衆議院

メインへスキップ



第7号 平成15年2月6日(木曜日)

会議録本文へ
平成十五年二月六日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      麻生 太郎君    伊吹 文明君
      池田 行彦君    石川 要三君
      衛藤征士郎君    尾身 幸次君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      坂本 剛二君    高鳥  修君
      竹本 直一君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      西川 京子君    西野あきら君
      萩野 浩基君    原田昇左右君
      松岡 利勝君    三塚  博君
      持永 和見君    森岡 正宏君
      山口 泰明君    石井  一君
      上田 清司君    大石 尚子君
      海江田万里君    河村たかし君
      菅  直人君    田中 慶秋君
      中村 哲治君    長妻  昭君
      細野 豪志君    前原 誠司君
      吉田 公一君    米澤  隆君
      赤羽 一嘉君    北側 一雄君
      斉藤 鉄夫君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      佐々木憲昭君    矢島 恒夫君
      中川 智子君    中西 績介君
      横光 克彦君    井上 喜一君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   総務副大臣        若松 謙維君
   法務副大臣        増田 敏男君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   法務大臣政務官      中野  清君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月六日
 辞任         補欠選任
  石川 要三君     麻生 太郎君
  奥野 誠亮君     坂本 剛二君
  栗原 博久君     竹本 直一君
  葉梨 信行君     西野あきら君
  松岡 利勝君     西川 京子君
  田中 慶秋君     大石 尚子君
  中村 哲治君     前原 誠司君
  細野 豪志君     菅  直人君
  斉藤 鉄夫君     北側 一雄君
  中西 績介君     中川 智子君
  井上 喜一君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  麻生 太郎君     石川 要三君
  坂本 剛二君     森岡 正宏君
  竹本 直一君     栗原 博久君
  西川 京子君     松岡 利勝君
  西野あきら君     葉梨 信行君
  大石 尚子君     田中 慶秋君
  菅  直人君     細野 豪志君
  前原 誠司君     中村 哲治君
  北側 一雄君     斉藤 鉄夫君
  中川 智子君     中西 績介君
  松浪健四郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  森岡 正宏君     奥野 誠亮君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医薬局長小島比登志君、厚生労働省社会・援護局長河村博江君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。麻生太郎君。
麻生委員 自由民主党の麻生太郎です。(発言する者あり)ありがとうございました。
 質問の予定していた外で甚だ恐縮ですけれども、けさ未明、午前二時半近くまでかかっていたと記憶をいたしますけれども、一時十五分ぐらいから約七十五分にわたって、アメリカ国務長官コーリン・パウエルの国連の安保理における演説を聞かれたために、眠そうな顔をしておられる閣僚の方も大勢お見えだと思いますが、熱心に御拝聴されたんだと思っております。
 一四四一決議に対する違反行為を告発いたしております。イラク軍の高官同士のいわゆる無線傍受から始まって、録音テープ、衛星写真等々を見せて、イラクの大量破壊兵器等々、殺傷兵器につきましていわゆる隠している疑惑を具体的に示して、そして生物兵器、化学兵器、核兵器の順番に、開発、製造、貯蔵等々について実証を挙げて明らかにし、加えてサダム・フセインという大統領のテロリズム、とりわけアルカイーダとのつながりを固有名詞を挙げて証明いたしておりました。
 このパウエルのリポートに対します反応は、けさ、CNN、BBC、いろいろやっておりましたけれども、国によって温度差はかなりあるように感じましたが、日本政府としてはどのように受けとめられたのか、まず最初に、川口外務大臣に御見解を拝聴させていただきたいと存じます。
川口国務大臣 昨日といいますか、きょう未明のパウエル国務長官の国連安保理における演説でございますけれども、なかなかインテリジェンスの情報を出すということが困難な中で、国際社会に対してきちんと説明をしようと考えた米国の努力については高く評価をいたします。そして、今委員がおっしゃられたようなそういう情報が提供されたということについては、これを重視いたしております。私は、この演説を受けまして、外務大臣の談話というのも、その趣旨のことを申し上げて、出させていただきました。
 パウエル国務長官の安保理への情報の提示というのは、今までずっと言われてきたことですけれども、イラクが情報の提供についてこれを積極的に行っていない、十分ではないという国際社会の持っている疑念を裏づけるということであったと思います。それから、それだけではなくて、イラクが積極的に隠ぺい工作あるいは妨害工作をやっているということでございまして、イラクの大量破壊兵器を保有しているということについての疑念、これがますます強まったというふうに考えております。
 我が国としては、イラクの非協力的な態度が改められない限り、効果的な査察を実施していくということについては期待ができないのではないかというふうに思います。
 この問題を平和的に解決をしていくために、イラクが積極的に開示をしていく、懸念、疑念を晴らしていく、そういった行動をとって、大量破壊兵器等に関する国際社会の懸念を積極的に晴らしてほしい、これを強く求めたいと考えております。
麻生委員 二時過ぎだったと思いますが、ほぼ最後の段階でパウエル長官が、一四四一は戦争に突入するための決議ではない、平和を守るための決議であると述べておられた認識は、私も正しいと思いますし、みだりに戦をけしかけるような言動は厳に慎むべきというのは当然だと思っております。
 しかし、同じくそのセンテンスで、同時にイラクは最後のチャンスを無視したと述べて、サダム・フセインの世界に対する脅威とイラク国民に対する弾圧等々について、抑圧はもはや外の力でとめなければ自分でとめることのできる状況ではないと述べた指摘は、具体的な数々の事例を示しておりましたので、見ていて説得力に富んだ言葉と私には映りました。
 日本の場合、このことに関してできること、できないこと、いろいろあろうとは思いますが、世界の平和と安寧のために、自由で民主的な社会を守るためには、これはアメリカの同盟国としてふさわしいきちんとした対応をすべきだと考えておりますので、総理の御見解を伺っておきたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 私も、昨夜といいますか深夜、国連安保理でのパウエル・アメリカ国務長官の報告を伺っておりまして、イラクの大量破壊兵器に関する疑惑というものは深まっていると思いました。
 今週末、査察委員長、ブリクス委員長と、それからエルバラダイIAEA事務局長がイラクを訪問して、その後、また国連に状況を報告するということでありますので、日本としても、イラクが一四四一国連決議に違反を犯しているという国際社会の共通した認識、これにいかに誠実にこたえるかということが問われているぎりぎりの段階に来ている、平和的解決をもたらすことができるかどうかというのはイラクが握っているという状況におりまして、私は、日本としても、国際社会の一員として、また日米同盟国として責任ある対応をしていかなきゃならない。
 特に、これは同時に、今までの国連の決議、国際社会の一致した決議が履行されていない、国連が問われているという事態でもございます。日本として責任ある対応をしていきたいと思います。
麻生委員 ありがとうございました。
 それでは、今回提出されております政府の平成十五年度予算原案につきまして、主に経済不況問題並びに教育問題等々について質問をさせていただきたいと存じます。
 まず最初に、これは担当の塩川大臣もしくは竹中大臣にお答えいただきたいと思いますが、今言われております不況というものの本当の原因は何とお考えでしょうか。
塩川国務大臣 やはり根本的には、名目成長と実質成長との差、つまり、名目成長が余りにも実質成長より低いというデフレ現象にある、これが一つはあると思っております。
 それからもう一つは、企業が不良債権を相当抱えております、設備等において。これの償却が十分進んでいかないので新しい投資が難しいということ。
 三番目には、金融機関が不良債権の処理に相当なやはりダメージを受けて、それの整理がなかなか思うように進まないということと、そういうところが複合したものだと思っておりまして、それに世間の空気がやや、何といいましょうか、悲観的な見方を先行的に行っておるということ。
 ですから、先行きに対して希望を与えていくということが一つの大きい経済政策の柱ではないか、そのように認識しております。
麻生委員 基本的には、いわゆる実需不足、名目成長、実質成長率、デフレということだということを言われたいんだと存じますが、私は、基本的には、デフレも結果であって不況の原因とは言いがたい。
 不況というものは、少なくとも我々は過去七十年間デフレをやったことがありませんので、デフレイコール不況、インフレイコール好況という、何となく漠然とした認識がありますが、戦後一貫して、もしくは昭和二年、高橋是清内閣以後、日本はほぼ一貫してインフレ下でありました中でも、不況もあれば好況もあったということでして、したがって、逆に、デフレであっても、不況もあれば好況もある。中国では四年連続いわゆる消費者物価がマイナスになっておりますが、少なくとも経済成長率は七%を記録しておるという実態は、デフレだから不況とは限らないということだと思っております。
 以後は、見解を自分なりに申し述べてみたいと思いますが、少なくともデフレというものに目がどうしても行きますが、今回の国際的な不況に陥った最大の理由は、基本的には二つだと思っております。
 一つは、冷戦という戦争が終わった。これによって東側、いわゆる社会主義経済圏から大量の労働力、かつ安くかつ若く、優秀で労働意欲の高いいわゆる労働人口が大量に西側に流れ込んだ。特に日本の場合、地理的に中国に近かったために、この影響は極めて大きく、結果として労働賃金の引き下げにつながった、大きかったと思っております。これは、国際情勢からそうなったんだと思いますが、加えて国内情勢もあったのではないか。
 それは、基本的には総量規制。総量規制、もうお忘れかと思いますが、一九九二年に実行されたいわゆる規制でありますけれども、資料の配付をさせていただきたいと思いますので、許可をいただければと存じます。
 いわゆる総量規制というものが始まりましたのは九二年ですが、これが出てこざるを得なくなったもとは、一九八五年、プラザ合意において、当時一ドル二百四十円だった円が百二十円に暴騰という結果になって、当時、円高不況という名が日本じゅうに蔓延したんです。
 これに対応するために、円というものの方が高くなった、輸出が大変だということが円高不況のもとだったと思いますが、円高不況ということになって、これに合わせて、当時、日本銀行は金利、公定歩合、五%だったと思いますが、その五%を一年間で五回、〇・五ずつ引き下げて、二・五%まで金利を下げております。
 この結果、八六年以後、いわゆる景気というのは戻るんですが、その資料を見ていただきましたらわかりますとおり、その真ん中に引いてあります、一〇〇と書いてありますが、そこまでは一貫してGDPの伸び率と土地の値上がり率は全く同一、軌を一にしておるということを意味しております。それ以後、いわゆる一九八五年、プラザ合意が起きました以後、一挙に点々が上がっておりますが、それは東京都におきます商業用地の地価でありまして、それが一挙に暴騰を開始します。それがいわゆる土地バブルと言われたものでありまして、その下に書いてあります二二七というのは、全国の商業用地の平均がそれだけ上がった、いわゆるバブルの発生というものはこれを意味しております。
 御記憶かと思いますが、株も同様に上がりまして、その当時、株は、御存じのように、三万九千九百八十円を一九八九年十二月の二十八日につけたんですが、そういった状況下にあったんですが、株は九〇年を境に下がり始めます。
 しかし、土地はさらに上がり続けました。そして、それに合わせて、政府としては、総量規制という名のいわゆる土地に関する融資もしくは規制、税制の大改革をやって、そこに書いてありますように、平成三年、いわゆる一九九二年以後、土地は急落を始めます。そして、それがずっと右に点々が下がっておりますが、下がったところとGDPがクロスしておりますのが平成六年、一九九四年ということになります。
 これで、いわゆる総量規制としては、ここまでで十分に効果が上がったということでありまして、基本的には、この段階で総量規制というのは外しておけば今日ほどの土地の暴落を招くことはなかった、私は基本的にはこれが一番大きな理由だったと思います。
 当然、この土地の下がった段階で、大蔵省主税局等々は、土地を担保にしか金を貸すというルールになっておりません日本の銀行にとっては、その預かっております担保というものの価格が暴落したわけですから、当然のこととして、勘定でいえば、いわゆるバランスシートの右側、借方の方に大量の特別損失が立つことになりました。
 主税局としては償却ということを言ったんですが、御記憶のように、国税庁としては、一挙に収入、税収が下がるということになって、それは財政運営上極めて大きな問題であったがために、償却を推進することをとめた、もしくは償却をなるべくしないようにさせた。結果として有税償却ということになりますので、有税で償却する人はほとんどありませんし、世界じゅうでもそういうことがありませんので、不良資産の償却が進まなかった。そういったものが結果として不良資産をたくさんつくることになっていったというのが歴史だと思っております。
 そこで、政府としてより党としては、その当時、政府・与党として、これは償却を進めないとえらいことになるというので、どうして進まないのかというのを調べた結果、これは有税償却というのであり、国税庁と主税局と意見が違っているということを我々は理解したものですから、九六年から九七年にかけて、これをいろいろ話をして、結果的にできましたのは、無税償却というのにどうしても反対をされたために、勘定科目の左側の方にいわゆる繰り延べ税金資産という特別な勘定科目を立てて、これをいわゆるびほうした、びほう策を用いた。その結果が、九兆円に及ぶ繰り延べ税金資産のたまりにたまっていった背景だ、私はそのように理解をしております。
 私の申し上げたいのは、その土地の値下がりというものがいわゆる不良資産を招き、土地の資産が下がったがために、それを担保に金を借りている一般企業は、担保力が不足したために、銀行から増し担保、追い担保を要求される。対応ができないと不良債権として言われることになるから、銀行は貸した金の引き揚げを図る。これが貸し渋りにつながり、そして貸しはがしにつながり、不良債権としては、さらに土地の値段がずっと下がり続けておるわけですから、そういった意味では、不良債権を今の段階で切っても、また数年したら不良債権が続くことになるということにならざるを得ない状況にある。
 したがって、問題点は、この土地の価格の急激な値下がりというのが、不良債権に限らず、今回起きております不況というものの非常に大きな原因であって、国際情勢もある、しかし、国内の規制によって結果としてそれができてしまっているという点も、これは忘れちゃいかぬ大事なところであって、これが解消されない限りは、土地の値段が下がっている限り、幾ら、仮に今不良資産がなくなったとしても、二年、三年すれば、土地の値段が下がっていれば不良債権が続くことに、また発生することになるということでありますので、これはどう考えても、この点を断ち切らなければいわゆる不況というものの根本が直らないのではないかという感じがしますので、いわゆる土地に関する無税償却の点が一点。
 そして、いわゆる銀行にたまりにたまった繰り延べ税金資産は九兆円になっておりますので、この九兆円は、いわゆる現金じゃなくて名目で積んであるだけですから、そういった意味では、これは、繰り延べ税金資産を戻すとか、そういったような形の対応がなされる必要があるのではないか。
 これがいろいろな意味での不況対策になるのであって、根本は、この土地の価格の暴落をいかにしてとめるかという点に最大の関心を置くべきだというように感じておりますが、財務大臣の御所見をお聞かせいただければと存じます。
竹中国務大臣 銀行の償却の話が含まれておりますので、まず私の方から答弁させていただきます。
 バブルの生成から崩壊に至るそのプロセス、さらには、現下の不況の基本要因としての土地の問題、私自身も、麻生委員の御指摘のとおりであるというふうに思っております。
 ただ、土地の問題に関しましては、そもそも過去四十年の間に、消費者物価が五倍になる間に住宅地が二百二十倍になっていたというその調整の部分も含まれておりますので、これはなかなか一筋縄にはいかない面がございます。それにしても、土地の資産価格を高めることが重要であるということから、都市の再生でありますとか、今回の税制の改革でもそれに関する御審議をお願いしようとしている、この点は私たちも大変重視しております。
 もう一点、土地に絡む問題でありますけれども、繰り延べ税金資産の問題。これも委員御承知のように、実は、金融庁としては、まさに繰り延べ税金資産というのは、もちろん資産性があるからバランスシートに立てている。しかし、今後収益を上げることができるかどうかという観点から市場からなかなか厳しい目で見られているということも事実であるから、この繰り延べ税金資産という資産をはっきりとした現金に変える方法がないわけではない。それはまさに繰り戻し還付をしていただくことであり、これについては、金融庁としては、要求官庁でありますから、そういう考え方があるということを主税局にはお願いしているという状況でございます。
 もちろん、この問題そのものはより高い次元からの御判断をいただかなければいけない問題であるというふうに思っておりますが、いずれにしても、土地の問題、それと繰り延べ税金資産、税制の問題等々についての問題意識は非常に強く持っておりまして、その中で対応をしていきたいというふうに思っております。
麻生委員 土地税制というものにつきましては、これは、基本的にバブル以前の土地税制と今とは全く違っておりますので、その意味で、かなり国税の部分では大幅に修正がされたところもあります、事実、あれ以後。だから、すべて全く動いていないというほど無知なことを申し上げるつもりはありません。
 ただ、これは地方税も含んでおります話ですので、簡単にいく話ではないんですが、少なくとも、今回のこの政府が出されておりますいわゆる税制改正というものが成立をいたしますと、これは不動産取得税、登録免許税、特別土地保有税、それから事業所税等々いろいろなものが大幅に、時限立法、もしくは軽減されたり廃止されたりするんだと思いますが、今後とも固定資産税というものが非常に大きな要素だと思います。
 ちなみに、そこに書いてあります、資料のところの二ページ目を見ていただくとわかると思いますが、固定資産税というものはこの十年間の間にこれだけ大きなものになっておりまして、平成六年度で二四・九%が平成十四年度では実に六〇・二%ということになっておりますので、土地というものが下がったにもかかわらず払っておる固定資産税はどんどんふえておるというところが、土地を持っておられる一般庶民の方々の住宅を含めてこういうことになっておりますのが、何となく納得のいかないところだと思っております。この点につきましては、各県ごとに出してありますので、その県の内容もあわせて御参考にしていただいて、今後ともこの問題について、いろいろ、土地税制というのは非常に大きな要素を占めるという点だけ御理解いただき、今回の不況の原因が土地というのが非常に大きな要素だという点をぜひ御理解いただきたいと思います。
 次に、中小企業に関して平沼大臣に伺わせていただきたいと思います。
 資金繰り、これはお役所にない言葉ですので、資金繰りという言葉はなじみのないところなんですが、企業を経営する者にとりましては、損益はもちろん大事ですが、資金繰りは極めて大事であります。今、中小企業で倒産の内容は、損益の倒産よりも、資金繰りがつかないために倒産もしくは会社をやめる、閉鎖するという数が多いんだと思いますが、このことに関して、中小企業庁では、いわゆる特別融資やら何やらを確保されておられますが、今回新たにセーフティーネット保証とかいろいろな形で保証枠をふやしておられると思いますので、私は、これの効果は極めて大きいのであって、どの程度これがいわゆる中小企業経営者に行き渡っているのか知りませんが、これは非常に効果の大きいはずだと思いますので、今上がっております実績、これまでの経緯等々を教えていただければと存じます。
平沼国務大臣 麻生先生にお答えさせていただきます。
 今の厳しい経済情勢の中で、中小企業の皆さん、必死に頑張っておられます。そういう中で、御承知のように、既に、第一次の貸し渋り、貸しはがしが起きましたときには、今ちょっとお触れになりましたけれども、特別保証制度というのを創設させていただき、三年間で三十兆という枠でやらせていただきました。結果的には、中小企業の三分の一を超える百七十二万社が利用していただきまして、その間、倒産でありますとかあるいは失業というのは相当私は防げたと思っております。保証枠も二十八兆九千億、こういう形で第一次、終了しました。
 しかし、その後、今御指摘のように、デフレ傾向が非常に進んでおりますので、私どもといたしましては、セーフティーネットの拡充ということに努めてまいりました。特に、さきの臨時国会の中で、中小企業信用保険法、こういったところを改正いたしまして、一般保証という形で、私どもは政府系金融機関を通じてのセーフティーネットの枠を拡大してきたところであります。
 そして、成立をさせていただきました補正予算の中では、今回私どもは、四千五百億の財源を確保いたしまして、そして十兆円の規模のセーフティーネットを構築する、こういうことで、これはもう予算を成立させていただきましたから、可及的速やかにその対策をとろうと思っております。
 その中で一つ、これは評価をしていただけることだと思いますけれども、今一生懸命返済をされているんですけれども、その返済になかなか苦労されているわけです。そこで、新たにこの四千五百億の枠の中で借りかえ制度というのをつくらせていただきまして、そしてその借りかえ制度によって、具体的に言いますと、例えば、一年以内に六百万返さなければならないという方は月五十万ずつ返済をしなきゃいけない、しかし、これを今度は五年という幅でやりますと、そうしますとそれは月十万の返済でいいということに相なります。
 そういった形で、非常に返済を容易にする借りかえ制度というのも創設をさせていただきまして、今、やる気と能力があって、この厳しい中で一生懸命頑張っておられる中小企業に対して、さきに成立させていただいた補正予算の中ではそういったきめ細かい対策もさせておりますし、また、今回のいわゆる平成十五年度の予算の中でもさらに中小企業に対しては私どもしっかりとやらなきゃいけない、このように思っているところであります。
麻生委員 今の話で、ちょっと重ねて、そういうことになっているんだとは思いますけれども、新しく借りたものの保証のほかにも、いろいろ過去、例えば売り掛け債権に関する融資とかセーフティーネット保証、特別保証、いろいろなものがあるんですが、それは全部、今度の十兆円の中では、その他の分もそちらの方に振りかえられることは可能ですか。
平沼国務大臣 今、主に借りかえ制度その他は補正予算の対応で言わせていただきました。そして、売り掛け債権担保の融資制度というのは、当初はなかなかPRも不足だったし、使い勝手も悪かった。私どもは、そこのところを累次にわたって是正をしてまいりまして、今非常に利用件数もふえてきた、こういうことでございますので、そこはさらにふやしていきたいと思っております。
 また、今御指摘の特別保証というのは三年限りでやめておりますけれども、新たなそういういわゆるセーフティーネット保証・貸し付け、こういったことは引き続きしっかりとやらなきゃいけない、このように思っております。
麻生委員 先ほど、最初、土地の話もしましたが、日本の場合は、基本的に、土地という担保に金を貸す、少なくとも、何か仕事をするからという、その事業に金を貸す、いわゆるプロジェクトにファイナンスするんじゃなくて、土地にファイナンスするという歴史が長いこと続いております。
 プロジェクトにファイナンスしているのはむしろ商社金融であって、いわゆる金融機関とは少し違っておる中にあって、商工中金とか中小企業金融公庫、国民金融公庫等々は、いずれもこれはゼロのとき、仕事を始めた全くゼロの人たちに対して無担保で金を貸すというのをやってきた中から、例えば、今大きくなりましたビックカメラ等々は、これはいずれも、国民金融公庫に最初百五十万金を借りてビックカメラというのは始まったそうですが、そういった、最初に金を借りるときは無担保で金をお借りしているので、これは大丈夫だ、この仕事は大丈夫です、このやっている男は大丈夫だからという、金を貸す審査能力というのが、土地を見て貸すのと、その事業内容と人を見て金を貸すのとでは根本的に違うところだと思いますので、そこらのところが、むしろ政府系金融機関の方にそういった人が育っておる、銀行の方に育っていないんじゃないかという危惧があるんですが、その点に関してはどのように思っておられますでしょうか。
平沼国務大臣 従来、土地担保主義という形で、土地担保ということを非常に念頭に置いて融資をしておりました。そういう中で、特に中小企業に対して、先ほど麻生政調会長御指摘のように、非常に資産デフレの中で土地の担保力というのはなくなってきて、さらに厳しい状況になってきました。
 そこで、私どもとしては、やはり土地担保主義から脱却するために、政府系金融機関で、国民生活金融公庫で、新しく業を起こす、創業をする方々に対しては、一切土地担保はやめて、むしろ事業計画に着目をいたしまして開業資金を出そう、こういう制度をつくりまして、これが始まりまして、従来の十倍のスピードでそういう新しい企業が誕生しているという実績が出てきました。
 ですから、御指摘のように、そういった融資の場合にはやはり目ききの人たちがいないといけないわけでございまして、そういう目ききの人たちの養成も含めて私どもはこの点も努力をして、ただ単に、それは国のお金ですから、むやみに貸すという形じゃなくて、しっかりとした事業計画と意欲を持っている、そういう事業者のパーソナリティー、そういったことにも着目をして私どもはここを拡大していかなきゃいかぬと思っております。
 また、従来は、資本金の問題で非常に制約がありました。株式会社は一千万最低必要だ、有限会社は三百万必要だ、こういうことでございましたので、ここもこの前の改正におきまして非常に緩和をいたしまして、極端に言えば、一円からでもいわゆる会社を起こせる、こういうことで始めさせていただいて、実は、まだ一件ですけれども、一円の資本金で申し出がございまして、そういう中で私どもは頑張っていかなければならない、このように思っております。
麻生委員 ありがとうございました。
 次に、遠山文部科学大臣に話を聞かせていただきたいと思うのですが、教育基本法。
 これは、総理大臣の過日の衆議院における所信表明演説にも触れられておられたと思いますが、まず、教育基本法の考え方について、基本的なところを拝聴させていただきたいと存じます。遠山文部大臣にお願いします。
遠山国務大臣 我が国の教育は、常に国民の資質の向上のためにしっかりした成果を上げてまいったと思っております。しかしながら、教育の根本を定める教育基本法につきましては、個人の尊厳でありますとか、真理あるいは正義を大事にしていくその思想というのは、これは不変のものであると考えております。
 その根本法をベースにしまして、いろいろな教育制度を整え、今日までやってまいりました。しかしながら、二十一世紀に入りまして、新たな世紀をしっかりと担っていく子供たちをどのように育成していくかということは、大変大きな問題だと思っております。
 そのときに当たりまして、今私どもは大きな教育改革をやっておりまして、昨年の八月に出しました人間力戦略ビジョンのように、これまでのような画一と受け身から自立と創造へということを目指す大きな改革を進めております。しかしながら、同時に、教育にまつわるさまざまな問題が出てまいっております。そういったことを考えますと、その根本法たる教育基本法はどうあったらいいかということを真剣に考えていく必要があるわけでございます。
 そこで、今、私から諮問をいたしまして、中央教育審議会において、これからの教育の基本法の見直しはどうあったらいいかということについて御議論をいただいております。その中には、御議論の経過を見ますと、やはり日本を担っていく子供たちは、我が国の豊かな文化であり伝統であり、そういったものをしっかりと学び、あるいは公共の精神というのをもっと持っていく必要があるのではないか等々の、さまざま有益な御議論が今交わされているところでございます。
 昨年の十一月に、中央教育審議会から中間報告を得ました。その中間報告をベースにいたしまして、一日中央教育審議会でありますとか、あるいは国民の皆様からさまざまな形の御意見を伺い、また有識者からの御意見も伺って、今、それらをベースにした上で、広く国民の御議論を踏まえた上で、その取りまとめの御議論をいただいております。かなり詰めた、しかも実りのある御議論をしていただいていると思っております。
 私といたしましては、中央教育審議会の答申を得まして、そして、その段階においてしっかりとこの見直しの問題に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
麻生委員 この教育基本法というものは、御存じのように、これは戦後、教育勅語にかわるものとして、昭和二十二年、憲法に先立つこと数カ月早く成立させた経緯というのがあるんですが、時代背景は、もう御存じのとおりで占領中という状況。また、それ以後の国際情勢はもうえらく変わっておるのは御存じのとおりで、中を読みましても、これはどう考えても生涯教育を考えているとはとても思えぬし、そういったようなことで、これは小中学校を対象に考えられた教育基本法だというのはわかるところですが、今は生涯教育というのが言われている状況下にあって、大学というものも、九十九ありました国立大学は、この際、いわゆる独立大学法人というものに変えて、いわゆる国立大学の先生は非国家公務員にするという法律が今出されておるように思いますが、問題は、昔期待されていた学生像もしくは日本人像と今とは結構違っておるのではないか。
 少なくとも、これだけ国際競争が激しくなった時代の中にあって、その国際競争の中に生き延びていけるような日本人、学生、そういったものをいかにしてつくるかという中にあって、私どもは、そういったものは需要側にある、社会側にある、社会が需要とするなら、需要側としてはそういう需要があるのに対して、それを供給する側の学校において従来どおりとは少し違った形になってきていると思っているんですが、今回の国立大学法人、何とか大学法人の内容については、これをどのような成果を期待しておられますか。
遠山国務大臣 確かに麻生委員の御指摘のとおりに、これからの二十一世紀を考えますと、知の世紀と言われておりますが、その知の世紀において日本を担っていきますためには、知の拠点である大学の役割というのは非常に大事だと思っております。もちろん、その大学に至るまでの初等中等教育の充実も重要でございますけれども、大学につきましては、今おっしゃいましたように、私としては、やはり本当にすぐれた教育を展開して、実際にもかつまた理論的にも役立っていく、あるいは国際的な競争力も持つようなそういう人材を輩出していくこと、そして最先端の教育も研究も実施していただくこと、同時に社会貢献もしていただく、そのような使命を持った大学というものをつくっていかなくてはならないと思うわけでございます。
 そのようなことから、一九九〇年代から大学改革をかなりのテンポで進めております。規制改革あるいは制度改革によって、それぞれの大学が個性を持って輝くようにしていく、それの大学の努力を通じていい人材を育成していくということで、かなり大学側の努力は今実りつつあると思っております。
 しかし、その大学改革をさらに前進させていくために、十三年の六月でございますか、私としましては、大学の構造改革の基本方針、小泉内閣のもとで出させていただきました。そこでは国立大学の法人化、国立大学の再編統合、そして第三者評価に基づく重点的支援といったようなものを柱にいたしております。
 それで、今お話ございました国立大学の法人化につきましては、昨年三月に有識者による調査検討会議の報告も得ましたので、それを実現に移すべく今全力で準備をいたしております。ぜひとも今国会でこの法律を通していただきまして、それによって国立大学は非公務員、あるいは法人化することによって、従来のともすれば護送船団方式でありましたものから脱却をして、真に社会が要請するそういう人材をつくっていく大学であるように、私どもも努力いたしますし、大学側も今努力が進んでいるところでございます。
麻生委員 今の大学法人関連で、特区に関係をするところだと思いますので、鴻池大臣に次に伺ってみたいと思います。
 日本の場合、大体カリフォルニア州一州ぐらいの国土面積ということもこれあり、大体、全国何でも一律にやることになっております。時差でも結構、正確には二時間少々時差があるところでも全部同じ時間にしていますし、いろいろな意味で、この国の場合は全国何でも一律でやることになっておりますが、これだけ価値観が多様化してくると、なかなか全国一律とはいきにくくなってきたのが一点。もちろん温度差、気候差もありますが。
 そういった意味では、これだけ価値観が多様化してくると、いろいろな意味で新しい試みというものをやってもいい。ただ、全国一律でやると、失敗すると話が込み入りますので、まず特区ということをやろうというアイデアは、私は極めてすぐれたアイデアだと思っているのです。
 そのアイデアに関しては、役所が考えるアイデアではなくて、民間に広く、どういった特区、どういった規制、どういったものを変えたら新しい仕事が生まれるか、新しい需要が生まれるか。そういったような話で全国にいろいろアイデアを募られた結果、かなりな数が集まったと新聞報道では承知していますが、それを実行するに当たって、既得権益がなくなる側から見れば、抵抗勢力としていろいろなものが出てくるのは当然だと思いますので、私どもとしては、どういった点が今問題になっているのか、もしくはどういった抵抗勢力等々がそこらのところはとめているのか。役所の反対もあるでしょう。いわゆる規制を、既得を失う人たちにとりましてもいろいろな問題があると思いますので、その点につきまして、今の現状を鴻池担当大臣に聞かせていただければと思っております。
鴻池国務大臣 特区構想というのは大変すばらしいアイデア、このように麻生政調会長御発言でございましたが、もともとこの特区構想については、平成十三年の十二月に麻生提言という形で一発出てきた、言い出しっぺが麻生太郎政調会長である。その後、平沼大臣等御賛同があって、特に私はお礼を申し上げなきゃいかぬのは、自民党の中に特命委員会をおつくりいただいて、この推進方を特に野呂田委員長を中心にしていただいているということに大変感謝をいたしているところであります。
 おかげさまで、第一次募集をいたしました四百二十六の提案から、一月十五日に締め切りました第二次提案、これが六百五十一の御提案を地方、民間からちょうだいいたしております。これを宝物のように我々は取り扱いまして、各省庁に規制の緩和あるいは規制の撤廃をお願いいたしておるところでございます。ただいま進行中でございますが、第一次提案につきましては、四月の中ごろにはこれを第一回の特区として総理が認定するという運びと相なっておるところでございます。
 抵抗勢力のお尋ねでございますけれども、この話を推進しておる間にいろいろなことが報告されておるわけでございますが、一部の人あるいは一部の党を除いて、ほとんどの国民の皆さん方、政党がこの構想については賛成をしておる、こういうふうに私どもは受けとめさせていただいておるわけでございますが、その中においても、やはり今麻生委員のおっしゃいましたように、どうしても権益を放したくないという勢力がそこにうごめき回っているというふうに見えるわけでありまして、時代錯誤も甚だしいというふうに思います。いまだに、我々は代官であって、民百姓の言うことはけしからぬ、このような感じの動きというものがかいま見えるわけでありまして、いずれは水戸黄門さんあたりが出てきていただいて、そういう成敗をしなきゃいかぬのではないか、こういう状況であります。
 いずれにいたしましても、できる限り、できないものはどうやったらできるか、これを真剣に取り組んでいく所存でございますので、どうぞひとつ後々の御支援をお願い申し上げたいと思います。
麻生委員 基本的には、これはいろいろ成功例もあれば、多分失敗例も出ると思います。それは構わぬのであって、少なくとも、カリフォルニア州で電力の自由化もしくは通信の自由化をやって失敗しました。あのカリフォルニア州の例は州でやって失敗だったと思いますが、それを反省材料にして、テキサスではそれをうまくやって成功させているということでありますので、失敗したらどこが問題点だったのかという点だけを洗って、失敗したらすべてバツというのは、これはこの種の仕事では全然前に進まなくなりますので、失敗を恐れたら話にならぬと思いますので、新しい試みにはある程度失敗はつきものなのであって、その失敗によって国民の痛みがある程度出てくるのをどうやって和らげながら、失敗をまた糧として成功させていくかというのは、これはかかって政府の姿勢の問題だと思います。
 これは、わざわざ担当大臣を指名された小泉総理のバックアップがぜひとも必要というところだと思いますので、その覚悟だけ、ぜひよろしくお願いしたいと思いますので、こんなことまで聞くのはいかがかと思いますが、小泉総理のこの特区に関する御見解なり御支援なり御決意なりを拝聴させていただきたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 規制改革の一環として特区構想を取り上げておりますが、今鴻池担当大臣が話されたように、精力的に地域の意欲を生かしていこうという前提で進めております。
 失敗もあり得べしというお考えでありますが、私も施政方針演説で述べたように、大事なことは、失敗しないことではなく、失敗を次の成功に生かすことなんだということでありますので、いろいろな意欲を生かして規制を改革するとこういう活力が出てくるんだという成功例がどんどん出ていただくような、しっかりとした構想を特区として取り上げていきたいと思っております。
麻生委員 それでは、最後になりましたけれども、やはり今いろいろな意味で、敗戦後五十七年もたちましたし、冷戦も終わったし、世紀も変わったし、いろいろな意味で世の中が変わって、アメリカも一九三〇年代以降初めてのデフレ傾向を示すところまでになるほどの騒ぎというので、いろいろな意味で情勢が変わっておる中にあって、日本も、それに合わせて戦後つくり上げてきた構造を変えるということだと思います。
 いわゆる構造改革なくして成長なしという言葉は、これは小泉総理の言葉が極めて簡明なんですけれども、簡明過ぎて本質的な意味が伝わらぬ部分もあるという例の一つとして、私は、日本の構造で今一番問題なのは、経済産業省でいえば、いわゆる高コストの構造。日本が物をつくり、そして国際競争をやっていくに当たっては、コストが高い、税金が高い、土地が高い、人件費が高い、規制がやかましい等々のそういったものは、結果として日本で物をつくる構造を高くしております。この高コスト構造を改革して、そうすることによって日本にいわゆる産業が残り、そしてそういったものがいろいろな形で出ていくような構造改革というところが、いわゆる構造改革なくして成長なしという意味の本質だ、これは私なりの理解なんですが、そういうぐあいに理解をしているんです。
 そういうところからいくと、私どもは、やはりこの五十年間、日本の場合は主に輸出、主力エンジンは輸出と設備投資でやってきたんだと思います。補助エンジンが多分、公共工事と低金利。金利を安くするという金利政策で、補助エンジンで日本の場合はずっと来たんだと思うんですが、世界じゅうの経済が大きく、いわゆるグローバル化というのがよく使われますけれども、それになった結果、そこらのところの主力エンジンの力が落ちてきて、かわりに、補助エンジンでずっと支えたこの十年だったんですが、補助エンジンだけじゃちょっと疲れてきまして、かわりの主力エンジンがよく見えてきていないんだという感じになっているんだとは思いますが、その主力エンジンたるべきものは、やはり基本的には個人の消費、そして住宅というものが非常に大きな要素を占めるんだと思っております。
 住宅は、日本の場合は消費です。しかし、先進国ではほとんど住宅は投資というぐあいに観念でとらえられていると思うんですが、日本の場合は、この住宅というものに関しては、いろいろな意味で、今まで貧しい時代、焼け出されたあの時代、そういったときには、何となく屋根があって雨露しのげばよろしいというような住宅事情から、猛烈な勢いで今は住宅に関する需要の内容が極めて多様化しております。
 加えて、家族が大勢という前提でつくったうちが、一人去り二人去り、残ったのはじいちゃんばあちゃん二人きりということになって、そのでかいうちはなかなかほかに転用ができない、そしてそのでかいうちの中にいる。だったら、そこらがうまく住宅がこう移り変わっていくようなところを考えないと、これは住宅が、早い話が回転せぬわけです。そこらのところが、田舎なんかで起きております一番大きなあれはこれですよ。
 そこらのところが、いわゆるリバースモーゲージとかいろいろな表現が今出てきていますけれども、こういったものを含めて、これはどう考えても、考え方を変えていって実需というものが出てこないと、何となくデフレをインフレにするためにインフレターゲットなんて、金さえばらまけばインフレになるような話は、これは経済が余りよくわかっておられぬ方の話で、私は、基本的には、実需というものが出てこない限りはいわゆるデフレがインフレに変わるはずはないんであって、今設備投資の方と、不況というのは、常に供給力が多いか需要が多いか、どっちかが、需要が強くなればインフレ、供給が強くなればデフレになるというのは経済の原則の基本みたいな話で、これはもう学生時代みんな習われたと思いますが、これはもう基本的に今もいつも全然変わっておらぬ話で、不況は、常にこのバランスがおかしくなったときにどっちかになるというので、今は明らかに需要がどう考えても供給を下回っておるというところが最大の問題だと思います。
 ぜひ、今回の予算もしくは税制改正を見ておりますと、そういった方向に関して少しいろいろな意味での光明が出てきたかなと思いますので、扇先生のところの相続税等々の関係で、いわゆる住宅関係の投資が促進されやすいようになっておりますけれども、こういったものが、法案が通りました後ひとつぜひ積極的に、政府としてもこの種の需要の大きさを御理解いただいて、広告宣伝もしていただかぬと、あの話は新聞でちょろっと見ただけで、あの新聞を読んでわかっている人はほとんどおらぬと思うんですね。書いている新聞記者も余りわかっておる風がありませんから、読まされる方はもっとわからぬということになっている内容だと思いますので、あれはわかりやすく扇先生あたり、絵か何かできれいに示していただいて、こういったものだ、これは税制ですから主税局も関係しているんだと思いますけれども、ぜひそういったようなものは、党としては今、やるべく努力をいたしておりますので、ぜひ、政府としてもこの法案が通りました後はよろしくお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
藤井委員長 この際、自見庄三郎君から関連質疑の申し出があります。麻生君の持ち時間の範囲内でこれを許します。自見庄三郎君。
自見委員 通告をいたしておりますので、小泉内閣総理大臣に質問を一題させていただきます。
 外交でございますが、今、麻生政調会長からも質問がございましたが、イラク情勢について一問質問をさせていただきたいと思っております。
 イラクの大量破壊兵器をめぐる問題は、我が国を含む国際社会が一致団結して取り組まねばならない大変大事な外交課題であるというふうに私は思っております。
 イラクは過去に、実際に化学兵器を使用したことがございますし、イラクはまた十年以上にわたって、大量破壊兵器の廃棄等を求める国連の安全保障理事会の決議を履行いたしておりません。先般の安保理においても、イラクは大量兵器に関する疑惑を解消するために十分な協力を行っていないなどの報告がなされております。
 実は一昨年、衆議院の予算委員会の、当時は野呂田芳成議員が委員長でございましたが、衆議院の予算委員会のメンバーの一人として、きょうおられます原口議員、井上議員と私も、実際にイラク・バグダッドに行かせていただきまして、イラクの副大統領を初め要人と会見をさせていただいたわけでございまして、日本の国会議員としては十年ぶりの訪問であったということを聞かせていただいております。
 その際の、私が実際にイラク・バグダッドを訪問させていただいた経験を踏まえても、やはり私は、イラクが国際社会の懸念あるいは疑惑を完全に払拭することが必要であり、今後、継続されるであろう査察を妨害することなく能動的に疑惑を解消し、みずから武装解除を行うことが必要だ、こう私は思っております。
 それで、総理に御質問でございますが、昨日、今朝でございますが、国連の安保理においてアメリカのパウエル国務長官が、イラクの大量破壊兵器関連活動に関して説明を行ったわけでございますが、この説明に関しまして、今さっきの質問とダブるところがあるかと思いますけれども、概要はいかがなものであったのか、また、日本国政府はこの説明を踏まえて今後どのように対処するのか、小泉総理にお伺いしたいと思っております。
小泉内閣総理大臣 私は、パウエル国務長官のあの報告を伺いまして、イラクの大量破壊兵器に関する疑惑はさらに深まったと思っております。
 今後、ブリクス査察委員長、エルバラダイIAEA事務局長もイラクに行って協議をするようでございます。その後また、その報告を国連になされるということでありますので、そういう状況を見ながら、日本としても責任ある国際社会の一員として対応していかなきゃならない。
 特にこの問題は、イラクが一四四一国連安保理決議を誠実に履行するということが大前提であります。そうすれば平和的解決がなされるわけでありますので、今後ともその働きかけを、日本としてはアメリカ初め各国と協調、緊密に連絡しながら行っていきたいと考えております。
自見委員 いずれにいたしましても、小泉総理、大変重たい決断をせねばならない、そういった時期が来るかとも予想するわけでございますが、ひとつ、この日本国の置かれた状況、そして未来の歴史家の批判にきちっとたえるような判断をしていただきたい。いかなる判断を総理がされるにしても、我々、自由民主党の国会議員としてしっかり支えていきたい、こういうふうに思いますので、お伝えをさせていただきたいと思うわけでございます。
 さて、次に片山総務大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。
 ITでございます。情報通信でございますが、我が国において、将来取り組むべき戦略分野であるだけでなく、短期的な経済への波及効果あるいは景気刺激効果、さらに、雇用の拡大に非常に大きな効果があるわけでございます。
 昨年十月でございますが、当予算委員会で質問させていただいたとき、私は、総合的な景気対策の中で税制改革は非常に大事である、特に研究開発減税といわゆるIT減税の二つが重要であると質問をいたしました。この質問に対しまして、塩川財務大臣から、試験研究費に関する大幅な減税措置を講じたい、さらに、コンピューターの周辺領域についても大幅に減税をしたいという趣旨の説明をいただいたわけでございます。
 今回、それぞれ六千億円、合わせて一兆二千億円の減税が盛り込まれているところでございます。
 このうち、IT投資促進税制につきましては、御存じのように、ハード、ソフト、今回から初めてソフトが対象となったわけでございますが、両面から税制支援を行うもので、企業の事業効率化、高付加価値化等を促進し、我が国の企業全体の国際競争力の強化、ひいては、これは大変大事なところでございますが、我が国の社会経済の活性化に資するものであるというふうに私は思うわけでございます。
 IT投資促進税制の対象設備としては、パソコン、サーバー、ルーター、あるいはインターネット電話設備、今言うIP電話ですね、などのネットワークの関連設備、さらに地上波のデジタル放送受信施設、さらにソフトウエアが入っているわけでございます。
 今も放送しています地上テレビ放送のデジタル化について言えば、従来のアナログテレビ放送と比べて、はっきりくっきり、車の中でもちらつかない。私も先般、ちょっと試験車に乗らせていただきまして、車の中のテレビが全然、デジタルテレビだとちらつかないんですね。そういった中、また、御存じのように、受信者と発信者との間の交流が可能である。よく言われる双方向、こういうことでございますが、双方向性を持つわけでございまして、大変便利でございます。
 いよいよ、この地上テレビ放送のデジタル化がことしの末から東京、大阪、名古屋の地区で始まり、二〇一一年までには全国をカバーする予定だということをお聞きいたしています。
 それで、地上テレビのデジタル化に必要なアナログ周波数対策として総額千八百億円程度が必要だと見積もられておりまして、本年度の予算、そのうち百九十五億円が予算案に計上されております。さらに、デジタル化に要する設備投資額といたしまして、大体約一兆円の金が要る。内訳は、御存じのように、NHKが約四千億円、民放では、民放合計で五千六百億円が見積もられております。
 これらの投資によって、関係産業まで含めると、二〇一一年までだ、こう思うわけでございますが、約二百十二兆円の経済効果、あるいは七百万人の雇用が見込まれると言われておりまして、まさに私は日本経済の再生の切り札だというふうに期待をしておるわけでございますが、片山総務大臣に、地上波デジタル放送の実現、推進に向けて片山大臣の決意をお伺いしたいと思っております。
片山国務大臣 今、自見委員お話しのように、来年度の税制改正、年次改正で、ITネットワーク化促進税制ですね、投資促進税制は大変大幅な税制を採択していただいたことを大変感謝しておりまして、その中には、ハードだけでなくてソフトウエアも対象にする、デジタルの受信機も事業用については減税の対象にする。
 私は、画期的なことだ、こう考えておりますが、地上波のデジタル放送をやると決めたのは平成十年六月でございまして、自見委員が郵政大臣のときに地上デジタル放送懇談会の中間報告で決めたんですね。それを正式にきちっと法的に位置づけたのは、平成十三年度の電波法の改正でございまして、二〇一一年七月までにすべての今地上波のテレビをデジタルにかえると。
 お話がございましたが、今アナ・アナ対策という周波数変換対策を、デジタル化の前提でございますが、やっておりまして、二月、もうすぐ始めます。本年の年末には三大都市圏でデジタル放送が始まる、二〇〇六年には、三年後にはその他の都市圏でも始まる、二〇一一年の七月までには全部デジタル放送に移行する。今言われましたように、経済効果、直接投資が七十兆から八十兆だと思いますが、間接まで入れますと二百十兆を超える、大変な私は経済活性化の推進力になるのではなかろうか。一億台の今のテレビが全部デジタルにかわるわけですから、そういうことを含めて大変なことではなかろうか。
 お話のように、デジタルになりますと、大変画像が鮮明、音声は聞き取りやすく、また双方向で、テレビショッピングやクイズに参加したり、いろいろな申し込みができたり、あるいはデータ放送がいろいろ利用できるとか、あるいはお年寄りの方には音のスピードを変えることもできる。いろいろなそういう意味での効用があるわけでございまして、ぜひ我々としてはこれを進めたいと思っておりますが、問題は、デジタル放送の効用を国民の皆さんに知っていただく、これが一番大切なんですね。
 去年の七月に関係の方に集まっていただいてそういうアクションプランをつくりましたが、まだまだ国民の皆さんの理解が進んでいない、こう思っておりますので、一月末に改定版をつくりまして、特に、放送事業者だけじゃありません、メーカーの方、小売の方、あるいは自治体、私は、デジタルになると電子自治体もこのデジタルが使えるようになりますし、またそうした方がいいと思いますので、その意味で、大々的な国民の皆さんに対する周知徹底を図りたい、こう思っておりますので、よろしく御指導をお願いいたします。
自見委員 今の答弁の中で、デジタル地上放送の効用ですね、メリットが非常にありますが、なかなかこれがわかりにくいということで、今大臣からもしっかり国民の各層に知っていただきたいという話がありましたが、この点にしっかり力点を置いてやっていただきたいと思っております。
 次に、環境問題について環境省の大臣に、鈴木大臣にお聞きしたいと思います。
 総理も、小泉内閣総理大臣の施政方針演説の中で大変、私、多くの分量を割いて地球環境あるいは環境問題について敷衍をしておられる、こう思うわけでございますが、そういった中で、一つ環境問題について鈴木大臣にお聞きをしたいと思っています。
 今、南太平洋にあるツバルという島国がございます。これは温暖化による海面上昇で水没の危機に瀕しておりまして、約一万一千人の方がここには、島には住んでいるわけでございますが、二十年前から海面上昇ということで大変水害に悩まされ始めまして、最近では島の中が水浸しになって、主食である芋の畑が壊滅するということになりまして、とうとう住民の暮らしが成り立たなくなりまして、もはやもう水没は時間の問題である、こういう深刻な問題になりまして、ついにことしからニュージーランドへの移住が始まっているということをお聞きいたしておるわけでございます。
 国連の国際機関、いろいろな権威ある研究によりましても、過去百年間、温暖化によって既に約二十センチ海面が上昇した。そして、二十一世紀、あと百年近くたてば、地球の平均温度が五・八度上がるだろう。五・八度温度が上がりますと、海面が膨張しますから、そうしますと、大体、平均海面水位が八十八センチ上昇するということが、これは権威ある機関で推計をされておるわけでございまして、そうなれば、第二、第三のツバルが出てくることは確実であります。
 これは、多くの島国が水没するだけでなく、大陸にも甚大な影響が出まして、バングラデシュでは数千万人の移住を余儀なくされるのではないか、こう言われておりますし、また、お隣の中国の上海でも三分の一が水没するのではないかというふうに予想をされておるわけでございます。
 このように深刻な影響を及ぼす地球温暖化の問題は、全世界が今すぐに取り組まねばならない重要な問題であるということを私は声を大にして訴えたいわけでございますが、その取り組みの一つとして、先般、これは小泉総理の本当に決断でございましたが、京都議定書でございますけれども、これを決断していただいて日本国は批准をしたわけでございますが、先進各国に、地球温暖化ガス、五つございますが、その一つ、一番大きなボリュームを占めるのが二酸化炭素、CO2でございますが、排出の削減義務を課す京都議定書ですね、これはいろいろ右左ございましたが、小泉純一郎総理の決断で実はこれを日本国としても批准するということにさせていただいたわけでございます。
 これは、大変、人間が生産活動、経済活動で炭酸ガスを排出しておりますし、大体一年間に琵琶湖の水一杯分の重さの炭酸ガスを毎年毎年出しているというのが現状でございます。これをどうしても削減せねばならないということが、私は今喫緊の課題だ、こう思うわけでございます。
 これは、具体的な数字を申しますと、一九九〇年比で六%の炭酸ガスを削減するということが京都議定書の中で約束をしてあるわけでございますが、ところが、現状では排出量が九〇年比でもう既に八%ふえておりますから、六プラス八で一四%の削減を実はせねばならない、今、こういったことになっているわけでございます。
 鈴木大臣に質問でございます。
 政府は、昨年三月に、そういった京都議定書、三%の削減達成のためにとるべき方策などをまとめました地球温暖化対策推進大綱をまとめたわけでございますが、しかし、現状を見ていると、この大綱に沿って対策を進めていくことが本当にこの削減目的を、約束を達成できるのかどうか、私も少し心配をいたしております。たまたま私は党の方の環境基本問題調査会長もさせていただいておるということでございまして、そういった意味でも不安を持たざるを得ないというような状況にもあるわけでございますが、ひとつ鈴木大臣から、この地球温暖化問題あるいは環境問題について、御所見をお伺いしたいと思っております。
鈴木国務大臣 京都議定書でございますが、ロシアの批准の時期、まだ不明確でございますけれども、ロシアが批准をいたしますと、いよいよ京都議定書も発効要件を満たすということであります。
 その中で、我が国は、一九九〇年時に比べまして温室効果ガス、六%削減するという義務を負うわけでありますが、先生御指摘のように、その後の伸びを考えますと、これを達成するということはなかなか容易なことではない、そういうふうに思っております。早期にこの排出量を減少基調に転換するということが大切でございまして、そのために、地球温暖化対策推進大綱、そこに盛られております百を超える具体的なさまざまな措置、これを着実に進めていくことが大切であると思っております。
 政府におきましても、地球温暖化対策推進本部、本部長は総理でございますが、この本部を設置いたしまして、政府一体となって、各種の温室効果ガスの排出抑制対策、あるいは吸収源としての森林整備等の国内対策を進めているわけでありますが、これに加えまして、途上国でのクリーン開発メカニズム事業などを推進しております。
 また、環境省といたしましても、特に民生部門を中心に、地域に根差した効果的なCO2削減対策や国民各界各層による活動を推進するため、人材、教育等の体制整備を図ってまいりたいと思っております。
 先生御存じのとおり、温暖化対策は、大綱において、時期を区切って、第一ステップ、第二ステップ、第三ステップとステップ・バイ・ステップで進むことになっているわけであります。その中で、節目となる年、例えば第一ステップが終了する二〇〇四年、第二ステップが終了する二〇〇七年に、今までやってまいりましたさまざまな施策をレビューすることになっております。その中で、進捗状況、排出状況等を評価いたしまして、新たなステップに進む段階でさらに必要な追加的対策を講じていくこととしているわけでありまして、こうした取り組みを通じまして、京都議定書の義務であります削減約束が必ず達成できますように、全力を尽くしてまいりたいと思っております。
自見委員 いずれにいたしましても、地球環境問題は大変人類の生存に関する大きな問題でございますので、政府の責任でしっかりやっていただきたいと思っております。
 総理に一点、環境問題についてお聞きをしたいわけでございますが、総括的な御答弁でも結構でございますが、温暖化を防止するためのさまざまな取り組みは、ややもすると経済活動の足かせとなり、経済を停滞させるのではないかといった懸念がしばしば指摘されるわけでございます。
 経済と環境とを対立するものととらえ、そのどちらを選択するかという考えでは、私は温暖化の防止はおぼつかないと思っております。環境は、経済の足かせでなくて、現下の厳しい経済情勢の中においても新しいビジネスチャンスを生む貴重な存在だと、私はまさにプラス思考で考える必要があるというふうに思っております。
 先般の予算委員会でも、私の方から、現下の不況下においても、年間、実は一兆円以上マーケットが拡大している分野に、エコビジネスを紹介させていただいたわけでございまして、そういった大きな、不況の中でございますけれども、エコビジネスは年々一兆円以上マーケットが拡大している、こういった分野でございます。
 こうした発想に立ち、今、鈴木大臣の話にもございましたように、我々の意識あるいは我々国民の生活スタイルあるいは企業の経済活動を環境調和型に転換させ、循環型社会を形成していかねばならない、こういうふうに思うわけでございますが、まさにそういったことこそ、社会経済に求められる重要な、総理が掲げておられます構造改革だというふうに私は思うわけでございますが、そういった面で、環境問題あるいは地球環境問題に関して、特に今言いました経済と環境との両立について、ひとつ総理の御所見をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 環境保護と経済発展をいかに両立させるか、これは日本のみならず、今後、世界でも最も大事な課題になってくると思っております。
 昨年九月の南アフリカでのヨハネスブルク首脳会議におきましても、私はこの点を強調したわけであります。経済活動をする際には、環境のことを考えると経済に制約を受けるんじゃないかという考えが一部にはありましたけれども、そうじゃないと。むしろ、経済活動そのものを環境共生型、環境保護に転ずる、それの視点がないとその企業ももう成り立たないんじゃないか。そのかぎを握るのは、私は、科学技術、バイオマス、バイオテクノロジー、いろいろあると思います。そういう点が現在大事な視点で、私はこれを積極的に進めております。
 ことしのブッシュ大統領の一般教書でも、燃料電池を挙げましたね。これは既に、私は、昨年、環境と経済を両立させなければならない、また、エネルギー対策、温暖化、排気ガスという点からも、この燃料電池車の開発、さらには低公害車の導入、こういう点は、私はむしろ、環境に配慮することによって、経済活動が制約されるんじゃない、活発化させるといういい例だと思うんです。だから、これをどんどん進める。
 そして、循環型社会。ごみも今まで捨てていた。今、全省庁、生ごみを再生資源、生かすように、省内にその施設をつくるということも進めております。それから、大量廃棄などでも、不法投棄等をなくすような整備も進めておりますし、私は、今後、環境保護と経済活動、循環型社会、これには政府を挙げて取り組んでいく、むしろ世界の中で範となれるような、環境保護に最も熱心な国が経済活動も最も活動になっているというような例を示すことができるように、循環型社会形成に努力をしていかなきゃならないと思っております。
自見委員 総理が地球環境の問題、きちっと認識をお持ちだということは大変心強く思うわけでございます。
 昨年でございますか、政府の方も燃料電池車をリースして使用するということを世界にリードしてやったということを私はテレビで見まして、公用車に低公害車を使うということも、総理の指示もございますし、そういったことが大変、今後もしっかり積極的に施策を進めていただきたい、こういうふうに思います。
 次に、そろそろ時間でございますが、食品の安全行政について質問をさせていただきたいと思っております。
 一昨年の九月、我が国最初のBSE感染牛の発生以来、ダイエット用の健康食品の事件、あるいは中国産の冷凍ホウレンソウの残留農薬の基準違反、あるいは食肉の偽装表示問題など、食の安全を揺るがす問題が相次ぎまして、国民の信頼を根底から揺るがし、不安感が高まった、こう思っております。
 そういった不安感を解消すべく、我が自由民主党におきましても、食の安全確保に関する特命委員会を発足させまして、野呂田芳成委員長のもとに、私も副委員長を務めさせていただいて、いろいろ下働きをさせていただいたわけでございます。
 今回、あしたでございますか、この結果は、国民の健康を守り、食に対する信頼を回復するため、食品安全基本法があした閣議決定をするというふうにお聞きいたしております。これはもう言うまでもなく、リスク分析の手法、アメリカ、ヨーロッパでは大体こういう食品安全行政についてはリスク分析というものを導入しておるわけでございますが、簡単に言えば、リスクをまず科学的に評価するリスク評価、さらに評価結果を踏まえて基準の設定などを実施するリスク管理、それから情報公開、そして行政あるいは科学、国民との相互信頼を確立するリスクコミュニケーション、こういった手法を取り入れた画期的な手法であり、今申し上げました五十年ぶりの大改正でございますが、欧米並みのリスク管理体制がようやく整った、まさにこれは本当に食品安全行政における構造改革だというふうに私は高く評価をさせていただいておるわけでございます。
 小泉総理、あるいは担当大臣が谷垣大臣、あるいは農林水産大臣あるいは厚生労働大臣でございますが、ひとつこういったことにつきまして、国民の期待にこたえるべく、小泉構造改革の中でまさに食品安全行政をどういうふうに進めていくのか、手短に御答弁をいただければと思います。
谷垣国務大臣 今、自見委員が御指摘されたような状況の中で、食品の安全を確立していくというのはまさに政治の責任だろうと思うんです。食品安全行政を進めていく基本的な理念は、国民の健康保護を第一義としていく、こういうことではないかと思います。
 そのためには、必要なことは三点あると思うんですが、今自見委員が御指摘のように、まず第一に、今度の法案では健康影響評価という言葉を使っておりますが、科学的に食品の評価を行っていく、それが客観的かつ公正中立に行われなければならない、これが第一点でございます。
 二番目は、そういった評価に基づいて具体的な規制措置が適正に行われていく、いわゆるリスク管理が適正に行われるということでございます。
 それに加えまして、今自見委員が御指摘になりましたように、関係者間で情報が適切に交換され、共有されて、そのことを通じて行政の透明性や関係者の情報の共有が進んでいくという、いわゆるリスクコミュニケーションが必要であろうかと思います。
 今後、そういったことが総合的に行われるように今御指摘の法案を用意しておりまして、そういう中でリスクコミュニケーション等も総合的に政府として調整しながらやっていかなければならない、こういうふうに思っておりまして、新しい手法をどうやって確立していくか、関係各省庁あるいは消費者とも協議をしながら、国民の安全、安心を確保していきたい、このように思っております。
自見委員 ありがとうございました。
藤井委員長 この際、西野あきら君から関連質疑の申し出があります。麻生君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西野あきら君。
西野委員 自由民主党の西野あきらでございます。
 関連の事項につきまして、小泉総理並びに坂口厚生労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 私の地元は中小企業の町、東大阪でございます。この東大阪の中小企業が、株式会社アオキさんを初めとして数社が相寄りまして、二年後には宇宙に人工衛星を打ち上げるという、こういう夢のある計画を実は持っているわけなんです。このように夢のある計画を持っている中小零細企業があるかと思えば、反面、大半は残念ながら、今日の景況感でございますので、必死になってあえいでおるのが実態であるというふうに思っております。
 さきに総務省から発表されました完全失業率、これによりますと、全国平均が五・五%、こういうことでありますけれども、大阪はどうかといいますと、残念ながら同時には発表はされておりませんけれども、昨年のデータで見ますと、何とその当時でも八・六%の失業率だと。残念ながら、大阪は全国から比べますと大変厳しい景況感にあるということがこの数字でも出ておるというふうに思っております。私が地元に帰りまして中小零細企業の皆さんにお会いをいたしますと、これらの問題をひしひしと感じるものがあるわけでございます。
 また、先日金融庁が発表されました、みずほホールディングスに対しまして、中小企業向けの融資がその目標を達成しておらないということで、金融庁の方から当銀行に対していわゆる業務改善命令なるものを出されたわけであります。御案内のとおり、我が国の国内で、企業は九九・七%が中小企業であります。その中小企業に対して、今金融庁が言われたのは一銀行ではありますけれども、その一銀行でも中小企業に対する資金調達が十二分にいっていないということでありますれば、それに対して中小企業が受ける影響というものは大変厳しいものがあるということを逆に裏打ちしているような感じを私は持っておるわけであります。
 こういう面に対しまして、ぜひ中小企業に対する施策を思い切ってやっていただきたいなというふうに思っております。
 また、今は、戦後私どもが味わったことのないデフレ不況という状況にありますね。このデフレ不況を脱却するための要諦というのは、私なりに言いましたら、一言で言えば、やはり需要を喚起することにあると思いますね。そのためには、一つは、企業が民間設備投資を積極的にできるような、そういう素地といいますか、環境づくりをする必要があると思います。そのためには規制改革も必要でしょう、税制の改革も必要でしょう。さらには、財政を含めまして、金融等のそういう環境整備をしっかりやってもらわないかぬというふうに思っております。
 もう一つは、国民の持っておる個人資産が一千四百兆と言われておりますけれども、その国民の皆さんが、需要をどうしても喚起するに至っていない。なぜか。それは恐らく、国民の皆さんの中には、このまま勤務をしておって会社は大丈夫だろうか、リストラに遭わないだろうか、掛金をしているいわば年金が大丈夫だろうか、あるいは万が一、医療にかかることができるだろうか、あるいは老後は大丈夫だろうかといった先々の不安というものがあるというふうに思っております。それらを払拭する目安をことしはしっかりと立てる必要がある、政府にその責任があるのかなというふうに思っております。
 そこで小泉総理にお尋ねをいたしますが、このデフレ不況脱却に向けての処方せんは一体どこにあるんだろうか。あわせて、中小企業に対するセーフティーネットを含めた中小企業対策について御所見を承りたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今言われたように、いい企業よりも、大阪というのは特に失業率も全国平均に比べて高いという中で、中小企業の実情を述べられたわけでありますが、企業活動を活発にするためにも、私は、今の不良債権処理を進めていく、そして金融機関の健全性を回復する。さらに、税制面におきましても、一千四百兆円に上ると言われる金融資産、これをもっと投資なり消費に向かえるような税制改革をいかにしていくか、税制改革。さらに、規制改革特区構想等を通じて、今まで阻害されていた地域の活動なり企業の活動を活性化していく。そして、歳出面におきましても、成長分野に重点的に歳出を振り向けていくというような総合的な対策が必要だと思います。あわせて、政府は日銀と一体となって金融対策もしていかなきゃならないと思います。
 もろもろの対策を進めることによって改革を進めていく場合には、あるいは規制によって今までの企業がいい企業と、退場を迫られる企業もあるかもしれません。そういう際には、やはり痛みをどうやって和らげていくかという、そういうセーフティーネット対策、雇用・中小企業対策という点についても、資金手当て初めもろもろの雇用対策を今、坂口厚生大臣あるいは平沼経済産業大臣等、意を砕いていただいておりますので、あわせてやっていかなきゃならない。
 なおかつ、やはり、今まで成功していたこの戦後五十年間の例、官主導といいますか、行財政の面におきまして、全体の財政投融資制度から特殊法人、郵政事業に始まる一貫したこの構造に踏み込んで、むしろ不成長あるいは将来にツケを残すようなところに税金を使うということでなく、有効に生きた金になるような行財政の構造を直していかなきゃならない。
 これがすぐ目には成果は見えませんが、この一体の改革というのは将来必ず大きな果実をもたらすものだ、これを私は着実に進めていくということが、遅いようで最も必要な改革ではないか、民間主導の持続的な成長につながる改革ではないかと思いまして、そういう点を御理解、御協力いただくように、今後も格段の努力をいたしたいと思います。
西野委員 一方、国民はいつでもどこでもだれもが安心をして医療を受けることができる、そういう医療制度の確立というものが問われておるというふうに思います。とりわけ医療費は、御案内のとおり、きのうの参議院の本会議で総理もお答えになられましたとおり、この四月からサラリーマンの三割負担というものが導入を予定されておるわけであります。そうなってまいりますと、提供する医療機関と、そしてそれを監督する厚生労働省の方には、それだけの責任が重くのしかかってくるというふうに言われます。
 そんな中で、最近は、医療ミスだとか、それから医療に係る不祥事が大変多く出ておるわけでありまして、国民の間に医療に対する不信感それから不安感というものが高まってきておるというふうに思います。このことは、私どもは決してこのまま看過をすることはできないというふうに思っております。
 ちょっと顕著な例を申し上げてみたいと思いますが、平成十二年七月三日、大阪です。地元ですが、耳原総合病院がセラチア菌の院内感染で七人の入院患者が死亡してしまった。平成十二年の九月には、今度は東京でありますけれども、立川の相互病院で、左足骨折で入院した患者に対して医師が間違って右足を手術した。そして、今度それに気づいて慌てて再手術をやったんです。ところが、この患者は死んでしまった。亡くなってしまった。
 さらに、昨年の四月でございますけれども、神奈川県の川崎協同病院では、気管支ぜんそくで入院した患者が植物状態になった。そこで、担当の女医が気管チューブを抜き取ったのです。抜き取って、さらに筋弛緩剤を投与してしまった。そのために、この患者が亡くなってしまった。これにつきましては、御案内のとおり、横浜地検がその女医を逮捕して、あわせて昨年のクリスマス、十二月の二十六日に今度は横浜地検が起訴をした、こういう事件であります。
 最近では、京都にあります中央病院は、平成十年の一月から約五年近くにわたりまして、当病院の医者からの指示もしくは関連する医療機関の要請に基づいて検査をやっているんですね。どんな検査かといいますと、喀たん検査とか尿検査とか、あるいはマイコプラズマ検査などで、合計何と二千五百五件にわたりまして、培養検査等もやらずに、あたかも検査したかのように、うそ、虚偽の報告をしていることが明らかになっているんです。
 さらに驚くことには、この中で、何と二百四十三名の方がもう亡くなっているんです。これは、その検査、手抜き検査との因果関係を今調査中であります。でありますけれども、私は、決して無縁ではないというふうに思っておるわけであります。
 要するに、手抜き検査をしながら、検査費用は患者から取って、そしてこのことはいわゆる手抜き検査と診療報酬の不正請求、二重に犯しておる悪質な許しがたい行為であるというふうに私は思っております。
 これらはすべて、今申し上げました例は民医連系の医療機関です。すべてそうです。これに対して、現在は外部の委員で構成された原因究明委員会が調査をしています。さらに、社会保険事務局はこれを監査しています。
 京都府とか京都市は立入検査をして調査をしておりますけれども、その結果は、厚生労働大臣にお尋ねしたいんですが、どんなことを調査しているのか、いつごろその結果が出るのか、お示しをいただきたいと思います。
小島政府参考人 御指摘の原因究明委員会でございますが、これは、京都府及び京都市が推薦する外部有識者のみを構成員といたしまして京都民医連中央病院が設置したものでございます。検査結果の虚偽報告と健康被害との因果関係の検証等を行うことを目的として、昨年十一月一日以降これまでに七回開催したと聞いております。
 また、厚生労働省京都社会保険事務局及び京都府の合同の監査につきましては、健康保険法等に基づき、診療報酬上の不正の有無等につきまして確認を行うものでありまして、昨年十二月十日以降、数次にわたり実施しております。
 また、京都府、京都市は、病院の管理体制、検査業務の受託のあり方等を調べるために、十月四日以降これまで十回にわたり医療法に基づく立入検査を合同で実施していると聞いております。
 原因究明委員会の検証結果及び京都府、京都市の医療法の立入検査結果は、それぞれ年度内に取りまとめる予定であると聞いております。
 また、保険医療機関にかかわる行政措置につきましても、年度内を目途に結論を得たいというふうに考えております。
西野委員 厚労省としましても、これらの問題を一都道府県、京都府だけの問題として受け取らず、厚生労働省が全体として積極的にフォローアップをしていくべきだというふうに思っています。
 それともう一つは、どうも厚労省の縦割り行政というものが何らかの影響をしているんじゃないかと思うんですね。例えば、保健医療関係は保険局が扱います。検査技師関係は医政局が扱います。それから、監督指導の関係は医薬局が扱うというふうに、個々ばらばらに対応をされておるわけなんですね。こういった問題は、むしろ厚生労働省がすべて一元化して、情報を一本化して、できれば厚労省の中で対策本部でも設けて、早期解明に資すべきだというふうに私は思うのでございますが、いかがでございますか。
坂口国務大臣 社団法人京都民医連中央病院の件につきましては、大変残念な事件と申しますか、あってはならないことだというふうに思っております。
 これは、訪れられます患者さんにとりましても非常に重大な問題でございますので、徹底的に究明をしたいというふうに思っております。
 厚生労働省の内部におきましても、確かに縦割りのところがございますけれども、それぞれの分野、チームをつくりまして、ひとつ話し合いのもとに、早く究明をしたいというふうに思っておるところでございます。
 また、外部の先生方による究明におきましては、千四百名の患者さんに対する問題でございますので、それなりに時間がかかるだろうというふうに思っておりますけれども、厚生労働省といたしましても十分に対処したいと考えております。
西野委員 この医療ミス等は、患者側が、どちらかというと病院側にゆだねざるを得ないという立場にありますね。それから、病院、医療機関というのは、一般とはややかけ離れた、専門分野になりますから、そういう特異性がありますから、患者も泣き寝入りをするケースもあるというふうに思うんです。今後、ぜひ医療ミスがゼロになるように、国民から期待をされる医療体制になるように、厚生労働省としてもぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。これについては時間の関係もありますので、答弁を求めません。
 ところで、この民医連系の医療機関は、選挙になりますと、事もあろうに集票マシーン化している、こういう傾向が私見受けられるんです。きょうはその例を申し上げたいというふうに思うんですね。
 まず最初は、二〇〇〇年、京都で市長選挙が行われました。そのときに、選挙全体到達表というのが、きょうはそれを見せることができませんけれども、表が内部から出ているんですね。それによりますと、病院の各階ごとに、各所ごとに、部署ごとに、例えば支持は何%したか、お金、カンパは何ぼ預けた、行動は目標に対して何%達成したか、事細かにデータがぴしっと出ているんですよ。
 そして、驚くことに、検査室、今手抜き検査と言いましたでしょう、この検査室は三十三名の職員がいてるんです。その三十三名が全員行動をとっているんです。要するに一〇〇%。言いかえたら、選挙の時は検査室は一〇〇%の選挙運動をやりながら、肝心の本業の検査は手抜き検査をしているという実態があるんですね。これは大変な問題だと思いますよ。
 それから、昨年の十二月に、先ほど申し上げました、間違って筋弛緩剤を打って亡くなったというもの、その病院、川崎協同病院へ私は行ってきたんです。行ってきますと、何と入り口です、この間ですよ、入り口に、この医療機関、民医連系の問題を取り上げている公明党、創価学会に対して、何と堂々と政治活動をやっているんです。
 本にどんなことが書いてあるか。表紙に、「公明党・創価学会による異常な民医連攻撃」。これは、その問題を公明党がいわば取り上げているんです。それを攻撃だと言っている。
 しかも、その中のページを見ますと、ページ数で言いましたら七ページでございますけれども、「今回の虚偽の検査結果は、診療内容には影響しませんでしたが、」影響しなかったかどうかは今調査しているのでありますから、そんなことを言うわけがないのであります。
 さらに、私の地元で昨年六月、塩川大臣も御存じでありますけれども、市長選挙が行われました。そのときに、何と、明るい東大阪をつくる会という団体の、これは東大阪にある生協なのでございますけれども、生協の委員長がどんなことを言っているか、ここに書いてあるんです。
 午前の診療外来で院長が訴えを行った、これは診療中でございますよ。対話活動の中から、組合員名簿で四十九件対話した、はっきりあかんと言ったのは三件や、票をもらえそうと思ったのは三十九件云々、ほかいっぱいあるのでございますね。これは診療期間中に生協が堂々とこんなことをやっているんですよ。こんなことが許されていいのかどうかということ。
 さらに、自民党は京都のこの民医連の病院に対して対策本部を立ち上げたんです。立ち上げて、京都市議会でいろいろ対策を練っていますと、今度は、京都の、共産党の市議会の方が何と、命にかかわる問題を自民党は党利党略にとか、とんでもない話だ。党利党略に使うのはどちらの政党でありますか。私は考え直してもらいたいというふうに思います。
 要は、このように、今申し上げました民医連系の医療機関は、あらゆる選挙で日本共産党を私は支持しておる、その活動をしているのが民医連だと言っても間違いがないというふうに思っております。
 私は、今持っておる民医連の軌跡という本があります。これは、向こうが書いた本であります。この本の中にはこんなことが書いてあります。日本共産党が各地で設立したものであります、最初のそれは日本共産党代々木診療所でスタートしたのでありますと、みずからそれを宣言しているではありませんか。
 私は、このようなことを考えましたら、この民医連の活動が適切であるかどうかということ、この問題、しかも、川崎と東大阪は生協です、医療生協でございますよ。医療生協がこのような政党活動、選挙運動をしていいんでしょうかどうか。私は、これらの問題を厚労省が承知されておるのかどうか、これを法に照らして御答弁いただきたいと思います。
河村政府参考人 生活協同組合は、消費生活協同組合法第二条第二項におきまして、特定の政党のために利用してはならないということが規定されておるわけでございます。厚生労働省といたしましては、このことを踏まえまして、組合に対して、選挙に際しまして特定の政党または候補者支援を決定したり、あるいは機関紙による推薦をするなど、組織として支援してはならないという旨の通知を発出するなど、あらゆる機会を通じまして、その趣旨の徹底を図っているところでございます。
 医療生協におきまして、特定の政党と結びついた活動が行われているのではないかという御指摘につきましては、所管しております神奈川県等、県庁に対しまして、事実関係を把握して、適切な対応をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
西野委員 今お答えがあったとおり、ぜひ事実に基づいて適切な処置をお願いしたいな、そうすべきだと、私は。そして、国民から医療ミスがなくなる、実際にしっかりと検査をして、そして医療ミスのないように、国民が安心するような、そういう体制づくりをしていただきたいというふうに思います。
 そこで、私は委員長にお願いをしたいんですが、今申し上げました、医療現場で医療事故を起こしながら、あるいは手抜き検査をいたしながら、結果は死亡事故等も起こしながら、政治活動や政党活動だけは露骨に行っておると言われるわけであります。こういう病院ぐるみのことは絶対にやってはいけない。
 私は、現在、原因究明委員会においてそれぞれの真相が調査をされておるところでありますけれども、この調査が終わった段階で結構でございますから、民医連を初め、この中央病院等、関係の責任者をこの国会に呼んで、そして私は、参考人招致をして、実態の解明と、そして二度とこのような再発が起こらないように防止すべきだというふうに思いますので、委員長に関係者の参考人招致を要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
藤井委員長 理事会で協議をいたします。(発言する者あり)
 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 じゃ、速記を起こしてください。
 これにて麻生君、自見君、西野君の質疑は終了いたしました。
 次に、北側一雄君。
北側委員 公明党の北側一雄でございます。
 きょうは、私は、外交の問題、また経済問題についてお聞きをしたいと思っております。
 今、総理がちょっと席を外していらっしゃいますが、きょうも先ほど来、このイラク問題につきまして、けさ方国連の安全保障理事会に示された証拠に対する日本政府の評価については、総理からも外務大臣からも御答弁がございました。だから重複は避けさせていただきたいというふうに思うんですが、ちょっと私の意見を申させていただきますと、アメリカの今回の情報開示の努力、これは私は高く評価しなければならないと思います。また、今回のこの開示によって、イラクに対する疑惑というものがさらに深まったというふうにも言えると思います。
 ただしかし、これからそういう情報が収集されると思うんですけれども、各国の反応を見ますと、必ずしも現時点での最後の手段としてのイラクへの武力行使を国際社会の多くの国が十分に理解を示したとは言えないのではないかというふうに私は思います。そういうことも踏まえて、きょうの質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、このイラク問題とは一体何なのかということが、これは国民の皆様に正確に理解されているかということは、私は必ずしもそうじゃないんじゃないのかというふうに思っておりまして、私なりに簡単に、イラク問題とは一体何が問題だったのかということを少しお話をさせていただきたいと思うんですが、御承知のように、九一年、今から十一年前に湾岸戦争がございました。湾岸戦争が終わりまして、終結いたしまして、そこでイラクは、停戦条件として、生物化学兵器、核兵器、こうした大量破壊兵器の完全廃棄をイラクは受け入れたわけでございます。それによって停戦が成立した。これが安全保障理事会の決議六百八十七号、ここから出発しているわけですね。
 その六百八十七号では、九一年でございますが、核それから化学生物兵器、弾道ミサイル、こうしたものは廃棄するんだ、さらには、そうした大量破壊兵器開発のための研究とか開発とか設備なんかは廃棄するんだ、将来にわたってもイラクはこれらを開発しない、こういう約束をしたわけでございます。これが九一年の話でございます。
 しかしながら、その後、国連がずっと査察、監視を続けていくわけでございますが、その後は、この十一年前の安保理決議六百八十七号、これが出発点ですが、それがあるにもかかわらず、イラクは一貫してこの国連の査察に対して回避をしていくという行動に出ます。これがずっと続くわけですね。この間、何度も何度も、安保理でイラクに対する決議が十数回と続きます。
 そして、今から四年余り前の九八年の十月からは全くこの国連の査察団に対するイラクの協力が停止をされまして、以降四年間、つい最近までの四年間、全く国連の監視、査察が、イラクの大量破壊兵器の完全廃棄をしなければならないということについて四年間全く査察がないまま続くわけですね。そして、昨年の十一月の、先ほど来話題に出ております安保理決議一四四一につながってくるわけですね。こういういきさつでございます。
 国連の査察団の先般の報告によりましても、例えばVXとか、それからサリン、こうした化学兵器についてまだ残っているのではないかという疑惑が指摘されています。また、けさ方の国務長官の話にもありましたが、炭疽菌についてもまだ残っているのではないのか、こういう疑惑が指摘をされているんです。幾つかの疑惑が、大量破壊兵器が完全に廃棄されていない、こういう疑惑が、いまだに国連の査察団からはそのような報告がなされているわけでございます。
 こういう経過があるわけで、これがまさしくイラク問題。こういう大量破壊兵器というのは、まさしく日本も含めた国際社会の平和と安定に対する、安全に対する明白な脅威でございまして、これを取り除いていかないといけない。また、特にテロに対する恐怖もあります。
 そういう意味で、国際社会の平和と安全に対するこの脅威を除くためにも、イラクがまずもって大量破壊兵器をきちんと廃棄する、検証可能な形で廃棄する、こういうことが一番大事な問題、根本的な問題だというふうに思います。
 そこで、こういうことをあくまで大前提にいたしまして、私は、このイラク問題についての我が国政府の基本姿勢といいますか、こういう基本姿勢を持つべきではないのかという三点を申し上げたいと思うんです。
 第一に、これはもう今述べた話でございますが、累次にわたる、これまでも何回にもわたって国連決議がありました。この何回にもわたった国連決議、さらには昨年十一月の安保理決議一四四一号ですね、これに従ってイラクは国連の査察を無条件に受け入れて協力する、そしてイラク自身が積極的に検証可能な形で本当に問題になっている大量破壊兵器を廃棄する、これが一番大事なことです。これが第一。そのために、日本政府がしっかりと、イラクに対し、また国際社会に対しメッセージを出すべきだ、これが第一点です。
 第二点目に、こうした問題については、このイラク問題への対処につきましては、あくまで国連を中心とした国際社会との緊密な連携を軸に行っていくべきだというふうに思います。やはり、国際協調主義というのが我が国外交の基本の原則だと私は思うんですね。
 そして三番目に、私は、我が国、日本政府の基本姿勢として、やはりぎりぎりまで平和的な解決に向けての最大限の外交努力を日本国政府もしっかりとやっていく、そういうメッセージをしっかり出していくということが大事じゃないのかなというふうに思っているわけでございます。
 そこでお聞きをしたいわけでございますが、これからどう展開していくかわかりませんが、非常に緊迫した情勢にございます。状況を見てどう判断するかということも大事でありますが、我が国として主体的に、このイラク問題について、緊迫しているこのイラク情勢について、どういう今後の外交努力を行っていこうとされているのか、そこをお聞きしたいわけです。
 提案でございますけれども、私はやはり、日本というのは、アメリカに対していろいろな物が言える数少ない国の一つだと思うんです。私はそう思います。そういう意味で、私は、アメリカに対して国際協調の重要性ということを繰り返し我が国政府がやはり主張していくということが非常に大事じゃないかと思うんです。
 このイラク問題の解決というのは、やはり単独行動であってはならないわけでございまして、国際社会の連帯と国際社会によるイラク包囲網をしっかり構築する、それによってイラクに大量破壊兵器の廃棄を強く迫っていくということがやはり非常に大事なことでございまして、これが万一、アメリカ、米英の単独行動になってしまったならば、万一ですよ、これはやはり結果として、憎悪とか報復とかのそういう連鎖を結果として生んでしまうことになるんじゃないのかと私は思うんですね。そういう意味で、日本はあくまで国際協調ということを、国際社会の理解ということが大事だということを強くアメリカに訴えていくべきだと私はまだ思っております。
 また、我が国は今、安全保障理事会のメンバーではありません。だからこそ、このイラク問題というのは我が国にとっても極めて重大な問題でありますので、あらゆる場を使ってこのイラク問題についての我が国の主体的なメッセージを出していく、そういう努力が私はやはり日本の外交として非常に重要であるというふうに思っているわけでございますが、その点、総理、いかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 北側議員が御指摘の点、極めて重要な点でありまして、日本政府としても今まで御指摘の趣旨に沿って外交努力を続けてきたつもりでございます。
 今朝のパウエル国務長官の国連安保理、理事会での報告におきましても、極めて事態は深刻だと受けとめておりますが、まず、イラクが大量破壊兵器を依然として廃棄していないという疑惑が深まっている中でありましても、日本としてはアメリカに対して、国際的協調体制を今後も構築できるように最善の努力をするべきだと。昨晩、イギリスのブレア首相との電話会談におきましても、私は、お互い協力しながら、アメリカに対してもさらなる努力を要請していこう、さらに、今国際社会が一致してイラクに対して国連一四四一決議を履行するように迫っている、この働きかけをさらに強めていこうと。そして、今週末にまたブリクス査察委員長がイラクを訪問される、協議する、そしてそれを受けてまた国連で報告される、その状況を見ながら国際社会の責任ある一員として対処していくというのが変わらない日本の立場であります。これに沿って、今後も日本は外交的努力を継続していく考えでございます。
川口国務大臣 問題の本質について、冒頭、委員がおっしゃられたこと、それは全くそういうことであるかと思います。イラクが国際社会によって持たれている疑惑をみずから晴らすことが大事であるということでございます。
 若干乱暴な言い方になるかもしれませんけれども、よく国際社会で、査察の結果、何も疑惑に値するものが、あるいは重大な疑惑に値する分は出てこないんだから疑惑はないというような言い方がなされる場合がありますけれども、何も出てこないということが実は問題なんだということをあえて申し上げたいと思います。
 イラクは、委員がおっしゃられましたように、今まで疑惑がたくさんある。これは、VXもそうですし、おっしゃったいろいろなことがそうであるわけですが、その疑惑を積極的に解明するのがイラクの役目であって、それを積極的にやらない。何も出てこないというのは、疑惑の解明をイラクがしていない、そういうことであるということが国際社会の理解であるということを本質的な問題として申し上げたいと思います。
 おっしゃったように外交努力、これは今、茂木副大臣もヨーロッパに行っていらっしゃいますし、総理の電話、あるいは私のパウエル長官等の電話、これで、我が国としては国際協調を行いながら毅然としてイラクに対応を迫る、そういう態度が基本的な考え方であると思います。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
北側委員 それでは次に、北朝鮮問題についてもお聞きをさせていただきたいと思っております。
 北朝鮮の方の核開発問題、これも、これはもちろん、我が国の安全保障のみならず、世界の平和と安定にとって極めて重大な問題でございます。この問題の解決に向けて、日本、そしてアメリカ、韓国との連携は当然でございますけれども、やはりロシアとか中国との連携も極めて大事であると私は思っております。
 特に、昨今の情勢を踏まえますと、日本にとって最大の隣国でございます中国が、もともと北朝鮮ともパイプの非常に深い国でもございます、今後の北東アジア地域での安全保障という側面からも、やはり中国というのが北朝鮮問題、朝鮮半島問題に非常に重要な役割を果たすというふうに私は思っておるわけでございますが、総理、この朝鮮半島問題、安全保障の問題はもちろんですが、拉致の問題も含めまして、こうした日朝間の深刻な問題につきまして中国としっかり連携をすることが大事だ、中国にこうした問題解決への協力、連携、協議、こうしたものをしっかり深めていく、緊密な連携をとっていくということが非常に重要だと私は思いますが、総理、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 中国は北朝鮮と友好関係を保っておられますので、当然、この北朝鮮問題に当たりましては、日本としても緊密に連携協力していかなきゃならないと思っております。
 これは、直接的には日本と韓国、アメリカ、日米韓、この連携が核の問題、拉致の問題、過去、現在、将来の問題にわたって一番関係が深いわけでありますが、隣国であります中国もロシアも含めて、常に連携を密にして、北朝鮮との関係を改善していくということにつきましては十分認識しながら、関係国との協力を深めながら交渉を進めていきたいと思っております。
北側委員 それで、こちらの方も、IAEAがこの北朝鮮の核問題に関する緊急理事会を、十二日といいますから来週の水曜日ですか、水曜日に開催する旨が決定なされております。聞くところによりますと、この緊急理事会でこの問題につきまして国連の安全保障理事会に付託を要請する、付託をしていくというふうに言われております。
 この北朝鮮問題の安保理付託という事態ですね、これが近々そういう事態になるだろうというふうに言われているわけですが、この問題につきまして、どのように認識し、どのように対応をなされようとされているのか、お答えをお願いしたいと思います。
川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、十二日にIAEAの理事会が開かれるということになっております。そこで、その結果として国連に、今付託とおっしゃられましたけれども、報告をすることになるかもしれないということが言われておりますけれども、それも今まだ決まっているということではございません。
 二つのことを考えなければいけないと思っていまして、一つは、北朝鮮の核について、国際社会が一致して不拡散条約の遵守を求める、核開発をやめる、そして核の凍結を再び行うということが大事だというメッセージの発出が大事だと思います。他方で、北朝鮮のこの問題については、どういうやり方をするのが問題の平和的な解決に資するかという観点からこれを慎重に検討するということが必要だと思います。
 また、このメッセージを発する場合には、我が国がこの問題については大きな利益、利害を持っておりますので、我が国の立場が反映をされるということが大事だと考えております。
 IAEAの場では、我が国はウィーンでかなり積極的にこの議論についてはリードをしている立場にございます。この場でも、P5プラス2という枠組みを実質的に動かしているというのは我が国であるわけでございます。
 ということで、引き続き関係国の間で密接に話し合いを行っていきたいと考えています。
北側委員 もう一点お聞きをしたいと思います。
 昭和三十四年から始まった帰還事業で北朝鮮に帰った人、渡った方、その中には日本人妻もいらっしゃるわけですが、こうした帰還事業で北朝鮮に渡った方が、今、今というか何年も前から北朝鮮を脱出しまして、そして保護をされて日本に帰国をされる。こういういわゆる脱北者と言われている方々が、先般の国会の審議でも、数十名程度今日本の国内にいらっしゃいますという御答弁があったかと思うんですけれども、現在、そういう方々に対して、外務省やNGOの方々を中心に、個別に、ケース・バイ・ケースで支援を事実上なされていらっしゃるというふうに聞いております。
 ただ、今後、状況の進展いかんによっては、こういった方々がさらにふえてくる可能性もあるわけですね。
 そういう意味では、こういう脱北者の方々というのは、そのお子さんもいらっしゃるんですよね、帰還事業で帰った方々のお子さんもいらっしゃる、それから、日本人妻で日本国籍の方もいらっしゃれば、もともと在日の方もいらっしゃるというふうに聞いておるわけでございますが、いずれにしても、全く日本には生活基盤がない。住居それから生活の全般にわたって、また言葉の問題、仕事の問題、こうしたこと、さまざまな問題が当然あるわけでございます。
 当然、それを今外務省なりNGOがサポートされていると思うんですけれども、私は、こういう帰国した脱北者の方々に対する総合的な支援措置というのを、単に外務省だけではなくて、省庁がしっかり連携をとってそうした総合的な支援措置を実施できるようにしっかり努力をしてもらいたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、この問題は、日本に戻ってこられた方々がどのように国内できちんと生活をしていくことができるかということにかかわる問題でございますので、外務省だけではなくて、政府全体の取り組みが必要だということだと思います。
 そして、その場合に、おっしゃったように、残っている家族の方々が北朝鮮にいらっしゃるということですから、本人あるいは関係者の方の身の安全が守られるということが大事であると思います。
 今、まず、とりあえず既存の枠組みで何が可能であるか、何が足りないかということをきちんと調べる、そこから話が始まるというふうに考えておりまして、政府全体として取り組んでまいります。
北側委員 それでは、経済の問題に移らせていただきたいと思います。まず、中小企業と金融の問題につきまして、最初お聞きをしたいと思っております。
 昨年の臨時国会の予算委員会でも、私、この問題を取り上げさせていただきまして、そのときにも使わせていただいたデータでございます。ちょっとそのときより時間がたっていますので先に数字を入れておりますが、国内銀行の貸し出し動向です。貸し出し動向を、一九九四年を一〇〇という数値に置きまして、その後その貸し出しがどういうふうになっておるかという表でございます。委員の皆様にも資料がお配りしてあるかと思います。
 大企業の方は、九四年に比べますと一割方減っているんですね。九〇という数値。九十四兆三千億の貸し出し。それと、中小・中堅の方は、九四年を一〇〇とすると、現時点では数値が七一、二百十九兆という数字でございます。だから、中小・中堅への貸し出しが九四年に比べますと三分の一近く減ってしまっている、こういう状況でございます。
 この要因には、もちろん需要が弱いという要因もあると思いますが、もちろんそれだけではなくて、言われております貸し渋り、貸しはがし、こういう実態があるのも私は否定できない、そういう実態があるというふうに言わざるを得ないというふうに思うわけでございます。
 そこで、資本注入行の中小向け融資、これについては、当初の約束で、資本注入行の金融機関は中小企業に対する融資というものをちゃんと計画をつくってふやしますよ、各行それぞれ目標を決めましてふやしますよ、こういう約束でやっているわけです。
 ところが、これは昨年の十月でございますけれども、当時、金融庁は、UFJ、それからあさひ、それから新生銀行、ここが、去年の三月期ではございますが、十三年度中小企業向け貸し出し状況が大幅に減っておる、UFJは二兆五千億、りそなは一兆七千億、これだけ中小企業向け貸し出しが減っている、こういう状況を見まして、昨年の十月に、今の三行に対しまして金融庁は業務改善命令を出されました。もっと中小企業に対する貸し出しをしっかり工夫してやれ、こういう趣旨の改善命令を昨年の十月出されました。それから今数カ月たっているわけでございます。
 その後、この三つの金融機関の貸し出し態度がきちんと改善されているかどうか、当然そこは見ていらっしゃるというふうに思うんですが、金融担当大臣、いかがでしょう。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 委員御指摘のように、中小企業に対する貸し出しの減少というのは、大変我々も大きな問題だと思って注視しております。バブルのときに中小企業に対する貸し出しが一挙にふえて、その反動という面はあるにしても、それにしてもやはり大変厳しい状況で、注視しなければいけない。
 御指摘のように、新生銀行、それとUFJホールディングス、あさひ銀行、正確には、新生銀行に対しては十三年十月、それと、あとの二行に対しては十四年、昨年に業務改善命令を出しております。経営健全化計画で立てた目標に対して余りに未達であったということ。それに対しまして、各行はそれなりの対応を今とっております。
 総じて言いますと、貸し出し推進体制の強化として、社長や頭取をヘッドとする中小企業向け貸し出しに関する会議を定期的に開催している、営業店ごとに適切な中小企業向け貸し出し目標を設定した、業績評価項目、これは各店舗の業績評価項目の中に中小企業向け貸し出しのウエートを高めた、各種の商品を充実させる、そういった意味での中小企業向け貸し出しに関する具体策を講じたということでございます。
 貸し出し目標を着実に達成させるための取り組みの強化は一応なされているということでありますので、それを引き続き我々としては注視をしていきたいというふうに思っております。
北側委員 失礼いたしました。新生銀行は、十三年の十月ですね。十四年十月は、UFJとあさひの二行に対する業務改善命令でございます。
 それで、これは結果としてしっかりふえるように、中小企業向け貸し出しがふえるように監視をしてもらいたいと思うわけでございますが、先般、十四年度の上期の中小企業向け貸し出しの状況について公表がなされまして、今度はみずほが、これは全体で約九兆円中小企業向け貸し出しが減っているわけなんですが、そのうち五兆が何とみずほ一行で中小企業向け貸し出しが減っているんですね。とんでもない話でございます。これは、銀行がある意味じゃ意図的にやっているんじゃないかと私は思わざるを得ないわけでございます。また、三井住友の方もほかに比べますと非常に多くて、約二兆円近くの中小企業向け貸し出しが減っております。こういう状況でございます。
 これに対して、先般、みずほに対する業務改善命令が出たかと思いますが、みずほに対する今後の対応、また、三井住友も多いわけですから、三井住友に対する今後の対応、どうされるのか、大臣、お答えをお願いしたいと思います。
竹中国務大臣 貸し出し目標というのは、これは年度で立てているものではありますのですが、中間期で、御指摘のように、みずほホールディングスについては当初の予定、目標を五兆円も下回るような状況になった。これは我々としては異例のことではあるというふうに思うんですけれども、中間期ではあってもこの数字は余りに大きいということで、我々としては、厳しい処分としての業務改善命令をこのみずほに対しては発出をいたしました。これは、年度の中に達成してもらえるように、新たな体制を組んで、それをさらに厳しく監視をしていきたいというふうに思っております。
 もう一行、三井住友についても話がございましたですけれども、三井住友の場合は、みずほの場合と異なって、組織面での組織強化等の努力の跡は見られるということでありますので、業務改善命令は発出をしておりません。ただ、同じように減少幅が大きいということもありまして、継続的にヒアリングをしまして、十四年度下期の貸し出しの増強に向けて取り組み強化を促していく、そういう対応をとっているところでございます。
北側委員 こういう状況の中で、やはり政府系金融機関、また信用保証協会等を通じた、こうした公的な金融というものの持つ役割、意味というのは極めて今も大きいと言わざるを得ないと思います。
 それで、先般成立いたしました十四年度補正予算でこの中小企業対策についてさまざまやっておるわけですが、セーフティーネット保証の枠をこの補正予算で十兆円追加をいたしまして、これを活用しまして、先ほども話題に出ておりましたが、資金繰り円滑化借りかえ保証制度というのが創設されます。これが二月十日から実施、二月十日ですから来週の月曜日でございまして、二月十日から各窓口でこの制度が実施をされるわけでございます。
 これは、かつてやりました三十兆円の枠での特別保証、こういう特別保証を通じて金融機関からお金を借りている方々、たくさんいらっしゃるわけですね、今も返済されているわけですが、そういう方々も含めまして、また、従来セーフティーネット保証で融資を受けている方、一般保証で融資を受けている方、いずれにしても、信用保証というのを通じて融資を受けている中小企業の方々が、既往の金融機関からの借り入れにつきまして、これを長期の返済契約に借りかえをする、そして毎月の返済額をできるだけ少なくできる、こういう制度でございます。
 これは、我々も皆さんもそうだと思いますが、現場へ行ったら、もう中小企業、中小の零細事業者の皆さんから、私なんか大阪やから本当にそうなんです。塩川大臣、そうでしょう。もう本当に、現場へ帰ったら、いやもう銀行が金を貸してくれない、金融機関との話が物すごく多いわけですよ。資金繰りが大変だという声が、本当に帰るたびに痛切なお声をちょうだいしているわけでございますが、本当に多くの中小事業者の方々が既往債務の返済に今本当に苦労をしている中で、極めてこの制度というのは、こういう話をしますとニーズが高いわけでございまして、我々公明党もかねてからこの信用保証による既往債務の条件緩和を何とかしてもらいたいということを中小企業庁なんかに何度もお願いをしてきたわけでございますけれども、これが実現をするわけでございます。
 それで、きょうはテレビにも映っておりますので、ぜひ平沼大臣、わかりやすく、中小企業のおっちゃんにわかりやすく、これはこんな制度ですと具体例を通して、余り時間かけないで、ちょっと御答弁いただきたいと思うんです。
平沼国務大臣 テレビにも映っておりますから、具体的に三つの例で申し上げたいと思います。
 今、御承知のように、特別保証それからセーフティーネット保証、一般保証、この既往の保証の返済で非常に苦労されている中小企業の皆様方に、支払い能力はあるけれども売り上げが落ちて返済が厳しいという方々に、やはり国として手を差し伸べなければならない。こういうことで、先ほどちょっと具体例を申し上げましたけれども、一つは、例えば六百万、一年以内に返済しなければならない、そういう債務を持っている。そうすると、これは月々五十万返さなければならない、こういうことですね。それは大変だと、今の状況で。そこで、借りかえという形で、例えば五年という形にそれを借りかえていただく。そうしますと、それが月々十万円で済むことに計算上なるわけでございます、五倍になるわけでありますので。
 それからもう一つは、例えば六百万を借りた方、その方がまだ枠がある。そうなりますと、五年の中でさらに千二百万借り増しをしていただくこともお認めしよう。そうなりますと、千八百万になりまして五年でございますから、今までは五十万ですけれども、ふえた上で三十万で済む。こういうことも債務者にとっては非常にいいことだと思います。
 それから、複数の債務を持っておられまして、例えば一つは毎月十日に返済をしなきゃいけない、もう一つは月末の三十日にしなきゃいけない。そうすると、この十日、三十日という形で、いろいろ管理が難しくて、大変な負担もかかる。そういうことでこれを一本化して、例えば複数のものを一本化して返済をしていただくことも可能だ。
 こういう形で、今歯を食いしばって厳しい中で頑張っておられる中小企業者に対して、今北側先生がおっしゃったように、民間の金融機関がなかなかそういうことで対応をしていないわけでありますから、政府系金融機関としてそういう形で万全を期さなきゃいかない、こういうふうに思っております。
北側委員 一点だけこれに関して確認をさせてもらいたいと思いますが、竹中大臣、これは返済条件が変わるわけですね、ある意味では。そういう意味で、条件緩和債権として、借り手の分類として要注意債権に分類されるようなことはありませんね。結論だけで結構です。
竹中国務大臣 これはもうあくまでも実態判断ということになります。緩和をすることによってその後の業績がよくなるということは十分あるわけでありますから、それを踏まえて実態的に判断されているわけでございます。
北側委員 いや、大臣、私が聞いているのは、今回これは新しい借りかえ保証制度ができるわけですよ。これを活用して信用保証を通じて一本化するなり、返済期限が延びて毎月の返済額が減るわけですね。こういう制度を活用することによって、このことだけを取り上げて、これが、じゃ、もう要注意債権だ、条件緩和で要注意債権だとなったら、民間の金融機関は幾ら信用保証協会を通じてもお金を貸さないわけですよ。そうでしょう。そういうことがないということをはっきり言ってくださいということを言っているんです。
竹中国務大臣 それだけを理由に変更するということはございません。
北側委員 はい、結構でございます。
 もう一点、平沼大臣にお聞きをしたいと思うんですが、この中小企業が持っている売り掛け債権というのは、すごい量があるんですね。中小企業全体が金融機関から借り入れているお金の約三分の一相当が売掛金なんですよ、金額で比べましたら。
 だから、この売掛金という資産を活用してもっとお金が借りれるようにするということは、これはアメリカでは物すごくできているわけで、日本では、物的担保、土地とか建物とかそういうのを担保にする、また保証人をとる、これが専らでして、こういう売り掛け債権を担保にして金融機関から貸し出しを受けるというのは、非常にこれはいい制度なんですね。これが何度か制度も改善されて拡充をされてきました。これはさらに、当初の目標から比べるとまだまだでございますので、また、地方に行ったら、まだまだこの制度が十分に浸透していないところもございます。そういう意味で、しっかりとこの制度についても、拡充できるように、制度の浸透に努めていただきたいと思うんです。
 きょう御質問したいのは、この売り掛け債権担保融資保証、これも信用保証を通じた借り入れなんですが、そうではなくて、この売り掛け債権そのものを証券化しまして、新たな資金調達手段というのが検討されている。ある意味では間接金融ではなくて、中小企業の売り掛け債権をまとめまして、これを売却して、ある意味では直接金融ですね、そういう新たな資金調達手段が検討されているというふうにお聞きをしておりますので、その内容と検討状況についてお聞きをしたいと思います。
 これはちょっと日本銀行にもかかわりますので、御答弁いただきたいと思います。
平沼国務大臣 売り掛け債権の担保について、建設的な御意見をいただきました。
 売り掛け債権担保というのは、一昨年スタートいたしまして、当初はなかなか浸透をいたしませんでした。しかし、条件を緩和するとか、あるいは、これは全都道府県、それから全省庁も協力していただきましたけれども、いわゆる譲渡禁止特約というのがございまして、これを解除いたしました。それからまたPRに努めまして、今PRが必要だとおっしゃいましたけれども、パンフレット類も二百万枚以上をずっと配る、こういうようなことで、現段階では、おかげさまで、実績は四千九百件、そして二千三百億ぐらいの実績をつくらせていただきました。これはこれでさらに伸ばしていかなきゃいけません。
 御指摘のように、今、中小企業が持っている債権の中で、いわゆる資産ですね、その中では、土地が約七十二兆と言われておりますし、それから現金が七十四兆と言われています。しかし、それより大きな塊として、今の売り掛け債権というのは八十四兆、こういうふうに言われていますので、ここのところをもっと円滑に利用しなきゃいけない。そういう中で、これを債券化する、証券化し債券化する、そういう構想を今練っているところでございます。
 これはどういうことになるかというと、一つは、そういう売り掛け債権を金融機関が幅広く引き取って、そしてそれをひとつ証券、債券として、そしてそれでどんどん中小企業の融資も助かるし、それはそれで業に成り立つ、こういうことです。
 これは、検討していくためには、やはり金融機関の受け入れ状況でありますとか中小企業の対応ですとか、さらには、さっき言った、売り掛け債権のいわゆる禁止特約というのがありますから、そういったところを総合的に今検討しておりまして、日銀のお話をなさいましたけれども、日銀とも今相談をさせていただいておりまして、これはなるべく、今厳しい状況の中で、さらに売り掛け債権の有効活用というものを私どもは積極的に図っていかなきゃいけない、このように思っております。
速水参考人 ただいま北側会長のお話になられた売り掛け債権の市場・証券化というのは、私どもも、昨年来非常に関心を持ちまして、いろいろ事を進めつつある段階でございます。
 おっしゃるように、中小企業の金融というのは、金融機関からの借り入れが多いので、ほとんどが間接金融ということになっております。中小企業の債権のうち、全体として六十五兆円に及ぶ規模が売り掛け債権という形になっておりまして、これを何とかして市場化して売買ができるようにしていきたい。アセットバックド・コマーシャルペーパーとアメリカなどでは言っております。それをまとめるのは、中間に立つ特別目的会社というのができまして、それはもうできております。それが、例えば大企業の下請会社などに売り掛け債権で物を納めた者の手形をとって、それを合計にして証券化して、それを市場に売却していくというようなことが始まろうとしております。
 これはやはり相当な金額になっていくと思いますし、こういう特別目的会社というのも新しい仕事として、いろいろな金融機関や商社とか、あるいはいろいろな企業がそういうものをつくろうとしておりますから、そういう意味からも、ぜひこれは早い機会に市場化が実現すればいいがというふうに思っております。
 その証券化の過程で、私どもも非常に今こういうことにできないかと思っておりますのは、政府系の金融機関がこれに公的保証をして、これはアメリカなどでやっておるわけでしょうけれども、そうすれば、市場が一層拡大して投資家は投資しやすくなってくる。そのことはもう事務的にも話し合いをしているようですが、この間も、水口中小企業金融公庫総裁が来られたときにも、市場で金融機関と争うという形よりも、むしろそういうような形になってサポートしていただければ新しい市場ができていくんじゃないかというふうに思っております。
 日本銀行としては、買い入れ手形の担保でとるにつきましてもかなり緩和をしておりますし、これからそういった市場が証券化され育成していくことについて、関係省庁や市場関係者とも連携しながら、その早期実現に努力していきたいというふうに思っております。
北側委員 ぜひ、中小企業庁、経産省と日銀との間でしっかり連携をとっていただいて、これは本当にいい制度ですので、ぜひ早期に実現できるように頑張っていただきたいと思います。
 中小企業者にとりましては、自分の売り掛け債権を、本当はお金が入ってくるのはずっと先なんだけれども、入る前にこれを換金できるわけでございまして、ぜひ、この制度が早期に実現して、中小企業金融の円滑化に資するように頑張っていただきたいというふうに思います。
 そこで、次の質問に移らせていただきますが、デフレの要因。今、このデフレというのが一番最大の問題、デフレ克服が最優先課題というふうに言っておるわけでございますが、このデフレの要因というのは、もちろん需要不足、それから、日本の産業が成長分野への構造転換がおくれているとか、さまざまな理由はあると思います。根本的には需要不足ですから。
 一方、よく言われますのは、中国デフレということをよく言われるんですね。中国デフレ。ちょっとこれいいですか。(パネルを示す)日中貿易がもう本当に毎年毎年伸びております。いよいよ二〇〇二年、昨年は、対中国の貿易総額が、輸入と輸出を合わせた貿易総額が一千億ドルを突破いたしました。また、輸入だけを取り上げますと、とうとうアメリカを抜いて第一位。輸出の方は第二位なんですが、第一位。この表は香港経由の輸出が入っておりませんので、実際はこれよりまだ多い。百億ドル以上多い規模になるわけでございます。日中貿易が日米の貿易関係とほぼ匹敵するような量にまでとうとうなってきたわけでございます。
 まず、輸入の話をさせていただきたいんですが、輸入がこれだけ毎年毎年ふえているという中で、先ほどのいわゆる中国デフレ、非常に低廉な安い品物がどんどん中国から日本に入ってくる。それは、中国製品の輸入急増が我が国経済のデフレインパクトにどういう影響を与えていると認識しているのか、竹中大臣、ちょっと御答弁をお願いしたいと思います。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、デフレの原因というのは、需要の不足もあるでしょうし、海外から安いものが入ってくるというものもあるでしょうし、また金融的な要因もあるだろう。それぞれにやはり重要なものだというふうに思っております。
 ただ、まさしく日中貿易、輸入に関しては日本にとっての第一位の貿易国になったということ、それと、アジアを見ましても、日本のみならず香港、シンガポール、マレーシア等、やはり中国と深くかかわっているところで物価の下落が起きている、そういうことから重ね合わせましても、やはり中国の要因というのは、何割と言うことはなかなか難しいのでございますけれども、相当無視できない大きなものである。それが世界的に、中国のものは世界に行っているわけでありますから、世界的なインフレ率の低下にもつながっている。大変重視をしなければいけない要因であるというふうに思っております。
北側委員 それで、ちょっと時間がないのでもう省かせていただきますが、こういう中国デフレというふうな表現を使いますと、やはり中国脅威論、ここにつながりやすいんですね。私はやはり、そうじゃないんじゃないか、そういうふうに考えるべきじゃないというふうに思うんです。
 今世界で、恐らく経済の活力、エネルギーがどこであるかといったら、やはり中国であり、そしてASEANであり、韓国であり、アジアなんですね。日本だけはちょっとだめなんですけれども。この東アジアがやはり世界経済を引っ張っている、こういう状況。一方で、ほかの、アメリカも含めまして、ヨーロッパ、EUも含めまして、なかなか景気がよくならない、こういうのが今の世界経済の状況であるというふうに思うんですね。
 日本の輸入全体は昨年〇・六%減少しているんです。日本の輸入全体は〇・六%減少しているんですが、中国からの輸入は一〇%ふえている。さらにふえていますのが、日本から中国への輸出、これが大変ふえておりまして、前年に比べて三二・三%、〇一年に比べまして去年は輸出が三二・三%急増しています。自動車ですよ、部品じゃありません。自動車という完成した品物が、〇一年に比べますと、対中国輸出が倍になっているんです。
 私は、日本の経済にとっても、非常に内需が悪い中で、中国を中心とする東アジア地域への輸出が、結果としては昨年の国内経済を下支えしている、そういう機能を果たしているわけです。急成長するこの東アジア市場を我が国経済の発展の牽引力にしていく。中国脅威論ではなくて、我が国経済の発展の牽引力、中国の経済発展、東アジアの経済発展を活用していく、日本の経済が、こういうことが大事なんだというふうに思っておるわけでございます。
 確かに、産業の空洞化という深刻な問題もあるんですが、中国脅威論というのではなくて、中国また東アジアというのは、これから五年、十年という単位で少なくとも見れば、まだまだこの経済は発展していくと思うんですね。そういう中で、むしろ日本はそういうことを前提として、どう日本の産業の補完をしてもらうのか、どう分業していくのか、日本の新産業発展のいかに好機にするのか。また逆に、あの沿海部の方は三億人いるわけですよ、中国の人口。ここは所得も高いんですね。ここは三億人のすごい市場があるわけでございまして、そこをどう日本にとっても大きなマーケットにしていくのか。そういう考え方に立ってやっていかないといけないんじゃないのかなというふうにやはり私は思っておるんです。
 そういうふうに思っておりましたら、総理もそういうお話をされているんですね、海外で。これは去年の四月ですけれども、アジアフォーラムがございまして、これは中国であったんですが、総理はそれに出席をされまして、ちょっとそのまま読ませていただきますと、「中国の経済発展を「脅威」と見る向きもありますが、私はそうは考えません。私はむしろ、中国のダイナミックな経済発展が日本にとっても「挑戦」、「好機」であると考えています。中国の経済成長に伴う市場の拡大は、競争を刺激し、世界に大きな経済機会を与えることでしょう。日中両国は、産業構造が異なっているので、「相互補完」関係を強化することも可能です。日中経済関係の進展が日本の産業のいわゆる「空洞化」をもたらすと恐れるのではなく、日本での新産業の育成と中国市場への展開を通じて、日本産業の「高度化」を図る「好機」と捉えるべきです。」こういう演説を当時、総理はされているんですね。
 総理、私もそのように思いますが、改めて御認識を聞きたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私が、昨年四月でしたか、中国博鰲のフォーラムでそのような演説をしたのは、日本の一部で中国脅威論が出ていたものですから、私は、そうじゃない、好機ととらえるべきだと。中国とのこれからの関係というのは、経済のみならず、あらゆる分野において広がっていくということで、そういう発言をしたわけです。
 中国に行ってそういう発言をして中国だけを喜ばしているのではないかというのではいけないので、昨年九月にアメリカの外交評議会でも、アメリカ人を前にして、私は日本の総理として、日本の一部に中国脅威論が出ているけれども、そうじゃないと、同じような演説をいたしました。
 日本の中にむしろ脅威論が出ておりますが、そうじゃない、もっと積極的に、新たな時代の到来を日中両国ともに切り開いていこうという挑戦の時代だと前向きにとらえて、私は、日中相互補完性、こうした貿易額が伸びているわけでありますから、前向きにとらえるべきだと思っております。
北側委員 それで、中国を初めとして、この東アジアとの関係強化を図っていかないといけない、経済的にも。そこで避けて通れない問題がFTAの問題だと思うんですね。
 平沼大臣にお答え願いたいと思っているんですけれども、今、自由貿易協定、これが物すごい急増しているんです、世界でも。あっちこっちで、二国間、多国間でこの自由貿易協定というのをやっている。WTOはWTOとして尊重しながら、そういう個々でやっているわけですね。アジアでもそれが非常に活発でございまして、日本もシンガポールと、昨年、FTAの締結にこぎつけました。これは一つ大きな前進だと思いますが、ASEANとの関係で、これは中国に先を越されているんですね。ASEANとの関係では、もう中国は積極的にこのFTA構想を打ち上げまして、二〇〇一年の十一月にはもう具体的な協議を開始して、二〇一〇年には協定締結、前倒しでやる、一部は。こういう状況にまで中国は、それも中国は、中国も日本と似ていまして農業は弱いんですよ、農業がだめなんですね、それなのにもかかわらず、ASEANの方にとって有利な農業分野において貿易の自由化を早期実施する。アーリーハーベストというふうに言うんですけれども、こういうことをてこにして逆にASEANの協力を取りつけている。こういうふうに、戦略的に中国はやっております。
 私は、我が国として、発展している、経済活性化しているこの東アジア地域の国々との経済連携、特にこのFTAの推進について、我が国の戦略をやはり明確にしないといけないと思うんですよ。ところが、この経済戦略については、経産省は経産省で考える、そして外務省は外務省で考える、さらには農水省は農水省でいろいろと考えている。こういうばらばらの状況でございまして、私は、こういう対アジア経済戦略というのは、やはり内閣、総理のもとできちんとそういう戦略をつくる人がいて、ちゃんと指し示さないといけないと思うんです。それをすることが物すごく大事だと思うんです。そうしないと、個々の省庁に任せていては、それぞれの利害がありますから、なかなか前に進みません。
 そういう意味で、私は、このアジアに対するそういう総合的、戦略的な、総理のもとでの戦略本部というのをつくるべきだと思うんですが、まず、このFTAに対する、その推進について平沼大臣はどう考えていらっしゃるのか。
平沼国務大臣 東アジア圏の経済のポテンシャリティー、将来性については、今、北側先生からお話がありました。この地域では、人口が約二十億ございまして、そして全部のGDPを足しますと七兆ドルを超える、こういう非常に潜在力がある地域であります。
 それで、御指摘のように、中国は特にASEANとの経済の連携というものを打ち出しております。しかし同時に、小泉首相も、ASEANにおいて、日本もこのASEAN諸国との間で十年以内に経済連携をやる、こういうことをもう基本方針として打ち出されているわけであります。
 それで、各省庁間がばらばらだという御指摘がありましたけれども、それは決してそうではございませんで、やはり関係省庁は、この問題については、総理の基本方針の一つでございますから、連携を密にして今取り組んでいるところでございます。
 FTAに関しましては、私は、昨年六月に、実は東アジア自由貿易圏構想というのを打ち出させていただきまして、FTAも含めてそれぞれの国と具体的にやっていこう、こういうことで今、御承知のように、韓国とは勉強段階が済んで、非常に進んでおります。それから、各国の首脳が来られるときには、日本がぜひリーダーシップを発揮してほしいんだ、こういう言葉がございまして、具体的にそれぞれの国から、東南アジアの国々からFTAについてのいわゆる申し出もあるわけでございますから、私どもとしては、大きな枠はWTOの自由貿易体制、そして今、世界ではこのFTAというのが一つの大きな流れになっております。
 ですから、日本としても、このFTAというのは、特に東アジアを中心に、具体化にこれから各省庁連携をしてしっかりと進めていかなければならない、こういうふうに思っているところでございます。
北側委員 総理、先ほど私が申し上げた対アジア経済戦略本部みたいなものを、総理直轄のもとで、民間からも集め、また関係の省庁の専門の人たちも集めて私はやるべきだと思うんですが、いかがでしょう。
福田国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、各関係省庁でこれを取りまとめていくということは大事なことでございます。
 したがいまして、そういう考え方のもとに、昨年このFTA問題を研究する懇談会をつくりました。また、その答えも出していただきまして、その作業を進める過程において、関係省庁に集まりまして、私が主宰しまして連絡会議を行う、こういうような体制をとったところでございます。
 今後、さらに強力にこれを推進していくという観点から、今御指摘のような体制も視野に入れまして、具体化について考えていきたいと思います。
北側委員 やはり、基本的な戦略というのは、これは各省庁では判断できないと思うんですね。ここはやはり大所高所からの政治判断が必要だと思いますので、ぜひリーダーシップを発揮していただきたいと思うわけでございます。
 そこで、もう時間がございませんので最後ぐらいの質問になるかと思いますが、日米関係はやはり当然日本にとって基軸です、外交の基軸です。しかし、私きょうずうっと質問させていただいたように、例えば日本の安全保障の問題を考えましても、今置かれている状況を考えると、中国の役割というのは極めて大きいわけです。日中の連携というのは極めて重要です。また、経済的にも、今るるお話をしてきましたが、日中関係の重みは今後ますます私は大きくなっていくだろうと思います。日米関係とともに、日中関係が日本の今後の外交の基軸になってくる、そういう時代になっているんじゃないのかと思うんですね。
 昨年国交正常化三十年を迎えて、私は、ある意味では次の三十年に向けての日中の新時代が来ているのではないのかというふうに思っておるところでございますが、総理、その辺の御認識はいかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 韓国、中国、ともに我が国の隣国として、これからもますます重要な役割を果たしていかなきゃならないし、日本にとりましても、協力していかなきゃならない分野がたくさん出てくると思います。
 韓国でも新政権が近く発足いたします。中国でもしかりでございます。そういう点も踏まえ、たまたまことしは日中平和条約締結二十五周年の節目にも当たります。いろいろ交流を密にして、お互いの友好関係を深めていきたいと思っております。
北側委員 今お話がございました、中国は昨年十一月に胡錦濤党総書記が選出をされました。ことしの三月の全人代を経て、新たな指導部体制が発足をいたします。一方で、朝鮮半島の非常に深刻な安全保障の問題、さらには、日本にとって人権にかかわる拉致事件の解明の問題、支援の問題、究明の問題、こうした問題があります。
 さらに、日中経済には、これは中国にいろいろお願いせなあかんことがたくさんあるわけですよ。知的財産権の問題なんか、本当に大事な問題だと思います。日本側からしっかりと、私はこれは政治問題化しないといけない問題だと思うんですね。中国に国際ルールをしっかり守れということも、単に役人レベルではなくて、やはり政治家がきちんと政治問題化していくということも、大事な問題もたくさんある。
 そういう意味で、私は先ほど日中新時代の到来だと申し上げましたが、私は、ぜひ、総理、今後できるだけ早い時期に、日中の首脳間での、本当に政治家同士のハイレベルの意見交換を実施することが極めて重要だ、それは日本の安全保障にとっても、また日本のさまざまな経済のことを考えても、経済のこれからのことを考えても、日中間でまずトップ同士が密な連携をするということが日米とともに極めて私は大事なときが来ているのではないかというふうに思います。そういう意味で、できるだけ早期に日中の首脳会談というのを開いて、本当に胸襟を開いて会談していただきたいと思いますが、いかがでしょう。これを最後にして終わりたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日中双方にとって都合のよい時期に対話をするということは望ましいことだと思っています。そういう対話をとらえて、お互い今後の発展について率直に意見交換をして、今後の発展を期していきたいと思います。
北側委員 終わります。
藤井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
 この際、赤羽一嘉君から関連質疑の申し出があります。北側君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 本日、私に与えられた時間は二十分間という大変限られた時間でございますが、国民の皆様の真摯な声を率直にお伝えし、御質問させていただきたいと思いますので、小泉総理初め閣僚の皆様におかれましても、率直なる御答弁をよろしくお願い申し上げます。
 まず、総理、日産のカルロス・ゴーン氏、彼は、日産という会社を企業再建されたという意味で、今、今というか日本の社会では高い評価をされておりますが、この企業再建について、まず総理の御所見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 外国人経営者という方が登場してきて、日本とは違う手法でどのような合理化をするのかということで、大変関心を持って見守ってまいりましたけれども、かなり大胆な形でリストラ、合理化をやりながら、社員のやる気を出させてうまく再建させた。日本のよさと、また日本にない刷新的な経営、うまくかみ合ったからこそあのような再建が可能だったのではないかと、その手腕に敬意を表しております。
赤羽委員 私も、ゴーン氏ならではの手腕があったればこそ企業再建、でき上がったわけではないと思いますが、途上であると思いますが、今総理の御答弁にもございました、その途中には、かなりリストラによるコストカッター、それによっての収益性の向上による再建という、そういった側面も否定できないわけでありまして、これをそのまま国の再生にそういった手法を投影させるわけにはいかない。日本人は、採算性が悪いところにいてリストラに遭ったからといって日本国民をやめるわけにはならないわけでありますから、いろいろ考えても、今回小泉総理が進めようとされている構造改革を進める上で、セーフティーネットの充実というのはまさに車の両輪であるというふうに、私はそう認識をしておりますし、小泉総理も同じ認識に立っていただいているというふうに思うわけでございます。
 小泉総理がよく言われる、構造改革なくして成長なし、日本は大変な状況だから歯を食いしばって痛みをこらえて改革に頑張ろう、こういうスローガンをされました。国民は、そうだ、頑張ろう、痛みをこらえて頑張ろう、こういう形で、大変な高い支持を総理に与えたわけでございますが、この二年間、どうも国民の皆さんから見て、改革の方の道筋も余りよくわからない。
 一方で、景気も、同僚の委員から同様な話がございました、現場は大変な厳しい状況が続いている。失業率を見ましても、平成十三年の夏から五%台に突入をして、高どまりというか、高い水準で推移をしている。これから、今政府が用意されている不良債権処理の加速化、また過剰供給構造の是正を目指した産業再生促進、こういったことを進めることによって、内閣府の数値でも相当な失業者が出てくるというふうに予想されているわけでございます。
 総理が言われる痛みというのは、正直言ってよくわからないという部分があります。職をかえる痛みなのか、職を失う痛みなのか、家を失う痛みなのか。総理は何を、どんな痛みを我慢してほしいのか、こういったメッセージがやはり足りないんじゃないか。
 例えば失業率も、これから産業再生を進めていく上で、どのくらいまでの失業率ならば許容される痛みと考えられているのかということを、まず総理の御所見を聞きたいというのが第一点でございます。
 もう一つは、私は、国民の皆さんに痛みを求めようとするならば、まず指導者の皆さん、我々が痛みを同苦していかなければいけない。それがなければ、やはり国民の皆さんだけが痛んでくれというのでは道理が通らない。
 国会においては、私たち公明党は、昨年の国会で、これまで勤続二十五年の国会議員に与えられておりました毎月の三十万円の特別交通費や百万円の肖像画、こういった制度は廃止しようということで、国会でもそう決議をされ、廃止となったわけでございます。
 また、地方議会においても、私たち公明党は、各地方自治体で、大変な財政難の中で、海外視察は自粛する方向で提案していこうということで、今一生懸命運動させていただいております。
 私は、役所においても、公務員の人数削減というのは中長期的に大事だと思いますが、もっと今すぐできること、国民から見てよくわかるようなこと、例えば、私なんかが思うのは、公用車、各役所で公用車は相当に台数ありますから、これは、例えば国会に来るときぐらい地下鉄丸ノ内線で来るようにしよう。(発言する者あり)私は、そういう仕事でも必要だと言われるかもしれないが、やはり民間企業はそういった車の面なんかも相当絞って頑張っておられる。
 ですから、民間も頑張っていることはまず率先して公の部分が痛みを示していくということの姿勢が大事だと思います。その点について、先ほどの失業率に関する痛みとあわせての御答弁を総理から伺えればというふうに思います。お願いします。
小泉内閣総理大臣 痛みというのはどんな人にもあると思います。痛みのないような明るい方においても、どこかで悩みや痛みを抱えながら頑張っておられるんだと思っております。
 改革に伴う痛み、これは不良債権処理を進めていきますと、当然、生き残れない企業は市場から退場しなきゃならない場合もあります。となれば、今まで勤めた職場を失う、職がなくなる、これも大変な痛みであります。あるいは、職は失わなかったけれども、会社をかえなきゃならない、同僚を離れて、また新しい人間関係の中に入っていかなきゃならない、これはやはり悩みであり痛みであると思います。さらに、職を離れて新しい職についた場合、新しい訓練を受けなきゃならない、新しい仕事を覚えなきゃならない、努力しなきゃならない、これもやはり痛みだと思います。
 そういうもろもろの痛み、だからこそ改革に伴う痛みというのは一様ではないし、特に政治の場において、不良債権等処理を進めていきますと、失業が出るから雇用対策をしっかりしなきゃならない、あるいは企業の資金繰りが滞るであろうから中小企業対策どうしようか、あるいは生き残れない企業がお互い再編合理化を考えてどのような対応をするか。
 今までと同じようにいかない。いわば、多くの人は、今までやってきたことが通じればそんな痛みは伴わない、楽だと思うんですね。ところが、変化の時代、変化に対応するというのは、元気のある人、やる気のある人ならいいんですけれども、今までなれてきたことを変えろというのは、年をとればとるほど痛みなんですよ。
 そういう点から考えますと、やはり何事も、変化に対する痛み、これは大変だと思います。しかし、新しい変化を挑戦と受けとめて、自分の隠れた能力をみずから掘り起こして見出そうという、そういう勇気とか努力もやはり必要ではないかと思っております。
 そういうことに対して、どうやって政府として、政治としてそのような機会を提供していくか、チャンスを与えていくか、これがやはり雇用対策にしても中小企業対策にしても大事ではないか。そういうことによって改革を実現していくことが大事ではないかなと思っております。
 また、公用車等の点におきましても、むだな点は省く、必要なものは大いに使ってもいいけれども、そういう不断の見直し、いまだやっているところにむだはないんだろうか、もっと努力すればできることはないんだろうかということを不断に先頭に立つ者が心がけることが必要だと思います。
赤羽委員 やはり、今御答弁にもありましたように、まず襟を正す、時代が変化したと。今まではそれを通してきたけれども、車に乗ってきたのを電車に変える。わかりやすい変化だというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 私、ことし四十四歳なんですが、私の友人で、平成元年に五千万円前後の借金をして家を買った、そういう人がおります。昨年リストラに遭った。三十五年のローンです。五千万円で買った住宅は、二千万円ぐらいの資産価値しかなくなった。それで、住宅金融公庫が十五年ぐらい延長してくれるとかいろいろな制度をやっているんですが、計算すると、住宅公庫の部分は三割カットになる、しかし、民間の部分が、ボーナスじゃなくて十二カ月でならすと二十二万円、結局、三十万近くローンを払わなければいけない、こういう状況になっているわけです。
 こういう人というのは、実は私たちの世代から少し上、四十半ばから五十代半ば、閣僚の皆さんの中にもいらっしゃるけれども、そういう人たちは何があるかというと、バブルのときに一番高い住宅を買ってしまった、加えて、我々の世代になると転職が非常に制限されている。いつリストラになる、リストラになったときの恐怖というのは大変なんですね。このときにどうしていくのか。もう自己破産とか自殺しか道がないような国であってはいけないんではないか、私はそういうふうに思うわけです。
 雇用対策についても、今回、坂口厚生労働大臣の指揮のもとで、例えば早期再就職者支援基金事業二千五百億円の創設とか、これは、かつてからありました緊急地域雇用創出交付金、これまでの三千五百億円に加えて八百億円積み増し、こういった雇用対策もとられておりますが、やはり今回、産業再生ということを進めるに当たって、厚生労働省もぜひ経済産業省と連携をとりながら、私は、やめた後、失業した後職を探すという制度ではなくて、会社にいて、ある意味ではやめなければいけない状況になったら、その中から、今もう厚生労働省がやり始めたトライアル雇用なんかを通じて、転職という形でスムーズに進めていくようなことをぜひお願いしたい。
 こういったことをやっていくことが、私は、これからの厳しい状況の中、痛みを越える大事な制度設計になるんではないか、そう思っておるんです。
 時間も限られておりますので、きょうは御答弁はいいですし、今の状況にはないんですが、ぜひ、坂口大臣と平沼大臣、呼吸を合わせて議論をしながら、役所の垣根を取っ払ってやっていただきたいということが一つでございます。
 扇国土交通大臣にも、これは私、国土交通委員会ですから、また引き続きやりたいと思いますが、やはり、バブルのときに買った、失業してしまった、そして家を売却してもローンだけ残っていると。やはり、失業したらゼロからスタートできれば再チャレンジしようという気にもなりますが、マイナス二千万から失業してやれといったら、とてもじゃないけれども、生きていく勇気というのは与えられないと思いますよ。
 アメリカでは、ノンリコース制度、そういう家を売ってローンが残った場合はその債務免除できるという制度も実はある。そういったことも、やはり時限的、限定的な制度としてぜひ大臣にも御検討いただきたい。お役所の役人に言っても、それはできませんと、できない理由は山ほどつくるんですけれども、それであったら本当にそういう国民はいいのかということになるので、政治家の責任としてぜひ御検討いただきたい。
 わかったという、うなずいていただいておりますので、御答弁があったものとして、次に進めたいと思います。
 それでもう一つは、中小企業につきましては、午前中、我が党の北側政調会長がるるお話もありましたし、今回、無担保、無保証の融資の拡充とか資金繰りの円滑化、借りかえ制度とか、相当踏み込んだ制度設計もできましたので、これを徹底してやっていただきたいということでありますが、私、一つ個人的な体験というか、私の実家はしがないパン屋だったんですね、商店街の。おやじのことを思っていると、今でも記憶しているんですが、何かおやじが連帯保証人になってかぶったときにだれに相談したかというと、地元にあった銀行の支店長だったんですよ。大変親身に相談してくれた、アドバイスもしてくれた。また、店舗を少し拡張しようかとか改装しようかとかといったときも、本当に商売を、大した商売になるわけないんですよ、小さな小売屋ですから。
 そういった意味で、私は、これまでの銀行の支店長というのは町のよろず相談者、金も貸すけれども知恵も出す。ところが、今の銀行については、金も出さない、知恵も出さない。危ないところから資金はがし、融資はがし。こんなのだからだれも尊敬していない。とんでもない。僕は大変とんでもないと思っているんです。
 とんでもない理由がまた一つあって、自由化になったからといって、皆さん知っていますか。ATM、キャッシュディスペンサーは、土曜日からその銀行でも百五円かかるんですよ、手数料が。百五円て小さな金額だと思うけれども、普通の金利が〇・〇一%、百万円を一年間預けていて百円しかならない時代に、平気で百五円上げるこの無神経さ。国民不在、顧客不在。どこを向いているんだと。こんな銀行の態度で国民はおさまらないですよ。
 私は、資金はがしとかと言っていることでもあるし、ATMのことなんというのは、総理はATMに行かないと思いますけれども、これは国民にとっては、百万円一年間託す利息より、一回でかかっちゃうのですよ。金額間違えたら二回かかって、二年分以上の利息がかかる、こんなばかな話なんですよ。
 私は、今の銀行はとんでもない、融資にしても、担保主義になって堕落した、十年間で、そう思いますが、銀行には造詣が深いと思いますが、小泉総理、貸しはがしの実態なんかも踏まえて、今の銀行の姿勢について御所見をいただければと思います。
小泉内閣総理大臣 具体的な点には余り触れるべきではないと思いますが、それだけ、では、百五円が高いんだったら、どうしてもっとうちは安くやろうという金融機関が出ないんでしょうね。そこが私は不思議でしようがない。おかしい。みんな一律、こういう感覚がおかしいんですよ。そんな高いんだったら、うちは十円でいいとか五円でいいとか、何で出てこないのか、不思議でしようがない。
赤羽委員 総理が言われるように、無料でやっているところがあるのですよ。これはシティバンクなんです。シティバンクは無料、終日、土曜だろうが日曜だろうが。ここに僕は日本の銀行の根本的なおかしさがあると思います。何のための業なんだということを、今後の不良債権処理に加えて、ぜひ竹中大臣にも聞いていただき、参考にしていただきたいというふうに思います。
 それで、暗い話がずっと続きました。時間もあと一分ぐらいしかなくて、暗い話で終わるのは残念なんですが、構造改革特区というのは、これは数少ない希望の星だと僕は思います。全国からいろいろなことが出ています。
 我が神戸からも、先端医療産業都市、また港。先端医療産業都市は、昨年ノーベル化学賞を島津製作所の田中さんがとりましたが、実は、あのセンター長の竹市先生も候補者に挙がっていた。それだけレベルの高いプロジェクトになっておりまして、ぜひ、こういうことをやりたいという地元の声が随分出てくるのに、始まりもしないのに、各役所が、それはできないとか、これは全国統一だから後回しよみたいな、これがせっかくの小泉政権の目玉の構造改革を本当にだめなものにしてしまう。特区なんだから、だめでやってみようと。午前中の御答弁にあったけれども、失敗したらやめればいいじゃないか、まずやってみようという基本原則を確立して、ぜひ堂々とやっていただきたいということを最後に、時間があれですけれども、御答弁いただければ。
小泉内閣総理大臣 今言われたように、特区なんですから、これは全国と考え違いして反対している方がたくさんいるんですから。失敗すればよりよい方法を目指せばいい、失敗したらこれを次の成功に結びつけていく、実現する方向で考えろ、そういう原則方針を出して、今各大臣に督促しているところでございます。
赤羽委員 よろしくお願いします。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて北側君、赤羽君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守新党の井上喜一でございます。金融とか財政関係について御質問をいたします。
 本年度の施政方針演説は、経済の再生ということが第一番に取り上げられております。日本経済を再生させるためにあらゆる政策手段を総動員する必要がある、政府は日銀と一体となってデフレ克服に取り組むということですね。財務大臣の演説も、デフレの克服が最重要課題、最優先課題、こういうことになっております。経済演説は、もう当然のこととして最優先課題がデフレの克服だ、こういうことを指摘されておりまして、若干、この経済演説の中には、今のデフレというのは、複合的な背景もあるけれども、現在の日本のデフレというのは貨幣的な要因による面も強い、こういう指摘があるわけですね。いずれにしましても、政府は日銀と一体になって、前例にとらわれることのないデフレ対策を進めていくんだ、こういうことで言われております。
 そこで、こういったデフレの状況と関連いたしまして、ちょっと前からインフレターゲットの議論が出ているわけであります。なかなか、このインフレターゲットの設定というようなことは技術的には難しいと思うし、プラス面、マイナス面なんていうようなこともありますから、今、全体として合意が見られているというような状況じゃないと思うんですよね。賛成する人もあれば反対する人もある、こういう状況だと思います。
 ただ、やはり政府は、私は、どちらかといいますと、インフレターゲットの設定について幾分肯定的といいますか、前向きというか、そういうふうに受け取るわけでありまして、政府のインフレターゲットの設定について、統一見解がどうなっているのかわかりませんけれども、少なくとも物価をゼロ以上に上げていく、こういうような共通の認識があるんじゃないかな、こんなふうに思うのでありますが、それにしましても、各人、多少インフレターゲットの設定についてニュアンスが違っていると思います。
 そこで、きょうは竹中大臣と塩川大臣にお聞きしたいのでありますけれども、インフレターゲットの設定について、どういうようなお考えですか。要するに、賛成なのか反対なのかとか、そこを含めてお伺いしたい。
 その次の質問は、もしそれに対して肯定的なお答えであるならば、その目標をどういう手段、方法によって達成できるのか、お考えをいただきたいんです。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、私の経済演説の中では、やはりデフレについては、これは貨幣的な要因も非常に大きいというような趣旨の話をさせていただきました。デフレの克服のために、前例にとらわれず、政府、日銀が一体とならなければいけない。
 まさに、先ほどから特区の話が出ておりますけれども、特区というのは、政府の側でできる需要の創出について、前例にとらわれない新しい一歩を踏み出しているという認識をしております。その意味では、重要なのはマネーサプライをふやすことであって、マネーサプライをふやすということに対して、やはり前例にとらわれずに日本銀行にも頑張っていただきたいという期待をしているわけです。
 御指摘のインフレ目標ないしは物価目標、インフレ率なのか物価水準なのかという目標に関しては、どうもそれ自体が自己目的化されて議論されているという懸念を私自身も持っておりますが、重要な点は、やはりマネーサプライをふやすことである。マネーサプライを安定的にふやしていくというために、場合によってはそういった物価目標のようなものも、非常に有効に作用している国は外国にもあるわけでありますから、この点についてはぜひ前向きにいろいろな形、可能性を考えていただきたいというのが基本的な立場でございます。
 しからば、それをどのように実現するか。どのように実現するかという政策手段に関しては、これは日本銀行が独立性を持って決めていただく問題であろうというふうに思っております。
塩川国務大臣 私はインフレターゲットという言葉は使っておりませんけれども、物価を水準以上に上げたい、それじゃ具体的に何だといいましたら、私たちとしては、平成九年度の物価が、一番バブル崩壊後安定した状態のときでございましたので、それで、平成九年の大体二・一%ぐらいのところまで、そのぐらいまでになるのが一番いいのではないか。
 その手段としては、先ほど竹中大臣言いましたように、まずマネーベースを広げるということが第一である。それと、でき得れば内需をさらに一層振興していくということだと思っております。
井上(喜)委員 次に、日銀総裁にお伺いしたいのでありますが、かねがね総裁は、いわゆるインフレターゲット論などについては大変慎重な御意見を持っておられるというぐあいに承知をしておりますが、簡潔に、簡単に、一遍日銀の立場を御説明いただきたいんです。
速水参考人 簡潔にお答えさせていただきます。
 インフレターゲティングというのは、例えば英国なんかでは、インフレターゲティングというのは機械的に目標達成をねらっているのではありません。金融政策として効果を持つか、それとも弊害の方が大きいか、これはやはり大事なことで、目標を実現する手段とかメカニズムの裏づけなどがどの程度あるのかということが大きな問題だと思うんです。
 まず二つのことを申し上げたいと思うんですが、一つは、日本では短期金利は広範にほぼゼロになっちゃっているということですね。それから二つ目は、不良債権問題を抱える銀行の信用仲介機能というのは十分には回復しておりません。金融政策の効果が及ぶルートも毀損されております。このように、金融政策でインフレ目標を実現するメカニズムはとても十分とは言えません。そうした中で努力目標的にインフレターゲットを導入しても、効果が期待できないだけでなくて、逆に市場や経済を著しく不安定化させる危険があると思います。
 私どもの方では、量的緩和をいたしました、始めました二年前に、CPIの、消費者物価の上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和を続けますという宣言をいたしております。今後、幅広い主体の努力によって構造問題への取り組みなどが着実に進められて、日本経済が本来の力を発揮できるようになれば、デフレからも必ず脱却できると思っております。
井上(喜)委員 また引き続いて速水総裁にお伺いしたいのでありますが、総裁は、デフレの克服には金融だけではだめなので、財政出動でありますとか規制緩和とかそのほかの手段を動員しなきゃだめなんだ、こういうこともおっしゃっているんですね。
 そこで、どういうような財政出動、どういうような規制緩和、余り抽象論じゃなしに具体的に、わかるように、ひとつ御所見をお伺いいたしたいと思います。
速水参考人 お答えいたします。
 日本経済を活性化し、持続的成長を実現していくという、このために私は三つのことが大事だと思うんです。
 一つは、民間需要を引き出すということで、それには規制緩和とか税制改革を含めた適切な財政運営等が用いられていくことが大事だと思います。二つ目は、国民の安心感を高めるということですが、社会保障の見直しとか雇用のセーフティーネットの整備といったようなものを通じて、国民の安心感を高めることであります。三つ目は、よく言われる不良債権問題の克服を通じて、金融システムの安定強化を図るということでございます。
 こういった具体策につきましては、経済財政諮問会議などで改革加速のための総合対応策といったようなものが既に発表されておりまして、そうした観点に立って施策が盛り込まれていると思います。こういった施策を着実に実施していくことによって民間部門の活力が引き出されてくるのではないかというふうに期待しております。
 日本銀行としましても、経済を持続的な成長軌道に戻して、物価がマイナス基調から脱却できるために、中央銀行として最大の努力をしたいと思っております。
井上(喜)委員 日銀は今金融緩和を大変積極的に進めておられまして、資金供給というのは大変潤沢ですね。ですから、長短金利ともに非常に低水準といいますか、低い水準で推移しているんですが、しかし、なかなか金融機関の方から企業の方へ金が回らないということですね。あるいは、総裁が強調されますように、いずれは物価の方にも影響してくるというようなことでありますけれども、さっぱりそういうふうな効果も見られない。
 そういうことだと思うんですが、こういう原因、今お答えになりましたことからいいますと、日銀はちゃんとやっているんだけれども、どうも政府の方が十分な対応をしていないからそうなるんだ、こういうように理解してよろしいんですか。
速水参考人 私どもは金融のことを考えているわけですけれども、今の金融以外のことは、政府その他がやはり今の構造改革その他で現実化していただきたいということは確かにございます。
 それから、不良貸し出しの問題につきましても、私どもも一生懸命やりますけれども、金融庁の方と力を合わせてやっていきたいというふうに思っております。
 問題は、銀行の貸し出しが増加しないのはなぜなのか。これはやはり需要面と供給面があると思うんですよ。需要面の方は、設備投資が低迷して、企業が過剰債務を抱えているもとで資金需要というものは起こらないということ。それから、供給面では、金融機関が不良債権を抱えて、信用力の低い企業などへの貸し出し姿勢を非常に慎重化させているということであります。
 金融機関も、債権流動化など貸し出し以外の信用仲介に努めておりますけれども、やはり金融緩和の効果が企業や家計に伝わっていくためにも、経済の活性化を通じた資金需要の喚起、もう一つは不良債権を通じた信用仲介機能の回復がぜひ必要だと思います。
 私どもはこのほかに、日本銀行は、金融緩和だけでなくて、銀行の自己資本の安定化をさせて、銀行が信用仲介機能の回復にも十分安心してやれるように、銀行保有株の買い入れを二カ月前から始めました。これは順調に進んでおりますことを報告させていただきます。
井上(喜)委員 今、日銀総裁も若干お触れになりましたけれども、私は、どうも金融機関から企業への貸し付けが伸びないというのは、金融機関の自己資本の充実ということにこれは問題があるんじゃないかと思うんですよね。
 今金融機関は、自己資本を大きくするためにいろいろな努力をしているようでありますけれども、私は、公的資金をもう少し弾力的に投入していく、そういうような運用をしていった方がいいんじゃないか。非常にかた苦しいことを言いますから、かえって、それはそれとして理由があるんだけれども、現実のような問題が出てきているのでありまして、やはりデフレ対策を克服するというような点から、もう少し、金融機関の機能を回復させるために、公的資金の投入について考え直していくべきじゃないかと思うんですが、竹中大臣、いかがですか。
竹中国務大臣 金融システムの強化のためには、資産査定、それと銀行のガバナンスとともに、自己資本の充実が必要である、その三つの原則の中の一つと掲げて金融再生プログラムを組んでおります。それに沿う形で銀行も今いろいろな努力を始めたところだというのが現状であるというふうに思っております。
 御承知のように、今の状況の中で万が一にも経営に問題が生じるような金融機関が生じた場合には、預金保険法に基づいてちゅうちょなく我々は行動する用意があるということは、これは金融再生プログラムの中にも明示しておりまして、金融から絶対経済を底割れさせないんだ、ある意味で非常に、政府としては万全の体制をもってやるよという体制にはしているわけです。
 しかしながら、加えて、今の状況だけで十分かということになりますと、これはやはり考慮する問題もあろうかと思っております。したがいまして、これも金融再生プログラムの中に、今の預金保険法以外の自己資本に関する、また公的資金に関する枠組みが必要かどうかについて検討するワーキンググループを金融審の中に今立ち上げておりまして、ことし前半に結論を得ることになっておりますので、御指摘のような点も踏まえて、幅広く議論をさせたいというふうに思っております。
井上(喜)委員 総理、今までずっとこの議論をお聞きになったと思うんですが、竹中大臣は、日本銀行に対して、金融のことについては任せているんだといいますか、努力をしてもらいたいと思っているというような発言があったわけですね。日本銀行は日本銀行で、自分たちは一生懸命やっているんだ、しかし政府の方にもやってもらいたいことがあるんだというような御答弁だったと思うのでありますが、金融政策、通貨とか金融の調節というのはやはり経済政策の重要な一環でありますので、ここはやはり政府と日銀がよく話をする、連絡を密にしてやらないといけないと思うんですね。
 だから、今までの議論を聞いておられまして、政府、日銀の間は大体十分な意思疎通が行われているというぐあいにお考えですか、もう少しやはりよく話をして、足らざるはお互いに補い合って同じ方向に向かって進んでいくべきだというようにお感じだったのか、その辺を含めて御答弁をお願いいたします。
小泉内閣総理大臣 両氏の答弁にもありますように、極めて慎重に発言されておられますが、やはり政府としては日銀の自主性を尊重すべきだということは十分わきまえております。
 そういう中で、政府と日銀は、連携協力を密にして、国際経済、国内経済、よく見ながらより一層緊密に協力して、現下の厳しい経済情勢、金融情勢を克服していくよう努力していきたいと思います。
井上(喜)委員 次は、中小企業対策についてお伺いするのでありますけれども、まず金融ですね。
 金融については、中小企業庁が実態調査をやっております。これが私、一番よく中小企業金融の実態を把握しているんじゃないかと思うんですよね。私自身もそんな感じを持つんです。
 今、中小企業の資金需要というのは、全国的に見ますと、設備投資については、新しく設備投資をしようというような、そういう資金需要は非常に低調だということなんですよね。それから、運転資金もどちらかというとやはり減ってきている。ありますのは、売掛金の回収が長期化しているとか、あるいは売り上げが減っているとか、こういうことに伴うものだ、こういうようなことになっているんですが、私もそんな感じがするのであります。
 そこで、しかし中小企業は金融問題で苦しんでいないかといえば、大変苦しんでいるんですよね。それは、例えば金融機関が中小企業に対して融資の金利を引き上げようとしたり、あるいは貸し渋りとか貸しはがしも現実にあるわけですね。そういうことでありますけれども、しかし、その中で一番中小企業が困っているといいますか苦しんでいるのは、既に借りている既往債務の返済なんですよね。いかに借りた金を返すかという、これが一番難しい。これで非常に苦しんで、時には倒産をするとか、そういうことになってくるわけであります。
 そういったことで、私は、中小企業の方から見て、できるだけ簡単に借りられる、しかも既往債務の返済にすぐに間に合うような、そういう金融対策といいますか、セーフティーネットが必要なんだろうと思うんですよね。それなりにいろいろな制度があると思うんだけれども、そのとき、やはり手続とか何かが簡単で、しかも資金需要、金額、これにきちっと応じられるということが必要なんですよね。
 そういうことを配慮した制度について、この制度があるから大丈夫ということがあればお答えいただきたいと思います。
平沼国務大臣 井上先生にお答えさせていただきます。
 確かに、中小企業、御指摘のように、新たな設備投資ですとか新たな運転資金という需要は、それは統計上も低調であることは事実です。やはり、返済というものが中小企業にとっては非常に大きな負担になっていることは事実でございます。
 そういう中で、一方においては金融機関の不良債権を加速化する、こういうことで状況がますます厳しく相なりますので、さきに成立させていただきました補正予算でも、四千五百億計上いたしまして、十兆円の規模のセーフティーネット、これを構築させていただきました。
 そして、さきの臨時国会の中で中小企業信用保険法というのを改正しまして、そして今、金融機関の再編ですとかあるいは店舗縮小とか、いろいろなことが行われています。それが中小企業をもろに直撃をしておりますので、今、全国の金融機関というのが六百七十八あるわけですけれども、そのうち約六割に当たる四百三十三行はセーフティーネットの対象に指定させていただいて、そこで臨機応変に対応して、そしてやらせていただく、こういう形をとらせていただきました。
 それから、午前中来答弁もさせていただきましたけれども、やはり月々の返済が大変負担になっている、こういうことでございますから、新たに中小企業者に対して、資金繰りの円滑化の借りかえ保証制度、これを借りかえ保証というふうに呼んでおりますけれども、この制度を創設させていただきまして、そして月々の返済を、特別保証であり、セーフティーネット保証であり、一般保証であっても、それを新たに借りかえる、そういう形で月々の負担を軽減する。しかし、枠内においてさらに借りやすく、例えば六百万借りていてまだ枠が残っていればさらに千二百万借りて、そして一年以内のものを五年に延ばす、こういうようなことをしていきますと非常に月々の負担が減ります。
 そういったこともやらせていただくことにいたしておりまして、私どもとしては、こういう厳しい状況の中で、DIPファイナンスを含めて、あるいは一般保証制度を含めてさらに充実をして、中小企業の方々にわかりやすくしなきゃいけませんので、そういったPRも、今週から今月末にかけて百万部パンフレットを用意しまして、きめ細かく、金融機関そしてそれぞれの商工会議所あるいは商工会、中央会、そういったところで徹底をしていきたい、このように思っております。
井上(喜)委員 もう一つは、産業の再生といいますか、企業の再生でありますけれども、産業再生機構が設立をするようになりまして、いよいよ産業再生の仕事が、もちろん法律が要りますが、スタートしようとしているわけですね。私は、大企業はそんなに大きな問題なしにできると思うんですが、問題は中小企業なんですよね。
 中小企業の方も、今、経済産業省によりますと、各都道府県に中小企業再生支援協議会なんかをつくって対応するということでありますが、何せ中小企業というのは業種が多いし、いろいろな経営形態がありますから、私はなかなかそうはいうものの、現実は非常に難しいんじゃないかなというように思うんですけれども、これについては自信を持って、この機構をもってして中小企業にも産業再生ができるとお考えですか。
平沼国務大臣 中小企業というのは非常に種類も多くて、それから地域性が非常にあるわけでございます。そういう中で、産業再生機構ということも産業再生の中で一つ重要な役割でございますけれども、そういう中小企業の特性にかんがみまして、やはりきめ細かく対応をさせていただこうということで、中小企業再生支援協議会というものをこれから全国のレベルでつくっていこうと思っております。とりあえずは、予算措置では、二十五カ所程度まずやらせていただく。その中で非常に進んでいるのは、井上先生の兵庫県もこの二月中に、目途として、これが設立をされます。
 そうなりますと、地域におられます公認会計士の皆様方ですとか弁護士の皆様方で、そういったいわゆる企業の再生等に大変知識や知見や経験を持っておられる方、こういった方々に参画をしていただく。大体一カ所二名程度をまず考えているわけですけれども、そういう中で、私どものいわゆる地域、全国に九カ所あります経済産業局、それから政府系金融機関それから金融機関等を巻き込んで、そしてきめ細かく中小企業の再生、こういう形でこの再生支援協議会というものを機能させていく、これをやはりしっかりやっていくことが一番重要なことだ、こういうふうに思っています。
井上(喜)委員 次は、ミサイル防衛について御質問いたします。
 ちょっと時間がなくなってきましたので、最初、防衛庁長官にお聞きをして、それから総理と思ったんですが、これは総理にお聞きしたいんです。
 日米が、弾道ミサイル防衛システムについて、平成十一年からこれは研究をしてきているんですね。それなりの成果が上がってきているし、またこれからも続く、続ける、こうなっているわけですね。
 これはあくまで、ミサイルで攻撃を受けた場合に防御的なものとして考えられているわけでありまして、恐らくこういうシステム以外に、かわって、外から飛んでくるミサイルに対応することはできないわけですよね。絶対に日本としては必要なものだと思うのでありますが、今なお、これはもっと研究をしていくんだ、もっと検討していくんだということで、はっきりと導入するというようなことを言っていないわけであります。
 アメリカなんかはもう既に、今まで達したレベルの、技術的なその水準のものを配備していくというようなことになっているようでありますけれども、日本も、いつからということではないんだけれども、導入するんだ、そういうぐあいにきちっと方針を決めるということですね。そうしますと、研究するにしたって検討するにしたって非常に具体的になってきまして、何といいますか、進行管理がきちっとできると思うんですね。
 だから、もうそろそろそこを、時期はいつということは言う必要ないと思うんだけれども、導入するんだ、こういうようなことをはっきりと言うべき時期に来ているんじゃないかと思うんですが、総理の見解をお願いします。
石破国務大臣 お答えを申し上げます。
 これは、先生御案内のとおり、安全保障会議に総理大臣が諮問をいたしまして、そこの審議を経ることに相なっております。したがいまして、今の時点でそれをどうするかということは、安全保障会議の議を経て決定をされることであります。
 しかしながら、弾道ミサイルが非常に拡散しておる。冷戦当時は米ソしか持っていなかったものが、今や四十六カ国が持っている。そして、先生御指摘のように、今まではそんなもの落とせるのかねという話がありましたのが、合衆国においては実際具体的に配備が始まるという状況になっております。
 そうしますと、我が国でそれを仮に開発する、配備をするといたしましたときに、全体の防衛力の中でどのようなあり方になるんだろうか、どれぐらいの費用がかかってどれぐらいの効果があるのか、どのような法律的な構成になるのかということをきちんと詰めてまいることが必要だろう。その上で、総理の諮問があり、安全保障会議で決せられる、このように考えておる次第でございます。
井上(喜)委員 そういう手続はそういうことでありますが、総理のお考えとして、やはりそういうことはきちっとするという、総理のお考えとして私はやはりそういうことを今言うことが適切ではないかと思うんですね。手続は後でとればいいと思うんです。
 これについて、総理はどのようにお考えですか。
小泉内閣総理大臣 ただいま防衛庁長官が話されましたように、防衛整備にどのようなものを整えたら有効か、また技術的に実現性が高いか、国際情勢等勘案して総合的に検討した上で判断すべきものだと私は考えております。
藤井委員長 この際、松浪健四郎君から関連質疑の申し出があります。井上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松浪健四郎君。
松浪(健四郎)委員 保守新党の松浪健四郎でございます。
 冒頭、スペースシャトルのコロンビア号で亡くなられた勇気ある七人の宇宙飛行士に対して哀悼の誠をささげたいと思います。そして、病気療養中の天皇陛下が一日も早く御回復されることをお祈り申し上げたいと思います。
 最初に、政府に御礼を申し上げたいと思います。
 昨年の一月、我が国が議長国となってアフガン復興支援閣僚級会議を開いていただきました。その際、我が国は二年間で五億ドルを拠出するということで最大のドナー国になりました。
 以来、私は幾たびもアフガニスタンを訪問させていただいて、政府が掲げた、まず教育を回復しなければならない、四百万人の子供たちに教育のチャンスを与えなければならない、既に政府のおかげで三百万人の児童が学校に戻ることができました。
 そして、病院を建設しなければならない。これも大きな成果が出ております。
 そして、女性の地位を向上しなければならない。きょうもアフガニスタンから二十名の先生方がお見えになられました。そして、日本で研修を積まれて、アフガン復興のために頑張るということであります。
 そして四番目には、地雷除去を何としてもやらなければ、一千万個もある地雷並びに不発弾、この処理に日本政府が力をかさなければならないということで、うまく進んできております。
 きょう、二人の子供たちが、NPO、難民を助ける会の皆さんの招待で、両腕をなくされた少年、片足をなくされた少女が国会にやってまいりましたけれども、この悲惨な状況から私たちは勇気と夢を与える国でなければならない、そのことに対して政府が最大のドナー国として一生懸命御尽力いただいておることに御礼を申し上げなければなりません。
 そして、このイスラムの国、アフガニスタンを支援することによって、イスラムの国の人々は強い連帯意識を持っております。そうすることによって、アラブ諸国、世界の約十三億のイスラム教徒の人々が日本の温かい心を理解してくれておる、私はそのように思っております。
 そしてそのことが、実はイラクの問題と大きくリンクしておる。日本がこのイラク問題でどのような行動をとるのか、非常に難しい問題でありますけれども、我々国民はもしかしたならば誤解をしているのではないのか、このように思っております。
 と申しますのは、これはアメリカが怒ってイラクを攻撃する問題なんだ、つまり、イラク対アメリカだという構図になっております。そうではなくて、再三国連の安保理で決議されたことに対してイラクが守ってこなかった。そこで、自由を愛する、標榜する民主主義の国々が、何としても国連で決まったことを遵守するようにということで、アメリカが先頭に立ってイラクに強く注意を喚起させているわけでありますけれども、私は、政府は、アメリカ対イラクという構図で国民が誤解している、それはそうでないんだということをもっとはっきりと主張すべきではないか、こういうふうに思っておりますけれども、問題のこの本質について国民が理解されていない、そのことについて総理はどのようにお考えであるか、お尋ねしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 まず、松浪議員はアフガニスタンにも生活され、友人も多数おられ、なおかつ外務政務官も経験されて、外交関係、非常に御尽力いただいたことに対しまして、感謝もしておりますし、敬意も表しております。
 その上で、今のお尋ねでありますが、まさにこのイラク問題の本質は、国連決議を十年以上にわたってイラクが遵守してこなかったことにあるんですよ。それを、アメリカがけしからぬという論調が多いわけですけれども、全く私はピント外れだと思うんです。
 イラクがこの国連安保理決議を遵守すれば、もう平和的解決がなされて、大量兵器もなくなって、懸念がなくなるんです。戦争も起こらないんです。アメリカも平和的解決を望んでいるんです。それは、国際社会が一致して、一四四一決議を守りなさいと。これは一致しているんです、国際社会、日本も含めて。そういう十年以上にわたってこれをイラクが遵守してこなかったことに今大きな問題が、懸念が起こっている、これが私は問題の核心だと思っております。
松浪(健四郎)委員 そこで、今総理が言われました昨年の十一月九日の安保理での一四四一号決議でありますけれども、アメリカのブッシュ大統領は、この決議だけで攻撃できる、このように理解をされている。国際世論は、いや、それだけではまずいんではないのか。いろいろな議論がございますけれども、日本政府としては、この一四四一だけで大丈夫なのか、それとも、もう一歩踏み込んだ決議が必要であるのか。私は、もしかしたならば、日本政府としてはもう一つ安保理で決議が必要ではないのではないのか、こういう気もいたしております。
 と申しますのは、まず、明らかに武装解除していないという証拠がある、あるいは近隣のアラブ諸国がアメリカに理解を示しておる、いろいろな理由があろうかと思いますけれども、ともかく私は、日本政府は、この一四四一、これで十分なのか、それとも十分でないのか、どのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 問題の本質は今総理が言われたとおりでございまして、一四四一で十分か十分でないか、もしその重大なる違反があったときに、という御質問でございます。
 我が国の立場といいますのは、我が国は、まず外交努力をやる、これは現在一生懸命やっております。それから、国際社会が協調して毅然たる態度で対応していくことが必要だということでございます。そういった観点から、仮に諸外国の軍隊による軍事行動が不可避となったとき、その場合には、新たな安保理決議が採択されることが最も望ましいというふうに考えております。
 ただし、新たな安保理の決議が採択をされなかった場合どうかということでございますけれども、そのときの我が国の対応につきましては、これは、決議の一四四一で自発的な大量破壊兵器を廃棄するという最後の機会がイラクに与えられたということでございますが、そのイラクによる関連の安保理決議の履行の状況を含む今後の情勢、それから、イラクの大量破壊兵器の問題というのはまさに我が国の問題でもあるということ、そしてそれが、廃棄することが国際社会の一致した目標であるということ、そして我が国が国際社会の責任のある一員としてどのような対応を果たすべきかといった、そういう観点を踏まえて主体的に判断をしてまいりたい、そう考えております。
藤井委員長 松浪君、時間が来ております。
松浪(健四郎)委員 新たな決議が必要だという政府の立場をはっきりしていただいたことに感謝を申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。
藤井委員長 これにて井上君、松浪君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅直人君。
菅(直)委員 きょうは、一月二十三日の補正予算の審議に続いて、私が代表になってから、総理とは第二ラウンドということになります。この間に、民主党は、民主党としての平成十五年度予算案を作成いたしまして、昨日、発表いたしました。本来なら、我が党民主党の予算案を国会に提出して、内閣が出したものとどちらがいいかという議論をしたいんですけれども、残念ながら、現在の憲法は、内閣にしか予算を提出する権限を認めておりません。
 そこで、この予算委員会の場で、私たち民主党の予算案を、いわば国民の皆さんに提示して、小泉内閣の予算と民主党の、私、菅直人内閣の予算と、どちらが国民にとって望ましいものなのか、日本の将来にどちらが望ましいものなのかを真正面から議論いたしたい、このように思っております。
 いろいろとリングの外からやじなども飛んできそうでありますけれども、そうした雑音にはひるまず、戸惑わされず質問をいたしますので、どうか総理大臣も逃げないで真正面から答弁をいただきたい、そのことを冒頭に申し上げておきます。
 さて、川口大臣、きょう朝の質疑の中で、あなたはたしか北側さんの質問に対して、イラク査察によっていろいろ疑惑、疑惑と言うけれども、確たる証拠が出ないのはイラクが協力をしないんだから、そこに問題があるんだ、こういう趣旨の答弁をされましたが、それで間違いありませんね。
川口国務大臣 わかりやすく申し上げるという意味で、少し乱暴に申し上げますがという前提をつけて申し上げたことをおっしゃっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、査察をした場合に、イラクは過去にさまざまな疑惑を残しているということがあるわけでございます。それは、例えばUNSCOMという、今のUNMOVICの前のところの疑惑としても、VXとかボツリヌスとか炭疽菌とか、いろいろあるわけでございますね。それをどうやって廃棄したか、その廃棄をした証拠、あるいはだれが廃棄をしたか、そういったことをイラクが見せなければいけない、これが一四四一の言っていることであるわけです。
 そして、査察をした結果、何もそういうことが出てこないということであれば、これはイラクが能動的に協力をしていないことである、そういうことを申し上げたわけです。
菅(直)委員 私は、イラクに大量破壊兵器の疑惑はある、かつてクルドに使用した、あるいはイラン・イラク戦争で使用した、そういういわば過去の経歴があるわけですから、そのことは当然よくわかっております。
 ただ、川口大臣の論理は、証拠が出ないということは証拠を出さない方が問題だ、つまりは、冒頭から……(発言する者あり)いいですか、尾身さんとかいろいろ言われたかったら、そちらに座ってやってください。いいですか、これは重要なところですから。あらかじめ有罪というふうに断定した上で、あなたはやったんだろう、だからそのやった証拠を出しなさい、いやそんなものはやっていないから出さないと言ったら、いやあなたはやっているんだから、それを自白しないのはあなたの方が悪いんだと、あらかじめもう有罪であることを断定した形に論理的にはなるんですね。
 つまりは、査察というものがどういう意味を持っているのか。初めから武装解除を求めている、初めからイラク政府の政権を放棄しろ、武装解除をしろということを求めているのか、大量破壊兵器が本当にあるかどうかを、査察を求めているのか。論理的に、私は、川口大臣の先ほどの答弁は、微妙に言いごまかしていますけれども、有罪を断定した上での、つまりは問題の見方になっている。そうじゃありませんか。
川口国務大臣 決議の一四四一に書いてあることをちょっと読み上げさせていただきたいと思いますけれども、まず、ちょっと捨象しますが、イラクは、「義務の重大な違反をこれまでも犯しまた依然として犯していることを決定する。」というふうに書いてあるわけでございます。そして、その後でございますけれども、これも途中から読みますけれども、「この決議により、同理事会の関連の決議の下での武装解除の義務を遵守する最後の機会を与えることを決定し、」以下云々と続きますが、ということを書いてある、そういうことでございます。
菅(直)委員 総理、きょうの未明というべきか、国連安保理でパウエル長官が発言をされました。
 総理は、ブレア・イギリス首相と電話会談もされたようでありますが、そういうことを踏まえて、結局のところ、パウエル発言を含むこの中で、どういう判断をされたんですか。例えば、ロシアやフランスは、いろいろニュアンスの差はありますが、査察の継続が必要だという認識を示しています。総理は、先ほどの同僚議員の質問もありましたが、いや、もはやこれ以上の査察はしてもしなくても同じだ、もうこれで一定期間たったら、新たな国連決議がなくても、アメリカが軍事行動を起こすことに対しては支持をするんだ、そういう腹を固められたんですか。はっきり言ってください、イエスかノーか。
小泉内閣総理大臣 これは、今朝、パウエル国務長官の報告によって、イラクが懸念を払拭していないという疑念が深まったと私は認識しております。
 そしてさらに、これからブリクス査察委員長等がイラクを訪問し、協議します。その結果をまた国連安保理に報告いたします。そしてまた、国連安保理でいろいろ議論が出てくるでしょう。
 そういう中で、私は、日本として最終判断を下しますが、結論からいいまして、仮にイラクが遵守していないという場合、私は、もう一つの新しい安保理での決議がなされることが望ましいと思っております。
菅(直)委員 初めて、新しい安保理決議についての意見が、私が聞いたところでは初めて言われましたね、望ましいということを。
 そこで、少し話を進めたいと思います。
 小泉総理は、私が前回に質問したときにも、他の議員に対しても、韓国の金大中大統領あるいは盧武鉉次期大統領が太陽政策をとっておられることについて支持すると言われましたね、どうですか。
小泉内閣総理大臣 私は、支持しますと言いました。
菅(直)委員 私は、必ずしもそのことが悪いと言っているんじゃないんです。必ずしも悪いと言っているんじゃないんですが、イラクと北朝鮮というこの二つの問題は、大量破壊兵器の開発疑惑ということでは共通です。そして、ちょうどきょうのニュースを見ておりますと、ラムズフェルド・アメリカ国防大臣は、北朝鮮には核があるんではないか、数発は近いうちに保有するんではないか、こういう発言をしております。
 イラクはまだ、私が知っている限りは、イラクに核兵器があるというところまで断定をアメリカはしていないと思います。つまり、ある意味では、イラクと北朝鮮は大量破壊兵器を開発し保有しているんではないかという疑惑では同じで、見ようによっては北朝鮮の方が核兵器保有の可能性がイラクよりは高い。我が国と近い、遠いの話はまた後にします。そういう共通性がある中で、総理が韓国のそうした太陽政策を支持すると言われることと、イラクに対する姿勢との、何かすとんと落ちないんですね。説明をしてください。
小泉内閣総理大臣 イラクと北朝鮮は似ているではないかというお話ですが、似ていないんです。
 説明させていただきますが、イラクはクウェートを侵略したんです。そして、湾岸戦争が起こり、現在まで停戦決議なんです。この停戦決議に十年以上違反している。それを国際社会が一致して、この停戦決議を守りなさいといって今働きかけているんですが、守っていないんです。そういうことから、私は、イラクと北朝鮮につきましては違うということを申し上げたいと思います。
菅(直)委員 どうですか、自民党の皆さん、これでいいんですか。あなた方の総裁ですよ。経緯がいろいろ違うということと、現在問題になっている大量破壊兵器を、一方はNPT条約からの脱退を宣言し、一方は今現実に査察を受けている。イラクが停戦決議に違反しているところが、何かこの大量破壊兵器の疑惑ということと決定的な差になるんですか。
 私は、そうじゃないと思う。基本的には、もし核であるとすれば、核拡散という問題からしても、我が国の核に対する政策からしても、あるいは生物化学兵器という幾つかの条約はありますが、そういう問題からしても、そういうルールに違反した形でそれを開発することは大変問題だし、もっと言えば、先ほどあえて次にと言いましたけれども、我が国の安全保障にとっては、イラクの大量破壊兵器よりも北朝鮮の大量破壊兵器の方が大変大きな脅威である。当たり前のことじゃないですか。
 それなのに、単に、クウェートの停戦協定が守られていないから違うんだ、片方は太陽政策を支持するけれども、片方は太陽政策となるのかどうかわかりませんが別の立場だと。私が言っているんじゃないですよ。これは総理が言っているんですからね。もう一回説明してください。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮とは違うということは、北朝鮮につきましては、日米韓の緊密な連携をすることによって、今働きかけているんです。ロシアも中国もこれを支持している。そしてなおかつ、この北朝鮮に対しては、我々としても平和的解決に向けてこれからも働きかけを行っていくことが重要である。
 イラクについては、現に大量破壊兵器を過去に使用した経緯があるんです。しかも、安保理決議上の義務の重大な違反を続けていることが、既に安保理決議一四四一などによって認定されているんです。そして、安保理決議一四四一はイラクに最後の機会を与えるとして、今イラクは査察に十分な協力を行っていないというのも、これは国際社会の一致した見方なんです。
 これは北朝鮮とはっきり違うでしょう。
菅(直)委員 本当に、これが我が国の総理大臣の言うことですかね。何か教科書の棒読みでもしているんじゃないですか。日本にとっての脅威が、イラクの大量破壊兵器と北朝鮮の破壊兵器とどっちが大きいんですか。国民はそのことを心配しているんじゃないですか。そのことをベースにして聞いているんですよ。
 私も、北風政策がいいか、太陽政策がいいか、一概になかなか言えません。北風政策でやってもなかなかうまくいかないときもある、太陽政策でいって、うまくいきそうに見えてもなかなかうまくいかないときもある。しかし、総理は、その太陽政策を支持すると言われた。それには何らかの、いや大した脅威でないというのか、いやいや太陽政策の方が大量殺りく兵器をなくすることに近道だというのか。
 現実に、九月でしたか、ピョンヤンに行かれて平壌宣言をサインされた後に、北朝鮮はNPT条約からの離脱を宣言し、査察官を追い出し、査察のカメラを全部封鎖したんですよ。現実に、黒鉛炉から出ている核物質からプルトニウムを取り出すかもしれない、あるいはそれを稼働させる準備に入ったとも言われているんですよ。
 そういう中にあって、いや、教科書みたいな、何とかのイラクの何とかが、何とか条約だから、何とかだったから。私は、そうじゃないと思う。(発言する者あり)
 いいですか、ちょっと扇さんは後からちゃんと質問しますから、そこからやじを飛ばさないんです。いいですか。
 これは国民の皆さんの前で、私が総理だったらこう言いますよ。私が総理だったら、イラクの大量破壊兵器の問題と北朝鮮の大量破壊兵器の問題は、大量破壊兵器という点では共通の国際的な問題がある。その中で、イラクのことはもちろん国連を中心にいろいろな経緯があるけれども、北朝鮮のことはより日本に対して脅威である。だから、日本としては、イラクも重要だけれども、もっと重要なのは北朝鮮の脅威をいかにした形で取り除くか。そのためには、太陽政策もあるかもしれない、北風政策もあるかもしれない、イージス艦を戻すこともあるかもしれない。つまりは、そういうことをちゃんと国民の前で議論をするのが我が国の、日本の総理大臣じゃないですか。何か教科書の端っこを読むようなことはやめてください。
小泉内閣総理大臣 教科書と言われるぐらい、いかに私が丁寧に答弁しているかというあらわれだと思います。
 北朝鮮の破壊兵器もイラクの破壊兵器も、日本にとって、世界にとって脅威であることには変わりありません。それだけに、日本一国だけでは対処できない。各国と協力して対処していかなきゃならない問題であり、特に北朝鮮については、韓国、お隣、同じ民族であります。金大中政権、そして盧武鉉新政権も、ともに太陽政策を支持している。私も支持しておりますので、今後とも、韓国とも、アメリカとも、ロシア、中国とも連携しながら、北朝鮮の問題については当たっていきたいと思っております。
菅(直)委員 私どもも機会を見つけて、金大中あるいは盧武鉉次期大統領と、この問題で意見交換をしてみたいと思っています。
 そこでもう一点、北朝鮮の人権抑圧に対して、国連には人権小委員会というものがあって、いろいろな国を現地調査しているはずです。我が国は、北朝鮮、在日の人で北に渡った人、その奥さんで渡った人、いろいろな人がいます。関係の深い国です。今脱北者の問題もいろいろ問題になっています。この小委員会に対して、そうした北朝鮮国内の人権に対する調査を要請したことはありますか。
川口国務大臣 我が国が北朝鮮の脱北者の問題等について、非常にこれについては懸念をもちろん持っているわけでございまして、特に我が国の邦人であった、日本人ですね、それから在日の朝鮮人であった方については特に強い関心を持っているというのは、再三国会答弁でお答えを申し上げているとおりでございます。
 それで、これを我が国は、中国あるいは韓国、アメリカと連携をしながら解決をしていくと同時に、国際的な機関、例えば国連の人権委員会の場ですとか、そういうところであるいは働きかけているということもやっておりますし、人権委員会における決議、この中で強制失踪という言葉も我が国が主張して入れてもらっている、そういうことでございます。
菅(直)委員 なぜ最後のポイントだけ答えないんですか。そういうことをやっておられることは知っています。現地調査の要請をその小委員会に出されたことがありますか。
川口国務大臣 これはきちんともう一回確認をしたいと思いますけれども、私が今承知をしている範囲では、それはまだ行っていないというふうに思います。
菅(直)委員 たしか与党、公明党の皆さんもその関係者に会われてそういう要請を受けられたと聞いておりますけれども、なぜなんでしょうね、これだけ日本に関係の深い人が北朝鮮で人権抑圧を受けている可能性が高い中で現地調査という、これはなかなか、それはイラクはオーケーしましたが、北朝鮮がオーケーするかどうかわかりませんよ。しかし、少なくともそれを要請するということはやるべきだと思いますが、総理、どうですか。
川口国務大臣 方法はいろいろあると思います。我が国が考えておりますのは、どういう方法で働きかけるのが一番効果があるか、そういう観点で考えている、そういうことでございまして、北朝鮮と我が国は直接のチャネルもございますから、そういう場で話をしたりということをやっております。
菅(直)委員 なぜそういうふうに逃げるんですか。総理、どう思われますか。ちょっと答えてください。
川口国務大臣 いろいろなやり方というものがありまして、それを具体的に今の時点で北朝鮮と二国間の話し合いの場、そこでこの前十月にはいたしましたし、それから、そういったチャネルを利用して、使って、どういう方法が一番いいかということを、そのときの状況を見ながら政府としては考えているということでございまして、現在は、直接に働きかけたり、あるいは中国を通してということもやっております。
菅(直)委員 北朝鮮のことについて、政府あるいは与党は一生懸命だということを言っておられるし、私もそれは認めます。しかし、今のことを聞くと、私は、現地に調査団を出すことを要請するのがほかのことと矛盾するとはとても思えない。あるいは、北朝鮮との何かのやりとりが裏であって、いや、それだけはやめてくれと言われているのか、説明をちゃんと聞かなければ――扇さん、そこでやじを飛ばすんだったら、後でマイクの前でやってください。
 ですから、そういう意味で、理由もなく説明をそういった形で……(発言する者あり)いいですか、この問題に対して総理大臣としては、じゃ川口さんの言われるとおりでいいわけですね。それだけ聞いておきます。川口さんの言われるとおりでいいわけですね。
小泉内閣総理大臣 いろいろ御提案を検討して判断したいと思います。
菅(直)委員 それでは、次の問題に移ってまいります。
 総理大臣、もっと大きなことということをせんだって総理は言われました。もっと大きなことがあるから、まあ三つの公約は大したことはなかったんだと言われましたが、そのもっと大きなことというのは総理にとって何なんですか。総理が、三つの公約を守らなくてももっと大きなことをやるんだと言われましたが、そのもっと大きなこととは何ですか。
小泉内閣総理大臣 まず靖国の参拝、十五日に行くべきか、確かに約束だった。しかし、菅さんも、もちろんいろいろな方も、十五日は外した方がいい、もう盛んに言われたわけです。もちろん十五日に行けと言う方もおられました。そういう中で、いろいろ国際情勢、近隣諸国、国内情勢、総理大臣の立場も考えました。そういう中で、約束は守れなかったけれども、十五日は外した方がいいなということで十三日に伺った。
 国債三十兆円枠。これを守るのも大事であります、確かに。しかし、これはいろいろ経済情勢を見て、この三十兆円枠を断固として守って果たして今の経済情勢にとっていいかどうかということも考えると、これは、私のこの約束にこだわって一切この三十兆円枠を守ってやるかというのと、大胆、柔軟に対応するのとどっちがいいか。経済は生き物だということで、これを外す方がいいかどうかという点を考えて、この三十兆円枠も、税収減もありましたけれども、もろもろのことを考えまして、三十兆円枠も外さざるを得なかった。
 ペイオフもそうであります。こうして金融不安を起こさせちゃいかぬ。まだ金融改革がきちんと進んでいないという状況において不安を与えないために、ことし四月よりも十七年四月の方が国民に不安を与えないんじゃないかということでペイオフも延期した。
 しかし、この基本というものはやはり大事だ。なおかつ、現在、行財政改革、これを進めていかなきゃいかぬ。特に私が毎々言っております、税金のむだ遣い構造をなくそう。過去にはうまくいっていた制度や機構も時代に合わない面もある。そういう点を考えますと、根本的に直さなきゃならない点もたくさんあるが、例えて言えば、具体的に言えば、郵政三事業から始まって財政投融資、そのもとにある特殊法人改革、これはもう道路公団もあります、あるいは石油公団もあります、いろいろあります、特殊法人。この税金を使う構造、将来にいろいろ負担を残しかねないいろいろな問題、これにやはり切り込む、これがやはり行財政改革で大事じゃないか。
 そういう点につきまして、私は基本的な路線を変える気はありませんし、こういう改革をしないと、将来的に持続可能な民間主導の経済成長は果たせないのではないかということで、金融改革、税制改革、規制改革、歳出改革、こういうことをあわせて進めていくことによって、改革なくして成長なしという本来の大きな目標に向かって進むことによって活力ある社会を実現していこうということが、本来の目指すものではないかなと私は思っております。
菅(直)委員 私は一言聞いたんですが、わけのわからない話が大分長く続きました。
 私の方から今の総理の言葉を解釈すれば、やはり行財政改革を進めるという大きなことのために、まあ個々のことではいろいろあるということかなと思います。
 そこで、財政改革、財政健全化について、総理は就任以来、骨太方針とかいろいろな所信表明、いろいろなことを言われています。大体二つ言われていますね。これは財務大臣にもお聞きしますから。一つは、先ほどもう放棄された三十兆の問題と、もう一つは、二〇一〇年初頭のプライマリーバランスの黒字化、つまりは、過去の借金の利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない財政を目指す。
 まず、財務大臣に聞きましょう、塩川さん。あなたも一年九カ月間この内閣で財務大臣をやっておられますが、この方向に向かって前進しているんですか、それとも後退しているんですか。
塩川国務大臣 一時後退いたしましたけれども、これからの方向として、二〇一〇年の初頭、私たちの方針といたしましては、二〇一三年をめどにプライマリーバランスをゼロにするという方向で向かっております。
菅(直)委員 それじゃ、このパネルをごらんいただきたい、あるいは手元にはお渡しをしております。
 総理がまさに総理大臣に就任された直前ですが、二〇〇一年、森内閣のときのプライマリーバランスは、差額が二十一兆五千億でありました。そして、昨年出された「改革と展望」では、上にかいたグラフのように、これが十八兆九千億から十八兆になり、十五兆八千億になって、ずっと行って二〇一〇年ごろにだんだんゼロに近づくという、こういう試算になっておりました。これは政府が発表されていますからね、閣議決定で。
 しかし、実際はどうなったかというと、二〇〇二年、マイナス十八・九兆という形で少し改善するどころか、今財務大臣も言われました、逆方向に進んだ、マイナス二十六・五兆まで差額が広がりました。そしてことしの予算、予算段階でも、マイナス二十六・九兆まで下がっています。しかし、平成十四年と同じような補正予算を組むとすれば、さらにこれが五兆程度下がる可能性があります。
 つまりは、二〇〇一年、あるいは総理が就任された二〇〇一年の四月から二〇一〇年に向かって山に登るんだと言われている、そう書いてはありますけれども、一度として山の上には向かっていない。前は向いているかもしれないけれども、ずるずる下がっているばかりじゃないですか。これで前進と言えるんですか、財務大臣。
塩川国務大臣 数字で示しておられるように、二〇〇二年でどんと落ちましたのは、前内閣、前々内閣からのずっと持っておりました要するに負債額を表へ正式に出してきた、それを国債化にしてきたということがございました。そして、二〇〇三年で横になりましたことは、これは要するに、前年度から繰り越してまいりました国債を表面化してきたということでございまして、あえて二〇〇二年、二〇〇三年に新規のやつの発行、増額によって起こってきたものではなくして、当然に処置しなけりゃならないものを処理したということでございまして、要するにスタート台を二〇〇三年に持って、今後のプライマリーバランスの改善を図るということであります。
菅(直)委員 今の財務大臣の答弁はうそですからね、はっきり言っておきますけれども。
 じゃ、何でこの上の数字を「改革と展望」で試算を出したんですか。あなたは閣僚じゃないんですか。これは閣議決定ですよ。平成十四年一月二十五日の閣議決定の中で、その添付資料の中に、参考資料の中にこの上のグラフがあるじゃないですか、これはこの数字から私がつくったグラフですが。
 つまり、あなたは、いろいろな一時的な要因で下がったので、自分のところの責任はこれからだと言うけれども、そうじゃない。一年九カ月前、そして一年前に見通した数字から大幅に下がった。昨年も、平成十四年度の審議のときも言いましたが、税収見通しを間違ったんですよ。あえて言えば、総理大臣以外で税収見通しの一番の責任者はあなたじゃないですか。それが、天気が悪かったからみたいなことを言わないでください。間違ったんですね、見通しを。
藤井委員長 塩川財務大臣。
 いやいや、塩川財務大臣を指名していますから。塩川財務大臣、お答えしてください。指名していますので、まず塩川財務大臣、それから竹中金融大臣。
 塩川財務大臣、まず答弁してください。
塩川国務大臣 それは確かに、骨太方針を出しましたときにその数字を出したんですが、「改革と展望」を後に出しました。そのときの見通しは、当初のことでございましたので、確かに見通しは少し間違ったということは事実です。
竹中国務大臣 「改革と展望」の試算は参考試算でありまして、閣議決定ではありませんが、これは私の内閣府の方でやっておりますので、その中身を御説明させていただきます。
 まず、この「改革と展望」で数値を出すというのは、毎年毎年ローリングをしていくというふうに決めております。これは、アメリカの予算教書なんかでもそうでありますけれども、まさに経済は生き物でありますから、さまざまな状況の変化が起こります。その状況の変化に対応して、政府として説明責任をきちっと果たすために、これは毎年毎年見直していく。現に、アメリカの予算教書の中の見通しなんかも、ことしは物すごい変化をしているわけであります。
 ちなみに、しかし八・九兆円悪化している中身は何かということは、これはきちっと精査しなければいけないと思っております。八・九兆円の悪化のうちの中身の四兆円は、足元の発射台の税収見積もりが違ったこと。これは税収見積もりの発射台が違った。発射台というのは、実は十三年度の税収見積もりが違っていたというところに端を発しております。これは、残念でありますけれども、発射台が違ったということは認めなければいけないと思います。
 そのほかの四・九兆円は、今回、不良債権処理をするために、新たな事態に対応するために補正予算を組んで、その歳出増が実際にはこの年度に出てくる、三兆円ぐらい出てくる、さらには経済活性化のために先行減税を一・八兆円やった。まさしく経済が生き物のように変わっていく中で、政府として積極的に対応して、それを取り込んだものになっているわけでございます。
 しかし、重要なことは、こういった新たな対応を行った後も、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復させるというシナリオは十分に達成できる、そのことをこの試算はかなり精緻なマクロモデルをもって示しているわけでございます。
菅(直)委員 いいですか、総理、話をきちんとベースからもとへ戻して言いますと、総理が大きなことと思われたのは行財政改革、そして、財政改革については三十兆という目標はやめたけれども、二〇一〇年初頭のプライマリーバランスの回復という方向は変えていない。今の竹中さんもそう言われました。しかし、どう見ても、山に登るんじゃなくて下っているんじゃないですかと私は言ったんです。塩川さんは半分認められました。今の竹中さんも、私の知識が間違っていなければ、うそを言っています。
 平成十三年の発射台が違ったと言うけれども、平成十四年の税収見通しは間違わなかったんですか。それが発射台じゃないんですか。その発射台が間違ったから、二兆五千億の穴埋めのためにプラス二兆五千億で、五兆円の補正予算をついせんだってここでやったばかりじゃないですか。発射台というのは十三年だけで決まるものじゃありません。十四年の初頭の見通しが十四年の後半で間違ったじゃないですか。これは小泉政権の発足後ですよ。違いますか。
竹中国務大臣 私が申し上げたのは、十四年度の税収見積もりは何に基づくかというと、十三年度の実績見込みに基づいて、そこが発射台になって実は予測を行うわけでございます。その平成十三年度の実績見込みが、今から検証してみるとかなり違った、その意味で発射台が違ったということを申し上げているわけで、うそを申し上げているわけではございません。
菅(直)委員 それじゃ、神武元年からということになるじゃないですか。自分の内閣でないときのことに責任を押しつけて、それで済むんですか。前のことだってわかるじゃないですか。そんな無責任なことを言うんだったら、国民の前で説明責任を果たしていませんよ。十四年初頭には、これだけ税金が取れるはずだといって予算案を出されたじゃないですか、去年。それが違っていたからといって補正を出されたじゃないですか。それなのに、全部十三年の責任で、私は知りません、そんな言いわけが国民に対してきくはずがないじゃないですか。
 そこで、次に話を進めます。
 デフレについてどういうふうにこの二つの、二つという意味は「改革と展望」の昨年の二〇〇二年の一月に出されたものと、ことしに出された改定とでどうなっているのか。
 まず、集中調整期間というのを一年延ばされましたね。そして、デフレについてはこの期間、すなわち、これは二〇〇二年ですよ、二〇〇二年からの集中調整期間の間に最も重要なことはデフレの克服だ、いろいろやってみたら、デフレも克服され、物価上昇はプラスに転じると見込まれると二〇〇二年の「改革と展望」にあります。ことしの「改革と展望」の改定案には、集中期間をまず一年延ばした、延ばした上で、またこの期間の後には、ですから一年落ちているわけですね、おりているわけですよ、「後にはデフレは克服できるとみられる。」、大分腰が引けていますね。つまりは、一年たったら目標が一年延びて、しかも克服できると言ったのが、克服できると見られる、これが「改革と展望」の二つの比較です。
 前に進んでいるんですか、後ろに進んでいるんですか、言ってください。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、経済の状況を見ながらローリングをしていくというのがこの「改革と展望」の、アメリカの予算教書に倣った非常に重要なポイントです。
 そこで、一年間で何が一番重要な変化であったかということになりますと、残念ながら、実質成長率はそこそこいったんだけれども、デフレが予想よりやはり厳しい。このデフレの問題というのは、世界の中で日本がフロンティアで直面している問題でありますから、それに関しては改めて政府、日本銀行一体となってさらなる政策が必要であるし、不良債権の処理も加速させなければいけない。これは、正直言って、この一年間に、我々が予想していた以上に厳しい問題として学んだことであります。それに対処するために不良債権問題を、まさに処理を加速する、そのために集中調整期間も一年延ばす、それに向けて改めて政府、日銀が新たな体制をとってこのデフレを克服していくという決意を述べているわけであります。
菅(直)委員 結局は見通しが間違ったということでしょう。だって、デフレについて先ほどの二〇〇二年の方は、こういうことをやればデフレは克服できると書いてあるけれども、予想以上にデフレが激しかったというのは、予想が間違って、デフレについても前に進めると思ったけれども、一年目標を延ばしてもまだ危ないというふうに見通しを間違った。
 総理、近いうちに何か与党で、いろいろ党首同士で集まられるようですが、何かデノミでも考えているんですか。
小泉内閣総理大臣 与党と会うのは、たまに会いますが、いつ会うか、まだ、決まっているか決まっていないか、ちょっと私の耳には入っていないんですが、いずれ会うにしても、デノミの話は出ないんじゃないですか。デノミは、いろいろ議論されていることは承知しています。私のところにも、デノミをやれという方もおりますし、いや、デノミなんかやるなという方もおります。そういう議論はされておりますが、私は、与党との間で、これからまだいつ会うのかわからないのに、デノミのことで議論するという予定は全く知りません。
菅(直)委員 それはそれで、一つのエピソードですから。
 そこで、今いろいろと財務大臣も竹中大臣も、見通しの間違いを認められました。私は、総理に一つ、総理就任直後にカルロス・ゴーンさんに会われましたよね、カルロス・ゴーン、日産のCEO。そこで改革について秘訣を教えてもらおうと思ったと当時のマスコミは書いておりますが、記憶をされていれば、どういうことを、参考になるような話があったんでしょうか。もしあったとしたら、どういうことがあったでしょうか。
小泉内閣総理大臣 日本人というのはすばらしいと言ったことが印象に残っておりますし、同時に、この合理化、再建、成功したのは、日産の社員の皆さんが本当にやる気を起こしてくれたと、謙遜でしょうけれども、自分の手腕ということに対しては余り触れず、みんながやる気を出してくれたんだ、みんなのおかげだと言っていたのが印象的でした。
 しかし、外国から来られて、全く習慣も違う、考え方も違う、労働慣行も違ったでしょう、そういう中にあって、大胆な合理化、リストラをして、うまく再建させたんだから、私は、大したものだなと敬意を表しながらお話ししたところであります。
菅(直)委員 私も、カルロス・ゴーンさんという人は、経営者として大した人だと思います。
 そこで、場所は違いますが、ゴーンさんと総理の実績をちょっと比べてみました。
 カルロス・ゴーンさんがCEO、責任者に就任されたのは一九九九年の六月、そして九月には、日産再建のためにはどんな聖域も設けない、何か聞いたことありますね、九九年九月にこう言われています。そして、十月には日産リバイバル・プランを出して、一年半後の二〇〇〇年度、年度ですよ、年度までには黒字にするという約束をされました。そして、一年半後のその二〇〇〇年度の決算が、実際は六月ですが、三月がめどですが、三月には三千三百億の黒字で、その約束を、公約を達成されました。
 このリバイバル・プランを出したときに、マスコミに、もし達成できなかったらどうしますかと聞かれて、カルロス・ゴーンさんは、当然やめます、つまり、全経営者はやめます、こういうふうに言われました。
 そして、小泉総理は、時期は違いますが、二〇〇一年四月に就任されました。いろいろな計画、いろいろな案をたくさん出されました、先ほど来言っているように。そして、一年九カ月がことしの一月ですね。一月になったときに、どういうこれらのいろいろな計画、いろいろな公約ができたか。先日の施政方針で何と言われたか。改革は道半ば、成果があらわれるまでいまだしばらく時間が必要、こう言われました。
 そこで、一つ大変重要なカルロス・ゴーンさんの語録を私は目にしました。総理の語録とちょっと比較をしてみたいんです。
 ゴーンさんはこう言っています。計画を策定することは再生の取り組みのせいぜい五%にすぎない、残り九五%は、それが実行できるかどうかにかかっている。つまり、ゴーンさんは、それを就任四カ月後の日産リバイバル・プランで一年半後の黒字を約束して、それができなかったら私はやめます、だから従業員の皆さん、関係者の皆さん、痛みにこらえて再建に協力してください、こういうふうに言われたんだと思います。私の地元の座間工場も閉鎖されました、確かに。それだけの痛みを超えて、今、日産がよみがえりました。
 総理は、一年半たって、改革は道半ば、成果があらわれるまでいまだ時間がかかる。何か失敗したのも、若者に対して、失敗はこれからの成功になるというのはわかります。自分に対してああいう言葉を言った人は、私は初めてでしたね。あなたは、このカルロス・ゴーンさんに学んだら、一年九カ月たって、何一つ自分が約束した計画が成り立っていないときに、どういう行動をとるべきか。どう思われますか。
小泉内閣総理大臣 私は、総理就任後、二、三年は痛みに耐えていただきたい、少しでもあすをよくしようとする改革に取り組みたいと言って、総理に就任いたしました。確かにゴーンさんと違って、成果はいまだ出ておりません。しかしながら、これから進める改革、将来必ず大きな果実となってあらわれるよう、これからも不断の努力を続けていきたいと思っておりますし、いずれ、これについては国民が審判してくれると思います。
菅(直)委員 ですから、成果が上がっていないことを認められた上で、まだしばらくやらせてくれ、そういうのが今のお答えだったと思いますね。
 しかし、先ほど、あなたの最も大きなもの、つまり行財政改革の一方の柱である財政再建あるいはデフレの解消が、山に登る、登る、二〇一〇年初頭までに山に登る、登ると言いながら、実際は山から下っている。デフレに対しては、それを解消する、すると言いながら、一年たっても一年前よりももっと下っている。これから一年、二年総理に任せて、この閣僚に任せて本当に登れるのか、本当に改革できるのか、まさにこの論議を通して国民が判断してもらえる、私はこう思っております。
 そこで、我が党が平成十五年度の予算案をまとめて発表いたしました。皆さんのお手元にもかなり細かいものもお届けをしていると思います。
 規模はあえて政府の案と同じにいたしました、八十一兆八千億。なぜ同じにしたかというと、これはせんだっての議論でもやりましたけれども、景気が悪いから積極予算で予算を大きくしようという意見と、いやいや、財政規律のためには抑えようという議論がいつもあって、予算規模にばかり目が行って、議論が行って、予算の中身に必ずしも目が行ってこない。税金の使い方こそ問題だというふうな認識ですから、あえて私たちは小泉内閣と同じ規模で、その同じお金でもって、どちらの予算であれば国民にとって望ましいのか、あえて同規模のものをまとめたところです。
 そこで、大まかなことだけ申し上げますと、政府案とは中身は全く大きく変わっています。政府案の中から一部のむだな公共事業等々を含めて八兆八千億を削減した上で、改めて重点配分をいたしました。また、地方自治体に対する補助金の大部分といいましょうか相当部分を一たんカットして、一括交付金十五兆という形で自治体に配分をいたしました。
 それによって、この民主党平成十五年度予算を執行すれば、第一に、百万人の雇用が創出される。仕事を生む予算になっております。第二には、地方分権、つまりは自治体が自分で判断をして使えるお金が大幅に広がっていく。一括交付金十五兆です。そして、医療、介護、障害者の問題など、将来不安の問題の解消、医療保険の患者自己負担二割から三割をやらないということも含めて、二割にとどめるということも含めて、これにも九千億を充てました。
 さらに、せんだって私が、居住空間倍増計画とか、あるいは新たに学校耐震化問題とかいろいろ提案を我が党はしておりますが、それらも盛り込んだ内容にこの予算案はなっております。
 総理、我が党の予算案について感想があればお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 今すぐ見たわけでありますが、私は、細かいことは言わずに、野党第一党として対案を出されたことはいいことだと思っております。
 今後、こういう予算が、各省庁見て、どういうことになるかというものも聞いてみたい気がするんですが、これについて今具体的に言えという質問じゃないでしょう。ですから、ありますが、ともかく対案を出されたということについては、私は歓迎いたします。
 しかし、公共事業費が三兆六千億円。八兆八千億円も削減して、これは本当にもつかなとちょっと心配しますね。
 だから、具体的には言いませんが、ともかく対案を出されたということは私は評価いたします。
菅(直)委員 私に対してでもいいですが、また後ほど我が党政調会長も質問に立ちますので、もし御質問があれば、そちらの席からでもやっていただければ。
 きちっとした試算に基づいてやっている。少なくとも、我が党は財務省のお役人にお願いしたわけじゃありませんので、我が党自前でやったんです。自民党の予算ではなくて、内閣の予算に対して、我が党は霞が関の力をかりないでやったわけでありまして、総理にもお褒めをいただきましたが、ぜひ国民の皆さんにも、霞が関がつくった予算は、せんだっても申し上げましたが、下からの積み上げですから、どうしても、現状が一〇〇%で、それから変わってもせいぜい五%の範囲内で、思い切ってカットしたり、思い切ってふやしたりすることができないんです。
 ですから、今、こんなにも切れるんですかと小泉さんが言われたのは、まさに正鵠を得ている。小泉内閣ではできない、そういう大胆な、配分を変えることが我が党だったらできるということを見事に、小泉さん、さすがによく見ていると私もお褒めをしておきたいと思います。
 そこで、この中でも最も力を入れた一つが雇用拡大であります。
 私は、一月三十日ですか、高校卒業生の雇用のいわば現場、つまり、これは東京でありますが、まだ就職の決まっていない人、高校卒業予定者と就職を求めている人たちの会に少し顔を出しまして、当事者の生徒さんを含む話を幾つか聞かせてもらいました。ちょうどお会いをした方が農業関係の学校だったそうで、自分たちは植物を扱うような仕事がしたいんだけれども、今なかなか少なくなっていると。ちょうど我が党には、扇大臣も御存じのように、緑のダム構想というのがあるから、我が党が政権を握ればそういう仕事もふえるんだけれどもなという話もいたしておきました。
 また、ヤングハローワークという渋谷のハローワークにも出かけまして、いろいろ端末をたたきながら、三十歳未満の方を基本的には対象にしているわけですが、なかなか厳しい状態を目の当たりにしてまいりました。
 政府の今回の予算で、どのくらい雇用が拡大する、新規の雇用が発生する見通しですか。
坂口国務大臣 新しいこの十五年度予算、そしてまた十四年度の補正予算、これを連続いたしまして効果的に活用するということでございまして、またこれを百万やります、七十万やりますということを言うと、実際とえらい違うじゃないかという話にもなってくるわけでありまして、我々としては、現状の中で全力を挙げてこれは取り組んでいく。そして、それは今までは国が中心になってやっておりましたのを、これはやはり都道府県単位で見ないことには十分にこれが対応できない。都道府県におきまして、非常に失業率、有効求人倍率も違っている。
 ですから、その地域地域にやはり対応した施策をとって、マンツーマンで対応する以外に、それ以外のいい方法はない、こういうことでありまして、ことしの、これはまた法律の御厄介になりますけれども、都道府県、地方自治体におきましても、これはハローワークと同様のお仕事をしていただけるようにする。民間のお力もかる。そして、国と地方と民間と相携えて、この雇用対策に取り組んでいく。私たち、こういう考え方でおりまして、全力を挙げたいというふうに思っている次第でございます。
菅(直)委員 今の説明は、小泉内閣の予算では何人新たな雇用が発生するか試算ができていない、わからないということだと思います。
 なかなか難しいことはわかりますが、私たちは、例えばグループホームを建設することに予算をつけて、それにかかわって十万人の雇用が発生する、あるいは緊急地域雇用創出特別交付金事業で、私も昨年の暮れに行ってまいりましたが、緊急に清掃とかいろいろな仕事を改めてつくって、そういうものによって十万人の雇用を発生する、あるいは緊急対応型ワークシェアリングの拡充、いろいろな政策で十万人拡充する、こういう形で百万人の雇用を創出する、このことを申し上げております。
 今、坂口さんは、大変正直ですから、計算がないと言われたんですが、実は骨太の方針の二〇〇一年の六月の中には五百三十万人という数字が躍って、何度か総理が、五年間で五百三十万という言葉を言われました。
 私も、根拠もいろいろ調べてみました。きょうはこの議論にならないかもしれませんが、たしか島田晴雄さんがメンバーの雇用の調査会などがあって、逆算したらそういう数字が出たみたいなことを書いてありますから、言われたらそのことも言おうかなと思っておりましたが、正直に計算が出ていないと言われるんですから。
 私は、これだけ雇用状態が厳しいときに、どういう予算を組んだら雇用に対してどういう影響を及ぼすのか、そのことを考えないで予算を組んでいるというふうに理解したんですが、とても考えられませんね。それでいいですか、総理。
坂口国務大臣 我々は我々としての試算も、それはあるわけです。緊急地域雇用対策特別交付金にいたしましても、これは今まで十五年、十六年と一千億ずつ組んで、今度また八百億円ふやしたわけでありますから、これは十四万人ぐらいの雇用創出というのはある。今度プラスしましたから、今度は三、四万これに対してプラスすることができ得る。それは、そういう計算はやっているわけです。
 しかし、そういう計算だけではいけない。例えば保育所にいたしましても、保育所の待機児童ゼロ作戦をこれからやっていくわけでありますから、これは五万人の人たちをなくしてくるわけでありますから、それに対しても一万人とか二万人とか、そういう個々のそれは持っているわけでありますけれども、それだけではなくて、私が申し上げているのは、そうしたことをより効率的にしていくためには、もっと大きくこれをしていくためには連係プレーが大事だということを申し上げているわけでありまして、それによって、この我々が試算をしておりますもの以上の効果を上げたいということを申し上げたわけであります。
菅(直)委員 そういうふうに大いに連携をとって、効果的にやっていただきたい。ただ、二〇〇二年の年間の失業率は五・四という、この間の最悪の結果が出ていることだけはよく頭に入れておいていただきたい。
 次に、先ほど申し上げましたように、地方分権を推進する、そういう考え方の予算になっております。例えば、せんだって同僚議員も言っておりましたが、滋賀の豊郷小学校なんかで、新規の学校をつくるのがいいのか補強をするのがいいのか、それぞれ補助率が違ったりしてなかなか流用ができない、では多少金がかかっても多いのでいこうかということになるわけですが、この我が党の考え方でいえば一括交付金の枠の中に両方とも入りますので、それは自治体で、より効率的に、あるいはその中身によってどちらを選ぶかを考えることができる、こういう仕組みになっていますが、せっかくですから総務大臣、見解を伺いたいと思います。
片山国務大臣 国庫補助負担金は、大変細かい注文がついて、ある意味では地方の自立性、自主性を害していますから、それについてそこを直すという点では私は同じ考え方ができる、こう思います。
 ただ、一括交付金みたいな形でなくて、むしろ地方に税源を与えたらいいんですよ。国税、地方税の六対四、それを私は、経済財政諮問会議でも当面五対五にしてくれ、国税から地方税に五兆五千億移す、その過程で必要度の低い国庫補助負担金はやめていくと。一遍に税源移譲というのは大変でございますから、ある程度段階的に、計画的にやっていかなければなりませんけれども、それが本来の地方分権からいっての趣旨ではないかと。
 そこで、骨太方針の中にも、税源移譲を念頭に置きながら国庫補助負担金の整理合理化をやる、地方交付税の見直しをやる、税源配分を直す、この三位一体の改革というのを打ち出しているわけでありまして、来年度予算でも芽出し、芽を出す、そういうことが例えば義務教育の国庫負担金や市町村道の補助金等で私はできたと。これは、総理の御指示で本年の夏ぐらいまでに全体の工程表をつくれ、こういうことでございますから、ぜひそれはやっていきたい。
 それから、今の改造と改築の話は、改築というのは財政措置が手厚いんですよ、大きいから。改造はちょっと規模が小さいものですから、この辺の財政措置についての御質問もせんだって菅代表のところの同僚の議員さんからありましたので、検討はいたしますけれども、これはなかなか難しい問題を含んでおります。
菅(直)委員 片山総務大臣とは余り意見が合わないことが多いんですが、特に住基ネットなどでは大変対立をしているんですが、大きい方向では我が党と同じで。
 今回は、平成十五年の予算という形の中での組み替えですが、将来的にはまさに税制まで含めて財源そのものを、権限と財源を自治体に移していく。私は、国の権限は外交防衛あるいは都市計画の基準や福祉の基準で、江戸時代の中央政府がやったようなことで、あとは、藩がやったようなことは全部自治体がやればいいと個人的には思っていますし、我が党の考え方は大体そういう方向ですが、そのことについて総務大臣も共通だということですので、その点については協力していきたいと思います。
 医療保険について、いわゆる自己負担の三割を凍結する、これでも十分に今回のこの厳しい財政状況の中でやっていけるはずだし、またやるべきだ、こう考えておりますが、いかがですか。
坂口国務大臣 医療費の問題につきましては、昨年の医療制度改革の中でいろいろ御議論をいただいたところでございます。そして、今後の少子高齢社会のことを考えていきますと、皆さん方にも御負担をいただかなければやっていけないという数字もその中でお示しを申し上げたところでございます。
 したがいまして、特に政管健保なら政管健保のことを例に挙げてまいりますと、この三割を二割のままで据え置くというようなことになりますと、この平成十五年度中にマイナスになることだけは間違いがないわけでありまして、そうしたことを考えていきますと、これはどうしてもお願いをしなければならないというふうに思っている次第でございます。
 いろいろの試算をそれぞれのところでお出しいただいているわけでありまして、その内容をいろいろ拝見いたしておりますが、やはりその試算の前提条件が非常に違うわけでありまして、そういういろいろの試算に対しましては、我々の考え方というものも御説明を申し上げて、どこが違うかということも明確にして、そして皆さんにも御理解を得ているところでございます。
菅(直)委員 まさにそういう議論をこれからしっかり予算委員会、あるいは総括、一般質疑の中で個々の課題について、まさに小泉内閣と我が党、次の内閣のメンバーおりますので、その間でやっていきたいと思っております。
 そこで、もう一つ、居住空間倍増計画というものを私はさきの予算委員会の場でも御披露いたしました。きょう、麻生自民党政調会長もやや似たことを言われていましたが、日本は住宅というものを消費財、せいぜい二十年か三十年の耐久消費財としてしか見ていない。その話をしましたら、せんだって、アメリカと日本に行っておられるアメリカの学者の方が、菅さん、この間私の家へ来たけれども、あれ一九〇〇年にできたアパートなんだよということを言われておりました。ボストンですけれども、アメリカでも、古い町には百年以上使われている建物がたくさんあるそうで、ヨーロッパにはもちろん言うまでもありません。そういう意味で、私は、住宅は社会インフラだ、これを大きくすることは、在宅介護や在宅福祉にもつながりますし、豊かな時間を過ごすことにもつながる。
 そこで、どういう手法が一番効果的なのか。これは、扇大臣も所管をされているかつての建設省、住都公団に対して、私は、もう土地を買って家を建てて貸すのはやめろ。それよりも昔からある農住構想、農地などを持っている、土地を持っている人に逆に安い資金を貸したり、あるいは一部補助金を出して、そして一定基準以上の住宅を建てる。広さやバリアフリーといった、そういう特定優良賃貸住宅やあるいは高齢者向けの特定優良賃貸住宅を建設することが望ましいんではないか。そうすれば、土地を買って建物を建てて、そして管理までしてやるよりも、同じ予算であれば数倍の、しかも質のいい住宅が建つことができるということで、私も野党与党、いろいろな時代がありましたが、進めてきたところであります。
 そういった意味で、我が党の案では、特定優良賃貸住宅などの公営、これは公営といっても、先ほど言ったように公団とは違います。土地を持っている人に対して補助を出すわけですから、所有権はその土地を持っている人そのものですが、そういうものに我が党は三千三百二十二億の予算をつけました。政府の方も、若干頑張ってはいただいているようですが、千六百六十一億円。政府案の倍つくことができまして、だから居住空間が倍になるとまでは言いませんけれども、居住空間を倍にしていく予算のまさにスタートにしたい、こう思っていますが、扇大臣、見解がありましたらお聞きします。
扇国務大臣 いつも菅代表からもいろいろなことを言っていただいて、ありがたいことだと思っておりますけれども、共通できるところは、国家国民のために、当然お互いに知恵を出し合う。そういう意味で、私は、いつも拝聴しておりますので、よく拝聴しているという証拠でございます。
 そういう意味で、今、民主党の案を出していただきましたけれども、今、総理も評価されましたけれども、ただ、私は、きのうのきょうでございまして、今、一生懸命、出されたものを拝見しておりました。
 それで、今、居住空間の話で、私たちが千六百億円出している倍だというふうにおっしゃいましたけれども、菅代表がおっしゃいましたように、日本の居住空間の狭さ、少なくとも、今、我が国の床面積というのは、標準で、三大都市圏では四十平方メートルということで、大変少ない。四十一平方メートルにとまっています。これを今おっしゃったようにバリアフリーを使って、そして廊下を広くしたり手すりを使ったり、あるいは、今回、税制をもし早く認めていただくなれば、住宅税制で三千五百万円という大変大きな額がございますので、それで中古も含めて、生前贈与も含めて、住み心地のいい住宅にできるという、その目標を持っております。少なくとも私は、千六百億という額を、民主党は倍出したとおっしゃいますけれども、倍の効果が上がるようにしたいと思っていますし、私も、千六百億を倍に効果が上がるように知恵を出して対応していきたいと思っております。
 ただ、問題は、危険地域というものがございまして、三大都市もございますけれども、危険地域の整備、改善という面では、私は、まだまだ社会資本整備が行き届いていない。電柱の地中化ですとかあらゆる面で、住宅の安全のためには町の整備も必要であるということで、総合的な計画を国土交通省でいたしておりますので、そういう意味では、お互いに知恵を出し合うところは出し合い、なおかつ有効な資金の活用をしてまいりたいと思っております。
菅(直)委員 大変前向きな答弁をいただきまして、私ももちろん国民のプラスになることのために議論をしているわけで、別にやじを飛ばされても構いませんから、よく聞いていただいているものだとは思っていますが、せっかくですから時々反応をさせていただいているということです。
 次に、今安全性ということがありましたが、学校施設の耐震化について、これは従来からいろいろな数字が出ているんですが、いま一つ、政府の方で一体どういう段取りで、どのくらいの順位づけでやっていこうとしているのか、必ずしもはっきりしておりません。我が党では、学校施設の耐震化を五年以内に進めるということで、耐震関連で千七十七億円を計上いたしております。
 できれば文部科学大臣に、余り長い時間とらないで、政府としてはどういう段取りでこの耐震化を進めようとしているのか。子供を持たれている人は、あと十五年先というと子供はもう学校を出ているわけですから。一番危ない地域がどことはなかなか言いにくいですが、いろいろ報道もありますけれども、そういうところから優先的にやるならやる、そのことについて、我が党の案も含めて見解を伺いたいと思います。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
遠山国務大臣 学校の施設といいますものは、子供たちにとっても大変安全でなくてはいけないわけでございますが、地域の住民にとりましてもいざというときの避難の場所ということで、大変私はこれの耐震化というのは重要だと思っております。
 そのようなことで、今、公立の小中学校、全国で十三万三千棟ございますけれども、私どもの調査では、それのうちの四三%が、耐震化という角度でいきますと十分でないという実態を得ております。
 そこで、毎年この問題については誠意を持って一生懸命やっているわけでございますが、先般お認めいただきました補正予算におきましても、五百六十億円、この耐震化のために予算措置をさせていただきました。また、今お願いいたしております平成十五年度予算案におきましては、公共投資関係費を、全体で対前年度三・七%減でありますところ、百五十一億円増、一五・二%増の千百四十九億円を計上いたしております。これは、新築分とは別に耐震だけに使えるものでございますから、来年度は、両方合わせますと千七百億円近くということでございます。
 この問題につきましては、私どもも、どのような優先順位でやっていくかということについては大変大事なことだと思っておりまして、この問題につきましては、私ども既に、地域が難しい、地震が起こりやすいような地域につきましては、特別に対策が必要な地域ということで補助率のかさ上げなどもやっておりますけれども、もっと、より合理的に、効率的にやっていくというために、指針の策定を今やっております。
 昨年十月にその調査会を発足いたしまして、これは日本のトップクラスの専門家にお集まりいただきまして、そして、優先度の決定方法あるいは年次計画の策定方法、地震調査研究推進本部が進めております地震動予測地図の活用などについて、今真剣にこれは御議論いただいておりまして、三月中にその結果を得まして、今後の予算の使用に反映してまいりたいと思っているところでございます。
 そのようなことで、順次やっておりますが、公立学校耐震化の基準についても既に策定をいたしております。そのようなことで、耐震化の問題につきましては、全体に非常な厳しい財政状況ではございますけれども、今後とも我が省といたしましては、非常に優先度を高くこの問題に対処していきたいと思っております。
菅(直)委員 先ほど、ちょっと我が党の数字と政府の数字を間違えましたが、政府が千幾つですよね、我が党は実は六千百六十億、政府案の五・七倍をこれに振り向ける、そういう案になっておりまして、また、学校耐震化改修促進法という法律も用意をいたしております。
 総理は、いつの国会ですか、米百俵の話をされました。たしか学校をつくるという話でした。やはりこの問題は、子供たちの問題であると同時に、地域のある意味での避難場所でもある学校でありますから、いろいろ財政が厳しい折ではありますが、私は優先度高くやるべきだと思います。総理の所見をお聞きしておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 公共施設の耐震性、これは非常に大事なことでして、今学校の話になっておりますが、政府としては、学校のみならず、病院、保育所等、それも含めて耐震化の整備を図っていきたいと思います。
菅(直)委員 そこで、少し財政投融資に関連した問題に移ってまいりたいと思います。
 道路関係四公団民営化推進委員会が昨年十二月の六日に意見書を出されました。私は、本当に御苦労されたと思います。特にこの中で、プール制による新たな建設というのがもう完全に行き詰まっている、国会も通さないで、国幹審、国幹会議といったようなものでやってきた、財投の金をじゃぶじゃぶ使っていたやり方が問題だ。また特に、この後半の多くは、ファミリー企業がいかにこの公団を食い物にしていたかということをしっかりと調査をされました。私は、すばらしい意見書だ、このように思っております。その意見書に対して、今回の予算で出されている中身が一体どういう関係にあるのかなと。
 まず、お聞きします。
 平成十五年度予算の中に、直轄高速道路の費用が千三百億円入っています。これは、公団と無関係に無料で通行できる高速道路を建設するということだと説明を受けておりますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。また、そうだとしたら、どういう意味づけでこれがつくられるんですか。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
扇国務大臣 今、菅代表がおっしゃいましたように、昨年民営化推進委員会から出された答申に関しては、総理から、それを尊重してということを言われております。私も、それを実行するためにはどういう手法が必要なのかということで、その答申に対してのこともございましたので、その答申に関しては、私は、国土交通省で今すぐしなければいけないこと、例えば、今、最後におっしゃったファミリー企業の話、これをどう対処できるかということ。そして、財務諸表を出してもらって、一般の民間の会計処理と道路公団との会計処理がどういうふうになるかというので、三公団からも財務諸表をいただくということが第二段階。第三段階は、総理から言われておりますように、来年度の法律をつくるまでにしなければいけないということで、短期、中期、長期の区別をして、国土交通省で今論議をしている最中でございます。
 そして今、最後におっしゃいました十五年度予算、これに関しましては、今回は、少なくとも私たちは、今の道路と今後つくるべき道路、だれがつくるか。今おっしゃったように、道路の民営化推進委員会が今回、十六年度、法律を出した後でどういうふうな道路の建設の仕方をするかということをお互いに、これは法律ですから、皆さんにも御理解いただくために、私たちは委員会の答申を尊重しながら、どうやっていくのが一番いいかという方法論を国土交通省で今与党三党ともすり合わせしながら、なおかつ、内閣としてそれを尊重しながらどうできるかという方策を練っている最中でございますから、これを直轄方針でいくということも私は一つの選択の方法であると。
 そして、社会資本整備で、どの知事さんからもどの市長さんからも、つくってくれ、つくってくれという陳情が昨年来から絶えません。民主党の地元の皆さん方もおっしゃいます。それを、ない資源の中でいかにつくっていくかという方法を直轄事業という中でも私たちは考えているということでございます。
菅(直)委員 勉強はされているのかもしれませんが、私の聞いたことには答えがありませんでした。いいですか、一般的なことを聞いたんじゃありません。これは平成十五年度予算の審議をしているんです。
 平成十五年度予算の中に、直轄で千三百億円の予算が計上されているんです。先の話じゃありません。それは公団への補助金でもありません。一般の道路でもありません。高速道路です。通行料金は取らないんです。そういう、いわゆるフリーウエー、無料の高速道路をつくる。私は一概にそのことが悪い、いいを言っているんじゃありません。そのことと、これまでの公団中心の考え方、それを民営化するしないはありますが、どういう関係にあるんですかと聞いているんです。
扇国務大臣 十五年度の予算に関しましては少なくとも私たちは、四公団で四十兆円というものをいかに債務を減らしていくか、また、それを確実に返済する方法はどういうことかということが基本でございます。これが民営化推進委員会で論議されたことでございますから。
 その基本に沿って、私たちは、それぞれの地域によって、直轄で、自分たちも負担するからこれをつくってくれというところもあるでしょう。それは、それぞれのところでそれぞれの意見を出していただいて、国と地方の負担による直轄方式を導入するということも私たちは大事であるということで、直轄方式にするところもあるということを申し上げている。
菅(直)委員 全く答えになっていないんですが、これはちょっと総理にも聞いておかなきゃいけません。
 総理は、いろいろな発言をされたのでややこしいんですが、たしか平成十四年のときは、国費は投入しないとたしか言われました。当然国民は、四公団に対して国費を投入しないんだろう、こう思ったわけですが、結局のところは、四公団のうち、国費を投入しないという約束どおりなのは比較的成績のいい日本道路公団だけ。本四公団については既に一兆数千億の処理を国費でやる、他の二公団についてはこれから国費投入もあり得るという中身になっています。総理が言ったことと違うんじゃないですか。少なくとも国民が理解した総理の言ったことと違うんじゃないですか。どうですか。総理。
扇国務大臣 後で総理に答えていただければいいと思います。本四のことを今おっしゃいましたので。
 少なくとも、本四というものはもうでき上がっているわけです。三橋ができ上がっているわけですから、この本四のでき上がっているものをいかに持続していくか。また、料金を半額にしなさいという御提案もございました。
 この本四のむだだという話も世間にはたくさんございます。けれども、この本四というのは国会で全部で賛成してでき上がったものですから、その債務というものをどうしていこうというので、十五年度予算では、本四の有利子負債の一部に今おっしゃった一兆三千四百億というものを一般会計で継承して、少なくとも国の道路公団財源よりも早期にこれを処理しよう、それが本四の重荷を少し取ることだということで、高速道路建設については国と地方の負担によって新たな直轄もしますけれども、本四は本四として処理をしましょうということで、今回は私たちはこれを決定させていただいたわけでございます。
小泉内閣総理大臣 はっきりと、間違わないように聞いておいていただきたいんですが、「国費は、」これは日本道路公団です、日本道路公団について「国費は、平成十四年度以降、投入しない。」本州四国連絡橋公団、これは「日本道路公団と同時に民営化する。なお、債務は、確実な償還を行うため、国の道路予算、関係地方公共団体の負担において処理することとし、道路料金の活用も検討する。」
 日本道路公団について、十四年度以降、国費は投入しないと言ったんです。
菅(直)委員 私はちゃんと読んでいます。ですから、先ほどの質問もそのように申し上げました。しかし、平成十四年度の予算の前に、我が党やいろいろなときには、国費は投入しない、こういうふうに言われていました。頭に何々公団とありませんでした。その後に閣議決定を見たら、ちゃんと三公団が外してあったんです。
 つまり、そういう国民をだますようなやり方をおっしゃったんじゃないですかということを申し上げているんです。そうでないんなら、最初から形容詞をちゃんとつけてください。一番交通量が多くて料金の上がっている日本交通――だって、実はもうとっくの昔に償還が終わって無料になっているはずの名神なども、お金を取っているんですから。一般的に言えば成績がいいのは当たり前なんで、そういうところについてはお金を投入しないけれども、あとの三公団ですよ。一公団じゃないですよ。本四はもうお金をことしから出す。他の二公団も出す可能性がある。それに加えて、総理、もう一つあるんじゃないですか、国費は。今申し上げた直轄事業ですよ。これは国費じゃないんですか。
 公団ではありません。しかし、少なくとも、公団の改革議論をやっているときには公団で高速道路をつくることを前提として議論がされていたのに、公団の中の四つのうちの三つまでは税金投入もあり得る、あるいはもう税金投入をする。そして公団以外の高速道路は、またそれはそれで無料で走れるものをつくる。では、公団はどういう位置づけになるんでしょう。もし第二東名が直轄事業でつくられたら、公団の道路に乗る人は一人もいなくなるでしょうね、一台も。どういう考え方なんですか。
 つまりは、結局何が目的か。扇さん、よく聞いておいてください。(発言する者あり)今、やじで、高速道路をつくることが目的と言われましたけれども、実はそれならまだいいんです。そうじゃないんですよ。高速道路をつくる公団という組織を守ることが目的なんです。
 多くの国でいろいろな形で高速道路をつくっています。アメリカ、ドイツ、イギリスは、新たな直轄事業と同じやり方です。税金です。フランスやイタリア南部は、日本の公団とやや似ていると先日説明を聞きました。
 私は、公団は二重の意味で悪かったと思いますね。まさに国会も通さない税金でやるわけですから。税金じゃなくて、やるわけですから。それで償還期限を、当初はできて三十年が一体何年延びていますか、日本道路公団なんか。次々にそれが延びて、昭和三十七年からの三十年でしたからね、最初の予定から六十年から七十年延びているんですよ。そういうやり方をやって、ある意味では、国民から見えないところでまさにファミリー企業をどんどん抱えて、道路族議員とかつての建設省の道路局がつるんで自分たちの利権にしてきたわけじゃないですか。
 どういう形にするんですか、この高速道路を。総理、頭をちょっと整理された方がいいんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 問題があるから民営化しようという議論が起きたんでしょう。そして、これから民営化になった場合には、民営化でできる道路、しかし、今までの方式ではつくれない、民営化会社になったらつくれない道路が出てくる。しかし、どうしても必要だという場合は、これは国と地方、どういう税負担でつくろうか。税負担とすればみんなただでつくってくれると思ったのが、つくってほしいけれどもこれだけ負担なら嫌だという意見も出てくるかもしれない。そこにやはり効率性とか採算性、今までよりももっと厳しい見方が出てくる。私は、こういう改革をしていかなきゃならない。そうでないと、どんどん道路は国がやってくれる、地方は負担がない、これじゃみんなつくってくれという陳情が来るのは当たり前ですよ。しかし、その負担はだれがするのかということに問題があるから、そこに今メスを入れて、民営化議論が出てきたわけでしょう。
 だから、私は今後、民営化の委員会の皆さんが結論を出して、答申を出してくれましたので、これを基本的に尊重しながら、これからどういういいものをつくっていくかというのは、十分国会の中で議論をし、これはいずれ法案が出るんですから、その中で議論していけば、今よりももっと効率的な、後に負担の少ない、しかし必要な道路はつくるというものを目指して、この改革に突き進んでいきたいと思っております。
菅(直)委員 基本的なところが抜け落ちています。理念がないんですね。
 つまり、理念がないという意味は、高速道路というものは、あるところは公団、あるところは税金で無料でつくって、あるところはそれを民営化して、あるところは、民営化する前か後か知りませんが、国費投入する。(発言する者あり)それが自民党の理念ですか。やじを飛ばすんだったら、それが自民党の理念なら、ちゃんと書いてみなさい。
 では一度、もう一つだけ答えてもらいますが、きょうは、この問題はいろいろな議論がありますので、私も一つの実態だけを申し上げておきますが、中国地方に私もいろいろな関係があってよく行くんですが、高速道路はがらがらです。下の道路はかなりいっぱいで、バイパスをつくってほしいという要請が多分たくさん行っているはずです。
 つまり、先ほど扇大臣は、四本の橋がある、あるんですからと言われた。私もそう思う。(扇国務大臣「三本」と呼ぶ)三本ですね、三本の橋がある。確かにつくったことは私は間違いだったと思う。それは主に当時の与党の責任と建設省だと思います。しかし、できたものについてどう活用するかというのはあります。
 そういうことを考えたときに、一体どういう形で高速道路網をきちんとつくるのがいいのか。必ず、国土交通省に案を出させると、いいですか扇さん、組織を守ることを第一に優先します。間違いありません。国民のための高速道路じゃなくて、国土交通省のための何らかの組織、公団が一番いいけれども、公団でなきゃ天下りができる民営にしたいと思うでしょう。
 それからもう一つは、鉄道と道路は若干違うんです、よく総理は一緒にしますが。何が違うか。鉄道は、運転する人、車両、そういう運行を担う組織が要ります。当たり前ですね。道路は、道路の管理は要りますが、一般道路と同じように。別に運転手を派遣する必要はないんです。自動車を派遣する必要はないんです。ですから、何でもかんでも、JRで、国鉄でうまくいったから何でもかんでも高速道路と同じだというふうに考えられるのは、基本のところの認識が違っているということを頭に入れて、これからまたゆっくり議論をしますからきょうはこの程度にしますが、もし何かあったらどうぞ。
扇国務大臣 先ほど私、菅代表に申し上げたように、今の道路公団の改革しなければいけないところ、すぐ手をつけようと、これを指令してあります。そして、私は、ファミリー企業、関連企業の天下りも、剰余金が幾らあるというのも国土交通委員会で全部公表しております。
 ですから、それを私は改革していこうということで、今たまたま菅代表が国鉄との対比をなさいました。私は、その委員会から答申をいただきまして、尊重するとは言いましたけれども、簡単に分割するといったって、大根を切るわけじゃないんですから。少なくとも道路公団一つとってみても、役員は九名です。そして、国鉄と今対比をなさいましたけれども、国鉄はあの当時、少なくとも国鉄職員の役員は十八名だったんです。それが分割して、今百三十四名いるんです。
 ですから、ただむやみに分割するということではなくて、現実的に私は一番国民に負担を少なく、あるいは国民の要望にこたえるためにはどうしたらいいかと、いただいた答申を精査して、法律に、より納得できるようにしているというのが現実でございますから、私は乱暴なことを言っているわけではありません。一つ一つ緻密に私はそれを精査しているというのが今の現状です。
菅(直)委員 乱暴でなきゃだめなんですよ。目の前の改革なんかやっていたってだめなんですよ。公団をつぶさなきゃいけないと言ったのは総理じゃないですか。それを何か、何とかの人数が少ない、多い。ここに書いてあるじゃないですか、数万人がぶら下がっているじゃないですか、ファミリー企業で。何が何十人ですか。数万人がぶら下がっているじゃないですか。
 つまり、目の前のことを改革したってだめだというのがこの意見書であり、だめだというのがこの二十年間、三十年間の日本の高速道路での現実ですよ。目の前のことをちょっと手直しするのではなくて、根本から変えるためにこの答申が出ているのに、ことしじゅうには法案が出ない、来年になって法案を出す、再来年から始めますと。余りにも、目の前のことを急いでいる割にはゆっくりじゃないですか。このことはきょうはこの程度にしますが。もういいでしょう。まあ、どうしてもなら。
扇国務大臣 今おっしゃっているように、ファミリー企業、関連企業、少なくとも八十六社の中で天下りが六九%います。それをどうしたらいいかということで、また、それぞれの四業務に対しても私は今切るようにしています。
 それは、今までなぜ決まったところに発注していたかというと、道路を修理するのに、緊急のときには、あの会社はこの車を持っているからあそこにおろさなきゃいけないと言うんです。ですから、私は、公団に、その車を高速の下に待機させなさい、そこに車を持っていなさい、そうすると一般の人でもみんな入札できるじゃないかと言って、一つずつそれを改革しようということをやっているわけでございまして、高速道路の保全、修理、安全性というものは必要であるということを、今、全部ぶった切るのではなくて、一番国民に目に見える、また廉価な方法はないかということをしている最中でございますので、十二月に答申を出されて、一月にできるわけはありません。
菅(直)委員 もうこれ以上言いませんが、今言われた数字だけいっても天下りが六九%。これは天下りというんですかね、一体。ほとんどが天下りでなっていて、例外的に外から採っているというんじゃないですか。そういうのは天下りといわないんですよ。もともとが官営なんですよ。ですから、そういうものを、この六九を六五に下げてみたって、六三に下げてみたって本質は変わらないんです。
 公団をやめるんです。やめたときにどうするかという議論をきちんとやるためにこの意見書が出ているんですが、扇さんには手直ししか多分やらせてもらえないでしょう。まあそれはいいです。(発言する者あり)現実ですから。先ほど手直しのことばかり言われたじゃないですか。
 それでは、年金のことをちょっと申し上げます。今、年金問題、たくさんの問題を抱えていますが、一つだけ。
 まず、二〇〇四年から国民年金の国庫負担を三分の一から二分の一にするということが附則で決まっております。これに対する財源について、山崎自民党幹事長は消費税というようなことも触れておられました。
 総理は、自分の在任中消費税は上げないということを明言されています。ということは、これは、消費税以外でやるという意味なのか、自分のときは赤字国債か何かで穴埋めをして、自分がやめた後消費税を上げてくれという意味なのか、いや、消費税を上げなきゃいけなくなったら自分が総理をやめるという意味なのか、いずれか、お答えください。
小泉内閣総理大臣 まず、年金の財源が足りないから消費税を上げようということじゃないでしょう。私は、消費税は引き上げないで、安定した財源を確保しつつ、この年金制度を持続可能な安定した制度にしていくかというための議論は、消費税を上げる以外にたくさんあります、やるべきことが。給付はどのぐらいにするか、保険料はどのぐらいにするか、そして税金、安定した財源は消費税以外にどういうものがあるか、いろいろあります。そういう点もじっくり議論する必要があるのじゃないか。
 まず消費税を上げて、財源があるから給付を上げよう、負担を少なくしようといったら、これだけ高齢少子化が進んでいるのに、若い人はもうたまりませんよ。若い世代のことも考えなきゃいかぬ。高齢者は多くもらえればもらえるほどいいというのはわかりますよ、給付は多ければ多いほどというのは。こういうバランスも考えてやるためには、いろいろな議論が要る。それを最初に、消費税がある、まだ五%だから、低いから、欧米はもう二〇%ぐらいあるんだから余裕があるんだという議論は逆さじゃないか。
 私は、徹底的な行財政改革を進めるのが先だ。そういう中で、この程度の給付がもらいたい、年金がもらいたいんだったらこの程度の負担はやむを得ないな。そして、給付と保険料だけじゃ無理だから税金をどれだけ投入しようか。安定した税金は、ではどこがあるか。消費税以外にまだ、消費とかいろいろありますよ、ほかの消費も間接税も所得税もいろいろあります。あるいは行財政改革、どこを削るかというのがあるでしょう。そういう点の議論が先だということであります。
菅(直)委員 総理は厚生大臣を二度やられているわけですから、私の質問の中身はわかっていると思うんですね。別に、私が消費税を上げろと言ったんじゃありません。財界の方からいろいろと皆さんの方に言っているので、山崎幹事長がそういうこともあり得るということを言われたので、あなたが最も頼りにしている人ですから、それでどうですかと聞いたんです。
 それともう一つは、給付とかいろいろ言われました。ただ、国庫負担の三分の一から二分の一というのは法律の附則に決まっていて、制度を大きく変えない限り相当の財源が必要になることは現実の問題ですから、十年先、二十年先の問題ではありません。それも一般論で何かかわされてしまったようですが、私は、この年金のあり方については我が党もいろいろ議論をしなきゃいけないと思っています。昨年、我々の同僚の今井澄参議院議員が亡くなられましたけれども、今井さんはスウェーデン方式というものを検討してみてくれというふうに、ある意味では私などにも言われておりました。
 いろいろな問題があります。特に、これから高齢化が進む中で、その高齢化のピークを安心して越えられると同時に、若い皆さんも、その世代が全部食っちゃった、後は何も残ってないということにならないためにはどういう仕組みをとるのか、いろいろな議論があります。ですから、余り矮小に、自分の都合のいいところだけに持っていって、私はいろいろなことを考えています、私だって考えていますから。だから、そういうことじゃありません。山崎さんが言っているから聞いたんです。
 そこで、ちょっと話を移します。
 今の年金の運用ですが、坂口厚労大臣、私もちょうど切りかえの直前でした、たしか切りかえの法案が出たのは小泉厚生大臣のときじゃないでしょうかね。つまりは、だれが百五十兆もの積立金を運用する最後の責任者なのか。現在の法律では厚生労働大臣になっているんじゃないですか。
 そして、十四年度の前半だけで、マーケットで運用した百五十兆のごく一部であって、二兆円の穴があいていますね。もちろん、今非常に株の状況が悪いからそれもあり得るという言い方もあるかもしれません。しかし、厚生労働大臣の責任という形でこういう巨額の資金運用というものを任せて、そしてその穴があいたときには一体だれが責任をとるのか。結局ツケは被保険者にかかってくることだけははっきりしている。しかし、それを……(発言する者あり)ちょっと津島さん、また後ろから言わないでください。
 そういう考え方に立ったときに、これは私も率直に言ってまだ結論はありませんが、結論はありませんが、大臣が最終的な形式上の責任者というのはわかりますが、一体だれの責任なのか、私、聞いてみました。形式は大臣です、いや審議会があります、何とか基金があります、いやそれぞれの運用会社に任せています、いや成績が悪いところは変えています。結局、平成十四年度、二兆円欠損が出た。
 それは、プラスになるときもマイナスになるときもあるという言い方もあるけれども、少なくともこの間相当マイナスが積み上がっていますから、そういうものに対して何らかの責任をとらせる仕組みというのはあるんですか。あるいは大臣がやるべきだと坂口さんは思われますか、そういう責任を。
坂口国務大臣 これは、どういう運用をするかということになるわけでございますが、年金資金の運用基金法というのがございまして、その中に一応書いてあることは書いてある。理事なり理事長なりがそれなりの責任をとることになる、これはしかし、最終的にはやはり厚生労働大臣の責任になるんだろうと私、思っています。
 この間、上田先生からも御指摘をいただきまして、それは最終的にはやはり厚生労働大臣の責任になるというふうに私も思いますが、しかし、さりとて一兆円損したから責任とれと言われても、これはなかなかとりようがないわけでありまして、そこをどうするかということについては、株式にゆだねるかどうかというところが一番大事なところなんですね。株式にゆだねるということになれば、それは時に下がることもあり、上がることもありますから、その断面断面でどの責任をとるかということはなかなか言いにくい。
 ただ、本当の専門家として見た場合に、その運用の仕方が余りにも間違っているというときには責任をとることになっておりますけれども。だから、ただ単に上がった下がったでの責任ではないというふうに思っております。
 しかし、私は、この問題はもう一度考え直さなきゃいけないというので、昨年の十月から審議会も立ち上げて、議論もやり直してもらっている。私自身もこれは勉強をし直しているんです。今、いろいろな人から御意見を聞いて、そして、これをどうしていくかということを考えております。
 一つは、これはやはり国民から預かりました大事な年金資金でありますから、堅実な運用をしていくということが一つの原則。もう一つは、日本の経済にとってプラスになっていく立場というものをやはりとっていかなければならない、そうした立場の中で、これをどう運用をしていくべきかということを考えていかなければならないというふうに思っておりまして、そういう意味で、間もなくこの審議会の議論の結論も今月の末ぐらいには出ますので、それらを踏まえて私も結論を出したいというふうに思っているところでございます。
菅(直)委員 坂口さんは大変人柄のいい方ですから、率直なお話を聞かせていただいたと思っています。
 まさにこれだけの巨額のお金、一方ではPKOに使われているんじゃないか、プライス・キーピング・オペレーションに使われているんじゃないかという疑惑を常に持たれ、そういう最後のツケはすべて被保険者、国民にかかるという仕組みの中で、だれもが責任を持たないで済んでいるというのが現実です。
 二兆円損した、それまでの自主運用で三兆幾つ損した、だれが悪かったとも、今初めて悪かったかなと言われましたが、それは個人の責任だと言われても困るみたいなことも言われました。率直な気持ちでしょう。結局、だれの責任かわからない仕組みの中で、年金に対する信頼だけが崩れていることだけははっきりしています。
 もう一つ、ハンセン病の熊本地裁の判決の控訴を総理が断念をされるということが、ある意味で総理の人気の一端になったことは、ちょっと古い話ですが、思い出されるところです。
 その総理談話の中で生まれたハンセン病問題対策協議会が続いているわけですが、二つの問題が議論されております。
 一つは、早い時期の退所者について一時金の検討、一つは、その後のさらなる熊本地裁の和解によって、非入所者に対しての生活支援金等を含む恒久対策についての議論、それが、副大臣が中心のようですが、決裂をしたというふうに聞いております。
 中身はいろいろありますが、少なくとも、総理があれだけの意欲を込めて提案をしてつくられた中で議論されているものが、結局、平成十四年度中の実現に最大限努めると言っていた、その早い時期の退所者については、平成十四年度の補正予算にも出ない、平成十五年度の本予算にも出ていない。あるいは、非入所者の問題はいわばゼロ回答、何も中身のある回答が出ていない。一体いつになったらどうなるのかわからないという状況にあります。
 これは、やはり総理がちゃんと指導力を発揮されるべきじゃないですか。いかがですか、総理。
小泉内閣総理大臣 後ほど坂口大臣にも答弁いたさせますが、この問題について、入所者と非入所者の問題でいまだ解決がついていないという話を伺いましたので、できるだけ早期に話し合い決着できるように督促したところでございます。その督促に従って、今、坂口大臣が御苦労いただいております。
 その点については、坂口大臣から答弁をいたさせます。
坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、一つは、平成八年四月の以前に入所しておみえになりました皆さんで、退所された皆さん方の問題でございます。もう一つは、入所されずに、いわゆる社会の中でそのまま活動しておみえになった皆さん方の問題でございます。
 そのほかの問題は、おかげをもちましてハンセン病の問題、解決をしてきたわけでございますが、最後に残りましたのがこの両者でございまして、ここに対してどうするかという問題で、今、議論を重ねているところでございます。
 それぞれ御主張はございますけれども、その御主張は御主張としながらも、やはり我々の言い分というものも聞いていただきたいと思っているところでございます。
 既にお支払いをすべきものはお支払いをいたした後でございますし、そして八年の四月以前に退所をされました皆さん方の問題につきましては、これはその後の方は二百五十万円ずつお支払いをしているわけでございまして、そうしたことを踏まえて、その以前の方にどうするかといった問題でございます。
 非入所者の問題は、これは入所しておみえになったがゆえに、隔離されておみえになったがゆえにお出しをしたものでございますから、入所しておみえにならなかった皆さんも同じようにというわけにはいかない、そこは御理解をいただかなければならないというふうに思っておりますが、しかし、これは鋭意努力をいたしまして、そして早く解決をするようにしたいと思っているところでございます。
菅(直)委員 これは督促をしていただいているようですから、前進を期待したいと思います。
 もう一点、公共事業受注企業からの献金に対して、野党四党は法案を出していますが、総理は当然賛成していただけますね。
小泉内閣総理大臣 今、どういう制限が必要か、どういう対応が必要かということで検討しているところでございます。野党の案も十分検討いたします。そして、お互い話し合いの上で、一歩でも前進できるような措置を講じていきたいと思っております。
菅(直)委員 これは言うまでもないことですが、税金の使い道ということを我が党も一番重要視しておりますし、総理も先ほどそういう言葉も使われました。やはり、税金を使っている先から多くの政治献金をもらっていれば、国民はそれの使い道がその献金によって左右されているのではないかという疑いを持つのは当然でありますから、それについては、いろいろ前向きな発言はされていますが、ほかの方が果たして賛成されるのか心配なので、ぜひ進めていただきたい。
 最後に、きょうは我が党の予算案を一つの背景にして議論をさせていただきました。私は、議論そのものは議論そのものとして、残念ながら、総理が変わってきたなという感じを、この間、感じております。
 総理は、二〇〇一年の就任直後には、小泉改革に反することをしたら私が自民党をぶち壊す、何度もこの言葉をいろいろなところで言われました。そして、先日の我が党の岡田幹事長の質問に対しては、若干の意訳はありますが、つまりは、抵抗する野党よりも協力してくれる与党の皆さんの話を聞くのは当たり前じゃないですか、こういうふうに言われました。
 この格差が、私は、小泉総理のまさに政治姿勢の変化になっている、今や、小泉総理は改革のための総理ではなくて総理大臣にあり続けるための総理になってしまったのではないか、こう思いますが、総理、反論があれば最後にお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 最初から、小泉改革に協力してくれるために、私はいろいろな方々に対応しているんです。そして、自民党も当初は、郵政改革にも、あるいは道路公団民営化にも反対しておりました。しかし、今は、快くではないかもしれませんが、協力してくれております。そして、これを一歩一歩法案に仕上げていくわけであります。そういう点から見て、私は、自民党を変えると言って登場してきた、自民党が変わらないんならつぶすという考えに、全く変わっていないんですよ。民主党も賛成してくれれば、私はもっといろいろな改革もできると思います。
 自由民主党は、最終的には、いろいろな意見があったとしても、小泉内閣の進める構造改革に協力してくれると期待しつつ、今粘り強く話し合いをしながら進めているということも御理解いただきたいと思います。
菅(直)委員 変節をした小泉総理に協力をすることはできませんのであしからずということを申し上げて、私の質問を終わります。
藤井委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。
 まず、総理にお伺いします。簡単な質問ですのでお答えをください。
 国連加盟国で、他国を攻撃できる法的根拠というのはどういうものがあるんでしょうか。挙げていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 自衛権の行使、それから国連安保理決議ですね。
前原委員 そのとおりです。自衛権と国連安保理決議、国連憲章の二十五条、この二つしかありません。
 では、次に伺いますけれども、大量破壊兵器、またその運搬手段を保有している国、その理由のみで自衛権の発動の要件になりますか。御答弁をいただきたいと思います。
川口国務大臣 今委員がおっしゃった条件だけで自衛権の発動が可能かどうかということを言うのは困難であろうかと思います。
前原委員 予防線を張られていると思うんですが、自衛権発動の三要件というのは、急迫不正の侵害があるということ、それから他に手段がない場合、それから必要最小限度、この三つが自衛権発動の三要件です。したがって、私からお答えをすると、大量破壊兵器を持っている、あるいはその運搬手段を持っているだけで自衛権発動の要件にはなりません。
 イラクの今の現状で、国連加盟国が自衛権を発動する要件に当てはまりますか。
川口国務大臣 イラクについては、今国際社会で、平和的に解決をしたいということで一生懸命に対応をしているわけでございます。
 それで、そういった状況、我が国も一生懸命外交努力をしている、米国も武力行使をするとは決めていない、そういう状況で、武力行使が行われるということを前提にして質問にお答えをするというのは、まさに今国際社会がやろうとしていることの結果を、それがうまくいかないだろう、そういうように先取りをするということになって、私は不適切であるというふうに思います。
前原委員 それは詭弁なんですよ。
 イラクを擁護するつもりは全くありません。シロだということは全くないでしょう。限りなくクロに近い。
 そういう前提で言いますけれども、私は今聞いているのは、国際法に基づいて国連加盟国がどういう行動をとれるのかという話を聞いているわけです。ですから、どういう状況を生み出すかどうかなんというふうなことをあなたに判断してくれなんて言っていないんです。国際法に基づいてどういう条件が整えば攻撃できますかと。ですから、今のイラクの大量破壊兵器を保有している、運搬手段を持っているかどうかわからない、その時点だけで自衛権発動ができますかどうか、イエスかノーかで答えればいいんです。
川口国務大臣 先ほど総理がお答えになられましたように、武力を行使できるということは二つ、一つは自衛権の行使、あるいは安保理の武力行使の決議ということですが、今回の件について、自衛権の発動によって武力行使が議論を、国際的になされるという議論は国際社会では今行われていない、そういうことでございます。
前原委員 初めからそう答えていただいたらいいんです。
 つまりは、イラクの問題というのは自衛権の行使で物事が図られる話ではないということなんですね。ということは、もしイラク攻撃が可能であるならば、国連決議がなければできないんですよ。国連決議も、国連の決議の中に武力の行使を認めるかどうかの文言がなければだめなんです。そこを私は言いたかったんです。
 では、次に聞きますよ。
 国連決議の一四四一、この中にはイラクへの武力攻撃を認める文言が入っていますか、入っていませんか。お答えください。
川口国務大臣 これにつきましては、さらなる重大なる違反がイラクの側においてあったとき、これは、安保理に報告をされるということになっているわけです。
前原委員 ということは、入っていないということですね。
 重大な違反があった場合に報告があるということは、また国連安保理が開かれることを想定していて、国連決議の一四四一で武力攻撃を行うということを認めているわけではないということですね。イエスかノーかで答えてください。
川口国務大臣 一四四一に基づいて武力行使を行うということはできない、そういうことでございます。
前原委員 この一四四一については、アメリカの国連大使ネグロポンテさんも、今川口さんがおっしゃったことと同じことを言っています。つまりは、この一四四一の中には隠されたナイフはない、武力攻撃の自動性はないということをアメリカ自身も言っているわけです。つまりは、この一四四一の決議の中では、武力攻撃を認める文言を与えていないんですね。
 一番初めに総理が答弁されました。国連加盟国が他の国を攻撃することのできる要件というのは、自衛権の発動か国連決議、国連憲章の第二十五条でしかない。一四四一には武力攻撃を認める物事が、文言が入っていない。ということは、新たな国連決議なしでは、どの国も国連加盟国はイラクに対して武力攻撃できないということになるんではないですか。
川口国務大臣 一四四一にはそういうことでございますけれども、まず最初に申し上げたいことは、最初に戻りますが、国連の平和的な努力、これが失敗をするという先取りをして議論をしているということでは決してないということを申し上げたいと思います。これはとても大事なことだと思います。
 その上で、一四四一自体ではそういうおっしゃったようなことでございますけれども、国連の決議、過去において国連の決議六七八、六八七、すなわち六八七でございますけれども、それに基づいて武力行使が行われたという過去においてのケースはございます。
前原委員 そのとおりなんですよ。一九九八年の十二月にアメリカとイギリスがイラクを空爆しているんですね。砂漠のキツネ作戦ということで空爆をしています。そのときに求められた国連決議が六七八と六八七なんですね。でも、川口さん、外務大臣、六七八、六八七を根拠にすること、無理があるんじゃないですか。
 私、六七八も六八七も何度も読んでみました。確かに、六七八については武力攻撃を容認する言葉が書いてあります。「イラクが一九九一年一月十五日以前に、」途中省略しますけれども、「クウェイト政府に協力している加盟国に対し、安全保障理事会決議六百六十及び全ての累次の関連諸決議を堅持かつ実施し、同地域における国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段を取る権限を与える。」つまりは、武力攻撃の根拠になっている文言はここなんですよ、ここ。
 でも、六百六十という決議も読んでみると、これは、湾岸戦争のときにイラクがクウェート侵攻して、原状復帰しろという決議なんです。つまりは、クウェートを侵攻したイラクに対して、原状復帰しなさい、それを守らないとあらゆる手段を与えますよということなんです。
 その後の六八七については、武力攻撃を容認する言葉は入っていないんですよ。これは大量破壊兵器のことについて書いてありますけれども、六百八十七にはそういうあらゆる手段を与えるなんということは書いていない。
 ということは、六七八、六八七とおっしゃったけれども、それをもとにして武力攻撃をする、容認するということは、日本としておかしいんじゃないですか。法的にはあり得ないじゃないですか、国際法的に。それを認めるということは、どういうことですか。国連憲章違反ですよ。
川口国務大臣 ただいま委員が、日本として容認するのはおかしいのではないかというふうにおっしゃいましたけれども、先ほども申しましたように、武力行使をするという決定もなければ、どのような理由でそれが行われるかということについての議論は全くない。したがって、容認するとかしないとかいう議論ではない、そういうことを申し上げたいということでございます。
 その上で、委員の御質問についてのお答えですけれども、六七八、これは一四四一の前のところをずっと読んでいただきますと、決議の六七八を含むずっと累次の決議、これについてきちんと書かれておりまして、したがって、これはいまだ有効であるということでございます。
 それから、先ほど申しましたように、具体的に、では何で、もし武力行使が万が一あったとして、どういう理由で行われることになるかというのは、まさに安保理が今議論をする、そういう段階でございまして、それは今後のイラクの姿勢その他いろいろなことによるわけでして、今そのお話をしているのは、単に論理的なといいますか、法理的なそういう解釈の話だけであって、現実との関係でそういうことだということを申し上げているわけでは全然ないということを改めて申し上げたいと思います。
前原委員 現実は国際法の厳格な解釈に基づいて行われなきゃいけないんです。その上で今までの国連決議。
 国連決議というのは、今までの国連決議を想起し、想起しと何ぼでも書いてあるんですよ、幾らでも書いてある。それは今までのスタイルなんですよ、それを想起しというのは。だから、それをもって根拠になるとは書いていない。
 私が聞いているのは、一四四一には武力攻撃を与える文言は書いていないと認められたんですね。ということは、一四四一に基づいて武力攻撃をすることはできないわけです。では、過去の国連決議において、この間のいろいろなイラクの違反行為に対して武力攻撃をできるような法的根拠のある決議があるかどうかという話をしているわけです。だから、それについて答えてください。
 別に現実の話を、現実もオーバーラップしていますけれども、今は法的な解釈の話をしているんです。つまりは、他国を攻撃する場合は、自衛権でない限りは国連決議が必要なんです。国連決議で、ではどの国連決議をもとにやれるのかという話を聞いているわけです。
川口国務大臣 単にロジックの議論だけをしているということの前提でお話をさせていただきますと、先ほど申しましたように、一四四一自体は武力行使についての自動性はない。ただ、一四四一で引用をされているということでございますが、それは、単に委員がおっしゃったように想起をしているということだけではなくて、ここで言っておりますのは、イラクは国連査察団及びIAEAに対する協力及び決議六八七のパラグラフ八から十三に基づき要請されている行動の完了を怠っていることにより、決議六八七を含む関連する決議に基づく義務の重大な違反をこれまでも犯し、また依然として犯しているということを決定している、そういうことでございます。
 したがいまして、単に委員がおっしゃったように想起をしているということではなくて、それに違反をしているということでございますので、解釈としては、そういった過去において行われたように、一度使われたように、そういうことはあり得るであろう、そういうことでございます。
前原委員 誤解を生まないために何度も言いますけれども、イラクを守るために言っているんじゃないんです。攻撃というものが国際法に基づかれて行われないとなし崩し的になるということを心配して言っているわけです。イラクはクロであろうということは、私もそれは思いますよ、イラクがけしからぬ国だというふうには思います。
 だけれども、今おっしゃった六八七に、ではどこに武力行使を与えるという文言がありますか。確かにこの決議の中には六八七はありますけれども、六八七に武力攻撃を容認する文言はない、六七八にはあるけれども。
川口国務大臣 六八七というのは、いろいろなイラクが守るべきことがたくさん書いてあるわけですね。それをイラクが守って初めて停戦だ、そういうことになるわけですね。したがって、イラクがそれを守れていないということを国連安保理で決定しているわけですから、その結果として、それは六七八に戻って武力行使、そういうことが可能であると論理的にはなる、そういうことでございます。
前原委員 今の、物すごく大きな間違いを犯しておられますよ。六八七が武力攻撃を容認していると今おっしゃいましたね。いや、今そうおっしゃったじゃないですか。六八七が武力攻撃を認めているとおっしゃった。いや、今そうおっしゃいましたよ。それは、でも、もし間違いだったら訂正された方がいいですよ。六七八にはありますけれども、六八七にはないんですよ。
川口国務大臣 六八七をイラクが守っていない、したがって、これは、六八七に書いてあることを守って、それで停戦ということになったわけですね。それをイラクは守っていない。したがいまして、六七八にこれは戻る。そうすると、六七八には、あらゆる必要な手段を使用する権限を付与する、そういうことが書いてある、そういうことでございます。
前原委員 六七八に戻るというのはどこに書いてありますか。国連決議六百八十七に、どこに戻れと書いてありますか。どこに、戻って、それで六八七に基づいて武力攻撃ができると書いてありますか。
川口国務大臣 要するに、停戦が合意されていない……(前原委員「どこに書いてあるかを聞いているんです」と呼ぶ)ですから、六八七には書いていないですけれども、六八七には、これを守れば停戦だと、これを守って停戦になると書いてあるわけですね。それが守られていない。六七八はずっと生きているわけです。したがいまして六七八になる、そういうことでございます。
前原委員 六八七については余り、でもこれは大事なところなのでちょっと詰めておかなきゃいけないんですけれども、六八七については大量破壊兵器についてのことを書いてある。でも、六七八というのは、クウェートをイラクが侵攻したことについて、そして原状復帰しなければあらゆる手段をとることができるということになっているのです。これは大量破壊兵器の話ですよ、今。
 だから、それを六七八まで援用するということは論理的に矛盾があるんじゃないですか。しかも一九九〇年ですよ、これは。それを引っ張って、ほこりをかぶっているものを引っ張って、アメリカの武力攻撃を許しちゃうんだ、認めるんだ、国連決議は有効なんだと。日本の立場なんですね、それは。
川口国務大臣 まず、日本の立場なんですねとおっしゃられたことについて、今、これは委員もおっしゃっているように、論理的な、ロジックの議論をしているということであって、現在の具体的なイラクの問題についての今の日本の立場を申し上げているわけではないということを、先ほども申しましたけれども、混乱するといけませんので、それは再三になりますが、申し上げました。
 それで、前に、九八年の時点で、この六八七に違反をするということによって六七八に基づく武力行使の基礎を提供するということになったということを申し上げました。これは九八年の十二月に、米軍と英軍の両国軍がイラクに対して軍事行動を行ったということです。このときに英国は、安保理の公式会合において、イラクによる義務の不履行が最も深刻な結果を招くと見まして、これがその安保理の決議六八七に違反することを明確に述べて、そして、さらにこれが決議の六七八に基づく武力行使の基礎を提供しているというふうに述べています。それから、そのときにアメリカも、この会合の場で同じように一連の安保理決議に言及をしながら説明を行っているということです。
 当時の我が国の立場ということにつきましては、これは、決議六八七に基づく停戦の基礎が損なわれ、この地域における国際の平和と安全が脅かされているという状況のもとにおいて、イラクに対し武力行使を含む必要な措置をとることは、イラクに関するこれまでの安保理決議の内容からしてこれに整合するというふうに認めまして、米英による行動を支持した、そういうことでございました。
前原委員 話をもとに戻します。
 国連決議一四四一、それまでにイラク関係に関する国連決議というのは十数本あるんですね。一番新しいのが一四四一です。最後の機会を与える、そしてまた、重大な違反があった場合にはまた国連安保理に報告をする、そういうところまで決めたわけです。全会一致ですよ。シリアも含めて全会一致。
 報告をして、そして国連で議論をするのが本来の筋じゃないんですか。一九九〇年のクウェート侵攻のときに決めた国連安保理決議、ほこりのかぶった国連安保理決議を持ってきて、それで、アメリカに対して、もしそれが武力攻撃やるんだったら、昔の国連決議をひもといて、それでもやっていいんだよということを日本は認めるということですか。それとも、先ほど総理が菅代表のときに答弁されたように、新たな国連決議が望ましい。その整合性はどうとられるんですか。
川口国務大臣 現実の問題と論理の、ロジックの問題との混同があるように思いますので、改めて申し上げますけれども、それに基づいて日本は認めるのかとおっしゃられましたけれども、最初のお話を、だからこそ最初に言わせていただいたんですが、日本は、まさにこれは、今だれも武力行使をすると言っていない、平和的な努力を最後の最後までやる必要があるというのが我が国の立場でして、国際協調をして、そして毅然として対応をするということが大事だ、これが現実の問題についての我が国の立場でございます。
 ですから、それは日本が今現実にそういうことを考えていることではない。ロジックの問題として、一四四一、これには、委員がおっしゃられますように書いてありますが、さらなる重大な違反がイラクにあった場合、この場合には安保理に報告をされる、そういうことであると私は考えています。
前原委員 ですから、ロジックの話として、一四四一の決議が自動性はない、そしてそれを、武力行使を認めていないというのはありますけれども、では、それがないけれども、重大な違反があった場合において、重大な違反があった場合に報告するとあるんですけれども、それを新たな決議を経ずに、ある国がにしましょう、ロジックの話をするんだから、ある国がイラクを攻撃することは、国際法的に国連憲章に基づいて可能かどうか。ロジックの話をしてください。
川口国務大臣 ロジックのお話といたしましては、イラクにさらなる重大な違反があれば国連に報告をされるということになります。そして、国連がその上でどのような対応をとるのか、これはいかなる種類のさらなる重大な違反があったか、そのときの議論の状況がどうなのか、そしてそのときの国際情勢がどうなのか、そういったことによるわけでして、ロジックの話というのは、そういった可能性のどれかを選ぶということは全く今の時点ではできない、そういうことでございます。
前原委員 あなたの方が現実とロジックを混同していますよ。ロジックの話をしているんだ、今は。頭を整理して答えてください。ロジックの話をしているんだから。
 だから、一四四一に重大な違反があった場合、それで新たな国連決議がなかった場合に、ある国がイラクに対して攻撃する、国連加盟国が。それは、今までの国連憲章に照らし合わせて、いや、国際法として認められるか認めないのか、ロジックの話をしているんですよ。
川口国務大臣 同じことの繰り返しになりますけれども、まさにロジックの話として、さらなる重大な違反があったときに、どのようなさらなる重大な違反があるか、これは全くわからない。いろいろな対応があり得るわけです。したがって、その国、その可能性を一つ選んで、これでやるということは言えない。ただ、前に申し上げたのは、過去において六八七、六七八が使われたことがある、そういうことを申し上げたということでございます。
前原委員 これはもう一遍言いますよ。
 ロジックの話で、一四四一、重大な違反があった、国連に報告した、安保理に報告した。それで、そのときに、一つの選択肢として、ロジックの話として、要は国連が何かをまとめる前に、ある国が、もういいと、それで行動しちゃった、その行動については、イラクに対する攻撃については、ロジックとして、国際法で認めるのかどうかということを聞いているんです。
藤井委員長 川口外務大臣。川口外務大臣。(発言する者あり)指名していますよ。
川口国務大臣 ロジックの話といたしましても、一四四一で書いてあることは、さらなる重大なる違反があれば、理事会、安保理に報告をする、そこで議論をする、そこまでしか書いてないわけです。それ以上は可能性の話として、これはいろいろな話が、可能性はある、それを一つ一つ、こういうことがあるだろう、こういうことがあるだろうということを言うことはできないということを申し上げているわけです。
藤井委員長 前原君。前原君、指名していますから質問してください。
前原委員 だから今、それはまさしくロジックの話を外れて、自分自身で、現実の話、可能性の話として想定しているんですか。純粋にロジックの話として僕は聞いているんですよ。ちゃんと答弁はしなさいよ。
川口国務大臣 一四四一に書いてあるのは、先ほど申し上げたように、理事会に報告をし議論をするということまでです。
 それから、先ほどもう一つ申し上げたのは、過去において六八七、六七八で行われたケースというのはありましたというふうに申し上げたので、それ以上のことを申し上げるということはできないと思います。
前原委員 なぜできないんですか。何度も同じ質問をして、何で答えられないんですか。ちゃんと答えないと、これ以上質問できないですよ。
 外務大臣、ちょっと事務方に聞いていないで、あなたの責任で答えてくださいよ。これは、子供だましの話をしているんじゃないんだ。今、アメリカが実際にどういう決断をするかというところに来ているわけでしょう。そして、その、日本の決断、またどういう判断をとるかということは、物すごく今もう間際に迫っているわけですよ。後で聞きますけれども、これによって、日本の決断によって、いろいろな問題が起きてくる。例えば、国連決議がさらにないままアメリカが攻撃を行って、これは現実の話としますよ、日本が無条件で賛成する、それについて賛成する。では、だれが、日本がテロの攻撃を受けた場合に責任をとるんですか。
 国際法に基づいてどうかわからないというところを詰めて議論すべきじゃないですか。だからこそ、現実に差し迫っている問題を、国際法上それがクリアできるのかどうかということを聞くことが、なぜ答弁できないんですか。予算委員会、国会をばかにしているんじゃないですか。ロジックの話をしている。外交的な配慮を聞いているんじゃない。
川口国務大臣 委員がなさっていらっしゃる御質問というのは、仮定に仮定を積み重ねてそれで御質問をしていらっしゃると思うんですね。
 今現実に何が起こっているかというと、これは、一四四一がある、そして一四四一にはきちんと書いてある。それは何が書いてあるかというと、さらなる重大なる違反があったらば安保理に報告をする、そして安保理で議論をする、そういうことを書いてあるんですね。
 現実的に論理的な世界できちんと言えることというのはそこまでなんです。私は、それに加えて、過去において六八七、六七八を使って九八年に武力行使が行われたことはありましたというふうに申し上げている。そういうことでして、仮定に仮定を積み重ねて、今後武力行使があったときに、それがどういうような理由づけをして可能かどうか、そういうことは、まさにいろいろなことによるわけですから、今の時点で抽象的な問題として申し上げることは、これはできない、そういうことであるわけです。
 それから、もう一つ申し上げれば、我が国として考えていることは、これは先ほど総理もおっしゃられましたように、そういう状況が万が一起こった場合には、新しい決議があるということが最も望ましいということは申し上げたとおりでございます。
 それで、では、決議がなかったときにはどうするかという御質問になりました場合には、それは、先ほど来申し上げているような、まさに大量破壊兵器の問題が我が国の問題であるとか、それで国際社会としてそれを解決したいとか、それからもう一つは、イラクがどのような安保理の決議の不履行の状況があるかということも含んだ国際情勢の状況、そして我が国が、国際社会において、これは責任をきちんと持つ国家であるということを踏まえて、その時点で主体的に判断をする、そういうことでございます。
前原委員 ふざけた答弁するんじゃないですよ。現実に起こり得る話を国会で議論できなくて何の国会なんですか。しかも、一四四一が、重大な違反があった場合に、それについて国連に報告する。それがなかった場合に、ある国がイラクに対して攻撃をした場合、それは、今までの国連決議に基づいて、それが妥当性があるのかどうなのか、国際法上それが通るのか通らないのか、その話をすることがなぜいけないんですか。その答えをすることをなぜあなたは拒むんですか。おかしいじゃないですか。
川口国務大臣 事態はどのような展開になるかということは全くわからない時点で、例えば六八七ということを申しましたけれども、六八七が実際にインボークされるような状態がそもそも生じるのか、仮にさらなる重大なる違反があったとしましても、そこは全くわからないわけですね。山ほどいろいろな事態、現実に考えたときに、その違反の状況があって、そして、それに応じていろいろなそのときの対応の仕方が国際社会としてあり得る。それを全部考えて、ロジカリーに、論理の上で何が可能で何が可能でないかということを申し上げるということは不可能だというふうに申し上げたいと思います。
前原委員 今のはおかしいんですよ。六八七というのはもう書いてあることで、それが、これから起きる状況によって六八七の解釈が変わること自体がおかしいんだ。むちゃくちゃ言っているんですよ。同じ質問に答えられないんだったら私は質問できませんから、その点をちゃんと答えてくださいよ。
川口国務大臣 私は、六八七の解釈が変わるということは一言も申し上げていません。六八七がインボークされるような、要するに六八七が適用されるような、そういう状況が生じるかどうか、そういうことは全く今の時点ではわからないということを申し上げた、そういうことです。
前原委員 同じ質問になりますよ。しつこく何度でも私は聞きますよ。この六八七、六七八に基づいて、アメリカ、イギリスがイラク攻撃をやったんだ。それを、昔の一九九〇年のクウェートを侵攻したときの決議を引っ張り出して、そしてそれに根拠を求めたんだ。
 もっと違うことを挙げましょう。コソボを攻撃しましたよね、コソボに介入して。あれは、国連決議全くないんだ。法的根拠なくアメリカはやったんだ。過去にアメリカはそういうことをやっているんだ、実際問題。人道的介入という言葉はいいけれども、国連決議なくやっているんだ。完全に他国に対する介入、先制攻撃をやっているんだ。
 そういう問題がある中で、今私が話をしているのは、確かに一四四一の話がどういう結論になるのかわかりませんけれども、一四四一で重大な違反がある、多分あるんでしょう、後でまた質問しますけれども。しかし、それにもかかわらず、報告がなされた、しかし、いろいろな国際政治の中で、常任理事国、全部まとまるかどうかわからない、安保理決議がまとまるかどうかわからない、その中で、実際問題に攻撃が行われた場合に、それは法的にどうなのかと聞くことがなぜおかしいんですか。それは今の国際法に基づいて、今までの決議に基づいて妥当かどうかということが、なぜ言えないんですか。
川口国務大臣 御質問になることはおできになると思いますけれども、まさに仮定の話の積み重ねですから、どういうような状況でその武力が行使されるかというところもおっしゃっていただかないと、お答えができない。
 国際社会としてどういう対応をとるかということは、まさにどのような形で、武力行使が行われることの前に、重大なる違反、さらなる重大なる違反があるか、そういうことがはっきりわからなければわからない、そういうことです。
藤井委員長 前原君、質問してください。――川口外務大臣、答弁できますか。川口大臣。(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。川口外務大臣。――川口外務大臣、答弁できますか。(発言する者あり)
 では、速記をとめて。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 前原君。
前原委員 もう一度改めて質問します。
 国連の加盟国が他国を攻撃する根拠は、自衛権の発動か、国連憲章二十五条に基づく国連決議によるしかありません。今回のイラクの問題で、全会一致でこの間安保理でまとまったのは一四四一、これには武力攻撃を認める文言は入っていません。重大な違反があった場合には国連安保理に報告をするということになっています。
 今まで、先ほど外務大臣が答弁されたように、それがいいか悪いか、認めるか認めないかは別にして、昔々の、一九九〇年のいわゆるイラクがクウェートを侵攻したときの国連決議を持ち出して、そして武力攻撃を一九九八年にアメリカ、イギリスが行った。
 私が聞きたかったのは、一四四一は報告義務がある、そしてまた集まって、そして新たな国連決議なりができればいいけれども、いろいろな考え方があって固まらないかもしれない、そのときに、ある国がイラクに対して攻撃をした場合は、過去の国連決議に基づいて、それはいわゆる法的に妥当なものなのかどうなのか、あるいは法的な根拠がないものなのかどうなのか、そこを聞きたかったわけです。それに対してお答えを下さい。
川口国務大臣 純粋に論理の話としてお答えをいたします。現実、今現時に起こっていることとの関係は捨象してお聞きいただきたいと思います。
 決議六八七、これはいろいろなイラクに対する守るべき義務が書いてあるわけですけれども、その根拠を揺るがすような、すなわちそういうことを守らなかったということですね、そういうようなことが現にあった場合には、六八七が守られなかったということで、過去にあったように六七八が使われるということは論理的にはあり得る。六八七の根拠を覆すような、そういうことがなければ、六八七ということの違反はないわけですから、したがって六七八に戻るということはない、論理的に申し上げればそういうことでございます。
前原委員 つまりは、一四四一の国連決議で国連に対して報告が、重大な違反があった場合、報告があった、新たな決議がなくても、その攻撃は国際法的な根拠はあり得るケースがあるということですね、今の答弁は。
 そこで、ではちょっと聞きますよ。
 国連の決議の中に、この六七八にしても六八七にしても、イラクの大量破壊兵器の話が書かれていますよね、それに対しての違反の場合、あらゆる措置がとれると。では、その場合に体制転覆まで企てることは可能なんですか。つまりは、大量破壊兵器の破棄、原状復帰というものが目的でなければならないんじゃないですか。つまりは、この国連決議を利用して、あるいはもっと言えば拡大解釈して体制転覆をすることは、国際法的に可能なんですか。
川口国務大臣 一四四一には武装解除をするというふうに書いてあります。体制転覆という言葉は私は見た記憶はないということです。
前原委員 そうなんですよ。だけれども、アメリカには国内法があるんですね。どういう国内法があるかというと、イラク解放法というのがある。これは完全にイラクの政権をかえるという国内法がある。しかも、アメリカは議会の決議、上院、下院も両方ですけれども、イラク攻撃を大統領にもう授権しているんです、イラク攻撃していいよと。
 アメリカは、憲法というのは国内の最高法規ですけれども、憲法は国際法よりも上位に位置される。つまりは、アメリカの法解釈であれば、国内法が国際法に優越する、優先する。ということは、国連決議には体制転覆までは書いていないけれども、アメリカは国内法で体制転覆までやると言っているんですから。チェイニー副大統領は、イラクの占領統治は日本の占領時代を一つのお手本にするとまで言っているんですよ、チェイニーは。それは、では国連加盟国として、国連に二割近くの金も出して、世界で第二番目の金を出している日本が、そのアメリカの国内法のいわゆるグローバル化というものを認めるんですか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃったようなことをチェイニーが言ったということは私も聞いたことがございますけれども、同時に、ブッシュ大統領は、まだ武力行使をするとは決めていない、これもはっきり言っていることでございます。
 したがって、今のような仮定に基づいたことについてはお答えできないわけですが、我が国の立場というのは、先ほど総理がおっしゃられましたように、新しいそういうような状況があった、さらなる重大なる違反がイラクにあったという状況において、新しい決議があることが最も望ましい。
 そして、ただ、その新しい決議がなかった場合、この場合には、これも先ほどから申し上げていますけれども、大量破壊兵器の問題というのは、まさに国際社会全体として廃棄をしなければいけないことだと考えている。我が国は、国際社会の責任ある一員としてどういうふうに考えるかということを主体的に考える立場にある。そして、イラクがどのような状況で安保理の決議に違反をしたか、それに対する安保理の議論の状況等も含めまして、国際情勢、そういったことを考えて主体的に判断をする、そういうものでございます。
前原委員 そこの話になると、もう完全に逃げというか、仮定の話で全部逃げるんですよ。だから、そこをやはりここの国会の場というので議論しておかないと私はいけないと思うんです。
 例えば、これは、イギリスというのは僕は立派な国だなとある種思うのは、イギリスの法務長官、法務大臣に当たられる立場ですけれども、ブレア首相に対してこう言っているんです。国連の承認を得た軍事攻撃であっても、イラクの体制の変革を目的とする場合には、国際司法裁判所で国連憲章違反の容疑に問われ、英政府が追訴される可能性があるとまで言っているんですよ。そういう議論までイギリスの国会ではちゃんとやっているんです。
 あなたは、仮定の話には答えない。アメリカの顔色ばかり見ている。アメリカの走狗と言われてもこれは仕方がないですよ、本当に。つまりは、アメリカは、国内法で、しかも憲法で、もうイラクを攻撃していいということを授権されているんです。授権されていて、そして、それが体制転覆の国内法まで持っている。それについて日本はどう判断をするかも言えなかったら、あなた、外務大臣をやめた方がいいですよ。その判断を聞いているんです。
川口国務大臣 米国が、どのような国内法に基づき、あるいは政策の考え方に基づき、どういう判断をし、行動をするかということは、これは米国の問題である。我が国としての立場というのは、先ほど申し上げたとおりでございます。
前原委員 総理、この答弁聞いておられて、おもしろいですか。つまりは、国会として機能を果たしていると思われますか。
 イギリスでは、法務長官が先ほど申し上げたようなことまでブレアさんに言っているわけですよ。つまりは、仮定の話で、しかし、そういうものについては注意してやりなさいということを議論できているわけですよ。
 日本は全くそういう話は、仮定の話で、議論していません。木で鼻をくくったように、アメリカはアメリカの法律があるでしょう、日本はまた違う法律がありますから、主体的に判断しますと。ふざけるんじゃない、そんな答弁は。今は、その仮定が現実のものとなりつつあるから、先ほどからもしつこく私が聞いているんじゃないですか。
 そういう状況が起こったときに、日本としてどう判断するのか。それでもアメリカを支持すると、本当にあなたは一国の総理として明言できるんですか。御答弁ください。
小泉内閣総理大臣 私は、政治論を述べます、政治論を。法理論は、学者、専門家に任せます。政治論を述べます。
 今回、イラクの問題について、昨日から国連安保理の決議が、議論が行われております、報告が行われております。そういう中で、私は、どういう事態が起こるか、これから予断は許しませんが、万策尽きて、仮に武力行使不可避というような状況になったと仮定した場合には、新たな国連安保理決議が採択されることが望ましいなということを言っているわけです。
 そして、今後、今現実の状況を見ますと、これからブリクス査察委員長がイラクを訪問します。それで、協議します。そして、それを持ち帰って、また国連安保理でその報告をします。そこでまた各国議論するでしょう。その状況を踏まえて、日本は、国際社会の、国連の責任ある一員としてどのような対応をとるか、そこで決めたい。これがもう、何回も繰り返しますが、我が国のはっきりした立場です。
前原委員 いや、全然拍手するような答弁じゃないですよ。全然拍手するような答弁じゃない。
 つまりは、他国は、主体的にこれをどう動かしていくかというような視点に立っているわけです。日本はその視点が全くない。つまりは、自分たちでどう国際社会の世論をつくり出していくかという観点が全くないんです、今の質問していても。
 つまりは、それは国内向けの、政治の、生き物ですからありますよ、フランスにしてもドイツにしても、なぜああいう議論をするか。国内世論があるから、自分たちはこういう方向に持っていきたいからアメリカを牽制している。もちろん、フランスとドイツは違う観点があるでしょう。フランスは、自分はP5の一員だ、常任理事国の一員だ、つまりは、安保理を軽視して物事を決めることはけしからぬ、そういうようなことは絶対まかりならぬというような駆け引きもあるでしょう。しかし、どの国の議論を見たって、自分たちはこうすべきだという意思に基づいて、国家戦略に基づいて話をしているじゃないですか。
 今の場合は、状況を見てそのときに判断しますというのは、日本はどうしたいのかという意思がない。そういう判断をどういうふうに持っていきたいかという判断がないじゃないですか。だからこそ、仮定の質問には答えられないとか。そうじゃなくて、日本はどうしたいのか。
 では具体的に、この武力行使が不可避でなくなるために、つまりは避けるために、日本として具体的にどうしていくんですか。そういう部分がなければ、そのときに判断するといっても机上の空論にしか聞こえない。尊厳ある国家、主体的な国家、どういうふうに国際社会を持っていきたいか、戦争をできるだけ回避したいというふうな意思がみじんも感じられない。そういう意思を総理として示してくださいよ。答弁。
小泉内閣総理大臣 日本としてはっきり意思を示しているじゃないですか。前原議員と意見が違うかもしれませんよ。それはいい。あなたと一緒になる必要もないし、私の意見に合わせる必要もない。政党も違うんだから、政治家として違うんだから。
 しかしながら、イラクが、国際社会が一致して、一四四一遵守しなさい、大量破壊兵器廃棄しなさい、疑念を払拭しなさい、これに積極的に協力すれば物事解決するんです。そのために、今、世界が一致して協力しているんでしょう。しかし、イラクはなかなかそういうことをしない。協力しない。そこで今問題が起こっている。
 そこで、先ほど言ったように、日本としては、アメリカにも、今までも国際協調体制構築努力してきたんだから、これからも引き続き国際協調体制を維持できるように努力することが大事だと九月にも言ったし、一月の電話会談でもブッシュ大統領には話した。昨日のブレア首相との電話会談でも、日本の立場はこうだということを今のように、ブッシュとの会談においても私は話しました。
 そして、パウエル国務長官が今朝御報告をされた。これからまた、これによって疑惑も深まった、さらに、ブリクス査察委員長が近いうちにイラク訪問して協議する、そして、それを受けてまた国連に報告する、それでまたいろいろ議論が起こるんです。
 これはもう、そういうのを見て日本として責任ある一員をしよう。これは、はっきりしない、しないと言うけれども、あなた方の意見に気に食わないからはっきりしないと言っているだけであって、私どもとしては、これ以上日本の主体的な行動はないんです。国際社会の責任ある一員として、イラクにちゃんと守りなさいよ、アメリカには国際協調体制をとるように努力してくださいよ。そういう国際社会の状況を見て日本も主体的に外交努力を続けていこう。これはもう、何回聞かれても、これ以上はっきりしたものはないんですよ。
 外国と違うから日本は主体的対応じゃない。アメリカに協力すれば日本の主体性がない。では、ほかの国に協力すれば主体性がある。そうじゃないでしょう。それぞれ国には、フランスにはフランスの態度、イタリアにはイタリアの態度、イギリスにはイギリスの態度、それぞれ違うんです。全部同じとは言えません。日本も日本の立場があるんです。はっきりしています。たとえ国連安保理で武力行使が容認されたとしても日本は武力行使しません、これもはっきりしているんです。これは日本独自の態度でしょう。日本には日本独自の態度があるんです。はっきりし過ぎているぐらいし過ぎているんです。
前原委員 いや、中身のない議論を聞かせてもらった。私は、状況を総理に説明してもらおうと思って質問したんじゃない。
 では、もう一つ、違う観点で言いますよ。
 きょうの川口さんの談話、私はあきれましたよ。これ、パウエル国務長官の報告に対する談話。もう日本は完全にアメリカの安全牌、そういうふうに見られている、そういうような談話がすぐに出されている。
 「査察活動に対する非協力、大量破壊兵器の隠蔽工作等、イラクに大量破壊兵器を廃棄する真の意図が見受けられないことを示す情報を提示したことを高く評価する」。実証したんですか。このアメリカが出した情報をちゃんと分析したんですか。きょうの未明に発表されて、談話が出たのは六時ですよ。自分たちの情報で判断して高く評価するというんだったら立派なものだ。そういうもので判断しなくて高く評価するというのは、何ですか、これは。
 別に、何度も申し上げているけれども、イラクを守ろうなんという気持ちはない。だけれども、アメリカはもう武力攻撃するかしないかじゃなくて、いつするか、どういうふうに世界を説得してやるかというのはだれだってわかっているわけですよ。そういう状況の中でこんなものが出てきたら、やはりアメリカの言うとおりに日本というのはなるんだなと思うのは当たり前じゃないですか。
 また、この「隠蔽工作や査察の妨害を行っていることを示す情報であり、イラクの大量破壊兵器に関する疑惑は更に深まった」。検証したんですか、自分たちで。していないのに談話を出すというのはどういうことですか。アメリカの言うことは我々は唯々諾々と聞きますよということを言っているだけじゃないですか。そういうような談話しか出せない国に主体的があるなんてだれが思うんですか。そういう議論をしているんですよ、総理。
 さっきの、何かおっしゃったけれども、はっきり言って内容はなかった。立場の違いじゃないですよ。私、日米安保も大事だと思っている。また、北の問題もあるからアメリカとの関係というのは難しいのもよくわかっている。しかしながら、さっきから申し上げているように、国際法に基づいてしっかりと押さえるべきは押さえてやらないと、国際法に基づかなくてやることについてもオーケーだ、コソボのときのように人道的介入だと。今でも検証されていないんですよ、国際法的にあれが妥当だったかどうだか。そういうようなことについて日本がついていきますというふうに見られているからこそ、仮定の質問と言われながらも聞いているわけじゃないですか。
 新たに聞きたいと思います。総理に聞きます。
 イラク攻撃が始まった場合、これまた仮定の質問だから答えないとおっしゃるのかもしれない。しかし、イラク攻撃が仮に始まった場合、いろいろなことが想定されるわけです。それを日本が賛成するか反対するか、支持するか協力するかによって、我々の国民の生活、ひょっとしたら生命、財産、安全まで大きな危機が及ぶかもしれない、そういう判断を日本政府としてしてもらわなきゃいけないんです、総理はそういう立場だから。その中でどういう事態が想定されるのか。仮定の質問には答えられないというのだったら、もうそれで結構ですよ。答えてください。
小泉内閣総理大臣 先ほど外務大臣の談話を見てあきれると言いますけれども、「イラクに対し改めて、自ら積極的に疑惑を解消し、大量破壊兵器の廃棄をはじめとする全ての関連安保理決議を履行することを強く求めるものである。」「イラクが査察への積極的な協力を求める国際社会の呼びかけに真摯に応えることを求める。」これが何であきれるんですか。一部だけ取り上げて、それで意見が違い、しかもイラクを攻撃するとは言っていないんですよ、仮定にしろ。(発言する者あり)
藤井委員長 落ちついてください。
小泉内閣総理大臣 どういう脅威があるかということは、これから、まさに有事、有事関連法案が大事だというのはそこなんですよ。
 民主党も対案を出すと言っていますから、出していただければ、いいものは取り入れていきますけれども、これからイラク攻撃が起こればというのは、起こさないように今国際社会が一生懸命努力しているんでしょう。そういう点を考えてくださいよ。
 あなたの意見と違わないから、あきれる、あきれると首相に説教してもいいけれども、私が説教してはいかぬという理由もないけれども、私はあえて説教はしませんよ。議員は議員として、意見は意見として聞きます。
藤井委員長 前原君、時間が来ておりますから。
前原委員 いや、説教するんならしてくださいよ。さっきの私の言ったところは言わずに、当たり前のこと書いてあるところを書いて何でいけないんだというのは、それは全くおかしな反論だと私は思いますよ。全く論理として成り立っていない。
 あした、私また三十分ありますから、また続けて質問させていただきます。きょうはこれぐらいにしておきます。
藤井委員長 次回は、明七日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.