衆議院

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第17号 平成15年2月24日(月曜日)

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平成十五年二月二十四日(月曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      石川 要三君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    衛藤征士郎君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      梶山 弘志君    金子 恭之君
      倉田 雅年君    栗原 博久君
      高鳥  修君    竹下  亘君
      津島 雄二君    中本 太衛君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      原田昇左右君    松岡 利勝君
      持永 和見君    山口 泰明君
      吉野 正芳君    上田 清司君
      海江田万里君    河村たかし君
      菅  直人君    五島 正規君
      田中 慶秋君    中村 哲治君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      細野 豪志君    吉田 公一君
      米澤  隆君    赤羽 一嘉君
      斉藤 鉄夫君    田端 正広君
      武山百合子君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      小沢 和秋君    佐々木憲昭君
      矢島 恒夫君    植田 至紀君
      中川 智子君    中西 績介君
      横光 克彦君    井上 喜一君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   法務副大臣        増田 敏男君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府特別補佐人
   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   政府参考人
   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十四日
 辞任         補欠選任
  奥野 誠亮君     竹下  亘君
  亀井 善之君     金子 恭之君
  三塚  博君     中本 太衛君
  山口 泰明君     岩倉 博文君
  石井  一君     永田 寿康君
  中村 哲治君     五島 正規君
  細野 豪志君     菅  直人君
  赤羽 一嘉君     田端 正広君
  樋高  剛君     武山百合子君
  矢島 恒夫君     小沢 和秋君
  中西 績介君     植田 至紀君
  井上 喜一君     江崎洋一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     山口 泰明君
  金子 恭之君     亀井 善之君
  竹下  亘君     岩崎 忠夫君
  中本 太衛君     吉野 正芳君
  菅  直人君     細野 豪志君
  五島 正規君     中村 哲治君
  永田 寿康君     石井  一君
  田端 正広君     赤羽 一嘉君
  武山百合子君     樋高  剛君
  小沢 和秋君     矢島 恒夫君
  植田 至紀君     中川 智子君
  江崎洋一郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     梶山 弘志君
  吉野 正芳君     倉田 雅年君
  中川 智子君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  梶山 弘志君     奥野 誠亮君
  倉田 雅年君     三塚  博君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として環境省総合環境政策局環境保健部長南川秀樹君、環境管理局長西尾哲茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 本日の午前は、経済・財政・金融・雇用等についての集中審議を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江崎洋一郎君。
江崎委員 おはようございます。保守新党の江崎洋一郎でございます。
 本日は、与党に入りまして初めての質問でございます。日本経済再生のために、これから一生懸命汗をかいていきたいというふうに思っております。
 本日は、この十五年度予算案にまだまだ盛り込み切れなかった施策もあるんではないかと感じております。その点につきまして、総理には少し辛口の質問になるかと思いますが、これも、一日も早く日本再生のための道筋をつけていくという思いでございます。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。
 まず冒頭に、塩川財務大臣にお伺いしたいんですが、二十二日に終わりましたG7会議、この点につきましてお伺いをしたいと思っております。
 新聞報道によりますと、G7に加えて、日米での財相会談があったということでございますが、これらの両会談を通じまして、我が国には具体的にどのような要請あるいは注文というものがございましたんでしょうか。その点につきまして、まず簡単に御報告をいただければと存じます。
塩川国務大臣 まず最初に私の方から報告いたしましたのは、世界経済に対する日本の見方でございまして、不安定な状態が続くので、もしデフレに進むというようなことがあるならば、世界協力してこれに阻止の運動を起こすべきであるという提案をいたしました。そしたら、彼らの一般の空気といたしましては、デフレに対する警戒はしなきゃならぬけれども、まず日本がその克服のために努力をしてもらいたいということと、それから、日本の経済成長率が向上することを期待しておるという程度でございまして、特段、日本経済に対する問題点はクローズアップしたわけではございません。
 日本とアメリカとの関係につきましていいましたら、アメリカの方も確かに不安要因は残っておるけれども、しかし経済の基盤はしっかりとしておる、それから企業のダメージも回復してきたので、これは底打ちをして、回復の兆しは確実に運ぶんであろう、だから日本の方も積極的な産業政策をとってくれ、こういう要請があったということであります。
 それから、各国の関心は、企業再生の問題とか、それから行政改革におきますところの経済特区の問題等につきましての関心が強かったということ等でございまして、要するに、日本に対する期待は大きかったということであります。
江崎委員 今、最後に財務大臣からございましたが、やはり日本に対する期待、穏やかな表現で会談は終わられたようではございますが、やはり大変注目されているというのは間違いないかと思います。
 そこで、まず、我が国経済の現状につきましてちょっと認識を確認させていただきたいと思います。
 御承知のとおり、我が国経済は、バブル崩壊後、長期にわたって停滞を続けているわけでございます。過去十年以上にわたりまして、財政、金融の両面から大規模な政策対応が講じられてまいりました。しかし、今なおその経済の閉塞感というのは払拭されておりません。これだけの長期停滞とデフレの継続というのは、戦後の先進国経済では極めて異例というふうに言わざるを得ないと思います。
 そこで、政府・与党としては、我が国経済が停滞から脱却するための具体的な政策と道筋を国民に示していく必要があると思います。
 小泉内閣は、構造改革をその基本に据えております。そのこと自体はもう正しいことだというふうに私もちょっと感じております。しかし、日本経済は今、バブルの処理だけではなく少子高齢化、経済のグローバル化といった構造変化への対応も当然迫られているわけでございます。一刻も早く国民が信頼できるような経済の明るい展望を示していくことが政治の責任であると感じております。
 政府は「改革と展望」を示しておりますが、少し、国民の評価というものは十分に得られてはいないように思います。
 先週も、ここに新聞ございますが、株式相場四日続落ということで、また八千五百円割れ寸前になっているということで、大変、三月末の決算に近づきまして、厳しい現況にあるかと思います。
 そしてまた、来年度の民間調査機関によります経済見通し、これが金曜日に発表されましたが、こちらにしましても、やはり予測値の各社の平均というのは、実質成長が〇・三%、名目ではマイナス一・四%ということで、双方とも政府の見通し、実質〇・六%、また名目でマイナス〇・二%の見通しを逆に下回っているという状況にあるわけでございます。大変厳しい評価ではないかというふうに思っております。
 そこで、政府は積極的、かつ大きな役割を果たす必要が当然あるわけでございますが、特に不良債権処理や雇用対策、需要の創出など、構造調整を促進しまして、日本経済回復のためにもっと大胆な税制改革を進めていくべきではないかというふうに私は感じておるわけでございます。
 十五年度予算案にはこの税制改革が盛り込まれておるわけでございます。財務省の役所としてのお立場としては精いっぱいのことをやったということではございますが、しかし、この追い詰められた日本経済におきましては、さらなる税制改革を推進していくことも必要なのではないかと私自身は考えている次第でございます。
 その背景といたしまして、景気の長期停滞というのは、デフレの持続の基本的な原因が需要不足であるということではないかと思っております。だとすれば、まずは、いかに成長を実現して需要を高めるかということを考えるべきではないかと思います。我々が目指すのは、あくまで景気をよくすることであるはずでございます。この際、構造改革を通じた成長だけを考えるのではなくて、あわせて、千四百兆円にも上る個人金融資産を企業の設備投資の財源として活用していく、あるいは家計自体を貯蓄から消費へ振り向けていく、そういった施策について政府がいかに誘導できるかということを考えるべきではないかと思っております。
 具体的なポイントは、また明日、財務金融委員会におきまして塩川大臣また竹中大臣にお伺いするつもりでございますが、本日、総理に総括的にお答えをいただきたいと思っております。
 私は、この際、個人の金融資産を景気回復のために有効に活用するためには、税制面で思い切った見直しを行って、先ほども申しましたように、個人金融資産が設備投資や消費の財源としてもっと活用されるような政策手段が必要ではないかと思っております。成長に結びつく税制ということでございますが、まあ十五年度予算にのりました税制改革ではややまだパンチが足りていないのではないかと心配しているように思います。
 例えば、企業は今過剰設備を抱えているわけでございます。これらの設備廃棄をしやすくするような、例えば、欠損金の繰越控除の延長等の施策を取り入れてはいかがかと感じております。
 総理は、税制の大きな見直しは中期的課題とおっしゃられておりますが、もっと早く、かつ大胆な見直しを行わないと手おくれになってしまうのではないかと心配している次第でございます。総理の御所見を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 個別の税目につきましては財務大臣から答弁があると思いますが、まず、普通でしたならば、単年度、増税したらその収支を合わせるために単年度でやらなきゃいかぬということでありますが、今年度の税制改正におきましては、単年度にこだわらない、むしろ多年度でどのような改正が望ましいかという点について方針を打ち出して、そのとおりに実行してきたわけであります。
 総括的な答弁ということでありますので、まず、法人関係の点につきましては、研究投資の税制、あるべき企業の活性化に向けてどういう税制が望ましいか。また、個人資産千四百兆円とか言われておりますけれども、こういう個人資産をいかに消費に向けていくような税制が望ましいかということで、相続とか贈与、こういう問題についても一体的に考えよう。さらに、バブル以前の問題につきまして、バブルが終わったものでありますので、その以前に戻そう。同時に、減税だけやりますとこれは非常に無責任なことになりますので、多年度に増収を図っていこうということで、いわゆる多年度で税収のバランスをとろう……(発言する者あり)ちょっと静かにしてくださいね。
 総括的な答弁をしろということでありますので個別は避けますが、そういう方針のもとに行ったわけであります。
江崎委員 今、多年度税収中立というお言葉もございましたが、ちょっとそれは後ほどまた質問させていただくとしまして、塩川財務大臣、御方針としてはいかがでございましょうか。今後、大胆な税制改革というのはお考えいただけますでしょうか。
塩川国務大臣 今回の税制改正は、私たちといたしましては、要するに中期的な展望に立って、望まれる税制ということをテーマにして組んだものでございまして、景気がよくなればこの増減収中立の考え方というものに対して楽観的な見方もできるのでございますけれども、とりあえずは減税を先行さす、けれども、財政の規律をその後どうして保つかということを重点に置きまして、以降において減税から増税を施行してバランスをとるということにしたようなことでございまして、景気が好転するならば、それなりにまた新しい税制の改正の考え方はできるであろうと思っておりますが、不断に私たちは、税制が現在のニーズに合っておるかどうか、そして、将来の展望にその税制が誘導していけるかどうかということを絶えず展望しながら改正を考えていきたいと思っております。
 要するに、私たちは、今見ておりますのに、直接税におきますところの負担というものを、他の国に比べまして日本は相当重いと思っておりますので、この直接税と間接税の関係をどう考えるかということは、将来の問題として大きいテーマではないかと思っております。
江崎委員 やはり私は、まだまだ十五年度以降も、できる限りの策を尽くしながら景気のてこ入れをしていくということが必要ではないかなというふうに思うわけでございます。
 先ほど総理がおっしゃられました多年度税制中立という政策なんでございますが、二十日の日経新聞にもこういう形で図表まで用いて説明をいただいているわけでございますが、財政の健全化ということでは理解できるわけでございますが、しかし一方で、消費が停滞しているという現況においては、この目先、減税が実施されても三年後に増税するということがわかっていると、個人の立場になると、平成十七年度以降の消費の先食いになるだけで持続的成長には至らないのではないかという心配をしております。
 税制の見直しを通じて、むしろ経済のパイを、全体を膨らませまして、結果として税収をふやしていくという方法も一策ではないかと考えるわけでございますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 先の財政を考えないで減税だけやれば消費が刺激される、そういう考えに私は立っておりません。むしろ、これは借金でやれということですから、増税と同じなんです、実質的には。そういう面において、やはり責任ある将来に対する見通し、そういう面も必要じゃないかと思っております。
江崎委員 非常にまじめな形でこの税制中立を訴えられているとは思うんですが、今の時期、私は、もう少し減税先行でまずは消費を喚起して、その上で、また次の策としての増税を考えてもよかったのではないかなと思いますが、理解できましたので、ありがとうございます。
 それでは、続きまして、インフレターゲットにつきましてお話をお伺いしたいと思います。
 経済政策のあり方をめぐって、昨今インフレターゲットが議論されているわけでございます。確かにデフレは、お金を借りている企業や家計の債務負担を実質的に高めて、その結果、そうした人々の経済活動をシュリンクさせてしまうという面で当然望ましくなく、極力早くこれを解消しなければいけないということで、これからも官民挙げて努力をしなきゃいかぬわけでございます。しかし、だからといって、その諸悪の根源がデフレであって、また、物価さえ上がれば経済はよくなるということではないと思います。
 そういった意味で、このインフレターゲット、景気をよくする手段として主張されている向きもあろうかとは思いますが、そもそも、景気が悪いときに物価だけが先行して上昇するような事態になれば、かえって一般家庭の実質所得は減りまして、景気はもっと悪くなるのではないかと心配されます。また、物価上昇あるいは物価上昇期待と同時に金利が上昇するようなことになれば、企業や金融機関経営にも大きな影響を及ぼすということはもう当然であると思います。
 このインフレターゲットの議論につきまして、総理はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、インフレターゲットという言葉を使ったことは一度もないんです。しかし、このデフレ状況をどのように抑制し、克服していくか、この重要性というものを考えなきゃいかぬということは言っております。同時に、日銀総裁も物価水準をゼロ%以上に持っていくよう努力するということを表明されております。
 そういう面において、いろいろ金融対策、打つ手はいろいろあると思いますが、この点については、やはり日銀の個別の対策については自主性というものを尊重しなきゃいかぬ、しかし、今の状況というもの、政府の考え方というものをやはり日銀においても理解していただかなきゃならないな。そういう点から、政府は日銀と一体となって、今後、この金融問題についてもよく意見交換をして、連携をとっていかなきゃならないということでありますので、私は、早い機会にゼロ%以上に持っていこうということについて、日銀と一体となって政府は努力していきたいと思っております。
江崎委員 塩川財務大臣はいかがお考えでございますか、このインフレターゲットという議論につきましては。
塩川国務大臣 私も、委員会等でしばしば答えておりますように、インフレターゲットという言葉は使ったことはございません。
 ただ、一つ残念なことは、名目成長率とそれから実質成長率の間に相当な乖離がございますこと。これを一応縮めるためには、やはり名目成長率を高めることがまず先決であると思っておりますが、そのためには、少なくとも名目成長率が水準のゼロ%よりは上に上向いていくこと。私の一つの考えとしては、平成九年度がちょうど日本の物価の一番安定した良好な状態ではないかと思っておりまして、そのような状態になるようなことを一つの目標にして、今後、あらゆる経済政策を集約的にそういう方向に向けていくべきであると考えております。
江崎委員 インフレターゲット、そもそも期間を決めて、時間を区切った、仮に二年なら二年、その中で金利を上昇させてインフレターゲットを達成できるような、こういった曲芸わざですね、こういったものが金融政策としてとられるのは、私はいかがなものかと感じております。今総理、また大臣からは、インフレターゲットは導入しないという見解だと存じますので、そういった意味では理解できるわけでございます。
 海外でも、インフレの国がインフレターゲットを設定して物価の鎮静に、静めた、そういう事例はあるかと思いますが、逆にデフレで、しかも我が国のように構造問題をたくさん抱えている国が、インフレターゲット政策のみによってデフレを克服できたという事例はないのではないかと思います。そういった意味で、このインフレターゲットについては十分、導入しないような方向で考えていただきたいとは思うんです。
 そこで、質問でございますが、総理は現在、新しい日銀総裁をどなたにするかということで、人選中かと存じます。このようなインフレターゲットのみを主張する方をお考えなのでございましょうか、それとも、全然違うところに思いはお持ちなんでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 具体的な名前は遠慮させていただきますが、次期日銀総裁につきましては、デフレ克服に積極的に取り組んでくれる方、そして金融システムの強化に積極的に対応してくれる、なおかつ、金融問題に当然詳しい国際的な、経験豊かな人、すぐれた見識を持っている方、そういうことを基準に選考したいと思っております。
江崎委員 物価の一定のレンジの中におさめていくというのは、金利をうまくコントロールしていくというのは大変難しいことではないかと思います。物価を上げることができたんだから抑えることもできるというほど経済政策というのは単純なものではないかと思います。そういった意味で、日銀総裁の新人事におかれましても、十分論点を整理されている有能な方を御指名いただけるようにお願いを申し上げたい次第でございます。
 我が国は、戦後高度成長を支えてきた経済の仕組みそのものが今なかなか通用しなくなってきている。そういった意味では、今本当に見直しが迫られているんではないかというふうに感じております。そういった意味で、今必要なのは、そのための大きなビジョン、国家百年の計を改めて示すのが政治の責任ではないかというふうに感じている次第でございます。
 先ほど申し上げましたインフレターゲット論ということにつきましても、やや、国家百年の計を論ずるとすれば矮小化されているんではないかなということでございまして、新たな構造問題に対して、どう直面し、そして新たなビジョンを築いていくということが、今最も株式市場その他の市場も含めて期待していることであり、また国民の皆さんも期待していることではないかというふうに考えているわけでございます。
 私は、今、国の財政事情は極めて厳しい状況にあるということは十分理解しているつもりでございます。しかし、民間はそれ以上厳しいことは忘れてはならないというふうに思う次第でございます。
 経済構造改革も大変大事でありますが、その改革の一環として、私は、自分の考えとしては、税制を活用して経済全体に活力を与えていくことこそが今必要ではないかというふうに考えておりますが、この点を含めて、総理に、中期的な経済政策運営について、十五年度以降も含めて、これからどのようにお考えになっておられるか、お聞かせ願いたいと思います。では、竹中大臣、お願いいたします。
竹中国務大臣 委員が御指摘のように、税制の改革が大変重要である、それを、需要の掘り起こしのためにも、千四百兆円の活用のためにも重要である、そのような御指摘を含めて、大変重要な御指摘をいただいているというふうに思っております。
 中期的な経済の運営ということに関しましては、これはもう何度か御答弁させていただきましたけれども、日本の経済は一時的な需要不足によって十年間停滞してきたわけでは、これは決してない。競争力、生産性等々が徐々に低迷していく中で、不良債権や財政赤字という二つの負の遺産を背負い込んでしまっている。これに対しては、やはり辛抱強く、この負の遺産の解消を目指しながら、私たちが持っている本来の競争力を高めるような構造改革を進めていく。その中で、委員御指摘のように、やはり需要の刺激に対しても、財政の制約等々あるわけでありますけれども、可能な限りの政策の総動員を図っていくということに尽きるのではないかというふうに思っております。
 四本柱の構造改革、デフレの克服、そういった意味での、政府、日銀とが一体となった対応をする必要があるというふうに考えております。(発言する者あり)
藤井委員長 河村委員に申し上げます。
 委員長は答弁が聞き取れませんので、御静粛に願いたいと思います。
江崎委員 ぜひとも、まず日本の経済に活力を取り戻す、その呼び水となりますような税制をうまく活用した施策をこれからも打っていただきたいとお願い申し上げたいと思います。
 また明日、塩川財務大臣、また竹中大臣には、財務金融委員会でさらに個別的な税制のお話をさせていただきたいと思います。
 きょうは、以上で終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
藤井委員長 これにて江崎君の質疑は終了いたしました。
 次に、海江田万里君。
海江田委員 おはようございます。
 特に塩川財務大臣は、パリからお帰りになったばかりでお疲れだろうと思いますが、重要な審議でございますので、ぜひ御協力をお願いしたいと思います。
 さて、最初に小泉総理にお尋ねをしますが、ちょっとこれは通告にはなかった点でございますが、やはり日本の経済に大変大きな影響を与えるという点で、イラクの問題に触れないわけにはいきません。とりわけ二十二日、パウエル国務長官が日本にやってまいりまして、そして総理は二十二日の夕刻、一時間弱、パウエル長官と非常に中身のある話をしたやに聞いておりますので。
 この話の中身でございますが、当然のことながら、小泉総理はパウエル長官に対して、まず、やはり国連での新しい決議が必要なんだということを主張したというふうに思うわけでございます。もちろん、今アメリカも国連での新決議の採択に向けて努力をしているところでございますが、国連での安保理の構成のメンバーなども見ましても、なかなかこれは、アメリカあるいはイギリスの決議が採択されるという可能性も万全ではないということになりますと、新しい決議が採択をされずに英米軍がイラクに対して攻撃をするというような場合、日本は果たしてどういう立場をとるのかということについて、まず、国連での新決議の採択がない場合でも攻撃はあり得るんだというような示唆がパウエル長官からあったのかどうなのか。
 それから、もしそれがあったとするならば、それに対して小泉総理はどういうふうに日本の立場を説明されたのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 土曜日ですが、パウエル長官と会談した際には、今までアメリカが国際協調体制、構築するように努力してきたことに対して、今後もこの方向で努力していただきたい、国際協調体制が重要であると。同時に、日本としては、戦後一貫して、日米基軸、外交の基本である、日米同盟関係の重要性と国際協調関係の重要性は私は一番わきまえているつもりだ、この方向に沿って日本も努力してきたし、これからも努力していきたい、そういう意味において、アメリカが引き続き安保理での新しい決議に向かって各国から協力を得る努力は続けてほしいと。
 そして、この問題につきまして、パウエル国務長官から、新しい決議案を出したいというような意見の表明がありました。いつ出すのかということでありますが、恐らく今週中でしょう、中身は今言うべきではございませんが、できるだけ理解が得られるような決議案を出したいと言っておりました。
 私は、今後も、日本としてアメリカが今努力している点を評価しておりますので、最後まで国際協調体制ができるような努力をすべきだ。そういう中において、アメリカとイラクの問題、あるいはアメリカとフランスの問題がいろいろマスコミ、報道で報じられておるが、そうじゃないんだ、イラクと国際社会全体の問題なんだという点に十分我々は配慮しなきゃならぬ、そういう面におきまして日本としても最大限これからも努力していきたいということで、武力攻撃は、したらどうなるのかという話は出ませんでした。
 武力攻撃は最後の手段だ、これはもうシラク大統領も言っていることでございますが、それまでにはいろいろやることがあるだろう、あらゆる手を尽くして、国際協調体制がとれるように、そして、イラクが武装解除するように全力を傾けるべきだという話をいたしました。
海江田委員 武力攻撃したらどうなるのかという話は出なかったというお答えですが、私がお尋ねをしたのは、国連での決議が採択されなかったときでもイラクを攻撃するつもりがあるというようなお話はあったんですか、ないんですかということをお尋ねしたんです。いいですね、わかりますね、ここのところは。そういう話があったのかないのか。もしあったとすれば、それに対する総理の日本のお立場の説明はどういう内容であったのかという、これに尽きます。
小泉内閣総理大臣 これはブッシュ大統領も、新たな国連決議は必要ないと言っておられます。そういう前提でありますけれども、私どもとしては新しい決議があった方が望ましいという立場でありますので、今言ったようなそういう話には触れませんでした。
海江田委員 ちょっと今の答弁はおかしいですね。ブッシュ大統領の立場は、かねてから新たな決議というものは必要がないと言っておられるということですね。それに対して、総理は、そういう新たな決議が必要だというお立場ですね。(小泉内閣総理大臣「望ましい」と呼ぶ)そうです、望ましいという立場ですね。実は、望ましいと必要とは違うんですけれどもね。
 国民の世論を聞いてみれば、八五%が必要だということを言っているんですが、それはあえて御存じの上で、そういう国民世論とかけ離れた、そういう望ましいという形で表現をされたんだろうと思いますが、ここは、なくてもいいんだ、必要ないんだというブッシュ大統領の立場と総理の立場は違うじゃないですか。そうしたら、その立場の違うところを話をしないで、どういう話ができるんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、今国際協調をとるためにアメリカが必死に努力されているわけでありますので、私は、新しい決議がなされる可能性、十分あると思っております。そういう中で、まだとれないんだという前提で話をする必要はないんじゃないでしょうか。
 最終的にどういう決議案が提案されるのか、それに対して各国がどういう態度を表明されるのか、それを見てからでも遅くはないし、なおかつブリクス委員長が報告されるわけでありますから、我々は、アメリカ、フランス、いろいろな意見があるのは承知をしております。日本は日本の立場としてはっきり表明しているわけですので、今後の推移をよく見ながら判断したいと思っております。
海江田委員 ですから、最初にまた戻りますが、そういう話は、決議がなくてもアメリカはイギリスと一緒になってイラクの攻撃をやりますよという意思の表示は、パウエル国務長官からあったんですか、ないんですか。ないんならないでいいんですよ、それは。もしあったとするならば、それに対して日本の立場はどうなんですかということを最初にお尋ねしているわけですから、その点だけについてお答えをください。
小泉内閣総理大臣 それは、パウエル国務長官は、中身は言えませんが、新しい決議案を提出すると言って、その決議案が採択されることに、私は、自信を持っておられました。その点、よく考える必要があると思います。
海江田委員 それはパウエル長官は自信を持っていらっしゃるでしょうけれども、国際情勢というのはなかなかそうじゃないということはもう総理もつとに御案内のはずですから。
 ただ、一つだけ今の答弁で私はなるほどなと思ったのは、やはりそれがないと言い切れないわけですよね。そんな要請はなかったと言い切れないわけですね、そこの点だけは。つまり、国連の決議が得られなくてもアメリカとイギリスは攻撃をすることがありますよという意思表示はなかったということははっきり言えないんですね。それだけ確認しておきます。
小泉内閣総理大臣 今、海江田議員が言われたような言い方はされませんでした。しかし、全体の状況を説明されて、新しい決議案を提出して、それが採択されるということについて自信を持っているというふうに私は感じました。
海江田委員 では、どういう言われ方をしたんですか。教えてください。
小泉内閣総理大臣 外交間の話し合いであります。表面に出ている、公式に発表した以外は言うべきじゃないと思っております。
海江田委員 これで、これは与党の委員も野党の委員も大事な点ですので、やはりそういう意思表示は、私の直接言った表現ではないけれども、やはりこれはそういう可能性もあり得るというお話があったわけですから、では、これは仮定の質問ですけれども、ただ、仮定の質問について一切答えができないなんという話じゃ、こういう議論をやる必要ないわけで、それは奇想天外な仮定だったら答える必要ありませんけれども、やはり非常に現実性、蓋然性の高い、そうなる可能性の高い質問には仮定であっても答えていただかなきゃならないということは言うまでもありませんが、もし決議がなくて攻撃が始まったら、日本はどうするんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、前から言っておりますように、日米同盟の重要性を十分考えながら、日本の国益を考えて判断いたします。
海江田委員 それに対して何らかの協力をするということをお話しされたんだろうと思いますが、いいですか、では例えば、総理の頭の中にある話で、当然米軍が動けば戦費がかかるわけで、その戦費について、一部を負担しようというお考えはあるんですか、どうなんですか。
小泉内閣総理大臣 日本としては、国際社会の一員としてそれなりの責任を果たさなきゃいかぬという考えは持っております。
 戦費をどうするとかこうするとかいう話は一切出ておりませんし、私どもとしては、日本としてできることは、国際平和のためにもあるいは中東地域の安定のためにも応分の役割を果たさなきゃならないと思っております。
海江田委員 今、私は戦費に限ってお尋ねをしたんですが、例えば、その後の、占領が続いたときのその占領に対する負担でありますとか、それからもう少し途中の話として、これは実は国連なんかの事務局はもう試算をしているわけですけれども、難民が出てくる、この難民に対する支援でありますとかそういうことについて、だから戦費とそういう難民の問題、あるいは占領政策のときの、いわばこれは占領のときという言い方をする言い方もありますし、それから戦後復興について協力をするという言い方がありますが、戦費、難民、それから戦後復興、この三つについて言えば、それぞれどうですか。お考えをお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 それは、仮に戦争に突入した場合どうなるかという想定はいろいろ考えていると思います。そういう点について、今後、日本としても明らかにすべき段階になれば明らかにしなければならないし、今の時点で、戦争も始まっていないのに、戦争が終わったらどうなるか、あるいは戦争に入ったらどうなるかという問題については、私は今まだ話す時期でもないと思っております。(発言する者あり)
海江田委員 来年や再来年の話をしているんじゃなくて、本当に焦眉の課題といいますか、やはり差し迫った危機なわけですよ。それから、今同僚委員からも発言ありましたけれども、予算委員会の席で、まさに今度の予算なんかには、予算案の中を子細に調べたってそんな費用はどこからも書いてないじゃないですか、これは。予備費という項目がありますけれども、それだって限定的な金額ですから。一兆だとか二兆になれば、これは全然新しい予算を組むのか、あるいは組み替えの動議を出すのかという話になってくるわけですから、ここで話をしなければどこで話をするんですかということですから。
 私は、これ、今後もこの予算委員会でたっぷりと時間をとっていただいて、この問題について本当に集中審議でもやっていただかなきゃいけないというふうに思うわけでございますが、きょうはほかにも幾つか質問する点を通告もしてございますので、そちらの問題に入ります。
 竹中大臣のお話でございますが、ETFの問題で、先日、私どもの指摘で金融庁のホームページから削除した、絶対もうかりますということは。あれは、いわば、私が、ああいう形で金融庁のホームページの上に載せておけば、それを悪用して、悪用というかそのままストレートに受けてですけれども、証券会社の営業の人なんかが、大臣がこう言っているんだから絶対もうかりますよと言って、そして勧誘をすれば、これは証券業法違反になるということで削除をしたということだろうと思いますけれども、やはりその後新たな問題点といいますか、出てきました。ちょっと資料を配っていただきたいわけでございます。
 やはり竹中大臣は、日銀に対して直接的に、いいですか、日銀にETFを買いなさいということは言っていませんけれども、日銀の政策判断の一つとして、市場に、民間に資金を流すために、いわゆる金融政策の中で量的緩和という話ですが、民間にある資産を買い取って、そしてその資産を買い取った見返りとして資金を流しなさいと。そしてしかも、その手段としては、手段の一つとしてETFがありますよということは、かなりそういうふうにお考えになっているし、そのお考えをかなり頻繁に、民間のテレビでありますとか、あるいは雑誌でありますとか、そういうところで、今私がお話をしたように、日銀の資金を市場に流す一つの手段としてそういう資産を買いなさい、その資産の一つとしてETFがありますよということは、何度も何度もお話をしてきましたね。どうですか。
竹中国務大臣 これは、この場でも以前お答えさせていただきましたように、金融政策に関しましては、マネーをふやすような、マネーサプライが結果としてふえるような政策をこれはぜひともとっていかないと、デフレを克服することはできないというふうに考えております。
 そうした際に、いや、資金需要がないからなかなかマネーがふえないんだという、これはこれで一つの考え方でありますけれども、そういう議論は一つあり得るけれども、一方で、それに対して、代替的な資産を買うことによってマネーを出すことができるということを繰り返し申し上げているわけです。その中の一つとして、資産としてはいろいろなものがある、そういうことを私自身いろいろなところで発言をさせていただいております。
 ただし、その際も、これも前回も申し上げましたように、そういった政策手段の選択は、これは日本銀行がすべきであるということも繰り返し申し上げているつもりでございます。
海江田委員 委員長から竹中大臣に注意をしていただきたいんですが、そういうことは全部読んで、しかも、質問の時間というのは限られていますから、それをわかりやすいように要約をしてお話をしたんですよ、私は。
 だから、私の言ったことが間違っているのか、間違っていないのか、もう一回端的に言ってください、私のさっきの質問が。
竹中国務大臣 マネーをふやすために代替的な資産を買う、その中にはいろいろな選択肢があるというふうに考えておりますし、そのようなことを申し上げております。
海江田委員 いやいや、いろいろな選択肢の中にいつも必ず取り上げているのはETFですね、これは。いつもといいますけれども、例えば、具体的に言うと、皆さん方のお手元に配っております二月の二日の民放番組での竹中大臣の発言、それから二月二十七日号の週刊誌の中での発言、全部ETFのことを言っているじゃないですか、これは。
竹中国務大臣 わかりやすい事例として、国債、ETF、外債などの例を挙げることは多いと思います。
海江田委員 やはり、これは、特に日銀にそういう形でETFがあるよということを言い続けてきたわけですよ、ずっと。時節的にいくと、テレビが二月の二日で、そして二月の七日がまさに閣僚懇での発言になっているわけですから、これはやはり、ただ単に日本の経済の未来が明るいとかいう話じゃなくなってくるわけですよ。
 私は、その意味では、こういう日銀についての発言があるということは、これは重要な、重大な問題。もし本当に竹中さんがこのETFのことを選択肢の一つとして考えているんだったら、それはやはり二月の七日にあんな発言しちゃだめですよ、これは本当に。それを、従来からの考え方でそういう考え方があって、それとやはり竹中さんのあの七日の発言というものが結びつきますと、これは本当にそういう意味ではインサイダーといいますか、まさにあなたが一番の金融政策の責任者なんですから。それからあともう一つは、あなたの肩書というのは、もう一つ経済財政の担当大臣という肩書もあるわけです、内閣府を掌握しているわけですから。
 七日といえば、この間質問があって、答えをはぐらかしましたけれども、QEの発表だって、〇・何%のプラスの幾つとかいう数字については十何日、十四日だったかもしれませんけれども、もう一週間ぐらい前に大体プラスになるかマイナスになるかぐらいわかっている話であって、そういうことを総合的に考えますと、あなたの一連の発言というのは、極めてこれは、金融行政あるいは経済財政の全般的な方向性に対するやはりあなたの指導力といいますか、あなたがそこの立場でもってかじ取りをやることに対する大変大きな疑義があるということは指摘せざるを得ないわけですけれども、その点はどうですか。
竹中国務大臣 ちょっと、大変重要な御指摘がやはりありますので、ぜひとも答弁させていただきたいと思いますが、インサイダーだということがございますが、これは、インサイダーの証券取引法の規制というのは特定有価証券を対象にするものであって、ETFはそもそも特定有価証券じゃないわけですから、インサイダーというような議論の対象になるはずがないものだというふうに思っております。
 それともう一つ、QEが、GDPの統計が出るときに、一週間ぐらい前にそれをあなたはわかっていたはずだ、その方向性ぐらいわかっていたはずだということがありましたが、そんなことはありません、そんな形で統計はつくられておりません。これは統計の信頼性に関するものでありますので、ぜひとも正確に御理解を賜りたいと思います。
 それと、前半で海江田委員が御指摘になった二つの話であります。私は、日本銀行の政策というのは、これはマクロの金融政策の議論として議論をしている。閣僚懇での発言というのは、貯蓄から投資への流れを実現する、個人株主にとって参加しやすい環境整備をするという、これまた骨太の方針で決められた政策に対して協力を要請する。これは全く別の話でありますから、この点について混同していただくというのもいかがなものかというふうに思います。
海江田委員 それから、この二月七日の閣僚懇で配付された金融庁の資料というのを私どもの資料で三でつけていますが、これをごらんいただければいいかと思いますが、「ETFの概要」それから「投資家にとってのメリット」「税制上の優遇措置」というのがありまして、実はあと二枚紙があるわけですけれども、あと二枚紙は、これはどれくらい売れているかとかそういうものだけで、ETFの中身についてはこれ一枚こっきりなんですよね。
 その後に私の資料でつけてございますのは、普通の証券会社なんかがこのETFの販売に当たってつくっておりますそれぞれのパンフレットなんですが、必ずやはりETFのリスクというものについて触れているわけですよね。この金融庁がつくりました「ETFについて」という、このリスクについて全く記載をしていないんですよ。
 やはりリスクについて記載をするというのは金融商品販売法の非常に大きなポイントでありまして、金融商品販売法で言うと、何条でしたか、リスクについては必ず説明をしなければいけないということがわざわざ書いてあるわけですよ。金融商品販売法の第三条、金融商品販売業者等は、金融商品の販売等を業として行うときには云々、顧客に対して、次に掲げる事項、これは以下重要事項なんですよね、重要事項について説明をしなければいけないと。「当該金融商品の販売について金利、通貨の価格、有価証券市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨及び当該指標」をしっかり書かなければいけないと。まさにここは金融商品販売法の一番の中心部分なんですよ。
 それを閣僚の皆さん方に、まさにこれをみんなで買いましょうと言って、買うときにこんなメリットがあるよという紙を金融庁がつくった。これは竹中大臣が指示をしてつくったわけですけれども、一言もこのリスクについて触れられていないということについて、この説明、まさに金融商品販売法の違反である。
 それから、そういうことがあるから、そういうことがあるから、あなたがまさに絶対もうかるということで、何かリスクなんか説明する必要がないんだ、買えば必ずもうかるんだという話につながるんじゃないですか。どうですか、そこは。
竹中国務大臣 また、その法律に違反している云々という観点からのお話がありましたので、これはまさに今海江田委員御指摘のとおり、金融商品販売法の三条、これは金融商品の販売業者等を対象にしているものなんです。しかも、それを業として行うということを対象としているものなんです。私は別にこれによって業としているわけじゃないし、私は金融商品販売業者でもないし、これはそもそもそういう法律の対象外の話です。相手は閣僚でありまして、その閣僚に対してこれは投資信託であるということを明記しているわけでありまして、かつ、日経二二五やTOPIXに連動するということを書いてあるわけですから、これは閣僚の皆さんに対する説明として何ら不思議なものではないと思います。
海江田委員 じゃ、ちょっと総理にお尋ねしますが、いいですか。もうリスクがあるということはわかっていたということですけれども、説明を聞いたときね。じゃ、いいですか、金銭信託、貸付信託、公社債投資信託、株式投資信託、この中で元本割れのリスクがあるのはどれですか。どれですか、閣僚。(発言する者あり)いやいや、だって、総理に聞いているんだ、閣僚はそういう知識があると言っているから。じゃ、塩川財務大臣、どうですか、今の話でいうと。金銭信託、貸付信託、公社債投資信託、投資信託、この中で元本割れのリスクがあるのはどれですか。あるいは、元本割れのリスクがないのはどれですか。いや、ちょっと、あなたに聞いているんじゃないよ、大臣に聞いているんだよ。閣僚はみんなわかっていると言うからだよ。私が言い出した話じゃないですよ。閣僚がみんなわかっていると言うからですよ。(発言する者あり)
藤井委員長 冷静に。御静粛に願います。
 塩川財務大臣。
塩川国務大臣 いや、これは、すべて投資というものは期間がある。預金と違いますのは、どこが違うかといったら、期間があって、その期間内における損益を計算する、その損益の計算は、いわば投資者が判断するものですから、上がった下がったということを、即断で物を判断するという性質のものではないと思うんです。
海江田委員 私が今お尋ねをしたのは、閣僚だから、みんなそんなことはわかっていると言ったから。わかっていやしないじゃないですか。全然わかってないですよ。全くわかってないですよ。いいですか、わかってないんですよ。普通の投資家と同じなんですよ、悪いけれども、閣僚は。それでいいんですよ。
 それから、あなた、前の証券取引法のときもそう、私は業者じゃない、今度の金融商品販売法でも、業者じゃないと。当たり前ですよ、そんなのは。百も承知ですよ。
 あなたは、いいですか、業者じゃないから法律に縛られないなんと言うけれども、中国の昔、韓非子が、法家といって、これは秦の始皇帝の時代に、非常に世の中を厳しく法律で縛ったわけですよ。だけれども、その時代だって、法は士大夫に及ばずといって、いわゆる大臣だとかの役人には法律は及ばなかったんですよ。それはどうしてかというと、そういう士大夫階級というのは、全部法律については自分がつくる人たちだから、一々法律で縛らなくたって自分の身の処し方を知っているということから、そういう精神になるんですよ。そういうのを受け継いでいるんですよ。
 現場の販売の営業員が法律違反で、同じことを大臣が言って、私には法律がありませんから全然関係ないなんて、そんなばかな話ないですよ、これは。基本的な法律についての考え方を反省してもらわなきゃ困りますよ、それは。
 だから、それは総理もそういう形でやはり、法律が私には及ばないから、営業マンじゃないから知ったこっちゃない、何を言ってもいいなんていうのはとんでもない考え違いで、そういうようなことをちゃんとよくわかって、もう二度とこんな、証券取引法に引っかからぬとかそれから金融商品販売法に引っかからぬなんて言ってもらいたくない。
 あなたが大臣をやめて言うのなら構わないですよ。学者として言うのならいいけれども、大臣をやっているうちは、証券取引法に引っかからないとかそれから金融商品販売法に引っかからないんだなんということを大きな声を出して言ってもらいたくないですね。どうですか。反省をしなさい、その点は。
竹中国務大臣 海江田委員は、法律に反しているというふうに私のことを御批判されたわけです。ですから私は、法律には違反していないということを申し上げているわけです。
 私の発言は、記者会見における発言は投資家としての発言であって、個人としての発言でありますが、その点が適切ではなかったということに関しては反省をしております。しかし、法律違反であるかということに関しては、これは法律違反ではないという法律の定義を御説明させていただいたわけでございます。
海江田委員 いや、僕がさっきから言っているのは、あなたと同じことを証券会社の人間がやったら、例えばあなたと同じような、金融庁がつくった紙でもって証券会社の営業の人が一般の投資家に対して、知識レベルは同じですよ、悪いけれども大臣だって。同じような営業をやったら、これは明らかに金融商品販売法の違反じゃないですかということをお尋ねしているんですよ。そうでしょう。
竹中国務大臣 これは、営業するためにやる場合にどうなのかというその仮定が、私は別に営業しているわけではございませんので、そこは、そこの閣僚懇において協力を要請したというこの趣旨に関してぜひとも御理解を賜りたいと思います。
海江田委員 ところで、大臣はこのETFをお買いになったんですか、買うとか買わないとか言っていましたけれども。お買いになったのかどうか、どのくらい買ったのか教えてください。
竹中国務大臣 いろいろなことに対応が追われておりまして、まだ購入をしておりません。
藤井委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。
 次に、田中慶秋君。
田中(慶)委員 私は、民主党の立場から、総理に質問させていただきたいと思います。
 総理は、一億二千万の生命財産あるいはまた日本の国の繁栄を担って、責任の重い、国民から厚い信頼を受けなければならない務めにあるわけであります。そのような人にふさわしい総理にということで、国民の多くの支持を得て小泉政権が誕生され、そして神奈川でも小泉さんの人気は非常に高い、こういう状態でありまして、特に、小泉さんの総理になる前、あなたのお友達やあるいは知人、友人と昨日も会ったわけでありますけれども、純ちゃんは最近変わったな、こんなことであります。ということはどういうことかというと、小泉さん、よく聞いてください。改革なくして成長なしというその思いはいいけれども、しかし、最近は官僚の言いなりになっているようだ、前の純ちゃんはそうではない、本当に国民の多くの痛みや声に耳を傾けておりますけれども、昨今は違うじゃないか、こんなことを昨日言われておりました。私も、なるほどな、こんなふうに思っております。
 実は数年前に、私の主宰する、党派を超えて日本の将来を語るということで、総理初め、きょうは坂口大臣もおりますけれども、かつてパネルディスカッションに出ていただきました。あのときのことを思い出しますと、本当に歯切れのいい、例えば今問題になっております健康保険の問題やあるいは年金の問題、明確に主張されていたと思います。特に医療改革の問題等については、大きなプログラムをつくって、そしてその中で医療全体を見直しして、そして負担の問題を考えていかなければいけない、こういうことであった。最近では、トータル的な医療の計画がない中で三割負担の問題が出てみたり、次々とそういうことをされている。このこと一つとっても、昔と今は大分違っているのかな、こんな感じを受けているわけであります。
 特に、今一番問題になっているのは、大変これだけ厳しい日本の経済、特に神奈川等は中小企業、いっぱいあるわけであります、大手もありますけれども。そういう中で毎日毎日が苦しんでおられる、その実態を本当に知っているのかどうか。その痛み、国民の痛みあるいは中小企業の痛み、そして生活者でありますサラリーマンの痛みというものを本当に知っているんだろうか。
 普通ならば、今時分、この三月目前にすると、サラリーマン、労働組合も含めてみんなベースアップ闘争が始まるわけであります。特に皆さんは、国の将来や、それぞれいろいろな企業の問題を含めながら、ベースアップ控えてゼロ。これだけでも、年収含めて、ボーナスやいろいろなことを考えても、全体的には二割ぐらいの可処分所得が下がっている。にもかかわらず、次々と打ち出されるのは増税であります。
 そういう一連のことを含めて、本当に国民の気持ちに立った総理としてこれからの国の運営をされているのかどうか。昔の小泉純ちゃんという人のすばらしいことは今や失ってしまったんじゃないか、こんな心配をしておりましたけれども、あなたはどうそれにお答えになりますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、総理になる前と総理になった後の改革の決意、これは全く変わっていないと思っています。
 ただ、総理になりますと、もう一言一句、もう右から左から上から下から、もう斜めから後ろから、もうあらゆる片言隻句をとられて批判されるものだなということは、やはり総理になる前と総理になってからは違うなと。そういう点において、発言に慎重になってきたということは、変わったなという点があるかもしれません。
 しかし、改革に対する思い、決意は全く変わっておりませんし、私が総理前に言っていたことをいかに実現していくかということに努力をしているつもりであります。
 また、いろいろ批判されたり小泉いじめに遭っても、私にもだんだん抵抗力がついてきたかな。できるだけ穏やかに慎重に発言して、国民の理解と協力を得られるように努力していこうという、総理になる前に比べれば、随分私も人間的にまろやかに練れてきたかなという感じは自分でも持っております。
田中(慶)委員 自分でそう思うのは結構ですけれども、今、総理というのは、先ほど申し上げた一億二千万の頂点におられて、生命財産を初めこの国の国益にかかわっているわけでありますから、そんな悠長なことを言っている暇がないと思います。
 ですから、私は次に、総理、我々の仲間で、この前の、総理はいなかったんですけれども、この予算委員会で申し上げたんですが、中小企業の実態ということをあなたはどう感じておられるのか。同僚の協力を得て五百十七社のアンケートをとりました。その中の八五%は、貸し渋り、貸しはがしに遭っているということなんです。貸し渋り、貸しはがしというものについて、あなたはこのことをどのように考えられているのか。少なくとも、日本の今の不景気というものがこのことにも原因しているんではないか、このように考えているわけであります。この貸し渋り、貸しはがしに対する問題が一つ。
 それから、政府を初めとするいろいろなところでこの対策を打ち出されますけれども、役人の発想で物事をやるものですから、現場の発想や、それぞれそれを使う側の発想ではない。結果として、そのことが何の実にもなっていない。これが実態なんです。そのことをどういうふうに認識されておられるのか、まずお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 中小企業の経営者が今大変苦労されているということは承知しております。同時に、中小企業の中にも、やる気を持ってこの困難な状況を乗り越えていきたいという意欲に満ちている方もおられるということも、これは一面心強いなと。
 私は、中小企業なり中小金融機関が、地域に密着してそれぞれの実情を考えながら対応しているという人々と、あるいは不良債権処理に絡んで、かなり中小企業に対して冷たく当たっている、そういう金融機関もあるなという点はよく話で伺っております。むしろ中小金融機関の中には、努力して、大手の金融機関がどうしてこういういい、まだ発展可能性のある中小金融機関を見放していくのか、不思議だという声も聞いております。
 そういう点におきまして、いろいろな声を、担当は平沼大臣だと思いますが、平沼大臣もそういう声に耳を傾けて、しっかりとした中小企業に対して対応しなきゃいかぬという努力をしておりますので、私は、やる気と能力のある中小企業に対して、しっかりとした支援体制というものをとっていく必要があるというふうに考えております。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
田中(慶)委員 そこで、金融担当大臣であります竹中さん、あなたは、あるところで、オフレコだと言いながら、日本には貸し渋り、貸しはがしは存在していないような発言をされております。少なくとも、都市銀行で、昨年の実態として、約九兆円の貸し渋りをされていること自体が統計でわかっているわけであります。このことをあなたは認識していないんじゃないかと思う。
 まして、今、現下の状況というものをどのように認識されているのか。いいですか。よく聞いてください。このアンケートの結果でも、前回申し上げましたように、日本の自殺者、一日約百人、トータルとすると三万五千人ぐらいになるんですけれども、約三万二千人ぐらいおられる。その三割が、何らかの形で中小企業の人たちが、知っていたとか身内にいたとか知人がそういう人、こういうことであります。三万人の自殺者。いいですね。夜逃げしているのは二十万人ですよ。倒産が二万件。
 こういう実態を踏まえながら、あなたの金融政策ははっきり申し上げてどこにも見えてこない。そればかりか、貸し渋り、貸しはがしの原因をつくっている。都市銀行を見てください。検査マニュアルなりBIS規定の問題等々含めても、銀行の経営者は国の検査が厳しいから貸したくても貸せないんです、これが実態なんです。
 言っていることとやっていることが違うんじゃないですか。貸し渋り、貸しはがし、これに対するあなたの認識を聞かせてください。
竹中国務大臣 田中委員の御指摘で、私、ちょっと驚いているんですが、私は、貸し渋り、貸しはがしがない、存在していないというようなことを、そんなことを、オフレコももちろん含めてですけれども、発言したような記憶はございません。これは、私自身何回も申し上げておりますし、貸し渋りといいますか、これは定義は難しいですけれども、本来、将来伸びる健全な中小企業に残念ながらお金が回っていないという厳然たる事実があるというふうに、私は厳しく認識をしているつもりでございます。
 であるからこそ、やはり銀行にしっかりとして、そういうもうかるはずの、将来伸びるはずの中小企業にお金が回らないというのは、銀行経営のまさにガバナンスというか判断がおかしいからです。ないしは、自己資本が足りなくてなかなかお金が回らないというような面もある。だからこそ自己資本を充実してくれというふうに言っていて、だからこそガバナンスがしっかりと働くように、悪いところには本当に悪い、焦げつかせるような大企業に対して貸すのではなくて、本当に伸びるような中小企業に貸すべきである、そういう趣旨であの金融再生のプログラムはつくっているつもりです。
 その中に、しかし、過渡期においては厳しいこともある。したがって、まずその趣旨を御理解いただきたいということと、それと、セーフティーネットの整備に力を入れている。これは平沼大臣にも坂口大臣にも非常に御苦労いただいているわけでありますが、もう一つです。
 私が大臣に就任してから、中小企業、地域金融については、大企業とは別の基準でやる必要がある、だからリレーションシップバンキングの新しいあり方について、これは効率性だけではなくて、社会性とか、そういう多様な観点から新しい基準をつくろうということで、三月末に結論を出せるように、今、金融審にハッパをかけているところです。その辺の認識はぜひとも御理解をいただきたいと思います。
田中(慶)委員 あなた、認識はしていると言うけれども、現実に、今の不良債権や、少なくとも貸し渋り、貸しはがし、額としてどのぐらいあると思いますか。
竹中国務大臣 先ほど言いましたように、貸し渋りとは何なのかということを、ちょっと、なかなかわかりませんから、ですから、それは、金額そのものを正確に把握することは困難であるというふうに思っております。
 しかしながら、厳然としてそのような事実があるというふうに認識しておりますので、しっかりと対応策をとりたいと考えているところでございます。
田中(慶)委員 そういう抽象的なことでは困るんですよ。今ちゃんとした統計が出ているわけですから、これを、計算を逆算していくと、約二十兆以上の貸し渋り、貸しはがし、現実に去年だけでもそのぐらいあると言われているんですよ。そういうことを含めて、担当大臣が抽象的なことばかり言っているから、日本の経済はできないんですよ、おかしくなっていくんですよ。少なくとも、ちゃんとしたデータも全部出ているんですよ、こういうこと。製造業別に、いろいろなことを含めて、ちゃんとしているんです。そういう一連のことを含めて、責任者というものは明確にリサーチをしておかなきゃ困る、こういうことだと思いますよ。
 まして、あなたは、今の、現実の中小企業に置かれている人たち、特に、これは平沼さんにも関係しているわけですけれども、今、保証協会であろうが政府系金融機関であろうが、あるいはまた一般の金融機関、土地担保、この土地担保そのものが、もう既に政府の土地政策の失敗で十分の一くらいに土地が下がったんですよ。個人の努力じゃないですよ。にもかかわらず、少なくとも個人の担保をさらにつけなければいけないし、第三者保証もつけなきゃいけないじゃないですか。
 総理、あなたはいつもいろいろな形で、よく世界的にいろいろな視野で、インターナショナルで物事を考えておると思いますが、この第三者保証というのは日本だけなんです。その結果、経営がおかしくなったり、関連して倒産をしたり、自殺者が出ているんですよ。そのことを認識していたならば、第三者保証を解くべきだろうと思います、はっきりと。そのことを含めて、大臣と総理の考え方をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 この問題については、平沼大臣もよく我々の会合で話をされます。何とかしなきゃいかぬなということで、平沼大臣も提言もされたり意見も言って、私も、どういう改善すべき点があるかと、よく検討して具体案をまとめてくれということを話しているわけであります。
 その点について、平沼大臣からも答弁をさせたいと思います。
田中(慶)委員 そのことを竹中さんは知って金融政策をしているのかどうか。やはり、トータル、少なくとも全体の閣僚ですから、経済戦略会議のメンバーなんですから、そんなことも含めて、何も人ごとじゃないんですよ。現実にこうなっている。何回も私はこのことを指摘してきた。そして、時には、BIS規定を見てくださいよ、インターナショナルだからという形でこういうふうになってきている。そうでしょう。
 ところが、悪いところは全然改善されていない。その結果、倒産もすれば自殺者も出ている。明確になっていたら、そのことの対策を打つべきでしょう。生命というものをそんなに軽々しく見ているんですか、人の生命を。とんでもないことですよ。まず、竹中さんと平沼さん、御答弁ください。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 私も、零細企業を経営する父親を持って育ってまいりました。そういった点に関しては、これはもう人一倍そういうような思い入れを持って仕事をしているつもりでございます。
 第三者保証に関しては、これは、特にやはり担保と保証人、第三者保証に頼るような、リスクを回避するような経営判断を日本の銀行がしてきたことは非常に大きな問題であるというふうに思っています。
 それに対しては、さまざまな形での新しい融資の仕組みを要請しておりまして、その要請に応じる形で少しずつ第三者保証を不要とするような制度を、これは銀行等々が融資を始めております。今どのような融資保証制度があるかということに関しても我々も調べておりますので、これをさらに発展させたいというふうに思っております。
平沼国務大臣 田中先生よく御承知だと思いますけれども、政府系金融機関におきましては第三者保証の割合というのを非常に低めてきております。例えば、信用保証協会におきましては、八千万円の限度のうち五千万円は第三者保証は要らないという形にしておりますし、千二百五十万の小口のものは第三者保証を徴求していないです。あるいは、売掛金債権、それを三度にわたっていろいろ手直しをしまして、そしてこれも非常に大きくふえてきました。
 私は、やはり第三者保証という問題が今田中先生御指摘のようにいろいろな問題を惹起していますから、今政府系金融機関ではそういう意味では相当大きく第三者保証をなくすという形でやってきておりますので、これも民間の方々にも検討していただくような、そういう形で議論を起こしていきたい、こう思っております。
田中(慶)委員 平沼さん、努力していることはわかるんですよ。しかし、現場は違うんですよ。先週、あなたが言われたから、私はまた電話でいろいろなことを含めてリサーチしましたよ。第三者保証、全部まだとっていますよ、はっきり申し上げて。そういうことはだめですよ。ちゃんととっているんだから。私は、とっていなければこんなことを言いませんよ。やはり政府系金融機関も同じことをやっている。だから、保証協会も同じこと。一体となってこの景気対策や中小企業対策を本当に、極端なことを言えば、法律でもつくってそういうことをすぐにでもなくさないと、幾ら言っていてもやらないのが現実ですから。それが実態ですよ。
平沼国務大臣 ただ、信用保証協会の八千万円、その中の五千万円は制度としてそういうふうにつくっております。もしそういう事実があれば、これは私どもは非常に大きな問題だと思いますので、その辺は、今の田中先生の御指摘を踏まえてちょっと調査をして、それは改善しなきゃいかぬと思っています。
田中(慶)委員 ぜひ、これは本当に実在することですから、調査してください。いや、本当ですよ。
 竹中さん、あなたは、貸し渋り、貸しはがし、格好いいことを言っておりますけれども、あなたの認識というものが、少なくとも現実に、では、このデータをもって推定すれば大体できるんですから、あなたはどうつかんでいますか。
竹中国務大臣 何度も申し上げますけれども、貸し渋りというのは、ちゃんとした経営判断をしないで、貸出残高が減っていくという状況でありますから、これは個々の判断ですので、大変申しわけありませんが、数字で把握するというのは大変難しいということを理解いただきたいと思います。ただし、そうした問題について、問題として厳然と存在しているというふうには思っております。その点はしっかりと対応するつもりです。
田中(慶)委員 これは、少なくとも中小企業における貸し渋り、貸しはがしの実態調査までしているんですから。はっきり申し上げて、こういうことを含めて、できるんです。だから、本気でちゃんとそういうことを調査しながら、しっかりとして、貸し渋り、貸しはがしの対策をしなきゃだめですよ。あなたは頭で物事を考えているからそうなんですよ。現実にこういうデータまで全部つくって、国もいろいろなことを含めて取り組んでいる、しかし、ちぐはぐ行政をしているからこういうふうになってくるんだから、そのことをしっかりしてくださいよ。
 もう一度答えてください。ちゃんと調べて、具体的に出す気であれば、おおよそ、きめ細かく出せるわけはありませんけれども、グロスとしてちゃんとどのぐらいというのは出るんですから。
竹中国務大臣 これは、個々の経営判断の積み重ねですので、全体として数字を把握するというのは大変難しいということをどうしても御理解いただきたい。
 ただし、実態としては、財務局のヒアリング等々で、我々としてもできるだけその実感を持てるように、実態が把握できるように努力をしておりますので、その中で努力をぜひとも続けたいと思います。
田中(慶)委員 それじゃ、いいですか、少なくとも、中小企業含めて九兆円去年貸し渋りがあったとか、そういうことが具体的に出て、そして、なおかつ今中小企業が本当に困っている。このことについて現実問題として答えられないで、その指導がどうしてできるんですか。ちゃんと明確に調査してください。でないと質問はできませんよ。関連しているんですから。
藤井委員長 竹中国務大臣、金融担当大臣ですから、今直ちに数字がどうこうと、それから、この数字についてはなかなか出すことは難しいと思いますが、できるだけ、どの程度まで調査してそういったことが把握できるのか、そのことを踏まえて答弁をお願いします。
竹中国務大臣 今委員長にも御指摘をいただきましたように、この数字そのものを、経営判断の積み重ねでありますから、それを把握するというのは、これはちょっと難しいのでありますが、我々としましては……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
竹中国務大臣 経営健全化計画の中で、中小企業に対する目標値というのを提示させていただいています。それの、中小企業貸し出しに対して未達成の場合については、これは先般も業務改善命令を含めて厳しく対処しておりますので、その中でできる範囲の努力をしたいというふうに思っております。
田中(慶)委員 今の答弁では納得いかないですね。
 現実に、それじゃ、貸し渋り、貸しはがしがあるというようなことが、そんなことできますか。しっかりとした対応をして指導するようにしないと、本当におかしくなりますよ、日本の企業というのは。九割が中小企業ですよ。ですから、そのことを含めてやらないとだめですよ。ちゃんと答弁してください。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、貸し渋りというのは、本来貸してもいいはずのところに貸していない、そういうのが貸し渋りでありましょうから、その一つ一つの経営判断について、何らかの基準を設けてそれの集計値を求めるというのは、やはりこれは技術的に困難だということをぜひとも御理解をいただきたいと思います。
 我々としては、対策としては、貸し渋り・貸しはがしのホットラインも設けて、それぞれの問題について、問題がある場合は検査まで含めて対応するという方針を立てております。その方針の中でしっかりとやっていきたいというふうに思っているところでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 竹中国務大臣、先ほど申し上げましたように、この数字を出すことはなかなか難しいことは十分わかっておりますが、監督官庁としてどの程度のことができるのかどうか、そういう認識を示していただきたい。その前提、それで答弁していただきたいと思います。
竹中国務大臣 数字そのものは難しいわけでありますけれども、我々としましては、財務局等々からのヒアリング等々でできるだけ現場に近い感覚を得ようとしている。一方で、貸し渋り・貸しはがしホットライン等々の情報に基づいて、必要に応じた検査も含めて行おうとしている。今、その貸し渋り・貸しはがしのホットラインの数字については集計中でありますので、これを踏まえて、どのような対応が可能かということを考えていきたいというふうに思っております。
田中(慶)委員 委員長、今の本当の景気の巨悪の原因はここなんですよ。これをちゃんとしない限り日本の経済は再生しない。だからこそ、できるだけこれを明確にしてほしい。
 例えば、中小企業庁が懸命にこのことを後追って努力しているんですよ。ですから、今の問題は、私は竹中さんのその答弁では納得しません。ちゃんと答弁してください。
竹中国務大臣 数字を出すということは、これは技術的に大変困難でありますので、財務局等々からのヒアリングでできるだけ実態に近い情報を得たいということ、それと、貸し渋り・貸しはがしホットラインのデータを踏まえまして、その中でどのような、検査も含めて対応が可能であるかということを可及的速やかに我々としても検討をしていきたいというふうに思います。
田中(慶)委員 委員長、この対策がなくて貸し渋り、貸しはがしははっきり申し上げて具体的な対策が打てないと思いますよ。ですから、勘違いをこのことしている。ですから、しっかりと全体的に相談をしながら、経済産業省も含めてしっかり出してください。
 もう一つ、この問題を掘り下げる前に、これは総理に聞きたいわけでありますけれども、あなたは日米関係を大変大切にしておりますけれども、経済研究所で大変親日派とも言われておりますブルッキングス研究所は、日本の研究事業所を閉鎖されましたね。ということは、もはや日本の研究価値というものがそれに値しない、このようになりつつあるわけであります。
 まずこれについて、時間の関係もありますから、どう考えているか。
 せっかく坂口大臣も来ておりますので、今三百五十万の失業、この実態を、今後、少なくとも具体的に失業対策をどのように、数字ではわかりますよ、ですけれども、いろいろな経営環境やあるいはベースアップの問題等々を含めながら全体的に考えてまいりますと、この改善は大変難しい状態にある。国がしっかりとした方針を出してその流れをつくっていく必要があると思います。
 総理と坂口大臣の答弁をお願いします。
小泉内閣総理大臣 ブルッキングス研究所が閉鎖するというような話ではありますが、私は、アメリカの日本に対する関心、信頼というものは依然として高いと思っております。
坂口国務大臣 三百五十万に及びます失業者の問題を、積極的に対応して解決をしていかなければならないというふうに思っております。
 これは、やはりもう人海戦術でいく以外にない、厚生労働省の中だけでやっていてはいけないというふうに思っておりまして、地方自治体も同じにやっていただく、商工会議所等も一緒にやっていただく、そうした連係プレーをこれから密にして取り組んでいきたいと考えております。
田中(慶)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉田公一君。
吉田(公)委員 まず総理にお伺いをしたい、こう思いますが、総理は、改革なくして成長なし、聖域なき構造改革というこの二つの柱を持って総理をお務めいただいておりますが、ただ、改革なくして成長なしが、どうも途中でとんざをするんではないかという不安がないわけではありません。そしてもう一つは、期待も逆にあるわけであります。その期待にこたえて構造改革をやる、あるいは改革なくして成長なしを推進していくためには、総理、総力を挙げて取り組まない限りは、長い間続いてまいりましたしがらみの中で改革をしていくということは非常に困難だと思います。
 日本は、戦前も戦後も一貫して官僚政治であります。官僚は、一人一人はみんな優秀でいい人ですけれども、あれ、どういうわけか、組織になると抵抗勢力になってくる。それにまた今度国会でも抵抗勢力が一緒になって、そして総理の思いがなかなか通じないというふうに実は私は思っております。
 総理は、道路公団の民営化にいたしましても、公務員制度改革にいたしましても、郵政民営化にしても、一定の問題提起をされて進んでいるとは思いますが、どうも、道路民営化一つとっても、本当にできるのかな。両論併記みたいなものが出てきて、どちらをとればいいのかみたいなことで、このごろ道路の審議会も何か威勢がなくなったというように聞いておりますが、総理としての決意と、そして何か一つどんとやり抜かないと小泉総理に対する期待感というものは薄れてくるんではないか。実はこれはもう救国のことでありますから、ぜひ総理にやり遂げてもらいたい、そう私個人は思っているんですが、総理、いかがでございますか。
小泉内閣総理大臣 道路民営化の問題についてでありますが、私は、これは当初のとおり順調に進んでいると思っています。
 まず、民営化自体反対でしたのが、これは民営化についてはもうやむを得ないなと賛成に回ってくれている。そして、審議会の意見も、全員一致というわけにはいきませんでしたけれども、ほとんど、全員一致しない部分においても、八割から九割ぐらい、いい成果を出すようにまとまっている。そういう点において、私は、かなりの成果が出ているし、そして、国会の手続、手順を踏んで順調に進めている、独断専行を排して、識者の意見、国会の意見を聞いて、実現していく方向に向かっているなと考えております。
 こういう点につきまして、当初、賛否両論相半ばし、激しい議論が展開した中で、私は、基本的にこの推進委員会の意見を尊重して、そして同時に国会議員の皆さん方々の意見も十分考慮に入れながら、当初の目的を達成するために努力していきたいと思っております。
吉田(公)委員 私は、総理の民営化方式のやり方でもいいとは思っていますが、もう一つは、総理が御出席にならないときに私は質問をしたんですが、道路四公団で四十兆円の負債がある、それを五十年以内に返すと天文学的なことを言って、返すんだか返さないんだかわからないような、五十年までに返すなんという。
 だけれども、四十兆円を三十年間で返させる、それだけでもう民営化と同じようになるんじゃないか、法律一本通せばそれで済むんじゃないか、私はそう思っているわけで、そういうように、民営化の論議というのはなかなか論議の途中でいろいろなことがあって、だから、一にかかって決断一つでございます。
 それはもう、五十年までに四十兆円返せばいいんだなんという、返すんだか返さないんだかわからないようなことを言ってやるよりかも、じゃ、三十年でお金を返してくださいよと、国民のお金を。そうすれば、いろいろ下請はいっぱいもうけているんだけれども、今度は下請からもうけるお金を吸い上げて、とにかく国家に返さなきゃいけない。そういう法律を一本決めてしまえば、もうこれは民営化と同じ話で、新規の道路なんか建設できなくなる、財政上も困難になってくる。
 こういう方法もあるんではないか、そう思っているわけでございまして、民営化するかしないかということになるから非常に複雑になって、最後は両論併記というような結果になってきたんだ、こう思うわけで、その辺は、総理、我々立法府でありますから、とにかく法律をきちっとつくってやればすぐ済む、そういう話もたくさんあるわけで、どうぞその点は、総理が本当に改革をおやりになるということになれば、法律案を一本出してもらう、それを採決してしまえば、そのとおりいかざるを得ないというようなことになってくるんではないか、私はそんなふうに思っているわけでございます。
 総理も、抵抗勢力や官僚勢力に対抗して、総理お一人じゃ、とてもじゃないですけれども、二十四時間眠らなくたってまだ時間が足りないぐらいのお立場ですから、これはなかなか、総理が言ったことが大臣に伝わり、それから官僚に伝わって、そして今度は吸い上げて、また案になってくる、もう大変な時間がかかるんですよ。そのうちにいろいろな要件を入れられちゃって、最後はもう何が何だかわからなくなっちゃって、ああでもない、こうでもない、しまいには何でもないみたいな話になると、これまたどうにもならない。
 だから、総理、その辺は、ぜひ自分が言ったことは絶対やらせるんだという決意で頑張っていただきたい、そういうふうに実は私は思っているんです。
 ところが、独立行政法人、これも総理の肝いりの話でございますが、独立行政法人に関する、こういうことで予算措置も来年度とってあります。独立行政法人が、総理、八十八あるんですよ、八十八。そして、八千五百億円ぐらいの予算措置を来年度している。
 そうすると、独立行政法人というのは、つまり、公団、公社、公益事業の整理縮小のための独立行政法人なのか、ただ単に看板を書きかえただけの独立行政法人なのか。その点の基本的な総理の姿勢を伺いたい、そういうふうに思っております。
小泉内閣総理大臣 私は、特殊法人改革、これは、財投の改革と郵政の改革、一体的に進めなきゃいかぬということでやってまいりました。独立行政法人化につきましても、これは民主党の方々も半分ぐらいは賛成してくれているわけですね。当然、反対もあります。すべてを民営化、廃止、統合にはできませんので、一番大きいもの、これは道路公団にしても、あるいは石油公団にしても住宅金融公庫にしても、一番税金を投入しているものについてはもう廃止、民営化と。あとは、それぞれの必要性があるでしょう、よく考えてみましょうということでやっているわけでありますので、これで、今回の独立行政法人で終わりということではありません。
 不断の見直しが必要だし、これは独立行政法人じゃなくて国がやる必要があるのか、あるいは統合できるのか、廃止できるのか、民営化できるのかというのは、今後もやはり見直しを続けていかなきゃならないものだと思っております。
吉田(公)委員 そうしますと、平成十五年度では独立行政法人という、看板を書きかえて、そして一般会計からも特別会計からも予算措置をしているわけでございます。その数が八十八ございまして、今総理の御答弁ですと、これから民営化できるものは民営化していく、縮小するものは縮小、廃止するものは廃止していくということでございますが、きょうは石原行革大臣においでいただきまして、将来、この独立行政法人というのはどういう取り扱いにしていくのかということをお尋ねしたいと思います。
石原国務大臣 ただいま総理からも御答弁がございましたように、これは、見直せるものは見直していかなければならないものでございます。
 そして、これまでの特殊法人、認可法人は、一度設立してしまいますと、その法律を廃止あるいは民営化等々の法律を出さない限り、実は見直すことができない仕組みでしたけれども、今回の独立行政法人は、やはり一番のポイントは民間と同じ企業会計原則が導入される。そして、それによりまして経営実態が公になることによって、その経営にうまくいっていないような場合はその責任者の方の経営責任というものも問われる。さらに、三年から五年の見直し期間を設立しておりますので、そのとき、仕事がもう民間に任せられる、あるいはもう仕事が必要ないんだということになれば、法人自体を簡単にやめさせることもできる仕組みでございますので、委員の御指摘のとおり、不断の見直しを行っていくことが最大のポイントだと考えております。
吉田(公)委員 そうしますと、平成十五年度は予算措置はしたけれども、来年、再来年度、改革をしながら予算措置をなるべく少なくしていく。それでなければ独立行政法人にした意味がないわけで、そういう意味では、総務大臣はこれからどうしていくのか、予算措置を含めて。というのは、総務大臣の範疇だ、こういうふうに思うものですから、総務大臣に伺いたいと思うんです。
片山国務大臣 独立行政法人と特殊法人が違うのは、いろいろありますよ。特殊法人は、むしろ単年度主義ですが、独立行政法人は、三年から五年の中期経営目標、中期経営計画でやる。
 あるいは、もう一つ大きく違うのは、評価委員会ができるんですよ。評価委員会が全部、業績のチェックをやるんですね。それで、三年から五年以下の中期経営計画の期間が終わったらどうするのか。そのまま続けるのか、民営化するのか、廃止するのか、事業を縮小するのか、そういうことをきちっと主務大臣に申し出て、主務大臣が措置をとるということでございますので、私は、基本的には特殊法人とは大きく変わると。
 企業会計原則だとか、業績主義だとか、ディスクロージャーを思い切ってやるとか、そういうところがありますが、そこの、とにかく見直ししてどうするかを決めていくということがポイントでございますので、今後ともその仕組みが生きるようにぜひやっていきたいし、予算の方でも、そういうチェックを十分やってもらいたいと思っております。
吉田(公)委員 いずれにしたって、これは八千九百三十五億円の金を使っているわけですから、早く取り組まないと、結局だらだらなってしまって、名称だけは独立行政法人だ、だけれども予算措置は財投も含めて同じような措置をしなきゃならぬ、こういうことでございますから、ぜひ総理の意向に沿って、姿勢に沿って、来年も同じような予算措置であったら意味がないわけですから、要するに予算を少なくする、合理化する、効率化するということで独立行政法人をつくったわけですから、ぜひ進めてもらいたい、そういうふうに思っております。
 それから、株がやたらに下がってまいりました。株価が、一番高いときは二万六千円ぐらいいたしましたが、今八千円になってしまっている。こうなると、もう要するに体力がなくなって貧血状態。
 株価は当時含み資産があるんだから大丈夫なんだといって、銀行への資金投入、公的資金を注入したわけです。だけれども、今八千円になっちゃったら、これは、超大手銀行でさえ、十四兆円とかなんとかいって含み資産があったけれども、今五千億だというんです、含み資産が。それで、銀行自体が体力がなくなってきちゃっているわけだ。だけれども、当時は公的資金の注入といって、いずれはこれはよくなったら返してくれるんだろうという論理で、公的資金を注入してきたわけですよ。だから、そういう意味では、株が八千円になっちゃって、もう体力がなくなっちゃって、何をするのにも緩慢になっちゃう。
 一体、これから経済を立て直していくのにこんな株価でいいのかどうかということを、塩川大臣、いかがでございますか、八千円の株価で。二万円切ったら大変だなんて言っていて、二万円切ったら、一万六千円割ったらもうおしまいだなんて。ではもう八千円になっちゃったんだから、もう絶対おしまいだよ、これはね。だから、どうすれば株価をちゃんと安定株価にすることができるのかな。経験の長い塩川大臣ですから、何か知恵がありそうだと思うんだよな。どうですか、大臣。
塩川国務大臣 結局、経済界の力を強めていく以外はないと思うんですが、しかし、最近の傾向を見ますと、企業の構造改革も相当進んできたように思っております。それは、一つは、この三月期に復配をするという企業が大分ふえてきたということは、一つは、企業が力をつけてきた、構造改革が進んだ。しかし、それはリストラを中心として進めてきたことであって、真に生産体制そのものが、グローバリゼーションに対する対抗力をつけてきてよくなってきたということではまだ一歩ないようなこと。
 ここを強くするということ、そのためには、政府が誘導いたしまして、重点産業を指定して、それには税制なり、あるいは資金の面では思い切り力を出すということを、今度「改革と展望」で決めたことでございますので、これをまず強力に推進していくことが最大の景気対策であり、企業対策になる。そのことが株価対策へ反応してくると思っておりますので、強力に実施してまいります。
吉田(公)委員 いずれにしても、資本主義国家、自由主義国家で株が暴落をしているということは、恐慌、七十年前の昭和恐慌と同じような現象で、ちょっと調べてみたところが、今の政府のやり方は高橋大蔵大臣や井上大蔵大臣と同じような、そういう経済政策をやっている。どっちかを入れかえ、井上大蔵大臣のやり方と高橋是清大蔵大臣のやり方をミックスしたようなやり方を。やはり人間の考えることは、火星へロケットが飛ぶ時代になっても大して違わないなと思ったんです。
 塩川大臣、高橋是清大臣もやはり八十で請われて大蔵大臣になって、しまいに二・二六事件で殺されちゃったけれども、塩川大臣は三・一事件でやられるなんということはまずありませんから、その点は安心して大丈夫だと思うんですが、やはり小泉総理が、塩川大臣、愛称塩じいと呼ばれておりまして、塩じい大臣を起用されたということは、ベテランで経験は豊かだし、鈴木貫太郎内閣じゃないけれども、終戦内閣のときに、これもやはり塩川さんと同じくらいの年齢で、それは、もうだれが何と言ったって、やることはやると。
 そのために、塩川大臣、塩川大臣だってあと二十年も大臣をやっているわけじゃないんだから、ここは官僚の言うことなんか聞かないで、思い切りやった方がいいと思うんだよ。だから、塩じい、塩じいと愛称されて、どこへ行っても人気があるのは、さすがにベテランの政治家だからやってくれるんじゃないかという期待感があるからで、長屋の隠居じゃないんだから、塩川大臣、ぜひ頑張ってもらいたいと思っているんだよ。ぜひ頑張ってください。官僚の言うことなんか聞いて、ああ、そうか、そうか、それはよかったなんて言っている場合じゃないと思っているんですよ。ぜひひとつお願いしたい、そう思っているわけです。(発言する者あり)答弁。塩川大臣、答弁だって言っているから、やはり。
塩川国務大臣 余り褒めていただくと何かしりがこそぼうなってまいりまして、逆に居座りにくうなってしまいましたが、しかし、私も私利私欲を捨てて一生懸命、吉田さんの御期待に沿うように、国民の御期待に沿うように努力いたしますので、御支援のほどお願いいたします。
吉田(公)委員 そういうことで、私は期待をしているんだ、こう思っておりますから、ぜひひとつ、官僚の言うことを一々それはそうだなんて言っていないで、ぜひやってもらいたい、そんなふうに実は思っている次第でございます。
 それから、ペイオフを、これは一年延ばしてまた二年延ばして、要するに皆さんのお金を預かっている協同組合だとか、そういう会社の保険の積立金だとか、右往左往したわけですよ、どこへ積み立てれば間違いないかと。ところが、また二年延期しちゃった。だから、一体、騒ぎばかりさせてまた延期だ、このペイオフの延期というのはなぜするのか、私にはちょっとよくわからないんだけれども、御説明いただきたいんですよ。
竹中国務大臣 不良債権の処理を加速して、不良債権問題というものを平成十六年度には終結させるようにという総理からの強い御指示をいただいております。
 その中で、先ほどからも議論されている自己資本の充実に加えて、資産査定の強化とか厳格化、さらにはガバナンスの強化ということを目指しているわけでありますけれども、そのような金融システム改革の過程で、やはり国民に不安をもたらしてはいけない、それと中小企業金融が大きな影響を受けるということは避けたい、そういう観点から、この不良債権問題を終結させるまでの間はこのペイオフ解禁を延期しよう、そのような判断をしたわけであります。
吉田(公)委員 そういう判断ということでありますが、もう延ばさないだろうと思うんですよね。人騒ぎばかりさせておいて、火事だ火事だと言っておいて、みんな飛び出してみたら何でもなかったなんという話がよくあるから、ぜひひとつその一一九番は気をつけてもらいたい、そういうふうに思っています。
 それから、次に低金利政策。日銀総裁にお伺いしたいんですが、この低金利政策というのは、公定歩合を九五年、〇・五%にいたしましたね。それからずっと低金利政策が続いておりまして、一体、この低金利政策の本旨というのは、総裁、どこにあるんですか。
速水参考人 日本銀行による思い切った金融緩和というのは、我が国の経済にさまざまなショックが加わっている中で、金融市場の安定確保と景気の下支え、この面で強力な効果を発揮しておると思います。
 確かにおっしゃるように、九五年から〇・五%から金利がまた下がって、金利が実質上、短期の金利はゼロ金利になって、そういった超低金利の中で、家計等の利子収入の減少とか、年金など機関投資家の運用難といったような副作用が指摘されていることは、私ども十分承知いたしております。だけれども、景気を下支えしていくためには、やはり強力な金融緩和ということが必要であります。
 そのために、家計の収入とか機関投資家の運用の利回りを本質的に改善していくためには、金利を上げることは当面いいかもしれませんけれども、基本的には、経済活動全体を活発化させて、それに応じて金利の収入や賃金が増加していくというような状況になっていかないと、長期的にそういうものが上がっていくわけにいかないわけですね。
 景気の下支えを図ることで、企業のリストラとか事業の再構築の取り組みやすい環境を整えていく、それが、まさに今総理などがずっとここ二年かけておっしゃっている構造改革なんだと思います。そういう側面を金融サイドから支えるために、そういう低金利を使っている。
 実は、きのうパリでG7があって、その中で一番私どもも注目いたしましたのは、今地政学でがたがたしたことが起こっております。だけれども、これが終わった後に一番みんなが望んでいることは、各国が、ハイアーグロース、成長率を上げていくことなんだ、そのためには何をやるのか。
 ヨーロッパとアメリカと日本と分けて言ったことの中で、日本については、ごく簡単なことなんですけれども、金融面と、それを受けるコーポレート、企業側のセクターにおける、これを含めた構造改革を日本は約束しているだろう、それを早くもっと進めていくことが大事なんだ、それによって日本の経済成長が上がっていくんだということをはっきり書いているんです。これは非常によく理解してくれていると思うんですね。
 そういうことをねらっておりますので、私どもの金融緩和、これは確かに正常なものとは思いません。だけれども、金融緩和が、日本経済が今最も必要としている構造改革の動きを含めて、経済活動全般の活発化を目指して、粘り強くこれを実施していくことによって構造改革が進んでいくというふうに考えております。その点、ぜひ御理解いただきたいと思います。
吉田(公)委員 低金利政策は、景気回復の一つの手段として、経済成長の手段としてやむを得ないということでございますが、ただ、国民に痛みを与えていることは確かでございまして、昔は利息でいろいろな消費ができたんだけれども、今、低金利政策で、この間も、〇・〇一じゃないんだよ、〇・〇〇一%というんだから、普通預金の金利が。もう、こうなると、そのほかに、銀行で自分のお金をおろすのに手数料取られて消費税も取られて、それでおろしたお金で物を買って、また消費税かけられるという。自分のお金をおろしていて何で消費税かけられるんだという、塩川大臣、そういうお話がありますが、これは金融大臣かな。
 銀行でキャッシュカードでお金をおろすでしょう、祭日の日に。土曜日も。そうすると、金利の安いところへもってきて、手数料取られて、消費税取るというんだよ。それは物を買うためにおろしたのに、おろしたときに消費税を取られて、自分のお金だからね、それも、人のお金をおろしているんじゃないんだから。自分のお金をおろしておいて消費税取られて、そのお金を持って、また消費税取られる、二重課税じゃないかというんだよ、こんなの。
谷口副大臣 吉田先生のおっしゃること、よく理解できるんですが、消費税は消費一般に広く公平に負担を求める間接税でございまして、事業者が商品の販売だとかサービスの提供、いわゆる付加価値に対して課税を行うものでございますので、銀行が有料で行っている振り込みサービス、またATMの利用サービスは、これは課税の対象になるということで、例外扱いは難しいということでございます。
吉田(公)委員 例外ではない、私はそう思っている。自分のお金をおろすのに消費税取られるというのはどういうわけなんだ。そこがおかしいな。それじゃなくたって、〇・〇〇〇〇%なんて、全然、金利なんて言える数字じゃないじゃないですか。
 それから、月例経済報告というのをもらいましたけれども、これは、経済の問題について、その月その月のことを報告してありますが、実は、この中、金融大臣、何を言っているかちっともわからないんだよ、これ。
 個人消費、「横ばいで推移している。」先月は。今度は、二月になったら「おおむね横ばいで推移するなかで、足元弱い動きがみられる。」何だかちっともわからない、足元が弱いなんて。これ、貧血か何か起こしているんじゃないの。それから、設備投資、先月は「下げ止まりつつある。」と言いながら、今度は「下げ止まっている。」と言うんだ。それで、「国内卸売物価は、横ばいとなっている。」それから「国内企業物価は、弱含んでいる。」何を言っているんだかちっともわからないね、これ。
 トンネルの先に明かりが見えたとかなんとか、あるいは、足踏み状態だけれども少しは前進しているんじゃないかとかと、何かいいかげんなことばかり発表しちゃってさ。(発言する者あり)いや、問題じゃないよ。下げどまっているというのは何だというんだよ。横ばいで推移しているというのはどういう意味なの、横ばいでというのは。それは、カニが真っすぐ歩いちゃったら大変なことだけれども、経済が横ばい、横ばいというのは。そんなことばかり言っていて、弱含みだとか、足元が弱いとか、何だかよくわからないことばかり言って。もう時間がありませんから、これで失礼しますが。どうもありがとうございました。
藤井委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 まず、総理に伺います。
 総理は、昨年、内閣改造の際に、不良債権問題を解決するんだというふうにおっしゃっていたわけなんですが、ことしの自民党大会では、デフレを克服するというふうな言い方に変わってきているわけなんですが、経済運営のプライオリティーということについて、そのとおりでよろしいんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 構造改革、いわゆる行財政改革、さらに金融改革、そして歳出改革、税制改革、規制改革、そういうものを進めていく中で、デフレという問題を克服しなきゃならないという点について、これを進めていかなきゃならないという点を申し上げたわけでございます。
中塚委員 今いろいろおっしゃいましたが、その中で、不良債権処理ということなんですけれども、不良債権処理というのはデフレ克服に役立つというふうにお考えですか。
小泉内閣総理大臣 経済活性化について不良債権処理は欠かすことができないことだと思います。その辺について、その対応策を並行的にやっていくということでございます。
中塚委員 不良債権処理というのがデフレ対策として成り立つという考え方には、恐らく、金融面での供給をよくするということが一つと、あと、実体経済面での供給過剰解消というのが念頭にあるんだと思うんですが、では、需要という点はいかがお考えなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 不良債権処理ということだけをとらえますと、これは、倒産とか失業とか、そういうマイナスの効果もありますが、これを進めないと、やはりやる気のある企業あるいは成長分野にどのように資源を振り向けていくかという点について考えますと、これは避けて通れない課題だ。では、これを放置して、不良債権処理をしないで需要を創出するということについては、私は、経済活性化につながらないんじゃないか、両面が必要だと思っております。
中塚委員 両面が必要だとおっしゃるが、需要面は十分な対策を打てているというふうにお考えですか。
小泉内閣総理大臣 限られた状況、特に財政状況を考えまして、三十兆円国債を発行している。私は、十分財政対策も打っているつもりでございます。
中塚委員 結果と政策の話というのがすごく混同されていて、三十兆円発行してやっているから大丈夫だとおっしゃるけれども、それは政策面では確かにそういうことなのかもわからないけれども、結果というのが全然出ていないわけですね。
 そもそも、補正予算を組まなきゃいけないような経済状況であるにもかかわらず、需要面ということを余りにも楽観し過ぎているんじゃないかというふうに思いますし、もちろん、不良債権処理というのをやるなというわけじゃありませんが、需要というのが、何も別に、借金して需要を追加するというだけが政策ではないというふうに思いますけれども、そっちの面が余りにも弱過ぎるということをまず指摘いたします。
 そして次に、不良債権問題と関連をして竹中金融担当大臣に伺いますが、昨年の予算委員会なり財務金融委員会において、前の柳澤金融担当大臣が三月危機ということについて質問を受けた際に、三月期末で株価が一万円あればというラフな見通しを持っておりますという答弁をされていたわけですけれども、竹中金融担当大臣はこの件についてはいかがですか。
竹中国務大臣 柳澤大臣は御自身のお考えをお述べになったんだと思います。私自身は、株価の水準に関して何らかの想定を持っているわけではございません。その意味では、市場の動向を注意深く見守りながら経済を運営したいというふうに思っているわけでございます。
中塚委員 では次に、不良債権問題との関連、特に株価とも関連をするわけですけれども、金融機関の増資ということについて竹中金融担当大臣に伺いますが、今盛んに金融機関が増資を行っている。竹中大臣はそもそも、金融担当大臣になる前に、公的資本注入が必要だということを盛んに言っておられた。担当大臣におなりになったら、金融再生プログラムを発表されたわけなんだけれども、ところが、発表した後はだんだんと中身は後退をしていく。今度は、大手行の健全性に問題はないというふうな話までされている。
 今の法律で予防的な資本注入なんてできないじゃないかということはかねてより指摘をしてきたわけなんですけれども、では今度、各行が自分で増資をしているという状況を見ても、結局、お客さんに頼み込むか、あるいは外資に頼み込むかというふうなことになっていて、大変不明朗な方法になっているというふうに思いますが、いかがですか。
竹中国務大臣 主要行の最近の増資等々をめぐる動きについてのお尋ねでありますが、これはもうまさしく日本の金融システム、金融機関が大きく変わり始めた兆しであるというふうに私は思っております。
 我々は、金融システムを健全化するために自己資本の充実が必要であるという考えを常に表明してきたつもりであります。公的資金が必要だということに関しては、そういうことを明示的にお話ししたことはないと思います。必要があれば公的資金の注入をためらうべきではないというふうな考え方はしっかりと持っておりますが、そこで、増資等々に関しては、みずからの力で自己資本を充実させていく、そういう強い経営努力に向かっているということは、これはこれで評価してよいことだと思います。ただし、その際に、それが戦略的であるのか、健全性を十分持っているのか、それとか、優越的地位を乱用していないという意味で誠実か、そういうような観点からのチェックはしっかりとしていかなければいけないというふうに思っているところであります。
中塚委員 先週金曜日に増資のガイドラインを発表になりましたけれども、私は、このガイドラインを見たって、要は、うまいことやってくれというふうにメッセージを送っているようにしか見えないわけですね。例えば、証券会社を通さないで増資をする銀行もあるようですね。今もう事前勧誘じゃないかというふうな話まであるわけです。具体的にはみずほ銀行なんですが、一月二十一日に社長が、三月末までに一兆円増資をするというふうに言った瞬間に、支店長なんかはみんな取引先を回っているわけですね。それで、有価証券届け出書というのは出されたようですけれども、その前に回って、決まったらお願いしますよと言うだけでも事前勧誘に当たるんじゃないかというふうな話まであるわけなんですが、こういったことをちゃんと調査されるのか、どのようにされるのか。そして、それに対して罰則とかそういったことについては、お考えはいかがなのか。
竹中国務大臣 先ほど言いましたように、自己資本を充実させようという、その努力そのものはやはり評価しなければいけないと思います。しかし、それが本当にきちんとなされるかどうかをまさにチェックするために、先般、今、中塚委員御指摘のガイドラインを発表したわけであります。
 我々としては、そのガイドラインにのっとってしっかりと行政をしていく、必要に応じて、重大な違反がある場合は、それは当然のことながら、行政処分も含めて検討するという立場にいるわけであります。
中塚委員 一兆円もの増資で、目論見書もその分だけつくらなきゃいけないわけですけれども、それがきちんと適正に行われるかどうかということについて、行われるというふうにお考えなんですか。
竹中国務大臣 これは適正に行っていただかなければ困るわけでありまして、そのようにしっかりとやっていただけるものというふうに期待をしております。
中塚委員 相変わらず根拠のない楽観論ということなんですけれども、例えば石川銀行なんかでも訴訟が起きているわけですね。だから、そういったことを考えても、このガイドラインというものをお出しになったとしても、そこは当局としてきちんと監督をされる義務というのがあると思います。
 もう一行、例えば三井住友ですが、ゴールドマン・サックスに増資を引き受けてもらうという中にあって、これも大変にわかりにくいというか、そういうやり方で増資をすることになってしまっておりますね。
 問題点は、日本の開示基準ではわからないことがアメリカの開示基準でわかってしまうというふうなことがあるわけなんですけれども、この日米の開示基準の差ということについては、いかがお考えですか。
竹中国務大臣 ちょっとその開示基準の差というのは、具体的にどういうことを言っておられるのかにわかに判断ができないのでありますが、我々としては、石川銀行等々のさまざまな問題も踏まえてガイドラインをつくったわけであります。そのガイドラインにのっとって、必要に応じて報告を求めて、処分も含めてきちっと対応していくという姿勢で、そのためにガイドラインを出したわけです。
中塚委員 竹中大臣は新聞もお読みになっていないんですか。こういう不明朗な増資があったからガイドラインをお出しになったんじゃないんですか。
竹中国務大臣 もちろん、これまでのいろいろな経験を踏まえて、我々は、金融再生プログラムの中にガイドラインをつくるということを十月の時点で明記して、それにのっとって年度内にやるというその手順も決めて、それにのっとって先般発表したわけであります。
中塚委員 公的資本注入ということを言いながら、結局それができなくなったから、各行に自分で増資をしろというふうに言ってみたら、またこれが外資とは極めて不明朗な関係で増資をする。こんなの、だって、例の新生銀行なんかの瑕疵担保特約とほとんど同じ条件じゃないですか。そういうふうな形で増資をしなきゃいけない、あるいはお客さんのところに頼み込むというふうなことになっているからこそ、後からこういうふうなガイドラインを慌ててお出しになっているわけなんです。まあ、出した以上は、きちんと監督をするようにしていただきたいと思います。
 次に、義務教育の国庫負担金の一般財源化ということについて伺います。
 来年度の予算で、義務教育の国庫負担金の一部が一般財源化をされるということになっているんですが、財源措置は特例交付金と、あと特会借り入れというやり方になっていますけれども、そもそも義務教育というのは、憲法でも決まっていることでありますが、これは政府としてきちんとこれからも財政的な面倒というのは見ていくというふうにお考えになっているのかどうか。片山大臣と遠山大臣に伺います。
片山国務大臣 今お話しの義務教育の国庫負担金につきましては、御承知のとおり、共済長期と公務災害補償について約二千二百億弱を一般財源化いたしたわけでございます。それは、半分は地方特例交付金で、半分は地方交付税で全部措置いたしました。
 そのかわりに、今の学級編制や教職員配置について、地方の自主性を高めるというか、自由度を増してもらうと。これは文部科学省の方にお願いして、そういうことにいたしまして、これを三位一体改革の芽出し、目刺しじゃありません、芽出し、こういうことにいたしているわけでございますが、全般につきましては、これは今後、「改革と展望」の期間の平成十八年度末までに、教育改革の中で義務教育制度のあり方をどうあるかということを議論しながら、残りの義務教育国庫負担金についての一般財源化について所要の検討をしていく、こういうことにいたしたわけでございます。
 そこで、税源移譲の話が絡むんですが、これは年末の閣議了解で、「改革と展望」の期間中に数兆円規模の国庫補助金の削減をしようと。削減をするんですが、しかし、地方が国庫補助金対象事務でやるべきものについては税源の手当てをしよう、税源移譲ということを念頭に置いた閣議了解ができておりますので、その方向でやってまいります。ただ、二千億程度ですぐ税源移譲ということにはなかなかならない。つなぎとして、我々は地方特例交付金と地方交付税、こう考えているわけであります。
遠山国務大臣 今御審議をいただいております予算案につきましての内容につきましては、今総務大臣のお答えになったとおりでございます。
 義務教育というのは、すべての国民に一定の教育水準を確保するためのものでございまして、その内容につきましては、私は、国が最終的な責任を負っていると思います。ただ、その円滑な実施のために、国と地方が必要なあるいは適切な役割分担をしていくということが大変大事だと思っております。
 財源につきましても、その分担というものはしっかりやりながら、私としましては、義務教育費国庫負担金の制度の必要な見直しは行うといたしましても、その根幹については国が責任を持ってやっていくべきものだと考えております。
中塚委員 二人のおっしゃられていることは、ちょっと違うような気がしますけれども。遠山文部科学大臣は、国が責任を負うべきだというふうにお考えになっている。片山総務大臣は、税源を移譲していくようなことを視野に入れてというふうにおっしゃいますが、税源を移譲するというのは、地方がやるということですよね。それは、国がやるということじゃないんじゃないですか。
片山国務大臣 今、国庫補助負担金は約十三兆円あるんですね。(中塚委員「いや、そんなことは聞いていない」と呼ぶ)いやいや、だから、その中で必要なものは残していかなきゃいかぬのです。そういうことで全般を洗うと。
 義務教育国庫負担金についても、全部で三兆一千億あるわけですから、そのうちの二千二百億を今度一般財源化しましたが、残りについてどうするかは、これから、ことしの夏ぐらいまでに三位一体改革の中で工程表をつくって、どうするかと。その際、今言いましたように、教育改革の中で、義務教育制度のあり方、そういう議論を絡めながら、どこまでの国庫補助負担金を一般財源化するか、そういう議論をいたしたい。
 一般財源化した場合に、それについては税源移譲の対象にする、こういうことでございまして、余り違わないと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。
中塚委員 一般財源化、片山大臣は、将来は三兆円、数兆円というようなこともおっしゃっているわけですけれども、その暁には税源移譲ということもお考えになるということですね。
 では、遠山大臣、それでいいんですか。
遠山国務大臣 片山大臣がお答えになりましたのは、国庫負担金にはいろいろな種類のものがありまして、それらの全体のことについて見直しを考えていくということでございまして、義務教育費国庫負担金の部分の三兆円だけを考えていくということではないという趣旨と考えております。
 私としましては、義務教育については、国がその大枠について責任を持ちながらも、地方ができるだけ自立的に実施できるようにしていく、そういう制度の弾力化あるいは改革というものはどんどん進めておりますし、今後とも考えていく必要がありますが、経費につきましては、国と地方が必要な役割分担というものをしっかりと持ちながらやっていくということをお答えしているところでございます。
中塚委員 先ほど片山大臣が、それは芽出しだか目刺しだか知りませんが、これをやっていく、将来どんどん一般財源化して、そして税源も移譲するというお話をされたわけですよね。ということは、やはり義務教育というのは、もうこれは地方で独自にやってもらっていいということなんですね。どうですか。
片山国務大臣 義務教育は、国の教育制度の根幹ですから、この制度については国が責任を持つのは私は当然だと思います。
 ただ、どこまでを国庫補助負担金にし、どこまでを一般財源にするか、これはこれから大いに議論していかなきゃいかぬ。我々は、地方の税財源基盤を強化したいと思っておりますし、地方分権を進めたいと思います。今、国が、がんじがらめとはいきませんけれども、学級編制や教職員配置で細かい基準までつくっておるものを、私は、大枠は国がつくらなきゃいかぬと思いますけれども、細かいところは地方の自主性に任せたらいいんですよ、それぞれ地方の事情が違うんですから。
 そういう見合いの中で、全体の三兆に及ぶ義務教育の国庫負担金制度のあり方をどう考えるか。どこまで残すか、全部やめちゃうのか、残すのか、どうするのか、これは今後議論してもらいたいと思っております。
中塚委員 細かい面を地方に任せるのと財源の話は違う、それは申し上げておきます。
 それで、あと、税源移譲というお話をされましたから関連して伺いますけれども、この内閣府の展望なんかを見ますと、二〇一〇年ぐらいにはプライマリーバランスが回復しそうな勢いになっているわけですけれども、地方は黒字で、国は赤字のままですね。そういった中で税源移譲というものができていくんですか。
片山国務大臣 プライマリーバランスの数字というのは、いろいろなとり方がありますからね。ただ、プライマリーバランスだけから見ると、地方よりは国の方が悪い、これはもう私ははっきり言えると思います。だから、今後は、行財政改革で、国も地方も通じる行政全般を見直して不必要なものはやめていく、民間なり何かに任せていく、こういうことをしながら国と地方の役割分担をしっかり決めて、決めた上で、我々、できるだけ地方にやらせてもらいたい、地方でやれることはやらせてもらいたいと思っております。
 そういう中で、今、六対四の国と地方の税源配分を、実際の仕事は六五%地方がやっているんですから、二五%は国庫補助負担金なり地方交付税で国から地方に流れてきているんですから、仕事をやっているところがそれだけの税源を持つべきだと我々は考えておりまして、当面、経済財政諮問会議でも六対四を五対五にしてほしい、こういうことで御検討をお願いしておりまして、その一環で今回の義務教育の国庫負担金の一般財源化も、とりあえず目指すということで、そういう改革をいたしたわけであります。
中塚委員 だけれども、この楽観的なシナリオでも国のプライマリーバランスというのは赤字のままですね。そういう意味では、国のプライマリーバランスが赤字のままなのに、増税なしで財源移譲なんてできないんですよ、国も地方も。
 最後に総理に伺いますが、総理は就任直後に増税はしないというふうにおっしゃった。今でも消費税は上げないというふうにおっしゃっている。
 来年度の税制改正なんかを見ましても、先行減税とか多年度税制中立とか、いろいろなことが言われておりますけれども、先行減税分は後で増税になるわけですね。そして、先行減税は全部時限措置、後から増税になる分はほとんど恒久措置ですね。
 消費税は上げないけれども、それ以外の税は上げてもいいというのはどういう根拠なんですか。
小泉内閣総理大臣 まず、行財政改革を徹底的にやっていこう、むだな部分は極力削っていかなきゃならないということであります。
 そういう意味においては、今財源が足りないから増税で補おうという考えは持っていないということであります。
中塚委員 全然答えになっていないんですけれども、恒久的に増税をするわけでしょう、多年度税制中立で。先行に減税をするわけですよね。増税の分は恒久になるんだけれども、消費税は上げないというふうにおっしゃっているが、それ以外の税目は何で増税してできるんですか。そもそも増税はしないとおっしゃったんですよ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは、税収というものを考えなければ、バランスがいけないと思うんです。減税する、これだと将来のやはり財源というものも、税収も考えなきゃならぬ。全体でバランスを見て税収中立でやろうということであります。
 また、消費税につきましては、将来これは、財政状況を見て、議論が出てくると思いますが、私の在任中は上げないということであります。
中塚委員 これもまた根拠が全然なくて、精神論だけだということがよくわかりました。
 終わります。
藤井委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、銀行の手数料の問題についてお聞きをしたいと思います。
 週刊ダイヤモンドが行ったアンケートでは、八割の人が、銀行のサービスに不満がある、こう回答しておりまして、そのトップが、各種手数料が高い、これが一番多いわけで、二六%でありました。
 まず初めに、具体的な問題で総理にお聞きをしたいと思います。
 小泉総理は銀行に行って両替をするなんということはないんだろうと思うんですけれども、例えば、東京三菱銀行に総理が行きまして、両替機で百円玉を一円百枚に両替する。この場合、手数料は幾ら取られると思いますか。
小泉内閣総理大臣 私は両替したことないから、幾ら取られるか知らないんです。
佐々木(憲)委員 正直なお答えですけれども、百円を一円玉に両替しまして一円玉百枚にしますと、手数料は二百円取られます、二百円。これは正常な手数料だと思いますか。
小泉内閣総理大臣 何ですか、百円を両替するのに二百円取られる。これは、おかしいと思うのも無理ないと思いますね。
佐々木(憲)委員 それはもうそのとおりで、おかしいんですよ。おかしいことがまかり通っているんです、今。
 例えば東京三菱銀行、これは一週間前からこれを始めたんです、こういうことを一週間前から。二月十七日から、どんな金額でも、五十枚を超える両替を行えば、一回について一律二百円取るということであります。例えば千円を一円にかえる、一円玉を千枚ですね、それでも二百円取られる。すべて二百円。二千円を一円玉にかえても二百円取られる。
 ですから、私どものところに、ある業者の方からこういう訴えが来たんです。零細なクリーニング屋の店主でございます。一円、二円という商売をしているので、消費税のためにおつりの一円玉が必要です。手数料の二百円は、千円の二割です。いつつぶれるかわからないような零細な業者は、そんな金出せないですよ。あれだけ銀行に税金をつぎ込んでおいて、我々から手数料を取るというのはどういうことですか。もう死ねということですか。私のような零細な者はどこへ両替に行けばいいんですか。
 これまで大手銀行は、店内に設置している両替機を使用する際の手数料は無料だったんです、今までは。ところが、二百円の手数料を取り始める。これは一つの銀行だけじゃないんですよ。UFJ銀行も、両替機での手数料徴収も検討していく、こう言っているんです。まあ、横並びでやりたいと。三井住友銀行も、有料化について検討していくと。次々と、これは有料化をしていく方針でございます。
 このクリーニング業者の声にありますように、商売をしていれば、これはもう当然、つり銭のために両替は日常的に必要なんです。零細業者はぎりぎりのところで営業をやって生活をしているわけでありまして、こういう人たちの声も聞かないで、これはもうともかく決めたら一律に手数料は取り立てると。これは余りにも一方的で、強い者が弱い者から取り立てる、まさに優越的地位の乱用と言わざるを得ないと思うんですけれども、総理、これは一方的じゃありませんか、余りにも。どう思いますか。
小泉内閣総理大臣 これはおかしいから、うちの銀行はそんなことはやらないという銀行が出てきてもよさそうなものだと思いますけれどもね。
佐々木(憲)委員 それが出てこないで、次から次と、みんな横並びでやっているんですよ。私が今取り上げたのは両替機の話ですよ、両替機。今まで無料だったんです。つまり、自分で両替に行ってかえるわけですから、ただだったんです、今までは。それが、こういう形で一律に二百円。やり始めたら、うちの銀行も私の銀行もといって、全部やり始める、私はこういうのは非常におかしいと思いますよ。
 それから、例えば、今両替機の話をしましたが、実は、資料を見ておわかりのように、窓口での両替は既に軒並み有料化されておりまして、このときは住友銀行が先陣を切ったんです、それまでは両替手数料、なかったんですが。その後も大手銀行は次々に有料化していきまして、二〇〇〇年の十月に住友銀行が有料化しました。翌二〇〇一年の五月には東京三菱銀行、七月にはあさひ銀行と三和銀行、八月に富士銀行、九月に第一勧業銀行、こういうふうに続いたわけです。小泉内閣になってから重立った都銀が有料化で横並びをし始めた、こういうことであります。
 手数料の値上げは両替だけではありません。資料の一を見ていただきたいんですけれども、ここでも、今までは土曜日の午前中から昼間にかけまして、ATM、これは無料でありました。ところが、それを有料にする動きがUFJ銀行を皮切りに大手銀行の中で相次いでおります。
 このような銀行の新たな手数料徴収や手数料の一斉引き上げが近年どんどん行われるようになって、利用者から強い批判の声が上がっているわけであります。
 そこで、公正取引委員会にお聞きしますけれども、公取では土曜日のATM有料化をめぐって調査を進めると財務金融委員会や記者会見で述べておられますけれども、これはどのような観点から調査が必要だと判断したのか、公取委員長の答弁を求めたいと思います。
竹島政府特別補佐人 御指摘のATMの利用手数料の引き上げでございますけれども、公正取引委員会といたしましては、端的に申し上げますと、話し合い等によるいわばカルテル的な行為によってこういうことが行われているのかそうでないのかという基本的問題意識を持って、都銀の大手四行並びに全銀協からヒアリングをしておるところでございます。これから、必要な書類等もいただいた上で、私どもとして、それぞれが独自に判断しているということであれば独禁法上の問題が発生するとは思っておりませんけれども、話し合い等があった場合には、その検討、調査結果を踏まえてきちんと対応してまいりたいと考えております。
佐々木(憲)委員 調査をしっかりやっていただくということなんですけれども、これは大体もう現象的にもはっきりしているんですよ、これは一斉なんですから、時間が若干ずれてはいますけれども。コストは違うんですよ、それぞれ銀行によって。それが全部同じ金額になる。大体そういうこと自体が私は異常だというふうに思うんです。
 いつごろ調査結果が出るんでしょうか。
竹島政府特別補佐人 先週からヒアリングを始めておりまして、今週さらに資料等の提示を求めるというようなことも含めまして、今月中にそういった一次的な作業が終わると思いますが、その分析、検討を踏まえて速やかに私どもとしての考えをまとめたいと思っております。
佐々木(憲)委員 では次に、手数料が今どんどん上がっていまして、しかし、預金をしても金利がつかない、こういう状況であります。
 何でこうなるのかというのが大変重大でありまして、資料の二を見ていただきますが、預金利息の推移をグラフにしました。九〇年代にどんどん下がりまして、もう本当にゼロに張りついているような状態で、現在では〇・〇〇三%と、信じられないような普通預金の金利でございます。
 十年前には、百万円を預けますと年で約三千円から四千円ぐらいの利子はつきました。ところが、今は、百万預けても三十円、こういう状況であります。その利子も、土曜日にATMを一回利用すると百五円取られますから、三年分の利子が消えてしまう、こういうことになるわけでありまして、これはもう、預金者の怒りは当然だと思うんです。
 資料三を見ていただきたいんですけれども、右側ですが、これは、都市銀行の金利の支払いの部分について、つまり、預金者に対する利子の支払いですね、九二年には、都市銀行は預金者に対する利息の支払いに十一兆四千百三十億円を費やしておりました。ところが、二〇〇一年度には一兆二千六百三十一億円と、十分の一に利子の支払いが下がっているわけですね。
 これに対して、手数料の収入を示す役務取引等収益というのが左側にありますけれども、それを見ますと、九〇年代を通じてふえ続けまして、経常収益に占める割合は、九二年度の三・一%から九・五%、三倍以上になっております。
 この数字が間違いないかどうか、金融庁に確かめておきたいと思います。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 今委員御指摘がございましたように、預金利息の額については、九二年度十一兆四千百三十億円、それが二〇〇一年度一兆二千六百三十一億円で、十兆一千四百九十九億円の減少でございます。そして、役務取引等収益が経常収益に占める割合でございますが、九二年度三・一%が二〇〇一年度には九・五%、プラス六・四%でございます。
佐々木(憲)委員 私が申し上げたとおりの数字で、正確だと思うんですね。
 銀行は、一方では利子をどんどん下げまして、下げることによってもうけを上げているわけですよ。他方で手数料をどんどん引き上げてぼろもうけをする。二重に庶民から利益を得ていると言わざるを得ないと思うんですね。
 手数料収入というのは特に小泉内閣になってから急増しておりまして、三枚目の表の左側でありますけれども、私はこれは問題だと思うんですね、何でこうなるのかということを後で聞きますが。
 ここに挙げたのはごく一部で、一枚目の表を見ていただきたいんですが、先ほど、ATMですとか両替機のところを見ました。下の方を見ていただきますと、こういうふうになっているんです。残高証明書一通当たりの発行手数料は、東京三菱銀行もみずほ銀行も、四百二十円から七百三十五円、横並びで引き上げられております。通帳などの再発行は幾らか。千五十円だったのが二千百円、二倍になっております。それから、当座小切手用紙交付、用紙の交付ですね、小切手用紙を交付されるというだけなんですが、六百三十円だったけれども二千百円と、三倍以上ですよ。手形用紙の交付は、千五十円だったのが三倍の三千百五十円。
 これは、幾らコストがかさむとはいっても、余りにもひどい引き上げ方ではないのか。全体としてはデフレ時代だと言われて、中小業者が大変な、商売で赤字が出ている、そういう必死にやっているときに、もう一方的に決めたということで、これは競争にも何もならないんですよ。まさに優越的な地位の乱用だと思うんですけれども、総理は、こんなめちゃくちゃなやり方はおかしいと思いませんか。
小泉内閣総理大臣 これは、自分はこんな値上げしません、これだけ安いですと、もっと宣伝するような金融機関が出てきてもよさそうだと思うんですけれども、出ないことが不思議だと思います。
佐々木(憲)委員 そういうことになっていかないんです、今実際に。自分のところはこんなに手数料は安いですよ、引き下げましたとなぜ出てこないのか。
 私は、政府がやはり金融政策の上でそういう事態をつくっているのではないか。つまり、収益性の追求ということを竹中大臣も盛んに主張されるわけですね。小泉内閣になりまして、不良債権を短期で一気に処理しよう、そういう場合には、銀行に収益性を追求せよと盛んにおっしゃるわけであります。
 ある新聞は、手数料の値上げの背景についてこう書いています。政府が金融再生プログラムで収益力の強化を促したのを受け、手っ取り早く利益を稼ぎたいという思惑がある、あるいは、不良債権処理損失や貸出先の倒産に備えて積む貸倒引当金の増大は不可避、収益を上げる手段を血眼で探している。あるいはこういうふうに言われている。公的資金注入で収益力の強化が求められやむを得ず踏み切ったというような言い方をしながら、ずっと一斉に手数料だけが上がっているというのが実態であります。
 これが背景にこういうことがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか、総理。
小泉内閣総理大臣 収益を上げるということは大事だと思いますが、値上げすれば収益を上げるというのを全経営者が判断するのは、これはおかしいんじゃないか。ほかの企業を考えてみれば、むしろ値下げして収益を上げている企業はたくさんあるわけですよ。
 そういう発想を、いわゆる逆転の発想というか、今までの金融行政じゃなくて、そういう経営者が金融機関にどうしてあらわれないのか。そういう点が、私は、まだ金融機関、努力が足りないんじゃないかと思う点がたくさんあると思いますね。
佐々木(憲)委員 その逆転の発想が起こらない原因が、実は金融行政の中にあるんです。
 例えば、公的資金注入銀行は、経営健全化計画というのを出しますね。それぞれ経営健全化計画を出しております。例えば、ここにありますけれども、三井住友銀行は、役務取引等利益、先ほど言った手数料の利益ですね、これを二〇〇四年度末までに六百七億円ふやして二千二百六十億円にするという計画を立てております。金融庁はこれを承認して、つまり各銀行とも手数料を上げていくという計画を金融庁がそれを認め、実際にこの実績は計画を超過達成しているんですよ。これは、全然下げるなどというのは出てくる余地がないんですよ。
 大体、経営健全化計画にこういう項目を入れて引き上げるのを奨励するというのは間違っているんじゃないですか。いかがですか、これは。
竹中国務大臣 先ほどから総理がおっしゃっていますように、各行横並びで経営していくということは、私はないと思いますけれども、独自の判断でやっているとは思いますけれども、本当にそういった違った経営判断がやはり出てくるような状況を私はつくりたいと思っております。
 佐々木委員が御指摘の経営健全化計画でありますけれども、これは収益、公的資金を入れている以上、それはやはりきちっと経営を健全化してもらわなければいけないわけで、そのために一定の枠をはめているということはあると思います。
 しかし、あとどのようにするかというのは、これはあくまでも個々の経営判断であります。その個々の経営判断に優越的な地位の乱用がないように、これは公取でしっかりと監視をしていただく。さらに、競争がさらに促進するような環境を我々としてはつくっていく必要があると思っております。
佐々木(憲)委員 金融行政で私は非常に重大だと思うのは、中小企業に対する貸し出し目標は全然達成できない。中小企業に対する大変な貸し渋り、貸しはがしをやっておいて、それで手数料だけはどんどん上げてくださいと計画を出させて超過達成している、そんなでたらめな金融行政はない、こうはっきり申し上げて、質問を終わります。
藤井委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。
 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 当初予定していた質問のちょっとその前に、冒頭、ちょっと通告してへんので本当は済まぬことですけれども、総理に、ちょこっと二、三お伺いしたいと思います。
 例の、名古屋刑務所事件にかかわってでございますけれども、この間の予算委員会の質疑の中でも、憲法三十六条の、拷問をやったらいかぬで、残虐なこういう刑罰は「絶対にこれを禁ずる。」というにもかかわらず、その「絶対」が破られて、そして、人まであやめてしまったというこの事実がある。しかも、この審議の中で、森山法務大臣の答弁の中身等々を見ておったら、これは、常識的な判断としては、法務大臣を更迭するのがごく当然の帰結だろうと思うわけですけれども、総理、その辺はいかがでございますでしょうか。私が法務大臣更迭を要求するというのは、殊さらに非常識で理不尽な意見、要求でしょうか。いかがですか、総理。
小泉内閣総理大臣 野党の立場から見れば、何でもやめろと。私もしょっちゅう退陣要求されているんですよ。
 しかし、法務大臣の対応において、不適切な面があったというのも事実だと思います。そういう面において、この不適切な面を今後改めて改善措置を講ずる、これが法務大臣の責務だと私は思っております。
植田委員 覆水盆に返らずというんでっせ。人、死んでるんでっせ、はっきりしてるだけでも二人も。不適切な点があったんで今後改めますいうて、死んだ人が生き返るわけと違いまっせ、それは。そんなええかげんなこと言うてもろうたら困りまんがな、ほんまに。死んでるんじゃないか。
 しかも、法務大臣に不適切な点があったと今総理おっしゃったけれども、総理が知らぬが半兵衛を決め込んでるいわれも、これはないんですよ。なぜか。少なくとも、今回こうした事件が起こった背景の一つには、そうしたいわゆる特定の職業に従事する公務員等に対する人権教育、研修の不徹底というものがあったわけですよ。これは何も法務省だけに限ったわけじゃない。現に、九六年から人権教育のための国連十年推進本部というのができとるんですが、ちなみに、その本部長はだれやっとるんですか、総理。
藤井委員長 植田委員に申し上げます。
 きょうは、この午前中は経済・財政・金融・雇用等の集中審議ですから、いきなり通告なしに今の質問を総理にされても、総理はお答えできると私は理解しかねますので、どうぞ、もう一度質問を、経済、財政等についての質問を続けていただきたいと思います。(発言する者あり)ですから、今の質疑について、いきなり質問されてもおわかりにならないと思いますから。
植田委員 きょうは経済、財政等ということで、等の部分で、少なくとも、難しいこと聞いてへんのでっせ。人権教育のための国連十年推進本部の本部長は、あなたですやん、総理ですやん。自分の仕事について、例えば植田至紀さん、どの党の議員ですかいうて、私が自民党と答えたら、とぼけた話ですやんか。その程度のことしか聞いてへんわけですよ。何も難しいこと聞いてへんのに、それ自体よう答えぬとはどういう了見です。
小泉内閣総理大臣 それは、組織の長として全部私が何をやっているかと、それは調べないとわからない点もありますよ。その辺はやはり御理解いただかないと……。
植田委員 早いこと、次の質問、本題、日銀総裁にも来てもろうてますさかいに、早いことこの話、おさめたいんやけれども、私が何やってるか全部子細にわかりませんと、そんな調子で総理やってもらったら困るわけですよ。
 じゃ、聞きますよ。人権教育のための国連十年推進本部、九六年以降一度も本部会議というのをやってへん。やってませんから、それは紙を見せられて、ああ、私、こんな役職もやってたんかいう程度やったかもしれへんけれども、かかる事態が起こったときに、束ねの本部長が本部会議を招集して、訓示の一つでも垂れなあかんのと違いますの。今までやってなかったんやったら、済みません、これから至急やりますとぐらいはおっしゃっていいんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 担当部局、それぞれの責任者がありますので、そういう点は、担当大臣の報告をよく聞いて判断したいと思います。
植田委員 担当大臣の方からやってくださいと言わへんから、総理がリーダーシップを発揮してやりなさいと言ってるんですよ。簡単なことじゃない。
 本部長が総理大臣、副本部長に官房長官、文科大臣、それに法務大臣、ぎょうさんおりますわ。事務次官もずらっと名前を連ねてますわ。この間一度も、本部会議の一つもやってへん。だから、そういう調子で物を言われたら困りますねん。ちゃんと答弁してくれりゃ、ささっと聞きたいこと、本題に入るんですが、本題に入れへんような答弁をしているのは総理やないですか。こっちがルール違反だなんて言われる筋合いはどこにもないよ。
 じゃ、もう一点聞くけれども、殺人犯を抱えている法務省に人権侵害の被害救済機関を設けるって、これも常識から考えたら面妖な話やな、けったいな話やなと思いますけれども、全然それはけったいと思いませんの。総理、簡単な話ですやん。一言。
小泉内閣総理大臣 人権については十分な配慮が必要だと思っております。
植田委員 今回の名古屋事件ではっきりと、人権侵害の被害救済の機関は、そこやったら、法務省の所管だったらだめだということははっきりしているんですよ。そのことだけ申し上げておきます。
 それで、総理、本題に移りますけれども、「改革と展望」にかかわってですが、総理の先月の二十五日の会見でも、この「改革と展望」と昨年六月に閣議決定した経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針、骨太の方針、これを一体として、構造改革をさらに積極的に進めますとおっしゃっていますから、当然この「改革と展望」も、いわゆる小泉構造改革なるものの、とりわけ経済財政金融政策における基本方針を示した基本文書というふうに私は理解させていただいていいですね。
小泉内閣総理大臣 基本方針を示すとともに、将来展望を示したものであります。
植田委員 そこで、総理に伺うわけですけれども、今月二月の十四日に財務金融委員会で幾つか竹中大臣にお伺いしたんですよ。きょうは、別に竹中大臣に質問することはないので総理にお伺いするんですが、この「改革と展望」の中で、「できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。」という中で、この文言の中には、竹中大臣が言うてはるところのインフレターゲティングも政策の選択肢として包摂されているんですか、内包されているんですかということを伺ったら、竹中大臣は排除するとは思っていないというふうに明確に答弁されました。これは議事録、今のところ未定稿では速記録があるんですが、総理も、この「改革と展望」の読み方として、竹中大臣と御同意ですか。同意されていますね。
小泉内閣総理大臣 私はインフレターゲットという言葉は使っておりませんが、日銀総裁も物価をゼロ%以上に持っていくということを目標にしております。そういう点については十分理解を示しておりますし、その方向でデフレ克服に取り組んでいきたいと思います。
植田委員 竹中大臣のおっしゃっていることと同じお考えですか、どうですかと聞いただけなんですよ。それだけイエスかノーかでお答えできますか。それだけ聞いただけなんですから、今は。
小泉内閣総理大臣 それは、竹中大臣が、これからもデフレ克服に取り組むという話の中で出てきたことでありますので、そういう政府の考え方を理解されて、政府は日銀と一体となってこの問題に取り組んでいきたいということだと私は理解しております。
植田委員 それで、日銀総裁、御足労いただいたんですが、ここのところ、財金の委員会のときの竹中さんの答弁のときにはもう退席いただいていたんですが、既に事前通告していますから、当然、議事録、最新のものも読まれただろうと思うんですが、明確に、この「改革と展望」の中にある「できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。」というのをどう読むんだというときに、一般論としての消費者物価の上昇率をゼロ%以上となるまでどうこうという以上に、インフレターゲティングの政策もこの中には選択肢として排除されていないと竹中さんは明確におっしゃったんです。同じように日銀総裁も、この文言は竹中さんの読み方と同じ読み方をされた上で賛成されたんでしょうか。端的にお答えいただけますでしょうか。
速水参考人 お答えします。
 今の御質問の「改革と展望」の文言は、「政府・日本銀行が一体となって、デフレ克服を目指し、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。」そういうふうに書いてあります。これが現在我が国で議論されているいわゆるインフレターゲット政策を意味するものとは考えておりません。
植田委員 明確な答弁をいただきましたね。政府の閣議決定された文書、速水総裁は、当然賛成はされたけれども、竹中大臣がおっしゃっているようなインフレターゲティング政策は選択肢として入っていない、そういう理解のもとに賛成されたということですね。明らかにこの「改革と展望」にかかわって、政府と日銀一体となってと言いながら、現実にその文言の解釈がそもそも違っているということは、これはどういうことですか。一体じゃない。これは、しとねをともにしているというたって、布団を引っぺがえしたら横っちょ向き合ってた、そういうことですやんか。小泉さんが考えているその一体とはどういうことですか。よう答えぬのやったら、もうちょっと聞きますね。
 例えば、こういうプレッシャーを、竹中さんには聞いていません、竹中さんがおっしゃるような話を少なくとも御同意されているんですから、明らかに政府と日銀との間で見解が、文章の文言の理解が大きく分かれる。日銀法三条に基づいて、仮に政府が日銀の自主性を尊重するということであれば、十四日の日の総裁の答弁からすれば、こうおっしゃっています。「現在私どもは、消費者物価の上昇率が安定的にゼロ%以上となるまでとにかく潤沢な資金供給を続けますという約束をしておるわけで、これならばやっていけると思っております。」これが、日銀のいわゆる物価上昇率が安定的にゼロ%となるための政策の根本です。この政策を政府が尊重するということが日銀法三条に基づく自主性を尊重するということなんですが、それとは違う政策も選択肢に入っていると竹中大臣はおっしゃって、そういうことも政府として考えているという小泉さんの答弁ですから、これは矛盾するわけです。これは、竹中さんは結構です、小泉さんはどうですか。
小泉内閣総理大臣 全く矛盾していないんですよ。今、物価上昇率はマイナスなんです。ゼロ%以上にしようというのは、日銀がどういう手があるか考えることなんです。それで、お互い協力していこうと。矛盾していないんですよ。
 ただ、それは、インフレターゲットかどうかという言葉は私は使っていない。インフレターゲットという言葉はともかく、今マイナスなんだから、物価成長率は。それをゼロ%以上に持っていくためには、それは金融対策ですから政府があれこれやれとは言いませんけれども、日銀には、ゼロ%以上にするため、金融緩和といいますか、資金を潤沢に提供するための手段というのは、それは日銀が考えることである、私はそう思います。
植田委員 日銀が考えることですと言っておきながら、違うことを竹中さんはおっしゃっていて、それで小泉さんとの、竹中さんとの間の答弁は矛盾するんですよ。何遍も何遍も私、同じ議事録を説明はしませんが……(小泉内閣総理大臣「聞いてみりゃいいじゃないか、いるんだから、いるんだから」と呼ぶ)何で聞く必要があるんですか。私はきょうは呼んでいないわけですから。
 しかも、今聞いていること、簡単なことなんですよ。竹中さん、小泉総理のことをこんなに評価されているんですよ。小泉総理は、経済の枠組みといいますか、特にマクロ的な枠組み等々に関して極めて深い造詣を持っておられて、そばで働いている人間として痛感していると、去年の十一月六日、財務金融委員会でここまで評価されている。竹中大臣、今私が聞いているようなこと、小泉総理が十分答弁できる中身しか聞いていないでしょう。竹中さんが今のやりとりの中で手なんか挙げたら、この十一月六日の答弁、虚偽の答弁やということになりますよ、ここまで褒めてはるんやから。だから、私は、きょうは小泉総理から経済のお勉強をしたいと思って聞いておるわけですやん。
 しかも、素朴に読めば、全然言っていること違いますやん、はっきりしていますやん。私は、それは日銀の総裁にも言いたいですよ。日銀法四条にあるように、きちんとやはり意思疎通を図る、その意思疎通を図ってきたのかということは、私は日銀総裁に対して申し上げたい。しかし、意思疎通を図る以前に、日銀がこういう枠組みでやりますとこの一年間総裁の言っている発言というのは、どの発言でも、その評価は、よしあしは別としても一貫しているわけです。にもかかわらず、竹中大臣は、明確にインフレターゲティングに言及して、しかもこの「改革と展望」の中でそれも政策の選択肢に入っているとおっしゃった。日銀総裁は、入っていないという理解のもとに賛成したとおっしゃった。全然違うわけですよ。
 それならば、「改革と展望」自体を改めて再改定をする、政府がそういうことを書かせたのであれば、これは三条に抵触するんじゃないですか、再改定が必要じゃないですか。
小泉内閣総理大臣 それは勝手に解釈するのはいいですけれども、それはあなたの解釈で、我々は、協力しながらやっていく、そういう解釈をしているんです。
植田委員 あなたの解釈って、私は何も解釈していません。日本語を素直に読んで、日本語の言葉を素直に聞いたら、竹中大臣と日銀総裁のおっしゃっていること、これは同じことを言っていますか、違いますやろと言っているんですよ。
 同じだ同じだ、一体となっている一体となっているって、一体の根拠、どこにもないじゃないですか。何で黙ってはるんです。
竹中国務大臣 日銀総裁がまさにおっしゃったのは、今、ここに書いてあるその表現はインフレターゲティングを意味するものではないというふうにおっしゃった。私もそうだと思いますよ。あの文章がインフレ目標を意味しているとは全く思いません。
 しかし一方で、では、こういう可能性、いろいろな可能性をこれから検討しなきゃいけないときにそういう選択肢を頭から排除しているのかと聞かれたら、そんなことはないでしょう、いろいろなことを考えていくんですよと。私が申し上げていることは全くその限りであって、総裁がおっしゃっていることと全く矛盾していないじゃないですか。
植田委員 矛盾していないって、私は素直に聞いたんです、あのときも。きょう、これまた財金で聞きますけれども、そんな、言っていることをころころころころ。それはちょっと、竹中大臣、それは全部議事録残るんですからね、私が何を聞いたか、それに対して竹中大臣が何を答えたかと。そこでの答えに対して私は今お伺いをしておるわけですから。
 これは、総裁、もういいです。今さら、政府と日銀一体でございますという総裁のお話も、別に聞くのもやぼですから、黙っておきます。でも、まだ任期幾らかございますから、明確にやはり答弁されたんですから、政府がどういう解釈をしようが、日銀としての独立性というものをみずからおとしめないような姿勢で運営に当たっていただきたい。そのことだけは強く申し上げて、決意だけ最後に聞いて終わりましょう。決意だけ、総裁。
速水参考人 日銀法二条に、金融政策の目的は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と書いてあります。
 物価の安定ということは、日本銀行は、インフレ同様デフレも望ましくないという考え方でおります。したがいまして、デフレ克服を目指して、世界史に前例のないような金融緩和を今進めておるわけです。
 政府との間で認識に違いがある、デフレを解除、なるたけ早く外していきたいということについては政府と考え方は変わっておりません。
藤井委員長 これにて植田君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 本日の午後は、医療・福祉等についての集中審議を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。
田端委員 公明党の田端正広でございます。きょうは、こういう機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は医療、福祉ということでございますが、日本は環境立国、そしてまた経済大国、あるいは文化国家という、そういう意味では世界にはすぐれた国だというふうに私も感じますが、しかし、そういう日本の中にあって、三十五年もの長きにわたって苦しんできた人たちがいるという意味においては、大変残念なことだと思っております。そういう意味で、きょうは、一つの問題提起をさせていただいて、医療、福祉の行政の責任ということもお考えいただきたい、こう思います。
 それはカネミ油症患者の問題でありますが、昭和四十三年に起こった事件であり、もう忘れてしまっていた問題であるかと思いますが、これは大変なことなので、少し経過等も踏まえて質疑をさせていただきたいと思います。
 カネミ油症の患者の方は、この三十五年間、本当に病気に次ぐ病気、もう次から次へといろいろな病気が多発しておりまして、そういう意味では、もし国民皆医療保険制度というものがなければ、これはもう大変壮絶な苦しみになっていただろうと、逆に私はそう思いまして、この問題を取り上げるわけであります。
 実は、一昨年十二月の参議院の決算委員会で、同僚の山下栄一参議院議員が坂口厚生労働大臣に対して、カネミ油症事件の原因は、PCBによる汚染被害と言われているけれども、実はPCDFというダイオキシンであったのではないのか、こういう問題提起をいたしまして、議論されました。そして、国会で初めてその席で坂口大臣の方から、実はPCBではなくてPCDFというダイオキシンによる、主犯説がダイオキシンではないかと私も思うという回答をいただき、初めてそういう新たな視点に立った問題としてこのカネミ油症事件が国会で議論されるようになったわけであります。
 それを受けて、私は公明党のダイオキシン対策本部長をやっておりまして、そんなことから直ちに昨年二月に、福岡市あるいは北九州あるいは五島列島の方で多発しているわけでありますが、五島列島に参りまして、福江市、玉之浦町に集中的に発生した、そういう現場に行きまして、約五十人ぐらいの患者の方から直接いろいろなお話を伺いました。一人一人伺ってみますと、本当に壮絶なお話でございましたが、ようやく患者の方々も、そういった意味で初めて、この因習の深い田舎でできるだけカネミ油症患者であることを隠してきた人たちが、初めて重い口を開いて切々といろいろな実態をお話しいただいて、聞いてまいったわけであります。
 そんなことで、昨年の三月の予算の分科会で再び私、この問題を取り上げまして、坂口大臣にいろいろな具体的な対策の要請をさせていただきましたが、この一年、そういう意味では大きく状況が変わったと認識しております。
 カネミ油症事件の経過について御説明したいと思いますが、皆さんのお手元にはペーパーが行っているかと思いますが、パネルをつくってまいりました、大変大きなパネルになってしまいましたが。
 昭和四十三年十月に北九州一円に、カネミ倉庫が製造した米ぬか油から約一万五千人の、推定被害者ですが、食中毒によって大変な大きな問題になりました。その後、厚生省の方で認定患者として認められたのは千八百六十七人であり、現在は生存されているのは約千四百名ぐらいと伺っております。これは、米ぬか油が大変健康にいい、こう言われながら、その中にPCBという化学物質が混入してしまった、それを直接摂取したために大きな被害になった、こういう流れでございます。
 それで、昭和五十九年三月あるいは昭和六十年二月、第一陣訴訟の福岡高裁判決及び第三陣の福岡地裁判決において、このカネミ油症事件は、その八カ月前、一番上にありますが、四十三年二月のダーク油事件というのがありまして、カネミ倉庫が副産物としてつくっていたダーク油というもので、鶏のえさにまぜていたわけでありますが、このダーク油の中にPCBがまざってしまったんだろうと思いますが、百七十万羽の鶏が大量に死ぬ、そういう事件があったわけでありまして、そのときに農水省の方できちっと対応していれば一万五千人の人体への被害というものはなかったんではないか、こういう思いがするわけであります。
 それで、そのことが裁判においても明確に認められまして、国が敗訴、こういう判決がおりました。そして、仮払金として八百二十九名の人に約二十七億円、一人当たり三百万とか四百万とかというお金が出たわけでありますが、それがそれ以後、昭和六十一年から六十二年にかけての第二陣の訴訟の福岡高裁判決において、国に責任がないということになってきました。そのために、最高裁の方から勧告があり、原告と鐘淵化学の間で和解が成立して、昭和六十二年に原告が訴えを取り下げる、こういうことで和解に至ったわけでありますが、そのために、逆に仮払金を返還しなければならないということになるわけであります。
 そういう意味で、非常に残酷なことは、平成九年、時効まであと一年と言われるような時点になって、国の方が一人一人の患者の皆さんに、返しなさいという調停に入っていくわけであります。そして、平成九年から十一年にかけて、六百九十八名の人との調停ができまして、返還の手続に進んでいく、こういうことになります。
 そういう意味で、これは大変酷なことでありまして、ダイオキシンといえば、皆さんも大変御存じだと思いますけれども、非常に猛毒であります。PCBの五千倍の毒性がある、こう言われているわけでありまして、そういうダイオキシン被害という要素を持っていながら、PCBということでずっと今まで来てしまったわけでありますが、しかし、今の表でありますように昭和五十二年、今から二十五年前ですが、油症患者の体内からPCDFが検出されて、油症研究班が初めてそれを明確に認めたわけであります。そして、それ以後、昭和六十三年、今度はPCDFが、これはダイオキシン類に入るんだということを、当時の環境庁がPCDFはダイオキシンだ、こういう認定をします。
 そうしますと、これは明確に、国の方でももう十五年前に、PCDFというものはダイオキシンであって、PCBが、熱処理をしたときにPCDFとかPCDDとかコプラナPCBとかそういったダイオキシン類に変質するんだ、そして、それを直接このカネミ油症の人たちは口から摂取してしまったんだ、こういうことが明らかになったのであります。それが、環境庁が認めたときですら、今からもう十五年前になるわけでありますが、昨年、私たちが問題提起するまで、そのことが公式には認められていなかったという意味で、大変にこの人たちはつらい思いを長年にわたってやってきたということであります。
 ダイオキシンというのは、御存じのように、ベトナムの枯れ葉剤等でも大きな問題になりましたが、ベトちゃん、ドクちゃんということも、あの当時、大きな話題にもなりました。そういう意味では、大変な毒性の強いものが一たん体に入ったら出ないという非常に悪い性質を持っているわけでありまして、そういう意味では、当時三十五年前、四十歳であった人は、今もう七十五歳、高齢化しています。そういう高齢化して、次から次へといろいろな病気が起こりますから、もうぼろぼろに体もなっている、こう思います。
 例えば、ダイオキシン類あるいは環境ホルモン、内分泌攪乱物質と言われているこの一番目にダイオキシン類が入っているわけでありますが、そういうものから人体にどういう影響があるかといいますと、催奇性とか発がん性、あるいは生殖器異常とか免疫機能が低下する、つまりもう抵抗能力が、抗体が少なくなって、本当に人間としての機能がどんどん弱っていく、こういうことで、いろいろな病気が多発するんだろうと思います。
 そういう意味では、本質的に人間の機能を根底からむしばんでしまうというのがこのダイオキシン類あるいは環境ホルモンの怖いところだと思うわけであります。しかし、残念なことに、こういう患者の人の治療をどうするかという究明が世界的にもまだ確立していない、研究がされていないといいますか、疫学的にも臨床学的にもそこのところが今まだ途中である、そういうことでありまして、非常にこの方たちは大変なつらい思いが続いているわけであります。
 昨年、五島列島に行ったときに、いろいろなお話を伺いました。例えば、由香理ちゃんという方、当時三十三か四だったと思いますが、黒い赤ちゃんとして生まれました。そして、今二人のお子さんがいますが、今度自分の子供が、また黒い赤ちゃんを産んでいる、こういうことであります。それから、例えば指が六本の子供が生まれたとか、あるいは、息子さんが非常に生殖器異常で悩んで自殺をしたというお父さんのもう本当にすさまじい告白も伺いました。等々、いろいろな意味で、これは次世代にまで続いていくという意味でも大変残酷な事件である、こういうふうに思うわけであります。
 このほか、ホルモンの異常とか、甲状腺の異常とか、肝臓、腎臓の発がん性とか障害とか、あるいは皮膚病、神経障害、生殖器異常等々、いろいろな病気が次から次へとこういう人たちに襲ってきては苦しめているというのが現実であります。
 そこで、坂口厚生労働大臣にお尋ねしたいわけでありますが、昨年、私も質問させていただいて、いろいろな手を打っていただきました。これはもう大変患者の方も素早い対応だということで喜んでいただいておりますが、例えば油症研究班の体制を強化していただきました。
 つまり、PCDFという、ダイオキシンという認定で体制の強化をしていただいて、診断基準の見直しにも取りかかろう、そして患者の皆さんの血中濃度のダイオキシン調査を全国調査としてやろう、こういうお話もいただきました。あるいは、産婦人科の専門家あるいは疫学の専門家、そういった方々にも検査体制の中に入っていただいて、女性を中心にした相談体制もやっていこう、こういうお話もいただきまして、大変全国的にそれが進んでいるということで評価をいただいておりますが、この進捗状況と、さらにまた、医学的な解明はどこまでどういうふうに今進んでいるのか等について、お答えいただければと思います。
坂口国務大臣 今お話しいただきましたように、このカネミ油症の問題につきましては、九州大学の医学部でいろいろと研究をしていただいてまいりまして、その結果として、PCBによる毒性もありますけれども、そこから派生しましたところのPCDFによる影響も存在する、そして、量は非常に少ないけれども毒性は非常に強いということで、PCDFの影響の方が非常に大きいということがその論文の中に書かれていることを知りまして、我々もこれは対応を変えなければいけないというので検討させていただきまして、取り組ませていただいているところでございます。
 我々が今やっておりますことにつきましては、既に委員の方からお話がございましたから、重ねて申し上げることは控えさせていただきたいというふうに思いますが、全国の患者の皆さん方のPCDFの血中濃度というのが一体どうなっているかということの今検討をしていただいております。
 今までのところまだ例数が少ない、例数が少ないと申しますか、その前に、この検査方法というものがまだ確立をされていないということもございまして、結果がなかなか出にくかったということでございますが、最近、この検査方法も非常に進んでまいりましたので、全国の患者さんの皆さん方の血中濃度というものを、今もう一度改めて検査をしていただいているところでございます。かなり例数もふえてきているというふうに伺っておりますので、もう少し例数をふやさせていただいて、そして、それを研究会で、結論としてどういうふうにするかということを検討していただきたい、かように思っている次第でございます。
田端委員 この問題、この一年いろいろなマスコミでも取り上げられ、支援団体のグループも設立されて、バックアップ体制も出てきました。それで、カネミ油症被害者支援センターの方々が、女性の方に限っての健康調査を昨年からことしにかけてやりまして、つい先日、そのアンケート調査のデータがまとまったものがもう一枚の別紙であります。
 これを見ていただいたらわかりますが、本当に大変な病気がずっと羅列されておりますが、中でも特徴的なのは、この摂取年齢のところを見ていただきたいんですが、青い色を塗ってつぶしているところですが、大体二十代を中心にして、十代の後半から二十代、そして三十代の頭、二十代を中心にしたところにこの被害が集中しています。
 それは、例えば黒い赤ちゃんであるとか流産とか妊娠がないとか、こういった状況であり、そして甲状腺の異常というのも大変目につきます。あるいは子宮内膜症とかこういった病気も多いし、また出血が多いといったことも圧倒的にここに集中しているわけであります。
 そして、当時十歳以下の、十代であった人たちが今三十代、四十代になって、またそういう現象がずっと今出ているということであります。
 さらに、一番下の五十七、五十八、五十九番のところに書いているのは、当時は胎児として、お母さんが暴露して、そしてその後生まれたという三人の方でありますが、この方が今二十代から三十代にかかっているわけでありますけれども、その人たちがまた同じような症状が起こっているという意味で、次世代にまで影響しているということであります。
 坂口大臣はお医者さんでもあると思いますので、このデータをごらんになってどういう御感想をお持ちなのか。ぜひこの実態もまた厚生労働省の方でもおまとめいただいて、また研究の対象にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 これを見せていただきますと、このPCDFという物質が非常に体から外に出にくいという性格のものであるということがよくわかると思うわけでありまして、今後、そうした治療をどういうふうに進めていくかということを研究を重ねないといけないというふうに思っております。
 この皆さん方が検査をしていただきましたこの結果につきましては、研究班の先生方のところにもお送りをさせていただいているところでございます。
田端委員 坂口大臣、具体的にぜひ御検討いただきたいのは、例えば難病に指定するとか、そういうふうな検討はできないんだろうか。つまり、私の言いたいのは、今まではPCBということで、カネミの責任であったかもしれませんが、しかし、国として、政府としてダイオキシンによる被害であるということをお認めになったんだったら、国として、ダイオキシンという人類最強の猛毒な物質に対しての救済策、そういうものを考える必要があるんではないかというように私は思うわけで、難病に指定するということ、あるいは、例えば原爆手帳のような手帳を発行していただいて、ぜひ患者の皆さんが全国どこの病院でも行けるように、今は油症患者受療票というのが、受療券というのがカネミ倉庫から出ている、こういうもので対応しているわけでありますから、そうではなくて、国でそういうことをできないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 御承知のことと思いますけれども、特定疾患治療研究事業、いわゆる難病でございますが、この対象疾患というのは、原因不明で、効果的な治療方法が確立していない、患者数が非常に少ない、生活面で長期にわたる支援を来す疾患、こういう四つの条件がついて、そして認定されているものでございます。
 したがいまして、このカネミ油症の場合には、原因は一応明確なんですね。何々によって起こったということは明らかになっております。また、そのほかの効果的な治療方法とか患者数が少ないとかというようなことは当てはまっておりますけれども、一番のその根幹のところの原因というところは一応もう明確なわけでありまして、したがいまして、この難病の中に入れるというのは私はなかなか難しいというふうに思います。
 ただ、この皆さん方に対して何らかの救済の手を差し伸べなければならないことは事実でございまして、特に、治療方法が確立していないというのが大変この人たちにとりまして厳しいところでありますし、我々といたしましては、この治療方法を早く確立するということをやらないといけないというふうに思っております。それで、検査方法を早く確立する、そして、その皆さん方にそれを、どういう形で治療をしてさしあげるかということを考えないといけないというふうに考えておりまして、総合的に今後も検討していきたいと考えております。
田端委員 なかなか難しいということでございますが、鈴木環境大臣、ダイオキシンの対策はもう環境省の方でも大変やっていただいて、能勢の焼却施設の問題、あるいは所沢のダイオキシンの問題等がきっかけになって、もう何千億というお金をかけて、焼却施設からのダイオキシン汚染がないように、約九〇%の削減が今年度じゅうにはできるというふうに手を入れていただきました。それはつまり、人間に被害がないようにするために一生懸命やっていただいた。しかし、現実に今、一万五千人からに被害があったんだということがわかった以上、これは、環境省としてもぜひ私は積極的にダイオキシン対策として被害者に温かい手を差し伸べていただきたいとこう思うわけですが、大臣は、自民党を代表する厚生行政に非常に明るい方でもありますし、環境大臣でもありますし、ぜひそこのところ、誠実な鈴木大臣の方から何か知恵を出していただけないかと思うんですが、いがかでしょうか。
鈴木国務大臣 環境省としていろいろな被害を受けた方を救済するということになりますと、これは一つ、公害被害に対する救済ということが環境省における範疇になろうかと思います。
 この公害につきましては、もう先生、釈迦に説法でございますけれども、これは環境基本法上、いろいろな人間の健康に被害を及ぼすようなそういう物質が環境中に一度放出をされる、例えば水俣病におきましては、有機水銀というものが海という環境に放出されて、魚を経由して人の健康に被害を及ぼす、また大気汚染につきましても、有害物質が大気中という環境中に放出されて、それによって被害を受ける、こういうことが公害の定義として環境基本法上に定められているわけであります。
 今回のカネミ油症につきましては、これは、食用米ぬか油を製造する過程で直接これに毒物がまじり込んだ、こういうことでありまして、公害としてこれを取り扱うということは困難であるということを申し上げざるを得ないと。その点、御理解をいただきたいと思います。
田端委員 それならと言ってはなんですが、せめて大島農水大臣、これは、仮払金を取り立てるという大変過酷なことをやっているわけでありまして、この人たちにとれば、もう高齢化している、体はぼろぼろ、しかも国からはお金を返せと責められるという、もう本当に何重にも苦しみを味わっているわけですから、そこはぜひ、人情味あふれる大島大臣として温かい配慮をお願いしたい、こう思うわけであります。
 これは大きな問題だと思いますが、農水省の方もいろいろ取り組んでいただいて、相談窓口等も電話でつくっていただいたようでありますから皆さんも喜んでいるわけでありますが、もう時間がないので。
 大島大臣は、平成七年、村山内閣のときの環境庁長官として、水俣病の認定患者以外の一万一千人に対して政治決着として一人二百六十万、約三百億だったと思いますが、そういうことを決断された大臣でございます。私はそれは高く評価しているわけですが、そういう感じでこの問題について対応できないかということを感じておりますが、大島大臣、いかがでしょうか。
大島国務大臣 平成七年の水俣病問題解決のときに、与党三党と協議して、ああいう形で確かに決着をさせていただきました。その経過は、このカネミの問題と同様に、どういう経過があれ、被害に遭われた方の気持ちというものはもう筆舌に尽くしがたいものがあるということは、私も非常に感じております。
 水俣病問題のときとカネミのときと基本的に違うことは、いわば裁判という中で、いまだ決着せざる問題であったか、決着した問題であったかということが一つ違うとは思います。
 しかしながら、いずれにしても、先ほど来先生がるるお話しされましたように、そういう中にあって私どもができることは一体何であろうかということにおきまして、これはもう、一つは、丁寧に相談に乗るということが一番大事なことではないかと思います。私ども、今この返還を求めておりますことは、いわば合意に基づいてなさなければならないことと、法律に基づいてまことに恐縮ですがやらなければならないことだとするならば、そこには、情けや、あるいはまた気持ちや、あるいはまたそういう人間としての思いをやはりどこかに含めながら、丁寧に相談をしていくことが大事ではないか、こういうふうに思っておりまして、債務者の状況に応じた再調停を行わせていただいております。
 担当官を直接にまず応じさせるということ、現地説明会を開催するということ、先ほど先生がお話しされた、電話相談窓口を設置し個別の相談に乗るということ、そして、そういう皆様への配慮を念頭に置きながらより丁寧に対応してまいりたいと思っておりますし、また、債権管理法上の問題で、無資力で弁済が困難であって履行延期の合意をした皆さんのうち、履行延期後十年を経過した後においても無資力かつ弁済できる見込みがないと認められる場合には、債権を免除できる旨の規定がありまして、その時点における個々人の状況に応じ、関係省と協議の上適切に対処してまいりたい、このように思っております。
田端委員 最後に、総理。厚生大臣経験の総理として、また、改革を掲げる総理として、難しい問題だと思いますが、何とか温かい手を差し伸べていただきますように、一言よろしくお願いします。
小泉内閣総理大臣 裁判上の和解が成立したといえども、なおいまだにこのカネミ油症で悩んでいる方、また健康不安におびえている方、たくさんおられるわけでありますので、関係省庁協力して、少しでもこういう不安が解消できるように対応していかなきゃならないと思っております。
田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて田端君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅直人君。
菅(直)委員 きょうは医療問題を中心に総理と質疑を交わしたいと思いますが、ちょっと医療とは関係のないことですが、この間のいろいろな総理との議論の中で懸案になっていることを一、二点だけお聞きしたいと思います。
 一昨日、パウエル米国国務長官とお会いになって、きょうの午前中の質疑でもそのときの議論があったようであります。端的にお伺いいたしますが、新たな国連決議がなくても、米国のイラクに対する武力行使について支持をする、そういう意思を総理がお持ちなのかどうか、国民の皆さんにはっきりとお答えをいただきたい。
小泉内閣総理大臣 何回も答弁しておりますように、まず、この問題は国際社会とイラクの問題であるということで、アメリカも国際協調体制をとるように努力しているわけであります。そういう中にあって、日本も、このような形に持っていくために、イラクに武装解除そして査察に協力を求めるような国際社会全体の働きかけ、圧力が必要だということで努力しようという点で一致しているわけであります。
 日本としては、新たな決議案が採択されるのが望ましい。アメリカはアメリカの態度があるでしょう。私は、ぎりぎりの段階までそのような努力を継続すべきだと思う。そして、仮に将来、今後、国連安保理でどういう決議がなされ、どういう対応がなされるか、まだ定かではありませんが、日本としては、国際協調体制と日米同盟の重要性をよく考えながら国益を踏まえて判断したい、これが現時点での日本政府の態度であります。
菅(直)委員 もう私も何度も総理に聞くたびに、例えば十二日だと十四日に何かがあるから、いついつだとまた次が何かがあるからと、常にそういう、そのときそのとき先延ばしのごまかし答弁。
 昨日もテレビの場面ではありますが、麻生政調会長ははっきりとこのことについて、まあ政調会長の意見としては、決議がないものであれば少しとめなきゃいけないかなというようなことを言われたり、あるいは与党三党の幹事長は決議がなくても容認するということを発言したりしているわけですけれども、総理は、国会では相変わらず、ぎりぎりまでとか、そういう言い方をされ、しかし国連の場ではかなりはっきりとそうしたことを言われていることを考えると、まさに二枚舌外交、国民の外交ではなくて、国民に対して説明する外交ではなくて、二枚舌外交であるということをあえて、きょうは本題ではありませんのでこの程度でとどめますが、申し上げておきたいと思います。
 もう一点、坂口大臣に、これも若干きょうの本題とは変わりますが、せんだってNHKの「日曜討論」で冬柴公明党幹事長が戦争反対を言うことは利敵行為だ、こういう言葉を私もテレビで見て、びっくりいたしました。かつての非国民だという言葉を何か連想させるような、そういう言葉であったように思います。
 この考え方は公明党としての正式な考え方なのか、その点について坂口大臣にお聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 突然の御質問でございますし、前回のNHKの討論会で幹事長がどういうことを言ったのか、私、見ておりませんので、それは何とも言いがたいわけでございますが、それは、そのときの発言は冬柴幹事長としての考えを言われたんだろうというふうに思っております。
 やはり平和というのが一番大事なことだけは間違いございませんし、最大限平和が守られるようにするというのがやはり我々の務めである、そういうふうに思っております。
菅(直)委員 今の坂口さんの言われたことと冬柴さんの言われたことが真反対だったものですからお聞きしたのでありまして、冬柴幹事長はその場でも撤回をされておりませんので、この点については、まあ神崎さんは、最近の報道では、新たな決議なしの武力行使には反対だ、これは党首として言われたんだと思いますが、どうもそのあたりが整合性がとれていないのではないかと思いましたので、あえて聞かせていただきました。
 もう一点だけ、きょう午後に韓国に出かけられるそうですが、日銀総裁についてはきょうの午後にもほぼ固めたいというふうにもお聞きをしておりますが、総理としてのその判断はもう固まったんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 日銀総裁の人事につきましては、昨日も塩川財務大臣から、いい人物を人選してほしい、幾人かこういう名前が出ておる、しかし最終的に決めるのは総理に一任するという報告を聞いておりますし、この問題につきましても、国会の同意人事でありますから、よく国会の同意人事手続等、段取り等に支障がないように進めていかなきゃならないと思います。
 官房長官にもしかるべき対応を、こちらに、午後委員会に出る前に指示しておきましたし、今委員会があるから私がじかにできない分は、官房長官、しっかりとした対応をお願いすると言って今この委員会に来たわけであります。
 そこで、私の立場としては、国会同意が得られる前に具体的な名前を言えないんです。また、言うべきでもないんです。その点、御理解いただきたいと思います。
菅(直)委員 ちょっとおかしな話ですね。国会同意というのは、具体的な名前を挙げていただかなければ同意できるかどうか決まらないわけですから。私、別に問い詰めるつもりで申し上げたんじゃなくて、日程的にそろそろ決まると聞いたものですから、もし決まったのであればどうですかとお聞きしたんで、いや、まだだというならまだだで結構なんです。
 まさに今総理が言われたように、これは国会の同意人事でありますので、ぜひ、どなたが総理から指名されようとも、きちっと公聴会を開いてその方に出てきていただいて、その方の見識やこれまでやってこられたことについてきちんと私たちの前で意見を披瀝していただきたい、このように思っておりますが、これは当然国会が決めることでありますが、与党自民党の総裁でもある総理として、そのことについての公聴会を開くということについてぜひ同意をいただきたいと思いますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは委員会で判断されることでありますし、今後の手続の面におきまして、今私が言ったのは、私の腹の中にあったとしても、たとえ国会に人事を求める際には、当然具体的な名前が出てきます。そのとき、これは公表していいかいけないかという問題もあるんです、人事なんですから。そういう点で非常に難しい問題もありますから、私は極めて慎重なんです。こういう点も御理解いただきまして、後々、この同意人事を得る問題につきましては、委員会にお任せしたいと思います。
菅(直)委員 それでは、本題に入りたいと思います。
 国会でいわゆる患者の三割負担という問題が、昨年、与党の強行採決で決まって、今回の予算にも、それを前提として政府案は組まれております。我が党は、他の野党の皆さんと一緒に、三割を従来どおり二割に凍結する、それに必要な四百億の予算を我が党の予算案の中に計上いたしております。
 そこで、私は、この三割、二割の問題のベースにあることについて、まず総理にお聞きをいたしたいと思います。
 総理は、一九九六年十一月から一年数カ月にわたって厚生大臣を務められました。その折に、二〇〇〇年に抜本的な医療制度の改革を行う、こういう趣旨のことを何度かおっしゃっております。その二〇〇〇年の医療制度の抜本改革というのは、今一体どうなっているんでしょうか、説明をいただきたい。
小泉内閣総理大臣 当時、菅さんも厚生大臣として、自民党と社会党とさきがけと連立政権を組んでいて、その経緯もよく御存じだと思います。その際に、抜本改革の案もいろいろ検討されまして、方向が示されました。しかしながら、なかなかそのとおりに実現できていないということについては、残念なことでありますし、また責任も感じておりますが、今後、今年度末までには基本方針を示すということで、坂口厚生労働大臣のもとでその準備がなされておりますが、私は、今回の三割負担を求める問題につきましても、今までの、菅厚生大臣時代の経緯も踏まえて対応している点も随分あるんです。御承知だと思います。
 いろいろ、費用負担の問題あるいは保険料負担の問題、さらに医療提供体制の問題、診療報酬の問題、多岐にわたっております。こういう問題につきましても、菅大臣のもとで、たしか平成八年でしたか、そういう今後の進め方の要点を踏まえて、今検討を進めているというところでございます。
菅(直)委員 大変、私が厚生大臣を務めたときのことを大事に思っていただいて、それはありがたいんですけれども、正確に申し上げますと、小泉総理が厚生大臣になられた九七年の十一月段階では、私は、さきがけを離れて旧民主党を立ち上げておりますので、厚生大臣に小泉さんがなられたときには野党の立場に移っております。その中でいろいろな議論をさせていただきました。
 そこで、もう一つ申し上げます。自由民主党には医療制度の抜本的な改革案というのはあるんでしょうか、お持ちなんでしょうか、総理。
小泉内閣総理大臣 自由民主党は自由民主党として、今鋭意、抜本改革案というものについて検討を進めております。
 自由民主党、公明党、保守新党は今三党連立体制でありますので、そういう与党の意向も踏まえながら、政府としても検討を進めているところでございます。
菅(直)委員 ちょっと正確にお聞きしたいんですが。民主党の改革案というのは二〇〇二年六月に国民の皆さんに提出をしております。必要なら、ここにも二部か三部持ってきておりますが。
 自由民主党は、単独でないとしたら、現在の与党三党でそういう改革案をきちっと国民にお示しなのですかと聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 自由民主党との調整も必要でありますが、自由民主党は今、それぞれ議論がなされておりまして、まだきっちりとまとまった段階にない。今後よく協力しながらやっていきたいと思っております。
菅(直)委員 私は、この議論をぜひ国民の皆さんによく聞いてもらいたいと思うんです。少なくとも二〇〇〇年には抜本改革をやると当時の小泉厚生大臣が言われました。いろいろな経緯はありますが、現在の民主党は二〇〇二年に「安心の医療」という、かなり包括的な案を国民の前に提出いたしました。しかし、自由民主党は、現在の与党の中でまとまったのか、自由民主党として持っておられるのかと言ったら、いろいろ議論があって、まだはっきりしたものはありませんという答えであります。二〇〇〇年に改革をしようと言ったその党が、案が、今になっても、二〇〇三年になってもありませんというのは、一体どういうことなんですか。
 それでは、厚生省として、あるいは政府としてはそういう案をお持ちなんですか。医療保険制度ではありませんよ、医療制度全般にわたる改革の案をお持ちなのか、お聞きします。
坂口国務大臣 厚生労働省といたしましては、医療制度改革に現在取り組んでいるところでございますし、昨年、我々の考え方を明確にしたところでございます。ただ、昨年明確にいたしましたのはその骨格になりますところのみでございますから、全体のいわゆる医療制度改革というものにつきましては、その都度発表をさせていただいているところでございます。
 したがいまして、現在やっておりますこの医療制度の状況の中で、改革すべき大きな筋道は昨年お示しをしたとおりでございます。
菅(直)委員 昨年というのは、この平成十四年の八月の改革の基本方向という、これですか。
坂口国務大臣 昨年の医療制度改革の中で、その中の抜本改革としてまず手がけなければならない点というので……(菅(直)委員「これですか」と呼ぶ)はい。その医療制度の統合一元化の問題や診療報酬体系の基本の見直しの問題、高齢者医療の問題、そうした問題を提案したものでございます。
菅(直)委員 民主党の案をちょっとお渡しをしますが、どうぞ。
 民主党が出したのが二〇〇二年の六月でありますが、厚生省が出されたのが同じ二〇〇二年の八月でありまして、部分的には我が党の提案をつまみ食い的にいろいろ取り上げておられます。(発言する者あり)
 しかし、いいですか、総理、あるいは与党の皆さんもいろいろなやじを飛ばしていますけれども、金目の計算の話ばかりをするのではなくて、本当に国民にとってどういう医療制度が大事なのかという議論をちゃんとしなければいけない。自由民主党という与党第一党がみずからの案もないというところが私は大問題だと。総裁がそう言ったんですからね、ないということを。そういう意味では、私が申し上げたいのは、少し……(発言する者あり)総裁に聞いているんですから。
 そこで、少し中身の話に入っていきたいと思います。
 私は、この案をもって、いろいろなお医者さんのグループあるいは健保連あるいは経済界、労働界の皆さんとも少しずつ話を始めております。
 例えば、まず多くの国民は、何かあったら開業医のところに出かけるわけです。しかし、現在の日本では、ややもすれば、大きな病院に外来という形で最初から出かけられる患者さんも多いわけです。果たしてそのことが本当に医療供給サービスを最もいい形で受ける上でいいんだろうか。例えば、まずは開業医の皆さんが中心の診療所に出かけて、その中で、例えば、これはこういう装置がなければなかなか検査ができないとか、やはりこういう特別な専門のお医者さんのいる病院の方がいいとかという紹介がある場合に初めて病院に出かけるといったような、そういう形の方が望ましいんではないか。我が党の考え方にもそういう考え方が盛り込んでありますが、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 これは、菅さんも厚生大臣をされたからよく御承知のことだと思いますが、方向としては、大病院集中、すぐ大病院へ行くという方向をやはり改めていった方がいい。診療所には診療所のよさがある、大病院には診療所でできない設備も整っておる、そういう観点から、できるだけ大病院集中という方向というものを改善していこうというのはそのとおりだと思っております。
 また、先ほど自民党案というのがまとまってないという私の発言を取り上げられましたけれども、これは、自民党は厚生省とよく相談しながらやっているんです。いろいろな議論があります。そういう中で、その意見を調整しながらやっているという点も御理解いただきたいと思います。
菅(直)委員 私は、厚生省が、もちろん議論するのは当然だと思いますが、やはり国民の医療のあり方を考えるときに、政党は政党の責任としていろいろな関係者と話し合うことがあっていいので、ややもすれば、厚生省、まあ厚生省に限りませんが、霞が関というところは、自分たちの権限にかかわる問題あるいは財政にかかわる問題には大変深くかかわりを持とうとしますが、そうでない分野、後ほど時間があれば取り上げたいと思いますが、例えばC型肝炎の感染者が百五十万人から二百万人いるといったような問題に対しては、何か事が起きるまでほとんど手をこまねいている。
 しかし、国民にとって、今医療でどうですかといったら、何か患者を間違えたとかあるいは酸素を供給するところを違っていたとか、あるいはまさにこのC型肝炎のように、広い意味で医療行為、治療行為によって感染をしたとか、そういうところに非常に関心があるわけです。残念ながら、こういう問題は、厚生省の中からなかなか出てきません。ですから、そういう意味で私は、民主党は民主党としてそういう議論をしております。自民党もやられればいいんじゃないかと思っているんです。
 そこで、もう一点、一つの問題点を指摘したいと思います。
 実は、我が党参議院で今井澄さんがお医者さんで、この問題を大変長くやっておられましたが、昨年、残念なことに亡くなられました。お医者さんの教育のあり方について、もっと地域の治療を中心とした病院の中で研修を受けられるようにしたらどうか、あるいは今のようにアルバイトをしなければなかなか生活できないというお医者さんになりたての人たちの状況を、何とか研修を受けながらきちっと生活もできるような形にすることが必要ではないか、まさに、医療の質の問題を提起されております。
 ややもすれば、これまでは大学病院での研修、これは、ここに専門家もたくさんおられるようですけれども、大学病院というのはどちらかというと研究目的でありまして、必ずしも治療の研修にはふさわしいとは言えない分野がかなりあります。しかし、今の傾向を見ますと、どちらかといえば、治療病院での研修が従来以上に難しくなっている、こういう指摘も専門家の間でいただいております。こういった点についていかがお考えですか。
小泉内閣総理大臣 私も、今井参議院議員、亡くなられて、大変残念に思っておりますし、私は、厚生大臣在任中もその後も、今井先生とはよく話し合いをし、医療の見識というものに対しては敬意を持って、いろいろ相談なり意見を伺ってまいりました。特に、今井先生は長野県出身で、必ずしも医療機関とかお医者さんに診てもらわなくても長野県というのは健康な人が多いんだということをよく伺っておりました。
 そういう点から、私は、今井議員が言われました今まで提言なり御意見を踏まえて、これを参考にしていくことも大変いいことだと思っておりまして、いい点は大いに今後の改革に生かしていきたいと思っております。
菅(直)委員 そこで、もっとこういう本質的な議論を続けたいところですが、やはり、三割負担という問題が現実に今政府から出されているわけであります。
 総理はよく、三方一両損だと。いわゆる健康保険料を上げる、あるいは医療費を若干下げる、患者の自己負担を上げる、三方一両損だ、こういう言い方をされます。私は、しかし、考えてみますと、三方一両損なのか。つまりは、財政の穴埋めということをその三者が分担をするという意味ではそうかもしれませんが、そういう財政の穴埋めという観点だけで医療制度がこの間語られてきたこと自体が、私は最大の問題ではないかと思います。
 これは、もちろんお金の問題は重要ですけれども、例えば、公共事業の我が国のGDP比はたしか七%ぐらいになるでしょう。医療費も大体同じぐらいでしょう。多くの国では、公共事業がこんなに高くて医療費がこの程度というのは珍しいとも言われております。
 しかし、じゃ質がいいかというと、先ほど申し上げたように、確かに長野のように、例えば寒いところ、塩分をたくさんとっていたところを、今も言っていただいてありがたかったですが、今井先生たちがいろいろな活動の中で、塩分を少なくし、暖かくすることで高血圧などを少なくしていくという、健康教育という形で成果が上がったところもあります。まさにそういうことが本質的な質がよくなるのであって、三方一両損だからこれでいいんだという話には、実は質の問題が全くこの三方の中には入っていないわけです。
 そういうことを考えますと、私は、この三方一両損というのは、まさに、極めて財政当局的な判断でしかない、医療の本質の中の極めて一部分でしかない、こういうふうに思いますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これも、三方一両損というのは私は確かに言いましたけれども、それだけじゃないんです、言っているのは。非常にわかりやすい言葉でしたから、ワンフレーズポリティックスをマスコミが取り上げて、こればかり随分人口に膾炙されました。その点は別に非難することではありません。
 三方一両損というのは、一つの考え方であります。患者だけの負担、保険料の負担、そして公費、税金の負担、だれも、喜ぶ人は一人もいないんです。しかし、国民皆保険制度を維持するためには、これも、お互いが負担を分かち合うという面において、三方一両損という考え方があるんじゃないかということを言ったわけであります。
 もとより、健康のためには、お医者さん以外に、直す点、たくさんありますよ。まず、医療費が安いからお医者さんにどんどん行こうなんて言ったらこれはとんでもないことであって、薬やお医者さんが病気を治すものでもありません。もちろん薬も大事であります、お医者さんも大事であります。しかし、もっと大事なことは、日ごろの生活習慣、食事。正しい食生活、そして適度の運動、十分な休養、これはもう前から私は健康の三原則と言っているんです。
 そういう意味において、この国民皆保険制度を維持するためには、今言った三方一両損の考え方も必要ではないかと。これは結果的に、国民全体が、今、できるだけ安い負担で、どこでも医療に、病院でも診療所でも自由に行くことができるというこの制度というものは、やはり維持していきたいという観点から述べたということだと御理解いただけると大変いいんですけれども。
菅(直)委員 私たちも、大いにそういう医療の質に踏み込む議論に中心を据えていきたいと思って提案をしているわけですから、いただきたい。
 そこで、具体的な問題を一つだけ取り上げたいと思います。
 これは、坂口大臣でももちろん結構ですが、C型肝炎という大変深刻な問題が、本当に長年提起をされております。最近の調査では百五十万人程度、一説には二百万人程度の感染者があると言われております。これは、空気感染とか他の原因で感染する病気ではほとんどありません。私の知識が間違っていなければ、例えば輸血、例えばいろいろな、注射針を何人もに使ってそれから感染する、透析などでも感染した例が報告されております。それに加えて、血液製剤による感染が報告をされております。フィブリノゲンと言われるミドリ十字が発売した薬が、その相当の感染を生み出したことが言われております。
 今、患者さん、被害者から裁判も提起をされておりますが、厚生省は責任を、現段階では認めておられないんじゃないでしょうか。しかし、私が見るところ、薬害エイズの構造とほとんどそっくり、場合によったら出場メンバー、当時のミドリ十字の社長も同じ時期ですから、厚生省元薬務局長といった人たちが、同じメンバーが出てくるわけであります。そして、このフィブリノゲンによる感染の危険性ということについては、旧予防研究所の血液製剤部長がみずからの著書の中でそのことを指摘している。これは、厚生省の調査でそう書いてあるんですから、まさか否定されることはないでしょう。
 しかし、その調査報告の後の方では、しかし当時は、予防研究所の方からそういうことがあっても厚生省本体に対して話が来たかどうかよくわからない、そういうものに対して責任が、義務がなかったといったようなことをどこかでまた書いておられます。
 しかし、どう考えてみても、薬事法を読めば、厚生大臣が薬の安全性に対する最終的な責任を持っているわけですから、厚生省の一部門、しかも大変重要な部門からそういう指摘があったものが、もし当時、いわゆる薬事審議会なりあるいは当時の薬務局に伝わっていないとしたら、それも含めて厚生省の責任であることは疑いもありません。これでも、この問題について厚生省の責任がないと厚生労働大臣は言われるんでしょうか。
坂口国務大臣 血液を介しましての血清肝炎、今言われましたところのいわゆるC型肝炎あるいはB型肝炎も含むのかもしれません、あるいはまたそのほかの肝炎も含まれているというふうに思いますが、血液を介して伝播しましたことだけは間違いのない事実でございます。
 したがいまして、戦後ずっと続いてまいりました輸血の中でそうした広がりが起こったことも事実でございますし、血液の中で起こるといいますことは、それは、血液からつくりました製剤、すなわち多くの血液を集めてつくりました血液製剤からこれまた起こるということも十分考え得ることでございまして、それらのことを念頭に置いてそれは使用しなければならないものであったというふうに理解をいたしております。
 したがいまして、総論的なことで申し上げれば、私は、そうしたことに注意をしつつ今までの医療機関はそれらの製剤を使ってきたというふうに理解をいたしております。
 このフィブリノゲンの一企業に対します問題につきましては、今裁判になっているわけでございますから、それは裁判にひとつゆだねるということにせざるを得ないというふうに思いますが、全体で言えば、私は、そうしたことは事実あったというふうに言わざるを得ないと思っております。
菅(直)委員 あとは同僚議員に譲りますけれども、今、最後の一言だけは、厚生労働大臣、いただけない言葉だったと思います。つまりは、一企業がつくった製薬については裁判だから言えない、これでいいんですか。薬というのは一企業がつくって勝手に売れるんですか。薬事法上、最終的にはすべて厚生大臣が認可をおろすんですよ。つくったのがだれであっても、最終的責任は厚生大臣にあるんじゃないですか。一企業の問題で裁判だから自分は関係ない、この発言だけは少し変えていただかなきゃいけないと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 私が申し上げましたのは、血液を通じてC型なりB型なりの肝炎が伝播したことを、それは間違いのない事実だということを私は認めた上で言っているわけでございます。
 したがいまして、その血液を多く使って、多くの人の血液を使ってつくりました血液製剤、それは可能性としてはあったわけでありまして、その可能性というものをどれだけ皆さん方に理解をしてもらう務めをしたかということが、今問題になっているのだろうというふうに思います。そこをどう裁判が判断されるかということだろうというふうに私は理解をいたしております。
菅(直)委員 きょうはこれで終わりますが、今の答弁は、やはり厚生省が本来とるべき注意義務あるいは安全性を十分にやってこなかったということを、厚生大臣もよくおわかりだと思うんですが、やはりそこはきちんとある段階で表明をされて、そして百五十万人ということになると、これは裁判というよりも、行政的に、政治的に何らかの対策をしっかりと立てなければならない大問題でありますから、そういう観点から、ぜひ前向きの取り組みを最後にお願いして、私の質問を終わります。
藤井委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。
 次に、五島正規君。
五島委員 民主党の五島でございます。
 今、我が党の菅代表の質問に引き続きまして、社会福祉問題について質疑をしていきたいと思います。
 まず第一に、今、国民は本当に政府を信用していない。とりわけ、国民の一番多くの不満が、セーフティーネットに関して、これまでたびたび政府が国民に対して、あるいは議会において約束してこられたことが実行されていない、そのことに対して大変不満を持っておられる。そのことが、将来に対するセーフティーネットがないということでの大変な政治不信にもつながっているというふうに考えます。
 それについて具体的にお伺いする中で、総理の御意見をお聞きしたいと思うわけですが、まず第一に年金問題からお聞きしたいと思います。
 基礎年金の公費負担を五〇%へ引き上げる、これは宮下大臣のときにお約束されたわけでございまして、十六年度までにしかるべき財源を見つけて基礎年金の公費負担を五〇%へ引き上げるというふうにお約束なさっています。これについては、総理は、たしか総理の在任中は消費税の引き上げをしないというお話でございました。大変財政厳しい状況の中ですが、いわゆるしかるべき財源が見つからないということでもって、このお約束をほごにされるつもりはないでしょうね。そのことをまずお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、消費税を引き上げるほかにいろいろやるべきことはまだたくさんあると思っています。そういう観点から、まず、二分の一の財源を確保するために消費税引き上げやむなしという声が各方面から出ているのは承知しております。しかし、それを決めてしまいますと、むだな医療とか、あるいは給付が果たしてこれでいいのかどうか、このまま保険料負担を上げていってもつだろうかという議論もあるんです。
 そういう点も踏まえて、私は、まず消費税引き上げありきという議論に入る前に、もっとほかの、広い分野で幅広く議論する必要があるんじゃないか。少なくとも、仮にですよ、私が万が一、九月の総裁選で再選されたとしても三年間しかないんです、三年間。三年間ぐらいはもう消費税引き上げるということなんか考えなくて、やるべきことたくさんあるんじゃないかという点から、私は、在任中は引き上げない、また引き上げなくたっていろいろなやるべきことあるじゃないかということを言っているんであって、この方針は変えるつもりはありません。
五島委員 消費税に依存せずにやっていきたいという総理のお考えについては、私も結構なことだと思います。問題は、今総理の口からなかったわけですが、平成十六年度までに、できるだけ速やかな時期に公費の負担五〇%に引き上げるという、このお約束は果たされるんでしょうね。
小泉内閣総理大臣 これは、平成十二年の年金改正法におきまして、「基礎年金については、給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」というふうに規定されているわけであります。
 ですから、安定した財源を確保する、あるいは給付水準、財政方式を含めてあり方を幅広く検討するという点というものを議論する時間がまだ十分あるじゃないか。これについて、それでは二分の一へ引き上げるのにはどうした財源があるのかというのは、私は、消費税以外にもまだまだ検討していけば出てくるんじゃないかと思っております。
五島委員 どうも、今の話を聞いていますと、さまざまな分野で検討する、それは検討する時間もあるし、やるということは結構です。ただ、問題は、国民に対して、この基礎年金の公費負担二分の一、これは議会において明確に約束された内容であり、それが結果においてできないというふうなことになるとするならば、そうでなくても今の政治に対する国民の批判というものが強い中にあって、セーフティーネットそのものに対する大変な不信につながるということで、もう少し明確に、当然それはやるというふうに断言をしていただきたいと思います。
 時間がありませんので、あわせて、この年金の抜本改革の問題について厚生労働大臣にもお伺いしたいと思います。
 現在、厚生省内部におきましても、この年金制度改革についてさまざまな議論がされております。ただ、現実問題として、この年金制度を、細かなところが議論中であるというのはよくわかるとして、どういう形でつくろうとしているのか、大枠の問題についてお話をお伺いしたいと思います。
 一つは、このデフレの時代の中において、積立金と現役負担を財源としたいわゆる現在の確定給付水準、これを続けるとするならば、積立金そのものが運用益がマイナスになっている、そういう状況において、果たしてこの確定給付制度というものが維持できるのかどうか。すなわちそれは、過去の膨大な積立金からの果実というものを取り入れずに、逆にそれがマイナスになっているという状況の中で、それが可能とお考えかどうか。
 もう一つは、確定拠出方式というのも最近さまざま議論されています。これまた、スウェーデンその他において採用されているということで、にわかに脚光を浴びてきています。しかし、少子化の進行速度、スウェーデンと比べてみて、この十年間で特殊出生率に直しまして約四割から五割ぐらいの出生率の減というふうな状態から見ました場合に、しかも、もう一方で高齢化がまだまだ向こう十五年間ぐらいは大変なスピードで伸びていくという状況を考えた場合に、ますます進行する少子高齢社会において、この確定拠出制度というものが制度として成り立つのかどうか。
 私は、この二つとも、実は我が国にとってデフレが、小泉さんが来年からでも変えるぞと断言されるんならそれは話は別ですよ、断言されても私信じませんけれども。そういうふうな経済状況の中において、確定拠出あるいは確定給付とも、そう簡単に制度の基本として採用できない。
 そうした場合に、その年金制度、社会保障の一番基本になる年金制度をどういう骨組みで改革されようとしておられるのか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 まさしく年金制度の骨格にかかわる御議論だというふうに思います。この骨格につきまして、ことし一年間御議論をいただく、国会におきましても御議論をいただく。そして、ことしの年末にはその骨格を決定させていただきたい、そういうふうに思っているわけでございます。
 その骨格の方向性につきましての大体の粗筋というのは、一つは、現在のこの年金制度の延長線上で、いわゆる保険料を一定限度の上限を設けて、そして年金額を決定していくという方法か、あるいは、年金額の上限を設けて、それに合わせた保険料の額を決定していくかという、現在の延長線上のお話が一つ。
 それから、その現在の延長線上の話ではなくて、もう少し骨格にかかわるところを切り込んでいく、組みかえていく、そういうこともこれは考え得るのではないか。その中の一つとしては、この基礎年金をすべて税で賄うというのが一つの方法だ。それからもう一つは二階建て年金の方を、これを民間にゆだねるというのが一つの方法ではないか。もう一つは、先ほど御指摘になりましたように、スウェーデン方式というのが存在する。
 これらのこと及びこれらのバリエーション、そうしたものによって考え得るのではないかという大枠のところの考え方を示しながら、そして御議論をいただいて結論を得たいというふうに思っているところでございます。
五島委員 今の話、聞いていますと、現在の状況の手直しをしてみたところで基本的に問題解決しないのは明らかでして、抜本的にどう変えていくかという議論になるのだろうと思っています。果たしてそれに小泉内閣はきちっとたえられるだけの論理性を持って国民に提示できるかどうか、そこが一番大きな問題だろう。私は、そのことについて一割ぐらい期待しながらも、九割ぐらいあきらめの気持ちもございます。
 ただ、一つだけ私の方から申し上げておきますと、どのような制度になろうとも、今約六兆円ぐらい積立資産が目減りしているわけですが、それにしても、まだ百四十兆を超す巨額な先輩世代からの積立金というのがございます。この積立資金をどう運用するか。今坂口大臣はそれを民間に任せてしまえばということですが、民間に任す、任さないという問題の前に、先輩世代の積み立ててこられたこの巨大な積立金、このお金をどのような形で、これまでのように五%あるいは最低でも三%の利回りで運用するよ、それができる間は、いわゆる保険料率に直して千分の七十ぐらいにも相当しますから、大きな意味は持っていました。
 今、それがマイナスであるという状況の中においては、その巨大なお金を直接使って、若い世代あるいは子育ての世代の支援のための貸付制度その他をきちっと創設し、そのことによって、年金制度が高齢期に対してのみメリットがあるというものではなく、全生活にわたってそのメリットが享受できるような制度をやはり考えていくべきであろう。
 巨額なお金ですから、公共事業にも使いたい、国債も返したい、場合によっては、否定されるかもわからぬけれども、株価安定のためのPKOに使いたい、そういうよこしまな気持ちでこのお金は使うのではなく、国民生活の安定のためにこのお金を使う方法はあるはずです。そういうことを含めたこの年金制度の抜本改革を考えるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど基本的なことを申し上げましたけれども、百四十数兆に達しております積立金のあり方、使い方、今後の方法につきましては、一番その中心になります今後の年金制度をどのようにつくり上げていくかということによってこれは変わってくるだろうというふうに一つは思っております。
 しかし、この基本のところの年金制度をどうするにしても、どうしてもやらなければならない問題が二つあるというふうに思っております。
 一つは、女性と年金の問題でございます。ここをどう決着するかということが一つございます。それからもう一つは、少子化対策にこの年金をどう結びつけるかということがもう一つだろうというふうに思います。
 今、先生が御指摘をいただきましたのは、そうした中での御発言というふうに承りましたけれども、そういうことも考慮に入れてこれから御議論をいただきたいと思っているところでございます。
五島委員 時間もありませんので、年金問題を、まあ次に移りたいと思うんですが、先ほどの総理のお話の中でも、さまざま議論をまだしていきたい、しなければいけないという状況は理解するとしても、やはり十六年度までに基礎年金の公費負担五〇%、この約束は、この約束というのは個人の約束ではなくて、議会におけるお約束は、これはやはり何が何でも果たされるということを明確におっしゃっていただけますか。
小泉内閣総理大臣 安定した財源を確保する、二分の一へ引き上げるという点も含めて、これから年金はどうあるべきか、今、厚生省案がたたき台として出しております。その案もたたき台として、これを含めて、今、各方面から抜本改革の案が出てきております。そういう点を排除するものじゃない、厚生省案をそのまま出すんじゃない。これを参考にするために、この一年間じっくりと議論しようという方針を、既に、先週ですか、先日の経済財政諮問会議でもその方針を打ち出しております。
 今、各方面から、年金というのは国民の最大関心事項の一つですから、幅広く意見を聞いて、安定的な年金制度へ向けて最善の努力をしていきたいと思います。
五島委員 次に、医療保険の問題に移りたいと思うんですが、先ほど菅議員も触れておられたわけですが、今、健康保険法の第五章、第七十条ノ三、「国庫ハ第七十条ニ規定スル費用ノ外政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行ニ要スル費用ノ中被保険者ニ係ル療養ノ給付並ニ」云々かんかんについての費用については「千分ノ百六十四乃至千分ノ二百ノ範囲内ニ於テ政令ヲ以テ定ムル割合ヲ乗ジテ得タル額ヲ補助ス」、こうなっています。これが本法です。言いかえれば、法律では、政管健保に対する公費の負担は、千分の百六十四ないし千分の二百と定められています。
 それで、この定めはあるわけですが、実は、九二年の健康保険法の改正のとき、その当時は健康保険の積立金が非常にあるということが理由で、公費の負担率を要するに一六・四%から一三%に引き下げられました。そして、本人の保険料も千分の八十四から千分の八十二に引き下げられたわけでございます。すなわち、保険料が八十四から八十二に下がるかわりに、国庫の補助金も一六・四%から一三%に引き下げられました。
 そのときの議論については、きょうここにも当時からおいでになられました先輩の議員もたくさんおられますので、よく覚えておられると思いますが、当面の間、ともかく平成八年までは二兆円も健康保険料が余ってくるんだ、だから必要ない、だから、この公費の繰り込みを減らすんだというふうに説明をなさっています。
 これについては、例えば、お亡くなりになりましたが、当時、自民党の住委員の質問に対して、「私どもは、今回の国庫補助率の引き下げが、一つは暫定措置である、二つ目には、引き下げても中期的に政管の財政は大丈夫である、」ということで答弁をなさっています。
 また、九二年、私が質問した質問に対して当時の山下徳夫厚生大臣は、「今回の国庫補助率の引き下げは当分の間の暫定措置であるということ」であるというふうにおっしゃっています。
 また、これもちょうど私と同じ高知でございますが、公明党の石田議員の質問に対して、そのようなお話をおっしゃって、必要があれば直ちにもとに戻すんだという前提のもとで、この保険料に対する、政管健保に対する国庫の組み入れを一六・四%から一三%に引き下げられました。それは現在も一三%のままです。
 先ほど菅議員の質問に対して総理は、三方一両損、私は聞きなれないことを聞いてびっくりしたわけです。たしか総理は、あのとき、三方一両損はどこどこか、保険者であり患者であり医療供給側だ、こうおっしゃっていたように思います。そういう意味では、では、総理の頭の中には、税で賄っている、いわゆる政府という問題は入っていないんだなということで考えていたわけですが、きょうのお話では、いわゆる公費と保険と本人、こういうお話でございました。
 こういうお話ですと、話が違います。基本的にはこれは、三方一両損、一方三両得の制度なんです。公費が本来なら戻さなければいけないときに戻さないままで、それを三方に押しつけたというのが前回の健康保険法の改正でした。
 このような制度そのもの、法律そのものとの乖離について、ここまで医療費が厳しい、厳しいというのであれば、当然ここにおいて公費の負担を戻さなければいけない。これが国会におけるあのときの約束ではなかったか。十年たった約束は無効だとおっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 確かに先ほど言いました。若干私も混同していた嫌いがないとは言えません。
 というのは、今、五島議員が言われることを言うと、本来、四方一両損になるわけですよね、税金もこれまた国民の負担ですから。診療報酬を下げる、医療提供側のことを言ったわけであります。その点は、確かに、今までの三方一両損の考え方とは違っていたということを、おわびがてら、誤解だった、混同していたということを申し上げたいと思います。
 あとは厚生大臣に。
坂口国務大臣 確かに、その当時の御質問、私も読ませていただきました。昨年でございますが、委員から同趣旨の御質問をいただいたこともございます。その当時のお答えとしては、明確にそういうふうにお答えをしているわけでございます。
 一六・四%から一三%に下げるということであったわけでございますが、一三%に下げましたけれども、その後、いわゆる老健の拠出金につきましては一六・四%に戻している、これも御存じのとおりでございます。ことしの予算におきましても、政管健保から八千億円ぐらい出ておりますが、その中の拠出金は三千八百億円ぐらいございまして、これは一六・四%になっているわけでございます。
 その当時、当然予測はされていたとは思いますけれども、予想以上に進んでまいりましたのが高齢者医療でございまして、七十五歳以上の高齢者医療に対して二分の一負担にするということは、非常に、その当時は考えられていなかったことだというふうに思います。これはかなりの国費を投入していただかなければならないわけでございます。それをスタートさせまして、五年間で七十五歳以上二分の一というものを確立するということになりまして、平成十九年にはそれができ上がるわけでございます。ですから、年々歳々、国費の投入もこれからふえていくということでございます。
 こういう状況の中で、これから、現在の政管健保あるいは国保あるいは組合健保というものを、このままでいいか、それとも、もう少しここの改革すべきところは改革をしてむだをなくしていこうではないかというのが現在の一つの抜本改革案の大きな柱でございます。そうしたことを行うことによって、その御趣旨を私たちは酌み取っていきたいというふうに思っているところでございます。
五島委員 今大臣おっしゃいましたように、そのとおりなんです。その当時予測されていなかった老人医療が非常に伸びてきた、それに対しては一六・四%に戻した。だけれども、保険を払っておられる御本人の医療費に対しては、その暫定措置を続けたまま今日に来て負担増を求めておられる。そして、そういう状況の中で、二〇〇〇年までには医療の抜本改革をする、これもまた国民に対して公約されてきた。それが現実にはできていない。
 先ほど、菅さんの質問に対して総理の方は、自民党はまとまっていないというふうなお話をお聞きしましたけれども、たしか私は自民党さんの方が老人医療についてはいわゆる独立方式でまとめられた文書を読ませてもらったんですが、あれは違う文書なのかどうか、党で合意されていない文書なのかどうか知りませんが、たまたまそういう文書を見ました。
 いずれにしても、この話が二〇〇〇年までに解決をつけておれば、老人医療の問題を含めてこういう状況を避けられたんですね。結局、問題を先延ばししてきた結果、そうしたものがすべて今日国民に対する負担の増につながっている。
 また、今回の二割から三割への引き上げの問題について、私はもう既に法案が昨年議論されたそのときの状況を蒸し返すつもりはありませんけれども、少なくとも、例えば今皆さん方のところに日医の方から出されている数字、これは日本医師会の出している数字です。二〇〇二年の予算段階において、厚生省の政管健保の収支見通し、単年度収支で七千七百八十二億円の赤字、事業運営安定資金も千八百十二億のマイナスである、そういうふうに言われた。これが三割負担導入の根拠とされた。これは、この数字は私どもも厚生省から御説明を受けています。
 しかし、実際に、平成十四年度になりまして、診療報酬の引き下げが非常に効果があった、老人医療に対する十月の措置が非常に効果があったということで、単年度の収支を見てみますと、医療費そのものは、年度の途中からでございましたから、三千百六十二億の赤字になるけれども、事業運営安定資金は千九百億のプラスを維持する、すなわち、トータルで見ますと、三千七百二十一億円の改善があった、こういうふうに政管健保について医師会は言っています。
 しかも、来年からは総報酬制による保険料の徴収が開始されるために、単年度収支は四千九百九十五億円の黒字になっていく、さらには、二〇〇四年になると老人拠出金の削減が本格化するということで、当面の間は大丈夫だというのを日医は言っておる。
 この細かな数字についてはもう少し検討しなければいけないけれども、基本的な政管健保の傾向はそうなんだということについては、私どももそうだと思います。そうだとすれば、ここであえて二割から三割に医療保険の自己負担をふやすこと、そのことにどれだけのメリットがあるか。おっしゃっておられるように、二年以内に医療の抜本改革ができるのであれば、そのときまで凍結しても何ら問題ないではないか。
 ついでに申し上げれば、これは何か与党の方では、予算の組み替えが必要なんだということでできないなんて話がありますけれども、法律の中に、公費の組み入れは一六・四%から二〇%まで法律上組み入れられることになっているんですよ。極端に言うたら、予算の変更なしにだってできるはずの話だ。やる気がないからそういう理屈をつけておられる。
 しかも、自己負担増が医療費の効率的、適正な結果になるのであれば結構。だけれども、現実に、前回の一割から二割への引き上げのときにどうなったのか。糖尿病や高血圧といった、生活習慣病の患者さんの完全治癒率は三〇%ダウンした。必要な治療を受ける人が三割も減った。その結果、例えば糖尿病で腎透析を受けなければいけなくなった人、あるいは足を切断しなければいけなくなった人、あるいは糖尿性の網膜症を起こして視力障害を来した人、いずれもが年間一万人をはるかに超すという数になる。トータルの医療費に直してみたら、この糖尿病ということについて限って言うならば、完全にあの措置は、健康を悪化させて医療費を増大させるという結果になった。
 今日の医療費の上位一割の人が、医療費総額の四割を超えていると言われている。すなわち、進行した重症の患者さんをふやすことが、今の医療費の増大につながっている。そのことを考えた場合に、そうした患者をまたまたふやすであろう二割から三割への引き上げを、何かメンツをかけてしなければいけないということについて、私は非常に奇異な感じを感じております。
 その辺を含めて、厚生労働大臣、坂口さんも、もともと公衆衛生を専門にしてこられた先生、医者、尊敬する医者でございまして、そういう意味において、その辺のところを、一体、国民の健康度とコストパフォーマンスを考えた場合に、果たしてこれは有効な措置なのかどうなのか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 一番最初、御指摘をいただきました医師会の数字等のお話でございますが、確かに、私もその数字をちょうだいいたしました。
 しかし、そこで一番違っておりますのは、老健拠出金、退職者拠出金、そこのところの数字が非常に小さく見積もってあるというところが我々の計算と大きく違うところでございまして、そうしたところを修正していただきますと、ことし、もし仮に三割にしないということになりますと、政管健保も三千四百億円ぐらいのマイナスになる、赤字になるということでございまして、それは一方におきまして、この政管健保に加入しておみえになります方の人数もうんと減っているということも影響していることも、ひとつ御理解をいただきたいというふうに思います。
 そうしたことで、安定したこの医療保険制度を堅持いたしますためには、お願いをすることはお願いをしなければならないわけでございます。お願いをすることによって、今、次の御指摘は、本来医療を受けなければならない人が受けなくなるのではないかという御指摘であったというふうに思います。
 これは、今回のこの改定の中におきましても、いわゆる入院をされる皆さん方、その皆さん方には上限がつくられておりますし、低所得者の皆さん方の場合には上限は据え置きにいたしておりまして、それによって、この改定によって厳しくならないように配慮をいたしております。軽い病気の人が重い病気の人を支援する、所得の多い人が少ない人を支援する、そういう大前提のもとに組み立てたものでございまして、そこはひとつ御理解をいただきたいと思っている次第でございます。
五島委員 確かに、失業、リストラの時代、保険の加入者が減ってきている、かなりそれも急激に減ってきている、そのことによって保険収入が減少してきている、その点は新しくて重要な課題だというふうには思っています。
 しかし、そのこと自身が国民生活の逼迫感を示しているわけであって、そうであるから保険料、自己負担をふやすというのは逆さまの議論だろうと私には思えます。
 あわせてお伺いしますが、先ほどの議論にもございましたが、医療の抜本改革、三月には厚生省の試案を出されるというお話でございます。今、厚生省が出しておられるのは、いわゆる突き抜け方式、財政を含めたリスク構造調整をした突き抜け方式、もう一つは、独立型の方式というのが示されています。自民党さんの出されたのを見てみますと、どちらかというと、独立型に限りなく近づいたものを、あれが正式のものかどうか知りませんよ、先ほどの話、というふうに受け取ります。
 問題は、これは二つともそれぞれには欠点があると思います。
 まず、突き抜け方式の場合は、支援する被用者の中では財政も含めたリスク構造調整をやるといいながら、支援を受ける側の国保との間の財政調整はやりようがないという状況の中で、果たしてうまくいくのだろうか、これはだれもが常識的に思うところです。
 そして、独立型、厚生省型でいきますと、いわゆる退職医療はそのまま突き抜けにしております関係で、あれでいった場合は国保はもたないんだろう、国保は大変厳しいことになるということもだれもが簡単に理解できる内容です。
 しかし、これまでの行きがかり上、厚生省は、その二つ以上に踏み込めないのかどうか。例えば、国保をもたすためには、いわゆる退職者医療のところはそのまま国保に移してしまうというところで量的に担保することによって、いわゆる独立型というものは、国保をそれほどいじめることなしにできるとかいうふうなことはあるだろう。
 いずれにしても、今、老人医療をもう少し長期的に安定した制度に変えない限り何ともならない。何か保険制度の問題だけの議論でこの医療の抜本改革の問題が終わるということではまずいだろうというふうに思うわけです。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
 それから、時間がありませんのであわせて申し上げさせてもらいますが、医療制度の抜本改革の問題です。
 やはり医療というものは、これまで出来高制度というものが、医療機関が提供するその技術一つ一つに対する出来高制度である。すなわち、その疾病をお持ちになった患者さんに対する出来高制度とかいうものではない。そこのところに、重複受診の問題やいろいろな問題があります。
 先ほど、私は聞いていて、逆もあるなと思ったんですが、最初から病院へ行かれるよりも、最初は診療所へ行かれてと言われるけれども、場合によったら、初診の段階で、きちっとした検査のできる病院で、診断はきちっとつけてもらって、そして、それに対する疾病管理といいますか、治療を含めた管理については地域の開業医の先生に紹介していくという制度の方が、より医療の合理性というのはあるのではなかろうかなというふうにも思っています。
 そういう意味では、疾病についての治療方針というものを各医療機関がそれぞれにばらばらに出して出来高でやっていくのか、それとも、その患者さんの病状に対して合理的な治療方針というものを基本的に出して、その治療方針のもとにおいて、病診連携体制を強化する中で治療していくということがいいのか。そこのところは一つ大事な問題で、それがいわゆるアメリカ型のDRGではない方向というのがあるのではないかというふうに思っています。
 それから、もう一つ大事な問題は、さっきも言いましたが、日本の医療の中の一割の高度医療といいますか高額医療をしておられる方が、日本の医療費の約四割ぐらいを使っている。その中のやはり圧倒的な部分が、公私含めた大学病院の医療であることは間違いありません。
 大学病院というのは、医師のあるいは医学生の研修というものを兼ねた医療機関ですから、やはり一つの病気を診断するに当たって、それを学生が理解できるように、さまざまな検査やさまざまなことをやります。それを全部出来高で払っていくのがいいのかどうか。私は、これは思い切って現在の診療報酬の体系と別建てのものに考えていかないとだめなんではないかと思っております。
 そうしたことを含めた抜本改革を本当に三月に厚生労働省は出されるのかどうか、そこのところをお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今御指摘をいただきましたように、この抜本改革というのは、三本ないし四本の柱になっております。一つは、今お話がございましたように、医療保険をどのようにしていくかという問題、それからもう一つは、高齢者医療をどうその中で位置づけるかという問題。そして、診療報酬体系をどのように整備するかという問題。それから、もう一つつけ加えれば、医療の質をどう上げるかという問題がある。その中にさまざまあるだろうというふうに思っております。
 これらのことにつきましての厚生労働省の案というものをお示し申し上げて、そして、いろいろの検討をしていただいているところでございます。その検討の結果によって、この三月末までに決定をさせていただきたいというふうに思っております。
 ただ、先ほど先生から御指摘をいただきました中の、厚生労働省の言っておりますA案というのは、突き抜け方式という形ではなくて、すべての保険者の間の年齢リスクそれから所得リスクというものの調整を行うということをその中に盛り込んだものでございまして、そうした行き方で、総がかりで高齢者医療を見ていこうじゃないか、そういう一つの行き方でございます。
 しかし、そうではなくて、やはり少しここは独立をして考えた方がいいというのがB案、我々の示しておりますB案でございまして、自民党の中でもそういう御議論をいただいているところでございます。
 こうしたことを中心にしまして、我々としましてもいろいろの御意見を集約していきたいというふうに思っておりまして、現在、その集約中でございます。
木村副大臣 大学の医療の点について御指摘がありましたので。
 実は、この四月一日から、先生から御指摘をいただいたような大学におきましては、いわゆるDPC、包括医療を導入することでもう既に決定をいたしておるわけでございまして、すべて改革が先送りというのがございましたけれども、決してそういうことはなくて、次々と、着々と改革の方は進行していっている、こういうことをぜひ御理解をいただければ、このように思っております。
五島委員 DRGをDPCと変えてみても、それを大学病院だけに導入してみても、これまでの大学における医療費の平均的なところを標準化しようというわけですから、私は余り評価しておりません。
 また、時間がありませんので申し上げておきますが、私はやはり、一九九二年の健康保険法の改正のときにさまざまの方々が医療の抜本改革について話をしておられます。その中で、お亡くなりになられたから言いやすいわけですが、住議員の指摘というのは極めて私は核心をついた御議論を展開しておられると思います。
 今大臣も、医療保険の一元化と。理念としてのそのことについて私は決して否定はしません。しかし、更地に家を建てるようなことが、ここまでの歴史がある中で、何ぼ小泉さんの乱暴でもそうはできないということを考えると、やはり住議員なんかのあの当時の議論というものを含めて、厚生省の中で十分に議論していただきたいと思います。
 最後になりましたが、もう一つだけ質問をさせていただきます。
 最近、生活保護が大変ふえてきています。特にここ三年間ぐらい、生保の受給者はふえてきているわけですが、ただ、これを見てみますと、平成二年度の生保の保護者数は約百一万人、それに対して今年度が百二十四万ということですから、約二〇%ぐらいふえているわけですね。ところが、医療扶助の額、これは補助額全体がふえておりますから機械的には言えないわけですが、平成二年の医療扶助額は七千三百九十九、約七千四百億です。それが、今年度の推計では一兆一千四百二十二億、六十数%ふえている。
 何を意味しているか。やはり、昨今の生保へ移管される方々というのは、やはり経済弱者になられただけじゃなくて、そこに健康弱者が重なってくる、病気になっていく。そして、医療扶助を受けられて、生保にそのまま移管されるというケースが非常にふえてきたということを意味しているんだと思います。そして、先ほど坂口大臣自身も御指摘のあったように、今健保の加入者は減ってきているんです。健保の加入者が減ってきている上、国保の方の未加入者が、未納者といいますか、非常にふえてきています。
 すなわち、どういうことかというと、無保険者がふえてきているということです。そういうふうな存在がふえてきた場合に、その方がもし病気になって医者にかかった場合、国保に入りたい、国保へ行きますと、未納部分を払わないと国保をもらえない、保険を交付してもらえない。そうであれば、もう医療扶助を請求して、医療扶助で二、三カ月過ごした後に、仮に何らかの生活の糧が得られたら、改めて国保に移るというふうな方法がやはりとられるようになってきている。
 これ、どういうことかというと、やはり失業とか病気によって退職するときの医療保険の制度、ここのところが極めて対応が不十分であるということを意味していると思うんですね。
 そういう意味では、今の、退職したら国保になるということになりますと、その退職前年度の総所得に対して、地方税と連動しますから、国保料を払わないといけないということで、それまでの保険料の大体二・数倍というふうな保険料を払わないといけないし、継続医療にするとしたら倍払わないといけない。これは職を失った人にとっては大変です。この制度についてやはり何らかの措置をすべきであると考えるわけです。そうでない限りは、やはり生保というのが非常に不公平な形でどんどんふえてしまうだろうというふうに思われるわけですが、大臣、どうお考えですか。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
木村副大臣 まず、先生が御指摘いただきました生活保護者の件でございますけれども、年をとられましてから、いわゆるひとりで暮らしている方々がふえているということは事実でございます。
 それから、今御指摘いただきました失業者の国保の件でございますけれども、とりあえず失業された方々が、例えば資産を持っているという方々もございますので、すべて押しなべてこれを直ちに免除とか減免とか、そういう措置を講じるのはいかがなものか、こう思っておりますが、これは実は市町村の自治事務でございまして、市町村において判断がゆだねられているわけでございます。
 厚生省といたしましても、先般、担当者を集めまして、こういう特別な場合にはできるだけ、市町村の判断ではあるけれども、理解をしてやってほしいということを指示したところでございます。
坂口国務大臣 生活保護者が非常にふえてきておりますことは、もう御指摘をいただいたとおりでございます。それは今、木村副大臣から御答弁申し上げたところでございますが、あわせて、先生から御指摘をいただきました退職者との関係の問題、ここは大変大事な御指摘だというふうに思います。
 今後ひとつ、そういったことも含めまして、退職者がそのまま生活保護の方に結びついていくとは考えませんけれども、しかし、その可能性もそれはなきにしもあらずでございますから、その辺のところはよく調査をし、検討させていただきたいと思います。
五島委員 最後になりますが、この点につきましては、昨年の国会におきまして、私どもの方から、失業時の医療保険負担というものの軽減について、制度上、例えば国保については、前年度の所得を三〇%とみなした国保料を一年間に限ってやったらどうだ、継続をする場合、退職時の給与を六〇%であったというふうにみなして、その継続を一年間やらせたらどうだと。それによる財政影響も出して、議会へ出したわけでございますが、残念ながら、与党の皆さんの賛成を得られずに、廃案になってしまいました。
 しかし、廃案にして与党の顔が立ったということではなくて、この問題を放置しますと、高齢者に対して、すなわち円満に退職された人については引き継ぎのどうのといいながら、リストラや病気で職をやめることを余儀なくされた人に対しての措置は全くない、そこにあるのは生活保護だけだ、そういうふうな状況。私は、これは極めて不正常な状態である、そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
藤井委員長 これにて五島君の質疑は終了いたしました。
 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 きょうは、総理大臣とぜひ、年金、医療、介護という、今国民が一番関心もあり、また一番心配しているこの問題について議論をしたいと思います。
 二月十二日、野党がいわゆる三割凍結法案というものを議長のところに出してきたんですけれども、この点について、自民党の中で、これはいわゆる反対だと言っている方々もいるんですね。この点については総理はどうお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 この三割負担引き上げ問題については、当初、法案化する前にも、賛否両論が自民党内の中であったことは事実であります。かんかんがくがくの議論の末、三割負担の法案提出にこぎつけて、そして昨年成立したわけでありますが、今、当時の反対していた方々が、実施を目前にして、また反対されている方が中にいるということは私も承知しております。
 しかし、この問題、いろいろ議論した末に、そして法案で審議している過程におきましても、賛否両論が出てきたのは承知しております。そういうことからして、この問題につきまして、四月から実施ということについてはいまだに反対論が強いのは承知しておりますが、御理解いただきたい。
 ただいま五島議員が、極めて含蓄の深い、医療制度の難しさ等、あるいはまたあるべき改革について御提案をいただきましたけれども、どういう形がいいか、それぞれ一長一短ございます。どのような方策をとるにしても、この医療制度については、いい点、悪い点、今の悪い点を直そうとすると今までのいい点も損なわれる点があるという御議論も多々あるわけでありますが、今回三割負担をお願いすることによって、今後、あるべき改革に向けて、さらなる国民の理解を得るように努力をしたいと思っております。
武山委員 去年、強行採決して、現実に与党が絶対数を持っておるわけですからこの法案は通ったわけですけれども、それで、診療報酬改定や保険料引き上げによって政管健保の財政は一時的にでも回復するのではないかと言われておるわけですけれども、医師会が、これに対して、破綻することはないと言っておるわけです。先ほど財源の話が出ましたけれども、医師会が言っているのとそれから政府が言っているのと違いがあるんですけれども、医師会が間違えておるんでしょうか。その辺の説明をぜひお聞きしたいと思います。
 私は、総理と今回はやりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
小泉内閣総理大臣 現時点での医師会については坂口大臣の方がよく御存じだと思いますので、あとは譲りますが、私は、医師会は医師会としての試算があると思います。それが当たっているかどうかというのは、実施した段階で、しばらく状況を見きわめる必要があると思います。政府は政府としての見通しもございます。
 そういう点を、どちらが正しいかどうかという問題は、今後、この実施状況を見て、医師会の言い分もあると思います、そういう点も参考にしながら、四月からの実施状況をよく見て、今後判断すべき問題ではないかなと思っております。
武山委員 医療の抜本改革という点で、やはりきちっと抜本改革の道筋がしっかりと国民にわかるように、こういう道筋でやるんだということで納得がいけば、国民は必ずそれは負担すると思うんですね。ところが、負担が先にありきで、やはり道筋がわからない。
 では、例えば、ぜひ国民に説明していただきたいと思うんですけれども、私も実は交通事故に遭いまして、日々あちこちの総合病院に行っておるわけですけれども、相変わらず物すごい人が待っているわけですね。すなわち診療待ち。それで、実際は三分から五分、診療時間は。それで、もう五分過ぎると後ろに看護婦さんが来まして、いわゆるプッシュして、早く、次のお客さんというのが現実なんですね。
 それで、そのときに私は支払いの請求書を見ましたら、四百二十円なんですね。実際に、交通事故でこの辺を打ったものですから、いろいろ体を診るので行っておるわけですけれども、そういう場合、現実には三分から五分の診療、そして物すごい待ち時間。それでいて自己負担、私は四百二十円だったんですけれども、三割負担なんですね、国民健康保険は。
 ですから、そういう実態も、どういうふうにして医療改革の中で、では、そういう待ち時間の問題、診療、いわゆる提供体制の側に立った、すなわち、抜本改革というのはどういうことになるんでしょうか。
 例えば、そのお医者さんが個人で診療所を持って、シリアスな問題だけは病院に所属して、その高度の医療機器を使ったり、大きな手術をしなきゃいけないときに総合病院、大病院に行ってするのか、日ごろはお医者さんが診療所で診るのか。国民に対して、こういうふうになりました、だからこういうふうに負担しますという筋道が見えないんですよね。
 それで、首都圏といいましても東京は、大病院、総合病院、いい病院じゃないかと思われている病院、それでも相変わらず医療ミスは起こっている。私の地元で見ますと、やはり総合病院が、きちっと信頼の置ける病院が少ない、ほとんどない。いわゆる二十床以下の、十九床以下の小さな病院が本当にたくさんある。そうしますと、やはりいろいろと風評もあって、あそこの病院よりも大病院の方がいいということになりまして、そういう病院がなかなか大きくなれない、いい医者も雇えない、そういう現実があるわけですね。
 そういう現実をどのように国民に青写真として、抜本改革はこうなりますよ、提供体制はこうなりますよ、そういうものをお示しいただきたいと思います。
坂口国務大臣 また総理からお答えはあるかと思いますけれども、今お話をいただきましたのは、病院と診療所との連携をどうしていくかということに尽きるんだろうと思うんですね。
 これはなかなか難しい問題でありまして、皆さんにまず診療所から行っていただいて、そして紹介をもらって大きい病院にという話、先ほどの五島先生のように、大きい病院にまずかかって、それから診療所の方に紹介状をもらってというケースもそれはあるだろうと思いますが、その辺の流れがうまくいけば、大きいところにたくさん重なるということはないんだろうというふうに思うんです。
 しかし、ここはそういうふうに今しようと一生懸命になっているんですけれども、個々人の、どこにかかりたいかという御希望もございまして、なかなか思ったとおりにはいきにくいという面もございますが、流れとしましては、大きい病院から、診療所の方にお手紙を書いていただいて、その後はその病院でかかっていただく、またある時期が来ましたら、大きい病院にかわっていただくということの流れをよくするということを、ここをひとつ明確にしていかないと、皆さん方におこたえができぬだろうというふうに思っております。その辺のところも今考えているところでございます。
武山委員 地域によって大変格差があると思うんですね。やはり首都圏は大きな病院、総合病院が集中している。しかし、地方に行きますと、いわゆる人口の多いところでは総合病院はありますけれども、人口の少ないところはなかなか総合病院はない。住んでいる人は、近くていい病院、いい医療を受けたいということなんですよね。自分の住んでいる近くでいいお医者さんに、いい病院にやはり行きたいということは、もうだれでもがそう思っているわけですね。
 それで、やはり地域になくて、私は埼玉ですけれども、埼玉の東部地区にはなかなかいい病院がなくて、やはり東京志向で、東京に総合病院があるということで来るわけですね。そうしますと、地域の医療が充実することは、やはり地域にとって一番いいことなわけですね。でも、その地域は小さい病院が乱立していて、なかなか総合病院をつくるというところに、もう十年も二十年も努力していても、首長さんのリーダーシップに欠ける、またそこの地域の議員さんの努力も足りないということで、一番損害をこうむるのはやはり患者の側なんですね。医者に行きたい側なんですね。
 そういう整理が、大病院があるところは大病院から地域の診療所という流れですけれども、先ほど坂口大臣がおっしゃったのはそういう流れですけれども、地域にいい病院がなかったらどうするかということなんですね。それで一番不安に思っているのは、やはりいいお医者さんにかかりたい、いい病院に行きたい、老後、もう心配だということなんです。その辺、総理大臣はどう思っていますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 地域の病院について、医療の点において難しいのは、自由市場経済とはどうしても合わない部分があるわけです。公共性、統制的な面、規制的な面、そしてなおかつ、保険制度といっても規制も強いですし、税金を投入している。自由にやればいいというと、じゃ、お金のある人ばかりが受けられて、お金のない人の医療はどうなるのかという問題も出てきます。そういう難しさがあるものですから、今まで、一つの案が出てくると、これは今までのいい点が伸ばされるという面と同時に、これによって失われるいい点と、あるいは副作用の面が論じられて、なかなか進まないという面があったわけです。
 現に今、地域の大病院集中傾向の弊害が多過ぎるから、イギリスみたいに、まず大病院に行く前に必ず診療所に行かないと大病院に行けませんよというんじゃなくて、日本の今の、だれでも診療所であろうが病院でも行けるという、自由な医療機関に行けるよさを残しながら、どうやって大病院集中体制を直していくかという方法を講じられている。
 同時に、出来高払い制度というのは、本来私はいい制度だと思っています。しかし、それが行き過ぎて、不必要な検査、不必要な治療までする、後は保険で面倒見てくれるというんだったら、これは医療費どうするんだという点があるから、今、出来高払い制度を包括払い制度に変えていこう、あるいは診療報酬体系を見直そうと。
 しかし、出来高払い制度を包括払い制度にしても、これはいい点ばかりじゃありません。マイナス点もあります。一定の額を決めたらいい治療できないんじゃないかという心配も出てきている、反対論者もいることは事実であります。しかし、今までの不必要な検査、不必要な診療というものを直していく点においては、慢性病の程度については包括払い制度でいいんじゃないかという、反対論もありますが、大方の賛成を得て、その方向に今、この包括払い制度を取り入れていこうという制度になっております。
 だから、こういう面において、それぞれ一長一短あるんですが、現状でいいとは思わない、少しでも改善の道を施そうということで、地域の状況を見ながら、国民ができるだけ低い負担で、いい治療が得られるような医療制度はどうあるべきかということを今検討してまとめているところでありますので、今後、この問題については、国会においてももちろんでありますけれども、国民各位の賛否両論ある中で、少しでも改善の道を講ずるような改革に進んでいかなきゃいかぬと思っております。
武山委員 それですと、非常にあいまいだと思うんですよね。もう何年もそういう議論しておるのも現実なんですよね。それで、もうみんな力尽きて、疲れ果てているんですよ、そういう議論に対して。
 特に、この首都圏においては、いい病院とされている、総合病院とされている大きな病院がある。しかし、地域では本当にあきらめざるを得なくて、我慢している状態なんですよね。じゃ、地域ではどうしたらいいのか、だれがリーダーシップをとったらいいのか。首長だと思うし、そこの議会だと思うんですけれども、そこも放棄している。じゃ、県はどうか。県はまた県で、結局地域で医療をしていかなきゃいけない。都道府県単位、市町村で国保や何かしている。じゃ、だれがやるのか。やはり総理しかいないと思うんですよね。ですから、総理のリーダーシップをみんな期待しているんですよ。
 それで、総理は、厚生大臣もおやりになっていながら、国民の目から見ると、議論を待っている、審議会に投げている、それでその議論が上がってきてからと。期待しているにもかかわらず、トーンダウンしているんですよね。その総理のリーダーシップをお話ししていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 そういう点を含めて今改革案をまとめている最中でありまして、私は、恐らく、議論に任せていたら、三割負担導入よりも保険料引き上げる方を選んだでしょうね。私は、保険料引き上げるよりは三割負担の方がいいということで、三割負担を決断したんです。
 今回、いろいろ抵抗がある、今まで認められていなかった規制を改革していこうということで、特区法案、これも今大詰めを迎えております。そういう突破口を導入して、少しでもこれからゆっくり改革に向けて努力をしていきたい、そういう点において指導性を発揮していきたいと思っています。こういう問題についても必ず反対論は出てきますけれども、これはやむを得ないな、できるだけ国民の理解を得て、実現に向かって努力していきたいと思います。
武山委員 特区のお話が出ましたけれども、実際に、大病院にしても小さな病院にしても、医療従事者が経営から運用から教育からすべてやっているというのが日本の現状ですよね。ですから、それはもう本当に大変だと思うんですよ。
 医者は、医者としての技術、またそこで患者に対する医者のいわゆる仕事、それに集中すべきだと思うのに、医者が経営にも参画し、また運営もしなきゃいけない。そういう意味で、特区の中では例えばどういうことを特別にやろうとしているんでしょう。
坂口国務大臣 特区の中ではいろいろなことが提案をされておりますけれども、その前に、医療制度の改革のやはり柱を先にやらなければいけないというふうに私は思っております。
 先ほど総理からいろいろお話ございましたように、いろいろやらなければなりません。その中で、どこの病院がいいか悪いかということはかなり情緒的なものもあるわけですね、あそこがいいと言われるとそうかなと思う。私は、もう少し、どの病院が何を専門としているのか、どういう成績を上げておみえなのかということの情報開示がまず大事なんだろうというふうに思っております。それをまずやる。
 それから、二次医療圏と申して、全国三百六十に割ってあるわけですが、その中に一つは中心的な病院をつくるというやはり計画と申しますか、そういう方向でいく。そして、その地域に小さい病院もたくさんあるということにして、そういう一つの流れをひとつつくっていかないといけないというふうに今思っているところでございます。
武山委員 最後の質問になりますけれども、要は、医療費がもう本当に、高齢者医療費が膨大に、右肩上がりで上っている。そういう医療費の歯どめに対して、予防医学が欧米で盛んに取り入れられて、それが非常に医療費の抑制にもなっているわけです。と同時に、例えば新薬に対する薬価、薬の価格が非常に高い。後発品に対しても患者が選択できるための情報ですね、そして安く、これでもいい、このお薬でもいいという、そういうものも入れていかなきゃいけないと思うんですね。
 その予防医学にも保険を適用したり、それから、後発品ですね、そういうものに対してもきちっと選択肢を示せるような医療提供体制、患者と医療側との情報提供というか、その辺の連携も大事だと思いますけれども、予防医学に対する保険適用、それからいわゆる後発品に対する見解を厚生労働大臣から伺って、私の質問を終わりにしたいと思います。
坂口国務大臣 お薬の話につきましては、できる限り後発品につきましてもお使いをいただくように、いつも御指摘をいただくように、余りにも少な過ぎるものですから、これはもう少しPRもしなければいけませんし、そして、公的な病院におきましても使っていただくようにしなければならないというふうに思っておりまして、鋭意努力をしているところでございます。これは、このままやっていきたいというふうに思います。
 それから、その問題と、予防医学のお話でございますが、これは本当は、予防医学の分野を保険医療の中に取り入れることができれば非常にこれはいいわけだと思うんですけれども、余りここを入れ過ぎますと、また大変な拡大をしていくということがあるわけでございまして、どこまで、どういう点について保険適用をしていくかということを少し決めてやっていかないといけない。ですから、その辺のけじめをつけながら、ひとつ予防医学の分野を適用していくということが大事だというふうに思っている次第でございまして、その辺のところの研究をしているところでございます。
武山委員 まだ一分ありますので、いわゆる予防医学の話ですけれども、例えば歯医者さんに行きましたら、年間二回ぐらい歯のチェックをしていただく、やはり六カ月に一遍ぐらいはチェックしていただく、それが予防医学として保険に適用されましたら、歯が痛くなってから行かなくても済むわけですね。例えばそういうふうな例に対してはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 一番問題になりますのは、健康診断と保険の適用の問題だというふうに思います。その辺のところをどこの辺で、先ほど申しましたように筋道をつけて、何をそこで認めていくかということだろうというふうに思っておりまして、少し今後検討させていただきたいと思っております。
武山委員 以上です。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて武山君の質疑は終了いたしました。
 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 医療の問題で、主として総理に質問をいたしたいと思います。
 昨年十月から始まった医療改悪は、予想どおり、国民生活に深刻な打撃を与えつつあります。今お手元に配付しております資料の一枚目は、数日前に発表された昨年十月の高齢者医療の実績であります。これを見ると、高齢者医療費は、入院外、つまり外来で、受診延べ日数が対前年同期比マイナス四・四%、一日当たり医療費がマイナス五・九%、総医療費で一〇・一%の落ち込みとなっております。その数カ月前からの動きとの関係で見ますと、十月の受診回数の落ち込みが目立ちます。
 総理は、去る十二日の党首討論で、我が党の志位委員長に対し、必要な医療がおろそかにされるとは思っていないと述べられましたが、医療費が一割負担になった途端にこれだけの受診抑制が起こっていることが明らかになりました。私たちが心配したとおりになっております。
 二月九日の朝日新聞に、大野義一朗さんという医師の方の投稿が載っております。それには、最近、点滴は幾らですかと聞かれたり、こっちの方が安いからと薬の変更を求められることがよくあります、以前はこんなことありませんでした、先日は、なじみの患者から薬が余っていると言われ、わけを聞いたら、食事を一日二食にしたからということでした、毎食後ということで一日三回分出していたから余ったんですとあります。大野さんは、二十年医者をして、こんなこと初めてと言っております。
 総理にお尋ねしたいんですが、こういう数字や医師の証言を聞いても、必要な医療がおろそかになっていないというふうに判断されますか。
小泉内閣総理大臣 必ずしも、三割負担になったから必要な医療がなされないとは思っておりません。(小沢(和)委員「いやいや、老人ですよ」と呼ぶ)高齢者につきましても、一割負担になったから医療機関に行くのをやめたという方も中にはあるでしょう。あるいは、毎食後飲めと言われたのを、二食だから一回しないということがあると思いますが、必要な医療、これは、どうしてもというんだったらば、私は、多くの方は多少費用がふえてもお医者さんに行くと思うのであります。
 私も、風邪を引いたときに、風邪薬を毎食後飲みなさいと言われるんだけれども、三日飲んで治らなかったら薬やめちゃいますね、一週間分もらっても。かえって胃が悪くなっちゃう。そういう思いがあるので、私は、治すのは薬だけじゃない、やはり日ごろの生活、よく休養をとることも大事。休養しないで薬を飲んだって、これは治りっこありません。だから、そういう面もやはりよくこれから国民の皆さんに考えてもらわなきゃならない。
 現に、それでは、国保に入っている方は今までずっと三割負担でした。なおかつ、健保にしたって家族の方は三割負担です。それで本当に必要な医療が行われていなかったかというと、必ずしもそうじゃない。だから、今回健保が三割になったからといって、一概に、すべての必要な医療が行われていないというふうにはとれないんじゃないでしょうか。
小沢(和)委員 今総理は、どうしても必要だというんだったら行くんじゃないですかと言われましたし、今までこの予算委員会で、一割負担といっても上限があるから大丈夫だというふうに繰り返しておられます。しかし、わずか数万円の年金だけで生活している高齢者にとっては、低所得者の上限である八千円でも負担できない人がかなりいるのが現実であります。まして、その八千円を超える分についても、今の制度では、一たん全額を窓口で支払わなければならない。その後、市町村役場に行き償還手続をすると、ようやく二カ月後に返ってくる。この一時的な立てかえのお金がないわけです。結局、お金のことが心配で医者にかかれない。これが多くの高齢者の現実であります。
 総理、こういう人たちが多数いるために、一割になった途端に病院に行く人が減り、一〇%以上も医療費が下がったということではないんですか。上限があるから心配ないなどとは言えない。一割負担を押しつけたこと自体が誤りだったということを率直に認めて、こういう人たちに対する緊急の救済策を考えるべきじゃないでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど、昨年十月のお話が出まして、確かに高齢者の皆さん方のところが下がっております。しかし、そこで注意しなきゃならないのは、関係のない若い人も下がっているんですね、この十月で。その辺の、なぜ下がったかということについて、もう一、二カ月状況を見させていただかなければならないというふうに思っております。それが一つでございます。
 それから、その次にお話がございました問題につきましても、これから鋭意私たちとしてはやっていかなければならないというふうに思っております。いろいろ今までから何度かもう御指摘をいただいているところでございますから、これからも、私たちそうしたことをやっていきたいと思っております。
小沢(和)委員 次に、高齢者に続いて、四月から現役の労働者に対し三割負担が押しつけられようとしている問題でお尋ねをします。
 これも労働者の生活に深刻な打撃を与えることは疑いないと思います。政府の資料によっても、九七年に一割から二割に負担が引き上げられた直後に起こった受診抑制がいまだに続いております。九六年は千人当たりの受診者数が五百五十二人だったものが、九七年に五百三十八人に落ち込み、以後、九八年に五百三十三人、九九年まで五百三十人と下がり続けております。二〇〇二年の上期も五百二十四人という状況であります。
 もう一つ重大な数字があります。それは、有訴者率の過去十年間の著しい増加であります。
 有訴者とは、ここ数日、病気やけがなどで体のぐあいの悪いところのある人と定義されておりますが、これが、千人当たりで見ると、九二年は二百五十九・三人、九五年は二百八十三・三人、九八年は三百四・三人、二〇〇一年は三百二十二・五人と、調査のたびにふえております。驚くべきことに、その増加率は若い人ほど大きい。逆に、五十五歳以上の中高年齢者の有訴者率は九八年をピークに減少してきております。一番元気な、働き盛りのはずの層で病気の人が一番ふえている。
 この二つの数字をグラフにまとめてみますと、資料の二枚目のようになるわけであります。受診率をわかりやすいように九六年を一〇〇%として、年ごとにパーセントで表示しております。上の方には有訴者率の推移のグラフをつけました。
 厚生労働大臣にお尋ねしたいんですが、これではっきりしているとおり、お金や暮らしのことが心配で病院にかかる人が減り続け、その一方で病人がふえ続けているということになるわけじゃないですか。保険料だけ健保には確実に取られますけれども、医者にかかれない、まさに保険あって医療なし。こんなことがあっていいんですか。
坂口国務大臣 この表を今初めて拝見したわけでございますが、いわゆる有訴者、何らかの訴えを持っている人という意味だろうというふうに思いますが、これは、我々もよくやりましたけれども、昔からかなり多いんですね。それで、どこかが調子悪いかと言ったら、やはりどこかへ、調子の悪いところへ丸をつけたくなるわけでありまして、これは、やはり最近のいわゆるさまざまな社会の現象の中からそういう訴えというのは多くなってきているんだろう。
 しかし、この訴えのある人が、必ずしもそれが病気かといえばそうとは言えないという人たちもいるわけでありますから、そこは皆さん方も、そういう訴えを持ちながら、しかし、何とか自分で立ち直っていこう、自分で生活をどう改革したらいいか、そういうことで一生懸命やはり御努力をなすっているのではないかと私は思います。
小沢(和)委員 それは、有訴者が全部病気だとは私言いませんけれども、しかし、有訴者の率が上がっているということは、これは国民がますます健康になっているとは到底言えない数字じゃないでしょうか。
 私は、これらの数字は、ただ二割負担になって大変ということを示しているだけではないと思うんです。特に、グラフによくあらわれているように、一たん回復しかけた受診率が昨年度からもう一段下がってきているというのは、労働者にリストラのしわ寄せが集中して、生活が年々厳しくなっていることの反映としか考えられません。
 総務省の発表によれば、九七年をピークに、勤労者世帯の収入は五年連続して低下しております。金額にして、五年で年間収入が六十九万円も下がっている。これだけの収入減をやりくりするため、病気になっても病院に行かず薬局の市販薬で我慢することになる。その上、病院に行くため休暇をとれば、勤務成績不良でリストラの対象にされるおそれもある。ノルマを達成するためにサービス残業もしなければならず、勤務時間後でさえなかなか病院に行けない。これが労働者の現実の姿ではありませんか。
 総理、いいですか、この二つの数字はこういう現実を反映しているのではないか。今度は総理にお尋ねしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、いろいろ御苦労されたり、どこか悪いと訴えられている方はたくさんおられると思います。必ずしも病気じゃないと思います。それは、国会議員やっている方だって、病気じゃなくたって調子悪い人はたくさんいると思いますよ。しかしながら、お医者さんに行く方もいますが、お医者さんに行かないで自分で治そうという方もおられると思いますが、確かに、いろいろ苦しい、調子悪いという方がおられるのは事実だと思います。
 そういう点に対して、今の医療制度というのは、今までどおり低所得者の方に対しては据え置いておりますので、私はそれなりの配慮がなされておると思っております。
小沢(和)委員 政府は、この上さらにリストラを加速して、医療費三割への負担増だけでなく、社会保障全体として切り下げ、増税も加えると四・四兆円の負担増を押しつけようとしております。
 だから、今野党は一致して、国民の暮らしを守り安心してお金を使うことができるような状況をつくって景気を回復させようと、この負担増に反対をしております。
 ちょうどこの時期に、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の四団体も、患者の余りにひどい現実の状況を見かねて、せめてこの四月から予定されている労働者本人への三割負担の実施だけでもやめよと要求し、全国的な運動に立ち上がっております。
 私たちは、この方々の御奮闘に大きな励ましを受けております。既に、北海道、長野県の両議会では、三割負担凍結の意見書が、自民、公明などを含む全会一致で採択されました。新聞報道によると、これに続いて、全国で四十三都府県に同様の決議をする動きが広がっております。日本じゅうほとんどの自治体が三割凍結を決議しようとしている。
 あきれたことに、自民、公明両党は、この動きを上から押さえつけようと躍起になっていると聞いております。これは全く努力の方向が間違っているんではないですか。総理は、今や日本じゅうの声となりつつある三割負担の凍結の要求にもっと謙虚に耳を傾け、この際、三割負担実施凍結に踏み切るべきではありませんか。総理にお尋ねします。
小泉内閣総理大臣 いろいろ反対論が出ていることは承知しております。しかし、二割負担がいいか三割負担がいいかと聞かれれば、三割負担がいいなんという人はまず少数派でしょうね。
 しかしながら、この国民皆保険制度全体のことを考えるとやむを得ないという立場で我々は断行したわけでありまして、この三割負担も抜本改革のうちの一部でございます。私は、そういう意味におきまして、この皆保険制度を持続可能な制度にしていくことがもっと国民のためにプラスになるのではないかと思っております。
小沢(和)委員 二割か三割かどっちがいいかというふうに聞かれたら、二割の方がいいという人が今運動をやっているんですか。私は、本当に日医の皆さんなど、あるいはこういう運動をあちこちでやっている皆さんというのはみんな、これがどんなに国民の暮らしにとって深刻な打撃になるか、景気にどんなに痛手になるかということを真剣に考えてこういうことをやっているんだということを、もう一度考えていただきたい。
 我が党も、二十日に予算組み替え案を発表いたしました。公共事業や軍事費などの浪費を削減すれば二兆一千億円、大企業や資産家減税を中止すれば国税ベースで一兆五千億円、合わせて三兆六千億円の財源を生み出すことができる。そうすれば、四月からの三割負担を中止することができますし、それだけでなく、政管健保などの保険料を据え置く、また、老人保健制度をもとに戻し、定額制を復活することができる。
 総理は、患者負担を抑えると保険制度そのものが維持できなくなるかのように言いますけれども、政治のやり方を思い切ってこのように変えれば、これだけのことがやれるようになるのではありませんか。
小泉内閣総理大臣 今、小沢議員が言われた案を他の野党の政党は賛成しているんでしょうか。私はそうは思いませんね。三割負担凍結には賛成しているでしょうけれども、今言った、ほかの予算を削減しろということについて、共産党以外の政党が賛成しているとは、私は思っておりません。
 しかしながら、全体の予算というのは、各省庁、全体の予算を考えなきゃなりませんから、この医療負担三割だけを取り上げて判断すべき問題ではない。全体をやはり総合的に考える必要があると思っております。
小沢(和)委員 我が党はこういう提案をしたということをさっき言ったんですよ。四党がこういうことを言ったというようなことは、全然私は言っていない。だから、何の反論にもなっておらない。我が党も、国政、予算全体を考えて、これがいいということを提案しているわけです。
 それで、もうぼつぼつ時間もなくなってきましたから、最後に総理にもう一度お尋ねしたいと思うんですが、今、与党側は野党四党の三割凍結法案の審議を拒否しております。四月一日までこのままたなざらしにすれば、この法案が無意味になるというふうに思っているのかもしれませんけれども、私は、このような態度はもう断じて許されないと思うのです。直ちに本会議で趣旨説明を行い、厚生労働委員会で十分審議を尽くすことを強く要求いたします。
 自民党の総裁として、与党に対して堂々と審議に応じなさいという指示をする気がないかどうか、このことをお尋ねします。
小泉内閣総理大臣 国会に任せまして、そのような指示を出す気はございません。
小沢(和)委員 時間が参りましたから、この後の議論はまた厚生労働委員会などでやらせていただきます。
藤井委員長 これにて小沢君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 議事の途中でございますが、ただいま本委員会にタイ王国ウタイ下院議長御一行がお見えになっております。この際、御紹介申し上げます。
    〔起立、拍手〕
藤井委員長 御着席ください。
    ―――――――――――――
藤井委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 きょうは医療、福祉についての集中審議ですが、審議に入る前に一言、小泉総理に明確に御質問したいことがございます。
 私は、けさも朝七時過ぎから一時間、街頭に立ちました。そして、やはり多くの市民の人たちから寄せられるのは、中川さん、戦争だけはやめてね、イラク攻撃だけはやめさせてね、そのために中川さんに一票入れたのよという多くの市民の声でした。
 私は、小泉総理はきっと、思いの中では、絶対に平和を守りたい、平和を愛する人だと信じています。ですから、国民も、世論は八割以上がイラク攻撃反対ですけれども、どこか反戦運動がいま一つ盛り上がらない。それは、心のどこかで小泉総理を信じているからだと思うんです。
 それは、日本がどちらの立場に立つかということでの信じ方です。私は、小泉総理がずっと国際社会の声を聞いて、国際社会の動きを見てということをおっしゃっていました。それに対する信頼だと思うんです。アメリカ、イギリス、武力行使容認の新決議、もしも出されたら、三月七日に出されるとパウエル国務長官がおっしゃっていますけれども、そのときに、明確に今その支持を、表明を国連の場でしているのは、イギリスとアメリカの武力攻撃に対して、オーストラリアと日本、そして平和的解決を要望するというのは今は二十二カ国ございます。
 私、小泉総理に、戦争への道を選ぶというのが、アメリカとともにイラク攻撃を支持する新決議案に対して賛成する、それはこの赤いカードです。そして、平和的に解決するのはこの白いカードです。どちらかを今選んでください。
藤井委員長 ちょっとお待ちください。ちょっとお待ちください。ちょっと、だめです、だめです。そんな、だめです。
中川(智)委員 総理、委員長、選ばせてください。だって、見えないんです。
藤井委員長 許可をいたしません。
中川(智)委員 小泉さんはずっとはぐらかしています。迷いさえも外に出さない。本当にはぐらかした答弁です。三月七日に新決議が出る、それに対してどちらが、どちらを選ぶか、それに対して……
藤井委員長 中川委員に申し上げます。中川委員、ちょっと落ちついてください。落ちついてください。中川委員に申し上げます。委員長から申し上げます。
中川(智)委員 ああ、そうですか。でも、事前に承認を得なくても私はこの質問をきょう小泉総理にする、それは義務があるんです。国民の声が、戦争にいくのか平和に向かうのか、それをしっかりと総理に示してほしい。これを選んでもらいたい。委員長、許してください。たった三十秒です。
 そしたら、次のときはちゃんと通告してしますので、ちゃんと総理、考えておいてくださいね、もう時間がありません。戦争を選ぶのか、そして、平和を選ぶのか。(発言する者あり)これは、でも、多くの皆さんの声なんです。どうしてもこれはきょう聞かなければ、そういう思いでこの場に立っています。
藤井委員長 中川委員に申し上げます。
 ちょっとお座りください。お座りください。ちょっと着席してください。(中川(智)委員「はい、わかりました。じゃ、続いて、医療のことをちゃんとやります、やります、やります」と呼ぶ)ちょっとお座りください。委員長の指示に従ってください。
 中川委員に申し上げます。
 委員会の運営責任は、議事整理権は委員長にございます。そして、運営の協議につきましては、理事会という正式な場がございます。その中で、各与党、野党含めて、委員会の進行については、その理事会の許可を得、そしてまた、その議事の次第によって、委員長が運営の責任でございます。
 もう一つ申し上げます。
 きょうは、御承知のとおり、午後は集中審議でございまして、医療・福祉等についての集中審議でございますから、本来は、その問題について質問するのが本来の姿でございますので、ぜひその医療、福祉についての質問をお願いいたします。
中川(智)委員 私は、質問に先立つ前にということをはっきり申し上げました。そして、きっちりと医療の問題をやっていく、そのための冒頭に、多くの国民の声に対して、もう時間がない、はっきり教えてほしい、総理はどう考えているのかということで質問をいたしました。(発言する者あり)それは質問じゃなくて、これを選んでほしいということでした。ですから、もういいです。次、やります。
 次は、ハンセンの問題で、小泉総理に質問をいたします。
 小泉総理は、おととしの五月十一日の熊本地裁の判決、それに対して、控訴せずという英断をなさいました。ハンセン病で隔離されて、そして社会的な被害をこうむった多くの人々は喜びました。そして、今さまざまな問題で、三つの宿題が残っていて、その中の一つ、大きくは非入所の問題がございます。
 総理、ハンセン病の問題は、最後の最後まで総理が責任を持って解決すべきだと考えております。この非入所の問題は、坂口大臣もとても今苦しんでいらっしゃる問題ですが、社会的に隔離された療養所内での暮らし、そしていま一つは、社会の中にあっても、大きな壁があって、その中で息を潜めて苦しんで生活せざるを得なかった、生活基盤を失った非入所のハンセン病の患者の方がいらっしゃいました。
 熊本地裁の判決でもこのように言われています。「共通被害の範囲については、療養所への隔離の被害に限定せず、ハンセン病患者がハンセン病に対する誤った社会認識(偏見)により様々な差別的取り扱いを受ける地位に置かれたことによる精神的被害を含めて判断している。療養所への入所歴のないハンセン病患者・元患者も上記精神的被害を被ったと認められる」と書いてあります。
 この判決の中身、和解の中身に従って、非入所者の方々への社会的な、経済的な基盤確立のために、一言、総理の御英断を再びお願いいたします。
小泉内閣総理大臣 ハンセン病患者には、入所者、未入所者、それぞれ立場も事情も違う面がかなりあります。そういう中で、私は、控訴せず、和解の道を選び、そして、長年この問題について全面的に解決するように、対応するように、既に厚生労働大臣にも指示しておりますし、今、坂口大臣、厚生労働省の担当者と、それから関係者と話し合いが進んでおります。私は、この問題について、よく話し合いの末、早く解決するように督促しているところでありまして、その間の経緯は、私よりも今、坂口労働大臣の方が詳しいと思いますので、大臣に答弁いたさせます。
坂口国務大臣 今総理からお話がございましたとおり、未入所者の人に対します問題だけが今残されております。この皆さん方にも、五百万ないし七百万という一時金はお支払いを既にいたしておるわけでございまして、この皆さん方が入所していなかったがゆえに社会からどういう差別を受けたかといったようなことにつきまして、これは検討しなければならないというふうに思っておりますが、いわゆる隔離をされて入所しておみえになりました皆さん方と同じではないというふうに私たち思っているわけでございまして、そこはこれからいろいろと議論を重ねていきたいと思っております。
中川(智)委員 非入所者の皆さんは、同じということを求めているわけではありませんで、やはり、社会的な生活基盤を失った現実、非入所者の声をしっかり聞いて、そして温かい施策を求めているわけです。
 年一回の協議会が決裂いたしました。坂口大臣も、お忙しいかもわかりませんが、今木村副大臣にぽんと丸投げ状態であるかもしれませんが、決裂してしまった現実というのは非常に重いものがございます。ぜひとも非入所者の方々の声を直接聞いてください。
 私は何度も伺いました。それは涙なしでは聞けません。本当に、トウキビ畑の中に掘っ立て小屋をつくって、電気もガスも水道もないところで三十年間、三十年間、人目に触れずに生きてきた。そしてまた、家の中で家族に支えられながらでも、月に一回の病院にしか外に出なかった、集金の人が来たって息を潜めるように家の中でいた。あるいはまた、いまだに家族に病名が言えない。職場もやめて、奥さんの収入だけで、パートの収入だけで生きている。そのような、社会の中にあってもなお隔離される状況にあった非入所者の人たちの声を直接聞いてください。
 坂口大臣はもうじき会っていただける、そのようなうわさが飛んできておりますので、そこに期待をいたしております。
 続きまして、小泉総理に伺いたいんですが、小泉総理が厚生大臣当時、遺族の方々にもレセプト開示ということを実現なさいました。情報公開をして、そして理不尽な死に対して、医療事故で死んでいく人たちを本当に少なくしていこう、なくしていこうという取り組みをなされました。
 ついせんだっての韓国の地下鉄火災のときでも、やはりそうなったときにどういうふうにすればこのような悲惨なことが防げるかということにすぐ着手しました。日本の地下鉄は、サリンのときに地下鉄を全部見直してやりました。
 でも、医療事故だけは、これはやみに葬られていく死なんです。すべて情報が向こうに、医療機関にあります。医療裁判も、最近は提訴できるようにはなりましたが、カルテの開示も法制化されていない、実態把握の事故事例さえも報告が義務化されていません。
 それで、今、カルテ開示、そして事故事例報告の検討委員会が坂口大臣のリーダーシップでなされていて、三月いっぱいにその報告が出されます。
 一点、総理に率直な感想を伺いたいんですが、この検討委員会、最初は委員の中から義務化が必要だという意見がたくさん出されていたんですが、取りまとめの中には、義務化ではなくてもう任意でというふうに報告されているんです。任意ですと、調査によりますと、三割ちょっとしか報告が上がってこないんです。やはり正直にきっちりと報告を受け取るには、義務が大事なんですね。
 でも、このメンバーの中に、この間、東京女子医大、総理も御存じだと思いますが、重大な医療ミスがあって、小学校五年の平柳明香ちゃんが、心肺装置の扱い方を先生たちが知らなくて、亡くなりました。この被告側の弁護士が検討委員会の中に入っているんです。
 この人は旧来よりそのような委員のメンバーに入っていたらしいんですが、被告の弁護団の弁護士がこの検討委員会とかに入っているということは、私は公平性を全く疑ってしまいますが、率直にどのようにお考えになるでしょうか。総理にお願いいたします。
 大臣、総理にこれは聞いております。なぜ入っているかということなどはもう十分聞いていますけれども、このような事故を起こした被告人の方の弁護士で、そして記者会見なんかにもその人は出ているんです。被害者も入っていない検討委員会、その声を代弁するのは公平性が担保されることが第一だと思います。総理、いかがでしょう。
坂口国務大臣 医療事故の問題につきましては、中川議員もよく御存じのとおり、医療安全推進総合対策に基づきまして現在進めているところでございまして、医療安全相談センターの設置等も、これはつくったところでございます。
 いわゆる刑事事件にならなかったものにつきましても、注意義務違反が認められるものにつきましては行政処分の対象として取り扱うというところまで今来ているわけでありまして、そういうところで現在検討を進めているところでございます。
 全体としての、そのメンバーのお話がございましたが、弁護士さんも何人か入っていただいているわけですね。この検討会のメンバーの話でございますが、弁護士さんも入っていただいている。弁護士さんというのはいろいろなところで弁護に立たれるということでございますから、そういうことも起こってくる可能性としては私はあると思っておりまして、ただし、そういうことによってこれが左右されることのないようにこれからしていきたいと思っております。
小泉内閣総理大臣 委員会にはいろいろな方が入っておりますし、私は、一部の委員に左右されるものではない、全体の意見をよく踏まえて適切な判断がなされるべきだと思っております。
中川(智)委員 東京女子医大のああいう重大な、カルテ改ざんをしたり、重大なことで逮捕されて、そしてその被告になっている弁護士なんですよ。普通の弁護士じゃないわけですよ。そんなのはおかしいですよ。そのときにそういう委員は外すべきです。それに、検討委員会のメンバーというのは限られていて、その報告が重大に今度は関係してきて、それが任意になるか義務化されるか、本当にこの二つに一つの大事なときに、そのような人をメンバーに入れているというのは見識を疑います。
 坂口大臣、もう一度、そういうふうな問題が起きている当事者のメンバーは外すということをしないと、これはもう一度検討委員会を開けということになりますよ。明確に答えてください。
 そして、義務の問題も大臣の決意を教えてください。任意ではなくて義務にするということ、事故報告を。お願いします。
坂口国務大臣 義務化に向けて今検討を進めているところでございます。間もなく結論が出るものと思います。
中川(智)委員 メンバーのことではいかがでしょうか。
 坂口大臣がさっきおっしゃったのは、いろいろな人がいると。それは、いろいろな人はいいんです。だけれども、そんな重大事故を起こした、カルテ改ざんなんかもやった方を弁護している弁護士だったらば外すべきですということなんです。もう一度答えてください。
坂口国務大臣 そういうことにかかわりのある人を選んだというわけではなくて、弁護士を選びましたらその弁護士がいろいろのことにかかわったと、こういうことを申し上げているわけでありますから、そこは、それに左右されることなしに、先ほどお話がありましたように、決着をつけるということを言っているわけです。
中川(智)委員 それは左右されるんですよ。だって、一人一人の委員から意見を出してやっていくんですよ。そういう人は声が大きいに決まっていますよ。そういう人に引っ張られていくということは、医療事故をなくそうという決意がこの国にあるのかどうか。
 カルテ開示を法制化すること、事故事例は報告を義務化すること。最後に、医療事故を本当になくしていこうとするのか、厚生大臣を三期務めた小泉総理の決意を伺って、終わりにします。
小泉内閣総理大臣 医療事故というものは国民全体の大きな関心事であり、これをなくすということは極めて重要なことでありますので、そういう方向で坂口大臣も今努力されております。
藤井委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十五日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四分散会


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