衆議院

メインへスキップ



第5号 平成15年1月27日(月曜日)

会議録本文へ
平成十五年一月二十七日(月曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      荒巻 隆三君    伊吹 文明君
      池田 行彦君    石川 要三君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      奥野 誠亮君    亀井 善之君
      栗原 博久君    左藤  章君
      高鳥  修君    谷田 武彦君
      谷畑  孝君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      原田昇左右君    福井  照君
      松岡 利勝君    三塚  博君
      山口 泰明君    石井  一君
      岩國 哲人君    上田 清司君
      海江田万里君    河村たかし君
      木下  厚君    田中 慶秋君
      中村 哲治君    長妻  昭君
      細野 豪志君    三井 辨雄君
      吉田 公一君    米澤  隆君
      赤羽 一嘉君    斉藤 鉄夫君
      達増 拓也君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    佐々木憲昭君
      矢島 恒夫君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    中川 智子君
      中西 績介君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   総務副大臣        若松 謙維君
   法務副大臣        増田 敏男君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   国土交通副大臣      吉村剛太郎君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   内閣府大臣政務官     阿南 一成君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   総務大臣政務官      岩永 峯一君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   法務大臣政務官      中野  清君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   厚生労働大臣政務官    森田 次夫君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   国土交通大臣政務官    岩城 光英君
   国土交通大臣政務官    鶴保 庸介君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   政府参考人
   (人事院事務総局人材局長
   )            石橋伊都男君
   政府参考人
   (総務省大臣官房長)   瀧野 欣彌君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  磯部 文雄君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月二十七日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     谷畑  孝君
  津島 雄二君     谷田 武彦君
  持永 和見君     左藤  章君
  田中 慶秋君     岩國 哲人君
  吉田 公一君     木下  厚君
  山口 富男君     吉井 英勝君
  中西 績介君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     荒巻 隆三君
  谷田 武彦君     津島 雄二君
  谷畑  孝君     衛藤征士郎君
  岩國 哲人君     田中 慶秋君
  木下  厚君     三井 辨雄君
  吉井 英勝君     矢島 恒夫君
  阿部 知子君     中川 智子君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     福井  照君
  三井 辨雄君     吉田 公一君
  矢島 恒夫君     山口 富男君
  中川 智子君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     持永 和見君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計補正予算(第1号)
 平成十四年度特別会計補正予算(特第1号)
 平成十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計補正予算(第1号)、平成十四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局人材局長石橋伊都男君、総務省大臣官房長瀧野欣彌君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、厚生労働省大臣官房総括審議官鈴木直和君、厚生労働省医薬局長小島比登志君、厚生労働省年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長磯部文雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長妻昭君。
長妻委員 おはようございます。民主党の長妻昭でございます。端的に御答弁をいただければ幸いでございます。
 まず、今この予算委員会では補正予算の審議をしているわけでございますが、思い起こしていただきますと、ちょうど一年前は、今の時期、平成十三年度の二次補正の予算審議をしておりました。そのときに、二次補正、平成十三年度は雇用は十一万人増加する、こういうような政府は公約をしていたということで、まずは小泉内閣の雇用の公約について質問をさせていただきます。
 この十一万人程度というのは、一年たった今、一体何人の実績が出て、本当に十一万人出たんでしょうか。塩川大臣にお答えをいただきます。
塩川国務大臣 十一万人雇用がふえるであろうということを言いましたのは、第二次補正が予算審議にかかって、その後私が財特委員会においてお答えした数字だと思っておりますが、それは内閣府にございますところの経済モデルによりまして申し上げたことでございまして、その後、第一次補正予算、すなわち雇用のセーフティーネットに関する重点対策の予算はほぼ配分が終わりまして、各都道府県段階で実施されておる状態に入ったのでございますけれども、その後の詳しい実績の数字につきましてはまだ回答が得られておらないというところであります。
長妻委員 それはおかしいですね。昨年の一月二十八日の衆議院財務金融委員会で私は塩川大臣に、そういうことがあっては、いいかげんな十一万人という数字では困るんで、一年後に必ずその実績を報告してくださいというのを質疑をしておりまして、その中で、昨年一月二十八日の財金委員会で塩川大臣は、「実績を集計して報告することはできるであろうと思っております。」という御答弁をされている。さらには、「人数等がわかると思いますので、その結果についての報告はできるであろうと思っておりますけれども、しかし、直接財務省として人員を把握することはできませんので、各省に問い合わせて、その効果を持ち寄って報告するということにいたしたいと思います。」ということで国会で言われているわけであります。
 補正予算の審議で私は一番大事なのは、雇用が何人ふえるか、これも一つ大事なポイントだと思うんです。今回の補正では九万人ふえるということをまた今回出してきております。これを審議するには、過去十一万人ふえるというのが本当にふえたのかどうかの検証をしない限りこの補正予算の審議というのはできませんから、ぜひこの公約、守ってください。今出してください、数字を。
塩川国務大臣 その一つの目安といたしまして、昨年の十月末段階で契約状況等を調査いたしましたら、公共事業等におきまして約九割程度はふえておるであろうということでございますけれども、実際に各府県段階に出てまいりまして、各府県から市町村というふうに公共事業が分散されておりますから、その現場現場におきまして何人ふえて、合計十一万人に相当するという詳しい、いわゆる精査した数字は出ておりませんけれども、概略はそういう数字になっております。
藤井委員長 長妻君。長妻君、質問を続けてください。長妻君、質問を続けてください。(長妻委員「納得できません。だめです、出してください」と呼び、その他発言する者あり)
 財務大臣、よろしいですか、もう一度答弁。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 各省に雇用増加の効果を問い合わせ、行っておりましても、各事業の雇用者への波及効果を網羅的に掌握しようとすれば、実際には各事業の実施する主体である都道府県、市町村などまで調査をお願いすることになり、現実問題として相当な手間と時間と実態の把握が必要でございます。したがいまして、予算の執行状態を見てお答えを申し上げたのでございまして、何人、何百何人という数字まで把握することは非常に至難のことであると思っております。
長妻委員 いや、そうであれば初めから十一万人なんといういいかげんな約束はしないでください。今回の補正でも、では、九万人という約束をしていますけれども、これも検証できないわけでありますから、そんな約束しないでください。
 いずれにしても、十一万人というのは検証するということを塩川大臣が委員会ではっきりと明言されていますから、その説明では納得できません。質問できません。
藤井委員長 いずれ精査して、できるだけの答弁してください。
 塩川財務大臣。
塩川国務大臣 なお一層の精査をいたしまして、返答申し上げます。
藤井委員長 長妻君。長妻君、質問してください。(長妻委員「通告していますから」と呼び、その他発言する者あり)
 塩川財務大臣、いま一度答弁願います。
塩川国務大臣 御質問ございましたので、誠意を持って極力調査いたしますけれども、先ほども申しましたように、国から府県段階におり、そしてさらに府県から市町村段階におりておりますので、その末端に至るまで何人ふえたのかという実態はなかなかつかみにくいから、私が申し上げておるのは、各公共事業ごとでモデルがございまして、それぞれのモデルで何名使うということがございますから、その集計をもって、契約高がこれだけ、予算の配分がこれだけあって契約高がこれだけあるというならば、それにおおよそモデルを掛けて集計したものが、先ほど申しました九割程度実行されておるということを申し上げたのでございまして、さらにそれを精査せいというなら、時間をかけさせていただいて、調査をさせていただきます。(発言する者あり)
藤井委員長 長妻君、質問してください。質問してください。(発言する者あり)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 竹中金融・経済財政担当大臣。
竹中国務大臣 昨年の第二次補正の雇用創出の効果について御答弁をさせていただきます。
 この雇用創出の効果というのは、言うまでもなく、公共投資等々の支出によって、それが乗数効果をもたらして有効需要、GDPをどのぐらい拡大するか、その有効需要の拡大によって雇用がどの程度ふえるかということをモデルの上で計算したものであります。したがって、それの検証ということをこれはミクロで行うことは困難であります。なぜならば、例えば公共事業を支出する、それを受け取った人がさらにコンビニやスーパーに行って支出をする、その支出によってコンビニやスーパーの、さらにはその先の雇用がどれだけふえたかということをミクロで把握するのは、これはもう定義上困難でございます。
 したがって、把握の方法としましては、これだけの財政の支出を行った、これは財務省の方で詳細に調査があると思いますので、それに基づいて、約九割、昨年の十月で九割という数字でございますから、それがどのぐらいのGDPを拡大させたというふうに考えられる、それがさらに雇用の創出をもたらしたというふうなマクロ的な実績推定については、これは内閣府の方で行えるというふうに考えております。それについては、数日間の時間をいただければ、その数字を明らかにしたいというふうに思います。
長妻委員 いや、これは具体的に一年間で十一万人という数、雇用の数の目標がきちんと出ている。ですから、その十一万人の実際、実績、一年たって、九割の執行ということですけれども、では何万人それによって雇用がふえたのかということを検証してほしいということであります。
 いいかげんな、何か、推計とかなんとかというのであれば、初めからこういう雇用の目標数というのを出すと、これは国民の皆さんに大変な誤解を生むわけでありまして、全然、何かマクロモデルによる推計であるのであれば、こういうような雇用の数字というのは出す必要がないわけでありますから。ですから、十一万人に対して、実績として何人雇用が確保できたのか、これをお示しをいただきたい。いただけるのか否か、お答えをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 まず、その十一万人を出すときに、我々の書類には正式に書いておりますが、これはマクロモデルを使って計算したものである、これは想定される一つのめどであって、決して目標とかそういうものではないということも、そのモデルの性格、試算の性格上、十分に理解をしていただけるというふうに思っております。
 繰り返し申し上げますけれども、実績を示せということでありますけれども、例えば公共事業でこう支出をした、それによって建設業者の方が所得がふえた、それが消費に回って、その消費でコンビニでどれだけふえたかというのは、実質的に、ミクロ的にそういうものは把握できないというのは十分に御理解をいただけると思っております。だからこそ、雇用の把握というのは難しく、かつ、したがって、このようなマクロモデルで一つのめどをつけるというのが一つの便法として定着しているものであるというふうに思っております。
長妻委員 何人実績があるか出せないような目標というのは、これは目標じゃないわけですから。何人雇用がふえたかという実績を出せるか出せないか。今出せないという話ですから、これ以上質問できません。出せるまで検討してください。
藤井委員長 それは無理だ、それは無理だ。それはだめ、それはだめ。そんな、それはだめ。
 長妻委員に申し上げます。それは、意味はわかりますけれども、しかし、そのことによってもう一切質問できないというのは、これはちょっと。(長妻委員「これは一番重要な今補正予算の審議をしている」と呼ぶ)それはわかりますけれども。(長妻委員「補正予算の審議をしているんですから。だって、検証できない目標というのは何なんですか。検証できない公約というのは何なんですか」と呼び、その他発言する者あり)
 長妻君。
長妻委員 そもそも、この質問は、私、竹中大臣には一言も聞いておりませんので。私、塩川大臣に指名して質問をしております。
 それでは、塩川大臣、この議事録お持ちだと思いますけれども、これ、国会の議事録の答弁がもし意味がないのであれば、国会で質問するというのは何の意味もなくなりますから。国会の答弁というのは議事録に残る重いものだと思いますよ、委員長。
 この議事録を読ませてもらいますと、ちょうど一年前の一月二十八日の衆議院財務金融委員会、そこで私が今のような、十一万人の一年後の実績集計、何人かというのをお示し願えますかというふうに聞いたときに、塩川大臣の御答弁は、「実績を集計して報告することはできるであろうと思っております。」こういう御答弁をされている。そして、人数についても塩川大臣みずからが、「人数等がわかると思いますので、その結果についての報告はできるであろうと思っております」ということも明言しているわけであります。これは、じゃ、どういうふうになるんですか。
塩川国務大臣 これは冷静に読んでいただきたいと思うんです。あなたが一年以内と勝手に言っているんでしょう、一年以内と。私はそのとおりに答えていません。
 けれども、その前にどう私が言ったかといいますと、こう言っておるんです。結果を見て、人数等がわかると思いますので、その結果についての報告は、できるだけ、各省に問い合わせて、その結果を持ち寄って報告するということにいたしたいと思いますと。けれども、その間に、直接財務省としては人員把握をすることはできませんので、各省に問い合わせて、その結果を持ち寄って報告するということにいたします、こう言っておるんです。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
塩川国務大臣 ですから……(発言する者あり)いや、やかましくするんじゃなくて聞いてください。聞いてくださいよ。僕が説明しておるんじゃないか。
藤井委員長 御静粛に。大臣冷静に、大臣冷静に。(発言する者あり)
塩川国務大臣 ちょっと待ちなさい。
 そこで……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に。冷静に、冷静に。冷静に、冷静に。大臣、大臣も冷静に。
塩川国務大臣 そこで、どういう配分をしたかということと、私がさっきから言っておるように、その事業によって大体どのぐらいの人数を使うであろうという予測はできるであろうから、それをもって、掛けたものでもって予測する以外にないと。
 だから、実際にどこへ行ったか。竹中大臣の言っていますように、コンビニまで行って、その消費の効果は何人ふえたかということまで、そういうことまではつかめないけれども、各事業ごとに配分した、その事業ごとでは何名の雇用を増進したかという、そのモデルはわかるであろう、そのことについては私は報告を出したりすることはできる、こういうことを言っているんであって、あなたのおっしゃるように、末端のところまで、何人まで効果があるのかということを、それは出せといったってできない話です。けれども、モデルを使って、私が何遍も言ったように、モデルを使って、そこはモデルで答えをすることができる、こう言っておるんです。
長妻委員 今、塩川大臣がこの議事録を読まれましたけれども、そこの中で、塩川大臣、この議事録で、できるだけ出すとか、できるだけという文字は一切言われていませんよ。今、ここの答弁で、何かこの答弁を読まれて、できるだけというのが入っているように読まれましたけれども、それは間違いですので、訂正をしていただきたいと思います。
 そしてもう一点、今、塩川大臣お話しいただいたように、この十一万人の実績の数字は出せるということでありますが、じゃ、いつまでに、これは今補正予算の審議をしておりますから、この補正予算でも一年間で九万人と明記されているんですよ、この補正予算でも。一年間で九万人雇用増があるという、それで我々はそれを見て審議をしているわけでありますから、この十一万人の実績というのは、この雇用、今回の補正予算が実際に成立する前までにお出しいただきたいと思うんですが、いかがですか。
竹中国務大臣 実績推定値につきましては、先ほど申し上げましたような方法で、それほど時間をかけずに、数日のうちにぜひお示しをしたいと思います。
長妻委員 まず、具体的な人数と内訳と集計方法を補正予算の成立前までにお出しになるということでよろしいですね。
竹中国務大臣 マクロの実績推計でありますので、その内訳というのはなかなか困難であろうというふうに思われますけれども、可能な限りの情報をできるだけ出せるように努力をしたいと思います。数日の上で努力をしたいと思います。
長妻委員 そうしたら、財務大臣にもう一点だけお伺いしますけれども、各省庁に問い合わせて持ち寄るということをここで一年前御答弁されておりますけれども、各省庁にはもう問い合わせは、する予定、あるいはしたんでございますか。
塩川国務大臣 この種の事業については、私は、実績を調査するということは私の一つの施政の方針でございますから、実行してまいりたいと思っております。
長妻委員 実行してまいりたいというのは、今は問い合わせはしていないけれども、いつまでに、各省庁に、どういう問い合わせをするんですか。
塩川国務大臣 執行状況は絶えず調査しておりますから……(長妻委員「人数」と呼ぶ)数字をとることについてはやっておりませんけれども、執行状態は確実に把握しております。
長妻委員 雇用の状況、人数を各省に問い合わせるという御答弁でしたから、これをぜひ聞いていただきたいと思うんですが、いつまでに聞きますか。それで、集計しますか。
塩川国務大臣 できるだけ早くいたします。
長妻委員 そうしましたら、財務大臣にお願いをしたいのは、ここでの御答弁もありますから、各省庁に、今できるだけ早くという御答弁ありましたけれども、雇用の増加分の人数も補正予算の成立前に問い合わせていただいて、その結果を補正予算の成立前に御報告をいただきたいと思います。いかがでございますか。
塩川国務大臣 この補正予算といいますと、あと、参議院の審議と衆議院の審議でございますが、日数が非常に詰まっておりますので、その短時間ではちょっと私は難しいと思っております。できるだけ早くということにしていただきたい。
長妻委員 これは、今回も補正予算の審議で九万人という雇用目標が出ておりますので、検証できない目標というのは目標じゃないんです。
 そういう意味では、ぜひここでも、これは一年前に御答弁していただいておりますから、今回の補正予算の成立前までに各省庁に数字を問い合わせてそれを御報告いただくということであれば私も次の質問に移りますので、それをお約束いただきたいと思います。
塩川国務大臣 できるだけ努力いたします。(長妻委員「だめです、だめです。補正予算の前じゃないとだめです」と呼ぶ)
藤井委員長 長妻君。(長妻委員「質問できません」と呼ぶ)長妻君。(長妻委員「質問できません。もう一年前に聞いているんです、これは。補正予算の前に」と呼び、その他発言する者あり)
 速記、とめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 塩川財務大臣。
塩川国務大臣 マクロのモデルとしての計数は内閣府の方でやっておりますので、これはすぐに出てくると思いますけれども、実行したものの数字につきましては、これは一つのモデルに従って、金額からそれを推定して出す以外に方法はございません。
 その金額についての実績を調査いたしまして、すぐに出てくるものでございますから、これによってお答えを申し上げたいと思っておりますが、すぐにといいましても、ここ二、三日の間じゃ、これはとても作業としては難しいと思います。できるだけ急いで御趣旨に沿うようにいたします。
長妻委員 もう一度確認しますけれども、各省庁に問い合わせるというのは、具体的に人数を問い合わせるということなんですか。それはいつまでですか。
塩川国務大臣 そこははっきりしておきたいと思います。私の方は金額です。金額をいたしまして、その金額によって、事業ごとでモデルの……(長妻委員「ここで人数と言っているじゃないですか」と呼ぶ)そう言っているじゃないですか。だから、モデルの人数がありますから、それで人数を推定するということを、モデルによって出すということ以外にできません。
長妻委員 ですから、それを補正予算成立前に出していただきたいと思うんですが、いかがですか。
塩川国務大臣 それはできるだけ急いでやりますけれども、何日までということになりますと、私の方も、この補正予算を成立させてもらいたいと思うて、全力を挙げて国会対策をいたしておるときでございますので、若干の余裕はいただきたいと思っております。
長妻委員 今、国会対策という話がありましたけれども、補正が成立するためには、それを調査するのが一番の国会への説明責任だと思います。
 今回も、九万人という雇用目標の数字が出ておりますので、補正予算成立前に、では今の御集計を出していただくということをここでお約束いただければ、次の質問に移ります。いかがですか。
藤井委員長 長妻委員に申し上げます。
 今の塩川財務大臣の答弁に基づいて、そして、努力するということですから、それがもうはっきりここで期限を切るなんということであれば、そこは時間的余裕をお与えいただきたい。
 長妻君、質問を続けてください。(発言する者あり)
 御静粛に願います。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 それでは、速記を起こしてください。
 塩川財務大臣の答えで、今、長妻委員が、いつまでとはっきりと、成立前までと言っていますが、これは、いろいろな努力を今財務大臣がされるという答弁がありましたので、できるだけ速やかに、そして竹中大臣の方のマクロ的な実績推計は数日中にできるということですが、それ以上の、ミクロ的と申しますか、もっと細かなことについては、できるだけ補正予算の成立までにできるように努力をしてもらいたい、努力としてぜひお願いいたしたいと思います。
 長妻君。
長妻委員 次の質問に移りますけれども、なぜ私がこれにこだわったかというと、やはり補正予算、一番初めの財政演説でも、何で補正予算をつくるのかというまずイの一番のところに雇用だと、こういうのが書いてありまして、その雇用の目標を、具体的な数字を出したからにはやはりそれを守っていただくというのが、これは国民の皆さんに対する責任だというふうに思っております。それで質問をしているわけであります。
 もう一点だけ、雇用の目標について質問をいたしますけれども、皆様にお配りいたしました資料の一番というところに、これは閣議決定をされている雇用目標でありますが、五年間で五百三十万人雇用を生み出すという閣議決定が平成の十三年六月二十六日にされております。この五年間の目標の中で既に二年弱が経過をいたしましたけれども、それでは、この五百三十万人の雇用目標のうち、二年弱で今何百万人が達成をできたか、御答弁を願います。
竹中国務大臣 御指摘の五百三十万人雇用は、諮問会議の専門調査会で慶応大学の島田晴雄教授等々が推計されたものでございます。閣議決定とおっしゃいましたが、そういう性格のものではないというふうに認識をしております。
 この中で重要な点は、先ほどの十一万人の雇用もありましたけれども、基本的には、補正予算を組むときに、どのぐらいの雇用が想定されるか、雇用増が想定されているのが先ほどの推計。この専門調査会の推計というのは、どれだけの潜在的需要があるかということを考えた上で、それに向かってこれを、潜在的需要を掘り起こすように政策的な努力をしていこう、そういう意味でのこの数値でございます。
 その意味では性格が異なるということと、もう一つ、その進捗状況でありますけれども、これは試算においては、五年ごとに行われますサービス業基本調査、事業所・企業統計調査による過去の実績を基本としておりまして、欧米等々と比較しながら、その潜在的な可能性を探っているというものでございます。このため、この調査が五年ごとであるということでありますので、これを単純に今の時点で実績を比較することは困難でございます。五年後の数字を見て評価するしかない性格のものでございますが、一つの近似法として、労働力調査等々によって部門ごとにどのぐらいのことが起こっているかということを、一種の状況証拠といいますか、間接的な把握をすることに我々としても努めております。
 マクロ的には、二〇〇二年一月から十一月平均で見ますと、二〇〇〇年に比べて雇用者合計で二十七万人減少しているわけでありますけれども、サービス業全体としては九十一万人ふえていて、特に社会保障、社会福祉等の分野で大幅な増加がある。同様に、現在把握可能なデータによって、これはさまざまにデータの出所は異なりますけれども、調べていきますと、この中で特に関係がある社会保険、社会福祉等々については前年比九・六%増、情報サービス九・四%増、人材派遣サービス一四%増と、厳しい経済状況のもとで着実にこうした関連分野での雇用創出が進んでいる分野が見られます。
 しかし、その一方で、なかなか進んでいない分野もございます。例えば、旅行サービス業は、大きな増加が期待されるにもかかわらず同一・四%減になっている。弁護士は三・三%の増にとどまっている。現時点ではその大幅な雇用創出に至っていない。こういった実態を踏まえまして、例えば観光については、グローバル観光戦略を初めとしたさまざまな施策、それに関連する政策をとっておりますので、正確な把握は五年かかるわけでありますが、その状況証拠を踏まえながらきめ細かな対応をしていきたいと思っております。
長妻委員 ちょっと今の話の中で訂正していただきたいんですが、閣議決定されていますよ、閣議決定じゃないと言われていますけれども。平成十三年六月二十六日、閣議決定、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」の中で、文書の中で、「雇用機会の創出」「五百三十万人が期待」と、閣議決定の文書の中に五百三十万人が入っているんです。全然そういう認識ないんですか。ただの数字だと思っているんですか。
竹中国務大臣 私が申し上げたのは、これを目標値として閣議決定したわけではないということです。御指摘のように、骨太の方針の中にはこの試算を紹介しております。この試算を紹介して、このような可能性がある、そういう期待があるからそれに向けてさまざまな構造改革を進めていく、そういうような趣旨で引用をしているわけでございまして、この決定そのものを目標として閣議決定したわけではない、引用したということです。
長妻委員 しかし、本当にこれは、私は驚くんですね。五百三十万人という数字を、非常にバラ色の数字で期待した国民の皆さんも多いと思います。これは閣議決定の文書の中に入っている、五百三十万人が入っているんだけれども、これは何か、ただ引用しただけだ、そんなばかな話があるんですか。いいかげん過ぎると思いますよ。
 そして、私実は、これは裏話を先週聞きましたけれども、この五百三十万人という数字は、何のことはない、あるコンサルタント会社に政府が頼んで、アメリカ並みの雇用が実現したらまあ五百三十万人ぐらいふえるんじゃないのか、こういう単なる、マクロモデルとかなんとかじゃなくて、単にアメリカと同等の産業構造になったら五百三十万人ぐらいふえるんじゃないのか、こういう数字だということで、ひどい話ですね。これ、いつ検証しますか、本当に。これ、責任とってください。いつ検証しますか。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
竹中国務大臣 こういう潜在的な需要分野としてどのようなものがあるかということを議論するのはそもそも大変難しい話でありますが、それでも、いろいろな英知を活用して、その目標値、目標値ではなくて、その期待される潜在的な需要というのを示しているわけであります。(長妻委員「閣議決定に書かなきゃいいじゃないですか」と呼ぶ)ちょっと聞いてください。済みません。
藤井委員長 長妻委員に申し上げます。
 質問するときは、指名を受けてから発言してください。
 どうぞ、竹中大臣。
竹中国務大臣 それの推計に当たりましては、やはりさまざまに細かな考えを積み上げて行っているというところでございます。
 長妻委員言われましたように、ある分野については、例えば同じぐらい所得が成熟して高い国がある、そうすると、この分野ではこのぐらいのサービス需要が出ているんだけれども、日本ではまだ出ていないな、そこはやはりまだいろいろな規制があるからではないか、その規制を緩和することによってこのぐらいまで需要が行くのではないかというようなことを利用しておりますし、例えば別の分野については、もう少し計量的な手法で、所得の水準とともにこのぐらい需要が出てくるはずだ、さまざまなことを積み上げております。どのような形で推計したということについても、長妻委員の資料にもございますけれども、非常に工夫をして推計したつもりでございます。
 繰り返し申し上げますけれども、推計、数字にはさまざまな性格のものがございます。その数字の性格づけの評価については、こういった資料を公表するときに、こういうふうに限定的に留意して活用いただきたいということは十分に明記しているつもりでございますので、この五百三十万人についても、将来可能性がある潜在的な需要分野であるというふうにあくまでも御理解をいただきたいと思います。
長妻委員 それでは一点だけ。
 では、その推計の根拠をお示しいただきたいと思います。手短にお願いします。計算式を。
竹中国務大臣 ちょっと細かい計算式は持参しておりませんですけれども、必要でございましたら、これはそれぞれに根拠がございますので、お示しできると思います。
長妻委員 次に移りますけれども、これは小泉内閣の一つの、産業再生の政策の一つに観光立国というのが今あるやに聞いておりますけれども、私、今日本の観光産業というのがほとんど、ほとんどといいますか、かなりの部分が公的宿泊施設等々の公的部門によって侵食されているのではないのか、それで旅館業等の倒産がふえているのではないのか、非常にそういう思いを持っているわけであります。
 そして、昭和の五十八年の五月に閣議決定がなされました。昭和五十八年に閣議決定された内容というのは、民間と競合する会館、宿泊施設等の新設は禁止する、原則的に中止する、こういう閣議決定が昭和五十八年になされましたけれども、私、質問主意書を出しました。昭和五十八年の閣議決定以降、公的な宿泊施設で新設されたものは何がありますかということを質問主意書で出しましたら、答えが一件だけ参りました。スパウザ小田原だということで質問主意書にお答えをいただいたわけであります。
 ただ、スパウザ小田原は、閣議決定の後に新設をされた施設だけれども、これは民間と競合をしない宿泊施設だ、こういうような強弁をした質問主意書が来たわけですけれども、何でこれが、これホテルですよ、スパウザ小田原、何で民間と競合しないのですか。
坂口国務大臣 スパウザにつきましては、宿泊施設であることには、先生御指摘のように私もそれはそうだというふうに思いますけれども、しかし、ここは健康増進でありますとかそうしたことを中心にしました設備でありまして、それに付随して宿泊施設もついているということなものでございますから、宿泊を第一義とした建物ではないということを申し述べているんだろうというふうに思います。
長妻委員 それは、私、詭弁だと思うんですね。だって、宿泊が第一義的じゃないと言っても、では、フィットネスクラブなんかがあるのはわかりますよ、でも、これはホテル、宿泊が、十二階建てで四階から十一階まで客室があって二百七十人の定員がある。これは、どう考えてもホテルといいますか、民間と競合する宿泊施設ですよね。宿泊施設です。だから、これは昭和五十八年の閣議決定違反なんです。
 これは、先日も予算委員会で出ましたように、四百五十五億円も雇用保険等のお金を使って、それで今度売却するとき八億円で売る。これは雇用保険減らされる人は泣くに泣けないですよ。本当、怒りますよ、これ。それも閣議決定違反なんですよ、これは。閣議決定違反なんですよ。
 これ、違反じゃないというのであれば、ぜひ参考人招致をお願いしたいんですが、これを意思決定された方というのは、質問主意書の答弁書によりますと、当時の、旧労働省の職業安定局長さんと労働基準局長さん、お二人が意思決定をした、閣議決定の後に。こういうふうに答弁書で来ておりますので、お二人の参考人招致をして、これが、競合する施設を何でつくったのかということを質問したいと思いますが、委員長、お取り計らいいただきたいと思います。
藤井委員長 長妻君に申し上げますけれども、今、当時の局長、お名前わかりませんか。
長妻委員 わかりません。
藤井委員長 理事会において協議いたします。
長妻委員 そしてもう一点、重大な、この質問主意書に漏れがあるんですが、私がこの閣議決定以降に新設された公的施設ということで質問したときに、スパウザ小田原だけは、まあ、まじめにといいますか、質問主意書に明記されて、いただいたんですけれども、実は、閣議決定以降、簡保の関係でラフレさいたまというものも公的宿泊施設で新設をされているにもかかわらず、質問主意書には書いていない。なぜ書いていないんですか。
片山国務大臣 今委員御指摘のラフレさいたまは、我々は、診療施設、こういうことにしておりまして、これは簡易保険加入者の健康増進のために、診療したり検査をしたり体力測定をしたり、あるいはそれに基づく運動療法をやる、そのための施設でございまして、いわゆる閣議決定が想定した宿泊施設ではない、こう考えております。
長妻委員 これは大臣、ラフレさいたまのホームページに「宿泊施設」と書いてあるんですよ、ちゃんと。大臣、大臣がここで何と言われようと、簡保のホームページに書いてあるんです。資料二―一を見てください。「休養宿泊施設」と書いてあるんですよ、大臣。これは閣議決定違反じゃないんですか。違反だと思いますよ、私は。
 それで、驚くべきことに、私はこれは木曜日に問い合わせをしたんですよ、総務省に。いや、これは「宿泊施設」とちゃんとホームページに書いてありますよ、何でこれは質問主意書に書いていないんですかと。そうしたら、驚くことに、この資料二―二を見てください。これは同じホームページです。下のアドレスを見てください。同じアドレスです。そうしたら、この下の日付も見てください。初めの「宿泊施設」と書いてあるのが一月二十一日。私、もう一回ホームページを見たら、一月の二十五日、「宿泊施設」というのは消えているんですよ。何ですかこれは。
 ここを見てください。真ん中の、三つありますね。まず初め、資料二―一は、「メディカルケアセンター」「休養宿泊施設」とありますね。資料二―二は、「メディカルケアセンター」「フィットネス」「客室」。「宿泊施設」という言葉が消えているんですよ。
 こんな仕事をしているんですか。だれがこれを変えているんですか、これは。
片山国務大臣 それじゃ、詳細は、あるいは政府参考人の方から答えていただきますが、最初のホームページは、ちょっとこれは勇み足で、やり過ぎだという反省でしょう。それは実態に合わせた方がいい、こういう判断でホームページを直したと思います。
瀧野政府参考人 それぞれホームページを持ちながら、適時適切に見直しをしておるわけでございます。その中で、休養施設といいますか、そういう健康施設でございますので、そういう面を明らかにしたということでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 総務省瀧野官房長、もう一度答弁願います。
瀧野政府参考人 これは、いろいろな経緯の中で、簡保事業団の方で見直しをしているというふうに聞いております。(発言する者あり)
藤井委員長 官房長、ちょっとよく聞き取れなかったので、もっとわかりやすく、はっきりと答えてください。
瀧野政府参考人 簡易保険の簡保事業団ですね、そちらの方で見直しをしているというふうに聞いております。(長妻委員「監督責任はだれですか」と呼ぶ)
片山国務大臣 恐らく、そのホームページは簡保事業団の方でつくって、恐らく、委員の御指摘があったかどうかということでございましょうが、ホームページも実態に即したように直した、こういうふうに思っておりますし、簡保事業団はこの三月末で廃止いたしまして、その事業の一部は郵政公社に吸収し、残りはやめますので、これは御理解賜りたいと思います。
長妻委員 これは、私、簡保事業団に聞いたんじゃないんですよ、問い合わせ。総務省の御担当の方に、本省の方に電話で問い合わせたんです。そうしたら、変わっていたんです。これは、ちょっと謝罪してください。監督責任があるんでしょう。
片山国務大臣 私は、実態をよく承知しておりませんが、至急調べまして、だれがどういうふうに直したか明らかにしたいと思いますし、場合によっては、それはしっかりと釈明をさせます。
長妻委員 そして、これは、こういうふうにこそくな、ちょっと問い合わせて、「宿泊施設」を直すということは、ホームページというのはやはり利用される方が見るわけですよ。そうすると、「宿泊施設」と書いてあるとわかりやすいですけれども、今度直しちゃったら、これは、利用者のこと何にも考えていないじゃないですか。何か国会で批判されるから、そればかり考えて、利用者、全然見ていないじゃないですか。だから、公的宿泊施設というのはだめなんですよ。
 これは、ちょっと反省してください、ちゃんと。そして、これは質問主意書の答弁書に漏れていたわけですから、スパウザ小田原は入っていましたけれども、これは質問主意書の答弁書の漏れということでよろしいんですか。漏れていたということを明言して、反省してください。どうですか、官房長。
瀧野政府参考人 これにつきましては、先ほど大臣もお答えいたしましたように、宿泊施設ということではなくて、健康増進施設ということでございますので、質問主意書のところには、閣議決定の範囲とは違うということで整理させていただいたわけでございます。
片山国務大臣 これは、簡保事業団法の施行令で診療施設という定義をしているんです、政府としては。だから、宿泊的な機能も一部ありますが、これはやはり運動療法で治す人を一泊二日とかそういうことで泊めるんですよ。一般の人を泊めるんではなくて、診察したり検査をしたり、そのために一泊二日と三泊四日の、そういう宿泊をしているわけでございまして、だから、私が聞きますと、宿泊の利用者は全体の七%だそうです。
 そこで、政府としては、政令で診療施設と定義しておりますから、宿泊施設じゃないということで、恐らく質問主意書から外したんだろうと思います。
長妻委員 いや、これはだめです、宿泊施設ですから。書いてあるんですから。――速記をとめてください。委員長、速記をとめてください。
藤井委員長 瀧野官房長。
 誠意を持って答えろ。誠意を持ってちゃんと、謝罪するなら謝罪するで。
瀧野政府参考人 大臣の御答弁がございましたように、でありますので、大臣の御指示を受けて、誤解のないようにしていきたいというふうに思っております。
長妻委員 ここの、私も先週買いましたけれども、安くてよい宿公共の宿、こういう雑誌にも、スパウザもラフレも載っているわけですね。だから世間はもう宿泊施設なんですよ。
 次の質問に移らせてもらいます。
 もう一点、これも私調べて驚いたわけですけれども、国に非常勤職員という方が、これは資料の三ですけれども、二十万人もおられる。この非常勤職員の中には、本当に、事務を補助する、コピーをとってもらうような方とかそういう方もおられるわけですけれども、これは聞くところによるとコネで、公募じゃなくてコネで、例えば国家公務員の方のお知り合いとか知人とか、そういう方のコネ採用というのが大変多いということを聞いているんですが、これは、今大変雇用が厳しい中、やはり全部公募する必要があると私は思うんです。
 何で国家公務員の人と知り合いだと、おいしい、ある意味では、日給一万円弱のところもあるらしいですけれども、単純労働でおいしいアルバイトができるんですか、国家公務員と仲がいいと、知り合いだと。おかしいじゃないですか。
 この二十一万七千人の非常勤職員のうち、ちゃんと公募で採用している人は何%おられますか。
石橋政府参考人 二十一万人の調査でございますけれども、これは総務省の調査でございますので私たち詳細に承知しておりませんが、人事院では、昨年十二月現在で、人事院本院に三十七名の非常勤職員がおりました。そのうち、ハローワークを通じて採用しました者が十一名、職員の紹介による者が二十六名、そういう実態になっております。
長妻委員 いや、だから、二十六人がコネでしょう。知り合っているとおいしいアルバイトができるじゃないですか、非常勤で。全部公募しなきゃだめですよ、原則。今雇用が大変厳しいんですから。
 ちょっと今、先ほどの質問で、二十一万七千人のうち、どこかのお役所が集計されておられればお答えいただきたいと思うんですが、何%ぐらいが公募なのか、何%ぐらいが公募じゃないのか。これをお答えいただきたい。
瀧野政府参考人 非常勤職員につきましては、二十一万数千おるという御指摘がございます。それぞれの非常勤職員につきましては、各省庁等、各部局に任用を任せておりますので、中身については把握しておりません。
 しかし、こういった非常勤職員につきましても、できるだけ公募でやるようにということは、原則としてはあろうかというふうに思います。
長妻委員 人事院も、非常勤職員はなるべく公募にする、するべきであるということを私にも言われているわけでありまして、これはやはり基本的には、原則的には公募にしないと、何で国家公務員の人の知り合いだけがおいしいこういう仕事にありつけるのか、こういう批判を受けますから、二十一万七千二百五十人のうち公募が何%ぐらいおられるか、調査を依頼します。いかがですか。
瀧野政府参考人 非常勤職員につきましては、それぞれ、能力等あるいは採用の時期等、いろいろな必要がございますので、それぞれの部局で行っていただいているわけでございますが、いずれにいたしましても、そういった把握の必要性も含めて、今後検討してまいりたいと思います。(長妻委員「いや、調査をお願いします、把握の調査をお願いします」と呼ぶ)今後検討してまいります。
長妻委員 検討というよりも、これはコネですよ、コネ採用ですよ。コネ採用が横行しているんですよ、この雇用の厳しいときに。言ってください、集計すると。
片山国務大臣 非常勤職員は、予算に計上して、それで各省、各部局で採用しているんですね。しかも、時期がばらばらで、仕事もばらばらなんですね、御承知のとおり。そこで、なかなか、公募になじむのかということはありますが、今、例えばハローワークにお願いするとか、大学に依頼するとか、私どもの方では募集広告するとか、そういうことはやっておりますけれども、実態を私どもの方でまとめはしておりますが、各省ですから、よく各省と相談します。委員の御趣旨はわかっております。
長妻委員 最後ですが、資料四を見ていただきますと、これは、自民党といいますか、現閣僚が公共事業受注企業から、何社から幾ら献金をもらっているのかという一覧表を資料の四に調べました。この資料の四の三枚目には、「小泉内閣閣僚が代表を務める政党支部一覧」というのがございます。
 これは、片山大臣が平成十三年、一年間ですけれども、四十九社で一千五百万円、公共事業受注企業から献金をもらっている。一番なんですね、閣僚の中で。
藤井委員長 時間です。
長妻委員 大臣、もうこの際、これは法律にはいろいろありましょうけれども、公選法を所管する大臣でもございますから、自粛すると。大臣は、せめて公共事業受注企業からの献金というのは大臣になったときもう自粛しよう、そうすべきであるということを一言御答弁いただければ、日本の政治も少しはよくなると思います。
片山国務大臣 私は、額は承知いたしておりませんが、私の受けている報告では、いずれも支部の政治活動に対する一般的な寄附だ、こう思っておりますが、いずれにせよ、法律を遵守し、ルールに従って今後とも対処してまいりたいと思っております。
藤井委員長 時間が来ております。
長妻委員 ぜひ自粛していただきたいと思います。
 質問を終わります。
藤井委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。
 次に、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治です。
 私は、北朝鮮からのいわゆる脱北者について、邦人保護という観点と難民条約締結国としての義務の履行という観点から質問をさせていただきます。
 まず、外務大臣に質問をさせていただきます。
 現在まで、いわゆる脱北者は全体でどの程度いると考えているのか。また、その中に日本国籍を有する邦人はどの程度いると考えているのか。また、日本国籍は有しないが元在日朝鮮人だった人たちはどの程度いると考えているのでしょうか。
薮中政府参考人 今の御質問でございますけれども、脱北者全体の数というのは、これはなかなかいろいろな諸説ございまして、私どもでも確実にどういう数だということで全体をつかんでいるわけではございません。報道等々では数千人あるいは数万人という単位もございますけれども、この中身というのは私どもにはわからないわけでございます。
 他方、日本人配偶者として行かれた方々で、そのうちの、北朝鮮に渡られた方、その中で脱北されておられる方ということで、これは個々個別のケースがございます。一つ一つについて我々は情報があれば直ちに対応するということでやっておりますけれども、脱北者としてどれだけおられるかというのはわからないわけでございます。
中村(哲)委員 数はわからないということでよろしいんですね。
 それでは、現在まで、日本国政府による、邦人、日本国籍を有する脱北者の保護件数は何件ですか。
薮中政府参考人 個々個別に、今まで、脱北者として、日本人配偶者の方で出てこられた方はございます。一件一件、私どもはその時々に情報があれば対応はしておりますけれども、プライバシーの件それから安全の件がございます。その残られた家族の方がまだ北朝鮮におられるということもございまして、数も含めて、今までのところ御答弁は差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
中村(哲)委員 何を言っているんだ。数を聞いているんだろう。数を答えられない、なぜ答えられないんだ。プライバシーと関係ないでしょう。数を答えてください。
薮中政府参考人 先ほど御答弁いたしましたように、一件一件きちんと対応してきておりまして、それが、何十名というような単位ということでは全体ではございますけれども、その一件一件については、それが特定されることによって、かえって、その家族の方がまだ残られているというようなことで、身の安全のこともございますので、具体的なことを差し控えさせていただきたいという趣旨でございます。
中村(哲)委員 私が聞いておりますのは、なぜ、何十名という数が、先ほどおっしゃったプライバシーやそういうものの配慮として数が明らかにできないのかという理由を聞いているわけでございます。
川口国務大臣 数については、プライバシーには関係がないであろうという御意見もあるかと思いますけれども、脱北者の場合には、これは中国の政府からいいますと不法入国者ということになっておりまして、中国政府と北朝鮮の政府との関係もございますので、私どもとしては、数も含めて、恐縮ですが、公表は差し控えさせていただいている、そういうことでございます。
中村(哲)委員 中国が、不法入国者ということですので、次の項目に移りますね。(発言する者あり)いや、そこ、関連するので、次の質問に移ります。
 一般論として、国外において邦人が日本国政府の在外公館に保護を求めてきた場合、どのように外務省としては対処しているんでしょうか。
川口国務大臣 外務省の設置法の四条でございますけれども、これに、日本国籍を有する者、要するに「海外における邦人の生命及び身体の保護その他の安全に関すること。」これは日本政府の責務であるということで書かれております。したがいまして、そのように対応している、そういうことです。
中村(哲)委員 それでは、中国と北朝鮮の国境付近において邦人の脱北者が保護を求めてきた場合、どのように対応しているんでしょうか。
川口国務大臣 脱北者であるとあるいはないとにかかわらず、その人が邦人である、日本人であるということである場合には、先ほど申し上げたような、外務省の、日本政府の責務でございますので、対応をそのようにいたしております。
中村(哲)委員 それでは、実際問題、日本国籍を有する者、または元在日朝鮮人から、北京大使館や瀋陽の領事館に対して保護を求めるような、そういう具体的な、具体例といいますか、そういう例はあるんでしょうか。あるとすれば、何件あるんでしょうか。
川口国務大臣 具体例はございます。ただ、先ほど申しましたように、件数については申し上げられない、そういうことでございます。
中村(哲)委員 そこが答えられないと、日本国政府が中国とどのように折衝するのかということが、方針として、私たちは判断しようがないのではないでしょうか。
 例えば、一月二十三日の日本経済新聞があります。そこの中で、二十二日の自民党亡命者・難民等連絡会で脱北者問題への対応が論議の的になったという記事があります。その中で、出席議員の方が、日本には北朝鮮から脱出した日本人を帰国させる権利があるはずだ、中国がこれに応じる義務はないのかと聞いたことに対して、外務省の幹部が、難しい問題だ、本人に会いたいと申し入れているが、会えない状態で、あからさまに中国を批判するのは逆効果ではないかというお話をされております。
 これは、与党の皆さんではなかなかこの公の場では質問されない、できないからこそ私が聞く必要があるのかと思って聞いているんですけれども、やはり、日本国籍を有する者を日本国政府が保護したいと思うのであれば、それをきちんと中国に言う必要があるのではないでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国の邦人、日本人でございますね、日本人が日本の在外の公館に庇護を求めてきた場合、これは日本政府の責務として、その人間を保護して安全を図るということがございますので、そのようにしかるべく対応をしているということでございます。
 それで、中国との関係においては、我が国としてそのように考えているということについては、中国に対して、さまざまな場でそういうお話はしてきているということでございます。
 ただ、問題の性格が、先ほど申しましたように、中国政府の立場もございますし、それから、その人間の北朝鮮に残された家族の安全あるいは関係者の安全といった問題がございますので、またその当人の安全ということももちろんございますけれども、そういうことで、申しわけないんですけれども、具体的なことについてはここでは申し上げられない、これ以上明らかにできない、そういうことで御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 私も、個別具体的なケースについての具体的なことを聞いているわけではなくて、件数なり、そういったことを聞いているわけでございます。
 しかし、このことを詰めていっても仕方がないので先に進みますと、その庇護を求めてきた、保護を求めてきた場合に、具体的にどのような方法をとっているのか。一説によると、外務省は保護を求めてきた邦人に対してNGOを紹介して、極秘に我が国に帰国させているという報道もあります。これは事実でしょうか。
川口国務大臣 庇護を求めてきた人がいた場合に、どのような形で庇護を求めてきているか、さまざまな、まさに個別個別の事情がございます。
 したがって、その対応はまさに個別個別で、その件に応じて対応を考えているということでございますけれども、一般的には、昨年の瀋陽総領事館事件というのがございましたので、それを踏まえまして、庇護を求めてきた人間が在外の公館に来た場合、あるいはそのコンタクトをとってきた場合には、そのときの対応については全在外公館に改めて指示をいたしております。それから、そのための、そういうことについては研修も強化をいたしましたし、さまざまな対応についての改善ということを考えて今やっております。
中村(哲)委員 私がお聞きしたいのは、NGOへの紹介というものはやっているのでしょうか。
川口国務大臣 まさにいろいろな対応の仕方があるということを申し上げたわけでございまして、まさにケース・バイ・ケースで、いろいろな対応を邦人保護という目的に照らして行っているということで御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 私が聞いているのは、そのいろいろな方法の中にNGOへの紹介というものも含まれているのかということを確認させていただきたいわけでございます。
薮中政府参考人 まさに個々個別のケースがございますけれども、場合によっては、NGOの方とも緊密な連絡をとってやるのが適切な場合もございます。そういう場合には、そういう形での対応もしている場合もございます。
中村(哲)委員 それでは、NGO以外の一般のそういう協力者という人に連絡をとったりするような方法もあるのでしょうか。
薮中政府参考人 今のお話は中国においてということでございますか、あるいは日本の話でございますか。
 今の、中国においての場合ということでございましたら、それは、大使館等、いろいろな形で連絡がある、そういう情報を完全に把握して、そして適宜対応するということをやっておりますし、また、もちろん日本でも、こういうケースでいろいろな情報があるということであれば、その情報を参考にさせていただいて、いろいろと我が方としての対応をきちんとやっていくということに心がけております。
中村(哲)委員 私が今回このような質問をさせていただいているのは、邦人保護という観点から見て、保護を求めてきた人がどのような方法で保護をされるのか、その具体的なプロセスが見えないといけないというところからこのような質問をさせていただいております。
 そこで一つ、先週問題になりましたというか、週刊誌等で報道されているのが、週刊新潮のこの記事でございます。
 政府は、脱北者や邦人保護に協力する者を中国当局に通報し、逮捕させているということが報道されておりますが、このことは事実でしょうか。事実とすれば、こうしたことをすれば、今後、現地で邦人保護に協力してくれる者がいなくなってしまうということが懸念されますが、そのことについてはどのようにお考えでしょうか。
薮中政府参考人 個々個別のケース、そのケースごとにいろいろな対応がございますけれども、いずれにしましても、私どもとしましては、日本人の方、その方の身の安全を一番大事にしておりまして、そして速やかな帰国をする、そのために一番いい方法というのを常に考えております。当然、そのためには中国政府の協力を得なければいけない、出国の許可が要ります、そういう形でさまざまの連絡をするということでございまして、すべては身の安全の確保、そして速やかな帰国のために一番適切な対応を心がけておるわけでございます。
中村(哲)委員 答弁が少し抽象的ですので、一つ一つ事実を確認させていただきたいと思います。
 週刊新潮の記事によりますと、一月六日にNGOから、協力者と言われている韓国人Aさんの連絡先を伝えられたとありますけれども、これは事実でしょうか。
薮中政府参考人 まさに個々具体的なケースにつきましては、その方の身の安全等々ございますのでお答えできないということで、御了承いただければと思います。
中村(哲)委員 私が聞いているのは、この連絡先を教えられて、しかし連絡を外務省がとらなかったんじゃないか、そして秘密裏にこれを処理しようとしたんじゃないか、そのような疑念があるからこそ事実確認をさせていただいているわけでございます。だからこそ、この一月六日にまずNGOが連絡先を知らせたのかどうか、そこから事実の確認をさせていただかないと、本当に適切な保護のやり方をとったのかどうか、そこの検証ができないからこのようなことをさせていただいているわけでございます。
 もう週刊誌で明らかになっていることですから、それを答えてください。
薮中政府参考人 今回、いろいろな報道がございますけれども、その背景にいろいろと、私どもといろいろな方々とのコンタクトがあり、またいろいろな情報がございましたけれども、まさに今、中国の中で非常に大事な時期に来ておりまして、個々具体的な個別のケースにつきましては、先ほど申し上げましたように、その方の身の安全、そしてまた、あるいは北朝鮮の中に残っておられる方も御親族の間におられるかもしれない、いろいろな配慮がございまして、個々具体的なケースについて個々具体的な連絡の内容というのは、恐縮でございますけれども、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
中村(哲)委員 それだったら議論ができないわけですよ。
 それでは、先ほどの質問に戻りますけれども、この件について中国当局に通報したんですか。中国当局は日本政府からの通報によって逮捕したというふうに報道されておりますけれども、それは本当でしょうか。
川口国務大臣 先ほど来申し上げていますように、一人の日本人が日本に速やかに帰国をしていただくために、私どもは全力を今尽くしているところでございます。したがいまして、具体的なことについては今この時点で申し上げることができないということで、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
中村(哲)委員 大事なことは、この韓国人の協力者と言われている二人の方が逮捕されているということなんです。そして逮捕容疑が、日本国政府に身の代金を要求したということで逮捕されているということでございます。
 だからこそ、この韓国人の協力者の人たちがどのような要求を日本政府にしたのか、それがはっきりわからないと、なぜ逮捕されたのかわからない、韓国の皆さんがそのように考えているからでございます。だからこそ、日本国政府は、今回のケースは身の代金誘拐のケースであると思い、またそれを理由にして中国当局に通報したのかどうか、その事実を確認させていただきたいわけでございます。
川口国務大臣 私どもとして、申し上げることができるなら申し上げたいことはたくさんございますけれども、やはりこれは、一人の日本人が日本に速やかに無事に帰ってきていただくということが何よりも大事なことでございまして、今、そのために全力を尽くしているということでございます。
 それで、おっしゃったこの具体的な中身については、今、中国の司直の手で調査をされているというふうに理解をしておりますので、日本政府としてその件についてこの場で申し上げるということは控えさせていただきたいと思っております。
 それから、日本政府が邦人の保護についてきちんとやっているかどうかということをきちんと把握したいということが委員の御質問の一番の問題意識であろうというふうに思いますけれども、これについて、具体的なケースを挙げて御説明を申し上げることができれば納得していただけるかと思いますが、事柄の性格上、そういうことができませんので、私どもがベストを尽くしているということで、ぜひ御理解をいただきたいと思っています。
中村(哲)委員 事柄の性質上できないという理由を具体的に述べていただきたいわけでございます。
 中国当局に通報したのかどうか、その事実が、なぜ、帰ってこない、帰ってこれないということに関係してくるのか、わかるような説明をしてください。
川口国務大臣 その理由というのは、先ほど来申し上げておりますように、御本人の身の安全、それから関係者の安全、北朝鮮に残された家族の人たちあるいは関係者の安全、そして政府の立場、いろいろ申し上げているとおりでございます。
中村(哲)委員 例えば、一月十五日には瀋陽の総領事館に引き渡す、そういう段取りになっていたのではないか、そして瀋陽の総領事館はそれを認識していたのではないか、そのようなことが言われているわけでございます。そうすると、なぜ、延吉、現地でわざわざ、その前日に、というか一日おくれましたけれども、その日に逮捕させる必要があったのか、通報する必要があったのか、そのようなことも言われているわけでございます。
 日本政府の対応が非常に不可解である、そのような報道がなされている中で、その事実の確認と説明責任、きちんと果たしていく必要があるのではないでしょうか。答えていただけないというのは非常に残念なことなんですけれども、もうこのような形で事件のケース自体は表に出ています。そして、このこと自体で、次に、政府が確認することによって、結果にどのような影響があるのか、どういうことを懸念しているのか、そのこともあわせて説明していただけましたら今のような御答弁も納得できるかと思うんですけれども、きちんとした理由を説明してください。
川口国務大臣 委員のおっしゃっていらっしゃることは、その週刊誌の記事が正しくて、それが間違っているかどうかということを日本政府が申し上げないと、その記事が正しいということを前提で考えられるということだというふうに聞こえますけれども、先ほど来申し上げていますように、私どもとして、申し上げたいことはたくさんございますけれども、事柄の性格上、というのは、一人の脱北者の日本人の六十代の女性に速やかに日本に帰ってきてもらう、このことが何よりも重要なことであるということでございまして、それが重要である。したがって、個別具体的なことについては、大変に申しわけないんですけれども、これを申し上げるということはできないということをぜひ御理解いただきたいということでございます。
中村(哲)委員 私は何も週刊誌に書いていることが正しいというふうに聞いているわけではございません。事実の確認をさせていただきたいと言っていることでございます。これが間違っているなら間違っているとして議論をしないといけないし、すべてのことは事実の確認から議論というのは始まると思います。だからこそ聞かせていただきたいということでございます。
 例えば、ここには、「本誌記者はこのあと、事態の変化を受けて外務省幹部に面会している。一月十二日のことだ。 そこでも、外務省幹部はAさんを誘拐犯と断定できていないことをはっきり明言していた。」このような事実も、一つ、こういう事実があったのかないのか、そういったことでこの引用されたAさんが誘拐犯であったのかどうか、そうでなかったのか、そういうことが外務省の中でどのように把握されてきたのかということがわかるわけでございます。
 だからこそ聞かせていただきたいわけでございますが、やはり、今まで述べてきた御理由で、形式的に、答えることができないということでよろしいんでしょうか。
川口国務大臣 これについては、個別具体的にはお答えをすることができないということを御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 そうであれば、事実の確認とそれに対応しての外務省の行動が正しかったのかどうなのか、そういったことが議論できないと思いますが、こういった議論はどのようにすれば議論をさせていただけるのか、こちらは何を用意すれば議論をさせていただけるのでしょうか。
川口国務大臣 私どもとして、省内で常に、とった対応についてそれでよかったかどうかということの反省は不断に行っております。これについても、これはまだ解決をしたということではございませんけれども、どこかの時点で省内での検討はするということになると思いますが、私どもとして、やはり邦人保護ということをどうやったら適切にできるかということは大きな課題でございますし、関心事でございますので、それがさまざまな状況に応じてよくできるようにするために常に反省を重ねているということを申し上げたいと思います。
中村(哲)委員 非常に残念なお答えですけれども、ここでとどまっていてもらちが明きませんので、報奨金の問題について少し触れさせていただきたいと思います。
 先ほど、さまざまな方法があるという中で、NGOへの紹介もあるということが御答弁されておりました。NGOや邦人保護にかかわった人たちに対して、邦人保護の対価として資金の提供、いわゆる報奨金を提供しているという報道もなされておりますけれども、これは事実でしょうか。
川口国務大臣 報奨金とおっしゃる意味がよくわかりませんが、邦人を助けてくれたNGOに対して賞金を出す、そういうような意味でおっしゃっているということでございましたら、ちょっとその意味がよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、具体的にどのような方法で邦人の保護を図るか、特に脱北者の場合に具体的にどういうふうにして行っているかということは、先ほど来申し上げていますようにケース・バイ・ケース、その人の状況によって異なります。
 したがいまして、いろいろな今後の問題、今後あり得べき事態への対応その他、あるいは中国政府の立場、いろいろ先般来申し上げていることにかんがみまして、具体的にどのように対応しているかということについては、個別具体的に、あるいはその態様についてお答えをすることができないということを申し上げたいと思います。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
中村(哲)委員 私は、手数料も含めて、救出には実際費用がかかるわけですから、そういった実費負担も含めて、NGOに何らかの資金提供をしているのかどうか、報奨金という言葉が悪いのだったら、それは賞金という意味で言っているわけではなくて、何らかの資金提供をして協力を仰いでいるケースもあるのかどうか、そのことの事実確認をさせていただきたいと思います。
川口国務大臣 我々といたしましては、どのようにしたら邦人の保護が適切にできるかという観点から日ごろベストを尽くしているということでございます。
 例えば、その方が日本に渡ってくるというようなときには渡航費がかかるということでございますね。その渡航費について、例えばその方の親族がいればそういう方に請求するということもありますでしょうし、具体的なことは個別個別、本当にそのケースによる、そういうことでございます。
中村(哲)委員 何も答えないということでは非常に困るんですよ。実際お金がかかる活動じゃないですか、邦人の保護というのは。それでNGOに協力を求めるケースもあるのであれば、そういうNGOに何らかの資金を提供するということもあるのかどうか、そこの一点でも答えてくれないと、すべて邦人保護のために外務省はやって、その内容については国会では一切答えられませんということになります。きちんとこのことぐらいは答えてください。
薮中政府参考人 今まさに個別具体的な事案でどういう形での予算というか、対応があるかということでございますけれども、例えば旅費の問題ということでございますけれども、そういう旅費の手当て等につきまして必要な場合には、それは予算の範囲内で対応するということはございます。
中村(哲)委員 一般論としてNGOに資金提供をすることもあるということでいいんですね。
薮中政府参考人 今申し上げましたように、例えば旅費とか、そういう形での必要な場合には、それに対応しているということでございます。それはNGOを通じてある場合もあると思います。
中村(哲)委員 それでは、帰ってきた人たちがどのように支援されているのかというお話に移らせていただきます。
 安倍官房副長官、お待たせいたしました。先ほど川口外務大臣の御答弁では、今極秘に帰国されている方は何名かという質問に対しては答えられないというお話でした。そのことも含めて、なぜ答えられないかということを安倍副長官からも話していただきたいとともに、現在どのような支援がこの方々になされているんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 この件につきましては、既に川口外務大臣からお答えをされていると思います。また、私もそのとおりだと思っているわけでございますが、この帰ってきておられる方々の人数あるいは現在の状況等につきましては、これは極めて機微な問題もございますし、関係国の性格上の問題もございまして、御本人たちの安全をまず確保しなければいけないという私どもの大きな責任もございます。そして、さらには、その方々のいろいろなプライバシーの問題等々もございまして、今この段階では、詳細についてお答えができないということでございます。
 また、どういう政府としての対応ということでございますが、先ほど若干関連して薮中局長また大臣からもお答えをしていただいているわけでございますが、ケース、ケースによって我々対応しているわけでございます。
 ただ、拉致被害者の方々に対する御支援については、議員立法していただきまして、法的な制度は整っているわけでございますが、脱北日本人、また脱北在日朝鮮人の方々については、まだそういう法的な枠組みはないということでございまして、果たしてこの拉致被害者の方々につくったスキームと同じようなものをつくるべきかどうかということについては、いろいろ議論があるということは承知をしております。
中村(哲)委員 それでは、安倍副長官、個人的な見解で結構ですので、新たな支援法が必要であるというふうにお感じでしょうか。
安倍内閣官房副長官 委員会の場でございますから、私が個人的な、このまさに具体的な問題について見解を述べるということは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますが、一般論といたしましては、御指摘の支援の問題につきましては、関係者の身の安全、そして人道上の観点等の趣旨の観点を総合的に勘案しながら、真剣に検討していくべきものであるというふうに考えております。
中村(哲)委員 今、在日の方のお話もありましたけれども、川口外務大臣、先ほどは日本国籍を有する者に対する保護のことを聞いておりましたが、元在日朝鮮人の方たちに対してどのような保護の体制をとるつもりなのか、またとってきたのか、そのあたりのところを教えていただけませんでしょうか。
川口国務大臣 まず、一般論でございますけれども、外国人の方が我が国の在外公館に庇護を求めてくるということがありました場合には、これは、個々の事案について具体的にその事情を検討した上で、その上で判断をするということでございます。
 そして、在日朝鮮人の方につきましては、外国人ですけれども、その中で、特別永住者として日本に永住することができるということで、一般の外国人とは異なる法的な地位を持っていらっしゃるということでございますので、そうした点を考慮して具体的に対応をする、そういう考え方でおります。
中村(哲)委員 それでは、いわゆる脱北者についても、そのような在日朝鮮人の方たちについては保護をする必要もあるし、そういった実績もあるということは確認させていただいてよろしいですか。
川口国務大臣 申し上げていますのは、それぞれの方、庇護を求めてきた方について、個別具体的な事情を勘案してということでございまして、その中で在日朝鮮人の方については特別な、別な法的な地位を有していらっしゃるということを踏まえるということを申し上げているわけでございます。
 それで、個別具体的に何を判断するのかということであれば、これは一般的に申し上げまして、申請者の人定というのがございますし、そういった事実関係でございますね、それを確認して、その方の希望というのも伺う、そしてその方の生命あるいは身体の安全が適切に確保されるかというような人道的な観点、それから関係国との関係を総合的に考えるということでございまして、その中で、そういった外国人一般への考え方に加えて、在日朝鮮人の方の場合には違う法的な地位を有しているということをさらに考慮しますということを申し上げているわけでございます。
 過去においてどういうようなケースがあったかということについては、これもまことに恐縮なんですけれども、先ほど申し上げましたように、中国政府との関係とか、それからその方の安全、北朝鮮に残っていらっしゃる家族、関係者の安全ということがございますので、これについても日本人同様、数については控えさせていただきたいと思っています。
中村(哲)委員 私は具体的な数を聞いているわけではございませんで、一般的に、日本国政府によって元在日朝鮮人の脱北者について保護しているケースというのはあるのかどうかということをお聞きしているわけでございます。
川口国務大臣 あるかないかということでございましたら、ございます。
中村(哲)委員 安倍副長官にお聞きしていますが、そのようなあるケースに対して、庇護後、日本としてはある程度支援はしている、そういう体制もあるということでよろしいですか。先ほどの確認なんですけれども、そういったケースもあるということで。
安倍内閣官房副長官 今の段階におきましては、種々のケースを勘案して我々も検討をしているということまでしかお答えできないということでございます。
中村(哲)委員 このように、何を聞いてもなかなかきちんと答えていただけなくて、実質的に国会で審議をしづらいところがありまして非常に残念なんですけれども、一般論としてのことを聞いているんだから、もう少し答えていただきたい。また引き続いて、この問題については取り組みをさせていただきたいと思います。
 それでは、次に移ります。その他の脱北者について、脱北者一般の問題について質問をさせていただきたいと思います。
 脱北者が北朝鮮に強制送還された場合、北朝鮮ではどのような措置がとられるのか、とられていると考えていらっしゃるでしょうか。
薮中政府参考人 脱北者の方がまた北朝鮮に戻されたときということで、その中で、北朝鮮でどういう形で何が行われているのか、これは私どもにも、きちんと把握はしかねておるわけでございます。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
中村(哲)委員 一切把握していないということでよろしいですか。
薮中政府参考人 もちろん、いろいろな形でいろいろな情報というのも伝わってまいりますけれども、その個々具体的なことを含めて、私どもとしてきちんと確認することができないということでございます。
中村(哲)委員 北朝鮮の刑法について、資料で、四十七条、百十七条という条文を少し紹介させていただいておりますけれども、四十七条では、「我が国」、これは北朝鮮ですね、「我が国公民が祖国と人民に背き外国又は敵側に逃亡、スパイ行為、敵を利する行為など、祖国に対して反逆行為を行った場合には、七年以上の労働教化刑に処する。情状が特に重い場合には、死刑及び全財産没収刑に処する。」というのもありますし、第百十七条は、「許可なく国境を越える者は、三年以下の労働教化刑に処する。」ということも書いてあります。
 このように、刑法の条文は日本国内でも、私たちでも入手することができる、そういった、このような刑法を見ても、どのように脱北者が扱われるのかということについては、もう少し私たちに説明してもいいんではないですか。どのように外務省が考えているのかということをもう少しきちんと説明してくださってもいいのではないでしょうか。
薮中政府参考人 もちろん、北朝鮮の中に、今委員御指摘のとおり、刑法、そういう定めがございまして、具体的にどのケースでどうした罪名になって、そしてどういう罪科が確定するかということ、それは個々具体的に違うと思いますけれども、極めて厳しい状況であることは間違いないというふうに我々も考えております。
中村(哲)委員 私がこのような質問をしているのは、いわゆる脱北者の皆さんが、一般的に難民条約上の難民に当たるケースが非常に多いのではないか、そのようなことを議論させていただきたいからでございます。
 資料にもあるように、難民の定義の一番重要な点は、国籍国から迫害を受けるおそれがある者かどうかというところが、難民条約上の難民に当たるかどうかの重要な判断基準でございます。そういったときに、脱北者の皆さんが北朝鮮に強制送還された場合に、難民条約上の難民に当たる者と認定できるのかどうか、そこの判断の材料のために、外務省が脱北者の皆さんについてどのように認識しているのかということを聞きたいわけでございます。
 端的に聞きますと、脱北者というのは難民条約上の難民と言えるのでしょうか。
薮中政府参考人 脱北者の場合に、それに該当する場合あるいはそうでない場合、難民の定義からいきまして、それは個々、両方のケースというのはあるんだろうと思います。
 いずれにしましても、問題は、まず脱北者の中で日本人の方がおられる場合には、これはもう絶対にその方の身の安全を確保して、そして日本に無事帰国していただく、これがまず第一義的だと思います。そしてまた、外国人の方につきましても、先ほどの、どういう状況であるのかということ、そしてその全体の状況を見た上で、関係国とも相談しながら対応していくというのが現状でございます。
中村(哲)委員 私が言っているのは、北朝鮮に強制送還された場合、脱北者の皆さんはほとんど迫害を受けるおそれがあるのではないかということを聞いているんです。だから、迫害のおそれがないようなケースというのはあるのかどうか、それを聞いているわけでございます。どうですか。今の答弁だったら、迫害を受けるおそれがないケースもあるというふうな御答弁だと思うんですが、いかがですか。
薮中政府参考人 まさに、脱北者の場合というので、それが北朝鮮に戻された場合にどうなるか、これは北朝鮮の中の問題でございます。当然、先ほど申し上げましたように、非常に厳しい状況が待ち受けている場合というのは非常に多いと思いますけれども、他方においてまた、脱北者の方で改めてまた出てこられる方、一度北朝鮮に戻って、そしてまた脱北して出てこられる方もございます。そういう意味で、いろいろなケースがあるんだろうと思います。
中村(哲)委員 それでは次に移ります。
 中国は脱北者を北朝鮮へ強制送還する内容の議定書を結んでいると聞いておりますが、これは事実でしょうか。
薮中政府参考人 そういう話があることは私ども承知しておりますけれども、完全な事実としては確認されておりません。
中村(哲)委員 事実としてなぜ把握できないのでしょうか。
薮中政府参考人 状況をきちんと把握すべく、日中間でもいろいろな協議を行っております。その中でもさらに確認を求めていきたいというふうに思っております。
中村(哲)委員 それでは、日本国政府は、中国は強制送還をしているというふうにお考えでしょうか、していないとお考えでしょうか。
薮中政府参考人 我々といたしましては、まさに、日本側で確認した情報に基づいて、それが脱北者で、私どもがきちんと身の安全を確保すべきときには、中国側にそのことについて非常に協力を強く求めてきておりまして、これまでのところ、中国側から我々への協力に対しては非常に前向きな対応がなされているケースが多いということでございます。
 ただ、全般的に、今の委員御指摘の点につきましては、私どもとして、その全体で中国がどういうふうにすべてのケースについて扱っているかということは承知しておりません。
中村(哲)委員 つまり、脱北者に対してどのような措置が中国においてとられているかは外務省は把握していないということでよろしいですね。
薮中政府参考人 すべてのケースについて、脱北者のすべてのケースについて私どもが把握しているということではございません。
中村(哲)委員 それでは、すべての把握はしていないけれども、一部は把握している。その中で、難民条約上の難民に当たるような人たちに対して強制送還しているように思われるケースはありますか、ありませんか。
薮中政府参考人 私どもの把握している限りにおきましては、まさに難民に当たるような場合、これは国際機関もございます、そして、中国側がきちんと対応するものだというふうに思っております。
中村(哲)委員 それでは、中国側はきちんと対応しているというふうに考えているということでよろしいですね。
薮中政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、全部のケースについて私どもが完全に承知しているわけではございません。
 もちろん、脱北者のケースということで、大変多くのケースがあるというふうに思いますので、我々がすべてについて把握するということはできないわけでございまして、今の御指摘の点の、仮に難民の条約に該当するかどうか、そのすべてについての状況ということは把握できていません。
中村(哲)委員 私は、すべての場合において把握してくれと言っているわけではございません。把握しているケースにおいて、中国が、脱北者、難民条約上の難民と思われるような脱北者を強制送還しているケースはないのかということを聞いているんです。
 今まで外務省が把握しているケースの中で、難民条約上難民と思われるような脱北者を強制送還しているようなケースはないのか。それについてもう一度お答えください。
薮中政府参考人 私どもが把握している限りにおいては、そういうことを承知しておりません。
中村(哲)委員 ということは、日本国政府が把握している限り、中国政府は難民条約上の難民と思われるような脱北者を強制送還しているという事実は把握していないということでよろしいですね。
薮中政府参考人 私どもの把握している限りということではそのとおりでございます。
中村(哲)委員 今後、このような問題についてさらに把握する努力というものはしていくんでしょうか。そして、そのためにはどのようなことをしなくてはならないとお考えでしょうか。
薮中政府参考人 この脱北者の件につきましては、中国側ともいろいろな形での協議というのを行っておりまして、そういう中を通じて我々もさらに勉強、努力していきたいと思っております。
中村(哲)委員 私は、具体的にどのようにしていくのかということを聞いているんですが、いかがでしょうか。
薮中政府参考人 日中の間で領事協議といったものもございます。そうした中で問題を提起して、そして協議を重ねていきたいというふうに思っております。
中村(哲)委員 事ほどさように、ほとんど実質的な答弁がなされないということは非常に残念だと思います。
 一つ具体的な提案をさせていただきます。
 邦人保護や、日本国籍を有していない人たちへの人道的支援の観点から、各国やUNHCRと協力して、このような脱北者についてどのようになされているのかというのを、調査団を派遣するようなことを考えてはいかがでしょうか。また、今後、脱北者が増加されると予測されますが、その対応を容易にするために、現地に難民キャンプを設置するというようなことはいかがでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 脱北者がふえているようであるということについて、国際社会でいろいろ考えている人たちがいるということはあるかと思いますけれども、こういったことについて、難民キャンプをつくるとか、それから調査団を出すとか、そういったことを国際社会と協調して今行うということは考えておりません。
 ただ、日本としては、我が国の邦人の保護という観点から、中国に出てきた北朝鮮に住んでいた邦人についてはベストを尽くすということでございますし、それから、中国政府との間で二国間で、あるいは他の国との間で二国間で、あるいはUNHCRとも、そういったバイで話をしているということはやっております。
中村(哲)委員 なぜ多国間での取り組みということを考えないのでしょうか。
川口国務大臣 これは、北朝鮮の人が中国に出てきているということで、邦人である場合を除いて、あるいは何らかの理由で日本に庇護を求めてきているという場合は日本政府がかかわりますけれども、一般的には、中国政府としてどういうふうに対応をしたいかということをきちんと踏まえて国際的に話をしていくということであるかと思います。
 いろいろな場で、UNHCRあるいは二国間で話をするということはしておりますけれども、そういったことを国際的に大がかりにやるということについては、関係国の政府、特に中国政府の立場ということを配慮するということが必要だと思います。
中村(哲)委員 時間が参りましたので終わりますが、もう少し積極的な御答弁を今後ともよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 きょうは基礎年金の国庫負担率の引き上げの話から伺いますが、今の現行法で、国庫負担率を三分の一から二分の一へ引き上げるということが決まっていて、また安定財源を見つけるということも決まっておりまして、その切った手形がそろそろ落ちる時期が近づいているわけなんですけれども。
 そういう意味で、坂口大臣にまず伺いますが、最近、何かちょっとずつとかいうふうな御発言をされているように伺っておりますが、一体そのちょっとずつというのはどういうことなのか、お話しいただけますか。
坂口国務大臣 今御指摘いただきましたとおり、平成十二年度の改正法の附則におきまして、安定した財源を確保して、二分の一へ引き上げを図る、こういうふうに規定されているところでございまして、いよいよ来年、十六年、いよいよ改正をしなければならないときが来るわけでございます。
 したがいまして、ことし一年の間に、いわゆる今後の年金のあり方をどうするかという、年金そのものの問題も御議論をいただきたいというふうに思っておりますし、それに対する財源の問題も御議論をいただきたいというふうに思っております。
 私が記者会見で申しましたのは、それは今後の動向によりますけれども、選択肢の一つとして、これからこの年金の額を引き上げていきますときに、一年間でトータル引き上げるということが難しければ、何回かに、段階的に引き上げるということもあり得るのではないか。それは、御議論の中の一つとしてそういうこともあり得るのではないかということを申し上げたわけでありまして、しかし、これは十六年から引き上げるということに正式にはなっているわけでありますから、できれば、それは当然のことながら、十六年から引き上げるだけの財源をどうするかという議論は、これはセットの話でございますので、そうした議論の中の選択肢の一つとしてそういうこともあるのではないかということを申し上げたところでございます。
中塚委員 附則の選択肢は、安定財源を見つけて三分の一から二分の一に引き上げるということが書いてあるので、ちょっとずつというのは、それは財源、ちょっとずつの財源を見つけるということなのかどうなのか、今の答弁ではよくわからないんですが、財務大臣にお伺いをいたしますが、今の厚生労働大臣の御答弁なんですけれども、その財源を見つける、ちょっとずつというふうな話があるんですが、財務大臣としては、そこはどうなんですか。
塩川国務大臣 今、年金の問題について議論は、十六年度から抜本的改正をするということになっておりますので、その作業に向けまして、議論の進行状況を見た上でいろいろと御意見を申し上げていきたいと思っております。
中塚委員 法律で決まっていることなんですね。附則で三分の一から二分の一に引き上げるということになっているわけで、ちょっとずつというと、何かその財源をちょっとずつどこかから用意するような話なんですが、総理はそもそも、就任直後の所信表明でも増税はしないというふうに言い切っていらっしゃるわけですね。増税はしないというふうに言い切っていらっしゃるから、以前この予算委員会でもお尋ねしたときに、国庫負担率を上げるといったって、そんな財源はどこにあるんだというふうなことを伺ったことがありますけれども、では、その安定財源として、厚生労働大臣、一体何をお考えになっておられますか。
坂口国務大臣 これは、税制全般、あるいはまた保険料との関係でお考えをいただく以外にないわけでありまして、私も、今それを、どの税制において、あるいはどういう割合においてということを今決定したわけではありません。
 今後のこの年金制度のあり方等含めまして、そして、その中で財源としてはどこに求めるかということは、御指摘のとおり今年いっぱいの間に結論を出さなければならないわけでございますから、ことしの年末あたりのところでははっきりさせていただかなければなりませんし、我々も考え方をまとめたいと思っております。
中塚委員 年金制度のあり方と国庫負担率を上げるときの財源というのは、関係ない話じゃないんですかね。だって、年金のあり方、それを変えたところで、では国庫負担率を上げないという話にはならないわけですよね、これは法律の附則で決まっているわけですから。
 塩川大臣に同じことを伺いますが、安定財源ということで、大臣は何か今お知恵はあるんですか。
塩川国務大臣 安定財源ということは、要するに平易な言葉で言うたら保険会計が健全であるということになればいいわけでございますから、健全であるためには給付と負担の関係も見直していかなきゃならぬだろうし、あるいはまた負担のあり方、それは税によるのか保険料によるのかということも必要であろうし、いたしますので、そういう問題を抜本改正に向けて根本的に議論していただいた上で決めていくべきであると思っております。
中塚委員 何か今のお答えだと、給付額の方を思い切り削減をして、今三分の一の負担率になっているものが二分の一程度になるまで給付額を引き下げる、そういうふうなイメージに聞こえるんですが、そういうことですか。
塩川国務大臣 いや、私はそんな極端なことは何も言っておりませんが、しかし、給付につきましても、非常に格差が出てきて均衡を欠いておるようなものもあると思っております。
 それは、一つは世代間の負担というものもございましょうし、それから、同じ世代間におきましても、給付とそれから負担との関係を見ました場合に、ここでは均衡をとれるべきものが随分あると思っておりますので、そういう問題をやはり議論すべきであると思います。
中塚委員 世代間の負担の均衡を云々かんぬんということは、もちろんそれはそれで大事なんですが、給付総額が決まっていて、それの三分の一を国庫負担しているものを二分の一に引き上げるということで、それで二分の一に引き上げるための安定財源というのがなかなか見つからないということになれば、それは給付を減らすという以外にはないんじゃないんですか。厚生労働大臣、そこはいかがですか。
坂口国務大臣 そこはこれからの議論だというふうに思いますが、税制改革もさまざまな税制改革があるわけでありますから、それらの中でどういうふうに対応をしていくかということにもなるだろうというふうに思います。
 今、財務大臣がお話しになりましたように、保険料と税との割合をどうするかということもあります。ですから、今回のこの年金の改正につきましては、まず大枠で、今後、将来的にどういう年金の姿が望ましいのかということも決めながら、そして、より具体的に、それじゃどうしていくかということをまとめていかなければならないというふうに思っております。
 したがいまして、御指摘のような、三分の一から二分の一に引き上げるためには、その額が多い少ないは別にいたしまして、これは引き上げなければならないことだけは間違いないというふうに思っているわけでありまして、その財源をどう求めるかということについて結論を出さなければならないということだと思います。
中塚委員 厚生労働大臣のまさにおっしゃるとおりなんですけれども、三分の一から二分の一に引き上げなきゃいかぬということは決まっておるわけですね。その財源をどこかから引っ張ってこなきゃいけないということなわけで、それは年金制度自体の設計云々という話になるんなら、給付を削減するということになっちゃうじゃないですか。
 そうじゃないはずですね。給付を削減するというなら、それは話は別ですよ。けれども、そうじゃなくて、給付の額は今のレベルで、それを三分の一から二分の一に引き上げるということなんですから、新しい財源が要るということですね。
 果たして来年まで、来年の改正までということですから、ことし一年ということになりますけれども、そういったことが、そんな手品みたいなことができるのかどうか。年金の制度を見直したら三分の一から二分の一に引き上げる財源が出てくるというのはちょっとおかしいし、あと、保険料との兼ね合いということをおっしゃいましたけれども、保険料との兼ね合いと国庫負担の財源というのは全然別の議論ですね。保険料と国庫負担で給付に充てているわけですから、保険料をどうこうするというのと基礎年金の国庫負担率を上げるというのは、全然別の議論なんですよ。だから、年金制度をいじったって、国庫負担率を上げる財源というのは出てこないということになります。
 今、いろいろと消費税の議論が交わされているわけなんですけれども、総理は、消費税を上げないということを、増税しないという中で消費税を上げないということは特に強調されるわけなんですが、ということは、この基礎年金の国庫負担率を引き上げるときに、安定財源というときに、消費税というのは検討対象ではないということでよろしいんですか。塩川大臣、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 総理は、私の在任中は消費税を上げないということを言っております。そのことは、要するに、総理自身が言っていますように、まず歳出の実態を見て、歳出削減ができるものをもってできるだけの財源を見出すということが一つと、それからもう一つは、年金の実態が事実に即したような改正、私は、先ほど中塚さんおっしゃったように、総額の問題についてやはり問題があるだろうということをおっしゃっていますが、こういう問題等を考えて、その上で税の問題を考えたらいいと思っております。
中塚委員 私は総額に問題があるなんて言っているわけじゃなくて、要は、財源がないのに三分の一を二分の一にするということは、逆に給付額を減らすということにしかならないじゃないですかということを論理的にお話をしているわけであって、私は給付額を減らすなんということは一言も言っていない。逆に、皆さん方が自縄自縛に陥って、そうせざるを得なくなるんじゃないですかということをお話をしているわけです。
 厚生労働大臣に同じ質問をさせていただきますが、総理は消費税は上げないということを言っていらっしゃるわけなんだけれども、そうなりますと、安定財源として消費税というのは当てにはしてないということでよろしいんですか。
坂口国務大臣 税制改革全体の中でお考えをいただく以外にないというふうに思っておりますが、総理の御発言もありますから、そういたしますと、直接税の中でどういうふうなことが考えられるのかということも私はあるというふうに思っております。
中塚委員 というわけで、結局、財源を見つける、消費税は上げないということで、では、それ以外といっても、増税しないというふうな公約がきっちりあるわけですから、そこはきちんと守っていただかなきゃ困りますし、今、総理は、上げないけれども議論は構わないみたいなことをばんばんばんばん言っていますけれども、そうなると、来年にはもう小泉総理もいないから、今のうちに議論だけして、来年になれば消費税を上げて、では、基礎年金の国庫負担率も上げようというふうにお考えになっているのかもしれないけれども、そういったやり方は、やはりパッケージとして政策は考えていただかなきゃいかぬということを申し上げておきたいというふうに思います。
 次に、インフレターゲットについて伺いますが、竹中経済財政担当大臣、ダボスの方に行ってこられたようで、そのダボスでも、インフレ目標ということはそんなに問題じゃないというふうな御発言をされたというふうな報道があるんですけれども、そういうことでよろしいんですか。
竹中国務大臣 ダボスの会議で、日本の金融政策について、やはり世界の専門家の間では非常に高い関心がありました。
 私がその場で申し上げましたのは、重要な点はマネーサプライをふやすことであって、インフレ目標ということ自体を自己目的化した議論が余りに多いのではないだろうか、そのことだけを議論するのは不適切ではなかろうかということを申し上げたわけであります。マネーサプライをしからばどのようにふやしていくか。マネーサプライをふやすに当たって、インフレ目標を掲げるというのは、それはやり方によっては大変重要な手段にはなり得るということはその場でも申し上げているわけでございます。
中塚委員 ということは、インフレ目標、インフレターゲットということについても与党の方でもいろいろ議論がされているようなんですけれども、要は、大臣は、金融緩和ということが主で、マネーサプライをふやすということが主だから、インフレターゲットという政策自体にはそんなにこだわっていない、どうでもいいことだということでよろしいんですか。
竹中国務大臣 どうでもいいことだというふうにはもちろん思いません。ただ、繰り返し申し上げますけれども、インフレ目標をとるかどうかということを自己目的化したような議論は、議論の本質を誤らせる可能性がある、重要なことはマネーサプライをふやすことである、そのことを強調したわけであります。
中塚委員 では、逆に伺いますが、インフレ目標を設定して金融緩和を促していくということだと、今までとはどう違うんですか。
竹中国務大臣 かねてから答弁させていただいておりますが、日本銀行は既に物価の下落がとまるまで金融緩和を続けるというふうに言っておられるわけですから、私自身は、日本銀行は既に緩やかなインフレターゲティングをとっているというふうに理解をしております。それをよりはっきりとした形で示すのかどうかというのが一つの論点になるわけであります。
 どのようなメカニズムが働くかということになりますが、基本的に重要なのは、やはり中央銀行がマネーサプライをふやすという強い意思を持つこと。その強い意思の表明としてインフレ目標を掲げる場合には、それは現実のマネーサプライをふやすさまざまな効果があるだろうし、同時に、消費者や企業がインフレに対する期待度を変える、その期待の変化が期待インフレ率の変化を通して実質金利を下げて非常にいい効果をもたらす、それが重要なポイントになってくるんだと思います。
中塚委員 インフレの期待というのは金融緩和だけで生まれるというふうにお考えなんですか。
竹中国務大臣 今の委員のお尋ねは、基本的に、今、日本の物価が下がっている、物価が下がっている原因は何と考えるのかという御質問と同義であるというふうに思います。
 基本的には、私たちが申し上げたいのは、いろいろな実物要因と金融要因がある。しかし、私たちはその金融要因が非常に強いというふうに思っているわけです。したがって、金融要因が強い限り、マネーサプライがふえるというふうな期待は、あれば、それは非常に大きく物価の下落に役立つであろうと。デフレはすぐれて金融的な現象であるという考えに基づいているわけです。
中塚委員 それは竹中大臣お得意の量的貨幣論だと思うんだけれども、それは、量的貨幣論が合っているかどうかは別にしても、金融緩和をしていくとそういうインフレ期待が本当に生まれるんですか、生まれるというふうに考えていらっしゃるんですかということを伺っているんです。
竹中国務大臣 物価とマネーサプライの間には明らかに有意な、意味のある関係があります。したがって、マネーサプライがふえつつある、ないしは中央銀行が非常に強くマネーサプライをふやそうとしているという期待が消費者や企業にあれば、それは期待インフレ率を非常に大きく変えるというふうに思います。
中塚委員 やはりこれだけ政治が信頼されていないときにあって、日本銀行のやっている政策だって信頼されていないときにあって、そんな、物価の目標を設定しただけでインフレ期待なんか生まれるわけがありませんよ。私はそういうふうに思います。
 それで、あとその政策の手段ですね。金融緩和にしろ、あと物価の目標、そういったことを日本銀行と協議していくおつもりなんですか。アコードというようなことを最近よく大臣言われているんだけれども、それを、日銀と政府の間でそういったことを手段も含めて協議をされるおつもりなんでしょうか。
竹中国務大臣 今、中塚委員、物価目標を掲げるだけでは何も効果がないのではないかとおっしゃった。私は全くそのとおりだと思います。だから、その目標、インフレターゲットだけを自己目的化するのではなくて、マネーサプライをふやすという強い意思を持つことと、それが政策としてあらわれることが必要だということを繰り返し申し上げているわけです。
 後半のお尋ねの、それに対してどのような形でマネーサプライをふやすかということに対して、政府がどうこう言うのか、そこは私は少し違うというふうに申し上げているつもりでございます。デフレを抑制するという目標はしっかりと共有していただく、しかし、それをどのような金融政策の手段で実現しているのかということに関しては、金融専門家として日本銀行が独立の意思決定をするということが、健全な金融政策を行う上で私は大変重要であると思います。
中塚委員 それなら、ダボスの会議で、日銀は様々な資産を購入できるなんということをおっしゃったようなんだけれども、そういう発言は経済財政大臣としてなさるべきではないと私は思います。
 もう一つ、物価目標を設定して金融緩和をするということなんでしょう。それ以外の政策余地というのは余りないということなんでしょう。物価目標を設定して金融緩和をする、金融緩和をすれば何でインフレ期待が生まれるんですかという話を聞いているわけですよ。要は、大臣が言っているのは、インフレ目標があるなしにかかわらず金融緩和をしろということでしょう。金融緩和、足りないということでしょう。金融緩和をすれば物価上昇期待が生まれるんだということをおっしゃっているから、そんなことはありませんよという話をしているので、インフレ目標がどうのこうのということを言っているんじゃないんです。
 そういうインフレの、インフレターゲティングといって、一九三〇年にスウェーデンでやった例があるようで、大臣も御存じかもしれないんだけれども、このときでも、何も物価目標を設定しただけじゃないですね。公定歩合の引き上げ余地もあったし、八%から二・五%に引き下げたというふうなこともあるし、また財政支出もふえておるわけですね。財政支出も九・二%、一九%と二年連続でふやしていっているわけなんですね。だから、そういう意味で、デフレを克服するというふうに話をされるその中で物価目標の話も出てくるわけなんだけれども、結局、そういう金融緩和ということだけで、日本銀行に全部帳じりを合わせさせて、政府としてはもうとれるオプションなんて今ほとんどないじゃないですか。
 竹中さんは、そういう意味で、日本銀行に金融緩和ということをおっしゃる一方で、では、政府としてどんなことをやるべきだ、できるというふうにお考えになっているんですか。
竹中国務大臣 政府、日銀が一体となって取り組むべき課題であるということは、繰り返し申し上げているつもりです。
 先ほど物価が下がる要因について少し言及しかけましたけれども、これは確かに、すべてが、一〇〇%金融的現象であるということを申し上げているわけではないわけです。これは、実物要因もある、需要不足もある、供給要因もある。しかし、物価というのはすぐれて金融的な要因である。
 では、実物要因というのはどういうことか、需要要因はどういうことかということに関しては、我々の計測では、需給ギャップというのは、確かに存在しているけれども、過去の不況に比べてそれほど大きいわけではない。これについては、今回お願いしております補正予算も含めて、適切な総需要の管理を財政制約の中でも行っていこうとしているわけです。供給側の要因というのは、これは、海外から安い物が入ってくるとか、ITで、技術進歩で値段が下がるとか、これはなかなかとめようがないものであります。
 残ったものについては、金融的な要因ということで、政府は政府として適切な総需要の管理を行って、需給ギャップが広がらないように、少しは縮むように努力をしている。同様に、金融についても、八〇年代、一〇%伸びていたマネーサプライが、九〇年代は二・六%であった、今も三%台である。そのようなことについて、少し金融緩和について努力の余地があるのではないだろうかという意見を申し上げているわけです。
中塚委員 いずれにしても、そんな都合よく何か一%とか二%程度のインフレがずうっと継続できるような、そんな政策の運営というのができるぐらいなら苦労はしないわけだし、もしインフレになったらどういうふうに制御するかというふうな課題だってあるわけですね。
 時間がないので、塩川財務大臣と総務大臣にお越しいただいていますので伺いますが、もしこういうインフレターゲティングなりインフレ目標というのを設定した場合に、やはりリスクの方も考えておかなきゃいかぬと思うんですね。
 インフレになったときに国債価格が下がる。これだけ今、日本の金融機関なりが国債なり地方債をいっぱい抱え込んでいる中で、インフレになった場合に国債価格が下がることによってまた金融システムが揺らぐというふうなこともあり得るというふうに思うんですが、そこで、国債と地方債を所管されている両大臣に、このインフレ目標ということについて御見解をお伺いして、終わりたいと思います。
塩川国務大臣 私はインフレターゲットという言葉は余り使っておりませんし、そんなこと言ったことございませんが、しかし、インフレターゲットというと、何か学者らしい、しゃれた言葉ですから、流行語みたいになりまして言っていますけれども、政府はそんなことを、ターゲットを政策に取り上げてはおりません。
 そうではなくして、竹中大臣も言っていますように、物価を水準以上に上げていこうという努力をしているということが、これが政府の政策でございまして、おっしゃるように、急激に金利が変動するような事態が起こってきたら、それは困りますよ。ですから、物価を上げていくのにしても、要するに、経済全体のベースが上がることによって物価も上がる、そういう政策を着実にとっていくことが我々としては一番大事な政策だと思っております。
片山国務大臣 地方債も国債と同じ立場でございまして、インフレターゲット的な議論は、私は、必ずしも好ましくない。今、高コスト構造なんですよ。これをインフレにするのはいかがかな、こう思っておりますので、なお十分検討いたします。
中塚委員 終わります。
藤井委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、私、中小企業の金融の問題を中心に質問したいと思います。
 中小企業の置かれている不況の非常に深刻な状況とか、その中での金融の厳しい状況については、大臣も直接調査をされたり御存じと思いますが、例えば、全国中小企業団体中央会、ここが、半期に一度の調査に基づいて、下請中小企業の最近の動向というのを発表しておりますが、最近のもので見ましても、金融機関の融資の姿勢についてというコメントで、短期金利の引き上げ要請、これはダイカストの分野です。内容の悪い企業に金利引き上げ要請、産業用機械、電気部品で見られます。それから、リスクに応じた金利要請を行い、銀行の採算性重視というのが金型の部門です。融資先をランクづけし、貸出金利を、一%から五%台を格付に応じて要請しているという鋳物業界のコメントもあります。金利引き上げ圧力がかけられて、これを断ると新規融資のストップとか資金回収、つまり貸しはがし、こういうことが行われております。
 平沼大臣は政府広報で、「不良債権の処理を加速化している真っ只中です。このため、中小企業にとって一層厳しい局面になっています。」「金融機関の不良債権処理の影響が最も顕著に出るのが中小企業です。」というふうに、これはこの間の広報を私も読ませていただいて、大臣もそういうふうに言うてはるわけですね、金利引き上げ要求や貸しはがしなどで中小企業の置かれている現状は非常に厳しい状況だと。
 まず、そういう認識に立ってこの問題に取り組んでおられると思うんですが、最初にその認識を伺っておきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 まず最初に、中小企業に対して金利の引き上げ、こういうお話がございました。私どもとしましても、この引き上げというものが非常に多くなっているということは、調査の結果よく承知しております。
 具体的に申し上げますと、当省が政府系金融機関等を通じて毎月実施をしております中小企業への貸出姿勢に関する実態調査におきましても、金利上昇によりまして金融機関の貸し出し態度が厳しくなっている、こういう回答をする中小企業が非常に顕著になってきておる、こういうことでございます。
 また、私どもが今、幹部を派遣いたしまして、全国の二十六道府県、これの実態調査をいたしておりますけれども、この中でも、非常に厳しくなってきている、こういう中小企業の報告が上がってきております。
 そういう認識の中で、今広報のお話もしていただきましたけれども、私どもとしては、こういう引き上げでございますとか、あるいは貸しはがし、こういったことに直面して苦しんでおられる中小企業に対して、やはりしっかりとしたセーフティーネットを張っていかなきゃいかぬ、こういうことで、今審議をしていただいている補正予算でも、私どもとしては、その辺はしっかり手当てをしなきゃいかぬということでお願いをしているところでございますし、この他いろいろなことをやってこの厳しい中小企業に対して万全を期していかなきゃいけない、こういうふうに思っております。
吉井委員 平沼大臣の方は、この金利の引き上げ問題、貸しはがし問題で非常に厳しい状況に置かれている、そういう認識を今語られました。
 それで、一月二十日の経済財政諮問会議の議事要旨の方を私も読みましたが、小泉総理の方は、「野党やマスコミのいう「貸し剥がし」などに乗せられてはいけないと忠告された。」という話をしてはるわけですね。総理は、貸しはがしがないという認識まで言っているかどうかはともかくとして、少なくとも貸しはがしがないということで言っているわけですが、現実はどうか。
 日銀集計がありますが、これによりますと、九七年十二月末から〇二年九月末にかけての五年間で、中小・中堅向け貸出残高は八十九兆円減少、大企業向け貸し出しは三兆円の減少ですから、中小の貸しはがしが圧倒的に大きなものであるということが現実だと思うんです。
 竹中大臣、まず、この日銀集計等に見られる、こういう中小企業に向けて貸出残高が非常に大きく減っている、これも結局は貸しはがしということになるわけですが、その現状についてはもちろん竹中大臣はきちんとつかんでおられると思いますが、伺っておきます。
竹中国務大臣 我々も、中小企業に対する貸し出しの減少が非常に高く続いているということに対して、非常に厳しい状況であるという認識を持っております。
 前半、経済財政諮問会議の議事録が引用されましたが、その中でも、総理も大変厳しいということを認識した上で、しかし、こういう個別の話になると、それぞれ立場によって言い分が違ってくるからしっかりと聞かなければいけない、そういう趣旨でおっしゃったんだというふうに思っております。
 繰り返し言いますが、民間金融機関の中小企業向け貸し出しというのは、バブルのときに大企業よりも非常に高い速度で拡大していった。今その調整局面にある中で、その減少も中小企業への貸し出しにあらわれている、非常にそういう厳しい変化が起こっているというふうに認識をしております。
吉井委員 日銀集計を見れば、何しろ八十九兆の貸しはがしなんですから、個別の話で済むようなものじゃありません。
 公的資金の投入に際して、中小企業への大手銀行の貸しはがしなどが起こらないようにということで、中小企業向け貸し出しの残高をふやすという計画目標を立てさせたわけですね。
 現実はどうなっているか。大手銀行の中小企業向け貸し出し増加計画では、これは昨年三月の段階で計画値を見ると、みずほ、住友信託、UFJ、あさひ、大和、まあ、あさひ、大和は後のりそなですが、三井住友、横浜、中央三井信託、三井トラスト二行ですね、この昨年三月の増加計画は二千三百五十億円だったんですが、実績はどうかといえば、昨年の三月増加実績がマイナスの五兆一千四百十億円と、五兆円を超える貸しはがしが既に出ていて、ことし三月の増加目標は七千五十億円なんですが、しかし既に昨年九月の半期の実績で九兆四百八十三億円の貸しはがしがやられております。
 ですから、これはことし三月の増加計画を達成させようとすれば、昨年九月からの半年間で新たに九兆七千五百三十三億円、約十兆円の貸し出しをやることによって、貸しはがした分を帳消しにして新たに貸し出しをすることをやらないことには、これは増加計画を達成ということにならないと思うんです。
 竹中大臣に伺っておきますが、現在の状況というのは、昨年九月とそれ以降を見て大体約十兆円ぐらいの貸しはがしということですから、これを新たにやらさないことには目標達成ということにいかないんじゃありませんか。
竹中国務大臣 貸しはがしに関するお尋ねでございますけれども、そもそも貸出残高の減少イコール貸しはがしということでは決してないと思いますので、この点は、貸しはがしといいますと、本来貸すべきところに無理やりにはがしたというようなニュアンスが含まれているというふうに思いますので、貸し出しの減少ということでお答えすべきだと思いますが、委員御指摘のとおり、経営健全化計画に基づいて目標とされている中小企業に対する貸し出しが昨年九月の中間決算期で大幅に下回っているというのは、我々も大変深刻に重大な問題だと受けとめております。特に、銀行によってはちょっと想像できないぐらい大きな中小企業に対する貸し出しの減少が起きております。
 金融庁としては、こうした貸し出しの減少をした資本増強行に対しては、直ちに、銀行法二十四条に基づいて、それが減少した理由と今後の取り組みについて報告を求めております。その報告が一月の十六日に提出をされております。現在その精査を行っているところでありますので、必要に応じて厳正に対応していくという所存であります。
吉井委員 もともと不良債権処理を早期にやらせるということで、資産圧縮に銀行は向かっているわけですから、今おっしゃったように、貸出残高の減が一〇〇%イコールでないにしても、これは基本的には貸しはがしということになっていることはもう間違いありません。
 それで、計画の未達成どころか、例えばUFJで見れば、昨年三月で二兆五千二百四十七億円貸しはがしたUFJに、昨年、早期健全化法七条一項三号の基準違反として業務改善命令を出しましたね。しかし、九月で新たに八千三百二十六億円の貸しはがしが行われているわけですから、いまだ改善は行われていない。昨年九月にみずほは五兆五百六十九億円の貸しはがしなんですが、ことし三月にこの貸しはがし分を解消して百億円の増加計画を達成させるには、大体五兆一千億円近い、五兆六百六十九億円の新規の貸し出しに努めさせる、そういうことをやらないことにはこれは進まないと思うんですね。
 私、これは昨年の十月の財務金融委員会でも竹中大臣と議論をしておりますが、このときに、やはり九月の実績を見て、具体的にきちんとこの貸しはがしなどをやめさせるという取り組みをやらないことには進まないではないかということを申し上げました。具体的にどのようにUFJについて、みずほについて、具体的にどういうふうにやってきたのか、ここのところをきちんとお答えいただきたいと思います。
竹中国務大臣 昨年の九月期中間決算期のものにつきましては、報告徴求を受けて、今精査しているところでございますけれども、UFJホールディングスについては、昨年十月十八日に、あさひ銀行と同様に十三年度の中小企業貸し出しに関して業務改善命令を出しておりますけれども、それを受けまして、十一月十五日に、この二社からは業務改善計画の提出を受けています。
 この業務改善計画の概要については、UFJホールディングスについて、これは両行ともみずから公表を既にしておりますけれども、例えば、グループの中小企業向け貸し出しの推進体制を強化するために、社長自身を議長とするグループ中小企業向け貸出推進会議を新たに設置した。中小企業向け貸出残高と直接に結びつく目標を営業拠点ごとに設定した。業績評価目標にも中小企業向け貸し出しの取り組み状況を新たに設定して、監視するような体制をとった。
 あさひ銀行については、頭取を議長とする経営会議において、原則月一回、中小企業向け貸し出し増強に係る進捗管理、対応策の協議、決定を行うこととした。さらに、これも営業店ごとの個別の貸し出し目標を設定するとともに、その営業店の考課、評価においても、新規獲得の項目を新設するなど、中小企業向け貸し出しの配分のウエートを高めたというふうになっております。
 この業務改善計画については、提出後三カ月ごとにその実施状況の報告を受けることになっておりますので、この計画の着実な実施を通じて、中小企業向けの貸し出し目標が達成されるよう、その履行状況を今注視しているところでございます。
吉井委員 UFJ、あさひについてのお話もありましたけれども、しかし、みずほで昨年九月で五兆円を超える貸しはがしなんですね。
 そういう問題について、昨年の日経にもありましたが、銀行に融資増加計画の提出を求める金融庁に対して、複数の銀行が、達成できない計画を出すと現場が混乱する、業務改善命令を受けるからマイナス計画を組ませてほしいと訴えて、金融庁を慌てさせたというんですね。不良債権処理に苦しむ銀行は、不良化するような融資はもうできないと開き直り始めた。
 こういう状況ですから、五兆の貸しはがしをやっているみずほがこの三月に目標達成ということで、これは本当にやっていくということにならなかったら、今のようなお話は、これは達成の見通し、私はないと思うんです。
 そうすると、一月十八日付の政府広報で平沼大臣が、この補正予算について、中小企業に対する予算を五千億ほど確保した、そのうち四千五百億以上を金融セーフティーネット対策に充てる、これで十兆円の保証規模を用意しましたと述べているんですが、ところで、竹中大臣、中小企業へのセーフティーネットの補正予算を組んだと言うんですが、大手銀行を中心とする約十兆円の貸しはがしをことし三月の増加計画にあわせてきちんとやり抜かせる、これやらなかったら、約十兆円の中小企業の貸し付けのためのセーフティーネットと言ってきたものが、実際は十兆円規模の大手銀行の貸しはがしの穴埋めにしかならない、こういうことになるんじゃないですか。これでは、平沼大臣は中小企業向けのセーフティーネットと言うんだけれども、別の角度から見れば、これは大手銀行へのセーフティーネット補正予算ということになってしまうんじゃないですか。竹中大臣、ここはやはりきちっとやらせるという姿勢が今必要なんじゃないですか。
竹中国務大臣 とにかく、経営健全化計画の中で、確かに銀行は目標値として約束をした数字でありますから、それに向けて努力をしてもらうというのは、これは当然必要なことであるというふうに思っております。まだ中間決算期の段階だということもありますし、年度末に向けて、その意味では一段の努力を我々も求めているところであります。
 いずれにしましても、報告徴求、それが一月十六日に提出されておりますし、今その精査を行っているところでありますので、必要に応じ、厳正に対応したいというふうに思っております。
吉井委員 結局、竹中大臣のやっている政策が矛盾しているんですよ。これは小泉内閣の政策が矛盾しているわけなんですが、きょうの日経金融にも出ていますね、大手銀行、今期四十兆円規模へ、資産圧縮、なりふり構わずと。つまり、不良債権処理の加速をやれということで、これをやればやるほど、銀行としては貸出資産の圧縮か、それとも分子の方にかかわってくる金利の引き上げを求めていく。金利引き上げを要求して、これに応じられないところに対しては貸しはがしをやるということになれば、今度の十兆円規模のセーフティーネットと言うのだけれども、それは結局この銀行の貸しはがしの穴埋めにしかならない。補正予算と言うけれども、これは補正予算の意味がないと思うんですね。
 そういう点では、まず竹中大臣の方に、やはり具体的に取り組んでいくという点では、私は十月にも、金利引き上げマニュアルの問題とか、銀行はどういうふうに、QアンドAをつくって、お客さんからこういうことを言われたらこういうふうに言いなさい、言い返しなさいとマニュアルをどの銀行もみんなつくっているという実例を紹介しましたから、きょうはもうそれはもちろん繰り返しませんが、金融庁が業務改善命令を出すとしても、都銀は金利引き上げ要求を中小企業に求めるということになっておったのじゃ、結局この問題を深刻にするばかりですから、金融庁はこれを見逃さないで、やはり業務改善命令とあわせて、各銀行が金利引き上げのマニュアルとか方針とか通達をつくって実際にそれを進めていることをきちんと是正させる、その指導が必要だと思うのですが、竹中大臣、これをどういうふうに取り組まれるか、伺っておきます。
竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、目標を設定している中小企業に対する貸し出しが実現できるように、これは我々としては厳正に対処したいと思います。
 一方で、適切なリスク管理を行ってこそ銀行はその健全性を確保できるわけでありますから、そこは健全な企業経営のコーポレートガバナンスを発揮してもらって、これまた強い銀行の財務基盤をつくってもらいたいというふうに思うわけでございます。
 不良債権の処理の中で資産圧縮の問題を指摘しておられますが、新聞等々で報道されていますのも、資産圧縮即貸し出しの減少ということではありません。例えば、証券化をしてそれを売却するとか、そういったものについては、これはむしろその売却をすることによって可能な貸出額をふやすというものがあるわけでありますので、資産圧縮が即貸し渋りである、今進めているさまざまな銀行の健全化が即貸しはがしにつながるということではもちろんないというふうに御認識をいただきたいと思います。
吉井委員 竹中大臣は言葉はお上手なんですが、実態は全然違うんです。改革加速強行のための補正予算になっちゃだめなんですよ。今、中小企業対策で必要なのは、銀行の金利引き上げ圧力や貸しはがしを本当にやめさせることなんです。これを、加速策をやればやるほど、しかし、実態としてはそこへ進んでいるんです。あなたのやり方では、小泉内閣のその加速策では、この矛盾は解決できない、このことを言っておかなきゃならぬと思います。
 あわせて、実際に景気が悪いために返済は困難ですから、景気回復まで返済猶予を実現する、このことがやはり現場では求められております。実質的に返済猶予に相当する借りかえ制度、これは、一般保証と特別保証の制度の違いを超えての一本化した借りかえ融資制度を開くこととか、それから、元本返済の繰り延べや長期化、低い金利分を中心にした償還など、月々の返済額を減少して、そういう取り組みが必要だと思うんです。
 京都で実現した中小企業経営改善借りかえ融資制度とか、埼玉県その他の自治体の制度に学んで、大分今度も補正でお考えなのは見られるんですが、しかし、本格的に、実際に、実質的に返済猶予を実現していく、このことがないことにはこの不況のトンネルをくぐり抜けられない。トンネルを出たら、これはみんなばたばた死んでおったというのではあきませんから。その立場でどう取り組むかを最後に平沼大臣に質問して、質問を終わりにしたいと思います。
平沼国務大臣 大変そういう意味では、金融機関の中小企業に対する貸し出しが減少しているということは、私どもとしては本当に遺憾だと実は思っております。
 今までも、厳しい中で、御承知のように、条件変更に応じてきてきめ細かく対処してきたつもりでございますけれども、やはり不良債権の処理が加速されますと、なお一層厳しい状況が想定されます。
 そこで、私どもといたしましては、いろいろセーフティーネットも構築をいたしましたけれども、今ちょっと御指摘のように、売上高の減少に直面をしております多くの中小企業にとって、既往の借入金の返済というのが大きな負担になってきていることは事実です。このため、保証つき借入金の借りかえでございますとか、複数の保証つきの借入金の債務の一本化等を促進することによりまして、中小企業の月々の返済負担額を軽減できるように、今ちょっと御指摘になられましたけれども、この補正予算の中で、資金繰り円滑化借りかえ保証制度を一日も早く創設しなければならないと思っております。
 この制度は、吉井先生、よく御承知だと思いますが、特別保証による既往の借り入れのある事業者については、特別保証による債務をまとめて、セーフティーネット保証または一般保証の枠内で借りかえや一本化を行う、こういうことであります。セーフティーネット保証や一般保証による既往の借り入れのある事業者については、これらの枠内で、借りかえ、既往保証つきの借り入れの一本化、また、新規の与信ですね、これは増額保証、こういったことに対応していかなければならないと思っています。
 今、猶予、こういうお話がございました。
 私どもといたしましては、こういう厳しい状況に置かれている中小企業者にとって、今回、この借りかえ制度というものをきめ細かくやらせていただきたい、こういうふうに思っておりまして、そこで対応をさせていただきたいと思っております。
吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
藤井委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 本日、一月の二十七日は、日付で申しますれば、アメリカでも同じくことしの冒頭の国会が始まる、時差がございますので明日になりますが、その中で、ブッシュ大統領が所信表明演説をなさる。必ずやイラク攻撃のことも触れられるであろうという、実は世界にとりましても極めて緊迫した事態の中で、我が国での補正予算の審議が持たれていることと思います。
 たまたま、昨日のNHK報道がございましたが、アメリカのイラク攻撃をめぐってヘッジファンドが暗躍し、その中に日本の高齢者の年金の運用資金まで含まれておると。今、世界は、経済面でも雇用面でもいろいろな動きを、平和という、この非常に大事な一点にかけて動いておる。日本でのここでの論議も、先ほど吉井委員が御質疑でございましたが、トンネルを抜けられないどころか、一たん中東の平和が崩れれば、もう土砂崩れ状態に、日本の経済、金融、もろともになっていくことと思います。
 私は、そうした観点から本来は質疑をいたしたいのですけれども、限られた時間が二十分でございまして、私の目前で命のかかった問題がございますので、きょうは、最後まで御苦労さまですが、坂口厚生労働大臣お一人を質疑の相手と定めさせていただきまして、よろしくお願い申し上げます。
 実は、一月の十四日の日から本日ただいま、この雨の中の、本当に冷たい雨の中、厚生省と障害者の当事者並びに支援団体のにらみ合い状態がずうっと継続しております。明日になりますれば、もう二週間という長い座り込みあるいは実力行動でございます。国会議員、特にこの予算委員会に御参集の皆様も、厚生省前に出向いてごらんになれば、車いすの方あるいは本当に御不自由な方たちが寒空に一体何をなさっているんだろう、厚生省側ではさくにチェーンをかけまして、中に入れないという状態が続いておりまして、何事かとどなた様も思われるかと思います。
 実は、ことしの四月から、障害のある方たちのホームヘルプ事業並びにいろいろな御自身が受けるサービスについての相談事業が、これまでの方式を急激に、昨年暮れから何ら当事者団体あるいは支援団体への説明もなく、厚生労働省が変更したところから始まっております。
 実は、坂口大臣のお隣の財務大臣の塩川大臣にも関係はございますが、きょうは、先ほど申しましたように、坂口大臣お一人がターゲットですので、坂口大臣にお伺いいたします。
 明日、この支援費の担当課長会議というものが開かれる予定ですが、障害のおありになる皆さんは、これすらも実力で阻止しようか。一月の十六日は千人以上の方々がお集まりでございましたけれども。
 坂口大臣にまず冒頭一つ、私の息子は三十歳である、そして、私がもし死んでも、この息子がこの国で、二十四時間介護の障害者のお母さんの言葉ですが、きちんと生きていけることを保障していただけますか、これをまず大臣に聞いてくれ、こう言われましたので、一問目はこれでお願いします。
坂口国務大臣 この障害者の支援費の問題につきましては、平成十二年に法律ができておりまして、そして平成十五年度から導入されるものでございますから、大枠につきましては既に決定をされているものでございます。したがいまして、この予算も決まりまして、その予算の配分をどうするかという問題になってきているわけでございまして、その予算の配分の問題のあり方について意見の相違があったというふうに私は思っております。
 それからもう一つ、いろいろの都道府県あるいは市町村で皆さんの相談に乗っている、そして相談の窓口になっていただいてまいりましたが、この相談事業というものを一般財源化したということについて、これをどうするかという問題が御提起されているというふうに今聞いているわけでございます。
 今までのところ、非常に熱心にこの障害者の問題にお取り組みになりました都道府県と、そして必ずしもそうでなかったところと両極端でございまして、約四五%のところはほとんど、ほとんどと言っては失礼でございますけれども、余り熱心にお取り組みをいただいてこなかった。ただし、一方、東京でありますとか大阪でありますとか、そうしたところにつきましては熱心にお取り組みをいただいてきたということで、非常に大きな差がございました。
 今度、この支援費制度によりまして、全国津々浦々どこにおきましても、同じようにこの障害者の問題に取り組みができるような体制にしたいというふうに考えているわけでございます。東京におみえになりました方が地方に転勤になりましたときに、それで、その地域では何もできないということではいけませんので、東京でありましてもその他のところでありましても、同じようにしていかなければならないというふうに思っております。そういう全国的なことを考えますと、一つの基準をもって予算の配分をしなければならないというのが実情でございます。
 そのときに生じてまいりますのが、一つの基準でもって予算を配分いたしますと、今まで東京ですとかあるいは大阪のように、熱心におやりになっていたところが予算が不足する可能性があるではないかという御指摘でございまして、この辺につきましては、ひとつ経過措置をとらせていただきます。ことし、そして来年といったようなところでは、今までお受けになっていた皆さん方が今までどおりお受けをいただけるような体制にいたしましょう、そしてこの間に、これから先、障害者の皆さん方の中で、どういう支援体制にしていけばそれが全体に可能になるのかということの調査もやらせていただきましょうという御提案を申し上げているところでございまして、大体合意をいただいたというふうにお聞きをいたしておりますし、きょうお昼からには、その調印と申しますか、お互いの意見の最終結論を出すというところに至っているというふうに聞いているところでございます。
阿部委員 今、坂口大臣に御答弁いただきましたケアプランに相当する支援計画を立てる自治体側の問題については、確かに大臣の御答弁にありましたように、本日午後、まあ、この間各自治体から、国のやり方が余りにも唐突であり、自治体の現状あるいは今後の見通しについて何ら確約がないということで、東京都あるいは神奈川県、千葉県、あるいは各市町村からも厚生省に抗議の声が寄せられており、そのことに処せられたという大臣のお言葉でしたが、実は、こうした国の政治と地方の政治ということを考えます際に、今回とられたような一方的な処置はもちろん誤っておりますが、そればかりでなく、障害者問題においては法律的な問題もあるように私は思います。
 高齢者問題は、実は、私どもだれでも年をとりますので、ゴールドプラン、新ゴールドプランなど、プランが策定されるようにきちんと義務として市町村におろされております。しかしながら、私はたまたま、こんなに厚い社会福祉六法というのをひっくり返し、とっくり返し見ましたところが、障害者基本法の中では、障害者基本計画にかかわっては、市町村は努力、行わなくてはならないではなくて、行うべく努力するにとどまっております。
 これは、国の考え方の中で、法律はそれを指し示すものですから、障害者問題について、明らかに自治体の義務を明示するような方向に根本的に検討し直さないと、先ほど厚生労働大臣のおっしゃったような熱心な自治体と、取り組んでいなくてそれでよしとして、もしこれで一般交付税化されてお金が来てもほかに使わないことができる自治体の差が出てまいります。
 私は、補助金行政というのは、多岐にわたる問題はあろうかと思いますが、しかしながら、国が基本的な政策、基本的人権、生存権にかかわる問題でこれだけは到達したいと思ういわば誘導政策でございます。その誘導政策の落ちつく先が法律上でも現実でも全く展望されていないときに、今回厚生労働省のとられた方針は、私はやはり今の現状を見誤っていると思いますが、法律的な点、現状の点、いま一度御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 先ほど申しましたように、サービス、とりわけヘルプサービスにつきましては、これは補助金でお渡しをするわけでありますから、今度は各市町村に補助金としてヘルプサービスのお金は行くわけであります。
 したがいまして、その皆さん方にいわゆるヘルプサービスをやっていただこうというふうになりますと、それは当然のことながら、皆さん方に御相談をしていただくということは必須のこととして起こってくるわけでありますから、その部分につきましては、どうぞひとつ、一般財源化をいたしますけれども、その中でひとつおやりをくださいよと言っていることでございまして、したがって、私は、ヘルプサービスまで一般財源化というのであれば大変大きな問題だというふうに思いますけれども、この一番中心のところは補助金というふうにいたしておりますので、ここは御努力をそれぞれの市町村でおやりをいただけるのではないかというふうに思います。
 また、こうした問題は、自治事務にもなっておりますしいたしますから、各市町村におきまして、熱心にお取り組みをいただけるものというふうに思っております。
 もちろん、だからといって、国が手を引くというわけでは決してございませんで、国は率先してやらなければなりませんけれども、各自治体におきましても、これはどうしても各自治体でおやりをいただかなければ、お一人お一人の状況なんというのは国ではわからないわけでございますので、自治体にひとつお願いをして、お取り組みをいただかざるを得ないことだというふうに思っております。
阿部委員 私の質問予告の仕方も問題がございましたので、今の大臣の御答弁、必ずしも私がお尋ね申し上げたところにお答えではございませんが、恐縮ですが、時間が限られておりますので、多少角度を変えて伺わせていただきます。
 これまでの国の基本的な事業計画の中で、障害のおありの方が在宅でも暮らせるようにということを、ずっと厚生労働省として熱心にやっておられました。しかしながら、この間、支援費への移行ということに際して、実際、どれくらいの障害者が、どれくらいの時間をホームヘルプされているか、どれくらいのニードがあり、どのようにこれから拡大されるべきかということについて、厚生労働省側として、これまでほとんどと言っていいほどデータをお持ちではございません。ここに一番当事者側と厚生省側の意見のそご、今障害をお持ちの方は、例えば各都道府県をならして全部やれるようにした結果、自分の二十四時間ヘルプが、一日四時間になってしまったら、あと二十時間、息もせず、食事もせず、うんこもしっこもせず生きていかなきゃならないかという不安を持っておいでです。
 そこで、何度も恐縮です、時間が限られておりますので、大臣に、この場でぜひお約束していただきたいことがございます。当事者サイドと、彼らはいつもそうですが、大臣に期待し、会い、お話を詰めて、伺い、実情を知ってもらって、よりよい国日本の中で生きたいと願っております。大臣からメモ書きが伝えられたということですが、当事者団体は全く納得せず、先ほども申しました、この雨の中、厚生省前で対峙しております。本当に命にかかわることも生じかねないと思います。坂口大臣には、ぜひとも当事者を交えた会議をお持ちいただくように現場を指導していただきたいと思いますが、御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 障害者の皆さん方、とりわけ重度の障害者の皆さん方に、二十四時間ならば二十四時間の対応ができるようにしなければならないというふうに思っておりまして、それが継続されるように今言っているところでございますが、今回のこの問題は予算の配分の問題でございまして、いわゆる政治的な判断の問題ではなかったわけでございますので、事務方に、ここはきちっと皆さん方とお話し合いをして決着をつけないといけないということを言ってきたわけでございます。
 しかし、先ほど御指摘いただきましたとおり、それでは平素から障害者の皆さん方の団体との間でよく話をしてきたかと言われますと、ここは残念ながら十分になされてこなかった。これは私も率直に認めておりまして、ここはちゃんとしなきゃいけないということも言っているところでございます。
 間もなく一段落するというふうに思いますし、落ちついた状況の中でまた皆さん方とお会いさせていただくことはあるというふうに思っております。
阿部委員 やはり生きていくことの保障をきちんと国が提示されない限り、穏やかな話し合いがなかなか持たれず、不要な対立が積み重なると思いますので、大臣の今の御答弁が現実に生かされますように。
 そして、実はいま一つ、東京の北区に今度社会保険庁が新設する予定であった病院が突如、これも突如でございます、方針変換により四月からは開設されない、二百名以上の就労が既に決まっていた、採用が決まっていた問題が一挙に流されるという状態になりました。
 これをとりましても、今私どもが論議しているのは、本来保証された雇用をやめて、戦争と一緒です、破壊をして、その後どうしようかというようなやり方で、日本の中で、生命にかかわる、医療提供体制にかかわる病院の問題が、今本当に、住民にも説明なく、当事者にも説明なく、厚生省の方針転換がございました。
 この問題についても、坂口厚生労働大臣は、では、私の気持ちを思いはかってくださったのかと思いますが、小児の病院に転用してはいかがであろうかという御発言をしたというふうに新聞では伺っておりますが、今大切なことは、実は、この病院には老人保健施設も併設されており、東京都の計画の中にも地域の医療計画の中にも入っていたものが、国の社会保険庁のさまざまな問題で突如中止されるという事態になっており、本当にどのような形で住民の医療、生命、安心、安全、サービスしていくのかという問題になるかと思いますが、この件についても大臣に御所見を、前向きに、本当に命が支えられるような方向に御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 東京北社会保険病院の問題につきましては、中止をしたというふうに申し上げるよりも、その経営者を変更するということでございまして、できるだけ早くこの後をお引き受けいただきますところを決定させていただきまして、御迷惑をかけないようにしたいと思っております。
 また、そうすることの中で、今まで雇用が約束されておりました皆さんもできる限り雇用していただけるようにしたいというふうに思っております。
藤井委員長 阿部君、時間が来ております。
阿部委員 はい。
 医療は地域を支える産業でもありますので、今の低迷した経済の中で、角度を変えてよろしく御検討くださいますように。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
 この際、森山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 法務省が監督いたします財団法人矯正協会の刑務作業協力事業部が開催いたしました刑務所作業製品展示即売会に関しまして、先日、本委員会で御質問いただきました。
 その際には、事実確認が十分できていなかったことから詳しく答弁できませんで、委員長並びに予算委員会の皆様に対し御迷惑をおかけし、まことに申しわけございませんでした。
 委員長の御指示に従いまして、急遽調査をいたしました結果を御報告申し上げます。
 御指摘の展示即売会は、平成十二年四月二十一日から同月二十六日までの間、福岡県宗像市において、同事業部の主催で開催されました。この展示即売会に関して、地元の家具店経営者から福岡刑務所及び公正取引委員会に対し、同展示即売会で販売されている飾り棚は刑務所で製作されたとは言えないのではないかという訴えがなされたのでございます。
 この飾り棚は、台湾から輸入されたものではありますが、岡山刑務所内の工場で一度分解し、修理、研磨、下地塗装を経て、本漆を何度も重ね塗るということをいたしたものでございまして、その全工程はおよそ一カ月を要したと聞いております。その意味で、受刑者が全く加工にかかわっていない製品が刑務所作業製品として偽って表示されたというものではございません。
 なお、刑務作業の中には工程の一部しか行わないものもございますが、その場合でありましても、受刑者の改善更生によく寄与しておりまして、とりわけ本件の漆塗り作業は、相当な熟練と高度な技術を必要とするものでございまして、刑務作業として十分意味のあるものと考えております。
 しかしながら、さきの展示即売会におきまして、同事業部が岡山刑務所とのみ表示いたしまして、台湾という原産地を表示しなかったことにつきまして、公正取引委員会事務総局九州事務局から、原産国の不当表示に該当するおそれがあるとして、福岡矯正管区あてに口頭による注意の喚起がなされました。
 そこで、矯正局は、事業部に対しましてその改善方を指示いたしまして、事業部は平成十二年六月以降、製品の値札に、刑務作業として行った工程とともに原産国を表示することといたしました。さらに、矯正局は各刑務所に対しまして、その表示に遺漏がないように確認するよう注意いたしました。また、刑務作業の割合が少なかったものについては、同事業部において販売を中止するなどの見直しも行ったと聞いております。
 ところで、刑務作業の割合にはさまざまなものがあるところ、本件のような事案が生じた原因は、同事業部において原産国表示についての正確な知識を欠いていたこと、刑務作業の受注量を安定的に確保する必要があったこと、刑務所作業製品を広く宣伝したいという思いもあったことなどによると聞いております。しかしながら、このようなことは、刑務所作業製品は品質がよいとの消費者の信頼を損ねかねないばかりか、何よりもこれを購入することが受刑者の改善更生に資することになるという国民の温かいお気持ちに背くものであって、まことに申しわけなく思っております。
 ただいま申し上げましたように、今回の件につきましては、同事業部に対し、改善策を指導するとともに、再発防止を指示いたしまして実行されておりますが、このたびの御指摘を受けまして、私自身からも、趣旨が徹底されているか改めて点検するよう、矯正局を通じて同事業部に指示をいたしまして、その指導監督を強化して信頼の回復に努めたいと考えております。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これをもちまして一般的質疑は終了いたしました。
 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、委員長から一言申し上げます。
 当委員会の審議は国民の注視するところであり、活発な論議は結構でありますが、委員会運営に支障を来すような不規則発言は慎んでいただきたいと存じます。特に、内閣にあっては、補正予算を国会に提出し、審議をお願いしているわけでありますから、閣僚席からの不規則発言は厳に慎むようお願いいたします。
 これより締めくくり質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博です。
 冒頭、小泉総理の政治姿勢と業績評価ということで、委員長にお許しをいただいて、資料並びにパネルを使わせていただきたいと思います。
 これが、小泉総理が就任されてからの各種の指標でございます。名目GDP、これはマイナス七・七、そして国債発行額に至っては、あの平成の借金王というやゆをされた小渕総理をもう抜かんばかりの勢い、七十三・一兆、そして完全失業率最悪値、これは五・七、そして株式時価総額の増減、これももう断トツに悪くてマイナス百三十九・三兆、こういう状況であります。
 政治は結果責任でございますから、どんなにいいことを考えていても、それに結果が伴わなければ、やはりその責任を問われなければいけない。
 年末、三百三十三人もの御党の議員さんがお集まりになって、総理打倒という決起集会を開かれたようですが、私は、中には抵抗勢力的な古い政治の状況をまだ残そう、そういう思いもあるかもわからないが、私たちが地域を回れば、この数字が物語るように、まさにもう火の車。小泉さんはいつまでやるんだ、もうやめてもらいたい、こういう大合唱でございますが、この責任をどのように総理は認識をされているんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 経済状況、非常に厳しいものがあるのは承知しておりますし、だからこそ、この経済状況を打開するためにはあらゆる面における改革が必要ではないか、特に金融、税制、規制、歳出、全般にわたる改革が必要ではないかということで取り組んでおります。
 今御提示の指標につきましても、それぞれ厳しいものがあります。また財政規律におきましても、考えながらも国債の増発をせざるを得ないような状況。そういう面を考えても、この状況をどのように打開していくかということについては、私は即効薬はないと思っております。やはりある程度時間が必要ではないか。
 いずれ時が来れば、そういうことに対して私の内閣の今まで行ってきた政策あるいは実績等について国民がどう評価するか、審判を得なきゃならないと思います。そこにおいて最終的には私に対する実績の審判が下されるのではないか。それまでは精いっぱい、この厳しい状況を打開するために、改革なくして成長なし路線を進めていくことしかないと私は思っております。
原口委員 この資料1をごらんになれば、解散・総選挙で信を問うからいいんだとはなかなか言えないんです。歴代の、このバブル崩壊後厳しい中を政権運営をしてきた、経済政策をやってきた、その方々よりもはるかにひどい数値が出ている。
 これは一朝一夕に、例えば行財政の構造改革は、それは答えは出ないかもわからぬ。総理のおっしゃるとおりです。しかし、マクロの経済政策をこれほど誤って、あるいは金融の問題については、後でお話をしますが、全く間違ったやり方をやって、みずほだって一兆円の増資をしなきゃいけないんです。総理は恐らく、大向こうをうならせる、そういう人事をされたのかもわかりませんが、今や、民間大臣を任用して半分ぐらいは頼りにならなかったな、そんな声が総理の周辺から聞こえてくるというのは一体どういうことなんだろうかというふうに思います。
 資料2をごらんになってください。
 今委員長がくしくも注意をされましたが、これは年明けの、この国会冒頭の、議長が各党の国対委員長にあいさつの中で述べられたことであります。「今次の通常国会召集の前、まだ何らの議論も行われていないときに、国会の会期延長や衆議院の解散についての話が出たが、こうした言動は国民の国会への信頼を損なうものであり、残念な事態である。」ここまで言われているわけです。
 この解散・総選挙、あるいは会期延長、これを言っているのはだれですか。私たち野党が言っているんではない。御党の総理・総裁を支える方々がおっしゃっているんですよ。まさに、私は、国会を軽視すれば、そこに生まれてくるものは民主主義の崩壊でしかない。
 私は、今すぐにでもできる政策を総理がなさっているとは思わないんです。例えば、高速道路の建設ラッシュをとめよう、そういうことをおっしゃってみても、三年間同じ予算じゃないですか。その間に建設ラッシュは進んでいる。あるいは、特殊法人改革をするとおっしゃりながら、これはエージェンシーにしたことで国会からチェックが遠くなるんです。実際になさっていることとスローガンとしておっしゃっていることの乖離、これをどう考えていくのか。
 私は国会に来てことしで、上げていただいて七年目でございますが、先輩方にお聞きしても、こんなことを議長がおっしゃる国会というのはない。総理は、国会に対する説明責任や、あるいは誠実な姿勢でもってお答えいただくのか。これは与党、野党関係ないテーマだと思いますので、しっかりと説明責任を果たしていかれるのか。あるいは、もう一ページ目だけの目標、これは、国民の皆さんは改革が必要なことはだれもわかっているんです。その次の政策が整合性を欠いているから、歳出のカットだけをやって、そして歳入の構造改革に踏み込まないからかえって財政赤字はふえる、国民を追いまくるから経済は悪化する。このことについてどのようにお考えなのか、再度お尋ねを申し上げたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今御提示いただきました衆議院議長の話でございますが、私は、通常国会召集の前、会期延長とか衆議院の解散についての問題について、延長しろとか解散するという話は一切しておりません。そういうことの話がいろいろな議員の間で出ていることは承知しています。また、報道等でこれがよく話題になることも承知しておりますが、私自身の口から、まだ通常国会が始まる前に、延長しろとか解散をするとか一切していないということをまず御理解いただきたいと思います。
 また、公共工事の、今渋滞のお話はされましたけれども、この問題につきましても、私は、特殊法人改革等、三十兆円の枠は確かに守ることはできませんでしたけれども、この目標を掲げたがゆえに歳出の見直しもできたのではないか。また、特殊法人改革におきましても、今、廃止、民営化、あるいは独立行政法人等改革が進んでおりますし、すぐには効果が出ないのはわかっておりますが、ようやく大きな改革へ向けて動き出したということは御理解いただけるんではないかと思っております。
原口委員 私が申し上げているのは、今すぐにでもできることを総理はなさっていないということを申し上げているんです。
 エージェンシーの改革、七十七の特殊法人で、先日上田議員が質問をしましたが、年金基金だってどんな運用をしているんですか。ちょうど厚生大臣のときに総理と議論をさせていただきました、あのグリーンピアについて。こんなことがあるから郵政を民営化しなきゃいけないんだとそのときはおっしゃいましたが、年金基金は郵政とは関係ありません。あのときグリーンピアの赤字は千八百億でした、総理が厚生大臣のとき。これを変えるんだということをおっしゃった。しかし、現在六千億になっているんです。
 あるいは医療費の、重複受診、このことについても総理はそのとき厚生大臣として前向きのお話をされました。しかし現に、重複受診をそのときに総理がお約束されたとおりにチェックする仕組み、六年たってもできていないんですよ。
 資料4をごらんになってください。これは二〇〇三年度予算、今補正予算を議論している最中でございますが、医療保険関係、介護保険料引き上げ、税制改正、そして給付減額、地方の交付税を五千億減額した上で、またこれだけの国民負担増をやる。
 総理は任期中消費税を引き上げないというふうにおっしゃっていますが、それは具体的にはいつまでなんでしょうか。私は、それは総理の任期がいつまでかということをお聞きしているんではなくて、一体いつまで、そういう直間のあるいは間接税についての議論を括弧に入れたままでもつだろうか、このことを直接総理のお口から聞きたいと思って伺っているんです。
 資料3をごらんになってください。これは、坂口厚生労働大臣、厚生省が試算をされたものでございます。「すべての費用を年金目的消費税で賄う場合」、どういう国庫負担の割合でどれぐらい要るか試算されているんです。
 そして、十六年から本格的に制度を変えるということですが、改革を促進するのであれば、そんなゆっくりしたことで大丈夫なんでしょうか。午前中、長妻議員の質問に、雇用の問題についても、どれだけ雇用をふやすかという実数値については出てきませんでした。まさに、雇用の現場で何が日本の経済を傷めているか。年金の先行き不安なんです。この不安に対して、改革を加速する、不良債権の処理を加速するというのであれば、どうして社会保障の部門を平成十六年からやって間に合うんでしょうか。今年度中に、あるいはもう早急に検討をすべきではないか。
 あるいは、税の歳入の部門についても、自分の任期中はそういう議論はしてもいいが消費税は上げない、こんなことをおっしゃる。これも一つの考え方かもわからないけれども、その根拠を示していただきたいんです。
小泉内閣総理大臣 根拠といいますが、これは私の考えであります。消費税を上げるということを前提に考える必要はないんじゃないか。
 社会保障、年金、医療、介護等社会保障についての改革というのは必要であります。その際に、どの程度の負担でどの程度の給付が得られるかというのは、今後大きな議論を呼び起こすと思います。その際に、安定した財源を確保していくというのが、これまた大変重要な問題であります。
 安定した財源というのは、果たして消費税だけだろうか。私はそう思っておりません。消費税というのは安定した財源の一つであります。それは否定いたしませんが、それを直ちに上げるということを先に決める必要はないと思う。まず行政のむだを徹底的に改革するのも必要だろう。同時に、国民がどの程度負担に耐えられるだろうか、また、この程度の給付を欲するならばどの程度の負担が必要だろうかというのは、まず消費税を上げる必要があるという前提なしに私は取り組むべきものではないかと思っております。そして、これからの少子高齢化、この流れも見なきゃなりません。お互い、社会保障の負担をどう分かち合うかということから、何も消費税先に引き上げありきという議論はする必要ないんじゃないか。
 当然、消費税の問題は出てきます。所得税もあるし、間接税もあります。そういう面、総合的に見ていくことによって、私は、給付と負担のあり方、安定した財源をどう確保していくかという中で議論すればいいんであって、議論は否定しません。議論の中で消費税を取り上げちゃいかぬということは一つも言っていません。消費税を取り上げるのは結構でありますが、私は、在任中は消費税は引き上げない、そういう中で、それでは安定した財源と給付と負担をどう見直していくべきかということを議論してもいいのではないかということを思っているわけであります。
原口委員 何でこの資料の1を出したかと申しますと、もう総理の在任中だけで国債発行額が小渕総理に、もう小渕総理の名前は出しません、亡くなった方ですから、申しわけない、七十三・一兆円、ふえているんです。どこに安定した財源を求められるんですか。
 私は、消費税を上げること先にありきの議論をすべきだと一言も言っていない。上げなくていいのであれば、その根拠を示してほしい。上げたときのインパクト、私は大きいと思いますから、結果的には上げない方がいいと思う。もっともっとスリムになると思う。しかし、平成二十年で約百三十兆の国債を借りかえなきゃいけない、この国債のマーケットの大変な危機というのも目の前にあるわけです。そのリスクはどう考えるのか。そのリスクはまあまあ何とかなるから私の在任中は上げることは要らないんだ、こういう説明だったらわかります。総理はしっかりとその辺を、これは後で別のところでもお聞きしますが、伺いたい。
 私は、先日、菅委員に対して、三つの公約は、この程度のことは大したことはないという総理の答弁は、やはり伺っておかなきゃいかぬというふうに思います。
 三つの公約、これは、靖国神社十五日の参拝、ペイオフ、三十兆円。靖国の問題は、国家観、歴史観の問題です。そして、ペイオフの話は国際公約です。そして、三十兆円の話は財政規律のシンボルであります。ターゲットです。この三つが、大したことがない、「もっと大きな問題を処理するためには、この程度の約束を守れなかったというのは大したことではない。」というのは、では、何の約束だったら大したことがあるのか。
 私は、国家観、歴史観、十五日に靖国にお参りになる、このことを期待していた人たちも多いと思う。私自身のスタンスはどうか。英霊に鎮魂と平和を祈って、毎朝行っています。ですから、総理が十五日に行かれると言ったときに、それは、これまでの歴史が随分変わる、そういう決断だなというふうに思いました。
 しかし、これを大したことないと。いろいろな立場がありますよ、政教分離の話があったりA級戦犯の話がある。しかし、大した話ではないで済むことではないというふうに思いますが、総理、何か御弁明を党内ではされたようでございますが、つけ足す言葉がございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 確かにあの発言は不適切な発言だったと反省しております。情勢を見きわめながら、大胆かつ柔軟に対応する場合も必要でしょう。そして、改革を進めていくことは、重要性は十分認識しております。そういう意味において、私の基本路線は変わっていないということを言いたかったわけでありまして、あの発言は私は不適切であったと反省しております。
原口委員 さまざまな公約が破られ続け、そしてどれが重点の公約なのか。なぜかというと、さっき総理がおっしゃった選挙で信を問うということは、公約、国民との契約を示して、そしてそれを問うわけでございますから、その契約が、総理は自民党総裁選挙のときに、ある意味では国民との契約として選ばれて、それでお勝ちになったと思います。その契約が大したことがないということであれば、次の総選挙のときに、何をもって国民は選べばいいかということが全くわからなくなるわけでございます。
 総理がおっしゃる大胆かつ柔軟に、大胆にということは大ぶろしきを広げて、そして、柔軟にということは何ら一貫するものもなし、そういう意味かととらえられてもしようがないというふうに思います。
 北朝鮮の問題についてお話をさせていただきたい。
 日朝平壌宣言の法的効力、政治的、外交的位置づけは一体どこにあるのか。本来であれば、あのときに、私たちは拉致議連の中でも随分求めましたが、人権の問題、核の問題、これをないがしろにせずにしっかりと詰めてきていただきたい、このことを申し上げましたが、もう北朝鮮は核開発を認めるなど、既にこの宣言時からこの精神は破られているのではないでしょうか。あるいは、総理は、これは単なる政治的な宣言であって、お互いの国が、リーダーが表明した表明文にすぎない、このように思っていらっしゃるのか。位置づけについてお尋ねを申し上げたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言は、法的拘束力はないといいながら、私は、政治的に重いものだと思っております。昨年九月十七日、これからの日朝関係を正常化していく上において、非常に重い政治的意味を持つものだと思っております。この日朝平壌宣言の精神、原則にのっとって、これからどうやって日朝関係を正常化していくか、これは日本側、北朝鮮側、ともに重い責任を担っていると思っております。
原口委員 そこで伺いますが、この平壌宣言には、何回も指摘をさせていただきましたが、合意という言葉はありませんね。何かを合意した文書ではございませんでしょう。
小泉内閣総理大臣 これは読んでいただければわかりますが、この平壌宣言、お互い合意して、この精神に従い日朝国交正常化交渉を進めていくということでありますので、この宣言に合意したわけであります。
原口委員 どこに合意という言葉がありますか。「双方の基本利益に合致する」というところですか。意見が一致したということですか。普通、外交文書の中に、合意をすれば合意という言葉はあるわけでございまして、それがない限り、日本の新聞には大きく報じられましたが、これは外交文書からいう合意文書とは体をなしてない、そのように思いますが。
小泉内閣総理大臣 これは共通の認識を確認したということでありまして、この精神に従って日朝正常化交渉を進めていくという共通の認識を確認したということであります。
原口委員 だから、合意ではなくて共通の認識なんです。
 そして、例えばミサイル問題についても、私たち少し読んでみると、この資料8、日朝平壌宣言、あらかじめ持ってきましたけれども、ここには「ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく意向」を示したというふうに日本側の文書ではありますが、朝鮮語で読んでみると、ミサイル発射の保留を二〇〇三年以降もさらに延長する意向を示したと。モラトリアムと保留という言葉で違う。発射する権利はあるが控えるという意向を北朝鮮側は示したにすぎないのですね。
 なぜこのモラトリアムという言葉を使ったのか、私には合点がいかない。本来であれば、ここは凍結あるいは中止という言葉になっておかなければいけないのです。
 総理に伺いますが、あるアメリカ政府の高官は、総理が北朝鮮に行かれる前に、核査察の受け入れ、ミサイル開発、輸出、配備、テストの中止、通常兵器の削減、支援食糧の検証、以上の約束を必ず取りつけてくれ、そういう要請もあったというふうに思います。今まさに国際社会が一番懸念をしているのはこのミサイルの開発を中止できるかできないかということでございまして、なぜそういう文章が入らなかったのか、それはお互いの意向を確認したにすぎなかったからなのか、その辺、総理の御答弁をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ミサイルの問題につきましてお互い意向を確認した、ミサイル発射モラトリアム、二〇〇三年以降も継続していくということであるし、今原口議員がお話しされましたアメリカの核の問題、あるいは安全保障上の問題、十分話を聞いてから私は訪朝したわけでありますが、そういうことをよく認識した上での日朝平壌宣言だからこそ、アメリカもこの日朝平壌宣言を支持している、韓国も支持している、ロシアも中国も支持している。私は、十分関係諸国との連携協力を密にしてこの日朝ピョンヤン会談に臨み、この宣言を発したわけでありまして、私は各国の共通の懸念を十分認識して行ったつもりであります。
原口委員 そうすると、蒸し返して申しわけないけれども、中止を強く求められたわけですね。もうそれは猶予ではなくて、ここに書いてある保留、モラトリアム、朝鮮語では保留、こういう言葉ではなくて、しっかり中止してくれということを求められたわけですね。そういう理解でいいですね。
小泉内閣総理大臣 これを正確に読みますと、「この宣言の精神に従い、」「朝鮮民主主義人民共和国側は、」「ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく意向を表明した。」拉致の問題は二度と犯さない、不審船の問題も起こさないという発言もあったわけでありますが、このミサイルの問題につきましてはこういうことであります、正確に読めば。
原口委員 だから、私が伺っているのは、ここはモラトリアム、しばらくの間、権限を持っているけれどもやめますよということを言っているだけで、根本的にそういうことをやめますか、やめてくれということをおっしゃったわけじゃないんでしょう。しばらくの間凍結してくれということを言ったわけでしょう。
小泉内閣総理大臣 中止しろとはっきり言ったかどうかということは、私はどういう表現で言ったか今定かに思い出せませんが、この疑惑というのは多くの国民、国際社会が注目しているんだ、だからミサイル発射は凍結すべきだというふうに発言したと思います。特に、国際法は遵守しなきゃいかぬ、そして、安全保障上の核の問題についても疑惑を払拭するように努力することが必要だという表現をしたと私は思っております。
原口委員 核の問題についても疑惑を払拭するというのであれば、特別核査察の受け入れについても言及しておくべきじゃないんですか。どうして平壌宣言には全く言及がないのか。そして、中止ということについて、中止とモラトリアム、全然違うんですよ。
 日朝国交正常化の交渉の打開に向けた今後の姿勢、私は二十五、二十六、日ロ専門家会議というものに出させていただきましたが、その中で、ロシアは彼らの国なりの調停案を出しています。日本側は、この後イラクの話をしますが、まさに核の問題については最も私たちは関心を払い、そして活動をしてきた国であるにもかかわらず、イニシアチブをこの間とれているとは言えないんじゃないでしょうか。
 今後のこの北東アジアの冷戦の終結。北東アジアはずっと分断と紛争の歴史でした。それをとめるというのは多くの政治家にとっての大きな課題です。どのように状況を打開しようとされるのか、そして何か提案をされるのか。総理が行かれたら、返礼として外交上はあちらからそれに返されるのが普通でございます。そういったことも視野に入れるのか、総理の明快な御答弁をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 何もイニシアチブがとれていないじゃないかといいますが、まず私は、北朝鮮を訪問したこと、金正日氏と会談したこと、これは一つのイニシアチブではないか。何もしていないという御批判は私は当たらないのではないかと思っております。
 そして、今後、いろいろなパイプがあります、また話し合い継続の必要性も私は認識しております。そういう中で、金正日氏が日本を訪問すべきじゃないかということについて、お考えはわかりますが、今の時点で訪問していいものかどうかというのは、やはり政治判断は要するんじゃないでしょうか。将来はそういうことも十分あり得べしという状況はわかりますが、今の時点で、金正日氏を訪日、招待しろという状況には私はないと思っております。
原口委員 私も、言葉を非常に正確に、外交の話ですから選んで申し上げています。私は、訪日をすべきだということを一言も言っていません。むしろ私たちの立場は、国際法と正義に基づいて人権の問題についてもしっかりと明らかにする、毅然とした態度でやるべきだというのが私たちの姿勢ですが、総理はこの間この予算委員会で、太陽政策をとっていきたい、寛容政策を支持していきたいということでございましたから、そうであるんであれば、答礼としてのそういったことも御検討なのかと、あるいは、そういう時期が来るのかということを申し上げたんで、ピョンヤンに行かれたことを、私は一言もそれがだめだったなんということをこれまで言ったことはない。その後、さまざまな平壌宣言に反する行動を北朝鮮がやっているけれども、そこについての日本のメッセージはほとんど国際社会の中に伝わっていないということを申し上げているんです。正確に答弁をいただきたいと思います。
 北朝鮮の問題について安倍官房副長官にお話を伺いたいと思うんですが、官房副長官はピョンヤンにも同席をされて、中止という、核開発の中止という言葉を我が日本政府は一言でも言ったんでしょうか。そのことについて。そして、今後どのように打開をしていこうとしているのか。道筋と日本の姿勢についてお尋ねを申し上げます。
安倍内閣官房副長官 ただいま御質問の核開発につきましては、この平壌宣言にございますように、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」こうあるわけでございまして、これによって北朝鮮側は、これは米朝間の問題だとこう言っておりますが、私どもは、この平壌宣言を根拠に、これはこの平壌宣言の精神に反する、このすべての国際的な合意、ちゃんと遵守するべきだということを主張しているわけでございます。
 私も同席をいたしましたが、総理から、先ほどのミサイルの問題でございますが、総理はノドンの問題にもしっかりと言及をされました。試射だけではなくて、配備についても憂慮していることを金正日総書記に対しておっしゃったわけでございます。当然また、核の問題についての懸念についても総理から御発言がございました。
 また、今後の我々の考え方でございますが、既に総理から、また、川口大臣から答弁を申し上げておりますように、国際的な協調の中において、北朝鮮に、国際社会のルールにのっとって行動することが彼らの利益になるということを粘り強く説得する中で、核のこの問題を懸念を払拭すべく努力をしていきたい、また、そもそも平壌宣言に金正日委員長も署名をしているわけでありますから、この精神に立ち返って正常化交渉を始めるべく我々も呼びかけをしていきたい、こう思っております。
原口委員 やはり、今の答弁からうかがい知るに、中止要求といったことはされていないですね。私は、そこに毅然とした言葉が必要であったということを指摘をします。
 なぜか。資料10をごらんになってください。
 きょうは、イラクの大量破壊兵器の査察結果、もうじき出ると思いますが、まさに、世界の安全保障の枠組みが大きく変わっています。資料10は私がメモでつくったものでございますが、「国連憲章五十一条で想定されている武力攻撃への対応手順」ということは、この一番下、1から4までございます。
 つまり、私たち国連の加盟国が武力攻撃ができる場合というのは、被攻撃国による緊急の反撃としての自衛権の行使、これに限られていました。しかし、これが、脅威の主体が大きく変わりました。非対称性、非国家、そして、どんなに小さくても、そして、どんな国家であろうとも、一つの大きなダメージを与えることができるようになった。そして、一たん攻撃をされてしまえば、反撃不能で、しかも、そういう大量殺りく兵器の拡散をいとわない国というものが現に存在をしている。そして、核の恐怖の均衡が壊れている。私たちは、新しい時代の安全保障をここで確認しておかなければいけません。
 ここに、二〇〇二年の九月に出されたアメリカのいわゆる新ドクトリンがあります。この新ドクトリンの中は、まさにプリエンプティブ・セルフ・ディフェンス、あるいはこれは先制的自衛、予防的自衛という考え方があります。
 二〇〇一年の国連安保理決議一三六八、これはテロ攻撃を国連憲章五十一条に言う武力攻撃に相当するというふうに認めて、そして被攻撃国の自衛権行使を事実上促して、そしてそれにすべてをゆだねた、国連憲章のこれまでの枠組みから大きく変わった、そういう憲章でございました。二〇〇一年の十月七日に始まった米英の自衛権行使は、現在もそういう意味ですると法的に継続している、こういうことを言う方もいます。
 そこで、このアメリカの新ドクトリンについて、総理はどのようにお考えなのか。一つの大きな国が、新しいこういう安全保障のドクトリン、しかも我が国の最大の同盟国であり、そして集団的自衛権をアメリカ側が行使をする、そういう国であります。その国においてこういうドクトリンが採用されたことについて、どのようなスタンスで臨むのか。ここは国会の中で、最高責任者からきっちり聞いておかなければいけないことでございます。
 総理、この先制的自衛の考え方について、我が国はどのようなスタンスでこれに臨むのか、スタンスをお伺いいたします。
小泉内閣総理大臣 これはアメリカが言っているということを正確に、今要点だけ述べたいと思います。
 米国は、生起する脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するとしているわけではなく、国家は先制を侵略のための口実としてはならないということも言っているわけであります。国家は、急迫する攻撃の、危険をもたらす武力に対して、みずからを守るための合法的な行動をとる前に攻撃による被害を甘受せねばならないわけではないことを何世紀にもわたり国際法は認めている。そして、最も危険な脅威の共通の評価を形成するために同盟国と緊密に協調するということも言っているわけであります。
 そういうアメリカの発言に対して、私は、国際法の解釈について、日本として有権的な評価をする立場にはありませんが、アメリカの国家安全保障戦略には、今の脅威に対してどう対応するかということが明記されているのだと思っております。
 いずれにせよ、アメリカは、国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えております。
原口委員 よくわからなかったんですよ。
 これは、先制的自衛というのを今まで言っていた国はイスラエルです。イスラエルはこういうことを言ってきた。しかし、それは国際社会の中の理解を必ずしも得られませんでした。しかし、九月十一日のテロ以降、やはり脅威の主体が変わってきた。そして、一回攻撃されたら、それは反撃不能な状況にもなる。だからこういうドクトリンを明確に、ここで書いてあるのは、今総理がおっしゃったような漠としたところではありませんよ、もう私たちはそういう自衛権を行使できるんだということまで、しっかりうたっているんですよ。
 では、私たちはその国と、共同の同盟国としてどのように対処するのか。集団的自衛権の問題についても、私は、安全保障のフェーズが随分、当時議論されていたこと、あるいはこの国会の中で議論されてきたことと変わっていると思います。今は、まさにデータリンクとミサイルの時代ですから、どこからどこまでが集団的で、どこからどこまでが個別的だというようなことを言うよりも、むしろどのようにその脅威に対応するかという現実の議論が必要になる。
 私は総理に伺いたい。集団的自衛権を持てるけれども行使できないという理由はどこにありますか。そしてアメリカが、この新ドクトリン、しっかり先制的自衛権をうたっている、ここだけは確認をさせていただきたい。これにどういうスタンスで臨むのか。あわせてこの三つの質問をさせていただきます。
小泉内閣総理大臣 まず、集団的自衛権の行使、これについては、憲法九条だと思いますね。
原口委員 憲法九条のどこを読めば集団的自衛権が行使、持っているけれども行使できないんだ、どういう解釈ですか。それは内閣法制局が言っている、そういうことでしょう。
 実際に、今回イージス艦を出した、防衛庁から説明を受けました。説明が非常に私は納得いかなかった。四隻ある自衛艦のうち一隻はドックに入っている、そのうちの一隻をインド洋に出していいのかという質問をしましたら、北東アジアは安全だから大丈夫ですということを言っているんです。これは防衛局長の答えですよ。これでいいんですか、総理。
石破国務大臣 イージス艦につきましての御質問は、それを一隻出したからこの日本の周辺は大丈夫かという御意味の質問であるとすれば、もちろん大丈夫だという意味で防衛局長は御説明をしたものだというふうに理解をいたしております。
原口委員 そういう、人の質問を勝手に変えて答えないでください。そうではなくて、極東アジアは安全なのかということを申し上げたんです。一隻ぐらい出したところでどうかという質問はしていないので、質問を曲解してやられるのは大変迷惑でございます。
 おまけに、あなたがそういう答弁をするから聞きますが、防衛庁は今インド洋で、九月の時点で百四十九億のお金を、国費を使って給油作業に当たっている。作業に当たっている人たちには大変大きな負荷がかかっている、それは大変なことだと思う。しかし、防衛庁の記者ブリーフで、AやBという国はどこへ行くか正確に言わないけれども信頼でもって給油をしている、Cという国は、国名は言いません、国名は私は知っていますが、Cという国はまじめに申告をするからあなたには油を差し上げられませんよね、こんなことを言っている。まあ適当に申告しておけば日本の油は上げられるのにと、こんなブリーフをしているんじゃないですか。
 私は、総理、国会に対して、国益ですからね、野党も与党もない。国民をどう守るか、あるいは国際社会の中にどう貢献するか、テロとどう闘うか。そういうところで、聞けるところも少し聞かずにいる委員もいるかもわからない。しかし、今のようなことを勝手にやられたのでは、まさに文民統制はやれませんよ。総理、もう防衛庁長官は結構ですから、私たちはこのアメリカの新ドクトリンについてどう向き合うのか、ここは議論しなきゃだめなんですよ。これはとても大事なところです。
 先制攻撃という形で、今世界に対しては、アメリカはこれはやめてくれということを言っている。ここにもアメリカの議会の反戦決議、イラク攻撃を、二十六日、きのうはシカゴ市議会が反対したんですかね、ずっと反対だということが出ている。
 そういう中で、この先制的自衛というのは、北の脅威、北朝鮮の脅威、テポドン、ノドン、そういう脅威を直接抱える日本としては避けて通れない議論なんです。どういうスタンスなんですか。
小泉内閣総理大臣 アメリカは、私は国際法上の権利義務に合致して行動をとるものと思っておりますし、先制攻撃という今の議論について、先ほどお話ししましたように、すぐ先制攻撃するということではないということもアメリカも言っているわけであります。
 それは、各国と緊密に協調することは必要だ、話し合いも重要だ、そのオプションとしてそういう最後の手段もあり得るであろうという選択肢は放棄していないと思いますが、私は、アメリカは国際法上の権利と義務に合致して行動すると思っております。
原口委員 先制攻撃とか言っているんじゃなくて、先制的自衛、これについてはストラテジーの真ん真ん中なんです。これは大きな戦略の変更なんです。この変更に伴って、我が国はどうしますか。それを支持しますか。それは、国際協調の中でアメリカが行動する、私はこれは望ましいことだと思います。しかし、きのうアメリカの高官、何と言っていますか。新たな国連決議なくても、この武力攻撃に対して、自分たちアメリカのイラクに対する武力攻撃に対して賛成してくれる、その支持を表明してくれる国が、「ア・ダズン」という表現でしたから十二以上ある、そういうことを言っていますよ。日本はその中の一つなんでしょう。どうですか。
小泉内閣総理大臣 このイラクの問題について、私は、土曜日の夜、ブッシュ大統領から電話がかかってきて電話会談いたしましたけれども、ブッシュ大統領も平和的解決を望んでいるということをはっきり強調、言っておられましたし、日本に対してのその要請ということはありませんでした。平和的解決を望んでいる、武力行使するという決定はしていないということを、はっきりブッシュ大統領は言っておられました。
原口委員 私は、日本のスタンスについて伺っているんです、日本のスタンスについて。
 今、ある意味では、この資料10に書いておりますように、加盟国の政権を武力により除去することの可否が国際場裏で公然と議論されていることを承知しながら安保理が対応している。国連憲章は、加盟国の政権の武力による排除を想定していません。この国連憲章が想定している最大の重いペナルティーは、国連からの排除、これでございます。
 しかし、現にアメリカの議会でもこれほど反戦決議が生まれ、そして国際社会が、イギリスやアメリカの姿勢、あるいはドイツやフランスの姿勢、全然違うんですよ。ちゃんと議論しているんです。どういう法理に基づいて、いや、今アメリカの一部の人たちが言っているように、先制的自衛という立場に立てば、これほどの国連決議の長い間の不遵守、そしてテロとのかかわり、大量兵器の状況いかんによってはアタックやむなし、そういう議論ですね、私はそれにはくみしない。くみしないけれども、その問題について日本はどう考えるのか。
 パレスチナの問題や、あるいは中東のこのイラクの問題についても、何か日本がイニシアチブをとりましたか。いろいろな国際会議に出れば、日本はどんな姿勢なんですかと聞かれる。何て答えるんですか。日本のアメリカに対する姿勢、いや、あくまでアメリカの単独攻撃、それは支持しないんだ、国連決議を求めるんだ、これもスタンスでしょう。いや、そうではない、国連決議なしでアメリカが踏み切っても、それは自分たちは支持をする、これもスタンスでしょう。さっき、ピョンヤンでミサイルの中止をお聞きになったか、聞かなかったかということを伺ったのは、私たちにとっても、このアジアの今の緊張は私たち自身の問題だからなんです。
 総理、仮定の問題には答えられないということを予算委員会の菅議員の質問に対してはお答えになっていますが、私はそれでは済まないと思いますよ。そのことが日本を非常に、国益を損なってしまうんではないかと思いますので、明確な答弁をお願いいたします。
小泉内閣総理大臣 私は、明確な答弁をしているつもりなんです。アメリカに対して、国際協調の重要性、引き続き国際協調を構築するために努力すべきだと。そして、イラクは国連決議、査察に協力する、妨害しない、イラクはこの国連決議どおりに行動すべきだ、それが大前提であると。はっきりしているんです、日本の立場は。
原口委員 国連決議なしの武力攻撃、米国は、もうそれに十二以上、これはパウエル氏のきのうの会見の言葉であって、十二以上支持をしてくれると。日本も支持するんでしょうということを言っているんです。支持しないんですか。アメリカが国連決議なしに今単独で武力攻撃をする、そのことだってオプションの中に入れて議論していますよ。それに対して、日本はどういうスタンスなんですか、支持するんでしょうということを聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 これも、議員の質問に対して、気に食わないからおかしいというのでは、私はおかしいと思います。
 私の立場は、よく聞いてください、イラクがまず国連決議を忠実に履行することが大前提である。そして、これから国連にその査察の報告がなされます。そして、国際社会、アメリカがどういう対応をとるか、それを日本ははっきりと見きわめたい。日本の態度ははっきりしていますよ。それで、日本の態度を、今も表明したように、国際協調体制を構築することが重要だと繰り返しアメリカ・ブッシュ大統領に私も発言しております。これがはっきりしている私の日本の立場であります。それを原口議員が気に食うか気に食わないかは別であります。
原口委員 私が気に食うか気に食わないかを申し上げているんじゃないんです。つまり、各国の議会でも、まさにこの後の戦費の話もある。私は、ではアメリカが決断するまで見守るというのが日本のスタンスだ、そのようにとっていいのですね。
 その間のことは、さまざまな情報の共有を国会と国民との間にやって、そして理解を求めていくんです。今のままだったら、アメリカの予算局は、幾ら幾らかかる、日本にも幾ら幾らお願いする。国会で何の詰まった議論もなしに、見守って頼まれたらまたお金を出す、見守って頼まれたら人を出す、そんなのじゃ私たちは国民に対する説明責任を果たせないから聞いているんです。(発言する者あり)よその国の国会をここで引き合いに出す気はありません。しかし、少なくとも、政府はもっと真剣に国際法上の議論をし、そして自分の国益にとってそれがプラスかマイナスか。
 あの湾岸戦争の三年後にラマダン・オフィスを訪れたのはどういう人たちですか。欧米諸国の死の商人であり、油を欲しいという人たちだったんです。今、日本は原発が半分しか稼働せず、中東のOPEC諸国からの権益も非常に厳しい状況、こういう状況になっていますよ。一緒にイラクに行って、ラマダンが、日本は三番目の敵国だということを言ったという報道がされましたけれども、私たちはそのときはそうは言われなかった。
 態度がはっきりしない国は最も危険な国だと。私はその言葉が正しいとは思わない。一番友好国と言いながら、我が国の同胞を人質にとる、そういうこともやっているわけですよ。
 じゃ、このことについては、総理、見守る、日本はそれまでスタンスも、世界に対して自分はこうだということも言わずに、アメリカの最後までの努力を見守って、それに従っていくということでいいですね。
小泉内閣総理大臣 日本は、まず、イラクが国連の決議を無条件、無制限に受け入れるべきだと。そして、これから査察の報告が行われるわけですから、そういう中で、はっきりしているのは、アメリカに、国際協調体制をとるように引き続き努力せよと。これほどはっきりしているのはないんじゃないですか。各国は違う。これがはっきりしない、しないは、原口議員の判断は御自由ですけれども、これほどはっきりしている立場はないと思うんです、日本は。
原口委員 ということは、逆に言うと、国際協調体制なんだから、中国もロシアも反対していますね、単独攻撃ですよ、そして、この二月はドイツが常任理事国の安保理の議長国ですけれども、これも反対している。そこの理解が得られないで単独攻撃することは反対だということですね。国際協調の中でやるべきだと。その理解がなければ、アメリカが単独で自分たちの議論を押しつける、これは反対だ、総理はそういう姿勢なんですね。
小泉内閣総理大臣 よく、いろいろな質問で、イエスかノーで答えろという質問がありますけれども、イエスかノーではない答えもあるんです。私の答えははっきりしているんです。国際協調をとるようにアメリカは引き続き努力すべし、これははっきりしているんです。それは、あなたがこの答弁は違うと言われても、イエスかノーではない答弁もあるんです。そこを御理解いただきたいと思います。はっきりしているんです。
原口委員 私たちは、やはり、今、日本の国益を考えたときに、イエスかノーかわからない、そういう答弁をしておけば日本の国益に合致だという説明があればそれで結構ですよ。だけれども、私はそうは思わない。それでもって、二月とか三月にまた予算をお願いしますと。なかなか国民の理解は得られないんじゃないですか。
 金融政策について、これも大向こうをうっとうならそうとして、総理、もうやはり民間大臣を、民間人の方を大臣にされたことを半分ぐらい後悔されているんでしょう。違いますか。
 なぜか。中小企業の貸しはがしについても、大変な貸しはがしが起こっている。みずほの一兆円、こんな一兆円の増資をして、これはだれがこういうふうにやらせているのか。本来であれば、不良債権の最終処理、オフバラ化、私たちは賛成です。しかし、オフバランスするからには、預金保険法の百二条なんという、そういうスペードのエースみたいなので何でもやれます、金融危機のおそれがあったら何でもやります、そうじゃなかったはずなんです。
 私たちは、去年、金融再生ファイナルプランというのを出して、そしてこういう金融危機、中小企業に対してお金が行かなくなるような危機、こういう危機があったら政府がしっかりとした処理をできるような法整備をやるべきだと法律案まで出しました。ところが、皆さんがなさったことは、それをけ飛ばして、百二条で何でもできる、そしてそのあげくには、いわゆるさまざまな会計基準の見直しやそういったところで揺らして、ネガティブなアナウンス効果でもって、もうすくみ上がっているじゃないですか。
 私は、今回、三月危機だ何だということを今申し上げる気はありません。しかし、本気でオフバラ化をやろうとするのであれば、しっかりとしたルールを決めて、そして一気にやるべきなんじゃないでしょうか。このみずほの一兆円の増資について、総理、どのようにお考えですか。
小泉内閣総理大臣 みずほの問題については竹中大臣から答弁させますが、私は、前段の質問、民間人の大臣起用、全然後悔していません。信頼しております。
竹中国務大臣 不良債権の処理を進める原則というのは、こうした問題に直面したどこの国でも私は共通していたと思います。資産査定をしっかりと行って、自己資本を充実して、経営のガバナンスをしっかりさせる。そのための、金融再生プログラムにおいてルールは明確につくりました。
 さらに、公的資金の枠組みについても、今の預金保険法百二条以外にさらなるルールが必要かどうかについても、金融審議会のワーキンググループで既に議論を開始しております。
 そのような中で、それぞれの銀行が努力をして、自己資本を充実するためのさまざまな動きが出てきた。世界の専門家が集まるダボス会議でも、この最近のメガバンク等々の動きについては、日本でも新しい動きが出てきたということで、大変高い注目、高い評価をしている声がございました。
原口委員 そういう議論をしている間に、中小企業、優良な中小企業が貸しはがしに遭って、そして日本経済は他国に売られていく。この元凶を、政権ごとかえないともう無理だなと、今の答弁をもって判断をいたしました。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。
 次に、海江田万里君。
海江田委員 民主党の海江田でございます。
 一時間弱の質問でございますので、よろしくお願いを申し上げます。
 まず、小泉総理にお尋ねをいたしますが、まだ総理の施政方針演説、本会議で聞くことができませんが、年頭に当たりまして、今国民の喫緊の課題であります経済の問題、とりわけ総理はこの経済運営の最高責任者ですので、昨年一年を振り返りまして、この経済運営、うまくいったかどうであったか、結論だけじゃなくてよろしゅうございます、思うところをお述べいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 厳しい経済状況の中で、経済指標を見ますと好ましい結果は出ておりませんが、やはり必要な措置だった、必要な改革だったと思っております。これからもこの改革路線を推進していくしか経済再生はあり得ないと思っております。
 基本的にはそういう認識をしておりますが、これから、今までの財政政策、金融政策、税制あるいは規制、総合的な手だてを打っていかないと、この厳しい状況は打開できないのではないかと思っております。
海江田委員 厳しい状況の中で必要な改革を精いっぱいやったということだろうと思うんですが、経済の、例えば、毎年毎年成長率を予測する、それがどの程度達成できたのかとか、それから、株価でありますとか失業率でありますとか、幾つかの指標もございますけれども、私も参考までに、これは政府が発表しました数字でございますが、お手元に今お配りをしてございますが、そういうものを見ながら、厳しかったけれどもよくやったのではないだろうか、あるいは少し上向きの傾向が出てきているとか、そういう思いといいますか、そういうものはいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 厳しい中にも、実質の成長率に関しましてはゼロが〇・六ですか、実質の点においては、中にはこの厳しい状況にめげず頑張っている面もうかがい知れるような面もあるのではないかというふうに感じておりますが、総じて、名目成長率とかあるいは失業率等を見ますと、やはりこれは厳しいな、なかなかうまくいかない点も随分あるなという点を率直に感じております。
海江田委員 今、実質が〇・六と。これは実質は〇・九でありまして、名目がマイナス〇・六ということでございます。実質というのは物価の上昇を引いた後の数字ですが、今みたいなデフレのときは、むしろ実質よりも名目を見た方がいいということは、これは常識でございます。
 政府が昨年十二月十九日に閣議了承しました平成十四年度の我が国経済についての記述は、「年初来の輸出の増加や生産の持ち直しの動き等により、景気に一部持ち直しの動きが見られるものの、年後半にかけて米国経済への先行き懸念や株価低迷の影響等が最終需要の下押し要因となり、年度後半はほぼ横ばいで推移することが見込まれる。」こういう文句がありまして、そして、その後に、「こうした結果、平成十四年度経済全体として見れば、国内総生産の実質成長率は、年度前半の比較的高い成長の寄与もあり、〇・九%程度」、マイナスは、先ほどお話ししたように〇・六%程度「になると見込まれる。」ということでございますから、その意味では、当初見込んでおりました成長がゼロ%であったということが、それが結果的に、まだ年度の途中でございますから予測ではあるんですけれども、プラスの〇・九%ぐらいになるのではないだろうか。
 しかも、そこは、特に後半になってきてから落ち込みがありますけれども、年度の前半で、昨年のちょうど今ごろだとか春先、早い春のころにはかなり回復をしてきて、それで、特に輸出が伸びたわけでございますが、それによってこのGDPを押し上げることになったというのが、これが全般的な認識なわけですね。
 そういう認識でよろしゅうございますか。
竹中国務大臣 マクロ的な実質成長の動きについては、ほぼ海江田委員の御指摘のとおりだというふうに思っております。
 特に、昨年の第二・四半期、第三・四半期、実質成長率で見ますと、年率でそれぞれ四%、三・二%成長した。これは予想以上に輸出が伸びたということにもよるわけでございますけれども、それに対して、今持ち直しの動きは全般に続いているという認識は持っておりますが、その中での踊り場的な状況が年度の後半に出現している、そのような認識でございます。
海江田委員 ここはぜひ、総理がそういう認識を持っていただきたいわけですね。やはり総理が本当に、先ほども冒頭にお話ししましたけれども、経済運営の最高責任者、言うまでもなく、経済財政諮問会議の議長でもあるわけでございますから、やはり総理がしっかりとした認識がありませんと、総理の発する公約がそれこそとんでもない影響を与えることにもなりかねませんから、まず総理が、やはりそういうマクロで今の経済の状況はこうなっているというのを見ていただきたいわけです。
 そこでひとつ、これも総理にお尋ねでございますが、今、竹中さんからもお話がありました、私も紹介しましたように、その意味では、実質になると、完全にこれはプラスの〇・九になっている。名目も大変大事でございますが、この名目はマイナス〇・六でございますが、これは当初の、予算をつくったときの見通しは〇・九ですから、そこが、マイナスの〇・九がマイナスの〇・六になりそうなわけですから、これもよくなっているわけですよね。
 そうなりますと、総理、素朴な疑問としまして、当初の見通しよりも経済はやや好転をしている。にもかかわらず、何で補正予算を今になってお出しになるんですか、これは。その点、わかりやすくお答えください。これは総理に。――総理にお願いしますよ。
 これはぜひ委員長からも、お願いをしたいわけでございますが、きょうも一日この予算委員会があったわけでございますが、前半には塩川財務大臣はお出になっておりましたけれども、小泉総理はお出になっていないということで、きょうもわずか、本当に残された数時間しかお出にならないということもありますし、それから、やはり総理の発言というのは重いわけですから、総理がお答えくださいよ。お願いをいたします。そのように仕切ってください。
小泉内閣総理大臣 詳しくは竹中大臣が答弁すると思いますが、昨年来から、不良債権処理を加速するという方針を私は打ち出しております。そういう際には、やはりその不良債権処理の加速に伴って副作用が出てくるだろう。そういう点を和らげる意味において補正が必要じゃないかという点で、補正予算を編成したわけであります。
海江田委員 今の、不良債権の処理を加速化させるということがお話あって、そのために竹中さんもわざわざ任命をしたということ。それで事実、竹中さんが任命されて、株価も下がっておりますし、その必要性というのは、その意味では、厳しく感じるというのはそれでいいだろうと思うんです。
 あともう一つ。どうですか、税収の見込みが大幅に減ったということも、これもまた、今この時点で補正予算を組まなきゃならない、もうどうしようもならなくなった大きな理由じゃないですか。どうですか、これも総理に。
小泉内閣総理大臣 そのとおりであります。
海江田委員 そこで、税収の見込みが減ったということですが、これも総理にお尋ねしますが、いいですか、総理、当初の経済の成長率、名目の伸びだとか実質の伸びだとか、そういうものをつくりまして、そして見通しを年末につくるわけですよね。その年末の見通しに基づいて、これは歳入の見積もり、税収がどれくらい入ってくるだろう、成長率がゼロ%だからこれくらい入ってくるだろうと。あるいは――塩川大臣、今私がお話をしておるわけですから、それもやはり不規則発言ですからね、これは。いいですか、そうやって年末にそういう経済の見通しを立てて、その見通しに基づいて税収の見積もりをやるわけですよ。
 今ここまで来て、もうあと残り数カ月になって、ことしの一年の経済を振り返ってみたら、その当初深刻に見ていた見積もりよりも、深刻に見ていた見通しよりもやはり少しよくなっているよというのが現状ですね、先ほどお認めいただいたように。そうしたら、その深刻な事態が予想される中で見積もった税収が、経済が幾らか回復してきたのに、何でそこで税収の不足が出るんですか、これは。
塩川国務大臣 これは、かねてから御説明申し上げたと思うのでございますが、とにかく一つは、二〇〇一年度におきまして税収が大幅に狂ったということがございますが、それは一つは、九・一一事件がございまして、あれによりますところの、米国を中心とした世界的な大幅な減退がございました。あの当時で、アメリカですら九・六%の下方修正をせざるを得なくなってきたということがございました。
 それが押してまいりまして、一兆七千億円の税収不足というものが発覚いたしました。そのときは、もう我が方にいたしましては、第一次補正予算を組んだ後で出てきたことでございました。そういうことのベースが、非常に下方修正せざるを得なかった。そこへもってきて、昨年の税収の中で押してまいりましたことが、十四年度において五千億円の減収が法人税を中心として起こってまいりました。そうすると、一兆七千億円プラス五千億円で二兆三千億円になりますが、そのほかに消費税の減収が若干、二千億円近くございまして、合計いたしまして二兆五千億円。
 それを、おっしゃるように後に持っていって出してもいいじゃないかということでございますけれども、年度中に速やかにこれを明らかにすることによって財政の透明化を図り、そして財政の健全化をするためには早く措置をした方がいいということでございましたので、今回の補正にこれを計上するということにした次第であります。
海江田委員 それは全くわからないです、今の説明を聞いても。
 総理、総理に先ほどお話をしましたけれども、経済の見通しを立てて、名目だというのはもう先ほどから言っておるとおりでございますが、名目でいけばこのデフレの時期は、平成十四年でいきますと、マイナス〇・九のはずが〇・六になったと。〇・九のはずが〇・六。だから、少し上向いたわけですよ。
 そういう厳しい予測を立てて、じゃ、この成長率でいけば、成長率だけじゃありませんよ、雇用の、労働者がどれくらい、失業率がどのくらいになるとか、いろいろな数字を前提にしまして、そして立てた税収の見込みが、それが実際経済を運営してみたら、さっきもお話ありました、まあ何とかとにもかくにも、名目でいっても〇・六だし、実質でいえばプラスに浮かび上がったよ、うまくいったよ、これは外需が起因してだけれども。ということになったら、厳しく見積もったときの税収が、むしろそこでもってよくなったのにさらに落ち込むというのはどういうことなんですかということを聞いているんですよ。だから、それを教えてくださいよ。
小泉内閣総理大臣 それは、専門的なことは私よくわかりませんが、やはり見通しが狂ったのであって、より専門的なことは担当大臣から聞いていただきたいと思っております。
竹中国務大臣 税収見積もりは財務省で行っているわけでございますけれども、海江田委員まさに御指摘のように、経済の想定があって、それに見合った税収の想定がある。経済そのものは実質も名目も少し高かった、しかし、税収は残念ながら非常に見込みが違ってしまった、その原因はどこにあるかというやや技術的なお尋ねなわけですけれども、そこは、繰り返しますが、経済の想定が誤ったのではなくて、税収の見積もりが違った理由は、先ほど財務大臣がまさにおっしゃいましたように、十四年度の税収見積もりというのは、主税局の方で行っております十三年度の実績見込みを足元として行うわけです。その足元が低かった。その十三年度の足元が低かった理由としては、九月十一日のテロ等々さまざまな要因がそこにある、まさに財務大臣がおっしゃったとおりであると思います。
海江田委員 そこまで行く前に、そこはこれから聞こうと思っているんですが、いいですか、総理に、これはやはり、まず少なくとも十四年度の税収の見積もりが間違っていたということは言えるわけでしょう、結果的には。それはお認めになるでしょう。どうです、総理の口から。
小泉内閣総理大臣 結果的に見通しどおりいかなかったということであります。
海江田委員 だから、その税収の十四年度の見積もりが何で間違ったのかということを考えていかなきゃいけないんですが、やはり一つ影響を与えたのは、総理が総理大臣になられて、五月の段階、早々と、三十兆枠を維持するよという、まあ吹けば飛ぶような公約だったのかもしれませんけれども、その公約を総理が早々と打ち出しをしたということもやはり私はあるんじゃないだろうかというふうに考えているんです。総理がこの公約をしました理由につきまして、総理自身は、実はその前の年の、これはまさに先ほどからお話をしております二〇〇一年の国債発行額ですね、十三年度の国債の発行額が二十八兆円だったから、この二十八兆円に対して三十兆はプラス二兆円があるから、それだから二兆円枠がある、三十兆円はそんなきつい枠ではない、こういうふうにお考えになったということですが、それは今でもそのとおりだと思いますか。
小泉内閣総理大臣 そういう点もあります。
 それと同時に、当時は民主党も三十兆円枠を法律で縛れと言っておられましたね、国債発行。私は、法律で縛るというのは、経済は生き物だから法律で縛る必要はない、やはり経済は生き物、状況を見ながら大胆かつ柔軟な対応も必要ではないかということも言っていたはずであります。そういう点について、私が三十兆円を発表したから税収が低いと言うんだったらば、それに大きな原因があるんだったら、じゃ、法律で縛れと言った民主党の提案はどうだったのかなと私は思いますね。
海江田委員 ここは私どもが質問する場ですから、私どもがそっちへ行けば幾らでもお答えをしますが……(発言する者あり)いいですか、ちょっと待ってください。いいですか。
 総理、もう一回聞きますが、少なくとも、二〇〇一年度、十三年度の国債の発行額が二十八兆円程度だった、これが大変大きく頭の中にあった。もう一つ、民主党がそういうことを言ったからというので、民主党の意見を今おっしゃいましたけれども、それはどうでもいい話で……(発言する者あり)ただですね、いいですか、いいですか。ただ、これ総理、十三年度の国債発行額が少なくとも当初予算の中で二十八兆円で済んだということは、十三年度のは全然参考にならないんですよ。これはもうおわかりになっているだろうと思いますけれども、これはその前の十二年度もそうですが、十二年度、十三年度というのは、総理が一番お得意の郵貯の定額貯金の大量満期が来て、そして所得税の源泉徴収の部分が、利子所得の源泉徴収の分が二兆円膨らんでいるんですよ。
 だから、その意味でいうと、十二年、十三年というのは、二兆円もう既にそういう、そこでもって総理が郵貯の批判を始めたわけですけれども、今から十何年前の。あのお金があって、しかもそれが十四年にはなくなるよなんというような話は、これはもう総理自身が一番よく知っていたはずじゃないですか。
 だから、その意味からいうと、十三年度の国債の発行額というのは、まさにその二兆円税収のいわば膨らみがあった上で初めて出てきた数字なわけですから、これを根拠にして、その次の十四年度にもうあと二兆円枠があるからということを言うのは、それは残念ながら、これはどこでそのことを忘れたのかわかりませんけれども、まずそこのところに間違いがあったということはお認めになりませんか、どうですか。
小泉内閣総理大臣 間違いとは言えませんが、そのことは知っていました。だから、財務省も枠を、その三十兆円枠はきついということを言っていたのも、その理由があったから、私知っています。金利が高いときの定額貯金で、ないんだから、三十兆円枠は非常にきついですよということは聞いていましたし。しかし、そこでも、やはりこれほどの歳出改革が求められているときに、どんどん国債発行してもいいという状況じゃないだろう、むしろ、ある程度きつい枠をはめた方が歳出の見直しはできるんじゃないかということを承知でやったわけです。
海江田委員 その意味では、総理は確信犯なわけですから、本当にその意味でいうと、はっきり申し上げまして、さっきの発言というのは、これは経済財政諮問会議での発言、去年の十月七日の経済財政諮問会議ですけれども、この時点で当然その二兆円のへっこみがあるということがわかっていたということであれば、その意味では、二十八兆にプラス二兆円という発想じゃなくて、もう二十八兆だ、ほとんど同じだというような認識を持っておられたわけですよね、これは少なくともその時点で。予算を、つまり総理になられて、そしてこの三十兆の話をし出したときから、これはどうなろうと。そうでしょう。そういう大変厳しい認識を持っておって、しかも二兆円なくなるんだと。二兆円なくなることもわかった上で、さらにこれは三十兆ということだから、もうそこは、二兆円まだまだのり代があるんじゃなくて、もうのり代はないよというような意識で言われたわけでしょう。そうでしょう。
小泉内閣総理大臣 しかし、これだけ大量に国債を発行している段階で、一つの目標を立てなきゃいかぬな、枠をはめないと歳出の見直しはできないなということで、あえて、楽じゃないけれども、三十兆円枠というのは決してできない目標でもないと思っておりました。
 事実、だからこそ特殊法人に対する一兆円の削減もできたと思っていますし、かなりの反対がありましたけれども、公共事業の削減もできた。歳出に対して、私、厳しい見直しができたのも、そういう大きな一つの目標といいますか、枠があったからこそ歳出の見直しも進んだと思っております。
海江田委員 いや、それは結果的にできなかったじゃないですか、今度の補正でもって。そうでしょう、これは結果として。予算編成のところではできたかもしれないけれども、結果的にできなかったでしょう。それを貫かれたのならいいですよ、今おっしゃったとおりで。結果的にできなかったんだから、そんな威張ったことじゃないんじゃないですか。だから、さっきの公約の話でも、いや、だから申しわけなかったという話なんじゃないんですか。どうですか、それは。
小泉内閣総理大臣 しかし、目標がなかったら、果たしてこれほど厳しい歳出の見直しができたかどうかということで、それは海江田委員と見解は違います。
 それでは、民主党が何で三十兆円枠を法律で縛れと言ったのかということになってまいりますから、私は、必ずしも、三十兆円の枠を設定したから急に税収が落ちたとも思っていませんし、それは経済の状況は非常に変わります、世界的な経済情勢の変化もあるでしょう。しかし、この枠というのはかなり有効な面もあったと思っております。
海江田委員 もう一つ、この三十兆円の枠を設けたことに、さっき財務省は反対だと言いましたけれども、先ほど来のお話でありますね、やはり税収の見積もりが大変当初のところで甘くなっているんです、はっきり言いまして。
 二枚目の資料がございますけれども、「所得税納税人員の推移」というところで、例えば平成十四年の当初の給与所得者の見積もりを、これは四千三百二十一万人というような書き方にしている。これは平成十三年の実績が四千三百二十三万人ということで、たった二万人しか減らしていないわけですよ。
 ここの時点では、いいですか、先ほどの一番初めの表にもございますけれども、失業率が高くなるとかそれから成長率が落ちるとか、そういうことも書いていますし、それからあと申告所得者、これは営業、自営業の方だとか、農業だとか、これは平成十三年度の実績が七百八万人なのを七百二十八万人と書いてみたりとか、非常に大きく納税人員をまず見ているということ。
 それから、納税人員だけではありませんで、これはそこに表はお示しをしてございませんけれども、所得税の一人当たりの課税見込み額も、平成十三年度の実績でもって、これは当初見通しでもそうだったんですけれども、二十八万円だったのを二十八万二千円なんかにしているんですよ。今回どうしたかといったら、一万円下げて二十七万一千円とか、これは申しわけないけれども、どう見たってこの三十兆という国債の発行枠に規制されますから、大変税収の見積もりを高く見積もっているんですよ。
 さっき大臣がおっしゃったような話とはまた別に、現実的にそうやって試算をして、計算の積み上げをやっていかなきゃこれは税収にならないわけですから、そういう部分もあるんですよ。それはどういうふうに説明されますか。
塩川国務大臣 それは、やはり統計をずっと追って、一部においては所得増の部分もあったということは事実でございますしいたしますので、平均点をとって、やはり統計には我々は素直に順応してきたというところでございまして、作為的にそれをもって予算の編成の資料にしたということは絶対ございません。
海江田委員 では、説明してくださいよ。一人当たりの課税見込み額が、いいですか、平成十三年度の見通しが二十八万円で、どうして平成十四年度の見通しで二十八万二千円と二千円も上げているんですか、これは。参考人いないけれども、参考人から聞いて、それで説明してくださいよ。そういう資料があるんですか、本当に。
藤井委員長 主計局長。
海江田委員 いや、主計局長じゃだめだから、大臣に言って。ちょっと時間をとめて、今教えてくださいよ。
塩川国務大臣 それを調べて、すぐにまた返事いたします。
海江田委員 今教えてくださいよ、ちょっととめて。今教えてくださいよ。
藤井委員長 いないんだよ、参考人は今いないから。
海江田委員 では、全部聞きますよ。いいですか、お尋ねをしますけれども、それでしたら、さっきもちょっとお尋ねをしましたけれども、幾つか質問がございますから。
 そんなことは聞きたくなかったんですけれども、これは表に出ておりますけれども、申告所得者の数が、合計で、平成十三年で実績で七百八万人なんですよ。見込みでは七百二十九万人でしたけれども、どうしてこれが平成十四年度の当初予算の予測で一挙に二十万人ふえて七百二十八万人になったのかということも教えていただきたいですし、それから、給与所得者と申告所得者、合計で、平成十三年度は実績で五千三十一万人、見込みベースでは五千九十九万人ですけれども、これが十四年では五千四十九万人になって、納税人員が一挙に約二十万人もふえる。実際にはそういうことにならなかったから減らしたわけですけれども、幾らもあるわけですよ、そういう話は。
 これは明らかに、どう見たって、まず人員をふやして、そして今度は、さっきも言いましたけれども、それの一人当たりの課税の見込み額をふやして、それによって結果的に税収見通しをふやしているんじゃないですか。だから、そこを、どうしてそういうふうになっているのかということを、はっきりこれは教えてくださいよ。あれだって出しているわけでしょう、税収の見込みが違って減収になった理由というのを聞かせてくれということを通告してあるわけじゃないですか。それを聞かせてくださいよ、当然のことは。通告してないんならいいですよ、時間、別なときでも。では、それは聞いてくださいよ。今答えてくださいよ。
塩川国務大臣 この詳しい、七百八万人から七百二十八万人になって二十万人ふえた、この二十万人は、つまり予算上の都合で水増ししたんだろうと、ここを答弁ですれば満足されると思うけれども……(海江田委員「いや、そんなことはないです、本当のことを言えばいいんです」と呼ぶ)私たちはわからないです、そこは。
 そうは言えないのでございまして、この二十万人ふえたのは、やはり就業人員がふえたということが一つ大きい要素であった。つまり、その他のところで八万人ふえまして、そして、営業者自体が約十六万人ふえておる。こういう状態でございますので、この中身の状態がどういうところでどうしてふえたかという実態については、今速やかにお答えすることはできませんが、この実態について調査いたしまして、返事いたします。
海江田委員 いや、私が言いたいのは、さっき大臣がおっしゃったのは、十三年度はかなり甘く見過ぎたんだということをおっしゃっていたでしょう。それが十三年度、実際に年度に入って経済運営をやっていくと、そういうわけにはいかずになって、かなり落ち込みがあった。これは事実でしょう、十三年度については。そういう反省があるわけでしょう。
 そういう反省があれば当然のことですけれども、この十四年度については、しかも、さっきもお話をしましたけれども、成長率の見通しも悪いですし、雇用の状況も悪いですし、それから倒産なんかもふえていますから、どう考えたって、ただで考えたって十四年度はかなりシビアにしなければいけない。しかも、さっき大臣がお話をしたように、その十三年度の見通しが甘かったという反省があるんなら、なおのこと、本当はここでもってシビアなやはり税収の見積もりを出しておって、その税収が、シビアな見積もりを出したけれども、結果的に経済運営をしてみたら一年うまくいったということになれば、何もこんな歳入欠陥なんか出るはずがないんですよ、その意味では。そうでしょう、これは。
 それを、二兆四千億も新規に、歳入欠陥があるといって国債を出したりして、結果的に、さっき言った財政規律の話だって役立たないじゃないですか。達成できないじゃないですか。そういうことを言っているんですよ。
塩川国務大臣 まず、お答えを一つ一ついたしますと、一つは、この二十万人ふえた中身は何だということ、これは調査して御返答いたします、私ども、これを精査して、掌握しておりませんので。
 そこへもってきて、確かに、景気が悪くなってきておるのに収入が税収を大きく見積もってきたじゃないかという、このことでございますけれども、それは先ほど来申しておりますように、十二年度から十三年度にかけましてITの不況等がございまして、経済の地合いが非常に悪くなってきておった。しかし、それは実態としてどのぐらい悪いかということは、予測がなかなかつかなかった。けれども、米国を初めとして世界的に経済が非常に降下状態にあったということは、我々が予想した以上に深刻に企業の減収につながってきたということが一つ。そこへ持ってきて、さらに米国におきますところのテロ事件があった。こういうことが重なりまして、一兆七千億円という、我々ちょっと想像しなかった額以上の減収が出てきたということでございます。
 先ほど来、郵貯の減額を、これを見込みの中に入れておったのではないかということでございますけれども、そうではなくして、郵貯が毎年、平成十一年度をピークにして減っていくということは我々も大体想定して予定しておりました。でございますから、その点についての余り大きい思惑というものはなかったということは事実でございます。
 そして、五千億円の法人税のいわゆる還付というものも、これも、十二年度から十三年度にかけましての企業の業績悪化というものが必然的にそういう状態になってきたので、これも我々はいわば予測外の減収であったということでございます。
海江田委員 私は、郵貯のあれを見込んでいなかったんだろうなんて言っていないんですよ。ただ、総理がそういうことも知った上で三十兆円というのを出すことの、あえて言えば無謀さといいますか、それはちょっと考えてみなきゃいけませんよと。そういうやはり無謀さが本当に、結果的にそれが守ることができない、守ろうとすれば日本の経済めちゃくちゃになりますから。そういうことになるので、そこのところにむしろ一番の問題があるので、そういうようなやはり無謀な考え方といいますか、それはもうおやめになった方がいいですよということなわけでございますよ、これははっきり申し上げまして。
 それからもう一つは、後でこれはちゃんと細かくデータを出してもらいますけれども、幾らだってこれは操作できちゃうわけですよ、数字を一%変えれば。この補正のときの予算の説明の中でも、これまでの対前年度減少見込み額を二%にするのを、今度三%にするとか、一%動かすとか、こういうことによって幾らでもできるわけですから、結果的にどう考えたっておかしいのは、先ほども冒頭にお話をしましたけれども、当初の見込みよりもうまくいって、それで何で税収がそんなに不足をするんだ、二兆五千億も何で不足をするんだということに対する答えがどこからも出てこないじゃないですか。それがわかれば、細かなことなんて聞きませんよ。それがわかればいいですよ。それがわからなければ、話が進められないじゃないですか。
塩川国務大臣 景気が少し上回ってきた、マイナスの〇・九から〇・二になって上回ってきたということは、それは企業の実勢がよくなってきたということでございまして、企業はもう膨大な赤字を抱えておるものでございますから、少々の利益が出ても法人税にそれがなかなか敏感に反応してこなかったということがございます。でございますから、景気は少しよくなってきた、これはやはり小泉内閣が全員努力してきた結果、少しよくなってきたということでございますので、その結果がまだ税の上には的確にあらわれてこなかった、これからどんどん出てくると思いますので、期待しております。
海江田委員 小泉内閣がよくやっているなんということは全くないので、むしろ、企業が一生懸命よくなろうとする努力を小泉内閣は足を引っ張っているようなものなわけです。
 大変な大きな認識違いで、先ほども若干出ましたけれども、総理は、金融機関の貸し出し態度について、経済財政諮問会議で、これは国会で野党が貸してくれないと主張しているが、そんなことはない、よいところには貸しているということだった、野党やマスコミの言う貸しはがしなどに乗せられてはいけないと、まあこれは忠告された、ある金融機関の方から忠告をされたという伝聞の形で伝えておりますけれども、本当にこんな考え方をしているんですか。総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 私の発言、速記録にとってありますから、正確に今発言させていただきます。
 まず、奥田議員が、年末のテレビ番組で、優秀な技術を持った中小企業の例が数回紹介されていた、そのときに幾度となく言っていたのは、それだけの技術を持っておりながら全然金を貸してくれないという話だという話の中で、私が話した言葉が一部の新聞で報道されたんだと思います。
 そこで、私は、一部しか報道していないのではないかと。
 ある信用金庫から聞いた話では、むしろ今は、都市銀行がリストラで店舗を閉鎖して、よい客まで逃がしていると。それで、都市銀行ではなく、逆に中小金融機関に来ている。資金は十分あると言っていた。国会で野党が貸してくれないと主張しているが、この中小金庫の人ですよ、そんなことはなく、よいところにはたっぷり貸しているということだった。野党やマスコミの言う貸しはがしなどに乗せられてはいけないと忠告された。現実は、むしろ、都市銀行がこんな上客を逃がしてよいのかと心配するぐらい、店舗閉鎖でよい客を逃がしていると言っている。中小金融機関では、人対人でつながりのあるところには十分貸すよう努力しているので、悪いところばかり見てはいけないと言われた。
 これが私の発言であります。
 というのは、趣旨はこれでわかると思います。むしろ、中小金融機関の中には、十分貸すべきところには貸している。逆に、都市銀行の中で、本来もっと丁寧に貸すべきところに貸していない。都市銀行の努力が足りないということを言っているわけであります。
 私は、そういう点については、都市銀行の頭取の皆さんの前にも、これだけ政府金融機関が重用されるのは、むしろ都市銀行の努力が足りないのではないか。宅配便業者は逆に違う。役所がやらないところを宅配便業者はやって、国民にサービスを提供している。ところが、金融機関の方は、本来金融機関がやるべきことをやらないから政府が出ていくんだ。その辺をもっと反省すべきだということを私は言っているんです。
海江田委員 全体の流れがあるので、これは。今、奥田さんが発言をしたということで、それを受けてという話ですけれども。
 今、これはどう考えたって、全体的な貸しはがしだとか貸し渋りというのは、もう本当に蔓延していますよ。何も故意に、本当に小さな出来事をマスコミや野党が追及をしているとかいう話じゃなくて、これはちまたにあふれていますよ。そのちまたにあふれている話をこちらはお話をしているんだし、マスコミが話をしているんだし。そういうのがたくさんある中で、わざわざこういう、この信用金庫の方からの話ということをこの中で。
 奥田さんがここで言っているのは、ここは、ちまたは本当に困っているんだよと。この前段の話で、困っているときに、ここで話していることと、ここでというのはこの経済財政諮問会議ですけれども、ここは随分世間と離れたことを議論しているんじゃないですかと言って問題提起をしたわけでしょう、奥田さんが。そうでしょう、これは。
 そうしたら、それに対して総理が何を言ったかというと、いや、そうは言うけれども、そうじゃないんだと。今、総理からお話があったように、これは大銀行というのは、本当は貸せばいいのに、それが店舗がいなくなって貸さないんだよ、それから中小企業も、貸し出しをしたがっているところはたくさんあるんだよと言って、奥田さんの発言に対して、それにいわば違う事実もあるよということを言って、しかも、悪いところばかり見ちゃいけないと言われたと。
 この悪いところばかり見てはいけないというのはその信用金庫の方の発言でしょうけれども、総理は全くいつもそれを言っているでしょう。きのうだって言ったでしょう。きのうじゃない、二十三日もお話ししましたよね。悪いところばかり見ちゃいけない、悪いところばかり見ちゃいけないということを言ったわけで、それは総理の考え方がそういう意味でいうと明らかに、今のこの中小企業に対する大銀行であるとかあるいは中小金融機関の貸し出し態度に対して、これはやはり甚だ甘い、認識が甘い、そういうふうに断じざるを得ませんよ。そうじゃないんですか。
 奥田さんが言ったことに対して、私も全くそのとおりだと思うということをお答えになったんですか。そうじゃないと言ったんじゃないですか。それから、その後竹中さんだっていろいろ言っている、引用すると長くなるけれども、バランスを見て考えなきゃいかぬとかいうことを言っているけれども、総理はどうなんですか。そうでしょう、そういう流れの中で言ったんでしょう。自分の都合のいいように解釈しちゃいけませんよ。
小泉内閣総理大臣 悪いところばかり見てはいけない、常にいい面も悪い面も両方あるということを考えなきゃいかぬということを述べたまでであります。
海江田委員 それは前から言っている話ですが、やはり今本当に、この委員会だってそうですけれども、例えば補正予算の規模だとか、あるいは補正予算の中身だとか、そういうところを議論するときに、やはり経済運営の一番の総帥である総理の考え方、総理の認識というものが一体どういうことなのかということには、これは本当に大きく国の方向が変わってくるわけですよ。それによって生き死にする中小企業だってたくさんあるわけですよ。
 だから、そういう意味では、悪いところもあればいいところもあるから、いいところを見なきゃいけない、そういう楽観主義では、やはり一種の危機管理の状況ですから、あの佐々さんも言っていましたけれども大局的には楽観主義でいいんですよ、だけれども、一つ一つの問題を解決していくためにはきちっと見て、それこそ悲観主義で厳しいところは厳しく見なければ、結局、楽観主義に立てば何にもやらないでいいということになっちゃうじゃないですか、いいところもあるんだからということで。政治が仕事を放棄することになるわけでしょう。
 それはやはり、かなり根本的に考え直しをしていただかないと、せっかく公約のことでも反省をされたようですから、全体のことを考え直しをしてもらわなきゃ困りますよ。今でも相変わらず、いいところもあるんだ、いいところもあるんだということを言ったまま、それだから何にもしないでいいということになるんですか、どうなんですか。根本的に考え直ししてくださいよ。
小泉内閣総理大臣 物事両面を見なきゃいけないということを言っているんです。悪いところばかり見るというのもよくないし、よいところばかり見るというのもよくない。悪いところもあればいいところもある。やはり、悲観すべき点は希望を持って、どうやって打開していくか。そういう面において、悪いところばかり見ないで、こういう厳しい中でも努力している企業もある、努力している人もある、そういうやはり両面を見る必要があるんじゃないでしょうか。
海江田委員 まあこれは、総理はあれですな、もう直らないですね、本当に。何というんですか、これはもう、本当に。
 ただ、これはかなり、本当に今の日本のこれからの方向性ということを考えていく上では、やはりこういう方が経済のかじ取りをやっているということは、本当に悲観的にならざるを、その意味では思いますけれども。
 では、具体的にちょっと、また視点を変えてお聞きをしますけれども、先ほどの消費税についての考え方も、総理は何にも言っていないわけですよ。先ほどは総理はいなかったけれども、塩川財務大臣だとか坂口厚生労働大臣、いらっしゃいましたけれども、総理は基礎年金の国庫負担二分の一を税金でという話、それは消費税以外の税制もあるということですけれども、消費税について少なくとも言っているのは、議論は大いにしてくださいということと、それから自分の任期の最中は上げませんよということですけれども、任期というのは、私は、総理の任期というのは、我々国会議員の任期が少なくともあと一年半ですか、来年の七月まではあるわけですから、それをお考えになっているんですね。どうですか。
小泉内閣総理大臣 任期中というのは、私が総理大臣に在任中ということであります。それは当然極めて限られております。
海江田委員 限られているんですか。いつまでなんですか。
小泉内閣総理大臣 今の点でいけば、九月に自民党総裁選挙で、再選されればあと三年間あるんですよね。再選されなかったらばそれまでですけれども。いずれにしても、任期というのは、総理大臣の法定の理論は次の解散までは総理大臣ということです。それで、再選されれば三年あるわけですから、少なくとも総理大臣在任中は消費税を私は引き上げないということを言っているわけです。
海江田委員 それだったら、今の可能性としては、来年の七月という国会議員の任期のときまで可能性としてはあるわけですね。それでは、そのときまで消費税は絶対引き上げないんですか、これは。どうなんですか。
小泉内閣総理大臣 それは引き上げませんよ。(海江田委員「引き上げませんか」と呼ぶ)引き上げません。
海江田委員 それだったらば、またそれも、さっきの三十兆じゃないけれども、いや、あれは取るに足らない公約だったなんということを言われちゃ困るんで。
 ただ、そうなりますと、これは先ほども議論出ましたけれども、まさに基礎年金の二分の一への引き上げのところはことし議論をしておかないと、来年がもうその時期が来るわけですから、そうすると、ことし議論する中で、議論するのは自由だけれども、少なくとも内閣総理大臣としては消費税の引き上げをやらないんだから、来年の改正に消費税の引き上げというのはもう無理なわけですね、間に合わないんですね、これは。そういうことですね。
小泉内閣総理大臣 安定した財源というのは消費税だけじゃないでしょう。そういう点も含めて議論してもらわないと。ただ、消費税がいいという議論も国会議員の中でもあります。政党の中でも消費税を上げろと言う人もいます。そういう中で、それでは年金等の給付と負担はどうあるべきかということを徹底して議論していただきたい。
 ただ私は、消費税引き上げありきじゃありませんよ、ほかにいろいろ財源もあるでしょう、徹底的に見直す必要があるでしょうということを言っているのであって、議論は妨げませんし、封殺はいたしませんが、最初に、二分の一の年金の国庫負担だから消費税だという議論はいかがなものかと。もっと広範に議論していただきたい。
 そして、消費税を引き上げないという前提でより密度の濃い税制議論が行われるのではないか、そして給付と負担の見直しも行われるのではないか、なおかつ国民が、なるほど、財源なくしては給付もないんだなということもわかっていただけるだろうという、いろいろな議論が私は必要だと思っております。
海江田委員 少しずつ今の答弁、変わってきたわけですけれども、とにかくもう御自分が在任期間中は引き上げないんだということで、議論するのは構わないけれどもねということは、もうそこで、総理である限り、総理の方が一番最高権力を握っているわけですから、その意味では、議論として消費税のこと、議論は構わないけれどもそれは結果としては出てきませんよ、こういう話になるわけです。これは、その意味では公約ですよね。そういうふうに理解していいわけですね。
 それからもう一つ、やはり将来に対する不安というものが国民の間には広範にあるわけですよ。これは、いいところも見ろ、いいところも見ろということを言っていますが、現実の生活はそういうわけにいかないので。
 そうすると、特にこの年末年始、ずっと地元を回ったりしていますと、やはり去年の健康保険法の、あえて改悪ということで言わせていただきますけれども、これが非常に評判が悪いというか、特にお年寄りなんか、本当に風邪を引いたってやはりもう病院に行けないという人たちも実際にいますし、それから、いや、何か胃の調子が悪いので行ってみたら実際に三万円取られたとか四万円取られたとか、そういう話もありますし。
 これからいよいよ本当に庶民いじめだということを言っている声がちまたに満ちていますので、私どもとすれば、これは野党のほかの党の皆さん方とも一緒になりまして、これからの国会で、いよいよこの四月からはサラリーマンの負担増ということにもなるわけでございますから、それに対する、負担の引き上げをストップさせるような法案をつくるつもりでおりますけれども。
 私はどうしてもわからないのは、あの当時、本人の負担料を三割にするといったときに三方一両損ということを言いましたよね。その三方というのが、要するに、実際に病気やけがになった人の負担と、それから健康でいて保険料を払う人の一方と、これは同じ一人なわけですよね。それからもう一方が医療機関だというような説明で三方一両損だということを言っているわけですけれども、こんないいかげんな考え方というのは、これはもう私の主観ですけれども、ないわけですよ。
 あの三方一両損というのは、今でもやはりそういうようなお考えは持っているわけですか。今度の医療改革というものの思想というか考え方は三方一両損でいくんだというふうなお考えなんですか。どうなんですか。
小泉内閣総理大臣 三方一両損というのは、結果的に国民が一番プラスになるという考え方なんです。というのは、病気になると患者さんがどの程度の負担か。そうすると、保険に加入している方がいますね、保険に加入している方、これは全然病気にならない人もいるはずであります。自分はお医者さんにかからない、病気にならないけれども保険料を負担している。同時に、診療する医療関係者、こういう人たちがやはりそれぞれこの医療保険制度を維持していくためにはどういう負担が必要かと。
 それぞれ財政が厳しい中、負担を分かち合おうじゃないか、それが結果的にこの国民皆保険制度を持続可能なものにしていくということから出てくる考えであって、これは今後もやはり必要な視点ではないかなと私は思っております。
海江田委員 まさに保険の制度ですから、保険、英語のインシュランスというのを日本語に最初に訳したのは福沢諭吉先生だということですが、あのときは災難受け合いというふうに、災難を受け合うのがインシュランスという日本語訳を……(発言する者あり)インシュアランスですね、インシュアランスというのを災難受け合いというふうに翻訳をしたわけですけれども、保険というのは、その意味では、実際災難に遭った人、医療保険でいえば、病気やけがに遭った人、入院だとか通院の憂き目に遭った人、この人を元気な人たちでどうやって支えていくのかというのが基本的な考え方なわけでしょう。そうしたら、その場合は、病気やけがになって、病院に入院したり通院をしたりしたときの本人の負担というのは、やはりできるだけ軽くしなきゃいけないという考え方が基本になきゃいけないわけですよ、これは。その意味でいうと。
 日本の医療保険、健康保険の制度を見てみると、ほかの、まあアメリカは別ですけれども、ドイツやフランスだったか、そういうところと見てみると、やはり、いざ病気やけがになったときの本人負担の割合というのは非常に高くなっているんですよね。そういう意味でいうと、この保険のそもそもの思想からいって、やはり本人で、実際病気やけがになった人が、いざというときに三割も負担をするのはおかしいんじゃないだろうかというような考え方があるわけですが、これについてはどういうふうにお考えになりますか、こういう考え方については。
小泉内閣総理大臣 私は、三割というのは本当に負担し切れない多額なものかというと、そうは思っていないんです。現に、今、高額、月に百万、二百万というのはざらになりましたね。それで三割負担の三十万といったら大きいですよ。しかし、上限が設けてありますから。たしか六万三千円から七万二、三千円になったんですか。しかし、百万、二百万かかっても、月は、三割というのは上限がありますから、三十万じゃない。七万円という上限を抑えている。そして、最近では月一千万かかる患者も出てきたでしょう。
 そういうことを考えると、このままどんどん一割、二割の負担でいいかというと、この医療保険財政というものを考えなきゃいかぬ。じゃ、これは嫌だから税金で負担しようということになると、これもやはりどこか増税しなきゃできないでしょう。そういう点もある。だから、税をどこまで保険に投入するのか、そして保険料をどの程度払うのか、なおかつ、自分が病気になった場合に、自分がどのぐらい負担するのか、これからずっと続きますよ、この問題は。
 それで、今、もっと負担を和らげろというと、じゃ税金投入するかという議論にすぐなりますけれども、それはやはり、どんどん税を投入していればいいものじゃない。お医者さんにも今回診療報酬をやはり引き下げてくれということで、お医者さんは今大反対ですよ。
 そういうこともやっているんですから、お互いやはり痛みを伴うということは、結果的に国民全部が、できるだけ軽い負担で、病気になったら診ることができる、この皆保険制度を維持していこうということなんですから、全部負担嫌だというのはわかりますけれども、これは、ある程度皆さん国民が負担しながら、病気になったときにはできるだけ軽い負担で済むような制度を考えていくべきではないかということでお願いしたわけでありますので、その点はやはり御理解をいただきたいと思っております。
海江田委員 全部負担が嫌だなんという話では全然ないわけでありまして、いざ病気やけがになったときの本人負担の三割というものは、これは保険の本来の考え方からいけばおかしいんじゃないですかという話をしているわけでありまして。
 それから、ずっといつまでも議論していると言うけれども、ずっと議論せざるを得ないような状況をつくっているのは、小泉さん、あなたなわけで、厚生大臣やっていたときも、抜本改正やるといって、二割に引き上げをして、全然その抜本改正を先送りして、今度三割引き上げでしょう、これは。早く抜本改正をやってくれればいいんですよ。そうすれば、こんな議論はなくなるわけですよ。そういうことをやらないうちに二割や三割という話だったら、これはとても許されませんよと、こういう話でございますので、またこの続き、本当に、本予算のところでしっかりとやらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。
 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 小泉総理の過去約二年間の答弁を伺っておりまして、その印象は、やはり、はぐらかす、ごまかす、論理のすりかえをする、開き直る、他人事のように言う、怒って煙に巻くというのが私の印象でありますけれども、いつも本当に答弁を聞いておりまして、また始まったかというのが印象であります。国民の方でも二年もたてばもう飽きがくるわけでありますけれども、どうかきょうは誠実にお答えいただきたいというふうに思います。
 先週の委員会では、総理就任時の三つの公約、守られてないじゃないかということで追及されたことに対しまして、総理は、この程度の約束は大したことじゃないじゃないかと反論しました。国政の最高責任者としてあるまじき暴言で、国民を冒涜している、議会制民主政治を否定している。この国会の場で国民に向かって改めて謝罪をして、取り消すべきだと私は考えますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 あの発言は確かに不適切なものだったと反省しております。しかし、一回言ってしまって撤回してもしようがないですよね。撤回しろといったって、もうみんなわかっているんですから。これは確かに不適切な発言だった、反省しなきゃいかぬな、まだまだ修行が足りないなと思っております。
樋高委員 総理の認識はこういう感じなんですよ。これが本音なんですよ。反省していないんですよね。きょう、撤回してください。
小泉内閣総理大臣 撤回して済むものじゃありませんしね、これだけ皆さんがわかっているわけですから。だから、今後は行動で国民の信頼を得ることができるように努力していかなきゃいかぬなと思っております。
樋高委員 行動もないですよ。反省の弁というのは申しわけなさそうに言うべきものじゃないですか。威張って言うことですか。
 大体、全国の小学生、中学生が家庭でうそをついて親から怒られる、だけれども、総理大臣だってうそをついているからいいじゃないかと、そういうところまで今行き着いちゃっているんですよ。この現状をよく認識していただきたい。
 そもそも、総理みずからの暴言によって政治不信を高めてしまったのは事実であります。先ほどの、撤回もしないし、今さら取り消したってしようがないじゃないかというその認識自体がどうかしている、おかしい。議会制民主政治をみずから破壊してしまっている、これは事実であります。その責任をどうとられますか。
小泉内閣総理大臣 いや、私は誠実に、これは撤回して済むような問題じゃないと言っているんですよ。言ってしまったこと、綸言汗のごとしとかいう言葉もございますけれども、それよりも、反省しているから行動でこれから信頼を得るように努力しようということを言っているんです。
樋高委員 きょうの発言で、総理の認識がはっきりしました。
 堂々めぐりをしていても話になりませんので、次に参りたいと思います。外交・安全保障問題、今最も大きなテーマの一つであります。
 結論から申し上げますれば、そもそも政府の外交・安全保障政策というのには原則がない。きょうの午前中、そして先ほどの議論を聞いておりましても、推移を見守る、いつまでたっても政府の方針が示されていないということ自体が最大の問題であると申し上げたいと思います。
 総合的に判断するという答弁を何度も繰り返しておりますが、そんなの当たり前の話でありまして、では、どういった認識に基づいて、どういった政治家としての判断、どういった総理大臣としての判断、やはりそこの部分をきちっと示していただかなくてはいけない。リスクコミュニケーションをしっかりと図っていただきたい、アカウンタビリティーが欠如しているというふうに申し上げたいわけであります。
 さて、総理に伺いますけれども、端的に伺いますが、日本は国連中心主義なんでしょうか。イエスですか、ノーですか。
小泉内閣総理大臣 日本は国際社会と協調していかなきゃならない、国連において責任ある一員としていろいろな問題に対処していかなきゃならないと思っております。日本は、やはりその際には、国益をしっかりと踏まえて、国際社会の中で各国と協調していかなきゃならないと思っております。
樋高委員 当たり前の答弁しか聞かれなかったのが残念なんですが、いずれにしろ、国連中心主義だということであります。
 では、イラク問題、自衛隊を派遣するかしないかというテーマになってきますけれども、国連中心主義ということであるならば、国連憲章第四十二条に基づいた、いわゆる武力行使容認決議が行われてから平和活動を日本は行うということでよろしいですね、確認ですが。
川口国務大臣 イラクにつきまして、もし武力行使があったときのということについてのお尋ねですけれども、その前にぜひ申し上げておきたいことは、今はまだ武力行使があるということが決定されたわけではない、これはおとといの総理とブッシュ大統領の電話会談でも明らかに出ている話でございます。その上で、各国は、今一生懸命に平和的にこの問題を解決するために努力をし、十年にわたって国連決議に違反をしているイラクがきちんと国連の決議を守るように働きかけている、そういう状況であるということを前に申し上げておきたいと思います。
 その上で、イラクに武力行使があった、万が一武力行使が不可避となったときにどうするかということでございますけれども、これは、まず邦人の安全保護、これは非常に重要でございます。そして、その上で我が国としては、イラクの大量破壊兵器の問題は我が国にとっても大きな問題である、国際社会の一員として主体的に判断をするということがございまして、そういう観点で、難民支援とか周辺支援とかそういうことを、あらゆる選択肢を考えておりますけれども、自衛隊派遣云々といった具体的なことについては、今のそういう状況で具体的に可能性を考えているということでございまして、自衛隊が派遣できるということではないということは、これは当然のことでございます。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
樋高委員 要するに、国連の安保理もしくは総会において、総理お答えください、いわゆる武力行使容認決議が国連で行われてから日本のいわゆる平和活動を行うということでよろしいですね。イエスかノーかです。先ほどイエスかノーかではないというものもあるなんて言っていましたけれども、これはイエスかノーかで答えてください。
小泉内閣総理大臣 イエスかノーとかいう答えじゃない答えもあるんですよ。
 それは、武力行使というのはまだしていないんですし、決議も行われていないんですから、私は、今の段階で、日本の立場として、そういう前提でお答えする段階ではないということを言っているわけです。
樋高委員 危機管理という問題はすべて仮定なんですよ。いわゆる、そうなったときにどういう備えをするかという方針をあらかじめ提示する。もちろん、部分によっては、状況で判断しなくちゃいけない部分があるのも私は重々わかっています。しかしながら、事前にきちんとした方針を示しておく、原則をきちっと提示していくことによって、やはりリスクコミュニケーション、つまり日本国民の皆様方が、市民の皆様方がきちんと理解した上で平和活動、国際協調行動に移れるから私は申し上げているわけでありまして、今国連は確かに一方では不十分だという議論もありますけれども、唯一の国際機関でありますから、やはり国連の決議によって、国際世論の合意を得た上で、日本は自衛隊を海外に平和活動として行うということをするのかどうか。
 要するに、国連決議を必要とするのかしないのかをお答えいただければいいだけの話なんです。
小泉内閣総理大臣 これは自由党と我々とは意見を異にしていると思いますが、日本としては、たとえ国連で武力行使容認決議が行われても、日本は武力行使いたしません。その点ははっきりしなきゃならない。
 そういう中で、今どういう状況にあるか。これは、まずイラクが今までの国連決議に忠実ではないという状況で、これを忠実に履行することが大前提だ。そういう中で、アメリカが、今努力されていますが、これも国際協調を重要視しなきゃならないということを日本ははっきり表明しておりますし、いかなる武力行使容認決議が国連でなされても日本は武力行使いたしません。これははっきりしております。
樋高委員 それは当たり前の話です。そういうことを伺っているのではないのであります。
 つまり、国連決議というもの、じゃ、それには関係なく日本は独自に判断する、国連の決議、いわゆる武力行使容認決議に一切関係なく、日本はずるずると何の歯どめもなく、つまり何の原理原則もなく物事を判断していくと。このままでは、日本だけが国際法上の根拠もなく、国内法で決定しているからいいんだ、同盟国だからという理由でアメリカにどんどん追随していくんですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今はっきり言ったでしょう。ずるずる何でもやっていく、これは日本独自の、いかに国際社会で武力行使容認決議があろうとも日本は武力行使しないんですよ。そして、日本独自の判断で、主体的にこれから国際情勢も見ながら判断する。
 どういう御質問の趣旨かちょっと理解しかねますが、私は、これからのイラクの情勢というのは予断を許しませんが、まずは国際協調、これが大事だ、あらゆる外交的努力を続けて平和的解決のために努力していくのが大事ではないかということを言っているわけであります。
樋高委員 では、ちょっと角度を変えますけれども、国連でいわゆる武力行使容認決議が行われた場合、日本も国連の重要な一員としてイラクに対する国際協調行動に私は参加しなくてはいけないというふうに考えておりますが、アメリカが武力行使容認決議なくイラク攻撃を開始した場合は、国際ルールを遵守するように説得することが同盟国、友好国である日本の最大の務めであるというふうに私は思います。
 そのことについては、総理、同じ考えですね。
小泉内閣総理大臣 いや、同じかどうかわかりませんが、国連で武力行使容認決議しても日本は武力行使はしないということは、やはり違いますね。日本、独自性がある。
 ただし、これからアメリカがどういう態度に出るかというのはまだ予断を許さない面もありますが、アメリカに対しても、日本は、国際協調体制をとるように引き続き努力すべしということを何度も表明していますし、今後の状況をよく見きわめる必要があると私は思っております。
樋高委員 では、米国単独によります攻撃には反対する、そういう理解ですね。
小泉内閣総理大臣 米国に対して、国連、国際社会の協調、国際協調体制を引き続き構築するように努力すべしということを言っているのであって、今後の状況をよく見きわめながら判断したい、それが日本のはっきりした態度でございます。
樋高委員 それでは、その国連決議を抜きにして考えます。
 日本の政府として、方針を伺いますけれども、アメリカによるいわゆるイラクへの武力攻撃のよしあしを判断するのは、国連の査察が終了してからですか。それとも、終了しなくても判断するんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、まず、国連の決議に今までイラクは協力しない、あるいは妨害してきたという過去の実績があるわけです。それに対して今査察団が入っている。
 国連が、いわば実際に有効に機能するかという試練を迎えているわけでありますが、そういう中で、アメリカも武力行使には大変慎重でありますし、今後、そういう点をよく見きわめながら日本としても判断していく必要があるのではないかと思っております。
樋高委員 では、国連の査察が終了しなかった場合は米国の武力攻撃を認めないという方針でしょうか。
小泉内閣総理大臣 近いうちに査察団の報告が国連でなされると思います。そういう状況を判断して、いろいろ日本としても判断していかなきゃならないと思っております。
樋高委員 もう一回話を戻しますけれども、気になる点がありますので確認しておきたいんですが、国連決議の一四四一、つまり昨年の十一月八日決議しました、これはイラクへのいわゆる査察受け入れ要求決議でありますけれども、これは武力行使を容認しているという認識なのか、それともこの意味は含んでいないという認識なのか。
川口国務大臣 国連の決議一四四一でございますけれども、武力行使についての自動性は含んでいない、そのように解釈をされていると思います。
樋高委員 総理に伺います。
 一四四一国連決議、武力行使を容認しているのですか、していないのですか。
小泉内閣総理大臣 自動的に容認しているとは言えないと思います。まだ査察を通じた、このイラク、最後の機会を与えると言っておりますし、大量破壊兵器の廃棄のために強化された査察体制を構築する、そして、査察活動妨害等があった場合にはさらなる重大な違反とみなし安保理に報告ということになっておりますので、この点についてはもう少し事態の推移を見なきゃならないものだと思っております。
樋高委員 もう目の前に迫っているんです。もう結論を出さなくちゃいけない時期に今来ているんですよ。そんなのんきなことを言っている場合じゃないんです。
 いずれにいたしましても、この問題、安全保障委員会でもまた今後議論してまいりたいのでありますが、ちょっとお伺いしたいことがあります。
 まず、米国がイラク攻撃に突入した場合、日本は金銭面での支援はするのかしないのか。細かいことではなくて、総理の方針として伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これはまだしていないんですから、今の段階で私はそういう問題に対して答える段階ではないと思っております。
樋高委員 それが無責任なんです。なし崩しでどんどん、いつの間にか行われてしまう。やはり説明責任というのをきちんとやっていただかないと、いいことをやったとしても日本の国内で理解されないということを私は言いたいから申し上げているんですよ。
 それで、もう一つ申し上げますけれども、総理の認識、個人的な認識を伺いたいのであります。
 万一、もちろん起こってはならないことでありますけれども、イラク攻撃が始まったとき、今日本経済は危機的状況にありますけれども、これに与える影響、例えば原油価格が高騰をしたり、またさまざまな面、株価の問題、為替の問題、さまざまな分野で悪い影響が出ると私は考えます。もう今すぐにも始まろうとしているにもかかわらず、その対策が見えてこないのでありますけれども、総理はどのような経済に対する影響があると認識していらっしゃいますか。
小泉内閣総理大臣 これはさまざまな見方があると思いますが、まず、イラクと国際社会との戦争になった場合に、この戦争が短期に終わるのか、長期にわたるのか、あるいは中期になるのか、これも全くわかりません。そういうことを考えますと、こうなると断定はできないと思いますが、非常に厳しい情勢になるということは認識しておかなきゃならないと思っております。
樋高委員 その厳しい状況になるということに対して、そうならないように、じゃ、どういう手を打っていらっしゃるんですか。
小泉内閣総理大臣 まず、このイラク問題が平和的に解決される、これが一番いいと思いますが、それぞれいろいろな状況、まだ予断を許さない面があると思っております。
樋高委員 さっぱりおっしゃっていることがよくわかりません。中身がございません。
 今、政治は結局、私は危機管理の部分があると思います。事前にリスクを予想して手を打っておく、先にあらかじめきちんとした対策を講じておくということが私は政治に課せられた大きな重要な役割の一つであるというふうに思います。こういった安全保障の分野は、いわゆる戦争だけではございません、経済の危機管理もあれば、金融の危機管理もあれば、また町の中の治安などのいわゆる危機管理もあります。そういったことに対してきちっと国が責任を持って、また政治がきちっと責任を持って対策を打つということをしっかりとお願いいたしたいというふうに思います。
 あと、朝鮮半島情勢につきまして、時間が迫りましたが、お伺いいたします。
 平壌宣言、去年の九月の十七日、日朝間で交わされたわけでありますけれども、もう約束はほごにされております。私は、既にもう無効である。なぜならば、例えばNPTからの脱退など、宣言を履行していないのは明白でありまして、明らかに破綻であると思いますけれども、いまだに有効であるというふうにお考えなのでしょうか。
 きょうの答弁を聞いておりましても、あれは約束であると私は思います。サインをして、確かに、法律みたいな国際法上の何か取り決めではないにしても、約束であります。それと、総理がおっしゃっているのは努力目標であります。努力目標と約束というのは私は明らかに違うと思いますけれども、いかがでしょうか。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
小泉内閣総理大臣 これは共通の認識を表明したのであって、この合意に基づいてお互い努力していかなきゃならないと。この約束が守られるようにお互い努力していかなきゃならないと私は思っております。
樋高委員 それは当たり前のことであります。あれが有効だといまだに御認識していらっしゃるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 有効だと思っておりますし、これが実施に移されるということが大事だと思っております。
樋高委員 半年前のことを前提に、しかも、明らかにもう約束が破られた、もうそういった状況でもそれを追い求める、もちろん方向性としては必要なことだとは思いますけれども、もっと現実をきちんと直視して、それがもう無効であるならば、では、次のステージに向かってどういったことをやったらいいのかということを政治がリーダーシップを発揮して行っていただきたい。
 それと、この朝鮮半島情勢についてお尋ねをいたしますけれども、米国は、北朝鮮との交渉の中で、北朝鮮の中のいわゆる体制変更を安易に求めない、つまり、金正日体制のままでいいという態度をほのめかしているという報道もあります。日本は、いわゆるミサイル、核だけの問題ではございません、拉致問題を抱えている。日本の主権はもとより国際的、人道的な観点からも、いわゆる北朝鮮に対する日本の認識、つまり今申し上げました、核、ミサイルだけではない、拉致の問題も抱えているんだということをきちっとアメリカに理解をされるように働きかけをするべきだと思いますし、足りないのではないかと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 この問題は常にアメリカ、韓国と緊密な連携協力をもって進めなきゃならないと思っておりますし、だからこそ、アメリカも韓国も日朝平壌宣言を支持し、これからもお互い協力し合っていこうと言っているんだということもやはり理解していただかなきゃいかぬと。
樋高委員 政治は結果責任であります。どんなに頑張ってみたところで、もう約二年近くこの小泉政権続いてまいりましたけれども、結果が出せないのであれば、やはりこれは潔く、引き際が人間肝心ではないでしょうか。現政権は退陣をするべきであるということを申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて樋高君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 資料の配付をお願いします。順番を少し変えまして、最初に四兆円負担増の方から伺いたいと思います。
 せんだって、私、本会議で質問いたしましたときに、総理は、「四兆円の負担増については、年金の物価スライドの完全実施などを前提として、十五年度における負担増を過大に見ている」、そういう答弁をされました。翌日、参議院の方で、我が党の宮本議員がこのことを試算に基づいて質問したわけですが、総理は、もうその試算の数字を認めて、過大だという答弁は繰り返されませんでした。
 私は、改めて財務省と厚生労働省の方に来てもらって、レクチャーを受けて、数字を確認しました。平年度に直して計算することと、税の場合ですと、もちろん地方税の分がありますから、たばこにしてもそうですが、所得税にしても地方の住民税負担など出てきますから、これで平年度ベースに直して負担を計算しました。もちろん、総理の大分気にしてはった年金の物価スライドは、〇三年度のものだけで大体〇・九から一%という話ですが、〇・九%に下げるというこの計算で、これは関係の方と突き合わせをして確認したものであります。
 そこで、総理、配付した資料のこの数字ですが、これは過大な見通しではない、これは普通の数字といいますか、そういうものであると思いますが、もちろん経済財政諮問会議等でも総理も議論してきておられますので、まず、この点については、総理もこの負担増というものについては同じだと思うんですが、総理に最初に確認しておきます。
坂口国務大臣 今いただきましたこれを拝見いたしまして、まず、一番上の医療保険制度の改正でございますが、これは、十五年から十九年、平均をいたしまして一兆五千億、年間ということでございます。
 十五年度につきましては、この中で、国民健康保険ですとか組合健康保険の中期的な保険料の引き上げ分が含まれますことから、十五年度の影響は一兆五千億よりも少ないと思います。しかし、十五年から十九年、平均するとこのぐらいになるというふうに思いますが、十五年度におきましては一兆二、三千億というふうに思っております。
 それから、年金給付金の引き下げによりましては、これで三千億円ぐらいというふうに見ておりますから、三千七百というのは若干多いかなというふうに思います。
 そのほかのところは、大体このぐらいな数字ではないかというふうに思っております。
吉井委員 私、社会保障と税と両方申し上げているんですが、坂口さんのお話で、これは私も、当局の方でお示しになった、平均的ということはあるにしても、平年度でこうなるという話で言っておりますので、これはそのとおりであるわけです。
 それから、給付の方についておっしゃった話ですね。年金保険の方についても、これは十二カ月分に計算し直すとこうなるということで、これは当局の方と確認しておりますので。
 そこで、総理、答弁の方で、過大に見ているというお話でしたが、まず、私、別に過大に見ているわけじゃないので、その点だけ総理に確認しておりましたので、総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 どういう項目が過大であるか過大でないかというのは担当大臣に任せますが、十五年度と十六年度というものを合計して平年度と計算している面もあるのではないか。やはり経済の影響というのは年度ごとに見るべきではないかと思っていますので、そういう点については、この前のものにつきましては、平年度でやっておりますので、ある面においては過大な面もあるんではないかということを言ったわけでございます。
吉井委員 これにも書いていますように、十五年度でということになりますと、それは何月から始めてとかいろいろありますから、ですから、平年度に直してやっているんです。平年度にして、違うところがあれば、ここが違うんだと言ってもらっていいんですよ。
 私は、総理が本会議で私の質問に、過大な見通しをしておるとおっしゃるから、過大じゃないということを、おっしゃったことについてお示しをしたわけで、だから、まず、過大な見通しではなかったんだということだけ確認しておいてもらったら、それでいいんですから。
小泉内閣総理大臣 本会議のときは過大だったんでしょう。それで、今修正されたんでしょう。そうじゃないんですか。(吉井委員「いや、同じことなんです、同じなんです」と呼ぶ)項目別について、より専門的なことは担当大臣に任せます。――この問題について聞いておられるの。(発言する者あり)この問題についてはそのとおりだということを申し上げたんです。
吉井委員 実は、本会議での質問もこの数字でやっていますので。それで翌日、参議院の方では、宮本議員が個々に挙げて、お示しをしてお話をしました。
 そこで、この経済の問題というのは、私は、今の需要の落ち込みの中で、GDPの六割を占める個人消費をさらに冷え込ませる庶民生活への負担増を進めたら、これは景気の足をさらに引っ張ることになるというふうに総理としてもお考えになられるんじゃないかと思うんですが、景気という面から見て、負担増というものを伺っておきたいと思うんです。
小泉内閣総理大臣 それは、景気の面からいえばいろいろな要素に配慮しなきゃいけないと思っています、この負担増のみならず。それでは、この負担増をやめた場合に、どれだけまた国債を発行しなきゃならないかという点も出てまいります。そういう財政上の問題もありますし、私は、これだから、この負担増だから景気の足を引っ張るということでなくて、減税もしているわけです、両面見なきゃならない、そういう点も考慮しなきゃいかぬと思っております。
吉井委員 減税の方は、大企業、大資産家減税なんです。庶民の方は増税になってくるというのが今度の、今持っている問題なんです。
 そこで、九七年の橋本内閣のときの九兆円負担増について、あのときも随分議論しました。実は、あのときの年度末に出た九七年度「経済の回顧と課題」という当時の経済企画庁の出したものの中で、消費税引き上げ及び所得税等の特別減税の終了、社会保険料の引き上げ等の各種施策が家計の実質可処分所得を抑制した、国民負担の増大等が実質可処分所得を抑制しており、消費を足踏み状態としているというふうに記載をしました。
 つまり、国民、庶民に負担増をかぶせたら、それは結局、実質可処分所得が減りますから、消費を足踏み状態として、今の深刻なこの経済状況の中でさらに景気の足を引っ張るということにこれはならざるを得ないと思うんですね。私はそのことを言っているんですが、総理もこの点については、今日の景気のこの深刻な中で庶民に負担増をかぶせるやり方をしたら、これはやはり景気にはマイナスだ、こういうふうに考えられるんじゃないかと思うんですが、この点、どうですか。
竹中国務大臣 景気の見通しに関連する話でありますので、私の方から答弁をさせていただきます。
 重要な点は、経済全体、景気でありますから、経済全体に対してどのような影響があるだろうかということであろうかと思います。
 この点について言いますと、委員がお示しになった、例えば増税の数字が一兆七千億円というふうにありますが、平成十五年度に関しては、十五年度ベースでは、これはかなり先のものがありますので二千億円の増税にとどまるというふうに試算されます。一方で、先ほど総理が指摘されましたように、二兆円程度の減税が行われる、さらには今回の補正予算がマクロ全体としてきいてきますので、その意味ではこうしたことがおおむね相殺される状況にあるというふうに考えております。
 具体的には、これは政府の貯蓄投資差額がどれだけになるかということが景気に対して一番重要な点であります。先ほど九七年のお話がございましたけれども、当時と一番違いますのは、経済財政諮問会議の「改革と展望」において、この貯蓄投資差額がどのようになるかということをきちっと検証して政策を行っていることでありまして、この貯蓄投資差額につきましては若干のプラス変化、つまり、決して緊縮ではなくて、せいぜい中立かややプラスになるような、そういった形での経済運営を行って景気への配慮をしているということであります。
吉井委員 私、総理に聞いていたんですが、竹中さんがまた、いつから総理になられたのか知りませんが、総理になられてからお答えになられたらいいと思いますが、九六年に経済成長率がプラスで景気回復に向かったときに、大体当時で雇用者所得が五兆円ぐらい伸びていた時代ですね。九七年四月の橋本内閣の九兆円負担増で、大体そのときで四兆円の負担増、差し引きすると。これが長期不況をひどくして、立ち直りかけた日本経済を破綻に追い込んだんですが、今雇用者所得は四年間で十兆円ぐらいですから、大体年間二兆円以上減少しているという中ですね。そこで、最近の政府経済見通し、月例経済報告なんかの評価でもずっと連続下向くという中で、この経済局面で四兆円の国民負担増をかぶせたら、これは橋本内閣の九兆円負担増以上に深刻なものにならざるを得ない。
 だから、減税の話をされたけれども、大企業、大資産家減税を先にやって、後から庶民増税でかぶせましょうということじゃ、これは庶民の個人消費が伸びるかどうかという議論のときに意味を持たないわけですから、私は、この点ではやはり小泉総理が、今景気を立て直す決定的なかぎは、国民生活がきちんと、消費が伸びるようにしていくかどうかという、そこにかぎがあるわけですから、この庶民増税、社会保障の負担増など四兆円負担増をやめる、そして、不良債権処理の加速策の強行で、中小企業の倒産や、さらに失業をふやすようなやり方、これを改めて、やはり国民の暮らしを応援するという経済政策にきちんと軸足を移すということをされるべきだ、このことを指摘いたしまして、次のイラクの問題に移りたいと思います。
 私の本会議でのイラク問題についての質問に総理は、「イラクが、現在行われている査察に対して、無条件、無制限に協力し、大量破壊兵器の廃棄を初めとするすべての関連安保理決議を実際に履行すること」だとして、イラクへの意見は述べられました。
 私は、イラクに査察の遵守を求める、これは当然だと思っているんです。この点は私も総理と同じように当然だと思っているんですが、同時に大事なことは、アメリカが武力行使の意図を表明して、現にイラク周辺に兵力を集中しているというもとで、やはり総理としては、武力行使をしないで平和的な解決に尽くすんだという、この日本政府としての明確な態度を示すべきだというふうに思うんです。総理の答弁を求めます。
小泉内閣総理大臣 それは、前段で議員が言われましたように、イラクがまず国連決議遵守すべきだ、それに対して、今まで遵守してこなかった、協力してこなかった、妨害してきたということで、再度国連がイラクに対して遵守を求めている行動の一環だと思います。
 そういう国際的な圧力の中で、今イラクがどう対応しているかということを我々注目しているわけでありますが、あくまでもアメリカが、武力行使は最後の手段である、それまでに平和的解決のための道を尽くすんだということで、今、国際協調体制を構築するための努力を続けている。日本としてもアメリカに対して、国際協調体制を引き続きとるように、何回もこのことの重要性を指摘しているわけでありますので、私は、これが日本の一貫した立場であるということは議員も明らかに理解いただけるものと思っております。
吉井委員 実は、せんだって、一月二十三日にイラク周辺国六カ国が参加した外相会議が開かれましたね。そこの共同宣言で、イラクに対して誠実に査察を受け入れなさいということとともに、アメリカにも、戦争をするな、平和解決に努めよと。つまり、両方に物を言っているんですね。
 これは、この間、本会議でも紹介しましたように、これが国際社会の圧倒的な世論なんですよ。一方だけを言っているんじゃないんです。イラクにも査察受け入れ遵守せいと。しかし、アメリカに対しても、今、湾岸に兵力を集中したり戦争準備を現に行っている中で、戦争を口にもしているわけですが、アメリカにも、戦争をするな、平和解決に努めよと。これが国際的な世論であり、私は、日本政府も、両方にそのことをきちんと物を言っていくと。
 イラクには物を言うんだが、イラク戦争をするな、平和解決に努力を尽くせということをなぜアメリカにははっきり言わないのか、そこがわからないんですね。総理にそれを答えてほしいんです。
小泉内閣総理大臣 何回も言っていますよ。はっきり言っていますよ。何回答弁させるんですか。アメリカに対して、国際協調体制をとるように、イラクに対しては、国連査察に無条件、無制限に協力するように、これはもう、日本が一番はっきりしている態度なんです。
吉井委員 そうすると、総理の国際協調体制という言葉をきちんと定義を聞いておきたいんですが、それは、アメリカに対して、イラク戦争するな、平和解決に努力せよと、これが国際協調体制という意味ですか。
小泉内閣総理大臣 まずイラクが国連決議を尊重することです。そのために国際協調体制をとっているんですから。それを見守るのが私は重要ではないかと。はっきりしているんです。何回質問されても、この答弁、何回も繰り返すしかないです。
吉井委員 結局、アメリカによう言わぬという話なんですね。
 戦争になったら多大の被害が出るということは、これは国際機関の、いろいろな団体からもレポート等が出ております。実際に、首都で五十万人の犠牲者が出るという数字が出されたりとか、経済的にも、大体中東諸国の皆さん、物すごく経済的危機に追い込まれることについても大きな危機感、不安を訴えておられますし、実際、世界の多くの国民も、多大の被害が出るという問題を危惧しているわけですね。だから国際社会は、戦争によらないで平和的解決の努力を今尽くしているし、これを尽くせということをそれぞれの政府が求めているわけです。
 小泉総理も、昨年十月三十日のクエスチョンタイムのときに我が党の志位委員長の質問に答えて、日本としても戦争を行わないでこの問題が解決できるように懸命に進めるべきだ、その考えに変わりはありませんと答弁しておられるんですが。ですから、戦争を行わない、この問題がそうなるように、アメリカに対しても、イラク戦争をしないように、平和解決に力を尽くせ、このことを求められるというのが、昨年の秋の答弁からしても、これを明言されるのが筋だと思うんです。改めて伺います。
小泉内閣総理大臣 そのことを再三言っているんです、私も。アメリカが国際協調体制をとる。アメリカも平和的解決を望んで、今努力しているんですから。何回も同じことを私は言っているんですよ。はっきりしているんですよ。
 まずイラクが国連決議を尊重する。実施するために今努力しているんでしょう、アメリカも。アメリカも平和的解決を望んでいるんですから。そういう中で国際協調体制をとる。これは、日本の立場ははっきりしています。
 何回も言っておりますが、イラクがまず国連決議を尊重する。そしてアメリカに対しては、アメリカが国際協調体制をとること。これはもう、繰り返し繰り返し何回も言っていることです。
吉井委員 アメリカは現に、戦争の準備をして、中東に兵力を派遣して、戦争、武力行使を行うということを公言しているわけですね。そういう中で、国際社会は、フランスのシラク大統領が、戦争は常に失敗の確認であり最悪の解決策だとアメリカのイラク攻撃準備を批判していますし、ドイツのシュレーダー首相もイラク攻撃反対を明確に主張するなど、ドイツは軍事協力しないと、これは外相会議の中でも、ドイツもロシアも中国もフランスも、国連の安保理の外相会議でもみんなそういう立場で努力しているんです。そういうことをはっきり言わないのは小泉総理だけなんですよ。非常に異常な姿なんです。
 私は、この点では、総理が、やはりこの国際社会の世論となっているこの立場で、イラクに対してはもとよりアメリカに対しても、戦争をするな、平和解決に尽くせと、そういうことをはっきり言うべきだ、このことを重ねて申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。
藤井委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 私は、一月二十一日、本会議で小泉総理に質問をさせていただきました。やはり本会議で代表質問するとなりますと、いろいろな方々の意見を改めてお伺いして、そして、質問に何時間も何時間も割いて一生懸命原稿を書きます。でも、小泉総理の御答弁は原稿を棒読みで、ほとんど私の目さえ見てくださらずにお答えになりました。何だか小泉総理がだんだん私から遠のいていく、そのような気持ちがいたします。
 実は、質問をしているのは中川智子ではないわけですよ。国民の代弁者として質問をしているわけです。ですから、だんだん総理が遠くなっていくのは国民から遠くなっていくということをしっかり御認識いただいて、きょうはしっかり国民に近づくような御答弁をいただきたい。中川智子の姿をかりて多くの人たちの声だと受けとめて、質問をいたします。
 やはり今、いろいろな方々のお話を聞くと、一番心配なのは社会保障と戦争です。特に、年金は本当に命綱、年金があるからこうやって暮らせる、年金は大丈夫だろうかという声が本当に多いです。それは、高齢者の方々だけではなく、もう本当に国民あまたそのような心配を抱いております。
 具体的には、国民年金の空洞化が深刻になっています。平成八年の調査では、六百八十九万人が保険料の未納者で、全体のこれは三二・五%。そして、平成十一年の調査では、八百七万人で、これは全体の三六・六%が未納で、この数字から見ますともう四割に空洞化が近づいてきておりまして、昨年もまた調査しておりますが、もっとこの空洞化が加速していくことは明らかでございます。
 国民年金の空洞化の加速によって、やはり私は、国民皆年金とうたって努力してきたところが、その根幹が揺らいでいる状況、これを総理としてどのように御認識になるか、そしてこの原因は何だとお考えになるか、まず御答弁をいただきます。
小泉内閣総理大臣 国民年金の未納者が非常に多いということ、また、未加入者もいるということは、この年金制度に対する信頼を非常に傷つけるものだと憂慮しております。
 どのようにこの未納者を少なくするか、また未加入者に対して加入するように勧めるかということをいろいろ努力しておりますが、いまだに大きな成果が上がっていないということも率直に認めざるを得ない状況だと思いますが、今後、さらにこの未納者を少なくする、また未加入者に加入を勧めていく方法を、いろいろな方々の御意見を聞きながら、少しでも効果が上げられるような対策を講じていきたいと思っております。
中川(智)委員 今総理に質問したことは二つあって、その現実認識と、いま一つは、なぜかということの御答弁をいただいておりませんが、お願いいたします。なぜだと考えられますか。理由ですね。
小泉内閣総理大臣 後ほど坂口大臣に答弁してもらいますが、私は、中にはいろいろな理由があると思いますが、先のことだからいいという人、どうせもらってもそれほど大きな額じゃないだろうと見ている人もおられる。そして、これは将来、加入しなくても自分でやれるという人も中にはいるんだと思いますが、あるいは、まだ給料が少なくて払うことができないというような方もおられると思います。
 いずれにしても、理由はさまざまだと思いますが、より詳しい面については坂口大臣に答弁させたいと思います。
坂口国務大臣 未納者と未加入者、両方あるわけでございますが、未納者と納付者との所得格差を見てみますと、その両者の間には余り大きな差はないんですね。それから、未納者でも生命保険や個人年金をお掛けになっている人がかなりあるということも事実でございます。
 お掛けになっていない方々に聞きますと、これはやはり、お掛けになっていない人は若い人に多いわけで、若い皆さん方の中でお掛けにならないその理由を聞きますと、将来のことは自分でやるという人が一つ。それからもう一つは、何にも考えていない、将来のことは考えていないという人がもう一つ大きな山がある。
 こういう理由があることも事実でございまして、御承知のように、年金というのは自分自身のためであると同時にお互いのためでありますから、ぜひともひとつ皆さん方にもお入りをいただくように、これは努力もしなければならない。若干我々も努力不足であるというふうに思っておりまして、ここは改正をしていかなければならない。
 年金の改正問題、ことしは最大の課題でございますから、すべての問題について見直しを行い、そして信頼のできる年金制度にしていかなければならない、そう決意をしているところでございます。
中川(智)委員 今総理と厚生大臣の御両者、御答弁いただきましたが、やはり国民の実態と認識が非常にかけ離れているということを実感しました。
 総理の御答弁の中では、本当に負担が大きいので払えないという理由の方は随分後の方に今お答えになりました。平成十一年の実態調査では、保険料が高くて経済的に支払うのが困難という方が六二・四%です。ずば抜けて、保険料が高いから払えないという方がふえているというのが実態です。そして、国民年金を当てにしないというのは一二%です。これは、当てにしないというよりも、信頼が揺らいでいるからほかに自分で手だてをする。
 今、厚生労働大臣がお答えになった、将来のことは考えていないわけじゃないんです。今の暮らしが大変だから払えない、将来のことまで考える余裕がない、もうどうにかなるというか、どうにかならなきゃしようがないなという一種捨て鉢な状況が今あるというのが現実だということをしっかり御認識いただきたい。
 そこで、私は、この国会に来まして初めて知りました。自分の年金というのが、株の運用とか財投とか、グリーンピアに象徴されるいろいろなものに使われているなんというのは本当に知らなかったんですね。ここに来て初めて、いや、年金ぶろというのは栓をしないでためているんだということをびっくりいたしました。やはり実態をしっかり、百五十兆円という積立金が今幾らあるのか、まずそれをはっきり示していただきたい。
 小泉総理は三期厚生大臣をやられたわけですから、よくわかっていらっしゃると思いますが、何事も、来年のこと、来年の見直しに向けて今大事なのは、この百五十兆のうち実際今幾らあるのか、それをしっかりとした数字で示していくことがすべての基本になると思いますが、本予算の審議のときまでにその調査をしていただくことをこの場でお約束ください。総理のみでいいです。総理です。
小泉内閣総理大臣 御指摘の質問に対しては、調査して、坂口厚生労働大臣よりも答弁させたいと思います。
坂口国務大臣 総理の御指示に従います。
中川(智)委員 私は、小泉総理も坂口厚生大臣もすばらしい政治家だとは思っておりますが、消費税の議論でも、閣内が、どうもお話し合いがしっかりなされているのだろうか。昨年の十月、坂口厚生大臣は、来年の二・七兆円の財源、本当に苦慮していらっしゃると思います。約束を守らなきゃいけないから、三分の一が二分の一になるにはお金が必要だ。そこで、せっぱ詰まった形で記者会見であのようにおっしゃった。小泉総理は、自分の任期中は上げないとおっしゃっている。
 まず、厚生労働大臣ではなくて、小泉総理、坂口大臣とその財源のそこの部分に対して、消費税論議、お二人でなされたかどうか、それは一致しているのかどうかというのを一点、小泉総理に。そして今の御答弁のように、本当にどっちも丸投げというか、答弁に対しては無責任な答弁でありました。ですから、百五十兆、今幾ら残っているのかということを出すというふうに決めるのはリーダーシップです。小泉総理以外において明言できる人はいません。この二つに対して的確な御答弁をお願いします。
小泉内閣総理大臣 消費税については、もう何回も答弁しているんですが、私は、坂口大臣も極めて慎重だと思っていますよ。坂口大臣も議論するのは結構だと。そして、これから一年間、年金の議論を多くの国民の皆さんと一緒にするわけですから、そういう中で当然、税の議論が出てきます。こういうときに、議論の問題として消費税に触れてはいかぬということはできないでしょう。触れるのも結構だと。しかし、私は消費税は引き上げないということもはっきりしているわけです。消費税だけじゃありません、年金の議論は。安定財源というのは消費税だけじゃありません。そういう点も含めて議論すべきだ。
 だから、ある人は、消費税がいいという人は言って結構、しかしながら、私は引き上げないということで、ではほかの税目をどう探すかということで、税の議論がなお盛んになる。どういう形で税負担をして、給付をどの程度にするのかということもその中で出てくる問題であります。
 なおかつ、今、年金の資料については、これはきちんと出すようにいたします。
中川(智)委員 では、百五十兆、幾ら残っているかというのは出していただけるということでお約束いただいたと認識いたします。よろしいですね。
小泉内閣総理大臣 それは、できるだけ国民にわかりやすいような情報を提供する必要があると思っております。
中川(智)委員 それでは、本予算の質疑までにお出しいただくよう、厚生労働省しっかり働いてください。
 それでは、私は、先ほどの質問の中で、調査した結果、現在、ただいまより年金の保険料を払ってでも、もう足りなくて、そして六十二万人が明らかに無年金者になるという事態が生じることは調査の上で明らかになっているんですが、この六十二万人の無年金状態の方をどのように救済しようと考えているのか、明確にお答えいただきたい。これは坂口厚生大臣にお願いいたします。
 考えているかどうかで結構です。明らかに無年金者が六十二万人生まれる、無年金予備軍がいる、これに対する手当てを今やはり考えていくということが大事だと思いますが、考えていらっしゃいますか。
坂口国務大臣 先ほど申しました未納者や未加入者のほかに免除者というのがあるわけですよ。この免除者がいわゆる五百五万人ぐらい今おみえになるわけでありまして、こういう人たちもおみえになる。免除対象者の中にも年金にお入りになっていない方があるわけですよ。免除対象者ですから、お入りいただきましたら権利はできるわけですけれども、お入りになっていない方もある。そういうことも我々考えていかなければならない。
 一方におきましては、御承知のとおり、年金にお入りになっていない方で、そして障害者になられた方、いわゆる無年金障害者というのがおみえになって、その皆さん方を何とかしろというお話も一方であるわけです。
 ですから、これは一応お入りをいただくということが大事でありまして、そして、所得によりましてお掛けいただきます額も半分にしたりしているわけでありますから、とにかくお入りをいただけるようにするということが大事だというふうに思っております。
中川(智)委員 大臣がこの場でお入りいただかなければと言ったって、入ってくれない、お金を納めてくれない、それじゃどうしようもないわけです。それが今三六・六%に達しているわけで、この議論をしていますともう時間がないので、またちゃんとした場で質問いたします。
 それでは、そのように努力しております、国民年金に入ってください、納めてくださいというPRの財源というのは今どれぐらいか、それはどこから払われているのか、そしてその目的。大体、一つの車両が全部、年金納めろ年金納めろみたいな車両もある。テレビでも広告している。だけれども、実態は、そのように納めてくれないし、うまく効果が発揮されていない。これは本当に、年金のお金を使って、そしてPRしているのに、根っこが揺らいで、不信と不安があるから入らない、お金を納めないという状況があるのに、ちょっと例え話がよくわかりませんけれども、根っこが腐っているのに幾ら接ぎ木したってしようがないという状況が生まれています。
 国民年金の今のPRの財源はどこから出ているか、費用はどれぐらい出しているか、そして効果はどの辺まで見込んでいるか、それを教えてください。これは具体的な数字で的確に。
磯部政府参考人 平成十五年度予算案におきます年金広報のための費用は、厚生保険特別会計、国民年金特別会計におきましては、制度の仕組みや手続、それから法律改正内容の周知等に係る経費といたしまして、保険料を財源に約二十四億円を計上しております。
 また、次期年金制度改正に向けて、国民的な議論を幅広く進めていくためのシンポジウムの開催等の広報啓発関係経費等を一般会計に計上しているところでございます。
中川(智)委員 ちょっと一部の答弁しかいただけませんでしたが、それはもう別の場で、本予算のところでもう一度質問させていただきます。
 それほど年金に対する空洞化、そして不信、不安感が広がっていることが、やはり消費抑制になっている、消費が拡大できない大きな原因だと私は思いますので、小泉総理が年金のビジョンをしっかり示すこと、そして来年の二・七兆円の財源についても、広く議論をするというあいまいなことではなく、具体的にこういうところからこれだけ引っ張ってくるという答弁をいただきたかった。残念でした。
 それで、最後に二点、これは総理に伺いたいと思いますが、私は被災地の人間として本会議のときにも代表質問いたしましたが、今議論しているという答弁でした。生活再建支援法の見直しがことしに迫っています。ぜひとも、見直すという決意を総理から伺いたいんです。でなければ、三宅島の方々も島に帰れるかもわからないけれども、もう島に帰ってもそれが、生活再建ができないから帰れないかもわからない。ですから、生活再建支援法は小泉さんが厚生大臣のときにできた法律ですが、それに対して見直しの決意を、もう少し、所得要件とかさまざまな条件に対して、いろいろな人に喜ばれるような支援策にしていく決意をまず伺いたい。
 そしていま一つ、高速増殖炉の「もんじゅ」の、きょう名古屋高裁金沢支部から住民側勝訴の画期的な判決が出ました。原発をめぐる訴訟で初めての住民側勝訴なんですね。ですから、一生懸命頑張ってきた社民党としても喜びの気持ちでいっぱいなんですが、安全性を犠牲にしたままで、初めに運転再開ありきで準備を進めてきた国、核燃料サイクル機構側のもくろみは、司法によってはっきりとノーということを突きつけられました。
藤井委員長 中川君、時間が来ておりますので。
中川(智)委員 政府は、この判断を受け入れ、「もんじゅ」の運転再開を直ちに断念して、核燃料サイクル計画を根本から見直すべきだと思いますが、本当に、最後、欲張って申しわけありませんが、総理が国民に近づくために、ぜひともこの二本の質問に答えてください。
小泉内閣総理大臣 最初の御質問はたしか、被災者と言われましたけれども、被災者生活再建支援制度のことだと思うんです。この点については、今、全国知事会において検討がなされていると承知しておりますので、その検討結果を踏まえて、必要な措置を講じていきたいと思っております。
 また、今の判決、「もんじゅ」の判決についてですが、内容をまだ見ておりませんので、内容を十分検討した上で判断したいと思います。
藤井委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。
 これをもちまして締めくくり質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして平成十四年度補正予算三案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮本一三君。
宮本委員 自由民主党、公明党、保守新党を代表して、ただいま議題となっております平成十四年度補正予算三案に対しまして、賛成の討論を行うものであります。
 現在、我が国経済は、バブル崩壊後、長期化する景気の低迷やデフレ経済の悪影響に苦しんでおり、まことに深刻な状況にあります。日本経済の構造改革を推進し、活力ある経済社会の再生を実現していくためには、我が国経済の長引く不振の大きな要因である民間金融機関の不良債権を果敢に処理し、その抜本的解決を図るとともに、その過程における国民の痛みにも十分に目を配ることが肝要であります。
 このため、雇用、中小企業等のセーフティーネットに万全を期すとともに、現下のデフレ経済に適切に対応するための施策を講ずることが必要であると考えております。
 以下、本補正予算に賛成する主な理由を申し述べます。
 その第一は、本補正予算に盛り込まれた施策が万全のセーフティーネット構築を図るものであると考えられるからであります。
 本補正予算には、失業者や離職者の再就職を強力に支援するための措置や、日本経済の将来を担うとも言われる中小企業への資金供給円滑化、創業・ベンチャー企業への手厚い支援措置等が盛り込まれております。
 賛成理由の第二は、本補正予算において、構造改革の推進を図る上で特に効果の高く緊急に実施すべき公共投資、具体的には、都市再生プロジェクトの推進、魅力ある都市、地方の再生を図るための事業、我が国社会が直面する喫緊の課題である環境問題等への対応を図るための措置など、厳選して盛り込まれている点であります。これらを早期かつ着実に実施していくことが、現在のデフレ経済に対応していく上でまことに有効であると考えております。
 これらの措置を講ずるため、本補正予算においては、雇用、中小企業等のセーフティーネット構築のため一・五兆円、構造改革推進型の公共投資促進のため一・五兆円、合計三兆円という予算が計上されております。現下の諸課題に適切に対処できるものとなっていると考えております。
 以上、本補正予算に賛成する理由を申し述べました。
 私は、本補正予算が、我が国経済が早期にその活力を取り戻すため極めて有効かつ不可欠なものであるとして、賛成の意を表するものであります。ぜひとも本補正予算を速やかに成立させるべきであると考えております。
 また、政府におかれては、補正予算の成立の後、これらの施策を速やかに、かつ確実に実施されますよう強く要望いたします。
 以上をもって賛成討論といたします。ありがとうございました。(拍手)
藤井委員長 次に、細野豪志君。
細野委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の平成十四年度一般会計補正予算、特別会計補正予算及び政府関係機関補正予算に一括して反対する立場で討論を行います。
 その理由の第一は、小泉政権が、長引く不況の回復はおろか、経済雇用状況をいよいよ悪化させ、二・五兆円もの税収不足を招いておきながら、経済失政に対する反省も謝罪もないまま、国民に負担を強要していることです。本院の審議の中でも、経済失政に対する責任や、小泉総理が掲げてきた国債発行三十兆円枠の公約の破棄について、国民に納得のいく答弁はありませんでした。
 小泉総理は就任以来、平成十三年度一次補正、二次補正、そして平成十四年度本予算を編成し、国の経済運営を担ってきましたが、見てのとおり、景気は一向に上向いておりません。
 今回の補正予算編成の最大の理由である税収不足は、まさに小泉総理の経済失政によるものなのであります。国民に対する約束を破棄し、国民にさらなる負担を押しつけるのであれば、まず総理の謝罪が不可欠であると私どもは考えております。
 第二に、本補正予算の内容は、現下の厳しい経済雇用情勢に対応するには全く不十分であり、予算の使い方が間違っております。
 野党四党は、昨年の臨時国会で、雇用失業対策、中小零細企業対策に重点を置いた補正予算を速やかに編成するよう要求しました。しかし、政府がおくればせながら出してきた補正予算の内容は、効果が期待できないばかりか、利用もされない失業対策事業にさらなる予算を配分する例が見られ、失業者や中小企業にとって十分なセーフティーネットを提供できておりません。
 不良債権処理の加速でさらに失業者の増加が予想される中、緊急対策として、雇用保険財政基盤の安定化、非自発的失業者の生活基盤の確保、求職者の能力開発制度の改善等に重点を置くべきであります。また、中小企業対策については、中小企業金融円滑化のための特別信用保証の復活やセーフティーネット保証制度の拡充、ベンチャー企業、NPOの育成支援等を盛り込むべきであります。
 第三に、本補正予算は、旧態依然とした公共事業の利権構造を踏襲していると言わざるを得ません。
 事業の一部を都市部で実施するだけでは、中身は従来と全く変わっておりません。省庁別のシェアが維持されていることが、そのことを何よりも明確に物語っております。むだな公共事業を通じて、政府・与党がみずからの利権構造を維持するために国民の血税を流用することは、断固として許せません。
 第四に、政府には、財政構造改革の姿勢が全くあらわれておりません。
 本来は、公共事業入札の改善や補助金の一括交付金化、天下り解消を含めた特殊法人改革等、大胆な財政構造改革を断行することが先決であります。それなのに、政府は、効果の疑わしい事業への歳出を増加させる一方で、その直後には、健康保険三割負担への引き上げ、雇用保険の給付カットなど、国民への負担増を強要しようとしております。これでは、負担増、そして将来への不安から消費はさらに低迷し、経済状況は一層深刻化しかねません。
 予算委員会において、我が党の菅直人代表が小泉総理の公約破りを指摘した際に、小泉総理はとうとう本音を漏らされました。すなわち、国民に対する約束であり、政治家の命とも言える公約を破っても、大したことはないと発言されたのであります。馬脚をあらわすとは、まさにこのことであります。靖国参拝、国債三十兆円枠、ペイオフ解禁など、次々と公約を破り続けたことは当然のことであり、これについて国民に対して責任をとるつもりがないばかりか、説明する気さえないと、小泉総理の本音があらわれたのであります。
 国民は不安にさいなまれ、日々危機に直面しながら生活をしております。その中で、国民は、危機脱却の一縷の望みを小泉総理に託し、総理は、この国民の期待を背景に総理の座を射とめました。しかし、いざ総理になってみると、公約を次々と破り、経済をいよいよ悪化させました。自民党をぶっつぶすはずが、現実は国民生活をぶっつぶすことになりつつあります。この上で、今回のこの発言であります。政治家たる責任を放棄し、資格を失ったと私どもは考えております。
 予算とは、政治家にとっては公約を具体化したものですが、このように国民にうそをつくことを当然と思っている方が最高責任者として編成した予算を、私どもは断じて認めることはできません。
 よって、私ども民主党・無所属クラブは、補正予算三案に断固たる反対を表明して、討論を終わります。(拍手)
藤井委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 私は、自由党を代表して、平成十四年度一般会計補正予算案三案に反対の討論を行います。
 綸言汗のごとしという、指導者が長い間自己の戒めとしてきた言葉を、小泉総理は、使い方もよくわかっていないし、また、全く通用しないことが明白になりました。耳ざわりのよい言葉を並べても、約束は全く果たされておりません。しかも、公約を次々と破っていることを指摘すると、総理は平然と、守れなかったことは大したことではないと開き直る。それでは総理としての資格もありません。だからこそ、小泉内閣の経済運営は支離滅裂なのであり、政策転換や政策破綻について、説明も責任も一切放棄をしています。
 「信なくば立たず」と揮毫されると聞いておりますが、公約を守れなかったことを大したことではないと言う方が、どうやって信を保つことができるのか。理念なき政治運営、理念なき経済運営は、この補正予算審議を通じて、ここにきわまったと断ぜざるを得ません。
 以下、補正予算案に反対する理由を申し述べます。
 理由の第一は、小泉総理の政治、経済運営についての説明責任を全く果たしていないことであります。
 総理が主張した国債発行三十兆円枠は、この補正予算で名実ともに破綻いたしました。これまで我々自由党が、国債発行三十兆円枠は既に実質的に論理破綻していると問いただしても、小泉総理は、守られていると強弁するばかりでありました。ところが、今回、これが名実ともに破綻に至ったにもかかわらず、総理はその説明責任を全く果たしておらず、説明なき公約ほごは看過できません。
 理由の第二は、この補正予算がどのような経済運営の前提の上に成り立っているのか、全く不明確であることです。
 十四年度予算は、総理が編成時から責任を負うべき政策であり、それが間違っていたならば、それを認め、大胆な予算編成方針の組み替えを行うべきであります。経済運営の理念もない結果、税収は予想以上に落ち込み、これを補うため国債を追加発行し、なし崩しで補正予算をつくり、財政はますます悪化する。この悪循環では、幾ら予算があってもむだであり、景気もよくならなければ、財政の健全化もありません。
 理由の第三は、この補正予算では、デフレ対策や喫緊の景気刺激策としての効果はなく、雇用対策も不十分であることです。
 改革加速型公共投資、経済・社会構造変革セーフティーネット充実対策費、それぞれの中身を見れば、従来型公共投資や現状政策の羅列でしかありません。これまでも毎年のように補正予算が編成されておりますが、従来型公共投資の繰り返しでは効果が少ないことは、過去を見ても明らかであります。
 以上、補正予算案に反対をする理由を申し述べました。
 経済無策の小泉総理では、日本の経済社会はますます疲弊していくばかりであり、これを断ち切るには、小泉内閣が早期に退陣することを強く主張して、私の反対討論を終わります。(拍手)
藤井委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 私は、日本共産党を代表して、二〇〇二年度補正予算三案に反対する討論を行います。
 反対する第一の理由は、長引く不況で大量の倒産と失業が増大する中で、本補正予算案には庶民の暮らしと営業を応援し、冷え込んだ個人消費を温める抜本策が盛り込まれていないことであります。
 今なすべきことは、GDPの六割を占める個人消費を温めることです。とりわけ、社会保障の改悪と四兆円負担増を直ちに中止し、暮らしに軸足を置いた経済政策に転換することは緊急の課題です。このような国民生活への手厚い対策を何ら示し得ない本補正予算案は直ちに撤回し、組み替えるべきであります。
 第二の理由は、構造改革推進型の公共投資の名のもとに、旧来型の大型公共事業を促進し、財政破綻に一層拍車をかけるものとなっていることであります。
 一兆五千億円にも及ぶ公共投資の大部分が、採算の見通しが全くない中部国際空港などの拠点空港、むだ遣いとの批判を受けている道路建設、ダム建設といった、首相みずからが景気に効果がないと言ってきた事業の積み増しであります。
 小泉首相は、当初予算で、公共事業を一割削減したことを改革の成果と自慢してきましたが、今度の補正予算で多大な額を投入することにより、公共事業費がかえって増大したことは明らかではありませんか。
 しかも、一般財源化したはずの道路特定財源が、すべて道路に使われることになったのであります。こうしたまやかしとむだ遣いの結果、今年度の国債発行額は三十五兆円、国、地方の長期債務残高は七百五兆円にも達する深刻なものとなるのであります。
 第三の理由は、本補正予算案が中小企業つぶしと不良債権処理の加速による失業者の大量増加を大前提としたものだからであります。
 雇用と中小企業対策で幾ら安全網の強化充実をうたっても、数百万人の規模の大量失業者に対応し切れないことは明らかであります。今、雇用対策と中小企業対策として政府がなすべきことは、本気で大企業のリストラを規制し、失業者の生活支援立法とその予算化を図ること、銀行等による貸しはがしや金利引き上げをやめさせる具体策をとることであります。
 なお、本補正で中小企業の資金繰りを支援する保証制度の創設などが盛り込まれたことは、我が党のたび重なる要求と関係者による運動の成果でありまして、当然の措置であります。
 今なすべきことは、むだと浪費を繰り返すことではありません。国民生活を応援する経済政策に転換することであります。このことを強調して、私の討論を終わります。(拍手)
藤井委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、提案されております平成十四年度補正予算案に反対する立場で討論いたします。
 反対の第一の理由は、現下の未曾有の経済危機に的確に対応するため、一刻も早く補正予算を編成するよう求めてまいったにもかかわらず、先送りした上、おくればせながら提案されました今回の補正予算案は、従来型の省庁別による積み上げ方式の予算案であり、現下の厳しい雇用失業状況、経済状況を何ら反映したものとなっていないからであります。
 我が国の経済は依然回復からはほど遠く、デフレは深刻化するばかりであります。この原因は、小泉内閣の進める構造改革、すなわち経済失政にあることは明らかであります。それでもなお改革を推し進めるという小泉総理に、国民の不安が高まるのは当然であります。
 株価の低迷、高どまりの失業率、自殺者の増加など、あらゆる数字にあらわれているように、国民は今、ひたすら痛みに耐えております。直近の世論調査でも、これ以上の痛みは受け入れられない、失業への不安がある、早期の景気の回復をという国民の声が非常に高まっております。今後不良債権処理が加速されれば、新たに百万人に近い失業者が出るという民間金融機関の試算さえあります。これからさらに深刻になるでありましょう雇用状況を真剣に見詰めるならば、雇用失業対策にもっと手厚い対策が講じられ、状況を改善するための措置がとられてしかるべきであります。
 もはや雇用対策を単なる施策の一つとして位置づけるのではなく、国の最重要事項として扱うべきであります。一般財源から積極的に財政出動して雇用保険制度の財政基盤を安定させ、また再就職支援のための施策を国策として行うべきであります。みずからの失政を棚上げし、雇用保険財政の逼迫を給付水準の引き下げでカバーすることなど言語道断であります。小泉内閣の経済失政のツケを国民に回すことなど絶対に許されません。
 第二の理由は、中小企業、零細企業に対する配慮が弱いということであります。
 銀行の不良債権処理が進めば、銀行による貸し渋り、貸しはがしがさらに過酷なものになるのは目に見えております。時限的に特別信用保証を復活したり、過去の債務についても返済猶予措置を施すとかリスケジュールを講ずるべきであります。
 第三の理由は、小泉総理の公約であります国債発行三十兆円枠が、説明責任も果たされぬままほごにされていることであります。しかし、説明責任を果たすどころか、そんな公約は大したことではないんだと国民の前で居直るに至っては、もはや何をか言わんやであります。
 小泉総理が構造改革に固執する余り、景気がさらに悪化したことは明白であり、その結果税収不足を招いたことは紛れもない事実であります。緊縮財政路線は既に破綻していることは明らかであり、小泉総理は、みずからの経済失政を国民に謝罪し、責任を明確にすべきであります。
 以上、補正予算案に反対する理由を述べ、私の反対討論を終わります。(拍手)
藤井委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 これより採決に入ります。
 平成十四年度一般会計補正予算(第1号)、平成十四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。
 三案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
藤井委員長 起立多数。よって、平成十四年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました平成十四年度補正予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
藤井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.