衆議院

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第15号 平成16年2月23日(月曜日)

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平成十六年二月二十三日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 大野 功統君 理事 北村 直人君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 玄葉光一郎君

   理事 筒井 信隆君 理事 細川 律夫君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    植竹 繁雄君

      大島 理森君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    小杉  隆君

      鈴木 俊一君    滝   実君

      玉沢徳一郎君    津島 雄二君

      西川 京子君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    萩野 浩基君

      蓮実  進君    町村 信孝君

      宮下 一郎君    井上 和雄君

      池田 元久君    石田 勝之君

      市村浩一郎君    稲見 哲男君

      内山  晃君    生方 幸夫君

      海江田万里君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    小林千代美君

      鮫島 宗明君    篠原  孝君

      首藤 信彦君    鈴木 克昌君

      高山 智司君    達増 拓也君

      中津川博郷君    永田 寿康君

      長妻  昭君    鉢呂 吉雄君

      肥田美代子君    平岡 秀夫君

      藤井 裕久君    牧野 聖修君

      石田 祝稔君    遠藤 乙彦君

      高木 陽介君    西  博義君

      穀田 恵二君    佐々木憲昭君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       亀井 善之君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   国務大臣

   (産業再生機構担当)   金子 一義君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   財務副大臣        山本 有二君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   経済産業副大臣      泉  信也君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   環境副大臣        加藤 修一君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   法務大臣政務官      中野  清君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      中島 忠能君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (警察庁長官官房国際部長)            三谷 秀史君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   松谷有希雄君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           高部 正男君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       遠藤  明君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   参考人

   (日本道路公団理事)   山本 正堯君

   参考人

   (日本道路公団理事)   奥山 裕司君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  尾身 幸次君     西銘恒三郎君

  中山 成彬君     宮下 一郎君

  二田 孝治君     葉梨 康弘君

  池田 元久君     稲見 哲男君

  海江田万里君     高山 智司君

  河村たかし君     篠原  孝君

  木下  厚君     永田 寿康君

  鮫島 宗明君     小林千代美君

  達増 拓也君     牧野 聖修君

  平岡 秀夫君     肥田美代子君

  石田 祝稔君     西  博義君

  佐々木憲昭君     穀田 恵二君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     尾身 幸次君

  葉梨 康弘君     二田 孝治君

  宮下 一郎君     中山 成彬君

  稲見 哲男君     池田 元久君

  小林千代美君     鮫島 宗明君

  篠原  孝君     市村浩一郎君

  高山 智司君     海江田万里君

  肥田美代子君     平岡 秀夫君

  牧野 聖修君     鈴木 克昌君

  西  博義君     石田 祝稔君

  穀田 恵二君     佐々木憲昭君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     内山  晃君

  鈴木 克昌君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  内山  晃君     河村たかし君

  長妻  昭君     達増 拓也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房国際部長三谷秀史君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、防衛庁防衛参事官松谷有希雄君、防衛施設庁建設部長河野孝義君、総務省自治行政局選挙部長高部正男君、総務省行政評価局長田村政志君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省入国管理局長増田暢也君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長遠藤明君、厚生労働省年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長薄井康紀君、国土交通省道路局長佐藤信秋君、国土交通省住宅局長松野仁君及び環境省地球環境局長小島敏郎君の出席求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長増田峯明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 おはようございます。公明党の遠藤乙彦でございます。

 私は、まず、きょう冒頭、政治倫理に関する件からお聞きしたいと思っております。

 古賀潤一郎議員の件につきましては、先週十九日にも、我が党高木議員からも提起したところでございますけれども、やはり政治倫理の確立は、改めてこれはしっかりと強調しなければならないと思っております。特に、信なくんば立たずというのは論語の言葉でありますけれども、政治の前提に信頼が最も大事である、政治への信頼、政治家への信頼なくして政治がそもそも成り立たないといういにしえからの真理でありまして、そういった意味で、この二十一世紀の日本において、もう一度徹底してこの政治倫理の確立を進めなければならないと思っております。

 そういった中で、古賀潤一郎議員の学歴詐称問題に端を発しまして、同議員の今日に至るまでの一連の言動、行動は、国民の政治不信、政治家不信を一層増幅をさせているわけであります。

 報酬を受け取らないとして歳費支給を拒否したわけでありますけれども、歳費返納が公選法抵触に当たることがわかりますと、国へ供託しようとする。それもかなわず、結局、弁護士を通じて銀行へ預けております。また、文書通信交通滞在費は受け取っているわけであります。一方、月六十五万円の立法事務費を受け取るために一人会派の届け出をしたが、かえって問題が広がることを懸念してか、すぐに申請を取り下げております。

 こうした一連の行動は、国民から選ばれた選良として、国会議員としての資質を著しく欠いていると言わざるを得ません。古賀議員は、みずから潔く議員辞職をすべきであると考えております。

 この点に関連をしまして改めてお聞きをしますが、このたび、古賀議員の場合、在日外国人からの寄附を受けていたことが明らかになりました。これは政治資金規正法違反に当たると思いますが、どうでしょうか。これは総務省にお聞きいたします。

高部政府参考人 個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として申し上げますと、政治資金規正法第二十二条の五におきましては、「何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織から、政治活動に関する寄附を受けてはならない。」と規定されておりますことから、ここに規定されております外国人等からの寄附であることを認識して寄附を受けた者につきましては、同法第二十六条の二の規定によりまして、三年以下の禁錮または五十万円以下の罰金に処するものとされているところでございます。

遠藤(乙)委員 この点に関連をしまして、古賀議員の場合、外国人から寄附金を得たということが判明するや、寄附金を返還するとともに収支報告書において返金の報告をするとしておりますけれども、返金すれば法的に問題はなくなるという性質のものなんでしょうか。この点につきましてお聞きいたします。

高部政府参考人 これも一般論として申し上げさせていただきたいと存じますが、政治資金規正法におきましては、一たん寄附として財産上の利益を収受したものでありますれば、後に返却した場合であっても、寄附を受けたという事実関係は変わらないもの、かように認識しているところでございます。

遠藤(乙)委員 この点は、ぜひ、きちっと明確に司法的な処理をしていただきたいと思っております。

 次に、法務省にお聞きいたしますけれども、古賀議員に対しまして、福岡県警に公選法違反、虚偽事項の公表容疑で告発状が出され、受理されたとの報道がございます。告発受理後、捜査に入ったとの報道がないわけですけれども、捜査当局は捜査、調査段階に入ろうとしているのか、現状を伺いたいと思います。これだけ世間を騒がせ、国民の非難を古賀議員は浴びているわけで、速やかに調査、捜査する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

樋渡政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動内容にかかわりますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、御指摘のとおり、福岡地方検察庁におきましては、お尋ねについて、告発状を受理した旨公表しているものと承知しておりまして、関係機関とも連携の上、法と証拠に基づいて適宜適切に対処するものと承知しております。

遠藤(乙)委員 きちっと捜査、調査をして、国民の前に理非曲直を明確にしていただきたい。強く要望するものであります。

 そこで、麻生大臣にお聞きいたします。

 公選法を所管する担当大臣といたしまして、今回の古賀潤一郎議員の件、そして政治家のあり方についてどのようにお考えになるか、所感をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、個別の案件で、まさに告発をという話の真っ最中ですので、これに対して個別にどうのこうのと言う立場にはないと思っておりますけれども、少なくとも、選挙に出て、選挙違反等々を考えますと、これはやはり選挙運動また政治資金等々につきましては、公職選挙法また政治資金規正法というものをきちんと守ってやる前提で選挙をやっておるわけで、片っ方が守っていないという話になると話が公正さを欠くことになると思っておりますので、これはきちんと対応をしていただかないと当然違反になるのであって、今言われましたようなことが事実でありました場合は、これは明らかに公職選挙法違反ということになるんだと思っております。

遠藤(乙)委員 それでは、次のテーマに入ります。

 医療費の構造改革あるいは医療の構造改革というテーマに私は触れたいと思っております。

 今の社会保障の中で、年金、医療というのは大変大きなウエートを占めておりまして、しかも急速に増大しつつあるというのが現状でございまして、どうやってこの構造改革をしていくかということは、これも一つの大きなテーマであると思います。

 年金につきましては減らすわけにはいかないんですけれども、医療費については、かなりこれから医療費の伸びを抑える、あるいはまた削減に向けて踏み込むことも可能ではないかと私は思っておるんですが、特にそれは一次予防、これを徹底的に進めることによって、片や国民の健康を高め生活の質を高めるとともに、結果として医療費の抑制ないし削減に取り組むことができる、大変重要な構造改革のテーマではないかと私は考えているところでございます。

 特に、今、医療費が大体年率六ないし七%で増大をしつつある、また国民所得の比率にしても七%を超える段階に来ておるわけでありまして、そういった意味で、国民の健康の増進とまた財政のスリム化、一石二鳥の非常に重要なテーマであると私は考えているわけであります。

 そこで、日本の場合、病気の質が変わってきております。かつては、終戦直後は感染症等が中心でありましたけれども、今、これはかなり減ってきて、むしろいわゆる生活習慣病が大宗を占めております。

 生活習慣病につきましては、これは一九九六年に、従来、成人病という名前であったものが生活習慣病という名前に変更されたわけでありますが、これは予防のあり方について非常に一つの見方を示したものと思っております。

 予防の中には、一次予防、二次予防、三次予防とあることは御承知のとおりでございますが、一次予防というのは、そもそも病気にならないようにどうするかというやり方、それから二次予防というのは、病気になって早期発見、早期対処という考え方、三次予防というのは、病気がこれ以上悪くならないように何とか手を打つ、そういった段階でありまして、その段階に応じて、いろいろなやり方あるいはコストというものが大きく変わってまいります。

 そういった意味で、生活習慣病というのは、やはり一次予防を志向した一つのネーミングでありまして、大変これは重要な一つの見方の変化であると私は思っておりまして、それを踏まえて、二〇〇〇年に健康日本21といういわば基本方針が発表され、また二〇〇二年には健康増進法が成立をしたわけでありまして、この内容は私は極めてよくできたものと考えているところでございます。

 ただ、問題は、どうやってこれを実行していくか、定着させるかということが非常に私は大きな課題であると思っておりまして、この点につきまして、国民の健康増進という視点と、そしてまた財政のスリム化という視点から、ぜひ強力に取り組む余地がある、また必要があると考えているところでございます。

 それで、具体的な事例から申し上げた方がわかりやすいと思うんですが、日本の中の四十七都道府県、これを個別に見ると、医療費のいわば数字に大きな格差があることに気がつくわけであります。日本の中で一番、特に高齢者医療費が少ないのは長野県でございます。長野県の場合、最新の数字ですと、一人当たりの高齢者の医療費、年額約四十九万三千円という数字が出ております。これに対しまして一番高いのは北海道でありまして、一人当たり、年額九十五万三千円と二倍の格差が存在をしております。

 また、入院日数につきましても、一番短いのが長野県でありまして、悪いところと比べますと、二・五倍ないし三倍のやはり入院日数の格差があるわけであります。

 これに加えまして、長野県の場合には、特に男性の平均寿命日本一、女性が四位でありまして、非常に長寿県として知られております。また、自宅で亡くなる高齢者の比率、これが非常に高いわけでありまして、昨今は、高齢者の方々も寝たきりになって病院や施設で亡くなる方が非常に多いわけですけれども、長野県の場合には、自宅で亡くなられる方が非常に高いという比率があるわけであります。

 また、高齢者の雇用も長野県が一番高いわけでありまして、あらゆる指標において、長野県は非常に健康で長寿の生き生きした高齢者のイメージが存在をしているわけでありまして、四十七都道府県という大きな単位でとってみても、大きな格差があることが理解をされるわけであります。

 長野県の場合は、私もちょっと調べてみたんですが、もともと医療機関が非常に少ない、医者や看護師さんの数も少ない、病気になってしまったら面倒見切れないよ、したがって、病気にならないようにどうするかという、特に一次予防の視点から徹底的に取り組んだという成果があらわれているのではないかと思うわけであります。

 特に、国民健康保険中央会から長いレポートが出ておりまして、市町村における医療費の背景要因に関する報告書という極めて示唆に富んだ報告書が出ておりますけれども、長野県のケースを取り上げ、さまざまな調査をして、長野県のすぐれたパフォーマンスについて、背景につきまして分析をしているところであります。

 結論的には、やはり長野県の場合には、何といっても一次予防に徹底的に力を注いだということでございまして、特に医師会や自治体あるいは地域ともどもに一次予防に取り組んで、お医者さんもよく巡回指導に出ては在宅の高齢者の方にもさまざまな健康アドバイスをする、あるいはまた地域で減塩運動とか、あるいは運動を取り入れるそういったキャンペーンを繰り広げるとか、大変地域を挙げてのそういった一次予防への強い取り組みが見られるところであります。

 そしてまた、特に一次予防に関連した、栄養士さんであるとか保健婦さんであるとか、あるいはまた健康運動療法士といった、そういった方の比率が非常に高いわけでありまして、長野県の場合、人口十万人当たり、一次予防にかかわる人々の数は全国平均の二倍という高い数値になっておりまして、こういった県を挙げての、また医師会や地域も含めたそういった人々の取り組みが、こういった大きな格差をもたらしているものと考えております。

 そういった点で、今後の日本の医療行政には、ぜひ一次予防を核とした体制を徹底的に強化していく、これによって、国民の生活の質の向上とそれから医療費の削減につなげようということが大事だと思っておりますけれども、これにつきまして、厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 一次予防が非常に大事だということはもう御指摘のとおりだというふうに思いますが、これは言うはやすくしてなかなか実行の伴わないものでございます。

 今、長野県の例をお挙げいただきましたけれども、長野県の場合を見てみますと、医師の活躍もさることながら、やはり保健師さんですとか栄養士さんですとか、そういう周辺の皆さん方の活躍が非常に大きくなっているんではないか。

 と申しますのは、非常にきめ細かさが要求されますし、それぞれの地域全体で取り組むと同時に、個々の人に対するいろいろの指導、アドバイスというのが必要になっております。それらのことは、忙しい医師がそれをやるということはどの地域ともになかなか不可能でございまして、そうしたことが実際にやられておりますのは、そういう保健師さんや栄養士さんといったような皆さん方をいかにうまく利用し、利用するというと言葉は悪いですけれども、その皆さん方に参加をしていただいて努力をしていただくということをうまくやれるかどうかということに非常にかかわりが大きいというふうに私は思っております。

 したがいまして、これからの健康を増進していきますためには、そうした皆さん方、医師だけではなくて、そうした全体の医療従事者を統合的に見て、そして、その皆さん方にどういうふうに活躍をしていただくかという枠組みをどう構築するかということが大事でありまして、個々の皆さん方に、これは若いときからの積み重ねでございますから、どんなふうな家庭生活あるいはまた職場環境をつくっていただくかといったようなことをあわせてこれは議論を重ねていかなければなりませんし、そうしたことに我々も取り組んでいきたいと思っているところでございます。

遠藤(乙)委員 一つの具体的な今後の改善の論点として、今、生活習慣病が大宗を占めるようになった、日本全体でも約四千万人が生活習慣病だと言われておりまして、糖尿病につきましては約六百七十万人というふうに推定をされております。

 そういった中で、生活習慣病の場合には、個人の努力によって随分とこれは変えることが可能でありますし、長年の自分の生き方、ライフスタイル、あるいはまた健康への努力によって随分と成果が違ってくるわけでありまして、そういった意味では、自己責任をある程度問うといいますか、自己責任をもっともっと重視する体制が私は必要ではないかと思うところでございます。

 例えばアメリカの場合、健康保険は基本的には民間でやっておるわけでございますけれども、一たん健康保険に入ると、栄養士さんが来たり健康指導者が来ていろんな生活指導をしてリスク要因を下げるように努力し、また、いろいろな問題がある場合には逆に保険料を高く設定するとか、非常に個人の努力に対するインセンティブあるいはディスインセンティブといったものが明確になっております。

 日本の場合、そういうメカニズムはないわけでありまして、気ままに生活して生活習慣病になって高い治療費を払う人と、自分で努力し節制をして健康を維持している人と保険料が全く同じというシステムは、どこかこれは合理的ではない面があると思います。

 もちろん、感染症とかあるいはまた先天的な欠陥による病気の場合には、当然これは公的な費用で負担すべきだと思いますけれども、自己責任で、自己の努力で変えられるものにつきましては、ある程度そういった自己責任を重視するメカニズムをやっぱり制度に内在していくことが、これからそういった健康増進と財政のスリム化につながる重要な論点になると思いますけれども、この点につきまして、厚生労働大臣の所見をお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 医療保険の場合には、日本の場合に、どういう生活をしておみえになる方でありましても同じ保険料ということになっているわけであります。

 民間のように、リスクの非常に高い生活をしておみえになる人には保険料を高くするというようなことは今のところないわけでございますが、これから先、例えばたばこを吸われる方と吸われない方、そうした方、たばこを吸う方に対する、肺がんだとかいろいろの病気が多いというようなこともわかってきておりますし、そういうことを積み重ねていくことができれば、それは今後、公的保険といえども、同じようにみんな扱うのが公平なのか、それとも、そうした生活について御努力をしていただいている人と、していただいていない人と、それは考えていかなきゃならないのか、そんなことも若干は検討していかなきゃならないというふうに思っておりますけれども、今のところ、まだそこまでは至っておりません。

遠藤(乙)委員 私は、特に健康保険の場合には、自動車保険の考え方がかなりといいますか、ある程度これは参考になるのではないかと思っております。全く事故を起こさなかった人についてはノークレームボーナスというのがあって、保険料が下がるシステムになっておりますし、あるいはまた、今、運転免許証なども、ゴールドカードというのがあって、事故を起こさない人にはそういったゴールドカードが出るということになっております。

 健康保険証も、今後、基本的には個人別に発行をして、例えば長いことずっと健康を維持している人にはゴールドカードを出すとか、さらにもっといい人にはプラチナカードを出すとか、そういった形で、健康増進について個人的なインセンティブを与えるようなシステムをもっともっと強化することが、私は、健康増進と財政のスリム化につながるというふうに考えておりますので、ぜひとも、今すぐということはありませんけれども、今後、重要な課題として検討をお願いしたいと思っております。

 もう一点、これに関連をしまして、特に生活習慣病の防止についてはやはり教育が大変重要であると思っております。やはり基礎的な知識、また生き方について、食育とか最近言われておりますし、あるいはまた、運動習慣やストレス対処といった問題、そういった基本的な、非常に人間として重要な部分、これは学校では十分教えられておりません。こういったものをむしろ徹底して学校段階で教えることがこういった一次予防にとって非常に役に立つと私は考えておりまして、そういった点で、ぜひ文部科学大臣の所見をお伺いしたいと思います。健康教育ということにつきましてお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 遠藤先生御指摘のように、特に小中学校期にそうした生活習慣をきちっとつけることが大事でございます。私も、昨年、就任に当たって、総理から、これまでの知徳体プラス食育を重視した人間力向上の教育改革にと、こう言われております。特に、健康の三原則は、まずはバランスのとれた食事、そして適度な運動、さらに睡眠、休養、これが三原則と言われております。このことをきちっと位置づけていくということが大事だろうと思っております。

 このような観点で、既に食育ということについては、学校現場でも、子供たちに対して、学校給食を中心にしながらそういう教育を行っております。「食生活を考えよう」、こういうパンフレットをつくっておりまして、これを教材に使いながら、主食、主菜、副菜、ちゃんとそろっているかとか、どういう食べ方がいいのだろうかとか、おやつはどうしましょうというような、そういうこと、それから、さらに進めていくと、地域の産物と郷土料理、地産地消の問題まで及んでおりますが、こういう形で食事の大切さをきちっと位置づけております。

 さらに、体育も一緒にあわせてやらなきゃなりません。保健体育等々で、特に子供たちのストレスをどういうふうに吸収してやるかということ、これも大事なことでございます。そういう意味で、心の健康づくりといいますか、そういうことに配慮をしておるところでございます。特に、生涯スポーツと言われますが、子供のころから、やはり体を動かす、スポーツする習慣をつけてやる、こういうことも大事でございます。

 もう一つ、最近の子供たちは、体力の低下といいますか、投げたり、走ったり、跳んだり、少しずつ落ちております。これもやはり気をつけなきゃいかぬことで、この四月から、スポーツ・健康手帳というのをつくりまして、子供に渡しまして、絶えずそれで自分の能力をチェックするようにというようなこともやり、そして、スポーツの環境も整備していこうということで努力をいたしておるところでございます。

 さらに、そういうもの全般に、食生活習慣をつけさせるためにということで、これは、栄養士の皆さんにも、今度は、学校栄養教諭制度を導入いたしまして、教壇に立って日ごろからそういうことをきちっとやっていただこう、こういう方向で、御指摘のような、子供たちの健康、食育、そしてストレス対策、運動習慣、これからもさらに努めてまいりたい、こう思っておるところでございます。

遠藤(乙)委員 学校教育の現場におきましても、健康日本21の考え方をぜひとも徹底をして、健康教育を進めていただきたいと希望したいと思います。

 最後に一点だけ、少子化対策、もう時間がありませんので、お聞きしたいと思いますが、今、日本全体の合計特殊出生率は一・三二、非常に低い水準にありまして、このままいくと、百年後には日本の人口は半減、七百年後には日本の人口はゼロになるというとんでもない数字なわけでありまして、さまざまな暗い影を日本に投げかけているわけであります。

 しかしながら、少子化の原因は、なぜ少子化していくのか、どうしたら出生率を回復できるかということは、日本の将来のさまざまな、経済や雇用やあるいは社会保障、すべてにとって重大問題でありますが、これも今、日本全体、平均値で見ると非常に低い数字ですけれども、個別に見るとまた非常にばらつきがあります。

 三千二百の自治体、市町村があるわけですけれども、一番低いのは東京の目黒区で〇・八一という数字でございます。それから、一番高いのは、鹿児島県沖永良部島の和泊町という町で二・五八という非常に高い数字になっておりまして、三倍以上の格差があるわけであります。

 私なりに調査をしたんですが、結論から言うと、和泊町の場合には、伝統的にファミリーサポートセンターに非常に類似した社会システムが存在をしておりまして、子供は地域の宝であって、親が育てるだけじゃなくて地域社会が寄ってたかって支援しよう、そういうシステムがありまして、健康な高齢者、子育てが終わったお母さんたちがこぞって子育て支援をいわば助ける、これが非常に効果を上げております。ちなみに、そういったシステムを背景に、一人当たりの養育費は月額二万円という数字が、ある調査で出ております。

 ところが、目黒区の場合には十四万円という数字でありまして、七倍の格差があるわけです。目黒の場合には、やはり核家族であり、おじいちゃん、おばあちゃんがいない、余り周辺にはそういった育児を助けてくれる人もいませんし、社会システムも十分ない。しかもまた、共働きの場合には、お母さんが仕事をすると、なかなか公立の保育園も見つからないと私立は非常に高い。あるいはまた、ベビーシッターさんを雇うと時給二千五百円から三千円、非常に高いものにつきまして、あっという間に平均値で十四万というとんでもない数字になってしまうわけでありまして、まさにこういった経済的要因が最大の、いわば少子化の背景にあると私は考えております。

 特に、要因としては、養育費、教育費、それから住宅費があると思いますけれども、特に結婚したカップルあるいは結婚しようとしている人たちにとりまして、自分たちの未来予想図が全然成り立たない、子供を産めば産むほど破綻してしまうということが明確でありますので、そういった経済的要因が最大の理由であると私は思っております。

 この点につきまして、なぜ少子化していくのかということと、それからどうしたらこれを抜本的に変えて日本の未来を明るくすることができるかということにつきまして、厚生労働大臣の所見を最後にお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 ここはかなり複雑な条件が重なっているというふうに私は見ております。単純明快に言うことのできない問題があろうかと思います。

 一番低い東京でも、低いところは、目黒はもう〇・六八ぐらいに一番最近の数字はなってきているんではないかというふうに思っておりまして、大変先を案じるわけでございますが、全体で、総括的に見ますと、晩婚化、未婚化というのがありますし、さらに、最近では結婚している世帯の子供の数そのものが減ってきているということもございます。

 その理由は何かということは、いろいろのデータがあるわけです。一つは、今御指摘いただいた経済的なものというのも当然これはあるわけでございます。皆さん方にアンケートを求めますと、やはり経済的というのが一番多くなるんですけれども、しかしそれだけでもない。やはり皆さんにさまざまな心理学者がインタビューをいたしておりますと、産んで得なことはない、こういう御答弁もかなりあるわけで、損得勘定でいきますと、なるほど、私もそれはプラスのことはないのかなと。時間はなくなるし、金はかかるし、自分のやりたいことはできないしということで、非常に短な期間の間の損得勘定で見ればそうだろう。しかし、長い人生の中で、子供のあるなしがいかに大きな影響を与えるかということも考えていただければ、そこはまたおのずから違ってくるんではないかというふうに思っております。

 非常に複雑な要素が絡み合って低下してきているというふうに思っておりますが、それだけに、その要因を一つ一つ丁寧に取り除いていくということ以外にないんだろうというふうに思っております。経済的な要因も、それに対して、お若い皆さん方に対してそこをどのようにしていくかということを、これは厚生労働省の範囲だけではなくて、全体でこれはやってもらわなければならないだろうというふうに思っております。

 そうしたことをひとつ丁寧に積み重ねていくということがこの少子化対策ではないかというふうに考えている次第でございます。

遠藤(乙)委員 少子化の問題は日本社会にとって最大の脅威であると私は認識をしておりまして、ぜひとも、この問題につきまして、関係省庁しっかりと連携をして、体系的な分析をし、また、抜本的な政策の充実に向けてさらに努力をしていただくことを期待いたしまして、私の質問とさせていただきます。

 以上です。ありがとうございました。

笹川委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、生方幸夫君。

生方委員 民主党の生方でございます。

 まず、竹中大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 新生銀行が先週上場されまして、株価は初日の終わり値で八百二十七円、当初予定していた五百二十五円よりも大分高く売れたということでございますが、まず、このスキームをつくって上場までこぎつけた竹中大臣の感想からお伺いしたいんですが。

竹中国務大臣 感想ということでございます。

 このスキームとおっしゃいましたが、スキームそのものは平成十一年につくられたわけでございまして、五年前、当時の再生委員会の方々が知恵を絞ってお決めになったということでございます。

 御指摘のように、去る二月十九日に東京証券取引所に新生銀行は上場をいたしました。これについては、十一年にいろいろな枠組みをつくって、平成十二年の二月末の特別公的管理を終了後、再生に向けて取り組んだところである、今般、上場の承認を得まして株式の売り出しが行われるということは、同行の再生に向けた過程の一つのステップであるというふうに思っております。

 いずれにしましても、この新生銀行には公的資本増強が行われている、金融庁としては、同行が収益力を強化してまさに安定的な経営基盤を構築できるよう、そしてその金融機能全体の強化に資するよう、引き続きフォローアップをしていかなければいけないと思っております。

生方委員 上場にこぎつけたということはよかったというふうには思うんですが、多くの国民がなかなか納得がいかないのは、八兆円近い公的資金が導入をされた、そのうち既に三兆六千億円は損失をしていて、これから先も、まだ瑕疵担保条項等がございますので、損失が出て、恐らく最終的には、四兆円から五兆円近くの公的資金が損失をしてしまうんではないかということが言われていますね。

 その一方で、今回八百二十七円で、きょうは幾らになっているかわかりませんが、とりあえず八百二十七円で売れたとすると、リップルウッドは、三分の一売っただけで約二千二百億円手に入れた。これに対して、リップルウッドが最初に株を買ったときは十億円だったですね。株を買ったとき、全部で十億円。そのほかに増資で千二百億円。したがって、約千二百億円でいいんだと思いますが、大体四年間で一千億円を手に入れた。まだ株そのものは三分の二保有しているわけですから、これを売れば、現時点でも七千六百億円になる。だから、二千二百足すと、大体かなりの額の投資回収をしたと。

 一方で、国民の方は損をしたままで、これは、リップルウッドは外地に置かれておりますので、その株価取得の税金も払わないで済むというようなことになっていて、なかなかその点が国民に納得がいかない。何かもうちょっとほかの方法があったんではないか。今大臣もおっしゃいましたように、このスキームそのものは再生委員会がつくったとしても、何かもうちょっと工夫をする余地があったんではないか。

 私も、財金やら予算でいろいろ論議をしていたとき、十億円で株を買う、私だって十億円あれば買いたいなと。これは、ほとんどの損は国が面倒を見ていて、しかも、その後に瑕疵担保条項というのがついていまして、それから先に何か発生したとしても面倒を見てくれるという極めて有利な条件がついていたわけで、もう少し国民の税金、公的資金が回収できるような方法がなかったのかどうか。

 これは、もう終わっちゃったことですから、言ってもしようがないということもあるし、今、スキームが変わっていて、公的資金が導入されるようなことができるようになっているというのもよくわかりますが、今の時点から考えて、あの中でももう少し何か工夫する余地があったんではないかというふうに私は考えるんですが、竹中大臣、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 大変難しい御質問だなというふうにも思います。

 御指摘のように、枠組みそのものは幅広く国会でもいろいろ御議論いただいて、それで再生法の枠組みの中でやった。それで、その中でつくられた金融再生委員会で、まさに当時の専門家が知恵を絞ってやったということなのだと思います。

 恐らく、生方委員の御指摘の中に示唆されているのは、いわゆるロスシェアリング方式というか、つまり問題は、二次ロスが出るだろう、二次ロスを一体どうするんだということに、ある意味で集約されていたんだと思います。時間的な制約がある中で、二次ロスがその譲渡先に出た場合に、それをどうしてくれるんだと。これはいろいろな考え方があるんだと思いますが、住専法には明文の規定があったわけです、ロスシェアリング。しかしながら、金融再生法にはこのロスシェアリングに関する明文の規定がなかったわけでございます。

 そこで、当時の金融再生委員会としては、金融再生法上、そうした契約を締結することは困難であると。しかし、求める方は、何らかの二次ロス対策がなければこれはとても買えないというふうに言ってくる。そのために、例えば、ではもっと正確に調べさせてくれと。これは、デューデリジェンスをやれば、あれだけの大きな銀行をやれば大変な時間がかかるわけで、その間に資産も劣化していく。そうすると、買う方は、それができなければ安全のために相当の引当金を積まなければいけない。そうすると、そういうためには、今度はその時点で政府はより多くのコストがかかってしまう。そういった非常に厳しい制約の中で金融再生委員会があの判断をしたというふうに認識をしております。

 御指摘の点は大変重要な点だと思いますが、やはり当時の金融再生法にそのロスシェアリングに関する明文の規定がなかったという中で、知恵を絞ったということだと認識をしております。

生方委員 繰り返しの質問になりますけれども、株価を、全部で十億円で買ったという、その十億円という根拠が当時もわからなかったんですけれども、何でこれは十億円だったんですか。

竹中国務大臣 これは、当時、その資産の査定をする側、買う側、それとそれを売る側の国、具体的には金融再生委員会、そこでの認識に基づいて交渉で決まった金額であると。ちょっと、これ以上申し上げようがないのかなというふうに思っております。

生方委員 あれだけの大きな資産を持っている、しかも大銀行が、その全部の株が十億円で手に入るというのは、当時も私随分おかしいなと。いわば、額全体から見ればただみたいなものですね。十億というお金だけ見たら大変な額ですけれども、全体の資産額やら何やら、もちろん不良債権なんかいっぱい持っているということもあるし、だけれども、それは国が全部補充するわけですからね。それで再生をさせるということなのにもかかわらず十億円というのは、これは何年かしたら大もうけするなというふうに私なんかは少なくとも思いましたね。何年かして上場すればすごくもうかるだろうということは容易に想像できたわけで、そうであるとすれば、この十億円という額が適切であったかどうかというのは、問題にされてしかるべきだというふうに私は思うんです。

 今、竹中大臣がおっしゃいましたように、どうしてこういう値段がついたのかわからぬ、これはリップルウッドとの交渉だったんだというような話になると思うんですけれども、これはやはり十分に今後検討をして、この価格が果たして適当であったのかどうかということは私は検討に値することだと思うんですが、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、当時の金融再生委員会、それと交渉相手の間で非常に集中的な、真剣な交渉が行われたというふうに聞いております。

 委員、資産額がすごく大きい、そのとおりなんでありますが、同時に債務も大きいわけですから、資産と債務の差額がいわゆる純価値になる。資産と債務が同じであれば、どんなに大きな会社でも、これは純価値はゼロになるわけでございますから、そういう中で、非常に資産そのものが幾つかのリスクを抱えている、債務も当然大きいわけですから、その中できちっとした議論が行われたものであるというふうに私は認識をしております。

生方委員 その話はわかるんですけれども、当時でも、それは国がいろいろな条項をつけて、公的資金を投入してきれいにして売るということですからね。そのときゼロだとしたって、きれいなものにして売るというんであれば、これが将来的には大きな価値を生むということはわかっているわけですよ。

 それなりのリスクをリップルウッドが負って、四年間経営をした結果ここまで大きくなったというんならいいですけれども、瑕疵担保条項はつくわ公的資金は入れられるで、リスクに見合ったリターンかというと、リスクが余りに小さいのにリターンが余りに大きいというのは、これは投資原則に反しますわね。リターンが大きいときは、もちろんハイリスクだからハイリターンなわけで、ローリスクなのにハイリターンというのは、こんなおいしい投資は本来ないわけで、これが国民が利益をこうむるというんならいいですけれども、外資だからいけないと一概に言うわけじゃないんですけれども、外資しか手を挙げなかったという事情があったとしても、国民感情としてはなかなか納得はできないんですよ。

 そうじゃない方法があったんじゃないかということは、どうしてもこれは考えてしまうわけで、そのときいろいろなことを考えると、瑕疵担保条項だって全部つけるのはおかしいんじゃないかとか、十億円、おかしいんじゃないかとか、いろいろおかしいことが出てくるので、当時の制約の中でこれが最大の選択だったというふうに竹中さんはおっしゃいますが、これからの問題として、私は、一度、この問題はチェックをする必要があるんじゃないかということを指摘をいたしておきます。

 それから、新生銀行の前にあおぞら銀行のときも、私はこれを指摘させていただきました。これはリップルウッドではなくてソフトバンクの問題ですが、ソフトバンクの社長にもおいでいただいて参考人として質疑をしたこともございますが、これも、長期的に株を保有するんだということを条件にして、ソフトバンクはあおぞら銀行の株を取得したはずなんですね。四百五十億円で買った株を、結局、ソフトバンクは三年で一千十一億円でサーベラスに売っているわけですね。

 だから、たった三年持っているだけで、これも五百六十億円もの利益を得ている。これもやはりハイリスク・ハイリターンという原則からすれば、これも瑕疵担保条項がついている間だけ保有をしていて、瑕疵担保条項がなくなったら売ってしまう、これで、たった三年間で、ソフトバンクは五百六十億円ももうけているんですね。

 普通の一般の会社が五百六十億円もうけるというのは大変な努力を要しなきゃいけないのに、ここで五百六十億円もうけているということは、逆に言えば、本来国民が――私は、ソフトバンクの社長に、五百六十億円もうけたらそれは国に返すべきじゃないかというふうに言ったんですけれども、そのときはまだ売るか売らないかわからないということで答えがなかったんですけれども、この五百六十億円の利益というのは適正な利益だったというふうに竹中さんはお考えになりますか。

竹中国務大臣 旧長銀、旧日債銀、あれだけ大きな規模の銀行が破綻して、その出口をどのように探すかというのは、やはり当時非常に、本当に国民的に難しい問題であったんだと思います。

 今委員、リスクがないというふうにおっしゃいましたけれども、これはやはり決してリスクがなかったということじゃないと思うんですね。その中で、いろいろな方がビッドして、それぞれ、ある意味で一番国民負担を少なくするという有利な条件を出したところを総合的に考えて、当時の金融再生委員会は選択したというふうに私は理解をしております。

 お尋ねは、ソフトバンクの件、あおぞら銀行の件、以前にも委員から御質問をいただいて御答弁させていただいたことがあると思いますけれども、旧日債銀の株式売買契約書でありますけれども、その前文において、主要株主は、日債銀に長期的な視野から投資を行い、日債銀を収益性・成長性の高い銀行として運営する目的で日債銀の株を購入する意図を表明というふうに書かれております。これは意図表明でありますから、譲渡に制約を課しているというものではないわけでありますけれども、各主要株主においては、みずから、株主の長期所有を表明していることを踏まえて、これまでも、そうした趣旨も十分考慮した上での対応をされてきたものというふうに思っております。

 何年が長期かというのは若干水かけ論的なところもあろうかと思いますが、そうしたさまざまな事情の中で現実の売買がなされてきているというふうに思っております。

 今度は、それは売買して、買う方がまたリスクとリターンの関係を考えながら売買を行っていくわけでございますので、我々としては、そうした当初の趣旨にのっとって、この銀行がやはり立派に再生をしていって、まだ再生はもちろん途上でございますから、そして、日本の中でしっかりとした金融機能を果たしていけるように、これはしっかりとフォローアップをしなければいけないと思っております。

生方委員 一般的なことであれば、公的資金……(発言する者あり)ちょっと静かにして、そっちに耳が行っちゃいますので。

 これは、だから、普通に、何でもない商売であればいいんですけれども、公的資金が入っている、国民の税金が入っている問題でございますから、税金をどれぐらいこちらに戻すのかという観点からぜひともお考えをいただきたい。

 これは、ソフトバンクの場合、本当に長期的だということで買っていて、三年間で何にも銀行の経営には寄与しないうちにリターンだけを得るというのは、私はどうしても納得ができないんですが、もうこれも終わってしまったことなので、これから先どうこうもしようがない。あのときも、参考人としてもう一度呼んでくださいというようなことも何度か言ったんですけれども、財金もいろいろなことがある中で、結局話も聞けないままに売り抜けられてしまったという感じがいたしておりますので、今後ぜひとも、こういうことがないように十分検討していただきたいということだけをお願い申し上げまして、竹中大臣はもう結構でございます。

 それから、金子大臣に、どうもお越しいただきましてありがとうございます、お伺いをしたいと思います。

 きょうの日経新聞にも出ておりましたですが、カネボウに対して産業再生機構が支援に乗り出すということが非常に大きな波紋を呼んでおります。

 私、主に二点、みんながびっくりしていることがあるのではないかなと。

 私も、カネボウの経営については関心を持ちまして、ずっと見てまいりました。大体、ことしに入ってからの報道を見ていれば、花王が恐らくカネボウを買うことになるんだろうと、新聞はもうほとんど確定的にそういうことを報道していたわけですね。ところが、突然、最後の本当に土壇場になって、新聞によれば、もう契約書ができていて、あとはサインするだけで、契約書がもう一メーターぐらいのところまで準備が進んでいた、その最後に両首脳がサインをするというときになって、突如として、再生機構が支援に乗り出すということが決定をした。

 これは、基本的に、産業再生機構ができたときも、我々は、民のことに官が口を出すのはおかしいんじゃないかというようなことを指摘したこともございましたが、いや、これはあくまでも不良債権の処理と一体となったもう一つのバッファーとしての仕組みであるんだから理解をしてくれというようなことを言われたんですが、今度の場合は、少なくとも産業再生機構というものがなければ、まあ、あるんですから、なければという議論が成り立つかどうかわかりませんけれども、なければ、花王がカネボウの化粧品部門を買うということで決着がついたはずなんですね。

 民と民の間で十分決着がつくべき話を、どうしてそこに産業再生機構が乗り出していかなければいけなかったのか、そこがどうしてもわからないんですが、金子大臣は、産業再生機構が支援に本当に乗り出すのかどうか、これから決めることでしょうけれども、今の時点でどういうような感想をお持ちになっているでしょうか。

金子国務大臣 民業圧迫ではないのかという御指摘でもございましたけれども、御存じのとおり、あくまでも、メーンバンクあるいは事業者側、いろいろな経緯があったようでございますけれども、こういう方々から再生機構に持ち込まれた、持ち込まれて初めて検討を開始しているわけであります。

 もとより、産業再生機構にこれまで持ち込まれた案件を見ておりますと、民間だけではなかなか片づけられないというテーマを抱えているのがこれまで持ち込まれている例でもあります。

 今、支援決定をするかどうかも含めて検討を始めている段階でありますが、いずれその最終段階では、今御指摘の経緯も判然としてくるのではないかと思っております。

生方委員 現在の時点では、産業再生機構が支援に乗り出す方向だというふうに理解してよろしいんですか。それとも、まだ全く白紙の状態で、これからいろいろ、デューデリや何かして、するかしないかを決定するという段階ですか。どちらでございますか。

金子国務大臣 当然に、今は持ち込まれた段階でありまして、支援決定をするのかどうかも含めて、また改めてどういう形でなら支援が可能なのかということも含めて検討している段階であります。

生方委員 こちらにいただいた、産業再生機構とは何ですかというような一問一答の想定問答集があるんですけれども、その中に、企業の合併やら吸収というのは非常に秘密性を要する問題であって、これは大体、決まりましたというときに発表するというのが普通なのに、今度の場合は、これは機構側が流したのではないんでしょうけれども、カネボウ側が一方的に、機構がさももう支援に乗り出すのが当たり前だというような形の発表をしているわけですよね。この発表の仕方も、私はちょっとおかしいと思うんですよね。

 本来であれば、ここにも出ておりますが、支援をするということが決定されて初めて発表するんだというような形になっているのに、支援するかどうかもわからない段階で、もう支援するのが既定事実のような格好で報道されているというそのやり方自体も、私は、産業再生機構がそもそも行う仕事とちょっとやり方が違うんじゃないかなと。カネボウがまさに、経営陣というふうに言っていいと思うんですが、自分たちの保身のためにいいように産業再生機構を使おうとしているんじゃないかという、何か非常に意図的なものを感じるんですけれども、いかがでございましょうか。

金子国務大臣 持ち込んだカネボウ側はいざ知らず、再生機構としては、持ち込まれたときにカネボウ側があえて発表されておられますものですから、協議をいただきましたと、あくまでもこれから検討いたしますという意味で、支援を決定したということは、再生機構の経営者も、そういう表現ではなく、検討をしますということだけを申し上げているはずであります。

生方委員 余り突っ込んで質問すると影響が出るのであれかもしれないんですけれども、そうすると、産業再生機構が支援をしないということもあり得るというふうに今の時点で理解してよろしいんですか。

金子国務大臣 当然でありますけれども、産業再生機構法に基づきましてきちんとデューデリをやるということでありますから、それにのっとって、しかし、迅速に、前向きに検討するということは、再生機構の社長も当日の記者会見では言っておりますが、しかし、あくまでも再生機構の法律にのっとって検討するという前提でございます。

生方委員 機構が個別案件の支援決定をする際には、あらかじめ所轄大臣がそれについて意見を述べることができるというふうになっておりますので、もう少し伺わせてもらいたいんです。

 新聞報道によれば、カネボウの中で一番優良だというふうに言われている、実際そのとおりである化粧品部門だけを取り出して、そこへ産業再生機構が資金を援助する、その新しい会社がカネボウ本体をも含めた債権を買い取るというふうになっているんですけれども、これもこれから先の検討なんでしょうけれども、そうすると、本体と化粧品部門が借りているというのは、これは分けようがないわけで、本体の債務のうちのどれぐらいを新しい会社というのが引き取るのかということによって、仮に再生ができなければ、これも公的資金ですから、国民の税金が失われるおそれがあるわけで、私は、安易に債権をこっちへ移すべきじゃないというふうに思うんです。かといって、債権を思い切って移さなければ、本体がまた債務超過になってしまえば、これは上場取り消しというようなこともあるわけで、私は、もし本当に再生機構が再生をするというのであれば、カネボウ全体をやはり考えていってどういうふうにするべきかということを考えないと、おかしなことになってしまうんじゃないかなと。

 まさに、花王さんの場合は、自分たちの化粧品部門を強化するという形で化粧品部門だけを買うという判断ができるのは、これは一民間企業だから当然そういう判断になると思うんですけれども、産業再生という名前をつけた機構で、政府保証で十兆円の枠を用意しているというところが支援に乗り出すということであるのならば、全体をやはり考えた再建というのが考えられてしかるべきだというふうに私は思うんですが、いかがでございましょうか。

金子国務大臣 ちょっと一般論になって恐縮でありますけれども、ある会社の一事業部門、非常に将来性また潜在的な価値がある、しかし、債務超過の企業にあってはそれがなかなか生かされない、むしろその部分だけを切り離して、そして、しかるべき設備投資を行ってさらに伸ばしていくという再生の方法というのは当然あり得るんだと思います。

 ただ、生方先生御指摘のように、それでは一方で、残った部門というのをどうするのかという御指摘だと思いますけれども、それは、今後、残された会社がどう再建をしていくのかというのを、当然でありますけれども、一義的に検討していく。再生機構が持ち込まれましたのは化粧品の部分だけでありますけれども、しかし、今後、新会社が残された部分というものをどうするかという検討をしていく、またそういう過程で再生機構に相談があるのかもしれませんし、ないのかも、今の段階ではわかりません。持ち込まれたらば、その段階で検討するべき事項だと思っております。

生方委員 これはもう一点、あとは銀行側の債権放棄があるのかないのかという、これも、優良部門に移すんだから債権放棄する必要はないんだというような報道がなされている部分がございまして、大体、これまで再生機構が乗り出した場合は、全部でないとしても、ある程度の部分は銀行側にも債権を放棄してもらうというのが伴っていたというふうに思うんです。

 これはまたこれから先の話ということになりますが、主務大臣として意見を述べることができるということがございますので、債権放棄が一切ないというような形とか、もう一点、あと、経営陣がこのままいけば本体へ残って、しかも新しい会社にカネボウ本体は五〇%弱出資をすることができるというようなことになるので、そうなれば経営陣もかわらなくていいというようなことを経営陣が言っているようなんですけれども、これもやはりモラルハザードを生むんじゃないかというふうに思うので、債権放棄の問題と経営陣の交代ということについての大臣の意見を求めたいと思います。

金子国務大臣 経営陣の問題についてからでありますけれども、再生機構の公的資金を使うということを踏まえて、まずは会社側で、もしくは当事者で御検討されるべき事項だと思います。ただ、これ以上、今まさに支援決定をするかどうかも含めて検討している段階なものですから、私としては、当面見守りたいと思っております。

 それから、銀行の債権放棄でありますけれども、これは、新たに引っ張ってこられる新会社、できてくる新会社、それの価値がデューデリできちんと決まってくる、それに伴って負債というのが対応してくる。この査定というのは、もう委員御存じのように、生産性基準とか財務基準、こういうきちんとした考え方に基づいて、どの程度の債務を引き継ぐかということが決まってくるわけでありますから、引き継がれる会社、そして返済可能な、負担可能な金額の方が小さければ、必ずしも銀行の債権放棄を求めるということにはならない、そういう例もあり得るんだと思います。

生方委員 これは、デューデリをしっかりやっていただいて、不当な形で引き取って銀行側が利するというようなことにならないように、ぜひともお願いを申し上げます。もう一点聞きますので、ではそのとき一緒に。

 それから、産業再生機構は存立から大体五年程度でなくなるというふうに言われているんですが、これは、今の時点で、いつまでに産業再生機構は終わるというのは決定をしているんですか。それとも、決定をしていないとすれば、いつぐらいまでをめどに終わらせるというような予定でいるのか、その点を伺いたいと思います。

金子国務大臣 持ち込んでいただけるのは来年の三月まで、いわゆる申し込み。実質的にはもうあと一年。最大の目的は、来年の三月末までには金融機関の不良債権を半減する、これが政府としての一つの大きなターゲットでありますものですから、それに合わせて、サンセットでこの再生機構はセットされております。

 それから、カネボウの件で、先ほどちょっと委員から御質問があった中でお答えしそびれたのでありますけれども、報道で、ある会社が提案した金額よりも公的機関だから高く買ってくれる、公的機関だからよりいい条件で買ってくれるというような報道もちょっと流れたようでありますが、それは全くあり得ません。それだけは申し上げさせていただきたい。

生方委員 産業再生機構、これまでにも余り大したことをしていないと言ったら失礼ですけれども、少なくとも見る限りにおいては余り大した案件を扱っているわけじゃなかったので、まさに仕事をするためにこれをやったということになっちゃ困るわけで、本来のつくった目的に照らして、それに十分該当するかどうかを十分検討された上で、単に機構を存続させるために新たに仕事をつくったなんということが言われないように十分精査をしてもらって、先ほどの問題もございましたが、事はやはり公的資金に係って、最終的にもし損失が出れば三年以内ぐらいに処理をしなければいけないということであって、三年後にまた再びスポンサーを探すわけで、普通に考えれば、現在スポンサーがいるのに、そのスポンサーを押しのけて産業再生機構が出ていってまた三年後にスポンサーを探すという手間をかけるのであれば、それだけのメリットがきちんとなければいけない。それを国民が納得できるような理由づけがしっかりできるようにしてもらわなければ困るということをお話しいたしまして、また再生のスキームができましたらその時点でお話をお伺いしたいと思いますので、きょうはもうこれで結構でございますので、ありがとうございました。

 それでは、続きまして厚生労働大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 最初に、もういろいろ質問が出ておりますので、重なった質問はできるだけ避けたいというふうに思っておりますので、年金積立金の問題からお伺いしたいと思います。

 この中で、実際に運用している部分と財投資金として預けている部分というふうにございますが、この内訳はどうなっているんでしょうか。

坂口国務大臣 現在のところ、この財政融資資金預託金から返還をしていただくように予定されております額が、百四十兆四千百九十四億円でございます。平成十三年に十五兆五千三百七十八億円、そして十四年度に十八兆一千百八十三億円、これだけお返しをいただきまして、それで、今返していただきつつありますのが、この十五年度末で二十一兆二千八百三十八億円返還をしていただくということになっておりまして、現在これが継続中でございます。

生方委員 財投資金に預託をしているお金ですけれども、これはどういうような形で今、特殊法人に貸し付けられている部分が幾らぐらいとか、国債として保有している部分が幾らぐらいとかという、その内訳はどうなっているんでしょうか。

吉武政府参考人 財政融資資金には、先生御案内のとおり、公的年金の積立金も預託をいたしておりますが、同時に、郵便貯金あるいは簡保の預託がございまして、それが全体として財政融資資金から政府系金融機関等に融資をされるということでございまして、年金分の特別の内訳というのはございません。

生方委員 毎年返還をして、何年ですか、全部返してもらうわけですよね。

 したがって、今百十二兆あるわけですか、百十二兆のうちの、もちろんこれは我々の、国民の年金ですから、国民が預けたお金ですから、財投として一括しているといったって、厚生労働省がその中身について全く知らないということはないでしょう。大体がどうなっているということをちょっと教えてください。

吉武政府参考人 まことに恐縮でございますが、今手元に財政融資資金の全体の融資を総括した表をちょっと持っておりませんで、恐縮でございますが、御答弁できないことをお許しいただきたいと思います。

生方委員 これは質問通告してあるので、できないと言うんじゃ質問できないじゃないですか。

谷垣国務大臣 私の手元にありますのは平成十四年度末の資料ですが、全部で三百五十七兆三千二百四十一億が財政投融資計画の残高でございます。

 それで、委員がおっしゃっているのは、年金から預託されているのがどういうふうに運用されているかということですか。これは、今、先ほど御答弁がありましたように、年金あるいは郵貯、そのほか合わせて一体で運用しておりますので、年金の方がどういうふうに運用されているのかというのは、今つまびらかにせよとおっしゃっても、色がついているわけではございませんので、ちょっとそれは難しゅうございます。

生方委員 いや、私が聞くのは、財投に預託している中から毎年お金が返ってくるわけですね。最終的にはゼロになるわけですね、全部返して。だから、その百十二兆がきちんと――私がこう聞くのは、特殊法人にお金が行ったりしている部分でもうなくなっちゃっている部分もあるわけでしょう、そういうことを含めて、本当に百十二兆があるのかどうか、その中身については厚生労働省の方できちんと把握してなきゃいかぬでしょうということを言っているわけです。だから、それを知らないと言うのはおかしいんじゃないのということです。

谷垣国務大臣 先ほど厚生大臣から御答弁がございましたように、平成十二年度までで全部で約百四十兆あるわけですね。それで、先ほどのように逐次返還してまいりまして、平成十五年度末、もうじきでございますが、それを全部、平成十五年度予定を返し終わりますと、八十五兆五千億ほど残高があるということになっておりまして、平成二十年度に全部お返しをするということで今進めております。

 それで、平成十三年度以降は新たな預託金の受け入れはないわけでありますけれども、預託金は従来よりすべて約定どおり利子を付して払い戻しを行っておりまして、滞っていたり、何か御心配を与えるような状況ではございません。

生方委員 いや、だから、今のところはいいんでしょうけれども、平成二十年になったところで、最後に全部返そうとしたら全部戻ってこないという可能性が、全くないんですか。

谷垣国務大臣 その御心配は全くございません。

生方委員 全くないというふうに言い切れるわけですね。

谷垣国務大臣 はい、そのようにはっきりと申し上げます。

生方委員 私、厚生労働省に今このことを聞いたときに、だから、中身がわからないということで非常にびっくりしたわけですよ。丸投げしているわけですね。

 今、財務大臣が、全くそれを心配ないんだというようにおっしゃっているんですけれども、これは、特殊法人に貸したお金が、道路公団やら何やら見ても、いろいろ変なふうに使われて、もとの原資がなくなっちゃっているというようなことがあるわけで、財務大臣がこうおっしゃるんですから、恐らくほかのところから回してでも厚生労働省には返すのかもしれないんですけれども。

 少なくとも厚生労働省、坂口大臣、私これを質問取りのとき聞いたんですけれども、百十二兆の中身についてどうなっているんですかと言ったら、知らないと言うんですね。これを丸投げしてある、いわば、財務省に全部任せてあるんだからもうこれは我々は知らないことなんだというふうになっているんですけれども、これはやはり厚生労働省として、年金をみんな、国民の皆さん方から預かっているわけですから、知らないと言うことより、少なくともどう運用をされているのかについて、厚生労働省としても少しきちんと把握をして、私ぐらいな質問を財務省にきちんとして、本当にちゃんとお金が返ってくるのでしょうねというようなことぐらいは言っておくべきだと思うんですね。

 本当に、私も聞いてびっくりして、全然知らないと言うんですね、中身。百十二兆の中身については知らぬ、もうこれは預けてあるんだと言うのはちょっといかがなものかと思うんですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 今、財務大臣から御答弁をいただきましたとおりでございますが、確かにお預けをしてあるわけでございます。その内容につきましては、年金資金だけではなくて、ほかの資金も一緒でございますので、どこにどれだけということを明確になかなか言えない部分はございますけれども、しかし、我々の方も、そうして財投の方でお使いをいただいているわけでございますから、そこのところは、おおよそについて、大体こういうふうに今なっているということはお聞きをして、明確にしておきたいというふうに思います。

生方委員 どうも、だから先ほどの公的資金の問題でもそうなんですけれども、これは我々のお金ですから、自分のお金としてやはり考えないと、自分のお金がどこかへ預けてどうなっているかわからないということは普通あり得ないわけで、やはり国民の皆さんの大事なお金を預かっているんですから、それがどうなっているのかということに対して、所轄の省庁はきちんと把握をしているべきだというふうに私は考えますので、これは財務省を全面的に信頼しているからということであっても、それはそうはいかないんではないかというふうに思います。

 次ですが、時間がないので、もうこちらから言ってしまいますが、今、資金運用で大体マイナス八・六%の運用成績である、これを六年後にプラス四・五にしたいというのが厚生労働省のもくろみのようでございますが、このマイナス八・六であったものをわずか六年でプラス四・五に変えるというふうに言っているんですが、具体的にどのようにしたらこれは変わっていくというふうに思っておられるんですか。

吉武政府参考人 御説明申し上げます。

 今、平成十四年度市場運用部分では、マイナス八・四六%でございますが、先ほどお話がございました財政融資資金も含めましたトータルは〇・一七%でございます。それで、四・五%という収益目標でございますが、これは徐々に入れかわりまして、財政融資資金がいずれなくなった際の目標でございます。

 四・五%の考え方でございますが、それぞれの資産についての期待されます収益率、それから価格変動のリスク、それをトータルで組み合わせをいたしまして、さらに、四・〇%というのが現在の財政計算の目標利子率でございますので、四・〇%を下回る確率が一番小さいものとして定めたものでございまして、基本的には二十年あるいは二十五年という中長期の運用を通じました目標率というふうに設定をいたしております。

生方委員 今度、年金積立金運用の改革がなされるわけで、運用委員会というのが設けられて、そこで基本的に大きなポートフォリオを決定する、それを受けた形で普通の信託銀行やら投資会社に実際の運用をお任せするという方式になっていますね。

 これは、私、運用委員会、もちろん専門家の方がいらっしゃるということですが、ここで大枠を縛ってしまうのがいいのか、全くこれなしで運用会社に任せてしまえばこれはまたこれでリスクも大きいと思うんですけれども、このやり方ですけれども、運用委員会の方が、これはパーセンテージまで縛っちゃうんですね、株式は幾ら、国債は幾ら、外国株は幾らという。そのやり方というのは、ずっとこれから先も額が非常に大きくなっていくわけですね、毎年毎年。これを続けていくということで、これはもうずっとこれから先もそうであるというふうに考えてよろしいんでしょうか。それとも、途中の運用の実績を見ながら、多少この運用委員会の決定の仕方も変えていくという方向なのか、その点をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 それは、その都度状況によりまして変化をしていくものというふうに思っております。

 厚生労働大臣は、中期的な一つの大きい方針を出して、具体的なことにつきましては、今御指摘のように、その独立行政法人の中でお決めをいただく、ポートフォリオを今までは厚生労働省の方でやっていたわけでありますけれども、そうではなくて、その中でおやりをいただくということになります。

 これは、どちらも心配は実はあるわけでありまして、厚生労働省の方で大丈夫かというお声が今までからも多かったし、私もそこは心配をしております一人でありまして、それで、そこはもうお任せをするということにしたわけでございますが、これから額も大きくなりますしいたしますので、そこでしっかりやっていただかなければならないわけであります。それをさらにまた評価する委員会もつくりまして、そこで御評価もいただくということに、チェックにはチェックを重ねてということにしたいというふうに思っております。

生方委員 この運用受託機関というのは、これは何か資格があるんですか。それとも入札か何かでおやりになるんですか。

吉武政府参考人 年金資金運用基金の方で定めておりますが、基本的には公募でございます。公募いたしまして、一つは運用の体制を評価し、それから運用の実績、この両方を評価しているということでございます。

 新規に参入される場合には、通常、例えば厚生年金基金でありますと、ほかの分野で経験がございますので、その運用成績も評価しながら決定をするという仕組みにいたしております。

生方委員 これは入札の資格、例えば外国の投資会社とかそういうことにも全部門戸は開いているんですか。

吉武政府参考人 今の状態で申し上げますと、金融の規制はございませんので、外国の金融機関、それから国内の金融機関、完全に同一でございます。

生方委員 これは非常に難しい問題で、どうなるかということの結果がまさにすべてを判断することでございますので、私は、私の考えですが、運用委員会の方で全部決めるという部分と、決めないで全く自由にやらせるという部分で、運用の結果を見ながら判断をした方が本当はいいのではないかなと。これは運用の会社によっても、いろいろなスキルがございますので、うまいところもあるでしょうし、たまたまそのときうまくいったというところもあるでしょうから、その辺を見ながら、なかなか今の状況の中で高金利で運用するというのは難しいでしょうけれども、高金利を目指せばもちろんリスクも大きくなるということがありますので、額が非常に大きくなりますので、ぜひともうまいスキームを、何かあったら自由に、フレキシブルに対応できるようにしていただきたいということをお願い申し上げまして、厚生労働大臣、結構でございますので、ありがとうございました。

 それから、法務大臣にお越しをいただいております。

 法務大臣にまずお伺いしたいんですが、留学生、就学生が日本に来る。特に中国からの受け入れ体制について、中国人留学生の犯罪が相次いだというようなことを受けてだというふうに思うんですが、非常に審査が去年の十一月から強化されている。これは、特に中国人の方は、聞くところによれば、ある日本語学校では、三百人ぐらい申請をした中で、許可されたのがわずか三人だったというような事例も出ているやに聞いておるんですけれども、どうしてこれほど急に厳しくしたのか、そこからまずお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 入国審査を厳格にする方針に踏み切った理由と背景でございますが、議員御指摘のとおり、近年、外国人犯罪の深刻化が進みまして、その態様も、侵入強盗等の凶悪なものが増加しているほか、暴力団と連携して犯罪を敢行している例も多く見られるようになっております。我が国の不法滞在者は二十五万人程度と推計されておりますけれども、これら犯罪の温床となる不法滞在者を今後五年間で半減させ、国民が安心して暮らすことのできるようにすることが犯罪対策閣僚会議の行動計画において定められたところでございます。

 ところで、御指摘のように、留学生、就学生の受け入れについては、諸外国の若者の間に日本文化や実情について理解者をふやすという意味では大きな意義を持つと考えておりますけれども、近年、留学及び就学の在留資格で入国する者の中には、当初から就労を目的とした例や、当初は勉学を志していたとしても、経済的な事情等から勉強しないで働いてしまうという者が多く存在しております。

 また、留学生、就学生として入国した者のうち、約一万五千人に上る不法残留者が存在することに加えまして、留学生等による犯罪が社会的な関心を集めていることから、申請内容の真偽について、従来より厳格な審査を行う必要が生じてきたものでございます。

 御指摘のように、わずかな数という御指摘もございましたが、私どもの統計ではおよそ一三%くらいということでありますので、今の数字についてはもう少し精査してみる必要があろうかと思っております。

 法務省といたしましては、今回の方針によりまして、留学生、就学生の受け入れの一層の的確化、適正化が図られまして、より質の高い留学生、就学生の受け入れができることを願っておるものでございます。どうぞよろしくお願いします。

生方委員 留学生、就学生の中に一万五千人ぐらいの不法滞在の方がいるということでございますが、留学生、就学生の数が急激に最近伸びておりましたよね。これは、どのぐらいの割合で伸びてきたのかということと、留学生、就学生による犯罪がどのぐらいの率で伸びてきたのかということを教えていただきたいと思います。

増田政府参考人 平成十四年におきます新規入国者数、これは毎年新たに留学生、就学生として入国してくる方の数で、いわゆるフローのデータとなりますが、在留資格、留学、就学を合わせて五万六百七十八人で、そのうち中国の方は二万九千七百十六人ですから、約六〇%を占めています。

 また、平成十四年末現在における外国人登録者数、これは留学生、就学生として実際に日本に在留している方の数で、いわゆるストックのデータになりますが、在留資格、留学、就学を合わせまして十五万七千六百十三人で、そのうち中国の方は十万九千二百四十五人ですから、約七〇%を占めています。

 他方、平成十五年一月一日現在におきます不法残留者数ですが、在留資格、留学、就学を合わせまして一万五千二百二十九人で、そのうち中国の方が一万二千二百四十一人ですから、約八〇%を占めています。

 さらに、平成十四年中に在留資格、留学、就学から新たに不法残留となった人、これが二千八百人余りおりますが、そのうち中国の方が約二千五百人と、新たに発生した不法残留者の約九〇%を中国からの留学生、就学生が占めております。

 ここ二、三年の傾向といたしましては、留学、就学から新たに不法残留となる人の数の伸び方、これが、それらの在留資格で我が国に新たに入ってくる新規入国者や外国人登録者数、これは伸びているわけですが、その伸び方に比べても数倍の伸びを示している、そういう傾向にございます。

生方委員 犯罪の方も。

三谷政府参考人 お答えいたします。

 昨年中、十五年中の来日外国人刑法犯の検挙人員は、全体で八千七百二十五人、過去最多を記録しましたが、このうち入国時の在留資格が留学または就学であった者は、それぞれ千二百五十三人、千二百十五人でありまして、いずれも五年前の二倍以上となっております。

 このうち、来日中国人によるものは八割を超えまして、それぞれ千十六人、千五十四人となっております。

生方委員 確かに、数字を見ますと非常に犯罪が多くなっているし、不法滞在者も多くなっている。実際、中国人による犯罪も多くなっていることは事実でございますが、日本と中国との関係、非常に経済的な交流も盛んになっていて、これから先も非常に盛んになっていくであろうということが予想されます。

 もちろん、不法に、就労を目的として入ってくる就学生、留学生もいるでしょうけれども、それよりももっと多くの方が、まじめにちゃんと留学をしたい、これから先、日本と中国の経済関係にも役立ちたいという方がたくさんいるわけでございまして、この間も、私、中国の武大偉にお会いしたとき、大使も非常に心配をしておりまして、せっかくまじめに日本に行きたいというふうに思っている方の門戸を閉ざしてしまうというのは非常に残念であるから、何とか改善の余地はないのかというようなことを伺いました。

 文科大臣にちょっとお伺いしたいんですが、これから先、日本と中国との関係を考えれば、もちろん犯罪は防止をしなければいけない、犯罪とか就労を目的にした人間はもうできるだけチェックして外さなければいけないですけれども、そうでない人間について、まあこれは非常に、それがどうであるのかという判断は難しいんですけれども、できるだけ受け入れるべき、それが日中の関係にとっても非常にこれから将来役立つというふうに私は思うのですが、いかがお考えでございましょうか。

河村国務大臣 留学生は未来からの大使、こうも言われておりまして、日中を考えてみても、友好親善、相互理解、非常に意義があると思っておりまして、これを拡大することは当然だと思っておりますが、先ほど来お話しのようなこういう問題も起きまして、実際、在留管理が厳しく問われているという現況もございます。

 これからの留学生受け入れ、今どんどん、中国は一番ふえておりまして、既に留学生受け入れ十万人計画が昨年突破して、今十万九千五百八人。そのうち、中国からの留学生が七万八百十四人で、六五%に達しております。この調子でふえていきますと、中国人だけでも十万人にいくであろう、こういう状況でございますが、そこで私は、これからの留学生受け入れはやはり質を考えていく必要があろう、こう思っております。

 そこで、本当に学ぶ意欲を持って日本に来たいと言われる方を日本にお受け入れする、これが当然だと思いますが、それを事前に、こちらもある程度承知するという意味では、日本の留学試験を中国本土で行わさせていただけないかということを申し上げております。

 これも、大学側は十分これを活用していただければ、そこで学ぶ意欲を見ることができる、こう思っておりまして、これは、中国側ともさらに協議をいたして、この受け入れをお願いする。それと、日本側の大学もそこでしっかり見て、もうそこで試験が終われば、あとは、面接を日本は重視しておりますから、どうしても本土で、こう言うのでありますが、こっちからも面接に行ったっていいじゃないかと言っておりますので、できればそこで試験をして合格を決めるという形をとればそういう問題が防げるのではないか、こんなことも考えております。

 いずれにしても、留学生の受け入れを、さらに質の向上を考えながら拡大してまいりたい、特に中国についてはそういう思いがございます。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

生方委員 中国の場合は、国民一人当たりのGDPがようやく一万ドルを超えたぐらいですよね。片っ方、日本はもっと全然高いわけで、日本で入学すると、大学の入学金とか授業料というのはまさに日本の値段でございますので、一部中国のお金持ちの方は別として、普通の人で就学意欲を持ってきたとしても、ごく普通に考えると、仕送りだけではそれを賄えないというのも現実としてはあると思うんですよね。だから働いてしまう。

 結果として、働きたくて働くんじゃなくて、授業料を何とかしなければいけないということで働くということが起きてくると思いますので、十万人以上いるというふうになりますと、そこに、一人一人に全部奨学金を払うというわけには、これはなかなかいかぬと思いますし、奨学金もかなり充実しているというふうにも聞いておりますけれども、やはり何らかの援助というのをしてあげるということが、結果的には、就労することによっていろいろなトラブルが起こって、それがまた最後には犯罪に結びついてしまうというような遠因にもなる可能性もあるので、その辺について、日本政府として何かお考えになっていることがあるのかどうか、文科大臣にお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 日本育英会も、今度、学生支援機構ということで、一つの方向で、留学生の受け入れ、そして、日本からの留学生を出す場合も、これを相互的にやろうということになってまいりました。

 そこで、御指摘のように、留学生全員というわけになかなかいきませんが、できるだけ受け入れに対しては、これは配慮しなきゃいかぬ、こう思っております。

 これをどういう形で進めていくか。留学生会館をつくって、そこへ入っていただいて、できるだけ低廉な生活費でいけるようにということをもっと進めるべきであろう、こう思っておりますし、国費留学生の枠をさらに拡大する等々、さらに検討もし、また、諸外国ではどういうふうにしているかということをもっと調べて、そういう国々、日本に来られて日本が嫌いになって帰ってもらっては困りますから、最近そういうことは非常に少なくなってまいりましたが、そういうことを踏まえて、さらに検討してまいりたい、このように思います。

生方委員 私、今、中国の国民一人当たりのGDPが一万ドルと言いましたが、千ドルですね。一万もあったら大変ですね。

 最後に、法務大臣にお伺いしたいんですが、先ほどおっしゃいましたように、十数%だというようなことなんですけれども、あるところでは一%ぐらいのところもあるし、十数%のところもあるでしょうけれども、私、普通に考えて、要するに一〇%とすれば十人のうち九人ははねられてしまうわけで、十人のうち九人が不適格だというふうには私は思えないので、十一月の規定というのはやや、ちょっと厳し過ぎるんではないか。

 これは、四月から大学が始まったり日本語学校が始まったりするわけで、今、大体許可されないともう四月から学校に行けないということにもなってしまうようで、非常に皆さん方心配しているようなので、多少その運用規定を緩めるというようなことをお考えになっているのかどうか。最後にお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

野沢国務大臣 先ほども御説明申し上げましたとおり、本当に勉強していただく方にはもうぜひこれを続けていただきたいと思いますが、来る前に借金を背負い込んだり、初めからそのつもりということでは、これはうまくいきませんから、何としてもその辺の、勉学遂行能力があることを十分確認の上、御趣旨としての今後の日中交流の拡大とその礎になる留学生については、できる限りのまた配慮をしていきたいと思っております。

生方委員 せっかく、日本に来たいという意欲を持っている方がたくさんいるということは、私は本当に好ましいことだというふうに思いますので、できるだけ広く受け入れていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

北村(直)委員長代理 これにて生方君の質疑は終了いたしました。

 次に、牧野聖修君。

牧野委員 民主党の牧野聖修です。

 河村文科大臣、そして麻生総務大臣に質問をさせていただきます。

 最初に、心の教育について質問をいたします。

 漠とした質問で恐縮でございますが、心の教育というのは、古くて新しい課題であり、また新しくて古い課題でもありますが、今、インターネットをのぞいてみたりいたしますと、あるいは世界の新聞とか雑誌の無名の方々の投稿する意見、そして日本の新聞に寄せてくる無名の、一般の市民の皆さんの教育に対する思い、願い、そういったものをずっとつぶさに見ておりますと、世界の中にも日本の中にも、心の教育に対する必要性といいますか、そういったものの高まりがあるような感じがしているわけです。

 そこで、最初に、心の教育について質問をさせていただくわけでありますが、最初に私たちが心の教育ということに真剣に取り組み始めましたのは、一九六〇年代、七〇年代、八〇年代になりますが、時あたかも、世界は一色、経済優先、経済オンリーの時代でございましたが、それと並行して、物質万能主義、物質主義、そういうものが席巻をしてきたわけです。それによって、世界各地域では、公害が発生し、環境が侵され、その中で、人権侵害が行われ、心の喪失、人間性の喪失というものが大きな問題になりまして、心の教育の必要性が叫ばれてきたわけです。

 たしかそのころ、物質万能主義に警鐘を鳴らしたボードリヤール等が、消費というのはもともと生活を充足するためにあったけれども、最近の消費、物質万能の時代に入ってからは、どちらかというと記号化してきて、物を使用するよりも持っているだけでステータスとか、いろいろなことで消費の中身が変わってきてしまったのは、これは物質文明のなせるわざだ、そう言っておりましたし、また、たしかシューマッハーが、日本では大きいことはいいことだと叫んでいるときに、「スモール・イズ・ビューティフル」という、小さなことは美しい、より人間的なことはすばらしい、そういう本を出して警鐘を鳴らしたわけです。

 そのとき、世界で心の教育が叫ばれていたのは、物質文明の席巻する中で心を失ってはいけない、取り戻したいということで心の教育が出てきたわけでありますが、最近新たに起こっている心の教育に対する意見というのは、時あたかもイラク戦争に端を発して世界にそういう考え方が広まってきているわけです。

 といいますのは、人間社会は、平和に過ごす、豊かに過ごすために、どちらかというと制度とか機構とかシステム、そういったものをしっかりつくって、それを運用していくことによって初めて幸せとか平和とかが維持できる、そういう考え方をとりまして、第一次世界大戦のときには国際連盟をつくり、そして第二次世界大戦後は国際連合をつくって、英知を結集して努力をしてきたんですけれども、イラク戦争が起こりまして、世界の人々の考えは今大きく変わっているわけです。二度と戦争を起こさせないためにそういうシステムや制度、機構をつくったんだけれども、結果的には、そのシステムだけじゃなくて、それを運用する人たちの思いとか心構えとか考え方とか思想が制度の改革に伴って成長してこなければ何の意味も持たないということを世界のみんなが知り始めている。

 そこで、今インターネットなんかで流れてくるその考え方は、制度とか機構とかシステムを変革、革新すると同時に、それを運用する人間、それによって影響を受けるすべての人たちの基本的な考え方を、心を成長させるといいますか、アセンションという言葉も出てまいりまして、次元上昇という言葉も使われておりますけれども、いずれにしても、人間の心、精神、心構えというものをさらに成長させていかないと、システムとか制度だけに頼っていては本当の幸せとか平和は来ないのではないか、そういう観点から実は心の教育について世界では高まってきているわけです。

 イラク戦争に対していち早く支持を表明した我が日本の閣僚の一人である河村文科大臣は、その世界の高まりをどのように受けとめて、どのように考えられるのか、まずもってお聞かせをいただきたいと思います。

河村国務大臣 御指摘がございました心の教育をこれからどのように考えていくかという大きな課題でございます。

 今、私もさきの委員会で所信表明いたしましたように、これからの教育が、物の豊かさと心の豊かさがまさにバランスのとれたといいますか、そうした人間力向上を目指した教育をやっていくということが大事だということ、これは、今御指摘のように、日本だけの問題じゃなくて世界の一つの大きな潮流になってきているのではないかと思います。

 今日の子供たちを取り巻く環境も大きく変化をしておるわけでありまして、これは全体的に、特に家庭、地域の教育力の問題、低下しているのではないかという問題、それから、自然体験とか社会体験、そういうことが希薄になっているのではないか。そうしたことによって、人間と人間とのつき合い方といいますか、そういう人間関係、この希薄、そういうような問題で、社会に起きている現状を見ますと、子供がこういう事件を起こすのかというような問題、あるいは逆に親の虐待の問題、こういう痛ましい事件も起きておるわけでございます。

 そういうことを考えますと、これは学校教育においてもそのことをきちっと対応していかなきゃいかぬ、こう思っておるわけでございまして、特に、命を大切にする心、あるいは善悪をきちっと教えていく、それによって規範意識とか倫理観を高めていこう、こういうことも教育の中できちっと身につける教育をやっていく、これが今重要になってきておるというふうに思っております。

 具体的には、いろいろな施策を今から、これまでもとってまいりました、それを強化していかなきゃいかぬ。そして、そのトータルの教育として、心の教育というものを重視した教育を根本的に考えていく方向をこれからとっていく必要があるんではないかと思います。

 そして同時に、これだけの大きな、グローバルな時代でありますから、世界のいろいろな諸現象、こういうものにも大きく影響を受けるし、また逆に、日本からそれに対して発信もしていかなきゃいかぬ、こういう時代でございまして、そういうことから考えますと、日本人としての誇りを持ってこの地球上で生きていけるような教育、それはやはり心がしっかりしていかなきゃいかぬ、こういうことになっていくんではないかと思っております。

 これからの諸施策を通じて、特に、道徳教育と一口に言われますけれども、この道徳教育というのはいろいろ深いのでありまして、まず自分自身のことをどう考えるかということ。もちろん、克己心であるとか、そういうようなものをきちっとつけていく。そして同時に、今度は他との交わり方。これも思いやりの心というようなこと、礼儀正しさとか、そういうことで生まれてくるものでございます。それから、自然や崇高なものに対する畏敬の念をどういうふうに養っていくか。まさにこれは、人間の力を超えたものが世の中にあるんだということに対する考え方とか、あるいは集団や社会に対するかかわり方、これはふるさとを愛し国を愛する、そういうことにもつながっていくでしょうし、世界の平和、人類の平和、そういうことにつながっていく。

 そのようなことを学校教育で学びながら、心の豊かさと、そしてこの物の豊かさを享受しながら心の豊かさを養っていく、そういう教育を進めてまいらなきゃいかぬ、このように思っておるところであります。

牧野委員 幅広い大臣のお考えを今お聞かせいただいているわけですが、既に今度の常任委員会の席で大臣は所信表明をされているわけでして、細部にわたっての議論はまた改めてこれから常任委員会でもさせていただきたいと思いますので、詳しいことについてはそちらの方に譲らせていただきたいと思いますが、きょうはこの予算委員会の場で、常任委員会よりもさらに広い場で、こうして大臣と私とが質問という形で議論を交わさせていただく機会になりましたので、できるだけ骨太の議論を進めさせていただきたいと思いますので、お願いいたします。

 先ほど申し上げましたように、世界でそういう潮流が高まりつつある中で、同じ心の教育について、日本でも別の形で高まりがあるんですが、それを調べてみますと、基本的には、この閉塞状況にある日本という社会を克服していくための国家の主要な原理原則、その光の部分が余りにも明る過ぎて、その光の影にある、その影の部分で泣いている人が非常に多くて、その人たちの中から、あるいはその人たちを救おうという、そういう基本的なスタンスで心の教育の必要性というのは今高まってきているんです。

 そういうことで申し上げさせていただきますと、小泉さん、竹中さん、あるいはほかの閣僚の皆さんもそうだと思いますけれども、経済的な政策の基本的な考え方が、どちらかというと、あらゆるものの原理原則に今普遍的に広がってきているわけです。もともと経済主導の考え方だったと思いますが、その中心は何かといいますと、もう既に御案内のとおり、釈迦に説法で言うまでもありませんが、自由競争ですね、一つは。二番目は市場原理ですね。三番目は効率万能ですね。四つ目は結果主義。この四つが日本を蘇生させていくための基本的な原理原則になっているわけです。ところが、それには、強い力を持つ反面、暗い影の部分がついてくるわけですね。

 自由主義というのは、どちらかというと、悪い言い方をすれば弱肉強食ですね。貧富の差が非常に大きくなってくる。百人の中でたった一人勝ち組として残って、あとの九十九人は負け組として葬り去られる、そういうシステムですね。世の中が殺伐としてくるんですよ。こういう影の部分がありますね。

 それから、市場原理。アダム・スミスが言う神の見えざる手というのは、実業経済が主体をなしているときです。今はもう虚業経済の方が数百倍という大きさで動いているこの時代に、その神の見えざる手が市場原理の中に生かされているかというと、私は生かされていないと思うんですね。エンロンやワールドコムや大阪証券所のあの不祥事を考えてみれば、あるいは、ばくちにも近い投機的な世界に加わっている人たちのいろいろな生態を見てみれば、市場経済のどこに正義が担保されていますか。極端なことを言えば、どこにも担保されていないじゃないですか、正義が。その正義が担保されていない原理原則に国家国民の将来と幸せをゆだねるということ自体が無理ですよ。それによって非常に泣いている人たちがいっぱいいますね。

 それから、効率万能ですよ。合理主義というのは私は理解できますけれども、効率万能一辺倒というのは余り理解できないですね。人生なんというのは非効率きわまりないものですね。愛とか美だとか芸術だとか、これはもう非効率きわまりないものですね、その中に初めて価値はあるんですよ。本当の価値はその中に含まれている。それを効率主義の中に全部一緒くたにしていこうという考え方、それを国家の指導原理原則に、中核に据えられて、結果主義ですね、結果がよければすべてオーライというその考え方。途中経過の、その努力していく中に人生の妙味があるじゃないですか。

 僕は言いたいんです。今、新聞に投書している無名の人の意見、あるいはインターネットで飛び交ってきている心とか精神とか、そういうものに対する日本人の思いは、国家の指導原理、国家の運営方針の影の部分としてあるんですよ。閣僚の一人としてそのことをどのように受けとめるか、忌憚のない意見でいいですよ、文部科学担当大臣としての意見を聞かせてください。

河村国務大臣 私、大臣就任に当たって、総理から、知徳体、食育を重視した人間力向上の教育改革にと、こう言われました。

 私は、まさにこの人間力という考え方の中に、単なる勝者だけではない、勝者には敗者がある、そういうことも知る、そして、世界を見たときに、日本のような経済的に豊かな国もあるけれども、しかし、その日その日の暮らしの中に命をかけて暮らしている人たち、あすの日の食料のない人たちもいるというような、やはりそうした総合的な教育をしていきませんと、今の流れの中に入ると、おっしゃるように、勝者だけが、結果だけがという、今までの日本の教育の反省の中には、結果を求める、そこまでに至る経過を求めない。だから、条件は整備する、しかし、結果はいろいろな結果がある、生きていく上でいろいろな選択肢がある。そういうことの中で、まさに人間性が磨かれると思います。

 教育基本法には「人格の完成」という一言でこれをうたっているわけでございますが、ここに行き着くまでには、私は、いろいろな施策といいますか、そういうものがあろうと思います。そういう意味で、やはり人間としていかに生きるべきかという、まさにそのことに立ち返って教育を進めていかなきゃならぬ、人間力養成というのはそこに私はあると思います。

 そういう意味で、これからも、教育の持つ意味というのは、ますますその教育力を高めるということが重要になってきて、その中に、人間力を高める、こういう考え方でこれからの教育改革を私は進めていかなければいかぬ、こういうふうに考えております。

牧野委員 文科大臣に質問すると若干筋違いなところがあって、私が申しわけないのかなとは思うんですが、あえてもう一点、心の教育ということに関して大臣にお伺いさせていただきます。

 今、日本の社会は、毎年三万二千人が自殺しているんです。そのうち、五十代、六十代が二万人自殺しているんです、毎年。そのうちの一万人は、職を失って経済的基盤が崩れてしまったということによって、生活困難ということと、希望を失って死んでしまっている。一万人いるんですね、自殺している人が。その陰で、ことし、大学卒業者が三〇%まだ就職ができていない、高校卒業の子供たちはまだ四〇%が就職できていない、そういう世の中になってしまっているんですね。

 この実態を大臣はどのように考えますか。あなたの忌憚のない気持ちだけでいいですから、お聞かせください。

河村国務大臣 GDP、年間成長率が七%という報告を出されながら、地方と東京といいますか、その実態の格差というものも感じておるわけでございますが、現実に、御指摘のように、これから希望を持って働かなきゃならぬ、まさに学生、生徒が十分就職口がないということは、これは大きな、ゆゆしい問題だ、こう考えております。

 これは、表面的にはもちろん経済状況というものが背景にある。企業は今リストラをしているという現状でありますから、厳しいことはわかっておるわけでありますが、一方では、企業側の方から言わせると、今のそうした学生たちのいわゆる勤労観、職業観、これも非常に薄れてきておるという指摘もございます。額に汗して働くことのとうとさというものについて十分学びがないという指摘もございます。したがって、就職してもすぐやめていく。自分の考えていることと現場が余りにも違い過ぎると言いますが、そこのところのギャップを埋める教育ができておったかという反省も今これありまして、まさに現場と、企業での教育をきちっと一体となってやる、デュアルシステム的なものをもっと進めるということも考えておるわけでございます。

 しかし、一方では、その陰に、何とかなる、豊かさの中で就職をしなくても何とか生きていけるのではないかというような、それは、汗して働くことによって喜びを見出すとか、あるいはまた次なる夢、そういうふうに働いて、そして自分は何をしようというものを持ち得ない人たちが、学生たちが現実にあるという、ここのところへやはりメスを入れていかなきゃなりません。

 それは、今の大人たちを見たときに、子供たちがどういうふうに思っているのか。親の背中を見て子供は育つという、その親たちの実態。昔、もっと我々の先輩の時代には、とにかくもう働いて早く豊かになろう、国全体がそういう雰囲気の中にあって、みんなもそれについていけばという思いがあった。それが今失われつつあるのが、一方ではそうした就職に対するギャップも生んでいるのではないか、こう思います。

 確かに、求人数と求職者数とのアンバランスがあって、大学生は特に求職者数とそれから求人数の間の差がありますが、高校の場合には、地域的な偏在がありますけれども、確かに求職の方が少し多いんですけれども、本当に働く気があれば、かなりまだ、六割じゃなくて七割、八割はいくような数字も出ておりますので、そういう働くことに夢を持ち得ないところに、我々としても教育の面での反省点もございます。

 やはり、働いて、そして自分たちの夢を果たしていこう、こういう意欲をかき立てるような教育を生み出さないと、この問題はなかなか解決できない、こう思っておりまして、教育の持つ重要性を感じておるわけであります。

牧野委員 最初の質問でこんなに時間がかかるとは思ってもいなかったものですから、できるだけ話を前へ進めさせていただきたいと思いますが、今まで予算委員会で質疑された教育に関する議事録を拝見させてもらいましたら、保岡興治先生が、小杉文部大臣のときに、クリントンが始めた、一九九四年からの人格教育のことについて質問されて、触れられたことがありましたね。日本で心の教育というと、もうだれでも必ず道徳教育、道徳教育と言うんですね。それは既にもう限界が来ているわけでして、アメリカの挑戦は、私はあのときは、これはいい挑戦だなと思って見ていたんですが、その後、クリントン政権が妙な形で終わっていく、そういう中で、人格教育というのは若干弱まったのかなとは思いましたけれども、今さらに、引き続きアメリカの社会には人格教育というものの波が広がりつつあります。

 これは、今までの日本の道徳教育に対するスタンスと違うのは、本人、家庭、学校、地域あるいは地方団体、そして国、政府、それとボランティア、青年団体、宗教団体、あらゆる職業団体ですね。そういったものが、単なる教育じゃなくて、一つの国家のキャンペーンといいますか、国民運動として真剣に取り組んでいるんですよ。その成果が、今アメリカは徐々に実りつつありますね。日本は、アメリカから比べると、この手の教育は十年おくれていますね。はっきり大きな水があいてきていますから、その点を真剣によく考えて、これからお進めいただきたいと思います。

 また、私、チベットの活動もしておりまして、チベットは、仏教の考え方を中心とした民族のアイデンティティーを守るために努力している皆さんですね。仏教には慈悲、思いやりという考え方があります。キリスト教には愛と奉仕という基本的考え方があります。マザー・テレサさんたちですね。儒教には恕という、すべてを受け入れるという優しい気持ちが、考え方がありますね。日本には、聖徳太子が十七条の憲法の第一条で和をもってとうとしとなすといみじくも言ったように、和という精神があるんですよ。これは仏教で言う慈悲、キリスト教で言うところの愛、あるいは儒教で言うところの恕に匹敵する概念、レベルのものだと私は思っているんです。ぜひそのことを日本人として大切に、教育の根底に据えてくださいますように、まずもってお願いをしておきたいと思います。

 そして、次の質問に移ります。今度は教育基本法の改正について質問をさせていただきます。

 既に先大臣が諮問をして、一昨年の十一月の十四日に中間報告が出て、三月の二十日に答申をいただいたわけです。それから一年の歳月がたってきているわけですが、大臣、教育基本法は改正するんですか、どうなんですか。改正するとしたら、どこをどういうふうに変えたいんですか。そのことをお答えください。

河村国務大臣 御指摘のとおり、既に中央教育審議会で答申をいただいておりますし、また、これまで歴代の内閣が、今日の教育基本法を考えたときに、これをどのように見直していこうか、これはまさに教育改革の構造的な部分であるという観点に立っていろいろ取り組んでこられたことでございます。

 特に、小渕内閣において、教育改革国民会議においても濶達な議論をさきにしていただきまして、それを受けた形で森内閣そして小泉内閣と続いて、小泉内閣において、中央教育審議会に諮問、答申をいただいたということでございまして、文部科学省といたしましては、これは法律でありますから、これを法案化して、そして国会で十分御議論をいただいて改正いたしたい、このように考えております。

 どのような点をどうするかという問題でございます。

 この答申に基づくのが我々の仕事でございますけれども、人格の完成を目指すというこの教育基本法の理念、この理念は、私は、非常に大事な理念でありますから、そうしたこれまでの基本理念は大事にいたしながら、さらに現代のこの時代に合わせたものはどうあったらいいかという視点で、中教審からいただいた答申では、個人の自己実現と個性、能力、創造性をいかに涵養するかという点。あるいは、社会の形成者として、これは平和国日本の形成者としてというのが現教育基本法にございますが、その中で、形成に参画していく公共の精神あるいは道徳心を持って参画していくというようなこと、これはやはりきちっと教育基本法の中にうたうべきだという点。あるいは、日本の伝統、文化あるいはふるさとや国を愛する心、それがきちっとあって国際社会の一員として意識が涵養できるんだという指摘。あるいは、先ほど来お話がございましたように、家庭教育といいますか、そのことについて、今の現行教育基本法では社会教育の一環としか取り上げていない、もっとこれは重要な役割を果たすべきではないか、さらに、学校、家庭、地域社会の連携協力というのが大事である、こういうことをきちっとうたうべきであろう、こういう指摘がございます。

 私は、それらを受けて、この教育基本法というのは教育の憲法と言われる大事なものでありますから、国会で議論をいただくと同時に、やはり国民的な議論をしていただく必要があろう。既に、文部科学省として、また政府を挙げて、タウンミーティングとかあるいはシンポジウム等を行いながら、フォーラムを行いながら、全国に文部科学省の基本的な認識、あるいは中央教育審議会のこれまで考えてきたことを披瀝して御意見をいただく、こういうことも今取り組んでおるところでございまして、法案でありますから、多数を持っております与党の意見の集約もしなきゃいかぬ、こういう努力もいたしておりますし、また、当然、第一党であります民主党におかれましても、この重要な問題について、どうぞひとつ濶達な議論をいただき、御提言もいただきながら、この改正に取り組んでまいりたい、このように考えておるわけでございます。

牧野委員 憲法に準ずる教育基本法です。国家百年の大計を決めていく非常に重要な基本法ですね。ですから、私は、この教育基本法の制定とか改正については、少なくとも手続にあって瑕疵があってはいけないと思っているんですね。それから、やはり中身は、正当性がなければいけないし、多くの国民の信頼を得る、そういうものでなければいけないと思います。

 いやしくも今大臣が言われたように、それだけ重要な問題であるならば、そのときの政治状況に流されることなく、自民党であるだとか民主党であるとか、そういう立場を乗り越えて、やはり国家百年の大計、国家にとって国民にとって、どういう教育理念が、どういう方法論が望ましいかというのは真剣にやらなければいけないと思うんですね。

 そこで、お伺いするんですけれども、今度の諮問して、答申の作業に入って、中間報告を出しているんですよ。そして、答申をして、ここまで来ているわけですね。その経過の中で、私は、独善性はなかったのか、一つの勢力の、何といいますか、力強い主導というのが意図的にあったんではないか、そのことを非常に危惧するんですよ。

 というのは、最初に遠山大臣が諮問するときに、六千文字に及ぶ諮問文をつけましたね。その諮問文を読みますと、既に、あのときの遠山大臣が中央教育審議会に諮問しようとした教育基本法に対する基本的な考え方、骨子はその中に読み取れる。それはどういうことかというと、現状の世界を大競争時代と認識して、それに打ちかっていかなければならない、産業界の大きな要請にこたえる、それから、それを支えていく国家として、愛国心とか兄弟とかボランティアとか、あるいは大学教育においては、知のリードする、そういう教育のスタンスを明確にしろ、そういう意図、思想がそのときからもう出ているんですよ。

 それで、今大臣が言った、総理大臣の諮問機関、個人的機関である教育改革国民会議。これは個人的な機関ですね、どちらかというと。その中の主要メンバーが今度は中央教育審議会の方に入ってきて、その流れの中で審議会をリードし、そして、最終的には文部省がこの答申の案をまとめてきた。そういう流れですよ。

 私は、中央教育審議会の出した「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」、何回も読みましたよ。委員が集まって、まじめに、真剣に議論した最初からの出だしですね。座長の議事録まとめとか、そういうのも読ませていただきましたよ。非常に広範な、まじめな、真摯な議論が闘わされている。いろいろな意見があった。でも、最終的に文面になって出てきたのは、最初に大臣が諮問したときの思想そのままが出てきているんじゃないですか。

 私が言いたいのは、審議会でいろいろ話をした非常に大切な議論が全部捨象されて、最初からの文部省の基本的なものに基づいた答申案が出てきているということを非常に危惧しているんです。大臣、そういうことはありませんか。答弁してください。

河村国務大臣 今、牧野先生御指摘があったように、小渕総理のときに教育改革国民会議の中で濶達な議論をいただいて、そして、本格的にこの問題を取り上げようということになって、正規の中央教育審議会に諮問をされたということでございます。

 これは、大臣の個人的なというよりも、教育改革国民会議でいろいろ御指摘があった点を踏まえて、これは諮問するんでありますから、丸投げで諮問するわけにもいきません。ここで議論された重要な点について、今の時代にふさわしいものはどうあったらいいかということで諮問をした。そして、一年間かけて、確かにおっしゃるように、いろいろな議論があったものをまとめ上げていったものでありまして、それを文部科学省が恣意的にどっちかへ曲げたとか方向を変えたとか、そういうことではなくて、大きな流れは、私はそれで表現をされておる。

 しかし、もちろん、少数意見、多数意見、いろいろあったことも事実でございます。中央教育審議会でございますから、教育基本法を今すぐ変えて本当に今の教育がよくなるかというような議論もあったことも事実でございます。しかし、トータルとして、全体の意見としてまとめ上げたものがこの答申であるというふうに受けとめておりまして、これをしっかり受けとめた上でこれを法案化する作業をしなきゃいかぬ、このように思っています。

牧野委員 私は、基本的には、憲法も、論憲から創憲に変わり、改正の機運は高まってきている。不磨大典として扱ってはいけない、そういう動きが高まってきている。それと同じように、教育基本法についても改正という機運が高まってきていることについて、やぶさかではありません。その時代に合って、しかも、百年を見据えた教育基本法が、新たにバージョンアップとしていいものができてくる、そのことに対してはやぶさかでありません。政府の方でどういう案を出されるのか、それも見たいと思っていますし、その案が私にとって納得できないものであるならば、私も野党の一員として、自分たちで対案をつくるぐらいの気概を持ってこの問題には真剣に取り組んでみたい、そういうふうに思っているんです。

 ところが、今言いましたように、最初から、三月の二十日の最終答申をまとめていく前の二回の審議会は、定数に満たなかったんですよね、委員の数が。そういうことを私も聞いたんですよ。最終的に答申の作成は文科省に丸投げするような状況が出てきたというのもちょっと漏れ聞いたんですよ。

 ですから、そういう意味で、百年の大計をつくる重要なときですから、手続上に瑕疵があってはならないということを私は力説しているんですよ。そのことはもう新聞でもいろいろな雑誌でも書いている事実なんですから、手続上そういう瑕疵のないように注意されて進めていただきたい、そのことをまずもってお願いしておきます。

 中身のことについて一点だけお話をさせていただきますが、私は、答申を見て、この答申を尊重して大臣が教育基本法をつくると言っているから、どちらかというとこうして質問させていただいているんですよね。答申をもとにして、いろいろな意味でもっともっと幅広いいろいろな意見も聞いてやっていくということになると若干安心はするんですけれども、この答申の中身を見ていると、私は理解できないのが幾つかあるんですけれども、三つだけ言いますよ。

 この時代を大競争の時代と認識して、それに負けないような国民、豊かな日本人を育てるという認識は間違いですね。今、ビジネスとか経済、貿易の世界ではそれはあるかもしれないけれども、この地球的規模で環境とか人権とかいろいろな問題をみんな協力して克服していこうという時代に、大競争時代として位置づけていくということ自体が、いささか現状認識に違いがありますね。この認識が違っている。

 それから、「教育振興基本計画の在り方」の中に、教育は我が国社会の存立基盤であり、未来への先行投資である教育投資への国民の支持、同意を得るためには、教育投資の一層の質の向上を図り云々かんぬんと書いてある。教育を国民に対する投資として考えている。投資効率をよくするために注意して取りかかれと、そういうことがこの基本計画に書いてあるんですよ。

 基本的人権ですよ。この世に人間として生まれ、日本人として生まれたすべての人に、読み書きそろばん、生きていくすべを、基本的なそういう教育を行う、これは基本的人権を守るためにやっているんですよ。投資の対象じゃないですか、これは、この認識は。僕はそれを怒っているんですよ。大臣、どう思いますか。

河村国務大臣 前段の大競争時代、一般的にそういう言い方をいたしますが、特に、日本のこれからの立国の観点からいうならば、もちろん、人間力向上という基本的な人格完成のための教育、俗な言葉で言えば立派な日本人をいかにつくるかということが教育の根幹にございます。

 と同時に、やはり日本の国が、世界の中で、また貿易立国として生きていく、そして世界に貢献をしていく、そのために、まさに科学技術創造立国というものは非常に大きな課題でございますから、これはやはりお互いの国々が切磋琢磨といいますか、競争関係の中でやっていかなきゃいかぬ、私は、そういうふうにこの大競争時代というのはとらえておるわけでございまして、かつて日本も、追いつけ追い越せということで、そこまでやってきた。今また、日本を目標にして、追いつけ追い越せで頑張っている国はたくさんある。そういう国々と共存共栄しながら、さらにその先を行くという努力、これはやはり競争という考え方もあってしかるべきではないか、こう思っております。

 それから、教育投資といいますか、これも、人間を物として考えるとなるとこれは問題でありますが、教育も、やはりそれは効率が求められることも事実でございますし、やはり教育環境の整備ということについては資本を投下しなきゃならぬことも事実でございます。これが効率だけではならぬということは事実でございまして、やはり教育には時間もかかるし、しかし、やはりここにしっかり資本を投じなきゃならぬことも事実でございまして、単なる経済論理だけでこの問題は、教育問題は片づかない面もあります。

 そういう意味で、特に基本計画の方は、当面する今の教育の環境をどういうふうに整備していくかという観点からとらえてありますので、そういう言い方をしたと思いますが、しかし、人間力向上の教育をやろうというときに、人間を物と同じように考えていいかという御議論、それはもっともな御意見でもございますから、これをまとめ上げるといいますか、法律にする場合にはもちろんそういう言葉は使いませんし、使わないと私は思っておりますし、特に、基本計画の方は計画でありますから、これは個々にわたって具体的なものを出していく。当面する課題と、そして御指摘のような国家百年の大計が基本法という二本立てでやっていく、そして、基本法の理念ができたところで、具体的にどうするかというのが基本計画になっていく、こういうことであります。

牧野委員 河村大臣とは十数年前に同じ委員会の同じ仲間として萩の方にも委員会視察に行かせてもらいましたし、あなたが副大臣になってからも、委員長になり、副大臣になった、そして今、大臣になっておられるわけですが、真摯な態度で職務に専念されているのは私もよく承知しておりますので、今、私は、国家百年の大計をいやしくも立てようとしているときに、手続と中身において瑕疵があり国民の信を得られないような、そんなものをつくっていくのは、後世の人たちに、歴史の批判にたえられないことになりますので、間違いのないように、いい教育基本法ができるように努力してください。私も、野党の立場で、教育のことについて真剣に、教育基本法というものを軸に据えながら考えていきたいと思っておりますので、さらなる検討、精査を心から期待しております。

 きょうは、麻生総務大臣にお越しをいただきました。ここで先に麻生大臣に質問をさせていただきたいと思いますが、地方分権と教育ということで、総務大臣にお越しをいただきまして、先に質問させていただきたいと思います。

 この地方分権が出てきたもともとは、土光臨調の増税なき財政再建というのが端ですね。ところが、増税なき財政再建を行財政改革というふうに次に進み、そして行政改革になり、行政改革だけでもやっていけない、だからこれを地方分権、そういう流れになってきて、今、地方主権とかそういうことが議論されるところまで来ているわけです。ですから、もともとの発端をよく考えてみると財政論議であったのかなということは私感じるんですよ。

 でも、本来、地方分権は、これは全く別の思想ですよ。ですから、今三位一体とかいろいろな具体的なことがもう先行してきているわけですが、もともとは財政論とは違った意味での地方分権が論じられなければいけないと思っています。

 そのそもそも論が最近見えないということと、そして、その大きな流れの中に教育が完全に巻き込まれているといいますか、義務教育の国庫負担制度堅持等々を見ていると、この地方分権との兼ね合いの中で、財政論議が先行していて、地方分権と、あるいはそれにかかわってくる教育の議論というのが若干おくれているのではないかという感じがしますが、地方分権の任にある麻生大臣の見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 地域主権の話というものと財政の話と教育の話と、いろいろな話が混線をしておるのではないかということなんだと思いますが、混線していると思います。

 基本的には、今、土光臨調からのお話があっておりましたけれども、長い歴史を見て、国の財政破綻というのは非常に大きな要素でスタートしたことは間違いないと思いますが、地域主権とか地方分権とかいう大きな流れとなったのは、これはやはりどうでしょう、明治この方百三十数年間にわたって中央集権でやってきて、廃藩置県をやって成功したこの国が、どうやら一九九〇年代、この十年、十二年ぐらいの間にやはり物の流れが物すごく変わって、中央から地方へとか官から民へとかいろいろな表現になっていますけれども、そういう流れの中の一環として、地方財政もこれだけの大きな財政赤字を抱えているのでこれを何とかせにゃいかぬというところに、二十兆円の補助金の削減の話になり、その中に義務教育費約三兆弱の金が大きな目にとまっているというところなんだと思っておりますので、地方財政立て直しの話と教育の話とを一緒にするのは、話を極めて矮小化する、手法としても、アプローチとしても間違っていると思います。

 したがいまして、教育論は教育論としてきちんとやられるべきなのであって、やはり地方でも、静岡でやっておられましたからよく御存じと思いますが、県立高校などというものは全く補助金なしできっちりやっておりますし、幼稚園も同じようにきちんと対応をしておられるのも事実でありまして、義務教育として国家が最低限これだけのことをすべきというきちんとした話をする話と、それに伴います金の話とを一緒にするのは話を極めて混線させるもとになっておると思いますので、ここはきちんと分離して話をしないと、負担金の話と補助金の話とまた一緒になってみたり、いろいろな形になっておりますのは、きちんと整理ができていないために起きておる混乱と思っておりますので、本来、財政論と教育論は分離して議論されるべきと思っております。

牧野委員 これはもともと分離して議論すべき性格のものですよ。ところが、今一緒になってしまっているという、現場では大変、委員会をやっても大変な苦労をしておりますので、国会や地方自治体だけでなくして、国民の中に、この議論が整理された本質論でできるように、ぜひともまた総務大臣として御努力をいただきたいと思いますが、具体的な問題で一、二点、総務大臣、お答えください。

 これから県知事が教育のことについてもかなり力を持ってくる、でも、現場では市町村が実務レベルをやらなくちゃならないということなんですね。知事の選挙は四年に一回、市長さんの選挙も四年に一回。次の県知事がかわり、市長がかわると、ぐらぐらぐらぐらそのありようが変わるんじゃないかという心配があります。

 それからもう一つ、地域においては、行政区が、同じ経済圏と文化圏でありながら、行政圏だけ分かれているところがあるんですね、選挙区なんかもそうですけれども。地方には、文化圏と経済圏は同じだけれども、たまたま線引きによって市町村が分かれているようなところがあるんですよ、県境にも。そういったところは、同じ地域に住んで経済圏と文化圏を共有しながら、政治的な行政区域が違うために教育のありようも若干変わってくるということがこれから出てくるのではないかなという感じがするんですね。

 その点について、総務大臣、御意見はありますか。

麻生国務大臣 これは、牧野先生、この文化論、多分静岡県でいえば、遠州、駿州、豆州と三つ違いますので、一緒に三つくっつけちゃったのがそもそも明治時代の間違いじゃないかと言う方もいらっしゃるぐらい。福岡県も同じようなもの。南部と津軽の区別なんて私どもが聞いても全然わかりませんけれども、いらっしゃる方々にとっては深刻な話のようですから、そういった意味では、歴史や文化が違うことによっていろいろ問題が起きることは間違いない事実だと思っております。

 ただ、今言われましたように、知事さんにかなりの部分の権限が移譲された結果、外国、アメリカがいい例かもしれませんけれども、知識水準が一から十まであったといたしますと、一から十まで普通にあって別にええやないかというアメリカ的考えと、日本の場合は、一もないけど十もなくて、六、七、八、九ぐらいにばあっと集中しているというような考え方、これが平等という考え方と、これは全然根本的なところから違っているんだと思います。

 地方に分権をした結果、教育の差が、わあっと金の面で、実質、内容は文部科学担当大臣だと思いますが、金の面で知事が教育無視、無視とは言いませんけれども、教育軽視になって、教育に使える金を別のところにという結果、教育の質が下がる、何とかが下がる、全部下がって、結果としてえらいことになっちゃうという可能性を御心配なのかなと思いますが、起こり得ないわけじゃないとは思いますが、ただ、そのときこそ、それはちょっと待てという話で、いわゆるリコールが起きてみたり、選挙でということになるんだと思います。

 迷惑をする県民なり、それを受ける子供のことを考えたら、それらの幅がぐちゃぐちゃにならない程度、ある程度の枠をかけにゃいかぬところだと思いますが、それをかけると、分権ではないではないかというまた別の御意見も出てくるところで、これは、ここから先は文部省の話だと思いますが、地方を預かる私どもの立場といたしましては、そのような極端なことのないように、私どもとしては指導していくべきものだと思っております。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

牧野委員 まだ課題はたくさん残っておりますので、総務大臣としてもぜひ御尽力のほどをお願いいたします。

 時間が進んできて、予定をしておりました質問、全部行けないようで残念でありますけれども、ここで文化行政のことについて、もう時間がありませんので、最後に質問させていただこうかなと思います。

 去年とことし、文科省が予算編成をするときのその基本的なスローガンといいますか、基本的な考え方は、教育・文化立国の実現を目指してということですね。去年も全く同じでしたね。これは、私は、教育立国、文化立国を目指すということはいいと思っているんですよ。ただ、今私が大臣に聞きたいのは、それはかけ声だけで、標語だけで、何にも文化に対しての実体がないということを言いたいんですよ。僕は三年前からそのことを委員会で言っているんですよ。

 もう一度ここで言わせていただきますけれども、文部科学省は千七百五十八人、文化庁は二百二十九人しかいないじゃないですか。この体制で、文化立国なんてできますか。文化というのは、横断的、総合的な大きなものですよ。フランスでは、文化省には九千五百人の職員がいて、経済省には五千五百人しかいないんです。どっちかというと、文化省の方が倍、職員の数が多いんですよ、フランスは。いやしくも文化立国を標榜するなら、その体制は改革があってしかるべきだと思うんですね。

 それから、文化予算。これは、すべて文化庁の所管する予算が文化予算だとは私は言いませんけれども、文化立国を標榜するならもう少しやりようがあるだろうと思うんです。文部科学省の予算六兆五百九十九億円、それに対して文化庁の所管が千十六億円です。一・七%ですね。全体の八十二兆から比べれば〇・一%ですよ、文化庁の予算は。

 大臣、これで文化立国ができますか、お答えください。

河村国務大臣 大変、叱咤激励、応援の質問をいただいたと受けとめさせていただきましたが、確かに、文化庁予算を一千億にしたいということで頑張ってきて、それができた。ただ、そのパーセンテージだけ見ると、教育予算全体というのは八割は人件費でございますので、こういう数字にならざるを得ない面もございます。

 しかし、おっしゃるように、これでいいかと言われれば、我々としては、もっと文化予算をふやしたい。地方からもいろいろな要請も来ておりますし、また、文化庁の予算は一千億でありますが、地方でも今、まさに地方の時代といいますか、文化で元気を出そうということで随分いろいろな取り組みをされております。そういうものを集計すればかなりのものに文化投資はなっている、こう思いますが、さらにやらなきゃなりません。

 そして、十三年に文化芸術振興基本法をおつくりいただいた、これも大きいわけでございます。これを受けとめまして、国としても、その都度の基本計画を立てていただいて、国の役割と地方の役割分担をしながら、文化芸術の振興にさらに頑張っていきたい。特に、これから、文化力で国おこし、そしてこれを世界にまたもっと発信していきたい、こういう思いで頑張りたい、こういうふうに思います。

牧野委員 河村大臣が常任委員会の委員長を務めているときに、うちの大石尚子議員が文化庁長官の出席を求めた。そのとき、理事会で協議をすると言ったきり、二度と文化庁長官は国会に来ない。その後、中野寛成さんが質問をする。文化行政について質問をしたい、文化庁長官が国会に来て答弁をして、文化庁長官の見識を伺いたい、来なかった。十五年間、この日本の国会は、文化庁長官が国会に出席していないんですよ。文化庁長官が国会に来て、国民に選ばれた国民の代表たる国会と、文化行政のありようについて議論をしていないんですよ。

 今度あなたは文部科学大臣になったんですね。あなたの所管であるところの文化庁長官は国会に出てきますか。それで、国民の代表たる議員と文化行政について議論をしますか。そのことについてお答えください。

河村国務大臣 文化庁関係の国会審議につきましては、基本的に、私を初めとして、副大臣そして大臣政務官が担当いたしまして、さらに、質疑の細目にわたっては、国会のお許しをいただきながら文化庁次長が説明を申し上げるということで今日まで来ておるわけでございます。

 文化庁長官のあり方というもの、これは、文化の顔として国内外の文化関係者との活発な文化交流をやってもらおうということで、一般の部局とちょっと特殊なそういう面を持っておるものでありますから、文化庁長官の業務の特殊性といいますか、そういう意味で、前にもそういう御指摘があって、そして、文化庁長官の業務、非常に多忙であるというようなことも、業務も出させていただいたりして、これまで御理解をいただいてきたところでございます。

 私が文化行政の最終責任を担っておるわけでございまして、もちろん、文化庁長官のいろいろな見識というもの、文化に対するそういうものをしっかり受けとめて、私が責任を持って文化行政を進める立場にあるということで、これからも国会審議には真摯に対応してまいりたい、このように考えております。

牧野委員 そんな認識で文化立国ができるはずはないよ。おれ、はっきり言うよ。大臣、そこはよく考えて、教育・文化立国をつくるというなら、もっとやるべき事柄はあるだろう、そのことをぜひとも、もう一度力強く言っておきますので。

 最終的に、私は、質問させてもらったんですが、今、世の中は階層が分化しているんですね。もう生まれたときからお金持ちの子供はいい教育を受けられて、いい生活をする。ところが、親が収入が低い、そして学歴が低いという子供は、大体学歴が低くて、そして収入が低い、そういう階層になっていく。これはもう幾つかの調査で、私は数字を挙げたかったんだけれども、きょうはできなかったけれども、そういう、分極化されて、しかも子供の教育のレベルが分化されているという大きな問題がありますので、そういうことのないように、日本人としてこの世に生をうけて、本当に平等に教育を受けられて、やはり人生が本当に自己実現できるように、大臣として頑張ってくださいまするようお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

笹川委員長 これにて牧野君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林千代美君。

小林(千)委員 民主党の小林千代美でございます。

 私は、昨年の衆議院選挙で初当選をさせていただきまして、本日、この予算委員会の場で初質問をさせていただきます。大変上がっているんですけれども、はえある予算委員会の場で初質問をさせていただくという大きな期待に今燃えているところでございますので、本日は川口外務大臣そして石破防衛庁長官にお越しいただきました、ぜひ私のこの期待にこたえていただける答弁をいただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 実は私は、北海道選出の衆議院議員です。陸上自衛隊の本隊第一陣の皆さんが、おととい、千歳空港から出発をいたしまして、きのう、クウェートに到着をいたしました。今回派遣をされる自衛隊の中で、北部方面隊の方々が主力を担っている、そして、その九割は北海道から派遣をされるというふうに伺っております。

 私の地元には、恵庭と千歳という、千歳には航空自衛隊の千歳基地があり、そして、恵庭には陸上自衛隊の駐屯地があるという、この千歳と恵庭の地を合わせて約三万人の自衛隊関係者の皆さんが住んでいる、いわば基地の町と言われるところでございます。

 今回派遣をされている自衛官の皆さん、若い方がとても多いです。二十代、三十代という、私と同年代なんですけれども、こういった自衛官の皆さん、そして、特にその自衛官の御家族、妻という方は、本当に私と同じような年の方々なんです。ですから、本日は、私への答弁、私に答えるのではなくて、ぜひ、こういった自衛官の方、そして御家族の皆さん方に説明をするつもりでお答えをいただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 いただいた時間が三十分しかありませんので、質問を絞って行いたいと思います。

 今まで、政府は、アメリカがイラク戦争において劣化ウラン弾を使用したかどうか、このことについては、常に隠していらっしゃいました。明確にしてこなかったわけなんですけれども、先日の報道におきまして、オランダのカンプ国防相が米軍のサマワ付近での劣化ウラン弾の使用を認めた、こういった報道がありました。

 川口外務大臣にお伺いしたいのですけれども、日本政府はこの事実を認識しているのでしょうか、あるいはアメリカに対して事実確認をしているのでしょうか。よろしくお願いします。

川口国務大臣 委員はきょう、赤のブレザーをお召しで、私もここぞというときには赤を着ることにいたしておりますけれども、同好の士がいたということは、私にとっても心強い限りでございます。

 それで、劣化ウラン弾のことでございますけれども、オランダ政府が、議会からの質問書に対しまして、二月十七日付の書面の中で、昨年の十二月にオランダ軍がサマワ近辺において弾薬を処理した際に爆発処理用の穴の中で劣化ウラン弾と見られるりゅう弾を発見したということを、また、その当該りゅう弾を発見した隊員を検査しましたところ最大〇・〇〇五ミリシーベルトの放射線を浴びた可能性があるという結果であったということを言っています。そして、〇・〇〇五ミリシーベルトの放射線というのは派遣部隊の基準である〇・五ミリシーベルトをはるかに下回るものであるということを回答しているというふうに承知をいたしております。

 ということで、御質問にお答えをすれば、そういうことがあったということは認識をいたしております。

小林(千)委員 アメリカに対して問い合わせを行っているのかどうか、再度お伺いしたいと思います。

川口国務大臣 政府といたしましては、このオランダ軍の話について情報がありましたので、その後、米軍に対して、米軍といいますか、米政府に対しまして情報を聞きました。そして、米側から、オランダに提供をしたというのと同様であるとして情報の提供を受けました。

小林(千)委員 それでは、防衛庁長官にお伺いします。

 派遣をされた自衛隊の皆さん、先遣隊を含めるともう一カ月以上が経過をするわけでございます。自衛官の皆さんは全員、放射能測定器を携行しているというふうに聞いておりますけれども、この一カ月間の間で、測定に関する報告というものはどのように出ているのでしょうか。

石破国務大臣 先生御指摘のとおり、測定器を所持いたしております。これは部隊用と個人用と二種類携行しておりますが、現在までに、自然界に存在する以上の放射線を感知したという報告は受けておりません。

小林(千)委員 サマワで活動されている方々の中で、日本の市民団体の方々も多くいらっしゃるんですね。その市民団体の方々の報告によりますと、サマワに残されている兵器の残骸から通常の三百倍の放射線の量を検出したという報告が上がっております。実際にこういった地域は自衛隊の方々が活動している実施区域内ではないんですか。

石破国務大臣 実施区域をどのように御理解か、ちょっと私はよくわかりませんが、自衛隊がやります実施区域という中には、それは入っているのかもしれません。それは、市民団体の方がどこでそのような測定をされ、どこでそのような数字を出されたか、これは私わかりませんけれども、それは、ここだというふうにおっしゃっていただきませんと、実施区域に入っているとも入っていないともお答えをいたしかねるところでございます。

 しかしながら、私どもとして、そのような二種類の検知装置を保持いたしておりますので、私どもが行動します地域において、そのようなことはございませんし、そういうことがあってはならないということでそういうものを携行していっているものでございます。

小林(千)委員 今、活動区域の話になりましたけれども、この自衛隊の活動区域というのは、前提といたしまして、アメリカ軍は今まで劣化ウラン弾の使用を明確にしていなかった、その地域での使用を明確にしていなかったということが前提になって、今回、活動区域が設定されたというふうに聞いておりますけれども、今回、実際にサマワの地で劣化ウラン弾が見つかったという事実を踏まえて、この活動区域の変更というのはあり得るのでしょうか。

石破国務大臣 活動区域という言葉をこれまたどのような意味でお使いかはちょっとよくわかりませんが、私どもが行います活動というものは、当然、実施区域ということで定めておるわけでございます。

 それは非戦闘地域であるということを前提としておるわけでございますが、その場合に、我々がガイガーカウンターといいますか検知器を持っていきまして、それが自然界に存在しないものを放出しておるということになりますれば、そこでの活動は行わないということでございます。それは、区域の変更とか、そういう概念ではございません。

小林(千)委員 石破防衛庁長官は、以前に、これは二月九日ですけれども、この予算委員会の民主党の生方委員の行った質問に対しまして、今までサマワ周辺にはガンマ線が出ているところはない、ゆえに劣化ウラン弾がある心配はないという答弁をされているんですよ。この前提が、今回、この劣化ウラン弾が見つかったということによって成り立たなくなるわけなんですけれども、これはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

石破国務大臣 その答弁を私は詳細に存じておりません。答弁を御引用いただきますときは、ぜひ事前にお知らせをいただきまして、前後の脈絡を見ませんと、どういう趣旨で答弁をしたか、ちょっと委員の御質問に的確にお答えできない場合がございますので、ぜひ事前に何月何日のこの答弁という御指摘をいただければ大変幸甚に存じます。

 その中におきまして、先生おっしゃいますが、生方委員にそのようにお答えをした前後の脈絡、よくわかりかねますけれども、いずれにいたしましても、私どもとして、自衛隊員の身体、先生おっしゃいますように御家族の御心配もございます、自衛隊員の健康ということもございます。であらばこそ、そのような放射線を検知するものを所持しておるわけでございまして、そのようなものが仮にあったとしました場合には、その地域では活動しないということになるわけでございます。

小林(千)委員 自衛隊の皆さんや御家族の皆さんのそういった心配にこたえるためにというふうにおっしゃっておりますけれども、実は、きょうの朝日新聞、これは地元の北海道版に載っていたものなんですけれども、ある自衛隊の隊員の方です。派遣は一大事なのに、詳細について、私たち自衛官については報道でしか何も知ることができない、例えば基本計画決定についてや派遣命令など、そういったことから、上官から知らされることもなかったというふうに言われております。

 これでは、とてもじゃないけれども、派遣をされる自衛官御本人あるいは御家族の皆様の心配をなくすということにはならないのではないかと思いますが。

石破国務大臣 自衛官がとか、自衛官の家族とか自衛官の恋人とか、いろいろな方がいろいろなことをおっしゃっておられます。そのことには、私ども、きちんと配意をしていかなければならないものだとよく思っております。

 しかしながら、基本計画について、あるいは実施計画について、実施要項について、どのようなものだ、それをいつの時期にどれぐらいの内容をもって知らすべきなのかということは、それは、私どもの組織の中でそれぞれ適時適切に行っておるものでございます。

 それが、どのような内容を知らされねばならなかったのか、どのようなことを自分は知らなかったのか、どのような立場におられる方がそのようなことをおっしゃっておられるのか、そのことにつきましては、私は詳細に存じません。

 しかしながら、派遣される自衛官の方々が何も知らないままに、事実が全く詳細でないままに、言われるがままに派遣をされている、それはけしからぬではないかという御指摘だとすれば、私は、必ずしもそのようなことが行われているとは承知をいたしておりません。

小林(千)委員 実際にこう言って、派遣をされる方々が思っていらっしゃるんです。そういった方々が、御家族がいらっしゃるわけなんですよ。そういった方々の声というものをしっかりと聞いていただきたいと思います。

 今回、劣化ウラン弾が使用された地域というものはアメリカ軍からオランダ軍には知らされたという報道がありますけれども、そういったウラン弾が使用された地域というのは自衛隊員にも、日本側にも知らされているんでしょうか。

石破国務大臣 このことにつきまして、詳細にこの地域ということは今お答えをいたしかねます。それは、それぞれの軍事上のいろいろな情報につきまして、機微にかかわることでございますから、そのことについてどうのこうのということは、申し上げることは差し控えたい。

 ただ、先生、自衛隊というのは、先生も地元でよく御存じです。私も随分と、国会議員になりまして以来十八年になります、自衛隊の中で家族ぐるみのおつき合いをしておる方もあります。そして、派遣される今回の隊長にいたしましても、群長にいたしましても、本当に、みんながどうすれば一人残らず無事に安全に帰ってこれるかということには最大限の配意をいたしております。

 私はそのような自衛官たちを信頼いたしておりますし、自衛官たちの信頼を裏切るような、そういうような派遣をしたとは私は一切思っていない。それは、派遣された自衛官を信頼するということであります。

小林(千)委員 アメリカがオランダ兵には教えるけれども日本には教えていないということですよね。アメリカの要請に対して自衛隊を派遣したのではなかったんですか。日本もなめられたもんじゃないですか。

石破国務大臣 アメリカの要請に基づいてということが全く事実と異なることは、再三答弁を申し上げているとおりでございます。そしてまた、現地の脅威情報につきましては、当然、私どもの間で共有はいたしておりますが、その中身について詳細に申し上げることはできないと申し上げておるわけでございます。

 私どもは、アメリカになめられたものだとか、そのような認識は一切有しておりません。日本が主体的に判断し、主体的に派遣を行っておるものでございます。

小林(千)委員 そういった情報というものをしっかりと、派遣される自衛官の皆さん、そして残される御家族の皆さんに公開していただきたいと思いますし、そういった上で、自衛官の皆さん、御家族の皆さんのこういった懸念や心配というものをなくす努力をさらに一層していただきたいと思います。

 これ以上言ったら時間がなくなりますので、次に行きたいと思います。

 外務大臣にお伺いしたいと思います。湾岸戦争の折に、従事した欧米の兵士の帰還兵の中で湾岸戦争症候群という症状が発生をしておりますけれども、この湾岸戦争症候群とはどういった症状なのでしょうか。

川口国務大臣 湾岸戦争の帰還兵士の中にさまざまな症状があって、国防省においてこれを調べたということは承知をしております。それで、調べた結果といたしまして、特に何か特定の原因によってそういうことがあったということではないということが結論であったというふうに承知をいたしております。

 御質問について、そういうことをお聞きになられるということでございましたら詳細なデータを持ってきておりましたけれども、そういうことでなかったので、ちょっと具体的な数字等についてのデータは今持ち合わせておりませんけれども、かなりの数の将兵を調べて、特に何が問題であったということではなかったというふうに承知をしております。

小林(千)委員 この湾岸戦争症候群、さまざまな症状が発生をしているというふうにおっしゃいましたけれども、白血病、がん、体や骨の痛み、記憶障害などが症状としてあらわれているようです。そして、帰還兵だけではなくて、生まれてくる子供たちに対しても、出産の異常あるいは先天的な障害を持って子供たちが生まれてくる、こういう事実が発生をしている。これは放射能被曝特有の症状ではないのですか。

川口国務大臣 米国防省がこれについては九六年に発表をいたしております。

 その報告書ですと、まず一九九〇年、九一年の湾岸戦争には約六十九万七千人の米軍兵士が派遣をされて、その大部分は健康な状態で帰還をした。その後、帰還兵の一部から健康面での影響に関する懸念が表明されたことを受けて、一連の調査が開始をされた。

 九五年十二月までの時点で、包括的な臨床評価計画に参加をした一万八千五百九十八人の帰還兵はさまざまな臓器系にまたがる多様な症状を報告しているが、これらには臨床的に明確なパターンがない。また、過労、関節痛、頭痛、不眠といった症状を訴える者も多いが、これらは一般的に言って二五%から七五%の場合にそもそも原因が特定できないものであるということでございました。

 そして、湾岸戦争症候群の原因となっている可能性がある事項として、現地で使用された殺虫剤、対炭疽菌予防接種、油井の火災、粉じん、飲料水、化学剤防護用コーティング、劣化ウラン等につき調査を行った。このうち劣化ウランについては、劣化ウラン弾に被弾すること等により高濃度で摂取しない限り健康に影響はないとの調査結果があったということです。そして、劣化ウランが湾岸戦争症候群の原因ではないことを示す確固たる医学的、科学的証拠が蓄積されつつあるというふうに言っています。

 米国大統領諮問委員会最終報告書においては、湾岸戦争中に劣化ウランにさらされたことが湾岸戦争復員軍人が訴えていた健康上の問題の原因であった可能性は低い、ハイリーアンライクリーと書いてありますが、という結論であったということでございます。

小林(千)委員 劣化ウランの影響の可能性が低いですとか原因が特定できない、こういうふうな説明をされても、御家族の心配は減りはしないと思うんですよ。

 石破防衛庁長官にお伺いしたいんですけれども、大臣はあのように、劣化ウラン弾とのこういった因果関係は低いですとか原因は特定できないというふうにおっしゃっておりますけれども、隊員の安全といったものに責任を負っていらっしゃる以上、そういった人体への影響について注視は当然していただいていると思いますし、そういった放射能に対する危険性あるいは湾岸戦争症候群と言われるこういった病気の症状について、今、自衛官の皆さんはこういった教育を受けて派遣をされているのでしょうか。

笹川委員長 防衛庁松谷防衛参事官。(小林(千)委員「防衛庁長官に伺っているんです」と呼ぶ)委員長が指名をいたしましたから、聞いてから。

松谷政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊員の健康管理というのは大変大事なことであるというふうに常々考えておりますが、特に派遣部隊の健康管理は私どもにとっても重要な課題であるというふうに考えております。

 派遣隊員につきましては、今先生御指摘ございましたけれども、十分な衛生教育、各レベルにおける衛生教育を事前に行い、これにあわせて健康診断あるいはワクチン接種等を行って、さらに、専門的なことについてはそのアドバイスもできるように、臨床経験が豊富な医官も同行させておるところでございます。

小林(千)委員 各レベルにおける衛生教育というものの中に、そういった放射能による影響というような教育もなされているんでしょうか。

松谷政府参考人 各レベルというのは、隊員のレベル、指揮官、そういう意味で申し上げたものでございますけれども、もちろん、それぞれのレベルにおいて必要な知識の付与を行っているということでございます。

小林(千)委員 実際にその放射能の影響による人体への影響というものを教育として自衛官が受けているかどうかをお伺いしているんです。

松谷政府参考人 それぞれのレベルにおきますけれども、今回の派遣においても、放射線の障害、これに限りませんけれども、むしろ感染症の問題、いろいろ健康に関する問題がございます。衛生教育全般について、それぞれのレベルについて十分な注意をもって事前に行ったところでございます。

小林(千)委員 そういった放射線による人体への影響に対する教育もされているということですね。――はい。

 民間のウラニウム医療研究センターというところの報告によりますと、湾岸戦争に従事をした兵士の方から、二カ月派遣をされただけの方が湾岸戦争から帰ってきて九年後に亡くなったという報告が挙げられております。また、このウラニウム医療研究センターの現地調査員の二人の方、十三日間、現地で調査に当たった、こういった方のお二人の尿からも汚染が確認されたというふうな報告が挙がっております。因果関係がないですとか、原因が特定できないからといって、御家族に向かって、心配ないだとか関係ないだとかということが実際に言えるでしょうか。

 防衛庁長官にお伺いしますけれども、もう長い方は派遣されて一カ月以上たつわけなんですよ。実際に十三日間あるいは二カ月でそういった症状が出るかもしれない、そういった考え方がある中で、派遣をされている自衛官に対する派遣中のメディカルチェックあるいは健康診断ということは行われるんでしょうか。

石破国務大臣 そのために、今、衛生担当の参事官からお答えをいたしましたが、知見を有する医官が一緒に行っておるわけでございます。それは、現地の方々の医療のニーズにおこたえをするということもございますし、隊員の安全に配慮するということもございます。

 そして、それがいつ、どれぐらいの頻度で交代をするかということはまだ定めておりませんが、帰ってきたときもきちんとチェックをする、そして定期的に健康診断を行う、そのことにつきましては、これは、隊員の健康管理に私ども防衛庁・自衛隊として万全は期しております。

小林(千)委員 今の答弁の中で、帰国後のそういった健康チェック、メディカルチェックということも行うというお話があったんですけれども、精神面でのチェックといいますか精神的なケア、例えばカウンセラーによるこういったケアや、後からの心のケアといったものも行われるんでしょうか。

石破国務大臣 これは行います。そういうような精神的外傷ということも、私ども考えております。

 それは、当然、カウンセラーの資格を持った者も参ります。そのことに知見を有した医官も派遣をいたしております。帰ってきた後もそうであります。そういうような地域において活動する自衛官の健康、それは肉体的な、精神的な、両方とも含むものでございますが、このことには万全を期してまいります。

小林(千)委員 ぜひそれは必ず行っていただきたいと思いますし、五年後、十年後になって症状というものが出てくる可能性だってある、あのときが原因だったんだということになってしまってからでは遅いわけなんですから、しっかりと今から対策を打っていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 もう最後になってしまいました。私も地元ですから、さまざま自衛官の皆さん、御家族の皆さんから声を聞かせていただくことがあります。実際に声をぶつけたいと思っている御家族の皆さんもいらっしゃいます。そういった生の声というものをぜひ紹介をしたく、二、三挙げさせていただきたいと思います。

 これは御家族の方なんですけれども、夫が派遣をされることに決まった、食後の晩酌で早死にや生命保険のことを言うようになったと。あるいは、ほかの家庭の方ですと、派遣については全く何も話さなくなり、家庭の中での会話さえなくなってしまった、夜も眠れないで、食事もとれないで八キロもやせてしまった、こういった不安な毎日を送っている。家族のこの思いというものを受け取ってほしいのに、その思いが届かないことに憤りを感じている、持っていきようのない怒りを感じている、自分たちには何もできない、やりきれない、残酷だ、こういう声を家族の方が実際に上げているんです。

 この場をおかりいたしまして紹介したいと思いますし、実際に中核になって派遣をされた第二師団、これは旭川にあるんですけれども、旭川の駐屯地のすぐ隣には護国神社という神社がございます。その神社の絵馬に、お母さん、これは妻の方ですけれども、夫に対して、すぐに帰ってきてね、帰ってきたらまたバーベキューしようね、キャンプに行きましょうね、こういう絵馬があるんです。娘さんの言葉で、お父さん、無事に帰ってきてね。派遣をされる友人の方でしょうね、おまえが帰ってくるまで神に誓って禁酒する、こういう絵馬があるんですよ。

 ぜひ、こういった家族、そして自衛官の声というものを真摯に受けとめて、聞き届けていただきたく思います。

石破国務大臣 自衛官に対しまして本当に御配慮をいただきまして、心から厚く御礼を申し上げます。

 そのような声というものは、当然、冒頭お答えを申し上げましたが、私ども、真摯に耳を傾けなければいけないと思っております。

 ただ、私が申し上げたいのは、そのような声が上がってこないとすればなぜなのかということです。先生が御指摘になるようなお話が上がってくるようなシステムを、私どもは持っておるつもりです。したがいまして、いろいろなことが中できちんと上がってくるということが大事なのです。それがマスコミ、そういうものに出るよりは、もちろん出ることが悪いとは申しません、そういうことがきちんきちんと上がってくるシステムであるというふうに私は自負をいたしておりますが、委員が地元で、そんなことはないのだ、こういうような声は圧殺されて届かないのだということがあれば、ぜひまた今後の糧に御教示いただきたいと存じます。

小林(千)委員 実際に声を上げることができないから、こうやって上げているのでしょう。こういったような情報不足ですとか、こういったことからくる自衛官の不安、家族の不安というものを一つでもなくすように努力をしていただきたい、こういうことを申し上げまして、時間になりましたので、終了させていただきます。

笹川委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 きょうは、まず外交問題について、この予算委員会で質問したいと思います。

 新聞によりますと、日本はアザデガン油田に関して契約したということが伝えられています。川口大臣、おめでとうございます。

 今、日本は本当にエネルギーが大変難しいことであり、このアザデガン油田に関しては、アメリカからもこれに対して、イランに対して厳しい態度をとり続けるアメリカから、日本が勝手にそういうことに踏み切らないようにというようなことで圧力があったということはよく存じております。また、このアザデガン油田と日本との契約に関して、早速、バウチャー国務省報道官から、これに対して不快感の表明があった。私は、本当に大変な圧力がアメリカからあったんだと思っています。

 今、イラクで私たちは大変な問題を抱えているわけですが、このイラクというのは、アメリカの長期戦略からいえば、必ず、イランへのある意味での脅威、イランへの圧力の足がかりとしてイラクというものがアメリカにとって特に重要性を持っていたんだと言われています。そうした行動が進んでいけば、これは中東全域で非常に不安定化が進み、また、九九・九%の石油を海外に依存している我が国としては、大変な将来における脅威となり得る可能性があります。

 その意味で、このイランへの日本の石油権益の確保ということは、私は大変重要なことだと思っております。また、そのことは単にエネルギーの物理的な量だけではなく、このイランへの石油、エネルギーとの関係というものは日本の中東政策にとっても大変重要な意義を持っています。

 もう私たちは歴史を振り返ることをときどき忘れがちでありますが、一九五〇年代、当時のイランにおいて、モサデク政権、経済学者であったモサデクが政権につき、そして、石油資源、エネルギー資源というものを初めて自分の国のもの、発展途上国の恒久主権の考え方に基づいて、エネルギーというものはイランに属するものだということで石油の国有化を始めたわけであります。

 それに対して、御存じのとおり、ブリティッシュ・ペトロリアム、当時はアングロ・イラニアン石油と言っておりましたが、そうしたイギリス系の石油メジャー、そしてアメリカの石油メジャー、当時はセブンメジャーズと言われていた石油の利権をほとんど牛耳っていた石油メジャー、それにアメリカのCIAなどが入りまして、このモサデク政権を足元から覆していって、そして、それの転覆をはかろうとした。

 同時に、石油メジャーは、大規模な石油禁輸、エンバーゴー、これを実行しまして、石油を輸出させない、したがって、そのイランのモサデク政権を経済的にも立ち行かなくさせていくという方策をとったわけであります。

 そのとき、世界の中にあってただ我が国だけが、出光石油の日章丸がこのペルシャ湾にタンカーを入れまして、そして、世界の中で日本だけがタンカーを派遣して、その石油を日本が買い取って、そして、モサデク政権を支えたわけであります。

 このことに関しては、当然のことながら、当時のアングロ・イラニアン石油が、自分たちの所有物を盗んだということで、日本に対して国際訴訟をかけてきました。それに対しても、日本の企業は、断固としてそれに立ち向かって、そして、国際訴訟においても勝利いたしました。

 それは、日本の長いエネルギー戦略にとって、あるいはエネルギー外交にとって、本当に金字塔ともいうべきものであり、また、この記憶が深く広く中東アラブ社会にも残っておりまして、日本の話が出るたびに、あのとき日本は頑張ってくれたと。このことが日本に対しても大変な信頼を生み、そして、日本企業がこの中東の社会において、イランであろうがトルコであろうが、あるいはアラブ諸国であろうが、この中東において、日本の名声、そして日本人の活躍というものを支えてきたというのは周知の事実でございます。

 その意味において、今回、このアザデガン油田の利権の確保というものは大変な御尽力はあったと思います。そうしたアメリカの圧力あるいは非常に難しい今の状況、こういう中で、よくぞ外務大臣、日本の権益の確保のために御尽力されたと、敬意を持って非常に高く評価したいと思います。

 それで、川口外務大臣、今のこのような難しい状況において、特に世界の石油を、エネルギーを支配しようとするアメリカが大変な圧力をかけている、そのことがイラクの問題にも関係してくるわけですが、このような状況において、我が国のエネルギー戦略、特に中東におけるエネルギー戦略について、外務省としての方針をお伝えください。

川口国務大臣 今、首藤委員がおっしゃられましたように、我が国はエネルギー資源に非常に乏しい国であります。そういった国にとって、原油の自主開発などの安定供給、これを確保するということは非常に重要な国の政策であるわけでございます。

 イランにつきまして、そういった意味で、このアザデガンの開発の話がずっと進行していたということでございますけれども、その署名が今般なされたということはこの観点から非常に重要であるというふうに考えております。

 それから、私も先般、一月にイランに行きましたけれども、このことがまた日本とイランの二国間の関係を、より友好関係を強化するということに資することを期待しているわけです。

 他方で、イランの持っている核問題、これについての懸念、これは私どもも大量破壊兵器の拡散等々の観点から非常に重要な問題だと思っておりまして、その意味で、昨年の十二月にイランが追加議定書に署名しました。これは、私が一月に行きましたときにも、この署名については歓迎するということを言い、そして、その追加議定書を批准していくこと、それからIAEAの理事会の決議、それとNPTの条約、これに沿った形でイランが行動するということは重要であるというふうに考えておりまして、それは引き続き慫慂をしているわけでございます。

 そういったことによって、イランの核問題についての懸念が日本とイランの友好関係の進展に悪影響が及ぶということがないように、我々としては強く希望をしているということでございます。

首藤委員 外務大臣おっしゃるとおりだと思いますね。イラクはもう既に戦闘状態にまた戻りつつあり、大変難しい状況にある。こういうときにこそ、その戦火がイランに広がらないように、イランに広がればとりもなおさず湾岸に広がり、とりもなおさず中央アジアに広がっていくということを意味してきます。

 ですから、その意味で、今こそ、私たちができる外交というものに全力をかけて取り組んでいただきたい。そのためには、このイランというものを、私たちの理念が生きる形で、私たちのエネルギーの安定供給源にし、そしてまた、中東の安定の要素に全力をかけて取り組んでいただきたいと思います。

 特に、核の問題がございましたが、イランも、日本が被爆国であるということはよく知っている。言うなれば、イランに対して、本当に心からイランの将来を憂い、そして、イランに新しい方向を示すことができるのは、我が国をおいてほかにはないんです。ですから、その意味で、今、イラクに対しての外交努力がいま一歩おくれているところは否めないところですが、イランに対して全力をかけて外交努力を傾注していただきたいと思っております。

 さて、そう言っている間にも、世界はどんどんどんどん不安定な状況になっています。最近、我が国は直接利害関係があるところしか余りニュースでも取り上げられないんですが、世界のメディアはハイチの情勢に大変関心を払っております。

 ハイチは、これは実は私がこういう仕事をすることになったきっかけともなっていったんですが、一九九〇年代の初頭にアリスティド大統領が民兵組織に追われて、そして、そのアリスティド大統領を国際社会の努力でもう一度ハイチへ帰し民主化を進めようという、一九九〇年代に行われた最初の努力だったんです。

 それに対しては我が国も選挙派遣団を送り、実は私はそのときは政府派遣団の団長を務めていたわけですが、私自身、本当に地獄のような体験でありまして、ハイチのサバナ・ゾンビ、ゾンビ高原というジャングルの中で、アメリカ軍の特殊部隊と組んで選挙監視をやっていたわけです。

 それだけの国際社会の努力の傾注としてアリスティド大統領が復帰したわけですが、しかし、現実は、またまた大変な騒擾状態になっていって、アリスティド大統領自身もまた職を追われるというような瀬戸際にまで追い詰められています。

 そこで、問題となるのは、今、きょうのニュースによりますと、ハイチ第二の都市、これはカプハイチアンというところですが、カプハイチアンもついに陥落したというニュースがありました。あとは首都のポルトープランスなんですが、ここには、我が国はハイチに対して大変な外交努力をしまして、しっかりした大使館もあるし、邦人もおられます。そういうような状況において、今、この邦人の安全、そして大使館の機能という点に関して、どういう状況にありますでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 ハイチの情勢につきましては、委員がおっしゃられましたように、非常な混乱状況にあると申し上げていいと思います。

 これは昨年以降いろいろなことがあったわけですけれども、今月に入って、反政府武装勢力が地方の主要都市で警察署を占拠するというようなことがございまして、治安情勢が悪化をしているということです。先週末には、今委員がおっしゃった首都のポルトープランスでも、反乱軍といいますか武装勢力側とそれから大統領支持派、この二つの間で小競り合いがあったという状況が生じております。

 我が国の邦人への支援でございますけれども、これはずっと危険情報を段階的に出してきておりまして、二月十九日の時点で、ハイチ全土に対しまして渡航の延期というものを発出しております。大使館で在留邦人全員の安否を確認するとともに、海外に、国外へ自主的に退避するということを呼びかけております。

 今、在留邦人数、二月二十日現在で十二名ということでございまして、その中に、大使館員が二名、修道女で行っていらっしゃる方が五名、ボランティアが一名、学生二名、他国の外交官の配偶者二名ということで、十二名ということになっております。

 今後、ハイチがどうなっていくかということについて、予断を許しませんけれども、今、アメリカ、フランス、カナダ及びカリブ共同体の仲介努力がハイチの政治的危機を解決するために行われております。関係者同士の話し合いによって平和的に問題が解決をすることが重要だというふうに考えていまして、事態の推移を注視していくということと、国連や先ほど申し上げたような国々と協力をしながら対処していきたいと考えております。

首藤委員 大臣、このハイチの、先ほどおっしゃった修道女ですけれども、この地域は日本にとっては余りなじみのないところですが、シスター本郷、シスター須藤という非常に傑出された方がおられまして、特にシスター須藤というのは、私とちょっと字が違いますけれども、マザー須藤と言われるぐらい、たった一人で入られまして、一人から二百床のらい患者と結核病棟をつくり上げた方で、我が国はその功績を評価して、日本に帰国していただいて勲章を差し上げた方なんですね。

 ですから、そうした、日本にとっては、直接余り、小さいところでありますけれども、本当に、世界のそうした援助関係者あるいは人道問題に携わっている人からすると、おお、あのシスター本郷、シスター須藤がいるところかというところだと思うんですが、そのシスター須藤、シスター本郷は、現在でもまだポルトープランスに残っておられるんでしょうか、あるいは退避される予定なんでしょうか、あるいは最後まで退避されないんでしょうか。

川口国務大臣 今おっしゃられたシスター本郷それからシスター須藤、このお二方につきましては、退避の働きかけをしているわけでございますけれども、退避の意思はないということでございます。

首藤委員 わかりました。ありがとうございました。

 これから我が国も、援助に関しても、本当に口だけの問題じゃなくて、危険になっても退避しない方もだんだん恐らく出てくると思います。ですから、その意味でも、こうした不安定化した国際社会において日本人がどういう形で貢献していくのかということを考える意味からでも、このハイチの状況というのは今後も見守っていきたいと思っております。

 さて、きょうの主要な課題であるイラクの問題ですけれども、まず防衛庁長官に、サマワにおける自衛隊の活動についていろいろお聞きしたいと思うんですね。

 サマワで活動している自衛隊なんですが、今度、いよいよ本隊が入りまして、今までのオランダ軍のキャンプから、いよいよ我が国のコンパウンドというかバッテリーといいますか、そういうところへ入っていくと思うんですが、まだその土地の借地料について合意が満たされていないと思うんですね。一説によると、一億八千万、一億五千万、一億五百万、さまざまな説がございます。

 しかし、常識からいってそんな金額は、もうただの砂漠でございまして、例えば、それを向こうが言っているように、やがて麦をまくといっても、麦をまいたとしても、そんな大した土地ではない。そういうところに、億を超える、あるいは一千万を超えるような借地料というのはあり得ないわけですが、同じぐらいの規模、どれぐらいですかね、二十五ヘクタールぐらいですかね、そのぐらいのキャンプを持っている例えばオランダ軍のコンパウンド、これの借地料はお幾らでしょうか。いかがでしょうか。

石破国務大臣 オランダの面積、正確には承知をいたしておりませんが、我々がこれから先使おうとしておるものよりはかなり狭いというふうに承知をいたしております。

 その金額等々につきましては、これはまたおしかりを受けることを覚悟の上で申し上げますと、金額につきまして、情報は有しておりますが、この場で申し上げることはちょっとお許しをいただきたいと存じます。よく存じております。

首藤委員 さっき、私、二十五ヘクタールと言いましたけれども、二百五十ヘクタールですね。間違いです。

 その土地の値段がわからない、それはおかしいじゃないですか。いいですか。ここはほかのところじゃないんです。予算委員会なんですよ。防衛庁の予算も含めて、それを討議するところなんですよ。

 その金額を、例えばオランダが幾らか、これはみんな知っていますよ、その辺の人。その辺の歩いている不動産屋のおじさんに言ったって、ああ、オランダには幾らで貸したよ、こういう話ですよ。それが国家秘密なんでしょうか。軍事秘密なんでしょうか。オランダに幾らで貸しているということが知られると、迫撃砲がばんばんばんばん飛んでくるんでしょうか。おかしいじゃないですか。それは幾らですか。ちゃんと言ってください。

石破国務大臣 迫撃砲が飛んでくるわけではございませんが、確かに、その辺のおじさんが、おらはオランダに幾らで貸したぜ、こう言っているのかもしれません。いろいろな数字は飛び交っております。これは飛び交っておりますが、正式にオランダが一体どのような契約をし、どういうふうな形で支払いをしておるかということにつきましては、それはお答えをいたしかねる。

 なぜかといいますと、これは、私ども、いろいろな国との公平というのは図っていかねばならないだろう。日本だけが法外のお金を払うというわけにはいかないであろう。そこからどのように推しはかるかということでございまして、いずれにしても、適切な支払いというものはやっていかねばならない。そのときに、先生御指摘のように、オランダとの関係をどう考えるべきなのかということは当然留意すべきことと思っております。

首藤委員 防衛庁長官、やはり、話、論議を聞いていて、今の点は別として、軍事上の問題だから言えないというような表現はもうおやめになっていただきたいと思うんですね。

 例えば、御存じのとおり、太平洋戦争、あれだけの戦争をやって、アメリカ軍が本当に隠した秘密というのはたった二つしかない。一つは、山本長官機の撃墜ですよ。これは、暗号を解読しているということがばれないように、だれを落としたか知らないということになっていた。第二、マンハッタン計画、これはもう最後までほんの数人しか知らなかった。アメリカ軍は、太平洋戦争を通じて公開しなかった情報というのは二つしかないと言われているんですよ。

 それを、あなたのように、我が国が幾らで借りたかはともかく、オランダ軍のことも知らない、何とかも知らないと言っていたら、国会の審議が成り立たないじゃないですか。

 シビリアンコントロールというんですよ、御存じですか。シビリアンコントロールという言葉があって、それは、国会で軍事活動をチェックするという意味なんですよ。それが、わかりません、知りません、伝えられません、我が国に脅威となります、そんなことを言ったら話にならないんじゃないですか。

 もうみんな、だれに聞いたって、こんなことはもうわかっているんですよ。いろいろ巷間伝えられるところでは、これは私はジャーナリストとかにいろいろ聞きました。平均して言われているのは、大体、オランダ軍が二百五十ヘクタールの土地を借りて約七十万円から百万円と言われていますよ。それに対して、どうして一億という借地料が出てくるんですか。

 だから、もしこんな借地料が出たら、それは現地社会にとって、日本が払うとしたらですよ、大変な害がある。これはもう日本の自衛隊の存在そのものが現地社会を破壊していくことにつながっていくんですよ。

 ですから、私は、この問題をないがしろにするのではなく、どんなに言われても、やはりオランダ軍と同じ金額、それのせいぜい二倍ぐらい払ってもいいですよ、後から行ったんだ。しかし、まさにその金額をやらない限り、日本は必ずまた国際社会から批判を受ける、本当に問題になると私は思いますね。

 NGOでもそうなんですよ。昔は、NGO活動というと、いいことだ、いいことだと言っていましたけれども、最近は、NGOはいいことよりも悪いことにつながっているんじゃないかということで、カナダを中心にして、ドゥー・ノー・ハーム、NGOの基本原則は、少なくともそこで悪いことにはならないというのが最大の原則だと言われているわけですよ。

 ですから、自衛隊も、サマワに行ったことによって、サマワの現地社会、現地経済、サマワの部族社会を壊すことのないように、ここのところはもう本当に慎重にやっていただきたい、そういうふうに思うわけであります。

 また、このサマワの宿営地の近くで劣化ウラン弾が発見されているわけですが、それに関して、先ほど、我が党の小林委員からもこの問題について質問がございました。

 これに対して、最近、イギリス国防省がついに、劣化ウラン弾は健康被害があるということを認めた通達を出している。これは御存じですよね。

 劣化ウラン弾は健康障害を引き起こす可能性、危険性がありということで、あなたは、DUが、劣化ウラン弾が使用された戦場に派遣されていて、劣化ウラン弾は要するに放射性重金属であって健康障害がある、だからウラン検出のための尿検査を受けなさい、こういう通達が出されたということを聞いているんですが、御存じでしょうか。

 イギリス軍というのは、御存じのとおり、バスラを中心に、要するに南部、サマワを含むムサンナ県を含んで南部を管理しているところなんですが、この通達に関して御存じでしょうか。

石破国務大臣 承知をいたしております。

首藤委員 それに対しては、ぜひ、イギリス軍と同じように、目に見える形で、例えばイエローカード、レッドカードのような形で警告を出していただきたいと思います。時々、いろいろ自衛隊の訓話なんかを見てみますと、訓話の中で、恐らく朝礼でも触れると思うんです。そういうものではなく、個々の隊員に対してカードを配ってこの警告を出していただきたいと私は切に思うわけであります。

 実際にサマワで活動しますと、さまざまな問題が出てきます。今までは、日本からは、行って頑張っているな、佐藤隊長、ひげの隊長、頑張っているな、こういう感じですけれども、実際に軍事活動をすると、さまざまな難しい問題がございます。軍紀というのもあります。これはもう、軍律厳しき中なればといって、倒れた友達をほうって突撃しなきゃいけない、そういう歌があるように本当に厳しいものがありますよね。

 最近起こったことで、私は愕然としたんですが、オランダ兵が勤務中に居眠りした、それによって自分の部隊を危険に陥れたということで、オランダ本国で訴追されて五年の禁錮刑という訴訟になっているわけですね。

 我が国の場合は、例えば、そういうふうに夜警に立ったりいろいろするわけですが、歩哨に立ったりするわけですが、そのときに、例えば居眠りする、同じような行為があった場合、我が国ではいかなる法律に基づいてどれぐらいの量刑が科せられることになるんでしょうか。防衛庁長官、いかがでしょうか。

石破国務大臣 お答えいたします前に、先生、もし知見があれば御教示いただきたいのですが、イギリス軍が劣化ウランに対して出しておりますペーパーは、劣化ウラン弾によって被弾した戦車に遭遇した兵士に対して尿検査というものが強く推奨されておるということでございます。

 イエローカードにつきましてはまた勉強させていただきたいのですが、先般もお答えをいたしましたように、それぞれの隊員がそういうような検知器、自分の中にどれぐらい蓄積されたかというのを持っております。さらにお教えをいただきながら、万全を期してまいりたいと考えております。

 今のお話でございますが、居眠りをしていた人間に対して禁錮五年ということがオランダにあったことは承知をいたしております。私どもといたしましては、自衛隊法第四十六条によって対応することになるというふうに考えておりまして、この場合に懲戒の対象となることでございます。そうしますと、免職まで含むような、そういうような懲戒を行うことになると考えております。

首藤委員 これはやはり、実際に部隊が展開すると、こうした問題は本当に非常に多く出てくる問題だと思うんですね。ですから、これは、承知しておりますとおっしゃいましたけれども、私がこの問題を言ったときに、窓口の方は承知しておられなかったので、私がこの記事ですよと教えてあげたんですが、やはりこういう問題、別に批判するつもりじゃないんですよ、これは本当に我々が、送り出した我々の責任で、自衛隊の人方もそうした状況にあるということを理解していただいて、本当に安全に帰ってくるためには一瞬とも気を抜いちゃいけないということで、ぜひ防衛庁の方もさまざまな可能性を研究していただきたい、そういうふうに強く強く求めます。

 さて、そのイラクでございますが、外務大臣、イラクの、ここは予算委員会の場なんですね、外務委員会でもなければイラク特の場でもないんですが、特に予算問題についてお聞きしたいんですね。

 この予算、十六年度の予算書、そして、ついこの間通った十五年度の補正予算、これで、十五年度の補正予算においていろいろなことが言われましたが、もう本当に紙切れ一枚なんですね。電力とか水・衛生、保健、治安とか、そういうところに十億単位でぽんぽんぽんぽんと振り分けてあるわけですね。そこで、私は、こんなものでは、補正予算とはいえそんなものは予算に値しない、詳しいもので出してくれということをしつこく言ったわけですが、国会自体が不正常な状態になって、その質問というのがなかなか生かされなかった。

 しかし、それからもう既に一カ月たつわけですよ。例えば、まず十五年度の補正予算に関して、この一カ月で調べられて、どのプロジェクト、どの病院、どの地方評議会、どの主体にどれだけプロジェクトを、どのプロジェクトをどういう形で配付することができるようになったか、この一カ月での進歩を外務大臣にお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 補正予算のとき、千百八十八億円というお話を当時させていただきまして、そのうち、イラクとの二国間の直接支援、これは五百五十九億円であったわけですけれども、その当時お配りをいたしましたように、電力、水・衛生、保健医療、治安その他の分野といった幅広い分野にまたがるものであって、供与先として、イラクの各省庁、地方政府等を想定しているわけでございます。

 それで、どのように進捗をしたかということで御質問でございますけれども、まず、ことしの一月十一日から、JICA調査団が、ヨルダン、これを拠点といたしまして、地域のコンサルタントを活用しながら、イラク国内の状況、支援ニーズを踏まえた無償資金協力、この案件形成の調査を行っております。

 それから、外務省といたしまして、あらゆる機会を生かしてイラク側当局と案件形成に向けて協議を行っております。また、サマワにおります外務省の職員それから自衛隊の先遣隊によるニーズの把握ということも行っているわけでございます。

 それで、補正予算が成立いたしましたので、案件形成の作業を一段と加速化をその後させて、促進してやっております。具体的に申しますと、以下のようなことでございます。

 電力分野でございますけれども、これは、発電所のリハビリの具体的な内容、移動式の発電機、変電機等の必要な台数、設置場所の詳細等につきまして、電力省の大臣や電力省の副大臣を含めた電力省関係者と具体的に協議を行っております。

 水・衛生分野でございますけれども、簡易浄水機の台数や設置場所等について、地方公共事業省関係者やバグダッド市の水道局関係者と協議をいたしております。また、汚泥処理車の供与につきまして、地方公共事業省関係者と具体的な協議を続けております。

 三番目に、保健医療分野でございますけれども、これは、我が国が過去に十三病院を手がけましたが、その十三病院等に対しますリハビリの内容、供与する機材の内容や数量等につきまして、保健省の関係者と具体的な協議を行っております。先週は保健省の副大臣が来日をいたしていまして、私自身もお会いをしてお話をしましたし、政府、JICAなどの多くの関係者と具体的に協議を行っております。

 治安の分野でございますけれども、これは、今後必要な警察車両の台数、配付計画につきまして、イラクの内務省と協議を行っています。

 また、アンマンにJICA調査団が拠点を置いて今仕事をしておりますけれども、その案件形成を促進するために、二十二日、日曜日ですが、無償資金協力課長を団長としまして、調査団をヨルダンに派遣いたしました。

 このほかに、日本のNGOとの間でも具体的なイラク支援のニーズについての協議を行っております。

 今、こういった取り組みを促進させておりまして、我が国としてできるだけ早くこれらを実施していきたいというふうに考えております。

首藤委員 外務大臣、補正予算というのはこれからあと一年かけて使うということじゃないんですよ。これは、もうすぐ四月、三月あと一月しかないんですよね。そこでそのレベルだったら、結局、これは予算をつけられない、具体的に配付できないということですよ。今おっしゃった内容は、一月二十七日にこの委員会に出されたものと全く変わらないですよね。

 それで、一体どのように具体化したのかということを私がしつこく言いましたら、外務省経済協力局政策課から送ってきまして、補正予算審議の際に衆議院予算委員会に提出させていただいた資料に記されている事業のうち、現時点で決定したものは一つもありませんと書いてあるんですよ。これでどうやって年度内に補正予算が実行できますか。

 だから、それはもしできるというのなら、委員長、まず最初にそれを出していただきたい。それでなければ、この十六年度の予算の審議なんというのは、もうそれは先の先の話ですよ。いかがですか。

笹川委員長 外務大臣。(首藤委員「いや、委員長にお聞きしているんですよ、委員長に」と呼ぶ)

川口国務大臣 これに……(首藤委員「いや、まだ呼ばれていないですよ」と呼ぶ)委員長から御指名をいただきました。

笹川委員長 委員長は今指名をいたしましたから、とりあえず、もう一度答弁を聞いてください。

川口国務大臣 これにつきましては、今、年度内ということでございますので、先ほど申し上げたような具体的な取り組みをやっております。

 今後、あと一カ月強、まあ四十日ぐらいございますけれども、その中で、予算を御承認いただいた後でございますので、促進をして、供与先と協議を一段と加速化させていきたい、そして速やかに執行していきたいと考えております。

首藤委員 結局、プロジェクトというのは、プロジェクトでなくても、どこの県、どこの病院、どこのプロジェクトというのがないと予算できないんですよ。しかも、それが、末梢のNGOがやっている小さなプロジェクトならいいですよ、何とか村の何とかの学校をつくるとか。そうじゃないんですよね。みんなインフラ案件で大きなものなんですよ。

 ですから、これに関して、補正予算ですよ、十六年度予算じゃなくて補正予算に関して、もうあと一月しかないのに、具体的な名前の件名も出なければ、それからプロジェクト名も出なければ、そのスペックも出てこなかったら、それで予算実行しろなんて、それはむちゃくちゃじゃないですか。そんな予算はないですよ。ここ、予算委員会ですよ。

 だから、委員長、私、何度も言ったじゃないですか。二十六日に、あれだけがんがん言ったでしょう。また首藤、うるさいなとお思いだったじゃないですか。でも、やはりこれ、予算委員会なんだから、これがなかったら十六年度予算なんて審議できないですよ。十五年度の話だってできていないんだから、もうあと一月しかなくて。これはどうにか対応を考えてください。ちょっと対応を考えてください。もう十六年度の話、できないですよ。具体的にどうするか、ちょっと話してください。

川口国務大臣 今月の九日でございましたでしょうか、補正予算を成立させていただきまして、十日間あったわけでございまして、その十日間で、補正予算を成立させていただいた後、協議を加速化させて、今、取り組みをやっているところでございます。

 それで、具体的な名前がないということでございますので幾つか申し上げさせていただきたいと思いますけれども、例えば電力について言いますと、これは、我が国が手がけた発電所三カ所の、発電所、変電所のリハビリ、整備ということでございます。アルムサイブ火力発電所、タジ発電所、モスル発電所、これを制定いたしております。

 それから、十三病院と申しました。これは我が国がかつて手がけた十三病院ということでございますので、これも対象という意味でははっきりしているということでございます。

首藤委員 これでは質疑できないじゃないですか、そんなわけのわからない幾つかの病院を言って。

 だから、それが我々の目の前にあれば、あっ、いや違うよ、川口大臣、これ、十三病院と言うけれども、サマワの八三年のプロジェクトだろう、そのときはこんな問題がありましたよと我々は言えますよ。しかし、十三病院でございますとか、それから火力発電所、だれだって知っている火力発電所の名前を挙げられても、それがどういうものであるかわからないですよ。

 ですから、それは、十五年度の予算の対象のもの、スペックまできちっと書いていただきたい。どのプロジェクトで、どこで、そして、その受け皿はだれなのか、執行形態。

 評議会がどこにあるのかということもまだ教えてくれないわけですよ。評議会というのはサマワにはあるかないかだけでこれだけけんけんがくがくになったけれども、では、ほかのところの、これから私たちが、例えば十三病院あるところの地方評議会がそれぞれどうなっているか、何にもわかっていないわけですよ。

 ですから、それを出していただかなかったら、いかに緊急であり、いかに人道復興支援でありとはいえ、我が国の国民の税金ですから、これは一歩も進めることができません。いかがですか。

笹川委員長 外務大臣、首藤委員の御質問になるべく細かくもしできれば答えていただければいいと思いますが、もう一度どうぞ。外務大臣、どうぞ。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、十三病院あるいは電力関係では三つのところの名前を申しましたけれども、これは、補正予算を成立させていただいて、そして具体的にこの協議を先方と今加速化させている。まだ補正予算を成立させていただいて十日間でこれだけのことを今やっているということで御理解をいただきたいと思います。

 それから、評議会ということをおっしゃいましたけれども、これは従来から申し上げているように、市評議会、サマワであれ、ほかのところであれ、市評議会を対象として今考えているということはないということは従来から申し上げているわけです。

首藤委員 これは十六年度の予算の質問にもかかわってくるわけですから、外務大臣、予算を認めていただきまして十日で、これから加速しますと言うけれども、加速できないから言っているんですよ。

 例えば、今のイラクの中で、そうしたイラクの各地の病院、各地の施設を一体だれが調べるんですか。我が国の同僚であった二人の、奥、井ノ上の、我が国を代表する外交官が非業の死を遂げられた、そのティクリートの道路わきに何人の外交官が行って献花しましたか。行けないでしょう。だれもだから動けないわけですよ。だから、イラクの全土がわかるまで、わからないわけですよ。

 だから、これから後からまた質問が出ますから、では十六年度の話をしますよ。十六年度。もう時間もなくなってきたから。

 十六年度は、これはもっとわからないんですよ。国際の平和と安全のための日本発外交、七百六十五億八千三百億円、これがあるんですが、それを見ると、そのうちの平和構築・定着の促進というところですね、六百九十億三千八百万円。これで、イラク、アフガニスタン、スリランカ等における紛争後の平和の定着及び国づくり支援のための予算、ここに入るわけですか。一体このうちのどれだけがイラク向けであり、そのうちの国際社会への提供、例えばUNDPとかユニセフとかハビタットへ行く以外の、日本が独自に決める対象の総額は幾らになり、その対象の案件は一体何ですか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 七百六十五億円というお話がございまして、この七百六十五億円という数字、七百六十五・八三億円ということでございますけれども、それの出所ですけれども、これは外務省が重点外交施策ということで発表させていただいたもののうちの一つの柱、これを日本発外交ということで言っておりますけれども、国際の平和と安全のための日本発外交を能動的かつ戦略的に実施するための措置ということで、ODAによるものとその他の手段によるものを取りまとめて計上しましたというのが七百六十五・八三億円ということでございます。

 これがさらに幾つかに分かれているわけですけれども、具体的に申し上げますと、緊急無償を含む紛争終結後の平和の定着及び国づくりを支援するための予算として六百九十・三八億円、それから、中東和平問題等に取り組むための予算一・三七億円、核不拡散、核軍縮等への取り組みのための予算が六十二・六二億円ということが含まれているわけでございます。

 それで、イラクの復興支援について、これは、御審議をいただいています平成十六年度の通常予算、これは前に御答弁済みでございますけれども、二・九億ドル、要するに、十億ドルの無償のうち補正予算あるいは十五年度の通常予算を除いた分の二・九億ドル、これ相当の円というのが三百十九億円でございますけれども、これが十六年度の通常予算でお願いをしているということでございまして、これについては前回申し上げさせていただいております。

 その三百十九億円のうち、外務省予算では二・四億ドル相当の二百六十四億円、これを充てる考えでおります。それで、残りの〇・五億ドル相当でございますが、五十億円、これにつきましては、平成十六年度の財務省の予算から充てる予定であるというふうに承知をいたしております。

首藤委員 何にも関係ないことを、自分の手に後ろから回ってきたのを次々と読んでいただいても質疑にならないですよ、これは。

 この件に関しては、もう一週間、二週間たって全然出てこないので、くどくくどく言って、ついに返ってきたのが、二十日に外務省経済協力局政策課から来たものですよ。

 その回答によると、「十六年度通常予算では」「十五年度補正予算に計上したものを差し引いた残りの二・九億ドル分をイラク復興支援に想定していますが、その被供与先、供与内容、供与金額等については執行の段階で決定していくこととしており、厳密に決定したという性質のものではありません。」

 何ですか、これ。何にも対象は決まっていないと。総額だけ決まっていて、イラクに行くのかもわからない。これで、外務大臣、このとおりでしょう、結局。これが政策課から送ってきたものですよ。経協局から送ってきたものですよ。それは私は正しいんだと思うんだ。何にも決まっていないんですよ。だったら、予算書はつくり直してください。こんなものはできませんよ。

川口国務大臣 一般にODAの予算というのがどのような形で予算委員会にお願いをしているかということからお話をさせていただきたいと思っております。前段階で御説明を一般的に申し上げた方がより御理解をいただきやすいと思いますので、そういうふうにさせていただいているわけですけれども……(発言する者あり)まさにそのことについて今申し上げようとしているわけですが、一般に……(発言する者あり)済みません。ちょっとお聞きいただきたいんですけれども……。

笹川委員長 ちょっと静粛に。

川口国務大臣 一般に、ODAにつきまして、我が国と相手方、これの二国間関係ですとかいろいろなことを勘案いたしまして、これは各国別に拠出額ですとか内容とか、そういうことを決めていくということでございます。

 それで、ODAの予算につきまして、これは外交政策の重要な手段でございますから、機動的に活用をするということが重要である……(発言する者あり)ですから、今御説明を申し上げているわけです。活用するために、これは各国別の、これは大事なことなのでよく聞いていただきたいんですが、各国別の援助額、内容、これを予算要求の時点では計上してきておりません。これはずっとそういうことで予算委員会で御審議をいただいているということでございます。

 それで、イラクについて十五億ドルということで申し上げてきたわけでございます。それで、これにつきまして、そのニーズ、これも前から申し上げていますように、世銀、国連の行ったニーズアセスメント等を踏まえて、電力ですとか水ですとか、省略いたしますが、いろいろ申し上げてきているわけで、積み上げてきているということでございまして、先ほど来申し上げていますように、十二・一億ドル相当の千三百四十七億円、これが十五年度の通常予算であります。それから、補正予算として千百八十八億円をいただきました。

 それで、十六年度の予算について、残り、これは二・九億ドル、三百十九億円ということを申し上げておりますけれども、これはイラクの復興支援分ということで想定をされておりますけれども、そもそもODAの予算の中で、特定国向けの援助額が想定をされるということ自体が例外的であるということでございます。それは、そういうことで、イラクの場合には十五億ドルということで金額を申し上げているということ自体が今までの審議の中では例外的であるということでございます。

 それで、さらにもう少し申し上げたいと思いますけれども、このイラクの十五億ドル、十六年度の予算として二・九億ドルでございますけれども、三百十九億円ですが、この中で四十四億円、これは〇・四億ドル相当でございますけれども、これはイラクの復興信託基金に拠出をするということで考えております。それから、二十二億円、これは〇・二億ドル相当、これをイラクへの直接支援ということで想定をしております。ということで考えておりまして、先ほどの三百十九億円のうちイラクへの直接支援ということで考えておりますのは二百五十三億円、そういうことで考えているわけです。

 そういった中身を、先ほど来、国連、世銀等のニーズということで申し上げましたけれども、これは電力ですとか水・衛生、それから保健医療、それから治安、文化等の分野で考えているということでございます。

首藤委員 それで一体本当にどういう具体的なプロジェクトがあるのか、これは委員会に提出していただきたいと思います。それは――はい。

 それで、結局何が問題かというと、これはもうこれ以上詰められないんですよ。イラクの状態というのは去年よりももうどんどんどんどん悪くなっている。(発言する者あり)だから、結局、本当に白紙委任を求めるという、それはその気分もわかりますよ。しかし、やりようがないんですよ。

 ですから、まず、ともかく一体具体的にどれだけのプロジェクトがあるのか。それは、ODAは、今までにたくさん詰めていて、もう最後は決めないという形でやっていくんですよ。しかし、その裏には全部詰まっているんですよ、細かいところまで。そして、大体相見積もりも求めて、いろいろな企業からのお金を計算しながら、そしてやっていくわけですよ。だから、もう話にならないわけですが。

 なぜこんなふうになっているかというと、それは現地調査ができないということですよ。一つは、もう戦争状態にある。二つ目は、長らくこれにかかわってきた奥、井ノ上さんが亡くなったことですよ。まずこのことを、一体何だったのかということをはっきりさせないと先に進まないんですよ。

 この資料を見ていただきたい。この資料を見ていただければわかるように、これはAFPが翌日に書いたニュースなんですよ。これを、真ん中を見てわかるように、実は、二十九日に二人が事件に巻き込まれるわけですが、その事件が十二時過ぎぐらいに恐らく起こるわけですね。そして、二時にはNGOのブリーフィングが行われるんですよ。そのときに、米軍の広報官が、二人の日本人がこういう形で撃たれた、そして、病院に運んだと言っているんですよ。わかりますか。二十九日の午後二時。日本時間、何時でしょうか。夜の八時ですよ。

 次のページを見てください。これは小泉さんの、それから官邸の動きを示したものですね。二十九日の午後八時、これは金融問題でみんなやっているんですね。ずっとやっていて、そして公邸にお帰りになる。そして、翌日、午前七時ぐらいから動き出すわけですね。

 前回の外務大臣の話だと、総理にこの事件を伝えたのは三十日の午前二時だという話をされています。しかし、もう現場では、二人の日本人が殺されたということ、前日の二時にはもうはっきりわかっているわけです。

 だから、これは二つの仮説しかないわけですよ。一つは、何らかの工作が行われてこの事実の発表をおくらせていった。二つ、官邸が余りにも危機管理能力がなくて対応できてなかった。官房長官、いかがですか。この二つのどちらでしょうか。

福田国務大臣 事実関係で申し上げるしかないんですけれども、私ども、総理もそうですけれども、三十日の午前二時、三時、その時間帯に第一報を聞いておるわけであります。

首藤委員 それではこんな状況で対応できないじゃないですか。一体どういうことが本当に起こったのか、知り得たのに、六時間の空白というのは一体何なのか。

 これは、昔、ヒットラーに攻められたロシアの将軍が裏切り者として訴えられた、そのときに、その将軍が抗弁するには、いや、私は裏切り者ではない、私は無能なだけだ、こう言って威張ったという話が伝えられていますけれども、六時間、一体何をしていたのかということですね。

 それから、この事件に関しては、ともかく何度も何度も言いましたが、この車を分析していろいろ言いました。これは高いところから撃たれている、弾丸もカラシニコフじゃない、これはもう集弾度の非常に高い、近代的な、一九九〇年代以降の銃で撃っている、そういうことを言ったわけですよ。

 そして、この車は二月いっぱいには運んでこられるということですが、その前にももうこの事件ははっきりさせようじゃないですか。どの情報もすべて、可能性のあるのは、米軍の、コンボイに対する、接近に対する、不審車両に対する銃撃の誤射なんですよ。ですから、それを否定してください、私のそうした誤った仮説を否定してくださいということを一カ月にわたってしつこくしつこく言いました。しかし、一カ月たって、全然否定できていないじゃないですか。

 否定する一つの根拠は、簡単ですよ、銃弾が奥さん、井ノ上さんの体内から発見されている、その銃弾の成分を公表すればいいんですよ。そうすれば、ああ、これはカラシニコフです、そうなればまた話も随分変わってきますよ。それに関してだって、いろいろな不明な点はあるでしょう。アメリカ軍だってカラシニコフを使い始めている。それから民兵、いろいろな勢力の民兵がある。しかし、少なくともその銃弾の成分を公開するだけで、この問題に関しては一歩進むんですよ。

 この問題を妙に政治化させないためにも、選挙もだんだん近くなっていますから、今の時点でぜひそれを公開していただきたい。国家公安委員長、いかがですか。

小野国務大臣 先週も議員の方から同様の御質問をいただいたところでございますけれども、物理的鑑定がいわゆる銃の種類の特定に、絞り込みに有効である、そういう点からかんがみまして、物理的鑑定を優先し、そして、銃弾の金属成分については現在鑑定を継続中であるということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

首藤委員 いや、そんなこと言ったら、例えば、犯人がいたらもう逃げちゃっているじゃないですか。もうシリアの国境を越え、アフガニスタンに逃げ込んでいるかもしれない。それが警察の態度ですか。

 国家公安委員長、我が国は今、治安の問題が問題になっている。警察に対する信頼も揺らいでいる。そんなときに、発射された弾丸、明らかに我が国を代表する外交官を殺した弾丸、この成分分析すら何カ月たってもわからない。公表できないならそう言ってください、もうとっくにわかっているけれども公表できない、これはしんちゅうの成分が含まれている、そんなことは公表できない、公表できないならはっきり公表できないと言ってください。いかがですか。

小野国務大臣 一般論といたしましては、使用されました弾丸の金属成分のみから、使用したいわゆる銃の種類を特定するということは難しいと承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、現在、警視庁の科学捜査研究所において鋭意鑑定を進めているというのが現状でございます。

首藤委員 いや、だから、これはもう前から前から言っているでしょう。ここにある弾丸の数も銃の数も限られているんですよ。七・六二ミリの銃弾を使うのも、七・六二掛ける三十九ミリであるのか、七・六二掛ける五十一ミリであるのか、NATO弾なのか、カラシニコフの弾か、二つでしょう。

 それに、銃だって、これだけ集弾度の高い銃というのは、もう新しい銃なんですよ。だから、この写真を見ればわかるように、同じところに二発も三発も当たっているでしょう。同じところにほとんど二発ぐらい当たっているでしょう。これは、銃の設計が、一射撃によって三発も四発もバーストするようにできているわけですよ。ですから、そういう可能性があるわけだから、銃は簡単に特定できるんですよ。ですから、重要なのは、そこの成分が一体何であるかということで、それを早く公表していただきたいと思います。

 ともかく、外務大臣が、これは二月には日本まで運ぶということを明言されておられるわけですから、このことを確実に守っていただきたい。

 そうした問題に関して、やはりこの問題がしっかり解決できないと、要するに、これからの援助の体制あるいは援助プロジェクトの発掘体制もできないということなんですよ。今までの、前線には奥、井ノ上、そして日本には岡本行夫さん、こういう本当に限られた人だけがやっていて、しかも、そのうちの二人が欠けたために全然回らなくなったプロジェクトなんですよ。

 ですから、私は、この意味に関しても、一体どこに問題があったかを含めて、ぜひ岡本行夫さんの参考人招致を求めたいと思います。恐らく、それは与党の方にも異存はないと思いますので、ぜひ実現していただき、一体この問題はどうなのか、こういうものをはっきりさせないと、私は、先へ進まない、そういうことがわからなければ十六年度の予算はおろか十五年度の予算に関してもそれは執行すべきではない、そういうふうに思っております。

 そうした多くの課題を抱えながら、何も進まずにもしこのまま予算が認められるようなことがあれば、それは、私は、今こんな不景気に悩み、毎年三万人もの自殺者を出している我が国の国民に対する重大な裏切り行為であると思っております。

 以上で質問を終わります。

笹川委員長 これにて首藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、年金制度、不信がますます募っておりますこの年金制度でございますけれども、さらに、首をかしげるようなところに厚生年金や国民年金の掛金が支出をされている、この問題等について質問をさせていただきます。

 例えば、この今お配りをしております資料1でございますけれども、今、社会保険庁の職員の方々が一万七千五百六人おられますが、この方々が毎年、健康診断を受けておられます。健康診断を受けるというのは、これはいいことなんでありますけれども、ところが、その健康診断の費用が、これが厚生年金の掛金あるいは国民年金の掛金、民間の皆様の掛金で行われている、こういう実態が明らかになっております。

 例えば平成十五年度、これは見込みでございますけれども、一年間に健康診断の経費が一億七千万円ございましたけれども、そのうち、年金、国民年金、厚生年金の掛金で一億二千万円賄われた。そして、政管健保の掛金で、中小企業のサラリーマンの皆様が払っておられる政管健保の掛金で五千万円が、社会保険庁職員の健康診断のためにお金が使われた。

 そして、平成十六年度予算、まさに今この十六年度の予算を審議しているわけでございますけれども、トータルで一億六百万円の予算が計上されております、健康診断の。そのうち年金が七千五十万円、そのうち政管健保の掛金で三千五百五十万円支出をされているということで、これは常識的に考えて私は首をかしげるわけでございますけれども、坂口大臣、率直に、これをどうお感じになりますか。

坂口国務大臣 健康診断でありますとかその他の費用につきまして、これは財革法で平成十年に取り上げられますまでは一般会計から出ていたわけでございますが、平成十年以降、この財革法によりまして、人件費につきましては一般会計から、そして、諸経費につきましてはそれぞれの財源の中から支給をするということに振り分けがされたものですから、それ以降になりまして、今御指摘になりましたような健康診断等につきましては、健康診断も含めて、これは特別会計の方から出るようになった、こういうことでございます。

長妻委員 これは政府委員にお伺いしているのではありませんので、過去の経緯とか制度がこうなっているというのは、それは私も十分承知しておりますけれども、一般的な常識で考えて、大臣はどういうふうな感情、感覚を持たれておられるのか、こういうことを質問しているわけでありますけれども、どうでございますか、率直に。

坂口国務大臣 御指摘をいただいておりますように、職員の健康診断でございますから、それは一般財源の方から拠出するなり、あるいはまた共済の方から出すなりといったような道もあろうかと思います。しかし、一般の公務員の場合にも一般財源の方から出ておりますから、そういうふうになった方が私も望ましいというふうに思っております。

長妻委員 いや、一般財源で出すというのは、国庫負担、税金で出すということだと思いますけれども、そうであれば、そういうふうな働きかけを財務省にするなりなんなり行動を起こされればいいと思うのでございますが。

 それでは、お伺いしますけれども、政管健保に入っている中小企業のサラリーマンの方が同じように健康診断をすると、これはどこからお金が出ているか、教えてください。

坂口国務大臣 一般の中小企業の皆さん方が健康診断をお受けになりますときには、これは、経営者の皆さん方が御負担いただきます部分がございますし、そして一部は、国庫負担と申しますか、公からも出ているというふうに思います。

長妻委員 そうなんですね。民間の中小企業のサラリーマンの方が健康診断を受けるときは、その方々が入っている組合からのお金じゃなくて経営者がお金を払う。それだけ政管健保のお金は、加入している人の健康診断にも使わない。にもかかわらず、加入していない社会保険庁職員の方の健康診断の費用に政管健保の金が、中小企業のサラリーマンの皆様の健康を維持するための金が使われるということでございまして、今、大臣は、これは一般会計、税金でやるべきと思うというふうに言われましたけれども、ぜひそういう措置を、予算を組み替えてでも、今度の予算でも、平成十六年度入っておりますので、予算を組み替えてそういう要求を財務省にされるというお考えはないですか。

坂口国務大臣 十六年度につきましては、これは、財務大臣とお話し合いをいたしまして一年延長ということになったわけであります。

 本会議でも御答弁申し上げましたとおり、十七年度以降につきましては、財務大臣ともう一度調整をさせていただくことになっておりますので、そうしたところでお話を申し上げたいというふうに思います。

長妻委員 財務大臣、どうですか。十七年度からはこういうことはやらないですか。

谷垣国務大臣 そのときの財政状況、いろいろなことを勘案しまして、また厚生大臣とよく御相談をしてまいりたいと思っております。

長妻委員 今の御答弁も、申しわけないんですけれども、政府委員と同じなんですね。大臣の率直な、これをこういうふうに使われるというのがどういう感覚なのか、御自身で。まあこれは適当だと思われるのか、ちょっとおかしいねと思われるのか、そこら辺、率直な感情をお聞かせください。

谷垣国務大臣 もともと、年金を運営していく経費というものはどこから出すかという議論があるわけでございますね。それで、法の上では、今言ったような経費は国庫から出すべきものというふうに書いてあるわけであります。しかし、今、特例公債を発行しまして、それで、今年度引き続き年金の経費の中においてやっていただくのは……(長妻委員「率直な感想は」と呼ぶ)率直な感想はですね、その問題の立て方自体はもともとそういう整理をしてきたわけでありますけれども、財革法以来の財政の中でやむを得ずしてこうなっているというふうに考えております。

長妻委員 先ほど、財務大臣、苦しいというお話がありましたけれども、苦しいというのは何が、どこのお金が苦しいんですか。

谷垣国務大臣 これは、財政全体が苦しいということがございます。

長妻委員 財政も苦しいですけれども、年金は、これはやはり国民の皆様がある目的を持って払っている。そこがかなり苦しくなっているので、そっちも苦しいわけで、財務省の管轄は税金の部分だけなのかもしれませんけれども、そこら辺をちょっとよくお考えになっていただきたい。

 平成十七年度はこういうことはもうやめるというような御決意というのはありませんか。

谷垣国務大臣 今直ちにそれを申し上げる用意はございません。

長妻委員 そしてもう一つ、交際費の話を申し上げますと、社会保険庁の長官の交際費も、これは厚生年金の掛金や政管健保の皆さんが払った掛金で賄われている、こういう実態も明らかになりました。四ページでございますけれども、この中身についても私は疑義を持っているのでございます。

 例えば、ここにもありますけれども、「5県人会への参加費」ということで、長官の県人会に参加する費用も交際費から払われている。あるいは、六人の「退官記念品代」ということで、おやめになった同僚に記念品を贈るということにも使われている。この交際費は、税金ではありませんで、厚生年金の掛金と健保の掛金、半々で出ております。一年間に五十万一千円でございます、平成十四年度。

 こういうことは、もう苦しい年金ですから廃止する、あるいは、この支出は適当でないというふうに私は思うわけでございます。いかがでございますか、坂口大臣。

坂口国務大臣 交際費、十四年度約五十万円、その中で、今御指摘になりましたような中身のものもあるわけでございます。一番多いのは香典でございますけれども、その他のものも含まれておることは事実でございます。

 これは、いずれにいたしましても、それが一般公費であれ、あるいは年金資金の方であれ、あるいは健康保険の財源であれ、それは同じでありますから、特に、必要最小限度にして、そして、ほかのものは抑制をするというふうにしなきゃいけないと私も思っております。特に、今御指摘のありましたところで、県人会の問題は、御指摘いただいてみまして、これはちょっと、この中で支払うのには不都合だというふうに私も思っております。

長妻委員 これは不都合だと思われるのであれば、返却を社会保険庁長官に申し出ていただきたいと思います。それはどうですか、返却を。

坂口国務大臣 今後の処理の仕方、いろいろ検討したいというふうに思っております。

長妻委員 そしてもう一つ、交際費に関しまして財務省の方が、交際費とはこういうことに使いなさい、こういう文書を出しております。「交際費」「儀礼的、社交的な意味で部外者に対し支出する一方的、贈与的な性質を有する経費」というふうにありまして、部外者に対するということがございますが、いろいろ調べてみますと、この退官記念品代というのは、部内者、厚生労働省の職員の方がやめられるときに出しているわけで、これは部内者に当たって問題があるのではないかというふうに思うんですが、財務大臣、いかがですか。

谷垣国務大臣 先ほど委員おっしゃいましたように、交際費というものの性格をああいうふうに定義しているのは事実でございますけれども、今おっしゃった具体的なその執行のあり方については私は十分承知しておりませんので、もちろん適正に執行していただかなきゃいけませんが、疑惑を招いたりしないようにしていただかなきゃいけませんが、具体的なことについてちょっと申し上げかねる次第であります。

長妻委員 そうしたら、その退職する人というのは部外者ということで当たるわけですか。部内者だと思うんですけれども。

谷垣国務大臣 それは、一義的には執行の責任者で判断していただくということだと思います。(発言する者あり)

北村(直)委員長代理 長妻昭君、御質問をどうぞ。(発言する者あり)――では、谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 財務省はそういう区分をしておりますけれども、それをどう使うかは、まず第一義的にそれぞれの執行の責任者が判断していただくということでありますから、それは具体的な事例が出なければ、私の方としては何とも申し上げかねます。

長妻委員 具体的な事例は今私がお話ししたとおりで、坂口大臣にこれは事前に通告しております。

 記念品代六人、これは退職者、OBの方というか、厚生労働省に在職して、そして退職した方に対する記念品代でありますので、これは部外者ではないと思うんですが、坂口大臣、どういうふうに解釈されておられますか。

坂口国務大臣 これは社会保険庁の長官が行うことでありまして、社会保険庁から見て、厚生労働省に勤めていたドクターでありますとかあるいは薬剤師さんだというのがおやめになったときに払うというのが部外か部内かというのは、これはなかなかわかりにくいところがございますけれども、とにかく、おやめになるそうした人がありましたときに、その人に対して記念品として一万円ずつ出した、こういうことでございます。

長妻委員 今ちょっと、大臣の答弁、違うんですね。そういう薬剤師というか外部の方だけじゃなくて、これは本省の厚生労働省にお勤めの方の退職もございますので。

 谷垣大臣、先ほど事情がわからないと言われましたけれども、今、やりとりでおわかりになったと思いますので、このケースは部外者に当たるんですか、部内者ですか。そして、適法なんですか。

谷垣国務大臣 それは、何度も先ほどお答えしておりますように、執行の責めに当たる方がまずそこは判断していただくべきではないかと思います。

長妻委員 部外者か部内者か、退職する方はどっちなのかということを聞いているんです。大臣の判断を聞いているんです。

谷垣国務大臣 それは執行する責任者が判断することでありまして、私の方で判断する限りではありません。

長妻委員 会計検査院にお伺いしますけれども、この部内者、部外者、どういう見解ですか。

森下会計検査院長 ただいまの部内者、部外者という言葉が出てくるものは、財務省が決められたものでございます。その運用につきましては、もう少し子細に実態を見まして、どのように運用されているかを見てみないと判断が、したがいまして、そういう具体的な事情、この場合の社会保険庁のケースについてどういうふうに考えるのか、検討してみたいと思います。

長妻委員 私、こういうことを言うのは、今、保険、年金、あるいは健保もそうですけれども、大変なときに、国民の皆様の不信感が募る中で、もう交際費はやめたらいいんじゃないかと。

 特別会計というのは一くくりにして、厳しいときは節約をする、これを促すのが特別会計の制度だと思いますので、それに使い道も私自身も首をかしげるような使い道がありますので、企業は売り上げが落ちたり苦しいときには当然そういうものは削るということがございますので、これは、坂口大臣も先週の本会議で、「内部におけるチェックも徹底的に行っていきたい」、経費の削減に努めるということでありますので、この交際費の見直しというのは、坂口大臣、いかがですか。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 見直しを行っております。そして、平成十五年度におきましては、長官の交際費におきましても、香典以外のものは一切出しておりません。限定をいたして、見直しを行っているところでございます。

長妻委員 そして、もう一つ首をかしげる支出といたしましては、社会保険庁の職員の皆様が入るマンションも、厚生年金の掛金や健康保険の掛金や国民年金の掛金で建てられていた。グリーンピアなどの福祉施設、これもとんでもないという国民の皆様の声があり、私もそう思いますけれども、あの福祉施設は、一応建前は国民年金や厚生年金を払っておられる方がそこで御利用いただくということでありますけれども、今度は、職員の方の専用のマンションが厚生年金、国民年金、健康保険の掛金で建てられている。

 私も行ってまいりました。この横浜のマンション、新築のマンションでございますけれども、三DK六十一平米で家賃が二万一千円、こういう常識では考えられない価格です。これが十二戸、一Kが十八戸あるマンションが三億六千四百万円で建てられましたけれども、これも厚生年金、健康保険の掛金で建てられております。

 こういうようなマンションが、全国で三十七カ所の職員用マンションが、それ以外は税金で建てられているんですけれども、三十七カ所の職員用マンションが厚生年金、国民年金、健康保険の掛金で建てられた。トータルで建設費が六十六億二千五百万円、うち、国民年金や厚生年金で三十四億三千百万円賄われた。

 そして、これは資料の八ページでございますけれども、今現在建設中が十カ所ある。そして、平成十六年度予算、まさに今審議している平成十六年度には、七ページにあります六カ所が予算に組み込まれておりまして、この予算が九億円、うち、国民年金、厚生年金の掛金が充てられるのが五億一千五百万円、こういうような状態でございます。

 これについてお伺いをする前に、まず、そういう掛金を使ったこの三DK、横浜、新築、二万一千円という家賃、坂口大臣、これは常識的に考えてどう思われますか。高いと思われますか、安いと思われますか。

坂口国務大臣 職員の居住しておりますところも、先ほどのいろいろの事例と同じでございまして、これは、過去におきましては、一般会計から出ていたわけでございますけれども、十年以降におきましては、特別会計の方から出ている。また、それまでにできましたものは、したがいまして一般会計でできたものでございますが、非常に古くなって、そして、どうしても建てかえをしなきゃならないものにつきまして、最近、建てかえを行っているということでございます。

 しかし、職員の皆さんも一生懸命やっていただいておるわけでありますし、そういう居住の場所というものもある程度は提供をしなきゃならないわけでありまして、それをどこから出すかという問題だというふうに思います。そうしたことを行います中で、適正な家賃というものはやはりあるわけでございますから、だから今回も、したがいまして、それが引き上げられるということになったわけでございまして、公務員に準じて今やっているわけでございますので今回引き上げられるものと思っております。

長妻委員 これは引き上げられるということですけれども、この新築の三DKの二万一千円の家賃は四月から上がるというふうに聞いていますけれども、幾らになるんですか。

森副大臣 まだ決まっておりません。

長妻委員 いろいろ計算式をいただくと、家賃が二万一千円から大体三万円ぐらいに上がるというふうに聞いていますけれども、それはおおむね大体そうですか。

森副大臣 大体二五%程度の引き上げと聞いておりますので、おおむねそんな感じかなと思いますけれども、いずれにしても、国家公務員宿舎法等の規定に基づいて国家公務員の横並びで決めておりますので、御理解をいただきたいと思います。

長妻委員 いずれにしましても、こういう格安で、そして、年金、健保も大変苦しい中、そこの財源でこういう建物を建てるというのは、これはやはりどう考えても、私自身もなかなか腑に落ちないわけでございますけれども、坂口大臣、また率直な感想を聞かせていただきたいと思います。制度はこうこうこうなっているというのは、これは制度じゃないんですね、予算のつけ方なんですね、結局は。結局は予算の査定の仕方なんです、財務省の。坂口大臣、感想を聞かせてください。

坂口国務大臣 これは、いずれの財政も非常に厳しい中でございまして、ことしの十六年度の予算につきましても財務大臣といろいろと話し合いをさせていただいて、当面、この十六年につきましては継続をするということにさせていただいて、今後のことにつきましては引き続いてお話し合いをしましょうということになっておりますし、いろいろの角度から十分な検討を行って、誤りなきを期していきたいというふうに思っております。

長妻委員 やはりどうしてもこれは、必要なものは厳しく節減をして、そして、税金で賄うべきものは税金で賄う。掛金で賄ってもいい、例えば年金手帳なんかは、私も掛金を使って年金手帳をつくることを一概には否定しません。そういうような、あるいは交際費のように廃止をするとか、きちっと納得のいくような、年金の信頼を損なわないようなお金の配分を、ただやみくもに、財務大臣、ばさっばさっと切って税金を節約するように見えるだけで、結局、掛金が全部おっかぶされている、こういう状況であるというふうに思います。

 もう一つ申し上げますと、これは三ページでございますけれども、今、社会保険庁には約四千人の非常勤職員、国家公務員非常勤職員の方がおられますけれども、この方々の人件費も、すべてが厚生年金の掛金や国民年金の掛金、健保の掛金から支払われておりまして、平成十五年では、全体で人件費が七十五億円、うち厚生年金、国民年金では六十四億円もの人件費が賄われている。

 そしてもう一つ、これは私も不可解なのは、この四千人の方が厚生年金に加入されている。この方々は非常勤職員ですので国家公務員共済に入っておられないということで、事業所に雇われているということでありますので、事業主である国が厚生年金に加入をして、その半分の掛金を払っている。その半分の国が払う掛金が、厚生年金の民間の方の掛金や健康保険の掛金や国民年金の掛金で、一年間に十一・一億円が賄われている。非常に摩訶不思議な構造になっておりまして、わかりにくい、不信を呼ぶというふうに思いますけれども、これは、大臣、見直しされるおつもりはありませんか。

坂口国務大臣 これはなかなか人件費も、人件費と申しますか、人数もなかなか足りないものですから、パートの皆さん方を初めといたしまして、臨時にお雇いをして切り抜けているということでございます。

 その皆さん方も、これは何らかの社会保障をしなければいけませんので、そうしたことで今御指摘のようなことで行っているんだろうというふうに思いますけれども、これはほかにも例があることでございますしいたしますから、そうした働く皆さん方の社会保障をどうするかということにつきましては、私もよく検討をしていきたいというふうに思っております。

長妻委員 先ほど坂口大臣は、冒頭に、社会保険庁の人件費は国庫負担で賄うというようなことを言われましたけれども、これも人件費だと思うんですが、なぜこれは年金の掛金、健保の掛金で賄われるんですか。

坂口国務大臣 いわゆる正規の職員ではないということでありまして、正規の職員につきましては、これは一般会計から出ておりますけれども、その人数は限定されております。最近また多くの年金等につきましての作業があるものでございますから、そうした皆さん方にお手伝いをいただいているということでございます。

長妻委員 その分ける哲学といいますか、そこが私はよくわからないんですね。国庫負担で、社会保険庁の常勤の方の職員は税金で賄う。そうじゃない非常勤職員の方は掛金で賄う。いろいろなところでこれは区分けがあって、結局、本当の職員、常勤の職員の方の人件費だけを税金で賄って、あとは全部掛金だ、こういう仕分けなんですけれども、これは、例えば人件費だけでいいますと、なぜ常勤の方は税金で、非常勤の方の人件費は掛金なのか。その哲学は、どういう考えに基づいてそういうふうに分けられているんですか。

坂口国務大臣 哲学というほどのものはございませんけれども、これは、正規の人は一般会計の方から出ているわけでございますが、臨時に、臨時と申しますか、一時的に雇って、そしてそのお手伝いをいただくという方は、別途考えていかなきゃなりません。一般会計の中からそれはお出しをいただくということはできないわけでございますので、これは一時的にそういうふうにさせていただいておるということでございます。

 ただし、そうはいいますものの、これから先、常時一定の人が要るといったことになってきました場合には、それは初めからそういう人数を整備しなきゃいけないわけでありまして、今後のこの仕事の内容あるいはまた機械化等ともにらみ合わせて必要な人員というものをどう確保していくか、その常時必要とする人材の経費につきましてはどういうふうにしていくかということも見直しをしなきゃならないときはもう来ているというふうに思っております。そうしたことも含めて、今後のことを検討したいと思います。

長妻委員 いや、ちょっとお答えになっておられないんですけれども、結論はそうだと思うんですが、ですから、非常勤の方の人件費は掛金で賄う、掛金を充当する、常勤の方は税金で賄う、これは、何か仕事の質が違うとか、どういう発想に基づいて、どういう理由で分けられているんですか、そういうことなんです。

森副大臣 ただいま大臣から御答弁したとおりでございますけれども、要するに、人件費はいわゆる給与であって、固定費的な色彩の強いもので、それは国庫で負担する。(長妻委員「なぜ」と呼ぶ)ですから、非常勤はまさに文字どおり非常勤ですから、そういうことで、要するに、年金の行政としてのサービスを向上したり、そういった意味合いの、事務費の範囲内で、これはそれこそ財革法の趣旨にのっとって保険金で負担する、こういうふうに……(長妻委員「理由は」と呼ぶ)ですから、要するに、正規の職員については、給与ですから、これはもう固定費的なもので……(長妻委員「何で掛金で」と呼ぶ)

笹川委員長 私語のやりとりはやめてください。

森副大臣 ですから、あくまでも人件費については、正規の職員の人件費については、給与ということで、これは国庫で負担し、人件費以外の事務費につきましては、全部が全部ではありませんけれども、財革法の趣旨にのっとりまして、また、その定めによって、保険金を充当しているということでございます。

長妻委員 今、財革法の趣旨にのっとって、固定である職員の方は税金、固定費ではない非常勤の方は掛金だと。財革法の精神というのは、そういうことが書いてあるんですか。どういうことですか、精神というのは。

笹川委員長 副大臣、答弁したから、その質問は答えてください。

森副大臣 財務省とのやりとりの中で決めている、予算措置をしているということでございます。

長妻委員 いや、だから、理由は何ですか。

谷垣国務大臣 もともと、財革法や特例公債法ができましたときに、どういう仕分けをするかということについては、必ずしも明確な基準が存在していたわけではないわけです。

 それで、平成十六年度予算につきましては、いろいろ調整をしまして、できるだけそこは一つの整理をしようということで、物件費については保険料財源で賄うけれども、人件費分については国庫負担ということにおおむね整理をしたわけでありますが、今の点は、まさに森副大臣が説明を、答弁をいたしましたように、固定費的なものは、本来、やはり年金を運用していくときに一番必要な人件費、人件費といいますか、固定費的な人件費については国庫である、そうでないものについては、それぞれのいわば庁費で負担していただくというような形にしようということになっているわけであります。

長妻委員 ちょっと私にはさっぱりその分ける区分がわかりませんけれども、見合いでいろいろ、交渉の中で分けているということであれば、本当に、常識的に考えて、これは掛金はおかしいというものはやめる、あるいは、こういう費用はもう要らないというものはやめるということがあってしかるべきだ。本当に年金の不信がますます高まってしまうというふうに懸念をいたします。

 そしてもう一つ、最後にちょっとつけ加えますと、公用車、車ですね、これは十三ページ、そして、社会保険庁職員の外国旅費、十四ページにございますけれども、これらも国民年金の掛金、厚生年金の掛金、健康保険の掛金が充てられている。

 社会保険庁が持つ乗用車が二百五十一台、これも厚生年金、健保の掛金、国民年金の掛金で購入された。その中には幹部用の黒塗りの車もある。うち四十七人には専用運転手がついている。

 そして、平成十四年度一年間で、社会保険庁職員の外国旅費は二千百十二万円、これも厚生年金、健保の掛金が充てられた。平成十六年度、来年度の予算には二千七百万円の社会保険庁職員の外国旅費が入っておりますけれども、そのうち、厚生年金で充てられるのが二千百万円ある。こういうものも見直さなければならないのではないか。

 この車は、国民年金の掛金で平成十二年に購入をされた車でございます、国民年金の掛金で。(写真を示す)これは厚生年金と健保の掛金で平成十二年に購入された、いい車だと思いますが、車でございますけれども、こういうことを続けていると、本当にこれは不信が高まって、今、国民年金お支払い対象者の四割近くの方がお支払いいただいていないということも聞いておりまして、ぜひこれはきちっと措置をしていただきたい。

 十五ページをごらんいただきますと、どれだけ年々掛金がそういう事務費に流用されているのかというのを示した表でございますが、十五ページが厚生保険特別会計、十六ページが国民年金でございますけれども、これは平成九年度までは全部税金で賄う、こういうことだったんですね。平成十年度から掛金を入れていいよ、ただし六年間の限定措置ですよと、財構法によって。

 ということは、国会が何もしなければ、ことしの四月からはまた税金に戻るんです。ところが、先週、財務省が法律を出してきまして、その法律で、平成十六年もまた掛金が流用できる、こういう法案を出してきたということで、私はもうとんでもない話だというふうに思うわけでございます。

 例えば、平成十年度から見ていただきますと、年金勘定より受け付けの業務取扱費、これもふえているわけであります。施設整備費は、いろいろ批判もあり、これは減っているんだと思いますが、いずれにしても、国庫負担の割合を見ていただきますと、厚生保険特別会計では、国庫負担の絶対額が平成十年から十六年度当初予算、わずかながら減っている。国民年金に至っては、十六ページでございますが、平成十年度から国庫負担が、初めが一千二百九十億円ぐらいあったのが七百億円にまで減っている。どんどん掛金が使われている。

 歯どめがかからないんじゃないか。また平成十六年度やる。こういうことになっておりまして、私は、厚生年金の掛金や国民年金の掛金は年金支払いのためだけに使ってほしい、こういうことが国民の皆さんの本当に切なる願いだと思います。

 そして、私、財務省のやり方にもちょっと疑義があるのでございますが、我々国会議員に政府が配る、十八ページにございますけれども、こういう、皆様持っておられると思いますけれども、一月に、多分、全国会議員に配る、どういう閣法が通常国会で出てくるのか、こういう冊子がございまして、これは民主党でも民主党の議員が集まって、ことしの一月二十日に説明を受けました。

 その資料が十九ページでございますけれども、財務省の、例の平成十六年一年間だけ掛金を流用できる、私は年金掛金ピンはね継続法だと言っているんですけれども、この法律、四角で囲んでおります、私が。十九ページ。

 ここに、年金のネの字も出てこないんですね。これ、わからないんですよ、年金のネの字も。公債の発行の特例等に関する法律案で、右の説明で、「公債発行の特例措置等を定める。」ということだけで、ほかの配付資料もこれと似たようなものを配られているケースもあるということで、年金のネの字も出てこない。これじゃ、我々国会議員、わからないじゃないですか、何にも。

 何で、そんな年金の掛金を流用する非常に重要な、今こういう御時世ですから、重要な法案をここに省くんですか。これは訂正してください。訂正して、また全議員に訂正版を配ってくださいよ、これ。

谷垣国務大臣 もうこの法案の趣旨説明もさせていただくことでありますが、今後、こういう一覧表の作成に当たりましては、できるだけわかりやすく記述をするように努めたいと存じます。

長妻委員 こういうちょっとこそくな、さっとわからないようにやるというのは、これは準備もできないわけで、その一月の時点で、一月十九日現在というこういうのを配っておりますから。こういうことは二度としないということを再度ちょっと明言してください。

谷垣国務大臣 できるだけ中身がわかりやすく記述されるように努めたいと思います。

長妻委員 そして、先ほどから言っております、今の仕切りは、人件費は国庫負担だ、それ以外を物件費という名前で呼んでそれは掛金だ、こういうことなわけですけれども、それは、調べてお伺いすると、平成十五年から国民年金ではそういうルールができた、平成十四年度以前は人件費以外のものも国庫負担していたと。

 ですから、どんどんどんどん掛金で使っちまえというのが、掛金の領域が広くなってきたということだと思うんですが、平成十五年に突然、国民年金特別会計では人件費に国庫負担を限るというふうになった経緯をお示しください。

森副大臣 これは、平成十年度以降、財特法を受けまして、従来、国庫負担であった年金事務費の一部に、保険料財源を充てております。また、人件費につきましては国庫負担で負担し、人件費以外の事務費の範囲内で特例措置を講じてきたところでございます。(長妻委員「いつ、変わったのは」と呼ぶ)平成十年度から。

長妻委員 いや、平成十年から十四年、十年、十一、十二、十三、十四年は人件費のみに限ってないと思いますよ、国民年金、国庫負担が。

森副大臣 市町村交付金などが入っておりましたから、具体的なその中身については予算措置で決まるというところでございます。

長妻委員 ですから、平成十年、十一年、十二年、十三年、十四年は、国庫負担は人件費に限る、こういうルールというのは、国民年金に限ってはないということでありますから、きちっとこれ答弁してください、ちゃんと通告していますから。

森副大臣 人件費につきましては、市町村職員の人件費なども含まれておって、具体的には予算措置で決まるというふうに……(長妻委員「国庫負担は人件費だけじゃないでしょう」と呼ぶ)だから、物件費につきましては、具体的な金額については予算措置によって決まるというふうに承知をしております。(長妻委員「ちょっと、答えてないですよ、委員長。何かわからない。速記をとめてください」と呼ぶ)

笹川委員長 早く。もう一度答弁してください。――坂口大臣、何かありますか。――森副大臣。

森副大臣 原則的には変わっておりません。

長妻委員 そうすると、平成十年から十四年、私が厚生労働省、社会保険庁の方に事前に説明を受けたときは十五年度からというふうに説明を受けたわけですけれども、その説明は間違いだったということでよろしいんですか。間違った事前説明をされないでください、本当に。

森副大臣 人件費は国庫、それ以外は保険料負担というのは、原則的には十五年度前後で変わっておりません。

長妻委員 十五年度前後と言っておりません。十年度から十四年度の間ということです。

森副大臣 変わっておりません。

長妻委員 ちょっと意味がわからない、何が変わっていないか。

森副大臣 繰り返しになりますけれども、人件費については国庫負担、それ以外は保険料というのは変わっておりません、十年度から。

長妻委員 それでは、私は、社会保険庁から違う説明を受けておりましたので、その根拠となる資料をお出しいただきたいというふうに思いますが、よろしいでございますか。

森副大臣 今申し上げたとおりでございますけれども、資料は後刻提出させていただきます。

長妻委員 そしてもう一つは、二十ページでございますけれども、これも、すさまじい掛金が委託費ということでいろいろな団体に流れております。その中では、健康づくり事業というのが、同じような費目でも流れているものがありますので、これはきちっと精査をしていく必要があるというふうにも考えております。

 そして、二十一ページには、それぞれ委託先法人における天下りの数を、厚生労働省からいただいた数字でございますけれども、天下りの役員が百五十四人、そして職員が六百十四人おられる。そして、二十二ページには、その天下りの方の年収が書いてございますけれども、理事長に至っては国会議員よりもお給料をもらっている。

 こんなような実態が明らかになっておりまして、これも、委託費というのは国民の皆さんの掛金で委託をされておるわけでありますので、もうそろそろ、この天下りそして高額報酬、これをきちっと見直すということを始めたらどうでしょうか、厚生大臣。

坂口国務大臣 厚生労働省全体にかかわる問題でございますけれども、この天下りの問題につきましては、見直しを行いたいというふうに思っております。

 特にその見直しの中で、ただしかし、最近でも、お若い皆さんでやめていただくような方がお見えになったりというようなこともあるわけであります。したがいまして、ただ、今までのような関係団体に対する天下りということではなくて、厚生労働省でございますから、それぞれが新しい職場でどういうふうに働くかということを、みずからやはりその技能を身につけていかなきゃならないわけでありまして、そうしたことも含めて、今後、勤めておみえになった皆さん方の将来の問題というのを考えていきたいと思っているところでございます。

長妻委員 私も、いろいろな大臣が天下りは見直すというのを国会で答弁されているのを聞きますが、本当になかなかそれが実行されない。何しろ、大臣、今、見直すと言われましたので、いつまでにどういう数字目標を達成するのか、これがないと、これはもう毎回、我々はだまされているわけですよ。どうですか、大臣。

坂口国務大臣 全体の状況をよく把握いたしまして、そして、今後いつまでにどういうふうな手だてをやっていくかということを決めなきゃいけない。これからやらなきゃならないこととこれはセットの話でございますから、やりたいと思っております。

長妻委員 全体の把握はもうちゃんとされていますよ。部下を信じていただきたいと思いますけれども、本当にもう十分されていると思います。

 では、いつまでにどういうことをする、せめて、そういう期限と内容、そこだけ御答弁いただけますか。

坂口国務大臣 先ほども少し申し上げたとおりでございますが、今までの天下りというのは、関係の、いわゆる厚生労働省がかかわっておりますところにだけ第二の勤めを行っているということでございますから、そこを、そういう形ではないようにどうしていくかということを考えないといけないと思います。

 だから、そうしたことを……(長妻委員「いつまで」と呼ぶ)いや、いつまでと言いましたって、そう簡単にこれは決まるわけではありませんから、できるだけ早くこれはそういうふうにやっていく。それは、大臣は次々かわっていくわけでございますけれども、しかし、役人はそれをずっと引き続いてやっておるわけでございますから、そこが、自分たちでやるという決意をしてやってくれないといけないわけでありますから、そのことを私は省内でちゃんとしたい、こう思っております。

長妻委員 何か、マスコミ報道によりますと、参議院選挙の後に内閣改造があるというような報道も聞いておりまして、真偽は知りませんけれども、その意味では、参議院選挙までに、そうしたら何かの提言をまとめるなりアクションをするなりということをお約束できませんか。これは時間を区切らないと全然話が散漫になりますので。

坂口国務大臣 何らかのものはまとめたいと思います。

長妻委員 何らかのものを参議院選挙までにまとめられるということであります。

 そして、もう一つ、談合の疑惑の問題でございます。

 この資料14、二十七ページをごらんいただきますと、これは社会保険庁からいただいたものでございますけれども、予定価格と落札価格が二〇〇二年度一年間で全く同じだったと。この予定価格というのはマル秘でありますので業者の方には絶対わからないはずでありますけれども、落札価格が全く同じだったというものが全部で十九件あった。

 ここにある九件は工事のみを、社会保険庁が出してきた二十七ページでございますが、これらのものは、ほかの公共工事と違いまして、これも年金の掛金なんです。休暇センターとか、国民年金健康保養センターとか、かごしま社会保険センターとか、こういうものも年金の、あるいは健康保険の掛金なんです。

 そういう意味では、非常に貴重なお金でありますけれども、そういう非常に不可解というか、疑惑が強いと思われるような、予定価格と落札価格が全く同じということ、これは、調査というのは今進んでおられますか、そして、いつまでに結論を出されますか。

森副大臣 今、言及のありました上位百の中には社会保険庁分は六件入っておりますが、これまで確認したところでは、いずれも、談合情報の提供は事前にも事後にもなく、会計法令に基づき入札を実施し、予定価格の制限の範囲内の価格であった者と契約の締約を行っております。

 御指摘の六件につきましては、その入札状況等に関し、入札を実施した地方社会保険事務局に対してその確認を行い、できるだけ早く結果を得たいと考えております。

 なお、一般的に、入札にかかわる談合情報の提供があった場合や、談合があると疑うに足りる事実を得た場合には、厚生労働省の談合情報対応マニュアルに従いまして、入札参加者からの事情聴取、公正取引委員会への通報など、厳正に対処することといたしております。

長妻委員 そして、これは氷山の一角でありまして、二〇〇二年度一年間だけで、マル秘であるはずの予定価格と全く同じ落札価格で落札をした入札案件が国で五千五百八十二件もあった。

 その内訳を調べていただきますと、これは二十五ページでございますが、内閣府本府で十件、宮内庁で一件、警察庁で三十九件、防衛庁で二千百六十六件、総務省で二十二件、法務省で三十四件、外務省で二件、財務省で三十一件、文部科学省で二千三百二十七件、そして厚生労働省で二百九十三件、農林水産省で十五件、経済産業省で三件、国土交通省で六百三十八件、環境省で一件というふうになっておりますけれども、財務大臣、この調査は間違いございませんか。

谷垣国務大臣 今おっしゃった数字は正しい数字であると思います。

長妻委員 そして、二十六ページに、同じ価格というのが一番多いのが文部科学省でございまして、文部科学省に調べていただきますと、二〇〇二年度一年間で予定価格と落札価格が同じであった、先ほど申し上げましたように、二千三百二十七件あったと。この分母、何件の入札のうち二千三百二十七件かといいますと、一万二百六十三件ということで非常に確率が高い。パーセンテージでいいますと二二・七%もの入札が、なぜか、予定価格は漏れないはずなんだけれども、それが落札価格になっている。

 何と五件に一件がそういうことになっているということで、これはほかの省庁に比べても突出をしていると思いますけれども、文部科学省、きちっと調べられますか。いつまでに調べられますか。

河村国務大臣 ただいま調査中でございまして、この二千幾つ、数が結構ありますものですから、いつまでにということを今はまだはっきり申し上げる状況にありません。できるだけ急がせたい、こういうふうに思います。

長妻委員 大臣、国会というのは政治家同士の議論でございますので、調査される、まだ結論が出ていないというのはわかりますけれども、大臣はこの数字を見てどうお感じになられますか。まあこのぐらいあるだろうなと思われるのか、これは多いと思われるのか、そういう生の声はどうでございますか。

河村国務大臣 私もこの数字を見まして、これが多いから例えば談合があったんじゃないかと一概には言えないと思いますが、これは病院とか特殊な機械とかいろいろな――私もちょっと数字はそれは確かに多いなと思いました。だから、どうしてこういうことになるんだという話も内部でしたわけでありますが、特殊な機械等々たくさんあって、もう発注元、できるところも決まっていて、金額的にももうほとんど決まっている状況のものを調達する、そういうケースが非常に多いんだということでありまして、よその省庁、言ってみれば防衛庁なんかもそういう特殊なものがある、それの類似のような関係じゃないだろうかということですが、それは今調査させている、こういうことであります。

長妻委員 最後に、きょうは人事院総裁もお出ましをいただいておりますので、特別昇給の制度の問題でございますけれども、勤続二十年以上で勤務成績の特に良好な方には退職金を上乗せする、一号俸引き上げるということがありますが、特に優秀にもかかわらず、対象者の九割以上の方がその恩恵を受けていたということでありますけれども、人事院総裁、この制度を廃止を含めて見直すというような御検討をされるおつもりはありませんか。

中島政府特別補佐人 制度の趣旨に反した運用実態だと思います。したがいまして、当該根拠規定を廃止するかどうか、厳しい判断をしなきゃならないということで、平成十五年度の実施状況の調査を依頼しているところでございます。その結果を見て判断いたしたいと思います。

長妻委員 廃止も含めて検討されるのかという、そこのところをお伺いできればと。含めて。

中島政府特別補佐人 廃止を含めて検討いたします。

長妻委員 ありがとうございました。

 以上、終わります。

笹川委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上和雄君。

井上(和)委員 民主党の井上和雄です。

 本日は、まず、道路公団改革に関して、石原大臣にお伺いいたしたいと思います。

 大臣、昨日の新聞報道に、青木幹雄自民党参院幹事長の実弟の方が、道路公団の高速道路工事を受注している土木建設会社から二〇〇一年に自宅購入費として三千万円を融資してもらった、そういう報道がありました。また、この会社のグループ四社で、二〇〇〇年から二〇〇二年の三年間に、合わせて三千八百八十八万円の政治献金が自民党の国民政治協会、自民党支部、また青木氏の後援会に対して行われていた、こういったことが報道されております。

 また、先日、同じような報道がありまして、道路公団の発注する山陰自動車道などの関連工事を請け負っている島根県の建設会社計十社が、過去三年間で計約一億七千万円を国民政治協会や青木氏が代表を務めている政治資金管理団体に献金している、この十社で高速道路の建設費約五十億円の工事を受注している、こういうことも報道されています。

 これはまさしく政官業の癒着の構造なんじゃないか、こういうことがあるから、道路公団の借金がもう青天井にふえていって四十兆円にもなってしまったんじゃないか、そういうふうに私は思うんですよ。

 今度民営化をしますと、こういうことがなくなるのか。そして、大臣、こういった道路公団のコストを本当に引き上げるような政官業の癒着の構造に関して、御自身、どういうふうに思っていますか。

石原国務大臣 ちょっと質問が、政治献金の話あるいは報道ベースの話と、道路の、高速道路建設に関する高コスト化の話とこう一つになっていて、報道ベースのことについて事実であるか事実でないかということを確認もできませんし、コメントをする立場にないんですけれども、一般論として言わせていただきますと、公共工事の入札に関しては実は過去にもいろいろなことが言われてきているわけでございまして、こういう入札に関しては、平成十三年の四月に入札に関する新しい法律、適正化の促進に関する法律というものを施行して、より透明化、より疑惑を招かないようにという立場でありますし、それはより一層進めていかなければならないというのが一つ目の答えではないかと思うんです。

 それともう一つ、公共工事は、もとはといえば、国民の皆さん方の税金を原資にされるわけでありますから、そういうこと自体からも、ここの分野というものは厳正でなければならない。もちろん、今御指摘されましたようなことが事実かどうかは私は判断できませんが、発注や契約に対して、政治献金をしたから事業をもらうとか、そういうことが事業の業者を選定することを左右するというようなことがあっては、これもまた、委員の御指摘のとおり、いけないんだと私は思うんです。

 そこで、今度の民営化議論によってどういうことが変わるのか、また変わらないのかという三番目の御質問があったと思うんですけれども、やはり、総理も申しておりますように、戦後の有料道路行政というものは、お金が、すなわち税金がないときに高速道路というものをどうやって整備するのかということで、利用者の方々の通行料をもとにつくってきた。そして、私も、高コストの体質というのはあったと思います。最高の技術で、最高にお金をかけて、最高のものをつくってきた、そこに大きなむだがあった。

 ですから、今回は、二十兆円これからかかると言われる事業費を、税金でつくる、これは採算性が合わなくてもつくらなきゃいけないところがありますので、その三兆円部分を入れまして、総事業費は十兆五千億に、およそ半分に抑制する。こういうことによってコストを削減していかなければなりませんし、さまざまな歯どめをかけて委員の御懸念にこたえていかなければならない、そういう改革であるということを私は考えているわけでございます。

井上(和)委員 大臣、まだ事実確認ができないと。確かに、質問通告をしたのがおくれましたので、きょうしたものですから時間がなかったと思います。では、事実確認しておいてください。ぜひよろしくお願いします。

石原国務大臣 実は、これは国土交通省が事業の発注をしているわけではなくて、JHがJHの高速道路というものは発注しておりますので、当方に、不正があったというようなことがあれば、JHに対して、そういう不正があったというような連絡があるがどうなっているのかとただすことはできますけれども、実態がどうであるかということを私どもが調査をするような立場にはないということを、ぜひ御理解いただきたいと思います。

井上(和)委員 大臣、まさしく今、道路公団の改革の問題、また高速道路の問題が国民の大きな関心になっているわけじゃないですか。そういう中で、こういう報道があって、事実確認、調べていないからコメントできないとおっしゃった。では事実確認するんですかと言ったら、関係ない、要するにこれはJHの問題だからしないと。それは全然答弁になっていませんよ。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、道路公団が今までつくった道路の総建設費とこれまでの料金収入は幾らか、言ってください。

佐藤政府参考人 数字の問題でございますので、私の方から御説明申し上げます。

 道路公団、こういうことでございますが、四つの公団がございますので、それぞれ申し上げたいと思います。(井上(和)委員「まとめていいです」と呼ぶ)そうですか。はい。

 道路関係四公団、平成十四年度までの建設費の総計が、四公団合計で四十三・四兆円であります。そこで、これまで、同じ期間の平成十四年度までの料金収入総計、これが四公団合計で四十四・三兆円であります。それからまた、この期間に国費、地方費、これを導入しているわけでございますが、これが四公団合計で七・五兆円。このうち、五・四兆円は出資金等でありまして、料金収入で返済する、こういうことになっている内容のものでございます。

井上(和)委員 今御説明があったように、つまり建設費は四十三兆円で、もう既に料金収入四十四兆円あるわけですよ。そして、その上に国費、出資金も含めれば七兆円。ということは五十一兆円。これだけの巨額のお金が国民から払われているわけですね、一つは料金収入として、もう一つは税金という形でですよ。本来、もう建設費は償還されてもおかしくないわけでしょう、こういう事実を見れば。

 ところが、まだまだ国民は高速道路の料金を払い続けていかなきゃいけない。四十五年間払い続けていくわけですね。四十五年たったら、はっきり言って、私自体もう生きているかどうかわかりませんよ。恐らく、ここにいる多くの議員の方も私と同じ運命じゃないかと思いますけれども。

 それで、大臣、今回の道路公団の改革の目的というのは、一つは、四十兆円に上る債務を返すということ、二つは、むだな高速道路をつくらなくする、その二つだと思うんですね。では、四十五年で有利子債務を返せるというふうに政府が今回与党申し合わせで発表しましたけれども、これは本当に返せるんですか。

石原国務大臣 本当に返せるのかという御質問であるならば、本当に返さなきゃいけないので、今度は法律にしっかりと明記をして、四十五年以内に返済をしていくということでございます。

 どういうことかと申しますと、これまでやはり、委員の御質問を聞かせていただきまして、公団方式に問題があったんじゃないかという認識は共通しているような気がいたします。

 すなわち、四十五年で返せるのかという質問の根底にございますのは、これは私も多分同じ印象を持っているんですけれども、たしか東名高速ができたとき、三十年後は東名高速、無料になりますよ、そういう話を聞きまして、東名高速、三十年後に無料になるんだから、これはすごいなと。できた当時からの三十年後というのはどういう社会になるかは想像もつかなかったわけですけれども、この償還というものが順送りになってきた。そういうところに委員は疑問を感じられ、今度は四十五年と言っているけれども、これまでは三十年と言っていて返さなくて、どんどん先送りしてきたけれども、また先送りするんじゃないか、こういう御懸念から御質問をされているんだと思うんです。

 今回は、四十五年と法令化しますとともに、借金の上限についても、四公団合わせて民営化したときを上回らないようにしようとしっかりと書きますし、公団の問題はやはり施行命令、これはいい例だと思うんですけれども、一方的な命令のもとに、言われたらつくるしかなかった。しかし、今回は、やはり民間会社でありますから、会社の自主性を尊重しよう。仕掛かり品についても、複数協議制をもって、もしやりたくないというならば他の会社に回す。さらに、今度の整備計画の外の道路については、申請がない限りはその会社につくってくれということはやらない。こういうふうに、道路公団自体が抱えているさまざまな問題に対する解決策を実は盛り込ませていただきました。

 こういうことによりまして、委員の御懸念であります、おい、本当に返せるのかということに対して、返すんです、返すことが一つの大きな目的でありますし、前段の質問にございましたように、コストを下げて国民の皆さん方の負担を限りなく小さくして、厳しい評価を行って、その評価に合格した道路はつくる、こういうことがこの民営化によってなされているとぜひ御理解をいただきたいと思います。

井上(和)委員 それじゃ、大臣、お伺いしますけれども、民営化推進委員会の松田さんは、昨年の十二月に、五十年以内の返済がぎりぎりという認識を示したつもりである、この上に借金が上乗せになっていってどうして四十五年で返済できるのと。しかも、金利の変動がありますからね、金利が少しずつ上がっていく現状で、絵にかいたもちだと言っておるわけですよ。同じように、ほかの委員の方も、川本さんも、委員長代理だった田中さんも、とてもとても、五十年でも精いっぱいだと。まして今度、借金がふえるわけでしょう。それでどうして返せるんだということを言っているわけですよ。

 返せるとおっしゃる、返すんだと言うけれども、では一体、根拠は何なんですか。リース料とか需要予測、もう少し具体的な話をしてくださいよ。金利はどういうふうに考えているんですか。大臣、お願いします。

石原国務大臣 詳細については局長の方から答弁をさせていただきますけれども、リース料の設定というものは、料金収入から管理費を除いたものがすべてリース料になる、すなわち債務の返済財源になると御理解をいただきたいと思います。

 それでは、リース料の額、これは基本的には、将来の料金収入や管理費について、金利計算等々はこれから局長に答弁させますけれども、たしか金利を四%に置いていると思います。そういうことで、民営化後、民営化は十七年度にしますから、それから四十五年間の毎年毎年のリース料というものをあらかじめ設定します。そうしませんと、民間会社が中長期的な経営というものができませんから。

 そして、そのことによりまして民間会社が経営見通しを立て、今委員御指摘の、質問の中にきっとこういうことがあるのは、では、例えば大きな地震があったりインフレーションが起こる、またデフレが、デフレは金利が低くなるからいいんですけれども、大きなインフレがある、そういうときはどうするのかというのが多分御質問の趣旨だと思うんですけれども、そういう不測の事態には、五年ごとに見直すということで対処をしていく。

 そこの不測の事態に対する対処というものも十分考えていかなきゃなりませんが、やはり原則は、四十五年間の毎年毎年のリース料というものが決まっていない限り、民間会社は中長期的な経営見通しというものが立てられない、経営見通しが立てられないということは、民間会社として存在していく上で非常に問題がある、こういう考えでございます。

 詳細につきましては、局長の方から御答弁させていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 いろいろな条件の設定をしながら、今後法案を検討させていただく中でいろいろ検討をする必要があるだろうということで、今やっているところであるわけでございます。例えば、先ほどの先生のお話の、これまで料金収入が四十四兆円でこれまでの建設費が四十三兆円である、もう返していてもいいんじゃないか、こういうお話がありましたが、金利を払いあるいはまた管理費を払って、その上で、この四公団合計で既に償還準備金という形では十三兆円をこれまでお返し申し上げている。管理しながら、金利も払いながら、こういう前提でございますから、そういうところで努力させていただいているということ。

 それから、現状で申し上げますと、例えば高速自動車国道で申し上げましたら、平成十四年度の収支状況で申し上げますと、収入が高速自動車国道としましては一兆八千三百億円でございますが、これで費用、管理費と建設利息等をお払いしますと九千九百億円、合わせましてそれを差し引きいたしますと八千四百億円。こういう形で、毎年度、剰余金といいますか、返済し得る、資金もため得る状況だ。

 こういう中で、将来、建設しながら、有料道路の対象としては十・五兆円、こういう中で、四十五年で償還し得るであろう、返済し得るであろうというようなことを今検討しているところでございます。

井上(和)委員 今の大臣のお話を聞いても、政府委員の方のお話を聞いても、全然説得力がないですね。その四十五年というのは、要するに四十五年で何とかつじつまを合わせて返そうということでしょう。そうしたら結局は、料金を上げるか税金を入れるかしなきゃいけなくなっちゃうんじゃないですか。

 国民がこれだけ注目していることなので、もう少しはっきりとしたシミュレーションを出してくださいよ。ぜひそういうことをお願いして、ほかの問題に移りたいと思いますけれども、どうですか、大臣。

石原国務大臣 先ほどの御答弁の中で、委員の御懸念というものが私の経験の中で培われてきた疑問と一致するものがあるのではないかという私の推論を申し述べましたが、今回は四十五年という年数を法律にしっかりと書かせていただきます。これまでの道路公団というものは、そういうものが、三十年で返しますと言いっ放しであったわけであります。

 そして、委員の御懸念は、さまざまな状態の変化があったときに、新たな国費投入や、四十五年以上に返済が長引くようなことがあってはならぬという御指摘と聞かせていただいておりますので、その点については十分留意をして、これも民営化委員会の答申の中にございますけれども、四十五年、先ほど毎年のリース料というものの決め方は説明をさせていただきましたが、これは四十五年の元利均等払いの相当額よりも上回るような金額を念頭に置いて、しっかりと返すことで委員の御懸念にこたえてまいりたいと考えております。

井上(和)委員 大臣ももうおわかりのことだと思うけれども、これはもともと、高速道路ができたとき、どういう法律ができたんですか。高速道路特別措置法で、償還でしょう。料金収入がちゃんと入ったらそれでもう償還して、東名高速を無料にするという法律だったんじゃないですか。それがいつの間にか施行規則を変えて、プール制度になったわけでしょう。

 だから、今御答弁でおっしゃったように、幾ら法律の中で書き込むと言ったって、結局また同じようなことになるんじゃないか、そういうことを言っているわけですよ。つまり、国にはもう前科があるわけです。

 そういう意味で、今回の四十五年というのは、要するに、えいやで、まあ民営化委員会が五十年だから少しそれより短ければつじつまが合うんじゃないか、国民の理解を得られるんじゃないかということで、要するに鉛筆なめなめつくった年数じゃないですか、はっきり言って。そういう意味で、恐らくこれじゃとても国民は納得できないと私は思っています。またの機会でこの問題を、法案の方が出てきたらゆっくり議論させていただきたいと思います。

 それでは、大臣、別の問題にかえさせていただきますけれども、住宅問題の話なんですね。ただ、この住宅問題というのは、住宅の省エネという問題で、今話題になっております、この委員会でもたびたび出ました京都議定書の問題、CO2の削減の問題に非常に密接に関係しているということで、きょうは環境省の大臣にもおいでいただいております。

 実は、私は、政治の世界へ入る前にニューヨークに住んでおりまして、その後、日本に帰ってきて、アパートを借りて住み始めたんですけれども、日本の住宅が貧弱なのは、これはもう当たり前の話だと、狭くて高いというのは。これはしようがないと思っていたんですね。

 ところが、住んでみまして、冬に、コンクリートのマンションですからこんなことはないだろうと思っていたら、すごく寒いんですよ。何でコンクリートのマンションは寒いのかな、寒いのかなと思っていて、例えば夜でも暖房をとめちゃうと寒くなって風邪を引いちゃった、そんなこともありました。

 ニューヨークは非常に北で、北緯四十度で、日本でいえば八戸と盛岡の中間ぐらいなんですけれども、それでもセントラルヒーティングであるということで、私が住んでいたアパートでも非常に暖かかったんですね。セントラルヒーティングだからかなと思っていたんですが、いろいろ調べてみますと、日本の住宅、特にマンションとかコンクリート住宅の構造が欧米のものと全然違っているんだ、そういうことがわかってきたんです。

 特に違うことは、その断熱性能が全然違う。特に、欧米のコンクリートの建物というのは、断熱材を建物全体を包むようにかぶせてある、これは外断熱工法というんですけれども。だから、当然、部屋の中も断熱がよくされていて暖かい。そして、冷暖房の効果も非常に高くなるわけですね、断熱性能が高いということですから。

 ところが、日本では、どうもこういった工法で建てられている、外断熱工法で建てられているマンションというのはほとんどない、本当に数えるほどしかない。

 そしてまた、断熱材も、日本の推薦基準なんか、例えば、一般のマンションでは、十五ミリ、一・五センチぐらい、このくらい断熱が入っていれば別にいいでしょうというのが公庫の基準らしいんですね。

 ところが、カリフォルニアなんかではその三倍ぐらいだ、そういう事実があるんです。欧米では、特に一九七五年のオイルショックの後に非常に厳しい断熱基準をつくった。これは、もうヨーロッパもそうです、スウェーデンとかほかの国もそうなんですね。ところが、日本の場合は非常にこの断熱基準というのは低い。

 そこで、小池環境大臣にまずお伺いしたいんですけれども、地球温暖化対策として、我が国のCO2を六%削減するという目標がありますけれども、住宅分野ではどの程度の削減というのが目標でしょうか。

小池国務大臣 お答えいたします。

 今の地球温暖化対策推進大綱におきまして、民生部門、そこのエネルギー起源CO2の削減目標を定めておりますけれども、基準年である九〇年の総排出量との比較をいたしますと、六%のうちの約〇・四%相当ということになります。

 ただし、これは民生部門という大ぐくりな話でございまして、御質問の住宅ということに限定して申し上げるならば、ちょっとほかの数字になるかもしれませんけれども、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上によってCO2が削減されるその量を三千五百六十万トンというふうに目標を設定しておりまして、民生部門の約四割程度を占める、こういう目標で進めてまいりたいと考えております。

井上(和)委員 民生部門の約四割を住宅の省エネでやる、やらなきゃいけないというお話なんですが、先ほど民生部門での削減は〇・四%とお答えになって、これは随分私は小さいなという感じがするんですね。

 実はこれは私の生活感覚で、例えば私が今住んでいるマンションでも、どうも北側の窓が、北側の部屋、娘の部屋がどうも寒いということで、私、つい最近、もう一個サッシを入れまして二重窓にしたんですよ。そうしたら、部屋が物すごく暖かくなったんです。

 数年前に、軽井沢に家族で遊びに行ったことがありました。冬でした。かなり有名なディベロッパーがつくったマンションに泊まったことがあるんですが、そこも窓から何かすうすうすうすう風が入ってきたんですよ。中では一生懸命暖房をかけている。

 基本的に、ヨーロッパなんかではほとんどが、寒冷地でヨーロッパは寒いということもありますが、二重窓ですね、ペアガラス。日本の場合は、寒冷地でも北海道を除けばほとんどペアガラスはないと思うんですね。

 そういった意味で、こういう省エネの分野を本当に真剣に取り組めば、私、随分省エネになると思うんですけれども、そういった観点で、すごく我が国の省エネの取り組み、特に住宅分野での省エネの取り組みは不十分だという認識をしているので、きょうこの問題を取り上げているんです。

 例えば、窓です。普通の窓から熱がどの程度損失されるか。例えば壁もありますけれども、そういう具体的な数字、もしわかっていたら教えていただけますか。

松野政府参考人 お答えいたします。

 窓からのエネルギー損失はどの程度のものかということでございます。

 今先生おっしゃった単板ガラスの住宅でのモデルを計算してみますと、冬の暖房時には窓、開口部から失われる熱の割合は全体の四八%、それから屋根、天井からは六%、外壁一九%ということで、開口部が大変大きな数字になっております。また、夏の冷房時には、計算してみますと、開口部、窓から七一%、これは熱が逆に入ってくることでございますが、屋根、天井が九%、外壁が一三%というようなことになっております。これをペアガラスにいたしますと、損失は大体七割に減少するということが言われております。

井上(和)委員 今のお話を聞いて、私がニューヨークにいたときの住んでいたマンションが暖かかったのは当然だなというのはわかるんですね。つまりは、構造自体が外断熱でつくってあるし、窓も、私ははっきり覚えていないですが、恐らくペアガラスなんでしょう、そこまで全然その当時は意識がなかったものですから。最近は、どこへ行ってもまず先に見るのは窓なんですよ。窓が本当にペアガラスになっているか。東京の場合はほとんどないです。ビルでもほとんどない。

 スウェーデンの例を申し上げますけれども、スウェーデンでは、マンションやオフィスビルのCO2排出量を一九八七年から九四年の間に、マンションで四五%、オフィスビルで三二%というふうに劇的に減らしたんですよ。

 つまり、まさしく先ほどおっしゃった開口部の問題、窓の問題、こういうのをしっかりと取り組む、また、その断熱、外断熱工法による断熱性能の向上なんかをしっかりやったわけですね。そういうことによってエネルギー消費をすごく減らしているんですね。そういった観点から、何度も言いますけれども、私は日本の対策が非常に不十分だと思っているんですね。

 そこで、大臣にお伺いしますけれども、一つ、省エネ対策、先ほど申し上げた外断熱工法というのがあるんですが、どういうふうに今評価をされていますか。大臣じゃなかったら、参考人でも結構ですけれども。

松野政府参考人 外断熱工法の評価ということでございますが、外断熱は、外側でいわば断熱、熱の出入りをシャットアウトしてしまいます。したがいまして、内部の構造が劣化しにくいというようなメリットがございます。また一方、冷暖房をかけるときに、内部の構造躯体を暖める、あるいは冷やさなければいけないということで、つけたり消したりするというときのエネルギー効率は若干悪い、あるいはコストが外断熱は若干高いというようなこともございます。したがいまして、すぐれた工法ではございますが、これだけということではないかと思います。

 したがいまして、それぞれの気候の地域、あるいはどういう使い方をするのかということをよく考えて、さまざまな工法の中で選択していくべきではないかというふうに考えております。

井上(和)委員 今のお話で、つまりは、今までの国交省の考えというのは、北の部分ではペアガラスとか外断熱工法とか、要するに本当の省エネをしっかりとやりましょうということで、北海道なんかはかなり進んでいるんですよ。それは当然の話なんですけれどもね。

 ただ、やはりこれからは、これだけCO2削減というのが大きな課題ですから、これはもう国家的な目標だと思うんですが、それがやはり取り組みが非常に不十分だと思います。そういう点で、これは東京だって冬は相当寒いですし、そういった意味で、やはりきちっと対策をしなきゃいけないというふうに私は思っています。

 例えば、古い公団なんかが今改修されていますけれども、こういった改修されている公団を外断熱工法なんかを取り入れて、省エネ対策を導入したらどうですか。いかがですか。

松野政府参考人 公団住宅の改修の際に、外断熱にして省エネルギー対策を強化すべきではないかということでございます。

 昭和五十九年以来、公団でも、新規建設の場合、試行的に外断熱工法を採用して五団地百四十六戸を実施した経験がございます。ただし、やはりコスト的にやや高目であるということで、一つの団地の例ですと、大体コストが十数%高いというようなことが出ております。

 また、改修のときはどうかということでございますが、屋根の防水工事の改修がございますので、その時期に合わせて、上から引っぱがすような形で外断熱工法を採用してやるというのは大変合理的なものですから、屋根については外断熱工法による改修工事を実施しております。

 ただし、外壁につきましては、既存のサッシとのおさまりぐあいというようなことも大変複雑なものがございますので、大変コストが割高になるということがございますので、外壁については内断熱工法を採用している、こういう状況でございます。

井上(和)委員 省エネ対策として、金融公庫なんかが次世代省エネ基準というのをつくっていますけれども、これは金融公庫でお金を借りる場合に、ペアガラスとか、こういう断熱性能をよくするということをやるとお金がたくさん借りられるということをやっているんですが、実績が非常に少ないというのを私聞いているんですね。今は聞きませんけれども。

 つまりは、やはり何か今の日本の省エネ、住宅部門の省エネ対策というのは、あくまでもその基準を示して、国民の皆さんやってください、これが基準です、そういうレベルだと思うんですよ。ところが、やはりスウェーデンなんかでは、そうじゃないですよね。やはり住宅なんかに関しても、相当厳しい省エネを、法律を決めてやっている、強制的にやっている。

 だから、我が国も、私が最初に申し上げました、とにかくコンクリートであっても、どうも住んでいると寒くて寒くて、夜、風邪を引いちゃう、暖房を切ったらすぐ寒くなっちゃう、こういうレベルの断熱基準はなくして、やはりもっともっと高いレベルで、ある程度の高いレベルの断熱基準をもう法律として決めたらどうですか。――はい。それで、最後に大臣に一言。

松野政府参考人 断熱構造化、省エネルギー対策を義務づけるべきではないかということでございますが、現在の一番新しい平成十一年の基準、これが先ほど先生がおっしゃいましたペアガラスにするとか、そういったかなり省エネルギーの基準として高いものでございますが、確かにまだまだ浸透はしておりませんけれども、最近の公庫の基準金利や割り増しというような優遇措置によりまして、公庫の調査でも、平成十一年がわずか四・七%でございましたが、平成十四年度では一五%程度にまでかなり上がってきております。したがいまして、こういった誘導措置によってかなり伸びていくものであると考えております。

 規制すべきではないかということに関しましては、我が国の省エネルギー対策は、産業部門あるいは運輸部門、民生部門、各部門とも規制的措置はとっておりませんで、誘導的措置によって講じられております。こうした中で義務づけということになりますと、住宅所有者であります一般消費者のみにこの規制が及ぶということになりますので、今後これについては慎重に検討すべきではないかというふうに考えております。

井上(和)委員 きょうわざわざこの問題を取り上げたというのは、余り皆さん知らないんですよね、こういったことを。だから、ぜひ委員の皆さんに、やはりこれは、暖かいと思って行った旅行で旅館に泊まったら、すごく寒くて風邪を引いちゃったとか、恐らくそういうこともありますから。つまり、それはやはり構造的な、断熱基準とか窓の問題とかあるわけですよ。割と我々の生活に密接に関係しているもので、例えば、高齢者の方がトイレに行くとき寒くてヒートショックを起こしますね。これもやはり断熱の問題があるわけですね。

 だから、ぜひ皆さん方に御理解、委員の方も御理解していただいて、関心を持っていただきたい、そういう思いできょうこの問題を取り上げたんですが、大臣、何か最後に一言。

石原国務大臣 ただいま委員と政府委員のやりとりを聞かせていただきまして、工法には、屋根なんかですと、外断熱が安い値段でできて、しかも失うエネルギーの率が非常に低い、すなわち省エネルギー効果が高い、こういうことも明らかになってきたと思います。

 私も調べてみましたら、国土交通委員会の十五年四月の委員会の中の附帯決議の中に、先ほど融資の実績が低いんじゃないかと言われた公庫の融資についても、「外断熱の推進等住宅の省エネルギー化等の政策誘導機能を重視したものとなるよう努めること。」と、国土交通委員会で附帯決議、これは全党一致だと思いますけれども、そういう御指摘もありますし、ただいまの委員の意見もございますので、省エネルギーの推進というものにこれからも努めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

井上(和)委員 わかりました。どうもありがとうございました。

 それでは、大臣も環境大臣も、どうぞ、終わりました、御退席ください。

 それでは、坂口厚生労働大臣に年金問題に関して議論させていただきます。

 前回、私が登場したときに、国民年金の空洞化に関していろいろ大臣にお伺いしました。私は、きょうも引き続き、また国民年金の問題に関してお伺いしたいと思います。

 私は、国民年金は非常に大事だと思っているんですよ。つまりは、厚生年金というのはどちらかというと所得保障なんですけれども、私はやはり、基礎年金である国民年金というのは、これは生活保障だというふうに思っています。つまり、国民が安心して老後を暮らせるためのセーフティーネットであるというふうに考えているんですね。

 先日、私の同僚の議員が、やはり自助努力が大事だ、自立の精神が大事だということを申し上げていましたけれども、私もそれは同じ考えなんですね。ただ、やはり基礎年金にしか入れない方も非常に多いわけです。後で具体的な数をお伺いします。そういった意味で、やはり、基礎年金をもらえば老後も自立して生活できる、そういう意味でのセーフティーネットとしての役割は非常に大きいというふうに思っています。

 坂口大臣御自身も、平成十一年の厚生委員会でおっしゃっているんですね。「国民年金、基礎年金の水準の見直しと申しますか、水準への配慮というものも大事でございまして、現在のように生活保護者にも及ばないような基礎年金は少し問題がある。もう少しここは努力をしなければならない点ではないかというふうに思っておりますが、あわせて御答弁いただければ幸いでございます。」このときは大臣じゃないですから、大臣の方に答弁を求めていらっしゃる。こういうことを指摘させていただきたいと思うんです。

 大臣、今でもこのお考えは変わりませんか。大臣になってから変わられましたか。

坂口国務大臣 御指摘のように、基礎年金は非常に大事だというふうに思っております。

 やはり基礎年金しか入ることのできない方々もたくさんおみえでございますし、ここは皆さん方におこたえできる、これだけで生活というのはなかなか難しいんでしょうけれども、しかし、これが大きな老後の支えになるという基礎年金でなければならないというふうに今も考えております。

井上(和)委員 それではお伺いしますけれども、今回の年金改革で基礎年金の給付の調整というのはどういうふうになるんですか。大臣、おわかりですか。では、よろしくお願いします。

坂口国務大臣 仕組みその他の前提条件はもう申し上げません、長くなりますから。

 この前提条件は幾つかありまして、このままでいきますと、二〇二五年、約二十年先、二十一年先になりますか、先になりますと、名目額で十六・五万円、名目額でございます。これは本当はもう少し伸びるんでございますが、少し抑制いたしまして十六・五万円。物価上昇で割り戻しますと、これが十三・四万円ということになります。

井上(和)委員 これは、要するに下がるということなんですか、今のレベルと比べて。

坂口国務大臣 今十三・二万円、そして、物価スライドで若干下がっていますから、十三・〇ぐらいでございましょう。

 ですから、まあ、今と比べまして下がらない、少しは上乗せできるということでございまして、上乗せというほどではありませんけれども、物価的に言えば今と同程度あるいは少しよくなるという程度でございます。

井上(和)委員 そうなりますと、大臣が以前議員として御質問になっていたような水準の見直しとか、そういうレベルにまだ行っていないということですね、残念ながら。

 そこでお伺いしたいんですけれども、今、基礎年金の加入者は何人いるんですか。厚生年金と共済とも比較して御答弁いただけますか。

薄井政府参考人 お答えいたします。

 平成十四年度末におきます国民年金の加入者でございますが、第一号被保険者数と、それから厚生年金保険、共済年金、それぞれ分けてお答えをいたします。

 まず、国民年金第一号被保険者数、自営業者その他でございますけれども、これが、任意加入被保険者数を含めまして二千二百三十七万人という数字でございます。それから、おおむね第二号被保険者ということになろうかと思いますが、厚生年金保険の被保険者が三千二百十四万人、共済年金の加入者が四百七十一万人、両方合わせますと三千六百八十六万人ということでございます。それから、今申し上げました第二号被保険者の被扶養配偶者、国民年金の方から申し上げますと、第三号被保険者ということになるわけでございますが、千百二十四万人ということでございます。

 以上、合わせまして、公的年金全体の加入者ということで申し上げますと、七千四十六万人ということでございます。

井上(和)委員 今の答弁でわかります第一号被保険者、つまり国民年金だけに入っている人は二千二百万人もいるわけですよ。だから、この人たちの生活を支えていくのは国民年金なんですよ。それだけやはり大事な基礎年金であって、これはもう生活保障、何物でもないというふうに私は思います。そういった意味で、やはり何とか、大臣が議員のときに思っておられたような理想に近づける努力を私はしていかなきゃいけないというふうに思うんですね。

 今の基礎年金の中の自営業者の割合は何%、何人ですか。

薄井政府参考人 お答えいたします。

 社会保険庁が平成十四年に実施をいたしました国民年金被保険者の実態調査によりますと、これは、法定免除者を除きます第一号被保険者の職業の構成について調べておりますけれども、自営業主が一七・八%、それから家族従業者が一〇・一%、それからパート等の雇用者が三一・六%、無職の方が三四・七%、こういう数字になってございます。

井上(和)委員 前回の委員会で、私、二千二百万人の第一号被保険者、つまり、国民年金の加入者のうち三分の一が保険料を払っていないか入っていない状況であるということを厚生労働大臣に答弁いただきましたね。これはもう大変大きな問題だと。今回の改革では、それは全然改革されていないということを申し上げた。

 今答弁があったように、無職である人が三四・七%、パートが三一・六%、つまりは、六五%、もうマジョリティーですね。大多数の人が、自営業者と言えない、本当に非常に経済的に弱い立場にあるような人であるということですね。だから、今の制度を本当にこのまま続けていくのは非常に難しいというふうに私は思っています。

 ちょっと議論を変えますけれども、今回、国庫負担が二分の一にふえます。そして税金を余計に投入するということになるんですけれども、そうしますと、裕福な高齢者に対する生活支援、つまり、税金を使って裕福な人たちを支援するということになりませんか。大臣、どういうふうに考えていますか。

坂口国務大臣 この基礎年金の部分につきましては、国民年金ですね、この部分につきましては、これはまあ、裕福な方、それから貧しい方、いろいろあろうかと思いますけれども、同じように拠出をしていただき、同じようにもらっていただくということにここはなっているわけです。二階の部分でいろいろ調整をしているということでございまして、ここの部分は同じように出していただいて、同じようにもらっていただくということを一つ前提にいたしましてつくり上げている制度でございまして、中には御指摘いただきますように裕福な方もおみえだろうというふうに思いますけれども、しかし、ここは比較的、基礎的なやや低い部分でございますから、これは同じように扱わせていただいてきたというのが今まででございますし、これからもそういう考え方に立っております。

井上(和)委員 大臣、財政制度審議会では、やはりこのあたりをもうちょっと変えた方がいいんじゃないかという議論も出たんですけれども、それは御存じですか。

坂口国務大臣 経済財政諮問会議、私、常時出席しておりませんので、私のお邪魔していないときにあるいは出たかもしれませんが、基礎年金のお話につきましても若干御意見はあったことはあるというふうに思っております。

井上(和)委員 この辺が私は非常に大きな議論のポイントだと思っていますので。私たち民主党は、スウェーデン方式という年金制度にして、所得の少ない方、そういった方の老後を支えるためには税金を使いましょう、生活保障としていきましょう、所得が高くて独自に自立できる方には自分で、自立でやっていただこう、そういう考えなんですが、私は、大体、こういう私たち民主党の考えにもう移らなきゃ制度自体がもたないような状況になってきているんじゃないかというふうに思っているんですね。

 一点、前回聞き忘れた問題でお伺いしたいんですけれども、国民年金の現在の徴収にかかる事務費というのは幾らなんですか。

薄井政府参考人 お答えいたします。

 国民年金の事務費でございますけれども、国民年金の業務、適用、それから保険料の徴収、それから給付、こういった業務を一体的に処理をいたしておりますので、保険料の徴収分だけの事務費ということで切り分けてお答えすることは難しいわけでございますけれども、平成十六年度の予算案におきます国民年金事業全体の事務費、これは業務取扱費と社会保険事務所等の施設整備費ということになるわけでございますが、その合計額は千四百二十二億円、こういう数字になってございます。

井上(和)委員 約二兆円の保険金を集めるために千四百億円使っている。国際的には、大体年金の徴収のための行政費というのは一%だと言われているんですね。それをもう大幅に上回っている、七%ぐらいですね。だから、先ほど長妻議員も指摘しましたけれども、こういった問題はしっかり国民に説明のつくようにしていかなきゃいけないと思うんです。

 最後に、天下りの問題に関してお伺いしますが、厚生年金基金というのがあります。これは三階建ての年金制度です。約千六百ぐらい厚生年金基金ありますね。実は私がかなり若いときに、当時厚生省ですが、厚生省に入るといいよ、天下り先、絶対困らない、なぜかといったら、年金基金が幾らでもあるから天下り先なんか幾らでもありますよ、そういうことが言われていたんですね。

 大体、何でこんなたくさん、千六百も七百もつくったかどうか、それはまた別問題として、そこには一体何人天下りしているんですか、厚生省。

吉武政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十五年四月一日時点におきます厚生年金基金数は千六百五十三基金でございます。それで、これらの厚生年金基金の役員に就任しております厚生労働省出身者は六百二十五名、職員が二百三十四人と承知しております。

井上(和)委員 それ、逆じゃないですか。役員が六百二十五。――はい。

 つまり、厚生年金基金をつくるときに、今は、はっきり言って、もう代行返上とか破綻とか大きな問題になっていますね。ただ、つくるときには、企業から要請があるんだということを口実にして、天下りを引き受けてもらう、一人役員を引き受けてもらう。ところが、そのかわりに、いろいろな面で、税制とか制度面での恩恵は与えます、そういうえさですか、はっきり言って、つくってもらうようにしむけていったのが厚生省なんですよ。そして、今になって、にっちもさっちもいかなくなって代行返上だということになっている。

 本当にこれはもう年金の、これは国民年金であれ厚生年金であれ、本当に構造的なこの天下りの問題はもうしっかりと解決していかないといけないというふうに思っています。

 きょうの質問は、では時間がなくなったので、厚生労働省、これで結構です。どうもありがとうございました。大臣、どうもありがとうございました。(発言する者あり)聞いていただいても結構です。厚生労働省も関係あるからちょうどいいですね。

 最後の質問なんですけれども、私の選挙区は都内でございまして、錦糸町という繁華街があるんですね。先生方がよく飲みに行くような繁華街もありまして、北口は私がいつも街頭演説をやっているところなんですけれども、住宅地がばあっと広がっていて、南口の方には風俗店なんかが多々あるんです。

 私、先日その南口の方の電話ボックスにたまたま入りましたら、いろいろチラシがあったんですね。ちょっと集めてきました、こういうのを。アルバイトクラブ、すぐ伺います、お電話くださいと携帯電話の番号が書いてありますね。あと、何ですか、素人専門店とかなんか、こんなようなのをたくさん集めてきたんですね。

 これを見ると、何か電話番号とか書いてありまして、警察庁にお伺いしたいんですけれども、これはつまり、基本的には売春のためのチラシじゃないかと思うんですよ。実は、私のマンションにも時々入ってきて、子供には見せられないのでいつも捨てているんですけれども、こういうのが非常に野放しになっているし、やはりこれが基本的には売春の温床になっているんじゃないですか。こういうことに関してどういう取り締まりをしているか、ちょっと警察庁から御答弁お願いします。

伊藤政府参考人 いわゆるデートクラブなどの派遣型売春事犯におきましては、大量のピンクビラなどを貼付あるいは頒布して派手な宣伝活動を行いまして、地域の清浄な風俗環境を著しく害しているものも見られるところでありますので、警察庁といたしましても、都道府県警察に対しまして重点的な取り締まりを指示しているところであります。

 このような結果、昨年、平成十五年中でございますけれども、二千六十九件の派遣型売春事犯を検挙いたしております。また、ピンクビラなどの広告につきましても、七百四十一件を検挙しまして、約七百四十万枚のピンクビラを押収しております。

 今後とも、この種の営業の取り締まりにつきましてはさらに進めていくとともに、ピンクビラの貼付、配布事犯に関しましては、さまざまな法令を駆使した取り締まりや、あるいは関係機関、団体、地域住民との連携によります環境浄化活動を推進して、その防止を図っていきたいと思っております。

井上(和)委員 恐らく皆さん御存じのように、こういった売春なんかの問題で外国人が働いているケースが非常に今ふえていますね。実は、きょう問題にしているのはその外国人の問題なんですね。例えば、東南アジアの国々とか、あと中南米とか、最近は北米からもそうなんですけれども。

 どういうことかというと、日本でうまいもうけ話があるよ、日本はジパングだからとか言われて、何かちょっと働けばお金がもうかる、そういうふうにだまされて連れてこられちゃう。来てみると、パスポートを取り上げられて、やらされるのは売春だ。逃げようにも、例えば本国の家族を殺すぞというふうにおどされて、家族がいると怖いですから、そうすると、もう何にもできなくて、とても悲惨な目に遭う。

 そういうような、これはいわゆる人身取引、英語でヒューマントラフィッキングと言うんですけれども、これが今非常に、逆に諸外国が非常に日本の状況を危惧している、そういう現状がありまして、私も、つき合いのある、特にタイの大使とかいろんな方から、ちょっとこの問題を真剣に取り組めよということを言われまして、今回この問題を取り上げているんですね。あと、コロンビアとかいろんな国があります。

 今、時間がなくなってまいりまして、現状を簡単に短く、どういう国の人が被害に遭っているか、簡単に一分ぐらいでお願いできますか。

伊藤政府参考人 昨年、トラフィッキング事案で検挙した事件は二十事件、ブローカーや悪質な雇用主等四十一人を検挙しております。これらの事件におきまして、八十三人の被害女性を確認しておりますけれども、事案としましては、コロンビアであるとかあるいはインドネシア、さらには台湾、そしてタイ等の事案が出ております。

井上(和)委員 それで、この問題を今本当に国際的に何とかしようと。何とかしようというのは、これは二つの側面があるわけですね。一つは、取り締まりをもっと連携してやらなきゃいけないということ。もう一点は、やっぱり被害者の人権を尊重して保護していかなきゃいけない、そういう観点なんです。

 そこで、外務省にお伺いしますけれども、人身取引に関しては、既に国際組織犯罪防止条約というのがあって、その補足議定書に人身取引議定書というのがあって、既に各国で締結されているわけですね。日本の状況はどうなっていますか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 国際組織犯罪防止条約を補足する人身取引議定書は、人身取引という行為を犯罪とすることを締約国に義務づけた上で、人身取引の被害者の保護、人身取引の被害者の送還、国境に関する措置等について規定しております。

 この議定書は、二〇〇〇年十一月十五日、国連総会において採択され、我が国は二〇〇二年十二月九日に議定書に署名いたしました。その署名に関しましては、その前提となる国際組織犯罪防止条約の締結が完了し次第、できるだけ早い時期における締結を目指して関係各省庁との間で検討を進めているところです。

 今申し上げました国際組織犯罪防止条約につきましては、昨年の国会におきまして締結につき御承認をいただきました。ありがとうございました。

 なお、同条約の国内担保のための法律案につきましては、今国会に提出されたものと承知しております。

井上(和)委員 最後に、野沢大臣と国家公安委員長もいらっしゃっていますので、それぞれお伺いしたいんですが、今話があったように、諸外国が今こういった我が国の人身取引の状況を非常に懸念しているんですね。だから、やはりちゃんとそういう国々の懸念を解くという意味でも、しっかりと措置をしていかなきゃいけないというふうに思うんです。まあ、現行法でやるというお考えもあるかもしれないんですけれども、ぜひ野沢大臣からまず一言お願いいたします。

野沢国務大臣 議員御指摘のとおり、この人身取引は、被害者、特に女性や児童の自由を奪いまして、人間としての尊厳を著しく傷つけながら、被害者の犠牲の上にみずからの金銭欲を満たそうとする、許されざる行為でございます。

 今日、その防止に向けた取り組みが国際的な要請になっているものと承知しておりますが、昨年十二月に私ども犯罪対策閣僚会議において策定した、犯罪に強い社会の実現のための行動計画においても、人身取引の処罰を確保できるよう必要な検討を進めることとしているところでありまして、他の省庁と緊密な連絡をとりながら、この法制化に努めてまいりたいと思っております。

小野国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 外国人女性のトラフィッキングにつきましては、被害者のいわゆる心身をむしばみます著しい人権侵害行為でございまして、警察が力を入れて取り組むべき重要な問題であると認識をいたしております。

 今後さらに、警察におきましては、不当な利益をむしばんでおりますブローカーや悪質な雇用主の取り締まりが強力に行われますように、被害女性の保護の徹底が図られますように、警察を督励してまいりたいと思っております。

井上(和)委員 何か参議院選挙の後に内閣改造をするとかなんとかいう報道がされていますけれども、野沢大臣、ぜひ今の国会でしっかりと御努力いただきたいと思います。国家公安委員長にもお願いします。

 最後に、もう一点だけ。

 やみ金融の問題を前回の委員会で質問したんですが、どうもまだ、現場の状況を聞くと、警視庁管内でも現場の警察官がまだこれは民事不介入だと言っているんですね。だから、ちょっとこの状態、本当に何とかしてもらいたいんですが、警察庁、何とかしてくれますか。

伊藤政府参考人 実効あるやみ金融対策を行っていく上では、第一線の警察官が、改正法の趣旨、そして内容を周知しておることが極めて大事だというふうに思っております。そこで、警察庁では、各都道府県に対しまして、いわゆる具体的なマニュアルもつくりまして、現場における対応要領といったものをやっておるところでございます。

 例えば、警視庁のある警察署におきましては、生活安全部門の幹部から、地域警察官、いわゆる交番に勤務するお巡りさんなどでありますけれども、そうした人たちに、当番制になっていますので当番のグループ別に、今述べました、私どものつくりましたマニュアルを教えたり、あるいは、各本部でつくりました一枚紙の非常にわかりやすい対応要領、そういったものをテキストとして講習をしているというふうに報告を受けております。

 私どもとしましても、今後さらに、各都道府県警察に対して、そうした点について指導してまいりたいと考えております。

井上(和)委員 時間なので、これで終わります。どうもありがとうございました。

北村(直)委員長代理 これにて井上君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 私は、きょうは、道路公団の問題について質問いたします。

 日本道路公団が今後建設しようとしている高速道路の整備計画区間は残り二千キロで、事業費も十三・五兆にも上ると言われています。新たに建設する予定の路線の未供用七十区間のうち、既に工事が進められている工事入札について、まず聞きます。

 一九九八年度から二〇〇二年度、五年間に契約された十億円以上の工事三百六十一件の工事入札状況について、三百六十一件の工事の合計金額は幾らか、落札率の平均は幾らか、そしてそのうち、落札率九七%以上の件数、九五%以下の件数、これをそれぞれ明らかにしていただきたい。

山本参考人 お答えさせていただきます。

 今先生御指摘の九八年から二年度までの事業中の七十区間につきまして、契約金額の合計は一兆九百五十三億四千四百二十五万円でございます。

 平均落札率につきましては、九八・一八%となっております。

 落札率九七%以上の件数につきましては、三百六十一件中三百二十七件、率で申し上げますと、九〇・六%ということでございます。なおまた、落札率九五%以下の件数につきましては、三百六十一件中の四件、一・一%でございます。

穀田委員 資料を配付してください。

 大臣には、今お渡しします資料をつくるに当たってもとの資料となった資料をお渡ししたいんですが、委員長、許可いただきたいと思います。

北村(直)委員長代理 はい、どうぞ。結構です。

穀田委員 資料(1)を見ていただきたいと思うんです。

 今、公団の答弁を一覧表にしたものです。落札率の平均がこの五年間で九八・一八、八の方は言わなかったですけれども。それから、工事の金額、価格は約一兆円にも上るという膨大な費用だと。大体、落札率の九九%台が七%、九八%以上が七割を占めていると。今お話があったように、三百六十一件のうち三百二十七件が九七%以上の落札率になっている。資料にもありますように、九五%以下というのはたった四件しかない。まさに神わざと言うしかない。

 そこで、大臣に聞きたいと思うんです。

 こういう落札の状況、受注の状況というのは、異常だと思わないかと、あり得ないと、そして、どう説明するのか、お聞きをしたいと思います。

石原国務大臣 ただいま穀田委員から、委員にお配りの資料のもとになるものを見せていただきまして、ざっと見ましたら、委員の御指摘のとおり、九五以下のものが、ばっと見た限りでは私も発見できない。ですから、委員の御指摘は事実だと思うんです。

 これはもう委員わかっていて御質問されていると思うんですけれども、公団の発注ですから、国土交通大臣として、それがどうであるかということを個々のものについてコメントする立場にはありませんが、一般論でお話をさせていただきますならば、これも委員御承知のことだと思いますけれども、予定価格というものは、つくるであろう建設業者の方々が、例えば、ここにいろいろ区間が出ていますけれども、この区間をつくるには一体幾らかかるだろうというそのコストを積み上げて、発注者側である答弁された道路公団が積算するものである。

 一方、その工事をとろうとする側はどうするかというと、積算基準というものが公開されておりますので、業者の方はこれを参考に見積もりをつけていって、その結果、きょう委員が御指摘されたこの厚い資料の中のとおり、三百幾つでございましたか、その三百六十幾つのうち七割ですか、八割ですか、それが九五%以上になってしまう。言葉をかえますと、落札価格と予定価格が近くなってしまったというのが、私は、この数字の物語るところではないかと思っております。

 このような議論は、実は先般、違う、ある公団が発注する事業で、これは安く落札して、安かろう悪かろうの例みたいなものだったんですけれども、やはり公共工事、道路公団も含めてですけれども、入札にかかわる透明性あるいは公開性というものはこれからも高めていかなければならないと思っております。

穀田委員 どうも歯切れが悪いなという感じがするね。

 やはり、この三百六十一工事箇所の中には、実は、青木参院幹事長の道路公団介入疑惑で有名になった島根県の仏経山トンネル西工事も含まれています。ここでは談合疑惑が浮上し、マスコミでも報道されているのは御承知のとおりです。それによりますと、間違いなく談合、マスコミざたになったので急遽本命を差しかえたということで、地元建設会社幹部の話として報道されています。

 また、道路公団をめぐっては、一昨年、道路保全工事の入札で、ファミリー企業による公団ぐるみの談合事件もありました。

 大臣は、一件一件どうのこうのと言う立場にないと言って、結局、全体としてどうだという話も含めてお話しされていないんですけれども、しかし、積算根拠云々かんぬんと言うけれども、驚くべき数字、よく見てほしいんですね。

 例えば、この三百六十一工区の中で、百億を超えるそういう工事について言うならば、七件あります。その七件は、一般競争入札にもかかわらず、入札参加JV数が三社が四件、二社しかない工事件数は一件、この五件すべてが、予定価格を下回ったのは落札者のみなんですね。しかも、大体、驚くことには、百億を超す工事入札予定価格なのに、違いはたった八千五百万しかない。まさに神わざなんですよ。幾ら積算数が公表されている、いろいろそういうことでやったとしても、それが違うのが当たり前というのが今の現実なんですね。

 それがここまで来ているという問題について、やはりだれが見ても、この落札の高さには、談合以外に考えられない。一般常識でいえば、九五%を超えれば談合だというのが常識なんですよ。そういった問題について一言も触れないというところに、私は、大臣の姿勢があらわれているんじゃないかと思うから聞いているんですよ。

石原国務大臣 先ほど、入札価格と応札、落札価格、予定価格とが近づくからくりは情報公開によってだというお話はさせていただきましたけれども、それが一致しているからあるいは近いからそれが談合であると直ちに言うことは、論理的には難しいのではないか。

 先ほども申しましたように、これは道路公団が発注者でございますので、個々のものについてはコメントする立場にございませんが、こういう御質問があるということで、私、調べたんですけれども、平成十四年、二年前でございますけれども、ここで、やはり談合というものは、情報ですね、談合情報というものが寄せられるわけであります。直轄工事、私どもに関係ある地方の整備局等々が取り計らっている直轄事業の中で、談合情報というのはやはり百件近く寄せられて、そういう情報が寄せられたら、直ちに調査をいたします。

 その結果、これはなかなか、おまえらは談合であると実証することは難しいわけですので、灰色である、そう言われるものが一割程度あったということは事実でございます。

穀田委員 私は、この問題をなぜ解明する必要があるかといいますと、これは未供用の部分なんですね。これからまたさらにどんどんつくられるという問題をはらんでいるわけでしょう。しかも、この問題をめぐって、この路線をどうするかという検討の素材になったといういわば重大な問題を含んでいるから私はこれを言っているんですね。だから、だれが考えたって、今のこういう経過から見れば、談合じゃないかというのは多くの方々が当然思っておられるわけです。

 しかも、なぜそういうことを言うかといいますと、次の資料を実は見ていただきたいわけです。ここに資料(2)がございます。

 ここでちょっと道路公団の方に聞きたいんですけれども、道路公団のそういう工事受注企業への天下りについて、これが、実際は高い落札率が価格が漏れている証拠だと私は言うんですけれども、安い入札が起きないように談合しているというのがこの世の中の常識だと言われています。

 そこで、今資料はお示ししたわけですけれども、全体についてお聞きしたいんですが、大臣に聞きますが、道路公団の発注する発注工事を受注するゼネコンなどにどれぐらい公団幹部が、OBが天下りしているか御存じですか。

石原国務大臣 この天下りの議論はかなり奥が広くて、どのぐらいの公共事業、すなわち、変な話ですけれどもピンからキリまである、そういうものをどこまで見るかなどによって天下りの数というものが大きく変化するということは承知しております。

穀田委員 では、道路公団に聞きたいと思うんです。さきの工事を受注した二百二十社のうち、公団幹部、OBを役員で受け入れている企業は何社あるか、人数はということについてお聞きしたいと思います。

奥山参考人 お答えします。

 先ほどの二百二十社のうちの、公団のOBを受け入れている企業数ということでお尋ねがございました。

 一般論として申し上げまして、公団の役職員の退職後の再就職につきましては、基本的には、当事者でございます本人と民間企業との契約関係、私的な問題になりますので、再就職状況を把握する立場にはございませんが、OB、公団を退職した者によりまして設立されております道友会という組織がございます。ここで会員名簿がございますので、平成十四年の十一月に作成されました会員名簿によりますと、先ほどの受注企業二百二十社のうちで、公団のOBが在籍していると思われる企業が百七十六社、先生の方の資料の(2)に百七十七社とございましたが、私どもでは、百七十六社、OBと思われる者が二百九十七名というふうに考えております。

穀田委員 すごい数なんですよ。一社が違うと言っているのは、私調べたんですけれども、多分そちらの資料ではサクラダという会社が、これがゼロになっているんですけれども、会社に聞いてみると、OBはいますと言っているんですから。

 それで私は、ここに資料を出しましたように「注1 日本道路公団提出資料及び平成十四年度日本道路公団OB名簿等より作成。」、「等」ということをわざわざ書かせていただいて、これがその名簿なんですよ。道友会という名簿なんですけれども、三百五十二ページにわたる資料で、三千四百人を超えるOBがどこへ行っているかという名簿なんですね。今お話があったように、百七十七社、二百九十八人というのは、とんでもない多い数だと私は思うんですね。

 そこで、実際の工事が、ほとんどが二から三社一緒になって工事を請け負うJV方式、いわゆる共同企業体として受注しているわけですから、例えば、大手ゼネコンと地方の建設会社というのが一緒になっているケースもあるわけだから、OBを受け入れる、そういう余力のない中小企業も当然それに含まれているわけですね。だから、さきの三百六十一件の工事、先ほどお示しした三百六十一件、この数字ですよ、一兆一千億円近い金のそういうところ、これを落札した企業、JVで見てみると、ほとんど、OBを受け入れた企業が落札しているんですよ。この三百六十一件のうち、OBがいない会社というのは一件しかないんですよ。だから、ここまで大変だというところがわかるんです。

 しかも、そこで資料をもう一度眺めてほしいんです。皆さん、「日本道路公団OBの在職状況」という欄、右の欄がありますね。ここにあるように、ただ会社にいたというんじゃないんですよ。ここにありますように、顧問、営業部長、営業部長、営業部長、営業部長、こうずっとありますね。ほとんどこれは営業にかかわっている。そういう部署に配置されていることがおわかりいただけると思うんです。本当に偉い人たちになっているんですよ。

 だから、何を意味するか。私は、そういう意味でいいますと、今度の道路公団からの天下りというのは、お仕事つき、天下る際に一緒に仕事を持ってくる、持参金つきだというふうに言えるんじゃないかと思うんです。だから、あるところで言われているのは、この天下りの人たちは談合屋とさえ言われているという声まであるわけです。受注企業にとっては、公団の仕事を獲得するための部署に配置をして、確実に仕事を受注する、利益をねらう、こういうことになるわけですね。今言いましたように、談合屋の声もあると言っているんですね。それぐらいこの資料の重みは大変なものだと私は言っているんですよ。

 国土交通大臣にお聞きしたいんですけれども、こういう状況というのを放置していてええのんかということをお聞きしたいんです。

石原国務大臣 委員が、一般論としてか道路公団の問題としてか、今御指摘がございました、いわゆる仕事を押しつける形の天下り、こういうものはあってはならない。特に道路公団は、現在まだ特殊法人でございますので、やはり公務員の天下りの問題と同じように、その地位にあった者が時の権力あるいは後輩への影響力を行使して民間に天下るというようなことは厳に戒めなければなりませんし、これまで議論されてまいりました入札をめぐる談合等々はあってはならない。

 そういうこともございますので、国土交通省の直轄事業では、そういうものに対して、立証はできませんけれども、再入札を行う等々厳しい措置もとっておりますし、平成十三年には適正化法も新たに、国会で御審議いただき、お通しいただき、適用させていただいている現状にございます。

 今委員の御指摘の点は、言ってみるならば、道路公団から民間の企業に再就職をしているという話でございまして、個人に限って言うならば、道路公団をやめているわけでございますので、民民のケースでございます。ですので、個々のケースについて、それがどういうことであったのか、不正があったとしたならばそれは厳に戒めていかなければなりませんが、個々のケースについてどうこう国土交通省としてコメントをする立場にはございません。

穀田委員 それはおかしいんじゃないですか。

 例えば、大臣、ファミリー企業の問題でも、随分、こういう点については厳しくしようと言ったことはあったじゃないですか。しかも、民民の問題と言うけれども、発注者の側はこういう立場にもあるわけですから、問題は、受け入れる側じゃなくて、発注者の姿勢を正せばこれは十分できるわけですよ。

 だから、いろいろお話があるけれども、大臣自身の今までの言動から見たって、ファミリー企業に対してはその点、規制をする。そして、この問題についても、直轄の話じゃないんです、今実際行われている現実があるわけですから、ここに対しても規制をすべきだということになりはしませんか。当たり前じゃないですか、それは。

石原国務大臣 これは再三再四御答弁させていただいておりますように、その以前にいたポストを利用して、仕事をもって、あるいは権限をもって再就職をするというようなことがあっては私はいけないものだと思うということは、ファミリー企業の天下りの問題のときも他の委員会で御議論をさせていただきました。

 私がコメントできないと言っているのは、今委員がお示しになりました二百数十社のうちの個々のケースが、委員は一般論か道路公団に限っての問題か、そこのところは私の理解が至らないんですけれども、そういう押しつけ型、権限をかさに着た天下りであるということを前提に御議論されているように聞こえますので、そういうことは私の方からコメントすることができない。

 何度も一般論で恐縮でございますけれども、公共事業に関する入札等々をめぐりましては、国民の皆様方の厳しい目ということをしっかりと認識をして、道路公団も受け入れる、受け入れるというのは民民でございますけれども、民間企業も対処しているものと承知をしております。

穀田委員 そんな態度じゃ、国民が、これは何とかこの問題について改善してほしい、癒着の問題があるじゃないか、そして、こういう談合の疑惑があるじゃないか、天下りがあるじゃないかという問題に対して、民民の問題だというような話でやっておったんじゃ話になりませんよ。一般論じゃないんですよ。個別具体的に、道路公団はこんな事態になっているじゃないかと、この事態については改善する必要があるじゃないかと言っているんですよ。

 しかも、そう言いますけれども、考えてくださいよ。大体、人事院の規則でいいますと、公務員が自分の関係するところに行くには二年間猶予期間を持って、やっぱり迂回、ストレートには行かないんですよ。それを、例えば、今お話ししたように、一般論じゃなくて、まさに、きょうまで発注者側の人間であった者があすは受注者側に回ると。

 押しつけというので話をしているんじゃないんですよ。そういう形で、実際は天下っていることによって受注するという仕掛けができているじゃないかと。まさに今、道路公団をめぐって改革しなくちゃならぬ国民の議論はここにもあるじゃないかと。この構造自身をやめさせること。ファミリー企業でもそう言っているんだから、少なくとも、今指導権限があるその問題について、発注者側であるその問題について、きちんと正す必要があるんじゃないかということを聞いているんですよ。

石原国務大臣 私も、一般論ではありますが、かなり踏み込んで発言をさせていただいているつもりでございます。

 それは、道路公団は特殊法人である、公務員型の特殊法人じゃありません、しかし公務の中での天下りと同じように権限を背景に、また、委員が指摘されたように、仕事をとるということを前提条件とするようなことがあってはならないとお話をさせていただいておりますし、これも再三再四お話をさせていただいているんですけれども、公共工事をめぐる契約や発注に、その再就職をしたことが条件になっている、背景になっている、こういうものがあってはならないということは委員の御指摘のとおりでありますが、私は個々のケースでこれがそうなのだということを認識する立場にはないし、それはわからない。

 先ほどの談合の話と非常に似ておりまして、灰色であるかもしれないけれども黒であることを実証するのが大変難しいという議論と同じでございまして、しかし、先ほど来、本当に再三再四申し述べさせていただいておりますように、平成十三年の四月でございますか、入札契約適正法に基づいて、すべての発注者に対しまして、入札契約にかかわる情報の公表、談合と疑わしき、先ほど来議論をさせていただいている灰色というようなものについて、公取の方へ通知する義務等によって入札の適正化に努めておりますし、この特殊法人であるところの日本道路公団においても、私たち公共が利用する高速道路というものをつくっているわけである以上、それに準じて、行動を厳に正していくということ、透明性、合理化というものをさらに図っていって、委員御指摘のような点がないようにするということは、一般論として当然のことだと先ほど来御答弁をさせていただいているわけでございます。

穀田委員 わかりました。

 今お話があったように、これは本当に厳しくやらなくちゃならぬ。大臣はすぐ、入札の問題について出した二〇〇一年のものを言いますけれども、でも、これを見てもわかるように、二〇〇一年のところでもそんなに下がっているわけじゃないんですね。だから、適正化法という問題を、何度も通達も出されて、しかも昨年も二度にわたって、そういった問題が起きないようにという通達を出しています。その実態はどうかと見ていると、これを見ましても、さほどそういう、まあ〇・五ぐらいは下がっているという、それはあります。だけれども、こういうもの自身について、もっと厳しく、本当の意味で、疑惑を招かないようにという趣旨が徹底されるような仕方をしなければならないと私は思っています。

 そこで、構造的な問題だと私は指摘したんですけれども、もう一つ実は構造的な問題があるから、これはなくならないんですね。

 今、私は、未供用のところで、今後引き続いて供用を開始される大きな額があるところで起こっている問題だということを指摘し、そしてそれが、事実上談合に近いことがやられている、その基礎にあるのが、実はやはり天下りという背景がある、構造があるというふうに言ってきましたけれども、もう一つは、やはり道路公団に関連して政官財のトライアングルについて指摘をしないわけにはいかないというふうに思うんです。

 そこで資料(3)を見ていただきたいんです。

 これは、三百六十一カ所の工事で受注した企業が、自民党の政治資金団体、国民政治協会に政治献金した金額の資料です。これは、五年間で二千万円以上の会社四十六とそれから受注契約金額について、比較検討できるように載せた資料です。

 この五年間に政治献金したことのある受注企業は、先ほど述べた二百二十社のうち百三十九社、六割を超えているんですね。そして、総額は何と、これは資料の下に書きましたように、二十八億なんですね。だから、比較していただいたらわかりますように、皆さん、これは、最初の一の新日鉄や八の川崎製鉄、十三の住友金属工業、石川島播磨重工、十六番、これはほかの仕事もしていますから、ここの工区だけで受注しているわけではないんですが、ほかは大体、ほぼ重なっているということがわかると思うんです。

 しかも、それを見ますと、大体、政治献金が多いほど受注契約金額も多い。だから、政治献金すれば公共事業を受注する機会、仕事をふやすことにつながっているということが大体、これを見ますと一目瞭然だと思うんですね。

 ここが大事でして、今、自民党は、仕事確保のために高速道路をつくり続けるということを政治の場で決めると。今度の高速道路残り二千キロの建設を続けるというのは、ここにあるんじゃないかと私は思うんですね。だから、このような仕掛け、仕組み、結局、自民党が、税金である事実上公共事業を食い物にして公共事業の受注企業から還流してくる献金のやり方、これはやめるべきだというふうに大臣は思いませんか。

石原国務大臣 ただいまの委員の御質問の中で一点、どうしても承服しかねる点がございますのは、まだ未整備の整備区間二千キロを、公共事業に従事する会社から政治献金を国民政治協会が取得するためにつくるというように、もし私の思い違いであればお許しいただきたいんですけれども、私はそのように聞こえたのでありますが、残りの二千キロの残存区間につきましても、費用対便益、採算性あるいは社会的外部効果、BバイC等々を見まして、それによって、必要になる道路の順位づけをして、原則的に順位づけの高いものからつくっていく、すなわち、公共財として必要なものをつくるということでこの道路公団の民営化論が始まっているという点につきましては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 それと二点目の、企業が政治活動を行う団体等々に対しまして献金を行う場合は、もうこれも委員御承知のことだと思いますが、政治資金規正法あるいは公職選挙法関連法令に準じて適正に行われるべきでありますし、先ほど来答弁をさせていただいておりますように、公共事業、国民の皆さん方に必要な社会インフラを整備するということに透明性あるいは合理性、説明責任というものを高めていくという努力を政治は行っていかなければならないという点については、考えが同じなのではないかと思っております。

穀田委員 ちょっと違うんですね。それは、明らかにこのトライアングルを今やめさせるということが大事だと。しかも、未供用の七十区間というのは一番、今大臣からもありましたけれども、CやDのところなんですよ。これをどうするかという問題について、採算性の問題や必要性の問題それ自身が議論になったところなんですよ。だからあえて私は問題にしたということを先ほど言ったじゃないですか。そこで、献金をもらう場合については法にのっとりと、それは当たり前の話ですよ、だけれども、こういう仕掛けができていること自体に問題があるじゃないかと。

 しかも、国土交通省は、先ほど、一言、私、言いましたし、また大臣もお話あったけれども、〇二年の四月二十六日には、工事受注企業を含む建設業界団体あてに通達を出しているんですね。「公共工事の入札及び契約に係る不正行為の排除の徹底等について」ということで、「政治活動に係る寄付について」ということで「国民の疑惑を招くことのないよう」にと、わざわざ、私どもの議員が指摘をした、ダム建設をめぐって献金がその受注した企業からどっと行われているという会議録まで添付してやっているんですね。そういうものなんですよ。

 だから私は、今何か言うと民営化することが改革だと大見え切っているけれども、しかし、今お話ししたように、民営化の基本的枠組みでは、必要性が乏しく、そして採算性のない高速道路を今後もつくり続ける、そのために四十兆円もの債務返済も国民負担になる方向が結果として打ち出されているわけですよ。これのどこが改革なのかと私は思っているわけです。

 先ほど来、私、言いましたように、きょうは、未使用で、今後引き続き建設しようとしている整備計画区間での工事に絡んで、談合による落札価格の引き上げ問題、そして道路公団からの天下りによる受注確保、そして受注企業からの政治献金の実態を明らかにしたわけです。このトライアングルを本当に打破することこそ、多くの国民がいわば道路公団問題をめぐる改革として大きな期待を寄せているところじゃないでしょうか。

 私は、今後、改革をするのであれば、この問題の究明は当然だと思います。一般論として言うだけでなくて、この問題をとことん究明するということが、今政治に求められていると思うんです。したがって、このような問題にメスが入らない、また、そういう形で逃げを打っているだけでは、国民の願う改革というものにはならないと私は指摘したいと思うんです。

 ゼネコンやファミリー企業が仕事を独占する癒着と利権の構造にメスを入れる、そして談合や天下り、さらには政治献金の問題、政治家の介入、このことが実はむだや浪費をつくり出している。その根本的な問題を解決すること、これが今求められているということを改めて指摘をして、私の質問を終わります。

北村(直)委員長代理 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本でございます。

 新人議員がたびたび予算委員会に出るのは大変容易でないんでありますけれども、よろしくお願いをいたします。

 地球温暖化に伴う森林整備ということで、前回の続きでございますけれども、質問させていただきます。

 オゾンホールの拡大でありますとか、あるいは海面の上昇ということで、地球温暖化の影響は年々深刻になってきているということであります。そうした中で、九七年の十二月に京都会議が開催をされて、先進国全体で温室効果ガスを五%以上削減していこうということで、日本の割り当ては六%だということで京都議定書が結ばれたわけでございます。

 この六%のうちの、森林で吸収する部分を三・九%ということで、十年かけてステップ・バイ・ステップで取り組んでいくということで、この間、農林水産大臣から決意が表明されましたが、その中で、この目標を達成するためには現状のままでは大変厳しいという認識も示されたというふうに思います。

 実際、地球温暖化対策推進本部、これは小泉総理が本部長でありますけれども、これによりますと、平成十三年度時点で我が国の温室効果ガスの総排出量は、基準年、九〇年に比べて逆に五・二%ふえている、そういうふうに分析しているわけでございます。そして、この現状を踏まえて対策を直ちに実施し京都議定書の約束の達成を図る必要があるというふうに、地球温暖化対策推進大綱の進捗状況というものに述べられております。

 そこで、農林水産大臣に、この目標を達成するための人員措置、これをどういうふうに考えているのか。これは、国内森林の七割、千七百五十万ヘクタールで下刈りをするとかあるいは間伐をするとか、そうした大変膨大な作業があるわけでございますが、その点についての人員配置についてどういうふうに考えているのか、お伺いします。

亀井国務大臣 お答えをいたします。

 専業的な林業就業者数は、平成十二年で約六万七千人でありますが、現在、減少傾向があるわけであります。平成二十二年に約四万七千人程度まで減少する見込み、このように言われておるわけでもございます。その中で、今委員御指摘のとおり森林吸収量三・九%を達成するためには、この森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備を展開しなければならないわけであります。

 そういうようなことから、将来必要な林業就業者につきましては、森林施業の多様化であるとかあるいは機械化や路網整備の進展等、状況の変化が想定されるわけでありまして、一概に申し上げられないところでありますが、森林整備等が基本計画どおり実施されるためには、生産性の向上、こういうことを考えますときに、現状程度の水準を維持するということが必要、このように考えております。

山本(喜)委員 今大臣の方から、現状を維持する必要があるというふうに言われましたけれども、その現状は、大臣の方の認識も、減ってきているということです。そして、現在の林業労働者の年齢は、六十五歳以上が二五%というふうに極めて高齢化が進行しているわけです。

 そうした中で、現状を維持するためには、よほどの人的措置、育成というのが必要になると思うんですよ、現状を維持するだけでも。その点、これをどういうふうにしていこうとしているのか。

亀井国務大臣 今御指摘のとおり、林業就業者の減少と高齢化が進んでおるわけであります。こういう中で森林整備を着実に推進するために、優秀な担い手の確保とそして育成が重要なこと、このように認識をいたしております。

 そういうような点で、厚生労働省の緊急雇用対策としての森林作業に従事した者を対象に、林業事業体への本格雇用や地域への定着を促進するために、平成十四年度補正予算から、担い手としての必要な専門的技能、技術の習得を図る緑の雇用担い手育成対策事業が措置されたわけでありまして、平成十六年度予算におきましても、これは計上してあるわけでもございます。

 また、各都道府県におきましては、林業労働力確保支援センターによる就業準備等に必要な資金の貸し付けや、道府県ごとに造成されております森林整備担い手対策基金によります就業者への助成等の支援措置を講じているところでもございます。

 今後とも、各種の支援措置を講ずるとともに、緑の雇用担い手育成対策事業を引き続き実施することによりまして、森林整備に必要な人材の確保に努めてまいりたい、このように考えております。

山本(喜)委員 この緑の雇用ということで、担い手対策、大変いいことでございますが、現状、四十四都道府県で、二〇〇三年度、二千四百八名というふうに実績が出ているわけですが、これはかなりばらつきがあるんですね。県によっては三百人前後のところもあるけれども、五人程度しか実績がないところもあるわけですが、これはなぜなのか。状況、わかっているでしょうか。

亀井国務大臣 今御指摘のとおり、この緑の雇用担い手育成対策事業、四十四都道府県で約二千四百人、こういうことでございまして、林業事業実態等から、最低限の求められる技能の習得等々に取り組んでいただいておるわけであります。

 私も和歌山県等に参りまして、現場で研修を終えたこの緑の雇用の関係者が、チェーンソーを使って一生懸命汗をかいてやっていただいている。あるいはまた、森林組合に参りましても、もうその地域に定着をして、新たな、若い人が山村の奥に住居を構えていただいて、地域としても、そこにそのような若い人が入っていただく、これは地域の活性化につながると、森林組合や市町村でも大変歓迎をされておるところもあるわけでありますが、なかなかそういうところばかりでないようなわけでございまして、先ほど申し上げましたようないろいろの施策を進めて、また、私ども農水省におきましても、副大臣並びに政務官にそれぞれの森林管理事務所や森林組合に実はこの国会の間を縫って出向いていただきまして、そしていろいろお話を伺い、緑の雇用の関係者の確保のための努力をするつもりで今活動しておるところでもございます。

 若干地域によりまして差のあることは承知をし、そこを何とか補充してまいりたい、このように思っております。

山本(喜)委員 今の、育成が進んでいるというふうな答弁でございましたが、私どもの認識によりますと、定着がほとんど進んでいないという報告もあるんですね。果たしてこの、毎年二千四百人ずつという規模でございますが、これが定着しないとほとんど意味がない取り組みになるわけですよ。したがいまして、その定着先ですね、これはどの程度把握しておられるんですか。

亀井国務大臣 ちょっと私も今細かい数字を承知しておりませんが、地方によりましては、住宅を提供していただく、あるいはまた、お話を伺いますと、大阪でサラリーマンをしておって、この緑の雇用の研修に入って、大変、毎日毎日今までと違った中での生きがいを持って、この緑の雇用の役目、特に森林は、やはり物を育てる、木を育てると同時に、一面、人を育てる、人間を育てる、こういうところもあるんだ、このようなお話も承っておるわけであります。

 今細かい各地域ごとの状況は手元にございませんけれども、いろいろな努力をして、定着ができるようなことも、また都道府県ともいろいろと連携をとってやってまいりたい、こう思っております。

山本(喜)委員 現実のところ、研修が終わった後の事業量の確保というのが余りなされていないということで、今後きちっと財政措置をしていかなきゃならないというふうに思うわけでございます。

 そこで、この三・九%の目標達成に向けて、農林水産大臣並びに財務大臣に、今後の予算措置、実際のところ、平成十年度を一〇〇としますと、この林野公共事業の推移というものはどんどん下がってきております。こうした中で、果たしてこの国際公約、イラクに自衛隊を派遣するよりも大事な公約ではないのか、京都議定書の議長国でありますから。そうした点について、この予算措置を今後どうしていくのか、それぞれお願いします。

亀井国務大臣 先般も御質問がありましてお答えを申し上げたわけでありますが、三・九%、これはいわゆる関係国間で認められた数字であるわけでありますが、大変残念ながら、現状の水準でまいりますと、森林整備がこの現状で推移いたしますと、確保できる吸収量、三・九%を大幅に下回る、こういうようなことでございます。

 それを何とか、平成十四年に策定いたしました地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策、健全な森づくり、森の整備あるいは保安林の適切な管理、保全であるとか、あるいは木材及び木質バイオマスの利用の促進、こういうことで関係府省と連携をしてやらなければならないわけであります。それは、先ほども御指摘いただきましたが、ステップ・バイ・ステップでこの十年間これをやってまいりたい。

 そういう面で、この十年間の対策の着実な推進を図るためには、一般財源では大変厳しいわけでありまして、新たな税財源の確保について取り組んでいく必要がある、このように私ども考えておるわけでありまして、農水省といたしましても、昨年来いろいろ議論をしておりまして、温暖化対策税が導入をされた場合には、またその税収が森林整備等に活用されるように積極的に対応してまいりたい、このように考えているところであります。

谷垣国務大臣 京都議定書、私も京都選出でございますので、京都の名前がついているのをほごにしちゃいかぬ、こう思っておりますが、なかんずく三・九%の森林吸収源対策というのは大事なことではないかと思っております。

 今、亀井大臣から十カ年対策のお話もございましたけれども、ことしの予算もこの十カ年対策を踏まえたものになっておりまして、森林整備事業は、公共事業全体で三・五%減でございますが、ことしはこの森林整備は〇・五%ふやしました。それからまた、亀井大臣からもお話がございました緑の雇用担い手育成対策、これも私は非常に大事なものだと思っております。

 厳しい財政事情ではありますけれども、このような森林整備とか担い手育成というようなところに重点化して、亀井大臣ともよく議論しながらきちっと予算をつくっていきたい、こう思っております。

山本(喜)委員 それで、この三・九%の達成のためには一般公共事業費は四千九百億円規模必要だというふうに林野庁で試算しているわけですが、これについて、一般財源では難しいということのようで、新たな温暖化対策税というのが今出されましたが、これは具体的にどのようなものになっていくのか、今お話できますか。この温暖化対策税、どのように検討されているのか。財務大臣、いかがですか。

谷垣国務大臣 これは、これから農林水産省とよく議論もさせていただかなきゃならない事柄であると思っております。

山本(喜)委員 まだこれからということですか。

 それで……

谷垣国務大臣 済みません。亀井大臣の、前に御答弁があったものですからあれですが、環境省ともよくお話をさせていただかなきゃならぬと思っております。

山本(喜)委員 そこで、ステップ・バイ・ステップの十カ年計画ということで、十六年度が評価見直しの年になっているわけです。これから具体的に評価の見直しが進むと思うわけでございますが、この達成に向けた展望をどのように持っているのか。

亀井国務大臣 この三・九%を達成する、こういうことで森林の整備を進めておりますが、この森林整備の実績をちょっと考えてみますと、平成十年から十二年までの平均で、植栽で四万ヘクタール、下刈り三十万ヘクタール、間伐三十二万ヘクタール、こういう状況でありまして、現状、三・九%の目標、こういうことから考えますと、やはり二・九、こういうような数字になってしまうわけであります。

 これは、基本計画の目標達成に必要な森林整備を確保するためには、例えば、植栽では四万ヘクタールを七万ヘクタール、あるいは間伐を三十二万ヘクタールから三十八万ヘクタール程度にふやす必要があるわけでありまして、このため必要な事業費につきましても、さまざまな施策を効果的に組み合わせて進める必要があると思いますし、個々の施策のコスト縮減、このことも最大限に取り組まなければならないわけであります。

 これらをステップ・バイ・ステップ、こういうようなことで今日まで来ておるわけでありまして、その評価、見直し、こういうものを十分いたして、そして、効率的な形での対応をしっかりやってまいりたい、こう思っております。

山本(喜)委員 この温暖化対策については、引き続き農林水産委員会の方で深めていきたいと思いますが、次に、経済産業大臣にお伺いしたいと思います。

 自由貿易協定についてでございますが、今現在、新聞報道を見ますと、WTOの新ラウンドがアメリカ主導で立て直しの機運が出てきた、あるいは新ラウンドのネックだった農業交渉が一気に加速する可能性があるというふうに報道されています。それから、新ラウンドの議長に大島大使がなりましたから、この日本がWTO立て直しの重責を担うことになるというふうにも言われております。

 その一方で、FTAの交渉も今活発にしていこうということであるようでありますし、自民党さんの方も、特命委員会というのを設けながら、交渉をこれから活発にしていこうということのようでございますが、このWTOとFTAの進め方、どういうふうに全体の整合性を見ながら進めようとしているのかということ。

 それから、労働力市場の開放というのも今取りざたされていますけれども、そして、医師とかあるいは看護師、介護士という形で具体的な職種名も上がってきているわけですが、この労働力市場の開放ということについては、議論が果たして具体化、急速に進んでいくのかどうか、そこら辺も含めてお願いします。

中川国務大臣 WTO、FTAについての御質問でございます。

 日本は、言うまでもなく貿易立国でございますから、世界じゅうの国々と仲よくし、そして世界からいろいろなものを輸入し、そしてまた輸出をしていくということが我が国の非常に大事なところでございます。多分委員は農業問題を中心にしての御質問かと思いますけれども、農業については亀井大臣が一生懸命頑張っておられますし、また、私もよく連携をとりながらやっているつもりでございます。

 WTOにつきましては、二月の十一日ですか、アメリカのゼーリック代表と亀井大臣、私等々がお会いをいたしまして、ゼーリック代表、世界じゅうを回られたようでありますが、ことしを失われた一年にしてはならない、やるべきことはできるだけ前へ進めていこうということでありますが、特に、これは亀井大臣の御担当ですけれども、農業だけが突出してどんどん前に進んでいくというような印象ではないと思います。

 農業それから非農産品グループ、そのほかにもシンガポール・イシューとかアンチダンピングの問題なんかも議論に出ましたので、ただ、日本は、御承知のとおり、包括交渉、一括受諾という大原則がございますから、そういうことで農業だけ突出するということはないというふうに私は理解をしておりますが、とにかく時間があるんだから前へどんどん進めていこうということは、そういう流れ、雰囲気が各国ともあることは事実でございます。

 御指摘のように、大島大使が一般理事会の理事長に就任されたということも大きなニュースだろうというふうに思っております。

 FTAに関しましては、WTOのガット二十四条にFTAに関する条項がありますから、相互補完的な関係にあるわけで、マルチの関係、それからバイの関係、両方とも日本にとって大事でありますし、FTAは、御承知のとおり、世界で百八十とも百九十とも言われるものが既に存在をしているわけでありまして、日本は、御承知のとおり、各国と今やっているところでございますから、この場合には二国間の交渉ですから、お互いに交渉し、そしてまた譲り合うところは譲り合う、そしてまたとるところはとっていくということで、お互いにとっていい結果が出るように努力をしていかなければならないと思っております。

 労働に関しては、これはいろいろ今委員も御指摘がございましたけれども、特にアジアの国々とのFTA交渉においては、新たに人の問題が出てくることは、もう既に、議題にこれからなってくるということは相手国からも通報のあるところでございまして、これも非常に大事な、大きな分野でございます。これにつきましても、全体としてよく話し合っていくわけでありますけれども、関係の省庁あるいは関係の団体の皆さん方ともよく議論をしながら、全体としてFTAが特に日本にとってプラスになるように、またダメージができるだけ少ないように配慮をしながら進めていきたいというふうに考えております。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

山本(喜)委員 時間がなくなりまして、厚生大臣には大変申しわけないんですけれども、最後に、このFTAの関係です。

 メキシコとの交渉が今煮詰まってまいりましたが、豚肉の関係ですね、柿の種は輸出できても、豚肉の関係は大変厳しいんじゃないかというふうに思っているわけでございますけれども、こうした農業交渉と、そして自給率の四五%確保ということを含めた整合性について、どういうふうに努力していくのか。農産物も外国に輸出していくんだということで、今一生懸命取り組んでいるようですけれども、現場の感覚からすれば、大変むなしい響きでしかないわけですよ、実態が伴っていないんじゃないかという。

 ですから、そうしたFTA交渉と日本の農業の食糧自給率の向上ということを含めて、今後の整合性をどう考えていくのかということを最後に農林水産大臣に聞いて、終わりたいと思います。

亀井国務大臣 FTAの交渉あるいはWTOの交渉、こういう面でも、いわゆる食糧安全保障、それから国土の保全、こういう非貿易的関心事項と多様な農業の共存、このことを基本的な理念として対応しておるわけであります。FTAを進めるにつきましても、やはり、関税撤廃の例外品目の問題であるとか、あるいは関税割り当て制度や経過期間を設けるとか、いろいろ日本の全体のことをしっかり考えていかなければならないわけでありますし、農業だけでなしに工業製品等々、いろいろのパッケージで考えるわけであります。

 そういう面で、私ども農水省といたしましては、すべて、輸入の増大、こういうことが国内生産にそのまま置きかえられるというようなことになってはならないわけでありますので、いろいろそのことを十分考え、また、さらに農業の構造改革、これもやはり考えなければならないわけでありまして、そのような面でのいわゆる消費者の理解あるいは国際競争力、こういうものをも十分強化し、しっかりした農業を確立してまいりたい、そして対応してまいりたい、このように考えております。

山本(喜)委員 ありがとうございました。

笹川委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十四日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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