衆議院

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第16号 平成15年2月21日(金曜日)

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平成十五年二月二十一日(金曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      石川 要三君    衛藤征士郎君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      奥野 誠亮君    亀井 善之君
      栗原 博久君    小西  理君
      近藤 基彦君    高木  毅君
      竹本 直一君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      林 省之介君    原田昇左右君
      平井 卓也君    松岡 利勝君
      松宮  勲君    三ッ林隆志君
      三塚  博君    持永 和見君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      山本 明彦君    上田 清司君
      海江田万里君    河村たかし君
      田中 慶秋君    武正 公一君
      津川 祥吾君    手塚 仁雄君
      中村 哲治君    長妻  昭君
      細野 豪志君    山花 郁夫君
      吉田 公一君    米澤  隆君
      赤羽 一嘉君    漆原 良夫君
      斉藤 鉄夫君    西  博義君
      達増 拓也君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    木島日出夫君
      佐々木憲昭君    阿部 知子君
      中西 績介君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   財務大臣         塩川正十郎君
   法務副大臣        増田 敏男君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    中井 憲治君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十一日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     高木  毅君
  尾身 幸次君     三ッ林隆志君
  大原 一三君     小西  理君
  奥野 誠亮君     森岡 正宏君
  栗原 博久君     竹本 直一君
  高鳥  修君     近藤 基彦君
  中山 正暉君     林 省之介君
  松岡 利勝君     平井 卓也君
  山口 泰明君     松宮  勲君
  石井  一君     武正 公一君
  中村 哲治君     山花 郁夫君
  細野 豪志君     津川 祥吾君
  斉藤 鉄夫君     漆原 良夫君
  矢島 恒夫君     木島日出夫君
  中西 績介君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     大原 一三君
  近藤 基彦君     高鳥  修君
  高木  毅君     衛藤征士郎君
  竹本 直一君     栗原 博久君
  林 省之介君     中山 正暉君
  平井 卓也君     松岡 利勝君
  松宮  勲君     山口 泰明君
  三ッ林隆志君     山本 明彦君
  森岡 正宏君     奥野 誠亮君
  武正 公一君     手塚 仁雄君
  津川 祥吾君     細野 豪志君
  山花 郁夫君     中村 哲治君
  漆原 良夫君     西  博義君
  木島日出夫君     矢島 恒夫君
  阿部 知子君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     尾身 幸次君
  手塚 仁雄君     石井  一君
  西  博義君     斉藤 鉄夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長大林宏君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長中井憲治君、人権擁護局長吉戒修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 本日は、特に行刑及び人権等について質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤斗志二君。
斉藤(斗)委員 今委員長から御発言いただきましたように、行刑及び人権等ということで、テーマ別での予算委員会における審議でございます。
 まずもって申し上げたいのは、一昨日、名古屋刑務所事件に関して、質疑の中で、法務大臣及び矯正局長から答弁がございましたが、この答弁が問題あるということで予算委員会が紛糾いたしました。審議が一時ストップ、といいましても、二時間半に及ぶ長時間にわたってストップしたことは大変残念なことだというふうに思っております。本委員会におきましては、国民生活に支障を及ぼさないように一日も早く平成十五年度予算案を通過させること、これが非常に重要でございまして、国民もこれを待ち望んでいる状況の中で、大臣及び矯正局長には、その責任をまずもって感じていただきたいというふうに思います。
 御案内のように、一部には大臣の辞任要求という声も出ているわけでございます。
 そこで、先日の予算委員会で問題になった名古屋刑務所事件について、なぜそのように紛糾することになったのか。また、法務大臣にたださなければならないのは、数度にわたる記者会見並びに答弁、これらに一貫性がないのではないか、矛盾があるというようなことがございました。特に、答弁に欠落もあったのではないかというようなことも私ども感じているわけでございますが、ぜひ、この大臣答弁並びに記者会見の矛盾についての御説明、さらに、あわせて、名古屋刑務所事件の原因の解明及び再発防止等についても、大臣はどのような姿勢で、毅然として臨まれるのか、まずもってその点についてお伺いしたいというふうに思います。
森山国務大臣 先日の委員会におきまして申し上げましたとおり、昨年名古屋刑務所で起きました一連の事件で国民の矯正行政に対する不信が高まっております中で、再び被害者が死亡するというような重大な事件が明らかになりまして新たな逮捕者を出しましたということは、まことに申しわけなく、ざんきにたえないところでございます。心からおわび申し上げます。
 さらに、私がこれまでの答弁の中であるいは記者会見で申しましたことにつきまして、必ずしも、言葉が足りなかった、十分ではなかったということがあり、そのようなことで本委員会が紛糾いたしましたということは、予算審議に支障を生じたという意味で、大変申しわけなく、心からおわび申し上げます。
 また、矯正局長がいたしました答弁について不適切な点があったという御指摘もございましたが、委員長からも御注意を受けたところでございますが、これも私の指導の不十分であること、また不徳のいたすところでございまして、あわせておわび申し上げます。
斉藤(斗)委員 今、申しわけないというおわびの御発言がございました。
 また、この質問の経緯の中で、どの点が食い違っているのか等々はまた指摘をしなきゃならないのでありますが、欠落部分のことについて、これでストップしたわけですね、そして官房長も、大変申しわけなかったという御発言もあったわけでございますので、今の答弁の中では、欠落した部分について、私、ちょっと聞き足りないような感じがしたのでありますが、大臣、そこのところ、しっかりもう一度答弁してください、欠落部分。
森山国務大臣 まことに申しわけございません。
 十四年の十一月二十九日の法務厚生労働委員会連合審査会におきまして、阿部知子委員の御質問に対する私の答弁の趣旨が明確でなかったということが一つの原因ではないかと思いまして、これも深くおわび申し上げる次第でございます。
 このとき、阿部委員から、平成十三年十二月の死亡事案を含む三件についてお尋ねがあったわけでございますが、当日は、その二日前に起訴された一件のほか、同じ日に職員が逮捕された平成十四年五月の死亡事案がございまして、この事件のことでおわびしなければいけないという思いでいっぱいでございました。このために、この十四年五月の事案についてだけ答弁を申し上げてしまいまして、十三年十二月の事案については答弁が漏れてしまったわけでございます。
 本来なら、御指摘のあった平成十三年十二月の死亡事案については、名古屋刑務所から自傷行為によると思われる腹膜炎で死亡したという報告を受けましたという旨を申し上げなければいけなかった。そうすれば、より明確であったというふうに思うのでございますが、そのような御説明あるいは言葉が不十分であったということはまことに申しわけなく、おわび申し上げます。
斉藤(斗)委員 そうしますと、大臣の答弁は、実は名古屋刑務所、最近のこの事件、起きまして、三件あったわけですね。一番古いのが、これから問題にしようとしている消防用ホース事件で、平成十三年十二月事件、そして、その次に古いのが平成十四年五月、さらに平成十四年九月、これは革手錠事件と私、呼んでいるのでありますが、それぞれ三件あった中で、大臣は、平成十四年五月事件で十一月二十七日に逮捕という事態があって、その二日後に国会での答弁があった、したがって、そちら、本来なら十三年十二月の事件もあわせて答弁しなきゃいけないのに、五月事件の逮捕が二日前だったものですから、そればかり頭にあって、それを優先してしまった、こういうふうに理解したんですが、それでよろしゅうございますか。
森山国務大臣 大筋、おっしゃるとおりでございます。
斉藤(斗)委員 いや、実は、この消防ホース事件というのは、私どもには考えられない事件なんですね。本件致死事件、捜査状況というのをしっかりまずもって説明、答弁していただきたいというふうに思います。法務当局。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの件につきましては、名古屋地方検察庁において、受刑者死亡の当日である平成十三年十二月十五日、名古屋刑務所からの通報を受け、司法検視を行った上、同月十七日、司法解剖を実施したものと承知しております。
 その後の捜査経過についてあえて申し上げれば、名古屋地方検察庁におきましては、翌年十月二十四日付で解剖医から最終的な鑑定書を受領し、その鑑定書におきまして、解剖所見のみからは判断できないが、自為によるものであると考えても矛盾はないとの最終的な所見を示されましたことから、他害行為による死亡の可能性を念頭に、同事案の事件性について検討を開始し、関係資料の収集等を行ったということでございます。
 同事件におきましては、同年十一月末ころから関係者に対する取り調べを本格的に開始し、同年暮れごろ、矯正当局から提供を受けた情報も参考にしつつ、事案の具体的状況につき捜査を進めていましたところ、同年十二月下旬ごろ、被害者の肛門に対する放水の事実を把握するに至ったと聞いております。
 しかしながら、同事実を前提としても、いかにして肛門から約十一センチの場所に裂開が生じるのか、その科学的メカニズムは必ずしも明らかでなかったことから、同地検におきましては、他の暴行の事実の有無につきましても、あらゆる可能性を念頭に置いて鋭意捜査を進めますとともに、それまでに把握した事実を前提に傷害が発生するかどうかについて科学的裏づけを得るべく努力した結果、今年二月初旬ごろ、被害者の死因が放水によるものと考えて科学的に問題ない旨の結果が得られたことなどから、本件犯行の嫌疑が濃厚となったとの最終的判断を固め、同月十二日、被疑者の逮捕に至ったものと承知しております。
 逮捕事実の要旨は、被疑者は副看守長として名古屋刑務所に勤務し、被収容者の戒護、規律維持及び警備等の職務を担当していた者であるが、平成十三年十二月十四日午後二時二十分ごろから同三時三十分ごろまでの間、同刑務所保護房において懲役受刑者、当時四十三に対し、懲らしめの目的で、その必要がないのに、消防用ホースを用い、臀部を露出させてうつ伏せになっている同人の肛門部を目がけて加圧した水を多量に放水する暴行を加えて、直腸裂開、肛門挫裂創の傷害を負わせ、よって同月十五日午前三時一分ごろ、同刑務所病室棟集中治療室において、同人を同傷害に基づく細菌性ショックにより死亡するに至らしめたものであるというふうに承知しております。
 以上でございます。
斉藤(斗)委員 私の持ち時間は大変に短いので、答弁は短くしていただければというふうに思いますが、今、捜査状況、また、この事件の概要を説明いただきました。
 私、納得できないのは、この懲役受刑者は四十三歳ですよね。要するに、四十代の方でいらして、これが消防ホースで多量に放水されて六時間後に死んでいるんですよ。四十代の人が瞬く間に亡くなるということは考えられないので、かなり制圧行為に行き過ぎがあったのではないかと私は思っているわけでございますが、これは、今刑事局長から説明いただきましたけれども、矯正局の担当で起きた問題ですよね。
 そこで、本件致死事件について、名古屋刑務所から矯正局に、いつどのような報告があったか、また、大臣にどのような報告をいつしたのか、しっかり局長、答えてください。
中井政府参考人 お答えいたします。
 本件致死事件につきましては、死亡当日の平成十三年十二月十五日、名古屋矯正管区から矯正局に対しまして、名古屋刑務所から報告を受けたといたしまして、お尋ねの被収容者が、保護房収容解除後に急性心不全で死亡した旨の電話連絡がございました。
 さらに、司法解剖が実施された後の平成十四年一月十六日、名古屋刑務所から当局に対しまして被収容者死亡報告が郵送されましたが、同報告によりますと、汚物を壁に塗りつけるなどの異常行動を反復していたとされ、解剖医から聴取した所見といたしまして、自傷行為によると思われる腹膜炎による死亡、急性心不全ともされておりましたので、当時は特に問題はないと判断し、法務大臣に御報告していなかったものであります。
 名古屋刑務所の平成十四年九月の受傷事案を受けまして、矯正局におきまして、保護房に収容していた者の死亡事案等を調査いたしましたところ、平成十一年以降、全国の行刑施設で死亡事案が合計五件ございまして、名古屋刑務所関係では、このうち、御案内のとおり、平成十四年五月と、本件の平成十三年十二月の二件でございました。
 平成十四年十月の下旬でございますけれども、私矯正局長から法務大臣に対しまして、これら五件の概要を御説明する際に、本件につきまして、自傷行為によると思われる事案である旨名古屋刑務所から報告を受けている、かように御説明した次第でございます。
斉藤(斗)委員 ですから、当初、これは自傷の事故であって、問題がないということの認識というか、そのような扱いの中で大臣にも報告されなかった。とんでもないことだ。逮捕者も出した。あってはならない、あの刑務所の中で殺人が起きたことについて、認識が薄いですよ。大変けしからぬと思うよ。
 ただ、時間がないので次の質問に行きたいと思いますが、名古屋刑務所において、この事件、特別公務員暴行陵虐致死事案ということになっていますが、消防用ホースが犯行に使われたという説明がありました。ただ、消防用ホースを、逮捕された刑務官一人で犯行に及んだとは思えないですね、私には。本件犯行には他に関与した者がいるんじゃないかと国民は思っていますよ。このようなことを速やかに解明すべきではないかというふうに私は思うのでありますが、法務当局、お答えください。
樋渡政府参考人 お尋ねのことにつきましては、御指摘のとおりの御懸念が当然に生じることは十分に理解できるところでございまして、既に逮捕された刑務官のほかに共犯者としての責任を問うべき者があるかどうかは、御指摘いただいているような消防ホースの運搬等に携わった刑務官がいるかどうかだけでなく、その他の態様で犯行に関与した者の有無や、その者の意図、目的など、詳細な事実関係のいかんによることになりますが、検察当局におきましては、共犯者の有無等の観点をも含め、同事案の全容の早期究明のため懸命な捜査を行っているものと承知しております。
 いずれにせよ、本件についてはいまだ捜査中でございまして、他の関与者の有無につきましてはお答えできる段階にはございませんが、本件捜査が終了した時点では、お尋ねがあればもう少し詳細にお答えができるものというふうに思っております。
斉藤(斗)委員 この保護房というのは、御案内のように、逃亡を防止するため、また自殺予防をするために、ビデオカメラがセットされているはずですよ。これはどなたか答えていただけますか、そのような装置がセットされていますと。
中井政府参考人 おおむね整備されておりますが、整備されていないところにつきましては、ハンディーカメラ等で撮影できる体制を現在とっております。
斉藤(斗)委員 ですから、撮影できる体制があるという、今答弁をいただきました。
 この名古屋刑務所事件でありますけれども、いろいろお話を聞きますと、名古屋刑務所には処遇困難者が多く入っている、また初犯施設ではなくて、刑期八年未満で累犯施設という位置づけになっているということも聞いておりまして、また暴力団関係者がかなりの部分を受刑しているという話も聞いている。そういうような環境にあるのかなというふうに思っております。
 確かに、後ほど触れますが、過剰収容の常態ということも指摘もされているというふうにあって、刑務官にプレッシャーがかかっているということもマスコミ報道では報ぜられているところでありますが、それにしても、こんな、あってはならないところで殺人事件が起きるということについて、幹部の監督体制が機能していなかったと私は思いますよ。この点についてどのように考えているのか、お答えいただきたいと思います。
中井政府参考人 委員御指摘のとおりではないかと私は思っております。
 一連の名古屋刑務所の事件を見ますと、特に平成十四年度におきますと、革手錠の使用要件の厳守とかあるいは適正な使用方法の実施という点につきまして、所長以下幹部から第一線の職員に対する周知徹底が図られていない、かように私どもは見ております。また、その現実の革手錠の使用場面におきましても、使用要件とか使用方法につきまして、幹部の事後的なチェックが不十分であったと言わざるを得ない。加えまして、かねて御説明申し上げているとおりですが、急に革手錠の使用件数がふえておるにもかかわらず、これに対し特段の指導がなされていない。
 私は、名古屋刑務所の監督体制、これは適切に機能していたとは言い得ないと考えております。
 加えて、今回、非常に残念なことでありますけれども、さらに古い事件が摘発されました。この意味しますところは非常に大きく重いものがございまして、いわば前年度につきましてもその監督体制に大きな問題があったと言わざるを得ないのではないかと思っております。
 私ども、全力を挙げて、その原因、背後関係等について調査いたしたい、かように考えております。
斉藤(斗)委員 今、名古屋刑務所には重大な問題があるということを局長から御指摘いただきました。
 御案内のように、統計資料、法務省から出ていますが、平成十三年度施設別死亡件数というのがあるのです。このトップの方を見てまいりましたけれども、医療刑務所としては八王子、大阪へ行って、まあ医療ですから亡くなられる方は多いのかなというふうに思いますが、それを除いた場合、名古屋が一番多いんですよ、死亡した方々の数が。それで、規模では府中の方が多いんだけれども、府中を大きく上回って名古屋刑務所では死亡者が出ている、これは刑事事件、普通死亡、合わせた数字であります。当然、ここは重大な問題があるということで認識してもらわないかぬというふうに思っているわけであります。
 今もお答えいただいたわけでありますが、特に消防用ホースを使っての全く常軌を逸した事件でありますので、消防用ホースを使ったのは初めてと私聞きましたよ、初めてのケースだというふうに聞きましたけれども、これに対する、これを起こした者に対する刑事事件だけではなくて、監督者の管理責任も厳しく問いたいというふうに思っておりますが、これは局長じゃなくて大臣、お答えいただけませんか。刑事事件並びに監督者責任について、大臣の姿勢をお聞きしたい。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、まさにこの事件は常軌を逸したものでございまして、ちょっと普通の感覚では考えつかないようなことでございます。
 当該職員に対してはいずれ刑事責任が問われるというふうに思いますけれども、関係者の処分は、まず事実を確定することが肝要でございますので、調査や捜査の結果をも考慮する必要があろうかと思います。
 いずれにいたしましても、監督者の責任については、処分すべき者は処分するとの立場から、捜査及び調査の結果を踏まえまして厳正に対処する方針でございまして、また、処分できる者についてはできる限り早く処分したいというふうに考えております。
斉藤(斗)委員 大臣の決意を今お聞きしたわけでございます。
 時間がかなり制約されてきたので、それでは、昨日会議を持たれ、ごあいさつをされ、指示も出され、そしてさらに情願について大臣がお触れになっておられます。きょうはその新聞報道が多いので、情願について先にお聞きしたいというふうに思います。
 今まで、情願が出されてきていますが、ほとんど大臣はごらんになっていない。これは大変けしからぬことだなというふうに思いますよ。見ていれば、こういうような事件は防げたものがたくさんあるんだというふうに思います。そして、この情願の制度をもっと有効に、実効性あるものにしなきゃいけない。大臣のその決意をお伺いしたいというふうに思います。
森山国務大臣 情願という制度があるということを法務省に来てから知りまして、そして、これが直接大臣に対して、その名前をあて名として送られる手紙であるということも承知いたしました。
 ルールといたしまして、まずそれを局長が目を通して、さらに、大事なものと思ったものは事務次官にも見てもらって、どうしてもこれは基本的に非常に大切だということについては大臣に見せるというルールだそうでございます。
 そのルールは昭和五十年代にできたものだそうでありまして、そのようなやり方を今までやってまいったそうでございますが、私といたしましては、このところ、非常に情願あるいは名古屋刑務所の問題、その他いろいろございましたので、この情願を、私自身が筋どおり、本当の筋どおり私が直接見るということが重要だというふうに考えまして、そのように今し始めたところでございます。
 非常にたくさん量があるということでございますので、どうだろうかということを心配する人もおりましたのですけれども、私としてはともかく精いっぱいやってみようということで、非常にたくさん、あるいは難しくて大変な場合には副大臣あるいは政務官にも手伝っていただくこともあるかもしれませんが、今のところ、私が全部見るという立場でやっております。
斉藤(斗)委員 これは通告していなかったんですが、きょう、増田副大臣、お越しでいらっしゃいますね。その情願について、大臣をきっちり補佐してあなたたちも目を通すということを御答弁いただけますか。
増田副大臣 お答えを申し上げます。
 大臣のお話のように、指示さえあれば、全力を尽くして取り組みたいと思います。
藤井委員長 いいんですか、もう一人。
斉藤(斗)委員 では、中野政務官、決意をお願いします。
中野大臣政務官 今大臣が申されたとおり、この問題については、私や副大臣は、大臣の御指示があれば、どんなときでもこの問題については一生懸命やらせていただく、そういう決意でございますので、よろしくお願いします。
斉藤(斗)委員 時間がなくなりまして、最後の質問になるかなと思います。
 本来なら法務大臣にお聞かせいただかなきゃいけないんだろうけれども、財務大臣もきょうお越しでございますので、長い人生私たちの先輩として、このような事件が起きた、また、この名古屋事件の背景として、昨今の行刑施設における過剰収容があったり、また、刑務官の業務の危険度や負担の増加が考えられてきているんですね。というのは、犯罪がうんとふえてきている、急増している、したがいまして受刑者もふえてきていますから、こういったことにつきましても、長い人生の先輩としていろいろ御示唆いただければというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 この件が発生しまして、事件の内容とは関係ございませんのですけれども、実は、昨年の春ごろから森山法務大臣が私に非常に強く訴えておりましたのは、刑務所なりあるいは拘置所、留置場というものが整備が不十分だ、予算をつけてくれぬかということを必死に頼んでおられました。
 そこで私は、概算要求の八月のときに、準備を進めろということでやりまして、今回の十五年度予算には大幅にこれの緩和措置を講じたのでございますけれども、何分、今まで法務省というものは予算的に割合恵まれなかったところでございまして、それがために諸般の準備等もおくれておりました。
 しかし、こういうことがきっかけとなって、我々は、やはり法務行政といいますよりも、要するに、社会の秩序というものにもっと関心を持たないかぬと思いますし、まずは、忘れられておった綱紀粛正という言葉がございましたですね。今はもうしゃれた言葉でモラルだとかガバナンスだとか言っていますけれども、綱紀粛正という、そういうことをもう一回原点に戻って、きちっと役所の中を取り仕切っていくことも必要だろうと思っております。
 つきましては、そういう法務施設の整備を通じて、治安対策、そして、国民に不安を与えないようにこれからも努力をしていくようにいたします。
斉藤(斗)委員 時間が参りました。以上で終わります。
藤井委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 名古屋刑務所事件、お尋ねしたいと思うんですが、受刑者が名古屋刑務所内で刑務官の暴行によって死亡した、殺された、しかも、この刑務所は虚偽の報告書を作成して事件をやみからやみへ葬ろうとした、刑務所は無法地帯か、名古屋刑務所は一体どうなっているんだという私は驚きと怒りでいっぱいでございます。
 受刑者と刑務官という圧倒的な力関係と、刑務所という密閉された社会で一体どんなことが行われているのか。再発防止のために、この際、徹底して検証されるべきだと思いますが、まず法務大臣の所見をお尋ねしたいと思います。
森山国務大臣 このたびの事件を初め、名古屋刑務所におけるさまざまな経緯は、私も本当に何と申したらよろしいか、あきれ返って物が言えないとでも申しましょうか、本当に常識を逸したといいますか、驚きと言うほかございません。
 そのために、いろいろと皆さんに、先生方にも御心配をおかけし、また、予算委員会の審議にも支障を来しましたということについては、本当に申しわけなく、心からおわび申し上げます。
 なお、検察による捜査及び矯正局による調査も、それぞれ続行している段階ではございますけれども、この際、刑務官の人権教育の充実などを含め、行刑運営のあり方全体の見直しをするために、昨日、行刑に関する調査検討委員会を始めまして、そこで関係者がいろいろと議論を始めたところでございます。私も、先ほどのお話にもありましたように、情願をすべて自分の目で見たいということを申しまして、今までのやり方をすっかり初めから見直してやっていきたいというふうに考えております。
 今後は、この調査検討委員会を中心に、法務省全体で名古屋刑務所事件の原因を徹底的に究明いたしますとともに、抜本的な再発防止策を検討、策定いたしまして、一日も早い国民の信頼を取り戻さなければならないと考えております。
漆原委員 事実関係について少しお尋ねしたいんですが、先ほど刑事局長の方から事案の概要説明がありました。それによりますと、動機について、懲らしめの目的でとありますが、被疑者はどのような経緯で本件行為に及んだのか。懲らしめの目的でだけじゃわからない。もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねに係る実行行為に至る具体的経緯につきましては、被疑者の動機や犯意はもとより、実行行為の危険性や違法性にもかかわる極めて重要なポイントでございまして、まさに現在鋭意証拠を収集して事実関係の確定に努めているところでございまして、明らかにできる段階ではございませんので、現時点ではお答えをいたしかねることをぜひ御了承いただきたいと思います。もとより、本件捜査が終了した段階で、再度御質問があれば、可能な範囲で誠意を持ってお答えいたしたいと考えております。
漆原委員 では、後日の報告を待ちます。
 次に、臀部を露出させてうつ伏せになっている同人の肛門部を目がけてとありますが、被害者は、十二月十四日の午後二時二十分ごろ、なぜ臀部を露出していたのか。それから、うつ伏せになっていたのはなぜなのか。自分の意思なのか、あるいはだれかにうつ伏せにさせられていたのか。この辺の事情を聞きたいと思います。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 本件被害者は、本件被害を受ける前、平成十三年十二月八日から保護房に収容されたと承知しておりますが、その後、本件に至るまでの経緯、その間の保護房内での状況等は、本件犯行に密接に関連する事実であり、被疑者の動機、それから犯意はもとより、他に本件について責任を負うべき者の有無の解明にも直接関係する極めて重要なポイントでございます。
 名古屋地検におきましては、この点につきましてもまさに現在鋭意証拠を収集して事実関係の確定に努めているところでございまして、明らかにできる段階ではございませんので、恐れ入りますが、現時点ではお答えをいたしかねることを御了承いただきたいと思います。これにつきましても、本件捜査が終了した段階で、再度御質問があれば、可能な範囲で誠意を持ってお答えさせていただきます。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
漆原委員 先ほども斉藤委員から質問がありましたが、私も、この事件は被疑者が一人でやったとは到底考えられない。新聞報道によれば、暴行の際、上司である看守長が現場にいたという報道があります。また、放水の際、四人の刑務官が被害者の手足を押さえてうつ伏せにしていた、こういう新聞報道があります。この点についての御答弁を願いたい。
樋渡政府参考人 この点につきましても、本件につきまして、既に逮捕した被疑者のほかに、犯行に加担した共犯者や、まだ現場において密接に関与した刑務官がいたのではないかとの御指摘を理解するところでございますが、名古屋地検におきましては、これらの点につきましても全容解明に努めるべく、現在鋭意捜査を継続しているものと承知しております。
 したがいまして、お尋ねの点につきましては、いまだ確定した事実として明らかにできる段階にはなく、これらの点の現段階での証拠関係を明らかにすることは、本件につきましての罪証隠滅を招き、仮に共犯者があった場合の責任追及や本件被疑者の責任解明を困難にするなど、今後の捜査、公判に著しい支障を生じますので、現時点はお答えはいたしかねることを御了承いただきたいと思います。もとより、先ほど来申し上げておりますように、本件捜査が終了した段階で、再度御質問があれば、可能な範囲で誠意を持ってお答えいたしたいと考えております。
漆原委員 共犯の成否にかかわらず、名古屋刑務所の管理体制そのものが今問われているところなんですね。したがって、仮に、だれか協力者がいた、その協力者が共犯関係にないという場合でも、協力をしてそのことを上に報告しないで隠していたという、大変な、これは管理体制の問題になりますね。
 この辺については、矯正局としてはどのような調査をされるのか、お尋ねしたいと思います。
中井政府参考人 大臣からは、本件の原因の徹底的な究明と事実関係、特に背景事情も含めまして、きちんと調査するようにとの御指示をいただいております。
 先ほど刑事局から答弁がありましたように、刑事局は、いわば犯罪事実のコアの部分から外に向かって捜査をしていくものと思いますけれども、私どもは、それのお邪魔にならないように、全面的な協力をしつつ、いわば委員御指摘のとおり管理体制、その名古屋の全体の問題の外側から内側に向けて十分な調査を遂げて、事案の全容解明に努めたい、かように考えております。
漆原委員 局長、お邪魔にならないようになんという弱々しい心じゃなくて、気合いと根性で、局長が得意な気合いと根性ですから、気合いと根性で、自分の関係するところはしっかり調べるぞという決意でやってもらいたい。
 もう一度答弁願いたい。
中井政府参考人 気合いと根性で頑張らせていただきます。全力でやります。
漆原委員 本件事件の発生から逮捕まで、時系列に従って事実関係の確認をしておきたいと思います。
 まず、十三年十二月十五日、受刑者死亡、この事実を受けて、法務省には現場からどのような報告がなされたのか、お尋ねします。
中井政府参考人 第一報でございますけれども、死亡当日の平成十三年十二月十五日、名古屋矯正管区から矯正局に対しまして、名古屋刑務所から報告を受けたといたしまして、お尋ねの被収容者が保護房収容解除後に急性心不全で死亡したという電話連絡を受けております。
 また、司法解剖が実施されているわけでございますけれども、その後の平成十四年一月十六日、同じく名古屋刑務所から矯正局に対しまして、被収容者死亡報告というものが送られてきております。この内容の中には、要は、汚物を壁に塗りつけるなどの異常行動を反復していたとされておりまして、また、解剖医から聞き取りました所見といたしまして、自傷行為によると思われる腹膜炎による死亡、急性心不全であるともされていた次第でございます。
漆原委員 十四年一月十六日の死亡報告についてお尋ねしますが、一つは、腹膜炎による死亡、これは最初の急性心不全と違う内容になっておりますが、これについては、疑問を持ったのかどうか、持ったらどんなふうな対応をされたのか、一点。
 それから、自傷なのか他害なのか、その判断についての医師の、解剖医の所見はあったのかないのか、あったらそれはどんな内容か、尋ねます。
中井政府参考人 先ほど申しましたように、第一報が急性心不全でありまして、第二報が、腹膜炎による死亡、急性心不全ということでございまして、これは、字面から見ます限り矛盾はない。
 それと、自傷行為云々の話につきましては、これは、解剖医からそのような内容のことを聞いたという記載が報告書の中にございます。
漆原委員 では、解剖医そのものの見解はなかったわけだね。その死亡報告書の中に、解剖医そのものの所見というのは添付されていなかったわけですね。
中井政府参考人 矯正当局といたしましては、司法解剖結果を受け取るべき立場にはございませんで、そこに立ち会っておりました職員だと思いますけれども、それが、解剖医からその旨の話を聞いて、それを、又聞きをそのままメモしてこちらに報告してきたという外形になっております。
漆原委員 十四年の十月二十四日ごろ、名古屋地検が司法解剖鑑定書を受領している。それで、十一月下旬、刑事局長が、名古屋地検から本件解剖鑑定書の内容の報告を受けたと聞いております。
 法務省にお尋ねしますが、どんな内容の報告を受けたんでしょうか。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
樋渡政府参考人 お尋ねの点につきましては、司法検視、司法解剖のいずれも名古屋地検において行っておりまして、司法検視の結果は、死因となるような顕著な外傷は認められないものの、司法解剖の必要があるというものでありまして、司法解剖の結果は、鑑定書によれば、解剖所見のみからは判断できないが、自為によるものであると考えても矛盾はなく、肛門から約十一センチの箇所に直腸裂開が認められるものというものであったと承知しております。
漆原委員 自傷か他害かはよくわからないという内容であったというふうに聞いていいんですね。
 それでは、法務省の刑事局長が本件の報告を受けるに至った経緯は何なのか、法務省が直接関与したことは、何らかの理由で本件事件の事件性を察知して事件の捜査に関与したのかどうか、これはいかがですか。
樋渡政府参考人 当局におきましては、平成十四年十一月下旬ごろ、国会審議におきまして矯正局が本件について答弁したことから、参考のため入手する必要があると考えて、名古屋地方検察庁から本件司法解剖の詳細な結果の報告を受け、間もなく本件の事件性の有無について検討を開始した旨連絡を受けたものでございます。当省が本件の捜査に関与したということはございません。
 その後、検察庁からは、本件についても鋭意解明する方針であるなどの報告がありまして、さらに本年二月十二日午前十一時ごろ、本件犯行の嫌疑が濃厚となりましたことから、検察当局において被疑者を逮捕する旨最終的な判断を固めた旨の報告があったということでございます。
漆原委員 この十四年十一月下旬に本件解剖鑑定書の報告を受けた段階では、これは国会答弁のためだったんだ、国会答弁の必要性で受けた、法務省が事件性について認知していたわけではないというお答えと聞いておきます。
 ところで、法務省が本件について名古屋地検が捜査をしているということを認識したのはいつの段階か、どんな経緯で認識するに至ったのか、お尋ねします。
樋渡政府参考人 当局におきましては、平成十四年十一月下旬ごろ、名古屋地方検察庁から、先ほど申し上げましたように、本件司法解剖の詳細な結果の報告を受け、間もなく本件の事件性の有無について検討を開始した旨連絡を受けました。その後、当局におきましては、同年十二月下旬ごろ、名古屋地方検察庁から、本件について、犯罪の疑いがあると考えられ本件について捜査を継続している旨の連絡を受けたところでございます。
 これ以降も、当局におきましては、本件に関する捜査経過を注視し、適宜名古屋地方検察庁から報告を受けていたものの、事案の事件性について必ずしも明確にならない状況が続いていたところ、本年二月十日、それまでに行われた捜査結果を総合し本件犯行の嫌疑が濃厚となったとの判断に至った旨報告を受け、同月十二日午前十一時ごろ、最高検察庁から、検察当局においてかかる地検の判断を受けて被疑者を逮捕する旨最終的な判断を固めたことを把握し、同日昼前ごろ、同地検を通じて被疑者を逮捕したことを把握したところでございます。
漆原委員 昨年十二月下旬ごろ、名古屋地検が本件事件を捜査しているということを認識したと。そのときに、先ほど読んでいただいた逮捕事実ですか、事実の概要、特に消防用のホースを使用して暴行を行って死に至らしめた、こういうふうな具体的な容疑事実まで聞いたんでしょうか。どうでしょうか。
樋渡政府参考人 お尋ねにつきましては、本年一月三十日ごろ、現時点では犯罪行為によるものか否かは必ずしも断定できないが、名古屋地方検察庁において、他害による可能性も念頭に置き、他事件とともに本件についても鋭意解明する方針であること等を大臣に報告申し上げたところでございますが、当局といたしましても、要は、その十二月の下旬ごろの時点まで、放水があったという事実を名古屋地検で把握しているという旨はいろいろな連絡から受けておりますが、それが実際に犯行の手段であるかどうかということは確定できない、要するに、そのころは法医学の権威に鑑定を依頼しているところでありまして、法医学の先生の方で検討していただいているというところで、何ら犯行の手段は確定できない、それが事件かどうかもまだ確定できないという状況でございました。
漆原委員 今局長、十五年の一月三十日に法務大臣に報告をされた、こうおっしゃった。その報告内容はどんな報告内容だったのか。特に、このホースを用いて暴行に及んだというところの具体的事実まで御報告したのかどうか、お聞きしたい。
樋渡政府参考人 先ほど少し先走り過ぎて、失礼をいたしました。
 お尋ねにつきましては、もう一度繰り返しますと、本年一月三十日ごろ、現時点では犯罪行為によるものか否かは必ずしも断定できないが、名古屋地方検察庁において、他害による可能性をも念頭に置き、他事件とともに本件についても鋭意解明する方針であること、司法解剖の結果について、解剖所見のみからは判断できないが、自為によるものであると考えても矛盾はないとの所見が示されているが、肛門から約十一センチメートルの箇所に直腸裂開があり、解剖医の最終的な所見は、必ずしも自為によるものと断定するものではないこと、死因につきましては直腸裂開による汎発性腹膜炎によるものと考えられるとの報告をいたしました。
漆原委員 刑事局長及び法務大臣が本件事件の事実関係、冒頭に述べられたような事実関係を具体的に認識されたのはいつどのような経緯によるものか、お答えいただきたい。
樋渡政府参考人 最終的にあれは二月十二日の午前十時、その前に言いますと、一月の三十一日ごろ名古屋地検から、本件の事件性の有無について大詰めの捜査をしている旨の報告を受けております。さらに、同年二月十二日午前十時ごろ最高検察庁が被疑者の逮捕方針を決定して、同日午前十一時ごろ最高検察庁からその報告を受けたことから、私はその後直ちに法務大臣にその旨の報告をしたということでございます。
漆原委員 法務大臣は。
森山国務大臣 二月の十二日のお昼ごろに刑事局長から、このような事件が起こって、これに着手する、犯行態様が消防用ホースを用いて肛門部に加圧した水を放水するというやり方であったということを聞きました。それが初めてでございます。
漆原委員 十四年の暮れごろに本件に関する情報提供が矯正局にあったと聞いておりますが、どのような内容なのか、また矯正局はそれをどのように処理されたのか、お答え願いたい。
中井政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの時期に、矯正局に対しまして、問題の事件につきましては職員の暴行をうかがわせるんだ、こういう情報提供を受けたところでございます。これは事実でございます。
 この件につきましては、法務大臣から、かねて、事件の真相解明は検察にゆだねて、検察の捜査が円滑に進められるよう全面的に協力しなさい、捜査の妨げにならないようにしてやっていきなさい、こういう御指示をいただいておりましたので、私としては、直ちにこれを名古屋地方検察庁に情報提供いたしました。
漆原委員 これは法務省に聞きたいんだけれども、名古屋地検が本件事件の捜査に着手した端緒、一体何なのか。要するに、これは情報提供によるものなのか、それとも、名古屋地検が、解剖鑑定書を見て、これはおかしいぞというふうに思って自主的に捜査を開始したのか、どっちなんでしょうか。
樋渡政府参考人 お尋ねにつきましては、名古屋地方検察庁におきまして、受刑者死亡の当日である平成十三年十二月十五日、名古屋刑務所からの通報を受け司法検視を行った上、同月十七日、司法解剖を実施しております。
 その後の捜査の経緯について申し上げますと、名古屋地方検察庁におきましては、翌年十月二十四日付で解剖医から最終的な鑑定書を受領しましたが、その鑑定書におきまして、解剖所見のみからは判断できないが、自為によるものであると考えても矛盾はないとの最終的な所見が示されたことに加え、その当時進めていた同年九月発生の致傷事案等の捜査経過をも勘案し、他害行為による死亡の可能性を念頭に、本件事案の事件性の有無を解明する必要があると判断いたしまして、所要の検討を開始し、十一月末ころには、関係者からの事情聴取を開始したものと承知しております。
 以上の経過からおわかりいただけますように、昨年暮れごろ矯正当局から提供された情報が捜査の端緒となったわけではないものと承知しております。
漆原委員 刑務所の管理体制についていっぱい聞きたいことがあったんだけれども、時間がなくなりまして、総括的に聞きます。
 今回の事件で、まず問題として指摘しなければならないのは、名古屋刑務所が、刑務官の暴行による死亡事件を、受刑者による自傷行為による急性心不全と虚偽の報告をしたということであります。この虚偽の報告には、名古屋刑務所のだれがどのように関与していたのか、お答えいただきたい。
中井政府参考人 お答えいたします。
 問題の名古屋刑務所の報告文書でございますけれども、処遇部門の職員、解剖に立ち会いました職員、医師、看護師ら、同刑務所の関係職員からのそれぞれの報告等に基づきまして、当時の所長の責任において取りまとめられ、所長の責任において上級庁に報告がされたものでございます。
 問題は、具体的に、どの時点でどの職員が関与して事実に異なる報告がなされるに至ったのか、この点につきましては、現在、調査中でございます。
漆原委員 そこのところをしっかり調べないと、国民だれも納得しませんよ。刑務所内の管理体制が、先ほどの斉藤委員の話じゃありませんけれども、私も機能していないんじゃないのかなという気持ちを持っております。しっかりここのところはやってもらいたいということをお願いしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて漆原君の質疑は終了いたしました。
 次に、原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博でございます。
 きょうは、名古屋刑務所における平成十三年十二月発生の特別公務員陵虐致死事件、以下、十二月事件と呼びます、あるいはホース事件と呼びます、この事件についてだけ伺いますので、明快な答弁をお願いしたいと思います。
 先ほどの質疑の中で、所長の責任において虚偽の報告がされたというのであれば、これは日本の行刑行政、これを揺るがさんばかりの報告をしたということでございますので、委員長、理事会で協議をいただきまして、当時の所長をこの委員会にお招きいただきますように要請をいたします。
藤井委員長 理事会で協議いたします。
原口委員 さて、事実について聞いてまいりますが、この十二月事件については、被害者は、何分このような辱めを受けていたのか。そして、先ほどからの質疑にありますように、一人ではこれはできない。七十メーターもホースを引っ張っていって、そして高圧の水を当てる、指で十一センチまで傷をつけるなんてことは、常識でもってもできないわけです。何分放水されていたのか。そして、十一センチの傷がついているにもかかわらず、どうして自傷の疑いありという鑑定書になったのか、これが二点目。三点目は、その鑑定は行政解剖によるものなのか、司法解剖なのか。それを明らかにしていただきたいと思います。
樋渡政府参考人 まず、最後の質問でございますが、司法解剖でございます。
 本件逮捕事実によりますと、本件の態様については、被疑者は、本件被害者に対し、懲らしめの目的で、その必要がないのに、消防用ホースを用い、臀部を露出させてうつ伏せになっている同人の肛門部を目がけて、加圧した水を多量に放水する暴行を加えて、直腸裂開、肛門挫創の傷害を負わせ、よって、同月十五日午前三時一分ごろ……(原口委員「一言だけお願いします」と呼ぶ)はい。ショック死、細菌性ショックにより死亡するに至ったとされております。
 その直腸裂開につきましては、司法解剖の結果、肛門から約十一センチの部分にできたと承知しておりますが、受刑者に対し何分間放水したかなどの実行行為の具体的態様につきましては、その危険性や違法性はもとより、被疑者の動機や犯意にもかかわる極めて重要なポイントであり、まさに現在、鋭意証拠を収集して事実関係の確定に努めているところであり、明らかにできる段階にありませんので、現時点ではお答えをいたしかねることを御了承いただければと思います。もとより、本件捜査が終了した段階で、再度御質問があれば、可能な範囲でお答えをいたしたいと思います。
原口委員 重複を避けていただきたい。なぜならば、限られた時間の中でこの質疑をしています。聞いたことだけ答えてください。
 なぜ指で十一センチもの裂傷を負わすことができるのか、これについては全く答えていません。そして、当初から、司法解剖であったということは、これは、事件性をもうその当時認識していたということの証左ではないでしょうか。
 委員長、お願いを申し上げまして理事会で承認された資料を、一から九まで一遍にお配りさせていただきたい。
 法務大臣、資料の三をごらんになってください。これは、大臣の閣議後記者会見の概要、これを抽出したものでございます。平成十五年二月十二日と平成十五年二月十四日でございます。これは、法務省からいただいた資料を、委員の皆様にわかりやすく見ていただくために私が下線をつけたものでございますが、この資料、間違いございませんでしょうか。
森山国務大臣 相済みません、ちょっと先生のおっしゃいました最後のところがよく聞こえなかったのでございますが。(原口委員「この資料は閣議後記者会見の資料ですね。あなたがおっしゃった資料ですね」と呼ぶ)はい、さようでございます。
原口委員 委員の皆様にここの会見の概要は訂正することございませんね。
 「大臣の方には、その事件そのものについては、報告はあったのでしょうか。」「詳しい話はありません。」こう言い切っていらっしゃるわけです。そして、資料三の二、これは先ほど御答弁がありましたが、「私が聞いたのは、逮捕されたという、つい一日、二日前の時点でありまして、それまでは全く知りませんでした。」記者が繰り返し聞いています。「大臣には全く報告がなかったということですか。」と。「はい。」「矯正の中で独自にやっていた調査の報告には、その件については含まれてなかったのだろうと思います。」つまり、報告はなかったということを指摘しているわけです。これは事実ですね。
森山国務大臣 そのとおりでございます。
原口委員 さて、この委員会が紛糾をしたのは大臣答弁についてでございました。
 つまり、資料の一の一にわかりやすく、法務省の皆さんがこの事案についての時系列を出していただきました。これは資料一の一です。
 ここで幾つか聞いてまいります。
 最初、日にちもついていない、そういう資料でございましたので、理事会でお願いをして日にちを入れていただいたんですが、平成十四年の十二月二十四日、名古屋地検が本件司法解剖鑑定書を受領しています。つまり、この時点では、この十二月事件については、先ほどお話をしましたように、もう亡くなった、あるいはもう殺されたと言っていいでしょう、その疑いがある時点から司法解剖に付し、十四年十月二十四日ころには事件性があるという形で名古屋地検に司法解剖鑑定書を送っていたのではありませんか。違いますか。
樋渡政府参考人 監獄内、いわゆる刑務所等の施設内でお亡くなりになりますと、監獄法によりまして検察庁に通報されることになっております。それがいわゆる明らかに犯罪死でないと思われる場合には、刑事訴訟法で司法検視をしなければならないことになっております。そこでその犯罪性が、明らかに犯罪死でないことがわからなければ、司法解剖をすることになっております。
 したがいまして、司法解剖はしなければならないのでございまして、その司法解剖を依頼いたしますと、これは裁判所の鑑定処分状によりまして依頼するわけでありますが、その鑑定書が送付されるということになるわけでありまして、その鑑定の結果、犯罪死でないことが明らかになれば、それはその点で終了いたします。
 本件の場合には、自傷によるのか他害によるのか判然としない鑑定書でございましたので、他害の疑いがあるものとして捜査を継続したということでございます。
原口委員 いや、私が伺っているのは、十二月二十四日ころ名古屋地検が受領している。もうこの段階で犯罪性の疑いについて認識があったか否かということを聞いているんです。
樋渡政府参考人 十四年の十月二十四日ごろ受け取ったという時点でございますね。したがいまして、これは先ほど申し上げましたように、その時点でこういう内容の鑑定書をいただきまして、当時既に九月の事案の捜査をしておりましたことから、それとの関連で、これも他害の疑いがあるかもしれないという観点から捜査を継続しようとしたわけでございます。
原口委員 つまり、この時点で他害の疑いがあるかもわからないと法務省は思っていたわけであります。
 さてそこで、今回問題になった大臣の答弁であります。
 資料五をごらんになってください。これは平成十四年十一月二十九日の森山法務大臣と社民党の阿部委員との答弁です。ここで阿部委員は二つのことを明確に聞いています。つまり、四十三歳、先ほど年齢がわかりましたけれども、病気や基礎疾患などない人がなぜ二日で腹膜炎で亡くなられたか、これを大臣に明確に聞いています。これに対して答弁をされていますが、きょうの質疑の中では、それに対する答えは欠落をしていた、二日前に逮捕されたのでそっちの方を答えてしまった、こういう御答弁でございましたが、これは正しいですね、法務大臣。
森山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、ちょうどこの時期、その前に事件が相次いだものですから、そちらの方に頭がいきまして、おっしゃることについて明確に私の方から御説明申し上げることが欠けていたということを反省しております。
原口委員 まさにそれは後づけの答弁ではないかというふうに思います。ここで医療についてしっかり聞いているわけでありまして、そして、そのことについても大臣はお答えになっています。
 私は、納得がいかないということで理事会でもお話をしましたが、資料の七をごらんになってください。これは、二月十八日、ここにいらっしゃる委員は、まさに目の前でつい先日聞いていらっしゃいましたから皆さんも覚えていらっしゃると思いますが、また阿部委員との答弁であります。資料七、この前には、つまり、十二月事件の答弁について大臣に質問をしているんですが、大臣はこのように答えていらっしゃいます。「この事件は、先ほど来申し上げておりますように検察の」云々、ここは同じです。そして「したがいまして、」云々「私が先生の御質問に対してお答えいたしましたときも、そのようなつもりで申し上げたわけでございます」。つまり、この十八日でも大臣は、私が今問題にしている十二月事件について答えているんですよ。この議事録も、つい先日の議事も、大臣は、いや、これも欠落だとおっしゃいますか。
森山国務大臣 今おっしゃいましたのは先日の議事録からのようでございますが、阿部先生にお答えいたしましたのは、昨年の十一月二十九日に御質問になったときのことを申し上げたわけでございまして、それは資料五になるわけでございますね。そこの中で書かれておりますように、私といたしましては、この十一月二十九日の時点では、今問題になっている事件についてはいわゆる事件性がない、自傷行為であるという可能性が強いという印象を受けておりましたものですから、それよりも、その前に、十一月二十五、六日でしたか、ございました事件の方が重大であり、法務省としては非常に責任も重いと考えまして、そのことを申し上げるのに一生懸命だったわけでございます。
原口委員 もう聡明な皆さんは、今のだけで大臣の答弁の矛盾にまたお気づきだと思います。二月十八日、まさに阿部委員は十二月事件について聞いているんですよ。そして、そのときの私の十二月事件についての答弁はこういう意味でしたということをここで再度大臣はお話しになっているんですよ。五月事件や九月事件についてはお答えになっていないんですよ。
 私は、委員長、国会での答弁がかようにくるくる変わる。なぜさっき事件性について認識をしていたかと聞いたのは、これは、この名古屋刑務所ぐるみの隠ぺい工作があった、そして虚偽の報告がされた、それだけでなくて、法務省もこの事件性についてはもう十月の時点で疑いを持っていた、にもかかわらず、国会に対しては全然別のことを言い、そして、大臣も知っていたんだけれどもそれを隠していたのではないか、そう思われるような答弁だから聞いているわけです。今の答弁では納得できません。前も読みましょうか。阿部委員はまさに十二月事件を取り上げて、十八日ですよ、きょう二十一日、三日前に、あのときはどうだったんですかと聞いているんです。この答弁も間違いですか。
樋渡政府参考人 先ほど御説明しましたのは、名古屋地検が他害による犯罪の疑いがあるものとして捜査を始めたということでありまして、前から申し上げておりますように、我々がそういう報告を得たのは十二月でございまして、大臣に報告したのは一月三十日ということでございます。
原口委員 大臣に明確な答弁をいただきます。
森山国務大臣 二月十八日の阿部先生の御質問に対するお答えというのは、私といたしましては、今読み直してみますと、これは大変私自身が混乱している状況の中でお答えしたように思います。大変、そういう意味では申しわけなかったと思うんでございますが、前の十一月の答弁について精査する暇もなく御質問をいただいたものですから、このような言い方になっているというふうに今理解したようなわけでございますが、私の実情といたしましては、先ほど来申しておりますように、十一月の時点では、ほかの事件のことについて謝らなければいけない、おわびしなければいけないということでいっぱいでございまして、そちらの方に力点があり、この事件については、他害性あるいは犯罪性はないというふうに印象を強く受けていたものですから、言及しなかったということでございます。
原口委員 全く、これはちょっと理事にお願いをしたいのは、詰めれば、その答弁は誤解をしていたと言われるんであれば、事実を追っかけられませんよ。
 資料五をごらんになってください。ここであなたは完璧に、捜査というお言葉を使っていらっしゃるんですよ。しかも、医療についても触れていらっしゃるんですよ。ほかの件については、これは医療は問題になっていないんです。なぜなら、逮捕されているからです。もうこれは暴行だということを、五月の事件、九月の事件は暴行で、その容疑で逮捕された後なんですよ、十一月二十九日というのは。まさに大臣の答弁は、後から出してきたものを、それで糊塗をし、そして国会答弁を乗り切ろうというつじつま合わせの姿勢だと言わざるを得ません。納得のいく答弁をお願いします。
森山国務大臣 同じことを繰り返して申し上げることになってしまって、まことに恐縮でございますけれども、私のその当時の認識といたしましては、十三年十二月の事件については、他害性あるいは犯罪性がないというふうな可能性が濃いということを、印象を受けておりましたものですから、十一月二十九日での御質問をいただいたときの心境といたしましては、その直前に起こったほかの事件二件について謝らなければいけない、おわびしなければいけないということでいっぱいであったものですから、そのような説明あるいは申しわけになってしまいまして、そういう意味で、誤解を招くような言い方であったとすればまことに申しわけなく、それはおわび申し上げたいと存じますが、今の御質問に対するお答えとしては、今申し上げるような私の、そのときの事実の確認ということをもう一度申し上げるほかないわけでございます。申しわけございませんでした。
原口委員 それだったら十八日に、これはもう通告して質問しているわけだから、訂正することはできるわけですよ。十一月二十九日にやって、それから何回も何回もほかのところで、ちょっと官僚の方、呼んでもいないのにあれなんですけれども、私は全然納得がいかない。
 あなたは、自傷を受けたという、これはだれから報告を受けたんですか。
森山国務大臣 自傷であるということを報告を受けたのは、矯正局からでございます。
原口委員 その矯正局長から受けたのはいつでございますか。そして、どこでどのように受けられましたか。まず、いつだけで結構です。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
森山国務大臣 平成十四年の十月下旬に、福島瑞穂議員に提供をいたします資料を説明を受けまして、そのときに矯正局長から、本件について、自傷行為によると思われる腹膜炎で死亡したものであるということを、名古屋刑務所から報告があったという説明を受けました。
原口委員 私は、後からこうやってつじつまを合わせたものは、きょうは阿部委員の質疑に対してだけ出しました。ほかにもいっぱい破綻しています。数十ページあるいは数百ページにわたるものをゆうべ読みました。私はやはり、法と正義、道理と人権が問われているときに、後から糊塗をするような答弁、これはいかがなものかというふうに思います。
 資料の八、これは新聞報道より抜粋したものでございますが、情願について伺いたい。
 今まで情願を、この情願制度というものを大臣はいつお知りになり、そして何件ごらんになったのか、そしてそれはいつなのか、教えてください。
森山国務大臣 情願制度についていつ知ったかという御質問でございますけれども、これは何年何月というまでははっきりと今申し上げかねるんですが、昨年の秋かあるいは夏ごろだったかと思います。
 その後、そういう制度があって、それは大臣に向かって直接訴えたいという方が手紙を出すものだということを聞きまして、そういう手紙が来ているんですかと聞きましたら、それは幾つも毎日のように来ておりますということでありますので、それならば大臣が直接見るべきなのではないかというふうに申しましたところ、それまでの十年、二十年近いルールの結果、非常に重要なものは最終的には大臣に見せるけれども、基本的に矯正局長の机の上で処理をされて、大事なものは事務次官にも見せ、さらに大事なものを大臣に見せるという仕組みでありますということを聞いたわけでございます。
 私は、それでは、全部とは言わないけれども、幾つか重要なものだけでも見せてもらったらどうでしょうかということを何度かやりとりをいたしまして、その結果、ことしのお正月、一月ごろでしょうか、少し具体的に見たいということで見せてもらうことになりまして、昨日少しまとめて、一月の後半一週間ぐらいの間に来たものを見まして、たしか十通か二十通あったかと思いますが、昨日はそれを見まして、非常に印象を受けたわけでございます。
原口委員 資料九をごらんになってください。監獄法の施行規則です。情願書は封をして大臣に行くものであって、そして、これは速やかに対応しなきゃいけないものなんです。
 あなたはたしか、私の記憶では、法務大臣をなさったのは今回が初めてではないと思います。違いますか。(森山国務大臣「初めてです」と呼ぶ)初めてですか。それは失礼しました。何か別の大臣でしたか。失礼しました。
 しかし、先ほどお話を聞いてみると、今までの大臣の慣例で、これは一回も見られていないんですよ。これはあなただけじゃない。そして、外に対して訴えをしようとした、そういう人が、まさにその訴えを中途で遮られ、あるいは遮られるどころか、訴えようとした瞬間にまた暴行を受ける、こんな事件も起こっているんです。
 日米の地位協定の改定案を民主党が出したときに、アメリカの友人たちからは、日本は人権が刑務所で守られないからこの法律は受け入れられない、そんなことを言われました。何をいわれもないことを言われなきゃいけないんだ、とてつもないことを言っているんだと私はそのとき思った。そして反論しました。しかし、このような状況を見ると、他国からそんなことを言われて反論する材料を私たちが持ち得ないんではないかという危惧さえ持ちます。
 大臣、これまでどうしてこういう情願が無視をされ続けてきたのか、そして刑務所における人権の徹底がなぜ行われてこなかったのか。そして、これは二年かかって出ていますね、この事件。これまでにもたくさんこういう声なき声が抹殺されたんではないかと思いますが、全容解明に向けてどのように努力をされるのか、お尋ねを申し上げます。
森山国務大臣 私は、今申し上げましたように、以後この情願について全部私が目を通そうということを決めております。事務局の方々の中には、数が多いので大変ではないかといって心配してくれる人もございますが、数が多くてもまず見るということが重要であるというふうに思いますので、そのようにこれからやっていきたいというふうに考えます。必要に応じて副大臣や政務官も手伝ってくださるということでございますので、必要なときはそのようにお願いしようと思っていますが、私は、自分としては、これをぜひやっていきたいというふうに決心しているところでございます。
 それによって刑務所の中の、おっしゃるようなさまざまな問題を自分の目で読み、見ることができますが、その結果、必要だと思うことについて改善方を指示することもできますので、これを読むということは非常に重要なことだと考えております。
原口委員 それを今お気づきになったためにたくさんの命や人権が侵害をされたということを指摘しておきます。
 私は、この情願一つとってみても、また、先日、矯正局長がここで大きな声を張り上げて、そして予算の委員をまさに威嚇するかのような答弁をした。これは、国会で、始まって、半世紀ぐらい前にそういう記録があります。今までなかったようなことです。大臣に対する報告も、矯正局からどれぐらい上がってきたか一覧表にして出してくださいと言うけれども、今に至るまで上がってきていない。これはどういうことなんでしょうか。
 私は、大臣の責任はとても重いと思います。国会の答弁で、今私が申し上げたことでも混乱があるわけです。どのように責任をおとりになるのか。そして、だれをいつの時点でどう処分し、これには大臣がおっしゃったように調査が必要だと思います。しかし、これはもうずっと前から調査はされているんです。私、議事録を見て、なぜ今ごろこういう話を、今ごろだったら本当は調査報告書が上がってきて、改善が全省に向けて、あるいは全刑務所に向けて指示されていなきゃいけない、そういうときであるにもかかわらず、情願をごらんになったのはついこのごろ、そして改善を指示されるのもついこのごろ。これでは法務大臣としての責任を果たしてこられたとは言えないんじゃないでしょうか。
 大変きついことを申し上げて私も恐縮でございますが、大臣としての責任をどのようにおとりになるのか。これから一生懸命頑張りますという答えでは、なかなかそれは国民が納得しないんではないか、そう思いますが、いかがでございましょうか。
森山国務大臣 大変、情願等につきまして行き届かなかった点がありますのはまことに申しわけなく、深くおわび申し上げたいと存じますが、その反省の上に立ちまして、いろいろな事件の再発防止について全力を挙げて努力していきたい、これが私の務めであるというふうに考えております。
 また、この一連の事件に関する関係者、責任者、現場の人々、その他を含めて十分な調査をした上で、その責任を追及し、処分もしていかなければいけないというふうに考えております。
原口委員 私は、これが名古屋刑務所ぐるみ、あるいはどこの現場で口裏合わせをして、そして刑事局、検察から来たときにどのように答えるか、そんなことも報じられています。いや、これが名古屋刑務所ぐるみだけでなくて、法務省本庁の皆さんがこれを御存じであって、そして隠ぺい工作を、似たようなことをやられる、こんなことは絶対ない、私は国民に対して信じてもらいたい、そのように思います。しかし、そのためには外部の人を入れて、そして公正な調査をいつまでに、そして立法府に対してどのように報告をされるのか、このことについてお尋ね申し上げます。
森山国務大臣 昨日、この問題を受けまして、行刑運営に関する調査検討委員会というのを省内に発足させました。これは関係の責任者を主としてメンバーにいたしたものでございますが、ここで問題の整理をいたしまして、それをベースにいたしまして、さらに民間の方を中心とする懇談会を設けて、その皆様方の厳しい御意見をちょうだいして、改善、改正のための方針にしていきたいというふうに考えております。
 この内部の行刑運営に関する調査検討委員会は、三月中には、少なくとも今年度中には基礎をつくりまして、それとほとんど同時ぐらいに民間の方を交えました懇談会をスタートさせて、その上で、できるだけ早く結論をいただくというふうに努力していきたいと考えております。
原口委員 私はそれでは不十分だと思いますよ。
 外務省を引き合いに出したら外務省の皆さんに申しわけないけれども、捜査がスタートをし、そして疑惑がここで、国会で追及されている間でも中間報告を即出しているわけですよ。そんな、懇談会に意見を聞くなんて悠長なことできますか。私は、大臣のこの問題に対する危機意識の薄さ、それがこの弛緩につながっていると言わざるを得ない。今の答弁では納得できない。もう一回お答えいただきたいと思います。
森山国務大臣 省内の調査検討委員会というのは、委員会という名前ではございますが、省内で発見し得るさまざまな問題を整理するというのが仕事でございます。それとほとんど同時に、できるだけ早い時点で民間の方の懇談会を発足させて、それをもとにできるだけ早く結論をいただきたいというのが私たちのつもりでございますが、今の先生の御指摘もございますので、できるだけ早く実現するように努力いたしたいというふうに思います。
原口委員 もう時間が来ましたので、あと一点だけ伺います。
 平成十五年一月末の刑事局長から大臣への報告、これは文書で行われたのか。その内容については先ほど漆原委員の質問に対して答えられましたから、どのような形で行われたのか、それだけお尋ねします。
樋渡政府参考人 文書を作成いたしまして、それに基づいて説明をいたしました。
原口委員 その文書を、これは秘密会でも結構です、委員長。どのような形で大臣に報告をされ、そして大臣の指示がどのように法務省に伝わっているのか、このことについても、今回の事件は大変大きな疑問を残した事件です。ぜひそれを理事会で御協議いただきますようにお願い申し上げます。あるいは、法務省が今出せるというんであれば、出してください。
樋渡政府参考人 まず、内容を簡単に申し上げますと、項目につきましては、第一が死亡者の身上について、第二が死亡日時について、第三が死亡に至る経緯及び死亡後の経緯について、第四が捜査状況についてとなっておりまして、第三の死亡後の経緯におきまして、司法解剖の結果が詳細に記載されておりますが、このメモに推認される犯行状況についての記載はなく、結論部分である第四におきましては、名古屋地方検察庁においては、本件事案の事件性の有無について、上記鑑定結果について専門家に検討を依頼するなどして、慎重に検討しているところであるとされております。
 そういう内容の文書をつくりましたが、中には捜査の機微にわたることもありますので、できますれば、この程度で御勘弁願えればと思っています。
原口委員 どこに捜査の機微にかかわるものがあるか、それはわかりません。しかし、私たちは、この行刑運営に対する責任、そして国民の信頼、これが問われているんだということをお話をし、そして死亡鑑定書についても、私は、しかるべきときにこの真偽についても、本当に死亡鑑定をした当該医師が、あるいはどこで自傷の疑いというふうにできたのか、そのことについてもいずれ明らかになるものと思います。
 これで質疑を終えます。
藤井委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。
 次に、末松義規君。
末松委員 民主党の末松義規でございます。
 きょうは、法務大臣に対して、特に先ほど原口議員が追及されておられましたホースでの殺人事件について、お伺いをいたします。
 ちょっと私の質問の順序を変えて、先ほど原口議員の方から、あなたの答弁が、十一月の二十九日ですか、阿部委員からの、この答弁が、このホース事件について、殺人事件については全く念頭になかったというお話がございました。
 福島議員が、参議院で十一月十九日にこのホースの殺人事件について、自傷で、肛門に指を突っ込んで死んだということは、極めて不思議で、おかしいということが言われております。
 事実、やはり法務省の仕事というのは、本当に、これはちょっとおかしいか、あるいは自然か自然でないか、この感覚がないと法と正義というものは守られません。
 あなたは、十一月二十九日の阿部さんが、わざわざですよ、先ほども原口さんの質問にありましたから私は繰り返しませんけれども、そこで、このホース殺人事件をわざわざ抜かしたというのは私には不思議でならないんですが、そこのところをあなたは、もう一回言ってください。
森山国務大臣 二月十八日に申し上げましたことは、私が認識していたことをそのとおり申し上げたわけでございまして、十一月二十九日の法務厚生労働委員会連合審査会における阿部委員の質問に対する私の答弁の趣旨が明瞭でなかったということだと思いますが、このときは阿部委員から、平成十三年十二月の死亡事案を含む三件についてお尋ねを受けたわけでございます。
 当日は、その二日前に起訴されました一件のほか、同じ日に職員が逮捕された平成十四年五月の死亡事件がございまして、この事件のことでおわびしなければいけないというふうに思いまして、それで頭がいっぱいであったということが事実でございます。そのため、十四年五月の事案についてだけ答弁をさせていただきまして、十三年の十二月の死亡事案については、たまたまこれが、前に自傷行為ではないかというような報告もあったりしたものですから、このことをおわびしなければという中からは入っておりませんで、そのこと以外のことについて申し上げたというのが実情でございます。
末松委員 これは、やはりどう考えてもおかしいんですね。
 ちょっと検察の方に聞きますけれども、この阿部委員の質問に対して大臣が、この件については、検察において、また矯正局において、また人権擁護局においてそれぞれきっちりと捜査をしている最中ですと。検察の方は、ホース殺人事件は一切調査していなかったんですか。
樋渡政府参考人 その段階では、その前の矯正局長の答弁から、そういう事件があるのかということで、名古屋の検察庁に問い合わせまして鑑定書を取り寄せようとしたところでございまして、当局といたしましては、まだその段階では事件性があるものかどうかということの判断はいたしておりませんでした。
末松委員 大臣として、それでは、これはマスコミなんかでもだんだん取り上げられてくるわけですけれども、大臣自身も結構、問題意識はお持ちなんですよね、この名古屋刑務所について。
 例えば、法務省の矯正局が二月の二十日に「情願制度について」という紙を出しているわけですよ。そのときに、あなたも先ほど情願について言われました、大体秋ぐらいから情願について関心を持って、正月に情願を読んで、そして二月の十二日以降また読んだという話が書いてあります。この報告書にも、近年、この情願について、「特に重要なものに該当する事案がないので、大臣の決裁は得ていない。」これは情願の処理についてです。「ただし、本年以降、主に名古屋刑務所収容受刑者に係る情願について、大臣の供覧を得ている。」、これは括弧をして全体で六件、名古屋刑務所で四件ということでございますが、これは事実ですね。
森山国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
末松委員 この中でやはり私が思うのは、それで、一月末に刑事局長からあなたは名古屋刑務所の件について聞かれるわけなんですけれども、これまで刑事局長の話から、やはりこれはおかしいと。刑事局長の方は、先ほどお話がございましたけれども、ひょっとしたらこれは他害行為かもしれないということが言われたわけですね。そのときに、あなたはどう思いましたか。
森山国務大臣 他害行為の可能性も考えられるという話を聞きまして、それは大変なので、早く事実を究明してほしいということを言ったわけでございまして、そのとおりの気持ちでございました。
末松委員 名古屋刑務所というのは、昨年の五月にも事件があり、この革手錠の事件、九月にもまたあったわけですよ。そして、この十一月、またこの件が報告されて、五月、十一月については調査をすべきだ、あるいは捜査すべきだということであなたは言ったんですけれども、このホース殺人事件について、その辺から、矯正局に対して、きちんとこれも調査すべきということは一切言わなかったんですか。
森山国務大臣 ほかの二つの事件の関係と今のこのホースの事件とは全く別でありまして、ホースの事件についても他害の可能性があるということを聞きまして、それは大変だから早く真相を究明しなければいけないというふうに考えたわけでございます。
 ほかの二つは非常に重大な問題であり、まことに申しわけないという気持ちではございましたけれども、それとこれとがつながるというところには、残念ながら至らなかったわけでございます。
末松委員 今、一月末の刑事局長の話を聞いて、これはやはりあれですか、これだけ、さらに第三の事件がありそうだと、聞いて、あなたはどうして結びつかないんですか。もっと名古屋の刑務所について矯正局長にきちんと、普通の政治家であれば、大臣であれば、おかしいじゃないかということを言わなきゃいけないじゃないか。それはあなたが言わなきゃいけないじゃないですか。ちょっと、もう一回言ってくださいよ、あなたは。
森山国務大臣 他害の可能性があるという話を聞きまして、これは大変であるということを考えたのはそのとおりでございまして、そのときに真相究明をするようにということを申したわけでありまして、そのときはいわばつながっていたといいましょうか、つながることになったというわけでございますが、それまでは他害の可能性がないというふうな話であったものですから、また別のものであるというふうに理解していたわけでございます。
末松委員 では、このつながったという、今の、全くつながったというのは大体いつごろなんですか。それは二月の十二日の記者会見で初めてつながったんですか。
森山国務大臣 一月の終わり、刑事局から可能性があるという話を聞いたときに、もしかしたらというふうに思ったわけでございます。
末松委員 あなた、刑事局長から聞いたんでしょう。刑事局長から聞いて、そのときに、あれ、そういうこともあるのかということ、でも、他の事件と名古屋の刑務所の問題でどうもこれはつながらないなというのはそれは一月の末で、刑事局長から聞いての印象をあなたに問うたんですよ。そして、つながったのがそのときだというのは何かおかしいじゃないですか。さっきは一月の末、刑事局長のこのお話を聞いて、そしてあなたは、いや、そこはよくつながらなかったということで、おわび申し上げますと言ったんですよ。今あなたが答弁したのは、何か一月の末、刑事局長から聞いてつながったと。ちょっと答弁おかしい、混乱しているじゃないですか。もう一回言い直してください。
森山国務大臣 大変申しわけございませんでした。
 刑事局から話を聞きましたときに、そのような可能性があるのではまことに申しわけないから、真相を究明するようにということを言ったわけでございます。それは、刑事局長にそう言ったわけでございます。
末松委員 それであれば、私がさっきから言っているわけですよ。これは大変なことじゃないかとあなたは感じたわけですよね、驚いて。そうしたら、どうして矯正局長に対してきちんと、どうなっているんだと言わなかったんですか。
森山国務大臣 こういう事件性のあるものにつきましては、刑事局長を通じて検察が捜査をするということが非常に重要なポイントでございまして、そちらを最優先して、ほかの者はそれに協力をするということになると私は思うのでございます。
 したがいまして、刑事局長にしっかり捜査をするようにということを申したのでございまして、矯正局は当然、前から申しておりますとおり、協力をさせるというのは当然のことだと思っております。
末松委員 私、昨年の十二月四日に、名古屋刑務所に視察に行ったんですよ。
 そのときに、この刑務所で、標語が書いてありまして、寒さに負けずに頑張ろうとか。あそこは寒いんですよ、みんな布団をかぶって寝ているんですよね。ちょっと一種異様な雰囲気は感じたんですね。
 そのときに、たしか今回の事件で逮捕されたナカマルさんという方ですか、あの方が十二月におられたと思うんですけれども、そして、これは矯正局長に聞きますけれども、逮捕された人間はいつまでその職にありましたか。
中井政府参考人 対象は、今回逮捕されたという意味でございましょうか。(末松委員「今回の事件です。ホース事件の」と呼ぶ)逮捕まで勤務しておりました。(末松委員「じゃ、十日まで」と呼ぶ)
藤井委員長 ちょっと、ちゃんと質疑応答して。
中井政府参考人 ちょっと調べまして、回答いたします。(発言する者あり)
藤井委員長 正確に。
 末松君。
末松委員 ちょっと訂正ですが、乙丸さんという方が、容疑者がいつまで勤めていたのか、それをお答えください。
中井政府参考人 原庁に確認しませんとしかとわかりませんが、逮捕まで勤務していたと思います。(末松委員「いつ」と呼ぶ)本件の逮捕日でございます。
 もう一点だけ。先ほどのお尋ねですが、現に勤務しておったかどうかという意味のお尋ねであるとすれば、御視察されました昨年の十二月四日と十二月十一日の両日とも通常の勤務をしておりました。これは確認しております。
末松委員 つまり、私が言いたいのは、矯正局長に何にも指示していないから、被疑者がずっと勤めているんですよ。そして、大変いろいろと被疑者は、これは報道ですよ、報道にあるんですよ、あの乙丸という人とあともう一人、この人たちには気をつけろと。これはまた大変な同じようなことをやってきたかもしれないんですよ。
 それを、あなたは問題意識が本当はなきゃいけないのに、一月末に刑事局長のこの話を聞いて、そして矯正局長に、事態はどうなのか、体制はどうなのか、疑惑があるときにはちょっと彼らを外すべきじゃないかとか、どうして管理責任をそこで言わないんですか。おかしいじゃないですか。言ってくださいよ。
森山国務大臣 もし私が気がついてそのようなことを申しまして、それを発端に、その本人たちに現場から離れるようにとか、仕事をほかの者にかわるようにとかいうことを申しますと、それが一つのきっかけになって、犯罪の捜査がしにくくなるということもあるのではないかと思います。そういう点も心配しなければいけないのだと私は思っております。
末松委員 そうしたら、わかっても、あなたの論理でいけば、予防よりも、結局そのままずっと泳がせて、何かあっても、また第二の事件があっても、それはまた捜査の関係があるからできません、それがあなたの態度ですね。
 それが政治家としてのあなたの態度ですか。別に、すぐに外せと言っているわけじゃない。まず矯正局長に言って、どういうことができるか、それをきちんと彼と話すのがあなたの役目じゃないんですか。
森山国務大臣 矯正局長と相談することはあるいはできたかと、今御指摘いただいて思いますが、しかし、それが具体的なアクションになりますと、先ほど申し上げたような問題を惹起する可能性もあり、非常に難しいところだったのではないだろうかと思います。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
末松委員 矯正局長に伺います。
 あなたは、この前の予算委員会で、たしか、今、原口委員が言われたように、恫喝ともとれるような発言であなたの所信を言われたわけですね。それで、あなたはいつごろこの事件について知ったんですか。特に、その事件性について。
中井政府参考人 休み明けの、本件……(末松委員「どの休み」と呼ぶ)失礼しました、逮捕の当日でございます。名古屋管区から、名古屋地検に管区長が呼ばれて事案の概要を告げられた、ついては告発したいというような話が参っておりまして、それで私は初めて本件事案の概要についてしかと認識いたしました。
末松委員 ちょっと私、記憶になるんですけれども、この前の予算委員会で、あなたはたしか、検察関係が入った場合には、邪魔にならないように矯正局の方は何もそこは対応をしないんです、要するに、検察の邪魔にならないようにするのが一番ですという話を言いましたよね。それはちょっと矛盾するんじゃないでしょうか。だって、二月の十二日に知ったんだったら、それまでにあなたは知りようがないんだから、そういうことを一切わからないはずじゃないですか。言ってください。
中井政府参考人 私がどのように御説明申し上げたらいいのかというのは、若干戸惑うところがございますけれども、申し上げますと、要するに、先ほど来の御議論も聞いておりまして、そうでありますけれども、検察がいろいろなことを調べる場合に、それが、事実がある、犯罪を構成するといって、クロの立証のため調べることはもちろんあるわけでございますけれども、同時にシロ、これは犯罪を構成しないのではないかという形でやる場合があるわけですね。私ども、施設内で死亡が出ますと、すべて検察に通報をいたします。そうしますと、検察の方ではそれをお調べになるわけですが、それが果たしていずれのものであるかということは、私どもは知るすべがございません。
 したがいまして、その意味で、先ほど来、そういう検察のやられることに関しては、我々の方には、邪魔をしないように、協力を求めたことについては、シロに向かってであれクロに向かってであれ、全部協力するということを申し上げた次第でございます。
末松委員 この前の話で、あなたは、私たち与野党の議員に向かって恫喝をしたというところでは、捜査の保秘性といいますかね、情報の機微性にかんがみ、基本的には、大臣にも報告しない、この件については大臣にも報告しないという話を言ったんですよ。でも、そのとき、あなたは、この件については、一切何も知らずにそんな答弁をしているんですか。ちょっと、言ってください。
中井政府参考人 前回の件に申しますれば、委員長の御注意を受けまして、深く反省している次第であります。
 大臣に御報告しないという意味は、私は、重要な話は、これはすべて大臣に御報告すべきであり、それは局長としての私の職責である、かように思っております。問題は、ありとあらゆる種々雑多な情報が局長のところには参るわけでございまして、それをすべて大臣に上げたようでは、これまた私の局長としての職責が全うできないわけでございます。
 問題は、どの程度確実な話、しっかりした話、重要なのかどうか、そのときの情勢はどうかということを私なりに判断して大臣に上げるかどうかということを判断いたしたわけでございまして、その当時は、甚だ大臣に申しわけないわけでございますけれども、私の判断ミスで、これはまだ大臣に上げるほどの確定性のあるものとわからなかったものですから、大臣に上げませんでした。
 ただし、後で、検察の捜査が着手してみると、ああ、やはり、今から虚心坦懐に振り返ってみると、あのとき大臣に上げておくべきであったなと反省いたしました。そのことは間違いございません。
末松委員 ちょっと、じゃ、我々は一体で質問しておりますから、あのときというのは、大体、あなた、いつでしたっけ。
中井政府参考人 強制捜査に着手した日でございます。(末松委員「二月十二日」と呼ぶ)はい、さようでございます。
 私は驚きました。それで、現地からの報告を聞きまして、直ちに大臣室に上がりまして、ずっと以前に、自傷の疑いのある、こういう形で死亡したと御報告した案件、当時の報告内容をもう一度繰り返した記憶はございます。その上で、ただいまから私どもの矯正管区は名古屋地検に対し告発する見通しでございますという御報告をいたしました。
末松委員 要は、私は、世間の皆さんに知ってほしいのは、法務省のこういうところが問題だと言っているんですよ。捜査の保秘性というのは重要でしょう。でも、局内部で、局長全く知らされずに、そして局長から大臣にこの件を上げもしない、大臣から局長に相談もしない、こんな管理体制があるのかと。このために何人という人が亡くなっているんですよ。
 多分、犯罪性がさまざまにまた出てくると思います。今、法務省は、ようやく過去三年間、死亡事件について洗い直しをしているという話をきょうの新聞で言っていました。遅いんだけれども、きょうの新聞にそういうことが書いてあるんですよ。それは、きょうの委員会に合わせるためにそういうことを言っているのかもしれません。きのう行刑の検討委員会があったと言われていますけれども。
 こういった体質ですよね。ここが一番問題なんですよ。みんな秘密体制で、結局は何ら、やられる、危ない人たちの側に立っていないところが、国民から見たら本当に不安だし、困るんですよ。
 矯正局長にちょっと言います。あなた、この前、本当に恫喝した答弁のときに、あなたも訓練されてきたんでしょう、そういったことは極めて情報の機微性があると言った。あなたが重要な判断というのは、あなたが重要と考える判断でしょうけれども、重要の基準を言ってくださいよ。国会でこういう話題になっていること、あなたに、大臣に報告するのにとって重要じゃないんですか。福島瑞穂さんが十一月の十九日、いろいろおかしいおかしいと言っている。それから、幾つかおかしいおかしいと言っている。それについてあなたは何の問題意識も持たずに、あなたは自分でミスと言いました。でも、あなたの重要の判断の基準というのは、またあなたの後任者にもいろいろと伝わっていくわけですよ。その判断基準というのを、この国会において話題がある、こういったことは重要じゃないと判断したのか、もう一回、あなた、反省とともに言ってください。
中井政府参考人 今回の情報の取り扱いにつきましては、弁解いたしません。前回私が申し上げたとおり、不確定要素はあったけれども、当時は、やはり即座に大臣に御報告しておくべきものだったかな、私は、委員長からの御注意も拳々服膺しながら、さように考えた次第であります。
 今後は、このようなことがないように気をつけてやります。
末松委員 あなたも非常にそこは反省しているようなので、あなたの責任はもう問いません。御自分でおわかりになっていると思います。
 私が本当に問いたいのは、大臣についての責任ですよ。
 私は、この矯正局、さっき情願の話がありました。私もいろいろと、これの五倍するぐらいの資料で全部読み込みましたよ。そのときに、やはり情願なんというのはもう、原口委員も言われていましたけれども、やると仕返しを受けて、大変な暴行を受けるというのが何件も来ているわけですよ。私も、何かそこの一覧みたいなものを見ましたよ。そういったことを改めていかなきゃいけないでしょう。そうしないと、本当にどんなことでもやられるんですよ。
 なぜか、私は、ちょっと今回の事件を顧みて感じたのは、最近、本当にホームレスの方に対して中学生とか若い者が、このやろう、とっちめてやれ、おまえは悪いやつだといって、どんどんとっちめていく、ああいう感じのことが私も一瞬頭によぎったんですね。おまえはどうせ悪いやつだ、だからおれたちが懲らしめてやるんだと。それもぐるになって行ったら、やられる方はとんでもないわけですよ。それは確かに自分が裁判を受けてこういうふうに収容されているというのはあるけれども、これは彼らの人権から考えたらとんでもないことですよ。
 それで、あなたはそれを守る義務があるんですよ。いいですか。この矯正局についてきちんと、驚き、あきれているというのは、私があなたに対して言う言葉なんですよ。あなた、本当にこれからの矯正局、こういう体制について、どういうふうに考えているんですか。検討委員会を待つというだけでなくて、あなたが法務大臣をやっていて、まずどう感じているんですか。
森山国務大臣 私は、昨日、その委員会を初めて開会するに当たりまして、あいさつとかあるいは自分の気持ちを披瀝するための言葉を申しました。私、一人の国民として今まで余り深く知らなかったことですけれども、法務行政を預かってみまして、非常にある面で大変違和感を感じるところがある。特に行刑については、非常に雰囲気が独特だなというふうに思ったものでございます。そのことも申しまして、それも含めて、世の中変わっているんだし、時代も変わっているので、長い歴史があり、それなりに功績のあった行刑の政策ではあるけれども、この際、基本的に見直さなければいけないのではないかということを申したのでございます。
 聞いていらした方々も納得していただいて、第一回の会議を持っていただき、非常にざっくばらんに意見を交換していただいたということでございますので、私自身といたしましては、行刑の方策も、もちろん評価すべき点はたくさんあるでしょうけれども、それを取り巻く国家国民全体にとってプラスのものでなければならないということを考えますと、多々反省すべき点があるというふうに思います。その点をぜひみんなでよく考え直して改めてほしいということを言ったわけでございますが、このような気持ちで私もこれからやっていきたいというふうに考えております。
末松委員 また新たにやっていくんじゃなくて、あなたは一回ここで責任をとっておやめになるべきだと思いますよ。
 いいですか。こういう集中審議がこの予算委員会で行われたというのは何十年ぶりかという話じゃないですか。これは、法務省の本当に不祥事ですよ。不祥事が起こることは仕方がないかもしれません。それを放置してきたというのは、今回だって二年間ですよ、二年間ずっとそのまま。もし刑事局がこれについて疑問を持たなければ、矯正局だけだったら一切何もこの件は表に出てこなくて、やみからやみなんですよ。
 いいですか。それをあなたの、法務大臣として、国民の命を守るという観点から、やはりやっていかなきゃいけないんですよ、刑務所の中におられる方は更生をしている方なんですから。いいですか。そういったことをきちんと法務省がやらないで、本当に人権をじゅうりんするようなことをやったらどうするんですか。
 法務大臣の責任を厳しく問いまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて末松君の質疑は終了いたしました。
 次に、山花郁夫君。
山花委員 山花郁夫でございます。
 過日の予算委員会でも、最後のところで、これで終わる話ではないということを申し上げましたが、改めてこの問題について取り上げたいと思います。
 また、法務大臣、今までいろいろと意見の合うところもあったんですが、これから大変残念なことをいろいろ指摘しなければならないと思います。
 まず、今の質疑の中でも、私は、今回の事件について大臣の認識はちょっと軽過ぎるのではないかと思っています。つまり、今、不祥事だという言葉がありました。戦後役所が起こした不祥事の中でも、いろいろありました、最近でも、警察もありました、覚せい剤を使っていたとか。あるいは近年でいえば、BSEであるとか、さらには薬害エイズもありましたよ。薬害エイズなんかは人殺しじゃないかとまで言われましたけれども、あれは、でも、あくまでも比喩です。本当に殺人罪というわけではない。
 しかし、今回は、刑務所の職員という、まさに公権力を持っている人が人命を奪っている。こんなこと今までないわけですよ。私は、これに対して大臣がまだ責任をおとりになっていないというのは、ちょっと考えがたいと思います。過日も比喩で申し上げましたけれども、民間の会社で、従業員がこれだけ人を殺して逮捕者を出して、社長が平気でいられるわけないじゃないですか。
 まず冒頭、そのことを申し上げて、きょうは人権局来ていらっしゃいますけれども、人権局、今回、十二月事件はさておき、九月事件、五月事件とあったわけですけれども、先日、法務大臣に対して意見具申などもされたようでありますが、ほかの刑務所については調査なり何かされているんでしょうか。
吉戒政府参考人 お答えを申し上げます。
 今先生から御指摘のとおり、九月事件と五月事件につきましては、調査を遂げまして、先月の三十日に法務大臣に対しまして私の名前で意見具申をいたしました。それから、十二月事件につきましては、実は去年の十二月に、名古屋地方検察庁がこの事件も捜査の対象にしているというような報道がございましたので、人権侵害の疑いがあるかなというふうな感じで、その捜査の行方を注視いたしておりました。したがいまして、二月の十二日になりまして初めてこの事案を知ったというのが人権擁護機関の立場でございます。
 それから、他の刑務所につきましては、実は昨年、九月事件に着手いたしました後に、全国の人権擁護機関に対しまして、現在扱っておる刑務所関係の人権侵犯事件につきましては直ちに報告するようにというような指示を流しておるところでございます。
山花委員 今回、この件があってから、随分刑務所についてはひどいことが行われているのではないかということが指摘をされております。また、NGOなども、かねてより刑務所問題について一生懸命やっているところもあったわけですが、矯正職員による人権侵犯事件の統計を見ますと、平成十年から十四年まで、二十五件、二十四件、四十四件、三十四件、五十四件と、大体こういった数字で推移していますが、説示という形で何らかの対応がとられたのは、平成十一年に一件、十三年に一件、十四年に二件、たったこれだけですよ。
 いいですか、私は、別に今刑事局に話を伺っているわけじゃないです、人権擁護局に聞いているんですけれども、つまりは、事件性があったかなかったか、それは大変機微に触れる問題で、先ほどから、なかなかお答えできない、それはあり得ると思いますよ。だけれども、本当にそんな事件かどうかということじゃなくたって、人権上ちょっと問題があるんじゃないかとか、不適切じゃないかということはこんな少ない数字なわけないと思いますけれども、一体何をやっていたんですか。
 もう一つ言えば、今回これだけ事件が起きていますけれども、吉戒さんですか、当時からずっと人権局長をやっていますけれども、この間、この刑務所のことについては、要するに、こういう事件が起こらなければ何も気がつかなかったということでしょうか。いかがでしょう。
吉戒政府参考人 申し上げます。
 過去三年間でございますが、平成十一年から平成十三年まででございますけれども、百二件の人権侵犯事件を受理いたしまして、九十七件の事件を処理いたしております。
 その中には、人権侵害の事実が認められたために、加害刑務官に対しまして、反省を促す意味から説示という措置をした事案もございますけれども、それ以外には、人権侵犯に該当しない、非該当という措置、それから、人権侵犯の事実が明確でない、侵犯事実不明確という形で処理を終えているものもございます。
 それで、説示をいたしましたものを若干御説明申し上げますと、例えば、刑務官による収容者に対する不当な言動あるいは不十分な医療措置に関しまして、反省を促す、善処を求めた事案もございます。それから、受刑者に対しまして平手打ちなどの暴行をした刑務官に対して説示をした事案もございます。こういうふうに、人権侵害の事実が認められたため、調査の過程で一定の指導を行ったり、施設側に対して一定の要望を行った事案もございます。
 先生御指摘のとおり、そういう形で処理いたしておりますが、ただ、今、人権擁護機関の方といたしましては、調査の権限、これは任意でございまして、相手方の協力がなければそれ以上の調査はできないという限界もございますので、それは検察庁と違います。検察庁は強制調査はできますけれども、私どもの方は、そういうふうな任意の調査、任意の権限でございますので、そこらあたりは御理解いただきたいと思います。
山花委員 要するに、限界があるから、それでも人権擁護局はよく頑張っていたという答弁だと思うんですけれども、結局、よく頑張ったって出てこないわけですよ。もしこれでというか、よく頑張ったって出てこないだけ、それだけ、言ってみれば、指摘されています、矯正局の中で何かあったときの隠ぺい体質がいかに堅固かということの証明じゃないでしょうか。
 また、もし、そうではなくて、人権擁護局がもっと一生懸命やっていれば防げたというんだったら、これは大臣の監督責任の問題だと思いますよ。この点についてはまだ結構です、まだほかにもいろいろありますので。
 先ほど来、大臣の答弁についていろいろ話題になっておりますが、矯正局長は、過日の午前中の質疑の答弁はまずかったということで、午後に陳謝をされまして、事実上発言は撤回されたと考えておりますが、私は、人としてはその陳謝は受けとめますが、お互いの立場の観点からすると、法務大臣、謝って済む問題ですか。
 つまりは、あれだけ重大なことを法務大臣の耳に入れなくて、後で謝ったとはいえ、入れなくていいんだ、私の判断だ、入れる必要はない、今でもそう判断していると、少なくとも午前中言っていたわけです。
 また、今回の件で、法務大臣御自身もそうですけれども、役所の方はまだだれも責任をとってやめたなんという話は聞いていないんですけれども、私、矯正局の職員だったら、そんな組織やっていられないですよ、ばかばかしくて。要するに、検察で捜査されるのを待っているだけで、自分の上司がおかしなことをやっていたって、だれも責任をとらないわけでしょう。
 今回のあの問題、謝って済む問題だと思っていますか。それとも、処分が必要だと考えていますか。
森山国務大臣 矯正局長は、最初にお話ししたことについて大いに反省いたしまして、それを取り消し、謝罪させていただいたというふうに私も承知しておりますが、あの発言についてはあれで収拾できたのではないかというふうに考えておりますが、先生方のお許しをいただければと考えているわけでございます。
 私といたしましては、矯正局長、今後気持ちを十分改めまして、これから、私に報告すること、あるいは自分のなすべきことをきちっとわきまえて、それをしっかりとやってほしいというふうに考えておりまして、私自身、局長に特に注意もいたしましたし、十分反省しているということを認識しておりますので、再発防止のためにみんなで協力して頑張ってほしいというふうに考えております。
山花委員 ちょっと納得できませんね。九月事件、五月事件のとき、当時の、これは刑務所長さんですけれども、更迭をされました。今回のこの十二月事件が起きたときの所長は久保さんですか、久保勝彦さん、今広島の矯正管区長をやっているようです。また、当時の矯正局長鶴田六郎さん、法総研にいるようですけれども、こういった方たちの責任についても同様にお考えでしょうか。
 つまり、これだけのことが起きて、立場のある方は謝れば済むというのが大臣の御認識なんですか。そんな認識だったら、本当にそれだけでもう大臣の資格ないと思いますよ、私は。
森山国務大臣 全体の形がわかりましたときに責任者の処分はしたいと考えております。
山花委員 手法として私は間違いだと思います。もしやるのであれば、人心を一新して新たな形で徹底してやらないと。だって、結局、今のメンバーでやったら、部下を守るようなおそれだってあるわけですよ。もちろん、みんなそのつもりがあるかどうかわかりませんけれども、こういうことをやるときには、性悪説に立って物事を考えなきゃだめじゃないですか。みんな多分いい人だからちゃんとそうやって報告書を上げてきている、それで今まで失敗しているわけでしょう、今回のだって。もう一回答弁をお願いします。
森山国務大臣 名古屋の刑務所については、事件が発覚いたしましてから、早いうちに人心を一新のために所長以下の顔ぶれをかえまして、異動が行われました。
 本省の分につきまして、あるいはそれに関連する部分につきましては、これから全容を解明して、できるだけ早く処分したいというふうに思っています。
山花委員 十分は納得しませんけれども、その処分については過去の方々たちも含まれるということでよろしいでしょうか。御答弁をお願いします。
森山国務大臣 この事件に関係した人々についてはすべてというふうに思っています。
山花委員 まず、先ほど来の議論の中でも私は矯正局の問題は大変重大だと思っておりまして、先ほど矯正局長は、いつ知ったかということについて、いろいろ言い方は工夫されるんでしょうけれども、事件だということがわかったのは当日で、大変びっくりしたとおっしゃっていましたけれども、結局、捜査機関が、地検が何もしなかったら今回の件はわからなかったんじゃないかという疑いがあるわけです。
 去年、名古屋の事件があって、五月事件、九月事件とあって、特別調査チームだ何だいって矯正の中でいろいろ調べようとしたけれども、結局矯正局長ですら逮捕がされる日までわからなかったということですよ。要するにそういう体質なんだということを特にこの委員会の皆さんは共通認識としてまず持っていなければいけないことではないかと思います。
 ところで、今は私、矛先を矯正局長の方に向けておりましたが、大臣、矯正局長は確かに、先日の午前の答弁はまずかったということで、午後、陳謝された上で、情報を入れるべきだった、こういう発言をされております。
 ところが、それに対して大臣いかがですかと私が答弁を求めたところ、午前中の答弁では、「矯正局その他の部署で断片的に把握したものを一々私に報告するということは考えておりません。」という答弁がありました。また、午後になってもう一度、私は二回、この点について再三、おかしな答弁じゃないか、答弁が撤回されたけれども、法務大臣、あの矯正局長の判断はよかったのかと言いましたところ、午後のところですね、ちょっと中間省略しますが、「その結果、いろいろな、大小さまざまな情報が矯正には入っていたと思いますけれども、その中から非常に重要なものを選んで報告があったんだと思っております。現に、この事件についても、一月に報告がございましたし、さらに捜査が進んで逮捕という事態になりまして、そのときはしっかり報告を聞いておりますので、午前中の御答弁については、本人も深く反省しているようでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思いますし、私との関係では、先ほど申し上げましたように、検察とそれから矯正との関係について十分申しまして、そのとおりやってくれたものと理解しております」と、何か非常に矯正局長だけが悪者のような言い方をしているんですが、私はこの午前中最後の答弁で非常に気になるのは、「いろいろな情報が、雑多なものがいろいろと入ってくるでありましょう。それをすべて、私に全部言う必要はないというふうに思いますので、物によって取捨選択されるのはやむを得ないというか、それが当然だというふうに思います」と。
 今回のこの事件については、矯正局なり刑事局なりで取捨選択されて、大臣の耳に入らなくてこれはやむを得ない、むしろ当然だったと。驚くべき認識だと思いますけれども、これは本当に撤回されないんですか。撤回してください、こういう発言は。
森山国務大臣 今先生がお読みになったのは、一般論として私が申し上げたところでございまして、この事件に関する報告については、当然もっと早くに、局長が承知した時点で報告があるべきであったと思います。
山花委員 一般論じゃないですよ、私が聞いたのは、このときのは。
 特別調査チームとかつくって、今回の案件は耳に入らなかったんですかと。それで、矯正局長の、大臣には言う必要がないという、あれはどう思われますか、先ほどの答弁はどうですかと聞いているんです。それに対して、いや、物によって取捨選択されるのはやむを得ない、それが当然だと言われているんですから、一般論じゃないじゃないですか。ちょっと、どういうことですか。
森山国務大臣 大変、聞き違えまして、失礼いたしました。おっしゃるとおりでございます。
山花委員 ちょっと、おっしゃるとおりというのは、どういうことですか。撤回をされるということですか。
森山国務大臣 先日の発言については、私は撤回したいというふうに思います。
山花委員 ちょっと、さっきから多過ぎるんじゃないですか、言い直しが。
 ちょっと、時間戻してください。こんな、審議したって、撤回されちゃうんじゃ、時間むだですよ。時間、とめてください。
藤井委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 森山法務大臣。
森山国務大臣 委員長、申しわけございませんでした。
 山花先生がお読みになりましたこの前の委員会のときの御発言、特に限定して、この問題についての発言、大臣森山の発言はどうかということでございましたので、その点に関して申しますと、私は、その後考えますのに、これは、当然もっと早目に局長が重要性を認識して報告してくるべきであったというふうに思っているわけでございます。
 ですから、そのような意味で、前回私が申し上げたことと違っているわけでございますので、前の発言を訂正させていただきたいというふうに申し上げたわけでございます。
山花委員 撤回されるということは、それはそれとして受けとめますが、ただ、何か委員会で審議していて、さっきから、いや、あれは間違いでした、勘違いでした、撤回します、これじゃ、ちょっとこっちも驚いちゃうんですけれども。本当にそれは大変問題であるということを申し上げて、その部分は保留して、ちょっと時間がありませんから、質問を続けたいと思います。
 先ほど大臣は、情願制度についての中で、ことしの一月になって初めてその情願というものをごらんになったと。また、きのうまとめて十通から二十通見たという発言がありました。
 監獄法施行規則によりますれば、情願というのは二種類ありますね。法務大臣に対するものと巡閲官吏に対するもの。法務大臣に対するものは、監獄官吏はこれを見ちゃいかぬと書いてあるわけです。法務大臣に直接進達すべきと書いてあります。
 先ほど御答弁の中で、いや、今までは矯正局で見て、重要なものであれば事務次官が見てという流れでやってきた、今までは大臣御自身のところに上がったのがなかったということなわけですけれども、ただ、これも何か調べますと、そういう通達とか何かでそういう運用になっているようですが、しかし、情願というのは、例えば、刑務所で、私が受刑者だとしたら、自分がこんなひどい目に遭った、だから何とかしてくれというのを、いわば、法の理念が正義であるとすれば、それを最後にすがるのがあなたなわけですよ。そこのところに情願をして、ところが、結局矯正局で、言ってみれば刑務所の親分ですよ、親分が見て、大体そんな運用をされていたわけですね。その上、去年からさんざん、情願をごらんになりましたかとか何だとかいって指摘があったのに、ことしの一月に見るというのは、少し遅過ぎるんじゃないかと思います。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
 ところで、大臣、昨日、私は、名古屋の刑務所で受刑をして、革手錠などで随分ひどい目に遭った方と直接お会いをしました。その方は、この委員会の審議を見て、ぜひ会って話を聞いてほしいということでいらっしゃったわけです。
 その方は、二〇〇〇年ですから平成十二年、名古屋刑務所に入所をされて、二〇〇二年七月十五日に出所した方です。その方は、あるとき、これも名古屋の刑務所です、名古屋刑務所の件ですが、入所後二十日ぐらいしたところで、刑務所職員、名前は公の場ですから伏せますが、そのある職員が、多少精神発達に遅滞があると見受けられる人、もう一人は高齢で痴呆がある人、この二人を突き飛ばして側頭部をど突いて、受刑者の側頭部を壁にぶつけているということを目撃した。さらに、その痴呆でお年寄りの方の頭を金属製のメガホンで殴っているのを目撃した。
 お会いしましたが、大変まじめそうな方で、正義感の非常に強い方のようです。これはおかしいじゃないかということで、まず、所長面接というものを求めました、所長に訴えたいということで。ところが、刑務官から、所長面接願なんか出しても、所長が実際来るわけないだろう、私が話を聞きましょう、こういうことで所長には会わせてもらえなかったようですが、暴行のことなどについて供述調書を作成してもらったわけです。
 その後、刑務所からのひどい仕打ちがここから始まるわけです。要注意人物扱いをされます。また、当該お年寄りと知能の発達のおくれた方をぼこぼこにしていた人がどういうわけかいなくなったということで、まあA刑務所職員としましょう、A刑務所職員はもういなくなったよ、もういいだろうと言われ、暴行があったかないかを今さらはっきりして、生活しづらくなるだけじゃないか、こんなことを言われて、つまり、申し立てを維持すれば刑務所内でいじめ続けられることを示唆されたわけです。そして、その職員は、この人の所長への、願せんというんですけれども、願せんを持ってきて、目の前で破ってくれと言って、自分で破くほかなかったと。
 九月事件、どういう事件だか、今直ちには思い出さないかもしれませんけれども、あの事件も、きのうも法務省のある方がいろいろレクしに来たときに、いや、それは違うと否定をされていましたが、私はこういう認識です。
 あの事件も、情願なりなんなり、いろいろしようとしていたんですよ。そして二日後に弁護士さんが会いに来る。やめさせようとして、前田容疑者でしたか、いすをけるなどして、最後には革手錠をされてけがさせられる、腰の骨を折りましたか。
 だけれども、きのう役所の方が来られて、私がその話をすると、いや、あれは、情願は自分から取り下げたと話を聞いていますと。確かに外形的には自分で取り下げたかもしれないけれども、こういうケースだってあるわけですよ。
 私は、おとといですか、内部告発という言葉を使ったら、矯正局長から、内部告発ということは認めておりません、その事実は公表していませんと言っていますけれども、何か、あのときあたかも私が勘違いで、つくり話で言っているような言い方をされていましたけれども、根拠あることを言っているんですよ。
 続けますが、この後、刑務所職員による暴行が続きます。踊り場で肩をつかまれて引きずり回されて床に倒れ、あざと切り傷を負ったので、処遇部の職員に写真を撮ってくれということを言って、このときには撮ってもらったようです。そこで、もう一回、改めて申し上げます。二〇〇〇年の十二月の一日に情願を出します。十二月ですから、今回の事件が起こる前の話ですね。情願を出しました。ところが、これに従来撮影してもらったけがの写真を同封したいので自分に交付してもらいたいと言ったら、そんな義務はないということで拒否をしました、名古屋刑務所は。
 そして、さらに、情願の件は、この法務大臣に出したものと、もう一つ、巡閲官に対する情願がございます。巡閲官への情願があるということで、この人は大変期待をしていました、何とかしてほしいということで。ところが、職員からどう言われたか。あんなばかたち相手にしていちゃだめだぞ、同じ法務省にいる人間がやっているんだから調査するわけなんかないだろう、あんなの、お茶でまんじゅう食って帰るだけだ、こういうことを言われているわけです。
 この後に、言いがかりなどによっていろいろ懲罰を受け、革手錠で何回もひどい目に遭っています。職員から、上から乗っかられて腕を持たれて、このまま腕折ったろうか、こんな発言をされたり、一部医療を拒否したりとか、そういったケースもあったようであります。
 さらに、保護房に連れていかれて革手錠をされて、いいですか、これは事件になっていない話ですが、職員からこういうことを言われています、おまえ、このまま冷たくなる人いっぱいいるんだぞ、ここでと。いいですか。そして、ここは別に裁判所の法廷じゃないですから、恐らく、これは一方の当事者が言ったことだろうと言われるかもしれませんが、これは相手も認めています、言った当人も。ただ、いや、それは諭すために言ったんだと、わけのわからないことを言っているんですよ。
 つまり、こういうせりふが出たというのは、これは、訴訟になれば自白になるのかもしれませんけれども、こういうことが行われていて、いいですか、繰り返しますが、二〇〇〇年にそういう情願が出ていたわけです。そして、御本人から了解をいただいて預かってまいりましたが、十三年の十二月二十日、きょうの事件の時系列を持っている方は、十三年の十二月二十日、大体何が起きたころかわかると思いますが、事件と直接関係あるという話ではありません。
 これが、「平成十二年十月一日付け提出に係る情願は、一 他受刑者の廃棄物品の取扱い、二 職員による暴行、三 面接(二件)、四 刑執行開始時の訓練に関する不服であるが、一については情願事項に係る不服に当たらないものであるから棄却し、二については申立てに係る事実は認められず、三及び四については施設の処置に不当な点は認められず、いずれも理由がないから却下する。 平成十三年十二月二十日 法務大臣森山眞弓」ということで、あなたの判こもここに押してあります。
 いいですか、二点あると思います。
 一つは、この決裁をした、事務次官なのかわからない、あるいは矯正局でやっちゃったのかもしれませんけれども、仮にそうだとすれば、その人たちの処分を求めます。
 もう一つ、この結果として、こういう判こがあって、しかもこの方の情願というものがしっかり受けとめられていれば、その後、二人の人は死んでいないんですよ。政治責任をとっていただきたい。御答弁お願いします。
森山国務大臣 今のお話のようなことを伺いますと、本当に申しわけないと思います。もしそういうことが事実であるとすれば、情願というもののこと、本来の意味を全く承知していないといいますか、認識していない者が刑務所の中で仕事をしていたということになるわけでございまして、それを、その被害を受けた方、先生に、昨日ですか、昨日訴えられた方のおっしゃることが本当だとすれば、本当に申しわけないことだったと思います。
 そういう種類の刑務従事者の人たちの認識だといたしますと、刑務官関係の人権意識というものが大いに問題だと思いますし、そのようなものを何とかしてたたき直さなければいけないというふうに考えます。
 十分反省いたしまして、一から、人権教育がなぜこのようなことになって不徹底であったのか、あるいは曲がってしまったのかということまで突き詰めて考え直し、できるだけ事態の改善のために努力していかなければならないということを痛感する次第でございます。
 まことに申しわけございませんでした。
山花委員 答えていないじゃないですか。政治責任はどうですかということですから。
萩山委員長代理 森山法務大臣、答弁もう一回しますか。山花委員の質問に答えてください。
森山国務大臣 そこに私の名前が出て、そういう決裁をしているということについては、私も責任を感じざるを得ないと思います。
山花委員 驚くのですけれども、例えば受刑者の気持ちになって考えてください。それだけひどい目に遭って、法務大臣ならわかってくれると思って、申しわけないで済むと思いますか。私はそんなことで法務大臣は務まらないと思いますよ。
 では、何ですか、こういう判こというのは勝手に押すことができるんですか、本人以外が。
 法務大臣、改めてもう一度見解を伺いたいと思います。(発言する者あり)
萩山委員長代理 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 それでは、まず法務省大林官房長から答弁をいただき、その後に森山法務大臣から答弁をいただきたいと思います。
 法務省大林官房長。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 これは、矯正局の業務でございますけれども、決裁規程によりまして、決裁者といわゆる名義者が異なっているものでございます。
 本件については、局長の決裁をもって大臣の名義で発行する、こういうことでございます。
 詳細については、矯正局長の方からお答え申し上げたいと存じます。
藤井委員長 中井矯正局長、わかりやすく答弁してください。
中井政府参考人 御説明申し上げます。
 先ほど来御議論いただいておりますように、この情願、これまでは、ほとんどすべてが局長限りで決裁されております。
 それで、内部の決裁規程上は、ただいま官房長が申したとおりでありまして、決裁権者が局長であり、文書の施行名義者が大臣ということになっておるわけでございまして、印鑑は……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に。
中井政府参考人 印鑑は、私は正確には存じませんけれども、多分、公印保管部署たる官房秘書課ではなかろうかと思います。私はちょっと、官房のことなので正確には申し上げられません。
 このような慣行は、これまたさかのぼるのが古いわけでございますが、恐らく数十年前からこういう形での事務運用がされておったところ、このたび、大臣の御指示によって、すべて、情願につきましては大臣が開封段階から見られるということになったわけでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に、御静粛に。
 森山法務大臣。
森山国務大臣 今御説明申し上げましたとおり、矯正局の仕事でございますが、その中で文書決裁規程というのがございまして、その決裁は局長が行いまして、文書施行の名義者は大臣ということになっております。そのようなわけでお手元のような書類ができたんではないかというふうに考えます。
山花委員 もう時間が何か来たみたいですが、ちょっと待ってください。
 一つは、監獄法の規定にこれは違法なんじゃないですか。先ほど矯正局長は、大臣の御指示に基づいてと言ったけれども、それはあくまでも本来の形に戻すというだけの話であって、今、何ですか、では、今回のあれは違法でしたと、それ、いいですか、本人の前でそういうことを言えますか。何を考えているんですか。
 それと、大臣、ちょっとお答えになっていないけれども、そういうような実態を踏まえて、あなたの政治責任はどう考えますかということを聞いているんですよ。いかがでしょう。
森山国務大臣 私といたしましては、情願をすべて私が見ますということを先ほど来申し上げているとおりでありますし、また、政治家としての責任ということをおっしゃいますが、私としては、二度とこのようなことが起こらないように努力するということが責任だと思っております。
山花委員 違う法務大臣によって、あなたではない方によって、情願が違う大臣によって読まれるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
藤井委員長 これにて山花君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増委員 日本国憲法第三十六条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」とあります。「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」日本国憲法で絶対という言葉はここにしか出てきません。日本国憲法上、本当に絶対にやっていけないこと、公務員、公権力による不当な暴力行為、そして公務員による暴行陵虐、それを絶対にさせないのが内閣の務めであるはずです。
 しかるに、きょうは、名古屋の刑務所の革手錠事件三件について、そのことをただそうと思っておりましたが、今の山花委員の質問の中で明らかになったように、実は、そのほかにも恒常的に、この「公務員による拷問及び残虐な刑罰」、公務員による暴行陵虐、日本国憲法第三十六条が「絶対にこれを禁ずる。」と明記してあることが平素から広く行われていた。
 そして、そのことについて情願が出ていたにもかかわらず、森山法務大臣の名前でその情願を却下した。その却下は、平成十三年の十二月二十日付の返答であります。もし、ここできちんと対応していれば、その後の致死に至るような公務員暴行陵虐事件が発生していなかったかもしれない。
 この平成十三年十二月二十日付の情願却下、森山法務大臣名による情願の却下について、森山大臣、どう責任をとられますか。
森山国務大臣 先ほどお答え申し上げましたとおり、法務省の文書決裁規程というのがございまして、その中に、矯正局のページに情願の決裁というのが書いてございます。これの内容は、ここに書いてあることは、特に重要なものは大臣、重要なものは事務次官、一般的なものは局長、そしてその名義者は大臣というふうに書いてございまして、そのとおりのことが行われたんだと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、私は、最近から、情願は自分で目を通しますということを言いまして、そのような方式に変えていきたいというふうに考えております。
達増委員 ただいまの答弁の趣旨は、手続的に瑕疵がないので自分の責任はないということでしょうか。
森山国務大臣 手続を御説明申し上げたのでございまして、私といたしましては、その手続に従って今まで行われてきたことについては問題がないというふうに考えております。
 しかし、これからは改めるということも申し上げました。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
達増委員 手続にのっとって行われていれば、今まで起きたどんなことにも責任をとらないという趣旨の答弁のように聞こえます。
 より広い事態について質問しますけれども、繰り返しますが、日本国憲法三十六条が「絶対にこれを禁ずる。」ということが発生し、しかも人が死ぬ事態まで起きている。そのことについてはどう責任をとられますか。みすみす、小泉内閣において、森山法務大臣の下で、憲法が絶対に禁ずると書いてあることが起きてしまった。公務員がそういうことをやってしまった。このことについての責任はどうとられますか。
森山国務大臣 大変申しわけないことであり、何ともおわびのしようもないと思いますが、私といたしましては、二度とこのようなことが起こらないようにするということが一番大事な責任だと思っています。
達増委員 伺いますが、特別公務員、公務員である刑務官が受刑者を暴行陵虐で死なせてしまった前例というものは確認できますか、大臣。
中井政府参考人 私どもが保存しております記録の限りでは確認できません。
 ただ、非常に高齢のOB等に聞きますと、やはり数十年前にはそのような案件があったやに漏れ聞いております。
達増委員 今の答弁はすごい驚きなんですけれども、記録にはないが事実としてはあったとおっしゃるわけですか、局長。
中井政府参考人 そのような話を、お年を召したOBから聞いたことがあるというだけの話でございまして、私自身が、それがあるかないかということを確認して申し上げることはできません。
 それと一点だけ、委員長、御許可が得られれば申し上げたいわけでありますけれども……
藤井委員長 どうぞ。
中井政府参考人 先ほど来、大臣名義の情願の案件の件で御議論いただいているわけであります。私も拝聴いたしておりまして、これは大変なことだなと思っております。それが、私どもが調査あるいは捜査することが適当なのか、あるいは検察がやるのかどうかはわかりませんけれども、先ほど来いろいろ伺っておりますので、その事実関係につきまして、まずもって調べさせていただきたいと思います。でき得れば、その事実関係を前提の上で御議論賜ればと、かように思います。
達増委員 まず、刑務官により受刑者が死に至らしめられたケースが、公式な記録にはないがあったかもしれないという答弁については、これは非常に大変な発言でありまして、そこを指摘させていただきたいと思いますが、公式の記録においては今までなかったことなんですね。それはそうです。憲法ではっきり絶対に禁ずるとあったわけですから、絶対に禁じられていたわけですね、少なくとも公式な記録上は。
 その憲法が絶対に禁じていて、公式な記録上は今までなかったことが、森山大臣の下、小泉内閣の時代に、人が死んでしまうところまでいくケースだけで二つ、重傷になったケース、名古屋の革手錠一つ、そして先ほどの話では、もっとほかにあるかもしれないと。このことについての責任、これは憲法に対する責任でもあり、また歴代の日本の内閣が、日本という国が守ってきたそういうタブーを破ってしまった、その責任はどのようにとられるおつもりですか。
森山国務大臣 先ほどお話しいたしましたように、大変重大なことで、まことに申しわけないと思います。私も、二度とこのようなことが起こらないように一生懸命に努めるということが大事だと考えております。
達増委員 一度もあってはいけないことなんだ、憲法にそう書いてあるんでしょう。憲法に、一回でもあってはならない、絶対にあってはならないと憲法に書いているんだから、二度と起こさないということはもう議論の対象にはならないということを指摘させていただきます。
 二月十九日付の法務省のペーパーで、先ほど来議論になっておりますけれども、昨年十一月二十九日、十二月四日の阿部委員の森山大臣に対する質問、そこで森山大臣は、十二月事件については念頭になかったと。名古屋の革手錠事件ほかの二つについて答弁したのであって、十二月事件については念頭になかった、翌年、ことしになって、一月末になるまでは自傷だと思っていたということを先ほど来答弁されていますけれども、十一月十九日には、福島瑞穂議員が参議院の法務委員会で非常に具体的に十二月事件について取り上げて、肛門に指を入れて腹膜炎になったりするのか、つまりそうやって直腸を破ったりできるものなのか、国会の場できちんとそういう問題を指摘しているわけです。疑惑として明らかにしているわけです。
 また、新聞でも、朝日新聞の十月三十一日の夕刊、翌十一月一日の東京新聞朝刊、毎日新聞朝刊、ここで、革手錠をつけられた受刑者が名古屋刑務所でほかにも死に至っているケースがあると、十一月頭には新聞にも載っているわけであります。
 国会でも取り上げられ、新聞でも取り上げられたこうした疑惑について、疑惑段階で陣頭指揮をとるべきではなかったのではないですか。安易にこれは自傷だというふうに判断し、実はそうではないんじゃないか、自分の部下が実はやったことじゃないか、そういうことを念頭に置いて陣頭指揮をとって、問題解決を図るべきだったと思うんですが、この点、大臣いかがですか。
森山国務大臣 おっしゃいますように、十一月二十九日の時点では、私、報告を受けた内容として、この十二月の事件が自傷行為の可能性が非常に高いというふうに受けとめたわけでございまして、そのことについてよりも、その前に、亡くなって、あるいは起訴されたケースがありましたので、それが大変申しわけないと思い、謝罪申し上げなければいけないと考えたために、おっしゃるように、十一月二十九日の時点の答弁では十二月の事件については触れなかった。言葉が足りなかったと申しましょうか、あるいは触れたとしましても、これは、その十二月の事件についてはこういうふうな認識でありましたということをつけ加えて申し上げればよろしかったのかと思いますが、そのような言葉が足りませんでしたことを、まことに申しわけなく、深くおわび申し上げます。
 しかし、おっしゃいましたことにつきまして、陣頭指揮をして早くからやればよかったではないかという御指摘でございますが、これもまた、検察のやっていること、あるいは検察が起訴のために、あるいは起訴しないためかもしれませんが、事件であるかないかを見きわめるためにいろいろと捜査をしていることにつきまして、大臣がみずから個別のケースについて、こういうことをしたらどうかとか、しない方がいいとかということを言うのは、また別の意味で指揮権発動というようなことにもつながり、非常に問題になる可能性がございます。
 したがって、検察が入っているということがわかりましたと同時に、私といたしましては、できるだけ個別のことについての指図をしないようにしようというのが私の考えでございまして、結果としてこのようなことになりましたのは本当に残念であり、申しわけございませんけれども、私の気持ちあるいは立場というものを御理解いただきたいというふうに思います。
達増委員 日本国憲法が絶対にこれを禁ずるということが、しかも歴史上初めて起きてしまった。名古屋刑務所の異常事態、非常事態ですが、大臣は、名古屋刑務所には行ってみましたか、また革手錠というものを見てみましたか。
森山国務大臣 一月の半ばごろに行く予定で予定を立てておりましたが、ちょっと体調を崩して行かれなくなりました結果、国会が始まってしまい、日程が立たなくなりまして、まだ愛知には行っておりません。
達増委員 法務大臣の仕事として、検察行政、そして行刑行政あるいは矯正行政、犯罪についての事実関係を究明するという検察と、そして受刑者のそういう行刑ということを管理監督する、刑務所の管理責任ですね。つまり、検察の指揮という任務と刑務所の管理という任務と、両方法務大臣の責任ですけれども、憲法三十六条は、公務員のそういう暴行陵虐のようなことは絶対これを禁ずると言っているわけですから、そのことの方が優先するんじゃないですか。
 つまり、矯正局のラインで直接陣頭指揮をとって、実態の解明、そして再発の防止、また、逮捕された人が、その逮捕されるときまで現場で働き続けていたそうじゃないですか、そういうことを防いで危険をなくす、そういう行刑に関する大臣の責任の方が、検察の仕事がスムーズにいくとか邪魔されないとか、そういうことよりも優先されるんじゃないんですか。
 先ほど来大臣は、検察に任せる、捜査が最優先とおっしゃっていましたけれども、本当にそれでいいんですか。
中井政府参考人 委員長の御了解が得られれば、先ほど来の、調べてまいりましたので、逮捕者が勤務していたかとか、ただいま結果が届きましたので、御報告させていただきたいと思います。
 乙丸容疑者の最終出勤日でございます。二月十日は出勤して勤務についております。二月十一日は休みでございます。二月十二日、一たん登庁いたしましたが、検察庁に参っております。
 以上でございます。
藤井委員長 森山法務大臣、今の達増君の質問に答えてください。(達増委員「検察よりも刑務所管理が優先されるんじゃないか」と呼ぶ)まず答弁を聞いてから。どうぞ、答弁、もう一度。
森山国務大臣 どちらも大変大切な仕事でございますが、ある事態の真相を究明するということになりますと、これは公権力を持って捜査ができる検察というものが最終的には決め手になると思いますので、その検察の仕事を邪魔しないように、協力するようにというふうに考えるというのが重要なことだと思います。
達増委員 確認しますと、憲法が絶対に禁じている公務員の暴行陵虐といったことを防ぐことよりも、事実の解明の方が優先するということですか。
森山国務大臣 どちらも大変大切なことでございまして、私も矯正について関心がないわけではございませんで、むしろ、出かけていく機会があるたびに、刑務所とか少年院とかその他矯正に関する施設を視察して歩いておりまして、そこに働く人たちの意見を聞いたり、あるいはそこで作業する人たちの仕事ぶりを見たり、努力しているつもりでございます。
達増委員 余りに、危機意識といいますか、責任感が足りないと言わざるを得ません。
 二月の十四日に、この十二月事件、逮捕に至った後で会見されていますけれども、その前、まだ逮捕に至る前、しかし、既に新聞では、これはホースを使った暴行陵虐だったということが新聞などに出ていた逮捕直前の二月十二日の大臣の記者会見、大臣がどう答えているか。
 まだ、調査をしている段階のようですから、私として今何かを申し上げるのは、難しいと思いますけれども、よく事実を解明して、しかるべく対処をしなければいけないというふうに思います。
 大臣の方には、その事件そのものについては、報告はあったのでしょうか。
 詳しい話はありません。
 その発生当時というのは、どういう報告があったのでしょうか。
 その発生当時というのは、一年か二年くらい前のことで、その時は何もなかったと思います。報告は特にありませんでした。
問い
 二〇〇一年十二月の事件と聞いておりますので、今から一年ちょっと前になりますが、いつごろお聞きになったのですか。
答え
 名古屋でいろいろ事件があったということがわかった時に、それに関連して類似のことがあるらしいということは、聞いておりましたけれども、詳しいことはわかりませんでした。
問い
 これだけ次々に出てきていることについて、どう受け止めていらっしゃいますか。
答え
 もし本当の事実であれば、とても残念なことだと思います。余程気をつけて、これからの処遇について考えなければいけないと思いますが、まずは事実を解明することが、重要ではないでしょうか。
このやりとりからうかがわれるのは、事実の解明、事実の解明ということを盾にして、法務大臣としてとるべき刑務所管理の適正化、憲法三十六条を絶対に守っていくという、そういう決意と行動の欠如であります。
 日本国憲法は、九十九条、憲法尊重擁護義務、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」そういう迫力、決意、そして行動が欠けていたことが、今、表面的には国会答弁のいいかげんさ、そして国会審議の混乱ということで出てきておりますけれども、さらに本質的には、歴史上初めて、しかも死者が二人も、そして実は恒常的にそういった暴行陵虐が行われていた、そういう文字どおり前代未聞の不祥事を小泉内閣のもとで森山大臣が引き起こしてしまった、そういうことではないんでしょうか。
 この憲法九十九条の観点も含めて、再び、大臣としてどのように責任をとるか伺いたいと思いますが、これはもう、内閣として責任をとるには法務大臣の辞任は不可欠と考えますが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 大変重大な事件が起こりまして、まことに申しわけなく存じます。何ともざんきにたえないことでございますし、全国でまじめに働いている刑務官の多数の者にとってまことに恥ずかしいことだろうと思いまして、その人たちのためにもまことに残念だと言わざるを得ません。
 私にとりましては、大変重大な事件にぶつかりまして本当に残念であり、申しわけないと思いますが、このようなことが二度と起こりませんようにしっかりと行政をしていくというのが私の責任であろうと思います。
達増委員 今、このようなことにぶつかったというような発言があったかと思いますが、引き起こしているわけですよ、その情願の処理も含めて。
 したがって、今この問題は、小泉内閣全体の憲法観が問われることだと思います。大臣の処分がどのようになるのか。小泉内閣は、国会と内閣の関係についても非常に憲法の原則を踏みにじる振る舞い。憲法九条についてのすき間があると言いながらテロ特措法を制定、憲法を改正した方がすっきりするが政治的にできないじゃないかと言いつつ、平然としている小泉総理。そうした小泉内閣の憲法観が問われているということを指摘して、私の質問を終わります。
藤井委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 名古屋刑務所で起きた一連の重大な受刑者に対する人権じゅうりんについてお聞きをいたします。最初、情願の問題が出ましたから、お聞きをいたします。
 情願は、監獄法の規定に基づく受刑者の法務大臣に対する権利であります。決裁義務は法務大臣であります。
 法務大臣に聞きますが、この法務大臣の決裁権限、決裁義務を法務大臣以外の者に委任する、委任したという法律はありますか。
森山国務大臣 法律はないそうでございまして、ただ、法務省の文書決裁規程というのがございます。これは……(木島委員「もう結構」と呼ぶ)よろしいですか。
木島委員 法律がない。法務省の文書決裁規程で、監獄法で定められた法務大臣の権限並びに責務を放棄することは、日本の法律体系上許されない。
 私は、法務省矯正局が作成した「行刑法」という研修教材をここに持ってきております。「情願」というところを読んでみます。時間がないからはしょりますが、「法務大臣への情願」監獄法七条、監獄法施行規則第四条、「法務大臣への情願は、書面によることを要する。情願書の作成を希望する被収容者には、表紙一枚及び申立用紙の情願書用紙五枚以内で本人が希望する枚数を交付するが、申立用紙に加え私有の便せん等を使用させて差し支えない。書面は本人が自ら封をし、職員はこれを披閲することはできない。」あけて見るようなことはできないと明確に書いてあるんです。法務大臣が直接見なきゃいかぬ、そういう法体系になっているんじゃないですか。あなた方が矯正職員のために発行している「行刑法」という研修教材にこう書いてあるじゃないですか。
中井政府参考人 文書決裁規程におきまして大臣権限の一部を下部委譲している点につきましては、私どもの所管以外の法律で律されると思いますけれども、その点につきましては、確認しまして御報告いたします。
木島委員 何で法律がこんなに厳しい仕組みをつくったか、あなた方の教科書にも書いてあります。「情願は要するに事情を訴えて願い出ること、すなわち請願であって、行政不服審査法における不服申立権のような具体的処置を求め得る権利ではない。被収容者には情願事項の実現を求める具体的請求権はなく、ただ単に行刑施設の監督官庁として法務大臣の指揮監督権の発動を促すだけであり、受理の保障はあるが、その審理・裁決までも請求する権利はない。」とは書いてありますが、そういう問題です。
 それで、情願は、刑務所長の処置に対して覆審的な性質を持つとされている。要するに、所長が悪いことをやるから、それを覆す、そういう性格を持っている。だからこそ情願というのは本人以外だれも開披して見ちゃいかぬのだ、直接法務大臣以外見ちゃいかぬのだ。法務大臣の指揮監督権発動を促すための、そういう権利なんだ。だからこそ、法務省の高級官僚であろうと、大臣以外の者が横やりを入れたんでは、法務大臣にまで届かなかったらこの趣旨の根本が消えてしまうじゃないか、そういうことが書かれているんです。
 法務大臣に聞きます。
 単なる法務省の文書決裁規程で監獄法という法律を覆す根拠を述べてください。いや、法務大臣。法務省の単なる文書決裁規程で監獄法の規定を覆すことができる法的根拠を、法務大臣、述べてください。
藤井委員長 法務大臣の前に中井矯正局長。(木島委員「いや、これは法務大臣」と呼ぶ)指名しています。その後、法務大臣に答弁してもらいます。
中井政府参考人 監獄法施行規則にありますけれども、第四条第二項におきまして……(木島委員「いやいや、そんな質問していない。文書決裁規程で覆せるかと」と呼ぶ)
藤井委員長 まず答弁を聞いてください。
中井政府参考人 「情願書ハ本人ヲシテ之ヲ封緘セシメ監獄官吏ハ之ヲ披閲スルコトヲ得ス」と記載してございます。
藤井委員長 森山法務大臣。(木島委員「文書決裁規程で監獄法の法律を覆す法的根拠を述べよと。答えになっていない」と呼ぶ)
 中井矯正局長、もう一度答弁をお願いします。中井矯正局長。(発言する者あり)
 森山法務大臣。
森山国務大臣 私は法律の細かい専門家ではございませんので何とも申し上げられないんですけれども、国家行政組織法その他にあるのではなかろうかと思います。
木島委員 大変無責任な答弁です。国家行政組織法にあるんではなかろうかと思うと。こんないいかげんな答弁で、私は質問できません。
藤井委員長 中井矯正局長。(発言する者あり)
 御静粛に願います。御静粛に願います。
中井政府参考人 まずお断りしておきたいことは、大臣の補助機構として矯正局長がやっている、これがまず第一点です。
 続きまして、先ほど舌足らずでございましたけれども、監獄法の第七条におきまして、「在監者監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ法務省令ノ定ムル所ニ依リ法務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ為スコトヲ得」と書いてございますので……
木島委員 今は全然別な話。法律は、大臣に対する情願と官吏に対する情願、二つ別にあるんです。
 私が今質問したのは、大臣に対する情願に対する法的手続を聞いておる。
 全然答弁になっていない。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
中井政府参考人 もう一度読ませていただきます。
 「在監者監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ法務省令ノ定ムル所ニ依リ」、これからでございますけれども、「法務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ為スコトヲ得」、こうなっているわけでございます。
木島委員 だから、あなた方の教科書にも、情願には二種類ある、法務大臣に対する情願と官吏に対する情願と二種類あるとちゃんと分けているんです。
 私は今、法務大臣に対する情願を聞いておる。まさに獄中にいる受刑者は法務大臣にみずからの気持ちを訴えたい、そういう規定です。
藤井委員長 今の質問に対して答弁を願います。
 速記、とめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 では、速記を起こしてください。
 中井矯正局長。
中井政府参考人 何度も繰り返して恐縮でございますけれども、監獄法の第七条に、「在監者監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ法務省令ノ定ムル所ニ依リ法務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ為スコトヲ得」という規定がございます。
 それとともに、法務省の文書決裁規程におきまして、先ほど委員御指摘のとおり、決裁権者は通常のものは局長として、そして文書施行名義者として大臣が定められているところでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 速記、とめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 法務省大林官房長。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 今の規定、監獄法の規定でございますが、情願は、法務大臣に対してなすことを七条で定めてあります。ただ、御承知のとおり、我々もそうでございますが、法務大臣の補助者として私たち位置づけられているものでございます。ですから、その中で、御承知のとおり、すべての法務省の業務というものは、行政事務は大臣の命で行われておりますが、その中で、各局において各局長に委任されているわけでございます。
 ですから、この趣旨は、要するに、監獄の現場において、先ほど問題になっている刑務官たちが、要するに、処遇に過ちあるものを防ごうとするために、上告といいますか、直訴させるための規定でございます。ですから、そのために、行政庁の長である大臣にという規定にはなっておりますが、じゃ、実際に、どの者が扱うかというのは、これは各省庁の規程、管理規程によって決まっているわけでございます。
 ですから、法の趣旨からして、それが矛盾するものではないというふうに考えております。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
木島委員 そんな理屈で、この情願という権利を大臣以外の者ができるなんという解釈は出てこないです。法務省の内部決裁文書とか法務省の組織法とか、法務省の組織法、組織法令によって情願権を奪えるものじゃないんです。
中井政府参考人 先ほど申し上げましたように、法務省におきまして、法務省令の定めるところにより情願をなすことができますよ、こういう規定になっておるわけでございます。
 それで、問題は披閲の件でございますけれども、先ほど引用いたしましたように、規則の四条におきまして、監獄官吏、要するに、刑務所の職員はこれを披閲することはできませんよと書いているということは、法務省の職員はこれを披閲することができる、こういう意味でございます。
木島委員 整理します。いいですか、整理しますよ。法律そのものですよ。監獄法の第七条。いいですか、読みますよ。「在監者監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ法務省令ノ定ムル所ニ依リ法務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ為スコトヲ得」、これだけです。ここで言う法務省令というのは監獄法施行規則です。
 監獄法施行規則によりますと、第四条が「法務大臣への情願」です。第五条が「巡閲官吏への情願」です。ですから、法や規則によりますと、第四条だけが問題です。第四条を読みましょう。「法務大臣ニ情願ヲ為スニハ其趣旨ヲ記載シタル書面ヲ差出スコトヲ要ス」、第二項「情願書ハ本人ヲシテ之ヲ封緘セシメ監獄官吏ハ之ヲ披閲スルコトヲ得ス」、第三項「情願書ヲ差出シタルトキハ所長ハ速ニ之ヲ法務大臣ニ進達ス可シ」、これだけです。
 ですから、法務大臣以外の者がこれをあけたり、勝手に法務大臣の権限を、情願者の権利ですから、奪い取ることなど、もしできるとすれば、そのような実体法がなければできないはずです。
 法務省の文書規程とか国家行政組織法なんかで一般的に法務大臣の権限を事務次官や局長に委任するなんて、一般規定でこの大事な情願権という実質権を、実体権を封殺することはできない、当たり前じゃないですか。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
中井政府参考人 木島委員、法律論でございますので。要するに、監獄法の施行規則の第四条二項に規定しておりますのは、あくまで、監獄官吏はこれをあけることはできませんよと書いてあるわけです。したがいまして、監獄官吏でない矯正局の職員はこれをあけることはできる、こういう意味でございます。
木島委員 いや、それは――じゃ、いいですよ。仮に、万が一局長の答弁を認めたとしても、それはあけるかどうかの話。情願を決裁する権限、何も委任していないじゃないですか。
中井政府参考人 ですから、わかりやすく申しますと、先ほど官房長が言いましたように、法務省の職員、我々矯正局であれ刑事局であれ官房であれ、いわば大臣の内部の補助機構で、手足でございますので、それはできる。ただし、その中での委任、決裁をどういう形でするかということを先ほど申し上げました法務省の規程で定めている、こういう構成になっているわけでございます。
木島委員 私の質問に答弁になっていないんですよ。大臣の権限を補助機関がやれるという法律の根拠を示せと言っているんです。法律の根拠を示していないんです。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。御静粛に。
大林政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、法務大臣がそれを見るあて先でございます。それで、その事務分配については法務大臣が決定して、だれにこれをやらせるということを決めるわけでございます。したがって、先ほどの根拠としては法務大臣訓令があるわけです。その中でどういう分担を自分の補助機構に対して、局長にさせるか事務次官にさせるかというのは、これはほかの官庁でも同じだと思いますね。(発言する者あり)いえいえいえ……
藤井委員長 官房長、素直に自分の答弁だけしてください。どうぞ。(発言する者あり)
 中井矯正局長。
中井政府参考人 要するに、大臣は情願の権限はお持ちなんですね。お持ちであるけれども、それを自分の手足……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛にしてください、海江田委員。
 お互い冷静に、冷静に。
中井政府参考人 自分の権限はお持ちなんですね、大臣は。お持ちであるんですが、それをやるに当たりまして、内部の補助機構、それを使うことは、これは当然のことではあろう、こういう理解で御理解賜れればと思いますけれども。(発言する者あり)
藤井委員長 木島君、木島君、質問してください。質問してください。
木島委員 情願権を大臣以外の者に委任できる法的根拠を示せということの答えになっていない。
藤井委員長 それを今答えていますから。
 もう一度、木島君、質問してください。(発言する者あり)ちょっと静かに。
 中井矯正局長。
中井政府参考人 ですから、大臣の権限がなくなっていない。要するに、大臣……(木島委員「委任できる法的根拠は何ですか」と呼ぶ)その委任の用語をやりますとあれなんで申し上げませんけれども、要するに、大臣の権限がありますので、その権限行使をする際、講学上の概念は私ちょっと所掌外なので申し上げませんけれども、いわゆる内部委任というような言い方になろうかと思いますけれども、それはちょっと私の法律の所掌外なんで申し上げられませんけれども、いわゆる権限自体は大臣にあくまである。あるときに、それを行使するに当たって、自分の部下にそれをやらせることは、これは当然できるという構成になっているわけでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 木島君、まず法制局長官に質問してください、法制局長官に対して。到着しましたから、秋山内閣法制局長官。
 木島君。
木島委員 監獄法や監獄法施行規則の規定によりますと、受刑者は法務大臣に対して情願を求めることができるという規定になっております。その法務大臣の権限あるいは責務、これを法務大臣以外の下級官僚に権限を委任するという法の規定がない、政令の規定がない限り、この情願を決裁するのは法務大臣以外にあり得ない、これが情願の本質だと思うんですが、法律で、法務大臣の権限を下級官僚に委任する法的根拠、ありますか。情願についてですよ、一般じゃだめですよ。
秋山政府特別補佐人 いわゆる専決の制度というのがございまして、これは、特定の行政庁、例えばこの場合ですと法務大臣でございますが、法務大臣の権限に属する事項につきまして、その内部委任を受けて、特定の補助機関、例えばその省の局長などでございますが、それが内部的な意思決定をその補助機関限りで行うこと、これが専決の制度であります。
 それで、これは法律に明文の根拠があるわけではございませんけれども、組織法の一般的な法理といたしまして、恐らく戦前から行われている制度でございます。そういうことでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に聞いてください。
秋山政府特別補佐人 したがいまして、この専決規定を制度として決める権限は法務大臣でございますけれども、それに従って内部機関が処理を行い、それでその法律的な効果は法務大臣に帰属するという制度が専決規定の一般論でございます。
木島委員 説明になってないんですね。法律の規定がない。一般的に、明治の時代から、そういう、行政庁は勝手な解釈で勝手な運用をしてきたというだけの話です。
 しかし、監獄法による情願というのはそんな生易しい権限じゃないんです。受刑者が獄中で、今回名古屋で起きたような事態に瀕したときに、命を守る最後のとりでは、直接法務大臣の指揮監督権限の発動を求める、意見を目に触れてもらうということなんです。だから、情願というのは別格なんだ。今のは答弁になっていない。
秋山政府特別補佐人 情願の制度自体は、直接今突然聞くお話でございまして、これは制度を所管する法務省において御判断されるべき話だと思います。
木島委員 法務省は説明できないんです。法務省、監獄法、監獄法規則、これですよ、これだけ。これをいじらない限り、この法務大臣の権限は委任できないんですよ、法律の仕組みは。
秋山政府特別補佐人 繰り返しの答弁になりますが、一般法理に基づいて行われております専決処理に従って行われている事務処理であると考えます。
木島委員 だから、繰り返しで答弁になっていないんですよ。答弁になっていないんですよ。
藤井委員長 法制局長官が見解を述べているんですから、それを気に入らないといったってしようがない。(発言する者あり)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 内閣法制局長官秋山收君、いま一度答弁をお願いいたします。
秋山政府特別補佐人 行政法規というのは何百本もございまして、その中で、特定の行政庁、いわゆる大臣に対して権限を付与している規定というのも非常にたくさんあるわけでございます。それをすべて、行政庁たる大臣が自分で見て決裁するということは現実的ではございませんので……(発言する者あり)
藤井委員長 静かに聞きなさい。
秋山政府特別補佐人 先ほど申しましたように、内部規程をつくりまして、その権限を内部的にその補助機関に委任する。ただ、その場合、その法的な効果は行政庁たる大臣に帰属するという制度があるわけでございます。
 これは各省とも持っていると思いますが、いわゆる訓令である、例えば法務省専決規程、正確な名前はそうかどうかちょっとわかりませんけれども、そういうもので決めて専決処理をしているということ、それの一つのあらわれであると考えます、情願につきましては。
木島委員 今の説明は、行政法規はたくさんあると。私も知っていますよ、大臣に権限を付与している。そういう法律によって大臣に付与された権限を行政庁の都合によって下級に委任すると言うんでしょう。
 しかし、よく聞いてくださいよ。監獄法による受刑者の情願を法務大臣に求むるの権利は、大臣に与えられた権限じゃないんでしょう。行政法じゃないんですよ、これ。受刑者の、法務大臣に直接自分の訴えを読んでもらう、決裁してもらう、所長の非違を、監獄官吏の刑務所長の間違いを直接法務大臣に知ってもらう、その権利なんですよ。法務大臣の権限じゃないんですよ。責務なんですよ。権利は、受刑者の権利を規定したものなんですよ。
 だから、今の法制局長官の答弁は全く私の質問に対する答弁になっていないし、それでは法務大臣以外の者が決裁をする権限は出てこない。
秋山政府特別補佐人 行政上いろいろな事務処理があるわけでございますけれども……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛にしてください。
秋山政府特別補佐人 その中で、確かに、許認可のような大臣の権限とかいう形で定められているものもありますし、あるいは、情願を受けてそれを処理するというのも、これは、権限というよりも権能というような言葉であらわす方があるいは正確かもしれませんけれども、広い意味で私はそういうふうに申し上げたわけでございます。
木島委員 全然法的説明になっていないんです。
 実は、戦前からこういう違法なやり方を続けてきたそのものが問われている、まさには、そういう違法状態を続けてきたその根本が問われているということを私は指摘をして、きょうのところは終わりますが、全然答弁になっていませんから、この問題は未解決になっているということだけ指摘して、終わります。
藤井委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部委員 ただいまの法制局長官の答弁も含めて、やはりこの場に一番欠けているものは、すべての基本は人間の生命であるという当たり前の、それも、受刑者の生命が奪われるような仕組みにしかなっていないということだと思いますので、私は、その観点から森山法務大臣にまずお伺い申し上げます。
 先回の委員会でも、また、去年の二回の委員会でも、私が腹膜炎による十二月の死亡事例を何回も取り上げましても、そして、先回の委員会で私がわざわざ、大臣、この案件について私が取り上げたことを記憶しておられますよねと私は伺ったんです。そうしたら大臣は、「はい、記憶しております。」という御答弁でした。しかしながら、すぐその直後に、また違うケースについての答弁でしたと御意見を簡単に変えていかれます。
 私は、そこまで無視されたこの受刑者、死してなお今もって無視され続けている十二月の事例について基本的なところから大臣にお伺いいたしますから、あれこれ御答弁を変えずに、きっちりお願いいたします。
 まず、大臣が、平成十三年の十二月に亡くなったこの方について、最初に知ったのはいつですか。
森山国務大臣 先回は言葉が足りませんで、大変失礼いたしました。
 ただいまの御質問でございますが、平成十四年の十月の下旬に福島瑞穂先生に提供する資料の説明の際に、矯正局長から本件について、自傷行為によると思われる腹膜炎で死亡したものであるという旨を聞いたのが最初だったと思います。
阿部委員 では、混同のないようにお願いいたします。
 平成の十四年の五月に亡くなった方について、その方について最初にお知りになったのはいつですか。
森山国務大臣 この件につきましては、平成十四年の十一月二十七日に傷害を負わせた人が逮捕されたときであったかと思います。
阿部委員 大臣、御自身の答弁がまた変わっています。ちょっと、お役所の人を横に置いてください。私は大臣に逐一きっちり伺いたい。
 大臣、いいですか、もう一度答弁の機会を与えますから。平成の十四年の五月に亡くなった方について、初めてあなたがお知りになったのはいつですか。きちんと、何月何日ですか。人の死です。一回しかないんです。いつですか。
森山国務大臣 ただいまの五月の件につきましては、矯正局長から、死亡のあった数日後に報告を受けたのでございます。司法解剖した後において、捜査機関による捜査が引き続き行われることになったということで報告があったのでございます。
阿部委員 いいですか、大臣。人間の死は、特にあなたが預かっている施設内で起きた人間の死は、そして今まで三年間でわかったものは五件しかないわけです。実はもっとあるでしょう。しかし、わかったものの五件については、ここでこれだけ論議がされているときに、せめてそれくらいのことを覚えるのは亡くなっていった方への私は手向けだと思います、せめて。しかし、それすらない。
 そして、あなたは最初、今、十一月二十七日と極めてあいまいに答弁なさいました。あなたがかつて、去年の十二月十日、参議院で井上哲士さんが質問なさったときに、五月のケースについては、よろしいですか、五月の二十七日に亡くなり、その数日後、矯正局から概要について私は報告を受けました、いいですか、二度目の答弁は確かにあなたの言うとおりです。
 では、十二月のケース。五月のケースは二日後に受けました、ないしは数日後。十二月のケースは一年以上も報告がなかったですね。なぜですか。
森山国務大臣 これは、犯罪性あるいは他害性の問題がないというふうに判断されたからではなかったかと思われます。
阿部委員 今の答弁、しかと覚えておいてくださいね。
 では、五月のケースは直後に犯罪性がわかっていたのですか。直後です。五月のケースが逮捕されたのは、たしか、前田容疑者、十一月だったかと思います。あなたは、五月のケースは二日後にわかっているのは犯罪性があったからだとおっしゃいました。大臣に聞いているんです。それくらい、私は大臣に命のことを大事にしてほしいからです。五月のケースは数日後に知ったということは、直後に犯罪性について気づいておられたんですか。
森山国務大臣 これは、革手錠を巻きつけて強く締めつけた、腹部を強度に圧迫する等の暴行を加えたというようなことがございまして、それが犯罪性を疑わせるものであったのではないかと思います。
阿部委員 では、もう一つ伺います。
 十二月のケースに、この五月のケースにかかわった前田容疑者が関与していたかもしれないことは御存じでしたか。
森山国務大臣 だれが関与したかという個人の名前は承知いたしておりませんでした。
阿部委員 そこでまた、あなたが一回一回の国会質疑をいかにいいかげんに聞いているかということが明らかになってしまうのです。
 同じ十二月の十日、荒木委員の質問に対して中井矯正局長が、十二月の案件、「その案件は今回逮捕された」、今回というのは五月事件です、「逮捕された刑務官は関与しておるんですか。」と聞かれて、「関与しているという報告を受けております。」
 いいですか。あなたが刑務所という場を預かる人であって、事件を起こしたと言われる前田容疑者が関与していたかもしれない事件であるということを知って、なおかつ矯正局は、ないしはあなたは、そのことについてずうっとあえて意識に上らせず、放置してきた。
 今、私が議事録を拾って指摘しましたが、あなたには記憶がありますか。
森山国務大臣 今おっしゃいました件については、うっかりしておりまして、覚えておりません。
阿部委員 もうその一言で、大臣はやめていただいて結構です。
 うっかりしていて人の命が忘れられて、繰り返し殺人が起きて、情願すら踏みにじられて。この国で刑に服するとは、刑に服することすらできないんです、殺されるから。その長があなたであります。私どもは、何回もむだな審議をここで繰り返す必要はありません、あなたに対して。
 人の死が忘れられる。今、私は、議事録から拾ったものです。あなたにだって読み直す時間はあった。まして、一番意識しなきゃいけない立場の方が法務大臣です。情願という制度があるのも、十一月の時点では、私どもの保坂展人が聞いて、知りませんでした。そして、その後、悔い改めたかと思ったら、この間の質問は、どれを聞いても、その件はあの件でお答えしたことでしたと全くちぐはぐな答弁を繰り返す。
 私は、この十二月のケースの事件性は、既にこの前田氏が、前田氏じゃないですね、前田容疑者が逮捕されたとき、管轄省庁としては、関与しておりますと答弁なさっているんですから、当然意識に上らせるべきだと思いますが、森山大臣、そして責任はどうとりますか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、そのような議事録があるということは、そのような事態が起こったんだと思いますが、私は、大変申しわけございませんが、言葉が足りませんで、意を尽くせなかったことは本当に申しわけなく思いますが、私といたしましては、今後このようなことがないように十分注意していきたいというふうに考えております。
阿部委員 注意しても注意しても、きょう私がまた新たなことを指摘しなければ、あなたの意識には上らない。もう私たちは、その繰り返しは、人権のためにも命のためにもできないのです。その役割をあなたに任ずることはできないのです、受刑者の命のためにも。
 私は、いま一点、あなたのその感性のなさ、本当に残念に思うことがあります。もうこれで私はだめ押しの一点にしたいので、よくよくお聞きください。
 あなたは、この十二月の案件について、いいですか、十二月の案件について、矯正局長から報告を受けたのではなく、刑事局長から報告を受けましたとおっしゃいました。そして、刑事局長の報告とは、よく聞いてくださいね、前回の私の質問の中で、刑事局長の方からいきましょうかね、混乱しないようにね、解剖医の最終的な所見は必ずしも自為によるものと断定するものではなかった。いいですか、必ずしも自為によるものと断定するものではなかったと報告したわけです。
 それを受けたあなたは、同じ日の答弁です。一月の終わりごろ聞いております、自為行為と考えても不思議ではないというような内容であったけれども。いいですか、必ずしも自為によるものと断定できないと伝えたんです。そしたら、あなたは、いいですか、自為行為と考えても不思議ではないというような内容であった。
 報告をまるで逆さに受け取る。日本語が理解できない。それ以上に、受刑者の死という重要なことが理解できない。刑事局長のあなたに伝えたという内容とあなたが受け取った内容は、ここにこれだけの隔たりがあるわけです。その方には、何度も言いますが、御自身、私の議事録ですから読んでください。
 そして、私は医者ですから、私がこういう鑑定書を書くときは、断定できないと書くときは、それ以外の可能性があるということなんです。もう一方の、不思議ではないというときは、それで妥当であろうということなんです。明らかに違うんです。不思議ではない、断定できない、あなたはその後、他害かもしれない、その可能性もあるかもしれないということを聞いたと、同じセンテンスで言っています。
 解剖の剖検書は一つです。一つのものを読み、刑事局長が報告し、あなたが真っ逆さに受け取り、しかし、他害の可能性があるかもしれないというふうに考えたとしたら、その根拠は何ですか。
森山国務大臣 先ほどおっしゃいましたことについて私がそう思いましたというのは、他害かもしれないという言葉も報告の中にあったような気がするわけでございまして、今正確には覚えておりませんけれども、断定しないということ及び、それから、他害かもしれないというような言葉がございまして、私としてそのように感じたのでございます。
阿部委員 では、先ほど来問題になっている鑑定書を出していただきたい。
 ただしかし、私は、大臣、あなた、とても人間としての品格を疑います。きちんと毎回答弁されて、真っ逆さのことを言っているというのは、普通に日本語を理解できる文脈をお持ちの方だったらわかるはずだと私は思うんです。それをわからなくさせるところの立場や役割があなたに課せられているなら、あなたはあなたの人間性のために、その場を去るべきです。私は何回も、本当にこんなことはしたくない、根掘り葉掘り。そのような方に人命を預かっていただいては困るのです。
 委員長には、鑑定書はただ一つです。そのことを全く逆さに読むとしたら、現物を見て、この場で――人の死です。だれが困るわけでもない。一番困るのは、殺されたその人です。この場できちんとしていただきたい。
 そして、当たり前の理解能力を大臣がもし曇らされているとしたら、その背後で隠れているものがあるはずです。私は、実は矯正局長にも幾つもの隠されたうそがあると思います。ただしかし、きょうは大臣に、非常に重要なお立場にいる大臣にぜひとも御答弁いただきたいので、何度も伺います。あなたは、鑑定書から受けた内容と、それ以外の情報によって他害の可能性があるかもしれないと思われたのか、それとも、鑑定書からそう思われたのか、答弁をお願いします。
森山国務大臣 私は鑑定書を見る立場ではございませんで、ただ、それらを見まして検討いたしました刑事局長、さらには矯正局長等から報告を聞いたのでございます。
阿部委員 そうであるならば、矯正局長は報告はしていないという御答弁ですから、それを言うとまたうそになりますから、ちょっと、幾つもうそが重なるともう大変になりますから、やめてください。
 そして、それでは、鑑定書そのものを見たか見ないかじゃなくて、あなたが刑事局長が伝えた言葉を真っ逆さに理解している。断定できない、自傷という形では。あなたは、それで十分説明し得る、が、しかし、他害によるとなっているわけです。私のせんだっての答弁です。もし、この場であなたが答弁書――ごめんなさい、答弁じゃなくて質問です、お持ちじゃなくて、議事録を確認したいのであれば、いましばしのお時間は差し上げましょう。ただし、そうやっている間にも、刑務所では人が殺されるかもしれません。
 おまけに、私がこの事件で視察した名古屋の刑務所に、私は、余りにも不自然な死なので、特に医務官にいろいろお尋ねしてみたいと思い、電話をしました。医務官にはつなげてもらえず、直後、矯正局から、そのような質問は刑務所にはしないでほしいと。私の議員としての質問権、私は国民の命にかわって質問をいたしました。それをとめるような役所が矯正局です。
 私は、先ほども言いました、矯正局長にも、まだこの審議、やっていただきたいですけれども、一人一人の首を飛ばしただけでは中身がよくならないので、システムを変えたいと思っています。ただ、変えていくために、余りにも森山大臣の今の感性では、命について責任感がない。何遍も何遍も答弁を変える。
 あなたがもし御遺族だったらどう思われますか。遺族にどう説明するんですか。その件で、私は強く大臣の辞任を求めます。答弁をお願いします。大臣に伺っています。
森山国務大臣 いろいろと、私といたしましては誠実に御説明し、お答えしているつもりでございますけれども、その意が十分通じないのは、私の表現がまずい、あるいは説明が悪いということだろうと思います。
 その点については心からおわび申し上げますし、今後、重ねないように努力していきたいと思いますが、今おっしゃいました遺族の気持ちということでございますけれども、私も、遺族と呼ばれる者の一人になったことはございまして、そのお気持ちがわからないことはございません。そして、それを考えますと、亡くなられた方には本当に申しわけない、御冥福を祈るという以外に言葉はないのでございますが、その気持ちをこれからも大切にして、今後、私の務めを果たしていきたいと考えております。
阿部委員 何度も申しますが、やり直せることとやり直せないことがあります。これだけ事件が重なり、先ほども申しました、五月の、九月の、両方です、事件に関与したと言われる前田容疑者が実は十二月の事件にも関与していたことは、矯正局も御存じでした。十二月十日の答弁で、みずからおっしゃっていますから。それくらいアンテナがシャープでなければいけなかった十三年の十二月の事件について、あなたは一切無視し、私が何度も何度も何度も、実は、この件では参議院で四回の質問、衆議院で私の二回の質問、質問があってもあってもあっても忘れ、違う答弁をなさり、今日にまで至っています。
 本当に、これだけ審議の場を愚弄し、なおかつ人命に疎いあなたには、何度も申し上げますが、私は何も個人的な遺恨ではない、だけれども、本当に受刑者の命を預けることができないのです。私が刑務所に行き、あの寒い独房を見て、私はそれだって改善してほしいです。ホースで放水されて、冷たい体のままあの冷えた独房に入れられれば、だれでも死ぬことができるでしょう。そのような独房の状態を放置し、その前の五月の事例も、確かに革手錠で締め上げましたが、その後、寒いところに放置されたこと、いよいよ死ぬ間際まで何の医療的手当ても受けず死んでいった人のことを思うと、申しわけないけれども、何度も申しますが、大臣には、その任にあらずでございます。
 それから、もし、せんだっての私の質問に対する答弁を確認していただいて、全くあなたの理解と刑事局長の具申は異なっておりますので、そういう理解しかできていない審議の状況を自覚されて、何度も申しますが、辞任を要求して、終わらせていただきます。
藤井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る二十四日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十三分散会


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