衆議院

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第10号 平成16年2月16日(月曜日)

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平成十六年二月十六日(月曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 大野 功統君 理事 北村 直人君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 玄葉光一郎君

   理事 筒井 信隆君 理事 細川 律夫君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    宇野  治君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    奥野 信亮君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    佐藤  錬君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      滝   実君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 恭一君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      丹羽 雄哉君    西川 京子君

      萩野 浩基君    蓮実  進君

      二田 孝治君    保坂  武君

      町村 信孝君    井上 和雄君

      池田 元久君    石田 勝之君

      生方 幸夫君    大出  彰君

      加藤 尚彦君    海江田万里君

      木下  厚君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    小林 憲司君

      鮫島 宗明君    首藤 信彦君

      高山 智司君    達増 拓也君

      中津川博郷君    計屋 圭宏君

      鉢呂 吉雄君    平岡 秀夫君

      松崎 哲久君    村越 祐民君

      石田 祝稔君    遠藤 乙彦君

      高木 陽介君    山名 靖英君

      佐々木憲昭君    塩川 鉄也君

      東門美津子君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       亀井 善之君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣        山本 有二君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   経済産業副大臣      泉  信也君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    山中 昭栄君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    五味 廣文君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)  新原 芳明君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)       高部 正男君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  清水 英雄君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   政府参考人

   (国税庁次長)      村上 喜堂君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)      坂本由紀子君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)      豊田 正和君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  松田  昇君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  尾身 幸次君     佐藤  錬君

  中馬 弘毅君     鈴木 恒夫君

  津島 雄二君     津島 恭一君

  西川 京子君     宇野  治君

  町村 信孝君     奥野 信亮君

  河村たかし君     計屋 圭宏君

  木下  厚君     高山 智司君

  首藤 信彦君     加藤 尚彦君

  藤井 裕久君     小林 憲司君

  高木 陽介君     山名 靖英君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

  照屋 寛徳君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     西川 京子君

  奥野 信亮君     町村 信孝君

  佐藤  錬君     尾身 幸次君

  鈴木 恒夫君     中馬 弘毅君

  津島 恭一君     保坂  武君

  加藤 尚彦君     首藤 信彦君

  小林 憲司君     藤井 裕久君

  高山 智司君     木下  厚君

  計屋 圭宏君     村越 祐民君

  山名 靖英君     高木 陽介君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  保坂  武君     津島 雄二君

  村越 祐民君     大出  彰君

同日

 辞任         補欠選任

  大出  彰君     松崎 哲久君

同日

 辞任         補欠選任

  松崎 哲久君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁刑事局長栗本英雄君、防衛施設庁長官山中昭栄君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁監督局長五味廣文君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長新原芳明君、総務省自治行政局選挙部長高部正男君、総務省自治財政局長瀧野欣彌君、総務省郵政行政局長清水英雄君、外務省北米局長海老原紳君、財務省理財局長牧野治郎君、国税庁次長村上喜堂君、厚生労働省医政局長岩尾總一郎君、厚生労働省職業能力開発局長坂本由紀子君、厚生労働省年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長薄井康紀君、経済産業省商務情報政策局長豊田正和君及び国土交通省道路局長佐藤信秋君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中馬弘毅君。

中馬委員 おはようございます。連日御苦労さまでございます。

 きょう私は、最近の中国の動きについて少し政府の認識をお伺いしておきたいと思います。

 世界の動きが今かなり急ピッチで大きく変換をいたしております。地域紛争あるいは国際テロの問題をちょっと別にいたしますと、世界史的な大きな地殻変動を迎えていると私は認識をいたしております。

 産業革命でイギリスが、世界の工場として七つの海を制した。その次に、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じてアメリカが、大きな生産基地であり、同時に大変な成長を遂げまして、戦後は世界国家へと変貌した。そして、それの影響下にあった日本が、これまた世界第二の経済大国になるまで成長したわけでございますが、それに続く、今回は中国を中心とした大きな動きが世界の経済史に大きく一つの時期を画すような形の動きになってきていることは御承知かと思います。

 これは広大な土地を持っております。資源はもちろん持っております。そして、十三億という、世界の四分の一ぐらいの人口を抱えているんですね。これが急成長を遂げ始めましたし、そしてまた、世界の工場として大きく世界を席巻し始めておりますと同時に、これはまた所得も上がってまいりまして、巨大なマーケットとして今浮上してきているわけでもございます。

 しかも、欧米に比べまして我が国がその最も近い位置に地の利を持っておりまして、ある意味では地の利を得ているということが言えるかもしれません。

 しかし、こうした現実にもかかわりませず、この現実を直視したがらない人たちもいらっしゃるんですね。正直申しまして、これはまだ、こうした今八、九%の成長を遂げておりますけれども、こういったのは、まだ統計も不備だから数字のまやかしだなんて言う方もいらっしゃいますけれども、現実問題としては、それぞれの単品単品をとってみましたならば、例えば鉄鋼にしましても自動車にしても、あるいは携帯電話にしましても、実物として完全にそれ以上の生産を遂げているわけでございまして、決して数字のまやかしどころか、逆に、今の八、九%以上の成長が実際には続いているんではないかという見方すらあるわけでもございます。

 それからまた、これは一時的なバブルで、いずれはじけるんだというその声もあります。しかし、現実問題として、金融で日本のような形で膨れたのではなくて、かなり実体経済として大きな動きになってきているわけでございまして、この実体経済の拡大を考えたときには、そう簡単にはじけるものではない、私はこのように考えております。

 それとまた、別の見方としましては、政権が安定しなくて、内政上いずれ混乱が起こるんではないか、こういった声もあります。しかし、私もかなり現実にあちこち中国を見て回っておりますけれども、これはかなり自己増殖的な経済になってきておりますから、政治が少々混乱したところで、この経済の大きな流れは私は変わらないと思います。

 それから、これは沿岸部だけの発展であって、内陸部はまだまだ貧困だ、こういう声もありますが、決してそうじゃありません。私も十数年前にも重慶に行きましたけれども、重慶は、もうそのころから大変な大きな工場団地をつくって、そこにどんどんとアメリカやドイツが進出をしてきております。日本はそのころから、四川省だけでも数億の人間がいる、日本よりもはるかに大きな経済圏なのに日本は領事館すら置いていないじゃないか、早く領事館でも置けと言っておったんですが、ずっとそのままでございまして、ようやくことしになって領事館を置くようでございます。

 ともかく、内陸部の方も、重慶だけではなくて、雲南省にありましても、あるいはまた中原の諸都市にしましても、大変発展を遂げております。あちこち建築ブームであったり、また、高速道路がどんどんと四通八達いたしております。

 しかし一方、この中国の現実を競争相手として非常に警戒したり、あるいは脅威ととらえることではなくて、相互補完的に、そしてまた共存共栄の形をとることが日本の国策だ、それにかなうのではないかと思うんですが、そしてしかも、これから十年、二十年のうちには、この中国は、先ほど言いましたような、一時的ではなくて、かなり持続的な、経済的な発展を遂げてまいります。しかも、二〇〇八年のオリンピック、そしてまた二〇一〇年の上海万博、これに向けてもう国内が大変なブーム状態でございますから、こういう成長は続いていきましょうし、そして、中国だけではなくて、お隣のインドもかなりの成長過程に入りつつございます。

 そうしますとこれは、アジアが、今までのアメリカや日本の規模とははるかに違うんですね。これがわあっと上がっていったときにどのような状況になってくるか。いろいろなことも想定されますけれども、しかし、先ほど言いましたように、この認識を我が国の政府としてはどのようにお考えになっているのか。そして、実際我が国の政府にあっては、中国との政治的な関係がもう一つうまくかみ合っていない、このように認識をいたしております。

 これにつきまして、内閣の意思として小泉総理に本来であればお聞きしたいんですけれども、きょうは御出席じゃございませんので、内閣を代表した形で福田官房長官にお願いしたいと思います。

福田国務大臣 日中関係という、今極めて日本にとっても大きな私はテーマだろうというふうに思っておりますので、日中関係、概略申し上げたいんでありますけれども、今、日中関係をどういうふうに思うか、また、中国に対してどういうふうに考えるかといったようなことで御質問があったんだろうと思いますけれども、確かに中国は、特に経済状況というのは極めて急速に進展しているということであります。

 そういうことでもって、中国の産業が発達すると日本から産業がみんな吸い取られてしまうんではないか、特に先生の地域なんかそういうふうに思っておられた方が多いんじゃないかと思う。実際、そういうふうな傾向もあったわけですね。しかし、そういう状況も今また様子が変わってきた。何となれば、吸い上げられるだけでない、そういうことじゃなくて、中国の経済が発展することによって日本の経済も発展する、そういう関係になってきたということですね。

 これは総理もたびたび言われているんですけれども、中国というのは脅威ではない、脅威ではなくて、これは好機、チャレンジとそれからチャンスだ、こういうふうに言っているんですね。まさにそういうことだと思います。中国の発展は日本にとっても好ましい状況にある、こういうのが今の日中関係だというように思っております。

 今のGDPも日本の四分の一ぐらいでございますけれども、今の経済成長でいきますと、中国はあと六、七年でもって倍になるでしょう、恐らく。そしてまた、今の元も、安い、安いというように言われておりますから、六、七年たてばかなり高くなってくるんだろうというふうに思います。切り上げをしていくということになります。そういうことを総合して考えていきますと、中国のGDPは、恐らく、六、七年、もしくは七、八年たちますと、もうほとんど日本と同じようなGDPの規模になってくるというようなことも考えられるわけですね。

 ですから、人口が多いから一人当たりは少ないかもしれぬけれども、しかし、そういうような関係を考えますと、中国の経済というものは、これは決して無視はできないというような状況になります。それだけに、それに対して日本がどういう対応をしていくかということは、これは十分日本の方としても考えていかなければいけないことだというように思っております。

 しかし、それは、先ほど申しましたように、脅威ととらえるのではなくて、むしろチャンスだというような、そういう意識を持って、むしろ日中関係をどのようにうまく関係づけていくかということに意を用いるべきでなかろうか。そうでなければ、これはまた大変煩わしい問題がいろいろと生じてくる可能性があるかもしれぬ。

 そういったような観点から、日中間の相互理解というものは進めなければいけないし、幸いにして人的交流もどんどんどんどん進んでいるというような状況もございますので、そういうような今の状況をさらに伸ばすようないろいろな工夫をこれから政府としても考えていかなければいけない、そのように思っているところでございます。

中馬委員 次に、竹中経済財政担当大臣にお聞きいたしますが、具体的な事例を挙げて、十六年度の経済見通し、これにどのように反映されているのか、いや、それ以上に、我が国の経済運営にどのように今後この中国の大きな経済成長を反映させていくのか、この点をお伺いしたいと思います。

 先ほど言いましたように、二〇〇八年には北京のオリンピックでございます。二〇一〇年には上海の万博。

 振り返って我が国を考えてみますと、昭和三十九年に東京オリンピックでございました。東京じゅうが工事現場となったような形で、その大きな経済発展を神武景気と称したのが、今から四十年ほど前ですね。それから続きまして、昭和四十五年に大阪の万博が開かれました。これがそのときまた、大阪だけではなくて日本全国が大変な経済発展を遂げたわけでございまして、これを岩戸景気と称しました。

 現在は、これは中国では岩戸景気と神武景気が一緒に来たような、前のときには、日本の場合には六年間差があいていますけれども、二年ですから、上海も北京も今大変な工事現場、建設ラッシュでございまして、こういったことがいろいろ経済的に大きなインパクトを与えてきております。

 鉄が足りません。日本の生産量一億トンをはるかに超えた形で中国は生産をしているんですが、それがここに来てもう足らなくなってしまったんですね。ですから、それまでにもどんどんと鉄鉱石を輸入しておった、しかしそれでも間に合わないので、現在では世界から鋼材を買いあさり出しました。日本でも、御関係の方はおわかりのとおり、鋼材が大変な高騰をいたしております。

 それだけではなくて、鉄を一々溶かしてつくってというよりもスクラップの方が早いということで、日本からスクラップがどんどんと買われております。それも、二割、三割の値上がりじゃなくて、かつてキロ五円だと言われておったのが、今は十七、八円、三倍、四倍に上がっていますよ。それが全部中国に行っています。

 そして、石油も、もちろん中国は産油国でございますが、それももちろん足らなくなって、一億トン以上、日本よりも多い石油を輸入し始めております。

 それから、プラスチック加工品は、中国は本当にお手の物でございますが、その原料のナフサが足らないから、これまた世界から買いあさるような状況になってきておりますし、紙パルプが不足しております。この影響も、我が国の末端の方にまで出ておりまして、古新聞を集めても今まではなかなか引き取り手がなかったのが、今は古新聞や段ボールをホームレスの人が集めても、これが夜中に別のホームレスにとられるといったような状況で、これまた中国にざあっと行っていますね。

 そういうことで、大変な荷動きになってきておりますが、原材料だけではなくて、製品輸出も盛んになってきておりまして、海上運賃は高騰いたしておりますし、それでまた船腹が足らなくなって、各ギリシャ船主や香港船主はどんどんと発注を始めております。中国、韓国、日本の造船会社、ほとんどのところが三年、四年の受注を抱えてしまいました。そして、それが今ずっと、エンジンその他機械類、部品類が発注されておりますから、我が大阪の中小企業、町工場までもどんどんと仕事が今ふえ始めてきております。

 今まで斜陽産業と言われておった重厚長大のこうした鉄だとか機械だとか造船だとか化学だとか、こういったものがわあっと底から上がってきているんです。その上に、ハイテクあるいはまたソフト関係の業績はいいわけですから、そうしますと、これは年末あたりにはかなりの好況感すら出てくると考えられるわけでもございます。

 先ほどは原材料の話をしましたけれども、総理もおっしゃっておりましたが、最近では、マーケットとしてかなり高い所得の方がふえてまいりましたから、そうしますと、日本の高品質のものが逆に向こうに輸出されるようになりました。日本ブランドのものを逆に向こうの人たちが欲しがる。デジカメだとか、あるいはオーディオなんかは、所得の高い人は、中国製はまだだめだ、日本の方がいいんだと日本のブランドを志向しておりますし、それから、青森のリンゴ、上等のリンゴが向こうの方で、中国に輸出されております。それから、鹿児島、宮崎あたりの杉、ヒノキが、向こうでも内装は、私のところは家具はイタリア製です、そしてまた、今言いましたようなオーディオ関係は日本製です、そしてまた、内装はシベリア材じゃ、南洋材じゃだめなんです、やはり日本の杉、ヒノキですといって、高級な杉、ヒノキが日本から輸出されているんです。

 そこまでなってきているわけでございますから、こういったことにつきまして、従来の産業構造ともかなり変わってくる可能性もあります。これを竹中大臣、どのようにこれから反映されていくのか、経済計画等にもどのように織り込んでいらっしゃるのかおられないのか、その辺も含めてひとつ御認識をちょうだいいたしたいと思います。

竹中国務大臣 中馬委員先ほどから御指摘のように、本当に気がついてみると、世界の経済を語るときも、ましてや日本の経済を語るときに、中国の経済のことを抜きにしては語れないような状況が出現している。一昨年の春だったと思いますが、小泉総理が中国の海南島で持たれました大きな会議に出席されましたときに、そこには朱鎔基首相も御出席だったわけですが、まさに総理御自身の認識として、中国というのは日本にとって脅威ではなくてチャンス、機会、オポチュニティーなんだということをおっしゃった。非常に示唆に富んだお話であるというふうに思います。いろんな問題はあるけれども、いろんな問題を乗り越えてそのようなチャンスにしていかなければいけないという御決意でもあったかと思います。

 中国の話というのは、まさに委員御指摘のように、もう我々の目に見えるような段階で、ミクロレベルでしっかりと確認できるような段階になってきた。具体的には、生産そのものが、物の売り買いだけではなくて、日本の企業も向こうでつくった製品、部品を輸入する、対して輸出するという、生産部門で統合されておりますし、とりわけ近年は中国の市場の重要さ、マーケットとしての中国の重要さというのが目に見えて認識されるようになった。さらには、文化の話でありますとか各種のライフスタイルにまでいろんな相互の交流が進んでいるということだと思います。当然のことながら、日本の経済の運営においても、そのことはしっかりと我々なりに位置づけをさせていただいているつもりでございます。

 数字の問題になってしまいますが、昨年の中国の実質成長率は九・一%でございました。二〇〇四年も、OECDの見込みでは七・八%、アジア開発銀行の予測では八%の成長を見込んでいる。我々は、中期的な経済の姿、さらには、より具体的には十六年度の政府経済見通し等々も立てるわけでございますけれども、そうした中でも、やはり中国に非常に影響を受ける形で世界のGDPが十六年度三・八%程度伸びるというふうな予測を立てて見ております。

 中国が何%伸びるかというようなことに関しては、これは誤解を招くおそれがありますので従来より特定してお示しはしておりませんけれども、さらに場合によっては現在以上に中国の経済が世界の中での存在感を高める、マクロ的にもミクロ的にもそういうことを想定しながら経済の見込みも立て、かつ運営をしているつもりでございます。

中馬委員 このような発展を遂げておりますと、人民元がかなり値打ちが上がってきていることは当然予想されるわけでございまして、強くなってきております。購買力平価でいえば倍でもいいんではないか、このようにすら言われているわけでございます。

 さきのG7で人民元のレートにつきましての議論があったかと聞いておりますが、そのとき日本はどのような意見を開陳されたのか、あるいは、最近、中国の人民銀行の総裁が為替レートの形成メカニズムの改善を表明されたと聞いておりますが、報道ですけれども、これの事実関係等につきましても含めて、財務大臣に、人民元の今後について、日本の対応をお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 先般のG7では、人民元のレートそのものに特定した議論というよりか、言うなれば世界経済全体が今どういう状況にあるかというような議論、幅広い、それぞれの地域がどういう状況にあるかというような議論はいたしました。

 そこで、人民元の問題ですが、今、中馬委員がおっしゃいましたように、先日、周人民銀行総裁が講話をされまして、その中で、為替レート形成メカニズムを整備し、人民元の為替レートを合理的で均衡のとれた水準に維持して基本的に安定させる、こういうお話を、発言をされたというふうに承知をしております。

 これ以上具体的な内容については私どもも承知をしていないんですが、したがいまして、今後中国がどういうふうにされていくかということについてこの場で申し上げられる材料はそれ以上ないわけでございますが、既に、先ほどからのお話のように、中国経済の規模というのは極めて大きくなっておりますし、そこがどういう為替の制度を持っていくかということは、日本はもちろん、アジア諸国のみならず、欧米にとっても、いわば世界経済全体にとっても極めて大きな影響があることではないかなというふうに思っております。

 そこで、これに対してでは日本はどういう態度で臨んできたかということになりますと、簡単に申し上げれば二つでございまして、一つは、こういう為替の問題はそれぞれの国がそれぞれの主権の内容として自国の利益に合うように考うべきものであるというのが第一でございますが、もう一つは、これも常々申し上げていることですが、為替というのは経済のファンダメンタルズを安定的に反映すべきものであるということでございまして、ですから、これだけ経済が成長している中国の実情を見ながら中国の当局者がどういう為替制度を持つかということをお考えになるべきものだろう。

 ただ、先ほど申し上げましたように、非常に影響のあることでございますから、いろんな機会に意見交換をしたり、あるいは日本の経験はどうだというようなことも中国も非常に関心を持っておられますので、いろんなときに意見交換をして対話をしていくということが大事だと思っております。具体的に申し上げますと、閣僚のレベルではASEANプラス3のような場で今までもいろんな御議論がございましたし、この場にとどまらずいろんなところで意見交換を、対話を続けていくことが大事なのではないか、こう思っております。

中馬委員 外務大臣にお聞きいたしますが、ODAでございます。

 中国にはかなり日本もODAを渡してまいりました。それが現在の中国の大きな発展にかなりの寄与をしたことは私どもも評価したいと思いますが、今お話がありました人民元がかなり切り上がりますと、それでぽんと、一人当たりのGNP、GDPといいましょうか、これが今はもう千ドルを超えたと思いますが、現在でもそれがかなりはね上がるような形になろうかと思います。

 そうした場合には、数字的にはODAの対象国から消えることもありましょう。しかし、一遍に消すことがいいのかどうかはともかくとして、現在のODAも、もうインフラに日本が援助するようなことは必要ないんじゃなかろうか。十分にその力は向こうが持っておりますし、逆に日本の方が、道路にしましても空港にしましても、中国よりもおくれてきているようなことですからね。そういうことで、これは見直す必要があると私は思います。

 その場合に、やはり環境の問題と、あるいは人的な交流ですね。今までハードの方にばかりODAをやっておりましたが、人の交流がいかに大事か。それは、ただ観光ビジネスというような話だけではなくて、人間と人間との関係、相手を知るということ、そしてまた、心のつながりといったようなことをするならば、これは国際平和にまでも寄与するわけでございまして、むしろ、このODAを人的な交流の方にかなりウエートを置いた形で使うこともこれからのあり方だと私は思っております。そういうことにつきまして、外務大臣の御所見をお願いしたいと思います。

川口国務大臣 中国のODAにつきましては、先ほど来お話が出ていますような中国の経済発展、それに伴うODA需要の変化というのもございます。また、国内におけるODAを中国に出すことについての厳しい意見というのも踏まえる必要があると考えております。

 それで、平成十三年に対中国経済協力計画ということを作成いたしました。そして、その重点分野、これは、今までは沿海部の経済インフラということであったわけですけれども、それから変えていくということで、まさに今、中馬先生がおっしゃったような、人的交流ですとか環境ですとか、そういった方向に変えていくということでODAを見直してきております。

 より具体的に申しますと、おっしゃった相互理解の増進ということですけれども、これも従来から、専門家派遣ですとか、青少年の青年海外協力隊の派遣ですとか、研修員の受け入れといった技術協力をやってまいりましたけれども、それに加えて、最近では、資金協力の分野でも、日本への留学生を支援する留学生支援無償資金協力、そして円借款による人材育成支援ということを行っておりまして、円借款で計算をしますと、このような相互理解への支援というのは平成十四年度で約二三%を占めております。

 それから、もう一方で、円借款のうち環境案件というのが七割を占めております。また、環境案件をやるに当たっても、例えば、地方公共団体の人を連れていって、そこで人間の交流もやりながら中国の環境支援をするというような工夫もやっております。

 今後もそういった取り組みをしていきたいと考えております。

中馬委員 先ほど申しましたように、対中国の人的な交流、これが非常に大事なんですが、かつてのような、日本と中国のかなりトップレベルの、いや、それは政治的な意味ではなくて、周恩来さんが日本で留学したとか、あるいは廖承志さんや孫平化さん、こういったかなり影響力のある方と、日本のそれぞれ文化人やあるいはまた政治家が精神的なつながりまで持った関係を持っておりましたけれども、このごろは少し薄くなってきていることは現実問題でございます。ともかく、中国との往来をもっと活発にする必要がある。先ほど言いましたような大きな影響力を持ち始めているわけですし、隣でございますから。

 そうすると、まず、一番近い我々庶民レベルのことで言いましても、観光ビザ、これをほとんど出していないんですね。私どもが少しは努力いたしまして、二〇〇〇年から、団体であって、しかも五万元という、日本円で言うならば七十万円を保証金として積んで、しかも政府が認めた団体観光業者の集めた者でなければだめだ。

 しかも、それだけならまだ許されると思うんですけれども、地域を限定してしまっているんですね。北京と上海と広州の地域だけの、その市民でなかったら日本には来てもらっては困る、こういう差別的なことをやっておりまして、私も、中国に参りますと、逆に、人種差別じゃないか、内政干渉じゃないか、それぞれの個々人をチェックしてもらうのは結構だけれども、地域を限定してそれ以外の人には観光ビザを与えないというのは、これはどういうことか、あなたたちは靖国神社の問題で内政干渉だと言うけれども、自分たちこそ内政干渉しているじゃないか、こういうことまでも言われるんです、正直言いまして。

 なぜそういう限定をするのか。犯罪者が、一部不法滞在者がふえていることも事実でございますが、これは観光ビザで来た人じゃありません。安易に、かなりルーズな形で就学ビザ、留学ビザ、あるいは研修ビザという名前の就労ビザをやっておったがために、その方々がほとんどの不法滞在者、残留者でございます。観光ビザの方はほとんどないわけですから、しかも、それだけお金を積んでゆとりのある方に来てもらうわけですから、これはオープンにしてしまったらいいんじゃないかと私どもも主張しているところでございますが、なかなか政府の方はガードがかたいようでございます。

 もう余り時間がありませんから、私はもう少しこの点につきまして問い詰めたかったんでございますが、ひとつ、それぞれのお立場でこれに今後どう対応していくおつもりか、国土交通大臣からよろしくお願いします。

石原国務大臣 中馬委員が副大臣としてこの問題にお取り組みになられたということは十分承知しておりますし、私も初代の観光立国担当大臣でございますので、中国を中心とするアジアの観光市場、韓国、台湾、そしてアメリカ、中国、香港と、これは五大市場でございますので、こちらから観光客の方に大勢来ていただきませんと、総理が提唱されておりますビジット・ジャパン・キャンペーン、二〇一〇年に一千万人の観光客の誘致ということにはおぼつきません。

 そんな中で、この中国の問題は、発給元は外務省でございますが、外務省、法務省、また警察庁と十分連携、連帯をとらせていただきまして、良好なやはり治安と公安、こういうものにも配慮させていただいて、観光立国担当大臣といたしましては、拡大に努めさせていただきたいと考えております。

中馬委員 法務大臣、先ほど言いました若干ルーズな問題であった研修ビザ、就学ビザ、これを締めてもいいから観光ビザをオープンにすべきだと思うんですが、法務省の立場でどうですか。

野沢国務大臣 中馬議員におかれましては、日ごろから日中交流拡大につきまして大変積極的な取り組みをいただいておりますことに感謝をいたすものでございます。

 法務省といたしましては、御指摘のとおり、十二年九月から始めました中国との訪日団体旅行の取り決めが人的交流の増大、民間レベルでの相互理解に大変役に立っていることは評価しておるものでございますが、他方、委員御承知のとおり、我が国においては不法入国、不法滞在の問題等もございますので、この状況を踏まえまして、関係省庁とも十分協議しまして、必要な対策をとりながら、順次、委員御指摘のとおり、地域の拡大等について努めてまいりたいと思っております。

中馬委員 外務大臣、最後に一つだけ。公安委員長、ちょっと済みません、きょうは時間がありませんですから、また後ほど。済みません、外務大臣で。終わりますから。

川口国務大臣 外務省といたしましても、拡大に前向きに取り組んでいきたいと考えております。他方で、失踪者等の問題もございますので、同時に制度の運用の改善についても中国と話をしていかなければいけないと思っております。

 いずれにしても、関係省庁と相談をし調整をしながら、また、中国とも調整をしながら取り組んでまいります。

中馬委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたので失礼します。

笹川委員長 これにて中馬君の質疑は終了いたしました。

 次に、中津川博郷君。

中津川委員 民主党の中津川でございます。

 谷垣大臣、G7、大変御苦労さんでございました。テレビで見ておりましたら、割ににこにこしておりました。何か本当に成功したのかなと。そうであればよろしいわけでありますが、少し検証してみたいと思うんです。

 G7の声明、相場の過度の変動や無秩序の動きは、経済成長には望ましくない、これは一般論ですね。その上で、為替相場のさらなる柔軟性が、不均衡の調整を進めるのに望ましい、これは前回のドバイの表現をそのまま踏襲しておりますね。

 問題は、その対象となる国、つまり柔軟性を欠く主要な国・経済地域に限定するということをつけ加えているわけですが、まあ、これは中国が含まれるということは大方みんな認識している。ところが、日本が含まれるのかどうかということでありまして、谷垣大臣は、日本が含まれていないということを、大変よかったと。それもにこにこの一つかなと思っているわけであります。

 これについて、トリシェ総裁は、為替相場の柔軟性を欠く主要国には日本が含まれているのか、こう聞かれたら、日銀総裁に聞いてくれと突き放したと。これは、暗に日本は含まれているんだという意味だと大方解釈しますよね。それから、スノー米財務長官は九日に、介入は最小限にとどめるべきだ、そういう見解を示しましたが、これは、介入してもいいけれどもいっぱいやっちゃいけないよ、そういう意味であるわけで、やはり日本もこれは含まれているというふうに見るのが一般的で、アメリカも日本も欧州もみんな仲よく、何かわかったようなわからないような、そういう決着で今回終わって、そういう意味で喜んでいられたのかなと思っておるんです。

 十一日には、FRBのグリーンスパン議長がドル安というのが経常赤字を抑制する方向に動くと述べて、これは、市場ではもうドル安容認、示唆と受けとめていますよね。結局、私は、アメリカ大統領選を控えて、輸出産業を中心に経済をよくするために緩やかなドル安というもの、だんだんそういう方向に行くのではないかと。

 それで、日本は、やはり昨年来からこの委員会でもいろいろな人が議論しておりますが、二十兆、ことしに入ってもう七兆円超まで円売り・ドル買い介入を繰り返してきた。結局、ほとんど効果ない、これからも効果ない。この間、私も外為特会では為替差損がじゃんじゃん出ているということを指摘いたしましたが、大臣、円高・ドル安も、この自然な市場の流れというのは、私最近思っているんですが、もうどうにもとまらないんじゃないかと。

 それで、日本の国益、経済、これを世界の中で真剣に考えていけば、やはり今、そこのところを腹を決めなければいけないんじゃないかな。谷垣大臣は、それはあいまいのままで何かよかった、みんなよかったということじゃなくて、私はその辺のところをきょうお聞きしたいと思っておるんですが、大臣のお立場でなかなか言いづらいことはわかりますよ。一ドル大体幾らぐらいまでが妥当で、そして日本の経済はどのぐらいだったら持ちこたえられるのか。これをやると市場が動くかなと思って心配されると思いますけれども、どうぞひとつお答えください。

谷垣国務大臣 中津川委員から真摯なお問いかけでございますが、どのぐらいの為替相場がいいかということは、これは私の立場からは申し上げるべきことではないので、相場は相場にみずから語らしめよと。先週は平岡委員に、コミュニケはコミュニケをしてみずから語らしめよとお答えしたんですが、相場はやはり相場に聞く以外ないんだろうと思います。

 それで、私どもの基本的な態度は、前から申し上げているように、投機的な思惑や何かで無秩序に動くようなときにはしかるべき手段をとるということでありまして、幾らがいいかということは、お答えは差し控えたいと思います。

中津川委員 模範生のお答えで、お答えする数字というのはなかなか難しいでしょうけれども、質問する方もなかなか数字、今まで数字を出して質問した人、少ないと思うんですよね。私はあえて言わせてもらいますよ。もう一ドル九十五円ぐらいまで視野に入れなければいけないんじゃないかと思うんですよ。

 それで、かつて、たしか私の記憶ですと七十九円、そこまで上がったのありますよね。何か今、その時代に似ているような、不気味な予感がする面も一面あるんです。イラク問題がベトナム戦争のように長期化すれば、その傾向がどんどん出てくるというような心配をするところがあるんですが、この一ドル九十五円、日本の役人というのは、非常に今円高というものに神経質になって、百円ぐらいまで何とか頑張ろうというような気持ちでいると思うんですよ。

 では、ついでにもう少し私見を述べさせてもらいますけれども、後で大臣、お答え願いたいんですが、そんなにもう円高恐るべきじゃないんじゃないかと。私は以前、円安をどんどんもっと頑張ってやるべきだったと塩川大臣に聞いたんですよ、二年ぐらい前でしたかね。黒田財務官がいたときは、大体一ドル百四十円とか百五十円とか、確か額賀さんも言っておられました。みんなそれで、政府の高官も塩川大臣も言っておられましたのですが、あるときぴたっととまってしまった。それで、質問してもなかなか方向性のある答えが返ってこないというところで、やはりもうこれは無理だと。僕は、一たん円安にして、そして円高に持っていくというのが一番いいかなと思っていた。ところが、もうこの流れはちょっと無理ですね。

 それで、ちょっと私は勉強して調べてみたんですが、資料をお渡ししております。「為替レートとGDP成長率」「為替レートと消費」というのがあるわけですが、これは折れ線グラフの方が為替レートですね。それから棒グラフの方、上の方がGDPの成長率ですが、これを見てもらうと、円高になると結構頑張っているんですよ。成長率、いいんですよね、GDPが。それから、下は消費なんですけれども、どんどん円高になるにつれて消費が上がっているんですよ。

 今、輸出も大体四八%ぐらいもう円建てでやっておりまして、今までフロー経済というのは、日本は確かに今資産デフレで大変だけれども、私は、これは政府の政策が悪い、何で土地をもっと上げるような、あるいはもとに戻すという表現でもいいんだけれども、そういう政策をしないんだということをずっと言ってきているんですが、もう言っても何にも政策を出さないし、それじゃ今ある中でどうするかということで、やはり我が国も長期的には円高、円を強くしていくというのが大道ではないかなというふうに最近ちょっと思ってきているわけであります。その辺の考え、いかがでしょうかね、大臣。竹中さんも専門ですから、ちょっと簡単に、あなたは長いから。

谷垣国務大臣 いただいた資料を拝見して、確かに、なるほどこういう関係になっているのかと思いましたが、どちらがいいんで、どちらが可か、これはなかなか判定の難しいところだと思います。

 それから、今、為替水準についてはコメントいたしませんが、長い過程で見ると、徐々に円高が進んできたということかなとは思っております。

竹中国務大臣 委員がお示しになられたグラフそのものに関しましては、財務大臣がおっしゃいましたように、原因と結果、どちらなのかなということはしっかり考えなければいけないんだと思います。

 それと、為替レートについては、これは名目の為替レートと実質の成長率を見ておられますけれども、実質の為替レートはどういうことなのかなということを見なければいけない、そこは我々も勉強させていただきます。

中津川委員 為替は非常に大事な問題ですので、私は、やはり委員会でも本当にいろいろな意見で議論して、国が方向性をこれから出していくということが必要だということを申し上げて、足銀問題に入ります。

 足利銀行の一時国有化の問題、私はもう財務金融委員会とかあるいは前回のこの予算委員会でも最重要問題として取り上げてきました。そして、これは近々上場すると言われております新生銀行と絡んで、ダブルで、足利銀行をつぶして新生銀行を上場するという、何か見事なストーリーのような、やはりダブルで考えていく、日本の金融行政が今まさに問われているこの二つが私は非常に象徴的な問題だと思うんですね。

 そこで、竹中大臣ともいろいろ質疑をしてきました。そして、ちょっと整理をして、本質的な議論をしていきたいんですが、今までの議論で一つ欠けていたんですが、大事な論点、私やっていて出てきたんですね。それをきょうちょっとここでしっかりと決着をつけたいと思うんです。

 一月十四日の財務金融委員会での上野中央青山監査法人理事長の参考人招致、これを私やりまして、私は、銀行と監査法人に、法律で新たに義務づけられた企業のリスク情報開示の必要性を問いただしたんですね。そうしたら上野さんが、足利銀行は繰り延べ税金資産が自己資本の一・八倍の一千三百八十七億円で銀行でも突出しているわけでありますが、こういう銀行。言ってみれば、この銀行というのはもともと繰り延べ税金資産で今までやってきたわけですよ。金融庁も認めてきた。まさかこんなことを、この年に限って繰り延べ税金資産認めないなんということはないだろう、これはみんな思うわけですよ、投資家、善意で株を買って銀行を支えた人たち。ところが、上野さんはこういうふうに言ったんですよ、答えが。自己資本比率が国内行の基準を上回る四・五四%だった、だからリスク情報を記載する必要はないと判断したと。

 これはすごい大事な発言ですよ。株を買う人はやはりこの情報を見てやるわけでありまして、繰り延べ資産がこんなことで、こんなに大変な銀行。これは、企業が突然破綻をする突然死、いわばそういうのを防ぐためにリスク情報開示というものが預金者や投資家に向けて実施されたものでありまして、例えば大災害とか不測の事態が起きない限り、破綻リスク情報が開示されていない企業が一年以内に倒産するなんというのは考えられない。自己資本比率が大丈夫だから、中央青山の監査法人はこう言ったんですが、これは私は問題だと思うんですよ。自己資本比率というのは、これは後で議論しますが、これはそんなに、竹中さん、大事なんですか。

竹中国務大臣 御質問に関しては、自己資本比率が重要かどうかという御質問であろうかと思いますけれども、これは世界的な金融問題に関する議論の中で、御承知のように、金融というのは世界じゅうにつながって連鎖を持っている。そうした中で、一種のリスク受容力としてある程度の自己資本を持っていなければみんな困ったことになるのではないだろうか。そこで、御承知のように、バーゼルの委員会で八%という水準が決められた。

 日本に関しては、世界の中ではいろいろな議論はあるわけでありますけれども、これは国際取引を行うところも行わないところも、アメリカ、ヨーロッパ等では八%の自己資本を求めているわけでありますが、日本では、日本のさまざまな状況を勘案しながら、国際業務はやはり国際ルールで八%、しかし、国内業務に専念しているところは四%というところで健全性の一つの基準を決めさせていただいているというものでございます。

 お尋ねの中央青山監査法人の話は、きょうの通告になかったものですから、今すぐにどういう発言をされたというのはちょっと確認できないんでありますが、これは実務指針にのっとって、会計士自身が独立した立場で、会計士協会が決めた基準にのっとって審査を行っているわけでありますので、そのような審査の基準にのっとってしっかりと独立して御判断をされているということだと思います。

中津川委員 では、もうちょっと議論を深めていきたいんですが、合計一千億以上の公的資金が二回もこの銀行に入って、いわば国のお墨つきだから、県や市町村あるいは一般県民も、投資が目的じゃなく協力しようという気持ちで非常に増資に協力したわけですよ。だから、私から言わせれば、これは県民に対して、広い意味で国民に対して裏切り、使いたくないけれども、犯罪に近いと思うんですよ。

 今、自己資本比率のことを申し上げたんですが、かつて日本の銀行というのは、地方銀行、信用金庫、みんな行員の人がかばんを持って各家庭や商店、企業を回って、おじちゃん、おばちゃんたち、中小企業のおやじさんたちと会話をしながら、もうかってますかと、いろいろコミュニケーションを図って、もうそれこそ冷蔵庫の中身まで知っている、そういうのがうまくいっていたんですよ。おやじさんはしっかりしていないけれども奥さんがしっかりしている、大分たんすの中に預金もあるとか、そういう本当にコミュニティーバンキングというのがあったわけですよね。ホットな関係があった。

 だから、私から言わせると、いつも竹中さんはアメリカ寄りと言って、そうじゃないと言うんだけれども、そういう日本のよきシステムを否定して、みんなアメリカ寄りのグローバルスタンダード、この自己資本比率でもそうだと思うんですけれどもね。

 それで、だから銀行だって自己資本比率云々で気になるからどうしても、それで繰り延べ税金資産つけてもいいよということでしょう。それで、どんどんどんどん整理しておけ、構造改革という言葉で小泉さんはこれをやっているわけだけれども、それでどんどんどんどんつぶれていって、破産して、夜逃げして、競売。もうみんなそういう人たちは、もともと自民党の支持者だったんですよ。そういう自殺がどんどんふえていっている。

 それで、竹中さん、いいですか、ポイントは、自己資本比率というものが、今日我が国の金融機関の健全性を判断するのに最も重要な物差しなんですかという点であります。

 足利銀行のこの債務超過の判断は、この中央青山監査法人、自己資本の一・八倍の一千三百八十七億円という巨大な不良債権があるということは、自己資本比率なんというよりももっと深刻で重要な危険ファクターじゃないですか。自己資本比率を見て、四%を超えているから、判こを押して、もうこれを通しちゃおう。リスク情報開示しなかったというのは、おかしいよ、どう考えても。そして、七百二十七億、一万一千人を超える方々の株式が紙くずになっちゃった。これは、金融庁、責任ないとは言えませんよ、これ。責任ないとは言えない。

 竹中さん、もう自己資本比率なんて取っ払っちゃいましょう。かつて世界で一番から十番まで日本の銀行が占めていたんですよ。今ないじゃない、みんな気の毒に。一番は第一勧業銀行。私、日経の本を見ていて、ああすごいなと思いましたよ。これはみんな、こういうのを取り入れて推進しているのはあなたじゃないですか、違いますか。いかがですか。

竹中国務大臣 委員の御懸念、非常に理解できるところ、我々はもちろんたくさんあるわけでございます。特に、その地元意識に基づいて増資に応じられた方々、そういう方々の心情を思うと、非常に我々も遺憾な思いがいたします。

 それに対してはまた別途、我々としても地元の経済に悪影響を及ぼさないような御議論を、これは後ほど御質問もあるかもしれませんが、直接の御質問であるどういう基準で監督をすればいいのか。我々は、やはり自己資本はある程度の基準は常に持っておいていただきたい。一種の、繰り返し言いますが、リスク受容力のようなものを持っていないと、これはやはり金融機関としては困ったことになります。したがって、四%を切った場合には、我々は、四%を回復してほしい、四%を回復するためにいろんなできることをやってもらいたい、そういう早期是正の命令を出すわけでございます。

 しかし、御承知のように、今の法律の枠組みは、これが例えば四%を切るだけではなくてマイナスになった場合、実は、存続できない、これは破綻だという仕組みになっているわけです。もちろんこれは、我々としては、マイナスになった場合は、すぐ戻してくれ、戻すためのいろいろな措置を講じてくれと。これはできません、もう戻す措置はありませんということで、足利の場合は破綻の申し出を行ってきたということでございます。

 委員がるるおっしゃったことの中で、これは何度も御議論させていただきましたけれども、我々はアメリカの基準を適用するというようなことは考えておりません。とりわけ、地域の金融機関に対しては、御承知のように、不良債権をいつまでにこれだけ減らせというような義務も課していないわけです。間柄を重視する定性的な情報に基づいて、しっかりと地域にコミットした金融機関として活動を続けていただきたい。だから、間柄を重視したリレーションシップバンキングの枠組みで、まず地元の企業を強くしてほしい、その中で銀行みずからも財務の健全化をさせてほしい、そういうやり方で、実は行政は行っております。

 委員の御指摘の中で、やはり自己資本の問題に関しては、一定の基準というのが必要だろうというふうに思います。しかし、監督はそれだけでもちろん見ているわけではございません。さまざまな観点から、いろいろな形で、必要に応じて業務改善の命令を出したり、実際、足利銀行に対しても非常に多くの回数の報告徴求を行って、また業務改善の命令もその直前に出しているわけでございます。

中津川委員 竹中さん、答えていないですよ。

 自己資本比率なんというのは、だから、繰り延べ税金資産というのを入れたらここだって超えていたんだから、何でこの銀行は、繰り延べ税金資産、りそなは認めてこの足利銀行は認めない。ほかの銀行はみんなあなたのさじかげんでやるんですか、これは。だから、答えていない。だから、リスク情報開示をしなくて一年以内につぶれちゃったんですよ。栃木の人たち、みんな元気がないというか、もうどこに恨みをぶつけていいかわからない。今の私の、これはもう一回本当に検討してくださいよ。

 自己資本比率といったって公明性、客観性がないんだから、そんなので勝手に裁量行政が、また金融庁、竹中さんになってスマートな言葉でぼんぼんいっぱいしゃべるからみんな何か洗脳されちゃうけれども、実態はよくいっていない。それも本当にしっかりもう一回やってもらいたいですよ。

 それで、私は、二月七日の民主党の栃木県総支部連合会主催の会合で、優先株を購入されたたくさんの方々、それから経済を憂えるたくさんの方々の前でお話をさせてもらいましたけれども、質問と言ったら、質問というよりも恨みつらみ、怒り、どこに今後のことを相談したらいいかわからない、途方に暮れている。だから、この窓口はやはり国の方も考えなきゃいけないということが一つ。

 そして、今、県民銀行をつくろうとかいろいろな話があります。これは議論してもらうのは大いに結構。

 私、これ一点だけ確認したいんです。まさか竹中さん、新生銀行のような、そういう外資に売り渡すようなことはないでしょうね。新生銀行はこの委員会でも取り上げて、この後、私の後もまた小林議員が専門の立場でがんがんやりますけれども、いいですか、今、瑕疵担保特約で未決着の金額が千百億円もあるんですよ。これが宙ぶらりんで解決しない限り、私、今までやじっていました、ここのところを言うとき、すべきじゃないと思う。簡潔に答えてください。これは市場が決めるから関係ないんだなんということじゃいけないですよ。

竹中国務大臣 我々の裁量という言葉を何回かおっしゃいましたけれども、これはもう委員よく御承知のはずでございます。今の法律の枠組みは、事後的なチェックを行って、ルールでいろいろな監視監督を行っているわけでありますので、我々で裁量の余地というのはほとんどないというのが現状であります。

 例えば、繰り延べ税金資産を認める認めない、これは金融庁の裁量であるかのようなお話、私にはちょっとそう聞こえたのでございますけれども、これはそうではございません。独立した監査法人がみずからの監査指針に基づいてしっかりと判断をしたと。上野理事長自身、その意味で、三月の判断は間違っていなかったということを、これは国会の場でも申し上げているというふうに聞いております。

 二つ御指摘がありました。

 一つは、窓口のようなものをしっかりとつくるべきではないのか。これに関しましては、既に我々は、金融庁としては、特別危機管理開始決定を行った当日、これは十一月二十九日に、既に足利銀行に対して円滑な資金供与等を含む業務適正命令というのを出しておりまして、県内外の支店に相談窓口を設けるなどしてその円滑化に努めるように、債権管理、回収に当たっては、個々の債務者の実情に応じたきめ細かな対応に努めるようにというようなことを発出しております。

 また、関係省庁間で連絡会議をつくっておりますけれども、株主を含め中小企業等に対するセーフティーネット貸し付け・保証等を講じるとともに、足利銀行の株主や借り手等のための相談窓口としては、例えば、これは足利銀行において相談窓口を設置する、県において相談窓口を設置する、政府系金融機関及び栃木県ほか四県の信用保証協会においてこの足利銀行関連の特別相談窓口を設置する、さらに、関係する行政機関による相談窓口、これは所管業種ごとに設置する、つまり、利用者の身近なところで窓口を設置するということを決めております。

 二つ目の受け皿の話でありますが、これは、御承知のように、池田新頭取が着任されて、新たな経営の計画を発表したばかりでありまして、これに基づいてまずしっかりと健全化させる、それで、地元の、地域の円滑化、再生できるものは再生をさせていく、その中で、経営の改善、財務の改善を進めて受け皿を探すということになるわけでございます。

 その出口がどのような形になるのかということは、これは今の時点ではちょっとまだ想定できない問題でありまして、我々としては、まず健全化をしていただきたい、その上で、国民の負担も考えながら、しっかりとした出口を、受け皿を探す。私の個人的な希望といたしましては、これは記者会見等で申し上げておりますけれども、先ほど申し上げました、地域に密着したリレーションシップバンキングの一つの模範になるような、そういった受け皿に引き継いでいただきたいというふうに思っております。

中津川委員 外資には、間接的ながら、やりませんよという意味だとよく解釈しますが、私、ここで一つ、大臣、認識しているか、あるいは委員の皆さん、こういう問題を認識しているか、ちょっと警告の意味で申し上げておきたいことがあるんです。

 今、シティバンクとか新生銀行とか、外資の銀行がどんどん来ている。そこで、プライベートバンキングといって、個人のお金持ち、たくさんいますから、五千万から十億ぐらいまでの。資産を管理すると言って来るわけですよ、ふやしますよと。銀行という名前がつくと、日本人というのは安心するんですよ。メリルリンチなんか、これは撤退しましたけれども、証券会社というとちょっとうさん臭いんじゃないかということで、日本人はそんな気持ちがあるかもしれない。

 それで、この個人資産の運用で、今、為替差損がすごいでしょう。デリバティブとか、事前によく説明しないで、今物すごい損をしている、五億預けて四億八千万なくなっちゃったとか。皆さんのところなんか、そういう相談来ないですか。今、私、そういうようなものが社会問題にならなきゃいいなと思っているんですよ。これはしっかり金融庁も、そういう事態を把握してください。強引ですから、商売のプロですから。今、リレーションバンクと言っていますけれども、プライベートバンキング、おじいちゃん、おばあちゃん、みんな言ってくるわけですよ。物すごい損をしている、事件が出ている。これを一つ警告しておきます。

 もっと短くやるんでしたが、きょうは、歯科医師連盟不正事件について、こっちがメーンでありますので、参りたいと思います。

 今月二日、ちょうど二週間前ですが、全国の歯科医師約六万四千人が加入します社団法人日本歯科医師会、日歯ですね、政治団体であります日本歯科医師連盟、日歯連が政治資金を不正に処理している疑いが浮上しまして、東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑で、東京・千代田区の日歯連事務所や日歯連の代表を務める臼田貞夫日歯会長の自宅三鷹、及び会計責任者である、内田裕丈さんというんですか、常務理事の自宅、これは大田区、関係箇所を捜索しました。

 具体的には、二〇〇一年と二〇〇二年の収支報告の中の、歯科医師出身である吉田幸弘前衆議院議員、当時は衆議院議員でありまして、寄附について、吉田議員の政治資金管理団体である幸進会や吉田議員が支部長を務めていた自民党愛知県衆議院比例区第四支部ですね、収支報告書と記載が食い違っているという容疑、これが内容だそうです。報道によります。

 まず、二〇〇一年の五月に、党支部の収支報告には、日歯連から一千万円の寄附を受けたことになっていますが、日歯連の方には記載がない。同年八月には、日歯連の報告書にある三千万円の幸進会への寄附が幸進会の方には記載がない。そして、翌二〇〇二年五月と八月には、逆に、幸進会の収支報告書にはそれぞれ五百万ずつ日歯連から寄附を受けたとの記載があるにもかかわらず、日歯連側には記載がない。以上四件、五千万円について食い違っているというわけであります。

 先週十二日の予算委員会で、佐々木委員の質疑でも取り上げられた問題ですが、皆さん御存じのように、日歯連というのは自民党の大スポンサーですよ。二〇〇二年の政治資金収支報告書によりますと、国民政治協会へは四億六千三百万円で断トツ。あの例の日本医師連盟、二億三千三百五十万円ですから、倍ですよね。

 ですから、日歯連と、これは今、吉田議員の、今回残念ながら落選されておりますが、一政治家との間でのお金のやりとりの問題ではなく、実はもっと根が深い背景があるのではないか、大物政治家が絡んでいるんではないかと言われているわけであります。私も、日歯連というか、日歯と自民党とのつながり、今まで決して表に出なかったこの両者のやみの歴史といいますか、ここでやはりはっきりさせることは政治不信の払拭に必要だと思い、今回、党を代表して質問をさせていただいているわけであります。

 今、検察が捜査中でもあり、よくこういう場合ですと、答弁する方は、今捜査中でありますのでとか、国会の質疑にはなじまないというようなことがあると思いますが、国会は、これは最高機関ですから、この役割がありますから、ぜひ誠意ある明確な答えを国民にひとつ聞かせてもらいたいと思います。

 まず、私、申し上げたいんですが、皆さんたち、今、現場の歯医者さんがどんな状況で、どんな思いで働いて、今回の事件をどう思っているかというのを御存じかなと思うんですよ。

 それで、私の地元は東京・江戸川なんですが、何人かの歯科医師の友人にお話を聞きました。参考になりますので、これはある種の象徴的な話だと思いますので、ちょっとお話をさせてもらいます。

 その方は、スタッフ全部で三人、どこにでもある一般的な歯医者さんです。経営は本当に大変みたい。橋本内閣のころ、医療費の自己負担比率が一割から二割に上がりました。そのとき厚生大臣は小泉さんなんですよ。そのあおりで、今まで月に二百四十件くらいあった診療件数が二百件に減ってしまった。次に、小泉政権になってから、自己負担率が二割から三割に上がりましたよね。これはみんな小泉さんが絡んでいる。二百件が百六十件になった。そして、ついには百三十件まで落ち込んだというんですね、これ。ピークの半減。平均的には百八十件から二百件ぐらいが経営のラインだそうなんですが、本当に経営危機になってしまった。大変プレッシャーになって、何かそのころを今思い出すと、随分酒を飲んでいたなというふうに思うんですね。この方は、本当に患者を大切にして、研究熱心でまじめで、いや、経営センスもあります。私が見てそう思っております。

 世間一般に歯科医というと、高収入の代名詞みたいに思われて、何か、豪邸に住んで、外車に乗って、海外にも行って、別荘を持つというイメージがありますが、実際は、開院するのに膨大な初期投資がかかって、駅前の一等地に自前の医院を持つための賃貸料とか高価な医療器具の購入とか人件費なんかで、本当に借金漬けなんですよね。だから、それで不安定な診療収入でやっているわけですから、零細企業だなというふうに私は思いました。

 ところが、最近は、どうも様子が変わってきたと言うんですよ。診療件数がふえてきたと言うんですよ。景気がよくなったのかなと、小泉さんが言ったから、あれと思って、私、現場を大事にするものですから、そう思ったら、違うんですって。

 今まで診療代が値上げになったために歯医者に行くのを我慢していた患者さんが、症状が悪化してどうしようもなくなってリターンしてきたと言うんですよ。だから、こんなにはれちゃって、何人も切ったのがいると。だから、時間がたてば、当然症状は進んで費用もかかるということでありますね。

 先ほどの診療件数の話でまた言うと、経済が悪いという、これも私は現場で感じたんです。最初の二百四十件の場合、国保が百三十件、社保が百十件くらいの内訳だったのが、百六十件のころは、国保が百十件、それから社保が五十件だったそうです。だから、ほとんど社保が減少しているということですね。やっぱり不況が深刻だということが、私、まさか、この歯科医の問題を現場で調べていて、ここにも経済の影響があるんだということを改めて知ったわけであります。

 昔懐かしい今治水が、ある薬局では売れたといって、奥から引っ張り出して、一日三本売れたことがあると言っていました。だから、歯医者さんも、皆さん本当に、内科だったらやっぱりお医者さんにはすぐ行かなきゃいけないけれども、歯医者さんは命にそんなに関係ないから我慢する、こんなようなことだったんですね。

 いろいろ長いお話をしてきました。こういった経営をしている歯医者さんが大多数である中で、これからが大事なんです、毎年莫大な献金を政界にし続けている日歯の体質が、良識あるまじめな歯医者さんの間で今非常に問題になっている。ここなんですよ。

 日歯は自民党ばっかり向いていて、自分たちが生活不安を考えながらも一生懸命医療をやっているのに、日歯への会費、年間、もう何万、何十万になる。そのお金が一握りの幹部によって非常に不透明な使われ方をしていると現場の歯科医師は怒っていますよ。

 今回、臼田会長、内田常務理事、問題になっていますが、多分こういう現場を知らないと思うんですよ。現場を知っていたら、そんなことしませんよ。こんなカウントのつけ方はしていない。権力者にすり寄るばかりで、患者の方を向いていない。

 そこで、伺いたいのは、小泉政権、今申し上げたように、こういう実態というのを、日ごろ改革改革と言っておりますが、厚生大臣、知っていらっしゃるのかなと。もう一つ今質問しますので、これは後でまたまとめて答えてください。

 そこで、実は、先週の予算委員会で、日歯に関する小泉総理の答弁はちょっと認識がおかしい、こう思います。

 総理は、自民党と日歯の癒着を正さないで何が改革かという質問に対して、それは、歯科医師会の先生方は自民党を応援する人もいるでしょう、中には共産党、これは、共産党の議員さんが質問しましたから、そう言ったのかもわかりません。応援している人もいるでしょう、それの実態を私ども調べようがないんですよ、個人の自由だから、全部が、歯科医師会の会員が全部自民党を応援しているとは私は思っていませんねとはっきりと答弁しました。

 確かに、歯科医個人の応援している政党はそれぞれですよ。しかし、自動的に組織として自民党の応援団となっているんじゃないですか。歯科医個人個人の意思を無視されて、何億という金を自民党に献金しているじゃないですか。いかがですか、これは。二つ答えてください。こちらの方は福田官房長官。

福田国務大臣 団体であろうが個人であろうが、ルールに基づいて党に献金をするということは、これは認められていることであります。また、党のことについて政府として何か見解を述べろというのは、これは申し上げる必要はないんではないかと思っております。

中津川委員 調べたら、日歯会に入会すると、自動的にそこの支部、都道府県、それから政治連盟の日歯の連盟に、これは入っちゃうんですよ。

 江戸川、これを調べたら、入会金が二十万、それで年会費八万とか、それから会館施設費が百三十万で、最初に二百五万払うんですね。それで、都歯科あるいは日歯関係にもそれぞれ二十八万、十七万払っているわけですよね。このお金が自動的に、お医者さんになってそして歯科医師会でこの入会を地元で申し込むと、全部、組織に入っちゃう。だから、構造的に自民党の下部組織になっているということ、これは明らかじゃないですか。

 歯医者に行く人、自民党の人だけですか。民主党だって行きますよ。他党の人だって行きますよ。多分、小泉さん、そうやって野党だったら言うんじゃないですか、これは。皆さん行くんですよ。自民党だけのものなんですか、歯医者さんは。いかがですか。

笹川委員長 中津川君、どなたに質問ですか。

中津川委員 官房長官。

笹川委員長 福田官房長官。

福田国務大臣 お答えするまでもないことですね、これは。

中津川委員 誠意ないね。これは、国民の皆さんに後は判断してもらいましょう。私が言うのがナンセンスな質問か、今やじっている人、そして今、福田さんが答えたのが正しいのか、それは皆さんに判断してもらいましょう。本当は総理の考えが聞きたい。だけれども、きょうはいないからしようがない。

 では、先ほど申し上げました自民党と日歯の間の関係について申し上げますが、報道によれば、日歯連は、パーティー券の購入などを含めると、政界に提供した総額が三年間で二十二億円です。前述の吉田前議員は一億一千七百五十万円、それから前日歯会会長である中原参議院議員で八千二百九十七万円、続いて井上裕元参議院議員が四千七百万円、加藤紘一衆議院議員が四千二百二十万円など。

 大したものですよ。主に厚生労働族と言われる自民党議員を中心に、見事に献金がされています。これは日歯連からの報告書なんです。今まで、これ以外にまだ表に出ていないお金があるだろうと国民のみんなは今報道を見て思っていると思いますよ。

 さらに問題なのは、私は政治献金を悪とは言っていないんです、これは政治資金報告書に適正に処理をして活動すればいいんだけれども、しかし、この金額というのは、このシステムというのは、到底国民の理解を得るものじゃない。

 特に、今回、第二次小泉内閣の閣僚の皆さん、ほとんど受け取っていらっしゃるわけですね。名前を挙げるのはちょっとはばかるんですけれども、あえて申し上げます。麻生大臣、谷垣大臣、河村大臣、坂口大臣、亀井大臣、石原大臣。副大臣では、内閣府の佐藤副大臣、中島副大臣、山口総務副大臣、逢沢外務副大臣、阿部外務副大臣、山本財務副大臣、原田文科副大臣、稲葉文科副大臣、坂本経済産業副大臣。オンパレード。

 特に、日歯の所管大臣である坂口大臣、そして政治資金を扱う麻生大臣の御両人のお名前があることをちょっと残念だなと思うんですね。

 坂口大臣の献金には、一昨年十一月六日の坂口力先生と医療福祉を語る夕べの会費として百万円が含まれておりますね。本来、保険者、被保険者、そして診療者から中立であるべき厚生労働大臣が、一方の当事者からのパーティー購入で、どうかなと思われるのでありますが、大臣、いかがですか。

 また、麻生大臣、御自身も日歯から献金を受けていらっしゃいますが、今回の収支報告書の不備についてどう思われますか。

 コメント、それぞれお願いします。

坂口国務大臣 前半の、全体で非常に経営が苦しくなってきたというお話につきましては、私も、それは事実、全体にそうなってきているというふうに思います。

 これは一つは、歯科医師の皆さんが非常にふえてきた。数がふえたものですから、お一人お一人の経営が非常に厳しくなってきたということもあることも事実でございまして、こうしたことも、今後どうしていくかということがございます。これは全体として考えていかなきゃならない問題です。

 それで、私の名前が出ましたけれども、いわゆる歯科医師からの政治資金という形では、私は今までいただいたことはございません。ただ、パーティーのときにパーティー券を若干お買いいただいているということは、これはございます。しかし、最高額、これは何に対しましても同じですけれども、二十万を上限ということにいたしまして、それ以上のパーティー券を買っていただいておるところはございません。

 したがいまして、そこはよくお調べをいただきましたら、そのとおりになっているというふうに思っております。

麻生国務大臣 今御指摘の点でございますけれども、この総務省というところは、委員よく御存じのとおりなんだと思いますが、政治資金規正報告書の提出を受けてその内容を公表するということと、政治資金収支報告書を閲覧に供するというのが、私どもに、総務省に与えられておりますいわゆる権限でありまして、いわゆる内容を立入検査する等々のものはできる権限はなく、これは形式調査ということになっておりますのが私どもに与えられております権限、この点だけはまず最初にぜひ御理解をいただきたいところであります。警察とか法務省とちょっと立場が違います。

 それから、政治資金規正法上、政治活動に関します寄附行為に関しましては、公益法人であるか否かとか、私企業であるか否かということには制限はない、これも御存じのとおりのところでありまして、特段の権限の制限もないというところも御存じのとおりのところだと存じます。

中津川委員 厚生労働大臣の今の答弁で、一つつけ加えさせてもらいたいんですが、これは過当競争じゃないんですよ。先ほど申し上げた人も、近辺にはほとんど競合がない。ちゃんとリフォームして、設備も非常によくしてやっている。やはり景気が悪いということ、構造的なものがあるということ、私はそう思っていますので、大臣、ひとつ現場をよく見ていただきたいというふうに思います。

 それと、麻生大臣。麻生大臣の献金は、私の方の資料では十四年に百万というのがありますが、それ以外は表も裏もないですね。

麻生国務大臣 甚だ、人が疑われるように持っていかれようとしている気持ちがわからぬじゃありませんけれども、政治資金を担当しております私どもの秘書に一回調べさせてみないかぬところだと思いますが、書類を提出いたしておりますので、その提出いたしておりますもの以外にはございません。

中津川委員 安心しました。

 これだけ自民党に偏った、国民が払った医療費ですよね、それが偏った不均等なこの資金を見たら、一般国民は、もっと診療費安くしてくれよ、そう思いますよ。

 そこで、具体的な問題に入っていきたいと思うんですが、吉田前議員と日歯の、今、癒着関係が政府の補助事業とかかわっているんではないかという疑惑について何点かお伺いします。

 報道によれば、経済産業省の二〇〇一年度と二〇〇二年度の情報基盤整備事業、つまりIT関連の委託事業に参画した下請企業の中に、吉田前議員と極めて関係の深い二社が含まれていた、日歯もその事業に一枚絡んでいたということが言われております。

 その委託事業は、大変名前が長いんですが、保健医療データビジュアライゼーション事業というんですね。二〇〇一年度が総委託額七億二千二百七十万円、二〇〇二年度が六億六千万円。事業目的というのは、医療機関の経営効率化とか経営診断とか、いろいろなシステムのそういう開発ということでありまして、二〇〇二年度にもこれに歯科用の電子カルテの調査、設計、開発等が追加されて、どっちにしてもシステムを開発して経営効率を実現しようというプロジェクトであった。

 そこで、二〇〇一年度、事業を、まず財団法人イメージ情報科学研究所、イメラボに委託されました。このイメラボは、一九九二年三月の通商産業省の指導のもと、関西において、学界の協力を得て民間企業によって設立された公益法人ですが、日歯はここから七千九百万円、歯科保健医療ネットワークシステム開発実証事業を受注します。そして八百万円を管理費として取り、七千百万円でさらに歯科専門商社に下請に出して、そこからさらに下請に出されて、日本テクノ・ソリューション、JTSという会社が受注したという流れはこうですね。

 また、二〇〇二年度の同委託事業も同様にまずイメラボに委託されて、今度は日歯を介さずに歯科専門商社に再委託され、さらにコンピューター会社を通じてオー・アール・シーという会社に下請に出されています。

 経済産業省から始まって、イメラボ、日歯、商社、JTS、オー・アール・シーと、説明するだけでも一苦労でありますが、まず、その流れが事実であるかどうか、お答えください、経済産業省。

中川国務大臣 平成十三年と十四年、これは今委員御指摘のように、ちょっと長い名前でございますが、e―Japan計画に基づきまして、歯科医療業務の高度化ということでこの事業をスタートしたわけでございます。平成十三年、十四年に財団法人イメージ情報科学研究所という、これは民間の財団法人でございますが、ここを通じて日本歯科医師会等にお金が流れているということは事実であります。

 なお、十三年と十四年とちょっとシステムが若干変わっておりますけれども、先生御指摘のとおりだと思います。

中津川委員 この私の資料、図にしますとこういう流れでありますが、疑問なのは、二〇〇一年、何でイメージ情報科学研究所が日歯会にこれを出すんですか。日歯会が、こんな情報処理やデータ送信、こんなものやっていないのに委託されるのは、これはおかしいですよ。いかがですか。

豊田政府参考人 先生御指摘の保健医療データビジュアライゼーション事業でございますが、歯科用のレセプトのオンライン化、それから電子カルテということでございます。実現に当たりましては、情報技術に関する高度な能力と医療現場に関する豊富な知見、両方が必要であるということでございます。

 イメージ情報科学研究所は、これまでそういった医療関係の情報化事業、多々取り組んできておりまして、そういう意味で、事業目的を達成する上で、委託先として最も適当であるというふうに考えたものでございます。

中津川委員 今のその答え、わかりますか、皆さん。何で医師会に頼んだかと言うんですよ。医師会がそういう情報とかそういう機能を持っているんですか。そこで抜くというふうにみんな思うじゃないですか、これは。だめだ、そんなのじゃ。

豊田政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、医師会にこのイメージ情報科学研究所から請負に出してございます。この今申し上げたような二つの事業、レセプトの情報化、電子のカルテといったようなものにつきましては、歯科医療の実際の現場で実証、評価をしていくことが必要である。さらに、こういったものができ上がった後に普及、活用が働きかけられないといけないということでございます。

 そうした観点から、この日本歯科医師会は、日本の歯科医師の過半が、約七割ぐらいだというふうに伺っておりますが、参加をしておられる団体でございますので、事業を統括していただくのにふさわしい団体だというふうに考えたと伺っております。

中津川委員 全然満足しない答弁だね。少し次に進みたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、JTSとオー・アール・シーの二社が、吉田前議員と非常に深いつながりがある会社というのが今疑惑を呼んでいるわけですよ。

 調べてみたら、JTSですが、この会社は、タイミングのいいことに、経済産業省が事業を始める直前の二〇〇一年四月に設立されている。これだけでも怪しい。何と、同社の代表取締役が、吉田前議員の資金管理団体である幸進会、あの団体の二〇〇二年の事務担当者だったんです。さらに、吉田議員が代表者である自民党支部の会計責任者でもあったというんですから、もうこれは真っ黒ですよ、ずぶずぶの関係、そう思いますね。

 一方のオー・アール・シーはどうかというと、こちらもすごいんです。一九九〇年二月に吉田前議員が代表取締役として設立されて、公設秘書だった奥様と父親が役員について、経済産業省からの事業を受注して、二〇〇二年十月になると、世間の目を気にしたのか、本人は監査役に身を引いて、弟さんを代取にしていますね。

 そこでお伺いしたいのは、これらの事件のこの流れ、実態、経済産業省は把握していましたですか。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

豊田政府参考人 イメージ情報科学研究所から、十三年度には日本歯科医師会、十四年度には日本歯科医師会及びモリタという専門の企業に請負契約を結んだことは、委託契約に基づきまして、届けによって承知をしております。ただ、そこから先の請負企業の選定につきましては、当省への届け出の義務は必ずしもございません。

 以上でございます。

中津川委員 何を言っているんですか。補助金を使った委託事業においては、委託先の管理費の内訳までは把握していても先がわからないなんて、そんな委託額やそのときの下請先なんて一切関知しないという話でしょう、それは。ちょっとまずいんじゃないですか、それは。補助金は税金ですよ、税金。その使い道というのは委託先を通じて把握すべきじゃないですか、明確に。

 大臣、今回は特に政治家の関係会社が受注していることがあるの、これは。いかがですか。

中川国務大臣 今回は、先生御指摘のように、その財団法人から日本歯科医師会等々、それぞれ得意分野ということもございまして、何段階かに仕事が請け負わされているわけでございます。後で御質問が出るのかもしれませんけれども、その吉田議員のかかわりと今回のことの作業とは直接的には何ら不明朗なものはないというふうに私は認識をしておりますけれども、今後、こういうことが誤解を招くということもまた防がなければなりませんので、省内ではこういうやり方をできるだけわかりやすくやっていくように検討していかなければいけないというふうに考えております。

中津川委員 この二件の事業の経緯についてちょっとお伺いしたいのですが、二件が受注したのは、僕は偶然じゃないと思われるんですね。どうも吉田前議員が日歯とともに動いた形跡がある。

 報道によりますと、二〇〇〇年七月から八月、医療歯科分野でIT化がおくれていたということをちょっと憂慮した日歯が、予算獲得を画策して、吉田前議員と相談して、数回にわたって同議員とともに経済産業省に対して上記事業の予算獲得の陳情を、これは行ったことがあるんじゃないかと今問題になっているんですが、これは事実ですか。

豊田政府参考人 吉田前議員からは、当省の当時の商務情報政策局長に対しまして、歯科分野における情報化についての説明を求められました。平成十三年春から初夏にかけて、担当いたしました課長、職員が数回、同議員と意見交換を行っております。

 ただ、これはあくまで一般的な意見交換でございまして、予算獲得のために陳情というような性格のものではなかったと承知をしております。

中津川委員 もうちょっとその事実関係を知りたいんです。これは核心なんですよね。今、意見交換と言いましたけれども、まあ言葉は言いようで、その実態を知りたいんですよ。

 要するに、今もう一回確認したいんですが、日歯と吉田議員の面会や陳情があったんですね。あったかないかだけ。

豊田政府参考人 ございました。

中津川委員 その日時、省内で対応した人物、その内容をちょっと説明してください。

豊田政府参考人 平成十三年春から初夏にかけてということでございますが、意見交換をしたことは事実でございますけれども、具体的日時については記憶にないようでございます。ただ、数回ございました。

 それから、担当いたしましたのは商務情報政策局のサービス政策課とサービス課でございました。吉田前議員と意見交換を行いましたのはサービス政策課の課長でございます。

中津川委員 内容を、今もうあれですよね、どういうことがあったかというのは、これは知らせてもらえますよね。意見交換じゃだめですよ、そんなの。報告してください、報告。

豊田政府参考人 あくまでも一般的な意見交換だというふうに理解をしておりますけれども、同議員から、既に経済産業省としては進めようと決めておりました医療の情報化、レセプトあるいは電子カルテのオンライン化につきまして御質問があったと聞いておりますけれども、予算獲得に向けた陳情というものではなくて、一般的な理解を促進するための議論であったというふうに承知しております。

中津川委員 何を言っているんですか。経済産業省の事業が始まる前の年の夏といえば、概算要求があって、来年度の予算の骨格が見えてくる時期でしょうよ。だまされないですよ、そんなの、我々。その時期に、自民党のトップスポンサーである日歯と関係の深い自民党政治家が介入してくる。そして、めでたく日歯は事業予算を獲得しているんじゃないですか。政治家といえば、自分の金庫番とか自分が社長を務める会社が事業を受注する。これは大問題ですよ、大問題。大変なことですよ、これ。

 大臣、いかがですか。

中川国務大臣 あくまでもこれはe―Japanということで、歯科診療事業というんでしょうかの高度化、IT化という観点から、民間の財団法人に、経験があるということでやっていただく、そしてまた、実際には歯科医師の先生方、病院がそれを活用していただくということでやったわけでございまして、先ほどから私も申し上げているように、いろいろなところを通って行っているわけでございます。

 そういう中で、我々としては、あくまでもe―Japan計画に基づいて、これが必要であるという判断で進めてきたところでございまして、逆に、国が過度に介入してあれこれ指示をするということも、こういう御時世でございますからいかがなものかということも考慮に入れてやってきたわけでございますが、しかし、先生の御指摘も踏まえて、今後、こういうものについては、より透明性のある、また非常にわかりやすく御説明ができるように、内部で早急に検討していきたいというふうに考えております。

中津川委員 さっきの質問、やはりこれは答えてくださいよ。中身はどういう内容だったんですか、中身を。いいですか、今話題になっているのは、吉田前議員や日歯から、最後はこちらに金を回すようにといったような要請は受けてなかったんですかと。そういう疑惑を払拭するような中身であればそれでいいわけですよ。

豊田政府参考人 吉田議員からのお問いかけで御説明を申し上げましたのは、今大臣申し上げましたような、e―Japan計画で進めております医療の情報化、具体的にレセプトも含めた医療の情報化についての一般的な意見交換だというふうに伺っております。

中津川委員 その意見交換の中身を見せてくれと言っているの。もうちょっと詳しく意見交換の、いつも役人がいて、書いていますよね。だから、それをここで私たちに見せてくれと言っているんですよ。それをちょっと。

豊田政府参考人 先生からは、医療の情報化について、e―Japan計画でどういうふうに位置づけられているのか、具体的にどのようなものが重要なのかというようなものについて御質問があったことに対して、経済産業省の考え方、日本政府全体としての考え方というものを一般的に御説明したというふうに理解をしております。

中津川委員 それは、記録はありますか。記録があったら開示してもらいたいんですけれどもね。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

豊田政府参考人 記録はないというふうに理解をしております。

中津川委員 何が記録ないですか、そんなの。皆さんいつも来て、役人は書いているじゃないですか。必ず二人で来るようになったんでしょう。それはだめですね。

 記録ないって、これは本当に記録ないの。ちょっと、もう一回聞いて、これ。逃げているの。記録残すために記録に来ているんでしょう。

笹川委員長 豊田商務情報政策局長、記録があるのかメモがあるのか、はっきり。

豊田政府参考人 私どもが先生方のところに伺うときにも、特にメモをつくらないことは多々ございます。今回もそういうものの一つだったというふうに伺っております。

中津川委員 だとしたら、経済産業省、怠慢ですよ、これは。その程度のものだったという判断でしょう、これは。本当にあきれ返りますね。経済産業省というのは事前にJTSとかオー・アール・シーが受注することを知っていたのかどうか、今これが話題になっているじゃないですか、問題に。

 大臣、経済産業省は本当にJTSやオー・アール・シーの名前や内情というのを知らなかったんですか。

中川国務大臣 そういういろいろな関連の、特に財団法人、それから日本歯科医師会ですか、それからもう一つ医療関係の問屋さんがありますけれども、そこまでは我々も把握をしておりました。ただ、その先のJTSですか、そういうようなものも含めまして、それについては我々としては報告を求めることもいたしませんでしたし、求める義務もございませんでした。

 なお、吉田前議員からこれに関しての直接的な働きかけなりなんなりがあったという報告は、私自身、受けておりません。

中津川委員 これは、今、そこから先、全然話が進みません。吉田前議員と、それから日歯の臼田会長、内田常務理事の当委員会への参考人招致を求めたいと思いますが。

笹川委員長 理事会で協議します。

中津川委員 どうも経済産業省は逃げ腰ですよね。

 日歯についても、これは異常に不透明な資金の動きが指摘されているんですよ。日歯の報告書には載っかっていて、渡った方、もらった方の議員なりそういうところが載っかっていないというのが、これはもう物すごいたくさんある。こういうことというのは珍しいんじゃないかと思うんですね。

 例えば、日歯連が二〇〇〇年から二〇〇二年にかけての下部組織、東京歯科医師政治連盟、私、東京でありますからちょっと調べてみたら、配分したとしている資金の大半が東歯連の収支報告書に載っかっていない。その合計が約一億四千万円に上ると。

 坂口大臣、所管の業界団体がこのような極めて不明朗な会計処理をしているということ、これ、どう思われますか。

坂口国務大臣 御承知のとおり、日本歯科医師会は、これは公益法人でありまして、私どもが関係しているところでございますが、政治連盟の方は、これはもう政治団体でございまして、我々の範囲外でありまして、そこは明確にいたしております。

 ただ、我々として注意しておりますのは、歯科医師会とそれから医師連盟とが混然一体となってはいけない、そこは明確に区別をして、きちんと整理をしてもらわなければいけないということを今までからも申し上げてきたわけであります。

 ちょうど三年ぐらい前でしたかね、医師会の問題が出まして、そのときに、この歯科医師会に対しましても、医師会に対しましても、そこはきちんと明確にしなければいけないということは申し上げているわけでございます。

中津川委員 今、大臣のお考えのように、日歯と日歯連、これが違うものだということであれば、きょうこんな委員会、私質問する必要ないんですよ。だって、これ、代表者は同じじゃないですか。会計責任者も同じじゃないですか。おまけに住所まで同じ。おまけに、東歯連だって同じビルじゃないですか。これはもうあきれ返っちゃいますよ。厚労大臣がそれだけしっかりした考えを持っている、しかし実態は違う。日歯連というのは、そうすると、日歯が好き放題に政界に工作するとか、そういうことの隠れみのと思われたって仕方ないんじゃないですか。これ、みんな同じじゃないですか。

 厚生労働大臣、たびたび恐縮ですが、いかがですか。

坂口国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、これは歯科医師会だけではなくて、医師会にいたしましても、ほかの、薬剤師会に対しましても、すべて申し上げているわけでありまして、そういうふうに、できるだけ早く改善をしてもらうように、平成十三年でございましたか、通知も出し、皆さん方にひとつ改革をしてもらうようにお願いをしたところでございまして、しかし、それ以降もなっていないということであれば、もう一度またきちんとさせなければいけません。そこは明確にいたします。

中津川委員 この日歯連というのは、自民党への献金額が多い、断トツだということでも非常に目立つんですが、中身がこんなごちゃごちゃになっている。もうこれは、あいた口がふさがらないですね。

 それで、ここに資料を、ファクシミリ通信で「“歯科記者会”加盟各社御中」ということで、二月十日に中原爽参議院議員がオープンにファクスで出されたものでありますが、ちょっと読んでみます。

 冠省 日本歯科医師連盟の政治資金提供について、平成十二年から平成十四年の三年間に、私が“八千二百九十七万円”の資金提供を受けているとの某日刊紙(九日夕刊)の報道は誤りであります。このことについて、抗議の趣旨を申し入れました。

  私の政治資金管理団体の“中原爽社会保障研究会”は、この三年間について、日本歯科医師連盟からの政治資金の提供は受けておりません。

と書いてある。受けておりませんと。

  上記金額は、日本歯科医師連盟が関係擁立議員の支援のために設立した“中央後援会”の政治活動と会運営の経費であり、私の政治資金管理団体へ資金提供されるものではなく、私が直接、この経費の収支・運営に関与するものでもありません。

と。ありませんと言っている。

  “歯科記者会”加盟の各位には、

と、こういうふうに書いてあるわけでありまして、これ、私が調べてみましたら、日歯連報告から出てくる議員のこれを見たら、本当にすごいんですよね。いろいろあって、きょう、これは皆さんには資料として配らないでおいたんですが、その中で、中原爽さんのは、私が調べたのもやはり日歯連からの報告で、これは平成十三年で八千二百九十七万あるんですね。これは、中原参議院議員の名誉にもかかわります。

 この中原さんというのは大変な方で、臼田さんの前の日歯会の会長、日歯連の会長、かつ参議院議員、かつ日本歯科大学理事長ですか、もう全部やっている、大変な人でありまして、ぜひ御本人からお話を聞きたいということで、中原参議院議員の参考人招致を求めたいと思います。

笹川委員長 理事会で協議します。

中津川委員 時間がだんだん押してきましたが、きょう、いろいろ質問をさせていただきました。

 小泉改革というのは、中川大臣、今回、イメージ情報科学研究所というような財団法人、こんなものを本当に変えていく。こんなものを舞台にしてこういう不明朗な金の流れを生じるのは、これは小泉内閣と逆なんじゃないかと思うんですよ。こんなもの、もうきょうにでも廃止すべきだと思うんですが、いかがですか。

中川国務大臣 e―Japanという非常に大事な政策の遂行は、小泉内閣の大きな柱でございます。他方、小泉総理は常に官から民へ、国から地方へということを言っているわけでございまして、この財団法人も、今から十数年前に大阪の経済界の方々が中心になってつくられて、実績を残しているところでございますから、いろいろ御指摘があって、我々としても省内で検討をし、見直さなければいけないということは先ほど申し上げましたけれども、この財団法人そのものは立派に成果を果たしているというふうに理解をしております。

中津川委員 最後に、坂口大臣、私が聞くところによると、この歯科医師会というのは、要するに、小泉改革が進める例えば医療費の患者負担の増加とか株式会社一部参入とかということと、これは意向に反していますよね。一生懸命金を積んで、何にも実にならないし、おかしなことをやっていると思いますがね。

 それはそれとして、大臣、歯科医療改革というのを、最後、どういう考えで進めておられるか、これを聞いて質問を終わりたいと思います。

坂口国務大臣 歯科医師の皆さん方ともいろいろと御相談を申し上げておりますが、歯科医師の今後の問題につきましては、八〇二〇運動というのを展開いたしておりまして、できるだけ自分の歯を最後まで残していく、八十歳になって二十本残すような状況にするのが望ましいということで、今、八〇二〇運動というのをやっているわけでございます。そういうふうにして残していくということは、人間の体にとりましては非常にそれはいいことでございまして、介護等もそれによって受けなくてもよくなったという人もあるぐらいでございますから、私は、この歯というのは、ただ体の一部だけではなくて、体全体に大きな影響を与えるものだというふうに思っております。

 そういう意味で、ぜひこの運動を皆さんと一緒に展開していきたいというふうに思っておりますが、それをやっていこうということになりますと、現在の歯科医療の問題は、これは治療中心になっているわけであります。治療中心でやっておりましてはこれはいけないわけでございますので、予防的な措置をそこにどう導入していくかということが今後の大きな課題になると思います。

 虫歯の数が減れば、これはまた先生方の、現在の状況でありますと、診療の内容にもかかわる話でございます。したがいまして、その辺のところを、予防を取り入れた形での今後の歯科医療のあり方というものを検討していこうというので、今話し合いをさせていただいているところでございます。

中津川委員 ありがとうございました。質問を終わります。

笹川委員長 これにて中津川君の質疑は終了いたしました。

 次に、鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。

 きょうは、日本の予算そのものの仕組みに限って御質問したいと思います。

 今政府が管理している資金は、一般会計、特別会計含めて四百五十兆円近いお金が国内的にはありますし、また、外為の世界で百四十兆円という、平成十六年には新たな枠を拡大して、大変そういう巨額の資金を政府が管理しているわけですが、その実態と管理の仕方の適正性について御質問をしたいと思います。

 前に谷垣大臣はこの場で、わかっている人が質問してわかっていない人が答えると言っていましたが、予算については私も余りよくわかっていないので、同じレベルでの質疑になるかと思います。

 初めに、外側の方の外為の方の話からしたいと思いますが、先ほど中津川さんからもありましたし、平岡委員からも先日ありましたけれども、大変巨額な今円売り・ドル買いをしているわけでして、一月だけでも七兆円、累積で外貨準備が、多分、直近の数字で七十八兆円ぐらいになっていると思いますが、印象としては、いつも円を売ってひたすらドルを買うということをずっと続けているような気がしますが、逆のことをやったことも最近あるんでしょうか、十年間ぐらい振り返ってみて。逆にドルを売って円を買うということは、十年ぐらいの間にありますでしょうか。

谷垣国務大臣 最近十年間では六回、円買い・ドル売り介入を行っておりまして、平成九年十二月に三回、平成十年四月に二回、それから平成十年六月に一回で六回であります。それで、六回の総額は四兆千七百五十四億円というふうになっております。

鮫島委員 六回あったとしても、円を買った方は四兆円、逆に売った方は多分それをかなり上回る額で、それが差し引きで今七十八兆円という巨額な外貨準備になっているんだと思いますが、これは、ドル安傾向の中ではかなり為替の差損が出るのではないか、こんな七十八兆円も持っていて、為替の差損が出るのではないか。一方で、だけれども、米国債は日本の国債よりも利息がいいから運用益も出ているはずだ。この為替の差損と運用益は、直近でそれぞれどのぐらいになっていますでしょうか。

谷垣国務大臣 まず、差損の方ですが、平成十五年度末で七兆七千九百二十八億円の見込みであります。それから、外貨資産の運用からの運用収入は、これは今までの累計が約二十八兆円でございますが、平成六年度から平成十五年度までの十年間の累計見込み額が十七兆というふうになっております。

鮫島委員 今のお話ですと、差し引きで十兆円ぐらいの利益が出ているという話になりますか。

谷垣国務大臣 二十八兆利益が今まで累計であるわけですが、そのうち一般会計繰り入れというのを十七兆やっておりまして、そしてその残りが十一兆、こういうことが今の利益でございます。

 それで、差損というのは、さっき申しましたように、七兆七千九百二十八億ですから八兆弱、こういうことになります。

鮫島委員 今のところは、米国の国債の金利がいいために、多分、過去に買った分については高金利で運用されているので、為替の差損よりも運用益の方が多いという状況になっているかもしれませんが、私もその内訳を全部知りませんけれども、今後とも、多分傾向としては、ずっとこのドルを買っていくという傾向になると思いますが、アメリカの金利も下がっている中でこういう巨額の買いオペをずっと続けていくと、今度、為替の差損の方が運用益よりも大きくなって、差し引きで赤字になっていくという危険性はないんでしょうか。

谷垣国務大臣 それは確かに、評価損、今のような仮定を置きますと、金利の状況によってはそういうことが考えられないわけではないわけですが、今まで全体として見れば累計運用益は評価損を大幅に上回っているということでありますし、ですから、現時点で外貨資産の評価損が生じているから外為特会の収支が悪化しているということは、現時点では健全性は支障はないと思います。

 それから、外為特会の保有資産というのは、外貨準備としての性格から、保有していくことに政策的な意味がございますので、為替レートの変化による評価損益を発生の都度損益計上する必要というのは必ずしもないだろうと思います。したがって、外貨資産の売却を行う、つまり、外貨売り・円買い介入を行う場合以外は評価損益というのは実現しないというのが一般でございます。

鮫島委員 確かに、ずっとドルを、九割ぐらいが米国債の形で持っている、その形で持っている限りは為替差損が生じないというのはよくわかりますが、そのこと自身が実はかなり問題があるんじゃないか。

 先ほども話がちょっと出ていましたが、一瞬ドルが八十円を割り込んで七十九円になったあの一九九五年ですらも、ドルの買い支えに走った資金が五兆円と言われていますが、ことし一月だけで七兆円を使い、また、その外為の準備高を、枠を平成十六年度は百四十兆円まで膨らます。補正で百兆円まで膨らませて、今度は百四十兆円まで膨らます。

 ネットで六十兆円ぐらい膨らます話になりますが、これは何を意味するかというと、超低金利で、それで日銀が非常に資産供給をふやしている中で、このお金が、正味六十兆円があっという間にドルの方に流れて、それが米国の国債に変わっていく。本来内需に向かうべきお金が外需にだけ向かうというデメリットもあるわけで、これだけの巨額な買い支えをすることによるメリットとデメリットを私は財務大臣から国民にわかりやすく説明する必要があると思います。

 特に、内需がないから外に向かっちゃうのか、それとも意図的に外に向けているのか、そのことによって逆に内需が生まれないという問題もあるわけですから、むしろもっとそういう資金は、市中に潤沢に供給された資金を全部短期の外為の債券でばあっと吸い上げてそれをどんどん米国債にしていくという運営の仕方は、ブッシュは喜ぶかもしれませんが、日本の国民にとって幸せなことかどうかという説明が私は足りないと思います。

 こういう巨額の介入を続けることのメリットとデメリット、両面あると思いますが、その辺、もしわかりやすく説明できるんでしたら、メリットとデメリットと両方御説明いただきたい。

谷垣国務大臣 我が国の為替介入は、内需が足りないからそれを外需に振り向けようというような、今の鮫島委員がおっしゃったような目的でもって行っているわけではございませんで、これも繰り返し申し上げておりますけれども、経済のファンダメンタルズを安定的に反映していないような投機的な思惑が出た場合には介入するということでやっているわけでございます。

 それで、我が国の場合、輸出入に占める外貨建て取引というものが随分高いわけでございますので、為替の急激な変動の影響というのは、これは企業収益に与える影響も大きいし、それから、そういうところからくるビジネスマインドといいますか、市場のセンチメントというんでしょうか、英語ばかり使って恐縮でございますが、そういう思惑がいろいろございますので、そういう思惑を抑制するということは、実体経済へのマイナスを緩和するという意味で意味があるのではないかと思っております。

 それから、大量介入の理由の一つとしては、去年、為替市場では、イラク情勢とかテロ懸念といったような地政学的な動きというものが非常に注目されたという面があったと思います。アメリカ経済自体は、いろいろな数字もございますように、日米欧の三極の中で一番力強い動きをしているわけでございますけれども、そういう地政学的要因とか、あるいは双子の赤字というものが非常に喧伝されたというか、もてはやされたようなところがございまして、思惑的な無秩序な動きが出てきて、結果として介入額が多くなったということがございました。

 確かに、今委員が指摘されましたように、長期的にこれだけ持っているとリスクも多いんじゃないかという御批判もございますけれども、しかし、アメリカ経済自体は今のところ非常に堅調でございますし、すぐに先ほどおっしゃったような懸念が現実のものとなるというふうには私は考えておりません。

鮫島委員 ちょっとポイントがずれているような気がするんですが、外需に振り向けているわけではないという大臣の御意見でしたが、外為の短期証券をこれだけ巨額に発行し続けると自然と資金はそちらに流れて、むしろ内需に向かうべきことを考えている暇もなく、全部ドルの方に向かい、米国債に向かってしまう。こういう外需中心の方の資金の流れではなくて、むしろ内需中心の方の流れも考えるべきではないかということを私は指摘したかったわけです。

 確かに、輸出中心の企業にとっては大変大きなメリットだと思いますよ、それは、向こうで稼いできたドルを安定的にいい値段で円にかえてもらうという意味では。そのドルを今度は米国債にかえるというやり方は、外側をぐるぐる回っている分については大変プラスかもしれませんが、肝心の内需の拡大、このせっかくのゼロ金利で量的緩和という政策を内需に結びつけるという観点からいえば、これは私はデメリットというふうに感じますが、竹中大臣、何かこの点について御見解ありますか。

竹中国務大臣 メリット、デメリットそれぞれあるという御指摘はそのとおりなんだと思います。

 ただ、通貨の急激な変動を拒否する、それは困るのではないかということは、決して輸出業者だけではなくて、例えばでありますけれども、急激に円が高くなって、それで安い外国商品が一気に国内に入ってくるということになりますと、輸出業者だけではなくて、国内の、まさに地場のさまざまな産業に対する影響もあり得るわけでありますので、その点は、やはり急激な為替変動を避けるということのメリットは広く国民経済的にあるということだと思っております。

 それともう一点、これは需要を支える、需要をファイナンスするというような観点から委員お尋ねだと思いますが、これは、もし需要があれば、マネーの、通貨の量をどのようにするかということは、別途日本銀行の方において、通貨の管理政策の中で調整が可能な問題なわけでございます。

 したがって、そこは、需要の問題と通貨の、まさに貨幣供給の問題というのは、少し分けて御議論いただく方がよろしいのではないかと思います。

鮫島委員 確かに、日本がこれだけ買い支えることによって、アメリカが長期に金利が低いままで安定して、それが証券の好況に回り、景気を支え、そのことがはね返ってきて、日本やほかの国々の証券市場も活性化するという意味では、世界的に見れば、お人よしの日本がそれだけどんどんお金をつぎ込んでくれるのは好ましいことかもしれませんが、私は、こういうことをずっと続けていてとまらなくなる、とめられなくなる、日本がどんどん米国のドルを買い支える役割を、世界の中でそれがもう日本の当然の役割としてはめ込まれてしまうことの危険性というものもぜひ大臣に御認識いただきたいし、むしろ、これだけの潤沢な資金がありながらどうして円の国際通貨としての価値がなかなか高まってこないのか、このこともぜひお考えいただきたいと思います。

 つまり、ドルを買い支えるということは、ある意味では元の買い支えにもつながっているわけで、元の価格の安定にもつながっているわけで、そのことがいろいろな意味で貿易のプラス、マイナス、影響もありますし、逆に言うと、もしかしたら日本は自分で自分の首を絞めているということもありますので、この点についてはまた私は場を変えて改めて議論したいと思いますが、一応外為関係の話についての懸念だけを示しておきました。

谷垣国務大臣 今おっしゃった円の国際化を進めろということは、この間、平岡委員の御質問の中にもございましたけれども、大変大事なことで、随分いろいろ議論をして、必ずしも十分進んでいないところがございますけれども、今後もそれは努力をしなければいけないと思っております。

 それから、やはりこれだけの巨額な介入をどう続けたらいいか、続けられるのかという御質問に対しては、現在のところ為券等の消化は順調でございますので、とりわけそこには支障はないというふうには私は思います。

 あとは、竹中大臣がおっしゃったように、日銀が潤沢に資金を回るように努力していただいているということもあわせてあるかと思っておりますが、委員の御意見もまたよく検討させていただきたいと思っております。

鮫島委員 今度は、国内の予算の本体そのものの話に移りたいと思います。

 私はずっと、なかなか日本の予算というのはわかりにくいんだなと思っていましたけれども、多分多くの国民も、日本の予算の本当の姿はわかっていないんじゃないかと思います。マスコミ、新聞、テレビも含めて、いつもショーウインドーとしての一般会計の説明だけで、まるでそれが日本の予算であるかの説明が四十年近く続いてきている。ですから、マンションを見せるのにモデルルームだけ見せてマンションの本体は見せていないということがずっと続いてきたことが、大変私は、日本の納税者にとって自分の予算がどう使われているのかをわかりにくくしているし、あるいは郵便貯金をしている貯金者にとって自分のお金がどうなっているかがわからなくなっている。これは、私はマスコミにも大いに責任があると思います。一般会計だけしか報道していない。

 しかし、一般会計は実はほとんど意味がないということをそろそろ広く認識されるべきだというふうに思います。そのことについて、ちょうど、平成十五年の十一月二十六日に財政制度審議会が、「特別会計の見直しについて」という、私は大変よくまとまった報告書を出していると思いますが、その意味では、随分変わってきたのかなという気がします。

 実は、我が党の中でも、特別会計の問題については、埼玉県の知事になった上田清司さん、それから不幸にしてお亡くなりになった石井紘基さん、この二人がむしろこの特別会計の裏に何が隠されているかということをずっと調査してきたんですが、二人とも今はこの場におりませんので、私がある程度彼らのやってきた仕事も引き継ぎながら、特別会計の中に隠されているさまざまな問題について明らかにしていきたいというふうに思っています。

 初めに、簡単なことから確認しますが、ここに全体の財政の仕組みと資金の流れを図にしておきました。マスコミで報道されているのはいつも、一番上に書いてある一般会計八十二兆円、この歳入は、建設国債が六・五兆円、特例国債、赤字国債と言われているものが三十兆円、それから税収が、一部横へ流れますが、四十七・五兆円程度。これで一般会計が八十二兆円ということになっていますが、このうちの四十七兆円は特別会計の方に繰り入れられる。したがって、一般会計の方の純計、ネット、本当の額は三十五兆円。

 このことは、ことしから非常に財務省の各種資料を明らかにするようになって、昔はこの純計を計算するのがなかなか大変だったんですが、今全部公表資料で出していますので、これはもう多くの方々の知るところとなりましたが、このお金が、国債で三十六・五兆円、税で四十七・五兆円入ってきて、特別会計に四十七兆円流れるんですが、このときに、このお金の関係というか、どうなっているのか。特別会計に流れる四十七兆円は、税金の部分が流れているのか、それとも国債の部分が流れているのか、それぞれ性格がここまで引き継がれるんでしょうか、特別会計に移るときに。国債で集めたお金なのか、税収なのかというのは、この性格が引き継がれるものなのかどうなのか。

山本副大臣 先生の御質問の、四十七兆円の一般会計から特別会計への繰り入れの中身、この中身に国債が使われているかどうか。これはなかなか難しい御質問でありまして、特に、一般会計の歳入になる国債には、建設国債のほかに特例公債がございまして、後者につきましては、公債発行の対象となる経費が限定されているものではなくて、一般会計全体の歳入の不足を補うものであること等から、一般会計から特別会計への繰入額、先ほどの四十七兆円につきましては、国債の発行によって賄われる金額を直接お示しすることは困難であるというようなことでございます。

 特に簡単に言いますと、お金に色をなかなかつけがたいというのがあっさり言った答えでございます。

鮫島委員 ある種どんぶりになっているということだと思いますが、この建設国債の六・五兆というのは、この部分については特別会計の方に全部流れるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

山本副大臣 建設国債分の方も全部、もう申し上げるまでもないですが、特別会計でやる事業もあれば、そうでない事業もありますし、補助金で払われるものもありますから、したがいまして、建設国債につきましても、なかなか色をつけがたいということでございます。

鮫島委員 一般会計の歳入の、国債で三十六・五兆円入ります、税収で四十七・五兆円入ります、それで八十二兆円のうちの半分以上の四十七兆円がその日のうちに特別会計に繰り入れられますという、この流れは割合わかりやすいんですが、もう一つ、特別会計というのはほかの入り口があって、財投債という四十一兆円という大変大きな入り口、これは主に郵貯、簡保、年金等の資金がここへ流れ込んでくるわけです。

 それから、一番わからないのが、交付税特会借入金、俗に言う隠れ借金と言われているものですね。これは国債の形をとらないで、じかに政府が借り入れているという部分が、これはネットで書いてあって、少しほかのもまぜてあるんで、その部分だけを取り出せば、累積で平成十六年は五十・二兆円になると言われている。借りかえ分除くと、十六年で新たに調達する資金は一兆七千億円。ですから、借りかえ分に一兆七千億を足すと、十六年は五十・二兆というふうになります。

 これが交付税特会の借入金というものなんですが、これは債券の形をとらないものですからなかなか見えにくい。俗に隠れ借金と言われるゆえんだと思いますが、これを、一月二十三日の日経の新聞には、「民間借り入れを停止」「「隠れ借金」に歯止め 財務省方針」という記事が出ていますが、これはこういう方針なんでしょうか。

麻生国務大臣 財務大臣になるかもしれませんけれども、私の方から。

 今お話しになっておりました、新たな借り入れを行わないという新聞が出ていたという話で、その報道は事実と考えてよいかということでありますけれども、今、この問題につきましては、御存じのように先行減税にかかわる話といろいろ絡んでまいりますところでもありますので、金融的な、簡単に言えば、これまで総務と財務と双方で検討を開始せねばいかぬ問題であることは確かだと思っておりますが、今、この時期、いつの時期からそれをやるかとか、その時期が正式に決まったというわけではないというところが一番正しい答えだと思っておりますので、新聞に書いてあるように、今から即やるような話ではないと思っております。

鮫島委員 この新聞記事では「「隠れ借金」に歯止め 財務省方針」、こう出ているんですが。

谷垣国務大臣 今、麻生総務大臣がお話しになったとおりでございまして、今後、税制の見通しなども当然考えなければいけませんが、麻生総務大臣とよく相談して、今後の、特に平成十八年度以降考えていかなきゃいかぬということでございます。

鮫島委員 この累積で五十・二兆円に上る地方交付税の借り入れ、これは政府保証はついているんですか。

麻生国務大臣 ついております。

鮫島委員 これは、ただ国債という形をとってなくて、じかに借り入れているわけですね。政府保証がついているというと、これはいわば手続論になるかもしれませんが、形としてはどういう形になるんですか。別に債券発行しているわけでもないし、政府が手形を出しているんでしょうか。どういう形でこの政府保証というのは形式的に担保されているんでしょうか、これは参考人の方でもいいんですけれども。

瀧野政府参考人 交付税特別会計の借入金についてのお話でございますけれども、これは特別会計ではございますけれども、国の借金ということでございますので、担保とかそういうことじゃなく、要するに国が借りているということになります。特別会計におきまして借りているわけでございます。しかも、それは一時借入金という形でございまして、おっしゃいますように、国債というような形にはなっておらないものでございます。

鮫島委員 いや、それはわかっているんです。毎年毎年借りかえて、ただ、雪だるま式にじわじわじわじわ膨らんで、ついに五十兆円超えますということでしょうが、債券という形をとってなくて。どういう約束になっているんですか。政府保証がついているという話ですが、これは口約束なんですか。貸す側と政府とはどういう形式の約束になっているんでしょうか。つまり、債券という形はとってないから俗に隠れ借金と呼ばれているわけですが、どういう手続になっているんですか。

瀧野政府参考人 それは、一般の公的債務と同じようにお互いの契約関係になるわけでございまして、一時借入金として債務を国が負い、債権が民間に発生しているという関係でございます。

鮫島委員 その契約書は公表できますか。

瀧野政府参考人 契約でございますので、相手方があることでございますけれども、必要があれば、それは公的な契約として存在しているものでございます。

鮫島委員 私は、きょう、この特別会計、日本の予算そのものについての質問をするに当たっての基本的な立場は、やはり税金を払っている納税者が自分のお金がどうなっているのかということを知りたいはずだから、それを明らかにするということと、郵貯、簡保、年金等の参加者が自分たちのお金がどうなっているかを知りたいだろう、こういうことを明らかにしたいということと、それから、おかしな借金はしない方がいいんではないか、特に、透明性が疑われるような借金はしない方がいいんじゃないか。それから、意味のない、不必要な事業はしない方がいいでしょう。それからもう一つ、どこかでお金を隠しているんじゃないですか、隠していたお金があったら出してくださいという、この四つの立場からきょうの質問はしているつもりです。

 今の隠れ借金と言われるもの、債券を出していないからなかなかはたからわからないんですが、個別の契約だというお話でした。プライバシーの問題もあるから一々社名まで明らかにしろとは言いませんが、どういう構成になっているのか。累積で五十兆にもなるわけですから、どういうところからどういう条件で借りているかという資料は、出せる範囲でディスクローズしていただきたいというふうに思います。このことを、出すということをお約束いただきたいんですけれども、どうですか、麻生大臣。

麻生国務大臣 基本的に財務省理財局ということになるんだと思いますが、双方で検討させていただいて、今、出せるところだけ出せというお話でございますので、出させていただきます。

鮫島委員 これは三位一体との関係で、一方でこの借金を膨らます、しかし、元本も返さなくちゃいけない、三位一体も進める、大変難しい運用になっていくと思いますが、そういう中で、先ほど、新聞に出たような、この借り入れを停止すべきなのかどうなのかということも議論になると思いますが、私はぜひ、隠れ借金という形ではなくて、もしどうしても必要なら、これはこれで、やはり表の、どういう名前でも結構ですが、ある種の国債の一種として、国民の目に明らかになるような形で担保すべきというか、手当てすべきだと思いますが、その辺のお考えは、谷垣大臣じゃないかな。

谷垣国務大臣 今の仕組みは、現在の財政状況の中でこういう形で処理をしているわけでありますが、今後とも、できるだけ財政の状況がどう理解いただけるか、そういうこともあわせて検討しながら仕組みを考えてまいりたいと思っております。

鮫島委員 ぜひ、この問題については、透明性を高めていただきたいということが非常に強くあります。

 それから、もう一つの大きな入り口である財投債なんですが、これも本当はおかしな話で、郵貯、簡保の資金の自主運用、資金運用部に預けていたのを平成十四年度からは自主運用にしますと。何するのかと思ったら、ほとんど国債買いますというのが、これが自主運用かどうかという疑問が大変大きく持たれているところですが、まあ、まだ経過措置ということで、何年間かは主に国債で運用することが許されているのかもしれませんが、郵貯、簡保資金のうちの何割が財投債という名前の国債に使われているのか、国債の引き受けに使われているんでしょうか。

清水政府参考人 平成十三年度からの経過措置という形で財投債の引き受けをやっているところでございますが、平成十五年度引受額の新規運用額に占める割合は、それぞれ、郵便貯金資金ですと三一・五%、金額で約十兆円、それから簡保資金ですと一五・三%、約三兆円を予定しているところでございます。

鮫島委員 ちょっと、郵貯資金のこの財投債の借り入れに使う分は、平成十六年度、新規に調達した資金の三一・五%ということでよろしいんですか。

清水政府参考人 各年度によりまして、それぞれの当年度運用原資が異なってまいりますので、十五年度は、例えば郵貯資金ですと、三十一兆六千億のうちの九・九兆円になるような形です。このパーセンテージが年度年度によって異なってまいります。保険の場合も同様でございまして、十九兆、当年度、十五年度は運用予定原資、予定しておりますが、その中で二兆九千億というものを運用を予定するところでございます。

鮫島委員 これも財務省の資料だと思いますが、平成十六年度国債発行予定額。小泉さんの言う国債というのはおかしな話で、私は、国民に大きな誤解を招くと思いますが、去年は三十兆とか、ことしは三十兆を少し超えますという言い方をしていますが、それは国債の中のごく一部、新規発行債のことを言っているわけで、国債にはいろいろな種類があって、今、財投債、郵貯や簡保や年金の資金に買っていただく財投債も国債ですし、それから、一番大きいのは借換債、満期が来たから返しますけれども同じだけ買ってちょうだいよといってぐるぐる回している借換債、これを全部合わせると、平成十五年度が百四十一兆、平成十六年度は百六十二兆円が予定されているわけです。これは財務省の公表資料ですから、別に隠す必要ないと思います。

 去年までこういう言い方はしていなかったんですよね。私が去年、特殊法人の特別委員会のときに、日本国政府が発行している国債は全部で幾らですかという聞き方をしても、どうしても新規発行債のことしか言わなくて、借換債とか財投債は違いますという扱いで、国債という名前は使っていなかった。大分抵抗された記憶があるんですが、ことしから、財政制度審議会の答申等の流れもあるのかもしれませんが、逆に言うと非常にわかりやすい資料が出てきたのは、私はいい傾向だと思います。

 ここに、ことしは財投債は四十一兆円出します、郵貯に引き受けていただくのが十九兆七千億と書いてあるんですが、さっきの数字と違うと思いますが、十六年は郵貯のうちの幾らをこの財投債で運用しようとしているんですか。三一%じゃないでしょう。平成十六年度の郵貯に引き受けてもらう予定として十九兆七千億というお金が公表されているんですよ。

清水政府参考人 十六年度は、全体の財投債発行予定額が四十一・三兆の内訳ですが、経過措置として郵便貯金引き受けが十九・七兆、簡保が二・四兆円です。二十、その数字……(鮫島委員「わかっています。何%になりますかということ。郵貯の運用予定資金のうちの何%を財投債で運用するんですか、平成十六年は」と呼ぶ)

鮫島委員 それならいいや。多分三十二兆円ぐらい十六年度の郵貯の新規の資産があって、恐らくそのうちの十九・七兆円ぐらいを財投債で回しますと。つまり、自主運用と言いながら三分の二ぐらいは国債で回すというのが実態だろうと思います。別に私はそれが悪いと言っているわけじゃなくて、まだそういう形の運用ですねと。

 何が言いたいかというと、多くの日本の国民が郵便局に貯金しているわけですよ。このお金がどう使われているのかというのは、本当は、郵便貯金している方が、私たちの貯金の運用はどうなっていますかと郵便局に聞いたときに、郵便局が答えられなくちゃいけないはずですが、多分どこの郵便局長さんも答えられないでしょう、貯金者に対して。私はそのことを問題にしているんで、だから、郵便貯金している方が郵便局に行って、私の貯金はどういうふうに運用されているのと言ったときに、いや、六割は国債でやっていますとか、そういう答え方ができるんですかという質問なんです。

谷垣国務大臣 郵貯資金をどういうふうに運用しているかは総務省の方からお答えいただくといたしまして、私どもの財投をお預かりしている立場からいたしますと、これは経過措置でございますから、平成十九年度までこういう形でやらせていただく、それは、今まで全額預託で大変大量にございましたのを一気にそれを変えてしまいますと市場に与える影響も大きいものでございますから、十九年度までに少しずつこういう形で次に移していく、こういう形でやらせていただいております。

麻生国務大臣 全体の流れは、今財務大臣が言われたとおりで十九年度ということになっておりますので、今私たちが預けているお金がどのように使われているかという点に関して答えられるようにしておくべきではないか、ごもっともなところだと思いますが、自主運用と言いながら国に預けておるのがいかがなものかという御懸念も半分おありなんだと思います。

 かたく運用しようとなると、やはり国債というのは最もかたい運用ということになって、利幅は少ないけれども、かたいという点においては非常に安心していただけるという部分も半分はある。もっともうけられるではないかというと、大体役人が金もうけなんて考えるとろくなことになりませんので、私どもから言わせていただくと、その方がかたいかなという感じが率直な実感です。

鮫島委員 大臣のおっしゃり方もよくわかりますが、今度は、この財投債、もちろん郵貯、簡保にかなり引き受けてもらうわけですが、政府保証債という形でこの財投資金を確保するという仕方もありますね。

 この政府保証債というのは、財投機関債は財投機関債で四兆円ほど別でありますが、政府保証債の対象となる機関というのは、特殊法人とか認可法人以外にどの範囲なのかというのがもう一つ見えないんですね。政府保証債にしてもらうというのは大変発行する側にとってはありがたい話で、いざとなれば政府が面倒見てくれるという話ですから大変な特典だと思いますが、この特典を与えられる機関の範囲というのはどの範囲なんでしょうか。財投機関債の発行機関という答えもあると思いますが、それ以外の部分で。

牧野政府参考人 お答えいたします。

 政府保証を行っております機関は全部で十二機関ございます。どのように政府保証対象機関が定められているかでございますが、これは、国の行政の一端を担うような極めて公共性の高い業務を行っておりまして、かつ業務の執行について国の監督が十分行き届く、そういう機関に対しまして、個別の法律等でそういう政府保証を付すことが認められている、そういったものについて政府保証を付すことにしているわけでございます。

鮫島委員 そういういわゆる性格だけ今説明になりましたけれども、これは具体的な名前は公表できますよね、もちろん。

牧野政府参考人 お答えいたします。

 それでは、十六年度に政府保証を付しております機関の名前を読み上げさせていただきますが……(鮫島委員「全部言わなくてもいい」と呼ぶ)全部言わなくてもよろしいですか。公営企業金融公庫、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本道路公団、こういったところが大どころでございます。

鮫島委員 日本道路公団が政府保証債を発行できる機関という御説明でしたが、これはおかしいんですよね。道路公団、去年まで三兆円近い財投の資金が出ていたのが、ことしはえらくそれを減らして多分二兆円に、一兆円減らしたんじゃないかな。そうしたら、その分すぐ政府保証債で裏打ちするというふうな形になっていると思いますが、これは、政府保証債と国債はもうほとんどイコールというか、ある種、目くらましのような印象を与える。

 つまり、去年までは道路公団に対して三兆円近い財投資金が入っていましたと。ところが、民営化すべきだという流れもあって、そういうふうに政府に資金を依存するのがいかがなものかという批判の目が厳しくなってきたら、表向き一兆円減らして、その一兆円を政府保証債という形に形式だけ変えたんじゃないかというふうに思いますが、そこのところは。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘のように、従来財政投融資で直接融資いたしておりましたものを、今回政府保証債という形で、道路公団は政府保証債の発行額をふやしております。

 この考え方は、今後、民営化がもう既定の路線になっておりますから、民営化された場合にはマーケットで資金を調達せざるを得ないという事情がございます。したがいまして、財投から直接融資するのではなくて、むしろ市場で調達していただく、そういうことを始めていただいて、最初は政府保証つきでございますが、いずれにしても、まず市場で調達することを道路公団に始めていただくという趣旨でございます。

鮫島委員 ちょっと私、数字を間違っていました。平成十四年度は財投から二兆七千億、政府保証が二千七百億でした。平成十五年度は財投から二兆二千億、政府保証が九千九百億。十六年度が一気にさま変わりして、財投から一兆円、政府保証で二兆円というふうにバランスを政府保証に変えたわけですね。

 これは、今道路公団の民営化の方向の中で、市中から資金を獲得するような方向への第一歩だということですが、政府保証がついているような資金の調達というのは、まず民間部門では絶対できないわけでしょう。これはほとんど、名前だけそういうふうに政府保証というふうに変えていますが、これは結局うまく回らなくなった場合は国民負担に回るわけですから、政府保証という名の財政融資とほとんど中身は変わらないんじゃないかと思いますが、石原大臣、その辺どういうふうにお考えになりますか。

石原国務大臣 私は、根本的に違うと思います。

 すなわち、政府保証が道路公団の債券についている、ついていないということは、借りる側からいいますと、スプレッドが政府保証がついていることによって多分一ぐらい下がっている、すなわち、その資金によって必要な道路がつくられていく中で返済額も減ってくる。

 将来的には、委員御指摘のとおり民間会社は政府保証なんかついておりませんので、政府保証が民間企業の出す債券についているというのはおかしいということは当然でございますが、極めて公共性の高い機関ということで、そういうふうに自己調達しやすい、そして債務を大きくしないということで、こういう形がとられているものと推察しているところでございます。

鮫島委員 当分は政府保証をつけるというお話でしたが、では、何年ぐらいこの政府保証債を発行し続けるんですか。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 道路公団が民営化するまで政府保証をつけていきたいと考えておりますが、民営化後にどういう形で会社あるいは機構がその資金を調達されるのかは、それは今後提出される法案の中で御議論されるべき問題だろうと考えております。

鮫島委員 わかりにくいお金の集め方というのは二つあって、先ほど言った地方交付税特会のところのじかの借り入れ、個別契約によるじかの借り入れという集め方、それからもう一つは、政府保証つきの債券を発行して集めるやり方、これが一般の国債市場に出てこないで、何となく限られた範囲の中でやりとりされている印象があって、納税者の目から見たら透明性を欠く分野だというふうに私は思いますので、こういう分野も、これは財政当局でしょうが、財政審の指摘の中にも、私はなかなかいい指摘がされていると思いますが、「特別会計が多数設置されることは、予算全体の仕組みを複雑で分かりにくくし、財政の一覧性が阻害される面がある」、これは、ぱっと一目瞭然じゃなければいけないのに、入り組んでいてよくわからない、歳入部分だけでも、今のように何か政府保証をつけてお金を集めてみたり、じかに契約でお金を集めてみたり、あるいは財投債で、郵便貯金、国債で集めてみたり、非常にわかりにくい。そういう一目瞭然じゃないといけませんという財政の基本的な方向が大事です。

 そういう意味で、特別会計のようにばらばらに会計が分立することによって予算全体の効率性も損なわれる危険性がある、こういう指摘がなされているわけですが、その意味で、今言ったような歳入部分についての不透明性をまずもっとすっきりと国民の目から見てわかりやすくすることが私は大変大事だというふうに思います。

 次に、歳出面の方からちょっと質問したいんですが、まず、特別会計に入れていく場合に、特別会計とは何かという問題があって、これ、実は、どんどんどんどん特別会計が肥大してきている。

 これも財務省の発表した資料で、昭和四十年には一般会計と特別会計の比率は、特別会計の方がもちろん大きいんですが、一対一・八ぐらいでした、昭和四十年。今どうなっているかというと、一対四・五二。どんどんどんどん特別会計比率が高まっていって、つまり、予算の本体は特別会計というふうに移っていることが、この数字から見ても明らかになっています。

 規模はすごくて、昭和四十年と平成十五年を比べると、一般会計は二十二倍に額が膨らんでいる。それに対して、特別会計の方は五十五倍になっている、昭和四十年と平成十五年で。したがって、当然比率としてはどんどんふえて四・五二にまでなっているわけです。

 特別会計というのは、もちろん何でもかんでも事業はみんな特別会計にしていいですよということではなくて、財政法の十三条で決まっているわけですね。国の予算は一般会計と特別会計がありますよ、しかし、基本は一般会計です、特別の場合には特別会計にしてもいいですよというふうに決まっていて、国が特定の事業を行う場合、まあ三つの条件で決まっているわけですが、よく見てみると、何でこれが特別会計にしているんだというような内容のものが幾つかある。特に、一般会計から四十七兆円の繰り入れが行われていますが、繰り入れが非常に大きいもの、少なくとも事業費の三分の二以上が一般会計から入っているようなものをどうして特別会計として別会計にしなければいけないのか。それは、この財政法の考え方からいってもおかしいのではないかという気がいたします。

 一番繰り入れの比率が高いのが港湾整備事業、七一・三%が一般会計から繰り入れられている。こんなものは一般会計で扱えばいいと思います。それから、二番目に多いのは治水事業、これも六八・一%が一般会計からの繰り入れです。それから、三番目が農業共済の再保険、これも六四%が一般会計から繰り入れ。この再保険はともかく、港湾とか治水とか、七割が一般会計で計上されているものをなぜ特別会計に移してやらなくちゃいかぬのか。これは財政法の基本精神から外れていると思いますので、こんなものはすぐ、私は、平成十六年度で、大臣の裁量で一般会計に戻すべきだというふうに思います。

 道路のことについてちょっとお伺いしたいんですが、道路の予算だけがやや不思議になっていて、本来ですと、道路の方も、実は、ちゃんとやると三分の二ぐらいが一般会計からの繰り入れになるんですが、妙な操作が行われている。それは何かというと、ここに、私、目的税で、税収が一般会計に入らないで、横から直接特別会計に入る道筋があることを示しておきましたが、特に揮発油税の七千億、これが一般会計を経由しないでいきなり道路特定財源にすぽんと入っているんですが、なぜこんなようなおかしな扱いになっているんでしょうか。

石原国務大臣 詳細は財務大臣がお話しになられると思いますが、経緯を話させていただきますと、昭和六十年のときより、一般会計を経由せずに道路特会の方に繰り入れられておりまして、地方に交付する地方道路整備臨時交付金という形でなっております。

 この交付金は、それまでの交付金というものが、例えば道路なら道路、街路なら街路といったような個別に補助がついていた、そういう補助金であったのに対しまして、この地方道路整備臨時交付金というものは、街路でも、あるいは道路でも、あるいは橋でも、一つパッケージにして、そのパッケージに、地方の裁量、判断でお金を自由に使っていただくというような形で入れる制度として入ったのが第一の理由。

 第二の理由は、昭和六十年代から、まあ現在もなのかもしれませんけれども、道路に対する各地方の需要というものが大変多くて、財政事情に左右されることなく安定的に財源を確保するという、この二つが理由として、極めて特別だとは思いますけれども、道路の場合は直接入っているものと考えております。

鮫島委員 石原大臣は、もうちょっと私は国民的な立場に立った御答弁を期待していたんですが、今のは役人答弁そのままで、第一の理由、つまり、道路特定財源だけれども、道路そのものというふうな特定を緩めて、もうちょっと道路周辺のところにまで使えるようにと。これはまさに特定財源の一般財源化で、これだったら、バイパスして特別会計にほうり込むんじゃなくて、まさに、だったらなおさら一般会計に入れるべきでしょうという話ですね、前半の話は。

 それから、二番目の話は、道路に対する希望が大変強くなって需要が大変ふえたものですから、それはそれで別に確保するという話ですが、これはうそですね、この説明は。

 昭和六十年になぜ七千億だけ直入せざるを得なくなったかといえば、これは中曽根内閣のときのシーリングがあって、当時の建設省のシーリングをオーバーしてしまう、この七千億を入れると。したがって、シーリングをオーバーした部分を、随分おかしな話だと思いますが、一般会計に入れずに直入してごまかす。つまり、建設省のシーリングの枠からこれを外せばもっと使えるようになるという、なかなか、だれが考えたか知りませんが、際どいやり方。

 これは、だから昭和六十年からこの直入が始まったんですよね。それが本当の理由だと思いますが、今、一府十二省庁に省庁が再編されたとき、相変わらずこれはシーリングにひっかかるんですか、この七千億は。大臣、どうですか。

石原国務大臣 経緯については詳細は存じませんが、昭和五十九年当時の財政事情、またマイナスシーリングのことを考えますと、そういう未充当が発生したということは私も事実だと思います。

 その一方、先ほどお話をさせていただきましたように、幅広く地方でそういうものを使いたい、つくりたいというニーズがあり、現在も続いているということも、その時代背景として現在に至るまであるということもまた私は事実だと思います。

 委員の御質問をちょっと先に進めさせていただくと、もう直入しないで、一般会計に集中して透明化を図るべきではないかという論点で御質問をされているんだと思うんです。

 そうしますと、私も道路の問題に足を突っ込み出しまして非常に感じましたことは、地方も含めて、東京も、私も鮫島委員も東京でございますけれども、含めて、道路整備のニーズというものはかなり現在も高いんだと思います。このため、高速道路なんかにしても受益と負担、あるいは道路特定財源にしても道路を利用する人たちが自分たちの道路を整備していくということでこの道路特定財源制度というものが採用された。その過程の中で、一昨年ですか、議論された、特定財源の暫定税率を維持するかしないか、そういう議論がなされたんだと思います。

 それと、もう一つ言えることは、この道路整備の財源は、地方のニーズが高いということを踏まえて、やはり地方も都市計画なんかをやりまして、町の整備とかいろいろやっています。それが、国からの助成、補助金という形ですと、さっき言いましたように一本一本の箇所づけみたいになりますから、そういうことに左右されることなく、ある程度フレキシブルに地方自治が責任を持って整備できるということでこういうものがあるということも、またこれも事実だと思います。

 それと、やはりこれも、これは民主党、御反対されましたけれども、特定財源の暫定税率は、平成十五年ですか、国会で、十五年から十九年間の措置は暫定税率も残していこうということが国会の御審議で決まった。それはやはり整備をする道路がまだあるんじゃないか、それは受益の関係で、利用した人がそこの部分にお金を出してもらう。そういうことで、一点、この道路の問題が、委員の図ですとぴゅっと横から線が出ている話として出ている。

 もちろん、需要がなくなるということは当然これから将来考えられますから、私は、固定化することなく、十分に審議をしてよりよいものに変えていく。委員の、透明化を図るという点については、まさに私もそのとおりだと思っております。

鮫島委員 いや、私は、道路予算の規模がどうこうとかニーズが高いとか、そういう話をしているんじゃなくて、今、予算をわかりやすく、納税者にわかりやすくという意味では、税金は全部税収として一括して一般会計に入って、それからどう使うべきかを考えて道路の方に振り向けられる、そういうわかりやすい構造にする必要があるんじゃないですかと。昭和五十九年、六十年のときのシーリングでやむを得ずはみ出した、それをいまだにはみ出したまま引きずっておくことはないでしょう、もうちょっとわかりやすく、本来の姿に戻したらどうですかという質問です。

 これはぜひ財務大臣も含めてお考えいただきたいと思います。これは、過去の残渣というか、本来処理しておかなくちゃいけない部分が怠慢で残っているだけの話でしょう。ぜひこれは一本化してもらいたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど鮫島委員から故事来歴も御教示をいただいたわけですが、その前に、公共事業関係の特会のうち、たくさん入れているものはもうやめたらどうかという御意見がございました。しかし、こういう特別会計は、多くの場合、国みずからが多数の直轄工事を長期間にわたってやっている。しかも、その財源も、必ずしも国だけではなくて、地方公共団体や何かが負担するという中で、やはり特会にしておいて、その経理というものを特会の中で明らかにする必然性があるものがかなりあるのではないかと私は思っております。

 それから、今の揮発油税がこういう形になっているのはおかしいではないかという御質問がありましたけれども、先ほど石原大臣がおっしゃいましたように、地方の道路需要というものが大変あることを考えれば、現在も私は意味があるんだろうと思っております。

 それともう一つは、暫定税率を五年ごとに見直していくことになっておりますが、昨年の三月に法律が通ったばかりでございますから、今後どうすればいいかということは十分我々もまた状況の推移等を見きわめて議論しなければなりませんが、現在のところは、昨年通していただいた法律でこのような枠組みになっているということだろうと思います。

鮫島委員 いや、私は、谷垣大臣の御発言ですが、もうちょっと本来どうあるべきかということをぜひ大臣としてお考えいただきたいし、何らかの機会に表明していただきたいと思います。

 本来、会計というのはどうあるべきか。総覧性、一覧性というのはどう担保されるべきか。何でもかんでも特別会計に移していいということではない。その歯どめがあってしかるべき、けじめがあってしかるべきだと思いますが、今の大臣の御発言だと、まあ必要性があれば別に特別会計にあっても構わないし、それから、今直入分も、これはある種の必要性があるんだから構わないと言いましたが、みんながそんなことを始めたらどうなると思いますか。みんながどんどん直入を始め、みんながどんどん特別会計に移し、そうすると、一般会計なんか空っぽになって何もなくなりますよ。

 大体、下水道は一般会計でやっているでしょう。だから、やろうと思えば別に、本来、社会的なインフラとして必要で公共性の高いものは一般会計の予算でやるのが当たり前の話で、特別会計にするのは特別だからやるわけですよ。だから、港湾だとか治水だとか、七割が一般会計で賄われているものを、なぜわざわざこんなものにするのか。これはきょうは言いませんが、これは実際、この下にぶら下がっている団体とか、それこそ上田清司さんとか石井紘基さんがさんざん調べてやった問題につながっていくわけです。

 だから、特別会計に余り何でもかんでも移さない方がいいですよというのは、財政審の専門家たちもみんな一様に指摘していますよ。つまり、規律、けじめがないんじゃないかと。これはある種、戦後の退廃というか、全部財政の考え方が緩んできたことの非常にシンボリックなあらわれでして、いつの間にか一般会計に比べて特別会計が四・五倍になっちゃった、こんなことをおかしいという認識がないこと自身が私はおかしいと思いますが、何か御意見があったら。

谷垣国務大臣 その点は、鮫島委員がおっしゃいましたとおり、物によっては、特会の中で負担と受益というようなものを明らかにしていった方がいいものがございますけれども、他方、それを余りやりますと一覧性を阻害したり何かしてわかりにくくなる、おっしゃるとおりだと思います。

 昨年、財政等審議会で総ざらい的に特会の見直しをやっていただきまして、今、それをもとに検討している最中でございますから、不断の見直しはやはりやっていかなきゃいけないことだと私たちも思っておりまして、できるだけわかりやすい姿を主権者に提示できるように努力したいと思っております。

鮫島委員 もう一つ、財投の問題に戻りますが、これは、先ほど私は、一般会計、特別会計は納税者に対してわかりやすく、それから財投の方は貯金者とか簡保加入者に対してわかりやすくという言い方をしましたが、この財投というのは、ある意味では、財務省理財局が超メガバンクみたいな形で、それでこの財投の資金を毎年四十兆近く預かって、今、貸付金だけで三百三兆円、有価証券で八十一兆円というこれだけの巨額な資産を持っているわけで、国営の巨大銀行という言い方もできると思います。

 竹中金融大臣は、大変、銀行に対して、債権分類をきちんとしなくちゃいかぬ、不良債権があったら処理を急ぎなさいということを督励していると思いますが、肝心の国がやっているこの巨大銀行、財務省理財局という国営巨大銀行がやっている財投を使った出融資に関して、特に融資先の債権分類はできているんでしょうか。これは、非常に厳しい態度で民間に臨まれている竹中大臣だったら、当然、理財局の運用している債券についても債権分類をしろと言っていると思いますが、いかがですか。

竹中国務大臣 財政投融資というのはプログラムでありますけれども、それを、資金を調達して運用するという流れから、一つの金融機関に見立てて御議論されるというのは、これは一つの方法ではあるかと存じます。

 お尋ねの、それに対して金融庁はどうかかわるのかということでありますが、これは、金融庁は、財政投融資資金に対してのいわゆる検査権限は、これは委員御承知だと思いますが、有しておりません。金融庁は、本年度から、主務大臣の委任を受けまして、財投機関のうち、五つの政策投資機関及び日本郵政公社のリスク管理分野の検査を実施するということはことしから始まっております。

 委員長、済みません、今、数、九つの政策金融機関でございます。

鮫島委員 政策金融機関以外に財投はいろいろなところに貸し付けられているわけですが、そういう中で、明らかに破綻懸念先、あるいは既にもう破綻している破綻先というような貸出先はあるという御認識でしょうか。これはどなたがいいのかな、谷垣大臣ですか。財投でいろいろなところに貸し付けていますが、破綻懸念先とか破綻先はあるんでしょうか。

谷垣国務大臣 財投等の貸し付けは従来から滞りなく返済されておりますので、そのような不良債権化しているという事実は認識しておりません。

 ただ、この議論がありますときに、特殊法人などに対して、財投とあわせて国の補助金が入っている場合が随分あるわけですね。こういう補助金等の国費は、特殊法人などが行う事業の受益者が負担する金利とかあるいは料金を一定の範囲に抑えるのが目的で、政策的に財投と組み合わせて入っているものですけれども、これが不良債権であるかのごとき立論も世の中にはございますけれども、それは当たらないのではないかというふうに私は思います。

鮫島委員 厚生労働省所管の雇用・能力開発機構が平成十六年の三月三十一日で独法に移るのかな、そのときに、借金の処理について国民負担をお願いすることになるんじゃないですか。

坂口国務大臣 雇用・能力開発機構に関しましては二種類ございまして、一つは、勤労者に対して持ち家融資を行う財産形成促進融資でございます。それからもう一つは、事業主が、社宅でありますとか食堂でありますとか、そうしたものの整備を行う際に必要な資金を貸し付ける雇用促進融資でございます。

 二つございまして、一方の方の財産形成促進融資の方は、ここは非常に回収率がようございまして、九九・八%回収をいたしておりまして、ここはそういう問題はないというふうに思っております。

 ただし、もう一つの方の、事業主が社宅ですとかあるいは食堂の整備を行います方は、これは十四年度から貸し付けを中止いたしておりますけれども、現在まだ残っております。こちらの方はかなりまだ残っておりまして、これから回収をしなきゃいけないわけでございますが、こちらの方は、しかし貸倒引当金を用意いたしておりまして、財投の方には迷惑をかけないようにしていくということになっております。

鮫島委員 これも、財務省発表の資料によると、十五年末でこの雇用・能力開発機構は九千七百七十七億円の借入金が未返済のままになっているわけですね。これはどうするつもりなんですか。

坂本政府参考人 議員御指摘の九千七百七十七億円の累積欠損金の内容でございますが、これは固定資産減価償却費が四千三百億余、固定資産売却損等が三千八百億余になっておりますが、この減価償却の損として計上されておりますのは、これは特殊法人等会計処理基準に基づきまして会計処理を行っておりますため、出資金で取得した資産については、減価償却により目減りした分を資本の減資ができない仕組みとなっております。これが結果的に欠損金で累積をするということになっております。この点につきましては、独法移行時に資産の評価をするという形で調整をすることになっております。

 そのほかの、財形融資の欠損金でありますとか、あるいは育成資金の貸し付け等に伴う欠損金につきましては、これは積立金を準備いたしまして措置をすることにいたしております。

鮫島委員 ちょっと説明がよくわかりませんが、では、この雇用・能力開発機構が独法に移行していく過程、それから将来についても国民負担は生じない、そういう、政府の方でここの部分はしょってくださいということはしないということは約束できますか。

坂本政府参考人 雇用促進融資の懸念債権につきましては、一部国の補助金が充当される部分がございますが、それは雇用保険の方で予算を措置しているところでありますが、多くは貸付金利と貸出金利の利ざや等で解消する等の措置でやっている部分もございます。

 議員御指摘の雇用・能力開発機構の欠損金について国民負担を求めないかということにつきましてですが、固定資産の減価償却等のものが欠損金として会計の特殊上、計上されているものについては、これは国民負担を生じるものではございません。ただ、雇用促進融資の一部につきまして、欠損を生じたものについて、それぞれの年度で予算を措置している部分があるというものでございます。

鮫島委員 要するに、国民負担を求めるということは、ちゃんと私はお願いすべきだと思いますよ、国民に。要するに、破綻先なんですよね、おたくはね。

 それから、国営土地改良事業、これも、私が言っているわけではなくて、財政審の方で幾つか指摘されているわけですよ。財投の貸付先として必ずしも健全じゃないところがありますよ、あるいは危ないところがありますよと。国営土地改良事業も、もうきょう時間がなくて言いませんけれども、借金のうちの一割しか返していない。多額の借金を抱えて、民間だったら、元本を全然返していなくて、一割しか返していないというようなところにはもう新たな貸し付けは行わないというのが普通だと思いますが、では、ことし新たな貸し付けを受けるのかどうか、あるいは借金の返済がどのぐらいいっているのかだけ。

笹川委員長 亀井農林水産大臣、発言を求められております。

亀井国務大臣 国営土地改良事業の特別会計、もう御承知のとおり、これは財政融資資金からの借入金と一般会計、こういうことになっておるわけでありまして、この借入金につきましては、都道府県から負担金を徴収して所管しております。これまで負担金の滞納等の事例はなく、借入金の償還は円滑に行われております。このことにつきまして、平成十一年度以降、新規採択から、借入金の借り入れは行っていないということでございます。

鮫島委員 もうやめますが、ただ、ことし、平成十六年度も、財投から土地改良事業に三百六十三億円の借り入れを予定していると思いますが、危ないところには貸さない方がいいと思いますので、それだけ申し上げておきます。またこの問題、改めてもっと細かく今度は取り上げたいと思いますので、よろしく。

 以上で終わります。

笹川委員長 これにて鮫島君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井上和雄君。

井上(和)委員 民主党の井上和雄です。

 まず冒頭、外務大臣に、先週行われました日朝政府間交渉に関してお伺いしたいと思います。

 今回の日朝交渉、国民の多くの皆さんは大変その成果を期待されていたと思うんですね。しかし、どうも、報道によりますと、余り結果が出ないという論調が多いようですけれども、事務方としてのかなりハイレベルな会談が行われたわけですが、具体的にその成果に関して外務大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 今回の協議でございますけれども、これは、拉致問題を含む二国間の諸懸案及び核の問題につきまして、日朝の政府間で話し合うというためのものでございました。

 そして、日本側からは、特に拉致問題の解決の重要性を指摘いたしまして、被害者の家族の方すべての無条件の帰国を求め、そして、安否不明の被害者についての真相究明、これを強く求めたわけです。

 これに対しまして、北朝鮮側は、今回の会合の直前に日本側で外為法の改正法が成立したということにつきまして、北朝鮮を力で押さえるものであるということで強く反発をしました。そして、拉致問題については、五名の拉致被害者をまず北朝鮮に戻すことが先決である、また、子供たちの意思確認、これも必要である、真相究明の問題は解決済みである、これは従来のポジションですが、それを繰り返したということであります。

 このようなやりとりをいたしまして、我が方からは、拉致問題の解決がなくて日朝の国交正常化はあり得ないということを強調しまして、我が方の要求に応ずるということを強く求めたわけですけれども、結局、平行線であったということでございます。

 核問題についても意見交換を行いまして、日本からは、核の廃棄の重要性を強調しました。これに対しまして、北朝鮮側は、朝鮮半島の非核化についてはコミットをしているとしながら、米国を初めとする各国が北朝鮮側のいわゆる核の活動の凍結、この提案にいかに対応するかが重要であるということのその立場を強調したわけでございます。

 それで、委員が先ほど御指摘になりましたように、今申し上げましたように、今回の協議は、日朝双方が互いの立場を詳細に述べるということにとどまって、具体的な結果を見るということにはなりませんでしたけれども、日朝平壌宣言に基づいて諸懸案を解決していくということを確認し合った、そして、政府間の協議を継続するということで申し合わせたということでございます。

 これは、政府間協議がずっとなかったわけでございまして、政府間のハイレベルで詳細にじっくり話し合ったという、その意味があったわけでございます。我が国として、引き続き、この解決、このために一歩でも二歩でも前進をするように政府として問題の解決に努めていく、取り組むという立場、これには全く変わりございません。

井上(和)委員 結局、平行線で交渉は終わったということなんですが、私自身も、田中外務審議官や薮中局長が行かれるということで、これはかなりの成果があるのかなというふうに思っておりましたし、恐らく国民の方もそういう見方をしたと思うんですね。

 そういった意味で、今回の交渉はそもそも一体どういう経過で始まったんでしょうか。本来、当然ある程度の内々の打ち合わせがあって交渉が進展するという状況のもとでこの会談が行われたのか、そうじゃなかったのか、ちょっとその辺に関して御説明していただきたいと思います。

川口国務大臣 これは再三申し上げてきておりますけれども、政府間で交渉することが大事なのだということを北朝鮮側に対してずっと日本は働きかけてきたわけでございます。そして、それに対して、北朝鮮側から、これは北京大使館のルートでございますけれども、今回、田中、薮中両名を受け入れるという話があったということでございます。

井上(和)委員 そうしますと、今回は成果が上がらなかったんですが、今後、日朝間の二国間交渉というのはどういうふうに進めていくんでしょうか。また、今の田中さん、薮中さんのラインで交渉をずっと続けていってうまくいくというふうにお考えですか。

川口国務大臣 私どもとしては、政府間で協議をしていくということが大事だと考えております。そして、これについては、今後引き続き、いろいろな機会を活用、利用しまして、一歩でも二歩でも前進するように最大限の取り組みをしていくということでございます。

 それで、今回の陣容でいいかどうかということですけれども、政府レベルの協議ということを考えたときに、まさに、実務専門家のラインの責任者とそしてこの問題に長いことかかわってきている人間というのは、最高の、我が国としてはベストな布陣で臨んだということだと思いますし、これを変えなければいけないということは考えていないということです。

井上(和)委員 二十五日から六カ国協議が始まるわけですが、この拉致問題を何としても六カ国協議のテーブルにのっけて問題解決に向けて前進する、こういう姿勢が非常に大事だと思うんですね。

 そういった意味で、政府として、この拉致問題をどういうふうに働きかけて六カ国協議の議題にのっけていくんでしょうか、また、今、ほかの国の反応というのはどういうことがあるか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

川口国務大臣 我が国の態度はずっとこれについては一貫しておりまして、六カ国の場で、拉致問題につきまして、これを解決することの必要性を北朝鮮側に伝え、これを取り上げていくということは、もうずっと前から申し上げているわけでございます。

 一歩でも二歩でも前進するように、いろいろな機会を活用して、利用して、できるところでは全部話をしていくということだと思います。

井上(和)委員 今回の交渉の一つの大きな要因となったのが外為法の改正だということが言われております。具体的に北朝鮮はどういうふうにこの外為法の改正について言及してきているんでしょうか。

川口国務大臣 これについては、非常に強い反発があった、この会談の二日前に成立をさせるということは北朝鮮を力ずくで押さえつけようとするものであるということで大変に強い反発があったということでございます。

井上(和)委員 とにかく、この拉致問題をさらに前進させるためにも、ぜひ二十五日からの六カ国協議でしっかりと議論していただきたいということをお願いいたします。

 それでは、外務大臣、もうこれで結構です。

 きょうは、まず年金問題について、坂口厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 大臣、私は東京の下町である墨田区、荒川区から選出されておる議員でございまして、東京でも中小企業が非常に多い地域なんですね。そういった意味で、現在の不況に最も影響を大きく受けている。そして、繊維、鉄鋼関係の企業も多くありまして、中国からの輸入によって直撃を受けて倒産した企業も非常に多いんです。

 実は、三年ほど前になりますけれども、やはり私の地元の繊維業の経営者の方から、負債を抱えて倒産しそうだという御相談を受けたことがありました。私も、知人の弁護士を紹介したり、いろいろ相談に乗りまして、いろいろ努力はしたんですが、結果的には、借金を返すことが不可能で、本人と奥さんも自己破産して、再出発ということになりました。

 再出発といっても、七十歳を過ぎた方だったので、私も本当に大丈夫かなと非常に心配したんです。ただ、幸い、自己破産しても年金は残るわけですね。そういった意味で、年金の方は約十五万円ぐらいありましたから、あとは奥さんがパートに出るということで、自宅はもう引き払わなきゃいけなかったですから、自宅を引き払ってアパートを借りて、そこで新しい生活を始めることができました。

 私は本当に一安心したんですけれども、そのときも、年金というのは本当にありがたいなということもその方はおっしゃっていましたし、私も、老後、年金があるということがどれだけ安心して暮らせるということにつながるのかと、本当につくづく認識いたしました。その方も、いや、もし年金がなければ、子供たちといっても子供たちも本当に生活で大変なので迷惑かけることできないから、もう本当に首をくくるところでしたというようなことも言っておられたんです。

 実は、この方、昨年お亡くなりになったんですけれども、一つの、高齢者の方々にとっていかに年金が大事かという具体例をお聞きいただきました。

 そこで、大臣、我が国では一九六一年に国民年金制度が発足したわけです。その際、国民皆年金、国民のだれもが年金を受け取れる、そういう理想を持ってこの制度は始まったと思うんですね。この国民皆年金という理想について、大臣、今どういうお考えをお持ちですか。

坂口国務大臣 今、先生から、真正面からの御質問をいただきまして、申しわけありません。

 年金改革というのは、今御指摘をいただきましたように、大変重いものだと私も考えておる次第でございます。高齢者の皆さん方にとりまして、やはり年金というのは一つの大きな頼りになる存在でございますし、そのことを思いますと、皆年金、みんながやはり年金に入っていく体制をつくらなければならない、これはもう最大の課題だというふうに、私も率直にそう思っております。

 そのために、お若い皆さん方に対しましても、若いときにはそれほど老後のことを思いませんから、なかなか年金の保険料というふうに思われない方もございますけれども、全体の数字を見ておりましても、やはり三十五歳を過ぎてまいりますと、今までお入りになっていなかった皆さん方でもお入りをいただく方がふえてくるといったようなこともございます。

 年齢とともにこの年金に対する考え方も私は変わってくるように思っておりますが、いずれにいたしましても、やはり全員が支え合っていける年金制度というものを確立しなければならないということでは、私も同じ意見でございます。

井上(和)委員 大臣、今、これは最大の課題だとおっしゃいました。私も、国家の目標としてやはり一つの大きな、最大の課題だというふうに思っています。恐らく、ここにおられる自民党の委員の皆さんも、ほとんどがやはりそういうふうに思っておられると思うんですね。

 数百万人もの国民が年をとって年金がなくて生活ができない、そんな社会では、とてもこれは安心して暮らせる社会とは言えません。当然、社会としても非常に安定を欠く社会になってしまいます。多くの国民が年金をもらえない、そして、大変厳しい困難な老後の生活を送らなければいけない、そんなことが起こらない社会をつくる必要があると私は思うんですよね。大臣も同じ意見ですか。

坂口国務大臣 それは私も、そういうふうな社会をつくらなければならないということでは同じ思いでございます。

井上(和)委員 残念ながら今の社会はそうじゃないということをこれからちょっと議論を深めていきたいと思うんですけれども、谷垣大臣にお伺いします。

 大臣は、この国民皆年金の理想というものに関して、どういうお考えを持っていらっしゃいますか。

谷垣国務大臣 先ほど井上委員が選挙区の方の例を引いておっしゃいましたように、老後の生活保障のかなめとなる制度ですから、これはやはり、国民皆年金という形で国民ひとしくそういう保障を受けられるということが意義があると思いますし、また、制度の安定的な運用ということからいいましても、国民全部が参加していただいて、一部の者だけではなくて全員だということで安定的に制度が運用できる、これは望ましいことであるし、その努力をしなきゃいけないと思います。

井上(和)委員 非常に肯定的な御意見をいただきまして、私も非常に頼もしく思うんですね。やはり政治家ですから、私たちみんな、理想を持って、よい社会をつくりたいという思いを持っているわけですね。ところが、現実が非常に違う。それが今の状況なんですね。では、それをどうやって理想に近づけるか、まさしくそれは政治家の責任だというふうに思うんですね。

 さっき大臣が私の質問に対して、真っ正面から問いかけてきたということをおっしゃいましたけれども、大臣のお答えはまだ、私が思うに、真っ正面から答えられていないんですね。つまりは、今の、特に国民年金がまさしくその国民皆年金という理想から余りにかけ離れている、そういう実態があるわけですよ。だから、これは本当に、今の年金制度でいいのかということをしっかり議論していかなきゃいけない。

 今回の年金制度の改革でも、大臣は、先日の予算委員会の質問でも、年金は負担と給付の問題ですというふうにおっしゃっています。しかし、今の現実を見れば、負担できない人がたくさんいるわけでしょう。そこに、本当にどうするかを考えていかなければ、とても年金改革に値しないですよ。

 そこで、お伺いしますが、現在、国民年金の第一号被保険者の数というのは幾らなんですか。

薄井政府参考人 お答えをいたします。

 国民年金の第一号被保険者としてお届けをいただいている方、これは平成十三年度の数字でございますが、二千二百万人でございます。

井上(和)委員 それじゃ、未加入者と未納者、免除者はそれぞれ幾らですか。

薄井政府参考人 これも同じく平成十三年度時点での調査ということになりますけれども、第一号被保険者として加入すべきにもかかわらずその手続をされていない方、未加入者、これが六十三万人という数字でございます。

 それから、未納者でございますが、これは保険料を納めるべきにもかかわらず過去二年間全く納めていない人という形で調査をいたしておりますが、それが三百二十七万人という数字でございます。

 それから、免除者でございますけれども、これも同じ時点、平成十三年度で申し上げますと、保険料の免除者が三百七十六万人ということでございます。

 十四年度は、免除基準の見直しがありましたので若干数字は変わってまいりますが、十三年度の数字は以上でございます。

井上(和)委員 二千二百万人、第一号被保険者、つまり国民年金の加入者がいて、未加入者が六十三万、未納者三百二十六万いるわけですね。この未納者三百二十六万というのは二年間保険料払っていない人ですから、その後、なかなか払う人は少ないと思うんですよ。

 大臣が先ほど、いや、三十五歳ぐらいになって払う人はふえるとおっしゃったけれども、三十五歳から国民年金をもらえるまで、一体何年払わなきゃいけないんですか。

薄井政府参考人 お答えをいたします。

 国民年金の受給資格期間は二十五年ということでございます。三十五歳から原則六十歳までということですから、二十五年間フルに納められれば受給資格が得られる、こういうことでございます。

井上(和)委員 三十五歳から六十歳まで払っても、十五年間しか払わないでしょう。(発言する者あり)二十五年間か。失礼。だから、それでぎりぎりだけれども、いくわけですよね。

 今、免除者が三百七十六万人いるとおっしゃいましたね。免除者って、年金をそのままもらえるんですか。もちろん、収入が少ないということで免除になっていると思うんですよね。

吉武政府参考人 現在、全額免除それから半額免除、二つの免除制度がございまして、全額免除の方は、住民税の均等割が非課税という形であります。それから、半額免除の方は、所得税の課税所得が三十万円未満という形でございます。

 全額免除の方の場合には、国庫負担三分の一で申し上げますと、給付は国庫負担相当額の三分の一が給付をされる、その期間でございますけれども。それから、半額免除の方は、国庫負担三分の一でありますと、給付は三分の二の給付がされるという形でございますが、基礎年金の国庫負担が二分の一になってまいりますと、これが、二分の一の給付それから四分の三の給付というふうに変わってくるということでございます。

井上(和)委員 局長、済みません。今だと、例えば、免除者はどのくらいもらえるんですか、年金額、具体的な額として。

吉武政府参考人 今回、スライド特例法を提出させていただいておりまして、昨年の物価の下落分、マイナス〇・三%を引き下げさせていただくという形になります。その引き下げ後で、基礎年金が六万六千二百八円でございます。これに対しまして、今申し上げました三分の一の場合には、全期間三分の一免除という形でございますが、二万二千六十九円でございます。

井上(和)委員 つまり、免除者の場合、年金が月々二万円ちょっともらえるんですね。これは本当にわずかな額ですよね。つまり、今の国民年金の未加入者六十三万、未納者三百二十六万、そして免除者も月に本当に二万円ぐらいしかもらえない、こういう現状だから、ほとんど低年金でもらえていないというふうに考えてもいいと私は思うんですよ。

 そうすると、これ、トータルはどのくらいになるんですか。大変な数じゃないですか。六十三万と三百二十六万でもう七百万ぐらいになっちゃうんじゃないですか。今、国民の七百万人の人が、加入していないか、払っていないか、ほとんど年金をもらえない、月二万円ぐらいしか、低年金しかもらえないという状況にあるんでしょう。大臣、これは大変な状況じゃないですか。

坂口国務大臣 具体的な数字は局長が言ったとおりでございますが、あらあら申し上げて、払えない人と払わない人と両方あるわけでございます。払えない人が大体五百万人、その中には学生さんの一時保留の分も入っております。百五十万ぐらい入っております。その残りの、払える、所得がありますけれどもそれに応じていない人が三百九十万人ぐらい。大体、アバウトな数字でございますけれども、そういうことになっております。

 払えない人にはそれぞれの御事情があるわけでございますし、これは年金だけではなくて全体の問題として、この人たちに払っていただけるような社会をどうしていくかということを考えていかなきゃならないというふうに思っております。

 ただし、払えるけれども払わないという三百九十万の人に対しましては、ぜひ払っていただくように、これは説得を申し上げていく以外にないというふうに思っておりまして、粘り強くこれは説得をしなきゃいけないというふうに思っております。

井上(和)委員 大臣、粘り強く説得すると。説得するのはお役人がやるんでしょう。これは、数百万人の、年金を払えて払わない人を説得していく。

 大臣も、先日、この委員会でおっしゃいましたね、いや、強制的に徴収することも考えなきゃいけないし、制度の信頼性を取り戻して多くの人に払ってもらわなきゃいけないと。本当にそういうふうに思っているんですか。それで払ってもらえるようになると本当に思っているんですか、大臣。

坂口国務大臣 そうしなきゃいけないと実は思っております。

 問題は、払わない人の中もさまざまでございまして、ほかの、いわゆる一般の生命保険に入っておみえになりますけれども年金には入らないという方も中にはある。そして、払っておみえになる方と払わない方との所得構成を見ますと、余り変わらないわけでございます。

 ですから、所得の額の非常に少ない方でも、ちゃんと払っていただいている方もありますし、そうでない人もあるということでございまして、その辺のところは、所得の少ない方々には、今回も、ただ半分というだけではなくて、四分の三それから四分の一というような多段階方式をつくりまして、そして、その所得に合ったように御参加をいただいて、徐々に全額を負担していただくような体制をつくっていただくように努力をしなければいけないというふうに思っております。

 もう一つ大事なことは、年金制度については、自分のためだけではない、みんながお互いにこれは支え合うものだということの御理解もいただかなければならないわけでありまして、そういう意味で、高額所得の皆さん方には特にそうしたことをよく御説明しなければいけないというふうに思っております。

 今までは市町村でおやりをいただいていた。これは、前回の改正で国のやることにしたわけですね。昨年から、平成十四年からでございますか、国がやるようになった。国が少ない人数でやるということでは少し無理があるということは、これはもう自明のことでございますので、もう少し市町村のそれぞれの立場の皆さん方にもお手伝いをいただけるようなことを考えて、やはりきめ細かくやっていかなければいけないというふうに思っておるところでございます。

井上(和)委員 大臣が一生懸命、国民の方の御理解を求めたいと言っても、国民の方で、どうも理解するのはかなり難しいと思いますよ。

 それで、強制的に徴収するといっても、以前は、保険料徴収の事務費というのが保険料の一割ぐらいあったんですよ。今でも、かなり少なくはなっていますが、これは昨年の数字だと思うんですが、二兆一千億の保険料を集めるのに千四百億円、七%ぐらい、事務費がかかっているわけですよ。これでさらに、払える人から強制的に取ろうといったら、これは事務費だけでも大変なことになりますよ。

 世界的に、年金の行政費用というのは保険料の一%だと言われているんですよ。保険料の一%ぐらいじゃないと要するに健全な年金制度として成り立たない、そういうことが言われているんですね。

 今、厚生年金の場合は何%かわかりますか。数字、言っていないけれども。厚生年金は〇・五%ぐらいじゃないんでしたっけ。まあ、それはわかったら言ってください。

 つまり、幾ら国民の方に御理解していただいて払ってもらおうと思ったって、また、払える人から取ろうと思ったって、現実には不可能ですよ。つまりは、もう七、八百万の人が国民年金に加入していないか払っていないかとか、こういう状況を変えることは不可能だと私は思っていますよ。ただ、その人がすべて将来無年金者になるとは、それは私も思いません。しかし、それでも相当の数が無年金になる。そういう社会でもいいんですか、厚生労働大臣。

坂口国務大臣 先ほど申し上げた中で、払えない人をどうするかの問題は別途考えなけりゃいけないと私は思うんです。そういう経済状況の中にあるという人たちでありますから、その中身もいろいろではございますけれども、その人たちに対する手の差し伸べ方、これはまた別途考えなければいけないというふうに思いますが、先ほど申しましたように、払えるけれども払わないという人たちに対してどうするかの話でございます。

 これは強制的にということを先日も申し上げましたけれども、それは、一部そういうこともやりながら、しかし、それだけでいいかといえばそうではない。お互いの支え合いということをみんな納得して出していただくということにしなきゃいけないわけですから、それはする以外にないというふうに思っております。

 年金制度、これからいろいろの改革案が出るだろうと思いますし、民主党もお出しになっております。いわゆるスウェーデン方式を見ましても、例えばスウェーデン方式でございますと、個人単位でございますから、そうすると、サラリーマンの奥さん方にもお入りをいただく、そうすると、徴収をしなきゃならないという問題が起こってくる。どう徴収するかという問題が起こってくる。

 また、二階建ての部分も、これは自営業者の皆さん方もお支払いをいただくということになりますから、そうしますと、今度は、多額の保険料を徴収しなければならないという問題が起こってくる。

 それらのことを、どの制度を見ましてもなかなかその辺のところは避けて通れないところでございますから、ここは粘り強くやっていく以外にないと私は考えております。

井上(和)委員 私は、もう今の年金制度は制度として崩壊していると思っています。これは税方式に早く切りかえていかなければ、私は先ほど危惧したような状態が起こると思うんですね。

 例えば、今、国民年金の、先ほど未加入者の数を出してもらいましたけれども、保険料の納付状況というのはどうなっているんですか。

薄井政府参考人 先ほど、平成十三年度のある断面での数字ということでお答えをさせていただきました。

 平成十四年度の保険料の納付状況、これは、保険料を納めるべき人に対してどれだけ納まったか。これは月数、一人一人動きがございます、月数で換算をしていますけれども、平成十四年度の保険料納付率は六二・八%というのが現年度の数字でございます。ただ、二年間、時効に来るまで納められますので、十三年度分、十二年度分で、合わせまして三、四%ぐらい納まっているということでございます。

井上(和)委員 つまり、保険料も六〇%ぐらいしか入っていないんですよ。これで空洞化していないと言えますか。大臣、どう思います。

坂口国務大臣 そこは私も深刻に受けとめておるわけでありまして、だからそこをどうするかということを考えなきゃいけないので、さまざまな議論を今重ねているところでございます。しかし、この問題、特別な方法があるわけではなくて、粘り強くここはやる以外にないというふうに思っております。

 先ほどおっしゃいましたように、保険料ではなくてここは税制でというお話がございましたけれども、税制で基礎年金をもしもやるといたしましても、それじゃその上の年金はこれまた集めなきゃいけないわけでございますから、同じことがこれは起こってくるというふうに思っています。

 例えば自営業者でありましたら、その上の方の、基礎年金だけという年金制度にするのならばそれは要らないというふうに思いますけれども、自営業者の皆さんも二階建てにするということならば、二階の部分はまた集めなければならないということになってまいりますから、これはやはりしていかなきゃなりませんし、全体として見ましたときに、基礎年金を全額税制でということになりますと、これはかなりの額になります。将来またこれはかなりふえるわけでありますから、医療のこと、介護のこと、すべてを念頭に置きながら考えますと、全額を税制でというのはなかなか難しい話だというふうに私は思っております。

井上(和)委員 この場でくそ詳しい議論をするつもりはないんですね。つまり、私が申し上げたのは、今本当に国民年金の未加入者、未納者が非常に大きな数である、このままでいけばもう制度が崩壊する、そして多くの無年金者が発生する、社会の安定にとって非常に危機的な状況に陥るという問題を指摘しているわけですね。

 それをどういうふうに解決するか。恐らく、税方式でやることが一番いいと私は思っていますよ。ただ、そのときに、所得の少ない人、そういう人に厚く手当てしていく。私たち、まさに民主党が言っているような、所得の上の方の人は税じゃなく積立方式でやってもらう、こういうことも考えられるわけですね。

 そういう意味で、一言だけ。今、国民年金の加入者自体も、本来、自営業者だったわけですよ。ところが、今、中心が無職の人とかフリーターに移ってきているんですね。今後、この傾向はもっともっと続いていくわけですよ。条件はもっと悪くなりますよ。だから、今こそ本当に改革していかないと大変なことになるということで、またこの議論は引き続きこの予算委員会でやらせていただきたいと思います。

 それでは、別の問題に移らせていただきます。大臣、どうもありがとうございました。

 それでは、今度、金融庁と警察庁に、やみ金融に対する対策の進捗状況に関してお伺いしたいと思います。

 やみ金融問題、一昨年秋ぐらいから大変な問題になってまいりまして、私も、これは大変なことだと思いまして、同僚の議員とともに、金融庁や警察に対策強化をお願いしてまいりました。また、私自身が、民主党のやみ金対策法を作成する際に、法案担当者として議員立法をいたしまして、その後また、自民党の金融部会の先生方の御協力や他党の先生方の御協力を得て、昨年の通常国会で議員立法した貸金業規制法の改正が全党一致で成立したということになりました。

 そこで、竹中大臣にお伺いしたいんですが、昨年成立したやみ金対策法、一部は昨年の九月から施行されております。具体的には、高金利、無登録業者に対する厳罰化、違法な広告や勧誘の禁止。また、これまで、やみ金業者のチラシとかダイレクトメールがもう野放しだったんですね。これも禁止いたしました。また、ことしの一月一日からは法律の全体が施行されましたけれども、現在のやみ金融の実態について、大臣、どういう認識を持っておられますか。

竹中国務大臣 井上委員におかれましては、この分野で特に大変御活躍をいただき、御指導いただいているというふうに認識をしております。

 今御指摘ありましたように、昨年八月に、このやみ金対策法が成立して、その後、それがどのような状況にあるか。これは、九月に一部施行、本年一月から全部施行でありますから、我々としても、今しっかり様子を見ているところだということでございます。

 二点申し上げたいと思いますが、今回、参入要件を厳しくしております。そういうことを反映してだというふうに思われますが、数字がとれるのは昨年の七月から十二月までの期間でございますけれども、全国の財務局、都道府県における貸金業者の新規登録件数につきましては、前年同期に比べて一五%の減、東京では三七%の減ということで、これは参入要件を厳しくしたということの効果があらわれ始めているのではないかなと思っております。

 実態として、こういった意味での苦情等の件数がどうなるかということを我々は注目しているんですが、これはまだちょっと計数の関係で、昨年九月から一部施行というふうに申し上げましたが、昨年の十―十二月期の数字までしかございません。

 これに関して言うならば、関東では、七―九月期二千二百三十三件であったのに対して十―十二月期は二千五百四件ということでやはりふえている、ただし、その増加は鈍化しているという傾向があって、ぜひこういった傾向を実現、さらに強化したいなと。近畿につきましては、七―九月期六百十一件の苦情があったのに対して四百六十二件、これは減少しておりまして、まだ数字は整っておりませんけれども、少しよい方向が出る可能性はある。これはしっかり見ていきたいと思っております。

井上(和)委員 私たちも非常に効果的な法律をつくるということを考えまして、特に現場の警察官が取り締まりしやすくしようということで随分頭をひねりまして、これまでは、警察官が例えばやみ金の被害者に呼ばれても、これは民事不介入だということで相手にしてくれなかったわけですね。だから、そういった意味で、今回、私が考えたのは、例えば、貸金業者として登録してある者に関しては従業員が身分証明書を携行しなきゃいけないというふうにしました。だから、警察官がすぐ身分証明書を要求できる。持っていなければこれは法律に違反しているということですから、やみ金業者であるということが非常に簡単に判明できるわけですね。

 ところが、最近のケースでも、やみ金業者に押しかけられて、一一〇番へかけて警官を呼んでも、やはり民事不介入だと言われて何にもしてくれないというケースがあったということなんですね。だから、もう少し現場の警察官にこの法律の趣旨を徹底させてもらいたいと思うんですよ。例えば、取り立てももう午後八時以降はできないというふうに法律でしっかり書いてありますからね。

 だから、その辺をやはり現場の警察官が理解しないとなかなか取り締まりが進まないということになるので、その辺がまだちょっと努力が足りないと思うので、今どういうふうにこの法律の趣旨を徹底させているか、また、今後どういうふうにやっていくか、ちょっと警察の方で御答弁をお願いします。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 第一線警察に対しまして関係法令や具体的な対応要領を十分に周知徹底させることは、実効あるやみ金融対策を推進していく上で極めて重要だと考えております。

 そこで、警察庁といたしましては、やみ金融対策法の成立に伴いまして、各都道府県警察に対しまして、一つは、改正法のポイントと捜査に当たっての留意事項、またもう一つは、取り立てをめぐる違法行為に現場において的確に対応するための現場対応要領、さらには、やみ金の問題等で相談業務に来られる方に対してその相談に従事する警察職員向けの相談の対応要領について指導したところであります。

 具体的には、昨年の八月の頭に、全国の捜査担当幹部を集めまして、やみ金融事犯捜査担当者会議を開催したのを初めとしまして、九月以降には、やみ金融に対する集中取り締まりを実施しました。また、十一月には、各管区ごとに、捜査幹部を対象にケーススタディー並びに改正法をめぐる質疑応答を行って、周知徹底を図ったところであります。

 今御指摘のようなことも、今後あらゆる機会を通じまして都道府県警察に対して指導に努めまして、法改正の趣旨に基づく積極的な取り締まりが行われるように努めていきたいと考えております。

 以上でございます。

井上(和)委員 幹部の方は問題ないんですよ。問題は、交番にいるお巡りさんとか、パトロールカーに乗っている現場の第一線のお巡りさんなんですよ。だから、そういう方にどうやって徹底させるかということを私は今お聞きしているので、例えば、それはもういろいろな方法があると思いますよ。パンフレットをつくるとか、それを全員に配るとか、講習会を警察署ごとにやるとか。やはりそれをやっていただかないと、相も変わらず民事不介入ですというふうになっているんじゃ、これは法律をつくった方としてもたまったものじゃありませんので、ぜひよろしくお願いします。

 それで、先ほど竹中大臣からもお話ありましたが、貸金業の登録自体も大分厳しく制限するようにしましたから、やみ金融業者が、悪徳業者が登録することはかなり減っていると思います。以前だったら、それこそ二十ぐらいの茶髪の人が東京都にどんどんどんどん来て登録していたという現状があったわけですね。

 ただ、最近、やはり警察も取り締まりが厳しくなってきたから、やみ金業者がいわゆるおれおれ詐欺とか架空請求、こちらの方に仕事の内容を変えてきているという状況も私はあるんじゃないかと思っていますけれども、警察庁、今どういう認識をしていますか。

伊藤政府参考人 いわゆる架空請求事案についてでございますけれども、十五年中に検挙しました大規模な架空請求事案でその被疑者らがやみ金融に関与していたという事実は、検挙した事案の中ではございませんでした。また、いわゆるおれおれ詐欺につきましても、元やみ金融業者による犯行と見られる事件は、平成十五年中は一事件を把握しております。

 したがいまして、現在までの検挙状況を見る限りにおきましては、やみ金業者がこうした架空請求とかあるいはおれおれ詐欺の方に移ってきたというような状況をはっきり確認するには至っておりませんけれども、いずれにしましても、やみ金融事犯あるいは架空請求事犯、さらには、おれおれ詐欺事犯につきましては、多くの国民が被害者となった犯罪でありますので、こうしたものにつきまして、引き続き積極的な取り締まりを行っていきたいと考えております。

井上(和)委員 実は、私の家にも電話がかかってきまして、料金を払えと言うんですよ。それが何回も何回もかかってくるんですね。私の家内も、何回もかかってくるから、あなた、本当にかけたんじゃないのとか、ついに家内にも疑われ始めまして、私は絶対使っていないんだというふうに言っているんですけれども。

 そこで、警察庁の人にもちょっと相談して、相手の電話番号を渡して、とにかく調べてくれと言ったんですけれども、全然調べてくれなくて、衆議院議員の私が頼んでも何にもやってくれないんだから、これは一般の人が相談しても何にもやってくれないのは当然だなというふうに思いました。

 特に最近は、何かインターネットを使って、例えば、ポルノのページがあるようなんですけれども、そういうところをあけるとそれによって料金が発生するというふうにページが非常に巧みにつくってあるらしいんですね。そこで要するに請求がされるというケースがあるみたいですね。非常に巧妙な手口になっているようなんですね。これは、確かに、私の家内みたいに、あなた本当にやったんじゃないのというふうに言うように、やったやらないの話になっちゃって難しいので、非常に取り締まりも難しいと思います。

 先日、警視庁がおれおれ詐欺などに使われていた千四百口座を転売していた者を捕まえたという報道がありました。この問題は私たちも認識していたんですが、なかなか対策がとれなかったんですけれども、金融庁、今、どういう検討をしていますか、また、どういう対策をとっていますか、不正口座の場合。

竹中国務大臣 さまざまな犯罪、特に経済的な犯罪については、どこかでお金を受け取る仕組みが必要、そういうことで、架空口座等々に象徴されるように、やはり銀行の口座が悪用されるケースが多い。これは大変遺憾なことであり、我々としてもしっかりと対応しなければいけないことであるというふうに思っております。

 金融庁としては、架空請求等、悪質な業者によります口座の不正利用に適切に対応するために、昨年の九月に、全銀協等の各金融団体に対して文書での要請を行っております。これは、全銀協のほかに地銀協、第二地銀協、信託協会等々を網羅しておりますけれども、まず、本人確認をさらに徹底する、それと、必要に応じて預金取引の停止または預金口座の解約を行う等、適切な口座管理をしろということをお願いしているわけであります。

 全銀協において、この我々の要請を受けまして、昨年の十一月二十七日に、口座の不正利用に伴う口座の利用停止とか強制解約等の状況というのを公表しております。これによりますと、昨年の四―六月期においては九百九十六件、同七―九月期においては三千六百十三件の口座について、利用停止または強制解約等々の措置がとられたというふうに承知をしています。

 我々としては、同時に、金融庁でありますとか各財務局に寄せられました架空請求口座等の不正利用等に関する情報、そういう情報が寄せられた場合には、金融庁なり財務局からその当該金融機関に対して情報提供を行っております。

 それで、このような取り組みを開始したのは十五年の九月でありますけれども、その九月以降十二月までの間に我々の方から提供を行った口座情報は千三百五十九件あります。十二月末の時点で、そのうち三百七十四件が利用停止に、百五十一件が解約になったというふうに聞いております。

 我々としては、先ほど言いましたように、やはり口座をしっかりと管理してもらうことによって犯罪の防止にぜひ努めたいと思っております。

井上(和)委員 おれおれ詐欺とか架空請求の場合、口座の方でトレースというんですか捜査をしていくのが一番効率がいいと思うので、ぜひそれをしっかりやってください。

 きょうは総務省を呼ばなかったんですけれども、郵便局の方も口座もあるので、ぜひ大臣の方から郵便局の方にちょっと言っておいてください。

 それで、官房長官に来ていただいたので、これは通告していないんですが、先ほど川口外務大臣がいらっしゃったので日朝交渉のことに関してお伺いしたんですが、ちょっと今お伺いしてもよろしいですか。

 今回の日朝政府間交渉に関して、総理との会談にも参加されたというふうに新聞に出ていましたけれども、田中さんが総理にお会いしたときにも官房長官は御出席されたということですけれども、官房長官はどういうふうに評価されていますか。

福田国務大臣 概括的なことで申し上げたいと思いますけれども、一昨年に政府間交渉がございまして以来、一年半近くにわたりまして交渉はなかったんです。そういう意味におきまして、今回、政府間交渉ができたということは、これはやはり、北朝鮮もいろいろ問題を解決しよう、そういうような気持ちを持っているのではないかということで評価をいたしております。

 会談の中身自身は双方の主張を述べ合うというようなことでございましたけれども、しかし、今まで話題にもならなかった、例えば核の問題についても北朝鮮側はいろいろと話をしたというようなこともあったようでございますので、それはそういうような状況になってきたのかな、こんなふうに思っております。

 今後は、この成果を上げなければいけないということでございます。これはなるべく早くその成果を上げるよう努力するように、そういうような指示が昨日総理からもあったわけでございまして、また政府全体として懸命に努力してまいりたいというふうに思っております。

井上(和)委員 どうもありがとうございました。

 それでは、官房長官にきょうお越しいただいたのは、まず、昨年の秋には衆議院の選挙もございました。当然、官房長官もあちこち選挙の応援に入られたと思うんですね。その際に、これは政治の世界ですから陣中見舞いを持っていくのは当然だと思うんですけれども、官房長官はそんなことはなさらないとは思いますけれども、そういう陣中見舞いを機密費からさっと出したりすることはないでしょうか。

福田国務大臣 報償費の使用につきましては、これは官房長官の責任と判断のもとに厳正に行っているつもりでございます。使途について申し上げるということはこの性格上できないのでございまして、御了解をいただきたいと思います。

井上(和)委員 それでは、前回の衆議院選挙で埼玉県第八区で当選した前自民党衆議院議員の新井正則派による公職選挙法の事件に関してお伺いしたいと思います。

 この新井派の選挙違反というのは、本人御自身も、そしてまた選対関係者らを合わせて全部で二十七名が逮捕、起訴されるという、まさに自民党による組織ぐるみの買収行為が行われたということでございます。そして、それが特に森派が派閥を挙げて応援した候補であった。(発言する者あり)新井正則なんですね。

 小泉総理も何か派閥解消ということを言っていらっしゃるんですけれども、どうも選挙中には、総理御自身、また安倍幹事長が二回入られているし、そして、それ以外の有力な方々も応援に入っているわけですね。福田官房長官も応援に行かれたわけですよね。

福田国務大臣 私も一度、遊説の途中に合流したことがございます。

井上(和)委員 森派を挙げて、総理・総裁派閥で全力を挙げて運動したことで当選したということだと思うんですね。新井選対の内部資料によれば、自民党の幹事長の安倍さんも新井選対の名誉顧問として名前を連ねている、そういうことです。そして、実際の買収の資金も、どうも政党助成金が使われたんじゃないかということが言われているわけですね。

 官房長官も当然、森派の幹部ですから、今回、御自分の派閥が総力を挙げて当選させた議員が大規模な、本当に前代未聞と言えるような大規模な買収事件を起こしたということに関して、どういう責任を感じておられますか。

福田国務大臣 選挙にまつわる不祥事、これはどうしてもあってはならないことでありまして、こういうことによってまた政治不信を増加させるというふうなことはあってはならないことだというふうに思っております。そういう意味において、我々としても、そのようなことになったことは極めて遺憾であるというように思っております。

 森派を挙げてとおっしゃるけれども、挙げての意味はよくわかりませんが、だれかが応援に行くわけですから、それは関係の深い人が行くんだろうということでございまして、派閥的にとかどうとかいうふうに言われるのは御自由ですけれども、自民党というのは大体そういうふうにやっておるんですから、これはそういうことで御理解いただきたいと思っております。

井上(和)委員 それでは、応援に入られた方の名前をちょっと。例えば、総理、幹事長、福田官房長官、町村総務局長、中川秀直国対委員長、尾身幸次元沖縄北方大臣、そしてまた、さらに森元総理。こういった本当に有力な方、ここに、委員会にも所属していらっしゃいますよね。こういう方々が応援に所沢市に入ったということなんですよね。

 これはもう森派の総力を挙げて応援して当選させたということだと思うんですね。それはやはり大変な責任があるんじゃないですか。まず候補者を選ぶのだって、当然、派閥でやっているんじゃないですか。どうですか、官房長官。

福田国務大臣 派閥でどういうふうにやっているかということはわかりません。派閥というふうに言わないで、政策研究会、こういうふうに言っておりますのですが、どういうふうにやっているかわかりませんけれども、またしかし、候補者がやはり候補者としての自覚を持ってやらなければいけないということでありまして、応援に行く人は別にお金の使い方を指導しているわけじゃないと思うんですね。

 やはり街頭で演説をするとかいうようなことをして、政治信条とか政策とか、そういうことを中心にサポートしているわけでございますから、そこでそういう事件を起こしたということについては、極めて残念であり、また遺憾なことでございますけれども、それ以上のことにつきましては本人の問題であろうかというふうに思っております。

井上(和)委員 先ほど申し上げたように、今回の買収の資金が自民党から支給された政党助成金にあるということが言われているんですね。

 ここで捜査当局にお伺いしたいんですが、どうも五百万円以上の支部交付金が買収に使われたということが一部で報道されているんですが、政党助成金が買収に使われたんでしょうか。警察庁、お願いします。

栗本政府参考人 お尋ねの事件につきましては、既に警察として捜査をし、事件を送致、起訴されているところであります。そのような起訴された事件の、まさに先生の御質問は証拠の内容にかかわる問題でございますし、今後の公判で必要に応じて明らかにされるものと承知しておりますので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

井上(和)委員 では、これで質問を終わります。

笹川委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林憲司君。

小林(憲)委員 私は、民主党の小林憲司でございます。

 竹中金融担当大臣初め金融庁、政府関係機関の皆さん、本日は御苦労さまでございます。

 私は、これから、新生銀行の再上場に関する件で御質問をさせていただきます。政府側の答弁は適切かつ迅速にお願い申し上げます。

 竹中金融担当大臣は、大学教授らしからぬ口八丁手八丁で、小泉内閣の看板大臣として獅子奮迅の活躍をしておられます。米国を初め国際金融取引についても大変熟知されておられ、政府における第一人者であることは周知の事実でございますが、私も米国の大学に留学をいたしまして、五年間はかかりましたが、米国ウェストバージニア州立大学を卒業いたしました。私が卒業したことをここできちっと御説明した上で、御質問に入らせていただこうと思っております。

 大学卒業後は、外国為替を取引している会社に勤めまして、国際金融取引については、実体験の経験則に基づいて今日まで勉強してきました。そうした観点から、竹中金融担当大臣に、新生銀行の再上場問題について御質問をさせていただこうと思っております。

 竹中金融担当大臣、小泉首相のように行き当たりばったりなことでは金融の問題はなかなか答えられませんので、誠実に、まじめに真実を、前職の大学教授のときのことを思い出していただきましてお答えいただきたいと思っております。

 平成十一年、当時の金融再生委員会の柳澤委員長は、国有化された旧長銀をリップルウッド社に、破格の安値であります十億円で譲渡いたしました。そして、新生銀行は、瑕疵担保条項の特約をフルに生かして、今回、異例の早さで、東京証券取引所に平成十六年二月十九日、再上場を果たすべく作業を進めておられます。

 このことは竹中金融担当大臣も御承知のことと存じますが、御存じですよね。

竹中国務大臣 金融再生委員会の審議を踏まえて旧長銀の受け皿をリップルウッド社のグループに決定をした、そのもとで再生を目指してさまざまな努力を重ねて上場にこぎつけつつある、その事実は認識をしております。

小林(憲)委員 そこで、竹中金融担当大臣にお伺いをいたしますが、当時、政府が外資系のリップルウッド社、これは新生銀行ですね、ここに旧長銀を譲渡したことは、破綻もしくはその危険性のある金融機関の救済、再建の中での今後のお手本にいたしたいと、金融政策における成功例として評価をしておられますか。そしてまた、瑕疵担保条項の特約を認めたことなど金融政策としては誤りであったと、負の教訓として受けとめておられますか。どう評価されておられますでしょうか。もう一度、はっきりとお願いします。

竹中国務大臣 金融の再生というのは、非常に時間のかかる息の長いもの、継続的な努力が必要なものであるというふうに思っております。

 これまでの平成十一年からの経緯をどのように評価するか。これは、さらに今後の状況を見ながら歴史的な評価をいただかなければいけない問題であるというのが基本的なことであろうかと思います。

 そうした中で、今回、上場に至りつつあるということに関しては、これは一つのステップであるというふうには思っております。しかし、これはあくまでもステップでありますから、今後これがどのようになっていくかということはしっかりと見なければいけない。

 そこで、今お尋ねのありました、瑕疵担保の条項等々がどのような役割を果たしたのか、当時の決定がいかがであったのか。

 私は、これに関しましては、当時の英知を集めて、金融再生委員会で、さまざまな条件かつ非常に厳しい時間的な制約の中でしかるべき決定を行ったものであるというふうに認識をしておりますし、それを受けて努力を引き続き各方面で重ねていただく必要があるというふうに思っております。

小林(憲)委員 今の御答弁の中には、ある程度の評価をしている、しかし、これから、これは歴史的なことであるから継続的に見ていかなきゃいけないと。

 まさしく、この上場に関しては、十九日に予定をされておるわけですけれども、これは、国民の皆さんが、そしてまた海外の投資家の皆さんがずっとこの結果を見ていくことなんです。だから、きょうの委員会さえ乗り切れば、これは正しかった、間違っていなかったということにはなりません。この結果どうなるかということは、事実が一つ一つ、一日一日出てくる問題である。そのことをよくお考えになった上で、この上場に対して、これから私の質問に答えていただきたいと思っております。

 まず、瑕疵担保ですが、新生銀行には、瑕疵担保条項によって八千八百億円の公的資金、これは税金ですね、国民の皆さんの税金が預金保険機構から支払われ、さらに申請中の拠出額を含めると、これは何と一兆円近く支払われる勘定となっております。

 一つ目に、この瑕疵担保条項の適用対象となった取引企業は何社くらいあったのか、御存じですか。二つ目は、取引企業の倒産によって職場を追われた、職を失った方々、雇用者はどのくらいの数と把握しておられますか、金融庁。

五味政府参考人 預金保険機構が瑕疵担保条項に基づきまして新生銀行から買い取りました債権、これは平成十五年九月末現在で、件数で三百二十一件、債権額一兆一千七百二億円、支払い額では八千五百三十億円というふうになっております。

 なお、こうした瑕疵担保条項に基づきまして買い戻されました債権といいますのは、買い戻しに伴いまして、預金保険機構の委託を受けましたRCCがこの回収に努めるということで、最も回収が極大化できる方法をRCCは選択して回収をしていくということでございます。

 申しわけございませんが、そうしたさまざまな一つ一つの案件ごとの扱いもございますし、この瑕疵担保条項に基づく買い戻しでどういうような雇用への影響が出たかといったような点については、私はちょっと承知をしておりません。

小林(憲)委員 三百二十一件、これはすべて倒産したということですね。そしてまた、もっともっとあるかもしれない数については、倒産した理由は、瑕疵担保があったからじゃないよ、それはみんな、国民の皆さんや会社経営者、そうした人たちが悪いんだ、だから倒産したのであって瑕疵担保があったからじゃないよ、そういう意味で今おっしゃられたのでしょうか。

五味政府参考人 瑕疵担保条項と申しますのは、新生銀行と預金保険機構との譲渡契約の中にございますように、瑕疵が譲渡時から三年以内に存在をすることが明らかになり、しかも二割以上の減価が起こっている、こういうことを要件としておるわけでございまして、倒産をしたということが要件になっておるわけではございませんし、また、譲渡されました後、回収の過程で再生をされていくということも可能な仕組みでございます。すべてが倒産をするということではございません。

小林(憲)委員 皆さん、これはまさしく、新生銀行が再上場するに当たっての好業績、好決算は、瑕疵担保条項の特約を乱用したため、三百社を超える企業が倒産をして労働者が職を失い、サラリーマンの大量失業といった、いわば日本の国を支えている人たちの犠牲のしかばねの上に成り立っているということが、この数から明らかではないでしょうか。

 思い出してみますと、この旧長銀取引先の大企業、大変大きな会社、川崎製鉄、そごう、東京電力、ダイエー、日本信販、NTT、熊谷組、ライフ、セゾン、オリコ、本当に日本の国を支えてきている大きな会社がたくさんあったということは事実でありますし、これが大きな金融危機の引き金になっていったということも今の検証で明らかになっているのではないでしょうか。竹中大臣、どう思われますか。

竹中国務大臣 ちょっとこれはいろいろな御理解があるのかもしれませんが、瑕疵担保特約があったことが企業の倒産と結びつく、そこはやはり因果関係というのは直接結びつけるべきものではないと思います。

 委員は短資会社におられましたからマーケットのことは大変よく御存じなはずでございますけれども、これは、債権を評価する中で当初想定できなかったような問題が出てきた場合に、それをどちらが責任を負うか、ロスをどういうように扱うかという中で瑕疵担保という考え方ができてきたものでございますから、これは資産評価を時間をかけてきちっとする中で一つの判断を行っていく。それと企業の破綻そのものというものは、やはりそれは直接結びつけるべき問題ではないのだと思っております。

 委員が、例えば、バブル崩壊によって非常に大きなバランスシート上の問題、バランスシートに穴があいてしまって、それがやはり日本の経済に大きな負担をもたらしたという御指摘であるならば、これはまさに、私もそのとおりであろうと思いますし、それを銀行がかぶるべきものはかぶらなければいけない。

 しかし、銀行がかぶれないときは、公的資金で賄ってこの決済システム、金融システムを維持していくということがまさに政策の目標として正当化されるものだというふうに私は思っておりますし、そこは個々のケースでいろいろな問題があるのかと思いますが、そういうまさにバランスシートの調整というプロセスをそれぞれの部署で一生懸命行ってきた一つの結果なのであろうというふうに思っております。

小林(憲)委員 私と大臣とはちょっと考えが、同じアメリカに長くおりましても違うようでございまして。

 私は、この際、新生銀行について、平成十一年の国からの破格の譲渡、瑕疵担保条項という特約を付与したことなどを含め、国の金融政策が間違っていたという反省を、総括がまずされなければいけないと思いますが、それに対しましてどう思われますか。

竹中国務大臣 先ほどの新生銀行の経営改革と同様に、政策そのものも、当然のことながら、国民から、専門家から、内外から厳しい評価を受けていく、その中で歴史的な評価を受けていかなければいけないものだと思っております。そういう評価は評価で、これはまだ専門家の評価も出そろっているとは思いませんけれども、やはりしっかりとやっていただかなければいけない、また、それに対して、そういう批判を聞きながら行政は行政としてしっかりとした対応をしていかなければいけないということであると思っております。

 ただ、一点、瑕疵担保の問題に関しましては、これは先般のこの委員会でも御答弁させていただきましたが、さまざまな制約の中で、特に時間的な制約が大変大きかったというふうに聞いておりますけれども、これは、二次ロスが出た場合にそれをどうするのか、それをさまざまなところで知恵も出し合って、その上で、当時の金融再生委員会で、国民負担をできるだけ小さくする、金融システムを安定化させる、そういう政策の目標の中でしっかりとした判断がなされたものというふうに思っております。

小林(憲)委員 瑕疵担保で、その内容は正当に評価されて、それを国が補てんしていっているというような御説明を先ほどから繰り返されているわけですが、新生銀行は、経営再建中の取引企業に対して、瑕疵担保を最大限に悪用し、経営再建を中断させるような、貸しはがしという言葉ができたほどの、それを乱発して新たな金融不安を発生させたということではないんでしょうか、大臣。

竹中国務大臣 瑕疵担保条項を乱用するというのがちょっとどういう意味なのか。これは、預保に対して、瑕疵があったということを申し出て、預保はそれに基づいて拒否する事例もございます。したがって、いわゆる乱用というのはできないような仕組みになっているというふうに承知をしております。

 これはマーケットでの評価の問題でございますから、それぞれの資産の評価というのは大変難しい側面があろうかと思いますが、その辺は預金保険機構においても厳正にこれを適用しているというふうに私は認識をしております。

小林(憲)委員 竹中大臣はこんなお話を聞いたことはないですか。

 泣く子と新生銀行には手がつけられない。ほかの銀行は、新生銀行が手を引くものですから債権を全部あきらめて、不良債権となってしまう。でも、新生銀行は、瑕疵担保がもらえるから最後まで債権を保持した上で、それが全部瑕疵担保でもらえるからと、そのコマーシャルバンクとしての銀行の業務をしないがための新生銀行に、すべてほかの銀行がお金を出して助けていこうとした企業が倒産していく。そんな中で、最後まで瑕疵担保があるがゆえに、しかばねをついばんだ。

 そんな話を聞いたことはないですか、大臣。

竹中国務大臣 マーケットの中での個々の取引に関しては、いろいろなケースがあると思います。いろいろな事例があると思います。一部の雑誌等々で、例えば新生銀行は非常に厳しい審査をしているというような話は、これは私も雑誌レベル等々では聞いたことがございます。しかし、これは本当に個々のケースだ、個々のケースによるんだというふうに思います。

 たまたまでございますけれども、りそな銀行の再建に関するテレビ番組、NHKスペシャルで、先般、土曜日でございましたか、やっておりましたけれども、そこで出てくる事例は、これも一部だと思います。これがすべてだとは言いません。そこでは、一生懸命貸し出しをふやそうとしているんだけれども、むしろなかなか借りてくれなくて、支店の業績が伸びないというふうに支店長は物すごく悩んでいる。そういうのもまたあるのだと思います。

 そこは、繰り返し申し上げますが、個々の取引に関しては、これは個別の事情がありますから、いろいろな場合があるのだと思います。しかし、そういうものも踏まえて金融システムを安定化させて、それで、先ほど申し上げているようなバランスシート調整を少しずつ進めてくる。そういう努力を、これは各機関も、また企業もずっと今続けている。それが、少しずつでありますけれども、不良債権が減るという形であらわれつつあるというふうに思っております。

小林(憲)委員 大臣は、この間の参議院のときでも、すぐに、民間の話とか個々の話とかおっしゃいますが、私は、それはちょっと違うと思うんですね、この場合は。

 まず、大臣、当時、長銀の上場の廃止命令が出たのはいつですか、教えてください。

笹川委員長 ちょっとお待ちください。――早く。

五味政府参考人 手間取りまして申しわけございません。

 日本長期信用銀行が特別公的管理の開始決定を受けました日、すなわち、平成十年十月二十三日が上場廃止でございます。

小林(憲)委員 上場の廃止命令は、これは金融庁に届け出があるんですね。金融庁長官がこれを承認してされるわけですよね。どうですか、その仕組みというのは。上場の廃止は、金融庁に届け出がされて、そして、それが承認されて、金融庁長官の名のもとに上場は廃止されたわけですね。

増井政府参考人 長銀の関係につきましては、上場につきましては、当時、金融庁はまだございませんでした。当時、たしか金融監督庁だったと思いますが、そのときにはまだ承認制でございます。今は届け出制でございますが、承認という形になっているかと思われます。

笹川委員長 五味監督局長、正確に答弁をしてください。

五味政府参考人 申しわけございません。

 当時は、金融庁ではなくて金融監督庁が金融行政の執行部門を担当しておりましたが、市場の監督は当時まだ大蔵省に残っておりますので、大蔵省に対して届け出られた、こういうことになります。

小林(憲)委員 市場の監督、では、これは大蔵大臣の名のもとに上場廃止命令が出たということでございますか。

増井政府参考人 失礼いたしました。

 当時、命令というのか、上場廃止の決定を大蔵大臣がしたということだと思われます。

小林(憲)委員 当時の大蔵大臣はだれですか。そしてまた、その大蔵大臣がその上場の廃止命令を許可したのであれば、これは今の現金融庁としてもその責任があると私は思いますが、いかがですか。

増井政府参考人 当時の大蔵大臣は、たしか宮沢喜一大蔵大臣だったかと思われます。かつ、当時の業務といいますのは、大蔵省から今の金融庁に引き継がれておるということでございますので、今の金融庁が担当しているということでございます。

小林(憲)委員 ということは、竹中大臣、これは個々の問題とか民間の問題とかということではなくて、新生銀行イコール長銀なんですよ。長銀イコール新生銀行なんですよ。ですから、これは国が関与しなけりゃいけない問題ですから、そのマーケットにおける行為、行動、風評、いろいろなことがあるとおっしゃいますが、これはすべて国の監督の中で行わなきゃいけない。当時からそういうことになっていたんじゃないですか。ですから、大蔵省が上場廃止をし、新生銀行になり、そして、新生銀行イコール長銀です。私の認識では長銀イコール新生銀行ですが、いかがですか、大臣。

五味政府参考人 日本長期信用銀行は、特別公的管理に入りました後、最終処理がなされましたが、その処理の手法は、預金保険機構が保有しておりました日本長期信用銀行の株式を新生銀行に譲渡するという形で行われましたので、法人格は新生銀行に引き継がれた形になります。したがって、長期信用銀行から新生銀行へはその権利義務関係も法人格の継続という形で引き継がれる、こういう形になります。

小林(憲)委員 法人格の継続というのは何だかわかりにくい話ですが、同一法人という言葉であらわしてよろしいでしょうか。

五味政府参考人 はい。同一の法人が継続しているということでございます。

小林(憲)委員 ですから、これは、竹中大臣、人ごとではありません。これからのお答えはすべて、あなたに関する、監督の中のことでありますから、そのような言い逃れはもうできません。ですから、しっかりと後のお答えはしていただきたいと思っております。

 そこで、税金の負担をお願いしている国民の皆さんに、補てん、弁済も、しっかりとした説明もないままに、新生銀行が再上場にしゃかりきになっているわけです。再上場しなきゃいけない、再上場しなきゃいけない、早く、早く、早くと。八兆円ものお金をみんな国民からもらっておいて、なぜそんなに早く上場しなきゃいけないんですか。教えてください。

竹中国務大臣 先ほど監督局長が答弁させていただきましたように、法人格は継続している、したがって、それに関する権利義務等々のいわゆる法律的な関係は、当然のことながら、長銀のものも新生銀行に引き継がれております。それに対して、我々は、もちろん検査監督上しっかりと責任を持たなきゃいけない、そのように思っております。

 しかし、同時に、当時と今とでは検査監督の仕組みが大きく変わっているという点も、これは御承知のとおりだと思います。当時は、まだ大蔵省があった。今は、金融監督庁を経て金融庁になって、行政のスタイルそのものが、事前にということではなくて事後的なチェックを行う形になった。

 例えば上場問題一つにおかれましても、上場にはもちろん基準があるわけでございますけれども、その基準を満たしているかどうかの判断、それは、当時は、したがって大蔵省が行っていたということだと思いますが、今は、証券取引所が行うということになっております。証券取引所が、上場が適か不適かということの審査を行います。

 これはまさに、民間でできることは民間で、現場でできることは現場でということだと思いますけれども、そういう形で分権的にしっかりとやっていこうと。事前介入ではなくて事後的に、ルールを決めて、それで我々が届け出を受ける、そのような形に行政の枠組みはかなり大きく変化しているということもぜひ御理解いただきたいと思います。

 直接のお尋ねは、これはどうして急ぐのだろうかと。

 これはまさに、我々はその事後的な監督をいたしますが、それに関しましては、これは一つの経営の判断でございます。どのような形で市場の価値、企業価値を最大化していくか、それにはいろいろな要因があると思います。上場だけがすべてではありませんですけれども、上場というのはその一つのステップであるということなのでありましょう。

 そういう観点から、総合的に、経営者の判断として、そのようなタイミングであるというふうな御判断をされた、それを基準に基づいて東京証券取引所がしっかりと審査をしている、そのような状況であるというふうに認識をしております。

小林(憲)委員 これが同一法人であるということははっきりとここで、私は提起をしていなかったものですから、謄本をとってきました。これは一冊でした。一冊ということは、これはもう同一法人。昔の名前で出ていますというのがありましたが、昔の名前を変えただけで出ていますというもので、上場廃止命令が出たのが、新生銀行になって、名前を変えただけで今度上場する。

 そして、今、大臣おっしゃいました、おれたちは関係ないよ、東証が判断をするんだよと。東証が、しっかりとした、平成十六年二月十九日の新生銀行の再上場について審査もすべて完了して無事承認されるという報告を、東証からお受けになっているということですね、大臣。

竹中国務大臣 一月十六日に、東京証券取引所が新生銀行の上場を承認いたしました。そして、新生銀行が株式の売り出しを発表した。これは二月の十九日予定でございますが、東京証券取引所への上場は、先ほど言いましたように、証券取引所から事後的に届け出が行われるという仕組みになっております。

 我々の役割、これは、内閣総理大臣の役割、その権限は金融庁長官にゆだねられて、委任されておりますが、証券取引所が業務規程に違反して有価証券の上場を行おうとする場合には、これは、証券取引法第百十三条の規定に基づいて当該違反行為を是正するために必要な措置を講ずることができるわけでございますが、我々としては、現時点において、そのような違反の事実は把握をしておりません。

小林(憲)委員 私は、この際、新生銀行の再上場に対しまして、東証に監督責任のある金融庁として再上場の延期または上場承認の再審査を指導すべきと考えておりますが、竹中大臣は、今おっしゃったとおり、何の問題もなく、これはぴかぴかの銀行として、国民のしかばねの上に立ったまま、その内容もいろいろな状況が今うわさされている中で、しっかりと、上場しなさいと太鼓判を押して、上場させてもいいという判断におかれて内閣総理大臣の名のもとでこの上場を許可した、そういうことでございましょうか。

竹中国務大臣 我々の役割は、太鼓判を押すとか、そういうことではないと思っております。

 証券取引所が業務規程に違反して有価証券の上場を行おうとする場合には、証取法百十三条の規定に基づいて当該違反行為を是正するために必要な措置を講ずることができるわけでございますが、現時点において、そのような違反事実は把握はしておりません。

小林(憲)委員 違反している事実、この後一時間ほど私は持ち時間がありますが、そこを展開させていただいて、その上で、最後の質問で、これはいけないというのであれば、それをまた今この時点でも再審査をしなければいけないということにつながるわけですね。わかりました。

 新生銀行に対する訴訟の問題は、大小の差はあれ、予断を許さない状況にあると私は思っております。貸しはがしで倒産に追い込まれた企業、倒産で職場を失われた雇用者からの訴訟なども準備されていることを、竹中大臣は、具体的な報告を受けていないとおっしゃっておりますが、全くそのような報告を、訴訟の内容の問題などは受けておられませんか。

増井政府参考人 金融庁は、新生銀行から、新生銀行に係る損害賠償訴訟の内容については報告を受けております。

 ただ、具体的な中身につきましては、新生銀行の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるということから、答弁をすることは差し控えたいと思っております。

 また、金融庁といたしましても、そのほか、幹事証券会社あるいは東京証券取引所等の関係者から、把握している事実について説明を受けるなどの実態把握を行っているところでございます。

竹中国務大臣 ちょっと委員、誤解があるといけませんが、訴訟について聞いていないというようなことを私は申し上げていないと思います。違反があるというふうには認識していないという答弁を先ほどさせていただいたわけでございます。

 訴訟についての報告等々は、今の局長の答弁のとおりでございます。

小林(憲)委員 法律的な瑕疵はない、したがって、新生銀行の再上場の延期はしないでもいいという判断に今立っておられる、そういうふうに理解してもよろしいですね。違反がないということは法律的瑕疵がないということで、これは上場しても、延期する必要も何もなくて、今これはしてもいいです、そういう御判断に立っておられるということで理解してよろしいですね。

竹中国務大臣 先ほど答弁申し上げたとおりなんですが、ちょっと正確に御理解をぜひ賜りたいと思うんですけれども、上場の審査は、証券取引所がいたします。当局の関与は、証券取引所が規程、基準に違反して審査、承認をした場合は、これは是正命令ができる。

 先ほど、そういった事実があると認識していない、違反があるとは認識していないというふうに申し上げたのは、東京証券取引所が、審査をする立場にある者が違反をしているというふうには私たちは認識をしていない、そういう趣旨でございます。

小林(憲)委員 大臣はどう思われるんですか。報告を受けているんですよね。東証が、問題ないと言ったら、金融庁は、ああそうですかと言って、はいはいと言うのが金融庁ですか。それとも、そこで最終的に金融庁が判断を下すんですか。それとも、東証がすべて判断して、大臣、これでもうこのことは問題ありません、ああそうですかと言って上場が決まるんですか。金融庁は何のチェックもしないんですか。大臣は何のチェックもしないんですか。

増井政府参考人 先ほど大臣の答弁もございましたように、現在の上場の仕組みは、東京証券取引所が承認をする、それを事後的に当局、金融庁に届け出があるということでございますから、東京証券取引所が判断をするということになると思います。

 ただ、先ほどから大臣も御答弁になりましたが、証取法の百十三条の規定がございます。証券取引所が業務規程に違反して有価証券の上場を行おうとする場合には是正をするための必要な措置を講ずることができるということになっておりますので、そういった判断はあろうかと思いますが、いずれにしても、現時点において、そのような違反事実は把握をしていないということでございます。

小林(憲)委員 これは不思議ですね。八兆円以上のお金を国が国民から払わせて、それが、同一法人が名前を変えただけで上場するときに、東証というのは民間でしょう。あれは民間会社じゃないですか。国の会社じゃないでしょう。国が国民に八兆円払わせたんでしょう。それを上場するのに、民間会社の東証がいいと言ったら、それがすべて責任で、東証がその判断を間違っていたら国が罰するんだ。ということは、金融庁は全然、国が投入して、さっき私が言いましたとおり、上場に関して責任はないんですか。お答え願います、大臣。

竹中国務大臣 上場するかどうかを金融庁が決めるのかどうかという問いに関しましては、明確に、そうではないということでございます。これが今の法律の枠組みです。上場するかどうかの審査は、これは東証が行います。繰り返しますが、これが今の法律の枠組みです。

 その場合の基準は、当然のことながら、株式上場審査基準ということで公表されております。それを基準どおりにしっかりとやってもらうというのが我々の東証に対する要望でありますし、東証は上場の基準にのっとって、公開された基準にのっとってしっかりと審査をしているというふうに認識をしております。

 万が一にも、その審査基準と違うじゃないか、何か漏れがあるじゃないか、そんなことがあれば、これは、東証に対して、その是正等々に対して我々は物を言う立場にはございます。しかし、繰り返し言いますが、審査は、今の法律に基づけば、これは東証が行います。法律であります。

小林(憲)委員 よくわかりました。それでは、小林も法律の話で今からやらせていただこうと思います。

 それでは、まず瑕疵担保につきましては、これは、先ほどの貸しはがし等の話など、まだまだどんどんどんどんいろいろなことが出てくると思いますので、私の本拠地であります決算委員会で、それは待っているぜという感じでやりましょう。きょうは、今から法律の話で、法律違反がないかどうかという点を一度検証してみたいと思います。

 それでは、私が思いますには、今、新生銀行の再上場の問題を、上場にかかわる虚偽疑惑、インサイダー取引疑惑などの問題があるという立場から、この予算委員会では残り時間を質問させていただきまして、ぜひとも、ここまで法律だ法律だとおっしゃったんですから法律で解決していただいて、この上場は異議ありということを大臣はきょう帰りには言うと思いますので、しっかりと私の説明を聞いてください。

 まず、今裁判の起こっている最大大手、新生銀行、旧長銀の最大大手の取引企業でありました、その後破産をしましたイ・アイ・イの管財人から、新生銀行に対して巨額な賠償請求が提出されている、このことは竹中大臣は報告を受けておられますでしょうか。

竹中国務大臣 そういう報道があるということは承知をしておりますが、新生銀行はまだ訴状を受け取っていないというふうに、先週末の時点では聞いております。

小林(憲)委員 大臣、これが報道ですね。一月二十二日の朝日に載りましたね、イ・アイ・イの。

 訴状がないから訴訟がない、そうおっしゃいましたね。――何でしたっけ。訴訟はないということですか。その訴訟は風評であって、その証拠がないということですか。

竹中国務大臣 新生銀行はまだ受け取っていない、そういう事実を申し上げただけでございます。これは、報道は承知をしております。

小林(憲)委員 私は、訴状を持っているんですよ。資料4をお配りください。

 これはサイパンの裁判所にあるんです。裁判所に出すんですよ、海外は。大臣、御存じでしょう、私よりももっとアメリカに詳しいんだから。裁判所に行って、もらうんですよ。だから、イ・アイ・イの清算人も管財人も持っているんです。そして、小林憲司も持っているんです。

 何で金融庁、こんなもの、手にとらないんですか。東証の人に聞いてください。これはもう本当にでたらめな話で、訴状さえなかったら訴訟ないだろうなんて、逃げ回っていて訴状を受け取らなかったら裁判じゃないなんて、そんなインチキなことは通らないんです。訴訟はあるんです。訴状は今配っていますから。訴状はあります。訴訟はあります。これは事実の問題です。そして、このことに対してどう思われますでしょうか。

五味政府参考人 資料4とおっしゃいましたね、この英文の。――申しわけございません。実は、つい先ほど見せていただきましたが、これは、サイパンの訴訟に関連して、訴えがイ・アイ・イ・インターナショナルから起こされまして、それが、一たんその訴えを取り下げをされ、その取り下げの取り消しを求める申し立てがイ・アイ・イ・インターナショナルから裁判所に行われて、その申し立てをこの資料4で裁判所が認めている、こういう性格のものだと思います。

 新生銀行はこの資料をお持ちかどうか、私はちょっと確認をしておりませんが、何らかの方法で、あるいはこういうことがあったということは新生銀行も知っているのではないかと思います。

小林(憲)委員 何かよくわからない答弁をされていますが、新生銀行は、持っていることは言っていないんですね。

 それから、これは、取り下げされたのが、再度、新規として裁判を始める、再度復活してもいいですよという訴状ですから、そしてまた、これは、相手も、イ・アイ・イの社長ではなくて管財人にかわっているわけですから、これは全く新しい訴訟の訴状です。もしよかったら、これ全部ありますから、見てください。

 それから、新生銀行はこの訴状を持ってないと言っているんでしょう。さっきおっしゃったじゃないですか、訴状はないと言っている。訴状はありますから。確認をしていないなんという、こんないいかげんなことをして上場してもいいんですか。そんなばかなことがあるんですか。

五味政府参考人 訴状というものを新生銀行が持っていないというのは、これは私も確認しております。訴状は、新生銀行は持っておりません。これは、管財人に対して裁判所から出された、取り下げの取り消しを認める資料であるというふうに承知しております。

小林(憲)委員 これは、サイパンから、エド・カルボという弁護士から、管財人、清算人に渡った訴状です。裁判所に行って、もらわなければいけない訴状をもらわないで、上場までもらわないでいて、これは二月の二十日か二十一日か何かに訴状をもらいに行こうなんという、そんな魂胆なんじゃないですか、新生銀行は。だから、そのうちにだんまりで上場しちゃえと。訴訟はありません、訴状は後からもらいましたなんて、そんなイカサマ師みたいなことをやろうと思っているんじゃないですか。

 それから、先ほどから言いますとおり、金融庁さん、これは取り下げられた訴訟が再度復活をするという訴訟です。英語、よく読んでください。だから、これは、新しい裁判がありますよという訴状なんですよ。後でよく読んでください。竹中さんの方がよく読めるでしょう。渡して、読んでもらってください。

五味政府参考人 もう一度、私の存じております限りで申しますと、銀行に対するイ・アイ・イ・インターナショナルの訴えというのが、再び訴えることも可能であるといった趣旨の条件がついて取り下げられて、その取り下げられましたものについて、再度これは訴訟にしたいということで、その申し立てを、これはジャッジの方ですよね、ですから裁判所の方がその管財人にそういう通知をしておられる、そういう文書でございますね。

小林(憲)委員 だから、私はさっきからそう言っているじゃないですか。同じことを言っているだけじゃないですか、そっちで。しっかりちょっと整理してください。

 それは裁判所にあるんですから、新生銀行は、上場させてから、それからとりに行けばいいや、その間は、大臣、ありませんよなんて、そんなイカサマをやろうと思っているんじゃないですか。そうじゃなかったんだったら、すぐに訴状を、私でも手に入れているんですから、すぐに新生銀行に言って手に入れさせて、訴訟を受けた、そういう状態にして、目論見書の訂正をすべきじゃないですか。いかがですか、大臣。

竹中国務大臣 ちょっと一部、決めつけをぜひ避けていただきたいというふうに思うのでございますが、私が先ほどから申し上げておりますのは、これは裁判等々、これはこの問題に詳しい委員も御指摘であられるわけだし、報道、メディアも報じているわけですから、そういう問題があるということは、全体として、一つの事実としてはこれは承知をしております。そういう訴訟がある。このことは、サイパンの裁判所において云々ということは、これは今回の証券取引所に提出された新生銀行の書類の中にも、同社もそういうことは承知していると、情報の公開はしているというふうに認識をしております。

 我々としては、これは個々のイシューです、これは個々の裁判の問題ですから、裁判の問題に関して、これは個別の訴訟についてどうこう申し上げる立場にはございません。そんなことは言うべきではないというふうに思います。

 ただ、これは、審査をする東京証券取引所において、こうした報道等々も踏まえてしっかりとやっていただかなければいけないというふうに思っておりますし、我々としてはしっかりと審査をしていただく、必要があれば先ほど申し上げましたように証取法に基づいて我々としても対応する、これが我々の基本的な姿勢でございます。

小林(憲)委員 二月の四日に、資料の中にありますが、目論見書に訂正が出ているんですよ。これは、いろいろな質問を私がやり出したら、二月の二日とか三日とか東証の皆さんとお話をさせていただいた後に、何か突然出てきたんですけれども、訂正が出ているんです。この訂正をよく読んでいただきたい。これはサイパンの裁判についてもちゃんと書いているんですが、訂正が出ているんですが、この訂正に虚偽があるじゃないかということがきょうの私のお題であります。

 先ほど大臣が言ったように、きょうは法律の話でいきましょう。だから、裁判所じゃありませんが、法律の話でいきます。

 これには、中段から、五十億円の引当金もありますよ、でも、いろいろな裁判を、ありますが、大丈夫でしょう、影響を及ぼすものはないでしょう、ただし、預金保険機構はこれを瑕疵担保によって払ってくれるか払ってくれないかということは今後もめるかもしれませんよ、そういうことが書いてあるんです。

 そしてまた、その下に、サイパンの裁判は一遍取り下げられたものがまた一部復活して継続しているというふうに言っていますが、これは、先ほどから私が言ったように、復活をさせた裁判を新規で始めるということが裁判所の見解です。ですから、訴状にもそういうふうにあります。だから、新規の裁判が始まっていると書かなきゃいけない。

 そしてまた、最後にただし書きに戻るんです。ただし、どんな裁判があったって私たちは平気だよ、瑕疵担保がついているんだから預金保険機構さんがちゃんと払ってくれるからねと言わんばかりに書いてあるけれども、でも、預金保険機構さんと意見が違って払う払わないの話になるかもしれませんよということが、何とも回りくどい、何か変わった商品を買ったような、私が投資家だったら何だろうなと思いますが、そんな訂正が出ているんです。

 そこで、私は、預金保険機構の理事の方にきょう来ていただいておりまして、これはもちろん御存じだと思うんですが、払うんですか、払わないんですか。それとも、これは今後いろいろな話し合いをしていく上で考えることなんですか。私はちょっとその辺の意向のことはわかりませんのでぜひ教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

松田参考人 お答えいたします。

 先生、これは瑕疵担保の条項ではなくて、別に偶発債務の補償という協定を預金保険機構と、それから、渡したリップルウッドの間で結んだものの一つのあらわれでございます。内容は似ているんですけれども、瑕疵担保は貸出債権の問題、こちらは後から偶発的に起こる債務の問題、こういうことがまずございます。

 今御質問ございましたように、これは預金保険機構として払うのかどうかという問題になりますと、これは非常に難しい問題がございまして、これは一般的なこういう偶発債務の補償の規定は設けておりますけれども、それを満たすためには、我々としては十分に審査をして、きちんとした要件に合っているかどうか審査した上で払わなければならない、このように思っております。

 そうしますと、現時点では、先生、先ほどいろいろ御提出されましたので、私ども、それは承知はしておりますけれども、実際にこの裁判がどういう形で今後展開していくのか、どちらが勝つのか、新生銀行はどのくらい負けるのか、負けたときに我々にどれだけ補償を言ってくるのか、すべてがわからないと我々としては慎重な態度をとらざるを得ない、こういうことでございます。

小林(憲)委員 大変貴重な御意見を今いただきました。

 ですから、払うか払わないかもわかっていないんですから、書かなきゃいけないじゃないですか、これは株を売るんですから、大臣。私が株を買う人間だとしたら、まだこれから、偶発的債務とおっしゃった、もう一つその後でお伺いしますが、まあそれはちょっとおいておいて、これはまだ払うか払わないかわからないですよ、紛争が起こるかもしれませんという。

 そしてまた、五十億円の引当金は書いてありますが、訴訟金額は今グアムだけでも七千億円という数が出ていまして、これはもう私はサイパンの方からも、弁護士さんたちからも間接的に聞いております。

 そうしますと、向こうは賠償で負けたりすると三倍賠償ですから、基本的に外国の方はそうですね、ですから、これは一兆円以上の損害賠償が起こるので、これは軽微の範囲ではなくて、完全に書かないとこれは違反になるんじゃないですか。法律違反ですよ、ちゃんと書いてないと。

 そしてまた、偶発的だと理事長はおっしゃったので、ちょっとこれは私の勉強不足で教えていただきたいんですが、瑕疵担保条項を満たしているものは払う、それから、偶発的であるものは検証していく、そしてまた、新生銀行はこのイ・アイ・イに関しては三年間の間に預保の方に申請をしていないんですね。だから、申請してあれば三年間たったって裁判が終わったところで全部弁償になるんですけれども、申請していないから弁償はしなくてもいい対象になっているんですが、今、理事長がおっしゃったように、偶発的ということは、でも、これは長銀時代から裁判があるということですよね。だから、一番初めの裁判はずっとあるわけだし、私でも、このイ・アイ・イの事件というのは、これを見たときに、ああ、そういうのがあって大変だったなと。そしてまた国会でも、これは金融国会と言われた一九九八年、九九年に取り上げられておりますから。

 偶発的というのは、後から勃発的に突然起こることではなくて、これはもうみんなが周知なんだけれども、偶発的に入るんでしょうか。その辺、ちょっとまだ物を知らないので教えていただきたいんですが、理事長、お願いします。

松田参考人 お答えいたします。

 イ・アイ・イをめぐる訴訟はたくさんあるようでございまして、先生御指摘のものもその一つであろうと思いますが、先ほど来お話が出ていますように、もともとは十三年の七月にイ・アイ・イが新生銀行を提訴したということから始まりまして、それが十三年の七月に一応対象としての通知を受けた後で、十四年の六月五日にイ・アイ・イがその訴えを取り下げたんですね。それで一たん落着の形を見ているわけです。それが今度、十六年の一月十二日に取り下げの取り消しを求められた。こういう経過でございます。

 そうしますと、我々としては、先ほど申し上げましたように、最終的な判断をする段階にはございませんけれども、将来、このような訴訟が我々が言う偶発債務の対象になるのかどうか。私は、これは非常に慎重に考えなければいけないので、場合によっては対象にならない可能性だってあるわけでございますから、そうしますと、それは慎重に判断をしなければいけませんので、その場でまたしっかりとした要件をもう一度審査しなけりゃいけない。

 ところが、新生銀行と私どもの間で、これは基本的には民事契約でございますから、双方の意見が対立することがあります。したがって、対立したときにどう調整していくかという問題、あるいは、その後、それが場合によっては訴訟に発展するかもしれない、そういう紛争が起こる可能性というのは否定できないわけでございまして、その限りでは、この新生銀行が出してきた記載もあながちおかしくはないなというのが私の考えでございます。

小林(憲)委員 では、新生銀行が、この場合、ちょっと資料で謝罪文が出ているのがあると思うんですが、資料をお配りした中で、シャーマン・アンド・スターリングというところが謝罪文を出しているんですね。資料1です。

 これは、要するに、イ・アイ・イさん、ごめんなさいという謝罪文です。これはサンフランシスコでイ・アイ・イの裁判があって、それで、シャーマン・アンド・スターリングといったら、百三十年の大変歴史のある、海外の投資等を中心とした法律事務所ですが、そこが謝っちゃっているんです、理事長。ごめんなさいと。もうたくさん、旧長銀のその資料の中から、サンフランシスコで裁判をやってディスカバーをかけたら大変な資料が見つかってきちゃった。だから、もう裁判負けちゃうので和解しましょう、ごめんなさいと。

 今後もいっぱい裁判がいろいろあるから、ある日本の法律事務所とともにやったんですが、ごめんなさいと言っちゃっているんです。訴訟に負けちゃうからごめんなさい、もう手を打ちましょうと言っているんです。その訴訟と同じ証拠が全部、今、サイパンでやっているんです。やるんです。これは、負けるかもしれないというか、負けが濃厚ではないかという資料の一つでありますね。

 ところが、そんなことはいいんですが、でも、こういうものが出ていて、そして、先ほどから言っているように、言葉のまやかしのような訂正文が出ていて、これで本当に、今の状態で株を売っていいと思うんですか。もし負けたら、預金保険機構は払わないんですよ。何千億というお金を払わないわけですから、そんな会社の、そんな銀行の株は、だあんといきますよではないですけれども、しっかりそんなことをしていないままに売るんですか。これは投資家、投資者保護になるとお思いですか、大臣。

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今御質問にありましたシャーマン・アンド・スターリング法律事務所が、カミノコーポレーション及びイ・アイ・イ・インターナショナルとの訴訟、いわゆるカミノ訴訟でありますけれども、これにおける和解の一部として謝罪文を複数の新聞に掲載したことは承知をしておりますが、その謝罪文が出された経緯等について、私どもは承知をいたしておりません。

 なお、新生銀行は御指摘のカミノ訴訟の当事者ではなかったと承知をいたしております。

 また、この謝罪文が新生銀行が被告となって訴えられている訴訟に及ぼす影響については、私どもとしてお答えする立場にはないというふうに思います。

小林(憲)委員 今、私としては、投資家、投資者の保護になっているかどうかと。この訂正文だけで、十九日に株を売って、ハゲタカが飛んできてもうかって、日本人の銀行がまたクラッシュをして、UFJが次待っていますよ、何々が待っていますよなんて、日本がオンセールみたいにされていいんですかという問題です。大臣、答えてください。

竹中国務大臣 まさに、投資家保護の観点から上場を審査するのが東京証券取引所の仕事です。そのための基準というものも公開をされている。東証においてはそうした面からしっかりと審査をしてくださいということを、我々は重ねてお願いをしております。

 いろいろ委員おっしゃいましたけれども、私もよくわからなかったのは、この謝罪文というのは、確かにこれは謝罪文なんですけれども、これは新生銀行とちょっと関係ないものではないのかと思います。こういうこともあるから注意しろという御趣旨なのかなというふうに思いますが、これは、先ほどから申し上げておりますように、これから裁判にどういう形でなっていくのかもわからない、裁判でその結果預保がどのようになるかもわからない、そうした段階で、投資家に対しては一つのリスク情報は開示しなければいけないということだと思います。

 先ほど申し上げましたように、新生銀行もその点は認識して目論見書を出しているというふうに申し上げましたけれども、それがまさに今委員が御紹介くださった訂正のものなわけですね。その中にはどのように書かれているかというと、このサイパンのことに言及した上で、自分たちはこう考えているけれども、「今後紛争が発生しない保証はありません。」ということで、これに関しては、実にそのとおりではないか、違和感はないというふうに松田理事長も今おっしゃっておられましたけれども、そうした意味での情報の開示はなされているのではないかと思います。

 ただ、これは東証の解釈と委員の解釈というのは違うところがあるのかもしれませんが、東証に対しては、さまざまな日々動く情報も視野に入れながらしっかりと見ていってほしいということは、引き続き我々としても申し上げる必要があると思います。

小林(憲)委員 それでは、ちょっと言葉の問題になってきたと思うんですが、今、大臣、最後には、東証にもう一度指導をしていこうと思うと、私の話を聞いてちょっとは思っていただいたようですが、これは訂正になっていないという点を私は言っているんです。

 まず第一に、こんな巨額な、八兆円以上もの国の税金を使ってぴかぴかにして、それで好業績と言って、そして上場するものが、間近に訂正を出して、何かなぞなぞみたいなことを書いて、よくわからないことを書いて訂正を出していること自体、私は、これはもうおかしなことをしているな、何か隠しているのかなと思わざるを得ない訂正だと思うんです。

 そうじゃないのであれば、私たちはどうどうどういう訴訟を今受けていて、その損害賠償額は幾ら請求されていますよ、そして、これに関しては預保も見守っています、そして、訴訟の勝敗によって、そしてまた幾ら払っていくかということもこれから決めることだから、瑕疵担保がついているからといって、うちは全部もらってぴかぴかの銀行だなどというわけじゃないですよ、だから皆さん注意してくださいという訂正文を出したらどうですか。いかがですか、大臣。

竹中国務大臣 公的資金を入れて云々という前半のお話と今回の措置をどのようにするかというのは、これは少し次元の違う話だと思います。

 前半の話は、これはいろいろな制約の中で引き続きしっかりやっていただきたいということに尽きると思いますが、後半の話は、こういう目論見書というのはどこまで詳しく書くものかという一種の社会常識の話だと思いますが、一般に、大企業であれば訴訟というのは常にたくさん抱えていると思います。それを全部開示するということは、これは現実にはあり得ないわけで、そんなことはどこもしていないわけでありまして、そこはやはり、必要に応じて特に注意すべき事項を掲載するというのがこの目論見書の趣旨であるというふうに思います。

 その意味では、特に注意すべき事項として、今後紛争の云々ということを明示しているわけでありますので、ここは、訂正はそれなりに行っているというふうに私は認識をしております。しかし、引き続きこれは東証においてはしっかりと見ていただかなきゃいけない問題であるというふうに思います。

小林(憲)委員 ちょっと大臣、待ってくださいよ。もし大臣がこれを知らないんだったら僕が教えてあげますけれども、これは軽微な問題じゃないんですよ。イ・アイ・イの裁判については、この間、債権者集会が東京地裁であったでしょう。東京地裁であった。そのときに、RCCの役員が出ていて、何度も発言しているんですよ。それなのに、政府としては、個々の問題だとか、小さな問題だとか、それぞれの問題だとか言うんですか。堀田さんという役員の人が出ていて、役員の人が東京地裁でやっているんですよ、債権者集会のときにRCCが出て。だから、RCCの人が出ているということは政府も関係しているんでしょう。だから、どうしてそういうことはここで……。そういうことを御存じないんですか、金融庁。

松田参考人 お答えします。

 RCCは子会社でございますので、名前が出ましたから、私から知っている限りのことをお話ししますが、これは、イ・アイ・イの管財人が今サイパンで裁判を起こそうとしているわけですね、新生銀行を相手に。ところが、イ・アイ・イの管財人というのは、破産をしている段階でございまして、今、破産の整理中なんです。その中で訴訟を起こすかどうかを今非常に考えておられる。その段階でございまして、RCCは旧長銀から不良債権を引き継いでおりますので、そのイ・アイ・イに対する債権者なんですね。債権者としてそういう会議に出ているということだけであります。

小林(憲)委員 ですから、債権者集会にRCCの人が出ているということは、どうして、さっきから話を聞いていて、この訴訟はないだの、訴状がないだの、この訴訟についてはそんなものは個々の案件で、会社には幾らでも、訴訟も裁判も幾らでもやっているんだからそのうちのワン・オブ・ゼムだみたいな言い方をなぜするんですか。

 これはそうじゃないでしょう。国の機構のRCCまで来て発言をして、裁判所で債権者集会に出ているんですよ。それじゃ、そういうことを全部書いてから上場していったらどうですか。こんな状態で上場して、債権者だ、破産だとかいって、それでまた裁判になっていていろいろな証拠が出ているのに、それで、預金保険機構は瑕疵担保をすべて偶発的だから全部払うと言っておられるわけではないでしょう。だったら、それもちゃんと、紛争が起こるかもしれませんよじゃなくて、もう見解が違って起こっているじゃないですか、ここで見解が、払う払わないで。

 僕は東証の人を呼んでいただいて、来ていただいて、私がお話を聞いたときに、これは大丈夫ですか、これをまた上場してこれでクラッシュした場合は大変なことになりますよと言ったら、いや、投資家保護の立場からこれは預金保険機構からちゃんと払われるというふうに存じ上げていますというふうにちゃんと言っているんですよ。

 だから、金融庁にもそれは僕は何度も言った。そうしたら、いや、裁判がないんですよ、訴訟がないんですよと。だから、私は訴状まで全部手に入れてきて、サイパンにも行ってちゃんと確かめている。私は行っていないけれども、ちゃんとうちの者が行ってみて確かめている。それで言っているんだから。この訂正はおかしいでしょうということを私は言っているんですよ。

 ですから、私は、ここで、もう売り出しを開始しているから十条は使えないけれども、証券取引法十一条で発令してくださいよ。これはもう訂正を、発売停止にして、それでもう一度再上場に出す審査をすべきであると。しないと、これはおかしいんじゃないですか。これはもうすべて、さっきから、これはどこか何か皆さん隠してみえて、何か言葉遊びじゃないですけれども、しているんじゃないですか。

 だから、私の結論は、そういうことがあるんだったら上場をもう一度見直した方がいいんじゃないですかということですよ。どうですか、大臣。

増井政府参考人 先ほどちょっと御答弁を申し上げましたが、上場につきましては、東京証券取引所が承認を行うという仕組みになっております。

 それから、そもそも今の有価証券届出書の記載の関係でございますけれども、基本的には、これは本来、有価証券届出書というのは、届け出者がみずから保有する情報をもとに自身の判断によって作成するものでございます。これらの記載について、届け出者がその責任を負うものというふうになっております。

 したがいまして、金融庁としましては、当然のことでございますが、法令にのっとって適切な情報開示が行われるように努めたいということは、先ほど大臣もおっしゃっているとおりでございますけれども、そういった観点から、基本的に届け出者の判断でこういった訂正届出書が出された。その際の書き方として、先ほど先生からお話ございましたように、預金保険機構における補償の範囲または補償金額の支払い手続について、「今後紛争が発生しない保証はありません。」という記載をしているということでございますので、現時点での開示としては、私ども、適切なものだというふうに考えております。

小林(憲)委員 では、きのうまではそれでいいですけれども、きょう、訂正をもう一遍出してくださいよ。紛争はもう起こっているじゃないですか。理事長がさっきおっしゃった、まだそんな払うか払わないか決めていないんだと。でも、新生銀行の方はどう言っているんですか。払うと言っているんでしょう。だから、こうやって訂正に何も書いてないんでしょう。まだ払うか払わないかはわかりません、そういう訂正を出さないと投資者保護にならないじゃないですか。

 それと、全然聞いていないことをさっきからおっしゃるものだから、こっちが混乱しちゃうんですよ。それで、もう一度ここを整理したいんですが、せっかくきょうは預金保険機構の理事長に来ていただいておりますので、スタンスについてもう一度確認をさせてください。

 預金保険機構は、新生銀行との約定の中で、補償行為について、平成十二年三月以降より三年以内に提訴された訴訟案件あるいは訴訟が係属中の件については補償するが、平成十五年三月以降に提訴された案件については補償しないというふうになっておりますが、一方、新生銀行は、東京地裁で認可されましたイ・アイ・イの破産管財人の訴訟と、イ・アイ・イが新生銀行にサイパンで提訴した訴訟とは継続性があり、同一のものと認定しているので、仮に裁判に敗訴した場合でも預金保険機構が補償するようになっていると主張しているというふうに私は伺っておるんですが、その辺はどうでしょうか。もう一度、重なりますが、お答えください。

松田参考人 当機構が、新生銀行が出してきた補償要求についてそれを認めるかどうかというのは、最終段階になってみないとわからない。それは、具体的に新生銀行が幾らの補償をしてくれと言ってきたときに、訴訟のあり方、それから、補償要求の要件を充足しているかどうか、それを見きわめた上で、補償すべきであれば、契約でございますから補償しますし、補償すべきでなければ、それを拒絶します。

 ただ、そのときに、見解の相違がございます。今先生がおっしゃっているのは、多分、新生銀行の見解ではないかと思いますが、そういう見解と私どもの見解が違いますと、そこはお互いに協議をするか、協議が調わなければ、最終的には、もし新生銀行が、我々が払わないと言ったときに訴えるということで、訴訟になる可能性もある、そういうことでございます。

小林(憲)委員 ですから、それを全部書かなければ虚偽になるんじゃないですか、大臣。今おっしゃったことを全部書いて、こういう訴訟があってこうだから、見解が違った場合には裁判になって、払われないかもしれないし、払われるかもしれないし、だからそれはリスクですよ、だからそれはそういうリスクがある株ですよと、これはちゃんと出さなきゃいけないじゃないですか、ちゃんと書いて。訂正になっていないじゃないですか、さっきのものは。あんなまやかしじゃ、そこまでわからないですよ。きょう私がこうやって何度か聞くから、きょうお手元に訂正を持ってみえる方が、ああ、そうなんだと。ああ、そうなんだ、どうしようと。どうするんですかね、大臣。大臣が投資家だったらどうしますか、こうなってきたら。

竹中国務大臣 いや、委員がおっしゃっていることと私たちが先ほどからずっと申し上げていることは、ほとんど同じじゃないですか。

 つまり、裁判については、訴状を受け取っていないということを私は申し上げましたけれども、それをもって裁判がないとか、そういう訴えがないとかいうことを私たちは全然申し上げておりません。そういう訴えがあるからこそ、現実に新生銀行は訂正をしているわけです。

 しかし、その上で、今後そういう裁判は、裁判のプロセスはまだ始まっておりませんから、今後どうなるかということは、これはわかりません。したがって、これはリスク情報です。だから、そのリスク情報は書かなければいけません。

 そのリスク情報を書くべく訂正を行って、どうなるかわからないということを書けというふうにおっしゃっていますけれども、私が読む限り、どうなるかわからないということはそこに書かれているではありませんか。それに関して、委員もさっき、いや、きのうまではそれでいいと、しかし、きょうここで事実を話し、何か明らかになったんだから書けということをおっしゃいましたけれども、きょう明らかになったというのは、ちょっと私には、何が明らかなのかと。

 今まで、我々はそういうことも踏まえて東証にいろいろ要望してきて、東証も、きょう議論されたようなことを踏まえてしっかりと判断をきのうまでしているんだと思います。

 これは、今後さらにいろいろなことに急展開するようなことになれば、我々としては、重ねて東証にしっかりと見ろよというふうに言わなければいけませんし、継続してしっかりとやってくれと、これは世間も注目しておりますから。東証だって、これは変な審査をしたら、みずからの名声に著しい傷がつく。これは、まさに東証というのは信用商売でありますから、そういうことを踏まえてしっかりと判断をしているというふうに思いますが、我々としては、引き続き東証に、基準に基づいてしっかりと審査をしてもらう、その上で必要な対応をとるということになると思います。

小林(憲)委員 しっかりしているとおっしゃっても、先ほど来、金融庁も、いろいろなことは、訴状の問題から始まって訴訟のことも、そして金額や、全然わかってないじゃないですか。それからまた、預金保険機構さんのことも、しっかりとした把握を金融庁はしてなかったでしょう。

 どうですか。東証からそういう説明を金融庁は聞いていましたか。ちゃんと聞いていましたか。さっき知らないと言ったじゃないですか。金融庁、答えてください。

増井政府参考人 先ほど申し上げましたように、訴訟の関係については、私ども、ヒアリングなどをして、内容について、その時点でわかる限りのことについて確認をしております。

 ただ、きょうのお話も踏まえて、また東証の方も、当然のことと思いますが、審査というのか、しっかりした審査を今後やっていくものだというふうに考えております。

小林(憲)委員 いや、今の、今後というのは、これはもう終わりということですか。今後、まだあと三日ありますよね、十九日までに。きょうからしっかりとやっていただくということで、もう一度、再審査にするかしないか、そしてまたそういう事実を、きょう出た事実を全部踏まえた上でもう一度しっかりと東証に対しての指導をする、そういう意味でしょうか。もう一度お答えください。

増井政府参考人 先ほど申し上げましたように、東証の方は上場の承認をしておるわけでございます。ただ、先ほど大臣からもお話がございましたが、いろいろな事象が起こった際には、それぞれにつきまして審査をしていくということになるかと思います。

 いずれにいたしましても、この法令あるいは審査基準に従って、東証の方でもしっかり審査をしていただけるものだというふうに考えております。

笹川委員長 小林委員、あなたが言っているこの一条の、「預金保険機構による補償の範囲又は補償金額の支払の手続に関して、今後紛争が発生しない保証はありません。」こう書いてあります。紛争が生じるかもわからないということは一応は書いてあるけれども、この上の方に、引当金を五十億円積んであるとも書いてありますね。訴訟の内容、これを見てみますと、金額が五十億とかそういう金額じゃなくて、万が一のときには何千億になる可能性があると。だから、あなたは、それも軽微で大丈夫なのか、払えるんですかということを聞かれたらどうですか。

小林(憲)委員 はい、そうです。委員長、ありがとうございます。

 ついつい一つの問題に特化いたしまして、そちらの問題を提起しておりましたのを委員長に今指摘をしていただきまして、まことに感謝をしておりますが、ですから、私は、先ほど言った、軽微ではない、これは軽微ではなくて法律の範囲内に触れる問題だと。でしたら、ここに、軽微ではない場合は書かなければいけないという証券取引法の法律があるんですよ。それによって、そこをさっきから私が言おうと思っていたところに委員長から指示があったものですから、そこをどうか大臣、お答えください。お願いします。

笹川委員長 竹中大臣、今私の言ったことを踏まえて答弁してください。

竹中国務大臣 はい。

 まず、軽微だというふうに我々は一切申しているつもりはございません。軽微でないからこそ、ここの特別な記載事項に載せているわけでございます。その範囲で、例えばどのぐらいの可能性があるか。これはしかし訴訟でありますから、訴訟があるからそれが全部実現するわけではもちろんないわけですから、そこはいろいろ、こういった目論見書の中での常識的な書き方の中で判断すべき問題であろうかと思っております。

 これは、五十億というのは通常の場合にリスクに備えて積むもののようでございますが、それ以外にこういうリスクがあるということをここにしたがって書いている。ここには、明確に、今後紛争が発生しない保証はないということを書いている。しかし、金額等々については、これはいろいろな可能性が今後ありますので、それについて何か具体的な数字を挙げるということは、これはまた一方で誤解を与える可能性もあるのではないかな。その意味で、これは東証もそのような判断をしているというふうに思いますし、ここでの訂正の記載というのは、その意味では情報を開示しているというふうに私は思っております。

小林(憲)委員 ですから、それが、専門家ではなくて一般にこの新生銀行の上場に対していろいろな思いがある方々がこの株に投資しようとした場合に、この訂正では危険ではないですかということを私はさっきから言っているんです。

 これは、もうことしの終わりには、サイパンで裁判をしている関係者に聞きますと、年末には結果が出るものだと。近々には出るものなんです。そしてまた、先ほど私が初めに言ったとおり、これは、あした、あさって、しあさって、そして十九日以降と、どんどんどんどん、それはどうなっていくかという結果が出ることなんですよ。

 ですから、投資家保護の立場からこれは大丈夫だ、絶対大丈夫だと大臣は言えるんだったら、ここで言ってください。お願いします。

竹中国務大臣 これは裁判であります。裁判がどのようなプロセスを経て、いつ結審するのか、その結果がどうなるかということは、これはわかりません。裁判の一方の当事者の挙げる数字だけを書くというようなことは、これは目論見書のあり方としてはやはりいかがなものなのかと思います。

 ここはしかし、しっかりとリスク情報は開示しなければいけない。したがって、特別な記載事項の中にそれは含めている。その紛争の可能性はあるということを明示している。しかし、その上で、これは刻々と変わる可能性があるんだ、それは私もそのとおりだと思います。その範囲において、東証にはしっかりとやはり引き続き見てもらう必要があると思いますし、これはそのように要望したいというふうに思います。

小林(憲)委員 これは不十分であるからこそ、もう一度東証に指導するという意味ですね。いかがですか。

竹中国務大臣 不十分かどうかというのは、これは、今の時点で私たちは、何らかの、先ほど言いましたような形で法令に違反しているというふうには、ないしは虚偽の記載がある等々は認識をしておりません。現状においては適切なものであるというふうに認識をしておりますが、事態が刻々と変化することに対しては、これは対応を求めなければいけないというふうに思っております。

 いずれにしても、これは、リスク情報として特別の記載事項であるということで訂正を行ってそこに記載をされているということでございます。

小林(憲)委員 先ほど来、東証は民間の会社なのでこちらに来ていませんが、一応、東証の責任者の方をこちらに呼ぶことというのは今すぐできますでしょうか、参考人招致で。

笹川委員長 これは理事会で協議しますから、今すぐここにということは不可能であります。

小林(憲)委員 では、要求をさせていただくということでお願いします。

 それでは、ちょっと同じ話がめぐってきて、与党席からも違う話でやれよというような感じで、飽きてきたという感じがありますので次に行きますが、インサイダー取引について。

 インサイダー取引というのは、株ではよく、最近でも事例は幾つかあるんですが、会社内部の情報に通じた単一株主によるインサイダーインフォメーション利用疑惑の観点から、金融庁並びに証券取引等監視委員会に対して質問させていただきます。

 証取法の百六十六条によれば、インサイダー取引とは、会社の内部の人、役員、大株主、内部者として知り得た会社の重要事項が公表される前にその会社の株式を取引してはならないとされています。

 まず、リップルウッドは、新生銀行の普通株式全株を持ち、社長を含む役員も送り込んでおります。会社帳簿閲覧権を持つ大株主として紛れもなく会社の内部の者に該当していると私は思うのであります。次に、先ほどの訴訟の提起は間違いなく会社の重要事実に入っていると思うんです。そして次に、その重要事実が公表されたか否かが問題となりますが、届出書の記載では訴訟、裁判に関する記録が投資家に真実を伝えるには全く不十分であると私はさっきから言っておりますが、むしろ意図的にこのことの重要性を投資家にわからないように隠したと言ってもよい形になっているとも思うんです。

 いかがでしょうか。その場合に、これはインサイダーだということにつながる可能性はないでしょうか、金融庁。

増井政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、証取法百六十六条は、上場会社等の役員等の会社関係者または当該会社関係者から当該上場会社等の業務等に関する重要事実の伝達を受けた者が、重要事実を知りながら、重要事実が公表される前に株券の売買等を行うこと、それをインサイダー取引として禁止しているということでございます。

 今、新生銀行の件につきましては、まだ上場前の状況でございますので、この条文からいきますと、今申し上げました上場会社の役員等ということには当たらないということになろうかと思います。

小林(憲)委員 いや、それはおかしいですね。これは役員になると私は思います。大臣、どう思いますか。

竹中国務大臣 これは、法律の解釈は恐らく局長が今おっしゃったとおりなんだと思います。法律の解釈としてはそういうことなのかもしれませんが、ただ、いずれにしても、これは、責任ある、上場しなければいけない、そういう立場の方々にとっては、当然のことながら、極めて公正に、オープンに情報は外に出して、情報の秘匿によって自己が利益を得る、そんなことはあってはならないことでありますし、もしそういう事実があるんだったら、これは重大なことであるというふうに思います。

小林(憲)委員 ですから、サイパンとまでは記載していますけれども、訴訟の金額が書いていないということは、これは意図的に訴訟のことを表ざたにしたくないということがあるような書き方ではないかと思うんですが、いかがでしょうか、金融庁。

増井政府参考人 先ほど来御説明をいたしましたように、ディスクロージャー、いわゆる開示につきましては、当事者が責任を持ってやっているということでございます。したがいまして、訴訟の額をそういった形で書くか書かないかというのはもちろん判断があるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、一般的には、その訴訟が起こされた相手側の金額を書くということはしておらないというようなことが一般的に言われているようでございます。

小林(憲)委員 この新生銀行の投資、出資団であるニュー・ロングターム・パートナーズの主要メンバーであるシティグループ、ロックフェラーグループ、さらにリップルウッドは、謝罪広告を出したシャーマン・アンド・スターリングから事の深刻さを知り得る立場にあったということは、役員であるないということは別として、これは絶対に知り得る立場にあったということは、大臣、そう思われますよね。

竹中国務大臣 これは、さっきの法律事務所の話は、新生銀行とはたしか関係のない訴訟でございましたので、これはちょっとどういうことなのかわかりませんが、一般論としては、当然のことながら、経営に携わっている方というのは、それはいろいろなことを知る立場にあるのだと思います。

 今回の場合も、委員はそういうことを御懸念だと思いますが、例えば、判決が確定しているのにそれを何か隠していたとか、もしそんなことがあるならば、これは重大な問題だというふうに思います。

 しかし、先ほどから申し上げているように、委員が挙げておられる数字も、これも裁判の一方の当事者が挙げておられる数字で、これは新聞情報なんかでも二千とあったり、もっと五千とか七千とか、物すごいいろいろな数字が出ておりますから、それは現時点で何かそういう立場の方が重大な情報を秘匿しているという事実は、私どもは認識をしておりません。もしそういう事実があるんでしたら、これはこれでぜひ御指摘をいただきたいと思います。

小林(憲)委員 ですから、先ほど来、東京地裁で債権者集会をやって、地裁が集まってくれと言って、東京地裁でやっているんですよ。それをなぜ、知らない、知らないと言って、その訴訟のことも。

 では、このことに関して、預保の理事長はどうお考えですか。今の竹中大臣の答弁にあったように、今の状態で、この状態でこの株が上場して、投資者の保護という立場から私たち国会議員が見ていて、そしてまた、預保の立場からこれから払う払わないの話をする中で、どうも先ほど来お話を聞いていても、払うという腹づもりのお話ではないように私は感じるんですが、いかがでしょうか。そのお立場からではないかもしれませんが、どうか御感想でも何でもお聞かせください。

松田参考人 先生、せっかく尋ねていただいたんですけれども、私ども、投資家保護の観点からいいますと、何ら役に立たない、別の仕事をしておりますので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきます。

小林(憲)委員 それでは、ちょっと先ほどの話に戻りますが、先ほどのシャーマン・アンド・スターリングから事の深刻さを知り得る立場にあったと。内部者として裁判の情報を入手し、シャーマン・アンド・スターリングから事実の、事件の評価を得て、新生銀行の業績に大きな影響を与える可能性を知りながら、投資家に十分な説明を行うことを避けながら、売り出しによるそのリスクを一般投資家に転嫁した。これを内部者取引、インサイダー取引と言わずして、何と言うでしょうか。私はこの懸念があると思いますが、大臣、どう思われますでしょうか。

竹中国務大臣 インサイダー取引の問題は証券取引等監視委員会等々の担当でありまして、これはそちらの事務局長に答えさせます。

小林(憲)委員 それではお願いします。

新原政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども証券取引等監視委員会は、証券取引に関するさまざまな資料、情報を収集、分析いたしまして事実関係の解明を進めておりまして、仮に取引の公正を害する違法行為が認められれば、法の定めに従いまして厳正に対処をしているところでございます。

 しかしながら、私ども監視委員会といたしましては、個別の具体的な事案について調査を行う必要があるか否かを明らかにすることは、調査の事務運営に支障を来すため、従来よりお答えすることを差し控えさせていただいております。この点、御理解をいただきたいと存じます。

小林(憲)委員 何だか、事の真相が、上場三日前にこんな状態で、いろいろな疑問があるままに、確かめます、調べますと。そんなことがあって、審査をしっかりしたと言えるんでしょうか。

 そして、その八兆円もの大きなお金を国民の負担として、そして貸しはがし、そしてまた雇用の、失業という日本の労働者に対する大きな重荷を課せて、金融という大きな世界的な流れの中で日本が今、丸裸でいる。このままどんどんどんどんハゲタカについばまれていく、それを何とかとめよう、その思いが今この国会にあると言えるでしょうか。

 ぜひとも、この十九日、四億四千万株、全体の三分の一が売り出されます。そしてまた、最後まで預金保険機構は株を持っていて、最後まで、ハゲタカが飛び去るまで売れないはずです。そうなったときに株価はどうなるんでしょうか。

 皆さんよくお考えいただいて、この三日間で、きょうの私の質問で、そしてまた再度、これは一日一日、結果が出てくる問題です。そして訴訟の問題も、大臣、年末に向けて大きく大きく、一日ずつ出てきます。訴訟がないなんて言って訴状を受け取らなくたって、新生銀行には確かめてください。そんなまやかしではもう済まないということ。そして、私は決算委員会でこの引き続きをやらせていただきますので、待っております。

 終わります。

笹川委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 私は、まず最初に、新生銀行、リップルウッド問題について質問をさせていただきます。

 今も議論になりましたように、経営破綻した旧日本長期信用銀行を引き継いだ新生銀行の東京証券取引所再上場が二月十九日となり、新生銀行は、これに伴う株式売り出し価格を一株につき五百二十五円と決めたと発表しました。

 お手元に配付をしております資料の二枚目に、リップルウッドと新生銀行のイメージ図ということで出させていただきました。

 新生銀行の普通株式のほとんどは、米リップルウッド・ホールディングスLLCがマネジメントする投資ファンド、ニュー・LTCB・パートナーズが保有をし、同ファンドは保有株の約三分の一を売り出すことから、再上場で約二千二百億円を獲得すると言われております。同ファンドが一時国有化された旧長銀の株式を〇〇年三月に十億円で買い取り、その後、新生銀行の千二百億円の第三者割り当て増資に応じました。差し引きすれば、これだけでも約一千億円の利益が出ることになります。さらにまだ手元には、残り三分の二に当たる九億一千万株、売り出し価格ベースで四千八百億円とも言われております含み益に相当するものが残ります。これら投資ファンドは巨額の利益を得たことになります。

 そこで、この新生銀行の問題については、旧長銀及び新生銀行にはこれまで多額の公的資金が投入をされています。この公的資金の内訳と金額は幾らか、お示しください。

竹中国務大臣 旧長銀、新生銀行に対して預金保険機構が行った資金援助等の額のお尋ねでありますけれども、まず特例資金援助等、これで金銭贈与等が三兆七千三十五億円でございます。資産の買い取りが七千百二十三億円でございます。

 さらに、二番目の項目としては、旧金融安定化法及び早期健全化法に基づく資本増強を行っておりますので、それに基づいて四千百六十六億円でございます。

 三番目に、適資産、保有株式の買い取りを行っておりますが、これは平成十五年九月末現在で二兆二千六百八十八億円になります。

 第四番目に、瑕疵担保条項に基づく貸し出し関連資産の買い取り、これも平成十五年九月末現在でありますが、八千五百三十億円というふうになっております。

 これは、非常に異質なもの、資産の買い取りであるとか贈与とか異質なものがまじっておりますので、これを合計することに余り意味がないわけでございますが、あえて合計すれば七兆九千五百四十二億円となります。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

塩川委員 約八兆円の公的資金が投入されたことになります。これらのうち国民負担となるものは何か、その金額は幾らか、お示しください。

竹中国務大臣 旧長銀に対して預金保険機構が行った資金援助等の額のうち、先ほどいろいろな項目を申し上げましたが、その中でペイオフコスト超の金銭贈与に用いられた交付国債の使用額、これは三兆二千二百四億円でございますけれども、これにつきましては、現段階において国民負担として確定をしております。

 その他のものにつきましては、例えば買い取り資産からの回収が今後どのぐらい行われるか、資本増強に当たって引き受けた優先株式の処分収入等が返済に充当され得る、そういうことになっておりますので、国民負担が発生するか否かについては、現時点では確定をしておりません。

塩川委員 この三兆二千二百四億円、これだけでも、今の国民の暮らしを考えたら、大変巨額な金額であります。

 国民負担が発生するか現時点では確定していない問題があるということをおっしゃいましたけれども、要するに政府の説明は、損失として処理をし、既に国庫から支出をされているものだけを取り出しているにすぎないわけで、処分していないだけで含み損となっているものはたくさんあるわけであります。

 例えば、長銀の保有株を預金保険機構が買い取ったいわゆる適資産の買い取り二兆二千六百八十八億円は幾らの含み損を抱えているのか、お答えください。

竹中国務大臣 十五年十二月末での含み損は五千六百三十四億円でございます。ちなみに、その前の三月末では八千八百五十億円の含み損でありました。株価の上昇によって少し縮小しておりますので、今後の株価の動向に依存してまいります。

塩川委員 もともと日経平均株価が一万九千円のときが出発点ですから、それを考えても、今おっしゃったように、含み損が五千六百三十五億円ある。こういうことこそ、国民の立場を考えたら、具体的にはっきりと開示をすべきじゃないですか。

 ここに、財務省の主計局が出している特殊法人等の行政コスト計算書というのがあります。この文書の中には、文書の中に基づいて、預金保険機構の含み損についても、今大臣がお話しになった、二〇〇三年三月末で八千八百五十億円とはっきりと書いてある。預金保険機構のこの問題についての含み損が八千八百五十億円とはっきり示しているじゃないですか。この主計局の文書にも「特殊法人等の行政コスト計算書作成の意義」、預保がはっきりそういう金額を書いているというその意義は何があるかというと、「国民への説明責任の確保と透明性の向上」とはっきりとうたっているじゃないですか。

 ですから、それ以外の問題についても含み損についてはっきりと示すということが国民に対する責務じゃないですか。示してください。

竹中国務大臣 これは当然開示をしております。今私が申し上げた含み損は、預保の行政コスト計算書で毎年開示をしているというふうに認識をしております。今おっしゃったのは、預保全体の数字、預保が持っている資産の内訳については預保の計算書で開示をしております。国民に対して説明責任を果たすのは重要であると思っております。

塩川委員 それ以外の含み損についても示していただけますか、瑕疵担保のこととか。

竹中国務大臣 それ以外というのが何なのかということだと思います。

 ちなみに、瑕疵担保に含み損という概念は、ちょっと私にはよく理解をできません、今後どのようになるかによって依存するわけでありますので。それを、すべてを現時点で何か無理やりに評価しようということなのか、それはなかなか、むしろ技術的に誤解を与えるという可能性もあるのではないかと思っております。

 現時点での評価が可能なものに関しては、極力、既に我々は開示をしているつもりでございます。

塩川委員 それ以外の含み損についてもはっきりと開示をすべきだ。瑕疵担保特約の買い取り資産の問題もありますけれども、要するに、約八兆円の公的資金が投入をされて、先ほどお話があった三兆二千二百四億円に加えて、長銀保有株の預保の買い取りの含み損を含めて四兆円近い、その他を加えれば四兆円を超えるような負担が国民に押しつけられていることになります。こういう多額の負担のもとでの新生銀行の再上場だということが今大きく問われているんじゃないでしょうか。

 その上で、瑕疵担保特約の問題であります。瑕疵担保特約は、当時大問題となって、これで当時の担当大臣の首が飛ぶような大きな問題でもあったわけであります。

 この瑕疵担保特約というのは、アメリカではもう、うまくいかないからやめてしまったやり方じゃないでしょうか。アメリカのFDIC、連邦預金保険公社では、この瑕疵担保特約に当たるプットオプション、買い戻し方式を処理方法として採用することを一九九一年にやめてしまいました。我が党の志位委員長が二〇〇〇年の八月の予算委員会でも指摘をしております。

 このFDICが九八年にまとめた報告書では、取りやめた理由を二つ述べています。第一に、受け皿銀行は、簿価を上回る市場価値を持つ債権あるいはリスクの小さい債権だけを専ら選び、その他の債権はすべて返還するという、受け皿銀行による債権のつまみ食いを可能にしたからだ。第二に、債権を戻す前の間、受け皿銀行が回収の努力を怠り、それによって債権価値がさらに劣化するという傾向をもたらしたからだ。

 これは、今の新生銀行にも当てはまるような指摘じゃないでしょうか。受け皿に大変有利ということは、もうアメリカで試され済みの話であります。

 この瑕疵担保特約というのは、当時、国側のフィナンシャルアドバイザーだったゴールドマン・サックスに入れ知恵されたものじゃないですか。アメリカ仕込みのものじゃないですか。いかがですか。

竹中国務大臣 まず、アメリカにおける瑕疵担保のお話がありましたが、私の認識では、これはまさにケース・バイ・ケースということなんだと思います。

 瑕疵担保と一言に言っても、いろんなものがあります。瑕疵があった場合にそれをどのようにオフセットしていくのかという仕組みの問題ですから、これはいろんなタイプの瑕疵担保の特約があり得る。その中で、長銀の場合は、やはり非常に大きな時間的な制約があったんだというふうに思います。時間的な制約の中で、資産の査定がなかなかできない、今後顕在化する可能性があるかもしれないようなリスクをどう評価するかということで、しかし時間が急がれるのでということで、今回のような措置になっているのだと思います。

 アメリカの場合には、そのような時間的な問題がどうであったのか、個々のケースがどうであったのか。したがって、このやり方が古い新しいといったたぐいの問題ではないと私は思っております。

 直接のお尋ねの、当時ゴールドマン・サックスからそういう入れ知恵があったのではないかどうかということについては、これはちょっと現状で、私では確認しかねます。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

塩川委員 アメリカの教訓が生かされていないというところが問題なんですよ。

 当時、国側のフィナンシャルアドバイザーだったゴールドマン・サックスですけれども、一方で、買い手の側のニュー・LTCB・パートナーズの代表者の一人にはクリストファー・フラワーズという人物がおります。この人は、このニュー・LTCB・パートナーズを譲渡先に決めた九九年九月の直前の四月までゴールドマン・サックスに在籍をしていた人物じゃないですか。

竹中国務大臣 申しわけありませんが、質問通告もいただいておりませんで、私は存じ上げません。

塩川委員 このことははっきりしていることですから。

 売り手と買い手の両側にゴールドマン・サックスと深い縁の方がいるという点でも利益相反の疑念が浮かぶわけで、こういう点からも、改めてこの瑕疵担保特約のあり方を含めた譲渡契約の中身について再検討することが求められているんじゃないか。国民には負担だけで、そして相手にはもうけだけのような、ノーリスク・ハイリターンのようなこんなやり方はやはり許されない。このことは今大いに問われていると思うんです。

 その上で、新生銀行の貸しはがしや貸し渋りの問題も大変ひどいものがありました。

 配付をしました資料の一枚目に新生銀行の貸出金の推移を載せております。二〇〇〇年の三月末、総貸出金が、七兆七千三十九億円から〇三年三月末には三兆六千百二十七億円と半減をしているわけであります。うち中小企業向けを取り出してみても、二兆七千七百三十八億円から一兆八千四十一億円と激減をしているわけであります。その上、いわゆる正常債権の推移を見ても、二〇〇〇年三月末の六兆六千二百五十五億円から、二〇〇三年九月末には三兆五千九百五十億円と激減をしているじゃありませんか。

 当時の相沢担当大臣は、新生銀行から金を借りている人たちに対しても、三年間は急激な回収はしないという条件もついていると答弁をしておりますが、この契約が守られていると言えるんでしょうか。

竹中国務大臣 新生銀行として、どのような資産と負債、アセットとライアビリティーのマネジメントをするのか。これは、収益を上げる、さらに、経営基盤を強化していくためにさまざまな努力を当然のことながらしてこられたのであろうと思います。

 これまで、当期利益とかリストラ関係でありますとか、概して、これは経営健全化計画を出させているわけでありますけれども、経営健全化計画をおおむね着実に実行しているというふうに承知をしております。

 中小企業向けの貸し出しについては、平成十二年度の貸出残高が、これは実勢ベースで前年度より大幅に減少しまして、計画を大きく下回るとともに、同時に、行内の管理体制の整備等具体的かつ実効性のある対策を講じていたとは認められなかった。これに対しては、我々も、十三年十月に業務改善命令を発出して、その改善は求めました。この命令を受けて策定した業務改善計画に盛り込んだ施策を着実に以降実施するということで、平成十四年三月期には中小企業向け貸し出しの増加計画を達成して、平成十五年三月期についても増加計画を達成しているというふうに認識をしております。

塩川委員 この譲渡契約書には、相沢担当大臣の話を紹介しましたが、少なくとも三年間は「特段の事情のない限り、貸出関連資産を売却せず、急激な回収を行わず、且つ借換え、季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずる」とはっきりと書いてあります。

 新生銀行の問題については、皆さん、世間からも怨嗟の声が上がっていたんじゃないですか。この契約が実際にほごにされるような事態があった。業務改善命令の何のといっても、それこそしりをまくるような、こういったような事態に対して、この譲渡契約書の立場に立って、国民の立場からはっきりともっと物を申すべきだった、このことが改めて問われているんじゃないですか。いかがですか。

竹中国務大臣 旧長銀の厳しい状況を引き継いで、大変厳しい環境の中での当然経営をしてきたものというふうに思っております。

 一点、先ほど塩川委員がお出しになりました貸出金の推移でございますけれども、これは我々は、よくこういう場合に実勢ベースということを申し上げます。特に不良債権がたくさんあるところ、そういうところは当然のことながらオフバランス化をしていかなければいけないわけですから、そのオフバランス化の部分については、ないしは証券化等々の部分については、これを調整して、実勢ベース、調整した値で見る必要があると思っておりますので、これは、塩川委員の数値は、そういった調整前の数字だと思いますので、これがやや数字が極端にあらわれているという面もあるのではないかなと思っております。

 いずれにしましても、新生銀行の融資管理に係る基本方針としては、これはニュー・LTCB・パートナーズも、「特段の事情のない限り」「急激な回収を行わず、且つ借換え、季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずる」というふうに表明をしているところでありまして、これは、経営はしっかりしていただかなきゃいけない、経営の自主的な判断を尊重しながらも、同時に経営健全化計画を着実に達成してもらえるように、必要に応じては、先ほど申し上げましたように、業務改善命令も我々は出してきたわけでありますし、信用供与の円滑化に努める必要がある、しっかりとその辺は我々としてもフォローをしていくつもりでおります。

塩川委員 貸し出しが激減しているのははっきりしているんですよ。それは否定できないわけでしょう。中小企業や国民に過大な負担を強いて、多大なしわ寄せをして再上場したのが新生銀行であります。いわば一将功成って万骨枯るような、こういうのが新生銀行のビジネスモデルだというんだったらこんなものは要らない、これが国民の声じゃないでしょうか。

 そこで、この投資ファンドの株式譲渡所得に対する課税問題であります。

 投資ファンドのニュー・LTCB・パートナーズは今回の保有株売却で二千二百億円を獲得することになりますが、当時の金融再生委員会でつくった譲渡契約書ですね、これを拝見しましたら、その中に、「ニュー・LTCB・パートナーズに対する主要な投資家の名称及び出資割合は別表5・3・1(d)に記載されたとおりである」と書かれています。

 これを拝見しましたら、後ろの方に主要な投資家というのは一覧表で挙がっていますから、これはわかるんですけれども、この別表で示している出資割合、これを教えていただけますか。

竹中国務大臣 これは、先方も公表しておりませんし、公表をしないことになっているんだそうでございます。出資割合につきましては、私的な契約等に係るものでありまして、また、個々の出資者の経営判断にかかわるものでありますので、先方も発表していない、当局から開示することは差し控えさせていただきます。

塩川委員 でも、わざわざこっちには、主要な投資家と、投資家の名前を挙げてあるわけでしょう。今、再上場が大きな問題となっているときですから、そのときに、わざわざ列記した主要投資家の出資割合について国民の前に示すことこそ政府の情報開示での責務、当然のことじゃないでしょうか、今、莫大な譲渡所得が問題となっているときなんですから。改めて答えてください。

竹中国務大臣 これは上場の基準等々にかんがみて、それの公表が特に必要であるということにはならないと理解をしております。

 いずれにしましても、これは先方も個々の取引であるので公表しないというふうに言っている、先方が公表しないことを当局として公表することは差し控えたいと思います。

塩川委員 これは別表がそもそも載っていない、本文だけの契約書ですから。この間の、二〇〇〇年でしたか、同僚議員の中から資料要求があって、別表の一部については開示がされたというふうに聞いています。今の事態に至って、この再上場が大きな問題となっているときだからこそ、主要投資家の名前だけ挙げてあるんじゃなくて、出資割合についてもはっきりと示す、そういうふうに働きかけるような取り組みこそ国民に対する説明責任を果たすというものじゃないでしょうか。改めて答えてください。

竹中国務大臣 上場に関しては、上場審査の基準にのっとって適切にやっていかなければいけないと思っております。

塩川委員 全然納得できませんね。今大きな議論になっているときに、これを説明する責任というのは感じないんですか。どうですか。

竹中国務大臣 その説明責任を果たすために、上場基準、審査の基準がつくられて、その基準にのっとってしっかりとやっていくのが我々の責任であると思います。

塩川委員 政府として、今の段階、国民に大きな疑念があるようなときに、きちんと説明する、これでこそ政府に対する信頼を確保できるんじゃないでしょうか。

 そういう意味でも、きちんとこれについて、相手側に事情があるんだったらそのことも説明するぐらいの、こういう働きかけをすることこそ、四兆円を超えるような公的資金を入れた銀行の再上場なんですから、当たり前のことじゃないでしょうか。ぜひとも要求してもらいたい。改めて、いかがですか。

竹中国務大臣 基準にないことを求めろ、基準にないことを裁量でやれという御指摘かと思いますが、基準に基づいてやるべきだと思います。

塩川委員 全く納得できませんね。国民に対して、四兆円の国民負担の責任についての説明責任を果たすことが当然じゃないかということでしょう。当たり前じゃないですか。国民の、公的資金、税金を使った銀行の再上場問題なんだから、これについてきちんと説明する、当たり前のことだと思いますけれども。納得できない。改めて答えてください。

竹中国務大臣 国民に対して責任を果たすというためには、そのルールにのっとってそれを明らかにして、しっかりとした行政を行っていくということだと思います。

 今委員がおっしゃっておられるのは、ルールにないけれども裁量で特別にやれということのように聞こえますが、そのようなことは、やはり行政のルールとして私はやるべきではないのではないのかと思っております。

塩川委員 国民の暮らしの立場から政府がふさわしい役割を果たすことこそ一番の責任だ、それこそ本来のルールじゃないでしょうか。納得できません。改めてこの問題は要求していきたいと思います。

 そこで、株式譲渡所得の課税問題についてお聞きいたします。

 ニュー・LTCB・パートナーズをマネジメントしておりますリップルウッド・ホールディングスLLC、これは米国籍であります。現行の日米租税条約では、投資ファンドの株式譲渡所得については日本に課税権があるんでしょうか。

谷垣国務大臣 課税に関しては、個別のお答えはちょっと難しいものですから、一般論として申し上げますと、非居住者あるいは外国法人が日本の国内の法人の株式を取得し、それを譲渡した場合の譲渡益課税については、国内法と租税条約によって規律されるわけですが、一般のモデルとしては、OECDのモデルの条約がございまして、先ほどから話題になっております日本とオランダとの関係、それから日本とアメリカとの租税関係、どちらもOECDのモデルにのっとっているわけです。そのOECDモデルでいきますと、原則として、非居住者、外国法人の居住地、つまり外国において課税されて、源泉地国である我が国においては課税されないことになっている、これが一般論であります。

村上政府参考人 一般論で、今大臣がもう既にお答えになったところでありますが、私も一般論でお答えしなければいけないんですが、非居住者、外国法人が内国法人の株式を譲渡した場合の課税関係につきましては、国内法並びに租税条約によって律されることになります。

 先進国間の標準とされていますOECDモデル租税条約、これは日米租税条約も日蘭租税条約も同様でございますが、原則として、非居住者、外国法人の居住地国、すなわち我が国から見れば外国になりますが、外国においてのみ課税され、源泉地国、すなわち我が国では課税されないということになります。

塩川委員 八兆円の公的資金が投入をされて四兆円超の国民負担が生じた、その結果として新生銀行が再上場できたというのに、この巨額の株式譲渡所得に課税できないというのはどう考えても納得がいかない。

 当時、二〇〇〇年の三月のとき、ちょうど谷垣財務大臣は金融再生委員長をお務めだったわけであります。ですから、谷垣大臣は、この譲渡契約が行われたときの、その当時から課税できないというのは当然わかっていたんでしょう。御存じでしたか。

    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 このリップルウッドと契約を結んだときの私は担当閣僚ではございませんが、私の前任者のときに既に国会でそういう課税関係についての議論がございまして、そして、私が就任しましたときにはそういう議論の流れもございまして、私としては、先ほど御説明したような条約関係のもとで日本では課税権がないということを承知しておりました。

塩川委員 当時、わかっていたときに、具体的な手だてというのは打てなかったものでしょうか。

 私、多額の国民の血税が元手になった再上場なのに課税できないというのは、やっぱり納得がいかないわけです。日本の国民の税金がいわば元手になって獲得した利益に日本側で課税するというのが、私当然じゃないかなと率直に思うんですけれども、いかがですか、財務大臣。

谷垣国務大臣 私は外国との租税条約のことは詳細には存じませんので、政府委員から答弁してもらった方がいいかと存じますが、お互いにやはり投資を活発にしようということで、二重な課税を避けるために居住国で課税するというのが租税条約の一般的な形であるというふうに理解しております。

塩川委員 いや、国民の血税が元手になった再上場だというところに、我々日本政府としての独自の取り組みがあってしかるべきだ。

 こういうときに、今度日米租税条約を変えようとしております。今国会に新日米租税条約の提出が予定されておりますし、既に昨年の十一月に日米両国で署名が行われました。その内容についてお聞きをしたいわけですが、配付をしました資料の三枚目に新日米租税条約の第十三条を抜き出してあります。その三項をごらんいただきたいと思います。

 この第十三条というのは、いわゆる譲渡所得について書かれている項目だと承知をしております。この三項の(a)のところにありますけれども、文面として、後ろから六行目ぐらいに「金融機関の差し迫った支払不能に係る破綻処理に関する法令」と書かれておりますけれども、これは具体的にどの法律を指すんでしょうか、お答えください。

谷垣国務大臣 これは、今おっしゃった「金融機関の差し迫った支払不能に係る破綻処理に関する法令」というものは、現在の我が国の法令下では、いわゆる金融再生法それから預金保険法が該当するということであります。

 具体的な破綻処理のスキームとしては、金融再生法の第三十六条または第三十七条の規定によるいわゆる特別公的管理のスキーム、それから、預金保険法百二条第一項第三号の規定によります特別危機管理スキームがこれに当たるということであります。

 こういった措置においては、開始の決定などが行われると同時に預金保険機構から対象金融機関の株式の取得が行われまして、さらに、必要な資金援助が行われた後、対象金融機関の合併とか当該株式の譲渡などによって措置が終了することとされているわけですが、これが当たるということであります。

塩川委員 今の次の行に「実質的な資金援助」と書かれておりますけれども、これは何のことでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、先ほどちょっと、もう既に申しましたけれども、先ほどの預金保険法やあるいは金融再生法によって株式の取得が行われた後、資金援助が行われるわけですね。要するに、全額保証などをしております場合は足らず前は埋めるという資金援助が行われますが、そういったことを指しているわけであります。

塩川委員 竹中大臣にお聞きしますが、破綻処理にかかわって金融再生法あるいは預金保険法に従い公的資金が投入をされた、実質的な資金援助が行われた金融機関というのは、主なところで結構ですから、お示しいただけますか。

竹中国務大臣 破綻に伴う資金援助ということでございますれば、旧長銀、旧日債銀が相当いたします。

塩川委員 新生銀行、あおぞら銀行が該当すると。

 要するに、公的資金の投入された銀行の株を日本政府から取得したアメリカの投資ファンドがその株を売却したときに獲得する所得に対し、ここでは日本側に課税権があるというふうに書かれていると思うんですけれども、これでよろしいでしょうか。

谷垣国務大臣 新しいこの租税法は、これから国会へ提出するところでございまして、まだ未発効でありますが、基本的なことを申しますと、この条約の基本は現行条約と同じなんですが、先ほどお読みになったところは、株式の譲渡益であっても、締約国、これは預金保険機構を含むわけですが、この締約国が破綻処理に関する法令に従って、破綻した金融機関に対して、先ほど申しましたような実質的な資金援助を行った場合には、金融機関の株式を締約国から取得した者が一定の期間、五年内に当該株式に関し取得する譲渡益については、その資金援助の際に多額の公的資金が投入されたという事情を踏まえて、源泉地国、つまりこの場合でいえば日本においても課税できる、こういう仕組みになっております。

塩川委員 要するに、多額の公的資金が投入された銀行の株の譲渡所得については日本側に課税権があると。本来は、OECDモデル条約の立場で、居住地国課税で、この場合でいえばアメリカに本来あるんだけれども、例外として、公的資金が入っているから、日本の破綻処理の法令に従ってやっているものだから、日本側に課税権がありますよということになるわけですね。

 それで、この条文で見ていくと、破綻処理にかかわって、金融再生法に基づき旧長銀、旧日債銀に対し公的資金が投入されたのは、ちょうど譲渡契約の成るときだと思いますから、その前の日だと思いますから、新生銀行でいえば二〇〇〇年の二月の二十八日、あおぞら銀行は、具体的な日付を失念しましたけれども、二〇〇〇年の秋、九月ごろだというふうに思います。また、新生銀行について、このニュー・LTCB・パートナーズが、実質的にリップルウッドですけれども、預金保険機構から株式を取得したのは二〇〇〇年の三月の一日。ちょうど金融再生委員長のときですから御存じのことだと思うんです。

 この条文にも、ちょうど三項の(a)の一行目の一番下の方に、括弧の中で、「資金援助が最初に行われた日から五年以内に行われる譲渡に限る。」こういう書き方もしていますから、新生銀行の例でいえば、二月十九日の、今度の株式譲渡所得を含め、〇五年の二月二十八日までの株式譲渡所得については日本側に課税権がある、そういう組み立てになっているわけです。十三条の三項の(a)の中身というのはそういう中身であるわけですね。

 ここの条文というのは、そもそもどちらの要求で、日米間議論しているわけですけれども、当然日本側の要求で入ったものだと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 どちらがという前に、今の委員の、まだ発効しておりませんけれども、この新しい条約の解釈でちょっと申し上げておきたいことは、お引きになった、参考にお配りいただいた紙の一番最後に(b)というところがございますね。これが現実にはきいてくるわけでございまして、新条約の発効前に非居住者等が破綻した金融機関の株式を取得した場合には、予期されない課税を防ぐため、この株式の譲渡益に対しては新条約は適用できない、不遡及という形になっているわけであります。

 それから、この条約のときにどういう議論をしたかについては、これは政府参考人からちょっと答弁を――これは国際交渉上の話でございますので、どちらから提案したというようなことは、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

塩川委員 わざわざ「日本国については、預金保険機構を含む。」とありますから、当然のことながら、日本側の要求で取り上げられた項目であります。

 そこで、なぜこういう条文を盛り込んだのか、そういうのはやはり大いに議論がされなければいけません。なぜこういった条文が盛り込まれたんでしょうか。大臣、いかがでしょう。

谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、これは外交交渉の過程でございますから、要するに、条約は条約をして語らしめよということではないかと思います。

塩川委員 まさに日本側の要求で入ったわけで、その事情について、財務大臣がわざわざ談話まで出してこの条約の説明までしているぐらいですから、はっきりお答えください。

谷垣国務大臣 いや、どちらが案を出したかということではなくて、この条文の趣旨は、要するに、先ほども申しましたが、多額の公的資金が投じられたということを踏まえて、課税権をその多額の公的資金を投じた国に持たすのが適当であろうという議論であったわけだと思います。

塩川委員 公的資金が入っているからだ、つまり、国民の皆さんの批判が背景にあってこういうふうに盛り込まれた、そういう趣旨と理解してよろしいですね。

谷垣国務大臣 国民の健全な御意見が背後にあって、こういう議論があったというふうに私は理解しております。

塩川委員 国民の血税が使われたからこそ、いわば居住地国課税という原則の例外として、公的資金が投入をされた銀行の株式の譲渡については日本側に課税権がありますよと。まさに国民の声で盛り込まれたものですよ。そういう議論を何でもっと早くやらなかったんですか。

 これを見ても、肝心の新生銀行の問題、リップルウッドには日本に課税権がないわけでしょう。当時の金融再生委員長だったときを含めて、大いにこういう問題について、世論に、国民の声にこたえて、はっきりと日本に課税権があると交渉する、この立場で取り組む、こういうことこそ行われてしかるべきだったんじゃないですか。改めて、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、先ほどもお配りいただいた参考資料の(b)のところで御説明申し上げましたように、やはり予期せざる不利益をかけるわけにはいかない、こういうことであろうかと思います。

塩川委員 こんなのは、譲渡契約の覚書を交わす時点からもう国会でも議論になっていた問題ですから、こういう立場で条約改正にも大いに取り組むということこそもっと早くできた話なんじゃないか、こういう問題だと思うわけですよ。

 要するに、十三条の三項の(b)というのは、いわばリップルウッドの税逃れのためにつくったような、リップルウッド免税条項というような中身じゃないでしょうか。四兆円を超える国民へのツケ回しが行われて、瑕疵担保特約という特権を振り回されて、そして貸し渋り、貸しはがしが強要されて、その上に、最初からわかっていたことなのに、課税も見逃すようなことをする。三重、四重にも許しがたい。アメリカ言いなりのやり方じゃないか。こんなことは許されないと強く指摘をしておくものであります。

 引き続きこの問題については大いに追及をしていくことを述べて、今、国民の暮らしはもう大変な中にある。中小企業、中小業者は深刻な実態にあります。

 全国中小企業団体中央会で、現場の皆さんの声を集めた報告というのが出されております。ここを見ましても、昨年十二月の声ということで、一部業種で回復の兆しが見られるが、しかしそこでも、単価が低下をし収益が厳しい。その上、大半の業種というのは、引き続き景気回復の兆しは見られない。具体的な声として、景気回復の兆しなど毛ほども感じられないという声もありました。

 昨年十月の際に、中小企業四団体が中川経済産業大臣に要望書も提出をされておられます。そこの全中の要望書にも、不安感をあおり、中小企業や中高年、高齢者に痛みが集中しかねないような施策は行わないようお願いしたい、不安感をあおる消費税率の引き上げや引き上げ論議は景気回復の足を引っ張りかねないと指摘をしています。こういうときに、昨年、法改正が行われた改正消費税法、総額表示方式や、免税点引き下げや、簡易課税の引き下げが実施をされます。

 そこで、谷垣大臣にお伺いしますが、免税点一千万円への引き下げによる新たな対象業者数と、政府の増収の見込みは幾らか、お尋ねいたします。

谷垣国務大臣 今おっしゃった事業者免税点制度については、消費税に対する信頼性やあるいは制度の透明性を向上させようということで、適用上限を三千万から一千万に引き下げたわけですが、この免税点の引き下げによりまして、約百三十六万の事業者が新たに課税事業者になると見込んでおります。

 それから、この免税点の引き下げで、地方消費税込みでありますと、つまり五%では約四千億円の増収でありますが、国の、国分四%でいきますと、三千二百三十億円の増収を見込んでおります。これは平年度ベースであります。

塩川委員 地方分入れると四千億円がこの百四十万近い事業者にかかってくる問題であります。

 透明性の確保といいますけれども、そもそも今の、売り上げ三千万から一千万の事業者の現状がどうなのかということを、やはり我々、しっかりと現場を見据える必要があるんじゃないか。

 例えば、ある東京の建設業者の方は、増改築を二、三軒引き受ければそれだけでも売り上げが一千万円を超えるわけです。実際に手元に残る収入というのは二百万円を超える程度だ、そこに新たに納めなければならない消費税が数十万ということであれば、どうやっていけばいいのか。これが現場の皆さんの声だと思うんですね。

 そこで、中川経済産業大臣にお伺いしますが、この免税点引き下げによる中小業者への悪影響についてどのように認識しておられるのか、率直にお聞きをしたいと思います。

中川国務大臣 今、日本全体の景気は緩やかな回復ということでございますけれども、委員御指摘のように、中小企業の中には依然として、まだまだ厳しい状況にあるというふうに認識はしております。

 ただ、今回の事業者免税点制度につきましては、平成十四年八月ですから一年半ほど前にいろいろな調査等もやっておりまして、例えば一部転嫁できるとか、ほぼすべて転嫁できるというのが、おおむね七割ぐらいが転嫁できるというようなデータも出ております。

 また、これは信頼性、今財務大臣からもお話ございましたが信頼性、あるいはほかの国々の免税点との比較等々も考慮をしていかなければなりませんし、何よりも制度をきちっと御理解いただくということが大事だろうと思っております。

 十六年四月からスタートいたします。個人事業者は平成十七年一月からという予定でございますけれども、全国の商工会、商工会議所等においてできるだけ事前に御理解をしていただき、消費者あるいはまた事業者に、円滑にこの制度によりまして転嫁できるように、最大限PR等をしていくことによって、中小企業者に対する御理解をいただいていきたいというふうに考えております。

塩川委員 今七割という数字の話がありましたけれども、それは〇二年八月の経済産業省の調査であります。私、大臣、見る項目がちょっと違うんじゃないか。この項目では、消費税が全く転嫁できないと一部しか転嫁できないという声が五二・三%なんですよ。こここそしっかり見るべきじゃないですか。部分的にしか転嫁できないという方が、実際に過半数の方がいらっしゃる。払いたくても払えないというのが実態だと思うんですよ。

 売り上げ一千万ぐらいのといえば、夫婦二人の営業ですよね。実際、今、今までの三千万以上であれば、商店街、大体二割ぐらいですよ。それが一千万になれば八割ですよ。今、中心市街地の疲弊の問題が大問題となって、政府としてもてこ入れしようというのに、そういう商店街をさらに疲弊させるようなことが、この免税点の引き下げで、払いたくても払えないという業者のところにしわ寄せをする形で生まれるということが大問題だと思うんです。デフレ下の売り上げが減少している中でのこの消費税のおもし、このことをしっかりと見据えてこそ、まともな政治ができるんじゃないでしょうか。

 今回のニュー・LTCB・パートナーズが全株売却すれば約七千億円と言われていますから、日本で課税すれば一千四百億円国庫に入る。百四十万事業所から数千億円集めるよりも、この一つの、リップルウッドを初めとしたニュー・LTCB・パートナーズにきちんと課税をする方がどれほど中小企業と日本経済のためになるのか。このことを改めて指摘をし、この問題についても改めて追及することも表明をして、質問とさせていただきます。

杉浦委員長代理 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子でございます。長時間御苦労さまです。私が最後になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、イラク問題について二点ほど伺いたいと思います。

 昨年三月二十日、米国がイラク戦争を開始したことを受けて、小泉首相は、支持表明を行うに際して、真っ先に、大量破壊兵器の拡散を防止することが我が国を含む国際社会全体の平和と安全にとって極めて重要であると述べられ、イラク戦争は、イラクが保有する大量破壊兵器の拡散を防止することが目的である旨を強調していました。

 しかし、大規模な戦闘が終結してから九カ月余がたちましたが、大量破壊兵器は見つからず、それどころか、戦争前にイラクの大量破壊兵器保有を裏づけた証拠が捏造であったり誇張であったりしたことが次々に判明してきました。昨年の三月二十日時点では、少なくとも、武力行使を行わなければ大量破壊兵器の拡散が防止できないという緊急事態ではなかったことが明白になったわけです。

 昨年三月十八日に、小泉首相は、ブッシュ大統領の決断について、やむを得ない判断だったと思い、私は米国の方針を支持しますと述べています。

 武力行使を決めたブッシュ大統領の決断が捏造や誇張された証拠に基づいて行われたことについて、その決断を根拠がなく支持した政府として、我が国国民に対していかなる説明を行うつもりなのか、あるいは、説明する必要はない、もういいんだと考えておられるのか、その点からお伺いいたします。外務大臣。

川口国務大臣 これは何回か委員にも、東門先生にも申し上げたことですけれども、武力行使の前、ずっとイラクは国連の安保理の決議に継続的に違反をしていたわけですね。さらにその前にさかのぼれば、イラクはみずから、大量破壊兵器を持っているということを自分で言った、国連の査察官に対してそれを言った、そして実際に自分でも使ったということがあるわけです。それに対して、安保理の決議に従って、武装解除をするようにということで査察が入り、国連の安保理決議で言っていたわけですけれども、イラクはそれに対して従わなかったということがあるわけで、今、まだイラクの疑惑というのは晴らされていないということであるわけです。

 したがいまして、先般の武力行使、米英軍による武力行使ですけれども、これは、決議一四四一で全会一致で決定をしたように、イラクが武装解除の義務を継続的に守ってこなかった、違反を犯していたということで、安保理決議に従って、イラクの武装解除等の義務の履行を確保して、この地域に平和と安全を回復するということのために、真にやむを得ない措置として行われたということであると考えております。この考え方というのは、アメリカ及びイギリスが国連に対して、武力行使の後、説明の文書を出しましたけれども、そこについてもはっきり出ているということであります。

 したがって、我々といたしまして、この疑惑というのはまだ解明をされていないというふうに考えております。

東門委員 これは、今大臣のおっしゃったことが国民への説明をしておられるというふうに受け取ってよろしいですね。いや、いろいろあるんですが、時間的な制約がありますので、外務委員会でまた続けていきたいんですが、今のが、国民への説明はこのとおりですというふうに受けとめてよろしいのでしょうか。

川口国務大臣 国民への説明ということでしたらもっと初めからきちんとお話をしたいというふうに考えておりますけれども、先生にお時間がないだろうということなので、かいつまんで申し上げたということですけれども、もっともっと詳しく申し上げる用意はございます。

東門委員 ブッシュ大統領は、戦争回避の条件として、戦争前にフセイン大統領の国外退去を求めました。これをイラクが拒否するや、武力行使を開始し、フセイン政権を壊滅し、フセイン大統領を捕虜として拘束したわけです。

 これで明らかなことは、米国の究極の戦争目的はフセイン政権の打倒であり、小泉首相の思惑とは異なった戦争を米国が行ったということだと思います。首相は、イラクの大量破壊兵器廃棄のための武力行使として戦争を支持したはずであります。

 政権の打倒が結果的に大量破壊兵器を持たない国づくりにつながるとしても、また、その政権がたとえ独裁政権であったとしても、外国が武力を行使して他国の政権を打倒することは、国連憲章に規定されている武力行使禁止原則を踏みにじるばかりでなく、人民の自決権を否定することにもなると考えますが、今も継続しているイラク戦争について、政府は、武力行使の開始からこれまでの米国の行動を、国際法に照らして正当化され得るものと考えておられるのでしょうか。

    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

川口国務大臣 ブッシュ大統領が武力行使をしたということについて、私どもが、我が国が支持をしたということの理由は、先ほど申しましたように、安保理決議にのっとった形でイラクが武装解除をしなかったということが問題であるという立場で支持をしているわけでございます。

 国連の憲章においては、武力行使は一般的には認められていない、例外として自衛、それから安保理の決議ということがあるわけですけれども、その意味で、国際法にのっとった武力行使であるというふうに我が国としては考えております。

東門委員 わかりました。

 では、私は、沖縄問題に移りたいと思います。

 復帰後三十二年にならんとする今日、敗戦後もう五十九年になろうとしておりますが、復帰前と変わることなく基地の重圧に苦しんでいる沖縄県民に一条の希望の光が見えてくるかと思われるような報道が、二月十三日の毎日新聞にございました。「普天間飛行場 米「代替なしで返還も」 日本に打診 嘉手納へ統合検討」との見出しで、米側が代替施設の建設を米軍普天間飛行場返還の条件としない意向を日本政府に打診してきたことが十二日に明らかになったとの書き出しです。

 そこで、記事に関連して質問をいたします。

 ラムズフェルド長官は、市街地の真ん中にある普天間飛行場を上空から視察され、こんなところで事故が起きない方が不思議だ、代替施設の計画自体もう死んでいると指摘され、九六年十二月のSACO最終報告の見直しを国防総省に指示したという報道でした。

 その報道によりますと、国防長官の意向は、昨年末、外務省と防衛庁にも非公式に伝えられたとありますが、外務大臣、いかがでしょうか、外務省には伝わっておりますでしょうか。

川口国務大臣 そういうことは外務省には伝わっておりません。

 先ほど委員がおっしゃった、ラムズフェルド長官がおっしゃったということについても、私どもはその事実関係を把握いたしておりませんが、私も普天間の飛行場を嘉数の高台から拝見をしました。それで、密集した人家の中にぽこっとその飛行場のところだけあいているということでして、これは本当に、その周りに住んでいらっしゃる方にとっては大変な御負担であろうというふうに私も思いました。

 したがいまして、政府としては、この普天間の飛行場の移設について懸命に今努力をしているということでございます。

東門委員 ラムズフェルド長官と外務大臣の大きな違い、普天間飛行場の移設は大臣のおっしゃること、長官はもう返還をするべきだ、返還をしようよと指示したということを私は申し上げたのですが、後で続けていきますけれども、本当に残念だなと。

 その関連で、一月の十三日、海老原北米局長が国防総省を訪問した際にも、ロッドマン次官補が、普天間問題を何とかしたい、SACO合意の見直しを検討できないかと提案したとのことですが、ロッドマン国防次官補からの提案はあったのでしょうか。北米局長にお伺いします。

海老原政府参考人 今、東門委員からお尋ねがありましたように、先月の十三日にワシントンにおきまして、国防省のロッドマン次官補と、日本におきます軍事態勢の見直し問題につきましていろいろな意見交換をしたのは事実でございます。

 ただ、この普天間飛行場の問題につきまして、これまでの見直しを検討してほしいというような、報道にありますような要請を受けたという事実は一切ございません。

東門委員 ということは、この新聞記事にあることは事実無根であり、あり得ないというふうに、大臣と局長の御答弁を伺っているとそういうふうに聞こえるんですけれども、そうなんでしょうか。日本政府としては、これは事実無根だから、全然そういう相談を受けていない、あるいは提案を受けていない、あり得ないことだということなんでしょうか。

海老原政府参考人 先ほども大臣から、また私から御答弁申し上げましたように、このような提案を受けたことは一切ございませんので、私の方からも、この報道を行いました新聞に対しては、これは事実に反するということを申し入れてございます。

東門委員 私も、実はつい最近、アメリカ・ワシントンDCへ行ってまいりまして、いろんな方々と意見交換をしてまいりました。その件に入るとちょっと時間的に余裕がないので、もう移りますけれども、後でそういうことを少しお話し合いをしていきたいと思います。

 沖縄に入られる前に、ラムズフェルド国防長官は韓国を訪れたようです。ヘリコプターでソウルの龍山基地を上空から視察されて、そのときの御発言、これももう皆さん御存じだと思いますが、ニューヨークのセントラルパークに外国軍が駐屯するとすれば、米国民は受け入れるだろうかと述べたとも言われています。

 私、これを聞いたときに、血の通った為政者だなという感じを受けました。余りにも日本政府の冷たさにいつも憤慨をしているものですから、こういうことが発言できる、しっかりと言える人というのはすごいなという思いを持ったことを覚えています。

 国民の生命、財産、安全を守る立場にある人が現場を視察した率直な意見であると思うんですが、大臣、それをお聞きになっていかがですか。

 そして、沖縄の現状を考えて、せっかくラムズフェルド長官がおっしゃったということもあるわけですから、普天間の代替なしの返還をむしろ積極的に外務省側から、日本側から押していくということが考えられると思うんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 今、東門委員がおっしゃられたラムズフェルドが韓国においてしたという発言については、私どもは、それを確認することは、そういうことがあったかどうなのかということについては確認をすることができませんので、その御発言についてコメントをするということは控えさせていただきたいと思います。

 思いますが、普天間飛行場の移設、返還につきましては、これはよく東門先生も御存じのように、普天間飛行場の移設についての政府方針というのが平成十一年の十二月にございまして、それに基づいて設置をされた代替施設協議会で、これは、私は環境大臣であったころから時々出席をし、今外務大臣になってからは出席をいたしておりますけれども、その代替施設協議会で約二年間、議論が積み重ねられたわけでございます。そして、その結果として、平成十四年の七月に普天間飛行場代替施設基本計画が決定をしたということでして、十五年の一月には代替施設建設協議会、これも設立をされたわけでございます。

 政府としては、この間、地元の地方公共団体ともいろいろ御相談をしながらこれを進めてきたわけでございまして、今後とも引き続き政府として、沖縄県等の地元の地方公共団体と十分に協議をしながら、普天間飛行場の移設、返還の問題には全力で取り組んでいきたいというふうに考えております。

東門委員 今おっしゃる、SACOになるんですが、SACOのその合意は、その進捗状況から見て、もう本当に実施は困難である、年限もはるかに過ぎてしまっている、破綻しているというのが現状だと思うんですよ。それを、いつまでも政府の側からアメリカに対して何も言えないという状況では困る。常に、沖縄の負担、県民の負担の軽減はよくわかります、負担軽減に努めますと口ではおっしゃいますが、言うだけで何もしてこない。本当に悲しい限りです。どこの政府なんでしょうか、どこの外務省なのかと思います。

 それで、海老原局長、伺いますが、一月十三日の先ほどもお話が出ましたロッドマン国防次官補との会談で、沖縄県民の負担の軽減に努めるために協議していくということでも一致した、それは別のこともありますが、沖縄県民の負担軽減に努めるために協議していくとのことで一致したとの報道がありましたが、間違いありませんか。そして、そうであるのならば、日本政府は具体的にどのような負担軽減策を提案していこうと考えておられるのか、お聞かせください。

海老原政府参考人 先ほどの一月十三日のロッドマン次官補との会談におきましては、先ほど申し上げましたように、日本におきます在日米軍の軍事態勢についての基本的な方針というか、そういうものについて主に意見交換をしたということでございます。

 その際、特に私の方から強調いたしましたのは、一つは、これは当然のことでございますけれども、在日米軍の持っている抑止力、これは我が国及び極東の平和と安全のための抑止力を効果的に維持するということが大事だということでございます。それからもう一つは、これは特に沖縄県でございますけれども、沖縄県を含みます米軍の施設・区域の地元の公共団体の負担というものを少しでも軽減する、特に沖縄県の負担を軽減するという観点からこの協議を進めるという、この二つをロッドマン次官補に強調いたしまして、ロッドマン次官補の方からも、その二つについては自分たちも当然のことながら念頭に置いて協議を進めていこうということでございます。

 具体策ということでございますけれども、これはこれから、今までもいろいろな形で意見交換をしておりますけれども、まだここで申し上げるような段階には至っておりませんけれども、これから米側との間で誠心誠意詰めまして、協議を進めてまいりたいというふうに考えております。

東門委員 負担の軽減ということは、これまで、もう何年かわかりません、ずうっと言い続けてきた言葉だと思いますが、これからですということ、すごくがくっとくるような。

 というのは、負担はどんどん増しているんです、減っていないんですよ、沖縄は。そういう中で、これからやりますと。ぜひやっていただきたい、急いでやっていただきたい、そして県民が目に見えるような形、肌で感じられるような形でやっていただきたいと思います。いつまでも、やります、やります、やっていますということだけでは済まさないでいただきたいと思います。

 復帰後、これまでに沖縄の方から、それは県であり市町村、あるいはそれぞれの議会、そして市民、民主団体等含まれますが、沖縄の方から在沖米軍基地の、初めのころは撤去だったと思います、あるいは整理縮小、多発する米軍人による事件、事故の再発防止、海兵隊の削減、日米地位協定の改定等々に関する多くの決議及び要請等が届いていると思いますが、どれくらいこれまでに届いているのでしょうか。そして、そのうちの何件が、郵送ではなくて、直接に沖縄から上京してきて外務省あるいは施設庁に手交されているのか、お聞かせください。

海老原政府参考人 今、沖縄復帰以降というお尋ねがありましたけれども、きょう、けさこういうお尋ねをいただきまして、率直に申し上げて、時間の許す限り調べたのでございますけれども、残念ながらそこまではとても調べ切れないということ、また、資料も必ずしも十分ではないということもありまして、我々の調べられる最大限のところまで調べた数を御紹介させていただきたいと思います。

 平成十四年七月以降に、沖縄県、それから沖縄県内の地方公共団体、市民団体等よりいただいた要望書等の総数は、我々が数えたところでは三百八件でございます。

 それで、今の、郵送云々というのはちょっとその区分けができておりませんけれども、申しわけありませんが、本省と、それから沖縄事務所というのは分けてございまして、外務本省への要請は百六十九件でございます。それから、我が方の沖縄事務所への要請が百三十九件でございます。

 あと、内容はよろしいですか。(東門委員「いや、整理縮小、再発防止」と呼ぶ)これは必ずしも、要望書の中にいろいろな話が入っているものもございますので、きれいに何件というふうに分類できない面もございますけれども、我々が分類したところでは、本省の方の百六十九件のうち、基地の撤去、これは四件でございます。それから、事故、事件の防止、これが五十九件でございます。それから、海兵隊の削減、これはゼロ件でございます。それから、地位協定の改正が六十三件でございます。

 沖縄事務所の方も申し上げますか。(東門委員「はい」と呼ぶ)沖縄事務所の方が、全体で百三十九件ですが、基地の撤去が二件、それから事件、事故の防止が九十件、海兵隊の削減が一件、それから地位協定の改正が一件、以上でございます。

東門委員 平成十四年七月以降ということでしたけれども、ぜひ復帰後のものを調べていただきたいと思います。そして、沖縄県から手交するためにわざわざ上京してくるということも考えていただきたい。

 その内容もそうなんですが、基地の整理縮小がないということでしょうか。今、海兵隊の削減ゼロ件、撤去が四件、沖縄事務所が二件とおっしゃったんですが、これは全面撤去のことなのか、整理縮小のことなのか、含めてですか。

海老原政府参考人 申しわけありませんけれども、けさちょっと大車輪で作業したものですから、一応、基地撤去ということで手分けをして統計をとったものでございまして、その中身につきまして、整理縮小というようなことなのかも、完全な撤去ということなのか、ここではちょっとお答えできません。申しわけありません。

東門委員 ちょっと驚きました。先ほど、資料も十分ではないとおっしゃったんですが、ちゃんとこういう決議あるいは要請書が来たら、私は、当然、資料はちゃんとしたところにある、毎年どれくらい来ているかというのをわかっているべきだと思うんですね。ということは、物すごいずさんな扱いをしているのかなと。あっ、来たか、そうかとそばに置いてしまうという感じ。本当に真剣に、県民がどのような思いで届けているかということをわかっておられないのではないかな、今そういう思いがいたしました。

 大臣、いかがでしょうか。数的に、何しろ十四年ですから、三百八件ということでしたけれども、それだけの要請あるいは決議等が届けられている。中身を、どのようにごらんになったかわかりませんが、沖縄県民のそういう思い、わざわざ東京まで出てきて、ぜひ大臣にということで持ってくるわけですね、手交するわけですね。それに対してどのようにお考えでしょうか。

川口国務大臣 沖縄県の方々あるいはその関係の方々からいただいた要望書については、私がみずからいただいたものもありますし、それから、そういうものがあったという報告を受けているというものもございます。

 いずれにしても、先ほどの三百八件と、十四年の七月以降だけでそれぐらいの数になっているわけですから、それは、それぞれの陳情書、要望書にかける沖縄の方々の気持ちというのが非常に重く入っているわけですから、それを重く受けとめなければいけないというふうに私はいつも感じております。

 七五%の基地が沖縄県にあるということの沖縄県の方々の感じられている負担、これについては、私もつとに認識を強く持っているところでございます。

東門委員 総理もおっしゃっているんですね、沖縄県民の負担の軽減は現内閣の大きな課題の一つであると常におっしゃる。大臣も今もおっしゃっていましたけれども、県民の側から見ますと、負担の軽減どころか、先ほども申し上げました、負担はますます増大しているというのが実情です。

 航空機騒音はひどくなっています。特に、宜野湾、嘉手納、とても大変です。事件、事故は決して減っておりません、ふえております。女性への暴力もふえています。環境破壊もますます進んでいます。このどこをとって県民の負担の軽減に努力していると言えるのか、不思議です。

 今、金武町のキャンプ・ハンセン内の都市型戦闘訓練施設建設を例にとってもよくおわかりだと思います。九五年にレンジ16に建設された既存の施設が老朽化して損耗がかなり激しいので、それをレンジ4に移すということを米国側が計画しているということですが、レンジ4への移設は負担増以外の何物でもないということが、県民を挙げて今怒りを示しているところです。

 レンジ4の近くにある金武町の伊芸区、ここは、大臣あるいは北米局長、おいでになったことがあるかどうか後でお聞きしたいと思うんですが、敗戦後、八〇%以上の土地を米軍に取り上げられて、以来、実弾演習場として使用されてきました。御存じのように、去る二月七日午後、実弾演習による山火事が発生。夜空をオレンジ色に焦がして翌日まで燃え続け、地域住民は不安な夜を過ごしたと新聞は報じております。

 そして、地域住民にも直接聞きました。実弾演習による事故は、流弾、被弾による人身事故や騒音被害、砲弾の破片落下、振動被害、そして山火事による水源涵養林への被害、水質汚染、車両による畑への乗り入れ等々、枚挙にいとまがありません。世界各地で戦争に加担している米軍ですが、戦地ではない沖縄がまるで戦場のような被害を受け続けているきょう、今の現状を御存じでしょうか。

 しかも、今回の都市型戦闘訓練施設が予定されているレンジ4は、集落からわずか三百メートルしか離れていないんです。それこそ、地元住民の命、生活権を無視した移設計画であり、日本政府が常に、一握りの沖縄県民は犠牲にしても小指の痛みにも値しないとの考えをとっていることのあらわれにほかならないのではないかと思います。日米同盟を重視する余り、国民不在のアメリカ追従の基地容認では、外務省はアメリカの東京出張所なのかと疑わざるを得ません。

 これ以上、精神的苦痛を伴い、安全な暮らしを奪う基地は要らないと、去る十一日、伊芸区では区民決起大会を開催しました。学童からお年寄りまで多くの区民が参加しての決起大会でした。区民は、体を張ってでも今回のこの都市型戦闘訓練施設の建設は阻止すると立ち上がっています。

 この問題に関しては、県知事あるいは金武町長が建設反対を表明し、県議会、金武町議会でも反対決議がなされております。都市型戦闘訓練施設の建設反対は県民の総意だと言えます。なぜ、沖縄県民の声や痛みが日本政府には届かないのでしょうか。

 そこで、伺います。大臣あるいは局長、現場、伊芸区を訪ねたことがございますか。あるいは、レンジ4、今現在あるレンジ16をごらんになったことがあるか、お聞きいたします。

川口国務大臣 私は何回か沖縄に伺っていますけれども、まだ残念ながらレンジ4の、そこの場所には伺っておりません。

海老原政府参考人 私もその施設には伺っておりません。

東門委員 では、伊芸区はごらんになったでしょうか。伊芸区の皆さんと、お話を伺ったということはありませんか、局長。大臣はお忙しいでしょうけれども、局長はできるんではないかと思うんですが。

 伊芸区の皆さん、私、参りました。土曜日のちょうど昼どきでした。歓迎されました。何でだと思いますか。パンパンという音ですよ。びっくりしました。これは日常茶飯事です、これは小さい方です、もっと大きな音が聞こえるんですと。本当に三百メートルしか離れていない、牛舎からですと百メートルしか離れていないんです。そこがレンジ4なんですよ。

 それを、外務省あるいは防衛施設庁の皆さんにレクを受けますと、安全は確保されます、今回は奥の方に向かってしか弾は撃ちません、練習はしません、だから大丈夫です、騒音も小さくなりますとかなんとかおっしゃいますが、そこに住んでいる伊芸区の皆さんの立場からすると、とても納得いくものではありません。余りにも近い。山火事も起こる。今までもいろいろな事件、事故があったんですね。

 そこから、三条の管理権、地位協定の管理権があるから、これは日本政府としてはどうにもならない、アメリカ軍がアメリカの予算でつくるからそれはいいんだ、物が言えないんだというのではおかし過ぎる。その土地はだれのものなんですか。先ほども申し上げました、戦後八〇%が取り上げられたんですよ、米軍に。そういう状況のところを視察もなさらないで、いや、仕方がない、管理権は米軍にあるんだからというようなことでは、とても困ると思うんです。

 ぜひ、この今の都市型訓練施設の移設、16から4への移設ということに対しては、私は、アメリカ側に外務省の方から強く撤回をしていただきたいと申し入れてほしいと思いますが、いかがでしょうか、大臣。

川口国務大臣 これは、先ほど委員がみずからおっしゃられたように、この訓練施設ですけれども、米軍が施設・区域の管理権の行使の一環として、その施設・区域の中に米国の予算によって建設を予定しているというものでございます。

 それで、もちろん、日米地位協定上、米軍はその施設・区域内における作業については公共の安全ということに妥当な考慮を払うという義務も負っているわけでございまして、今回の建設の計画というのは、安全や地元の方々の御懸念にも一定の配慮をしたものであるというふうに理解をいたしております。

 それはまさにどういうものかというのは、先生がみずから先ほどおっしゃられたわけですけれども、例えば、流弾、跳弾対策として射撃用の建物の中には標的の後方に高密度のゴム製の弾丸トラップ等を使用するというふうに承知をしています。それから、射撃用の建物の外では、施設・区域の境界線とは反対方向に対してのみ射撃を行うという措置をとるということも承知をいたしております。

 騒音の問題ですけれども、レンジ4については、従来、中距離の火器によって、そこでそれを使っていたわけですけれども、それについて地元から騒音問題が提起をされていたわけですが、今後につきましては、訓練施設においてですけれども、小型の火器による訓練のみが予定をされているということでございますので、地元の負担は軽減をされるということだと思います。

 いろいろ申し上げましたけれども、そうはいっても、それは音がゼロになるわけではないでしょうし、地元の方々の御負担が減るわけではないという委員がおっしゃることは、それは負担がゼロになるということにはならないとおっしゃれば、そういうことでございますけれども、先ほど、アメリカに対して、米軍に対して建設の中止を求めないのかということですが、これは、先ほど来申し上げていますように、米軍が管理権のもとで自分の予算でつくるということでございます。そういうことで、その安全の配慮については外務省からも地元の方に対して御説明をさせていただいたということでございます。

 沖縄県の県民の方が担っていらっしゃる負担ということについては、私もつとに認識はいたしております。できるだけそれを目に見える形で減らしていくという意味で、SACOの最終報告の着実な実施を図っていきたいと考えております。

東門委員 外務大臣とお話をしていると、もう本当に円をぐるぐる回っているようで、どこにも行かない。とても悲しい。大臣として本気でやる気があるのかな。外務省の官僚の皆さんがこうですよとお話をするから、そのとおりを受け継いでいるというような感じがするんです。

 公共の安全に配慮をすると言いました。それならば、アメリカ側の説明を、ああ、そうですか、理解しましたと、それを地元の住民に、理解してくれ、大丈夫と言っているから、演習は中に向かってやるから、ここには飛ばないようにするから、あるいは騒音も低くするから、そのように信じてくださいと言うのではなくて、もっと地元の、県民の側に立ってアメリカ側に物を言うということはできないんですか。それが政府の役目ではないんですか。それをやりましたか。やってだめだったんですか。どのようなやりとりがあったのか。公共の安全に配慮をするという立場でお聞かせください。

 といいますのは、九五年にできたこの施設、レンジ16ですね、損耗が激しいと言われています。それをつくったときには、日本側は知らなかったんですね。アメリカがつくってしまったんですよ。その前は恩納村でつくって、恩納村で反対が激しかったので九二年に撤去しているんです。そして九五年には政府にも知らせずにつくられた。今度はこれの移設なんです。

 私は、レンジ4とレンジ16を、もちろん入れませんから、立ち入りを要請していますが、まだ許可は出ていません。しかし、それを見る限り、レンジ16にある方が住民にとっては、それがいい悪いは言っておりません、レンジ16、今の場所にある方が住民にとってははるかに安全なんですよ。三百メートルしか離れていないところと、レンジ16というのはかなり遠いんです。前に兵舎があります、キャンプ・ハンセンの中ですから。確かに兵舎には近いです。しかし、北側を見てもはるかにここの方が大きく見えるんです。直接は見ていません、図面でですが。

 そういうことを考えただけでも、なぜこれをわざわざ住民地域に近い、三百メートルしかないところに移さなければいけないのか。

 しかも、都市型ゲリラ訓練の施設ですね。一方だけ、奥の方に向かって撃ちますと言ったって、それで訓練ができるんでしょうか。テロ対策であれば、三百六十度ぐるっとどこからでも来るような態勢で訓練はされていくはずなんですよ。一方だけを向いてやるから大丈夫ですというような説明に、ああ、そうですかと外務省が乗っていたら、どうしようもないんじゃないですか。

 県民の立場、国民の立場に立って物を言っていくのでなければ、本当に、アメリカの外務省ですか、東京事務所ですかと言われてもやむを得ないのではないでしょうか。

 私は、やはり強く大きな声で訴えたい。今、伊芸区の皆さん、本当に必死です。子供たちが自然体験学習もできない。あのパンパンという大きな音、それにならされてしまうのではないかと大人たちは心配しています。教育上の環境も悪い。そんなので本当にいいんでしょうか。

 東京から沖縄は見えません。議員の皆さんも沖縄がどういう状況であるかおわかりにならないと思います。でも、沖縄県民は本当にそういう危険とそういう不安の中で日常を過ごしているんですよ。もっとわかってほしいと思います。実際に、特に担当される方、ぜひ沖縄に足を運んで、レンジ4、レンジ16を見てどうなのか、アメリカ軍と話していただきたい。

 最後にお尋ねします。着工の時期はアメリカから連絡があったのでしょうか。

海老原政府参考人 この計画をいつ実施に移すかという具体的なスケジュールについては、我々は米側から聞いておりません。

東門委員 終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 これにて東門君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十七日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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