衆議院

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第2号 平成14年10月24日(木曜日)

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平成十四年十月二十四日(木曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      石川 要三君    衛藤征士郎君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      岡下 信子君    奥野 誠亮君
      金子 恭之君    亀井 善之君
      近藤 基彦君    阪上 善秀君
      谷田 武彦君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      原田昇左右君    松岡 利勝君
      松宮  勲君    三塚  博君
      持永 和見君    山口 泰明君
      五十嵐文彦君    岩國 哲人君
      海江田万里君    河村たかし君
      桑原  豊君    筒井 信隆君
      中沢 健次君    野田 佳彦君
      細野 豪志君    松野 頼久君
      松本 剛明君    山村  健君
      横路 孝弘君    青山 二三君
      赤松 正雄君    北側 一雄君
      達増 拓也君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    佐々木憲昭君
      山口 富男君    中西 績介君
      山内 惠子君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十四日
 辞任         補欠選任
  亀井 善之君     金子 恭之君
  栗原 博久君     阪上 善秀君
  高鳥  修君     岡下 信子君
  岡田 克也君     山村  健君
  中沢 健次君     桑原  豊君
  野田 佳彦君     細野 豪志君
  松野 頼久君     海江田万里君
  赤松 正雄君     北側 一雄君
  中西 績介君     山内 惠子君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     谷田 武彦君
  金子 恭之君     亀井 善之君
  阪上 善秀君     松宮  勲君
  海江田万里君     松野 頼久君
  桑原  豊君     中沢 健次君
  細野 豪志君     野田 佳彦君
  山村  健君     岡田 克也君
  北側 一雄君     赤松 正雄君
  山内 惠子君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  谷田 武彦君     高鳥  修君
  松宮  勲君     近藤 基彦君
同日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     栗原 博久君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として警察庁生活安全局長瀬川勝久君、金融庁監督局長五味廣文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 それでは、基本的質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。自見庄三郎君。
自見委員 おはようございます。自由民主党の自見庄三郎でございます。
 きょうは、小泉内閣総理大臣初め各閣僚に対しまして質疑を行わせていただきたいと思います。
 まず最初に、小泉純一郎総理にお尋ねをしたいわけでございますが、北朝鮮の外交問題でございますが、北朝鮮の問題について、小泉総理は本当に北朝鮮との国交交渉の再開に踏み切るということでございます。
 まさに、我が国周辺の凍りついた状況と申しますか、長い間米ソの冷戦構造があったわけでございますが、我が国が、自由主義諸国の一環として、率直に言えば、ソ連共産党あるいは中国共産党等々に挟まれて、氷のような状況があったわけでございます。大変不幸なことでございますが、朝鮮戦争というような、昭和二十五年、私は五つでございましたが、北九州生まれでございますが、上空を本当にたくさんの米軍の爆撃機が飛んでいったことを、小学校入学以前でございましたが、私はよく記憶にございます。
 そういった、ある意味の凍りついた日本国周辺の状況があったわけでございますが、小泉純一郎総理は、やはり本当に政治家として使命感を持って、ある意味の危機を顧みず、勇敢に北朝鮮に行かれたということでございます。私は、政治家の末席の一人としてそのことを高く評価するわけでございますが、今回、そういった意味で、国交再開を確認した平壌宣言を、今後の両国の交渉の道を開いたものとして高く評価をするものであります。
 しかしながら、総理御存じのように、拉致問題に関しまして、余りにも無残な結果もあったというふうに私は推測いたしておりますが、日本人として、北朝鮮のこういったことは本当に許せない、こう思うわけでございます。
 また、特に今、拉致された方、生存者の五人の方々が一時帰国をいたしまして、故郷の御家族、親類との再会、あるいは友人たちとの友情の復活を楽しんでいる姿を私もテレビで見るわけでございますが、心温まるといいますか、本当によかったなと率直な気がするわけでございます。
 彼らのお子さんともども日本に永住帰国し、いまだにまだ不明の方もおられるわけでございますから、そういった方に関しまして、消息に関して科学的、客観的にきちっと確認され、やはり納得をしていただく、そして国民もああそういったことなのかと納得していただくまでは、私は、拉致問題は終わらない、こういうふうに思うわけでございます。
 また、五人の方々の帰国実現が、家族の会の皆様の粘り強い、かつ強い立派な態度だと私は思っていますが、実現したことを考えると、五人の方々の北への帰国について、また日本への永住帰国についても、御家族の皆様方のお気持ち、あるいはそういったことを十分そんたくして交渉の場に着くことが私は必要だ、こう思うわけでございます。
 また、御存じのように、先般でございますが、北朝鮮の核開発の事実が明らかになったわけでございます。これは日本の安全と平和にとっては看過できないことだ、こう思うわけでございます。小泉総理は、核開発断念の保証がなければ日朝関係の正常化はあり得ないという強い態度で交渉に臨んでいただきたい、私はこう思うわけでございますが、拉致問題あるいは北朝鮮の核開発の問題について、最初でございますので、総理に一言御所見をお伺いしたいと思っております。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮との国交正常化交渉、今月二十九日から始まる予定でございますが、この正常化交渉につきましては、拉致問題、そして安全保障上の問題、過去にわたる問題、現在の問題、そして将来の問題、総合的に包括的に交渉することが必要だと思っております。
 わけても拉致の問題につきましては、今までなかなかその存在すら認めていなかった北朝鮮が初めて認めて、二度とこのようなことは起こさないとおわびまで表明したということから、現在五人の生存者の方々が帰国されている。これからも御家族等の意向を尊重しながら、この拉致の問題については国交正常化交渉の場でも取り上げていかなきゃならない問題だ。
 同時に、核の問題等は、安全保障上の問題、これは日本だけの問題ではございません。韓国にとりましても、またアメリカにとりましても、安全保障上の問題、大きな懸念を有しております。そういうことから、日本としても、日朝平壌宣言の原則と精神にのっとって、あの宣言に盛り込まれた約束が誠実に実施されるように交渉の場において強く働きかけていきたいと思っております。
自見委員 歴史の扉をあけるということは本当に私は勇気が要ることであるし、また将来のことについては見通せないところがあると思うわけでございますが、やはり政治家、総理はまさに日本国の指導者でございますから、国民のまさに生命財産、そして国益を考え、しっかり全般のことについて、国民の大変期待があるわけでございますから、そういったことを裏切らず、まさに歴史の扉をあけられたわけでございますから、しっかりやっていただきたい、我々国会議員としてもしっかり応援をさせていただきたい、こういう気持ちであるわけでございます。
 このことにつきましては、後から杉浦正健我が党の理事が、専門家でございますから、しっかりいろいろな問題について質問をさせていただきたい、こう思うわけでございます。
 さて、私は、何と申しましても、現下の最大の急務は、いわゆるデフレ不況からの克服、あるいは総合経済対策、どうしてこのデフレ不況を克服するのか、そういったことだ、こう思うわけでございますから、経済問題について、総理初め関係閣僚に質問をさせていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
 まず、いろいろ話があるわけでございますが、今回のデフレ不況にはいろいろな側面があるわけでございますが、一つが、昨今言われておりますように、不良債権という重い足かせを解消し、財政、税制、金融あるいは産業再生等の産業政策等あらゆる面から、具体的かつ緊急的な経済対策をスピーディーに実施していくことが必要だ、私はこう思うわけでございます。このことについてはみんな異論がないところだと思うわけでございますが、そういったことを通じて、活性化に向けて刺激を与えて、国民に元気を出していただく、そして未来に希望を持っていただく、そして力を奮い起こさせるということが、機運が私は大変大事だ、こう思うわけでございます。
 そういった中で、総理、今度、ことし、日本始まって初めてのことでございますが、ノーベル賞をお二人の方が受賞されたわけでございます。ニュートリノの研究で小柴昌俊さんがノーベル物理学賞、これはスーパーカミオカンデといいまして、ニュートリノの研究でもらわれたわけでございまして、それから、たんぱく質の分析法の開発で田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞されたわけでございます。この方は企業の一サラリーマンでございまして、我々もずっと、後でテレビを見ておりましたけれども、本当に親近感を感じて、いや、こんな人がノーベル賞をもらえるのかな、すばらしいことだなと。
 こういった意味で、全国たくさんのサラリーマンの方がおられますが、また、特に会社で働いておられる科学者、研究者も非常にたくさんおられるわけでございますが、彼らは重要な部分を支えておられますよね。そういった方にしっかり夢と希望を与えた、私はこう思うわけでございますが、ダブル受賞は日本国始まって以来のことでございますから、大変元気がついた、こう思うわけでございます。
 また、ある経済学者によりますと、長い不況が続いておりますけれども、実は、着実に今後一兆円以上市場拡大が期待される元気のある産業分野がある、こう言っております。
 五つ挙げておりまして、一つが、総理、介護ビジネスだそうです。これは一年間に非常に、この前、三年前まで三兆五千億でしたが、今はもう五兆九千億だったと思いますが、もうどんどん高齢化社会、介護保険制度というのをアジアでは最初につくった国は日本国でございます。高齢者ニーズがありますから、介護ビジネスというのは非常に、実は民間参入も最初から制度上認めましたので、トータルで一兆円以上毎年拡大が期待されている分野だ、こういうことをこの経済学者は言っております。
 また、二番目が環境ビジネス、エコビジネスでございまして、私もちょっと党の環境基本問題調査会長をやらせていただいておりますが、大変年々歳々実は環境ビジネスは大きくなっておりまして、これは地球環境の問題もありますし、また循環型社会をつくらなきゃいけない。廃棄物処理だ、あるいは循環型社会をつくらなきゃいけない、そして同時に地球環境の問題でございまして、今これは各国でも技術革新あるいは市場性ということが非常に、経済と環境をどういうふうに両立させるか、まさに人類の二十一世紀の大変大事な課題だと私は思っておりますが、これが年々一兆円以上ずっと今膨張いたしております。
 それから、中食産業というのが、総理御存じでございますか、中食産業。私も知りませんで、実はこれはお弁当、お総菜の製造販売でございまして、デパ地下というのがある。この前私も行ってみましたら、デパートの地下に五時過ぎに行きますと、すさまじい何かお総菜がありまして、本当にたくさんの方がおられるんですよ。まさに今女性の社会進出、そういった非常に生活リズムが変わってきまして、このいわゆるデパ地下に代表されるような中食産業、これが年間一兆円以上ふえるだろう、こう言われているんですね。
 それから、四番、五番がありまして、情報ですね。情報のサービス、ソフトでございます。それから情報通信機器、これは不況、ITバブルがはじけたといえども、機器の部分がやはり一兆円以上年々大きくなる。
 こういった言うなれば元気のいい分野もあるわけでございまして、そういったことも、やはり元気のいい部分、伸びる部分はしっかり伸ばすことも必要だ、私はこう思うわけでございます。
 しかしながら、今最初に申し上げましたように、大変今日本、本当に未曾有のデフレ不況でございますし、これをいかに克服するかということは、一番国家にとって、まさに経済のことは我々の身近な問題でございますから、まさに生活の問題でございますから、そういった意味で、まず小泉内閣総理大臣に、こういった我が国の経済の現状についての認識と、今後の経済運営全般の基本的なことについてどうお考えかということをお聞きしたいと思っております。
小泉内閣総理大臣 経済の停滞をいかに脱却するか、それぞれ各業界、今、自見議員が指摘されたように、不況の中でも成長分野を指摘され、また、頑張っている分野がこういうものだと具体的に指摘されましたけれども、今言った分野のみならず、日本の基本的な潜在力というのは十分強いものがあると私も思っております。
 現に、ノーベル賞を受賞されました小柴さんにしても田中さんにしても、日本が一番弱いと言われていた基礎科学分野において、だめだだめだと言われながら、その時期の業績が評価されてノーベル賞を受賞されているわけであります。私自身、じかに小柴さん、田中さんのお話を伺いまして、大変明るい、おもしろい人柄をあわせ持つ研究者として、非常に今まで意欲的に取り組んでこられた。敬意を表しますとともに、両氏とも、自分たちのような研究者は日本にたくさんいるんだ、埋もれているだけなんだ、もっと日本は自信を持たなきゃいかぬと、逆に私は励まされるぐらい、日本の研究技術に対して大きな希望を抱いておられました。
 私は、そういう面から、暗い面ばかり見るのではなく、やはり明るい面を見るのも必要ではないか。現に、過去も、円高で円高で、大変だ大変だという声がこの国会の場でも盛んに取り上げられました。一時期は、二百円を円が切ったらば日本経済はもう崩壊するとか、百五十円を切ったらもう輸出産業は壊滅するというような議論が盛んに行われておりました。今、百二十数円台で、輸出産業、大打撃を受けるだろうと思われた輸出産業の中でも、世界のトップ企業として活躍している企業はたくさんある。
 そういう部分から見ると、やはり暗い面と明るい面、両面を見ながら、自信と希望を持って進んでいくのが大事だ。現に、これから不良債権処理の問題あるいは景気の問題、経済再生の問題、いろいろ総合的に取り組まなきゃならない部分がたくさんあります。
 いずれにしても、賛否両論あります。しかし、当初の予定どおり、構造改革を進めて、持続的な成長可能な基盤に持っていくのが政治の役割だと思っております。
自見委員 今の小泉総理のまさに決意の中にも、総合的な景気対策と申しますか、経済対策が必要だという話があったと思います。
 不良債権処理の加速化という問題が今大きな問題にはなっておりますが、デフレ克服、そのためには税制改革をどうするのか、あるいは、そうなった場合、非常に大事な雇用のセーフティーネット、これは雇用あるいは中小企業の金融対策をどうするのか、産業再生あるいは産業政策をどうするのか、大変総合的な対策が必要であるということを総理も言われたわけでございます。
 また、その中でも、この国家、振り返ってみますと、いつも、きついこと、苦しいこと、内外ともに政治が多事多難なことの方がむしろ多いわけでございますが、そういった中でもきちっとノーベル賞をもらえた方、あるいは、そんな中でも元気のいい分野があるという話をしたわけでございます。
 そういったことも見詰めつつ、不況の克服に努めてまいる、総合的にやるという今の決意の表明であった、こう思うわけでございます。
 それでは、ここで、いろいろ総合的にやることが大事でございまして、やはりこういう時期でございますから国民は不安を持たれます、その不安をやはり取り除くということも政治の極めて大事な役割だ、こう私は思うわけでございますが、セーフティーネットにつきまして、ひとつ経済産業大臣と厚生労働大臣に、お二人にお聞きをしたいわけでございます。
 もう、現在失業率は五・四%の横ばい状態を続けておりますが、場合によっては、不良債権の処理の加速によっては、これは失業者がふえることも残念ながら予想されるわけでございます。
 こういった失業者、あるいはこういった中小企業経営をめぐる、特に金融環境というのは大変厳しいわけでございまして、一九九七年でございますか、山一、拓銀の破綻の後、御存じのように、信用保証協会の特別保証枠を、当時は無謀ではないかと言われたのでございますが、思い切って、政府・自由民主党も、私もたまたま責任者でございましたが、やらせていただいて、たしか二十八兆円ぐらい信用保証を供与したと思いますが、あれで中小企業の社長さん、私の選挙区で、地元でも、本当に自見さん、親でも金を貸してくれないときに、あれでうちの企業は生き延びたよという方をたくさん、私、地元でも、北九州で聞いております。
 そういった中で、セーフティーネットということは私は大変大事だ、こう思うわけでございますが、それぞれ両大臣に関しまして、雇用あるいは中小企業のセーフティーネットについて、きちっと、国民が本当に心配しないでいいんだということを、きちっとそのメッセージを送っていただきたいと思いますが、ぜひお願いをいたします。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 現下の厳しい金融経済情勢の中で、やる気とそして能力のある中小企業、これに対してしっかりとしたセーフティーネット網を構築するということは、御指摘のとおり、非常に大切なことであります。
 これまでも私どもは、条件の緩和とかそういうことで、セーフティーネット保証・貸し付け、これは十二万件、三・三兆円の規模に当たる、そういった形で対応をしてまいったところであります。しかし、またこれからさらに厳しい情勢が想定されますので、私どもとしては、しっかりとしたセーフティーネットを張らなきゃいかぬと思っています。
 そのセーフティーネットを張る前にもう一つ、やはり今御指摘の、例えば特別保証制度、ここで二十八兆九千億を保証させていただきました。その方々が今返済に一生懸命入っておられるわけですが、こういう状況の中で非常に厳しい局面に立っておりますので、私どもは、返済条件の緩和にも応じさせていただいておりまして、これも既に十九万に上る、そういう条件緩和にも応じさせていただいています。
 これから我々としては、今申し上げたように、さらに、この金融情勢が厳しい、金融サイドの不良債権の処理が加速化されますと非常に厳しい状況になってきますので、この臨時国会におきまして、私どもは、中小企業信用保険法の改正、これをお願いすることにしております。
 その中では、店舗統合、あるいは金融機関の不良債権処理、それに伴う店舗統合等で苦境に立たされる、そういう中小企業者に対しては、さらに私どもとしてはセーフティーネットの枠を広げて、そして柔軟に対応させていただきたいと思っておりますし、また、万やむを得ぬ状況でRCC送りとなったようなところに対しても、再生の可能性のあるところに対しては、私どもはセーフティーネット保証の対象にこの法律でさせていただきたい、こういうふうに思っております。
 さらに、再建に取り組む中小企業に対しては、これまでも若干実績が上がってきておりますけれども、DIP保証を行うこと等で対応させていただきたいと思っております。
 また、このデフレ経済下の中で、十分な担保力を中小企業というのは有してないものでありますから、そういう担保力のない中小企業がさらに増加をする傾向にございますので、商工中金の貸し渋り対応無担保保証制度がございますけれども、これも拡充をしていきたい、こういうふうに思っております。
 また、民事再生に至ったりRCCに債権譲渡された中小企業者が再挑戦をすることを後押しするために、商工中金や中小公庫の融資制度をさらに拡充していこう、こういったことできめ細かく対応していきたい、このように思っています。
坂口国務大臣 現在の状況を考えますと、現在も非常に厳しい雇用情勢にあるわけでございますから、これに加えまして不良債権処理が行われるということになりますと、不良債権のその額とスピードによりまして、非常に大きな失業者が出る可能性がございます。そのことを私たちも見定めて、そして対策を立てなければならないというふうに思っているところでございます。
 一つは、それぞれの地域によりまして、やはり雇用状況というのは非常に違いますので、地域に見合った雇用対策が立てられるような対策を中心にやっていかなければいけないというふうに思っております。
 それからもう一つ、ミスマッチがございますが、このミスマッチの解消につきましては、今までのハローワークの対応にプラスいたしまして、できるだけキャリアカウンセラーを配置いたしまして、そして、きめ細かくその皆さん方と御相談を申し上げていくということをやらないといけないというふうに思っております。
 それらのことを柱にいたしまして、そして現在のこの雇用情勢に対応できるよう、さらに、それが増加しましたときの対応につきまして、一生懸命にやっていきたいと考えているところでございます。
自見委員 それでは、今話題になりました不良債権処理の加速について、竹中大臣を中心に話を聞かせていただきたいと思っています。
 一点は、総理も言っておられますように、日本経済再生、デフレ不況の克服のために、半年間で改革を加速し、十六年度には不良債権問題も終局させると並々ならぬ決意を表明されておるわけでございますが、竹中大臣に、まずデフレ不況の脱却について、今後どのような経路を描いていくことが可能と考えられているのか、また、新聞紙上によりますと、二十二日に予定されていた不良債権処理の中間取りまとめの公表が延期されたというような記事もございましたが、竹中大臣の不良債権処理の加速に関する基本的な考え方、概要についてお知らせをしていただきたいと思います。
竹中国務大臣 不良債権処理、この問題を十六年度には終結させるようにと、総理から大変厳しい命を受けまして金融担当の仕事をさせていただいておりますが、基本的な考え方は、これはかねてより経済財政諮問会議で議論してきましたように、やはり四本柱のしっかりとした改革を同時並行に進めるということであると思っております。
 これは、歳出の改革、歳入の改革、歳入つまり税金でありますが、金融システムの改革、それと規制改革。その中で金融システムの改革というのは、なかなかマネーが実際に世の中に回らない、金融仲介機能が低下しているということを踏まえて、やはりこの不良債権処理を加速させるということが大変重要であるというふうに考えるわけでございます。
 その基本的な考え方、これはしかしなかなか厄介な問題でありまして、これまで金融庁の中のプロジェクトチームでいろいろな議論をしていただいて、論点の整理を踏まえて中間報告をするということを考えておりました。
 しかしながら、その四本柱の改革が同時に重要であるということ、さらに、自見委員御指摘になったようなセーフティーネットの問題を、やはり同時解決しなければいけない問題でありますから、一つだけ、むしろその金融の中間的な整理だけ先に出ても、かえってマーケットに混乱を与えてはいけないのではないかという多方面からの議論もいただきまして、当初から、この月末までには不良債権処理の基本的な考え方をまとめるというふうにしていたものですから、月末にまとめて、この不良債権処理の考え方と、それと今御指摘になったセーフティーネットの問題等々を踏まえて総合的にお示ししたいというふうに考えたところでございます。今、それに向けまして鋭意努力をしているというふうに御理解賜りたいと思います。
自見委員 竹中大臣に二つほどお聞きしたいんですが、まず一点は、十月十六日、二十三日の週刊誌ニューズウイーク、私も読みました。あの中に、竹中大臣は、大き過ぎてつぶせない銀行はないというふうに述べたように報道されております。大きな銀行が破綻することの経済社会への影響ははかり知れないわけでございまして、不良債権処理に伴う企業の処理の場合も、今や、清算型でなくて再建型である、そういうふうに私は思っておりますし、国民が不安を安易に抱くメッセージじゃなくて、むしろ、銀行も企業もしっかり立て直すんだという強いメッセージを、国民にも業界にもきちっとわかってくれることが必要だ、私はこう思いますが、このニューズウイークの発言の真意について、簡単にお答えをいただければと思っています。
竹中国務大臣 ニューズウイークで、大き過ぎてつぶせない銀行はないというふうに私が発言したと報じられておりまして、それに基づいて、いわゆる竹中ショックというような言葉が使われているということも承知をしております。
 まず、事実関係としてぜひ御認識を賜りたいのでありますが、そのインタビューはもともと英語のインタビュー、英語で応じたインタビューでございまして、その中では、一般論として、企業経営とその企業の規模というのがどういうものであるかということを議論させていただいたことがございます。しかしながら、それが日本語で報じられる際に、翻訳のいわゆる意訳が行われておりまして、かつ大変重要なことは、今自見委員御指摘のとおり、タイトルに、ヘッドラインに括弧つきで「「大きすぎてつぶせない銀行はない」と言う竹中」と書いているわけですが、こんなことは言っておりません。
 これは明らかに編集権で、少し不適切な表示であるということで、先般、弁護士を通しまして、この出版社に対しまして正式に抗議しますとともに、同時に訂正を求めているという段階でございます。したがって、大き過ぎてつぶせない銀行はないというような発言は一切しておりませんので、この点はぜひ御認識を賜りたいと思います。
 しかし、理由はともあれ、結果的にそういうことが報じられ、こういう事態になっているということに関しては、これは私の不徳のいたすところであるというふうに思っておりますので、肝に銘じて業務に当たりたいと思っております。
 さらに、自見委員が御指摘されましたように、不良債権の処理というのは、結局は銀行を強くするために、日本の銀行システムを強化するために行うものであり、結果的には日本の企業を強くして、弱っている企業を再建するために、産業を再生するために行うものであるというのが基本でございますので、まさにその方向に沿って今不良債権処理の加速策を、月末に向けて鋭意詰めているところでございます。ぜひこの点も申し添えたいと思います。
自見委員 国務大臣の発言は極めて大事なもの、重たいものでございまして、誤解を招くような発言というのは、やはりそこはきちっと、責任の重たさにかんがみて気をつけていただきたい、こう思います。
 一点、ちょっと具体的なことでございますが、これは新聞紙上で出ておりますが、銀行の体力が低下したときに公的資金の注入がございますが、この公的資金の注入をもしするとした場合、これはあくまで銀行の体力増強が目的であって、私は、国有化が目的でない、こう思うわけでございますね。したがって、優先株の普通株への転換は行わず、銀行は国有化すべきでないというふうに私は考えております。
 官と民とのそれぞれ役割分担がありまして、民の最も民的な部分というのがまさに民間銀行でございまして、ここを国有化するというのは私は賛成できませんし、そのためには、まさに優先株の普通株への転換を行わないということは自由主義社会の、本当にいろいろ危機の状況はございますが、それがやはり最低のモラルだ、私はこう思うわけでございますね。資本主義というのは、やはりきちっと自分の創意、そしてお互いの信頼関係に基づいた歴史的な制度だ、私はこう思うわけでございますから、そのことを強く大臣に求めたい。
 それからもう一点、自己資本比率の減少をもたらします税効果会計ルールですね。これは今まで日本は五年間だという話だったと思いますが、アメリカが一年だと。調べてみますと、ヨーロッパもほとんど、五年のところが結構多いんですね。それはまさに、国際決済銀行、BISによって認められた国際的ルールでございますから、ここに来て急にルールを変える、そして、結果として銀行の自己資本比率が減少するというのは、こういった不況の中ですから、私は、むしろ逆さまではないか、こう思うわけでございます。私は、このルールの変更は行うべきでない、こう思うわけでございますが、この点について二点、ちょっと専門的なところでございますが、お尋ねをしたいと思っております。
竹中国務大臣 お尋ねの内容は、まさに不良債権処理の加速策として今月末にどういう内容を織り込むかということであろうかと思います。
 申し上げましたように、今、論点の整理をして、さまざまな方の御意見を聞きながら、最終的な調整をしているところでございますので、内容のそれこそ是非につきましては、むしろいろいろな誤解を与えることもありますので、この場でも詳細な私なりの答弁は控えさせていただくべきであると思いますが、基本的には、それぞれの問題について、今の問題、詰めれば詰めるほど、必ずメリットとデメリットが出てまいります。こうすれば必ず四方八方うまくおさまるというような道はなかなかなくて、その中で狭い選択をしなければいけないというふうな状況に追い込まれていると思っております。
 その意味では、さまざまな意見をお伺いしながら、今、最終報告に向けて鋭意議論をしておりますので、その中で最終的な結論を出させていただくつもりでございます。
自見委員 そろそろ私の持ち時間は終わりでございますが、最後に一点。
 財務大臣、やはり総合的な景気対策の中で税制改革は非常に大事だ、こう思いますが、私は、ノーベル賞受賞者の二人の話が出ましたが、研究開発減税、もう一つはやはり企業の情報化投資を促進するための投資減税、いわゆるIT減税、この二つについて、ぜひ財務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 今回の税制改革で、試験研究費に対します大幅な減税措置を講じたいと思っております。それは四重点部門でございまして、ITももちろん入っております。
 ITにつきましてお尋ねでございますので、ITにつきましては、今まで、周辺地域に対しては余り優遇しておらなかったのですが、いわゆるコンピューターの周辺地域に対しても大幅にやっていきたいと思っておりまして、それと同時にまた、今までのような設備投資をしていただいたら、試験研究費の減税と同時に、あわせて、その設備に対する特別償却の制度も導入したいと思うております。
自見委員 わかりました。どうもありがとうございました。
藤井委員長 この際、杉浦正健君から関連質疑の申し出があります。自見君の持ち時間の範囲内でこれを許します。杉浦正健君。
杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。
 激動する国際社会にございまして、外交問題も多々課題がございます。イラク問題、国連で今焦眉の急を告げております。また、関連して、泥沼化の様相をしているパレスチナ問題も心配であります。テロとの闘いはこれからでございます。二国間関係としては、日ロ関係をどう進めるかという大きな問題もございます。
 しかし、時間も限られておりますので、ここでは北朝鮮の問題に絞って、総理初め関係閣僚にお伺いしたいと存じます。
 小泉総理がピョンヤンに赴いて金正日と話をしようという御決断をなさったことは、私は大英断だったと思うわけでございます。トップの率直な会談で金正日総書記の明確な政治的意思を聞き出すことができたと思うわけであります。金正日氏は、今まで存在すら否定しておった拉致問題について、存在を認め、不十分でありますが、資料も提供し、そして驚くべきことに、国家の関与を認め、謝罪をしたわけであります。また、金正日氏は、いわゆる不審船、工作船問題について、軍の一部の関与を認めまして、調査をし、再発を防止するということも確約いたしました。
 また、国際社会の重大な関心事でございました核開発問題につきましては、朝鮮半島の核に関するすべての国際的合意、北朝鮮はNPT、不拡散条約に加盟しておりますが、あるいはIAEAとの協定もございます。南との間の朝鮮半島非核宣言もございますし、アメリカとの間の合意もあります。そういったすべての国際的合意を遵守するという約束もさせております。また、テポドンを飛ばしましたが、ミサイル発射については、無制限に、無期限に凍結するということも約束をいたしました。
 これらの問題を含みます我が国の主張をすべて盛り込みました平壌宣言が合意されまして、国交を回復する交渉がこの二十九日から開始されることになったわけであります。大きな成功だったと言えると思うわけでございます。戦後五十年余続きました両国間の不正常な関係が正常化に向けて進み出す新たな一ページを開いたわけでございます。また、東アジアの地域の安定的な平和構築へ向けての大きな一歩が踏み出されたわけであります。
 我が国の国民も大方高く評価しているところであります。国際社会の評価も極めて高いものがございます。同盟国のアメリカ、友好国の韓国初め中国、ロシア、アジア各国、ヨーロッパ、そしてアメリカ大陸、アフリカ大陸の各地から高い評価と賛辞が寄せられております。戦後、独立達成後の我が国の外交において、このように高い国際的評価を与えられた外交交渉はなかったのではないかと私は思うわけでございます。
 我が国民の最大関心事は、もとより拉致問題でございました。金正日氏が、北朝鮮が拉致問題について謝罪したということは、まことに驚きでした。存在はおろか、もちろん国家の関与も一貫して否定していたからでございます。
 そこで、総理にお伺いいたしますが、九月十七日の日朝首脳会談におきまして、もとより拉致問題の解明を目指されたわけでありますが、金正日総書記が北朝鮮による拉致の事実を認め、謝罪するに至った経過、どのような言葉で解決を迫られ、金正日書記がどのような言葉で謝罪したのか、詳しくお伺いしたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 もとより外交交渉ですから、公表すべきもの、しない方がいいもの、また差し控えるべきもの、いろいろあると思いますが、私は、事前交渉の段階から、拉致の問題についてはっきりしない限りは正常化交渉には応じられない、行方不明者というあいまいな形では交渉のテーブルにものることはできないということをはっきり伝えて、いろいろ事前の交渉を進めてまいりました。そういう経緯を経て、事務的な交渉においてはこの拉致の問題については今までの交渉の段階を出ない、トップ同士の会談なしには進展がないと判断したからこそ、私は九月十七日に、じかに、直接会談して国交正常化交渉の可能性があるかどうか見きわめるために赴いたわけであります。
 結果的に、今までの発言とは全く違う、拉致問題を認め、二度とこのようなことは起こさないというおわびの表明が金正日氏からありました。
 そして、日朝平壌宣言に盛り込まれたように、安全保障上の問題、過去の問題、現在の問題、将来の問題、日本の主張を十分認められたということから、私は、日朝平壌宣言に署名して、今月中に国交正常化交渉を再開するという決断をしたわけであります。その後、もう既に、拉致なんか存在していないと言って、一カ月そこそこで、その拉致された方々が今日本に帰国されている。
 今後、政府としては、拉致された被害者や御家族の意向をできるだけ尊重して、この問題については正常化交渉の場でも取り上げていきたい。
 同時に、安全保障上の問題は、事前に、九月十七日に訪問する前にブッシュ大統領とも会談し、核の疑惑等の問題、米朝合意の問題等も十分情報交換、意見交換をした上で会談に臨んだわけであります。もちろん、金大中大統領とも事前に報告をし、お話をしました。また、ロシア、中国両政府からも強い支持のもとに、これからも、安全保障上の問題につきましては日朝間だけの問題ではない、韓国が一番切実な問題でありますが、核の問題についてはアメリカが重大な懸念を抱いております。
 そういう点も踏まえまして、私は、日米韓、この関係諸国の緊密な連携のもとにこれから正常化交渉に当たらなきゃならないと思っております。
杉浦委員 今総理がお触れになりました新たに浮上しました核開発問題、金正日氏側がケリー次官補に対して開発していると認めたということでございますが、これは大きな問題だと思います。国際社会も重大な関心を持っておることであり、また、平壌宣言で約束しております、核問題に関するすべての国際的な合意を遵守するという彼らの意思表明にも反するものでございます。
 国交回復交渉の中でこの核問題が国際社会が納得する形で解決しない限り国交回復はすべきでないと私は思いますけれども、総理の御見解はいかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 核の問題あるいは大量破壊兵器の問題等安全保障上の問題をおろそかにして、拉致の問題が解決すれば日本と北朝鮮が国交を正常化して日本が経済協力に踏み出すのではないかということについては、これは、アメリカも安全保障上の問題が解決されない限り北の脅威はなくならないという考えでありますので、十分私も考慮に入れております。
 そして、あくまでもこの日朝平壌宣言は、国交正常化に署名したんじゃないんです。正常化交渉を再開する、その原則と精神を宣言に盛り込んだのであります。この宣言に盛り込まれた原則、精神、これが誠実に実施されることが日朝正常化の前提なんです。そこを誤解しないでいただきたい。
 ですから、正常化交渉が始まれば、その中で十分いろいろな御指摘を踏まえながら交渉していく。最終的にこの宣言に盛り込まれた約束が実施されるかどうか、これが今後の正常化に向けた両国の進展に大きな影響があるし、これを崩してはならないと思っております。
杉浦委員 北朝鮮から提供されました拉致された方々の安否に関する情報は、悲惨きわまるものでございました。総理もショックを受けたと申されています。私どもも胸ふさがる思いがしたわけでございます。五人の生存が確認されたことは不幸中の幸いでございますが、その他の、死亡されたと言われた方々が、まだ亡くなっておるとは思わない、生きているという前提で交渉してほしいとおっしゃっている気持ちも非常によくわかるわけであります。
 この際忘れてならないことは、この拉致事件というのは、我が国土において行われた、我が国法を犯した犯罪行為だということでございます。そしてそれが、北朝鮮という国家が関与して行った、国家による犯罪行為だということを決して忘れてはならないと思うわけでございます。真相解明と同時に捜査を徹底的に行う、そして国際法にのっとった犯人引き渡しあるいは捜査共助の要求をどんどんしていくべきだ、こう思っております。
 また、国家による犯罪でありますから、北朝鮮としても被害者の方々に対する民事賠償の責任を負っておることも明らかであります。その点も交渉に際しまして提起すべき問題だと思います。
 それらの新しいさまざまな課題を含めまして、二十九日から国交正常化交渉が開始されるわけでありますが、外務大臣にお伺いいたします。
 政府は、拉致問題の全面解決を最優先課題と位置づけ、これを国交正常化の前提とするというふうな態度をとっておられると承知をいたしておりますが、いかなる事態になれば拉致問題が全面解決したと考えられるのか。また、そのためにどのような取り組みをなさるのか。とりわけ、刑事事件としての拉致事件の解決には北朝鮮側の協力が欠かせませんが、国交のない北朝鮮に対しまして、捜査協力、共助とか、あるいは犯人の引き渡しを求めることは可能なのかどうか、お伺いしたいと思います。
川口国務大臣 杉浦委員がおっしゃいましたように、拉致の被害者の方々に関しての提供された情報というのは、本当にむごい、悲惨なものでありまして、日本人一同大変なショックを受けたということであったと思います。また、これは、杉浦委員がおっしゃいましたように北朝鮮による犯罪であるということも、そういうことであると思います。
 拉致問題については、これは事実関係の解明をきちんとやっていくということでございます。生存者そしてその御家族の方、生存者の御家族の方の帰国の実現等につきまして、関係者の方が納得される状態、状況で問題が解決をされるということが重要だと考えております。
 二十九日から、先ほど総理もおっしゃっていらっしゃいましたように、国交の正常化の交渉が再開をされるわけでございます。拉致の問題につきましては、この再開された国交正常化交渉の中で、最優先課題として取り上げていくということでございます。被害者の方々やその御家族の方々の意向を踏まえながら、政府として事実解明に全力を尽くしていくということでございますし、また、その拉致された被害者の方の御家族の帰国が早期に実現するように全力で取り組んでいきたいと思います。
 その上で、北朝鮮に対して具体的にどのような対応を求めていくかということにつきましては、これは、事実関係の調査の結果も踏まえつつ、国交正常化に向けた過程の中で総合的に検討をしていきたいと考えております。
 また、御質問の犯人の引き渡し請求、捜査の共助の要請等々につきましては、これは北朝鮮側がどのような反応を示すかということについては予断ができませんけれども、我が国が北朝鮮を承認していない、国家として承認をしていないということであったとしても、我が国が適当と判断をする場合には、このような請求や要請を行うことは可能でございますので、こうしたことについては、先ほど申しましたように、事実関係の調査を踏まえながら、正常化に向けた過程の中で総合的に検討していきたいと考えております。
杉浦委員 国家公安委員長に、刑事事件としての拉致事件に対する警察の取り組みについてお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 警察におきましては、北朝鮮による日本人拉致容疑事案の重大性にかんがみまして、今まで懸命に捜査に取り組んでまいりました。また、これからも、必要な捜査、最大限の努力を傾けまして行っていくものと考えております。
 そのような一連の捜査の結果としまして、現在、北朝鮮による日本人拉致容疑事案は現時点で十件十五名と判断しておりまして、このうち、原敕晁さん拉致の実行犯である辛光洙、それから有本恵子さん拉致の実行犯であるよど号犯人の魚本公博、旧姓安部公博でありますが、これにつきましては、既に逮捕状の発行を得て国際手配の手続を行っておりまして、そのほかのよど号グループメンバーとともに、外務省を通じて北朝鮮に対しまして身柄の引き渡しを要求しているところであります。
 警察においては、引き続き、そのほかの拉致の実行犯の特定に努めますとともに、北朝鮮に対する犯人の身柄の引き渡し要求やあるいは捜査の協力要請などにつきましては、外務省そのほか関係当局と十分連携して、事案の全面解明のため、最大限努力をしていくものと考えております。
 国家公安委員会委員長としても、この趣旨で警察を督励してまいるつもりでございます。
杉浦委員 これで終わりますが、交渉はこれからであります。交渉が外交史に輝く一ページとして後世に残るように、政府一丸となった、しかも、うそつき国家でありますから慎重の上にも慎重に対応されるよう望みまして、質問を終わります。
藤井委員長 これにて自見君、杉浦君の質疑は終了いたしました。
 次に、北側一雄君。
北側委員 公明党の北側一雄でございます。
 きょうも、私は、この日朝の国交正常化交渉にかかわる問題と、そして経済の問題につきまして御質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、日朝国交正常化交渉に関する質問をさせていただきたいと思います。
 今もるる同僚委員から御質問がございましたが、来週の二十九日から国交正常化交渉が再開されます。改めて政府の基本姿勢を確認させていただきたいと思うわけでございますが、拉致問題と核開発など安全保障問題、この二つが日朝国交正常化交渉の最優先課題だというふうに思います。すべての拉致問題の事実解明、すべてというのは、北朝鮮から死亡と発表されておられます八人の方も含め、また未確認の行方不明者も含めまして、すべての拉致問題の事実解明、そしてその原状回復。もう一つは、核開発中止と核査察の受け入れなどの安全保障問題の進展、この二つが国交交渉前進への大前提であるというふうに考えます。ぜひ政府として、毅然とした姿勢で交渉に臨んでいただきたいというふうに思っております。
 民主党や自由党の方は、先般の代表質問によりますと、交渉のテーブルそのものに着くべきではないというふうな御意見を持っているかのように聞こえるわけでございますけれども、それでは大切なこの拉致問題や安全保障問題等の解決に向けてどうするのか、私は極めて無責任な主張だと言わざるを得ないというふうに思っております。
 二十九日に再開されるこの交渉の中で、拉致問題、安全保障問題など、日朝間に横たわる重い課題の解決に向けて、毅然として、また粘り強く交渉に当たっていただきたいというふうに思います。改めて総理に、この正常化交渉における基本姿勢につきましてお聞きをいたします。
小泉内閣総理大臣 ただいま北側議員が御指摘されたように、これから解決しなきゃならない問題はたくさんあります。特に拉致の問題、安全保障上の問題、これがいまだに解決されていない。また、北朝鮮という国は信用できないから交渉再開は尚早である、ということは反対であるということなんですが、それで果たして今までの不透明な問題、疑惑に満ちた問題が解決できるのかというと、むしろもっとやみの中に入ってしまう。だからこそ交渉が必要だと私は思っております。
 そういう中で、拉致問題、安全保障の問題、これは日朝平壌宣言に盛り込まれた約束ですから、この約束をいかに実施させるかというのが今後の交渉の中で非常に重要な意味を持ってくるわけであります。しかし、これは対話と交渉でしか解決し得ないものと私は思っています。
 という点から考えて、交渉再開は時期尚早であるとかするなとかいう意見には全くくみするつもりはありません。
北側委員 昨日、この拉致被害者の家族連絡会の方々から、今一時帰国をされていらっしゃいます被害者五名の方の滞在を延期して北朝鮮に帰さず、これから始まる日朝交渉の中でその家族を日本に呼び寄せて、その上で永住帰国を実現すべき、こういう要望があったというふうに聞いております。
 御家族の御心情を考えれば当然のことだというふうに思うわけでございますが、この要望がぜひ実現できるように、政府としても努力を、できる限りの努力をしていただきたいというふうにお願いいたしますが、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 二十数年間御家族が、拉致された、どこにいるかわからない、生死も不明だという御家族の胸中を思いますと、現在、帰国された被害者の方々と対面し、今いろいろ話し合いする場も持たれ、くつろぎの場も持たれている、この状況を二度と変えたくない、さらには、そのほかの御家族、お子さんたちと一緒に過ごしたいという気持ちは、私は当然だと思っております。
 そういう点も踏まえまして、御家族、被害者の意向を十分踏まえて、その要望にこたえられるように、今後、北朝鮮側に強く働きかけていきたいと思います。
北側委員 さらに、来週から始まります正常化交渉の中で、私は、取り上げる問題の一つとして、日本人配偶者問題について一言申し上げたいというふうに思っております。
 昭和三十四年の十二月から開始されました在日朝鮮人等の帰還事業、この事業で北朝鮮に渡った人たち、特にその中でもいわゆる日本人配偶者たちの消息でございます。昭和三十四年以降、計百八十七回、九万三千人余りの人々が北朝鮮に帰還をしております。そのうち約一千八百人余りが日本人配偶者、その子供たちを含めますと約六千人の日本人が北朝鮮に渡っているわけでございます。この方々の多くは今でも日本国民でございます。
 平成九年以来、これまで三度、四十三名の人の里帰りが実現をしておりますが、これからの正常化交渉の中で、この方々の安否や消息等についてできるだけ明らかにするよう私は申し入れをすべきだというふうに考えておりますが、総理、いかがでございましょうか。
川口国務大臣 委員がおっしゃいましたように、北朝鮮への帰還事業で在日朝鮮人の方々とともに北朝鮮に行った日本人妻の方々は、妻といいますか、日本人の配偶者の方ですね、約一千八百人というのは委員がおっしゃったとおりの数字でございます。
 政府といたしまして、人道的な観点から、これらの方々の安否については重大な関心を持っているわけでございます。従来から、日本赤十字社を通じまして北朝鮮に安否の調査を依頼する、また、日朝国交正常化交渉の場におきまして、これらの方々の消息についての確認をいたしまして、また、御家族との再会あるいは故郷訪問についても北朝鮮側に求めてきたわけでございます。
 北朝鮮においての人権問題等についても、政府として大きな関心を有して、及び懸念を有しているわけでございますけれども、今度の再開をした国交正常化交渉の中で、これらの日本人の配偶者の方々に関しましては、きちんとこれについて議論をし、相手方に消息の確認を求め、必要な交渉をしていきたいと考えております。
北側委員 最後にもう一問お聞きをしたいと思うのですが、今回のこの拉致問題ということの経過を通じまして、私は、やはり国民の生命身体の保護、これは国の、国家の最低限の目的、役割だというふうに思うわけでございますけれども、結果として、四半世紀もの長い間、被害者の方々を私は放置してきたと言わざるを得ないと思うのです。
 私どもこの国会に所属する各議員はもちろんです。各政党、また関係する政府の皆さんを初め、およそ政治にかかわる者はこの問題では本当に私はみずからを厳しく総括しなきゃいけない、厳しく戒めなきゃいけないというふうに思うわけでございますが、総理、これから始まる国交正常化交渉の中で、拉致問題の事実解明等々、安全保障問題等々、こうしたことに全力を尽くすのはもちろんでございますけれども、この拉致被害者の方々に対する日本国政府の責任というものをどのように認識されておられるのか、お聞きをしたいというふうに思っております。
小泉内閣総理大臣 これは、五十数年間にわたりまして北朝鮮との間に国交がなかった、正式な交渉の場も持てなかったということから、どのような状況があったとしても、話し合いの場さえ、正式な政府機関同士のルートがなかったわけですね。しかも、交渉には相手があるわけであります。相手がだめだとか日本の主張に対してそんなことはないとか言う限り、どうやって話し合っていいかわからないからこそ、過去、この五十数年間にわたって各政党の方々は必死に、何とかこのパイプがないか、正常化の道はないかといって努力をされてきた面もあると思います。しかし、相手側がそんなことはない、そうではないと言ってしまうことから、暗礁に何度も乗り上げてきた。
 そういう努力の一方で、いろいろ、今から考えれば、何でこの拉致の問題がわからなかったのか、安全の問題においても、もっと十分な対応ができなかったかという御指摘に対しましては、我々は反省すべき点もあったと思いますが、今後、そのような点も踏まえまして、今言ったような問題はこれからの正常化交渉の場で、ようやく今まで認めなかったものを北朝鮮も認め、おわびし、二度とこのような非道なことはしないと言明されているということからも、私は、今までの問題も含めて、解決の糸口をまずは見出すことができたと。
 しかし、まだ第一歩にすぎません。問題はたくさんあるわけでありまして、この問題に対して、容易に解決するとは思えません。時間もかかるでしょう。一歩一歩、粘り強く日本の主張を展開し、そして、北朝鮮側に対しましても、国際社会の責任ある一員になるということが、北朝鮮にとってもプラスだし、日朝間の関係にとってもプラスになるし、ひいては世界の平和と安全に資するものである。何よりも、今まで敵対関係にあった日朝間を今回の交渉の場を通じて協調関係にすることによって、今御指摘されたような拉致の問題とか安全保障上の問題の懸念がなくなるわけでありますので、でき得れば、協調関係になるような働きかけをお互い努力していかなきゃならない。そのために、粘り強く、今後、交渉の場を通じて懸命の努力をしていきたいと思います。
北側委員 毅然と粘り強く、私は、相当ハードな交渉になると思いますが、やっていただきたいというふうに思います。
 一点だけ提案をさせていただきますが、これからの日朝交渉は、私は、やはりしかるべき政治家が中心にいて直接交渉に当たるというふうにしないといけないと思っております。ぜひそのことを念頭に置いて今後取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 それでは、経済問題に入らせていただきたいと思いますが、まず、不良債権問題に対する認識、また問題の所在についてお聞きをさせていただきたいと思います。
 不良債権問題については、これは今始まった話ではございません。これまで何度も不良債権処理につきましてはさまざまな対策を打ち出してまいりました。近いところでいいましたら、昨年四月の緊急経済対策で、基本的な方針、スケジュールを策定いたしました。その路線に従いまして、その後も累次にわたる施策を打ち出してまいりました。
 例えば、去年の四月でございますけれども、主要行の破綻懸念先以下の債権については、既存分は二年以内、新規発生分は三年以内にオフバランス化するんだとか、また、去年の十月の改革先行プログラムにおきましては、主要行に対する特別検査を実施する。また、RCCによる不良債権買い取りの方法を弾力化して、時価による買い取りをやろう。また、三年後には不良債権問題を正常化しよう。ことしの四月の対策では、さらに不良債権処理のスケジュールにつきまして、新規に発生する分について、一年以内には五割オフバランス化するんだ、二年以内に八割を目途にオフバランス化するんだ等々、さまざまな不良債権処理についての対策は今まで打ち出してまいりました。
 委員の皆様のお手元にも資料をコピーさせていただいておりますが、この間の不良債権処理の状況を見ますと、主要行の破綻懸念先以下でございますけれども、オフバランス化自体は、数字上は、これまで定めたスケジュールにのっとって、予定どおり進捗をしています。〇〇年九月期、二年前の九月期の十二兆七千億あったものが、ことしの三月期では四兆七千億まで減っています。また、その後、新規発生したものも、ほぼ先ほど申し上げたスケジュールにのっとって処理はなされているんですね。これまでの経済対策にのっとって、不良債権処理はある意味では予定どおり進捗をしているわけでございます。
 ただ、ことしの三月期を見ていただいたらわかりますとおり、新規発生が六兆九千億という、新規発生がふえておるという、ここに大きな問題があるわけでございますけれども、竹中大臣、ここ数日来いろいろにぎわしておるわけでございますけれども、改めてこの時点で不良債権処理の加速化というのはどうしてなんでしょうか。不良債権問題に対する認識に、問題意識に何か変化があったんでしょうか。これまでの金融政策のどこに不十分な点があったのか。まず、それを明確に御答弁をお願いしたいというふうに思います。
竹中国務大臣 御指摘のように、この不良債権問題というのは、ある意味で日本の経済をこの十年以上の長期にわたって覆っている問題であります。
 これまでも金融庁は、不良債権の迅速な処理と企業再生を一体的に進めて不良債権問題を正常化するという中で、かなりいろいろな政策を行ってきました。その意味では、この与えられた状況の中で金融危機を起こさないという点に関して、やはりそれなりの役割を果たしてきたというふうに私は評価をしております。
 しかしながら、同時に、特にこの一年間顕在化したことは、いわばマクロ経済と金融の間の悪循環。マクロ経済というのは、特にデフレと金融の悪循環。デフレが進行するので不良債権問題が深刻化する、不良債権問題がなかなか解決しないので銀行の金融仲介機能が上昇せず、マネーがふえなくてデフレが深刻化する。やはりそういう悪循環からなかなか出ていくことが難しいということが、特にこの一年の経済悪化の中で判明してきたのではないかというふうに認識をしております。
 そういった市場の変化に対応する意味で、さらに言えば、危機を起こさないという意味ではこれまでそれなりの成果を上げたわけですけれども、これからさらに構造改革を推し進める上で、この構造改革を支えるより強固な金融システムをつくっていかなければいけない。そういう意味で、金融政策、この面での政策を進化させていくということが重要になっているというふうに認識をしております。その意味で、就任当初から三つの原則を申し上げているわけでありますけれども、資産査定が厳格になされているだろうか、自己資本が十分かどうか、ガバナンスが発揮されるようなシステムになっているかどうかという根本問題を問い直す形で不良債権処理の加速策を今議論しているところでございます。
北側委員 竹中大臣に申し上げたいと思うんですが、この不良債権処理対策というのは、これまでもう累次にわたってやってきたんですね。その積み重ねの上に今があるわけなんですよ。私が申し上げたいのは、政府の金融政策の継続性、それをやはり重視されないといけないということと、金融政策に対する信頼性というものを大切にしないといけないというふうに思うんですね。少なくとも、定めたルールを突然変更するのは、これはもう金融界初め、市場関係者初め、無用の混乱を起こしてしまいますよ。
 今、税効果会計、きょうは国民の皆さん見ていらっしゃいますから詳しくやりませんけれども、この問題も、アメリカの場合と日本の場合とは前提が違うわけでしょう、会計制度も税制度も。アメリカの制度をそのまま日本に持ち込んでいいという前提じゃないんじゃないでしょうか。また、銀行の国有化の話も、銀行を国有化したら不良債権問題が解決するなんかとんでもない話です。私は、やはり今伝えられているお話については少し疑問があるというふうに言わざるを得ないと思っておるところでございます。
 もう一点申し上げたいのは、こうした不良債権処理の加速策だけで本当に不良債権問題は解決するのかということでございます。さっきも大臣は、デフレと不良債権の悪循環というふうな言葉をおっしゃっていましたけれども、そのとおりです。先ほどの表にあったように、新規の不良債権の発生が増加しているんです。この間の日銀の報告によれば、バブル崩壊の不良債権処理はもう終わっている、今は新しい事態だ、こういうふうに言っているわけですね。なぜ新規の不良債権の発生が増加しているのか。それは、その大きな要因は、やはりデフレが深刻化しているからではありませんか。土地とか株等の資産価額が低下がとまらない、そういうことが大きな背景にあるんじゃないですか。
 私は、不良債権処理の加速化ということを言うならば、一方で、同時にデフレ阻止に向けての政策を総動員しないといけない、デフレを退治しないと不良債権問題そのものも解決しないということを強く申し上げたいというふうに思っております。
 引き当ての強化をする、これは一方では間違いなく貸し渋りとか貸しはがしが一段と深刻化します。金融が逼迫します。企業倒産、失業者が増加します。不良債権処理の加速化と言うならば、同時に強力なデフレ対策と、もう一方では雇用、中小企業に対するセーフティーネット、これを万全に張りめぐらしていく。この両輪がなかったら、日本の経済は大変なことになってしまいますよ。そういう認識を政府はきちんと持ってもらいたい、私はそれを強く主張したいと思っております。
 そこで、きょうも与党で、ぜひ政府の皆さんにデフレ対策を示したいということで、ぜひきょうじゅうに与党三党で取りまとめたいというふうに思っておるんですが、ちょっと二枚目の、時間もございませんので、私なりに八つの総合対策というものを提案させてもらいたいと思っているんです。
 一つは、中小企業のセーフティーネット、後で少しやらせてもらいます。雇用のセーフティーネット、この二つはもう絶対必要です。それから、都市再生の推進とか都市基盤整備公団を活用した土地の流動化、こうした資産デフレ対策も必要です。今やっている構造改革特区の推進などの規制改革もやっていく。構造改革を加速する社会インフラの整備というのはあるわけですよ。
 例えば、高齢化に備えた介護関連施設、どっちにしてもこれは必要なんです。今、待っている高齢者の皆さん、いっぱいいるわけですよ。こういう介護関連施設をつくれば雇用の創出にもなるわけでございます。保育施設の整備、待機児童ゼロ作戦をやろうというわけですから、この整備もやっていかないといけない。耐震化など学校施設の整備。この間の文科省の発表では、小中学校、耐震化に問題があるのが四割あるというじゃないですか。耐震化など学校施設の整備、また、環境保全や防災にとって重要な意味を持つ間伐などの森林整備、また、バイオ、ナノテクノロジーなど先端技術開発などのための研究所、大学などの施設整備、さらに東海、東南海地震対策等々、社会資本整備で、やっても国民から文句も言われない施設、社会資本整備というのはあるはずなんです。構造改革をむしろ加速する社会資本整備があるはずです。これをしっかりやるべきです。
 また、新産業創出、産業・企業再生と書いてございますが、この新産業というのは、バイオとかナノとかITとか環境とか、重点四分野と言われているんですが、それだけじゃありません。私は、健康とか文化とか観光とか、こうした分野も新しいこれからの日本の成長分野だというふうに思っているんです。扇大臣、観光、EUではGDPの一二%、観光産業からですよ。一二%ですよ。日本はやはり観光政策というのが極めて私は不十分だと思います。もっと観光とか文化とか、そういうものに力を入れていかなあかん。
 私、政府に、内閣に観光担当大臣とか文化振興担当大臣をつくってもいいんじゃないかと思うんですよ。扇さんなんか本当にふさわしいと思います。また、内閣に戦略会議をつくって、経済活性化のために観光をどうするんだ、文化をどうするんだ、そういうことを内閣府で、経済財政諮問会議で今やっていることだけではなくて、こういうこともぜひやってもらいたい。
 平成五年から日本国民の消費傾向は変わっています。物から非物に移っているんです。今までは、物を買う、こういう消費性向が半分以上でした。今は違うんです。非物、ソフトの方に消費をしていくという傾向にシフトしています。そういう意味では、こういうものにもぜひ力を入れてもらいたいと思いますし、ここで書いてございます産業や企業再生機能についてもぜひ強化してもらいたいと思いますし、さらなる金融緩和、物価安定目標の設定など、金融政策についてもぜひやってもらいたい。こうした総合対策を一本で、一括で出さないで、不良債権の処理の加速策だけをやってはだめですよ。総合的に私はやるべきだというふうにぜひ訴えたいと思うわけでございます。
 そこで、ちょっと三枚目の資料をごらんになっていただきたいんですが、中小企業の問題についてお聞きをいたしますけれども、中小企業への貸し渋りの実態を示す統計資料だと私は思っているんですけれども、これは日銀の資料に基づきましてつくりました。国内銀行の貸し出し全体から企業への貸出分を出しまして、それをさらに大企業分と中小・中堅企業分に分けてこういうグラフをつくらせていただいたんです。
 皆さん、これ、大企業の方は、一九九四年の一―三期、当時これは百四兆の貸し出しがありました。中小・中堅は三百八兆の貸し出しがこの九四年の一―三期にはあったんです。それがその後どうなったかといいますと、大企業の方はこの表のとおり、一時期はこの額を上回っている時期もあるんですね。指数でいっても九四・八、マイナス五%、その程度しか減っておらないんです。一方、中小・中堅の方、この数字は、私はこの表をつくってみて非常にショックだったんですけれども、九四年一―三期に三百八兆あったのが、今、二〇〇二年では二百二十三兆しかない。八十五兆も減っているんですよ、八十五兆も。二七%以上減っておるわけですよ。
 大企業というのは、本来、社債とか株式とか、直接金融という手段があるわけでしょう。中小企業の方は、そういう直接金融の手段がありません、少ないです。間接金融、銀行からお金を借りるしかありません。そういう、中小・中堅の方はずうっと貸出総額が急速に減っていて、大企業の方はそんなに減っていないという実態なんです。
 この数字を見る限り、私は、やはり弱い立場の中小企業には貸し渋り、貸しはがしをやっているということは言わざるを得ないと思うんです。
 今、中小企業、中堅企業というのは、バブルの崩壊とか、デフレの深刻化とか、地価や株価の大幅な下落とか、取引先の倒産とか、もう数多くの中小・中堅企業はみんな大きな痛手を負っているわけでありまして、リスクを負っているんです。リスクを負っているのがむしろ普通なわけです。そういうリスクを生じる可能性のある中小企業にお金を貸さないという状態が生じているわけでございまして、民間金融機関の本来の役割でございます資金仲介、リスクテークをとってお金を貸す、これができていないということでございまして、私は、政府系金融機関の役割が高まるのは当然ではないかというふうに思っているわけでございます。
 平沼大臣、中小企業対策を所管されておられます大臣として、この数字、この資料、どういう御感想をお持ちでしょうか。
平沼国務大臣 確かに、今グラフでお示しいただいたとおり、中小零細企業に対する民間銀行の貸し出しというのは著しく減っていることは事実であります。それはやはり、貸し渋り、貸しはがしという言葉に代表されているように、そういう事実があった結果だと思っています。
 しかし、あえて政府の立場で言わせていただきますと、その間、九七年以降、特別保証制度というものを議会の御賛同を得てやらせていただいて、これは、三十兆の大きな保証枠の中で二十八兆九千億の保証をさせていただいて、そして百七十二万社の中小企業が利用していただいた、こういったところで穴埋めを私どもはしてきたと思っています。
 したがいまして、私は、先ほど先生がお示しになられましたそういう総合対策というのは非常に必要だと思っておりまして、私どもは、セーフティーネット対策でありますとか新規産業創造、そういったこと、あるいは税制も含めて抜本的にやっていかなきゃいかぬと思っておりますし、ここ当分は政府系金融機関というのは絶対に必要だ、このように思っています。
北側委員 平沼大臣、もう一問質問させてもらいたいんですが、今、信用保証を、先ほどの答弁にもございました、さらに拡充していこうというふうにされておられます。財政基盤の方は大丈夫でしょうか、この信用保証の方の。
 代位弁済が増加する中で、保険収支が悪化して、私が聞いておるところでは、保険準備基金残高がもう残り少ないというふうに聞いておりまして、これから十分な信用保証業務を行っていくためには、政府からの基金の出資は不可欠だというふうに思っております。これは補正予算でやるしかありません。大臣、いかがですか。
平沼国務大臣 確かに、いわゆる保険準備金というのは、もうどんどん減少しておりまして、平成十三年度はマイナス六千億の赤字でございましたし、この十四年度もマイナス六千億、このように想定されています。
 一兆二千億余りあったものが底をつくという形で、あととらの子の七千億を切り崩す、こういうところまで来ておりまして、私どもとしては、近将来に、やはりそういう真水の手当てというのはどうしても、これだけ不良債権の処理を加速化すれば必ず必要になってくる、このように思っています。
北側委員 こういう事態の中で、政府系金融機関の見直しについても、私は、一時凍結すべきだ、この不良債権問題が正常化するまでは議論を一時凍結すべし、そのように主張させていただきたいと思っております。
 次に、雇用についてお聞きをいたしますが、不良債権処理を本格化すれば、企業倒産、失業者が増加するのは必至でございまして、この極めて厳しい雇用情勢を、坂口大臣、どのように認識し、雇用のセーフティーネット対策についてどのように張りめぐらそうとしているのか、ぜひお聞きをしたいと思うんですが、昨年の第一次補正予算で、緊急地域雇用創出交付金制度、これは今各地方公共団体、運用しています。
 きょう、もう時間がないので詳しくできませんが、いろいろな地方公共団体、知恵を出して、アイデアを出して、いろいろな雇用創出の事業をやっていただいております。
 地方からはいろいろな、これを改善してもらいたいという要請がございまして、また、延ばしてもらいたいという要請があって、この雇用期間の延長要件の問題だとか等々、さまざまな改善要望が厚生労働省にも行っておると思います。やはり、雇用の実情を一番よく知っているのは地方公共団体です。どこにニーズがあるかもわかっているのも、地方公共団体がよくわかっています。
 私は、この緊急地域雇用創出交付金を改善、さらに拡充ということをぜひ大臣に検討してもらいたいと思います。今後の雇用情勢についての認識も含めまして、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど、自見議員にもお答えを申しましたとおり、不良債権処理の大きさとスピードによりましてかなり違ってくるというふうに思っておりますが、省内におきましても、不良債権処理雇用支援プロジェクト、仮称でございますけれども、つくりまして、今、最終的な取りまとめを行っているところでございます。
 今までの雇用政策の中でぜひやらなければならないのは、先ほど申しましたように、中央でやらなければならない問題もこれはございます。雇用保険のように、どうしても中央でなければならないものもございますが、しかし、あわせて、やはりそれぞれの地域の要望、地域に見合った雇用対策というものが必要だというふうに思っております。
 そういった面では、この交付金というのはかなりの効果を発揮いたしておりますし、これに対するやはり御要望、変更をどういうふうにしてほしいというような御要望もたくさんお聞きをしておりますので、その御要望を十分に聞いていくようにしたいというふうに思っております。
 加えまして、この地域に見合ったものをやっていきますためにはどういう施策が今必要かということを、今検討を重ねているところでございまして、この交付金の問題をさらに発展させたいというふうに思っております。
北側委員 最後に、先ほど、総合的な経済対策が必要だというふうに私は申し上げさせていただきましたが、やはり補正予算の編成も含めた経済対策の指示というものを、ぜひ私は、タイミングとしてはこの時期に総理からしていただきたいというふうに思っているわけでございます。
 国債発行三十兆円枠の問題がございますが、財政規律は重要といういわばシンボルがこの三十兆だったと私は思うんです。この三十兆という数字そのものに特別な意味があるわけじゃなくて、財政規律は重要だ、だから三十兆なんだと。また、その意味では、小泉総理就任以来、財政規律のシンボルとしての役割は十分果たしている。
 不良債権問題という日本経済最大の障害を今乗り越えようとするならば、先ほど申し上げた総合的な対策というのは不可欠だというふうに思っております。むだな支出は排さないといけないのは当然です。問題は中身です。不良債権問題の解決という改革をさらに進めていくためにも、補正予算の編成も含めた総合的な経済対策の策定を早急に指示していただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私が昨年四月に総理に就任した時点におきましては、税収は五十兆円程度あるだろう、国債発行は二十八兆円程度、十四年度予算は十分三十兆円以内でいろいろな施策が施行できるだろうという前提で、安易に借金をして財政を出動すれば景気が回復するのか、そういう状況じゃない、だからこそ本質的な構造問題に手をつけなきゃいかぬということでやってきたわけであります。
 結果的に、税収が五十兆円には上らなかった。現在の時点におきましても、今北側議員が御指摘されたような税制改革と歳出改革とを着実に進めております。厳しい歳出の見直しも行っております。重点化も行っております。そういう中で、今後不良債権処理を加速させるどういう対策が必要かということは、今月中には、今竹中大臣のもとで、さまざまな意見を聞きながら、今取りまとめ作業に入っております。
 税収動向等も見ながら、そして、必要な対策はどういうものか、また無用な混乱を起こさせないためにはどういう措置が必要かということを見ながら考えればいいことであって、現時点で、今国会で補正予算を提出しなくても対応できることは十分ある。そして、今後、総合的な経済状況そして諸般の情勢をにらみながら、経済は生き物でありますので、国民生活にとって必要なことは大胆かつ柔軟に対応するという方針に全く変わりはありません。
北側委員 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 今国会は、臨時国会でありますけれども、外交問題あるいは経済問題、大変重要な問題が山積している国会だと思います。私の質問時間は何か十九分ということでありますので、質問の重複を避けまして、具体的な質問をしたいと思いますので、具体的なお答えをいただきたいと思います。
 まず、雇用の問題でありますが、最近の雇用失業情勢というのは、一言で言えば、まことに厳しいということだと思います。完全失業率が五・四%、あるいは完全失業者数が三百六十一万人、有効求人倍率、求人の方も大変少なくなってきているということであります。
 しかも、私はこの雇用情勢で深刻だと思いますのは、例えば、失業率を見ましても、有効求人倍率を見ましても、四十歳以上の、言ってみれば中高年というんですか、ここの失業率が高いとか、あるいは求人が少ない、こういうことなんですね。あるいは、地域的にも近畿なんかが非常に失業率が高い。こういう状況になっておりまして、いよいよ雇用失業問題が深刻化してきたなという感を深くするものでございます。
 今や雇用政策として必要なのは、雇用を開発していく、見つけ出していく、つくり出していくというようなこととか、あるいは雇用を安定していく、維持していくというようなこと、これに雇用政策の重点を置いていくということは、もう当然だと思うのであります。
 そこで、私は総理に二つ質問をいたしたいんです。
 一つは、政府も、雇用の開発でありますとか雇用の維持について、非常にいろいろなことをやってきたんですね。これまでの労働省、今の厚生労働省がやっているのを見ますと、まあこれだけよくも考えられたなと思うようなことがいっぱいあるわけですよ。何とか奨励金、何とか交付金、何とかかんとかで。しかも、その中がまたいっぱい細分化されていまして、それぞれに条件がついているわけですよ。本当に懇切丁寧なんだけれども、成果を見ますと、これが活用されていない。成果が上がっているのもありますけれども、活用されないんですよ。活用されない、だから金もいっぱい余っている、今こういう状況なんですね。
 ですから、私は、まず第一には、やはり今の政策を総点検して、見直して、本当にニーズに合った有効なそういう政策、それを打ち出してほしい。いろいろなことを考えることはいいんだけれども、やはり有効なそういうのを打ち出すべきだというのが第一の質問であります。
 第二は、行政組織であります。
 御承知のとおり、雇用行政というのは厚生労働省にありまして、地方の方も、公共職業安定所が全国津々浦々に設置をされているんですね。こういう雇用の調整を末端まで国がやるというのは、私は、これはかつての炭鉱労働が労働調整の主体でありましたときの産物ではないかと思うんですよね。つまり、炭鉱というのは全国から人が集まってくる、それが閉鉱しますと全国で職業を見つけぬといかぬ、こういうことがあったんですよ。
 今や、雇用問題というのは地域の問題なんですよね。地域で職をなくしたらその地域で仕事を探す、こういうぐあいになってきているわけであります。
 それからもう一つは、今、地方分権といっているわけですよ。だから、公共職業安定所がやっているような仕事、例えば職業紹介みたいな仕事は、私は県に絶対移譲するべきだと思うんですよ。県の方が、実情に即した、きちんとした仕事をすると私は思うんですね。これはぜひひとつ検討いただきたい。
 この二点です。政策の総合化、ニーズに合った政策と、公共職業安定所といいますか、雇用の現場の事務まで都道府県に移譲するということ、この二点です。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
坂口国務大臣 御指摘をいただきましたように、厚生労働省がやっております雇用の政策の内容は、まことにきめ細かなものでございます。しかし、その中で十分効果を発揮しているものもございますし、十分使われているものもあるわけでございますが、御指摘いただきましたように、中にはそれが十分に活用されていないものもあることは事実でございます。これらの点につきましては考え直していきたいというふうに思っておりますが。
 トータルで申しますと、これも委員が御指摘になりましたように、今までは中央ですべてをくくってまいりましたけれども、それは地方によってかなり雇用の実情が違うということを考慮した政策にやはり転換をしていかなければならないということだろうというふうに思っておりまして、そういう方向に向けております。
 それから、地方が、都道府県等につきましても、ハローワークと同じような仕事をできないかという御要望がたくさんございますが、これはそうした方向で認めていくようにしたいということで、今、法案の用意等をしているところでございます。
井上(喜)委員 スローガンだけじゃなしに、現実にきちっとした有効な対応ができることを、私は雇用政策というのはこれからやはり政治の一大中心になっていくと思うんですね。ですから、対応をお願いいたしたいと思います。
 次は、中小企業対策なんですが、今、政府全体の経済の見通しというのは、持ち直しが見られてきている、こういうような見解だと私は思うのでありますけれども、これも大体輸出に関連して多少景気が持ち直してきた、こういう判断だと思うんです。輸出は、中小企業あるいは大企業、関連がありますが、どちらかといいますと、やはり大企業が利益を受けることの方が多いと思うんですね。中小企業の経営というのは今でも大変苦しい、厳しい、こういうことだと思うんであります。
 特に問題にしておりますのは、金融なんですね。経済産業省がこの九月に、現実に役所の人が現地に出向いて、金融機関とか中小企業者と面接しまして、金融の実態について資料を出しておりますが、これを見ましても、いい企業は金なんかどんどん返しているんですよ。そうでない企業が非常に金融の方で困っている。こういう状況でありまして、金融問題というのは、中小企業対策の中でいろいろな対策があるが、これは一番中心に置くべき対策だと私は思うんですよ。特に、金融システムが不安だとかなんとかいうことで言われる中でありますから、こういう中小企業への資金供給ということについては特段の配慮が必要だと私は思うんです。
 その中でも、中小企業者で非常に評判のいい制度というのは信用保証制度なんですね。保証してやる、その保証のもとに中小企業に対する融資をするという、これは非常に評判がいい、余り問題がないと言われているんです。問題があるとすれば資金枠なんですね。これが、つい最前の経済産業大臣の御答弁にもありましたように、非常に窮屈になってきておりまして、これはきっちりと今やるということを決めないと、中小企業金融に影響が出てくると私は思うんですよ。
 ここの現実の判断については、私は、補正予算とかなんとかいろいろな話がありますが、それはそれとして検討すべきだと思うんであります。この判断については、総理は余り御異論ないんじゃないんですか。いかがですか。信用保証制度は、今、充実が必要だという点についてです。
平沼国務大臣 先ほどの答弁でも申させていただきましたけれども、我が省の調査におきましても、この信用保証制度というのは、全国の中小企業の皆様方からは大変評価をいただいているところであります。こういう中で、厳しい経済情勢がますます加速されますので、私どもとしては、これをしっかりと体制を組んで対応しなければならない、そういうふうに思っております。
 確かに、特別保証の分あるいは一般保証の分の代位弁済というのが非常に景気の不況の中で加速されてきておりまして、厳しい状況になってきておりますので、ここは我々としては、今のところは何とか対応できますけれども、やはり財政投入でございますとか、あるいは、今とらの子でございますけれども、融資基金というものを一部取り崩して、今までは取り崩したことがないんですけれども、そういう形で、これは遺漏なきように期していかなければならない、このように思っております。
井上(喜)委員 次に、不良債権の処理に関連した問題でありますが、不良債権の処理については先ほど来いろいろな議論がございました。いろいろな議論がある。あとはまとめて決断するという、今これが残っているわけですね。しかし、私が思うに、よく考えて、上の制度、緻密な制度をきちっとつくるということと、それがドラスチックであればあるほど、そういう手続をきちっと踏んで、やはり関係者の了解を取りつけるということが必要じゃないかと私は思うんでありますが、これは要望だけにとどめておきます。
 私は、不良債権は単に不良債権処理すればいいじゃないかということだけじゃないわけですね。結局、経済をよくしていく、産業を再生していく、こういうことだと思うんですよ。ところが、最近の議論を見ますと、金融機関の不良債権の処理を、処理を、そればかりが言われておりまして、本来の業界とか産業の再編とか整備とかそういうことが余り言われない、おくれているんじゃないかと思うんですね。
 ゼネコンなんかも、私どもは問題のある業界だというぐあいに思うんでありますが、これなんかも、どういうぐあいに再編、再生していくのかというのが余りよくわからないんですよ。これは一例でありますが、全体として、私はそういうことが言えるんじゃないかと思うんであります。
 やはり、不良債権の処理と並行して、本当に経済が再生していく、産業がよくなっていく、この対策を今以上に力を入れてやるべきだと思うし、不良債権の処理と並行して、きちっとそれができるようなことをすべきじゃないかと私は思うんですが、どうですかね、総理。これは向こうですか。
竹中国務大臣 井上委員御指摘の問題は、まさしくそのとおりだと思っております。
 新聞報道等々では、一部の偏った議論がなされて、特にそこが大きくクローズアップされているわけですが、問題意識は、先ほども申し上げましたように、これは不良債権をどうこうするという問題ではなくて、日本の金融システムを強化して、結果的には企業を強化する、産業を再生していくということでありますから、その点の配慮を十分に行いながら議論を進めているという点をぜひ御理解賜りたいと思います。
 とりわけ、御指摘をいただいたこの問題は、やはり、経済産業省の皆さん、国土交通省の皆さん、つまり、銀行の不良債権の問題というのは企業の過剰債務の問題であるということはもう明々白々でありますので、これとの一体化、これは従前からも行われてきましたが、今回も、先日もそのプロジェクトチームに両省の責任者の方においでをいただいて意見交換をしておりますし、両大臣の御協力をいただいて、今、強力にその関係を強めているところでございます。
 産業再生について、ぜひとも力を入れた政策にしていきたいと思っております。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
井上(喜)委員 それじゃ、しっかりとお願いをいたします。
 次は、日本銀行総裁に二問お伺いいたします。
 一問目。これまで金融機関というのは不良債権処理をずっと進めてきたわけですよね。にもかかわらずこの不良債権というのは一向に減少しない、こういうことなんですね。前の北側委員の御指摘もありましたけれども、計画的にはこれは処理をしてきているんだけれども、新しくデフレ不況によってこの不良債権がふえてきているわけですよ。したがって、不良債権の処理の加速も大事なことだけれども、デフレを阻止していく、こういうことも大切なんですね。
 そこで、これは日本銀行に対する質問でありますけれども、インフレターゲットを日銀は設定したらどうかという議論、今までありましたよ。今まではやはり否定的だったと思うんですよね。どうもその手段、方法がきちんとないんだということでありますけれども、今ここに来れば、私はそんなことは言っちゃおれないと思う。やはり、物価の御意見番といいますか、責任のある立場にあるわけですから、インフレターゲットをきちっと設定して、そのためにはあらゆる政策を導入すべきだと思うんですが、見解、いかがですか。
速水参考人 お答えします。
 私ども、今までも申してきたことなんですけれども、現状のもとでインフレターゲットを導入することは適当でないというふうに思っております。
 日本銀行は、日本経済をできるだけ早期に持続的な成長軌道に復帰させて、物価がマイナス基調から脱却できる状況を実現するために、中央銀行として最大限の努力を続けております。
 しかし、インフレターゲティングというのは、これはインフレを抑えることを主眼とし、あるいはそれをきっかけとして金融政策の透明性を高めるということをねらう枠組みでありまして、これを達成する手段やメカニズムの裏づけが伴って初めて意味を持つものとなってくると思うんです。しかし、金利はゼロに達しておりますし、さらに、さまざまな構造問題が金融緩和の効果を制約しております。そうした中でインフレターゲティングを採用していくと、政策への信頼とか、市場への悪影響などのむしろ弊害の方が大きくなってくるおそれがあります。
 日本銀行は、既に、インフレ率が安定的にゼロ以上となるまで現在の思い切った金融緩和の枠組みを続けるということを宣言しまして、昨年の三月ですが、デフレ脱却への強い決意を明らかにしているわけでございます。現在の状況のもとでは、こうした宣言のもとで思い切った資金供給を継続する方がわかりやすく、また効果的ではないかと考えております。
井上(喜)委員 どうですかね、まだ考えようが大いにあると私は思うんですが。
 一案を出してみますと、日銀は今までいろいろなことをしてこられたと思うし、一歩踏み込んだようなことも最近されようとしておりますよね。例えば、金融機関が持っております株式を買うなんというのはそうだと思うんですが、これを、より直接金融に重点を置いた、いわゆるETFというものを買い入れるということ、これは株式指数型上場投資信託というらしいんですけれども、どうせ株式を買うならこれを買った方がはるかに効果的じゃないんですか。
 だから、例えばですよ、そういう案もある。そういうふうな方法を考えていくというのは、やはり私は一つの案じゃないかと思うんですが、いかがですか。
速水参考人 お答えします。
 今回私どもが決定しました金融機関の持っている株式の買い入れというのは、金融システムの安定化を図る観点で期間を限定した一時的な措置でありまして、これは株価の支持とか流動性の拡大をねらったものではありません。金融機関が持っている株が多過ぎるというようなことで、それを減らしていこうということでございます。
 流動性供給の手段としましては、現在、金融機関は国債などの資産を豊富に保有しております。したがいまして、日本銀行が潤沢な資金供給を行っていく上で調節手段が不足しているという状況ではありません。ETFの購入は、この際考えておりません。
 なお、株価は基本的に企業収益の先行きに対する市場の見方を反映して決まるものでございます。したがいまして、日本経済を活性化して企業の収益力を高めていくことが、デフレ脱却にも株価にも好影響を与えるということになると思います。
 日本銀行としても、日本経済を安定的かつ持続的な成長軌道に復帰させるために、中央銀行として最大限の努力を払ってまいりたいと思っております。
井上(喜)委員 これで終わりますが、総理は所信表明演説の中で、デフレ対策には政府、日銀一体になって取り組まぬといかぬということを言われたんですが、今の日銀総裁の御発言についての総理の所見をお伺いします。
小泉内閣総理大臣 これは総合的な対策が必要でありまして、もとより、政府と日本銀行一体となって取り組む必要があるということで、日銀総裁もその点は十分勘案しながら、今、日銀としてできる限りをやろうという決意を表明されたんだと思っております。
井上(喜)委員 終わります。
藤井委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 次に、海江田万里君。
海江田委員 民主党の海江田万里でございます。与えられました時間で質問をさせていただきたいと思います。
 まず、大島農水大臣にお尋ねをしますが、前政務秘書官の公共事業にまつわる口きき疑惑でございますが、本委員会が始まるまでに調査を発表されるということですが、いまだ発表に至っておりません。この詳しい事実関係につきましては、私の後で同僚議員が詳しくお尋ねをしますが、私はこの問題に対する大島農水大臣の基本的なお考えを聞かせていただきたいと思います。
 まず、前政務秘書官でございますが、公共事業の会社から現金の授受があるやに報道されておりますが、仮に現金の授受があった場合、あなたの農水大臣としてのお立場、これは辞任をされるおつもりはありますか、どうですか。
大島国務大臣 十月二十四日に週刊文春に報道されまして、今、私の監督責任としての義務は、その事実をしっかりと調査して、そして、本人からの報告を受けて、皆様方にそのことを説明することではなかろうか。私自身、きのうまで精いっぱいぎりぎりのことをやってまいりました。御質問があれば、その内容についてお答えを申し上げたい、このように思っております。
 なお、政治家として、さまざまな事柄に対しては、一層身を律して事に当たることがまた私の行き方であろう、このように思っております。
海江田委員 今、私がお尋ねしたことを後半の方で少しお話がありましたけれども、ちょっとわかりにくいので、私がお話をしましたのは仮にということでございますが、現金の授受があった場合は、潔く身を引かれますねということをお尋ねしたんです。いかがでしょうか。
大島国務大臣 先ほども申し上げましたように、今私の責務というのは、本当にあの報道に対して真剣に私自身も対応して、皆様方からのさまざまな問題に対して本人の報告を受けて答えることであろう。そして、すべからく政治家というのは、絶えずでございますが、身を律して政治に当たること、それを一層自分自身の気持ちの中に置くことが今の私のやるべきことであろう、このように思っております。
海江田委員 非常に、私のこの質問は単純でございまして、まだ私は事実を聞いておりませんので、もちろん、現金の授受はないということもあるでしょう。しかし、一方、現金の授受もあるということもあるわけですから、現金の授受があった場合、潔く職を辞するということは、一つの考え方としてあって当然だろうと思いますので、そういうことがあった場合はそうしますよという一言をおっしゃっていただければいいのですけれどもね。いかがでしょうか。(発言する者あり)
大島国務大臣 元秘書官にかかわることでございますし、そして、今まず私がなすべきことはそういうことに全力を尽くすことだ、こう申し上げておるわけでございまして、すべからく政治家はもちろん、法はもちろんでございますが、それぞれの生きざまの中で倫理に照らして生きていくことが当然だと思いますけれども、なお一層身を律してこれから事に当たってまいりたい、こういうことでございます。
海江田委員 今もございましたけれども、ことしの五月、鈴木宗男議員の秘書が逮捕された時点で、あなたは国会対策委員長という重責におられて、そしてそのときおっしゃった言葉というのは、大変重い事柄だ、議員にはすべて秘書の監督責任があるということをおっしゃったわけですから、当然、その考え方が今も続いておれば、そういう現金の授受があるというようなことがあればそのときは潔く身を引くということをおっしゃっても、私は何ら、これまでの発言からつなげまして、おかしいことは全然ない。
 いずれ真相は明らかになるわけですよ。何千万のお金をもらって家を建てたということが事実であれば、国税当局だって、これは当然のことですけれども、脱税の事件として立件をせざるを得ないわけですから。そういう意味で、明らかになるんですから、いずれ。今ここで私はやめろと言っているんじゃないんですよ、それはお間違いのないように。そういうことが明らかになったときはおやめになるんですねということを、もうこれは最後のお尋ねにしますので、しっかりとお答え、私はこのことについてはお願いします。
大島国務大臣 国対委員長のときに確かにそう申し上げました。そして、監督責任というのは、広い意味で、倫理ということも含めながら、総合的に判断していかなきゃならぬことだと思っております。
 今私がなすべきことは、週刊誌に報道された事柄についてしっかりとその事実を報告を受けて、そして皆さんの御質問に答えていくことが私の責務であり、五月に申し上げた、倫理を含めてのその責任というものは、広く、そういう意味では私はみずからの身を律しながら、もちろん、これからも一層努力していかなきゃならぬことだと思っております。
海江田委員 政治家が、国会議員が、秘書の行動に対して監督責任がある、その考えは今でもそのままお持ちになっているということですので、そうであれば、本当にもしそれが事実になったときは、身の処し方は知っているという、つまりこれは辞任をするということで、それをおっしゃっても何ら不都合はないはずでございます。どうしても言えないんだったら、事実関係については後から同僚議員が聞きますから、どうしてもそのことを、そのとき事実になっても言えないというんだったら、何で言えないのかということをお聞かせいただきたいと思います。
大島国務大臣 海江田委員のさまざまな御所見でございますが、監督責任というのは非常に広く、また重くあるものだと思います。したがいまして、そういうふうなことはみずからにしっかり律して、そしてやっていくことと同時に、そしてこの事実が一体どうであったのか、そういうことをまず私がなすべきことだと思って、今やっておるところでございます。
海江田委員 わかりました。
 私の理解では、まだその意味では現金をもらった可能性もあるから、だから今の時点で自分の辞任ということは言えないんだ、こういうことですね。こういうふうに理解してよろしいわけですね。
大島国務大臣 お言葉でございますが、そうであるからそうだというのではなくて、同じことで恐縮でございますけれども、秘書のいわば監督責任というのがあるということは私申し上げました。それは、秘書のありようによってさまざまな監督責任の態様というものがあるであろう。だとすれば、まず今私がなすべきことは、国民の皆様方に、あるいはまた報道された事柄に対して、しっかりと事実を解明する努力を私がいたさなければならないことであろう、その上に立って、なお身を律して政治に当たっていくということが私のなすべきことであろうということを申し上げておるのでございます。
海江田委員 全くお答えになっておりません。
 私は、本当にこの問題は冒頭二、三分で、当然大島農水大臣も、これまでの発言からいって、もしそういうことが判明をすれば、そのときは潔く職を辞するという答えが返ってくると思っていましたけれども、全く返ってこない。
 それから、私の幾つかの質問に対しても、全く堂々めぐりといいますか、御自分の基本的な考え方を明らかにできないわけでございますから、これはやはりもうこの委員会でしっかりと事実を究明しなければいけない。まず、後ほど大島農水大臣の口から事実のお話があるでしょう。
 それから、場合によっては、片一方では現金を持っていったという人の証言もあるわけですから、やはりそういう方のお話も聞かなければいけないでしょうし、それから、もちろん宮内、先ほど元秘書官とおっしゃいましたけれども、あれは前ですよね。そういうことはよく御存じのはずなのに、なるべく、元だとか古いとかそういうふうな、当然これはみんなわかっているはずですから、ついこの間、まさにこの問題で首を切られたわけですから、それはもうぜひ事態を明らかにしていただきたい。
 それから、今やはり何といいましても、補欠選挙をやっておりまして、ここで、もちろん今経済が大変大きな問題ですから、経済の問題について大きな争点になっておりますけれども、それと同時に、何で補欠選挙をやって、国民の税金を使って選挙をやらなければいけないかというと、やはり政治と金の問題、しかも公共事業をめぐる構造の問題が現にありますから、この問題をやはり明らかにしませんと、きれいにしませんと、また同じことがあって、そのたびに補欠選挙をやったりして大変な国費のむだ遣いにもなるわけですから、これはぜひ本当に、最後ですから、しっかりとした疑惑の解明をしていただいて、そして本当に事が明らかになって、現金の授受があれば、これはもうおやめになる、私はそういうふうに理解しますが、それでよろしゅうございますね。
大島国務大臣 前であるよと言われればそのとおりで、大変申しわけなく思いますが、前秘書官でございました。
 要するに、仮定のことを前提にして申し上げる前に、私のなすべきことが今の責任であろう、そのことに全力を尽くしてまいりましたので、そして、そのことに対してまたお答えをしてまいります。
 政治家それぞれにさまざまな問題提起を受けるときがございます。そして、それらについても一人一人がそれぞれに身を律しておかなければならないと私自身も思って、これからも努力していきたいと思っております。
海江田委員 さて、小泉総理、お尋ねをいたしますが、私はけさ、こちらへ来る前に企業の経営者の方たちと会ってきましたけれども、本当に悲鳴にも近い叫びが充満をしておりますね。ある方は、名前を言えばかなり有名な方でございますけれども、今の状況というのは小泉さんと竹中さんがこの日本をおもちゃにして、つぶしごっこをしている、こういう厳しい意見もあるわけでございますが、今のこの経済の状況に対する危機意識というものを小泉さんはどのようにお考えになっておるのか、危機意識をお持ちなのかどうなのかということをまずお尋ねします。
小泉内閣総理大臣 現下の経済情勢が停滞している、この停滞状況を打開するためにこそ構造改革なくして成長なし路線を進めている。そういう中にあって、不良債権の処理、これが足かせになっているという点から、竹中担当大臣に対して不良債権処理を含む総合的な対策を取りまとめるようにという指示をしているところでありまして、私は、現在のような日本の経済というものを何とか早く再生させて、持続的な成長軌道に乗せなきゃならないということは、一貫して就任以来持っているわけであります。
海江田委員 今冒頭に、今の日本の経済は停滞をしているというふうにおっしゃいましたね。停滞というのは、とどまっている、低い位置でとどまっているということでございまして、今の状況というのは、低くとどまっているということよりむしろ底なし沼に向かって落ち込んでいる、落下をしているんじゃないですか。
 停滞というのは、私はそれは危機意識としては非常に希薄だと思いますけれども、最初に停滞という言葉をお使いになったその意味というのはどうなんですか。むしろ下に向かって、それこそ本当にこのままでいけば底なしの谷に向かって落下しつつある、何とかしなきゃいかぬ、こういう認識じゃないんですか。
小泉内閣総理大臣 底なし沼なんかに陥らないように対応をとる。底なし沼なんかに陥る、そんな弱い潜在力は日本経済にはない。潜在力は十分ある。それを発揮させるのが大事だと思います。
海江田委員 潜在力の話はこれからやりますが、今このままで、これまでどおりの、これは小泉内閣の一年半の施政がありますけれども、このままでいけば、これまでと同じようなやり方でいけばどんどん落下をしていきますよという認識はあるんですか、ないんですか。
小泉内閣総理大臣 このままでいけないから、就任してから構造改革なくして成長なし路線を進めているわけであります。この路線を進めてまいります。
海江田委員 今私がお尋ねをしたのは、もう既に小泉内閣誕生をしましてから一年半たっているわけですから、この一年半も含めて、このままではいけないというふうに思っておるんですか、どうなんですか。このままではですね。
 前はそうだったけれども小泉内閣になってから回復したとかいう話じゃなしに、小泉内閣になってからも、後で詳しいデータをお示ししますけれども、相変わらず日本の経済というのは下降し続けているじゃないですか。そういう認識はないんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、日本経済のみならず世界情勢の問題もあると思いますが、私は就任以来、二、三年は低成長は我慢すべきだと。だからこそ、痛みに耐えて、あすをよりよくしようという路線を進むんであって、多少の痛みは耐えて、将来の発展を願うために構造改革を進めているわけであります。今、着々と進んでおります。
海江田委員 全く、その意味では私は、危機意識というものに総理が欠けていると言わざるを得ませんね、これは。
 成果が着々と進んでいるというんだとしたら、例えば、株価は総理が就任をしたときはおよそ一万三千円ぐらいでしたけれども、今幾らですか。きょうも下げていますけれども、八千六百円ぐらいですよね。失業者はどうですか。雇用はこの一年半の間にふえてきましたか。企業の倒産はどうなっていますか。
 低成長というのは、二%とか三%とか、安定成長とか、あるいは一%ぐらいの成長だというのが低成長でありまして、そうじゃなくて、奈落の底に向かってどんどん落下をしているじゃないですか。そういう認識はないんですか。
小泉内閣総理大臣 あるときは、伸びるためにも縮むときもあるでしょう。伸びるための努力をしているんです。
海江田委員 何か、そうです、どこかのテレビのコマーシャルで、縮みっ放しの日本、これでいいのかというような話ですが、そうじゃなくて、では視点を変えますが、あなたは九月三十日に内閣改造をやりましたね。これまでの金融担当大臣柳澤さんを竹中さんにかえましたね。何でかえたんですか。
小泉内閣総理大臣 金融改革を進めるために、経済、財政を一体的ににらみながら竹中大臣は手腕を発揮してくれるだろうと思ったから、竹中大臣を起用しました。
海江田委員 小泉総理は一内閣一閣僚ということをおっしゃって、しかも、従来の派閥からの推薦ではなしに、小泉総理御本人が、一人一人、だれが一番自分の改革に適任かということを考えて、考えて考え抜いて柳澤さんを任命されたわけでしょう。
 では、柳澤さんをこのままその座につけておれば、小泉さんの改革はできなかったんですか。それから、最初に柳澤さんを任命したのは実は間違いだったということもお認めになるんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、海江田さんが政調会長になったから前の政調会長が落第だということじゃないでしょう。私は、時宜に応じて、そのときに適材を起用するということであります。
海江田委員 この問題は本当に、この後でしっかりと同僚議員がやりますけれども、総理、この一年半の間に金融改革は進んでこなかったじゃないですか。不良債権が減りましたか。それから、金融機関の仲介機能が本当に落ちていますからどんどん中小企業はつぶれているじゃないですか。それから、ペイオフだって延ばしたでしょう。進んでいると思うんですか、金融改革だけとってみても。進んでいるんですか、この一年半の間、進んできたんですか。
小泉内閣総理大臣 金融改革が進んでいるんです。加速させるんです。
海江田委員 いや、ではどういうところで進んでいますか、それをおっしゃってくださいよ。――いやいや、総理に聞いているんじゃないですか。今総理が御自分で進んでいるとおっしゃったんだから。総理が最高指揮官じゃないですか。
 いやいや、総理、では、一つでいいですから、進んでいるところをおっしゃってくださいよ。
 総理、総理。だめです。総理、簡単な話じゃないですか。進んでいるとおっしゃったじゃないですか。進んでいるんなら進んでいるところをおっしゃってくださいよ。総理、おっしゃってください。
小泉内閣総理大臣 それは、不良債権処理を進めているうちに、さっき質問されたように、現在の不良債権処理が着実に、予定どおり進んでいる、しかし、新たな不良債権が出ている。そこをさらに進めていくということでございます。
海江田委員 不良債権の処理は進めているけれども、新たな不良債権がふえている。
 いいですか、では、これは単純な質問ですよ。一年半前の不良債権の量と、現在の不良債権の量と、どっちがふえていると思いますか。簡単ですよ、こんなのは。こんなの簡単じゃないですか。
小泉内閣総理大臣 そういう技術的な問題は、詳しい竹中担当大臣にお願いします。
海江田委員 技術じゃないじゃないですか。(小泉内閣総理大臣「じゃ、読み上げればいいんだ」と呼ぶ)いや、それでいいですよ。いやいや、読み上げるんじゃなくて、自分の頭の中に今の状況が、どういうふうになるかということが入っていなきゃ判断できないじゃないですか。あなたがこの日本の国の一番の統治者なんだから、一番のガバナーなんだから。自分の中に、では、本当に不良債権が自分の一年半の間にふえたのか減ったのか、関心がないんですか、知らないということは。
小泉内閣総理大臣 よく状況を知っているから竹中大臣に担当させて、こういうのを読み上げれば何でもないんですけれども、私よりも、不良債権処理にちゃんと今しっかり取り組んでいる竹中大臣から説明を聞いた方が親切でしょう。
竹中国務大臣 海江田委員の御質問は、どういうところで金融改革が進んできたのか、そういう点であるところだと思います。
 不良債権は、不良債権額そのものは、もうこれは言うまでもなく、金融庁が公表しているわけでありますから、ふえているわけでございます。しかし、それそのものが、実は金融検査を強化して、特別検査を行って、その結果、より実態に近づいて、しっかりとした不良債権処理に向かっているという一つのあらわれであるというふうに認識すべきであると思います。
海江田委員 総理、わかっているんだったら答えてくださいよ、本当に。親切にと言うけれども、竹中さんが言った今の数字ぐらい私だってわかっていますよ、竹中さんから聞かなくたって。だから、総理がどういう認識を持っておられるのかということで、これは冒頭にお話をしましたけれども、やはり総理は希薄なんですよ、そういう危機意識というのが。私はそうだと断ぜざるを得ませんね。(発言する者あり)
藤井委員長 落ちついて、静粛に。
海江田委員 それから、竹中さんにもお尋ねをしますけれども、せんだってニューズウイークで、大き過ぎてつぶせないという金融機関はないというような発言をしていますが……(発言する者あり)いやいや、まあいいや、揚げ足じゃありませんけれども。
 金融担当大臣なんですから、あなたは。金融担当大臣が今こういう時期に、見出しとしまして、「大きすぎてつぶせない銀行はない」というような発言をするということが一体どういう影響を与えるかということをお考えになって、それで、やはりあれは問題があったということで訂正をするなり撤回をするなりされるんでしたら、どうぞ。
竹中国務大臣 この点は、実はけさも一度御答弁をさせていただいたのでございますが、そのニューズウイークのインタビューはもともと英語で行っております。その英語のインタビューで、例えばそういうことは一切言っておりません。これは英文の本論を見ていただきますと、その英文のタイトルにはそういうものは出ておりません。それを日本語に翻訳するときに意訳をして、加えて、私が言っていないことを括弧でつけて、コーテーションのように、さも言ったような見出しをつけている。
 この点に関しては、既に出版社に対して、弁護士を通じて正式に抗議を申し上げるとともに、その訂正を求めているところでございます。ですから、事実関係としては、そういうことは断じて申し上げていないということを言いたいと思います。
 ただ同時に、そういうことが実際に出てしまっているわけですから、これは、そういった点も含めて私の不徳のいたすところはあるというふうに思っておりますので、鋭意注意をして臨みたいと思っております。
海江田委員 括弧のところは、「大きすぎてつぶせない」というところ、これは括弧でくくって、これはツービッグ・ツーフェールでしょう。そうでしょう。ツービッグ・ツーフェールという言葉は一言も使わなかったんですか、どうなんですか。
竹中国務大臣 これは英語の問題でありますけれども、オリジナルなインタビューで申し上げたのは、企業の規模とその経営のパフォーマンスの間にどういう関係があるのかと。大き過ぎてつぶせないというふうに勝手に訳しておりますけれども、大きいからそのまま業績がいいということはないんだということを申し上げたんです。だから、市場の厳しいメカニズムの中で大きいところも小さいところも経営効率改善のために努力をしなければいけない、そういうことをオリジナルの英文では申し上げているんです。
 それを、大きいから大丈夫だというのと、大き過ぎてつぶせないというのは、これは明らかに意訳でございまして、そのことを抗議しているわけであります。
海江田委員 ツービッグ・ツーフェールというのはそんなに難しい英語じゃなくて、ここにいらっしゃる賢明な議員の皆さん方はみんな知っているんですよ。だから私は、そのツービッグ・ツーフェールという言葉を、少なくともあなたは、金融担当大臣はお使いになったんですか、お使いになっていないんですかということを尋ねているんですよ。簡単な話ですよ。
竹中国務大臣 ツービッグ・ツーフェールという意味をどのように解釈するかという問題だと思います。まずそのことを申し上げたいと思いますが、それは二通りの意味があるんだと思います。大き過ぎてつぶせないという意味で使うことも確かにありますが、大きいからつぶれない、大丈夫だという意味もある。これは英文をぜひお読みください。その主語は何かをお読みください。私は、そういう意味では、後者の意味できちっと使っているということです。
海江田委員 使っているんでしょう。その二つの意味があると言うけれども、だけれども、もう一つの意味はちゃんとあるんですよ、大き過ぎてつぶせないという。むしろそっちの方が第一の意味なんですよ。そういうふうにみんな考えるんですよ。でも、使っているじゃないですか。このツービッグ・ツーフェールを、こういう状況のもとで金融担当大臣がツービッグ・ツーフェールじゃないですよということを言うのは、やはり不適切でしょう、これは。
 その意味では、この時点での、現に株も急落しましたし、しまったな、間違ったということをお認めになってもいいんじゃないですか。もうこれから言いませんということをおっしゃっていいんじゃないですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますように、その言葉をどのようにとるかというのは、確かに一つの問題であると思います。しかし、それはオリジナルのものを見ていただければ、主語が何であるか等々を含めて、そういうことは申し上げていないということは明白だと思うんです。
 ただ、何度も申し上げていますように、結果的にそういう誤解を招いてしまったということに関しては、これは不徳のいたすところであるというふうに思っておりまして、注意して今後の行政に当たりたいと思っております。
海江田委員 使ったことは事実です。
 じゃ、竹中さん、この記事の、日本語訳ですけれども、これを見ますと、「金融機関の統廃合の結果、四つのメガバンクが残った。巨大すぎてつぶせないのでは?」という質問になっているんですよ。これは何とお答えになります、今の時点で。日本語でいいんですよ。
竹中国務大臣 そのときも次のように答えているわけでありますが、銀行をどうこうすることについて私は言う立場にはありませんということをまず申し上げた上で、一般の企業については、その企業の規模とパフォーマンスの間には、それはそんなに明確な関係はないわけであって、大きい企業も頑張って経営しなければいけない、そういうふうに明確に述べている。それを縮めてそのように編集しているということに対して、今抗議をしているわけであります。
海江田委員 全然、縮めたとか、今のキーワードなんかどこにも出てきていないですよ。「巨大銀行にはそれなりの利点がある。事業規模が大きいため、財務基盤を強化できる。 だが「大きすぎてつぶせない」とは思わない。そういう発想がコーポレートガバナンスを危うくし、モラルハザードを引き起こす。」こういうことを、今おっしゃったことと全然違う、百八十度違う。言ったことでもないことをこのニューズウイークは書いているんですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、これは海江田委員もいろいろインタビューの御経験があると思いますが、そういうものを、言葉を縮めて一つの流れをつくるということは、これは間々あるわけでございます。
 繰り返し言いますが、私は、まず銀行のことにはコメントしないということを申し上げた上で、企業について、企業のコーポレートガバナンスをしっかりさせなければいけないという趣旨で、そのことをそのときは申し上げました。そのことも含めて今正式に抗議をしているところでございますので、重ねて申し上げますけれども、そういうような、大き過ぎてつぶせない銀行はないなどということは一言も言っておりませんし、かつ、しかし、結果的にそういうことが広まってしまっているということに関しては、これは私自身の不徳のいたすところであるというふうに思っておりまして、注意して行政に当たるつもりでございます。
海江田委員 いや、これはもう本当にその場しのぎのことを言っているとしか思えないので、さっきのお話で、ツービッグ・ツーフェールというのはどこに行っちゃったんですか。なくなっちゃった。さっきはツービッグ・ツーフェールということを言ったということを言いながら、言っていないという話になるわけですから。
 これは総理、竹中大臣に柳澤さんからかえたということのこの一番のねらいは何なんですか。やはり不良債権の処理を加速化するということなんじゃないんですか。どうなんですか。
小泉内閣総理大臣 経済の再生を促すために、総合的に金融改革、不良債権処理を含めた対策を、全体をにらみながら竹中大臣に任すべきではないかということで判断したわけであります。
海江田委員 じゃ、もう一回単純に聞きますが、竹中大臣をわざわざ柳澤大臣からかえて、そして金融担当大臣にした一番の思いというのは、これは不良債権の処理の加速化ですよということで言えないんですか、これは。
小泉内閣総理大臣 不良債権処理を加速させると同時に、総合的な対応策、経済財政全体の総合対策をさせるということであります。
海江田委員 この不良債権の処理ですけれども、加速化ということの場合は、やはりどう考えたってセーフティーネットの問題ですね、特に中小企業と雇用の問題をしっかりさせなきゃいけないんですが、私はどうも、冒頭の質問から聞いておりまして、本当に今中小企業の痛みだとかなんだとかがわかっておられるのかどうか。私は、総理と一般の国民、あるいは、もちろんとりわけ中小企業の経営者との間にはかなり乖離があると思うんです。
 総理、この間、四月の十七日に大田区の京浜島というところに行ってこられましたよね。(写真を示す)そして、実はせんだっての本会議での所信表明演説の中でも、京浜島まで行ってこられて、本当に技術を持った企業が頑張っている、これこそ日本の潜在力だというお話をしましたけれども、あのとき、どうですか、例えば北嶋絞という、これは大変優秀な技術を持った会社なわけですけれども、そこだけじゃなくて、その付近を少しごらんになってきましたか、どうですか。あそこだけ見てきたんですか。
小泉内閣総理大臣 いろいろな企業を今までも視察に伺いましたけれども、国会では、特に野党の諸君は悪いところばかり取り上げるから、たまにはいいところも見た方がいいだろうということを言ったわけであります。
海江田委員 野党はいいところも見ていますよ、私だってきのう北嶋絞にも行ってきましたから。
 だから、そうじゃなくて、では、あそこへ行けば、隣の隣の工場はどうなっていました、これは。覚えていませんか、隣の隣の工場はどうなっていたか。
小泉内閣総理大臣 それは全部見たわけじゃないからわかりませんけれども、いい企業ばかりではなくて悪い企業もあるということぐらいは承知しております。
海江田委員 そういうことぐらいは承知をしているという話は、ちょっとこれは今の情勢の認識としては不見識ですよ。不見識です、不見識ですよ。あの二つ先の工場は売り工場じゃないですか。「売工場」と書いてあるじゃないですか。こんな大きな看板、見えてこなかったですか。きのう行ってきましたけれども、見えなかったですか、「売工場」と書いてあるのが。
 それからもう一つですけれども、これがその北嶋絞というところです。京浜島の工業地帯ですけれども、島ですよね。大体二百七十ぐらい組合があるわけですけれども、この赤く塗ってあるところは、いいですか、これは総理が就任をされてからこの十月までの間に、だから一年半の間にこれだけの企業が、これだけの工場がつぶれたんですよ。廃業のところもあるし、倒産のところもあるし。
 こういうところは、やはりそういう認識といいますか、こういう厳しい中で、ごく少数だけれども一つ二つ、あそこでは本当に数えるばかりですよ。しかも、北嶋さんのところも、四月には確かによかったけれども、この夏から大変な状況だと。夏から景気が底を打って回復だと言われていたけれども、実際は全然違う。この十月なんか仕事がない、技術はあるけれども仕事がない、どうすればいいんですかと言っているんですよ、これは。技術だけあればいいというものじゃないですよ。仕事がなかったらどうするんですか、これは。
 そういうことをやはりあの所信表明で言って、大田区の話をしていますから、いつ行ったんだろうかと調べたら、四月じゃないですか。半年前じゃないですか、これは。半年前に行ってみて、それをこの十月に所信表明で言っているというのは、これもおかしな話で、やはりこういう痛みをまずわかって、そしてその後で、痛みもわかるけれども、だけれどもその中でも元気があるということにしなければ、そっちの方の痛みに対する対策は全然手ぬるいじゃないですか。どう思いますか。
小泉内閣総理大臣 悪いところもあればいいところもあるということを言っているのであって、それは、廃業する企業もありますよ。新規産業創出、これにも努力しなきゃいけない。政治の責任で企業をよくする、悪くするということだけでなくて、いろいろな場面があると思います。
 しかし、環境を整えるというのも政治の大きな、大事な役割であります。それを、どこを見ろ、あれを見ろ、そういうことではなくて、全体を見ながら判断しなきゃいかぬと思っております。
海江田委員 いや、それはまさに全体を見てくださいということを言っているわけで、総理はいいところだけ見ているわけじゃないですか。だから、いいところもあれば悪いところもあればという話じゃないですか。いいところもあって悪いところもあるというのは、まあ、大体半分半分ぐらいで、それは半分ぐらい悪いところもあるし半分ぐらいいいところがあるというのなら、それはそれでいいですけれども……(小泉内閣総理大臣「両方見ている」と呼ぶ)いや、見ていないでしょう。では、どこを見てきたんですか、調子の悪いところはどこを見てきたんですか。どこを見てきたんですか、それをおっしゃってくださいよ。調子が悪いところはどこを見てきたんですか。
小泉内閣総理大臣 そういう揚げ足取りみたいなことを言わないでくださいよ。どこを見てきたと、全体を見ていますよ。
海江田委員 揚げ足取りと言うけれども、総理が今そこで、悪いところだって見ているからと言うからでしょう。総理が悪いところだって見ているからと言うから。見ていないんですよ、見ていない。
 では、総理、お尋ねしますが、今中小企業で実際に話を聞いてくると、やはり金融の問題ですよ、融資の問題。特に、年を越して、本当に年を越すことができるのかどうなのかということ、これはやはり解決してくださいということが一つ。
 それからもう一つは、やはり彼らがおびえているのは外形標準課税なんですよ。この外形標準課税について、政府の税調なんかでは、来年の四月からこれはもう実行しますよ、実施しますよということを言っている。我々も、経済が安定をしているときとかあるいは経済が回復をしているときなら、外形標準課税というのも一つの地方税のあり方としては全く全面的にだめだということじゃありませんが、今この時点で来年の四月から導入をするなんというようなことは考えられない話ですよ。まだお考えになっているんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、現在の状況を考えながら、段階的に、中小企業、大企業問わず外形標準課税というのは影響があります。それは、もうけている企業、もうけていない企業も影響があります。そういう点は、総務大臣がよく考えながら、時間をかけて段階的に導入するために、今いろいろな意見を聞きながら準備をしているわけであります。
海江田委員 では、来年の四月に一斉に導入をするということはないわけですね、これは。
小泉内閣総理大臣 総務大臣に答弁していただきますが、今言ったとおり、段階的によく実情を聞きながら導入を図ると言っているんでありますから、よく総務大臣から聞いてください。
片山国務大臣 外形標準課税につきましては、まだ来年度どういう案にするか確定的には決めておりませんが、去年出した案では、大企業と中小企業を分けまして、大企業は平成十六年度から、再来年度から三カ年は四分の一だけ外形標準にする、四分の三は所得課税にする。その三カ年が終わった後、十六、十七、十八、十九年度から二分の一だけ外形標準課税にする。これは大企業ですね。中小企業は十八年度から三カ年、十八、十九、二十は四分の一だけ外形標準にする。十七年度までは今のままです。二十一年度から二分の一を外形標準にして、これを最終の案にする、こういうことでございまして、それから、大企業と中小企業の税額は、これは今の税額のままでいく、全体は増税も増収もしない、こういう案でございます、去年の案が。
 この案をもとに今いろいろな調整をやっております。だから、委員が言われるように、来年度からなんということは一切考えておりません。
海江田委員 それから、もう一度確認をしますけれども、今お話のあった、これは去年の案ですから、これも変わることが大いにあり得る、そういうことですね。
片山国務大臣 基本は去年の案をベースに考えたいと思いますが、細部については、なおいろいろな団体と現在いろいろ相談して調整中であります。
海江田委員 これはやはり変えてもらわなきゃいけないわけですから、急激な回復でもあれば別な話ですけれども、そうじゃない場合はやはりこれはきちっと、外形標準課税で今かなり多くの企業がおびえていますので、これはぜひやっていただきたいと思います。
 それから、やはりもう一つの雇用の問題ですが、総理官邸、首相官邸のホームページを見ますと、「これだけ進んだ!構造改革 見えてきた小泉構造改革の成果」というのがあるんですが、この成果というもので、「民でできることは民に委ねます」「雇用のセーフティーネットを充実しています」「待機児童ゼロ作戦ただいま展開中」「いきいき暮らせるために」、それから、「中小企業のチャレンジを支援します」「不良債権処理を促進します」「世界最先端のIT社会、科学技術創造立国を目指します」と、全部、何々します、しますということで、どれも、これだけ進みましたということじゃないじゃないですか、これは。
 特に、この雇用のセーフティーネットですけれども、「雇用のセーフティーネットを充実しています」「中高年ホワイトカラー離職者訓練、新公共サービス雇用の実施などにより三年間で百万人の雇用を拡大します。」というふうに言われているんですが、本当にできるんですか、これ。
 それから、今までに、先ほども総理は改革の実績は上がっていると言いましたけれども、この一年半の間に雇用はふえましたか、どうですか。
小泉内閣総理大臣 それは、失業者もふえておりますが、ふえている部分もいろいろあります。その具体的な数字については、厚生労働大臣がお答えすると思います。
海江田委員 厚生労働大臣、どこか、この一年半の間ですよ、改革が進んだ成果としてふえているところがありますか、教えてください。
坂口国務大臣 全体から見ますと、二次産業の方は厳しくなっておりますが、三次産業の方ではふえてきていることは御承知のとおりでございます。しかし、トータルで見ると、失業者がふえていることは御承知のとおりでございます。
海江田委員 三次産業だって失業者の方がふえているでしょう。そうでしょう。二次産業がふえるのはもうわかり切った話で。
 三次産業のところで、じゃ新規に、一年半前と比べて、ふえているんですか、どうなんですか。
坂口国務大臣 それはふえているところもございます。先ほどからお話の出ておりますように、介護分野でございますとかそうした医療の分野でございます。そうしたところはふえているわけでございまして、三次産業の中にもふえているところはございます。
海江田委員 今私が聞いたのは、おわかりになっていてああいうお答えになったんでしょうけれども、三次産業トータルとしてふえているということはありませんよね、これは。もうそれだけでいいんですが、どうですか。
坂口国務大臣 ちょっと今具体的な数字を手元に持っておりませんが、三次産業は全体として私はふえてきていると思っております。
海江田委員 この問題は後で数字をきちっと教えていただきたいと思いますが、それから、できましたら分野別にこれはやっていただければわかりますが、少なくとも、厚生労働大臣の認識は、三次産業全体でふえているというんですから、かなり考え違いだと思いますよ、これは。後ではっきりさせますがね。
 それから、問題は、失業者がやはり三百七十五万人ですね。これは完全失業者ですから、もちろんこの下にもう就業の意欲を失ってしまった人たちもたくさんいるわけですけれどもね。この三百七十万人というのは、ちょうどニュージーランド一国ぐらいの人口の規模なわけですね。それから、日本でいいますと静岡県一つぐらいの人口でありまして、やはりこの三百七十五万人、静岡県の人口と同じぐらい、あるいはニュージーランドの人口と同じぐらいが失業者というのは大変悲惨な話でありまして、しかも、この三百七十五万人のうちでも、結局、実際に失業給付を受けている人たちというのは百十万人ぐらいしかいないわけですよ。
 そうすると、残りの二百何十万という人たちは、本当に、果たしてきちっとどうやって生計を立てているのかということ、そういうことにやはり思いをいたさなければいけないと思うんですがね。どうやってその人たちは食べているんですかね、これは。
坂口国務大臣 これも、私の方も調査をいたしております。雇用保険で生活をしておみえになる方もございますし、それから、失業者の中にも年金等で生活をしておみえになる方もございます。それから、そのほかは、家族の支援によって生活を立てておみえになる方もおみえでございます。それから、失業者が、年齢によりましてこれはかなり差があることも事実でございまして、そうしたことも踏まえてやっているところでございます。(発言する者あり)
海江田委員 今委員の方から、本当に若い人たちの実情を見ろと。ヤングハローワークなんというところもありますけれども、本当に厳しいんですね、これは。もちろん、若い人たちだけじゃなくて、中高年の人たちもそうですけれども。
 私は、やはり今の雇用保険の、これは総理にも聞いておいていただきたいわけですけれども、今の雇用保険の制度というのは、大体失業率が二%、三%ぐらいを前提にして、給付の中身でありますとか、それからあと保険料率でありますとか、そういうのが決まっているわけで、これが五%、六%というような話になってくると、実は今の雇用保険の制度そのものがもうおかしくなってしまっているんじゃないですか。もうたえられないんじゃないですか。
 ですから、例えば六%とか七%とかいう話になったら、これは当然この雇用保険の制度を超えたところからの財源の措置、そういうものもやはり考えなきゃいけないんじゃないですか。どうですか、それは、厚生労働大臣。
坂口国務大臣 雇用保険の見直しにつきましては、現在進めているところでございます。確かに、二、三%のときと五、六%のときでは、厳しさというものは、それは違うことは当然のことでございまして、それに対しまして、今後どういうふうに最も必要なところに雇用保険を渡していくことができるか、給付の面をまずどうするかということを中心にしながら、トータルで現在検討を進めているところでございます。
海江田委員 これは、やはりここまで失業者がふえてくると、例えばそういう、もうこれまでの、従来の雇用保険の枠組みとは違うところの問題になったんだということになれば、例えば来年の春からまた雇用保険の保険料の値上げなんというようなことは出てこなくなるわけですよ。
 今そういう、せっかく仕事を持って働いて給料がある、この給料も減ってはいますけれども、だけれども、そういう人たちにまで今度来年の春からまた雇用保険の保険料が上がるよとか、そういう話になったら、そこの人たちもどんどんどんどんそれこそ縮んでいってしまうんじゃないですか。だから、これは一刻も早く方針を出すべきじゃないですか。どうなんですか。
坂口国務大臣 これは総合的な雇用政策の中で進めていかなければならないというふうに思います。雇用保険だけを見てやるのではなくて、全体の総合的な雇用政策の中でどうするかということをやはりやらないといけないというふうに思っている次第でございます。
 ですから、そうした立場で現在すべてを進めているわけでございまして、もし不良債権処理という問題がさらに加わってくれば、さらにどうするかといったこともあわせて今検討をしているところでございます。
海江田委員 今度、小泉さんにお尋ねをしますが、やはり小泉さんはどちらかというと、改革の中で、構造改革とおっしゃいますけれども、サプライサイドといいますか、不良債権の処理もそうですけれども、そちら側の改革に大変力を入れていますけれども、もう一つ、やはり本当に、需要サイドといいますか、やはり国民が豊かになるためとか、ゆとりを感じるためとか、そういう、本当に国民生活の向上に直結をするような需要サイドの政策というものにもっと力を入れる必要があるんじゃないですか、全体の小泉さんの思っている政策の中で。どうですか、それは。
小泉内閣総理大臣 十分需要サイドの面も考えて今構造改革を進めているのであって、いわば介護の面においても、あるいは環境の面においても、教育の面においても、潜在的需要はたくさんあるんです。その潜在的需要をいかに顕在化させるかというための改革を進めている。
海江田委員 あなた、潜在的な需要、潜在的な需要と言いますけれども、例えば住宅問題なんか一つとっても、本当に具体的な青写真が全然出てきてないじゃないですか。(小泉内閣総理大臣「出てる、出てる」と呼ぶ)じゃ、どういうのが出ているんですか。
小泉内閣総理大臣 具体的な点は、住宅というと国土交通大臣かもしれませんけれども、今、中古住宅なんというのは非常に流通がおくれていますね、日本というのは。そういう点について、なかなか住宅が売れない、あるいは移り住めないという点も、中古住宅をいかに借りかえたり利用しやすくするか、そういう面について何万人の雇用が出てくる。あるいは、サービスの面におきましても、介護だけではありません、教育の面においてもあるいは規制緩和においても、総体的に言って、五年間で約五百万人の雇用創出ということをかなり具体的にやっているわけであって、住宅の面につきましても、今、担当省庁が総合的に取り組んでおります。
海江田委員 せっかく自分から進んで出てきて、お話があるというふうな雰囲気だったので、国民に対するどんな夢と希望を与えるようなのがあるかと思ったら、そんな、中古住宅の流通をと言って、あれは確かに小泉さんの構造改革の雇用の中に入っているんですよ。年金受給者の送り迎えをするタクシーの運転にというのと、もう一つが中古住宅の……(小泉内閣総理大臣「よくわかっている」と呼ぶ)それはそうですよ、勉強していますから。あと、車のということですが、だけれども、あれはやっていないじゃないですか。できていない。それの準備を今やっているという話じゃないですか。やっていないじゃないですか、それは。
 それから、住宅なんかでは、もっと国民に夢を与えてください。例えば床面積倍増計画だとか、できますよ、そういうことは、本当にやろうと思えば。
 そして、しかも私は、やはり住宅の問題というのは、本当に今、潜在的な需要ということを言いましたけれども、一番大きいわけですよ。国民が何を欲しているか。洋服だとかなんとか、もうたくさんあって。日本経団連の奥田さんも言っていましたけれども、あの方はもちろん自動車の出身ですけれども、今この時期は住宅なんだと。車は部品が十万点だけれども、住宅は、部品とは言いませんけれども三十万点だ、経済の波及効果も大きいし、しかも、何よりも国民が本当にゆとりを感じられるようになる、これでなければだめだということをおっしゃっているんですよ。
 だから、そういう住宅政策を、それこそ床面積倍増、だけれども、床面積倍増だけれども、都心部においてはそう倍というわけにいかないだろう、だけれども、例えば公団住宅なんかたくさん余っているわけですから、あいている部屋が隣にあったらそこを買って倍にして、そこに住んでいる人は、どこかこっちにあいているところがあれば移っていくとか、そういうことをもっともっとやらなきゃいけないですよ。本当にやっているんですか、これは。
 余り長くはだめですよ、もう時間がないんだから。あなたが来ると長いから。
扇国務大臣 いろいろな、住宅も、あるいは雇用政策もまとめて先ほどから伺っておりますけれども、我々としてできる部分、また、痛みを感じている国民が直接、特に中高年層が一番苦しいところということで、住宅ローンも、返せない、そういうところも十年間延長して、私たちは融資の問題も考えております。
 それから、今海江田先生がおっしゃいましたけれども、住宅も、狭いというのは当然のことで、今までやっと住宅公団でやってきたわけですけれども、日本の大都市圏の平均というのは、大体、少なくとも、皆さん方がお住まいになっている住宅も、半分しか面積がありません。そのために倍増しようというのは、それは、高齢社会を迎えて、今の住宅が、少なくとも総住宅の三%しかバリアフリーができていません。ですから、廊下も広くし、車いすが通れる、段差をなくす、あらゆることで我々はその政策をとっていこうということで実行しておりますし、また、現に住宅金融公庫も、今おっしゃったローンの延長もしておりますし、あらゆる面で。
 それから、さっき雇用の問題をおっしゃいましたけれども、雇用の問題も、我々は、皆さん方のおっしゃるとおり、これから日本は、例えば、今、国民のとおっしゃいましたけれども、平均の月給の皆さん方が、有給休暇、年次休暇、平均しますと十八日間有給休暇とれるんですけれども、九日間しかとっていないんですね。それをとっていただくと、この経済効果というのは十二兆円なんです。そして、この十二兆円の経済効果と、雇用も、これは百五十万人の雇用の創出ができる。そういうことも含めて、住宅も、そして第三次産業の主管の観光も今後やっていきたいというふうに考えております。
海江田委員 国土交通大臣なんですから、今のは厚生労働の方まで踏み込んで発言がありましたけれども、やはりそれを言うんだったら、女性の雇用なんかの問題をお話しになった方がいいんですよ。我が党は、ちゃんと、女性の育児とそれから働くことが、仕事の両立支援法とか、そういう話をやっているんだから。だから、それだったらば、女性なんですから女性のそういうところがこれから大事だとおっしゃった方が、そのほかの話はあれですよ。
扇国務大臣 女性だから私、選ばれているわけじゃないんです。(海江田委員「もちろんそうですよ」と呼ぶ)だったら、女性の声――女性は女性のことだけしろというような言い方にしか聞こえません。
 我々は、厚生労働省と一緒になって、女性の問題も男性の問題も、国民全体の問題を我々は考えてやっております。
海江田委員 いや、それは、今女性だからと言ったのは撤回をしますが、だけれども、女性の雇用の問題がどこかから聞こえてきてもいいじゃないですか。どなたからもないじゃないですか、それは。最初にそうやって厚生労働省の話をしたんだから、そういう話をしてもいいんじゃないですか。そういうことをお話ししたわけです。
藤井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。海江田万里君。
海江田委員 改めまして、小泉内閣が発足をしまして一年半でございますが、小泉さんは改革が着実に進んでいるということを言っておられますが、その中でどういうふうに国民は痛んできたか、経済は痛んできたかということを改めて一つの表にまとめましたが、名目のGDPでは十七兆円ですね、完全失業者は五十五万人ふえた、企業の倒産は千百二十六件ふえた、自己破産は二万一千百三十九件ふえた、不良債権は九・六兆円ふえた、それから東証時価総額でございますが、百三十七兆円減った。
 特に、この名目のGDP、それから東証の時価総額ですね。百三十七兆なんというと、国民の方はなかなか、まあ何千万とか何百万なら意識がわかるわけですが、何兆円というお金になるとなかなか実感が伴わないものですが、やはり一兆円というのは、一億人が一万円ずつ負担をすると一兆円という計算ですから、その意味では、株だけをとってみても一億人が百三十七万円、この間やはり財を失ったということであります。もちろん小泉総理は、まだ改革の途上だから改革には痛みはつきものだというふうにおっしゃるんでしょうけれども、やはり、その改革の先にどういう日本の社会があるのかとか、こういう痛みがいつまで続くのかということをしっかりと国民にお話をして、そして、もちろんその痛みをできるだけ和らげるための輸血なり麻酔なり、そういうものをやらなければいけないというふうに思うわけでございますが、この数字を改めてごらんになってどういうふうに思われますか、どうですか。
小泉内閣総理大臣 厳しい状況にあるのは事実だと思っています。こういう厳しい状況があるからこそ、より各方面にわたり総合的な改革が必要だと思っております。
海江田委員 厳しい情勢があるからこそと言いますが、私がここにあえて括弧つきの「小泉「改革」」というふうにつけさせてもらいましたのは、やはり本当にこういう改革でいいんだろうか、もちろん、改革を今否定する人はだれもいないわけでございますが、やはり改革の中でも、国民に対してあるいは中小企業に対して、しっかりとした目くばせを、気配りをしていかなければいけない。それから、気配りや目くばせだけじゃなくて実際的な手当ても行っていかなければいけないということでありまして、特に、やはり総合的なパッケージといいますか、そこのところが全くおくれている。
 本当でしたら、そういうものをこの国会の予算委員会が始まるまでに出していただいて、あるいは国会が始まるまでに出していただいて、そして、そういうものをもとに、私どもも政府とお話をしたい、討論をしたいわけでございます、議論をしたいわけでございますが、大変残念ですが、そういうものが全く出ていないということですから、月末までにお出しになるということをおっしゃっていますが、今度はもうこの月末までにというのをたがえるようなことはございませんね、これは。
小泉内閣総理大臣 今度はといいますのは、当初から月末にまとめると言っているんです。予定どおり進めていきたいと思います。
海江田委員 またそういうことをおっしゃると、この問題で時間をとることになるわけでございますが、不良債権の加速化の問題でも、中間報告を出すと言いながら実際には出せなかったとか、それから、やはりこのパッケージの話だって、二十五日という話もあった。二十五日、あしたなわけですよ。それがいつの間にか延びたわけですから、やはりここはぜひ月末までに出していただきたいということですが、このことだけで言うと、私は今度は、午後は持ち時間がたったの十五分ですのでこれ以上深追いはいたしませんが、しっかりとしたものを出していただきたい。そして、それが出たところでまたこういう予算委員会を開いて、しっかりとした議論を続けなければいけないと思うわけでございます。
 財務大臣にお尋ねをしますが、証券税制、この証券税制も、これから年末までに議論をして、来年のいわゆる年度の税制改正で処理をするというようなお考えですか、これは。
塩川国務大臣 これは、来年の通常国会で税制が通りまして、適用されるのは、来年の一月一日からいたしたいと思っております。
海江田委員 ただ、来年の一月からでございますが、これは大変大きな変化があるわけですね。源泉分離課税が申告分離課税になる。自分で申告をしなければいけない。あるいは、証券会社は特定口座というようなことを今一生懸命進めておりますが、ただ、これは大変わかりにくい制度でございまして、それから、今のような状況のもとで申告分離にすることの意味合いですとかいろいろなことがございまして、私どもは今党の中で議論をやっているところでございますけれども、例えば、何年か期間を限定して、キャピタルゲインを非課税にしようとか、そういうアイデアも出しているわけですよ。
 これは、やはり今、ことしのうちに、適用になるのは一月一日ですけれども、今まさに準備期間であって、例えば昔買った株があると、今度は申告ですから、その買い値が幾らかということを証明しなければいけない。証明がない場合はいろいろな計算方式でもって決められるということになって、今実際に起きているのは、それこそクロス取引なんといいまして、まず自分の持っている株を一回売って、そしてそれと同じ額の株を買えばまだいいわけですけれども、手数料が行って来いで取られますから、売ったときは一万株だけれども、買うときは今度は九千株になるよとか、そういう動きがもうずっと広範に起きているわけですよ。
 ただ、一部の人は、場合によっては変わるんじゃないだろうかということで、今、政府の動きですとか国会の動きに非常に注目をしているわけですよ。そのときに、いや、もうことしは結論は出ないんだよ、法案も出さないんだよということになったら、全部やはり、まさにこれから年末までの間に、そういう売ったり買ったり、あるいは、こういう時代ですから、売るだけにしちゃって、もうやめようというふうなことも起きるわけで、私は、この問題というのは喫緊の課題でありまして、やはりこの年内に、しかもこの国会の間に結論を出す問題じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 事務的には相当煮詰まってきておりまして、しかしながら、御存じのように、税というのはすべて法律になってきておりまして、その手続を経ていかなきゃなりません。それに、法案として提出するまでの準備に、それぞれの委員会とかあるいは必要な政党の協議とか経ていかなきゃなりませんので、その時間が若干かかりますけれども、でき得ればこの国会中に、理解していただく範囲内においてきちっとしたものを出していきたいと思っております。
海江田委員 それでは、この国会中に、証券税制については見直しの法案を出してくる可能性があるということですか。
塩川国務大臣 法案とおっしゃいますと、それはなかなか難しい、先ほども申しましたように、手続が要りますから。ですが、理解していただくのには十分なものは決める、こういうことであります。
海江田委員 これは、本当の対決法案でありましたら時間もかかるわけですけれども、今、私どもも内部で議論をしているところですが、そういうような案もこれありということもありますので、これは、一番よろしいのは、こういう考え方を出していくんだと言いますけれども、実際に法律が成立をしませんと、また、いろいろな情勢もあるわけですから、それはやはり、本当の意味で安心を与えるという意味からいうと、これはできるだけ早いときに法案化をして、そして国会にお出しをいただくということが私は一番いいということは申し添えておきますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 おっしゃる御趣旨に沿って、できるだけ早く御理解していただいて準備をしていただく、来年一月が適用でございますから、準備していただけるようにしたい。
 それからもう一つ、今、特定口座制をやっておりまして、これが非常に複雑で、私ら自身が聞いても、損やのか得やのかわからぬようになっておる。そういうことでは普及もできませんので、これは、すっかりとわかりやすくして、そして手間のかからぬように、そのかわりに証券会社も少しは汗をかいてもらうということを義務づけていこう、こういうことでやっていきたいと思っております。
海江田委員 財務大臣がわからない仕組みにするということ自体、大変大きな問題なわけです。私自身は別にそういう勉強会に行っていませんけれども、行ってきた人の話を聞きましたら、どうだったと聞いたら、いや、わからないことがよくわかったということを言っておりまして、そういうものでございますので、これは本当に可及的速やかに直されるべきだと思います。
 本当に時間が限られてしまいましたけれども、日朝首脳会談の話にも触れないわけにはいきません。
 やはり国民にとりまして拉致の問題は大変重要な問題でございますが、その後、新たな問題が起きてきたということでございます。これは、言うまでもございません、核の問題でございます。
 総理は、この十八日、国会の冒頭に当たりまして所信表明演説が行われましたけれども、私どもは数日前にその草稿、原稿を印刷したものをいただくわけでございますが、そこには核疑惑というような表現がございましたね。それを総理はどういう形で実際に演説をされるかということで聞いておりましたら、核問題という形で言いかえをしておりましたけれども、疑惑という表現と、それから核問題、まさに核の開発というものが継続して行われていたということについては、この間の問題というのはやはり日本の安全保障にとっては大変大きな問題があるというふうに思います。
 とりわけ、その後、総理は講演で、核の査察につきまして、金国防委員長は査察の全面的な受け入れを約束したというような講演でのお話があり、そして、その場に居合わせました、日朝の会談に居合わせました官房副長官は、いや、そういう確約はしていないんだ、発言はなかったんだということですが、実際にこの日朝の首脳会談の中で、核の開発の問題について総理はどのように北朝鮮側にただしたのか、それに対してどういう答えが返ってきたのかということをお聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 具体的に一語一語こう言ったということは差し控えますが、核の問題については米朝だけの問題ではない、その間いろいろやりとりがありましたけれども、日本にとっても大きな問題なんだ、そういうことから、核の問題はおろそかにできない。そして、この日朝平壌宣言の、盛り込まれた宣言にありますように、「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。」こういう文言どおりに、これは誠実に、査察等の問題、国際協定の問題、こういう問題についても、今後、日本としては重大な関心を持っているので、ミサイルの問題も含めて、脅威の除去に努めるべきだというような話し合いをしたわけであります。
 結果的にそういう日本の主張が十分盛り込まれてこのような日朝平壌宣言に至ったわけでありますので、今後、この安全保障上の問題につきましては、日朝間だけでなくて関係諸国上の大きな懸念でもありますので、この点については、十分アメリカや韓国と連携をとりながら進めていかなきゃならない問題だと認識しております。
海江田委員 私どもは、この「関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」という表現だけではやはり不十分だろうというふうに思っておりますので、ここでは本当に核が開発をされておって、そして、それに対する我が方の絶対にそういうことは許しちゃいかぬのだという決意が盛り込まれていないということでございますので、この問題は、ぜひこれはしっかりとこれからの日朝交渉の中で取り組みをしていただきたいということでございます。
 それからもう一つだけ。イラクの攻撃の問題で、実は各議員の皆さん方に、「チルドレン・オブ・ザ・ガルフウオー」という湾岸戦争のときの子供たちの写真集があるわけでございますが、この中で、劣化ウラン弾の問題ですね。これは、もう一つの、別の核戦争だというような表現もございまして、私は、こういう問題を大変危惧しておりますので、日本ももっと、一部のNGOの方々はこういう支援活動をやっていますが、政府も、こういう劣化ウラン弾、間接的に被曝をしたり、あるいは直接的に被曝をした子供たちの救助のため何らかの形の救済の手を伸べるということが必要なんではないだろうかというふうに思うわけでございますが、総理、いかがでしょうか。
川口国務大臣 劣化ウランの問題につきましては、私どもも関心を持っておりまして、きちんとそのように対応をしていきたいと思っております。
海江田委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
藤井委員長 この際、五十嵐文彦君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
 昨年の五月の末に、当委員会で私が総理に対して、小泉構造改革というのは、かば焼きのにおいだけはさせているけれども、なかなか焼き上がってまいりませんねということを申し上げましたが、一年半たってまだ焼き上がっているとは言えない、かば焼きじゃなくてマツタケを焼いちゃったんじゃないかな、こう思っているわけですが、マツタケのにおいどころか、最近ではもっときな臭いにおいがしている。それが大島農水大臣の前秘書官の疑惑問題でございまして、これは、こういうことをやっているから公共工事をやりたがる人が与党の方には多いのかな、あるいは、こういうことをやっているから日本の国は、こんなに国民が税金を払っているのに、なかなか社会資本の充実が図られないのかなというようなことを思わざるを得ない。こういう仕組みをやらせない、させないということ自体が構造改革なんだろう、そう思うわけであります。
 そういう観点から、今回の問題の事実関係を、時間がありませんので、恐縮ですけれども農水大臣、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
 これが問題となっている八戸市立市民病院です。(写真を示す)大変巨額の、二百億円を超える額をかけて整備されたというふうに聞いておりますが、この八戸の市長さんも助役さんも、大島さんと大変親しい関係の方だというふうに伺っているところでありますが、そこでこの工事の一部業者、下請を中心とする一部業者をめぐって口ききが行われて、下請業者から多額のお金が集められて宮内寛さんという前秘書官に渡っていた、こういう疑惑が出ているわけであります。
 週刊誌に取り上げられていますけれども、週刊誌だけではなくて、そのずっと前に、ことしの春にも毎日新聞が、実は匿名ではありますけれどもこの疑惑を取り上げて、かなり細かく書いているんです。それから、日経新聞にも出ておりますし、週刊誌が出たから急にという話では実はありません。これは構造的な問題だとして、日刊紙の記者たちもずっと追いかけている問題であります。これが宮内さんの問題になっている御自宅、世田谷区桜丘三丁目だと思いますが、我々がとても手が出せないような高級住宅地であります。そこに家と土地を買ってしまった、そして、その前に持っていたマンションのローンの残債を一括弁済してしまったということがあったために発覚をしたというふうに理解いたしているところでございます。
 この八戸市というところはすごいところで、ここで工事をとると、とにかくくぎ一本に至るまで業者さん、孫請業者まで指定をされて、そこで決められていく、末端まで業者が決められていく、そういう風土があるんだというふうに私の調査ではなっているところであります。
 ここに、週刊誌上あるいは新聞紙上では匿名になっておりますが、もちろん実名も知っておりますし、実は証拠となる国会の手帳の実物の中身も知っているわけでありますけれども、このコンサルタント会社社長Aさんが、まだ名前を出さないでほしいということでありますので、私もAさんとして話をさせていただきたいと思いますが。
 実は……(発言する者あり)余計なことを言わないようにしてください。実は、このAさんという方は、週に二、三回大島さんの議員会館の事務所を訪れる関係であった。宮内さんとは大変親しい関係でありまして、Aさんのところから通じて、介してというふうになっておりますけれども、実は、実質上宮内さんの口座が、都内の中小の金融機関ですが、中小金融機関の貸し金庫に口座がありまして、そこに順次お金が振り込まれていく。単にその名義人に頼まれていて、名義人だから、本人が行かないと貸し金庫からお金をおろせない。それで、たまったころに幾ら出してくれと言われると、そこへ、名義人ですから、頼まれたとおりに額を言って出してもらって運ぶだけというのがAさんの役割だというふうに私どもの調査ではなっているわけで、ですから、事実上これは宮内さんのお金なんですよ。だから、途中で取ったとか取らないとかいう話じゃなくて、最初から振り込まれたお金を一時プールしておくだけ、プールされたお金を自分の名義にたまたまさせられたので、それを運んでいるだけという関係だというふうに承知をし、そのように証言をされているわけであります。
 それで、この豪邸の費用なんですが、その費用が、残債分が多分一千万円程度、前の上用賀のマンションを売却した際に一括返済したその残債が一千万円程度。そして、この豪邸が土地建物で一億一千万円程度。そして、そのうち七千数百万円の抵当権がついておりまして、ローンが組まれているということで、頭金は四千万円程度実はあったであろうということを御本人も、宮内さん自身も取材に対して認められている。すなわち、合計で五千万円を超える額が突如として宮内さんの懐から出ていった。
 この原資は一体どうなるのかということでこの問題が出てくるわけでございます、つじつまが合わないじゃないかということで。そこで遺産相続というお話が出てきたんですが、調査によると、遺産をめぐって御親族間でいさかいがありまして、それで、現金で渡っているのは一千万円程度だということですね。そうしたら、突然、宮内さんの方で説明を追加いたしまして、変えてというか追加して、実は母からの生前贈与があったと。
 しかし、生前贈与は不自然なんですね。なぜ不自然かというと、ごきょうだいがおられまして、ごきょうだいは生前贈与を受けておられないのがある程度証明されているということで、女性のごきょうだいがおられるのに、稼ぎ手である男子のお子さんにだけ生前贈与が多額に行われるというのは不自然であるということもありまして、どうも出どころがやはり説明し切れていないじゃないかということなのであります。
 以上、まとめて、筋がわからないとテレビを見られている方にもわからないと思ってお話しをしたわけですが、以上のような事実関係について、どのような弁明を御本人から大臣は受けているのか、お知らせをいただきたいと思います。
大島国務大臣 五十嵐委員にお答えを申し上げます。
 今、写真をお見せいただいたり、私も初めてその住宅の写真を見るんでございますが、さまざまな御指摘をいただきました。
 十月二十四日に週刊文春に報道されて、そのことに関して、まさに住宅資金というものについて前秘書官が口ききで得たお金を財源に充てて一軒家を買ったのではないか。あるいは、今御指摘いただいたように、相続の問題についても食い違うのではないか。いずれにいたしましても、そういう市民病院のことに関して彼が口ききをして得た収入をもって、それを財源にして家を建てたのではないかという報道がされましたので、ある意味では私も五十嵐委員と同じような問題提起をいたしながら彼に問いただしました。
 そのことを、数字のことでございますので、恐縮ですが、簡明にといっても、やはり数字でございますから、厳しく私自身彼に問いただし、そしてまたその周辺からも聞いたことを申し上げさせていただきますので、御容赦くださいませ。
 支出から申し上げますと、一戸建て、一千百万円だそうでございます。マンションは、これは繰り上げ返済で、今御指摘ありましたが、一千百六十万円、諸雑費が六百九十二万円、利息が九十四万で、一億二千九百四十六万の経費がかかった。
 一方、その手当てはどうしたのかといいますと、頭金の判明分、後ほど申し上げます、五千百五十万円、ローンが七千百万円組んだそうでございまして、合計で一億二千二百五十万で、不足分が、私が調べて彼から報告を受けた分においては、六百九十万強、出所がわかりませんでした。
 さて、その頭金の判明分でございますが、大和銀行の衆議院支店、これはほとんど平成七年と思ってくださいませ。財形貯蓄解約約百七十四万円、定期預金解約一千二十万、これは城南信用金庫用賀支店でございます。定期預金解約二百五十五万、城南信用金庫用賀支店でございます。投資信託解約、これは大和証券の成城支店分ですが、一千七十万。MMF解約、これは三洋証券赤坂支店ですが、百一万。それから、さくら銀行世田谷通支店の普通預金五百三十三万。さらに、奥様のお父様から二回に分けてさくら銀行世田谷通支店に三百万と二百万ございました。
 そして、御自身の先ほど遺産の話がございました。これは確かに、後でまた申し上げますが、お母様の一千二百万、すなわちお父様からの遺産が一千二百万、プラスお母様の手持ちが三百万で、実母からの贈与という形で一千五百万もらいました。計約五千百五十万ぐらいということでございました。私は、このことの数字だけではわからぬ、何かこれを裏づける資料をくれないかということも申し上げました。
 そうしましたら、彼の奥様から、今、恐縮でございますが、ここに普通預金の通帳まで入っております。私もこういう事態にたびたび遭いましたので、このように今でも使っておる通帳をここに入れて、全部これを裏づける、ある意味ではその資料をここに持ってまいりました。
 以上が概要でございまして、今私ができる最善の彼に対する厳しい要求もしましたし、率直言ってプライバシーの、本当に家庭の中まで調べてくれ、こう言って持ってきた資料でございます。
 以上が、今の五十嵐委員に対するまずお答えにさせていただきます。
五十嵐委員 つじつまの合わないところが随分あるわけですね。最初に取材を受けたときに、なぜ遺産相続三千五百万、それから母からの贈与一千五百万というようなことを言ったのかどうか。それがまずつじつまが合わないんですよ。
 それから、A氏は、そういう口座があって渡したというメモをお持ちであって、自分が猫ばばされたと思われてはこの後仕事ができないから困るんだというお話までされているんです。それはどのようにお返事をされているのかという問題が残っている。
 それから、このAさんに対して、大島代議士本人が、九七年十月一日に赤坂の料亭でありがとうというお礼の宴席を設けて、ネクタイまで渡している。あるいは、大島代議士の事務所では、一回のようですけれども、これはA社長からということでお金をもらって、事務所のそのほかの秘書さんに渡して、宮内氏が、事務所経費に充てたという話が出ているわけですね。これらについてどのようにお返事をされているのか。
 また、まとめて恐縮ですけれども、それからもう一点、今の資料ですけれども、必要資料は、まずいところは何か消していただいても結構ですから、理事会に提出をいただけるかどうか、お返事をいただきたいと思います。
大島国務大臣 五十嵐委員から何点か御質問があったと思います、今。
 一つは、遺産のところの話が一つあったと思います。それから、A氏と宮内の関係が一つあったと思います。それから、私がA氏と会ったことがあるかというお話ではなかったか。大体そういう質問でよろしいでしょうか。最後に、この資料を出すかどうかということですね。
 まず、贈与についてちょっと申し上げさせていただきますが、確かに彼のお父様が亡くなりましたときに家裁の調停というものがありましたから、それは公の記録として残っているわけでございます。お兄様が三千万、そしてお母様とお姉様の二人分として一千二百万の配分があったと私に報告がございました。不動産の名義等は、ここは質問がありませんので申し上げませんが、自分の住宅の取得のときに、お母様とお姉様がさらに相談して、その一千二百万に三百万を追加したものをくれたのだという報告でございました。それらは本当に、これもその経過もしっかり説明しなさいということで、彼の実のお姉様から、その経過を詳しく書いたものがここに入っております。
 それから、なぜ、最初に答えたのと今の報告と違うではないかと。御指摘のとおりでございます。彼からその点も伺いましたら、十二日の夜でございましょうか、文春の記者がおいでになって、いきなり聞かれましたと。私もこれは調査する経過の中でわかったことでございますが、そういう資金関係は全部奥様がやっておられた、しかし自分の記憶の中で答えたことと実際に調べたことの違いがあったのは申しわけないということは言っておりました。
 もう一つ、そのA氏との関係を含めて申し上げますと、少々これは事実とあれでございますから。この問題の最大の報道のポイントは、彼が、おまえは受け取ったことがあるのかないのかということで、私も厳しく問いただしました。そうしましたところ、受け取ったことはございませんと。であるならば、それを受け取っていない証明をするのは難しい。難しいけれども、一番問題になっている家の原資をしっかりとおれに説明することだ。ですから、ある通帳、なかったら銀行にお願いしてまでも取り寄せてくれ、こういうことで、実はここに全部、今私がとり得るものは、先ほど説明した、まさに今使っておる通帳までも、生のものをここに入れてあります。
 そういうふうなこと、これは奥様が病弱でございますけれども、本当にもう七年前のことも銀行さんにお願いして出させていただいたのもあるようでございます。そういうふうなものも含めまして、彼からはまさに家の住宅資金が自分に、大島に理解できるように説明できない限り、この問題の解決にはならぬということでそうさせていただきました。調査をしたわけでございます。
 それから、A氏とおまえは会ったことがあるのか。きょうの週刊文春にそういうことが載ったようでございまして、そのことについて、私のことでございますから、早速に日程を、記録があるかないか調べなさい、こういうふうなことでございましたら、ちょうどその指摘をされている日に今言われた料理屋さんに行くという日程が入っておりましたので、そして、そのときには三カ所ぐらいの日程が入っておったそうでございます。ちょうど私は国対の副委員長か議運の筆頭理事かどちらかやっていたと思いますが、したがって、そこには行ったという事実は確かでありましょう。そして、そういうところで、多分その方にお会いしたということも事実かもしれません。
 そして、そこにも、私も原稿を見ましたが、九七年十月一日十八時、大臣はと書いてありますから、これは私はですね、ビールを三杯飲んで帰った。私、ビールが好きでございますから三杯ぐらいは飲んだかもしれませんが、そんなに長くはいなかったということは、ある意味じゃ事実だと思います。
 ただ、七年前のことを、そこの、ネクタイをやったのかやらなかったのか。多分ここには宮内も同席したと私は思いますので、彼が用意したのかわかりません。そこはもう一度彼に調べてみますが、そのことは事実でありますけれども、その週刊文春さんの報道があって以来、Aさんという人の顔が私すぐに、覚えがないものですから、これも前秘書官に、Aさんというのはどういう人で、そして私とどのぐらい会っておる、こう言いましたら、パーティー等で数回お会いしているかもしれませんという返事でございました。
五十嵐委員 記事の中には、九五年だけで二千百万円のお金が渡っているという話になっています。
 今のお話で納得し得ない。秘書さんというのはサラリーマンですよね。サラリーマンの秘書さんが、ぱっと言っただけで三千万の預貯金を持っておる、そして七千百万のローンを組めるというのは、恒常的に口ききして収入がほかになければこれは無理ですよ。最初から七千万もローンは秘書さんの給料では組めないし、認めないですよ、銀行は。かなりの収入がなければこれはないし、そのもともとの貯金も怪しい。
 私はもらっていないというのは、口ききをしたことは認めているんですか。口ききはしたけれどもお金はもらっていないということですか。
大島国務大臣 先ほど、最後の御質問というか御要請にまだ答えていませんでした。五十嵐議員も忘れたようでございましたので。その資料をおまえは出せるか、こういうことでございます。
 私は、人間にはだれでもプライバシーがございます。五十嵐委員にもあると思うんです。宮内にもあると思うんです。そのぎりぎりの中で集めたものでございます。そういうことを前提に、委員長にお預けいたしますので、理事会で御協議いただき、その取り扱いについてはそういうことを、これは私身ぎりの話ではございません、国会の慣例にもなります。そういうことで御協議いただいて、御要請があれば、そのやり方等は十分考えていただき、この資料を委員長にお任せして結構でございます。
 それで、今の御質問ですが、普通のサラリーマンに三千万もの現金をぽんと出せるかという御質問が一つございました。
 私は、まさに先ほど説明申し上げたところの中で、自分で、宮内自身が実際にそれじゃ働いて得た金はどのぐらいあるのか。そして、お父様、お母様、あるいは亡くなられたお父様からのお金、そういうものを除いて、実際に彼自身が集めた金が約三千万強あるんだろうと思います。これは五十嵐委員がおっしゃるとおりだと思います。
 それで、その件に関しまして、私も問いただしました。そういたしましたところ、幾ら代議士とて、私のそこまでおっしゃるのですか、夫婦共稼ぎしておったこともございます、大学を終えて以来三十年働いてきたつもりです、そのお金と私は報告をいたしますということでございました。したがって、そのことについて、その原資は何かというところまで私も聞きましたけれども、それは、大学を終えて秘書の仕事に入って約三十年間、彼自身の奥さんも共働きしたこともございますということでした。
 それから、口ききをしたことがあるのかということに対して、口ききかどうかということの概念はまた別にしまして、秘書の仕事というのは、いろいろな人が来れば、いろいろな人を紹介したりすることはございます。そして、そういう中に市民病院関係でもあるのかと言ったら、発注元にはございません、紹介をし、それはあいさつ程度の紹介はいたしました、しかし、その見返りに金銭を受領したことはございません。そこは、私も何回も確認し、そして、そういうふうなことを示すためにも、家の自己資金の概要だけはきちっとしろということで、こういう資料まで取り寄せたところでございます。
五十嵐委員 大島大臣、大変申しわけないんですが、なお調査を続けていただきたい。一つは、七千百万円のローンですね。その後、それについても繰り上げて、割り増しで弁済をしている事実があるかないかを調べていただきたい。この余のことは同僚議員がまた……(大島国務大臣「ちょっと間違っているところがありましたので、私」と呼ぶ)ちょっと私も時間がないですので、簡潔に。
大島国務大臣 家の値段を、私、一千万と、それは一億一千万でございます。済みません。
五十嵐委員 それはわかっています。訂正してください。それはもう最初から一億一千万だろうと思っていましたから。
 私も本業が金融なものですから、時間がなくなってしまいますので、あとは原口さんの方から私の足りない分を質問していただくということにして、次に移らせていただきます。
 やみ金融が盛んになっております。大変ひどい状態でありますが、やみ金融というのは、皆さんも間違えておられると思うんですが、登録していない業者をやみ金融だとお思いだと思うんですが、登録はみんなしているんです。四万三千円を出すと、届け出制ですからみんな登録できるんです。一人で幾つも登録しちゃうんですね。登録をした上で、出資法や利息制限法を守らないで高利で貸す。
 最近はやっているのは、〇九〇金融といいまして、事務所を持たずに、登録時は事務所必要なんですが、その後は事務所などどこか行ってしまって、携帯電話一本で、場合によっては、相手の、貸付先から取り上げた携帯でやるものですから、全く居場所がつかめない形で、お金のデリバリーも、振り込んだり、あるいは車の中からやる、路上でやるというような形で高利のお金を貸す。先に金利を取ってしまったりして、うまい言葉で困っている中小企業者を助けるふりをして貸し込んで、どんどん身ぐるみはいでしまうというのが〇九〇金融やシステム金融。
 システム金融というのは、業者がたくさんでぐるになって少しずつ貸し込んで、やはりおどして相当な、最終的には貸し倒れになるわけですが、貸し倒れになっても、その前にもう十二分に利益を上げてしまうというやり方なんですね。身ぐるみはがれた人たちは、困り果てて、自己破産するか、夜逃げをするか、自殺をしてしまう。自殺者とやみ金融の増加の数が本当に比例してふえているという状況なわけで、これが今深刻な問題になっている。
 私も、神田周辺に行ってまいりました。神田駅をおりた途端に、すぐ貸しますよと言ってくる人がたくさん寄ってくるんですよ。すごい状況ですよ。これが非常な大きな問題になっているということで、この実態を金融庁それから警察庁は把握しているんでしょうか。摘発しても、すぐ罰金をちょっと払って終わってしまったり、あるいは処分をされても、取り消されても、たくさん人の名義を借りたりしてまたやれるものですから何にもならないという状況になっているので、この現状を把握しているかどうかについて、金融庁と警察庁から簡単に御説明をいただきたいと思います。
瀬川政府参考人 やみ金融と呼ばれます高金利、それから無登録の貸金業者の摘発でありますけれども、近年、大変増加をしております。平成十三年中で見ますと二百十事件、五百十七人の検挙ということで、この件数、人員は、過去十年間で最多のものとなっております。ちなみに、これらの事件の関連で見たところ、貸付人員で約八万人、貸付金額で約百八十七億という被害に上っております。
 こういった状況にかんがみまして、事件捜査は当然でありますけれども、いろいろな被害相談が多数寄せられますので、これに対する適切な対応、それから、今御質問にもございました広告宣伝、これの問題がございます。こういったものにつきましても、関係機関とも連携して強力に取り組んでいるところでございます。
五十嵐委員 警察へ行っても、ひどいケースでは、借りたものを返すのは当たり前だろうといって追い返されてしまう、あるいは民事不介入だといって取り合ってくれない。事実上、脅迫や迷惑行為が横行しているというのです。
 その中で、私どもが調べていて行き当たった例が、これは地方でなんですが、二人の方から新聞社に話がありました。これはちゃんとした日刊紙でございます。十一けたの住基ネット番号を業者から言われたというんですよ。逃げられぬぞ、みんなが知らないはずの番号までおれたちは知っているんだという形で、脅迫に使われる。
 これは大変なことなんですよ。考えてみれば、住基ネットを扱う担当の職員は、全国市町村にたくさん職員がおりますから、一人でも町金融の悪質金融業者にからめ捕られて、おまえ、免除してやるかわりに、許してやるかわりに持ってこいと言われれば、持ってくる人がいないとも限らない。あるいは、その打ち込みに関係する業者さんの中にいるかもしれないというようなことで、これは物すごくゆゆしいことなんです。要するに、住基ネットという国のシステムが悪質な暴力金融業者を手助けしているということになるわけですね。
 こういう悪用の仕方というのは想定されたはずなんですよ。公務員の守秘義務があるから、公務員は悪いことをしないんだという前提に立ってやるからいいんだ、個人情報の保護のための行政側の法整備は後回しにしても、まず稼働させてもいいんだということを片山大臣はおっしゃったわけですが、こういうことがあるようではそれは成り立たない論理になってくる。
 この投書があった、投書というか連絡があったので、その日刊紙の記者が実は追跡調査した。そうしたら、そのやみ金融街で確かにその記者はネットの番号を買わないかと言われたというふうに言っております。要するに、売買されているんです、ネットの番号が。これはリストがもう出回っている、やみ金融業者の間でひそかに。ということなんです。これは大変な問題なんですよ。ですから、住基ネットの稼働というのは、これは早過ぎたんじゃないですかと。
 私が指摘した問題について調査をする意向があるか、そして調査をしてそれが事実だったら住基ネットに対する態度を変えるというおつもりがあるか、責任をとるおつもりがあるか、片山総務大臣に伺いたいと思います。
片山国務大臣 五十嵐委員、住基ネットのシステムは、国のシステムと言われましたけれども、これは何度ももうこの委員会で申し上げているように、国のシステムじゃありませんので。全部の都道府県、市町村のシステムですからね。
 それから、今住民票コードの売買という話がありましたが、これは民間利用は一切禁じているんですよ。だから、もしそういう事実があれば、私どもの方は承知しておりませんが、五十嵐委員御存じなら教えていただければ、これは最終的には罰則が行くんですから、全く法律違反ですから、それは私どもの方で関係の都道府県をしっかり調査いたします。
 それから、今の住基法の仕組みは、個人情報保護法やそれの特別法である行政機関個人情報保護法よりはずっと厳重にしているんですよ。民間の利用は一切認めていないんですよ。だから、契約のときに住民票コードを言えなんということを認めていないし、データベースをつくってそれを提供することも一切認めていないんですよ。全部最終的には罰則ですよ。それから、今言われた市町村も都道府県も指定情報処理機関もあるいはそれの委託の関係の関係者も全部これは罰則の対象ですから。それは御承知のとおりです。
 それから、住民票コードをある人が知っておっても何の得もないんですよ。今の住民票コードは、それぞれの、例えば恩給を出すとか共済を出すとか、そういう行政機関が住基ネットに本人確認するだけなんだから。それ以上は使わせないんだから。だから、住民票コードを持ったってその人は何の得もない。それは売買の、あなたはそういうことを言われるけれども、例を出してください、私は調べますから。(発言する者あり)
藤井委員長 静粛に願います。
片山国務大臣 それからまた、本人がその番号が嫌なら幾らでも変えられるんですから。簡単に変えられるんですから。だから、そういうことは、まず事実をきちっと出していただいてからの話だと私は思います。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
五十嵐委員 だから、私どもが言っているのは、悪用する人たちは、我々が想像もしないような悪用の仕方、今言ったようにおどしに使うということは、だから、役に立たないなんということはないんです。その人たちにとっては役に立っているわけですよ、おどしに使うという。そういうことを言っているわけですから、我々は、悪用されないような念には念を入れての、そういう個人のプライバシーを守り、個人の情報を守るような念には念を入れてのセーフティーネットを張らなければ、うっかり運用の拡大やなんかはできないでしょうということを言っているんですよ。そこまで否定するんですか。私は何か変なことを言っていますか。
片山国務大臣 いや、これは事実をしっかり提示していただかないと。五十嵐委員は、悪用、悪用、こういう例があると言われますけれども、しかしそれは悪用しようにも悪用する意味がないんですよ、どういう意味で売買されるか。
 それから、何度も言いますように、本人がその番号が嫌なら、すぐ、届け出れば番号を変えてくれるんだから。しかも、番号を持っておっても何にも使えないでしょう。(五十嵐委員「そういう問題じゃないと言っているんです」と呼ぶ)いやいや、だから今万全の制度的な手当ても運用上の手当てもしているんです。しかも、そのためには我々の中に運用の調査委員会までつくって、関係の県や市町を全部入れて議論しているんですから。
 どうか具体的な例を提示してくださいよ。又聞きじゃだめですよ。
五十嵐委員 だから、信憑性のある、ちゃんと記者クラブに加盟しているような日刊紙の記者の体験としてお話をしているんだから、それをあなたの方で危ないと思ったら調べるのは当たり前でしょうが。何を言っているんですか。
 こればかりやっていられませんから先に進みますけれども、このやみ金融の問題というのは中小企業の自殺者の問題と非常にリンクしているということを先ほど申し上げました。これを防ぐには、出資法や貸金業規制法を改正して、罰金が非常に緩いんですよ、罰金の引き上げ、あるいは場合によっては営業保証金制度をとるとか、これには実は規制法の四十三条の問題が絡んで反対も出ているわけですけれども、そのようないろいろな手段を絡めて、やみ金融を撲滅する意思を政府側が示さなければいけないということを私は思うんですが、金融庁、いかがですか。
伊藤副大臣 先生から今、悪質なやみ金融の問題について御指摘を受けたわけでありますが、罰則強化についてでありますけれども、貸金業の規制法については、いわゆる商工ローン問題の社会問題化を受けて、罰則を強化する改正法が平成十二年六月から施行されたところであり、現時点ではその着実な実施を図る所存でございます。
 また、出資法上の罰則を強化することの要否については、関係省庁間の連携のもと、悪質な金融業者による犯罪の実情の把握等に照らし、所管省庁において慎重に検討されるべきものと考えております。
 いずれにいたしても、悪質な金融業者への対応については、関係省庁としっかり連携を図って、適切に対応をしていきたいと思っております。
五十嵐委員 何だかはっきりしない答弁なんですけれども、罰則や行政処分をかなりきつくしないと、これは後を絶たない、自殺者がふえるばかりだということを申し上げておきます。
 それから、本題に入らせていただきますが、時間が少なくなってしまいました。日銀総裁、お待たせをして申しわけございません。
 日銀が銀行の持っている株を買い取るという、いわば世界で類を見ない禁じ手を繰り出すことになったわけですが、これは、もう今の事態が金融危機であるという認識に立ってのこの異常な措置だと私は思いますが、そのことはお認めになるかどうか、総裁にお尋ねいたします。
速水参考人 お答えいたします。
 私どもは、今が金融危機であるとは考えておりません。しかしながら、経済の構造調整に伴い、なお不良債権の新規発生というのが高い水準にあります。それから、金融機関の貸し出し利ざやが極めて薄い状況になって、体力が少し弱ってきております。
 もう一つは、経営のバッファーとして機能しております含み益ですね。かつては株式などをたくさん持っていて、それが右肩上がりで上がっていけば、それが含み益になって、それで不良貸し出しの償却などができたわけですけれども、昨年の九月からこれが時価評価になりますと同時に、株が下がってきて、かつての含み益が含み損になってきている。そういったことで、我が国の金融機関はかなり今苦しい状態、厳しい状況に直面していることは事実でございます。
 私どもが株を買うことを決めましたのは、民間の金融機関が株を持っているというのは、外国ではドイツと日本だけです。日本は特に今、株の保有比率が銀行、金融機関だけで全体の三六、七%を占めているんですね。非常にたくさん持っておられる。持ち合いがあったり、あるいはメーンバンク制があったりした結果だと思うんですけれども、そういうものが今や含み損になってきますと、これは自己資本が減ってくるわけでございまして、そういう状況の中でかなり苦しい状況に向かいつつあることは確かだと思います。
五十嵐委員 それはでたらめな説明ですよ。そのために銀行株の買い取り機構をつくったんじゃないですか、政府の方が。与党の提案でおつくりになったんでしょう。それを使えばいいだけの話で、それを使えば足りるという前提でそういう組織をつくられたはずですよ。日銀がわざわざ乗り出す理由にならない。日銀がわざわざこういう異常な手に出るということは、これはもう金融が危ない、政府に、非常手段を我々もとったんだからあなたたちもとりなさい、そういうメッセージでしょうが。これはうそを言っちゃいけないと思いますよ。
 危機の理由は幾らでもあるんですよ。例えば、九月の二十日に、長期国債、札割れになりました。未達といいまして、売れ残りが出ちゃったわけですね。これは、その後の我が国の財政状況は大変ひどいわけですね。
 八月末現在の徴税実績は、前年度の二〇%割れです。八〇%しか税収入が上がっていない。このままいけば、十四年度、大幅な歳入欠陥が出ることは目に見えているんです。特殊な事情もあることは知っているんですよ、前の年に郵貯の定額貯金の大量満期があって、そのときに、年度の初頭にたくさんの所得税が入ったという理由があって、ことしはそれがなくなったからある程度はやむを得ないという部分はありますけれども、そうでなくても、二割減というのは大変な額なんです。そうすると、一〇%減っただけで四兆円以上の歳入欠陥が出るということでしょう。その分、赤字国債を出さなきゃいけない。やりくりしたって相当足りないんですよ。
 その上で、与党の皆さんは無責任に今、どんどん補正予算を組んで建設国債を増発しろ、こう言っているわけです。そうすると、小渕内閣のときを思い出していただきたい。九八年十一月に二十七兆円の緊急経済対策をやっているんです。そのときに、九八年十月直前の長期金利は〇・七%だったのが、九九年の二月には二・四%にはね上がっているんですよ、一・七%も。今、ことし三月末の長期金利は一・四%です。これは一・五%にたった〇・一%上がるだけで、国内の銀行の国内債券の含み益は含み損に変わるはずですよ。たちまちのうち、日本の銀行はまたバンザイになっちゃうんじゃないですか。
 そういう財政と金利との非常に微妙なバランスの上に、ようやく息絶え絶え、日本の経済は乗っているんですよ。金融危機じゃなくて何なんですか、これは。ふざけたこと言ってもらっちゃ困りますよ。金融危機ではないという今までのごまかしが不良債権問題の先延ばしを生み、そしてここまで悪くしたんじゃないですか。金融危機じゃないんですか。
 担当大臣、竹中さん、その認識を、簡潔に言ってくださいね、金融危機と思っているのか、思っていないのか。
竹中国務大臣 危機をどのように定義するかということに尽きると思いますが、一般には、連鎖的な資金繰りの悪化でありますとか預金の連鎖的な取りつけでありますとか、そういうことが起こっていないという意味で、その意味では危機でないことは確かでございます。
 しかし、財政の赤字と金利が非常に微妙なところに来ている。これは私たちも十分認識しておりまして、であるからこそ、財政の健全化を図りつつ、非常に微妙なナローパスで経済を安定化させるように、不良債権を進めつつ、経済の活性化を図るための諸施策を今とっているところであります。
五十嵐委員 あなた、金融危機ということを宣言していて、金融危機対応会議を開いて、非常事態なんだからこうやらせてくださいと言わなきゃ、前やった失敗と同じことの繰り返しじゃないですか。銀行経営者に責任をとらせられないでしょう、そうでなければ。また、あなたがやっているルールの変更というものを認められないでしょう。私もそう思いますよ。銀行経営者にしてみれば、危機でも何でもないのに、いきなりルールが変わってしまう。今まで五年分の税効果会計を認めたのは一年分だ、ディスカウント・キャッシュフローに計算方式を変えるんだと。何でもないのに変えられるわけないでしょう。
 あなた、そのときに、そういう何でもない事態の中での、法律の改正も何もない中でのそういう方式の変更をして、もし訴訟を起こされたときに訴訟のリスクに耐えられるんですか。そうなんですよ。
 だから、今までのメンツを捨てて、日本の金融は危機なんです、緊急事態を宣言して、金融危機対応会議を開いて、法律に基づいて公的資本を注入するというやり方でなければ、同じ間違いを何回も繰り返すことになるんですよ。それがだめなんです。
 それから、竹中さんに申し上げておきますけれども、あなたは危機の面だけを振りまき過ぎた。そこがいけないんですよ。一体、理論的な根拠が、もし公的資金を注入して、結果として準国営化、国営化の銀行が出てきたとして、一挙に不良債権問題の処理を進めたとして、それがどうして直接パニック的な、中小企業が全部つぶれるんだという話につながるんですか。つながらないんですよ、それは。
 むしろ、今までだらだらだらだら牛のよだれのように逆算方式で銀行の体力の範囲内でやってきたから、先ほど数字が出たでしょう、八十五兆円も中小企業から貸しはがして、大きな死に体の大企業、構造不況業種でこれから先金利がちょっと上がっただけで助からないような企業に追い貸しをして、債権放棄して、その分、自己資本が減った部分をまだ健全な中小企業から貸しはがそうとするから中小企業がだめになるんじゃないですか。そういうことなんですよ。だらだらやるから逆に、ソフトランディング路線が中小企業を殺してきたんですよ。一挙に資本を、公的資本だろうと何だろうと積み重ねて、そういう心配がなくなれば、中小企業から貸しはがす必要がなくなるんじゃないですか。
 そこをちゃんと説明して、自分たちがこれは腐った大企業の問題なんだということをきちんと説明して、中小企業についてはむしろ処理についてはダブルスタンダードで守ります、中小企業のそのセーフティーネットをきちんとつくります、そういう準備をして、それで始めれば、みんなパニックに陥ることないじゃないですか。あなたがパニックに陥れているんですよ。そういうことでしょう。理屈のない、みんなでわあわあ、やったら大変だ、みんなつぶれてしまうなんというのは、根拠のないところで騒いだってだめなんですよ。私はそう思いますね。
 総理大臣、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今、根本的な財政の問題、国債発行の問題、金融の問題、御指摘いただきました。
 そういう点を踏まえて、この際、構造的な問題に対して本格的にメスを入れようということで、さまざまな意見を伺いながら今竹中大臣のところで総合対策を考えているところでございます。今の御指摘も踏まえまして、今月中にその対策を取りまとめたいと思います。
五十嵐委員 何度も申し上げますけれども、国会が始まる前にその対策を出していただきたかったんですよ。そうでなければ、これはみんなが不安に陥るのは当たり前なんですよ。
 それで、銀行は全く自分たちの責任を感じていない。感じていない。私は今資料をお手元にお渡ししていますけれども、「中小企業向け貸出」、先ほどもよそのところからありましたけれども、全然約束した実績、計画の実績を守ってないじゃないですか。UFJは、これは幾らですか、二兆円も足りないんです、二兆五千億も足りない。あさひ銀行も一兆四千億も足りない。全く計画の、約束した中小企業向け貸し出しをしていないじゃないですか。
 そして、リストラしているのか。リストラしてない。「平均役員退職慰労金」、見てくださいよ。多少は下がっているかもしれないけれども、いまだに七千五百万ですよ、みずほ三行。平均ですよ、平均役員退職慰労金ですよ。貸し出した先の個人事業主が、あるいは中小企業の経営者がみんな泣かされて自殺している、夜逃げしている中で、七千五百万円の平均退職金ですよ。こんなの全然リストラしてないじゃないですか。
 また、私が金融庁に依頼をいたしましてつくりました、合併した銀行の、しているわけですから、支店はさぞや整理されただろうと思ったら、まあ多少はやっているけれども、全然整理されていないに等しい状況ですよ。人には犠牲を強いて、自分たちはリストラをサボっている。
 いつかは、土地担保でそのまま経営を続けて、土地が反転したらよくなるだろう、そういう思いで大企業を生き延びさせてきたわけでしょう、いつかよくなるよと。まず、とりあえず小手先でかわすために、中小企業から貸しはがしておけば何とかなる、そういう経営を続けてきたからだめなんですよ。
 だから、むしろ思い切って公的資金を注入して、責任をとらせるんですよ、強制的に注入して。責任をとってもらう。そして、激しい競争の中で生きてきた、むしろ製造業の世界から銀行の経営者を連れてくる、あるいは若手の、本当に、外資で学んだことがあるとかいう若手の銀行マンから、土地担保に頼らない新しい融資システムを身につけた、そういう人たちを経営者に据える。そうでなければ、日本の銀行はよみがえらないでしょう。私はそう思いますよ。そう思いませんか。うなずいておられるけれども、竹中さん、どうですか。
竹中国務大臣 五十嵐委員から、大変幾つか重要な御指摘をいただいていると思っております。
 これは一つの枠組みの中で、その枠組みの中でそれぞれの金融機関なり企業がみずからの一種の最適行動を行って、しかし、それが結果的によい結果に結びついているかどうかという非常に根深い問題があると感じております。したがって、今御指摘のように、一体どういうシナリオと全体的な思想でこの問題を終結に向かわしめるかという、その全体像が大変重要である、これはもう御指摘のとおりであると思っております。
 であるからこそ、その部分的な発表を避けて、包括的に、最終的にその考え方をお示ししたいと思っておりますし、同時に、それによってセーフティーネット上さまざまな問題が起こらないような総合的な仕掛けを一緒にお示ししたいというふうに思っているところでございます。
 総理のお話にありましたように、総合的な立場で、ぜひよい施策を目指して議論を煮詰めたいと思っております。
五十嵐委員 私どもは、最初から、日本の中小企業を再生させる、それが日本の将来を築くんだ、次代の成長産業をつくるんだ、そういう観点から政策を構築してきました。金融再生ファイナルプランあるいは金融アセスメント、木で鼻をくくったような御答弁が代表質問に対してありましたけれども、私ら、説明する時間がきょうはないからまた後ほどいたしますけれども、これは本当に真剣にやって、考えていただきたいと思います。
 それから、インフレターゲティングが、竹中さんが主張しているというふうに伺っていますけれども、イギリスが今唯一インフレターゲティングが成功した例というふうに言われていますが、イギリスは成功していません。実は土地がバブルなんです。今お示しした資料、皆さんのお手元にある資料を見ていただければわかりますけれども、ロンドンだけが土地、住宅がめちゃくちゃ値上がりしているんです。これが今、土地バブルがはじける寸前なんですよ。そのために、ロンドンは一応の水準で物価の上昇が起き、それがおさまっている、そして経済が成長しているという姿になっているんですが、実は、それはそうではありません。ロンドンのバブルが、イギリスのバブルがはじけた場合には、イギリスもデフレになる。世界同時デフレになる可能性が高いんです。
 ですから、これはむしろ、根本的なデフレの対策、デフレの対策というのはデフレを退治するとかいうことではむしろなくて、デフレのマイナス面を、いかにして最小限に痛みを抑えるかという政策に私は変えなければいけない。それは根本的に日本の資本効率を高め、企業の生産性を高め、外国との競争に勝つ、そういう体質に強化していくということを繰り返し申し述べておりますけれども、また別の機会にさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
藤井委員長 先ほど、大島農林水産大臣より、宮内前秘書官の住宅建築資金手当て等に関する資料について、委員長に預けるとの発言がありました。
 委員長はこれを預かりますが、プライバシーにかかわる資料も含まれておりますので、慎重の上、この取り扱いにつきましては理事会において協議いたします。
 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博です。
 総理並びに担当大臣に、数点にわたって、ただすべきことをただしたいと思います。
 まず、大島農水大臣でございますが、先ほどお話しになった調査、どのような調査をされたのか。これを、宮内さんのお父様の御遺産ということで、週刊文春に証言した宮内さんのお兄さんに今回調査をされたのか。それから、私たちが証言を問題にしているこのA氏、先ほどお話しになった方ですね。この方について調査をされたのか、そのことについてまずお尋ねしたい。
大島国務大臣 調査の方法のお尋ねがございました。
 私といたしましては、週刊誌の報道等が、既にAさんという方から取材をされている、あるいは彼のお兄様からも取材されているということとすれば、やはり彼と彼の奥様、あるいはこのお二人を中心に私のできる限りのことを問いただし、先ほどもお見せしましたし、ただいま委員長のお計らいもございましたように、私のできるだけの調査をし、彼からの報告をちょうだいしたところでございます。
原口委員 時間が限られておりますので、大臣、イエスかノーかでお答えください。
 お兄様、それからA氏については調査をされていないということで断じてよろしゅうございますか。
大島国務大臣 そのとおりでございます。
原口委員 私はきょうパネルを持ってまいりましたが、今補選をやっていますが、参議院議長、さわやかプラザ軽井沢、口きき見返りに六千四百万円、それから、今回、八戸市立市民病院、先ほど五十嵐議員がお話をしたような額の大きな工事でございますが、このとき前秘書官は、九五年当時、秘書官にもなられているのですね。大臣は三回大臣になられていますが、三回とも秘書官なんです。
 この秘書官がさまざまな紹介をすると。秘書官という形で、この工期を考えてみると、その間に秘書官が御紹介をされたという疑いもあるわけですが、いつ、どのような御紹介をされたのか。原資については先ほどお話しになって、なかなかちょっと私たちの調査と違うものですからまだ問わねばならぬのですが、秘書官としてこういうことをやるということが一体どういうことなのか、大臣、お答えをいただきたい。
大島国務大臣 私は、常に節度を持ってやりなさいと。その節度というのは、法を遵守し、法に違背してはならないということがまず基本にあるわけでございまして、そういうことを絶えず言っておりました。
原口委員 普通の秘書さん、あるいはほかの方でも、政治改革をやって、口きき、あっせんといったことを随分厳しく私たちはやってきているんですね。それを秘書官当時やられたのか、やられていないのか、ここを明らかにしていただきたい。
大島国務大臣 私もそのことを問いただしましたが、あいさつ程度の紹介はいたした、しかし、そのことによって見返りのお金は取ってません、こういうことでございました。このことはもうたび重なって私も尋ねましたが、彼からの報告でございました。
原口委員 私たちの調査では、八戸市民病院に絡む公共工事、これは、設計会社を押さえて、この業者を使えと言ってリストを出して、そして、そこから口きき料として一定のものを、一部が宮内氏に、あるいはA氏を通して宮内氏にということで、そういう証言をいただいておるわけでございますが、先ほど五十嵐委員に大臣が答えられた、十二日の夜に取材を受けたというのは誤りですね。取材を受けられたのは十一日の夜であって、十三日に大島大臣に取材を申し込んで、十三日の夜、回答を得ている。
 その十三日の夜の回答でも、宮内さんに聞いたところ、父親の遺産、母親の生前贈与と合わせて三千五百万と回答していると。宮内が妻任せにしており、十一日の取材で言い間違えたにせよ、十三日の大島大臣を経由しての回答も同じというのはやはりおかしいんですね。妻に、その奥様に聞けば、十三日の時点で訂正できたはずなんです。
 先ほど、お母様とお姉様から千五百万の生前贈与を受けたとおっしゃいましたが、これは贈与税は支払われておりますね。
大島国務大臣 十二日だったか十一日だったか、これは、間違ったことはお許しくださいませ。
 今、二つ、原口議員からの質問があるような気がします。
 第一点は、十三日の夜におまえはどういうふうに聞いたのかということであったと思います。十三日に、朝、私はラオスから帰りまして、地元へ帰り、そして宮内を東京に置いて、その文春記者の質問に沿って私は厳しく聞きました。そのときに、彼からは、お母様からのもの、それからお父様のもの合わせてというふうな言い方をしたと思います。
 それから第二点として、そういうふうなことについて口ききを……(原口委員「贈与税を」と呼ぶ)それも伺いました。贈与税をおまえは払ったのか、払ったのならそれを見せてくれ、こう言いましたら、まことに申しわけございませんと。そのことについては私どもの不手際、つまり、奥さんと相談、奥さんも贈与税みたいなのもあったのかもしれませんが、これから払えるものなら調査して対処してまいりたい、こう言っておりました。
原口委員 それは不手際では済まない。千五百万の生前贈与というと、大臣、大きな贈与ですよ。これは今、事実をそのままお話しになったことを評価をいたしますが、しかし、これは明確な、税を逃れているということでございます。
 それから、大臣、私はここに、ある受注業者が記者会見をした資料を持っています。ここには、「八戸市立市民病院の空調工事に絡む営業協力費の授受について」、この会社は記者会見をして正直に自分たちの非を認めていますから、きょうはテレビも入っているので、その会社の名前は言いません。仮にS空調株式会社としておきます。
 「調査結果 社内調査の結果、以下の事実関係につき確認いたしました。一九九五年四月頃、東北支店営業部員二名は、都内においてコンサルタント会社社長」、これがA氏ですね。「と面会し、首記の空調工事に対する営業協力費二千万円を手渡したこと。同協力費は、当時の本社営業本部長の承認を得て経費処理されたこと。」ということで、しっかり認めているのです。
 そして、A氏は、私たちの調べたところによると、これを宮内さんにお渡しになっている。明らかに渡っているじゃないですか。先ほどの桜丘の原資についても、贈与税のところに問題がある。あるいは、この会社が、Sという会社が出したこととも矛盾をする。
 大変恐縮でございますが、この工事に絡んで、宮内さんが幾ばくかの金銭を、その見返りというか、とられたことがあるのか、あるいは大臣御本人が、まさかそんなことはないと思いますけれども、この八戸市立市民病院に関連して、このA氏ないしはここに関連をしている業界の方から、業者の方から資金を取ったことはないというふうに断言おできになりますか。
大島国務大臣 平成七年の、家を建てたのも平成七年だったようでございますし、調べてその辺わかりました。
 まず第一点は、私は一切ございません。
 今度の報道は、そういうふうなことが既に最初から報道されておりましたので、本当におまえは取っていないんだな、どういうことにしろそれはないんだな、紹介して受け取るということはないんだなと。だったら、それを受け取っていないという証明をするのはなかなか難しい。難しいが、しかし、その年に家の原資に充てたと、これは一貫してそういう指摘を受けておる。そこのところを、本当にプライバシーも全部明らかにして、自分に、私に報告しなさい、こう言って集めたものが先ほどの内容でございます。また、その集めた資料につきましても、先ほど委員長にお願いしたところでございます。
 先ほど説明しましたように、計算上七百万強の資料は実際に私も集められませんでしたが、そういうふうなことを、彼からの報告として私のできる限りのことをしたということでございまして、彼は、そういうお金は受け取っておりませんと、何回も聞いてもそういう返事でございました。
原口委員 通常、一軒家を購入した場合は、税務署に原資について報告書を提出する。宮内氏はこの報告書にどのように記入されているのか。先ほど、生前贈与の一千五百万については贈与税をお支払いになっていないということを大臣みずから認められましたけれども、この報告書に記入した内容を大臣がお調べになればこれは済む話なんですよ。これが一点。
 それから二点目は、大変つらい質問でございますが、このA氏と宮内さんのお兄様、ここに対するお調べ、聞き取りはおやりになるつもりなのか。いかがですか。
大島国務大臣 私自身、秘書にかかわるお話でございましたので、秘書に対してやはりきちっと聞く、あるいはきつく聞く、あるいはその家庭の中まで入って聞く、こういうことが私の責務と考えております。
原口委員 これはA氏の証言と真っ向から食い違って、そして、今これはお示ししてもいいんですが、委員長、これは委員会に提出いたしますので、Sという空調株式会社が認めているものでございますが、これとも食い違う。宮内氏は二千万円の授受を、このS株式会社が認めている授受を認めないということは、これはA氏がどこかにやられたという形にもなってしまう。これは大変なことなんですね。ぜひお調べになって、誠実に対応をしていただきたい。
 そして、税務署に、原資についての報告書が出ているのか、それはお調べになりましたか。
大島国務大臣 私も、税務署に原資の報告が全部あるのかどうか、届けない方もあるようでございますので、せっかくの委員の御要請でございますから、調べてみたいと思います。
 また、今の問題についても、私は、今までの報告ではそういうことでございましたが、改めてまた確認してみたい、こう思っております。
原口委員 このA氏は大島大臣のパーティー券を、私どもの調査では、多いときで三百枚、二万円だと六百万円ですね、売っていたと。これは事実ですか。御存じですか。
大島国務大臣 報道されて以来、そのA氏という方について、すぐに、私、本当に記憶にございませんでした。そこで、宮内に伺いましたところ、宮内との関係は十年前から、そして三、四年前からもうおつき合いがなくなりました、そういう中にあってパーティー券等をお願いしたこともあるかもしれませんという報告でございました。
原口委員 宮内氏のお姉様とこのA氏が宮城野総合企画という会社を設立しておられる。これは登記がございます。これは事実でございますね。
大島国務大臣 実は、きょうの週刊誌にそういう記事があるという御指摘をいただきました。きのうまで私が調査をしたり、また彼とのやりとりをしたりする中では一切その話はございませんでした。したがって、週刊誌に報道されたことをもって初めて伺いましたので、これについてもきちっと調べなきゃならぬなということで調査をしたい、このように思っております。
原口委員 宮城野総合企画は、この登記簿を見ると、企業経営上のリスクマネジメントあるいは土木建築計画の設計監理、まさに今回問題となっているような、そういうお仕事をなさる会社なのか。この宮城野総合企画は宮内氏自身が設立にかかわっていたのじゃないか。それから、宮内氏のお姉様に、これも私現物を拝見しましたが、月々十万円払われているという事実があって、こういったことは大臣にはお話しにならなかったんですか。
大島国務大臣 全く話がありませんでした。調査を自分の監督責務としてやる経過の中でもそういう話はございませんでしたので、これまた今までと同じようにしっかりと調査したい、このように思っております。
原口委員 この閉鎖事項全部証明書という登記簿を当委員会に提出いたしますので、調査をお願いします。
 これはどう違うんですか。これほどこの国会の中でお金と政治の関係、まさにそれで補選をやっていて、こういうときに、今しっかりと調査をするということですが、いつまでに出していただくのか。そして、今回は、井上前参議院議長、この構造と私たちの調査は全く同じなんですね。そして、大臣が御存じだったか御存じでなかったかわからない。しかし、極めて不明なところ、疑惑の多いところがある、見返りにお金をもらっているという証言をしている人がいる、そして会社までこういう記者会見をしている、このことはなかなか否定できない事実ですね。
 私は、大臣が今正直に調査をするということをおっしゃいましたから、今私が申し上げた、本当に誠意をお見せになるんであれば、A氏にも聞き取り調査をしてみてください。きのうまでこの会社のこともおっしゃっていなかったわけでしょう。やはりさまざまな、大臣にもわからないことがある。一人の人から聞いていたんではわからない。少なくともこのA氏、そしてお兄様、そこから聞き取り調査を一刻も早く、いつまでに出すんだと。
 これはそんなに時間がかかる話じゃないんです。そんな複雑な事件でも何でもない、疑惑でも何でもない。こういうことがまさに政治の構造改革をおくらせて、私たち全体の信頼を失わせているという観点からすると、最後、大臣に、このことに対する事実解明、いついつまでに、だれに調査をし、どのようなことをこの委員会に出すということをお話しいただきたいと思います。
大島国務大臣 今の調査をするということに関しましては、誠意を持って本当に調査をしたいと思います。
 先ほどもお示ししましたように、これは簡単なことだから調査すればすぐ出るのではないかというふうにおっしゃられるかもしれませんが、その意図、事業内容、やはり彼自身がどうかかわってきたか、そんなものを聞かなければなりません。そういうことをして、できるだけ努力をしたい、誠意を持って努力してみたい、こう思っております。
 こういうものを、ファイルをつくる、そして調査をして集めるまでにも相当無理を私自身したつもりではありますが、全力を尽くしてまいりたい、こう思っております。
原口委員 時間を明記してほしいんです、やはり。
大島国務大臣 いつまでということは、例えばそれはそろわないと失礼でございますから、できるだけ急ぎたい、このように思っております。
原口委員 一刻も早い調査結果を本委員会に出していただきますように。
 外交の問題に質問を移します。
 五名の拉致被害者がピョンヤンに残していらっしゃる子供の皆さんの早期帰国を被害者家族は政府に求めて、前向きの回答を午前中もいただきましたが、私たちはそこに北朝鮮が誠実に対応することを希望いたします。
 そして、けさ拉致被害者の家族の皆さんが、うち八名の死亡ということを報じられている、その北朝鮮が示すデータも矛盾と疑問がたくさんございます。そのことについて、けさ官邸にもお申し入れがあったと思いますが、今度どのように調査していく方針なのか。
 まず総理、私は、私自身も含めて拉致行動議連というものを立ち上げてやってまいりましたが、しかし、本当に力不足、今まで政治は何をやっていたんだろう。さまざまな困難に、朝銀の質問をしたときも、あるいはさまざまな申し入れをしたときにも、党派を超えて困難に出会いました。しかし、結果としてここまで放置をされてきたことを考えると、まず私たちは拉致被害者の方々そして御家族に誠意を持っておわびをする必要がある。
 総理が北朝鮮に行かれる前に、福田官房長官にお会いをして、万全を期してください、そして事前にお会いになってくださいというお願いをしましたが、それはかないませんでした。そして、お帰りになったときも謝罪はございませんでした。
 私は、総理お一人に謝罪をさせてそれで済むとは思っていません。私たち自身もその責任を痛感しなきゃいけない。しかし、日本政府としてこれまでの不作為をやはりきっちり御家族にわびるべきではないか、そのように思うんですが、総理、この拉致被害者の亡くなられたとされている八名の方々、この調査はどのようにされるのか、そして謝罪についてはどのようにお考えなのか、まずお尋ねをしたいと思います。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
小泉内閣総理大臣 今まで、拉致の存在が認められなかった、むしろ日本政府側の主張はでっち上げだと言われていた中で、こういう事実が明らかになってきたわけであります。そういう点を踏まえれば、不十分な点もあったと思います。私は、今後の交渉の中で、できるだけ御家族並びに被害者の方々の意向を実現できるように全力を尽くしたいと思っています。
 なお、私は、既にことしの三月に拉致の御家族の皆さんとお会いしております。十分その方々の希望をわきまえて今まで交渉してきたつもりであります。政府にはいろいろな専門家、対応者がおられます。そういう意見も聞いて、総理大臣として適切に判断してきたものと思っております。
原口委員 私は、謝罪を、やはり政府としてやるべきではないかということを申し上げているんですが、それは、自分は適切にやってきたから必要ないということをおっしゃっているのではないというふうに思います。
 きょう、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会、拉致被害者家族連絡会が出されたこの紙、これは後ろの資料を見ますと、例えば死亡確認書の発行病院が七人同じなんですね。これはなかなか見にくいんですが、第六九五病院。こんなことは普通は考えられない。あるいは、生年月日の誤り、そして目撃情報、さまざまあるわけでございます。
 私は、総理がこのことをいつ御存じになったのか。福田官房長官にお願いをしました、あのとき官邸で。そのときは石破防衛庁長官が私たちの議連の会長で、事前にこの消息の、皆さんの情報については知って、そして通訳やさまざまな問題があるから万全を期してくださいというお願いをして、官房長官は、それは大丈夫だということをおっしゃったわけですが、総理、八名の方の死亡という信じがたいこの報告をお目にされたのはいつでございますか。
小泉内閣総理大臣 たしか日朝平壌宣言の署名の前だったと思います。
原口委員 安倍副官房長官、そこで……
小泉内閣総理大臣 いや、私は安否の情報のことを言ったんです。それじゃないんですか。
 安否の情報は、平壌宣言の署名の前であります。
原口委員 私が聞いているのはそうではないんですね。正しくお答えください。
安倍内閣官房副長官 今委員お問い合わせの安否情報につきましては、十一時から首脳会談がスタートしたわけでございますが、その前に、事前に田中局長が先方と話をいたしまして、そのときに伝達をされたわけでございます。その伝達された情報を総理と私が控室で聞いたのは、始まる前の、十時半ぐらいだったと思います。
原口委員 私もそのように聞いて、総理、それで結構ですね。(小泉内閣総理大臣「いいです」と呼ぶ)
 安倍副長官は、ピョンヤンにおいて、日朝首脳会談を中止し帰国すべきである旨の発言を行っていらっしゃいますが、この発言を行われた真意を伺いたいと思います。
安倍内閣官房副長官 その安否情報が伝達された後、首脳会談が十一時からスタートいたしまして、その場で、冒頭、総理から、極めて厳しく、日本人の生命を預かる責任者として極めて遺憾である、強く抗議するという抗議をされたわけでございます。
 今委員が御指摘の私の発言でございますが、その後、午後の会談が始まる前の昼休みの間の打ち合わせにおきまして、私は、極めて重い内容ですから、やはり金正日委員長みずからが国家の関与を認めて、そして謝罪なり遺憾の意なりを表明しなければ、これはこれ以上進むことはできませんねということを申し上げたわけでございまして、総理も、まさにそうであるということでございました。
原口委員 そこがポイントなんですね、総理。
 これは国家が行った犯罪なのか、国家の関与を認めたのか。伝えられるところによると、そこが必ずしも明確ではない。国家としての犯罪なのか、我が国の主権侵害なのか、このことについてどのようにお考えなのか。最高責任者がこの拉致という事実を知らないわけはない、いや、そのコントロールのもとで行っているのではないかと考えるのが普通だと思いますが、安倍副長官の先ほどの答弁は私の今の解釈でよろしいでしょうか。
安倍内閣官房副長官 その後、金正日委員長から、自分自身は知らなかったけれども特務機関が独自の判断で行ったものであるという話がございまして、それに対してのおわびがあったわけでございます。
 私どもの認識といたしましては、これは金正日委員長が知らなかったということをおっしゃったわけでございますが、しかしながら、それは国家の一機関がやったわけでございますから、それは国家として責任を持って、生存者については家族を含めて日本に帰国させる、そしてまた死亡していると言われる方々については、私どもが納得し得る、また確認し得るに足る資料、材料を提出する、そういうことでございます。また、国家としてきっちりと謝ってもらいたい、こういうことでございまして、私どものとらえ方としてはそういうことでございます。
原口委員 国家としての犯罪行為、主権侵害があったというふうに考えてよろしいんですね。
 防衛庁長官に念のためにお尋ねをいたしておきますが、これは、私たちの生命、安全、そして主権、人道、これを侵された大変大きなことだというふうに思います。私は、対話と交渉、とても大事だと思います。交渉しなければ前に進まない、これも事実でしょうが、しかし、ほかの道もある、国際法と正義に基づいて。
 例えば、北朝鮮の拉致の問題に対して、ICC条約で定める人道的な罪に対する、まさにこれの違反です。しかし、北朝鮮はこれには入っていない。これで裁くことができないんではないか。いや、我が国もまだこれは批准をしていない。人道に対する罪、この条約になぜ批准をしないのか。一刻も早く批准をすべきじゃないか。
 あるいは、これはほかにも国際法と正義に基づいてやる道が幾らもあるんではないか。イラクに対してアメリカは、その体制をも変えるべきだという強い姿勢で臨んでいます。そして北朝鮮に対しては、その政策を変えてもらうという姿勢なのかもわからない。しかしこれは、先日明らかになった核開発、これを北朝鮮自身が認めたということによって、大きくアメリカの見方も変わっています。
 私は、明らかな国際法益の違反があるのであれば、国連安保理に訴えて、例えば特別の刑事裁判所、国際司法裁判所をつくって裁くルワンダやあるいはユーゴのやり方というのがあるんではないかというふうに思うんですが、総理、並びに、これは大変安全保障上もゆゆしきことでございます、防衛庁長官の御所見をいただきたいと思います。
石破国務大臣 お答えを申し上げます。
 この拉致の問題ということが、拉致をされた方々が一体北朝鮮でどのようなことをしたかといえば、これは工作員の教育に携わっておられた。そして、その工作員が何をしたかといえば、ラングーン事件であったり、あるいは日本人に成り済ました工作員の場合には大韓航空機爆破事件であった。これは単なる拉致という問題ではなくて、テロということに直結をするものであろう。
 そうすると、何が拉致問題の解明にとって一番よいか。これは、日朝正常化交渉であり、あるいは安全保障協議の場であり、そこで日朝間において議論されることでありますが、同時に、今までもこの問題を家族の方々が国連人権委員会に訴えてきたということがあった。残念ながら取り上げられなかったが、もう一度チャレンジをしてみる価値はあるだろう。あるいは、安全保障の問題として国連の場で議論をすることもあり得るだろう。
 何が拉致問題の解決に一番よいか。日朝間で安全保障協議なり正常化交渉の中でやっていくのが政府の方針ではございますが、同時に、そのほかのことも政府として模索をする。何が一番解決に資するものであるか、テロの根絶に資するものであるか、そういう観点から議論をされてしかるべき問題であると承知をいたしております。
原口委員 そこで、防衛庁長官に続けてお尋ねしますが、北朝鮮の核兵器は日本を標的にしているということを発言している自民党の有力議員がいらっしゃいますが、これは事実なのか。
 そして、今回、いわゆる核開発、これはアメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国との間で合意された枠組み、ここは黒鉛減速炉ですから、黒鉛減速炉についてはだめだということでございますが、しかし、その四のところ、いわゆるNPTの枠組み、これには明確に反するというふうに思うんです。あるいは私たちが協力をしてきた、核の廃絶ということで協力をしてきたKEDOの枠組みにも明確に反していると思うんですが、総理並びに防衛庁長官の御所見を伺いたいと思います。
石破国務大臣 お答えいたします。
 委員が後段でおっしゃいましたNPTに違反をするというのは、私は全く認識を一にいたします。そのとおりであろうと思っております。NPTの義務に違反をしておるのであり、そのことを履行すること、それは我が国として北朝鮮に強く求めていくべきものだと考えております。
 前段の御指摘につきまして、自民党の有力議員という御指摘でございますが、大変申しわけございません、私はその点、正確には承知をいたしておりません。
原口委員 ミサイルや核の問題は、陸続きの韓国より、あるいは中国より、我が国にとって大きな脅威ですね。そして、北朝鮮の核及び弾道ミサイル、この現況がどうなっているかというのは私たちはつぶさに明らかにして、もしその事実があるとすれば大きな行動をしていかなきゃいけない、対策を練っていかなきゃいけない。
 その事実について、防衛庁長官、どのように認識をされているのか。
石破国務大臣 お答え申し上げます。
 委員御案内のとおり、北朝鮮はあのような閉鎖的な国でございますから、正確な情報を私ども正確に把握をするには至っておりませんし、断定的なことを申し上げられません。
 しかし、今まで、同盟国であるアメリカの情報あるいは発表、声明等々によりますれば、北朝鮮が既に数個の核兵器を保有しておるとか製造しておるとか、またそれを製造するに足るプルトニウムを保有、貯蔵しておるということが公表されておるところであります。また、先般、核兵器用ウラン濃縮プログラムということが指摘をされ、北朝鮮がそれを認めたということは、これは大変なことだろうというふうに認識をいたしております。
 委員が御指摘のように、要は、ノドンというのは射程が千三百キロですから、これは日本を全部射程に入れているわけですよね。そしてまた、陸続きの韓国にそれを撃つ必要があるのか、あるいは同一民族にそれを向けるのか、あるいは、一種の同盟関係と言っていいかどうかわかりませんが、中国に対してそれを向けるのかというふうに考えてみますと、じゃ、それはどこへ向いて何をするためのものなのか。そのときに、我が国の可能性を排除するということは、私はあってはならないことだと思っている。それを認めるということではなくて、それを排除すると考えることは、私はあってはならないことなのだろう。
 したがって、このことは世界に対する脅威であるけれども、私ども日本人は、これを日本に対する一種の脅威であるという認識は正確に持っていかねばならないのではないか。だからこそ、NPTの義務をきちんと履行していただく、そして核兵器の開発を中止していただく、それは、私ども日本として、北朝鮮に強く申し入れるべきものであろうと認識をいたしておる次第であります。
原口委員 そこで、総理に伺いますが、北朝鮮は、いつ、だれが、だれに対して核開発の事実を認めたのか、そして、総理はそれをいつ御存じになったのか、教えてください。
小泉内閣総理大臣 私は、アメリカ等と常に情報交換をしておりますし、アメリカは、この情報は伏せるべきか、あるいは発表していいかというのは常に注意しながら、私は情報を受けております。
 そういう中で、日本としては、いろいろな核の問題の疑惑なり、アメリカなりの情報を受けながら交渉してきたわけでありまして、今、北朝鮮が核の存在を認めたということを、私に直接言ったわけではありません、アメリカを通じて発表されたんだと思います。それは私にとりまして、やはりアメリカ側のそういう疑惑が本物だったのかということを北朝鮮が認めたわけでありますので、日本としても、これは、今後の交渉の中で日朝平壌宣言を誠実に履行するように働きかけていくのは当然だと思っております。
原口委員 いつ御存じになったのか。アメリカからその事実をお知りになったというのは今お答えになったんですが、いつそれを御存じだったんですか。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 先ほどの御質問が、北朝鮮がアメリカに対していつ認めたかということであったかというふうに承りましたけれども、そういうことで……(原口委員「いや、いつ、だれが、だれに対して核開発の事実を認めたのかと申しました」と呼ぶ)北朝鮮がいつ認めたかということですね。
 十月の三日から十月の五日まで、アメリカの国務省のケリー次官補が北朝鮮に行きました。それで、北朝鮮側と話をしたのですけれども、そのときに北朝鮮側が、ケリー国務次官補をヘッドとするアメリカの国務省代表団に対して、ウラン濃縮プログラムを北朝鮮は持っている、そういうことを言ったということでございます。
原口委員 この委員会に提出された資料では、総理は九月十七日以前にそのことを御存じだったというふうに、資料をいただいているんですが、それは違うんですか。
小泉内閣総理大臣 いつだか覚えておりませんけれども、ブッシュ大統領との会談の中でそういう報告、情報なりはよく提供を受けております。しかし、いつか覚えておりません。
原口委員 そんなにしょっちゅうブッシュ大統領と会談されているわけではない。だから、九月にブッシュさんにお会いになったアメリカでお聞きになったわけですね。
小泉内閣総理大臣 アメリカとの会談において、そういう疑惑があるという情報の提供は受けました。
原口委員 私が伺っているのは、それを認めたと、北朝鮮みずからが。それは疑惑でしょう、今おっしゃったのは。北朝鮮が核開発をしている疑惑がある、それは私たちもさまざまなところから聞きます。しかし、それをみずからが今回の拉致と同じように認めたというのを御存じになったのはいつですか。
小泉内閣総理大臣 それは覚えていません。
原口委員 いや、それはなぜかと、なぜこんなことを聞くかというと、日朝平壌宣言の前に認めていればまた別の対応があるからなんですよ。それが九月十七日の前か後かというのは、そんな簡単な話じゃないんですよ、総理。覚えてない。わざわざ、そのために、ここにいらっしゃる杉浦さんに御足労を何回もいただいて、それで資料をとった上で御質問申し上げているんですが、何なんだ今の答弁はというふうになりますよ。
小泉内閣総理大臣 大体、私がいろいろ報告を受けるのに、何日の何時何分なんて覚えているわけないでしょう。だから、私が言っているのは、ケリー・アメリカ国務次官補が十月三日から五日まで訪朝したんですよね。その後、こういうことだという情報を受けたわけでありまして、何日の何時に受けたというのは私は覚えていません。
原口委員 そんな何時とかまで聞いていないじゃないですか。私が伺っているのは、九月十七日の前に、北朝鮮は核開発について認めていたのか認めていなかったのかということを聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 それは、アメリカから疑惑があるということで、北朝鮮は認めていませんよ。認めていませんよ。
川口国務大臣 北朝鮮は、総理がピョンヤンに行かれて平壌宣言を署名なさる九月十七日の前には、このことについては認めていませんでした。今総理がおっしゃいましたように、北朝鮮が認めましたのは、十月三日から五日までケリー国務次官補が行ったときに認めたということでございます。
原口委員 ということは、九月十七日の平壌宣言のときには北はそれを認めていなかったということでよろしいですね。
川口国務大臣 北は認めておりませんでした。
 他方、我が国に対しては、詳細なことについては伝わっておりませんでしたけれども、九月の十七日の前に、そういった疑惑があるということについてはアメリカから伝えられていた、そういうことでございます。
原口委員 時間がもうあとわずかになりましたので、朝銀について質問をしておこうと思います。
 これは、総理、二年前に私がこの委員会で質問をしたものです。二年前に、集中検査の対象としていない信用組合がこれだけあったんです。これは、ごらんになるとほとんどが朝銀なんです。しかも、金融整理管財人も置かない。何兆、一兆を超えるお金を入れなきゃいけないから、ここに対して管財人を入れてくれと何回もこの場で言いました。しかし、判を押したような金融担当大臣の答えでした。
 今、今までこれに六千億以上お金を使って、これからまたハナ信組を中心に四千億以上のお金を使わなきゃいけない。一体この責任というのはだれがとるのか。金融担当大臣、この事実について御存じだと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘の朝銀、朝銀信組をめぐりましては種々の問題が指摘されている、私も十分承知しています。
 しかし、よく御存じのように、この信組は、我が国の法律に基づき設立された預金保険上の金融機関でありまして、他の金融機関と同様、預金者保護や信用秩序の維持といった預金保険法の趣旨、目的に沿って、同法に基づき、御承知のように預金保険機構より資金援助が行われているということになります。
 他方、朝銀については、平成十二年四月の都道府県から国への信用組合の監督権限移譲以降、それ以降厳正な検査監督に基づく破綻認定、金融管財人派遣による責任追及への取り組み等がなされておりまして、責任追及については、民事訴訟二十件、刑事告訴、告発五件の実績が上がってきております。また、告訴、告発等を端緒に捜査当局による捜査が入りまして、現在、司法による事実解明が進められているところがありまして、さらに事業譲渡後もRCCにおいて引き続き徹底的に責任追及が行われております。
 さらに、今御指摘のありました新しい受け皿組合においては、二度とこれまでと同様のような問題が生じることのないよう、架空名義口座の排除、監査機能の強化等の対策とあわせて、経営の独立性、透明性を確保するための対策を講じているところであります。
 したがいまして、金融当局としては、このような枠組みが有効に機能して、受け皿組合の経営の独立性、透明性が確保されて経営の健全性が維持されていくよう、引き続き厳正な検査監督を行う、そういうつもりでおります。
原口委員 厳正な検査監督をしていたら、どうしてこういうことになるんですか。あんまりうそを言っちゃいけませんよね。
 それで、今何でこんなことを言っているかというと、総理はこの予算委員会の、通常国会の中で、我が党の前原議員やさまざまな同僚議員の質問に対して、ちゃんと調査をすると。きょう、この定款を持ってきました。いわゆる北朝鮮の、朝鮮労働党の下部機関であったり、あるいは総連と関係ある人たちはこの朝銀から排除して、本当の健全な金融機関にするということを目指して改革をしてきたんです。しかし、どうですか、この中にはまだしっかりいらっしゃるじゃないですか、理事長。皆さん調査すると言ったけれども、本当に調査しているんですか。このお金がどこへ行っているんですか。新潟から万景峰号に乗って北に渡っているんじゃないんですか。
 これは、平成十四年十月二十二日、東京地方裁判所で判決が出ました。朝鮮総連と一体となって組織的にやっているということを判決文がしっかり示しているじゃないですか。司法からこんなことを言われないと正されない行政というのは一体何なんだ。
 総理、どのような調査をされましたか。前原議員は総理に、これは日本の安全保障にかかわる重大な問題だ、一兆というお金、恐らく一兆できかないですよ、そういうお金をなぜ払わなきゃいけないのかと何回もやっている。どうされますか。総理、今、竹中大臣は、法律にのっとれば公的資金は注入できると言ったんですよ。それと同じですか。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 まず、朝銀東京については、金融管財人により、同組合の元理事長等旧経営陣二名について、平成十三年十一月八日、協同組合による金融事業に関する法律違反、検査忌避で刑事告発がなされ、また、同月二十八日には業務上横領で刑事告訴がなされており、十月二十二日火曜日、それら刑事事件に関する判決がなされたものと承知をいたしております。
 そして、破綻した朝銀信組に係る責任追及については、金融整理管財人において作業が行われるとともに、事業譲渡後はRCCにこの作業が引き継がれております。
 いずれにせよ、当局といたしても、破綻金融機関の責任解明に引き続き努力をしてまいりたいと思っております。
原口委員 公的資金、投入するんですか。今、金融整理管財人と言ったけれども、二年前に質問したときはいないじゃないですか。何を言っているんだ。総理、これは決断なんですよ、調査をすると。
 そして、ここにもはっきり書いてある。「理事長以下がその使命を無視して組織ぐるみで敢行した背信性の高い、計画的かつ組織的犯行である。」判決文にちゃんと書いてある。「朝鮮総聯からの要請は無視できないという気持ちのほか、」云々と。これを読んでください。司法がしっかりと言っていることを行政は無視をして、そして、この立法府でも何回も何回もやってきたことをまだやるんですか。今のは答えになってない。どうぞ、総理。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 朝銀をめぐっては北朝鮮本国への送金疑惑も指摘されておりますが、金融整理管財人等においては、旧経営陣、さらには債務者の責任追及のための融資資金の資金トレースに努めているものの、融資資金が融資先からさらに、どこにどのように流れているかといったことが、なかんずく不正に海外に持ち出されるかどうかについてまで調査することは、権限もない以上、おのずと限界がございます。このため、送金疑惑については、捜査当局やあるいは税関等関係省庁と連携をして対応していきたいと考えております。
原口委員 委員長にお願いしますが、権限のない人間が出てきて決断の話をしないでほしい。そして、自分には権限がありませんと言う。
 どうですか、総理。これは公的資本形成の推移ですよ。今、日本の地方は大変な状況になっています。お金足りないんです。デフレ対策なんと言っているけれども、税源も、ことし大幅な税収減ですよ。何でそれで今みたいな、調査できないかわからない、それで公的資金を入れますという話になるんですか。理屈が立たないじゃないですか。総理、どうぞ。
竹中国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、基本的には、我々はこの法律の枠組みの中で仕事をしているわけでありますから、日本の法律に基づき設立された預金保険上の金融機関に対しては、やはりその国内法に基づいてしかるべき対応をしなければいけないというふうに思っております。
 しかしながら、御指摘のような問題があるということは十分承知しておりまして、それに対応して、例えば幾つかの条件等々をつけているわけであります。そういった問題を関係当局と調整をしながら今やっている、粘り強くやっているところでありまして、法律の枠組みの中できちっと対応していくというのが基本的な方針でございます。
原口委員 定款にも違反しているから、これでは公的資金は入らないでしょうということを言っているんですよ。法律に沿ってやるのは当たり前じゃないか。そんなことをどうして予算委員会で聞かなきゃいけないのか。
 石破大臣にもお尋ねをしたいが、まさに私たちの安全保障上の問題ですよ、これは。これがミサイルになり、あるいは核の開発になりなんということは許されないわけで、どうですか。
藤井委員長 竹中金融担当大臣、再び答弁を求めます。
竹中国務大臣 まあ、しかし、超法規的に我々がそういうことをやるというような枠組みは持っていないわけでありますから、基本的には、日本の国内法に基づいて対処するというのが基本であります。
 しかしながら、それぞれ例えば個別の問題がございます。例えば、関東信越地区の破綻五朝銀の受け皿組合であるハナ信組の定款においては、今定款の話がありましたけれども、経営の透明性、独立性を確保する観点から、朝鮮総連を含むいかなる団体からの経営、人事に関する介入、関与を排除すること、さらに、朝銀や朝鮮総連の役員経験者は役員としないこと、第三としては、役員は朝鮮総連のいかなる地位、職にもつかないことというふうにされていると。
 したがって、現状においては、役員体制の洗い直し作業等々、大きな進捗が見られていないことから、現時点では事業譲渡等の具体的な見通しがまだ持てない状況にあるということです。したがって、先ほどから申し上げていますように、法律の枠組みにのっとって、関係機関と調整をしながら、粘り強く対処していくという立場にあります。
原口委員 国民の皆さん、これ、おわかりになったと思いますよ。これと同じ体質が拉致の事件を長引かせてきたんですよ。拉致はないと言っていたじゃないですか。
 もう時間がございませんので。今、雇用が大変厳しい。その雇用の中で、さまざまなデフレ対策の議論があるが、一番国民負担、これは棒グラフにすると、年金保険料ですよ。そして、この年金保険料、基礎年金の国庫負担額の見通し、これを考えてみても大変な、例えばすべての費用を年金目的消費税で補う場合、五・五%も要る。逃げ水みたいにずうっと年金が逃げていく。このことによって何が起こっているか。不安が起こり、消費の停滞が起こっている。もう一つは、深刻なことは、中小企業は特にそうですが、事業主負担を忌避するために正規雇用をどんどん減らしている。ここに明確な答えを出さなきゃいけない。
 平沼大臣、私は、BISの規制も今のままでいいとは思いません。いわゆる貸し出しリスクを一〇〇%、貸し出しを一〇〇にして国債保有をゼロにするんだったら、銀行は国債だけ持って貸しはがしするのは当たり前ですよ。中小企業に対する基準というのが必ず必要だということを一月にも御議論をさせていただきました。
 竹中大臣は、不良債権の問題は都市の問題だ、大銀行の問題だとおっしゃりたいかもわからないが、そうではない。地域の中小企業に対してどのように構造改革をしていくのか。総理、地域の中小企業をどのように構造改革されるおつもりですか。私は、その資本構造も含めて、しばらく、例えば中小企業版のデット・エクイティー・スワップというものをつくって、そこの構造改革をやらないといけない。もう黒字でも倒産をしているこの現状に対して何をメニューとして出していくのか、明確なお答えを総理からいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 中小企業対策につきましては、平沼経済産業大臣等、今精力的に対応策を、今までも考えてきましたけれども、今後さらに不安のないような対処をするように検討中だと思います。産業大臣に譲ります。
平沼国務大臣 確かに、今、中小企業というのは非常に厳しい状況に置かれております。ですから、御指摘のあったデット・エクイティー・スワップ、こういった手法というのは、大変な負債を抱えているそういう企業がそれを証券化して、身軽になって、そして再建に立ち直ることができる、こういった手法はやはり積極的に私は取り入れていかなければならないし、中小企業対策というのはきめ細かくやっていくべきでございまして、私どもとしては、例えば中小金融機関におけるBIS規制というようなものも、中小企業というものを考慮しながら、やはりその辺は余裕を持ってやるような、そういう対策は積極的に講じていかなければならないというふうに思っております。
原口委員 BIS規制の見直しについても、バーゼルの委員会でも議論をされているけれども、しかし、随分後じゃないですか。今、この世界的にデフレ傾向が定着をしつつある。大変厳しい時代なので、私は、スピードを持って、そして首相のやはり指導性を持って、改革の案を前に進めなきゃいけない。もしできないのであれば、もう一年半も待ちましたが、できないので、私たちにかわっていただきたい。そのことを申し上げて、質問を終えます。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて海江田君、五十嵐君、原口君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増委員 日朝交渉について伺います。
 拉致問題と核問題、失われた二十五年間を今こそ取り戻さなければなりません。また、核開発問題は、朝鮮半島をめぐる国際関係に十年ぶりの強い緊張をもたらしています。非常に困難な問題ではありますが、日本国としての正念場であります。この難局を乗り越えれば、日本と世界は歴史の新しい段階に入るでありましょう。
 しかし、政府は今、北朝鮮とのやりとりで非常に苦しんでいます。なぜかといいますと、さきの平壌宣言におきまして、拉致問題と核問題を国交正常化交渉の議題にきちんと入れないでしまったからであります。
 平壌宣言を読んでみますと、国交正常化交渉をことしの十月中に始めるとはっきり約束してあります。そして、国交正常化交渉において協議すべき議題を具体的に定めていますが、何を協議すべきこととして定めているかといいますと、一、経済協力の具体的な規模と内容、二、財産及び請求権の放棄、三、在日朝鮮人の地位と文化財に関する問題、平壌宣言の中で国交正常化交渉において協議すると明記されているのは、この三つだけなんです。
 拉致問題については、これからそういうことはしませんというようなことは書いてあるんですけれども、既に行われた拉致事件については、平壌宣言の中には一切書かれていません。核問題を含む安全保障問題については、平壌宣言の末文に安全保障協議を行っていくというふうに書いてはありますけれども、本文中で国交正常化交渉の協議の対象というふうにはされていないわけです。
 総理に伺いますけれども、なぜ拉致問題と安全保障問題を国交正常化交渉の中身に入れなかったのでありましょうか。
小泉内閣総理大臣 今、一部だけを引用されましたけれども、拉致の問題も安全保障協議の問題も平壌宣言の中に全部組み込まれていると確認した上で署名したわけであります。あなたの見解と私の見解、違いますが、交渉をすることによって解決が可能だと思ったから宣言に署名したわけであります。見解の相違です。
達増委員 どう読んでも、拉致問題、既に起きた拉致事件について日朝国交正常化交渉の中で協議するとは書かれていません。どの部分が既に行われた拉致事件について協議すると定めた部分なんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 よく読んでいただければわかると思いますよ。
 「双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために二〇〇二年十月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。」と。以下、今言った拉致の問題、安全保障の問題、すべて含まれています。十分に日本の主張は含まれている。
達増委員 今のままの答弁では、拉致問題についてどこに書いてあるか、小泉総理は明らかにできなかったということになりますよ。
小泉内閣総理大臣 何を言っているんですか。交渉を再開する前に、既にもう拉致問題、いろいろ交渉しているじゃないですか。今まで予想もできなかった、家族が帰国しているじゃないですか。交渉以前に、既に交渉を始めているんです。交渉後も続けていきます。
達増委員 一九九一年から過去十一回やっている日朝国交正常化交渉の中では、双方言い合いという形ではありますけれども、曲がりなりにも、拉致問題やミサイル問題についても議題として日朝国交正常化交渉の中でちゃんと取り上げられているんです。ところが、今回の平壌宣言の中では、今度十月にスタートさせる国交正常化交渉の中で、国交正常化交渉の議題として拉致問題というのは排除されてしまっているわけです。これはもう歴史的な妥協、考えられない譲歩だと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 とんでもない、見当違いなことを言わないでくださいよ。あなたの解釈はあなたの解釈だよ。
 三番に、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」はっきりと明記されているじゃないですか。だから、交渉以前に今既に交渉している。交渉してからも、これから、話は進めます。交渉するなというあなたの見解の立場に立てば、もう信用できないから交渉するなというんですけれども、交渉しないで何が解決できるんですか。(発言する者あり)そっちの方が詭弁だ。
達増委員 今読んだところは、これからは拉致のようなことをしないということを定めた部分を今お読みになりましたけれども、過去の拉致について国交正常化交渉の中で協議するとはどこにも定められていない。
 これがなぜ問題かといいますと、ことし十月、この十月中には国交正常化問題をスタートしなきゃならない、そう約束しちゃったわけです。その国交正常化交渉の中では、二ですね、「国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。」と、国交正常化交渉が始まってしまえば経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議するということを約束してしまっているわけです。
 しかし、経済協力の問題に入る前に、つまり、ここで言っている国交正常化交渉に入る前に、拉致問題を解決させなければならないわけです。つまり、拉致問題に関する協議をするということを一切約束しないまま、十月から国交正常化交渉をスタートするということに署名してしまったことは、明らかな失敗だったんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 何を見当違いなことを言っているんですか。よく読んで……(達増委員「誹謗中傷はやめさせてください」と呼ぶ)誹謗中傷はあなたですよ。国会議員同士で討論しているんだろう。(達増委員「後で議事録を見てもらえばわかりますが、私は一切誹謗中傷……」と呼ぶ)
藤井委員長 冷静に。今、内閣総理大臣を指名していますから。
小泉内閣総理大臣 日朝間に存在する諸問題に誠意を持って取り組む決意を表明したと。これでこれからいろいろ交渉する。今既に、再開していないのに、拉致問題を協議しているでしょう。何もしていない、何も明記していないとは、とんでもない誤解ですよ。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。冷静な議論をしてください。
達増委員 私が今考えておりますのは、国交正常化交渉の議題の中に拉致問題を入れなかったことをいわばけがの功名として、今政府は……(小泉内閣総理大臣「何がけがの功名だ、そっちの方がよっぽど誹謗中傷じゃないか」と呼ぶ)委員長、この総理大臣の不規則発言について注意してください。
藤井委員長 質問者も答弁者も冷静に。この拉致問題は、国民ひとしく一日も早い解決を望んでいますので、お互いに冷静に議論を交わしていただきたいと思います。
達増委員 日本政府は、関係閣僚会議で、国交正常化交渉においてはまず拉致問題を最優先事項として取り上げると。つまり、日本政府は日本国民に対して、国交正常化交渉の中で拉致問題を取り上げるということを言っているんですけれども、北朝鮮はそのことを認めていませんよ。平壌宣言の中では、北朝鮮は拉致問題を国交正常化交渉の議題として認めていない。その証拠に、日朝国交正常化交渉再開に当たっては拉致問題の解決に誠意を持って取り組むべしとケリー国務次官補が北朝鮮に働きかけたとき、北朝鮮は答えていません。
 北朝鮮は拉致問題を十月からスタートするこの国交正常化交渉の議題として認めていないということを確認したいんですが、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、アメリカとの会談、アメリカは、拉致問題というのは日本とは違うから、どういう話をしたのかわかりませんよ。しかし、日本としては、拉致問題、あるから交渉前から既に交渉しているわけでしょう。再開する前から今交渉して、家族が帰国しているんでしょう。これを、拉致問題を取り上げていないという見方自体、誤解じゃないですか。
 しかも、平壌宣言の第一ですよ、一。国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意を持って取り組む強い決意を双方は表明した。これで読めない方がどうかしている。拉致の問題も安全保障の問題も、この文章で拉致の問題が入っていないと思う方がおかしい。
達増委員 私が総理に伺っているのは、北朝鮮がどう認めているかということでありまして、アメリカのこととか日本政府の認識を聞いているんじゃありません。
 北朝鮮当局は、拉致問題を国交正常化交渉の議題として認めているんですか。では、それにイエスかノーかで答えていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、日朝間の交渉は、拉致の問題も安全保障上の問題も、過去、現在、将来にわたる問題も、包括的に総合的にこれから協議するということで署名してきている。これに対してアメリカも支持、歓迎しているじゃないですか。韓国も支持している。ロシアも中国も支持している。
 だから、拉致の問題というのは当然、交渉再開前から今もう既に交渉しているじゃないですか。それを、何にも交渉する議題に入っていないとか。議題に入るどころか、もう家族は帰っているんですよ。議題にしている。第一歩にすぎないと言っているじゃないですか。余り偏見に満ちたのはやめてもらいたいね。
達増委員 私の質問に全然答えずに、かつ、誹謗中傷を繰り広げられる。何というのか、きちんと私の言葉を理解して、また自分の語っていることを理解してしゃべっていらっしゃるのか。非常に困るんですけれども。
 私が問題にしたいのは、この平壌宣言の中では、十月にスタートする日朝国交正常化交渉の中では「経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議する」と約束してしまっているわけですよ。ですから、それ以前に、この十月が終わる前に拉致問題が解決すれば、約束したとおりにやればいいんです。
 しかし、今の日本政府は、いや、大丈夫だと。今月国交正常化交渉が始まるけれども、その中で拉致問題、拉致事件についてはきちんと協議できるからいいんだと日本政府は言っているんですけれども、北朝鮮はそういう約束はしていないじゃないですか。なぜ、そういうものに署名をして帰ってきたんですかと総理に伺っているんです。
藤井委員長 川口順子外務大臣。(達増委員「総理です、総理」と呼ぶ)
 小泉内閣総理大臣。
小泉内閣総理大臣 後で外務大臣にしてもらうけれどもね。
 総理が、日本国の総理大臣として平壌宣言に金正日氏と署名してきた。そして、なぜ、拉致問題がないとか、経済協力ばかり先行しているとか言っているけれども、正常化の暁には経済協力等の形で支援する。正常化しない限りしないんですよ。拉致の問題も、交渉を再開する以前にもう交渉しているじゃないですか、始まる前に。だれが、八月三十日の私の訪朝の発表前に、拉致された家族が日本に帰国したと想像した人はいますか。交渉再開前に既に交渉を進めているじゃないか。それを、交渉もしない、約束もしていない。どこを見ているんですか。
達増委員 では、確認しますが、平壌宣言で約束した国交正常化交渉というものと拉致に関する日朝交渉、これは別物という理解でいいんですね。
小泉内閣総理大臣 拉致の問題も、安全保障の問題も、過去、現在、将来の問題も、国交正常化交渉の中で交渉しますよ。既に、再開が始まる前から拉致の問題は交渉しているんです。同時に、安全保障の問題は安全保障協議でもやります。
達増委員 国交正常化交渉の中で取り上げると平壌宣言で約束しているのは、経済協力の問題と、その他いわゆる北朝鮮が今まで言ってきた過去の清算の問題ばかりじゃないですか。
 今まで十一回に及ぶ日朝国交正常化交渉の中で、人道問題、拉致の問題とミサイル等安全保障の問題、そして北朝鮮側が言う経済協力等の問題は、あくまで対等な扱いを十一回ずっとされてきたのに、今回の平壌宣言では北朝鮮側の言い分がはるかに優先されている。特に、既に行われた拉致事件については平壌宣言の中には全く書かれていない。ですから、この平壌宣言というのは、本当に考えられない譲歩、今まで十一回やってきた日朝国交正常化交渉の日本のスタンスを大きく後退させる、それは経済協力ということを大きく前進させているわけです。今まで、経済協力について、国交正常化交渉の中で議論するとはっきり約束したことはないんですよ。
 ですから、拉致問題に関する情報が提供されたことや、家族の方々、被害者の方々が帰国されていることなどなど、今までの進展、失われた二十五年間を取り戻すために大きな前進があったことは認めますが、外交交渉、宣言をつくる外交交渉としては、もし日本政府として経済協力をこの際大きく前進させ、はっきり約束したいというのであれば大きい前進でありましょうが、もし、そうじゃなく、経済協力はあくまで拉致や核の後という決意があるとしたら、この文章は大きな譲歩なんです。そのことを総理、お認めになりませんか。
小泉内閣総理大臣 全く認めません。見解の相違。
 拉致の問題が書かれていないから、工作船の問題が書かれていないからと言いますけれども、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題、再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認したと明記してあるじゃないですか。
 そして、書いてないにもかかわらず、なぜ今拉致の問題がこれだけ前進してきたんですか、一方に。しかし、拉致の問題が含んでいるということをなぜ読めないんですか。なぜ読めないんだ。書いてないから議題にならない、どうかしているわ、それは。これは、しかし……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
小泉内閣総理大臣 国民の生命と安全にかかわる問題じゃないですか。それで十分読めるじゃないですか。それを、読めない、読めないからしない。開催する前からもう拉致の問題は交渉しているじゃないですか、現実に。それを、何もしていない、やっていない。よっぽどおかしい、それは。
達増委員 国交正常化交渉という言い方がよくないんです。この際、日朝交渉を仕切り直せる大チャンスなんですから、まず拉致交渉、そして安全保障交渉、その二つをこの際日朝間でやると約束し、そしてその結果、北朝鮮が普通の国になっていくのであれば、その中で、国交正常化交渉という言葉は使わずに、経済協力交渉とでもいう言葉を使ってやればいいんです。
 アメリカは国交正常化交渉という言葉は一切使わず、人道に関する交渉や安全保障に関する交渉や、必要に応じてきちんと交渉している。そういう仕切り直しを小泉総理ができないというのであれば、これは政権交代をしない限り、日本はこのいいかげんな平壌宣言、この平壌宣言のいいかげんさは幾ら強調してもし過ぎることがありません、このいいかげんな平壌宣言に引きずられて日朝交渉を進めるしかありません。
 さて、今まで十一回の日朝交渉でありますけれども、この間、日本政府は北朝鮮側の経済協力要請に安易に耳を傾け、また積極的に米支援をしてまいりました。この平壌宣言はそういう経済協力前のめり外交の総決算になっているわけであります。
 この間、対ロシア外交では鈴木宗男議員を先頭に利権目当ての経済協力前のめり外交が続いてきたし、対中国外交でもODA政策に甘さが見られたわけであります。私は、総理個人にODA利権目当てという気持ちがあるとは言いませんが、外務官僚が先走ること、また派閥関係者が群がる危険性、こういうことがあるということは指摘させていただきたいと思います。
 総理は経済の分野で重要政策を丸投げする傾向があると言われていますが、外交の分野でも外務省に丸投げ、そのおぜん立てに安易に乗って変なことにならないようにと注意させていただきたいと思います。
 最近、そういうおぜん立ての破綻が多くの分野で目立ってまいりました。竹中大臣の金融プロジェクトチームが中間報告に失敗したのが典型的な例であります。また、経済財政諮問会議もだめでありますし、自民党税調に任せるということもそもそも間違っているでありましょう。道路公団に関する猪瀬さんたちの委員会もおかしくなっておりますし、首相公選に関する委員会については、今ごろ一体どうなっているのかという感じであります。
 こうした小泉手法の破綻が最もあらわれているのが経済政策であります。
 総理に伺います。
 小泉内閣誕生直後の所信演説で、「日本にとって、今、最も重要な課題は、経済を再生させることです。」とおっしゃいましたが、経済は、再生どころか大きく悪化しております。これでいいんでしょうか。二、三年我慢ということでこれは織り込み済みなのでしょうか。
小泉内閣総理大臣 二、三年我慢しながらあすをよくしようという姿勢を就任以来やっています。
達増委員 不良債権について、最初の所信表明演説では、「二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します。」としていました。これだと、達成日は早くて来年の五月、来年の五月には不良債権の最終処理ができていてもおかしくなかった。遅くて平成十六年の五月となりますが、先週の総理の所信表明では、平成十六年度に不良債権問題を終結させるとなっておりまして、締め切りが平成十七年三月に延びてしまいました。このおくれのためにペイオフ解禁も二年間延期となったわけですが、これに応じて、当初二、三年我慢ということが、今は四、五年我慢ということになっていると理解してよろしいでしょうか。
小泉内閣総理大臣 二、三年と四、五年、違いといえば違いますけれども、二、三年我慢すると十六年度中に不良債権問題を終結させる、全然変わっていないじゃないですか。
達増委員 驚くべき答弁でありましたが、この二、三年という期間の間にも、そのとき学校を卒業する人たちは就職が非常に厳しいんです。また、商売でも、来年、この年末越せるかという人たちがたくさんいる中で、それがさらに一年、二年延長されるということは、一種、戦争が二、三年で終わるのが四、五年に引き延ばされてしまうような、そういう経済危機の直撃を受ける人たちにとっては人生の問題なんですから、そのように軽々しい発言はしないでいただきたいと思います。
 去年、五月二十八日の予算委員会で、竹中大臣は次のようにおっしゃいました。ペイオフ解禁の延期等々に象徴されるような、政府が一たん約束したことを延期するというのは、政府のクレディビリティーというか信用を損ねるという意味で大変残念なこと。そういうことが絶対起こらない経済運営をしていかなければならない。
 ことし七月二十二日の予算委員会では、小泉総理がこうおっしゃっています。ペイオフ実施に向けて、金融機関も経営の健全化に努力していかなければならない。実施への対応ができないから延期してくれという声が一部にあるが、そういう方策はとらない。ペイオフは、予定どおり来年四月に実施いたします。
 さて、総理に伺いますが、政府の信用は確実に損なわれたと思いますけれども、民間企業の場合、失われた信用を取り戻すには、トップが謝罪して辞任することであります。総理はどのように信用を取り戻すつもりでしょうか。
小泉内閣総理大臣 もとより経済は生き物ですから、不良債権処理を進めていくうちに、一方では不良債権が減り、また新規にふえている部分もあります。そういう中で、無用な混乱を起こさないために、大胆かつ柔軟に対応する。そして、不良債権処理等、総合的な対策を加速させるためにいろいろやっていますが、責任をいつとるか、総選挙で責任とります。
達増委員 きょうあすにもやっていただきたいと思います。
 不良債権処理について伺いますけれども、本来、不良債権問題として処理されるべき不良債権というのは、借金して変なゴルフ会員権を買ったり、あるいは無謀なリゾート投資をした結果、失敗して借金を返せなくなった、そういう借金をいつまでもぐずぐずやっていたのではだめなので、そういう人や企業からは厳しく取り立てようということが不良債権処理の趣旨なはずであります。
 ところが、今、財政を急に切り詰めていくことでデフレや不景気が続いて、物が売れない、お客さんが来ない。そういうことで、まじめな人やまじめな会社でも十分稼ぐことができなくなって、借金を返すよりも、むしろさらなる借金を必要とするケースがふえているわけであります。バブル型の不良債権ではない、不況型の不良債権がどんどんふえている。これらを一緒くたに処理を加速していけば、さらなる失業、さらなる倒産、さらなる不景気をもたらし、不良債権はさらに増加していく。つまり、破綻がふえていくわけでありまして、破綻懸念先もふえていくわけであります。
 今、不良債権処理を加速するということをおっしゃっていますけれども、結局、健全債権をどんどん不良化させて破綻をふやし、不良債権増加を加速していくことにはなりませんか、総理。
小泉内閣総理大臣 後ほど竹中大臣に答弁させますが、かといって不良債権処理を先送りしたら、どうなるんですか、何にも解決にならないじゃないですか。
 その不良債権処理を加速する上において、雇用とか中小企業対策をしっかりするのが総合対策であります。
達増委員 柳澤前金融大臣がびびって不良債権処理を加速できなかった気持ちはよくわかります。ただし、これは政府としての約束違反でありますから、更迭されても仕方がないわけでありますが。
 総理に重ねて伺いますけれども、小泉内閣の不良債権処理を進めるという約束は、同時に切り詰め政策と一緒にやっていますから、切り詰め政策、デフレ政策と不良債権処理加速化を同時にやるということは、結局、日本国内の健全債権がどんどん不良債権化されていき、処理されて、資産や人材や経営権がほうり出されてしまいます。失業や倒産などで資産や人材、経営権がほうり出されて、それを外国企業が安値で買っていく、外国企業に安値でたたき売られていくわけですね。
 今月二日、特殊法人の政策投資銀行が、アメリカの有名なカーライルという会社が設立した企業買収ファンドに四十億円出資する、そういう発表がありましたが、いよいよ来たなという感じがしております。
 小泉総理は、そういう日本の資産や人材や経営のノウハウとかいったものを次々につぶして外国に安くたたき売る、そういうことをやらなきゃ、その先どうなるんですかとおっしゃっているんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 そんなこと一つも言っていませんよ。
 外国の投資が日本に向かうのは歓迎します。それは、日本が外国に出ていって、日本の企業が歓迎されるということも日本の企業も望んでいるでしょう。いろいろ企業が行き来して、日本も投資しやすい環境を整備するのは大事であります。それは外国に売り渡すという観念とは全く違います。
 と同時に、現在、不良債権処理を進めておりますけれども、その中で、私は緊縮路線をとっているとは思っておりません。三十兆円認めているんです。経済は生き物です。そういう中で大胆かつ柔軟に対応する。改革を、税制改革等、あるいは規制改革等、歳出改革等を進めておりますが、緊縮路線をとっているとは全然思っておりません。五十兆円も税収がないのに三十兆円の国債を発行して、なぜ緊縮路線をとっているのか、その方がよほどおかしいと思います。
達増委員 今もまた質問と違う答弁だったんですけれども、先に続けますが、総理を見ていますと、「屋根の上のバイオリン弾き」というミュージカルを思い出します。
 「屋根の上のバイオリン弾き」というミュージカル、どういう意味かといいますと、帝政ロシアに住んでいたユダヤ人の暮らし、一見格好よく楽しそうだけれども、非常に危ないことをしている。それを「屋根の上のバイオリン弾き」と例えているわけであります。一見格好よく楽しそうだけれども、非常に危ないことをしている。
 ミュージカルの主人公が語るんですけれども、そういう「屋根の上のバイオリン弾き」がおっこちて首の骨を折ったりしないようにするためには、しきたりに従うことが決め手だと言うんですね。そうすれば危機が少なくなる。それで、ミュージカルではみんな大勢出てきて、みんなで「しきたり」と歌うシーンがあるんですけれども、ここ三日間の衆参の本会議の議論を聞いておりますと、自民党を初めとする与党の皆さんが、今までのやり方でやれとか、与党の言うことを聞けとか、みんなに相談しろと、繰り返し総理に食ってかかっているわけでありまして、与党のみんなで総理に向かって「しきたり」と迫っているように見えるわけであります。
 今、我らが「屋根の上のバイオリン弾き」が、結局しきたりに従うことになるのか、それとも勝手な演奏をして屋根からおっこちることになるのか、そういう局面に来ているんだと思います。これは見せ物としては大いに見ものなのでありますけれども、日本はそれどころではありません。今必要なのは、かたい大地につめを立てるようにして着実に開拓を進めていくような政策、すなわち減税と構造改革の組み合わせです。
 そこで総理に、橋本総理が辞任するきっかけとなった質問をさせていただきたいと思うのですけれども、恒久減税、後から増税によって財源をカバーするということをしない純粋な減税という意味ですけれども、この恒久減税をおやりになりますか。
小泉内閣総理大臣 私は、今まで税制改革というのは単年度で、一年度で、減税をした場合にはどこを増税するかということでやってきた。しかし、今の経済情勢を見ると、やはり減税を先行させる必要があるだろうと。しかし、ここで財政状況を無視して減税だけ、あとは増税は後の人に任せるというのも無責任だろうということから、単年度ではない、数年かけて結構だと。
 そして、来年度は減税を先行させる、その際には一兆円を超える規模の減税、結構だと。しかし、多年度で、将来の財源を見越しながら責任ある税制改革をすべきだということでありますので、多年度税収中立、来年は先行減税可、そしてその先行減税の規模も一兆円を超える。
 そういう中で、万機公論に、いろいろな専門家の意見も聞いてやってくれ、私は独断専行を避けますということを言っているんです。
達増委員 この前のNHKの日曜討論で、藤井自由党幹事長が恒久減税をするべきだ、財源は歳出の削減だと言ったところ、与党の幹事長さん方、特に自民党の山崎拓幹事長は、にやにやしながら、歳出カットはもう無理だ、もう節約の余地はないというようなことを言っていました。果たしてそうでありましょうか。
 思い出していただきたいのですが、ムネオハウス、あれは二億円でできるものに四億二千万円の予算をつけて、その差額が不正に使われていたわけであります。また、私が前に予算委員会で取り上げた愛媛県八幡浜のトンネル工事丸投げは、十九億円で落札したものが十三億円で丸投げされ、差額六億円がどこかに行っております。そして、ことし議員辞職した井上前参議院議長、千葉県内の公共工事で、七億七千万円の工事で六千四百万円、政治家に渡ったと指摘されております。同じく議員辞職した加藤紘一さんの秘書が地元山形で荒稼ぎしたのも同じメカニズムであります。
 このような税金のむだ遣いをやめて、むだな分をそのまま家計や企業に使ってもらい、消費や投資をふやすべきだと思うわけでありますけれども、こういうことは、山崎幹事長はできないと、それがしきたりなんでありましょうが、できないと言っていましたが、やはり今の政府・与党ではできないんでしょうか、総理。
小泉内閣総理大臣 今まではできないようなことを小泉内閣になってからはやっているんですよ。
 歳出を前年度以下に抑制する、来年度もそうですよ。しかも、公共事業は減らしますけれども、全部減らせなんというのは山崎幹事長もできないと言ったんでしょう。なぜならば、年金とか医療とか介護、これからますます高齢者がふえる。何にもしなくても、受給者がふえるんです。黙ってふえていきます。そういうところは減らせない部分もあります。しかし、減らすべき部分、ふやすべき部分、両方見ながら、全体としては来年度も、今年度よりも一般歳出は抑制していくという方針をとっているわけであります。
達増委員 私は、個人的な試算ですけれども、八十兆円の国家予算のうち、十兆円は不正を含むむだに使われていると思います。公共事業のみならず、各種補助金や例の機密費も含め、十兆円くらいは節約できると思うのです。
 鈴木宗男問題を調べていたとき、宗男議員の北海道の支持者が、自民党に金を出さないと生きていけないと語っていたことが印象に残っております。政権交代ができれば十兆円の減税が可能だということであります。
 そこで、大島大臣に伺いますけれども、宮内秘書が八戸市民病院などの公共事業受注口ききの報酬として金銭を受け取ったのは事実ですか。
大島国務大臣 先ほど各先生からお尋ねがございまして、何度か私も厳しく説明を求めました。その結果、紹介等をしてお金を受け取ったことはない、こういう報告でございました。
達増委員 それではさらに大島大臣に伺いますけれども、先ほどから同僚議員の質問に出てきましたコンサルタントのA氏でありますけれども、宮内秘書に対しまして、九五年四月三日百万円、七月六日五百万円、七月十七日一千百万円、八月四日三百万円、十月二日百万円、これを衆議院第二議員会館五〇二号室、つまり、大島大臣の議員会館の事務所で宮内秘書に渡したというふうに発言しているわけですが、これは事実でしょうか。
大島国務大臣 先ほども詳細に御報告申し上げましたが、そういう調査の経過の中で、紹介等をしたけれども金銭の授受はないとの報告でした。その報道がきょうあったわけですが、再度確認をしたい、このように思います。
達増委員 ぜひ確認の作業を続けていただきつつ、当委員会としてもそこは追及したいと思いますので、委員長にお願いでありますけれども、この宮内秘書、また、大島事務所で金銭の受け渡しを行ったと発言している、これは実名を知ってはいますが、きょうの場ではA氏としておきますけれども、A氏についての、この委員会へ参考人として招くことをお願いしたいんですけれども。
藤井委員長 A氏というのはよくわかりませんが、いずれにいたしましても、理事会において協議をいたします。
達増委員 小泉内閣になってもこういった問題がまだあるということでありまして、やはり政権交代が必要であるという思いを深くいたします。
 次に、国債三十兆円枠について伺いたいと思います。
 これは総理に伺いますけれども、国債三十兆円枠、これは堅持していくんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 もとより国債三十兆円枠というものをでき得れば守りたいと思っておりますが、経済は生き物であります。その時々の情勢において無用な混乱あるいは危機を起こさせないためには、大胆かつ柔軟に対応したいと思っております。
達増委員 国債三十兆円枠というのは財務当局、財務省ですね、財務当局による政府・与党に対する一種の貸し渋り、貸しはがしだと思うんですね。政府は破綻懸念先になっていて、与党は経営者として失格扱いをされている。そこで、政府・与党にこれ以上借金をさせないということで、国債三十兆円枠ということを財務当局が強く主張していると思うんですが、これは一面非常に正しいと思います。しかしながら、これは財務当局の責任回避でもあるんですね。
 といいますのは、不景気というものは人のせいにできるんです。財政切り詰めの結果、デフレ政策の結果、今のような不景気になっても、これは民間企業の努力が足りないからだとか、アメリカの不景気のせいだとか、あるいは他省庁のせいにすることもできるわけです。ところが、国債が発行のし過ぎで暴落などをしますと、これはもう一〇〇%財務当局の責任になるわけですね。そういう国債の暴落という危険、またデフレスパイラルの危険、究極の選択をてんびんにかけ、責任回避の論理から、結局、三十兆円枠堅持ということを財務当局が選んでいるのではないか。その結果、罪のないまじめな国民が今犠牲にされているということなのではないかと思います。
 節約主義というのは、一見格好よく見えるんですけれども、実は、今説明したように、無責任なところもありますし、そして結構残酷なところもあるわけであります。しかしながら、財務当局としては今の自民党政権に対してそういう査定で臨むしかないということが今の日本が直面している危機の本質であって、結論はやはり政権交代しかない、国民全体としてそういうことを今真剣に考えるときなのかなというふうに思います。
 最後に、総理に質問いたしますけれども、きょうは四十分たっぷり時間はいただいたんですが、余りに私の質問に対して直接答えていただけない、私の質問と関係ない答弁をする、こういうことをこれからないようにしていただきたいのですけれども、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は質問に誠実に答えているつもりですよ。しかし、今言ったように、言いっ放しでやられるのもなんですけれども、減税を先行させなさい、三十兆円枠を取っ払いなさい。どうするんですか、これから先、日本の財政。そういうこともあるから、私は、もう財源を考えないで減税先行させて、三十兆円の枠も突破して、景気が回復するんならすぐしますけれども、そうできない状況だから、そうならない状況だから苦労しているんですよ。
達増委員 今も私の質問と違う答弁をいただいたわけでありまして、こうしたことについて見解の相違と言って切り捨てることは簡単ですが、やはり言論の府の国会であります。粘り強く対話の結果、国をよくしていきたいという決意を示し、私の質問を終わります。
藤井委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 青森県の八戸市民病院の公共事業に絡んで、大島大臣の秘書官が六千万から七千万の口きき料を得ていた、そういう疑惑が問題になっているわけであります。
 先ほどの御答弁で、大島大臣は、これは十月十八日の記者会見でもおっしゃっているわけですけれども、本人は、相談を受けて紹介したことはあるけれども、見返りに金をもらったことはないと言っていると。つまり、口はきいたが金はもらっていない、こういうふうにおっしゃったわけなんですが、そういうことですか。
大島国務大臣 秘書の仕事は、御承知のように、さまざまな方が来て、さまざまな相談をします。そうしますと、そういうものとして、だれかに紹介してくださいと言って、はい、わかりましたと言って紹介する程度であった。その見返りとしてお金を得たことはない、こういうことでの報告でございました。
佐々木(憲)委員 要するに、公共工事に絡んで口はきいたけれども、金は受け取っていない、こういう報告を受けたということです。
 では、具体的に、端的にお聞きしますけれども、大島大臣自身、先ほど原口委員の質問に対して、私は一切受け取っていないとおっしゃいました。この八戸市民病院の公共事業の受注者から、表からも裏からも一切受け取っていない、こういうことですか。
大島国務大臣 裏とか表とか、それはどういう意味かわかりませんが、すべからく政治資金については、法にのっとって届け出ております。
佐々木(憲)委員 法にのっとってということは、政治資金収支報告書には記載されるようなことはある、こういうことですか。
大島国務大臣 受注者から政治資金にのっとってもらったことはないか、そういうことでございますか。
 その受注者の細かいこと、ほとんど私わからないんです。あるかもしれません、率直言って。それは調べればわかると思いますし、調べろと言えば調べてみますが、法にのっとって処理していると思います。
佐々木(憲)委員 原口委員の質問に対しては一切ありませんとおっしゃったんですね。
 では、私の方でそれを調べましたので、今皆さんにお配りしておりますけれども、ぜひそれを見ていただきたい。
 工事が行われた時期に献金が集中しております。九五年から九七年の三年間だけで、関連の元請、下請会社から、政治資金収支報告書に記載されたものだけでも、大島大臣は、実に一千九百万円献金を受けております。しかも、落札直後の九六年、ここに急増しているわけであります。これを見てもわかりますように、九五年の百六十二万から、九六年になりますと一千五百四十四万、約十倍の献金になっている。
 つまり、先ほどの話では、秘書が口ききをした、これはお認めになった。見返りに、秘書はもらわなかったけれども、しかし大島大臣が受け取ったということになるんじゃありませんか。これは明らかに口ききの見返りだということになるんじゃありませんか。
大島国務大臣 政治資金規正法にのっとって処理されていると思います。それはそういう資料だと思います。私は、今そういうことを初めて詳細に教えていただきましたが、決してそれはその見返りとかなんとかということではなくて、法にのっとって適切に処理されているもの、このように思います。
佐々木(憲)委員 法に基づいて報告をしたというだけでは疑惑は晴れないんです。鈴木宗男議員の場合も、法に基づいて適切に処理をして記載をした。しかし、その記載された金額が、この性格がまさに問題になって起訴され、逮捕されたわけです。ですから、問題は、この記載された金額が異常にふえている。なぜそうなのか。この献金の性格を明確にしなければならぬというふうに思うわけであります。
 しかも、重大なのは、次のところを見ていただきたいのです。八戸市民病院新築工事、工事ごとの請負業者、落札業者の一覧であります。これを見ますと、全部で十二の工事区分がありますけれども、この予定価格と落札価格でありますが、何と九九・六%、九九・四%、九九・五%、九九・三%。本当に、ほとんど九九%。九九・一から九九・九%と極めて異常な落札。しかも、それもほとんどが一回で落札している。これはまことに驚くべき状況であります。これはもう談合の疑惑が極めて濃厚であると言わざるを得ないと思うんですね。
 大島農水大臣の前秘書官が公共事業の受注に絡んで口ききをした。しかも、談合が行われた疑いがある。しかも、この時期に受注企業から大島大臣に献金が集中している。まさに献金の横流しであり、鈴木宗男議員と一体どこが違うのかということになるのです。
 総理に改めてお伺いしますけれども、本会議の答弁で、まずしっかりと事実関係を明らかにすることが重要であるというふうに述べられました。これは本人任せにせず、これだけ問題になっているんですから、きちっと責任を持った調査をすべきではないかと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今、大島大臣が責任を持って調査を進めていると思います。
佐々木(憲)委員 その大島大臣の調査が、結局は前秘書官に聞いただけなんです。よく聞いてみたと。
 それは、自分がやったことについて、自分の疑惑について、事実関係を、資料を調べるのはいいですけれども、本人が私が犯罪人ですなんということを言うはずがないわけですから、やはり客観的に調査をする。これは外務省の場合だって同じだったわけです。この問題についても、当事者の調査では全然問題は解明できない。
 そういう点で総理のリーダーシップが必要だと思いますが、今の答弁では全く丸投げでありまして、全然その究明がなされない。
 そうなりますと、やはり予算委員会で、委員長にお願いしたいわけですけれども、この問題の事実究明のために、農水大臣前秘書官の宮内寛氏、それから、現金の授受にかかわりましたA氏、我々は名前を特定しておりますけれども、当委員会に参考人として招致することを改めて求めたいと思います。
藤井委員長 A氏というのは、これは全く、そういうことだけで理事会協議というのは――提出しました。そういうことであれば、それを前提であれば、A氏ということだけではだれのことかわからないんですから。ですから、そのことについては、今、明らかにするんですね。そうしませんと……(佐々木(憲)委員「もう名前は既に内々には理事会の中では明確になっております」と呼ぶ)わかりました。では、そういったことを前提に、理事会で協議いたします。
佐々木(憲)委員 では、よろしくお願いしたいと思います。
 では次に、経済問題についてお尋ねをしたいと思います。
 今、国民の多くの方々は、もう本当に今のこの不景気を何とかしてほしいと強く望んでおります。世論調査でも、優先してほしい政策課題ということで、景気対策というのが一番最初に出てくるわけであります。例えば日経の十月四日付、ここでは、「優先的に処理してほしい政策課題」のトップが「景気対策」、五七%であります。この声に政治がどうこたえるかというのが今問われていると思うんですね。
 小泉総理は、就任以来、不良債権の早期最終処理ということを掲げて進めてまいりましたが、その結果、失業、倒産というのが大変な事態になっております。ところが、総理の所信表明では景気対策というのはほとんど触れなかったわけでありまして、不良債権、本格的に加速ということが宣言される、結果的にはデフレ不安をあおるということになっていると思うんです。
 総理に端的にお聞きしたいんですが、この不良債権の処理というものがデフレを加速させる、そういう性格を持っているということは認識されているんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 不良債権処理を進めると、やはり債務等の問題で企業にも倒産が起きてくる場合も出てくるでしょう。そうしますと勤めた方々が失業される。この悪循環に陥ることがないような対応策もあわせて進めていく必要がある。
 しかし、不良債権処理、この問題、今、経済再生、景気問題の足かせになっていますので、先送りするわけにはいかぬ、どうしても乗り越えなきゃならない一つの大きな壁だと思っております。
佐々木(憲)委員 今、デフレ要因はある、つまり倒産、失業がふえるということをお認めになった。しかし、それに対応するものが必要であると。しかし、対応するものが実際に機能しているのかどうか。これは、我々は全く機能していないというふうに思うわけですが、それは後の議論として、昨年、小泉内閣は、大手銀行の十一・七兆円の不良債権を二年間で処理すると言ったわけですね。この一年間では、つまり半分ですから約六兆円を処理するという計算になるわけですが、金融庁にお伺いしますけれども、処理したのはこの一年で幾らでしたか。数字を教えてください。
五味政府参考人 お答えいたします。
 平成十三年度の、主要行の破綻懸念先以下の債権、これをオフバランス化いたしました額が六・二兆円でございます。
佐々木(憲)委員 不良債権を減らす計画を立て、そのとおり、一年間では計画どおり実施した。
 それでは、もう一つ数字を教えてください。不良債権の残高、これはどうなりましたでしょうか。数字を言ってください。
五味政府参考人 お答えいたします。
 こうしたオフバランス化が進められました一方で、平成十三年度には新規の破綻懸念先以下債権の発生が九・九兆円ございました。したがいまして、平成十四年三月末における主要行の破綻懸念先以下債権の残高は十五・四兆円となっております。
佐々木(憲)委員 つまり、結論としては、昨年の三月で十一・七兆だったのが、ことしの三月には十五・四。三・七兆円ふえたということになるわけです。
 つまり、不良債権の処理額と新規発生の関係をグラフにいたしますと、こうなるわけでありまして、総理、処理しても処理しても新しく発生するものが加わるために、結果としてふえていく、こういう関係になっている。これはお認めになりますね、当然。
小泉内閣総理大臣 予定どおり処理を進めても、また予測以上の新規が出ている。これが非常に、経済は生き物であるというゆえんの一つかもしれませんが、こういう問題に対してどう対応するか、これから大事な問題だと思っております。
佐々木(憲)委員 どう対応するかというのが大事だとおっしゃった。では、こういうときに政府として何をやるかということが大変重要でありまして、デフレ要因であるということはお認めになった。
 それで今、来年度だけでも、医療、社会保障の負担増で三兆円であります。経済財政諮問会議で有識者の議員がこう言っているんですね。医療費の負担、自己負担、保険料の引き上げなどがGDPにマイナス効果を及ぼすと。それはもうそうなるわけです、負担がふえるわけですから。デフレ効果なんですね。
 しかも、不良債権を処理すると。つまり、現在十五・四兆円という不良債権が過去よりふえてしまった、これをさらに処理する。そうしますと、国民の負担はふえる、失業者はふえる、倒産がふえる。こういうふうになっていきまして、これは、やってもやっても、処理してもしても、どんどん不良債権がふえ続ける。不良債権がふえたら、さらにそれを処理する。大量に処理すれば、ますます大量の失業、倒産が出る。こういう悪循環になって、不良債権は片づかないんじゃありませんか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 不良債権処理だけで経済が再生するとは思っておりません。いかに企業を再生させるか、また、再建可能な企業に対してどのような発展できる環境をつくるか、いろいろな対策が必要だと思っています。
 ですから、不良債権処理だけという点は考えていませんが、不良債権を処理しないと、私は、持続的な経済成長は無理ではないか、また、成長分野への健全な金融機関の融資業務等が行われないのではないか、そういうことから、やはり不良債権処理はもう欠かせない、それに伴ういろいろな作用については十分な手当てが必要だというふうに認識しております。
佐々木(憲)委員 しかしながら、現実に行われているのは、不良債権処理だけがどんどん先行していまして、それに対応する中小企業に対する支えというのはほとんどないわけであります。また、失業者がふえる、その失業者に対する対応策、これも大幅におくれている。
 したがって、私は、今大事なのは、不良債権を、出てきたからそれをもう全部ゼロにするんだというようなことで次から次とやっていくと奈落の底に沈むような状態になってしまう、そうならないように方向転換が必要だと思うわけであります。
 そこで、不良債権というのは、銀行の帳簿から見てこれは不良債権だ、そういう性格を持っていると思うんです。しかしながら、国民の側、日本経済全体、地域経済、そういう側から見ますと、果たしてその企業というのは不必要な企業なのかというと、私は、決してそうじゃない、これらの企業は一生懸命努力して地域経済の発展、雇用の確保、そのために全力を挙げていると思うわけです。
 総理は所信表明演説で、東大阪市、東京の大田区の中小企業に触れまして、「厳しい環境の中で、我が国の中小企業は果敢な挑戦を続けています。」とおっしゃいました。その大田区では、ピーク時に九千以上ありました工場、その工場数が今では六千に減っております。東京都の工業統計調査によりますと、小泉内閣になってこの一年間で大田区の町工場は一〇・五%マイナスであります。つまり、小泉内閣になって不良債権処理をどんどん先行した結果、それもありまして、一割中小企業がつぶれてしまった。
 大田区の産業振興会の専務理事はこう言っているんです。すぐれた技術を持っている企業に限って決算状況がよくないところが多い。こうした資金需要がある企業には融資が行われない。先立つものがあれば回復できる中小企業がたくさんある。経営者の資質を見抜いて資金を供給してくれたプロのバンカーがかつては存在した。しかし、今は切り捨てられている。こういうふうにおっしゃっているわけです。
 ですから、技術を持っている中小企業も、赤字だということで不良債権扱いされて、みすみすつぶされていっているわけですよ。それが、先ほど言ったように、三分の二になり、一年間で一割減りという形になっているわけであります。
 やはり、不良債権だからというのでそういうふうにどんどんつぶしていくというやり方というのは、根本的にこれは改めるということが大事だと思うんですが、技術を持っている企業が生き延びる、やっていける、そういう状態をつくるというのが政治の役割じゃないんでしょうか。総理、どうなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 倒産する企業も私は一様ではないと思います。それぞれ事情を抱えて、倒産のしようも形も違ってくると思いますが、要は、やる気のある企業にどのように頑張ってもらうか、また金融機関も、やる気のある企業なり経営者なりを見抜いて、将来の発展性をどう考えるか、こういう点で今まで欠けていた面があるということに対しては否定はいたしません、確かにあるでしょう。
 しかし、こういう大きな時代の流れに乗って、時代の流れに、どうやって変化に対応できるかというのは、全体の政府の環境づくりももちろん大事でありますが、同時に、その変化を見越して、企業がどういう形で新たな改革に挑んでいくかという面も必要だと思いまして、その面、産業再編あるいは企業再生、両面から活力を発揮できるような支援体制をとるのも政府としては大事だと思っております。
 ただし、これからの大きな時代の流れにあって、廃業あるいは倒産しなきゃならない企業と、新規に会社を立ち上げる企業というものも一方では出ておりますので、そういう意欲をどう駆り立てていくかという面もやはり見ていなきゃならないのではないかと思っております。
佐々木(憲)委員 新規に企業が起こってくるということは大変大事なことでありますが、実際には、今まで廃業と新規の企業とを比較しますと、廃業の方がこの数年間ずっとふえてきているんですね。新規に立ち上がる企業というのは非常に減っているわけです。
 ここが重大でありまして、やはり可能性のある企業を応援していく、その中小企業の経営者の能力、あるいは持っている技術、そこを評価する、こういうことに根本的に変えていかないと、ともかく赤字だ、赤字が出ているからこの赤字を何とかしなきゃならぬ、その赤字を抱えている企業、三年以上たつとこれは不良債権だというようなことでどんどんどんどん切り捨てていったら、日本の中小企業の可能性を、芽を摘んでしまうということになるわけでありまして、そこをやはりよく考えていただきたい。
 RCCに送って、RCCが再生機能があるといっても、実際に六万社を超える企業がRCCに昨年以降送られたけれども、再建の軌道に乗ったのは八十七社ですよ、六万の中の。ですから、そういう意味では、先行しているのは何かといったら、企業をつぶすこと、それが先行しているんです。そこを変えなきゃならぬというふうに思うわけであります。
 そこで、デフレが深刻な事態になっているわけでありまして、小泉内閣はかつてないほどの膨大な不良債権を処理しようというわけでありますけれども、現時点で十五・四兆円の不良債権がある。新しく発生する分も含めて、これから何兆円の不良債権を処理するのか。例えば今年度、一体幾ら処理する計画なのか。これを金融庁、答弁してください。
五味政府参考人 お答えいたします。
 今後の不良債権の処理額といいますのは、債権者、債務者の間の問題でございますので、確たることを申し上げることは困難でございますけれども、例えば、非常に機械的な試算をしてみるとどうなるかということで御紹介をいたします。
 破綻懸念先以下の債権につきまして、オフバランス化のルール、これは既存分であれば二年、新規発生分であれば三年でオフバランスをするという原則、あるいは五割八割ルールと言われておりますが、ことしの四月に要請をいたしましたものなど、こういったルールにのっとりまして計算をしてみますと、平成十四年度中に十兆円前後の破綻懸念先以下債権についてオフバランス化につながる措置、これはもちろん企業再建も含んででございますが、オフバランス化につながる措置が講じられるという計算結果になります。
佐々木(憲)委員 昨年は六・二兆円処理をした。六・二兆円ですよね。では、ことしは幾らか。十兆円処理しなきゃならない。大変な規模なんです。しかも、新規発生がこの中には入っておりません。今あるものだけ処理しても十兆円だと。これは大変な失業、倒産を生み出すことにならざるを得ないんじゃないか。
 竹中大臣は、昨年、十二・七兆円の不良債権最終処理で三十九万から六十万の離職者が出る、こういうふうにおっしゃいましたね。では、今後一体どれだけの離職者が生まれるのか、数字を出してください。
竹中国務大臣 引用の御数字は、内閣府の勉強会で東大の西村教授らが試算された一つの過去の平均値に基づく雇用と債務、債権の関係を引用されていると思われます。
 基本的には、その場合にオフバランス化される債務、債権がどのぐらいになってくるのかということ、これはまさに、そういうことも念頭に置きながら今政策の枠組みをつくっているわけでございますから、それそのものを正確に議論するのは大変難しいと思います。
 それと、西村教授の数字は当時の一つの平均値として出されておりますので、それそのものを機械的に当てはめることはもちろんできるわけでございますけれども、そうした点も含めて、政策の枠組みをどのようにしていくかということをしっかりと今議論しているところでございます。
佐々木(憲)委員 全く無責任で、計算さえしていない。つまり、これだけ去年よりもことしは大規模に処理をするんだから、倒産、失業は今まで以上にふえるんですよ。今まで以上にふえるのに、去年は出した数字もことしは出さない。大規模に失業、倒産を生み出すという政策は明確だけれども、やってみないと結果はわからないと。
 総理、これは大変無責任だと思いますよ。総理はやってみなきゃわからぬということをよく言いますけれども、こんなことをどんどんやっていったら、国民は倒産と失業の中で大変な苦しみに遭うと言わざるを得ないと思うんです。
 今、失業者はどんな状態になっているかということで、八月の統計を見ましても、約三百六十万ですね。就職活動をあきらめた、もう就職なかなか見つからないとあきらめた失業者を含めますと一千万人を超えると言われているんですね。完全失業者の中で、雇用保険、失業給付を受給している人はわずか一九・三、つまり二割です。二割しか失業給付を受けられていない。
 働く能力と意思があり、求職活動を一生懸命しているけれども、雇用保険が切れて収入がなくて生活に困っている、こういう失業者に対して生きていけるようにするというのが国の責任じゃないかと思うわけであります。私は、このような方々のために何らかの生活保障制度を創設すべきだと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 今お話がありましたように、失業者が三百六十万前後あることは、この八月の数字を見ましてもそのとおりでございます。
 雇用保険制度その他が現在あるわけでございますが、二割とおっしゃいましたけれども、私の見た感じは三割はおもらいになっているというふうに思います。雇用保険制度、これは御承知のとおり、労使の間でいろいろ議論をしていただいて、そして決めていただいているわけでございますから、できる限り雇用保険に多くの人がかかっていただけるようにしなければならないというふうに思っております。
 パートの問題等につきましても、やはり検討していかなきゃならないというふうに思っているわけでございますが、しかし、自営業の皆さんでございますとかそうした皆さんは現在のところ入っていないわけでございますし、自営業等の皆さん方に対しましては離職者支援資金を現在出しているところでございまして、そうしたものによって、ひとつ、できるだけカバーをしていきたいというふうに思っております。
佐々木(憲)委員 今、離職者支援資金というお話がありましたね。私もこういう制度があるのは知っているんですけれども、あくまでこれは貸付制度なんです。
 つまり、三%の利子つきで、もちろん一定の猶予期間はあるとしても五年で返済しなきゃならぬ、こういうものでありまして、今、失業しまして本当に将来の展望が描けなくなっている、そういう方に利子つきの融資で果たして生活が支えられるのか、あるいはそういう希望がかなえられるのか。実績を見ましても、なかなかこれは低いわけですね。
 やはり、今大事なのは、このような離職者支援資金について、こういう方々のために制度をもう少し弾力的に改善していく。例えば、利子を無利子に引き下げるとか、あるいはこの返済期間を長期に引き延ばすとか、もっと利用しやすいように変えていくということが私は大事だと思います。総理、この点のいろいろな改善、もっときちっとやっていくということが私は大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今後、どのような具体策がいいかというのは、厚労大臣を中心に検討していただいております。
佐々木(憲)委員 しっかり検討して、安心して生活できるような状況に持っていくということが国の役割だと私は思うわけであります。
 それからもう一つ、例えば、大変つらいわけですね。親が失業する、そうすると子供が学校に通えなくなる、学費が払えなくなる。本当に能力のある若者が今学校に行けなくなって大変な状況だということで、訴えがたくさんあるわけです。これを救済するというのもやはり政治の責任だと思うわけですけれども、例えば、失業者の子供の学費、授業料の援助ですね、緊急援助。あるいは住宅ローンの払いなんかも大変なことなんですけれども、こういう方々のために家庭と家族を維持するというそのための支援、やはりセーフティーネットと言っているわけですから、きちっとこれは支えていく、充実していくという決意を総理に最後にお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日本は教育に力を今までも入れてまいりました。現在におきましても、親御さんがやむを得ず職を失った、あるいは離れざるを得なくてお子さんの学費に困ったという場合につきましても、御本人が教育を受けたいという意欲があるのならば必ず支援できる制度が設けられ、今拡充しております。そういう意味において、日本における、教育を重視していく姿勢にはこれからも変わりありませんし、今後、すべての国民が、親御さんがたとえ資金的な教育支援ができない家庭におきましても、お子さん本人が教育を受ける意欲があるならば必ず教育を受けられるという制度なり体制はきちんととっていきたいと思います。
佐々木(憲)委員 終わります。
藤井委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。
 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問をさせていただきます。
 まず最初に、北朝鮮による拉致問題について、冒頭おわびを申し上げたいと思います。
 社民党は、今日までの拉致問題について、その真相解明のために、また真実の追及のために一体何をしてきたのかと厳しい批判を受けております。確かに、朝鮮労働党と友党関係にあり、日朝間の国交がない中、そのパイプ役を果たしてまいりました。そういった関係の中で拉致問題も追及してまいったわけでございますが、拉致など存在しない、あり得ないと頭から否定され続けるばかりであり、そういった中、さらなる追及が十分であったかといえば、率直に申しまして決して十分でなかったと思いますし、党の力不足を認めざるを得ません。
 拉致の被害者の方々、そしてまた被害者の家族の方々に本当に申しわけないことをしたと思っております。心からおわびを申し上げます。
 我が党は率直におわびを申し上げますが、何といいましても政党間交渉、政党間交流であり、そして御案内のように、独裁国家、あのような国家体制の中で限界があったこともこれまた事実でございます。そういった意味からいっても、拉致が発覚してから今日までの二十四年間、この二十四年間の歴代政府、そしてまた国会もひとしく私は謝罪をしなければならない課題ではなかろうか、このように考えております。
 申すまでもありませんが、この拉致事件はまごう方なき国家犯罪であると私は思っておりますし、日本の国の主権の侵害、人権の侵害であると思っております。しかし、真相はすべて解明されたわけではありません。新たに拉致されたのではないかと思われる人たちも出てきておりますし、これらの人々の確認、また、亡くなられたと伝えられている人々の真偽も含めて、あらゆる情報が北朝鮮から開示されなければならない、拉致全体の真相解明が進められなければならない、このように思っております。これが第一でございます。
 そしてまた、五人の拉致被害者の方々が帰国されている最中に、北朝鮮が核開発をしていることが明らかになりました。これは、九四年の米朝合意違反でありまして、また、NPT、核不拡散条約に明らかに違反するわけであり、何よりも許しがたいのは、この国際社会を長年にわたってだまし続けてきた北朝鮮の態度であると私は思っております。政府は、北朝鮮が核開発を即時全面停止するよう厳しく対応すべきである、これが第二点でございます。
 いよいよこの二十九日から日朝国交正常化が再開されるわけでございますが、今申し上げました核開発の中止、そしてまた拉致に関するすべての情報が明らかになるということ、これが大前提であろうと思いますし、これがなければいわゆる経済援助など到底今の国民感情から許されるものではないと思っております。
 また一方、正常化交渉を続けなければ、拉致問題の徹底解明も、また核開発の中止も北朝鮮に要求することができないわけでございますので、この二つを解決していくためにも政府は毅然とした態度でこの国交正常化交渉に臨んでいただきたい、このことを強く申し上げまして、そしてまた総理の決意をお聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 拉致問題も、そして核の問題につきましても、今回の正常化交渉に当たりましては当然最優先で当たらなきゃならない問題だと思っております。
 この問題につきましては、まだ交渉が再開しておりませんが、既に拉致の問題につきましては、御家族の意向を踏まえながら、できるだけ今北朝鮮側にも働きかけておりますし、核の問題につきましては、これは北朝鮮側はアメリカとの問題だと言っておりますが、日本としても重大な懸念を有しております。そういう観点から、この核の問題を含めまして安全保障上の問題、これは今後の交渉の中でも大きな問題だとして、各国と、韓国、アメリカとも協力しながら働きかけていきたい。
 そして、今御指摘になりましたように、経済協力の話は、今言った拉致の問題、核を含む安全保障上の問題、そして、過去、現在、将来にわたる問題、これが包括的に議論されて、日朝平壌宣言の約束が誠実に履行された段階、成った後の話なんです。それをしっかりと踏まえて、包括的に、総合的に交渉していこうということをぜひとも御理解いただきたいと思います。
横光委員 よくわかりました。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。
 それでは次に、経済関係についてお尋ねをいたします。
 今臨時国会、私は、異常な形での幕あけになったなと思っております。これは、さきの通常国会のスキャンダル国会の異常さと違う異常さです。この国会でもちょっとスキャンダルが一部浮上しておりますが。つまり、本来政府を支えるべき、支えるというより一体でなければならない与党三党が、ことごとく小泉総理の経済政策あるいは政権運営に対して真正面から厳しく批判をしたということでございます。これは正直、異常でございました。恐らく、私も九年国会を経験しておるんですが、初めてで、ほとんどの質問が野党だったのではないかなという印象を受けるほどの厳しい与党からの質問だったわけですね。
 総理は、迫力は大分落ちたとはいえ、それでも、改革なくして成長なしと叫び続けておられるわけでございますが、肝心の自民党の堀内総務会長が、改革だけでは成長は困難だ、そしてまた、青木参議院幹事長は、構造改革一辺倒から脱皮すべきだ、このように批判したわけですね。もちろん野党の議員が言うのは当たり前のことですが、政権の中心であります自民党の執行部の方々が、党を代表して、国民が注視している本会議場の代表質問で、本当に堂々と総理の政策に対して異を唱えたわけでございます。本当にこんなことで大丈夫なのかなと多くの国民は思ったんじゃないでしょうか。
 政府と与党が一体となって、この未曾有の経済危機、総理が言われる非常事態に対応しなければならないときに、政府と与党との政策の違いが鮮明になったり、あるいはその乖離が非常に大きいなということが見せつけられた国民は、正直言って私は、たまったものじゃない、これほど苦しんでいるときにあのような状況でいいのだろうかと、さらに大きな不安をこの国会冒頭抱いたのではないかという気がしてなりません。
 総理は、所信表明の中で、与党三党による「連立政権の強固な基盤に立って、政策の実現に努めてまいりました。」と表明されましたが、一体どこが強固な基盤なんでしょうか。一体どんな政策が実現されたんでしょうか。政府と与党との政策の違いが鮮明になっただけであり、また、政府と与党との不一致、不協和音だけが浮き彫りにされたという現実だと思いますが、そのことについての御認識はどういうふうにお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私が昨年四月に総理に就任して以来、与党との関係は、確かに不協和音のような形も時折見られます。しかしながら、全体的に見まして、与党は最終的には小泉内閣の政策に協力してくれておりますし、いろいろ批判なり痛烈な提言はあったとしても、結論を見てみますと、きちんと協力すべきところは協力してくれるんですね。そこが非常に与党の与党としての懐の深さというか、大人の態度といいますか、今はやはり改革が必要だなという点だと思います。
 むしろ、自民党、公明党、保守党の皆さんがそういう違いを乗り越えて、今小泉内閣の改革を支えていこうという、いわば柔構造、柔構造というのは揺れるかもしれないけれどもかえって強固なんですね。そういう与党の上に立って、いろいろ難しい問題を解決していかなきゃならない。野党から見ると戸惑う点もあると思いますけれども、それは与党の立場として言うべきことは言うということで、私は、それはそれで結構だなと思います。
横光委員 今、協力してくれているという御答弁でございましたが、協力してくれていたら、もっともっと総理の言われている改革は進んでいたんじゃないんですか。
 公明党や保守党の皆さんがそういった批判、異論を言うことは、これは連立政権ですから、それぞれの党の主張があるから当然です。しかし、政権の中心であります自民党が、本当にそういった批判が出るということ、しかも代表質問で出るということは、これは非常に重大なことだと私は思うんですね。そして、今のそういった総理の御答弁が、そういう重大さを認識されていないような印象を私は受けた。この認識の欠如こそ、さらに私は重大だなという気がしてなりません。
 そういった国会の冒頭の姿を見て、その日の市場はすぐ正直に反応しておるんですね、例のように。三百円近く日経平均株価は下がって、九千円台を大割れした。きょうも百円ほど下がったと聞いておりますが、こういうふうに、すぐに現実の経済の生き物の中に影響を与えるということでございます。
 総理は、改革改革と唱え続けておりますが、今痛みに耐えに耐えている国民が一番知りたいことは、ではその改革の成果はいつあらわれるのか、この一点だけだと思うんですね。ところが、なかなかこの改革の後のあるべき姿が見えない、あるべきビジョンの説明がない。このために、多くの国民はずっと不安といら立ちに陥っているのではなかろうか。
 第一、先ほど言いましたが、改革そのものがなかなか進んでいない。ペイオフの解禁問題にしても、あるいは三十兆円枠にしても、補正予算の問題にしても、だんだんと総理の公約は後退しつつあるわけです。
 ペイオフの問題につきましては、二年間解禁を延長するということを打ち出しました。この間、日銀は、来年の四月一日から解禁する予定であったので、三月末までには金融機関は健全化に努めなければならないと強調してきた。ところが一方、柳澤前金融担当大臣は、金融機関は健全であると事あるごとに言ってきたわけですね。これは、いわゆる政府の確固とした意志のもとでの発言だと私は思うわけです。
 総理も、ついこの間までは四月一日に解禁しますと言っておられました。それが、突如として二年間延期するということに方針を変えた。これは明らかに政策の転換だと思います。政策の転換をするのならば、国民にはっきり、なぜ転換をするか、なぜしなければならないかということを説明する責務があろうかと思いますが、お答えいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 基本は、不良債権の処理を進めるということなんです。これを加速させるというんですから、転換どころか強化していくんです。その間に無用な混乱、不安を起こさせないために、ペイオフは十七年の四月から実施するということでありまして、基本路線は全く転換しておりません。
横光委員 不良債権を強化するという今の御説明でございますが、私が言っているのは、ペイオフの延期ということは明らかに転換であろうと言っておるんです。要するに、ペイオフを延期して政策転換をした結果、その結果、あなたの言われるように政策の強化につながるというのなら理解できるんですよ。しかし、ペイオフそのものを来年四月に解禁すると言ったのを解禁しない、二年間延長するということは、転換なんですよ。子供でもわかることなんです。それを、やはり強化とかいうことを言えば、国民はさらにわからなくなってくる、市場もわからなくなってくるのじゃなかろうか。
 要するに、私から言わせれば、今の総理のお言葉はどうしても詭弁としか聞こえないんですね。詭弁というのは、総理、ごんべんに危ないと書くんです。これはこじつけとかごまかしとかいう意味なんですね。ですから、言葉でそういったごまかしたりすることが、政策にまでごまかすという形で続くのじゃないかということを、私は非常に心配しているわけでございます。
 もとより、ペイオフは金融システムの安定を図るための手段であり、決して目的たり得ないことはもう明らかであります。私たちも、このペイオフに関しましては凝り固まった対応をするつもりはありません。重要なことは、延期する延期しないということよりも、この延期する二年間の間に一体何をするかということだと思うんです。これが明らかにならない限り、いわゆるいたずらに金融機関のモラルハザードを惹起するだけ。つまり、この二年間、これからの延期する二年間、金融機関は何もしなくてもいいですよとお墨つきを与えることになりかねない。こうなりますと、国民の金融機関に対する不信や不安はさらに増大するわけですね。
 ですから、この二年間、これからの二年間、あるいはこれまで延期してきた間に何をしてこなかったからさらに二年間延長せざるを得ないんだということですから、これからの二年間にどういうことをしっかりやるのか、そのプログラムをお示しいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 後ほど竹中担当大臣からも答弁させますが、やはり資産の査定、これも厳格化と言ってやってきましたけれども、まだやはり不十分な点があるんじゃないか。金融機関等の見方と金融庁の見方と、どうなのか、金融機関の方はちょっと甘いんじゃないかという点もなきにしもあらず。そして、十分な引き当ては可能か、経営者の姿勢、いわゆる経営能力はどうか。そういう点も含めて、やはり総合的にもう一段の進んだものが必要ではないかと思いまして、私は、今までの状況を見直し、果たしてよかったかどうか十分見きわめて、今まで目指していた不良債権の処理の問題、経済再生にとって足かせとなっている問題、早く払拭しよう。そういう際にいろいろ副作用が起こってくるだろう。その副作用に対しても十分な対応をしなきゃいかぬということで、今月中には取りまとめるように竹中大臣には指示しております。
 竹中大臣からまた答弁を。
竹中国務大臣 不良債権問題に関連しまして、この一年間で、例えば経済実体そのものは「改革と展望」に沿った線でおおむね運営されてきているわけです。実体経済そのものが「改革と展望」の線から外れて大幅に悪くなっているということはありません。
 しかしながら、一つ予想を上回る厳しいことが起こっているのは、実質GDPに比べて名目GDPがやはりふえてない、まさにそのデフレの問題、デフレと不良債権問題の悪循環が予想していたより厳しい。したがって、そこを強化しなければいけない。そのためには、今申し上げたように、やはり資産の査定、自己資本、ガバナンスについてもう一段強く見直そうではないか、そういう立場に立っているわけでございます。そのためには、不良債権処理を加速するためには、一つのセーフティーネットとしてペイオフに関しても延期をする方がよいであろうという判断をしたわけです。
横光委員 今お二人から同じ答弁を受けました。総じて言えば、金融機関の健全化をさらにちゃんとするということだと思います。ということは、これは再々延期ですから、再延期の間にこれができなかったということをお認めになったと同じだと思います。ですから、これを反省の上に立って、これからの二年間、本当にこの健全化のために、金融機関の健全化に努力しなければ、先ほど言いましたように、金融機関のモラルハザードだけに陥ってしまう危険性があるということを申し上げたいと思っております。
 先ほど失業率のことが出ました。とりわけ中高年の方々の失業者の再就職、非常に厳しい状況にあるわけですが、それと同時に、大変心配されているのが、若年層の就職難を憂慮しております。特に高卒者の就職は深刻なんですね。厚生労働省の調査では、就職希望者の高卒予定者に対する求人倍率は、七月末現在でわずか〇・五倍なんですね。これは史上最悪の数字でございます。
 これからを展望しても、高卒者の大きな受け皿にこれまでなっておりました地方都市の生産ラインであります工場が次から次へと撤退している現実、そしてまた、IT化が非常に急速な流れで進んでいる、そういった影響を受けて、私は、より厳しい状況に追い込まれるんじゃないかと心配しているわけですが、国の成長を支えるための大きな労働力であるべき高卒者が、今非常に追い込まれようとしている。働く場が狭められて、働く場がない。このような雇用情勢を放置しておくならば、私は、将来に大変な禍根を残すことであろうと思っております。
 どうか高卒者の雇用対策に迅速かつ抜本的に政府を挙げて取り組んでいっていただきたいと思いますが、では、厚労大臣、ちょっと一言お願いいたします。
坂口国務大臣 若年者に対します雇用は、御承知のとおり、特に高等学校で非常に低くなってきているわけでございます。しかし、若年者のところは失業者も多いんですけれども、求人の方もここは比較的多いわけでありまして、そこにミスマッチも存在するというふうに思っております。
 高卒の問題につきましては、チームをつくりまして、そしてプロジェクトチームをつくって取り組みを始めておりますが、文部科学大臣とひとつ連携をいたしまして、そして学校も含めまして、経済界に対しましての依頼でありますとか説明等に今励んでいるところでございます。これを一生懸命にやらせていただきたいと思っております。
横光委員 もちろん、最大の原因は現在の景気状況にあろうと思います。要するに、雇用を受け入れる企業の状況が厳しいからというのが最大の原因だと思います。そういった状況があるだけに、国の方が何らかの、いろいろ知恵を絞って、これから未来のある人たちに場を与えていただきたい、そういった、文科省とともにやっていただきたいということをお願いしておきます。
 総理、今の国民の生活状況、大変に厳しいことを認識されておると思いますが、さらに具体的に申しますと、民間サラリーマンの給与所得はこの数年下がり続けております。そしてまた、公務員の賃金も、来年は人事院の勧告によって引き下げられますね。また、年金受給者、物価スライドの凍結解除をもしやるとしたら、これによってまた受給が下がる。要するに、入る金がどんどん減っていきますね。
 それと同時に、来年から、今度出す方、負担増は目に見える形でふえますね。医療費の負担増、また介護保険料、あるいは、これも決定はしておりませんが、いろいろな控除の縮小や見直しということになれば、さらに負担はふえていく。入るものは少なくなる、出ていくものはふえる、私は、これが来年さらに激しくなるというような気がしてなりません。
 そういった状況で今何が起きているか。収入減のために何が起きているか。リストラや倒産やいろいろな形で、収入減のために何が起きているか。個人ローンやクレジットカードの不払いが物すごくふえ始めている。それと結局、個人破産、これが急激に増大しておるんですね。個人破産が前年比、もう今の時点で四割増のペースでふえているんです。このままいけば、年間で初めて二十万件個人破産が起きるだろうと言われております。
 このように、こういった状況が、いわゆる生活苦からくる自殺者という数もふえておりますし、本当にこの状況は厳しいと申し上げざるを得ません。
 そういった意味から、ここはもうメンツとかにこだわらずに、私は、本当に政策転換を明言して、政策総動員をして、国民の痛み、あるいはこのデフレ圧力緩和のためにやるべきであるということを申し上げたいと思います。これはちょっと意見でございます。
 最後に、やはり政治と金の問題、どうしても避けるわけにはいきません。
 大島大臣にお尋ねをいたしますが、先ほどの質問から、今回の六千万円の疑惑で、秘書の方から現金は受け取っていないというお話がございました。この言われている疑惑の、六千万円の口きき疑惑のときの、要するに、企業からこういった要請が来ている、あるいはその要請を受けてこういった口きき、お願いをした、そういったことは宮内さんからお聞きになっておられるんでしょうか。
大島国務大臣 聞いておりませんでした。
横光委員 大臣、今度言われている疑惑は六千万円もの口ききですよ。これが秘書だけで、秘書だけの判断でしたということなんでしょうか。どうぞ。
大島国務大臣 先ほど民主党の原口さんや皆さんにもお答えしましたように、週刊文春が報道されて以来、自分の自宅購入の資金として、六千万がそういう金であるという、そういう報道があったと。そして、それを証明するためには君の住宅資金の原資を本当にさまざまな形で僕にきちっと報告する以外にないということで先ほど御報告をさせて……(横光委員「いや、口ききは、報告、口ききの内容」と呼ぶ)それを言いませんと、したがって、そういうことですということで、ありませんと。
 また、今横光議員から御質問がありましたが、口ききというお話でございましたが、紹介程度のことはいたしました、その見返りにお金をいただいたことはありませんとの報告でした。
横光委員 二百八十億という大事業の口ききを依頼されて、そのことを、依頼されたことは今お認めになったわけです、秘書の方が依頼されたということ。その依頼されたことを代議士に報告していないんですか。ということは、勝手にそれだけのことを、もう勝手に代議士の名をかたってやっているということですか。どうぞ。
大島国務大臣 横光委員のお話でございますが、そういうふうな一々のことについては、報告は私聞かないんです。
横光委員 いやいや、この口ききというのは、秘書の方がやったということは認めているわけですが、それは秘書の方にお願いしているんじゃないんですよ、業者は。秘書を通して先生にお願いしておるんですよ。ということは、秘書は先生の名前を使って口ききをしているわけで、あなたの名前を使われたということですよ。秘書の名前だけでそんな、通用するわけないじゃないですか。大島理森という衆議院議員の名を、秘書ということで行動しているわけですから、それぐらいのことは当然一々ちゃんとしっかり報告していなければならないと思います。
 この問題は、先ほどからお話ございますように、業者も、あるいは途中に入っているコンサルタント会社も金を贈ったといって証言しておるわけでございますので、片やその秘書の方は金銭を受け取っていない、真っ向対立するわけですね。これはいずれ白黒はっきりさせなければなりませんし、先ほどから言われておりますコンサルタント会社のAさんとそして宮内秘書を、私は本委員会で参考人で招致していただきたいと思っております。
 総理、本当にこうしてまた、残念ながら、自民党の議員の関係の疑惑が浮上してしまいました。一体どれだけ繰り返されれば済むのかと国民は思っているでしょう。ここまで来れば、自民党と金は切っても切れない関係にあるなということを言っても、総理はもう目くじらを立てることはできないんじゃないかと思います。政治と金の問題で、我々は本当に、どれほど国民の信頼を失ってしまったのか。
 そしてまた総理は、政治の信義、信頼がなくして改革の実現は望めないと言われておるんです。改革の実現は政治の信頼がなきゃ望めない。ということは、あなたの言われる改革は、まず政治の信頼がなきゃだめだとみずから言っておるんです。その政治の信頼がことごとくなくなりつつあるんですよ。
 あなたは、閣僚や議員はみずからの襟を正さなければならないと言っておりますが、これは事あるごとに言われる言葉、もう私も何百回聞いたかわかりません。しかし、襟を正すと言いながら、一回として襟を正したことがあるでしょうか。また襟を正すと言わなきゃならない。襟を正すということは、私から言わせれば、真っ黒に汚れた襟を真っ白にするということだと思うんです。一回として真っ白になったことがない、だから何回も襟を正すと言わなければならない。
 総理、総理はさきの国会で、余りにも公共事業絡みの汚職事件が多いので、せめて公共事業受注企業からの献金は自粛しようとみずから提案をされました。ほとんどの政党が賛成しております、肝心の自民党以外は。ところが、あなたが総裁を務めておる自民党がなかなかこの問題を進めない。しかも、その自民党の人たちが汚職事件を起こすということですから、国民はわけがわからない。このことで、本当に公共事業受注企業からの献金だけでも自粛する法案を早急に制定するよう強くお願いをいたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて横光君の質疑は終了いたしました。
枝野委員 委員長、動議を提出いたします。
藤井委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
藤井委員長 この際、枝野幸男君から発言を求められておりますので、これを許します。枝野幸男君。
枝野委員 私は、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び民主党・無所属クラブの四会派を代表して、緊急動議を提出いたします。
 動議の内容は、金融・経済財政担当大臣竹中平蔵君問責決議案の提出であります。
 以下、提案の中身を申し述べます。
  日本経済が危機的な状況にあり、この立て直しが求められている現在、金融・経済財政担当大臣の要職にある竹中君が、自らの重大な責任を自覚せず、軽率にして無責任な言動を繰り返し、国民経済を混乱させ、国民に大いなる不信と不安を抱かせたことは、重大である。
  よって、本委員会は竹中君の責任を問い、ここに国民の名において問責する。
  右決議する。
以上が本動議の内容であります。
 動議の提出に当たって、委員各位に一言申し上げます。
 去る九月三十日、小泉改造内閣が発足し、柳澤金融担当大臣が更迭された後を受けて、竹中平蔵経済財政担当大臣が金融担当大臣を兼務するという異例の人事が行われました。この異例な人事が行われた直後から、竹中大臣は、軽率かつぶれの激しい言動を繰り返し、国民と国際市場の信頼を著しく失っています。
 特に、大臣は、今国会における最大の政策課題の一つである不良債権処理の加速策について、今月二十二日中に中間報告を公表するとしながら、当日になって突如これを取りやめました。この結果、竹中大臣は、市場に影響を与える不用意な発言を繰り返しながら、公式には何らの具体策も決められないという最悪の状況のまま、今日を迎えるに至っています。
 こうした行動のぶれの激しさと、具体策を決められない指導力の欠如は、結果的に株価の乱高下を招き、我が国経済と国民生活をさらに悪化させています。この責任は重く、竹中君はこのことを十分に認識すべきであります。
 これが金融・経済財政担当大臣竹中平蔵君問責の趣旨であります。
 以上、動議の提案に当たりまして、一言申し上げました。議員各位には十分な御理解をいただけたことと存じます。国民注視の本委員会であります。後顧に憂いのないよう、委員各位の御賛同を心からお願いいたします。(拍手)
藤井委員長 ただいまの動議につきましては、理事会において協議いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四分散会


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