衆議院

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第7号 平成16年2月10日(火曜日)

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平成十六年二月十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 大野 功統君 理事 北村 直人君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 玄葉光一郎君

   理事 筒井 信隆君 理事 細川 律夫君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    植竹 繁雄君

      尾身 幸次君    大島 理森君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    鈴木 俊一君

      鈴木 淳司君    滝   実君

      谷  公一君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 雄二君

      中山 成彬君    中山 泰秀君

      丹羽 雄哉君    西川 京子君

      西村 明宏君    西村 康稔君

      萩生田光一君    萩野 浩基君

      蓮実  進君    二田 孝治君

      町村 信孝君    阿久津幸彦君

      井上 和雄君    池田 元久君

      石田 勝之君    一川 保夫君

      市村浩一郎君    生方 幸夫君

      大谷 信盛君    岡田 克也君

      岡本 充功君    奥田  建君

      海江田万里君    河村たかし君

      木下  厚君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    鮫島 宗明君

      島田  久君    神風 英男君

      首藤 信彦君    達増 拓也君

      中津川博郷君    永田 寿康君

      計屋 圭宏君    鉢呂 吉雄君

      平岡 秀夫君    古本伸一郎君

      細野 豪志君    石田 祝稔君

      遠藤 乙彦君    北側 一雄君

      高木美智代君    富田 茂之君

      佐々木憲昭君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       亀井 善之君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (青少年育成及び少子化対策担当)

   (食品安全担当)     小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣        

   (沖縄及び北方対策担当)

   (個人情報保護担当) 

   (科学技術政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣        

   (規制改革担当)   

   (産業再生機構担当)   金子 一義君

   国務大臣        

   (防災担当)       井上 喜一君

   内閣官房副長官      細田 博之君

   内閣府副大臣       佐藤 剛男君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   総務副大臣        山口 俊一君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣        山本 有二君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   環境副大臣        加藤 修一君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     宮腰 光寛君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   総務大臣政務官      松本  純君

   法務大臣政務官      中野  清君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   会計検査院長       杉浦  力君

   会計検査院事務総局第一局長            石野 秀世君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  尾身 幸次君     萩生田光一君

  西川 京子君     谷  公一君

  池田 元久君     島田  久君

  河村たかし君     計屋 圭宏君

  木下  厚君     大谷 信盛君

  藤井 裕久君     岡田 克也君

  高木 陽介君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     西川 京子君

  萩生田光一君     西村 明宏君

  大谷 信盛君     神風 英男君

  岡田 克也君     藤井 裕久君

  島田  久君     阿久津幸彦君

  計屋 圭宏君     古本伸一郎君

  高木美智代君     北側 一雄君

同日

 辞任         補欠選任

  西村 明宏君     中山 泰秀君

  阿久津幸彦君     奥田  建君

  神風 英男君     木下  厚君

  古本伸一郎君     市村浩一郎君

  北側 一雄君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 泰秀君     鈴木 淳司君

  市村浩一郎君     細野 豪志君

  奥田  建君     池田 元久君

  富田 茂之君     高木 陽介君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     西村 康稔君

  細野 豪志君     永田 寿康君

同日

 辞任         補欠選任

  西村 康稔君     尾身 幸次君

  永田 寿康君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     一川 保夫君

同日

 辞任         補欠選任

  一川 保夫君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長増田暢也君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。

大野(功)委員 おはようございます。自由民主党の大野功統でございます。

 きょうからいよいよ平成十六年度の本予算の審議に入るわけでございます。この審議、速やかに進めて、そして、一日も早く国民生活のために、日本経済のために頑張っていくことをお誓い申し上げまして、ただ、ことしの通常国会の開幕戦の論議を振り返ってみますと、この論議、ほとんどがイラク問題に集中いたしましたけれども、この論議を聞いておりまして、えっと私は耳を疑うようなことがございましたので、この開幕戦の論議から始めさせていただきたい、このように思うわけでございます。

 えっと私は耳を疑いましたのは、まず、民主党菅代表の本会議における代表質問での、イラクへ自衛隊を派遣するのは憲法違反じゃないか、こういう御発言でございます。

 なぜ、よく聞いておりましたが、わかりませんでした。後で議事録を読ませていただいて、これもわかりませんでした。

 ただ、もし、イラクへ自衛隊を派遣する、これが戦争のためというのであれば、こんなことはありません。イラクへは、自衛隊は人道復興支援のために派遣されるわけでございます。ちょっとおかしいなと思いますし、仮に、海外へ自衛隊を派遣するということ自体が憲法違反だ、こういうことであれば、これはもう論議が大昔に戻ってしまっている。既にPKO活動で自衛隊は本当に世界各国で評価されているわけでございます。また、国連決議との関係で憲法違反だというのもよくわかりません。

 こういう点、どうもよくわからない議論があった。憲法違反ではない、このことを鮮明に申し上げたいなと思っておる次第でございます。

 それから、我が目を疑いましたのは、本会議場で野党席が空席になっていたことであります。

 昔は、駆け引きのために座り込みをやったり、あるいは牛歩作戦をやったり、あるいは欠席ということがありました。この二年近くはそれがなかったんですが、空席になっている。

 大事な問題でありますから、これはきちっと出席していただいて、堂々と反対なら反対、賛成なら賛成、まず欠席するよりも堂々と議論を述べる、これが新しい時代の政治の流れではないか。反対するよりも対案を出そう、こういうふうに新しい流れに乗ったかなと思っていた日本の政治でございますけれども、本当に残念な気がいたしました。

 それから、もう一つ問題でございますけれども、これは内閣、政府の方も悪いと思うんです。情報にまつわるミス、このミスの追及をされました。このミスの追及に終始したような気がいたします。

 でも、本当は、なぜイラクへ自衛隊を派遣するのだろうか、その理由は何だろうか、なぜ反対するんだろうか、このメッセージをはっきりと国民の皆様にわかりやすく伝えていく、これが大事なことじゃないかな、こんなふうに思いました。

 ことし……(発言する者あり)今から質問します。私、ことしの正月に、自衛隊の方から年賀状をいただきました。この年賀状の中に、イラクへ行くならば……(発言する者あり)

笹川委員長 静粛に願います。

大野(功)委員 イラクへ行くならば誇りを持って行けるような環境をつくってほしい、自衛隊の方からの年賀状でございました。

 私はやはり、こういうことを思いますと、憲法違反というような議論、あるいは欠席というようなことじゃなくて、何のために日本が、世界の平和のため、人道支援のために行くのか、このことをもう少し議論していかなきゃいけないな、政治家としての反省でございます。

 私、こういう印象を持ちました。こういう反省を持っています。もし、総理におかれまして何か感想がございましたら、お聞かせいただければ幸せでございます。

小泉内閣総理大臣 こういう委員会審議の場で、各質問者が自分の意見を述べるのはいいことだと思います。質問するばかりが能じゃない。政治家として、現下の状況に対して自分はどう思うかということを述べるというのは、私は極めて有意義だと思っております。

 そういう中で、今の発言に対して私の所感を質問いたしましたけれども、私も、菅代表の、自衛隊のイラク派遣は憲法違反であるということの発言に対しましては、疑問に思っております。

 自衛隊は戦争に行くのではありません。戦闘行為に参加するものではありません。復興支援、人道支援に赴くわけでありますので、これは憲法違反でも何でもない。憲法に合致する。まさにイラクの復興支援にいかに寄与できるかという中で考えたものでありますので、これは憲法違反でないとはっきり申し上げたい。

 何か、新聞等で見るところによりますと、菅代表は、民主党内の議論で、自分の発言、気にしなくていい、憲法違反、気にしなくていいというような報道が出ておりますけれども、やはり、憲法違反であるか違反でないかというのは、これは大きな問題でありますので、今後とも議論が重ねられると思いますが、私どものこの自衛隊のイラク派遣につきましては、いかにイラクの人々が希望を持ってみずからの国づくりに励むことができるか、それを支援していくわけでありますので、現在の状況におきましては、国連におきましてすべての加盟国にイラク復興支援協力を要請している、その要請にこたえて日本として何ができるかという中で考えたことであります。

 今後とも、国民にこのイラクにおける自衛隊の活動について御理解と御協力を求めるよう努力をしていきたいと思っております。

大野(功)委員 今回、自衛隊をイラクへ派遣したということは、新しい時代の中で、日本の外交がみずからの判断でこの決断をしたのかな。

 なぜこういうことを申し上げるかといいますと、すべては、あの二〇〇一年九月十一日のニューヨークで発生しました同時多発テロ、これが起点になっているんじゃないか。そして、あの多発テロが歴史の流れを変えていっているんじゃないか。それぞれの国が安全保障政策について考え直さなきゃいけないんじゃないか。

 と申しますのは、テロというのは、無警告で、どこへ出てくるかわからない、こういう状態でありますし、国と国との戦いではない、国を超えた存在であります。国と国との戦いであれば、例えば戦時国際法があって、けんかのルールがちゃんと決まっているんですね。ところが、テロというのは、国を超えた存在でありながらやはり国というものを陣地にしている、こういう存在であります。

 それに対してどういう対抗策があるか。これは国としてやっていかなきゃいけない。だから、グローバリズムの中で国連の役割がどんどんどんどん戦後大きくなっておりました中で、やはり国という存在を考え直していかなきゃいけない、こういうことだと思います。今回は、国連かアメリカか、こういうような議論もございました。私は、グローバリズムの中で国というものの存在を考えていかなきゃいけない、こういう歴史の流れをやはり考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 テロに対する今回の国連の態度、国連の姿勢につきましても、アメリカを支援する側にとっては、国連というものがなぜまとめていただけないんだろうか、こういう反省があったと思いますし、それから、アメリカに反対する方も、なぜアメリカをとめてくれなかったか、こういう思いがあったような気がいたします。グローバリズムの中で今まさに日本が自分で判断する、こういう外交の新しい出発点になったのではないか。

 そういう意味で、私は、日本としてテロをどう考えるか、テロは人類共通の敵である、その共通の敵に対して日本という国は一人前の国家として絶対にテロに屈しないんだ、こういうメッセージを今回出せたこと、これは非常によかったんじゃないか、そして、それをみずから判断していった、このように思いますが、今回の正当性につきまして、イラクへ自衛隊を派遣する正当性、まさに正義、大義と言っていいかもしれません、これを総理はどのように御判断なさっていますか。

小泉内閣総理大臣 日本の平和、独立を確保していかに発展、繁栄を考えるか。これは、現在の国際情勢を考えますと、日本一国で平和と発展はあり得ない。やはり世界の平和と安定の中に日本の発展と繁栄があるんだということを考えますと、日本はこれから世界全体の平和と安定の秩序づくりにどのように役割を果たしていくことができるか、これを考えていく必要があると思います。

 かつて、日本は、第二次世界大戦後、廃墟の中から苦しみながらも、多くの国の援助を受けて今日まで発展してまいりました。おかげさまで、経済的にも他の国に比べると比較的豊かになってきた。援助される立場から援助できる立場になりました。

 今、イラクの国民が、フセイン独裁政権が倒れて、みずからの国づくりに苦しんでおります。できるだけ早く安定した民主的政権をイラクに構築していくということは、イラク人が最も必要としていることであり、同時に、これからの国際社会の中で、イラクの地において安定した政権ができるということは、中東全体にも大きくいい影響を与えますし、世界の安定のためにも必要である。もしここに、イラクの地が不安定のままテロリストの温床になった場合どうなるか、そういうことを考えますと、今のイラクの復興を失敗させるわけにはいかない。

 開戦時に意見が対立した、アメリカやイギリスの立場に反対した国々も、米英軍撤退しろという声は出ておりません。国連の関与を強めるべきだという声があったとしても、今の状況、各国が手を引いていいという言葉というのはどの国からも聞いておりません。やはり国際社会が協力してこのイラク復興支援を成功させなきゃいけないというのが共通した認識だと思っております。

 私は、日本としても、このイラクの復興支援、これを成功させるために何ができるかということを考え、資金的な協力もいたします、物的な協力もいたします、同時に人的な協力もしますという、日本の国力にふさわしいできるだけの支援をして、早くイラク人のためのイラク人の政府をつくり上げるために日本としてできるだけのことをしたいと思っております。

 そういう中での人的支援ということを考えますと、今、民間人あるいは民間企業が出ていって十分な復興支援活動ができるかというと、必ずしもそうでもない。必ずしも安全と言えない。テロリストの問題を考えますと危険かもしれない。そういう中にあって、そのような不測の事態、危険を回避する装備も能力も持っている自衛隊の諸君に、各国とは違う立場で復興支援活動、人道支援活動ができるのじゃないか、また、その分野があるのではないかということで、自衛隊の諸君に今回行ってもらうことにした。

 多くのイラク国民も自衛隊の支援を歓迎している状況が、最近、各種の報道で見られております。住民と協力して、イラク人から評価され歓迎される支援活動を自衛隊諸君が立派に果たしてくれることを期待しておりますし、政府としては、そういうような活動ができるように万全の支援体制をとっていきたいと思います。

 そのことがひいては、ああ、苦しいときにイラクの復興のために日本人は助けてくれたな、日本の国家は協力してくれたなということが、将来、国際社会の中で日本が信頼を高め、日本に対する評価も高めて、日本という国は国際社会の中で必要な国である、日本の役割は重要だという認識を持たれることによって、その恩恵を受けるのはやはり日本国民ではないか。

 そういう面において、一般国民ができない活動を今回自衛隊の諸君がしてくれる。自衛隊の諸君、非常に困難な任務であります。厳しい環境の中で意欲を持って、使命感を持って頑張ってくれる自衛隊諸君に私は心から敬意と感謝をささげたいと思っておりますし、無事任務を果たされることを皆さんとともに願っておるとともに、これからも、どのような活動が必要かということは、多くの国民とともに、また国会の各政党とともに考えていかなきゃならない問題だと思っております。

大野(功)委員 今、総理から、世界のための日本、そして、それがひいては日本が世界から信頼されるゆえんになるんだ、こういうお話を承りました。

 そこで、その点、日本のためという意味で国益ということを少し論じさせていただきたいと思うんです。

 ところが、日本という国は第二次世界大戦のトラウマが残っておりまして、国益というとちょっとうつむいてしまう、議論したくなくなってくる、こういう癖がございます。

 しかしながら、私は、今こういう不景気の中で、中小企業の皆さん、大勢の皆様が、なぜイラクのためにあれだけ巨額の資金を貢献するんだろうか、こういう疑問もあるわけでございます。そういう意味で、国益を堂々と議論していかなきゃいけないんじゃないか、このようにも思う次第でございます。

 国益とは何か。国益というのは、日本国の安全、安心、これを確保する、日本国民の豊かさを願っていく、これが私は国益だと思っております。

 そういう意味で、第一に、私は、アメリカと協力する、このことは日本の平和と安全のために絶対大事なことである、日本の国益である、このように思います。日米同盟が試されるときとか、これまで日本を守ってくれた兄弟を裏切れない、こういう感覚論も十分ありますけれども、私は、現実論として、日本の安全を守る、日本の安全を確保するためには日米関係大事なんだ、協力していこう、これは国益だと思います。

 また、資源エネルギーに乏しい日本として、イラクの復興にきちっと協力していく姿勢を示す、これもまた日本の将来の経済の姿にとって大変大事なことじゃないか。

 こういうことをはっきり議論させていただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、総理、国益論についてはどのように考えておられますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 極めて大きな課題であり、抽象的な議論にならざるを得ないんですが、国益とは何かといえば、これは、日本の国益とは、日本の平和と安全を確保し、日本経済、日本国民を豊かにしていくこと、これが私は国家利益、国民の利益を図る上で最も重要なことだと思っております。

 そういう中で、どうしたら日本の平和と安全を確保していくか。日本一国だけで日本の平和と安全を確保することはできません。そういう状況を考えて、日本はアメリカと安保条約を結び、同盟関係を大事にして、日本の平和と安全を確保する。

 同時に、国民の生活を豊かにしていくということについても、日本一国だけで自給体制をすべて維持できる状況ではありません。世界の各国と貿易、交流関係を発展させていく。日本の品物も世界各国に買ってもらう。同時に、日本にない、日本の国民生活が欲しているいろいろなものを世界から購入する。この交流を図ること、これは日本国民の生活を豊かにしていくことであります。

 国際関係、世界各国と協調体制をとっていく、これは私は不可欠だと思います。だからこそ、日本の外交の基本方針、戦後一貫して日米同盟と国際協調、この重要性をよく認識して、この両立を図っていくというのが現在の日本の基本方針である、これからの将来も変わらないと私は思っております。

 そういう観点から、日本としては、国際社会の中で日本なりの責任を果たしていくことが、ひいては日本の国家の利益であり、日本の国民の生活を豊かにしていくゆえんであると思いますので、今後とも、外交方針として日米同盟と国際協調の重要性をよく認識して、日本として世界の平和と安定のために何ができるかということを考えていくのが国家利益を考える上においても極めて重要なことだと考えております。

大野(功)委員 まさに、今回のイラクへの自衛隊派遣というものは、世界のためにでもあり、また翻って日本のためにでもある、こういう認識を持たせていただきました。

 そこで、先ほど触れましたけれども、ことしの正月に自衛隊の方から年賀状をいただいて、どうか誇りを持ってイラクに行かせてください、そういう環境をつくってくれ、こういうお話が書いてありましたけれども、自衛隊の皆さんには、どうぞ誇りを持って、正義のため、世界のため、日本のため、イラクの復興支援を、堂々とその任務を遂行され、無事御帰国なさいますことを心からお祈り申し上げる次第でございます。

 今、議論の中で、戦後は国連中心主義、日本も外交なり安全保障政策というのは国連中心、そして日米安保条約頼み、こういうような感じがあって、余り日本として外交とか安全保障について独自の判断をする場面がなかったのでありますけれども、今、グローバリズムの中で、やはり国と国との関係というのがかなり浮き彫りになってきた。そういう中で、国連というものが超国家的な組織となっていくのか、それとも、単に調整役になっていくのか。いずれにしても、何といっても日米関係も大事でありますけれども、国連のこれからの役割も大事であります。

 今、だんだんと調整役的な役割を担うようになってきておりますけれども、国連について、やはり我々は期待しておるわけでございます。そういう意味で、川口外務大臣に、どうぞ今後の国連の役割、日本としてどう考えるんだ、このことについてお尋ね申し上げたいと思います。

川口国務大臣 国際社会において、国連が国際社会の平和と安定に果たしていく役割というのは、今までも大きゅうございましたし、これからもますます大きくなっていくと思います。ただ他方で、今回のイラクについて国連が十分に機能を果たせたかというと、必ずしもそうではなかったというふうに思います。

 我が国として、やはり国際社会において国連がしかるべき役割を果たしていくことができるように働きかけるということも重要ですし、また、国連がその機能を強化していくようにさまざまな改革をしていくということも重要であると思っています。

 それで、特に安保理の機能の強化ということでいいますと、改革、そして国連全体が、脅威の形が新しくなってきているということがありますので、これはアナン事務総長も前に指摘なさったように、そういった新しい脅威に対応する、それから安保理をもっと実効性のある機能を持つようにするという観点から改革していく、そのために有識者の会合をつくって今議論をしていただいているわけですし、我が国も、二〇〇五年に首脳レベルの国連改革についての会議をするということを提案しているわけです。

 国連というのは、その加盟国がみんなで協力をして、その機能を強力なものにするためにつくっていく努力をしていく場でありますから、我が国としても引き続きその面の努力を続けていきたいと思っております。

 今、アナン事務総長に、日本に早く来ていただきたいというふうにお話をしているわけでございますけれども、そういったことが可能になりましたら、またそれを、機会をとらえて国連の強化ということにいろいろお話をしていきたいというふうにも思っております。

大野(功)委員 日本としても十分に国連改革に真剣に取り組んでくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

 そこで、再びイラク問題のポイントに立ち返らせていただきますけれども、こういう問題が出るたびに、やれ戦闘地域、非戦闘地域、やれ武力行使、武器の使用と大変わかりにくい議論が出てくるわけでございます。周辺事態法におきましても、後方地域支援という、まさにあの天才的な造語ですね、天才的な造語すらできたと私には思うような言葉が続々と出てくるわけでございます。こういう言葉をつくっていくよりも、やはり基本的に物事を考え直した方がいいのではないか。それは、憲法の解釈問題であり、憲法の改正問題であります。

 そこで、私は、憲法問題、憲法の解釈については、過去、三段階ぐらいのステージがあるんじゃないかと思いますけれども、当初、吉田茂総理大臣は、正当防衛すら否定していたわけでございます。正当防衛の美名のもとに戦争が始まるじゃないか、こういう議論もありました。その後、朝鮮動乱のときには、必要最小限の実力、こういうような言葉もありましたし、また、鳩山内閣のときには、憲法解釈というのは時代の流れに沿って変わってもいいんじゃないか、こういう議論もありました。

 そこで、第一段階としては、自分を守るためにはいいんだ、こういうことになったわけでありますけれども、あの一九九〇年の八月、湾岸戦争、あるいは冷戦時代の終結によりまして、やはりもっともっと日本が世界的に貢献していこうということで、PKO法ができたり、あるいは周辺事態法ができた。外へ出ていこう、出ていってもいいんだ、こういうような感じになってきたわけであります。

 今、我々が迎えているのは新しい時代であります。この新しい時代で何が問題か。いろいろな協力をやりたいけれども、非常に自衛隊の活動が制約されてしまう。別に、戦争をするためではないんです。復興支援に行くんだけれども、いろいろな意味で自衛隊の活動が限られてしまう。それは、集団的自衛権というものがまだ確認されていないというところにあるわけでございます。これが根本問題であります。

 まず、総理に、もう簡単にイエスかノーかで結構でございますけれども、憲法解釈というのは時代の流れで変わっていいと考えるか、どうでしょうか。

小泉内閣総理大臣 時代が変わるにつれて解釈も変わってくるのは、私は悪いことではないと思っております。

 現に、自衛隊の存在自体が憲法違反であるという見方、これが盛んに行われておりました。しかし、最近では、自衛隊の存在までが憲法違反であるという見方は、かつてそう思っていた方も、そうでなくなってきたと思います。

 あるいはまた、自衛隊が平和維持活動におきましても海外に行くことは、これは海外派兵なんだ、戦争に巻き込まれるおそれがあるということで、自衛隊が海外に行くことは、戦争に行くことでもないのに、平和維持活動、PKO活動に行くのにおいても憲法違反であるという議論が盛んに行われました。しかし、今、当時はそう思っていた方も、PKO活動だったらこれは憲法違反ではないであろうという見方がだんだん定着してきたと思います。

 そのように、憲法は同じ、憲法は変わっていないんですね、憲法九条も。しかしながら、その解釈においてはだんだん変わってきている。こういうことを考えますと、時代につれて憲法の解釈も変わってくるのかなというのは、過去の議論を見るといろいろ出てきております。

 私は、そういう意味において、時代に合ったように憲法を改正するのもいいであろう、改正しないのであれば解釈において変更するのもいいのであろう、それは議論の余地が大いにあると思っております。

大野(功)委員 総理は、時代の流れで憲法解釈が変わっていい場合もあろう、議論の余地があろう、こういうお答えでございました。

 そこで、法制局長官に、集団的自衛権、この一点について御質問申し上げたい。

 それは何かといいますと、本当に集団的自衛権の議論がわからないんです。集団的自衛権は、日本は持っているんですけれども行使できない。これは、今国会の始まりにも、予算委員会で我が党の安倍幹事長から質問が出ました。その質疑を聞いておりましても、私はわかりませんでした。持っている権利で、行使できない権利。

 そこで、お伺いしたいのは、この集団的自衛権というのは、国連憲章五十一条には書いてありますよ。だけれども、日本国憲法において保有しているのかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。これはイエスかノーかで結構です。

秋山政府特別補佐人 従来の私どもの考えについての答弁を踏まえてのお尋ねであろうと思いますので、その点に絞ってお答えいたします。

 我が国が主権国家である以上、国際法上、集団的自衛権を有していることは当然であります。

 それで、お尋ねは憲法上どうかという問題でございますが、日本国憲法を含めましていわゆる近代憲法というものは、主権者たる国民がその意思に基づきまして国家権力の行使のあり方について定めまして、これによりまして国民の基本的人権を保障するというところにその基本的な役割があるものと考えております。したがいまして、ある国際法上の権利を国家が保有するかどうかということについて、そういう事柄について定めることは憲法の本来の役割ではないのではないかと思います。

 それからまた、我が国の憲法は、集団的自衛権を保有するかどうかについて明文で定めているものでもございませんので、憲法の解釈として、憲法上我が国がこれを保有しているかどうかについて結論を導くことについてはなかなか難しい問題があろうと思います。

 ところで、憲法を含め法令の解釈というのは、何らか実際の用に資するために行うものでございます。かねて申し上げているように、憲法九条のもとにおきまして我が国が集団的自衛権を行使することは認め得られないと解される以上、憲法上この権利を保有するかどうかにつきまして論ずることは実際上の利益は余りないのではないかと考えております。

 以上申し上げたところが、従来の説明におきまして、憲法は集団的自衛権の保有それ自体について言及しているものではなく、また、我が国として、憲法上、集団的自衛権を行使できない以上、これを持っているかどうかはいわば観念的な議論であり、集団的自衛権について憲法上行使できず、その意味において保有していないと言っても結論的には同じであると申し上げてきた理由でございます。

大野(功)委員 全く逃げていますね、今のお答えは。今聞きましたけれども、何をおっしゃっているか、さっぱりわかりません。観念論だからそんなことはもう考えなくていいよという御結論、御説教でございましたけれども、一体どうして、集団的自衛権がこれだけ重要な議論として俎上に上っているときに、そういう無責任な、議論することすら観念的でむだだみたいな議論が出るのか、私は非常に残念に思います。

 この集団的自衛権、国連憲章では、個別的自衛権とともに固有の権利と書いてあるわけであります。固有の権利、英語ではインヒアレントの権利と書いてある。インヒアレントというのは生まれながら持っている権利ですよ。生まれながら持っている権利を、持っているか持っていないか議論することは観念的でむだだなんという議論をされますと、本当にむなしいですね。

 それから、フランス語だってドロワナチュレルと書いてあるんですよ。自然権なんですよ。自然権というものを、そういうふうに、論ずることがむだなような議論をされますと、本当に悲しいなと思うわけでございます。

 今のは、まさに国会対策的答弁とでもいいましょうか、国際的に通用しないような議論であります。

 我々は今、政治家同士が十分議論して、この集団的自衛権のあり方について議論して決めていかなきゃいけない、こういう時代に差しかかっているのではないか、まさに政治のリーダーシップによって、もし本当に解釈できなければ憲法改正の道筋をつけていくべきじゃないか、このように思います。

 そうでなければ、日本の国際貢献、平和のための自衛隊の派遣、人道支援のための自衛隊の派遣、これがいつも難しい議論で挫折する可能性が出てくる、こういう問題。まさに、自衛隊の皆さんが本当にルールに従って一生懸命頑張れるような世界をつくっていかなきゃいけない、このことを申し上げまして、次に、経済問題に移らせていただきたいと思います。

 まず、財務大臣、G7、ボカ・ラトンという場所でございますが、御出席、本当に御苦労さまでございました。

 今回、私、注目いたしておりましたのは、為替政策の問題であります。

 日本は、ドル安を阻止するためにドル買いをどんどんどんどん進めてきている。逆に言うと円高阻止ということになりましょうか。ところが、最近発表されておりますアメリカの経済報告を見ましても、もっともっと外国の皆さんは景気拡大に努めてくれ、そしてアメリカの経常収支が改善するようにやってほしい、また、ドルもドル安が好ましいなという感じがにじみ出ているわけでございます。ところが、日本の方は、どんどんどんどんとドル買いを進めて、そして、今まさに外貨準備はもう七千億ドル、七千四百億ドルぐらいになりましたでしょうか、世界最高、歴史最高のレベルに達してきている、こういう状態。なぜそういう状態になるのか。

 日本でいいますと、景気は緩やかな回復あるいは着実な回復、政府、日銀とも、回復しているということは言っておられるわけでございますけれども、これは主に輸出によって支えられている。あるいは、製造業の設備投資によって支えられている。だから、やはり輸出のために一生懸命ドル買いをしなきゃいけないのかなというふうな議論も出てまいりますし、それがアメリカの経済を助けている、アメリカの経常赤字をファイナンスしているという面もある。ところが、アメリカからは逆のメッセージが伝わってきている。

 こういう状態の中で、この為替政策、ちょっと考え直してみる必要があるのかなとも思いますし、一番大事なことは、ドル安の危機感みたいなものを今回のG7で世界の主要国が共有できたかどうか、その辺が問題になるんじゃないかと思いますが、G7の声明発表を見ましても、読んでみても、そこのところはよくわからない。読んでわかる人はわかるかもしれませんが、私にはわかりません。

 一体、この解決策、恐らく世界の主要国がドル安の問題を共通認識として持っていれば一番いいんだろう。その中で、アメリカ自身がそのドル安というものをどういうふうに考えているか、ドル安の危機感をどういうふうに持っているか、これが一番のポイントじゃないかと思いますので、御出席されて、その辺、どういうふうな御認識を財務大臣お持ちになったか、教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今度のG7で、参加各国の共通の関心といいますか問題意識を私なりに要約しますと、アメリカはもちろんですが、日本もヨーロッパも、経済はいい方向に進んでいる、そして、それをより堅実なものに、堅実な繁栄につなげていくためには、成長につなげていくためには各国がどういうことをこれからしなければならないか、これが一つであります。それから、現在、どういうことがそれぞれが持続した成長に持っていくことの阻害要因になっているか、それは共通の理解を持って取り除いていこう、そして、共通のメッセージをできれば出そうというのが今度のG7のねらいだったと思います。

 そこで、持続した成長のために何をしなければならないかという点は、これは、G7の間にほぼ共通の見解があると思います。いわば、それぞれの国の構造問題にしっかり取り組むことだ。アメリカでいえば、いわゆる双子の赤字のような問題にどう対応していくかということであり、ヨーロッパでいえば、労働市場の硬直性を初めとした問題をどう乗り越えていくかということであろうと思いますし、日本でいえば、今、小泉内閣のもとで取り組んでいる構造改革のようなものをさらに実効的にしていくにはどうしたらいいかということで、そういうことにそれぞれ努めるべきであるというのがその共通の認識であったと思います。

 それから、阻害要因は何かということになりますと、ドバイで出しました声明がやや市場で誤解をされまして、その後やや、私どもから見ると、為替水準というものはいろいろな動きが生じてきている。これが今度の声明の中には、その点で、為替相場の過度の変動や無秩序な動きは経済成長にとって望ましくないと、我々のかねての主張でございますが、そういう文言が入りましたことは、この為替のドバイ以来の動向が、持ち直してきたそれぞれの経済成長といいますか、それを阻害する要因になっているという共通の認識が得られたということではないかと思っております。

 そして、今、大野委員がおっしゃったアメリカのドル、為替に対する認識でありますけれども、これは、スノー財務長官からも、G7の場で再三にわたって、財政赤字の削減やらあるいは貯蓄率の増加に努めるという御発言がございましたのは、アメリカとして経常収支、財政収支のその双子の赤字の克服に努めなければならないという意図を表明されたわけでありますが、その背景にあります認識は、経常収支のアンバランスを単なる為替調整だけでやるのはこれはなかなか現実的なことではないという、これもG7の共通認識だろうと思います。それぞれの国の成長率の差やあるいは投資・貯蓄バランスの不均衡といったようなことが経常収支赤字の背景にあるわけだから、アメリカはそういったことに努める、日本もだからそれは努めてくれというメッセージも入っていると思いますが、そういったような認識であったと思います。

 アメリカはもともと、強いドル、それから為替相場は市場によって決まるべきだという考え方をずっと基本に持っておられるというふうに私は理解しておりますが、全体的に今私が申しましたような認識で今度のG7の声明ができ上がっているということではないかと考えております。

大野(功)委員 さらに、このボカ・ラトンのG7の「成長のためのアジェンダ」、これを拝見いたしますと、今後予定している改革の中で、金融セクターの改革という問題があります。金融セクターの改革、本当にやってもらいたいな、こう思う問題であります。

 と申しますのは、日銀が最近、日銀の当座預金の積立額の目標を三兆円上げまして、三十兆から三十五兆円にした。お金はいっぱいありますよ、デフレ対策のために、デフレ退治のためにお金はいっぱいありますよというメッセージは出してくれているんですが、そのお金が日銀の中に、金融セクターの中にたまってしまって流れていかない、金融セクター以外に流れていかない、こういう問題があるわけであります。

 日銀総裁福井さんは、総裁になった時点で、我々はお金の出前持ちをやりたい、こういうことをおっしゃっていました。なかなかいいことをおっしゃるなと思っておったのでありますが、お金というのはずっと何か日銀の中へ、金融セクターの中へたまっておりまして、出前持ちどころか自分持ちになってしまっている、こういうような現象が起こっておりまして、こういう現象、どうやってお金を外へ出していくか、こういう問題が日本の金融にはあるんじゃないか。

 金融庁の方も、公的資金の注入について新しい法律を準備されているようでございますが、これも側面的にお金が外へ流れていくようなことを支援していこうという趣旨かと私は理解しております。

 そこで、これは現場の問題にはなりますけれども、本当に金融セクターの中だけでお金がとどまってしまって、銀行と企業の関係で見ますと、銀行は大企業に借りてもらいたい、ところが大企業の方は全然借りたくない、そして、中小企業は銀行から貸してもらいたい、ところが銀行の方は中小企業を信用しない、こんな現象が起こっているわけでございます。

 これが証拠に、例えば業況感の、景況感の悪いときにマネーサプライが多くなっている。これはやはり、過去の貸し渋りの反省があって、危なくなると金をためておこうかな、こういうことじゃないか。あるいは、キャッシュフローがあるのに設備投資に回っていない、こういう現象が統計上も出ているような気がいたします。

 これは実に、私は銀行の貸し出し審査、貸し出し態度の問題になるのではないかとも思いますけれども、今、事前調整よりも事後審査の時代ですから、竹中大臣にお尋ねしてもどうかとは思うのでありますけれども、こういう現象を、竹中大臣、どうやったら解消できるのか、どういうふうに思っておられるのか、どうやったら解消できるのか。

 私は、貸し出し態度、審査の態度の問題かなとも思うのであります。今までの担保主義じゃない、あるいは人的保証の世界でもない、何か新しい貸し付け審査の姿勢が必要なのかな。それはリスクプーリングかもしれないし、何かわかりませんけれども、コメントがあればひとつお願い申し上げたいと思います。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、金融機能がさらに強化されて、今、金融セクターに、委員はたまっているという表現をされましたが、それが中小企業を中心とした産業部門にしっかりと流れていくような環境をつくることこそが、まさに金融改革の私たちが目指すところであるというふうに思っております。

 そのためにどのようにしていったらいいか。日銀は、銀行セクターにいわゆるベースマネーと言われているものはかなりしっかり出している。しかし、それが銀行の不良債権問題等、銀行がなかなかリスクに対応できる力を持てない、低下させてきたという中で、銀行から企業への貸し出しが思うように伸びない状況になってきたということだと思っております。

 これを解消する根本的な問題、これは中期的な課題ということになろうかと思いますが、これはやはり不良債権問題をしっかりと解決して銀行が前向きの対応をできるような環境をつくっていくこと、恐らくそういう観点からG7でも日本の金融改革ということが議論されているんだというふうに思っております。

 しかし、同時に、金融の現場を預かる立場としましては、そういったことを中期的にしっかりと進めていきながら、同時に、日本の金融の実情に配慮した、特に銀行という相対型の間接金融が極めて重要である、中小企業にとっては特にそうであるということに配慮した、やはりきめ細かな対応が必要であるということを一貫して我々も考えております。

 そうした観点から、地域を中心とした銀行と企業の間柄、リレーションシップを重視した、リレーションシップバンキングをしっかり強化しよう、つまり、銀行は相手の企業に対してしっかり場合によっては相談に乗る、コンサルティングにも乗る、それを再生させる、地元の企業を再生させることによって結果的に銀行も財務基盤を強化していける、強くなっていける、そのような計画をずっと我々も、プログラムを実行しているわけでございます。

 今、委員の御指摘の中に、その一つのあらわれとして、銀行の貸し出し態度であると。具体的に言えば、担保とかに頼らない融資をしっかりとやってもらわなければ困るのではないかと。そのことは、実は我々のリレーションシップバンキングのプログラムの中心的な位置づけを占めております。

 去年の八月に、六百を超える日本の地域機関、中小金融機関すべてに報告を求めまして調べましたところ、日本の地域金融機関のうちの八割が、現在の時点で、担保に頼らない融資を拡張する、具体的には、スコアリングモデルといいますか、いろいろな評価を非常に早く行ってそれでしっかり対応していくような、そういう取り組みを既に始めている。これはやはり前向きの動きであると思っております。

 主要行につきましても、不良債権比率が着実に低下する中で、今年度に関しましては、四メガだけで一兆三千億円程度の、担保に頼らない、第三者保証に頼らないような融資を今計画をして、私はこれは実現されるというふうに思っております。

 なかなか打ち出の小づちのようなものはないわけでありますけれども、主要行ならば主要行に合わせて、地域金融機関は地域金融機関の実情に合わせて、そうした取り組みを進めることによって担保に頼らない融資等々がふえていくようにする、そうしたことによってお金がまさに市中に回るような環境を我々も引き続きしっかりとつくっていきたいというふうに思っております。

大野(功)委員 ありがとうございました。

 お金が金融セクターから外へどんどんどんどん出て行くように、みんなでお金の出前持ちの役割をやっていかなきゃいけないなと思います。よろしくどうぞお願いします。

 それからもう一つ、最近の現象として、緩やかな回復、着実な回復と言われながら、この中身を見ますと、もう地域間格差、業種間格差それから規模格差が大きく大きくなっていっているんですね。ここで私は、一つだけ地域間格差の問題について取り上げさせていただきたい。

 六四半期連続で経済成長はできております。また、近々発表されると思われます二〇〇三年の十月から十二月までの四半期の数字も、恐らく年率五%ぐらいだろうと言われているわけでございます。

 そこで、着実に、緩やかにという経済成長の実感、景気回復の実感がなかなか皆さん共有できない、ここに問題があるのではないか。業況判断を地域別に見てみますと、日銀の短観でございますが、関東はマイナス一〇%ポイント、ところが、私、四国でございますが、最悪の四国はマイナス三〇%ポイント、こんなに格差があるんですね。しかも、地価も、土地の値段も東京は下げどまっている、ところが、地方はまだまだ下がっている、こういう状態であります。

 今までは、地方間の格差というものは公共事業で埋めておりました。しかし、この役割はもう終わっておるわけであります。今までは、この地方間格差というのは、地方に工場がありました、本社機能は東京、大阪にあったとしても、工場は地方にあったわけであります。これが、経済のグローバル化によりまして、どんどんどんどん工場が中国へ行ったり、外国へ出ていく、あるいは他の地域へ出ていく、こういう現象が起こっているわけでございます。

 こういう問題を踏まえて、地方は悲鳴を上げているということもありますけれども、総理、この地方の悲鳴をどのように受けとめ、どのように考えておられるのか、お考えを聞かせていただければ幸いでございます。

小泉内閣総理大臣 地域再生、これは、各地域でいろいろ今知恵を出して、構造改革特区なり、みずからの地域を自分たちで興していこうという意欲が出てきたと思います。

 今のところ、大企業を中心に企業業績が上がってきて収益も改善してきておりますが、今後、これを中小企業、地域にいかに進展させていくか、これが重要でありまして、現に、稚内から石垣までという、この地域再生をいかに図っていくかということで今政府としても腐心しているところでございます。また、いろいろな規制の問題、これを、特区構想ということによりまして、各地域の申請をできるだけ実現に向けて生かしていこうという取り組みを進めております。

 この地域の再生におきましては、金子担当大臣も積極的に地域の意向を生かしていこうということで、今、数多く申請が出てきておりますので、これをいかに地域の発展につなげていくかという取り組みの中で、地域再生について、金融問題のみならず、地域おこしにおいては、観光振興あるいは規制改革等によって地域の発展につなげていきたいと思っております。

大野(功)委員 私も、地域特区の発展ぐあいに大いに期待している者の一人でございます。

 それから次に、基本的な問題として、これからの日本経済の立て役者、日本経済を押し上げていく牽引車の問題について簡単にお伺いしたいと思います。

 これまでは、日本経済を押し上げていく立て役者、これは輸出と公共事業であったと思います。しかし、既に公共事業は残念ながら舞台から退場しております。では、これからの立て役者というのはだれだろう。私は、輸出と科学技術、今、新しい三種の神器なんて言われておりますけれども、もうデジタル家電ブーム、大変なものでありますし、IT産業も大変である。だから、科学技術に力を入れる。

 今度の本予算でも、科学技術と福祉につきましては、他の分野がマイナスであるのにもかかわらずプラスになっている。ここは大いに評価させていただきたいと思うのでありますが、もちろん、他の項目もプラスになればもっと評価させていただきますが、こういうめり張りのついた予算を組んでいただいた、これは大変なことだと思っております。

 しかし、これから何が日本経済を押し上げていくのだろう。私は、今、輸出と科学技術と申し上げましたが、もう一つ、消費というものを挙げたいと思うんです。

 時間がありませんから細かなことは議論はやめますけれども、この点について、どういう項目がこれから重点を置いて考えていかなきゃいけない項目なのか、財務大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。簡単によろしくお願いします。

谷垣国務大臣 今、大野委員おっしゃいましたように、戦後の高度経済成長のときは民間投資が経済を引っ張った。それから、低成長になってからは外需が意味を大きく持ってきて、それで、さらに景気が悪くなったときは公共事業だった。そういう時代には、どちらかというと、今委員がおっしゃった消費というのは、いわば結果であって、経済を引っ張る原因ではないんだというふうに考えられていたと思いますが、これだけ財政が厳しくなってきますと、やはり民間需要というものを中心に考えなきゃいけない。そうすると、委員のおっしゃったような科学技術やIT投資というようなものとそれから消費の動向というものに今まで以上に着目していかなきゃならないんだろうと思います。

 消費の動向ということになりますと、やはり将来稼いでいく所得がどのぐらいか、それが確実かということになってまいりますから、一つは、委員が今おっしゃったような年金改革のようなものにしっかり取り組む、それから、税制等においてもそういった安心感が高まるような心理面も考えながらやっていく、あわせて、先ほどおっしゃったような科学技術等へのめり張り、こういうようなことをあわせてやっていくべきではないかと思っております。

大野(功)委員 ありがとうございました。

 今、年金も、消費者が安心してお金を使える、この安心のよりどころだ、こういう御説明もございました。私も全く同感でございます。年金によって本当に将来安心できる世界をつくりたい、そして、どんなに年をとっても楽しい人生を送ることができるような世界をつくっていきたい、これが政治家としての大変重要な役割だと確信いたしております。

 こういう意味で見ますと、「成長のためのアジェンダ」、G7でございますけれども、「社会保障を含む財政の歳出・歳入改革」、こういうことも書いてございます。今回、与党としては、年金制度改革を議論いたしました。その議論は全体で七十八時間という長時間に及ぶ議論をやりまして、年金改革案をつくりました。その年金改革の問題について、G7でも、これまで「二〇〇三年九月以降の成果」として掲げられておりますことに、私、大変うれしく思っておるところでございます。

 そこで、今回の年金改革のポイントはもう申し上げませんけれども、どうぞ、このG7に書いてある「社会保障を含む財政の歳出・歳入改革」、これは一体何を意味するんだろうか、今申し上げた、日本人のDNAは安心である、この安心に対立するようなことは絶対になさらないだろうな、このことだけ確かめさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 やはり持続可能なものでなければ、安心、安全につながりませんので、委員が大変御努力なさいましたように、年金制度そのほかが安心なものに、持続可能なものになっていきますように、財務省としても一生懸命尽力したいと思っております。

大野(功)委員 安心、これを絶対、財政の面から守ってくださいますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

笹川委員長 この際、園田博之君から関連質疑の申し出があります。大野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。園田博之君。

園田(博)委員 私は、小泉改革の大きな目標の一つであります中央から地方へというものを、ちょっと後でこのことについてお聞きしたいと思っているんですが、その前に、当面、国民の皆さん方はこれから先の暮らしのことがやはり極めて大事ですから、暮らしのもとになる仕事、仕事の環境といいますか、国内の経済環境がどうなっていて、これからどうすべきなのかということをちょっと大野委員に引き続いて質問したいと思います。

 不況、不景気からやや脱しつつある雰囲気が出てきた。この好況感をみんなで共有できていないというのは、これは事実なんですが、しかしそれにしても、経済、また特に大企業に関連される方々が好況感が出てきたとどなたもおっしゃっていますので、部分的であってもそういうものが出てきたんだろうと思う。

 そこで、竹中大臣にちょっと説明をしていただきたいんですが、どのようなところがよくなって、しかも、よくなっているところがあるとすればどういう環境からそういうものが今生まれてきているのか、ちょっと御説明をお願いします。

竹中国務大臣 バブルが崩壊してから日本経済は大変厳しい状況にずっと一貫してあるわけでありますが、そうした中で、直近の経済に関しては、景気は着実に回復しているという判断をしております。

 どこの部分がどういう理由でよくなっているのかというお尋ねであろうかと思いますけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、設備投資と輸出に支えられて企業業績が着実に回復をしている。そうした中で、個人消費は持ち直し、底がたく推移しておりましたが、これも持ち直している、雇用情勢は依然として厳しいものの持ち直しの動きが見られるというのが、部分部分で見た今の状況でございます。

 何といっても、その意味では設備投資と輸出がその大きな一つの原動力になっておりますが、それがどういうところからもたらされたのか。これは、設備投資でありますから、基本的には企業の努力によるところが大きいわけでございます。

 しかし、同時に、その背景でやはり考えられますのは、金融環境が一時の状況に比べて非常に安定をしてきて、不良債権が減る中で、かつてのような信認に対する、信用に対する不安というものが減じてきて企業家マインドが回復したというのが一つ大きな背景としてあると思われますし、さらに、金融と産業の一体再生、そうした中で、さまざまな制度改革を通す中で、企業の再生に向けた動きが着実に始まった。これは、企業の努力であると同時に、政府がそういった枠組みをつくってきたという面もあろうかと思っております。

 一例で申し上げますと、例えば、この五年間に日本のMアンドAが二・五倍にふえているわけですが、これはこの間の、例えば持ち株会社制度の問題、連結納税の問題、そういった制度、まさに改革が企業の活動を支えてきた面があるのではないかというふうに思っております。

 もちろん、これはまだ芽でありますから、こうしたことが、委員おっしゃいますように、好況感が共有できるように、まさに地域と中小企業に浸透できるような状況をしっかりつくっていかなければいけない大変重要な局面であるというふうに思っております。

園田(博)委員 部分的であってもそういう兆しができてくるというのは極めて大事なことなんですが、それじゃ、個人消費は、今少し持ち直したとおっしゃいましたか。持ち直したのかどうか、指標を見ていても、僕はそうはちょっと思えないんですけれどもね。やはり景気というのは、企業体がうまくいくということは極めて大事なんですが、そこで多くの人たちが働いて安定した賃金を得て、そういうものを生活だけじゃなくていろんなものに消費していくということで初めて循環するんだろうと思うんですね。そこには全然まだ来ていないと思うんですよ。

 そこで、竹中大臣が政府の代表者として実感しておられる足らざる部分、じゃ、どういうところが足りないのか、どういうところを政策的に埋めていかなきゃならないのか、そこのところを聞かせてください。

竹中国務大臣 さらに今後努力を要する足らざる部分はたくさんあるというふうに思っております。

 その重要な一つは、園田委員も御指摘されたような、やはり消費。これは、企業が企業の再生の中で、リストラ等々も行う中で、家計への所得というのがやはり十分にふえてこなかった、場合によっては減っていた。しかし、企業が強くなって、企業のキャッシュフローがふえて、借金を返すだけではなくて、設備投資をする力も今は出てきた。そうした中で、今、実は雇用者所得がふえる兆しが見えております。

 そういう意味で、企業が強くなって、それが家計部門にしっかりとお金が回るような状況になっていく、そういう状況をつくっていくこと、これが足らざる部分といいますか、なさねばならない大変重要なポイントであるというふうに思っております。

 同時に、やはり国民にとって重要なのは、人々の生活、所得機会、所得稼得の機会であるところの雇用の問題であるというふうに思っています。

 この雇用の問題というのは、御承知のように、アメリカ経済は大変高い成長を今しておりますけれども、それでも実は失業率は日本をはるかに上回っておりますし、雇用は厳しい。景気全体が少しよくなっても雇用はなかなか回復しないという共通の構造問題を世界の先進工業国は抱えているというふうに思っております。

 日本も実はそういう問題が着実に存在しているわけで、まさに労働市場における需給のミスマッチ。雇いたいと思っている企業は実際にある、しかしそこにマッチするような人材がなかなかいない、これはまさに構造問題である。景気の問題というよりは、これは構造問題の様相が今は強くなっているというふうに思っております。この雇用に浸透させるということが重要であろうかと思います。

 同時に、今の景気の回復というのが、例えばITでありますとか輸出主導、そうした一つの先端的な分野によってもたらされているという側面がやはり少なからずありますので、そうした効果が地域、中小企業に浸透していくような環境を、これをやはり構造改革を通してしっかりとつくっていかなければいけないということではないかと思っております。

 足らざる部分はたくさんありますが、今申し上げましたような家計への浸透、消費の問題、それと雇用の問題、地域への浸透、そうしたところがやはり当面我々にとって極めて重要な問題であるというふうに思っております。

園田(博)委員 一番最低限大事なのは、やはり雇用の問題だと私は思うんですね。今の御時世ですから、そんなに賃金が毎年ぼんぼんぼんぼん上がるという状態というのはなかなかつくり出し得ないんですが、しかし、最低限やはり雇用の場があって、生活や人生にある程度の目安が立てられるという環境をつくるというのが、やはりこれは政治の責任だろうと思う。

 よく言われるんですが、雇用のことでアメリカと比較して言うというのは、余りよくないと私は思うんですよ。歴史的にもアメリカの経済というのは日本の経済と全く違っておりますから。日本は、雇用だけは大部分確保できるんだという経済社会をつくることが極めて大事なんであって、まだアメリカより低いぞなんということは、余り考えない方がいいと思う。それぐらいの責任は、やはり政治が持った方がいいと私は思いますね。

 そこで、経済状態で、今おっしゃったように、特にITとか輸出とか、こういうものが非常にまた頑張って、政治の環境づくりもあったんでしょうが、私は、企業の自助努力によってそういう状況を今つくり出しかかっているんじゃなかろうかと思うんですね。

 そこで、さっきも大野委員からもおっしゃって気になるのは、最近、例えば鉄鋼とか造船がいいという話をよく聞くんですね。その理由は何かといったら、中国経済。中国が今、設備投資を非常に盛んに行われていますから、鉄の需要も多いし、それから、中国経済が非常に頻繁になり、したがって物の移動も激しくなるので、外航を中心とする船舶の仕事が非常に多い、それで造船も非常によくなっている、こう言うんですね。

 考えてみますと、こうしたかつての重厚長大型がまた再び頑張ってくれるというのは非常にいいんですが、ちょっと嫌な感じがするのは、一方では、中国からの輸入品で苦労している大部分の地域が実はあるんですね。

 これは輸入品だけじゃなくて、まあ輸入品は、農産品とか水産品とか、せっかく一生懸命努力していいものを、付加価値の高い農産品をつくったりしているんですが、中国の安い農産品が入ってきたりして、なかなか思ったとおりの所得を得られないという状況が一つありますね。

 それからもう一つは、工場移転の問題です。これはもうかねてから言われておるように、空洞化と言われる現象で、私は加工食品の世界に二十年ぐらい前にいたんですが、この前、当時の同業者、これはオーナーなんですが、どうですかと聞いたら、その会社は割合順調なんですね。利潤はちゃんと確保している。ところが、園田さん、中身が全然変わっちゃったよと言うんですね。今ここは中国に工場を十カ所ばかりつくった。売っている値段はあなたがいた二十年前と全然変わらない、利潤を確保するために安いコストで物をつくらなきゃならないので、もうほとんど中国に工場を移転しちゃった、こう言っているんですね。

 これはこれで私は、企業の努力だし、そういう努力をしていいものを消費者に提供できれば、それは消費者はそれで非常にいいと思うんですが、一方では、この輸入の問題とか工場移転の問題で、中国経済の今のあり方で苦しんでいるいっぱいの地域があるということも、これも事実なんですね。なぜか高度成長期の最初のころの様子をちらっと思い浮かべたりして、明らかに日本の経済にはひずみも出てきていることも事実だなと。そのことを大野委員はおっしゃったんだろうと私は思うわけであります。

 さて、一つ私は竹中大臣か財務大臣にお聞きしたいんですが、ひょっとしてこれから、中国経済は順調に来ているわけだから、中国通貨の元が切り上げられれば、値段だけで勝負するような輸入品は日本の国内から見れば競争力を増すし、輸出も順調にいくし、日本経済にとっていいのかなと思うんですが、これは間違いですか、こういう考え方。

谷垣国務大臣 中国は大変な経済成長も今遂げておりますし、大きな規模になりましたので、この人民元、中国の為替がどういうものであるかというのは、日本はもちろん、近隣のアジア諸国も、あるいは欧米にも大きな影響を与える問題になっているわけですね。

 それで、では日本にとってどういう影響を、この人民元の切り上がったり切り下がったりすることで影響を与えるかというのは、実は、これは地域や業種によってさまざまな意見があって、かつてのように一枚岩、かつて日本は人民元に対して一枚岩的な対応ができる時代があったと思いますが、非常に多様だと思います。しかし、私は、一番心配なのは、やはりさっきおっしゃった雇用の問題であるというふうに思うんですね。私はそういうふうに認識をしております。

 ただ、人民元の水準の問題は、為替の水準の問題は、やはり国際的に原則がありまして、一つは、やはり為替の問題はそれぞれの国が自分自身の利益に従って判断するものである、どういうシステムをつくっていくか。それから二番目の問題は、さはさりながら、ファンダメンタルズを安定的に反映しないような制度であるならば、それは周りにとっても自分にとっても余り望ましい結果にはならないであろう。やはりファンダメンタルズを安定的に反映していくような仕組みが望ましいんじゃないかというのが、二番目の原則としてあるだろうと思います。

 我々もいろんな意見交換を中国としておりますけれども、日本自身の経済発展とそれに伴う日本の通貨のあり方というようなこともいろんな機会に中国と議論をしておりますが、いろんな形で中国と議論をしていくということが大事ではないかな、こう思っております。

園田(博)委員 それは、日本の都合がいいから上げろというわけにはいかないと思うんですが、しかし、中国経済が本当に順調であるのならば、財務大臣おっしゃるように、正しく通貨を国際的に評価するというふうにしなきゃおかしいわけで、そういう意味で、堂々と理屈の通る話ですから、日本にとって都合がいいかどうかということよりも、そのことはやはり、日本も重要な役割を国際的に負っていますから、これはぜひ続けてもらいたいというふうに思いますね。

 そこで、もう一つの問題は、経済が与える国と地方との関係の問題で気になるのは、今言ったように、結果としてそうなっているわけですね。これは、政府の意向がどうであれ、日本の経済がまた再び輸出産業を中心にしてやや活気を呈している。しかし一方では、ほとんどの地域で産業政策上特別なもの、政府としてもある程度のことをやっているんですが、苦しんでいるというのがやはり実態だろうと思うんですね。

 そこで、日本のこれからの産業政策というものを少し丹念にやっていかないと、さっき申し上げた雇用のことも含めて、いろいろな地域が活力を取り戻していくということはなかなか難しい、こう思っているんですね。一方、輸出産業のこれからのあり方だとか中国経済との関係で、こういう産業を今後ともやはり日本の中心として政府が相当力を入れてやっていくというほどの、そういうお気持ちがおありになるのかどうか、経済産業大臣、ちょっと一言、どうでしょうかね。

中川国務大臣 今までの質疑を拝聴しておりまして、私は、日本経済に一部明るさが見えてきたとは思いますけれども、業種あるいは規模、中小企業ですけれども、あるいは地域によって、依然として厳しいところがいっぱいあるというふうに思っております。

 そういう中で、どういうふうにそういう厳しいところを元気に前進させていくかということが私の大きな仕事でありますが、そういう中で、園田委員御指摘の中国との関係ということでありますけれども、元気のいい代表例が輸出中心の製造業ということで、その輸出先がアメリカ、東南アジア、そして中国が今一番元気がいいということであります。これがいい方向に行っている部分もあるわけでございまして、例えば、いろいろな統計の中の一つとして、日本から中国向けの輸出というのは非常に伸びているわけでありますが、中国で経済活動している企業に対する日本からの輸出というものが非常にふえている。これは一ついい例だと思います。

 他方、委員御指摘のように、それによって本来日本で製造していたものが空洞化してしまうとか、輸入の影響というものも非常に大きいわけでございまして、それをどういうふうにしていったらいいかということが非常に大きな問題でありまして、その問題意識は園田委員と共有していると思います。

 そういう中で、我々としては、全国に散らばる企業の九九%以上を占める中小企業そしてまた地域の企業を、どうやってその能力を遺憾なく発揮できるかということについて、金融面あるいはまたいろいろなネットワーク、人材面、それから技術面でできるだけの支援をしていきたいと思っております。

 一つは、高付加価値というもの、これは先端四分野みたいなものもあれば、その地域でしかできないような製造に対して、できるだけのバックアップをさせていただきたいと思っておりますし、また、いわゆるIT投資とか、あるいは最近、我々、頑張って御支援いただいております一円企業を初めとする最低資本金制度の例外企業の支援等々についても、これからも後押しをしていきたいと思います。

 そういう意味で、日本の中で頑張っている企業をできるだけ支援をしていきたいと思いますし、先ほど申し上げた高付加価値につきましては、やはり知的財産権の問題というものも非常に大きいんだろうと思っておりますので、きちっと技術を保護しながら、その地域あるいはまた日本でしかできないものを大いにいろいろな面でバックアップをしていきたいと思います。

 それからもう一点、最近、きのうもちょっと一部ニュースでやっておりましたけれども、日本の代表的な輸出企業が中国や海外から日本に戻ってきて生産をする。これは消費者ニーズにこたえるとか、それから研究開発部門、投資部門を充実させるという意味で、一部、日本を代表する輸出企業の生産拠点が日本に戻ってきているという傾向も他方見られますので、そういうものも総合的に勘案しながら、日本の企業あるいは地域が元気になるように全力を挙げて努力していきたいと思っております。

園田(博)委員 さて、総理、こういうチャンスを逃がさずに、経済産業省でも、輸出関連だけじゃなくて中小企業をどうやって育成していくのか、いろいろ知恵を出していただいているので、大変結構なことだと思うんです。

 一方、地方から見れば、地方独自のいろいろな知恵を出して、今苦労していると思うんです。しかし、これからは、地方ではもう、かつての高度経済成長時代のように、輸出産業が好調であれば、その工場を田舎に誘致して、そしてそこで雇用の場を確保していくなんということがもう多くは望めなくなりましたから。基盤そのものが違っていますからね。

 そこで、やはり従来からの産業というものを大事にして、去年よりもことし、ことしよりも来年、例えば、農業でいえば、少しでも生産高も所得ともふやして、そして将来の人生設計が成り立っていく。そこにそういうものができ上がれば、若い人たちもそこに残って、家業を引き継ぎ、地域のために頑張っていくという空気が出ていくんだろうと思うんですね。

 そういう意味では、現状というのはやはり非常につらい状況でありまして、そこら辺、さっき、地域再生のための改革特区とかいろいろな知恵を出していただいているんですが、従来型のこの一次産業に対して、保護ということじゃなくて、一生懸命頑張る人たちに対して、やはり政治がさらに今までよりもよい環境をつくっていく、どういう知恵があるかはちょっとわからないんですが、そういう考え方で一方で進めていく、そういう考え方は総理の頭におありでしょうか。

小泉内閣総理大臣 時代の変化にいかに対応していくかというのは、大企業のみならず、地域においても、中小企業においても極めて大事であって、今大きな転換期にあって、それぞれの企業が、また地域が知恵を出し合ってこの困難を乗り越えていこうという意欲が出てきていると思います。

 今、中川大臣からお話ありましたように、今まで一千万円以上ないと会社を立ち上げることができなかったのを、特例を認めて、一円以上だったらば会社を立ち上げることができますよということにした結果、この半年近くで五千件以上のそういう、ああ、それだったら、おれたち金がなくても会社できるのかということで立ち上げてきた。

 こういう、自分たちは資金がなくても会社を立ち上げて、自分たちの能力を生かしていこうという人たちが出てきたということはいい傾向だと思います。問題は、この企業を本当に本物にしていくためにはこれからどういう支援が必要かというのは、さらに工夫が必要だと思います。

 同時に、中国はかつて、どんどんどんどん安いものが日本に入ってくるという脅威論が出ていましたけれども、私はそのころから、いや、これは一つの大きなチャンスじゃないか、脅威とばかりとらないで、これだけ中国経済が発展するということは必ず日本にチャンスが出てくるはずだという、中国脅威論をとらないで、むしろ好機と受けとめて、チャンスと受けとめて、この中国の経済発展に対して日本はどういう対応ができるかということを考えるべきじゃないかと言っていたんですが、最近はむしろ、輸入だけじゃなくて、中国の経済発展につれて日本が中国に輸出する、中国が日本の製品を求めてきたという事情がある。これはいい傾向だと思っております。

 同時に、やはり安ければいいというものじゃない。高くても、いいものはやはり日本の技術を生かしたい、日本の製品を求めたいという外国企業も出てきている。

 あるいは、農業というのは、もう日本は輸入制限するばかりだ、輸入をいかに阻止するかということから、最近は、北海道でも長芋を外国へ輸出している。日本の需要に足りなくて、それで外国へ輸出も考えなきゃならない。日本の需要に追いつけないというぐらいな北海道の地域で、長芋を外国に輸出している。あるいはリンゴも、一時外国から入ってきて大変だというのが、日本のリンゴは高くてもうまいというので、リンゴも輸出している。鳥取では最近、ナシですか、ナシも、これは外国の方へ輸出している動きが出てきた。だから、輸入を制限するというだけじゃなくて、日本は高くてもおいしいんだというものを輸出するということも、農業改革の中で視野に入れて改革する必要があるんじゃないか。

 日本だって、考えてください、日本の品物は安かろう悪かろうといって非難を浴びた時期があったんです。しかし、それを克服して、最近は、日本の品物は高くてもいいんだということで非常に評価を得ておりますし、生ものは日本しか食べないんだというのは、今どうですか。欧米人は生ものを好まないという固定観念はうそだった。おいしいものだったら、すしだって生ものだって、ニューヨークだってロンドンだってモスクワだって繁盛している。それにつれて魚介類、水産物も、日本は輸入だけじゃなくて今輸出に転じた。同時に、それが転じて、日本の調味料、しょうゆも、そういう人の嗜好に応じて輸出しなきゃいかぬということが出てきている。

 だから、悪いことばかりじゃなくて、いいことも出ているんです。両面考えて、前向きに考えて、意欲ある企業なり地域を振興していくために一工夫が必要だ。こういうことについては、政府としても、省庁連携をとりながら、いかにやる気のある企業、意欲のある地域を支援していくかということが今後も重要だと思っております。

園田(博)委員 それはそういう努力をしているんですよ、いろいろな地域で。これは政府が威張っちゃいけないんでね。私が申し上げたかったのは、そういう意欲があるんだから、その環境をさらに促進するための政策を実行するという気持ちを強く持ってくれ、こういうことを申し上げているので、総理のおっしゃっているのは間違いではございませんが、そのことに満足してもらいたくないという気持ちで申し上げました。

 それで、中国との関係でいえば、私が気になるのは、確かにおっしゃるように、消費国としての中国というのは大変な魅力なんですね。しかし、大部分は、十三、四億おられる中国の国民のうちの消費、中国から見れば、輸入してでも消費できる層というのはまだほんのわずかだと思うんですね。だから、それはそれでも大事なことなんですが、多くの人たちがやはり生産地としての中国という実態を抱えていますから、このことをやはり頭に入れて、これから中国との関係を続けていかなければならぬなという気がしております。

 時間が余りないんですが、私が一番大事だったのは、地方分権ということについて聞きたかったんです。

 今、地方分権、何だかんだ、いろいろな意見も出ているし、地方から苦情も出ていますが、確かに少しずつ進んでいくことは事実だと私は思うんですね。問題は、先々どういう形にして国と地方との関係というのが制度的になっていくのか。地方推進基本法か何か、あの法律では国が持っているものをなるべく県に移譲するということになっていると思うんですが、総理御自身の口からも道州制という言葉が何回か出ています。

 将来の地方分権の道筋というのは、大まかに言うとどういう形が日本の運営の仕方として、今の時代、一番いいと思っておられるのか、ちょっとその辺、総理から意見を聞かせていただけませんか。

小泉内閣総理大臣 地方分権ということは、地方にできるだけの裁量権を与えていこう、地方にできることは地方にということが趣旨でありますが、同時に、裁量権を与えられれば、地方は責任が生じてくるわけです。

 この事業をやれば中央省庁が補助金を出しますよということも、特定の分野については必要な部分もあるでしょう。しかし、全体から考えてみれば、地方に何が必要かということは地方が一番よく知っているわけであります。そういうことに対して、個別事業に対して特定の補助金を出すよりも、ある程度地方に任せて、その補助金全体の中でどういう部分に優先順位を置いて地方が考えていくかということも必要でしょう。

 しかし、同時に、地方においては、税源があるところ、財源があるところ、いろいろであります。三千二百ぐらいの地方自治体があるんですから、人口の規模も違う、地域の広さも違う。そういう中にあって、企業があるところ、ないところ、企業に課税をしようとしても、企業がないところは、税源なんかない、だから補助金もらった方がいい、交付税もらった方がいいというところもあるわけです。

 では、地方に課税自主権を与えようと言うと、いや、減税ならいいけれども増税は中央がやってくれという虫のいいことも言ってくる場合がある。責任を持つということは、減税もできるけれども、同時に、財源がなかったら増税もしなきゃならないんですよ。両方考えてもらわなきゃ困る、裁量権というのは。自分たちで判断しなきゃならない。こういうのを両面から考えてもらわないと、地方分権というのは実現できない。

 そういう中にあって、ある程度規模が必要だ。小さいところだけじゃ無理ですから、合併も必要でしょう。ある程度の財源も考えなきゃいけない。人口の規模も考えなきゃ、自主的に地方が判断できないし、財源も調達できないという面もあります。

 同時に、今言った道州制については、いろいろ議論が出ておりますが、これは非常に大きな問題です。各県をどの程度ブロックに分けて、県を幾つにまとめて州に、単位にするか。そうなると、今までの県はどうなるのか、市町村はどうなるのかという問題が出てきます。

 ところが、北海道を例にとりますと、北海道は四国よりも大きい。そうすると、将来、もし仮に道州制が実現した場合に、今の北海道というのはそのまま地域で、よその地域を北海道につけるということも考えにくい、同時に北海道の一部を削って別の地域につけることも考えられない、だから北海道というのは、道州制をもし考えるんだったらば一番いい例じゃないか。何も今の制度を道州制にしなくても、北海道独自に、もう道なんだから、それで、県はないんだから、四国以上。この北海道を道州制の一つのモデル地域に考えて、どういうことで北海道はみずからの裁量権を拡大していくか、市町村を合併していくかというのを北海道自身で考えてみたらどうか。その北海道が、意欲が、いいものだったら我々はどんどん受け入れるから、まず北海道自身が知恵を出してくれと私は言っているんです。

 そういう中で、私は将来、各地域、今の四十七都道府県をブロックに分けて、幾つになるかわかりません、九州は九州全体で考えるかもしれない、四国は四国全体で考えるかもしれない。そういう中にあって、北海道は、どういう道州制になっても、北海道独自の地域で道州制を考えるだろうから、では北海道独自でみずからの裁量権、中央省庁が出張している、こんなのは重複行政の弊害も出てくるだろう、そんな、北海道に対して中央省庁が支店なり分局なり支局なりが出張しないで、これは全部北海道に任せてくれというのもいいんじゃないか、そういうのを北海道みずから知恵を出して言ってくれ。我々、押しつけることはしない、北海道がこうしてくれと言うんだったら、できるものは意欲的に取り上げていきたいから、一つのモデル地域としてやってくれということが、北海道を一つの道州制に考えるんだったら、モデル地域として北海道自身が考えていい知恵を出してください、それを私は取り入れる準備がありますということを言っています。

園田(博)委員 私は、道州制というのはもっと強力に推進すべきだ、こういうつもりでちょっと聞いたんです。

 なぜかと言いますと、やはりこの時代、日本の国づくりの、そのときの国づくりの体制といいますかルールのあり方、これはやはり、もうこの時代ですから、まあ日本が狭いといいましても、やはり地域の特性というのがありますから、その特性を有効に生かして地域づくりをしていくためには、日本国政府でそれを一元的に管理するというのはなるべくもうやめて、地域に任せるということが極めて大事なんじゃないか。これは地域にとっては本当はつらい話なんですよ、これは責任も持たなきゃなりませんから。権限だけ、お金だけ来て、非常によくなったなんて考えるとこれは大間違いを起こすんで、そこはやはりお互いにこの道州制ということの意味をよく理解し合って進めないと大きな間違いを私は起こすと思うんですね。

 ただ、将来道州制というものを志向して、そのために少しずつ進めたらどうだろうかということをよく理解し合いながら進めないと、今の町村合併も、町村合併の意義というのが、なるべく合併した方が効率的な運営ができるからということでどっちかというと進めているんですね。そうだけじゃなくて、これはちょっと総務大臣にも御意見を聞きたいと思ったんですが、時間がありませんのでもう聞きません。そうではなしに、将来、やはり本当の地方分権の受け皿として地方それぞれがもっと強くなってくれと。そういう意味で、これは十七年三月が終わってもさらにそういう方向に向けて町村合併を促進することを政府でやっぱり考えてやっていかないと、本当の意味の町村合併が私はできないんじゃないかと思うんですね。

 将来、そういう道州制になるときには税源もあるいは法令的にも自由裁量でできるように、国にはこれぐらいのものを残してあとは自由にやってもらいますよという仕組みを説明して進んでいくことが私は大事なんじゃないか。そうじゃないと、今の町村合併というものは、そういう意味ではやはり本当の意味で理解しないで進めていますので、ぜひそういうことも指針を出しながら進めていただきたいということをお願いいたしまして、以上で質問を終わります。

笹川委員長 この際、杉浦正健君から関連質疑の申し出があります。大野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。杉浦正健君。

杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。

 私の担当する質問に入ります前に二点ほど申し上げさせていただきたいと思いますが、道州制の問題については、今、園田委員が触れましたから詳しくは触れませんが、私も道州制推進論者でございまして、これは市町村合併、都道府県再編、道州制、そして小さな政府、三点セットで進めるべき改革だと思います。究極の行財政改革であって、財政、行政経費の節減だけでも十兆から二十兆ぐらい見込めるんじゃないかという私の試算がございます。園田先生のおっしゃったところにつけ加えさせていただきたいと思っております。

 それから、私どものふるさとで行われようとしております二大ナショナルプロジェクト、二十一世紀万博、愛知万博、そして中部国際空港。この二大プロジェクトについて、地域を代表させていただく人間として、歴代内閣、橋本総理から小渕総理、森総理そして小泉総理、歴代経済産業大臣、とりわけ前の平沼経済産業大臣初め各閣僚、大変な御尽力を賜りまして、予定どおり来年二月早々には中部国際空港開港、そして三月二十五日から愛知万博が盛大に開催される見込みが立ってまいりました。今年度予算におきましても満額要望どおり確保していただきまして、これで万全の備えで二大プロジェクトを推進できることになりましたことを心から感謝し、御礼申し上げたいと思います。

 ここに写真を持ってきましたが、もう万博会場建設が始まっております。各国から展示される施設の建設も始まっておりまして、目に見えてできつつあるなということが実感されます。

 参加国も現時点で国際機関を含めて百二十六ございまして、前回のハノーバーには及びませんが、大阪万博のときは八十でした、国と国際機関、それに比べますと、私ども百を超えればいいなと当初思っておったぐらいでございますので、本当にすばらしい、にぎにぎしい万博に相なるだろうと喜んでおる次第であります。

 総理初め各閣僚、出張されるたびに御勧誘を賜りまして、五大陸から、主要国はもとよりのこと、多数の参加者が得られる、夏ごろからはもう出展物の準備も始まるようでありますが、感謝申し上げたいと思います。

 中身は、自然の叡智。環境を初め、今、国際社会が当面している重大課題に対する展示に相なります。どういうものがそろうか楽しみでございますし、前売り券も発売しておりますが、好調のようであります。テレビをごらんの国民の皆さんもぜひ前売り券を買っていただいて、少なくとも一回は万博をごらんいただければ大変すばらしいな、こう思っておる次第でございます。

 空港も予定どおり来年二月開港であります。ここに写真を持ってきておりますが、もう空港島が全貌を見せておりまして、滑走路はほぼ完成、ターミナルビルも大分できております。中部地域にとっての二十四時間空港ということで、万博にとってのみならず、万博にも間に合いますが、この地域の、中部地域の将来に与える影響ははかり知れないものがあるだろうと期待されているところであります。

 トヨタ自動車さんが、名古屋駅前に今ツインタワービルがありますが、その真ん前に、それよりもちょっと高い、物すごい豊田ビルの建設を始められました。伺うところによりますと、海外、国内の営業を全部集中するそうです。新幹線、将来リニアも来ますが、名古屋は日本の真ん中だ、空港には車で三十分で行ける、電車でもそんなものであります。いろいろ関連事業も、東海環状とか第二東名の名古屋市部分だとか、愛知環状二号線とか、いろいろ整備していただいておりますので、万博までにはかなり整備されるというようなこともあって、トヨタ自動車は世界戦略の中心を名古屋に据えようというお考えだと承っておるところであります。

 他の日本企業も、恐らく同様の反応をされる企業も多いんじゃないかと思われますし、空港を中心として前島もできますので、海外からの企業進出も考えられる、中国の企業もいろいろ打診が来ておるようであります。中国からも進出しようというような動きもございますので、産業技術の集積が日本一の地域でありますから、この万博、空港の開港を機にいたしましてさらに進んでまいる、中部地域は日本の元気のいい経済の牽引車になるということを夢見ておるわけでございます。

 お礼を申し上げたついでに、特にインフラ整備についてまだまだやるべきことがございます。第二東名の整備だとか、東海環状は半分しかできておりませんとか、空港へ向けてもう一本高速道路が要りますとか、あるいは名浜道路といって海岸沿いを東に走る高規格道路とかさまざまございますが、そういった点について、今後とも政府の御配慮の方をこれは御陳情申し上げておきたいと思う次第でございます。

 私が担当する質問に入らせていただきますが、まず、領土問題、特に北方領土問題について総理のお考えをお伺いしたいと思うんですけれども、去る七日土曜日、北方領土返還全国大会が開催されまして、総理も御出席なさいました。そこで総理のお考えを述べられたと聞いております。

 日ロ関係は非常にいい関係にある、プーチンさんとは三回会談した、プーチンさんもこの領土問題の解決が日ロ関係、特にロシアにとっても大事だという認識をお持ちのようだというようなことも述べておられます。そして、一年前ですか、日ロ行動計画ですか、合意されたわけでありますが、それに沿って着実に両国の関係が進展しているので、これからも一層努力してまいりたいという決意を表明されたと伺っております。

 プーチン大統領、この三月、選挙でございまして、伝えられるところによりますと、圧勝と言われております。ロシア大統領の任期は四年でございますが、憲法上三選禁止であります。ですから、憲法が改正される余地がないわけじゃないんですが、ロシア憲法を見ますと、なかなか厳しい、日本憲法よりももっと厳しい改正規定がありますので、御本人も三選は出ないとおっしゃっていますから、これが最後の大統領任期になるんじゃないか。

 そうなりますと、選挙を意識しないで歴史的な決定ができるということもあり得るでございましょう。今まで日本が積み重ねてきた実績の上に、総理がこの問題について解決をして、そして日ソ平和条約を締結するという歴史的第一歩を踏み出す一つの時期ではないだろうかと思われるわけであります。

 日ロ関係は、申し上げるまでもなく、海を隔てた隣国であり、日本の外交にとって、対米基軸と同時にアジアに軸足を置く外交、その中でも、隣国として最も重要な二国関係の一つであります日韓、日中、対ASEANにまさるとも劣らない大事な関係であります。過去、不幸な事態がいろいろございましたが、プーチン大統領の再選を機に、さらに一歩進める機会ではないか。ロシアの方でも大分、日本に対する関心、理解が盛り上がっているようであります、詳しくは申しませんが。

 そこで、総理に決意のほどをお伺いしたいんですが、再選されればお祝いを兼ねて訪ロをされることもあるかと思いますが、東京新聞か何かに、北方領土を訪問してもいいというような御意向、内閣は否定されたようでありますが、報道もされておりますけれども、北方領土に足を踏み入れるかどうかという問題は別として、まだ北方領土の姿をごらんになっていないようですから、空からなり対岸からなり視察をされた上で臨まれる。

 北海道の方々は、小泉総理のあの報道を見て、領土へ行ってほしい、歴代総理で初めてというような御要望もあるやに伺っておりますが、総理のお考えがあればお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日ロ関係につきましては、一番の懸案が北方領土の問題であります。これは、北方領土問題を解決して日ロ間に平和条約を締結するという方針に変わりありません。

 そのためにどういうことが必要かという中で、昨年一月、私はロシアを訪問して、プーチン大統領との間で日ロ行動計画を発出したわけでございます。その趣旨は、お互い、この北方四島の帰属を明確にして日ロ平和条約を締結するということのためにも、日ロの交流を、政治面のみならず、経済協力、防衛交流、さらには文化、芸術、スポーツ交流、これを拡大していこう、そういうことによって、両国政府、両国国民の間に、日ロ間における親近感も増してくるだろう、信頼感を醸成していくことが必要だ、そういう中でこの日ロの平和条約締結に向けて努力していこうというのが趣旨でございます。

 もとより、ソ連時代と違って、ロシアはサミット参加国になりました。いずれサミットの議長国になります。いわば、サミット参加国の共通した価値観念というのは、民主主義、市場経済を重視していく。お互いの価値観を持ったということは、ソ連時代とはもうさま変わりであります。そういう共通した世界におけるみずからの国の役割というものは、民主主義と市場経済を重視していく中で追求していくということで、私は、いわば共通の土俵ができたのではないか。共通の目的に向かって日ロが協力していくということによって、世界の平和と安定のためにお互いが協力できる。

 その中におきましても、日ロ関係を見ますと、日米関係、日中関係を見ますと、貿易、経済の面においても格段に低いです。これほど大きな国土、人口、技術を擁しているロシアと日本の関係は、不正常な状況だからこそ、この経済の面においても、日米はもちろん日中の間に比べても格段に低い。

 これは、敗戦後、日本はアメリカと戦って敗れましたけれども、日米との間に友好関係を結ぶことによって経済発展を遂げてきた。日中におきましても、日中の間に国交正常化をなし遂げてから格段に経済面での交流が深まった。日ロが何で停滞しているのかということは、これは平和条約を締結していないからだ、領土問題を解決していないからだ、そこをよく認識してほしい。

 この領土問題を解決しない限りはもう一切経済交流はしませんという態度は、日本はとらない。交流を含め相互依存関係を深め、お互いの交流というものは両国の利益になるんだという観念によって、ああ、やはり平和条約を締結しなきゃいかぬな、領土問題を解決しなきゃならぬなという、そのような信頼関係を醸成していきたいという趣旨で日ロ行動計画をお互い署名し、ロシアにおける日本年、交流年、日本におけるロシア年、お互いして、それぞれの文化なり芸術なり経済なり、交流を深めていくことによって友好関係を発展させていこうということが現実に今行われております。

 かつて、非常に防衛、安全保障の面においてはお互い警戒心を持っておりましたけれども、最近は、防衛関係、安全保障の分野においても協力していこうという機運が出てきております。こういう機運を大事にして、プーチン大統領、三月に大統領選挙を迎え、勝利をすれば、ロシアの政治基盤も安定するのではないかと思っています。その安定した基盤というものが日ロの平和条約締結に向けてもいい方向に向かって進む、この機会を今後の日ロの正常な関係発展に生かしていきたいと私は思っております。

杉浦委員 これはもう釈迦に説法ですけれども、北方領土の日というのは、二月七日というのは、日ロ間で明治維新に先立って国境を決めた日を記念して北方領土の日、つまり、四島とその向こうとの間に帝政ロシア政府と江戸幕府が線を引いたわけですが、明治維新の後、明治何年ですか、千島樺太交換条約によって、その当時は、樺太千島雑居と、どっちの領土とも決めなかったんですが、交換して、千島は日本領、樺太はロシア領と決めた。戦争によって決めたわけじゃありませんが、日露戦争で樺太の半分を日本は取得したという経緯があるわけですけれども、戦争に負けまして、南樺太を返しただけじゃなくて、千島までサンフランシスコ条約で領有権を認めてしまったということに相なった経緯があるわけです。

 これは、領土問題は国際紛争なんですが、我々は、戦争によってとられたものを取り戻すというようなことは今後いたしませんが、しかし、筋を通して、国際法に基づき、少なくとも固有の領土は返還すべきだということでやってまいったわけですし、これからもやってまいるわけであります。

 総理のお言葉を伺ってちょっと気になりますのは、日ソ平和条約を結ぶときこそ返還させる好機なんですね。領土問題というのはなかなか難しくて、かつて三国干渉というのがあって、日本が戦争によってとったものを取り上げられたという歴史的な経緯もあるわけですが、諸国間、特にアメリカとかヨーロッパの関係国々の理解を得ながら、ソ連に、国内にもいろいろ意見があるようですけれども、理解を求めていくということも大事でありますが、日ソ間の総理がおっしゃったような交流を進める、理解を進める、と同時に、平和条約を結ぶというときこそ円満に解決するチャンスだと思いますので、それを目指して御尽力いただければと思っております。意見として申し上げさせていただきます。

 領土問題はほかにも日本はあります。竹島の問題、尖閣諸島の問題、中国と韓国の間、あるわけですが、時々思い出すわけですけれども、これも、我が国の主張をしっかりしながら、忘れないように努力するということが大事だと思います。

 麻生先生、麻生総務大臣に伺いたいんですが、韓国は何か、竹島、向こうは何とか島、東島かなんか呼んでいるようですが、記念切手を発行した。政府は抗議したということなんですが、抗議も結構ですけれども、向こうが切手を発行したのなら日本政府も切手を発行したらどうですか。実績を積み重ねることが大事であって、人が住んだことはないらしいんですが、昔から日本の漁民があそこへ行って昆布等をとっておったらしいですから、その風景などを入れて記念切手を発行したらどうかと私は思っておるんですけれども、総務大臣、御見解を一言お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、万国郵便連合憲章の前文に長々と書いてあるところをそんたくして、この種のいわゆる切手を韓国で発行するということになるんであれば、これはその前文には明らかに外れておりますので、その意味からいきましたら、これは甚だ遺憾というのが正直なところだと思っております。

 そういった意味では、他国の地域を切手にしてというような感じになりますので、これは極めて遺憾な話なんであって、ただ、これは基本的には領土問題ということになりますので、これはかかって外交の話になると思いますので、お気持ちはようわかるところでもありますし、同じような気持ちから、万国郵便連合を通じ、また外務省を通じいろいろ抗議をいたしておるところまででありまして、これから先は、かかってこれは外交問題ということになろうかと思っております。

杉浦委員 竹島の問題は、領土として、土地利用からするとそんなに価値のあるものじゃありませんが、漁業権とか経済水域とか関係してまいると思うんです。韓国との関係も重要ですから、そのあたりの話は円満にできないことはないと思うんですね。とんがった形じゃなくて、そちらが発行されたのならうちもやらせてもらいますわという程度で、そんな深刻に考えないで検討していただいたらいかがかと思っておりますことだけ申し添えさせていただきます。

 次に、治安問題、そして、治安問題と密接に絡みますが、拉致事件、拉致問題についてお伺いをいたします。

 近ごろ犯罪が非常にふえてきている。日本じゅう津々浦々までふえてきた。凶悪犯罪もふえてきた。外国人犯罪も多い。もうここにおられる方みんな実感しておられると思うんです。私のうちなんというのは昔はど田舎だったんですが、私の部落のど真ん中で、ワゴン車に車がとめられて、乗っていた子がほっぺたをぶん殴られて財布をとられた。びっくりしましたね。うちの部落の中で起こるとは思ってもいなかったわけでありますが、私の町名が新聞をにぎわせました。

 少年犯罪もふえております。少年法の大改正をいたしましたが、二、三日前の新聞を見ましたら、十四歳未満の少年の犯罪がふえておる、凶悪犯罪もふえておるというショッキングな出来事が載っておりました。まさか彼ら、十四歳になったら刑罰を食らうから、それになるまでにやっておこうと思ったんじゃないとは思うんですが、本当にこれは大変なことだなという実感を持ったわけでございます。

 麻生大臣が政調会長のころ、国民の要望調査を詳細になさった。その国民が何を求めているかという中で、麻生さんはびっくりされて、私にこんなすごいのが出たぞとおっしゃって、まだ覚えておりますが、何と一番が、治安が悪くなったと。年金だとかそういうことじゃない。要するに、犯罪がふえて、もうこれを何とかしてくれという国民の要望が一番だということであったようでありますが、もうむべなるかなと思います。日本は世界一安全な国だという神話はまさについえてしまったと言っていいかと思うんです。

 前回の選挙、我が党も政権公約「小泉改革宣言」を作成いたしました、民主党もマニフェストをおつくりになったようですが。その一番が安心できる社会保障制度、改革七項目のうち一がそれなんですが、二番目が「国民の安全を守ります」、安全な国の復活ということを政権公約のいわばトップに掲げて選挙戦をやらせていただいたわけでございます。ここに持ってまいりましたが、世界一安全、安心な国を復活するんだという我が党の公約でございます。

 ここに、「犯罪のない、安全な国」、今後五年で治安の危機的現況から脱却して、五年で不法滞在外国人を半減するという目標が掲げられておりまして、捜査・検挙能力の強化、出入国管理体制の強化等、総合的な治安対策を緊急に実施する、また五年で不法滞在外国人、今二十五万人ということなんですが、これを半減するということが公約として掲げられておるわけであります。

 検挙能力下がりましたですね、警察。我がふるさとでも、市の中心部からちょっと外れた、新興住宅地とは言えませんが、女子大生が、夕方、刃物で殺されたわけですが、三、四年前ですか、まだ犯人が見つからない。犯人は、自転車に乗って、草履みたいなので来て、やって、逃げた。目撃者もおるんですね。これは近くの人間だ、捜せばすぐ犯人は挙がるだろうと言われておったんですが、まだ検挙されたという話は伝わっておりません。

 最近は、自動車盗、ガラスを壊して中の物をとっていくという犯罪なんか日常化しまして、そんなの警察に持っていったら、おまえたちが悪いんだと言われんばかりの態度だそうであります。犯罪がふえた、数字にあらわれない、暗数になっている犯罪はその何倍もあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。

 まず、総理に、この総合的な治安対策を緊急実施ということを約束しておるわけでありますが、それについてお考えがあれば伺いたいと思います。

 また、これは国家公安委員長ですか、その下の方に「警察官増員、空き交番ゼロ」、三年で空き交番ゼロを目指す、親身で頼れる警察への脱皮を目指すというようなことを党として公約しておるわけですが、そのお取り組みをお伺いしたいと思いますし、法務大臣には出入国管理体制の強化と抜本策を、一言ずつお伺いできればと思います。

小泉内閣総理大臣 世界一安全な国復活を目指してどのような対策が必要かということについては、これは一番、多くの国民が関心を持っていることでありますので、政府も全力を挙げて、この安全神話の復活、治安の不安解消を目指そうということで努力しなければならない最重要課題の一つだと認識しております。

 一定の、犯罪、超えると、もう回復不可能になるのではないかという議論があります。もう今が限度だろうと。その世界一安全な国復活を目指すためには、今の犯罪状況をいかに減らすか、これに取り組むのがまず第一だということで、まず、警察官の増員を図ろう。全体の公務員は削減する中で、警察官増員を図りました。

 同時に、日本は何で治安がいいのかという一つの例として、交番の機能がいいのではないかということで、日本の交番制度に倣おうという国があるにもかかわらず、最近は見習われていた日本の交番の機能が発揮されていないのではないか、空き交番がふえてきたんじゃないかということで、それでは、空き交番ゼロを目指していこう。

 同時に、不法滞在者、この不法滞在者が多くなったということによっても犯罪が多発しているのではないかということで、不法滞在者というものをいかに減らしていくか。

 それと、警察力だけでは不十分だ、やっぱり安全と水はただだという時代ではない、個人自身のみならず、地域全体で、町全体で、お互い犯罪に対する警戒心を養っていこう、お互いが協力していこうということで、地域の取り組み、これはかなり自主的に地域が取り組んでいるところはふえてきております。

 そのような、警察官だけの機能を強化するということ、それと不法滞在者というものに対しての管理体制を強化していくこととあわせて、やはり地域住民の協力をいかに得ていくか、安全は自分たちで確保するものだ、そういう意識も涵養していくことが必要ではないかという総合的な取り組みが必要じゃないかと思っています。

 個別の問題につきましては、国家公安委員長、また法務大臣から答弁させます。

小野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 ただいま総理の方からお話がございましたけれども、一万人緊急増員三カ年計画がございまして、平成十四年に四千五百人、十五年に四千人、そして十六年には千五百人ということがあと残っておりますけれども、さらに足らないわけでございますので、今後一万人を新たに計画させていただこうというところで千六百五十人、合わせまして三千百五十名を平成十六年の予算案の中に盛り込んだところでございます。

 深刻化いたします治安情勢というのは、先生初め国民もすべてが心配をしているところだと思いますけれども、これは各都道府県の方に最大限活用するように人数的にも割り振りをさせていただこう、そしてまた十七年度以降も、不足する警察官の増員に向けまして努力してまいりたい、そのように考えております。

 それから、空き交番対策に関してでございますけれども、今先生の方からも、そして総理からもお話がございましたけれども、事件や事故が大変急増しておりまして、交番の勤務員がその対応に追われてしまうということと、そしてまた、地域の治安のために巡回をして歩くわけでございます、そのことがまた交番の中を空き交番状態にしてしまうという、ダブルパンチという状況が現在の状況でございます。

 また、夜間における警戒力強化のために交番を増設いたしました。十数年間で四百カ所くらい増設をいたしました。そのことにより、また人数の不足というのも出てきたわけでございます。

 そんなことで、空き交番対策といたしましては、平成十三年度以降、地方警察官の増員のうちの相当数を空き交番に充てさせていただき、交番機能の強化要員等に充てることといたしております。

 また、平成十六年度の地方財政計画におきましては、この空き交番対策といたしまして、退職警察官を活用いたしまして交番相談員の増員をさせていただくということ、それから、地域住民と警察署の連絡用といたしまして、交番へのテレビ電話システムの導入ということで、機材の導入をもって交番員の不足を補う、そういうところが盛り込まれております。

 警察におきましては、これらの地方警察官の増員、あるいは交番相談員の増員、それから今申し上げましたテレビ電話システムの導入などによりまして、空き交番対策を進めていくものと承知をいたしております。

 各都道府県警察におきましては、具体的な計画をその都道府県において行っていただくわけでございますけれども、空き交番対策を着実に推進していくよう、私といたしましても督励してまいりたいと思っております。

野沢国務大臣 お答えいたします。

 法務大臣を拝命いたしましたときに、小泉総理から、世界一安全な国と言われた日本の治安が近年大変悪くなっているということで、これをぜひ回復してほしいという特命をちょうだいいたしました。委員御指摘のとおり、そのうちの特に大事な要素として、外国人の不法滞在の皆さんが残念ながら事件の温床になっている、こういうふうに今指摘を受けております。

 そこで、法務省といたしましては、とにかく、問題のある外国人の方が日本に入らないように、来させないこと、それから水際でしっかりとめるということ、そして現在おります不法滞在の皆様を半減させよう、こういうことで入国管理あるいは在留管理をしっかり強化いたしましてこれからの対応を考えましょうということでございますが、特にことしの予算におきましては格別の御配慮をいただきまして、入国審査官、在留の審査官の増員も御配慮をいただいておりますので、これを踏まえてしっかり取り組んでまいるつもりでございます。

杉浦委員 しっかりとよろしくお願いします。特に、総理がおっしゃった、地域はもう人任せにできない、自分たちで守らなきゃだめだということでいろいろとやっておられる、その動きを国民運動的にもう少し全域でやって、退職警察官もおられるし、消防団という組織もありますよね、消防団おります、そういう地域みんなで犯罪行為を抑え込んでいくんだという努力を励ますような政策を強力にやっていただきたいと思います。

 拉致問題に触れるつもりでおりましたが、ちょっと時間がございません。私、前にも触れさせていただきましたが、これはいろいろな、今御家族の問題がありますが、御家族以外にも十件警察が立件している件があるわけで、その背後には北朝鮮という国家権力が絡んでいるというのは間違いないことでございます。

 これは、日本の国内法に基づいて犯罪行為であります。誘拐であり監禁であり、罪名幾つかあると思いますが、国際法的に見ても、北朝鮮による我が国の領土の侵犯であって、主権の侵害であります。六カ国協議があるようでありますが、私は、総理が金正日書記と話されたときに、彼はおわびをした、処罰したということを言ったそうですが、最低きちっとしたところで謝罪をする、それから賠償、国家と国家の間、それから被害者の間でもするということはもう当然のことだと思いますので、そのことをきちっと踏まえて拉致問題に対処していただきたいということだけ申し上げさせていただきます。

 最後に、教育問題。これは大きい問題であって、予算委員会でもこれから議論されると思いますが、その中で、総理がおっしゃっている食育の問題について、総理、御意見あれば伺いたいと思います。

 自民党の政権公約にも、国の基本を見直す、人間力を高める教育改革ということで、教育基本法の改正とか人間力向上のための教育改革推進ということが挙がっておるわけですが、その中に、知育、体育、徳育と食育というのが挙がっておる。

 私、大辞林初め調べてみたんですが、今まで日本の言葉の中で食育という言葉はどうもなさそうなんですが、これはどなたかが新たにつくられた造語じゃないかと思いますが、考えてみますと、知育にとっても徳育にとっても体育にとっても、特に子供たちにとっては食べ物というのは非常に大事なんですね。ですから、そういう意味で食育というのを総理は特に力を入れておられるのかなと思うわけです。

 例えば、カルシウムの摂取量が少ないと切れやすい子供ができるというようなことも医学者は言っておりますし、ファストフードのやわらかい食べ物ばかり食べていると歯が弱って、かまないから脳の発育によくないとか、お医者さんは、医学者はおっしゃるんですが、本当に大事だというふうに思います。

 この食育について、総理、お考えがあれば一言おっしゃっていただければありがたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今まで教育のことを考えますと、知育、徳育、体育、これはもう多くの人口に膾炙されている言葉であります。しかし、食育というのは、食べ物の重要性を考えるとすべての基本であります、人間生活の。体の健康のみならず心の健康、心身の健康。どのようなものを食べたら健康になるのか、健康を維持するにはどういう食生活が必要かという基本中の基本がおろそかにされていたんじゃないか。最近は、食べ物によって病気も治っていく、生活習慣、食生活を変えることによって予防もできるということが、もう多くの方、認めるところでございます。

 特に、食べ物というのは人間の基本的生活の基本であると同時に、文化の面を考えても、食生活を豊かにしていく、豊かになってきた状況においては、お互いの礼儀、家族のきずな、友人との交流関係、どのような関係を維持発展させていくか、仲よくしていくかということについては、まず、家族が一緒に親子で食事する、友人の間、おい、食事しよう、デートに誘う場合は大体食事したいと誘うでしょう。食事がいかに大事か。

 そして、はしの使い方、ナイフ、フォークの使い方。ただ食べればいいというものじゃない、食べ方についても礼儀というものがある。人の前で余りくちゃくちゃ食べちゃいけないよとか、健康のためには飲み込んじゃいけないよ、よくかんで食べなさいとか。

 食育というのはいかに大事か。そういう面について、家庭においても学校においても、子供だけじゃない、親についても、知らない面があるんじゃないか。

 これは健康の基本だから、これを私はあえて、こんな、なじみがないという言葉もありましたけれども、あえてことしの施政方針演説に食育の重要性を訴えたゆえんであります。多くの国民に、食育、食生活、食べ物がいかに人間の心身に健康か、人間生活を豊かにするかということをよく重要視して、お互い人間力の向上に役立てていこうというのが趣旨でございます。

杉浦委員 大賛成でございます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 この際、松岡利勝君から関連質疑の申し出があります。大野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松岡利勝君。

松岡委員 いよいよきょうから本予算の審議であります。長丁場でありますし、総理初め閣僚の皆様方、大変御苦労さまでございます。

 きょうは、自民党のしんがりを務めさせていただきますが、まず最初に、総理のリーダーシップということで、大変おこがましい言い方になるかもしれませんが、お許しをいただきまして、お考え方をお伺いしたいと思います。

 まず、百聞は一見にしかずということわざがございます。有名なことわざでありますが、これは、今から約二千百年ぐらい前、中国は前漢の時代、趙充国という人が言った言葉でございます。

 そして、この趙充国という人はどういう人かといいますと、若いとき、羽林軍、近衛兵、皇帝を守る近衛兵でありますが、羽林軍に入って、若いときからしっかり手柄を立てて、偉くなって将軍になり、末は大臣になった。

 そこで、当時の、これは歴代の中国王朝がそうでありますけれども、北方騎馬民族との戦いというのは国家最大の課題でありました。長安の都にいて前線の指揮をとるわけでありますが、前線からいろいろ報告が来る、そして判断をする、決断をする。そのときに、行って見る、自分は前線に行くと言うわけでありますが、そのとき、報告をする人たちが、いやいや、あなたはもう偉くなって大臣だし、年もとっておられるから今さら行く必要はないんじゃないかと言ったときに言った言葉がこの百聞は一見にしかずであります。

 私は、これは大変、物事に対するといいますか、事柄に対処していく基本をあらわした表現といいますか、心構え、そうではないかと思うわけであります。まして、政治家といいますか、特に最高指導者にとっては、これはもう大事な基本姿勢ではないか、私はこう思います。

 そこで、総理のリーダーシップでありますが、私は、電撃的な訪朝によってああいう拉致問題に大きな風穴をあけられたというのは、まさにこのことを示された、何よりそのものずばりではないか、私はこう思うわけでございます。全くやみに隠れてというか、見えなかった拉致問題というものがこれによって世に出たし、いろいろ幾多のまだ困難な問題が今日残っておりますけれども、私は、ここまで進んできたと高く総理のこの決断というものは評価をする次第であります。

 そこで、お伺いをするわけでありますが、我が国は、まさに、戦後憲法といいますか、戦後の時代の中で、今、イラクに自衛隊派遣をいたしております。きのうは参議院で承認をされたわけでありますけれども、このことを考えますと、私は、いまだかつてない、まさに国家の命運をかけた決断を総理はなされたな、こう思うわけであります。国際社会に対しての貢献をしていく、また、国としても、国民が国際社会に対する自覚というものをしっかり持っていく、そういうまさに命運をかけた決断をされた。

 そこで、総理に、この百聞は一見にしかずということについての基本姿勢をもとにしてのお伺いをしたいわけでありますが、これだけ世界的にも、また国民挙げての注目のこのイラク派遣であります。自衛隊も大変苦労して頑張っておる、国民全部で支えなきゃならぬ、私はこういう思いをいたしております。

 そこで総理、どうでしょうか、百聞は一見にしかずということで、イラクの現地に行かれて、そして自衛隊を激励され、そしてまた国際社会に対して、日本の腹構えといいますか、決意といいますか、総理の心構えを示す、またそれによって国民も、またこれは、イラクの問題ということについて国民世論が一致していく、そういうことになるんではないかと思うんでありますが、総理、この点についていかがでありましょうか。

小泉内閣総理大臣 つい最近も、イギリス軍を激励のために英国のチャールズ皇太子が訪問されたということを聞いております。

 私のイラク訪問につきましても、いろいろ新聞報道、あるいは多くの方が議論されているようでありますが、私も、状況が許せば、いつの日かイラクを訪問して、自衛隊諸君の活動のみならず、イラクの国民に対して、日本がイラク復興のためにできるだけの協力をしたいということについて理解と協力を求めたいと思っております。

 ただ、現地の情勢等を考えて、現地で実際に活動している方あるいは外国のいろいろな部隊に対して迷惑をかけてもいけない、そういう点も総合的に考えて、いつの日か、私はこの目で、イラクを訪問して、実際に活動している日本国民、自衛隊のみならず民間人あるいは民間企業、多くの方々を激励したり、あるいは感謝したり、そして日本の国際社会の中でイラク復興における役割というものを正しくイラク国民に理解していただくような訪問ができればなと考えております。

 しかし、いつかということについては、今この時点で明らかにできるような状況ではございません。

松岡委員 ありがとうございました。

 今、総理のお心構えといいますか、お伺いいたしまして、ぜひ、大変意義のあることであります、どうぞそのようなことで、いつの日か決断をしていただきまして、お願いをする次第であります。

 そこで、リーダーシップということについて、これはお願いでございますが、幾つかちょっとお願いをしておきたいと思います。

 先ほどから、経済の問題、いろいろございました。そしてまた地方の問題もございました。今、やはり地方がどれぐらい苦しみ、あえいでおるかということも、これは大変な問題であります。そしてまた、景気の回復ということを竹中大臣も言われておりますが、一面的にはそういった現象があるとしても、それはやはり大企業中心、また大都市を中心にした現象だと私は思っております。

 私どもの地方に行きますと、大企業、大都市の景気がよくなった分のしわ寄せが逆に重くのしかかってきて、なおあえいで苦しんでいるという実態が今の地方の経済であり、中小企業の実態であろう、私はこのように認識をいたしております。

 したがいまして、百聞は一見にしかずというこのことわざのとおり、また総理にはぜひ地方の問題につきましても、地方の経済、中小企業の実態につきましても、ぜひともみずから肌で実感して感じていただいて、そして、最高指導者としての決断といいますか、政策といいますか、そういったことをお願いする、こういうことでございますので、これはよろしくお願いいたします。

 次に、厚生労働大臣にお願いでありますが、今、小児救急医療、実は私も選挙戦の中でも、乳幼児をお持ちになっておる、お抱えになっておる若いお母さん方を中心に、何といっても今一番自分たちの願いは、二十四時間体制の小児救急医療、こういうことが絶対必要なんだということでありました。

 私の熊本を例にとって恐縮でありますが、天草の島部を除いて、本土側といいますか、陸地側といいますか、十の二次医療の圏域に分かれております。その十あるうち、やっとこの二月一日に初めて熊本の赤十字病院が二十四時間体制になった。やっとであります。まだ、あと残りは全くこれからであります。

 どうか、やはりこれは切なる問題でもございますので、ぜひとも、厚生労働大臣の特段のお取り組みといいますか、指導力を発揮していただきまして、この小児救急医療体制の整備、二十四時間体制の整備、これに取り組んでいただきたいということでお願いしたいと思います。大臣、よろしくどうぞ。

坂口国務大臣 小児救急医療でございますが、御指摘いただいておりますように、なかなか整備が進まなくて、私たちもいらいらしながら、早くここを何とかしなければならないというので、一生懸命にやっているところでございます。

 二次医療圏に一カ所ぐらいずつは二十四時間体制の救急医療を整備したいというので今やっているところでございますが、小児科の先生がなかなか足りないというようなこともございまして、内科の先生にもう一度小児科の方を少し御勉強いただいて、そして小児科を兼ねていただく、小児科のこともやっていただくというようなことも今実はやっているところでございます。ことしの予算におきましてはかなりな予算も組んでいただいておりますので、しっかりやっていきたいというふうに思っております。

 そして、夜間の救急の中でいろいろと御相談をいただく中には、本当はそんなに医師にかからなくてもいいというものも中に含まれておりますので、これは二十四時間体制、特に夜間体制の相談窓口をつくりたいというふうに思っております。これは、どこでも全国一律シャープ八〇〇〇番、シャープを押して八〇〇〇という番号にいたしまして、そして必ずどこかから出る、それで御相談にすぐ応じるということにいたしまして、そしてこれはどういうふうに、すぐに診てもらった方がいいとか、そういうふうなことに対するアドバイスをするという体制を確立したいというふうに思っているところでございます。

松岡委員 ありがとうございました。

 ぜひ特段のお取り組みをよろしくお願いして、次の質問に移りたいと思います。

 私は、きょうは地球環境問題についてひとつ議論をさせていただきたいと思っております。

 この二十一世紀、いろいろな問題が地球全体にありますが、私は、この地球環境問題というのは人類が生き残っていけるかどうか最大の問題だと思っております。

 そこで、地球環境問題といいますが、いろいろ、さまざま複雑なものが組み合わさっております。これはまさに……(発言する者あり)どうもありがとうございました。地球の温暖化の問題であり、またオゾン層の破壊、酸性雨、熱帯雨林が減少していく、そしてまた砂漠化が進行していくという多くの環境破壊が進んでおるわけでありますが、その中で、きょうは、特に温暖化の問題とその対策、解決策、そういったことについて議論をさせていただきたいと思います。

 まず、温暖化といいましても、これはなかなかぴんときません。それぞれに理解はされていると思いますが、どれほど、どのぐらい大変なものかということについてはなかなかまだ一般にぴんとこない面があると私は思います。

 そこで、端的に言いまして、温度が一度C上がりますと、最近いろいろな研究が進んできまして、作物生態学、こういった先生方の研究が進んできまして、ほぼ一致した見解となってまいりましたのが、適正温度が一度C上がれば穀物生産は一〇%減少する。一〇%。

 そして、これを裏づけるように実はその事実がございまして、この地球上の人口は六十億ちょっといるわけでありますが、この穀物の消費量というのが大体二十億トン弱。それが、二〇〇〇年には消費に対して生産が千六百万トンの不足でありました。二〇〇一年には二千七百万トンの不足でありました。二〇〇二年になりますと何と九千六百万トンの不足、そして二〇〇三年、去年でありますが、九千三百万トンの不足、こういうことでありまして、これはいろいろな原因がございます。アメリカ、インドの干ばつ、去年はヨーロッパの熱波、これはやはり温暖化に伴うそういう現象でございまして、本当に大変なわけであります。そして、一方で、人口は二〇五〇年には約九十億を超すだろう、こう言われております。

 そして、ではどれくらい温度が上がるのか。これは、IPCC、気候変動に関する政府間パネルという組織でありますが、千五百人の地球上の有名なというか先端を行く学者が集まって、研究の結果、最低でも二十一世紀中には一・四度C、最高で五・八度Cぐらい上がるだろうと。これが平均しても三・六ですから、三度から四度上がるだろう。

 そういうことになりますと、三割、四割の穀物生産がなくなってしまう。これは干上がってしまいますからね。そして、人口は九十億ということになると、これはもうまさに大変な状況になるわけであります。一方で、水もどんどんどんどん干上がっていきますから、水がなくなる。まさに水と食糧がなくなってしまう。これが実は温暖化の問題であります。

 したがって、ぴんときませんが、特に日本は米も余っていますから、穀物の生産の減少ということがぴんときませんが、実は地球全体がそういう状態にある。これはまずひとつ御認識をいただきました上で、そこで、それを解決するために京都議定書、こういう問題があるわけであります。

 これは、一九九〇年を基準にして五%のCO2の排出を削減する、こういう議定書であり、また、日本はそのうち六%を排出を削減する、こういうことになっております。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

 そこで、では、この排出を削減することがどれだけ大変かということでありますが、ちょうど二〇〇八年から二〇一二年までにこの達成をすることになっておりますけれども、中央年の二〇一〇年で換算いたしましても、一九九〇年の六%が、もっとCO2はふえ続けていますから、恐らく一三、四%の排出削減が必要になるだろう、こう言われております。

 そこで、ではこの一三、四%、どうやって排出を削減するかでありますが、今、日本に車が六千三百万台ぐらいあると言われております。これを全部とめまして、あしたから歩けと、自転車、馬車、リヤカー、こういうことになって全部とめたとしても、これ、まだ一三%に足りるかどうかわからない。総理、これぐらい実は本当は大変なことであります。

 したがって、温暖化というものは人類が生存していけるかどうかという問題であり、また、そのCO2を削減するということはこれまた至難のわざである。だからアメリカは入ってこない、こういうことなのかもしれませんが、難しさがわかっているから入らないのかもしれませんが、これはぜひ責任を持って入ってもらいたいと私は思っておりますけれども、これくらい大変なわけであります。

 そこで、その解決策ですけれども、ここに幾つか方策はあるわけでありまして、私は、何といっても、CO2を多く出す化石燃料、とりわけ石油エネルギー、これの使用を大幅に減らしていくことが重要だ、大事だ、こう思っております。

 そこで、ではそれは何によって減らすかでありますが、既にブラジルもアメリカも、いろいろな国が取り組んでおりますけれども、特にアメリカでは、クリントン大統領の時代には、大統領令を出して、二〇一〇年までには、トウモロコシを原料にしたエタノール、緑の原料をもとにしたエネルギーでありますが、これをやって、そしてこのクリーンエネルギーによって一次エネルギーの九%を賄う、こういったことを目標とし、そしてまた、ブッシュ大統領になりましてからは、それをより確実なものにするためにいろいろな対策を強化いたしております、税制の面にしても助成の面にしても。そういうことで取り組んでおりますし、いろいろな国が、一々申し上げませんが、税制の問題も含め、そういう取り組みを強化いたしております。

 そこで、私ども自由民主党で、緑のエネルギー革命推進議員連盟、これは、もう引退されましたけれども、江藤隆美先生を会長に百名以上の国会議員が集まりまして、そういう取り組みをしようということで議員連盟をつくって、今取り組みを進めているところでございます。

 どういうことかといいますと、バイオマスを含めまして、緑の原料、これをすべて有効に集めまして、そして、エタノールでありメタノールであり、またエタンでありメタンであり、こういったものを生み出していく、こういうことであります。

 アメリカは、このエタノールをつくるトウモロコシを原料にするだけで農家の所得が二兆円ふえる。加えて、エネルギー産業が新しくできますから、雇用も大幅に増大する。そして、エネルギー産業によってまた、十兆円とも、十兆円以上とも言われるような新しい産業が生み出される、こういうことであります。

 そういったことをぜひ、私は、日本にあってもこれの実現を目指して、これは一省庁ではできませんから、今、農林省が一応、農業廃材をもとにしたバイオマスということで予算化もいたしておりますが、これは取っかかりにはなると思いますけれども、まだまだ全体からいたしますとこれからであります。

 したがいまして、政府挙げて、緑のエネルギー革命、そういった方向に取り組んでいただきたい。そうすれば、森林も、田や畑も、これはもう大事な大事な、石油、油田のかわりのエネルギー供給源になっていく。そして、地方にはエネルギー産業が生み出されて、地方全体も活性化し、国全体の産業構造も大きく転換をしていく、こういうものだと認識しております。そこに総理のリーダーシップをぜひお願いしたい、こう思うわけであります。

 もう一面、地球環境の問題でどうしても大事なのが森林の存在であります。どんどん減ってきております。熱帯雨林を中心にして減ってきております。

 中国が、華北平野の水がれ現象というのが今あるわけでありますが、これは、文化大革命時代に黄河の上流を皆伐で大伐採してしまった、そのツケが今来ておるわけでありまして、したがって、黄河がかれつつある。そこで、中国は大植林運動を、母なる大河を守る、こういう大運動を展開しておるわけでありまして、それを支えるためにできたのがあの小渕基金であります。

 この森林の問題をこうやって考えてまいりますと、私は、その中でも特に違法伐採、世界の違法伐採、これをなくさなきゃならぬ、そういうことで、自由民主党に、麻生政調会長のときそのことを申し上げまして、お願いいたしました。早速、すかさず判断、決断をしていただきまして、自民党に政調会長直属の違法伐採対策検討チームをつくっていただきました、私は座長にしていただきましたけれども。

 それで、それから政府と一体となって取り組んでまいりまして、ずっとこれは総理にしっかり頑張っていただいたんですが、サミットで総理がこの違法伐採対策問題に主導権を発揮していただきまして、そして今相当な枠組みができ上がってきております。これは、カナダのときもそうでしたし、昨年のエビアンでも総理から言っていただいたんですが、ちょっと総理の発言を御紹介申し上げたいと思います。

 いろいろ言われた後ですが、日本の小泉総理から以下の趣旨の発言ということでありますが、違法伐採対策のための国際的取り組みが重要である、こういう発言を、いろいろ言われた後、締めくくってされました。これを受けて、他の首脳から、今の日本の発言には勇気づけられた、日本は自然に敬意を払うという他の文明にない長い歴史、文明を持っている、森林の違法伐採は、アフリカ、アマゾンで見られるように問題であるとの発言がございまして、これをシラク大統領が議長総括でまとめまして、首脳宣言の中にきちっと盛り込まれて位置づけられたのが「森林の違法伐採」という項目で、「持続可能な森林経営の観点から、我々は、違法伐採の問題に取り組むための国際的な努力を強化するとの決意を確認した。」これはシラク大統領の総括であります。

 今、そういった流れを受けまして、アジア森林パートナーシップとか、政府間で徐々にその枠組みが進んできております。私は、こういった面でも、これはもう小泉総理の発言、提言によって、今、国際的なそういう取り組みが進んでいるところでありますので、この点についてもなお一層の総理のリーダーシップをお願いしたい、こう思っておるところであります。

 あと一点だけ、地球環境問題に関連した形でお伺いしたいと思いますが、これは特に大島先生から、国益をかけた大事な問題であるから、君も自民党を代表する形で質問するんだから、しっかり選挙区は違ってもやれということでありましたのでやりますが、ITER。私も、ITER、最初何のことかなと思ったんですが、きのうよく勉強させていただきました。

 ITERという略称でありますが、国際熱核融合実験炉、これはまさに次世代の新しいエネルギーだ、こういうことでありまして、今研究が進んできて、いよいよ実験炉の段階になってきた。そこで、その実験炉をどこにつくるか、そういうことで、日本とフランスのどっちかだということで、今いよいよ、もう場合によっては今月か一、二カ月のうちには決まってしまう、こういう重大な場面に差しかかっておるということでございます。

 したがって、これまた日本が将来の国際社会に、地球全体に果たしていく役割、その上からも、またぜひ日本の国益もかけて日本にこの実験炉の誘致をということ、これは大島先生から、そういう大事なことだからしっかり言え、こう言われたわけでありますが、そういうことでありまして、以上申し上げました地球環境問題に関連しての緑のエネルギー革命、違法伐採対策、ITERの問題、こういったことについて、総理からひとつ御見解といいますか、お心構えをお伺いいただければと思う次第であります。よろしくお願いいたします。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 環境政策につきましては、私は総理に就任以来、日本の政策の中で、これは日本だけの問題でなくて世界が重視しなきゃならない問題だということで取り上げてまいりました。

 就任以来、まず、低公害車を全部購入しろということで、三年間で全部、高くても低公害車を購入するという方針を出した結果、その実現に向けて着々と進んでおります。

 同時に、ディーゼル車の排気ガス、これも世界最高水準の排気ガス規制を設けるということで進んでおりますし、同時に、バイオマス、この点については、森林伐採、違法伐採等、世界全体の問題であります。

 さらに、エネルギーの問題におきましても、太陽光発電では日本は世界一ですけれども、風力発電等についてはまだ拡大する余地があるのではないか。原子力発電も重要でありますが、自然の、環境に優しいエネルギー、これを推進していく必要がある。

 さらに、これから究極のエネルギーと言われております、水素、酸素、自動車等排気ガスを出さない燃料電池の問題。これは、自動車のみならず、家庭用の電池、京都議定書の問題に係ります温暖化の問題、これについても日本は世界の中で先導的な、主導的な役割を果たすことができるのではないかということで、サミットの場においても私は環境政策の重要性を訴えているところであります。

 ことしアメリカでサミットが行われますが、その中でも、日本としては環境の分野でも世界が協力していかなきゃならないということを、私は、もし日本が独自に考えていることは何かと言われれば、環境というものを第一に挙げたいと思っております。

 もとより、ITERの問題につきましては、これは今フランスと日本が誘致合戦を広げているんです。日本は青森の六ケ所村、そしてフランスも譲りません。今拮抗しておりまして、お互い、日本とフランス、余り対立しないで協力し合えないか、妥協できないかという話も出ております。

 しかし、日本は青森の六ケ所村が最善だという方針で今進めておりますので、これについては、今後、政府を挙げて何とか日本に誘致できるように努力を続けて、この究極の未来エネルギーと言われる問題についても、科学技術の振興と環境保護と両面を実現していくためにも重要な一つの選択であるということを考えながら、この誘致の問題についても積極的に取り組んでいきたいと思います。

松岡委員 ありがとうございました。

 そこで、もうちょっとではつけ加えて、これはお願いでありますけれども……

笹川委員長 松岡君、指名してから発言してください。

松岡委員 緑のエネルギーというのは、まさに土から生まれてまた土に返る、これはもうエンドレスの循環資源であります。そして、緑を守りながらエネルギーを生み出していくという、まさに緑の循環産業ともいう循環資源であります。したがいまして、この点についてはぜひとも、きょうはこれだけに終わりますが、また総理にも十分御理解を賜りまして、政府を挙げて取り組んでいただけるような、そういうお取り組みをお願いしたいと思っております。

 あと、ITERの件でありますけれども、河村大臣は所管大臣として、ひとつ総理の御方針のもとでいま一度決意を述べていただければと思います。よろしくどうぞお願いします。

河村国務大臣 総理から、このITERの意義、そしてその重要性、国を挙げて取り組むと強い決意を表明されまして、私も、所管大臣として、この誘致に向けて全力を尽くしたいと思っておりますが、まさにフランスは、一国じゃなくてEU全体の代表としてカダラッシュと、こう言っている。日本は、六カ所村だと。

 地域的な問題、それから技術力、そういう面において、日本がこれまで核融合について先端的な役割を果たしてきておりますから、技術的にも日本が優位である、こういうもとで今進めておるわけでございますが、さきの暮れの閣僚会議におきましては、日本対EU側に対しまして、アメリカと韓国は日本の立地、それから中国とロシアはヨーロッパ側、こういうような意向も示されまして、まさに六カ国、六極でございますが、参加をしようということになっておりますが、拮抗した状態でございます。さらに、中国あるいはロシアの理解もいただかなければなりません。きょうは議員の皆様にも、議員外交にもおすがりをしながら、日本の優位性、そしてこの核融合を利用した夢のエネルギーによって環境問題の解決、あるいはまさに高レベルの廃棄物が少ないとか、原料は水素である、重水素、幾らでもある、まさに夢の、次代を決める、人類福祉にとって重要な核融合でございますから、日本がその先端を切ってやりたい、こういう思いで頑張ってまいりたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。

松岡委員 決意をお伺いいたしました。どうかひとつ、しっかりと国益を担って、河村大臣には頑張っていただきたいと思います。

 そこで、あと残されました時間で、私は、この環境問題と食糧問題という観点から、ちょっと主張といいますか、考え方を述べさせていただきたいのでありますが、平成八年のローマ・サミットで食糧宣言というのがFAO主催のもとで出されました。あのときには、アメリカ、ケアンズ・グループが強硬に主張いたしましたのは、比較優位の原則、簡単に言いますと、生産性、効率性、これを基準に物事はすべて進めていくべきだという考え方であります。そして、その裏腹として、自由化のさらなるというか一層の促進、こういったことが強く主張されました。

 それに対しまして私どもは、EUもそうだったわけでありますが、それは総生産の増大、これがまた大変重要なんだ、生産性だけでいったら生産性の低いところはつぶれてしまうわけで、そうすれば総生産全体、食糧全体の生産は減るではないか、そうなれば、八億とも九億とも言われる飢餓人口を救えないじゃないかということから、総生産の増大、これは譲れない、そういった主張をし、また、農業の持つ多面的機能、林業もそうでありますけれども、水産もそうですが、この多面的機能の発揮、これは譲れないということで、この二つがぶつかり合って併記されたわけであります。

 それがにらみ合ったまま今日来ておるというのが実態でありますけれども、そこで、先ほど申し上げましたような温暖化の問題、こういうことによって地球環境、食糧というものは大変な事態になってくる。こういうことを考えれば、単に効率性、生産性ということだけで食糧生産を追い求めていいのか。これは、私は、極めて人類の生存、将来にとって重要な問題だと思っております。価値観をどこに持っていくか。

 そこで、昨年の九月のメキシコのカンクンでありますが、私も衆議院、参議院の合同議員団の派遣団として行かせていただきましたけれども、そこでは、端的に言いまして、私は、農業分野で、それで決裂ということではなくて、違う分野で決裂して全体が決裂、こうなったわけなんですけれども、そこでの主張の折り合わない最大の問題は、農産物の先進国輸出国であるアメリカやEUやケアンズ、それと、後進国の輸出国であるインドやブラジル、こういったところの農産物輸出国同士の先進国と後進国、この対立が完全にというか全く解けなかった、これが原因だと思っております。だから、よくマスコミには日本がどうとかこうとか書いておりますが、それは全く的外れな話であります。

 こういった観点からも、日本は、もちろん日米同盟が基軸であるということは、私はもうこれは論をまたないと思っております。日本の歴史の上で、日英同盟がなくなって道を誤ったという指摘もございます。したがって、そういった点から、日米同盟が基軸であることは間違いない、それはそのように私自身も思っておりますが、しかし、場面場面によってはいろいろあっていい。

 そういうことで考えますと、やはりアメリカやEU、これは輸出の武器をいっぱい持っていまして、輸出補助金であり、輸出信用であり、輸出国家貿易であり、それに対して途上国は武器なしで戦わなきゃいけない、冗談じゃない、こういうことでありますから、やはり日本は両方の立場に立ってしっかり調整する役割も担う。そして、先ほど言った環境等の観点からの食糧問題、こういったことをしっかりと基軸としてとらえてWTO交渉に臨んでいく必要がある、私はこう思っておるところでありまして、この点については、農業分野の問題と今言葉を出しましたので、農林水産大臣にお願いをしたいと思います。

 それともう一つ、先ほどちょっと落としました。京都議定書の目標を達成していく上で、日本は森林整備という分野に六五%もの吸収の部分を担わせておるわけであります。しかし、とても今の予算ではこれはおぼつきません。ましてや林野庁の予算の内部だけで調整をするというようなことでは、とてもこれはおぼつきません。したがって、これは全く別の財源なり別枠ぐらいのことを考えないと、日本の経済活動、生活活動全般を受け持つ森林の吸収力ということでは、これはとてもじゃないが達成できない、こう思っております。

 したがって、その点も含めて、大臣からお願いをしたいと思います。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 前段のWTOの問題につきましては、先ほども委員から御指摘のとおり、昨年九月のメキシコ・カンクンでの閣僚会議、それには国会議員団、IPUの団長として、そして全面的に諸外国の議員の皆さん方と御討議をいただき、また決議等々の作成のために御尽力をいただきましたことを感謝申し上げる次第でございます。

 今御指摘のとおり、この問題、食糧の安全保障、また国土の保全、こういう面で、いわゆる多様な農業の共存、そして我が国はそのことを基本的な理念に持ちまして今やっておるわけでありまして、御指摘の先進国と開発途上国との溝は深いわけであります。引き続き、日本の基本的な理念、このことを主張し、頑張ってまいりたい、こう思っております。

 また、さらに、後段のいわゆる森林の問題。十カ年計画を作成いたしまして、鋭意今努力をしておるわけでありますが、また一方では、今日、いろいろの整備をするにつきましては、新しい財源をどうするか、こういう議論も今ちょうだいをしておるところであります。

 一般財源ではなかなか、この十カ年の対策と健全な森林の整備、また保安林等の適切な管理、保全、あるいは木材及び木質バイオマス利用の推進、先ほどもいろいろバイオマスの件につきまして御指摘をいただいておりますが、これらのいろいろな施策を進めるにつきましては、ステップ・アンド・ステップ、いろいろ評価、見直し等々を重ねて、この重要な問題にしっかり対応してまいりたい、このように考えております。

松岡委員 どうもありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

笹川委員長 これにて大野君、園田君、杉浦君、松岡君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄でございます。

 きょう、私、イラク問題、また、年金、介護等の社会保障問題を中心に御質問させていただきたいと思っております。

 まず、質問に入る前に、改めて、イラク復興支援に尽くされた二人の外交官、奥克彦さん、井ノ上正盛さんの御冥福を心からお祈り申し上げたいというふうに思っております。

 一昨日、陸上自衛隊の施設部隊の第一陣がサマワに到着いたしました。また、きょうにも第二陣が到着するというふうに伺っております。そこで、これはもう何度も何度も議論になっておりますが、改めて、イラク人道復興支援の意義についてお尋ねをしたいというふうに思うんです。

 イラクという国は、これは古代文明の発祥地でございます。御承知のように、ユーフラテス、チグリス両川の両岸に五千年前に古代文明が栄えた地でございます。また、現代では非常に戦争と圧制の歴史が続いた国がイラクではなかったかと思うんです。

 フセイン大統領が大統領に就任しましたのは一九七九年でございますけれども、翌年の八〇年から隣国のイランとイラン・イラク戦争が八年も続く、そして九一年には御承知のとおり湾岸戦争、湾岸戦争の後は国連による経済制裁、そして昨年のイラク戦争等々と、三度の戦争、そしてフセイン政権の圧制、経済制裁等々、イラクの国民の生活基盤は壊滅状態に近い状態に、これは昨年の戦争でなったというわけではなくて、この長年の、十数年間のこうした状況の中で生活基盤が崩れてしまっているという状態にあるというふうに思っております。

 そして、その戦争の後に、イラク復興に向けて、全会一致で国連が、イラクの復興をすべしということで加盟国に呼びかけました。一四八三また一五一一等の国連決議、ともに全会一致でございます。これに基づいて今は三十七の国がイラクに派遣をしているということでございまして、そこに我が日本の自衛隊の皆さんに人道復興支援活動に参加をしてもらうということでございます。

 一つの意義は、やはり私は、イラクの復興というのは中東地域の安定につながり、ひいては世界の平和と安定に寄与していくということだというふうに思っております。重大な、非常に重要な地域、これがイラクであり中東、そこのイラクの人道復興支援活動に自衛隊が参加をする。

 もう一つ、私は申し上げたいのは、今回のイラクで起こっていることというのは、やはりその本質はテロとの闘いだというふうに思います。

 総理、これは最近発刊された、総理も御承知の、奥大使が昨年、外務省のホームページに七十一回にわたりまして書きつづったものが本でつい最近出ました。私も、最近出版されましたので、改めて読ませていただきました。私も読んだ後、これは多くの方々にぜひ読んでいただきたいなというふうに思いました。

 この中で、奥大使は、いろいろ感銘した部分があったんですけれども、こういう部分がございます。それは、昨年の十一月十三日、これは奥大使が亡くなられる二週間ほど前の話でございます。この日はイタリアの警察部隊にテロがございまして、これはイラク南部のナシリヤというところに展開しているイタリアの警察部隊です。そこで十八名のイタリア人警察官とイラク人が犠牲になった、こういう事件があった日に書かれている文章でございます。

 少し引用させていただきますと、

  これはテロとの闘いです。二〇〇一年九月十一日にアメリカ人だけでなく多くの日本人もアル=カーイダのテロの犠牲になり、私たちはテロとの闘いを誓ったのですが、ここイラクでもテロリストの好きなままにさせるわけにはいきません。地元の人に尋ねてみると、確たる証拠はないのですが、このような民家に囲まれた場所に自爆テロを仕掛けるなどというのは、到底イラク人のやることではないと皆言います。

  犠牲になった尊い命から私たちが汲み取るべきは、テロとの闘いに屈しないと言う強い決意ではないでしょうか。テロは世界のどこでも起こりうるものです。テロリストの放逐は我々全員の課題なのです。

こう書かれております。

 また、これは恐らく最後の奥大使の文章だと思うんですけれども、そのところで、

  自由を手にしたイラクの人々は、テロの恐怖と戦いながらも着実に新しい国造りを進めています。私たちもイラクという国がテロリストの手に落ちないように、懸命の努力をしているイラクの人々と手を携えなければなりません。これは、自由を守るための私たち自身の戦いでもあるのです。

このように言っております。

 私は、これを読みまして、今回のイラクの問題というのはその本質の一つはテロとの闘いだ、そして、今一番テロと闘っているのはイラクにいる人たちそのものが、まさしくイラクの、自分たちの国づくりをしようとして懸命に頑張っている人たちこそがこのテロと一番闘っているわけでございまして、改めてそういう認識もした次第でございます。

 総理に改めて今回のイラク人道復興支援の意義につきまして御答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 北側議員御指摘のとおり、今、イラクの復興に米軍のみならず多くの国が協力している。そして、このイラクの復興が成功するかどうかというのは、国際社会の協力、もちろんでありますが、一番大事なのは、イラク人自身が希望を持って、みずからの国はみずからの国でつくり上げるんだという意欲、これをどう支援していくか。つまるところ、イラクの復興のために一番熱心なのはイラク人だと私は思っております。イラクの国を日本が復興させるんじゃなくてイラク人が復興させる、そのイラク人が希望を持ってみずからの国をつくり上げようとする、それに日本がどのような協力ができるかだと私は思っております。

 そして、今、イラク人がそういう希望を持って、フセイン独裁政権の時代にはない安定した民主的な政権をつくろうとして、米英軍を初め各国と協力してイラク人自身がみずからの治安回復なり、あるいは国際社会と協力して活動しようとしているイラク人に対してまで、テロリストは攻撃を加えている。

 こういう状況を考えると、私は、イラク人自身が早く、みずからの国のために、自分たちの手でみずからの国をつくり上げていこうという枠組みをどのようにつくっていくか、極めて重要なことだと認識しておりますし、その政治的プロセスは、今、CPAのみならず、またイラクの統治評議会、国際社会が協力して、イラクの国民の支援意欲をどのように喚起していくか、また、イラク人が自分たちの国をつくるための努力を支援するために何が必要かということを考えている。日本もそういう国々の一国であります。

 そして、イラクの復興を成功させなければならないということは、イラク人自身が一番わかっていると思いますし、必要としておりますが、同時に、中東諸国、世界全体の中でイラクが安定した政権を持つということは、世界の平和と安定のために大きく影響してきます。

 このイラクの復興支援、国づくりを失敗させてはいけない、もし失敗したらこれは完全にテロリストの思うつぼになる、テロの温床になってはいかぬということで、今、日本としては、世界と協力して、国際社会と協力して、世界が日本のために何をしてくれるかということじゃなくて、日本自身が世界の平和と安定のために、イラクの復興支援のために何ができるかということを考えるのが必要だと思っています。

 そういう中で、日本は、資金的な支援もします。物的な支援もします。人的支援もいたします。その際、今までの湾岸戦争の経緯から、人的支援はしませんという状況じゃないだろうと。一〇〇%安全でないかもしれない、今のイラクの情勢を考えると。しかし、危険を伴うかもしれないけれども、そういう危険があるかもしれないというところに対しては、日本はやらないでほかの国に任せましょうということで果たしていいのかどうか。

 そういうことから、私は、人的支援を考える場合には、現在、民間人も民間の企業も、いろいろ、行こうという意欲はわいてこない。そうであるならば、安全ではないかもしれない、危険を伴うかもしれないけれども、確かに困難な事業だけれども、自衛隊の諸君だったらば、厳しい訓練も重ねている。どのような事態が起こっても危険を回避する訓練もしている。また、能力、装備も備えている。この際、自衛隊の活動がすべてではありませんが、まず、汗を流して人的貢献もしようという場合には、現在の時点では自衛隊を派遣するのが適切だろうと考えて、私は、イラク特措法、この成立をお願いして、その条件の中で復興支援活動、人道支援活動に自衛隊の諸君に行ってもらう。

 こういう状況がだんだん進んでイラクの治安情勢も改善されて、ああ、民間人も行けるな、NGOの諸君もやれるな、政府職員も外交官も今よりももっと幅広く活動できるな、あるいは民間企業も、復興支援活動に持っているエネルギー、能力というのは、政府関係機関よりも民間企業が持っている部分はたくさんあります。そういう方も出てもらう。

 あくまでも自衛隊は一部であります、日本の。人的支援活動、復興支援活動、人道支援活動の一部を自衛隊の諸君に担ってもらうというのが今回の趣旨であります。

 そして、何よりも、日本としてこのイラクの復興支援を成功させること、イラクが安定した民主的政権を自分たちでつくっていくということは、日本の平和と安定にも大きく寄与する。エネルギー関係、エネルギー事情を考えても、中東の安定というのは、日本のこれからの生活面におきましても重大な影響を持ってくる。

 そういう関係から、イラク人が一番苦しんでいるとき、一番困難な状況に面しているときに日本はできるだけの支援の手を差し伸べようということは、長い目で見れば、あの苦しいときに日本人は援助の手を差し伸べてくれたな、日本の国は国家としてイラクの支援づくりに立ち上がってくれたな、協力してくれたなということをイラクの国民が感ずれば、それは日本との友好関係にもプラスの面を与えてくるでしょうし、国際社会の中でも、こういう困難な状況に際しても日本は日本にふさわしい寄与をなしたということで、私は、国際社会の中で信頼を高めてくるんじゃないか。

 ひいては、これが日本人自身の評価にもつながってくる。日本人が世界で活躍する場において、ああ、日本人は信頼できる、日本人は困ったときに援助の手を差し伸べてくれたということは、私は、日本人全体の評価を高めることにもつながってくるのではないか、それが日本の国家利益にもつながっていくのではないかと思っております。

北側委員 今の総理の御答弁の中にもありましたが、イラクの復興というのは、これは恐らく一年とか二年で終わるようなことではないんだろうと私は思います。イラク復興というのは、これまでのこうした逆の十数年間のことを考えれば、これはもう本当に五年とか十年とかかかるような事業なんだと思うんですね。その第一段階が、今の治安情勢も考え、危険度も考え、自衛隊の皆様にお願いをしたということであって、これはあくまで第一段階、一つにしかすぎないわけだと思います。総理も今そういう御趣旨でおっしゃったと思うんですね。

 そういう意味で、このイラク復興に向けて、また、イラク人自身の国づくりに我が国が何ができるのかという観点から、私は、イラク復興に向けての我が国政府のトータルのビジョンというものをやはり示すべきではないかと思うんです。その第一段階が今回の自衛隊の派遣なんだというふうにしないといけないのではないかと思っております。

 私は、もちろん国際機関との連携もありますが、我が国政府として、イラク復興に向けて、民間の力もかりた形でのこの復興をトータルとしてこのようにしていきたい、また、ODAを活用してこういうふうにしていきたい、そういうビジョンというものをやはりこの際策定すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今お話し申し上げましたように、自衛隊の復興支援活動は日本の支援協力の中で一部であります。

 今後、日本が各種の国際機関とも協力して、教育活動あるいは文化活動、さらには人材の面での協力、電力や給水等生活面での支援、あるいはODAを通じた支援、いずれにしても、イラク人が何をしてほしいのか、何を考えているのか、イラク人が歓迎するような、そういう支援をしていきたいと日本政府としては考えておりまして、これは幅広く考えていく問題であり、日本一国でできること、それとアラブ諸国とともにできること、さらには、イラク開戦時には意見の相違があった国と協力してできること、アメリカやイギリスと協力できること、いろいろなことがあると思います。そういう点を総合的に考えて、幅広く日本のできることをやっていきたいと思います。

北側委員 それをぜひ、国民の皆様に今回のイラク問題、イラク復興ということの重要性というものをより理解していただくためにも、私は、トータルとしてこういう復興に向けて我が国政府は取り組んでいきたいというビジョンをぜひつくっていただきたい、そのように思うわけでございます。

 例えば、そういう中では、このイラク復興ということを考えますと、不可欠の要素は、一つは、やはり雇用の創出の問題だと思いますし、また、教育の問題だと思います。自立をしていくためにはやはり教育が大事なんだろうと。そういう教育基盤の整備に我が国は何ができるのか、そういうことを検討していく。

 そういうようなことをぜひ検討してもらいたいと思うわけでございますが、その中にあって、例えば一つの具体例といえば、イラク南部にメソポタミアの湿原がございます。この湿原の復元事業、これなんか本当に現地の方々も非常に喜びますし、雇用の創出にもなるし、そして、産業の創出にもつながってまいります。こういう事業なんか、我が国が本当に時間をかけてできる事業であるというふうに思うわけでございます。

 二つだけ、お答えは結構でございますので、ちょっと注文といいますか御要望を申し上げたいのは、一つは、これはもう総理初め一番そのことに今細心の注意を払っていらっしゃると思いますが、くれぐれも隊員の安全確保に総力を挙げて取り組んでいただきたい、万全の措置をとっていただきたい、また、関係機関しっかり連携をとっていただきたいということを強く要請したいと思います。

 また、イラクにおける今後を考えますと、やはり国連のさまざまな機関が入ってこないとイラクの復興というのは実現しないわけでございまして、イラクにおける国連各機関の機能回復にぜひ外交努力、しっかり日本としてもやっていただきたい、そういうことをお願いしたいと思います。

 次に、質問、また変わりますけれども、今月の二十五日には、北朝鮮問題に関しまして六カ国協議が開かれます。改めて、これも再三議論になっているところでございますが、この第二回目の、半年ぶりの六者協議に臨む日本の基本的な姿勢につきましてお聞きをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本の基本的な姿勢は、日朝平壌宣言のとおり、核の問題、拉致の問題、ミサイル等の問題、これを総合的、包括的に解決して日朝間に正常化関係を打ち立てていきたいということでありますので、この方向に沿って今まで交渉なり話し合いを進めてまいりました。

 第一回の六者協議が開かれてから大分時間がたちましたけれども、今月には第二回目の会合が開かれる予定であります。まだ、どのような期間かかるか、この第二回協議も何日かかるかわかりませんが、いずれにしても、この六者協議においては核廃棄の問題が一番大きな焦点になると思いますが、日本としては、拉致の問題、これはともに重要であります、最重要問題でありますので、この問題解決は、六者協議を待つまでもなく、今までやってまいりましたし、六者協議に関係あろうがなかろうが、これは一刻も早く家族を日本に帰国させるように北朝鮮側に働きかけているわけであります。

 北朝鮮側が今の国際情勢をよく見きわめて、国際社会から孤立するのではなくて、国際社会の責任ある一員に入ってくるということが北朝鮮にとって最も利益にかなうんだということをよく認識してもらうこと、そして、日本側の呼びかけ、働きかけに対して誠意ある対応を示してくるならば、平和裏に北朝鮮との関係も世界各国と良好な関係を維持していくだろうということを理解してもらうような働きかけを日本としてもやっていきたい。

 また、いろいろな交渉、話し合いの中では、対話だけでなくて、北朝鮮側の理不尽な今までの問題、要求に対しては、やはり圧力といいますか、日本の立場というものをわかってもらわなきゃならない。対話と圧力、こういう両面が必要だと思います。

 日本の国家としての意思、国家としての安全、国民の利益、そういうことを考えながら、私は、日朝平壌宣言、これにのっとって、北朝鮮が一日も早く国際社会の協力メンバーとして多くの国の声に耳を傾けて日本との関係も正常化していこうという姿勢に転じていくように、引き続き努力を続けたいと思います。

北側委員 今、御答弁ございましたように、我が国にとりまして、この北朝鮮問題というのは、核、ミサイル等の安全保障の問題とそして拉致問題、ともにやはり解決をしていかなきゃいけない問題であるというふうに思っております。それの進展なくして日朝の国交交渉が進展するということはあり得ないわけでございます。

 きょう、実を申し上げますと、我が党の神崎代表が中国に出発をいたしました。胡錦濤主席を初め中国の要人の方々と会ってまいりますが、神崎代表からも、やはり北朝鮮に対して影響力を持っております中国に対しまして、拉致問題の解決に向けてぜひ中国側の協力をお願いしたいということを改めて要請してまいりたいというふうに思っているところでございます。

 それでは、社会保障の問題に移らせていただきたいと思っております。これからは、坂口大臣、集中して議論させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まず、年金の改革でございます。

 きょう、年金改革の法案が国会の方に提出をされました。後半国会の最大の焦点がこの年金改革、年金法の改正だろうというふうに思っております。

 今回の年金改革でございますが、私も直接その議論に参加した一人でございます。これは、抜本改革が先送りされているという御批判がたくさんあるわけでございますね。これは、抜本改革とおっしゃっている方々の抜本改革の中身も大分違うような気がしますし、特にこの年金の問題を初め社会保障というのは給付と負担の問題ですから、恐らく、負担のあり方をどうするかということについては全く違う立場の方々が批判をされている場面も多いわけでございますが、私は、今回の年金改革、相当な、これまで積み残してきた大きな課題について結論を出した、方向性を出した、そういう年金改革であったというふうに思っております。持続可能な年金制度の構築に向けた大きな前進であったのではないのか。

 例えば基礎年金の国庫負担割合、これもかねてから、五年前の法律の中でも二分の一にという話があったわけでございますが、三分の一から二分の一へ国庫負担割合を段階的に引き上げて二〇〇九年には二分の一にするということを明記させていただきました。

 そしてまた、有限均衡方式といいまして、年金の、厚生年金の基金があるわけでございますが、これは今百四十兆以上あるんですか、これを、今までは有限均衡方式でなかったわけでございますが、百年を見通して財政が均衡するようにやっていきましょうというふうな有限均衡方式を導入するだとか、それから給付水準の問題については、少なくとも、厚生年金ですが、五〇%以上を確保する。これは法律に明文で明記します。そして国民年金の場合も、自分の払った保険料、モデルの場合ですが、一・七倍の給付が将来返ってくる。

 そして、保険料の水準について、負担の問題については、これまで五年ごとに変わっておったのですが、保険料水準を、上限をもう固定しましょう、これ以上上げないという上限を固定しましょうと。これは、厚生年金も国民年金も、二〇一七年ですが、厚生年金については一八・三〇、国民年金は一万六千九百円、段階的に引き上げて最終そこで固定する、それ以上は引き上げません、こういう最終保険料水準固定方式をとったというようなことも新たなことでございますし、また、これは別の法律でございますが、雇用と年金のリンクをいたしまして、六十五歳までの定年引き上げ、継続雇用制度の導入についても別の法律で出しております。

 雇用と年金のリンクも初めてやったわけでございますし、さらに言いますと、年金課税の導入とか在職老齢年金の見直しとか、こうしたある意味では所得のある高齢者の皆様には課税をお願いする、また、七十歳以上でも給付を抑制する、こうした制度も導入いたしました。

 そして、女性と年金の問題なんかでも、これも第一歩でございますが、厚生年金の場合ですが、保険料は夫婦共同で負担したものとするというふうなことも、これもきちんと法文で明記します。

 そういう意味では、これまで積み残されてきたさまざまな課題につきまして決着した、また、方向性を出した、そうした年金改革であったというふうに私は思っておるところでございます。

 抜本改革先送りだという議論がございますが、厚生労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 北側議員から全部言われてしまいましたので、私の言うことはなくなってしまいましたけれども、年金というのは、負担と給付、もうそれだけでございまして、負担と給付のところが決まれば大きな幹はそれででき上がった、あとは枝葉の話だと私は思っている次第でございます。

 積み残しと申しますか、継続審議になっておりますのはパート労働者の皆さん方の加入の問題でございまして、これはこれから御議論をいただくことになっておりますが、この問題は、拡大して言えば、現在の世帯単位の年金をこのままでいくのか、それとも、これは個人単位の年金にしていくのか。国民年金は個人単位でございます。厚生年金は世帯単位になっています。ここをどうしていくのかという課題がこれからの大きな課題ではないかというふうに思っております。

 しかし、これは、もう言われてなかなか久しいことでございますし、いろいろの分野に影響の大きいところでございますから、年金だけ直せばそれで済むという話ではございません。産業構造にも影響いたしますし、税制にも影響いたしますし、さまざまな影響を与えるところでございますから、ここはいろいろの角度から御議論をいただいて結論を出すべき問題だというふうに思っております。

 したがいまして、そうしたことも含めて今後の御議論をいただくところも残しておりますけれども、先ほどお話しいただきましたように、負担と給付のところを中長期的な展望に立って明確にしたということで、私は、ここに一つの大きな柱ができたというふうに考えている次第でございます。

北側委員 そこで、一つ各論の話でございますが、国民年金の保険料の未納問題です。

 今、未加入、未納者を含めて三百九十万人いらっしゃいます。これは本来国民年金に加入すべき人の一七・二%になるそうでございますが、今回の法案の中にも、また議論の中で、さまざまな対策を入れております。

 きょうは詳しくやりませんが、多段階免除制度だとかさまざまな制度を導入して納付しやすいように、そういうふうな仕組みを入れました。年金個人情報の定期的な通知をするだとか、ポイント制でございますね、そうしたことも今回の対策に入っておりますが、しっかりこのPR、啓蒙に努めてもらいたいと思うわけでございます。

 私は、一点ちょっと注文といいますかお願いしたいのは、例えば、地元なんかでいろいろな方とお話をしていますと、中にはやはり国民年金に入っていらっしゃらない方がいるんですね、特に若い方々ですけれども。えっと思う場面があるんですよ、えっと思うことが。

 それは、例えば障害年金。これは、例えば国民年金に入っていれば、仮に何かけががあって障害を負っても、これはもう若い時代から障害基礎年金が給付されるわけですね。そのことをお知りでない。

 それから、遺族年金。それは、若い奥さんが御主人が若い時代に亡くなってしまったら、若い奥さんにも当然、遺族年金が若い時代から出るわけなんですよ、国民年金に入っていれば。これは厚生年金もそうでございますけれども。

 それから、そもそもこの基礎年金に税金が入っている。今は三分の一入っています。二〇〇九年には二分の一。もう大変な国費が投入されるわけでございますが、この基礎年金に税金が入っていることも、へえ、そうなんですかという人も多いんですね。

 私は、今、年金不信とかよく言われますけれども、その以前の問題として、年金の基礎的な知識といいますか、理解といいますか、それが十分あると言えないんじゃないのかというふうに思うわけでございまして、学校の、例えば中学校とか高等学校の――文部大臣、いらっしゃいますかね。私は、中学や高校の教育の中でしっかりと、これはもう本当に必要な知識なわけですから、しっかりと教えていくべき、また、教師の先生方にもしっかり理解をしてもらわないといけないというふうに思っておるわけでございまして、年金教育、PRとともに年金教育というのが非常に大事なのではないかというふうに思っているわけでございます。

 厚生労働大臣、この未納問題についての御認識について御答弁をお願いしたいと思います。

坂口国務大臣 これは御指摘をいただいたとおりでございまして、さまざまな改革を行いたいというふうに思っております。

 約四割というふうによく言われますけれども、実際に払えるけれども払わない人というのは、大体、今おっしゃいましたように、約二割というふうに思っております。この皆さん方に支払いをしていただかなければならないわけでありまして、よくこの年金制度というものを御理解いただくということが前提でございますけれども、しかし、それでもお支払いをいただけないというのは、これはそのままにしておくわけにはいきませんから、これは強制的な措置も講じさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。

 それにいたしましても、この問題に対する理解、やはり年金制度というのは現在の高齢者に対して現在のお若い皆さん方が支える問題であって、そして、皆さん方が高齢者になったときには次の若い皆さん方が支える問題だ、そういう年金の本旨、意義というものもよく理解をしていただかなければならないというふうに思いますし、そうしたところからこれは積み重ねていかなければならない課題だというふうに思っております。

 今まで十分であったかと言われれば、これはやはり、私たちもまだ不足している点があったのではないかというふうに思っておりまして、もう少し丁寧に、皆さん方に御理解をしていただけるようにしなければならないと思っているところでございます。

北側委員 きょう、お手元に、委員の皆様に資料を配っておりますが、その一ページ目でございますけれども、この年金の問題というのは出生率と極めて密接にかかわっておりまして、これまでの合計特殊出生率の推計が全然違っているんですね。全然違っています。この表でごらんになったらわかりますとおり、平成四年の推計ですと、今ごろは一・六台ですよ。ずっと上がっていくはずなんですね、中位でも。平成九年推計でも、中位でも今よりもずっと高い推計です。ついこの間の平成十四年推計からも、今もう既に、〇・〇一ですけれども、若干低くなってしまっている。二〇〇二年で一・三二でございます。

 この少子化の問題というものを、やはり私は、もっと深刻に私どもはとらえていかないといけないのではないかというふうに思っているんです。厚生労働省ももちろん、次世代支援対策ということで総合的な対策を今とっているわけです。それはもちろん我々も推進してやっているわけで、さまざまな対策、待機児童ゼロ作戦とか児童手当の拡充とかさまざまな対策をやっているんですけれども、総合的な対策をやっているんですが、私は、どうもそれだけではだめなんじゃないかと。

 なぜ、このような少子化が続くのか。私は、社会の意識改革が、根本的な意識改革をしていかないといけないことがあるのではないかと。この社会の意識改革というのは、言いかえましたら男の方の意識改革といいますか、これがないと、この少子化というのはなかなか食いとめられないのではないかというふうに思っておるんです。

 本当、これは一つの一例ですよ。一例ですけれども、厚生労働大臣、育児休業制度でございますが、あの制度ができてもう大分たっております。今回の年金改革でも、この育児休業制度をさらに拡充する、使いやすくするわけでございますが、男性がこの育児休業制度を使うということが、制度上はとれるんですよ、とれるんですが、しかし、社会の考え、企業の風土といいますか、そういう中で、とてもそんなものとれないよというふうな風土とか考え方がやはりずっとあるんじゃないか。その辺の意識を転換していかないと、この少子化の問題というのはなかなか乗り越えられないのではないのかというふうに私は思うんです。

 ちなみに、政府の公務員の方々の育児休業制度の実績をちょっと調べてみたんですよ。そうしたら、平成十四年度でございますが、男性の方で育児休業を取得された方、短い期間だと思います、男性の方ですから。育児休業を取得可能となった職員の数は一万七千人以上いらっしゃるんですけれども、実際にとった人は八十三名、〇・五%なんですよ、〇・五%。ちなみに、厚生労働省は十名でございます、十名。育児休業制度を推進しなければならない厚生労働省も十人。

 たしか、坂口大臣、去年、いつでしたかね、職員の方々に、週一回は五時になったら帰れというふうな指示をされたんじゃなかったでしたか。ぜひ、まず厚生労働省から、しっかり育児休業制度を男がとれるようにすべきじゃないですか。

坂口国務大臣 十四年度で、厚生労働省で男性でとっておりますのは五人でございまして、〇・四%でございます。まことに少ない人数でございます。

 私も、いろいろな方の御意見をお伺いしましたり、勉強したりしておるわけでございますが、この問題にずっと取り組んでいる大学の先生がおみえになりまして、その先生に、どうしたら一番いいかということを聞きましたら、その先生は、早く家庭に帰すことだ、こういうことでございました。

 それで、厚生労働省の皆さんにも、いつまでもおらずに早く帰れ、僕のおるおらないは関係ない、帰るのは早く帰ってくれと言いましたら、若い女性の皆さん方は、私が言ったのを、新聞に出ましたのを、それを後ろへ拡大して張ったりいたしまして、それで早く帰ろうというふうに一時はいっておりましたけれども、いつの間にかまたもとどおりに戻っていますね。

 これは、そういう雰囲気にやはりなっている。みんながいるといなきゃならないような雰囲気になっている。ここをよく……(発言する者あり)そう、おっしゃるとおり仕事も多いんですね。これはもう多いことも事実で、ここを一体どうするかというのは、今お話にありますように、仕事量との関係もございますし、そこも整理しながら、一体どういうふうにしていくかということを全体で考えていかなきゃいけない。

 ただし、そこは、ある程度の時間が来たら家庭に帰って、そして家庭のことも楽しむといったような雰囲気にならないとなかなかこの少子化の問題が難しいというのは、幾つかある理屈の中の一つではないかというふうに私も思っております。

北側委員 大臣、個別の話ですが、育児休業制度をもっと男性が、それは部分休業でもいいんです、もう少し使えるように促進すべきではないかと思いますが、その点はいかがですか。

坂口国務大臣 一応目標を立てまして、この目標も低いのではないかとおしかりを受けるんですけれども、一応、男性一〇%、女性は八〇%というふうにしております。女性の八〇%はもう超えているのではないかというふうに思いますが、男性の方は、今、全体で〇・四%か三%ぐらいでございますから、一〇%というのもなかなかでございますけれども、しかし、そうしたことをこれからやっていきますために、これは、昨年法律もつくらせていただきましたし、ことしもまた法律を出させていただいているところでございまして、やはり何とかここを前進するようにしていかないといけない。

 そのためには、地域におきましても、また企業におきましても計画を立てていただいて、そして、この少子化対策にいろいろお考えをいただいて知恵を絞っていただく、忙しいところは忙しいなりにまたお知恵を絞っていただくということではないかというふうに思っております。そうしたことの積み重ね以外にないだろうというふうに思っているところでございます。

北側委員 イギリスのブレア首相は、みずからこの育児休業制度を使ったんですね。そうしたら、イギリスの国民は支持をしたということらしいんですよ。ぜひ、この少子化の問題につきましては、本当に政府を挙げて取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。

 次に、介護の問題についてお聞きをいたします。

 ことしは、これから介護保険の見直しの論議が始まってまいります。来年の国会には介護保険法の改正を提出するという段取りになるわけでございますが、坂口大臣、今、介護保険は二〇〇〇年に実施されまして、これで四年たちました。介護保険実施から四年たって、その総括、また今後の見直しの、これからの議論ですが、その方向についてお話をいただきたいわけでございますが、その前にちょっと私の方から。

 これは、皆様にお配りしているものの二ページ目でございます。「要介護度別認定者の推移」なんですけれども、四年前は要介護認定者の数というのは二百十八万であったわけでございますが、昨年の十月末では三百七十一万と大変な、七〇%増に要介護認定者がふえておりまして、なかんずくふえているのは、この表でごらんになったらわかるとおり、一番下のところ、それから、その上のところですね。要支援の方々が九一%増、それから、要介護一の方々が一一五%増、二倍以上になっているんですね。この軽度のところが、認定者の数が非常にふえてきているわけでございます。

 また、この軽度の方々、もともと軽度の方々が要介護三とか四とか重度の方にシフトしている人が割と多くて、本来、この軽度の方々というのは介護サービスによって改善しないといけないんですけれども、必ずしも改善の方向に向かっていない。そこにはやはり何か問題があるんじゃないか。

 介護サービス、特にこの軽度の方々への介護サービスというのは、御本人の身体機能とか生活機能とかを維持する、もしくは向上させる、そこが大きな目的であるはずなんですが、必ずしもその方向に向かっていない。そこにはやはり何か問題点があるのではないかというふうに思うわけでございますが、大臣、御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 介護サービスにおきましては、大体二倍というふうに大きく伸びてきているわけでございますが、今お話ありましたように、どちらかといえば、要支援ですとか要介護一といった軽いところが非常に大きな伸びになっている。ここにリハビリですとかいろいろのことをやるわけですけれども、しかし、この人たちが、だんだんと要介護三になりましたり、五の方に向かってだんだんとお悪くなっていくということでございます。

 これは何を意味しているか、よく検討しなきゃならないところでございますけれども、私が思いますのには、坂道を転がり落ちるようになりましてからやったのでは手がつけられない、これはなかなかとまらないということであって、坂道を転がり落ちるその前に何とかしなきゃいけない、もう少しいろいろのことをやらないといけない。要介護一といったようなところからでは少し遅いのではないか、もう少し早い時期にどんな手だてを行うかということを検討すべきではないかということを、省内でも今話をしているところでございます。

北側委員 私がお聞きしましたのは、高齢者の筋力向上トレーニング、筋トレなんですね、高齢者向けの筋トレ。器具も高齢者用になっているんです。軽度の方々、特に足の関節とかそういうところに支障のある方々が、なかなか歩きづらかったのが、その筋トレで、三カ月やったら要介護二だった人が要支援になったとか、逆に改善しているという話をお聞きしております。

 これは、御本人はなかなか最初は大変なんですけれども、これを三カ月やった人は、まだ継続してやっているとおっしゃるんですね。それは、自分が今までとれなかったものがとれるようになる、信号なんかも今まで歩くのが遅いものですから歩きづらかったのが速く歩けるようになる、そうすると外にも出るようになる、そうするとますます自分の身体機能、生活機能が改善に向かってくるというふうないい影響があるわけでございます。

 そういう喜びを感じられますと、みずから好んでそうしたトレーニングをされていらっしゃるだとか、また、栄養の指導をしっかりするだとか、これは軽度の方々だけではなくて介護予防についてもそうなんだと思うんですが、私は、そういう身体・生活機能の維持回復というところにもっとシフトしていくようなサービスであるべきではないか。

 これは介護サービスもそう、それから介護予防の事業も、座学ばかりではなくてそういうサービスが大事じゃないか、そういう環境、条件をしっかりつくっていくことが政府の施策として大事じゃないのかなというふうに思っておるところでございます。これから、私はやはり、介護予防とか健康の維持とか、こうしたことが非常に大事な政策テーマになってくる時代ではないかというふうに思っております。

 総理も御承知かと思いますが、全国で一人当たりの老人医療費が一番少ない県、そして男性の平均寿命が一番長い県、これはどこかといいますと長野県なんですが、長野県の一人当たりの医療費と、逆に医療費の高い県は申し上げませんけれども、そのところは一・五倍以上の一人当たりの医療費がある、そういう差がついています。

 なぜこんな違いが出てきているのか。長野県は、これもよく知られている話でございますけれども、保健補導員さんという方がいらっしゃるんですね。これはもう戦後間もなくから自主的にでき上がった組織なんですけれども、これが長野県全部に、百十八の市町村がございますが、今や全市町村に広がりまして、そこに保健補導員さんという地域の自主的なボランティア組織があるんですね。

 ほとんどが女性の方々です。今、県下に一万三千六百九十人いらっしゃいます。一人の保健補導員さんが大体七十世帯前後の御家庭を担当されまして、みずからも保健、健康に関する教育というか知識をたくさん受けられる。そして、みずから御家庭を訪問して、健康保健予防活動にさまざまな助言をしていく。そして、保健師さんなんかともしっかり連携をとってやられる。住民健診の啓蒙をされる。こういう自主的な組織が本当にでき上がっておりまして、私は、今申し上げた医療費が少ないという一つの要因はここにあるのかなと思っているんですね。

 では、ほかの県もこれと同じようにやれといっても、これは無理な話だと私は思いますが、ヒントがあると思うんですね。

 一つは、やはり自分の身近に自分の健康について相談できるような人がいる、人材がいる。そういう人材をどう育成するのか。気軽に相談できる、そういう人材をつくっていくことが大事じゃないか。

 それともう一点は、この長野県の例でもわかるとおり、やはり地域が土俵です。今の福祉の問題だけではなくて、治安の問題も教育の問題も、私は、この地域というのが、地域の力というのが本当に大事だと思うんですけれども、この長野県の例を見ても、地域ぐるみで健康づくりをされていらっしゃるんですね。

 そういう環境をどうつくっていくのか、そういうところがポイントかなというふうに思っておりまして、これからの日本の社会のことを考えますと、また医療費や介護費がどんどんふえてくる、こういう状況を見たときに、もっともっと、健康とか疾病予防とか予防医学とか介護予防とか、こういうところに力をシフトしていくことが極めて大事であるというふうに思っておるんです。

 毎年、予算編成のときに重点四分野なんてやりますよね。その中に少子高齢化と入っているんですが、こういう健康とか、そういう言葉は入っていないんです。健康日本という厚生労働省のスローガンがあるんですが、健康日本21、私は、政府を挙げて健康日本の社会を構築する、これを政策の優先順位としてもっと高くしていっていいのではないかというふうに思っているんです。

 例えば、今、治安の問題を重視しています、世界一安全な日本の国を取り戻す、こういうふうにおっしゃっています。また、科学技術で経済を活性化するといって、みらい創造プロジェクト、大幅に予算を増額しました。それと同じレベルで、この健康日本の構築ということを、政策の優先順位を高くしていくということがこれから非常に大事だと思う。

 この健康日本21というのは、何も厚生労働省だけじゃありません。スポーツの振興という意味では文科省も入っていますよね。それから食育、先ほども話題に出ていましたが、これは農水省も文科省もかかわりがあります。健康サービス産業、これからの成長産業ですよ。この健康サービス産業をしっかり支援していく。こうした総合的な健康というものに対する取り組みをしていく必要があるし、そこに、重点分野において政策の優先順位を高めて、予算も措置をしてやっていくことが非常に大事だというふうに私は思っております。

 最後に、総理からその辺の認識につきまして御答弁いただきまして、私の質問を終わりたいと思います。

小泉内閣総理大臣 御指摘のとおり、健康にまさる財産なし、予防が大事だと。病気になるときの治療も大事ですけれども、まず、日ごろから病気にならないような対応。これは、前から言っていますように、健康三原則、食事と運動と休養、これを生活態度の中でよく考えて、そして、病気になったらお医者さんにかかろう、薬も飲もうはいいんですけれども、日ごろむちゃな生活をして、薬に頼ればいい、お医者さんに頼ればいいということでは健康にはならない。まず、健康三原則であります、食生活に気をつける、そして、適度の運動、十分な休養、これを日ごろからよく考えてもらう。

 今、日本は、おかげさまで世界一長生きできる国になりました。これは、戦後、長生きできる国はいい国だからという目標を立てて実現したわけです、日本は、多くの国民の努力によって。今、目標としているのは、長生きできる国になったんだから、長生きを喜べる社会にしようということで厚生労働省挙げて取り組んでおりますが、もちろん、全国民、関心事は健康であります。

 今の御指摘も踏まえて、日ごろから、寝たきり老人をゼロにしようという対策だけでなく、全国民が健康に気をつけていただいて、長生きを喜べる社会、そういう国づくりにも日本としては各省庁連携の上に取り組んでいく必要があると思っております。

笹川委員長 この際、谷口隆義君から関連質疑の申し出があります。北側君の持ち時間の範囲内でこれを許します。谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、時間が限られておるものですから、簡潔にまた的確に御答弁をお願い申し上げたいというように思います。

 まず初めに、中小企業に対する経済対策、こういう観点での御質問をさせていただきたいというように思います。

 きょうは日本銀行から福井総裁も来ていただいておりますけれども、まず初めに福井総裁にお伺いをいたしたいというように思います。

 今、日本銀行におかれましては、物価がゼロ%以上になるように努力をされておられるわけで、資金供給を潤沢にやっておられます。時間軸政策というようなことをやっておられるわけでございますけれども、市中では潤沢に資金が供給されておるにもかかわらず中小企業がなかなか資金をとれないという状態は、若干ましになりましたけれども、やはりあるわけでございまして、そんなことから、日本銀行では、中小企業の売り掛け債権を証券化したものを買っていただいて直接中小企業に資金を入れるというような資産担保証券をやっていらっしゃるわけでございます。しかし、これも、難しい言葉で言いますとダブルBマイナス格ということで、それほど小さい企業のところまで現実に資金供給ができないということでございます。

 この努力は大変重要なことでありますのでやっていただきたいというように思うわけでございますが、そんな状況の中で、やはり中小企業は資金がとれなくて経営がうまくいかないというところが大変多いわけでございます。

 そこで、私は、日本銀行にも申し上げておるわけでございますけれども、一つは、民間の金融機関が地元の状況をよくわかったフェース・ツー・フェースの融資と申しますか、例えば、非常に優秀な経営者だ、経営者の資質だとか、扱っている製品が非常に将来性があるというようなことは、現場の支店がよく知っているわけですね。それに対しまして、あのバブル崩壊以降、民間の金融機関は審査機能を本店のところに持ってまいりまして、本店で審査の決裁をやっておるものですから、なかなか現場の感覚とのずれがあるということでございまして、そういう意味で、支店長の権限をふやすというようなことをやっていくべきだというように言っております。

 また、今、我が国の企業の融資はコーポレートファイナンス、法人に対して融資をするということですけれども、それに対しまして、事業に対して融資をする。事業に対して融資をするというのは非常に難しいんです。これは非常に審査能力が問われるわけでございますので、大変難しいわけでありますけれども。

 このような支店長権限の拡大またプロジェクトファイナンス、事業に対して融資をする、こういうようなことを、中央銀行の総裁として市中の金融機関にそういう金融環境を整えていただくというような立場で行っていただきたいと申し上げておるわけでございますが、このこと、また、その他、日本銀行として中小企業に資金供給ができるような方法を今考えていらっしゃるのであれば、そのようなことも含めて御答弁をお願い申し上げたいというように思います。

福井参考人 お答え申し上げます。

 日本経済、これから順調な回復過程をたどって持続可能な成長過程に入っていくために非常に重要なことは、景気回復のすそ野を広くする。したがいまして、今委員御指摘のとおり、大企業だけでなくて、中堅・中小企業の分野にまで十分エネルギーが充満してくる、そのためには、金融の面では中小企業金融の一層の円滑化が必要だ、これは私どもも基本認識といたしております。

 三つの大きな方向があると思いまして、日本銀行、その三つの方向に沿って努力を展開しております。

 一つは、中小企業に対して、銀行その他金融機関による伝統的な貸出業務でございます。

 この点につきましては、現在、日本銀行の量的緩和政策をバックに金融機関が不良債権の処理のスピードを上げつつございまして、私ども拝見しておりますと、不良債権問題の処理が進捗している金融機関から順次、今おっしゃいましたとおり、支店長の権限を、今までかなり本部に吸収していたのを、再度、支店長の権限を広げるという方向で、中小企業に対してよりきめ細かい融資ができるような体制が今ようやく始まりかけているということでございます。

 この点につきましては、今後の新しい日本の経済のことを考えますと、以前のように、中小企業に対する金融はこういった伝統的な貸出業務だけではないということでございます。

 これは恐らく、今後は必要運転資金の範囲内ということで、しかし、従来よりは円滑に進んでいくだろうというふうに思いますが、おっしゃいましたとおり、中小企業が投資をして、将来収益を上げて、将来の収益でなきゃ銀行貸し出しが返せない、こういうファイナンスについては、今後は、必ずしも担保に頼った従来の伝統的なやり方ではなくて、おっしゃいましたとおり、事業の性格を見ながら、そして、事業の将来の収益性とリスクを見ながら融資をしていく新しいタイプになっていくと思います。

 これには、無担保無保証ローンを含む新しい中小企業向けの融資、それからプロジェクトごとに融資をしていくプロジェクトローン、さらにはシンジケートローンという形で新しい工夫が今進み始めておりまして、まだこれも緒についた段階ではございますが、これから有望な展開を遂げていくと思います。

 三つ目は、さらにもう一歩進んで、中小企業にも市場を通ずる金融のパイプを太くしていく必要がある。

 やはり中小企業も、これからは新しいビジネス機会を探り当てて、新しいリスク、より高いリスクをとりながら事業を展開していかれると思いますので、これは市場を通ずるファイナンスでリスクを多くの投資家に分散して持っていただくということが一番有効な方法で、この三番目の展開ということも日本銀行としては非常に重要だというふうに思っています。

 最初の二つ、これは、量的緩和、そして不良債権の処理、そして私どもの考査の窓口を通ずる銀行に対するさまざまな情報提供ということでやっております。一番距離の遠い、市場を通ずる金融につきましては、少し全体の動きを促進するために、私ども自身が資産担保証券を買い入れるということにまで踏み切りながらやっているということで、今後とも、さらに知恵を絞りながらいろいろなことをやっていきたいというふうに思っております。

谷口委員 ぜひ前向きにやっていただきたいというふうに思います。

 次に、やはり中小企業の自己資本を充実するというのが非常に重要なことでございます。

 それで、この自己資本の充実という観点で、経済産業省、中川大臣いらっしゃいますけれども、経済産業省の中小企業基本法というところで、大きな縛りで中小企業の範囲を、ランクを決めていらっしゃる。製造業のところでは、資本金が三億円以下または従業員数が三百人以下、こういうことで、これ以下は中小企業ですよということなんですが、今、この中小企業基本法の対象になる法人また個人が、すべて見ますと四百七十万社ほどある。このうち、このところに、製造業等の三億円以下または三百人以下のところが百五十万社ぐらいあるということなんです。約三〇%近くでございます。ところが、この状況を見ますと、一億から三億までのところは七千五百社しかないわけですね。

 ほとんど一億のところで資本金をとめてしまっておるというのは、一つは、これは今度は谷垣大臣のところでありますけれども、税制上の中小企業というのは資本金一億ということでございますので、一億以上にしますと、中小企業の軽減税率を受けられないとか、また、交際費課税で非常に恩典を受けられないというようなことがございますので、どうしてもその一億以上に増資をしようとしないということなんです。

 今、経済産業省のところで、申し上げましたように三億というようなことをおっしゃっているわけでございますけれども、まず初めに谷垣大臣に、経済産業省と同じような、平仄を合わせるという観点で、一応、財務省の税制上の中小企業も三億というようなことを考えたらどうかと思うわけでありますけれども、どのようにお考えでございましょうか。

谷垣国務大臣 中小企業基本法は、今委員おっしゃいましたように、業種とか資本金とか従業員数によって支援対象となる企業の中小企業者を定めているわけですが、法人税法の方は、課税の公平性とかあるいは法執行の簡便性といった観点から、一律に一億円ということにしているわけですね。

 そこで、委員の御提案は、三億円に全部引き上げたらどうか、こういうことですが、にわかに、わかったと胸をたたくわけにまいりませんのは、まず、中小企業基本法でも、中小企業、先ほどの製造業は確かに三億円ですが、ほかのところはもっと低くなっているところがたくさんございますので、そうすると、基本法で中小企業者でないものを特典として認める必要性をどういうふうに説明するかということが一つあると思います。

 それから、現行の一億円でも、既に九八%以上の法人が特例の対象になっているということになりますので、それを上げていくと、もう限界的に特例を受ける人が多くなるということをどう考えるかということもございます。

 それから、あとは、財源をどうするかということもあると思いますが、そんなことがございまして、ちょっとにわかに貴意にお沿いすることはしにくいなというのが率直なところでございます。

谷口委員 今、大臣おっしゃったこと、よく理解できるわけです。財源の問題もありますし、おっしゃったようなことがあるんだろうと思います。しかし、これがネックになって、中小企業の、どうも一億から増資をしないというような企業行動がやはりあるということも念頭に置きながら、ぜひ平仄を合わせるという観点で考えていただきたいというように申し上げる次第でございます。

 それと、私も地元に帰っていろいろな話を聞いておりますと、最近、世代がわりというんですか、今まで、戦後、高度成長のときに一生懸命頑張ってこられた方が、いよいよ後継者にかわるとかいうようなことをおっしゃる方が多いんですけれども、その際に、後継者がいないというような場合には、ある程度業況は順調にいっているんだけれども、もう閉めてしまいたいというようなところもあるわけですね。また、経営の多角化という観点でいろいろな事業部をつくった、ところが、中にはうまくいかない事業部が出てきて、もうこの事業をやめたいというところもあります。

 こういうようなところに対して、例えば後継者のいない、これでもう廃業したいというところにはなかなか融資がつかないんですね、後ろ向きの融資でございますから。不動産を処分して、後で借りたものを返済する、こういうことになるわけですけれども、やはりタイムラグがありますから、なかなかすぐにいかない。どうも民間の金融機関はなかなかそういう後ろ向きの融資をしない。

 ですから、これは政府系金融機関がそういう観点で融資を行うということを考えてはどうかということで私は国金に申し上げたんですけれども、国金の方は、そのことを踏まえまして、既にあった融資でありますけれども、それを集約する形で事業スリム化資金という資金を出したわけですね。ですから、それはそういうことで一歩前進したわけでありますけれども、しかし、政府系金融機関の根拠法が、例えば廃業する人には融資ができないということになっておりますので、そこまではできないわけです。それで、何とかこういうことをやっていかないと、無理してずっと経営を続けておって、あのときにやめておったら何とかなったんだけれども、どんどんどんどん損が累増していって、結局にっちもさっちもいかないということになった場合もあるわけですね。

 そういう観点で、ぜひ、国金の方はさっき申し上げましたように事業スリム化資金というのがあるんですが、経済産業省、中川大臣のところの商工中金また中小公庫のところ、こういう政府系金融機関もこのような観点での融資を行っていただければ非常にありがたい、こういうように思っておるわけでございますが、どのようにお考えでございましょうか。

中川国務大臣 委員御指摘の国民金融公庫の事業スリム化資金というものでございますが、これは、廃業のための資金というよりも、厳しい経営が続く中で事業の縮小等による経営の見直しということでございまして、いわゆるスリム化資金、従業員の退職金でありますとか、決済資金、仕入れ先との関係を縮小するとか、あるいは工場一部リストラとか店舗の縮小とか、そういう面について先生御指摘のスリム化資金は国民金融公庫にございますが、いわゆる政府系の中小金融機関であります商工中金あるいは中小公庫でも同じ制度の資金はございます。したがって、ここは三金融機関の間に差はございません。

 それからさらに、法的整理というところまで行かない状態の、いわゆる債務超過状態ではあるけれども事業が継続できるということについては、今まではだめだということ、貸付制度の対象になっておりませんでしたけれども、中小公庫と商工中金については去年の二月から、それから国民公庫につきましてはことしの四月から、そういう同じ目的で融資ができるということになっております。

 結論を繰り返しますと、三金融機関の間に差はないということで御理解いただきたいと思います。

谷口委員 だから、先ほども申し上げましたように、一度、国金と同じような形でそういうことを対象にした融資もやっているということをぜひ広く知らしめていただきたいというように思います。

 それと、最後に質問させていただきたいんですが、総理が、再挑戦できる社会と施政方針演説でもおっしゃったわけでございます。

 二〇〇三年度の中小企業白書によりますと、中小企業の借り入れの際に八一%で個人保証が求められた。また、中小企業研究所の二〇〇二年の調査によりますと、倒産一年前に自宅を保有していた経営者のうち、七四・一%が負債整理のために自宅を売却し、四三・四%は個人破産に追い込まれている。こういうことで、個人保証というのは非常に、会社の債権を切り捨てたけれども個人のところに行っちゃうということで、なかなか再挑戦できるというような今現状ではないわけです。

 それで、法制審の方では、これは総理もおっしゃっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、包括根保証というようなもの、この包括根保証、従来から金額も極度を設定して期間もぴしっと決められているわけじゃない、こういうことで、問題が過去あって、現在もあるわけでありますけれども、このような期間だとか金額についてもう一度制度を考えていかなきゃいかぬ、こういうような動きが出ております。また、今、破産法も今国会で出されるということでありますけれども、総理、この再挑戦できる社会、こういう観点で総理の御見解また法務大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 一度あるいは二度失敗してもまたチャンスをうかがって次の職を探そうと努力している方もたくさんおられます。今までの終身雇用制度から、今は、いい企業に勤めても、若い人の中でも、やはりこの仕事合わなかったなといって、ほかの人がうらやむほどの大企業に勤めても、みずから進んでほかの企業に変わっていく人もふえてきたという状況であります。

 今までの、一度失敗すると立ち上がれないとよく言われていた個人保証の問題あるいは土地担保の問題、もっと一度の失敗にくじけないで次のチャンスをうかがう人に意欲を与えるような、そういう制度なり法的な整備が必要ではないかということで、今、担当大臣に指示しておりまして、この点についてはかなり多くの省庁が連携して取り組むべき課題だと思っております。

野沢国務大臣 御指摘のとおり、法務省では、現行の破産法を全面的に見直すことを内容とする新しい破産法案を今国会に間もなく提出するよう準備をいたしております。

 破産者の自由財産の見直し、大体三倍にしようか、こういうことでございますが、さらには、個人財産の保護を考えまして、個人再生手続、破綻から破産に直結しないような個人再生手続の見直し、さらには、今御指摘の包括根保証の見直しを含めまして、本日、法制審議会に対しまして新たな諮問をすることといたしました。

 引き続き法務省としては努力をしてまいりますので、どうぞよろしくお願いします。

谷口委員 それでは、これで終わらせていただきます。

笹川委員長 この際、富田茂之君から関連質疑の申し出があります。北側君の持ち時間の範囲内でこれを許します。富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 私の方からは、子供たちの命の安全を守るという観点から、政府の児童虐待防止対策について質問をいたしたいと思います。

 私ども公明党は、昨年の衆議院総選挙におけるマニフェストにおきまして、「地域の子育て支援や児童虐待防止対策などをより強化します。」と国民にお約束いたしました。昨年の十一月十九日、これを受けまして、自由民主党と公明党は、「平成十六年度・少子化対策に関する与党合意」として、地域における子育て支援事業の充実、児童虐待防止対策の充実等に、平成十六年度、国、地方を通じた歳出面の措置として総額五百億円を充てるという、積極的にこの児童虐待防止対策についても推進を図っていくんだということで合意がなされました。

 実は、私は、平成十二年成立施行されました児童虐待防止法を、青少年問題に関する特別委員長として提案させていただきました。当時、それぞれの政党はおのおのの政党の法案の準備を進めておりましたが、委員会におきまして、児童相談所また児童養護施設への視察を行いまして、児童センターの所長さんや児童福祉司等、長年この問題に取り組んでこられた方々の御意見を伺いました。その結果、児童虐待事件の激増、深刻化は私どもの予想をはるかに超えるものであり、何としてもその国会で法律をつくらなければ子供たちの命は守れないと、各党の議員の熱い思いが合致して法成立に至ったものであります。

 このように、緊急避難的につくられた法律という一面もありましたので、どちらかといえば、この法律は児童に対する虐待の発見、虐待された児童の保護という点に重点が置かれていました。

 現在、青少年問題に関する特別委員会におきまして、児童虐待防止法の改正に向けて協議を進めているところでありますが、法律施行後の事件の発生状況にかんがみますと、児童虐待の発生の予防や早期発見の促進、保護された児童の社会的自立に向けての環境整備といった、予防から社会的自立に至るまでの切れ目のない支援体制の整備が急務であるというふうに考えられます。

 そこで、坂口厚生労働大臣にお尋ねしますが、政府は、この点に関し、平成十六年度予算では、どのような理念のもと、また、どのように具体的に取り組まれる御所存でしょうか。

坂口国務大臣 お話ございましたように、これは切れ目のない対策をしなければいけないと私たちも思っているところでございまして、平成十六年度の予算におきましては、対前年度比で三・五倍の予算額を確保したところでございます。

 具体的には、発生予防、早期発見の観点から保育士でありますとかあるいは子育てOBが訪問して支援を行う事業、これを行う。また、虐待を受けた児童ができる限り家庭的な環境の中で生活していけるように施設の小規模化を推進する。それから、親を含めました家族全体を支援します家庭支援相談員を全児童福祉施設に配置する、里親からの求めに応じてそれに対して相談支援を行う。あるいは、児童福祉施設退所後の児童に対しまして自立のための相談援助を行う自立援助ホームの設置、これを少しふやす。

 こういったことを行いまして、きめ細かくやりながら、予防から取りかかっていきたいというふうに思っております。

富田委員 ありがとうございます。予算も三・五倍、そして、新たな施策も数多く整備されました。ぜひ地方の関係諸機関の皆様にこの点を御理解いただいて、対策の充実が図られることを切望いたします。

 ところで、私は、青少年問題に関する特別委員会の一員として、先週の金曜日、二月六日ですが、大阪へ視察に行ってまいりました。これは、昨年十一月二日、大阪府内の中学三年生の男子が、保護者の虐待によって餓死寸前の衰弱状態で病院に搬送され、同日、警察より岸和田子ども家庭センターに虐待通告があったという事件の調査のためであります。この少年は現在も入院中で、生命の危機は脱しましたものの、意識不明の状態が続いており、本年一月二十五日、少年の実父とその内妻が殺人未遂容疑で逮捕されております。

 この事件では、保護された少年は不登校状態が続き、学校側が一生懸命、少年との接触を試みましたものの、保護者に阻止され、長い間、少年の安否、生活状況を把握できませんでした。学校側より虐待のおそれがありとの連絡を受けた子ども家庭センター側で、この連絡を児童虐待の通告というふうに認識するに至らず、本事件の発生に至ったものであります。虐待を予防、早期発見できなかった関係者の無念さは大変なものでありました。

 私は、関係者の皆様のお話を伺っていて、だれの責任というより、児童虐待がしつけといった言葉で許容されるものでは決してなく、児童の権利に対する重大な侵害であるということを、いま一度、児童相談所、学校等の関係者、そして地域に住む我々大人が再認識し、子供の命にかかわる問題について一歩踏み出す勇気をお互いに持つことが重要であると改めて感じました。

 本年一月三十日付で厚生労働省の方からも、「児童虐待防止対策における適切な対応について」と題する通知が各都道府県等に出され、文部科学省また警察庁も、これを受けて同趣旨の通知を関係各機関に発しております。国民の皆様にもぜひこの内容を知っていただきたいと思い、若干紹介いたします。

  今般の大阪府における事件を始め深刻な虐待事例が頻発していることを踏まえ、児童虐待については、改めて児童相談所における情報の共有を始めとする組織的かつ迅速な対応、子どもの安全確保の優先といった基本に立ち返った取組みをお願いしたい。

  また、児童虐待への対応に際しては、児童の日常の状況を把握している学校、幼稚園あるいは保育所とのより密接な情報交換、立入調査に際しての警察官の必要な援助など、児童相談所と地域の関係者との適切な連携・協力の確保に改めて特に配意頂くようお願いしたい。

という内容でございます。

 ここで言われているように、関係各機関と地域住民とのネットワークが有効に機能することが最も重要であり、そのためにも、このネットワークに対する支援が必要と考えます。

 虐待防止対策の中心である児童相談所の現行体制は、相談案件また事件の急増に伴って、もう限界に近いものがあると思われます。全国各地の市町村では、独自のネットワークを設置するところが数多く見られます。平成十二年度より、政府は市町村ネットワーク事業の立ち上げ経費の補助を開始しておりますけれども、政府として今後どのような支援体制を検討しているのか、坂口厚生労働大臣より御答弁いただきたいと思います。

坂口国務大臣 時間がないようでございますから、簡単に申し上げたいと思います。

 一つは、今御指摘のありましたように、ネットワークをつくること、これは、それぞれの地域によりましていろいろの人のネットワークをつくらなきゃいけないというふうに思います。そのネットワークをつくりましたときに、だれがその中心になって責任を果たすかということは明確にしなきゃいけないと思うんです。ただネットワークをつくっているだけではだめだというふうに思いますから、責任体制を明確にする。その二つのことを踏まえて、多くの職種の人たちがネットワークをつくる。

 そして、虐待をする家庭というのは、なかなか本当のことを言ってくれない。しかし、ここが危ないというときには警察にも協力をいただいて、そして、積極的に子供を保護するという体制をつくり上げていくことだというふうに思っております。

 多くの市町村ででき上がっておりますので、それに対する支援をさらに強化していきたいと考えております。

富田委員 坂口大臣から御答弁いただきました。

 実は、昨年も、児童虐待により四十二名の子供の命が奪われております。特に河村文部科学大臣、そして小野国家公安委員長にも、関係各機関への適切なる指導を要請し、子供の命を守るネットワークの構築に政府を挙げて全力での取り組みを要望いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

笹川委員長 これにて北側君、谷口君、富田君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。今から九十分間、総理に対して質疑をしたいと思います。

 まず最初に、総理がこの通常国会冒頭に、百五十九国会における小泉内閣総理大臣施政方針演説を行われました。私はかなり期待をして聞いておりましたが、端的に申し上げて、がっかりいたしました。

 この施政方針演説は、毎年毎年行われる、そういう性格のものでは私はないと思います。去年の秋に小泉総理が自民党総裁として再選されました。任期は三年であります。そして、総選挙において、我々から見れば大変残念なことですが、今の政権の枠組みが続くことが決まりました。ですから、特段の大きな変化がなければ、小泉総理はあと三年間、日本国総理大臣としてお務めになる可能性が高い。この三年間にこの国をどうするのか、総理として何をするのか、そのことが伝わる演説でなければならなかったと思います。しかし、中身は、ことし一年間でやる各省庁の施策の羅列。総理としてのほとばしるような、そういった情熱は感じられませんでした。

 具体的に申し上げたいと思います。

 総理がみずからの考えを述べている部分は非常に少ないわけですが、こういうくだりがあります。「我々が目指す社会は、国民一人一人や、地域、企業が主役となり、努力が報われ、再挑戦できる社会であります。」ここは総理の思いの入ったところかな、そういうふうに推察をいたしますが、国民一人一人や地域、企業が主役になる、これは実は、民主党もよく似たことを前から言っているわけですね。官から民へ、国から地方へ、そして、旧民主党の時代から、市民が主役。ここは共通する部分があると思いますので、その後の「努力が報われ、再挑戦できる社会」、これが総理の思いのこもったところかと思いますが、この「努力が報われ、再挑戦できる社会」ということに対してノーと言う人は、私はいないと思うんですね。

 しかし、これのみを言っておられるということは、その結果、どういう社会ができるということを総理は想定しておられるのか。よく言われるように、例えば、アメリカ型の二極分化が進むような社会になっても、この「努力が報われ、再挑戦できる」ということが確保できていればいいというふうにお考えなのか、それとも、日本の目指す方向は違うというふうにお考えなのか、そこの基本的なところをまずお答えをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 安定した民主的政権をつくるということは、イラクだけではありません。どの国においても、これはあらゆる施策を推進する上で最前提であり、極めて重要なことであります。日本におきましても、そうであります。

 今まで、共産主義社会、社会主義政権と資本主義、自由主義、民主政権、それぞれどちらの制度が国民の生活を豊かにしていくか、幸せをもたらすかという議論が、過去盛んに行われてまいりました。しかし、現在においては、統制経済よりも、個人、企業、自由度を生かした市場経済、これを重視した経済体制、政治体制の方が国民生活を豊かにしていくのではないかということについては、ほぼ、この論争においては大方の決着はついているのではないか。

 ソ連の崩壊、東ドイツと西ドイツとの経済状況、北朝鮮と韓国との経済状況、同じ民族でも政治体制のいかんによってはこうも国民の生活が違ってくるのかということを見ると、民主的価値、市場経済を重視していくということは、これからも極めて大事なことだと思っております。私が、民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、個人の努力が報われる社会と言うのも、その方向に沿ったものであります。

 いわば政府なり政治というのは、そのような個人の意欲を支援する、企業の意欲を支援していく、地域のいろいろな創意工夫を発揮させる、余り政治が余計な干渉はしない、そのような個人の意欲が自由に発揮しやすいような環境をつくっていくことが、政治で極めて重要なことだと思っております。

 そういう面において、私は、個人の創意工夫が発揮できるような、そして、一度や二度の失敗にくじけないで、また別のチャンスを探して、そのチャンスを生かしていく努力が報われるような、いろいろな選択肢を社会が提供していく、政治が提供していく、あるいは法律的な整備をしていくということが重要ではないか。

 結果的に、企業が、おう、こういうことをやれば自分たちの業績が上がるのか、地域も、このような創意工夫をしていけば、意欲を出せば、自分たちの地域は発展していくんだなというような体制を支援していくことが、政治で大事だと思っております。

 極めて抽象的な議論ではありますが、そういう方向性におきましては、民主党と自由民主党との間においては、共通した認識もかなりあるのではないかと思っております。

岡田委員 基本的に統制経済よりも市場経済だ、これは異論を挟む人はほぼいないだろうと思いますし、私は、あるいは総理以上に市場経済主義者かもしれません。しかし、そこは経済の分野の話です。しかし、それだけでいいのかという、つまり政治が果たすべき役割というのは、もちろん、そういった自由な市場経済が行われるようにきちんと条件整備をしていく、それは大事でありますが、しかし、その結果出てきた結果について政治が何もしなくていいということではないと私は思います。

 先ほど申し上げたアメリカ型の所得分化型の、二極分化型の社会がいいのか、それとも日本に伝統的にあるような中間層の厚みというものを重要にする、そういった社会を目指して、政治はそこに手を入れていくのかどうか、そこを私は問うたわけですが、総理は、ここについてはどういうお考えなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、社会保障という観点からいたしますと、政府が役割を果たすというのは大きいと思います。

 年金、医療、介護というのは、日本の社会におきましても、基本的な社会保障制度として、これからも公的な役割というものをいかに果たしていくかという視点が必要でありますし、私どもとしては、この社会保障を充実していく際に、経済の活性化を同時にどのように発揮させていくか、これが大事だ。特に、社会保障の負担というのはこれからかなりふえてまいります。そうすると、これは企業の負担も多くなる、個人の負担も多くなる、公的な税負担も多くなる、これが逆に、社会の、経済の発展のための活力をそいでいくのではないかという議論もあります。

 そこで大事なのが、社会保障を維持するために、どの程度の国の役割が必要か、公共団体の役割が必要か、どの程度個人の意欲を助長するような対応が必要か、両面考える必要がある。今大事なことは、いわゆる民間でできるところは民間に、それから地方にできることは地方にと同時に、やはり日本の安定した社会をつくっていくためには、この社会保障が極めて大事だ。

 どの程度の負担が必要か。これは下手すると、もう消費税二五%でもいいというような、高福祉になるのは歓迎する向きもありますが、同時に、これは大変な負担であります。日本は、スウェーデンなりデンマークなりの高福祉を見習ってまいりましたけれども、一方では、そのような税負担には耐え切れないという人もたくさんいるわけであります。その点が、いわゆる北欧の高福祉・高負担とは日本としては違った行き方があるだろう。

 逆に、アメリカみたいに、貧富の格差がかなりあって、公的な医療の面においても日本に比べればまだおくれている、こういう点は日本としてはとらざるところだ。やはり、医療というもの、あるいはアメリカにない介護というもの、こういうものに対しては公的関与というものがあっていいのではないかという立場をとっております。

 だから、アメリカにもない、北欧のすぐれた福祉制度があるがあのような高負担には耐え切れない、やはり日本は日本独自の行き方があると私は思っております。

岡田委員 総理は、社会保障の問題にかなり限定をしてお話しになったわけですが、私は、話を小さく小さくとらえられているのではないかと思うんですね。

 例えば、税の問題もあります。所得配分の問題ですね。あるいは教育の問題もあります、実質的な機会の平等。つまり、いろいろな価値観がある、多様な価値観を認める社会、実質的な機会の平等を認める社会、あるいは努力しても努力しても報われない人に対してきちっと手を差し伸べる社会、そういった価値観をやはり政治はきちっと実現していく責任があると私は思うわけであります。

 総理は、今回の施政方針演説でも、最初に「構造改革なくして日本の再生と発展はない」、この言葉を繰り返されました。この言葉も結構ですが、そろそろもう、あと三年間、どういった社会をつくっていくのか、そして、その中において総理みずからが何をされるのか、そのことをしっかり述べられるべきじゃないか。お見受けしていると、そういったエネルギーが二年前と比べてもかなり薄れてきているんじゃないか、失礼ながら、何をやっていいのかわからなくなっているんじゃないか、総理を見ているとそういう印象を非常に受けるものですから、あえて最初に申し上げておきました。

 さて、外交の問題について少し申し上げたいと思います。イラクへの自衛隊派遣の問題です。

 イラクへの自衛隊派遣の問題について、なかなか議論がかみ合わなかったと思います。総理は、いや、イラクには武力行使に行くのではない、戦争をするんじゃない、こういうことを繰り返されたわけですが、そこで言う武力行使というのは一体何なのか。私は、かなり総理は狭く考えておられるんじゃないか、こういうふうに思うわけですね。

 例えば、戦闘が行われているときに米軍が、イラクのフセインの残党なら残党、あるいはアルカイダと戦闘を行っている、そして、その戦闘の結果出てきた負傷兵に対して米軍の医療部隊が手当てをしている、そこにもし自衛隊の一部が医療活動を一緒になってやる、こういうことになったときに、それは武力行使になるんでしょうか、ならないんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、具体的などういう事態に遭遇してくるかによっても変わってくると思いますが、今の時点でその質問に答えるには抽象的な答えしかないと思うんです、実際にそういう事態が起こっていないんですから。

 それでお許しいただければいたしますが、私は、一般的に考えて、傷病した米軍の兵士に対して日本が医療活動をしていくというのは、一般的に考えてですよ、これは武力行使には当たらないんじゃないかと思っております。これは人道支援だと。赤十字においても、戦争中でも野戦病院というものがありますから、医療活動まで武力行使には、たとえ兵士の医療活動に協力したとしても、武力行使には当たらないんじゃないか。

 もちろん、そういう、どのような状況に自衛隊が入っていくか、いかないかの問題もあります。ですから、この抽象的な御質問に対しては、今のような抽象的な答弁しかしようがない。

岡田委員 今の私の質問は、戦場においてという前提が加わるんですけれども、これは、政府の従来の考え方では武力行使なんですね。政府の答弁は明確にそう述べておられるんですよ。つまり、武力行使の概念というのは、かなり幅広く今まで政府は考えていた。直接武力行使をするだけじゃなくて、その周辺の一体的な行動も含めて、これは武力行使であるというふうに考えてきたわけです。だからこそ、その考え方に立って、そういったことを防ぐために、戦闘地域と非戦闘地域に分けて、非戦闘地域の活動に限るということが出てきているわけですね。

 そこで問題になるのが、この戦闘地域、非戦闘地域、つまり、非戦闘地域であるということがきちっと分けられるのかという議論がこの間なされてきたわけです。

 少し議論を整理しますと、一つは、今の政府の線の引き方に相当無理がある。例えばバグダッド空港。委員会の答弁の中で、バグダッド空港そのものでは戦闘行為はないから、これは非戦闘地域であると言っています。しかし、バグダッド空港の周辺からバグダッド空港に離着陸する飛行機に対してミサイルを撃ち込まれる、空港の中だけは非戦闘地域だ、詭弁にすぎません。周りも含めて考えるのは当然であります。

 そしてもう一つは、今回のイラクにおいては、テロやゲリラ活動、つまり地理的概念が非常に立てにくいわけです。きょう安心だと思ったら、あしたは戦場になるかもしれない。だからこそ、非戦闘地域だ、こういうことがなかなか言えないわけですね。

 そして三番目、非戦闘地域の概念は、今非戦闘地域だけではなくて、将来にわたって戦闘が行われることがないと認められる地域。では、サマワは今非戦闘地域、皆さんそうおっしゃるかもしれません。しかし、今シーア派は直接選挙を求めている。直接選挙ができないときに、サマワは一変するかもしれない。なぜ、将来にわたって戦闘が行われない、そういったことが断言できるのか、説明はありません。

 そういった非常にあいまいな中で、つまり、戦闘地域、非戦闘地域が明確にできないということになれば、これは憲法に抵触するおそれが極めて強いということで、我々はこの議論を展開しているわけであります。

 そういう中で、総理は、きょうの大野委員の質問もありました。時代が変われば憲法解釈が変わることは悪いこととは思わない、かつて自衛隊自身は違憲だという意見があった、しかし、時間がたてば、今違憲と言う人は少ない、これと同様に、イラクへの自衛隊派遣もやがて反対がなくなるだろう、私は、この総理の問題意識は極めて問題があると思うんですね。

 つまり、自衛隊ができたときの議論とそして今と、置かれた状況は全然違うわけです。同じようにそういった拡張解釈を繰り返していくということについて、総理はけさも、いやいや悪いこととは思わないと言われたんですが、本当にそうなんでしょうか。憲法というのはそういうものなんでしょうか。いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 政府の憲法解釈は今まで一貫してまいりましたし、これまで積み重ねてきた議論を尊重したいと思います。

 しかしながら、国民の中には、ああ、なるほど憲法解釈としてはこういうものがあるのかなという例として、自衛隊は憲法違反だと思っていた方も、今では自衛隊の存在は憲法違反ではないと言う方もふえてまいりました。

 また、PKO議論のときにも、平和維持活動においても自衛隊を海外に出すことは憲法違反だということで、国会でもかんかんがくがくの議論が行われ、賛否両論行われました。これも当時、たとえPKO、平和維持活動でも海外に自衛隊を出すことは憲法違反だという議論が、国会でも盛んに行われました。しかし、政府としてはこれは憲法違反ではないという立場をとってきたわけでありますが、憲法違反だと言っていた方の中にも、今ではその解釈を変えて、ああ、PKO活動だったらこれは憲法に違反しないなというふうに変わってきた方々も随分ふえてまいりました。

 私は、そういう意味において、これからも、憲法の条文をそのまま受け取ると、ある場合においては自衛隊の存在も自衛隊の海外派遣も憲法違反だというふうにとる向きがあるということは承知しております。そういう面において、将来、もっとすっきりした形で憲法を変えた方がいいなということから、今、自由民主党も憲法改正論議を進めておりますし、民主党も憲法改正論議をこれからしようということになっていると思います。

 私は、本来、でき得れば、国民の間に憲法の条文によって解釈が違憲、合憲と二つに分かれるのではなくて、すっきりした形で改正することによって、そういう違憲論、合憲論の見方が分かれるというふうな状況はなくしていった方がいいと思っております。

岡田委員 まず、憲法改正の話は、私、今問うているわけではありません。私も憲法改正について決して後ろ向きではありません。

 そのことを申し上げた上で、そしてPKO、総理はよく言われるわけですが、私は、PKOは大分違うと思うんですね。というのは、PKOは、あのときには野党である公明党や民社党も賛成しているんです。社会党、共産党は反対しました、おっしゃるように。ですから、そんなに国会の中で大きく分かれているわけじゃないんですよ。

 私は、申し上げたいのは、警察予備隊がスタートしました、一九五〇年ですね。当時はGHQのそのもとにありました。自衛隊のスタートは一九五四年です。朝鮮戦争が五三年に終わったばかりでした。そういった時代的な背景の中で自衛隊の存在というものをいかに憲法上位置づけるか、私は、先輩は相当御苦労したと思います。吉田総理の時代には、いや、軍隊は持てないと言っていたわけですから。しかし、時代がそういう時代、つまり占領時代あるいはその直後で、そういう中で無理に無理を重ねて自衛隊を今の九条の中に押し込めた、読み込んだ。素直に読めば、私も、自衛隊というのは九条で本当に読めるんだろうか、そう思いますよ。だけれども、当時はそれで読み込んだ。

 それから五十年たちました。日本はその間、民主主義国家として成熟してきました。そうであれば、もし問題があるんなら憲法改正をきちんと議論すべきであって、なぜ解釈を拡張していくのか。本来、憲法というのは、国民から見たときに、国と国民との関係で、国の、国家権力の不当な行使から守るという、そこが憲法の最も本質のところですね。しかも、我が国の憲法は改正について国会で三分の二ですね、そして国民投票。つまり、国民がしっかり関与しなければ改正できない形になっている。

 そういった憲法を、単に時の国会の多数を占める、政府を構成する、そういった政治家たちが解釈を変えていく、私は、それは大変まずいことだ、そういうふうに考えるわけです。国民の知らないところで憲法が変わっていく、国民の手から離れていく、そこについてしっかり自覚を持って議論していくべきだ、私はそう考えますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、今までも自衛隊の創設以来、違憲論、合憲論、盛んに議論されておりましたけれども、多くの国民は、自衛隊を合憲だとする、憲法違反ではないとする考え方に、改正することによって自衛隊を合憲にしようというよりも、今の憲法の条文をよく解釈することによって自衛隊の存在を認めた方がいいというふうに多数の国民がなっていると思います。国民の関与抜きじゃないんです。国会の政党が今までこの問題についてはもう違憲論、合憲論、盛んに行われてきましたけれども、国民もそれに参加してきたと思います。

 そして、一方では、違憲だから自衛隊をなくすということはできないだろう、それでは憲法を改正して、はっきりと自衛隊は合憲だ、軍隊だと認めようといって、憲法を改正することによって自衛隊の存在を認めるよりは、やはりこの憲法は守った方がいいということで、今の憲法の条文でも十分自衛隊の存在は憲法違反でないという形の解釈に変えた方がいいという国民の情勢を見て、私は、今までの戦後の内閣はそのような国民的な議論を踏まえて自衛隊合憲論をとってきたんだと思っております。

 これはPKOでもそうです。日米安保条約のときもそうです。こういう議論は決して国民の議論を無視したものではないのであって、国会の中での議論も踏まえて、国民も、その憲法の条文で読める範囲内で日本の国家の平和と安全をどのように確保することが必要か、また、自衛隊の存在が必要かという議論の中で、それぞれ憲法の条文というものはどういうものかということを真剣に考え、議論してきた積み重ねの結果だと私は思っております。

岡田委員 私は、憲法ができたころのその状況と今と、やはり民主主義の熟度が違う、だから、そこはやはりきちんと議論をすべきである、そういうことを申し上げたわけです。

 総理は、国民の意識がと言われました。では、今、イラクに自衛隊を出すことについて説明が十分なされているという国民は、一体何人いるんですか、何%いるんですか。大半の国民は、説明責任は十分果たされていないと。七割、八割です、今でも。だから私は申し上げているんです。国会で議論を尽くしたんですか。私は、とてもそういう状況にないということをまず申し上げておかなければいけないと思います。

 さて、日米の問題、いろいろ議論してきました。総理からは、民主党は日米関係がどうなってもいいのかと、非常に挑発的な発言もいただきました。もちろん、我々は日米関係は非常に重要であるという前提に立っています。しかし、国と国がどういった形でお互い話をしていくか、そこの基本が失われつつあるのではないかということを私たちは申し上げているわけです。

 総理、具体的にお聞きしますから、簡単で結構ですから、それぞれおっしゃっていただきたいと思います。

 最近、ブッシュ政権になっていろいろ議論されている、世界の中で議論されていること、例えば小型核の開発、劣化ウラン弾の使用、あるいは地雷問題への消極的な取り組み、こういったことに対して、総理はどのように考えておられるんでしょうか。簡単で結構ですから、総理自身の言葉で述べていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本としては、核軍縮を初め、軍縮の問題、不拡散の問題、あるいは無差別に市民を殺傷するような兵器の抑制の問題、日本として、国際社会の場においても、米国に対しても、日本の立場をはっきりと説明して、理解を求める努力を続けております。

岡田委員 今まで言われているのは、小型核については、これは技術開発で現実にできたわけではないと。そして、劣化ウラン弾については、ほとんど何も述べておられません。地雷問題についても、私は、アメリカがこの問題に消極的であるということについて総理からお話を聞いたことがありません。

 私は、特に地雷問題を考えるときに、小渕さんを思い出すんですね。当時は、まだ総理になる前、小渕外相でした。そのときにも、アメリカは地雷問題に対して極めて消極的。しかし、小渕外相はリーダーシップをとって、そして、対人地雷問題の解決に向けて犠牲者ゼロ・プログラムというものを提唱しました。私は、政党は違いましたが、あっぱれだな、小渕さんの人間性も出ている、そして、これこそが政治のリーダーシップだと感じました。

 総理を見ていて、そういうことが全くうかがえないものですから、結局はアメリカのやっていることに対して見ざる聞かざる言わざる、基本的にはそれに追随をしていくというその姿勢。私は、やはり日本国総理大臣としての誇りを持って、そしてしっかり対応してもらいたい、そのことを申し上げたいわけですが、総理、何か御感想ありますか。

小泉内閣総理大臣 日本の総理大臣として、日本の立場、日本の国益を考えて各国首脳と会談しております。日本の立場というもの、これをどのように理解していただき、そして日本の国益を追求するかということに対して、日本の総理大臣としての職責をこれからも果たしていきたいと思います。

川口国務大臣 一言だけ追加をさせていただきたいと思いますけれども、総理のリーダーシップのもとで、日本政府としては、小型核の問題につきましても、それから地雷の問題につきましても、米国に対して、懸念ないしは地雷の場合にはオタワ条約に入るようにということを働きかけてきております。これは、総理のリーダーシップのもとに日本政府としてやっていることでございます。

 それから、劣化ウランについては、国際機関でまだこれが健康に問題があるということが出たわけではない、我が国としては引き続き今後の動向を注視している、そういう状況にあります。

岡田委員 劣化ウラン弾について一言申し上げたいと思いますが、さきのイラク戦争あるいは湾岸戦争でこれが大量に使われたと言われている。確かに、我々、映像を見ると、その影響を受けたと思われる子供たちの映像が出てまいります。

 総理は、今回自衛隊をサマワに送って、そして子供たちに水を、こう言われるけれども、水も大事ですけれども、ああいったことに対してどう考えておられるのか。総理の肉声が伝わってこないんですよ。事実関係がはっきりしない、原因かどうかわからない、だけれども、現実に、統計的にはっきりとしたものが出ているし、恐らく自衛隊の皆さんも、劣化ウラン弾に対する対応というのはしっかりした上でサマワに行かれたと思いますよ。そういったことに対しての総理の思いというのが伝わってこないんですよ。小型核だって、被爆国である日本からすれば、もっと本気になってとめに入っていい話でしょう。それは、私は非常に残念だということを申し上げておきたいと思います。

 武器輸出三原則についてお聞きします。

 ミサイル防衛との関係で、武器輸出三原則について検討が必要だと総理は言われております。具体的にどういう検討が必要なんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 弾道ミサイル防衛、これは日本の専守防衛という方針に合致するものであるということで、今後、共同研究していかなきゃならない問題だと思っております。

 武器の問題、共同研究開発していく段階において、この弾道ミサイルの技術が今までの武器輸出三原則とどう関係してくるのかという問題が出てきた場合に、どのような対応が必要か、どういう検討が必要か。

 過去、いろいろ議論を見てみますと、ヘルメットや防弾チョッキも武器ではないかという議論が行われました。今、ヘルメットは、実際の消防活動とかふだんの市民生活においても、国民、市民も一般に使っております。そういうものまで武器に当たるのか。あるいは、今いろいろな、輸出する場合に、多くの国々が、日本の新製品のみならず今まで使われていたものまで輸入したいという動きが出てきた場合、あるいは安全保障の面のみならず市民生活に使いたいという場合も、トラックを改装すれば武器になるのではないかという問題も起きてきます。

 そういう点については、今後やはり、武器の今までの、三原則の問題にもかかわってくる問題でありますので、いろいろ検討するのもいいのではないか。当面、弾道ミサイルの問題において、武器三原則とどういうかかわりがあるかということは十分検討する必要があると思っております。

岡田委員 総理は私の質問にお答えいただかなかったものですから、もう少し具体的に聞きます。

 武器技術の米国への輸出というのは、今認められています。したがって、今、技術開発をして、その技術が米国で使用されるということは、これはあるんでしょう。しかし、その技術が非常に中核的な技術であって、このミサイル防衛システムの中で外せないような技術であるというときに、その技術を含むミサイル防衛システムが第三国に供与される、そのときに、これは総理、どうされるんですか。今までの考え方では、アメリカまではいいですよ、だけれども第三国というのは認められませんよね。どうされるんですか。

中川国務大臣 武器輸出三原則については、時間の関係でもう省略させていただきます、御存じだと思いますから。

 その中で、今、総理からも答弁がありましたように、幾つかの例外的な扱いというものがございまして、例えば、法律上例外となっているものでありますとか、あるいはまた自衛隊の海外活動に伴う武器輸出であるとか、そして今委員御指摘の対米武器技術供与取り決めというのが、これは八三年から行われておりますが、ここには三つの原則がありまして、そのうちの一つとして、取り決めとして、第三国への移転はしないということになっております。

岡田委員 例えば、こういうケースはどうでしょうか。

 そういった中核的な技術として欠かせない、ミサイル防衛システムに欠かせない技術を日本が開発した、そのミサイル防衛システムを第三国、例えば台湾に供与する、このときに日本政府はどうするんですか。

中川国務大臣 まず、今総理から冒頭お話があったように、日本の安全保障上の問題ということが一つあって、そのときに、武器輸出三原則という議論が出てきたときに、私が出てきてこうやってお話をしているわけでございますが、その中で、日米間の取り決めでもって、こういうものについて技術の供与をしますとか、そういう議論があったときに、それが第三国に移転するかどうかということも当然判断材料になるわけでございまして、そのときに、日本としては第三国に移転すべきではないという判断をしたときには、それをアメリカに通知をし、そしてアメリカもその合意に基づくということでございます。

岡田委員 技術的な話を私はしているんじゃないんですが、そういった中核的な技術で、それがなければミサイル防衛システムが成り立たないようなケースで、そういう第三国への配備について日本がノーと言ったら、システム全体が配備できなくなりますね。そんなことができるのか。

 そういったことについて、やはりきちんと今から政府としての考え方をまとめ、そして国民に対しても説明しておかなきゃいけない。ずっと先送りして、そしていざそのときになったら、もう間に合いませんといって、そして事実が先行してしまう、そういうやり方はぜひやめていただきたい。それが長い目で見て、日米関係をしっかりしたものにしていくためにも大事なことだ、そのことを申し上げておきます。

 何ら答えがなかったことは、非常に残念であります。

 もう一つ、これは日米関係ではありませんが、お聞きしたいと思いますが、総理は、一月一日に靖国神社に参拝されました。総理は、A級戦犯の合祀という問題をどのようにお考えなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、A級戦犯の合祀を問題にして靖国神社に行ったわけではございません。A級戦犯がいようがいまいが、多くの戦没者に対する、犠牲の上に今日の日本の平和と繁栄はあるんだ、二度と戦争は起こしてはいけない、そういう思いを込めて靖国神社に参拝いたしましたので、A級戦犯の合祀の問題について、とやかく言う立場にございません。

岡田委員 A級戦犯を合祀するかどうかは、確かにこれは靖国神社側が決める問題ですね、国の機関ではありませんから。ですから、そのこと自身は、それが国としていいとか悪いとかいう問題じゃありません。靖国神社側が決める、あるいは御遺族の皆さんが決めることです。

 しかし、そこに総理が行くとなれば、これは話が違うんですね。本当に御遺族の皆さんの総意でA級戦犯の皆さんが合祀されているのかどうか、これはかなり異例ではあります。つまり、軍人ではない人も合祀されています。それから、もちろん戦場で亡くなったのではありません。戦後そういうふうになったわけですけれども、私は、靖国神社にお参りするときに、やはりそこに戦争について責任を持つ人たちが一緒に祭られているというのは非常に抵抗感を覚えます。総理はいかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、抵抗感を覚えておりません。

岡田委員 ここは、日本とドイツのかなりの違いかもしれません。ドイツは、ニュルンベルク裁判で同じようにしっかりと戦争責任を追及しました。そしてその後も、占領が終わっても裁判は続けて、戦争犯罪に対してはきちんとけじめをつけていきました。日本は残念ながらそうはならなかった。あやふやに終わりました。

 私は、この問題は、総理が参拝をされるのであれば、やはりA級戦犯合祀の問題、もう少しきちんとした方がいいと思うんですね。例えば、中国や韓国が言っているのはまさにそのこと。靖国神社参拝そのものを言っているんじゃなくて、A級戦犯が合祀されているということについてそれぞれの国は問題にしているわけですね。

 総理は、この靖国参拝の問題について、きちんと説明をするとおっしゃったけれども、中国に対してどういう説明をされているんですか。

小泉内閣総理大臣 私はきちんと説明しております。

 先ほども申し上げましたように、今日の日本の平和と繁栄は多くの戦没者の犠牲の上に成り立っている。こういう、心ならずも戦場に赴いて命を失わなければならなかった方々、こういう方々に哀悼の誠をささげたい、家族を残し、あえて命を失った方々に敬意と感謝をささげたい、そして、二度と戦争を起こしてはいけないという気持ちで靖国神社を参拝しているのであって、私は、日本に死者までむちを打つという感情は余りないのではないか。

 中国には中国の立場があります。韓国には韓国の立場があります。しかし、死者を弔うことについて、韓国、中国がどのような対応をとろうとも、私は文句を言うつもりはありません。批判をするつもりはありません。日本の一つの伝統といいますか、歴史を大事にする、二度と戦争を起こしてはいけない、そして戦没者に対する哀悼の誠をささげるというのは、私は人間としても自然な感情ではないかと思います。そういうことについて、よその国から、ああしなさい、こうしなさいと言われて、今までの気持ちを私は変える意思は全くありません。

岡田委員 死者に対して哀悼の誠をささげたいという気持ちは、私も全く一緒であります。しかし、その死者に対して責任のある人たち、本来責任を負わなければならない人たちも含めてというのは、私は異論があります。

 いずれにしても、これは水かけ論かもしれませんが、そういう中で、アジアの中で生きていく国として、果たしてどれだけ説得力のある説明が総理はできているのか。もし総理が、みずからの言い方で説得できる、それが正しいと信ずるなら、そのことをしっかりとアジアの中で述べてもらいたい。結局、そういった説明を回避する中で誤解が高まり、そしていつまでもアジアの中で日本という国の居場所ができないというのが、私は現実だと思います。

 それでは、次に参りたいと思います。経済の問題。

 お手元に配らせていただきましたが、これは世界経済フォーラムの国際競争力ランキング。総理、これは覚えておいでだと思うんですが、総選挙の最中から盛んに自民党はこのことを取り上げたんですね。総合的な順位がこの二年間で二十一位から十一位に上がりました、これは小泉改革の成果です、そういうふうに何度も何度も説明されました。確かに、十一位になったことは、これはいいことだと私は思います。だけれども、それは本当に小泉改革の成果なのか。

 中身を見てください。大きく三つあります。まず、マクロ経済環境。悪化をしています、十八位から二十四位。公的制度の効率性、十九位から三十位。よくなったのは科学技術のところです、二十三位から五位。では、科学技術の中は何か。企業の新技術の取り入れ、これは二位ですね。企業の研究開発投資三位。

 その他の指標を見ますと、企業の経営戦略六位、しかしそれに対して、経済政策決定の集中度八十二位、創業の際の行政手続の負担八十位、農業政策のコスト百位、銀行の健全性最下位。つまり、政府が絡むような話はみんな悪いんですよ。だから、小泉改革、小泉改革、その実態は民間企業が頑張ったということなんです。

 小泉構造改革、この成績表で見ると完全に落第じゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、日本の国際競争力ランキングが何位から何位に上がったということなんというのは、演説でも一度も使ったことはありません。どなたが使ったか、それはわかりませんが、私自身が、そういうランキングが上がったから私の改革の成果が出ているなんということは一言も言っていないということだけ御記憶願いたいと思います。

 私が言っているのは、改革なくして成長なし、ようやく経済に明るい兆しが出てきた、改革の種をまいてきた、この種にようやく芽が出てきた、企業にやる気が出てきた。これは、やはり政治の環境、改革がだんだんわかって理解されてきたなと。

 企業の業績も上がってまいりました。そして、やる気のある企業も出てまいりました。今まで、お金がないと会社をつくることができないということも、先ほど申し上げましたように、一千万円の資本金がないと会社を立ち上げることができなかったけれども、それでは、お金のない人も会社をつくる意欲があるんだったらつくってもらおう、一円の資本金でも会社を立ち上げることができるようにした結果、一年足らずで八千件を超える新しい企業が誕生しております。意欲が出てきたなと。

 雇用もだんだん改善してまいりました。不良債権処理を進めないと経済の活性化にならない、私の就任前、盛んに言われていました。この改革を進めていくと、不良債権はふえるばかり、失業率はどんどん高くなるばかり。現実は、失業率もだんだん減ってまいりました。不良債権処理も、額においても比率においても順調に予定どおり進んでおります。企業も、余り公共事業を政府やってくれと言わなくても、やはり自分の力でやらなきゃならないんだなという意欲を持って業績を上げてくれました。

 これは、やはり政治環境を整えることがいかに大事か、政府が余計な、不必要なことをやらないことがいかに大事かと。歳出を抑制する中で、財政出動をすることなくして経済が明るい兆しを出してきたな、この意欲を守り立てていくのが改革でも必要だなと。やはり、日本の経済を興していくのは、個人個人、個人企業、地域、これが意欲を出してもらう、その意欲を支援していくのが政治として極めて大事だということを言ってきたわけでありまして、私は、別に国際競争力のランキングが何位に上がったからいいというようなことは一度も言っておりません。

竹中国務大臣 世界経済フォーラム、IMD、そういうところがランキングを出しておりますが、そういうランキングの作成にかかわったこともありますので、それなりの私なりの解釈を申し述べさせていただきます。

 そのフォーラムのランキングというのは、昨年の暮れ、秋だったか冬だったか、暮れぐらいに、後半に発表されておりますが、それは、世界の有識者にいろんなヒアリング、アンケート調査を行います。どの時点でかといいますと、去年の春ぐらいの情報に基づいてそういったランキングがつくられたというふうに認識をしております。

 どういうことかというと、去年の四月末に株価が非常に悪い段階、そういう状況で、しかし企業の収益は改善しておりました。その企業の収益の改善の部分はそこにきっちりと織り込まれている。しかし、その後、三月決算が六月ぐらいに出て、不良債権が下がっているということがはっきりとし出した。それで、今回の予算で、財政のプライマリーバランス、基礎的収支も改善しているということがはっきりとしてきた。そうした評価はこの半年ぐらいであります。

 したがって、その評価は、企業部門がよいという部分だけ入れていただいているんですが、政府がよくなったという最近の部分は、ことしのランキングに入ってくると思っておりますので、私は楽しみにしております。

岡田委員 総理は随分長くお話しになりましたね。人間、やはり苦しいときは雄弁になるんですね。そう思って聞いておりました。この今の表は、安倍幹事長初め、自民党の皆さんがしょっちゅう使っていましたよ。総理は知らない、そんなこと言わせませんよ。自民党としてやってきた話です。そのことだけ申し上げておきます。

 その上で、それじゃ、競争政策、先ほど最初の話にもありましたが、私は非常に大事だと思うんです。

 ちょっと具体的な話を一つだけ聞いておきますが、公正取引委員会が独禁法の改正案を今検討していますね。これは、施政方針演説の中にも出てまいりますし、自民党マニフェストの中にも出てまいります。独禁法の改正というのは、いつもなかなか難航して、政府の中で、あるいは経済界の反対もあったりして、できない、あるいは時間がかかるわけですが、この国会に必ず出してくる、そのことを確約していただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 昨年十月に公正取引委員会がお願いいたしました研究会から報告書をいただいておりまして、これを踏まえてパブリックコメントをお願いしました。一カ月ぐらいでございましたが、百十に及ぶパブリックコメントをいただきまして、それを踏まえて、公正取引委員会として、今度は独禁法の改正のいわば大綱というようなものを発表させていただきました。それに基づいて今、政府部内、与党、経済界等々と同時並行的に鋭意問題点の詰めをさせていただいております。

 公正取引委員会としましては、この通常国会に改正法案が具体的に御提案できるように、それを努力目標にして、これからもやらせていただきたいと思っております。

岡田委員 私は、公正取引委員会の見解を求めたわけじゃありません。しかも、努力目標だと言っています。

 だけれども、自民党ははっきり言っているんですよ。自民党のマニフェストの中に、公正取引委員会の権限強化や課徴金の引き上げなどを行う独禁法改正案を二〇〇四年中に国会に提出すると。まさか、この二〇〇四年中というのはこの通常国会じゃなくて秋の国会だなんて言うんじゃないでしょうね。総理は総裁ですから、マニフェストに書いてあることはきちんと守る、そのことはちゃんとはっきり言ってください。

小泉内閣総理大臣 マニフェストに掲げておりますように、国会に改正案をできるように、今、努力目標として鋭意検討し、各方面の意見を聞いて努力しているところでございます。

岡田委員 今のを聞くと、かなり怪しくなってきますね。しかし、マニフェストというのは、きちんと守る、そういう性格のものですから、ぜひこれはやっていただきたいし、この国会に出てこなければ、あるいは最後の最後になって出てきたらこれは審議できませんから、時間がありませんから。それはやはり次の参議院選挙で、マニフェストというのはいかにいいかげんなものかということになりますよ。ぜひそこはしっかり出していただきたいとお願いしておきたいと思います。

 次に、規制改革について若干具体論でお聞きしたいと思います。昨年の十一月にいずれもお聞きした点なんですが、まず、幼保一元化についてであります。

 総合的な施設をつくるということで、文部科学省と厚生労働省の間で話し合いが実務的に進んでいるというふうに理解をしていますが、私は、お役所同士で幾ら実務的に話しても、結局、新しい第三の、総合施設という規制の塊のような施設ができるだけだと思うんですね。やはり、スタートするに当たって、政治的なリーダーシップというのはどうしても私は必要だと思う。

 それは何かといえば、具体的に申し上げますが、二つあると思うんです。

 一つは、総合規制改革会議が答申しているように、国の規制の基準を、現在の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準にする。幼稚園と保育所の規制の基準の緩い方に合わせるということですね。

 そして、もう一つは補助金。例えば、今、私立保育所に対する補助金二千五百億、幼稚園関係補助金五百億、そういったものを一本化して、そしてこれを一般財源化して、都道府県、市町村に任せる。

 この二つの枠組みをきちんと決めて議論を始めないと、結局、議論はしたけれども現実は変わらないということに私は必ずなると思います。この点について、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 現実に、幼稚園と保育園の問題についても、お子さんを持っている親の立場で利用しやすいように、一体化なり一元化なりという言葉が適当かどうかわかりませんが、弾力的に運用できるようにしていこう、また、教育の費用の問題につきましても、これは地方に裁量権を与えるような形で改革していこうというその方針に沿って、今、鋭意進めております。

岡田委員 方針は結構なんですが、お役所に任せておくと、それはそうなりませんよということ、まず大きな枠組みをきちんと決めて、その中で具体案を詰めさせないといい結果は出ませんよということを申し上げております。

 一年後には結果は出るでしょうけれども、しっかりとした、子供さんたちを持っている若いお父さんやお母さん、あるいは子供自身のためにいい施設をつくってもらいたい、そのことをお願い申し上げておきたいと思います。

 財政の重点化、効率化について少しお話をしたいと思います。

 こういった、これは政府のものですけれども、つくってまいりました。二〇〇三年度「改革と展望」そのものではありませんが、その資料の中に出てくるものであります。

 これは、要するに、いろいろな前提を置いておりますが、これから実質GDP成長率がほぼ二%で二〇一三年までいきます、そしてその間、名目成長率は次第に上がっていきます、そういう前提を置いて、二〇一三年には基礎的財政収支がプラスになります、こういう数字であります。

 私は、これ自身、随分楽観と期待と願望を込めた数字だと思うんですね。ずうっと二%で本当にできるのか。名目成長率がこんなに順調に上がっていくのか。そして、ここには出てきませんが、歳出の削減ができるのか。そういった議論があるわけです。

 しかし、これを一応前提にしたとして考えたいんですが、これは竹中さんにお答えをいただきたいと思いますが、このときの公債発行残高、この二〇一三年あるいは二〇一〇年代前半で、私は一千兆ぐらいいくと思うんですが、いかがですか。

竹中国務大臣 数字は公表しておりませんが、当然のことながら、中ではいろいろな計算をしております。一千兆というお話でございますけれども、我々の試算では九百兆円強というふうに思っております。

岡田委員 そこで、問題は、この名目GDPが四%近くいくというときに、名目金利はどうなっているかですね。これは一定の前提を置かなきゃいけませんが、通常、名目GDP成長率に二ポイントぐらい上の名目金利になるということは、そうおかしな前提ではないと私は思うんです。例えばそうなった場合、あるいは、そこまでいかなくても、例えば四ポイント、名目GDPと同じだけの名目金利になる、そういった場合に、公債費というのは一体どうなるのか。

 例えば四ポイントだとすれば、一千兆近い公債残高があって、そして利子が四%ということになれば、それだけで四十兆円、公債費がふえるということになりますね。つまり、基礎的収支はプラスになっても、その外の、外枠のところでどんどんどんどん公債費が膨張して、これは大変なことになっている、こういうふうに私は思うわけです。

 したがって、この非常に楽観的な前提に立っても、私は、財政の現実というのは物すごく厳しいということをしっかり認識しなきゃいけない、こう思いますが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 財政の現状は非常に厳しいという御指摘は、我々はまさにそのように思っております。であればこそ、どのような形でこれを、この問題を解決していけばよいか。

 名目金利と名目成長率の関係について、名目金利の方が高いというふうにおっしゃいましたが、これはちょっと違うと思います。もしも名目金利の方が高いような状況が出現すれば、恐らくどこの国の経済も財政も破綻的な状況になると思います。

 歴史的に見て、名目成長率と名目金利を比べると、名目金利の方が名目成長率より低い。であるからこそ、基礎的収支を均衡させることによって長期的に財政を安定させることができる。これは、非常に幅広く世界の専門家の間に共有されている考え方であろうかと思います。

 我々は、だからこそ、厳しい状況の中でまず基礎的収支を均衡させたい。その間どうなっていくのか。これは、こういう試算を行うことの意味は、金利そのものを、前提ではなくて、モデルの中での内生の変数として、名目成長率とともにある程度名目金利も上がっていく、そういうことを踏まえた上での試算を行っております。

 財政の状況は厳しいです。しかし、厳しいからこそ基礎的収支を均衡させる。その中で、名目金利の上昇も踏まえながら財政を何とか切り回していって、基礎的収支が均衡すれば財政が破綻することは避けられますので、そのような形でその狭い道をしっかりと運営していきたいというふうに考えているわけでございます。

岡田委員 二〇一三年には小泉さんも総理ではないですし、竹中さんもおられないでしょうから、結局はこのことに対して責任を持つ立場じゃないんですね。私は、そこで、できることからしっかりやっていく、つまり、財政の重点化、効率化、そのことがどれだけ今なされているのかということ、これが大事だと思うんですね。同僚議員がいろいろ、これからその点についても質問をしていくと思います。

 また、一つだけ申し上げたいのは、国家公務員のことなんですね。

 国家公務員について、これは、平成十二年度の閣議決定で、十年間で一〇%削減と決めました。あのとき私は純減かあるいはどうなのかと聞いたら、はっきり答えられませんでしたが、結果的にはこれは純減ではなかったわけですね。しかし、純減ではないにしても、平成十三年度は五千九百六十五人減りました。純減です。平成十四年度は九千二百七十一人減りました。しかし、平成十五年度、つまり小泉さんになった後、二千百三十二人。十六年度予算においてはわずか五百五十三人しか減っていないんですね。

 やはり、人を減らすというのは、これは時間もかかります、国家公務員ですから。制約があります、動かすことに。であれば、やはり新規採用を抑えて、そしてここのところをしっかりやっていかないと、いつまでたっても、人件費の割合というのは非常に大きいですから、財政の問題というのは解決しない。そこの意欲が非常に私は薄いんじゃないかと総理をお見受けして考えるんですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今年度、十六年度予算におきましても、警察官等を増員する中で、全体の公務員は減らしております。また、二〇〇七年には郵政民営化を控えておりますので、こうなりますと、二十八万人の公務員が公務員でなくなる。これはもう実に大きな公務員削減案であります。

 民間にできることは民間に、そういう点を考えて、民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、民間の意欲を引き出す、地方の意欲、やる気を出す、これは極めて大事な構造改革でありますので、今後この推進に向けて全力を傾けていきたいと思っております。

岡田委員 総理、かけ声は結構なんですけれども、先ほど言いましたように、総理になられてから、それまで九千二百人純減で減らしてきたのが、二千百人になりそして五百五十三人になっているということなんですね。郵政の話は、これはもう既に除かれているんです。その上での話をしているんです。

 私は、やはりこれは、今のような積み上げ方式で、それぞれの担当のお役所が定員の増と定員の減でつじつまを合わせているやり方では無理だと思うんです。やっぱり政治がしっかりと、純減、例えば何年間で一〇%、目標数字をつくって、そしてその上で進めていかないと結局何も進まないという、そこにまさしく政治的なリーダーシップが求められているということを申し上げておきたいと思います。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 さて、残された時間を使いまして、改革の問題について申し上げたいと思います。

 これらの問題をこれから同僚議員が深く質問をすることになると思いますが、私のところで、まず入り口のところ、少し議論を整理したいと思います。

 まず、総理、かつてこういうふうに言っておられたのを思い出しませんか。これは道路公団の問題ですね。五十年、六十年かけて公団の借金を償還するようではもう私は死んでいる、少なくとも三十年以内で、かつ税金も投入しないでやるべきだと。これは、二〇〇一年十月にこういう発言を総理みずからされているんですが、御記憶でしょうか。

小泉内閣総理大臣 そのような発言をしたと思いますし、そのような方向に沿って、四十五年でもう債務の確実な返済を目指しております。

 民主党はたしか五十年を目途に債務返済するということを考えているんじゃないでしょうか。三十年から、上限が四十五年だと思いますので、やはり税金を投入しないで、民間にできることは民間にと。民間にどの部分、道路ができるか、有料道路ができるか、民間にできないところはどうやって、国の税金、地方の税金、あるいは国民の負担によって、必要な道路はどうやってつくっていくかということが大事でありまして、私は、道路公団方式ではそういう効率的な運営が無理だろう、また債務の返済もなかなか返済することはできないであろうということから、やはり民営化方式がいいということで、民間の委員の方にも御協力いただいて、その意見を基本的に尊重し、今ようやく法案づくりの段階、抜本的な改革が実現に向かって動き出したわけであります。

 これは極めて大きな大改革でありまして、民主党の言う高速道路無料化論に比べれば、はるかに大胆な、税負担の少ない中で必要な道路をつくる画期的な改革案だと自負しております。

岡田委員 総理はあと四十五年間生きられるおつもりだということはよくわかりました。五十年じゃなくて、四十五年なら御本人もまだ生きられるということなんでしょうか。

 さて、この道路公団の問題で、ちょっとこれを。一月二十六日の予算委員会で我が党の前原議員の質問に対して、何のために民営化するのかということについて総理は幾つか述べられたんですが、順番に行きますと、実は三つ以外にもう少し言われたんですが、むだな高速道路はつくらない、それからコストを削減する、これはつくる道路についてもコストを削減するという意味、それからファミリー企業の見直しを行う、こういうふうに言われましたね。

 それらについてちょっとお聞きしたいんですが、まず、むだな道路をつくらないと言う以上、例えば、今ある整備計画九千三百四十二キロの中で、何キロメートルつくらない道路があるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 具体的な実際の数については国交大臣にお願いしますが、私は、今までの公団方式で予定どおりに今の高速道路はつくることはできないということを申し上げたわけでありますし、むだな道路はつくらないんだ、当然規格の見直しがあるだろう、そういう点を申し上げたわけでありまして、できるだけ多くの道路をつくってくれという要望は各地域において出ているのも承知しております。そういう際には、むだであるか、必要であるか、また、どのような負担だったら必要な道路ができるか。民間道路ができる、民間の会社ができる部分と、民間がつくってくれないんだったら税金投入してもつくりたいという地域が出てくるでしょう。そういう点では、どの程度の費用対効果、採算性、十分考えてやっていただきたい。

 コスト削減も、今まで二十兆円程度でできるというのを、今度は十兆五千億円、半分近くに減らして、いろいろなコスト削減を図らせているわけであります。ファミリー企業の見直しもそうであります。いわば、今までにはできないような画期的な改革案が今できつつある。それを国会審議にお願いして、民主党の無料化案と政府の考える民営化案とどちらがいいか、よく国民に議論していただきたいと思っております。

岡田委員 総理、今の答弁、ちょっとおかしいんですよ。まず、規格の見直しの話を私は聞いたんじゃないんです。規格を簡単にして、そしてつくるということを聞いたのではなくて、つくらない道路はどれだけあるんですかと聞いたんです。それに対して、総理は公団方式とそれから税方式というようなことも言われましたが、公団方式であろうと税方式であろうと、それは高速道路である限りはこの整備計画に入ってくるわけですよ。

 ですから、私が聞いたのは、整備計画の中で高速道路としてつくらない、有料無料問わず、つくらないものは何キロあるんですかと聞いたんです。それに対して明確に答えていただきたい。

石原国務大臣 この御議論は前原委員と私の間でもなされたわけでございますけれども、ただいま総理が御説明になりましたように、この残存二千キロの中の事業評価というものを初めて行いました。これは委員もう既に御承知のことだと思いますけれども、費用対効果、あるいは収支率、あるいは基幹病院までの距離といったような外部効果や、これには原発があるとかいったような外部要因のものも含めております。

 それで評価をした結果、どういうことが起こったかといいますと、残存区間すべてのBバイCを見ると一を上回った。すなわち、公共事業で一を上回ったということは、必要性がある。しかしながら、有料道路でやった場合に管理費も出ない、こういうものが新直轄。必要性がBバイCであることがわかったわけですから、新直轄にすると総理が御答弁いたしました。

 そして、委員の御質問は、では、抜本的に見直す百四十三キロを全部つくるのかつくらないのかという御質問の趣旨だと思います。前回もそういう議論でございました。(岡田委員「そんなこと言っていない」と呼ぶ)ちょっと聞いていただけますか。百四十三キロにつきましては、今の計画のとおりつくりません。一たん中止して、規格すべてを見直しますので、したがって、何が言いたいかと申しますと、何キロつくるかということを議論すること自体、今回は、今の段階では意味がないということを申したいと思います。

岡田委員 まず、この百四十三キロについては、抜本的にコスト削減はする、こう言っていても、つくらないとは言っていませんよ、国土交通省は。しかも、私が言ったのは、これはこの百四十三キロだけの話なんですか。私はつくらない路線というのはもっとあると思っているんですよ。しかし、そのことについて結局は答えはないんですよ。

 だから、総理、最初に、公団を民営化法人にすることの最大の意味は、むだな道路はつくらない。しかし、そこのところは、お役所の方は全部つくるという前提で、それを税金でつくるか、会社がつくるか、そして一部はコスト削減して、しかしこれもつくるんですから、全部つくるんだという前提で考えているんですよ。そこにトリックとごまかしがあるんですよ、総理。

石原国務大臣 これは全部お話しさせていただいていることなんですけれども、BバイCが一を全部上回ったんですね、二千キロの。しかし、有料道路でつくる管理費も出ない道路ができたので、そういうものはさすがに考えて抜本的に見直さなきゃならない。すなわち、工事は一切中断して、抜本的に見直さない限りはつくらないわけです。

 そのほかの、大まかな数字で言いますと千八百五十キロにつきましても、いろいろな計画があるんですね。中には、都市計画でそこに工場団地をつくるとか、そういうものがあるから高速道路を敷こうというようなことになっているものもあります。しかし、そういうものも、外部要因、経済の変化によって、そういう大規模な施設等々ができなかったら外部要因の効果が下がってきますから、そのとき見直さなければなりません。

 この二つをもってしても、一体、では、二千キロのうち何キロつくるのかという議論を今することに意味がないという話をさせていただいているわけでございます。

岡田委員 これは意味がないんじゃないんですよ。今の九千三百四十二キロ、整備計画というのは、高速自動車国道法五条に基づいて計画で書いてあるわけでしょう。やはり、それをそのまま維持していくのか見直すのかということは、それはまず、政府として、総理としてきちんと、そこがまず入り口じゃないですか。だって、そのために民営化法人にしたわけでしょう。だから、全然話が逆転しちゃっているわけです。何のために民営化したのかわからなくなっているんですよ。

 コストの削減もそうですよ。総理は半分になると言いました。違うんですよ。二十兆円あって、税金でやる部分がありますから、正しくは二十兆円が十三・五兆円になる。六・五兆円が縮減される、こういうことですが、しかしその根拠は何も示されていないんですね。六・五兆円、どうやって縮減するのか。民営化したら縮減されるとおっしゃる。しかし、この民営化法人は、高速道路を自分でつくりますね。最終的には、その高速道路と借金は違う機構に移行されるわけですよ。自分のものなら安くつくろうというインセンティブになりますよ。だけれども、どうせ借金と一緒に持っていくんなら、それは安くつくろうというインセンティブにならないじゃないですか。

 何のためにこの民営化法人をつくるんですか。そこの説明が全くないじゃありませんか。いかがですか。

石原国務大臣 先ほどの冒頭の質問の中で、いわゆる厳格な評価基準を設定して、残りの七十路線について評価を行ったという話を冒頭述べさせていただきました。

 それはどういうことかといいますと、どの道路がむだなのか、むだじゃないのか、むだというのはすごく主観的な概念でありますから、これを指標によって明らかにしたわけです。その結果、管理費も出ないようなものが百四十三キロ、もちろん第二名神の部分も入れてですけれども、三路線あった。こういうものは今の現行計画ではつくらないと何度も答弁をさせていただいております。

 ですから、むだな道路は何かというところで、それを評価したことによってこの議論がスタートしているということをぜひ御理解いただきたいですし、先ほど申しましたように、大規模な改良事業というものが近隣にあって、それに変更があった場合は、すなわちこの評価が下がるわけでございます。(岡田委員「そんなこと聞いていない」と呼ぶ)聞いております。一番最初の問題として質問をされているから、お答えしているわけであります。

 ですから、何が必要な道路か、必要じゃないかということをはっきりと御理解いただきたい。では、不必要な道路は何なのかということがあるなら言っていただきたいと思うんです。

 それと、後段の質問にお答えしなくてよろしいでしょうか。説明がないという、六・五兆について説明がないというお話がありましたが、それはこれから説明、二番目の質問として今お答えしようと思っておりますので、御許可をいただければお答えさせていただきたいと思います。

 すなわちどういうことか。これは、何度も実は説明をさせていただいているわけでありますけれども、平成十五年の三月二十五日に決定いたしましたコスト削減計画で四兆円。そして、国と地方の負担により整備を行う、すなわち客観的な事業評価を行った中で、有料道路方式になじまないけれどもつくらなきゃいけないものを三兆円と決めさせていただいた。そして、昨年末の基本的枠組みにおいて、二・五兆円のさらなるコスト削減を行うということでございます。

 委員に御説明しなければならないのは、四兆プラス二・五兆円をどうやって出すのかということだと思います。

 これは、四兆円部分につきましては、インターチェンジのジャンクションのコンパクト化。御存じなことだと思いますけれども、今、大体台形の形をしております、これをトランペットのような形にすることによりまして、構造が大体三分の二の費用でできるようになります。さらにトンネル、第二名神、第二東名等々を見ていただければわかりますように、六車線で計画されております。これを四車線にいたしますと、これは立方体でございますので、コストはかなりの削減になるわけでございます。それと、今申しました六車線の道路を四車線にする、こういうことを行いまして四兆円を捻出いたします。

 さらに、二・五兆円についてのお答えをさせていただきたいと思うんですが、これは、民営化いたしましたときに、サービスエリア、パーキングエリアは分割された公団の民間会社が引き取ることになります。その負担の区分の見直しや、あるいは高速道路等々をつくるときの、これは公共事業全般でも言えることですけれども、契約の見直し等々を行います。さらに、大規模改修事業。今、中央高速の方で、上野原のあたりのところが、下りが四車線、上りは三車線になった、こういう大幅な改良工事を行う計画がございます。これは数千億のオーダーでございます。これはやらない。そういうようなものを積み上げることによりまして二・五兆円。

 詳細につきましては、次回の国幹会議に、具体的に、どこの路線でどういう改修工事をやめる、あるいはサービスエリアをどういうふうにする、インターチェンジをどういうふうにするというような形で六・五兆円、さらに新直轄の三兆円も含めまして、十兆円程度の経費を削減するという案を個別にお示しさせていただきたいと思います。

岡田委員 今の大臣のお話を聞いていまして、結局、役所からいろいろなことでレクをされて、すっかりその気になっちゃうという一つの典型例ですね。石原さんだって、道路公団の民営化について、自分の熱意を持って頑張ってきたわけでしょう。そのあなたは一体どこへ行ったんですか。

 そして、私が聞いたのは、民営化することでコストが削減できると総理はおっしゃるから、では、どこが民営化することによってコスト削減できるんですか。今言ったような、例えばインターチェンジの形を変えるとか、トンネルをどうのこうのとか、それは国がやることであって、民営化の意味がコスト削減にあるというのであれば、民営化が具体的にどういったところでコスト削減につながるのか、そのことを明確に述べろというふうに私は聞いているわけです。

 今の、総理、ずっと目をつぶって聞いておられるんですけれども、そのことが私は典型だと思うんですね。一番根幹のところですよ、根幹のところ。何のために民営化するのか。それは総理のおっしゃるとおりです。むだな道路をつくらないために、そしてつくる道路もコストを削減するために。しかし、そこの説明がないんですよ。そして、総理は、答弁すら石原大臣にゆだねて、みずから語ろうとしないじゃないですか。一番骨格のところですよ。

 結局、かけ声はかけて、民営化にスタートしたけれども、でき上がったものは全く似ても似つかないものができた。だから、総理、答弁できないんでしょう。小泉改革の一つの姿を私は語っていると思いますよ。

 時間も限られていますから、次に年金を少し申し上げたいと思います。(小泉内閣総理大臣「答弁できるよ」と呼ぶ)答弁、どうぞ。

小泉内閣総理大臣 答弁すると、話を説明しているのにわかろうとしない人に、幾ら説明してもわかろうとしない、改革だと言うと改革の名に値しないと言う。私は実におかしいと思いますね。

 私は、民主党の高速道路無料化、これは評価していません。いずれこれ、無料化がいいと言ってくるんでしょうが、私は、民営化議論が出てきて、民営化しようという形になってきたからこそ、むだな道路をつくらないようになってきた、コストも十兆円程度削減することになってきた、ファミリー企業も見直すことになってきた。すべて民営化の議論の中でこの改革が進んできたんです。まさに画期的な改革なんです。

 それは野党の立場だから、政府の言う、私の言う改革は改革の名に値しないと批判するのは結構ですよ。これだけ一生懸命説明しているのに、説明になっていない、説明になっていない。わかろうとしないという人に対して、どこかの本で、話せばわかるなんというのはちょっとおかしいんじゃないかという本もあったけれども、なるほど、これだけ説明しても、これだけ改革が進んでいるにしても、改革の名に値しないと切り捨てれば、いかにも批判して政府は何もやっていないというふうにとられる野党の気持ちはわかりますが、さる国幹審の会議でも民主党の議員が出ていて、政府の方針に賛成しているんですよ、民主党の議員は。野党の議員までも賛成して評価している。これは、民営化の議論が出てきて、野党もその必要性を感じているからだと私は思っております。

岡田委員 総理は説明しているとおっしゃったけれども、この高速道路の問題について、ずっと今石原さんに説明させていたじゃないですか。あなたは目をつぶって、説明していないじゃないですか。そして、わからないと言う人にとか、それからこの前のイラク特措法のときにも、どうせ民主党は反対なんでしょう、こうおっしゃった。私は、とんでもない発言だと思いますよ。

 つまり、例えば私、今質問しています。それは、私に対して総理がお答えになると同時に、私の後ろで、本当にこの道路公団民営化が必要かどうかわからないと思っている国民の声を反映して私は聞いているんですよ。それに対して、あなたのその答弁は一体何なんですか。極めて無礼でしょう。

小泉内閣総理大臣 無礼と言うなら、これほど総理に対して失礼な質問をしているのはないじゃないですか。私は言いませんよ。これだけあることないこと批判されて、私は黙って耐えて、静かに丁寧に答弁していますよ。人を批判する無礼な質問をする、失礼な質問をすることに対しては、私は黙って耐えていますよ。

 私は、質問に誠実に答えているつもりであります。今まで基本方針を述べている。総理は、細かいことまで、詳細なことまで、担当大臣が答えることまで私は答弁する必要はないと思っています。基本方針を述べて、この方針に沿って担当大臣が答える。いかに丁寧に基本方針を説明しているか。私は、十分説明していると思っています。

岡田委員 先ほどの総理の答弁は、民営化の話をする過程でコスト削減の議論が進んだ、そういうふうにおっしゃいましたね。だけれども、民営化することがなぜコスト削減になるのか、あるいは要らない道路をつくらないことになるのか、そこの説明は全く総理はしていないんですよ。だから、それを総理に説明していただきたい。

 もう一度答弁を求めます。

小泉内閣総理大臣 何回も説明していますよ。

 民営化の会社になれば、これは将来、債務の返済ができない、採算性が合わない、会社の利益が上がらないということなら民営化の会社はつくりません。これは、民営化になったらどういう形態の経営方式を導入しなければならないかということで議論が出てきているから、コストの削減も出てきたわけでしょう。民営化の議論がなかったら、こんなコスト削減できませんよ。

 そして、民営化できた際には、将来上場を目指すというんですから、利益を上げなきゃならない。利益を上げるためには、むだな道路、採算性を無視した道路なんかできるわけない。しかし、住民がどうしても必要だ、民間の会社がこの高速道路はできないといった場合に、住民の要望にこたえて、地域の住民あるいは地方公共団体、国が、この道路はどうしても必要だというんだったらば、どの程度の税金負担だったらできるかということを考えるでしょう。そうした場合には、民営化の会社は、できない部分については、お互い地域の住民がどのような負担でどのようないい道路が、必要な道路ができるかということを考えればいい。

 私は何回も説明している。これを説明していないなんというのは、理解に苦しみますね。

岡田委員 総理、もう一回聞きますよ。総理は、僕は、基本的なことを踏まえて言っておられるのかどうかちょっとわからなくなりましたよ、今の御答弁の中で。

 例えば、利益を上げる。利益を上げるのは、これは、民営化法人は将来上場を目指している。そうです。サービスエリア、そこで利益を上げる。いわば不動産業ですよ、サービス業。そこで利益を上げるんであって、道路そのものから利益を上げるんじゃないんですね。道路そのものは、四十五年後にそれは戻して、そして無料になるんですから。だから、道路で利益を上げるんじゃないんですよ。むしろ、道路はどんなに高くつくっても、その道路の資産とそして負債は機構に持っていかれるんですから、だからインセンティブがないんですよ、つくる。

 そのことについて、総理にお答えいただきたいと思います。

石原国務大臣 岡田委員の御質問の中で若干事実と違う点があるので、そこをちょっとお話しさせていただきたいのは、民間会社は、総理がお話をしておりますように、新しく道路をつくるときには、その道路から、料金収入から上がるであろう、すなわちキャッシュフローをもとに市場からお金を借りるわけですね。ですから、管理費を除いた部分は全部リース料として四十五兆円の債務の返済に当たるわけでございます。そうしますと、むだな借金をして、料金収入を上回る、管理費を除いて上回るようなものを民間企業が借りるわけないと私は思うんですね。

 それで、岡田委員の御懸念は、これまでのプール制の問題をきっと御指摘されていると思うんです。すなわち、東名高速の上がりで北海道とか、ちょっと問題があるかもしれませんけれども、採算の非常に合わない道路をつくるということがけしからぬ、そういうことはないようにするんだろうなという御質問であるとするならば、九州、北海道、九州と北海道は別の会社に間違いなくなりますから、九州、北海道の道路を所管する会社が責任持ってつくるし、それは仕掛かり品二千キロでございまして、その外でも必要な道路があるという話は何度もさせていただきました。それは、申請して自分たちがつくりたいと言わない限りは、押しつけてつくらすことはいたしませんから、今言ったような御懸念は当たらないのではないかと思います。

岡田委員 詳細はこれから議論していけばいいと思いますが、市場から借りるとおっしゃいました。確かにそうです。しかし、最終的には政府は担保するんでしょう。しないんですか、借金。

石原国務大臣 これは今、法律で検討させておりますけれども、四十五年後に必ず債務を返済すると法律に法定化しようと思っています。そのことによって必ず債務を返済するということを政府としてギャランティーさせていただきたいと思っております。

岡田委員 JRのときも、最後は国がその借金の穴埋めをしたわけですよ。だから、法律で書いたからできるなんというものじゃないんですよ。絵そらごとなんですよ、それは。だから、もともと何のために民営化したのか、そこのところのスタートが全くおかしくなっているんだ。いろんな妥協の中で、結局形だけだ。これは、この改革をやってきた田中さんが言っておられるじゃないですか、結局公団方式の焼き直しにすぎないんだと。それが結論ですよ。

 なお詳細はまた議論していきたいと思います。玄葉議員とかわります。

笹川委員長 この際、玄葉光一郎君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。

 先ほど来から総理が何度もおっしゃっている、国から地方へ、あるいは官から民へ、こういったいわば改革スローガンといいますか、小泉政権のスローガンに直結をするテーマを議論させていただきたいというふうに思っております。

 特に三位一体改革は、結果として財務省のためだけの分権になってしまっているのではないか、あるいは単に地方切り捨てに終わってしまっているのではないか。我々は地方発展のための分権改革というものを考えているということを含めて、議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 ちなみに、知事会の知事会長さんは、今回の三位一体改革の姿を見て、三位ばらばらの改悪だ、こういうことをおっしゃっているわけでございます。それも含めて後ほど議論をさせていただきたいと思いますけれども、まず、地域経済を見てみたいというふうに思うんです。

 景気全体を見ると、私はまゆつばものだと思っておりますけれども、緩やかな回復過程だということを政府は言っているわけであります。まゆつばだというのは、先ほど午前中にも議論がありましたけれども、どうも輸出に頼っている、しかも中国に頼っている経済になっていますね、こういうこともございます。

 同時に、我々、特に注目をしなきゃいけないのは地域経済ではないかというふうに思っています。地域の現場を歩くと、冷え切っています。国会のために東京に参りますと、ビルが林立をして、もしかしたら景気がいいんじゃないか、こういう錯覚を覚えるときもあるんですけれども、どうも、それぞれの、全国各地の現場はそうではない。

 まず、この地域の経済の実態をどういうふうにとらえておられるか、総理大臣にお伺いいたします。

小泉内閣総理大臣 大企業におきましては収支の改善、業績向上が随所に出てまいりましたけれども、まだ地域まで及んでいないということは事実だと思います。この業績なり収支の改善が中小企業に及び、ひいては地域が活性化していくことにつなげていきたい。

 そういう点において、地域の再生、都市再生、あるいは特区構想、あるいは一地域一観光等総合的に支援していく体制を整えて、地方にできることは地方にという、意欲が出るような改革を実現していきたいと思っております。

玄葉委員 地域に景気がよくなっているという、そういうマクロ経済全体の状況は及んでいない、こういう認識だということでありますね。地域はどうもよくない、まずこの現状認識を持っていただきたいというふうに思っています。

 もう一つは、どうも、先ほど申し上げたこととも絡みますけれども、東京もしくは首都圏とその他の地方で格差が広がってきているのではないか、こういう認識を私は持っているわけでありますけれども、その点はいかがですか。

小泉内閣総理大臣 東京とやはり地方とは違っていると思います。東京におきましてはかなり活性化の兆候が見えておりますが、これがまだ地方に及んでいないという点は、私は大方の見方ではないかなと思っております。

玄葉委員 つくづく最近感じるのは、先ほども議論がありましたけれども、結局、今までは、東京がよくなると半年後ぐらいに地方がよくなる、こういういわば経済波及経路があったと思うんですけれども、御案内のとおり、今、大手の製造業がよくなっても、それらの工場は海外にある、パーツはまた海外でつくる、公共事業もよくないということで、今までの波及経路がいわば寸断されている、こういう状況じゃないかと思います。

 これを見ていただきたいんですけれども、一目瞭然なんですね。過去五年間の就業者数の変化率を見てみると、首都圏はほとんど就業者数が減っていない。だけれども、その他の地方はみんな減っている。群馬県は五年間で八%も減っている、就業者数が。和歌山県に至っては一一%も減っている。一目瞭然で、首都圏あるいは東京圏とその他の地方、こういう構図ができているんですね。まず、このことの現状を踏まえていただきたいんです。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 地域において、まだ雇用情勢におきましても、経済情勢においても厳しいものがあるということは、そのとおりだと思っております。

玄葉委員 私は、先ほど岡田幹事長から、日本の競争力の一定の回復というのは小泉政権の成果ではない、こういう議論がありましたけれども、大事なことは、競争力の再生強化と地域における仕事づくり、地場での仕事をつくる、あるいは持続可能な生活圏をそれぞれの地域でつくる、この両立ができるかできないかだと思うんですね。今できていないことが、小泉政権のあるいは小泉構造改革の最大の問題の一つじゃないかというふうに思っています。

 今、総理が御自身でおっしゃったように、地方は悪い、どうも東京圏とその他の地方で格差も広がっている、そういう認識を踏まえて、では、政府としてはどうするんですかということをお伺いしたい。

中川国務大臣 今、総理からも、それから玄葉委員からも御指摘ありましたように、業種それから中小企業、地域によって、依然として厳しい状況のところがあることは私は事実だと思っております。

 したがいまして、特に、中小企業に対しては、この場でも何回もお話ししておりますけれども、厳しい現状のところに対して、資金面、技術面、人的面、ネットワーク面でのいろいろなスピード感のある柔軟な対策をとっていきたいというふうに思っておりますし、また、地域としても、例えば政府系金融機関とか民間金融機関とか、あるいはまた自治体とか、そういうものがばらばらにするのではなくて、地域の知恵とかパワーを結集した形で、いろいろな相談窓口をとって、総力で、その地域活性化のために頑張っていきたいということで、今御指摘のような地方、あるいはまた一番ダメージを受けている、その地方を特に支えている中小企業に対して、いろいろな対策を現在とっているところでございます。

金子国務大臣 地域再生の担当で、各地域からいろいろなアイデアを募集しておるのでありますけれども、このわずか一カ月間の間で全国から七百カ所案件が出てまいりました。先生のお地元の福島県、知事がいいんですかね、物すごい案件が、県から市から町まで出てまいりまして、今それを、私たちはどうやったら実現できるかという前提で進めておるんです。

 ただ、幾つか、一つ二つだけ例を申し上げたいのは、四日市なんですけれども、先ほど来、民間の自助努力だけでできたというお話もちょっとあったんですけれども、四日市のコンビナートというのは、高度成長を、少品種大量生産のコンビナートとして我が国を支えてきました。規制があって、災害防止法というのががんじがらめにあったものですから、建て直したくても建てられない。今の時代は多品種少量のコンビナートを要求された。工夫しました。規制を改革いたしまして、新しい安全策を導入してもらいまして、そういう工場が今度できるようになりました。現実に、この規制緩和だけで七百億円の設備投資がもう既にことしから起こってまいります。

 九州の響灘というところは、あそこは二十四時間、三百六十四日、通関を可能にしたんです。正月一日だけ休み。そうしましたら、水深が十五メーターあるものですから、今まで北米の大型コンテナ船が全部韓国に行っていたんです。今度は九州に入ってきます。津軽海峡を越えて、そして日本海を渡って帰ってきまして、そして九州、下関に入ってから、ここをハブとして、今度は中国、韓国にディストリビュートを行うという、いわばこういうハブ空港ができる可能性が出てきました。それによって、この地域でいわばロジスティック業務という運送業務が今出始めていまして、少し時間はかかります、七年間かかりますけれども、雇用が五千人ふえるという事業計画が今広まっております。

 そういうたぐいの話というのがあちらこちらに、まだ鹿島にもほかにもある、福島にも多分そういうものが出てきているんだろうと期待をしております。

玄葉委員 再生プログラムというのは金のない取り組みですよね、一言で言って。よくわからないのは、四日市コンビナートでもそうなんですけれども、それは、たまたまそこはある意味じゃ特区的に、集中的にやろうということで取り組みをした、それでうまくいきました、こういう話なんですけれども、もともと、これから議論しようとしている三位一体改革との関係というのは一体どういうことなんだろうか。

 つまり、四日市コンビナートでも何でもそうなんですけれども、もともとそういう権限とか規制とかというものを地方に与えていたらば、四日市コンビナートだけではなくて、それぞれの地域にそういうものが既に生まれていたかもしれない。どういうふうに考えたらいいんですか、三位一体改革との関係は。

金子国務大臣 地域再生の場合には、私たち考えておりますのは、できるだけ従来の予算措置というのを講じずに、一般的に、今の地域限定である特区ではなくて全国版として、そういう規制あるいはアウトソーシングというものを、具体的な地方から提案があった、しかも地方再生にふさわしいというものについては、それを全国版で対応していきたいと思っているんです。

 それから、あえて申し上げますけれども、当然でありますけれども、金目ということについて言えば、これは、これから市町村合併が始まる。そうしますと、学校が統合する、廃校になる、何か活用の方法はないか。従来ですと、そういうものをほかの用途に使おうとしますと、目的外使用ということで、出した予算を返還しろというようなのも出てきましたけれども、それは、そうじゃないだろう、それぞれの地域で使ってもらおう。かつ、自治省にも協力いただきまして、それを他用途に使う場合には、もう一遍リニューアル債というのも考えてもらおう。それから、それを中小企業が使うような場合には、今度は産業省にも考えてもらって、「がんばれ!中小企業」ファンドという、まあこれはちょっとまだ名前を考えていただいていますけれども、そういうような金融措置というのもあわせてこういう地域再生というのでは考えていこうというのが基本的な考え方であります。

玄葉委員 ですから、三位一体改革との関連はどうなるのかということを聞いているわけであります。

 つまり、ある意味ではお上の取り組みなんですよね、一言で言いますと。申請があれば出せ、希望があれば出せと。最初からそれぞれの地域を信じて任せてあげればいいわけですよ。三位一体改革が仮に進んでしまえば、今の再生事業というのは何だと。私、別に反対はしません、はっきり申し上げて。ただ、一体何なんだと、この位置づけは。一方で三位一体改革が進んで、一方でこの再生事業が特区的に進んで、一体どういうことなのかなと。どうですか。

麻生国務大臣 基本的には、今の時代というのは、明治この方、多分廃藩置県までさかのぼるんだと思いますが、明治四年の廃藩置県この方、中央集権でやってきた日本という国において、多分、地域主権というものに大きく流れが変わりつつある、地方分権というより地域主権というようなものに変わりつつあるんだというのが今の流れ、これがはっきりしてきたのがこの数年なんだと私自身はそう思っております。

 したがいまして、今までの三千二百あります、正確に言えば三千百七十市町村ありますが、この三千百七十市町村の中でも、この今の時代にあって、おじいさんが町長をしておられたので御記憶かと思いますが、町を経営するわけですよね。これから多分そうなるんですよ。自治体を経営するという感覚が多分要るんです。その時代に合わせたようなルールづくりになりますと権限は移譲される、その方が、今言われるように自分でやれるからハッピーになるはずだ。そのためには自由でなきゃいかぬ、自由にやるためにはある程度銭も要る、そのためには税源は移譲だ、それも、いいかげんな話じゃなくて基幹税で渡せと。大体、基本的にそういうことになっているという流れは間違いなくあります。

 傍ら、こちら側に今までどおりやってきたところがありますので、これは、大いにやれやれと言う人が大体二割ぐらいかしらある、ちょっと待ってくれ、何もしてくれるな、今までのままがええぞと言う人もやはり二割ぐらいこっちにいらっしゃいまして、真ん中の六割ぐらいの首長さんがちょっと待てと言って、今かなり頭の中が、ここはいいけれどもこっちは悪いとか、実にいろいろ。これは経営者と同じで、これは自分でやるんですよ、そうしなきゃできないんだからと言うと、そんなこと言われたって、わしはそんなことをやるつもりで町長なんかになった覚えはないとえらくはっきり言われる町長さんも私のところには何人かお見えになりましたから、それはだめです、これからは違うんですよと。

 だから、首長さんをやられた方は、皆、能力のある方は、これはもっとやってくれ、ああ言ってくれと、これは実にいろいろ。本当にいろいろ、同じ県内でも、同じ郡内でも、全然ばらばらなことを言ってこられる方がいらっしゃいますので、今御疑問の点はよくわかるところでありますので、私どもとしては、その点に関しては、これは個別に対応する以外に手がないのです。こっちがやっても、要らない、それは要らないからこっちくれと言われるような方というのは、実は、実にいろいろいらっしゃいますので、この数カ月間、その対応、まことに同じ県内、郡内でもこれだけ違うものかというのが正直なところですので、細かく対応していきたいと思っております。

玄葉委員 わかりました。結局、再生プログラムというのは……(発言する者あり)いや、わかりましたというのは、分権改革の一部にすぎないということですよね、はっきり言いまして。つまり、我々のもともとの分権改革が実現しちゃえばそういう事業は全部包含しちゃう、包み込んじゃう、こういう話だということがよくわかりました。

 我々は、競争力の再生強化と同時に持続可能な生活圏を両立させる、そのために例えば住宅というものにも注目をしています。私は今回の予算を見て、やっと住宅ローン減税を継続する、やっとですね、私はその感覚が正直わからない。私だったら住宅は最優先ですね。衣食住あって、特に住宅ほど日本がまさに不足している、質の高い住宅が不足している、半数の人たちが不満を持っている、仕事を一番つくるのも住宅ですよ。私は、民主党としては住宅ローンの利子を控除する制度をつくろうと言っていますが、思い切って住宅にかかる消費税を非課税にするぐらいの措置をとった方がいいとすら思っているぐらいです。

 さらに言えば、国産材を使う、そういう住宅について優遇をしていく。そうすれば、緑の雇用というのが本格的に回っていく。我々は、政府も緊急雇用対策でやっていますけれども、根本的に緑の雇用、緑のダムというものをやろうとしています。ですから、民主党の予算案というのをつくりましたけれども、二千五百億円、年間で予算をとろうではないか、さらに地産地消だって数値目標をつけた取り組みをしようと。

 恐らくこれから同僚の議員が十二日にたくさん質問されると思いますけれども、年金も、実はこれは持続可能な生活圏をつくる上では極めて重要ですね。つまり、地域に行けば行くほど少子高齢化が進みます。ということは、地域に入る所得の中での年金収入の割合が非常に高くなります。しかも、今は厚生年金だけが議論されていますけれども、四割保険料未納の国民年金も含めて、抜本的に対策を練る、安定策をとるということで、かなり地域の資金が回りやすくなる、そういうことがあるだろうというふうに思います。

 ちなみに、我々は、国民年金も含めて、共済、厚生年金、一本化をして所得比例年金にしようと。一階建ては無料です、二階建ての部分は有料です。所得に応じて、保険料に応じて給付を受けられるようにします。もしそういう制度ができたら、消費税にも我々は言及していますけれども、それでも地域内の資金循環というのはしていきますよ。ですから、持続可能な生活圏をつくるということも含めて我々は考えている。

 これから議論しますけれども、制度設計も、国と地方、がらりと変えますから。アメリカの一つの強さは、やはりそれぞれ州ごとに産業政策を競っていることだと思いますよ。日本は、残念ながらそうはなっていません。

 あるいは、地域金融アセスメント法というのを我々提案していますけれども、債務者区分を上げた金融機関、これを公開しよう、あるいは個人保証を撤廃しよう、そういうことの総合戦略で我々は持続可能な生活圏をつくっていく、こういうことを、これは質問じゃありません、申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、三位一体改革に入りたいと思いますけれども、まず、総理は、以前にも聞きましたけれども、どのような基本的な考え方で、国から地方、国から地方ということを叫んでいるのか、もう一度聞かせていただきたい。何が一番大事だと思っているのか。

小泉内閣総理大臣 この三位一体という言葉は別に地方に対する言葉ではないんですが、たまたま三点の改革が重要だということで三位一体という言葉を使っているわけであります。

 というのは、まず補助金の問題、地方交付税交付金の問題、そして税財源の問題。これ、一つ一つやっていくとなかなか難しいということで、なかなか進まない。難しい、全部難しい問題です、補助金の問題も、交付税の問題も、税源の問題も。難しいんだから、それでは一緒にやろうということが、いわゆる、三者一体でもいいんですけれども、三位一体という言葉の方がより人口に膾炙されているから三位一体という言葉を使っているわけであります。

 そういう中で、明治以来、先ほど麻生大臣がお話しされましたけれども、中央集権的な考え方があった、これからは地域の自主性、裁量権を拡大していこうという中で、一つの補助金をとってみても、中央省庁が、こういう事業をやると補助金を出しますということよりも、ある程度地方に裁量権を与えて、一々中央官庁がこの事業に補助金をつけるかどうかというよりも、一つの補助金を地方が使えるんだったらば、どのような事業をするかというのは地方の裁量権に任せた方がいいんじゃないか、その部分をふやしていこう、これが補助金の問題。

 それから、交付税交付金の問題につきましては、今、三千二百から若干減ってまいりましたけれども、市町村合併等によりまして。交付金をもらっていない団体というのは極めて少数。

 財政調整という機能が交付税にある。となると、財政の豊かな地域とそうでない地域、これはやはり調整しないと、必要な施策も財政が乏しいところはできない。例えば、東京と北海道、あるいは東京と各地方。東京は、財政的にも地方に比べれば豊かだということで、これは財源、税源にもかかわってきますが、企業の法人事業税をかけるに際しても、東京には企業が集中している、地方においては、税源、財源、税を実質ゆだねられても税源がないんだ、だから税のかけようがない、東京とは全く違うという意見、当然であります。

 そういうことから、むしろ、地方の中には、現状がいいという考えの地方もたくさんあります。おれたちは税源もない、財源もないんだから、今までのとおり必要な財源はよこしてくれという地域もあるんです。だから、そういう税財源と交付税と補助金というのは全部絡んできます。

 そういうことから、これは、一つ一つ難しい問題だったんだから一緒に考えよう、三者一体ということから三位一体の改革が出てきたわけでありまして、今の金子大臣の地域再生特区の問題も、中央が押しつけちゃいかぬ、地方のまず申請を待ちなさい、地方が意欲を出したところ、そういうことなんです。中央があれこれやるよりいいでしょう。まず地方が手を挙げてくれ、そういう中で考えていくというのがその趣旨でございます。

玄葉委員 平成十六年度予算における三位一体の姿がこのパネルでございます。

 今、総理がおっしゃった補助金、これが約一兆円、国から地方に対して補助金を削減しますと。そして、今おっしゃった税源の移譲、これは、平成十六年度予算では四千五百億円。そして、地方交付税、実質というのは赤字地方債分も入れているのでこういうことになりますけれども、約二・八兆円。

 私は、この地域デフレといいますか、先ほどおっしゃった、悪くなっている地域経済をますます悪くしてしまっている予算になっているというふうに思っていますが、ちなみに、この平成十六年度予算をつくるに当たって、総理は、三位一体、予算に反映させなさい、どういうふうに指示をされたんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、基本方針を示すのが趣旨ですから、個別は担当大臣に任せる。まず一兆円、補助金削減目指しなさい、税源移譲もしなさい、交付税の改革もしなさい、具体的な問題はよく各担当省庁、地方、よく聞いてしなさい、この方針にのっとってしなさい、これが総理としての方針であります。

麻生国務大臣 今の示されました資料の前年度分がもう一枚欠けているところだと思いますね。そこのところを知っておられる上で聞いておられるんだと思いますんで、さすが町長経験者の息子さんは違うな、いいな。話が早くて大変助かりますんで、ちょっとその図を示されていた方がよろしいんで、人様の党を使ってまことに恐縮ですけれども。

 一兆円のうち、実にこの税源移譲という形で、今言われましたように、正確には二千百九十八億円というものと、そして税源のいわゆる移譲予定の分が二千三百九億円という形をそうやって渡した。だから、簡単に言えば、あと五千五百億足らぬじゃないか、基本的にはそういうことなんだと思うんです。

 私どもは、全くおっしゃるとおり、そのとおりになっておるんですが、その分は、基本的には、私どもから言わせていただければ、今までやりますそこの公共事業とか、それからいわゆる奨励的補助金というものは切らせていただきますと。そういったものは、基本的には、どうしても絶対必要な、例えば義務教育とか保育園とかそういったような、保育所とかいうものはきっちりやらせていただきますと。ただし、その他の部分につきましては、その各自治体においていろいろ努力をしていただきたいと。

 そういった意味で、その努力をしてもなおかつどうしてもできないという分につきましては、いろいろな形で私どもとしてはお話し合いに応じさせていただかないとこれはできないところがありますんで、そういった意味では、地域再生事業債の活用とか、その他これまで預貯金、蓄えられたお金を使うとか、財政健全化の弾力化等々でさせていただいて、いろいろ対応をさせていただきますということを申し上げておるということだと思っております。

玄葉委員 今の税源移譲は、確かに我々だったら、我々はこんな一兆円という少ない額じゃありませんけれども、補助金を削減する、それに大体相当する分を税源移譲するということで、我々ありますけれども、それはおいておいて、まず税源移譲のところを聞きたいんですけれども、例えば公立保育所の運営費というものを税源移譲した。先ほど総理大臣は、地方の自主性を高める、裁量を高めるんだ、それが国から地方と言っているわけだ、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、この税源移譲で、例えば公立保育所の運営費を税源移譲したことで、地方の裁量は高まったんですか。

麻生国務大臣 高まっております。基本的には公設、民営、自由にできます。高まっております。

玄葉委員 今、公立保育所には、例えば施設の設置基準だとかあるいは職員の配置基準だとか、そういうものがいろいろと定められているんですね。例えば、匍匐室の面積だとか乳児室の面積だとか、あるいは保育士の数だとか、税源移譲してもこれは変わっていないんですよ。変わったんですか、何か。

坂口国務大臣 最低基準を決めておりますが、その最低基準は変えておりません。しかし、知事会も市長会も、ともに厚生労働省の関係の予算の中で税源移譲してもらってもいいと言われるところは少ないんですけれども、ここの部分だけは、比較的皆さん方が、ここはしてもらってもいい、こういうふうに言われたわけでありますので、皆さんもやはりこの部分については何らかのそれぞれのお考えがあるんだろうというふうに思っております。基準は、最低基準を示したそのままでございます。

玄葉委員 結局、権限は手放していないんですよ。

 じゃ、総理。これから例えば三年間で四兆円おやりになる、我々はもう十九兆円やっちゃうという話なんですけれども、ただ、そのときに一番大事なことは、国の関与あるいは法令による義務づけというのは必ずあるんです。それをセットでやらないと、ほとんど意味がなくなりますからね。総理、わかりますね。

小泉内閣総理大臣 わかっているから三位一体改革をやっているんであって、地方において、逆に地方の人から陳情を受けて規制を強める動きもなきにしもあらずなんです。これはよく気をつけないといけませんよ。最低基準を緩和すると、やはり地方にも地方の規制を設けたいという組織があります。市会議員なり市長さんなり、陳情してきます。そうすると、やはりこの規制は大事かなといって、せっかく規制緩和の条件が整っているにもかかわらず、規制を緩和しないで、現状がいいという動きになってこないように、地方においてもやはりこの規制改革の意義、地方に権限移譲した意義というものを十分考えてもらいたい。この点はやはりお互い、与野党を通じて、地方にもっと自主性を出していくような努力が必要だと思っております。

玄葉委員 権限をなかなか手放せないから、例えば補助金の問題だって、総理は三年で四兆円というぐらいの数字にしたんだと思うんですよね。これは、今もう一回見ていただきたいんですけれども、率直に申し上げて、補助金で一番痛むのは中央省庁ですね。一つの権限がなくなる。あるいはそれに絡んでいる国会議員でしょう。一兆円だけ。税源移譲、一番困るのは財務省でしょう。税源移譲は一兆円にも相当しない四千五百億円だ。一方、地方交付税、これは実質でいくと二・八兆円だ。

 今、各自治体はなかなか予算編成ができない、こういう声をそれぞれの市町村、特に市町村とかで出しています。はっきり申し上げて、地方だけが泣いている。これが今の実態じゃないですか。

谷垣国務大臣 今、玄葉委員のお話、先ほどから財務省のための改革だとおっしゃるから、どこかで言わせていただかなきゃいけないと思っていたんですが、なかなか番が回ってまいりませんで。

 しかし、委員のお話を伺っておりますと、三位一体をやってまいりますときに、そこに、スリム化をしなければこの改革はできないという視点が私は脱落しているんじゃないかと思うんですよ。

 それで、例えば、そこに公共事業がございますね。公共事業の場合は、要するに、それは財源廃止しても建設国債でやっているわけですから、なかなか地方にお譲りする、建設国債廃止して、では、どう財源をするかといって、出てこないわけです。どうしてもスリム化の視点というものが必要でございます。

 ですから、補助金改革でも、では補助金をそのままなくして全部地方に譲れば済むというわけじゃありません。補助金が廃止されて、必要なものだけやはり地方にやっていただく。だから、それは税源移譲の検討対象になるわけですけれども、もともと必要でないもの、あるいは廃止すべきもの、これは地方に税源をお譲りする必要もない。そういうことでやらせていただいたのがあの結果でございます。

玄葉委員 二つ申し上げたいんですけれども、一つは、こうして交付税を今削っていく、確かに、三位一体の中の地方交付税、いずれ交付税に対する依存比率を低くしていこう、これは当然だと思います。だけれども、その前に一つ申し上げなきゃいけないのは、どうしてこれだけ地方交付税の借金が生まれてきたかということを皆さんはよく認識をしなきゃいけないというふうに私は思うんですね。それぞれ補正予算等々で財政支出をして、率直に言って、使わなきゃ自治体はしかられる、このぐらいのところまであったといろいろな自治体の関係者から聞きますよね。まず、このことの反省をしていただきたい、それが一つ。

 もう一つは、スリム化、確かにそうでしょう。だけれども、問題は、補助金と税源移譲と地方交付税とそれぞれ改革をしていかなきゃいけないんですけれども、まさに、その改革にはプロセスとか優先順位とか方法とかがあって、それが一番大事なんだと思いますよ。このまま進めていくと、恐らく結果として三位一体改革はとんざをするだろうと私は思っています。

 今の平成十六年度予算で見る限り、一言で言えば、地方交付税交付金の改革だけと言ってもいいかもしれませんし、少なくとも先行型なんですね。先行型ですよ。私は全く逆です。あるいは民主党は全く逆です。

 いずれ交付税の依存比率を下げるためにも、若干交付税はバッファーにしていい。そのかわり、補助金、中央省庁が持っている権限、これを一気になくしていこう。もちろん、一つ一つ見ますよ。一つ一つ見ますけれども、一気になくしていこう。税源移譲も五・五兆円まずやろう。そして、十九兆円の補助金のうち五・五兆、もし税源移譲するとしたら、その残りは一括交付金という形でそれぞれの自治体に使い道自由なお金にして差し上げよう。これは革命的なことだと思いますけれども、やってやれないことはない。全然、プロセス、方法、優先順位が違うということです。わかりますか。

麻生国務大臣 総額約二十兆というのが補助金、総額だと思うんですが、その総額のうち、約半分が福祉、それを切っちゃうというわけですよね。(玄葉委員「切っちゃうわけじゃない」と呼ぶ)いや、それは税源で渡すわけだから、切っちゃうというわけだ。そういったような話が今いきなりできるかと言われると、一挙に全部やっちゃうというのはちょっと無理があるんじゃないか、むちゃなんじゃないかなというのが率直な実感なんです。

 それで、私どもは、その四兆というのを出したおかげで、一斉に、十兆だ、八兆だ、十一兆だ、いろいろな説が、知事会だ、市長会だ、いろいろ出てきた、結構なことだと思うんです。民主党も、その案を出されたんで、そういった案が出てくるようになった。これは民営化を言ったからいろいろ出てくるようになった。先ほどの総理の答弁と似たような話で恐縮ですが、基本的には四兆というものの額を示したことによっていろいろな案が出ることになったということだと思っております。

 それから、財務大臣の答えられたスリム化の点も、これはぜひ、いろいろ、この案でやれると言われる市町村も実はいらっしゃるので、そういった意味では、まず最初にきちんとした対応でやっていかないかぬところですが、先ほどの答弁にもありましたように、よく御存じのように、もう税源を移譲されたって、税源をかける法人もなきゃ住民もおらぬというところに徴税権を与えられても全然話になりませんので、そういったところには当然のこととして交付税という調整する能力、バッファーという言葉を使われましたが、そういったものが必要というのははっきりしておると思いますので、今後とも、全部日本じゅうが均一化されるはずもありませんし、その地域地域の特徴が出てきて当然。特色ある地域が出てくるわけですから、その意味におきましては、地域において、人は少ないけれども、そこは水を出し、そこは空気をつくっているというところも必要でしょう。その意味では、その他の調整という意味では、交付金の機能というのは今後とも維持されるべきものだと思っております。

玄葉委員 一つは、社会保障を、我々、税源移譲したり一括交付金にしたときに切ってしまうということでは決してございません。それは地方に任せようというのが我々の考え方だということと、もう一つは、今麻生大臣の答弁で違うのは、政府が四兆円というものを出したから知事会も出したし民主党も出しただろう、こう言うんですが、民主党は政府が四兆円と出す前からその額を、十九兆円ということも含めて言っている、主張しているということをまず知っていただきたいというふうに思います。

 まず大事なことは、国の権限と税財源を思い切って手放せるかということだと思います。だけれども、それは一兆円からいくんだというのが総理の方針だ。しかし、よくわからないのは、総理は、午前中にも議論に出ていましたけれども、一方で道州制ということを言っているわけですね。そんなにすぐ一気に地方に渡せないじゃないですかと言いながら、一方で道州制の検討をする。どういう道州制を検討しているんですか。

小泉内閣総理大臣 私が申し上げた点を素直に受け取っていただければいいんですが、改革と言うと、改革の名に値しないということではなくて、今の道州制も、よく申し上げているんですが、今、私は道州制を実現するということは難しいと言っているんです。

 だから、将来たとえ道州制が実現された暁においても、北海道はそのままであろうと。北海道という地域を考えれば、北海道の地域によその県からその権限を北海道と一緒にやろうということの議論は起きてこないだろう。逆に、北海道の一部を削減してよその地方につけて、その地方の自主性なり権限なりを移管しようという動きは出ないだろう。今、道州制が実現できなくても、北海道は道州制特区みたいな考え方で北海道の自主性を尊重できる対応があるのではないかということを言っているんですよ。

 だから、全国の道州制の議論とは全く別です。北海道が独自に、今でも北海道の中に県はないんだから。四国よりも広いんです、市町村。だから、道州制の議論というのは各地域、東北ブロックを全部州にしようとか、九州を全部、県じゃなくて州にしようとか、そういう議論が出ておりますので、北海道というのは、たとえ道州制が議論できても知事を全部一緒にする必要もない、今、知事一人だから。

 市町村合併なりあるいは中央の出先の機関を整理統合するようなことによって、北海道は将来道州制ができたとしても、独自の地域主権を生かしたような、あるいは裁量権を生かしたような対応ができるのではないかということで、今の地方分権、三位一体の改革と、道州制特区のモデルとして北海道が自主的な提案をしてくれということと全く矛盾しておりません。

玄葉委員 正直、全く中身がないなというふうに思いますね。(小泉内閣総理大臣「何で中身が」と呼ぶ)いや、全く中身がないなというふうに思いますね。だから、どういう発想で道州制というのを考えているのか、その発想と中身を聞いている。

小泉内閣総理大臣 私は、道州制の中身は、具体的には議論する段階で私がとやかく言うべき問題じゃない、よく議論してください、将来の問題だと。しかし、北海道は、道州制が実現した暁にも北海道の地域は地域としての主権を確保するだろうということを言っているんです。だから、道州制の中身、どの地域を州にするかというのは、私は、今、中身を言えと言っても、言う立場にはありません。また、その中身まで具体的に検討している段階でもありません。

 私の中身というのは、今、地域、三位一体改革であります。それと道州制の特区モデル、北海道独自の自主性を発揮してくれというのと全く矛盾しません。中身がないどころか、これほど中身が濃いのはないじゃないですか。

玄葉委員 よくわかりませんね。

 まず、これは総理、一緒に考えていただきたいんですけれども、ニュージーランドという国がありますけれども、ニュージーランドの人口は三百九十万なんですね。同じように、大体日本と一人当たりの豊かさが同じ国々、例えばアイルランドなんかもそうかもしれない、ノルウェーもフィンランドもそうかもしれない、それぞれ三百万人台とか四百万人台とか五百万人台ですね。北海道、五百八十万ですよ。

 道州制を例えば考えているというときに、もう国家としてそのぐらいの人口があれば経営できるんだ、そのぐらいの発想で私は道州制を検討しているならわかるんですよ。そのぐらいの発想を持ってほしいということを言っているんですよ。民主党はそういう発想を持っているということですよ。

小泉内閣総理大臣 そこが全く違うんです。あなたと違うんです。

 国がとやかく言うべき問題じゃない。北海道が知恵を出してください、北海道がどのように自主権、裁量権を考えているのか、その北海道の提案を受け入れて国は考えましょうと言っているんです。私が、国が北海道にこうやれと押しつける考えはありません。

玄葉委員 いやいや、そういう能力があるかどうかということを聞いているんです。あるということを前提に道州制というものを考えているんだったら、私はわかると言っているんです。ただ提案を聞いてそれをといったら、まさにお上依存になっちゃうんですよ、お上主義になっちゃうんですよ。そのことを聞いているんですよ。

小泉内閣総理大臣 何回も言っているでしょう。北海道が自主権、裁量権を拡大するのはいいことだ、だから国は押しつけませんと。北海道が、まずこういうことをやりたい、このように自主権を拡大したいというのは、北海道自身が考えた方がいいと言っているんです。その北海道自身の提案をよく検討して、それを北海道の自主権が拡大するように政府としても支援していきたいというんです。

 他の地域の道州制というのはこれからのことであります。これは、将来まだずっと先のことであります。

玄葉委員 民主党も、あるいは知事会なんかも、今議論がありましたように、例えば、都道府県レベルの補助金のほとんどを、もういいよ、要りませんと。そのかわり、九兆円要りませんから、一兆円は我々で節減しますから八兆円の税源移譲をしてくれ、こういうことですね。ほとんど民主党と発想は同じなんですけれども、我々の発想の根本にあるのは、そのぐらいの人口があれば国家経営だってできるんだ、このぐらいの発想がなければ実はこういう案は出せないですね。もし、この考え方が違うということであれば、私はあくまで自民党政権では分権改革はできないなというふうに言わざるを得ないと思います。

 塩川前大臣が、ある新聞のインタビューで、まさになぜできないかの理由を端的に語っています。一つは、もともと考え方が違うということもあるかもしれませんし、もう一つは、こういうことを言っています。担当大臣はみんな役人に丸められてふにゃふにゃになっている、やっぱり中央省庁が権限にしがみついている、国会議員は皆中央省庁の族議員化されていてよう言わない、数字合わせはこっぱ役人のやることです、こういうことを言っています。

 役人が悪いわけじゃないですよね、はっきり言いまして。政治がリーダーシップをとれないから悪いんだというふうに思います。ですから、我々とはやはりこの分権の問題では決定的に体質も含めて考え方も大分違うなということが、きょうわかりました。

 もう一つ、独立行政法人に問題を移りたいというふうに思いますけれども、国から地方ということで今聞いてきましたが、官から民、その一つの象徴が郵政であったり道路であったり、この独立行政法人だろうというふうに思います。今、自治体側からは、自治体にばかり、先ほどの谷垣大臣の話じゃありませんが、スリム化あるいはリストラを求めて、国はリストラしていないじゃないか、スリム化していないじゃないか。私たちは、国会議員だって減らしていいということを言っています。議員年金だって廃止プロジェクトチームというのができて今議論をしています。そういうところから始まって……(発言する者あり)しかし、格好いいことを言うなというやじもありますけれども、実際身を削る努力をしないとなかなかこれはついてきてくれないと思います。

 ちなみに、特殊法人改革というのが行われていますけれども、特殊法人改革の中で廃止された法人というのはあるんでしょうか。

金子国務大臣 十五法人で廃止をされております。

玄葉委員 何をどういう形で廃止したんですか。

金子国務大臣 ちょっと待ってくださいね。(発言する者あり)いやいや、個別のお話が、要請がありましたので、間違えないように。

 石油公団が、これは廃止ですけれども、六法人が他の特殊法人から移行しました独立法人に移管をされております。もう一つだけ申し上げれば、宇宙開発事業団等四法人が既存の独立法人等に統合されています。ですから、十五法人、その他例がありますけれども、廃止されていますけれども、そのものが廃止されているわけではありません。

玄葉委員 まさに、これは今大臣がおっしゃったように全部残っているんですね。廃止と言ったけれども、例えば簡保の福祉事業団は日本郵政公社に、今おっしゃった宇宙開発事業団は独立行政法人宇宙航空研究開発機構に、あるいは日本労働研究機構は独立法人労働政策研究・研修機構に、ほとんど実態的に、実質廃止されたものがないというのが今の現状であります。

 同時に、予算も特殊法人向けに財政支出を減らしたと言っていますけれども、独法向け、独立行政法人向けの財政支出がその分ふえているんですね。結局相殺されているだけで、減額はほとんどないというのが今の現状ではないでしょうか。

 さらに、時間がありませんので、一つだけ総理にお聞きをしたいと思いますけれども、例えば、平成十五年十月までに独立行政法人化した九十二法人の中で、例えば理事長さん九十二人の中で七十四名が何と天下りであります。あるいは常勤の役員の皆さん、この方々も三百九十七人の中で三百二十八人、八三%が同じように天下りでございます。この実態と現状を総理はどういうふうにお考えになられますか。

小泉内閣総理大臣 今後とも特殊法人改革は必要でありまして、これからも、天下りの問題あるいは特殊法人の役員の問題、廃止できるものは廃止する、この方針にのっとって進めていきたいと思います。

 しかし、最も特殊法人の中で、出口の方で大きなものが道路公団の民営化問題、入り口の方では郵政民営化の問題、その最も大きな問題に手をつけていくというのに最大限の努力を傾注していきたいと思います。

玄葉委員 道路公団も郵政もいいんですけれども、ぜひこの独立行政法人、この間も申し上げましたけれども、フロアも予算も変わらない、名前が変わっただけだ、天下り職員がふえた、この天下りがこれだけいることについてどう思いますかということを聞いているんです。

金子国務大臣 昨年の十二月には、既にこの天下り人事については、閣僚をベースとした閣議人事検討会議というのを開いておりますので、これについて非常に厳しい対応が行われる。

 もう一つだけ申し上げさせてください。

 役員数はふえたとおっしゃっていますけれども、四割削減の方向を確実としております。それから、役員についている退職金でありますけれども、これも十四年三月からずっと続けておりましたけれども、三分の一の水準に削減をしております。

玄葉委員 退職金の問題は、一種の、お茶を濁すというか目くらましという状況だと思います。

 総理は、一年以上前にこういうことを言っていますよ。天下りにしてもそうです、この問題をどうやって直すかということが今回の特殊法人改革の主眼の一つだ、こういうふうにおっしゃっている。総理になられて、最近ですよ、特殊法人が新たに独立行政法人になったのは。それなのに、総理の指示が全く行き届いていない。郵政も道路もいいけれども、この独立行政法人の問題についてしっかり対応してくださいよ。

小泉内閣総理大臣 しっかりと対応していきます。

玄葉委員 対応しなかったじゃないですかということを言っているんです。

小泉内閣総理大臣 今言った退職金の問題においても役員の削減にしても、対応しているんです。これをしっかり対応していきたいと思っております。

玄葉委員 ですから、この一年で総理は答弁されているんですよ、絶対にこれは対処すると言って。対処するとしているんです。だけれども、総理が在任中ですよ、今回特殊法人が独法化したのは。そのときに、まさに理事長を変えようと思えば変えられたんですよ。天下りをなくそうと思えばなくせたんですよ。総理は、事務次官がそのまま理事長になれるとは思わないでくれとたしか指示されたという新聞記事を見ましたよ。全然守られていないじゃないですか。そのことを言っているんです、総理。

小泉内閣総理大臣 これはきちんとやっていこうと。既定路線で自動的にいくものではない、人材をよく見ながら対応していこうと。天下りを自動的に認めない、これはもう着実にこれからもやっていきたいと思います。

玄葉委員 結局、今回官から民ということで、どうも郵政と道路もなかなか、進んでいる進んでいない、議論があると思いますけれども、独法に関しては、確実に独法天国になってしまったということは間違いない。

 それともう一つは、国から地方へというのも、国から地方へというスローガンそのものは私も賛成なんですね。だけれども、今回の平成十六年度予算案に関しては、どうも単なる地方切り捨てになってしまっている、財務省のための改革にすぎなくなってしまっている、このことは申し上げておかなくてはいけないというふうに思います。

谷垣国務大臣 先ほどからいろいろ言いたいことをおっしゃって、なかなか発言の機会がありませんので。

 特殊法人向け財政支出がちっとも減っていない、独法にやったのからすればほとんど減っていないじゃないかとおっしゃいますが、平成十三年度予算から平成十五年度予算に向けましては、平成十三年度は五・三兆だったんです。それが平成十五年度では、独法向けのを含めまして一・四兆減っているんですね。それから、平成十五から十六は、独法向けを含めて四百十三億減っているんです。ですから、そういう流れを御理解いただきたいと思っております。

 それから、もう一つ付言させていただければ、先ほどから……(発言する者あり)わかりました。民主党はたくさん、独法もカットするということをおっしゃっておられまして、大変御努力されて予算案もまとめられました。しかし、例えば独法でも、科学技術関係の独法から三割を削るといったときに、民主党が推し進めておられる政策の方向と合致するかどうか、その辺の御説明もまた聞かせていただきたいと思っております。

玄葉委員 基本的に独法でなくてもできると思いますし、我々は天下りについてもきちっと禁止法案というのを出していますし、先ほど申し上げた国から地方へというのも、我々なら地域発展のための国から地方への分権改革にしてみせるということを最後に申し上げて、木下委員に譲りたいと思います。

 どうもありがとうございました。

笹川委員長 この際、木下厚君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。木下厚君。

木下委員 民主党の木下厚でございます。

 きょうは、内閣官房報償費、通称機密費の私的流用疑惑について質問させていただきたいと思いますが、その前に、一つだけ総理にちょっと質問させていただきます。

 けさの各紙朝刊に、首相の日々ということで、昨日の日程が報じられております。それを見ますと、昨日の夜の七時五分、東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテル内のフランス料理店トリアノンにおいて、衆議院予算委員会の笹川委員長、大野自民党筆頭理事と三人で食事をしているという報道がありましたが、この本予算は、まさに平成十六年の大事な幕あけです。その前日にこういうような食事をしていることは、非常に誤解を生みやすい。その辺を総理、どうお考えなのか、一言お願いします。

小泉内閣総理大臣 議員同士、政治家同士が食事を一緒にする、意見交換をする、これは、政治家であれば木下さんもよくおわかりだと思います。よりよい情報を交換しよう、そして人間関係を円滑にしていこう、お互い努力してくれたな、特に委員長としても努力してくれた、そして与党の理事の皆さんも汗をかいてくれた、これからの予算審議の状況、また御苦労かけるな、今までも大変だったけれども、当分この苦しい状況は続くけれども、お互い頑張ろうということで会食したわけでありまして、それは、与党のみならず野党の皆さんも、政治家と食事をしたり、話をしたり、お茶を飲んだり、酒を飲んだりするということは、人間関係を円滑にしていくという上において、私は必要なことではないかと思うんですが。

木下委員 もしそういう機会があるんだったら、野党理事もぜひ呼んでやってもらいたいな、まさにそれが公平ですから。ただし、きちんとそこは公平にやってもらいたい。

 それじゃ、本題に移りたいと思いますが、私が質問しようとしている内閣官房報償費、これが大きな問題になったのは、平成十二年、あの外務省大臣官房の要人外国訪問室長の松尾事件でございます。このとき、外交機密費が私的に流用されていたということになりまして、その後、外務省のプール金の問題、あるいは、これは私が指摘したんですが、百貨店三越と外務省の不透明な取引、あるいは在外公館における外交機密費、あるいは渡切費、あるいは諸謝金の不正流用事件、そして外務省報償費から官房報償費への上納問題、さらに、北方四島支援事業をめぐる鈴木宗男議員の疑惑へとエスカレートしていったわけでございます。

 この内閣官房報償費について、実は、先般、中川秀直前官房長官、現在、自民党の国対委員長でございますが、その女性問題で事実無根の写真と記事を掲載され、名誉を傷つけられたとして、中川秀直前官房長官が写真週刊誌の発行元の新潮社などに慰謝料を求めた訴訟で、内閣官房が、二〇〇〇年七月と八月に、内閣官房報償費から二億二千万円を中川氏に支出したことを示す文書を広島地裁に提出していることがマスコミ報道で明らかにされましたが、この支出証明書、これについて、二月四日、内閣官房に対してこの資料の請求をいたしました。ところが、きのう夜までに出すという担当者からの話があったにもかかわらず、最終的に出せないということがございました。

 なぜ出せないのか、官房長官、お願いします。

福田国務大臣 御指摘の件は、これは私人間の民事訴訟に関するものでございまして、本来であれば、そのことに関することについて答弁を差し控えるべきことだというふうには思います。

 しかし、ここであえて申し上げれば、官房報償費にかかわる文書、これは、広島地裁から文書送付嘱託があったので、これに応じて提出いたしたところでございます。しかし、この資料が裁判所においてどのように取り扱われるかまだ決まっていないという状況でございまして、その内容については現在お答えすることはできないというのが私のお答えでございます。

木下委員 問題は、その報償費二億二千万円、全部かどうかわかりませんが、それが私的に流用されたという疑惑であります。したがって、これは大変な大きな問題です。ですから、裁判は裁判、これはやればいいんです。しかし、国会は国会として、国の最高機関ですから、やはりそこはきちんとはっきりさせなきゃいけない。

 そういう意味で、私は、その裁判とは別に、二億二千万支払われたその一部が私的流用されたと予想される年月日について出してもらいたい、それが二〇〇〇年七月と八月である、その部分について出してほしいとお願いしたんですが、裁判所に出して、なぜ国会に出せないんですか。

福田国務大臣 ですから、ただいま申し上げましたように、これは訴訟に関する問題でございますので、このことについてここでもって内容について申し上げるというのは、これは控えさせていただきたいというふうに申し上げているんです。

木下委員 いや、訴訟とは別ですよ。要するに、私的流用されたという疑惑があるわけですから、その事実確認をするのになぜ国会に出してもらえないんですか。訴訟とは全く別ですよ。

 具体的に、支出だけですよ。どこへどう使った、そこまで要求していません。支出の請求書とそして記載事項、これを出してくれと。支払い先じゃないですよ。使途について明細を出してなんて言っていないんです。出したかどうか、そこをきちんとさせてくださいとお願いしているわけです。なぜ出せないんですか。

福田国務大臣 今、もう一度申し上げなきゃいかんですか。

 あくまでも私人間の訴訟ということでございますので、ですから、この資料について差し出すということについては、これは控えさせていただきたいということを申し述べているわけでございます。

木下委員 問題は予算にかかわることですよ。これは国民の皆さんの血税ですよ。それをきちんと審議しないで。私は、その使途まで明らかにしてくれとは言っていないんです。出したかどうか、その時期に中川官房長官がそれだけの支出をしたのかどうか、そこを知りたいわけですから、そこのところを出してくださいとお願いしているわけですから、出していただけませんか。

福田国務大臣 同じことを申し上げるしかないんですけれども、民事訴訟にかかわることでございますから、それも私人間の訴訟なんです。ですから、それにかかわることについてお出しするのは差し控えさせていただくべきだというふうに考えておるところでございます。

木下委員 出していただけないだろうと思って、私自身独自に入手をいたしました。

 これでございます。

 これを見ますと、請求書、平成十二年七月十九日、平成十二年度第九回分報償費として下記金額を請求します、五千万円、これが一枚目です。そして、同じ日に第十回分、そして五千万円。そして、平成十二年八月二十一日、このとき第十一回分として五千万円、そして同じ日に十二回分として五千万円、そして同じ日に九月分報償費として二千万。二カ月で二億二千万。これは、中川秀直官房長官から内田俊一内閣総理大臣大臣官房会計課長に請求書が出ています。

 これは、事実確認をさせていただくこと可能でございますか。これが本当に内閣官房から出ているものかどうか、確認だけさせていただいてよろしゅうございますか。

笹川委員長 委員長の手元によこしてください。

 これにつきましては、理事会で協議をさせていただきますので、一応、委員長の方でお預かりをさせていただきたいと思いますが。

木下委員 いや、事実かどうか。内閣官房から出たものかどうか。

福田国務大臣 ただいまそれを確認する資料を持ち合わせてないので、お答えできません。

木下委員 いや、資料はそこにあるんですから、福田官房長官がいつも書いている書類と同じものかどうかですよ。

福田国務大臣 これはコピーでございますので、そのものであるかどうか、真実であるかどうか、これは確認させていただきたいと思います。

木下委員 それから、もう一つ、これがあります。これは、二〇〇〇年七月と八月に内閣官房から出された、支出された明細です。これにもきちんと、今申し上げた日時にきちんと支出をされています。

 ですから、これだけの金がなぜこの時期に、当時の時期を考えれば、ちょうど二〇〇〇年六月に衆議院選挙があって、そして参議院選挙が翌年です。ですから、これだけの、二カ月間の間で二億二千万円の金がどう使われたのか、ここは一番私のポイントでございます。

 この報償費については、厳格な、この問題については外務委員会等で随分追及をいたしました。これについては、厳格なあれがあるということで、目的があるということなんですが、会計検査院、これについて、この平成十二年、この出費について、きちんと調査は、検査はされましたですか。

杉浦会計検査院長 会計検査院といたしましては、平成十二年度の検査の際、松尾事件等ありまして、いろいろな議論がありました。その段階で、平成八年から五年間の経費につきましてきちんと調べさせていただきました。

 そして、その結果、特に報告書に記載した以外のものにつきましては特別な事情があると認めなかった事態でございます。

木下委員 ちょっと資金の流れを説明させてもらいます。

 これは平成十二年度会計検査院報告より掲示させていただいたものですが、「内閣官房報償費(一般行政に必要な経費)の支出手続」、内閣官房長官から請求書がこういう経路を渡ってきます。支出するまでは相当な手続があります。しかし、実際に小切手が内閣官房長官に渡ると、あとは役務提供者に渡るしかないんですね。ここは何のチェック機能もないんです。どうですか。

杉浦会計検査院長 お答え申し上げます。

 取扱責任者でございます官房長官のところに会計担当者から渡りました後は、支出につきましては、官房長官が政策の必要性に応じ適時適切に出されるということで、出す中身につきましては官房長官がきちんと整理されると。

 それで、私どもは、検査の際には、後でございますが、関係書類を拝見したり、あるいは事務当局を通しまして、どういう中身でお使いになったかということをお聞きしているところでございます。

木下委員 要するに、取扱責任者、官房長官は、自分で請求して、そして、自分で受け取って領収書を出して、あとは役務提供者に渡すだけなんですよ。ですから、ここに何のチェック機能もないということなんですよ。そうじゃありませんか。

 そして、ここから支払われたこのお金というのは会計検査院の検査対象になるんですか、ならないんですか。公金でしょう。

杉浦会計検査院長 お答え申し上げます。

 担当責任者でございます官房長官に渡りました時点で、基本的には私ども、公金ではありますが、個別の中身を全部チェックできることはできません。基本的に、現実には公金でございますから、本当にうまく使われているかどうかという点の確認をさせていただきますが。

木下委員 何を言っているかよくわかりません。

 どうやって確認するんですか。領収書があるんですか、帳簿があるんですか。何もないでしょう。

杉浦会計検査院長 ちょっと説明が不十分だったかもわかりません。

 私どもといたしましては、そこの、官房長官から役務供給者のところへ参ります中身につきましては、まず官房長官が会計担当者からいただいたという証拠書類、それから経費等の増減、そういった点は書類等でわかりますが、その後につきましては、どういうことにお使いになったかということを官房長官に事務的に質問をいたしたわけです。そこでお返事をいただきまして、高度な政治的なことに使われたということの心証ができれば、私ども、そこで了としているわけです。

木下委員 その中身がわからなくて、適正に使用された、よく判断できますね。要するに、官房長官が言ったことをただうのみにするだけでしょう。証拠は何もないわけですね。中身もないのに言っているんですか。

福田国務大臣 この内閣官房報償費というのは、これは、内政、外政を円滑に遂行するために、取扱責任者であります内閣官房長官のその都度の判断と責任のもとでもって機動的かつ効果的に使用する、こういうものでございます。そして、歴代の官房長官も、これはもうこういうような報償費の目的に従って厳正な運用に当たってきているのは当然のことでございます。

 それから、その手続的なことにつきましては、私ども平成十四年にこのやり方を、ルールを決めました。そのルールに従って厳正にやっておるところでございます。

木下委員 一般論を聞いたってしようがないんですよ。しかも、支出の流れはこっち側です。図B、これを見ますと、これについては、要するに、支出の経路です。こういうふうに流れるんですが、このうち平成十二年度の決算額で見ますと、総額で十五億一千九百万円、そのうち一般行政経費、これが十二億一千四百万円、そしてこの事務補助経費、事務経費ですね、これが二億一千六百万円、そして首相外国訪問経費八千八百七十七万円、そして会計検査報告によると、この部分だけは領収書もあって、帳簿もあって、確認できた。しかし、こっちの部分は何もない。実際、そして、これを官房長官が全部一手に握っている。これが実際の八〇%を超える額を官房長官一人が全部やっているわけですよ。私的に使ったかどうか、官房長官、信じろと言われたって、現実に松尾事件だって起こっているし、いろいろな事件が起こっているじゃないですか。どうやって確認したんですか。(発言する者あり)

笹川委員長 御静粛に。静粛にしてください、聞き取りにくいから。

杉浦会計検査院長 木下先生のおっしゃいました中身でございますが、私ども十二年のときに、検査いたしましたときに、それまで非常に、ルールも余りはっきりしなかったというような問題がございまして、そして十二年の検査報告におきまして、扱いをきちんとしていただきたい、それからその管理の状況もきちんとしていただきたいというようなことで要求申し上げたわけであります。

 その後、官房の方におきましては、基本方針をつくったり、それから要領をつくったり、それから補助者を任命するとかいうような格好で透明性をきちんとするようにいたしたわけです。したがって、現行と昔のずれが、若干の差がございました点は申し上げます。

木下委員 そんなことを聞いているんじゃないですよ。二〇〇〇年の七月と八月に支出した二億二千万円について、官房長官からどういう説明を受けたのか、どういう形で使ったのか、私的に使われた事実はないのかどうか、そこをはっきり言ってください。

杉浦会計検査院長 同じような答弁になるかもわかりませんが、関係書類を提示していただいたその提示の中身は基本的には大まかなものでございます。その内容につきましては、支払い状況につきましては、先ほど申し上げましたように、政策判断、高度の政策判断等に基づいて執行されるものがありますものですから、事務方を通しまして中身をお聞きしたということでございます。

 それで、二億二千万という数字が何に使われたかということにつきましては、その二億二千万という数字も含めまして、ここで今申し上げる実態にないかと思っております。

木下委員 先ほど、官房長官は高度な政治的判断だという……(発言する者あり)ああ、会計検査院。高度な政治的判断、その高度な政治的判断、だれがどのように判断するんですか。官房長官ですか。会計検査院がなぜ、検査院はどういう判断をしたんですか。

福田国務大臣 それは、いつもこれは、このことにつきまして答弁申し上げていますけれども、これはあくまでも、内政、外交を円滑に進めるために、官房長官の責任において、その都度の判断と責任のもとに機動的かつ効果的に使用するものでございます。

 そういう意味で、これは官房長官が、それはやはり相当しっかりとした判断をもってこれは施行に当たらなければいけない、こういうふうに思っておりますけれども、そういうことで歴代の官房長官も対処してきたものと考えておるところでございます。

木下委員 この問題は……(発言する者あり)いや、私も女性問題をここではやりたくないですよ。そんな答弁をしていたら、お金が私的に流用されたという、それをやはり明らかにしていかなきゃいけない。

 だから、それをきちんと説明してくださいよ。二億二千万円がどういう形で使われたのか、それをもう一回、検査院、きちんと言ってください。何が高度な政治的判断なのか。

杉浦会計検査院長 官房報償費のその性格から申し上げまして、なかなか、その政策的判断で適時適切に御支出される場合があるわけであります。

 その中身につきまして、今、本当に私的な支出があるということが私どもわかれば、それはちゃんと対処することでございます。その中身につきましては、現在もそうですが、官房長官といたしましては、現在は、特にその中身を整理した上で支出されているということになっておりますので、必要があればまた聞きます。

木下委員 自民党の中川国対委員長が、去る二月七日のマスコミ記者会見で、報償費は、制度上、私的流用などできない、そうなっていると。

 どういうシステムだからできないんですか。官房長官が一人で全部管理して、そして私的に流用したかどうか、だれがチェックするんですか。全部一人で、それは、もちろん福田官房長官はきちんとされた方だからそんなことは絶対ないと思うけれども、現実にあったんだから。だから、私的流用ができないというシステムになっているとすれば、どうしてそういうあれができるんですか。

福田国務大臣 内閣官房報償費の支払い、これは、取扱責任者であります官房長官の判断、また責任のもとに行われておりますけれども、一部その支払い事務の実施、詳しく申し上げれば、この実施につきまして、事務補助者を介して行う場合もありますし、その場合においても、これは官房長官の指示に従って行うということでございます。

 また、出納管理の記録、これは、取扱責任者、これが指名した人が行う。取扱責任者みずからが定期的に確認するということもしておりますし、出納管理の記録を担当者以外の者に年度末に確認させるというような方法もとり、可能な限り複数の目による事務処理を行っている、こういうことでございます。

木下委員 今、福田長官がおっしゃったのはこの部分です。この部分でしょう。こっちの内閣官房長官が管理する、これについては全くチェック機能がないんですよ。ないんですよ。だから、私的に使ったってだれもわからない。だから、中には、私的に使って、だからこういう疑惑が出てきているんですよ。だから、これについてもし事実関係があれだとすれば、中川長官にきちんと、前長官に出てきてもらって、きちんと説明して、これは説明責任あるんですよ。どうですか。

福田国務大臣 私的流用云々と申しますけれども、これは中川長官、前長官が、記者会見で公表していることで、説明していますね。そのことを見ていただければいいのではないかと思いますけれども、いやしくも官房長官として、ああいう週刊誌に出ているようなことがあるのかどうか。

 いずれにしても、これは民事訴訟の問題ですから、これ以上私も申しませんけれども、しかし、そのことについては、あの中川長官の記者会見をよく見ていただきたい、こういうふうに思っております。

木下委員 それは言いたくはないけれども、あれだけの女性スキャンダルあるいは捜査状況、情報の漏えい、そういった問題で官房長官やめているんですよ。だから、そこはきちんと、国民に疑惑を与えたんなら、これは大事な血税ですよ、国民の。だから、疑惑があるんですから、それはきちんとやはり説明して、説明責任を果たしてもらいたい。

福田国務大臣 中川長官の週刊誌記載のことにつきましては、これはその週刊誌と係争中であるというように聞いております。ですから、それはやはりその真偽については、そこにゆだねるということも一つの方法かと思います。

木下委員 時間ですので、この問題はさらに追及していきたいと思いますので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次回は、来る十二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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