衆議院

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第28号 平成14年5月22日(水曜日)

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平成十四年五月二十二日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 井上 義久君
      伊吹 文明君    石川 要三君
      臼井日出男君    衛藤征士郎君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      七条  明君    高鳥  修君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      細田 博之君    三塚  博君
      宮本 一三君    持永 和見君
      八代 英太君    山口 泰明君
      赤松 広隆君    池田 元久君
      岩國 哲人君    上田 清司君
      海江田万里君    河村たかし君
      小泉 俊明君    筒井 信隆君
      手塚 仁雄君    中川 正春君
      中沢 健次君    中村 哲治君
      野田 佳彦君    前田 雄吉君
      牧野 聖修君    松野 頼久君
      松原  仁君    松本 剛明君
      山内  功君    青山 二三君
      赤松 正雄君    達増 拓也君
      中井  洽君    中塚 一宏君
      児玉 健次君    佐々木憲昭君
      矢島 恒夫君    菅野 哲雄君
      日森 文尋君    横光 克彦君
      井上 喜一君    小池百合子君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    海老原 紳君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十二日
 辞任         補欠選任
  小島 敏男君     臼井日出男君
  野田 聖子君     七条  明君
  赤松 広隆君     手塚 仁雄君
  五十嵐文彦君     牧野 聖修君
  岩國 哲人君     小泉 俊明君
  河村たかし君     前田 雄吉君
  筒井 信隆君     山内  功君
  松野 頼久君     中川 正春君
  山口 富男君     矢島 恒夫君
  中西 績介君     菅野 哲雄君
  井上 喜一君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  臼井日出男君     小島 敏男君
  七条  明君     野田 聖子君
  小泉 俊明君     松原  仁君
  手塚 仁雄君     赤松 広隆君
  中川 正春君     上田 清司君
  前田 雄吉君     河村たかし君
  牧野 聖修君     五十嵐文彦君
  山内  功君     海江田万里君
  矢島 恒夫君     児玉 健次君
  菅野 哲雄君     日森 文尋君
  小池百合子君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  上田 清司君     松野 頼久君
  海江田万里君     中村 哲治君
  松原  仁君     岩國 哲人君
  児玉 健次君     山口 富男君
  日森 文尋君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     筒井 信隆君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 予算の実施状況に関する件(支援委員会問題及び瀋陽総領事館事件)


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。
 本日は、支援委員会問題及び瀋陽総領事館事件についての集中審議を行います。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君、外務省大臣官房長北島信一君、外務省アジア大洋州局長田中均君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、外務省経済協力局長西田恒夫君、外務省条約局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。臼井日出男君。
臼井委員 自由民主党の臼井日出男でございます。
 初めに、中国・瀋陽日本総領事館における中国武装警官の無許可侵入についてお伺いをいたしたいと思います。
 今回の事件ほど、私ども日本の世論というものが衝撃を受けた事件は少ないと思います。かつて、北朝鮮のテポドンが日本列島の上を飛び越えて太平洋に落下したあのときもかなりのショックを受けたわけでございますし、最近引き続く不審船との銃撃事件、これも私ども日本人に対し大きな影響を与えた。いつ、何が、どこで起きるかわからないというようなことを感じさせたわけでございますが、今回の瀋陽におけるこの事件というのは、一つには、いわば日本の主権にかかわる問題である、こういうこともございまして、私どもは、ぜひともしっかりと対応していただきたいという気持ちを持っております。
 今回の事件では、あのビデオというものが主役になっております。もしあのビデオがなければ、本当に小さな事件として報道されたにすぎなかったのかもしれない。しかし、私ども日本人が何度も何度も見せられているあの冒頭の母子の乱闘のあのビデオというもの、これがあるわけでございまして、かなりはっきりこの事件の端緒の状況というものがわかるのでございます。
 あのビデオを見ている限りにおいては、当初、日本総領事館逃げ込みに失敗をして、武装警官ともみ合いになってしまったあの状況では、日本の副領事はまだ現場に到達していなかったということがはっきり映し出されております。明らかに日本の、正門の中に入ってもみ合っているという状況もあのビデオではっきり見てとれるわけでございまして、そういうことから考えますと、今回の事件というのは、いわゆる領事関係に関するウィーン条約三十一条の領事機関の公館の不可侵についての中国側の明らかな違反である、このように断ぜざるを得ないのでございます。
 政府は、中国に対して、この条約違反に対する明確な謝罪要求というものを私はすべきであろうと思います。この点について、総理のお考えをお聞きいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日本側としては、不可侵権を中国側が侵しているという立場に変更はありません、変わりません。だからこそ中国に抗議をしているのであって、早期解決、そして五名の身柄の引き渡し等を要求しているわけでございます。
 そういう点については、中国側と見解を異にしておりますが、現時点におきましては、連行された五名の人道上の要請も踏まえ、早期解決に向けて全力を尽くしているところでございます。
臼井委員 総理も、この問題について、我が国のいわゆる不可侵権、いわば主権というものが侵された状態にある、このことはお認めをいただいたと思います。
 今回の事件で、私ども日本側の見方、中国側の見方、これは真っ向から対立している、対立点が多いというのが一つの現況であるわけでございます。一方では、日本側の、領事館側の不手際というものも諸所に見られるわけでございまして、問題が非常に複雑化してきてしまっていると私は思います。
 しかし、今総理がお述べをいただきましたとおり、今回の最大の問題点というのは、日本の不可侵権というものが侵された状態にあるんだ、このことが言えるわけでございまして、中国側の違法行為に対して、毅然たる態度でもって、この点はひとつしっかりと主張していくことをしていただきたいと思います。
 今回の問題を見てみますと、三つの問題に分けられるんだろう、こう思います。一つは、ただいま申し上げました、日本の不可侵権というものが侵された状態にある、一体これをどういうふうに両国間でもって解決していったらいいのかという問題が一つございます。それからいま一つは、連れ去られた五人の亡命希望者、これをいかに人道的な処置をしていくことができるのかということでございます。それから三番目には、今私がちょっと申し上げましたとおり、今回の対応については、日本側の、総領事館側のいろいろな問題点も多いんだ、これについていかに反省をし、二度とこういうことを起こさないような対応をしていくのか。私は、この三つに分けられると思います。
 事件発生以来、二週間が経過をいたしました。世論も、日中間の対立という視点からだんだんと、この連れ去られた五人の身柄が一体どうなるのか、ぜひとも人道的な対処をしてもらいたい、こういう世論というものがだんだんと高まりを見せてきつつあるように思います。
 私ども日本は、当初から、まずこの五人の身柄を引き渡してもらいたい、現況回復ということを主張してもまいりました。また、出国前の身元確認はどうしてもさせてもらわなきゃ困るといったような主張、それから、出国の意思というものをはっきり日本側にわかるようにさせてもらいたい、こういうことを主張いたしてまいりましたけれども、ここのところ、中国側との接触もいろいろなサイドから試みられているようでございまして、川口外務大臣の発言も、そうしたものを配慮した方向に変化をしつつあるような感じも私はいたします。先般、新聞を拝見いたしましたら、この二十日には、総理が川口外務大臣初め関係者をお呼びいただいて、対応を協議したという記事も出ておりました。
 そこで、川口外務大臣にお聞きをしたいわけですが、日本側のこれからの交渉に対する態度、これはどのようになっていくんでしょうか。
川口国務大臣 この瀋陽総領事館事件についての日本側の基本的な態度というのは、先ほど総理がお話しになられたとおりでございますけれども、私は、その中で、特に人道問題というものを現在の時点で最優先をして考える必要があると思っております。
 本件につきまして、その事実関係ということで申し上げますと、日本側は調査を行いまして、その事実関係に基づく立場に変更はございません。他方で、中国側も調査を行いまして、その結果を尊重してほしいと要望をしております。したがいまして、この件については、日中関係は最も重要な二国間関係の一つでございますので、日中関係の大局を踏まえまして、冷静に協議を行っていくことが重要でございます。
 先ほど、さまざまな日中間のコンタクトが試みられているようであるというふうに委員がおっしゃられましたけれども、私も、最近の時点では二十日、趙啓正国務院新聞弁公室主任とお話をさせていただきまして、日本側の立場について御説明をさせていただきました。今後とも、中国側との話し合いを通じまして、この問題につきましてきちんと対処をしていきたいと思っております。
臼井委員 事件発生以来二週間という、決して当事者にとっては短い期間ではない、経過をいたしている。人道的な配慮というものを特に考えていきたいという御配慮というものは、ある意味では世論の動向にこたえるものだと私は思います。
 一方、この問題というのは、責任は総領事館にあるということでございますが、かなり早い時点から、もう現場の対応には任し切れない、政治問題化してきているのではないかという認識を私は持っております。もっと早い時点で、外務大臣を代理する副大臣等の中国への派遣というものがあってもよかったんじゃないかなというふうな感じも持っております。
 総理におかれましては、今後、膠着状態のこの日中間、何とか打開をしなければならないこの環境、お互いに意地を張っておっても解決しない環境でもあるかもしれない、そうした際に、政府、総理の意思というものをはっきり伝えて、日中国交回復三十周年という記念すべきこの年、一日も早い解決をするためのそうした特使派遣とか、そういうものをお考えでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 今いろいろ交渉をしているさなかでありますので、どうしているということをつまびらかにするのは、相手側の立場もありまして、言うのは差し控えさせていただきますが、日本の主張と中国の主張が食い違っている、相違があるという点も踏まえ、なおかつ、連行された五名の人道上の要請を満たすということも考えなきゃならない、そういうこの問題における早期解決。
 それと、ことしは日中国交正常化三十周年、日中友好を拡大していこう、発展させていこうという大きな節目の年に当たっております。日本にとっても日中友好の重要性を認識しております。中国側も日中友好の重要性を認識していると思います。この問題が日中友好を損なわないような点で解決するように今全力を尽くしているわけでありまして、当面、特使を派遣するということは現時点においては考えておりません。
臼井委員 冒頭から申し上げておりますとおり、この問題は三つの大きな課題がある。人道的な問題も配慮しなければならない、しかし、日本の不可侵権というものを侵されている。なかなか難しい課題、対立するものが二つあるわけでございますが、ひとつ早期解決への努力を一層お願いいたしたいと思います。
 今回の事件を見ておりまして、言葉の障害といいますか、そういったものが多く感じられるわけでございます。自由民主党の調査、これも、きょうは多くを申し上げませんが、余りにも通り一遍過ぎるんじゃないだろうかなと。もうちょっと機微に入った、例えば、十五分間無言で過ごしたということはあり得ない、そういう言葉のやりとりとか、そういうものも一歩これからも突っ込んでさらに調査を継続してもらいたいというのが私の要望でございます。
 さらに、民主党の調査なるものがあらわれた。例えば副領事が警察隊の隊長と握手したとかしないとかというふうな問題、あるいは遼寧省の外事弁公室に電話をした、その内容、これは確認をする必要があると思いますが、余り、日中が対立している状況の中で、相手様の言うことを聞いてそういうものを外部に発表するということは、日本側の言い分も当然あるわけでございますから、かえって問題の真実というものからそれてしまう、こういうこともあり得るんじゃないのか。
 記述が細かいということがいいということではない。木を見て森を見ないということがあってはならない。本質的なもの、正しいものとそうでないもの、そういうものをしっかりと見きわめていくということが私は必要だと思います。一つ一つの事象の取捨選択というものを、やはりしっかりしていく必要があると私は思います。
 繰り返し申し上げて恐縮でございますが、現に中国の武装警官によって日本の不可侵権が侵されている。これに対する日本の名誉回復というのが必要である。こういうことの立場で私どもはこれからも、この事件の解明に対して自由民主党は進んでまいりたい、このように考えている次第でございます。
 各論についてお伺いをいたしたいと思うわけでございますが、今回の中国側のウィーン条約における三十一条の二項の違反というものは、これは明白でございますが、一方、日本の総領事館側の対応のまずさというものも幾つも見せられております。
 特に、繰り返し繰り返し見せられております冒頭のビデオ、私も大変苦々しい思いでそれを見るのでございます。母親が武装警官ともみ合っている中、困惑の表情で立っている少女、ちょうど私、孫があの年代でございますから、あの顔というものは目に焼きついて離れないものがございます。しかし、この場面で、あのもみ合いの状態のときに、まだ副領事というものは明らかに現場には到達していないというのが映し出されております。御本人たちは正門の中でもってもみ合っているというのもあのビデオではっきり映されている。
 そういうことを考えますと、確かにあの中で、館内であったということは事実でございますが、一方、あの副領事がのんびりとあらわれて、至極のんびりとした様子で、事態の緊急性というものを全く感知しない、泣いている子供も目をとめない、もみ合っている中にも入っていかない、帽子を拾っている。こういう姿を見せられますと、まさに日本が、日本人というのは人道上の問題については全く無関心なのか、こういう状況を世界にさらしているというような見方ができるわけでございまして、日本の総領事館、在外公館の危機管理というものに対する対応は一体どうなっているんだろうか、まことに私は残念な、腹立たしい思いをいたしております。
 このことは、私がこの場でもって自分の意思で申し上げるということではなくて、自由民主党の部会の中でも、中国に対する批判というものはありますが、一方では、その多くが、日本側の対応のまずさ、もしここでもうちょっと日本側が頑張っておれば違った展開になったんじゃないか、悔しい、こういう思いが多くの発言者の中に見られるわけでございまして、私は、こうした状況をさらしてしまうというのは、日本の在外公館の職員、この瀋陽の総領事館の職員というものが、日本の国益を代表しているんだという自覚と信念に欠けているんだ、こう思わざるを得ないのでございます。
 こうした点について、外務大臣の責任というのは極めて重いと私は思います。これについての御意見を伺いたいと思います。
川口国務大臣 委員がまさに今御指摘になられましたように、今度の瀋陽総領事館事件につきましては、初動の段階でさまざまな総領事館における対処についての問題があったと思います。この点につきましては、調査の結果で報告をさせていただいておりますけれども、意識面、指揮命令系統面、それから警備面でさまざまな問題があったと思います。これらについては厳しく反省をいたしております。その上で、今後そういうことが起こらないようにきちんと対処をすることが必要だと思っておりまして、既にそこには取りかかってきております。
 これにつきまして、私は、今非常に重要なことというのは、そういった改善策をやって、今後起こらないようにするということと同時に、五人の方に関連するこの件を早期に解決するということが取り組むべき仕事であると思いまして、私を初め、外務省一丸となってそれに取り組んでいるところでございます。
 当初の段階で、そのビデオを見て、私たちの心の中にいろいろな思いが去来をするわけでございますけれども、当時の状況を対処した副領事等に聞きますと、かなり、現地でもいろいろな事件があったりということもありまして、最初、どういうことかということがわからない状態でいたということでございます。そういった点も、当初の混乱の中ではやむを得ない事情もあったかなという部分もなくはないということでございます。
臼井委員 我が国の在外公館の職員の姿勢、こういうものはぜひとも外務大臣からしっかりと、日本の国益を代表するものであるという自覚を得るような、ひとつそういう指導をしていただきたいと思います。
 次に、総領事館の危機管理システムについて御質問したいわけでございますが、外部からのテレビで、事件発生当初の状況というのは、はっきりわかるわけであります。自民党の部会でも、日本側の、内側から現場をとらえたビデオがあるだろう、それを見せろという意見もございました。ないというお話でございました。一体、領事館というああいう環境のところにビデオ一つないのかとびっくりしたわけですが、話を伺ってまいりますと、館内全体では五つのビデオがあった。しかし、録画装置がない。しかも、待合所の中にもあったんだが、それは作動していなかったという話も聞いております。
 今どき、日本のどこの、まあ、失礼ですが、コンビニエンスストアに行ってもビデオぐらいありますよ。ビデオには必ず録画装置がついております。大体、写しているさなかに確認するということはできないわけで、後、リプレーしてどういう状況だったというのを確認するのがビデオの常識だと思うわけでございますが、一体、なぜ一番最初に据えつけなければいけない正面にこういうものを置かないのか、あるいは、なぜ録画装置をつけないのか等々、今私が御質問したことについて、どうしてなのかということを外務省側にお聞きをしたいと思います。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 瀋陽総領事館には五台の監視カメラが設置されていましたけれども、御指摘のとおり、正面ゲート付近には設置されておりませんでした。監視カメラの設置場所について問題があったことは否定できず、謙虚に反省しております。
 録画装置につきましては、警備強化の観点から、在外公館における配備を順次進めてきておりましたけれども、瀋陽総領事館においては未配備の状況にあったということで、配備を推進したいと思っております。査証の待合室には、そもそも監視カメラが設置されておりませんでした。この点、不備があったことは確かで、必要な改善を早急に進めたいと思っております。
臼井委員 どうせ、五台のカメラがどこにあるか、正門にも向いていない、査証待合室にもない、恐らくわからないところにあるんだろうと思うんですが、まあ、あえてお聞きをしませんが、今後、これらのことについては、外務大臣、この瀋陽だけのことではないんじゃないかと。全在外公館について、即刻どういう状況であるかということを調べて改善すべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 委員御指摘の点につきましては全くそのとおりでございまして、今点検を始めているところでございます。
臼井委員 こうした管理体制というのは、一つのシステムにのっとってやっておれば十分対応できるものでございますから、ぜひともしっかりとお願いをいたしたいと思います。
 先ほど来、一行五人の人道的措置というものが重要になっております。私どもは、当初のビデオというのが非常に印象が強くて、あの場面ばかり意識が集中しているんですが、私は、あの場面よりは、むしろ、中に入ってしまった二人の男性がなぜやすやすとまた連れ戻されてしまったのかということの方が重要な問題だと思うんです。
 あのビデオがなければ、正門の付近でもって不法侵入者をとらまえて引き戻したというのは、これはまあ、スポーツじゃありませんが、ファウルラインを越したとか越さないとかという話じゃなくて、警備側の責任感ということも言えるだろう。しかし、あの中に入ってしまった五人を、やすやすと連れ戻されてしまったということは、何としても私は納得がいかないし、残念でしようがない。
 一体、こういう状況について外務大臣はどういうふうに考えておられるのか、どうあるべきだったのか、また、どうこれから対処していくのか、お聞きをしたいと思います。
田中政府参考人 事実関係についてお答えをさせていただきます。
 当時、査証担当副領事が対応したわけでございますが、そのときに本人は、二人の人が入ったという認識はなかった。そこで、外で、その二人がいるということで、慌てて走って帰った。その後ろを武装警察官が追いかけていったということで、非常に瞬間のことで、直ちに拘束されて出ていったということでございまして、後で、結果から見ると、委員御指摘のようなことはあるし、残念だとは思いますけれども、現場において武装警察官の行為を阻止することはできなかったということでございます。これは直ちに抗議はしているということでございます。
臼井委員 時間もありますからそれで結構ですが、私は、これは外務大臣の御意見を本当は聞きたかった。やはり姿勢ですよ。姿勢が一番肝心だと私は思っております。
 今お話しのようなことは概略報告書でわかっているわけですね。ですから、私は、なぜ副領事が正門から戻るときに、もうあなた方、これ以上入っちゃ困るよと、とめて、それから帰ってくる、五人もぞろぞろついてくるのに気がつかないなんてことは、これはおかしいですよ。
 そういうことを考えて、また十五分間拘束しておって、いきなり入ってきた武装警官が連れ出す、こういうときにどういう態度をとったのか。まさか、人形じゃないですから、黙って突っ立ったまま連れていかせたということはないだろう。そのやりとりも、日本の主権に対する覚悟のほどが見えるようでなければならない。それは極めて残念でございます。
 ここのところ、きょうの毎日新聞にも朝刊に出ておったわけでございますが、阿南大使の発言というのはいろいろ物議を醸しております。きょうはもう時間がありませんからそのことについては触れませんが、日本の出入国管理難民法、これは五十六年に改正されておりますが、この第六十一条の二の一項で、本邦に上陸をいたしました外国人しか難民認定できないということになっております。在外公館における難民の亡命申請、これは受け入れる体制になっておらないというのがそもそも根底にあるんではないだろうか。
 もしこの五人が、仮に無事に出国ができて、御本人たちが日本に亡命をしたい、こういう希望があったときにはどういうことができるんでしょうか、できないんでしょうか。外務大臣にお伺いします。
川口国務大臣 委員が御示唆なさっていらっしゃるように、この問題の根底に、背景にございますのが、難民の受け入れの問題であると思います。おっしゃられましたように、日本の領域に入った人を難民として受け入れるか否かということと、それから、在外公館に庇護を求めてきている人を庇護するかどうかということは、これは区別すべき問題であると思います。
 この件につきまして、私どもは、領域内にいる外国人ではなくて、在外公館に庇護を求めてきた場合にどうするかということについては、個々の事例に応じて対応をするということになります。あえて一般論で申し上げさせていただきますけれども、これは、この人の人定をきちんと調べる、事実関係を調べる、希望を確認する、それから当該この人間の身体の安全確保などの人道的な観点、それから関係国との関係等を総合的に判断をして、具体的な対応を検討するということでございます。
臼井委員 私は、もうちょっと明快なお答えを願いたかった。
 これは法務省の方から私の質問資料が外務省の方に回っているはずであります。法務省は、もし日本に来たい、亡命したいという意思があるならば、日本側に、もし当事国の了解が得られるならば呼ぶこともできるんだ、そして改めて、亡命できるかどうか、認定の調査をすることができる、したがって、対応しようと思えばできるんだというのが法務省の見解であります。
 よく日本の受け入れが少ないという御意見がございますが、法務省に聞きますと、大体希望者の約一四%が亡命できていると。これは、イギリスの一二%、ドイツの一五%と比べると、そんな差異はない。要は、亡命希望者が、日本から遠いということ、あるいは言語の問題等々あって、もともと希望者が少ないということによる。さらに、実質的に庇護をした者、特別在留許可等を加えると二七%になる、こういうことでございますので、決して少ないということではないんだということを私はあえてここで申し上げたいと思います。
 もう時間が来てしまいました。対ソ連問題というものが質問できなくて申しわけないわけですが、最後に総理、私ども自由民主党の議論の中で、中国に対するODAの再検討というのは非常に意見として強いんです。中国は、約四億七千五百万ドルの海外援助というものをしている国であります。七十二カ国に対してしている、そんな国に日本の貴重な税金というものをなぜ使わなければならないのか、その辺を、なぜなのか、どうすべきかということを最後にお伺いいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ODAにつきましては、今年度予算におきましても一〇%削減しつつ、各国の要望を踏まえながら効率的に運用していかなきゃならない、また、日本の外交政策上、ODAの重要性も我々は認識しております。
 中国に関して申すならば、今臼井議員御指摘のような意見、党内からもいろいろ御意見を承っておりますし、この点についてはODA大綱、一つの原則がございます。それを踏まえながら、なおかつ日中友好関係、これを考えながら、総合的に判断する必要があるのではないかと思っております。
臼井委員 終わりますが、これは、例えば中国でも、偏西風に乗っていろいろなものが飛んできますから、環境対策等に、日本がぜひともしてもらいたいところに出すということは私はあっていいんじゃないかと思いますが、ひとつ検討をどうぞよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
津島委員長 これにて臼井君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。おはようございます。
 きょうは予算委員会、この場で、ロシア支援委員会の問題及び瀋陽の総領事館の事件、この二つの集中審議であるということでございますが、まず冒頭に、総理に一つの私自身の感慨を込めて申し上げることがありますので、それに対するお答えを冒頭にいただきたいと思います。
 まず、こういう話を聞いていただきたいと思います。
 この日曜日、十九日の日、私の住みます兵庫県の姫路市で、機能的な面で東洋一、実質的には世界一と言っていいと思いますけれども、県立の武道館というのができ上がりました。そこに私、オープニングの会合に出席をしたわけですけれども、その際に、式典が終わった後で、現代における武道の役割というテーマで、武道にかかわる方々、剣道、柔道、相撲、そして空手、こういった分野の方々が出てこられてシンポジウムがありました。
 その中で、実は空手の分野を代表してC・W・ニコルさん、彼はイギリス生まれで先ほど日本の国籍を取られたという方でありますが、ナチュラリスト。長野県の黒姫山に住んで、環境問題、今話題になっております捕鯨の問題でも「勇魚」という本を書いたり、積極的に発言をされている方でありますけれども、このニコルさんがこんなことを言っていました。自分が日本に来たのは約四十年前、昭和三十七年、当時は明治生まれの人が大勢いた、男も女も含めてですけれども、明治生まれの人たちは背筋がしゃきっとしていた、そういう印象を強く当時の日本に自分は持っている、こんなふうな話をされたわけであります。
 私はその話を聞いて、外務大臣がしきりによく言われます毅然としたというお言葉、そのとき連想したわけですけれども、言葉をかえれば、明治の男たち、女たちには毅然としたものがあったということをニコルさんは言いたかったんだろうと思います。
 終わりまして、私、控室へ行って、大変に印象深いお話、それだけじゃないいろいろな話があったわけですけれども、そういう話をした際に、彼が、政治家の皆さんしっかりしてくださいよ、日本がどうにかなってしまいそうですよということを、イギリスに生まれた、今日本国籍を取っておられる方でありますけれども、そのC・W・ニコルさんから言われたということは、極めて私印象にまず残りました。
 今、あたかも国会のそば、憲政記念館で「吉田茂とその時代」という展示が行われております。そのときに、つまり吉田茂、外務省出身で、戦後、日本の極めて大変な時代に、日本を、見方によってその評価は多少いろいろ分かれようかと思いますけれども、厳しいそういう状況の中で日本を、今日の礎を築いた吉田茂さん、こういったふうなことを思うにつけてとりわけ感慨深いわけです。
 一方で、半藤一利さんの「日本のいちばん長い日」というのを私ついこの間読んだんですけれども、東郷和彦元オランダ大使、かつて、戦後の、戦後というよりも、あのさきの大戦のときの外務大臣のお孫さん、そして一方で、今話題の阿南惟茂中国大使は、あの終戦時の阿南陸相の息子さん、だからどうこうというわけじゃありませんが、そういう、先ほど来申し上げた明治、大正、昭和、そして今日、平成という流れの中で、日本の今というものを考えるときに、非常に重要な役割を果たす人々に関係する人たちが今外務省で渦中の人になっている。
 きょうは、とりわけこの二つのテーマは、両方、このお二人が渦中であるわけでありますけれども、そういう流れの中で、私は、小泉総理大臣に、将来、小泉純一郎とその時代、こんなふうに言われてほしいというふうな思いも込めて、これから質問をさせていただきます。
 まず、総理は、鈴木宗男氏が外務省を主たる舞台にして起こした今回の問題、これはいわば特殊な、あるいはまた、総理もかつて言われた変な人物がたまたま起こした、たまたま日本の伝統ある外務省というところを舞台に起こした異常な出来事である、そういう認識なのか、それとも、原因というのはもっと錯綜しており、複雑であり、もっとほかに原因がある、こういうように見られているのか。まず冒頭、この点から総理のお考えを聞かせていただきたい、そんなふうに思います。
小泉内閣総理大臣 鈴木宗男議員の問題と今回の瀋陽の……(赤松(正)委員「いや、ロシア支援室」と呼ぶ)ロシア支援室の問題と外務省の対応ということについては、相手国も違うし、いろいろな問題点も相違がありますが、今御指摘の対応ぶりといいますか、日本の外務省においての対応に大きな問題があるという御指摘については、私は、確かに御指摘の点もあると思っておりますが、要は、ふだんから、非常時に対してどういう対応をすべきかという心構えが大事だと思っております。
赤松(正)委員 いや、総理、ちょっとお疲れじゃないかと思います。私は、そういうことはここから先に聞くんで、きょうは、冒頭に申し上げたように、ロシア支援委員会の問題と、そして瀋陽総領事館の問題と二つある、そしてそれをひっくるめた形の外務省の問題を冒頭に申し上げ、そして、まずロシア支援委員会の問題として、鈴木さんの問題が要するに異常な出来事なのか、それとも原因はもっとほかにあるのか、こう聞いたんです。それを瀋陽の問題だというふうに取り違えておられるんですが、それをまた言うと時間がかかりますし……(発言する者あり)もっと端的に聞けと言っているので、これは、じゃ、もうこれだけにしておきます。
 瀋陽の総領事館の問題に移ります。(発言する者あり)
津島委員長 御静粛にお願いします。
赤松(正)委員 では、総理、私は、別に後ろのやじにこたえるわけじゃありませんが、もう一度今の前半部分のことについてお答えいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私ははっきり答弁しているつもりですよ。具体的に言っていただければはっきり答弁しますし、抽象的な点だったら抽象的に答弁します。
赤松(正)委員 具体的に聞けって、要するに、鈴木問題について、事の本質、原因というのはどこにあると考えているかと聞いたんですよ。二つの要するにテーマがきょうの予算委員会集中審議になっているから、その冒頭のときに聞いたんですよ。
小泉内閣総理大臣 それは、原因は一つじゃないと思いますよ。前から言っているように、適切な意見というものに対しては、だれが言おうと受け入れるべきだし、適切でないんだったら、どんな人が言っても受け入れるべきでない、前から言っているんです。
赤松(正)委員 だから、私は丁寧に聞いているつもりなんですが、総理にそんな怒った顔をされると、ちょっとつらいものがありますが。
 実は、要するに、ロシアを専門とするある高名な著者が、ロシア問題に熱心に取り組む政治家がいないからこういったことが起こったんだという指摘をした人がおります。つまり、彼に独壇場を許したということがそこにつながったんだというわけです。
 だとするならば、これから問題にする中国という問題については関心を持っている人が非常に多い。では、中国に関心を寄せている人が多いということになると、先ほど言ったロシアにおけるような問題は起こらないのかというと、私は、必ずしもそうじゃない、中国を舞台に利権というものにかかわる政治家の存在というものはないわけじゃない、これから先に問題になるかもしれない、こういったことをまず指摘しておきたい、それにとどめておきたいと思います。
 さて、ロシアとの問題に次ぎまして、中国との問題の登場であります。
 この問題を考えるに当たりまして、先ほど自由民主党の臼井委員から事細かな質問がありましたので、私はこれ以上、現在交渉のさなかにあるときに、外務省の失態やていたらくをあげつらう、そういうつもりは私はございません。北朝鮮の住民と思われる五人を強引に連行した中国に対しまして、ウィーン条約違反であり、日本の主権を侵害したものであるとして、どこまでも抗議をすべきだということについては、全く私も同じであります。もちろん、五人の人権を第一に尊重しなくちゃいけないということも当然であります。
 ただ、今回の問題を考えていく上において、事の本質は何なのかといえば、私は、北東アジアのいわば地雷源としての北朝鮮の現状であろうと思います。ここから難民が流出する、それがいわば諸悪をもたらしているという現実があると思います。ただし、経済難民と政治亡命者を立て分けて考える必要があると思います。これらをどう扱うかにつきましては、やはり日本が大方針を持っていないということに私は遠因があろうと思うのです。
 せんだって、我が党の委員が武力攻撃事態特別委員会の場において質問をしましたときに、官房長官やあるいは外務大臣もお答えになったわけですけれども、例えば官房長官は、確かに御指摘のように、我が国が難民問題に対してどういう形で向き合うかということについて、これにしっかりとした考え方を持って対応しているというようには言えないような感じがしています、こういうふうなことをおっしゃったり、外務大臣も、この問題は非常に難しい、広く国民の皆さんの御理解と御関心をいただいて議論をしていただきたい、こういうふうな、聞きようによっては非常に、のうてんきだなと言っては失礼な言い方ですけれども、やはり、そういうことじゃ最前線の、総領事館、さっき非常に厳しい副領事さんに対する、彼らの態度あるいは大使に対する態度等を指摘する向きがありますけれども、私は、むしろ、そういった人たちはある種犠牲者ではないかという気さえいたします。大方針を決めずして挑めば、結局は最前線の人たちが困るだけであります。
 このあたり、政治亡命者に対して門前払いをしないで、経済難民には送り返すんだという姿勢を明確にせよという、これは総理が外相登用に非常に熱心であったと聞いております緒方貞子元難民高等弁務官がおっしゃっている、指摘していることでありますけれども、そのような提案についてどのように考えられますでしょうか。総理。
小泉内閣総理大臣 この難民の問題は非常に難しいんです。いろいろ考えても、不審者に対してはきちんと対応しなきゃならない。不審者が人道的な問題を抱えて領事館あるいは大使館等に庇護を求めてきた場合、これは個々のケースによって違うわけです。認定も、人それぞれで全部違ってまいります。不審者排除の問題と人道的保護の問題は、線引きが難しいです、実際。どこまでが不審者で、どこまでが人道的に保護する必要があるかという線引きは、あいまいな点もあるんです。
 そういう点から、なおかつ、はっきりしろと言いますけれども、では、日本国民が難民を受け入れるべきだといった場合に、これは新たな国内問題を引き起こします。そういう点で、私は、この問題については幅広く意見を聞くべきだということを言っておりますように、日本国内でもさまざまな意見がありますから、この点については、再三申し上げていますように、今後も多くの方の意見を聞きながら、今の日本の難民受け入れ体制、どうあるべきかということを今後も検討していかなきゃいけないなと思っております。
赤松(正)委員 総理、今おっしゃったのは、私の聞き違いかもしれませんが、どうも、要するに、経済難民、広範囲な経済難民という土壌があって、経済難民イコール政治亡命者じゃありません。その中から、一つの先端部分としての政治亡命を希望する人がいるというふうに思うんですね。
 さっき緒方さんの例を挙げたのは、彼女が言っているのは、要するに、政治亡命者というものをしっかり、それは門前払いしないで、これについては、あとう限りしっかり状況を把握した上で受け入れる姿勢というものを示さなくちゃいけない、これは当然だろう。しかし、経済難民については、今総理がおっしゃったように、それは何でも受け入れていたら大変なことになりますから、それについてはやはり、それこそ毅然とした姿勢というものを現時点で日本は示す、これはこれでいいと思うんです。そういったことをしっかりばちっと持っていないから、何となくあいまい、それは官房長官の発言を聞いても、外務大臣の発言を聞いても、私はそういう点の意識が非常に弱いと思うということを今述べたわけです。
 さらに、私は、次に北朝鮮からの経済難民ということで言えば、角度を変えれば、私は、中国が第一に隣国としての被害をこうむっているという見方ができると思います。なぜならば、正確な数字はつかめておりませんけれども、数万とも言われるそういう北朝鮮からのいわば経済難民の扱いに苦慮している、間違いなく中国は困っている。これは、私が親しくしている中国問題の専門家とか北朝鮮の専門家にしっかり聞いても、同じようなことを言います。
 だから、総理は、先日私が、委員会は違いましたけれども、武力攻撃事態特別委員会の場所で、アメリカに対して言うべきは言ってくださいと言ったら、言っているよ、アメリカにはアメリカの立場がある、日本には日本の立場がある、こうおっしゃいました。この場合、総理は、中国には中国の立場がある、こういうふうなお考えでしょうか。北朝鮮の難民と直接、日常的に対峙している中国の、この問題に関する中国の立場というものはどのように総理は認識しておられるか、お聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、中国にも中国の立場があると思っております。
 特に、北朝鮮と中国は国境を接していますから、北朝鮮側から中国に入ってくる、いわゆる、中国側にとってみれば不法入国者もいるでしょう。あるいは、かつては逆に、中国から北朝鮮側に渡っている人もいるでしょう。両方あると思いますね。
 しかし、今言われたように、数千から数万、あるいは万を超えるような北朝鮮側からの不法入国者が中国側に存在しているという情報もいろいろ入ってきております。いわば、俗に言う難民という問題については、日本以上に深刻に考えている中国の立場はあると思います。
 そういう中で今回の事件は起こったわけでありまして、この問題は、単に今回が、日本側に駆け込んだ人だけではありません、ほかの領事館にも駆け込んだ例があるわけでありますので、そういう点について、私は、日本とは違った中国側の立場がある、考え方があるということは認識しております。
赤松(正)委員 そういう立場を理解した上で、どうタフな交渉をするかということだろうと思うのですね。
 私は、今回の事件を背景に、いろいろな人がいろいろなことを言っていますけれども、例えば、東西両ドイツが、あの壁が崩壊する直前に、東ドイツからの難民がハンガリーを経て西ドイツへ流れていったというか、流入していった。これが、やがて起こった東西両ドイツの統一のこよなき前奏曲、プレリュード、そういうふうな状況になった。したがって、その歴史のひそみに倣って、今回の事件を一つの契機にして、南北朝鮮の統一に向けて一つの役割を、ハンガリーの役割をさせるということが大事じゃないか。
 では、その役割はどこが果たすか。それは、地理的に言って、第一義的には中国だろうと考える向きがあるのですけれども、中国がそういう、いわば東西両ドイツにおけるハンガリーの役割を果たし得ると見られるかどうか、そういう役割を中国が果たし得ると見られるかどうか。その辺についてのお考えを、では外務大臣にお聞きいたします。
川口国務大臣 ハンガリーのことでございますけれども、一九八九年の九月に、ハンガリーとオーストリアの国境開放をハンガリーがいたしまして、当時、観光客といたしましてハンガリー国内で西側への出国を待っていた東ドイツ人の出国を認めました。このことによりまして、約十二万人の東ドイツ人が西側に脱出をいたしまして、これがベルリンの壁崩壊につながっていった、そして、九〇年の東西ドイツの統一につながっていったという経緯があるわけでございます。
 北朝鮮からの脱出者の問題につきましては、第一義的には、中国政府が今後いかなる出入国管理政策をとるかということでございます。したがいまして、これは中国の政策でございますので、我が国としては立ち入った論評を行うということを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、現時点では、北朝鮮からの脱出者は、中国の国内法上、不法入国者と位置づけられていると承知をいたしております。
 いわゆる脱北者に対する中国政府の基本的な立場は、これらの人々を非合法越境者、非合法入国者として位置づけていまして、難民としては扱わない、中国と北朝鮮の間には難民問題は存在をしないということであると承知をいたしております。
 いずれにいたしましても、東アジアと欧州では情勢が大分違うということでございますので、単純に比較をするということは難しいと思います。
 それからまた、これはよその国の政府の政策でもございますので、論評は差し控えたいと考えます。
赤松(正)委員 私も、そういうことであると思っております。
 東西両ドイツのケースは、前例がなかったからある意味ではうまくいった。今回の南北朝鮮が抱えている問題は、東西両ドイツの前例があるからむしろ難しいという側面もあろうかと思います。
 いずれにしましても、今回の事件は、私、テレビを見ていて、ある民放番組で、もはや中国に隠れるところはない、こういう言い方をして危機を訴えた彼ら難民の姿というものは、非常に印象的でした。
 韓国のNGOが世界のメディアと組んで、現状に警鐘を鳴らすために仕組んだものと見られますけれども、今申し上げたように、東西両ドイツのことが前例にはならない。ならば、北朝鮮から難民を出さない、出させない、こういうことがやはり東アジアの私たちにとって大きな目標になるだろうと思うんですけれども、そのために、では、どうすればよいと考えるかという問題であります。
 拉致問題などの解決がない限りどうしようもなく、一歩も引かぬというのが日本の立場なのか、それとも、飢餓にあえぐ民衆に直接救援物資が届くような手だてを何らかの形で講じる、そういうふうなことを検討する余地があるのかどうか。そういう、いわば北朝鮮から難民を出させないための手だて、そういったことについて、外務大臣、どういうふうな考えを持って今取り組もうとしておられるのかについてお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮におきましては、厳しい食糧難、経済難等、さまざまな問題が国内にあって、その結果として多数の北朝鮮の人が中国に入っていっているという事情があるということでございます。これは北朝鮮の内部の問題でございまして、不透明なところが多いわけでございますけれども、我が国としては、こういった問題も含めまして、北朝鮮に関しましては、米国、韓国と密接に連携をいたしまして、その他の関係国とも緊密な情報交換を行いまして、この地域の平和と安定に資するべく北朝鮮政策を推進していきたいと考えております。
赤松(正)委員 この間、総理と対米外交の話をしたときに、例の悪の枢軸発言について総理のお考えを聞いたりしたんですけれども、実はブッシュ大統領は、政権発足直後に、北朝鮮に対して約十万トンの食糧支援を行っているんですね。今、私が調べたところによると、アメリカにおいては、要するに、いわゆる金正日政権とは別に、いわゆる政権と、大衆というか民衆とを分ける格好で、直接民衆に対する人道的な支援というものをさらに考えようとしている。
 一方で厳しいことを言いながら、もう一方でそういう手だてを講じている。しかも、単に物資を渡すというのではなくて、実質的に困っている人間に直接行っているかどうか、いわゆるモニター、モニタリングというものをしっかりするということを念頭に置いて今検討を進めているというふうに聞いておりますけれども、そういったことを含めて、総理、答えていただけますか。では、外務大臣、お願いします。
川口国務大臣 北朝鮮の中につきましては、さっき申しましたように、なかなかわかりにくいということでございますけれども、食糧援助を初めとします北朝鮮に対しての人道支援につきましては、そういった食糧難というような問題があるということを含め、総合的な観点から考える必要があると思います。
 おっしゃったモニタリング等につきましては、WFP、世界食糧計画というものがございまして、そこで行っているわけでございますけれども、我が国の過去において行った食糧支援につきましても、この団体によりまして、それから我が国の送りました視察団によりまして、しかるべくモニターをされているわけでございます。
 さらに申し添えさせていただきますと、今の時点で、我が国が北朝鮮に対して食糧支援を考えているということはないわけでございます。
赤松(正)委員 私は、今回の事件にありまして、中国がウィーン条約第三十一条に違反をし、日本の主権を侵害したということは、紛れもない事実だと思います。粘り強くこれを主張し続けて、非を認めさせるべく対処するべしということに異論はもちろんありません。ただ、その上に立ちまして、日本の国じゅうが、主権を侵害された云々の大合唱には、私は、いささかの違和感を持ちます。
 その意味で、私は、総理が一番最初に、冷静な対処ということを言われたことに異論はありません。また、それはなぜかというと、中国のことを言うなら、では、アメリカにも日本は主権を侵されていないかどうか。まあ事の性質というか、ありようは多少違いますけれども、私は先回もこの場で言いましたけれども、とりわけアメリカの沖縄における、言ってみれば傍若無人な基地における演習のありようとか、あるいはまた基地の使用の仕方、演習の実態、私は日米地位協定の見直しということを強く主張しているわけですけれども、こうした面に目を向けて、バランスよく、日本が置かれている状況において、主権というものに対して敏感に、侵されたというふうに感じるときにはしっかり抗議するというのが私は大事だろう。
 私にとって、あのテレビを見た人たちが、急に日本じゅうが主権、主権、こう言うことについては、ちょっと余りに矮小化され過ぎているというふうに思うわけでありますけれども、こういうとらえ方、今私が申し上げたようなことにつきまして、総理の見解をお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、日本とアメリカとの関係と、日本と中国との関係は当然違います。日本とアメリカとの関係は、御承知のとおり、日米安保条約を締結し、同盟国であります。日本の同意のもとに、日米両国の同意のもとに日本は米軍を受け入れているわけでありますので、その点は、中国とは対応は全く違うものだと思っております。
 しかし、特に基地を抱えている住民にとりましては、米軍の存在あるいは行動について非常に負担を感じている面も多いのは事実でありますが、その時々の対応で、もしその米軍の行動がおかしいものであれば、日本としては毅然として抗議なりしっかりした対応をとるように今までも申し入れていることであり、また、中国に対しては、今回、アメリカとは全く別の立場でありますから、一方に抗議をしたから別の方に抗議をしろという、バランスをとる問題でもないと思っております。その個々の事案、ケースごとにどういう対応をとるべきかということは、日本は考えるべきじゃないかと思っております。
赤松(正)委員 私は、この現在起こっている問題について、とりわけ総理の敏腕に期待したいといいますか、最後はやはり国の最高責任者、総理の出番ですよ。今はまだ最前線でいろいろな、水面下であったり、多少上に出てみたり、先ほど特使を派遣するつもりはないというお話はありましたけれども、まだまだそこに行っていないかもしれないけれども、やはりここは総理、先般、繰り返しますけれども、ここで私、靖国の問題をお聞きしたりいたしました。中国と日本との交渉という部分で、やはり非常に今大事な場面を迎えようとしております。
 私は、これも私がよく存じ上げているあるジャーナリストが「日中友好のまぼろし」という本を書いています。私は、民間団体、民間における日中友好、これはもう当然のことです。これはどこまでも日中友好でなくちゃいけない。ただ、政府間の交渉において、僕は、政治家が口にする日中友好というのは、多少というか、かなり意味合いが違うと思うんですね。だから、それはやはり国益を第一にしているときには大げんかをしなくちゃいけないときもある。そういうときに日中友好を第一にと言うのは、ちょっとどうかなと。先ほどの総理の発言でいうと、冷静な対応はいいんだけれども、まず一等最初に日中友好ということを口に出されたら、これは交渉の次元としては少しまずいなという感じもするわけであります。
 いずれにしても、国益第一に、しっかりとした日中間の相互理解を生んでいく、こういう観点が今一番大事だ。タフなネゴシエーターとしての外務大臣を登用された総理大臣ですから、ぜひともここのところはしっかりと頑張っていただきたいということを申し上げたいと思いますが、最後に決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、日中友好は日本外交にとって大変大事なものだと思っています。中国側も、日中友好を考えているということを念頭に置いて発言しているんですよ。中国側も、日中友好を考えてもらいたいと。ですから、当初から、冷静に、慎重に、毅然とと。変わらないんです、最初から。そして、日中友好というのは、中国側も、そういうことを念頭に置いてこの問題を処理すべきだと。日本側も、日中友好の重要性は決して忘れていない。私は最初から一貫しております。現在でもその考えに変わりありません。
赤松(正)委員 終わります。
津島委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。
 次に、小池百合子君。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。
 まず、ロシア問題の方からちょっと伺わせていただきたいと思うのでございますけれども、ムネオハウス、そしてイスラエルでの会議等々で非常に不透明な会計ということが問題となっております支援委員会でございますけれども、この支援委員会は、当時はソ連だったんでしょうか、ロシアですね、ロシアとの間での協定に基づいた外務省の関連団体である国際機関であるということから会計検査院も入らない、大変不透明であるということが問題になってきて、ある種の温床となってきて注目されているわけでございますけれども、この委員会はこれからもう廃止しようという動きがあると聞いておりますけれども、いかがなんでございましょうか。
 私が伺いたい点は、ここには百五十八億円ほどまだお金があるわけでございまして、これをどのようなことで対応されていこうと考えておられるのか、外務大臣、お願いいたします。
川口国務大臣 支援委員会につきまして、支援委員会が行ってきた予算の支出のあり方については、この予算委員会でもさまざまな委員の方に御指摘をいただきましたように、非常に望ましい姿で行われていたとは言えない部分があったということは今まで申し上げたとおりでございますけれども、この支援委員会、これがやっている仕事というのは、ロシアに対する人道的な支援、それからロシアの市場経済化に対する支援、そして北方四島に対する人道支援ということでございますけれども、この事業は、非常に評価をされ、かつ重要な事業だと私どもも思っておりまして、これをどういう形でやっていくのがいいかということにつきましては、この春に、四月に、専門家の方に集まっていただき、議論をしていただきました。
 それで、そこで出てきた提案につきましては、支援委員会を廃止する方向で検討しろということでございましたので、私どもは、これを重く受けとめさせていただいておりまして、今、これらの業務をやっていくのにどういう形がいいかということを、これは相手国の政府、ロシアの政府等もございますので、御相談をしながら考えているところでございます。
小池委員 いずれにせよ、私たちの税金が国際機関の方に移って、そしてそれが、相手がいない、国際機関とはいえ相手側はいないというような、非常に不正常な状態にあるわけでございまして、これをどうするのかというのは、じゃ一体だれが向こうの担当者なのかも明確ではございません。
 一部に、これを財団法人にしていこうという話もあるそうでございますけれども、しかしながら、このお金については、じゃだれが責任を持つのか、そしてそれをまた、よくわけのわからない財団法人をまた新たにつくるということは、何ら改善をされないのではないかと思いますので、このお金につきましては一たん国庫に返すべきではないかというふうに思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 このお金につきましては、今後、どういう枠組みでこの事業をやっていくかということを相談し、そして財務省とも相談させていただいて決めていきたいと思っております。
小池委員 ただ、今申し上げたのは、私は、納税者の観点から重要なことであり、また日ロの関係をもう一度根本から見直すということでは、一たん線を引くということが今求められていると思うわけでございます。
 そしてまた、こういうふうに二国間であるとか地域間で協定等を根拠としてでき上がっている外務省関連の団体というのは、結構ほかにもあると思うんですね。幾つぐらいあるんでしょうか。そして、それはどのような活動をしているんでしょうか。特に日本に本拠地を置いているところ、どういう方がやっておられるんでしょうか、お答えください。
川口国務大臣 ロシアとの関係で存在をしますもの、国際機関ですが、これは行政取り決めによるものを勘定しますと、六機関、六つあります。
 支援委員会のほかには、ロシアとの青年交流、ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシとの間で核兵器の廃棄協力を行っている機関がございます。これらについてだれがやっているかと委員おっしゃられたと思いますけれども、資料が手元にございませんので、これはまた調べまして御連絡を、御報告をさせていただきたいと思います。
小池委員 これは大変いい機会でございますので、国際機関としての位置づけをされているということは、支援委員会が抱えていた、日本の会計検査院の力が及ばない、そしてまたここの国会でも話し合われることがない、非常に不透明であるという点では共通項だと思うんですね。
 今、六つとおっしゃいましたけれども、外務省関係ではもっとたくさん、ロシアのみならず、旧ソ連のみならず、ほかにもたくさんあると思います。
 ぜひともこの予算委員会の方で、委員長、今の私が申し上げました要求事項について、一覧としておまとめいただいて御提出をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
津島委員長 理事会で相談させていただきます。
小池委員 引き続きまして、今度は、中国との問題、瀋陽での駆け込み事件についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回のビデオがなかりせばどうなったであろうかということを考えますと、非常に複雑な思いがいたします。
 あの場に映し出されていたのは、一つには、中国側が、あの武装警官が明確に日本の主権を侵して、そして、不可侵の権利を侵して中に入っているという事実でございます。その一方で、厚生労働省からの出向の方でございましょうか、大変心優しい、帽子を拾うという行為をされて、まあ、日本の外交の現場における最前線の、何というんでしょうかね、非常に脆弱であって緊張感がないかということを日本のみならず世界じゅうにさらけ出したという、この二点ではないかと思います。
 もちろん、最初のときは様子がよくわからなかった、混乱したという状況もございますでしょうけれども、外交というのは、いつ何どき、何が起こるかわからないという緊張感を持って当たっていただかなければいけないところでございますので、非常に私もショックを受けたわけでございますし、ある意味では、これまでの流れから考えていくと、まあ、あんなものだろうというような、そういう大変あきらめの気持ちも持っていたのを隠すわけにはまいりません。
 ただ、今、この日中間は大変膠着もしております。お互いのメンツもある。お互いの主張もある。私は、日本はこれまでの主張を何ら変えることなくこれからも対応していただきたいと思っているんですが、そういう中で、時には見方を変えるというのも非常に重要かと思います。
 これが、もし、日本側の警察官が中国大使館、領事館等に何らかの形で入っていた場合、中国のリアクションはいかがでありましょうか。そしてまた、今、瀋陽の総領事館の周りには鉄条網が張りめぐらされておりまして、要は、来るなというメッセージを伝えているかのように私には感じられますけれども、もし、日本にあります例えば中国の公館に日本が勝手にあのような鉄条網を張りめぐらせた場合には、多分中国側は大変また抗議をしてくると思いますよ。ですから、見方を変えるということで、むしろ日本の置かれている立場ということがもっと明確になってくるんじゃないかと思っております。
 私は、その意味で、あの瀋陽の日本の総領事館を取り囲んでおります、主権だ、国家の利益だと言っているときに非常に細かい話で恐縮ですけれども、一つの象徴として、あの鉄条網は日本側から頼んだわけでもないと思うんですけれども、あれは非常に日本の総領事館を要塞化している、まるで近づくなということを暗に伝えているようなニュアンスがあるから取ってくださいということもひとつ言っていいんじゃないかと思っております。
 これも続けて伺いますけれども、今後そういった見方を変えていくと、中国側の方はなかなか、考えというか対応を変えるとも思いがたいわけでございますけれども、今後の流れとして、連行された五人の家族の方々、あの子供の顔を見てどんなに胸が締めつけられる思いをした人がたくさんいたか。また、あの子供に代表される何万、何十万の北朝鮮の子供たちが同じような、アリラン祭で楽しく踊っている子供たちはまた別の意味の気の毒さを感じますけれども、本当に食べるものがないというような状況に置かれている子供たちをやはり私は何とか救っていきたいというふうに思うわけでございます。
 その中で、今後の対応として、今回ビデオがあったということで、私は、あの五人の家族の方々が北朝鮮に戻されることはないであろうというふうに考えております。北京オリンピックも控えております、WTOのメンバーにもなりました、その中国が北朝鮮にあの五人を秘密裏にでも帰すというようなことがあったら、それに関して中国側が受けるダメージの方が大きいというふうに考えるからであります。
 さて、その五人が第三国なりどこかに今後身柄がきっちりと確保されて自由になったときに、記者会見が開かれると思うんですね、記者会見。そこで自由な物言いをするのか、それとも、今は中国側の方に身柄があるわけでございまして、今中国側の言うことを聞かないと外に行けないという事情も五人にはあると思うんですね。そこでいろいろな条件も課せられるんじゃないでしょうか。そうなると、日本側にとって不利なこともその記者会見で述べられるということは往々にしてある、もうそっちの方向だと考えていていいと思うんです。
 それについての御対応、先ほどの見方を変えた場合の話、そして今の、記者会見で日本に対して不利なことが出てくるということが予想されるということについて、外務大臣のお考えを伺います。
川口国務大臣 見方を変えるというのは、いつも大事な発想だと私も思っております。
 それで、まず記者会見をした場合ということでございますけれども、これは今の時点ではまさに人道上の問題を最優先として、これについての早期解決をと考えている時点でございますので、ちょっとその先のことについて、そういうことがあったらということについては大変に今お答えがしにくいわけでございますけれども、私は、いずれにしても、日本国の総領事館の対応について御意見がおありになるという方がいらっしゃったら、それはいかなる意見であれお聞きをするということであると思います。それで、その上でそれが適切でないということであれば、それはそういうことでございますし、それを参考に総領事館のあり方として改善をしていくということであれば、それはやるべきであると私は思っております。
 この五人の方が記者会見をするかどうかということについては、今の時点ではそういった仮定の御質問についてはお答えが非常にしにくいということでございます。
小池委員 外交というのは、そういったある種の情報合戦の部分が多分にあるわけでございます。そして、私が今申し上げましたように、五人の家族の命は現在中国側の方にある、残念ながら。そこで、今後出た場合に、彼ら自身の身を守るために、やはりある種の条件については守らざるを得ないであろうということ、これはもう容易に想定されるわけですから、十分そのときのための御準備をされていただきたいということを申し述べさせていただきます。
 さて、ほかにも今回のビデオの関連で、スペイン大使館への集団駆け込みの映像なども拝見をする機会がございました。あのときは、同じ中国の武装警官なんですけれども、ただぼやっと見ていて何も手を下していないんですね。日本のときだけああやってだっと入ってきてやっているというのは、これは中国に基本的になめられているんじゃないでしょうか、日本側は、これまでのいろいろな積み重ねで。いかがでしょうか。
川口国務大臣 この件につきましては、事実関係について日本側はきちんと調査をしたわけでございまして、その事実関係についての日本の立場は全く変わらないわけでございます。他方で、中国側も調査を行いまして、その結果を尊重してほしいということを要望しているわけでございます。そういった違いがあるわけでございますけれども、これについては、日中の関係の大局を踏まえて冷静に対処をしたいと考えております。
小池委員 事実関係は一つなんです。日本が中国になめられているという事実だけなんですよ。それは今の御説明でいただいたように、やはり外務大臣としてはもっと毅然とした、御自分でもおっしゃっていると思いますけれども、そういった所作であるとか一つ一つがひっくるめて外交だ、パワーだと私は思うんでございますね。その辺がないと、今後の交渉についても私は非常に悲観的に見ざるを得ないと思っておりますので、きょうも勝負服ではないですけれども、常に赤で迫っていただきたいと私は思っております。
 さて、きょうのこの委員会もテレビが入っていろいろあるわけでございますけれども、なかなかやりにくうございます。ある意味でこの外務省の、悪いけれども、やはり余りにもこれまでひどいと思いますよ。ていたらくという言葉で言わせていただきますけれども、これを踏まえて、日中間で今交渉をやっているところで非常に実はやりにくいんでございます。
 ある意味で、この間も民主党の方は調査団を出されましたが、そういう苦悩も抱えていらっしゃったと思うんです。だけれども、基本的に外務省の調査を信じられないからいらしていると。ただし、その中でいろいろなことを発表していくと日中間の交渉にマイナスになるということも考えなくちゃいけない。オウンゴールを入れちゃだめだというようなところもある。
 こういったところについて、総理は自虐的ではないかということを、これはもう取り消さないとおっしゃっておられます。非常に難しいと思います。中国側は、片やマスコミも一枚岩です、統制されていますから。そういったところで、非常にこのやりにくいところ、こういった自虐発言等も含めて、思いをお伝えください。
小泉内閣総理大臣 日本には日本の立場があります。中国には中国の立場があるでしょう。そういう点も含めて、日本は今中国に抗議しているわけです。それを、中国側の言い分があたかも正しくて日本側の言い分が間違っているということを今交渉の最中にがたがた言われるというのは、これはいかがなものかと。余り日本の非をあげつらうということは自虐的ではないかということを言ったまででありまして、私は、今の状況、真剣に交渉しているわけですから、そういう点も考えてもらいたいということを言ったまででございます。
小池委員 我が国がやはり毅然としていくということ、これについては、いろいろなバックアップがあってこそ私は成り立つものだと思っております。その意味では、日本の国民も、ひょっとしたらあの場に自分がいたら帽子を拾っているかもしれないというふうに感じている方もたくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。私は今回、今後のこの交渉のぐあいを日本側がどういう態度で臨んでいかれるのかもよく注視させていただきたい。そういう国民の目をしっかり意識して外務交渉に当たっていただきたい。
 最後に、今回の問題でございますけれども、問題は、そもそもは、こういう難民の方々を出している、飢餓の方を出している北朝鮮問題にあるわけでございます。アメリカも悪の枢軸国ということで指定もしている。私は、G7、今後、カナダで開かれるわけでございますけれども、これは世界の問題として取り組んでいくべきで、日本がそのイニシアチブをとるべきではないかというふうに思っているわけでございますが、総理のお考えを伺わせていただいて、終わらせていただきます。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮と日本との交渉、また北朝鮮内の国情、これは非常に難しいものがありまして、日本としては、拉致問題を抱えつつ、なおかつ正常化交渉というものも真剣に対応しているわけでありまして、本来だったらば、北朝鮮から流出する国民が出ないような北朝鮮の国内事情がとられるような努力を求めたいわけでありますが、これは一朝一夕には成りません。それぞれの国というものがいろいろな国情の違いを乗り越えて、難民問題というものは単に北朝鮮だけの問題ではありません。全世界的にもこの問題で多くの国が悩んでいるわけでありますが、日本としては、今回の問題あるなしにかかわらず、北朝鮮とは拉致問題、正常化交渉、真剣に対応しているということには変わりはございません。
津島委員長 これにて小池君の質疑は終了いたしました。
 次に、海江田万里君。
海江田委員 民主党の海江田でございます。
 まず、小泉総理にお尋ねをいたしますが、今も小池委員の質問に対しまして、民主党の調査が自虐的だというお話がございましたけれども、私どもは、五月の十五日から十七日にかけまして、瀋陽と北京に行ってまいりました。
 そして、まず日本側からも、瀋陽の総領事であります岡崎さん、北京の日本大使館の公使であります高橋さん、それから、あのVTR、映像にも出ております宮下副領事、警備の担当の馬木副領事、総領事館の会計課の職員の千葉さんという方、それから現地の中国人のスタッフの方もいますから、この方々、それから中国側とも、あの当日、領事館の中に立ち入りました尹という大隊長、その上部の支隊長、参謀長、それから瀋陽市の、あそこは遼寧省になっていますので、遼寧省のいわば外務省に当たります、外務大臣の張さんという方ですが、こういう人々に会って、本当に、どういうことが真実なのかということをつぶさに、十四時間ぐらいかけて聞き取りをやりました。
 そして、私どもが発表しましたことというのは、中国側だけが一方的に言うことではありませんで、それを日本側にも確認をしまして、あるいは日本側から出た話は中国側にも確認をしまして、そして、その報道の一部が報道されて、ああいう形で、私どもの今日に至っているわけでございますが、一体、総理は私どものこの調査のどこが自虐的だとお考えになっておるんですか。
小泉内閣総理大臣 それぞれの立場で調査されていると思いますが、今交渉中であります。日本の立場と中国の立場は違うんです。そういう交渉の最中に日本の非をあげつらうということはいかがなものかということを言ったまででありまして、どこが自虐的か、やはり日本の今交渉している立場も考えてもらいたい。
 そして、政治家同士が自分の気に食わない発言を撤回しろとか言うというのはいかがなものか。これにも私はあきれているんですよ。与党の議員が野党から批判されるのはたびたびですよ。政治家同士だから、自分の意見を言ったら違う、けしからぬというのは当たり前なんです。そういう問題について、自分が批判されているから発言を撤回しろなんというのは、政治家としては私はいかがなものかということを言っているわけであります。
海江田委員 今の発言は明らかに問題のすりかえでございます。私の質問に対して答えになっておりません。
 ちなみに、いろいろな意見がこれまでもございましたけれども、例えば衆議院では、これは五月の二十日ですから一昨日でございますけれども、事態対処特別委員会で、中野寛成委員が福田国務大臣に質問をしましたところ、福田国務大臣は、民主党の皆さんが現地に赴かれたということは、大変お忙しいところにもかかわらず、わざわざ行かれて真実を究明しようというその姿勢については私は大変高く評価をしたい、このようなことを言っておりますし、昨日は、参議院の外交防衛委員会で、これは齋藤勁委員からの質問で、安倍官房副長官は、自分が失言だったと、私の中国の拡声機という表現につきましては適切さを欠いたということで撤回をさせていただきます、こういうふうにあるわけですよ。
 ですから、私は先ほど総理にお尋ねをしましたのは、私どもの行ったこと自体が、それが自虐的なのか、それとも、行って発表をしまして、その一部が報道されたわけですけれども、その中身について自虐的だとおっしゃっているんですか。どっちなんですか。行ったこと自体が自虐的なんですか。
小泉内閣総理大臣 私は、現在中国と交渉している最中に日本の非ばかりをあげつらって非難するのは、これは自虐的過ぎるということを言ったまでであります。
海江田委員 重要な問題がございます。一つは、日本の非ばかりをと言いますけれども、では、どこが非なんですか。
小泉内閣総理大臣 私は、瀋陽総領事館の対応で反省すべき点が多々あったと思います。
海江田委員 じゃ、その非については、総理も当然同意をされるわけですよね。それがどうして自虐的になるのかということがわからないということが一点。それだったら、総理も、その非をその意味では指摘をしているわけですから、自虐的になっているということですね。まずこれが一点ですね。
 それからもう一点は、そもそも調査に行くこと自体がいけないのかどうなのか。前段のお答えでは、調査に行って、今政府間で交渉をやっているんだから、政党でありますとかあるいは委員会でありますとか、これは本当は委員会で行こうとしたわけですよ。だけれども、それは与党の皆さん方が反対をしたわけです。ですから、私たちだけでやむなく行ったわけでございますが、あるいは、マスコミの皆さん方もいろいろな調査をやられる。それを発表することがいけないんですか、今政府が交渉している間は。
 その二つについて明確な答弁をお願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 どのような調査をするということに対してとやかく言うつもりはありません。知っていることをどこまで言うか、どこまで言わないか、その判断もあると思います。
海江田委員 まだお答えになっていませんね。いいですか。じゃ、今総理がお認めになったのは、調査に行くことは構わないわけですね。構わないわけですね。
小泉内閣総理大臣 それは独自の判断があるでしょう。
海江田委員 問題は、その外務省の非をあげつらうことがどうして、第一、私どもは非をあげつらったとは思っていません。こういう新しい事実があるよということを、まだ私ども発表していない点もたくさんございますけれども、少なくとも事実を突き合わせをやって、しかも両方にきちっと聞いて、それで、明らかにこういう事実が隠れていたわけですよ。それから、私ども以外にも、あの英文の亡命希望の手紙が出てきて、それを受け取らずにそのまま突っ返した、英語が読めないからというような答えも出てきました。こういうことが全部自虐的なんですか。どうなんですか。
小泉内閣総理大臣 全部かどうかということじゃなくて、今交渉しているんです、日本側の立場も考えてもらいたいということを言ったまでであって、私と海江田議員とは見解が違うでしょう。見解が違うからけしからぬと言うのは結構ですよ。しかし、私の発言に対してけしからぬと言うのは結構でありますが、それはそれとして受けとめますが、私は、今交渉している立場として、余り現時点で、外務省の対応、反省すべき点が多々あるけれども、今中国と交渉しているんだから、日本側の非ばかりをあげつらうことは慎重にしてもらいたいという意味で言ったわけであります。
海江田委員 私どもは、総理が、民主党は自虐的だとおっしゃったことは、特に民主党の調査が自虐的だとおっしゃったのは、十七日の夜の八時ごろでございまして、私どもは当時、その日にやっと帰ったばかりでございまして、私どもの方からそういう総理のやり方に対して攻撃だとか何だとかした、少なくとも私どもはその調査に関して言えばまだ全然ありませんよ。ただ明らかになっている事実を発表しただけで、総理の方が批判をされたから批判をされ返すんだとかいって、先にそっちが言ってきたんじゃないですか。違いますか、時系列からいって。
小泉内閣総理大臣 私は、記者団の質問に答えただけでありまして、今交渉している最中に余り外務省の非ばかりをあげつらうのはいかがなものかと言ったまででありまして、それは私の意見であります。
海江田委員 では、どうですか。その自虐的だと言ったことは、これは撤回しますか。
小泉内閣総理大臣 撤回いたしません。
海江田委員 では、総理、私どもは、どこが外務省の非ばかりをあげつらっているんですか。
 私どもは、もちろん日本の方にもそれから中国の方にも、ビデオで皆さんが見ておるように、あの三人が、あの武装警察が本当に三人の、いたいけない子供と女性二人を強引に外に引きずり出した。これは許可なんかとっていませんよ、そんなことは。わかっていますよ。そういうことはちゃんと指摘をしていますよ。
 では、一体どこが具体的に私どもが中国側の主張をそのままうのみにして言ったんですか、これは。
小泉内閣総理大臣 それは、民主党の立場もあるでしょうけれども、今、政府側としては政府の立場があるわけであります。中国に抗議しているわけであります。
 中国と日本とは国情も違います。そして、中国側は恐らく、日本に調査団を派遣して日本の政府側の言い分を聞いて日本の政府はこうだということは言わないでしょうね。それは、日本はこういう自由な国ですから何を言ってもいいんですけれども、私は、そういうふうに感じたことを言ったまでです。
 私の感じたことを言ったことを撤回せよなんと言うことは、政治家として私は慎むべきだと思っております。
海江田委員 総理は、私どもが調査に行ったことについてはこれはとやかく言うものではないというお話がございましたけれども、結局、今交渉中なんだから、やはり調査に行って、そしてそこでわかったことを発表しちゃいかぬということじゃないですか。政府が言うことだけを信用していればいいんだ、出してきたこの報告がどんなにあやふやなものであっても、一回それを出したんだから、それをもう全部信じてあとはみんな盲目的についていけ、こういうことを言っているんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 それは、自民党と民主党の立場は違いますから、私は私の感想を言ったまでですよ。それをけしからぬと言われちゃ、それはおかしいと。
海江田委員 それでは、まず、そうやってやはり総理の立場もあるわけですよ。私どもとは違うわけですよ。それが、総理が、一国の総理大臣がそういう形で、私どもの調査に対して、そういうことをやってはいけないような、そういうふうに受け取られる、あるいはそれに対して自虐的だというようなことを言うこと自体――やはり私は、民主主義というものを本当に育てていく意味では、みんながそれぞれ言うことを言って、それから、与党の側というのは、やはり野党からいろいろなことを指摘されて、それで正しい方向へ直していかなければいけないわけですから、それは全然立場が違うわけですよ、総理と私どもの立場というのは、置かれている国の中の立場というのが。
 だから、本当に私どもの発言の自由というものをしっかり確保しなければいけないんで、その発言に対して自虐的だというレッテルを張って、そしてそれを押しつぶそうという考え方は、これはどう考えたって許されるものではないですよ。
小泉内閣総理大臣 それは、私は言論の自由を認めていますよ。その私が自虐的だと言うことを怒って、けしからぬなんと言うのは、これはとんでもないことだと思いますよ、政治家として。
 では、今まで私に対しての批判を私が撤回しろなんて言ったことありますか。見解は違う、自虐的と言ったのはけしからぬと言うこと自体、言論統制じゃありませんか。よく考えていただきたいね。
海江田委員 ですから、先ほどから、では、もう一回お尋ねをしますが、いいですか、私どもが発表した一体どこの部分が自虐的なんですか。それについては、私どもは、調査の仕方などについても十分日本の国の国益というものを配慮しまして、本当に何が国益になるかということを真剣に考えまして、そして調査をして発表したんですよ。だから、一体どこが自虐的なのか、それをおっしゃっていただければ。
小泉内閣総理大臣 それは一般的な感想を言ったものであって、今交渉しているのであって、日本としても、外務省の対応がよかったとは思っておりません。反省すべき点があると言っているんです。
 しかし、今この大事な交渉最中で、そういう最中に、中国側に行って、それは中国側の発言と合わせて、中国の言い分に合わせて、日本の外務省が問題だということに対して、私は、それはちょっと自虐的過ぎるんじゃないか、自虐主義じゃないかと言ったんであって、それはけしからぬと言うのは自由ですけれども、それは私は、自民党です、政府です、野党の立場けしからぬと言ったっていいじゃないですか、どんな発言だって。それをけしからぬといって撤回しろと言う方が、私はおかしいと思っています。
海江田委員 中身で一体どこの、総理、総理、どこの部分がけしからぬのかということをやはりおっしゃっていただきませんと、さっきも行くこと自体は構わないとおっしゃっていましたけれども、今の答弁ですと、今度、行くこともいけない、大事な交渉の最中なんだからという話にすりかわっていますからね。
小泉内閣総理大臣 私は、行ってはいけないなんて一言も言っていませんよ。一般的に、今の意見、何回も言っているでしょう。今大事な交渉をしている最中に、日本の対応、日本の非を余りあげつらうというのはいかがなものか、それは私の考えですよ。それをけしからぬといって撤回せよと言うのはおかしい。あなたの意見がどんなに私を批判しても、私は撤回しろなんて言いませんよ、政治家同士で。民主党も野党も、どんな意見を言ったっていいんですよ、それは。私は、報道の自由、言論の自由を認めています。
海江田委員 今私がお尋ねをしておりますのは、いいですか、総理、よく聞いてください、お尋ねをしておりますのは、一体中身のどこが自虐的なんですかと。そこからで、何でそれに答えてくれないんですか。答えてくださいよ、これを。
小泉内閣総理大臣 全体の感想を言ったんですよ。こういう審議の中で、外務省けしからぬ、外務省けしからぬ、それはわかりますよ、野党として。しかし、政府は今中国と交渉しているんです、抗議しているんです。いかにも中国側の言い分が正しくて日本側の対応が間違っている、日本の言い分が間違っているというようなとらえ方はやめてほしいという意味で言ったんであって、それは私にも言論の自由があります。あなたの言論の自由も認めます。そういう意味において、政治家の発言を撤回せよ、総理だから撤回せよと、総理も政治家ですよ。そういう態度がいかがなものかと言っているんです。(発言する者あり)
津島委員長 御静粛に願います。
海江田委員 いいですか、今私が総理にお尋ねをしているのは、私どもの調査の一体どこが自虐的なんですか、そのことをお教えくださいということを言っているので、それは言えないんですね、結局。言えないんじゃないですか。
 私どもの批判というのは、どこどこのどういうところがいけないから、そのことについては改めなさい、こういう指摘をしているわけですよ。全般的に言っているだけじゃないですか。答えてください。
小泉内閣総理大臣 その姿勢を言っているんですよ、姿勢を、今の。
 外交交渉をしている、そして中国に行って、中国側の言い分を聞いてきて、中国の言い分が正しくて日本の言い分が間違いである、あるいはそういう印象を与えるということは、私は印象を述べた。印象を述べた意見がけしからぬと言うのがどうかと言っているんです。
海江田委員 では、総理、総理、それでは、私どもが今、先ほども、どういう形でどのくらいの時間をかけてどういう人に会ってきたかということは、今初めて総理にお伝えをしたわけですよね。ですから、私どものやはり本当に国のことを考える気持ちというのも恐らくわかっていただけると思う。それだったらば、そのときに、先に言っていた話が少し違うというふうにお考えになったってそれは構わないんですよ、少しも。それはどうですか、そこの点は。
小泉内閣総理大臣 それは、どういう考えでもいいですよ。だから、私がどう考えてもいいでしょう、言論の自由だから。
海江田委員 こういう根拠もなしにそういうレッテルを張るということをやりますと……(小泉内閣総理大臣「しょっちゅうレッテルを張っているじゃないか」と呼ぶ)いやいや、それは違いますよ。そんなことはありませんよ。いいですか。根拠もなしにレッテルを張るということは、それは、申しわけありませんけれども、これはやはり本当にそれこそ大本営発表をやって、この大本営発表に、それに対して何か文句を言うやつは非国民だというようなこととつながってしまうんですよ、それは。(小泉内閣総理大臣「非国民なんて言っていないですよ」と呼ぶ)いや、言っていませんよ、もちろん。だけれども、そういう考え方につながるということを言っているわけですよ。
 具体的な話に入りますけれども、私どもが調べてきましてわかったことというのは、幾つか新しい事実も出てきました。それは全部外務省に確認をしまして、そして外務省もそのとおりだと。ただ、例えば電話をしたということも中国側からも言われた、外務省にも確認をしたら、外務省からもかかってきた。だから、電話は確かにしたんだなと。だけれども、その電話の中身が抗議であるのか、それとも、中国側は謝意であると言っているけれども、それはそうなのかということはわかりませんよ。だから、そこはそこで、問題点は問題点で平行線のままあるわけだけれども、少なくとも電話はありますねとかそういうようなことを一つ一つ、抜け落ちているものが余りにも多過ぎるんですよ。
 そして、総理、聞いていただきたいんですが、あの報告書というのは、国民自体も七五%の人がこれは信頼に足りないということを言っているんですよ。だから、総理が、そんなに本当に国民の七五%の人たちが信頼に足らないようなものを材料にして中国とぶつかっていれば、中国は本当に四千年の歴史があって外交がうまいわけですよ。いろいろなことをやってくるわけですよ。それには余りにもこれは心もとないんじゃないだろうか。もっとこっちがしっかりと事実をつかまえて、そしてその中でやらなきゃいけない。
 特に、総理、やはり今度の問題の事情聴取に、外務省は小野領事部長という、これは局長のずっと下の、まあ総領事館で起きたことだということでも、お役人を、領事部長を行かせて聞き取りをやらせているんですよ。それは、外務省の中にも副大臣、政治家であります政務官でありますとか、そういうようなポリティカルアポインティーというのが、ちゃんと政治家がいるわけですから、やはりそういう人が行って、きちっと聞き取りをやってくる必要があるんじゃないですか。どうですか、総理。これは総理です、総理にお尋ねをしております。
小泉内閣総理大臣 それは、外務省の判断もありますし、その時点でだれを派遣するのがいいかということは、政府側として判断すべき問題だと思っております。
海江田委員 ただ、これは外務省のそれこそ同じかまの飯を食った人たちに聞き取りをさせますと、例えば電話のことだって、これは全然それまでは外務省は聞いていなかったわけですよ。私どもが聞いて、しかも、その聞くときも、本当にもう五人が連行されてから後、何も中国側に連絡をとらなかったんですかということを言ったら、二度否定をされまして、その後、中川委員が、電話なんかしなかったですかと言ったら、ああ電話をしましたということを、その時点で思い出したわけですよ、これは。
 そうしますと……(発言する者あり)今、後ろから隠していたという言い方もありますけれども、私はそう思いたくない部分もあるんですが、そういうふうにやはりきちっと聞いて、それこそ本当にお役人以外の人が聞いて、事実をまずしっかりと持っておって、そして相手に対抗して交渉を進めていかなきゃだめじゃないですか。余りにも無防備過ぎて、領事館のあのときの姿勢、あのときの姿と同じで、私は見ておって余りにも無防備過ぎますよ、交渉の仕方についても。
 だから、それを私どもは、こういうこともありますよと。言わないことだってたくさんありますよ。だけれども、そういうことを、その意味では私なりに、やはり国を思う気持ちからそういうことを調べているのに、それを自虐、自虐とおっしゃるから、それは違うんじゃないですかということになってくるわけですよ。いかがですか、総理。
小泉内閣総理大臣 それは違うという意見はいいですよ。しかし、私はそう思ったんだから、思ってもいいでしょう。
海江田委員 私どもは、少なくともそういう形で調査をしてきたということは、これはまず御理解をいただきたい。そして、いろいろなことは、私どもはちゃんと中国の人からも聞かなきゃいけないんですよ。ただ対談をしたとかそんなことじゃありませんで、三時間余りにわたって聞きましたけれども、そのうちは、ちゃんとその中に入った人間に対して聞き取りをやったら、やはりいろいろな矛盾もあるわけですよ。そういうことがはっきりわかってくるわけですよ。
 だから、そういうことも通じて全体を把握して、それで初めてこれは対応をしなければ、とてもじゃありませんけれども、日本の外交というのは、この中国との交渉においても全然腰砕けになっちゃって、本当にあれは交渉になっていないじゃないですか。そういう反省というものは、やはりこれまでの外務省に任せ切りにやっていたその反省というものを同時に持っていただかないと、総理なんですから……(発言する者あり)
 民主党も、もちろんそうです。一緒になって頑張るために、私たちもいろいろな情報を持っていますから、そのことをしっかりと受けとめてくれなきゃいけないわけですよ。それを、最初から自虐と言う。しかも、最後まで総理は、その中身が、どこが自虐なんだということをおっしゃらないで、全体の雰囲気だとか、そういうことになったら行くこと自体もおかしなことになっちゃうじゃないですか。それはだめですよ。
 外務大臣に聞いていません。総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 今まで言っているように、一々政治家の発言を批判されたからけしからぬとか、言うのは自由ですよ。私の発言の自由も認めてくださいよ。私は、一般的な全体の感じとして、あのときの発言は自虐的と受けとめたんで、それはけしからぬという意見は言っていいですよ。しかし、私がそう言った発言はけしからぬから撤回せよというのは同じ政治家同士でいかがなものかと、それを言っているんですよ。
海江田委員 私どもは最初から、これは私どもが発表した事実と、調査をしてきた調査の態度、それから発表をした中身、そういうものから照らして総理の発言というのは事実と違いますから、ですから、その発言を撤回してくださいと。もし総理がこの問題にこだわるんでしたら、一体どこの部分が本当に自虐的なのかということをお教えくださいということを言っているわけで、これはお答えになっていませんので、後で委員長、議事録をしっかりと精査していただいて、私がお尋ねしていることに総理がお答えになっていないわけですから、そこの点を改めてもう一回協議をしていただきたいと思います。
 私の持ち時間はもうこれで過ぎましたので終わりますが、協議をしていただきたいと思います。
津島委員長 議事録はちゃんと調べてみます。
 この際、中川正春君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 先ほどの、私自身も海江田議員と一緒に現地に入ったわけでありますが、一国の総理大臣らしからぬ、何といいますか、悲しくなるような表現で我々の行動を評価されたということ、これについては、これ以上やっても、国民の方から最終的には判断が下されるだろうという気持ちを持って、中身に入っていきたいと思います。
 中身の中で、私たちがなぜ現場ということを大切にしたかということ、それから、最終的には、この五人が第三国に出て、日本の外交というのがそういう意味で、最初のプライオリティーである人権というものに対してしっかり重きを置いた形で交渉をしたということ、このことが果たされていくという、その思いを持って議論をしていきたいというふうに思っております。
 まず、この具体的な議論に入る前に一つだけ確認をしておきたいんですが、外務大臣、今、さっきの五人、この人たちが、中国との交渉の中で第三国に出国できる可能性がある、両方の、日本といろいろな前提条件のそれぞれについての話し合いはあっても、基本的には、まず人権を大切にしていくということ、このことが中国との間で前提として同意があるということ、これは、そこまでいっているんですか。それとも、まだそこも確認ができていないんですか。まず、ここから入りたいというふうに思います。
川口国務大臣 現在、中国側と話し合っていることにつきましては、現在まさにそういう状況でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
中川(正)委員 次に、中身に入っていくわけでありますが、今回、それぞれ前半でも指摘をされましたとおり、最初にビデオが放映されたということが非常に大きなインパクトになりました。これを見て、私も、何ということだと。あのビデオを見たところでは、やはり日本の外交のあり方というのに非常に大きなショックを受けるわけであります。
 それでは小泉総理、これはどういうふうな形で日本の副領事はあれに対応すべきだったのか、あそこで何をすべきだったのかということですね。これをどんなふうに考えられますか。
小泉内閣総理大臣 ビデオを見た範囲内でありますけれども、現場の状況は、何を言っているのか、どういう状況なのかという点を当時の領事関係者と違って把握はできませんが、あのビデオを見た限りでは、これは非常時の対応としては、非常時意識といいますか危機意識というか、生ぬるい点があったのではないかと私は思っております。
中川(正)委員 これは、私たち日本の国民でさえあれだけショックを受けるわけですから、私は、中国にこの調査に行ってから、その足で韓国のソウルに向かいました。そこでは、あの背景にある韓国系のNGOの皆さん、そしてあのフィルムを配信した聯合通信、この人たちと具体的に会いまして、その空気をつかみました。これは、日本の私たちが想像する以上に、韓国の人たちというのは、今の日本の外交に対して、何というていたらくなんだ、何という弱腰外交であり、人権を無視した形で現場対応がなされたんだ、こういう大きなうねりがあるということ、これをつかんでまいりました。
 その上に立って、こういう海外の目ということに対しても説明するというのは、これは外務省の一つの大きな役割でありますが、あのビデオに対して、川口大臣はどのように説明をし、どのようにアピールをされておるかということ、これを冒頭お尋ねをしたいというふうに思います。
川口国務大臣 あのビデオについてということで申しますと、それを見た人の心の中にさまざまな思いはあったと思います。ある人たちは、まさに今委員がおっしゃったように、総領事館の副領事の対応があれでよかったのかというふうに思われたでしょうし、また他の人たちは、全く別な観点から、人権、中国側の対応についてあれでよかったかと思った方もいらっしゃったと思います。
 それは、思いはさまざまあるわけでございまして、私どもは、あのときの副領事の対応についてはその後調査をしておりまして、確かに、最初の段階に何が起こったかよくわからない状態、一人で非常に慌てていた状態というのは私はあったと思いますけれども、総領事館全体としての対応があれで適切であったかというと、改善をすべき点、反省すべき点多々あったと私は思っております。
中川(正)委員 これは私たちが現地で確認をしてきたんですが、日本側の副領事の説明も、それから中国サイドの、さっき話の出た尹大隊長の説明も、ここは共通しているんです。ここを実は日本は強調しなきゃいけない。それは何かというと、あの時点では、侵入してきた人たち、侵入というよりも、あそこで映っている、泣き叫んでいて、あの本当にかわいそうな子供と、それから母親、こういう人たちが北朝鮮の亡命者だという認識はないんですよ、現場で。そのことに対してのまず第一義的な説明というのは、日本政府からなされるべきなんです。
 その上に立って、それぞれ、では、次の対応がどうであったかということなんですね。私たちが発表した中に、あの三人がそのまま武装警官の詰所の中に入れられて、それで宮下副領事もその後についていってその詰所の前に至った、そのときに先ほど話の出た尹大隊長がそこの現場に駆けつけて、それで宮下副領事と顔を合わせている、そこで二人が握手をしたということがあった。これについては、この外務省サイドの調査書の中にもないんです。そこで報道されたということが、今回、まず第一、新しく出てきた事実だということで取り上げられたわけであります。
 この二人の気持ち、その後ろにある背景というのは何だったんだということなんですが、宮下副領事の説明は、これまでいろいろな事故が起こっているんだ、特に、あの最前線の領事館というのは、にせの、残留孤児だ、だから日本に帰りたいという人たちであるとか、あるいは犯罪者でビザを取りたいという人たちであるとか、そういう人たちが拒否されたときに何回も何回も同じような形でああいう場面があって、宮下副領事は外に出ていって、その尹大隊長と一緒にそういう人たちをなだめている、そういう信頼関係があって、二人がそこで握手をして、まずこの事件をどう解決していくかということの二人の確認みたいなものがあった、そういう背景なんです。
 そこのところが、まず、第三者に対しても、特に韓国にこの同胞が、今中国でこれはもう二十万人から三十万人苦しんでいるという状況にあるわけですが、こういう人たちに対するメッセージとして日本の外交としてしっかり出てくるということ、このことがまず第一義だったというふうに思うんです。どう思いますか、総理。
川口国務大臣 今、委員が御指摘なさった、現場での、その門のところでの対応という点についての副領事の置かれた状況というのが、まさに私どもが報告書の中で御説明をしたポイントでございまして、この二ページ、事実関係のところで、「総領事館入口付近で女性二名、幼児一名が取り押さえられた際の状況」ということで、これは五つほど書いてございますけれども、その最初の三つのポイントで書いてあるのがまさにその点でございます。
 副領事は、何らかの事故の発生、または、しばしば発生している中国人査証申請者との間のトラブルの可能性が高いと認識をしていた、あるいは、出てきたときに、副領事は武装警察官が敷地内に入ったという認識はなかった、あるいは、女性がいかなる理由でこうした状況にあるのか理解しようと試みたが、いずれも大声で叫ぶのみであった、これがまさに私どもがここに書いてある点でございまして、そういった点について、私どもは、十分に国民の方には御説明をしようと試みているつもりでございます。
 その上で、委員が、なぜ国際的にそういった説明をしないのかということでございますけれども、私は、今大事なことは、この五名の関係者が、人道上の観点から、この方々が望むところに行くことができる、望まないところに送還をされないということが大事であると思っておりまして、この点について冷静に、そして毅然とした態度で中国と話し合っているところであるわけでございます。
 ということで、日本側のその考え方をここで声高にほかの国に言っていくということが、外交上必ずしも適切であるという判断はしていないということでございます。
中川(正)委員 最初の、いわゆる政府サイドの初動というのが間違っているんです。それと同時に、自分の気持ちの中に、絶えず防戦をするだけの消極的な話でこのことに受け答えしているから、一番大事なことが前に出てこないんですよ、大臣。そこのところを強調することによって日本の国民も初めて冷静になれる、初めてここから話が始まるんだということになる。
 その後は、これはその後がまずいんですよ、外務省は。最初の部分というのは、あのビデオによって本当の情報が伝わってないんだということ、ここから始めなきゃいけないということ、ここのことを改めて申し上げたいと思うんです。そこからもう一度現場を分析していただきたいというふうに思います。これが第一点。
 それから、第二点は、それこそ事実認定です。ここで大事なことは、あの二人が中に入ったときに、そこで中国側が許可をとってその先に入っている二人を連れ出しに行った、こう言っていることに対して、日本のサイドは、一つは、この門のところで許可を与えたこともない、そして、先行した男性二人が領事館の中に入って受付で座っている、そこのところを連行したときにも、日本のサイドはこれに対して同意を与えたことはない、こういうことで、両方が平行線になっている。これが、侵犯をされたかしなかったかというポイントだというふうに思うんです。
 これについて、私たちは第三者から話を聞いてきました。そこに、第三者が現場にいるんですよ。この人たちに話を聞きましたが、具体的には、そういう会話、やりとりがあったということは私たちは見ていない、目撃をしていないという証言がありました。これに対して、恐らくそれをもとにして交渉を進めていっても、中国サイドも、これは負けじということで、同じ第三者に対してそういう会話を目撃したかどうかというようなことを言ってくるんでしょう。
 恐らく、私たちの感じとしては、これはどこまでいっても両方が、どれだけ傍証をしても両方が平行線になっていく、そういう思いが強いんですけれども、これについては、外務大臣、どう思われますか。
川口国務大臣 おっしゃられていらっしゃいますように、私どもの発表をさせていただきました調査の結果というのは、まさに同意があったか否かということがポイントでございまして、私どもは同意がなかったということを申し上げているわけでございますし、中国側は同意があったというふうに言っているわけでございます。
 この件について、したがって、日本は事実関係についての日本側の立場に変更は全くないわけでございまして、中国側は調査を行ったその結果を尊重してほしいというふうに言っているわけでございます。ということでございますので、この件については、日中関係の大局を踏まえまして、冷静に対処をしていく必要があると思っております。
 一方で、現在最も優先的に考慮すべきであることは、人道上の観点からこの五名の身柄の問題についての早期解決が行われるということでございます。このために、私は、中国との協議を通じまして、解決に全力を挙げていく所存でおります。
中川(正)委員 その上で、もう一つ確認したいことがあるんですが、それは、同意はしていないということであるけれども、それじゃ、果たして実際に、入ってきてはだめだ――その前にもう一つお話をしなきゃいけないんですが、二人の先行した男性を連行していくというときには、既に、宮下副領事もそれから尹という大隊長も、この人たちが朝鮮人である、北朝鮮からの亡命者であるということを認識していたんですね。
 一たん、女性三人が中へ入って、そのときに尋問をして、その中から尹大隊長は、これは北朝鮮から来た人たちだということを確認し、そうした確認の声を聞いて、宮下副領事は、まだ中に二人いるということ、このことも含めて聞いたものですから、北朝鮮ということと二人が中にいるということ、このことを前提にして宮下副領事が中へ駆け込んだということでありますから、このときにはこれはわかっているということなんですね。
 そこで、外務省の調査の中を見ていると、どこを見ても、副領事自体が自分の意思表示をしていないんですね。ということは、これは北朝鮮からの亡命だから私たちが管理をしなければならないんだというその意思表示を中国サイドにしていないんです。中国サイドから入ってもいいかどうかというのを聞かれた、それに対して、中国サイドは腰をかがめてうんと言ったとか言わなかったとかという、この議論というのはどこまでいっても平行線だろうというふうに思うんです。
 しかし、問題なのは、この宮下副領事の頭の中に、侵犯なんだ、これは領事館の中に侵入されたんだ、武装警官に対して。だから、これは私たちがこの二人は保全すると同時に、武装警官に外に出てくれということを意思表示しなければならないんだということが、この外務省の報告書の中にはあらわれてこないんです。これは、外務省が、どなたかが本人のところに行って確認をしてきたんだろうというふうに思うんですけれども、やはりこの表現で私たちは物足りないと思いながら行ったんですが、外務省が確かめたのもそういうことなんですか。
田中政府参考人 私どもが調査をし、事実関係を確認する目的というのは、あくまでその同意があったか否か、それぞれの場面において同意があったか否かということでございまして、委員御指摘の場面において、武警が同意を求めた、それに対して同意をしたという事実はないということを関係者のヒアリングを通じて確認しているわけです。
 確かに、北朝鮮人であるという認識が副領事の頭の中にはあったものだと思います。ですから、慌てて駆け込んだということでありまして、その後を武警がついていったということは事実だろうと思いますし、それを阻止する行動に出なかったというのは事実だろうと思います。
中川(正)委員 この宮下副領事というのは厚生省からの出向なんですよね。中国語がどこまでできるかというと、私もこれは確かめたんですが、例えば、最終段階で外事弁公室に電話をかけたという新しい事実が出てきましたよね。それなんかを見ていると、自分が説明するんじゃなくて、最初に大変なことが起こったと言っておいてから、現地の職員にかわって説明をさせているというふうなことなんですね。
 こういう外交官のあり方、外交官というより厚生省の役人が出てきて、初動というのが一番大事なこういう緊迫した現場において、しかもそのことが起こったときに、これは抗議をしなければならないんだというその頭がすぐ出てこない、こういうことですね。こうした問題を、基本的に今回の事件からしっかりと教訓としてとらえて、これをどうするかということを議論していく必要があるだろうというふうに思うんです。外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 今回の瀋陽総領事館事件につきましては、委員が御指摘のように、今後に向かって改善すべきさまざまな問題点があると思っています。報告書でも指摘をいたしましたけれども、意識面の問題、指揮命令系統の問題、警備の問題、さまざまございます。
 これにつきましては、改善に取りかかっていますけれども、一つ今、これは外務省改革との関係で議論をされていることが、外務省の職員、在外公館も含めましてですけれども、外部の方に、外務省外の方にどれぐらいそこに入っていただくか、それが外務省の職員の意識改革にどれぐらい役に立つか、どれぐらい貢献するかという議論でございます。
 今、できるだけ多くの方に入っていただくということで議論は進んでおりまして、それはそれなりに意味があると私は思っておりますけれども、また同時に、こういった場における行動あるいは身にしみ込んだ意識といった面で、さらに教育といいますか、研修といいますか、そういったことをやらなければいけない、あるいは、どれぐらいの比率にそれぞれのところでするのがいいかといったような人の構成という意味でも、さまざまに考えるべき教訓があると私は考えております。
中川(正)委員 それは問題のすりかえだと思うんですよ。実際は、こういう人たちを入れる場合でも、外務省の組織としての体制の中で、危機管理をどのようにマニュアル化して対応させるか、そういうような準備と、それからその能力のある人たちをしっかり入れ込んでいくという、それに全く欠けていた、そうした体制を今でもとっていない、このことなんだと思うんですよ。それをまず反省するということから始めなければ本当の改革には結びついていかないということ、このこともあわせて指摘をしておきたいというふうに思います。
 そして、さらにキャリアなんですよね。実際に責任のある人たちがこのときどういう行動をとっていたかということ。最終的にこの総領事館の責任者というのは総領事なんですね。このときそれぞれ連絡をとっているわけでありますが、総領事、それから外務省の本省、それから北京大使館、このそれぞれの立場の人たちがどのような初動、初期の対応をしたかということであります。これは、実は外務省のこの調査書の中には出てこないんですけれども、ここはどうだったんですか、大臣。
田中政府参考人 報告書の中にも一部あると思いますけれども、これは繰り返しになりますけれども、あの報告書は中国とこれからまさに反論、議論をしていくために、同意があったかなかったかという中核的な部分について書かれているわけで、そういう意味ではすべてを網羅しているわけではございません。
 現場の対応、それから大使館の対応、本省の対応ということでございますけれども、総領事館につきましては、総領事は確かに大連の方に向かっておりました。けれども、大連というのは瀋陽の総領事館の管轄ということでございますから、その代理を指名することなく、総領事が総領事として機能をしていたということだと思います。ですから、現場の副領事は総領事に対して指示を求めたということだと思います。
 それから、大使館との関係でございますけれども、大使館というのは、総領事館とは横に並ぶ関係、上下の関係ではございません。しかしながら、こういう問題について知見を有する大使館、それに対して意見を聞くということはあったと思いますし、その担当である総務担当公使が対応したということでございます。
 それから、本省につきましても、こういう物事が動いていくときに連絡をするのにも限界があるかとも思いますけれども、本省の、具体的には中国課、北東アジア課、それから私が責任者でございますけれども、そのもとで基本的な指示をするという体制をつくっておりました。
中川(正)委員 もう一回確認しますけれども、こういうときに初動の指揮権というのは、これは当然総領事ですね。同時に、その総領事は大連に向かっていたわけで、ここにはいなかったわけですけれども、現場の宮下副領事がまず第一報、総領事と電話で連絡をとり合っているんですね。だから、そういう意味では、総領事は初動で指揮権を発動できたということ。この二つについては、外務省のサイドの調査でもそういうことだということでいいんですか。
田中政府参考人 現場の指揮という意味では、総領事でございます。
中川(正)委員 実はそのときにどういうやりとりがあったかというのも、私たちが聞いてきたということでありますから、恐らく外務省もこのとき聞き取りをやっているはずなんですね。だから、認識しているはずなんですが、それは調査書の方には出てきていないんですね。
 それでいくと、まず宮下副領事は、二時二十分ごろに第一報を入れているんですよ。総領事に対してこの状況の説明をしています。総領事、どう言ったかというと、これは重大なことだからまず大使館に連絡をしたかという問いかけをしている。まだだということで大使館にも連絡を入れた。それだけなんですよ。あとさまざまな、余りこれは詳細に検討していると、もうこっちまで情けなくなってくるので、これ以上詳細は言いませんが、この人たちがこの初動で中国に抗議しろということを初めて言ったのは、すべてのことが終わって、それでこの五人がもう既に連れ去られていって、外務本省の方から、中国課長だと思うんですが、やっと領事館の方に連絡がついて、これはウィーン条約違反だから抗議をしろ、五人を取り返せ、そういう命令をその時点で初めてやっているんです。これはどういうことですか。これはどのように説明をされるか、大臣。
川口国務大臣 総領事が一番最初に連絡を受けたのが二時二十分ごろか、あるいはもうちょっと後の時点でございますけれども、そのときになぜすぐに抗議をしろと言わなかったかということにつきまして、私は本人から直接話を聞いているわけではございませんけれども、この時点では、何が起こったかということの把握ということを総領事がすぐにして、それでということを、直ちに判断が必ずしもできなかった。これは、この報告書で書きましたように、指揮命令系統の問題点があったということでございまして、その意味では、総領事たる者、一番最初の時点できちんと把握は、把握といいますか、確認できなければちゃんと聞いてやるべきであったということは私は言えるかと思いますけれども、これは今後の指揮命令系統上の問題点として、全体として改善をするということでございますし、現在既にそれには着手をいたしております。
 それから、報告書についてその辺が入っていないということについては、これは先ほどから申し上げていますように、この報告書の目的というのは同意があったかなかったかということでございまして、同意があったなかったということに直接かかわらないで問題があるということは、この紙の最後に問題点としてまとめて書いてあるわけでございます。
中川(正)委員 だから、外務省だけの調査では真実のことが出てこないということだと思います。
 ここで一番最初にやはり大臣の頭に浮かべなきゃいけないのは、この初動でだれが指揮権を持っていたかということじゃないんですか。その指揮権を持っていた人間がどういうことをそのときに命令をしたか、ここじゃないんですか。それに全く触れないで、ただ本当に現場の言った言わないというところに焦点を持っていくから外交交渉がややこしくなる、ここはあると思うんですよ。
 それと、宮下副領事、その状況が把握ができていなかったといいますが、これは悲しいことなんです。こんなことは私はまことに情けない限りなんですが、これは宮下副領事は総領事にちゃんと状況を説明して、そのときには、これは北朝鮮からの亡命者だということも言っているんですね。ちゃんと把握しているんですよ。把握しているけれども、それに対してどうしろという命令を一つも出していないんです。追って連絡をする、あっちこっちに連絡を入れたか、そういうことなんですよ。そんな状況の中で日本の海外公館が運用されているということですね。このことについても、改めて外務省の体質というのが今本当に問われているということを改めて思います。
 小泉総理、今までの議論の中でどのようにこれを受けとめられていますか。
小泉内閣総理大臣 これは、対応の問題で反省すべき点は多々あったと思います。初動の対応ですね。
 それと同時に、一般的な在外公館での対応というのは、在外公館の安全確保のために、身元が確認されない不審者を安易に入館させることはできない、そういう原則論があります。そして、受け入れ国の警備当局とは常に協力関係を保つこと、これも大事なんです。受け入れ国、今回の場合は中国側ですね。いずれの主要国も、公館の外側にある亡命申請者等を積極的に館内に招き入れるということは行っておりません。こういう不審者と亡命希望者、なかなか判定しにくい。
 そして、原則として不審者は館内に入れないということでありますが、入った場合、入ってしまった場合の対応はまた違います。領事館内に入ってきた場合は、その当該者の事実確認をして、同人の希望をいろいろ聴取した上で、人道的観点や、あるいは関係国との関係を総合的に配慮しなきゃならない。
 今回、いろいろテロ事件もあります、ペルー事件等の問題もあります、そういう点も考えて、まず不審者であるかどうかという認定と、入ってきた場合の対応というものを日ごろからよく考え、その場合の対応というもの、初動と調査、初動対応という面において私は反省するべき点もあったと思いまして、これは今後の大きな課題だと思っております。
中川(正)委員 最後に、この事件の背景を含めて、中国に対して、我々の、主権までいかなくても、領事館に入ったという事実は事実としてあるわけですから、これに対する抗議というのは、これはもう日本は当然続けていくということでいいと思うんです。中国もそうやって並行的に続けていくんだろうと思う。
 しかし、こんな話で事実解明をどうこうということ以上に、実は、この背景を見ていると、もっと大きな問題があるんです。それは、このことによって、こういうビデオが流されたということによって、中国当局が、今北朝鮮から中国になだれ込んできている、それこそ二十万人、三十万人と言われている難民に対して、そしてもう一つは、その人たちを助けているNGOの活動体に対して圧力をかけて、その取り締まりというのを非常に厳しいものに今しつつあるということであります。
 これは、韓国のNGOとの議論の中で、韓国側も意見が二つに分かれている。こうした形で領事館に駆け込むということが、そしてそれを世界に流すということが、本当にこの難民問題を解決していく方法として適切なものかどうかということですね。もっとこれは本格的に、日本、それから韓国、アメリカ、ヨーロッパも、そうした形ではNGOが今しっかりコミットしてきていますけれども、そういう連携したものが出てきて、それに対して、総合的にこの難民問題というのに対応していく、そういう大きな枠づけがこの際要るんじゃないかということですね。このことを一つの問題意識として私たちは持たなければいけないというふうに思うんです。
 そういう意味でも、私たちが中国に対して本来ここで、このタイミングで言わなきゃいけないのは、この事件によって難民の人たちの人権、それからもう一つ、この人たちに対する人道的な配慮というのを中国が締めつけていかないように、しっかりそこで一緒にやっていくようにということ、このこともあわせて言わなきゃいけないところだろうというふうに思うんですが、どうですか。
小泉内閣総理大臣 日本の領事館侵入に対する不可侵権、侵したということに対する抗議の問題と、あるいはこの再発防止、日本側の立場はあります。中国側に言うべき問題、日本側の立場はあります。その主張は今後も堅持しながら、今交渉に当たっているわけでありますが、同時に、今、中川委員御指摘のとおり、連行された五名の方々の人道上の問題、彼らの要請に対して、この要請を満たすことができるように、今日本側は中国側と折衝しているわけです。この点についてはつまびらかには現時点ではできませんが、早期解決に向けて鋭意これからも努力をしていきたいと思っております。
中川(正)委員 時間が来ましたので最後のコメントをしますけれども、もう一回もとに戻っていくと、あの自虐的という発言なんですよね。これは、交渉していく中でこうした事実をしっかりと前提にしながら相手に対応していかないと、今中国から差されている話、向こうの中で言い分が通ってきている話というのは、我がサイド、私たちのサイドの事実があいまいなところへ向いて全部差し込んできているんです。
 そういう意味で、こんなときには、外務省だけの調査ということで、それを慌ててまとめて対象にしていくんじゃなくて、やはり私たちの調査権、それから、しっかりとしたそれぞれ現場の突き合わせの中で、何をまず日本として主張しなければいけないかという、その私たちの基本姿勢というのをつくっていかないと、慌ててその都度その都度やっているだけでは全部後手後手に話が回っていくという、その現実がここにあるということ、このことを改めて指摘をしたいというふうに思うんですね。
 そういう意味で、もう一度これは腹を据えて、特にヒューマニティー、人道的な観点から、双方が大人になってこのことを解決していくという姿勢、このことを改めて政府に申し上げたいというふうに思います。
 総理、最後に。
小泉内閣総理大臣 この問題、日本側と中国側の見解は違いますが、早期解決に向けて全力を尽くしていきたいと思います。
津島委員長 この際、松本剛明君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松本君。
松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。
 私は、主に支援委員会のことに関連してお伺いをさせていただきたいと思いますが、ここまでの審議を聞かせていただきました率直な一般的な感想を申し上げたいと思います。
 総理が大変大事な問題について一般的な感想を申し上げる、また官房長官が、自国と他国の政府のどちらを信じるのか、自国が信じられなければ不幸なことだ、こうおっしゃる。政府の責任者がそんな人ごとのように物をおっしゃるというのが大変残念であり、その結果が今の形にあらわれているのではないかと思います。何事もあたかも人ごとのように表現をするというのは、いわば小泉内閣病ではないかと思いますが、そういったものが無責任につながってくるのではないかと思います。
 我が国は今大変大事な転機にあるんですが、第二次世界大戦の前の我が国の指導者の行動、また感覚を見て、丸山真男先生は、我が国ほど、あれほど大事な戦争に臨もうとしているときに、その方向を決めることについて無責任であったことはない、こういう指摘をしております。このような転機のときにあって政府が無責任であるということは大変重大な問題だろうと思いますし、無責任である結果が何事も言葉ばかりになるんではないかと思います。
 この支援委員会の問題については、かねてから国会で取り上げられてまいりました。そのことを受けて、外務省からも、園部報告と言われる報告、また第三者の新日本監査法人の報告、そして専門家の提言、一方で「変える会」の中間報告というものをお出しになっておられますが、この最終的な責任は川口大臣、そしてその上にある総理にあるという理解でよろしいですね。まず大臣にお伺いしましょうか。
川口国務大臣 外務省という組織のトップは私でございますので、外務省の関連での最終の責任は私にあるということでございます。
松本(剛)委員 総理には、まとめて後で、一般的かどうかわかりませんが、感想をお伺いしたいと思いますが、この支援委員会の調査報告について、具体的なことについて幾つかお伺いをしていきたいと思います。
 木を見て森を見ずという声が先ほどありましたが、今の状態は木も見ず森も見ずでありまして、木をしっかりと一つ一つ見ていくことによって森が見えてくるというふうに思っております。
 まず、報告に関連して、国後島緊急避難所兼宿泊施設に関することについてお伺いをさせていただきたいと思います。
 いわゆる園部報告では、入札の参加資格の決定については鈴木議員の関与を認めておりますが、そのほかは確認されなかったとすべてなっております。ちなみに、私どもの同僚の金子議員の方から外務省に、確認されなかったというのはどういう意味かというふうにお伺いをしたところ、そういう資料はないということだというお返事でありました。全体的にも、国後島桟橋の入札参加資格についてのみ認めておりまして、いわば国会で明らかに言い逃れができなくなったこと以外はすべて確認をされない、こういう形で済ませているわけであります。
 そこで、まずお聞きをいたします。園部報告にも出てまいりますが、この工事の下請に入りました日揮の参入についてであります。確認されなかったということに園部報告はなっておりますが、今でもその見解は、川口大臣、変わりませんか。
川口国務大臣 園部参与による調査につきましては、議員がおっしゃられたとおりでございまして、その後、新日本監査法人による調査をいたしましたけれども、そこにおいても園部報告と比較して特段の新しい点というのはなかったわけでございます。
 外務省といたしましては、この件につきましては、ただいま検察当局による捜査が行われているわけでございますので、その捜査に積極的に協力をしていきたいと思います。外務省の行いました調査は、強制権のない調査ということでございますので、その範囲内でできる限りの調査を行ったということでございます。
松本(剛)委員 大臣、よろしいですか。日揮の参入について、園部報告を含めて私どもの方から問い合わせをさせていただくと、日揮が入札公告の前に入札参加資格に関する情報を入手していたとは確認していないというお返事をいただきました。ところが一方で、六月の三日に鈴木議員の事務所で日揮が面談をしております。このときに、渡辺建設と犬飼工務店に本案件を手伝いたいという話をしたことは確認できたとしております。これはまだ入札の手続に入る前なんですよ。この二つの会社に日揮が手伝いたいと申し出たということは、この二つの会社が少なくとも入札参加資格を持っているということが普通に読んだらわかる話じゃないですか。これを、いわば外務省の報告は無理やりそこで断ち切ろうとしているとしか思えないんですが、大臣、率直にこれを聞いてどう思われますか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 この件につきまして、その時点で外務省が行いました二つの報告書については、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、この件につきましては、ただいま捜査中の事案でございますので、我々といたしましては、検察当局による捜査に積極的に協力することによって事案の解明に貢献したい、こういうふうに思っております。
松本(剛)委員 昨日、外務省の方に質問の内容を御説明申し上げるときに、まことに申しわけないが、齋藤局長にお出ましいただいて意味のない時間をつぶすのはおやめをいただきたいということをお伝えいただきたいと申し上げたんですが、ぜひそのことは御理解いただきたいと思います。
 大臣、今の私が申し上げたことを聞いて不自然だと思いませんか。なぜそこで話を切ってしまうんですか。御意見を大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 これは、質問の意味を必ずしもきちんと理解をさせていただいたかどうかわかりませんけれども、この報告書によりますと、この点、鈴木事務所において一堂に会した際に、日本工営の社員がいたか否かについては、一部の方は否定をなさり、一部の方はいた、あるいは一部の人はわからないということを言っているわけでございまして、したがいまして、関係者の説明が一致をしないということでございますので、確認をできなかったというふうに書いてあるわけでございます。
松本(剛)委員 外務省からいただいた資料に、日揮が犬飼、渡辺両社に仕事を手伝いたいと申し出たことは確認できたと書いてあるんですよ。外務省のこれはロシア支援室から一つ一つ園部報告の内容についてお伺いをしたいというふうに申し上げた紙の中に書いてあるんです。日揮がその両社に申し出たということは、その両社が当然入札参加資格があるからそこへ手伝いたいという言葉が出てくるわけじゃないですか。
 ところが一方で、すぐちょっと前には、日揮が入札参加資格の情報を得ていたことはなかったと書いてある。こういうばらばらのというか矛盾だらけの報告をそのまま通してしまう、これは、さっき申し上げたように、国会でどうしても議事録で逃げられなかった、このことだけを認めて、あとの部分について全く調べようという気がないとしか思えないわけであります。
 このことが、先ほどの瀋陽の話もそうでありますけれども、外務省の中をぴしっと改革されて、そして中国に当たるべきところは当たる、こういう態度がとれない大きな原因であろうというふうに思います。この日揮の孫請、下請のことについて、まさに齋藤局長、これは衆議院の外務委員会で五月十七日の日にお答えになっておりますが、契約については知る立場にあるが、それ以外の下請、孫請とかそういうことについては知る立場にございませんと。最初から調べる気がないんですよ、この答弁で。強制権がないとおっしゃいますが、お聞きすることはできるわけですよね。知る立場にないと言って最初からもう調べることを放棄されておる。こういうことだから、結局外務省の調査というのが、この支援委員会についてもそうです、どこでもそうです、信用できるものが一つもでき上がらないということになるわけであります。
 もう一つ、これについて、だれが見ても、聞いている国民の皆さんは不自然だと思ってくださると思いますが、お聞きをさせていただきたいと思います。
 入札の情報が漏えいをされたという話がありました。コンサルタント会社の日本工営がわび状を支援委員会に入れているわけでありますけれども、このときの園部報告でもまた、情報漏えいをして申しわけありませんと日本工営が支援委員会に言っているにもかかわらず、「如何なる情報を漏洩したかを確認することはできなかった」と。何のために調査をしているんですか。いかなる情報を漏えいしたかを確認することができなかったので告発の手続もとらなかったと。何度もここで出てきますが、告発の手続というのは公務員の義務であります。これは職務怠慢によって義務を放棄しているとしか言いようがないわけでありまして、これで調査報告と本当に言えると大臣お思いなんですか、最終責任は大臣におありになるとおっしゃいましたが。
川口国務大臣 今の情報漏えいにつきましては、調べた際の資料の中に、情報を漏えいした可能性があるということに関する記述があったわけでございます。ただ、いかなる情報を漏えいしたかということについての記述がなかったということでございますので、確認できなかったということでございます。
松本(剛)委員 もう何度も予算委員会でやっている話ですから繰り返し申し上げるのはばからしいですけれども、外務省の報告書の中にあるんですよ、この日本工営のわび状。関連情報を外部に漏らしたことに関し深くおわびいたしますと出しているんですよ。この中身を聞かないんですか。
川口国務大臣 まさに先ほど申しましたのはその資料のことを言っていたわけでございまして、そういう紙があるわけですから、情報が漏えいされたであろうということはわかるわけでございますけれども、ヒアリングをしてもわからなかったということでございます。情報の中身が、いかなる情報が漏えいされたかということについて確認できなかったということでございます。
松本(剛)委員 日本工営さんにお聞きになったんですか、大臣。日本工営さんにお聞きになったんですか。
齋藤政府参考人 日本工営を含む関係者から事情を聞きましたけれども、日本工営が不法行為を行ったと確信に至る明白な事実は確認できなかったということでございます。(松本(剛)委員「ちょっともう一回」と呼ぶ)日本工営が不法行為を行ったとの確信に至る明白な事実は確認できなかったということでございます。
松本(剛)委員 不法行為かどうかの法的判断を求めているんじゃないんですよ。日本工営が支援委員会に提出したこの中身について聞いたのかと聞いているんですが。
齋藤政府参考人 事情を聞いております。
松本(剛)委員 聞いた結果はどうだったんですか、このわび状の中身について。それとも聞かなかったんですか、中身は何かと。
齋藤政府参考人 いろいろと園部参与の方で聞いていただきましたけれども、結論として、いかなる情報を漏えいしたかを確認することができなかったということでございます。
松本(剛)委員 日本工営さんにおいでをいただく、また、園部参与にもぜひおいでをいただいて、この国会でお話を伺わなきゃいけないと思います。
 調査をするといって、これは日本工営さんはわび状を入れているわけですよ、その中身が結局わからなかった。さっき申し上げましたように、この園部報告で認めているのは、国会で認めざるを得なくなった事実以外は何も認めていないと言っても過言ではないんですよ。しかも、その後の、またこの監査法人の報告、これは監査法人がお書きになったということだと思いますけれども、最終責任は大臣ということでありますが、この要旨のところにも、「すべての事業について網羅的に調査をおこなったが園部レポートで報告された以外で」云々、新しい事実は発見されなかったと書いてあるんですよ。
 しかし、御存じのとおり、この入札工事をめぐって、偽計業務妨害罪ですか、七人の方が逮捕されているわけですよね。幾ら強制権がないとはいえ、業務にかかわる部分ですから、しっかりと調査をしていただかないといけないと思います。
 では、続きは午後にさせていただくということで、終了させていただきたいと思います。
津島委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十分開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本剛明君。
松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。
 午前中の質疑に続いて、予定をしていた質問をする予定でございましたが、お昼に大変大きなニュースが報道をされました。在瀋陽の総領事館に駆け込んだ五人について、マニラ経由できょうじゅうに韓国に向かうというニュースがNHKのニュースで報道されたようでありますが、外務大臣、この事実を確認いただけますか。
川口国務大臣 五名の出国につきまして種々のニュースが流れておりますけれども、日本といたしましては、現在、早期解決に向けて努力をいたしておりまして、人道上の要請等ございますので、現段階で一切確認あるいはコメント申し上げられないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
松本(剛)委員 通常、こういったものは出国をされてから発表されるケースが多いようでありますが、フィリピン政府が発表したという事実だけは御確認をいただけますか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、一切確認あるいはコメントできないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
松本(剛)委員 フィリピン政府が、テレビで次官の顔も私拝見をいたしましたが、発表したという事実も確認をできないというのが現在のお立場だということでよろしいんでしょうか。それだけ確認をさせていただきたいと思います。外交上の問題もあろうかと思いますから、それ以上はお伺いをしませんが。大臣。
川口国務大臣 フィリピン政府の方が記者会見をなさった、私は見ておりませんけれども、という事実はあったようでございますけれども、内容につきましては、まことに申しわけございませんけれども、確認もコメントもできないということをお許しいただきたいと思います。
松本(剛)委員 これ以上やっても時間がかかると思います。
 フィリピン政府の内容は、既にもう報道をされておられますし、カメラで映っていた内容だろうと思います。日本政府として確認はできないという大臣のコメントを承ったというふうに確認をさせていただきます。
 これについて二点だけ、ちょっと申し上げたいと思いますが、一点は、これは共同の通信でありますけれども、外務省幹部は、この事件で、中国側からの五人の出国について事前通報があったことを明らかにしたというふうに記者に語ったようであります。今のお話からしましても、こんなことをこんな段階で記者に明らかにする幹部というのはどなたなのか、きちっと調査をされるべきではないかというふうに思いますし、そういった体制というのがそもそも外務省にとって大変大きな問題だろうということを一点、御指摘させていただきたいというふうに思います。
 もう一点は、十二時のニュースで総理の御回答を伺っておりました。外交交渉中なので一切回答できないという趣旨のお答えのようにも理解できますが、一部お顔を拝見していると、聞いていないこともあったようなニュアンスでとれました。これも現段階でコメントできないということであれば、お答えもいただけない部分があろうかというふうに思いますが、瀋陽の総領事の事件の当初の報告にも見られるように、きちっと大臣、総理に報告が上がる体制になっているのかどうか、そういうことがこの場面でも問われる事態になっているんではないかというふうに思います。
 総理、大臣からもしコメントがあれば、お受けしますが。
小泉内閣総理大臣 現在、交渉中でありますので、中身については一切言いません。
松本(剛)委員 この報道が流れたのが十一時五十四分、予算委員会終了と同時に流れる、こういうことでありまして、我々も議会にあって、大変高い関心を持って、全党関心を持っているニュースが、こういう形で中国の主導権で処理をされるということについて、ぜひその点を御指摘申し上げたいというふうに思います。
 それと同時に、この報道のとおり、人道的な問題が速やかに解決をされた後も、日本に対する主権が侵害されたという問題、それから、当初の外務省の対応に極めて問題があった、その責任をしっかり問うということが必要であるという問題が依然として残っているということを御指摘申し上げて、予定をしておりました質問の方に入らせていただきたいというふうに思います。
 大臣、何かありますか。よろしいですか。
 それでは、先日、佐藤優外務事務官が逮捕をされました。容疑については御確認を既にいただいているということでよろしいですか、川口大臣。いや、もう内容は結構です。御確認をいただいておりますね。
 先日、予算の委員会の方にこの決裁書というのもお出しをいただきました。逮捕をされました前島補佐が起案をしまして、各関係のサインが入った起案書が出てきているわけでありますが、一点、まず御確認を申し上げなきゃいけません。当初の御説明では、決裁をする人間は起案する人間が決めるというお話でありましたが、これでよろしいんでしょうか、外務大臣。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 決裁書の決裁先につきましては、一義的には、その事案を担当いたします主管課の課長あるいは室長及び主管局長が選定することになってございます。したがいまして、本件決裁書におきましても、決裁先を一義的に決定したのは、ロシア支援室長及び当時の欧亜局長であったというふうに考えております。
松本(剛)委員 そのときそのときで、決裁者は案件によって決めるということで、外務省の中にルールはないんですか。
齋藤政府参考人 決裁に際しましては、外務省における文書決裁基準等に関する訓令というのがございまして、関係する局部長等または課長等の決裁を受けるというふうになっております。
松本(剛)委員 局長、今のが全文ですか、訓令の。関係する局部長または課長といったら、かなり広いですね。そのうちのだれか一人受ければいいということですか、その基準は。
齋藤政府参考人 ただいま引用いたしました訓令の第十条でございますが、第十条は、「文書の内容が他の局課等の組織の所掌に関係する場合には、関係する儀典長、官房長等又は課長等の決裁を受けなければならない。」というふうに規定されております。
松本(剛)委員 余り細かいことで延々とやっている時間はありませんが、これ、官房長の決裁を受けていないですよね、この案件は。今おっしゃったように、通常、やはり官房長というのはかなめにいることを考えますと、官房長の決裁を受けていても当然だと思いますが、官房長だけ飛んでいる理由というのは何かあるんですか。
齋藤政府参考人 この件に関しましては、このような支出を行うことが、支援委員会を設立する協定との関係を含めまして適切であるか否かにつき判断を求めるものでありましたがために、当時のロシア支援室長、欧亜局長、会計課長の判断により、官房長の決裁は不要というふうに判断されたと承知しております。
松本(剛)委員 それでは、今お話があったこの決裁が適正であったかどうかということでありますが、この決裁について、適正であったかどうか、川口大臣のお考えを伺いたいと思います。
川口国務大臣 本件につきましては、私は適正であったと思っております。
松本(剛)委員 佐藤優事務官が本件に関して背任で逮捕されたという事実をどのように受けとめておいでですか、大臣。
川口国務大臣 今、適正であったと申し上げたのは、決裁の範囲が適正だ、だれに決裁を回すかということでございます。
 それで、決裁の内容につきましてでございますけれども、これは、純粋に協定の解釈の問題として考えた場合に、本来の姿でいけばそれは適正であったということで決裁がなされたということでございますけれども、この件については、起案者等が個人的に費消をするといったような、個人的な利得を得ていた事情があるということで、外務省として、支出についての判断を行った時点では想定されていなかった疑いが指摘されているということでございまして、いずれにしても、本件支出が協定違反になるか否かは、捜査の進展を見きわめた上で判断をすることになると考えます。
松本(剛)委員 最初に私、大臣に、被疑事実を確認されておられますねと申し上げたんです。個人的な使途にそのお金を使ったかどうかということは、背任罪の構成要件とは直接関係がありません。背任罪を構成するためには、任務に違反をすることが必要でありまして、この場合、前島補佐の任務というのは、協定に従った支出を行うことであります。つまり検察庁は、協定に従って支出をするという任務に反しているというふうに考えたからこそ、その容疑をもって逮捕した、こういうふうに考えられるわけですね。
 川口大臣、外務委員会でも今のような御答弁をされておられますが、その答弁、大臣がお考えになったのか、外務省の方でお考えになったのか知りませんが、逮捕されたという事実を踏まえてのお答えだとしたら、その用意された答えは間違っているわけですよ。答弁の準備としては、それでは足らないということになるのですね。
 今申し上げたように、起案者の前島容疑者が逮捕されたということは、この決裁が協定に違反しているという容疑で検察が逮捕したということになるんですよ。大臣、いかがですか。
川口国務大臣 現在、当時の決裁の判断の基礎となりました事実等について捜査が行われているところでございまして、この支出が協定違反になるか否かは、捜査の進展を見きわめた上で判断をしたいと考えております。
松本(剛)委員 大臣、今もおっしゃいましたし、外務委員会でも、そのときに想定していなかったことがあるという答弁を繰り返されておられます。ですが、そのことは、今申し上げたように、背任罪を構成することとは直接関係ないんですよ。
 ですから、少なくとも検察庁は、協定に従って支出をするという任務に違反しているという容疑で逮捕したわけでありますから、ここの決裁書に出ている方々は全部背任のおそれがあるということなんですよ、検察庁の認定によると。そのことをどうお考えになりますか。
川口国務大臣 これは現在捜査中のことでございますので、私の判断は差し控えさせていただきたいと思います。
松本(剛)委員 佐藤事務官のことについても、この院において、この委員会でも外務委員会でも、たびたび、参考人でおいでをいただくようにということで要請させていただいてまいりました。今、逮捕されてしまったわけでありますけれども、この方々についても、個人的にお金を使ったか使ってないかというのは、背任罪を構成するに当たっては関係ないわけでありますから、みんな条件は一緒なんですよ。ですから、ぜひ、ここに書かれた方々について、私は、きちっと、この委員会においてお呼びして、お話を伺っていきたい。
 特に、この決裁を強く主張して実施されたと言われている東郷元オランダ大使、当時の欧亜局長については、当委員会にぜひおいでいただくようにお願いをさせていただきたいと思います。
 外務省は、免官された日に退職金をお渡しになって、いわば……(発言する者あり)余りその言葉はどうかと思ったので控えましたが、ということで、そういう方にお金を渡して、しかも今行方がつかめないというようなことで、お呼びすることすらできない、こういうことになっているわけであります。きちっと、これは外務省の職員であったときの責任でありますから、大臣として対処をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 東郷前大使は外務省を退職しておりまして、当省、外務省といたしましては、東郷前大使がどこにいらっしゃるかということを逐一把握する立場にないわけでございます。
 いずれにいたしましても、私といたしましては、東郷前大使が捜査に協力をし、国会に協力をしていくということを、そして事件の全容が解明されるということを期待申し上げております。
松本(剛)委員 何年も前に退職した方じゃないんですよ。この問題が明らかになって、その問題で退職された方に、わざわざ退職金を渡して、どこでも自由に行きなさいと言ったら、これは外務省が逃がしたというふうに言われてもしようがないわけですよ。そういうやり方をおやりになるから、全然外務省の信頼回復につながりませんし、日本の外交が一つも世界からも信用されないという状態が続くわけであります。
 ぜひここは、外務大臣、改革のために外務省に乗り込んだんだとすれば、リーダーシップをここでしっかり発揮していただくべきところであろうというふうに思います。今までのお答えは、そんな、本当に、いわゆるお役所の用意したような答弁を続けているのでは、一つも物事は前へ進まないどころか、事態は悪化する一途ではなかろうかというふうに思いますが、もう一度大臣の御決意を伺いたいと思います。
川口国務大臣 東郷前大使につきましては、先ほど申しましたように、私としては、所在を明らかにして国会でお話をしていただくというのがいいと思いますけれども、現在所在が、私は所在は把握いたしておりませんので、直接に御連絡をしかねるということでございます。
松本(剛)委員 それは、四千万も五千万も渡したら、一年や二年、どこでも行けますよ。私の生活でいったらもっと長いこと行けるかもしれませんけれども、大使レベルで生活したらどのぐらいもつのかわかりませんけれども。
 これは、お金の使い方も大変問題があると同時に、このテルアビブの出張のときに、途中から、佐藤、当時は主任分析官ですか、モスクワに出張しておられますよね。これに関連しても大変大きな問題を含んでいるというふうに私は考えているわけであります。
 当初、四月の三日から八日までテルアビブの滞在を予定されていたものが、東郷氏に呼ばれて急遽モスクワに行くことになったということで、決裁も、出発の直前に変更の決裁が出ております。これは出発の直前というより、本当にそのときに出ていたのかどうかすら定かではないというふうに思いますが、結果、このテルアビブの学会というのは三日から五日に行われて、六日から、六、七、八の三日間は、関係者との懇談と称して、あちこち、一部では観光と報道されているような活動を行っていたわけでありますが、佐藤当時の主任分析官は、その三日から五日の間はモスクワにいたんですよ。五日の晩にテルアビブに帰ってきて、六から八のいわば自由行動だけ合流している。こういうことをしているわけでありますが、この余りに傍若無人というか、出張を何と心得るかということをまず一点、申し上げなきゃいけません。
 もう一つは、四月の一日に東京を立ってテルアビブに向かっておりますが、二日の未明に、当時の小渕総理が緊急入院をされておられます。そして、四日には総辞職をしているわけでありますが、一方で、三日にモスクワに入った鈴木宗男特使と東郷欧亜局長と佐藤主任分析官で首脳会談の日程をまとめてきている、このように言われていますが、その事実は確認できますか。
齋藤政府参考人 佐藤元主任分析官のモスクワ出張の関係でございますが、当時の決裁書によりますと、佐藤元主任分析官はモスクワに移動いたしまして、その目的は本件学会関連の資料収集ということであったようでございます。ただし、佐藤容疑者が実際にテルアビブ会議関連資料収集という目的に即した活動を行っていたか否かを含めまして、同容疑者の本件国際学会へのかかわりは今後の捜査により明らかになっていくと考えられます。現時点で本件につきコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 なお、佐藤元主任分析官は、同時期に行われました鈴木議員とプーチン大統領代行との会談に際しまして、同議員へのロシア情勢に関する事前説明、通訳、記録作成等の支援を行っていたというふうに承知しております。
松本(剛)委員 もう一点御確認をしていただきたかったのは、そのモスクワにおいて、小渕総理の特使であった鈴木宗男議員と東郷欧亜局長と佐藤容疑者、その三人で、その年の四月の二十九日に行われた首脳会談をまとめてきたということは事実ですか。
齋藤政府参考人 小渕総理は、その年の三月二十六日にロシア大統領に選出されましたプーチン大統領代行と、四月の連休を利用いたしまして、ロシアの地方都市において非公式かつ率直な会談を行う方向で検討されておりました。その調整を行うために小渕総理は鈴木議員を総理特使としてロシアに派遣し、四月四日、鈴木特使とプーチン次期大統領との会談が行われました。この会談では、プーチン次期大統領より、モスクワ以外の地方都市で四月二十八日から三十日の間、非公式首脳会談を行いたいという話が出たというふうに理解しております。
松本(剛)委員 きちっと申し上げたつもりですが、鈴木宗男議員は小渕総理の特使ですよね。その小渕総理は四月二日の未明には人事不省に陥っているわけですよね。その中で勝手に、東郷欧亜局長と佐藤容疑者と鈴木宗男議員の三人で首脳会談の日程を決めてきちゃうんですか。
齋藤政府参考人 小渕総理は、倒れられる直前にも鈴木特使を含め政府内において日ロ関係の躍進に向けたお考えを示され、こうした強い思いを踏まえまして、またこの間、政府としても、九州・沖縄サミット、さらにはプーチン大統領訪日という平成十二年の一連のロシアとの首脳外交の流れの中で、四月に非公式の日ロ首脳会談を行いたいとの方針を一貫して維持しておりまして、さらに、その調整を行うための鈴木議員とプーチン大統領の会談が既に決まっておりましたことから、特使派遣を中止することなく実施したものであるというふうに承知しております。
松本(剛)委員 四日に会談をされたとおっしゃいましたよね、モスクワ時間だと思いますけれども。四日には既に総辞職されているんですよ、小渕内閣は。我々から見ても、あの時点で小渕総理の御病状は決して楽観できるものではなかったと思います。四月の終わりに首脳会談をセットする、だれがどこで判断しているんですか。日本で四月の四日に総辞職されているわけですよ。まさか、百年も前じゃないんですから、情報が入るのが時間がかかったなんて言わないでしょう。その中で、四月二十九日の日にちを決めてこられたわけでしょう。新総理は、まだそのときには国会でも選出をされていないはずです。(発言する者あり)そうでしょう。今声がありましたけれども、実質決まっていたから、そのときの、密室で決まっていた方に指示を受けてやったんですか。指示も受けずにやったらもっと問題ですよ。いかがですか。
齋藤政府参考人 政府は、小渕総理御自身による特使派遣の決定とそれに至る強いお気持ちを踏まえまして、小渕総理が倒れられた後も予定どおり鈴木特使を派遣するという決定を維持したものと承知しております。
松本(剛)委員 これ以上申し上げてもらちが明きませんけれども、今申し上げたように小渕総理の特使なんですからね。小渕総理に命を受けてモスクワへ渡っていって、その小渕総理が倒れられた。当然その情報はすぐに入っているはずです。ましてや、四日の会談の前には、小渕内閣は、その総辞職そのものについても私は問題があると思っていますが、総辞職をしているわけですよ。モスクワとの時差、正確な時間は私もわかりませんが、数時間あるはずです、向こうの方が遅いはずです。そんな中で、既に総辞職が行われる、もしくは決まっている段階で、小渕特使として次の総理との首脳会談を事実上決めるわけですよね。そういうやり方というのが、日本の外交をどこでだれが決めるのか。
 鈴木宗男議員は、小渕総理に特使として頼まれたからある意味で政府を代表して行っていたと思いますが、新しい総理に何を頼まれたわけでもないわけですし、その時点では政府の人間ではなかったはずですが、いかがでしょうか。大臣、ここまでお聞きになって、どう思われますか。
川口国務大臣 先ほど局長が申しましたように、特使は小渕総理の御意向を受けて行かれたわけでございますし、一国の外交というのは、総理の御意見というのはもちろん非常に重要でございますけれども、基本的な方針が、総理がかわった時点でがらっと変わるものではないと私は思います。
 したがいまして、鈴木特使が小渕総理の意向を受けて日程をセットしたということは、その時点では何ら問題はなかったと私は思います。
松本(剛)委員 大臣、基本的に対ロ政策がどうか、そういう問題を、ころころ変えろと申し上げているわけじゃないんですよ。小渕総理とプーチン新大統領との会談をセットするという話であれば、二日に向こうに行った時点で、三日ですか、小渕総理が倒れられたということになれば、当然その病状を把握して、回復を待つのか、小渕総理が残念なことになりましたけれども、おやめになるのか、それを判断して日程をセットし直すというのが普通のやり方じゃありませんか。ましてや、あの倒れ方から、伝わるところからして、我々は外部の人間でしたけれども、そんな、二、三週間でどうこうなるというものではなかったはずでありますし、逆に二、三週間で無理をしてロシアの地方都市へ行かせるのかという話も出てきたはずであります。だれがそのときにそういう最終判断を、総理自身が倒れられているときにやったのか。まさに密室の中で、しかも権限がどこに、だれにあるのかもわからない中で行われている、こういう日本の外交そのものにも問題がありますし、今申し上げたように、お金の使い方にもいろいろ問題があるということを御指摘させていただきたいと思います。
 ほかにも、支援委員会については山のように問題が山積をいたしております。
 既に通告をさせていただいておりましたけれども、私の持ち時間も間もなくで終了するかというふうに思いますが、二、三点だけ申し上げておきたいと思います。
 例えば燃料支援、これも一番最初に行われた色丹島の二百五十トンだけが、二千五百万までは指名競争入札ができるという支援委員会の内規によって根室の八業者を中心に指名で入札をされております。北方四島へ行く燃料は通常根室からは積み込まないわけであります。これは報告書にも、調査報告にも指摘をされていますが、あえて根室の八業者で指名入札をして、そして、しかもその後行われた国後島などの入札の結果に比べて、単価で見たら、最初の根室の指名競争入札はキログラム当たり単価百四十円、あとのものは四十八円、六十四円、六十八円ですよ。そして、この指名競争入札で落札をした業者から予想どおり鈴木宗男議員は献金を集めている。こういう構図なんですよ。
 この支援委員会というもの、先ほども、当初申しましたように、外務省の報告を見る限りでは、国会ではっきりと指摘をさせていただいた国後島の緊急避難所兼宿泊施設の入札参加資格に関してと国後島の桟橋の入札参加資格の部分だけ認めて、あとは確認されなかった、関係ないと。こういう調査を続けている限りはいつまでたっても信用することができないのですよ。全く、後から、次から次へといろいろなことが出てくる。今回の在瀋陽総領事館の事件と全く同じ構図です。
 我が党の中野議員が、信用したいんだから信用させてくれということをこの前事態対処特別委員会でおっしゃっておられましたが、だれが見ても自分の国が信用できないような不幸な状況をつくっておられるのが外務省だということであります。
 その外務省を率いられる立場で、川口大臣にはしっかりと務めを果たしていただきたい、このように考えております。
 最後に一点だけ。
 この支援委員会の中で、医療医学の交流事業というのが行われています。これは委託されているそうでありますが、その委託先、それから政治家の方が関与されていると言われていますが、主宰されている方をお答えください。
齋藤政府参考人 日露医学交流事業についてのお尋ねでございますが、この事業は日露医学医療交流財団に委託して行っております。また、この財団の理事長は中山太郎議員でございます。
 それから、先ほど燃料について御質問がございました。一点、事実関係として御指摘させていただきたいと思いますが、平成十一年の八月に色丹向けに供与いたしました二百五十トンにつきまして、単価がほかのに比べて倍になっているという御指摘だったと思いますけれども、これは、そのときの二百五十トンにつきましては事情がございまして、軽油引取税が課せられた、こういうことで単価が高くなっているということでございます。
松本(剛)委員 先ほども中山議員が主宰をする団体のことを申し上げました。
 そういう政治家と支援委員会のかかわりがこれだけ問題になったわけでありますし、国会でも既にこれも出た問題でありますのに、一回も調べられていないという状態であります。
 適正であるかもしれません。そこはわかりませんが、当然調べて報告があってしかるべきでありますし、支援委員会の事務局長が国会で証言をされたときは、中山先生の団体で、団体の名前は忘れました、こういうお答えでありました。支援委員会の方にとって大事だったのは、団体そのものではなくて中山先生だったのではないか、こう疑わざるを得ないような運用が行われていることを指摘申し上げて、あとは同僚の上田議員に引き継がせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
津島委員長 この際、上田清司君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田君。
上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。
 総理、官房長官、外務大臣、御苦労さまです。
 早速ですが、瀋陽の問題について、阿南大使の発言が報道を通じていろいろと言われております。亡命問題はまず大使館内に入れないのが肝要、入ってきた場合には不審者とみなし館外へ押し出せ、こういった趣旨の発言を、偶然にも当日の朝訓示をされているというふうな報道が流れておりますし、直近では、仮にビデオに映ってもそれは構わないというような趣旨の発言があったというふうに聞いておりますが、我が国は、人道上亡命を全く受け入れないという仕組みをつくっている国でもありません。そういう意味では、いわば暴言ともいうような中身になります。
 私は、この真実については当然聞き込み、ヒアリングをなさっているというふうに思っておりますし、また、この阿南大使は、アジア局長時代に、ふらちにも、北朝鮮による拉致は全くいない、こういううその発言をした当人でもありますから、またうそをついているのではなかろうか、こういう疑いを持って私は臨んでおりますので、的確なヒアリングの言葉、調査の中身を、外務大臣、御答弁ください。
田中政府参考人 阿南大使の発言についてのお尋ねでございますけれども、阿南大使の発言は、脱北者は中国へ不法入国している者が多いが、一たん館内に入った以上は人道的見地からこれを保護し、第三国への移動等適切に対処する必要がある、他方、大使館としては、昨秋来テロに対処するという観点からも警戒を一層厳重にすべきことは当然であり、不審者が大使館敷地に許可なく侵入しようとする場合には、侵入を阻止し、規則どおり大使館門外で事情を聴取するようにすべきであるということでございます。
上田(清)委員 外務大臣は、今の局長の答弁のように確認をされているのでしょうか。
川口国務大臣 阿南大使は、今局長が答弁をしたようなことを言われたと私は承知をしております。
上田(清)委員 後で違ったような内容が出てきた場合には、外務大臣、どのように措置をされますか。
川口国務大臣 私は、阿南大使が今局長が言ったようなことを言われた、言ったと承知をしております。
上田(清)委員 それでは、支援委員会の方の問題に移らせていただきます。
 三月五日と六日に、小泉総理も御出席をいただいておりまして、支援委員会の問題点を明らかにさせていただきました。その後、新日本監査法人による監査ではなくて調査という形で、いろいろな問題を指摘はされております。
 なぜそのようになったかとか、だれが行ったかということは一言も書いてありません。だれが責任者で、どういう決定をなしたかということについては触れないまま、基本的には私が指摘しましたように、まずこの支援委員会というのは九三年、九四年以外は会議として行われていないということ、それから、さらに二年後にはロシアの大使も空席になってしまいまして、ロシアの責任者も空席になって、事実上パートナーの方の責任者がいないままにお金だけはどんどん出ていくという、要請がない、それから会議がない、こういう基本的な構成要件が欠けたままに支援委員会が動いている。実質的に外務省のロシア課なり支援室で内容が決まっていく。しかも、その内容がとんでもない内容になっていっている。
 先般も御指摘しましたように、この内容は、御承知のとおり、ソ連邦が崩壊した後のそれぞれの共和国の市場経済への移行への改革プログラムのためのさまざまな支援をするというのがこの支援委員会の目的でありましたが、定款上、人道支援という形で食料だとか医薬品の提供ができる、また最小限度の生活を維持するための物品の提供もできる、このくらいしか内容がないんですね。にもかかわらず、色丹島ではプレハブ診療所ができ、以後、教室、そして発電所、あるいは自航式はしけという形で、どんどん中身が展開していっております。
 その転機になったのが、実は平成七年の五月三十一日の沖縄北方特別委員会における鈴木宗男議員の河野大臣に対する質問から始まったわけでありまして、当時、プレハブ診療所をつくるということに関しては、北方領土を不法占拠されているという現況の中で、これは不法占拠を固定化し、助長するものである、したがって、慎重に考えなければならないという趣旨の答弁を河野大臣はされておりますが、なぜか次の朝、朝食会で鈴木宗男議員との懇談の中で、突如オーケーという、プレハブ診療所をつくっていいという話になったというふうに御答弁いただいておりますが、外務大臣、なぜ正式な委員会でだめだという話が次の日の朝食会でオーケーになるんですか。――外務大臣、もうこの話は何度もやっているんだから、答えてください。
齋藤政府参考人 平成六年の八月に、色丹島住民側からこのプレハブ診療所建設の要請がございまして、また、北海道東方沖地震後の四島の窮状等を考慮いたしまして、平成七年の四月に検討を外務省内で行ったわけでございます。北方四島に関します我が方の基本的な立場を十分に踏まえまして慎重に検討しました結果、平成七年六月末に、色丹島に仮設プレハブ診療所を建設するという決定を行った経緯がございます。
 平成七年六月末に決定をいたしますまでに我が方においてさまざまな角度から慎重な検討を行ってきたわけでございますが、新日本監査法人の報告書にも指摘されているとおり、外務省内で本件実施についての決裁が進みつつある段階において鈴木議員の意向が強く示されたというふうに考えております。
上田(清)委員 違うじゃないですか。正確に、時系列的に言うと、今お手元に資料の一というところで、一、二、三枚のペーパーを出しております。これが四月十一日に、仮設プレハブ診療所を外務省として正式に協議した日であります。そして、五月二十五日に鈴木議員と質問の下打ち合わせをした後、五月三十一日に鈴木議員が質問して、この当時の速記録は総理にも見せさせていただきました。明らかに慎重だということであります。この四月十一日の中にも非常に御苦労の跡が出ております、この中にも。領土問題の問題、それから渡航する場合の法的な問題、非常に難しいと。外務のそれぞれお役所の皆さんも真剣にこのときは悩んだと思いますよ、現実に不法占拠しているわけですから。そういう不法占拠している中で、プレハブとはいえ固定的なものをつくること自体がどれほど不法占拠を助長するものになるかということについて――役所側に配ったんですか、資料。余っているんだったら配ってやってください、探しているみたいですから。
 それで、河野大臣も当時の野村欧亜局長も、実はそういう懸念があるんだということも答弁されているんです。しかし、次の日に、ちゃんと皆さんが提供してくれた、十四年三月六日に私に出していただいた資料の中でちゃんと、六月一日に、河野大臣と鈴木衆議院沖縄北方特別委員長との会食で、河野大臣より、診療所については昨日の国会の答弁どおりと。答弁では違うことを言っているにもかかわらず、ここには、答弁どおり速やかに着手する、こういうことを言っているんですけれども、なぜそういう話になったのかということを確認しているんですよ。
 なぜそういう話になったのか。そして、今言われたのは、六月末に正式に決定したと。その間に、六月十三日に、今西田さん来ておられますか。あなたがちゃんと言ってくれた、やはり問題があるからまだまだ検討しなくちゃいけないと。どうぞ西田局長、当時を思い出して言ってくださいよ。何の問題があって、河野大臣がオーケーと言った後もあなたは行って鈴木議員に説明したのか。なぜなのか、何が問題だったのか、答弁してください。
津島委員長 西田経済協力局長。(発言する者あり)指名して、答弁できませんか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 これは、先般外務省より資料を提出いたしました文書に書いてありますとおりでございますが、プレハブ診療所につきましては、以下のような諸点があるので、現在検討中であるということを御説明いたしました。第一番目に、ロシアによる北方領土の不法占拠との関係で法的な問題があり得る、二番目、ロシア側が現在の日ロ関係の中でどういうふうに受けとめるかという点を確かめる必要がある、三番目、実際に本件を実施する際のフィージビリティーについても当然検討し、調査する必要があるという趣旨のことでございます。
上田(清)委員 このようにここにも書いてあります。極力小さく、それから、仮設、小規模、簡易、なおかつ、一億程度だと。しかし、現実には三億九千万かかっているという大きな話になってしまった。それ以降にもいろいろな問題が出てきております。なぜそうなったのか。これは外務大臣、日本の北方領土政策、外交政策とのかかわりの中で大変大きな意味を持つ。その中で、今、西田さんとの話の中で例の鈴木宗男議員は北方領土不要論を言われた経過があります。
 いずれにしても、この支援委員会がやってきたことは明らかに協定違反であり、そしてさまざまな違法的なお金の使い道があるということについて、指摘しているとおりです。これは新日本監査法人も言っていることですが、外務大臣、この新日本監査法人が出した調査報告書をお読みになっていると思いますが、特に総括の部分で明らかに協定違反をあちこちでやっているということについての確認はなされましたか。
川口国務大臣 新日本監査法人からは、監査をしていただきました後、いろいろな問題点を指摘いただいております。それから、その前の園部参与にお願いをした調査についても、当時外務省と鈴木議員との異常な、社会的通念から見て異例な関係というのも御指摘いただいております。
 私としては、そういった御指摘をきちんと受けとめて外務省の改革をやっていきたいと思っているわけです。
上田(清)委員 質問に答えていないんですよ。違法な状態、協定違反であること、それから目的使用外にお金を使っていること、そういうことについての確認をなさったかどうかを確認しているんですよ。それが一番大事でしょう。
齋藤政府参考人 この新日本監査法人の報告書におきまして幾つか問題点が指摘されていることはそのとおりでございますけれども、協定違反が行われているという指摘はなかったと思います。
 また、プレハブ診療所につきましてでございますけれども、これは協定第三条1(a)(3)に言います建設に係る資材等の購入及び建設のための役務の購入ということで、協定違反だというふうには認識しておりません。
上田(清)委員 それでは申し上げましょう。(パネルを示す)総理、これは何ですか。船でしょう。どうぞ。どういう認識ですか。御答弁いただきたいんです。今齋藤局長は違うことを言っているんですよ。
小泉内閣総理大臣 これを見ると船ですけれども、もうちょっとはっきり質問してくださいよ。
上田(清)委員 はい。要するに、支援委員会の仕組みを、総理は私の質問に対して五日の日にもちゃんとおっしゃっていらっしゃるんです。実におかしなことだということを答弁の中で総理はちゃんと、きちっとした認識をなされていますよ。「今議論を聞いておりますと、上田議員の疑問はもっともだと思います。この支援委員会に対する過去の経緯、そして現状、将来のあり方、これをよく調査して再検討する必要があると思います。」と言われましたし、塩川財務大臣は、「いや本当に、常識で考えたら非常におかしい事件である。私ども、それじゃ、これを、どういう査定をしてきたのか、そしてまた、これは会計検査院、何やっておったん、」こういう率直な感想を述べておられます。
 この中で、支援委員会の中で、今齋藤局長が言ったのはこういうことができると言っているんですよ。食糧だとか医療以外にも、「諸国の国民の相当な生活水準を確保するために必要なその他の物品であって委員会が適当と認めるものの購入」とか、あるいは「市場経済への移行の円滑な実現に資する施設の建設のために必要な生産物及び役務の購入」。
 なのに、市場経済に移行するのに必要なものが診療所ですか、教室ですか。違うでしょう。明らかに協定違反じゃないですか。第一、これは船じゃないですか。船が何で物品ですか。どこに物品という規定があるんですか。これは船じゃないですか、明らかに。
齋藤政府参考人 先ほどは、プレハブ診療所の協定におきます根拠条文として、協定第三条1(a)(3)項の、建設に係る資材等の購入及び(5)の建設のための役務の購入ということを申し上げたわけでございますが、はしけにつきましては、この根拠条文は、協定第三条1(a)(4)項の「緊急人道支援の実施のために必要な機材、車両等の購入」でございます。
上田(清)委員 どこに船と書いてあるんですか。どこに船と書いてあるんですか。車両じゃないじゃないですか。これは船じゃないですか。いいですか、この中身、全長三十二メートル、幅七・五メートル、トン数八十二トン、積載貨物を百トン載せられるんですよ。十トントラック十台載せても沈まないんですよ。そして航行距離、あの四島から東京湾まで入ってこられるんですよ。外洋船じゃないですか。どこがはしけか。ふざけたことを言うな。
齋藤政府参考人 はしけは、先ほど申し上げましたように、機材、車両等に該当するという理解でございます。
上田(清)委員 いいですか、これが機材だという話になりますね、そうなってくると。車両じゃないんだから。これが機材。では、この国会の議事堂も機材ですか。そういう話になってくるんですよ、あなた方の話は。いいですか。
 それじゃ、二の一を回してください。
 明らかに、あなた方がつくってきた発電所も違法行為。全部違法行為だ、あなたたちがつくってきたのは。支援の協定なんてどこにも書いていない。こういうインチキをやっている。最初は悩んだ、プレハブつくるときには。しかし、一回突破したら後はもうずぶずぶだ。
 いいですか、総理。この二の一、二、三は、それぞれ経済産業省、厚生労働省それから海上保安庁に、物品の定義、船が物品になるかならぬかということを聞いてみた。あるいは、あなた方が言うところの友好の家、ムネオハウス、これが機材なのかあるいは生活を維持するための物品の購入なのか。あなたたちは物品の購入と言っている、診療所を。しかし、厚生労働省、書いてあるじゃないか、二の二。――ああ、ちょっと抜けていますね、これは。肝心なところが抜けています。失礼しました。
 では、経済産業省からいきましょう。いいですか、経済産業省に書いてありますね。発電所、当敷地内に設置されている自家発電所施設、従来より物品ではなく国有財産として登録しているとちゃんと経済産業省は書いていますよ。こういうのは入らないと、船舶、はしけや桟橋、浮きドック、航空機、こういうのは物品じゃないと経済産業省は言っているし、海上保安庁の船についても物品購入費の中に入っていないのよ。あなた方だけなのよ、外務省だけなのよ、そういうことを言っているのは。あなた方は世の中の常識から狂っているのよ。自衛隊だってそんなこと書いていない。
 文部科学省だって出ていますよ、ここに。「宿泊施設・交流施設等の建物について、物品購入費等、施設整備費以外で施設整備をしているのか。」という私の問いに対して、そうじゃないと。ちゃんと「五月二十一日 文部科学省」。公式に文書として全部いただきましたよ。
 あなたがやっているのは何ですか、これは。犯罪ですよ、使っちゃいけないものに使っちゃっているんだから。大臣、どうですか。答弁してください。
小泉内閣総理大臣 これ、定義はともかく、上田さんの言っているとおり、おかしいですよ。そういう反省のもとに、外務省、考えなきゃいかぬ。字義の定義じゃない。物品の定義はともかく、常識で考えて、何でこんなおかしいことやったんだという反省をしなきゃいかぬ。そういう認識から始まって初めて改革できるんですよ。(発言する者あり)
 だからそれは、外務省、私は今のような答弁を聞いて、まだ反省が足りない。きっちりと私は指導します。
上田(清)委員 官房長官、各省庁で物の考え方に違いがあるときに調整するのは官房長官の仕事だと思いますが、それできょうわざわざ来ていただきました。恐縮です、お忙しい中。
 実は、外務省の基本的な認識に関して、この支援委員会の協定書の中身は、厳密に言えば、市場経済改革のプログラムのための支援事業、しかし緊急人道支援事業として医薬品や食料品が購入できる、あるいは生活を最小限度維持するのに必要なものができる、これだったんですよ。
 ところが、教室あるいは診療所あるいは発電所。後でも申し上げますけれども、発電所も別につくらなくてもよかったんですよ。余っていたんです、電力も。油が足らなかったんです。外周工事をやろうという調査報告書も出ているんです。ところがなぜか、三億三千万の外周工事をやろう、外壁を直そうというそれだけの調査報告書が出ているにもかかわらず、なぜか二十一億の発電所になり二十七億の発電所になっていったんですよ。これをいまだに正当化しているじゃないですか、外務省は。
 いいですか。今総理が言ったようなことを総理自身が認識された。これは刑事訴訟法の二百三十九条、こういうことが書いてありますよ、第二項に。「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」
 犯罪じゃないですか。外務大臣、告発してください。外務大臣、答弁してください。
川口国務大臣 大分前にこのことについて予算委員会で御議論をいただいたときに私も申し上げたわけですけれども、この支援委員会における予算の支出のあり方が最も望ましい形で行われていたかというと、必ずしもそうではない。このことにつきましては、新日本監査法人の報告書の中でも、ちょっと今手元にありませんけれども、組織の形骸、国際協定の形骸化とか、そういった表現であらわしていたかと思います。
 そういった意味で、最も望ましい形であったかどうかということについては、なかったと私も思いますけれども、協定の解釈をする中で全くこれが読めるかどうかという判断を恐らく外務省としてはしたのではないかなと私は考えております。
 いずれにいたしましても、この支援委員会の予算の支出のあり方については、専門家の委員会の方々にアドバイスをいただいて、現在、見直すということで、私としては、相手、ロシアもあることでございますから、私のみの判断ではできませんけれども、支援委員会は見直すというか廃止をすべきではないかと私としては思っているわけです。
上田(清)委員 今いみじくも外務大臣、相手がいると言いましたけれども、相手いなかったんです。責任者がもういなかったんです。そして、いわゆる島民からの要請があったり、鈴木宗男さん関係のグループが話し合って、こういうものをつくろうという話にしたんです。
 ロシア政府の、いわゆる責任者からの口上書も何もないじゃないですか。あるんだったら出してください。
 それから、今委員長にお願いしたいと思います。
 あれほどまで外務大臣が言われるんでしたら、この間の、さまざまな施設をつくったときの協議書、内部の協議書を全部出してください。要請したいと思います。お願いします。
津島委員長 理事会で相談させていただきます。
上田(清)委員 それで、今申し上げましたこのディーゼル発電所のコンサルも支援委員会に出向している人がやっているんですよ。こういうずぶずぶをやっているんですよ、本当に。そういうのも、本当に外務大臣はまじめにやろうとしているんですか。とんでもないですよ。
 いいですか。このパシフィックコンサルタンツインターナショナル、この支援委員会に事務局員を一人出向させていますし、ここがディーゼルの発電所の調査をして、実は三億三千万の改修費でいいというのに、いつの間にか二十一億円に化けたんですよ。こういう経過について何も出ていないじゃないですか、肝心なところは。
 だれが書いたんですか。本当にこれは新日本監査法人が書いたんですか。名誉にかかわりますよ、ここだって。外務省が書いたんじゃないですか、ひょっとしたら。
 先を進みます。まだ山ほどありますよ。
 特に、外務省職員の暴行事件。これは私は、極めて健全な、国益に関することを当時の外務省の課長補佐の方はやられたと思います。国後島に植樹をする、そうするとロシア政府が検疫をしたい、その検疫を受けたらまさに日本の領土でなくなってしまうから、それを拒否した。そうしたら、帰りの船の中で、余計なことをするなということで鈴木議員からぼこぼこやられた。
 こういう事実関係について、これは事実ですよね、外務大臣。
川口国務大臣 事実だと聞いています。
上田(清)委員 こういうことでございまして、ちゃんと診察の診療書もあります。
 では、なぜこれを外務省として黙殺したんですか。いいですか。国益のために働いた職員が国会議員にぼこぼこやられて、それでなぜ泣き寝入りをしているんですか。では、国益のために働こうとする職員なんかいなくなっちゃうじゃないですか。どうぞ答えてください。黙殺した理由は何だ。
齋藤政府参考人 外務省としましては、本件につきまして告発に足りる程度の事実が特定できるか否か、引き続き慎重に検討しているところでございます。
上田(清)委員 もう随分昔の話なんだ、これは。
 刑事局長、時効はあと何年残っていますか。
古田政府参考人 具体的な事案で、日時とかそういうことについての確定が捜査当局としてできる前に個別のお答えをすることは、これは差し控えますけれども、法律上どうなっているかと申し上げますと、傷害罪の公訴時効は七年、暴行罪は三年、脅迫罪は三年でございます。
上田(清)委員 まだ一年残っていますよ。外務省、外務大臣、告発してください。じゃないと、正しい行為をした人が黙殺されて、しかも鈴木議員は明らかに抗議の声明文を出しているじゃないですか。どっちが本物だと、あなたたちは殴られた方だと言っている、本人はやっていないと言っている。だって、調査したんでしょう。調査した結果は今大臣が答えたじゃないですか。ちゃんと告発してください。そして、さっき言ったように、もし告発しなければ、あなたたちは、刑事訴訟法でちゃんとやらなくてはいけない義務を怠ると、今度は国家公務員法の違反になっちゃいますよ。事実がわかっているにもかかわらずやらないとなれば。
川口国務大臣 これにつきましては、ただいま慎重に検討をしているところです。
上田(清)委員 もう話にもなりません。
 この間のこの支援委員会にかかわる期間における外務次官、それから担当審議官、それからロシア大使、そしてロシア課長、すべての方々の参考人招致を要求したいと思います。
津島委員長 理事会で相談をいたします。
上田(清)委員 総理、ちょっとだけ、申しわけありません。非対称戦とか超限戦とか、こういうのは御存じでしょうか。聞いたことはありますか。
小泉内閣総理大臣 わかりません。
上田(清)委員 実は事態特が、もう我々は審議したくて審議したくて仕方がないんですが、答弁が非常に苦しいから早くやめたいということで、事態特は審議打ち切りに近いと言われておりますところの公聴会の設定をきのう強行で、与党の単独で行われましたけれども。
 実は我々は、今出ている法案は、場合によっては二十年前の陸上戦を中心とする焼き直しではないかというような疑いを持っておりますが、この非対称戦という、これはアメリカの国防総省が最近研究しているものであります。つまり、これからの戦争というのはいろいろな場合があり得る、いわば空爆があれば対空高射砲で対応するとか、そういう話にならないだろう。期を同じく、これは人民解放軍の、中国の参謀部でひそかに研究された超限戦という概念です。これも期を同じくして、中国でも実は昨年の五月ぐらいから研究をしていたものであります。
 こういう仕組みを実は、まさに有事立法というんでしょうか、いろいろなパターンでこれから、一概に戦争の概念で言えないような仕組みが、さまざまな、災害も含めて、あり得るんではないかということを実は事態特でぎりぎりの議論をすべきだというふうに私たちは思っているんですけれども、昨日、残念ながら、公聴会の日程を決めて、事実上の審議拒否をなされた、こういう認識を持っております。
 そういう意味で、総理、総理はこれからの課題として、九月十一日のアメリカの自爆テロ、ああいうものを含めた、核テロあるいは細菌戦、サイバーテロ、いろいろなパターンがこれから考えられるんではないか、そういう意味で我々は議論することを非常に大事だというふうに思っておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 大いに議論をしていただきまして、政府の案に対して、足らざるところがあれば、建設的な提言、大いに歓迎したいと思います。
上田(清)委員 この席は総理でございますので、あえて自民党総裁として申し上げておりませんが、最後に……(発言する者あり)まだ時間あるんですか。それでは、先ほどの続きを少しせざるを得ません。
 イスラエルのテルアビブにおける支援委員会の支出について松本さんが議論をしておりました。まだ結論が出ておりませんが、これは佐藤前分析官が逮捕される一日前に、さる雑誌社のインタビューに答えて、川島さんも知っている、ちゃんと了解を得てやっているんだ、こういう議論をしておりますけれども、大臣は御承知でしょうか。
川口国務大臣 この件の決裁は次官にも上がっているようでございますので、そういう意味では次官も知っていたと思います。
上田(清)委員 外務大臣は御存じなんですか。外務大臣は御存じだったんですか、この経過については。
川口国務大臣 どこまで細かく知っているかということについては自信がございませんけれども、ある程度は知っていると思います。
上田(清)委員 それでは、一般的に言うと、これは東郷さんが許可をしたと言っておりますけれども、これについての認識は、御存じですか。
川口国務大臣 私は、その当時のだれがそれを許可したとか、そういうことについてはよく知りません。
上田(清)委員 きょう来ている方で官房長はおられますか。官房長、お答えしてください。
北島政府参考人 当時の決裁書は次官まで上がったというふうに承知しております。その過程で関係局長が決裁しております。
上田(清)委員 昨日、前分析官と関係のもう一人の方が起訴をされております。警察当局によれば、違法行為だ、こういう認定をしているわけであります。もちろん確定したわけではありません、最終的には司法が確定するわけですけれども。疑いが濃いということについて、今外務省としてどのように対処されているのか、お伺いしたいと思います。大臣。
川口国務大臣 この件につきまして外務省から逮捕者が出たということについては、私は非常に重く受けとめております。外務省としては、捜査に全面的に協力をいたしまして、事実関係が早く解明されるということで協力をしたいと思っております。
上田(清)委員 そもそも、内部でなぜ、支援事業のお金がイスラエルの大学のさまざまな会議に使われるということについて疑問が出なかったのか。何も出なかったんですか。
齋藤政府参考人 本件の決裁につきましては、決裁書に記載されている事項に基づいて当時の決裁者が決裁したというふうに理解しております。
上田(清)委員 だから、何の疑問もなく決裁されたかどうかということを聞いているんですよ。
齋藤政府参考人 当時の決裁者が疑問を持っていたということを私は聞いておりませんけれども、直接の担当ではございませんでしたので、それ以上のことを私から御説明することは差し控えさせていただきたいと思います。
上田(清)委員 明らかに、先ほど総理が言われた、常識から考えておかしいと。船が機材であるわけがないし、しかも、いわゆる自航式はしけというのは湾内を走る船のことですね、御承知のとおり。大きな船から小さな船に荷物をおろして、その小さな船が岸壁まで運ぶとか、そういうのを自航式はしけというんですけれども、北方四島から東京湾まで入るだけの航続距離のある外洋船がはしけなんというわけもないし、物品だというわけがないんです。船は船なんです、だれが見ても。そういうことを繰り返し繰り返しやっているのですよ。発電所は物品じゃないんです。発電所の中にあるさまざまなものが物品であるんです。なぜいつの間に物品になったんですか、発電所が。
 外務省は、こんなふうに中身をどんどん変えながら違法行為を行っている。違法行為を行っていることを知っている人たちまで、それを目をつぶってちゃんと告発もやっていない。告発もやっていないということはどういうことになるのか。いいですか、同罪ですよ。
 それから、川口外務大臣に、もう時間がありませんから最後に聞きますけれども、あなた方は、デンバーの総領事の公金流用、パラオ大使館の公金流用、オーストラリア大使館のプール金の使い込みについて、外務省で、内部規則に基づいて処分しているだけじゃないですか。これは完全に犯罪じゃないですか。今言ったように、犯罪だということを知りながら何もしないというのは、国家公務員の職務怠慢になってしまうんですよ。刑事訴訟法の二百三十九条では、ちゃんと告発しなければならないんですよ、公務員は、そういうことを知ったら。していないじゃないですか。明らかに違法状態になっているじゃないですか。税金を違法に使った人間を法律に従って処分をしない大臣というのは一体何なんですか、これは。
北島政府参考人 デンバー等の事案について言及されましたけれども、外務省としまして、こうした事案の重大性を十分留意し、また、こうした問題をめぐるこれまでの経緯を踏まえつつ、詳細な事実関係を確認することが必要であると考えており、その結果、告発に足り得る程度の事実が特定できるか否か、引き続き慎重に検討している次第でございます。
上田(清)委員 ずっと調査調査で、事実上、国会での議論を邪魔しております、外務省は。大臣、調査に何カ月もかかっていたら、ど忘れてしまうじゃないですか、みんな。(発言する者あり)それがねらいなんですって。与党の方も言っておられる。本当にそうですよ。的確にさっと結論を出していかなければ、関係者だっていなくなるじゃないですか。
 最後に、外務大臣、あなたが本当に改革する気であったら、だめですよ、こんなの。調査報告、監査法人は調査するところじゃないんです、監査するところなんです。監査をさせないで調査をする。だれも監査していないじゃないですか。
 そして、支援委員会の改革なんて、改革なんかできません、これは。即座に廃止して、違法行為を行った人たちを告発して、そして必要なものは各関係の機関がちゃんと引き取っていく、これが大事じゃないですか。本当に改革できると思っているんですか、この支援委員会が。協定書から全部違反しているじゃないですか。相手がいない、会議はしない、そして定款にないことを全部やっている。でたらめじゃないですか、これは。こんなの改革できませんよ。もう廃止することですよ。しかし、告発はしてください。告発をぜひお願いしたいと思いますよ。
 最後に、委員長にお願いします。
 先ほど、関係の、支援委員会に係る次官、官房長等々、全部申し上げましたけれども、瀋陽の総領事、副領事もぜひ参考人としてお願いしたいと思います。(発言する者あり)阿南さんはもう申し上げました。
 外務大臣、最後に答えてください。支援委員会、どうするのか。
津島委員長 今の御要望の点は、理事会で鋭意議論をいたします。
 川口外務大臣。
川口国務大臣 支援委員会につきましては、これまでも申し上げてきておりますけれども、協定上、相手国と合意がなければ変えることができませんので、そういったことを進めまして、私としては、専門委員会の提言を重く受けとめておりますので、廃止したいと考えております。
上田(清)委員 ありがとうございました。
津島委員長 これにて海江田君、中川君、松本君、上田君の質疑は終了いたしました。
 次に、中井洽君。
中井委員 自由党の中井洽です。
 時間が四十分でございまして、この間に瀋陽総領事館の問題そして支援委員会の問題と二つやらなければなりませんので、できる限り端的に御質問申し上げますので、お答えを簡単にお願い申し上げ、外務大臣も法務大臣も、歩いていただくのは時間がかかって恐縮ですから、お詰めいただいて、極めて短い距離で御答弁をいただければありがたい、このように思います。
 十一時五十七分、NHKのニューステロップで、五人の北朝鮮の方々が中国を出国してフィリピン経由で韓国へ行くということが、フィリピンの外務省次官の記者会見で発表されたと報じられました。その後、韓国政府もこれを確認したようでございます。
 この五人の方々は、一人は二歳の幼児でありますし、一人は妊娠五カ月の奥さんであります。しかも、御主人は、一度中国から北朝鮮へ送還されて、脱獄して再び自由への脱出を試みた方でございます。北朝鮮を脱出した人が捕まって戻されても、必ずしも全員極刑ということではないようでありますが、この五人は韓国と日本のNGOに助けられて今回の行動をとった。したがいまして、北朝鮮にとってはこれはスパイ行為、こういうことでありますから、戻りましたら極刑だろう、そういう意味で、安全ということを心配いたしておりました。
 日本政府はコメントできないということでございますが、間違いないということで、やれやれという思いは私もいたしております。同時に、コメントできるようになりましたら、この委員会開会中でも、ぜひ委員長の御配慮で御発表を賜りたい、このように思っています。
 昨日、私どもの党は、藤井幹事長が官邸へ小泉総理に申し入れに参りました。五人の生命を、安全を人道上確保すると同時に、日本の侵された主権を回復しなければならない、こういったことを強く申し入れたわけでございます。
 瀋陽あるいは北京におきまして、ここ数カ月間だけでも、国連難民高等弁務官事務所あるいはスペインあるいは韓国あるいはアメリカ大使館等々へ北朝鮮の難民の方が逃げ込んで、それぞれ自由の国へ出国をすることができました。このときに中国政府は一度も、それらの公邸、大使館へ乗り込んで無理やり連れ出しているというような暴挙をやっていません。日本だけがこういう屈辱的なことをやられているわけであります。中身はいろいろあるんでしょうが、私ども日本人として、日本国として、いかに中国と仲よくてもこれを許すことはできない。
 毅然たる態度でやる、総理も外務大臣もおっしゃって、私どもも党派を超えてこれを支持してまいりました。しかし、二日ほど前から、人命第一だ、こうおっしゃって、毅然とした態度はどこやらへ行っております。そこのところをどうぞお間違えないように対応していただきたいと思いますが、総理の御決意をお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 日本側と中国側の、今回の瀋陽総領事館における事件については見解が違っております。そういう点を踏まえまして、日本としては、日本側の主張を今展開し、中国側に強く抗議しているところであります。同時に、連行された五名の方に対して人道上の要請をいかに満たすかということも考えなきゃならない。これを両立させるべく、今日まで鋭意交渉を続けているわけであります。
 私は、中国側も、この問題が日中友好を損なわないように早期解決したいということについては重く受けとめていると期待し、何とか早期解決に向けて全力投球したいと思っておりまして、現在のところ、報道でいろいろなことが言われておりますが、私は、その中身について言うことは現時点において差し控えなければならないと思います。相手の立場もあります。五名の方々の身元の安全もあります。そういう点を御勘案いただきまして、中身について言えないことは御了解いただきたいと思います。
中井委員 二つ申し上げます。
 その申し上げる前に御承知おきいただきたいんですが、私は昭和十七年に、満州、今の瀋陽のすぐ近所の長春、当時は新京と言いましたが、そこで生まれました。兄弟全部、中国生まれです。家族は十数年にわたって中国で生活をいたしました。したがって、中国には独特の思い入れがあります。しかし、日本は日本であります。二つの点で中国のやり方はおかしいじゃないかと思っていますが、日本政府は反応していない。ここらを少し申し上げます。
 一つは、アフガンの復興支援国際会議であります。中国は、日本があれだけ張り切って議長国としてやりました会議に百万ドルしか拠出をいたしておりません。しかし、その帰路、アフガンのカルザイ議長が北京に寄りましたら、江沢民さんは一億五千万ドル。日本の共催した会議、日本が、お金がなくてなくて苦労しているときに二億五千万ドル、二年目は二億八千万ドル出しましょうとまで約束して、まあ国民からそんなに出すのと言っているときに、中国は百万ドル。そして、その帰りにアフガンの議長が北京に寄ったら、一億五千万ドル出す。こんななめたやり方がありますか。
 その中国に対して、日本は、有償で十六億ドル、無償で四千万ドル、技術協力で六千万ドル、これは平成十二年ですが、それだけ出している。中国に対して一番お金を貸しておるんじゃないですか。こういったことをやられておってはだめだ、このように思います。
 それからもう一つは、過日から、小泉総理が何かこそこそと靖国神社を参拝なさいましたが、僕は本会議でも八月十五日に行くのかと言ったら、行くと言ったんだよ。そうしたら、全然違うときに行って、まあそれはいい。だけれども、それに対して北京の首脳が、小泉総理は許せない、こう言ったというんですね。そんなことを言う方が許せないのであります。
 そういうことに対して、毅然とした対応をいつもとっていない。今回も、五人が助けてもらったら、人道の問題片づいたからいいじゃないか、いいじゃないか、これをやっちゃだめだ。毅然とする態度を貫いてほしい。外務大臣、お答えいただきます。
川口国務大臣 この瀋陽総領事館事件につきましての我が国の政府の基本的な考え方については、先ほど総理がおっしゃったとおりでございまして、まず、国際法関係のことについては、日本側は調査も行い、その事実関係に基づく立場に変更はございません。他方で、中国側も調査を行いまして、その結果を尊重してほしいと言っているわけでございます。
 したがいまして、この件につきましては、日中関係の大局を踏まえまして、冷静に対処していきたいと考えております。
中井委員 それでは、この瀋陽の領事館問題について少しお尋ねをいたします。
 大使館への悪口を言うと総理は自虐的じゃないかとおしかりになられるようですが、まあまあいいんじゃないか。やはり、起こったことの反省、それからどう対応を変えていくか、こういったことをきちっとやっていかなきゃだめだ、こう考えております。
 最初に外務大臣にお尋ねいたしますが、この外務省の職員、そのうちに他省庁から出向しておる、外務省の総領事だとか外交官として出向しているという人はどのぐらいおられるんですか。――わからなかったら僕が数字を言います。九百九十人、約二割です。
 今回、この瀋陽の総領事館に外務省のいわゆるキャリアという人は一人もいらっしゃらない。他省庁の人ばかりだ。外務省のキャリアは、警備とかあるいはビザの審査とか、総領事館の仕事を少し軽々しく見て行かないんですよ、こういうところへ。
 ところが、川口大臣に、あの十の何か外務省改革の、宮内さんのやっていらっしゃる、そこにも出ていると思いますが、日本人が一番大使館と接触するのはこの領事部門なんですよ。だから、領事部門がやはりきちっと対応したら、情報が入ってくる。ところが、それを避けて、そういう汚いのはよその省庁から来た人、地方の警察から来た人。そして、無責任な顔をしておる。
 こういうことを改めないと幾らでも起こると思いますが、外務大臣、認識はおありですか。
川口国務大臣 瀋陽総領事館の例でいきますと、いわゆるキャリアと言われる人は二名でございまして、この方々はよその省から出向している人たちです。
 それで、領事業務というのは非常に重要な業務でございまして、私は日ごろから、大使館あるいは総領事館、領事館といったような在外公館は、外務省のためにあるのではなくて、日本のためにあるのだということを外務省の中で言っております。
 この領事業務について、これから、今始めているところでございますけれども、若手の外交官がここで仕事をやる、経験を持つということをする、そういったことが、領事業務を理解して、意識を変えていくために重要なことだと私は思っております。十の改革の中にこれは含めております。
中井委員 次に、阿南大使の発言にいろいろな報道がなされております。
 きょうの毎日新聞では、ビデオで撮影されても構わない、私が責任をとるんだ、追い返しを指示したと言われる日に、五月八日ですね、館内で指示を出されたときにそのように言われた、こういうことでございます。これはもう、この北京近辺の、先ほど申し上げたスペイン以下の大使館へ北朝鮮の方々が駆け込んだところをNGOの方がビデオで撮っているのを承知した上で言われた、こういうことでございます。
 私ども、外務省から阿南大使の発言等を、できるだけ詳細をと頼んでおりますが、こういったことは一向出てまいりません。この事件が決着をいたしましたら、阿南大使をお戻しいただいて、予算委員会で参考人としてお呼びいただくことをお願い申し上げます。
津島委員長 理事会で相談をさせていただきます。
中井委員 それから、情報をどう集めるかというのは、大使館、領事館等の大事な仕事だと思いますが、今回、このバックアップをしたと言われるNGOの代表が総理の周辺の官僚に、まあいろいろ説はありますが、官僚から電話がかかってきて教えた、瀋陽では近々起こりますよ、こういうことを申し上げたが、これらのことが北京大使館、瀋陽の総領事館に伝わっていたという形跡がないという話が報じられておりますし、私もNGOの方から、間違いなく伝えましたと聞いております。
 これに対して、総理はそういった情報を事前に聞かれておったか、あるいは外務省はそういった情報を首相周辺から御注意を受けておったか、お答えをいただきます。
川口国務大臣 外務省といたしまして、こういった情報を事前に把握をしていたということは全くございません。
 それから、外務省の知る限りでは、ほかの部門がこれを知っていたということは、はっきり承知しておりません。
小泉内閣総理大臣 私は、事前にそういう情報というのは受けておりません。どういうことで周辺と言われたのか、報道はわかりませんが。
中井委員 したがいまして、私どもがNGOの方々から聞いていることやマスコミで報じられていることと全く違いますので、私どもは、このNGO代表の李さん、関西大学の助教授でございますが、この方を参考人招致をして、国会で、予算委員会できちっとただしていきたいと思いますので、お取り計らいをお願いいたします。
津島委員長 理事会で御相談させていただきます。
中井委員 あと、余り細かくああだこうだと申し上げるのは、この事件の渦中にある総領事館の方に申しわけないんでありますが、外務省に対してめったに物を言う機会ございませんので、幾つか申し上げたいと思います。
 先ほどから指揮命令のお話がございました。総領事館に対する命令は外務大臣ですか、北京大使館ですか。
川口国務大臣 外務大臣でございます。
中井委員 そうしますと、最終的にあの五人が詰所におって、外務省の方が手を広げてとめておったところ、北京の公使から連絡がついて、無理しない方がいいよと言われて帰した、連れていかせた、こういうふうに私どもは聞いておりますが、北京の公使はどうして総領事館を指揮命令したんですか。
川口国務大臣 この件につきまして、まず、中国大使館の立場でございますけれども、先ほど申しましたように、中国大使館は瀋陽総領事館を指揮監督する立場にはございませんけれども、総領事がたまたまこのときに、管内ではありましたけれども瀋陽にいなかったということのために、中国大使館のアドバイスといいますか助言を得るということで連絡をとるように指示をし、その結果として中国大使館がアドバイスをしたということですが、最後に、これはちょっと私、今、記録ですぐに見つけることができないので、もし間違っていましたら後で訂正をいたしますけれども、中国大使館の公使からも電話があったということと同時に、総領事も同じころに同じ趣旨の連絡をしていたというふうに聞いております。ちょっと今、報告書ですぐに見当たらないので確認をしますが。
中井委員 指揮命令権のある大臣のところへは、もうすべて終わってしまった六時になってから、五時ですか、報告が行っているわけですね。その間、大臣のかわりに指揮命令するのはアジア局か中国課でしょう。この中国課長の電話は、この五人が連れ去られるまで通用しなかった、つながらなかったというんですから。それで、つながったときにはもう連れていかれた。そのつながったときには現状を維持せよと命令した。そんなの、何をしとるんですか。総領事館の電話、外務省の電話というのは都合のいいときにはつながらぬのですか。用が済んでからつながって、現状を維持せよと命令をした、そんなばかな報告、どこにあるんですか。何をやっとるんですか。だれが指揮命令しとるんですか、このお若い方を。お若い方を責めるつもりはありません。初めてのことを、訓練してなかったのは外務省の手落ち。しかし、起こった後の指揮命令、めちゃくちゃじゃないですか。大臣、いかがですか。
川口国務大臣 まず、さらなる指示があるまで現状を維持せよという指示を査証担当の副領事に北東アジア課の課長補佐からしたということがございます。これが多分二時半ごろだというふうに思います。
 それから、中国課長から、二時五十分ぐらいだと思いますけれども、これは抗議の上、身柄を構内に戻すように指示を試みたけれども、中国課長からの電話が通じなかった、現地に通じなかったということでございます。それで、三時過ぎに中国課長は、抗議の上、身柄を取り戻すように指示をしたということでございます。(中井委員「だけれども、その指示したときにはもう連行された後だったわけ。あなた、何を言うとるんだ」と呼ぶ)
津島委員長 中井君、質問してください。
中井委員 済みません、時間がないから。
 僕、珍しく通告してあるの。そんなばかにした答弁しちゃだめだよ。全部、あなた、僕が言うたことをさっと抜かして答えとるだけやないですか。三時につながったときにはもう後の祭り。後の祭りって知ってますか。何を言うとるんです。どうしてそういうふうに電話が都合ようつながらないんですかと聞いとるんです。それだけ答えてよ。
川口国務大臣 連絡体制の不備ということについては、国際電話機能を携帯につけるということも含めて、今対応中でございます。
中井委員 僕の言っているのは、全部、中国の公使から総領事から中国課から、みんな逃げ回ったんじゃないですかと言っているわけ。
 たまたま総理は官邸におられたから、総理のところは早く連絡が行った。しかし、大臣のところへは五時、官房長官のところは六時か六時半でしょう。何でだといったら、国会、委員会開いていたから。これ、自民党の人、怒らなあかんよ。そんなもの、ちょっとメモ入れたらしまいなんだから。その後ろにいる秘書官、何しとるんだ。大臣に連絡しないなんというばかなことがあるか。
 しかも、その六時に連絡したときには、三人は中へ入ったと言ってないでしょう。五人が試みたけれども連行されたと言っただけで、テレビで映るまで大臣や総理だましとったんじゃないですか。
 こういうやり方、これを徹底的にぶち破らないと、日本の外交、日本の政治というのはやっていけないんだ。川口さん、そこのところを僕は申し上げているわけ。それなのに変な答弁しちゃだめだよと、あえて苦言を呈しておきます。
 時間がありませんから、あと幾つか申し上げます。
 阿南大使も警備をふやしたとか、瀋陽には三人の警備官がおったとか言われますが、これはペルー大使館のあの大問題以来、日本の大使館や公使館、領事館、警備をふやしている、結構なことであります。しかし、中国で中国の警備員を雇って一体何になるんですか。どういうことなんですか。
 阿南大使は、その日に警備員をふやせ。中国は雇用がふえて喜ぶかもしれませんが、何の役にも立たぬじゃないですか、いざといったとき。中国の官憲の味方をするのは日本の警備員ですか。僕は違う。こういうことが起こらないために、警備体制含めて、一度本当に役に立つ警備体制をつくるべきだ、こう思います。
 それから、もっと言えることは、僕はテレビを見ておって、あれ何だと思ったら、中からぽんとボタン押したらドア閉まるんでしょう、正面の電気ドア、シャッター。しようがないから確かめた。外から押してもあかぬようになっているのと言ったら、あかないと言うんですよ。だから、いざ非常時になったらぽんとあれを押せという訓練をしてなかったのか。そんなこともやらずに何が警備だ。僕は憤慨しています。
 そういう意味で、この警備体制の見直し、約束をしてください。
川口国務大臣 警備体制の見直しというのは重要なことだと考えておりまして、今既に着手をいたしております。
 それから、御指摘の、何で中国の方を警備員に使っていたかということでございますけれども、これは大体の在外公館で現地の人を日本人の警備担当者の監督のもとに使っているわけでございまして、これは、定員の問題ですとか予算の問題ですとか、そういった事情があるわけでございます。
中井委員 北京大使館やら総領事館におられる中国のコックさんやらお手伝いさんやら警備員は、すさまじく高い月給を取っていますよ。そうじゃないと回してこないから、中国政府が、中国共産党が。日本が自由に選べているわけじゃないんですよ。知っておって聞いているんですからね。どこかの中学生に答えるような答え方しないでください、あなたは。だから、中国の警備員を幾ら雇ってふやしたってだめだ、こう言うておるわけです。
 ビデオのこと等を聞こうと思いましたが、先ほども出ましたから、聞きません。本当に警備というのはどうあるか、アメリカみたいに海兵隊が守れとは言いません、しかし、いろいろなことを考えなきゃだめだ、このことを申し上げます。
 本当に時間がありませんので、もう一つの議題、鈴木宗男さんと支援委員会のことについて質疑をいたします。
 先ほど質疑を聞いておりますと、外務省や外務大臣は、前島陽さんと佐藤優さん、この二人が逮捕されたのは、支援委員会で出されたイスラエルでの国際会議の費用を猫ばばした、ピンはねした、これで捕まっている、このような答え方をいたしておりますが、法務当局からいただきましたこの事件被疑事実の要旨というのを見ますと、全然違って、あのお金の使い方全体が背任であり、そして佐藤さんは課が違うから共犯だ、こういう被疑事実を私どもは聞かせていただいておりまして、外務省の認識は違う、まずこのことを申し上げなければなりません。
 そして、その中で出されましたもろもろの資料を見ておりますが、まず最初に、決裁書というのを私どもは見せていただきました。この被疑事実に出てまいります決裁書を見ますと、当時の川島次官がサインしている。あと、ずっといろいろな決裁書を見ましたが、外務省で次官が決裁しているのというのはめったにありません。全然見当たりません。
 大臣、この事件は、その前年の三月にイスラエルの教授夫妻が日本へ来たんです。そのときに佐藤容疑者は、外務省に対して、これは支援委員会の金を出すべきだ、こう働きかけたんです、旅費やら宿泊費を。ところが当時の条約局長が、それは違う、支援委員会が出すような趣旨のことじゃないと反対したために、外務省の予算でこの旅費を出した、こういうことであります。ところが、それを聞いた鈴木宗男当時の内閣官房副長官が激怒して、おれのとってきた金をおれが使うのどこが悪いんだ、こう言って外務省をしかり飛ばした。その結果、明くる一月にこの夫妻が来たときの旅費、それから四月にテルアビブで行われた国際会議に日本側が、役所が七人、学者が八人、秘書やら通訳を含めて総勢十五人、金額にして三千数百万のお金を支援委員会から出させて、この旅行に行った。
 この支援委員会の決裁、出し方が違うんだ、こういう法務当局の調べでありますが、大臣、いかが御認識でしょうか。
川口国務大臣 イスラエルにおける国際学会への日本からの参加に要する費用を支援委員会の予算から支出したということは事実でございまして、このときの判断は、この国際学会がロシアの情勢をめぐって世界各国からの有識者が意見交換を行うという趣旨のものであったので、そこでの議論が支援委員会が業務としている対ロ支援、それに有益であるという判断を当時したということだったと聞いています。
中井委員 これだけだとまたやらなきゃならなくなりますから、まだあといっぱいやりたいことがあるんですが、申し上げたことは、ここに決裁書があるんです。
 これは事務次官が決裁しておるんです。ほかの決裁書、僕ここに二十通ぐらい持っていますが、外務省事務次官が決裁したのは一つもありません。いいですか。それから条約局長は、判こじゃありません、自分でサインしています。これ何だと言ったら、条約局長は、やはりこれは押さなきゃだめだよと言われて書いて押したんですとかなんとか言うておりましたが、なかなか難しい。決裁の文章も、全然他の文章と違います。しかも極秘、秘密指定、無期限、麗々しく判まで押してあります。(発言する者あり)解除になっていますから。
 これを法務当局が、おかしい、こう言っているわけですね。僕は法務当局に、それでは、これは判を押しておる二十数人も調べているのかい、こう言ったら、いや、前島と、このあれで、局長だけは調査したようなしないようなことを言いました。
 私どもは、この局長さんにお越しいただこうと。「局長をして」、こう書いてあるんです、法務省の文書には。「欧亜局長をして」と書いてあります。だからこの欧亜局長を呼ぼうと思ったら、海外へ行って行方不明だ、こういうことであります。
 ついでに聞きますが、オランダ大使をおやめになって、どこにオランダなんというばかなしゃれをさっきから言うておりましたが、退職金をすぐぽっぽに入れて、僕らから見たら、高飛びしたのか敵前トウゴウか、こうなるのでありますが、この東郷さんは、外交官パスポートは返上なさったんですか。返上なさって、一般パスポートで行方不明になっておるんですか。
川口国務大臣 返上をしていると聞いています。
中井委員 元欧亜局長の東郷さんも、私どもも民主党と同じく、予算委員会に参考人、あるいは証人喚問して、これらについてきちっとお答えを賜りたいと思っております。
 それで、時間があと五分しかありませんので全部一遍に言いますが、ぜひ川口さんに外務省の改革の中でお考えをいただきたいことは、ここに鈴木宗男さんと佐藤事務官の同道の出張十九回の決裁書がございます。これを一度ごらんください。
 先ほど民主党の方が言いましたが、これは起案者が判こを押す人をどうも決めている、間違いないようでございまして、みんなばらばら。これは僕らちょっと、僕も短い大臣をやりましたが、課や局によってきちっと押す人が決まっておって、起案者が勝手につけ加えていくというのは初めてでございます。このやり方はまずおかしい。
 それから、大臣、政務次官、事務次官、外務審議官、官房長というのは一切外されて、サインしなくていいということになっています。そんな細かいことはいいでしょう。しかし、局長や審議官が二人も三人も海外出張するときも、大臣の決裁印がないというのはおかしいじゃないですか、これは。
 それから、各省の出張旅費が足りなくなったら、もうぽこぽこ官房出張から持っていっているんですね。平成十三年で幾らだといったら四億四千万あって、よその局が使っているのが二億七千万、官房よりか多いじゃないですか。しかも官房の方は会計課長がぴゅっとサインしたら終わり、使い放題。鈴木さんなんかのときには文化人出張で出ておるんです。鈴木さんが文化人出張かよと僕は言うのであります。赤字でも平気なんですね。ぱっと書いて、赤幾らと。その中にいっぱい計算違いがある。数字なんか合わない。これ一体どういう決裁しておるんだ、外務省は。めちゃくちゃだ。幾ら聞いてもわからない。
 この中に七回ほど支援委員会の出張がありますが、委員会のお金を使っていますが、全部外務省が、はい命令、それだけですよ。支援委員会の書類があるのは一回だけです。支援委員会というのは、実際何にも機能していません。支援委員会の人は今ロシア室長一人でしょう。百五十八億金を残して、毎年予算がついて、好き放題ですよ。だから、出張、はい支援委員会と書いたらそれでしまい。そんなやり方がどこにあるんですか。
 だから、こんなことは、対ロシアがあるとかないとかじゃなしに、なくす、このことを言っていただきたいのと同時に、法務大臣、済みません、いろいろとありましたが、この日本の難民受け入れ、これについて世界一難しいシステムになっている。これを改めない限り、人権だとかあるいは人の生命を守るとか、そんなことは言えないと僕は思っています。
 いろいろと難しい問題もありますが、この事件を契機に思い切って見直していく、こういったことをお考えになりませんか、お答えをいただきます。
川口国務大臣 決裁文書のことですけれども、通常の常識でいえば、ある組織の特定のランクの人が出張に行くというときには、おのずからそれを決裁するランクの人というのは決まっているということだろうと思います。
 ただ、それ以外の人がつけ加わることがないかというと、案件によっては、この話はこの人にも特に関係があるからということで回すことはあるかなと思います。
 外務省の出張についてのルールというのを私まだ見ておりませんけれども、もしそういうランクが、出張者等のランクとの関係で決裁者が決まっていないということがもしあるならば、私はそういうことではないと思っておりますが、もしそういうことがあれば、それは早急に直したいと思います。
 それから、局長が出張する場合に大臣が決裁していないということをおっしゃいましたけれども、私は、局長が出張に行く場合には、事前に私のところに報告に来て、どういう目的で、いつからいつまで出張に行くという話をきちんと聞いております。
森山国務大臣 我が国へ入って難民の申請をするという方がもともと大変少ないものですから、恐らく、そういう難民の出身国と日本が地理的に大変遠く、また言語、文化その他大分違いますので、希望者が少ないというのはよくわかるのでございますが、その申請のあった者を認定する認定率というのは我が国の場合約一四%でございまして、イギリス、ドイツその他ヨーロッパ諸国に比べて決して大きく違いはないというふうに思っております。
 しかし、難民問題あるいは入国管理の問題について、大変国際化の著しい今日でございますので、さらに大きな問題としてこれからも注目されると思いますので、法務大臣の先輩として中井先生も御存じだと思いますが、法務大臣の私的懇談会というのがございまして出入国管理政策懇談会と申すのでございますが、そこに、これをきっかけに難民問題の検討を特にお願いしたいというふうに考えておりまして、現在、事務方にその準備を進めさせているところでございます。
中井委員 終わります。
津島委員長 これにて中井君の質疑は終了いたしました。
 次に、児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 瀋陽の日本総領事館事件から既に二週間が経過いたしました。道理のある外交交渉を進めなければならない、道理のある外交交渉は揺るぎない事実に立脚しなければ不可能だと私は考えます。国会として、事実の徹底的な解明のために国会に可能な役割を果たすことが現在求められている、私はそのように信じております。
 先ほど、五名の方がフィリピンを経由して韓国に向かうことが報道されました。私たち日本共産党は、かねてから人道主義的立場に基づく事態の速やかな前進を強く願ってまいりましたので、この報道を喜んでおります。今回のような事態を繰り返さないためにも、先ほど述べた立場で事態の解明をしていきたい、そういう立場で御質問します。
 まず最初に、中国側に対していつ、どのように抗議をしたのか、この問題についてです。
 パネルを作成いたしました。これです。ちょっと字が小さいかもしれないけれども、「在瀋陽総領事館・在中国大使館・本省間の連絡クロノロジー」。クロノロジー、時間順に事実関係を配列する、仮に私はこれを表示と言いたいと思います。このクロノロジーは、外務大臣、皆さんのところでつくられたものですね。
川口国務大臣 私の席からはちょっと全部見えませんでしたので、同じであるかどうかよくわかりませんが、同じようなものはつくっております。
児玉委員 そこで、まずこの表示を見ていただきたいのです。
 十四時ごろ事件が発生をする。そして、外務省が抗議ということについて出てくるのはいつかというと、十四時五十分ごろ、この直後のところです。十四時からこの間の約一時間、抗議ということは外務省がつくられたこの時系列表示には全く出てまいりません。なぜだろうか。この一時間、現場も外務省も抗議すべき事態であるとの認識を持たなかったのではないか。そのことについて、外務大臣にお尋ねします。
川口国務大臣 外務省にこの情報が入りましたのが大体二時半ごろでございました。それでその後、局長室かどこかで、局長室だろうと思いますが、集まって議論をしまして、そして抗議の上身柄を構内に戻すように指示を試みた、これが二時五十分ごろでございますので、二十分間でこの判断をしたということでございます。
児玉委員 問題になっている瀋陽の副領事の方も、そして館内にいらした領事の方、総領事はそのとき高速道路を大連に向けて走行中であった。副領事であれ、領事関係に関するウィーン条約三十一条二項によれば領事機関の長に当たりますから、不同意、同意しない旨を明示すれば立ち入ることはできません。
 そこで私はお尋ねしたいのですが、先ほどの表示からも明らかなように、瀋陽の日本領事館では、十四時ごろから、そして査証待合室、そこに二名の方が入って、数名の、五、六名の中国警察によって連行されていく。十四時五十分まで約一時間の間、日本の領事館担当者と中国側は終始接触していました。言ってみれば、ごく近いところに一緒にいました。
 それなのに、中国が行った総領事館への立ち入りと五名の方に対する連行、この行為に対して、言葉による不同意の意思表示、抗議がなされておりません。明らかに、そのことをこのクロノロジー、外務省自身がおつくりになったクロノロジーがよく示しているではありませんか。これはどういうことなのか、外務大臣、お答えください。
川口国務大臣 これは、二時半ごろに警備担当副領事が、現状維持のために武装警察詰所入り口に立ちふさがって移動を阻止したということでございまして、ここで、動かさない、現状を維持するということをずうっと態度であらわしているわけでございます。
児玉委員 今おっしゃったのは、ここの十四時五十分ごろのところ、それはあくまで現状維持のためであって、外務省がつくられたこの表示によっても、現状維持のためであって、抗議のためではありませんね。ここのところはやはり、外交上の関係ですから、事実に基づかなければならないし、厳格性が必要です。現状維持ということと抗議とは異なりますよ。川口さん、どうですか。
川口国務大臣 現状維持というのは、そこの場から動かすな、連行をさせるなということでございます。
 それから、抗議につきましては、これは、抗議の上、身柄を構内に戻すように指示を試みたということですけれども、査証担当副領事の電話につながらなかったということで、抗議をしろという指示が届かなかった、そういうことでございます。
児玉委員 今の点ですが、やはり事実関係が明確でなければなりません。
 十四時五十分ごろ、先ほどの御質問にもあったけれども、外務省とそして現地との関連です。それはこういうふうに出てきますね。十四時三十分ごろ、午後二時半ごろです、中国課長補佐から、車の中で、走っていた岡崎総領事に対して何と言ったか。「追って連絡する旨述べた。」外務省の表示はそう書いてあります。
 そして、同じ十四時三十分、午後二時半ごろ、北東アジア課長補佐は、瀋陽の査証担当副領事に対して「更なる指示あるまで現状維持せよ」。ここからも、瀋陽の総領事館に対して直接の指示権をお持ちの外務省が、その場で起きている事態を抗議すべきものと認識していなかったのではないか、このことがあなたたちがおつくりになったこの表示からも出てくる。川口大臣、いかがですか。
川口国務大臣 これは、先ほども申しましたように、二時半に本省で情報を受けて二時五十分に電話を試みたということのところの間に、どういうことをすべきかということを決めた、そういうことでございます。
児玉委員 それは事態が動くわけですし、そして事態の重大性がもしそれにふさわしく認識されたら、まごまごするはずがありません。
 そこで、先ほど川口外務大臣がおっしゃった、この外務省の表示の中で初めて出てくるこの言葉、「抗議の上、身柄を構内に戻すよう指示を試みるが、電話通じず。」十四時五十分ごろ。このように指示することは私は必要だし、適切だと思います。
 ところが、その指示が通じなかったと。電話で通じなかった。どうしてもこれは私には理解できない。ここで何と書いているか。「中国課長 抗議の上、身柄を構内」、総領事構内ですね、「構内に戻すよう指示を試みるが、電話通じず。」抗議という言葉が、総理、ここで初めて出てくるのですよ。
 そして、この指示は、当然車の中で、走っていた岡崎総領事に対しても、そして北京大使館の阿南惟茂大使に対しても伝達されなければならないと思うのです。それぞれに対して外務本省はどのように指示を伝達したのか、具体的にお答えください。
川口国務大臣 このクロノロジーにございますように、中国課長が二時五十分ごろに伝達をしようとした、電話がお話し中であった、あるいは通じなかったと書いてありますが、ということでございます。
 同じころに、この中国課長が連絡をしようと試みていた査証担当副領事が、すぐその下に書いてありますが、中国大使館の公使に電話をし、また中国大使館の公使から電話をもらっていたということがありまして、恐らく彼の電話がずっと使われていたというような状況にあったのかというふうに推測をいたします。
 いずれにしても、私が思いますのは、こういった緊急時の対応体制について、やはりこれは考え直さなければいけない。離れた東京に指示を仰いでそこでやるということが適切かどうか。総領事あるいは総領事にかわる者、そこの段階で意思決定をするということも考える必要があるのではないか。
 いずれにいたしましても、こういったこの経験あるいはこのケースを踏まえまして、今後いかにしていくのが、時間が大事でございますので、こういったことに適切に対応できるのかということは、やはりきちんと考え直さなければいけないと思っております。
 それから、さらにもう一言だけ申し上げますと、今何時何分にというこの表を見まして、整然と物事が動いていたというふうに思うことは容易なんでありますけれども、恐らくこのとき、現場では武装警察が大勢いて、この副領事が非常にうろたえたといいますか、そういう、まあ上がってしまった状態にあるということについても、これはそういうことだったんだろうというふうに私は思います。
児玉委員 外務大臣もうよくよく御承知ですが、現場に居合わせた副領事には、どなたの指示がなくても立ち入りに同意しないことを通告する権利がありますから、資格がありますので、その点が行使されなかったことを私は先ほど問題にいたしました。
 そこで、今の電話が通じなかったという問題です。
 瀋陽にどのような通信手段があるか。瀋陽の総領事館と外務本省との間には、高速データ通信、KDD、そしてインマルサット、先ほどお話しの携帯電話、何層もの通信手段があります。そして、高速データ通信、これは皆さんが高デ、高デと言われているようですけれども、話し中ということはないのです、これは。真っすぐつながる。そうであれば、これほど重要な指示について、抗議と五人の身柄を戻すように本省指示が電話で通じなかったということは、これは到底理解できないのです。これはもう非常に肝心なことです。外務省が常用する高速データ通信で、抗議と身柄の取り戻しを総領事館に確実に指示することができました。そして、たとえあなたがおっしゃった査証担当副領事が動いていたとしても、管内には領事がいらしたはずです。現地に伝わらないとは決して言えない。
 そして、もう一つ、先ほど私の質問にあなたはお答えにならなかったけれども、車で走っていた岡崎総領事に対して外務本省はどういう指示をしたか。先ほど他の議員に対するお答えのとおり、岡崎総領事は瀋陽にはいなかったけれども、しかし、瀋陽と大連間は瀋陽総領事館の管轄内ですから、これは不在ということではありません。その方に直接指示をしなければならない。そして、事柄の重要性をもし認識していれば、中国大使館の阿南惟茂大使にも外務本省としては独自に指示を行うべきでした。それが行われたか行われなかったか、お聞きします。
川口国務大臣 おっしゃるように、今、冷静な頭で、もし一カ所の携帯が通じなかったらばほかに連絡できるところがあったはずと思うのは、私は容易だと思いますけれども、このときに本省がやろうとしていたことは、現場の副領事に一刻も早くこれを伝えたいと思っていた。この間、二十分間なんですね。二十分間の間で、人を集めて、意思決定を決めて、それで連絡をしようと試みたということでございまして、今おっしゃるように、私ももっとほかに連絡できたではないかという感じが持たれるということはわかりますけれども、この現場のこの時点での緊張したあるいは緊迫した情勢の中でそうなってしまったということであろうかと思います。
 事務所の中、いろいろな問題はありまして、この二人が対応していたということで、それでよかったかとか、これはあそこの報告書に書きましたように、検討すべき問題はさまざま残していると私は思っています。
児玉委員 川口大臣、この時系列を平静な状況で読めば云々という、そのあなたの申し分については私は同意いたしません。というのは、私たち自身も、そういう緊迫した事態でどうすればいいのかという立場でこれを見ているので、そこのところは同じ立場だということをひとつ、あなた、御理解いただきたいんです。
 それから、次は、今のお話を聞いてみてなおさら私が疑問に思うのは、先ほどの十四時五十分ごろ、これですね、ここの「抗議の上、身柄を構内に戻すよう指示を試みるが、電話通じず。」私は、これが本当に行われたのかどうか疑わしいんです。空手形ではなかったのか。
 なぜかといいますと、それは、この皆さんの表示や、そして皆さんが十三日に発表なさったあの事実報告も拝見し、そして小泉大臣、川口大臣の本会議その他での答弁も私はよく拝見いたしました。その中でどういうことが出てくるか。皆さんが、抗議の上、電話通じず、通じなかったんだ、しかし、抗議を指示したとおっしゃるけれども、その十五時前、在中国大使館公使から瀋陽の査証担当副領事に対して、「無理はするな、最終的には連行されてもしかたがない旨述べた。」と外務省の表示は示しているではありませんか。これは、阿南大使の指示を公使が現地に伝達したのではありませんか。阿南大使はこのとき何をなさっていたんでしょうか。
川口国務大臣 この中国大使館の公使は、相談を受けて助言をするという立場にあったわけでございまして、このときに電話をもらって、そこで話をしたということです。そのときに阿南大使が何をしていたかということですけれども、阿南大使はこのとき現状把握の努力をしていたというふうに承知をしております。
児玉委員 そうなりますと、これは総理もよく御理解いただけると思うんだけれども、十四時五十分ごろ、抗議、身柄を構内に戻すように、これは必要な指示だと思います。電話が通じなかったと。しかし、その後の段階で、無理をするなという指示が公使から瀋陽に届いたということは、「電話通じず。」と皆さんが言っているこの指示が、少なくとも北京の大使館には届いていないことの証明じゃありませんか。そして同時に、車中にいた岡崎総領事にも届いていないから、岡崎さんはそのまま大連に向けて走り続けていたんじゃないんですか。事態の重要性に気がつけば、もう即刻瀋陽に向けて引き返すべきですよ。それを漫然と大連の方向に向かって走り続けている、これはやはり大きな問題だと思う。
 そして、十五時過ぎ、初めて「中国課長 抗議の上、身柄を取り戻すよう指示。」この時点まで、外務省も阿南大使も岡崎総領事も、抗議すべき事態であるという認識を持っていなかったのではないか。いかがでしょうか。
川口国務大臣 まさに、この二十分間の混乱の時期に、中国大使館それから本省それぞれに、中国大使館はアドバイスという立場で、本省は指示をという立場で、この査証担当の副領事それから警備担当の副領事に連絡をしようとしていたということでございます。総領事も、同じころに同様の趣旨をこの警備担当の副領事に連絡をしているわけです。
 それで、現場が緊迫しているということをその副領事が説明をして、対応ぶりに指示を仰いだということでして、このとき、私が聞きましたところでは、武装警察が数がふえてきて、連行する車も到着をして、そこでかなり緊迫した雰囲気であった、これをこのまま物理的に抵抗しているということについて、不測の事態が起きるかもしれないということで、無理をするなということをこの大使館の公使が言ったというふうに私は承知しております。
児玉委員 今のお話は私は理解できません。
 それで、そのとき現地でどういう判断であったのかということを示すもう一つの例が、書簡、手紙の取り扱いの問題です。ここにやはり出てきます。十四時三十分ごろ、「外出先から戻った警備担当副領事が関係者五名に国籍等を尋ね、五名が北朝鮮から来た家族であることが判明。(英文の書簡を手渡されたが、内容がよくわからなかったため返却。)」こう書いてあります。
 どんな状況だったのか。事件の後、瀋陽に急行された外務省の小野部長の国会での答弁があります。どんな状況だったか。「詰所の中では、その五人の家族が悲嘆に暮れているといいましょうか、一人の年取った方はもう床に横たわっている、それから女性の方は泣いているというような状況」、五月十六日の参議院の外交防衛委員会での小野さんの答弁です。これはそういう状況です。
 男性が必死の思いで書簡、手紙を渡したんじゃないか。ある新聞は、こういう形でそれを示しています。外務省もお持ちで、私が下さいと言ったら届けてくれなかった。この小さな面をちょっと見ただけでも、私は非常に語学力が不足しておりますが、この小さなこれを見てみても、「ファイブ オブ アス」「リクエスト アサイラム イン ザ ユナイテッド ステーツ」、そこのところがゴチックで書いていることがすぐわかります。私たち五人の家族はアメリカへの亡命を求める、そういう意味だと私にもわかります。混乱していてわからなかったというのは、私はやはり繰り返されるべきではないと思います。
 川口大臣、この手紙、書簡をせっかく本人が差し出したのに、本人に返してしまった。あなたはこの行為について、その場で受け取っていた方が適切であったとおっしゃったけれども、私は受け取った方が適当であったという程度の問題ではないと考えます。なぜか。亡命の必死の思いで差し出す手紙を本人に返す、この行為は、日本が亡命者を受け付けない、後のことは先方に任せる、そういうふうに相手側に考える要素を与えたことにならないでしょうか。大臣の答弁をお聞きしたい。
川口国務大臣 今、すべて事情がわかって、わかった時点でこの問題を考えるときに、この書簡を受け取るべきであったと言うことは私は容易だと思います。
 これについて、私が受け取った方が適切であったと言いましたのは、この警備担当の副領事が外出先から帰ってきて、帰ってきてみたらこういう状況になっていて、非常に緊迫をした中で、本人が冷静に物事を判断できるような状況であったかどうかということについて、私は考えるという余地があるであろうということを思いまして、本人にとって、もらった方が適切であったであろう、そういうことを言ったわけでございます。
児玉委員 それでは、東京にいて、ごく平静であった外務省の幹部がどのように考えたかということを、私は、当日の十七時、現地時間十六時ですね、(パネルを示す)これでいえばこの部分に当たります。外務大臣、ここのところに当たります。
 外務省の記者会見室で服部報道官が記者会見をなさっている。服部報道官は、みずから瀋陽で起きた事態については触れられていない。質問した新聞記者、瀋陽で何か起きたのですかと。この新聞記者に対して、初めて次のように述べている。これは外務省、皆さんの出しているブリーフィングです。「現在判明している事実を申し上げます。きょうの八日の日本時間で午後三時ごろですから、現地時間で二時ごろですが、北朝鮮人とおぼしき五名が在瀋陽の日本総領事館に侵入を試みたようでありますが、その総領事館を警備する中国の警察がこれを阻止して、結局五名は瀋陽市の公安当局へ連行されたものと承知しております。」
 ここには抗議も不同意も、かけらも出てきません。それが、それこそ冷静な東京の外務省の幹部の発言ですよ。そして、彼は一問一答の中でこうも言っている。「要するに、侵入を試みたが、中国の警察当局がこれを阻止して取り押さえ、連行したということです。」
 この発言は、事件が起きる四時間前に北京で阿南大使が述べた、不審者が大使館敷地に許可なく侵入しようとする場合には侵入を阻止しと完全に符節が合っているじゃありませんか。どうですか、大臣。
川口国務大臣 これについて、報道官の立場といいますか、本省の中のいろいろな情報の連絡体制が十分であるかどうかという観点から反省をしないといけないと私は思っております。
児玉委員 小泉総理に私はこの後お伺いしたいと思うんですが、先ほど言いましたように、外交というのは政府がなさることです。国会としては、国会でなければならない事実関係の解明を行って、そのことで全体として国益を守り、そして道理のある外交を進める、そのことが可能になると思います。
 そこで、この事態の根本に何があるでしょうか。日本は亡命者を受け入れる政策が欠如しているんではないでしょうか。五月十三日の朝日新聞に外務省幹部の言葉が紹介されています。「日本は事実上、政治亡命を認めていない。主要国(G7)で、ほかにそんな国はないだろう」と。外交の衝に当たっている外務省の幹部がこう言っている。私は、これは日本の現状を言い当てていると思いますね。
 小泉総理、第二次世界大戦が終わろうとするとき、国連憲章が、二度と地球上でああいった悲劇を繰り返さないように、欠乏、困難から抜け出るように、そういう憲章を出している。そして、その後、世界人権宣言が採択されました。第十四条、「すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。」総理もよく御存じだと思います。そして、この宣言に基づいて、国際人権規約、難民条約その他がつくられてまいりました。
 小泉首相は、五月十四日の本会議、日本共産党の松本善明議員のこのことに触れた質問に対して、「政府としては、人道的な観点を踏まえ、細心の配慮を行ってまいりたい」、こう答弁された。そして、翌五月十五日、参議院本会議で、同じお名前ですが、私どもの小泉親司参議院議員に対して、「難民申請を希望する者の入国の問題を含めて、」これは肝心なところですね、「難民申請を希望する者の入国の問題を含めて、」十分配慮しつつ考えたい、こうもつけ加えられた。
 私は、今こそ人道的な見地に立って日本政府がこの分野の改善、改革を確実に進めていただきたいと考えます。総理の答弁を求めます。
小泉内閣総理大臣 本会議で私が答弁したとおりですが、難民受け入れについては、今さまざまな意見があるのは承知しております。率にすると諸外国と比べてそんなに少ないものではないということでありますが、そもそも申請者が少ないんです。同時に、日本は厳し過ぎるのではないか、あるいは、冷たいのではないかとか、人道上の配慮を、もう少し細やかな配慮があってもいいのではないか、いろいろな批判も受けております。
 そういう点も含めまして、国内の意見も、どんどん受け入れるということに対してもまたこれは非常に厳しい意見があるのも事実でございますので、どこの国も、これは大きな社会問題、政治問題化している例もあります。その点も踏まえまして、さまざまな意見をよく聞いて、今後も日本として、難民受け入れについてどうあるべきかということを私は慎重に検討したいという意味で本会議の答弁をした次第でございます。
児玉委員 最後ですが、そこのところを私は、本会議答弁から後退することなく、確実に前進するようにお願いし、かつ、津島委員長、お願いがあります。事実関係を解明するために、阿南惟茂氏を本委員会に参考人として招致されることを求めたいと思います。
津島委員長 理事会で相談をいたします。
児玉委員 終わります。
津島委員長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。
 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 まず冒頭、私、小泉総理、そしてまた政府・与党の皆様方に強く抗議を申し上げたいと思います。
 今、国会で有事法案が審議されておりますが、この特別委員会で、きのう公聴会の日程が与党三党の数の力によって決められてしまいました。公聴会の日程が決められるということは、この法案の成立の前提であります出口が決められたということでございます。
 国民の生命や財産が脅かされる事態が有事であるというのならば、今回の瀋陽の事件も、ある意味では一種の有事と言えなくもないという思いが私はするわけですね。でも、そういった事件に日本の政府はどのような対応ができたか。十分な対応が果たしてできたのか。危機管理能力がゼロに等しいことを露呈しただけではないか、そういう気がしてならないわけでございます。
 大災害あるいはテロ、不審船、こういった問題に対する対策も十分とられていない中、外国から攻撃されたときという、あり得ない事態を想定しての法案、しかも、その法案の中身が、まだ事態の定義があいまいである、さらには総理や官房長官や防衛庁長官の答弁もまちまちである、こういった混迷の中で、数の力で公聴会の日程が決められたということは、強く抗議しなければならないと思っております。
 総理は、この法案の成立の大前提は、国民の理解が必要であるとおっしゃられております。ところが、その国民は、この有事法制の内容を余り知らない、全く知らない、合わせますと六〇%の人がこの法案の中身を知らないという世論調査が出ている。さらには、七〇%の人が、この法案は今国会にとらわれることなく十分に審議すべきだ、してほしい、そういった国民の声があるわけですね。
 総理は、国民の理解が大前提であると言いながら、これほど、七〇%の人たちが慎重にしてほしいという事態というものをしっかりのみ込んでいただいて、そういった中でのこの法案成立は絶対、私は、国民の理解を得るまで十分に審議すべきである。そういった意味で、公聴会の日程等を白紙に戻して、これから国民に理解が得られるまで審議をすべきであるということを、私はまず冒頭申し上げておきます。
 さて、瀋陽の事件でございますが、本当に発生してから今日まで、我々やほとんどの人たちは、いろいろ主権の問題等ございます、ございますが、それでも何よりも、あの五人の方々の身の安全と、そしてまた希望する国へ行ってほしい、そういった願いをずっと持っていたわけですが、先ほどのお昼のニュースで、フィリピンのマニラから今晩にも韓国に行くという報道がされました。
 今、五人の命をかけた願いがかなえられようとしているわけです。本当によかったと思っている。とりわけあの二歳の女の子、ハンミちゃんのこれからの人生に希望が開けた。本当によかったと思っておりますし、これは私たちだけの喜びでもない。そしてまた、これはあのビデオ映像を見た全世界の人たちの願いでもあったであろうと思っております。
 そういったいい方向に今向かいつつあるわけですが、それにしてもこの事件、我が国にとりましては多くの課題、問題点というものを残してしまいました。とりわけ、このビデオ映像というものがあったがために、日本の今回の事件に対する危機管理能力、あるいは人権意識、これが全くゼロに近いんじゃないかというような印象を全世界に広めてしまった。恥ずかしい話ですが、私はそう受け取られても仕方がない状況になったと思っているんですね。
 なぜこんなことになってしまったのか。先ほどもちょっと質問がございましたが、あるNGO団体の代表が、いわゆる首相官邸筋に、一応こういった状況であるという警告を発したということを聞きまして、私もその代表者の李さんに、関西大学の助教授でございますが、この方にいろいろとお話を伺いました。
 ちょうどゴールデンウイークの前に官邸の情報担当部門の官僚から電話があって、難民の状況を教えてほしいという連絡があったそうですが、ちょうど忙しかったので、連休最後の五月六日に電話を受けたそうでございます。そこで、約一時間にわたってお話をしたそうです。その方は、在中国の各国公館で亡命者の駆け込みが相次いでいたために、危機管理の観点から意見を求めてきたそうでございます。
 この事実、官邸としては認識しておられますか。
安倍内閣官房副長官 総理、官房長官、そして私も、そういう事実を一切承知をしておりません。
横光委員 危機管理を非常に心配して、こういったすぐれた情報収集する人が、実際こういうふうに情報を得ようという努力をしているわけです。
 ついでに申し上げますと、このときにこの李代表は、既に亡命者が北京入りしている、近いうちに日本の公館に彼らが必ず来る、北京ではなく瀋陽の可能性もあるので心の準備をしておくべきだ、追い返すと国際問題になりますよということを言ったそうです。
 日本が気をつけなければならないことは何かと聞かれたので、今こうして電話で話している瞬間にも北京等で駆け込みがあるかもしれない、いや、あるのが当然だと考えた方がいい、瀋陽もそうだ、難民のメッカと言われている瀋陽も同じような状況である、いつ、何人、どこでということは通告はしなかったが、可能性が非常に高いということを伝えたそうです。
 そして、もしあったらどうすべきかということも聞かれましたので、そのときには、警備を厳重にしても、たとえ失敗しても、門の前で悲惨な事態が起きるだろう、つまり、失敗すれば北朝鮮に送り返され、死を意味するわけだから、自殺用の毒薬さえ持っている、決死の覚悟で来るので、受け入れるしかない、それが国益にもかなう、心の準備をしておいた方がいいですよとこの李さんはその官僚の方に伝えたそうです。その二、三週間前、アメリカ大使館からも情報提供の要請があったので、ほぼ同じようなことを伝えたと。
 この事実は確認してないという今のお話ですが、これほどの、努力した人のおかげで、貴重なアドバイスと情報が間違いなく官邸筋には得られているわけです。それが何ら生かされてない。
 全く、本当に今聞いてないんですか。もう一度お聞きします。
安倍内閣官房副長官 今回の事件を具体的に予測する情報はなかったというふうに聞いております。
横光委員 その政府の情報の共有体制、あるいは分析能力、どうなっておるんですか。
 その方がいろいろとお話を聞いたのが五月六日。三月には北京で、スペイン大使館であのように大量の亡命事件が起きている。そういった状況の中でそういった情報を得られたにもかかわらず、それが全く生かされてなかった、全くむだに終わってしまったということですか。
安倍内閣官房副長官 当然、私どもといたしましては、北朝鮮の情勢に詳しい方々から情報を収集するという努力を行っております。
 また、その具体的な中身、あるいはどういう人から聞いているかということについてはお答えすることはできませんが、しかし、今回の事件を、先ほど申し上げましたように、具体的に予告するという情報はございませんでした。
横光委員 私は、今の答弁を聞いて、全く官邸の機能が麻痺していると言わざるを得ません。仮にこのような情報提供がなかったとしても、外務省は十分に、今お答えのように、状況は把握して、駆け込みの可能性に備えていたはずだと思います、その直前にいろいろな亡命の事件がございましたので。
 ですから、例の阿南大使も、もしこの敷地内に足を一歩でも踏み入れた難民を保護しようとする意思があったのならば、私は、瀋陽の日本領事館は十分に対応できたはずだと思うんです。しかし、大使の発言は、先ほどから言われていますように、まるで違った方向というふうに発表されている。北朝鮮の亡命者が大使館に入ってくれば、不審者として追い出せという趣旨の発言をしたことになっている。これはそのとおりでいいんですか。外務大臣、お願いします。
川口国務大臣 阿南大使の発言の中身でございますけれども、脱北者が、脱北者は中国へ不法入国している人が多いわけですけれども、一たん館内に入った場合、入った以上は人道的な見地からこれを保護する、そして第三国への移動等の適切な処理をする必要がある。他方で、テロ等の事件がさまざまある中で警戒を一層厳重にするということは当然であって、不審者が、身元がわからない人が大使館の中に入ろう、侵入しようとする場合には、侵入を阻止して、門の外で事情を聞くということをやるべきだ、そういうことを言ったと聞いております。
横光委員 それじゃ、全く報道されている趣旨と違うじゃないですか。しかも、なぜそのような、大使が追い出せというような発言をしたかというと、その話を聞いた大使館員、複数の人たちが証言をしているんですよ。大使館というのは垂直の組織でしょう。トップの考えというのは、末端の人たちまで一直線、同じ考えでなければならない。大使の発言と、それを聞いた人たちが全く違うことを言っている。
 例えば、その聞いた人たちは、出席者の間からは、入ってくる人を追い返したり追い出したりしてもいいものだったとはと驚きの声を上げているとか、しかし、大使の指示だからと。しかも、その大使の発言を聞いて、実際に北朝鮮住民が来たらどうしようという不安な気持ちになった、そう発言している大使館員もいる。複数の人たちが聞いたことは、大使の発言の、今おっしゃられた趣旨とは全然違うことを言う。大使は、今外務大臣が言われたようなことを言う。同じ大使館の中でそんなばらばらで、それも一カ月も二カ月も前のことでない、八日ですよ。そんなばらばらで外務省の対外交渉ができるんですか。これはどう見ても、大使が、今大臣が言われたようなことじゃなくて、追い出せという意識が非常にその聞いた人たちには強い印象を与えたとしか言いようがありません。
 その後に、結局、先ほどもお話がございましたように、ビデオに撮られても構わぬ、私が責任を持つと、そこまで今度新たな大使館関係者が証言しておりますが、それは事実を確認されましたか。
川口国務大臣 事実ではないと承知をいたしております。
 それから、この阿南大使の発言は、大使館の定例会議という場で起こりまして、ここにいた人は大勢いたわけでして、人によって、人の話、よく伝話ゲームというのがございますけれども、とり方が異なってくるということはあることかと思います。
横光委員 今事実でないとおっしゃいましたが、ということは、それを聞いた大使館員はうそを言ったということになります。もしこれが事実であったら大変なことになりますよ。ビデオに撮られても構わない、追い返せ、後で問題になったら私が責任をとる、ここまではっきり聞いた人が証言をするということを大臣はどのように思っておるんですか。そんなに簡単に事実ではないと言ってもいいんですか。後になったら大変なことになりますよ。いいですね。
 委員長、阿南大使にこのことは聞かなければならない。ぜひとも本委員会で参考人としてお聞きしたいと思います。本当に重要な発言だと思います。
 私は、今回のこの阿南発言、聞いた人たちの声からすると、この発言が、どうしても瀋陽の領事館の人たちの対応にまで影響を与えていると言わざるを得ないんですよ。あの発言がああいう発言でなかった、本当に、入ってきたら保護せよという発言であったなら、違う対応ができたはずなんです。ところが、全く、追い返せというような声が出るほど、それを聞いた人たちの中からは趣旨が違うことが出てきているわけでしょう。それが今回の大きな問題になっているんですよ。
 ですから、とりわけ、公安局に引き渡すときにとめようとした副領事、一生懸命頑張ったわけですが、最後に高橋公使の、無理をするな、最終的には連行されても仕方ないという指示、これは高橋公使が指示したそうですが、まさにこの高橋さんこそ、その数時間前にこの阿南さんの発言を直接聞いた人なんです。同じ趣旨のことを言っておるじゃないですか。全く、その声を聞いた人は高橋さんなんですよ。阿南さんがあなたが言うようなことを言うんだったら、こういった発言はしないはずです、高橋さんは。そういったことが非常に今回私は大きな問題につながっていってしまったんではないかという気がしてならないわけです。
 そしてまた、ちょっと総理にお尋ねしますが、午前中にも出ましたが、民主党が調査したことに対して自虐的であるという批判をしたわけですが、これは一国の総理がする発言とは私は思えないんですね。外務省の調査結果が完全無欠であればいいですよ。しかし、聞き取りが甘かったんじゃないんですか。現に、次から次から新たな記載漏れが出てきているじゃないですか。むしろ、民主党がやったことによって、外務省がやった調査結果の不備な点を補ったというふうにとらえるべきじゃないですか。それを逆に自虐的だと言う。
 総理、いいですか。あなたは、日本の非をあげつらうのは自虐主義じゃないかと言っております。しかし、民主党の調査の中では、決して日本の非をあげつらうだけの調査じゃないんですよ。例えば、あの二名を連行するときに、入る人たちに対しては、日本領事館が雇っている中国の人たちは許可をしていない、そういった発言もしている。これは日本の領事館の人たちの意見と一致するわけです。何が日本の非をあげつらう証言ですか。日本の非をあげつらう証言だから自虐的だというのならば、外務省の調査結果も非常に日本の非をあげつらっておるんですよ、総理。
 緊急事態への対応に関する意識の希薄さがあった。指揮命令体制、伝達面の不備があった。普通は二名の警備員が一名になっていて、外出中であった。そのために正門付近の警備は一時行われなくなった。日本人職員への報告もおくれる事態となった。不備な点をいっぱい外務省の報告もしておるんですよ。そういったことは自虐的にならないんですか。
 民主党がやったことをなぜともに、一番大事なことは、事実をすべて解明、はっきりしなければ、総理が言うように、交渉中である、正常な交渉にならないわけでしょう、真相を究明する努力をしなければ。そういった事実を挙げるのに、なぜ自虐的と言うのか、私にはさっぱりわからないんですが。
 結局、マイナスのとらえ方をしないで、新たな事実が判明したわけですから、すべての事実が明らかにならなければ改善のしようもないわけですから、そういったことがまた交渉の大事な材料にもなるわけですから、なぜそのようなことを言うか。プラス、マイナスだろうが、事実が判明することが一番大事であるという、もっと度量の広い一国の総理の発言であってほしいと思います。
 自虐的ということを取り下げてくれという先ほど要請がありましたが、しませんとあなたははっきり言いましたが、私は、その発言を非常に、このテレビを見た国民の皆さん、何と心の狭い人だろうと思ったんじゃなかろうかと思っておるんです。だから、これはもう聞きません。
小泉内閣総理大臣 何と心の狭いかというのはそちらに言いたいですね、私は。
 外務省の対応がいいと思っていませんよ。反省すべき点はたくさんある。しかし、政治家が、考えが違って批判する。けしからぬと言うのもいい。あなたも私が自虐的という発言をしたのをこの場で批判して結構。政治家である限りは言論の自由というものをどう考えるのかを私は聞きたい。
 いかに批判してもいいですよ。私はその批判を撤回しろなんて言いませんよ。だから、私の発言もけしからぬと言うのは自由だけれども、私から言うのもそれは自由じゃないですか、言論の自由。与党の政治家が野党を批判したらけしからぬ、そういうこと自体、言論の自由というものをもっとわきまえていただきたい、そう思います。
横光委員 いや、総理、言論の自由はあります。しかし、総理たる者、一言一言に責任を持たなきゃいけないということを言っているんです。
 今回の新たな事実が、むしろ政府にとって、国にとって交渉材料になる、プラスになる、それぐらいの大きな心をなぜ持てないのかと私は言っておるんです。そこを言っておるんです。外務省の、日本の非をあげつらうのが自虐的だというならば、外務省がやったことも非をあげつらっておるんですから、そういったことを言わないで、何でともに協力し合って対応をしようじゃないかということにならないのか、私はそのことを強く……。
 いずれにしましても、この問題、私はビデオのおかげで大変大きな教訓を残したと思うんですね。そして、災いですよ、これは。この災いを何とかしてプラスに持っていかなければならない。
 そういった意味からも、これから、政治難民あるいは亡命に関して、北朝鮮の人たちの難民対策だけでもいい、日本と中国とそして韓国も交えて協議の場をつくるべきじゃないか、それを日本が提案するべきじゃないか。いわゆる中国も韓国も非常にこの難民問題には対応に苦慮しているんです。日本は幸いにも島国ですから、日本が一番これを提言できるんです。ここは後ろ向きにならないで前向きになって、この問題を三国で協議する場をつくるべきじゃないか。
 とりわけ中国に対しては、領事館や大使館やこういった公館の警備のあり方、あるいはウィーン条約に対する認識、これをもう一回ちゃんとお互いに意思確認をする必要があるんじゃないか、こういうことを私は求めますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 難民の問題あるいは難民受け入れの問題については、それぞれの国の事情があります。日本は日本として、難民の問題についてどう対応するかというのは、いろいろな御意見を聞いて検討していきたいと思っております。
横光委員 確かにそのとおりだと思います、大きな問題ですから。ですから、やはりこの北朝鮮の問題だけに限ってでも、三国で協調して話し合う場を、私はこれを機会に日本が提言すべきだ、このように思っております。
 もう一つ、これは要求ですが、日本領事館にやってきた人が亡命やあるいは難民認定を希望するのかどうか、その意思を確認することを当然の業務とするようにすべきじゃないか。いわゆる政府の基本的な政策を転換すべきではないかということを強く要望しておきます。
 次に、支援委員会の問題をちょっとお尋ねいたします。
 今度の、鈴木宗男議員の側近中の側近であったと言われている佐藤優容疑者が逮捕されたわけですが、この不正支出、先ほどから言われていますように、この決裁書、これは、黒いところは、課長補佐未満は名前を明かせないということで塗りつぶしておりますが、事務次官から外務審議官から欧亜局長から条約局長から、すべての外務省の幹部がサインをしているんですね。
 これは、両容疑者の個人的な犯罪というよりも、これを見ただけでも、組織として決定したものであり、私は、外務省の組織ぐるみの犯罪である、そのぐらいに外務大臣は認識しなきゃいけないときだと思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 この外務省の決裁でございますけれども、これは、その支出につきまして、決裁書に載っている事項に基づきまして支出を行うことが協定上可能かどうかということについての外務省としての判断を当時行ったものでございます。
 それで、この件につきまして、起案者等が個人的に使う、それで個人的な利得を得るといったような事情があるということで、外務省としての判断を行った時点では想定をしていなかった疑いが指摘されているわけでございまして、いずれにいたしましても、この支出が協定違反になるか否かは、捜査の進展、これを見きわめた上で判断をすることとなると考えます。
横光委員 私は、この問題は、大臣が国民の側を向くのか、それとも外務省をかばうのか、そこが問われていると思うんですよ。
 これまで、松尾あるいは浅川、こういった人たちもさまざまな事件を起こしましたよ。これも個人的な犯罪に押しくるめようとした。しかし、結果的には外務省全体でプール金をためていたんでしょう。そういったことが明るみになった。
 今回も、佐藤とか前島をかばう気はありませんが、この人たちが決裁するのに、ここまで、事務次官がサインをするほどのことをやったということは、まさに外務省挙げてこの決裁を決めたわけじゃないですか。そういうことを私は、国民のこれは税金なんですから、しかも目的外に流用されたということで今度事件になっているわけですから、もっと外務大臣は重くこの問題を受けとめていただきたい。
 次に、佐藤容疑者、これはキャリア級の主任分析官に就任しておりますが、普通ではこれは考えられない人事だと思うんですね。鈴木議員や東郷局長の力で佐藤容疑者のために用意されたポストであったと言われておりますこの主任分析官、これは今までそんな席なかったんですから、そういうふうに言われておりますが、それは間違いございませんか。
川口国務大臣 主任分析官のポストにつきましては、これは平成十年の七月に設けたわけでして、この理由は、国際情報局における特定の地域、分野の情報分析機能の強化であったというふうに聞いております。
横光委員 この新たなポストは、先ほど言いましたように、鈴木議員や東郷局長が佐藤容疑者の力を発揮するために設けたポストだと言われております。
 また、先ほどもございましたが、支援委員会が金を出したテルアビブの国際会議、この前年には、同じような要請が支援委員会にあったにもかかわらず、当時の条約担当課長ははっきりと断っておるんです。そんな立派な人もおるんです。その後に、東郷さんや鈴木さんが激しく叱責して、次の年には、同じような形でありながら、難なく、支障なく支援委員会から金が出ている、三千万も。しかも、事務次官初め幹部級が捺印をしてしまっている。
 この頑張った当時の条約担当課長は、その後、結局、これも鈴木議員に叱責された結果、人事で、今韓国の在外公館に移転されたそうですが。あるいは、今、支援委員会の事務局長も元コンゴ大使だそうです、外務省に聞きましたら。現在の支援委員会の事務局長はコンゴ大使なんです。ムルアカ、鈴木、全部つながっているじゃないですか。こういうふうに、鈴木議員の、外務省に対する人事にまで物すごく大きな力を発揮している、いわゆる外務省支配の構図がしっかりと描かれているわけです。これは、政策がゆがめられ、人事に力を発揮し、そしてまた予算の執行にまで影響を行った鈴木議員の、非常にこの問題は関係がある。
 偽証罪の決議案は拒否される、議員辞職勧告決議案は上程されない、証人再喚問もオーケーしない。しかし、事ここに至っては、鈴木宗男議員の本委員会での証人再喚問を強く委員長に要望いたしまして、質問を終わります。
津島委員長 これにて横光君の質疑は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十分散会


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