない理由は、やはりこの現実的な今の雇用情勢の危機感というのが政府に伝わっていないんじゃないか、そういうふうに思わざるを得ないと思っております。
 それで、連合がこの二月に、現実の雇用情勢あるいは経済情勢をすべての地方連合会で調査したデータを、私はずっとくまなく拝見をし、この実態を私なりにもとらえてみたんですが、すさまじいまでの厳しい現実がこの中で報告をされているわけであります。
 まとめてみますと、現状は、地域経済はとにかく全国的に悪化を続けている、それでまた問題は、今後も明るい展望が見えない状況にほとんどの地域があるという報告が、ほとんどの地方から出されている。共通しているのは、求人が大幅に減少しつつあり、合理化、企業閉鎖が進み、地域経済に大きな影響が出て、かわる新たな雇用機会が生み出ていない。さらには、今も最初に申し上げましたように、失業者はここに来てさらに増加しつつあり、雇用保険受給者数が対前年比で二けた増という恐るべきペースとなっている地域がいっぱい出てきている。さらには、失業期間の長期化、そして非自発的理由による離職者が急増している。そして、中高年の失業者も増加をしている。また、ここへ来て、労働基準法を無視した解雇の相談が全国的に頻発をしているということであります。
 すなわち、今まで私もここで、去年の初めの予算委員会でも論議をさせていただきました。かなり失業率が高まった、しかし、その高まった中のかなりの部分が、当時までは、構造的、摩擦的失業である、したがって、そこに対しては、ミスマッチをいかに解消するかというところにまず全力を挙げるべきだという提起をし、坂口労働大臣もそういう方向での政策をとられてきた。しかし、ここへ来て、それプラスまさに需要不足による失業者が新たに加わってきている。今までの、五%に行くまでは若年層を中心としたそういうミスマッチ、プラス深刻な需要不足による中高年層のリストラによる失業というのが加わって、三百三十七万人という失業者になってきている。この実態の中での政策が私は必要だというふうに思いますが、労働大臣、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
坂口国務大臣 御指摘になりますことは、多少のニュアンスの違いはあれ、共有しているつもりでございます。
 今までいろいろの雇用対策を立ててまいりましたし、本年度予算におきましても三兆八千億という、小さいとはいいながら、大きな額でございます。そうした雇用政策の中できめ細かくやっているわけでございますが、しかし、失業率というのは、これは最後の総決算でありまして、雇用対策だけで決着のつく話でないことは今さら言うまでもありません。
 そこで、今私は、また後で出てくるのかもわかりませんけれども、今、ドイツやフランスそして日本との格差のペーパーもお配りをいただきましたが、これらのことを考えましたときに、確かにドイツやフランスは日本よりも多くのGDPでの比率で予算を投入していることは事実でございます。しかし、ここで我々が今考えなければならない、一つ大きな決断をしなければならないところに直面しているというふうに思います。
 それは産業政策との関連でありますけれども、いわゆる先端技術を中心とした産業を中心に生きていくか、それとも、もう少し幅広く、たとえ賃金が低い分野であっても、そこもあわせて生きていくかという選択に迫られている。ドイツ、フランスにおきましては、先端的な政策を中心にして産業政策が組まれ、そのかわりに、多少の失業率はあってもそれに対して対応をしていく。そして、ここに多額の予算を導入していく、こういう選択をしているわけでございます。
 日本の場合にもそうした選択をするのか、それとも、もう少し幅広い産業政策をとって、そして幅広い雇用をそこで拡大していくという対策をとるのか、私は一番根っこのところにその選択があると思っておりまして、そろそろ日本は、この選択をどちらにするか、どの辺にするかということを決定しなければならない時期に来ている、根本的には私はそう思っております。
城島委員 いや、大臣、そういうことをおっしゃいますけれども、それは方向性としてはわからないでもありませんが、その前にやるべきことがまだ山積をしている。今申し上げましたように、構造的、摩擦的失業に対する対応も極めて不十分、プラス需要不足の失業者がふえてきているという危機的状況に来ているんじゃないですか。
 そうしますと、例えば、端的に申し上げると、今数字をここでぜひ総理にも見ていただきたいのですが、圧倒的に雇用政策費の対GDP比は、今の日本とドイツ、フランス、ドイツに至っては日本の約七倍ありますよ、それからフランスに至っても六倍ありますよ。それで、上の方を見ていただくとわかるように、公共事業の割合と雇用政策費の割合というのは、ヨーロッパにおいてはほとんど同じ比率ですよね。今そういう危機的状況に来ているから、一遍にここまでというわけにはいかないことはわかりますが、この雇用政策費が日本がいかに低いかという実態ですよ。だから、前回、総理にもゼロが一つ違うんじゃないかと申し上げたのは、ここにあるわけです。
 私は、今でもできることというのはいっぱいある。この前、総理は、ハローワークの問題で民営化だというようなこともおっしゃいましたけれども、例えばハローワークも、今人員を調べてみると、ドイツでは八万人、アメリカは七万人、日本は依然として一万二千人。これはほとんど横ばいだ。そうすると、一般的に、これだけ状況が変化してくれば、例えば民間企業において見ると、全体の従業員は変わらなくても、一番必要なところにぐっとシフトする。多能工化じゃありませんけれども、シフトして、そういう必要なところに人員を投入し、もっと窓口もあけてというようなことを臨機応変にやっていく。それがほとんどされていないようなことが数限りなくあるわけです。
 ましてや、先ほど御紹介した地方からのかなり強い意見としては、いろいろな地域の失業問題あるいは再就職問題で、都道府県とその地域における、地方における労働局、全然連携がうまくいっていないという指摘は至るところから出てきているわけです。
 ということも含めて、それは、それに対する投資も必要でしょうから、そういったところには臨機応変に即投資をして、人員も傾斜配分するというようなことは今即できるわけです。と同時に、失業問題についての長期的な方向性の前に、確かに総合的な方針は必要だと思うけれども、そういうこともやるべきじゃないかというふうに私は思っているわけであります。
 それで、ちょっとぜひ今この段階において総理の御見解をもう一つ聞いておきたいのは、そういう極めて緊急的な、危機的な雇用の状況にあって、ワークシェアリングというのが今政労使の中で一つの大きなテーマとして上がってきております。これについての総理の御見解を承っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今お話を伺っていまして、雇用対策の難しさも感じました。
 というのは、確かに日本はヨーロッパに比べまして雇用対策費の対GDP割合は低いわけなんですが、それでは、一番手厚いと言われるドイツはどうか。日本の四倍以上の雇用対策費を投じていながら、失業者数は日本よりもはるかに多い。失業率も八%を超えています。だから、ここが非常に雇用対策の難しい点だと思うのです。雇用対策費用を手厚くすれば失業者が減ればいいですよ。実態はヨーロッパはそうなっていない、ドイツもフランスも。この辺を我々はよく考えなきゃいけない。
 と同時に、これから日本としても、失業者がふえておりますが、同時に求人数もあるわけです。このミスマッチ、あるところでは人が足りない、あるところは幾ら求人を出しても人が来ない、あるところでは職を求めたいんだけれどもなかなか雇おうとしない、このミスマッチをどうやって解消するか。それは、もうきめ細かい情報提供とかあるいは訓練等いろいろな方法が今ありますので、鋭意努力しております。
 また、ワークシェアリングという考え方につきましても、今、政府と使用者側、労働側、いろいろ協議を重ねまして、お互い仕事を分かち合いながらいかに雇用を確保していくかという点につきましては、たしか三月中に一つの結論がまとまるような方向で今厚生労働大臣を中心にされまして協議を進めておりますので、そういう方向を見ながら、お互い失業対策にいかに有効な対策はないものか、いい知恵を出し合いながら努力をしていきたいと思っております。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
城島委員 総理とその部分論議をしたいわけでありますが、ドイツ、フランス、確かにそういう側面もありますが、これだけ投入しているからこそ徐々に改善と今の水準があることも事実なんですね。そこの見方というのは、これだけあっても失業率が高いじゃないかというような一面的な見方だけじゃなくて、やはりそれだけの投入をしているということにおける今の成果みたいなものもあるわけですし、今の各国政府も、失業率、まさに日本以上に低下させる目標を持ちながらやっている。それは、少しでも目標より高いと、このドイツの選挙なんかでもかなり政権は厳しいと言われるほど、ヨーロッパは雇用、特に失業率については敏感な国々ですから、そういう中でやっているということであります。
 そういう中で、時間が来ましたけれども、やはり今一番大事なワークシェアリングについては一言ぜひ申し上げておきたいわけでありますが、これをうまくやるには、その資料の下にありますが、日本の問題としては、やはり労働時間の問題があるというふうに私は思っております。
 ここにあるように、依然として長期間、どんな状況になっても、この時間外労働は全く減っていないということであります。少なくとも、本当に雇用を何とかしたいというふうに小泉政権が思うのであれば、いろいろな手だての前に、例えば、少なくともサービス残業というようなことは法的に違法ですから、これを徹底して取り締まる、あるいはそういうことをやるという姿勢を出すことによって、これは数字上でありますけれども、社会生産性本部の研究データは九十万人の雇用増だ、こう言っているわけですね。それから、残業全部をなくせば百七十万というわけですから、例えば、その半分でも一割でも大変救われる話ですよ。しかも、それは当然やるべきことだ。そういうあらゆる手だてを尽くしてでもやろうという姿勢をぜひ出していただきたいというふうに思うわけです。
 そういう面でいうと、時間外労働を削減していくためにも、世界の中で一番低い時間外割り増し率、これはどこよりも一番低い二五%。アジアに行ってもフィリピンとアフガニスタンぐらいじゃないですか、日本と同じ比率というのは。あとは圧倒的に、ほとんど世界は五〇%ないし一〇〇%という、例えばそういうところもこれは政治主導で流れをつくっていけるわけですから、そういうことも含めてぜひやっていただきたいというふうに思っております。
 実は、前回論議をして、今回も竹中大臣とサービス分野の五百三十万人というところをもう少し論議をしようと思ったんですが、問題提起だけをして、次回ぜひ詳細をやりたいわけでありますが、五年間で五百三十万人、これについては、我々がポイントのところをどう分析しても、とてもじゃないけれども、現実性はほとんどない。
 アメリカの実態を調べても、アメリカはこのサービス分野で、五年間で七百二十七万人ふえた。しかし、これを日本の人口に置きかえると、これは三百六十万人になる。しかも、その間のアメリカのGDPは四・三%平均で伸びていて、そういう状況。これから、この基本方針を見ても、日本の場合は数年間ゼロとか一%でしょう。どうやってこういうことができるのかということは、規制緩和等も含めてみても、個別に見ても、現実とはかなり裏腹だというようなことがございます。これはまた、別途論議をしたいと思います。
 時間が参りましたけれども、最後にちょっと。実は、あすの経済財政諮問会議の資料が今インターネットで流れている。内容は、不良債権処理、金融システムの安定、市場対策、貸し渋り対策、四点になっておりますが、これは、金融情報会社のブルームバーグで今流れている。しかも、午前中のうちに、ちょっとこの中で指摘をさせていただいたような不良債権処理については、主要行に対して、十一社に公的資金を入れるという、社名も含めて流れている。
 これはまさしく、こんなことをやるとすれば小泉内閣の徳政令じゃないですか。これが、今の状況に対する本当のデフレ対策と言えるのかどうか。急でありますが、これをお尋ねしたいと思います。
竹中国務大臣 その通信社で何が流れているか私は全く承知しておりませんが、今お伺いする限り、そういう報告を私自身全く受けておりませんし、あした何を議論するかという素材は、きょうの予算委員会が終わってからじっくり検討することになっております。
城島委員 ここにこうやって具体的に、早急に取り組むべきデフレ対策要旨ということでばっちり流れておりまして、これは一体どういうことなんでしょうかということであります。
 特別検査の状況を踏まえ、問題企業について、市場に評価される再建計画の策定、法的手続による会社再建などで速やかな処理を実施する、緊急支援十一社の名前も出て流れている。とんでもないことだということを申し上げて、終わらせていただきたいと思います。
津島委員長 これにて城島君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増委員 今の城島委員の質問で、何が本当で何がうそかわからなくなってきておりますけれども、さて、森金融庁長官に伺います。
 昨年十月二十四日の銀行協会との意見交換会でのいわゆる手心発言等、長官のたび重なる問題発言が日本の金融市場に対する信頼を損ねているというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
森参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の意見交換会での話等、さまざまに報道されていることは承知しております。私としては、事実に反していることが多いわけでございまして、いろいろ申し上げたいこともあるわけでございますけれども、ただ、金融庁長官としてこのような記事が出ることをどう思うのかと言われれば、それは私の不徳のいたすところであり、反省して今後に生かしていきたいと思います。
達増委員 信頼の回復ということが我が国経済立て直しのための最大のポイントであると思いますので、そのことを指摘させていただきたいと思います。
 次に、政治家による省庁に対する不当な圧力の問題について伺います。
 政官業癒着こそ我が国最大の構造問題であると考えております。政治家による省庁に対する不当な圧力というものがある限り、行政の改革もまた財政の改革もあり得ないのでありまして、民間活力も抑制されてしまいます。さらには、日本のガバナンスとか、ガバナビリティーですとか、統治システムがそもそも機能していないんじゃないかということで、いわゆる日本売りの要因にも最近なってきている政官癒着の問題であります。
 これにつきまして、最近の報道によりますと、こう書いてあります。小泉総理は、二十二日、行政に対する政治家の不当な圧力を排除するため、全省庁で国会議員らの意見や注文を文書に残し情報公開の対象にする体制を整える方針を固めたということを記者団に述べられたそうですが、これは本当にそうするんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 これは、特定の議員からの不適切な意見については、惑わされないようにしっかり対応するように、これは外務省だけの問題じゃない、各省庁、いろいろな与野党を通じた議員の意見はあるでしょう、それは排除するものではないけれども、間違いのないような対応をしなさいということであります。
 その際には、現在の行政情報公開法では、これは原則として情報公開の対象とすると定めておりますので、これを有効に活用すべきではないかということであります。
達増委員 よくわからなかったんですけれども、要は、与党であれ野党であれ、政治家が省庁に意見してきたことについては紙に残すということなわけですか。
小泉内閣総理大臣 その際に、プライバシーを侵害するおそれのある個人情報とか、あるいは国家の安全、外交上の機密に携わるもの、どうしても機密にしなきゃならない問題はあると思います。そういう点についても、部局、上司、よく相談しながら、メモをとるべきものはとるべきだと。その一つのルールを、どういうルールでメモを残しておくべきかというものもよく検討してくださいというふうに指示しております。
達増委員 まず紙には残すということで、あとは残し方をこれから詰めるという趣旨と理解いたします。しかし私は、それではまだ足りないんだと思っております。
 イギリスでは、もっと厳しい政官のけじめがつけられていまして、与党は、大臣、副大臣、政務官、内閣の中に入り、行政の中に入った議員を通じて行政を直接指導する。政府・与党は、与党の中できちんと議論して政策を詰めて、大臣、副大臣、政務官を通じて行政を執行する。野党の側は、これはもう国会の場がありますから、国会の場で政府に対して意見を言う。
 個々の議員が個別に省庁に働きかける、個々の議員が個別に官僚に接触することを禁止する、そういうイギリス式の政官のけじめを導入するのが適当と思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今の日本の国会議員と役所、国民との関係からいうと、そこまでやるのは無理でしょう。無理だと思います。それは、議員ですから、いろいろな住民の声を聞いて、役所がおかしいよと言えば言いますよ。それまで禁止するのはいかがなものかと思いますね。
達増委員 総理は、衆参の予算委員会などでも、議員が、これは与党であれ野党であれ、役所に意見を言うこと自体はいいんだと。いい意見、悪い意見があるから、いい意見は受け入れて悪い意見は受け入れなきゃいいとおっしゃっているんですけれども、それでは伺いますけれども、例えばODA予算、ODAの中に草の根無償というのがありまして、この草の根無償は現地で使うのが原則だから、現地から東京の会議に来る旅費には草の根無償のODAのお金を使ってはいけない、そういう意見が政治家からあったとしたら、それはいい意見になるでしょうか、悪い意見になるでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、いい悪いはともかくとして、その役所がよく判断すればいいのじゃないのかと。私は、そういう意見を言ってくることまでいかぬとは言いません。
達増委員 もう一つ伺いますけれども、色丹島、今はあそこに診療所が日本の援助で建っているんですけれども、色丹島に診療所がなかったときに、色丹島に診療所を建てるべきだ、建てろということを言ったとすると、それはいい意見でしょうか、悪い意見でしょうか。
小泉内閣総理大臣 これも、いい意見、悪い意見はともかく、どこに病院を建てろとか、診療所を建てろとか、道路をつくれとか、川をつくれとかいうのまで私はとめる必要はないと思うんですよ。それは、どう判断するか、どういう状況でそういう発言をしているのか、地域の事情がどうなのか、また、それが適切かどうかという判断であって、私は、与党であれ野党であれ、一切、大臣なり副大臣、政務官以外は役所と口をきいちゃいかぬ、そこまでしなくていいんじゃないかと思いますが。
達増委員 いい意見、悪い意見、どちらとも言えないと、二つの質問に対して続けて同じ答えだったと思うんですけれども、実はほかにも、国後島に宿泊施設を日本の援助で建てる場合に、それは同じような気象条件である根室管内で工事の実績のある業者、そういう条件をつけて入札すればいいという意見があったらどうかとか、あとは、これは青木参議院議員が実際やったケースですけれども、十三の道路公団の工事の延期について延期を取りやめるべきだという意見、これはいい意見か悪い意見かと。四つ、いいか悪いかを聞こうと思ったんですけれども、実は、いい意見、悪い意見というのはわからない。また同時に、いい意見であり悪い意見でもあるわけですね。
 総理お得意の演劇の世界、シェークスピアのマクベスというお芝居には、予言をする魔女が出てきますけれども、いいは悪いで、悪いはいいというせりふがあるんですよね。政治家の役所に対する圧力というのは大体そういうものだと思います。それぞれの現場で考えると、確かに、そこにダムなり道路なりなんなりできれば、そこの人たちにとっては助かる、いいことだ。しかし、そういう意見を言った人のところにだけできるとしたら、これは全体で見て公正を明らかに害しますよね。ですから、そういうのを自由に認めた上で、いい意見だけ聞けと役所に言うという仕組みは機能しないと思うんですよ。
 ですから、イギリス式が参考になるわけですが、特に日本の場合には、イギリスは慣習としてそういう制度が確立しているわけで、日本の場合は逆に政官業の癒着が慣習として確立しているわけですから、制度的にそこを断ち切ることをやっていかなければならないということを申し上げたいと思います。
 次、施政方針演説への昭和天皇の和歌の引用について、これもまた総理に伺います。
 施政方針演説の結びのところで、「私は、初めての所信表明演説で、改革に立ち向かう決意を国民に問いかけました。さきの臨時国会における演説では、変化を恐れない勇気を求めました。改革の痛みが現実のものとなりつつある今、これまでさまざまな苦境を乗り切って新しい時代を切り開いてきた日本と日本人を信じ、未来への希望を決して失わない強さを改めて求めたいと思います。」という総理の言葉を受けて、
  ふりつもるみ雪にたへていろかへぬ松そをゝしき人もかくあれ
という御製が引用されている。その歌について、総理は、「雪の降る、厳しい冬の寒さに耐えて、青々と成長する松のように、人々も雄々しくありたいとの願いを込められたものと思います。」というふうにおっしゃっております。
 よく考えたんですけれども、「青々と成長する松のように」とおっしゃいますけれども、松と成長という言葉はどうも結びつかないんじゃないかと思いまして、杉ならわかりますよ。杉であれば青々と成長するというイメージがわきますが、どうも日本語の世界では、松というものは、変わらないこと、特に、永久、不変性、そういう象徴に使われるので、実際、昭和天皇も、「いろかへぬ松そをゝしき」、色を変えない松が雄々しいのだと、変わらないことが勇気のあることだと歌っているわけですね。
 このときの事情、昭和二十一年の正月の歌会始、これは敗戦後、占領後初めての歌会始でありまして、言論統制、教科書の墨塗り、公職追放等々、GHQによる日本大改造が始まっていたところであります。ハーグ陸戦規約は、占領軍が被占領国の政治や制度をいじることを禁じているわけですけれども、それに反して、世界史上例を見ないような外国による改革ということが日本で大々的に始まっていた。その昭和二十一年の夏から東京裁判が始まり、戦犯は既に逮捕されて取り調べを受けているところでありました。一方、新憲法というのはまだ全然できておりませんで、GHQも草案作成をまだ始めていない段階。そういう状況で、昭和天皇は、明治憲法下における国家元首、そして統治権の総攬者としてこの歌を歌っていらっしゃるわけであります。
 そういう立場からこの歌を解釈しますと、これはもう、国民よ、変わるなと。GHQ、占領軍は、日本を変え、日本人をも変えようとするだろうけれども、勇気を持って自分自身を変えてはいけないということを言っている。もうこれはGHQに対する心のレジスタンスを指導しているようなものだと思うんですが、ブッシュ大統領来日直前にこういう引用を施政方針演説の中でやるのは変なのではないでしょうか。どう思いますか。
小泉内閣総理大臣 和歌のよさは、人によっていろいろな解釈ができるところというのも和歌のよさなんですね。いろいろな余韻が残る。そのときの心象風景、人々によって、感動する人しない人、いろいろあるんですね。
 私は、あの昭和天皇の御製は、敗戦後まだ半年たたない、恐らく多くの国民が敗戦に打ちひしがれているだろう、天皇陛下もそうだったと思います、しかし、あの松のように厳しい寒さに耐えて、このような敗戦で色を失ってはいかぬ、動じてはいかぬ、そして祖国再建に雄々しく立ち向かおうじゃないか、そういう願いを込めて歌われたんだと私は感銘しながらいつもこの歌を見ていたんです。これは、我々が学ばなきゃならない心だなと。
 ですから、松は成長しないんじゃなくて、松も成長するんですよ。そして、いっときの厳しさに色を失う、そういうぐらぐらしないで、新しい希望に向かって立ち向かおうといういい歌だなと思って引用させていただきました。
達増委員 私も、昭和天皇がどういう思いでこの歌をお詠みになったのか考えるために多分ヒントになると思ったのは、終戦の詔勅です。玉音放送、八月十五日、総理が去年靖国神社に行くと言って行かなかった日、その八月十五日に出た終戦の詔勅、
 耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、もって万世のために太平を開かんと欲す
これは、国民に痛みに耐えろと言っているんじゃなく、自分自身が耐えがたきを耐え忍びがたきを忍んで、もって万世のために太平を開かんと欲すとおっしゃられたわけですが、その後、最後の段落の最後の文章は次のようになっています。
 よろしく、挙国一家子孫相伝え、かたく神州の不滅を信じ、任重くして道遠きを思い、総力を将来の建設に傾け、道義を厚くし、志操をかたくし、誓って国体の精華を発揚し、世界の進運におくれざらんことを期すべし
神州の不滅、そして国体の護持、そういう変わるなということを最後のところで言っている、その思いを、終戦、占領下最初の歌会始で詠まれたんだと思います。
 やはり、特に歴史的な和歌ですから、その歴史的背景と切り離した解釈というのは余りよくないんじゃないかと思うんですが、そういう歴史的背景からいいますと、やはりここは、勇気を持って変わらないでいろというところにポイントがありまして、総理は、逆にこれを、変わる勇気を持てという文脈の中で引用されています。アメリカン・スタンダード的なグローバル化が進み、市場原理が優先されていく中で、日本も変わらなきゃならないというところでこの和歌を引用するのは、総理の方針と百八十度違う引用になっていると思うんですが、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 それはどのように解釈されても御自由だと思いますが、「いろかへぬ」というのは、うろたえるなという意味もあるんです。「いろかへぬ」、うろたえてはいかぬ、敗戦にうろたえてはいかぬ、雄々しく立ち上がろうじゃないか。そういうふうにとれないですか。
達増委員 いずれにせよ、施政方針演説というものは、隅から隅までが批判にさらされる政治的文書であります。その中に天皇陛下の言葉を安易に引用し、みずからの主張の正当化を図るというのは不見識だと思いますが、この点は総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 いろいろな、感銘を受けた過去の先人の文章なり言葉を引用するのもいいのではないかと思っております。
達増委員 いずれにせよ、昭和天皇が歌ったのは「いろかへぬ松」ということで、青々と成長する松ではないということを指摘したいと思います。
 次に、ブッシュ大統領が先週この国会で演説をされた中に、次のようなくだりがありました。
 過去においては、我々米国も経済問題を抱えてきました。一九七〇年代後半から一九八〇年代前半にかけて、米国の競争力は弱く、銀行は問題を抱え、高い税率と不必要な規制がリスクを冒す活動に水を差し、革新を抑えていました。そして、米国は、これらの困難を減税と規制緩和によって克服しました。
 大統領の同行記者の一人、ニューヨーク・タイムズのデビッド・サンガー記者も、スピーチ作成に携わったアメリカ側のスタッフに取材して、あの一節には、小泉首相も同じようにやれば経済危機を乗り切れるというメッセージを込めたつもりだったというふうに取材しております。
 まず、竹中大臣に伺います。
 日本政府として、このメッセージ、減税と規制緩和によって経済困難を克服したんだというメッセージをどのように受けとめますか。
竹中国務大臣 日米、時代も違うし国も違います。置かれている立場が違いますから、一国の政策をそのまま別の国にという形で議論するのは適切ではないというふうに基本的には思います。
 私自身の解釈を申し上げますと、アメリカの八〇年代の復活は、まさにサプライサイドの強化によって行われた。そのアメリカのサプライサイドの強化を行うに当たって、貯蓄・投資を引き出すというようなことが一つの重要なポイントになって、さらに労働供給をふやすということが重要なポイントになって、つまり、資本と労働の量的な不足があった、だからそこで減税してインセンティブを与えたというのがレーガノミックスの基本的考え方であったと思います。
 日本もサプライサイドを強化しなければいけないんですが、日本の場合はアメリカと違って、資本と労働が不足しているわけではない。そのアロケーションといいますか、配分がゆがんでいるというところにこそ問題があるのであって、量的な不足ではない。したがって、アメリカの政策をそのまま日本に当てはめるということにはならないというふうに思っています。
達増委員 自由党の減税という政策、そして規制緩和という政策、今の日本に非常に有効だと思っているんです。特に減税については余りほかの党は指摘していません。共産党は消費税減税を主張していますけれども、ほかの党は余り減税について言わないんですが、所得税、法人税あるいは相続税、これは場合によっては消費税でもいいと思います、やはり減税によって、個人、一人一人のもと、あるいはやる気のある企業のもとにお金を残すことで、二十一世紀、これからこういう時代になるんだとそれぞれが判断し、国際化時代に対応するよう自分は英会話学校に行くぞとか、あるいはITの時代、コンピューターを買おうとか携帯電話を買おうとか、そういう判断を一人一人が行ってみずからを通じて投資を進めていく、そういう個人個人の公共投資といいますか、個人のもとでお金が使われるわけですが、それが公的に大きく意味を持っていく。それは、ただの減税やあるいはばらまき的なお金の還元ではできず、規制緩和等の政策が同時に伴わなければ機能しないんですけれども、やはりそういう理念でいくことが今の状況を突破することに必要だと思うんですが、これは総理の考えを伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、減税を歓迎しない人はいませんよね。小渕内閣でもかなり大胆な減税をやってまいりました。なかなか効果を発揮しない状況でありますが、今、やはり減税を考えるにおきましても、税制全体を考えていかなきゃいけないと思います。それから、財政状況も考えていかなきゃならない。規制改革、これも必要だと思っています。
 今、政府としても、規制改革に意欲的に取り組んでおります。外国の例も参考にしながら、あるときには減税が効果を発揮するでしょう。規制改革も必要だと思います。また、競争、コンペティションという例を出して競争の重要性をブッシュ大統領は指摘されましたけれども、公正な競争を図れるような、いろいろな、ある面においては規制改革、規制緩和と規制強化、両面あると思いますけれども、そういうことも大事ではないかと思っております。
達増委員 今の御答弁の中で、小渕総理のときの減税は余り効き目がなかったとおっしゃったのはちょっと聞き捨てならないんです。といいますのは、ここ七、八年、九〇年代後半以降今に至るまで、小渕総理の一年半だけが、唯一日経平均が一年半継続的に上昇した期間でありますよ。あのとき、一万二、三千円だった株価が二万円まで上がっていた。あのときの経済政策、それは、実は自由党が連立に参加していて、自由党の政策を丸のみすることでスタートした政策だったんですが、あれが今も続いていれば、日経平均は今ごろ三万円台に向かって、三万円を突破するかしないかということが議論されていたと思います。
 そういう今の経済情勢で、実は総理は、減税を含めた税制改革については一年かけて議論をすると。その中では、何やら消費税の増税についても視野に入っているようなことが取りざたされているんですが、実は、九〇年代後半、日本経済、その景気の波と日経平均株価の波というのは、大体二つの山、ちょうどきれいな二つの山をつくっていまして、一貫して上昇、一貫して下落、一貫して上昇、そして今また一貫して下落しているんですが、その二つの山、つまり一貫して上昇していたものが一貫して下落ということになったここ七、八年の二大経済失政というのは、後のものから言いましょう、後のものは、自自連立解消ということで自由党の経済政策が行われなくなったのが二つ目の山。一つ目の山は、九六年六月の橋本総理のときに、消費税引き上げをやるぞと、あれはもう決めただけで株価の下落が始まっているんです。
 消費税率引き上げというのは、実行したときだけではなく、もうやると決めただけで株価を下げる効果があるわけでありまして、今、消費税率アップが取りざたされるというのは非常に危険だと思います。ですから、この機会に、今の段階で政府としては消費税率アップは考えてないとおっしゃるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、上げるとも下げるとも言っておりません。あるべき税制、経済活性化にどのような税制がふさわしいか、そういう観点から幅広く議論をしていただきたいと思っております。
達増委員 最後、産業政策について幾つか伺いますが、去年の秋、一次補正のときに、経済産業省が産業クラスター計画というものを打ち上げました。これは、地域における科学技術の振興と新産業、雇用の創出ということで、地域の特性を生かした技術開発の支援、起業家育成施設の整備、産学官のネットワークの形成ということで、東北とか関東とか、そういう地域ごとに産業クラスター、塊をつくっていく。
 ところが、ことしの予算案、平成十四年度本予算案を見ていたら、文部科学省予算で知的クラスター計画というのが入っているんですね。それで、中身は、地域産学官連携基盤の整備ですね。産学官連携事業等を通じ、地域に蓄積された研究成果について、企業化に向けた成果の育成を強力に支援。どっちも二百億円くらいの予算で、片や産業クラスター、片や知的クラスター。
 それで、漏れ聞くところによりますと、両者の上に地域クラスター協議会というのをつくって、経済産業省と文部科学省、自治体と経済界の四者が入って、それで調整しようという。ただでさえ、産業クラスターだけでも複雑でわかりにくいと思っていたんですが、クラスター、クラスター、クラスター、これではもう全然機能しないんじゃないでしょうか。
 それであれば、もういっそのこと、各都道府県等の自治体は、産学連携で地域経済、そういう誘致企業に頼らない地場の新産業をつくっていこうということをもう十年以上ずうっとやってきているんで、いっそ地方分権、地域に主導権、自治体に主導権を渡してしまった方がむしろうまくいくんじゃないかと思うんですが、まず、平沼大臣に伺います。
平沼国務大臣 文部科学省と当省のクラスター計画というのは、いずれも、地域において産学官の連携で、そして地域を活性化させて、国際的に通用する、そういう地域からの活力を出していこう、こういうコンセプトであります。したがいまして、予算編成のときも当然連携をしなけりゃならない、こういう形で、実は、総合科学技術会議あるいは内閣、そういったところから予算編成も相連携して予算編成するようにという形で、その連携はしっかり構築をされています。
 そしてさらに、それが今度は実行段階に入ったときもお互いに一体化をしてやる、そのために、今御指摘の地域クラスター推進協議会というものを、四者が入って、年一回しっかりと、どういう形で進んでいて、そしてばらばらにならないか、そういうことがあっちゃならないという形で、そういう推進協議会を開くということと、さらに、年一回、計画としてはその成果を確認し合う、そういう体制をとっております。ですから、そういう意味では、御指摘のような不安を払拭してしっかりとやっていかなきゃいかぬと思っております。
 もう一方、さらに御指摘の、地域に任せたらどうか、こういう御指摘ですけれども、しかし、こういう産業クラスターにしても、いわゆる知的クラスターの創成事業にしましても、例えば、経済産業省が持っている機能は、そういう意味では、新しい技術開発ですとか技術支援ですとか、あるいは販路の支援、そういうことは一地域に限定しないで、広範な視野でそれぞれ持っている力を発揮するというところにやはり意味があると思っております。
 ですから、そういう中で、御指摘の点も踏まえながら、そういうことが起きないように私どもは全力で努力をしていきたい、このように思っています。
達増委員 時間が来てしまいましたが、これは総理にも伺いたかったんですが、小泉内閣は、金融や財政のマクロ政策に比べ、ミクロな経済アプローチが必要な産業政策というところが非常に弱いんじゃないか、生身の人間が生身の暮らし、生身の仕事をしていくところが弱いんじゃないかということを指摘して、質問を終わります。
 ありがとうございました。
津島委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 午前中に引き続いて、地域金融機関、地域の経済の問題をお聞きしたいと思います。
 昨年から、信用金庫や信用組合など地域金融機関の破綻が連続しています。私ども日本共産党は、地域金融対策委員会をつくって、破綻した信金や信組の実情と地域経済への影響を把握するために、全国各地で調査をしてまいりました。私自身も、栃木に伺ったり、あるいは千葉や埼玉などにも伺ってまいりました。
 午前中の当委員会で、金融庁の検査により破綻に追い込まれた船橋信用金庫の問題を取り上げました。船橋に本店がある、通称「ふなしん」と言われているこの信用金庫、七十年にわたって地域経済に根づいてしっかりと支えてきたところであります。こういうところが破綻に追い込まれている。
 そこで、総理にお尋ねしますが、長期や短期の資金を信金や信組からの借り入れに依存している中小零細企業にとって取引先の金融機関が破綻するということがどんなに大変なことか、地域経済にいかに深刻な影響を与えるか、総理はどのように御認識をお持ちでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それぞれの地域で、中小の信用組合あるいは信用金庫等、大変頼りにされている金融機関だと思っております。
 そういう機関の中にも、今、時代の新しい流れに、どう生き残っていくか、必死の努力をされているんだと思いますが、中には、そのような要請にこたえられないでやむなく退場を余儀なくされるような機関も出ているということは認識しております。今後、中小の金融機関も、健全性を保ちながら、地域のいろいろな要請に対してどのように対応できるか、その努力が期待されているところではないかと思います。
塩川(鉄)委員 その地域で頼りにもされ、また必死の努力をしてきた信用金庫の一つがこの「ふなしん」だったわけですけれども、これは、午前中の審議の内容をかいつまんでお話ししますので、ぜひそれをお聞きいただきたいんですが、この「ふなしん」が一月の二十五日に突然破綻をしました。何であんないい信金が破綻するのか、「ふなしん」があったからこそやってこれた、これからどうすればいいのか、地元では大変大きな不安と怒りが渦巻いております。
 私も関係者の方からいろいろお話を伺いましたが、その中で、金融庁の強引な検査が破綻の背景にあることがはっきりしてきました。最初から、検査官が、信金には正常先などまずないだろう、こういう発言であります。債務者の区分についても、検査官側と意見が違ったときに、信金の職員が、長年の取引の実績や経営者の人柄、商売の実績、商売の可能性などを幾ら説明しても、聞く耳を持たない。その上、ここの何が正常なんですかと机をたたきながらの検査が行われていた。しかも、前回検査のときには認めていたルールを今回変更して行う。こういう中で、多額の引当金を要求し、結果として債務超過に陥らせて破綻に追い込んだものです。
 午前中のこの質疑を通じて、二つの重大問題が明らかとなりました。その一つは、金融検査官が行った不動産担保評価の問題であります。
 そこで、柳澤大臣にお伺いしますが、不動産鑑定士の評価はそのまま一〇〇%認めていたのに、実際「ふなしん」では、八〇%だとか九〇%と、それより低く見ることを強要したわけであります。それが原因で、直接のきっかけで十億円の引き当ての積み増し、債務超過で破綻に追い込まれた、こういうことが大きな疑惑となっております。
 柳澤大臣御自身も、不動産鑑定士の評価は原則そのまま採用すると述べておられましたが、大臣、この点を確認されたでしょうか。
柳澤国務大臣 不動産の評価につきましては、路線価であるとか公示価格であるとか、そういうような公的なものを使用した場合には何%かの掛け目を掛ける、不動産鑑定士の方が直近、非常に最近時において改めて鑑定をしてくださった場合には、基本的にはその鑑定の価格を一〇〇%認める、こういうようなことでございます。
 ただ、それは原則でありまして、鑑定士の鑑定にも簡易鑑定であるとか、そういう特別な範疇の鑑定があるようでございまして、そうした場合にはそうした背景を勘案して一定の掛け目を掛けざるを得ない、こういうことが行われているということでございます。
塩川(鉄)委員 同じ時期に検査に入った東京ベイ信用金庫、東京ベイ、東京湾ですから、この本店というのは千葉県の市川市なんですよ。船橋の隣なんです。この東京ベイ信金に対しては、不動産鑑定士の評価、一〇〇%で見ているんですよ。それなのに、「ふなしん」については九割で見るようなことも行われている。
 おかしいじゃないですか。調査の時期もまさに十二月の末から一月の前半。そっくり重なっている。同じ地域の同じ時期に行った検査がどうして違うことになるんですか。しっかりと調査すべきじゃないですか。改めて柳澤大臣にお聞きします。
柳澤国務大臣 それぞれの鑑定士がどういう状況で、いつ鑑定をなされたかということも、実はかかわりがあります。
 私もいろいろな鑑定の例を、実際の検査のマニュアル等を勉強するときに聞いたりいたしておりますけれども、検査官からして若干疑問に思うような鑑定もあるということが事実ありまして、そうしたときには一定の掛け目を掛けさせていただくというようなことでございます。
 今回の例は、簡易鑑定ということをどうとらえたかという問題でございまして、そういう資格の問題と背景の問題とを恐らく総合的に勘案してそのような掛け目をお願いしたんではないか、このように考えます。
塩川(鉄)委員 そんな答弁では、破綻に追い込まれたという信金の関係者の皆さん、取引業者の皆さん、納得できませんよ。きっぱりと疑惑を晴らすような説明をしてもらいたい。
 もう一つ、午前中の審議で浮き彫りとなった問題があります。「ふなしん」破綻の経過の異常さの問題です。
 大蔵省からの天下りの「ふなしん」の理事長がさっさと破綻申請に判こを押して、立て直す余裕もなかったということが言われておりました。この「ふなしん」の破綻発表されたその日に受け皿となったのが東京東信用金庫、「ひがしん」と言われているところであります。
 この「ひがしん」についてですが、金融庁が任命した「ふなしん」の破綻処理に当たる金融整理管財人団の中にこの「ひがしん」の職員が既に入っていた。「ふなしん」破綻の記者会見の場には、東京東信金、「ひがしん」の理事長も同席をしているという、普通では考えられない話であります。
 「ふなしん」の金融整理管財人団の中に「ひがしん」の職員が既に入っている。柳澤大臣、この点、それは誤解ではないか、精査をすると述べておりましたけれども、確認されたでしょうか。
柳澤国務大臣 ちょっと、今お話しになられたことは、破綻の記者会見に「ひがしん」の理事長が同席されていたという御発言であったようにお聞きしましたけれども、そのようなことでよろしいんですか。(塩川(鉄)委員「肝心なのは、管財人団の中に「ひがしん」の職員がいる」と呼ぶ)
 これは管財人ではないんです。管財人は我々が任命しておりまして、そういう方ではないんですけれども、管財人というのは、実際上すべてをやれるわけではありません。そこで、管財人が自己の責任において一定の数、補佐人というものをお願いするということになっておりますが、その中にいたというような話もありますが、もうちょっと私ども、お時間をいただいて調べさせていただきたい、このように思います。
塩川(鉄)委員 その金融整理管財人団の中に、金融整理管財人補佐をする担当補佐人というのは何人いるものなんですか。管財人団の、二人の管財人を補佐する担当補佐人というのは何人ですか。
柳澤国務大臣 補佐人は四名この場合おりまして、そのうちの一名に近隣の金融機関からお願いするということで、適切な人材ということで登用されたということであります。
塩川(鉄)委員 近隣というのはどこですか。柳澤大臣。
柳澤国務大臣 補佐人の四名のうち二名が東京東信用金庫出身、残り二名は千葉信用金庫出身ということでございます。
塩川(鉄)委員 私も確認しました。東京東信用金庫の本部、担当別一覧表の中に、人事部付でこの二人の人物の名前があります。箕輪と天野という人物であります。
 そこでお聞きしたいのですが、金融整理管財人の任務というのは何ですか。
柳澤国務大臣 これは、金融整理管財人というのは文字どおり、経営者にかわってその金融機関を譲渡のときまで管理するということでございます。また処分も譲渡という形ですることが多い。それと同時に、先ほど来ほかの質問のときにお答えしたように、民事、刑事の責任追及もする、こういうことでございます。
塩川(鉄)委員 経営者にかわって管理をする、つまり「ふなしん」の立場で、いわば売り手の側で資産、土地や建物や貸付金を管理して、利益を多く出るように保全することでしょう。幾らで売るのかが最大の問題じゃないですか。こういった金融整理管財人の中に買い手の側の人間がいる、おかしいじゃないですか。買い手側の「ひがしん」の職員が売り手側の管財人団の重要なポストにいる。箕輪という人物は審査部ですよ。こういうかなめのところに買い手の側の「ひがしん」の職員がいる。どう考えてもおかしいじゃないですか。答えてください。
柳澤国務大臣 これは、あくまでも権限ある者というのは金融整理管財人です。当方が任命した者です。それの補佐人ということでございますので、今言ったような利益相反のところで、実際そういったことが起こるようなことにはタッチさせない、そういうことで運営されている、このように考えます。
塩川(鉄)委員 本来高く買ってもらおうとする人間の中に、その側に、安く買いたい、いいとこ取りをしたいという側の人間が入っている。利益相反だ。根本的なルールに反するんじゃないですか。改めて答えてください。
柳澤国務大臣 選定の範囲からしますと、そういうようなお話が起こってくるということも私も理解できないではありませんけれども、これは実際、利益相反というのは、現にそこのところは配慮して、そういうことの起こらないようにということで運んでいるわけでございますので、単なる補佐人と、事務をやっている人間と、実際の権限ある者として今言ったような業務に携わるということとは、やはりこれは区別してお考えいただきたい。
塩川(鉄)委員 担当補佐人の四人というのは、管財人団ということで管財人と一体に仕事をしているわけでしょう。管財人と別にやっているわけじゃないですから。具体的に作業をしている審査部の担当者、管財人団の中に、買い手の側の「ひがしん」の人物がいる。どう考えてもおかしいじゃないですか。納得できない。それが金融庁のルールですか。改めて答えてください。
柳澤国務大臣 いや、まず第一に、破綻というときにはその人間はいないです、これはまず。当然のことです。破綻をして、その破綻の処理の一環として金融整理管財人を任命して送り込んでいく、こういうことです。
 そこで、その後、その事務を実際につかさどるというか、補佐をさせるために近隣の金融機関の適切な人材というものが登用されているわけでございまして、譲渡先の選定等にかかわる経営判断には、これには携わらないということでございます。
塩川(鉄)委員 信用金庫というのは幾つあるんですか。近隣の信用金庫は幾つあるんですか。「ひがしん」だけじゃないでしょう。東京ベイ信金とか銚子信金とか、幾つも信金はあるじゃないですか。何で、近隣というんだったら、ほかの職員を置かないのか。おかしいじゃないですか。なぜわざわざ「ひがしん」なのか、答えてください。
柳澤国務大臣 近隣が幾つもあるとおっしゃいましたけれども、それは確かに幾つもあるわけでございますが、その補佐人を選定するときには、どこが譲渡先になるかというのは、当然のことながら決定しておりません。そういう意味合いで、近隣の、特に、委員も御指摘のように、まさにその地域のことがわかった方がこういう地域金融機関の場合はいいということで補佐人に任命させていただいている。しかし、譲渡にかかわる、あるいは管理処分にかかわる重要なことについては、そこは十分配慮してこの人の補佐を得ているということであります。
塩川(鉄)委員 十分配慮するんだったら、買い手側の人間をどかせばいいじゃないですか。別な人を任命すればいいだけでしょうが。何で銚子信金とか東京ベイ信金とか、ほかの職員、近隣の事情のわかる、「ふなしん」と営業区域が重なるようなところ、そういったところの職員を配置しないんですか。その問題を問われているんでしょう。
柳澤国務大臣 これは、そのときには、今この譲渡先と最終的に決まった東京東信用金庫というものがそういうことになるということがわかっていない段階なんです。したがって、もし東京ベイ信金というようなものを選んだときに、そこが譲渡先になったら同じような問題が起こる、こういうことでございます。
 したがって、我々としてやらなければならないのは、そういう人の補佐を求めても、そのことによって影響されないということが最も大事だということにならざるを得ないと思います。
塩川(鉄)委員 利益相反という疑惑は全然晴れていないですよ。どうなんですか。信用金庫協会から管財人を派遣してもらうとか補佐人を派遣してもらうとか、いろいろやりようはあるじゃないですか。何でわざわざ買い手の側の人間を配置したのかと。一度配置をしたんだったら、かえればいいんですよ。かえればいいんじゃないですか。かえるべきじゃないですか。どうですか。
柳澤国務大臣 この今の私の説明が私の立場から御説明できることですけれども、それ以上の具体の事務の運び方等においてどのような配慮をしたかということについては、これは、いま少し時間をいただいて、調査の上、御答弁させていただきたい。
塩川(鉄)委員 私は、今回の問題を見て、非常にひどい破綻が行われていると。ここの「ふなしん」でこんなことが行われているんだったら、この一年余りで行われた五十三の信用金庫、信用組合の破綻、全部疑惑の話になってくるんじゃないですか。五十三の信用金庫、信用組合の金融整理管財人の管財人団の名簿、しっかり出してもらいたいと思いますが、どうですか。
柳澤国務大臣 塩川委員が今、破綻について疑惑があるというふうなお話でございました。補佐人の人は、今言ったように、整理管財人が選ばれて後の話なんです。破綻をした後の話なんです。ですから、そのことは、破綻そのものの妥当性、適正性、こういうようなことと関係ありません。これはもうはっきり申し上げておきます。
塩川(鉄)委員 破綻についての疑惑というのは……(発言する者あり)
津島委員長 御静粛にお願いします。
塩川(鉄)委員 不動産鑑定の問題で言ったじゃないですか。これについては答えてないでしょう。調査するという話じゃないですか。
 問題は、買い手の側の「ひがしん」の人間が売り手の側にいる、こんなことを行われたら、好き勝手に自分のいいところだけいいとこ取りをする、こんな勝手が許されるということでしょう。その問題をはっきりさせてくださいと言っているんですよ。だからこそ、五十三の信用金庫、信用組合について、この破綻の際の金融整理管財人の管財人団の名簿、全部出してください。
柳澤国務大臣 これはもう事実の問題でございまして、しかもかなり詳細な、実務的な問題でありますので、いま少し時間をいただいて御報告をさせていただきたい、このように思います。
塩川(鉄)委員 総理に率直に伺います。
 今のやりとりを聞いて、どうお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 疑惑を持たれないように、よく調査して報告する必要があると思います。
塩川(鉄)委員 資料の提出を理事会に求めるものです。
津島委員長 総理からの御答弁もございましたが、理事会でよく協議をして対応いたします。(発言する者あり)佐々木君、私が申し上げたわけですから。
 はい、塩川君。質問を続けてください。
塩川(鉄)委員 ですから、この間の信用金庫、信用組合の破綻について、極めて重大な疑念が浮かび上がったということなんですよ。これについてきちんと説明する責任が、金融庁、政府にある。金融庁の説明責任、きちんと果たしてもらうということをぜひともやっていただきたい。
 その上で、改めて総理にお聞きしますが、このような信金の破綻の問題というのは、この一つの地域にかかわるものじゃない。やはり、総理の地元の横須賀にあります湘南信金の服部理事長、この方も、このような信金の問題について、破綻の問題について率直に、この貸し渋りに対する金融検査マニュアルが問題だ、金融検査マニュアルがあることによって貸したくても貸せないような状況になっている、こういう問題について率直な意見を述べられております。
 改めて、金融検査マニュアルの適用をやめる、信金、信組に対して必要なマニュアルの見直しを行う、このことが必要だと思いますが、率直に総理にお伺いします。
小泉内閣総理大臣 それは、厳格な資産査定のためには検査の指針というのは必要でしょう。これは私は、必要な指針として適切かどうかというのはまたいろいろな御意見があると思いますが、検査の指針というのは必要だと思いますよ。
塩川(鉄)委員 終わります。
津島委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。
 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問させていただきます。
 私、先日の本委員会の質疑で、今のようなデフレ経済のもとでの構造改革は、成功するどころか、そういったことを考えた国さえもないというようなことを申し上げました。
 総理は、構造改革は断行する、ネバーギブアップだとおっしゃっております。また一方で、あしたにも総合デフレ対策が発表されるということになっております。
 構造改革を推し進めるということはデフレをさらに促進させる、悪化させる、そういった認識はおありかということを午前中、竹中大臣にお聞きいたしましたら、両面あるというお答えでございました。そのときに反論しませんで、総理がいらっしゃる前でお話をと思ったんですが、確かに両面あります、ありますが、圧倒的にデフレ圧力の方が強い。これは、緊縮財政あるいは不良債権の処理、規制緩和、すべてがデフレ圧力につながるわけですね。
 そういった、よく報道で例えで言われておりますように、構造改革というアクセルを踏みながらデフレ対策というブレーキをまた踏む。同時に踏んで、車は動くわけありません。踏み続けると、いずれこれは車はぶっ壊れてしまうわけですね。車はぶっ壊れても、日本の経済がぶっ壊れてしまったらこれは大変なことになるわけです。そこのところを私は申し上げているわけでございます。
 まず、現下の日本の経済、これは単なるデフレなのか、それとも、もう既にデフレスパイラルに陥っているのか。総理、どう認識されておられますか。
小泉内閣総理大臣 インフレスパイラル、デフレスパイラル、よくスパイラルという言葉が使われますが、らせん状にどんどんどんどん物価が落ち込んでいく、そういう状況にはまだないと思っております。
横光委員 私はちょっと認識が違うんですね。
 午前中も言いましたが、この執拗な資産デフレによる不良債権の拡大、そしてまたデフレ期待の蔓延によるリスクテークの萎縮、そして産業空洞化による輸入デフレの増加、こうした悪循環の共生が全体としてデフレスパイラルを増幅している、私はこう思っているんですよ。これは、九〇年代後半から景気の減速とデフレが相互に起きる緩やかなデフレスパイラルにもう入っている、そう見る経済学者も多いわけですね。そういった状況から、現在、マイナス成長が続いております。物価も継続的に下落しております。明らかに、これはもうデフレスパイラルの渦中にあると判断してもいいのではないか。
 もし、実態はデフレスパイラルであるにもかかわらず、楽観的な見方で実態を見誤り、適切な対策がとられなかったとすれば、そのツケは結局は国民生活にしわ寄せが来るんですよ。
 ですから、少々厳し過ぎるくらいの見方をして万全の対策をとることの方が、国民生活を守る、そういった観点からすぐれているのではないか、そういった意味で私は今質問をしているわけでございます。
 そういった中で、目下最大の問題は、地価の下落や、あるいは株価の低迷などで資産デフレが執拗に続いております。その一方で、実体経済のデフレも悪化している。そのために、銀行は幾ら不良債権を償却しても新たな不良債権が発生して、その発生額の方が大きいんですよ。つまり、不良債権がネットでふえ続けているという非常に厳しい現状なんです。竹中大臣、そうですよね。ですから、この不良債権処理を進めるにはデフレ対策が最重要課題であるということは、これは認識は一致しているんです。
 しかし、その一方で、総理は、構造改革を推進する、ネバーギブアップだ、その御意思がある。構造改革で緊縮財政をとり、産業空洞化が進み、そして規制緩和で競争も増せば、短期的にはデフレ圧力が一層強まるのは避けられないでしょう。そうなれば、不良債権も当然ながらさらに増加するはずですよ。
 ですから、要するに、不良債権処理と構造改革とはデフレ環境のもとでは短期的には矛盾し合う政策目標であり、この二つを無理やり同時進行させると経済をデフレの大恐慌に陥らせることにもなりかねないと思って、心配して私はこの質問をしているんですよ。
 ですから、アクセルを緩めるのか、ブレーキを緩めるのか、どちらかをやらない限り、さっき言ったような状況になる。不良債権処理を最優先するのであるならば、他の構造改革のスピードを緩めるとか、あるいは短期的な政策の整合性、プライオリティーに欠けているのではないか、こういうふうに思うわけです。総理はいかがお考えですか。
小泉内閣総理大臣 構造改革を進めなきゃならないということは、これは小泉内閣の一貫した方針ですし、その中でデフレ対策をする、第一次補正、第二次補正、十四年度予算も三十兆円の国債を増発を認めております。
 社民党の横光議員も、今緊縮予算と言っていましたけれども、社民党はそれじゃ三十兆円の枠を取っ払ってもっと国債発行しろと言っていますか。言っていませんね。ここが私は大事な点で、決して緊縮予算じゃありませんよ。税収は五十兆円ないんです。三十兆円も国債増発しているんです。そこの認識は、私は、どう思っておられるかわかりませんが、現在の予算を緊縮予算と見るのは間違いだと思っています。
 そういう中で、できるだけ構造改革に伴うデフレ効果を阻止するということで、ぎりぎり、苦心惨たんで補正予算を組み、雇用対策をやって、今この本予算を通すことが最大の景気対策だということでやっているわけですよ。その点も御理解いただき、ただ一方だけ進めているわけじゃありません、構造改革を進めながらデフレ対策をやっているという点も御理解いただけると思うのであります。
横光委員 私たち、財政の健全化というものに反対しているわけじゃありません。しかし、今のこういった状況で、果たしてそれがいいのかということを言っているわけです。
 ですから、緊縮財政だけじゃなくて、いろいろな、産業の空洞化とか規制緩和とか不良債権はかなりデフレ圧力になるということを言っているわけです。ですから、片一方の、ブレーキを緩めるとか、どちらかのプライオリティー、要するに優先事項を決めるべきではないかと私は申し上げているんです。でなければ、大変な状態になっていくんじゃないか、にっちもさっちもいかなくなるんじゃないかということを訴えているんです。
 また、総理はかねてから、経済が危機的状況になれば大胆かつ柔軟に対応するとおっしゃっておられましたし、金融危機は必ず回避するともおっしゃっておられます。それでは、総理にお尋ねをいたしますが、一体どういう状況になれば大胆かつ柔軟に政策転換をするのか、そのシナリオを明確に示していただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 どういう状況が金融危機か、それは、金融機関の不安が多くの企業倒産なりあるいは連鎖的な破綻につながる、これがひいては社会不安をもたらす。そういうような状況には陥らないような対策をとらなきゃならない。ただ、具体的にこういう状況だというのは、なかなか、今言わない方がかえって金融危機対策というのにはいろいろな手が打てるのではないかと思っております。
横光委員 社会不安が起きたときとか言われますが、そういったときにはもう遅いんですよ、総理。
 ですから、今、小さい、細かいことは言わない方がいいなんておっしゃっていますが、とんでもない。やはり、株価がどこまで下落したときとか、あるいは生産が何%落ち込んだとか、あるいは失業率がこのままずっとどこまで過去最高を更新し続けたときとか、消費が何%まで落ち込んだときとか、それぐらいのことを具体的に明示しないことには、これは日本の国の経済政策運営に対する内外の不信感が増すばかりなんですよ。ですから、私は言っておるんです。
 竹中大臣、いかがですか。こういった項目はどこまで来たときにはこれはやるんだと。
竹中国務大臣 以前、予算委員会でも御議論させていただいたことがありますが、やはり危機というのは、予想できないような状況になって、経済がコントロールできない、アンコントローラブルになるということだと思うんですね。
 したがって、例えば消費がたとえ大幅に落ち込んだとしても、それが極めて一時的な要因で、すぐ回復すると見込まれるならばこれは危機ではないわけで、したがって、この指標が何%落ち込んだらというような議論にはやはりなじまないというふうに思います。極めてトータルな判断になるんだと思います。
横光委員 どうも、そういった政府の対応が、私は、内外の、そしてまた市場の不安をかえってあおっているんじゃないかという気がします。
 あした、政府総合デフレ対策を発表するということになっておりますが、いろいろな対策、いろいろなことが検討されているかと思います。その中で言われておりますのが、日銀の金融緩和という話もある。しかし、これももう実際問題、極限まで来ているんじゃないんですか。
 ですから、これの次の一手として、インフレ目標の設定とか、そういった話さえある。しかし、これも午前中言いましたように、デフレ期待をインフレターゲットに転換するということは並大抵のことではないし、現実的ではないんじゃないか、あるいは問題解決にはならないんじゃないか、そういう気もしております。
 また、為替相場、これを円安方向に誘導し、輸出の拡大を図り、そして物価を押し上げるという議論もございます。しかし、これも、御存じのように、アメリカのオニール財務長官は、人為的に為替を安くすることはその国の経済を弱くする、こういうふうに発言しているんですよ。危険な策だと思います。
 私は、そういった中で、このデフレ対策の最重要課題は、いかにして消費者の需要の拡大を図るか、冷え込んだ消費者のマインドを回復するか、この一点にあると思うんですが、総理はいかがお考えですか。
小泉内閣総理大臣 それは、消費需要が回復するというのは必要なことだと思いますが、それをどういうふうにやっていくかという点についてはいろいろな議論があると思います。今、デフレ対策の一環としてそれぞれ策を講じておりますが、方法論につきましては、それぞれ各党においても違うのではないかと思っております。
横光委員 現実は本当に消費者のマインドが冷え切っているんですね。十二月には就業者数が前年比七十八万人減少している、完全失業率は御案内のように五・六%と過去最高を更新し続けている。消費の減少もいよいよ本格的になってきておるんですよ。きのう発表されました百貨店とかスーパーとか、あるいは外食業界団体の発表でも、すべてにおいて前年同月に比べてマイナスなんですね。今こういう状況である。個人消費は、今年度、既に二期連続でマイナスになっているんです。その上に、今後構造改革を強引に推し進めれば、企業倒産やリストラを通じて雇用や所得環境のさらなる悪化が起こるのは避けられませんよ。一層消費の落ち込みが危惧されるばかりでございます。
 そのために、政府は税制改革等も、塩川大臣、やられているかと思います。しかし、これも、いろいろな案をお聞きすれば、いわゆる住宅取得資金、この贈与の非課税枠を拡大しようということも言われておりますが、若年層の住宅取得あるいは買いかえを促して個人消費回復につなげようというプラスは確かにあろうかと思います。しかし、これはこの前三百万から五百五十万に引き上げられたばかりなんです。この効果は出ているんですか。この効果を見きわめた上で、今度さらにその六倍近い三千万まで拡大しようとしているわけですが、私は、非常にあいまいな形で、つけ焼き刃的に考えているんじゃないかという気がしてならない。
 そして、これはあくまでも高所得者、いわゆる資産や土地を持っている人たちのための優遇税制とも受け取られる。それはそれで効果がないとは言いません。しかし、そういった高額所得者の税対策を考えるのであるならば、中低所得者層の税対策も考えるべきである。ところが、その中低所得者の税対策は、課税最低限を引き下げようという、むしろしわ寄せを逆に今与えようとしているわけですよ。ですから、構造改革の痛みをより弱者に強いてまで改革を行おうとする小泉内閣の姿勢が浮き彫りになるばかりだと言わざるを得ません。
 低所得者層ほど消費が萎縮しているという現実を、総理、忘れてはならないと思います。昨年の夏以降、実質所得は既に減少をし続けておりますが、低所得者層は、可処分所得に対する支出割合の大きい医療費や光熱費などの料金が高どまりしているために、デフレで耐久消費財やあるいは衣料品などの物価が下がっても、それらにまで消費が十分に回らない、つまり、デフレのメリットさえ受けられないというような状況にもあるんです。
 例えばアメリカでは、福祉の一環としてフードスタンプなど、低所得者層が食料品を購入する際に使える食品券を政府が支給しております。日本でも、いわゆる低所得者層の消費の冷え込みを抑えるために、あるいは逆にもっと消費を拡大するためにも、こういったアメリカの福祉政策、いろいろなセーフティーネットを参考にしながら、日本でもそういったセーフティーネットに取り組むべきだという気がいたしておりますが、いかがですか、総理。
塩川国務大臣 これは、恐らく横光さんのおっしゃっているのは、消費に対する優遇措置、インセンティブとして何か還元措置を考えたらということと結びついておるように聞いております。
 そこで、消費でございますけれども、最近、私はいろいろな面から検討いたしましたら、エンゲル係数は逆に下がっているようなことを聞いておるんです。実際には私、計算したんじゃありませんが。そうすると、どこでふえているのかというと、消費のふえているのは教養関係とか教育関係、そちらの方で消費がふえておる。そしてまた、一般の消費動向を見ましても、高級品が伸びて普通品が伸び悩んでおる、そういう状況とあって、消費の中が随分と流動的になってきておると思いまして、これをなお一層の十分な関心を持って検討し、分析し、研究しなきゃならぬことは当然でございますので、消費についての最大の関心を持って私はこれは進めていきたいと思っております。
 ところで、食料品に対するものだけ税制上見ろということは、これはなかなか難しいことでございまして、例えば、かつて私が初当選しました当時でございますけれども、物品税というのがございまして、その物品税で、紅茶には物品税かからぬけれどもコーヒーにはかかる、サイダーにはかからぬけれどもカルピスにかかる、そういう非常に複雑な問題がございましたので、十分に検討したいと思います。
横光委員 確かに、ヨーロッパやアメリカのように、飲食料の関係の二重課税というのは、税の場合非常に難しい。
 そこで、実は私たちが提案をずっとしてきているわけです。これは税じゃありません。税は、今言われたように非常に難しいわけです、消費に関する税は。ですから、私たちは、飲食料品にかかる消費税額の戻し金制度というものを、実は自社さ政権のときからずっと訴え続けております。
 これは御案内かと思いますが、収入一千万円までの世帯の、これは給与所得でいうと七百八十万ぐらいですが、そういった方々の世帯の飲食料品にかかる消費税負担をゼロないし大幅に軽減する、つまり食べ物にかかる消費税負担をなくそうということです。これは、税でどうのこうのするんじゃないんです。
 総務省の平成十二年の家計調査年報では、全世帯の平均支出が約四百十万円でございます。このうち飲食料品にかかる平均支出が九十万円。この飲食料品にかかる九十万円の消費税を、約五万円になるわけですが、これを戻し金として、収入一千万円世帯までの家庭に給付しよう、こういう案なわけです。
 これは、今塩川さんが言われた問題とは全然違うわけです。ですから、税の問題じゃありません。この食料には税がかかるか、これはコーヒー、ココア、そういった問題じゃないわけですね。飲食料品にかかる消費税は、大体、統計ではこうなっている。しかも、年収四百万以下の世帯になりますと、食料の平均支出は七十万円ですから、こうなりますと、これにかかる消費税は三・五万円になりますね。こうしますと、こういった所得層にとりましては、それでも戻し金として五万円給付するわけですから、ゼロ税率よりも大きな効果があるわけです、中低所得者層にとりましては。
 つまり、今消費税で一番の問題は、いわゆる欠陥と言われているのは逆進性ですよね。この低所得者層に対する逆進性緩和になる。そして景気対策に何よりもなる。もう本当に負担増、負担増の中で、こういった制度というものが今こそ私は必要であろうという思いできょう提示させていただいたんですが、竹中大臣、まずこの案について御意見をお聞かせください。
竹中国務大臣 専門家の間では、戻し税の、特に消費税の戻し税の考え方というのは、いわゆる逆進性といいますか、それを緩和する制度として以前から議論されてきたことだと思います。
 今我々で取り組もうとしております税制改革というのは、パッチワーク的なといいますか部分的な改定ではなくて、税の考え方そのものを見直そうというところから出発をしております。その中で、例えば、頑張った人が報われるようなインセンティブを重視するよう、その形で所得税の税体系も変えるのであるならば、それと見合って消費税についてもそういう考え方を入れるとか、非常に総合的な中で議論するということは私はあり得るのだと思います。したがって、今の税体系を前提にしてそれだけということになりますと、なかなかお考え方の整理は難しいというふうに思います。
横光委員 私は、今、税の問題を言っているんじゃない。それはいずれ先の問題だと思うのです。今言っているのは、この戻し金制度なんですね。これは税と関係ないんです。ですから、先ほど言いました逆進性緩和になる。そしてもう一つは、このメリットは、先ほどから言っているように、いわゆる消費意欲が強いにもかかわらず可処分所得の低下に悩む中低所得者層に対しては、払い戻し超過になるほどの効果を発揮するんですよ。景気対策として、私は今、個人の消費需要拡大ということを言いましたが、そのためには最も有効な手段である、このように考えておるのです。
 そして、この戻し金制度は、財源は国が持ち、給付は自治体で行う方式であり、一昨年ですか、九九年実施されたあの地域振興券と全く同じ歳出措置なんですね。あれは余り効果なかったという話もありますが、これは全然違う形で、国民に最大限受け入れられる制度だと思います。ですから、政治的決断さえすれば圧倒的な柔軟性を発揮できる歳出手法に基づく方式だと私は思いますし、税だと、先ほどから言っておりますように、公平、中立、簡素、こういった制約を受けざるを得ない、そういった意味で、私はぜひとも御検討いただきたい。
 総理、改革に痛みが伴うと言っております。しかし、痛みの伴う改革だけが本当の改革ではないと私は思います。介護保険料も上がりました。医療費も上がります。年金給付は引き下げられる。そしてまた課税最低限も引き下げられる可能性がある。もう本当に庶民にとりましては負担増ばかりなんです。そうでしょう、塩川さん。負担増ばかりなんです。右を向いても左を向いても真っ暗やみじゃござんせんかというせりふがありましたが、今庶民は全くそういう気持ちですよ。ですから、そういった真っ暗の中で、一点の光、砂漠の中のオアシスのような制度ですよ。いやしの制度なんです。これを今創設していけば、この今の、現下の経済状況に十分効果を発揮するであろうと私は思っているわけですね。
 金持ちが金を使えば、確かにマクロ的には大きな金が動く、これもまた必要でしょう。しかし、中低所得者層にそのしわ寄せが行くようでは、これは政治ではないし、まして改革ではない、そのように思っております。いやしの制度の創設、総理、御検討いただきたいと思います。最後にどうぞ。
小泉内閣総理大臣 五万円を皆さんに配るということですが、エンゲル係数が低下している中で、各家計が食料品支出の割合が低い中で、果たして五万円を皆さんに配ってどういう効果が出るか。商品券の例もありますし、なかなか効果が出ないんじゃないでしょうか。
横光委員 終わりますけれども、本当に今総理のお考えとは全然違う効果が出ると私は確信しております。ありがとうございました。
津島委員長 これにて横光君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
津島委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。(退場する者あり)
 平成十四年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は
 第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府所管及び他の分科会の所管以外の事項
 第二分科会は、総務省所管
 第三分科会は、法務省、外務省、財務省所管
 第四分科会は、文部科学省所管
 第五分科会は、厚生労働省所管
 第六分科会は、農林水産省、環境省所管
 第七分科会は、経済産業省所管
 第八分科会は、国土交通省所管
以上のとおりとし、来る三月一日、四日の両日分科会審査を行いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
津島委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
津島委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 次いで、お諮りいたします。
 分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
津島委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 次に、分科会審査の際、政府参考人及び会計検査院当局の出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
津島委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 次回は、明二十七日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時八分散会


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