衆議院

メインへスキップ



第9号 平成15年2月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年二月十二日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      石川 要三君    尾身 幸次君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      高鳥  修君    谷畑  孝君
      津島 雄二君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    葉梨 信行君
      萩野 浩基君    馳   浩君
      林 省之介君    原田昇左右君
      松浪 健太君    三塚  博君
      持永 和見君    山口 泰明君
      吉野 正芳君    五十嵐文彦君
      伊藤 英成君    石井  一君
      上田 清司君    海江田万里君
      鍵田 節哉君    河村たかし君
      田中 慶秋君    中村 哲治君
      長妻  昭君    細野 豪志君
      牧野 聖修君    吉田 公一君
      米澤  隆君    赤羽 一嘉君
      斉藤 鉄夫君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      小沢 和秋君    佐々木憲昭君
      矢島 恒夫君    阿部 知子君
      中西 績介君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      上野 公成君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   法務副大臣        増田 敏男君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   政府特別補佐人
   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君
   会計検査院長       杉浦  力君
   会計検査院事務総局第三局
   長            船渡 享向君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (総務省自治行政局選挙部
   長)           高部 正男君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        鈴木 孝之君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    小松 一郎君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君
   政府参考人
   (財務省主計局長)    細川 興一君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  磯部 文雄君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   政府参考人
   (国土交通省政策統括官) 鷲頭  誠君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君
   参考人
   (日本銀行理事)     白川 方明君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月十二日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     吉野 正芳君
  松岡 利勝君     林 省之介君
  海江田万里君     牧野 聖修君
  河村たかし君     五十嵐文彦君
  田中 慶秋君     伊藤 英成君
  矢島 恒夫君     小沢 和秋君
  中西 績介君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     松岡 利勝君
  吉野 正芳君     馳   浩君
  五十嵐文彦君     河村たかし君
  伊藤 英成君     鍵田 節哉君
  牧野 聖修君     海江田万里君
  小沢 和秋君     矢島 恒夫君
  阿部 知子君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     松浪 健太君
  鍵田 節哉君     田中 慶秋君
同日
 辞任         補欠選任
  松浪 健太君     谷畑  孝君
同日
 辞任         補欠選任
  谷畑  孝君     衛藤征士郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑に入ります。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として総務省人事・恩給局長久山慎一君、自治行政局選挙部長高部正男君、公正取引委員会事務総局審査局長鈴木孝之君、法務省刑事局長樋渡利秋君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、北米局長海老原紳君、欧州局長小松一郎君、中東アフリカ局長安藤裕康君、財務省大臣官房審議官藤原啓司君、主計局長細川興一君、厚生労働省医薬局長小島比登志君、職業安定局長戸苅利和君、社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君、保険局長真野章君、社会保険庁運営部長磯部文雄君、農林水産省農村振興局長太田信介君、水産庁長官木下寛之君、国土交通省政策統括官鷲頭誠君、海上保安庁長官深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第三局長船渡享向君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中慶秋君。
田中(慶)委員 民主党の田中慶秋です。
 私は、まず最初に総務大臣にお伺いしますけれども、小泉総理が、改革なくして成長なしとかいろいろなことを言われているわけであります。そういう中で省庁の再編あるいは行政改革、こういうことで待ったなしという形で、そこで生まれた副大臣あるいは政務官、こういうことの役割がどうなっているのか。
 例えば、このとき省庁再編の中で副大臣、政務官ができるときに、やはりこれからは政治主導でやっていこうじゃないかということで、それぞれの質問取りは政務官、副大臣がやる、こういうことだったわけでありますけれども、現実にはそういうことをされていない。
 まして、この委員会が十日に、月曜日にやるということで、その月曜日がきょうになったわけでありますけれども、この月曜日に、ふだんの日でありますが、政務官、副大臣はだれ一人として職務についていないという、こういうことの実態をあなたはどう考えておられるのか、まず冒頭に聞きたいと思います。
片山国務大臣 今、田中委員言われましたように、政治主導ということを強く打ち出そうということで副大臣や大臣政務官制度ができたのは御承知のとおりでございまして、やはり各省庁の政策決定、事務の執行等について、私は、副大臣、政務官ができてから大分そういう面は強化された、こういうように思いますし、もう一つは、国会だとかいろいろな各党との連絡調整の先頭に立つ、こういうことは私は副大臣、政務官の仕事だと。それはそれなりに田中委員、御意見があろうと思いますけれども、前よりは進んでいる、私はこう思います。
 ただ、十日は、国会がなかったからということじゃありませんが、各省庁の公式のいろいろな行事や仕事も割に少のうございまして、それぞれ地元でのっぴきならぬ仕事があった、こういうことで副大臣、政務官の登庁が少なかったと思いますけれども、しかし、それをもって制度全体のあり方について云々するのはいかがかなと。
 今後、大いに、田中委員の言われる御趣旨で、私の方も、副大臣、政務官にもそういうことを伝えまして徹底してまいりたい、こういうふうに思っております。
田中(慶)委員 質問通告は一日半前に、きょうの質問は少なくとも月曜日にと、こういうことになるわけであります。こんなことを含めて、現実に調整役の人たちは、電話してもだれもいないじゃないですか。
 それで、どこへ行っているんだ、地元選挙区に帰っているというんだ。私も政治家だから、それが全部だめとは言いませんけれども、今、予算委員会をやっている最中であります。ましてや、あらゆる問題での危機管理が問われている、経済がどん底になっている、いろいろなところでこれから何とかしていこうというときに、政府の一員である少なくとも副大臣、政務官がそんなことでいいんだろうか。
 やはりこういうことから、全く丸投げと同じでしょう。今まで恐らく、私は、こういうことを国対が今度改めてこれからやっていこう、こんな形で、いつもほとんどの質問取りは副大臣や政務官が来たことなんて一度もない、はっきり申し上げて。こういうことで本当に政治改革ができるのかどうか。もう一度。
片山国務大臣 十日につきましては、いろいろ地元での用があるという話を聞きまして、私が出るから、副大臣、政務官はどうぞ御地元の用事をと、私のところはそういうふうにいたしましたので、今後は、今の田中委員の御指摘のような趣旨を十分徹底いたしたいと思います。
 国会のこの質問の通告につきましては、副大臣、政務官が、特に政務官が先頭に立って指揮をする、みずから行くんじゃなくて、指揮をとって各担当の諸君に行かせる、こういう仕組みになっておりますので。必要ならばもちろん本人が行ってもよろしゅうございますけれども、指揮をして、各担当の国会の対策室というんですか政府委員室等が対応している、こう思いますが、田中委員の御趣旨は私も十分わかりますので、今後とも、内閣官房の方とも相談しながら、委員の言われる御趣旨の徹底を図ってまいりたい、こう思っております。
田中(慶)委員 今、行政改革というのは、むだなことをなくす、あるいはスリムになる。一方においては改革を進めて、あらゆるむだなことをやめさせたり、あるいは公務員のスリム化も言っている最中に、片方ではその組織が十分に機能されていないということであっては、私は、そういう指導そのものができなくなってくる、こういうことだと思いますので、やはりその辺はしっかりと、改革を中心としてこれからやっていこうということなんですから、その辺をちゃんとしないといけない、このように思います。
 大臣はこれから徹底するということですから、それ以上申し上げませんけれども、まず模範としてその人たちがやっていかないといけない。名誉職じゃないんですから、はっきり申し上げて。何か名誉職みたいに政務官や副大臣につくと、僕が見てびっくりしたのは、何でもできるようなことをあいさつ状に書いて配ったり、いろいろなことを見て、おお、すごい権限があるものだなと思っているわけですけれども、しかし、やはりそういうことを含めながら。一般の人は何も知らないわけですから。ところが、現実に、本業をしないでそういうことをするということ自体は、やはり政治に対する信頼を失うことでありますから、その辺をしっかりしてください。それだけ申し上げておきます。
 次に、実は、今の政府が経済政策、あるいは諮問会議等で打ち出しておりますけれども、景気の現状について先般来内閣府が打ち出した、発表されました速報値によりますと、四四・四ということでありますから、これまた二カ月連続五〇%を割り込んでいる、大変厳しい環境にある。昨年の暮れも、十月から十二月までGDPがマイナス成長である、こういうことでありますけれども、こういう一連のことを含めながら、我が国の景気の後退は現実にはまだまだ続くであろう、こんな心配をされております。
 この景気現状について、私は、政府の認識は甘いのではないか、何かもう少し厳しくしっかりと対応していかないといけない、このように思っておりますけれども、この辺についての考え方をお伺いします。
竹中国務大臣 景気の認識に関しましては、決して甘くなることがないように、事実に即して着実に行っていかなければいけないといつも心がけているところでございます。
 今、委員がおっしゃいました四四%というのは、いわゆるDI、景気の現状認識に関する一致指標が四四%で、先般の指標では五〇%を割り込んでいる、そのような御指摘だと思います。十―十二月期のGDPにつきましては、民間の予測値が今発表されておりまして、それは少し低い数字が出ている。これは、まだ政府の正式の統計は出ておりませんので、そういったところをしっかりと見ていきたいというふうに思っております。
 重要な点は、なかなか見通すのは難しいわけでございますけれども、この十四年度に関しましては、我々、ゼロ%というふうに見ていました。一年前、ちょうど民間から政府の見通しは甘いというふうに言われた。民間の見通しではマイナスの見込みだったわけですけれども、我々はゼロというふうに、甘いというふうに言われたわけですが、現実には、昨年の第二・四半期、第三・四半期、それぞれ年率ベースでは三%ないし四%という成長をしましたこともありまして、むしろ政府の見通しよりもさらに少し高い数字に十四年度に関してはなるであろうという見込みを立てております。
 いずれにしましても、甘い、甘くなるというようなことがないように、しっかりと現実に即して見ていきたいというふうに思っております。
田中(慶)委員 まず、特にことしは、今アメリカによるイラク攻撃が非常にうわさされているわけでありますけれども、これによって日本経済というものが大変大きく左右するだろう。もう既にアメリカの株価も昨日ダウンしている。こういうことを含めて、一喜一憂の問題があろうかと思いますけれども、少なくともそういう問題を考慮に入れて全体的にやはり経済指導をしていかないと、長い今の日本経済そのものがさらに厳しい環境になるだろう、このように思いますけれども、まずこれについてどのように考慮されているのか、お伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 アメリカの、特に湾岸をめぐる不確実状況をどう読むかというのは、まさしく大変難しい問題でございます。基本的には、国際機関も多くの民間予測も、基本シナリオとしては、むしろ二〇〇二年より二〇〇三年の方が景気は上向くというふうにアメリカ、ヨーロッパに関しては見ております。しかし、先生御指摘のように、その中でイラクに関連する不確実な問題がある。
 我々としては、とにかくさまざまな情報を集めて慎重に見ていくということに尽きるのであろうと思いますけれども、アメリカの中でいろいろな予測の幅がありますけれども、我々の経済見通しを立てるに当たりましては、アメリカの予測の幅の中で比較的低いところの予測を前提にして、我々としては慎重に見通したつもりでございます。
田中(慶)委員 いずれにしても、いろいろなファクターがあると思います。
 ところで、小泉総理がことしの施政方針演説で、構造改革道半ば、こんなことを言いながら、少なくともしばらく時間はかかるということであります。
 ところが、昨年のを見てみますと、昨年は、二〇〇二年は改革は本番である、そして二〇〇三年には成果を得られる、こういうことであります。しかし、現実にはそうなっていない。
 ところが、ことしは、経済政策の中で、この諮問会議初め経済財政中期展望の中で、二〇〇五年以降ということを具体的な指数として言われております。
 ところが、民間の総合研究所、三菱総研を初めとする民間の研究所では、二〇〇八年までずれ込むではないかと言われているわけであります。こういう点では全然トーンダウンしてきておりますし、この先が、ある面では非常に希望が持てなくなってくるのではないか。
 こういう一連のことを含めて、担当大臣としてこれをどう受けとめておられるのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 今御紹介になりました三菱総研の予測は、特にデフレの克服に関して、デフレ克服には時間がかかるのではないかというような予測を立てているということは承知をしております。
 我々としましては、予想以上に厳しいデフレであるということは認識をしております。であるからこそ四本柱の改革と、さらには政府、日銀が一体となって政策を総動員することによって、二〇〇五年ぐらいにはこれを克服したいというシナリオも立てまして、改革をしっかりと行っていくことを目指しているつもりでございます。
 むしろ、中期的な予測に関しては、三菱総研の予測を御紹介してくださいましたけれども、余りほかに事例が出ておりません。さまざまな観点から、ぜひ御検討を民間の部門にもいただきたいというふうに思っておりますけれども、我々としては、大変厳しい状況にありながら、今申し上げましたような形で、集中調整期間を克服して、ぜひとも経済をその本来持っている安定的な成長軌道に近づけていきたいというふうに思っているところでございます。
田中(慶)委員 大臣はデフレの問題に触れましたけれども、今の日本における経済環境の中で、少なくともデフレ克服できるような環境ではない。
 まして、全体的な失業者はふえる、そればかりではなくして一方においてはいろいろな増税がされている、あるいは増税が検討されている。こういう形で、税制中立という中で一方においては増税、一方においては減税というのはほんのわずか。思い切った減税をする、こんな考え方も示されていない。そればかりか、例えば、物価がある面では下がっているから年金を下げようとか、そんなことをずっと続けていたならば、少なくとも消費の拡大はできるどころか、全体先行きが、この見通しがはっきり暗くなっているのが現状だと思います。
 ましてや、今の経済環境の中で、デフレそのものに対する基本というものが間違っているんじゃないかな。不良債権の処理だけに力を入れてみたり。本気で思い切った減税をやるとか、あるいは規制改革を、少なくとも規制はゼロに、もう撤廃するとか、発想の転換をして初めてこういうものが克服できるんだろうと思いますけれども、現実にはそうではない。
 例えば、地方自治体になっておりますけれども、固定資産税一つ見ても、土地が下がっていても固定資産税は全然下げていない。こんなことも含めながら、税制の問題も十分検討された中で、総合的にデフレ対策というものをやっていくべきだろうと思いますが、今政府がやっているのは、総合的にやっていない。部分的に、むしろデフレを増長するような考え方でおられるのではないかと思っておりますけれども、その辺について、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 デフレの状況がある意味で予想以上に厳しいということは、先生も御指摘になったとおりでございます。
 また、数字だけ申し上げますと、企業物価の下落率というのは、二〇〇一年にマイナス二・五%ぐらいであったものが、今、下落幅は大体その半分ぐらいになってきている。これは、為替レート、いろいろな要因が関係はいたしますけれども、その意味では、これを解決に向かわしめる非常に重要なチャンスはあるというふうに思っております。
 委員御指摘の、一方で国民に対する負担等々があるではないかということにつきましても、これは我々なりにもしっかりと検討したつもりでございまして、であるからこそ、補正予算と先行減税で、トータルとして財政が経済に対して中立になるような配慮はしたつもりでございます。
 規制撤廃、これは本当に我々が目指すところでございまして、規制の改革を含む四本柱の改革、それに金融政策を合わせた、まさに総合的な、我々としては目いっぱい総合的な政策総動員の体制をとっているつもりでございます。
田中(慶)委員 いずれにしても、今の経済政策そのものが、やはり国民に多く理解もできないし、わかりにくい状態になっておりますから、少なくともわかりやすい政治を行っていく、まずこういうことを要望しておきたいと思います。
 続いて、実は経済産業の関係でお伺いをしたいと思います。
 私ども民主党として、特に日本の経済、企業関係の中心は中小企業である、こんな観点から、それぞれ議員にお願いをして、昨年の十一月から十二月について、五百十七社についての聞き取り、アンケート調査をさせていただきました。その中で一番多くの皆さん方が困っておられたのは、やはり貸し渋り、貸しはがし、これが八五%、こういう実態であります。
 そして、そういう中で一番驚くべき数字が出たのは、皆さんのお手元にもお配りしておりますけれども、このアンケートの中で、知人あるいは友人やそれぞれの関係者に借金による自殺という問題を一つアンケートの中に入れさせていただきましたが、三〇%の人たちは、何らかの形で自殺をされた人たちを知っている、こういうことであります。それは、どちらかというと、今の借金を苦にしているということであります。こういうことを考えたら、これはやはり政治の責任は重いんじゃないかな、こんなふうに思っております。特に、業種的には、卸売、建設業、流通、製造業という、こんな順番になっております。
 こういう一連のことを含めながら、これを経産省として、前回も私は申し上げました、やはり政府系金融機関で個人保証の問題も、第三者保証、特に外国の例を挙げながら、第三者保証というものは今やめるべきじゃないか。そのことを、少なくともこのデータから見ても、あるいはまた今の環境から見ても、私は、経済産業大臣がそのことを発信することによって政府系金融機関がこれに対応し、そして一般の金融機関もそれに準じて行えるような形になっていけば、その対策はできるんだろうと思いますが、いかがですか。
平沼国務大臣 田中先生にお答えさせていただきます。
 御党が五百十七社の分析を行われまして、その結果を私ども非常に重く受けとめさせていただいています。私も地元に帰りますと、後援会の中の中小企業者で非常に前途を嘱望されていた若手の経営者が自殺をする、こういうことも現実にありまして、私は、お示しいただいた三〇%というのは、これは決して間違ったデータではない、こういうふうに認識をさせていただいています。
 第三者保証に関するお話でございますけれども、これはもう先生御承知のように、政府系金融機関の中の中小企業金融公庫と商工中金では第三者保証は徴求をしていない、これが一応原則に相なっております。
 しかし、若干詳しく申し上げますと、国民生活金融公庫の中では約四割、これは金額、件数ともにでございますけれども、第三者保証人で保全を行っている事実がございます。しかし、国民金融公庫におきましても、中小企業が担保や保証人を出すことが難しくなっている、これはもう今御指摘のとおりでございました。担保や第三者保証人がなくとも、一千万円までは、〇・七%の上乗せ金利をお支払いいただければ、担保とか第三者保証人がなくても融資できる制度をつくっております。
 それから、信用保証制度について若干詳しく申し上げますと、本人以外の第三者から保証を徴求する可能性があるのは八千万円を限度額とする無担保保証制度でありますけれども、本制度は、平成十二年の十二月二十五日に中小企業庁から通達を発出いたしまして、五千万円までは第三者保証は徴求しない、こういうことにさせていただいております。
 したがいまして、全国の信用保証協会で五千万円超の無担保保証を有する中小企業者のうちどの程度の方が第三者保証人を利用しているか、これは定かな統計はまだございませんけれども、五千万円超の無担保保証を利用しているのは中小企業の方々の中で全体の約一割、こういうことでございまして、大半の方は第三者保証人なしに信用保証を御利用いただいている、こういうふうに考えています。
 したがいまして、そういう中で、今厳しい中小企業者に対して、今申し上げたような形で我々としてもでき得る限りのことはさせていただいているわけでございますけれども、状況が非常に厳しいわけでございまして、今の先生の御意見もしっかりと踏まえて、これからいろいろ政策を考えていかなければならない、このように思っております。
田中(慶)委員 いずれにしても、これは中小企業庁も少なくとも前向きにいろいろなことを第三者保証問題でもう検討して、大臣がこれを基本的にやろうとすればできる環境になっているわけですから、やはりそのことを含めてやっていかないと、今の中小企業の問題というのは解決できないと思うんです。
 特に、四人から十人ぐらいのところは、国や地方自治体でいろいろな政策を打ち出していても、なかなかそれに対する理解、あるいはまたそれをしっかりと、現実には手間暇がかかるものですから、せっかく制度をつくっても現実にその制度が普及されていない、アンケートでもこれが実態なんです。
 ですから、そういうことを含めて、やはり一番わかりやすい制度を導入していかないと、いつまでたってもこの中小企業の問題、ましてそれが、先ほどの自殺者の問題も含めながらこういう形でつながっているわけでありますから、これは徹底的に、私は制度の問題も、PRすることあるいはまた今のようなことも含めて、第三者保証制度というのがあれば、少なくともこういう自殺者あるいは倒産あるいはまた夜逃げというものが解消できるだろう、全部じゃなくてもそう思っているので、これについてもう少し前向きに答弁をしていただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 田中先生のおっしゃる意味はよくわかりますし、それから、やはり十人以下あるいは四人以下、こういった零細の企業の方々は、なかなか今るる申し上げた制度があってもそれを御存じない、こういうことがあると思います。
 そういうことで、今までも随分、パンフレット等をつくって、あるいは全国の商工組合の連合会でありますとか商工会議所を通じて、PRはしておりますけれども、しっかりと私ども、PRを徹底させていただいて、皆様方に制度を理解していただくようにさらに努力をしていきたいと思っておりますし、また、先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、御指摘の点はしっかりと踏まえて政策をやっていきたい、このように思っております。
田中(慶)委員 次に、同じような中小企業の問題でお伺いしたいと思います。これは実例を挙げながらやっていこうかなと思っております。
 例えば、やはり今の中小企業の問題で、先ほど貸し渋り、貸しはがしの問題がありました。みんな一生懸命頑張っておりますけれども、今、政府系の金融機関というものはこういうことがあるんですよ。
 具体的に、自主再建を、会社ぐるみ、労使を含めて、あるいはまた今までの取引先や大手以外の金融機関も自主再建に協力しよう、こういうことなんですね。ところが、都市銀行はそれについて断る。そればかりか、この都市銀行は、会社が知らない間に、事前の話もなく工場を競売に付しておるわけであります。そして、債権がこの例は約十億だったわけですけれども、アメリカの債権回収会社に売却をされる、こういうことで、この十億を三億円で買い取り、こういう交渉をされたようであります。しかし、それでも、いろいろな交渉の結果、最終的には、約十億のものが一億ぐらいで再度このアメリカの会社は話し合いに応じたわけであります。
 なぜかというと、やはりこの会社の実態を調べて、高い技術力を持った企業である、社会的にもまだまだ非常に、この企業は自力でも再建できるとか、生き残りはこの企業としての問題があるということを買った方のアメリカの債権会社が言って、日本の銀行はどういう考え方を持っているんだろう、経済政策やあるいは日本の産業に対する考え方を持っていないんじゃないか。すばらしい技術を持っている、だからという形で、これは組合の人たちも含めていろいろなところにお願いをしながら、やっと再建ができた例であります。
 RCCも全部みんなそんなことを含めて、日本の金融機関や日本のそういう組織が全部、十分の一とか、ひどいところは三十分の一で外国の債権会社に売られている、初めから三十分の一だったら、そういう話し合いに応じれば再建が十分できるものも外国の債権会社に売られている例がたくさん現実にあるということ。こういうことは、やはり金融指導監督庁としておかしいのではないかと思うし、経済のルールとして、経済産業大臣としてこのことをどういうふうに受けとめたらいいのか、これは実態の例ですから、また次々と実例を申し上げますけれども、どのように考えられるのか、お伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 金融機関の関係は竹中大臣からお答えをいただくといたしまして、確かに、技術力があって能力のあるそういった中小企業が整理の対象になる、こういう事例は私は御指摘のとおりあると思っています。
 これは経済財政諮問会議の場でも、実は経済団体の代表の民間の議員であるトヨタ自動車の奥田会長さんから、技術力のあるそういったところに全然金融機関から融資が行っていない、これは一体どういうことなんだ、自分はテレビ番組を見てそういう問題意識を持った、こういう形でちょっと議論がありました。その中で、私は一つの意見として申し上げたのは、今までの日本の金融機関というのは、どちらかというとそういう技術力というよりも担保中心主義で、そして技術力の評価だとか事業の計画の評価というものが乏しかった、そういう形で、能力があって技術力のあるそういった中小企業が、例えば外資に買われてしまう、あるいは倒産のやむなきに至る、こういうことになっているんじゃないか。私はそういう一つの問題点を指摘させていただいたことを鮮明に記憶しています。
 したがいまして、やはり今厳しいこの金融情勢の中で、そういう事例があるということは私は甚だ遺憾だと思っておりまして、私どもとしては政府系金融機関の中でそういったところを少しでも手助けをしなければならないという形で、さきの臨時国会で中小企業信用保険法を改正させていただいて、そして、今全国に六百七十八の金融機関がございますけれども、とりあえずは四百三十三を指定させていただいて、そこもセーフティーネットの対象にさせていただく、こういうこともさせていただきました。それから、これは補正予算でお願いをいたしましたけれども、例えば、今返済にお困りの中小零細企業に対しては、新たな借りかえ制度というのをつくりまして、そして、一生懸命頑張っておられる方々に、一年で返済しなければいけないのを五年というような形で月々の返済を軽減する、こういうこともさせていただいておりますし、また事業計画に着目をして、そして無担保無保証、本人保証なし、そういうふうなこともいろいろやらせていただいています。
 そういったことで、我々は、御指摘の点は確かにあるわけでありますから、そういう中ででき得る限り経済産業省として対応をしていきたい、こういうふうに思っております。
竹中国務大臣 委員御指摘の個別の事例というのは、詳細ちょっとわからない面もございますのですが、基本的には、銀行に関して言うならば、私はやはり委員御指摘のあったように、日本の銀行、金融機関に大いにさらに変化していただかなければ困るというふうに思っております。
 一般論としてですけれども、日本の銀行は二つの点で変わっていただかなければいけないし、ようやくでありますけれども、その方向にはなりつつあるのかなというふうに思っております。
 よく中小企業で、やる気と能力のある中小企業にというふうに言葉を使いますが、実はこのことはまさに金融機関にも当てはまるわけで、きちっとした中小企業に対して、そこを育てていくというのが結局のところ銀行の利益になるはずなわけでありますから、そういうやはりしっかりとしたマインド、まさにやる気を金融機関に発揮してもらわなきゃいけない。
 もう一つは、先ほど、外資がちゃんと買っていくのに日本のところはうまく対応できないのかと。これはまさにやる気と能力の能力の問題であろうかと思います。
 そういう意味では、最近の銀行は、ようやくではありますけれども、そういった中小企業に対する専担部門を設けたり、ないしは、不良債権の消化というのは大変難しいわけですけれども、そこに外国の銀行のノウハウを活用しながら自分のところでしっかりとやろうというような仕組みをつくったりということでありますので、引き続き我々としても、強力に銀行のやる気と能力の強化を要請していきたいというふうに思っております。
田中(慶)委員 貸し渋り、貸しはがしという問題は、まず大臣の行政指導にあると思うんです。なぜかというと、貸したくても検査マニュアルやBIS規制、そういうもので貸せないんです、こういうことなんですよ。私は、きょうの質問に際して、信金、信組の理事長さん、会長さんに三人ほど会ってきたんですけれども、そういうふうに言われております。
 ましてや、どうですか、去年だけでも、去年の中小企業向けの融資が目標に対して九兆円も減っているんですよ。あなたが言っていることをやっていたら、こんなことにならないでしょう。まして全部倒産して、いろいろなことを含めて、次から次とBIS規制で、検査で厳しいから貸したくても貸せないんだ、こんなことを言われているんですよ。あなた、言っていることと現実にやっていること、違うんじゃないですか。答弁ください。
竹中国務大臣 これは何度か答弁をさせていただいたんでございますけれども、マニュアルそのものは、これはリスク管理、信用リスクの管理のものでありまして、基本的には、中小企業、特に零細企業に関しては実態で判断するということを我々も徹底して指導しているつもりであります。そのための周知徹底の努力も行っているつもりであります。
 現実問題として、公的資金を受け入れたところが、中小企業の貸し出しの目標を達成しないで、しかも大幅にこれを下回っている、これはやはり見過ごせない問題であるというふうに私も強く思っております。それを受けて、まだ期の途中でもあるにもかかわらず、御承知のように初めて業務改善の命令を発出いたしました。それに基づいて、厳しく我々もその後の事業のフォローをしていくつもりであります。
 とにかく、中小企業に対する金融というのは大変重要でありますので、その点抜かりのないように、しっかりと引き続き見ていきたいというふうに思っております。
田中(慶)委員 あなたが厳しく厳しくと言うと、逆に検査やその他の方が厳しくなって、現実には貸し渋り、貸しはがしにつながっていくんですよ。あなたの厳しくというものが、やはりあなたは学者ですからペーパーで、頭で考えるからそうなっているんですけれども、銀行の現場あるいは中小企業の現場というのはそうじゃない。やはりそのことを含めて、しっかりとしないとだめだろう。
 あなたは、この前、悪いけれども、あなたには少なくともペーパードライバーだと申し上げて大変失礼なことを言いましたけれども、現実に実態と合っていないわけですから、そういうことを含めてちゃんとしてもらいたい。まして、期半ばだけでもうということじゃなく、本当にそれぞれの生きた指導というものをやっていかないと、日本の経済はあなたによって逆におかしくなってしまう。そのぐらい、あなたは今注目されているんですから。
 いいですか、今の不景気やこの今の実態はどうしたら一番特効薬があるか、竹中さんがやめることが一番特効薬、こんなことまで言われているんですからね。そのことを、やめるつもりだったら何でもできるでしょうから、しっかりとやってほしい。いや、本当ですよ。そのぐらい言われているんですから。答弁ください。
竹中国務大臣 しっかりとやれということでございますから、ぜひともしっかりとやらせていただきたいと思います。
田中(慶)委員 しっかりの意味が違わないようにしてください。
 次に、今、和議の問題もやはり同じような形で、現実には、七十年以上続いた企業が、すばらしい技術やいろいろなことで大変評価をされているわけでありますけれども、この企業の存続に厳しさがあって和議の申し立てを行った。ところが、これも各金融機関がそれを認めていない。こういうことで、最終的には、金融機関によって裁判所が工場や建物の売却を開始された、こういうことであります。
 ところが、これも同じような形で、RCCが企業に対していろいろなことを含めながら努力をされているのではなくして、むしろアメリカの債権買い取り会社にそのまま売ってしまう。こういうことで、何か日本のRCCというものはアメリカに日本の企業を売るためにあるのかなと思うぐらいに大変、日本の経済や日本の産業のことを考えていない、これが非常に最近の例として挙げられているわけでありますけれども、これらについてどう認識され、どう対応しているのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 和議のお話でございますけれども、和議条件が可決、認可されて、それに従って弁済等の履行がなされている途上においては、例えば金融機関であれRCCであれ、当該債権がどのように移動して売却されたりしましても、その条件に従って債務者より弁済を受ける、これはもう当然のことであろうかと思います。
 ちなみに、和議法は二〇〇〇年の三月をもって廃止されておりますので、今、別の法律体系にはなっておりますけれども、委員のお尋ねは、その後、RCCが総じてその後の再建をきちっとできているのかということであろうかと思います。
 RCCについては、その再建部門の機能を強化するということを引き続き行っておりまして、それに関しては、これはRCCに行くのは破綻懸念先でありますので、なかなか再建が難しいということもありますが、それでもようやく実績は上がりつつあるのではないかなというふうに思っております。この再建のノウハウにつきましても、RCCには次第に蓄積されているというふうに思っておりまして、再建するための学校を開いたり、再建のためのいろいろな関連事業も行いつつあります。
 RCCに関しては、これはやはり特に中小企業についての再建について大変重要な役割を担っておりますので、そのような機能が発揮できるように引き続きしっかりと指導したいし、そのように努力をまたしてもらいたいというふうに思っております。
平沼国務大臣 RCCの関連でちょっと答弁をさせていただきます。
 創業三十年というのをしにせ、こう言うわけでございますけれども、その三十年以上の倒産というのが、先生御承知のように非常に目立ってきておりまして、大体、中小企業の倒産の二割以上を占める、こういう状況になっています。
 そこで、本当にしにせというのは、地域の文化を担い、地域の経済の原動力を担ってくれているところでございますから、私どもとしては、RCCの中にも、再建可能性のあるそういうものに対しては、これも昨年改正させていただきました中小企業信用保険法で、セーフティーネットの対象にさせていただきました。
 また、今回、いわゆるRCCの中でも、これまた能力とやる気があるところは、私どもとしてはこれは融資の対象にしよう、こういう形で取り組んだところでございまして、私どもとしては、できる限りそういった政策の金融を通じて、こういう伝統ある中小企業者に対しては努力をしていきたい、こういうふうに思っています。
田中(慶)委員 いずれにしても、三十年以上、多くの実績を持った企業が大変厳しい環境にあり、まして、RCCに基づいて企業再建しようとしても、難しい環境に逆にされてしまう、これが実態なんです。
 ですから、竹中さんに、大変申しわけないけれども、あなたが実態をちゃんと調べて指導してほしいと言ったのはそういうことなんです。少なくとも、長い間続いた企業活動が、この倒産の中で三十年以上のものが今二〇%以上ということですけれども、大変大きいですよ。そのことが日本のこれからの経済活動にどれだけ影響しているのか、こういうことであります。
 ですから、そのことは、やはり私はある面では政治の責任である、このように思っておりますので、何か人ごとみたいに言っていたのではこれは直らぬと思いますよ、本当に。だから、そのぐらい、この問題については深刻な状態になってきておりますから、人ごとじゃなく、ちゃんとしてほしい、これは要望しておきます。
 次に、これは厚生労働大臣にお聞きしたいのですが、今、経営譲渡という形で営業譲渡がされるわけでありますけれども、営業譲渡というのは、御承知のように、雇用契約そのものが、ある面では法律的に雇用契約を含む権利義務の問題で少なくとも営業譲渡そのものが、従来の会社分割やあるいはまた新会社に対する合併の問題とは別に採用されるわけでありまして、この営業譲渡によって失業者が非常に最近は多い。ある大手の企業がやはり営業譲渡されたために三分の一の従業員になってしまう。しかしこれは法的根拠は、ある面では許されているわけであります。
 こういうことも含めながら、今、一方においては失業者対策をしている等々含めながら、営業譲渡とこの失業対策の問題、これは政府が大きな方針を明確にすることによって改善ができるのだろうと思いますけれども、その辺についてお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今、田中議員から御指摘をいただきました営業譲渡の際の労働契約の問題等につきまして、結論から言いますと、今年度中にひとつここを明確な指針を出そうというので、今やっている真っ最中でございます。間もなく結論を出させていただきたいというふうに思っております。
 一番大事なことは、ここに働いております個別の労働者の同意を必要とするということだろうというふうに思っておりまして、特定の承継が行われるそのときの営業譲渡の法的な性格というものを踏まえて、そして私たちも結論を出したいというふうに思っている次第でございます。早く結論を出したいと思っているところでございます。
田中(慶)委員 大分時間も押し迫っておりますけれども、次、坂口大臣、雇用保険の値上げをされたわけでありますけれども、そういう一連の中で、先般来、我が党の長妻さんからも指摘をされました。保養施設やあるいは関連する施設の中で、勤労者福祉の関係のものが福祉施設として二千七十カ所、独法を含めて、これを今売却されておりますけれども、現実問題として、この施設は今までかかった費用は約四千九百億、そして今回、これが全部売れたとしても恐らく四百億足らず、そうすると、約四千億ほどの損失が出るわけであります。これはあくまでも雇用保険という形で掛けたお金、労使で本当に汗を流して掛けたお金がこのように水泡に帰してしまうわけであります。こういう問題を含めて、どのように対応されているのか。あるいは、事業団から機構に変わって、そして平均賃金が八百六十万円、職員が四千六百人もまだおられる、こういうことであります。
 こういう一連のことを含めながら、この事業団からあるいは開発機構に変わっても、中身は何ら意味がない。そればかりか、この約四千億の損失は、雇用保険に換算すると、一人九十万円とすれば、四十二万人分の失業保険がむだになったことになる。こういう一連のことを考えても、しかし、それに対する責任は何一つとっていない、こういう現実であります。
 まだまだこういう一連のことが次々と、この施設の一覧表の中で、非常に遍在する施設であって、そしてそれが今のような形で無造作に処分をされる。ひどいのは、大体三千万で新築されたものが千五十円で売られる。千五十円ですよ。いや、本当ですよ。それから、売った一覧表がありますけれども、千五十円、あるいは一万五百円とか、こういうことが次々と売られた中で出ているんです。これは本当に雇用保険で掛けた、そしてつくったものが、こういう形で千五十円で売られる根拠なんというのはさっぱりわからないし、あるいはまた、こういう一連のことを含めても大変なことだと私は思っております。
 独法という形の中で、確かに採算性の問題があるんだろうと思いますけれども、しかし、こういうことを含めて、別に大臣に責任あると思うわけじゃないです、これはもう長いこと続いているわけです。ですけれども、これはやはり今の特殊法人、そこに問題があるわけですから、この特殊法人の改革をしない限りいつまでたっても、大臣が一生懸命何かしようとしていても、逆にこういう問題が次々と特殊法人の中には出てきているということ、このことを大臣はどうお考えですか。
坂口国務大臣 この雇用保険につきましては、御承知のとおり、普通の雇用保険と、それから雇用保険三事業の方と両方あるわけでございますが、今回のこの施設等の問題は雇用保険三事業の方の問題でございまして、そして平成十七年度末までにすべてこの施設等は決着をつける、こういうことはやらないようにしよう、こういうふうに決定されているところでございまして、今鋭意それをそれぞれ決着をつけているところでございます。
 御承知のように、これを建てますときにはかなりな、それなりの金額がかかったことも事実でございますが、土地の方は、これはそれぞれの地方自治体のものをお借りして、その上につくっているわけでございます。
 今、何年かの歳月がたちまして、それを売却しようとしますときには、かなり使ったわけでございますから、その値打ちもかなり下がってきている。そして、その値打ちは下がってきておりますが、それが引き取りをしていただけないということになりますと、そこを取り壊しして地方自治体にお返しをしなきゃならないといったようなことになるわけでございますので、そこは、地方自治体がお引き受けをいただくということになりますと、現在の価額を鑑定していただいて、その値段でお渡しをするということにせざるを得ない。
 そして、地方自治体がこれから継続してそこを御使用いただくということになれば、これからもこの掛金をしていただいている皆さん方も御利用いただくことができるわけでありますから、そこはかなり継続が今後もできるものというふうに思っているわけでございます。
 ただ、雇用保険だけで見ますと、御指摘をいただいたような、それはむだ遣いではないかというような御指摘もあるわけでございます。そこは率直に我々も考えなければなりませんし、そのことを生かして今後この雇用保険運営をやらなければならないと思っているところでございます。
田中(慶)委員 時間の関係で、この問題は長妻議員にお譲りしますけれども、やはりそれだけではないです。
 これは、はっきり申し上げて責任問題も含めながらやらなきゃいけないし、こういう形できょうまでの経過というものが調査の中でも明らかになっていること、これは大臣の答弁と、まさしく一般国民感情にすればとんでもないことだと思いますよ。三千万でつくったものが千五十円で売られる、こんなばかなことが現実に行われているということを私は明確に指摘しておきたいと思います。
 時間の関係で、その問題については同僚に譲らせていただきます。
 次に、自動車のNOx・PM法についてお伺いをします。
 これが今度施行されることになったわけでありますけれども、これに対する中小企業の事業者は大変な痛手であります。新しい人たちはそれはそれなりに納得するわけでありますけれども、このPM法によって、その業をやめざるを得ない中小企業の運送会社は恐らく約四千社、あるいは個人経営者を含むと約一万社といいますか、そのぐらいの影響が出てきております。そういう中で、失業者は最低約二万人出ると言われている。
 それで、政府は、片方はセーフティーネットを含めて中小企業に対するいろいろなことを努力し、一方においては、こちらでこのように、はっきり申し上げて失業を促進するようなことをされている、ちょっとちぐはぐだろうと思います。
 もう一つは、やはり何でもそうでありますけれども、片方で省庁間の連携ミスが、環境省とそれぞれの経済省なり国土交通省なり、全体の連携ミスでこうなっているんだろうと思います。
 まして、これから少なくとも新しく対応する、例えばこの部品をつけようとするとトラックで八十万もかかる、こんな形で、現実にはつけ切れない。まして、その性能は、まだ時半ばということでありますから、結果的に今のNOx・PM法に十分検討し切れていない。ですから、法律だけが先行している。
 まして、そればかりじゃありません。国と地方自治体、ギャップがあるわけです。ということは、特に東京、神奈川、千葉、埼玉というところは上乗せ基準をつけておりますから、もういや応なし、こういう形で一刀両断にされているわけであります。
 それぞれ関係省庁がこれらに対して、私は、時限立法で、もう少し再検討しながら、失業対策やあらゆることを含めてやっていく必要があるだろう、このように思いますけれども、それぞれの担当、失業の問題や景気の問題等々含めて、あるいは延期の問題を含めて十分対応しているのかどうか、答弁をいただきたいと思います。
鈴木国務大臣 自動車を原因といたします大気環境汚染でございますけれども、これにつきましては、自動車の排気ガス自体を規制するいわゆる単体規制という問題、それから低公害車の導入、こういったことでやっているわけでありますが、しかし、大都市圏におきましては大気汚染の状況は大変厳しいものがございます。
 大都市部において、二酸化窒素、それから粒子状物質、これの環境基準をクリアするためには、環境省としては、NOx・PM法に基づく車種規制というものの導入が不可欠である、そのように考えております。
 それで、車種規制の対象となるトラックの台数でありますけれども、平成十四年十月の段階、これは車種規制の施行時点でありますけれども、全国で約三百十万台ございます。このうち排出基準に適合するものが九十万台ございますので、その差であります二百二十万台が原則として九年たった時点で使用できなくなる、こういうことであります。
 これに対して、大変事業者にも影響があるという御指摘でございますけれども、この車種規制の結果として、車が使用できなくなる時期の設定、これが一番影響があると思うのでありますが、これにつきましては、関係団体の意見も幅広くお聞きした上で、周知期間あるいは準備期間というようなものを設けまして、既に期限が到来している車などにつきましても最長で三・五年にわたります猶予期間を設定しておりまして、中小企業を含めた事業者ができるだけ対応しやすいよう十分な配慮をしているつもりであります。
 あわせて、車の買いかえ、事業者の負担軽減のための自動車取得税の軽減などの税制上の優遇措置、あるいは政府系金融機関による低利融資の措置、こういうものを講じているところでございますが、こうした事業者に対するこういう十分な配慮、これにつきましては今後とも各省と連携を図って、NOx・PM法の円滑な施行に努めてまいりたいと思っております。
扇国務大臣 今、田中議員が御質問になりましたように、重ならないように答弁させていただきたいと思います。
 国土交通省としては、少なくとも、今おっしゃったように、十トン、そういうものに対してのDPFの装置では約百万円程度、そしてなおかつ酸化触媒のこれは装置の大きさによりますけれども、四十万円程度、これはおっしゃったとおりでございます。国土交通省としては三つ対策をとっております。
 まずその一つは、少なくとも、最新の排出ガスの規制適合車に対しての代替促進に関します優遇税制。これは、自動車の取得税について、本来は三%のものを〇・七%から一・八%にこれを軽減しております。それから、低PM認定車に対する優遇税制、これも、自動車の取得に関しては本来三%の税制を一・五%に軽減しております。それがまず第一でございます。
 二つ目には、中小企業への公庫の低利融資。これはあっせんしております。
 三つ目には、低公害車に係る補助、あるいは特定財源を活用したDPFのディーゼル微粒子の除去装置に関する補助、これもいたしておりますので、少なくとも、NOxとPM法に関しては、国土交通省として、今、他省庁と重ならないように、我が省としてはそれだけの対策をとっております。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 中小企業の低利融資あるいは税制上の措置については既にお答えがございました。
 御指摘のように、やはり関係省庁がしっかりと連携をとって、そして中小企業の運送業者の皆様方が円滑に法律に適合できるように、最大限私どもは努力をしていかなきゃいけない、このように思っております。
田中(慶)委員 少なくとも、新車を購入する段階でのいろいろな優遇措置、税制措置、いろいろあるわけですけれども、今の経済環境やいろいろなことを含めて、新車を購入するような状態になっていない。
 もう一つは、自動車がそれぞれ性能が伸びて、もう平均して十年以上使えるような問題でありますから、やはり経過措置として、こういう一連のことはもう少しきめ細かく対応すべきだろうと思う、はっきり申し上げて。結果的に、それが失業対策とかあらゆる倒産防止とか、こういうことにつながってくるんですから。
 今、一方的にペーパーの上で述べられている新車購入という前提じゃなくして、もう大体約百三十万ぐらいの対象の車がある。そして、それぞれがいろいろな対応をしている。国のいろいろな形での対応も、それは十分わかっておりますけれども、それではもう現実には救うことはできない。結果として二万人ぐらいの失業者が出るということでありますから、十分そういうことを含めて、これから省庁間の連携をとって、これは大変厳しいことでありますから、このことに十分対応できるようにしていただきたいということを要望して、終わります。
藤井委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。
 次に、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 私、本日、まず初めにシベリア抑留者について質問させていただこうと考えておったんですが、官房長官が十時十五分以降にならないと記者会見からお帰りになれないということですので、順番を変えまして、まず、公務員制度改革について質問をさせていただきます。
 本日、お手元の要旨にありますように、1、2がいわゆる公務員の天下り問題、退職公務員の再就職についての質問であります。
 この問題に対しましては、昨年、平成十四年十一月十一日と十一月十三日に、我が衆議院の特殊法人等改革に関する特別委員会におきまして、山井議員が質問されているところでございます。そこで、どうも石原大臣と人事院の言っていることが食い違っている。これは、食い違っているのは構わないみたいなんですけれども、その議論が、特殊法人等、独立行政法人と営利法人の議論を混同した議論がされていたように思いまして、このお配りさせていただいている資料におきましては、その発言を、特殊法人等と営利法人で分けて記載させていただいております。そういう趣旨で、1、2と分けて質問を、議論をさせていただきたいと考えております。
 まず第一、退職公務員の特殊法人、認可法人、独立行政法人等への再就職について質問をいたします。
 まず、中島人事院総裁にお伺いいたします。この特殊法人等に対する再就職について、人事院はどのようにお考えでしょうか。
中島政府特別補佐人 現在、民間企業に対する天下りの承認権は人事院にございます。そのねらいは、行政の中立公正性というものを確保しようということでそういうふうになっておりますが、私たちは、それを内閣に移すべきだ、若干デメリットがございますけれども、内閣に移すべきだ、そして、特殊法人、認可法人等に対する再就職も内閣が一括管理すべきであると。
 なぜそういうふうに私たちが申し上げているかといいますと、そのことによりましてセクショナリズム是正のための大きな一歩を踏み出すことができるだろうというふうに我々はねらったわけでございます。そのメリットというのは、先ほど申し上げましたデメリットを補ってなお余りあるというふうに私たちは考えております。
 したがいまして、この再就職の問題について議論するときには、セクショナリズムの是正というものもねらってひとつ議論をしていただきたいというふうに考えております。
中村(哲)委員 もう少し詳しくお聞きしたいんですが、内閣に一括管理するようにすべきだというふうなお話をされていましたけれども、その具体的内容というのは、十一月十一日の質問、十一月十三日の質問によってもそれ以上のことは述べられていなかったんです。
 だから、改めて人事院として、内閣で一括管理すべきというのは、具体的内容としてはどういうことをお考えになられているのか、お聞かせください。
中島政府特別補佐人 内閣が一括管理するというときに、内閣官房にするのか、内閣府にするのかというふうな議論もございますし、また、内閣がどこまで承認権を行使するのかということの議論もございます。そういう議論は、大方針、結局、すべての再就職を内閣が一括管理するということが決まった後に詰めればいい議論だというふうに私は考えております。
中村(哲)委員 もう少し具体的なお話をお聞きしたいなとは思っているんですが、それでは、具体的に話をさせていただきたいのは、昨年十一月十三日の石原大臣の発言についての人事院のお考えをお聞きしたいと思います。
 特殊法人に対する天下りに対しては人事院がチェックをすればいいのではないかというのが、そのときの山井委員の主張でした。それに対して、中島人事院総裁は、内閣でやっていただいた方がいいとお答えになりました。その後、石原大臣はこのようにおっしゃっているんですね。「官僚の方が特殊法人並びに今度の独立行政法人に移るということでございまして、この件につきましては、人事院はアンタッチャブルでありますし、これからも関与したくないと総裁が申しておりました。その理由は簡単でございまして、人事院も天下っているんですね。」というふうにおっしゃっているんです。
 人事院が特殊法人等に天下っているから、人事院一括管理、人事院では管理はできない、そういう趣旨で総裁はおっしゃったんでしょうか。
中島政府特別補佐人 全くそういうことは関係ございません。
中村(哲)委員 ということは、石原大臣がこのようにおっしゃったことに関しては、人事院としてはどのようにお感じになっておられますか。
中島政府特別補佐人 私は、石原大臣がどういうお考えでそういうふうにおっしゃったかということはよくわかりませんけれども、私たちの職員も公益法人等に再就職はいたしております。それは現在の制度のもとで許されるぎりぎりの再就職だというふうに考えておりますが、そのことが特殊法人とか公益法人等の改革に仮に妨げになるということでございましたら、そのお決めになった方針に従いまして、私たちは御遠慮申し上げたいというふうに思います。
中村(哲)委員 その大方針として、仮にですよ、政治の現場で、人事院でこれをしてもらいたいということになれば、人事院はやれる覚悟はありますか。
中島政府特別補佐人 先ほど申し上げましたように、内閣の一括管理が一番いいと思いますけれども、政治の場で、人事院が中立機関として担当すべきであるということになりましたら、当然私たちは全力を挙げて取り組むことにいたしたいというふうに思います。
中村(哲)委員 人事院は全力で取り組む、政治の現場でそうなれば人事院は取り組むとおっしゃっています。それではこれ、石原大臣が十一月十三日におっしゃっていた「その理由は簡単でございまして、人事院も天下っているんですね。」という理由とは全く合わないわけですよ。
 石原大臣、この件に関してはどういうふうに今御説明いただけますか。
石原国務大臣 もうこれは委員も御承知のことだと思いますけれども、特殊法人等々は営利企業への再就職に関する現行の規制の対象外ですけれども、国民の皆様方は、営利企業に行こうが、特殊法人の総裁に行こうが、公益法人の理事長に行こうが、天下りという大きなカテゴリーの中で見ているという意味でございます。
中村(哲)委員 委員長、私、今の御答弁は答弁になっていないと思うんですね。これはどのように聞いたらいいんでしょうか。
石原国務大臣 実は、営利企業への天下りの問題についてはこれまでもいろいろな取り組みというものがなされてきたんですけれども、どちらかといえば、特殊法人あるいは公益法人への天下り、ここ数年の議論の中で、わたりという言葉、私も初めて聞いたわけですけれども、二年ずつぐらい、理事長、社長あるいは総裁をぽんぽんぽんとやって退職金を取る、そういうものにインプットされて公益法人、特殊法人があるということで、一昨年、十三年の末ですけれども、公務員制度改革という大綱を決定したわけです。
 そこでやはり、国民の皆さん方の、天下り、特に特殊法人に対する天下りの最大の問題意識というものは、仕事の割に退職金が多いんじゃないかとか、給与が高いんじゃないか、そういうことがあったわけでございます。ですから、そういうものを、退職金は三割削減する、これも前回同じような議論がございまして、三割じゃ少ない、じゃ五割ならいいのかというような議論もございましたけれども、行政改革、この天下りに対する批判に対しては、いきなりゴールには行き着かないわけですけれども、ステップを積んでいって、国民の皆様方の批判にたえる。役員の給与も高いということでありますので、これも削減する。
 あるいは、退職公務員の法人及び子会社への役員の就任状況、こういうものも、実は公にされていなかったわけですけれども、公にしていく。さらに、先週の金曜日でございますけれども、七日に法案を提出させていただきましたけれども、役員出向制というものを入れることによって退職金の二重取りといったような批判にたえる。
 あるいは、公益法人改革に関して申しますと、公務員の方々が天下っている、一体どこまで勤めた方がどこの公益法人のどういうところに勤めているのか、こういうことが全然公にされていなかったわけですけれども、こういうものも公にしていこう、すなわち情報を公開する。あるいは、国と特に密接な関係にある公益法人については、さっきも言いましたように、自分が役人のときよりも高くならないということを指導する、あるいはこれに関する規定を公表するなどなど、初めてこういう抜本改革、国民の皆様方の御批判であるところの天下りの、特殊法人あるいは公益法人への天下りに対する抜本改革というものを実は示させていただいたわけであります。
 結果といたしまして、権限、役人の方がそういうところに行く理由は、やはり役人のときに培った権限とか、あるいは後輩がいるとか、そういうものを持って再就職するわけですけれども、そういうものを是正していくということに実は取り組んでいるわけであります。
 先ほども言いましたように、いろいろな批判が出てきますし、退職金も三割削減しました、給与も一割削減しましたけれども、決してこれはゴールではない。批判に謙虚に耳を傾け、鋭意この問題をクリアにしていかなければならない。
 しかし、忘れてならないことは、やはり職業選択の自由ということも忘れてはなりませんし、過度に一遍に再就職することによって、一年間違うだけによって条件が余りにも変わってしまう、こういうものにもやはり配慮していくということが政治として私は必要だと考えております。
中村(哲)委員 マスコミの皆さん、政策新人類と呼ばれた石原大臣の今の姿がこのような状況でございます。聞いたことに真っ正面に答えようとしない、役人が書いたペーパーをそのまま読むだけ、これでは政治主導の実質的な議論なんかできるはずがありません。私は、この質問取り、問題になっている中でもかなり丁寧に質問取りに答えましたよ。誠意を持って答弁に臨むというのが政府のあるべき姿なんじゃないですか。
 ちゃんと聞き取れなかったようですから、もう一度議事録から読んで、お話をさせていただきましょう。
 石原大臣は、こう言っているんですよ。「官僚の方が特殊法人並びに今度の独立行政法人に移るということでございまして、この件につきましては、人事院はアンタッチャブルでありますし、これからも関与したくないと総裁が申しておりました。その理由は簡単でございまして、人事院も天下っているんですね。」こうおっしゃっているんです。
 そして、私は、先ほど人事院総裁にお聞きしました。天下っているから関与できないのか、もし政治の大きな方針で人事院が関与すべきだということになったら、人事院はできますか、そうお聞きしたんです。
 中島人事院総裁、繰り返して申しわけございませんけれども、石原大臣に人事院総裁が石原大臣がおっしゃっていたような意味で言ったのかどうか、もう一度その点をお聞かせください。
中島政府特別補佐人 それは私たちの考え方の根拠にはなっておりません。関係ございません。
中村(哲)委員 この点について、石原大臣、この十一月十三日の発言、撤回されますか。いかがですか。
石原国務大臣 私は、そのように議論の中で感じたので、感じたままを政治家の言葉で申し述べたわけでございます。
中村(哲)委員 人事院総裁、今の石原大臣の答弁に対してはどのようにお感じになりますか。石原大臣も感じたとおっしゃっていますから、人事院はどうお感じになりましたか。
中島政府特別補佐人 これは、石原大臣がそのようにお感じになったということについて私が感じを申し上げるというのはちょっと不正確になりますので、石原大臣がそのようにお感じになったというのなら、それをそのままお聞きするということだと思います。
中村(哲)委員 これ、石原大臣の感じ方というのが非常に問題なんですよ。
 というのは、社会福祉事業団という特殊法人の議論をしているときに、天下り問題を山井議員が指摘しているんですよ。そのときに石原大臣がこのようにお答えされているんですよ。「ただいま御指摘をされておりました問題は現行制度の中で起こった問題であって、大変けしからぬことだと思います。ですから、営利企業への再就職を厳しくするために、人事院がこのようなことをやっていましたので、これだけ批判が出るのに何ら有効な手だてを打てませんので、政府として腰を上げたということでございます。」このようにおっしゃっているんです。
 しかし、特殊法人に関しては人事院はアンタッチャブルなんです。これは石原大臣おっしゃっているとおりです。ここは、何で人事院がアンタッチャブルだという石原大臣の答弁が出てきたかというと、山井議員が、違いますよ、今は特殊法人の問題をやっているんですよ、議論をやっているんですよ、営利法人のことを言っているんじゃないですよ、営利法人のことを答弁されても困りますよという趣旨のことを言っているから、後でアンタッチャブル発言が石原大臣、出てくるんですよ。
 感じる、感じて発言する。この国会、いつも論理的に発言するのではなく情緒的になっているという批判がありますよね。質問取りにもきちんと答えているにもかかわらず情緒的な発言をするような大臣では、私たち議論することはできませんよ。
 いかがですか。感想でいいです、お聞かせください。
石原国務大臣 感想はまさに人間の感情でございますので、今の委員の御指摘からいうと、私がそれを述べるのはままならぬということでございますので、控えさせていただきます。
中村(哲)委員 今、感情は答えないということなら、それでは本当に論理的な議論をしましょう。
 特殊法人等への再就職には人事院はアンタッチャブルですね。ということは、どういう意味ですか。
石原国務大臣 この点につきましては、先ほど御答弁申しましたように、現行の規制の対象外になっているということでございます。
中村(哲)委員 現行の制度の対象外になっているということですよね。ということは、昨今の特殊法人や行政法人に対する再就職、つまり天下りへの厳しい批判というのは、それを厳しく取り締まることができなかった各大臣に問題があるということではないですか。
石原国務大臣 先ほども申しましたように、特殊法人あるいは公益法人等々に対する国民の皆様方の天下りに対する批判というものは、いろいろなものがやはりあると思うんですね。退職金が高い、あるいは給与が高い、あるいは、これはいい例かどうかわかりませんけれども、十時ぐらいに来て、新聞を読んで、御飯を食べて、三時ぐらいに帰っちゃう勤務状況。すなわち、その人の能力、仕事に合った給与をもらっているんだか、そのとおりの仕事をしているのかしていないのか、こういうところが実は不明瞭であった、こういうものをやはり公にしていく必要があるということで、今回改革に取り組ませていただいているわけでございます。
中村(哲)委員 質問に正面から答えないようであれば、もう一度、それでは聞き方を変えましょう。
 今問題になっているのは、大臣承認制を維持するのか、それとも内閣一括管理をすべきなのかということでございます。私たち民主党初め野党は、人事院で一括管理をすべきなのではないかというような法案も提出させていただきました。しかし、次善の策として、内閣一括管理でもいいでしょう。人事院は内閣一括管理がいいと言っている。しかし、今の政府の方針では、そうではない、大臣承認制にすべきなんだと。だからこそ、私は先ほどの質問で、大臣承認制というところに問題があるのではないですかということをお聞きしたわけです。
 その点に限って、またお聞きいたします。いかがですか、石原大臣。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
石原国務大臣 この点につきましては、当委員会あるいは内閣委員会、また記者の方々からの質問から、また世間の評判から、さまざまな意見が出ているということは十分に認識をしております。
 私、年頭の記者会見でも申したんですが、よりよいものがあるならば柔軟に考えていかなければならないし、今回の公務員制度改革は、公務員の皆様方が皆様方自身の手で皆様方のためにやる改革であってはならない、こういうふうに考えております。
 そして、誤解がありますのは、行為規範を重ねるとか、内閣が総合調整機能を持って当たるとか、二重三重になっておりますけれども、十分に説明が至っていないという点も認識をしております。ですから、内閣として、総合調整機能というものを持っているわけでございますので、こういうものを十分に機能させる方法というものをこれからも真剣に検討させていただいているところでございます。
中村(哲)委員 つまり、総合調整機能があるから内閣一括管理しているのと同じことだということをおっしゃっているわけですか。
石原国務大臣 大臣承認制の運用についても、内閣官房の総合調整機能がいかに機能することができるのかできないのか、また、どうしたらよりよいものになるのかということを、今、鋭意検討させていただいているところでございます。
中村(哲)委員 人事院は、はっきり自分たちの立場を言っているわけですよ。それに対して石原大臣は、検討しているだけ、検討していると言うだけじゃないですか。実質的な議論は国会の現場でできないということになりますよね。そんな不誠実な対応でいいんですか。国会軽視じゃないですか。
 さらに、石原大臣の答弁がいかにいいかげんなのか、今度は営利企業の問題に移らせていただきます。
 石原大臣、今は人事院のチェックが入るわけですよね、営利企業への再就職には。先ほど中島人事院総裁は、人事院のチェックを外すということにはデメリットもあるけれども、内閣に移すべきだ、そこで管理をすべきだというふうにおっしゃっていました。その論点について議論をさせていただきます。
 先日、去年の十一月十一日の質問に対する答弁なんです。石原国務大臣は、「所管大臣は、内閣が定めた承認基準に基づいて、内閣の総合調整のもとに再就職の承認を行う。各大臣がリスクを背負うことによりまして、野方図な天下りというものを是正しようというように、二重にも三重にも厳しくした内容でございます。」こうおっしゃっているんです。これは、先ほど石原大臣がおっしゃった答弁もここにそのまま当てはまりますね。
 それに対して、中島人事院総裁はこのようにお答えになっています。「ちょっと石原大臣の御答弁には誤解があると思います。現在の天下りの法律を読んでいただきますと、各大臣が申請してこられて人事院が審査をしているということでございますので、それぞれの大臣が申請する前にきちんとチェックをなさればふえることはない、そこのところをしっかり認識していただきたいというふうに思います。」こういうようにおっしゃっているんですよ。
 つまり、今現時点でも、各大臣がチェックをして、その後で人事院も基準に基づいてチェックをして、ダブルチェックで営利企業への再就職というのが認められているんです。その人事院のチェックを外すということに今回の政府の方針はなるじゃないですか。だから、ここで石原大臣はかなり論理的に矛盾したことを言っているんですよ。石原大臣、どのようにお考えになりますか。
石原国務大臣 人事院は、これまで公務員の人事制度等々で重要な仕事をしていただいてまいりましたし、これからも重要な仕事をしていっていただきたい。その観点から、悪いことがあれば政府に対して勧告をしていただくように仕組ませていただいております。
中村(哲)委員 人事院総裁、今の御答弁をお聞きになって、人事院総裁はどのようにお考えでしょうか。
中島政府特別補佐人 石原大臣は、総合的というか総括的な答弁をなさったんだというふうに思います。
 現在の制度の仕組みというのは、法律に書いてございますように、人事院が基準を決める、その基準を各省によく御連絡申し上げて、各省はその基準にのっとった審査をしていただいて人事院の方に承認申請される、その上で人事院は行政の公正中立性の確保というような点も含めまして最終的に判断する、そういう仕組みになっておりますので、そこのところを各省にしっかり御認識いただきたいなというふうに思います。
中村(哲)委員 私は、やはり独立した行政機関である人事院の立場というのは尊重しないといけないと思うんですよ。
 しかし、石原大臣は十一月十三日にこのようにお答えになっています。人事院が信用できるかどうかということに対して石原国務大臣は「七十人が十人になるならば信用いたします。」このような、私は人事院にとっては非常に失礼なことをおっしゃっていると思うんですが、石原大臣、どのようにこれはお考えになったんでしょうか。
石原国務大臣 大分前のことでございますので正確には覚えておりませんが、不愉快な思いをいたしましたので、そのようなきついことを言ったのかと存じます。
中村(哲)委員 不愉快に思ったというのは、人事院に対してですか、それとも山井委員に対してですか。
石原国務大臣 私は、中村委員も含めて質問をいただいてくださる先生方に対しては絶えず敬意を持って自分の思っていることを述べておりますので、委員が御指摘になったようなことはなかったと存じます。
中村(哲)委員 人事院に対してだと考えてよろしいんですか。
石原国務大臣 大臣という職責は意外に忙しくて、昨日何を食べたか本当に覚えていないぐらいでございますので、冒頭申しましたように、詳しくは覚えておりません。
中村(哲)委員 人事院総裁に伺います。
 この「七十人が十人になるならば信用いたします。」という御答弁に対しては、現場にいらっしゃってどのような意味で言われたと御記憶されていますか。
中島政府特別補佐人 審査基準というのを、今度の大綱では人事院ではなしに内閣の方でお決めになるということを考えておられるようでございますので、その審査基準というものがそういう厳しい審査基準になるのかなというふうに伺っておりました。
中村(哲)委員 人事院総裁は非常に苦しい答弁をされているわけですよ。それは何でかというと、人事院と内閣はある意味共同してこの天下り問題に取り組まないといけない、だから人事院はばかにされても内閣との信頼関係を崩してはならない、そういった意味で、苦しい答弁しかできないわけですよ。
 石原大臣、きのうの御飯もわからない、確かにそうでしょう、お忙しいんだから。そういうことはそうでしょう。しかし、人事院に対してどのようにお感じになっているのかという基本的な認識を聞いているわけです。議事録に残っていることです。どのように考えて論理的に政策を作成しているのか、それについて私たち国会議員は大臣に質問をしているわけでございます。だからこそ、人事院に対する認識を先ほどからお聞きしているわけでございます。
 人事院に対する考え方、もう一度、一言でいいですから、今どのように考えておられるのか、お聞かせください。
石原国務大臣 先ほど来、人事院に対しての私の見解というものは先ほどもはっきり申し述べさせていただきましたので、つい先ほどのことでございますので、中村委員は覚えていらっしゃると思います。
中村(哲)委員 論理的な話をしているわけです。感情論でそのような議論をしないでください。
 では、先ほどの「七十人が十人になるならば信用いたします。」という人事院に対する発言は、これをどうされますか。撤回されますか。それとも、まずいことを言ったなと思いますか。その認識だけお聞かせください。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
石原国務大臣 先ほど来、人事院がこれまでの人事行政において重大な役目を担ってきましたし、これからも重大な使命を担っていただきたいと人事院に対することをはっきりと申し述べているのに、それを何度も聞かれましたので、先ほどああいう御答弁をさせていただいたわけです。
中村(哲)委員 ということは、この「七十人が十人になるならば」という発言は人事院を批判したものではないということですね。
石原国務大臣 事実を申し述べただけでありまして、そのとき私が何を考え、どう思ったかということは、十一月のことでございますので詳しく覚えていないともう答弁させていただきました。
中村(哲)委員 委員長、こんな議論のやりとりはすごく不毛だと思うんですね。国権の最高機関である国会で、それも予算委員会でこのような質問をする。大臣に対して指導していただけませんか。
藤井委員長 いま一度、石原伸晃国務大臣、御答弁をお願いいたします。
石原国務大臣 委員の御指摘は、多分こういうことを委員が考えているんじゃないか、これは違ったら申しわけないんですけれども。
 私が今行革事務局を所掌している、その中で公務員制度改革をやっている。そして、人事院というものがこれまで公務員の制度設計あるいは人事院勧告等々と重要な役割を担ってきた。もちろん、これも議論になったことですけれども、労働基本権の制約についてもこの人事院の存在というのが非常に大きい。そういうものが、委員の御指摘は、実は今うまく人事院とやっていないんじゃないか、だから私が十一月の議論でいろいろなことを言ったんじゃないか、そういう御質問ではないかと今聞いていて感じたんです。
 これも議論したんですけれども、人事院は内閣が所轄するですか、独立した存在ですよね。ですから、委員も御指摘のように、考え方は違っていいわけです。私が人事院から批判されることもあるし、行革事務局が人事院と議論をする。議論をすれば、意見が違うわけですから、批判することは互いにあって当然ですよね、ある方が当然である。しかし、公務員制度改革は、内閣の総合調整のもとに実は行革事務局というのをつくったわけですね。そして、内閣官房に事務局を設置して、そこには人がいないわけですから、各府省から人が来ている。人事院も、今四十四名のうち十八人来ているわけですね。ですから、まさに内閣全体の取り組みとしてスタートをしておりますし、現在も意見を交わし合っている。
 その中で、先ほど委員は、検討しているというのがけしからぬというわけですけれども、議論を、ディスカッションして検討している最中であります。ですから、違う意見が出てくるということは当然でありますし、公務員制度改革大綱というものは閣議決定したんですね。閣議決定するということは、関係府省庁がそれでいいよと言っているということは当然のことであります。
 そして、今、内閣官房が中心となって、さらに関係府省庁と連絡をとりながら、もちろん人事院も入っておりますけれども、緊密に調整を行いながら、この公務員制度改革大綱が、先ほど申しましたように、公務員の皆さん方が公務員の皆さん方の手によって、先ほど来議論の出ている、天下りしやすくするとか、自分たちの老後はもう早くやめて特殊法人に行って楽するんだとか、そういう批判にたえられるものにしていかなければならないという気持ちを持って今取り組んでいるとぜひ御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 何か、非常に水かけ論みたいな話になってきましたね。
 私は、石原大臣がおっしゃっているように、人事院と内閣がうまくいっていないんじゃないかというようなことを考えているわけではございません。そういう感情論をお話ししているわけではございません。論理的な話として、今見解の違いがある。この間の内閣官房長官の十一月十三日のお話の中でも、立場の違いがあるというのはそれはあっていい、そういうものなんですということをおっしゃっていまして、そこは、私もそれは認識しております。
 しかし、ここでお聞きしたいのは、その違いがどういう理由に基づいているのか、そして、その人事院からの批判、人事院とは考え方が違うということに対する理由づけ、それに対して、内閣の方が実質的にどういった理由で人事院の意見は私たちの考えとは違うのか、その実質的な内容を議論する必要があるということで申しているわけでございます。だから、検討中だから実質的な議論をしたくはないと石原大臣がおっしゃっているのなら、まあ、それはそれで一つの立場としてわかります。
 石原大臣、もう一度お聞きしますけれども、検討中だから、実質的な議論、人事院の批判に対する実質的な理由づけというものには答えないということでよろしいんですか。
石原国務大臣 申しわけございませんが、質問のイシューがちょっとわかりません。
中村(哲)委員 内閣と人事院の見解は今違うわけですよね。そして、人事院の批判に対して内閣はどのようにお答えになるのかとお聞きしたら、石原大臣は、今検討中ですという形式的な理由でお答えになった。しかし、国会の現場ですから、なぜ見解が違うのか、人事院が言っている内閣一括ではなぜだめだとお考えになっているのか、その実質的な理由をお聞かせ願いたい、そのことを申しているわけです。
 質問の趣旨は非常に明確だと思うんですが、委員長、私の言っていること、不明確でしょうか。
石原国務大臣 今のふうに聞いていただくと私も非常によくわかりました。
 先ほどはわかりませんでしたけれども、今委員御指摘になっているのは、すなわち、天下りに関して大臣承認制ということを大綱で言っているが、人事院は内閣が承認すべきであると言っている、ここに見解の相違があるけれども、そこの部分は今検討しているということを私が答弁したけれども、なぜ相違があるのかという御質問に私は聞かせていただきました。
 考え方が違う、そして、そこの部分について議論が一番あったということは先ほども申しましたし、そこでよりよい案があるのであるならば、柔軟に考えていかなければならないとも御答弁をさせていただきまして、なぜ検討中かといいましたら、今委員御指摘の点は、これだけいろいろな方が批判をされ、あるいは、人事院の総裁がこれだけ強く言われ、それなりの理由があるだろう、そういうことを含めて現在検討しているということでございます。
中村(哲)委員 石原大臣、もう公務員制度改革の法案を提出するかどうかというところまで来ているわけですよ。まだ検討中というのはなかなか理屈が通らないんじゃないか、そういう考え方が私はできると思うんです。だからこそ、具体的には、なぜだめなのか、内閣一括管理のどこが悪いのかということを、また、そのよりよい方法というのはどういう方法があるのか、そういうことをもう少し具体的に答えていただきたいわけでございます。
 しかし、もう時間も迫ってまいりましたし、もうちょっと個別的な話をさせていただきたいと思います。
 石原大臣は承認基準をつくるというふうに答弁されております。その承認基準というのは、それではいつまでにつくられるおつもりなんでしょうか。
石原国務大臣 中村委員の質問は非常に具体的で、私も答えやすくなってきたんですけれども、その前のくだりで、なぜ内閣承認制がいけないのか、いいのか。
 私一番最初に考えますのは、私は、公務員制度改革だけをやっている大臣じゃないんですね。行革相なんです。ということは、それだけの承認基準を、内閣官房あるいは内閣府でもいいのですけれども、セクションをつくって判断するには、これは非常なマンパワーが必要になるんですね。公務員を十年間で四分の一減らそうという大きなものがあるわけです。そんな中で、またどこかから人を持ってきたりする。それに一体どれだけの労力がかかるのかというのは、個別の役所のことはやはり個別の役所しかわからないわけであります。
 そういうことを今鋭意検討していて、本当に法案提出時期が迫ってきて申しわけないとは思うのですけれども、現実問題、先ほど申しましたように、公務員の人が公務員の、自分たちのためにやるような改革と言われないものを、すなわち、昭和二十三年に人事院制度ができて、抜本改革をしてこなかったわけですね。ですから、産みの苦しみというものも非常に大きい、こういうふうに御理解をいただきたいと思うのです。
 そして、後段の質問は、内閣の承認基準、どういうふうに、いつつくるのかということですけれども、これも当然、このフレームがまだかっちりしたというか、今、試行錯誤、人事院の皆さんとも相談をしながらやっております。
 承認基準は、私どもとしては、政令で定めさせていただきたい。この三月末までにまとめて、それから先、政令で可及的速やかにお示しをさせていただきたいですし、承認制度の運用については、先ほど来答弁させていただいておりますように、内閣が総合調整機能を、総合調整機能というのは非常にざっくりした言葉ですので、どういうふうに、どういう権限を持って運用するかというところを詳細詰めている最中でございます。
中村(哲)委員 すべて政令で任せていくということですから、この政令の中身をどういうふうにつくっていくのかということを議論しないといけないわけですね。もう一事が万事この調子ですので、また公務員制度改革に関しては改めて質問をさせていただきます。
 それじゃ、次に行きます。官房長官が戻っていらっしゃいましたので、シベリア抑留者の問題についてお聞きいたしたいと思います。
 私は、先日、いわゆる北朝鮮からの脱北者問題について質問をいたしました。生活支援については、拉致被害者に対するものは昨年秋の臨時国会で特別立法ができました。そして、先日の私の質問では、脱北者に対する特別立法が必要なのではないか、検討をされるのが必要なのではないかという話をさせていただきました。それに対して安倍副長官が、個人的な見解だったと思うのですけれども、その検討の必要性についても言及されておりました。
 そこで、私は、この件について考えをめぐらす中で、戦後に発生したいわゆるシベリア抑留者の人たちへの未払い賃金の問題も解決しなければならない問題なのではないかと考えるに至りました。
 この問題については、後刻質問なさる日本共産党の小沢和秋議員がライフワークのように取り組んでいらっしゃる問題だと聞いておりますが、私のような若輩者が質問をさせていただくのは恐縮しております。しかし、私たちの世代こそ未来の世代のために、こういった戦後に起こった問題、そして日本人が日本政府から保護されなかったのではないかと言われる問題に関しては、きちんと取り組んでいかなくてはならないのではないか、そのように感じましたので、質問させていただきます。
 福田官房長官、このシベリア抑留者の問題というのは、どこの省庁が担当すべき問題なんでしょうか。
福田国務大臣 戦後処理問題ということで、窓口としては外務省でありますけれども、一般的にどういう援護措置をするかというようなことになりますと、厚生省、厚生労働省ですね、そういうことになるんだろうと思います。ただ、いろいろな経緯がございますので、そのケースごとに対応の仕方が違ってくる、こういうようにも理解いたしております。
中村(哲)委員 それでは、いわゆるシベリア抑留者の未払い賃金の問題ありますよね。裁判にもなっています。この件に関してはどこが所管すると考えたらよろしいんですか。
福田国務大臣 この問題も、これは以前にこの問題についての対応については、政府としての考え方というものは、これは考え方というのは決めておりまして、したがいまして、その問題についてどこが窓口になっているかということはわかりません、しかし、昭和六十三年に平和祈念事業特別基金等に関する法律、こういうものを制定して抑留者に対して対応しているということでありますので、総務省と厚生労働省、両省が共管をしている、こういうように承知しております。
中村(哲)委員 福田官房長官、ここがすごく重要なところでして、先ほど官房長官は、この未払い賃金の問題については所管はわからないとおっしゃったんです。ただ、六十三年の一般的な支援については総務省と厚生労働省が共管されているということをおっしゃいました。
 きちんと説明しますから聞いていただきたいんですが、このシベリア抑留者の未払い賃金の問題というのは、ほかの一般的な帰還者の問題ではなくて、シベリア地域に行かれた方が強制労働のような形、強制労働と皆さんおっしゃっていますけれども、そういう形でやった、ある種、帰還者の中でも特殊な問題なんですね。だから、そこに対する所管が決まらないと、例えば外務省に聞いたらいいのか厚生労働省に聞いたらいいのか、むしろ全体を束ねるやはり内閣の問題なんじゃないか、そのような質問の仕方がなかなかわからないというところもあって、そこの確認をさせていただきたいということなのでございます。
福田国務大臣 ですから、先ほど来申し上げているのは、その過程においていろいろな省庁が関与してきた、しかし、今現在、先ほど申しました平和祈念事業特別基金等に関する法律を制定し、それに基づいて対応していることについては総務省が管轄しているということでございます。
中村(哲)委員 私は、総務省が管轄しているのは一般的なことであることも認識しているんです。ただ、この未払い賃金の問題に関しては、一般的な問題では解決できない問題としてあるわけですよね。例えば、拉致被害者の問題について内閣官房副長官である安倍さんが担当しているのと同じように、各省庁にまたがることだから内閣で対応すべきということなのか、それとも、この未払い賃金の問題については、以後、総務省に聞いてくれということでいいのかどうか、そこの確認をさせていただいているんです。
福田国務大臣 この抑留者の、強制労働に従事された、本当にお気の毒なことで同情すべきものではございます、そして、この賃金未払い問題につきましては、シベリア抑留者に対して労働賃金の支払いを行う法的義務を負うということは、これはしないというのが、そこまではしないんだというのが、これが政府の見解でございます。そして、なお、平成九年の最高裁の判決も同様の見解を示している、こういうことで承知しておるわけであります。
中村(哲)委員 いや、しないということの決定はそうなんでしょうけれども、窓口を私は聞いているんです。内閣でされるのか、それとも外務省でされるのか、厚生労働省なのか総務省なのか、窓口がどこなのかということを聞いているんです。内閣でいいんですか、総務省でいいんですか、どちらですか。
福田国務大臣 この問題は、そういう政府の見解をもって、その上で、昭和六十三年の、先ほど来申し上げている、いろいろな対応をしてきておるところでございますけれども、対外的にはこれは外務省が当然担当するわけでありますけれども、国内的にはこれは総務省の担当というように考えるべきと考えております。
中村(哲)委員 ということは、未払い問題について抑留者の皆さんから請求をされる、その質問に対して、立法が必要なのかどうかということに関しても総務省にお聞きする、総務大臣にお聞きすればいいということですね。
福田国務大臣 先ほど来申し上げているとおり、この賃金の問題については、これは政府の見解としてそういうことはしないんだということになっておるわけでありますから、ですから、この問題を新たに、継続して実はあるわけでございますけれども、この問題についての窓口は、今そういう対応措置をしている総務省であるということであります。
中村(哲)委員 これは立法の措置が私は必要なのではないかということを考えておりますので、この件についてはまた総務省に議論をさせていただきたいと思いますが、外務省の川口外務大臣に来ていただいておりまして、対外的には外務省という窓口がある、外務省だと官房長官もおっしゃいましたので、外務省としてはこの件についてはどのようにお考えになっているのか、改めて見解をお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 外務省のこの問題とのかかわり合いがどういう形かといいますと、当然、ロシアとの何であれ交渉をすることがあれば、それは外務省の担当ということでございますし、また、条約の解釈ということでいえば、これは外務省が行うということでございます。
 この件は、先ほど官房長官もお答えになられましたように、まさに政府全体としてどうするかという判断が既にあるわけでございまして、外務省としてはその政府の判断に従っております、そういうことでございます。
中村(哲)委員 日ソ共同宣言の中で、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」これが根拠になっているわけですよね。
 私たち戦後生まれ、それも私は七一年に生まれたものですから、そこで最後にお聞きしたいんですけれども、普通に感覚的に考えると、我が国民がソビエト政府に持っていた請求権、これを日ソ共同宣言で放棄することになった、そうすると、国民はそのソビエトに対する請求を今度は日本政府にできるように立法化しないといけないのではないか、そう考えるのが法理的にも普通の考え方だと思うんですが、この件に関してはどのようにお考えになって政府の今の決定になるのか、その点をお聞かせいただいて、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。
川口国務大臣 委員がおっしゃられました日ソ共同宣言の第六条ですけれども、これは、サンフランシスコの平和条約の第十九条もそうでございますが、敗戦国としての我が国の請求権、戦争請求権の放棄を定めたということで、あわせてロシアに対しても、当時のソ連ですけれども、その請求権の放棄を求めたということで、相互にやっているわけですね。これは当時の、当時のといいますか、これは一般的な戦後処理の方式であるということでございます。
 その上で、おっしゃっている問題について外務省としてどう考えるかということについては、これは先ほど申しましたように、政府が決めるということでございますし、その方針は既に決まっているということでございまして、外務省としてどうかということは、政府の方針と一体であるということでございます。
藤井委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田清司君。
上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。閣僚の皆様方、御苦労さまです。
 まず、昨年の十二月九日に、北朝鮮の船舶でソ・サン号と言われるものが、中東のイエメン沖で、射程距離五百キロのスカッドミサイル十五基及び弾頭、さらにロケットエンジンが積載されていたわけですが、アメリカ並びにスペインの船舶に拿捕された。実は、これが日本にも寄港していたという情報がありまして、この点について、まず確認をさせていただきたいと思いますが、国土大臣でしょうか、事実関係を。
扇国務大臣 今、上田議員からお尋ねのソ・サン号に関してお答え申し上げます。
 北朝鮮船籍のソ・サン号は、昨年十月、名古屋港等に入港したことを確認いたしております。その際に、立入検査を実施いたしましたけれども、犯罪に結びつくような事項は見つかっておりません。また、それ以降の我が国への寄港はございません。
 なお、船舶が売買された場合、国籍、船名が変更されることはしばしばありますので、後でお尋ねでしたらこのソ・サン号の経緯を申し上げたいと存じます。
上田(清)委員 このソ・サン号は、今大臣が言われましたように、しばしば国籍を変え、そして名前を変え、そして諸外国で三度にわたって航行停止の処分を受けている、いわばいわくつきの船舶であります。
 そこで、大変気になるところは、いわゆる一般の貨物船がそのまま、こうしたスカッドミサイル、大量破壊兵器を平気で運び、売買されるということに関して、国際社会の中で、例えばテログループがシージャックをする、犯罪組織がシージャックをする、こういうおそれもなきにしもあらずというときに、どんな形でこういうものを阻止することができるかということについて、防衛庁や外務省というのはどのような取り組み、あるいはこの事件についてどのような認識を持たれたのか、この二点について、それぞれ外務、防衛、大臣からお聞きいたしたいと思います。
川口国務大臣 イエメン向けのミサイルを北朝鮮の船が運んでいたということについては、先ほど委員がちょっとおっしゃいましたように、スペインの軍艦がこれを公海上でとめたということでございます。
 そして、このときに、これは米国政府が船舶を監視下に置いていたということでしたけれども、イエメンがミサイルの輸入をすること自体、これを禁ずる国際法がないということで、米国政府はこの船を解放したという経緯でございました。
 我が国、外務省としてのこれの受けとめ方でございますけれども、この直後でございますが、在京のイエメンの大使を呼びまして、またさらに、イエメンで外務省の次官の、両方を通じまして申し入れを行いました。
 その申し入れの内容は、一つは、北朝鮮によるミサイルの開発、輸出等は我が国のみならず国際社会の平和と安定に直結をする重大な問題であると認識をしているということが一つです。
 それからもう一つは、我が国としては、中東地域において大量破壊兵器の運搬が可能なミサイルが拡散すること、これを懸念していて、このミサイルが今後無責任な第三者の手に渡ることがないように強く要請をしたということです。
 それから三つ目は、武器の輸入に関するODAの大綱を踏まえた我が国の考えということを……(上田(清)委員「そこまでまだ聞いていない」と呼ぶ)そうですか。では、ということを伝えたということでございまして、イエメン政府からは、これに対しまして、日本政府の懸念は十分に理解をするということと、このミサイルが第三者に引き渡されることはない、このような出来事を二度と繰り返さない、そういう回答がイエメン政府からあった、そういうことでございます。
石破国務大臣 委員御指摘のような問題意識は、私としても強く持っておるところであります。
 それから、それが単に運搬しておる今回のような場合、あるいは委員御指摘のようなシージャックのような場合、それぞれ海賊行為との関係がございます。そうしますと、私どもと海上保安庁との間でどのような役割分担をすべきなのか、国際法に照らしてどういう形になるのか、国内法的な根拠は何か、そしてまたその能力はどうなのか。
 つまり、シージャックをするような場合に、水上船舶でシージャックをする場合と、あるいは潜水艦みたいなものを使ってやる場合とでは、これは、海上保安庁が有している能力、私どもが有している能力と違います。
 それがどの海域で行われるのかということもあります、領海内、排他的経済水域、公海。そういうようなことはきちんと全部詰めておいて、我が国が国際社会の一員として何をすべきかということは明らかにしておかねばならないだろう。私どもが何ができ、どのような能力があるかということを、今委員の御指摘も踏まえて鋭意詰めておるところでございます。
 いずれにいたしましても、そのようなことが、海賊行為なりシージャックなりということが行われないように私どもとして何ができるか、現在検討中でございます。
上田(清)委員 御承知のように、世界の一つの紛争に関して、中国では超限戦という名称を使い、あるいは欧米では非対称戦と言われるような形で、こういうテロ行為的なものに対して、どんな形で安全を確保するかということが大変問題になっておりますので、引き続き関係省庁でこうした問題について詰めていただきたいということをあわせてお願い申し上げたいと思います。
 それで、外務大臣にお尋ねするところですが、先ほどちょっと言いかけておられましたが、イエメンは多分ODAの対象国かなというふうに私は思っておりますが、ODAの原則からすると、こうした北朝鮮の大量破壊兵器を買うようなところに、まさか今年度の予算はつけていないでしょうね。
川口国務大臣 ODAの大綱につきましては、先ほど申し上げました我が国から申し入れを行いましたときに、我が国のODA大綱に書かれた考え方については先方に説明をしたということでございます。
 それで、我が国として、イエメンに対する政府開発援助、ODAについても、この大綱を踏まえて実施をするということに変わりはないということですけれども、金額的に言いますと、平成十五年度のイエメンに対するODAの供与額は未定であるということでございます。(上田(清)委員「未定」と呼ぶ)未定、予算額は、供与額は未定であるということです。
 それで、今予算を御審議いただいているわけですけれども、その予算を執行していく中で、今回のミサイルの輸入問題あるいはテロとの闘いでイエメンがどのような役割を果たしているかといったようなこと、種々の要素を勘案しまして、具体的な金額は検討していくということになります。
 先ほどの申し入れをいたしました後、イエメン政府から回答が来ているわけですけれども、その中の一つは、先ほど申しましたように、このような出来事を再び繰り返すことはないということ、そして、第三国に引き渡すことはないということを言っています。それから、日本政府が表明した懸念を高い関心を持って受けとめた、そして、イエメン政府につきましては、イエメン政府の開発努力に対する日本の二国間もしくは国際機関を経由した援助を高く評価していて、今回の出来事が日本、イエメン関係にいかなる悪影響も与えないように望むということも言っておりました。
 以上です。
上田(清)委員 ODA、開発援助をする場合、日本政府の立場であるODA大綱、ODA四原則についても強くそれぞれの国に発信しているはずですから、それを破ったイエメン国に対して、予算の要望が未定だというのも不思議な話でありまして、未定という概念を私は初めて聞きましたので、これは財務大臣、教えてほしいんですが、未定というのはあるんでしょうか、予算の中に。
川口国務大臣 予算との関係で言いますと、我が国のODAについて、これは要請主義でやっております。したがいまして、それぞれの国から、どういうプロジェクトがあって、そのために幾ら援助が欲しいという要請があって、それをプロジェクトごとに検討し、さらにそれをODAの大綱に基づいて検討して、そこで個別個別の国の供与額が決まっていく、そういう形になるわけでございます。
上田(清)委員 では、イエメンからは要請がない、こういう解釈でよろしいんですか。
川口国務大臣 平成十五年度の供与額、イエメンからということにつきましては、これからイエメンからどのような要請があるかということを待つ必要があるわけでございます。
上田(清)委員 大枠で援助額を決めているので、個々の中身についてはこれから決める、こういう理解でよろしいんですね。
 それと、そういうわけにはいかないですよ、これは。少なくとも昨年の十二月の九日の時点でこのことが発覚した以上、イエメンにはびた一文とも上げてはいけないですよ。それが日本の外交の毅然とした姿勢を示す最大のあかしになりますから。私は、この点についてきちっと大臣から答弁していただきたいと思います。
川口国務大臣 ODAの供与につきましていろいろな考え方があるということはよく承知をしております。
 我が国の政府の考え方ということについては、これは、先ほど申しましたように、ODAの大綱を踏まえてやっていくということでございまして、イエメンにつきましては、そういったODAの大綱との関係で、今般のミサイルの輸入問題をどうやって考えるかということもございますし、他方で、今国際社会が懸念を持っているテロとの闘い、これにおけるイエメンがどのような役割を果たしていくかというような考慮、そういったさまざまな考慮を総合的に行ってイエメンへの供与額を具体的には決めていく、そういうことでございます。
上田(清)委員 今の外務大臣の答弁は間違っております。ODA大綱にはきちんと書いてあります、大量破壊兵器を輸入するような国には援助しないと。原則でしょう。何も考える必要ありません。きっちりとした答弁をしてください。
川口国務大臣 ODAの大綱にどういうふうに書かれているかということでございますが、ちょっと読み上げさせていただきますけれども、「政府開発援助の実施に当たっては、国際連合憲章の諸原則及び以下の諸点を踏まえ、相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、実施するものとする。」ということになっておりまして、それで、大量破壊兵器との関係におきましては、「開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。」そういうことでございますので、これにのっとって、それから、先ほど申し上げたような他の要素を総合的に勘案して、これは供与額を実際には具体的に決めていく、そういうことでございます。
上田(清)委員 結論出ているじゃないですか、その中に。五百キロ射程のスカッドミサイルを十五基も輸入して、ODA大綱に反するじゃないですか。ロケットのエンジンも入れて、弾道弾も入れて、しかも、セメント袋で隠して。明らかじゃないですか。紛争を拡大しているじゃないですか。それで何が総合的に判断するですか。そんな判断するんだったら、審議なんかできないですよ。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、ここに書いてございますことは、十分に注意を払うというふうに書いているわけですね。それで、これを踏まえてどのように判断をするかということは、先ほどの輸入の件、それから全般的なテロとの闘いにおけるイエメンの貢献、そして先ほど申し上げたような国連の諸原則あるいは相手国の要請、経済社会状況、二国間関係、そういったことを総合的に勘案するということでございまして、それは今後行っていく、そういうことでございます。
上田(清)委員 そんなことが方針になるわけじゃないじゃないですか。手続を読んだだけでしょう。外務大臣としての方針をきちっと言ってくださいよ、もう起こったのは二カ月前なんだから。この二カ月の間にきちっとした方針ぐらいできるでしょう。何でできないんですか、そういうことが。我々がそういうことをきちっとやって、その上で、さまざまな問題で国際社会に協力する、そういう姿勢がない限り、ただ追随していると言われますよ。うなずいている閣僚もおられますよ、私の言っていることに。
川口国務大臣 考え方ははっきりいたしておりまして、繰り返しませんが、先ほど申し上げたようなことを総合的に勘案して決めていくということでして、まさにそのための予算を今御審議いただいているわけでございますから、予算の審議が終わった後で、相手の具体的なプロジェクトの要望等、それから、繰り返しませんが、いろいろなことを総合的に勘案する、ODAの大綱を踏まえる、そういうことでございます。
上田(清)委員 もし後で、いつの間にかイエメンにODAの予算が入っていたということになって、先に我々は賛成したり反対したりして、後で入っていたということになったら、僕らは責任は持ちませんから、方針を聞くまで私は審議しません。
藤井委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 川口外務大臣、いま一度答弁をお願いいたします。
川口国務大臣 上田委員のただいまの御意見は御意見として十分に参考にさせていただいて、政府として判断をしていきたいと考えます。
上田(清)委員 一週間後か二週間後にまた私の質疑があると思いますので、それまでに御返事をいただけるということであれば審議を続けますが、そういう返事がなければ、審議を続けるわけにいきません。
藤井委員長 上田君、質問を続行してください。上田君、質問をもう一度してください。
上田(清)委員 次の私の質疑までにきちんとして、政府の対応を明らかにしていただきたいと思います。
藤井委員長 そういうことでございます。それで結構です。
 では、次の質問をしてください。
上田(清)委員 この点については委員長は御理解いただいたわけですね。
藤井委員長 はい。
上田(清)委員 ありがとうございます。委員長が保証していただきますので、次の時間までに必ず対応してください。
藤井委員長 上田委員、保証という言葉はちょっとあれですが、要するに、今の上田委員の質問の意を体して、次の質問の機会にどう答えるかについては、十分に外務省の方に、その意を踏まえて、委員長から伝えておきたいと思います。
上田(清)委員 藤井委員長の大変公正な裁きに感謝いたします。
 続きまして、非常に気にしているところは、こうした北朝鮮の船舶が、資料をいただきましたところ、二〇〇二年レベルで一千四百十四隻、我が国に入港しております。外国から直接日本の港に入港したものとしては、北朝鮮籍では千二百隻。これは主に、舞鶴で三百九、境港で三百二十八、小樽で百二十九という形で、この三港でおよそ六割、七割近くあると思っておりますが、このように、国交のない北朝鮮の船舶が我が国に寄港をしておりますし、また最近では、覚せい剤の輸入ルートがかなり北朝鮮ルートになりつつあるということも踏まえて、大変、先ほどのソ・サン号も含めまして、日本の海上警備あるいはまた税関、また犯罪、いろいろな点から危惧するところでございますので、この点について二、三点、お伺いしたいと思います。
 例えば船舶が日本で、いわば臨時検査的に立入検査をやった場合、どのくらいの数の立入検査があり、そしてどのぐらい犯罪なり犯罪に類することが起こっているのかということについて、数字を挙げていただければありがたいと思います。
深谷政府参考人 御説明申し上げます。
 平成十三年の数字について申し上げますと、海上保安庁は各港で庁法に基づきまして立入検査を実施いたしておりますけれども、平成十三年、一年間で四万七千九百六十四件の立ち入りをいたしております。その立ち入りからすべて端緒が出たわけではございませんけれども、一方で、海上保安庁におきまして犯罪送致をいたしましたのは、平成十三年で五千六百四件となっております。
上田(清)委員 そのうち北朝鮮に関連するものは何件ですか。
深谷政府参考人 御説明申し上げます。
 平成十三年に四万七千件余の立入検査を実施したと御説明申し上げましたけれども、うち北朝鮮関係は千百三十六件でございます。
上田(清)委員 ついでに、犯罪送致も教えていただければありがたいんですが。
深谷政府参考人 御説明申し上げます。
 先ほど、先生、覚せい剤のことを御指摘されましたけれども、先ほどの申し上げました数字の送致件数の五千六百件の中の北朝鮮関係、今ちょっと手持ちにデータがございませんけれども、覚せい剤関係で申し上げますと、私ども、平成十年から平成十四年までの間におきまして五件の北朝鮮仕出しのものを摘発いたしております。
上田(清)委員 後で結構でございますので、北朝鮮絡みで送致件数も教えてください。
 それで、国家公安委員長にもお伺いしたいと思います。
 事前に警察庁の薬物対策課からいただいた覚せい剤の大量没収の案件でありますが、平成十四年度に、その他不明というのが六一%ですが、次いで北朝鮮が三七・三、約百五十一キログラム没収しているわけであります。こういう状態について、どのような感想と対策を講じておられるか、お伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 覚せい剤の件では、今も海上保安庁長官から御答弁がございましたけれども、平成十年から十四年の間、これは件数は必ずしも多くないんですが、一回一回の量がかなり多うございまして、合計すると千四百六十六・八キログラムと、この間に押収した覚せい剤の三四・六%を占めているわけであります。
 北朝鮮を仕出し地とする覚せい剤は、今申しましたように一回一回の摘発量が非常に多いということ、それから純度が極めて高いということ、それから包装等が極めてきちっとした包装になっているということでございまして、これは相当な技術力と資金力を持った者でなければなかなかこういうことができないであろうというふうに考えております。
 したがいまして、警察といたしましては、海上保安庁やそのほか入管、税関あるいは諸外国とも情報交換を密にいたしまして厳正に対処する、重大な関心を持って当たっております。
上田(清)委員 ありがとうございます。ぜひ重大な関心を持って果敢に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 そこで、不審船が、この間の銃撃戦も含めて大変大きな国民の関心事になったわけでありますが、扇大臣だと思いますけれども、この十年間でどのぐらい不審船と思わしきものが日本近海に出てきたのか、この辺についての把握、そしてこの不審船に対しては基本的にはどのような対処をしているのか、二点についてお伺いしたいと思います。
扇国務大臣 上田議員にも御理解いただいていると思いますし、また国民にとっても、戦後初の銃撃戦をしたという大変衝撃的なことを我々は経験しました。そして、今、海上保安庁も今回の予算で多くのことをお願いいたしまして、海上保安庁として対応できるような最小限の予算を審議させていただいておりますけれども、少なくとも、出入国等々を見ますと、それぞれ大変な回数でございまして、今私どもは、この不審船というものの回数というのを、海上保安庁から長官がきょう来ておりますので明快に出していただきますけれども、我々は、過去に不審船と認定できたもの、あるいは不審船らしき逃走してしまったもの、これを分けなきゃいけませんので、その数字は海上保安庁長官から明快にしていただきたいと思います。不審船と見られるものと完全な不審船と、両方ございますので。
深谷政府参考人 御説明申し上げます。
 海上保安庁といたしましては、過去二十一隻のいわゆる不審船を確認いたしております。昭和三十八年に一隻を確認して以降、これまで二十一隻確認をいたしております。
 なお、そのほかに、海上保安庁としては、現認そのものができておりませんけれども、昨年の九月四日、レーダーでは見ましたけれども、目視はできませんでしたが、それも含めますと二十二隻というふうな結果に現在なっております。
上田(清)委員 済みません。外務大臣と防衛大臣はもう退室されて結構でございます。
 それから、朝銀問題、いわゆる北朝鮮系信用組合の問題に移らせていただきますが、先ほど、ハナ信組に資本注入が決定したわけでありますが、日本人の理事長が就任すればそれでいいという話でもないと思われます。既に、少なくとも平成九年から平成十三年に関して、北朝鮮系信用組合が預金保険の保険料を払った総額が約六十八億、そして、何らかの形で、資産の買い取りも含めて、投入された金額が約一兆四千億ですね。六十八億保険料を払って一兆四千億いただいたという、大変効率のいい破綻の仕方をしておりまして、そのお金が一部、私も総連の財務副局長という方にお目にかかったことがあり、御自身でも新潟から運んだことがある、こういうお話を聞いていて、国民の間に釈然としない感覚を我々も含めて持っているんですね。
 それで、担当大臣として、日本人が理事長になれば、今後、ハナ信組というものは非常に健全な運営、経営ができるのかどうかということについて、確信を持っておられるんでしょうか。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 今、上田委員から御指摘がございましたように、いわゆる朝銀系の金融機関の問題については、さまざまな問題を生じさせているということについては承知をいたしております。
 御指摘のありましたハナ信組の現理事長につきましては、昨年の三月の同組合設立時において常務理事に就任しておりましたが、その後、私どもから同組合に対して役員体制の徹底した洗い直しを要請したことを受けて、役員の経歴をめぐる疑惑を払拭し、経営の独立性を確保する観点から、臨時総代会等を経て、昨年十二月に理事長職に就任したものと承知をいたしております。
 ハナ信組の定款においては、経営の独立性を確保する観点から、「常務に従事する役員には日本の銀行、信用金庫において勤務した者であって、金融業務に関して十分な経験及び知識を有する者を含むものとする。」と定められておりますし、また、中小企業等協同組合法において、組合の設立認可に当たっては、常務に従事する役員が金融業務に関して十分な経験及び識見を有する者であるかどうかを審査するとされているところであります。同理事長については、三十年以上にわたり信用金庫において勤務した経験を有し、協同組織金融の実務に精通しているなど、金融業務に関して十分な経験及び知識を有しているものと考えられております。
 ハナ信組におきましては、こうした理事長の問題だけではありませんで、役員体制の整備については、四分の三、常勤の役員は日本人ということになっておりますし、また、融資審査委員会における厳格な融資審査、架空名義口座の排除、監査法人の導入による監査機能の強化など、経営の健全化を確保するための措置を講じているところではございます。
 いずれにいたしましても、私どもとしましては、厳正に検査監督に努めてまいりたいと考えております。
上田(清)委員 いつも厳正に慎重に検査して、いつも破綻しているんですね。
 あと、西と中部と北東がございますが、常に破綻のうわさが絶えない。どのような検査をされているのか。多分、破綻する前にまたばらばらにしたりくっつけたりして、資本を、資金を注入するんでしょうけれども、最近検査はやっていらっしゃるんでしょうか、この三つについて。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 朝銀については、都道府県から国への移管後、平成十二年に財務局から五組合に対して検査を実施しております。
 また、朝銀に対する二巡目の検査については、朝銀西信用組合に対して昨年十一月から検査を実施、朝銀北東信用組合に対して本年一月から検査を実施しているところであります。
 さらに、朝銀近畿信用組合から昨年八月に事業譲渡を受けて業務を開始いたしましたミレ、京滋、兵庫ひまわりの三組合に対して、本年一月から検査を実施しているところでございます。
上田(清)委員 ぜひしっかりした検査をやっていただきたいと思います。いずれまた、さまざまな問題が噴き出すと思いますので、そのときにきちんとした中身を見せてもらいたいと思います。
 続きまして、年金の問題に移らせていただきます。
 竹中金融担当大臣は、どうぞ退室してください。御苦労さまです。
 御承知のとおり、年金は、株式の方が利回りがいいんだというのが一般的な考え方で、今まで年金資金運用基金において株式がたくさんシェアを持ち運用されて大変な損失を起こしているところですが、国家公務員共済は、やはり運用成果の多い株式にたくさんかけておられるんでしょうか。そのパーセンテージと運用の損益について、どのようになっているんでしょうか。
谷口副大臣 今の上田委員のお尋ねでございますが、国家公務員共済組合の年金資金の運用について今おっしゃったわけでございますけれども、一定割合株式で運用しておるところでございます。
 十三年度決算におきまして、国家公務員共済組合連合会の株式比率でございますけれども、国内株式が二・七%、外国株式が一・七%、十三年度の損益といたしまして五百四十九億円の利益ということになっております。
上田(清)委員 それは、株式も含めた全体の利益でしょう。株式そのものは損をしているじゃないですか。
谷口副大臣 国内株式でございますけれども、これは、国内株式と外国株式の株式合計でまず申し上げさせていただきますと、簿価が四千七百九十二億五千九百万円、そのうち、実現損益として百十七億六百万円、これはマイナスになっております。評価損益がマイナスの九百九十億五千七百万、これはマイナスになっております。それに対しまして、債券も持っておりまして、国内債券で申し上げさせていただきますと一千五百六十億の利益になっておりまして、通算いたしますと五百七十億の利益、こういうことでございます。
上田(清)委員 財務大臣、お聞きになったように、わずかに株式約四・三%で、それでも、へまして評価損になっちゃうんですよ。
 もっとも、国民の年金である国民年金と厚生年金を預かる年金資金運用基金では四〇%の株式を運用する。国家公務員の主宰するところの国家公務員共済は、さすがに、自分たちのお金はリスキーなところにはつけない、こういう賢い考え方に立って、四・三%しかつけていない。大変賢いもので、株式では九百億ぐらいの損失しかしていない、債券のプラス分を合わせてプラスマイナスはプラスである、こういう形になっておりますが、そもそも、どうして国家公務員共済は、株式、こんなに少ないんでしょうか。
塩川国務大臣 これはやはり資金運用の審議会で厳重に制限されておるということが一つございますことと、それから、利益が出てまいりましたのは、これはやはり株式の評価差は出ておると思うんですけれども、配当がずっと長いこと積み重ねてきておるということがございますし、もう一つは、公務員連合会の方の方針として、株式の保有は長期間にわたって同一株式を持っておる、つまり、安易に投機的に運営しないという、そこが非常に私は堅実で、その結果としてこういう数字になってきておると思っております。
上田(清)委員 その長期がいろいろなデータで出ておりまして、二〇〇〇年の十二月をもって、日経の二二五のものに平均的にずっとかけていても、三十年移動平均でマイナスになることが明らかになっている。今ではもう五十年でマイナスになっています。
 それで、今、大臣がいみじくも言われましたように、相当安全性に留意をしてこうした配分になっているんですけれども、そうすると、坂口厚生大臣、どうしてこんなに同じ国民の年金が、国家公務員共済だと、株式に余りかけないで債券中心で安全にやるために四・三%で、そして国民年金と厚生年金を預かる年金資金運用基金の運用では四〇%を株式に使う、これはなぜそう違うんですか、同じ安全性と言いながら。国民のお金はばんばんリスキーにかけていい、しかし、国家公務員の皆さんのはリスキーにしちゃいかぬ、こういう考え方に立っているような気がするんですけれども、どうでしょうか。
谷口副大臣 今、上田委員のお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたように、国家公務員共済組合連合会では、国内が二・七、外国株式が一・七ということでございまして、年金資金の運用基金でございますけれども、おっしゃるように、市場運用の分だけで見ますと、国内で二五・六%、外国株で一四・三%ということでありますけれども、年金資金全体を見て、財投の財政融資資金の預託金がありますので、これを含めた全体の状況で見ますと、国内株式の比率が四・〇%、また外国株式の比率が二・三%……(上田(清)委員「そんなのはわかっています」と呼ぶ)いや、同じ基準で評価をしますと、全共済の方が二・七に対して年金資金の運用基金が四%、外国株式は一・七に対して二・三ということになって、大きく変わりがないということを言いたいわけであります。
上田(清)委員 厚生大臣にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話ございましたように、自主運用するものの中におきましては、先ほど御指摘のとおり四〇%になっておりますが、全体で見ると四%、こういうことでございます。
 いずれにいたしましても、前回も御質問いただきまして、現在、この年金資金の運用のあり方というものに対してもう一度見直しを今やっているところでございまして、ぜひ、今のところを改めるところは改めたいというふうに思っているところでございます。
 そうした中で、やはり年金の場合には、どういたしましても、年金の給付金というものは、これは賃金上昇率に応じて増加するものでございますから、そのことを加味して今後やっていかなきゃならない、ふやしていかなきゃならない。しかし、これに対応して堅実な運用というものが要求されますし、それから、日本経済に貢献できるような、これは貢献でなければならない。これらの原則を踏まえて、私はこの見直しに取り組んでいきたいと思っているところでございます。
 現状につきましては、御指摘のとおりでございます。
上田(清)委員 片山総務大臣、郵貯と簡保の中期計画では徐々に株式等の運用を低めていくという基本的な姿勢があるわけですが、現況における株式の運用において、損益はどのような状態になっているか、御存じでしょうか。
片山国務大臣 今郵貯では、株式保有は郵貯全体の一%でございます。それから、簡保の方は四%ぐらいでございまして、ただ、評価損はどっちも出ているんです。郵貯の方が二兆二千億ぐらい、簡保の方が約五兆ぐらい出ておりまして、ただ、全体の指定単の中では評価は上回っておりますし、別の積立金がありますから、その点私どもは心配しておりませんが、比率としてはかなり低うございますし、四月から御承知のように日本郵政公社になりますから、今度はこの指定単制度のあり方を含めて公社の方で十分御議論いただこうと。現在の中期経営目標、経営計画の中で似たような制度はお考えになっているようですが、さらに今よりはもっと安全確実にやる、こういうお考えのようでございますので、我々もそれを支持したいと考えております。
上田(清)委員 財務大臣もお聞きになったように、一%、四%でもさんさんたる損失を出しているという現況があるんですね、その部分に関して言えば。これは損失があるよりはない方がいいわけですから、全体でプラスだからいいというわけでもありませんので、これは、政府を通じてぜひ、国民のお金でありますから、間違ってもマイナスにならないように努めていただきたいと思っております。
 続きまして、国会テレビの問題についてお伺いいたしたいと思います。
 今国会テレビがとまっているんですけれども、総務大臣、何が原因でとまっているんですか。あんないいものが、全部の委員会に国民がアクセスするチャンスを今失っているんですね。何でとまっているんですか。
片山国務大臣 御承知のように、CS放送で、国会テレビということで、C―NETという会社がやると。ところが、それを衛星で流してもらうのに、JSATという受託事業者にお願いをしておりましたら、いろいろな、経理のこと、視聴率のこと、いろいろあるんでしょう、衛星中継器の使用料についてずっと滞納してきているんですね。そこで、受託の方が、これじゃもたないということで、契約に基づき契約を破棄したんですよ。それが十三年の十二月でございまして、以降、国会テレビが放送されない、こういうことでございますが、中に入ったプラットホーム業者がさらにC―NETを告訴しまして、現在訴訟になっておりまして、状況としてはそういうことでございます。
上田(清)委員 状況としてはそうですが、これは、たまたま谷垣国家公安委員長も御在席でありますが、たしか議運の委員長などをなされておられるころに、この国会テレビの問題が、ある意味では国会の意思として、何とか発足させ、そして民間に運営させようということで始まったものだと思っておりますが、谷垣委員長は当時議運の委員長としてこの国会テレビにも並々ならぬ関心を置かれたと思っておりますが、今日の状況について、どうすればうまくいくのか、御所見があれば承りたいと思います。
谷垣国務大臣 きょう上田委員からこの件について御質問があるということで、当時のことを、記憶を呼び起こしておりまして、私の頭の中だけで、記憶でございますのであるいは正確でないかもしれません。
 政治改革の中で、やはり国会の議論を放映して、国民にも関心を持っていただくし、我々も緊張感を持って、いつも国民に開かれるんだという緊張感を持って質疑をすべきではないかということから、何か国会放送を外に送れないかという議論、相当長期間にわたって熱心な御議論がございました。議運からもアメリカのC―SPANを見学に行くという、そういう調査に行くというようなこともいたしました。
 最初は、これは国会直属の放送局で、いわば国会放送局、国費でやったらどうだというような案もあったのでございますが、他方、そうすると、何というか、国のひもつきみたいなことになるのが報道の自由というような観点から見ていいものなのかどうかというような議論もこれあり、他方、トランスポンダーを借りる費用も相当高くついたりして、国会がお手盛りでそういうものをつくったとき国民の批判にたえられるかというような心配もございまして、そこで、国会のやるべきことは、まず国会の中の議論をきちっと放映できるようにして、それで、やろうという民間の方が出てきた場合には、いろいろ細工を加えないというようなことで自由に使っていただこうじゃないか、それで民間の方の登場を待とうというようなことで、いわゆるC―NETが手を挙げてやられたという経緯であったと思います。
 当初からそういう財政面の問題が若干気にかかっていたことは事実でございまして、今何かいい考えはないかとお問いかけでございますが、直ちにいい考えというのは私も思い浮かびませんが、ぜひここは衆知を集めて解決をしていただきたいと思っております。
上田(清)委員 ありがとうございます。
 失礼しました、どうぞ委員長御退席を、また厚生労働大臣も、申しわけありません、言うのを忘れておりました。どうぞ御退席ください。
 そこで、片山総務大臣、私どもの仲間であります玄葉光一郎議員からも総務委員会で質疑があったというふうに思いますが、当時、佐田副大臣を中心に答弁をいただいたわけですが、実は、衛星料金が高いんじゃないかという議論が一点。それから、アメリカのC―SPANみたいにベーシックの部分をきちっとしてやればこういう運営ができるんじゃないか。事実、アメリカなどでは、そうした教育的、公共的チャンネルを、多チャンネルの場合には四%ルールで放送事業者に義務づけるというような保護法までできているわけですね。
 現実に、今のCS放送の、私が理解しているところでは多分百三十社ぐらいかと思いますが、かなりの数が赤字でありまして、黒字のところはポルノだとか劇画、映画とかそういうたぐいのもので、教育的な配慮だとかそういうところからすると極めて将来非常に不安を感じるわけであります。
 そこで、きょうも遠山文部科学大臣にもわざわざ御出席いただいているんですが、文部科学省あたりでも、このCS放送における四%ルールなどという考え方は具体的に検討されたりしていないんでしょうか。
 もう、多チャンネルで、山ほどチャンネルがあるわけですね。しかし、ある意味での健全な経営をしているのは、残念ながら非常に、ポルノだとか映画だとかそういうものだけで、むしろこういう国会テレビというのはなかなか営業しづらい状況になっておりまして、そして滞納問題が起き、契約上の問題で停波されるという形になっているわけですから、ここを何とか解決しなければと思っておりますが、文部科学省あたりでもそういう提案はないんですか。
遠山国務大臣 私どもも、メディア上の性あるいは暴力等の有害情報などが青少年に大変悪影響を与えるということについては大変懸念をいたしておりまして、青少年にとって興味深く、夢のあるような番組が提供されていくことが大変大事だと思っております。
 御質問にずばりお答えする前に、我が省におきましては、そのような観点から、学校教育におきまして、青少年が主体的に情報の取捨選択ができますようにメディアリテラシーの教育を推進いたしましたり、あるいはテレビ番組について、日本PTA全国協議会が実施いたします全国モニタリング調査に対する支援をやったり、あるいはCS放送を活用した放送大学の全国展開、あるいは科学技術振興事業団による子供が楽しみながら科学に触れることができるサイエンスチャンネルの提供をしたり、良質な番組をどのようにふやしていくかということ、あるいはモニタリングをきちっとやっていくというようなことをやってございます。
 私は、この放送の番組の中身といいますものは、やはり、私どもの期待はそういうことでございますけれども、青少年に向けてお勧め番組を選定しておられる衛星放送協会などの関係業界において、こうした青少年向けの番組の充実に向けて実質的な取り組みがなされるということが大変大事だと思っております。
 今後とも、関係省庁との連携をとりながら、この問題について、私どもとしても、できるだけそのような取り組みが推進されるように努力をしてまいりたいと考えております。
上田(清)委員 余り意味のない答弁でした、正直言いまして。(発言する者あり)失礼でもしようがないでしょう、ちゃんとした答弁していないんだから。憲法六十三条を読んでください、もう一回。ちゃんと国会に来て説明する義務があるんです、質問に対して。そういう質問に答えていない。
 総務大臣、佐田副大臣が当時、衛星料金が高い、これは、放送法の五十二条十項、十一項を踏まえて、大臣から指導していいんじゃないかという議論をしておりますが、精査したいという答弁が出ておりますけれども、その精査の結果はどうなっていますか。
片山国務大臣 恐らく精査をしていると思いますが、私はまだ詳細に聞いておりません。
 ただ、CSの営業成績も年を追ってよくなってきまして、今、委員御承知のように、四割黒字なんですよ。トータルではまだ少し損失の方が多うございますが、だんだん減っておりますからね。
 結局、利用者がふえないんです、簡単に言えば。そのためには、CSテレビがもっと魅力を持てばいいんで、我々はそういう指導をしてまいりたいと思いますし、今の衛星の使用料についてはさらに詰めて議論いたしたい、こう思いますしね。
 四%条項のお話もありましたが、アメリカと少し違うのは、日本は全部持つんですね。衛星放送を持っている人が番組をつくって、衛星で流して、アレンジして。日本はみんなそこがばらばらですね、御承知のように。それから、日本には公共放送のNHKがあるんですよ。だから、これをどういうふうに考えるかということもありますので、なお十分検討してまいります。
上田(清)委員 次の委員会のときにまた精査の結果を教えていただきたいと思います。
 公取委員長、済みません。長らくお待たせをしました。一点だけ。
 さる会合で委員長は、テレビ番組の制作会社がいわば放送事業者の下請化して、独禁法に触れるような状況にあるんじゃないかという非常に見識のある発言をされております。
 現実のこのCS放送の受託放送事業者が独占的に衛星を持っているわけですから、事実上、放送事業者は言いなりにならざるを得ない状況にありますので、こういう意味でも、ひとつこれは、係争の争点にもなっておりますので、公取として、こうした受託放送事業者と放送事業者の関係について、独禁法に触れるような状態になっているんではないかという考え方について御見解を伺いたいと思います。
竹島政府特別補佐人 最初に委員おっしゃった、放送会社と番組制作会社の関係、これは、この国会に下請防止法の改正を出していただいて、その中で新たに、そういう番組制作会社等を含めたソフトサービス業種も下請法の対象にしたいということでお願いをさせていただくことになっております。
 それで、その話と、今具体的に御指摘のありました放送衛星の話でございますが、そのまま一〇〇%平行移動できる話かどうかわかりませんが、いずれにしましても、放送委託会社、これは百社以上あると思いますが、それと受託放送会社がいわば独占的状態にある、その状態の中で、その百社強の個別事業者が同じ競争条件を与えられないということであれば、これは独禁法の問題になると思いますが、先ほどから御指摘のある、放送委託料金が高いというのは、これは、今の事前届け出制のもとで、総務大臣の方でそういう御指導をなさっているわけでございまして、その料金が高いことを独禁法上問題にするというわけにはまいらない、そういうふうに考えております。
上田(清)委員 時間が参りましたので終わりますが、もちろん、料金の問題だけを問題にしているわけじゃありません。力関係の中で公正な競争関係にないだろうという判断をしておりますので、ぜひ御調査していただきたいということを最後にお願い申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。長妻昭君。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
長妻委員 民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いいたします。
 午前中、我が党の田中慶秋議員からも質問がありましたが、この雇用・能力開発機構について、若干質問をさせていただきます。
 勤労者福祉施設というのを雇用保険の保険料で二千七十カ所もつくって、それを今、採算がとれないということで投げ売りをしていると。その施設の中には、これも有名な話ですけれども、川越勤労者体育センターという体育館が何と千五十円で売られるとか、本当に投げ売りであります。今までのところ、六百二十九カ所が処分をされたということで、この六百二十九カ所をつくる初めの建設費用が六百三億円かかっていた、処分の金額は、一万円とか十万円とか安い値段で投げ売りした結果、四億三千七百十七万円ということで、ある意味では、初めの建設費から見ると、売却価格というのは、もし値引きという考え方をすれば、九九・三%も値引きをして、だから〇・七%で投げ売りをしている。なりふり構わないわけであります。
 そして、私、前回のこの委員会で参考人招致の要求を委員長にも申し上げたのでございますが、スパウザ小田原という、これも同じこの雇用・能力開発機構がつくった施設、これは閣議決定違反であると私は考えておりまして、それを決定した当時の職安局長が清水傳雄さんという方であるということで、これは質問主意書の答弁書でも、清水傳雄さんが決定したんですよ、こういう答弁書をいただいているわけであります。現在はリフレッシュ財団の理事長をされておられて、このリフレッシュ財団というのは、まさにスパウザ小田原に従業員を送り込むためだけの財団でありまして、その元凶と言っても言い過ぎではないと思うんですけれども、清水局長さんの参考人招致をぜひいただきたいということをお願いしたわけであります。
 そして、その意味では、清水局長が決定をした、先ほど申し上げた二千七十カ所の施設を何個かちょっと今申し上げますと、例えば、清水局長決定の石川県の山中勤労者体育施設、これは一億円で当初建設した。ところが、もう販売しましたけれども、一万五百円で販売した。これは古い施設じゃないんですよ。平成二年の三月に運営を開始している施設です。これも清水局長が決定した施設。
 そして、清水局長が決定をした施設、もう一つ、例えば山梨県の勝沼勤労者体育施設、これも一億円。これが十万五千円で売却された。これも古い施設じゃないですよ。平成二年四月にオープンした施設ですよ。
 そして、清水局長がさらに建設を決定した施設で、岡山県総社市、総社勤労者総合福祉センター、これは約三億円。これが十万五千円で売却決定して、もう契約しています。これも古い施設じゃない、平成二年の十一月オープン。
 そして、これは枚挙にいとまがないわけでございますが、例えば宮崎県の小林市、小林勤労者体育施設、これは大体二億円の建設費。これは、一万五百円で売却が決定をして契約書も交わしている。これも、平成三年の七月にオープンした施設であります。こういうとんでもないことを、こういう施設の建設を決定した清水局長でありますから、ぜひ参考人招致をお願いしたいわけでございます。
 そして、これは私、厚生労働省に聞いてみました、何でこんな投げ売りするんですかと。そうしましたら、いやあ、これは二千七十施設も売るから、数が多いから一律に金額を決めているんですよ、こういう話が返ってくるわけですよ。とんでもない話。これは雇用保険の金ですよ。そして私、聞いてみました。売却で一円でも高く売るように交渉するべきだと思うので、交渉の現場に聞いてみました。
 例えば、北海道倶知安町というのがありますね。こういう町があるんですが、そこの倶知安町に、これも、この雇用・能力開発機構がつくったサンスポーツランドくっちゃん、これはこの機構が二億円でつくったんです。これは、パターゴルフ九ホール、ソフトボール場、テニスコート五面。二億円でつくって、これを十万五千円で売却したと。
 私、売却の交渉を聞いてみたんです。そうしたら、北海道の倶知安町の担当者と私は直接話しましたけれども、いやあ、それは手紙が来ただけです。担当者は一度も私は会っていません。手紙が来て、十万五千円でどうですかと。全然交渉も何もなく、ああ十万五千円、安いから買います、こうなったわけですね。一度も担当者が町に足を運んでいないんですよ。交渉すらしていない。ただ、十万五千円の手紙を出しただけ。
 こういうとんでもない状況が起こっておりまして、最終的に当初建設費から四千億以上のマイナスが出るというわけでありますから、これはだれがどのように責任とるのか。これは責任なしでは済まないですよ。御答弁をお願いします。
坂口国務大臣 細かな具体的な話まで私もちょっと存じ上げないわけでございますが、いずれにいたしましても、今委員がお挙げになりましたように、非常に安い値段で売られているという事実はあちこちで聞いているわけでございます。
 一つは、午前中にも田中慶秋議員にお答え申しました……(長妻委員「責任だけ言ってください、詳細は知っていますから」と呼ぶ)
 いずれにいたしましても、そういうことを今行っておりまして、施設は手放してとにかくやろう、こういうことになっておる。具体的にどういうふうになっておるかは私もちょっと調査いたしますけれども、責任といったら、全体の責任は私が中心ですから、それは……(長妻委員「いや、機構に」と呼ぶ)機構の方は、それは機構の責任者が一番の責任でございます。
長妻委員 そして、今の二千七十カ所の施設は、トータルの建設費が四千四百九十八億円なのでございますが、もう一つ、実は、一兆円もかけて日本全国にこの開発機構がマンションというか賃貸住宅をつくっている、こういう問題もあります。
 これは、正式な名前は移転就職者用宿舎、いわゆる雇用促進住宅と呼んでいるらしいんですが、全国千五百カ所に十四万戸を一兆円かけてつくったということであります。そして私、昨日その一カ所、東京に行ってまいりました。(写真を示す)
 これが、東京の江東区の潮見というところにあります潮見住宅です。平成九年にオープンしたということで、まだ新しいわけでございますが、これを八十億円の建設費で建てた。そして私、行ってびっくりしました。入居率はどのくらいですかと聞きましたら、六割ですと言うわけですね。四割はまだあいていますよと言うわけです。賃貸のマンションで月額八万四千円の家賃ですね。安い。平米数が大体六十五平米、三DK。
 それで、管理人さんに聞きました。五階以下は一度も、平成九年にこの建物が建ってから一度もだれも入っていないんです。五階以下は、だれも入っていないんです。新しい部屋なんですね。それが三十戸あるということであります。私も中へ入れていただいて写真を撮ってまいりましたけれども、こういう部屋が三十戸あるんです。これは一度も、平成九年に完成してからだれも入っていない部屋です。広い、いい部屋ですよ、私が写真を撮ったのでちょっと臨場感がないかもしれませんけれども。
 それで、私、そのときに、おられた方に聞いたんですね。何でこれはこんな入らないんですか、宣伝しているんですか。いや、宣伝はしていませんと。地元の不動産屋さんにちょっと案内すればいっぱい来るんじゃないですか。確かにそうかもしれないけれども、そんなことしたら民業圧迫になります、こういうふうに言うわけですね。では、民業圧迫になるんだったら、初めからこういうのを建てるなと。何ですか、これは。
 それで、これは全国一兆円かけて建てて、確かに、私、経緯を聞くと、一番初めは昭和三十五年、六年に、炭鉱の方がみんな離職されて炭鉱じゃない町に就職されるということで、一時的にこういう宿舎が要るということで始まったんです、初めは。ところが、だんだん趣旨が違ってきて、こういう形をつくり、つくったけれども、民業圧迫だから募集しないと。それで一兆円。これもまた全部売るというわけですよ。そういう方針が基本的に出たというわけですよ。
 いや、これはめちゃくちゃですね。これは、だれがまた責任とるんですか。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 今お話しになりましたように、最初は、雇用促進住宅というのは炭鉱ですとかそうしたところの皆さん方のお入りをいただくようなところ、あるいはまた都道府県を越えて就職をされるような皆さん方を引き受けてきたわけでありまして、現在もそういう需要はある程度あるわけでございますから、そういう皆さん方に限定をしてこれはお貸しをするということになっていたんだろうというふうに思うんですね。
 いずれにいたしましても、全体として、民営を圧迫するようなことはやめよう、全部それは手放そうということに全体としてなってきたわけでありますから、つくったときはそれなりの理由があって、東京都は……(長妻委員「九年、九年ですよ」と呼ぶ)だから、九年は九年でございますけれども、やはり東京都からも御要請があり、そこはつくったんだということでございますから、そのときにはそれだけの要請があったわけでございます。しかし、今後そういうところはもうすべて持たないようにしようということになりましたから、それは手放すということになってきているというふうに理解をいたしております。
長妻委員 今、雇用促進住宅の経緯の説明がありましたけれども、これ聞きますと、原則は、入居は一年以内だ、こういう原則がある。それともう一つの原則は、移転就職者に限るという原則です。これは、今、ここに住んでいるんだけれども、就職を探してもない、例えば遠くの場所にしかない、その場合の一時的ということ、二つ、基本的な条件であります。
 これは原則一年以内ということでありますが、私が聞いたところによると、三年以上住んでいる世帯の割合が何と全体の七割、七〇・七%が三年以上住んでいるんじゃないですか。そして、十一年以上が三〇・一%、内訳ですけれども。三〇・一%、十一年以上住んでいるんじゃないですか。では、移転就職者は何%ぐらいおられるんですかと聞きましたら、全部で、入っている方の、移転就職者の世帯の割合が二一・五%じゃないですか。
 全然基本原則が守られていないわけでありますが、これはどう説明するんですか。
戸苅政府参考人 今お話しのように、雇用促進住宅をつくり始めましたときは、炭鉱離職者等の、移転先でというか就職先で一時的に住宅を確保せぬといかぬ、こういう人たちを対象にしていたんでありますが、その後の雇用情勢の変化等々、それから住宅事情の変化を考えまして、職業の安定を図るために宿舎の確保を図ることが必要であると公共職業安定所長が認める方、これについても貸与しよう、こういうことになっています。
 具体的には、同居の扶養親族の方を随伴して入所する方とか、あるいは毎月の収入額が、家賃が十万円未満の場合は、原則として家賃と共益費の合計額の四倍以上の方、こういうことでやってきているということでございます。
 それから、先ほどの潮見住宅でありますが、これはさっき大臣も申し上げましたけれども、当時、住宅事情が厳しいということで、東京都の方からぜひ建設をしてほしい、こういうこともありまして、勤労者のためにつくったということであります。
 ただ、入居率が低いというのは確かに問題でありまして、この点について今後、入居者の募集ということについて、民間等の方の民業圧迫という問題も確かにございますが、そのあたりも考慮しながらいろいろ工夫をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
長妻委員 東京都に言われたからつくったと。これは民間企業だったら、だれかに言われたからつくった、入居者が入らない、倒産しますよ、全員解雇ですよ。
 そして、日本全国に千五百カ所あるこういう住宅を管理するのがまた、財団法人雇用振興協会というのをつくって、そこの常勤理事が五人おられるんですが、全員が天下り。四人が労働省OB、一人が財務省OBの方がおられる。従業員は千人おられる。だから、こういうのをいっぱいつくって、だれも入れなくても別に国から補てんしてもらうから困らない、仕事がある。常勤理事五人の方がおられて、どういう経営をしているのか。
 そして、これは法律的根拠を聞きました。そうしましたら、雇用促進事業団法という昭和三十六年にできた法律がございますが、ここに二つ業務があります。
 例えば、一つは、「広域職業紹介活動に係る公共職業安定所の紹介により就職する者のための宿舎の設置及び運営を行うこと。」この二行の文でばんばんこれを全国につくる、これが法的根拠だということ。もう一つ、先ほどのスパウザ小田原とか勤労福祉施設は、この条文です。「労働者のための教養、文化、体育又はレクリエーションの施設その他の福祉施設の設置及び運営を行うこと。」この二行。これで、ばんばん全国につくる。
 これは聞きましたら、局長決裁で、大臣にも知らせなかったということなんです。スパウザ小田原はさすがに大きいから大臣にも知らせた、あとは局長決裁ですと。大臣にも何の書類も回っていません。それで、その局長の下に開発機構がある、雇用・能力開発機構。そして、その下にさっきのこれを管理するような財団法人がぶら下がっている。一つの帝国をつくっています。
 それで、その一つのドンの方が、先ほど申し上げた清水傳雄さん。この方は、八九年の二月から九〇年の六月、職業安定局長をされていた。ここの局長をされていると、本当に帝国のドンになれるわけです。
 九二年の六月に労働事務次官をやめられた。そして、九二年の七月に雇用促進事業団、先ほどの開発機構の前身ですね、ここの理事長に就任、五年間。年収が二千六百万、退職金二千七百万、五年間で一億五千万円を手にしました。当然、事務次官をやめたときにも退職金が八千万か九千万か、かなり高いのが出たのかもしれません。そしてその後、九九年の七月、勤労者リフレッシュ事業振興財団の理事長になりました。この財団は、先ほど申し上げましたように、スパウザ小田原に従業員を送り込むだけのためにできた財団でありますが、ここでも年収二千万取っておられる。それで、今も理事長でおられるということであります。
 そして、スパウザ小田原が八億円、四百五十五億円でつくったんですよ、それを八億円で、もう売るというのを決定したんですよ。それも、古い施設じゃなくて平成十年の三月にオープンしているんですよ、大リゾートが。それでもう売っちゃう、八億円。
 そうすると、スパウザ小田原が売却されて、多分このリフレッシュ事業振興財団というのは、解散する可能性があると思うんですね。そうしたときに、清水傳雄さんは何の責任もとらずに退職金をまたもらう。それで、またどこかに行かれる。だれも何も責任をとらない。食い散らかし。
 そして、去年の十月には雇用保険の料率が千分の二、〇・二%上がった。一年間で約三千億円を超える国民の皆さんの負担です。そして、平成十五年一年間で三千億円の給付がカットされる。六千億ですよ。こういうことが起こっているわけでありますね。
 それで、私、これは本当に提案したいんですが、ここでだれも責任をとらなかったら、今官僚の皆さん、この国会をじっと見ていますよ。こういうことをやってもだれも責任とらなければ、ああそうか、よし大丈夫か、こうなるわけですよ、絶対。これは国会の存在意義ないですから、ぜひこれは責任をここでとらせないと大変なことになる。
 その大変なことは徐々にまたありまして、この同じ雇用・能力開発機構が、今度、私のしごと館、これも有名な話ですが、京都に五百八十億円もかけて私のしごと館を今建設中です。ことしの十月に正式オープンします。これは年に二十五億円の運営費がかかる。入場料は年に二億円だから、差し引き二十三億円赤字だから、これを補てんしていくわけですよ。
 これは若者の仕事についての認識を深める、仕事の体験ができるといううたい文句です。何でこういうところに、宇宙での仕事が体験できますという、宇宙ステーションでの仕事の体験コーナーもある。そんなの、どこか職安にあるんですか、今、宇宙の仕事というのは。これは何かよくわからないですね。アミューズメントパークなら民間にやらせてください。雇用保険ですよ、これは。
 こういうことが今も続いております。これは特別会計ですから、平成十五年度も特別会計、ここも今当然特別会計の審議をしているわけでありますから。それで、財務省の天下りもおられる。
 そして一つ、私、提案します。この雇用・能力開発機構の役員さんは常勤が八人おられますけれども、四人が労働省のOBの方、一人が財務省のOBの方。年収二千万弱もらっている。このOBの天下りの方、機構に天下っている方に即刻今やめていただいて、退職金をお支払いしない、これは私は最低限の措置だと思うんです。そして、このリフレッシュ財団の清水傳雄さんもやめていただいて、退職金を支払わない。
 そして、委員長にお願いしたいのは、前回もお願いしましたけれども、この清水傳雄さん、閣議決定違反をして、スパウザ小田原のような施設をつくって大損害を出した。まず、参考人招致を御検討を、さらに。
藤井委員長 理事会で協議いたします。
長妻委員 私の先ほどの提案でございますが、雇用・能力開発機構のこの天下りの役員は即刻辞職、退職金は支払わない、これは譲れません。
 ここできちんと答弁をして、国会がきちんと議論をしない限り、同じ過ちが必ずまた別のところでも起こりますよ、間違いなく。じっと見ていますよ、これを、この国会を。ぜひ坂口大臣、御答弁をお願いします。
坂口国務大臣 今いろいろのお話ございましたが、全体として見直さなければならないことだけは間違いありません。これはもう見直しいたします。
 いたしますが、今個々に挙げられたようなことをどうするかの話までここで決めるわけにはまいりませんが、全体として雇用保険の状況を今考えましたときに、そういう今までのやり方をどうしていくかということを解決していくということ全体を決めなければならない。そして、その中で、過去の問題についてだれがどういうふうにしたのかということは、それはまたその中で議論をするということでありますから、その具体的な問題をここで決定するというわけにまいりませんけれども、総論として、見直すことだけお約束を申し上げます。
長妻委員 いや、これは今の御答弁で、官僚の方、ほっと胸をなでおろされた方も多いと思いますよ。
 清水傳雄さんがこのリフレッシュ財団を退職するときも退職金を払うんですか。
坂口国務大臣 今どんなことになっているのか私もよく知りませんから、それは一遍調査いたしますけれども……(長妻委員「払うんですか」と呼ぶ)いや、払うか払わないかは、それは全体にかかわる話でありますから、全体をどう見直すかの中でこれはやらなければいけないと思います。
長妻委員 これは、雇用・能力開発機構というのは平成十六年三月に独立行政法人になるんです。まさかこの天下りの五人の方が、横滑りでまた独立行政法人に行かないでしょうね。最悪でもこのときには全員の方にやめていただいて、退職金は支払わない、これはもう本当に当たり前の話だと思います。財務大臣、どうですか。
塩川国務大臣 この個別の問題は別といたしまして、一般論で申しまして、今ほどのそういう御質問は非常に私たちには参考になります。これはやはり、国民が皆聞いておるだろうと思います。それに対して政府としても、やはりしかるべき措置はしなければならぬだろうと思います。そうでないと、これが事実とするならば、私は全面的にそうだと肯定しておりませんけれども、しかしそうである、そういうニュースがあるとするならば、これはニュースはニュースとして、しっかりとやはり我々も検討しなきゃいかぬし、その対応も考えなければいけないだろうと思っております。
 しかし、その問題と個々に今現在起こっております問題とは、またこれは個別の問題であろうと思いますけれども、一般論として見た場合、今おっしゃるような、そういう公社公団あるいは公益法人等のあり方全体について小泉内閣が改革をしようと言っておるんでございますから、その改革の方向をしっかりと見定めてやっていくべきだと思っております。
長妻委員 もうそういう話は信用したくありません。
 それでは、再度厚生労働大臣にお尋ねいたしますけれども、ぜひ大臣、思い切って御答弁してください、本当に。官僚をかばう何かメリットがあるんですか。全然ないでしょう。政治家ですから、きちんと答弁してください。
 再度言いますよ。雇用・能力開発機構の天下り役員、今五人おられます。この方々が、平成十六年三月にこの機構が独立行政法人になるときに、そちらには行かせない、そこでやめさせる、退職金を支払わない、これを前向きに御答弁いただかないと質問できませんから、よろしくお願いします。
坂口国務大臣 独法に皆移りますときには全面的に見直したいというふうに思っています。この問題だけではなくて、全部見直し。その中で、今までのように皆天下るというようなことは許さないという態度でいきたいというふうに思っています。
 個々に、どういう人が今そこに役員になっていて、その人が何年勤めてどういうことになるのかということまで私ちょっとわかりませんから、それは全部だめだ、なんだというようなことまでここで私が言うわけにはまいりませんけれども、そこは国民の皆さん方から御批判を受けないように対処したい、こういうふうに思っております。
長妻委員 では再度、角度を変えてお尋ねしますけれども、この五人の天下りの今の役員の方が退職されるときは、せめてこれは退職金は支払わないということを前向きに御答弁いただきたいんですが。
坂口国務大臣 類似の、ほかの皆さん方の問題もあるわけでありますから、ほかの独立行政法人の問題もあるわけでございますから、それらも全部ひっくるめまして、どういうふうに対応するかというのを考えたいと思います。
長妻委員 そうしたら、いつまで、この問題です、一般論じゃなくて私が今申し上げた問題、この役員の天下りの方々をどう処置するかというのはいつまでに検討して回答を出されますか。期限を区切ってください。
坂口国務大臣 独法に移行するまでにはやらなきゃならない話でありますし、その少なくとも半年前にはすべて決着をしなきゃならない問題でございますから、ことし、できるだけ年末までの間にすべてのことを決着していきたいと思っております。
長妻委員 そうすると、その年末までの決着の中には、今の天下りの官僚の受け入れ、そして退職金を支払う、支払わない、そして清水傳雄さんの退職金を支払う、支払わない、これも入っている、含まれるということを明言してください。
坂口国務大臣 すべて含めて見直しを行いたいと思っております。
長妻委員 もう一つの雇用に関する問題でございますが、政府は、この平成十五年度予算をここの本委員会に出してきたときに、今、資料三でございますが、「平成十五年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」という資料も同時に添付されて、委員の皆さんにお配りをいただきました。それを見て私はびっくりしたのでございますが、四角く囲ってあるところを見てください。平成十五年度の完全失業率の見通しは五・六%、平成十四年度よりも〇・二%上がる、そして雇用者総数は横ばいですね、就業者総数が減ると。
 今回の予算というのは、雇用をふやす、こう高らかに宣言されて出てきた、そして審議をしていると思ったのでございますが、これはどういうことですか。
竹中国務大臣 雇用の情勢は大変厳しいということで、個別の政策については厚生労働省の方でいろいろ検討いただいているわけですが、今の労働市場は、構造的に大変厳しい需要と供給のミスマッチを抱えている。それをとにかく放置しておいては大変失業率が上がる。それを何とか食いとめるためにさまざまな措置を講じたい。その中の重要なものを予算の措置でお願いしているわけですが、この構造的な部分というのはかなり根強いものがありまして、結果的に失業率は若干高まるということを甘受せざるを得ない。そういうことを踏まえて、しかしさらなる努力をしていきたい、そのような趣旨でございます。
長妻委員 これは政府の中で、平成十五年度の予算が通っても、内閣府に聞きました、この計算を。そうしたらば、平成十五年度の予算の中身も見て、そして平成十四年度の補正予算の中身も見て、勘案してこれを書いた、うそは書けませんでしたと内閣府の方は言われていました。
 これは塩川大臣にお聞きしますけれども、結局、本予算が通っても失業がふえるんじゃないですか。それがあらかじめわかっていれば、予算を発表する前にきちんと組み替えて、失業率が下がるような予算を出さなきゃだめじゃないですか。何でこんなふうになったんですか。
塩川国務大臣 今、この失業率、労働、雇用の問題を取り上げられておりますけれども、全般に政府の統計というものは、ある一定の実績をもとにしてそれを集約したものでございまして、それが現実の数字とはちょっと若干違うということは、もうずっと過去において何遍もあることである。要するに、学問的な話として出てきておるものでございまして、これが、今後の経済の運営あるいは行政の進め方等によって、予算の執行上の問題ともいろいろ絡みまして、またいろいろと変化が出てくると思って、一つの目安として出したものであるということを御理解いただきたいと思います。
長妻委員 ちょっとこれ、きちんと説明していただかないと、これは審議できません。
 平成十五年度のを政府はすばらしい予算だと言って、雇用を支えると言って国会に出してきているんです。ところが、同じ政府が、いや、雇用は支えられませんよというのを一緒に資料を出してきているんです。納得できません。
塩川国務大臣 ですから、私が先ほど説明いたしましたように、こういう指数というものは一つの目安として出てくるものであって、だからといって、これを、労働失業率を例えば五・三にするとか五・二にするということになってきたら、それは過去の実績も踏んまえた上から見て不自然な数字になってくるということでございますので、要するに、先ほど申しましたように、統計上の一つの学問的な数字をはめ込んだということでございまして、実情と、実際は、経過した、一年たったその経過というものとの差は当然出てくるに違いないと思っております。
藤井委員長 長妻君。――長妻君、質問してください。(発言する者あり)
 竹中金融・経済財政担当国務大臣。
竹中国務大臣 集中調整期間の間は、さまざまな形で経済の成長率も低いことを甘受しなければいけませんし、労働市場そのものも構造的な問題を抱えている中で、少しずつその需給のミスマッチをなくすような努力をしていかなければいけない。そういうことを積み重ねて、集中調整期間が終わった後には、経済も本来の成長率を取り戻すであろうし、そのような時点では雇用についても安定的な状況が出てくるということを期待しているわけでございます。
 ちなみに、実は昨年度も同じような形で、平成十四年度の予算の審議をお願いするときに、十四年度の失業率は若干上がるだろうという予測を出しております。それに基づいて御審議をいただいております。
 幸いにして、昨年に関しまして私たちが若干高まるだろうというふうに予測したものよりは、現実の数字は少し失業率は低い数字になっておりまして、今回も、さまざまな政策努力を重ねることによってそういうふうな結果が出るように努力をしたいということでございます。
藤井委員長 長妻君。(長妻委員「ちょっと納得できません」と呼ぶ)長妻君、質問してください。
 はい、野党の理事さん、質問させてください。(発言する者あり)だめです。これは、納得しないからといって質問しないのはだめです。(長妻委員「こんなばかな予算ないじゃないですか」と呼び、その他発言する者あり)質問させてください。だめです。
 塩川財務大臣。
塩川国務大臣 御指摘のありました数字で見ましたら、確かに厳しい状況でございます。けれども我々は、そういう厳しい状況でありながらも、なおセーフティーネットを十分にして、そういう事態にならないように鋭意努力して、回復に努力していくということをいたします。
長妻委員 それは内閣府の説明と違うんですね。内閣府に私が聞いたときには、平成十五年度の予算の中身もちゃんと見ました、そして、平成十四年度の補正予算の中身もちゃんと見ました、それで、平成十四年度の補正予算はもう通りましたけれども、平成十五年度の予算も通って執行されるとすれば、失業率はそれでも上がるんですというふうに説明しているわけです。
 再度聞きますけれども、では、一生懸命つくられた予算案だと思いますけれども、これを通して執行しても失業率は〇・二%程度上がるということですね。書いてあるから。それを、ごまかさないでください。
塩川国務大臣 私は、先ほども申しておりますように、これはあくまでも予測をしてきた一つのめどでございます。でございますから、それよりもさらに好転するように努力するというのが政治の努力でございまして、その出ております五・六というのは、一つのめどであるということで御認識いただきたいと思います。
長妻委員 これは、めどというのは、五・六というのはそちらが出した数字ですから。平成十四年度の見込みが五・四であれば、これを上回ることは絶対にさせない、これを下回らせる、こういうふうに明言いただきたいと思うんです。
塩川国務大臣 努力はいたします。
竹中国務大臣 塩川大臣おっしゃいましたように、とにかく我々としては、少しでも減るように努力をする、これが政府の重要な役割であるというふうに思います。
 しかしながら、そこにも書いておりますように、成長率そのものが十四年度の見込み〇・九%から十五年度は〇・六%に、これはアメリカ等々の非常に不確実な要因があるということで成長率が下がる。成長率が下がる以上、失業率が若干高まるということは甘受しなければいけないわけでありまして、そうであるからこそ、これはまさに塩川大臣おっしゃられたように、セーフティーネットを張って、しっかりとそこを支えたいということであります。
 失業率は、成長率が下がる以上、失業率は上がるということは、これは甘受しなければいけないことであるというふうに思っております。そうであるならば、成長率そのものをどんどん高めていけというようなことにもなってしまいかねないので、そこは構造的な問題も踏まえてしっかりと対処をしていきたいということでございます。
長妻委員 今の説明はわかりました。
 甘受、だから結局政府の、私、いろいろな方の答弁を聞いても、この平成十五年度予算で雇用をふやします、こういう話が華々しく出ていたわけでありますけれども、本音はというか正しい理解は、今言われたように、いや、平成十五年度のこの予算を通しても失業率は高くなるんだ、しかしそれは甘受しなければいけないんだ、こういうことだという今御答弁ですから。話としてはわかりますけれども、そうであれば、失業率を上げない予算をもっと頭をひねってつくるべき、それを国会に出すべきじゃないですか。
 ただ、我々は予算案をつくりましたけれども、まだ政府に入っていませんから出せないわけでありますので、私は、この予算は大変問題ありという認識を今いたしました。
 次の質問に移りますけれども、非常勤職員の雇用の問題に移りますが、これはさきの質問で、人事院の方が、本院だけで三十七人の非常勤職員のうち二十六人が職員の紹介、コネ採用だったということを認められております。そして、私、いろいろ調べましたら、お役所で御子息を非常勤職員で入れているという例もありました。そして、これは笑い話みたいな話でありますけれども、国のハローワーク、ここでも非常勤職員、パートさんをいっぱい雇っている。身分は国家公務員です。調べましたら、日本全国のハローワークで、千四人の方が職員の紹介で雇われている。コネ採用、縁故採用です。ハローワークなんだから、すぐ前に求職票を出せばいいわけですよ。ハローワークが職員の紹介、コネ採用している。
 そして、ハローワークで採用しているというふうに答えたところの所長さんに、私、電話しました。そうしたらば、いや、ハローワークでは採用しているのは確かだけれども、求人票をハローワークに出すと、ここの職安は九時から十七時で日給が九千円、非常にいいお給料なので、わあっといっぱい応募者が来て、面接するのが大変なんですと所長さんはこぼしておられました。だから、そこのハローワークは、求職票を出さないで、窓口に相談しに来たよさそうな人を一本釣りで採用しています、こういうことを言われていました。
 それと、先ほどお配りした資料の四を見ていただきますと、これは省庁別の非常勤職員の方の数です。二十一万七千二百五十人もおられる。雇用が厳しいときに、やはり公募しないとよくないんじゃないか。
 そして、資料の五は、調べていただいたわけでありますけれども、これは本省分のみです、本省分のみでどうやって採用しているか。A、B、C、D、このDのところが職員の紹介がきっかけとなったということで、まあ職員のコネ採用でありますが、その中でも、事務補助職員という方は、ある程度どなたでもできるのではないかという推定のもと、九百六十五人を聞いてみましたところ、資料五の下の表です、一番多いのが経済産業省、コネ採用の事務補助職員の人数ですね。二番目が国土交通省、三番目外務省、四番目総務省、五番目農林水産省となっています。これはせめて公募した方がいいと思いますよ。
 そして、非常勤職員の法的根拠でございますが、国家公務員法十三条にあります。ただし、十三条では、あくまでも例外として非常勤職員を認めますよ、試験も選考も要りませんよと書いてあるんですが、十三条にはもう一つ、こういうことも書いてあります。ただし、この特例は、国家公務員法の第一条の精神に反するものであってはいけないと書いてあるんです。国家公務員法の第一条は、この法律は、職員がその職務の執行に当たり、最大の能率を発揮し得るように民主的な方法で選択されるべき、民主的な方法で選ばれるべきというふうに国家公務員法でうたっているわけです。それを逸脱しちゃいけない。
 私は、職員の紹介、その息子さん、娘さんがおられるというのは、決してそれだけで悪いと言っているわけではなくて、不透明な採用だと疑われるわけですよ。そして、本当に職を探しておられる優秀な方の機会を喪失してしまう。税金でお給料もらっているわけですから。
 人事院総裁にお伺いしますが、人事院もコネ採用していますけれども、もうコネ採用をやめて、全部ハローワークとかあるいはインターネットのホームページに掲載する、非常勤職員の方。ぜひ明言して、各省を指導してください。
中島政府特別補佐人 できるだけそのようにしてまいろうと思います。
長妻委員 では、人事院も今後、人事院に限って申し上げると、ないということですね。非常勤職員はすべてハローワークとか公募にする、切りかえるということを明言ください。
中島政府特別補佐人 ハローワークとかホームページを通じて採用するようにいたしますが、それで採用できないというような場合には、やはりだれか人を通じてということがあるかもわかりません。できるだけそれは避けてまいりたいというふうに思います。
長妻委員 それと、もう一つの問題は、実は、常勤の国家公務員の方も、一般職の国家公務員の方、八十万人おられるんですが、うち試験じゃない採用の方が四六%もおられるということなんですね。ですから、これらの方々、三十七万人、今、一般職の国家公務員の全部で八十万人のうち三十七万人が試験じゃない採用だということであります。
 その中には、私も聞きましたら、自動車の運転手の方、この方々は、免許を持っていればコネで採用している、国家公務員を。そういうところもありました。あるいは、特定郵便局長。五人に一人が世襲だというふうにも、聞くところそういうお話もありますけれども、試験を受けさせないんですね。試験の合格率が、平成十二年度九六%、平成十三年度八八・八%、試験を受けた人はほとんどが合格する。年収が、五十二歳平均九百十万円、定年六十五歳。大変いい仕事でもあるわけでありますが、こういうコネ採用が一般の公務員にもある。
 これは一度、厚生労働大臣にもお聞きしますけれども、こういうものは基本的に全部公募にする、フルオープンにするということは考えられないですか。
坂口国務大臣 各省庁それぞれのやり方でおやりになっているんだと思いますが、少なくとも、厚生労働省といたしましては、今後すべて公開をし、そしてインターネット等でもわかるようにしまして採用するということにしたいというふうに思っております。現在のところも、九十何%かは公募しておるわけでございますけれども、今おっしゃるように、職員等の紹介によるものも七・八%ございまして、約一千名ぐらいあるということでございます、今現在のパートの皆さん方の問題でございますけれども。今後はすべてしていきたい。
 ただ、お許しいただきたいのは、例えば障害者の皆さん方に対します、目の御不自由な方に対する問題ですとか、耳の御不自由な皆さん方に対する問題とか、そうした特殊な問題につきましては、だれでもできるというわけじゃございませんから、そうしたことにつきましての御理解はひとついただきたいと思っております。
長妻委員 最後の質問でありますけれども、質問レクの調査の問題でございますが、いろいろ議員の質問レクの調査をしているということでありますけれども、せめて私の、長妻議員という名前を書いた調査票は、それはもう見せていただくのは当たり前だと思うんですが。
上野内閣官房副長官 この調査は、副大臣会議で、長年、超過勤務が多い国家公務員の健康管理からやっておるわけでございまして、そういう点から調査をしておりますので、目的外に、個人の方といえども提出は控えさせていただきたい。政府としては、こちらの方としては提出させるのは御勘弁をいただきたいと思います。
長妻委員 納得できませんけれども、時間が参りましたので、質問の時間が及ばなかった大臣の皆さんには申しわけございませんでした。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増委員 共同通信が八日、九日に行いました全国電話世論調査の結果、イラク攻撃反対七八%、賛成が一五・五%ということで、イラク攻撃反対という世論が賛成を大きく上回った、そういう結果が出ております。
 このイラク攻撃反対七八%という数字の意味でありますけれども、アメリカが準備を進めているイラク攻撃についての反対、賛成、推測いたしますと、日本政府はまだ国民に対してはっきりした考え方や、さらには政府としての態度というのを明らかにしていないと思うんですね。今までの国会答弁の中でも、小泉総理を初め、さらなる安保理決議、さらなる国連決議が望ましいという表現で、今すぐ攻撃をするのはいかがなものかという雰囲気をにじませつつ、決議があれば攻撃をしてもいい、あるいは決議がなくてもやむを得ない、そういう余地も残している。
 したがって、恐らく政府は、アメリカのイラク攻撃について支持をするか、あるいは理解をするにとどめるか、さらなる国連決議なしでやれば理解するにとどめ、さらなる国連決議があれば支持するまでいけるのか、その辺で悩んでいるんじゃないかと思いますけれども、国民にとっても政府の姿勢がはっきりしませんし、また政府の考え方にもはっきりしないところがあるため、少なくとも賛成できるだけの根拠が国民に対して示されていないということが、賛成の数字の低さ、反対の数字の大きさにつながっているのだと思います。
 また、別の角度から分析いたしますと、政府から情報の開示やあるいは考え方の開示というものが少ないために、国民としても何が何だかわからないまま情緒的に答えてしまっているのではないかという推測もできます。何が何だかわからないけれども、どうも戦争が近づいているようだ、アメリカがイラクを攻撃するのが秒読みになっていると報道もされております。そういう中で、何となく怖い。そういう中で、とにかく怖いのは嫌だと。恐怖感の裏返しとして、とにかく反対、戦争反対ということで、七八%という大きい、高い数字が出ているのではないか。
 そこで、私がきょうこの質問でまず訴えたいのは、リスクコミュニケーションということであります。この言葉はもともと、原子力発電の安全性でありますとか、また食の安全性で最近使われている言葉でありますけれども、その対象となっている問題の危険性、どこにどういう危険があるのか、専門家の意見、また現場の意見、そういったものをきちんと開示して、そして一般の国民の声、これもきちんと受けて、専門家と一般の人がお互い理解し合った上で、そのリスクというものに共同で取り組んでいく。
 安全保障の問題は、まさに国民が一つとなって取り組んでいかなければならない問題であります。政府だけが突っ走ればいいというものでもありませんし、また国民世論が政府と離れて暴発してしまうようなことがあってもよくない。
 どうも最近の日本の社会を見ておりますと、あるいは国の全体を見ておりますと、国全体としての情報処理がうまくできなくなっている。例えば、経済の行き詰まりについても、不良債権問題にしても、どこにどういう不良債権があるのか、どこまで本当でどこまでうそなのかわからない。そういう事実関係がよくわからない中で、関係者が萎縮して経済がうまく回らないというあたりに実は日本経済不振の本質があると思っておりますし、また、政治や外交につきましても、小泉、眞紀子ブーム、今から振り返ればどう考えても異常な人気でありました。
 そういった、国民が十分な情報を得ないまま感情的になって判断してしまい、またその国民の情緒に基づいて政治がいいかげんな政治をしてしまうようになっては、日本全体として国のかじ取りを誤ってしまう。このイラク問題について、またその他の安全保障問題、外交問題についても、日本がそうならないようにということで、きょうは質問させていただきたいと思います。
 基本的な、素朴な質問と言ってもいいんですけれども、イラクの大量破壊兵器問題が今これほど問題になっている。イラクの大量破壊兵器問題というのは、十二年前、湾岸戦争が終わったころからずっとあるわけでありますが、それがなぜ今このような深刻な問題になっているのか。恐らくこれは、九月十一日テロ、アメリカ同時多発テロがきっかけで今改めてこの問題がクローズアップされているということなんだと思いますが、そういう認識でいいんでしょうか。
川口国務大臣 まず、お答えする前に、前提として委員がおっしゃられたコミュニケーションの重要性、これについては私も全く同感でございますし、委員がおっしゃられた幾つかの言葉の中に、心の中から同意をさせていただくという部分もございます。外務省としても、今までも努力をしてきているつもりでございますし、私も個人的にはかなり努力をしているつもりですけれども、引き続きこれはやっていかなければいけないと思っています。
 それで、その上で、御質問ですけれども、九月十一日のテロ、この問題がテロの脅威あるいは大量破壊兵器の脅威についての認識を一段と深めたという側面は確かにあると思います。ただ、我が国としては、別にこの事件と大量破壊兵器の問題を一緒にして考えているということではない。委員がおっしゃられましたように、もともとこの大量破壊兵器の問題というのは、イラクが大量破壊兵器を実際に使いあるいは保有している危険があってというその実態と、それから国連のたび重なる決議、これをずっと無視をして国連に挑戦をしている、そういった二つのことが背景にあって、大量破壊兵器がイラクによって使われるあるいは周辺国に拡散をする、そして委員がおっしゃったようなテロ、テロリストの手に渡る等々の問題があるので、国際社会が懸念を持っている、そういうことだろうと思います。
達増委員 これは多くの国民が疑問に思っていると思うんですけれども、今大臣は、我が国としてはイラクの大量破壊兵器問題ということと九月十一日テロというのを一緒にしているわけではないとおっしゃいましたが、一方で、その後、イラクの大量破壊兵器がテロと関連づけられる危険性についても指摘はされていましたけれども、もっと端的に、九月十一日テロで、アメリカ・ニューヨーク、ワシントン、そういったところであれだけ大規模なテロが起きた。そこに、イラクが持っているような、持っていると疑われているような大量破壊兵器、核あるいは毒ガスでありますとか炭疽菌といった細菌兵器、それがテロリストの手に渡って、再びアメリカの大都市、あるいはアメリカじゃなくてヨーロッパやオーストラリアかもしれませんが、そういったところで大量破壊兵器がテロリストによって使われたら、これはもう大変だし、かつその危険が非常に差し迫っている。
 そういう事態に九月十一日テロで世界じゅうが気づいて、特にアメリカは強く問題意識を持って、それでその間、ある程度微温的に、それなりに制裁も発動していますからそうそう微温とも言えないんですけれども、ただ、何十万の大軍でイラクに攻め込もうなんという問題は、九月十一日テロ以前にはなかったことですからね。今、アメリカがもう十万、二十万の兵力を準備して、すぐにもイラクを攻撃しなければならないというその必要性というのは、テロリストの手に大量破壊兵器が渡ることの脅威が今非常に強いからということなのではないんでしょうか。
川口国務大臣 先ほど一緒に考えているわけではないと申し上げたのはちょっと言葉が不適切であったかもしれませんけれども、そこで申し上げたかったのは、イラクにアルカイダの分子がいるからと、これはこの間ブッシュが言いました、ブッシュでしたでしょうか、パウエルが言いましたけれども、だから、大量破壊兵器が問題だと考えているわけではない、そういう意味で申し上げたということです。
 それで、大量破壊兵器の問題は、実態面としては、まさにイラクが過去にこれを持っていて使って、あるいは今も持っている懸念が非常にあるという事実がずっとあって、これが、イラクみずからがまた使う、あるいはイラクが周辺国にこれを拡散させる、あるいはさらにイラクからあるいは第三国からテロリストの手に渡る、そういったことが問題であるというふうに国際社会が全体として考えていて、その懸念を払拭するために、イラクに対して、廃棄をした証拠を見せる、あるいは廃棄をしていなければ現物を見せるということを言っていることに対して、イラクが十二年にわたってこれを無視、これをしてこなかった、きちんとこたえてこなかったということについての懸念があるということでして、その拡散の危険あるいは懸念というのは、それはさらに中東地域の平和と安定、これを乱すものであろう。これはまた我が国にとっても非常に大きな懸念であるということであるわけです。
 そういったことがその原因、背景あるいは理由として、大量破壊兵器の問題が大きな問題であるというふうに我々は考えている、そういうことでございます。
達増委員 政府が端的に、大量破壊兵器がテロリストに渡ることが問題なんだと言い切らない、核拡散、大量兵器拡散の一般的な懸念や周辺国、中東の平和と安定の問題ということも一緒にしているのは、恐らくアメリカのイラク攻撃というものが、今回のテロリストとの関係、九月十一日以降問題意識が高まったテロリストの関係というところを主な理由としてイラク攻撃をするわけではなく、湾岸戦争のときの停戦合意違反ということですね。
 これは、先週の基本的質疑の答弁の中でも大臣言及されて、新聞報道では、六七八と六八七ですか、湾岸戦争停戦合意違反ということでの武力行使ということもあり得るということで、新聞報道などでは、そういう武力行使を政府が認めたというように報道されていますけれども、アメリカがそこを理由にして攻撃して、そこに日本政府として理解を示すと言っておくためには、テロリストに核兵器が、大量破壊兵器が渡る危険性だけを理由にはできない、そういうことなんじゃないかと思うんですね。
 ただ、その論理がおかしいと思うのは、今まで、大量破壊兵器の拡散の危険性とか、周辺国に対する脅威、中東の平和と安定の問題というのは、湾岸戦争が終わってから一貫してずっとあったにもかかわらず、何も十万、二十万の兵力で武力行使しようという話は出なかったわけですよね。だから、要は、テロリストに大量破壊兵器が渡らないようにできれば、何も武力行使をする必要はないんじゃないかと思うんですけれども、政府としては、なかなかはっきりそう言えないので、湾岸戦争のときの停戦合意違反ということを組み込んだ形で言い続けている。これは国民にとっては非常にわかりにくいわけですよ。だから、攻撃しなければならないのか、しちゃだめなのかがはっきりしない。
 もし、脅威が本当に差し迫ったものであれば、九月十一日テロ以前にもイラクを武力攻撃しなければならなかったはずですし、また、テロがやはりきっかけであって、九月十一日以降、大量破壊兵器がテロリストに渡ったときの脅威というのが格段に実質的に高まっているということであれば、日本政府は積極的にそのことを国民に知らせて、むしろアメリカへの渡航についても危険かもしれないというようなことを積極的に言わなければならないのに、そういう努力も余り日本政府はしているようには思えない。だから、どこに脅威があって、アメリカの武力行使の可能性まで、必要性まで議論することになっているのかがわからないわけですよ。
 答弁しやすいように質問をちょっと組みかえますと、どこに脅威があるのかなんですね。イラクの大量破壊兵器の拡散でありますとか、周辺国への懸念、中東の平和と安定という問題、それは、十万、二十万の兵力で武力鎮圧しなければならないほどの脅威なんでしょうか。
川口国務大臣 この問題の何が脅威なんだろうかというのは一番基本的な問題でございまして、それで、それのお答えは、先ほどの繰り返しになりますけれども、大量破壊兵器、これはまず兵器として非常に問題であるということは御説明する必要もないかと思いますけれども、それをある国が持っている、その国が使うかもしれない、なぜならば過去に使ったことがあるから。それから、その国が、周りの国にあるいはどこかの国にそれを拡散するかもしれない。そしてさらに、委員も先ほどから強調していらっしゃるように、イラク自身あるいは第三国からテロリストの手に渡るかもしれない。これはブッシュ大統領が年頭教書で言っていますけれども、九・一一にあったような事件、このときに、飛行機が突っ込むのではなくて大量破壊兵器、例えばBCがまかれたらどんなことになるだろうかということを言っていますけれども、まさにそういうこと。それを起こらないようにしなければいけないというのがこの問題のずっと存在をするところであると思います。
 それで、それについて、そういった実態に加えて、さらにイラクは過去ずっと、十六の決議、あるいは十二年間、十年以上の期間、国連の決議、イラクがそういうことをしてはいけないという決議を無視し続けてきていた。国連に対してずっと、無視というのは少し言い過ぎかもしれませんけれども、それにこたえてこなかった。国連に対してずっと挑戦をしてきた。これを国際社会としてこのまま放置をしておくということができないというのが各国の認識であって、したがって、満場一致で一四四一が昨年の十一月にでき、これによってイラクに最後の機会を与えたということであるわけです。そして、イラクが能動的に査察に協力をしなければ、すなわち、みずから、例えば廃棄をしましたという証拠を積極的に見せていかなければ、イラクは深刻なる結果に直面することになるであろうということも決議に書いてあるということであるわけです。これがその本質のところであると思います。
 したがって、国際社会が一致してイラクに問題があるということ、一四四一自体も認めているわけですし、ということであるということだと思います。
達増委員 我が国として主体的にこの問題に取り組む、これが多分小泉内閣の基本姿勢だと思うんですが、主体的に取り組むに当たっては、軍事問題でありますから、人の命がかかわる問題、日本人の命かもしれないし、イラク人、あるいはまた別の諸民族の命かもしれませんが、人の命がかかわる問題なので、そこで主体的に判断して行動していくに当たっては、まず一つは、単に決まりを守るためというだけで人の命をかけるわけにはいかないと思うんです。そこには実質的な必要性というのが明らかにならなければならない。
 国際社会として、今まで、おっしゃるように、イラクの大量破壊兵器の問題性をずっと議論してきて、だめだだめだと言い続けてきた。ただ、そこは、一種武力行使には及ばない範囲内で今までずっとやってきたところを武力行使にハードルを上げるに当たっては、その実質的な必要性が示されなければならない。特に、日本がそこに賛成だ反対だ、あるいは参加するしないを決めるに当たっては、実質的な必要性ということが、国民的にも詰めた議論がされることが必要だと思うんですね。
 そこで、もし本当に、今、アメリカは物すごい脅威だと思っているから、自分の国の軍隊を大挙派遣して、とにかくイラクの大量破壊兵器をつぶさなきゃだめだということで必死になってやっているわけでしょうけれども、日本政府は果たしてどうなのか。もし大量破壊兵器が、今すぐにもイラクの大量破壊兵器がテロリストの手に渡って、あすにも、きょうにも、またニューヨークやワシントンといったところで、今度は毒ガスや炭疽菌を使ってのすさまじいテロが起こるかもしれない。アメリカはそう思っているから軍を派遣しているんでしょうけれども、日本も同じくらいの問題意識を持つのであれば、渡航自粛とか、自粛までいかなくても、政府から国民に対して警告を発するべきでしょうね。九月十一日テロでは、少なからぬ日本人がニューヨークで犠牲になっているわけですから、もうこれ以上一人もああいうテロの犠牲にさせないという覚悟が政府にあれば、そういうことをするんだと思います。
 また、イラクの大量破壊兵器の拡散や、また周辺国への脅威が非常に高いのであれば、そこは、サウジアラビアの防衛やクウェート解放のために多国籍軍をつくった前回湾岸戦争のときのように、これはもう多国籍軍をつくってでもその脅威を除去しようと日本が率先して提案してもいい話だと思いますよ。自由党はそういう国連決議に基づく多国籍軍には自衛隊が積極的に参加すべきと思っていますから、日本も参加しますからドイツもフランスも一緒にやりましょうということを日本が率先して言ってもいいと思っているんですが、政府は自衛隊の参加までは憲法解釈上できないとおっしゃっているんでしょうが、少なくとも国連の議論については日本がそこまで主張することはできるはずなんです。そういったことを日本が全然やらないでいるということは、日本政府としてイラクの脅威をさほどのものと見ていない、そういう態度のあらわれなんじゃないか。それが日本国民に大分態度として伝わっているからこそ、七八%がイラク攻撃反対と答えちゃうんだと思うんですね。そこは非常にちぐはぐだと思うんですよ。
 政府のレベルでアメリカのイラク攻撃について支持するか、あるいは理解にとどめるか悩んでいるんでしょうけれども、ただ、国民に対する態度の示し方としては、それがいかにせっぱ詰まった脅威であるかということを国民に態度をもって示していない、そこは政府のあり方として非常に問題だと思うんですが、外務大臣、いかがでしょう。
川口国務大臣 我が国が、仮に武力行使があったとして、どういうような態度をとるかということについては、これは今まで再三再四申し上げているわけですけれども、まず基本的には、これは新たな国連の決議があることが最も望ましいということを言っているわけです。
 それで、その決議がなかった場合どうかということですけれども、これは先ほど委員がおっしゃったように、主体的に態度を決めますということを言っておりまして、そのときに考慮するというか、踏まえるべき点として幾つか挙げているわけですけれども、一つは、大量破壊兵器というのが我が国自身にとって問題であるということであります。
 それからもう一つは、イラクがこの国連の決議を引き続き守ることを我が国としては働きかけている、ほかの国と一緒になって外交努力をやっているわけですけれども、これに対して今後どういう態度をとっていくかということがあります。そのイラクの態度をめぐる国際的な情勢というのがあると思います。
 それから三つ目に、我が国としては、国際社会の責任ある一員であるので、この立場を踏まえてどう考えるかという点があります。
 ほかにもありますけれども、主なものを挙げればそういうことだと思います。
 ということを踏まえて考えていくということでございまして、委員がおっしゃるように、それならば脅威が実際にあるということをもっと国民に知らしめるべきではないかということについて、それはおっしゃるとおりでございまして、我が国としてはそういった努力も行っております。
 例えば、これは、米国におけるお話をなさいましたので、米国は米国で、テロ攻撃に対しての警告のレベルを発表しているわけですね。我が国は、例えば二月の七日に米国政府はこの警告レベルを黄色からオレンジに変えた、それぞれ説明があるわけですが、ということを言っています。これについては、我が国のホームページで、こういった警告についてはそのままそれが読めるような形で出しております。
 また、我が国自身の中近東における渡航の情報についてのリスクの度合いをお知らせするということもやっておりまして、ありとあらゆる機会を通じまして、邦人の安全を守るということは非常に大事でございますので、それはやっているということでございます。
 一かゼロかということではございませんで、基本的に、邦人の安全については、それぞれの各人の判断があるわけですし、各人の御事情もあるわけですから、我が国としては、そういう情報を発信して、最終的にはそれぞれの方が御判断をいただくことになるということは言うまでもないわけでございます。
 それから、多国籍軍等の対応、これについてはまたいろいろな考え方があると思いますけれども、我が国としては、今イラクに対して、国連の決議を守るように、能動的に行動するように働きかけている、外交努力をさまざまに展開いたしております。細かくは申し上げませんけれども、最善の努力を尽くしている、そういうことでございます。
達増委員 二段構え、三段構え、非常に論理的に美しく構築された答弁ではあるんですけれども、それが冷静に示されれば示されるほど、本当にせっぱ詰まっているのだろうかという疑問がかえって頭をもたげてしまいます。
 これは内閣全体の問題でありまして、総理大臣が先頭に立ってどう取り組んでいるかという姿勢の問題ですから、やはりこれは、総理大臣にも出ていただいた、イラク問題を初めとする外交、安全保障の集中審議をこの予算委員会でもやらなけりゃならないなということを指摘させていただきたいと思います。
 日米同盟という観点から質問をさせていただきますけれども、イラク問題について、小泉総理、先週の基本的質疑の中で日米同盟ということにも言及して、考えていかなければならないとおっしゃいました。
 ただ、日米同盟の根拠になっている日米安保条約というのは、日米の防衛協力について規定した基本的な約束でありますけれども、あくまで日本が攻撃されたときの防衛協力、せいぜい極東の平和と安全のために米軍が日本の基地を使用することができるという約束で、極東の中での日米防衛協力を取り決めているのが安保条約であります。
 したがって、日米同盟に基づいて日米が安全保障について協力していく場合に、まず極東の中での協力という話なんだと思います。そういう意味では、北朝鮮の脅威に対応するというのは、まさに日米安全保障条約の問題。北朝鮮からの武力攻撃があった場合、また極東の平和と安全のための活動が必要になった場合。そういう意味では、北朝鮮の核開発やミサイル保有等の問題こそ日米同盟の観点からは優先すべき事項であって、イラク問題については、日米同盟の枠組みで考えるというよりは、やはり国連を中心とした国際的な協力の枠組みで日本として取り組むのが適当と思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。御発言をお願いします。
川口国務大臣 日本とアメリカは同盟関係にあるということでございますけれども、イラクとの関連においてこの同盟関係というのが一体何かということは、基本的に、同盟関係にある国ですから、さまざまな考え方、例えば民主主義ですとか自由ですとか、あるいは市場経済のメカニズムですとか資本主義ですとか人権ですとか、そういった社会の基本的な価値、これを共有する国であるからこそ同盟関係がある、あるいは同盟関係を維持することができている、そういうことであると思います。
 したがいまして、イラクの問題における日米の同盟というのは、それは大量破壊兵器についての危機感を共有するということでも当然あるわけですけれども、そういった考え方を共通にする国が、国際社会の中で、今国連が一致して対応しなければいけないと言っているイラクの大量破壊兵器の問題、これにどうやって緊密に連携をとりながら、お互いにその意見を言いながら対応しているかということであると思います。
 これの関係では、これは総理もブッシュ大統領との電話でおっしゃいましたし、私もつい数日前にパウエル国務長官と電話をしたときに言いましたけれども、基本的にこの問題は、大量破壊兵器を持ったイラク対国際社会の問題であるということをずっと言ってきておりますし、したがって国際協調ということが非常に重要なんだということもアメリカに対してはずっと言ってきている、そういうことでございます。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
達増委員 日米新ガイドラインには、日米安保条約に基づく直接の防衛協力以外に、グローバルな課題に対して、国連のPKO活動に関する相互協力など、極東の外での協力の可能性にまで広げていくことが決まっているんですけれども、やはりそこでは、国連の体制、システムを活用した協力という方向性がはっきり出ていると思うんですね。
 ですから、アフガニスタン戦争に協力するためにテロ特措法をつくって、差し入れに行っているようなものですよね、燃料をただで関係国の船に補給するという差し入れをしているわけでありますけれども。国連として明確な決議をして多国籍軍を編成する、その中に日本も参加するというようなやり方の方が、本当は筋が通っているんだと思います。
 そうしませんと、テロ特措法に基づく、今はイージス艦が出ているわけでありますが、日本国内法的には、テロ特措法に基づいているからいいんだ、憲法違反じゃない、武力行使じゃないということになりますが、湾岸戦争のとき、金だけ出した、人殺しはしていない。ただ、人殺しをするより、金を出して人殺しをさせる方がより邪悪なのではないかと。また、今回は金を出してというところまで金は出していませんで、差し入れをしている程度なんですけれども、これも立派な戦争協力でありまして、その辺をなし崩し的に、日米同盟という言葉を使って、そういうなし崩しの日本の軍事活動、自衛隊の運用というのを広げていくのはよくないと考えるわけであります。
 また、北朝鮮との比較ですけれども、前半、イラクの問題について、イラクの大量破壊兵器、それの拡散でありますとか、周辺国への問題、中東の平和と安定に対する懸念、これは北朝鮮の方がより問題は深刻なんじゃないかと思うんですね。大量破壊兵器は、北朝鮮の方がより完成に近いものを持っていると思われますし、周辺国は、極東の平和と安定ということなんですけれども、まさに日本が直接脅威を受けるわけであります。
 ですから、本当は今、小泉内閣として、国連の場などを利用して、イラクの大量破壊兵器と並んで北朝鮮の大量破壊兵器も脅威だ、脅威だと強く主張すべきだと思うんですけれども、一方で、小泉総理がピョンヤンに行って金正日と握手しちゃっていますからね。大量破壊兵器、核兵器については国際約束を守りますということを金正日氏と小泉総理の間で約束しちゃっていますから、今さらそれをほっぽり出して、大量破壊兵器が脅威です、助けてくださいと国連やアメリカに駆け込むわけにもいかないような環境を小泉総理がつくってしまっているわけですね。
 そこは非常にちぐはぐなんですが、もし北朝鮮に対して、そういう太陽政策的な、融和的なアプローチを北朝鮮にする、握手して、ちゃんと約束を守れば国交も正常化して経済協力もするということを紙に書いて約束するようなことを北朝鮮にするのであれば、では、イラクに対してなぜそういう太陽政策的な、融和的な政策を主張しないのか。この点、日本の主体的な行動が非常にちぐはぐだと思うんですね。この点、いかがでしょうか。
川口国務大臣 まず、北朝鮮への我が国の態度ですけれども、これについて、経済協力をする云々ということを今委員がおっしゃられましたけれども、私どもが北朝鮮に対してはっきり言っているのは、拉致問題等の二国間のさまざまな問題、そして安全保障の問題、こういった問題が解決されない限り、国交正常化交渉は妥結しないんだということを言っているわけです。そして、国交正常化交渉が妥結しなければ経済協力はないということも言っているわけでございます。
 それで、イラクと北朝鮮についての我が国の態度がちぐはぐかどうかということですけれども、問題の本質といいますか、それは同じであると思います。すなわち、大量破壊兵器の拡散を防止しなければいけないということについて、その政策の目的ということは同じであると思います。
 それから、では、そのどちらが深刻か、深刻さはどうかということで言えば、どちらも同じように深刻であると思います。ただ、違いがありまして、一つは、先ほどイラクについて言いましたように、これはもう国連の決議を何回も何回も守らないということをやってきた、そういう事実があるわけでございまして、北朝鮮の場合には、NPTを脱退したとかあるいは距離的に我が国に近いとか、国連の決議を無視して北朝鮮がやったということではない。違いがそういう意味ではあるけれども、同じように我が国として懸念を持っているということについては全く同じであるということだと思います。
 それで、ブッシュ大統領も、違いがある、アプローチに違いがあって当然だということを言っているわけですけれども、我が国もそう思っているということでして、これは、イラクについて言いますと、最後の機会ということを言われて、それで深刻な結果に遭遇するということを言われて、国連の決議ができているということであります。それに従って国際社会が今対応を考えているということです。
 それで、北朝鮮の場合は、これはブッシュ大統領も言っていますし、我が国もそう考えていますけれども、平和的に問題を解決することが必要であるということで、このために日米韓一緒になって対応を考えている、さらに中国、ロシア、あるいはIAEAといったところが対応を考えているということで、対応に違いがある。
 ただ、大事なことは、どういうことをやれば一番目的に合うかということでして、大量破壊兵器の危険、拡散の危険をなくすために、それぞれ国によってアプローチが違うということであると思います。イラクの場合には国連を中心に、北朝鮮の場合には、日米韓の協調の枠組みを国際社会もきちんと認識して、それで我が国、三カ国を中心とする対応を現在見守っている、そういう状況であると思います。
達増委員 いろいろな機密情報とか漏らすことのできない情報も政府にはあって、そういうことに基づいていろいろ判断したり行動したりする部分もあるんだと思います。そういう意味で、今野党の側にいて、政府の中にいませんと、その判断について最終的にどうかというところ、なかなかはっきり言えないんですが、ただ、政府として態度を、どれだけせっぱ詰まっているのかとか、具体的な中身は言えないにせよ、そのせっぱ詰まっている度合いを態度で示す、そういうところを国民に示すということをきちっとやっていかないと理解は得られないということを重ねて申し上げたいと思います。
 どうも政府の対応を見ておりますと、決まりを守りさえすればいいというような一種の法形式主義、あるいは、どの国と同調していけばいいのかという、ほかの国の顔色を見ながら決めていくような、そういう主体性のない対応が目につくんでありますが、その主体性のなさというのは、国益の核心の部分である主権とか、国民の人権、生命、財産、自由を絶対守るとか、また平和を守るということも大事だと思います。いわば憲法理念を守るということですね。日本の国益の核心は日本国憲法の価値だと私は思っておりまして、それは日本国の主権、国民主権のその主権でありますし、また基本的人権、国民の生命、財産、自由、そして平和、これを守ること。そのためには、断固たる決意で断固たる行動もとるということを機会あるごとにはっきりさせていかないと日本の主体性というものが見えてこない。
 そういう日本の主体性の問題で関連で伺いますが、瀋陽事件であります。
 瀋陽総領事館における中国官憲の不法侵入事件でありますけれども、まさに日本の主権が侵されて、その結果、北朝鮮からの亡命者の人権も損なわれる危険性が非常に高まった事件でありますけれども、あれについて、その後、中国政府から謝罪等はあったんでしょうか、また日本から抗議は続けているんでしょうか。
薮中政府参考人 瀋陽総領事館事件でございますけれども、委員御承知のとおり、これは我が国から非常に厳しく、総領事館の不可侵が侵害されたということで厳しい抗議を続けてきたことは御承知のとおりでございます。これは数次の外相会談等の場で行ってきておりまして、その後、こうした問題が再発しないようにということで日中間で領事協議を行って、こういう再発を防ぐ方途は何かということを今真剣に検討しておる状況でございます。
達増委員 主権と人権と平和というのは不可分でありますから、主権が侵されるとき人権も侵されますが、また平和も脅かされるわけであります。きちっとした対応をしなければならないと指摘します。
 もう一つ、北方領土問題、これも日本の主権が侵され続けている問題でありますけれども、ロシアがソ連時代から引き続き北方領土を不法、不当に占拠しているわけでありますが、去年のカナナスキス・サミットで、そのロシアを、G7、あるいはG8になるということなのか、サミット正式メンバー、そしてモスクワでサミットを開くということを決めてしまいました。これは非常に驚きだったんであります。
 しかも、九〇年のヒューストン・サミットではっきり、G7は北方領土問題の早期解決を支持するということをサミット共同宣言文の中でうたっております。北方領土問題の存在はもちろん、その解決の必要性というのは、あのころ、G7諸国の中で意見が一致していたわけですね。
 そして、九一年のロンドン・サミット、これは、ソ連末期、ゴルバチョフ大統領が初めてG7に招かれて、G7からG8になっていく転機のときだったんですけれども、この九一年のロンドン・サミット、翌年、ソ連からロシアになったばかりの九二年ミュンヘン・サミット、このときのG7サミットでも、北方領土問題、これが早期に解決されねばならないということははっきり言われているわけであります。ロシアをG7に取り込んでいくに当たって、当時はそれだけの配慮があった。
 ところが、今回、全然そういう北方領土問題に関する共同宣言決議文などないまま、ロシアのサミット入りだけが決まってしまっている。これはやはり日本としては、他のG7メンバーに、機会あるごとに北方領土問題解決の必要性、少なくともロシアによる領土返還があれば関係がスムーズになるといったようなことを、北方領土問題が解決しない限りロシアを参加させないまでは言わなくていいかもしれませんが、北方領土問題、返還があればより円滑な協力関係ができるぐらいのことを機会あるごとに主張し続けなきゃならないと思いますが、いかがでしょう。
小松政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国といたしましては、今後の日ロ関係をあらゆる分野にわたり発展させていく、そういう中で北方四島の帰属の問題を解決いたしまして、平和条約を早期に締結したい、こういう方針をとっているところでございます。
 委員御指摘の昨年のカナナスキス・サミットでございますが、ロシアがグローバルな諸問題への対処に当たって十分かつ意味のある役割を果たす潜在力を有しているという認識で、そのメンバーの基本認識が一致したわけでございまして、二〇〇六年にロシアがG8の議長国となりまして、ロシアにおきましてG8サミットを開催するということにつきまして、委員御指摘のとおり、合意に至ったわけでございます。
 このことにつきましては、もちろん北方領土問題に対する私どもの基本的な立場にいささかの変化もないわけではございますけれども、グローバルな諸問題へのロシアの積極的な参加と申しますか、役割を果たさせることの意味につきましては、基本的に、冒頭に申し上げました我が国の方針に沿うものであると考えた次第でございます。
 同時に、委員も御指摘のとおり、北方領土問題につきましての我が国の立場に対して、サミット諸国を含めまして国際的な理解と支持を得ることは非常に重要である、これは依然考えてございまして、米国を初めとする国々に対して、機会をとらえてこの問題につき我が方の考え方を説明しているところでございます。
 一例を申し上げますと、カナナスキス・サミットの後でございますけれども、昨年八月のブルネイの外相会談におきましても、川口大臣よりイワノフ外相に対しまして、ロシアが二〇〇六年にG8サミットを主催することになることなどロシアをめぐる国際情勢が変化している中で、唯一進んでいないのが平和条約交渉の問題である、これをぜひ前向きに動かすよう全力で取り組んでいく必要がある、こういうことを強調したところでございます。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
達増委員 ポスト冷戦後の新世界秩序というもの、今のブッシュ大統領のお父さんが新世界秩序というのを最初に言い出して、まだそれはできていないんだと思いますが、ブッシュ大統領、お父さんの大統領は、少なくとも新世界秩序をつくろうとして、湾岸戦争のときにはきちんと多国籍軍を編成するくらいのことはしたわけでありまして、日本としても、国際紛争の解決に当たってはできるだけそういう国連のきちんとした体制をつくってやるということ、また、日本、主体的に、日本の主権、国民の人権、そして諸国民との平和ということについて、もっと真剣に、命がけにやっていかないとだめなんだと思います。
 宮本武蔵がはやっていますけれども、私の生まれた盛岡出身の新渡戸稲造博士は国際協調主義で有名なんですが、デモクラシーを翻訳するには平民道という言葉がいいと言っていまして、民主主義、民本主義とかいろいろな訳が出ていますけれども、平民道、それは新渡戸博士が書いた「武士道」の延長線上で、武士道の延長としての平民道。
 したがって、デモクラシー、もともと、アメリカ独立戦争のあのパトリック・ヘンリーの言葉、我に自由を与えよ、しからずんば死を与えよという、自由か、しからずんば死かですからね、武士道は死ぬことと見つけたりという言葉がありますが、一種、デモクラシーも、そういう命をかけるということとともにあるところにデモクラシーの本質があるわけでありまして、そういう真剣さを忘れて、主権だ、人権だ、平和だということを取り扱うと、政府としてもちぐはぐになってしまう、そういう懸念を述べさせていただいて、インフレターゲット政策の質問に移りたいと思います。
 先ほど、民主党長妻委員の質問で、今回の政府予算案、成長率は減少、失業率は増大、一方で三十六兆円の国債発行ということで、もうこれ以上行き詰まりようがないくらい行き詰まった財政政策ということが明らかになりました。そういう中で、あとはもう金融政策しかないという自暴自棄の気持ちになるのも、気持ちの問題としてはわからないこともありませんけれども、インフレターゲット政策であります。
 これは非常に危険なものではないかと懸念しておりまして、例えば、いざインフレターゲット政策、インフレ誘導が行われる、そういう期待があるだけで、どんどん物価が上がって、物の値段が上がって、給料も上がって、景気も上がる、そういう論なんでしょうけれども、ちょっと考えれば、例えば、円安になりますから、円を持っている人はそれをどんどん売って外貨を買ったり金を買ったりして、あっという間に円が暴落する、そういう危険性があると思うんですけれども、これは日銀の参考人に伺いましょう。
白川参考人 お答えいたします。
 インフレーションターゲティングの問題を議論しますときには、この定義というのをはっきりさせる必要があるというふうに思います。
 イギリスあるいはニュージーランド等の国で採用されておりますインフレーションターゲティングといいますのは、これは議員御案内のとおり、機械的にインフレ目標の達成を目指すものではなくて、金融政策運営の透明性を高める、そうした枠組みとして導入されております。先週、イギリスは政策金利を引き下げましたけれども、実は、足元の物価上昇率はターゲットを上回っている、そういう状況のもとで金利を下げたわけでございますけれども、これも、そうしたことをやった上で、なぜそういうふうにしたのかということを説明している、そういう枠組みでございます。
 他方、現在日本で議論されておりますインフレーションターゲティングは、これは期間を決めましてインフレ目標の達成を政策運営上の最優先課題として位置づけるということでございまして、いわば日本的インフレーションターゲティングというべきものでございまして、これは現在世界で議論されておりますインフレーションターゲティングとは内容がかなり異なっているというふうに思います。
 その日本的な意味でのインフレーションターゲティングが効果を持つか、あるいは弊害の方が大きいかというのは、先生も御指摘のとおり、目標を実現する手段やメカニズムの裏づけがどの程度あるのかということに大きく依存するというふうに思います。この点、残念ながら、現在の日本は短期金利がゼロに達しまして、さらにさまざまな構造問題が金融緩和効果の波及を制約している。そういう状況のもとで、金融政策だけでインフレ目標を達成するというメカニズムはとても十分ではないなという感じがいたしております。
 そうした中でも努力目標的に今インフレ目標を導入してはということはございますけれども、しかし、これでは透明性を高めるという本来の目的にもかないませんし、それから、もし何か変化があるとすれば、日本の経済政策全般への信認を失わせるような、何か極端な政策になるのではないかという期待が生じた場合でございます。そうなりますと、市場でいろいろな動きが出てまいりまして、不安定な動きが出てくるおそれもございます。現在、円や日本の国債というのは、海外の投資家も含めまして幅広い投資家の信認を確保し得ているわけでございまして、万が一にもこうした信認が崩れることがあれば、逆に日本経済の再生あるいはデフレ克服にとっても大きな障害となるというふうに思っております。
 日本銀行としては、物価の下落、これ自体は何としても防ぎたいというふうに思っておりますので、現在潤沢に資金を供給しておりまして、そうした姿勢を消費者物価が安定的にゼロ%以上となるまで続けますよということははっきりと宣言しまして、しっかりと努力していきたいというふうに思っております。
達増委員 円の価値を守るということも、日本国の主権を守り、国民の人権を守り、そしてまた平和を守ることにもつながるんだと思います。
 実は先週、インフレ誘導的なことがハプニングで起こったわけであります。それは、ある通信社のコラムで、インフレターゲット支持の人が次の日銀総裁になるかもしれないというようなコラムがインターネット上掲載されたものが、たちまち、その人に決まったといううわさで市場に流れて、円高ぎみだった為替市場が円安の方にぎゅんと振れてしまった、うわさだけでそういうマーケットの変動が先週起きたわけであります。
 これでもし政府が本腰を入れてそういう方向に持っていくぞと決めたときに、どういう市場心理、一般の国民心理が起こるのか。さらに言えば、イラク戦争が始まりますと、原油高騰の可能性とかも出てくる。そういう戦争も絡んだ不確実なときに、かえってハイパーインフレを生じさせる危険性もあると思うんですが、同じく参考人に伺いたいと思います。
白川参考人 お答えいたします。
 インフレターゲティングが金融市場や為替市場に及ぼす影響につきましては、そのもとでとられます具体的な政策手段自体の効果に加えまして、目標実現のためにどのような政策手段がとられるのかということに関する市場の見方に大きく依存するように思います。
 ここで、先ほど申し上げましたとおり、金融政策だけで、現在、インフレ目標を実現する手段やメカニズムの裏づけを欠いているという状況でございますので、そういう中では、インフレーションターゲティングだけで何か変化があるかというと、それはないんだろうというふうに。
 ただ、そうした中で、もし何か変化があるとすれば、これも先ほど申し上げましたとおり、中央銀行が何か、何が何でも目標を実現しようとして非常に極端な手段をとるかもしれない、そういうふうな予想が生まれた場合であろうというふうに思います。その場合には、さまざまな市場の不安定化に結びつく可能性があるというふうに思っております。
 それから、円安、インフレ等のことでございますけれども、一般論として申しますと、円相場の下落や原油価格の上昇というのは、輸入物価を押し上げる要因となります。しかし、それがどの程度現実の物価上昇をもたらすかは、相場変動の幅やタイミング、その持続性といったものに大きく依存するというふうに思います。
 現在、日本の物価は、需要の弱さ、それに加えまして、海外からの安値輸入品の増加等もありまして、今弱基調を続けておりまして、この弱基調が現在すぐ変わるというふうには思いませんけれども、今議員御指摘の点、為替相場、原油価格等々の動向も含めまして、経済、物価に与える影響については注意深く見てまいりたいというふうに思っております。
達増委員 時間ですので、終わります。
藤井委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 昨年二月の長崎県知事選挙で、自民党長崎県連幹事長らがゼネコン各社から公共事業の受注実績に応じて総額五千万円の献金を集めたことが公職選挙法違反で起訴され、全国的な大問題となり、本委員会でも既に何回も取り上げられております。
 十日夕、私の手元に今回の事件についての自民党の調査報告が届きました。早速読んでみましたが、前幹事長などについては、逮捕日以降接見禁止のため聴取できず、虎島県連会長、久間前会長は、県連の財政は慣例により幹事長に一任しており、知り得る立場になかったなど、結局、何もわからなかったという内容であります。
 官房長官、これが調査報告の名に値するのか、国民がこれで納得すると思うか、長官自身がこの報告をどう評価したかを、まずお尋ねしておきたいと思います。
福田国務大臣 委員の御指摘のとおり、お尋ねの事件、現在公判中でございまして、事実関係の詳細について承知する立場にはございませんけれども、しかし、起訴事実によりますと、知事選挙にまつわる寄附の要求など公職選挙法違反に問われている事実、こういうふうに承知をしているところでございます。
 こういうようなことは決してよろしいことではない。政治と金をめぐる一連の事件が発生しまして、その再発防止に向けた努力をしてきたところでありますけれども、そういう最中に今回こうした事件が摘発されたということでございまして、まことに遺憾に思っております。
 この調査報告云々というお話がございましたけれども、これは、先ほど申しましたように、調査報告は党が実施したものでございますので、政府としてこれを評価する、こういう立場にはございません。
 個人的な考えとして申し上げれば、この報告書でも述べられていますとおり、捜査当局による事件捜査と並行して調査した、こういうようなことがございますので、十分な調査をするというような環境になかったということでございます。そういったような制約がございますので、そうした中で可能な範囲で調査が行われたもの、こういうふうに理解をいたしております。
小沢(和)委員 調査に制約があったということは事実かもしれませんけれども、余りにも中身がない。そういう意味で、私は、調査をする気がなかったというふうに言っておかざるを得ません。
 七日には、我が党の志位委員長が本委員会で長崎県知事選に関連して問題を質問いたしました。志位委員長が取り上げたのは、小泉首相を初め現職閣僚や副大臣などが総選挙などの時期に公共事業受注企業から献金を受け取っているという問題でありました。これが、長崎の事件と全く同様に公選法百九十九条、二百条に違反していると何回指摘されても、小泉首相は、正規に政治資金規正法で届け、選挙のときにはきちんと収支報告をして適正に処理していると繰り返したばかりであります。
 しかし、そういう言い分は全く通用しません。はっきりさせておきたいのは、長崎でも五千万円の献金は届け出がなされていたということであります。届け出ていても選挙に関する寄附であれば公選法違反だということで、今回、逮捕、起訴されたと承知しておりますが、法務省の刑事局長に、それに間違いないかどうか、お尋ねをします。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 長崎のお尋ねの事件につきましては、要求は、起訴された事案のみでなく、他の会社にも及んでおりまして、会社側では、これに応じて寄附を行った会社もあり、行わなかった会社もあることから、現在、捜査当局において、このような一連の事案について、他に刑事事件として取り上げるべき事実の有無について引き続き所要の解明を行っているものと承知しておりまして、現段階ではお答えを差し控えさせていただきますが、ただ、一般論として申し上げますれば、今御質問のありました政治資金規正法との関係におきましては、公職選挙法上の特定寄附禁止違反に該当するか否かは、その寄附や寄附要求が選挙に関するものか否かにかかわるものでありまして、なされた寄附について政治資金規正法上に定める収支報告がなされているかどうかは関係がないものというふうに承知しております。
 しかしながら、その寄附が選挙に関しなされたかどうかは、選挙と寄附の時期だけではなく、当該寄附の趣旨、金銭の性格、寄附者や受領者の真意、その金銭の取り扱いなどの諸事情を総合勘案して判断されるべきものでございまして、一概に申し上げることは困難であるというふうに思っております。
小沢(和)委員 回りくどい言い方ですけれども、要するに、届け出ていても選挙に関する寄附であれば公選法違反になるということを今言われたというふうに確認しておきたいと思います。
 次に、お尋ねしますが、こういう条文は既に何年も前からあるのに、これまで検察が摘発しなかった。だから、自民党内には、届け出ておけば大丈夫という気分が広がっていた。それが、今回、逮捕、起訴に至ったので、これが違法なら今後金集めができないという衝撃が自民党全体に広がったと報じられております。
 昨年も、鈴木宗男、加藤紘一両氏らの政治と金をめぐるスキャンダルが大問題になりましたが、ことしもまた、政治と金がこうして国会の焦点の一つになってきております。国民が不況の長期化に苦しみ、内政、外交とも問題が山積しているときに、政権与党の中枢である自民党の腐敗が次々にさらけ出されることは、単に自民党への不信にとどまらず、政治そのものへの不信を広げることになりかねません。
 官房長官は今回の問題の重大性をどう認識しているのか、お尋ねをいたします。
福田国務大臣 お尋ねのことは先ほども一部答弁をいたしたつもりでございますけれども、自民党も本件は重く受けとめて、改めるべきは改める、こういう姿勢でもって政治改革に臨んでいるところでございます。
 何はともあれ、国民から信頼される政治、これを目指さなければいけない、そういう立場でありますので、そのような考え方に基づいて対処してまいりたいと思っております。
小沢(和)委員 その後も、長崎では事件が拡大し続けております。
 日常から、ゼネコン各社からの金集めは歴代の自民党県連幹事長の仕事でありました。特に今回は、知事選のために金が集められ、その中で裏金づくりが行われ、これが幹事長の機密費として飲食費などに充てられてきたこと、さらに、元県連幹事長がやみパーティー券を大量に発行し、三千万円の裏金をつくっていたことなどが次々に明らかになり、元県連幹事長は県会議長を辞任いたしました。こういう中で、金子原二郎知事はいまだに真相を明らかにしようといたしません。
 一方では、自民党県連事務局長が、ゼネコンから金集めを行った際、選挙もある、知事にも相談済みと語ったとの報道もあります。これが事実なら、今回の事件に知事が直接関係していたことになり、前幹事長らの有罪が確定すれば、知事失格ということにもなり得ることであります。
 委員長、ここまで事態が発展している以上、国会としても、直接真相を解明し、国民の政治不信を解消するため、前回から要求されております久間、虎島両議員に加え、浅田五郎前県連幹事長、加藤寛治元幹事長らを参考人として招致するように要請いたします。いかがでしょうか。
藤井委員長 理事会で協議をいたします。
小沢(和)委員 私も、地元九州の事件であり、早速、長崎に調査に行ってまいりました。そこで痛感したことは、自民党県連全体が総汚染の状態になっている土壌は、やはり公共事業をめぐるゼネコンなど建設業者と議員などの癒着にあるということであります。
 長崎県はもともと、海岸線が入り組み、その上離島が多いため、県内に港湾が百八カ所、漁港が二百八十六カ所もあり、その整備のための公共事業費が全国平均の四倍近くで、全国一多いのです。加えて、諫早湾干拓事業や雲仙・普賢岳災害復旧事業などもあります。諫早湾干拓は論外でありますが、県民の生活基盤を整備するための大切な公共事業が業者と政治家によって利権化され、食い物にされている、ここに問題があります。
 このような癒着と腐敗を証明している二つのパネルをお目にかけたい。
 まず一つは、政治献金の額と公共事業受注額の見事な相関関係であります。
 このパネルをごらんになっていただけばわかるように、献金額第一位の五洋建設は五千九百万円献金しているんですが、受注額も第一位の百七十四億四千六百万円、第二位の献金額は若築建設なんですが、これが四千七百万円献金している、そうしたら受注額も第二位の百四億六千五百万円、こういう調子です。そして、献金しないと、清水建設のような業界一、二を争うようなスーパーゼネコンでもわずか四千四百十万円、これは街路整備工事が一つだけしか受注できない。これほど見事な相関関係にあります。
 私は、昨年七月の国土交通委員会で、扇大臣に川辺川ダム受注企業からの多額の献金について質問をいたしました。大臣は、すごい、ぞっとしている、今回の小沢議員の質問の議事録も配布して、業界を指導したいというふうに答えられまして、実際、そういう指導をしていただいております。
 このパネルを見ていただければ、だれでも、政治献金をすれば仕事をもらえる、政治献金をしなければ仕事がもらえない、受注のさたも金次第という関係を否定できないのではないかと思いますが、これでいいのかどうか、国土交通大臣としての見解をお尋ねいたします。
扇国務大臣 私は、こういう御懸念の資料を出されるたびに、きょうもまた新たなものが出てまいりました。港湾のことに関して、また今までと違った資料をお出しになりました。
 少なくとも私は、今表でお示しになりましたけれども、入札というものは献金額と入札額と比例しないというのが原則でございますし、また、必ず比例するとは思っておりません。というのは、献金の多い、少ないということで公共工事の入札が行われないというのは、私は、そのために公共工事の入札の適正化法というのを先生方に御協力いただいて全会一致で通していただいて、今それを全国に指導している最中でございます。
 ですから、私は、そういうことで反省をしながらも今進めているとわざわざ先生が言っていただいたことはありがたいことだと思いますけれども、一つだけ私が、きょう新たに港湾に関して出てまいりましたけれども、私はぜひ御理解いただきたいのは、昨年の二月に、事務次官を筆頭に入札の改革をしろという命令を出しまして、検討委員会を立ち上げました。そして港湾に関しては、少なくとも、十四年から検討しまして、十五年からはすべて港湾に関しては電子入札です。これではお互いに、献金したところに受注するなんということは電子入札でできません。公明正大でございますので、今年度の十五年度からはすべて電子入札になるということで、一つの前向きな方向が出てきたと私は思っております。
小沢(和)委員 献金額と落札の額とに比例関係などあってはならないというふうに今言われた。全くそのとおりだと思うんですが、現実に、今お示ししたとおり、もう一位のところは一位の額、二位のところは二位の額、それで、献金しないところはもうほんの小さな仕事が一つとれただけ、こういう関係が現に出ているんですから、だから私はそのことを言っているわけであります。
 もう一つお示ししたいのが、今既に大臣がちょっと触れられましたけれども、長崎県内の国発注の港湾工事の落札率であります。これをごらんになるとわかりますように、予定価格の一〇〇%の落札をしているところが十四の契約、そして九・九%。そして、九八%から一〇〇%未満、これが九十四件で六六・七%、三分の二がここに集中していますね。そして、九六%から九八%が二十件、一四・二%。これを見るとわかるように、九〇%未満というのはたった三件、二・一%しかないんです。
 私は、昨年七月二十三日の決算行政監視委員会分科会でも、諫早湾干拓事業の落札率をお示ししたんですが、これも同じような状況でした。幾ら同じ積算基準によって積算するといっても、工事の条件は千差万別、それぞれの企業が計算すれば相当の差が出るのが当たり前じゃないでしょうか。これはすべて談合による入札の結果だとしか言えないのではありませんか。
 政治家が、建設業者の請託を受け、国や県に働きかけて、入札前に事実上落札業者を決定する天の声を出させたり、予定価格を聞き出し、談合入札を組織したりすることが当たり前になっていない限り、ここまで見事に落札価格が予定価格に接近したり的中することはあり得ないのではないでしょうか。
 大臣、今何か手を挙げられましたから、どうぞ。
扇国務大臣 国民に疑惑を持たれないような姿勢をとるのは当然のことです。御指摘のとおりだと思います。
 ただ、私は、今いただいた資料の中で、一番注目すべき点が全く違うところにあると思うのです。
 ちょっと細かいところなので失礼しますけれども、何よりも私は注目したいと思いましたのは、これだけ表をいただきましたけれども、この中で一番問題は、有利子負債額というところが書いてあります。この有利子負債額というのは要するに赤字ですから、三年間連続して赤字のところは政治献金ができないはずですから、これは年月が書いてないのでわかりませんけれども、この有利子負債額が億単位で書いてあるところから献金をもらったということであれば、これも私は、完全に指導していかなきゃいけない、また改めるべきところだろうと思っていますので、全般には、今おっしゃるように、国民に疑義を持たれないような入札方法をとるというのは、当然、国土交通省として指導をしているところでございます。
小沢(和)委員 今、私が大分先で質問しようと思っていたことを言われましたから、それはまたそのとき言います。
 会計検査院にお尋ねをしておきたいのですが、政治家とゼネコンだけでなく、行政も入札情報を漏らしていなければ、今申し上げたようなことというのは起こり得ないのじゃないかと思う。三者の責任は、それぞれメスを入れる必要があると思うのですが、会計検査院、どうお考えでしょうか。
杉浦会計検査院長 お答え申し上げます。
 先生おっしゃいましたような、落札比率が高いということだけから、私ども、直ちに契約の競争性とか公正性等が確保されていないとは言えないと思っておりますが、私どもといたしましては、従来から公正な競争による経済性の確保には関心を持っておりまして、今後とも、公共事業の検査に当たりましては、会計検査関係の法令に照らしまして競争性が十分確保されているかという観点からやってまいるつもりでおりますので、よろしく御理解を賜りたいと思っております。
小沢(和)委員 余りにも形式的な答弁ですね。
 それで、一月三十日付の朝日新聞の報道によりますと、長野県の公共工事入札等適正化委員会は、浅川ダムの落札価格が予定価格の九六%であったことを談合の結果と認定しております。落札率九六%で談合なら、長崎県のこの落札結果はいよいよ談合の産物であることは明らかであります。
 実は、長崎県では、昨年、県が発注する漁港整備工事をめぐる談合が摘発され、県はもちろん、国からも数カ月の指名停止処分を受けております。調べてみると、その談合にかかわった二十五社のうち、五洋建設、若築建設など二十一社は、今私が問題にしている国の港湾工事も受注しております。県の工事で談合していたのなら、国の工事でも談合していると考えるのが当然ではないでしょうか。
 会計検査院だけでなく、公正取引委員会も重大な関心を持って調査に乗り出すべきではないでしょうか。
鈴木政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、公正取引委員会では、長崎県県北振興局発注の港湾工事等につきまして、入札参加業者が共同して受注予定者を決定していた行為が認められたため、独占禁止法第三条、不当な取引制限の禁止の規定に違反するものとして、昨年六月に勧告を行ったところでございますが、お尋ねの件については個別具体的なことでございますので、調査を行うか否かを含め、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
 なお、一般論として申し上げますと、単に落札率が高いという外形的事実のみによっては、直ちに独占禁止法上の問題とするには困難でございまして、事業者の間で共同して入札に係る受注予定者を決定することは独占禁止法に違反する行為でございますので、そのような具体的事実に接し、違反する疑いがあると考えられる場合には、公正取引委員会としても必要な調査を行い、その結果、違反の事実が認められれば厳正に対処しているところでございます。
小沢(和)委員 私が言っているのは、一件や二件じゃないんですよ。国の直接発注している港湾事業だけでも百何十件とあるんですよ。そのほかにもいっぱいある。去年も、私は、諫早のことを調査したら同じようなデータだったということも言っているんですよ。それだけ事実が積み上がっても、まだ一般論としてということでみこしを上げない、そんなだったら、私は、公取やら会計検査院というのはもう存在意義が問われるということをここで言っておきたいと思う。
 この落札率のグラフは国が発注した港湾工事の分だけであります。これだけで約三百八十三億七千万円ある。そのほかにも、県発注の港湾工事、漁港工事など、長崎県内の公共事業費は合計すれば膨大な額であります。
 もしこれらの工事でまともな競争入札が行われていたらどういうことになるのか。長野県では、さっき申し上げた事件を契機に入札方式を変えたところ、落札価格が何と予定価格の半分以下に下がったと報じられております。横須賀市では、既に九八年から入札方法を改善し、談合が行えないようにいたしました。その結果、落札価格が予定価格の九五・七%から、平均ですね、一挙に八五・七%に下がったという数字があります。この数字どおりでいっても、長崎県内の国の港湾工事だけで約五十億円節減できるということになります。全国では、想像できない巨額であります。
 この際、この癒着と談合に対し、法務省も贈収賄という犯罪として徹底的にメスを入れるべきではないか、刑事局長にお尋ねします。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねは、贈収賄等に該当する事案についての捜査に関するものと思われますところ、もとより捜査機関におきましては、個々の事案において、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、他の刑事事件と同様に、所要の捜査を遂げた上、法と証拠に従って適宜適切にその処分を決しているものと承知しております。
小沢(和)委員 こういう仕組みの中で、企業は受注のために、自民党長崎県連や有力政治家にどんどん献金するようになります。
 私も驚いたんですが、自民党長崎県連の一九九五年から二〇〇一年までの七年間の企業・団体献金総額は七億二百二十万円、その半分以上、約四億三千四百三十万円が港湾や漁港、諫早湾干拓事業などの受注企業からのものであります。
 同じ期間に有力政治家たちも巨額の献金を集めております。自民党政調会長代行の久間章生衆議院議員は五千七百九十一万円、金子原二郎長崎県知事は九千二百六十一万円もこれらの受注企業から献金を受けております。詳細は資料の四ページから十ページを見ていただきたいと思います。
 先ほど、談合で企業が工事費をつり上げ、国民の血税をぼろもうけしていると言いましたが、この政治献金ももとはその国民の血税の一部ではないのか。財務大臣、どうお考えになりますか。
塩川国務大臣 個々の問題については断定できませんけれども、私は、税金と直接結びついてはおらない、あるいは企業努力の中でそういう献金が行われておるのかもわからぬし、その実態は定かではございません。
小沢(和)委員 企業努力の中でこの献金の財源をひねり出したというようなことを言われるわけですか。そんなばかなことはないと思うんです。
 ゼネコンの中には多額の借金を抱えているところも多い。調べたところ、わかっただけでも有利子負債額の合計は五兆四千四百二十五億円、先ほど扇大臣が言われたとおりです。これらのゼネコンには、献金などする余裕はないはずであります。まして、中には銀行から債権放棄を受けたゼネコンもあります。
 資料の五ページにその会社名を太枠で囲っております。その債権放棄をしている銀行がほとんど公的資金、つまり国民の税金を投入されているのですから、そういう形で国民の税金に助けられているゼネコンが献金を行うことは許されないと思います。
 資料五ページを見ていただければわかりますが、フジタは債権放棄を受けた九九年以後に六百万円、間組は二〇〇〇年以後に百万円をそれぞれ献金しております。そういう献金を行っても問題ないと思われるのか、これらの不当な献金は返還させるべきではないか、総務大臣にお尋ねをいたします。(扇国務大臣「ちょっとその前に、いいですか」と呼ぶ)いやいや、総務大臣に。
藤井委員長 扇国土交通大臣。
扇国務大臣 先ほど小沢議員からお話がございましたけれども、私、きちんとしておかなきゃいけないと思いますのは、有利子負債の話をしましたけれども、それは赤字会社というだけで、それが債務免除というのを、かつて国土交通委員会のときに大森議員から、この有利子負債を受けて、なおかつ免除をされているところから献金をされているのはどうだという、同じ共産党の大森議員から御質問がございまして、そして、その件は、自由民主党の方から、これは確かにそうだということで、きちんとそれは返還したという、債務免除が確認でき次第ということで、自民党からきちんとその当該企業に返還したということが、債務免除された企業からの献金を返還したという通知が私のところへ自民党から来たということを御報告しておきたいと思います。
片山国務大臣 現行の政治資金規正法では、いわゆる債権放棄を受けた会社が政治家等に対する寄附ができない、こういう規定はございません。
小沢(和)委員 総務大臣に重ねてお尋ねしたいと思うんですが、フジタは、九九年にさくら銀行から千二百億円の債権放棄を受けながら、その年以後も、毎年、六百万円を献金しております。ハザマも、二〇〇〇年に第一勧銀から千五十億円債権を放棄してもらいながら、百万円献金しております。
 債権放棄は、赤字が続き、借金を返すめどが立たないときに経営再建の最後の手段として行われるのが普通です。だから、三年以上赤字の企業はもともと献金を禁止されている。今、そのことはお話がありました。
 たった今聞いた話ですが、きょう福井地裁で、長期間赤字が続いている熊谷組が、熊谷組もこの五ページの表に載っておりますが、自民党本部に献金したのは違法だと判決があったという。まして、債権放棄を受けた企業はそれ以上に献金の資格がないことは明らかだと思います。
 今、扇大臣は、この前、我が党の同僚議員が質問した分については返させたというお話があるんですけれども、それだったら、この分についても返還をさせるということを指導していただきたいけれども、そのことはどうか。
 しかも、債権放棄をしたさくら銀行は九千億円、公的資金の注入を受けております。第一勧銀も七千九百九十億円注入を受けている。だから、フジタやハザマへの債権放棄の原資は、もとはといえば国民の血税。この点でも、自民党県連などが受け取っている献金は、国民の血税そのものだということで許されないというように私は思うんですけれども、この点、総務大臣にもう一遍お尋ねしておきたいと思います。
 両方からお答えください。
片山国務大臣 現行の政治資金規正法では、今申し上げましたように、いわゆる債権放棄を受けた会社が、企業が政治活動に対する寄附をすることについては制限していないわけであります。ただ、法律上の規定がありますね。三年度連続して欠損が出た場合には、欠損を埋めるまでの間には寄附ができない、それを知りながら受け取ってもだめだ、こういう規定がございますね。
 そこで、立法政策論としては、委員、いろいろな御意見あると思いますよ、私は。ただ、それはひとつ国会の場で、各党各会派で十分の御議論の上、民主主義のコストについてどう考えるか、どういう法的な規制が適当か、御結論をぜひ出していただきたい、こういうふうに思っております。
小沢(和)委員 扇大臣にも質問しておりますから、お答えいただきたい。
扇国務大臣 前回、確かに、先ほど申しましたように、委員会で大森議員から御質問がありましたことを自民党にお伝えしまして、自民党は、なるほどそのとおりだ、疑義を持たれるということで返還したというお話を私は伺いました。
 今回は、今聞いたところでございますから、今後自民党の方で、私、命令する権利はございませんけれども、政党として見識のある対処をなさるだろうと思っております。
小沢(和)委員 委員長に申し上げたいんですが、既に先日、本委員会でゼネコン七社の幹部を参考人として招致することが要請されております。今指摘した多くの疑問を解明するためにも、我が党は、改めてこの機会に、その七社に加えて、フジタ、間組などの参考人招致をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
藤井委員長 理事会において協議をさせていただきます。
小沢(和)委員 先ほどから、公共事業にゼネコンと政治家がたかっているというふうに言いましたが、もう一歩踏み込むと、国民の目から見ると全く不必要な事業でも、自分たちのもうけのためなら無理にやらせるようなことにもなります。その典型例が、諫早湾の干拓であります。
 この事業は、一九八二年、長崎県出身の金子岩三農水大臣、金子現知事のお父さんから、漁民の反対や投資効率の問題を理由に計画を一たん中止すべきとの見解が表明されました。既に当時米は余り始めておりましたし、諫早湾干拓の投資効率は今や農水省も〇・八三まで下がっていると認めている状態です。だから、金子大臣の当時の中止の判断は正しかったと思います。
 ところが、これをひっくり返す先頭に立ったのは久間議員であります。同議員は、当時は当選したばかりの一年生議員でしたが、同議員自身が、一九九三年に財団法人の諫早湾地域振興基金が刊行した「諫早湾干拓のあゆみ」という本の中に書いた回想録で次のようにその経過を生々しく述べております。全文は資料の末尾、十五ページを見ていただきたいと思います。その終わりの方に、こう書いてあります。
 ここで金子農林水産大臣が登場するや干拓事業の廃止が打出され、大騒動となった。事務当局や地元の漁協はこれまでのせっかくの努力が無に帰すと、当時政界に力のあった田中角栄先生の目白に陳情におよんだ。その日は雪が深く、タクシーも通らない早朝、雪を踏みながら出かけた我々の目の前で、当時の大蔵大臣竹下登先生に電話をし、「ともかく廃止や中止だけはするな、そのうち知恵を出して解決策を見付けるから」と事業継承を承認してもらった。この後事務当局の説得もあり、防災干拓として日の目をみることになったのだが、この時ほどひやひやしたことはない。
本人がこのように自分の功績を誇っているのですから、この経過が真実であることは疑いないと思います。
 久間議員が先頭に立って、田中角栄元首相、竹下登大蔵大臣らの政治力を利用し、担当者である金子大臣の反対を押し切って事業続行に持ち込んだことがよくわかります。今言われる防災干拓などというのは後からくっつけた理屈だということも、これではっきりいたしました。
 諫早湾干拓事業は、もともと必要がないのに、久間議員らの働きかけの結果として、ゼネコンのため無理やり工事を始めたものです。こうした功績があるから、久間議員には今も干拓受注企業から破格の政治献金が続けられているのではないでしょうか。
 官房大臣、このような不要な公共事業を復活させ、その受注企業から引き続いて献金を受け続ける、こういうようなことが道義的にも許されますか。
福田国務大臣 いろいろお話ございましたけれども、随分昔の話もされたようでございますけれども、そういう一つ一つのことはどういうことであったのか、私もよくわかりません。そういうようなことがあったのか、ないのか知りませんけれども、いずれにしても、政治家として疑惑を持たれないような行動をするということ、これは必要でしょう。
 諫早干拓の問題については、これは事業を継続しているわけでございますので、それは必要あって継続しているというように考えております。
小沢(和)委員 必要があって事業を続行しているというふうに言われたけれども、私は、必要もないのにこの事業を、一たんやめるという方向が出されたものを復活させたんだという経過を今詳しくお話ししている。そのことをもう一遍申し上げておきます。
 このようにして干拓工事を強行した結果、今どういうことが起こっているか。
 工事が進む中で、かつて宝の海と言われた有明海は今や急速に死の海と化しつつあります。ノリ養殖も、締め切り後は毎年赤潮の被害を受けている状況であります。特に一昨年の収穫は、過去六年間の平均の五八%という大打撃を受けました。昨年は、奇跡的な天候に恵まれ一〇九%にまで回復しましたが、ことしは、各地でまた色落ちが発生し、一月早々から収穫を断念し、ノリ網を撤去するところが続出しております。
 私も、先日、大牟田に行き、実情を調査してまいりました。漁民たちは、年末までの収穫でことしの借金返済分だけは何とかしたが、これからの生活費が全くめどが立たないと頭を抱えております。干拓がいかに環境だけでなく漁民などの生活まで破壊しつつあるかは、これで明らかだと思うのです。数日前のテレビでは、色落ちが七、八割の海域に広がっていると伝えております。
 農水大臣にお尋ねしますが、政府として、直ちに実態を調査し、融資を返済できない漁民には償還期間の延長などの措置を緊急に打つべきではないでしょうか。
大島国務大臣 今の委員の御質問にお答えをいたしますが、その前にちょっとだけ。
 中止を決定した干拓事業を生き返らせたという御発言がございましたが、これは、前の二回の計画は確かにそういう方向になりましたが、いわゆる今進めている干拓事業は地域の要望に従って進めているということだけは、ちょっと、誤解を多くの方々がされてはいけませんので、申し上げたいと思います。
 さて、有明海における今期のノリの生産状況については、委員の御指摘された部分におきまして、長崎県を除いて、確かに色落ちが発生して出荷されるノリの枚数が減少している状況にあります。
 二月八日現在の共販枚数は前年同期を約六%下回っておりまして、価格につきましても、消費の低迷、それから色落ちによる品質の低下等から、前年の約八割程度となっております。二月八日現在の共販金額は、前年同期の七六%、約三百十六億円となっております。
 その原因は、各県からの報告によれば、雨が少ない、少雨による栄養塩濃度の低下によるものと考えられますが、状況を的確に把握するため、近日中に担当官を派遣させたい、このように思います。
 そして、色があるうちの摘採、網の撤去や、撤去した網の冷凍保存等の対策に努めるところでありますが、被害を受けた場合には、今委員が、さまざまな手を打ちなさいということでございますけれども、その救済策として、漁業共済の加入者への迅速な損失査定と共済金の早期支払い、災害資金その他の低利の融資制度の円滑な運用に努めてまいりたい、このように思っております。
小沢(和)委員 私が金子大臣が中止を決定したと言ったように言われましたけれども、私は、中止をすべきだという見解を表明したというふうに言っておりますから、その点は誤解ないようにお願いしたいと思います。
 それで、今言われたように、ノリの漁民の人たちに、被害を調査して、そして必要な手だてを打つということですので、それはぜひお願いしたい。このように漁民を苦しめ、環境破壊を深刻化している諫早湾干拓は、今からでも直ちに中止するように改めてこの機会に要請しておきます。
 それで、金子知事も国会議員時代からこういう仕組みの中にどっぷりつかっておる。だから、干拓受注企業から引き続いて多額の献金をもらい続けているし、二〇〇六年度の干拓工事完成を強硬に要求して、中長期の開門調査を拒んで工事を強行させている。知事の責任も重大だということも私は指摘をしておきたいと思います。
 さて、金子知事の献金のことでもう一、二お尋ねをしたいと思います。
 知事は今無所属であります。だから、企業献金を受け取ることはできないはずであります。しかし、政治資金収支報告を見ますと、資料の九ページと十ページにまとめておりますとおり、これまで企業から受け取っていた献金をその会社の社長や長崎営業所長などの個人名義に切りかえ、知事の資金管理団体、明日の長崎県を創る会で受け取っているものが多い。金額も、限度額の百五十万円近くまで引き上げたものが目につきます。
 総務省の選挙部長にお尋ねしたいと思いますが、これは事実上の企業献金の継続であり、脱法行為ではありませんか。
高部政府参考人 お答え申し上げます。
 総務省といたしましては、実質的調査権を持っておりませんので、個別具体の事案についてお答えはする立場にないということを御理解いただきたいと思いますが、委員御指摘ございましたように、平成十二年一月から政治家個人の資金管理団体に対する企業・団体献金は禁止されたところでございます。
 他方で、政治資金規正法に定める量的制限の範囲内で個人が政治団体に対して寄附することは、同じく政治資金規正法で認められているところでございます。
小沢(和)委員 金子知事でもう一つの問題は、知事が自民党の衆議院議員時代につくった資金集めのルートを無所属になってからも引き続いて裏ルートとして使っていることであります。それは、自民党長崎県魚市場連合会支部のルートです。詳細は資料の十一ページから十四ページにまとめておりますが、魚市場連合会支部は、この七年間に一億一千七百二十二万円の企業献金を集めている。二〇〇一年も八百二十二万円の企業献金があります。
 問題なのは、このパネルに示しておりますように、知事選直前の十二月二十日、その一部を、知事の対馬後援会に二百六十万円迂回献金をしていることであります。詳しいことは資料の十四ページを見ていただきたいんですが、県知事選挙の直前、二〇〇一年の十二月に、県からの工事を受注している若築建設や地元建設会社など九社が、金子原二郎対馬後援会に献金をしたいと言ったところ、それは自民党魚市場連合会支部に出してくれというふうに言われて、三百六万円献金をした。それが、魚市場連合会支部から二百六十万円、金子原二郎対馬後援会に回っている。こういうようなお金の回し方というのは、いわば、直接受け取れば政治資金規正法や公職選挙法の両方に違反することになるというふうに見て、このように迂回することによって合法化したつもりで受け取っている、一種の政治献金の資金洗浄、マネーロンダリングになっているんじゃないか。
 総務省の選挙部長に、こんなことが許されるか、これは脱法行為じゃないかということをお尋ねします。
高部政府参考人 先ほどと同じお答えで恐縮でございますけれども、個別具体の事案につきましてはお答えいたしかねますので御理解を賜りたいと思いますが、政治資金規正法におきましては、企業、団体が政党に対して法に定める限度額の範囲内で政治活動に関する寄附をすることは認められているところでございます。また、政治団体間での寄附も、政治資金規正法で特段の金額の制限はないということになっているところでございます。
小沢(和)委員 残念ながら時間が来ましたから、今後さらにこの問題については追及するということを申し上げて、終わります。
藤井委員長 これにて小沢君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 私は、本日、四点に大きく区分けいたしましてお伺いをいたしたいと思いますが、まず冒頭、一昨年の四月に法案の成立を見ました情報公開法についてお願いをいたします。
 情報公開法は、今の小泉内閣にあっても、国民から見てわかりやすい行政のあり方、そして国民と密着した行政処理ということを掲げまして実施されておりますが、しかし、私が去年の暮れ、質問主意書で総務省にお伺いいたしましたところ、この法律に定められております情報公開請求をいたしまして三十日以内に、請求された側は一応返事を出すなり、三十日で処理し切れないものは延期処置をとるなりということをしなければいけないという法のもとの取り決めでございますが、これに違反、ないしは三十日たって延期処置をとりさらに三十日、六十日ということを限度に行っている、その内容にも違反したものが総計百二十七件、各省庁を横断してございました。
 確かに、胴元となっております総務省にはございませんでしたが、だがしかし、総務省が全体を管轄なさる省とされまして、各省庁がこのように開示の延期の通知をサボタージュしたり、あるいは開示期限内にきちんとした開示を行わなかったり、あるいは不服申し立てが行われましたときに、それをしかるべく情報公開の審査会にかけなければいけませんが、それのサボタージュ件数も数百件あるというような現状で、果たしてこの情報公開法の精神はいかに各省庁に行き渡っておるかということについて、片山総務大臣の御見解を伺います。
片山国務大臣 今、委員言われましたように、情報公開法で行う情報開示等の決定は早くなきゃいけませんね。スピードが命でございます。まだなれていない点もややございますが、私どもの方でちょっと調べてみますと、三十日以内に処理する、処理できなければ延長手続をとるんですが、手続をとらずに三十日を超えて処理しているのが四十九件、延長手続をとりましたけれども、それこそ三十プラス三十で六十日ですね、延長手続をとりながら、それをさらに超えているのが七十八件ございまして、私は、所管大臣として大変遺憾だ、こういうように思っておりまして、注意をいたしております。
阿部委員 本当に遺憾、いかぬことだと思うのです。そして、そのいかぬ状態が最も多いのが、実は外務省と防衛庁でございます。
 外務省、これは情報公開ということに関しましては、いろいろな不祥事が続発いたしましたが、外務省は、手続せず勝手に開示をおくらせたもの八件、三十日の延長期限を守らなかったもの五十四件で、計百二十七件中の六十二件は、いずれも外務省の情報公開法の精神にのっとっていない部分でございますが、片山大臣にあっては、こうした事態にかんがみて、外務省の方にそれなりの御指導といいますか、そういうことはなさいましたんでしょうか。
片山国務大臣 個別には連絡しておりますし、それから、一般的に、私どもの方の行政管理局長から年末に通知をいたしまして、ぜひ法の精神、法の趣旨を守ってほしい、こういうふうにお願いいたしております。
阿部委員 では、法の趣旨を守ってほしいと言われた外務省側の最高責任者である川口外務大臣は、この事態についてどのように省庁内に趣旨徹底なさいましたでしょうか。
川口国務大臣 私は、情報開示というのは民主主義の基礎であり、また行政機関が透明性を確保しながら行政をやっていくという意味で、非常に重要なことだと思っております。私が環境大臣でありましたときにはそういうことを徹底しまして、私の記憶では、たしかそのとき、環境省の開示の姿勢というのは、ワーストワンではなくてベストワンであったか、あるいはワンかツーであったというふうに思います。それで外務省に参りまして、私は基本的に同じ姿勢で情報開示については当たっております。
 ただ、これで、ぜひ御理解をいただきたいのは、外務省の場合に、資料の内容が外交にかかわることが多いということでして、他国等の信頼関係を損なうおそれあるいは交渉上、不利益をこうむるおそれというものがある文書がございまして、そういうことについては開示できないということがございます。
 それから期日のおくれあるいは手続をとらなかった、これは非常に問題であるわけですけれども、いろいろな仕事が大変にある中で、限られた人数の人間がこれに対応している観点で、必ずしも意がそのような形であらわれなかったところもあると思います。
 いずれにしても、そういった外務省の扱っている文書の性格についての御理解をぜひ賜りたいと思っていますし、その上で、引き続き、私としては情報開示を極力するように既に言ってありますし、引き続き今後も言いたいと思っています。
阿部委員 ただいまちょうど御答弁をいただきました事例に相当するようなものといたしまして、七二年の日米会談の資料というものを、米国側の情報公開請求に基づいて米国側から資料請求いたしますと、米国のものは出てきますのに、同じ会談の日本側のものと米国側のもので、日本側のものは今大臣がおっしゃったような外交上の理由ということで出てまいりません。何度も申しますが、同じ会議をアメリカ側は既に公開しております。その日本側が出ないということは、おっしゃったような外交上の理由ということを逸脱していると思います。
 また、在外公館でいろいろな問題が起きまして、会計処理を情報公開せよと請求いたしましたら二年間、三十日で迅速をモットーとするという総務大臣のお答えですが、二年間、開示までの時間を通告されたものがございます。
 もしも川口大臣が環境相当時、情報公開を徹底させたという実績がおありであれば、私は、今たまたま大臣がお答えになった二件、関連して気になるものを申し上げましたが、もう一度部局内を徹底してお調べくださいまして、きちんと情報公開がなされるようになお検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 冒頭申しましたように、情報開示というのは非常に重要なことだというのは私は思っております。
 外務省の制約はございますけれども、極力開示をするように事務方には言っていきたいと思っています。
阿部委員 続いて、防衛庁にお願いいたします。
 防衛庁も同じでございまして、実は、手続をせず延長しておるものが十四件、三十日の延長期限を守らずが二十件で、計三十四件ございます。このことについて、防衛庁長官としてどのような部局内御指導を行っておられますか。お願いいたします。
石破国務大臣 実態は、今委員が御指摘のとおりであります。これは、理由はいろいろございますが、しかし、情報公開法に定められた期間内、あるいは手続をきちんととって行ったということには相なっておりません。言いわけ無用だと思っております。
 情報公開法の趣旨をきちんと徹底するように総務省からの御指摘をいただきまして、私どもといたしましても官房長からその旨徹底したところであります。私といたしましても、情報公開法の趣旨をよく踏まえまして、今後このようなことがないように、情報公開法の趣旨を貫徹すべく努力をする所存でございます。
阿部委員 この場で御答弁いただくことが空約束では困りますので、もしも今後そうした、ある意味での法の精神に反するような事態が生じた場合に、その行政の担当責任者をきちんと処分なさるということの確約も両大臣にお願いいたします。
 最初に、川口大臣からお願いします。
川口国務大臣 情報公開を極力させるように事務方には言っていきます。
石破国務大臣 先ほど申し上げましたように、このようなことが起こらないように周知徹底をいたしてまいります。そのような事態が起こらないよう、全力を尽くす所存であります。
阿部委員 やはりその省庁の責任者が、単に空約束で全力を尽くしますとかおっしゃるのではなくて、きちんとした行政上の仕事を職員に周知徹底し、なおかつ、実行されなかった場合は処分をもって臨むというくらいの覚悟がないと、なかなか、立ちおくれた国の情報公開はそれから以降進むことがございません。
 ちなみに、防衛庁に至っては、一般PR誌に既に公開されているものを、情報公開請求で来たら、それは公開できない資料ですというふうな処置の仕方まで、極めて漫画のような処置までしているわけです。
 精神を変える、考え方を変える、そのためにもきちんとした処分で臨むということを、私は再度石破防衛庁長官に御答弁いただきたいですが、いかがでしょうか。
石破国務大臣 処分ということになりますと、これは、意識的にサボタージュをしたとか、あるいは、あってはならないことですが、故意に行ったとか、そういうことは極めて許すまじきことであって、処分の対象であります。
 今委員から御指摘もございました、その前に総務省からの御指摘もいただき、官房長の方からも徹底をいたしております。御指摘のようなことは当然あるまじきことでありますので、それは、そのようなことが二度と起こらない、起こった場合には処分するかどうか確約をせよということでございますが、確約云々の前に、そういうことが絶対に起こらないように徹底する、その趣旨が肝要であろうかと思っております。
阿部委員 本来、時間がございますれば具体的な事例で詰めたいと思いますが、少なくとも私が今防衛庁長官と川口外務大臣にお伝えした事例については、早急に対処をいただきますようにお願い申し上げます。
 片山総務大臣は、お時間がございますので、ありがとう存じました。
 引き続いて、イラク問題について、特に川口外務大臣に御質問をいたします。
 先ほど自由党の委員からも御質問がございましたが、今、このイラク問題は、特に国際社会においては、何とかしてイラクに対する武力攻撃を避けようと、そのために査察をさらに徹底させるべく、さまざまな努力が行われているやさきかと思います。
 また、日本の国民の世論等々も、いろいろなアンケートがございますが、お目通しいただければわかるかと思いますが、国民の七割ないし八割が、例えばNHKの調査によりますと、アメリカの軍事行動への姿勢を支持する者二三%、支持しない者六八%。また、TBSの集計によりますと、国連決議のないままのアメリカの単独イラク攻撃を支持する一一%、支持しない八七%、国連決議があったとしたらイラク攻撃を支持するのか、支持する三六%、支持しない六〇%と、国連決議があったとしても支持しないという国民世論も多うございます。
 そこで、外務大臣にお伺いいたします。
 先ほどの自由党の委員の御質問では、外務大臣としていわゆるこのイラク問題について国民へのアナウンスメント、どういう姿勢で臨むかが不徹底なこともいろいろな国民の関心をいまいち先鋭化しない事由ではないかというふうな御指摘がございましたが、私は、それ以上に、国民は、実は直観において、武力攻撃を何とか避けるようになってほしいという願いを持っているんだと思います。これは、空襲された日本の国民の多くが、例えば空襲の翌日は、木の枝に腕から先がぶら下がっている、あるいは死屍累々たるしかばねがそこに転がっている、大量無差別爆撃の結果を我が国は経験しておりますから、その国民性から見ても、どのような形であれ、空爆は行われるべきでないとする直観を持っているのだと思います。
 ちょうど本日の朝刊の朝日並びに毎日新聞の一面トップは、ロシアとフランス、ドイツの三カ国が、イラクの大量破壊兵器問題に関して共同宣言を出しております。その宣言の内容は、安保理決議一四四一に基づいてさらに国連査察を継続強化し、イラクに対しての軍事攻撃を何とか食いとめていこうとするものであると思います。
 川口大臣にまず一点お伺いいたしますが、この三カ国の共同宣言についてどのようにお考えでしょうか。
川口国務大臣 共同宣言でも言っているわけでございますけれども、ロシア、ドイツ、フランスは、イラクの武装解除こそが大事であると。国際社会の共通目標を示し、武装解除が可能な限り早期に解決されなければならないということを強調するということで始まっておりまして、まさにこの問題の本質は、イラクがいかに国連の決議を守り、そして、一四四一でイラクに期待されている大量破壊兵器の廃棄の証拠をみずから見せていくかということにかかっているということだと思います。
 平和的に解決をしたいということはみんなが思っていることであって、そのかぎはイラクが持っている、そういうことだと考えます。
阿部委員 では、もう一度、角度を変えて伺いますが、川口外務大臣は、一人の政治家として、日本の外交を預かる重要なポストにつかれた……(発言する者あり)政治家ではない、国民の信任を得ていない、そういう面もございますが、外務大臣として、この三カ国の共同宣言をどのように評価なさいますか。
川口国務大臣 まず、私は総理によって任命をされた閣僚でございます。そういう意味で、責任を果たすべく最大の、最善の努力をしている、そういうことであるということをまず申し上げたいと思います。
 それから、この三カ国の提言についての私の評価をお聞きでいらっしゃいますので、それについて申し上げます。
 それは、先ほど申しましたように、この問題の本質は、イラクの武装解除をどうやって国際社会としてイラクにやらせるかということであって、イラクが、能動的にという言葉を使っていますけれども、武装解除、大量破壊兵器の廃棄、これを自分でやっていかなければいけない、それをイラクが守らなければならない、イラクにすべてはかかっているということであると思います。イラクはまだそういった形で前向きの態度、武装解除をするということについて証拠をみずから出していくということを見せていない、イラクは行動で示すべきであるというのが私の感想でございます。
阿部委員 きちんと私の質問に答えていただきたいと思います。この三カ国による共同宣言を外務大臣として前向きに評価するか否か、イエスかノーでお答えください。今のは、恐縮ですが、答えにはなっておりません。
 それから、もう一点。確かに川口外務大臣は小泉総理によって任命された外務大臣でありますが、であると同時に、国民の声、国民の思いというものも深く酌んで外交政策を行う重要なポジションにあります。そこで私は、冒頭、わざわざ時間を割いて国民の声の集計の一端を申し述べました。そのことを踏まえた上で、この三カ国の共同宣言を前向きに評価するか。むしろアメリカのブッシュ大統領は、これは困惑、不満、あるいはあえて言えば反対の意思もお持ちだというふうにコメントをきのうもされておられました。川口外務大臣は、この三カ国の共同宣言を前向きに評価なさいますか。イエスかノーかでお願いします。
川口国務大臣 これだけ大きな、そして国際社会がいかに解決をしようと考えるか、そのことについてみんなが知恵を出して、それでもなおかつ解決が今目の前に見えてこないという問題に対して、イエスかノーかで答えを申し上げるということはできないと思います。それだけに難しい問題であるというふうに思います。
 これについての私の意見というのは、先ほど申しましたように、武装解除をするということが大事である、この認識が共有されているというふうに思います。同時に、イラクが査察の期間を少し延ばすことによって本当に武装解除のために能動的に行動するかどうかということについて、そういった見通しはまだ見えていないというふうに私は思います。そういう意味では、独仏の提案がそういったことをどう評価しているかということについてはいま一つ明らかでないというふうに思います。
阿部委員 諸条件が混乱しておるからみずから態度を決めずによいのであれば、我が国に独自の外交は必要ありません。
 私が伺ったのは、もし川口外務大臣が、ドイツ、フランス、ロシア、中国、各国態度を表明しておりますが、このことへの態度表明を求められたら何とお答えになりますか。そして、もう一つお願いいたします。今大臣がおっしゃったような、イラクが大量破壊兵器の廃棄に向けてそれなりの努力をすることが肝要であるというふうなお考えであれば、そのために具体的に日本は何をしておられますか。その二点、お願いします。
川口国務大臣 二点の御質問ですけれども、独仏ロ、これの宣言の評価については、もう何度も繰り返しになりますので申しませんけれども、これが成立するためには、イラクが前向きに能動的に、中身において、サブスタンスにおいて武装解除をする、みずからするということを見せることが大事で、それが見えていない、そういうところがよくわからない状況で、これが必ずしも成り立つかどうかはよくわからないということは先ほど申し上げたとおりです。
 それから、我が国としてどのような働きかけをしたかということですけれども、これは、もし必要でしたら、区々、細かく申し上げますけれども、この働きかけは十分に、というか必要なことは鋭意やっております。大きく分けて、一つ一つだれに何をしたということを言うと時間がかかり過ぎると思いますので、大まかに申し上げますと、一つは、イラク自体に対する働きかけ、そしてもう一つは、周辺国に対する働きかけ、それから三つ目は、安保理の理事国を初めとする主要国に対する働きかけ、そういった三つに分かれるかと思いますけれども、必要ならば細かいことは申し上げます。
阿部委員 日本がどのような外交努力をこのイラク問題にしておるかに関して、私は、ことしの予算委員会あるいは去年暮れからの補正予算の審議において、川口大臣から、本当に自分たちがどんな思いを持ってこの問題に積極的に努力しているかという姿を一度も見せていただいたことがないように思います。
 今お答えの中で、それでは一つだけ、私の時間を気にしていてくださるのであれば、一つお願いします。イラク自体については、どのような働きかけをなさいましたか。
川口国務大臣 昨年の秋から特に我が国としてどのような働きかけをやったかということは、いろいろ委員会の場で再三再四申し上げたつもりでおりますけれども、改めてここでまとめて繰り返させていただきますと、まず、イラク自体に対してという御質問ですので、これは、昨年の十一月に安保理の決議一四四一が採択をされましたけれども、その直後に、新藤外務大臣政務官から在京のイラク大使館の臨時代理大使に、これはカーシム・シャーキルさんという人ですが、申し入れを行いましたし、先月の一月の二十九日に、私からもさらに臨時代理大使に対して申し入れをいたしました。それから、現地におきまして、二月の一日に、日本の臨時代理大使からイラクに対しても申し入れを行いました。それから、少し前になりますが、昨年の秋、九月ですけれども、国連の総会のときに、私からイラクの外務大臣に対してその旨を強く、これも申し入れたわけでございます。
 イラクに対してという意味では、そういうことです。
阿部委員 外交は、生き物と同じで、動いているものでございます。ただいまの川口外務大臣の御答弁では、在京のイラク大使に二回働きかけ、なお二月の一日にイラクの臨時大使を通じてイラク側と交渉を行った。
 この世界的な危機に立ち入らんとするときにあって、なぜ、外務大臣みずからが、あるいは、これまで特使を何人かお送りでありますが、このような新たなドイツとフランス、また中国、ロシアの共同宣言を受けて、日本として、本当に平和裏にこのイラクを武装解除させようと思えば、今こそ、特使を派遣なさるなり御自身がみずから時間を割かれるなり、最大限の努力をすべき時期と思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 イラクで直接働きかけたということは、先ほど申しましたように、在イラクの我が方の臨時代理大使からイラクの外務省に対して働きかけているということは、申し上げたとおりです。それから、私が外務大臣に直接に働きかけたということも、言ったとおりです。
 それで、我が国がイラクに対して、今、直接に特使を派遣するということが適切かどうかという点について、これについては検討しなかったわけではありませんけれども、結論的には、適切ではないだろう、そういう判断に達したわけでございます。
 それはなぜかといいますと、これは各国、同じような懸念を持っていますけれども、イラクは、今、そういったことを自分の目的のために利用をする可能性があるということについての懸念が各国にございまして、そういった配慮もございまして、それは見送った、そういうことでございます。
阿部委員 自分の目的のために利用するか否かは、外交は駆け引きでございますから、我が国が平和への思いを込めてイラクに一歩一歩迫っていけばいいわけであります。最初からそのように決めつけて、イラクが悪なる意図を持って利用するかもしれないからと身をひるませていたら、このことは決して平和解決いたしません。
 ちなみに、バグダッドには、フランス、ドイツ等々は現在も大使館を置いておられます。日本は、湾岸戦争時以来、今は臨時大使という形ですが、既に半ば引き揚げた形での外交しか行っておりません。
 私どもの国、本当にこの世界平和ということについて何らプレゼンスがない。そのことについて、いつも川口外務大臣のお答えは、アメリカの側の一方的な見方。物事はやはり双方を見て、そして情報はみずから聴取して外交の事に当たらなければ、これからさまざまな外交問題が発生した場合に、みずからの道を誤ることになると思います。
 なぜ、イラクについてそのような腰砕け外交なのか、もう一度御答弁をお願いいたします。
茂木副大臣 何点か御指摘いただいた点につきまして、私の方からもお答えを申し上げたいと思うんですが、例えば、日本が直接に情報をとっていない、そういうことはございません。(阿部委員「申しわけありません。私は川口大臣にお願いいたしました」と呼ぶ)
藤井委員長 委員長が指名しています。
茂木副大臣 エルバラダイ事務局長、それからブリクス委員長とも直接、先週、先々週お会いしまして、査察の状況、そして今後の見通しにつきましても話を日本として聞いております。
 そして、両氏ともに、イラクの現在の協力は不十分であると。プロセス面、手続面においては協力は進んでいるけれども、一方、実態面において、例えばVXガス、マスタードガス、炭疽菌、こういうものがあるんだったらば、きちんと残っているものを差し出してください、もしこれがないんだったらば、どう廃棄したのか、その証拠を出してほしい、そういう能動的な協力がイラクの側が必要なんだ、こういうことは、ブリクス委員長、そしてIAEAのエルバラダイ事務局長も直接述べております。
 それから、フランス、ドイツ、そして英国を回らせていただきました。イラク担当の政務次官であったり、また副大臣等々とお会いをいたしまして、日本としては、この問題というのは、アメリカ対イラクの問題ではない、国際社会対大量破壊兵器を有するイラクの問題なんだと。そしてまた、この国連決議の一四四一、そして現在続いている査察については、イラクの側に能動的に証明をする責任があると。そして、現在までの査察においてイラクの協力は不十分である、したがって、国際社会全体が一致してさらなる圧力をかけ、イラク側から能動的な協力を引き出す、このことが極めて重要である、このことを明確に各国に申し上げまして、各国ともに、全く同じ意見である、そのためにさらに努力していこう、こういうことになっております。
 ちなみに、昨年の十一月におきましても、総理の特使として、私も含め、高村議員、そしてまた中山議員が、イラクの周辺国、イラクに対していろいろな意味で、日本もそうでありますけれども影響力のある国、私の場合はヨルダン、シリア、トルコでありました、そして高村先生の場合はエジプトとサウジアラビア、さらに中山先生がイラン、そういう国を回りまして、先ほど申し上げましたような立場をそれぞれの国に説明し、それぞれの国からも、イラクに対して働きかけてほしい、まさに今ボールはイラクの側にあるんだ、どの国もイラクが今は問題なんだ、そういう話をしております。
 そして、この大量破壊兵器の話。先ほど大臣の方からもありましたけれども、これをイラクがみずから使う、これは中東地域の平和と安全、これはまさに我が国の問題でもある。そして、それが第三国に渡る問題、さらに三番目にそれがテロに渡る問題、そして四番目に、イラクに対する国際社会の一致した厳しい対応、これがなければ、次に大量破壊兵器を開発しよう、こういう意図を持っている国に対してもそれを助長することになる、こういう意味から大きな問題だ、こういうことについて国際社会でのコンセンサスをつくる、そういう努力は日本としてやってきております。
阿部委員 限られた時間ですし、私の質問に正しく答えていただきたい。私が伺ったのは、現在、ドイツ、フランス、そして中国、ロシアの支持を得て新たな共同宣言がなされて、そのことを受けてイラクでも、上空の飛行で偵察機の受け入れ等々を認める等、事態に変化が生じております。
 おっしゃるように、査察をきちんとやらせて本当に大量兵器を廃棄させていく。そして、その結果としては、当然経済制裁を解いて、今イラクの中で一番困窮している子供たちや病人の状況が改善するということがその先にございますが、まず経済制裁を解くためにも大量破壊兵器の問題を解決しなきゃいけない。そのために日本が今何ができるか。私は、もっと目に見える形で、みずから情報収集に出向き、イラク側と交渉し、事態を進めるべきではないかという私の質問をいたしました。
 今いただいたお答えは、去年から現在に至るまでの、そして、近々はブリクス氏とエルバラダイ氏からの情報を得たというお話であって、この時点にあってイラク側と直接のコンタクトはしておられません。
 例えば、私は去年の十二月、国民会議議長のハンマーディ氏、この方は外務大臣の経験もおありで、イラクの国民会議議長でございますから、それなりの地位にある方ですが、その方ともお目にかかって、査察の問題、経済制裁の問題、そして武力攻撃を避けるために何をなすべきかということを話し合ってまいりました。そのことはさらに、実際の政策上、国の国政上の責任をお持ちの外務省がもっと積極的に行うことによって日本の平和外交のプレゼンスができるのではないかと私は質問いたしました。
 そのことへのお答えは、エルバラダイ氏に会った、あるいはブリクス氏から聞いた、そのことを求めているのではないのです。イラクの当事者にどのような形で会うおつもりがあるのか、あるいは、つもりがないのは、今、先ほど川口外務大臣、ちらっとおっしゃいました。諸般をかんがみて、特使も考えたがそうしない方がいいだろうと。しない方がいいだろうと考えたならば、その答えを川口外務大臣にお願いいたします。
川口国務大臣 私が先ほど申し上げた答弁をきちんと聞いておいていただきたかったと思いますけれども、再度繰り返させていただきますと、イラクへの直接の働きかけをやったということを言っているわけです。
 日にちを四回申しました。秋の、私の国連総会におけるイラクの外務大臣との会談から始まりまして、十一月に新藤政務官から、そして一月の二十九日、これは非常に直近の日にちだと思いますけれども、私が東京で在京のイラクの臨時代理大使に直接話をした。そして、さらに最近の時点では、二月一日にバグダッドで日本の臨時代理大使がイラク側に話をした。働きかけを十分にやっている。
 そして、特使を出さない理由ということについても、先ほど申しましたように、今、国際社会の共通の理解として、この時点でイラクに特使を出すということについて、イラク側がそれを逆に利用する懸念がある、可能性があるということで、それをやらないということを判断した。この判断について、委員の判断と政府の判断と違うのは、それは判断が違うということでございまして、そういうことも考えた上で判断をした、そういうことでございます。
阿部委員 イラク側が利用するから特使を出さない、そのような最終結果であれば、逆に、査察を何としてでもうまく運ぼうとする意思がないということですか。その一言をお願いいたします。査察は継続されるべきですか、否ですか。
川口国務大臣 御質問の趣旨がきちんと理解できているかどうかはわかりませんけれども、イラクへの査察については、イラクの協力、これは能動的な協力、すなわち、廃棄をした大量破壊兵器についてその証拠を、ここにありますといって見せていく、そういうことがなければ査察はうまくいかないということです。これについて国際社会が働きかけている。先ほど茂木副大臣が言いましたけれども、その認識はエルバラダイあるいはブリクス両方においてある。手続について、例えばU2を、飛んでもいいということについては、これは単に手続の話であって、それはもうはるか前にイラクはそれをやっていなければいけなかった。それをやっていない。
 サブスタンスのところについて、これを能動的に見せていくということをやっていない限り、査察がうまくいくという見通しが非常に暗いということを国際社会が懸念しているわけであって、したがって、そういった点でイラクが前向きに対応するように、今国際社会が全力を挙げて働きかけている。査察を続けることの前に、もちろん続けることは大事なんですけれども、イラクがそういう対応をしなければ査察を続ける意味がないということを国際社会は懸念しているわけです。
阿部委員 査察を続けることが大事であるから、ドイツとフランスそしてロシアは共同宣言を出したわけです。その査察を続けることが大事であるから出した共同宣言に、どのような評価をなさいますかというのが私の冒頭の質問でした。
 今、極めて最終局面と言われるような重要な局面に来ております。その動いている政治状況ということをきちんと外務大臣として把握して、単なる物事の言いわけや言い逃れや言葉のあやにとらわれることのない、本当の意味の外交を展開すべきなのがあなたの役割だと思います。
 私は、この件については、ここでまた再度の質問の機会を折があれば得たいと思いますので、本日提案いたしました健康保険法の本人三割自己負担、窓口負担凍結法案に関連して、坂口厚生労働大臣にお願いいたします。
 私は、主には二点お願いしたいと思いますが、去年の健康保険法の一部改正に伴って三つの改正、私どもは改悪として反対いたしましたが、行われました。第一に診療報酬の引き下げ、第二に、十月からは御高齢者の定率一割負担、そして控えるのが、ことしの四月からのサラリーマン本人三割窓口負担であります。
 まず、本当は幾つも伺いたいですが、喫緊なことといたしまして、この御高齢者の定率一割負担に伴って、先回、二月七日、志位共産党委員長も御質疑でございましたが、在宅酸素療法といって、御自宅で酸素を使うことによって呼吸を楽にして、心臓や脳への負担を軽減なさっている御高齢者たちが、窓口負担ゆえに在宅酸素療法を打ち切らざるを得ない事態が、患者さんの約一%から三%に生じております。在宅酸素療法の患者さんは全国で十二万、一%から三%にしても、千二百人から四千人ほどの患者さんが、既に、在宅酸素療法を窓口負担ゆえに中断するという事態が生じております。
 このことについて坂口厚生労働大臣は、まず、せんだっての御答弁では、現状を調査します、あるいは、何とか対処、対策を考えますというふうにお答えでありましたが、その後、具体的に進展なさいましたでしょうか。
坂口国務大臣 高齢者一割負担に絡みまして、いわゆる在宅酸素療法についてのお尋ねでございましたが、この問題につきましては、確かに今までと異なりまして、一割負担になりましたために、まあ一万円前後と思われますけれども、御負担になっているわけでございます。低所得の場合には八千円という上限がございますから、そのぐらいになっている。
 それから、御家庭で酸素吸入をお受けになっている皆さん方の中にも、経済的に十分それにたえ得る人も私はおみえになるというふうに思いますけれども、しかし、そうではない、八千円でもなかなか厳しいという方が大体どれぐらいあるのか。今、十二万人何がし、それは全体の数としては大体十二万四、五千人だろうというふうに思っておりますけれども、その中で、その八千円でも厳しいという方が大体どれぐらいおみえになるのかということにつきましては、少し調べないとわからないというふうに思っております。
 それだけではなくて、この障害者の問題をどうするかというのは、いろいろな問題が実はございます。例えば、肝臓移植をなすった方につきまして障害者として認めるかどうかというような問題もありましたり、いわゆる肺の障害のあります皆さん方をどうするかという問題もありましたり、そのときそのときにつくったのにはそれなりの理由があったんだろうと思いますけれども、今比較をしてみますと、これがなぜ入っていてこれがなぜ入っていないのかと、非常にわかりにくくなっていることも事実でございます。
 これらの問題を総論的に私ども、一遍整理をいたしまして、そしてどうするかということの決着をつけたいというふうに思っておりますし、その中には、今御指摘をいただきました肺疾患の問題も含めさせていただきたいと思っているところでございます。
阿部委員 よろしく検討をお願いいたします。
 最後に、一問お願いいたします。
 本日提案いたしました患者本人三割負担の凍結は、実は、四月の診療報酬改定において当初予定していたよりも医療費に抑制がかかりまして、厚生省の試案よりも全体に医療費の額が上がらずに済んでいる。逆に言えば、患者さん本人、窓口、働く者の三割負担はせずとも、例えばこの二年間試算しても、私どもの試算では、政府管掌保険は維持することができる、その間に、お約束である抜本改正を行っていくということが正しい政策ではないかということで、きょう四野党で提案させていただきましたが、そもそも試算をやり直すお気持ちはおありかどうか。かなりの受診抑制ないしは総体の医療費抑制が既に診療報酬改定と一割定率負担によってかかっておりますから、事態は変わっておる。変わっておる現状にかんがみて、試算のやり直し、そして必要とあらば三割を凍結するということについて、厚生大臣のお考えを伺います。
坂口国務大臣 現在、四月から九月までの値がわかっておりまして、十月はまだ完全にわかり切っておりません。こうした状況の中で、私たちも十分に試算をいたしております。一方におきます収入の方を見ましても、いわゆる政管健保の方はかなり人数も減りましたり、あるいはまた収入が減ったりいたしておりますので、この減少もあります。
 そうしたことから、やはり三割負担をお願い申し上げなければやっていけないことは明白でございまして、皆さん方の方で試算をしていただきましたものと、我々の試算いたしましたものと、その基準がどういうふうな基準でやっているかということは、これは当然比較をさせていただきまして、皆さん方にも御理解を得たい、こういうふうに思っているところでございます。
阿部委員 そういうことの審議のために、ぜひともこの予算委員会でも取り上げていただきまして、きちんとした、国民に最大負担を強いないような形に結論づけられることをお願い申し上げて、質問を終わります。
藤井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.